Fate/Grand Order~農民は人理修復を成し得るのか?~ (汰華盧顧)
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邪竜百年戦争オルレアン編
その墓標はさとうきびだった


始めて書いた作品です。
まだまだ浅いにわかの為、あれ?と思うことがあったらドンドン教えてくださいお願いします三百円あげるから!



あ、できればお手柔らかに。


3月30日 加筆修正しました

2/17 加筆修正しました


「はぁ………かはっ………っ!」

 

 

息を切らしながらも、目前に迫る蛮族に対して、ボクは全力で“伝説の首領パッチソード”を振るう。

一瞬の鍔迫り合いもなく、ボクの振るう首領パッチソードが、蛮族を剣もろとも真っ二つにする。

見た目はネギでも(実際ネギだけど)伝説の名は伊達じゃない。そんじょそこらの剣では相手にならない。

 

 

「はひゅ…………っ!」

 

 

崩れ落ち、血や臓物をぶちまける蛮族と共に、ボクの膝からも力が抜ける。

………まったく、これで真っ二つにしたのは何人目だろう。50までは数えていたが、そこから先は数える余裕もなかった。

 

 

「は───………」

 

 

常日頃の農作業のお陰で体力のあるボクでも、ぼちぼち限界が来ている。

でも、ここで倒れるわけにはいかない。

今倒れたら二度と立てなくなる。だからこそ───まだ、倒れるわけには行かない。

 

 

「く………ぁぁ…ああ”あ”……!!」

 

 

なけなしの気力を振り絞り、足に力を込めて立つ。

 

───力んだせいか、体中の傷から血が吹き出す。

足下にびちゃびちゃと落ちた血で血溜りが出来、それがどんどん広がっていく。

 

…………くそ、流石に血を流しすぎた。

 

医学に精通してないボクでもわかる。この量は致死量だ。

戦わなければいけない。その意思に反して、視界がどんどん狭まってくる。

 

 

「────やっぱ、慣れないことはするもんじゃないな」

 

 

意識がぼんやりしているのに、何故か頭にいくつもの過去の出来事が、早送りされたビデオのごとく流れていく。

これは所謂、走馬灯ってやつだろうか?

 

 

 

ボクは所謂、転生者という奴だ。

生前は■■■■と言う名前の男で、その人生は大晦日の日、あと一日で42歳の厄年が終わるというときに雷に打たれ、一瞬で終わった。

 

そして気がつけば一面真っ白な空間に。

そして目の前の神様と名乗る人から言われたテンプレな話。そしてチートを持って転生しないかと誘われ、ボクはすぐに食いつき───

 

 

───俺(♂)はボク(♀)になった。

 

 

……………まさかの性転換だった。

 

確かに神様は性別が男のままとは限らないと言ってはいたが、これはなかなかクるものがある。

おまけに顔はアルトリア顔だ。

中身四十のオッサンでアルトリア顔とか、需要なんてねえよ。いくらなんでもマニアック過ぎるわ!

 

 

………まあ、それはともかく。

 

 

ボクは転生する際、ある注文を付けた。

農業があまり発展していない時代に送ってほしいと。

生前学んできた農業の知識で『農業の先駆者』になるためだ。

男なら何か大きなことをしたいと思うのは当然だろう?

 

───今は女だけど。

 

それと特典は、身体能力の向上とボーボボの世界のような真拳を使えるようにしてもらった。

名前は『野菜真拳』野菜を武器に戦う力だ。

農家のボクには我ながらピッタリの能力だと思う。

今持ってる二振り“伝説の首領パッチソード”と“魔剣大根ブレード”も、この真拳の力だ。

 

まあそんなこんなで村長の孫という立場を生かして村で農業改革をしていると事態が急変した。しかも、悪い方にだ。

 

いつも通り、鍛練や農業の日々を過ごして早十数年、王様からの使いが村に訪れた。

この国って王様いるんだな~とか呑気に考えてたら、使いの人がとんでもないことを言い始めたのだ。

言った内容は───戦とかで食糧足んないからこの村の食糧軒並み寄越せ───大体こんな感じだ。オブラートに包んでいるが、実質、死刑宣告と同じだった。

 

これには村長も面食らって思わず抗議。まわりの大人達も参加し、辺りに険悪なムードが漂い始める。

使いの騎士達が剣に手を掛け始めた所で、それに待ったをかけたのがボクだった。

 

使いの人と村のみんなの間に立ち、何とか宥めつつどれくらい食糧が要るのか聞いたところ、連れてきた馬車が全て埋まるぐらい必要らしい。

馬車はかなりの台数があったが、ボクの野菜真拳なら埋められないこともなかった。

 

