虚に転生したけど二番隊に入りました。 (フル・フロンタル)
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プロローグ
俺は今、ピンチである。
死んで、俺は転生した。それは別にいい。前の世界にそれほど思入れがあるわけじゃないからな。
問題はこの先だ。転生先の世界がBLEACHであることだ。よりにもよって原作を27巻までしか読んでない物語。藍染が敵ってことしか覚えてねえよ……。
さて、俺はどういう設定で転生されたのか。さっぱり分からない。さっき転生され、空から落ちてきたのだ。場所は森の中。で、なんとなく世界観を知るために森の中を出歩いてみたんですが、目の前に虚がいるんですよね……。
俺は今、ピンチである(2回目)。
直後、俺の真上に降ってくる、虚の足みたいな身体の一部………かと思ったら、その虚は俺の真横を通り過ぎて何処かへ移動し始めた。まるで俺のことを無視するかの如く。
どういうこっちゃ?などと思ってると、後ろからスパッと心地良い音がした。振り向くと、黒い女の人と軽薄そうな男が俺の横を通り過ぎた虚を斬り倒していた。いや、片方は蹴ってたけど。
「ふぅ、危なかったッスね」
「なんじゃ。すごい霊圧を感知したのじゃが……おるのは雑魚と子供だけか」
黒い方……確か夜一、だったか?元二番隊の隊長サンで、隣の男は浦原喜助かな?夜一さんの方が、俺に手を差し出してくる。ていうか、子供って言った?
……まぁいいや。とりあえずお礼言っておこうか。
「……アー……?」
おっと、言葉が口から出ませんよ?ガキって言われてたし、子供で転生されたってことなんですかねぇ。
「おっと、口が聞けん子供じゃったか」
すいませんね、何も言えなくて。何分、さっき落ちてきたばかりなんですよ。心の中で精一杯謝ってると、浦原喜助の方が俺の事をジッと見つめていた。そして、突然脇の下に手を入れて持ち上げられた。
「アウッ?」
変な声が漏れた。喜助は俺の事を真剣な目で見ていた。
「どうした?喜助」
俺の思った事を、夜一さんがそのまま言ってくれた。喜助の視線は俺の顔……より少し右に逸れた辺りを見ていた。
………俺の耳か?
「夜一サン、この子の耳に付いてるの……」
耳?耳垢いっぱいあった?なんかすいませんね、まだ生まれ変わってから耳掃除してないもんで。
喜助は俺の耳、というか耳たぶに手を当てた。そこで俺は初めて自分の耳たぶに何か付いてるのを知った。え、やだデキモノとかじゃないよね。
「これ……」
「このピアス……虚の顔にそっくりじゃな……」
ほえっ?虚?
「さっきから感じてるこの霊圧……もしかすると、」
「このガキからじゃと言いたいのか?」
おい、なんで子供からガキになった。どういう意味それ。
「……ハイ。調べてみないことには何も分かりませんが、もしかすると、虚かもしれません」
えっ?ほ、虚?
「……どうする?」
「ま、とりあえず持って帰ってみましょ」
と、いうわけで俺は虚になって死神に連行された。
☆
数十年後。二番隊の地下室。喜助が虚を担いで俺の部屋に降りてきた。
「ほぉーら、ルーたん!ご飯ッスよー」
「ルーたんって呼ぶなクソボケ‼︎」
喜助をブン殴り、鹵獲してきてもらった虚にかぶりついた。うん、味は悪くない。
「大虚か。まぁまぁだな」
あれから、俺は喜助と夜一さんに上手いこと二番隊に入れてもらった。喜助曰く、「虚を殺して俺が食って糧になれば一石二鳥」との事だ。意味わかんねーよ。
まぁ、実際の所、当時俺はクソガキだったし、向こうはちゃんと教育すれば自分達の敵にはならないとでも考えたんだろう。当時から俺には自我があったから、その予想は正しくはないが、俺は別に謀反を起こすつもりなんてないし、結果オーライと言えるだろう。
名前はルイスと呼ばれてます。なんで和名にしてくれなかったんや……。
「おお……今日も虚の踊り食い……良い食べっぷりッスね!」
茶化してくる喜助を無視しながら虚を食べた。
無論、虚を仲間に入れるなんて条件を山本元柳斎重國が簡単に飲むはずもなく、瀞霊廷にいる間は二番隊の地下に俺は閉じ込められる事になっている。まぁ、それは仕方ないと思うけどね。
他にも喜助は俺に対してコソコソと何か細工をしていたみたいだが、俺が万が一暴れ出した時、封じるための細工だと思うので無視した。だって暴れなきゃ問題ないから。
「ふぅ……ご馳走様でした」
「元気っスか?ルーたん」
「だからルーたんって呼ぶなっつーの。マジブッ殺すぞ」
「えー、ルーたんの何がいけないんスかー」
「なんか気持ち悪い。夜一さんになら呼ばれてもイイけど」
「うう……最近、ルーたんが冷たい……反抗期という奴っスね……」
うるせーよ。
まぁ、確かに昔は世話になったし少しは素直になっておこうとか思ったが、最近こいつあからさまに俺の事からかって来てやがるので、普通に素を出してる。
そもそも、あの時は気づかなかったけど、まさか女の身体で転生されてたとは……。神様とかいうのがいたら、とりあえず絶対許さない。
「ふんっ」
「痛い⁉︎」
とりあえず、目の前の喜助を蹴った。
「ちょっ、なんで蹴るんスか⁉︎」
「うるせ。俺、風呂入ってくる。覗くなよ」
「一緒に入っ」
「殺すぞ」
一応、潜在的には女性になっているのか、夜一さんの裸を見ても何も思わなかったし、男性に裸を見られるのは恥ずかしい。
………だから、まったく成長してない自分の胸や身長が恨めしかったりする。
「………喜助、あと3秒以内に部屋から出て行かないと虚閃撃つよ」
「すいませんした!」
脅すと、喜助は逃げた。
ルイス
身長:138cm
水色髪のショートヘア
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ルイスと夜一さん
閉じ込められて数十年経っても、俺の精神が壊れていないのは、やはり任務になると出れるのと、夜一さんと喜助がたまに娯楽を買って来てくれてるからだろう。
………まぁ、この時代の娯楽なんてたかが知れてるんですが。はぁ、スマホ…いや、プレ4……いやそれ以前にTVが恋しい。
「………はぁ」
「む、どうしたルイ?」
ため息を吐くと、夜一さんから声が掛かった。つーか、君達が付けた名前だろうに、ルイスって全然呼ばないなこの人達……。
「何でもない。いつもここにいると退屈だなって思って」
「ふむ、そうか?何か欲しいものがあれば……」
「いや、良いよ。………ああー!退ッッッ屈‼︎」
ベッドの上で脚をバタつかせながら仰向けに寝転がった。あー、せめてゲームくらいあれば良いのに。
「夜一さん」
「なんじゃ」
「なんか面白い話してー」
「…………」
起き上がりながら、思わずダメ上司のようなことを口にしてしまった。俺は何を口走ってるんだ。ほらぁ、案の定、夜一さん困ってんじゃん。
「………面白い話と言われてものう。なら、こういうのはどうじゃ。むかーしむかし、ある所に……」
「おとぎ話じゃん。それ何回も聞いた。バカにしてんの?」
直後、夜一さんの頬がヒクッと吊り上り、ひたいに青筋を立てながら姿を消した。
と、思ったら後ろから俺の首に腕が絡みつき、締め上げられながらこめかみに拳がグリグリと押し当てられる。
「ほほう?お主は随分と偉くなったもんじゃのう?」
「いだだだだだ‼︎頭凹む!頭凹むって!」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい!ごめんなさいって!」
「じゃ、そのままあと30秒我慢じゃ」
「いやいやいや!夜一さんみたいな筋肉お化けに30秒もやられたら頭弾け飛ぶって!」
「…………は?」
「いや間違えましたすいませんっしたああああああ‼︎」
耳元で絶叫し過ぎたのか、ようやく離してくれた。涙目で頭をさすってると、呆れた目で夜一さんが俺を見ているのに気付き、なんとなく不貞腐れてしまった。
「そんな怒らなくても良いじゃん……」
「仕置きが足らんか?」
「いえ、なんでもないです」
この人はホント怒ると怖いんだよなぁ……。前に浣腸したら本気でキレられたっけ。
「でも暇ー」
「ふむ、ではあれやるか?久々に鬼事でも」
「えー、体動かすの面倒臭いー」
「お主はどこまでも勝手じゃのう……」
「いや、なんていうか……たまには外の空気を吸ってみたいっていうか……」
「むっ……」
言うと、夜一さんは少し困ったような表情を浮かべた。が、すぐにいつもの表情に戻った。
「仕方ないじゃろう。そういう契約なのだから」
「えー、でも俺もたまには二番隊以外の人と話したり流魂街でなんか色々したいよー」
「困ったのう……」
ああ、しまった。困らせるつもりはなかったが、つい我儘が出てしまった。自分がこんな現状に置かれてる理由は理解してるし、むしろ殺されないだけマシだとも思っているが、それでもこの中で引きこもってるのは、やはりストレスも溜まる。
………でも、これやっぱ我儘だよなぁ。我慢しないとダメだろ俺。
「………や、ごめん。何でもないよ、夜一さん。ちょっと言ってみたかっただけ」
