幻想の郷の稀人兵士 (蓬莱の翁)
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プロローグ 「終わりの始まり」
日ノ本、某所。全世界で戦争が日常化し非暴力、軍権の破棄を謳っていた。国々も軍備を再建し、核を持ち違法に人体実験を行なう国まで現れ出した。兵士は体内にナノマシンを打ち込まれナノマシンの相互リンクによる意思疎通の簡略化、身体機能の制御などを施され1秒の無駄もなく最前線を死が訪れるまで戦い続けている。
木漏れ日の差す森の中を一人の男が歩く。男の名は
「ん?こんな所に社・・・?」
彼がふと顔を上げると、目の前に朽ちた鳥居と小さな社が姿を見せる。世界中が戦場に変わった中ここは人の手が全く入っていない。森の最深部に何故人工物が?と普通なら思うところだろう。しかし彼は社の階段に腰を下ろすと、フッと微笑み
「忘れ去られた俺が命の灯を消すにはいい所だ。逆に風情がありすぎるか?」
そう言い目を閉じる。こんな森の深部だ次に目を覚ますときは三途の川かどこかか。と最期の思考を巡らせ意識を落とそうとした時
「忘れ去られた物たちが辿り着く場所があるわよ」
耳元でそう囁かれる。目を開き声の主へゆっくりと向き直る。先程まで確かに誰もいなかった雅の隣に一人の少女が立っていた。紫を基調とした中華風のドレスを身に纏う金髪の少女だった。顔に幼さはあるものの高めの身長と何よりその身に纏う妖艶さが奇妙な空気に拍車をかけている。雅は流れる様な動作で立ち上がり目の前の少女の首に手刀を突きつける。あと数センチ踏み込めば少女のか細い喉を貫けるが雅は動かずにいた。否踏み込めずにいた。少女はどこからか取り出した傘を同じ様に雅の喉元に突きつけていた。暫くの沈黙の後に雅が口を開いた
「忘れ去られた物たちの地?・・・・・・面白そうだな。どうせ消えるはずの命だったんだ、案内は頼めるのかい?」
暫し悩んだ雅は警戒しつつも興味本位でそう尋ねる。少女は微笑みながら「ええいいわよ。それでは・・・」
一種の決め台詞のようなものを投げかける。
「 幻想郷へようこそ 」
雅の意識はそこで途切れた。
《これは、紅白の巫女もいなければ白黒の魔法使いもまだ生まれていない時代。そんな時代の招かれた未来に生きた兵士雅が稀人と崇められ、幻想郷平定の一翼を担う昔噺である。利用され棄てられた雅が見出すのは、未来への憤怒か?過去への希望か?》
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第1話 「ようこそ幻想郷へ」
小鳥の囀りに目を覚ます。雅はゆっくりと辺りを見回す。先程までいた場所とは明らかに違う場所。取り敢えず雅は懐から煙草を取り出し火をつける。紫煙を燻らせながら今の状況を確認する。おそらくここは日本、あの少女の言うようにここが忘れ去られた物たちの地なのだろう。それにしてもあの少女は・・・と近くの樹木にもたれ掛かりながら考えていると森から気配が近ずいてくる。気配の方へ体を向ける。樹木をへし折りながら現れたのは巨大な熊だった。空へ咆哮を轟かせ獲物を見つけた飢えた巨獣はその巨体に似合わぬスピードで跳び巨大な腕を振り下ろす。
「オイオイ、こんなのがいるなんて聞いてねぇぞ?向こうの世界の熊より一回りくらいデカイぞ」
すんでのところでそれを躱しコートとスーツの腕を捲る。細い体の線からは想像もできないほどの筋肉が浮き上がる。彼は元いた世界では、一人の被験体だった。人並みの暮らしはしていたが来る日も来る日も薬物を注入されデータを取られる。その研究機関では体を自由自在に操れるナノマシンの研究を行っていた。壊れた細胞を瞬時に修復し、骨密度や骨の長さを自由自在に変え、体内の電気信号を変換増大し電撃を放つ。脳内の考えを相手の脳に直接伝える等まさに世界の軍事バランスを根底から覆すような研究だった。しかし彼以外の被験者は、ナノマシンの拒絶反応やコントロールの失敗により全員が悲惨な末路を辿っている。
たった一人の被験者を除いて。
「 さて、折角新しい土地に来たんだ。来て早々三途の川に逆戻りなんてのはごめんだね。悪いが手は抜けないぞ?」
【亡霊の鋭爪】
雅は左手にをかざす。すると手首の少し上の位置から鋭く研ぎ澄まされたような骨が二対皮膚を突き破り出現する。熊はその異様な光景を本能的に危険と察知したのか急いで踵を返すが
「相手が悪かったな」
瞬時に熊の頭上に跳躍し腕を振り下ろす。その日幻想郷全体に爆音が轟いた
「さてこれからどこへ行くか?どこにもアテは無いんだがな・・・」
乱れた襟を正し男・・・鬼灯雅は周囲を見渡す。鬱蒼と森が茂るだけで何かありそうな気配はない。取り敢えずさっき熊が来た道とは逆へ進む。動物が出て来たなら森は余計深くなるだろうと言う考えだ。暫く進むと感が当たったのか湖の畔に出た。昼間だと言うのに霧がかかっていて視界が悪いが湖の向こうに赤い建物のようなものが微かに見える。取り敢えずそこを目指してみるか。歩み出そうとしたその時俺の頭にでっかい氷の塊が飛来して来た。
避ける暇もなく氷は俺の頭にぶち当たる。砕けた氷が溶けて服を濡らす
「あわわ何してるのチルノちゃん⁉︎」
「此奴がボサッと突っ立ってるのが悪いだ。あたいは何も悪くない!」
頭上から女の子の声が二人分聞こえて来た。デカイたんこぶをさすりながら上を見ると青い服に青い髪の女の子のと緑の髪の女の子がいた。パンツ見えそう・・・顔色や声の位置から察するに青い方がチルノと言うらしい。しかし人に氷塊をぶつけておいてあの言い草、まさしく不良娘そのものだ。お灸を据えてやろう。
「人に氷塊をぶつけておいて全く、何モンだ?って待てよ・・・宙に浮いてる⁉︎」
「何驚いてんだ?あたいはチルノ。最強なんだぞ。」
「あわわ。私は大妖精と言います。チルノちゃんの代わりにごめんなさい」
「あぁ成る程。大妖精ちゃんは、律儀ないい娘だね。それに比べてこんの不良娘が」
「何だ?あたいに難癖つけるのか」
大妖精ちゃんは自分がしたわけでもないのにきちんと頭を下げて謝罪したが、チルノの方は未だに空中に踏ん反り返っている。もう堪忍袋の尾が切れたぞ。
【消火者の焔槍】
俺は、体内の血液をナノマシンによって増幅。更にその血を炎に変える。体力を消耗するが、死ぬ事はない。
「げげっ炎⁉︎ちょ、まっ・・・」
「おら!」
俺は、5m程度の長さに炎を調節して手の先から撃ち出す。飛ぶ鳥を落とすように逃げる氷の妖精に超高温の槍を撃ち出す。
氷の妖精なら掠っただけでも致命傷だろう。そもそも妖精って死ぬのか?