野菜真拳を使いこなせていないのもあってか、荷をいっぱいにした所でボクは気絶し、三日三晩眠り続けた。

目覚めた次の日にはお爺ちゃんに連れられ、村民会議であれはなんなのか話すことに。

化け物呼びも覚悟してたが、村のみんなはボクの事を受け入れてくれた。

それと、あんな無茶はするなと拳骨も一発。

 

まあ何はともあれ問題は解決したかに思われた。

 

 

 

─────王様から召喚命令が下るまでは。

 

 

 

「……………おっ、と……」

 

 

倒れかけた体を地面に突き刺した魔剣大根ブレードで支える。今のボクにはおちおち走馬灯を見る余裕すらないらしい。ちょっと気を抜いただけでこのザマだ。あの世に旅立つのも時間の問題だろう。

 

だけど、怖くはない。もう一回死んでるし。

 

この国の王様のお陰で国全体の農業改革も行うことが出来た。これでボクは『農業の先駆者』になれたわけだ。

これで実質目標は達成。

 

 

………そうそう、王様なんだが、なんとびっくり、アルトリア・ペンドラゴンだった。

初めて見た時はほんとに驚いたのを覚えている。

というかあの時まで自分の住んでる国の名前すら知らなかったんだよな。田舎とはいえ、もう少し常識を学んどけば良かった。

まあそれも、今となってはいい思い出だ。

この人生もなかなか楽しかったし、遣り甲斐もあった。アルトリアの協力のお陰で農業改革も出来たし、円卓の騎士達とも知り合いになれた。

それに、アルトリアとも仲良くなれた。個人的にはこれが一番嬉しい。

話を聞いたり、ご飯を作ってあげたりしてたら名前呼びをしていいともいってくれた。

 

 

「……よっこい………しょっと…………」

 

 

村人達は蛮族が攻めて来る前に大人も子供も全員逃がした。家族は最後まで渋っていたが、そこは説得してなんとか納得してもらった。

 

───父さん、母さん、爺ちゃん、ごめんなさい。

『生きて帰る』って約束は、破ることになりそうだ。

 

今この村にいるのは、足止めに残ったボクと、王都から派遣された騎士達。

騎士の皆は最後まで供に戦ってくれた。

………だけどその騎士達はもういない。

ついさっき最後の騎士を看取ったばかりだ。

 

今この場に生きているは、死に損ないのボクただ一人。

 

村のあちこちから火の手が上がる。また新手が来たか。蛮族どもが嫌がらせで放ったのだろう。今日はだいぶ乾燥している。これだとすぐに燃え広がるだろう。

そうしてこの村は消えて無くなる。何も残さずに。

様々な野菜や作物が植えてあった畑も、蛮族共に踏み荒らされ、ぶち撒けられた血肉で汚れてしまっている。

 

 

「……………気に入らないな」

 

 

この村はボクの二つ目の生まれ故郷だ。

短い人生だったが、この場所にはかけがえのない思い出が沢山ある。

 

そんな場所を、奴等に好き勝手させる訳には行かない。

 

これ以上、奴等をのさばらせる訳には行かない。

 

奴等に、死に損ないの最後の意地を、やる気になった農民の怖さを思い知らせてやる。

 

 

「物質ハジケ融合…………っ……!!!」

 

 

“伝説の首領パッチソード”と“魔剣大根ブレード”が融合することで、ボクの最強武器“聖魔支配剣 さとうきびセイバー”が顕現する。

 

その姿は、本来なら皮が剥かれたサトウキビになるはずだった。

だが、アルトリアのエクスカリバーに影響されたのか、その形状は緑をメインとした色違いのエクスカリバーのようになっている。

 

 

 

「───みんな、ボクに力を貸してくれ」

 

 

 

ボクの呼び掛けに答えた植物から光が放たれ、それらが掲げたさとうきびセイバーに集結していく。

 

刀身から溢れる光が柱となり、辺りを暖かく照らし出す。

 

 

「──────────」

 

 

ボクのなけなしの魔力を、命を、存在の全てを、さとうきびセイバーに込め────

 

 

 

「さとうきびぃぃ───────」

 

 

 

────解き放つ!!!

