蒼が導く幻想の旅路~東方蒼幻録~ (wingurd)
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蒼の旅路 序章

初投稿です。生暖かい目で見てやってください。

本作品は、東方とブレイブルーのコラボ作になります。
原作イメージは出来る限り壊さないよう善処しますが、コラボ等が苦手な方は閲覧を控えてください。

仕事の都合により更新速度は不定期になりますので予めご了承ください。

ブレイブルー時系列はCP終了位になります。
東方はまちまちですので、キャラ登場タイミングがずれたりします。

尚、ブレイブルーの原作キャラについてはあまり大勢は出ません。
原則オリジナル主人公がブレイブルーの世界に介入した上で幻想入りする話になります。(この時点でかなり原作崩壊じゃないか?と思いますが、残念ながら事象干渉によりなかったことになりました!すまん・・・これが言いたかっただけなんや・・・)

尚、最初の話はオリ主の設定資料集及びプロローグになります。


設定資料集

 

オリ主(ショウ・ウィンガード)

 

性別 男 年齢 18歳

体格 身長170程度 いわゆる細マッチョ

身体特徴

黒髪首位の長さ(若干外はね)瞳の色 暗い青

 

ドライブ名 罪の聖櫃(クライムアーク)

 

自身の体内に蓄積されている魔素を解放し、自分の意思に合わせてコントロールすることを可能にする

能力支配下に置ける魔素は自身から解放された魔素のみであるが、拡散、集束に加え密度上昇、下降、硬化など汎用性は高い

 

能力(幻想郷風)

障気を操る程度の能力(ドライブ起因)

???(幻想入り後覚醒チート級能力)

 

人物像

 

自身のドライブにより、魔素を操りつつ接近戦を重点においた戦闘スタイルを得意とする。

体内には、無尽蔵に生成、蓄積された魔素を内蔵し、それを自身のドライブでコントロールしている。

ドライブの発動、魔素のコントロールには自身の血を媒介として行っているので、深手を負うとコントロールができなくなり、周囲に際限無く魔素を放出してしまう災厄となってしまう。

性格は直情型だが暑苦しいタイプではなく、むしろ冷静な印象を感じさせるが、自身の大切なものに害がおよぶ時には、かなりの激情を見せる。

 

過去の動向

 

CT時系列

 

CT時代にカグツチに現れた青年。CT系列の時、浪人街においてバングと知り合う。

以後行動を共にし、目的の為にラグナを捜索した。

カグツチの統制機構をラグナが襲撃しているとの情報を手に入れ、バングと別れ単独で侵入、支部内でノエルと出会い協力関係となり、支部最下層の窯でニューと邂逅し、ノエルと共闘しつつ戦闘する。

途中で合流したラグナとも協力し、ニューに辛くも勝利したが、窯に落ちていくニューを助けるため自身も窯内に飛び込み行方不明となった。

 

CS時系列

 

暫くの間境界内をさまよっていたが、心を開いたニューが、ショウの体を意識が途絶える前に境界外に弾き出し、ショウはカグツチの窯の空間で目覚める。

目覚めた後、情報を集めるためラグナとノエルの二人を探していたが、捜索中にハザマ(テルミ)に襲撃され深手を負うと共に、ハザマの狙いがノエルを使いマスターユニットを破壊することであると知る。

その計画を阻止するため、統制機構カグツチ支部最上階に向かったが、其処では既にラグナとハザマが戦闘をしていた。

終始押されていたラグナであったが、自分を庇い死んでしまったラムダのイデア機関を吸収し、テルミを圧倒したラグナは、とどめは刺さず後に来たショウに託し、自らは精練され神殺しの剣となったノエルを追った。

託されたショウは、テルミの真の狙いに気付き、ラグナを止めるため後を追ったが時既に遅く、タカマガハラを無効にしたテルミ、レリウス、そして現帝イザナミであるサヤと邂逅した。

サヤを倒すことを目的にするラグナは、師である十兵衛の言葉を手掛かりにクシナダの楔を手に入れるため、タオカカ、ショウを連れイカルガを目指すことにした。

 

CP時系列

 

ラグナ、タオカカと共にイカルガに訪れたショウであったが、すぐさまタオカカが行方不明になり、ラグナを残しタオカカを捜索していたが、ここで第七機関から解放された狂犬アズラエルに遭遇し、瀕死の重症を負ってしまう。

重症であったショウだったが、通りすがりのセリカに治癒魔法を掛けてもらい万全ではないが回復できたので、ラグナを探しに行くため、同じ目的のセリカと共にラグナを探した。

ラグナが統制機構に捕らえられた情報を入手したので、セリカと共に、統制機構総司令カグラのもとを訪ねる。

そこで、カグラが統制機構に対し謀反を計画していることを知ったショウは、ラグナが人質に取られていることもあり、カグラ、そして、第七機関の科学者ココノエに協力することになった。

計画の第一段階としてアズラエルの拘束、及び、統制機構衛士ツバキの救出作戦に参加し、両方を達成したショウ達であったが、その後にサヤが始動した滅日を止めるため、ラグナ、ノエル、ジン、セリカと共に、サヤが操るタケミカヅチと戦闘、そして、タケミカヅチをコントロールしていた冥王の剣であるニューと再会した。

かつて自分を救ってくれたニューを助けるため、タケミカヅチの中でニューと戦い、見事救いだしたが、直後、サヤにより体内の黒き獣の因子を暴走させられたラグナから、ノエル達を守る為にラグナと戦い、そのままラグナと共に消息を絶つ。

 

この後、ラグナについては、サヤがタケミカヅチを媒介にして産み出したエンブリオの中に反応があることが確認できたが、ショウについての手がかりは皆無であり、カグラ、ココノエが必死に捜索するも、行方は判明せず、二人共が、ショウの生存は絶望的と判断した。

 

ショウと交流があった者達は、皆悲しみに暮れると共に、ショウのことを世界の守護者として扱い、後世に語り継いでいくことを決めた。

 

~???~

 

「俺は、・・・どうなったんだ・・・?」

 

「ラグナと戦っていた時、アイツの剣が俺を捉えたと思ったんだが・・・?」

 

「確かあの時・・・俺達の間に、誰かが割り込んだような・・・」

 

「駄目だ・・・思い出せない・・・」

 

「それに・・・すげえ眠い・・・」

 

「俺は・・・い・・った・・・い・・・?」

 

流されていくような、落ちていくような奇妙な感覚を抱きながら眠りに落ちる・・・

 

『アナタハ・・・シナセナイ・・・イキテ・・・』

 

意識が途絶える直前、誰かの声が聞こえたような気がした・・・

 

守護者として生きた青年は、

蒼に導かれ、

幻想の旅路を歩く

 

蒼の旅路 序章 終

 




プロローグを含めた開始の挨拶です。

この物語は、
ブレイブルー世界の話を蒼の旅路
幻想郷の世界の話を幻の旅路
といった位置付けにしてあります。

感想、意見等があれば出来る限り参考とさせていただきますので、よろしくお願いします。


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幻の旅路 第1話 見知らぬ大地 part1


一応ペースは、一週間に1回のペースくらいを理想に投稿していきます。

尚、ある程度投稿した後、ギャグシナリオを投稿する予定です。

余力があれば、多数投稿したいところですが出来るかは現在未定です。

現在、ギャグシナリオの想定は2作あります。
良いネタがあれば追加しますので、今のところ、2作は投稿確定です。

では、本編をお楽しみください。



 

~???~

 

周りには、たくさんの木々が生い茂り、所々から鳥や虫の鳴き声が響く森の中で、一人の青年が倒れている。

 

気を失っているが、うなされており、顔色も悪い。

 

◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾

 

(・・・はあ・・・はあ・・・)

 

(いい・・・加減にしろ・・・逃げろつったろ・・・ぐ?!・・・はあ・・・はあ・・・)

 

(お前を・・・殺したく・・・ねえんだ・・・)

 

悪夢の中で、自身に殺気と威圧を与える、全身からどす黒い霧を放つ男が、こちらに向かって苦しみながら話しかける。

その言葉に対し、自分自身は何かを叫んだようだが、その言葉は聞こえない。

 

(こ・・・の・・・バカ・・・野郎が・・・ぐ?!グ、グアアアアァァァァァ!!!)

 

目の前の男が怒号をあげる。

赤黒く変化した異形の腕で、腰に指している大剣を掴みこちらに斬りかかって来た。

自身の意思では回避しようとしているが、体はその意思に反し、動こうとはしなかった。

 

そして、その大剣がこちらに届こうとした刹那、自身の前に何者かの影が割り込み、次の瞬間、自身の視界は血のような真っ赤な世界を映した。

 

(⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!)

 

直後に、何者かの声にならない叫び声が響く。

 

そして・・・

 

『アナタハ・・・イキテ・・・』

 

◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾◾

 

「?!・・・はあ・・・はあ・・・ゆ、夢・・・?」

 

見知らぬ森の中で目を覚ます。

 

「こ、ここは・・・?」

 

辺りを見渡してみたが、見覚えがない。

 

「な、何でこんなところに?」

 

自身がここにいる理由を思い出そうとするが、頭に霞みがかかったように思い出せなかった。

それに加え、自身が今まで何をして来たのかもわからなかったのだ。

 

「駄目だ・・・何も思い出せない。とりあえず、情報を集めないと。せめて、ここがどこなのかだけでも分かれば・・・。」

 

自分の現状を把握するため、おぼつかない足取りのまま歩き始める。

 

周りは木に囲まれた森、周囲には動物の気配がするものの人の気配はなく、ここが何なのかを示す物はどこにも見当たらない。

 

「くそ・・・まだ足がうまく動かない。だが、このまま留まっても埒が明かないし・・・今は少しでも情報が欲しい。」

 

自身の体は所々傷だらけであり、動こうとすれば体に鈍い痛みが走る。

それでも、止まるわけにはいかず、苦痛を訴える体を引きずり歩き続ける。

そして、暫く歩き続けると、開けた場所に出た。

そこには、輝く様に澄んだ水をたたえる広大な湖が広がっていた。

 

「湖か!ありがたい。喉も乾いていたし、ここなら食料になりそうなものも確保できそうだ。」

 

水を汲み口に入れる。

それだけでもかなり体の疲労がとれた気がした。

精神的にもかなり余裕ができる。

 

「はあ、はあ、生き返った!正直危なかったがなんとかなったな。この水なら綺麗そうだし、傷の応急措置もしておこう。」

 

汲んだ水と持っていた布を使い出血が酷い箇所から応急措置を施していく。

一通り処置し終えたところで、周囲の異変に気付いた。

 

周囲の動物の気配が消えている。

いや、あるにはあるが、猛スピードで湖から離れようとしていた。

 

まるで、何かから逃げる様に・・・

 

次の瞬間、自身の眼前に、鮮やかな色の何かが突き刺さり、かなりの爆発をもたらした。

 

「な!?くそ!!」

 

突然の事であったが、瞬時に反応し、巻き込まれるのは防いだ。

そして、元凶を確かめるため湖中央辺りを注視して見ると、そこには・・・

 

「お、女の子・・・?」

 

二人の女の子が、互いに鮮やかな色の弾のようなものを用いて戦っている光景が見えた。

 

to be continue

 




いきなり体調不良で更新タイミングオーバーとか嫌になります。
(インフルエンザマジぱねぇ)
これで、第1話パート1終了です。
次のパートから東方キャラが登場しますが、いきなり主人公の戦闘パートになります。
ちなみに主人公は、記憶はありませんが戦闘方法は忘れていません。
ただし、専門知識を必要とする術式は使用不可です。
いきなり、更新ペース予定が狂う残念仕様ですが、これからよろしくお願いします。


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幻の旅路 第1話 見知らぬ大地 part2

早めに完了したので、更新します。

パート2です。
前回のとおり主人公戦闘パートです。
ブレイブルー世界に出来る限り近付けつつ東方に組み込むのは難しいかもですが、可能な限り挑戦します。

では、本編をお楽しみください。


湖の少し上の空中で相対しながら、光の弾を打ち合い戦闘している少女2人を見つめる。

 

片方は、水色のワンピース、水色の髪の少女で、背中に何か水晶のようなアクセサリーを付けている。

 

もう一方は、先程の少女より少し年上で、自分に近い年齢と思われる少女、魔女みたいな風貌で、黒い帽子を被り、箒にまたがって飛行している。

 

戦闘は激しくなっているが、どうやら後述の少女の方が優勢のようだ。

 

そして・・・

 

???

「ふぎゃ!?」

 

水色の少女が、魔女風の少女の一撃をもろに喰らい、こちらに飛ばされてきた。

 

「まずい!?間に合え!」

 

すぐさま駆け出し、水色の少女を受け止めた。

ケガはないが先程の一撃で気絶しているようだ。

彼女を地面に寝かせたところ、もう一方の少女もこちらに飛んで来た。

 

???

「まったく、サイキョー(笑)か知らないが、ケンカ売る相手は考えた方が良いぜ。お前じゃアタシには・・・?あれ?見ない顔だな?あんただれ?」

 

魔女風の少女は、こちらに質問をする。

 

「人に名前を尋ねる時は、まず自分から名乗るのが普通だぞ。まあ、別にいいけどな。俺はショウ、ショウ・ウィンガードだ。君は?」

 

現れた魔女風の少女に警戒しつつ、こちらも名前を名乗った後質問を返す。

 

魔理沙

「そりゃ悪かったな。アタシは霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ。ところで、あんた見たことない顔だけど、里の人間にしちゃ雰囲気が違う。何処から来たんだ?」

 

魔理沙と名乗った少女の質問に少しばかり考えた後、返答した。

 

「・・・悪いけど思い出せなくてね。俺自身にもわからないんだ。記憶にないんだよ。」

 

魔理沙

「は?記憶にない?それって記憶喪失か?」

 

「そういうことになる。気がついたら、そこの森の中で倒れてたからな。ここに来るまでどこで何をしてたのかもさっぱりだ。」

 

自身が記憶喪失だと話すと、魔理沙はにがい顔をしていた。

まあ、記憶喪失と聞かされたら誰でもこんな顔になるだろう。

 

魔理沙

「そりゃまた、気分悪い事聞いちまったな。悪かったぜ。じゃあ、ショウはこれからどうするつもりだ?」

 

「一先ずはこの子の看病からだ。それからは、自身の現状を知りたい。ここが何処なのか?俺は何処で何をしていたのか?出来れば俺の過去についての調査がしたいところだ。」

 

魔理沙からの今後についての質問に対して、俺は少女の看病をした後で、自身の現状についての調査がしたい旨の返答をした。

 

魔理沙

「ああ、そいつならほっといて大丈夫だぜ。そいつはチルノっていう氷の妖精なんだ。妖精は、自身の性質を宿す自然が消えない限りは不死身なんだよ。ようは、死なない。ほかっといて問題なしだぜ。」

 

「いや、だからってなあ・・・」

 

魔理沙

「まあアタシのが原因だからな。仕方ない。たぶんこの近くに大妖精って奴がいる。そいつはチルノの友達だから、頼めば面倒見てくれる筈だぜ。その間私はこいつを見とくよ。ただ注意しろよ?この辺りには、弱いが妖怪もちらほらいる。只の人間が戦うのは自殺行為だぜ。見かけたらすぐに逃げろよ。」

 

この近くに、このチルノと言う妖精の友達がいるらしいが、危険もあると伝えた魔理沙に対し返答した。

 

「忠告どうも。まあ戦えない訳じゃないし大丈夫だ。そっちも気を付けろよ。」

 

魔理沙

「アタシの心配か?はは、そりゃ無用だぜ?雑魚妖怪に負けるような腕じゃないよ。気を付けてな。」

 

魔理沙に一言言いつつ森に向かう。

森の中は変わらず静寂に包まれている。

と、思った矢先だった。

 

???

「きゃあああ!!」

 

何処からか女性の悲鳴が聞こえた。

 

「悲鳴!?何処から!?」

 

声を頼りに森の中を進む。

すると・・・

 

???

「こ、来ないで!!ひ!?いや!?」

 

先程のチルノと同じくらいの年齢の少女が、異形の生物3匹に襲われていた。

そして、その生物の鋭く研がれた爪が、今にも少女の体に届こうとしていた。

 

「まずい!?くそ!させるか!!」

 

走りながら腰に指してある剣を引き抜き、左手の指先に軽く傷をつける。

指先から流れる血を確認し、自身のドライブを起動する。

 

「罪の聖櫃『クライムアーク』起動!!」

 

ドライブの起動を完了すると、傷つけた指先から流れる血から、どす黒い霧が放たれる。

それと同時に、左手を後ろに回しながら走りつつ、手を前へ振り抜いて叫んだ。

 

「間に合え!!『シャドウファング』!!」

 

振り抜いた左手から、刃状に変質した魔素が放たれ、少女を手にかけようとした異形の生物の腕を切り飛ばした。

その間に、少女と異形の生物の間に立ち、異形の生物と相対する。

 

「ガ、ガアアア!?オ、オレノウデガ!?テメェ、シニテエカ!?」

 

苦悶の表情を浮かべながら此方に敵意を向けてくる奴等に対し、ドライブの影響により発生する魔素を全身に纏わせながら剣を構えつつ、言い放った。

 

「彼女に手は出させない。遊びたいなら俺が相手をしてやる。来い!」

 

此方の言葉に激昂した異形の生物達は、殺意を撒き散らしながら此方に向かってくる。

そいつらに剣を向けながら、こちらも戦闘体制をとる。

 

「俺の前で誰かが死ぬのを見るのはもうたくさんだ・・・今度こそ、守ってみせる!!」

 

自身の口から自然に出た言葉に対しての疑問を覚えながら・・・

 

to be continue

 

 

 

 

 




パート2終了です。
次回はこの戦闘パートの続きです。
上手くかけると良いなー(棒)
がんばって書きます(汗)

では、来週更新を目指して執筆開始じゃー!!
お付き合い有難うございました。


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幻の旅路 第1話 見知らぬ大地 part3

仕事の影響で更新が遅れました。パート3です。
前回の戦闘パートの続きです。
今回の戦闘パートは、ブレイブルー寄りの容赦のない感じの戦闘描写ですので、苦手な方は気を付けて閲覧してください。

では、本編をお楽しみください。


「コイツハオレガコロス!ウデノレイモカネテヤツザキニシテヤル!」

 

咆哮しながら爪や牙を剥き出しにして、ショウを殺そうと向かってくる一匹の魔物。

他の二匹はニヤニヤした顔で様子を見ていたが、次の瞬間、その顔は驚愕に染まることとなった。

 

「遅いんだよ!」

 

ドライブ能力により、支配下に置いた魔素によって身体能力にブーストがかかり、極限まで研ぎ澄まされた身体能力を得たショウの前には、目の前の魔物の動きはまさにスローモーションといって差し支えなかった。

 

向かってきた魔物の攻撃に合わせ、すれ違い様に剣を振り抜く。

その一振りは、向かってきた魔物の肩口から脇腹の辺りにかけて魔物の体を真っ二つに両断し、一撃のもとに絶命させた。

 

「ガハッ!?」

 

短い断末魔を上げ、倒れる魔物。

その様子を見ていた残りの二匹は、驚きの表情を見せる。

しかし、その二匹はすぐに意識を戻し、ショウから距離を取る様に走りつつ、手のひらを此方に向けた。

 

「クライヤガレ!」

 

向けられた手のひらから、魔理沙達が使っていたような鮮やかな色の弾が放たれる。

だが、魔理沙達が使っていた物と同じとは思えないほど乱雑に放たれており、スピードも大したことはない。

それに加え、ブーストされた身体能力なら、攻撃を回避しつつ接近することも容易だとショウは判断した。

 

(この程度なら抜けられる・・・それなら!)

 

判断した後のショウの行動は早かった。

すぐに接近を開始し弾幕の中に飛び込む。

密度の薄い場所を選びつつ、接触しそうな弾は、剣を使い切り払って進む。

瞬く間に魔物達との距離を詰めていくショウに、魔物達は焦燥し、狂った様に弾を放つが、焦りから余計に弾が乱れ、接近してくる速度が上がる。

正に悪循環だった。

 

「この距離なら、行ける!」

 

射程距離まで近づいたところで、ショウは敵に向かって全力で跳躍し、一瞬で懐に入った。

 

「ナ、ナンダト!!」

 

ショウの動きについていけず接近を許した魔物達は虚をつかれてしまい反応しきれていない。

それを見逃す筈もなかった。

 

「そこだ!!」

 

一瞬の硬直を見逃さず剣を振る。

その切っ先は、二匹の魔物の内の片方の首を切り飛ばした。

ゴトリと音をたて魔物の首が地面に落ちる。

 

「コイツ!?クソ!バケモノガ!」

 

最後の一匹が背を向け、悔しさを滲ませる捨て台詞を吐きながら逃げていく。

既に運命は決しているとも知らずに・・・

 

「お前に言われちゃおしまいだ・・・」

 

既に逃げる方向に先回りしていたショウが皮肉を言いつつ剣を構えて佇んでいた。

体から大量の魔素を放出させながら剣を振りかぶる。

その動きに合わせ、更に莫大な魔素が放たれる。

 

「ヤ、ヤメロ!?」

 

命乞いをする魔物の言葉に対し、静かな怒りを込めて返答した。

 

「なら、彼女に対してお前達は同じように見逃したか?寝言は寝てから言うんだな。さて、覚悟はいいか?」

 

「ヤメ!?」

 

魔物が言葉を言い終わる前に、全力で剣を真横に振り抜く。

体に一文字の傷がつき、魔物は苦悶の表情を浮かべているが、関係無いといった顔で返しの手を上段に振り上げる。

 

『ブラッディ・・・クロス!!』

 

上段から渾身の力を込めて放たれた斬撃を受け、魔物はその場に膝をつく。

 

「終わりだ・・・」

 

ショウは、魔物に背を向け、言葉を静かに呟いた。

次の瞬間、斬撃を受けた魔物の十字形の傷から大量の魔素が吹き出した。

そのままうつぶせに倒れる魔物。

もうピクリとも動かない。

魔物達全てを倒したことを確認した後自身のドライブを使い、周りに広がった魔素を自身の中に戻す。

本来なら魔素が持つ毒性に蝕まれる所だが、ドライブ能力により支配下に置いているため、自身及び周囲に悪影響を与えないようコントロールすることで防いでいる。

しかし、コントロールには自身の血を用いる為、長時間行うと血を流しすぎてしまい、制御が出来なくなるといったデメリットもあるので、この様に回収し自身の体で蓋をする。

体から発生している魔素の勢いが弱まり、完全に消えたのを確認した後、ドライブ発動を止め、襲われていた少女に話しかける。

 

「間に合ってよかった。ケガはないか?」

 

???

「あ、はい。大丈夫です。危ない所を助けていただいて有難うございました。」

 

「それはよかった。後、確認させて欲しいんだけど、君はチルノっていう妖精の友達の大妖精で間違いない?」

 

大妖精

「え?・・・確かに私は大妖精ですけど、お会いするのははじめてですよね?誰から聞いたんですか?」

 

「魔理沙っていう魔法使いから聞いたんだ。魔理沙と君の友達のチルノが戦って、チルノが気絶しちゃってね。介抱してくれる友達である君を探してたんだ。悪いんだけど一緒に来て欲しい。」

 

目の前の少女が大妖精であることがわかり、これまでの経緯を説明した後、一緒に来て欲しい旨を伝える。

 

大妖精

「やっぱりチルノちゃん負けちゃったんだ。魔理沙さんは流石に相手が悪いよ。いい加減覚えて欲しいんだけどな・・・。わかりました。すみませんがチルノちゃんの所まで案内をお願いします。えっと・・・」

 

「ああ、すまない。まだ自己紹介してなかったな。俺はショウ、ショウ・ウィンガードだ。じゃあ案内するから、よろしく頼むよ。」

 

大妖精

「はい。よろしくお願いします、ショウさん。」

 

ショウは大妖精を連れ、魔理沙達がいる湖の方へ歩いていった。

 

(しかし、戦う前に感じたあの違和感・・・なんだったんだ?前にも体験したような感覚だった・・・俺は、過去に何をしていたんだ・・・?)

 

自身が感じた違和感の正体を考えるが、その答えである記憶がない。

 

(まったく・・・何がどうなってるんだか・・・)

 

自身の身に何が起きたのか、その答えは出ない・・・

 

to be continue

 

 

 

 

 

 




仕事の影響で更新遅れました。
休日出勤土日共には勘弁してくれ・・・
次回は、主人公が楽園の素敵な巫女と邂逅し、そこから本格的に幻想郷を探索します。
一応予定としては過去探し、異変パート、日常パート、過去探しpart2(途中ギャグシナリオ)、異変パート、ブレイブルーパートとなります。
そこからの構想はまだ未定です。
尚、何時になるかはわかりませんが、CFパートが入ります。オリ主については話の中盤から介入します。

では、次回執筆完了までお待ちください。
有難うございました。


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幻の旅路 第1話 見知らぬ大地 part4(終)

あかん・・・
出張からの連勤で更新大遅刻や・・・
ほんますいません。

てなわけで関西出張からかえって、ようやく投稿出来ました。
時間掛かってしまい本当にごめんなさい。
(出張命令の連絡が遅かったんや・・・)

今回で導入部の第1話終了です。
次回から本格的に幻想郷を探索します。
なお、資料集でも説明した、オリ主チート級能力は、幻想郷各地での東方キャラとの邂逅で覚醒していきます。
そのため、完全覚醒までは時間がかかりますので、気長にお待ちください。

では、第1話最終パート、お楽しみください。



チルノの友達の大妖精を連れ魔理沙達の所まで戻ってきた。

すると、先程のチルノが目を覚ましていたが、何やら魔理沙と揉めてるようだ。

 

チルノ

「サイキョーのアタイが負けるはず無い!何かインチキしただろコラー!」

 

魔理沙

「んなことするかっての!お前がアタシより弱いだけだぜ?単純な理屈だ。」

 

チルノ

「なんだとー!?もう一回勝負だ!今度こそアタイがサイキョーだってわからせてやる!」

 

先程の勝負の結果に不満があるチルノが魔理沙に突っかかっていた。

 

(明らかに魔理沙の方が実力上だったけどな・・・本人の面子もあるし、ややこしくなるから言わないけど。)

 

先程の戦闘の一部を見た感じでは、明らかに魔理沙の方が強かった。

お世辞にも勝てる相手とは考えられない。

未だに文句を言っているチルノを見て、大妖精が頭を抱えている。

見た感じ、この状況は日常茶飯事のようだ。

 

大妖精

「もう!チルノちゃんいい加減にしてよ!さっきまで気絶してたのに!ショウさんが心配して私を探してくれてたのに!」

 

チルノ

「あれ?大ちゃん?いつの間にこっち来たの?て、いうか、隣にいる人誰?」

 

大妖精がいることに気づいたチルノが、ショウの方を見て大妖精に尋ねた。

 

大妖精

「この人はショウさん。チルノちゃんが気絶してたから、介抱してくれる私を探してくれてたの。妖怪に襲われていた所を助けてくれたんだ。気絶してるって聞いたから心配してたのに。まったく、心配して損した!」

 

大妖精がショウの事をチルノに紹介した所、チルノではなく魔理沙から驚きの声が上がった。

 

魔理沙

「妖怪に襲われていた所を助けた?お前、戦ったのか?にしちゃケガらしい物はないし・・・、逃げて来たのか?」

 

「いや、大妖精を守りながら逃げるのは難しかった。倒してきたよ。あんまり強くはなかった。あれぐらいなら俺だけでなんとかなる。」

 

魔理沙

「へえ?倒してきた、か。そりゃ凄いな。一対一なら妖怪も倒せる実力か。」

 

「え?いや、三対一だったぞ。まあ、一体づつ倒したから一対一と言えなくもないけど。」

 

魔理沙の質問に対して正直に答えたが、その答えに魔理沙の表情は固まった。

 

魔理沙

「は?三対一?只の人間が三対一で妖怪に無傷で勝った?おいおい、冗談にしては笑えないぜ?」

 

魔理沙の常識では、只の人間が妖怪に勝つのは無茶を通り越して無謀らしい。

それが三対一でしかも無傷で勝利したなどと聞けば、冗談だと思うのも無理はないようだ。

 

大妖精

「魔理沙さん。ショウさんが言っていることは嘘じゃないです。私を襲ってきた妖怪は三人でしたし、戻る時には三人ともに倒されていました。」

 

その話を聞いた大妖精がフォローを入れた。

 

魔理沙

「まじかよ・・・お前ホントに人間か?妖怪三人相手に無傷で勝利は有り得ないぜ・・・あと・・・その、殺したのか?」

 

「?ああ、気絶させるだけじゃ、他の奴を相手にしてる時に起きられたら危険だからな。まあ、元々こんな小さな女の子を襲うような奴に慈悲をかけるつもりはなかったが。」

 

歯切れの悪い言い方をする魔理沙。

「殺したのか?」と言う問いに対して肯定の返事をする。

 

魔理沙

「ああ、やっぱか・・・説明してなかったからな。記憶がない事を考慮しとくべきだったぜ。悪いが一緒に来てくれ。事情を説明してやらなきゃならないが、ここじゃ落ち着いて話ができない。ちょっと遠いから乗っけてやるよ。」

 

「場所を変えるのか?わかった。よろしく頼む。」

 

場所を変えたいといった魔理沙は、自分が跨がっている箒の後ろを叩き、ショウに後ろに乗るように促す。

了承したショウが、魔理沙の後ろに座ろうとしたところ、チルノと大妖精の二人がショウに近づいてきた。

ショウの目の前まで来たところで大妖精が話しかけてきた。

 

大妖精

「ショウさん。妖怪から助けていただき有難うございました。あの・・・その・・・」

 

話しかけてきた大妖精だったが、最後の方が聞き取りづらい。

 

「ん?何だって?悪い。よくきこえなかったんだが・・・」

 

何故か大妖精の顔は赤い。

具合でも悪いのだろうか?と考えていると、チルノが大妖精の隣に来て、元気よく爆弾を投下した。

 

チルノ

「大ちゃん。また会いたいから遊びに来て欲しいってハッキリ言えば良いじゃん。」

 

大妖精

「ちょっ!?チルノちゃん!?何言ってくれちゃってるの!?」

 

顔を真っ赤にして慌てる大妖精。

チルノの両肩を掴み、これでもかと前後にゆする。

いつもの大妖精の様子を知っている魔理沙は腹を抱えて笑っていた。

 

「そうだったのか。わかった。ある程度落ち着いたら遊びにいくよ。それで良いか?」

 

大妖精

「あ・・・えっと、はい・・・。また会えるのを楽しみにしてます。」

 

「ああ。チルノも元気でな。」

 

チルノ

「うん!今度はアタイとも遊んでね。バイバイー。」

 

一通り話を終え、魔理沙の箒の後ろに乗った。

すると、今まで感じた事がない浮遊感を味わう。

ついでにスピードもかなりのものだ。

ドライブを発動した時の自身のスピードを軽く越えている。

後で聞いたが、直線だからあれほどのスピードらしく、戦闘時には著しく落ちるらしい。

あと、箒はなくても飛べるようだ。

 

しばらく空中走行を満喫したところ、目的地に着いたらしくスピードが落ちる。

周りを見てみると、木に囲まれた山の上に大きな建物がたっている場所に着いた。

 

「ここは・・・?」

 

魔理沙

「此処が目的地だぜ。此処には、幻想郷の管理をやってる知り合いが居るんだ。ちょっと待ってろよ?」

 

そう言いつつ魔理沙は厳格な雰囲気を持つ建物の中に入っていった。

 

(幻想郷・・・?聞いたことがないな・・・まあ、俺が忘れているだけかもしれないが。)

 

魔理沙の言葉に疑問を抱いていると建物の中から魔理沙が出てくる。

その後ろにはもう1人いた。

 

???

「会って欲しい奴がいるとは聞いていたけど、まさか魔理沙が、知らない男を連れてくるとはね。」

 

現れたのは、紅白の衣装に身を包んだ魔理沙と同年代位の少女だった。

 

霊夢

「はじめまして。魔理沙から聞いているかもだけど、改めて。博麗霊夢よ。よろしく。」

 

この霊夢と名乗った少女との出会いが、ショウの背負う運命の歯車を動かすこととなる。

 

幻の旅路 第1話 見知らぬ大地 完

 

to be continue

 

 

 

 




幻の旅路 第1話終了です。
次回から幻想郷探索です。
探索候補地(目的人物)は、紅魔館(レミリア)、永遠亭(永琳)、地霊殿(さとり)、彼岸(映姫)の四ヶ所。
選ばなかった候補地もあとで行きます。

なお、選んだ候補地により、覚醒能力による戦闘内容が変化します。

最初の覚醒は、最初の異変パートに発生します。

では、次回の更新までお待ちください。
遅延更新ですみませんでした。


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幻の旅路 第2話 メモリー・シーカー part1

第2話更新終了です・・・が、探索先がまだ決定してません。(マジどうしよう・・・)

今回は導入部なので探索先は登場しません。
なお、今回で主人公がスペルカードを入手しますが、後日資料集を作りますので、能力等については後の資料集を参考にしてください。(資料集については該当スペル、能力が追加される度に更新します)

では、第2話パート1お楽しみください。



魔理沙に連れてこられた場所(後に博麗神社と判明)で出会った少女。

名前を博麗霊夢と言うらしい。

彼女は、この世界『幻想郷』の周りを包んでいる『博麗大結界』の管理を行う人物で、この博麗神社で巫女と言う仕事をしていると言っていた。

 

霊夢

「で?魔理沙。この人、ショウって言ったっけ?この人に何を説明すればいいの?」

 

魔理沙

「こいつ記憶がないんだよ。私がこいつに会ったのもついさっきなんだが、成り行きでこいつが妖怪三人を殺しちまったんだ。一応聞いてはみたがやっぱり覚えてないみたいでな。霊夢にこいつの事を知ってるか尋ねるついでに、ここのルールを教えてやってほしいと思って今日来たんだぜ。」

 

霊夢

「んなこといって、説明するのがめんどくさいだけでしょ?まったく・・・。様はスペルカードルールについて教えればいいのね?」

 

魔理沙

「助かるぜ!私だと上手く説明できないからな。やっぱ作った本人じゃなきゃ。」

 

霊夢

「ハイハイ・・・じゃあ、説明するからよく聞いといて。二度は言わないからそのつもりでね。」

 

「わかった。すまないが頼む。」

 

霊夢から『スペルカードルール』についての説明を受けた。

このルールは、力の差がある人間と妖怪のバランスを取るために作られたもので、基本的には不殺主義、殺しは厳禁とされている。

互いに合意した上で残機、スペルカードの枚数を決め、弾幕、スペルカードを用いて攻撃するが、この攻撃については殺傷能力を持たせてはならない。

ここでは、これを『弾幕ごっこ』と呼称している。

勝敗は、指定の残機分相手の弾幕、スペルに被弾するか、指定の枚数のスペルカードをお互いに使いきった段階で、相手の残機が残っていた時、自身より相手の残機が多ければ敗北となる。

そして、弾幕ごっこの結果に条件がつけられていた場合、敗者は勝者の条件に従わなければならないとされている。

このような感じの説明だった。

 

霊夢

「こんなところかしら。どう?わかった?」

 

「ああ、大体な。だが、俺はスペルカードを持ってないけど、どうすればいい?あと、俺は近接戦闘しかできないんだが?弾幕なんて出せないぞ?」

 

霊夢

「弾幕については自分で何とかして。スペルカードについては予備に持ってる白紙のカードをあげるわ。あと、魔理沙。あなたの予備もショウにあげて。これでそれなりの数になるはずよ。」

 

魔理沙

「私のもか!?あー・・・わかったよ。予備とってくるからちょっと待っててくれ。」

 

そう言って魔理沙は箒に跨がり猛スピードで飛んでいった。

魔理沙がカードを取りに行くのを見届けていると、横から霊夢に声をかけられた。

 

霊夢

「ところで、ショウはこれからどうするつもり?」

 

「なくした記憶について調べたいと思ってる。自分が何者か知らないままってのは嫌な気分だからな。その件で質問があるんだが・・・構わないか?」

 

霊夢

「ええ、構わないわ。何が聞きたいの?」

 

そう言って俺は、記憶の手掛かりになりそうな場所、人物について霊夢に尋ねた。

 

霊夢

「記憶の件について力になりそうな奴なら心当たりが数人いるわよ。ただ・・・どいつもこいつも一癖、二癖ある奴なんだけどね。」

 

心当たりがあるといった霊夢だったが、その後に苦い顔を見せた。

どうやら一筋縄ではいかない連中らしい。

 

霊夢

「一応教えておくけど・・・どうするかはショウに任せるから。行くなら自己責任でよろしく。」

 

「ああ、わかった。ありがとう霊夢。」

 

霊夢

「お礼はいらないから、懐に余裕ができたらお賽銭よろしく。」

 

「現金な奴だな。わかった。お礼の代わりに必ずいれに来るよ。」

 

霊夢

「約束よ。破ったら許さないから。じゃあ私も予備のスペルカード持ってくるからここで待ってて。」

 

そう言って霊夢は建物の中に入っていった。

すると、入れ違いに魔理沙が帰ってきた。

 

魔理沙

「あれ?霊夢はどうした?」

 

「予備のカードを取りに行ってる。すぐに戻るだろ。」

 

魔理沙

「そっか。じゃ、先に渡しとくぜ。ほいこれ。白紙のスペルカードだぜ。」

 

「これがスペルカードか・・・これどうやって使うんだ?」

 

魔理沙にスペルカードの使い方について質問する。

 

魔理沙

「スペルカードは、弾幕ごっこ用に自身の能力にある程度の方向性をつけるものだぜ。自分がイメージする弾幕を思い描いて、それをカードに込めればいい。ただ、幾つかルールがある。スペルカードを発動する時は、カード名を宣言しなきゃならない。つまり、名前のないカードは使えないんだ。更に、スペルカードを絶対に避けられないような高難易度仕様にするのは、暗黙の了解で禁止だぜ。あくまでも決闘だからな。そこんとこ気を付けろよ。」

 

「能力の方向性か・・・ま、なるようになるか。ありがとう魔理沙。」

 

魔理沙からある程度の説明を受けた直後、霊夢が帰ってきた。

 

霊夢

「丁度魔理沙も戻ってきてたわね。はい、スペルカード。魔理沙のと合わせたら・・・6枚か。これだけあれば十分ね。スペルカードの説明は・・・」

 

魔理沙

「私がやっといたぜ。」

 

霊夢

「ならいいわね。じゃあ、さっき言った記憶の手掛かりになりそうな奴について説明するわ。」

 

霊夢から記憶探しの手掛かりになる人物について教えて貰った。

対象者は・・・

 

「紅魔館のレミリア・スカーレット、永遠亭の八意永琳、地霊殿のサトリ、三途の川を越えた先の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥ・・・か。」

 

ショウは、霊夢、魔理沙と別れ、一人道を歩きながら目的の人物の名前を呟いた。

 

「さて・・・何処から行こうかな。」

 

失われた自身の記憶を求め、幻想の世界を巡る旅路を歩き始める。

 

to be continue




第2話パート1終了です。

次回の更新は、探索先決定から開始ですので投稿が遅れそうです。
次回は探索先に向かう道中で目的地までは到着しませんが、ここでも東方キャラとの邂逅があります。
主人公の能力覚醒の都合上、「こんなところで会うわけねえだろ!」的なキャラがいるかもしれませんが、観測者的な立場で苦笑しながら見てください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。


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幻の旅路 第2話 メモリー・シーカー part2

更新完了です。
今回はいつもより早く仕上がりました。

探索先は紅魔館に決定です。
今回は道中話で、東方キャラとの邂逅です。
次回は戦闘パートになる予定になります。

では、本編をお楽しみください。



ようやく自分が向かうべき場所がハッキリし、決意を新たにしたショウ。

しかし、その足どりは軽くなかった。

 

「やはり、自分の記憶を求めるんだから、地霊殿か三途の川なんだが・・・場所がな・・・」

 

御覧の通りおもいっきり悩んでいた。

目的地自体に問題があったのだ。

 

「地霊殿は旧地獄跡地で今は地底と呼ばれる地下世界にあるらしいが、地上とは比べ物にならない位強く気性の荒い妖怪が多く、喧騒が絶えない場所だったか・・・正直弾幕ごっこについてまったく経験がない状態じゃ流石に無謀か・・・勝敗条件に命が指定されたらたまったものじゃない。」

 

地霊殿攻略には単純に経験が足りない。

地上と比べても意味がないくらい強い妖怪がひしめいているらしく、今のままでは自殺志願者と変わらない。

 

「もうひとつの三途の川は大前提、生者では渡れないとかどうしようもないしな・・・これについては始めから選択の余地なしだ。」

 

三途の川攻略は現在では不可能だった。

生きている人間では渡ることはできず手の打ちようがない。

 

「となると、選択肢は2つ。紅魔館か永遠亭のどちらかだが・・・」

 

地霊殿と三途の川が不可能な以上選択肢は紅魔館か永遠亭のどちらかになる。

現在地から近いのは紅魔館だが、人里での物資補給を考えれば永遠亭の方が近くなる。

どちらにするか決めかねていた時だった・・・

 

???

「おーい!ショウー!」

 

「ん?誰だ?俺の名前を知ってる人物は限られるが・・・」

 

不意に誰かに名前を呼ばれた。

現在自分の名前を知っているのは数人しかいないが・・・

 

魔理沙

「やっと追い付いたぜ・・・案外歩くの早いな。」

 

「魔理沙?どうしたんだ?」

 

声をかけたのは魔理沙だった。

 

魔理沙

「確か記憶探しの候補に紅魔館があったよな?私も其処に用があるから一緒にいこうぜ?」

 

魔理沙は紅魔館に用があるから一緒にいこうと言ってきた。

此方としては非常に嬉しい申し出なのだが・・・

 

「そりゃ此方としては嬉しい申し出なんだが、この世界を見て回りたいから歩きで行くつもりだったんだ。そうなると到着が遅くなる。流石にそれは迷惑だろ?」

 

この世界について知る必要があり、ゆっくり歩いて目的地を目指すつもりだった為、用事があるなら迷惑を掛けることになる。

魔理沙には世話になったし迷惑は掛けられない為断るつもりで返答した。

 

魔理沙

「確かにショウは幻想郷についてなにも知らないからなー。なら付き合うぜ。」

 

その返答に対し、魔理沙から返ってきた言葉は意外なものだった。

 

「え!?いいのか?時間かかると思うけど・・・」

 

魔理沙

「私の用は急ぎじゃないからな。別に構わないぜ。それとも、一人の方が動きやすいか?」

 

「いや、魔理沙が大丈夫なら断る理由はない。助かるよ。ありがとう魔理沙。」

 

魔理沙はこちらの勝手な都合も気にせず快く承諾してくれた。

 

魔理沙

「そうと決まれば早速いこうぜ!時間はあるけど、無駄に使う必要はないだろ?」

 

「そうだな。行こう。よろしく頼むよ、魔理沙。」

 

魔理沙

「オッケー!まかされたぜ!」

 

ショウと魔理沙は並んで紅魔館へ向けて歩いて行った。

 

???

「・・・(ギリッ)」

 

その様子を見ていた何者かに気づかないまま・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■

 

魔理沙と二人で森の中を進んでいく。

道中魔理沙に幻想郷についていろいろと教えて貰った。

特に興味を引かれたのは、この世界で起こるトラブル

『異変』についての話だった。

 

魔理沙

「起こした奴それぞれ大小いろんな理由があるけど、大体は自分のために起こしてたな。それを私や霊夢、時々は他の奴と一緒に解決して、終わったら異変の首謀者主催で宴会って流れだな。」

 

「え、宴会?また変わった風習だな。さっきまで敵同士だった奴なんだろ?」

 

魔理沙

「そこまで拗れるような関係になる奴なんてこの幻想郷にはいないさ。『ごっこ』で決闘する奴らがいる場所だぜ?ケリがついたらそんなもんだよ。」

 

「お気楽と言うか、平和的と言うか・・・まあ、もしそうなら楽しそうだな。殺伐とした世界と比べたらまさに『楽園』だ。」

 

この世界のあり方に呆れつつもどこか羨ましいと思っている自分がいることに、かつての自分は殺伐とした世界にいたのではないかと考えながら、自分の感想を口にした。

 

魔理沙

「ただ能天気なだけだって。さて、もうそろそろ開けた場所に出る。そしたら悪趣味な赤色の館が見えるはずだぜ。そこが目的地だ。」

 

「そうか。しかし、赤色の館か・・・確かに悪趣味だな・・・ー」

 

???

「あら、魔理沙じゃない?奇遇ね。」

 

魔理沙からもうすぐ目的地付近であるとの話を聞いた丁度その時、背後から誰かに声をかけられた。

 

「ん?誰だ?」

 

魔理沙

「あれ?アリスじゃないか。めずらしいな。どうしたんだこんな場所で?」

 

アリス

「あら、私だってたまには外に出るわよ。人を引きこもりみたいに言わないでちょうだい。ところで・・・そちらの人は?」

 

魔理沙

「ああ、こいつはショウ、ショウ・ウィンガードって名前だ。ここ最近知り合ったんだが、ショウは記憶喪失なんだ。だから、知り合った縁で色々教えてるんだぜ。」

 

アリス

「へー・・・そう。なんかかわいそうね。自分自身が何者かわからないなんて・・・」

 

「・・・」

 

魔理沙

「じゃ、次はアリスの紹介な。ショウ、こいつはアリス、アリス・マーガトロイド。私と違って純粋の魔法使いだぜ。主に人形を使った魔法が得意なんだ。私の友達なんだが、ちょっとばかし引きこもり気味でな。あと、さっき話した異変についても何回か一緒に解決したことがあるぜ。」

 

アリス

「だから、引きこもりみたいに言わないでって言ったじゃない!」

 

魔理沙

「事実だろ?1日の殆どを家のなかで過ごすくせに。」

 

アリス

「それは人形作りが忙しいからで・・・あー、もう!まあいいわ。とりあえずよろしく、ショウ。」

 

「ああ、よろしくな、アリス・・・」

 

このショートカットの金髪の少女はアリスと言うらしい。

魔理沙の言う通り、隣にはアリスと同じ金髪の可愛らしい人形が浮かんでいる。

人形に関する魔法が得意なのは間違いないようだ。

 

彼女について一通り分かった。

しかし、こちらには真っ先に確認すべきことがある・・・

 

(恐らく、そろそろ彼女から行動を起こす頃だが・・・)

 

アリス

「ところで魔理沙?あなた確か、珍しいキノコ探してたわよね?実は、さっき森の奥の洞窟で見たことがないキノコを見かけたのよ。毒があるかもしれないから触ってはいないけど、確認してみたら?」

 

(やはり・・・か・・・)

 

魔理沙

「ほんとかアリス!?どっちだ!?」

 

アリス

「北の方よ。大きい花が目印だからすぐにわかると思うわよ?」

 

魔理沙

「マジかよ・・・調べたいがなー。今はショウを紅魔館に連れていかないと・・・」

 

アリス

「なら私が案内するわよ。それなら調べられるでしょ?私に任せて行ってきたら?」

 

魔理沙

「いいのか!?なら任せたぜ!悪いなショウ。まあ、目的地は目の前だし大丈夫だろ?じゃ、ショウのこと任せたぜアリス。」

 

「大丈夫だ。助かったよ。ありがとう魔理沙。」

 

アリス

「任されたわ。見つかるといいわね。行ってらっしゃい。」

 

魔理沙

「おう!またな、二人とも!」

 

そう言って魔理沙は箒に跨がり猛スピードで飛んでいった。

 

「じゃあ、すぐ近くだけど頼む、アリス。」

 

アリス

「ええ・・・任せて・・・」

 

ショウはアリスに背を向け歩き始めた。

アリスは少し後ろからショウの後を追う。

アリスはショウの背中を見据えながら、おもむろに人形を呼び出した。

呼び出された人形の手には、人形の大きさに不釣り合いな大きな槍が握られている。

 

アリス

(あの世への案内をね!)

 

アリスは人形に命令し、ショウの背中に向けて人形を飛ばす。

人形の槍が今にもショウの背中を捉えようとしていた。

 

「・・・そう言えば、忘れてたな・・・」

 

ショウが何かを喋ろうとしたと同時に、人形の槍が背中を貫いた。

誰が見ても明らかな致命の一撃だった。

但し、当たっていればの話だが・・・

 

「さて、アリス・・・」

 

当たったはずの槍はショウの背中を通り抜け、対象を失った人形は困惑したような動きを見せる。

それを見たアリスは動揺したが、直ぐに立て直した。

正しくは、立て直さなければいけない状況に追い込まれていた。

 

アリスの首元には、背後から伸びてきた、鋭い光を放つ刃が突きつけられていたのだから・・・

 

「・・・一体、何が目的だ・・・!」

 

to be continue

 




第2話パート2終了です。
邂逅キャラはアリスになります。
この出会いも後に影響を与えますが、上手くまとめる自信はないので、期待せずに見ていただけたら幸いです。

次回は戦闘パート、弾幕ごっこ初体験になる予定です。
では、お付き合い頂きありがとうございました。


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幻の旅路 第2話 メモリー・シーカー part3

始めに言っておく・・・
次回は戦闘パートになると言ったな。
あれは嘘だ!

ごめんなさい・・・思った以上に話が長くなり切りがいい所になってしまったので戦闘パートは次回になります。

弾幕ごっこ初体験はVSアリス戦

いきなりハードル高い戦闘ですが何とか表現できるように頑張ります。

では、第2話パート3お楽しみください。


アリスの後ろから剣をアリスの首元に突きつけ、アリスに声をかけるショウ。

その瞳には警戒と確信の念が込められている。

どうやら、アリスが自分を狙っているのが始めから分かっていたようだ。

 

アリス

「その顔・・・最初から気付いていたのね。私があなたを狙っている事を・・・」

 

「ああ・・・君が最初に俺に対して言った言葉にはなんの感情も感じられなかった。まるで興味がないみたいに・・・まあ、当然だな。始めから殺すつもりの相手の事なんて興味が湧くはずもない。少し前から俺に対して殺気がこもった視線が向けられていたのには気付いていた。そのタイミングで君が現れ、さっきの態度を取ったなら限りなく黒だ。疑いようがない。」

 

アリス

「残念。まさか気付かれてたなんてね。ドジ踏んじゃったわ。」

 

アリスは残念そうな顔を見せたが諦めた目はしていない。

 

「答えろ・・・何が目的だ?あんたと俺は初対面のはずだ。俺にはあんたに殺されなきゃならない理由は思い付かない。なぜ俺を狙う?」

 

アリス

「あら?あなた自分で言ったじゃない?あなたに対してはなんの興味もないの。話す必要はないわ。」

 

こちらの質問に答える気はないようだ。

なら、対応を変えるだけだ。

 

「そうか・・・それなら仕方ない。あんたは魔理沙の知り合いだったな?なら、魔理沙なら心当たりがあるかも知れないな。あんたを倒した後に魔理沙に聞いてみるか・・・」

 

アリス

「!?な、何を言うかと思えば、私を倒す?あなたに私は倒せない!なら、ここで死ぬあなたに答えを得ることはできないわ!」

 

(どうやら当たりらしいな・・・原因は魔理沙か・・・)

 

アリスは明らかに動揺している。

どうやら原因は魔理沙に関わることらしい。

こちらに対してかなりの敵意を向けている以上それなりの理由があるはずだが・・・

 

(しかし、困ったな・・・なんの関係もないならさっさと気絶させて終わりなんだが・・・魔理沙の知り合いなら話は変わる。根本を解決しないといつまでも狙われることになるな・・・下手を打てば魔理沙にも迷惑を掛けることになりかねない・・・)

 

「さて・・・どうするかな・・・」

 

ショウはこの後どうするかを思案していた。

対応を間違えると取り返しがつかなくなる。

最善策はあるのだろうか・・・

 

霊夢

『弾幕ごっこに勝利条件がつけられている場合、敗者にはその条件に従う義務がある。』

 

(!?そうか!これなら・・・しかし、上手くいくかどうかは俺次第か・・・)

 

ここでショウは霊夢の言葉を思いだし、今の状況に対する答えを導きだした。

 

アリス

「く!?いい加減離れなさい!」

 

「わかった。但し、こちらの条件をのんでくれたらな。」

 

アリス

「条件・・・?」

 

「この幻想郷ではお互いの意見を通す為に行う決闘方法があったな?なら、それで決めよう。『弾幕ごっこ』だ。但し、前提条件に命を奪わないを加えさせてもらうがな。そいつを納得してもらえるなら離れてやる。どうする?もし、納得できないなら仕方ない。このままあんたの首をはねる。こっちも死にたくはないからな。」

 

アリス

(!?絶対優位なこの状況を五分に戻してまで弾幕ごっこを要求?どういうつもり?でも、これならまだこいつを殺すチャンスがある!)