とりあえず、テキトーな言い訳をしておいた。なるべく、迷惑はかけたくないし、俺のせいで二人が総隊長に怒られるのはもっと嫌だ。それに、任務の時は外に出してもらえてるし、それで我慢しよう。
「そ、そうか……?」
「それより、俺お風呂はいってくるから」
俺の部屋は他の隊士の部屋よりも広い。死神と同じ風呂に入ったりするわけにはいかないので、部屋に風呂やトイレ、他にキッチンだの机だのと、とにかく色々な生活用家具が置かれている。
まぁ、部屋割りとかはないんだけどね。バスルームとトイレだけカーテンで仕切りを作ってるだけ。その仕切られてるバスルームに服を脱ぎながら歩き始めると、後ろから声が掛かった。
「ルイ」
「?」
「たまには、一緒に風呂でも入るか?」
「入る!」
………なんか今日は目一杯甘えよう。
☆
シャワーの前に座ると、俺はシャンプーハットを被った。その上に夜一さんがシャンプーを垂らし、頭を洗ってくれる。俺は夜一さんの胸の上に後頭部を置いた。
昔、まだ転生したばかりの時、上手く身体が動かせなくて、夜一さんにシャンプーしてもらってたのだが、シャンプーハットがまた素晴らしいものでね。洗ってもらう時はいつも使ってる。
「痒いところはあるか?」
「ありませーん!強いていうなら乳首が後頭部に当たっててちょっとキモいだだだだ!指が!摩擦が!そんな擦らないで禿げるうううう‼︎」
「では、流すぞ」
じょぱーっと流すと、今度は俺が夜一さんの頭を流し、続いて夜一さんの背中を洗う。傷ひとつない褐色の肌を、ゴシゴシとボディーソープを含んだタオルで擦った。
「ふはぁ〜……気持ち良いのう。昔はどんなに力を入れられても少しかゆいくらいだったのに。………なんか母親になった気分じゃ」
「うーん……でもこれ娘と母親というより息子と親父だよね」
「え、そ、そう?」
それも昭和の。というか夜一さんが親父臭すぎるんだよな。何なら、喜助よりも遥かに男前に見えるレベル。
………それにしても、と、俺は夜一さんの胸を上から覗き込んだ。デカイ……。
「ああっと、手がすべったぁ!」
「ひゃわっ⁉︎な、なんじゃ、急に!」
肩を拭くフリして後ろからオッパイを鷲掴んだ。な、なんつー弾力とハリと柔らかさだ……!四楓院家の
「ひゃわっ⁉︎だってー、夜一さんも可愛い声出すねー」
「あまり揉むな。これ以上、大きくなられても困るのじゃ」
「はいはい。出たよ巨乳の常套句」
「おい、いつまで胸を揉んでおる。儂だから良いものの、もし他の誰かと風呂に入る機会があっても絶対揉むなよ」
「分かってるっつーの」
………どうせ、他の誰かと風呂に入る機会なんてない。死神達にとって、虚の俺は鼻つまみ者のようで、二番隊以外にはあまり歓迎されていない。というか、そもそも俺は彼らにとって倒すべき敵で、俺の同族に何人殺されてるかもわからんのだ。そう考えると、俺に流魂街を出歩かせないのは、ある意味正解かもしれないな。
………あーあ、なんで俺は虚なんかに転生したんだろうな。
「ルイ」
「! な、何?夜一さん」
上から声が掛かった。
「今度は儂が洗ってやろう」
「へ?よ、夜一さんが?」
「ほれほれ、前に行け」
後ろから俺の脇に手を差し込み、持ち上げて自分の頭の上を通して前に無理矢理座らされると、背中を洗ってもらった。
「って、いだだだだ!力入れすぎ!背中剥がれる!」
「むっ、そ、そうか?」
「まったくこの怪力バ……あ、いやなんでもないですから力入れるのやめてマジで」
「まったく……お主は……」
段々と俺の背中の強度に慣らしてもらって、気持ちよくなってきた。と、思ったら、急に夜一さんは俺の脇の下と肩の上の二箇所から手を潜り込ませ、胸を揉んで来た。
「はうっ⁉︎」
「ふーむ、相変わらずちっこい八つ橋みたいな胸じゃのう」
「う、うるせぇ!触んな!ていうか何してんだあんた!」
「どれ、少しでも大きくなるように揉んでやるとするか」
「いやいいです!やめて下さいなんか捥がれそうだから!」
「捥ぐほどないじゃろ」
う、ウゼェー……!ていうか虚って胸成長すんのかな。そもそもギリアンだのなんだのってのは聞いたことあるけど、それって成長というより進化だしな……。
「ていうか、夜一さんこそ何を食べたらそんな胸になるんだよ。バインバインじゃん」
「特に何かした覚えはないのう」
「…………」
「……いやホントに。そんな恨みがましそうな目で睨むな」
「ふん、まぁいいし。戦闘中にそんなバインバインなのあったら邪魔だし」
「そうでもないぞ?服でちゃんと揺れないように縛れるからのう」
「…………」
この野郎……!そのドヤ顔腹立つなオイ……!
ふん、いいさ。俺だっていつかは……!いや、虚って体成長するか微妙だしな……。下手したら一生このまま……、
「………はぁ……」
「ふむ。何に落ち込んどるのか手に取るように分かるが、一応言っとくぞ。頑張れ」
煽ってんのか。
そのまま石鹸を洗い流し、二人で湯船に浸かった。カポーン、と、音がしそうな雰囲気で、二人して「ふぅーっ」と息をつく。
いい湯でござるー。ほへー。緩み切った俺の顔を見ると、夜一さんが言った。
「元気は出たか?」
「………へっ?」
「随分としょげていたからのう。外出できない代わりに、儂が少しでも相手してやれたら良いと思ったったのじゃ」
「…………」
マジか。なんか気を遣わせちゃったみたいで悪いことしたな。
「うん。元気出た」
「なら良かった。主が外出できるようになるのはいつだか分からんが、それまでの間は儂を母親だと思って存分に甘えて良い。良いな?」
「良いのか?二番隊の隊長って忙しいんじゃ……」
「大前田や喜助にやらせるから問題ない」
うわあ、こいつまじか。まあ、この人がそう言うなら良いんだろうけど。
「………じゃあ、お言葉に甘えるわ」
「うむ」
虚と死神は敵同士、それは間違いないけど、少なくとも俺と夜一さんと喜助だけは、敵同士ではない。俺はそう思った。
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ルイスと流魂街
ふと俺は思った。俺って虚の中ではどのくらいの強さなのだろうか、と。
前々の任務で時は雑魚としか戦ってなかったし、それも喜助や夜一さんが倒した虚にかぶりついていただけだ。だから、タイマンなんて張る機会がなかった。みんな俺のことを恐れてるのか、手合わせすらしてくれないし、そもそも瀞霊廷内では俺は外に出れない。
つまり、BLEACHの世界において俺の強さは今の所未知数なのだ。27巻まで読んだが、喜助が二番隊にいるのは知らないし、俺の記憶が正しければ、喜助は元十二番隊隊長だったはずだ。こんなことならもう少し原作読んどきゃ良かった。
ま、考えたところで分からないなら、考えても仕方ない。今は、死神の信頼を得る事を考えないと。
そんな事を思いながら、俺は自室でゴロゴロしていた。やたらと広い部屋で、やることもなくなり、とりあえず斬魄刀と、外から喜助に拾って来てもらった丸い石で野球の練習をしていた。
「一番ショート、千田くん」
野球漫画はあだ○充しか読んだことがなかった。テキトーに野球っぽくスウィングして、石を打った。石は見事に右中間に飛んだ。
「………飽きた」
飽きた。斬魄刀をその辺に放って、ベッドの上に寝転がった。あーあ、マリオやりたい。
「この、バカモンがッ‼︎」
突然の怒鳴り声と背後からのゲンコツ。悲鳴をあげる前に頭を抑えながら涙目で何事かと辺りを見回した。
後ろには夜一さんがメチャクチャ怒った様子で立っている。
「よ、夜一さん?なんで怒って……」
「何しとるんじゃ!斬魄刀で石を打つだけじゃなくその辺に放るなんて!」
「え、な、なんで?」
「斬魄刀にはちゃんと自我があるというのにそんな真似するバカモンがおるか‼︎」
そ、そういえばそんな設定あったっけ……。
「そ、そか……すいません……」
「まったく……というか、良い加減斬魄刀の名前は聞けたのか?」
「いえ、それがまったく」
ほんとに。てか虚って斬魄刀使えんの?確か、破面の皆さんの斬魄刀は自分の力を解放するためのもので、斬魄刀に名前なんてなかったよね。
が、俺の返答に呆れたのか、夜一さんは苦虫を噛み潰したような表情で額に手を当てた。
「まったく……そんな扱いをしてるからじゃぞ」
「虚にも斬魄刀って扱えんの?」
「扱えんことないじゃろう。多分」
なーんだそりゃ。極めて曖昧じゃねぇか。実際、戦闘自体がほとんどないんだから仕方ないだろ。でも、一回でも良いから卍解してみたいなぁ。せっかく、BLEACHの世界に転生したんだし。
「でも、それなら戦闘させてくれよ。いつもいつも虚を食い尽くすしかなくて、俺のスタイルにあった戦闘もクソもないでしょうよ」
「ふむ、斬魄刀も何かを食べるような形になるのではないのか?」
なんだそりゃ、ゴッドイーターかよ。
「あーあ、やってらんねーよ。暇だよー。運動不足だよー。俺だよー、ワリオだよー」
「ほう?そんな態度を取っても良いのか?」
「あ?」
「喜助に頼んでおいたのじゃ。そしたら、1日だけ流魂街への外出許可が出てのう。けど、そのような態度を取るならこの話は……」
「超行く!夜一さん大好き!」
よっしゃ!俄然テンション上がって来た!