 

 

 

「セイバァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

解放された極光が、直線上の物を無差別に薙ぎ払う。

これで大体の蛮族は消し飛ばせたが、まだ生き残りがいる。

一人たりとて逃しはしない。全て消し飛ばしてくれる。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───!!!」

 

 

極光を放つさとうきびセイバーを振り回し、全域を余すことなく薙ぎ払う。

やがて光が尽きたとき、この場に立っていたのはボクだけだった。

 

手からさとうきびセイバーがこぼれ落ち、ボク自身もその場に倒れこむ。

ひどい有り様だ。只でさえボロボロだったのに、余波のせいで右腕がちぎれ、左目が潰れてしまった。ボロ雑巾のほうがまだマシな見た目をしているだろう。

 

ま、それはどうでもいいことだ。

さとうきびセイバーで薙ぎ払われ、土が剥き出しになった大地に、新たな命が芽吹く。それらはみるみる内に成長し、辺りを緑で埋め尽くしていった。

 

 

どうやら無事に生命力を還元できたようだ。これでまた、ここで農業ができる。

 

これでボクのやることは終わった。

 

地面に突き刺さるさとうきびセイバーに触れる。途端にボクの体も光に変換され、吸収されていく。

 

どうせ死ぬんだ。だったらこの体の全てをつかって、皆の力になりたい。

 

 

 

 

 

“───…………───”

 

 

 

 

 

…………………。

 

 

 

 

 

“───……ィーナ───”

 

 

 

 

 

…………声が聞こえる………。

 

 

 

 

 

“───エフィーナ…───”

 

 

 

 

 

…………これは記憶だ………。

 

 

 

 

 

“───エフィーナ! おむらいすとはなんですか!?───”

 

 

 

 

 

…………あの子とした、約束………。

 

 

 

 

 

“───村の子らに大変美味だと聞きました!私も是非食べたいです‼───”

 

 

 

 

 

“───え……? 卵がないから作れない……?───”

 

 

 

“───………わかりました。では、次来たときは必ず作ってください!いいですか?約束ですよ?───”

 

 

 

 

 

…………アルトリア……ごめんね………。

 

 

 

その約束も、守れそうにない。

 

声はもう出ないのに謝罪の言葉が零れ落ちる。

未練はない。そう思っていたはずが、まだ残っていたか。最後の最後で思い出すなんて、タイミング悪すぎだ。

そんなことを考えながら、ボクの意識は、完全に途絶えた。

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

「───ここ────どこだ?」

 

 

 

あの時ボクは確かに消滅した筈。

なのにボクはここにいる。五体満足になってだ。

 

………頭の中に情報が流れ込んでくる。

 

どうやらここは、英霊の座という場所らしい。

そう。つまりだ───

 

 

───ボクは英霊になった。

 

 

「……………………」

 

 

英霊になれたのは光栄なことだ。だけどまぁ……素直には喜べそうにない。

ボクはただ名を残して教科書に載りたかっただけだ。

それなのにまさかの英霊化───流石型月ワールド、農民を英霊にするとは。

 

そういえば、ボクのクラスはなんなのだろうか。

 

 

ファーマー(農民)?

 

 

ダメだこりゃ。

 

ボクはどこぞのNOUMINじゃないんだぞ。燕返しも出せないし。それにボクは戦闘は苦手だ。剣より鍬を振り回す方が性にあってる。

 

まあ、このよくわからないエクストラクラス(?)のお陰でそうそう呼ばれないだろう。聖杯戦争にはエクストラクラスの枠はないし。

 

そんなことを考えていたのが裏目に出たのか。

足下に現れた魔方陣。それがダイソン顔負けの吸引力でボクを吸い込んだ。

 

どこかに転送されながら、頭に知識が植え付けられる。

これが聖杯による知識なんだろう。やり方のあまりの荒っぽさに文句が言いたくなる。

 

 

「─────っ?」

 

 

なんだろう。今なんか妙なものを感じた。

無理やり後付けパーツを付けられたような、そんな感じが。不快だったから振り払ってしまったが。

 

そうこうしてるうちに召喚されたらしい。

固い大理石のような所に着地する。

 

どこの誰だか知らないが、とりあえず名乗るとしよう。

セリフは思い付かないから、シンプルにいこう。

 

 

「───サーヴァントファーマー。召喚に応じ参じょううぅぅぅうっ!?」

 

 

──────嘘でしょ。

 

 

頭を上げながら名乗りをあげ、召喚者の顔を見て思わず声が上擦る。

 

色の抜けた肩までの短い金髪に、黒いM字の額当て。

黒がメインの衣装に、竜の顔が描かれた旗を掲げる美少女。

FGOの中でも性能とあざとさと所々に伺えるポンコツさが魅力的な人気キャラ。

 

ジャンヌ・ダルク・オルタが、ボクのマスターだった。

 



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ステータス

誤字報告してくださった方々、ありがとうございます!
投稿が遅れてすみません。レポートは片付いたので、どんどん投稿出来るようにしていきます。


………さて、今回はエフィーナのステータスなんですが、『はぁ?これおかしいだろ!』って思われたかたはコメントください。可能な範囲で直させて貰います。

スマキ妖怪さん、情報提供ありがとうございました!