数分後、チルノは、身体からプスプスと煙を上げてグッタリしている。
「全く、さてとじゃあ大妖精ちゃんでいいかな?俺は行くよ。こいつを頼むよ?」
「え、えぇ?わかりました。ところであまり見慣れない方ですがどちらに?」
「俺は、鬼灯雅ついさっきここに来た人間だ。これからあの館に向かおうと思っている。」
俺は、簡素に自己紹介をする
「あの館にですか・・・」
あまりいい顔をされない。あの館に何かあるのだろうか?
「あの館には誰が住んでいるだ?あんまりいい答えを聞けるとは思えんが」
「あの館には吸血鬼が住んでいるんです。いたずらに近づかない方かいいかと・・・」
吸血鬼?あの人間の血を吸う?妖精どころか吸血鬼までいるとは、ここは本当にどこなんだ・・・と考えて見ても何も思い浮かばない。一先ず泊めてもらえるかどうかだけ聞こう
「そうか。忠告ありがとう、気をつけるよ。俺は、寝泊まりする場所を探しているんだ。もう日も落ちるだろうしこの山から人がいる場所まで降りるのは危険だろうから取り敢えず行ってみるよ。」
「そうですか・・・わかりました。お気を付けて、また何処かで会ったら声をかけて下さいね。」
俺は、非常にいい娘の大妖精ちゃんと別れ館へ向かう。真紅に染まる不気味な館へ。
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2話 「紅い館」
湖の対岸にある紅い館にたどり着いたが、さてこのでかい館にはどうやって入ろう?門は何処に・・・門番らしき人影が見える。おそらくはあそこが入り口なんだろう。話しかけてみるか。
近づいてみると、寝てるのか・・・?
スリットから長い美脚を晒ているチャイナドレスのようなものを着た。女性に声を掛けようと近づくと
「誰です?」
今まで寝てた門番が急に目を覚ました殺気丸出しで。すげぇなこいつ気配を感じ取ったのか?にしてもデカイな、俺と5cmくらいしか変わんないんじゃないか?顔は女性と言うか少女のようなだけど出てる気配はプロそのものだな。構えは、中国南側の拳法の様にも見えるな。
「あぁいや今晩ここで泊めてもらえないかと思って来てみたんだが、迷惑だったか?」
ふむ・・・と少女は少し考えるとふっと顔を上げ
「わかりました。レミリアお嬢様に掛け合わせてみます。ただし淫らな行為に及ぶような事があればその時は...覚悟してくださいね?」
なんだろうこの子の笑顔はすごく怖い・・・殺気が漲っているのか背後に凄い黒い靄が見える気がする。庭で作業をしていたメイドに何か指示を出している彼女を尻目に最初の戦場で人を殺めて以来の冷や汗を流しながら
「あ、あぁ・・・肝に命じておくよ。」
何とかそう答える。
「一応俺は、鬼灯雅だ。今晩はよろしく頼むよ。」
俺は、殺気を放つ彼女に手を差し出す。すると彼女は、殺気を収め人懐っこい笑顔とともに手を取りブンブンと大げさに手を振りながら。
「私は、紅 美鈴です。では鬼灯様。ようこそ紅魔館へ。」
「そう言えば、君の立ち方や構えは中国拳法かい?相当の実力者と見受けたが」
俺は好奇心から美鈴へ聞いてみる
「そうですよ。貴方も最初見た時は明らかに普通の方ではない気配を感じましたし手を取った際にかなり戦い慣れてるなってわかりましたよ」
この娘・・・侮ってはいけなかったな
これは、泊めて貰う前に手合わせでもしてみるかな。もし、って事になったら嫌だし。
「凄いな、そこまでわかるのか。一応俺も腕に覚えは、あるつもりでいるんだが・・・手合わせをしてみるか?」
「いいんですか?丁度最近修行に付き合ってくれる方がいなくて困っていたところでしたよ。」
嬉しそうに言うと彼女は、右手足を前に左手を少し引いた構えを取る。やっぱり中国拳法か。気を引き締めていかんとこっちがやられそうだな。
刹那一足で美鈴は、俺の間合いへ入りその長い脚を振るう。咄嗟にスウェーで躱すがギリギリだな・・・これは躱してたらいつかは当たるな。しかし俺も負けちゃいない。美鈴の軸足に蹴りを入れるが跳躍で躱される。ならばすかさず軸足を切り替え後ろ回し蹴りを見舞うが、受け止められその力を利用して後ろに距離を取られる。まさしく足の応酬。間合いへ跳ぶ足、鞭のような足、崩す足、殺す足。互いに蹴りのみで相手の実力を察する。このままじゃラチがあかない。
俺は、動きを力を流す構えに変える。これは俺が戦場で身に付け被験体の成れの果てから身を守る為に完成した型だ。構えといっても力を完全に抜いただけだ。腕を下げ足前後に少し開く。美鈴の方は、訝しげに
「えぇと、構えを解いてどうするんですか?」
それはそうだ。アレほどの足技の応酬の直後にこの構え、見る人が見ればふざけているのかと怒り出すだろう。
「いやこれが俺の構えだよ。さぁ遠慮はいらないからどうぞ」
俺は、静かにそう答える。美鈴は、それではと砲弾の様な一足で拳を放つ。刹那世界がゆっくりと進む。美鈴の拳が俺の肩に触れた瞬間体を捻る。回転扉のように拳の威力は吸収され遠心力によって力が倍増された俺の拳が美鈴に直撃する。
石畳にヒビが入る勢いで叩きつけられた美鈴だったがほんの数秒で
「イタタッ・・・こんなに強烈な一撃を食らったのは久し振りですよぉ強いですね雅さんは」
と言ってケロッとしてる。
どうなってんだよこいつ・・・乱れた服を正し少しキリッとした顔で
「いやぁいい教訓のなりましたよ。ありがとうございます。いやぁあんなやり方もあるんですねぇ。っとこんな事してるうちに暗くなってきちゃいましたね。今案内呼びますね」
美鈴が館に入り暫くすると小さなメイド(?)を連れて来た。さて泊めて貰えるかな?美鈴の笑顔を背に俺は館の門をくぐる。
中に入るとこれまたたまげたなぁ。
真っ赤な外観とは打って変わって中は、これぞ洋館と言うような作りになっていた。
エントランスはちょっとしたホールのような造りで高い天井にある巨大なシャンデリアが広い空間を明るく照らしている。
また壁や並べてある絵画や美術品はどれも非常に高価なようである。確か館を美術品等で飾ったり複雑構成でそれ自体を一つの芸術品にする建築法があったな。
確か・・・バロック建築だったかな16世紀頃にヨーロッパで流行った建築法だったらしい
2階へ続く真ん中の大階段。左右にり館を分ける大扉。どこかのホラーゲームで見たことあるような造りだな。
感心して眺めていると小さなメイドに服を引っ張られた。どうやらいそげと言う事らしいので俺は素直について行く。
ん?・・・そこの左の大扉か入るんじゃないのか?食堂兼応接間って書いてあるんだが。
そんな事は御構い無しにメイドは2階へと上がって行く。それについて行くが結構左へ進んで行く。扉を開け階段を降りるとそこは普通の食堂だった。来た道とは別の扉を見ると大扉のある位置の扉が普通のものになっている。どうやら余程見せたくないものがあるらしいな。
椅子を引かれたのでそこに座ると早速メイドがワインを注いだ。毒は無さそうなので一口飲んでみる。独特な香りと他にはあまり無い甘み、飲みやすさこれはルーマニアワインか。東欧の戦場にいた時出されたことがあったな。
「やっぱり美味いなぁ懐かしい味だ。」
「あらお気に召したのかしら?」
懐かしみながらワインを飲んでいると前方から声を掛けられる。
薄ピンクの俺にはわからない種類の服に同じくピンクのナイトキャップを被った少女がメイドを伴って立っている。青みがかった銀色の髪の少女は、もしや美鈴の言っていたこの館の主確か名前は・・・
「私の名はレミリア・スカーレット私をこんな早くに叩き起こして、まったく不愉快だわ」
そうレミリアだ。彼女は如何にも不機嫌そうに雅を睨み付けた。
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3話 「西方の王」
吸血鬼
その名を知らぬ者はほとんどいないであろう生き血を啜る怪物。
古くは、1800年代に吸血鬼を貴族的な外見と定番化させたルスヴン卿、言わずと知れたドラキュラ伯爵、女吸血鬼カーミラや不死者ノスフェラトゥ、ヨーロッパにおいてその強大な力と数々の伝承によって恐れられ、日本にさえ
「まぁ本題に入らせて貰うが、今日ここに泊めてもらえないだろうか?つい数時間前にこの土地に来たばかりなもんでな」
「あらそう、好きにすればいいわ。不愉快だから出来れば今すぐ勝手に寝て、朝一番で出て行って欲しいものね。」
欠伸をしてながらそう答えたレミリアは最早雅の事など眼中に無いようだが
なぜ。何故彼女から焦りを感じるのだろうか?