 

なんと、ショウは一度も経験していない弾幕ごっこでの決着を条件に指定した。

一応前提条件として命を奪わない事を約束させているが・・・

このショウの申し出に対しアリスは・・・

 

アリス

「わかったわ。条件を飲みましょう。あと、弾幕ごっこの残機、スペルカードの枚数もあなたが決めていいわよ。あなた外来人でしょ?弾幕ごっこは経験少ないだろうからね。一応追い詰められた立場だし、これぐらいならハンデをあげる。これでどうかしら?」

 

「お?いいのか?そういう細かい気配りができるんだなアリス。見直したよ。」

 

アリス

「ふん!一応決闘だからね。ある程度拮抗してないと私が楽しめないわ。一方的に蹂躙するのも悪くないだろうけど・・・あんたに情けを掛けたつもりはないわ。」

 

アリスは条件を飲んだ上、弾幕ごっこの残機、枚数の決定権をこちらに委ねた。

 

(おそらく彼女の本質は、こういった気配りが自然にできる優しい少女の筈だ・・・なのに何故・・・?)

 

アリスの本質を垣間見たショウは、何故アリスが今回の暴挙に出たのか分からなかった。

 

アリス

(これでいい・・・ある程度譲歩しないと怪しまれる上、拮抗していれば手違いも起こり得る。これなら、チャンスを生かしてあいつを殺せる!仮にできなくても勝利条件に『魔理沙に今後一切の干渉を禁止する』って言う条件をつければ・・・)

 

「じゃあ、残機、スペルカードの枚数だが・・・残機2、枚数3で頼む。」

 

アリス

「短期決戦ね。いいわ。それで行きましょう。あと、弾幕ごっこの勝利条件だけど・・・私が勝ったら、貴方には今後一切魔理沙には関わらない事を誓って貰うわ。」

 

「やっぱりか・・・その条件は想像に難しくないな。」

 

アリス

「この条件が適用された時は呪いを受けてもらうから。呪いを受けた状態で魔理沙に近づいたら、全身の骨を自らの手でへし折る呪いをね。」

 

「おいおい・・・随分きつい呪いだな・・・まあ、わかった。じゃあ、こっちの条件だが・・・」

 

アリス

「どうせ私が勝つし、決めても意味ないから好きにしなさい。なんだったら、私が負けたらあなたの奴隷にでもなってあげましょうか?」

 

「おーい!?冗談でもやめてくれ。そっち関係に興味がない訳じゃないが、そこまで飢えちゃいないっての!まったく・・・じゃあ、そうだな・・・」

 

アリスは案の定魔理沙に今後一切関わらない事が条件だった。

対して、ショウがアリスに提示した勝利条件は、アリスもまったく想像していない答えだった。

 

「俺が勝ったら・・・君には俺の仲間、友達になってもらおうかな。」

 

アリス

「は・・・?と、友達!?」

 

「ああ、友達な。俺はまだ記憶的にはこの世界での経験が殆ど無いからな。アリスみたいに気配りができる女性が仲間、友達になってくれたら非常に助かる。厳しい戦いになるが、勝利条件的にやる価値はある。」

 

ショウが指定した条件は、アリスに友達になってほしいとの内容だった。

まったく想像していない条件指定に、アリスは呆れと驚きが混じった何とも言えない顔を見せる。

 

アリス

「わ、訳のわからない事を・・・まあいいわ!どうせ勝つのは私!さあ、始めるわよ!」

 

「そうだな。始めよう。悪いが、勝たせてもらう!」

 

今、この世界において初めてとなる決闘・・・弾幕ごっこの幕があがる!

 

to be continue




第2話パート3終了です。

次回弾幕ごっこ初体験を書いたあと一回資料集を挟みます。
資料集作成も時間がかかるかもしれませんので、本編進行は遅れる可能性があります。
仕事の都合もあるので、申し訳ありませんがご了承ください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第2話 メモリー・シーカー part4

投稿遅れました、ごめんなさい。

弾幕ごっこは長くなるので前後編構成です。
オリ主のスペルカード初登場になりますが、性能はかなりの鬼畜仕様になっています。
あと、アリスについては殺す気満々なので、仕様はルナティックか、それ以上になっています。

では、本編をお楽しみください。


お互いの開始の合図で双方距離をとる。

遂に、ショウにとって初めての弾幕ごっこが始まった。

 

アリス

「まずは小手調べね。避けてみなさい!」

 

アリスが声を出すと同時に複数の人形がアリスの周りに展開され、人形それぞれから鮮やか色の弾が放たれる。

数が多くスピードも速い。

少なくとも、この前の妖怪達の弾幕とは比べ物にならないレベルの物だった。

 

「いきなり飛ばしてくるな。だが、そう簡単にやれると思うなよ!」

 

腰から剣を引き抜き自身の指先に傷を入れ、ドライブを起動させる。

 

「罪の聖櫃『クライムアーク』起動!」

 

ショウの叫びと共に体から大量の魔素が放出される。

その魔素を自身に纏わせ、身体能力を強化、同時に剣にも魔素を纏わせ、アリスに向かって剣を振り抜いた。

 

「行け!!」

 

振り抜いた剣先から無数の刃状の魔素が放たれる。

ショウが考えた弾幕。

それがこの刃状にした魔素を利用した弾幕だった。

魔素自体の毒性はドライブ能力で無効にしているので、人体に影響はなく暫くの間なら毒性も戻らない。

長時間放置するとどんな影響が起こるかわからないが、少なくとも2、3時間位ならドライブ影響下に置いておけるので問題はない。

弾幕ごっこ用なら十分な代物だ。

 

ショウが放った弾幕は、アリスの弾幕とぶつかり相殺していく。

アリスは、ショウの身体の変化に驚きはしたものの、いまだに余裕の表情を崩さない。

 

アリス

「へえ、只の人間じゃないとは思っていたけど、面白い能力ね。僅かだけど毒の臭いがするってことは・・・障気かしら?さしずめ『障気を操る程度の能力』ってところかしらね。」

 

「まあ、似たようなものと思ってもらえればいい。あと、毒性は消してあるから心配はないぞ。こちらが出した条件を自分で破るつもりはないから安心してくれ。」

 

アリス

「あら?案外紳士なのね。乙女の首元に剣を突きつける血も涙もない外道だと思ってたわ。」

 

「さっき俺が言ったことの意趣返しかよ・・・仕方ないだろ?命狙われてて黙ったままやられるなんてできるわけない。正当防衛だっての。」

 

アリスが言った障気というのは毒性がある霧のことだと魔理沙から聞いた。

まあ、似たようなものなのであえて訂正しなかった。

 

アリスが放った弾幕を相殺しながら、撃ち漏らした弾幕についてはかわしたり、切り払っていた。

すると、アリスから声が上がる。

 

アリス

「埒があかないわね。なら、そろそろ本番と行こうじゃない。行くわよ。貴方にかわせるかしら?」

 

「!?来るか!?」

 

アリスは懐からカードを取り出した。

そのカードを掲げ、カードの名前を叫ぶ。

それと同時にカードから光が放たれた。

 

アリス

「蒼符『博愛のオルレアン人形』!!」

 

アリスの叫びに呼応するようにカードが強く輝き、それと同時にアリスの周りの人形達から先程とは比べ物にならない程大量の弾幕が、まるで絵画を見ているような美しい軌跡を描いてこちらに飛来してきた。

弾幕は、一定の時間で色を変化させながら、次第に眼前を埋め尽くすほどの数になっていく。

ショウはその弾幕の美しさに一瞬意識を奪われたが、直ぐに意識を戻し、弾幕の隙間を探す。

この時ショウは魔理沙の言葉を思いだしていた。

 

魔理沙

『スペルカードを回避不可能な高難易度仕様にするのは暗黙の了解で禁止だぜ。』

 

(つまり、いかに回避が難しくても絶対に回避不可能な弾幕じゃない。必ず突破口がある筈だ!)

 

ショウは眼前の弾幕を凝視し、突破口を探す。

すると・・・

 

「見つけた!この位置なら行ける!」

 

徐々に広がっていく弾幕の間に僅かだが隙間が幾つかある。

ならば、隙間を少し広くしてやれば抜けられると当たりをつけた。

ショウは見つけた隙間に向かって走りつつ、魔素を左手に集める。

そして、向かった隙間に近づいたところで上に跳躍し、上空から先程の隙間に向かって左手を振り抜いた。

 

「行け!『シャドウファング』!!」

 

刃状にした魔素を飛ばし隙間付近の弾幕を纏めて吹き飛ばす。

吹き飛ばしたあと、飛ばした魔素は地面に突き刺さり消滅した。

『シャドウファング』自体の殺傷能力は極めて高いが、弾幕を吹き飛ばすのみにとどめているので厳密には反則じゃない。

吹き飛ばした分隙間が大きくなり容易に回避が可能になったので開いた隙間に飛び込み、撃ち漏らした邪魔な弾幕を切り払いスペルカードの弾幕をやり過ごした。

 

アリス

「な!?あんな力業で私のスペルカードをやり過ごした!?く、馬鹿力ね!」

 

さすがに正面からパワーで押しきり弾幕を減らすやり方をとるとは想像していなかったようで、悔しさが顔に出ているアリス。

 

「危ないところだった・・・余りにも弾幕が綺麗だったから一瞬目を奪われたぞ。反応が遅れたらやばかったな。さて、そろそろこちらも使わせてもらおうか!」

 

アリス

「そう?なら見せてもらいましょうか?あなたのスペルカードがどれほどのものかを。」

 

ショウはポケットからスペルカードを1枚取り出し、自分が思い描く弾幕を強くイメージする。

そして、それが形になり白紙のスペルカードに絵柄が浮かび、発動の準備が整った。

 

「喰いちぎれ!」

 

それを確認し、気迫を込めてカード名を宣言した。

 

「闇牙『キリングラッシュファング』!!」

 

光がカードから放たれたと同時にカードからどす黒い霧が吹き出し、その霧が無数の刃状になりアリスに向かって猛スピードで向かって行く。

 

アリス

「速い!?く!?」

 

かなりのスピードに反応が遅れたアリスだったが、間一髪で弾幕をかわした。

しかし・・・

 

「それで逃げられると思うな・・・」

 

かわしたアリスの後方に飛んでいった弾幕は、形を崩して霧に戻り、再びアリスの方へ向かって行く弾幕へと変化する。

このスペルカードの特性は、ターゲットに対して飛来し、かわされたり撃ち落とされた場合に最初の霧の状態に戻り、再びターゲットに向かう弾幕に変化する特性を持っていた。

 

アリス

「な!?ホーミングタイプ!?しかも、再度狙い直すタイムラグがないなんて・・・く!?反則スレスレの難易度じゃない!?」

 

アリスはショウのスペルカードの特性に四苦八苦していた。

しかし、元々頭が良いのか直ぐに対応し始める。

そして・・・

 

アリス

「ここよ!相打ちしなさい!」

 

タイミングを合わせ回避し、ショウのスペルカードの弾幕同士でぶつかる位置に調節して見せた。

だが、それがこのスペルへの最適解かは別問題だった。

 

「見事と言う他ないが・・・その回避方法は、最悪の悪手なんだよ・・・」

 

ショウの言葉が耳に届くのとほぼ同時にぶつかり合った弾幕に変化が現れた。

ぶつかり合った弾幕同士が共鳴し始める。

やがて、ぶつかり合った弾幕はひとつの巨大な弾幕になり、先程のスピードとは桁違いな速度でアリスへと飛来した。

 

アリス

「そんな!?」

 

あまりのスピードにさすがのアリスも反応しきれず、弾幕はアリスの右腕に直撃した。

 

アリス

「きゃあ!?こ、こいつ!?只の素人じゃない!?」

 

これでアリスの残機は残り1、枚数は共に2枚となった。

先に被弾したことが悔しいのか、アリスの声には怒りが込められている。

 

アリス

(く、こいつ・・・想像よりかなり強い。先に被弾するなんて想定外よ!ただ・・・これだけ強いなら、手違いがあっても違和感はない。さあ・・・そろそろ死んでもらうわよ!)

 

「なんとか第一段階は突破か・・・あとは、詰めさえ誤らなければ、なんとかなる・・・か。」

 

アリス

「貴方がここまで出来るなんてね・・・だけど、勝つのは私よ!さあ、終わりにしてあげる!」

 

アリスの顔に一層の殺意にも似た闘志が宿る。

先に弾幕を当て有利になったショウだが油断している様子はない。

 

お互いの思惑が交差し、弾幕ごっこは佳境を迎える・・・

 

to be continue




パート4終了です。

ご覧の通りオリ主のスペルカードはかなりの鬼畜仕様です。
詳しい内容は資料集で説明しますが、要するに反則スレスレのスペルカードです(笑)
他のオリ主のスペルカードも似たようなものが多数あります。
ただ、余りにもチート臭いスペルカード案が多くなったため、後に東方キャラに叱られるはめになる予定です。

次回で弾幕ごっこは終了し、資料集の後目的地の紅魔館に到着する予定です。
ちなみに、すでにフラグが立ってる臭い主人公ですが、各話で少なくとも1、2人に立てやがるたらしになります。(多い時は登場キャラの6、7割に立てるときも・・・)
しかも、本人は朴念人仕様の為、いずれ血の雨が降ります。
最初に言っておきますが、血の雨を降らせるのは東方キャラではありませんよ?

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第2話 メモリー・シーカー part5(終)

携帯がお亡くなりになりました・・・

大遅延更新でほんとすみません。
携帯が壊れてしまい、更新が超絶遅れました。

今回で第2話終了です。
弾幕ごっこの後半戦、対アリス戦ですが今回で決着です。

改めて思いますが、やっぱり弾幕ごっこの戦闘描写は難しいですね。
終わりまでに上手くなりたいところです。

では、第2話最終パートお楽しみください。


アリス

「出なさい!シャンハイ!ホウライ!」

 

アリスの周りに現れた2体の人形。

それは、先程アリスが使役していた人形とは明らかに違った。

細部まで作り込まれており、時間をかけて作られたことがわかる。

おそらく、この2体の人形がアリスの切り札であると直感した。

 

ショウ

「ずいぶんと丁寧に作られた人形だな。かなり細部までこだわってる。」

 

アリス

「この子達は特別製よ。さっきまでの人形とは似て非なる私の大切な子達なの。」

 

ショウ

「凄いな・・・それほどの完成度の人形とは。」

 

ショウは素直に称賛した。

先程までの人形もかなり精密な動きだったが、この2体の人形は格が違う。

まるで生きているような動きでアリスの周りを飛んでいる。

さらに・・・

 

「シャンハーイ」

「ホウラーイ」

 

まるで意思表示をするかのように喋っている・・・

 

先程までとは明らかに闘志の質が違う事が伺えるアリスに対し、警戒心をさらに高める。

 

アリス

「さあ、覚悟はいい?行くわよ!」

 

再びアリスは人形を展開し、弾幕を放つ。

しかし、先程とは違いアリスが先に出した『シャンハイ』『ホウライ』の2体の人形がアリスから離れ、別角度から弾幕を放ってきた。

 

ショウ

「な!?」

 

予想外の多角弾幕攻撃に反応が遅れ、場所を変えられずその場に釘付けにされてしまった。

 

アリス

「もらったわよ。踊り狂え。」

 

アリスは、この機を逃すまいと懐からスペルカードを取り出し、宣言した。

 

アリス

「戦操『ドールズウォー』!」

 

宣言と同時に複数の人形が現れ、ショウに向かって剣や槍を持って突撃してきた。

 

ショウ

「人形による直接攻撃か!」

 

人形を使った直接攻撃に加え、アリスと先程の『シャンハイ』『ホウライ』の2体による弾幕攻撃も雨のように降り注いでくる。

明らかに本気の攻撃だった。

人形の攻撃に加え、弾幕による多重攻撃。

手数が多過ぎて対応仕切れていないが、いくらなんでも弾幕の密度が高過ぎる。

これ程の数だといずれ、自身の人形も巻き込みかねないはずなのだが・・・

 

アリス

(これで・・・終わりよ・・・)

 

アリスの口元が怪しく歪み、妖艶な笑みが浮かぶ。

次の瞬間、アリス達が放った弾幕の一つがアリスの人形に直撃。

そして・・・

 

ショウ

「!?」

 

人形から一瞬火花が散った。

 

アリス

「消えなさい・・・」

 

弾幕が当たった人形が爆発し、それに連鎖するように他の人形も爆発。

かなりの規模の衝撃がショウの周りで発生した。

中心にいたショウは爆発をまともに受けてしまう結果となる。

 

アリス

「フフフ・・・アハハハハハ!」

 

アリスはショウが死んだと確信し高笑いする。

無理もない。

爆発の規模から考えても、中心にいたショウがただで済む筈もなかった。

 

アリス

「ごめんなさいね。でも、あなたが悪いのよ?魔理沙に近付かなければ死ぬこともなかったんだから。」

 

アリスの口からは罪悪感を感じさせる言葉が出ているものの、その顔は狂気の笑みで歪んでいた。

 

アリスが行った方法は、スペルカードの人形に爆弾を仕込む事だった。

人形に突撃させるスペルと弾幕でその場に釘付けにした後人形を起爆させる。

アリスはここまでを計算して実践して見せたのだ。

 

アリス

「フフフ・・・さてと。魔理沙のところに行かないとね。引き離すためとはいえ、嘘ついちゃったし。」

 

爆発の後の噴煙に背を向け魔理沙が飛んでいった方向へ向かおうとするアリス。

その時だった・・・

 

???

「何処に・・・行く気だ?まだ戦いは・・・終わってねえぞ!」

 

アリス

「!?」

 

怒号と共に噴煙の中から刃状の弾幕がアリスに飛来してきた。

 

アリス

「く!?ど、どうゆうことよ!?あれほどの爆発の衝撃を受けてるはずなのに!?」

 

飛来してきた弾幕を回避しつつ、アリスは未だに舞い上がる噴煙を見つめ、噴煙の中から見える影に向かって憎しみの感情を込めて叫んだ。

 

アリス

「何で・・・貴方は生きているのよ!?ショウ・・・ウィンガード!!」

 

ショウ

「・・・お前のおかげだよ・・・アリス。」

 

噴煙が晴れて映ったのは、体中に傷を負い全身から血を流しているショウだった。

アリスの問いに対し、自分が助かったのは他ならぬアリスのおかげだとショウは語る。

 

アリス

「わ、私のおかげ・・・?」

 

ショウ

「ああ・・・攻撃の仕方、そして殺気が教えてくれた。さっきの弾幕だが、いくらなんでも密度が高過ぎる。自身の人形に当たる可能性を全く考えてない。最後に君の表情、そして、闘志が殺気に変われば大方の予想はつく・・・」

 

アリス

「く・・・」

 

ショウ

「後は消去法だ。殺気に変わったのなら、目的は最初と同じく俺を殺すこと。表情が笑みに変わったのなら、殺す手段を既に実行済みと断定できる。ならば、その手段は人形か弾幕のどちらかだが、相手に覚られずに仕掛けが出来るのは・・人形しかない。」

 

ショウはアリスの仕掛けた手段をギリギリのタイミングで読んでいた。

しかし、手段が爆発であるとは読みきれず、咄嗟に魔素を硬質化させ身に纏い、防御を固めることで重傷ではあるものの致命傷だけは避けることが出来ていたのだ。

 

ショウ

(かろうじて致命傷は避けたが・・・不味いな・・・血を流しすぎている。もう猶予はないか・・・)

 

傷から流れる血を見ながらショウは思案していた。

ドライブによる魔素コントロールは自身の血を媒介にして行うため、今の状態では維持出来ても4、5分程度、それまでに決着を着けなければならない。

 

アリス

「貴方はもう瀕死の筈、ならもう一度当てれば助からない。これで・・・終わりよ!」

 

アリスはスペルカードを取り出し、ショウに止めを刺そうとする。

対するショウは、足元がおぼつかないものの剣を構えてアリスと対峙している。

 

アリス

「足軽『スーサイドスクワッド』!!」

 

アリスの宣言と同時にアリスの周りに無骨な人形が大量に展開される。

その人形は枯草のような材質で作られており、先程とは違い、丁寧に作られた人形ではなく使い捨てのような印象を受けた。

アリスが手を此方にかざすと、全ての人形が此方に向かって飛来してきた。

 

ショウ

(先程のアリスの言葉、目的から考えたら、まず間違いなく爆弾だな・・・当たるわけには!)

 

ショウはアリスの言葉、目的からこの人形は十中八九爆弾であると予想し、回避行動を取る。

案の定、人形が地面にぶつかると爆発を起こした。

次々と飛来する爆弾をかわしていたショウ。

この時、ふと足に当たる何かに気付く。

それは、先程アリスが爆発させた、丁寧に作られた人形の残骸だった。

人形達は粉々で、先程の綺麗な見た目とは違い見る影もない。

それを目にしたショウの頭の中に、不鮮明な映像が浮かぶ。

 

ショウ

(これは・・・?)

 

映像には、顔は不鮮明でわからないが、いくつもの同じ姿の人が、見るも無惨な姿で横たわっていた。

ショウはこの映像を見たとき、言い様のない怒りを覚えた。

そして、その映像と被る人形達の残骸を見つめ、ショウは決意する。

 

ショウ

(負けられない・・・)

 

《これ以上彼女たちを傷つけさせない!》

 

ショウ

(絶対に・・・負けるわけには行かない!!)

 

《彼女たちのような犠牲を、これ以上出させるわけには行かない!》

 

ショウは持っている剣を力強く握りしめる。

ショウの頭の中には、誰のものかわからない叫びが木霊する・・・

 

《これ以上・・・あんな悲劇を繰り返させる訳には行かないんだ!!》

 

ショウ

「これ以上・・・あんな悲劇を繰り返させる訳には行かないんだ!!」

 

頭の中の叫びと同じ言葉が、ショウの口から無意識に叫ばれる。

その時、ショウの体からかつてないほど大量の魔素が放たれた。

それらは次第に形を変え、まるで獣の頭のような異形の物へと姿を変える。

その異形な姿の魔素が、飛来してきたアリスの弾幕を余すことなく喰らい尽くした。

 

アリス

「な!?何なのよそれは!?」

 

アリスは動揺しながらも追加で人形を飛ばしてきたが、それらも全て異形の魔素に喰い尽くされる。

そして、異形の魔素はアリスに向かってその牙を剥いた。

 

ショウ

「ぐ!?抑えきれない!?何て力だ・・・駄目だ!このままじゃ!」

 

ショウ自身、全身が焼けるような痛みを感じていた。

感情の爆発からドライブに強化が加わり、術式強化『オーバードライブ』状態に陥ってしまったのだ。

眼前に迫る異形の頭に対し、アリスに打つ手はなく、その瞳に映るのは、自分が先程までショウに向けていた、絶対なる殺意だった。

それらを目の当たりにしたアリスは、自身の死を覚悟したが、その瞳は、死に対する恐怖に染まっていた。

 

アリス

(死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない!)

 

眼前に迫る死そのものに恐怖し、その目を閉じるアリス。

しかし、何時までたってもアリスにその牙は届かなかった。

 

アリス

「・・・?あ、あれ?」

 

アリスが目を開けると、異形の頭はアリスの眼前でその牙を止めていた。

だが、未だに牙を此方に向けて食らいつこうとしている。

それを止めていたのは、自分の前で背中を向け、異形の頭に手をかざしているショウだった。

 

ショウ

「ぐ、駄目だ・・・彼女を喰らわせるわけには・・・くそ!血を流し過ぎた・・・コントロールが効かない・・・!」

 

苦しい顔をしながら、アリスに食らいつこうとしている魔素を止めているショウを見て、アリスは疑問をぶつけた。

 

アリス

「な、何してるのよ!?そんな苦しそうな顔をしながら、何で・・・貴方を殺そうとした私を守ろうとしてるのよ!?」

 

ショウ

「最初に言ったろ・・・命を奪うのはなしだって・・・俺が出した条件を自分から破る真似はしない・・・あくまでもこの戦いは、決闘だからな・・・」

 

アリス

「!?」

 

アリスは、ショウの答えに言葉を失った。

アリスもかつて弾幕ごっこで霊夢や魔理沙と共に異変解決に尽力したことがあり、弾幕ごっこにはそれなりの自信があった。

弾幕ごっこには少なからずプライドがあったが、今回アリスは自分の都合のため、弾幕ごっこのルールを破った事になる。

それなのに、弾幕ごっこの素人であるショウが、ここまで弾幕ごっこに準ずるやり方を貫いていることに、アリスはある気持ちを抱いた。

 

アリス

「・・・フフッ。ほんと・・・貴方ってバカなのね・・・」

 

アリスの口から小さく呟かれた言葉は、ショウの耳には届かなかった。

 

ショウ

「くそ・・・もう持たない!アリス!逃げろ!俺ならこいつには喰われない・・・狙いは君だ。感知外に離れれば何とかなる!」

 

ショウはアリスを逃がそうとする。

その時、ショウの背中に何がが触れた。

 

アリス

「ショウ。・・・応急処置だけど、魔法で傷を治すわ。さっきの言葉通りなら、傷が治ればなんとかなるのよね?」

 

ショウ

「アリス!?逃げろっていっただろ!」

 

アリス

「良いから答える!」

 

ショウ

「え!?あ、ああ・・・能力制御には血を使う。傷さえ治れば多少はマシになる。」

 

アリス

「なら良し!そのまま押さえてて!直ぐに治療するから!」

 

ショウの背中にはアリスの手が添えられており、すぐに体から傷の痛みが消え始める。

アリスの治癒魔法により、瞬く間に傷が塞がっていった。

 

ショウ

「凄いな・・・」

 

アリス

「これが限界よ・・・いける!?」

 

ショウ

「ああ!充分だ!」

 

全身の傷はもう7割方塞がっている。

これなら充分に制御可能だ。

 

ショウ

「仕事は終わりだ!砕けろ!」

 

ショウの叫びと共に異形の頭が砕け散り、魔素の霧に戻る。

ショウは直ぐ様ドライブを使い、魔素を体内に戻した。

 

ショウ

「はあ、はあ・・・な、何とかなったか・・・」

 

アリス

「してくれなきゃ困るわよ・・・全く。自分の能力すらまともに制御できないの?」

 

アリスとショウはお互いに顔を見合わせ、その場に座り込んだ。

 

ショウ

「悪いな・・・こう言う能力なんだよ。・・・さて、続きやるか。」

 

ショウはアリスに先程の弾幕ごっこの続きをするかと聞いた。

しかし、アリスから返ってきた答えは意外な物だった。

 

アリス

「必要ないわ。私の・・・負けよ。」

 

決着の時は、唐突に訪れた。

 

ショウ

「え?」

 

アリス

「私は貴方との約束を破ったわ。更に、弾幕ごっこのルールも破った事になる。反則負けよ。」

 

ショウ

「だが、良いのか?アリスの目的は、俺と魔理沙を関わらないようにすることだろ?」

 

アリス

「厳密には違うわ。私の目的は魔理沙に悪い虫が近付かないようにすることよ。だけど・・・貴方なら問題なさそうだからもういいわ。疲れたし。あと、ショウの条件は確か、私に友達になってほしいだっけ?敗者は従う決まりだし、承ったわ。これからよろしく。困ったことがあったら頼りなさい?」

 

ショウ

「アリス・・・ああ!よろしく頼む。ありがとうアリス。」

 

アリスは弾幕ごっこの条件を承諾した。

ショウはアリスの答えに対して礼を述べる。

 

アリス

「どういたしまして。あと・・・」

 

アリスはショウの謝辞に答えたが、そのあとに一呼吸置いてこう続けて言った。

 

アリス

「さっきは助けてくれて・・・ありがとう。」

 

アリスの顔には、先程までとは違う、穏やかな笑顔が浮かんでいた。

ショウは、アリスのこの笑顔が見れただけでも、弾幕ごっこをやった価値はあったと素直に思った・・・

 

to be continue

 

 

 

 




第2話最終パート終了です。

長い・・・書きたいことぶちこんだら平均をかなりオーバーしてしまいました。
という訳で弾幕ごっこ終了です。
はい、アリスが墜ちました(フラグ的な意味で)
ショウの暴走の切っ掛けになった映像は、わかるとは思いますが、次元境界接触用素体群の残骸です。
今回のように、過去に類似する体験や人物との邂逅により、ショウの能力は覚醒していく仕様になっています。

次回は資料集です。
第2話で新たに加わった情報を纏めて載せます。
前にも言いましたが、資料集は新情報が加わった時、各話終了時に更新しますので、わからない場合は確認してください。

資料集の後は、いよいよ最初の目的地である紅魔館を訪れますが、紅魔館編の後は最初の異変パートになります。
なお、異変についてはブレイブルー関連の事項をねじ込んだ異変になる予定ですので、ここでこの作品のブレイブルー要素を回収してください。

では、次回更新までしばらくお待ち下さい。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part1

第3話パート1です。
導入部になりますのでまだ館内には入りません。
今回の攻略は、オリ主に加え魔理沙、アリスが同行します。

第3話は紅魔館攻略ですが、異変の舞台になる場所でもあるので紅魔館内は厳戒体制になっており、全く友好的ではありません。
むしろ、敵意剥き出しです。

攻略の後異変パートですが、正確には攻略途中から異変パートになりますのでご了承ください。

では、第3話パート1お楽しみください。


アリス

「いい?動かないで・・・」

 

ショウ

「ア、アリス・・・」

 

アリスはショウに静かな口調で語りかけつつ、ショウの体に手を伸ばす。

ショウは、上着を脱ぎ、上半身は裸だった。

 

アリス

「じゃあ・・・やるわよ?」

 

ショウ

「・・・いや、やっぱり・・・」

 

アリス

「もう・・・あとには引けないの。諦めなさい。こうしなきゃ私の気が済まないのよ。じゃあ、いくわよ・・・」

 

アリスの手がショウの体に触れる。

そして・・・

 

アリス

「ふん!」

 

ゴキッ

 

鈍い音がした・・・

 

ショウ

「あだだだだだだ!?」

 

ショウが悲鳴をあげる。

アリスにより身動きが出来ない状態になっており、アリスからの若干(?)荒っぽい治療を受けていた。

 

今いる場所はアリスの家。

アリスは、ショウを傷つけたお詫びがしたいと言い、治療のためショウを自分の家に招待していた。

 

一通りショウの治療(?)を終えたアリスは、ショウに対して話しかける。

 

アリス

「はい、終わりよ。体の調子はどう?」

 

ショウ

「途中ものすごく痛かったんだが・・・不思議だ。なにも問題ない。むしろ、調子が良いくらいだ。」

 

アリス

「なら良かったわ。今から昼食作るからちょっとここで休んでいて。一応シャンハイを待機させとくから、何かあったらシャンハイに言って。言ってくれれば私を呼びに行ってくれるから。」

 

ショウ

「すまないな。治療の上に食事まで世話になってしまって。」

 

アリス

「傷の大半は私のせいよ。治療するのは当然。食事についてはお詫びの代わりよ。それじゃあ、待っててちょうだい。」

 

そう言ってアリスは部屋を出ていった。

ふと、周りを見回してみると、部屋の至るところに人形が置かれており、部屋の見た目は非常におしゃれだ。

改めて、女性の部屋に招かれた事を実感している。

その時だった。

 

???

「おーい!アリスいるかー!?」

 

ショウ

「ん?どうやら来客らしいな。シャンハイ、ご主人様を呼んで来てやってくれ。」

 

「シャンハーイ」

 

シャンハイから承諾ととれる返事が返ってくる。

意思が伝わることに改めて、かなりの完成度の人形だと感服している。

シャンハイが部屋から出ていった後暫くして、何やら騒がしい声が耳に届いた。

どうやら言い争いらしい。

流石に心配になり部屋の外に出ると、そこにいたのは・・・

 

魔理沙

「めっちゃ探したのに結局見付からなかったぜ!?ホントにちゃんと見たのかよアリス!」

 

あからさまに腹を立てている魔理沙だった。

アリスがついた嘘を真に受けて、ずっとキノコを探していたようだ。

そして、魔理沙の前で困ったような顔をしているアリス。

仕方ない、と呟きながら魔理沙とアリスの元へ歩いていった。

密かにドライブを起動し、魔素をある形にしながら・・・

 

ショウ

「すまないな魔理沙。多分アリスが見たのはこいつだよ。」

 

そう言って魔理沙に、先程の形を変化させた魔素を見せる。

それはキノコの形になっており、見た目はかなりどす黒く、触りたくない外見だった。

 

魔理沙

「あれ?ショウ?何でアリスの家にいるんだぜ?ていうか今、ショウが持ってるのがアリスが見たキノコって言ったのか?」

 

ショウ

「ああ、多分な。かなり強い毒性がありそうだったから、危険だと思って回収したんだが、実際ヤバい代物だ。俺は毒性に対して高い耐性があるから持っていられるけど、他の奴だったら瞬く間に毒にやられかねない。」

 

魔理沙

「マジかよ・・・初めて見るキノコだから持って帰りたいんだがなー。触れないんじゃお手上げだぜ・・・。そっか。ショウが先に回収してたんじゃ見付からないわけだぜ。悪かったなアリス。怒鳴っちまって。」

 

ショウの話を聞き、怒りは収まったようで、アリスに対して謝罪する魔理沙。

対して、予想していない所からのフォローに反応仕切れず困惑しているアリスは、テンパりながらも魔理沙に言葉を返した。

 

アリス

「え!?あ、いや・・・い、良いわよ、別に。仕方なかったんだし。魔理沙が疲れたのは間違いないんだから。あと、タイミング良いわね魔理沙。丁度お昼にしようと思ってたの。良かったら食べてく?」

 

魔理沙

「お!良いね!お腹すいてたんだよ。そういう事なら有り難くご馳走になるぜ!」

 

アリス

「それじゃあ、先にリビングで待っててちょうだい。後から料理持っていくわ。」

 

魔理沙は嬉しそうに頷き、リビングへと歩いていった。

ショウも後を追おうとしたが、後ろからアリスに袖を引かれその場に止まる。

 

ショウ

「アリス?どうした?」

 

アリス

「ごめんなさい。助かったわ。でも良かったの?わざわざ嘘までついて。」

 

ショウ

「何だ、そんな事か。別に構わないよ。アリスと魔理沙は友達だろ?ちょっとした事で関係に傷が入る可能性もあるからな。俺の一言で場が収まるならその方が良い。」

 

アリス

「ショウ・・・ふふ・・・貴方ってバカな上にお節介なのね。」

 

ショウ

「ほっとけ。性分だよ。」

 

先の魔理沙とのやり取りについてアリスと笑いながら談笑していた。

 

魔理沙

「おーい。まだかー?待ちくたびれたぜー?」

 

魔理沙からの呼び掛けに気付き、会話を中断、二人で顔を見合わせる。

 

アリス

「魔理沙ったら、一応女の子なのに。まあいいわ。行きましょうか?」

 

ショウ

「ああ、そうだな。」

 

この後、魔理沙も合わせて三人で昼食を食べた。

思えば、ショウにとっては初めての団欒の時であった。

 

三人

「ごちそうさまでした。」

 

食事を終えた三人は、出掛ける準備をして外に出る。

当初の予定通り、紅魔館に向かう為だ。

 

ショウ

「そろそろ出発しようか。アリス、魔理沙、すまないが案内を頼む。」

 

アリス

「分かったわ。魔理沙、行きましょう。」

 

魔理沙

「おう!それじゃあ、はぐれないようにしっかり着いてこいよ?」

 

そう言ってアリス、魔理沙は飛翔、ショウはドライブを起動し身体能力を強化、走ってアリスたちに着いていく。

アリスとの件で時間がたってしまい、当初の予定より少し遅れている為だ。

 

最初は歩いて向かっていたが、今回はスピード重視、その上アリスの家から紅魔館まではそれほど離れていないので、出発してすぐに視界の中に赤色の館が映る。

あれが目的地のようだ。

 

ショウ

「あれが、紅魔館か・・・」

 

ショウ達三人が館に近付いた丁度その時、上空の二人に向かって弾幕が飛来した。

 

二人

「!?」

 

ショウ

「!?させるか!行け!」

 

予想していない攻撃に二人の反応は遅れたが、身体能力を強化しているショウはいち早く反応しており、二人に飛来した弾幕に対して迎撃の弾幕を放つ。

二つの弾幕は互いに相殺し、周囲に噴煙が舞う。

アリスと魔理沙はその間に、下にいるショウの元へ降り、三人は合流しつつ弾幕が飛来してきた赤色の館へ向かって進むと、そこには・・・

 

???

「あら?魔理沙にアリスじゃない。ごめんなさいね。わからなかったわ。でも残念だけど、今は誰も紅魔館内に入れるなとお嬢様から命令されてるの。お引き取り頂ける?」

 

???

「聞けないと言うならすみませんが実力行使させていただきます。弾幕ごっこじゃなく、本気の実力行使ですので、すみませんがお引き取りください。」

 

二人の女性が門の前に立ち、こちらに敵意を向けていた・・・

 

to be continue




第3話パート1終了です。
次回は最後に登場した、「完全で瀟洒な従者」の誰かと「中国と呼ばれる門番」の誰かとの戦闘パートです。(殆ど名前言ってるのと同じじゃねーか!?)

戦闘は本編でも言われましたが、ガチバトルになります。
魔理沙、アリスが不利になりますが都合上仕方ないので悪しからず。

あと、この二人との出会いもショウの能力覚醒の条件に当てはまります。(初回覚醒の条件ではありませんが)

では、次回更新までしばらくお待ち下さい。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part2

更新完了です。
戦闘パートを少し入れるつもりでしたが、戦闘導入部で区切ることにしました。
次回のパートで戦闘自体は終わらせるつもりですのでご了承ください。

では、本編をお楽しみください。


魔理沙

「咲夜に中国じゃないか!?何なんだよいきなり!?今日は別に本とか借りに来た訳じゃないぜ?」

 

中国(?)

「中国言わないでください!私には、紅美鈴って名前があるって何回も言ったじゃないですか!と言うか、いつもは名前で読んでくれてたのに!」

 

魔理沙

「はは。すまんすまん。様式美だから言わなきゃならんと思ってな。」

 

咲夜

「美鈴。魔理沙と漫才やってる場合じゃないわよ。初めて見る殿方が貴方達についていけずに固まってるから。」

 

美鈴

「あ!す、すみません咲夜さん!」

 

ちょっとした芸を見ている気分だったが、一緒にいた給仕服を着た女性が二人のやり取りを止め、一先ず場が落ち着いた。

 

咲夜

「家の者がお見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません。私は十六夜咲夜。この館、紅魔館のメイド長を務めています。以後お見知りおきを。ほら、美鈴。貴方も自己紹介しなさい。」

 

美鈴

「そうですね。礼を失しました。申し訳ありません。私はこの紅魔館の門番をしています紅美鈴と言います。どうぞよろしくお願いします。」

 

ショウ

「これはどうもご丁寧に。私はショウ・ウィンガードと言う者です。こちらこそよろしくお願いします。恐らくは外来人だと思いますが、記憶を無くしていますので、詳しくは私にもわかりません。」

 

二人の女性から至極丁寧な自己紹介を受け、此方も調子を合わせて自己紹介をした。

すると、魔理沙、アリスから合わせるように言葉が出る。

 

魔理沙

「と言う訳なんだ。こいつの記憶の手掛かりになるかと思ってレミリアに会いに来たんだよ。いつもみたいに本とか借りに来た訳じゃないんだぜ。会わせてくれよ?」

 

アリス

「私からもお願いするわ。ショウの記憶を戻す切欠になるかもしれないし。どうかお願い。」

 

咲夜・美鈴

「・・・申し訳ありませんが、それはできません。」

 

三人

「!?」

 

紅魔館の主レミリア・スカーレットに会わせて欲しいと言う願いは、二人には聞き入れてもらえなかった。

 

咲夜

「先程にも伝えましたが、今は誰も紅魔館に入れるなとお嬢様から命令されています。申し訳ありませんがお引き取りください。」

 

美鈴

「私達にも理由はわかりませんが、ふざけて言っている訳ではないようです。ならば、私達はお嬢様の命令に従うまでです。ショウさんの現状には同情しますが、こればかりはどうにもなりません。」

 

ショウ

「そういう事なら仕方ないな・・・日を改めるよ。無理を言ってしまいすみませんでした。咲夜さん、美鈴さん。」

 

事情があるなら仕方ないと諦めるショウだったが、彼女達の言葉に魔理沙、アリスが噛みついた。

 

魔理沙

「入れないってどういう事だよ!?理由が分からなきゃ納得できないぜ!」

 

アリス

「こうも一方的に言われると流石にカチンと来るわね。せめて、立ち去らせる理由ぐらい教えてくれても良いんじゃないかしら?」

 

あからさまに敵意を露にする二人に対し、紅魔館側の二人も威圧感を高めて言葉を発した。

 

咲夜

「悪いけど、こればかりはどうにもならないわ。言っておくけど、無理矢理入ろうとするならこっちにも考えがあるわよ?あと、理由はわからないから悪しからず。」

 

美鈴

「お願いですからやめてください。私も見知った方々やショウさんみたいないい人に暴力は振るいたくありません。」

 

二人が放った言葉に遂に魔理沙が切れてしまう。

 

魔理沙

「あくまで話さない気かよ!なら、直接確かめて・・・」

 

魔理沙が二人に対し攻撃しようと懐から八卦炉を取り出そうとした瞬間だった・・・

 

咲夜

「まあ、魔理沙ならそう言うわよね。悪いけど痛い目を見てもらうわよ。」

 

すでに魔理沙の眼前に無数のナイフが迫っていた・・・

 

魔理沙

「な!?やば!?」

 

予想していない攻撃に全く反応出来ず、硬直してしまっていた魔理沙は思わず目を閉じる。だが、そのナイフは魔理沙には届かなかった。

何かに打ち払われ、魔理沙に向かっていたナイフは全て地面に落ちる。

 

咲夜

「え?」

 

美鈴

「な!?」

 

ナイフを退けたのは、一瞬の間に魔理沙とナイフの間に割り込み、剣を構えていたショウだった。

 

ショウ

「おい・・・いくらなんでもナイフはやりすぎだ。確かに魔理沙にも悪い所はあったが、彼女達は俺の友達で大切な仲間だ。傷つけるつもりなら容赦しないぞ・・・」

 

ショウは確かな敵意を持ち、咲夜と美鈴を見据えている。

さすがのショウも、魔理沙を攻撃された事に対し、怒りを隠す気はなかった。

 

咲夜

(反応出来る時間なんて殆どなかったはず・・・何者なの?)

 

美鈴

(咲夜さんの能力使用のナイフにいとも簡単に反応してみせた・・・この人、強い!?)

 

初めて会った外来人の実力を目の当たりにし、警戒心を高める二人。

対して、攻撃を受けそうになった魔理沙と見ていたアリスは、怒りを露にして戦闘体制をとる。

 

魔理沙

「助かったぜショウ!おい!咲夜!美鈴!そっちがその気ならもう容赦しないぜ!」

 

アリス

「いきなり攻撃とはやってくれるじゃない?覚悟はできてるのよね?」

 

咲夜

「仕方ないわね。美鈴。多少怪我させてもいいから追い返すわよ。前衛は任せたわ。」

 

美鈴

「やむを得ませんか・・・わかりました咲夜さん。援護お願いします!」

 

四人共に戦闘体制になる。

 

ショウ

「あくまでも戦うつもりか・・・」

 

それを確認したショウも剣で指先に傷をつけドライブを起動させた。

ドライブの影響によりショウの周りに大量の魔素が発生する。

 

ショウ

「ならば遠慮はしない!魔理沙、アリス!俺が前に出る。援護してくれ!」

 

魔理沙

「オッケー!任しとけ!」

 

アリス

「了解よ!」

 

ショウと美鈴は地面を蹴り互いに相手へ向かい、アリスは人形を展開、魔理沙は箒に跨がり空中へと飛翔し八卦炉を構え、咲夜は両手に無数のナイフを持ちこちらの様子を窺う。

ショウ、魔理沙、アリスの三人と美鈴、咲夜の二人による戦いの火蓋が切って落とされた。

 

to be continue

 




第3話パート2終了です。
次回のパートで咲夜・美鈴戦は終了予定です。
なお、ショウの新しい技等が登場する予定ですが、資料集更新は第3話終了後になります。

次回更新は出張の関係で遅くなりそうです。
今回は余り地元から遠くないので、まだ前よりはましですけどね。

では、次回更新までしばらくお待ち下さい。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part3

だいぶ長い間更新が止まってしまい申し訳ありませんでした。
仕事の都合で東北の支社に単身赴任しており、休みの時も作成する余裕がほぼありませんでした。
合間にちょこちょこ書いていましたが、文章能力がなく時間がかかりましたがなんとか更新できました。

一応休みを長期でくれることになりましたが、これからドラクエ購入で更新が遅れそうです。
一応、更新ペースを安定させるつもりですが、2週間位が平均的になりそうです。

今パートで美鈴・咲夜戦は決着します。
では、本編をお楽しみください。


美鈴

「はあああああ!」

 

ショウ

「させるか!」

 

重い衝撃音の後に二人が離れる。

片方は剣、もう片方は拳、近距離戦を得意とする二人による戦闘は激しさを増していた。

 

美鈴

(つ、強い・・・弾幕ごっこなら負け越していたけど、接近戦でここまで苦戦するなんて・・・)

 

ショウ

(変わった動きだが、なんとかついていける。しかし、すごい人だな・・・ドライブで身体能力を強化しているのに肉薄されるとは・・・)

 

互いが互いの強さに驚愕する。

美鈴は自分が絶対の自信を持つ接近戦で苦戦していることに。

ショウは身体能力を強化しているにもかかわらず強さが拮抗していることに。

 

二人の戦いは硬直状態、互いに決定打を入れられない状況が続く。

その時ショウが動いた。

 

ショウ

「埒が明かないな。ならば、攻め方を変える!」

 

ショウは言葉の後に体から大量の魔素を放出し、地面に剣を突き刺した。

その瞬間、美鈴の足元から魔素が吹き出し美鈴に襲い掛かる。

先程とは違い搦め手を使いだしたショウの攻め方に美鈴は徐々に押され始めた。

更に、ショウが徐々に美鈴の独特の動きに慣れ始めた事も原因の一つとなっている。

 

美鈴

「見えない死角からの攻撃も混ぜられてはかなりきつい・・・しかも、ショウさんの反応も徐々に良くなっているとなると、長くは持ちませんね・・・ならば、短期決戦です!」

 

美鈴が気合を込めて言葉を発すると同時に周りに衝撃波が発生する。

そして、美鈴の体からうっすらとオーラのような物が沸き上がる。

明らかに先程と様子が違う美鈴に対し、ショウもなりふり構っている状況じゃないのは明白だった。

ショウも覚悟を決め、体に力を込める。

 

ショウ

「本気って訳か・・・ならば此方も全力でいくぞ!喰らい尽くせ!術式・・・解放!黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』!!」

 

叫びと同時にショウの周りから大量の魔素が吹き出し、獣の頭のような状態に変化していく。

ショウがオーバードライブを起動させたのを見たアリスは、表情を曇らせつつショウに呼び掛けた。

 

アリス

「シ、ショウ・・・大丈夫なの?前の時は制御出来なかったのに。」

 

アリスはショウとの弾幕ごっこを思い出していた。

自身の目の前に迫る死そのものを体現した姿は少なからずアリスにトラウマを植え付けていたのだ。

 

ショウ

「アリスのおかげで身体に問題はない。短時間なら問題なく制御出来るから心配するな。長引かせて二人が怪我をしてしまったら元も子もない。なら、多少危険でも使うことに躊躇いはないさ。必ず守って見せる!」

 

アリス

「ショウ・・・なら、私は貴方を信じるわ。思う存分やりなさい。後ろは任せて!」

 

魔理沙

「嬉しい事いってくれるじゃないか。援護は任せな!ショウは美鈴に集中してくれ!」

 

魔理沙、アリス共にショウの横に並び気合を見せている。

対して、咲夜、美鈴はこちらに敵意を見せながら会話していた。

 

咲夜

「美鈴大丈夫?魔理沙、アリスならまだしもあのショウって奴は接近戦の貴方でも押さえきれなかった。私は魔理沙達の相手で手一杯だから、まともに援護はできそうにないわよ?」

 

美鈴

「・・・正直に言うと・・・無理です。最初の内ならまだしも、徐々に私の動きに慣れ始めている今では、まず勝てないですね。気を込めて肉体を活性化させてますが、ショウさんの変化はそれ以上にヤバイ代物だと思います・・・」

 

咲夜

「!?美鈴!あなた!?」

 

美鈴

「でも・・・同時に嬉しいと思う私がいます。今まで私には、接近戦で苦戦するような相手はまずいませんでした。でも今は、全力で戦っても勝つのが難しい相手が目の前にいる・・・例え勝てなくても、私は更に上を目指せるのが嬉しいんです。門番としては問題ですけどね・・・」

 

そう言って美鈴は困ったような顔で笑っていた。

 

咲夜

「美鈴・・・はあ、分かったわよ。好きにやりなさい。魔理沙達は私が押さえておくから。でも、何も出来ずに負けるのは許さないから。せめて、きついの一発叩き込んできなさい。」

 

美鈴

「はい!私もやられっぱなしで終わるつもりはありません!行きます!」

 

美鈴と咲夜は共に飛び出し此方に向かって来た。

それを確認したショウ達も美鈴達に向かって行く。

 

アリス

「咲夜は私達が押さえるから、ショウは美鈴に集中して。魔理沙は遠距離から咲夜を魔法で牽制、私は人形と一緒に中距離から弾幕を散らしておくわ。これなら咲夜が美鈴の援護に向かうのは困難になる。万が一抜かれても、ショウの周りに護衛用の人形を展開しておくからそれで迎撃出来る。ただし、美鈴にまで手は回らないから必ず勝ちなさいよ!ショウ!」

 

アリスは護衛用の人形を取りだしショウの周りに配置しつつ、ショウと魔理沙に指示を出す。

 

魔理沙

「オッケー!任しとけ!」

 

ショウ

「ああ。心配するな。必ず勝つ!」

 

二人が言葉を言い終わるとほぼ同時に、ショウと美鈴が衝突し、上空では魔理沙、アリスのコンビと咲夜の弾幕戦が再開した。

 

美鈴

「せいやぁぁぁ!」

 

ショウ

「はあぁぁぁ!」

 

再び衝突するショウと美鈴。

炸裂する衝撃音は先程とは比べ物にならない。

しかし、二人の戦いは先程とは違う点が一つあった。

 

ショウ

「そこだ!」

 

美鈴

「く!?反応が速い!?」

 

明らかに美鈴が押されていたのだ。

 

美鈴

(やはり・・・ですか。身体能力の上昇だけならまだしも、牽制用の弾幕が悉くあの獣の頭に迎撃される。恐らくは、私の弾幕に対して自動的に迎撃するようにコントロールされている様ですね。でなければ、一度も弾幕を見ずに全てを潰す何て神業が出来るはずもない。)

 

ショウは美鈴の独特の動きに慣れ始めており、先程とは違い美鈴にアドバンテージがない。

それに加え、美鈴の弾幕に対しては、変化した魔素が自動的に迎撃してしまうため、ショウは美鈴の動きだけに集中出来る。

結果、純粋な戦闘力の差が勝敗を分ける戦いになったが、僅かではあるものの確実にショウの方が強かった。

 

美鈴

「流石にこれはきついですね・・・でも・・・」

 

美鈴は押されながらも諦めた様子はない。

 

美鈴

「咲夜さんと約束した以上・・・」

 

美鈴の口から出る言葉には力が込められている。

 

美鈴

「何も出来ずに負けるわけにはいかないんです!」

 

闘志を燃やしショウに拳を突き出す。

ショウは回避しつつ反撃の体制を取ったが、美鈴の狙いはこれだった。

 

美鈴

「見えた!そこです!」

 

ショウの反撃に合わせて懐に踏み込み、その勢いを殺すことなく肩からショウに体当たりを仕掛けた。

中国武術の中に『鉄山靠』と呼ばれる技があるが、美鈴はこれを使用した。

全身の力を使い強烈な体当たりを当てる技、しかも、カウンターに利用したならその威力は計り知れない。

ショウは咄嗟に防御したが、流石に衝撃全てを吸収し切れずかなり後方まで飛ばされる。

そして、美鈴はそれを好機と見るや自身の両手に高密度に圧縮した気を集中させる。

勝負を決めるために自身が出せる最強の技をぶつけようとした。

 

美鈴

「はあああああ!」

 

みるみる内に美鈴の両手に集まる気を目にしたショウは直ぐに技を潰す為に美鈴に突っ込もうとしたが、気付いた時には既に技を放つ直前の状態にまで気が圧縮されていた。

 

ショウ

「な!?さっきまではまだ発動まで時間が必要だったはずだ!何が起きたんだ?」

 

突然の事に戸惑っているが、状況が長考を許さない。

 

ショウ

「なら、迎え撃つまでだ!」

 

直ぐに思考を立て直し、自身の前方に剣で術式の陣を描く。

それと同時に身体中の魔素を左手に集中させる。

時間的に集中しきるのは難しいが贅沢は言えない。

陣を描き終わるのとほぼ同時に美鈴が動いた。

 

美鈴

「紅魔館の門番として何も出来ないまま負けるわけにはいきません!ショウさん!これが・・・私の最後の技です!はあああああ!行きます!星気『星脈地天弾』!!」

 

美鈴が叫ぶと同時に美鈴の手から虹色に輝く気の波動が放たれる。

その波動はかなりの速度と質量を持ち、真っ直ぐショウに向かって来ていた。

それを確認したショウも完成した術式陣に左手をかざす。

 

ショウ

「負けられないのは此方も同じだ!貫け!『バニッシュ・・・ゲイザー』!!」

 

ショウがかざした左手の先にある術式陣からどす黒い色をした波動が放出される。

それは、先程美鈴が放った波動と衝突し、激しい炸裂音が鳴り響く。

 

美鈴

「いっけええええええ!」

 

ショウ

「貫けええええええ!」

 

二人は怒号のような声をあげお互いの技に力を込める。

最初の内は拮抗していたが、力を集中する時間が足りなかったショウの方が徐々に押され始めた。

この時、二人の衝突を観察していたアリスが魔理沙に向かって叫んだ。

 

アリス

「魔理沙!ショウの援護を!僅かだけどショウが押され始めてる!あれに対抗出来るのは魔理沙のマスタースパークしかないわ!咲夜は私が押さえておくから、お願い!・・・そして・・・」

 

魔理沙

「マジかよ!?オッケー!任しとけ!」

 

アリスの言葉を受け、魔理沙はショウの援護に向かおうとするが・・・

 

咲夜

「私の世界から逃げられるわけないでしょ?幻世『ザ・ワールド』。時よ・・・止まりなさい。」

 

咲夜が言葉を発した瞬間、彼女の周囲の時が停止した。

彼女自身を除いて・・・

咲夜は時が止まっている内に魔理沙の周囲にナイフを投げる。

すると、ナイフは魔理沙の周囲に停滞して止まる。

咲夜の体から離れた物体は例外なく時が停止するためだ。

咲夜は時が停止している間に周囲を確認すると、魔理沙は真っ直ぐショウの所に向かおうとしており、ショウは美鈴とのせめぎ合いの最中、アリスは懐に手を入れており何をしようとしているかはわからないが、大方援護に向かう魔理沙のサポートをするつもりのようだ。

アリスの口は何かを喋ろうとしているようだが、どのみち時が停止しているので意味はない。

停止を解除して魔理沙を倒せば、ショウは美鈴に競り負け敗北し、残ったアリスは美鈴と一緒にゆっくりと倒せばいい。

勝利を確信した咲夜は時間停止を解除した。

 

咲夜

「そして・・・時は動き出す。」

 

指を鳴らし時間停止を解除する。

瞬間、停止していたナイフは魔理沙の元へ、懐に手を入れていたアリスは懐から何かを取りだし、喋ろうとしていた言葉の続きを発した。

 

アリス

「悪いけど・・・あなたのやることは読めてるわ!」

 

アリスが言葉を発した瞬間、魔理沙の懐から数体の人形が飛び出しナイフを迎撃した。

アリスは最初から魔理沙の懐に人形召喚用の魔法陣を書いていたのだ。

その隙に魔理沙はショウの元へ、そしてそれを阻止しようとした咲夜の周りに数体の人形が出現した。

 

咲夜

「な!?」

 

アリス

「残念だけど、あなたはここでリタイアよ。さあ見せてあげる。ショウと一緒に考えた私の新しいスペルカードをね!狂劇『ハンニバルレクイエム』!!」

 

アリスが宣言した瞬間、咲夜の周囲の人形が無差別に弾幕をばらまきながら、咲夜に向かって突進した。

 

咲夜

「くっ!?数が多すぎる!?」

 

咲夜は弾幕を回避していたがあまりにも数が多く時折掠りながらも凌いでいた。

しかし、弾幕を放っていた人形同士がぶつかった瞬間、人形が爆発し、同時に放たれた弾幕も誘爆した。

 

咲夜

「な!?しまっ!?」

 

言葉を言い終わる前に咲夜は爆発に巻き込まれ、空中から落ちていった。

 

美鈴

「な!?咲夜さん!」

 

魔理沙

「おーい中国?そっちより自分の心配をした方がいいぜ?」

 

美鈴

「!?」

 

美鈴が咲夜に対して気をとられている間に魔理沙はショウの横にたどり着いており、手にはスペルカードが握られ、もう一つの手には魔理沙の武器、八卦炉が握られていた。

 

魔理沙

「待たせたなショウ。咲夜はアリスが倒した。なら後は美鈴を倒しゃ終わりだ。決めちまおうぜ?」

 

ショウ

「そうだな。終わらせよう!頼めるか?」

 

魔理沙

「任しとけ!そんじゃ、一緒に行くぜ!恋符『マスタースパーク』!!」

 

魔理沙の宣言と共に八卦炉から虹色の波動が放出される。

そして、押されていたショウの波動に沿うように美鈴の波動とぶつかり肥大化したエネルギーが爆発。

辺りに轟音を響かせながら、周囲に砂埃が舞い上がる。

 

美鈴

(くっ!砂埃で視界が!?)