2/17 加筆修正しました。


ステータス

《クラス》 ファーマー

 

《属性》 中庸・中立

 

《真名》 エフィーナ

 

《地域》ブリテン

 

《性別》 女性

 

 

 

〈保有スキル〉

 

 

【野菜真拳:EX】

自身の攻撃力をアップ(3ターン)&自身の宝具威力をアップ(3ターン)&自身のスター集中度をアップ(3ターン)+スターを大量獲得。

 

【包容力:A++】

味方単体のHPを大回復&弱体解除&NPをかなり増やす。&スタン付与(1ターン)〈デメリット〉

 

【農業の先駆者:A+】

自身のアーツカード性能をアップ(3ターン)&味方全体のNPを増やす&スターを獲得。

 

 

〈クラススキル〉

 

 

【農地作成:EX】

自身のNP獲得量を増やす。

 

 

〈特殊スキル〉

 

 

【魅了(アルトリア顔):EX】

自身の〔アルトリア顔〕に対して攻撃した、またはされた時、低確率で魅了状態を付与する。

 

 

〈ステータス 〉

 

 

筋力:A

 

耐久:C

 

敏捷:B+

 

魔力:C-

 

幸運:C

 

宝具:EX

 

 

〈宝具〉

 

 

【聖魔支配剣:EX Arts 対界宝具】

敵全体に強力な攻撃+味方全体を大回復

 

 

《セリフ》

 

 

開始

 

「よっし!気合い入れてこう!」

「やるだけやるけど、あまり期待はしないでね……」

 

スキル

 

「野菜真拳奥義!」

「よしよし、いい子だ」

 

カード選択

 

「ふむふむ」

「なるほど」

「はいよ」

 

宝具カード

 

「みせてやるよ、これが農民の力だ!」

 

アタック

 

「おらぁ!」

「せりゃあ!」

「ちぇすとぉ!」

 

エクストラアタック

 

「伝説の首領パッチソード──魔剣大根ブレードッ!」

 

宝具

 

「今こそ集え、命の光よ。その輝きをもって、この地に豊作をもたらそう───!

『聖魔支配剣(さとうきびセイバー)』!!」

 

ダメージ

 

「くっ!」

「かはっ!」

 

戦闘不能

 

「やっちゃったな……」

「ごめん……力不足だった……」

 

勝利

 

「はぁー、疲れた。やっぱ戦いはしょうに合わないね」

「お疲れマスター。帰ったら甘いものでも食べようか」

 

レベルアップ

 

「お、なんだか強くなったな」

 

 

霊基再臨

 

1

「ちょこっとイメチェン。ま、上着を腰に巻いただけなんだけどね」

 

2

「おいおい良いのか?ボクはあんまし強くないぞ?」

 

3

「この鎧?昔いろいろあってね、アルトリアからのプレゼントなんだ。どう?格好いいだろ?ただちょっと胸が苦しいんだよなぁ……」

 

4

「ここまでしてくれるとはね………。よし!このエフィーナ、マスターの為に全力をつくそう!というわけで、改めてよろしく!」

 

 

 

 

Lv1

「マスター、これは人類を救う戦いだけど、無理はすんなよ。何かあったら相談してね?」

 

 

Lv2

「生まれか?ボクは生まれてからずっと、唯のしがない農民だよ。………いや嘘じゃないって」

 

 

Lv3

「アルトリアとの馴初め?そうだな………あの時の肉じゃが、かな?あの時の食べっぷりは見てて気持ちいいぐらいだったよ」

 

 

Lv4

「ずっと建物の中じゃ気が滅入るね。マスター、ピクニックにでも行かないか?みんな誘ってさ。たまにはリフレッシュしないとね?」

 

 

Lv5

「マスター、君はよくやってる。だけど無理してないか?何かあったらボクを頼ってほしい。英霊じゃなく、一人の友として、君の力になりたいんだ」

 

 

会話

 

 

「出番か?なら早く行こう。行動は迅速に、だ」

 

 

「今日も今日とて農業三昧。そうだ!マスターも一緒にやらないかい?自分で作った野菜は良いもんだよ」

 

 

「アルトリア?あの子は妹みたいなものだよ。知ってるかマスター、あの子は以外と甘えん坊なんだよ。頭を撫でてやると凄く嬉しそうにするんだ。

……………え?恋愛感情?……マスター、ボクこんなんでも一応女だよ?」(青王所属時)