「何をそんなに焦ってる?さっきのメイドもそうだが、何か見られたら困るものでもあるのか?」
「どう言う事よ?」
レミリアが更に不愉快そうな顔をする。
「そりゃあえて遠回りしてここへ案内したメイドに、俺には長くいて欲しくない素振りを見せる君の態度で大まかにはわかるよ」
ゆっくりと目を閉じナノマシンを放出しゆっくり目を開く。
【観測者の千里眼】
体内のナノマシンの半数を周囲に展開、もう半数が空間認知能力を強化、リンクし壁の向こう側などを視ることが出来る。今雅は、文字通り千里眼の様にこの館全体を見ていた。
「ふむ食堂の反対側のドアは図書館のドアだったのか、凄まじい数の本だな、2人ほど人がいるのか。外は美鈴ちゃんが1人で門番かい?」
唖然とした表情でレミリアは雅を見つめていた。あの間抜けな顔っと心の中でほくそ笑み再び館へ意識を向ける。
「ん?地下か・・・外側から鍵、かなり分厚い扉だな。中には1人か?女の子・・・」
「口を慎め。お前が踏み込んでいい話では無いのよ」
雅の言葉を遮ってレミリアが言い放つ。唸り声を上げる怒気。あまりの殺気に燭台の蝋燭が消え窓が軋む。心なしかレミリアの深紅の瞳が輝きを増した様な気がする。よほど触れて欲しく無い者らしい。一体誰なんだ?
「済まなかった。だが一体誰なんだ?その子は」
しばらくの静寂の後レミリアが静かに語り始めた。
「妹よ。たった1人の肉親なのよ。それなのに私は、あの子が内に秘める狂気を怖れ400年以上もの間あの子を幽閉して来た。わかっていたのよ、こんな事じゃ何も解決しないのは、けど怖かった。あの子が何かを壊すのがそしていずれあの子を私が殺さなくてはならなくなるのが怖かった。」
「・・・姉としてそれはどうなんだよ。向き合わないお前がその子の狂気を・・・」
「黙れ‼︎お前に・・・お前に何がわかる。この400年以上をあの子の為に捧げてきた私の何がわかる‼︎」
言うや否やレミリアは雅の眼前に迫り鋭爪を振るう。腕を交差させガードするが窓を突き破り外へ放り出される。受け身を取りレミリアと対峙する。鮮血に染まる腕に深紅に煌めく瞳。そこにはあの我が儘なお嬢様の姿は無く、ただその力においてヨーロッパ社会で恐れられた夜の王の姿があった。
王は、その無慈悲な鋭爪を雅の首に向けて振るう。そして・・・
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幻想郷の何処かにある廃屋《マヨヒガ》
薄暗い部屋の中に2人の女性。
「さてどっちが勝つかしらあの勝負、吸血鬼とあの男との戦い。けど本当にこれど良かったのかしらねぇ?紫」
純白と漆黒の法衣を纏う天狗の頂点、幻想郷創造の関係者、その気になれば鬼の長とも対等に渡り合う怪物。天魔
「えぇアレでいいのよアレは未来から来た技術の渡来者。新しい物が幻想郷を平らにして行くのよ。天魔ちゃん」
紫を基調とした中華風ドレスを纏う妖怪の賢者であり最強妖怪の1人。紫
鬼のいなくなった幻想郷において実質トップの2人だがその仲はけして険悪なものでは無い
1000年を超える時を過ごして来た2人は時に姉妹の様な姿をも見せる。
「けど紫?あの男は危険よ。この土地を変えすぎる。ヘタしたら幻想郷が消えるわよ。あの吸血鬼も鬼の力に天狗クラスのスピードを兼ね備えたかいぶつよ?」
「けど今は彼に頼るほか無いわ。それにもう時間が無いのよ。」
長い沈黙が訪れる。紫は立ち上がり障子を開け放つ。
東の空が明るくなり始めていた。いつの間にか異様な妖気は感じなくなっていた。
「もう直ぐ夜が明けるは、向こうの方も終わったみたいだし帰るわね。」
バイバイと手を振りながら空間を引き裂いて現れた異様な隙間へ消えて行く。取り残された天魔は、懐から一枚の写真を取り出した。
天魔と紫のそしてその間の少女の3人が写る写真。天魔は、ゆっくり写真を撫で
「霊夢。あともう少しだけ頑張ってね」
一言を残し韋駄天の如く東の空へ翔けて行った。
戦闘描写のコツをください・・・
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4話 「死なば諸共」
自分がなぜこんな状況になっているのかわからなくなったことは経験はないだろうか?