 

美鈴の視界は砂埃で埋まり、周りは全く見えない。

美鈴は意識を集中し、周囲を警戒すると真っ直ぐ此方に向かって来る気配を感じた。

 

美鈴

(この気配はショウさんですね。さすがです。砂埃でまともに前が見えないのに真っ直ぐ此方に向かって来てますね。ですが、私もあなたが見えているんですよ!)

 

美鈴は向かって来た気配をぎりぎりまで引き付けカウンターを合わせるつもりで正拳突きを放つ。

しかし、その拳はショウの体を捉えることはなかった。

拳の風圧により周囲の砂埃が吹き飛び、明らかになった光景は・・・

 

美鈴

「そ、そんな!?」

 

美鈴の拳が捉えたのは、ショウの発生させた魔素だった。

正確には、ショウが自身の大きさとほぼ同じ大きさに調整した魔素だ。

ショウは、美鈴なら視界が塞がれていても接近した自分に必ず反応してくると考え、調整させた魔素を前方に配置し、自身はその魔素の後ろから美鈴の元へ向かったのだ。

その結果、美鈴は魔素に対して拳を振り抜いてしまい、技後硬直で動けない状態になる。

その隙を逃す筈がない。

 

ショウ

「これで・・・終わりだ!」

 

美鈴の拳を受けた魔素は霧散し、ショウの体へ戻る。

そして、魔素が自身の体へ戻ったのを確認した後、ショウは体内の魔素を一気に解放し、美鈴に向け走り抜けながら剣を振り抜いた。

 

ショウ

「全てを飲み込め!暴食の魔獣!」

 

叫びと同時に振り抜いた剣を地面に突き刺すと、美鈴の立つ場所の周りの地面から、獣の頭に変化した魔素が吹き出し美鈴の周囲を取り囲み、今にも襲いかかろうとしていた。

 

美鈴

「だ、だめだ・・・何かに縛られたように動けない・・・」

 

美鈴はその場から動かない。

ショウは、初撃で美鈴の体内に魔素を送り込み体の自由を奪っていた。

そのため、美鈴は魔獣型の魔素の一撃を無防備に貰うことになる。

 

ショウ

「『グレイプニル・ケルベロス』!!」

 

技名を叫んだショウの言葉に呼応するように、魔獣型の魔素は一斉に美鈴に襲いかかった。

美鈴を中心に魔素が爆散し、辺りに撒き散らされる。

そして、魔素が晴れ、そこに立っていたのは、倒れた美鈴を見下ろすショウの姿だった。

 

美鈴

「すみません・・・お嬢様、咲夜さん・・・負け・・・ちゃいました・・・」

 

自身を負かした相手を見つめながら、謝罪の言葉を呟き、美鈴はその意識を落とした。

 

to be continue

 




第3話 パート3 終了です。
一応の流れは、紅魔館突入後、魔理沙が離脱し、アリスと二人でレミリアの元へ向かい、レミリア戦を経て第4話の異変パートに入る予定です。

レミリア戦では新しくオリ主のスペルカードが登場予定で、レミリア戦の後に纏めて資料集を更新します。

異変パートでは、このssの肝の後日覚醒能力が解禁されますが、はっきり言ってチートなのでその辺りが苦手な方には申し訳ありませんが、この能力が書きたかったためこの作品を投稿したので変えるつもりはありません。ご了承ください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part4

更新完了です。
咲夜・美鈴戦の後の話とレミリアとの邂逅及び弾幕ごっこ対レミリア戦導入部になります。

レミリア戦は二部構成を予定しており、間に魔理沙サイドを挟んで決着します。
今後は、予定通りレミリア戦後資料集を更新してから異変パートに入ります。

では、本編をお楽しみください。


美鈴

(負け・・・ですか・・・でも、悔いはないですね。私は全力を尽くしました。であれば、今回の戦いでは勝ち目はありませんでしたね。ただ、咲夜さんの時間停止の能力を借りてこの結果ですか・・・咲夜さんになに言われるかわかりませんね・・・何て謝ろうかな・・・)

 

咲夜

「素直にごめんなさいでいいわよ。やれることはやったんでしょ?」

 

美鈴

「!?」

 

美鈴は気を失っていたが、どうやら寝言を喋っていた。

それに対して咲夜からの返答があり、驚きのあまり目を覚ます。

そして、美鈴の目の前には咲夜ともう一人の顔があった。

 

ショウ

「気がつきましたか?良かった。少しやり過ぎましたから心配していたんですよ。」

 

美鈴

「ショウ・・・さん?ど、どうして?」

 

咲夜

「彼とアリスが私達を治療してくれたのよ。どういう意図かは分からないけどね。」

 

美鈴

「治療?ショウさん、何のつもりですか?私達はあなたの敵ですよ?一体・・・いたっ!?」

 

ショウ

「まあ、それが答えです。完全には直してません。この意味、わかりますよね?」

 

ショウは心配しているといった顔をしていたが、その顔を真剣な表情に変え美鈴に答えた。

 

美鈴

「なるほど。そういうことですか。」

 

ショウの発した言葉の意味。

それは、完全に治療をせずに怪我を治し、もし再び戦いになってもショウ達に絶対的なアドバンテージを残すためだ。

つまり、もう一度戦っても必ずこちらが勝つから、もう戦うなという間接的な命令だった。

事実戦いになれば確実にショウ側が勝つことに疑いの余地がないため、美鈴達にはどうすることもできない。

 

美鈴

「わかりました。わざわざ治療していただいてありがとうございます。お通りください。私達にはもうショウさんを止めることはできません。悔しいですが・・・」

 

ショウ

「すみません。手荒になってしまって。本来なら日を改めるところですが。」

 

咲夜

「先に仕掛けたのはこちらですから気にしないでください。あと、魔理沙?あなたはもう少し落ち着いて行動した方がいいわよ?あなたが仕掛けるつもりだったから、こちらも強行手段を取ったんだから。」

 

魔理沙

「うっ!?わ、悪かったよ。だけどそっちも悪いんだぜ?理由くらい教えてくれてもいいじゃないか?初対面じゃないんだし。」

 

咲夜に指摘され謝罪した魔理沙だったが、咲夜の態度について指摘すると、咲夜はばつの悪そうな顔をした。

 

咲夜

「戒厳令についてだけど冗談抜きで知らないのよ。お嬢様は私にも理由を教えてくれなかった。私が知らないなら、館内の誰も知らないと思うわよ?」

 

美鈴

「別に秘密にしてたわけではなく、本当に知らなかったんです。すみません。」

 

戒厳令の理由については、二人とも知らないと言う。

それに対して疑問を浮かべる魔理沙とアリスだったが、ショウは全く別の感情を抱いていた。

 

ショウ

「なら、あなた達にこんな命令を出しておきながら、理由すら教えないだって・・・?ふざけるな・・・!」

 

ショウが抱いた感情はレミリアに対する激しい怒りだった。

 

美鈴・咲夜

「ショウさん?」

 

ショウ

「あなた達なら理由が分からなくても命令を確実に遂行するでしょう。でも、理由も分からず戦うのと、理由を把握した上で戦うのとでは、取り組み姿勢に差が出る筈です。集中力も違うでしょう。それは、全て戦闘力の差になります。今回もあなた達が理由を知り、納得した上で戦っていれば、結果は違ったかも知れません。あなた達の事をちゃんと考えているなら尚更だ!」

 

咲夜達の事を大事に思っているなら理由を話す筈であると考えているショウにとって、レミリアのとった行動は遠回しに彼女達を信用していないと言っているのと同義だった。

 

ショウ

「行こう。魔理沙、アリス。レミリアに聞くことが一つ増えた。話を聞かなきゃ気がすまない!」

 

魔理沙

「・・・悪いけど、私は行かない。パチュリーの所に行くよ。用事があるからな。」

 

ショウ

「あれ?魔理沙は来ないのか?」

 

アリス

「魔理沙・・・。また本を盗みにいくつもり?別に今じゃなくてもいいでしょ?」

 

魔理沙

「盗むなんて人聞きの悪い事言うなよ。借りるだけだぜ?死ぬまでだけど。」

 

ショウ

(人はそれを盗むと言うんだよ魔理沙・・・。)

 

魔理沙は一緒には行かず、紅魔館内の図書館に行くらしい。

アリスの問いに対し違うと言いつつ肯定の返答をする魔理沙に苦笑していると、魔理沙から思わぬ言葉が出てきた。

 

魔理沙

「それに、パチュリーの所に行くのはショウのためだぜ?あそこならショウの記憶の手がかりがあるかもしれないし、パチュリーにも意見を聞けるしな。」

 

ショウ

「え?俺のため?」

 

魔理沙

「ああ。ショウに関わったのは私が最初だしな。出来る限り協力するぜ。まあ、ショウと一緒だと退屈しないからってのもあるけどな。だから、調査は私に任せてショウはレミリアとの決着をつけてこいよ?一言文句言ってやるんだろ?」

 

ショウ

「魔理沙・・・ありがとう。なら、任せていいか?」

 

魔理沙

「任しとけ!何かしらの手がかりは見つけてやるよ!」

 

ショウ

「何から何まで世話になりっぱなしだな。本当にありがとう魔理沙。じゃあ、行こう!アリス!」

 

アリス

「そうね。行きましょう!」

 

魔理沙と別れ、アリスと二人で紅魔館内に入ろうとすると、咲夜が話しかけてきた。

 

咲夜

「ショウさん。私から何点か注意事項を説明させていただきますね。この時間お嬢様ならメインホールにいると思います。メインホールは入り口から真っ直ぐ廊下を進んだ先ですから迷うことはない筈です。だから、ショウさんは真っ直ぐお嬢様の所に行って下さい。寄り道はしないようにお願いします。また、間違っても地下室には行かないでください。妹様に関われば死ぬ危険もあります。絶対にしないでください。」

 

ショウ

「またずいぶんと物騒な話ですね。妹様とは誰なんですか?」

 

咲夜の口から初めて聞く人物についての話を聞き質問を返す。

 

咲夜

「お嬢様の妹で、名前はフランドール・スカーレット。見た目は可愛らしい少女の姿です。特徴として、輝く水晶の羽を持つ金色の髪をした方ですが、精神に異常を持っています。見知った顔であるなら問題は少ないんですが、初対面の場合は矛先が向く危険性が極めて高いですので、命が惜しいなら近づかないように。」

 

ショウ

「わかりました。わざわざすみません。」

 

レミリアには妹がいるようだが会うのは危険らしい。

咲夜の言葉を心に留めつつアリスと共に紅魔館の門を開き中へと進んでいった。

ショウの姿が見えなくなったのを確認した咲夜と美鈴は、残った魔理沙に話しかける。

 

咲夜

「魔理沙。ショウさんは一体何者なの?外来人とは聞いてるけど、接近戦の美鈴ですら真正面から戦えば負ける相手、しかもそれが人間なんてにわかには信じられない話なんだけど?」

 

美鈴

「妖怪特有の妖気や霊力は感じませんでしたから人間なのは間違いないですが、あの黒い霧みたいな物はただの人間に扱える代物じゃありません。どんな人なんですか?」

 

魔理沙は質問に対して苦い顔をしたが、意を決したように口を開いた。

 

魔理沙

「・・・私もショウについて詳しくは知らない。ただ、あいつが戦闘の時に使うあの黒い霧みたいな物については少しだが教えてもらった。少し話が長くなるけど構わないか?」

 

咲夜・美鈴

「「お願い(します)。」」

 

魔理沙

「分かったぜ。じゃあ、まずは・・・」

 

《少女説明中》

 

魔理沙

「・・・という話らしい。要するに、ショウの意思で自由にコントロールできる障気みたいな物だぜ。単体での毒性の強さ、汎用性が極めて高い代物だし、それにショウの戦闘力を合わせたら反則クラスの能力だな。」

 

咲夜

「呆れるほどに反則的な能力ね。身体能力の強化だけじゃなく、毒性の高さ、拡散、集束、硬化までとか、私の能力ほどあからさまな反則能力じゃないけど、充分チートね。美鈴が負けるのも頷けるわ。」

 

美鈴

「そこまで強い能力を持っていながら、戦闘技術も群を抜くレベルでしたし、勝てない筈です。途中で見せたあの獣の頭のような物については知ってますか?」

 

魔理沙

「ああ。知ってるぜ。あれはショウ曰く『オーバードライブ』って名前の能力らしい。効果は簡単に言えば、さっきのショウの能力を超強化する効果らしいぜ。ただ、デメリットもでかいらしいがな。色々教えてはくれたんだが、難しくて半分位しか分からなかったんだよ。詳しく知りたいなら本人に聞くか、アリスに聞いてくれ。アリスは実際に戦ったし、デメリットが発動した場面を見てるらしいからな。」

 

魔理沙の説明に興味津々といった態度で聞いていた二人だったが、ポツリと咲夜が爆弾発言を発した。

 

咲夜

「ちょっと興味が出てきたかも・・・戒厳令が解かれたらお茶にでも誘ってみようかしら・・・」

 

美鈴

「ちょ!?咲夜さん!?さらっとすごいこと言いませんでした!?」

 

咲夜

「そう?別に普通だと思うけど?それに、その方が美鈴にも都合がいいでしょ?ショウさんと一緒に修行したそうな顔してるわよ?」

 

美鈴

「な!?別にそんなつもりじゃ!?」

 

咲夜

「ならいいわね。今度誘ってみましょう。」

 

美鈴

「・・・さ、咲夜さん?」

 

咲夜

「何かしら?」

 

美鈴

「・・・誘えたら、教えてください・・・」

 

咲夜

「ふふ・・・素直でよろしい。最初からそう言えば良いのよ。ショウさんの性格なら多分、あなたが普通に誘っても承諾してくれると思うわよ?ショウさん紳士っぽいし。」

 

美鈴

「・・・その誘導の仕方は、ずるいですよ・・・」

 

いたずらが成功した子供のような笑顔を浮かべる咲夜に対し、顔を赤くした美鈴が文句を言う。

魔理沙は二人のやり取りを見て笑っていたが、そろそろ図書館に向かおうと考え、二人に一言言ってから紅魔館内に入っていった。

門前に残された二人は、レミリアの事について思案していた。

 

咲夜

「・・・さて、二人きりになったことだし腹を割って話しましょうか。美鈴、あなたはお嬢様の態度・・・正直なところどう考える?」

 

美鈴

「率直に感想を言うならちょっと悲しいですね。主従以前に家族のような関係を思い浮かべてましたから。まあ、お嬢様はそう考えておらず、私の独りよがりだったかもしれませんが。」

 

咲夜

「そんなことはないと思えれば簡単な話なんだけどね。ショウさんに言われて初めてお嬢様に疑問を抱いたし。でも今までそんなことはなかったはず・・・お嬢様に一体何が・・・?」

 

二人が考えを話し合うが結論は出ない。

その内、二人は戦闘の怪我と疲労でその場で眠ってしまった。

彼女達が求める答えは、当事者のレミリアしか分からない・・・

そして、彼女達が眠りについた時とほぼ同じ頃、紅魔館内では・・・

 

???

「・・・今日招待した人物はいないはずだけど?どちら様?」

 

ショウ

「あんたに話があって来た。聞いてもらうぞ・・・紅魔館の主、レミリア・スカーレット!」

 

レミリア

「礼儀がなっていないわね?死にたいのかしら?それにしても、咲夜や美鈴は何をしているのやら・・・こんな礼儀知らずに侵入を許すなんて。役に立たないわね。」

 

ショウ

「!?」

 

紅魔館の主レミリアと対峙したショウだったが、レミリアが放った言葉を聞き、頭の中で何かが切れた。

 

ショウ

「黙れ・・・」

 

レミリア

「・・・よく聞こえなかったわね・・・?今、この私に向かって、何と言ったのかしら?」

 

ショウの言葉を耳にしたレミリアは信じられないといった表情を浮かべ、目の前の無礼者に言葉を発した。

それに対してショウは視線に殺気を込め、レミリアを睨み付けながら答えた。

 

ショウ

「黙れと言った。彼女達はあんたの命令を守り、やるべき事をやった。見てもいないのに勝手なことを言うな・・・不愉快だ。」

 

レミリア

「・・・フフフ・・・アハハハハ!」

 

その答えにレミリアは高らかに笑う。

しかし、体からはかなりのプレッシャーを放っていた。

 

レミリア

「無礼な物言いもここまで来ると清々しいわね。気に入ったわ。直ぐに肉塊にしてやろうと思っていたけど、気が変わった。弾幕ごっこをしましょう。私が勝ったら、貴方は一生私の下僕にしてあげる。死ぬまで可愛がってあげるわ。悪いけど、拒否権はないわよ。ここは私のテリトリー。ここまで啖呵を切っておいて五体満足で帰れるなんて思わないわよね?」

 

ショウ

「わかった・・・なら、俺が勝ったらあんたには俺の質問に正直に答えてもらうと共に、咲夜さんと美鈴さんに詫びてもらう。異存はないな?」

 

レミリア

「いいでしょう。なら、残機4、枚数6で構わないかしら?」

 

ショウ

「わかった。アリス。手出し無用だ。こいつは俺の戦いだからな。」

 

アリス

「ええ、わかってる。私もむかついたけど、あいつに折檻する役はあなたに譲ってあげる。思う存分ぼこぼこにしてやって。」

 

ショウ

「ああ・・・。ここまでの怒りを覚えたのは記憶に有る限り初めてだ。悪いが、手加減する気は更々ない!」

 

レミリアの弾幕ごっこの提案を承諾し、勝利条件、残機及び枚数の決定は滞りなく終わった。

アリスに対して援護は不要と伝え、指先に傷を付けドライブを起動させるが、発生した魔素の量は今までとは比べ物にならない程膨大だった。

 

レミリア

「へえ・・・只の人間ではないとは思っていたけど、意外と楽しめそうね。・・・フフ、丁度夜になったし、今宵は満月。しかも、狂おしい程赤い月ね。舞台は整った・・・さあ、楽しみましょう!」

 

レミリアは椅子から立ち上がり、羽を広げて空中へ舞い上がる。

そして、ショウに視線を向け妖艶な笑みを浮かべていた。

二人は同時に飛び出し、お互いの弾幕を撃ち合う。

アリスはその戦いを見ていたが、スピードが速すぎて目で追いきれない程のハイレベルな戦いだった。

 

アリス

「は、速すぎる!?なんて戦いしてるのよ二人とも!これじゃあ、どのみちショウに任せるしかなかったわね・・・ショウ、負けないでよ・・・。」

 

アリスはショウの勝利を願いつつ二人の戦いに視線を戻す。

赤と黒の閃光が織り成す、ハイスピードな弾幕ごっこが始まった。

 

to be continue

 




第3話パート4終了です。

前書きの通り次回から弾幕ごっこレミリア戦です。
新しくショウのスペルカードが明らかになります。
レミリア戦の後は、咲夜・美鈴戦とレミリア戦で明らかになった技、スペルカードの情報を追加します。
追加された情報には《new》と表示してありますので参考にしてください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part5

投稿完了・・・ヤバい、時間かかりすぎだ・・・。

仕事の都合で更新が遅れる可能性はあると言いましたが、一月以上も遅くなるとは・・・文才はないと再認識しました。

レミリア戦前半部になります。
レミリアは最初の内、某慢心王の如く油断しまくりですのでめっちゃ弱いです。
しかし、本編ラストで慢心を捨てカリスマ化しますので超強化されます。
そして、この超強化が異変導入のトリガーになります。
フラグを作りつつ、文章を書くのは難しいですね。

では、本編をお楽しみください。


黒い刃状の弾幕と赤い球体の弾幕が飛び交う中、メインホールの広い空間を赤と黒の閃光が交差している。

レミリアは飛行、ショウは空中に硬化させた魔素を設置し、それを足場にして蹴ることで擬似的な飛行を用いて相手に向かっていき、相手の隙を見つけては弾幕を放つ一進一退の攻防が続いていた。

 

レミリア

「へえ・・・吸血鬼の私のスピードに飛行もせずに追い付けるなんてね。あなたが使う足場は自分の能力で作っているようね。面白い能力じゃない。」

 

ショウ

「戦いの最中にお喋りか?その上から目線は気に入らないな。慢心は敗北の元だぜ?」

 

ショウはレミリアの余裕な態度に悪態をつきながら懐からカードを取り出した。

 

レミリア

「慢心?違うわ。これは余裕と言うものよ。悔しいなら黙らせて見せなさい?」

 

ショウ

「なら、お言葉に甘えさせてもらおうか。喰いちぎれ!闇牙『キリングラッシュファング』!!」

 

ショウの宣言と同時に黒い霧が発生し刃状の弾幕が現れ、レミリアの弾幕を打ち消しながら向かっていった。

 

レミリア

「スペルカードか・・・なかなかのスピードね。でも・・・甘いわよ。」

 

レミリアはショウのスペルを難なくかわし、反撃の弾幕を撃とうとした。

だが・・・

 

ショウ

「甘いのはあんただ吸血鬼。単純にかわしただけで逃げられるわけないだろ。一応スペルカードの弾幕だぞ?」

 

ショウの言葉を耳にしたレミリアは咄嗟に横へ飛ぶ。

次の瞬間、レミリアが元居た位置に弾幕が殺到した。

間一髪でかわしたレミリアは少し驚いた表情を浮かべたが、直ぐに余裕の表情に戻りショウに言い放った。

 

レミリア

「追尾型の弾幕とは驚いたけどそれだけね。同士討ちで消えてちゃ世話ないわよ?もう少し工夫した方がいいんじゃないかしら?素人さん?」

 

ショウの弾幕はレミリアが直前でかわしたため弾幕同士がぶつかる結果となった。

それを見たレミリアは笑いながら皮肉を言っている。

しかし、その様子を見ていたアリスは必死に笑いを堪えていた。

アリスはショウのスペルカードの特性を知っているため、レミリアの姿はひどく滑稽に見えたのだった。

 

アリス

(慢心もここまで来ると哀れね・・・ショウ。かましてやりなさい!)

 

レミリアの言葉を受け、ショウが口を開く。

 

ショウ

「助言をしてくれるんだな?ありがとう。お礼と言ってはなんだが、代わりに被弾数1をくれてやるよ。」

 

レミリア

「・・・は?」

 

ショウの言葉にレミリアは呆気にとられる。

ショウの言葉の意味が理解できていないようだ。

 

レミリア

(こいつのスペルは同士討ちでつぶれたはず・・・弾幕も出していない・・・一体何を・・・)

 

時間にして一瞬、レミリアが思案していた次の瞬間、自分の背後から強烈な衝撃を受けるレミリア。

 

レミリア

「が!?」

 

ショウのスペルの強化弾幕をまともに受け体勢を崩す。

 

レミリア

「な、何が・・・?」

 

自分に起こったことを理解できないといった顔をするレミリアに対し、ショウは呆れたような表情を浮かべる。

 

ショウ

「さすがに調子に乗りすぎだ・・・。相手のスペルの消滅も確かめずに目を離すとはな。非常に疑問だから聞かなきゃ落ち着かないし、聞いとこうと思うんだか・・・。」

 

レミリア

「なによ?」

 

ショウのもったいぶった態度に怪訝な顔をしながら、ショウの言葉を待つレミリア。

そして、一呼吸置いてショウが口を開いた。

 

ショウ

「あんた、ほんとに強いのか?今は少なくとも、外に居た咲夜さん、美鈴さんの方が強かったぜ?自信たっぷりな態度の割に強さや威圧を感じない。はっきり言うが拍子抜けだ。」

 

レミリア

「な!?なんですって・・・!」

 

ショウの言葉はレミリアのプライドを粉々にする一言だった。

ショウの言葉を受けたレミリアは怒りを隠さずショウに叫ぶ。

 

レミリア

「許さない・・・!この私が弱いですって!?ならば、貴方を完膚無きまで叩き潰して証明してあげるわ!私の強さを!」

 

レミリアは言葉と共にカードを取り出す。

 

ショウ

「いいぜ・・・。来い!」

 

レミリア

「逃げてみなさい!運命『ミゼラブルフェイト』!!」

 

スペルカードの宣言と同時にレミリアの周囲に複数の鎖が出現し、真っ直ぐ此方に向かってきた。

同時にレミリアも弾幕を放つ。

ショウは向かってきた鎖をかわしたが、鎖はショウを追尾するように方向を変えてきた。

さらに、複数の鎖により空中の行動可能範囲が狭くなってきている。

 

ショウ

「なるほどな。空間自体を狭めつつ追尾するスペルか・・・。なら対処は簡単だな。」

 

レミリアのスペルを見たショウは全く慌てることなく周囲を見渡し、ある一点を見てそこに向かっていった。

その場所は、メインホールの中央の床だった。

床面に降りたショウは自分に向かって来る鎖を見てはいるものの、その場からは動こうとはしなかった。

みるみる内に鎖全てがショウの元へ向かい、直撃する一歩手前まで迫ったその時だった・・・

 

ショウ

「今だ!」

 

ショウは鎖が自身に当たる直前に真上に跳躍、ギリギリまで引き付けてからかわしたため、鎖は地面に刺さり一瞬その動きを止めた。

ショウは跳躍後直ぐに剣を逆手に持ち替え、地面に向かって投げつけながら叫んだ。

 

ショウ

「穿て!『イービルトライデント』!!」

 

投げつけた剣は地面に突き刺さり、次の瞬間爆発したように魔素が放出され、レミリアのスペルの鎖を全て吹き飛ばし消滅させた。

 

ショウ

「悪いな。自分の弾幕と似たような特性だから、対処法も大体分かるんだよ。」

 

レミリア

「この!紅符『スカーレットマイスタ』!!」

 

スペルを吹き飛ばされたレミリアは激昂し、次のスペルを続けて放つ。

レミリアの周囲から空間を埋め尽くす程の大小様々な大きさの弾幕が放たれ、ショウに殺到した。

それを見たショウもスペルカードを取り出したが、直ぐに宣言せず弾幕を切り払いながら距離をとる。

 

レミリア

「これだけの密度なら避けられないでしょう?潰れなさい!」

 

弾幕を捌いていたショウだったが、次第に物量に押され始める。

直撃を確信したレミリアは直ぐに追撃を当てるためスペルカードを準備していた。

捌ききれなくなり弾幕がショウを飲み込もうとしたその時、ショウがぼそりと呟いた。

 

ショウ

「勝ちを確信した時が、一番危険だってことを知らないらしいな・・・?飛翔撃『アカシックブレイバー』!!」

 

弾幕に飲み込まれようとしたタイミングでのスペルカード宣言に警戒心を高めるレミリアだったが、弾幕は消えることなくショウを飲み込んだ。

 

レミリア

「・・・フフフ、アハハハハ!なに?不発かしら?無様ね?アハハハハ!弾幕に飲まれてフラフラでしょ?良い気味だわ。」

 

???

「誰がだ・・・?」

 

レミリア

「!?」

 

直撃を確認したレミリアは高笑いをしていたが、自分の背後から声をかけられ振り向くと、そこには・・・

 

ショウ

「いくらなんでも油断しすぎじゃないか?吸血鬼。まあ良いや。これで被弾2回目だ。」

 

黒い霧を纏っている剣を逆手に持ち、構えていたショウが居た。

ショウがレミリアに向かって剣を振り抜くと、剣から散弾のように放たれた弾幕がレミリアに襲いかかる。

弾幕は一つ一つが小さく軌道も直線的だが、いかんせん至近距離のためかわせる筈もなく、まともに直撃を受けるレミリア。

 

レミリア

「ぐっ・・・な、何なのよ今のは!?間違いなくスペルが当たったはずじゃない!?何で何事もなかったように私の後ろに居るのよ!?」

 

ショウ

「・・・」

 

レミリア

「答えろ!」

 

ショウ

「・・・はあ。良いぜ。教えてやるよ。今俺が使ったのは、転移タイプのスペルカードだ。」

 

レミリア

「・・・転移タイプ、ですって?」

 

ショウ

「ああ。発動時に自身の視界内のいずれかの場所に転移した後、散弾のように飛ぶ弾幕を剣から撃つスペルカードだ。転移先の座標を決めてから使う必要があるから、咄嗟の回避には使えない。ただ、今回はあんたが動かず、こちらが弾幕に当たるまで様子を見ていたから簡単だったがな。」

 

ショウが説明したスペルカードの内容を聞き、レミリアは絶句した。

語られた内容は反則ではないものの、性能は群を抜くレベルだった。

これ程の戦闘力を持っていながら、使うスペルカードはどれもこれも破格の能力を持ち、使い方やセンス、直感、洞察力等改めて考えれば、とても慢心したまま勝てる相手ではなかった。

これを自覚したレミリアの顔から余裕が消え、先程とは比べ物にならない程冷たい視線がショウを貫いた。

 

ショウ

「・・・ようやく本気か?確かにこの感じなら、簡単には勝てそうにないな。」

 

レミリアの姿は先程とは違い、刺すようなプレッシャーを宿す、その名『吸血鬼』に似合う威圧感を纏っていた。

 

レミリア

「・・・認めよう外来人。お前は強い。ならば、全力で応じる必要がある。先程までの非礼を詫びよう。そして、私を本気にさせた以上、つまらないと感じたなら即座に殺すぞ?死に物狂いで来るがいい・・・。」

 

ショウ

「・・・おいおい。慢心が消えるとここまで変わるのかよ。やばいな・・・眠っていた虎を起こしちまったか?」

 

レミリアの放つプレッシャーは、先程と同じ少女の物とは思えない程鋭く、気を抜けば飲まれかねない程であった。

ショウは剣を握り直し、レミリアの威圧に正面から向き合う。

 

ショウ

「ここからが本番か・・・悪いけど、協力してくれるアリスや魔理沙のためにも、負けるわけには行かない!」

 

ショウとレミリア、二人の戦いは、幻想郷中の強者に容易に認識出来るほど、苛烈を極める戦いに突入する・・・

 

to be continue

 

 




第3話パート5終了です。

時間かかりすぎで申し訳ないです。
次回は魔理沙サイドとレミリア戦決着、異変導入部迄の話です。
今回登場したスペルカード、必殺技については次回更新後の資料集に記載しますのでお待ちください。

BBCFアップデート触りました。
持ちキャラであるラグナ、ナオトの強化は非常にありがたいです。
これを読んでいただいてる方は多分ソフト持ってると思いますのでネットで会うかもしれませんが、その時はお手柔らかに。
一応、ラグナ20段、ナオト16段です。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻の旅路 第3話 緋色の狂気 part6(終)

更新完了です。
我ながら早めに仕上がりました。

前半は魔理沙サイド、後半は覚醒レミリア戦と異変導入部になります。
なお、レミリアとは異変終息後に再戦予定となります。
(不完全燃焼な戦いになるため)

異変は主に二分構成で、どちらも戦闘パートです。
オリ主後日覚醒能力は後半戦闘パートで覚醒予定となります。

では、第3話最終パートをお楽しみください。


~時は少し戻り、紅魔館大図書館前~

 

魔理沙

「さてと、パチュリーなら動かない筈だし、間違いなくいるだろ。」

 

魔理沙が図書館への扉を開け、声をあげた。

 

魔理沙

「おーい!パチュリーいるかー!?」

 

魔理沙の声の後に直ぐに返事が返ってくる。

ただし、返ってきたのは言葉ではなかった。

無数の弾幕が魔理沙の元へ殺到、慌てて避ける魔理沙に対し雨のような追撃の弾幕が押し寄せてきた。

 

魔理沙

「どわあ!?あっぶねえ!?いきなりなんなんだ!?」

 

???

「また私の本を盗みに来たのね!今度こそ追い返してやるわ!」

 

魔理沙

「パチュリーか!?ま、待てって!?話を聞け!」

 

魔理沙の叫びは届かず、追加の弾幕が降り注ぐ。

これに対し魔理沙は回避に専念、箒を使い弾幕をやり過ごしつつ攻撃者に呼び掛けていたが、一向に収まる気配がない。

そして、ついに魔理沙がきれた。

 

魔理沙

「この・・・!いい加減に、しろ!魔符「スターダストレヴァリエ」!!」

 

魔理沙がスペルカードを取りだし発動、魔理沙の周囲から巨大な星形の弾幕が現れ弾幕を薙ぎ払いながら進んでいき・・・

 

???

「むきゅ!?」

 

魔理沙を攻撃していた人物に直撃した。

 

魔理沙

「やべ!?大丈夫か!?って、あちゃー。気失ってら・・・。やっぱパチュリーだったか。仕方ない、運ぶか・・・。」

 

パチュリー

「むきゅー・・・。」

 

魔理沙は気を失った状態の少女を抱え、図書館の奥へ進んでいった。

 

■■■■■■■■■■■■■■

 

パチュリー

「むきゅー・・・はっ!?」

 

魔理沙

「よお、起きたか?ったく、いきなりぶっぱなしてきやがって。話ぐらい聞けよ?」

 

パチュリー

「・・・魔理沙。今楽にしてあげ・・・」

 

魔理沙

「これ以上やるなら顔面にマスパかますぜ?」

 

パチュリー

「・・・・・・・・・話って何?」

 

起きた後も魔理沙に敵意を示した少女、パチュリーに対し顔面に八卦炉を構えて脅しを言った魔理沙。

これでようやくおとなしくなった。

 

魔理沙

「今日は本を借りに来た訳じゃないんだぜ。いろいろ聞きたい事があるんだ。レミリアの事に加えていくつかな。」

 

パチュリー

「そうゆうのは本を返してから言うのが普通じゃ・・・」

 

魔理沙

「そう言うと思って、まだ読んでない本以外は持ってきた。返すぜ。だから話を聞いてくれ。」

 

パチュリー

「・・・は?・・・ま、魔理沙が、本を返す・・・?何これ?異変?明日幻想郷滅ぶ?ヤバい!逃げなきゃ!?」

 

ドオオオオオン!!!

 

パチュリー

「・・・ごめんなさい。」

 

魔理沙

「分かればよし。今回は割りとマジだ。話が進まないから、ボケるのは無しにしてくれ。」

 

ボケ倒してくるパチュリーの顔横へマスパをぶっぱなし黙らせる。

 

パチュリー

「で、話って何よ?ここまでするなんて、はっきり言うけど異変クラスよ?余程大事な話みたいね?わかった。こあー?机に飲み物二つ用意して。」

 

パチュリーはこあと呼ばれる少女に飲み物を用意させ、魔理沙の向かい側に移動し腰掛けた。

 

魔理沙

「質問は幾つか有るけど、先ずはレミリアについてだ。一体何があった?戒厳令なんてよっぽどのことだろ?」

 

パチュリー

「ああ、レミィが出したあれね?悪いけど私も知らないわ。とにかくここから出るなとだけ。元々出る気もないけどね。ただ・・・」

 

魔理沙

「ただ・・・って何だよ?何かあるのか?」

 

パチュリー

「フランのいる地下から得体の知れない感覚があるんだけど・・・それが何なのかは分からないわ。ものすごく嫌な予感がするだけね。」

 

魔理沙のレミリアについての質問に対し、パチュリーは知らないと答えた後、続けて言った。

 

魔理沙

「嫌な予感か・・・。漠然とし過ぎだな。まあ良いや、次の質問だ。パチュリーは『魔素』って言葉を知ってるか?」

 

パチュリー

「え?魔素?魔素って、あの黒い霧みたいなあの魔素の事?」

 

魔理沙

「え!?知ってるのかパチュリー!?」

 

魔理沙の次の質問は、ショウが戦闘時に使う魔素についてだったが、この質問の答えは魔理沙の予想とは違っていた。

パチュリーは魔素について知っていたのだ。

 

パチュリー

「ええ。まあ・・・かなり古い文献で見ただけだけど。でも、幻想郷には存在しない物質よ?何で魔理沙が知ってるのよ?」

 

魔理沙

「本当に知りたいのはそこなんだ。悪いけど知ってる限りの事を教えてくれ。実は・・・《少女説明中》・・・って訳なんだ。」

 

魔理沙は外来人であるショウの事について説明し、パチュリーの意見を尋ねた。

 

パチュリー

「にわかには信じがたい話ね。体内に魔素を内包って、要は体内に猛毒を宿しているのと同義よ?本当に人間なの?そのショウって外来人は。まあ、結論から言うなら私にも詳しくはわからないから、ここで読んでいく事を約束してくれるなら、私が読んだ文献を読んでいって良いわよ?知りたいなら自分で調べなさい。」

 

魔理沙

「わかった!サンキュー、パチュリー!」

 

パチュリーの承諾を得たので早速文献を読もうとする魔理沙を見て、パチュリーは疑問を魔理沙に聞いた。

 

パチュリー

「・・・やけに真剣ね?ショウって外来人と何かあるの?魔理沙が男の事で一生懸命なんて。」

 

パチュリーの言った質問は本当に何となくだったが、魔理沙にとっては確信を貫く質問だった。

パチュリーの質問に、魔理沙はビシリと音をたてるように固まる。

 

パチュリー

「・・・?魔理沙・・・?」

 

魔理沙

(・・・そういえば、何でだ?私はショウとそんな長い間一緒にいた訳じゃない。だけど、あいつに協力したいと思ってる。さっき森でもキノコを探すよりショウの事を優先したし・・・何でなんだ?でも、あいつの事を考えるのは不思議と嫌じゃない・・・)

 

魔理沙

「・・・・・・・・・・・・・・・(ぽっ)」

 

僅かでは有るが魔理沙の顔は赤かった・・・

それを見たパチュリーは唖然とする。

 

パチュリー

(何で頬を染めてるのよ!?嘘でしよ!?あの魔理沙が!?ヤバい!マジで幻想郷滅ぶんじゃない!?)

 

パチュリーは脳内で3割ぐらい本気で異変を疑った。

その時、魔理沙とパチュリーの体に異変が起きる。

館全体から異様なプレッシャーを感じたのだ。

 

二人

「!?」

 

二人は突然の異常事態に顔を見合わせる。

しかし、そのプレッシャーはお互いが知っている人物の物だった。

 

魔理沙

(これって、ショウのプレッシャーか!?と、とんでもない強さだ!?ここまで届くなんて!?)

 

パチュリー

(これ・・・レミィ?嘘でしょ?これ・・・多分本気だ・・・。レミィ、まさかとは思うけど、殺す気なの?いくら貴方でもそれは不味い!これ程の威圧感、間違いなく紫に気付かれる!)

 

異常事態を感じた二人の行動は速かった。

 

パチュリー

「魔理沙!」

 

魔理沙

「ああ!明らかに普通じゃない!行くぜパチュリー!」

 

二人は慌てて図書館を飛び出した・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■

 

~時は元に戻り、紅魔館メインホール内~

 

レミリア

「さあ・・・私を失望させてくれるなよ?」

 

ショウ

「フー・・・良し!行くぞ!最初から全開だ!喰らい尽くせ!術式・・・解放!黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』!!」

 

ショウはオーバードライブを発動、変化した魔素を纏ってレミリアに向かって猛スピードで接近する。

対してレミリアはショウを待ち構えながら、右手を前に持っていき呟いた。

 

レミリア

「真名解放・・・神葬『スピア・ザ・グングニル』」

 

レミリアの言葉と共にレミリアの右手に朱色の槍が握られる。

しかし、それを見ていたアリスは驚きを隠せない。

レミリアが手にしている槍は普段彼女が使う槍とは全くの別物であり、内包している魔力は桁外れの代物だったのだから。

 

アリス

(う、嘘でしょ・・・?何よあれ!?内臓魔力が尋常じゃない!?不味い・・・あんなのまともに受けたら確実に死ぬ!・・・ショウ!)

 

アリス

「ショウ!その槍は絶対に食らってはダメ!受けたらただじゃすまないわ!絶対にかわして!」

 

アリスが叫ぶ。

あれは食らってはいけない、絶対に受けてはいけない槍だから。

ショウはアリスの言葉を受け、持っていた剣に変化した魔素の一つを纏わせるとそのままレミリアに斬りかかる。

レミリアは持っていた槍で受け止める。

剣と槍がぶつかり合ったとき、メインホール内には嵐のような衝撃波が広がった。

 

アリス

「キャアアア!」

 

衝撃波をまともに受けアリスは体勢を崩してしまう。

それほどの衝撃波がぶつかり合ったときに幾度となく発生しているのだからたまったものではない。

アリスは二人からできる限り離れた壁際に背を向け戦いを見守る。

幾度か切り結び、鍔競り合いになる二人。

互いの獲物を力の限り押し込んでいるだけだが、それだけで、周囲には轟音が響く。

 

レミリア

「ふ・・・さすがだな。余程強い力がなければこの槍に触れた瞬間砕け散るところだ・・・。そうでなくてはな。」

 

ショウ

(なんて力だ!?オーバードライブまで上乗せしたのにピクリともしない!?)

 

レミリア

「このまま気を緩めるなよ?少しでも緩めたら即座に殺すぞ?私を楽しませてくれ。」

 

ショウ

「なめるなよ・・・。まだまだぁ!」

 

体から爆発的に魔素を放出し力任せにレミリアを弾き飛ばす。

距離を開けた後、剣を使い自分の前の空間に術式陣を刻み、同時に身体中の魔素を左手に集める。

 

ショウ

「生半可な技は通用しない。ならば、最大火力を叩き込む!」

 

陣を刻み終わり、魔素も充分に集中出来ている。

少なくとも、前回美鈴に使用した時よりは高い威力が出せる筈だ。

 

ショウ

「受けてみろ!『バニッシュゲイザー』!!」

 

発動と同時にどす黒い波動がレミリアに迫る。

それを見たレミリアは槍を逆手に持ち、ゆっくりと振りかぶった。

 

レミリア

「フフフ・・・良いだろう。正面から叩き潰してやる。行け・・・神殺しの槍。」

 

レミリアが言葉を発した後、手にした槍をショウが放った波動に向かって投げた。

投げられた槍は波動と衝突し、強烈な炸裂音と共に波動をかき消した。

 

ショウ

「な!?」

 

レミリアが投げた槍は推進力を失い地面に落ちていき地面に刺さる。

ショウ自身これほどあっさりと破られるとは思っておらず、驚きを隠せない。

 

レミリア

「ハハハハハ!見事だ。並みの威力なら貫いた上でそのまま相手に突き刺さる威力であった筈だが、凌ぎきったか・・・。良いぞ!その調子だ!ここまでの高揚感は久方ぶりだ!」

 

ショウ

「くそったれ・・・化物かよ!だが・・・諦めるわけにはいかないんだ!」

 

空中の足場を蹴り猛スピードでレミリアに向かっていくショウ。

対してレミリアも刺さっていた槍を地面から引き抜き、ショウを迎え撃とうとする。

二人がぶつかり合う正にその時だった・・・

 

ギィィィィ・・・ザシュ!!

 

ショウ・レミリア

「!?」

 

二人の耳には、扉が開く音、そして、何かが突き刺さる音が響いた。

この時は何が起こったのかわからなかった二人だったが、次に聞こえた声で全てを理解する・・・

 

アリス

「ぐ・・・かはっ・・・。」

 

ショウの耳にアリスの悲痛な声が届く。

そして、レミリアから背を向けアリスがいた方向に視線を向けた時、ショウの理性は砕け散った。

 

???

「お姉様ばっかりズルいよ・・・私にも遊ばせて・・・フフフ・・・アハハハハハハハ!」

 

声を発した人物の姿は見えず、見えるのはアリスの背中とアリスの影から辛うじて見える三日月の笑み。

そして、見えてはいけないものが見えていた。

アリスの背中からは鈍く光る『紫色』の刀身、そして、その刀身を染め上げる朱色の液体、即ち・・・

 

体を剣で貫かれた、アリスの血だった・・・

 

ショウ

「・・・キ」

 

体を震わせるショウの口から溢れるように声が出る。

次の瞬間、怒号のような叫び、そして、絶対なる殺意が放たれた。

 

ショウ

「キサマァァァァァ!!!!!」

 

身を焦がす程の怒り、殺意を纏った刃を振りかざし、笑みを浮かべる『鬼』へと向かう。

激情に身をゆだね、大切な者を傷つけた敵を・・・

 

この手で・・・殺すために・・・

 

幻の旅路 第3話 緋色の狂気 完

 

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『幻蒼異変 第一章《conviction resonance》』

 

to be continue

 




第3話終了です。
資料集更新を挟んで、次回から異変パートに入ります。

異変名は全て英語表記、ブレイブルーのタイトルっぽい感じで題名を決めています。

今回のタイトルは《conviction resonance》
直訳で『信念の共鳴』
タイトルは異変パートの主なテーマを表す名前にしています。

次は資料集更新ですが、これはすぐ終わるので、あまり時間はかかりません。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。



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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part1

更新完了しました・・・
長い、長すぎる・・・更新まで2ヶ月近く。
誠に申し訳ありませんでした。

実のところ、仕事が忙しくまともにさわれなかったので、1ヶ月近くブランクがある状態です。
ただでさえ壊滅的な文章力が下がっていないかと不安ではありますが、完結までは突っ走るつもりですので、お付き合いいただける心優しい方は、どうかお付き合いください。

では、幻蒼異変第一章、スタートです。
お楽しみください。


ショウ

「キサマァァァァァ!!!!!」

 

怒号と共に剣を振りかぶり、一瞬の内にアリスの元までたどり着く。

そして、憎悪を込めアリスを襲った敵に剣を振り下ろした。

 

ショウ

「アリスから・・・離れやがれ!!」

 

???

