獅子は今日も。 (KARASAWAん)
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#1

はじめまして、KARASAWAんです。
アンジュです。一応アンジュはスマホアプリの方はストーリー全部終わらせて、アニメを現在必死に回収中です。シリアスは書くの苦手だから自動的にギャグ寄りになりますが、場面によっては書きます。
長々言ってもあれなんで、本編どうぞ。


お父さんお母さん、そんなに喜ばないでください。

 

おい、コウタにハル、笑ってんじゃねえよ。

 

その他大勢の男子同級生、そんな怨念を込めた目で俺を見るんじゃない。

 

先生、近所のおばさんおじさん、涙して俺のことを送らないでください。

 

俺は、俺は―――――――――

 

 

 

 

「青蘭島に、………いや、αドライバーになんてなりたくないんだよぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

時はわずか一ヶ月前に遡る。中学三年の冬、受験シーズン真っ只中の中、一月に行われる10代男性対象全国共通検査が行われた。内容は、『αドライバーの資質の計測』。

何がなんだかわからないかもしれないが、十数年前に起こった四つの世界の結合。黒の世界『闇に眠る黒姫の棺』、赤の世界『テラ・ルビリ・アウロラ』、白の世界『システム=ホワイト=エグマ』、そして青の世界『地球』………これによって、まず10代の女の子が大半を占める『プログレス』が生まれた。

そして、それをサポートするための男性、『αドライバー』となるものが存在することが数年前に発覚したのである。

世界の崩壊を防ぐために必要不可欠な存在である『プログレス』、それを支える『αドライバー』。しかし、それも問題が発生している。

 

 

 

 

 

αドライバーの不足。

 

 

 

現在存在しているプログレスの人数が100少しに対してαドライバーの人数は3人。どう考えても人数の比率が釣り合わない状態である。

 

で、プログレスとαドライバーは青蘭島と呼ばれる孤島……巨大学術都市に集められ、そこにある青蘭学園で日夜研究が行われるため、αドライバーに選ばれようものならちょっとしたハーレムなんてのを味わうことができる。

 

俺としては、そんなのはごめんだが。だいたい、そんなに足りないんだったら適当に普通の人間つれていって、研究とかなんやらでαドライバーにしたらいいんじゃない………

 

 

 

 

 

話を戻して、『αドライバーの資質の計測』だが、結論から言うと「お前らαドライバーとしてやっていける資質あんなら、とっとと青蘭島行ってこいや」っていうやつである。なんとも勝手な話。

 

ともかく、なんで受験シーズンにそんなことしなくちゃなんないの、ってことだが、青蘭島の学園側の言い分だと区切りがいい、進路のひとつとして選べや、プログレス側からしたら同年代に近い方がいいんだよ――――――――って辺りだろうか。

 

 

 

で、計測会場である町のホール館内。下は小学生高学年から上は高校生までが計測に並ぶ中、俺は近くにいる友達……いや、腐れ縁の方がしっくり来るな。そいつらと話していた。

 

 

「いやぁ、ついにこの時期が来たなコウタ。」

 

俺としては、一生来てほしくはない時期なんだがな、ハル。

 

「悪いが、ハーレムを築くのは俺だぜ、ハル。」

 

どうぞご勝手に。というか、そんな不純な動機でいいのかよ、コウタ。

 

「おいおい獅音、そんなに緊張しなくたってお前に当たるわけないって。なんせお前ぐらいだと思うよ、青蘭島に行きたくないなんて考えてるやつは。」

 

「そうだよな、それにαドライバーなんて早々出てこないし………だが、俺は行ける気がするけどな。」

 

………少しは気が楽になったが、そのどこから生まれるかわからない自信は凄いと思うよ。

 

 

 

自己紹介が遅れてしまったが、俺の名前は水無月 獅音。現在中学三年、趣味はブレイクダンス、好きなものは海。そして、鳥肌がたつほど嫌いで、可能なことなら関わりたくないほどに嫌いなものは、女子だ。もう一度言おう、女子だ。

 

何度でも口に出して言おう、女子が大嫌いだ。

 