 

 

好きなこと

「好きな物?昼寝かな。原っぱで陽を浴びながらの昼寝は、何事にも変えがたい……」

 

 

嫌いなこと

「嫌いな物?………実は空豆が苦手で、あれだけはどうにも………」

 

 

聖杯について

「聖杯? やめとけやめとけ。そんな胡散臭いものにすがるぐらいなら、夢なんて諦めちまいな」

 

 

イベント開催中

「どうやら祭りが始まったらしいな。行こうマスター。やっぱ祭りには参加しないと。時にははっちゃけるのも大事だよ」

 

 

誕生日

「誕生日おめでとう。こんな日は休むに限る。さぁ、今日はレイシフトはおやすみにして、食堂に行こう。美味しいものでも作ってやるよ。そうだ、エミヤさんやブーディカさんも誘おう。ボクのとっておきの野菜も放出しようか。ふふっ、今日はいつもより豪華だぞ?」

 

 

召喚

「サーヴァントファーマー、召喚に応じて参上しました。唯の農民だけど、微力を尽くしますよ」

 

 

 

マテリアル

 

 

 

キャラクター詳細

 

ブリテンを食糧難から救った農民。

現代の農業に関する知識はほとんどが彼女が伝えたもの。一部では神格化され、豊穣のエフィーナと呼ばれている。あらゆる農業の知識を伝え、自国だけではなく、多くの国の農業の発展を促した。

農民でありながらも、その強さは円卓の騎士に匹敵する。

 

 

身長/体重:170cm・51kg

出典:アーサー王伝説

地域:イギリス

属性:中庸・中立  

性別:女性

男勝りな性格をしている。

 

 

ブリテンの危機を救うため、エフィーナは自身を省みずにその力を振るった。

かの騎士王はそれに対して、相応の対価を払おうとするもエフィーナはそれを拒絶。わりに農業の更なる発展の為に騎士王に助力を要請した。

騎士王の全面的な強力のもと、村々をまわり知識を伝え、国全体の食料生産量を大幅に引き上げた。

 

 

後に、彼女は自分の死後もその知識が絶えぬよう、あらゆる農業のノウハウを書いた本《農業のススメ》を5冊作り、遺した。

その本は文字が読めないものでもわかるよう、殆どが図で書かれており、文字も簡単な物が用いられ、容易く翻訳することができるようになっている。

 

 

ブリテンの崩壊の後、この本達は世界各地に散らばっていった。現存が確認されている《農業のススメ》は2冊。その内の1冊は魔術協会にて保管され、残る1冊は日本の神社にて、農業神の一柱として奉られている。

 

 

《農業のススメ》はエフィーナを召喚する際の強力な触媒となる。用いれば必ず呼ぶことが出来るだろう。

だが、1冊では呼べはしても、エフィーナの持つ力を完全には振るうことができない。5冊全てを集めて召喚したとき、彼女は■■を宿し■■へと至る。そしてその力の全てを全力で行使するだろう。

 

 

聖魔支配剣(さとうきびセイバー)

ランク:EX

種別:対界宝具

レンジ:1~99

最大捕捉:不明

 

伝説の首領パッチソードと魔剣大根ブレードが合わさることで使用可能になる。エフィーナが育て上げた野菜達や周りの自然から生命力を貰い、深緑の極光を放つ。威力はまわりにある野菜の量に比例する。言ってしまえば植物限定の元気玉。場所によってはエクスカリバーをも上回る。

エクスカリバーと違い、この剣は癒やすことに特化している。

さとうきびセイバーは敵を滅ぼした後、その命を無害な物へと変換し、内包した生命力と共に空と大地に与え、その近辺を豊穣の地へと創り変える。

それ故に、この宝具は対界宝具となっている。

 

 

農民の食糧庫

ランク:EX

種別:対国宝具

レンジ:1~99

最大捕捉:不明

 

生前のエフィーナが作ってきた膨大な野菜がつまった食料庫。内部に入れたものは腐ることなく、その量は一国を賄うことができるほど。

スキル【野菜真拳:EX】で使用される野菜(それ以外も)はすべて食料庫のものが使われている。

だが、無限という訳ではなく、定期的に補給する必要がある。

 

………別に食糧だけしか入らないわけでは無く、エフィーナが生前に使っていた道具やらなんかが、割と適当に放り込んであったりする。



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ボクの仕事はオルタの護衛です

難しい………
サーヴァントの口調、特にジルが難しい………

あ、もし『これ違う』と思ったらじゃんじゃん教えてください。



3/2 加筆修正しました


「ね……ねぇジル……何かしらコレ……」

 