「フフフ・・・。」

 

三日月の笑みを浮かべる鬼はアリスに突き刺していた剣を引き抜き距離をとる。

剣を引き抜かれたアリスは重力に従い地面に崩れ落ちる。

倒れた床にはおびただしい程の血が流れていた。

 

ショウ

「アリス!しっかりしろ!アリス!!」

 

力の限り呼び掛けるショウ。

すると・・・

 

アリス

「・・・う、うる・・・さいわよ。大丈・・・夫だから、少し・・・落ち着きなさい・・・。」

 

ショウ

「アリス!?大丈夫なのか!?」

 

アリスから、弱々しくはあるものの返事が返ってきた。

 

アリス

「損傷した箇所を・・・魔力で修復しているし、血は組織閉鎖で・・・止血してる。治療は必要・・・だけど、大事には至らないから・・・心配する必要はないわ・・・。」

 

ショウ

「よかった・・・。」

 

アリス

「でも・・・あいつを何とか・・・しないと、どのみち・・・みんな死ぬわよ・・・。」

 

一先ず大事には至らない事が分かり胸を撫で下ろすショウ。

そして、アリスの言葉を受け覚悟を決めた表情に変わる。

 

ショウ

「ああ・・・分かってる。どんな奴が相手でも、どれだけ強大な相手でも、必ず守ってみせる。俺の・・・命に変えても!!」

 

力強く叫ぶショウの体から爆発的に魔素が放出され、ショウの周りを覆っていく。

それを見た鬼は狂気の笑みを浮かべていた。

 

???

「あはは・・・お兄ちゃん強そうだね?これなら久しぶりに・・・楽しく遊べるね!!」

 

そう笑った鬼からは強大なプレッシャーが放たれる。

しかし、そのプレッシャーはさっきまで戦っていた人物のものに酷似していた。

 

ショウ

「・・・?この感じ・・・まさか?」

 

鬼から放たれるプレッシャーに疑問を抱いた時、背後から声が響いた。

 

レミリア

「どういうつもり?・・・フラン!」

 

声を出したのはレミリア、そして鬼に対して『フラン』と呼んだ。

 

ショウ

「フラン?・・・まさか!?お前の妹、フランドール・スカーレットか!?どういう事だ!?幽閉していたんじゃないのか!?」

 

レミリア

「その筈よ・・・。どういう事かしら、フラン?扉の封印は特別製、貴方だけでは開けられない筈よ?」

 

フラン

「別に?普通に『ドカーン』しただけだよ?でも、いつもと感じが違ったかな?でも、今は関係ないよね?さあ、アソボウヨ?」

 

レミリアの問いに答えたフランだったが、直ぐに刺すようなプレッシャーを放ち臨戦体勢を取る。

 

レミリア

「貴方を外に出すつもりはないわ。また、部屋に戻ってもらうわよ!」

 

構えたフランに向かって一直線に突撃するレミリア。

 

フラン

「アハハハハハハハ!先ずはお姉様から遊んでくれるの?久しぶりなんだから・・・スグニコワレナイデネ!!」

 

突撃してきたレミリアを狂ったように笑いながら迎撃するフラン。

二人の吸血鬼による戦いが始まった・・・のだが・・・

 

フラン

「どうしたの?お姉様?いくらなんでも、弱すぎない?」

 

レミリア

「ハア・・・ハア・・・クッ!」

 

フラン

「・・・つまんない。全然楽しめないよ。」

 

始まってから直ぐに均衡は崩れている。

いや、拮抗してすらいない。

先程の暴力的なまでの強さを持っていたレミリアと同一人物とは思えないほどに、弱々しい少女の姿そのものだった。

 

フラン

「・・・何で?何で本気でやらないの?殺し合おうよお姉様!お互いが相手を殺そうと本気を出すから面白いのに!何でちゃんと遊んでくれないの!?」

 

レミリア

「ハア・・・ハア・・・」

 

レミリアは明らかに疲労している。

しかし、先程のような強さを持つレミリアが何故ここまで苦戦しているのか。

アリスの応急処置をしながら戦いを見ていたショウは、レミリアの動きを見て全てを理解していた。

 

フラン

「もういいや・・・つまんない。壊れちゃえ。禁弾『スターボウブレイク』」

 

レミリア

「フ・・・ラン・・・うあ!?」

 

フランが放った弾幕がレミリアを直撃。

かなりの勢いで吹き飛ばされる。

飛ばされた先は壁。

このままの勢いでぶつかれば只ではすまない。

飛ばされたレミリアが壁に激突する直前、レミリアと壁の間に何者かの影が割り込み、レミリアを救いだした。

衝突の衝撃が来ない事を不思議に思い周りを見たレミリアは、自分の現状を理解した。

 

ショウ

「無理してんじゃねえよ。戦いたくないって気持ちがまる分かりだ。俺と戦ってた時のままなら、こんな無様は晒さなかった筈だ。実の妹だから、殺す気にならないんだろ?」

 

レミリアは、ショウに抱き抱えられていた。

所謂、お姫様だっこの状態で。

 

レミリア

「あ・・・貴方に・・・何がわかるのよ!?私達の事を知りもしない貴方が!」

 

最初の内は動揺していたレミリアだったが、此方の事をなにも知らない部外者であるショウが知ったような台詞を言ったのに怒りを覚えて叫んだ。

そして、その叫びに対してショウは口を開いた。

 

ショウ

「わからないな。ただ・・・俺がやらなきゃならない事はわかる。」

 

レミリア

「何をする気?」

 

ショウ

「目の前に苦しんでる人、助けを求める人がいるなら、それを助けるのが俺のやるべき事だ。そして、今苦しんでる奴、助けを求める奴は、レミリアとフラン、お前達だ。」

 

レミリア

「!?わ、私はともかく、フランが苦しんでる?どういう事?」

 

ショウ

「顔を見ればわかるだろ?あいつの本心が。」

 

そう言われたレミリアはフランの顔を見つめる。

フランは変わらず狂気の笑みを浮かべていたが、彼女の右目にはくっきりと、一筋の水の跡が見えた。

つまり、彼女は・・・

 

レミリア

「フラン・・・貴方・・・泣いているの?」

 

フランは涙を流していたのだ。

その事に気づいたレミリアはショウに問いかける。

 

レミリア

「どういう事なの?何故フランが泣いて・・・」

 

ショウ

「原因はわからない。ただ、何らかの理由で暴走しているか、正気を失っていると考えるのが妥当だな。何か心当たりはあるか?」

 

ショウはフランが外的要因により暴走しているか、正気を失っていると考えレミリアに尋ねる。

その問いにレミリアは少し思考した後、はっとなにかに気づいたような表情を浮かべ問いに答えた。

 

レミリア

「そうだ!フランの剣よ!フランの剣の刀身は炎を象った赤色の刀身のはず。あんな紫色ではなかったわ!」

 

ショウ

「やはりか・・・。あの剣からは感じたことがある気配がしていたが、これで確信に変わった。あの剣からは間違いなく魔素の反応がある。しかも、かなり純度が高い。これ程の魔素は一体何処から・・・!?」

 

ショウはフランの持つ剣から魔素を感じ取っていた。

ショウが、その魔素を何処から取り入れたのか思案していた時、強烈な頭痛に襲われる。

そして、ショウの頭の中にアリスと戦っていた時と同じような映像が見えた。

 

ショウ

(こ、これは・・・あの時と同じ・・・?)

 

流れる映像には、二人の人物の姿が映っている。

一人は青年、赤色のジャケットを羽織り腰に大剣を差し膝をついている。

もう一人は仮面の男、白を基調とした鎧のような印象を受ける姿で、背中に身の丈ほどの長い刀を背負っている。

その二人が会話をしていた。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

???

「どうした?何故本気を出さん。貴様は、世界最強ではないのか?」

 

???

「こいつ・・・強いなんてもんじゃねえ・・・化物か!?くそ!傷が治らねえ・・・。どうなってやがる・・・?」

 

仮面の男が刀を突きつけ、青年を見下ろし言葉を発する。

そして、止めを刺そうと剣を振り上げた。

 

???

「さて、貴様との因縁も、これで・・・終焉だ!」

 

仮面の男が剣を振り下ろそうとした瞬間、男の周りの景色が歪み、何かが男を包み込んだ。

 

???

「・・・クッ!?これは!?・・・事象干渉か!邪魔をするな・・・。化け猫め!!」

 

一瞬苦悶の意思を表した男だったが、怒号のような叫びをあげ周りの空間を吹き飛ばした。

そして、青年に対して刀を突きつけ呟いた。

 

???

「さあ・・・冥府の王が呼んでいるぞ・・・。」

 

???

「くそが!俺は、こんなところで死ぬわけにはいかねぇんだよ!てめえがどんだけ強かろうが、負けるわけには・・・いかねぇんだ!」

 

止めを刺そうとする仮面の男に対して、青年は立ち上がり咆哮した。

そして・・・青年は右腕を自身の眼前にかざす。

 

???

「第666拘束機関解放・・・次元干渉虚数法陣展開!」

 

???

「ふ・・・来るか・・・。その力こそ、世界においての根元たる悪、我が切り捨てるべき、邪悪なる『蒼』の力だ!」

 

???

「蒼の魔導書『ブレイブルー』・・・起動!!」

 

青年の叫びと共に、かざした右腕からどす黒い霧が放出される。

そして、青年の右腕は、邪悪そのものを体現したような異形の物に姿を変えていた。

 

???

「いくぞ!このお面野郎が!」

 

???

「いいだろう・・・貴様のその力ごと冥府に送ってやる。我は空、我は綱、我は刃!我は一振りの剣にて、全ての罪を刈り取り、悪を滅する!・・・我が名は『ハクメン』、推して参る!!」

 

二人が同時に飛び出し、中央でぶつかり激しい衝撃波が周りを包み込んだ。

そして、ここで映像が途切れる。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「!?い、今のは・・・?」

 

レミリア

「どうしたのよ!?この状況でボケッとするなんて!?死にたいの!?」

 

意識が戻ったが、状況はほとんど変わっていない。

どうやら、現実ではほんの一瞬の出来事だったようだ。

 

ショウ

(今の映像に出てきた言葉、『事象干渉』、『ブレイブルー』、そして『蒼』・・・か。明らかに今のは俺の記憶だが、意味まではわからない。しかし、あの男の右腕から出ていた霧、あれは魔素だ。使ったのは『ブレイブルー』、そして、仮面の男が言っていた『蒼』の力・・・。無尽蔵に沸きだす魔素、異形の腕・・・。そうか・・・そういうことか!)

 

ショウ

「・・・レミリア。フランの暴走の原因がわかった。」

 

レミリア

「!?暴走の原因がわかったの?」

 

ショウ

「ああ・・・。だが状況は最悪だ。どうやら、フランの剣には『蒼』って奴が埋め込まれているようだ。」

 

レミリア

「は?青?ごめんなさい。意味がわからないわ。どういう事?」

 

原因がわかったと言うショウの言葉、原因は『蒼』だと言うがレミリアには意味がわからない。

レミリアがショウに質問すると、ショウからは曖昧ながらも説明が返ってきた。

 

ショウ

「俺の記憶も曖昧だから、上手く説明は出来ないけどな。『蒼』って言うのは単純に説明すると、無尽蔵に魔素を供給出来る代物だと考えればいい。そして、魔素を過剰供給してしまうと精神に異常をきたしたりする場合がある。最悪の場合、肉体が変異し正真正銘の化物になってしまうこともある。だから最悪の状況なんだ。余り、時間の猶予はないぞ。だから・・・」

 

説明をしたショウだったが、最後に一呼吸おいてこう続けてレミリアに言った。

 

ショウ

「手を貸してくれ・・・レミリア。フランを、お前の妹を救うために!」

 

レミリア

「!?」

 

ショウは先程まで敵対していたレミリアに協力を申し出た。

レミリアはショウの言葉に驚愕の意思を示したが、直ぐに覚悟を決めた表情に変わる。

 

レミリア

「・・・時間の猶予はないんでしょう?なら、改めてそんなこと聞かないで。妹を救うのは姉として当たり前の事よ。足を引っ張る真似をしたら許さないから。」

 

ショウの申し出を承諾したレミリア。

二人はフランの方へ向き直り、ショウは剣を、レミリアは槍を構えて戦闘体勢を取る。

 

フラン

「お話、終わった?ウフフ・・・今度は二人で遊んでくれるんだ。さあ、アソボウヨ。いっぱいいっぱい・・・コロシアオウ!」

 

フランは狂ったように笑いながら、二人に向かって猛スピードで突っ込み、原因である紫色の剣を振り下ろした。

対して、ショウとレミリアは互いの得物でフランの剣を受け止め叫ぶ。

 

レミリア

「フラン!貴方は必ず助けて見せる!だから、待ってなさい!」

 

ショウ

「理由はわからないが、お前は絶対助ける!俺の記憶が、魂が、そう懇願している!死なせはしない。殺されもしない。必ず生きて、正気に戻してやる!」

 

ショウの記憶の中には、狂気を宿しながら、心の中で泣いていた、顔のわからない少女の姿が映る。

その姿は、目の前の吸血鬼の少女と瓜二つだった。

そして、その姿を見たショウは誓った。

この少女は必ず助ける・・・絶対に死なせはしないと・・・

 

to be continue




異変第一章、フラン《狂》対レミリア・ショウ戦導入部終了です。

以後の構成は、フラン戦の戦闘パート、フラン戦終了及び対???戦導入部、???戦の戦闘パート、???戦終了及び解決宴会、異変第一章の後日談といった構成を予定しています。
話数は未定、書きたいことをぶちこんで行くスタイルなので、どれ程の量になるかは分かりません。
更新は極力2週間を目指しますが、今回みたいに大遅延する可能性もあるので申し訳ありませんがご了承ください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part2

更新完了しました。

やはり遅くなってしまい申し訳ありません。
更新間隔が長くなるのは仕事の都合もあり諦めている部分もありますが、文章構成力が上がれば多少はましになるかもしれません。

やっぱり、活字や小説等を読み込んで勉強すべきですかね?

尚、異変パート中も後日覚醒能力の他に新技や新スペルも登場予定です。
また、フラン戦では遂に、オリ主のアストラルヒートが解禁される予定です。
一撃必殺の技にふさわしい性能にするつもりですが、やり過ぎないようによく考えて作るよう気を付けます。
資料集更新は異変パート後になりますのでご了承ください。

では、本編をお楽しみください。


フランの剣を受け止めていた二人は、呼吸を合わせてフランを弾き飛ばし距離をとる。

距離が離れたことを確認したショウはレミリアに話しかけた。

 

ショウ

「レミリア、手段は問わない。フランの動きをどちらかが止めて、もう一人が最大火力でフランの剣を破壊するんだ。剣を破壊すれば魔素の供給は止まる。そうすれば最悪の状況だけは回避できるはずだ。」

 

レミリア

「わかったわ。破壊すれば、とりあえず変異してしまう事は避けられるわけね?」

 

ショウ

「そうだ。ただ、生半可な攻撃では破壊できないぞ。供給される魔素により剣自体がかなり強化されているはずだ。あの剣もレミリアの槍と同じく魔力を内包した魔導兵装だろ?魔素の影響で剣の特性も変化している可能性もある。俺の時みたいに油断や慢心はするなよ?」

 

レミリア

「な!?バ、バカ言わないで!時と場合くらい弁えてるわよ!」

 

ショウ

「なら結構だ。行くぞ!レミリア!」

 

レミリア

「足を引っ張らないでよ!ショウ!」

 

ショウの作戦を聞きレミリアが了承、フランとの戦闘を開始しようとした時、メインホールの扉が開いた。

 

魔理沙

「ショウ!一体何事だ!?・・・って!?」

 

パチュリー

「レミィ!馬鹿な真似はやめなさ・・・!?」

 

入ってきたのは魔理沙と知らない女性だったが、レミリアの名前を略称で呼んだことを考えれば、紅魔館の住人だと分かる。

ホール内に入ってきた二人の目に飛び込んできたのは、上空で狂気の笑みを浮かべる鬼と、それと相対しているショウとレミリアの姿、そして、二人の後ろで血を流しながら横たわるアリスの姿だった。

 

魔理沙

「ア、アリス!?どうしたんだぜ!その怪我!?重症じゃないか!?おい、ショウ!どういう事なんだぜ!?」

 

パチュリー

「これは一体・・・?レミィ!何があったのよ!?」

 

フラン

「何って、私がアリスを刺したんだよ?だって、お姉様すごく楽しそうに遊んでたんだもん。フランだって遊びたい!楽しく楽しく・・・殺し合いしたかったんだよ。アリスはすぐ壊れちゃったけどね?お姉様は本気で遊んでくれないし。誰でもいいから遊ぼうよ?誰でも・・・イイカラサァ!」

 

現状を理解出来ない二人はショウとレミリアに荒い口調で質問したが、回答したのはどちらでもなく、上空にいた張本人だった。

事の説明をした後、翼を広げて魔理沙達に襲いかかるフランだったが、直前に割り込んだショウ達に止められた。

フランの攻撃を受け止めたショウ達は、魔理沙達に背中越しに叫ぶ。

 

ショウ

「魔理沙!訳は後で話す!直ぐにアリスを治療してくれ!アリス自身が治癒魔法で治療しているが、今にも気絶しそうだ。気絶したら治癒魔法も止まってしまう。時間がないんだ!頼む!」

 

レミリア

「パチェは魔理沙を手伝いなさい!急所は外してるみたいだけど出血がひどいわ。魔理沙一人じゃ手に負えないはずよ。直ぐにここから連れ出して治療を施しなさい!」

 

魔理沙

「わ、わかったぜ!」

 

パチュリー

「訳は後で教えなさいよ、レミィ!魔理沙!アリスを担いで図書館へ!私は咲夜に永琳を呼びに行かせるわ!今アリスを飛行でつれていくのはリスクが高すぎる!図書館のベッドに寝かせておきなさい!」

 

魔理沙

「ああ!咲夜は門の前で休んでるはずたぜ!直ぐに向かってくれ!」

 

魔理沙達にアリスの治療を依頼し、魔理沙達は直ぐに行動を開始した。

魔理沙はアリスを担いでメインホールを出て図書館へ。

パチュリーは咲夜のいる門の前へと飛行していった。

 

フラン

「邪魔しないでよお姉様。私はただ遊びたいだけだよ?はやく、早く誰か遊んでよ!」

 

ショウ

「お前の相手は俺達だろ?ちゃんと遊んでやるから他人を巻き込むな。俺達との遊びに集中しろよ。でないと・・・せっかくの遊びが、直ぐに終わりになるぜ?」

 

レミリア

「フラン!今度は全力でやるわ!必ず貴方を止めて見せる!だから、私達の相手に集中しなさい!」

 

フランを再び弾き飛ばし、フランに啖呵を切るショウとレミリア。

ショウは左手の指先に傷をつけ、レミリアは右手を前に持っていき、それぞれ叫んだ。

 

ショウ

「罪の聖櫃『クライムアーク』・・・起動!!」

 

レミリア

「真名解放・・・神葬『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

ショウ

「さあ、遊ぼうぜ!フランドール・スカーレット!!」

 

レミリア

「必ず助けて見せる!行くわよ!フラン!!」

 

二人は自らを鼓舞するように叫び、フランに向かって跳躍した。

対するフランは狂ったように笑いながら声をあげる。

 

フラン

「アハハハハハハハ!そうだよ!それを待ってたんだよ!ようやく遊ぶ気になってくれたんだね!さあ、たっぷり遊ぼう?たくさんたくさん、コロシアオウヨ!!」

 

翼を広げて一直線にこちらに向かってくるフラン。

上段から力任せに紫色の剣を振り下ろす。

対するショウ達は左右に別れて回避し、フランに向かって弾幕を放った。

しかし、フランは避ける動作を取らず、周囲に向かって横薙ぎに剣を振り抜き、弾幕を切り払った。

 

フラン

「ダメだよ。通常弾幕なんてつまんない。殺す気で来てくれなきゃ。」

 

ショウ

「簡単に言ってくれやがって。なら、お望み通りに全力だ!レミリア!俺に続け!」

 

レミリア

「わかったわ!」

 

スペルカードを取り出したショウの掛け声に合わせてレミリアもカードを掲げる。

 

ショウ

「喰いちぎれ!闇牙『キリングラッシュファング』!」

 

レミリア

「行け!紅符『スカーレットシュート』!」

 

ショウ達はスペルカードを発動。

それぞれのスペル弾幕がフランに迫る。

しかし、それでもフランは動かず不適に笑いながら言い放った。

 

フラン

「フフフ・・・そうこなくちゃね。でも、まだ足りないかな?禁忌『クランベリートラップ』」

 

フランもカードを取り出しスペルを発動。

二人が放ったスペル弾幕を相殺するつもりかと思っていたが、結果は予想を越えていた。

フランのスペルは二人の弾幕を打ち消して尚健在で、二人に迫ってきた。

 

ショウ

「そ、そんな馬鹿な!?ぐあ!?」

 

レミリア

「嘘でしょ!?きゃあ!?」

 

信じられない結果に反応が遅れ被弾してしまう二人。

被弾した二人を見下すようにフランが声を発した。

 

フラン

「全然足りないよ。殺す気がない弾幕じゃ遊びにもならない。ねえ?真面目に遊んでくれるって言ったよね?この程度なの?これで本当に全力なら、もう殺しちゃうよ?」

 

ショウ

(くそ・・・出来る限り傷をつけたくはない。しかし、このままじゃ俺もレミリアもじり貧だ。仕方ない・・・ある程度のダメージは覚悟するしかないか・・・。)

 

ショウ

「・・・・・・後悔するなよ?」

 

フラン

「?」

 

フランはショウの呟いた言葉が聞き取れず、疑問符を浮かべていた。

そして・・・

 

ショウ

「―――シッ!」

 

フラン

「!?」

 

一瞬凄まじい殺気が放たれると同時にフランの視界からショウが消える。

次の瞬間、フランの右腕に浅く切り傷がつき、背後にはショウが立っていた。

 

ショウ

「出来れば君を傷つけたくなかったが、これ以上は許容できない。殺しはしないが、多少の怪我は覚悟してもらうぞ・・・。」

 

肩越しにフランを睨み付け強烈な殺気をフランに向けるショウ。

その殺気を見たレミリアは戦慄し、フランは狂気に満ちた笑顔を浮かべた。

 

フラン

「アハハハハハハハ!凄い殺気!これこれ!これだよ!やっぱりお兄ちゃんを選んでよかった。お兄ちゃんとなら、本当に楽しく遊べそうだね!!」

 

ショウの殺気を受けたフランから更に強烈なプレッシャーが放たれる。

 

ショウ

「・・・レミリア。」

 

レミリア

「!?な、何?」

 

放心状態のレミリアに声をかけ正気に戻す。

戻ったのを確認したショウは続けて言った。

 

ショウ

「これ以上長引けばじり貧だ。悪いけど、フランを無傷で救うのは難しい。多少なりとも怪我をさせることになりそうだ。すまないが、最悪の結果も覚悟してくれ。」

 

レミリア

「ショウ・・・わかったわ。好きにしなさい。フランも吸血鬼よ。そう簡単には死なないわ。とりあえず助けることだけに集中してちょうだい。」

 

ショウ

「わかった。ならまずはフランの体力を削るぞ。拘束しやすいように動きを鈍らせるんだ。行くぞ!!」

 

レミリア

「了解よ!」

 

ショウとレミリアは同時に突っ込む。

しかし、フランも二人を迎撃しようとしていた。

フランが槍を構えて突撃してきたレミリアに剣を振り下ろす。

 

ショウ

「させねえよ。」

 

ショウの言葉と同時に、フランの足元から魔素が放出され、衝撃によりフランを後方へ弾き飛ばす。

 

レミリア

「そこ!」

 

そして、空中に飛び退いたフランめがけレミリアは槍を投擲、唸りをあげて槍がフランに向かう。

 

フラン

「まだまだ!」

 

フランは向かってくる槍を剣で打ち落とそうと上段から力任せに剣を振り下ろした。

激しい炸裂音と共に暫く拮抗したが、やがて槍が弾かれ地面に落ちる。

 

フラン

「やっとお姉様も本気になってくれたね。アハハ!楽しくなってき―――」

 

ショウ

「邪影槍『イビルゲイトランス』!!」

 

槍を弾いて笑いながら話すフランが言葉を言い終わる前に、フランの背後にいたショウがカードを掲げてスペルカードを発動した。

発動した瞬間、ショウの周囲に黒いオーラを纏った槍が複数出現し、フランに向かって行った。

 

フラン

「黒い槍?でも、軌道は直線的だね。こんなの簡単によけらるよ。」

 

槍は直線的な軌道のためフランは横に動きあっさりと回避した。

だが、ショウはかわされたにも関わらず全く表情を崩していない。

そして、ショウが口を開いた。

 

ショウ

「安心するのはちょっと早いな、ガキんちょ!」

 

フラン

「え?何?・・・きゃあ!?」

 

ショウの言葉に疑問を抱いたフランだったが、直後に背後から衝撃を受け体勢を崩した。

 

フラン

「いたた・・・。何?何が起こったの?」

 

予想していなかったダメージを受けたフランは周りを見渡す。

周囲を確認したフランの目には、空間に空いた穴のようなものが複数、自分を取り囲むように浮かんでいるのが見えた。

そして、その穴から無数の黒い槍が出現し、フランめがけて飛来する。

 

フラン

「空間転移型の弾幕!?すぐ地面に降りないと!」

 

ショウ

「逃がすか!レミリア!広範囲タイプのスペルを頼む!」

 

レミリア

「了解よ!天罰『スターオブタビデ』!」

 

ショウ

「爆ぜろ!混沌『カオスゲヘナ』!」

 

槍を回避するため地面に降りて行こうとするフラン。

対して、ショウは空中から逃がさないようにレミリアにスペルカードの発動を頼み、自身もスペルを発動。

レミリアからレーザーが複数放たれると同時に球体とリング状の弾幕が発射される。

ショウのスペルが発動すると、フランの周囲にゆっくりと動く黒い球体と素早く直線的軌道でフランへと向かっていく白い球体がそれぞれ複数出現した。

 

フラン

「白と黒の球体・・・?」

 

飛来する黒い槍とレミリアのスペルを回避しながら、フランはショウが発動した新しいスペルカードを観察していた。

黒い球体はフランの周りをゆっくりと旋回しているのみで向かってくる事はなく、白い球体も直線的な軌道のため回避は容易であった。

しかし、白い球体がフランに回避されフランの背後に漂っていた黒い球体に衝突した時、黒い球体が白い球体を吸収し、黒と白の斑模様の巨大な球体に変化した球体は直後に爆発、周囲に対して無差別に大量の弾幕をばらまいた。

 

フラン

「うそ!?危なっ!?って、きゃあ!?」

 

フランは球体の変化に驚愕したが、瞬時に反応し背後からばらまかれた弾幕を咄嗟に回避したものの、回避した先でレミリアの弾幕に被弾、休む間もなく黒い槍がフランの直近まで迫っていた。

 

フラン

「この!邪魔だよ!」

 

フランは持っていた剣を横薙ぎに振り抜き槍を吹き飛ばしたが、吹き飛ばした後のフランの視界には、目の前で巨大化している3つの斑模様の球体が写っていた。

 

フラン

「な!?嘘でしょ!?」

 

フランが認識した正にその瞬間、3つの球体は爆発し弾幕をばらまく。

至近距離で広範囲にばらまかれた弾幕をかわせるわけもなく、まともに被弾したフランは後方に弾き飛ばされ壁に激突した。

 

フラン

「かはっ!」

 

衝突した衝撃で肺の空気が押し出され、苦しさからフランの動きが止まる。

 

ショウ

「今だ!やるぞ!」

 

レミリア

「このチャンス、逃しはしないわ!」

 

動きが止まったのを確認した二人は瞬時に最大級の技を放とうと力を集中させる。

 

ショウ

「貫け!『バニッシュゲイザー』!!」

 

レミリア

「行け!神殺しの槍!!」

 

ショウとレミリアは同時に最大火力を解き放った。

レミリアが投げた槍を覆うようにショウの黒い波動が放たれ、一つの巨大な波動になり、真っ直ぐフランが右手に持っている元凶の剣に迫る。

 

レミリア

「これで!!」

 

ショウ

「終わりだ!!」

 

直撃を確信し咆哮する二人。

二人の放った波動が直撃する正にその時だった・・・

 

フラン

「・・・・・・・・・・・・・・・魔剣―」

 

衝突の瞬間、フランが何かを呟く。

そして―

 

フラン

「『ダーインスレイブ』!!」

 

フランの咆哮が響き、紫色の鈍い光が放たれた。

一瞬目が眩んだ二人がフランを見ると、そこには、傷一つない紫色の《巨大》な剣を振り下ろしたフランが、こちらを睨み付けていた。

 

ショウ

「ば、馬鹿な・・・。無傷だと!?」

 

レミリア

「そ、そんな・・・。」

 

信じられない結果に驚愕する二人。

そして、フランが凄まじい殺気を放ちながら口を開く。

 

フラン

「お兄ちゃん、お姉様・・・」

 

口を開いたフランの顔は、正に《悪鬼》そのものだった。

 

フラン

「あまり調子に乗らないでよ・・・。勢い余って・・・コロシチャウジャナイ!!」

 

狂気に歪んだ顔のフランが剣を掲げ、言葉と共に振り下ろした。

剣はショウとレミリアの間を通過し、紅魔館の床にぶつかると、まるでバターのように床が抵抗なく抉り取られた。

 

二人

「な!?」

 

その事実に驚きを隠せない二人。

その二人を狂気に歪んだ顔で見つめるフラン。

そして、恐怖に屈しかけていたレミリアの頭には、ある光景が写り込む。

それは、自身の能力『運命を操る程度の能力』により写し出された未来の光景。

 

血にまみれたフランの前に横たわる男、そして、涙を流しながら天を見上げる自身の姿だった・・・

 

to be continue

 




異変パート第二部終了しました。

今回はオリ主の新スペルカードが2枚登場しましたが、基本はオリ主の必殺技から似たようなニュアンスの単語をチョイスしています。
(シャドウファング→キリングラッシュファング等)
フラン戦では、未だ全部の技は出しきれないと思いますが、異変パート終了までにはオリ主の必殺技を全て出す予定です。

次回更新は出張があるので未定ですが、概ね一月辺りを目処にちょこちょこ仕上げていきますのでご了承ください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part3

やっと更新が終わりました。
すいません、二ヶ月近くもかかってしまいました。

仕事の都合もそうですが、新しく出たモンハンワールドやドラゴンボールのゲームが楽しすぎてついついやり込んでしまいました。

異変パート3話目です。
今回の更新で、遂にオリ主の記憶が甦ります。
しかし、まだほんの一部のみなので、新能力覚醒までには至りません。
覚醒の為には、少なくともあと一人記憶を取り戻す必要があります。
尚、今回及び次回の話の中には新能力覚醒に必要となる絶対的な要素が含まれています。

では、異変パート第3話お楽しみください。


レミリア達の最大火力を持ってしても傷一つつかないフランの剣、そして、その凄まじい力を目の当たりにしたレミリアは恐怖に屈しかけた。

その恐怖はレミリアの能力に干渉し、未来の光景を写し出す。

それは、レミリアにとっての絶望を表した光景であった。

 

レミリア

(い、今のは・・・未来の光景・・・?倒れていたのはショウ、フランは血まみれ・・・そんな・・・。私達には、フランを・・・救えない・・・?)

 

絶望の光景を見てしまったレミリアは呆然と立ち尽くしてしまう。

しかし、隣からかけられた声により正気を取り戻した。

 

ショウ

「レミリア!しっかりしろ!お前が諦めてどうするんだ!絶望的な状況だが、諦める理由にはならない!前を見ろ!」

 

レミリア

「!?シ、ショウ・・・。」

 

ショウ

「お前が諦めたら誰がフランを止めるんだ?大切な家族なんだろ?お前が・・・レミリアがやらなきゃならないことなんだ。俺も出来る限りの事はする。だから、お前だけは諦めるな!」

 

ショウの言葉を受け、足に力を込め立ち上がるレミリア。

その目には闘志が戻っていた。

 

レミリア

「・・・ただの人間のくせに偉そうに言わないで。誰が諦めるもんですか!フランは、必ず助ける!」

 

ショウ

「やれば出来るじゃないか。その調子で頼むぜ?」

 

レミリア

「・・・・・・・・・・・・ありがとう。」

 

ショウ

「・・・礼は後だ。行くぞ!!」

 

レミリア

「ええ!行きましょう!!」

 

闘志が戻った二人は再びフランへと向き直る。

 

フラン

「お話は終わったかな?じゃあ、続きをしましょう?お兄ちゃん、お姉様。でも、さっきのは少し痛かったから、本気で行くよ?すぐ壊れないでね?」

 

様子を見ていたフランは二人の話し合いが終わったのを確認してから口を開き、同時にカードを取り出した。

そして、言葉の終わりと共にカードが光る。

 

フラン

「禁忌『フォーオブアカインド』」

 

フランのスペルカード宣言を受け、警戒するショウ。

スペル弾幕が来るものとばかり思っていたが、フランのスペルはショウを絶望させて尚余りある程の最悪な物であった。

 

ショウ

「嘘だろ・・・おい・・・。」

 

フランはショウの目の前で4人に分身してみせたのだ。

そして、その分身達もオリジナルと同じく巨大化した剣を所持している。

 

ショウ

「レミリア!あれは一体何なんだ!?幻か?」

 

レミリア

「・・・いいえ。本体は当然一人だけど、他の奴も普通に攻撃してくるわ。単純に2対1が4対2になったってことよ。」

 

ショウ

「・・・・・・ハハ・・・ったく。呆れるほど無理ゲーだな・・・。しゃーねえ!此方もなりふり構っちゃいられねえか!後の事なんか考えない・・・。全力だ!術式解放!黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』!!」

 

絶望的な事実がレミリアから告げられたが、ショウはあろうことか笑ってみせたのだ。

それを見たレミリアは驚きを隠せない。

更に、ショウはレミリア戦でも見せたオーバードライブを起動したが、魔素の放出量はレミリア戦の時よりも遥かに多かった。

 

レミリア

(これは、私との戦いで使った・・・?でも、あの時とは全く別の力と言っても良いくらいに・・・強い!?)

 

ショウ

「・・・まあ、そう思うよな。自分と戦った時より強いって思ってるだろ?誤解が無いように言っておくが、あの時も全力だった。ただ、ドライブってのは魂の力だ。本人の気の持ち様、テンションで出力が変わったりするんだよ。今はただ、フランを助けることだけに集中してるからな。所謂、一意専心ってやつだよ。」

 

ショウの体から迸る魔素はレミリアの時とは雲泥の差であった。

そして、オーバードライブにより魔素が獣の頭のように変化していく。

 

ショウ

「やることは変わらない。ターゲットが増えただけだ。見た目で判別できない以上、全部の剣を破壊するしかない。かなりきついが・・・やるしか、ないよな!行くぞフラン!」

 

ショウは獣の頭に変化した魔素を剣に纏わせ、4人になったフランへと突っ込んでいく。

レミリアもショウに続き、フラン達と衝突、戦闘が開始された。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~時は戻り、紅魔館大図書館へ~

 

魔理沙

「くそ!血が止まらない・・・。咲夜、急いでくれ・・・!」

 

アリスに応急処置を施す魔理沙だったが、すでにアリスは気を失っており、自ら治療が出来ない状態だった。

組織閉鎖が失われ出血が多くなっており、危険な状態だ。

魔理沙とパチュリーは交互に治癒魔法を施しているが、容態は徐々に悪化していく。

余り猶予は残されていなかった。

 

パチュリー

「まずいわね・・・。これ以上血を失えば、いくら人外の魔女とはいえ、生命維持はきつくなる・・・。まだなの?咲夜!」

 

その時、勢いよく扉が開く。

 

咲夜

「パチュリー様!」

 

二人

「!?咲夜!」

 

二人の耳に咲夜の声が届く。

そして、咲夜の声が届くのとほぼ同時に別の女性の声がした。

 

???

「これは・・・。ひどいわね・・・あと数分遅れていたら危なかったけど、これならなんとかなりそうね。取り敢えず最優先な止血から行うから、そこを退いてくれる?」

 

そこには、赤と青のコントラストの服を着た女性が立っていた。

その女性を見た魔理沙とパチュリーはほっと胸を撫で下ろし、続けて言った。

 

魔理沙

「本当か!?アリスの容態は大丈夫なんだな!?なら、私はすぐに霊夢を呼んでくる。ショウとレミリアだけじゃ、あいつがスペルカードを使ったら手が足りなくなるからな。ここは任せるぜパチュリー!」

 

パチュリー

「わかったわ。なら私は、門にいた美鈴に加勢を頼んでくる。終わったらこっちに手伝いに来るから、それまではアリスを頼むわよ。永琳。」

 

パチュリーの言葉に先程の女性が答える。

 

永琳

「安心しなさい。私が来た以上、絶対に助けるわ。」

 

魔理沙

「よろしく頼むぜ。じゃあ、私は霊夢を超特急で呼んでくる!ショウ、無事でいろよ・・・。」

 

永琳の言葉を受け、箒に跨がりながら答える魔理沙。

図書館の窓から猛スピードで空を飛んでいった。

 

パチュリー

「私も美鈴を呼んでくるから、ここは任せたわ。すぐに戻るけど、それまでアリスを頼むわよ。」

 

パチュリーも図書館を出て未だ休んでいる美鈴を呼びに行った。

永琳と一緒に来た咲夜は、強行軍であったのかソファーに横になり体を休めていた。

そして、治療を始める永琳。

持っていた荷物からたくさんの瓶を取りだし、手早く治療を済ませていく。

 

永琳

「ああやって啖呵を切った以上、責任は取らないとね。医者の名にかけて必ず救ってみせる。死なせはしないわ。」

 

額に汗を滲ませながら、永琳による治療は進んでいく・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~場面は戻り、紅魔館メインホール~

 

ショウ、レミリアの二人は、四人に分身したフラン達と戦闘している。

しかし・・・

 

フランA

「アハハハハ!動きが鈍くなってるよ?お姉様!」

 

フランB

「そんな動きじゃかわせないよ!」

 

レミリア

「クッ!?こう、多角から攻撃されちゃ・・・」

 

フランA

「隙見っけ。そこだよ!」

 

レミリア

「!?しまっ――きゃあ!?」

 

攻撃を受けた際の僅かな硬直を狙われ弾幕の直撃をうけてしまう。

衝撃により紅魔館の床に叩きつけられたレミリア。

 

ショウ

「レミリア!?くそ!」

 

直撃を受けたレミリアを助けようとレミリアの元へ向かおうとするショウだが――

 

フランC

「余所見しちゃダメだよお兄ちゃん。」

 

フランD

「お兄ちゃんの相手は私達でしょ?」

 

ショウの前に残り二人のフランが立ち塞がる。

 

ショウ

「邪魔だ!どけ!」

 

魔素を解放しフラン達に向けて剣を振り抜くショウ。

しかし、ここでショウは、自身の身に起きていた異変に気付いた。

 

ショウ

(な!?こ、これは・・・?何が起こったんだ?)

 

ショウが振り抜いた剣をあっさりと受け止め、反撃により地面にショウを叩きつけたフラン。

かろうじて受け身を取り衝突は避けたが、ダメージ全ては受け流せず膝をつき、フランを見上げるショウ。

その顔は、困惑の表情を浮かべていた。

 

ショウ

(どういう事だ・・・?魔素が・・・、魔素の出力が、明らかに落ちている!?)

 

先程フラン達へ振り抜いた剣には、自身の感覚的にかなりの魔素を込めて振ったつもりだった。

しかし実際は、ほとんど込めることができなかった。

更に、改めて冷静に考えれば、自身の体から放出されていた魔素の勢いも先程に比べて格段に弱くなっている。

つまり・・・

 

ショウ

「体から・・・魔素が減っている・・・だと。」

 

ショウの体から放出される筈の魔素が、『減っていた』のだ。

その事に疑問を抱いたショウはフラン達を見る。

そして、フラン達にも明らかな異常が起きていた。

フラン達が持っていた剣の紫色の光が、先程に比べても明らかに輝きを増していた。

その結果から、ショウは直ぐ様異常の原因を見抜く。

 

ショウ

「まさか・・・お前ら。俺の魔素を、吸収・・・しているのか・・・?」

 

フラン達

「あれ?ばれちゃった?案外早かったね?そうだよ。これが、魔剣『ダーインスレイブ』の特性。つまりは・・・対象の『捕食』・・・だよ。」

 

ショウ

「『捕食』・・・だと?」

 

フラン達

「うん。相手の力を奪い取り、自分の力に変える能力。つい最近、この剣を手に入れてから出来るようになったんだ。」

 

フラン達四人は同時に話す。

この異常事態は自分の剣が持っている力だと。

ショウは改めて考える。

フランが元凶の剣を使いはじめてから、レミリアの動きが鈍くなり、自分の魔素が減ってしまったこと。

そして、それとは逆にフラン達の力は徐々に増していること。

その事実は、思考していたショウの頭の中から、一つの記憶を呼び覚ました・・・

 

ショウ

(・・・何故だ・・・)

 

頭の中から沸き上がる感情。

それは・・・疑惑。

眼前にある事象は、絶対にあり得ない筈なのに。

 

ショウ

(・・・どういう事だ・・・)

 

心の奥から溢れ出す感情。

それは・・・憤怒。

身を焦がす程の・・・怒り。

 

二つの感情が二重螺旋を描き、やがて心の中で一つになる。

ゆっくりとショウは口を開いた。

そして・・・心の中では、甦った記憶が沸き上がるように、ある『人物』の言葉が紡ぎ出される。

 

ショウ

「何故だ・・・!・・・そいつは・・・!」

 

???

《辛くて、悲しくて、もう誰も・・・》

 

ショウ

「その力は・・・アイツの!」

 

???

《失いたくねえから・・・大事な物を、守りたいから!》

 

そして遂に、ショウはその人物の『名前』を口にした。

 

ラグナ

《俺は、力を求めたんだ!!!》

 

ショウ

「『ラグナ』が求めた・・・守るための力!『ソウルイーター』じゃねえか!!!」

 

ショウの眠っていた記憶が、遂に甦った。

止まっていた時計の針は動きだし、ショウの内に眠る新たなる力の胎動が始まる・・・

 

to be continue




異変パート第3話終了です。

ご覧の通り、オリ主が取り戻したのは、死神『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』の記憶です。
そして、話中に出てきたラグナの台詞は、ラグナが力を求めた理由を自覚した時に喋った台詞を採用しました。

次回で対フラン戦は終了し、第2戦の導入部を書いてから第2戦を書く予定です。
異変パートの後は、日常パートと紅魔館訪問及びレミリア再戦、そして、一つ目のギャグシナリオを投稿します。
尚、ギャグシナリオの投稿時には少しばかりの遊び心で、元のゲームであった選択肢システムを採用します。
内容は、本編進行の話とギャグシナリオの話をそれぞれ作り、前の話の最後で選択肢を設けます。
そして、本編進行の話とギャグシナリオの話を同日の同じ時間に投稿し、タイトルに選んだ選択肢を貼っておけば、閲覧した方が選んだ選択肢がどちらの話なのかが楽しめると思いますので上手く出来るかはわかりませんが、試してみようと思います。
ただ、同時投稿の関係上、更新がかなり遅くなるのは確実ですので、その点はご了承ください。

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part4

やっと・・・終わった・・・。

長い間、打ち込んでは手直しを繰り返して、約4ヶ月。
やっと完成しました。
文章は最長の一万字超。
長い間更新できず本当にごめんなさい。

フラン戦決着です。
次回からは、導入部を挟んで異変第二戦闘パートにはいります。

では、長いことお待たせしましたが、本編をお楽しみください。


ショウ

「何故お前がその力を使える!?それは、『ラグナ』のドライブだ。ドライブは魂の力。同じドライブを持っているなどあり得ない!何処でそれを手に入れた!?」

 

取り戻した記憶が、フランが持つ剣の力を認めない。

認める訳にはいかなかった。

ショウの問いに対して、フラン達は疑問を浮かべて答える。

 

フラン達

「そんなの知らないよ。私が閉じ込められていた部屋に水晶みたいな石が落ちてたから拾っただけ。そしたらすごい力が溢れてきたんだ。今なら何でも出来そうって位の力がね。」

 

ショウ

(拾った・・・だと?・・・嘘を言っているようには見えない。恐らく真実だ。つまり、蒼の欠片が彼女の部屋に落ちていた?馬鹿な・・・いくらなんでも、ずっと落ちていたわけがない。誰かが持ち込んだ?ならば、何のために・・・?)

 

フランの答えに考えを巡らせる。

言っている言葉には恐らく嘘はない。

しかし、自然に生まれるような代物でもない。

残る可能性は、何者かが彼女の幽閉場所に持ち込んだ位しかなかった。

 

フラン達

「そんなのどうでもいいじゃない。私は今すっごく楽しいんだよ!この力があれば何でも出来る!もう、私を誰も縛り付けたり出来ない!やっと私は・・・自由になれたんだ!」

 

フラン達は続けて叫ぶ。

そして、言葉の最後に、自分はとうとう『自由』になれたと言った。

この言葉は恐らく、彼女にとっての本音。

 

ショウ

「・・・『自由』か・・・。レミリア、起きてるか?容態はどうだ?」

 

レミリア

「・・・え、ええ。なんとか無事よ。ただ、何故か相当疲労してる。ここまで動けなくなるほどダメージは貰ってない筈なのに。」

 

ショウ

「そいつについてはあとで説明する。今聞きたいのは・・・フランは、どのくらい幽閉されていたのかってことだ。」

 

ショウの考え。

それは、フランが今不安定な状態なのは蒼だけじゃなく、フランが心の奥で抱いている感情が蒼により増幅されているからだと当たりをつけた。

フランの方へ意識を向けつつ、レミリアにフランが抱く願望についての探りを入れる。

 

レミリア

「・・・最初は幽閉していた訳じゃない。普段は姿そのままの大人しい子だった・・・。時折、自分の能力に耐えきれず、情緒不安定になるときもあったけど、それも私や周りで抑える事ができたから。でも・・・フランの能力は年を重ねるごとに凶悪になっていったわ。」

 

レミリアは静かに語る。

 

レミリア

「フランの能力は『ありとあらゆる物を破壊する』程度の能力。文字通り全てを破壊できる力よ。その力を制御できずに暴走させてしまうことも少なくなく、暴走した時の被害は尋常じゃなかった・・・。幸いにも能力による死者は出なかったけど、私達では抑えきれないほどに力が強くなっていたのよ・・・。だから・・・私は・・・」

 

レミリアの言葉は徐々に弱々しくなり、最後は何かを堪えるような表情で呟いた。

 

レミリア

「・・・私は・・・フランを、紅魔館の地下室に幽閉したのよ・・・。もう、500年程前の話よ・・・。フランは私の、たった一人の家族・・・。私は・・・フランに、人殺しを・・・させたくなかった・・・。罪を背負うのは、私までで十分よ・・・。」

 

言葉を締めくくったレミリアは肩を震わせていた。

 

ショウ

「レミリア・・・。わかった。もう十分だ。言いにくいことを聞いて悪かったな。おかげで大体わかった。」

 

レミリア

「え?」

 

レミリアの答えに納得したショウ。

大体のことはわかったと言った

 

ショウ

「フランの暴走は直接の原因こそ取り込まれた蒼の欠片による物だけど、フランが奥底に抱いていた感情が蒼により増幅されているからこその暴走である可能性が高い。そして、フランが抱いている感情、願望と言ってもいいかな。それは、『自由』になりたいって感情だ。」

 

レミリア

「自由・・・まさか!?」

 

ショウ

「ああ。今レミリアが考えた答えで間違いない。フランは、外に・・・出たかったんだ。外に出て自由に生きたいと。だが、出来なかった。外に出て力を暴走させれば少なからず被害が出る。それを分かっていたから、自分の意志を殺して地下室にいたんだろう・・・。」

 

レミリア

「フラン・・・あなたは・・・。」

 

フランに意識を向けたままレミリアと会話していたショウだったが、完全に意識をフランに戻し剣を構え、叫んだ。

 

ショウ

「フランのこの願いは尊い物だ。出来るなら叶えさせてやりたい。だが、いや、だからこそ!今のフランは止めなきゃならない!彼女の願いを・・・本当の意味で叶えさせてやるために!」

 

オーバードライブによる魔素の殆どはフランのソウルイーターに吸収されてしまった為、オーバードライブは解除している。

というより、解除せざるをえない状況だった。

フランがソウルイーターにより魔素を吸収しているのなら、高純度の魔素を用いるオーバードライブを使えば、フランの状態が更に悪化してしまう。

ショウは魔素を用いた殆どの攻撃を封印されたも同然だった。

 

ショウ

(・・・だが、状況は最悪だな。俺は魔素を攻撃に使えない。身体強化と足場のみだ。攻撃手段は剣による直接攻撃かスペルカードだけ。レミリアはソウルイーターによりスタミナの殆どを奪われている。不味いな・・・。単純に、手が足りない・・・。)

 

客観的にみれば絶望的な状況。

尚且つ、戦力差は4対2と数的にも不利。

単純な話、勝ち目がなかった。

 

フラン達

「お姉様、お兄ちゃん。本当に楽しかったけど、流石にもう無理だよね?ならもういらないや。シンジャエ。」

 

最後通告とも取れる言葉がフラン達から発せられる。

一人を残し、三人のフラン達が巨大化した剣を振り上げ、ショウ達二人に振り下ろした。

 

ショウ

(万事休す・・・か。だが!せめてレミリアだけは!)

 

ショウはレミリアを庇うように立ち塞がる。

 

レミリア

「ショウ!?何を!?」

 

ショウ

「悪いな、レミリア。フランを助けるって約束・・・守れそうにない・・・。だが!刺し違えても、お前は守って見せる!」

 

ショウは体内の魔素を全解放し、一時的に暴走状態になって、フランの剣を全て喰らい尽くすつもりで腕に大きな傷をつける。

だが、暴走状態になれば際限なく魔素を放出してしまう災厄となってしまうことはショウも理解している。

だからこそ、全てを終わらせた後、自分自身に決着をつけるつもりだった。

 

レミリア

「な!?バカを言わないで!私には諦めるなと言ったくせに、あなた自身は諦めるつもり!?そんなの許せるものか!・・・くそ!?足が・・・もう!?」

 

レミリアはショウの言葉に激昂し、槍を構えようとするが、足に力が入らず崩れ落ちる。

 

フラン

「どっちでもいいよ。どのみち二人とも、コロスカラ!!」

 

フランの声が響き、ショウ達の眼前に剣が迫る。

 

???

「させないわ!霊符『夢想封印』!」

 

???

「させねぇよ!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

???