☆
と、いうわけで、俺は夜一さんと喜助で流魂街に出向いた。うほー、買い物なんてほんと久しぶりだ。何買おうかなマジで。とりあえず美味いもん食べたい。虚が虚と人の魂以外食べれるか知らんけど。
「ラーメン、ラーメン食べたい!」
「コラコラ、走らないー」
走ると、後ろから喜助に手を掴まれた。
「まったく、やんちゃ坊主め……」
「坊主じゃないし」
「何のために儂や喜助が付いて来たと思っておる。名目上はお主の見張りじゃぞ」
「知らんよそんなこと。それよりラーメン!」
「ほう?そういう態度で来るなら……」
反対側から夜一さんに手を繋がれた。その反対には喜助、と、いうことは、両サイドから落ち着きのない子供の動きを封じに来てる両親みたいになってる。
それを自覚した直後、さすがにこの歳での恥ずかしさか、カァッと顔が熱くなるのを感じた。
「ちょっ、離して二人とも!」
「ダメっス。言うこと聞かなかった罰っス」
「俺が悪かったですからホント勘弁して下さい‼︎」
「少なくとも、ラーメン屋に着くまでの間はこのままじゃ」
「いやこの状態でラーメン屋とかなんの拷問⁉︎ていうか、あんたらはこの状態だと夫婦に見られるんだぞ⁉︎」
「アタシは構わないっスよ」
「儂も別に気にせん」
「畜生おおおおおおおおお‼︎」
ああああ!なんだこれ!
いっそ殺してくれとでも言いたくなるレベルで連行され、ようやく到着した。3分ほどしか歩いていないというのに、3時間くらいに感じました。
☆
ラーメンを食べた。虚の体でも普通に飯は食えるんだな。
………あれ?じゃあ、なんで虚って人の魂とか虚を食うんだろう。自分の身体の栄養にする為だけではない?
「どうしました?なんか難しい顔して」
喜助に横から声をかけられた。
「えっ、あ、いや、何でもない」
「そうスか?‥……ああ、そういえば虚なのに普通にご飯食べれましたね」
おい、お前俺の思考読んでたろ。
「ふんっ」
「痛い!なんで蹴るんスか!」
「なんか腹立った」
「理不尽⁉︎」
そんな話をしながら、色んな店を見て回った。これが流魂街かぁ。なんか、おもしろい。買い物することが久し振りだからかもしれないけど、これか買い物かぁ、みたいな?沖縄人が雪に憧れてる感じ?
メチャクチャ色んなものを買い込んで、自室に帰宅した。
「あー。たっのしかったー!」
満足げにベッドにダイブし、夜一さんと喜助もあとから部屋に入ってくる。
「あ、あの……ルーたん……荷物は、どこにおけば……」
「ん、ああ。その辺置いといて。サンキュー」
喜助さんは言われるがまま、その辺に荷物を置いた。
俺の横に夜一さんが座った。
「良かったのう、ルイ」
「ああ。もう最高」
ベッドに転がりながら、夜一さんの腰に抱き着いた。
「夜一さん、喜助。……マジ、ありがとな」
なんとなく照れ臭かったので、夜一さんの腰に顔を埋めながらお礼を言った。なんか、二人がニヤニヤしてるのが顔を見なくても想像できたけど、自然と腹が立たなかった。
「……じゃ、アタシは大前田サンと溜まった書類片付けてくるっス。夜一さんもきてくださいよ」
「あ?あー、そうじゃな。たまには、」
そう言って、二人は部屋から出て行った。さて、けん玉でもマスターしますかね。
☆
が、俺にけん玉をマスターする時間はなかった。
マスターする前に入浴して、風呂入って上がると、出て行ったはずの夜一さんが苦々しい顔で待っていた。
「? 夜一さん?どしたの?」
「ルイ」
重々しい口調で、夜一さんは俺に紙を渡して来た。
「任務じゃ」
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ルイスと初単独任務
夜中。俺は任務で森まできた。なんでも、最近単独で調査に出ていた二番隊の隊員が何人かやられたらしい。
おそらく、厄介な虚が出現したと思われるため選ばれたのが、同じく厄介者の俺、というわけだ。多分、何処かで監視するつもりなんだろうな。俺が死んでも死んだのは虚だけ、監視してれば情報は手に入る、ということなんだろう。ノーリスクハイリターンというわけだ。
夜一さんがプンプン怒ってたが、正直素晴らしいにも程があるという感じの作戦なので、こっちも何も言えない。
「はぁ……気が重い」
ボヤきながらも、森の中を移動する。あー、暗いよう。暗いところ好きじゃないんだよう。いや隠密機動隊なのにその言い様はどうかと思うけど、怖いものは怖いのだから仕方ない。
そんな事を思いながら森の中を移動。大体、この辺りだった気がする場所で止まると、探査神経を全開にした。
「うわっ……いたよ……」
ここから少し離れた場所に霊圧がある。喧嘩売らないといけないのかぁ。霊圧の大きさ的に大虚だろうなアレ。
「さて、やりますか」
口を開くと、探査神経頼りに虚閃をぶっ放した。水色の閃光が口から飛び出し、何本もの木を倒して大虚に向かう。
それが直撃し、大虚の上半身を消しとばした。
「………は?」
わ、ワンパン?俺の虚閃ってそんな強かったの……?
「あ、あらら……終わっちゃった……」
本来なら、もう少し俺の実力を試そうと思ってたんだけど……どうしよ。
まぁいいか。俺の虚閃がこれだけの威力を持ってたことがわかっただけでもいいか。
「さーて、任務完了っと……、」
帰ろうとした直後、さらに大虚が湧いて出た。ザッと5匹ほど。
どういう事だ?何故こんなに大虚がこんな所にいる?BLEACHについてそんな詳しくない俺でも不自然だと分かる。
と、なると、この大虚の出現は故意的なものだ。何のためか、俺を仕留めるため?いや、虚閃一発で大虚を仕留められる俺を仕留めるには5匹じゃ足らんだろ。
つまり、何者かが俺の力を見るために監視してることになるな。それが正しいとすると、大虚を自由に操れる人物が俺を監視してる事になる。
「って、考えても分からんか」
さらに大虚が襲い掛かってきたのを機に、俺は斬魄刀を構えた。良い機会だ。俺も自分にどれほどの力があるか知っておきたい。
そういうわけで、一人目の一撃目を響転で回避して背後を取ると斬った。続いて、二人目の攻撃を瞬歩で躱して背中を斬る。
………なんか俺、超強くね?瞬歩は達人どころではない夜一さんに教わったし、響転はなんか最初からできた。
そう思ってると、斬ったはずの大虚の傷口が塞がり始めた。
「っと、超速再生……!」
5匹の大虚の攻撃を、身体をムチャクチャに捻って無理矢理回避した。
「危ね危ね」
危ない、と言った割に相手の動きが随分とゆっくりに見えた。修行の時、夜一さんに相手してもらってたからか、俺が普通に最初から強かったからか。いずれにせよ、5対1程度じゃ勝負にもならない。
響転で一気に5匹から距離を取ると、虚閃をぶっ放した。直後、ズボボボボッと音を立てて大虚の上半身をまとめて吹き飛ばした。が、一匹残っている。
その一匹に向かってジャンプした。途中で吹き飛ばした虚の残った下半身を掴み、口にかっ込んだ。くぅー、大虚なんて食ったの久々だわマジで。あとで最初の一匹もちゃんと食わないと。
「あと1匹……!破道の三十一『赤火砲』」
火の塊を手から出した。大虚に直撃し、爆発した。足止めはこれで十分。響転で一気に距離を詰めて、後ろから大虚を叩き斬った。
「ふぅ、おわり」
任務完了。さて、食べて帰ろう。はは、見たか護廷十三隊ども!俺は生き残ってやったぜ!ザマーミロ!
☆
「バッカモン‼︎」
部長のような台詞で、俺は夜一さんにゲンコツされた。
「な、ななな何しやがんだ⁉︎」
「あんな強力な虚閃をぽんぽんと撃つんじゃない‼︎瀞霊廷内がパニックになっておったぞ‼︎」
「え、あ、す、すみません……」
そ、そっか……。つい虚閃馬鹿みたいに撃ってたけど、そりゃ怒られるか。みんな霊圧とか感知できるんだもんな。大虚ワンパン虚閃連射したらそうなるよな。
「はぁ……ごめんなさい……」
「まったくお主は……!まぁ、初めて一人での戦闘じゃし、総隊長も大目に見るそうじゃが、これからは気を付けろよ」
「はーい……」
「それで、大丈夫じゃったか?」
「?」
何が?