なんで嫌いかまでは言わないが、昔ちょっとしたいざこざがあって、それ以来極力女子とは関わらないようにしてきた。今現在俺がなんの心のつっかえもなく話せる異姓は青蘭学園にいる妹と幼馴染みぐらいだ(あれ? 今はゼロ人……?)。というか、そもそも女子と話してなんのメリットがある? せいぜい時間を潰せるぐらいじゃないのか? そんな時間あったら………まぁ、ここでとやかくいっても無駄なことだから、今は検査の方に集中しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――どうやら、神様は俺を見捨てたようです。見事αドライバーの波形を観測、しかも歴代のαドライバーよりも強い波形……より資質があるとのこと。

 

目の前の試験官は大慌てで電話をしている。まさか見つかるとは思ってなかったのだろうか、呆然とする俺を完全に無視して連絡するのに必死である。

 

ポン。肩に手をおかれる感触、恐る恐る後ろを振り向くと、あぁ、これが笑ってない笑顔ってやつかぁ。握りこぶしを振り上げた腐れ縁どもがこっちを見ていた。

 

「なぁ獅音、顔面か鳩尾――――――――好きな方選べや。」

 

「待て、この場合俺は一方的に被害者だ。お前らも俺の事情知ってて言ってんだろうが。」

 

「関係ないね。まぁ……同情一割、憎しみ九割ってか。」

 

理不尽の極みである。俺だってできることならこんなことになりたくなかったし、拒否権があるのなら行使したい。――――が、たぶんそれは許されないだろう。

あぁヤバイ、これからの人生で数多くの女子と関わらなくちゃならないと考えるとめまいがっ………意識が遠退きそう………

 

「おい、獅音。目が虚ろになってるぜ………流石に同情したくなってくるわ。」

 

「」

 

「返事がない、ただの屍のようだ。」

 

「」

 

このとき俺は、はじめて時間が飛ぶ感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

そんなことがあって、現在俺は青蘭島に向かうための船が止まっている港にいる。もちろん今すぐにでも逃げだいたいのが本音であるが、逃げられない。

 

「αドライバーは私、安堂 環が責任をもって青蘭島に案内させていただきます。………ところで、ロープでぐるぐる巻きにされてるこの子はこれで大丈夫なんですか?」

 

――――逃げられない。

 

「いいんですよ。そいつはそうでもしとかないと青蘭島に行きませんから。」

 

嬉々として説明するハルの姿を、これほどまでに殺したいとは思わなかった。見送りに来たやつらの中には「なんであいつが……」とか、「もっとありがたく思えよ……」とか言う言葉をボソボソと、俺に聞こえる程度の大きさで話す。知るかよ、俺だって行きたくねぇんだよ。

 

「それならいいんですが………それでは、私たちはこれで。」

 

こうして(なかば無理矢理)俺の青蘭島での物語が幕を開けようとしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドナドナドーナードォナァー」

 

「そこまで青蘭島行きたくないの!?」

 




ハルとコウタは獅音の友人です。よき理解者なんですが、しばらく出てきません。


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#2

こんばんは、テスト期間だろうとお構い無く執筆、しかし文章はry



「それにしても本当に嬉しいわ。まさか今年は三人もαドライバーが現れるなんて。………ところであの、あまり無視されるとそろそろ泣きたくなるの……」

 

俺じゃない二人がちゃんと聞いてるじゃないですかやだー。というより、この船に俺以外に男が二人乗ってるのってそういう理由だったんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロープで巻かれ強制的に青蘭島につれていかれることになってしまった俺、水無月 獅音は現在青蘭島行きの船の上でただひたすらに『どうやって脱出するか』を考えてた。

 

流石に今から海に飛び込んで泳いで脱出はできない。距離も大分あるし、そもそもロープで手足が動かないから沈んでいくだけだ。それに、この船はそこまで大きくないから隠れることもできない……

 

はっ、もしかして俺って、詰んでる?