「させません!華符『芳華絢爛』!」

 

フラン達

「きゃあ!?な、なによ!?」

 

フラン達の剣が直撃する瞬間、ショウ達とフラン達の間に光弾が割り込み、フラン達を弾き飛ばした。

 

ショウ

「な、なんだ・・・?」

 

レミリア

「今のは・・・まさか?」

 

ショウは後ろを振り返り、光弾を放ったであろう人物を見る。

そこには・・・

 

魔理沙

「ショウ!無事か!?助けに来たぜ!」

 

霊夢

「まったく・・・無茶なことしたわね?このお礼は高くつくわよ。」

 

美鈴

「ショウさん!お嬢様!大丈夫ですか!?」

 

魔理沙、霊夢、美鈴の三人が手にスペルカードを掲げて浮いていた。

 

ショウ

「魔理沙!?それに、霊夢と美鈴さんも!?」

 

レミリア

「魔理沙や美鈴ならわかるけど・・・霊夢も・・・来るとはね。でも、これなら・・・!」

 

ショウ

「・・・何とかなるかもな!レミリア!希望が見えた!気張れよ!」

 

レミリア

「く・・・あああ!はあ、はあ・・・当然よ・・・!美鈴、それに・・・霊夢、魔理沙!・・・お願い、力を貸して!!」

 

ショウはレミリアに呼び掛け、レミリアはそれを受け、足に力を込め立ち上がる。

そして、助けに来た三人に、心を込めて願いを叫んだ。

 

魔理沙

「当たり前だ!当然手伝うぜ!そのために来たんだからな!」

 

美鈴

「私も同じ気持ちです!必ず、妹様を救って見せます!」

 

霊夢

「・・・ここまで来ると、もうこれは『異変』よ。なら、解決するのが、博麗の巫女である私の役目。必ず、解決して見せるわ!」

 

レミリアの願いに三人は応えた。

霊夢はお払い棒と護符、魔理沙は八卦炉、美鈴は拳を構え、ショウとレミリアの横に並び立つ。

対してフラン達は、頭を抱えてショウ達を睨み付けていた。

 

フラン達

「次から次へと・・・いい加減にしてよ・・・。いい・・・加減に・・・ワタ・・・シを・・・ジユウニシテヨ!ウウ・・・アアアアァァァァ!!!」

 

フラン達は咆哮し、狂ったように飛び掛かってきた。

その目は完全に正気を失っている。

既に魔素の侵食が危険領域に入っていた。

 

ショウ

「不味いな・・・。もう時間がない。霊夢!魔理沙!美鈴さん!フラン達の剣には相手の生命力を奪う力が付与されている!接近戦は駄目だ!遠距離からフラン達の剣を破壊してくれ!魔素の侵食が進行しすぎている!もう時間がない!早くしないと手遅れになる!」

 

魔理沙

「分かったぜ!霊夢!美鈴!一人で一体だ。ぶちかますぞ!」

 

霊夢

「分かってるわよ!そっちこそ、しくじるんじゃないわよ!」

 

美鈴

「妹様、すみません!少し我慢してください!手加減する余裕はありませんから!」

 

魔理沙達は、それぞれ突進してきたフラン達と激突し戦闘状態に。

ショウとレミリアも、残った一人のフランと相対していた。

 

フラン

「・・・・・・・・・」

 

ショウ

「これで最後だ。終わらせる・・・。レミリアとフラン・・・。二人の悪夢を!」

 

レミリア

「ショウ・・・。」

 

ショウ

「・・・来いよフラン。決着・・・つけようぜ。お前は自由になるため。俺はお前を止めるため。お互いの願いは相反する物。なら、けりをつけるしかないだろ?」

 

ショウはフランに言い聞かせるような口調で話す。

対するフランも虚ろな瞳でショウを見つめる。

 

フラン

「・・・オ、ニイ・・・チャ、ン・・・。」

 

ショウ

「とことんまで付き合ってやる。さあ・・・かかってきな!!!」

 

フラン

「・・・シンジャエエェェェ!!!!」

 

咆哮と共に剣を掲げ突進してくるフラン。

ショウも剣を構え、真正面からぶつかり合う。

周囲に轟音を響かせ、鍔競り合う二人。

その状況を見ていたレミリアは理解していた。

どちらが勝つにしても、もう決着は間近。

そして、フランが勝った場合、自分には最後の仕事、実の姉として、フランの暴走を止める。

例え、フランの命を奪ってでもと・・・。

 

だが、同時に願ってもいた。

自分が信じた男、ショウと名乗った外来人。

彼がフランに勝ち、フランを救う未来を。

自分が歩んできた人生、血の繋がったたった一人の家族を幽閉し、一人で歩んできた間違った人生を正し、もう一度、家族と共に歩んでいく未来を導いて欲しいと。

 

レミリア

(ショウ・・・お願い・・・。フランを、私のたった一人の家族を・・・助けて!)

 

声には出さず、ただショウを見つめながら心の中で願いを叫ぶ。

そして、レミリアの目に映っていたショウは、レミリアを見て微かに微笑んだ。

都合のいい解釈、もしくは気のせいかもしれない。

でも、レミリアは信じていた。

ショウの笑みはきっと・・・『後はまかせろ』・・・と言ってくれたのだと・・・。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~~???~~

 

???

「行かれるのですか?」

 

???

「・・・ええ。」

 

???

「わかりました。なら私も・・・。」

 

???

「あなたは来なくていいわ。私一人でいい。」

 

???

「な!?し、しかし!?」

 

???

「貴方には見せたくないの。私は、今回だけこの世界の理に背を向ける。そして、血にまみれることになる。」

 

???

「・・・わかりました。では、私は夕食を作ってお待ちしています。」

 

???

「・・・ありがとう。楽しみにしておくわ。それじゃあ、行ってくるわね。」

 

???

「はい。行ってらっしゃいませ。」

 

とある場所の縁側で会話する二人の女性。

片方は残り、もう片方は縁側から外に出ていく。

残った方は深々と頭を下げ、出ていく方は後ろを振り返ることなく、先へ進む。

そして、先へ進んだ女性は気配なくその場から消えた。

残った女性は頭を上げ縁側に背を向け呟きながら屋敷の中へ入っていく。

 

???

「あなたの苦悩は痛いほどわかります。ですが、全てを背負う必要は無いんですよ・・・。」

 

屋敷の中へ入っていく女性は、台所に向かい食事の用意を始める。

そこには、皿が《四つ》用意されていた。

一つは当然、自分の主。

残りは自分と最愛の従者の分。

そして、最後の一つは・・・

 

???

「・・・はあ。いい加減食べないと、衰弱してしまいますよ?目的があるのはわかりますが、先ずは体を回復させるべきなのではないですか?」

 

食事を準備していた女性は、テキパキと手際よく準備を進めながら、隣の部屋に向かって話しかける。

 

???

「・・・・・・・・・」

 

返事は返ってこない。

しかし、その後に絞り出すような声でポツリと独り言が聞こえてきた。

 

???

「・・・・・・・・・ラグ・・・ナ・・・」

 

うわ言のように呟かれるその言葉が意味するものは、今この場にいる誰にもわからない・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~~紅魔館 メインホール~~

 

フランA

「シンジャエ!シンジャエ!シンジャエ!ジャマヲ・・・スルナァァァ!!」

 

魔理沙

「よっと!あぶねえ!ただ、がむしゃらに振り回してるだけだから、避けやすいな。さてと!そろそろ決めるぜ!」

 

フランの攻撃を箒に跨がったまま軽やかにかわす魔理沙。

力強く叫んだ後、フランの攻撃をかわし、フランの真上へ飛翔して八卦炉を構える。

その手にはスペルカードが握られていた。

 

魔理沙

「ちゃんと剣で止めろよ?星符『ドラゴンメテオ』!」

 

真下のフランに向けて極大のレーザーを放つ。

 

フランA

「グッ!?ガアァァァァ!!」

 

かろうじて反応し魔理沙のレーザーを剣で受け止める。

しかし、あまりの質量のレーザーにより剣がきしんでいた。

レーザーが止み、真上を見上げるフランだったが、既に魔理沙の姿はなかった。

 

魔理沙

「流石に一発じゃ無理か。まあ、本命はこっちだけどな。終わりだぜフラン!恋心『ダブルスパーク』!」

 

魔理沙は既にフランの後ろに回り込んでおり、スペルを宣言する。

声に反応したフランが振り返ると、魔理沙の周りに二つの魔方陣が展開されており、既に発射体勢だった。

回避は間に合わない為受け止めるしかない。

加えて、今のフランに正常な判断は出来なかった。

 

魔理沙

「砕け散れ!」

 

フランA

「グギギ、ガァァァァ!!」

 

ビキッ

 

フランA

「ガ!?」

 

二つの魔方陣からレーザーが放出される。

案の定受け止めたフランだったが、レーザーの威力に耐えきれず刀身の根本に亀裂が入る。

度重なる攻撃により耐久力に限界が来ていた事にフランは気付けなかった。

亀裂は徐々に大きくなり、遂に・・・

 

バキン!

 

フランの剣は根本から折れる。

 

フランA

「ア、ア・・・アアアアァァァァ!?!?!?」

 

断末魔を上げるフラン。

折れた剣は霧のように消え、それに追従するようにフランも消えていく。

どうやら、魔理沙が相手をしていたフランは分身だったようだ。

 

魔理沙

「やれやれ。片付いたか。他はどうなった?」

 

一息ついた魔理沙は周囲を見渡す。

すると・・・

 

霊夢

「これで終わりよ!宝具『陰陽鬼神玉』!」

 

美鈴

「捕らえた!そこです!華符『彩光蓮華掌』!」

 

霊夢と美鈴のスペルがそれぞれ相手をしていたフランを捕らえる。

どちらの技も正確にフランの剣を破壊した。

魔理沙の時と同じように、断末魔を上げ消えていくフラン。

つまり・・・

 

霊夢

「私達が相手をしていたフランは、揃いも揃って偽物みたいね。」

 

美鈴

「だとすれば本物は・・・」

 

魔理沙

「・・・今ショウが戦ってるあいつだよな。」

 

魔理沙達は揃って上空を見上げる。

そこには・・・

 

フラン

「コワレロ!コワレロォォォ!!」

 

ショウ

「ぐっ!?・・・まだまだぁぁ!!」

 

強烈な炸裂音を響かせながら、幾度となく切り結ぶ二人の姿があった。

 

魔理沙

「援護は・・・駄目だな。遠距離じゃショウを巻き込みかねない。動きが速すぎるぜ。」

 

美鈴

「かといって接近戦は論外ですね・・・。ショウさんは攻撃にあの黒い霧を使ってません。つまり・・・」

 

霊夢

「使わないんじゃなく、使えないのね・・・。さっきショウは接近戦は避けろと言ったわ。力がフランに奪われるって。万が一私達の力が吸収されたらもう手に終えなくなる。私達に出来るのは、ショウが勝つことを信じるしかないわ・・・。」

 

援護は不可能。

最早三人に出来るのは、ショウを信じる事だけだった。

 

ショウ

(身体強化のみなら、奪われたスタミナを直ぐに補填できるから戦うことはできる・・・。だが・・・、決め手にはどうしても欠けてしまう。更に、フランのスタミナは俺から吸収しているからほぼ無尽蔵なのに対し、此方はいずれ限界が来る・・・。状況は絶望的か・・・。)

 

戦うこと自体は可能だが、勝機は皆無。

敗北必至の戦いを続ける意味はない。

最大出力なら可能性はあるが、フランの命も危ない上、失敗すれば助ける可能性はなくなり、自分を含め、ここにいる全員が死ぬ。

普通に考えれば、既にチェックメイトの状態だった。

 

ショウ

(だからといって諦めるわけにはいかない!一瞬でいい・・・フランの動きを止めることができれば・・・!!・・・ある。たった一つだけ・・・!今の俺にできて、動きを止めた上で、確実に剣を破壊できる技が・・・。だが、制御出来なければ、フランは確実に死んでしまう・・・。更に、俺自身の手で、魔理沙達を殺してしまいかねない・・・!・・・どうする・・・どうすればいい!?)

 

打つ手を思考していたショウは、たった一つの可能性に行き着いた。

しかし、その技は血の消費が膨大過ぎて、発動すら出来ず暴走する危険性もけして低くはない。

暴走してしまったら最後、今ここにいる全ての命を余すことなく喰らい尽くす災厄の獣と成り果てる。

ショウは迷っていた。

フランを救う為、ありとあらゆる可能性を模索し、リスクを低くし、確率を上げるために・・・。

 

時間にして一瞬の間のことではあるが、確かに一瞬、ショウの動きは止まっていた・・・。

 

フラン

「・・・クス」

 

ショウ

「!?しまっ――」

 

その隙は、戦いの最中においては致命傷だった。

一瞬の隙、懐に潜り込まれた。

直ぐに反応したが、既に射程圏内。

かわすことは不可能、防御も間に合わない、直撃する・・・。

 

???

「ショウ!!!」

 

直撃する直前、ショウとフランの間に何者かの影が割り込んだ・・・

 

ドシュ!!!

 

ショウ

「―――――・・・?な!?」

 

致命傷を覚悟していたショウは、来るはずの激痛がないことで意識を戻す。

取り戻した視覚が捉えたのは、自分を庇い右肩に剣を突き立てられたレミリアだった・・・。

 

レミリア

「グ・・・ウッ!」

 

ショウ

「バ、バカ野郎!!何で庇った!?生命力の殆どを吸収されて立ってるのがやっとだろ!?」

 

レミリア

「ば、馬鹿は・・・貴方・・・よ。無理なら・・・逃げれば・・・いい。私たちは・・・今日、会った・・・ばかりなの・・・よ。そこまで、責任を負う必要は・・・ないわ。巻き込んだのは・・・私のせいよ。・・・家庭の事情で、貴方を・・・死なせる訳には・・・いかないわ・・・。逃げ・・・なさ・・・い。」

 

レミリアの顔はみるみる青白くなっていく。

出血に加え、ソウルイーターにより生命力を奪われて、著しく衰弱していた。

 

フラン

「フフフ。アハハハハハ!!オネエサマカラシヌ?ソレデモイイヨ?ドッチミチミンナ、コロシテアゲルカラ!!」

 

狂気の笑みで笑いながら叫ぶフラン。

レミリアから剣を引き抜き地面に向けてレミリアを蹴り飛ばす。

床に叩きつけられ、身動きが出来ないレミリアに向けて、巨大化させた剣を振り上げた。

 

フラン

「バイバイ。オネエサマ。魔剣――」

 

レミリア

「グッ・・・フラ・・・ン。」

 

フラン

「『ダーインスレイブ』!!」

 

確実にレミリアの命を奪う、非情の刃が振り下ろされた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プツン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウ

「ヤメロオオオオオオ!!!!!!」

 

ショウの中で何かが弾ける。

咆哮を響かせ左手で剣を受け止めた。

剣の威力を殺しきれず、左手からは血が流れ落ちる。

しかし、確かに剣を受け止めていた。

 

フラン

「ナ!?」

 

その事実にフランも驚愕の声を上げる。

 

ショウ

「やらせない!絶対に!!これ以上、俺のために命を落とすのは許せない!!何より自分が許せない!!!もう迷わない!!どれだけ可能性が無かろうが、必ず助ける!!誰一人、死なせるものか!!!」

 

流れ落ちる血を無視し、自分の左手に手をかざす。

左手の周囲に術式陣が浮かび上がり、それを見たショウはその陣を掴み、『砕き割った』。

 

ショウ

「『左腕部限定・全拘束解放』!!」

 

陣が砕かれると同時に、ショウの左手が黒く濁っていく。

 

ショウ

「『魔素収束・掌握術式構築展開』!!」

 

左手から流れ落ちる血から魔素が発生するが、周りに拡がらず左手に収束していく。

 

ショウ

「グッ!?まだだ!もってくれ!『コード―クライムアーク・超越解放《アンリミテッドブレイズ》』!!」

 

術式を構築しているが、身体は拒否するかのように激痛を訴える。

しかし、ショウは身体からのSOSを完全に無視。

苦悶の表情を浮かべながら、術式を組み上げる。

 

ショウ

「これで・・・最後だ!!『目標捕捉・呀獣招来』!!・・・禁忌の楔を解き放つ!内に眠りし災厄よ!全ての魂を貪り喰らえ!」

 

最後の術式を構築し、身体中の魔素を左手に集約する。

既に左手は真っ黒に染まり、腕の表皮は僅かに胎動していた。

そして、ショウはこの戦いに終止符を打つ、最後にして最悪の切り札を発動した。

 

ショウ

「『カース・オブ・インフィニティ』!!!」

 

発動した最後の切り札。

黒く染まりきった左手の胎動が一瞬静まる。

次の瞬間、漆黒の左手から獣の頭が無数に出現し、フランの剣に食らいついた。

 

フラン

「ナ、ナンナノヨ!?コンナモノ!ダーインスレイブデ、ゼンブクッテヤル!」

 

フランは剣に食らいついた獣を吸収するため、ダーインスレイブの力、ソウルイーターを発動した。

だが・・・

 

ショウ

「無駄だ・・・。これは先程まで使っていた劣化型の黒き獣じゃない。俺のドライブ『クライムアーク』の力を全開にした上で、身体中の魔素を集約し再構築した、オリジナルの黒き獣だ。お前が使っていたソウルイーターの力の源泉は黒き獣の力だ。しかも、オリジナルの黒き獣の力にとって、ソウルイーターの力は絞り滓みたいな物なんだよ。使役できるのは一瞬だが、力の差は比べる必要もない。終わりだよ、フラン。」

 

フランのソウルイーターを全く意に介さず、巨大化した剣を貪り続ける黒き獣。

 

フラン

「ソンナ!?ナンデ!?」

 

ソウルイーターの力が効かず、剣を食われていくフランは明らかに動揺し始めた。

 

フラン

「ヤメテ!!ヤメテヨ!!ヤットワタシハチカラヲテニイレテ、ジユウニナレルノニ!ナンデジャマスルノ!?ワタシハ、ジユウニナリタイダケナノニ!!」

 

フランの目からは血のように赤い涙が流れる。

声は悲しみを携えた悲痛な物。

フランが叫ぶのは紛れもなく彼女の内なる願いだった。

 

ショウ

「・・・君の願いは分かってる。だから約束する。君を止め、君が元に戻ったら、俺が必ず君を外に出させてやる。だから、今は眠れフラン。レミリアとフラン、二人の悪夢は、これで晴れる!」

 

フラン

「ヤメ――――!!」

 

ショウ

「砕けろ!!!」

 

ショウが叫ぶと同時に、フランの持っていた剣は砕け、霧散した。

 

フラン

「ア・・・・・」

 

力なく呟いたフラン。

天を見上げて立ち尽くし、ピクリとも動かない。

だが、ショウにはわかった。

フランが纏っていた巨大なプレッシャーが完全に消えていたのだ。

 

ショウ

「・・・終わった・・・か・・・。良かっ・・・た――」

 

ドサッ

 

フランが元に戻ったのを見届けたショウは遂に倒れる。

既に限界は越えていた。

 

レミリア

「・・・は!?」

 

その時、倒れていたレミリアが起き上がる。

床に叩きつけられた時に気を失っていたようだ。

 

レミリア

「私・・・は?」

 

力なく起き上がったレミリアの視界が捉えたのは、正に自分が見た絶望の未来の光景だった。

 

レミリア

「ショウ!?フラン!?」

 

倒れているのはショウ、立っているフランは血まみれだ。

端から見れば、結果は最悪の物であると考える。

当然、その状況を見たレミリアも同じ考えだった。

 

レミリア

「そ、そんな・・・。ショウ・・・、ごめん・・・なさい。」

 

レミリアは死力を尽くし倒れたショウを思い、謝罪の言葉を口にした。

そして、全身に力を込めて槍を構える。

 

レミリア

「貴方を・・・無駄死ににはさせない!刺し違えても、フランは救ってみせる!」

 

身体中から激痛を感じる。

はっきり言って限界はとっくに越えていた。

だが、今のレミリアにとって、そんなことはどうでも良かった。

自分達姉妹のために命を落としてしまった外来人のためなら、こんな痛みなど些事に等しいと切って捨てた。

それほどの覚悟をもって、レミリアはフランと相対していたのだ。

そして、見つめる瞳の先にいる最愛の妹が、虚ろな瞳のまま口を開いた。

 

フラン

「・・・お姉・・・様。」

 

レミリアは歯を食いしばる。

自らの命を賭けて、妹を救う為に。

だが、次にフランの口から発せられた言葉で、レミリアの顔は変わった・・・

 

フラン

「・・・ごめん・・・なさい。私のせいで・・・お兄・・・ちゃんが・・・。」

 

レミリア

「え!?・・・フ、フラン、貴方・・・まさか!?」

 

フラン

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」

 

懺悔するように謝罪の言葉を繰り返すフラン。

その瞳にはもう狂気はない。

あるのは、瞳から流れる涙。

先程まで流していた血のように赤い涙ではなく、澄んだように透明な涙だった。

 

レミリア

「正気に、戻っているの・・・?」

 

フランの状況を理解したレミリアはフランに駆け寄りその手を取る。

間違いなく正気に戻っていたことが分かった。

その事実に気付くと同時に、倒れていたショウが僅かに動き、その目をレミリアに向け微笑んだ。

 

ショウ

「・・・終わった・・・ぜ、レミ・・・リア。約束は・・・果たした・・・。フランは・・・もう、大・・・丈夫だ。」

 

レミリア

「!?・・・シ、ショウ。」

 

ショウ

「・・・良かったな。もう・・・その手を、離すな、よ。」

 

レミリア

「―――!!・・・・・・うん!!ありがとう!!」

 

レミリアの顔には満面の笑みが浮かぶ。

その顔を見たショウは、安堵の顔を浮かべ、今度こそその意識を手放した。

 

果てしない程の長い間、醒めることのなかった悪夢が終わりを告げた・・・。

 

to be continue

 




対フラン戦、これで決着です。
いやー、設定ぶちこみすぎて長い長い。
やっぱり、読みやすいようにまとめた方がいいですかね?

長いことあとがきで話してもしゃーないと思いますので、今後の予定を話してあとがきはおわります。

予定は、一旦資料集を更新して、第二戦導入部を書き、戦闘パートにはいる予定です。

資料集更新は長くはかかりませんので大丈夫です。
更新遅過ぎて細かいところは忘れてしまったと思うので、読みやすいように異変前半の設定、技などを一度更新します。

資料集は遅くとも一週間以内に更新しますのでお待ち下さい。

では、長い間お待たせしてしまい申し訳ありません。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part5

更新完了です。
今回は異変の幕間になります。
次回で異変戦闘パート第二戦の導入部になります。

今回はだいたい5000字程、更新までは約二週間位。
やっぱり、この位の長さが安定しますかね?

尚、ショウの記憶の一部が戻ったことにより、ショウの身体の秘密の一部が判明します。
まあ、最初から少し不思議な所はありましたが・・・。

前置きはこの辺にして、本編へ行きましょう。
では、お楽しみください。


ショウ達とフランの戦いは終わった。

既に夜は更け寝静まる時間だが、当事者の内重傷な者達以外は、紅魔館の食堂に集まっていた。

今この場にいないのは、フランの一撃を受け瀕死になり 永琳に治療を受けていたアリス、フランの剣を右肩に受け重傷になったレミリア、当事者であり精神の衰弱が見られたフラン、そしてそのフランを満身創痍ながらも救いだし限界を迎えて倒れてしまったショウ、以上の四人だ。

この四人以外の紅魔館組と霊夢、魔理沙達がいて、丁度そこに四人の治療を終えた永琳が食堂に入ってきた。

入ってきた永琳を見るや否や、咲夜が永琳に話しかける。

 

咲夜

「永琳!お嬢様達の具合はどうなの!?」

 

永琳

「まあ、多種多様だけど大丈夫よ。一番ひどいのはあの青年ね。よくあんな状態で動けたわね。」

 

咲夜

「な!?ショウさんが!?ショウさんは無事なの!?」

 

永琳

「取り敢えず落ち着いて。一番ひどいとは言ったけど、大丈夫だとも言ったわよ。四人とも命に別状はないわ。」

 

咲夜

「本当!?よ、よかった・・・。」

 

永琳

「・・・よほど心配だったみたいね?貴方みたいな真面目な人が敬語を忘れるほどなんて。私を呼びに来たときは敬語だったのに。」

 

咲夜

「あ!す、すみません。私としたことが・・・。」

 

永琳

「気にしなくていいわよ。無理もないことは分かってるから。」

 

咲夜と永琳のやり取りでひとまず全員が無事だとわかり、食堂にいた面々はほっと胸を撫で下ろした。

 

パチュリー

「先ずは一安心ね。咲夜、嬉しいのはわかるけど一先ず食事にしない?強行軍だった貴方もだけど、ここにいるみんなもかなり疲労してる。直ぐに食事をとって今日は早めに休みましょう。永琳。悪いけど、峠を超えたとはいえ予断を許さない状態だから、貴方には残ってもらうわよ?休む部屋は用意させるから。」

 

永琳

「当然でしょ?患者を残して帰る医者なんかいないわよ。言われなくても、こちらから泊まる部屋を頼むつもりだったわ。」

 

パチュリー

「手間をかけるわ。治療費は約束する。」

 

永琳

「別にいいわよ。ただ・・・」

 

パチュリーが話しかけ、永琳が答える。

パチュリーの治療費についての話に永琳はいらないと答えたが、言葉の最後に「ただ・・・」と付け加えた。

 

パチュリー

「?・・・ただ、何?」

 

永琳

「二、三点質問があるんだけど・・・構わないかしら?」

 

永琳はパチュリーに対し幾つか質問があると言った。

 

パチュリー

「質問?構わないわよ。答えられる範囲でだけど。」

 

永琳

「なら聞くわ。彼は何者なの?身体の構造は間違いなく人間よ。でも、だとするとあり得ないことがいくつもある。特に、彼の左腕。あれほどの損傷なら、間違いなく死んでいる。でも、彼は生きている。加えて、一番損傷がひどいにも関わらず、既に傷は塞がり始めていた。人間だとしたら明らかにおかしいわよ。」

 

永琳の質問に対してパチュリーは苦い顔をする。

当然の事だ。

パチュリーは、ショウについて全く知らないのだから。

しかし、この時会話に割って入る人物の声が聞こえた。

 

???

「・・・その質問には俺が答えるよ。」

 

全員

「!?」

 

聞こえたのは男の声。

だが、今紅魔館にいる男は一人しかいない。

 

ショウ

「みんな。心配をかけて悪かったな。」

 

魔理沙

「お、お前・・・、大丈夫なのか?」

 

霊夢

「あんたバカじゃないの?絶対安静の筈よ。とっとと寝てきなさい。」

 

ショウ

「たはは・・・酷いな。本人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫だよ。わざわざ悪化させるような真似はしないさ。そうですよね?・・・永琳さん。」

 

永琳

「・・・・・・教えてちょうだい?なぜ、一番重傷だった貴方の傷が、治療を終える頃には・・・既に塞がり始めていた理由を。」

 

全員

「な!?」

 

全員が驚愕の声を上げる。

無理もない。

ショウの傷は明らかに重傷レベルだった。

それは、戦いの場にいた魔理沙や霊夢が一番わかっている。

どう考えても二、三時間程度で動けるような状態ではなかった。

 

ショウ

「・・・質問には勿論答えます。ただ、こっちにも貴方に頼みがあります。聞いていただけるなら、貴方の質問には全て、嘘偽りなく答えます。お願いできますか?」

 

永琳

「内容にもよるわ。今この場で即決することはできない。申し訳ないけどね。」

 

ショウ

「・・・まあ、そうですよね。治療してもらいながら図々しいことを言いました。申し訳ありません。では質問に答えます。長くなるのでよく聞いておいてください。」

 

ショウが語った内容は、ここにいる全員から言葉を途中で挟む意思を奪うほどのものだった。

ショウの肉体には魔素が内包されており、それを肉体に作用させることで治癒力を高める。

ここまでは霊夢達にも話した。

だが、次に出た言葉には霊夢達も耳を疑った。

 

ショウ

「・・・俺の身体は人間のものに間違いはありませんが、霊夢達は見たよな?フランとの戦いの時に俺の左手が真っ黒になったのを。あれは、通常より更に魔素を凝縮させた結果、腕が魔素に変質したものだ。俺の身体は、ある程度魔素へと変質させることが出来る特性があるんです。そして、その逆も可能です。つまり、今ある程度回復しているのは、体内の魔素を血液や肉体に変質させて補完しているんですよ。限度はありますが。言ってしまえば、人間とは似て非なる化物なんです。まあ、この事を思い出したのは、ついさっきですけどね。」

 

魔理沙

「・・・・・・・・・」

 

霊夢

「・・・・・・・・・」

 

美鈴

「・・・・・・・・・」

 

咲夜

「・・・・・・・・・」

 

パチュリー

「嘘・・・でしょ?あなたの身体にそんな秘密があっ―――」

 

ゴッ

 

パチュリー

「むきゅ!?―――きゅー・・・・・・。」

 

魔理沙

(空気読めよ!この紫もやし!)

 

霊夢達は沈黙していたが、パチュリーは驚愕の声を上げ・・・ようとしたが、言い切る前に魔理沙にチョップをくらい気絶した。

 

永琳

「・・・話は理解したわ。なら、治療はもう必要ないのかしら?」

 

ショウ

「応急処置程度で十分です。明日にはほぼ完治してるでしょう。最初の治療が的確だったってのもありますが。」

 

永琳

「そう。なら結構よ。丁度食事にするみたいだし、それを食べたら寝室に戻りなさい。治りかけているけど完治した訳じゃない。精神的にも疲労はある筈よ。休息は必要だわ。」

 

ショウ

「・・・わかりました。ありがとうございます。」

 

こちらの体調を気遣う優しい言葉をかけ、これ以上の追求を永琳はしなかった。

自分を思っての事だと分かったショウは素直に返事をする。

 

咲夜

「そうですね。皆さんお疲れですし、直ぐに食事を用意します。しばらくお待ち下さい。」

 

食事を用意すると言って咲夜がその場から消える。

能力を使用したんだろう。

しばらくすると、唐突に食事が机の上に出現した。

改めて思えばとんでもない能力だと感じる。

そして、席に着いていた全員が食事を始めようとした時、再び食堂のドアが開いた。

 

???

「・・・みんな揃っているようね。」

 

声は女性の物。

威厳を含みながら幼さも残る声色だった。

声の主は優雅に歩きながらテーブルの一番奥へと進み、一際豪華な椅子へ腰を下ろす。

 

???

「先ずはここにいる全員にお礼をさせてちょうだい。ありがとう。貴方達のお陰で私は救われたわ。」

 

ショウ

「・・・傷はもう大丈夫なのか?レミリア。」

 

レミリア

「ええ。永琳のおかげでね。まあ、私は吸血鬼。そこいらの一般人とは身体のつくりが違うのよ。全快って訳じゃないけど、普通に生活するだけなら問題ないわ。」

 

入ってきたのはレミリアだった。

レミリアが重傷になったのは自分のせいだと考えているショウは、レミリアの身を案じたが、取り敢えず大事には至っていないようで安心した表情を浮かべ続けて言った。

 

ショウ

「そうか。良かった。肩の傷は俺を庇って受けたものだったから心配していたんだ。あの時は助かった。ありがとうレミリア。」

 

レミリア

「何を言っているの?礼を言うのはこっちよ。貴方のおかげでフランは救われた。貴方がいなければ私達はみんな死んでいた。紅魔館にいる全ての命を救ってくれたようなものよ。だから、紅魔館を代表して私が言うわ。心から感謝を。ショウ、本当に・・・ありがとう。」

 

庇ってもらったことに対して感謝の言葉を口にしたショウ。

だが、レミリアから返ってきたのは、お返しと言わんばかりの最大限の感謝だった。

 

ショウ

「別にいいって。フランを助けると決めたのは俺自身だし、俺が勝手にやったことさ。助ける事は出来たんだからそれで十分だよ。元々ここに来たのは別の目的があったからだしな。」

 

レミリア

「あー・・・確か、私に聞きたいことがあったのよね?お安いご用よ。何が聞きたいの?」

 

ショウ

「ああ。レミリアの能力に関わることなんだが――」

 

ガタン

 

ショウ

「ん?今・・・」

 

レミリアに質問があると言ったショウだったが、何かを感じ言葉を止める。

 

レミリア

「・・・ショウ?どうしたのよ?」

 

途中で言葉を止めたショウに対し、疑問を浮かべ話しかけるレミリア。

 

ショウ

「・・・・・・・・・いや。やっぱ後にするわ。長くなるかもだし。食事を終わらせてからにしよう。あと、少し席をはずす。食事は先に始めといてくれ。」

 

レミリア

「席をはずす?一応、貴方は主賓になるのよ?主賓が不在では始められないわ。」

 

ショウ

「直ぐ戻るよ。トイレだから。ついてきたいって言うなら構わないぞ?」

 

レミリア

「な!?こ、このバカ!早くいってきなさい!」

 

ショウ

「ハイハイ。」

 

トイレと言って席をはずすショウ。

だが一人、咲夜は疑問を浮かべていた。

 

咲夜

(ショウさん?トイレって、ここのトイレの場所知らないはずじゃ・・・?)

 

ショウは初めて紅魔館に来たのだ。

自分達と戦った後、真っ直ぐレミリアの下へ向かった筈なのに、ここの間取りを知っているのは明らかにおかしい。

不審点は多いものの、咲夜はショウの事を信頼していたし、疲労もあったため深く考えなかったが、咲夜の考えは間違っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「・・・・・・・・・」

 

食堂の外には人影。

神妙な表情で扉を見つめていたが、やがて背を向けその場を離れようとした・・・その時だった。

 

ガシッ

 

???

「!?」

 

不意に後ろから肩を掴まれ身動きができなくなる人影。

そして、背後から声が聞こえた。

 

???

「・・・逃げんな。」

 

言葉に反応し振り向く。

 

???

「逃げたくなる気持ちは分かる。だが、ここで逃げれば君に未来はない。・・・勇気を出せ、フラン。」

 

フラン

「お、お兄・・・ちゃん?」

 

食堂の外に居たのはフランだった。

離れようとしたフランを止めたのはショウ。

食堂に居たとき、扉の外に気配を感じたショウは、理由をつけて席をはずした。

十中八九、外に居るのがフランだとわかっていたからこその行動だった。

 

ショウ

「君が最初にすべき事は、今回の件にけじめをつけること。先ずはそこからだ。でなければ、君は一歩も前に進めない。」

 

フラン

「でも・・・私は、みんなを・・・。」

 

ショウ

「それは変えようがない事実だ。だが、その事実から逃げてしまえば、君の望みは叶わない。」

 

フラン

「・・・私は・・・」

 

フランは変わらず下を向いたまま。

よほど今回の件が堪えているようだ。

 

ショウ

「・・・少し、昔話をしよう。」

 

フラン

「え?昔・・・話?」

 

ショウ

「ああ、かつて俺の戦友だった奴の話だ。」

 

ショウは思い出した記憶から昔の話を始めた。

その記憶は、フランが引き金になり甦った記憶。

死神『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』の戦いの軌跡。

記憶の一部は変わらずに抜けているが、それを踏まえてフランに分かるように話をしていく。

そして、話の中でも、フランに聞かせたい一番重要な事を語り始めた。

 

ショウ

「・・・こうして、そいつは果てのない戦いに身を投じた。禁断の力を持ち、やがて訪れるのは確実な死だけだ。だが、そいつは戦った。今でこそ目的は復讐だが、最初に抱いたのは、自分の『大切なもの』を守りたいって感情だった。」

 

フラン

「大切な・・・もの?」

 

ショウ

「フラン。おまえが外に出たいと思っているのは知っている。その願いは尊いものだ。だが、その願いはお前にとって、そんな簡単に諦められるものなのか?原因は蒼の欠片によるものだが、その願いを叶えるために、お前は俺たちに刃を向けたんだぞ?簡単に諦められる筈がない。違うか?」

 

フラン

「・・・・・・・・・」

 

ショウ

「無言は肯定と判断する。なら・・・『逃げんな』!!」

 

フラン

「!?」

 

ショウは語尾を荒くする。

強い口調でフランに叫ぶ。

すべてはフランに・・・『大切なもの』を伝えるため。

 

ショウ

「お前の外に出たいって感情は、お前にとっての・・・『大切なもの』じゃないのか?もしそれが違うなら俺は何も言わない。だけどな・・・お前は覚えてないかもしれないが、俺たちと戦っている時、お前は自分の願いを叫んだ!狂気に飲まれながら、その願いだけは叫び続けた!決着の時、願いが叶わなくなると思ったお前は、血の涙を流しながらやめてくれと懇願した!」

 

フラン

「――!!」

 

ショウ

「フラン!そこまで願う願望であるなら、そいつはきっとお前にとっての『大切なもの』のはずだ!だったらもう、お前のやるべき事は・・・分かるよな?」

 

フランの顔にはもう、迷いの色はなかった。

 

ショウ

「俺も協力してやる。けじめを・・・つけてこい。」

 

フラン

「・・・うん!ありがとう!私、逃げないよ!」

 

晴れやかな笑顔を浮かべ、食堂へ走っていくフラン。

ショウはその背中を見送った。

 

ショウ

「・・・頑張れよ、フラン。けじめをつけたら、俺が必ず、お前を外の世界に連れてってやる。」

 

フランを見送った後、ショウもゆっくりと食堂の方へ歩いていった。

 

to be continue




本編終了です。
作っていて思いましたが、紅魔館組のフラグ多いような気がする・・・。
咲夜、美鈴、レミリア、フランの四人には多分立ってます。
異変の都合上、しゃーないんですけどね。
何が言いたいかと言うと、異変パートではオリジナル主人公に対するフラグにラッシュが入ります(笑)
まあ、後で展開するギャグパートにも関わって来るので大事な事なんです。
もう一度言います。
異変パートでは、フラグラッシュが入ります(大事な事なので二回言いました)

そろそろ締めろなんて声が聞こえそうなので、この辺で。
では、次回更新までしばらくお待ち下さい。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part6

夏休みは私にはありません・・・。
ずっと仕事です・・・。
長期の休みをおくれー!

と言うわけで更新完了です。
時間がかかり申し訳ありません。
今回も幕間の話と導入部で戦闘はありません。
次回から???戦が始まります。
まあ、だいたい誰かはわかると思いますが。

尚、???戦終了後にブレイブルーキャラが本編に加わり、ショウの相棒になります。
以降の過去探し、異変パートでは強力な仲間として参戦します。
また、前回の話でフランが正気に戻り、最後にショウが言った通り、フランも能力制御が完了したら正式にショウのパーティーに加わります。
フランの能力はショウが訓練することで原作と比べても強力な物になる予定ですので、よろしくお願いします。

では、長くなりましたが本編をお楽しみください。


ショウ

「・・・・・・・・・う・・・ぐ・・・。」

 

紅魔館の客人用の寝室で眠っているショウ。

だが、魔素を肉体に作用させることで治癒力を高める代償に高熱が出ており、眠っているが表情は苦しそうだ。

 

ショウ

「・・・・・・・・・はっ!?・・・・・・朝、か。」

 

既に日付は変わって朝になっていた。

昨日は食事をした後、レミリア達と少し話をしてから直ぐに寝室で眠りについた。

治りかけているとはいえ、大事をとっての事だ。

 

ショウ

「・・・傷はもう塞がっている。ただ、少し汗をかいちまったな。シャワーを借りたい所だが・・・ん?これは?」

 

ベッドから体を起こし周りを見ていると、ベッド脇に自分の服がたたんで置かれていた。

昨日は永琳から患者用の簡素な服を借りて寝ていた。

服はボロボロだったし、治療用の部屋にそのまま置いておいたはずだったが・・・。

たたまれた服の横にはメモ書きが置かれていた。

 

咲夜

《ショウ様へ。ボロボロだった服は洗い、大まかに修繕しておきました。後、シャワーについては、今いらっしゃる部屋から出て右に真っ直ぐ行った突き当たりに客人用のシャワー室があります。そこをお使いください。尚、朝食については部屋内に設置された時計で朝8時頃に用意します。この時間辺りにお部屋に伺いますのでよろしくお願いします。》

 

メモ書きは咲夜からの物だった。

服の修繕、シャワー室の用意、朝食等至れり尽くせりの内容が書かれていた。

 

ショウ

「・・・凄いな、あの人は。咲夜さん自身もかなり疲労してるはずだよな?まったく・・・感謝してもしきれない。咲夜さんがいなければアリスは助からなかった。また今度ちゃんと礼をしないとな。」

 

せっかくのご厚意、有り難く受け取ろうと決め、ベッドから出ようとした・・・その時だった。

 

もぞっ

 

ショウ

「・・・・・・・・・!?だ、誰だ!?」

 

自身が寝ていたベッドに何かがいる。

警戒心を限界まで高めて、直ぐに対応できるようにベッド脇に置いておいた剣を取り、ゆっくりと近付いて一気に毛布を捲った。

そこには・・・

 

フラン

「・・・・・・むにゃ・・・・・・」

 

ショウ

「 」

 

まるで猫のように丸くなって眠っているフランがいた。

あまりの状況に放心して固まるショウ。

しばらく立ち尽くしていたが、我に返りこの状況を分析し始めた。

 

ショウ

(落ち着け、俺。確か昨日は・・・)

 

ショウは昨日の出来事を思い出す。

昨日は、フランを諭し食堂へ向かわせた後、フランは食堂にいた面々に頭を下げた。

自身は後から来て、レミリアにフランの外出許可を頼んだ。

この後はアリスを除く全員で食事をとっていたが、この時からフランは、やたらと近くに寄り添うような行動をとっていた覚えがある。

どうやら、フランになつかれたらしい。

食事後は、レミリアの部屋で自分とレミリア、フランの三人で今後の予定を話し合った。

話し合いの結果、先ずはフランの能力制御訓練、その後家庭教師による一般教養の修得、最後に試験的な外出で適正を判断するという結果となった。

まあ、妥当なところだろう。

約500年もの長い間外界から隔離されていた以上、必要な事は数知れない。

尚、能力制御訓練担当者及び家庭教師は俺の役割だ。

一応レミリアは、正式な雇用者として給金を出すとのこと。

無一文の俺には丁度良かったので快諾した。

元々、フランの面倒は見るつもりだったのでその点でもありがたい。

話し合いの後、寝室に戻り寝るつもりだったが、この時までフランはついてきた。

流石にダメだと追い返したが。

以上の内容から考えて・・・

 

ショウ

「・・・こいつ。俺が寝ている間にベッドに潜り込んだのかよ。なに考えてんだ。」

 

フラン

「・・・・・・むにゃ・・・お兄、ちゃん・・・。」

 

ショウ

「・・・・・・・・・はあ、まったく。しゃーねーな。」

 

ショウは寝ているフランの頬に触れる。

 

ショウ

「フラン、起きろ。朝だぞ。」

 

フラン

「・・・ん・・・うん?あれ、お兄ちゃん・・・?おはよう。」

 

ショウ

「訳は後で聞くから、取り敢えず顔洗ってこい。もうすぐ朝ごは――」

 

ガチャ

 

咲夜

「おはようございますショウ様。御気分はどう――」

 

刹那、二人の視線が交錯した。

 

ショウ・咲夜

「 」

 

フラン

「あ。咲夜。おはよう。」

 

最悪のタイミングで鉢合わせた二人。

そして、何も分かっていない元凶は、明るく元気に朝の挨拶をしている。

 

咲夜

「・・・・・・・・・ショウ様。少しお話があります。宜しいですね。」

 

ショウ

「・・・・・・・・・わかりました。フランすまない。少し席をはずす。先に顔洗ってから食堂に行ってこい。俺も後から、行けたら行く。」

 

有無を言わさない迫力で話があるという咲夜。

ショウに選択の余地はない。

咲夜の申し出を承諾し、フランには先に食堂に行くよう伝えた。

 

フラン

「?・・・うん。分かった。」

 

疑問符を浮かべながらも、こちらの言葉に素直に答えて部屋から出ていったフラン。

さあ、本番はここからだと気合いをいれたショウ。

そして、静かな威圧感を醸し出しつつ咲夜が口を開いた。

 

咲夜

「・・・細かくは聞きません。簡単に説明をしなさい。」

 

先程とはうって変わった命令口調。

嘘や言い訳は許さないと言わんばかりの喋り方だ。

 

ショウ

「・・・寝ている間にフランがベッドに潜り込んだ。それだけです。誓ってそれ以外はありません。」

 

咲夜

「後で妹様に確認しますが、宜しいですか?」

 

ショウ

「構いません。本当にそれだけです。」

 

咲夜の質問に対して嘘を言うことはない。

本当にそれだけなのだから。

 

咲夜

「・・・・・・ふう。わかりました。どうやら嘘ではないようですね。しかし、妹様にも困ったものです。」

 

ショウ

「慕ってくれるのは嬉しいんですが、今のままじゃ色々問題がありますね。まあ、それを教えるのも俺の役目ですが。」

 

咲夜

「教える?どういう事ですか?」

 

ショウ

「あれ?レミリアからまだ聞いていないんですか?これからはフランの能力制御訓練担当者と家庭教師として、時々紅魔館にお邪魔するので、その時はよろしくお願いします。」

 

どうやら咲夜は信じてくれたようだ。

また、フランの能力制御訓練と家庭教師の仕事を請け負った事実を話すと、驚いた表情を見せる。

 

咲夜

「妹様の家庭教師と訓練担当・・・ですか?」

 

ショウ

「ええ。フランを外の世界に連れてってやるって約束しましたからね。言い出しっぺですから俺が面倒を見ないと。」

 

咲夜

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウの話を聞いた咲夜は黙ったままだ。

だが、咲夜の脳内では・・・

 

咲夜

(話が本当なら、ショウさんがしばらく紅魔館に通うということ・・・。これは、またとないチャンスね!さりげなくお茶に誘うつもりだったけど、これならその必要はない。いくらでも理由をつけてショウさんと話せるわ。後、美鈴にも話してあげますか。約束したしね。)

 

等といった脳内作戦会議が行われていた。

尚、咲夜は一言も喋らず黙っていたが、若干顔が赤くなりにやけていたので、ショウは疑問を浮かべた顔をしていた。

流石に心配になり咲夜に声をかける。

 

ショウ

「・・・あの、咲夜さん?どうしました?」

 

咲夜

「へあ!?い、いや!何でもありません!大丈夫です!そろそろ食事の用意が出来ますので食堂に行きましょう!」

 

ショウ

「そう、ですか・・・?ならいいんですが。あと、食事前にシャワーに行きたいんですが、構いませんか?」

 

咲夜

「シャワーですか?構いませんよ。まだ少し時間もありますし。では、私は残りの方を起こしてきますので、ごゆっくりおくつろぎください。」

 

ショウの質問に驚いてから捲し立てるように食堂に行くよう提案した咲夜。

顔が赤いが本人が大丈夫だと言っているし大丈夫だろう。

咲夜の言葉に対し、先にシャワーを浴びたいと頼むショウ。

咲夜はこれを承諾し、部屋を後にした。

ショウもシャワーを浴びるため、着替えを持って部屋の外へ。

伽藍堂となった部屋。

しかし、その部屋の中央の空間に亀裂が入る。

亀裂は大きくなり、その亀裂から人影が現れた。

その人影は、ショウが寝ていたベッドに手をかざし、呟いた。

 

???

「・・・・・・・・・やっぱり、か。淡い希望に賭けたけど、駄目みたいね。・・・間違いなく魔素を持っている。ならもう選択肢はない。やはり・・・殺すしかない、か。」

 

人影は現れた亀裂に戻り姿を消す。

次の瞬間亀裂は消滅し、部屋は元通りになった。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~30分後、紅魔館食堂~

 

シャワーを終えたショウが食堂に入ってくる。

食堂には既にショウ以外の面々が集まっていた。

 

フラン

「あ!お兄ちゃん!やっと来た!もう、待ちくたびれちゃった。お腹ペコペコだよ。早く食べよ?」

 

ショウ

「悪いなフラン。待たせちまって。」

 

レミリア

「それじゃ、揃ったみたいだし食事を始めましょう。咲夜、用意をお願い。」

 

咲夜

「かしこまりました。」

 

咲夜の返事が耳に入るのとほぼ同時に朝食が目の前に並ぶ。

 

全員

「いただきます!」

 

全員で食事に手を伸ばす。

昨日は戦闘の疲労により食が進まなかった者もいたが、1日経ったことで疲労は回復し、代わりにエネルギーが足りなくなったのか、すさまじい勢いで食べていた。

 

ショウ

「でも、本当に美味しいですね。流石咲夜さんです。ごちそうさまでした。」

 

咲夜

「ありがとうございます。では、食後の・・・あら?」

 

ショウ

「咲夜さん?どうしました?」

 

咲夜

「あ・・・すみません。食後のデザートを用意するのを忘れていました・・・。直ぐに用意しますので。」

 

咲夜の料理の賛辞を述べると、お礼の後に苦い顔をする咲夜。

何でも食後のデザートを作り忘れたらしい。

ならばとショウは席を立ち上がった。

 

咲夜

「ショウ・・・様?」

 

魔理沙

「どうしたんだ?急に立ち上がって。」

 

咲夜や魔理沙が声をあげる。

二人だけじゃなく、食堂にいた他の面々も疑問を浮かべた顔をしていた。

そして、質問を受けたショウが口を開いた。

 

ショウ

「なら俺が作るよ。咲夜さん。厨房の場所を教えてください。」

 

全員

「は?/え?」

 

ショウの答えに全員が声を漏らした。

 

ショウ

「・・・ん?あれ?俺、なんか変なこと言ったか?」

 

ショウは他の面々の反応に疑問符を浮かべる。

 

魔理沙

「いや・・・ショウがデザートを作るって言ったのか?流石にそれは・・・。」

 

霊夢

「ちょっと・・・無謀じゃない?」

 

パチュリー

「咲夜の料理の腕を考えると賛同しかねるわよ。」

 

ショウ

「おい・・・。随分と好き勝手言ってくれるな?流石に傷つくぞ?まあ確かに、専門的に料理をしていた訳じゃないから、過度に期待されても困るが――」

 

フラン

「食べたい!!」

 

全員

「えっ?」

 

レミリア

「・・・」

 

露骨に疑いをかけられると、流石に作るのは諦めた方がいい気がしたが、直後にフランから「食べたい」と大きな声が上がる。

この時、レミリアは目をつむりショウ達のやり取りを聞いていたが、目を開き続けて言った。

 

レミリア

「・・・そうね。ショウ、お願いできる?咲夜以外が作るデザートに興味があるわ。」

 

ショウ

「他の皆が良いと言うなら構わないぞ?元々そのつもりだったし。皆はどうだ?」

 

レミリアの言葉を受け、ショウは全員に尋ねると全員は渋々頷く。

 

ショウ

「なら、ご期待に答えないとな。咲夜さん、案内お願いできますか?」

 

咲夜

「かしこまりました。ショウ様、こちらへ。」

 

咲夜の案内でショウが食堂から出ていく。

レミリアは沈黙したまま、フランは期待に胸を膨らませた顔をしている。

その他の面々は疑惑の意思を浮かべていた。

 

~10分後~

 

ショウ

「お待たせ。出来たぞ。口に合うかはわからないが。」

 

ショウと咲夜がデザートらしき物を乗せた皿を持って現れ、その流れで食堂の面々の前に皿を並べていく。

すると・・・

 

魔理沙

「これは、何なんだぜ?」

 

霊夢

「見たことないわね?これ何?」

 

パチュリー

「デザートよね?これ。」

 

全員から疑問の声が上がる。

 

ショウ

「勿論。ちゃんとしたデザートだぞ?見たことないか?まあ、騙されたと思って食べてみてくれ。味は保証する。」

 

フラン

「うん!いただきまーす!」

 

フランは躊躇いなく目の前のデザートに手を伸ばす。

それを見た他の面々も疑問を浮かべたまま、それぞれ口に運ぶ。

最初にフランがデザートを口に入れると・・・

 

フラン

「美味しい!!すっごく美味しい!」

 

満面の笑みを浮かべるフラン。

口に合ったようだ。

そして・・・

 

魔理沙

「う、うまい。何だこれ!?すっげーうまいぜ!?」

 

霊夢

「確かにすごく美味しいわね。何なのこれ?」

 

パチュリー

「生地は薄いホットケーキみたいなもの。味はほんのり甘い・・・。中にはクリームやチョコに加えて、バナナやイチゴが入っている。こんなの食べたことないわね・・・。でも、とても美味しいわ。」

 

魔理沙、霊夢、パチュリーからも絶賛する言葉が出る。

他の面々も驚愕の顔を浮かべたまま、美味しそうに口に運んでいた。

 

ショウ

「口に合ったようでなによりだ。こいつはクレープだよ。薄く作った生地の上に、クリームやチョコ、フルーツをのせて巻いた物だ。中に入れる物を変えることでいろんな味が楽しめる。手軽に作るにはもってこいだ。調味や加工はほぼ必要ないから失敗する心配もない。」

 

全員はショウの説明に耳を傾けながら、食べる手は止めない。

全員の嬉しそうに食べる姿を見て、気に入ってくれたことを素直に喜ぶショウ。

 

レミリア

「ショウの料理が美味しいのは運命を見て分かっていたけど、まさか想定を超えてくるとは思ってなかったわ。すごく美味しい。ありがとう、ショウ。」

 

ショウ

「どういたしまして。気に入ってくれて良かったよ。反対意見を出さなかったのはそういうわけか。」

 

レミリア

「ええ。黙っていた方が驚いてくれると思ってね。見事にはまったわ。」

 

咲夜

「まさか、これほどの品が出てくるとは思いませんでした。ショウ様、よろしければレシピを教えていただけますか?」

 

ショウ

「もちろん構いませんよ。まあレシピと言っても、クレープ生地の焼き方くらいで、後は中身の素材で味を変える簡単な物ですから、わざわざ教えるようなものでもありませんが。」

 

魔理沙

「今度家に来て作ってくれよ。こんなに旨いならまた食べたいぜ!」

 

霊夢

「なら私も頼もうかしら?バリエーションまだあるんでしょ?色々食べてみたいし。」

 

ショウのデザートを味わいながら談笑する食堂の面々。

食堂の中はショウ達全員の笑顔に満ちていた。

そして、朝食を終えたショウ達は其々の部屋に戻る。

美鈴と咲夜は仕事の為それぞれの持ち場へ。

ショウは寝ていたベッドに腰掛け、目をつむり考え事をしていた。

その内容は、食事中にレミリアに尋ねた自分の過去についてのこと。

ショウがレミリアに会いに来た目的だった。

 

レミリア

《貴方に嘘をつく気はないからはっきり言うわ。わからないの。貴方の運命を遡れないのよ。私に見えるのは、この世界、幻想郷に立っている貴方の姿まで。ただ未来は少し見えるわね。貴方が次に目指す場所よ。恐らくは・・・彼岸。閻魔四季映姫の所ね。ならば、可能性があるのは浄玻璃の鏡。罪人を裁く為に使う、その者の過去の行い全てを写す鏡よ。確かにこの鏡なら、あなたの過去を知るのにはうってつけの物ね。》

 

ショウ

「やはり、彼岸・・・か。だが、生きている者では辿り着けない場所だ。どうする・・・?行かない手はない。今のところ可能性が一番高い場所だ。何かしら方法はないだろうか?レミリアには心当たりがないそうだし・・・。」

 

レミリアの言葉に対する思案を巡らせるショウ。

だが、考えれば考える程手がない現実を思い知らされる。

それほど生者と死者では隔たりがあるのだ。

一応、四季映姫はたびたび幻想郷に姿を現すらしい。

そのタイミングを狙う手もあるみたいだが、後手に回る上、何時になるかわからないタイミングを狙うのは余りにも愚策だ。

頼み事をする立場上、出来る限りこちらから出向く方法が欲しいところである。

考えが煮詰まっていたため、思考をやめベッドに仰向けに体を預け、窓の外を見上げる。

心地よい陽気に眠気を覚え、瞼を閉じようとしたその時だった・・・

 

ショウ

「!?な、何だ!?」

 

とてつもない殺気を窓の外に感じ飛び起きた。

具体的には紅魔館の正門から。

そして、今その場には美鈴がいる。

 

ショウ

「何だ・・・これ!?凄まじい殺気だ!こんな殺気を放つ奴が、門の前に来てるのか!?まずい!今、門には美鈴さんが!!くそ!?」

 

慌てて剣を掴み、部屋を飛び出すショウ。

 

ショウ

(頼む!間に合ってくれ!!)