 

ボクの姿を見て困惑した様子のジャンヌ・ダルク・オルタはいつもの見下すような笑みをひきつらせて、後ろに立つ青髭こと、ジル・ド・レェに助けを求める。

 

困惑するのも無理はない。ボクも困惑してる。

 

第一に、ボクの格好だ。

ボクの今の格好は上下作業服に安全靴の現代風スタイルだ。英霊召喚でこんなのが出たらやっちまったと思うのは普通だろう。

 

第二に、今のボクには“狂化”が付与されていない(さっきちらっと確認した)。つまり、バーサーク・サーヴァントになっていないということだ。

 

───もしかして、召喚の時のアレが“狂化”か?やっべぇな、振り払っちゃったよ。

 

 

「ふむふむ………」

 

 

ジャンヌ・ダルク・オルタ………長いな、短くオルタと呼ぼう。オルタの前に出てこちらをあの魚眼でギョロギョロと見てくる、キャスタージル・ド・レェ。

 

じろじろと見られ居心地悪くしていると、ジル・ド・レェの姿が一瞬で消える。

 

呆然とするオルタとボク。どこに行ったのか探そうと首を動かし────肩にあの爪の長い手がそっと置かれた。

 

 

「っ───────────」

 

 

悲鳴を上げなかったボクを誉めてほしい。

冗談抜きで心臓が止まるかと思った。

 

 

「………清楚さ、可憐さ、清らかさはあるが、いささか慎ましさが足りませんなあ………」

 

「………あ、あの」

 

「おお!これは失敬。ワタクシはジル・ド・レェと申すもの。どうかお見知りおきを。……ところで、拷問や生贄に興味はおありかな?」

 

「い、いや、ボクそういう黒魔術的なのはちょっと……」

 

 

肩に置かれた手をそっと外して距離をとる。

 

………Zeroの時の所業が頭をよぎった。職業柄、引っこ抜く作業が多いけど首を引っこ抜かれるのは絶対ごめんだ。

刺激を与えないよう、慎重に深呼吸をしてバクバクの心臓を静めていく。

オルタに召喚されたときは、正直嬉しかった。だけどなんだろう、座に帰りたい。

 

そしてなぜジル・ド・レェはプルプルしてるんだろう。

時限爆弾を前にしたような、嫌な予感がする。

 

 

「おぉ…………おお…………!今“ボク”と………貴女は今“ボク”と言いましたか…………!?」

 

「ジル?どうし…………」

 

 

───っあ。

 

 

耳に手を当て、防御体制。

 

───そういえばジルドレェって、ボーイッシュな子が好みだったっけ。

 

 

「COOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOL!!!じぃつぅにCOOLですぞおぉぉおおお!!!」

 

「わぁっ!?」

 

「きゃっ!」

 

 

部屋にジル・ド・レェの歓声……いや咆哮が響き渡る。

その威力は部屋中の窓が砕け散り、ジャンヌ・オルタが可愛い悲鳴を上げ、ボクの防御体制を貫通。何事かと扉を開けたシュバリエ・デオンが、何も言わずに扉を閉める位だ。

 

って、おいコラ逃げんなデオンくんちゃん。

戻ってきてこの事態を静めてくれ!

 

 

「COOL!COOL!クゥゥゥゥル!!!」

 

「っひ!ジ、ジル!落ち着いて!落ち着いてってばぁ!?」

 

 

腕を振りかざしCOOLを連呼するジル・ド・レェ。

それをへっぴり腰になりながらも必死に宥めようとするオルタだったが、その目には涙が浮かんでいた。

 

どうしよう。めちゃくちゃ可愛いなおい。

 

かなり胸にグッと来る光景だが、このまま放置すると話が進まない。

もう少しあのかわいい姿を見ていたいけど、とりあえずボクも宥めるのに協力するとしよう。

 

 

 

 