「け、怪我はなかったか……?」
目を逸らして何故か顔を赤らめて言う夜一さん。ははーん、さてはこの人、俺のこと心配してたんだな。そう自覚した時、なんとなく俺の顔がにやけるのが分かった。
「むっ、貴様なんじゃその顔は」
「いや、心配してくれてたんだなぁって」
「ち、違う!」
「やーい、ツンデレ夜い」
ゴンッ‼︎
「すいませんでした」
「アホめ。………まぁ、その、なんじゃ。怪我がなければそれで良い」
そう言うと、夜一さんは部屋から出て行った。さて、お風呂入って寝るか。
俺強えーみたいにするつもりなかったんですが、どう足掻いてもこの時点ではチートクラスなのでなってしまった。
ツライ。
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ルイスと砕蜂
戦闘したは良いが、結局何か分かったわけではなかった。というか、ほぼほぼ全員瞬殺してしまったため、尸魂界にとっても何も分からない状況なので、ある意味では任務失敗だなこれ。
あれ以来、俺は相変わらず望んでもない引きこもり生活で、地下でずっと修行とゴロゴロをしていた。「ゴロゴロをする」ってすごい日本語だな……。
そういえば、俺って総隊長と喜助と夜一さん大前田副隊長しか原作のキャラで会ったことないんだけど、他の人って今どうしてるんだろ。とーしろとかシスコンとかっていないのかな。
そんなことを呑気に考えてると、コンコンとノックの音がした。俺の部屋の扉をノックする奴なんて初めてだな。誰だろ。
「どーぞー」
とりあえず返事をすると、ノックの主は入って来た。黒髪ショートの女の子。アレだ、俺が読んでた時の二番隊隊長、砕蜂。顔は合わせたことあるけどあんま話した事ないんだよな。
「失礼します」
何の用だろ。砕蜂は軽く会釈しながら、物珍しそうにキョロキョロしながら、どうしたら良いのかわからずにモジモジ?してる。
「あ、ああ。その辺……じゃないや、ちょっと待って。縛道の六十三『鎖条鎖縛』」
ソファーに鎖条鎖縛を掛けると、引っ張って自分の目の前に置いた。
「座って」
「は、はい」
続いて、コップにコーヒーの粉を入れて、コップの下に手をかざした。
「破道の三十一『赤火砲』」
ガス使うの面倒だったので、コップの下で火を出した。これでインスタントコーヒーを作る。コポコポして来たら、スプーンで搔き回しながら聞いた。
「ブラック?」
「………すみません、砂糖を入れていただけると」
「あいあい。……砂糖ってどっかあったかな」
確かキッチンの引き出しにあった気がするぞ。台所に向かって破道の一『衝』で軽く衝撃を与えて引き出しを開けると、白い器を縛道の四『這縄』で取り出した。
砂糖を入れてスプーンで搔き回し、砕蜂の前に差し出す。
「どーぞ」
「す、すみませんわざわざ……」
「いえいえ」
「けど、インスタントコーヒー作るのにわざわざ鬼道使わなくても……」
「便利なんだから良いんだよ」
まぁ、我ながらどうかと思う使い方ではあるけど。ちなみに夏は闐嵐を扇風機代わりにしたりしてます。
「それで、どしたの?珍しいな、砕蜂がこんなとこに来るなんて」
「いえ、その、少しお話が……」
「ああそう」
なんだろ。関わった事ないのに。もしかして、「夜一様とくっつき過ぎです!少しは私にも分けてください!」とか?ははっ、流石にそれは……、
「夜一様とくっつき過ぎです!少しは私にも分けてください!」
一字一句相違ないとは……。すごいな俺もこの子も。
「そんなん言われても……俺、自分から夜一さんに来てくれなんて言った覚えないし」
だって言えないもん。出れないから。気を使ってくれてるのか、向こうから来るんだよな。まぁ、普通にありがたいし嬉しいんですけどね。ぐへへ。
「ほらぁ!顔がニヤついてます!ズルいです!」
「は、はぁ⁉︎全然ニヤついてねーし!ちょっと構ってくれて嬉しいなーとか、一緒にお風呂入ったなーとか思ってねーし!」
「お、おおおお風呂ぉ⁉︎惚気ですか!自慢ですか!」
フーッ‼︎と、威嚇する猫のように憤り、俺を睨む砕蜂。
「大体、向こうから来てくれるんだから、俺じゃなくて夜一さんに言えよ」
「私から夜一様にそんな恐れ多い事言えるか‼︎」
やだこの子めんどくさい。なんなんだよ、帰れよ。
「じゃあ何、俺にどうしろっての」
「だから、そのだなっ……もう少し、自重を……」
「だから、俺から頼んでるわけじゃないから自重も何もないっつの」
「じ、じゃあせめて貴様から夜一様に言え!たまには他の部下とも交流を、と!」
「やだよ。だって俺も夜一さんに構ってほしいもん」
「んなっ……!」
夜一さんか喜助くらいしかマジでこの部屋来ないんだからな。貴様にはわからんだろうが。そのうちの一人を取られてたまるか。
すると、砕蜂は目の色を変えて、睨みながら俺に言って来た。
「どうしても、夜一様を譲るつもりはないんだな?」
「ねぇよ。つーかお前最初敬語だったろ。何タメ語に変えてんの」
「なら、力付くで奪うだけだ」
「…………は?」
直後、砕蜂は瞬歩で俺の背後を取り、蹴りを放って来た。それを下から殴ってガードした。
「え、何すんの」
「夜一様を渡すと言わんと貴様を倒す」
いや、良いんですけどね僕はね。でも、君の方が危ないよ。自惚れとかじゃなくて、隊長格ですらない子と、曲がりなりにも最上級大虚の俺が戦ったら君、一片のDNAも残さずに消えちゃうんじゃ……。
俺のそんな心配を知るはずもなく、白打で応戦して来る砕蜂。大丈夫なんかなこれ。偉い人に怒られないかな。まぁ、修行だってことにすれば大丈夫か。
「どうした、ルイス!反撃しなければ、勝てるものも勝てんぞ‼︎」
「反撃して良いのか?」
「当然だ!出来るものなら、な‼︎」
じゃ、お言葉に甘えて。俺は右手の拳を握って、軽く拳圧で吹き飛ばしてやろう。
そう思って、拳を繰り出した。が、その拳を砕蜂は掴んでガードした。
「ありゃ」
「遅いな」
そう言って、俺は腕を捻りあげられ、天井に叩きつけられる………直前に響転で回避した。それに気付いてないのか、砕蜂はそのまま拳を叩き込む。
「あーあ……また天井に穴開けちゃったよ……」
やったのは俺じゃないけど。
俺の声に気づいたか、砕蜂は攻撃をやめてこっちを見た。
「貴様……!」
あー、やっべ。どーしよっかなこれ。なんでこうなったんだろこれ。もういいや、とりあえず気絶させればそれで良いよね。
と、いうわけで俺は手刀を作った。流石に女の子を拳では殴れないからな。
「悪い」
言うと、砕蜂の額に手刀を当て……ようとしたところで、夜一さんに止められた。
「お主ら……さっきから何をしておったかと思えば……騒がしいにもほどがあるぞ」
「「だってこいつが!」」
「やかましい‼︎」
ガンッガンッと二発のゲンコツが俺と砕蜂の頭に直撃した。涙目で俺も砕蜂も自分の頭を押さえる。
「っつぅ〜……」
「な、何するんですか夜一様」
「さっきから下で暴れまわるなと言っとるんじゃ‼︎何をしてたんじゃ一体⁉︎」
「………そ、それは、」
と、いうわけで、事情説明。すると、頭痛を堪えるように人差し指をこめかみに当てがう夜一さん。
「主らは……子供かまったく……」
「俺悪くないよね⁉︎」
「何を言う!貴様の方が……」
「もう一撃行くか?」
「「すみません」」
ため息をつきながら、夜一さんは言った。
「全く主らは阿保か……」
「夜一さんはなんか良い案あんの?」
あるわけないよね。頭の中はサボることと飯のことしか考えてないもの。あの人はおっぱいと食欲と遊び事で形成されてるからな。
「なら、今度から儂と砕蜂が二人でここにくればそれで良かろう」
何それ最高。すごく良いじゃない。そうしよう。
………と、いうわけで、俺に新しいお友達ができた。
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ルイスと新発明
暇だ。相変わらず、護廷十三隊は俺を地下に閉じ込めておきたいようで、二番隊の隊舎から出ていない。
こうなると、この前出た時に「あの店行っとけばよかったなー」みたいな後悔が出て、余計虚しさが自分を満たしていくものだ。まぁ、過去の事なんて今更どうしようもないんですけどね。
あー、暇だー。暇だし、斬魄刀の名前くらい聞けるようになるか。
と、いうわけで、斬魄刀を抜いた。壁を斬って人型にくり抜いた。どうせ地下だから、壁を斬ってもその後ろも壁である。問題はないだろう。その人型を20体ほどくり抜いた後、斬った。
「…………飽きた。ツマンネ」
「でしょうね!」
「死ね」
「ほぉわ⁉︎いきなり⁉︎」
後ろに現れた喜助をブン殴った、躱されたけど。
「な、何するんスか‼︎」
「ごめん。喜助かと思った」
「いや喜助ですけど⁉︎」
「あれ?じゃあなんで俺今怒られたんだ?合ってるじゃん」
「合ってないっスからね⁉︎」
「………喜助殴っちゃダメなの?」
「なに、キョトンと首傾げてるんスか‼︎」
そっか、喜助は殴っちゃダメなんだ。「普段アタシのことどんな風に思ってるんスか……」と、いう喜助の文句を鮮やかに無視して俺は聞いた。
「で、なんか用?」
「そうそう。アタシが作った訓練用の面白いものあるんスけど、良かったらどうスか?」
「訓練?」
「そっス。これこれ」
喜助はマネキンのようなものを取り出した。マネキンの腕から、コードとマジックテープのついた黒い布が伸びている。
「なんこれ」
「これは、まだ試作品なんスけど、これを腕に巻いて、使用者の霊圧を計測し、まったく同じ霊圧の人形を作り出して、自分と同じ能力の人形と戦えるんスよ」
「へぇ、そりゃ面白そうだね」
「やります?」
あー。確かにちょうど良いかもな。そろそろ始解しないと怒られそうだし、俺もそろそろ斬魄刀の名前聞きたい。なるべくオサレな奴。
「じゃあ、『パパ大好き!』って言いながら頬をキスしてください」
「ぶっ殺されたいの?」
「じゃあ良いっスよ。これ貸しませんから」
「いや、ぶっ殺せば借りれるぢゃん。と、いうわけで歯を食いしばって」
「や、アタシの暗証番号入力しないと、使えませんからそれ」
「………こ、この野郎……!」
へ、変に用意周到な事を……!