 

訪れようとしているのは最悪の結末。

それだけは絶対に阻止する必要がある。

今ここに居るのは、自分にとって大切な仲間達。

彼女達に害をなそうとする者を許すわけにはいかない。

剣を握る手と、駆ける足に力を込め、ショウは凄まじい速度で殺気の元凶へと向かって行った・・・

 

to be continue




一応注意しておきますが、オリジナル主人公は原作主人公みたいにロリコンじゃありません。

???
「誰がロリコンだ!コラァ!!」

何か聞こえたような気がしましたが気のせいでしょう。

次回から異変パート第二戦闘パートです。
戦闘中、遂にオリジナル主人公のチート能力が発現します。
能力発動には条件がありますが、今までのショウの旅と今回の戦闘で条件は満たすので、発動が確定します。
能力は現在の幻想郷能力者達に対処はできません。
それほど強力な物です。
ただし、時間が経つにつれ能力の解析が進み、幻想郷能力者達にも対処法が浸透するので徐々に対応されていきますので、俺つえーな感じにはなりませんので安心してください。

では、次回からの戦闘パートに向け準備を始めます。
仕事は変わらず忙しいので更新はたぶん遅くなります。
申し訳ありませんがご了承ください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part7

更新完了です。
1ヶ月ちょいかかりました。
もう少し早めに仕上げたいかな?仕事の都合と折り合いがつかないのがもどかしいです。

今回の話は、???ファンの方にはちょっと申し訳ない形になってしまうかもしれません。
先に謝罪しておきます。
申し訳ありません(後の話でちゃんとした良い役所用意しますので)
戦闘導入部の続きなので本格戦闘は次回からです。

戦闘パートは二話構成で、後日覚醒能力は二話目になります。
???さんは戦闘能力激高なので、覚醒能力のチートっぷりを表すのにはうってつけですから、お鉢が回ってきました。

割りと胸糞悪い展開なので苦手な方は申し訳ありません。
心境変化の都合上、最初の内はオリ主の???さんに対してのヘイトが限界を振り切ります。
実際こんな対応されれば、ヘイトが限界を振り切るのも当たり前ですが。

では、本編をお楽しみください。


部屋を飛び出し、階段をかけ降りる。

既に猶予はない。

殺気の元凶は既に正門にいる。

このままでは美鈴に被害が及ぶと確信しているショウは、持てる力の全てをただ速く、迅速に正門にたどり着くために振り絞る。

階段は降りきった。

あとは、正面玄関の扉をくぐれば正門は目の前だ。

 

ショウ

「間に合ってくれ!・・・扉が見えた!美鈴さん!!」

 

恩人の名前を呼び、玄関の扉を乱暴に押し開いた。

扉が開き、光が差し込む。

光により一瞬視界が白くなり、直ぐに光に適応した瞳に、紅魔館の庭が写る。

 

???

「・・・あら?随分と騒がしい出迎えね?もう少し静かに来れないのかしら?」

 

美鈴のものではない静かな声。

聞いたことのない声を発した人物が視界に入る。

その姿は、傘をさしこちらを見る大人びた印象を受ける金髪の女性。

一目見るだけで美人だとわかる風貌を持っていた。

間違いなく面識がない人物だったが、他に人影や気配もない。

今近くにいる気配は、目の前の女性のものだけ。

そう、その女性の気配

 

・・・《ただ一つだけだった》・・・

 

ショウ

「―――――」

 

その事実を認識したショウの顔には、静かな、しかし確かな殺意が宿っていた。

殺意を微塵も隠さず、ショウは最後の確認をする質問を口にする。

 

ショウ

「・・・・・・お前が誰かはどうでもいい。一つだけ質問に答えろ。正門にいたはずの女性は、どうした・・・?」

 

???

「・・・消えたわ。」

 

ショウ

「!?」

 

???

「いや、違うわね。正確には・・・消した、かしら。で?それが何か?」

 

ショウ

「――――そうか。・・・それが分かれば、充分だ・・・!」

 

???

「一体何―――!?」

 

質問の答えを聞き、静かに返答したショウ。

その態度に怪訝な顔をして声を出そうとする女性。

しかし、その声が終わるよりも早く、一瞬で女性に肉薄したショウが振り抜いた剣が、辛うじて体を反らした女性の元あった首の位置を通過していた。

 

???

(速い!?)

 

ショウ

「ああそうだ!・・・その答えだけで充分だ!それだけで、俺がお前を殺す理由は、事足りる!!!」

 

ショウの口から出る言葉には、殺意という言葉すら生ぬるいと感じられるほどの殺気、憎悪とも呼べる感情が込められていた。

 

???

「・・・初対面の女を相手に随分な仕打ちね?かわしてなければ死んでいたわよ?」

 

ショウ

「聞いてなかったのか?殺すつもりだと言った。俺はお前を許さない。ここで死んでもらう!」

 

殺されかけたにも関わらず、軽口を叩く女性に対し、殺すつもりだったと隠す気もなく言い放つ。

既にドライブは起動しており、体から大量の魔素を放出させながら、剣を女性へと向けつつ戦闘体制をとるショウ。

対する女性は傘を持ったまま、妖艶な笑みを浮かべている。

 

???

「そういうことなら仕方ないわね。殺されるわけにはいかないし、抵抗させてもらうわ。これで貴方が死んでも、正当防衛になるわね。」

 

ショウ

「笑わせるな。初めから分かってんだよ。狙いは俺だろ?最初にお前を見た時、一瞬だけだが殺気を向けられたのには気付いた。直ぐに消えたが、あれは俺が館内から感じた殺気の気配と同じものだった。なら、あの時この場所にいたのは俺とお前だけである以上、殺気を向けたのはお前以外いるはずがない。下手な芝居はやめろ。」

 

???

「・・・・・・・・・何だ。バレてたのね。つまらない人。まあ、手間が省けるから楽ではあるか・・・。」

 

柔和な笑顔を浮かべていた女性の顔から笑顔が消え、冷たい視線を向けながら凄まじい殺気を放つ、冷酷な表情に変化した。

 

???

「ならもう分かっていますよね?私は貴方を消します。この意思を変える気はない。申し訳ないとは思いますが、死んでいただきます。」

 

ショウ

「・・・まったく、ここ最近は命を狙われてばっかだな。日頃の行いは悪くないつもりなんだが・・・。」

 

ショウは、目の前の女性の狙いは自分の命だと看破していた。

看破されたことがわかった女性からは、先程館内から感じた殺気と同じかそれ以上の強い殺意が感じられる。

だが、この女性とショウは今初めて会った者同士であり、ショウはここまでの殺意を抱かせる理由に心当たりはない。

 

ショウ

(ただ一つ気になる言葉があったな・・・。申し訳ない、か。命を奪うことに対し罪悪感を感じているような台詞だ。・・・確かめてみるか。)

 

ショウ

「しかし、随分とひどい話だな?お前とは初対面だが、何故か殺される話になっている。何でだ?俺としても理由くらいは聞いておきたい。それとも・・・」

 

???

「・・・・・・・・・」

 

ショウ

「喋る事なく死にたいか?なら、望みどうりにしてやる。構えろ・・・。先程言った通り、お前を許す気はない。理由は知りたいが、話す気がないなら結構だ。」

 

ショウは目の前の女性に対し、自分を狙う理由を尋ねるが、話す気がないなら必要ないと殺気を強めて言い放った。

だが、ショウ自身は理由を知ることに苦労はないと考えている。

ショウの問いに対し女性は口を開き語りだした。

そして、ショウが考えていた通り、女性はショウを狙う理由を口にする。

 

???

「・・・いえ。単純な理由なので構いませんよ。貴方はこの世界においては異物、イレギュラーな存在です。そのイレギュラーが『私の世界』にとって、存在が許されない者であるならば、私はこの世界の責任者として、貴方を排除しなければならない。ただそれだけの事です。」

 

女性が語った内容は単純なもの。

ショウの存在がこの世界にとって許されないものだと言う。

だが、ショウの頭に引っ掛かったのは別の言葉、『私の世界』と言ったことだった。

そして、その言葉へと思考を切り替えた時、ショウは一つの結論に至る。

しかし、その結論こそショウにとって、最も許してはいけない答え。

眼前の女性が犯した最悪の間違いだった。

 

ショウ

「・・・『私の世界』だって?つまり、この幻想郷が自分の世界だと言ってるのか?ハッ!笑える冗談だ。ならお前は神様か?神様だから、この世界に生きる命を好き勝手にしても良いと?ふざけるな!確かに俺は異物、イレギュラーな存在だと認めるが、美鈴さんは違う!それを、俺を殺す為には邪魔だったから消しただと!?どこまでふざけた奴だ!そんな奴が神様だと!?そんな神なんか、たとえ万人が認めても俺は認めない!!お前の世界である『幻想郷』に生きる命の為に、お前には消えてもらう!!!」

 

眼前の女性を完全に敵だと見なし、体から魔素を爆発的に放出させる。

 

???

「異物風情が好き勝手言ってくれるわね?貴方こそ生かしては帰さないわ。私の世界には存在してはならない者よ、貴方は。ここで死になさい!私は私の世界のために―――!?」

 

ドゴオオオオン

 

喋る途中で後方に回避する女性。

その一瞬後に元居た位置に黒いレーザーが突き刺さる。

放ったのはショウであり、かざしている左手の前には術式陣が展開していた。

 

ショウ

「もういい。喋るな。お前の言葉に耳を傾けるつもりはないし、聞くだけ不愉快だ。お前の辿る運命はここで消えること。ただそれだけだ。だから・・・」

 

???

「・・・いい加減にしろ、この糞ガキが!!」

 

ショウ

「黙って死ね!!!」

 

ショウと金髪の女性の二人による戦闘が始まる。

その戦いは、お互いに相手を消滅させようとする大火力が飛び交う壮絶なもの。

当然、その轟音は館内にいた面々にも届き、何事と思いながら外へと出てきた。

 

レミリア

「何事よ!?ドカンドカンとうるさいったらないわ!一体誰が!?・・・ショウ!?それに、あなたは・・・八雲紫!?なんであなたが!?」

 

霊夢

「うるさいっての!!昼前から何やってんのよ!?・・・って、紫!?あんたなんでここに!?それに、どうしてショウと戦ってんのよ!?」

 

庭に出るなり大声で怒鳴るレミリアと霊夢に続いて、咲夜、魔理沙、フランも出てくる。

流石に周りを巻き込む可能性があり、互いの顔見知りがいる為、互いに手を止めた。

霊夢達はショウの元、対面に紫を見据える位置へ集まる。

 

ショウ

「紫・・・それがこいつの名前か?こいつは一体何なんだ?」

 

霊夢

「こいつは八雲紫。この世界『幻想郷』を創造した妖怪の賢者よ。本人はスキマ妖怪と名乗ってるわね。」

 

レミリア

「私は外の世界から案内されてここに来たが、勧誘したのはこいつだ。まあ、あの時の事は感謝しているが。フランの件に加え、周囲からも敵視されていた時だったからな。」

 

ショウ

「・・・成る程な。『私の世界』と言ったのは、あながち間違っちゃいないわけか。」

 

ショウの言葉に答えた後、視線を紫に戻して話を始める霊夢とレミリア。

 

霊夢

「さて、どういうつもり、紫?アポなしで訪ねるのはいつもの事だけど、流石に度が過ぎてるわよ?ショウはここにとっては恩人の扱い。それを勝手に襲撃したなら、それなりの対応をしなきゃならなくなるけど?」

 

レミリア

「勝手に敷地に入ったことについて咎めたりはしない。だが、正式に客人として迎えているショウに対して危害を加えるつもりなら、その限りではないぞ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

霊夢とレミリアは紫に対して敵対心を向けながら問いかける。

ショウの両隣にはフランと咲夜、真後ろには魔理沙が来て、ショウの心配をしている。

だがここで、咲夜はいるはずの人物の姿がない事に気付き、ショウに質問した。

 

咲夜

「・・・ところでショウ様?美鈴の姿が見えませんけど、何処に?」

 

咲夜の質問を受けたショウは一瞬顔を歪め、続いて怒りを浮かべた顔になり、ゆっくりと口を開いた。

 

ショウ

「・・・・・・消されたよ。目の前にいる、あの女にな!!」

 

全員

「な!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ショウの答えを聞いた紅魔館の面々は驚愕し、紫を見据える。

その目は驚きの感情から、直ぐに憤怒を宿すものに変わっていった。

 

霊夢

「・・・どういう事よ、紫?ショウの話が本当なら、あんたをただで帰すわけにはいかないんだけど?」

 

レミリア

「・・・これは宣戦布告と捉えて良いのか、妖怪の賢者殿?身内に危害を加えられた以上、相応の報いを与える必要がある。詳細を語って貰うぞ?ショウに対する件も含めてな。」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人

「答えろ!!!」

 

ショウ

「・・・もういいよ。霊夢、レミリア。俺はどっちにしろこいつを許すつもりはない。喋らすだけ無駄だ。例え如何なる理由があろうと、美鈴さんはもう戻らない・・・。それだけで充分だ。絶対に許さん。生かして帰す気はさらさらない!」

 

紫に強い口調で問い質す二人を制止して、再び剣を構えるショウ。

 

霊夢

「いや、聞かないわけにはいかないのよ!紫には私も世話になったことがある。あいつのやることが間違っているなら、私が正してやらなきゃ―――」

 

ヒュン

 

霊夢

「―――え?」

 

ショウの言葉に反論し、再び理由を尋ねようとした霊夢の眼前に、大量の弾幕が飛来していた・・・

 

ショウ

「―――霊夢!!!」

 

瞬時に反応したショウは霊夢の前に立ちはだかり弾幕の直撃を受ける。

 

ショウ

「ガッ!?グッ・・・て、てめえ。どこまで、腐ってやがる・・・。」

 

霊夢を庇い弾幕の直撃を受けたショウはたまらず膝をつく。

霊夢は信じられないといった表情を浮かべ、弾幕を放った紫を見ていた。

 

「はあ・・・しぶとい男ね?今ので死なないなんて。それと・・・霊夢?これは私個人の問題じゃないの。幻想郷そのものに関わることなのよ。子供の貴方は黙ってなさい。まあ、今のは利用したけどね。この男の性格なら絶対に庇うと思ってたし。」

 

霊夢

「ゆ、紫・・・。あんた・・・何、考えてんのよ?利用、したって・・・。ショウが庇うと思って・・・?」

 

レミリア

「貴様・・・!咲夜!そいつを好き勝手にさせるな!これ以上の狼藉は、この紅魔館の尊厳に唾をかけるも同義だぞ!私もやる!神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

咲夜

「・・・流石に、やりすぎよ!傷魂『ソウルスカルプチュア』!!」

 

「・・・部外者に用はないわ。廃線『ぶらり廃駅下車の旅、二両通過』」

 

レミリア

「しまっ――ぐあ!?」

 

咲夜

「お嬢様!?お気を確か――きゃあ!?」

 

紫の行動に激昂したレミリアは咲夜に指示し、自らも槍を構えて紫に向かって行く。

咲夜も堪忍袋の尾がすでに切れており、指示を受けるのとほぼ同時にスペルカードを発動した。

しかし、無情にも突進した二人に合わせるかのように紫がスペルを発動。

空間に発生した裂け目から、巨大な長方形の物体2つが二人にカウンター気味に直撃し、弾き飛ばされて気絶してしまう。

 

霊夢

「―――――けんな・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

霊夢

「ふざ、けんな!!霊符『夢想封印』!!」

 

目の前の現実を信じられない霊夢は錯乱したようにスペルを発動。

しかし・・・

 

「・・・幻巣『飛行虫ネスト』」

 

冷たい口調でスペルを宣言する紫。

霊夢のスペルを軽々といなしつつ、自身のスペルは的確に霊夢を捉えていた。

直撃を受けた霊夢は弾き飛ばされ、紅魔館の壁に叩きつけられてしまう。

 

霊夢

「ゆ・・・ゆか、り。どう、し・・・て・・・?」

 

壁からぐらりと離れ、地面に落ちていく霊夢。

その目からは、一粒の涙が溢れ落ちた。

 

ガシッ

 

霊夢

「―――――」

 

既に気を失っている霊夢。

だが、地面には激突していない。

落ちる前に、ショウが霊夢を受け止めていた。

 

「・・・私は私の世界のため、成し遂げなければならないのよ。その為なら、悪党になろうとも構わない。あとでいくらでも謝るから、今は寝ていなさい、霊夢。」

 

瞳を閉じ、語りかけるように話す紫。

既に三人が倒れ、魔理沙、フランの二人は状況についていけず呆然としている。

しかし、ショウが発した一言で我に返った。

 

ショウ

「・・・魔理沙、フラン。霊夢たちを永琳さんのところへ連れていけ。気絶しているだけだ。診て貰えれば直ぐに目を覚ます。行け・・・!」

 

魔理沙

「シ、ショウ?」

 

フラン

「お兄・・・ちゃん?」

 

ショウ

「早くしろ!!」

 

二人

「!?わ、わかった!」

 

魔理沙とフランは手分けして気絶している3人を運んでいった。

 

「・・・賢明ね。彼女達がいれば、また私に標的にされる。キレている様に見えて案外クールじゃない。」

 

ショウ

「・・・・・・・・・」

 

「こちらとしても好都合よ。消さなきゃならないけど、彼女達に貴方は信用されている。その人物を始末するところを見せたいとは流石に思わないからね。これで邪魔者は――――」

 

ショウ

「黙れ・・・」

 

ゾクッ

 

「!?」

 

喋っていた紫は急に口を閉じ、冷や汗を流す。

目の前の男が口を開いた瞬間、心臓を握りつぶされたかと錯覚する程の悪寒に襲われたからだ。

 

ショウ

「・・・殺す前に一つだけ教えてやる。俺があいつらをここから逃がしたのは、お前がいたからじゃない。むしろ、お前の理由と同じだ。顔見知りを殺すところを見せたくなかった。加えて、お前を殺す俺の姿を見せたくなかったからだ。」

 

「な、何の事よ?」

 

ショウ

「わからないか?なら簡単に言ってやる。俺が人を惨たらしく虐殺する姿を・・・見せたくなかったって言ってんだよ!!」

 

紫に対して殺気を放ちながら語るショウ。

そして、言葉の最後を言い終えると同時に体から爆発的に魔素を放出し、凄まじい速度で斬りかかった。

 

「く!?」

 

辛うじてかわした紫だったが、ショウが放つ威圧感にあてられており、顔は蒼白く、冷や汗が絶えない。

 

ショウ

「・・・消してやる。今すぐに。貴様の痕跡一つ、この世界に残させやしない!!」

 

嘗てないほどの憎悪を抱き、復讐の刃を振るうショウ。

その瞳には、ただ目の前の怨敵を虐殺する、殺戮の意思だけが写っていた・・・

 

to be continue




と、言うことで本編終了です。
異変パート第二戦闘は対八雲紫戦です。(まあ、バレバレだったかな?)

紫さんの対応にはヘイトが溜まりますが、紫さん側にもここまでの対応しなきゃならない理由がありますので仕方ないんです。

次回は本格的に戦闘開始で、戦闘は二話構成の予定ですが、途中で乱入者と介入者が現れます。
この二人が登場することで異変は終息に向かっていく予定です。(大事な事なので二回言いますが、あくまでも『予定』ですのでご了承ください)

では、次回更新までしばらくお待ちください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part8

お待たせしてしまい申し訳ありません。
更新まで約3ヶ月、仕事の都合もあり時間がかかってしまいました。

対紫戦前半です。
今回で、ショウのラストスペルカード以外の全ての技、スペルカードが判明します。
詳細は異変パート終了後に資料集に載せますのでお待ち下さい。

今回の話の最後にブレイブルーキャラがショウの記憶以外で初登場しますが、正確には登場ではなく介入ですので、初めて幻想入りしてブレイブルーキャラが登場するのはもう少し先になります。

では、前書きはここまでにして本編を始めます。
お楽しみ下さい。


紅魔館の庭から響く轟音。

ショウと紫の二人による戦闘は苛烈を極めていた。

 

だが、内容は一方的なものだった。

怒号のような咆哮をあげながら攻撃を繰り返すショウに対して、怯えたような顔をしつつ攻撃を避け続ける紫。

まさに蹂躙だった。

 

ショウ

「くたばれ!!『バニッシュ・ゲイザー』!!」

 

「く!?当たるわけには!」

 

ショウの左手から放たれた黒いレーザーを間一髪で回避する紫。

その額には汗がにじむ。

 

ショウ

「逃がすか!闇牙『キリングラッシュファング』!!」

 

回避する紫を逃がさないため、追尾する特性のスペルを発動する。

 

「ちっ!次から次へと!調子に乗らないで!罔両『八雲紫の神隠し』!」

 

対する紫もスペルを発動。

発動と同時に紫の姿が歪み、ショウの眼前から姿を消した。

 

ショウ

「・・・・・・子供騙しだな。」

 

ぼそりと呟くショウ。

次の瞬間、ショウの隣の空間が歪み、歪みから大量の弾幕が放たれる。

はずだった・・・

 

ショウ

「見えてんだよ!『レイジングアベンジャー』!!『クライシスアサルト』!!落ちやがれ !!」

 

叫ぶと同時に、ショウは上に跳躍しながら剣を振り抜く。

振り抜いた瞬間、剣の周囲から強烈な衝撃波が発生し、弾幕と共に空間から弾き飛ばされる紫。

更に、弾き飛ばされた紫に対し、体を反転させ蹴りを2発打ち込んだ後、魔素を纏わせた肘を打ち込み下に弾き飛ばす。

 

「な!?」

 

弾き飛ばされた紫は、体勢を建て直しながら起こった事実が信じられないと言った顔をする。

本来なら、接近したショウの虚を突き、大量の弾幕を浴びせるはずだったが、直後にショウが放った衝撃波が弾幕だけでなく、スペルの能力で隠れていたはずの自分すらも弾き飛ばすなど、紫はまったく想像していなかった。

しかしショウの攻撃は、紫に思考を巡らせる時間を与えない。

 

ショウ

「喰いちぎれ!闇牙!!」

 

驚愕していた紫の周囲には、先程紫がスペルを発動した後、対象を見失い霧に形を変えていたスペルが再度弾幕を形成して肉薄していた。

 

「この・・・!境符『四重結界』!」

 

咄嗟に結界を張るスペルを使い、接近していた弾幕を防ぐ。

 

ショウ

「・・・空間転移に結界、か。存外器用だな?殺しきるには多少の工夫は必要になるか。」

 

攻撃が防がれたにも関わらず、ショウの思考は冷静だった。

ただ、その冷静な思考は、必ず相手を殺す必殺の意思によるもの。

殺意だけは欠片も消えていなかった。

だがショウは、思考の片隅に僅かな違和感を感じていた。

 

ショウ

(だが・・・、何だ?あの女がスペルで姿を消したのを見てから、何かが頭に引っ掛かる・・・。無くした記憶に関係しているのか?まあ、今は関係ない。こいつを始末してから、改めて考えるか。)

 

自身が感じている違和感が何なのかはわからない。

だが今は、ただ目の前にいる敵を殺すことしか頭にはない。

違和感を振り払い、再び剣を構える。

 

ショウ

「時間はかかるが仕方ないか。少しずつ、なぶり殺しにしてやる!」

 

魔素を放出させながら、再び紫に切りかかるショウ。

その姿は正に、復讐に燃える鬼だった。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~紅魔館 客人用寝室(現在は永琳の処置室)~

 

永琳

「・・・ふう。これで良いわね。粗方終わったわよ。」

 

魔理沙

「助かったぜ、永琳。しかし、紫の奴!一体どういうつもりだ!?霊夢達にまで攻撃を加えるなんて!」

 

フラン

「お兄ちゃん・・・大丈夫かな?」

 

紫の攻撃で気絶していた3人の応急処置が永琳によって行われていたが、たった今終わった。

一安心した魔理沙は紫の暴挙に憤慨し、フランは残っているショウを心配している。

そんな二人を見ていた永琳は、庭で起きた事を聞いて、処置をしながら考えていた事を魔理沙達に話し始めた。

 

永琳

「・・・恐らくで良いなら、私の見解を話すけど、構わないかしら?」

 

魔理沙

「・・・ああ。頼む。」

 

永琳

「多分だけど、ショウの能力を危険視してるんじゃないかしら?彼の力は知ってるでしょ?」

 

魔理沙

「確かに知ってるけどさ、それがどうしたんだぜ?」

 

永琳

「・・・フランちゃんを昨日診察したけど、精神疲労が原因で倒れたのは間違いないわ。だけど、一部肉体の治療も施したのよ。でも、外傷はほとんどなかった。流石に吸血鬼だけあって再生能力が高く、処置する必要は無かったのよ。」

 

魔理沙

「まあ、そうだよな。・・・あれ?おかしくないか?肉体の治療もしたんだよな?なら、何を治療したんだ?」

 

永琳が言うには、フランの治療の大半は精神疲労回復に費やされたが、一部肉体の治療も施したとのこと。

しかし、それだと先程の永琳の言葉に矛盾が生じる。

外傷がない人物に対して施した肉体の治療とは何なのか尋ねる魔理沙。

魔理沙の問いに対して、一呼吸置いてから永琳は口を開いた。

 

永琳

「・・・細胞の劣化よ。吸血鬼の寿命じゃあり得ないほどに劣化していた。まあ、吸血鬼だったからそれほど影響は無く、治療は簡単だったけど。」

 

魔理沙

「は?細胞の・・・劣化だって?」

 

永琳

「件の彼から聞いた話を考えると、彼やフランちゃんが使っていた魔素は、かなり危険性が高い代物だと推察出来る。なら、妖怪の賢者が命を狙う理由は充分にあると思うわよ?その魔素を彼は自在にコントロール出来る。だったら、良からぬ事に使う可能性はゼロじゃないと言える。」

 

魔理沙

「ふざけんな!!ショウはそんな奴じゃない!私やアリス、レミリアやフランだってあいつは助けた!私やアリスならまだ付き合いがあるから分かるけど、レミリアやフランは最初は敵として出会ったんだ!それでもあいつは助けた!あんなにボロボロになってまでだ!そんな奴が、殺されなきゃならないような悪い奴な訳があるかよ!」

 

永琳の考えは、ショウがこの世界に害をなす存在だから狙われたといったもの。

その考えに対し、魔理沙は怒りを爆発させて否定した。

だが、永琳は続けて話す。

 

永琳

「ええ。私も同じ意見よ。彼は絶対に違うと断言できる。でもね?彼と同じ力を使ったフランちゃんに細胞の劣化が発生したのは事実。魔素の危険性は否定されていないのよ。ならば、悲劇が起こる前に元凶を消そうとする行動をとるのも理解できる。彼女のように、この世界に深い愛情を持っている人物なら尚更よ。」

 

魔理沙

「―――くそ!!早く紫を止めないと!!ショウがそんな奴じゃないって教えれば――」

 

永琳

「・・・・・・無理よ。聞く耳を持ちはしないわ。」

 

魔理沙

「な!?どうして!?」

 

永琳

「わからない?話を聞く気があるなら、霊夢やレミリア達にいきなり攻撃を加えたりはしないわ。恐らく、彼が戦っているところを一部見ているはずよ。なら、彼の性格が正しいものであるのはわかるはず。それなのに、実力行使に出たなら、仮に意図せずとも、偶然、この世界にとって致命的な出来事が発生しないとは断言できないと考えていると思う。事実彼は、自分の能力は一歩間違えると、自分自身が災厄になる可能性があると言っていた。これはもう、貴方一人の意見で変わる領域の話じゃないのよ。」

 

永琳の意見に言葉を失う魔理沙。

その意見にはしっかりと筋が通っている。

だからこそ、納得できないにも関わらず沈黙するしかなかった。

 

フラン

「・・・そんなの関係ないよ。」

 

魔理沙

「え?」

 

自分に出来ることはないと諦めかけていた魔理沙の耳に、フランの声が届く。

 

フラン

「それが正しいなら、私は殺されなきゃいけなかった。お姉様は私を見捨てずにいてくれたし、お兄ちゃんは私を救ってくれた。私は暴走していて、周りの人をたくさん傷つけたのに。だったら、もしかしたら危ないからって殺しちゃうなんておかしいよ!」

 

魔理沙

「フラン・・・。」

 

フラン

「お兄ちゃんが、死んだ方がいい人なはずない!私は、死んで欲しくない!一緒にいて欲しいんだ!」

 

そう叫んだフランは、魔理沙や永琳の制止を聞かず部屋を飛び出した。

恐らく、ショウの所へ向かったのだろう。

 

魔理沙

「・・・私も行く。フランの言うとおりだ。客観的な意見なんて私には関係ない。私もショウには生きていて欲しい。それだけで、助けに行く理由には充分だぜ!永琳!霊夢達を頼んだぜ!」

 

魔理沙もフランの後を追って部屋を出ていった。

残った永琳は、未だベッドに寝ている霊夢達に視線を向け、一人呟く。

 

永琳

「・・・改めて思えば、本当に不思議な人ね。こっちの世界に来てから全然日が経ってないのに、もうあそこまで信頼されてるなんて。彼のような外来人は、今まで一人もいなかった。フフ、興味深いわね・・・。さて!私は私に出来ることをしましょうか!」

 

気合いを入れ直した永琳は、治療を再開した。

淀みなく治療を施していく。

しかしこのとき、永琳は気付かなかった。

本来ならまだ寝ていたはずの人物が、たった一人だけいなくなっていたのを・・・

 

???

「・・・・・・ショウ。死なせは、しない・・・!」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「そこだ!『ディザスターストリーム』!!」

 

「させないわ!境符『二次元と三次元の境界』!!」

 

ショウが地面に剣を突き刺すとショウの周囲から嵐のように渦巻いた魔素が発生し、紫に襲いかかる。

ショウの技が紫に肉薄すれば、紫も自分のスペルで周囲を凪ぎ払い、スペルの弾幕をショウへと飛ばす。

 

ショウ

「当たるかよ!飛翔撃『アカシックブレイバー』!!」

 

ショウは転移型スペルでその場から消える。

 

「な!?私と同じ能力を使えるの!?」

 

ショウ

(転移!弾幕!次の座標認識!奴の周囲を弾幕で埋め尽くす!)

 

スペルの能力で空間転移を繰り返し、その都度弾幕を放つ。

瞬く間に紫の周囲を弾幕で埋め尽くした。

 

「く!なめるな!境界『魅力的な四重結界』」

 

周囲から飛来する弾幕をスペルで防ぐ。

戦いは一進一退の様相を見せているが、徐々にショウが押していく展開になり始めた。

怒涛の連続攻撃で紫に反撃の隙を与えない。

 

ショウ

「そろそろ仕留めるか。切り刻め!葬刃『クリムゾンクロス』!!」

 

「!?」

 

頃合いだと見たショウは、懐からカードを取り出し宣言する。

すると、空中に無数の赤い十字架のような弾幕が現れたが、特に動きもせず滞空したままだった。

 

「・・・?なにも、来ない?」

 

紫は発動されたスペルに対し身構えていたが、特に何も起こらないことに疑問を浮かべていた。

しかし、油断していた次の瞬間―――

 

シュン

 

「!?不味い!!」

 

風切り音が耳に届くと同時に頭を下げる。

すると、先程まであった頭の位置を何かが凄まじい速度で通り過ぎた。

 

ショウ

「よく避けたな。だが・・・もう遅い。これでチェックメイトだ、八雲紫。」

 

「!?まさか、貴方の狙いは!?」

 

ショウのスペルによる赤い十字架のような弾幕が紫の周囲を囲んでおり、そこから無数の赤いレーザーが大量に放たれる。

速度は凄まじく、避けられる隙間もほぼない。

加えて、ショウ自らも紫に接近する。

 

ショウ

「これで逃げ場はない。お前は直接ぶった切る!!術式・・・解放!黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』!!」

 

接近するショウはオーバードライブを発動。

体から大量に魔素を放出し、それを剣へ集約していく。

更に、周囲には赤いレーザーが飛び交い逃げ道を塞いでいた。

回避は不可能に近い状態であり、状況はショウの言うとおり詰んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただしそれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手が並の相手であった場合に限ることだった・・・

 

「・・・ようやく、餌に掛かったわね。待っていたのよ?あなたが直接、私に向かってくる瞬間を・・・ね!!」

 

紫から発せられた言葉がショウの耳に届くと同時に、紫の周囲の空間が歪む。

その瞬間、スペルのレーザーが一斉に紫へと向かっていった。

 

ショウ

「これは・・・?このスペルにホーミング機能はない筈だ。何で、向きを変えて・・・?」

 

「さあ・・・逆チェックメイトよ。」

 

向きを変えたレーザーは一直線に紫へ向かうが、紫には一発も当たっていない。

何かに阻まれているように紫の目の前で消滅している。

そして・・・

 

シュン

 

ショウ

「!?」

 

状況に困惑していたショウだが、直後に後方から聞こえる風切り音に反応し、横へ飛ぶ。

そこには、先程まで紫に向かっていたのと同じ、『赤いレーザー』がショウの横を通過していた。

 

ショウ

「そんな馬鹿な!?これは、俺のスペルの!?」

 

間一髪で回避したショウの周囲には、先程までの紫の状態を再現するかのように赤いレーザーが飛び交い、ショウの逃げ道を塞いでいた。

 

ショウ

「くそ!!八雲紫!何をしやがった!!」

 

「フフ・・・改めて自己紹介をしておこうかしら?私は八雲紫。『境界を操る程度の能力』を持つスキマ妖怪よ。さて、種明かしをしてあげる。貴方のスペルの境界を操作し私の支配下に置いて、私に向かってくるように細工したの。後は、それを私のスキマを通して貴方に向けるように配置し周囲を囲んだだけよ。何も難しいことはしていないわ。そのまま貴方に向けても良いんだけど、貴方なら射線から軌道を読み回避しそうだからね。」

 

ショウ

「俺のスペルを・・・支配下に置いた、だと?」

 

紫はショウのスペルを逆に支配し、ショウの逃げ道を塞いでいた。

その事実に驚愕していたショウに紫から非情な宣告が告げられる。

 

「さあ、フィナーレよ。紫奥義『弾幕結界』。周囲を囲むレーザーに加えて、四方八方から飛来する大量の弾幕。逃げることも耐えることも不可能よ。」

 

ショウに向かって放たれる膨大とも言える弾幕。

逃げ道を塞がれ、周囲を埋め尽くしつつ向かってくる弾幕は、ショウに対して告げられる死刑宣告そのものだった。

 

ショウ

「クソ・・・が!こんな、所で・・・俺は!!!」

 

ショウは憤怒に燃えた目を紫へと向けているが、当の紫は感情を映さない瞳をショウに向け、ゆっくりと最後の言葉を告げる。

 

「では、悲運な外来人よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《サヨウナラ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「ショウ!!!」

 

???

「お兄ちゃん!!!」

 

ショウ

「!?こ、この声は!?魔理沙と、フランか!?」

 

魔理沙

「させて、たまるか!!」

 

フラン

「お兄ちゃんは、殺させない!!」

 

魔理沙

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

フラン

「禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

ショウの耳に自分を呼ぶ声が届く。

ショウの視界は変わらず弾幕に埋め尽くされていたが、視界の端に虹色と深紅の閃光が煌めく。

同時に激しい炸裂音が響いた。

しかし、ショウの視界を埋め尽くす弾幕に変化はない。

 

魔理沙

「くそ!!多少は弾き飛ばせるけど、それ以上に弾幕が増える速度が速すぎる!このままじゃショウが!」

 

フラン

「そんな・・・お兄ちゃん!!逃げて!!」

 

ショウ

「魔理沙、フラン・・・。くそ!!諦めて・・・たまるか!!」

 

助けに来た二人だったが、事態が変わらない現実に悲しみの声を漏らす。

その声を聞き、ショウが咆哮をあげる。

そして、ショウは腕に大きな傷をつけ『左手』に手をかざした。

瞬く間にショウの左手が黒く濁っていく。

 

ショウ

「『左腕部限定・全拘束解放』!!『魔素収束・掌握術式構築展開』!!『コード―クライムアーク・超越解放《アンリミテッドブレイズ》』!!『目標捕捉・呀獣招来』!!諦めてたまるか!俺はまだ、何も取り戻していない!!!」

 

詠唱を終えたショウは、眼前に広がる弾幕に黒い左手をかざしながら疾走する。

そして・・・

 

ショウ

「命が消える最後の時まで、俺は・・・立ち止まるわけにはいかないんだ!!『カース・オブ・インフィニティ』!!」

 

かざした左手からどす黒い獣が無数に現れ、周囲を埋め尽くす弾幕に牙を向く。

 

ショウ

「全てを・・・喰らい尽くせえぇぇぇ!!!」

 

眼前を埋め尽くしていた弾幕が瞬く間に消されていく。

そして、遂に獣の牙が弾幕の檻を貫いた。

 

ショウ

「開いた!!これで―――」

 

「逃げられると思う?悪いけど、それはないわ。廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」

 

ショウ

「な!?くそ!?」

 

ショウの正面にはレミリアや咲夜に使われたスペルが迫っていた。

咄嗟に反応し、持っていた剣で受け止めたが、先程の技で力を振り絞っていたため、受け止めきれず再び弾幕の檻の中に弾き飛ばされる。

 

ショウ

「ぐあ!?ぐっ・・・ちく、しょう・・・!」

 

開いた筈の視界は再び弾幕に埋め尽くされている。

もう、打つ手がない・・・

 

ショウ

(俺は・・・ここまで、なのか?もう、打つ手が・・・ない。)

 

ショウの体から力が抜けていく。

 

ショウ

(・・・ラグナ・・・)

 

不意にショウは、かつての戦友の事を思い出す。

 

ショウ

(・・・お前は・・・こんな絶望でも、諦めなかったのか?)

 

全世界から敵視される史上最高額の賞金首として、たった一人で戦い続けた戦友。

ラグナ・ザ・ブラッドエッジの人生は、戦いと共にある物だった。

なぜ彼が、過酷な戦いの中でいつまでも諦めずに戦えたのだろうか?

何が、彼を支えていたのだろうか?

共にいた時間はそれほど長くはないが、彼の心の強さは、一種の羨望すら覚える程の物であった。

 

ショウ

(ほんの少しで良い・・・お前の強さを、覚悟を!・・・俺に・・・貸してくれ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

《・・・絶対に諦めないで》

 

ショウ

(!?・・・な、なんだ!?)

 

ショウの頭の中に誰かの声が響く。

それは、慈愛に満ちた優しい声だった。

 

???

《最後の最後まで人として、ただの人間としてあがきなさい。醜くても良い、みっともなくても良いから・・・。》

 

ショウ

(・・・この声、聞いたことがあるような・・・)

 

???

《・・・頑張って・・・ラグナ・・・。》

 

ショウ

(ラグ、ナ・・・?俺じゃない・・・。これは、ラグナの・・・記憶か?)

 

ショウの頭の中に響く声は自身ではなく、ラグナに向けられた言葉だった。

 

ショウ

(・・・これが、あいつを支えていた言葉、なのか?)

 

ラグナに向けられた言葉ではあったが、その言葉は自分にも向けられているように感じるほどリアリティーを含んでいた。

そして、ショウの頭の中には自分に向けて手を伸ばし、頬に触れる少女の姿が映る。

 

ショウ

(!?まさ、か・・・)

 

その姿を見たショウの思考は加速する。

頭の中に見えた映像は、ショウの内から眠っていた記憶を呼び起こした。

 

ショウ

(思い・・・出した・・・。彼女は・・・。)

 

映像の中で自身を見つめる少女に向かって、その名を呼ぶ。

 

ショウ

「・・・レイ、チェル・・・。」

 

少女の名を呼んだ瞬間、ショウの視界は白く霞んでいき、ショウの意識が戻ると、ショウは周囲に何もない広大な白の空間に立っていた。

 

ショウ

(な、何だここは・・・?何も、ない・・・。)

 

自身の状況を把握できていないショウの背後から声が届く。

その声は、先程までと同じ声だったが、一つだけ違うことがあった。

 

???

「あら・・・?ようやく私の事を思い出したようね。まったく、私の事を忘れるなんて、大罪に値するわよ?」

 

込められていた感情は、慈愛ではなく、皮肉だった。

 

ショウ

「・・・悪かったよ。それと、久しぶり、かな?・・・レイチェル。」

 

その皮肉たっぷりの言葉に対しショウの抱いた感情は、言い様のない脱力感と、安心感だった。

 

レイチェル

「・・・ええ、そうね。お久しぶり、ショウ。」

 

新たな記憶を取り戻したショウ。

そして、この少女との邂逅がショウにもたらすものとは・・・

 

to be continue




異変第8パート終了です。
と、いうわけで介入したブレイブルーキャラは、みんな大好き姫様です。
尚、資料集で詳細に語りますが、各ブレイブルーキャラの記憶復元には東方キャラとの邂逅が必須と最初の頃に説明しました。
簡単に説明すると、今回レイチェル・アルカードの記憶復元に関わったキャラは、

1,レミリア&フラン(吸血鬼)

2,アリスの人形(ゴスロリ)

3,霊夢&紫(結界&空間転移)

です。

各東方キャラが持っている特徴、能力等が対応しているブレイブルーキャラの特徴と合致していて、それが一定数組合わさると解禁されます。
今後資料集を更新した際、解放条件の特徴は伏せたまま、解放条件になっている東方キャラの名前は載せておきます。
暇だったら、どのキャラが誰の解放条件か想像してみてくださると嬉しいです。

では、長々と駄文に付き合ってくださりありがとうございました。
今後も不定期に更新していきますので、よろしかったら続きを読んでいただけると作者冥利につきます。

かなりの時間を必要としますが、完結は必ずさせますので気長にお付き合いください。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part9

長い期間更新できないで申し訳ありませんでした。
約1年の間ずっと更新が止まってしまっていました。
仕事のストレスと過労により体を壊してしまい、約3ヶ月の間入院、前の仕事は既に退職し、新しい仕事を探すために就職活動をしており、全く更新出来ませんでしたが、仕事が見つかり時間も出来た為、更新を再開しようと思います。
未だに第一の異変すら終らないまま更新停止になど出来ないと再び筆を執りました。

状況は対紫戦の途中ですが、元々二話で作る予定を変更し、三話構成にします。
久々の更新で最初から長文は、読みにくい上に話も纏まらない可能性があるので、一旦区切りをつけます。
尚、今回の話でオリジナル主人公の後日覚醒能力を解禁。
覚醒能力を使っての戦闘は次回からになります。

では、長期間更新を停止していましたが、異変パート9話をお楽しみください。


再会した二人は少しの間談笑する。

取り戻した記憶では、彼女はこういった性格。

所謂、ツンデレタイプだ。

デレた所を見たことはないが、先程のラグナに向けた言葉と態度で容易に想像できる。

思い出した記憶に加え、記憶と変わらない彼女の姿や態度から、ショウの顔には自然と笑みが浮かんでいた。

 

ショウ

「・・・ずいぶん懐かしい感じだな。相変わらずみたいで安心したよ。やっぱりお前はそういうキャラじゃないと落ち着かない。」

 

レイチェル

「何を笑っているの?・・・貴方まさか、私の事を馬鹿にしているのかしら?何なら、今ここで消し炭にするわよ?」

 

ショウ

「悪い悪い。安心したらついな。不快にさせたなら謝るよ。さて、談笑はここまでにするか。」

 

ジト目になったレイチェルに謝罪しながら、ショウは表情を真剣なものに変える。

 

ショウ

「レイチェル。会って早々で悪いが、質問をいくつか聞いて欲しい。頼めるか?」

 

レイチェル

「構わないわ。もともとそのつもりよ。で、何が聞きたいの?」

 

ショウは静かに語り始める。

自身の記憶の断片を繋ぎ合わせ、今に至るまでの経緯を。

そして、その断片に足りない部分を補うための質問も合わせて尋ねていった。

それらに対して、レイチェルは知っている限りを話していく。

しかし―――

 

ショウ

「――――という訳なんだ。で、一番確かめたいのは俺の最後の記憶について。思い出せないが、誰かを守るために暴走したラグナと戦った所を最後に記憶が途切れている。あの後、一体何があったんだ?」

 

レイチェル

「・・・まあ、それを聞くわよね。ラグナから■■■と■■を守ろうとしたときのことよね?」

 

ショウ

「・・・?すまない。今、何て言った?多分人の名前だと思うが、よく聞き取れなかったんだが?」

 

レイチェル

「・・・やっぱり、か。この空間は貴方の記憶領域に干渉して構築しているのよ。つまり、貴方が思い出していない人物や出来事について話しても、貴方は認識できない。私が言った言葉の一部が聞き取れないのはその為よ。新しく聞いたことなら、理解出来るけどね。」

 

レイチェルが語った内容の一部が聞き取れなかったため再度確認したが、どうやら取り戻していない記憶については何度聞いても、ショウ自身が認識できないため聞き取れないらしい。

 

ショウ

「・・・そうか。なら、今理解出来るのは、ラグナとレイチェルの二人に関することだけか・・・。なら、ラグナはどうなった?」

 

レイチェル

「ラグナも行方不明になったわ。貴方と一緒にね。貴方はその時、今いる世界に来たと考えられるけど。」

 

ショウ

「な!?俺だけじゃなく、ラグナも行方不明!?」

 

レイチェルの口から衝撃の事実を告げられる。

一番最後の記憶はラグナと戦っていたこと。

その後、自身だけでなくラグナの消息も分からなくなったとのことだった。

 

レイチェル

「今の現状は、■■■■■■が■■■■■■を媒介に誕生させた『エンブリオ』が空中に漂っている状態。あと、■■■■■■■■も現れて、今は私のツクヨミユニットで守っている。■■は重症で今だベッドから動けないわ。■■■も怪我はしてるけど、動けないほどじゃない。■■■と■■■■は現在も貴方とラグナを探しているわ。まあ、こんなところかしら。」

 

レイチェルの言葉の内、自身の過去に関わる単語は聞き取れないが、大体の状況は理解できた。

また、味方と思われる二人の人物が怪我をしており、誰かがショウとラグナを捜索してくれているようだ。

ただ、初耳な単語もあった。

 

ショウ

「大体わかった。ただ、聞いたことがない単語があったな?『エンブリオ』って言ったか?聞き取れない訳じゃないから、本当に初耳のはずだが・・・、その『エンブリオ』ってのは何なんだ?」

 

レイチェル

「・・・『エンブリオ』についての説明は難しいから、これだけを覚えておけば良いわ。『エンブリオ』は真なるブレイブルー、『蒼炎の書』を産み出すためのものよ。」

 

ショウ

「真なるブレイブルー・・・か。そうだったな。ラグナのブレイブルーは模造品だったか。その元となったのが、『蒼炎の書』・・・て事か。なるほどね。後、もう一個聞きたい事がある―――」

 

レイチェルの説明を受け、ある程度は納得できた。

追加で質問をしようとしたショウだったが・・・

 

レイチェル

「・・・一つ聞いても良いかしら?」

 

ショウ

「ん?質問か?今の俺に答えられる事は少ないぞ?それでも良いなら構わないが・・・。」

 

レイチェルからの質問に遮られた。

記憶がない今の状態じゃ大した回答もできないとは思うが・・・。

 

レイチェル

「なら、聞くわ。・・・何故、貴方から蒼の力を感じるのかしら?強くはないから、欠片みたいなものだと思うけど、間違いなく蒼の力を感じる。どういう事かしら?」

 

ショウ

「・・・は?俺から、蒼の力を感じる?そんな馬鹿なことある訳・・・・・・いや、確かにあったわ、可能性が一個だけ。」

 

レイチェルからの質問は、ショウの体から蒼の力を感じるとの内容だった。

そんなはずないと突っぱねるつもりだったショウだが、改めて思い返せば、一つだけ可能性がある出来事があった。

 

ショウ

「この世界にスカーレットていう吸血鬼の姉妹が居るんだが、その姉妹の妹の方が何者かに持ち込まれた蒼の欠片を取り込んで暴走したんだ。その欠片を俺が魔素で砕いた。もしかしたら、その時に蒼の欠片を体内に取り込んだ可能性がある。」

 

レイチェル

「・・・ちょっと待ちなさい。聞き捨てならない内容が幾つかあったわよ?今貴方、スカーレット姉妹って言ったわよね?それに、蒼の欠片が何者かに持ち込まれたですって?どういう事よ?説明なさい!」

 

ショウの答えを聞いたレイチェルは、彼女らしからぬ大声をあげる。

 

ショウ

「確かに言ったな。順番に説明してやるから少し落ち着け。この世界には先程言った通り、スカーレットっていう姉妹がいる。姉はレミリア・スカーレット、妹はフランドール・スカーレットだ。予想はしていたが、やはり知り合いか。」

 

レイチェル

「ええ。彼女達は私の古い友人よ。かれこれ500年以上前のね。でも、彼女達は知り合ってから直ぐに行方不明になったわ。既に死んでいるものとばかり思っていたけど、生きていたのね。」

 

ショウ

「その事について詳しくは知らないが、レミリアから聞いた話を考えると恐らく、行方不明になったのはこっちの世界にやって来たからだ。話の内容と時期が一致する。レミリアは約500年程前に、能力制御ができずに暴走するフランを幽閉したと言っていたが、それはこちらの世界に来て直ぐの事と言っていたから多分間違いない。」

 

レイチェル

「幽閉・・・。まったく、馬鹿な子ね。手立てはないのに、諦めることだけは死んでも嫌だと宣っただけはあるわ。」

 

ショウ

「そう言ってやるな。フランは取り込んだ蒼の欠片により精神の暴走を強めた上に、欠片から魔素を取り込んでしまい精神汚染を引き起こしていたが、俺が欠片を砕いた事で今は安定してる。それに、不幸中の幸いとでも言うのか、フランの能力はレミリアの話で聞いた時よりもかなり安定してるんだ。蒼の欠片の力でな。」

 

レイチェル

「・・・どういう事かしら?」

 

ショウはレイチェルに語る。

フランの能力は、レイチェルが知り合った時よりも安定していると。

そして、その要因になったのは、暴走の元凶でもある蒼の欠片の力だと。

 

ショウ

「レミリアとフランが持っている力については知っているな?」

 

レイチェル

「ええ。レミリアが運命操作、フランが絶対破壊の能力だったわね。」

 

ショウ

「その通りだ。そして、二人の能力には共通点がある。レミリアは近しい運命を自身の能力が干渉出来る程度に改変する力。フランは破壊限定だが、干渉する物に制限はなく、強制的に破壊する力。この差が能力制御の難易度の差になっている。そして、能力行使の過程でどちらも対象の運命、因果に干渉する。これ、どこかで聞いたことないか?」

 

レイチェル

「・・・事象干渉ね。」

 

ショウ

「正解だ。力の強弱、導かれる結果は限定的だが、彼女達の能力は、どちらも事象干渉に酷似している。なら、蒼の欠片の力を吸収したならば、能力制御が安定してるのも納得できることだ。」

 

ショウの語った内容は、レミリアとフランの能力はどちらも限定的な事象干渉に酷似していると言うもの。

そして、蒼の力を一時的とはいえ取り込んだフランの能力は、より事象干渉の力に近づいた物へと変質した。

当然、能力の安定した使用の為に多少の訓練は必要になるが、フランはもう自身の能力による暴走の可能性はかなり低くなっていたのだ。

 

レイチェル

「・・・フランが欠片とはいえ蒼に触れた、か。かつての友人として思うなら心配ではあるけど、暴走の可能性がほとんど無くなったというのは確かに嬉しい事ね。フランは私を姉のように慕ってくれた可愛らしい子だったから。それについては礼を言うわ。・・・最後に聞かせてちょうだい。蒼の欠片が何者かに持ち込まれたというのはどういう事かしら?」

 

旧友を救ってくれたことに対してレイチェルは素直に感謝の意を示した。

そして、最も確認しなければならない事について質問する。

蒼の欠片が何者かに持ち込まれた件についてだ。

質問を受けたショウは、神妙な表情を浮かべながら語り始める。

 

ショウ

「・・・・・・わかった。先程言ったが、レミリアとフランがこの世界にやって来たのはおよそ500年前で、直ぐにフランは地下室へと幽閉された。フランは今日に至るまでの間、一度も外へ出ていないらしいが、フランの話だと、蒼の欠片はフランの部屋に落ちており、見つけたのは最近の事だそうだ。」

 

レイチェル

「・・・そういうことね。つまり・・・。」

 

ショウ

「ああ・・・。フランの部屋は完全に密室だった。しかも、最初からあったという説も否定される以上、残る可能性は、何者かが意図的にフランの幽閉された部屋に持ち込んだ以外にあり得ない。にわかには信じがたいがな・・・。一体何のために・・・!?」

 

レイチェルに可能性の説明をした後、何故持ち込まれたのかを思案していたショウだが、突如強烈な目眩に襲われバランスを崩す。

 

ショウ

「な、何だ?視界が・・・霞む・・・!?」

 

レイチェル

「・・・どうやら、もうすぐ時間切れのようね。」

 

ショウ

「時間切れ・・・だって?どういう事だ!?」

 

ショウの疑問にレイチェルは、間もなく時間切れだと答える。

時間切れとはどういう事か尋ねるショウ。

 

レイチェル

「先程伝えた通り、この空間は貴方の記憶領域に干渉して構築しているのだけれど、これ、かなり力業なのよ。長時間安定した状態で展開することができないの。しかも、一度でも閉じてしまえば、二度と構築することはできないでしょうね。」

 

ショウ

「・・・・・・そうか。いや、これだけ情報が得られれば十分か。ありがとうレイチェル。助かった。わざわざすまなかったな。」

 

レイチェル

「別に構わないわよ。私も知らなければならない情報が手に入ったし、礼を言うならお互い様よ。・・・もう時間はないか。最後に一つだけ忠告しておくわ。」

 

レイチェルの説明に落胆しながらも、そこまでの無理をさせてしまったことに責任を感じ、謝罪と感謝を述べるショウ。

それを受けたレイチェルもお互い様と礼を述べた。

そして、最後に一つだけ忠告があると語る。

 

レイチェル

「貴方が得た蒼の欠片の力だけど、その力の殆どは失われてしまっているわ。かろうじて出来ているのは、元となる力がある私たちの世界と、今貴方がいる世界を繋ぐことぐらいよ。当然、根源の力である蒼の力は、その殆どが失われてしまっても、強大な力ではあるけれどね。いわば、『方向性を失った力』の塊ね。まず役にはたたないわ。」

 

ショウ

「『方向性を失った力』か・・・待てよ?・・・それなら、力に出来るかもしれない!未だに決まってない最後のカードなら!」

 

レイチェルの忠告を聞き、何かを閃いたショウ。

その頭には、親友とも呼べる少女の言葉が浮かぶ。

 

魔理沙

《スペルカードは、自分の能力にある程度の方向性を付けるものだぜ。》

 

ショウ

(今の蒼の欠片の力に出来る事は、俺たちの元の世界と幻想郷を繋ぐこと。そして、スペルカードは自分の能力にある程度の方向性を付けるもの。ならば!)