 

~~~~一時間後~~~~

 

 

 

 

 

「いやはや、これはこれはみっともない姿を晒してしまいました。貴女がワタクシにとってドストライクでしたゆえ、つい羽目を外してしまいました」

 

 

あれが羽目を外すというなら、発狂だって羽目を外すに入るだろう。

頭に大きなたん瘤を作ったジル・ド・レェは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

始めはボクとオルタの二人で宥めようとしたのだが、鎮まる所かどんどんヒートアップする始末。最後の手段としてオルタの旗を借りてぶん殴り(ガチでカチ割ろうかと考えた)そこでようやく正気を取り戻せたのだ。

 

ちなみにオルタは今、ボクの背中に隠れている。ボクの身長は大体170cm位だから、オルタが隠れるにはちょうどいいサイズだ。背中に当たる双丘の感触がたまんない。

というかこの子、さっきのが怖すぎて若干幼児化してる。できれば今後の事を話したいんだが、これじゃあ無理そうだ。

 

………今のジル・ド・レェは一応正気を取り戻している……よね?そもそもキャスターの地点で正気もくそもないだろうけど。オルタがポンコツになってて話せそうにない今、出来ればしたくないがジル・ド・レェと話すとしよう。やだなぁ。

 

 

「……えっと、ジル・ド・レェさん?できればこれからの事を話したいんですが………」

 

「ええそうですな!ではまずは我々の目的から話すとしましょう…………」

 

 

ジル・ド・レェの語った目的はFGOの時と同じ、祖国フランスに対する復讐だった。

そしてボクを召喚を召喚した理由は、オルタを守るための護衛が欲しかったからだとか。反抗的なら令呪で自我を無くして傀儡にするつもりだったらしい。

 

……少なくとも、それは笑いながら言うことじゃない。

オルタがいなかったら座に帰ってるとこだった。

 

それはともかくボクの仕事はオルタの護衛ということだ。

冷静に考えたら敵サイドの味方をするのはアレだけど、まぁ仕方ない。ボクも身の安全のため、それと原作が壊れないように頑張ろう。

 

 

─────ところでオルタよ、いつまでボクの後ろに隠れてるんだ?

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

場所は変わってカルデアへ。

 

現在の時刻は11時を少々過ぎた辺り。

電灯が切り替えられて薄暗い通路を、マシュがフォウを抱えて歩いていた。

 

 

「フォウ!フォウ!」

 

「しーっですよフォウさん、皆さんもう寝てるんですから、起こさないようにしないと」

 

 

マシュがなぜこんな時間に歩いているのか、その理由はフォウに起こされたからではなく、明日に迫った二度目の聖杯探索が原因だ。

 

用は緊張して眠れなかったのである。

 

 

「(うぅ……緊張して目が冴えてしまいます……ホットミルクでも飲んで気を静めなくては……)…………あれ?明かりがついてる……」

 

 

食堂にはすでに先客がいた。

 

つい最近召喚された青いドレス甲冑を着込んだ騎士王、アルトリア・ペンドラゴンだ。

アルトリアは席に座り、手に持つ物を、懐かしむような、悲しむような、そんな複雑な目で眺めていた。

 

 

「………アルトリアさん?こんな時間にどうしたんですか?」

 

「ッ!……ああ、マシュですか。いえ、少々考え事を………。貴女は?」

 

「私はホットミルクでも飲もうかと思いまして。アルトリアさんもどうです?」

 

「……そうですね、お願いします」

 

 

厨房に立ち、鍋に牛乳を入れて火に掛ける。

 

暖まったところでマグカップと皿に移して、スプーン一杯ぶんの蜂蜜を加えて完成だ。

 

 

「どうぞ」

 

「いただきます」

 

「熱いから、気を付けてください」

 

「フォウ!」

 

 

食堂にホットミルクを啜る音が響く。暫くすると、沈黙に堪えかねたマシュが口を開いた。

 

 

「そういえば、アルトリアさんはさっき何を見てたんです?」

 

「………いえ、昔の貰い物を眺めてただけです」

 

 

そう言ったアルトリアは先程懐にしまった物を再び取り出す。それは、古ぼけた一冊の本だった。

 

 

「そ、それはまさか……『農業のススメ』ですか!」

 

 

『農業のススメ』。それはブリテンの繁栄に大きく貢献した女性の遺した本。全部で5冊あり、その中には農業に関するありとあらゆる知識が記されているとされている。

 

現存が確認されているのは2冊だけ。残る3冊は行方知れずだ。

 

 

「ええ。ですがあの5冊とは違うものです。これは私が彼女に無理を言って造ってもらった物なんですよ」

 

 

ほらここ。と、アルトリアが指し示した背表紙には、アルトリアの横顔が描かれていた。

 

 

「これを書いたのは……豊穣のエフィーナ、ですか?」

 