例えば、何か大きくショックを受けた時、事故にあった時など何も考えられずにボーっとなることはないだろうか。
レミリアは今湖の岸辺で星空を見上げている。水は吸血鬼にとって弱点の一つではあるがその多くには流水であると言う条件が付くので流れのほとんど無いこの湖にいるのは幸いだったかもしれない。そんなことより今は、なぜこんなところで星空を見上げているのかが彼女にとっては重要だった。重い頭で記憶の糸を辿り必死に何があったかを思い出す。確か一晩泊めてほしいと言ってきた男が逆鱗に触れてきたので窓から外に放り出してその首を掻き切った筈。いや確かにあの不埒者の首を掻き切った。服についた大量の血液は彼女のものではない。
「いったい何があった?・・・確かあの男の首を掻き切ってやった筈。何が・・・」
岸から起き上がり紅魔館を目指し歩く。飛んで帰る力などはもう残っていなかった。森を抜け、門に辿りつき居眠りをしていた門番に「どうかお払い箱だけは!!」と泣きつかれたのを無視して先程首を切った場所まで戻ってきた。確かにむせ返るような血の匂いが周囲に漂い、地面には大きな血溜まりができている。
殺したのは確かだった。だが
「なぜ死体が無い・・・あいつはいったい何なのよ!?」
「鬼灯雅、外の世界の元傭兵だよ」
プライドをかなぐり捨て叫んだレミリアの上から聞き覚えのある声がかけられる。怒りを覚えるしかしどこか人を安心させるその声にはっと上を見たレミリアを窓の縁に腰かけ見下ろす先程の男がいた。
「何故生きている・・・お前は、確かに私が首を切った。何故だ!!」
「俺の一つの術だよ。放浪者の死霊術と呼んでいるんだが。俺の体内に存在するある物質が破壊された体細胞を急速に復元していくんだよ。内臓だろうと、たとえそれが首だったとしてもな。さっきあんたを吹っ飛ばしたのは、再生時発生する衝撃波だ。」
レミリアは唖然として話を聞いていたが徐々にその話を理解していった。こいつには魔力の類はないが何か人ならざる力を持っている我々の知らない力を。しかし奴が顔を青くしているところを見ると短時間のうちに再生はできないようだ。ならば・・・
「そう、成程ね。ねぇ鬼灯雅、今日はとっても綺麗な満月だと思わない?しかも鮮血のような紅よ?」
あぁそうだな?とたいして気に留めていない男に向かって最大の怒りと殺意を込めて言い放つ
「こんなに月も紅いから 本気で殺すわよ」
この一連の出来事を影で見ていた紅魔館の門番紅美鈴はどうすべきか頭を抱えた。主人であるレミリア・スカーレットからは、有事の際は雇っているメイドや大図書館に籠っている盟友パチュリー・ノーレッジを避難させ周囲の妖精達にも避難勧告をするように言われていた。がしかし
「どうしよう・・・レミリア様は有事のマニュアルをくださったけど、私1人でやるのはちょっとな。それに・・・」
あの雅という男。おそらくあの力と戦闘技術が重なればレミリア様でも・・・はっ⁉︎と美鈴は頭を振った。主人の敗北を考えていた自分に喝を入れるように太腿を殴ると館中のメイドに今すぐ避難するように、それと湖周辺の妖精達にも逃げる手伝いをするようにと伝える為に駆け出した。主人と先程あったばかりの強者の武運を祈って
吸血鬼と人間との戦い。本来であれば人間は、一挙一動が岩を砕き大地を裂く力の前にただただひれ伏すしか無くそれは戦いと言うよりか一方的な暴虐。腕一つで胴を引き裂き、足で頭を潰し、その牙で血液を吸い尽くす。策を練りかの敵を知る者で無ければ戦いにすらならない。
レミリアは、不快でならなかった。今まさに拳を交えている相手に。その拳が当たらない事に。そしてこの戦いで自分が負けるかもしれないと言う事に。敵を裂く腕も、あの男の頭を砕く蹴りも依然として当たる気配がない。
「まったくよくまあちょこまかと、ネズミのようね?いい加減大人しくしなさい。そうすれば苦痛なく殺してあげるわ」
「一応向こうの世界での
唐突にレミリアの肩が切り裂かれる。
腹、足、首へ次々に傷が増えて行く。瞬時に傷が癒えて行くレミリアとて流石に距離を取る。
「惜しいな、あともう少し遅ければバラバラに出来たんだがなぁ」
眼を凝らして見ると指の先が微かに月明かりを反射している。
おそらく何か細い線の様なものだろうか
「何かしらね。細い紐見たいなものかしら?」
「企業秘密だ。さぁまだまだお楽しみはこれからだ」
タンっと革靴を鳴らす。
レミリアは上空へ飛び上がる。さっきまでレミリアが立っていた場所、紅魔館の外壁が音を立てて崩れ落ちる。
レミリアはどうにか接近しようと試みるがその都度不穏な気配を感じ回避すると自分の横を何かの攻撃が通って行くため迂闊に接近する事が出来ない。
「おかしな術ね。何かを飛ばしている訳では無いし本当に吸血鬼以上に奇怪ってどういう事よ。
「まさか全部躱されるとは思わなかったよ。これはネタバレしよう、死神の幻惑と呼んでいる。ナノマシンが周囲の物質を少しずつ集めて人型を成す。ここは空気が多いから目に見えないモノになるが、土や砂が多いなら所謂ゴーレムのようなのに、水が多ければまぁ人型になるんだよ。」
「成る程本当に面白いわね。はあぁ・・・ここまで私に攻撃を加えられたのは貴方が初めてよ。だから・・・」
雅は、強烈な殺気を感じ左手を前に出すが
「雑には殺さないわ。丁寧に殺して墓でも立ててあげるわ」
神がかりな速度で雅の横を駆け抜ける。
一瞬遅れて雅の左腕が地面に落ちる。吹き出る鮮血は紅魔の館をより紅く染めていく。
「カッ⁉︎・・・何いぃ⁉︎」
レミリアの手に握られた煌めく大槍がこの土壇場で自らの限界を超えた事を物語っている。
「こんな物も出せたのね私は。さて死の時間よ?貴方の死神が見せた幻惑は、現実となって貴方へ還る。」
「ふふっ・・・舐めるなよ、戦場で学んできた悪あがきを見せてやるよ。死なば諸共・・・お前も冥府魔道を一緒に旅して貰うぜ」
「左手一本で何が出来る。終わりよ、私にここまでさせたのよ、冥府で自慢なさい。」
レミリアは大槍を雅目掛けて投げる。
大槍が雅の腹を貫いた瞬間
【預言者の神技】
雅は槍と共にレミリアの懐に移動し自ら槍を突き入れる。
槍は、雅の腹を貫きレミリアの心臓を貫いた。
「これは、科学者どもも仕組みがわからなかった本当の神技だ・・・グッ、さぁ冥府への誉れある死だぜ」
「ば、馬鹿な・・・私が、にんげん・・・に?」
2人は同時に倒れ伏す。もうどちらも息をしていない。
「全く、嫌な空気を感じて駆け付けたのに終わってるじゃ無いの」
「無理する困った主人ね、貴方が居なくなったら妹はどうするつもりだったのかしら」
そんな会話が聞こえたような気がした。
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5話「幻想の守護者」
目を覚ました雅は激しい頭痛に襲われる。どのくらい眠っていたのだろうか?ガンガンと響く痛みに耐えながら体を起こしゆっくりと状況を整理する。確か館の主人レミリアスカーレットと対峙し相討ちではあるが刺し殺した・・・多分。左手はあの時のまま肘から先がない。
【放浪者の死霊術】
幾分回復しているのか左腕はすぐに再生した。腕の具合を確認する。なんとか大丈夫そうだ、あと2日ほど酷使しなければ完全に回復しているだろう。
「あら、お目覚め?死んでるかと思ったわよ」