 

ショウは自分の懐から、左手で白紙のスペルカードを取り出し、目を閉じる。

 

ショウ

(蒼の欠片の力を・・・境界、そして、世界を繋ぐ力を・・・スペルカードに!!)

 

自分の中に眠る蒼の欠片の力を、自らが思い描く力の形に変えるため、ショウは意識を集中させる。

やがて、ショウの左手から透き通るような蒼の光があふれ、その光は左手に握られていたスペルカードへと集まっていく。

光が止むと、握られていたスペルカードには、淡く揺らめく蒼炎が描かれていた。

 

ショウ

「・・・ふー。よし!上手くいった!」

 

レイチェル

「これは・・・?ショウ、一体何をしたの?」

 

スペルカードを確認したショウは絵柄が浮かび上がっているのを確認し、深く息を吐き安堵の表情を浮かべた。

その姿を見たレイチェルはショウに尋ねる。

 

ショウ

「さっきのレイチェルの言葉で閃いたんだ。今俺が持っているカードはスペルカードと言って、この世界に流通している攻撃手段の一つなんだが、このカードの力は、『自分の能力にある程度の方向性を付けるもの』だ。今の蒼の欠片は『方向性を失った力』であるなら、スペルカードの能力なら、蒼の欠片の力に方向性を付与し、自分の能力として使えるかもと思ってな。」

 

先程のレイチェルの言葉。

今の蒼の欠片は『方向性を失った力』の塊。

ならば、スペルカードの能力なら、蒼の欠片が持つ強大な力を、自らの力として使えるかもと思ったショウは、残っていた最後のスペルカードに蒼の欠片を移動させ、蒼の力を持つスペルカードへと変質させたのだ。

 

レイチェル

「・・・はあ、呆れたわね。まさか、蒼の力を自分の能力として使おうとするなんて。ただ、成功している以上、正しい解答かもしれないけど。」

 

ショウ

「使用してみないとわからないが、一応能力としては形になってるはずだ。理論上はな。いやー、良かった良かった。上手くいかなかったらと思うとゾッとするが、成功したなら問題なしだ。実際問題、制御できない強大な力なんかリスクにしかならない。俺の能力と一緒だ―――ぐ!?くそ・・・そろそろリミットか!?」

 

蒼のスペルカードの説明をしていたが、再び強烈な目眩を感じ、遂に膝をついてしまう。

どうやら限界らしい。

その姿を見たレイチェルは、ショウを見たままフワリと空中に浮かんでいく。

 

レイチェル

「ここまでね。ショウ、有意義な時間ではあったわ。疲れたけど。後、現実の時間は全く進んでいないわ。目を覚ませば気を失う前の状況そのままよ。確か、大ピンチのはずなのでしょう?」

 

ショウ

「―――あ、ああ。危機的状況だな。知ってるなら何とかして欲しいが、無意味な頼みかな?」

 

レイチェル

「ええ、もちろん。干渉は不可能よ。でも、もう心配の必要はないでしょう?」

 

ショウ

「まあ、な。力も心も、気を失う前とは、何もかも違う。心配は要らない。必ず勝つ!!」

 

レイチェルの皮肉に力強く答えるショウ。

その瞳にはもう、迷いも絶望もなかった。

その姿を見たレイチェルは、あの時ラグナに向けていた慈愛に満ちた表情を浮かべていた。

 

レイチェル

「頼もしいわね。なら、私は貴方を信じるわ。・・・ショウ・・・『絶対に諦めないで・・・最後の最後まで人として、ただの人間として足掻きなさい。醜くても良い、みっともなくても良いから。』」

 

ショウ

「!?レイチェル、お前・・・。」

 

レイチェル

「『・・・頑張って・・・ショウ・・・。』」

 

レイチェルはラグナに送った言葉をそのままショウに送り、その姿を消した。

静寂に包まれた純白の空間にショウは一人立ち尽くす。

その顔には、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。

 

ショウ

「・・・フッ。アイツらしいな。俺がラグナの記憶を見てレイチェルを思い出したの知ってやがったな?全く、最高に性格が悪い。でも・・・最高のプレゼントだ。・・・ありがとう・・・レイチェル―――」

 

レイチェルへの皮肉と感謝の言葉と同時に、ショウの視界は再びホワイトアウトしていった・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「―――・・・。」

 

ショウの意識が戻ると、眼前には、一度自分が膝をついた絶望が、変わらず視界を覆い尽くしていた。

 

ショウ

「・・・本当にそのままだな。だが・・・もう迷いも絶望も・・・無い!!!」

 

ショウは眼前の絶望だったものに力強く吠え、懐からカードを取り出す。

そのカードには『淡く揺らめく蒼炎』が描かれていた。

 

ショウ

「力を貸してもらうぞ、ラグナ。・・・紡いだ記憶を力に変える・・・。世界を繋げ!!」

 

ショウが持つスペルカードが蒼く輝く。

 

ショウ

「幻蒼符『ファンタジア・インストール』code:SoulEater《ソウルイーター》、共鳴解放《レゾナンスブレイズ》!!!」

 

かつて無いほどの力がショウの周囲で渦巻き、咆哮と共に弾ける。

その声を弾幕の檻の外から聞いていた紫は呆れたような表情を浮かべ、吐き捨てるように呟いた。

 

「・・・はあ、もう諦めなさい。いい加減しつこいわよ?貴方では私に勝てない。もう分かっているでしょう?貴方の力は私には通じな―――」

 

???

「・・・・・・『カーネージシザー』!!」

 

「―――いわ――!?」

 

紫がショウに対する皮肉を言い終わる直前、紫はかつてない程の殺気を感じとる。

そして、その殺気を認識した正にその時、凄まじい速度で肉薄し、上段から剣を振り下ろしてくる、『白髪』の男を視界が捉えた。

 

(な!?どうやって弾幕結界から!?しかも、この力・・・先程までとは比べ物にならない!?)

 

ギリギリで反応した紫は持っていた扇子で剣を受け止めたが、その剣から伝わる膂力は、先程まで戦っていた外来人の力を遥かに超えていた。

 

???

「・・・喰われろ!!!」

 

「そんな!?押し込まれ―――きゃあ!?」

 

受け止めたはずが、力で押し込まれて体勢を崩されると、眼前の白髪の男は体を回転させ、下から剣を振り抜いた。

振り抜いた剣先から黒い衝撃波が発生し、紫はかわせず直撃を受けかなり後方まで弾き飛ばされる。

 

「ぐ!?かはっ!?い、一体何が・・・!?」

 

???

「・・・・・・・・・」

 

かなりのダメージを受けた紫はたまらず空中で膝をつく。

顔をあげ、白髪の男を視界に捉えたとき、その異様な姿を目にした。

その姿は、先程まで戦っていた外来人そのものではあったが、細部が異なる。

頭髪は白髪、服は元の服の色が黒を基調としたものに変化し、上からは赤いジャケットのような物を羽織っていた。

そして、瞳は青と赤のオッドアイとなり、肩に担いでいる剣は白い刀身に赤と黒の装飾が施された、無骨と言える身の丈程ある大剣に変化していたのだ。

その異様な姿に戦慄していた紫に向かって、白髪の男が口を開いた。

 

???

「・・・さっきはよくもまあ、好き勝手にやってくれたな?オイ。だがな・・・もう仕舞いだ、八雲紫。てめえは許さねえ。俺がお前を終わらせる。もう・・・てめえの戯れ言は聞き飽きた!」

 

「・・・ショウ・ウィンガード・・・貴方のその姿は・・・?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「行くぞ!!この・・・クソ野郎が!!!」

 

かつて自身がいた世界の戦友、ラグナ・ザ・ブラッドエッジの力と信念をその身に纏い、新たな力を手に入れたショウは、戦友と同じ、大切なものを守るために反逆の刃を振るう。

 

to be continue




異変パート第9話、お楽しみ頂けたでしょうか?

遂にオリジナル主人公の覚醒能力を書けました。
ご覧の通り、覚醒能力は取り戻した記憶を媒介に、蒼の力を使ってブレイブルー世界と幻想郷を繋ぎ合わせ、ショウ自身に一時的に媒介にした記憶の人物のドライブ能力をコピーする力です。
フラン戦の時、フランがソウルイーターの能力を使えたのは、一部は未だ明かせませんが、この蒼の欠片の力が原因の一つです。
これだとショウが強すぎじゃないかと思われますが、他の東方キャラにブレイブルー世界との接点をつくったり、ストーリーに絡ませる都合上、この能力だと書きやすいため、このような能力としました。(タグに主人公最強とあるしいいよね?)

では、仕事の合間に細々と更新していきますが、当初の予定と話の流れを変えようかなと思っています。
と、言うのも、入院している間や、就職活動中にまた幾つかのサイドストーリーやギャグシナリオの案を思い付いたので、その話を随所に入れられるように構成を変更しようかなと思います。

では、長期間更新できず申し訳ありませんでした。
また、ゆっくり更新していきますので長い目で見ていただけると嬉しいです。
ありがとうございました。


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幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part10

更新完了しました。
約2か月、やっぱり遅いですね。
前よりはましでしたが。

今回で対紫戦決着です。
この後は、異変終結宴会で異変パートは終了、資料集更新を挟んでから後日談へと移行します。
主人公の新能力を使っての本格戦闘ですが、うん、はっきり言ってチートですね。
まあ、主人公最強設定なので気にしませんが、不快に思う方はごめんなさい。
変える予定はありませんのであしからず。

では、前置き長々話しても仕方ないので早速始めましょう。
対紫戦決着パート、お楽しみください。


紅魔館客室(現在は永琳の処置室)

 

永琳

「・・・終わったわね。後は目覚めるのを待つだけか。」

 

八雲紫に気絶させられ運ばれてきた霊夢達3人の処置を終え、他に異常はないかを検査していた永琳は、一つ大きな息を吐き腰を下ろした。

 

永琳

(一通り検査したけど、やはり絶妙に手加減がされている。あくまでも気絶させることが目的か・・・。まあ、顔見知りを怪我させるような人物ではないわね、彼女は。でも、だとしたら腑に落ちないわね。最初から強行手段を取るつもりなら、わざわざ紅魔館を襲撃して彼の怒りを買う必要はなかったはず・・・。それなら、霊夢達の事を気にする必要もないし、彼が一人の時を狙えば良い。紫の能力なら造作もないはずだし・・・。一体何のために・・・?)

 

3人の状態を確認した永琳は、紫が手加減していたことを看破していた。

しかし、何故わざわざ紅魔館を襲撃するやりかたを取ったのかが分からなかった永琳は思考していた。

その時、勢い良く処置室の扉が開け放たれる。

反射的に入口を見た永琳は、肩で息をしている一人の女性の姿を捉えた。

 

永琳

「誰!?・・・あら?貴方は・・・。」

 

???

「・・・はあ、はあ。す、すみません!ショウさんと紫さんは何処に!?」

 

この女性の訪問が、永琳に今回の事件の全ての答えをもたらす事になる。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ(code:SoulEater)

「噛み砕け!!」

 

「ぐ!?」

 

ラグナの力を使い、振り抜いた刀身から獣に変化した魔素を放ち、紫を追い詰める。

対する紫は絶対的な優位を崩された上、ショウが手にいれた蒼の力を把握出来ない為、防戦一方であった。

 

(どういう事よ?あの男の力は全て境界を通して見てきたはず。であるなら、私に力の境界操作が出来ないはずはない・・・。温存していた?いや、ならスカーレット姉妹との戦いの際に使うはず。あれほど満身創痍になりながら、力は温存していたなどとは考えられない・・・。)

 

紫は、ショウの能力を境界を通して全て把握していた。

先程は、把握していた力を操作し、自分の支配下に置いたが、今のショウの能力を操作する事が出来ず困惑していた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・考え事とは余裕だな?気を抜くなんて致命的だぜ?」

 

思考していた紫の注意は散漫になっており、射程圏内にショウが接近していた事に気付くのが遅れていた。

そして、ショウの手にはスペルカードが握られていたが、そのカードは今までショウが使用していたカードとはデザインが違っていた。

 

「!?・・・あら?何かと思えばスペルカード?私には通じないと分かってるわよね?」

 

ショウが発動しようとしていたのはスペルカードだと分かった紫は、自身には通じないと完全に油断していた。

だが、ショウは表情を全く変えずに言い放った。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・その慢心と油断が命取りだ。その代償は受けてもらうぞ!反逆『リベリオンシザーズ』!!」

 

「!?」

 

スペルカードが赤黒い光を放つと、その光と同じような色のオーラがショウの持っている剣から発生する。

オーラが纏われた剣をショウが振り抜くと、剣からオーラと同じ赤黒い光を放つ刃状の弾幕が無数に放たれる。

 

(見たことはないスペル。でも、私には関係ないわ!境界操作で―――!?操作・・・出来ない!?くっ、仕方ない!)

 

紫は境界操作でスペルを掌握しようと試みたが、結果は失敗。

仕方なく、迎撃用の弾幕を放つ。

ショウが放った弾幕は追尾型で、紫をホーミングで追い詰めていたが、至近距離に迫った弾幕に迎撃用の弾幕を当て、相殺した。

しかし、ショウの新スペルの恐ろしさはここからだった・・・

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・相殺お見事・・・。そして・・・地獄の始まりだ。反逆の意思を・・・示せ!!!」

 

ショウの叫びと同時に、砕けた弾幕の破片が周囲に弾け、残っていた弾幕に吸収される。

すると、破片を吸収した弾幕が巨大化し、凄まじい速度で紫に迫った。

 

「!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・反逆と名が付くスペルなんだから、多少は警戒するかと思ったが、意外に呆気なかったな・・・。喰われろ!」

 

巨大化した弾幕は速度だけでなく、ホーミング性能も上昇しており、瞬く間に紫の逃げ道を奪っていった。

 

「ぐっ・・・まだよ!境界『魅力的な四重結界』!!」

 

周囲を囲まれた紫は、周囲を防御するスペルを展開。

スペル弾幕を全て防ぐ。

しかし、全ての弾幕が消されたにも関わらず、ショウの顔に焦りや動揺は全くなかった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「馬鹿が。さっき言っただろ?そのスペルは反逆の名前を持つスペルだ。破壊すれば、更なる反逆の意思を持って襲いかかる。これで、終いだ・・・。」

 

砕かれたスペル弾幕の破片が一つに集まり、巨大な球体を作り出す。

その球体の表面は僅かに胎動しており、まるで生き物のようであった。

そして・・・

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・反逆の刃よ。その刀身に宿す復讐の炎で、仇成す力を焼き尽くせ!!」

 

ショウの咆哮に呼応するように球体は弾け、再び刃状の弾幕を形成するが、その弾幕には先程とは違い黒炎が纏われていた。

 

「少しばかり強化された所で、私を倒せるなどと思い上がるな!」

 

紫は再び弾幕を放ち、飛来するスペル弾幕を相殺しようとする。

しかし、紫の思惑は外れ、相殺しようと放った弾幕は、スペル弾幕の黒炎に触れた瞬間、消滅した。

 

「な!?意にも介さず消滅した!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「反逆の言葉の意味をまだ理解できないか?このスペルの特性は、破壊されれば、更なる反逆の意思を持って襲いかかる。更に、破壊された攻撃の特性を記憶し、一度受けた攻撃は、纏われている黒炎が無効化するため、二度は通じなくなる特性を持つ。だから言ったろ、その油断と慢心が命取りだってな!」

 

「!?しまっ――がはっ!?」

 

相殺出来ずに虚をつかれた紫は弾幕の直撃を受け、体勢を崩す。

体勢を崩した紫に向かって跳躍し、手にしている剣を変形させた。

大剣の持ち手を伸ばし、刀身は根本から折れ、そこから赤黒い魔素が発生、刃を形成し、その見た目はまさしく《鎌》に変わる。

その鎌を紫に向かって振り上げたショウ。

その手にはスペルカードが握られていた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「一気に畳み掛ける!!凶刃『インフェルニティデスサイズ』!!」

 

鎌に変化した刀身がスペル宣言と同時に揺らぎ、刀身が複数の刃を形成する。

ショウがその鎌を振り抜くと、オリジナルの刀身以外が刃状の弾幕となり、回転しながら曲線を描き、紫へと殺到した。

体勢を崩していた紫は回避行動を取れず、殺到する弾幕を持っていた傘で防ぐ。

 

「ぐ!?何て力なの!?」

 

かろうじてガードした紫だが、オリジナルの刀身の一撃を受けた際の傘から伝わる力に耐えきれず膝をつく。

それをショウは見逃さない。

 

ショウ(code:SoulEater)

「まだ終わりじゃねえぞ!」

 

ガシッ

 

「!?しまっ――放せ!!」

 

ドゴッ

 

「がっ!?――ぐ・・・あっ――」

 

膝をついた紫の首を掴み、無理やり引きずり起こす。

そして、がら空きの腹部に強烈なボディーブローを叩き込んだ。

鳩尾にクリーンヒットした一撃に、紫はたまらず体をくの字に折り曲げた。

眼前にいるショウから、あろうことか視線をはずしてしまう。

つまり、紫はショウの次の一撃を完全に無防備な状態で受けることになるのだった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「悪いがテメエには・・・容赦しねえぞ!『闇に・・・喰われろ』!!」

 

「うああああ!?」

 

ショウは咆哮と共に、魔素を纏った左手で紫を掴み上げる。

同時に、ショウの体から大量の魔素が吹き出し、その全てが、左手に拘束されている紫に襲いかかった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「砕け散れ!!」

 

言葉と共に左手に力を込めると、爆散するように魔素が弾け、紫は衝撃により吹き飛ばされる。

 

「くっ・・・まだ、まだよ・・・うっ!?な、何?・・・体が、上手く動かない・・・?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「悪いが、ここまでだ。」

 

諦めない紫は立ち上がろうとするが、体に力が入らず立ち上がれない。

その姿を見下ろすショウがいたが、紫の瞳にショウが映ると、その姿には異変が起こっていた。

 

「な!?傷が・・・瞬く間に治癒していく?」

 

紫の眼前に立つショウの体についていた無数の傷が、凄まじい速度で治癒していたのだ。

 

ショウ(code:SoulEater)

「俺の能力の殆どを知っていたことから考えると、お前はフランと俺の戦闘を見ていたんだろ?だったら、今お前自身と俺に起きていることが何なのかは、分かるはずだ。」

 

「・・・・・・まさか!?フランドール・スカーレットが暴走時に使用していた能力・・・ソウルイーター!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「正解だ。お前の生命力を吸収し、俺自身に還元した。・・・悪いが、もうお前に勝ち目はない。体力にかなりの差が出来た上に、お前は俺の新しい能力を掌握出来ていない。諦めるんだな。」

 

既に勝負は見えていた。

圧倒的な力の差を見せつけ、完膚無きまで叩きのめした。

結果、ショウはほぼ無傷なのに対し、紫は満身創痍。

至るところから鮮血を流し、体はボロボロ。

生命力までも奪われ、立ち上がることも出来ず地を舐めている。

勝負は誰の目から見ても決していた―――

 

その様子を見ていた視線が二つ。

ショウを助けに来た魔理沙とフランの物だ。

二人はショウが勝利したことに安堵していたが、ショウの近くには行かず、何故か呆然としていた。

 

魔理沙

「・・・勝った、のか?でも・・・ショウのあの姿、何なんだ?凄まじい力だけど・・・何故か、全然安心できないぜ・・・。」

 

フラン

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウと紫との闘いを近くで見ていた魔理沙とフランは、戦闘の苛烈さに加え、ショウの変化に戸惑い、その場を動くことが出来なかった。

魔理沙はショウの姿を見て、力の強さを認識したが、言い知れない不安を抱いていた。

フランはショウを見つめたまま微動だにしない。

 

フラン

「・・・・・・・・・・・・ダメ」

 

魔理沙

「?・・・フラン?どうした―――!?」

 

微動だにしないフランが、ぼそりと呟く。

フランの言葉に反応し、フランへ視線を向けた魔理沙の瞳には、涙を流しながらショウの方へ手を伸ばすフランの姿があった。

 

フラン

「お兄ちゃん!それ以上先に・・・行っちゃダメ!!!」

 

声を張り上げ、ショウへ自分の願いを叫ぶ。

フランは知っていた。

ショウが今どのような状態なのかを。

何故なら、今のショウは昨日の自分と同じだから。

感情を爆発させてしまい、それを蒼の力で暴走させられている。

フランは秘めた願いを求める心を。

ショウは身を焦がす程の紫への殺意を。

そして、暴走させられた感情がやがて行き着くのは、全てを憎悪し、全てを壊そうとする狂気しかないのだ。

フランは強く願う。

自分を狂気から救ってくれた人が、自分と同じ狂気に堕ちる所など見たくない。

認めたくない。

嫌だ、嫌だ、嫌だ!

そんなの・・・・・・許さない!!!

 

フランの願いは、ショウの狂気に対する明確な敵意になり、ショウが狂気に堕ちるという事象を完全に敵と見なした。

フランはまだ知らない。

自分を苦しめた自身の能力が、蒼の力で変質していることを。

救いを求める様に伸ばした手に、何かを掴んだような感覚を覚えた。

 

フラン

(――――――!?)

 

フランは、自分の手に感じた未知の感覚に反射するように反応し、咄嗟に拳を握った。

掴んだ物を握りつぶした様な感覚を覚える。

すると、手にした感覚は霧散し、もう何も感じなかった。

 

フラン

(今の・・・何?)

 

フラン自身にも何が起こったのかわからない。

しかし、この時のフランの行動が、結果的にショウを救うこととなった。

その事をフランが知るのはまだ先の話であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡り、紫に諦めの言葉を告げたあとのこと

 

「くっ・・・!?どこまで、規格外なのよ!」

 

敗北の事実を告げられた紫は苛立ちを露にする。

怒りに支配された感情を爆発させ、憎悪が籠った目をショウへと向けた。

しかしショウは、その視線を受け流し、這いつくばる紫へ殺意を込めた視線を向け、冷たく言い放った。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・終わりだ外道。せめてもの情けだ。痛みなくあの世に送ってやる・・・。」

 

終わりを告げる言葉を放ち、左手を異形化させて紫へと向けるショウ。

 

「ぐっ!?はな、せ・・・!」

 

異形化させた腕で紫を掴み上げ、残っている僅かな生命力も根こそぎ奪い取ろうとする。

無論、完全に殺す気であった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「――――死ね。」

 

一つの命が幻想郷から消え去ろうとしていた。

そして、この時のショウは、内に秘めていた蒼の力により殺意を増幅されていた。

フランにも起こった感情の爆発。

この時ショウが抱いていた殺意は、フランが焦がれていた願いを求める感情と同じか、それ以上と言える程高く、引き金になった紫をこの世から消すまで、決して消えるはずが無いほど、激しい怒りに支配されていた。

その怒りがショウの内側から囁く。

 

《殺せ・・・》

 

《殺せ・・・!》

 

《大切な者を奪い取った仇を・・・許すな!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《コロセ!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《それ以上先に・・・行っちゃダメ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――パリン

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「待って・・・ショウ・・・!!」

 

命の灯が消え去るその瞬間、殺意に支配されたショウの耳に、聞こえる筈のない声が届く。

 

ショウ(code:SoulEater)

「―――・・・!?その、声・・・?」

 

その声は未だに意識を取り戻していない筈のショウの大切な親友の声。

体の芯まで届いたその声に、ショウの意識は一時的に理性を取り戻し、掴んでいた紫から手を離した。

紫は重力に従い地面に倒れる。

死んではいないが、既に虫の息であり、後数秒手を離すのが遅れていたら、間違いなく紫の命は潰えていた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・アリ、ス・・・?」

 

アリス

「・・・はあ、はあ・・・。ショウ・・・もういい。殺す必要は・・・、ないわ。既に勝負は決して・・・うっ!?」

 

声はアリスの物だった。

だが、フランの一撃は間違いなく致命傷クラスの物であり、魔素で損傷を修復できる自分や、高い再生能力を持つレミリアやフランとは違い、永琳の治療で峠を越えたとは言え、予断が許されない状態であったはず。

少なくとも、後数日は目を覚まさないはずだと言うのは永琳の見立てであった。

しかし現実、アリスは意識を取り戻し、この場にいる。

ただ、相当無理をしているようで、話している最中に耐えきれず蹲ってしまった。

それを見たショウが、慌ててアリスの元に駆け寄り、その体を抱えた。

その姿は既に変わっており、髪は元の黒髪、服は黒を基調とした何時もの格好に戻っていた。

 

ショウ

「アリス!?・・・ったく、無茶しやがって・・・。しっかりしろ!」

 

アリス

「うっ・・・。ごめん、なさい・・・。八雲紫がここに来たと聞いて、無我夢中で・・・。」

 

ショウ

「直ぐに永琳さんの所に連れていく。それまでは気をしっかり持てよ?」

 

アリス

「あっ!?ちょっと・・・!?どさくさに紛れて!大丈夫だから下ろして!」

 

謝罪を口にしたアリスに対し、永琳の所へ連れていくと伝え、体を抱き抱える。

ちなみに、お姫様抱っこだ。

すると、みるみる顔を赤くしたアリスは、ショウの行動に文句を言ったが・・・

 

ショウ

「無茶をする奴の『大丈夫』程信用できない言葉はないな。大人しく抱えられてろ。」

 

と、アリスの意見を一蹴した。

 

アリス

「うっ!?・・・・・・・・・わかったわよ、もう。」

 

アリスは観念して大人しくなった。

顔はうつむいており、ショウから表情は見えなかったが、恥ずかしさのあまり、まるでトマトのように真っ赤だった。

しかし・・・

 

ショウ

(顔がかなり赤いな・・・。やっぱり未だ万全なわけがないか。急いで連れていこう。)

 

ショウは、そんな感情を全く理解していない、超鈍感野郎だった。

アリスはその事に気づいていないが、これが幸か不幸かは分からない。

 

魔理沙

「ショウ!大丈夫か!?」

 

フラン

「お兄ちゃん!」

 

ショウに近付かず様子を見ていた魔理沙達だったが、ショウの姿が元通りになったことで、抱いていた不安感がなくなっていた。

二人はそれを見て直ぐにショウの元へと駆け出す。

 

ショウ

「魔理沙、フランも。すまない・・・。心配かけたな。もう大丈夫だ。あの通り、もうあいつは戦えない。アリスを永琳さんの所に連れていくから、魔理沙達もついてきてくれ。」

 

二人

「わかった(ぜ)!」

 

アリスを抱えて歩き出したショウだが、不意に足を止め、振り返ることなく口を開く。

 

ショウ

「・・・・・・立て、八雲紫。死んじゃいない筈だ。アリスに免じて命まではとらない。だが、洗いざらい話してもらう。それと、霊夢、レミリア、咲夜さんに詫びてもらわなきゃならんからな。ついてこい・・・。一応、治療ぐらいなら頼んでやる。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウの言葉に返答はせず沈黙していたが、体はピクリと反応し、おぼつかないが体を起こした紫。

顔は下に向けたままであり、表情は見えない。

 

「・・・・・・・・・・・・なさい。」

 

ショウ

「?・・・・・・―――!?」

 

後ろから掠れるような声が聞こえる。

小さすぎて聞き取れないが、声が届いた瞬間、ショウの背後から凄まじい殺意が放たれた。

 

「・・・秘奥義『零式弾幕結界』」

 

ショウ

「な!?」

 

アリス

「紫!?馬鹿な真似はやめなさい!もう勝負は!?」

 

立ち上がれない紫は顔だけを上げ、ショウに右手をかざしていた。

逆の手にはスペルカードが握られており、倒れているうちに懐から出していたのだろう。

スペル宣言がされ、技は発動した。

ショウとアリスの視界は、七色に輝く弾幕に埋め尽くされる。

その弾幕密度は、先程の弾幕結界を遥かにしのぐ程膨大であり、ショウやアリスだけでなく、後ろからついてきていた魔理沙とフランも結界の中に捕らわれている。

 

「・・・あなたは、死ななきゃならない。貴方の存在は・・・くっ・・・故意、偶然に関かわらず・・・この世界、幻想郷に破滅を・・・もたらす。私の愛するこの世界は、私の命に代えても・・・『守る』!!!」

 

既に死に体の紫の言葉はか細く、殆ど聞き取ることは出来ない。

しかし、最後に発した『守る』と言う叫びは、ショウの耳に、紫が今まで発した言葉の中でも一番と言えるほどに響いていた。

それが示すのは、紫が抱く信念。

命に代えても守ると誓う、覚悟の意志であった。

 

ショウ

「・・・・・・魔理沙、フラン。こっちに来てくれ。アリスを頼む。」

 

魔理沙

「・・・わかった。任せとけ。」

 

フラン

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

ショウ

「・・・ああ、大丈夫だ。弾幕結界が無くなるまで、俺の傍から離れるなよ。」

 

魔理沙とフランにアリスを託し、紫と回りを囲む弾幕結界を睨み付けるが、その表情は先程とは違った。

怒りではなく、真剣な面持ち。

最大限に警戒しているといった表情で口を開く。

 

ショウ

「・・・・・・なるほどな。お前も俺と同類か・・・。命に代えても守りたいと願う物を、自分ではなく他の物と定める者。大切な物を守りたいと言う意志そのものが、自分の力になる純粋な願い・・・。分かるよ。俺も同じだから。でもな・・・―――。」

 

紫の本質を悟ったショウは、出会ってから初めて紫を認めた。

紫が抱く意志、覚悟は、自らが信じる最強の力。

守るために戦う力こそ、ショウが今まで見てきた力の中で、もっとも強い力だと信じている。

その力を強く持っている紫をショウは認めた。

しかし、だからこそ紫を許すことは出来ない。

絶望的な状況であろうと、ショウに敗北は許されない。

 

何故なら、紫は傷付けたから。

 

ショウの大切な者達《霊夢、咲夜、レミリア》を

 

何故なら、紫は奪おうとしているから。

 

ショウの大切な者達《アリス、魔理沙、フラン》を。

 

ショウ

「―――だからこそ、俺はお前を許さない!霊夢達を傷付け、今まさにアリス、魔理沙、フランを巻き込んでいる!彼女達は俺にとっての大切な者達だ!だから戦う!『守る』ために!!!」

 

ショウの力もまた、守るための力。

大切な者達《自身と繋がり、共に歩んでくれる親友達》を守るために命を懸ける―――

 

ショウ

「紡いだ記憶を力に変える・・・。世界を繋げ!!」

 

ショウの手に再び、揺らめく蒼い炎が輝く。

 

ショウ

「(力を借りるぞ・・・レイチェル!)幻蒼符『ファンタジア・インストール』code:Sylphide《シルフィード》、共鳴解放《レゾナンスブレイズ》!!!」

 

ショウの手に握られているカードから蒼い光が放たれ、それが大きくなりショウを包み込む。

近くにいたアリス達は眩しさから目をつむり、少したってから目を開いた。

 

三人

「――――――・・・!?」

 

三人の視界に写ったのは、目を疑う光景だった。

 

???

「―――偽装輝神『ツクヨミユニット・シャドウフェイク』」

 

目の前の人物が手にしたカードから金色に輝く光が放たれると、アリス達の周囲に魔法陣が展開され、薄いバリアの様な結界を形成した。

周囲から襲いかかる弾幕は、悉くバリアに弾かれ、衝撃も内側にいたアリス達には全く届かない。

アリス達は驚愕していたが、そのバリアの圧倒的な強度よりも、目の前の人物に驚いていた。

そこには、先程までショウがいた。

弾幕結界が形成されてからこの場所に来れる者など、空間転移を持つ八雲紫かその式である八雲藍くらいしかいない。

ならば、よほどのことがない限り、目の前の人物は先程までその場にいたショウのはずだが、その姿は似ても似つかない物であった。

 

「・・・くそ!どうして・・・何で凌げるのよ!?」

 

弾幕の外から、ショウ達の様子を息も絶え絶えな状態で見ていた紫は信じられないという表情を浮かべる。

秘奥義『零式弾幕結界』は、通常の弾幕ごっこでは絶対に使用出来ない、回避不可能の反則スペル。

隙間のない膨大な物量の弾幕で押し潰す物で、ボムを複数回使用しなければかわせない代物のはずだった。

だが、現実に目の前の弾幕は凌がれている。

特に内側からのアクションは確認できない。

ただ一回、スペル宣言がなされただけで、何か結界のような物に全ての弾幕が弾かれ消滅していた。

やがて、紫のスペルが時間切れとなり、膨大な弾幕がもたらした砂煙が徐々に晴れていった。

 

???

「――――――」

 

魔理沙

「・・・・・・ショウだよな?何なんだぜ?その格好。」

 

フラン

「お兄ちゃん、そんな服が趣味なの?可愛い!」

 

アリス

「・・・意外ね。可愛らしい服が好みだったのかしら?言ってくれれば仕立てて上げたのに。」

 

???

「―――茶化すなよ。俺の趣味じゃなくて、仕様なんだよ。まあ・・・、なんだ。詳しくは後にしてくれ。まずはあいつを黙らせる。」

 

煙が晴れて、視界が戻った紫の前には、アリス、魔理沙、フランの前に立ち、こちらに鋭い視線を向ける、黒を基調とした膝下まで伸びる長袖ロングコートに白いレースの様な装飾が施された、一見してゴスロリ服のような格好をした『金髪長髪』の、一瞬女性と見間違う様な顔をした人物がいた。

 

「・・・本当に何者なのよ・・・。その力、その姿、何もかもが異質、異様、異常!・・・貴方は一体何なのよ!?」

 

ショウ(code:Sylphide)

「・・・・・・お前の敵だよ。それ以上でも以下でもない。俺は、大切な者を守る為に戦うだけだ。お前が俺の守りたい者達に牙を剥くなら、俺はその牙を折るだけだ。」

 

ショウの姿は、媒介となった記憶の人物に寄せる様に変化する為、今はレイチェルの姿に酷似した格好をしている。

元は、ショウの姿がベースなので、細部までは再現されていないが、元々整った顔立ちなので、服が変われば、雰囲気も変わる。

今のショウは、煌めく様な金髪が腰付近まで伸びており、その格好も相まって麗しい女性のような姿をしていた。

まあ、声はまんまなので、ギャップがとんでもないことになっているが。

 

ショウ(code:Sylphide)

「さて、悪いがアリスの容態もある。時間を懸ける気は更々ない。早々に終わりにさせてもらうぞ。散弾『バラージュシードアマリリス』」

 

紫を見据え、呟き、言葉が終わると同時にスペル宣言がなされる。

ショウの前面から光が放たれ、光がやむとそこには、複数の大砲の銃口が紫をとらえていた。

 

「な!?」

 

紫が驚愕するのとほぼ同時に、銃口から大量の散弾が射出される。

放物線を描きながら、広範囲に降り注ぐ弾丸の雨。

紫は直ぐに自身の能力でその場から転移するが・・・

 

ショウ(code:Sylphide)

「ナイス回避。だが、まだまだ終わらないぞ?『テンペストダリア』」

 

ショウがコートをなびかせ、紫に向かって手を掲げると、大量の物体がまるで竜巻に飛ばされたかの様に縦横無尽な軌道で飛来してきた。

 

「く!?数が多すぎる!捌き切れない!?」

 

飛来する大小様々な物体を結界や弾幕で凌いでいた紫だが、圧倒的な物量に押され、次第に逃げ場を失っていく。

仕方ないと、空間転移し空中へと避難した紫であったが、紫自身空中へと避難するのは避けたかった。

体力を大幅に奪われている状態での飛行はリスクが高く、制御に不安が残るからである。

そして、紫の懸念は皮肉にも現実のものとなる。

 

――――――パチン

 

高い炸裂音が響き渡る。

次の瞬間―――

 

「きゃあ!?」

 

一陣の風が、空中の紫を吹き飛ばした。

 

「くっ、今の強風は―――」

 

ショウ(code:Sylphide)

「――――――チェックメイト」

 

「!?」

 

強風に吹き飛ばされた紫は地面へと転落。

叩きつけられるのは辛うじて回避したが、体勢を崩し無様にも地面を転がる。

やっとのことで体勢を立て直し、空中に佇んでいるはずのショウを視界に収めようとした瞬間、決着を意味する言葉がショウから伝えられた。

そして、紫の視界はショウの姿よりも先に、自身が置かれている『積み』の状態を捉えてしまっていた。

それは――――――

 

「な、何なのよ、これは?」

 

自身の周囲の地面から、天へと伸びる無数の柱。

そして、その柱の奥で優雅にたたずむショウの姿。

その手には、既に光を放つスペルカードが掲げられている。

 

ショウ(code:Sylphide)

「―――招雷『バルディッシュデイジー』」

 

ショウの言葉と共に、天から無数の落雷が降り注ぐ。

それらは寸分違わず紫の視界に広がる無数の柱に着弾し、その柱から周囲に雷撃が迸った。

 

「!?しまっ―――きゃあああああ!?!?!?!?」

 

自身の周囲全方位から飛来する雷撃を咄嗟にかわせるわけもなく、全弾直撃する。

そして、身体中を駆け巡る激痛に紫の意識は即座に刈り取られる事はなく、断ち切られた意識は激痛により覚醒、そして雷撃により再び昏倒を永遠と繰り返され、次第に声にならない悲鳴へと変化する。

やがて雷撃が止み、その場には、ピクリとも動かず横たわる紫の姿があった。

 

 

ショウ(code:Sylphide)

「・・・・・・・・・・・・・・・終わったな。」

 

――――――パシン

 

紫の意識が断ち切られたのを確認したショウの姿は、元通りの黒を基調とした姿へと変わる。

 

ショウ

「・・・・・・・・・まだ死なせねえぞ、八雲紫。お前にはやってもらわなきゃならんことが山のようにあるからな。・・・それに―――」

 

ショウは倒れ伏す紫へと視線を落とす。

 

ショウ

「―――確かめなきゃならないことも、できたしな・・・。」

 

その瞳にはもう、殺意と呼べる感情は微塵も感じられなかった・・・・・・・・・

 

to be continue




これにて紫戦決着です。
いやにあっさり終わりましたね。
主人公の新能力に対する対処法が確立されていない状態なら仕方ない話ですが。
後半になるにつれて徐々に浸透し、無双ゲーにはなりませんが、いつになることやら。

次回は前書きのとおり、異変終結宴会パートですが、今回の文章には、一部あれ?と思う場面が幾つかあったかもしれません。
これについては意図的にぼかしたり、言葉を抜いたりしています。
回収は次回以降、異変終結宴会パートか後日談パートで明かす予定ですが、元ネタがかなり複雑にフラグが絡んでいくストーリーなので、回収に失敗する可能性を考慮し、何度も繰り返し前の話を読みながら作ります。
その為、更新が毎度の事ながら遅れる可能性が高いです。
あらかじめご了承ください。

では、この辺で後書きを終わります。
本作品を読んでいただきありがとうございました。
次回更新までしばらくお待ち下さい。


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幻蒼異変 第一章《conviction resonance》partFINAL

お久しぶりです。
最終更新から、約1年と5ヶ月、仕事の合間に書き込んでは手直し、資料としてブレイブルーの過去作品の購入や、アニメ版のチェック、東方のwikiチェックや前回までの伏線の回収確認等々・・・かつてない作業量でしたが、とうとう形になり投稿出来ました。
遅くなるという次元じゃ無い程の亀更新で本当に申し訳ありません。

過去作品をプレイする際、持っていたps3がご臨終したため買い戻したり、文章が長いのが原因で書き込み途中に保存データが消えて最初から書き直したりなど、多数のトラブルが発生しましたが、遂に書き切りました。

これで異変第一章は完結です。
この後は資料集更新後、後日談である
《conviction resonance EXTEND》
を投稿する予定です。

ここまで掛かるとは想定していませんでした。
文字は過去最長、まさかのぴったり17000字。
文章を作ると言うのがどれ程難しいか、身をもって知りました。

では、異変第一章《conviction resonance》
最終話 お楽しみください。


霊夢

「はあ・・・はあ・・・。」

 

身体中から血を流し、肩で息をする霊夢。

目の前には、友人達が血まみれになり倒れていた。

そこには親友である魔理沙や、新たに友となった外来人の青年の姿もあった。

 

霊夢

「何で・・・、こんなことを・・・?答えてよ―――」

 

???

「・・・・・・・・・・・・・・・眠りなさい。」

 

霊夢

「――――――紫!!!」

 

向かい合う女性から弾幕が放たれ、霊夢の視界を覆い尽くし、彼女の視界が黒く染まる。

霊夢は女性の名を叫び、答えを求めたが、告げられたのは終焉を意味する言葉であった――――――

 

霊夢

「――――――紫!!!・・・・・・あれ?」

 

暗くなった視界は、叫びと同時に色をつける。

そこには、先程の地獄絵図はなく、視界には目に悪い血のような赤い壁が一面に広がっていた。

 

霊夢

「今のは・・・・・・夢?」

 

???

「お、やっと起きたか?・・・良かった。気分はどうだ?霊夢。」

 

霊夢

「え?」

 

意識がはっきりしていない霊夢の横から声がかかる。

かけられたのは男性の声。

呆然としたまま、かけられた声の方へ霊夢が顔を向けると、そこにいたのは、自身の夢の中で倒れていた青年であった。

 

霊夢

「ショウ・・・?」

 

ショウ

「うなされてたから心配だったけど、大丈夫みたいだな。一応、大事をとってもう少し寝ておけよ?」

 

霊夢

「・・・そうね、ありがとう。それじゃあ・・・!?いや、それより紫は!?あいつはどうなったの!?」

 

ショウの言葉に従い、再びベッドで横になろうとした霊夢だったが、気を失う前の事を思い出し飛び起きた。

 

ショウ

「紫・・・ね。あんなことされてもあいつの事が心配なんだな?・・・・・・良かったな。あれほどの仕打ちをしといて心配してくれてんだぜ?ちゃんと説明してやれよ?」

 

霊夢

「・・・?何の事?」

 

ショウ

「下だ、下。」

 

ショウに紫の事を尋ねたが、返ってきたのは自分に対する言葉とは少し違う印象を受けるものだった。

疑問符を浮かべている霊夢に対し、ショウは言葉と共に指先をベッドの下に向ける。

それにつられて霊夢が視線を下に向けると・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

霊夢

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何してんの?」

 

とても美しい一点の曇りもない滑らかなフォームで、頭を地につけて『土下座』をしている紫がいた―――

 

ここまでに至る経緯を説明すると、話は約2時間前まで遡る・・・・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

紅魔館客室(永琳の処置室)

 

現在、中ではショウと永琳が会話をしていた。

他の人物の姿はなく、それぞれ別々の部屋で休んでいるようだ。

 

ショウ

「・・・あいつの容態はどうですか?」

 

永琳

「・・・随分ボロボロにしたわね。まあ、命に別状はないわよ?彼女は遥かに長い時を生きる大妖怪。これくらいなら死にはしないわ。処置出来ているならと言う言葉が前につくけどね。」

 

ショウ

「そうですか・・・。既に目は覚めてますか?」

 

永琳

「ええ。少し前からね。私も聞きたいことがあるし、薬で一時的に能力を封じてあるから、話は聞けるはずよ。効果は一時間くらいね。あと、あなたには伝えておくべき事があるんだけど―――」

 

ショウ

「それなら大丈夫です。わかってますから。」

 

永琳

「え?」

 

ショウ

「あいつと話をさせてください。出来れば二人きりで。」

 

永琳

「・・・・・・わかったわ。ただし、そんなに長い時間は許可できない。よくて30分くらいよ。いいかしら?」

 

ショウ

「わかりました。わがままを言ってすみません。ありがとうございます。」

 

そう言ってショウは永琳との会話を切り上げ、目的の人物がいるベッドへと向かった。

 

???

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウ

「・・・・・・八雲紫」

 

「・・・・・・・・・何故」

 

ショウ

「・・・・・・何だ?」

 

「・・・何故、私を殺さなかった?私は貴方を殺そうとした。それは間違いなく事実よ。私は貴方に殺されても文句は言えない仕打ちをした。なのに・・・何故?」

 

ショウ

「・・・何故と言われれば、聞きたいことがあったから、だな。それに、アリスに免じて命は取らないと言ったろ?ただそれだけだ。別に深い意味はない。」

 

ショウが呼び掛けた事で反応した紫。

自分の命があることに対しての疑問をショウへと問うが、特に深い意味はないとあっさりと返される。

 

「でも貴方は、私が大切な人を殺めたって―――」

 

ショウ

「違うよな?」

 

「―――えっ?」

 

ショウ

「・・・殺してないだろ?美鈴さん。」

 

「!?」

 

当の本人から否定を言われた紫は驚愕の表情を浮かべる。

 

ショウ

「お前との戦いの際にお前の事が少しだけ理解できた。お前は大切な物を自分ではなく他の物に定めているタイプ。それはおそらく、幻想郷そのものだ。そして、そこに生きている人々も対象にしている。違うか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ショウの言葉に無言を貫く紫。

その様子を見たショウが続けて話す。

 

ショウ

「無言は肯定。はっきりわかるな。まあ、霊夢やレミリア達の容態を見れば容易に想像できる。あの時は頭に血が上っていたから気付けなかったがな。」

 

ショウは紫の反応を気にしないまま喋り続ける。

 

ショウ

「なら、答えは一つだ。美鈴さんは死んでいない。大方、お前の能力で遠くに転移させたんだろ?改めて思い出せば、あの場には血の臭いがしなかった。敵対する存在に対して、美鈴さんが何も抵抗できずにやられるとは考えにくい。あの人の能力に対しては奇襲も厳しい。一撃での転移しか不可能だ。全く・・・それにすら気付けないとは、俺もヤキが回ったな・・・。」

 

ショウの考えは美鈴が生きていると見破っていた。

紫の反応を見ればまず間違いない。

当時は激情により気付けていなかったが、改めて思い返せば、美鈴が死亡している可能性は皆無であった。

 

「・・・だから、見逃したと言うの?」

 

ショウ

「・・・違うな。俺は知りたかったんだ。お前の行動には矛盾点が多すぎる。特に、『紅魔館を襲撃したこと』が腑に落ちない。お前の能力は空間転移すら可能とする汎用性が高い能力だ。だったら、わざわざ襲撃する形をとる必要がない。俺を殺したいなら、俺が一人の時を狙えば済むからな。」

 

「・・・・・・・・・」

 

ショウ

「一応仮説は立てたが、確証はない。だから確認したいんだが・・・・・・質問、良いか?」

 

「・・・・・・・・・・・・答えられる範囲でなら。」

 

ショウの言葉に紫は同意した。

 

ショウ

「よし・・・。なら、まず確認だ。俺を殺すことは、お前が抱える問題の中で上から数えて何番目の優先事項だ?」

 

「!?な、何で分かるのよ?問題が複数あるって。」

 

ショウ

「んなもん、簡単な推理だ。最優先なら最初に言ったように真っ先に俺を単独で闇討ちし始末するだろ?なら、俺の命は優先度が低いって事ぐらい簡単にわかる。そして、確認したいのはその後の話だ。」

 

「・・・・・・・・・」

 

ショウ

「・・・何でわざわざ、優先度が低い俺の命を『抵抗してください』と言わんばかりの方法で取りに来たんだ?明らかに効率が悪く、成功率も高くない。不確定要素が多過ぎて、デメリットしかないやり方だ。」

 

「そ・・・、それは・・・。」

 

ショウの言葉に狼狽え始めた紫。

答えられず、俯いてしまった。

 

ショウ

「・・・・・・試したかったから、か?」

 

「!?」

 

ショウ

「やっぱりか。明らかに効率が悪いやり方をとったのは、俺の力を確かめて御しきれると分かれば利用するつもりだったから。そこまで手が回らないほど厄介な問題があるわけか。」

 

「・・・何もかもお見通しみたいね。その通りよ。貴方なら話しても良いか。・・・『黒き獣』・・・この言葉に心当たりはあるわね?・・・それが甦る可能性がこの幻想郷にあるとしたら、貴方はどうする?」

 

ショウ

「な!?」

 

紫の口から語られた言葉に、思いもよらない単語が混ざっていた。

 

ショウ

「黒き獣だと!?馬鹿を言うな!黒き獣には、肉体となる蒼の魔導書が必要だ!それが存在しない幻想郷に、黒き獣が復活する可能性などあるはずがない!!」

 

「ええ。その通りよ。でも、『ブレイブルー』の替わりとなる『もの』は、存在するわ。」

 

ショウ

「・・・蒼の魔導書の別名も知ってるなら、こっちの事情には詳しいみたいだな・・・。つまり、俺がその替わりになる『者』だって言いたいのか?」

 

「・・・そうよ。ブレイブルーの代用となる貴方。そして、今この幻想郷には・・・黒き獣の心臓となる『ムラクモユニット』も存在している。黒き獣の誕生に必要な2つの因子が曲がりなりにも揃っている今の状況を見逃すことはできないわ。」

 

ショウ

「・・・ムラクモ・・・ユニット?――――――ぐ!?」

 

黒き獣が誕生する可能性について話した紫。

誕生の可能性はないと否定したショウ。

しかし、紫から続けて語られた言葉を耳にした時、またしても激しい頭痛が生じ、再び頭の中に映像を写し出した。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~~~???~~~

 

周りは限り無く広がる色のない空間。

そこには、二人の人物がまるで水の中を漂うかのように浮いていた。

片方は自分であるが、もう一人はわからない。

身体特徴から少女であるとはわかるが、身体中に機械のようなパーツを着けている。

ただ、そのパーツも欠けたり、ヒビが入るなどボロボロな姿であった。

 

ショウ

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

映像の中の自分は目を閉じ、一言も話さない。

ただ、その顔は満足したように穏やかだった。

その顔を、目の前の少女はまるであり得ないと言った驚愕の表情を浮かべて見つめている。

 

???