 

「あの………水無月君、返事はしてくれないと、その、先生すごく不安になるって言うか……」

 

あぁ、教師なんですね。

 

「おいお前、流石に無視はないんじゃないか?」

 

不安そうな女性教師の言葉を遮るように話しかけてきたのは、恐らく同じαドライバーである一人の男だ。背丈はまぁ……高い方だろうか。

たぶん俺よりも身長は上だろう、フードつきのパーカーにジーパンとオシャレな格好をした、それでいてたぶんイケメンの部類に入るだろう金髪のそいつは、俺を見るなり少し冷たく話しかける。

 

「————何? お前が出てくる理由はないだろ? ……あぁ、申し訳ありません先生。少しだけ意識が飛んで行ってました。」

 

「あっ、別にそこまで謝らなくてもいい「よくないだろ!」えっ」

 

何こいつ、しゃしゃり出てくるなぁ………すげぇめんどくさそうなタイプだな。つか、

 

「あのなぁ、俺たちは選ばれて今から青蘭島でプログレスの子らと一緒に頑張って世界崩壊を防ぐ役割を持ったんだ! それなのにその態度は無いんじゃないか?」

 

あー、凄い正義感が強いやつか、あるいは正義に取り付かれた無能なやつかのどっちかかな?

 

「望んで来たかった訳じゃないんだよ。そんなに世界を救いたいんだったらお前らだけでやれよ。俺は今からでも帰ったっていいんだぜ?」

 

おっ、もうそろそろ島についてしまうな。いよいよどうするか決まってないのにこれはマズイ。このままでは強制的に女子と関わらなくてはならなくなる。ちくしょうこうなったらグフゥ!?

 

「望もうが望まいが俺たちは選ばれたんた。だったら普通はその仕事をするのが筋ってやつじゃないのかよ!?」

 

ついに胸ぐらまで掴んでくる。いやーやめてー(棒読み)。そして俺は理解した、こいつは『めんどくさい』やつだと。そして、数少ない男なのに嫌悪感がMAXの人種だと。

 

「そんなムキになってんじゃねぇよ………第一、何を言われようと俺はαドライバーとしての仕事をするつもりなんてない。例えそれが上からのガハッ」

 

気がつけば俺は殴られていた。いや、流石にひどくない? 俺手足縛られてノーガードだぜ? しかも割りと本気で殴りやがったこいつ。

 

「お前はぁっ………」

 

 

 

 

 

 

「わーわーー! もうやめようよ二人とも! ほら、もうすぐで青蘭島につくよ!?」

 

険悪な雰囲気を変えようと頑張っているもう一人のαドライバーは、見た目はほぼ女子だ。いやまじで。正直、男の娘って言う言葉はこいつのためにあるんだなと再確認できるほどだ。

 

童顔、低身長、高めの声。非の打ち所のない男の娘だ。

 

「……君がそういうのなら。」

 

渋々と俺から間をとる。その間に教師は俺のロープを解いた。恐らくここまで来たら縄を解いても問題ないだろうと踏んだんだろうか。————————だが、それは間違いだったな。そして、俺の運動神経を甘く見たな。

 

「君も、流石に君もあの言い方はダメだと思うよ? ……それに、そんなこと言いながらも本当はαドライバーするんでしょ?」

 

心配するように俺を覗き込みながら話しかけてくれる。あぁ、こいつなら将来を誓ってもいいかもしれない(錯乱)。

 

「………そうだな、流石に言い方があれか————でもな。」

 

俺は近くにあった自分の荷物を手に取り、船が止まる桟橋に近づきそうになったときを見計らう。おおよそ五メートルぐらいか、そこまで近づいたのを見て、俺は駆け出し、船の先頭まで走り先端から跳んだ。あまりの急な行動に誰一人として対応できず、俺はなんの被害もなく一番乗りに桟橋に足をつけた。

そして、恐らく見つかる可能性の少ない森のある方向を確認し————

 

「悪いな、αドライバーをする気がないのは事実だ。それと、そこの金髪。正義のヒーローごっこがしたいなら俺なんて無視して一人でやってな。」

 

それだけ言って一目散に森へと走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安堂 環side

 