目の前の扉が唐突に開かれ一人の女性が顔を出す。今気が付いたがベッドで寝ている事や完全に洋風な部屋からあの館で眠っていたらしい。女性は日本人らしく漆黒の長髪を後ろで結び、仄かに赤い黒目からは何にかを感じ取るには難しかった。白い着物に緋袴を着ているという事はどうやら巫女であるらしい。
「実際死んでたかもな。なあ俺は一体どのくらい寝てたんだ?」
「そうねぇだいたい七日ってところかしら?つまり一週間ね。本当に死んでると思ったわ」
い、一週間!?確かにそれは死んでてもおかしくない。淡々と告げられた事実に今更になって冷や汗をかく。
「まあ助かっただけで儲かりモンでしょ~」
巫女さんは上品さなぞカケラも無しと言わんばかりにドッカリと床に胡座をかく。椅子に座ればいいものを・・・
「そうかもな、取り敢えず巫女さんが助けてくれたんだろ?ありがとう。」
「私だけじゃ無いわよ後でこの館の図書館にいる何とかっていう魔女にお礼しなさいな。それから巫女さんなんて堅苦しいから博麗霊夢そう呼んでね」
赤白の巫女、博麗霊夢はにぃと猫のような気紛れな笑みを向けた。
「博麗霊夢?ずいぶん変わった名前だな。まあいいか人の名前は難しいものな、俺は鬼灯雅だ外の世界では傭兵をしていた。」
よろしくとお互いに手を取り合う。何とか起き上がれるようになったのでとりあえず生きていると言うレミリア・スカーレットのもとへ行ってみることにするしかし流石は吸血鬼あれだけのダメージを負って生きているとは。部屋を出てそばにいた小さいメイドにレミリアの居場所を聞きそこへ案内してもらう、2~3部屋を抜けひときわ大きい扉の前にたどり着くと見知った顔が勢いよく突っ込んできた。
「雅さん!生きていらしたんですね!?よかった雅さんが目を覚まさないっていうから私気が気で・・・」
この館に着いたその日に殴り合った門番の紅 美鈴が涙目で抱きついてくる。ていうか鯖折り?あ、意識が・・・
「わかったから・・・取り合えず放してくれ美鈴、折れるから・・・」
「は!?私ったら何を。ごほん、でも生きていて本当に良かった・・・それにあなたのおかげでレミリア様にもいいことが起こったんですよ?」
美鈴の話によるとレミリアはあの一件から3日程で目を覚ましたらしい。それでも吸血鬼としては深刻なダメージを負っていたようで今も無茶は禁物らしい。いいことって言うのは?と聞いたがそれはあって直に聞いてくださいと言われてしまった。大きく重厚な扉を開けるとどうやらそこは玉座らしい、レミリヤは優雅に座りワインを傾けている。隣の玉座に座すのは会ったことのない少女だった。レミリアとは相対する金髪の髪に着ている服は少し子供っぽいが大方レミリアと似ている、顔つきは二人ともよく似ているもしやこれが彼女の言っていた・・・
「あらよく来たわね、まったく吸血鬼相手によくやったものよ。初めてよ私が生死の境をさまよったのは、図書館のパチェがいなければ私もあなたも今頃死んでたわよ」
見た目は元気そうだが会った時より更に青白い顔や俺が付けた翼の傷や折れているようである足、どこにあったのか酸素吸入器のようなものまで持っているところを見るとまだ完全には回復しいないようだ。
「随分と元気そうじゃねぇか、まぁだが一週間も部屋を借りて悪かったなありがとさん」
「お礼なんていいわよ、それにあんたはよくやってくれたわ」
頭を下げた雅に対しレミリアは、頭を上げるように促す。
「ねぇお姉様?この人は誰?お姉様のお知り合い?」
隣にいた少女が疑問を連打している。やはりこの子があの時レミリアが言っていたたった一人の妹か
「落ち着きなさいフラン。鬼灯雅、あなたのおかげで私は妹と初めて向かい合うことが出来た、あなたが私に不遜な態度をとったおかげで今私は妹と肩を並べて座ることが出来ている。感謝しているわありがとう。それと厚かましいことだけれども件の日の態度を許して貰えないかしら?」
出会った当初の傲慢な態度はどこかに消え失せ、一人の主人として、誇り高き王として気品のある偉大な態度はカリスマのようなものであった。そこまで素直に頭を下げられては雅とて居心地が悪い
「よしてくれ、なんだか気味が悪い。それによかったじゃないか、たった一人の妹とまた肩を並べられて」
ええそうねと笑うレミリアは本当に嬉しそうだった。レミリアからはこの館を拠点として使っていいことやこの土地が幻想郷と言うらしきものだと言うことを教えてもらった。また自分たちを助けた図書館の魔女パチュリー・ノーレッジは基本的に出てこないうえにどうせ会ってはくれないだろうからお礼はいいと言われた
「じゃあ世話になったな。また頃合いを見てここにくるぜ」
レミリア姉妹や美鈴に別れを告げて館を出る。行く当てなどは無かったが地理を把握するには歩くのが一番だ、最悪野宿でも死にはしないだろう。雅は一週間ほど前にいた方角と反対側に歩き出す、館の建っている周辺の湖は、深い霧で覆われ見通しはすこぶる悪かった。暫く湖畔沿いを歩いていると
「おーおーいたいた。そこのちと止まりな」
雲のように覆われた空からいきなり声をかけられる。なんだっけなここに来る前に丸焼きにしてやった妖精がいたっけなそいつか?でも声が随分ハスキーな気がするな・・・
「誰だ?俺は霧のせいでそっちが見えん取り合えず降りて来てくれないか?」
霧を飛ばしながら三人ほどが空から降りてきた。真っ白な山伏衣装の二人を従えて、純白と漆黒、相対する色が見事に合わさった法衣とも着物とも言える服を纏い足まであろうかと言う漆黒の髪、黒い翼の女が口を開く
「初めましてだねぇうちは天魔。この幻想郷の創始者の一人で紫ちゃんの大親友よ~あ、紫っていうのはあなたをここに連れてきた人ね。どうせあの子名乗ってないだろうし」
天魔と名乗った女性はもうすでに友達のようなノリで肩をたたいてくる。犬歯を出して笑う姿はどこか霊夢に似ている、ここの女性はみんな同じような笑い方なのかな?
「左肩を叩くな・・・生えたばっかりなんだから。それにしてもこの幻想郷の創始者?そんなお偉いさんがこんな一人の男に何の用だ?」
左肩を抑えながら俺は天魔と言う女性に問いかけた。ちなみに彼女随分でかい、俺より頭一個分はでかい。モデルばりの長身に着物の間から見える長い脚が中々にセクシー・・・
「おおそうじゃそうじゃ、えーと実を言うと用があるのはわしじゃなくての・・・」
そこまで言うと天魔の身体から禍々しいまでの殺気が漏れてきた。数多の戦場を駆けてきた俺でさえ感じたことない猛烈な恐怖が振りまかれていく。
「て、天魔様・・・まさかこの人間相手に迦楼羅様を・・・?」
そばにいる側近たちも冷や汗を流しながら青い顔をしている。それだけやばい奴ってことか・・・
「鬼灯雅 貴様がこの郷に如何なる影響を与えるか我らが見極めようではないか」
漆黒の髪は徐々に白金色に変わっていき翼は赤く元の倍ほどに広がっていく。
「なんで、一週間も生死の世界を彷徨った後にこんなのが勝負挑んでくるんだよ・・・元の世界に帰りてぇ」
「ゆくぞ?稀人よ我は迦楼羅。幻想郷の守護者」
猛烈な勢いで滑空してくる天魔、迦楼羅と呼ばれた彼女の上を飛び越える形で避けるものの風圧でバランスを崩す。旋回し再び滑空してくる彼女を蹴り上げるが足を掴まれ宙に放り上げられる。なら
【炎神の覇気」
力を溜めるようにして自分を中心にドーム状に熱線を放つ。体内のナノマシンが血液を常温で発火させる物質に変化させそれを体外へと放出した。熱と衝撃波で殆どの敵は動きを止めるはずだが。
おおよそ物理法則を無視したかのように後ろへさがる迦楼羅。そして大きく息を吸い込むと
キィィィィィ!!