「・・・・・・何で」

 

ショウ

「・・・何で助けようとした、か?」

 

少女の言葉を受け、自分は目を開かないまま言葉を返す。

 

ショウ

「何で、と言われると答えに困るな。強いて言うなら、助けたかったから。何故かはわからないが、お前を死なせたくなかった。唐突にそう思ったからだ。」

 

自分は只助けたかった、死なせたくなかったと答える。

 

ショウ

「・・・ま、偉そうなこと言ってみたは良いけど、結局助けられなかったがな。自分のアホさ加減にうんざりしたいところだが、見捨てるなんて選択肢は初めから無いし、後悔はしてない。お前が気にする必要はないぞ?」

 

???

「・・・・・・・・そっか。」

 

自分の言葉を受けた少女は、憑き物が取れたような穏やかな笑みを浮かべた。

 

???

「・・・・・・■■■はやっぱり優しいね。」

 

ショウ

「え?」

 

???

「■■■は死んじゃだめ。大丈夫、私はずっと、■■■と一緒にいるから。だから―――」

 

???

「―――ムラクモユニット、起動―――」

 

ショウ

「な!?」

 

少女の言葉と共に、記憶の中の少女の背後に機械仕掛けのようなモニュメントが現れる。

そして、少女の体が光に包まれると、少女の姿は先程よりさらに機械じみた姿へと変化した。

 

???

「―――■■■は死なせない・・・。」

 

姿を変えた少女の背後から、無数の剣が現れ、前方に打ち出されていく。

その剣は、何もないはずの空間に刺さるように動きを止めるが、少女は構わず大量の剣を繰り返し放った。

止めと言うかのように一回り巨大な剣を放つと、何もなかったはずの空間に亀裂が入り、やがて空間に裂け目のような物が現れた。

その裂け目の先には、この場所とは違う場所に繋がっているように、別の景色が広がっていた。

 

ショウ

「・・・これはまさか、外に繋がってるのか?お前、こんなことできるなら始めから―――!?」

 

少女が外に出る手段を持っていたことに小言の一つでも言ってやろうと、あきれた表情で少女の方に顔を向けた自分の表情は、直ぐ様驚愕したようなものに変わる。

それも当然だった。

視界に映る少女の体が、徐々に崩れ始めていたのだから。

 

???

「・・・これで、外に出られるよ。」

 

ショウ

「・・・お、お前、その体・・・。」

 

???

「・・・私はどのみち出られない。待っててもこのまま消えるだけ。だから、気にしなくて良いよ・・・。」

 

ショウ

「バカ野郎!!何で俺なんかのために、お前が死ななきゃならねえんだ!!気にしなくて良いって言ったろうが!!くそ!身体組織の崩壊が止まらねえ・・・。止まれ!止まれって言ってんだよ!!」

 

自分は少女の側まで来て、少女の体を抱えるが、体の崩壊は止まらない。

 

???

「・・・・・・大丈夫。」

 

ショウ

「何が大丈夫だ!!今にも消えかけてんだろうが!!」

 

???

「・・・きっとまた、会えるから・・・。」

 

少女の姿が、自分の前から消えていく。

 

???

「だから―――」

 

ショウ

「駄目だ!待て!《ニュー》!!!」

 

ニュー

「―――またね、■■■―――」

 

消えていく少女の顔は、どこまでも穏やかで、優しい笑顔だった・・・・・・・・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「―――!?」

 

自分の視界から、少女の姿が完全に消え去ったのと同時に、ショウの意識は現実に戻り、目の前には先程と同じ一面真っ赤な壁が映っていた。

 

ショウ

「・・・・・・・ニュー・・・、お前が、俺を救ってくれたのか・・・。」

 

ショウは先程の映像の少女の名を呼び、窓の外をぼんやりと見つめながら呟く。

今新たに、ショウの失われていた記憶が甦ったのだった。

 

「・・・・・・ちょっと、聞いているの?」

 

ショウ

「・・・・・・ああ、悪い。ちょっと考え事をしててな。聞いてるから、続けて―――!?」

 

呆然と窓の外を見ているショウを紫が見据え、話を聞いていたかと尋ねた紫に対し、紫に顔を向け直して返答したショウだったが、唐突に紫の隣の空間に亀裂が入り、空間の裂け目が生まれた。

それは、紫の能力である『スキマ』と呼ばれるものと酷似していた。

 

ショウ

「空間に亀裂!?何の真似だ!八雲紫!」

 

「!?違っ!私じゃない!私はまだ能力を使えないわよ!」

 

ショウの言葉に紫が狼狽える。

永琳が薬の効果を間違えるはずはないが・・・

 

???

「―――紫様!!」

 

紫に対して警戒心を高めていたが、突如空間内部から紫とは違う女性の声が響く。

 

「ら、藍!?何をしているの!?『彼女』の監視をするよう命じ―――」

 

「消えました・・・・・・。」

 

「―――たはず・・・・・・え?」

 

「・・・『マヨヒガ』から彼女・・・『ムラクモユニット』が、姿を消しました・・・。私に感知されないまま、紫様の結界を破壊して、忽然と・・・。」

 

「そ、そんな・・・」

 

ショウ

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

空間から現れたのはどうやら紫の式である藍と言うらしい。

その藍と紫の会話を聞いていたショウ。

どうやら、ムラクモユニットを紫が確保し監視していたが、姿を消してしまったようだ。

黙ったまま話を聞いていたショウであったが、紫と藍の会話をよそにおもむろに椅子から立ち上がった。

 

ショウ

「・・・藍さんと言いましたか?ひとつ尋ねたいんですが、構いませんか?」

 

「え?・・・はあ、私に答えられるものであれば構いませんが・・・?」

 

ショウ

「・・・そのムラクモユニットが姿を消したのはどれぐらいの前の話ですか?」

 

「え?消えた時間ですか?確か・・・今から二時間前くらいの事です。昼食を運びに部屋を訪れた時ですから、間違いありません。」

 

ショウ

「・・・・・・・・・・・・成る程な。わかりました。藍さん、ありがとうございます。」

 

藍の答えを聞き、そのまま部屋の出口へと向かおうとするショウ。

傍らに立て掛けてあった剣を手に取り、部屋を出ていこうとする。

そんなショウを疑問に思い紫は声をかけた。

 

「ち、ちょっと!?貴方何処へ行くつもり!?」

 

紫の問いに対し、ショウは出口を見たまま答える。

 

ショウ

「・・・・・・ムラクモユニットの居場所なら目星はついてる。と言っても、何てことはない。アイツの目的地は・・・、『ここ』だからな。」

 

「・・・は?」

 

ショウの答えを聞き、紫は間抜けのような声をあげる。

何故、未だ姿すら見ていない者の目的地がわかるのか。

紫の言葉に答えたのか否かはわからないが、ショウは続けて口を開く。

そして、その答えを聞いた紫の表情は一変した。

 

ショウ

「・・・いや、正確に言うなら・・・、『俺』か?」

 

「な!?どういう事よ!何で、ムラクモユニットが貴方を狙ってるの!?」

 

ショウ

「慌てんな。ちゃんと教えてやる・・・。いや、『見せてやるよ』・・・。」

 

「・・・え?見せる?何を―――」

 

紫の問いに答えるように、ショウは懐からカードを取り出した。

 

ショウ

「・・・紡いだ記憶を力に変える。世界を繋げ・・・。」

 

「―――!?」

 

ショウ

「幻蒼符『ファンタジア・インストール』code:SoulEater《ソウルイーター》、共鳴解放《レゾナンスブレイズ》。」

 

ショウの言葉と共にカードから蒼い光が放たれ、紫たちの目が眩む。

光が晴れると、ショウの姿が紫との戦いの時に変わっていた白髪の姿へと変化していた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・これがその答えだ。ムラクモユニットの狙いは、蒼の魔導書を持つ死神『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』だ。融合し、一つになるためにな。今の俺の姿はその死神の力をコピーしたもの。俺がこの力を発現させたのは、今からちょうど二時間前、紫と戦っていた時だ。『ラグナ』の力をコピーした俺の存在を、『ラグナ』本人だと感じ、結界を破壊して姿を消したんだろうな。なら、まず間違いなくここに来るぞ・・・!?」

 

ショウはムラクモユニットの狙いが自分であることを明かし、紫達に説明していたが、その言葉の途中にショウの顔が険しい物へと変わる。

次の瞬間―――

 

―――キィン

 

紫・藍

「!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「早いな・・・もう来たか。八雲紫、誰も死なせたくないなら、全員館から一歩も外へ出すなよ?」

 

一瞬耳鳴りのような音がすると、紫と藍の二人にもここに向かってくる強大なプレッシャーを感じ取った。

同じくプレッシャーを感じ取ったショウは、紫に誰も紅魔館から外に出すなと告げると、紅魔館の窓から庭へと降りていった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・・・・さて、そろそろか?」

 

窓から庭へと降りたショウは、紅魔館の正門から外に出て、正面の開けた場所に陣取って呟く。

そして、呟きが終わると同時にショウの目の前の空間が歪み始めた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「お出でなすったな・・・。さて、お前は・・・『何番目』だ?」

 

???

「・・・・・・ラグ、ナ・・・ラグナ・・・」

 

歪んだ空間から姿を現したのは、記憶の中の映像の少女と《一部を除いて》瓜二つだった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「ラグナを求めるのは変わらないな。」

 

現れた少女の呟きを聞いたショウは、予想通りだと言う表情で少女を見る。

 

ショウ(code:SoulEater)

(当然瓜二つだが、色や細部の意匠は異なるな。・・・ニューではない、か。しかし・・・)

 

記憶の中の映像で自分を救ってくれた少女ではない事が分かったが、やはり姿は瓜二つ。

戦いになる可能性が高いことはわかっていたが、いざ相対すると、戦いたくないという気持ちが強いことがわかる。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・悪いが――」

 

目の前のムラクモユニットの少女に向け、言葉を発した後、体から光が溢れる。

光がやむと、ショウの姿は元に戻っていた。

 

ショウ

「―――人違いだ。」

 

???

「―――!?」

 

自分がラグナではないことがわかれば、戦いをやめる可能性があるかもと思い、自分の正体を明かしたが、待っていたのはショウ自身も予想していない答えだった。

 

???

「・・・・・・・・・えた。」

 

ショウ

「ん?何だって?」

 

姿を元に戻したショウを見たムラクモユニットの少女は、ぼそりと何かを呟き、ショウに向かって来る。

 

ショウ

「・・・やっぱ、避けらんねえか。・・・悪く思うな―――」

 

向かって来た少女を戦闘意思があると判断し、迎撃体制をとるショウ。

しかし次の瞬間、ショウは呆気にとられたような顔で立ち尽くすことになる。

 

ギュッ

 

ショウ

「―――は?」

 

接近してきた少女は、迎撃しようとしていたショウに攻撃を仕掛けることもせず懐に入り、ショウに抱きついて来たのだ。

流石のショウでも何が起こったのかわからず、呆然としてしまう。

しかし、次に少女が顔をあげ、発した言葉を聞いた時、ショウの顔は驚愕へと染まる。

 

???

「よかった・・・、また、会えた・・・!」

 

ショウ

「また・・・だって?・・・!!ま、まさか、お前!?」

 

少女の顔を目にしたショウは、すべてを理解した。

目の前の少女の顔は、境界の中で自分の命を救い、消えていった少女が最後に浮かべていた笑顔と瓜二つだったのだから・・・

 

ショウ

「・・・・・・ニュー、なのか?本当に、あの時の・・・お前なのか?」

 

ニュー

「うん・・・うん!約束、守れた・・・。きっとまた、会えるって・・・!」

 

現れたムラクモユニットは、ショウを救ってくれたかつての恩人、境界の中で消えていったニューであった。

ショウは、抱きついていたニューを抱き締め返し、あの時に伝えられなかった言葉を告げる。

 

ショウ

「・・・バカ野郎、俺の気持ちを無視して勝手に消えやがって。・・・あの後、どれだけ自分の無力さを悔いたと思ってんだ。・・・・・・ありがとう。お前のお陰で、俺は今日まで生きてこれた・・・。本当に・・・ありがとう。」

 

しばらくの間、今まで触れ合えなかった時間を埋めるように、二人は互いに相手を抱き締めていた―――

 

ショウ

「・・・ところでニュー、お前何かあったのか?あの時と、服の色や装備に少しだけ差異があるみたいだが・・・?」

 

しばしの間抱擁をしていた二人だが、流石に気恥ずかしくなったのか、ニューへの質問をしつつ、離れるショウ。

名残惜しそうにしていたニューだったが、ショウの質問を受け、少し考え込んだ後、口を開いた。

 

ニュー

「えっと、あんまり覚えてないんだけど・・・、実は―――」

 

~~~少女説明中~~~

 

ニュー

「―――って感じ、かな?境界の中で肉体は消えたけど、魂は残ってて、それを他の素体に移植したあと、記憶を消去されたんだ。ラグナを守ったときに思い出したんだけど・・・そのまま私消えちゃったから、あまり覚えてないんだ。そしたら、変なところで目を覚ましたの。起きたら、目の前に傘を持った人と尻尾がたくさん生えてる人がいて、どこかに連れてかれたんだ。」

 

ショウ

「なるほどな。ラグナがイデア機関を吸収したって話はお前が関わっていて、傷が原因でそのまま消えたけど、この幻想郷で目を覚ました、と。・・・全く、無茶しやがって。ただ、お前を生き返らせた奴には礼をしないとな。こうして、ニューにもう一度会わせてくれたんだから・・・」

 

ニューの説明を聞き、事情を理解したショウはニューの顔を見ながら、名前のわからないニューの恩人への感謝を呟く。

 

ショウ

(ただ、最後に俺と戦ったことは忘れているか。ニューの記憶が戻った時にタケミカズチについても思い出したが、その時の事は話の中には出なかった。まあ、知らないままであった方が都合がいいか・・・。)

 

ショウ

「・・・さて、一旦屋敷に戻ろう。ニューを紹介しなきゃならないからな。」

 

ニュー

「うん。わかった。」

 

かつて敵対し、その後分かり合えた二人。

しかし、世界は再び二人を敵対させる運命を選択した。

取り戻した記憶からその事実を理解したショウだったが、世界を越えて再び出会い、かけがえのない恩人の少女と共に歩くことが出来るようになった。

ショウは、たどり着いた幻想の世界がもたらしてくれた奇跡に深く感謝しながら、隣で笑顔を浮かべる少女と共に紅魔館へと戻っていった―――

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~時は元に戻り、霊夢が目を覚ました場面へ~

 

ショウ

「―――って具合でな。紫がわざわざ紅魔館を襲撃したのは、俺を利用するため、もしくは殺すためだった。理由はさっき話したとおり、俺と話に出てきたニューが融合した場合、黒き獣と呼ばれる災厄が誕生する可能性があったからだが、その可能性は無くなった。つまり、紫が今回とった行動は・・・」

 

霊夢

「・・・何も意味がなかった。ただいたずらに事を荒立てただけだったってことね。まあ、誰かが怪我したって訳じゃないし、美鈴も死んでなかったなら、万事OKよ。」

 

「・・・・・・・・・ごめんなさい、霊夢。」

 

ショウ

「まあ、こいつの行動理念も理解はできるが、色々やり過ぎではあったな。ケジメに関してはお前に任せる。俺はもう紫に対して咎を受けさせる気はない。後は霊夢が決めろ。煮るなり焼くなり好きにしな。絶対に抵抗できないよう、能力は封じてある。」

 

霊夢に事情を説明し、ケジメについては霊夢に一任した。

ショウはもう紫を許していた。

紫の行動理念は幻想郷を守ること。

その意思に嘘偽りは無いことを理解したショウには、もう紫と敵対する意思は無かったのだ。

 

霊夢

「・・・・・・・・・・・・紫。」

 

「・・・・・・・・・・・・何?」

 

霊夢

「・・・目を閉じなさい。」

 

「・・・わかったわ。」

 

ショウの言葉を受け、霊夢は紫を見据え、目を閉じるよう命令した。

命令を受けた紫は抵抗の意思を見せず素直に目を閉じる。

閉じたのを確認した霊夢はベッドから起き上がり、紫の正面へと立った。

 

霊夢

「・・・・・・覚悟は良い?」

 

「・・・・・・ええ。何時でも。」

 

霊夢

「・・・そう。なら・・・歯ぁ、食いしばれ!!」

 

「!!――――」

 

ポス

 

「―――――――・・・え?」

 

霊夢

「・・・・・・・・・・・・・・・バカ。」

 

「・・・れ、霊夢?」

 

閉じた視界の中、来るはずの衝撃はなく、来たのは自分が被っていた帽子の上から軽い感触で手を置かれたくらいだった。

不思議に思っていた紫の耳に小さく霊夢の声が届き、恐る恐る目を開ける。

そこには、目に涙を浮かべつつ自分の頭に手を置いていた霊夢の顔があった。

 

霊夢

「・・・何で、相談してくれなかったのよ?私は、紫にとってそんなに頼りないの?私だって幻想郷を守りたいと常に思ってる。博麗の巫女としてじゃなく、私自身が守りたいと思ってるのよ!」

 

「・・・霊夢。私は・・・」

 

霊夢

「・・・私だって、紫の力になりたい。だから・・・」

 

「・・・・・・」

 

霊夢

「・・・全部一人で抱え込まないで、もっと他人を頼りなさいよ・・・。今回の件だって、ショウを襲撃するんじゃなくて、ショウに頼れば良かったのよ。彼は誰かが危なくなるなら、例え知らない人物でも助けようとするわ。自分の危険も省みずにね。」

 

霊夢は紫にそう告げると、視線をショウへと向ける。

その顔は、自分なら必ずそうするだろうという信頼に満ちた表情であった。

 

ショウ

「・・・・・・流石に、面と向かってまっすぐ言われると照れ臭いな。まあ、確かにそうだ。相談されてりゃ最初から力になったさ。正直、黒き獣は洒落にならんからな。・・・結局杞憂だったわけだが。」

 

「・・・そうね。私は正直、彼の世界の知識を少し持ってるだけの存在。具体的な対策については分からなかった。本当に幻想郷を守りたいと思ってるなら、手段を選んでいる余裕は無かったわね。・・・ショウ、本当にごめんなさい。改めて、貴方に協力を依頼するわ。ただ頼むなんて真似はしない。代わりに私は貴方に全面的に協力する。私に出来ることなら、何でも言ってちょうだい?」

 

ショウ

「・・・わかった。協力を約束する。正直、俺から頼みたかった。今の俺には元の世界の記憶がほとんどない。現在は記憶探しの途中だった。だから俺はあんたに記憶探しの手伝いを頼みたい。代わりに、俺はあんたが抱える問題の解決に尽力する。・・・それで良いか?」

 

「もちろん。貴方の命を狙った私からしてみれば十分過ぎるわ。本当にありがとう。」

 

紫はショウに対し、協力を依頼する代わりに記憶探しの手伝いを約束し、ショウはそれを快諾した。

それを見ていた霊夢は笑顔を浮かべながら手を叩き、二人の視線を自分に集める。

 

霊夢

「よし!お互いの話がまとまった所で異変解決ね。宴会をやるわよ!紫!貴方が色々迷惑掛けたんだから、主催は紫がやること。場所はここでいきましょ?ショウはレミリアに交渉してもらえる?」

 

ショウ

「そう言えば、異変解決の後は宴会をする決まりだったな?了解した。レミリアには俺から伝えておく。」

 

「わかったわ。・・・藍、聞いてたわね?急いで料理の準備をして頂戴。私はお酒を集める。夜までに間に合わせるわよ!」

 

「畏まりました!直ぐに準備を始めます!」

 

霊夢の提案をそれぞれが承諾し、各自準備を始めた。

場所は紅魔館。

料理、酒は紫陣営が用意する手筈だったが、時間が無かったため、紅魔館側からも少し援助がなされ、夜までに突貫作業で準備が進められていった。

そして・・・

 

~~~同日夜、紅魔館メインホール~~~

 

急ピッチで進められていた宴会の準備も終わり、宴会参加者は全員メインホールへと集まっていた。

そこには、たくさんのテーブルに料理と酒がずらりと並び、メインホール奥には特設のステージが用意されていた。

しばらくすると、宴会の主催となる二人が壇上に上がり、参加者の視線がステージ上に集まる。

 

レミリア

「・・・さて、準備も終わったし、そろそろ始めましょうか?」

 

「・・・そうね。待たせるのも悪いし。・・・それでは、今宵の宴会を始めましょう!場所は紅魔館の主、レミリア・スカーレットが提供し、料理、酒は紅魔館との協力でたくさん用意したわ。みんな、今宵は楽しみましょう!・・・乾杯!」

 

全員

『乾杯!!!』

 

レミリアと紫の乾杯の合図で、今宵の異変解決の宴会が始まった。

参加者全員は用意された料理とお酒に舌鼓をうち、大いに盛り上がっていた。

ショウも料理をつまみながら、テーブルで寛いでいた。隣には、並んでいる料理を歓喜の表情で見つめながら、美味しそうに食べているニューもいた。

 

ショウ

「・・・意外だったな。普通に飯食えるんだな、ニュー?」

 

ニュー

「・・・ん?んん、はべれるよ?んん、んぐ、ぷはっ。私の体は作られたものだけど、クローン体みたいなものだから、人間とさして違いはないんだ。今はライフリンクが無いから、斬られたりすれば普通に血も出るし、エネルギーがなければ生命活動を維持できないしね。」

 

ショウ

「・・・そうか。・・・飯は逃げないから、慌てずゆっくり食えよ?」

 

ニュー

「うん!」

 

ショウの質問に笑顔を浮かべながら元気に答えたニューは、再び美味しそうに料理を食べ始めた。

ショウもテーブルの料理に手を伸ばそうとした時、後ろから声をかけられる。

 

???

「ショウさん。幻想郷の宴会、楽しめていますでしょうか?」

 

ショウ

「ん?・・・!?美鈴さん!咲夜さんも!ええ。楽しいですよ。元の世界で一回しか宴会みたいなことは経験してませんからね。」

 

咲夜

「それはなによりです。貴方は今回の異変解決のまさに立役者。貴方が楽しめていなければ、開催した意味がなくなってしまいますからね。」

 

ショウ

「それについては問題無しですよ。・・・美鈴さん。」

 

声をかけたのは咲夜と美鈴だった。

咲夜の質問に対し、楽しめていると答えた後、美鈴に向き直り、その顔を真剣な物に変えて話しかけるショウ。

 

美鈴

「・・・はい。」

 

ショウ

「・・・正直、最初は貴方が殺されたかと思ってました。良く考えて、貴方の事が理解できていたなら、我を忘れて激昂することなんて無かった。最後まで信じられず、すみませんでした・・・。」

 

美鈴

「ごめんなさいショウさん。門の前に立っていた時、後ろから一言『ごめんなさい』と言われて、振り返った時には既に転移させられた後でした。心配をお掛けしました。」

 

ショウ

「・・・本当に、無事でよかった・・・。」

 

死んでしまったと思っていた人が生きて目の前にいる事に心から安堵するショウ。

美鈴もショウからの心配を申し訳ないと思いつつ、心配してもらえた事に充足した笑顔を浮かべていた。

咲夜も、ショウと美鈴の二人が無事であったことを心から喜んでおり、三人は幸せそうに談笑していた。

その後、一通り話した後二人は席を離れる。

離れた事を確認したショウが、再びテーブルの料理に手を伸ばそうとした時、視界の端にひょっこりと顔を覗かせている二つの赤い瞳が目に入った。

 

ショウ

「(ん?あれは・・・レミリアとフランか?)・・・何してんだ、そんなとこで覗いて?話があるならこっちに来いよ?」

 

フラン

「ウソ!?バレた!?」

 

レミリア

「当たり前でしょ?ショウは私達と互角に戦える程の強者なんだから。ごめんなさいね、ショウ。邪魔したかしら?」

 

ショウ

「いや、別に構わない。どうしたんだ?」

 

レミリア・フラン

「・・・・・・(ジッ)」

 

二人の視線に気付いたショウは二人を呼び、レミリア達はショウの傍まで来たが、ショウの問いには答えず、ジッとニューを見ていた。

 

ニュー

「・・・・・・?」

 

ショウ

「?・・・ああ、ニューが気になるのか?この際だし紹介しておくか。ニュー、彼女達が吸血鬼のレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットだ。二人ともレイチェルの知り合いだそうだ。」

 

ニュー

「レミリアにフランだね。ニューだよ。よろしくね!」

 

レミリア

「ええ、よろしく。」

 

フラン

「よ、よろしくね・・・・・・えっと、ニューちゃんって呼んでも、良い?」

 

ニュー

「うん!良いよ!」

 

ショウ

「レミリア、フラン。彼女がニュー、正式名称『次元境界接触用素体No.13《ν》』だ。彼女はいわゆる人造人間、ロボットに近い存在だが、ちゃんとした感情を持ってる。出来れば人として接してやってくれ。」

 

レミリア

「もちろんよ。」

 

フラン

「・・・・・・・・・チラッ」

 

ニュー

「・・・・・・?フラン、どうしたの?ニューの顔に何かついてる?」

 

ニューが気になって見つめていた二人に対し、丁度いい機会だと互いの紹介をさせたショウ。

紹介を受けた三人はそれぞれ挨拶を交わしたが、フランだけはソワソワとしながらニューを見つめていた。

 

フラン

「えっと・・・その・・・ニ、ニューちゃん・・・。」

 

ニュー

「?」

 

フラン

「・・・・・・い、一緒に・・・遊ぼ?」

 

ニュー

「・・・・・・良いの!?ショウ!遊んできても良い!?」

 

意を決したようにフランがニューに向かって遊ぼうと誘い、それを信じられないと言った表情でショウに許可を尋ねる。

 

ショウ

「ああ、良いよ。弾幕ごっこみたいに直接戦うようなものじゃなければ大歓迎だ。遊んでやってくれ。暇を見つけたら合流するから、それまではニューを頼むぞ?フラン。」

 

ニュー

「やったあ!フランちゃん!行こ行こ!」

 

フラン

「うん!」

 

ニューがフランの手を引き、二人は会場から出ていった。

残っていた俺は、レミリアと顔を見合わせて微笑みながら口を開く。

 

ショウ

「・・・良い友人になれそうだな。」

 

レミリア

「そうね。嬉しい限りだわ。」

 

ショウ

「フランの家庭教師の時や、訓練時はニューも連れてくる。その方がフランも喜ぶだろう。」

 

レミリア

「ありがとう。よろしく頼むわ。」

 

ショウ

「・・・時間はかかるかもしれないが、フランには必ず外の世界を見せてやる。約束したからな。だから、待っててやってくれ。」

 

レミリア

「・・・もちろんよ。外の世界でフランと二人で歩いていけるなら、いつまでも待つわ。幸い吸血鬼は長命なの。ただ、立役者の貴方が居ないのは頂けないわ。最初は必ず私とフラン、それと貴方の三人で歩くのよ。だから、貴方が生きてる内に完遂してね?」

 

ショウ

「アハハ・・・善処するよ。」

 

ショウの言葉に穏やか笑顔を浮かべた後、おねだりでもするかのようないたずらっぽい顔で返答するレミリア。

その言葉にショウは苦笑いを浮かべて答える。

 

レミリア

「さてと・・・そろそろ戻るわ。あまり主催者がふらふらしてちゃかっこつかないし。ショウ、しばらくしたら二人を迎えにいくんでしょ?それまでは今宵の宴会を楽しんでちょうだい。それじゃあね。」

 

そう言ってレミリアは席を離れていった。

会った時とは違い、今ではずいぶんと笑顔が多い。

心配の種だったフランの事が解決して心に余裕が出来たからだろう。

それだけでも無茶した価値はあったなと思いながら、ショウはテーブルに向き直った。

 

???

「モテモテだな・・・ショウ。少し妬けちゃうぜ?」

 

???

「始まってすぐ絡みに行こうとしてる魔理沙が中々行けずにやきもきしている姿はお笑いだったわ。ショウ、楽しんでる?」

 

テーブルに向き直ったショウの背後から二人の声が掛かる。

 

ショウ

「ん?ああ、霊夢と魔理沙か。二人とも無事で何よりだ。宴会は楽しませてもらってるよ。」

 

魔理沙

「あれ?あの女の子が居ないな?紹介してもらいたかったんだが・・・。」

 

霊夢

「席を外してるの?」

 

声を掛けたのは魔理沙と霊夢だった。

二人はショウと一緒に居るであろうニューが居ないことに疑問を持ち、ショウに質問する。

 

ショウ

「ニューの事か?今ニューならフランと遊んでるぞ?フランがニューに遊ぼうと誘ってな。あの二人は良い友人になれそうだ。」

 

魔理沙

「へえ・・・。あのフランが他人に歩み寄ろうとしてるのか?良い傾向みたいだな。フランの外出、意外に早く実現するかもしれないぜ?」

 

霊夢

「早速社交性の成長が見られるのは良いことね。彼女自身も変わろうと努力してる。頑張ってほしいわね。」

 

ショウ

「ああ。フランの能力制御が完了したら、あと一歩かもな。ニューなら後で迎えにいくから、良かったら一緒に来るか?」

 

魔理沙

「お!行く行く!その子も外来人だろ?見てみたいぜ!」

 

霊夢

「そうね。折角だし挨拶しておきましょうか。私も行くわ。」

 

ショウ

「わかった。なら、頃合いを見て迎えに行くからその時に声を掛けるよ。」

 

魔理沙

「わかったぜ。待ってるからな、忘れんなよ?それじゃあ、また後でな。」

 

そう言って魔理沙は席を離れていくが、霊夢は動こうとはしなかった。

離れ際に魔理沙は霊夢の肩を叩き、一言呟いたみたいだが、声が小さくて聞こえなかった。

そして、テーブルにはショウと霊夢の二人きりとなる。

しばらく霊夢は黙っていたが、意を決したように顔をあげ、ショウを見据えて口を開いた。

 

霊夢

「ショウ、改めてお礼をさせて。・・・ありがとう。貴方が居てくれなければ、どうなっていたか想像もつかないわ。」

 

ショウ

「やめてくれ・・・。俺は、この世界にとって異物だ。幻想郷を守ろうとした紫の思いも、今なら理解できる。俺と紫の戦いは、俺がこの世界に居なければ起きなかったんだ。謝るならまだしも、感謝されることじゃない。」

 

霊夢

「それでもよ。紫を止めてくれた。それだけでも感謝し足りないわ。」

 

ショウ

「・・・まあ、霊夢が納得出来るならそれで良いか・・・。どういたしまして。霊夢も俺にとっちゃ友達だし、大切な仲間だ。霊夢が困ってるなら、俺は必ず力になるさ。」

 

霊夢

「!?・・・あ、ありがと・・・。」

 

ショウに対してお礼を言う霊夢。

ショウは感謝される事じゃないと思ったが、霊夢が納得してるならまあ良いかと謝辞を受け取り、力になると語った。

ただ本音から出た言葉だったが、ストレートな表現に霊夢は顔を赤くする。

 

霊夢

(これが素だから質が悪いわね本当に・・・。これが所謂天然ジゴロってやつかしら?嬉しいと思ってる自分がいるのが腹立つわね・・・。)

 

ショウ

「・・・?どうした?顔真っ赤だぞ?まだ体調が悪いのか?」

 

霊夢

「ちょ!?な、何でもない!大丈夫だから!」(近い近い!顔が近いって!)

 

ショウ

「お、おう・・・大丈夫なら良いが・・・。無理なら言えよ?」(さっきより赤くなってるが・・・本当に大丈夫か?)

 

顔が赤い霊夢を心配し、顔を覗き込むショウ。

それに驚いた霊夢は慌てて否定する。

大丈夫ならとショウも離れるが、霊夢の顔は更に真っ赤になっていた。

赤くなっている理由は別にあるのだが、超鈍感野郎のショウには気付けるはずがなかった。

 

霊夢

「ホントに大丈夫だから!そ、そろそろ戻るわ。言いたいことは言えたし。・・・私にとってもショウは友達だから、困ったことがあったら頼ってよね?それじゃあ、また後で。」

 

ショウ

「・・・ありがとう、霊夢。その時は頼りにさせてもらうよ。じゃあ、また後でな。」

 

お互いに挨拶をしてから霊夢は席を離れていった。

その後、ショウのもとには永琳や紫、藍、加えて藍の式である橙という少女等がやってきては談笑し、宴会の時間は過ぎていった。

終わりがけに霊夢達に声を掛け、ニューとフランを迎えに行き、会場に戻ってから宴会は終了。

そのまま紅魔館で一夜を過ごし、翌日の昼頃ニューと一緒に紅魔館を後にした。

そして・・・

 

~~~人里 とある一角~~~

 

そこには、ショウとニューの二人に加え、紫と藍の姿があった。

 

ショウ

「此処が・・・」

 

「ええ、私たちが以前人里で運送業を営んでいた時の建物で、それなりには繁盛したんだけど、諸事情で閉店したの。ただ建物を取り壊すのも勿体ないからと取っといた物よ。家賃とか土地代は必要ない代わりに、中は整理されていないわ。」

 

ショウ

「いや、継続的に費用が掛からないだけでもありがたい。整理くらい俺達でやるさ。」

 

「なら良かったわ。じゃあ、私からの依頼料金の代わりとして、この物件を差し上げます。何かあれば、出入口横に私たちの居住地に直通で繋がる電話があるから、それを使って。それと、明日の昼頃に、人里の責任者が此処に来る予定になってるから、人里についての質問はその時にして頂戴。それじゃあ、失礼するわ。」

 

ショウ

「ああ、助かるよ。ありがとな、紫。」

 

ショウとニューが暮らす拠点として、以前紫達が経営していた運送業社の建物を提供してもらうことになった。

中は確かに長い間放置されていた感じではあるが、壁や床は比較的良い状態が保たれているし、広さや設備の充実度は申し分ない。

これで家賃、土地代がタダなら十分すぎる報酬だとショウは快諾。

それは良かったと紫が答え、後日の予定を伝えた後、藍と共にスキマを通って消えた。

紫達が去った後、 隣にいたニューと顔を見合わせ、二人揃って拠点となる建物を見据える。

これから、この素晴らしい幻想の世界での新たな暮らしが始まる・・・

 

ショウ

「さ、先ずは建物の中の整理をするか。手伝ってくれ、ニュー。」

 

ニュー

「うん!」

 

 

 

命の恩人である、大切な少女と共に・・・

 

 

 

 

~幻蒼異変 第一章《conviction resonance》~

 

[ 終幕 ]

 

to be continue

 




如何だったでしょうか?
これで、異変第一章は完結です。

ほとんどバレていたとは思いますが、ブレイブルー初の幻想入りキャラクターは、ニューでした。
話の筋から分かる方が居るでしょうが、彼女は、CS時系列のラムダinニューです。
詳しくは資料集で書きますので、そちらを参考にしてください。

次回は資料集更新、その後は後日談を投稿予定。
後日談は基本一話完結で原作のサイドストーリー的な立ち位置です。
本編では足りなかった部分の補足や、純粋に異変後の出来事を載せていきますので、この話にお付き合いいただける心の広い御方は、また長くなるだろうなと、半分諦めながらお待ち下さい。

では、異変第一章完結までお付き合い頂き、ありがとうございました。


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東方蒼幻録 主人公資料集1《2021/6/13更新》

資料集になります。

ショウの能力及びスペルカードが新しく登場するたび更新します。

判明していない能力、技、スペルカードは『???』表記で表示し、満たした覚醒条件のみ表示します。


能力

 

ドライブ

罪の聖櫃『クライムアーク』

性能

魔素のコントロール、性質変化

詳細

自身の血を媒介に体内の魔素を支配下に置き、コントロールを可能にする。

支配下に置けるのは自身体内の魔素のみであるが、魔素の性質を多種多様に変化させられる。

 

オーバードライブ

黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』

性能

魔素出力及び質量の超上昇、劣化型の黒き獣の再現、使役

詳細

自身体内の魔素を全力解放し、その魔素を獣の頭部に変化させコントロールする。

獣の頭部は、黒き獣を劣化させて再現されており、その性質を受け継いでいるため、対象となったものは喰い尽くされる。

支配下に置いてはいるものの、その質量、出力は絶大なため、長時間のコントロールは不可能であり、血を流しすぎている場合は、発動と同時に暴走する危険性もある。

覚醒条件

弾幕ごっこアリス戦における暴走覚醒

(過去:次元境界接触用素体群の残骸の映像)

 

後日覚醒能力

『世界を繋ぎ力に変える程度の能力』《new》

使用 幻蒼符『ファンタジアインストール』

性質

ドライブ能力のコピー、外見変化、使用スペルカード変化

詳細

対フラン戦時に破壊したダーインスレイブに取り込まれていた蒼の欠片を吸収したことにより、体内に蒼の欠片を内包していたが、記憶領域空間でのレイチェルによる欠片の能力の解説からヒントを得たショウが、蒼の欠片をスペルカードに移植することにより力の方向性を定め、実戦用に調節した物。

ショウの記憶を核にして、蒼の欠片の力を使い、元居た世界と幻想郷を繋ぎ、元の世界の人物のドライブ能力をコピー、再現することが出来るようになる。

これは、ショウのドライブ能力『クライムアーク』の特性を利用し、体内の魔素の性質を変化、変化した魔素を用いて蒼の欠片の力によりコピーしたドライブ能力を肉体ごと再構築して使用する。

記憶を核にする特性上、記憶が復元されれば能力のバリエーションも増える。

また、ドライブ自体はその人物の魂に起因する力であるため、コピーしたドライブ能力によりショウが持つスペルカードも、変化したドライブ能力に合わせて変化する特性を持つ。

覚醒条件(初回覚醒時)

①『レミリア』と『フラン』及び『紫』との邂逅

②『ラグナ』と『レイチェル』についての記憶復元

③魔理沙のスペルカードについての説明

④『レイチェル』による能力解説

補足

幻想郷各地の東方キャラとの邂逅により徐々に覚醒。

理由としては、東方キャラが原作ブレイブルーのキャラと重複する特徴を持っている時、その特徴と一致する原作キャラの記憶を取り戻すトリガーになるため。

つまり、記憶の復元が最大の条件となる。

 

必殺技

 

①シャドウファング

性能

中-遠距離型の飛び道具、切断

詳細

ドライブにより発生した魔素を、刃状に変化させ前方に飛ばす技。

追尾性は無く直線的な軌道だが、スピードは速く、殺傷能力も高い。(作中にて妖怪の腕を切り飛ばしている)

ブレイブルーのゲーム的には波動技に分類される。

腕の一振りで出せるのは一発のみ。

 

②イービルトライデント

性能

剣の投擲、貫通、爆発

詳細

魔素を剣の内側に収束させてから相手に向かって投擲する技。

基本的には上空から相手及び地面に向かって投げる。

着弾した後、剣内部の魔素が一気に放出され周囲に爆発したように衝撃波を発生させる。

剣自体の貫通力は高く、追加の衝撃波により相手に与えるダメージはかなり高い。

投擲された剣は爆発後にショウのドライブ能力を感知し、自動的にショウの元に戻る。

 

③レイジングアベンジャー→クライシスアサルト《new》

性能

近距離迎撃用斬撃、魔素放出による障壁、叩きつけ

詳細

レイジングアベンジャー

体中の魔素を瞬間的に放出し、推進力に変えながら上空に向け斬り上げる技。

速度は非常に速い。

また、魔素放出の瞬間は自身の周囲の魔素が障壁となり相手の攻撃を弾く性質を持つ。

ゲーム的には無敵昇竜に当たる。

クライシスアサルト

周囲に放出された魔素を両足に集めた後に連続蹴りを繰り出し、とどめに魔素をまとわせた左肘を相手に打ち込み叩きつける技。

先の技の派生技に当たる。

攻撃後の無防備なタイミングでの技の上、魔素で威力をブーストしているので、叩きつけ時のダメージは大きい。

 

④ディザスターストリーム《new》

性能

魔素爆発による吹き飛ばし、擬似的障壁

詳細

剣に魔素を込め地面に突き刺し、自身の周囲から上昇気流を伴う魔素を放出する技。

仮に直撃した場合、上昇気流により打ち上げられてしまい無防備を晒すことになる。

また、周囲に壁を作るように魔素が放出される特性により、周囲からの弾幕などの遠距離攻撃への障壁としても使える。

ただし、衝撃波自体の威力はあまり高くない。

 

ディストーションドライブ

 

①ブラッディクロス

性能

近距離型直接斬撃、魔素による内部破壊

詳細

体内から発生した魔素を剣に込め、斬撃と共に相手内部に送り込む技。

横一文字に相手を切り、返しの手で上段からの切り下ろしを放つ。

相手体内に送られる魔素は高純度で非常に毒性が強く、瞬く間に相手の内臓を破壊していくかなり殺傷性が高い技になっている。

一応、ドライブコントロールにより毒性の軽減は可能なため、殺傷能力を抑えることはできる。

 

②バニッシュゲイザー

性能

遠距離型魔素集束波動砲、純粋破壊

詳細

剣を使い自身の前に術式陣を刻み、同時に身体中の魔素を左手に集めてから術式陣を通して前方に魔素を放出する技。

高純度に圧縮させた魔素により、破壊力を極限まで高めている。

純粋な破壊力はショウの技の中でもっとも高いが、魔素自体の毒性を破壊力に変換しているため、毒性は皆無である。

ちなみに、この技を見た魔理沙は、この技の事を勝手に『ブラックマスタースパーク』『黒いマスパ』と呼称している。

 

イクシードアクセル

 

グレイプニルケルベロス

性能

魔素による麻痺、拘束、魔獣型魔素による集中攻撃

詳細

斬撃により相手内部に魔素を送り込み相手の体を麻痺させ拘束した後、相手周囲の地面から魔獣型魔素を複数発生させ攻撃する技。

魔獣型の魔素は劣化した黒き獣を再現しており、攻撃された者を喰らい尽くす極めて殺傷性能が高い技となっている。

対美鈴戦で使用した際は、魔獣型魔素が攻撃する瞬間爆発四散するようにコントロールしていたが、やろうと思えば対象を跡形もなく喰い尽くすことも可能。

 

アストラルヒート

 

カース・オブ・インフィニティ

性能

黒き獣の完全再現、対象の消滅

詳細

身体中の魔素を左手に集約すると共に、腕に施してある魔素拘束の術式陣を砕くことで、限界まで魔素を集約出来るようにし、そこから更に掌握術式を新しく構築展開する。

これにより一瞬の間だけ、魔素の極限集約により左手が黒く染まり、一時的に黒き獣と同レベルの魔素を操ることが出来るようになる。

この魔素を対象に向かって放つ技。

完全再現された黒き獣の魔素は、一瞬の内に対象を食い尽くし確実に消滅させる程強大なため、使役できるのは正に一瞬、そのため遠距離では使えない。

尚、作中でショウが詠唱していた超越解放《アンリミテッドブレイズ》は、自身のドライブ能力を一時的に限界突破状態で使用するためのもの。

つまり、一時的に原作においてのアンリミテッドキャラになることを意味する。

 

スペルカード(後日覚醒能力により変化)

 

①闇牙『キリングラッシュファング』

性質

ターゲット追尾、復元機能、重複による強化機能

詳細

発動と同時に弾幕化出来る霧が発生し、それを刃状に変化させ飛ばすスペル。

発生した弾幕は対象の魔力や霊力をターゲットにして飛来する追尾型の弾幕であり、威力、スピードは高め、但し、持続時間は平均より大分低め。

発生した弾幕は、対象に回避もしくは相殺された場合、霧状に変化した後再度弾幕を形成し、対象に再度飛来する。

また、弾幕同士がぶつかり合った場合、弾幕を形成している霧の密度が上昇し、出力、スピードがアップした弾幕に変化する特性を持つ。

 

②飛翔撃『アカシックブレイバー』

性質

連続空間転移、散弾状弾幕、擬似的全方位弾幕

詳細

発動させる時、自身の視界内のいずれかの座標を認識した上で発動させる必要があるものの、発動と同時に認識した座標へ一瞬で移動できるスペル。

効果時間は極めて短く、5秒程度しかないが、座標認識、転移発動が間に合えば、連続転移も可能なスペルとなっている。

そして、転移の度に散弾のように飛ぶ弾幕を剣にチャージする。

弾幕自体は直線的な軌道で、スピードもあまりないが、数はかなり多めであり、空間制圧力は高い。

そのため、転移、弾幕、転移、弾幕と繰り返し、擬似的な全方位弾幕を可能にしている。

 

③邪影槍『イビルゲイトランス』

性質

転移型包囲弾幕、死角からの攻撃、弾幕及び同士討ち回避機能

詳細

発動した後、ショウの周囲に槍状の弾幕が展開され、対象に向かっていくスペル。

軌道は直線的で回避は難しくないが、回避された槍は空間に展開された亜空穴に飲まれ、別の場所から出現し、対象に再度襲いかかる。

スペルカードの特性の内、複雑な機構は亜空穴展開のみのため、ショウのスペルカードの中では持続性が高い。

また、作中では明記しなかったが、弾幕や同士討ちを回避する機能があり、相殺の可能性がある場合、槍状弾幕の前に亜空穴が展開され自動的に回避する特性を持つ。

 

④混沌『カオスゲヘナ』

性質

追尾型弾幕+包囲型弾幕、融合、広範囲散弾型弾幕

詳細

発動した後、対象の周囲に黒と白の弾幕が出現し、黒は対象の周囲を旋回しながら滞空、白は直線的な軌道で対象へと向かっていく。

白の弾幕が黒の弾幕にぶつかると黒が白を吸収し、斑模様の球体に変化、変化直後に爆発し、周囲広範囲に大量の弾幕をばら蒔く。

相手依存になるが、一気に複数が斑模様の球体に変化することもあり、複数が一気に爆発すると回避は困難となる。

持続時間はショウのスペルカードの中では、中程度の長さである。

 

⑤葬刃『クリムゾンクロス』《new》

性質

レーザー型弾幕、空間包囲及び回避範囲制限

詳細

発動後、対象の周囲に赤い十字架型の弾幕が出現し、その後十字架型の弾幕から対象に向け定期的にレーザーが放たれ、それに合わせて対象に対し通常弾幕を放つ。

レーザー自体はホーミングせず対象の周囲を囲むように放たれるが、レーザーは長時間存在するため、ターゲットはレーザーの内側でしか行動出来ない。

必然的に回避範囲が狭くなる上、ショウの通常弾幕は追尾型であるため、回避は非常に困難となる。

また、複雑な機構が一切ないスペルのため、持続時間はショウのスペルの中で一番長い特性も持つ。

 

⑥幻蒼符『ファンタジアインストール』《new》

性質・詳細は後日覚醒能力と同じ

発動後は各ドライブ能力のオーバードライブリミッター解除スペルカードへと変化する。

 

補足

主人公のスペルカードは、後日覚醒能力を発動させた場合、発動させた能力の種類により変化する特性がある。

つまり、後日覚醒能力には複数のパターンがあり、状況に応じて使い分ける事が可能になっている。

 

東方キャラ本作オリジナル能力、スペルカード

 

①狂劇『ハンニバルレクイエム』

使用者

アリス・マーガトロイド

性能

広範囲制圧弾幕、誘爆

詳細

アリスがショウと一緒に考えて作ったスペルカード。

ショウのスペル『キリングラッシュファング』を参考にした上で、アリスがショウに使用した戦法を流用したもの。

発動と同時に対象者の周囲に人形が展開され、無差別に弾幕をばら蒔きながら、対象を追尾する。

周囲からの全方位弾幕のため、対象者をその場に釘付けにしつつ、人形同士がぶつかり合ったときに弾幕も巻き込みつつ誘爆する特性を持つ。

 

②真名解放 神葬『スピア・ザ・グングニル』

使用者

レミリア・スカーレット(覚醒)

性能

高純度の魔力を内包する魔槍

詳細

相手の強さを自身と同等ないし自分以上であると認めた上で、レミリアが必ず相手を殺すと決意した時のみ使用する魔槍。

普段彼女が使う神槍『スピア・ザ・グングニル』とは全くの別物であり、それ自体が高純度の魔力を内包する魔導兵装である。

その特性は単純であり強力な物で、対象物を内部の強大な魔力により力ずくで破壊する。

一定以上の力がなければ触れた瞬間に崩壊してしまう程強力な物のため、対等以上の相手でなければ戦闘を継続することすら不可能である。

 

③魔剣『ダーインスレイブ』

使用者

フランドール・スカーレット(狂)

性能

対象の捕食・吸収《ソウルイーター》

詳細

フランが持っている剣、禁忌『レーヴァテイン』が取り込まれた蒼の欠片により変質したもの。

その刀身は炎のような赤色ではなく、紫色に変化している。

取り込まれた蒼の欠片の影響により、攻撃対象の生命力を奪い自身に変換する力、ソウルイーターを獲得している。

ソウルイーターの能力は、ショウの世界(ブレイブルー)の人間『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』が持つドライブ能力だが、取り込まれた蒼の欠片が持つ性質により本来の力より劣化しているが再現されている。

また、蒼の欠片により、量は少ないが無尽蔵に魔素が生成されているため、時間経過によりフランの魔素侵食を進行させていた。

作中で破壊されたが、以降フランが特定の条件を満たすと再度使用可能になる。

その際、魔素の生成能力は消えている。

再使用条件

???

 

④秘奥義『零式弾幕結界』《new》

使用者

八雲 紫

性質

圧倒的物量の包囲弾幕、回避不可(物量に起因)

詳細

八雲紫が使用する紫奥義『弾幕結界』のリミッターを解除して使用する、紫の殺戮仕様のスペルカード。

対象周囲に莫大な量の弾幕が高速で生成され長時間襲いかかる。

更に弾幕同士の隙間は全くの皆無であり、弾幕を相殺しない限り回避は不可能だが、生成スピードが速すぎるため、相殺しても直ぐ様弾幕が補充される。

そのため、通常弾幕では相殺しきれず、スペルカードでも単発では足りない、連続使用でようやく光が見える程度の鬼畜仕様のスペルカードのため、弾幕ごっこでは問答無用の反則スペルである。




資料集について

掲載している情報については現時点のものです。
内容変化により記載内容が変わることもあるので注意してください。
一応、更新した情報については、項目の横に《new》と表記していますので参考にしてください。

ありがとうございました。


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