「ここ最近、ルーたんはヤケにアタシに冷たいというか、反抗的っスからね。ちょいとお灸を据えてやろうかと思いまして」
こ、こいつアホか……!マジでバカなのか……?大人気ないどころの騒ぎではない。
「一応、言っておきますけど、この前の任務で異常なまでのルーたんの霊圧は尸魂界の中には脅威に感じてる人もいるので、もう一人で任務に行くことはなくなると思いますよ」
つまり、俺が斬魄刀を育てる機会はなくなるわけか……。こいつぅ〜!無駄に頭いいことしやがって!
「どうします?アタシは別にいいんスよ?貸さなくて」
「…………」
どうする、俺のプライドか斬魄刀か……。
………プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬魄刀プライド斬…………、
「…………」
俺は無言で俯きながら、喜助に「しゃがんで」と手招きした。しゃがむ喜助。
「………ぱ、ぱっ……ぱぱ……だぃすき………」
言いながら頬にキスした。あーやばい。超恥ずかしい。死にたい。多分、俺顏真っ赤。ほらぁ、喜助超ニヤニヤしてんじゃん……。
「仕方ないっスねぇ!それなら貸してあげましょう!ちなみに暗証番号なんてものはありまセン!」
「…………は?」
「いやあ、可愛かったっスよルーたんブフォッ‼︎」
俺のボディブローが喜助のボディを抉った。ゴロンゴロンと転がり、俺を恐る恐る見上げる喜助に向かって口を開いた。虚閃、発射準備完了。
「る、ルーたん……?あの、冗談っスよね……?それやったら色々と問題あるし、監督不届きでアタシが怒られ……ま、待て待て待て……待って待って待って‼︎」
「うわああああん!ブッ殺してやる‼︎」
「いや口開いてる状態で喋れるんス……ギャアアアア‼︎」
☆
五分後、俺は自室で膝を抱えていて、横から夜一さんに慰めてもらっていた。
何があったのか、それは喜助にアレだけの対価を支払ったにも関わらず、俺の霊圧を計測中にエラー起こして爆発したからだ。
「喜助に……喜助に、いじめ、られたぁ……」
「な、泣くな。喜助は後で儂が半殺しにしておいてやるから……」
「やるなら俺がやる……」
「傷心してても殺意は健在なのか……」
呆れつつも頭を撫でてくれる夜一さん。俺は俯きながら夜一さんに寄りかかった。おっぱいの谷間に頭が挟まったが、気にする余裕はなかった。
「ま、まぁ、喜助も試作品と言っておったし、仕方ないと言えば仕方なかろう。これからは始解するために儂が相手になってやるから、泣くな。な?」
「…………うん」
「では、儂は少し用があるから部屋を出る。すまんな」
今度、夜一さんに修行付き合ってもらおう。
部屋を出た夜一。
「む、喜助。余りルイをからかうな」
「………いえ、それが少し不思議で」
「何がじゃ?」
「霊圧の最大限界は隊長格どころか隊長に設定しといたはずなんスけど……」
「と、いうことは……」
「ハイ。おそらく、ルーたんの霊圧は隊長以上ってことになりそうっス」
「………」
「まぁ、推測っスけどね。それと、これ」
「それは……斬魄刀か?」
「ルーたんを拾った日、ルーたんの近くに落ちてたんスよ」
「…………」
「もしかしたら、ルーたんはアタシ達の思ってた以上の大物かもしれない」
「…………と、なると、」
「大丈夫っスよ。これからの二番隊の任務も、なるべくルーたんが全力で戦闘するような事態は避けて、上の人達にこの霊圧がバレないようにすれば」
「………そうじゃな」
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ルイスと五番隊
たまに夜一さんに修行をつけてもらったり、その修行に砕蜂が混ざったりして数ヶ月が経った。
夜一さんが気を利かせてくれて、俺の部屋にたまに矢胴丸さんとか京楽さんを連れて来てくれて、俺に友達ができた。原作キャラの中でも矢胴丸さんはともかく、京楽さんは知ってる人なので、俺はかなり舞い上がっていた。ホントに夜一さんは母ちゃんみたいで良い人だ。
で、今日もなんか新しく誰か連れて来たみたいです。
「よう。この子が虚の子か?」
この人は平子真子か。出た来たときにヤケに一護に絡んでたから覚えてる。そしてその後ろから現れたのは、………藍染惣右介だ。27巻までしか読んでない俺でも分かるラスボス。ブックオフとかで、BLEACHの単行本をよくみかけるけど、確か48巻くらいまで背表紙で出てた気がする。
が、隊長羽織は着てない。俺が知る限り、五番隊隊長はこいつだったはずだ。
………っと、考えるのはやめよう。こいつの前では平静を装え。冷静になれ俺。
「えっと……どちら様ですか?」
「おっと。すまんすまん。俺は五番隊隊長の平子真子や。こっちが、副隊長の……なんやっけ?」
「隊長、意味のないボケはやめて下さい。……副隊長の藍染だよ」
「どうも。ルイスです」
あれがラスボスか……なんというか、見れば見るほど悪い人には見えないな……。
「すみません、なんか来てもらって」
「いやいや、俺らも暇やったから。別に気にせんでええよ。………それより、ホントに自分は虚なんか?」
「は、はぁ」
「偉く可愛い子やなぁ。ひよ里のアホと違って礼儀正しそうやし」
あれと比べるなよ。男口調であることを除けば俺は偉くまともな人なんだから。………多分。
「それで、その……俺に何か?」
「おたくの隊長はんが、ルーたんが一人で寂しそうにしてるって言ってたから会いに来たんや」
「あの、ルーたんはやめて下さい」
「しかし、広い部屋やなぁ」
スルーされてしまった……。でも、初対面の人に俺強く言えないしなぁ……。
「いや、広くてもそんな良い事ないですよ。喜助や夜一さんが退屈しないようにしてくれましたけど、やっぱ何十年もここにいると気が滅入りますから」
「そら大変やなぁ」
「でも、最近はみんな遊びに来てくれますから、退屈はしませんけどね」
「ほーん……。みんなって?」
「矢胴丸さんと京楽さんと……砕蜂と夜一さんと喜助、くらい?」
「なんや、ほとんど来てへんのかい」
「隊長。あまりそういうこと……」
「い、良いですよ。藍染副隊長。………虚になんて、普通は誰も近づきませんから……」
「ほら、傷ついちゃったじゃないですか」
うるせー、つーかラスボスが俺の心配するなよ。というか心配するフリするなよ。
「悪かったな。変な事言って」
「いえ、別に大丈夫です。それに、平子隊長や藍染副隊長が来てくれて、俺はそれで満足ですから」
これは本心だ。普通は敵と仲良くしてくれるなんているわけない。馬鹿正直に本心を伝えるのもどうかと思ったが、やはり第一印象は大事だと思って、ストレートに伝えた。
俺の台詞に軽くビビったのか、引き気味に平子隊長は口を開いた。
「お、おお……なんか、気持ち悪いな」
「なんで⁉︎」
「や……なんか、良い子過ぎて。なんや、媚び売っとるんか?」
こ、こいつ……!今を持って俺の中のカテゴライズ喜助と同類になったぞ。
「ああ?男の癖にそんな髪伸ばしてる女々しい奴に気持ち悪いとか言われたかねんだよ」
「…………アア?」
ギヌロッと睨んでくる平子隊長。睨み返す俺。二人でメンチを切っている状態だ。
「ま、まぁまぁ、お二人共……」
「「うるさい眼鏡‼︎」」
藍染を黙らせて、俺と平子の顔はほぼゼロ距離まで近付く。そして、お互いに指をコキコキと鳴らし始めた直後、ガンッゴンッとゲンコツが響いた。俺と平子の頭に。
「やめんかバカども」
喧嘩を止めるのは大抵が夜一さんだ。ていうかいたんだ。
「な、何するんですか!今回ばかりは俺悪くないでしょ⁉︎」
「一々喧嘩を買うな、子供か主は。平子もじゃ、素直な言葉にそんな言い草はないじゃろう。ルイでなくても腹立てるに決まっておる」
「けっ、そりゃ悪うござんした」
「……………」
「……………」
俺と平子は隣で立って互いにそっぽを向いた。すると、ドスッと横から脇腹を突かれた。キッと振り返って睨み返すと、平子はそっぽを向いたままだ。
「……………」
俺は肘で脇腹を突き返した。
「ああ⁉︎やんのかクソチビィッ‼︎」
「上等だよクソッタレがボケ‼︎」
「だからやめんか‼︎」
このやり取り、しばらく平行線をたどりました。
☆
俺の部屋を開けられるのは喜助と夜一さんだけだ。それ以外は、俺も含めて開けることができない。理由は、死神と俺の身の安全のためである。どちらかが部屋を出て、或いは部屋に侵入して闇討ちするような事がないようにだ。
そんな部屋の中で俺は少し考え事をしていた。確か、藍染は虚達の番長だったはずだ。で、破面達のほとんどが、藍染の持って来た崩宝によって生まれた存在だ。
が、俺は崩宝などではなく、最初から破面だった。あれ?これ、藍染にとって俺はメチャクチャ良い実験材料のような……そう自覚すると、なかなかに俺は危ない位置のような気がして来た。