ほんの一瞬だが空間が歪むほどの咆哮で熱線が霧散していく。(そんなのありかよ・・・なにあの翼、天使?
「その程度か?これでは確かめるまでも無かったではないか。無駄な時間を使ってしまった、憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ」
後ろにいた従者から受け取ったのは槍の両側が斧のようになった巨大な武器を構える。あれは・・・
軽く振るっただけで周囲の空気が揺れる程質量を感じる。
「いやなこった、こっちは大けがしてんだ少しは加減ってものを知れ」
この手だけは使いたくなかったがやむを得ない。俺は奥歯の薬品を噛み砕く。現状俺の持つ最強の手段、複数の能力を同時に行使する禁薬。身体中に力が巡りわたるような感覚に思わず口元が緩む。
「ほう?なかなかの殺気じゃな。どれ見せてみうぬの
迦楼羅も先ほどとは比べ物にならない殺気を放ち身体をひねり投擲の姿勢をとる。パチパチと帯電しつつある俺は陸上競技のクラウチングスタートのような姿勢をとる。
【
地面を抉り走り出した俺は槍を投げるように拳を振るうと空気が渦を巻き帯電した槍のように見える。同じく空気を引き裂きながら放たれた迦楼羅の方天戟とぶつかり一帯は落雷にも似た巨大な光に包まれた。
眠いっていた雅と同じく私も眠っていたようです。毎度のことながら誤字やご指摘、アドバイスなどをよろしくお願いします
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6話「歴史の編纂者」
幻想郷ではないどこかの戦場。倒壊した建物、鉄筋が剥き出しなった商業ビル、今にも落ちてきそうな看板、かつてはそれなりに大きな街だったのだろうか?今は見る影もなくビルの間を熱く乾いた風が吹き抜ける。
「ヘイあれ見てみな、こんなところに女だぜ・・・」
「何寝ぼけたこと言ってんだタコ。こんなところに女なn・・・」
とある軍のキャンプ。正規軍ではなく各国から名乗りを上げた寄せ集めの集団は軍と言うよりならずものが集まった傭兵団のようだ。
そんな危険な中を優雅に歩く女性が一人。
紫色の日傘を差しこれも紫を基調とした中華風のドレス、金色の髪を揺らしながら誰かを探しているようだ。
彼女は廃墟にもたれ掛かり目を閉じている還暦の男性ににそっと歩み寄り
「
「なんだお嬢ちゃん。んー見た感じ東洋系かぁ?ギリシャ語が分かるのかい?」
この軍一年長の彼は突然の来客にほんの一瞬だけ目を開いて答えた。
「えぇ少しだけね。私は・・・そうねハーンとでも呼んでくださいな、ニコスさんで間違いないかしら?」
「如何にもニコラオスだ。しかしハーンねぇどっかで・・・まぁいい何が聞きたいんだいハーン婦人?」
「婦人だなんてウフフ・・・聞きたいことは一つよ、鬼灯雅この名前に聞き覚えは?」
その名を聞いた途端その男は閉じていた眼を見開いた。潰れた右目までも見開かんと言う勢いで。
「ハーン婦人、彼奴は生きているのか?どこでその名前を?聞いてどうするんだい?」
「んーただの興味本位よ、私はこれでも新聞記者なの。日本にいて知り合った雅さんの過去が知りたくてね」
「記者?・・・ふーんまぁいいワシの知っている事だけでいいなら話そう。あれは今から5年ほど前の話だ、ワシはフリーの傭兵をやっていた。ある日道の真ん中でぶっ倒れてる男を見つけてキャンプに連れて帰ったんじゃ。まだ幼さが残ったようで何とも言えん顔をしとったよ。目を覚まして色々聞いてみたんじゃが名前と国籍以外覚えてないの一点張りでとてもまともじゃなかった・・・」
ふぅと一息つき傍らにあったウィスキーボトルを一口
「歳かねぇ息が続かなくなってきたよ。続きか、取り敢えず保護してみることにしたんだがどう言う訳か戦闘技術は一流だし戦術眼も異様に高くてな2年ほど一緒に行動して随分と稼いだもんだ。だがある時敵の
「ええいいわよ。ありがとう参考になったわ」
蠱惑的な笑顔でお礼を述べると彼女は優雅に歩き出し角を曲がって行く
「ん待てよハーン?新聞記者?まさか・・・!」
ニコスは立ち上がり急いで後を追い角を曲がるがそこにはただただ壁があるだけだった。
ところ変わって幻想郷、数刻前落雷にも似た轟音が響き渡ったが今は何事もなかったかのように小鳥が
「中々やるではないかお主、まさか迦楼羅相手にして五体満足元気に立っているとはのう」
けらけらと笑いながら
「ふざけんな!殺されるかと思ったぞ。また左手が痛み出したよ、生えたばっかりだしこっちは一週間も三途の川の畔にいたんだぞ加減しろ加減」
「その割にはぬしもノリノリだった気がするがのう」
痛いところを突かれうっと煙草を落としそうになる。あれだけの死闘を演じながら並びあって一服する姿は既に友人同士のように見える。
「んでなんか言ってたか迦楼羅様とやらは?」
「言っておったぞ。アレだけの力をコントロール出来ていれば問題ないとな。久し振り良い余興であったと」
あれだけの攻防をしておいて余興とは大法螺吹くんじゃねぇ・・・と心のそこで悪態を付きながらも天魔、迦楼羅双方の実力を認めている雅は何も言えなくなってしまった
「さてお主これからどうするつもりじゃ?あと2~3時間で
「げぇっ。もうそんな時間かよ・・・どうするって誰のせいでこんな時間になったと思ってる!今日中には山を下りて人里があるなら宿でも取って明日に備えようと思ったのにこのままじゃ野宿だどうしてくれるんだ!」
掴みかかる雅を煙管で追い返しつつ天魔が懐から古びた鍵を取り出す。
「落ち着け!紫ちゃんから言伝とこれを貰っておる家の鍵じゃ」
ほれと投げた鍵を受け取る。古代ローマ時代にはすでに原型が存在した古鍵をしげしげと眺める
「なんだっけかウォード錠だったかな?実物を見るのは初めてだな」
「よかったのう貴重なものに触れて。人里に着いたら其れを持って上白沢慧音を探せ、有名人だからすぐに見つかる」
じゃあ楽しかったぞと言うと天魔は従者と共に一陣の風を残して消え去った。
「おいごら!何慧音だって?戻ってこいや!」
雅の怒声は山々に虚しくこだましただけだった。その場で立っているのも馬鹿らしくなってきたので仕方なく歩き出す、獣道を横切って小川を超えようやく整備された道に出る。道を下ってようやく人や建物が見えてきた頃には辺りがオレンジ色に染まってきた頃だった。
「オイオイ・・・こっからどうやって探すんだよ。みんな着物なのに俺だけスーツだし場違いじゃん・・・ん?」
雅はある家の前で足を止めるいや家と言うより長屋だけど。寺子屋。江戸時代子供に読み書きやらなんやら色々と教えていた現代で言うところの学校だ。
「寺子屋かぁ・・・学び舎の先生ならその何とか慧音っての知ってるかな?聞いてみよう」
戸口を開けようとした時
「せんせいさよならー」