青蘭学園で勤めてからまだそんなにたっていないけど、たぶんこれから先体験することはないでしょう。……生徒に逃げられました。

しかも、面と向かって「αドライバーをしない」と言われてしまうなんて、まさか断られてしまうなんて。

 

「えっと……安堂先生でしたっけ、大丈夫ですよ。俺たちもいますし、あんなやついなくても大丈夫です。」

 

「そ、そう………」

 

金髪の男の子……緑川 隼斗君はずいぶんと強気に話している。

私としては本当は一番αドライバーとしての才能のあるあの子に任せたかったのだけれど、この場にいないのはどうしようもない。現状はαドライバーの数を考えると、例えわずかでも反応すれば藁にもすがる気持ちで頼らなければならない。

 

「でも、何であそこまでαドライバーをしたくないんだろう………」

 

もう一人のαドライバー、遠野 雫(本当に男子なのかなぁ……)は少し寂しそうに呟く。

 

正直な話、私もそれは気になった。提出してもらった彼の経歴情報も目を通してはいるけど、そこまで問題のない、むしろ普通の内容だったはず。

それとも、そこにかかれていないところで彼に何かあったの……?

 

 




まじでこの作品どこに向かってるんだろう……


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#3

こんばんは。いやぁそろそろスカウトガチャがやって来ますね(アプリ アンジュの話)、なおレターの使いどころはいまだにわかりません。


??side

 

「ここなら誰も来ないわよね……」

 

辺りを確認しながら森の奥の方まで入り込む。そこまで来る理由はたったひとつ、歌の練習をするため。

それだけなら森の奥まで来る必要はないって? いやよ、人目のつくところで努力なんて。

 

……まぁ、練習っていっても確認みたいなもの。向こう(テラ・ルビリ・アウロラ)に居たときは「歌が上手」とは誉められてはいたけど、それは向こうでの話。

自信がない訳じゃない、けど、本当に今の自分の歌がこの青の世界で通用するかははっきりしてない。

 

「~♪」

 

うん、喉の調子は大丈夫。あとは…

 

ガサッ

 

「───────────っ、誰!?」

 

辺りの草が揺れ擦れる音に気づき、音の方を向くと、仮面をした女子が6人ぐらい、気がつけば私の周りを囲っていた。

 

「(もしかして、こいつらが最近噂になっているファントム……!?)」

 

慌てて逃げようとしたけど、出来ない。まるで、体に重りがのし掛かっているような感覚。そういえば、ファントムと出会ったプログレスはほとんどが意識不明の重体になっているって……

 

「………ぃゃ…………っ、助けて!」

 

こんな森の中じゃあ誰もいないってわかっている。でも、声を出さずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ここまでくりゃぁ追っ手も来ないはずだ。」

 

ここまでは少し計算のずれもあったが、誤差の範囲。青蘭島の脱出もまだ微レ存、いけるな。────いけるよな?

 

少し不安になり、手に持っていた荷物から1つの武器(というよりは装具)を取り出す。

金属製の手甲………俺が得意としている戦い方において一番必要なもの。

────いや、嘘だ。本当は銃とか剣とか、もっと大雑把に言えばあまり武器を使うのが嫌いだから手甲なんてものを選んでいるのだ。

 

そんなことはどうでもいい。最悪追っ手が来たのならボコって逃げればそれで……

 

「…………~♪……」

 

歌? まさか、こんなところに人なんているのか? 少し気になった俺は歌の聞こえる方へと足を進めようとする。

 

「それにしても、少し気になるな……どうにもトントン拍子で進みすぎてると言うか。」

 

「助けて!」

 

……あー、めんどくさそう。しかも今女の声だった。最悪だわ、いや別にわかってたよ? 青蘭島なんだから男がいるわけ無いって。いやでも、あー、あー………

 

女子を助けるなんてことは意味のないことだし、利益ないし、時間と体力の無駄だし。

でも、助けに行かなかったから後からグチグチ言われんのもヤなんだよなぁ………

 

と、どうにか自分を動かす言い訳をつけて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルプの声を探していると、どうやら現場らしい場所についた。が、慌てて近くの草むらに隠れた。