「…………」
と、なると今日、平子と喧嘩できたのはもしかしたら幸運だったかもしれない。これで五番隊はしばらく二番隊隊舎には近付いて来ないだろうな。
ありがとう、平子。サヨウナラ、平子。
しかし、そうなると俺は下手に外には出れない。藍染は俺のことを狙っているかもしれないからだ。そして、斬魄刀の能力が完全催眠。何らかの理由で喜助や夜一さんが俺の知ってるBLEACHのような状態になり、俺がそれについて行くようになるまで安全とは言えない。
原作の雰囲気では、喜助は藍染の事を知ってたような感じだけど、現時点で知ってるかどうかはわからない。俺の身を守れるのは、現状で俺だけだ。
「……ダメだ。寝よう」
考えれば考えるほど怖くなる。破面、それも最上級大虚でありながら、死神の鬼道や白打、歩法、死神の斬魄刀を持ってるとはいえ、あんな奴に狙われて俺は生きていけるのか。
…………落ち着け。物語上では、たしか一護によって奴は倒されるんだ。原作読んでないから多分だけど。
「………いや、藍染副隊長が虚圏に行くまでの辛抱だ」
それまでなんとか生き残れよ、俺。そんな事思ってると、夜一さんが入って来た。
「ルイ。任務じゃ」
「え?今から寝ようと思って……」
「任務じゃ」
繰り返すなよ。まぁ任務くらいなら問題ないけど。
「何の?」
「普通に虚の討伐じゃ」
なら良いけど……まぁ、虚如きに遅れを取るような俺じゃない。やってやるよ。
「で、どんな虚なん?」
「大虚じゃ」
なら余裕だな。油断してても虚閃一発で勝てる。ただし、それは藍染の介入がなければ、だ。やはり油断はできませんね。
「良いよ。今すぐ?」
「うむ」
「俺一人?」
「儂も同行する」
「マジか。夜一さんと二人って初めてじゃない?てか、そんな強い大虚なの?」
「なんでも、少々面倒な力を持っているらしくてのう。良いか?」
「まぁ、良いですけど」
と、いうわけで俺と夜一さんは任務に向かった。やったぜ、少し楽しみだ。
と、思っていたのだが……、
☆
一時間後、
「…………はぐれた」
森の中でポツンと呟いた。
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ルイスと胸
はぐれた理由はわからない。気付けば、俺は夜一さんと別々になっていた。が、これは不自然だ。俺と夜一さんが二人で探索しててはぐれるなんてことはない。と、なると、誰かが意図的に仕組んだことになる。多分、鏡花水月だろう。
そんなこと出来るやつは俺の知ってる中で一人しかいない。
「やぁ、ルイスくん」
藍染惣右介。………落ち着け、俺。ここでは藍染の正体は分かってないことにしないといけないんだ。
「藍染副隊長?何してるんですかこんな所で」
「君に用があってね。いいかな」
「……………」
マズイ。ここでこいつとかち合うのは。捕まって研究されるのは目に見えている。それどころか、解剖までされるかもしれない。
「どうしたんだい?ルイス。何を警戒している?」
警戒してることが一発でバレた。だめだ、どう足掻いても俺はこいつから逃げられそうにない。………なら、やるべきことは一つだ。
空に向かって大きな欠伸をしながら口を開いた。
「………なんの真似だい?」
「全力虚閃」
空中に向かって、極太い虚閃をぶっ放した。
「なっ……⁉︎」
鏡花水月の能力は完全催眠だが、霊圧までは誤魔化せないだろう。空中に放出した最強の虚閃の霊圧を夜一さん、或いは尸魂界が感知すれば、藍染は俺に何もできない。いや、むしろここにいる事自体が不自然だから、さっさと去るべきだろう。
そして、俺の狙い通りに藍染はいつのまにか退却していた。さて、夜一さんと合流しないと……と、思ったのだが、今の虚閃に虚がワラワラと集まって来ました。さて、食事の時間だ。
☆
「………で、さっきの虚閃は何の真似だったんじゃ?」
「いえ、あのっ……ふわーっと欠伸したらぽえーっと出ちゃったんです……」
夜一さんに正座させられて怒られていた。最近、怒られ過ぎでしょ俺。まぁ、今回は仕方ないんだけどさ。
「前も言ったが、何度も何度も主レベルの虚閃をポンポン撃つな!一発ごとに大騒ぎになるんだぞ‼︎」
「はい、ごめんなさい……」
「お陰で、お前の規制はより厳しくなったぞ」
夜一さんは懐から眼帯を取り出した。それを俺に手渡してくる。
「? これは?」
「主の霊圧を食う眼帯じゃ。瀞霊廷どころか、任務中もそれを付けること、良いな?」
「い、良いけど……よく作ったなこんなもん」
「………喜助が作らされてたものじゃよ」
なるほど。しかし、眼帯か。………悪くないな。早速装着して見た。
「どお?夜一さん、似合う?」
「遊びやオシャレで付けるわけとるわけじゃないぞ」
「えー、似合わない?」
「…………似合っているが」
「えへへっ、やったね」
俺もなんか「俺強すぎかなー」って思ってたし、丁度いいや。あれ、でも待てよ?
「………ね、これお風呂や寝るときも着けなきゃダメ?」
「当然」
「……………」
マッッッジかよ………。
☆
ある日、眼帯をもらっても部屋から出られないので、眼帯を披露する相手もない俺はゴロゴロしながら、砕蜂と将棋をしていた。喜助と夜一さんは、喜助の十二番隊隊長の就任の儀に出ている。だから、砕蜂が遊んでくれていた。
「飛車金取り」
飛車と金の斜め後ろに銀を置いた。
「げっ……!」
ヤッベー、みたいな表情を浮かべる砕蜂。てかこの人、将棋ホント弱いのな。
「ぐぬぬっ……意外とやるな、ルイス……」
「いやいや、砕蜂が弱ぇんだよ。最初から思い付きで駒を動かしてたっしょ」
「………ふむ、思い付きはダメか」
「将棋でも何でも、思い付きはあんま良くないよ。ちゃんと戦術を考えながら、相手をどうやって追い込むかを考えながら駒を置かないと」
まぁ、俺も正直半分くらい思いつきでしたけどね。
「そういえば、今日は浦原喜助が隊長に就任するんだったな」
「そーだね。おかげで夜一さんも大変だろーなー」
「? なんでだ?」
「だって、俺の面倒を一人で見なきゃいけないんだから」
「いや、私もいる、二人だ」
「あー、そだったね。……ま、俺としては気が楽だけどな。あの変態エロ覗き魔、いつも俺の風呂とか着替え覗いてくるんだぜ?マージで考えらんない」
「まぁ、それだけ可愛がられているのだろう」
「限度があるでしょ。………せめて、夜一さんくらい胸があったりすればまだ見られてもいいんだけど……」
「そういう問題か?……まぁ、確かに夜一様の胸は羨ましいのは分かる」
俺と砕蜂の視線が、お互いの胸に向かって交差した。
「「………はぁ」」
二人揃ってため息を漏らした。
「……でも、砕蜂はいいじゃん。死神なんだから、まだ育つ余地あるでしょ?」
「そうか……虚は育たないのか」
「そうっぽいんだよねー。………生まれてから胸どころか身長も伸びてない……」
「いや、でも逆に諦めがつくだろう。私は育つ種族なのに未だに育ってないんだぞ……」
「………確かにそれはそれで残酷だな」
そんな話をしてると、扉が開いた。夜一さんが帰って来た。
「ただいまー」
「……………」
「……………」
「む、どうした二人とも?」
「「…………はぁ」」
「人の胸を見てため息をつくな‼︎」
砕蜂と、仲良くなれた気がしました。
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ルイスと朽木家次期当主
俺は一人で地下でお絵描きしていた。全裸の夜一さんだ。何十年も直で見たからか、割とうまく書けている。これ売れるかなぁ。喜助や砕蜂辺りに。
「………腹立つからもう少し胸小さくしよ」
「ほう?この前、ため息をついたのはそういうことか」
「そうなんだよー、マジあの人おっぱいでかくて腹立つ。少しは分けろよってんだろ」
「ほう?」
「無駄に胸でかくしやがってあのドスケベボディが。その癖、薄着ばっかしやがってよ。あの乳マジ捥いだろか」
「それで?」
「そのおっぱいを俺に移植して………つーか誰と喋ってんの俺」
そう言いながら振り返ると、まさに巨乳オッパイの夜一さんが烈火のごとく怒りを燃やして立っていた。
「……………」
「…………さて、ルイ」
「…………はい」
「覚悟は良いな?」
「……できるだけ優しくお願いします……」
「できるだけ、な」
俺は歯を食いしばった。
☆
「で、何の用?」
殴られた頬に冷たい布巾を当てながら聞いた。
「いや何、暇そうにしてたからあそびにきてやったんじゃ」
「お気遣いどーも。でも仕事は?」
「喜助の部隊に新しいのが入ったのでな」
「わーい、華麗なスルーだ」
「うむ。しかも、蛆虫の巣から来た奴じゃ。名は涅マユリ」
「ふーん。誰?」
「まぁ、知らないなら良い。一応、伝えておこうと思っての」