「おい、いそがないとやきいもうりきれちゃうぞ!」
「おとんとおかんにもかってかないと」
などなど
開かれた扉から10とも20とも言えない子供の大群が一斉に飛び出してきた。押し寄せる津波のような大行進、子供とは時に恐ろしい力を生み出すもので・・・哀れ雅は子供の津波に押し倒され暫くの間地面と子供たちの足と格闘することになった。
――180を優に超える俺をこうも簡単に押し倒すとは・・・と薄れゆく意識の中痛感した
「気を付けるんだぞー!宿題だけは忘れるなよー!!」
むぎゅ。寺子屋から出てきた先生にも踏まれる始末、死にたくなってきた・・・
「ん?君はこんなところで何をしているんだ?」
「子供の大行進に呑まれた・・・子供ってのはすごい力を秘めているもんだな・・・」
「あぁその通りさ。子供達には無限の可能性がある、だから私は子供たちに教えるのが好きだし子供たちが大好きだ。」
子供たちのすばらしさを熱弁しているが当の本人が乗ってるのは人の背中の上だそろそろ降りてほしい気がする
「おっとすまないなついつい熱くなってしまった」
ようやく降りてくれた。服をはたいて立ち上がって先生に向き直る
「すまないな折角の客人を踏んでしまうとは」
「あぁいいんだ。俺は雅、鬼灯雅だちょっと前にここに来てな人を探してるんだ」
「そうか、見たところ人間かな?私でよかったらなんでも力になろう」
「助かるよ。けど肝心の名前を聞きそびれてな。覚えているのはけーねだか何だかだけなんだ」
「ほう・・・奇遇だな私の名前も慧音と言うんだ、上白沢慧音だよろしく頼むよ雅さん」
どうやら神様は俺を見捨てていなかったようだ。そりゃ到着初日から一週間も生死の境を彷徨って、目を覚ました日にお偉い様に殺されかけて、不確かな情報だけ掴まされて必死に山を下りて来たのに子供の行進に飲み込まれ踏んだり蹴ったりだったけどここに来て探し人がすぐに見つかるとは・・・涙が出てきた
「あぁよろしくな慧音。早速で悪いんだがこの鍵に心当たりは無いか?天魔から慧音って人を探せって言われたんだ」
彼女は受け取った鍵を見つめ暫く考えたのち
「え・・・もう天魔様と知り合いなのか?そう言えばなにやら3日前くらいにスキマの妖怪と天魔様がそこの裏路地に行ってなにかしていたな」
付いて来てくれと言う慧音の後ろについていく。それにしても不思議な帽子とスカートだな
路地裏に入っていった慧音先生の後を追ってみると家と家の間に少し大きめの空き地ができていた。そこに建つのは何ともお粗末な藁の小屋・・・まさかね、扉に南京錠が見えるけど違うよね?なんかの飼育小屋だよね?
「あの二人こんなもの作ってたのか雅さんどうやらここの鍵みたいだ・・・ってどうしたんだ?」
「あの腐れ女どもがああああ!!何が家だ!ただの掘っ立て小屋か飼育小屋じゃねぇかああああ!」
テールランプも真っ青なほど赤い顔で叫ぶ雅に慧音さんドン引き
「わが衣手は露に濡れつつじゃねぇんだよ!!」
「あーとその・・・よかったら暫くうちに来るか?部屋が余ってるから大丈夫だぞ?」
流石は先生すごく優しい。涙がで、出ますよ・・・天女に見えてきた。苦笑いだけどそれすらも美しい。
「里の建築関係の人に声かけてみるから明日以降あの空き地に拠点を作ればいいじゃないか」
「・・・そうさせて貰うよ・・・うっうっ・・・」
泣きそう、いや泣いてる
「取り敢えずうちに行こう。ここから近いんだ」
はい神様今日は何とか雨風を凌いで無事に生きられそうです。
寺子屋に野暮用を残したので適当にくつろいでいてくれと言われ通された居間。家自体は何とも簡素な長屋でレミリアの館のような豪奢さは無いがどこか安心するような居心地のいい空間だった。しかし
――落ち着かない
他人の家で寝泊まりする分には構わない戦場では赤の他人とすし詰めになって寝ることだってあっただからそこはいい。ただここは戦場ではないその上女性の家だ
「くつろいでって言われてもなぁ・・・よし料理でもするか」
思い立ったが吉日早速長屋の目の前にある八百屋と肉屋から食材を買いに行こうとするが
「まてよ俺この世界の通貨知らないんだけど・・・てか電子マネーしか持ってなかったし・・・」
と悩んでいると何やら外が騒がしくなってきた
「泥棒だよ!誰か捕まえておくれ!!」
キャベツを抱えて走る男とそれを追いかける小太りのおばちゃんが見える。さぁどうする雅行くのか?
「行くしかないよなぁ」
上着を脱いで走り出す。能力などは使わずとも前の2人との間はどんどん詰まっていく
「おばちゃんここは俺に任せな」
一瞬で男に追いつき足を払う。男と共にキャベツも宙を飛ぶがキャベツの方はキャッチ、野郎は知らない
「あいよおばちゃん取り返したぜ」
「んまぁありがとう。彼奴足が速くてダメかと思ったよ。あらっよく見たら旦那の若い時に似ていい男ねぇあの人ももう死んじゃったしこれは・・・」
おばちゃんに猛烈な勢いで感謝されたやっぱり人助けはいいもんだ・・・最後の方は聞かなかったことにしよう。
「ヤロウ・・・!シネヤァ!!」
おっとまだ元気だったようだ。匕首を持って突進してくるが
「まだまだ隙だらけだ」
瞬時に男の横に移動し丁度男の顎の部分に腕を伸ばす。突進してきた力だけを使い男を倒す。ざっくり言ってラリアット
「あんた強いじゃないか。助けてもらったお礼だよなんでも持って行っておくれ!」
「いや、ただで貰うのは・・・確かにお金は無いけどよ」
「何言ってんだいあんたはいいことをしたんだよちょっとはワガママだって言ってもいいんだよ。なぁあんたら」
「おうおうそうだぜ若ぇの。うちからも魚貰ってくれや」
「兄ちゃんが盗っ人捕まえたから俺らも気分がいいや!これうちの肉だ食ってくれ」
「あんた慧音さんのとこに居候かい?いい人が来てくれたもんだ。これ祝い酒だよ持ってって」
その他、みりんやら醤油やら味噌やらなんやらと気付けば雅は人里の住人に囲まれていた
「すまないな明日のことについて話していたら少し遅くなってっておぉぉ・・・」
「ん?あぁお帰り慧音さん。すまんすまん落ち着かないから料理でもと思って」
慧音の目の前に並ぶのはすき焼き、サラダ、珍しい物としてチーズとオリーブオイルを貰ったので鮭と一緒にカルパッチョ風の何かが並んでいる、ちなみに魚を使うカルパッチョは日本が発祥らしい昔聞いた。
「こんな食材を一体どこから・・・だって金も無いのに」
「キャベツ泥棒捕まえたら八百屋のおばちゃんとそこらの店の人に食材やらなんやら貰ってな。ここじゃ邪魔だから隣の部屋にも置かせてもらったよ」
「あぁ八百屋のおばあちゃんかぁ・・・確かにあの人は気風のいいひとだからな。この里のお店をまとめてるのもあの人だし」
あぁそうなんだと俺は味見をしながら答える。うーん少し味が濃いかな?まぁいいや完成!