 

「どういうことだよ! ……おかしい、確かに俺は助けてと言う声を聞いた。」

 

しかし、目の前にいたのは複数の不気味な仮面をつけた女数人だった。その辺りを見ても、あからさまに総リンチされてますぅみたいな人もいない。つまりこれは───────

 

「罠、か。」

 

まず歌で注意を引き、助けの声を出してからおびき寄せたところを複数でとらえる。大勢でかかれば成功率も上がるし、女性だから変な抵抗もしないと言う判断。

確かに素晴らしい……が、

 

 

 

俺のことを少し見誤ったな。俺は真の男女平等主義者だということを!

幸いにもこっちに気づいていない、つまり、今ここで襲撃して殲滅してしまえば、バレずにここを逃げ出し、この島から脱出する計画が進む。

 

そうと決まれば行動は早かった。荷物を置き、ちょうど全員の視線がこちらを向いてないほんのコンマ一秒を狙う。瞬、近くの木を蹴って宙に浮き、一人の仮面の女の後頭部めがけてドロップキック。

───運悪く俺のターゲットとなっていた女は振り撒いてしまい顔面(と言っても仮面付きだが)にキックを受けてしまう。が、こちらとしては嬉しい誤算だから問題なし。

もちろん全員が俺の存在に気づく。しかし、俺はまだ空中にいる。もちろん能力とかそんなんじゃない。単に顔面蹴られた女を足場にしてさらに浮いただけ。

 

「死にさらせ雌狗がぁ!」

 

重力よろしく、近くの女に踵落とし。両腕を交わしてガードの体制をとっているが関係ない。予定通り腕ごと踵を振り抜きその女を地面にめり込ませる。そして、すぐさま手刀。

 

俺は着地した瞬間に残りの人数を見る。1、2……4人か。すると、うちの二人が急に俺を無視して草むらの方に……って!

 

俺は残りを無視して草むらに向かった二人を捕まえる。

 

「そっちにはいかせねぇよ!」

 

無理やり捕まえた腕を引っ張って、その二人をぶつけ合わせる。怯んだ隙は逃さない、すかさず一人の肩を支えにして自分の体を上にあげ、捕らえた二人、同時に顔面キックを浴びせる。

 

「あぶねぇ……こいつら、俺のバッグを奪えばどうにかなると思ってやがったな!? 事実だから怖いけど。」

 

とはいえまだ戦闘中、体を残りの二人に向けようとするが、足が動かない。ふと足を見ると、数本の蔦が地面から不自然に生え、俺を絡めとっていた。

 

このときまで俺は見くびっていた。ここが青蘭島であり、プログレスが強いということを。

 

体を捻って後ろを見ると、最初にダウンさせたはずの二人はすでに起き上がり、じわじわと俺との距離を詰めている。

そして、その手にはどこから生まれたか鉄パイプが握られ───────

 

「ぐぶぅぁっ……」

 

横腹に一撃が入る。しかし、吹っ飛ばずに地面に倒れ混む。いまだに足元の蔦が存在しているのを見ると、まだ攻撃は続くようで追い討ちの殴りが俺を襲う。

 

さすがに十発を越えて俺を封じていた蔦は外されたが、それでも受けたダメージは大きくここから逃げることすら出来ない。

 

「(くそっ、バッグの中にモデルガンを魔改造して人体に影響を与える粉を撒く兵器ならあるのにっ………!)」

 

仮面の女たちは再び俺へと近づいてくる。

その光景は、かつての俺が見た景色を想起させ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ、俺はまた失うのか?

 

 

────何もできないまま、成されるがままに

 

 

また奪われるのか?

 

 

────抗うこともできず、ただ理不尽に

 

 

また、あの頃に戻ってしましまうのか?