「ふーん……その人副隊長なの?」
「いや、副隊長は別じゃ」
「………あたしも副隊長になりたいなぁ」
「嫌」
「え、なんでよ」
「絶対不器用じゃからのう。仕事を手伝ってもらうどころか増える一方じゃ」
「はぁ⁉︎そんなことないし!てか、俺こう見えて器用だから!ほら!」
言いながら俺は夜一さんの全裸の絵を夜一さんに見せつけた。直後、その絵を突きで穴を開けて、そのまま俺の顔面に拳を叩きつけた。
「ごめんなさいは?」
「ごべんばばい」
謝ると、夜一さんは満足そうに絵を取り上げ、ビリビリに引き裂いた。まぁいいか。あとでまた描こう。
「次描いたら引き裂かれるのは描かれた紙ではなく描いた腕の方じゃからな」
「ごめんなさい」
「………まったく、上手く描きおってからに……どこまで儂のことを見ていたんじゃ。………少し嬉しいのが困る」
最後の方は良く聞こえなかったが、とにかく描くのはもうやめよう。腕捥がれたら困るからなぁ。………いや、超速再生あるし平気か。
「それより夜一さん、遊ぼう」
「おお、そうじゃ。そういえば、お主と遊ぶのにうってつけの奴を連れて来てやったぞ」
「? 誰?」
「ほれ、入って来い」
入って来たのは、見たこと無い子だった。男か女か分からない中性的な顔をしていて、ツインテールの子だ。
「貴様が護廷十三隊の虚か?」
「あ?」
なんだこいつ、偉そうな奴だな。
「私は朽木白哉だ」
「ブッ⁉︎」
えっ⁉︎マジ⁉︎この幼いのが⁉︎あのシスコン軍曹朽木白哉⁉︎
「誰⁉︎」
「だから朽木白哉だ‼︎馬鹿にしてるのか⁉︎」
「うん、正直少し!」
「なっ……⁉︎」
だって、あんなスカした六番隊隊長がこんなチンチクリンなんて……!こいつもあと何十年か何百年か経てば千本桜になるのか……。
「貴様……!余程、私の怒りを買いたいと見えるな……!」
「え?や、ごめん。そんなバカにはしてねーよ。ただ、その、何。ちょっと意外だったというか………朽木家次期当主さんが俺なんかのために遊びに来てくれるのは意外だったから」
なんとか誤魔化してみた。
「それは朽木家が暇人だと馬鹿にしてるのか⁉︎」
あー、そう取られちゃったかー。この頃の白哉は純粋と言うか、いや純粋じゃないな。からかい甲斐があるって奴か。ちょっと可愛い。
気がつけば俺は、響転で白哉の後ろに回り込んで頭を撫でていた。
「き、貴様!頭を撫でるな‼︎」
手に持ってる木刀を俺に向かって振り抜いて来て、瞬歩で回避した。
「はっはっはっ!ルイに敵わんようでは、儂に勝つのはもっと無理じゃな。白哉坊」
「そーだよ、びゃっくん。簡単に後ろ取られるようじゃ、当主としてはまだまだなんじゃない?」
夜一さんと俺でニマニマしながら煽ってみると、プチっと堪忍袋の尾が切れる音がした。
「貴様ら……‼︎面白い!今から私の本当の実力というものを見せてやろう‼︎」
鬼ごっこが始まった。瞬歩で白哉が近づいて来るのを感じ取ると、俺も夜一さんも瞬歩で逃げ回った。壁から壁へ、天井へと移動し、まるでナルトみたいな鬼ごっこになった。
すると、白哉は一度壁に止まった。そして、ジロリと俺と夜一さんを睨みながら、肩で息をする。
「ッ……ッ……」
「お、何。もう疲れたの?」
「そ、そんなわけあるか!」
「女の子より先にバテるなんて、どう思う夜一さん?」
「男の癖に情けないのう!」
「ふ、ふん、図に乗るなよ……!ここから先が勝負だ‼︎」
白哉の姿が消えた。俺も夜一さんも当然逃げる。そうだ、少しからかってやるか。
白哉からの猛攻を回避しながら、俺はバスルームの中に逃げると、すぐに出て天井に掴まった。
「そこかァッ‼︎」
白哉は俺のある天井に瞬歩して来た。俺は避けながら、バスルームにこの前置いてあった忘れ物を白哉に被せながら回避した。
「クッ……!すばしっこい……‼︎」
俺は自分の頭を指しながら白哉に言った。
「びゃっくん、びゃっくん」
「な、なんだ!びゃっくんと呼ぶな!」
「頭、頭」
「な、なんだ?」
自分の頭の上に手を当てて、何かを被せられたことに気付き、取った。直後、白哉なのに顔を真っ赤にした。そう、被せたのは夜一さんの忘れ物のパンツである。
「えっ、なっ、こ、これは………⁉︎」
「夜一さんのパンツ」
「ッ⁉︎」
顔をさらに真っ赤にしてワタワタと慌て始める、白哉なのに。あ、しつこい?分かった、もうやんない。
すると、動揺したのか白哉は天井から落下した。
「! しまっ……‼︎」
「!」
まずい、朽木家の次期当主に怪我なんてさせたら俺の立場終わる……!そう判断して、響転で移動して白哉を落下前にお姫様抱っこでなんとか回避した。
「ッ………‼︎ ……あ、あれっ?」
自分が無事である事に気付いたのか、辺りをキョロキョロと見回す白哉。が、すぐに俺に抱っこされてる現状に気付き、またまた顔を赤くした。
「なっ………⁉︎」
「だ、大丈夫?」
「は、離せ!降ろせ!」
「わ、わかったから暴れんな!ガキかお前は‼︎」
腕の上で暴れられ、手元を蹴って白哉は降りた。ったく、暴れん坊将軍が……。まぁ、今回は俺に非があるけどさ。
「ご、ごめん白哉。ちょっと、やり過ぎた」
素直に謝って頭を下がるが、白哉は顔をうつむかせたまま動かない。わなわなとただ、震えていた。
「………白哉?」
下から顔を覗き込むと、真っ赤になった顔が見えた。そして、キッと俺を睨んだ後、パンツを投げ捨てて逃げるように部屋を出て行った。
………ああ、せっかく友達ができそうだったのに……。やらかしたなぁ……今度マジで謝らないと……。
珍しく反省してると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、白哉に投げ捨てられたパンツを握り締めた夜一さんが、俺の事を睨んでいた。
「………さて、これのことについて聞きたいのじゃが……」
「………俺のパンツもあげるから許して下さい」
殴られた。
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ルイスと斬魄刀
朝になった。俺は目を覚まし、首をコキコキと鳴らしながら電気を点けた。どうせ今日も任務はない。どうやって暇潰ししようかな。
考えながら、とりあえず着替えることにした。上半身のパジャマを脱いだ所で、異変に気付いた。胸が重い……?
「………なんだ、これ」
自分の胸元に視線を落とすと、バインバインのオッパイが二つ付いていた。
「………ぃぃいいいやっほおおぉぉぉぅうう‼︎」
き、キタアアアアアア‼︎育ったああああああ‼︎ポケモン並みに進化して姿形が変わったが、そんな事はどうてもいい!俺はバインバインになったんだ!
「うおおお!『卍解、おっぱい桜景義』‼︎」
直後、俺のオッパイは散って刃となった。それでも、胸の体積は変わっていない。ホンモノだああああああ‼︎
………あ、そうだ。このオッパイを夜一さんに見せて自慢してやろう!そしておっぱいで窒息死させてやろう!そう決めて自分の部屋の扉を開けた。その直後……、
俺は目を覚ました。辺りを見回すと、自室。胸元に視線を落とすと、真っ平らな胸。……そうか、夢か………。
「………あんまりだ……」
ベッドの上で絶望した。頭を抱えて枕に顔を埋めてると、夜一さんが自室に入ってきた。
「ルイ、来たぞ……って、何をしとるんじゃお主は」
「…………」
あいつが……!あいつがホンモノのオッパイか……‼︎
「うおおおおお‼︎」
「うわっ!な、なんじゃお主は⁉︎いきなり胸を揉……!んっ……やめっ……い、いい加減にせんか‼︎」
殴られた。
☆
「………それで、あのような暴挙に走ったと?」
「…………はい、すみませんでした」
出会い頭に上司の胸を揉みしだくってやばいな。何やってんの俺。
「しかし、そんな気にすることないじゃろ。個人差だし」
「ある奴はそう言うよな!ない奴は変に劣等感を抱くんだよ!」
「ふむ、そんなに気になるなら揉んでやろうか?儂が」
「え、まじ?」
「うむ」
「……………」
「……………」
「………よ、よろしくお願いします」
「じゃ、脱げ」
「へ?ぬ、脱ぐの?直?」
「そういうものではないのか?」
「……………」
無言で脱いだ。………なんか恥ずかしいな。いつもお風呂一緒に入ってるのに不思議。その羞恥心から逃げるように、夜一さんに背中を向けた。
「お、お願いします……?」
「うむ」
………なんか変な感じだな。なんで緊張してるんだろ。落ち着け俺、女性同士だ女性同士。恥ずかしがることなんて……いや、女の子同士でも十分おかしいよねこれ。や、元々、女じゃないからわかんねーよ。全国の女性の皆さーん、これおかしいんですかねー?
直後、夜一さんの両腕が伸びて俺の胸を掴んだ。
「んぅっ……」
息が漏れた。あ、ヤバイ。こ、これは……ヤバイ……!