「普段は夕食なんて一人だからこんなに大量の食事が並ぶなんて初めてだよ」
慧音先生もなんだ嬉しそう。その日は食べた、いつも以上に食べた、ここに来てから何も食べてなかった気がするし一回死にかけてる。そんな疲れを忘れるために夕食を貪る。
「凄い食欲だな・・・そんなに空腹だったのか?」
「ほりゃほうだ、ここなの#$%%$#tfrkjhpq(そりゃそうだここ何日も何も食べてなかったんだからな)」
「うん飲み込んでからしゃべってくれ、まったく聞き取れなかった」
「すまんすまんほんとにここ何日も食ってなくて」
「何日もって一体何をしてたんだ?人間が山の中で何日もいるのは危険だと思うんだが」
俺はここに来てからの顛末を話した。湖の畔に立っていた紅魔館の事、レミリアとの戦闘で一週間ほど生と死の境を彷徨ったこと、迦楼羅もとい天魔との一戦。
「それは・・・よく生きているな。迦楼羅様もそうだが吸血鬼だって鬼並みに強いんだ、ほんとに君は人間かい?」
「一応な。しかしそのおかげで眠い眠い・・・悪いが部屋借りていいか?」
「ああそう言う事なら隣を使ってくれ後片付けはやっておくから。明日から君の新居造りだからな」
腕の時計はこの世界の時間と合っていれば8時を差している。俺は小学生かジジイかよ・・・そんなくだらない思考を最後に意識が途切れた。
草木も眠る丑三つ時・・・古来より人外の者たちが蠢き始める時刻。外からくる月明りは満月の為か異様に明るい。相当に早い時間に寝てしまったため変な時間に目が覚めてしまったようだ。水でも飲むか・・・
「ん?慧音・・・先生?こんな時間まで何を・・・」
「私の・・・周りに近付くなぁぁぁぁぁ!!」
絶叫が速いか凄まじい速さで裏拳が飛んできた。両掌で受け止め力を利用して後ろに飛ぶが天井を突き破って屋外まで吹っ飛ばされる。ちょまっ腕折れる!
「なんなんだ一体!え!?慧音先生よぉ」
「邪魔をするな・・・私は後天性とは言え妖怪だ。名を白沢、今宵はこの幻想郷の編纂の時」
白沢――中国に伝わる獣か・・・人語を解し万物に通づる聖獣。後天的になれるのかよ。しかしずいぶん気が立ってるな。動物が気が立ってるときは・・・そうだ遊んでやろうじゃないか
「わかったわかった慧音先生。でもそんなに気が立ってちゃ作業もはかどらんぞ?俺が遊んでやるよ、要はあんた歴史を編纂つまりは歴史を書き換えてるみたいなものだろ?神経使う作業だろ気晴らしに動いてみろよ。ちょうど俺も食後に運動忘れてたとこだしなぁ」
昔から思ってたけど戦闘になったり能力を行使する準備始めると好戦的になるもんだなぁ
「知ったような口を聞きよって。いいだろう気晴らしに動くとするか!!」
これまた言うが早いか猛烈な速度で突っ込んでくる慧音。その手はレミリアのような手刀でもなく握りこぶしでもなく爪を立ててる、獣らしく相手の身体を抉り取るって事ね。しかし流石に速いな・・・調子こいてあんなこと言ったが攻撃をかわすのに精一杯だ。仕方ない俺は胸ポケットにしまっていたサングラスを掛けて反対側の胸ポケットにはいていたスモークグレネードを起爆させる。たちまち周囲一帯が濃煙で覆われる。サングラスにはある種の赤外線センサーが取り付けられているので問題なく見える。即座に慧音の後ろに回り込み殴りかかる
が
「甘いぞ雅」
勢いよく振り回された長髪が肩に直撃、鈍く嫌な音が響き渡る。俺は慧音から距離をとる、肩は折れては無いようだがかなり痛い。スモークグレネードが無駄になってしまった。高いんだぞアレ・・・
「この程度で私を殴れるとでも?忘れたのか私は白沢」
「中国似て語られる牛の姿をした聖獣で万物に精通し病魔を除けると信じられてた。目は複数あるんだったな忘れていたよ。」
そう白沢は額と左右に3つ目を持った姿で描かれることがある、半分白沢の彼女がどこかに目を隠していても不思議じゃない。其れなら俺もあの速さに付いて行くしかないな・・・
【破滅への進撃】
「っ!ほほう・・・中々どうしていい闘気じゃないか」
「2分だ・・・残り2分で今日の運動は終わりにしよう俺も・・・そんなにもたないんでね、行くぞ」
2人は残像を残すほどの速度で駆け出し2分間殴り合った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ・・・はぁ・・・痛ぇ」
「つくづく君は変わってるよ。本当に人間なのかい?」
地面に大の字になっている俺。慧音先生も立ってはいるが膝に両手を置いて何とかと言う感じだ。
「いやぁ一応人間だよ?戦場彷徨ったり、薬漬けにされたり、なんだりあったけど」
「そうか・・・普通の人間じゃなさそうだな、【普通】のな」
「そこ強調しない・・・」
「ははっ。でもスッキリしたかもしれないな、ありがとう。私はまた仕事に戻るけど君はゆっくり休んでいてくれすまなかったな」
慧音先生は静かに微笑むと長屋へ戻っていった。
俺は暫く大の字になったまま夜空を見上げている。俺は戦いに疲れ、彷徨い、楽園があると言われ連れてこられたこの地で何故まだ戦い続けているんだろうか?
何のために?
誰のために?
「考えてもしゃあないか・・・寒いから長屋に戻ろ」
明日からの自宅造りとまだまだしたりないこの地の探索の為に眠ることにした。寝るとこの天井穴が開いてるけどな!
はい、お久しぶりでございます。
年末には投稿しようと思って仕事をしたものの進路を決めたり、卒業課題やったり、何だりかんだりとやっているうちに気付けば2月・・・
今は結構フリーな時間を取れているので次回はもう少し投稿ペースを速めてみようと思います。いつもの通りご指摘、ご助言のほどをお願いいたします。
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