 

 

────自由に生きる毎日を消された日々に

 

 

 

 

 

 

「嫌だ、………それだけは。」

 

何のために、今まで鍛えてきたのかわかんねえじゃねえかよ………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫side

 

 

水無月君が船を飛び出してどこかへ行ってしまって数分後、僕らとあまり歳が変わらない女の子が二人やって来た。

 

「日向さん、それに………千尋ちゃん?」

 

「「お疲れさまです、安堂先生。」」

 

「うん、日向さんは確かに頼んだからわかるのだけれど、千尋ちゃんは何でここにいるのかしら?」

 

「はい、お兄ちゃんがこの島に来るって聞いたので、私が来ないとお兄ちゃん絶対に逃げ出そうとしちゃうから………」

 

お兄ちゃん、今確かにこっちの紺髪ショートの子はそう言った。ちらっと緑川君を見るが、様子からして緑川君の妹じゃない。ということは、必然的に………

 

「その、水無月君ならもう逃げ出しちゃったの。」

 

やっぱり、としか言いようがない。この子は水無月君の妹だ。

 

「あぁっ………あのダメ兄はっ、先生! 海岸の監視を強めておいた方がいいです。あの兄なら絶対に、どんな手段を使ってでも逃げ出しますから!」

 

 

 

 

「ねぇ君、君のお兄さんの事なんだけど、別に逃がしてもいいんじゃないの? あいつもαドライバーになるつもりなんて無いって言ってたしさ。やる気のない人間が来るとこじゃないだろ?」

 

僕も気になっていたけど聞けなかったことを緑川君があっさり聞く。

────と、突然その女の子は目付きを鋭くして掴みかかる勢いで話始めた。

 

 

「なんですかあなたは? もしかしてお兄ちゃんを侮辱してるんですか? ……確かにお兄ちゃんはここに来るべき人じゃないです。でも、ずっとあのままでいるわけにはいかないんです!」

 

「ちょっ、千尋ちゃん!? 落ち着いて、ね? え、えーっと、日向 美海です、私が青蘭島の案内をするから、よろしくね!」

 

 

 

 

 

僕はそれ以降の言葉は聞こえなかった。

来るべき人じゃない、そして、あのままではいけない? ……もしかして、水無月君は僕が考えている以上に過去に何かあったの?

 

 

 




いやぁ、主人公に何があったんですかねぇ(白目)


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#4

こんばんは。

今回の内容につながりますが皆さんは周りに注意し、迷惑にならないようにしましょう。


??side

 

まさか来るとは思っていなかった。だって、こんな森の中で、しかもただ叫んだだけなのに。でも、嬉しかった。

 

その男の人は、突然現れたかと思えば、あっという間に二人を地面につかせた。普通ならこんなことはできない。この島にいるってことはαドライバーってことを前提に話すと、αドライバーは言ってしまえばただの人間だ。プログレスに必要な存在とは言ってもリンクができること以外は一般人と大して変わらない。

つまり、普通なら異能を持つプログレスになんて勝負を挑まないはず。それでも目の前の男の人は私を助けてくれた。

 

「(はっ、今の間に逃げなきゃっ…………)」

 

震え痺れる手足を無視して背の羽をはためかせ、草むらのほうへと向かう。

でも、その私の動きを逃してはくれず、ファントムの二人が私を捕まえようとした。

 

「(───────嘘…………いやっ、こないで!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな私の心の願いが届いたのか、あの男の人が

 

「そっちにはいかせねえよ!」

 

私を追っていたファントムの肩をつかみ、引き離してくれた。

もちろんその間に急いで草むらに飛び込む。すると偶然か、そこにバッグが落ちていた。多分あの助けてくれた人のものだろう。本当ならこの場所から逃げたほうがいいと思う。でも、

 

「助けてくれたし、お礼、後でしなくちゃ。」

 

それに、ここで逃げ出したら、もう二度とあの人と会えなくなる、そんな気がして

私はバッグの中に入り込んだ。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

天地鳴動、俺、水無月 獅音の戦い方だ。

昔いろいろあってから、俺は自分が強くなるために武術を覚え始めた。空手、柔道、剣道、…………これでもかというほどに様々な戦い方を見てきた、学んできた。

でも、違った。今まで上げたものを侮辱するわけじゃない。ただ俺が望んだものを教えてくれるものはなかった。というのも、どれも確かに強いし役に立つことはある。が、所詮は一対一を想定したものがほとんどであり、一対多になった時に学んだものができるかといえば何とも言えない。