これが、女が胸を揉まれる感覚……!と、なんか変な実感を持った直後、
「ルーたーん!朝飯持ってきたっスよー!………ありっ?」
喜助が入ってきた。喜助の帽子の奥の目が丸くなる。
「…………あっ」
夜一さんが今更気付いたのか、声を上げた。
恥ずかしさのあまり、俺の体温が上がっていくのがわかった。
直後、喜助が「虚閃を撃たれる!」と思ったのか、両手を自分の前でアワアワと彷徨わせる。そして、懐からビデオカメラを取り出した。
「さっ!続きをドウゾ!」
違った。「録画しなければ!」と慌ててるだけだった。あーあ……さすがに入口の鍵を閉めなかった自分を責めようと思っていたのに……これは殺すしかないわ。
俺は斬魄刀を抜いた。それに合わせて身構える喜助。けど、それは無駄なんだなぁ。
「止まれ、『時折』」
直後、世界が真っ白になって静止した。夜一さんも喜助もその場から動かない。その間に俺は瞬歩で喜助の後ろに回り込む。この間、約1秒である。
「あれ?ルーたん?」
首をキョロキョロさせて、俺の姿を探す喜助の後ろから、さらにあたしは能力を発動する。世界が再び白に染まり、拳を構え、1秒間に50発ほど喜助に拳を叩き込んだ。
「ゴブホッ⁉︎」
喜助には、1度に50個の拳に襲われたような感覚だっただろーな。俺の斬魄刀、時折の能力は、1秒間だけ時を止める能力だ。それを20回使える。20回使い切ると、10秒間リロードの時間が必要になる。ハッキリ言って、瞬歩とか使えるこの世界の中ではかなりチートの部類だろう。しかも、初見では瞬間移動に感じるだろうから斬魄刀の能力を誤認させることもできる。
あたしは指をゴキゴキと鳴らしながら殴り飛ばした喜助に迫った。
「………何かいうことは?」
「…………言っていいんスか?」
「台詞による」
「……………いや、でもこれ……言ったら殴られそうだなぁ……でも言わないとこれ………」
「何ブツブツ言ってんの?死にたいの?」
「わかった!言わせてもらいます!」
喜助は俺を制止すると、目を逸らしながら言った。
「………まずは服を着ましょうよ」
「……………」
「……………」
「ふんっ!」
「痛い⁉︎」
蹴って黙って服を着た。
☆
「………本当にスミマセンでした」
土下座してる喜助。
「………今度あーいうこと言ったらマジぶっ殺すからな」
「まぁ、そう言ってもルーたん絶対許してくれるっスからね」
「止まれ……」
「嘘っス!スイマセンでした!」
まったくこいつは……!まぁいいし別に。
「しかし、主はいつの間に始解なんて覚えたんじゃ?」
「少し前かな。………色々事情があって、あまり他の人には言いたくなかったんだけど、二人にならいいかなって」
事情、とは言うまでもなく藍染のことだ。ある意味、鏡花水月の対抗策だと思ってる。………戦う方じゃなくて、逃げる方の。
まさか、「いつから、時が止まっていたなどと錯覚していた?」とはならないだろう。
「で、能力は?」
「空間移動ですよ」
とりあえず、しれっと嘘ついてみた。正直、目の前の二人が藍染や東仙である可能性は否めない。のだが、
「嘘っスよね」
真面目な顔をした喜助にあっさりと看破された。
「えっ……」
「食らった攻撃は明らかに複数の箇所に同時に衝撃が来ました。あたしにそんな事、夜一さんでもできない」
「…………」
相変わらず目敏いなぁ、喜助は。
「………時を止める能力だよ。1秒間だけ」
「1秒?」
「ただし、20回までね。これでいいでしょ」
そう言うと、俺は斬魄刀を納めた。が、喜助はまだ真面目な顔をして俺を睨んでる。
「………何」
「ルイスさん。アタシや夜一さんはあなたのことを信頼しています。ですが、あなたは虚であり、虚が死神の斬魄刀を持つなんて、どんな影響を及ぼすかわからないんです」
「…………」
「ですから、そういうところで嘘をつくのはやめて下さい」
………確かに、その通りかもしれない。俺の存在自体が尸魂界にとってイレギュラーなのだ。俺の言動一つ一つが信頼に繋がり、俺の生き死にに繋がるのだ。ただ、藍染から逃げ切ればいいだけじゃない。
「………ごめんなさい」
素直に謝ると、喜助は俺の頭を撫でた。
「分かれば良いんスよ」
そう言う喜助の声は、とても優しかった。
「それはそうとルーたん、おっぱい大きくしたいならアタシが揉んであげますよ!」
「止まれ、『時折』」
「え、ちょ待っ」
上げて落とさないと気が済まないのか。
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ルイスと逃走計画
また投稿すると思いますので、よろしくお願いします。
9年後くらい。昼寝しようと思ったんだけど、なかなか寝付けなくてゴロゴロと何度も寝返りをうってると、部屋のドアが開いた。
「おう、ルイ」
夜一さんだ。つーか、この人ここに来過ぎでしょ。隊長職って暇なの?や、遊びに来てくれるのは嬉しいんだけど、仕事をサボってまできてもらうのは申し訳ない。
「あの、大丈夫なの?」
「何がじゃ?」
「や、なんでもない」
ま、俺が言ったところで聞くとは思えないし、いっか。
「そういえば、面白い話があるぞ」
「ん?」
「なんでも、最近流魂街で変死事件が多発しておるらしい」
「変死?」
「ああ。服だけ残して、消滅してるらしい」
「ふーん……」
「それを九番隊が調べることになっとる。そこから連絡があって、喜助ん所から副隊長が出張るそうじゃ」
「変死ねぇ……」
それ原作通りなんかな。それとも、俺がいるから時空が曲がったのか……。原作通りなら俺が出る必要はないだろうけど、違ったら俺が行かなきゃならない。………面倒だから行きたくないなぁ。
ま、あまり考えないようにしよう。考えても分からんし。
「で、九番隊って誰がいんの?」
「お主は……。アレじゃよ、六車とか白とかじゃ」
ああ、仮面の軍勢の二人か。懐かし。そういや、この時ってこの人達は虚化とか出来んのかな。
「隊長がわざわざ出るって、意外とアレ?大事なん?」
「まぁ、そうじゃろうな。蒸発なら良くあることじゃが、服、足袋、草履のみ残して消えたらしいからのう」
蒸発って何よ。その現象知らないんだけど。
「もしかすると………」
夜一さんは呟いたが、その先は言わなかった。なんだ、この人心当たりでもあるのか。
「………いや、なんでもない」
なんだ、夜一さんの歯切れが悪いなんて珍しいな。
「ね、俺も見に行きたいんだけど」
「無理じゃな」
ですよねー。知ってた。まぁ、そこまで気になるわけじゃないし、大人しく諦めるか。
「ね、アレやろ。トランプ」
「構わんぞ。ポーカーか?」
「それで」
シャッフルして、トランプを配った。
☆
夜中。俺が部屋で寝てると、部屋の扉が開く音がした。割と寝が浅い俺はそれですぐに目が覚めた。扉を見ると、夜一さんが俺の方を見ているのが見えた。
「………ルイ、いるか?ルイ」
「……んっ………夜一さん……?」
どうしたのこんな時間に、と思ってると、夜一さんは俺の真横に降りて来た。
「ここを出るぞ」
「へっ?」
「説明はあとじゃ。早くしなければ、喜助が死ぬ」
「…………えっ?」
「荷物を持て。早くしろ」
「………は、はぁ」
とりあえず、斬魄刀を持って俺は夜一さんと姿を消した。二番隊隊舎を出て、建物の前で待たされたと思ったら、喜助と鉄裁さんを連れて双極の真下の地下部屋に連れて来られた。
「ちょっ、何?何なの?」
「………すまん、ルイス。巻き込むつもりはなかったが、お主の場合は残しておく方が危険と判断し、連れて来た」
「……………?」
いや、良いから説明を頼みたいんだけど………。いや、何となく想像はつく。これは多分、喜助達が人間界に移動するはめになったきっかけの話だろう。
だが、気になるのは、原作でいう仮面の軍勢と呼ばれる連中がその辺に転がっている事だ。何があった?まさか、仮面の軍勢と喜助達に何か関係があったって事か?
俺が考えている間に、喜助は真面目な顔で夜一さんに言った。
「あ、ありがとっス……。夜一サン」
「礼なんぞいらん。昨夜、何故儂にも一声かけんかったと、蹴り飛ばすのも後にしておいてやる。八人も新しい義骸の試作品もここに置いてある」
そう言う通り、平子隊長達の他になんかよくわからない箱も置いてあった。
喜助は暫く考えた後、鉄裁さんに声を掛けた。
「……鉄裁サン。平子サン達に時間停止をかけて下さい。そしてそのまま、この場所に二、三層の結界を」
えっ……?じ、時間停止?そんな技出来たんだあの人………。ていうか、俺の時折の立場は………。
「今から20時間で、ボク達二人と平子サン達8人、計10体の霊圧遮断型義骸を作ります」
すると、鉄裁さんが心配そうな表情で、俺と夜一さんを見た。
「………夜一殿と、ルイス殿は」
「儂達の事は気にするな。どうとでも逃げ果せる。……ルイス、行けるな?」
「え?う、うん」
「その時に、今回の事も話してやる」
BLEACH界で最強クラスの自信はあるしね。そう返事をすると、喜助は頷いて言った。
「現世に身を潜め、時間をかけて解き明かします、必ず。この虚化を、解除する方法を」
………ああ、なんか今回の話は大体理解できて来た。
つまり、仮面の軍勢とは藍染に嵌められて、虚化させられそうになり、その解除方法を知った連中の集まりだったと言うことか。喜助と鉄裁さんが捕まっていた理由は分からないが、それはこれから夜一さんに聞けるだろう。
喜助は夜一さんを見て言った。
「………では、夜一サン。ルーたんを頼みます」
「…………ああ」
それを最期に、俺は夜一さんと共にそこから消えた。
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