 

そこで俺は1つの答えにたどり着いた。

「人間は横の動きには慣れても縦の動きにはついていくことはできない」

人間は移動する、攻撃を避ける時は、ほとんどの場合が横にずれる、まれにしゃがむことはあってもそれは視界から完全に外れることはない。視界の何処か隅には残る。もちろんそうなる原因は明確で、人間のジャンプ力と地面が関係している……といえば誰でもわかるだろう。

 

ならどうする? ……自分がより高く上がれば地面との間の高低差は広がり相手の隙をより突くことができる、これが答えだ。

しかしこの戦い方には穴がある。自分も人間だからそれなりにしかジャンプできない。もちろん俺が天地鳴動を完全にものにするにあたって最大の壁だった。

 

これを解決することができたのは俺が中学に入ってすぐのころだった。中学に入ってすぐ、俺はまだ「あの事件」を完全に払拭することができず、女子はおろか男子ともあまり話さずふさぎ気味だった。そんな俺が学校で部活動をするとかそんなことはなく、ただ放課後は毎日筋トレと体力づくりの毎日だった。

そんな俺を見かねてか、親父は俺にある人物を紹介した。名前を「土屋原 カケル」、歳は15の高校1年。親父の親友の息子らしいが、その人は高1にしてパルクールのトレーサーだった。当時の俺はパルクールという単語すら知らず、どうせすることないなら何かスポーツでもやってなという親の目論見かと思った。

 

が、実際にパルクールをみて、俺は完全にこれだと思った。狭い足場から足場へ、高い場所

への跳躍、アクロバット………まさに俺が求めていた戦い方の一つだった。それから俺は(敬意をこめて)カケル先輩とパルクールの練習を続けた。街中であったり、学校の屋上であったりもとより鍛えていたのもあって、どうにか形にはなるほどになった。半年もたたないうちにカケル先輩はどこかへ行ってしまったが…………

 

とはいえ、カケル先輩のおかげで天地鳴動のいわば「天」が成り立ったのだ。

 

じゃあ「地」は? 答えはコウタとハルに教えてもらったブレイクダンスのパワームーブだ(説明が雑? 知らんな)。

 

 

 

 

 

 

こうやって完成した天地鳴動。その全身全霊をもってしても仮面の女プログレスに奇襲で勝てなかった。

 

多分プログレスは一般的な攻撃なんて多少ひるむくらいでしかないんじゃないかと思う。でも一時的に俺の攻撃は通っていた。つまり俺の特訓が足りていないことを暗示して

 

 

「ちくしょうっ…………もう女のいうことなんて聞きたくねえんだよっ………!」

 

観念して目を瞑る。が、いつまでたっても攻撃してこないどころか何も起こった音がしない。恐る恐る目を開くと、さっきまでの光景は何処か、ばらばらに砕けた仮面と、倒れこんだ女が6人、そして…………

 

 

 

「久しぶりだなぁ、女嫌いのシオン。」

 

「カケル先輩!?」

 

俺の目の前に立っていたのは数年ぶりにあった、土屋原 カケル先輩そのものだった。

 

「何でこk」

 

「話はあとだ、ここにはいずれ風紀委員がやってくる。そうなったらおちおち話もできん。…………まさか、腕は落ちてないだろうな?」

 

それだけ言って白黒のみで彩られた仮面を投げつけてくる。というか、「腕は落ちてないか」って、もしかして今から移動する場所って…………

 

安易に想像できた俺は慌てて荷物をとる。手甲はあえて外さず、かわりに靴の紐をきつく縛る。仕上げに仮面をつけて

 

「準備できましたよ。」

 

「じゃあ、逝こうか。遅れるなよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すでに太陽も高い位置につき、多くの人(女性)はレストランだったりカフェテリアだったりする場所で一息つくころ、おしゃれな街の中を風のように駆け抜ける二つの影があった。

もちろん土屋原 カケルと俺だけど。

 

森を抜けて街中に入るまではよかったんだ、誰もいなかったし。問題は商店街……と呼ぶには少しおしゃれ過ぎるが(入口にクリスタルモールって書いてるからここはスいう名前なのか)、そこに入る瞬間にカケル先輩がいきなりエアリアル→フラッシュキックをノータイムでかましたのが問題だ。

どんな技かは置いておいて、問題点が二つ。一つは、初回の技にしては随分と張り切った流れだ。ひとつひとつは出来るとしても、まさか小休止もなくとは思わなかった。

もう一つの問題は、いきなり街中でそんなことをすれば絶対に目立つことだ。俺は現在の立場としては脱走した身である。いくら仮面をつけているとはいえ、止められてしまえば身元がばれる。もし万が一、億が一にも妹かあの幼馴染に見つかりでもすれば仮面なんて関係なく一瞬でばれる。

 

が、ここまできてしまえばもう迷っても仕方ない。こうなったら近づきづらくなる技をするしか! そう思って俺が出した答えは、ライズ→猫宙だった。これなら見た目もよいうえに近づけない。

 

「(いいねぇ、気合入ってるじゃん。)」

 

誰のせいですか誰の! 心の中で毒づきながらも必死に追いかける。

 

一応俺と先輩の間にはあるきまりというか約束がある。それは、技の個数を統一にすること。さっきの場合は技を2個連続、といった風に。もう一つは、「バク転」の禁止。これは特に何かあるわけでなく単なる縛りプレイなだけだ。

 

と、気を抜いてる隙に先輩は近くの街灯を使ってウォールインワードサイドフリップをし始めた。いや、頭おかしすぎでしょ。流石に壁でするような技は壁でしましょうよ。

 

それにしてもさっきからおかしい。人はたくさんいるし賑わってないわけじゃない、けど、さっきからすんなりとパフォーマンスができるというか、俺たちの進行方向に人がいない……?

 

「(カケル先輩、青藍島の人ってパルクールに理解のある人なんですか? どうにもさっきからすんなりと技ができるんですが。)」

 

「(あぁ、それなら実はすでに島全体に連絡していてね。今日ちょっとしたストリートパフォーマンスをするって事前に言ってあるから。)」

 

なるほど、確かにはじめに言っておけばある程度注意は出来るからな。だがそれにしても、普通はそんな連絡してもすんなりと意見は通さないはずなんだが。

 

「(もしかして先輩って結構この島で役職高かったりしてます?)」

 

「(そんなわけないじゃん、これでも青藍学園中退してるし。その辺はあとで話す。それより、そろそろここの中央広場につくから準備しな。もうちょっとだけ付き合ってもらおう。)」

 

そしていうことだけ言ってサイドフリップ→サイドスワイプと技をつなげていくカケル先輩。多分だけど先輩にとってアクロバットは呼吸と同義なんじゃないかと思うんだ。

正直この島から脱出しにくくなるからこれ以上は目立ちたくはないのだが、ここまで来たから先輩のいう通りにしておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………それよりもさっきからかすかに聞こえる叫び声にもならない悲鳴が気になるけど、まあいいか。




今回出てきた技についてですが。そもそもわたしはパルクールしたことない(表現合ってるのかわかんないですが)し、これらの技は出来ません。YOUT○BEで「パルクール 技」とか「アクロバット 技」で調べたら映像は出ます。が、一応文で説明します。

エアリアル=手を使わない側転

フラッシュキック=バク中の足を縦に広げるバージョン

ライズ=体を横に寝かせて一回転

猫宙=側転→足をたたんで側転

サイドフリップ=足をたたんで側転

サイドスワイプ=体を横に寝かせて足を広げて一回転

ウォールインワードサイドフリップ=壁を足でけってからサイドフリップ



…………私の語彙力と観察力では実感わかないと思うので、気になったら適当に調べてください(丸投げ)
もしこんな作品を読んでいただいてる人の中にアクロバットガチ勢がいて、「この説明よりは……」という方がいれば指摘お願いします。


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