「ええ、そうです!」

 

 

豊穣のエフィーナ……アーサー王伝説の中に出てくる一人の農民だ。

 

彼女はブリテンで起きた食糧難を、彼女が持つ独自の力と知識をもって救い、さらなる発展に貢献したとされる人物だ。

本によっては、アーサー王の愛人とされるときもある。

 

マシュはこの話を思い出して、何故アルトリアが悲しんでいたのかを察した。

 

エフィーナは食糧を生み出す力を持っていた。

その力は有用性が極めて高く、それ故に他国から狙われた。

彼女の最後は、故郷を襲撃してきた敵軍を村の人間達を逃がすために常駐の騎士達と共に残って時間を稼ぎ、その結果、騎士達は全員死亡、エフィーナは最後の敵兵と相討ちとなり、この世を去ったとされている。

 

 

「………彼女は、とても優しい女性でした。いつも私を心配してくれて………美味しい食事でもてなしてくれて………」

 

「アルトリアさん………」

 

 

本を握る手に力がこもる。

 

 

「私は……彼女に謝らねばなりません……助けが遅れて彼女を…死なせてしまったことを………」

 

 

そう呟くアルトリアの目は、悲しみに染まっていた。

 

 



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ミサイルの乱れ撃ちってあんまり効果ないけどなんかかっこいいよね

ジャンヌ・オルタ、可愛く書くことを目指してるんですが、出来てますかね?



2/18 加筆修正しました


ボクの召喚から3日たった。

 

オルタの護衛として召喚されたボクは、オルタと共にフランスを蹂躙していた─────

 

 

─────何てことはなく。

 

城に残って日々オルタの世話をしていた。

 

 

「エフィーナ!出番です。行きますよ!」

 

 

今日も今日とてオルタが意気揚々と厨房の扉を蹴破り、乗り込んでくる。この足癖の悪さはモードレットにそっくりだ。あの子も扉を開けるときは大抵は脚で蹴破っていたな。毎回アグラヴェイン卿に怒られていたっけ。

 

今日も元気に生意気してるのを見るとホッとする。

幸い、あの日の出来事はトラウマにはならなかったらしい。すぐに対処したのが良かったのだろう。

 

あの後復活させるのにかなり時間を費やした。

抱き締めて頭を撫でながら『ジル・ド・レェは怖くないよ~』ってやり続けてようやくだ。

村で子供を宥める時やってた事だが、幼児化してたオルタには効果抜群だった。

 

……ジル・ド・レェが鼻血を流して『おぉぉ………』とか言ってたが、気にしたら負けだ。

 

 

「何をしてるのです!行きますよ!貴女は私の護衛なんだから」

 

 

服をつかんでボクを急かす。

オルタはジル・ド・レェに護衛無しで出歩くのを禁じられている。だからボクをつれに来たのだろう。

立場的には従う必要ないのに、ちゃんと守ろうとしてるのがとても可愛い。

 

ボクとしては今すぐ行ってもいいんだが、今はちょっとタイミングが悪い。調度クッキーを焼き始めたところだ。出来れば少し待ってほしいが、聞いてくれるだろうか。

 

 

「あれ?いいんですかマスター。もう少しでクッキーが焼けるんですけど」

 

「一時間待つわ」

 

 

ビックリするくらいチョロかった。

 

 

 

 

 

ボクのお手製かぼちゃクッキーを携えてご満悦な様子のオルタ。最初はかぼちゃと聞いて微妙そうな顔をしていたが、食べてみてかなり気に入ったらしい。

 

ふふっ、野菜はご飯にもスイーツにもなれるのだ。

 

オルタに連れられて来たのは城の中庭。現在はワイバーンの発着場になっている場所だ。

 

地面に降りて休むワイバーンの奥には、巨大なドラゴン。ファヴニールが控えていた。

 

 

「さあ行きますよ!」

 

「あ、はい。………何処に乗れば?」

 

 

ワイバーンの上で仁王立ちしながら不思議そうな顔をするオルタ。

 

いや君は普通にやってるけどそれ、わりと難しいからね。

 

オルタは普通にやってるが、昔から動物に乗ると一歩目で地面に叩きつけられるボクには些か酷な話だ。上空で振り落とされたらと思うと身の毛がよだつ。

ハンバーグは好きだがミンチにはなりたくない。

 

 

「サーヴァントなら出来るでしょうに………仕方ないわね、それなら私の後ろに乗りなさい」

 

「あ、じゃあ失礼します」

 

 

オルタの少し後ろに立ち、お腹の辺りに手を回す。

一瞬オルタがビクついたが、何事も無かったかのようにワイバーンを飛ばした。

その後に、他のワイバーンも続き編隊を組んでいく。

 

 

「エフィーナ、これからする事はわかっていますね?」

 

「ラ・シャリテの町に向かって、そこに来る敵のサーヴァントを迎え撃つんですよね」

 

「ええそうよ。そこでは貴女にも戦ってもらいますからね」

 

「んん………まぁ、微力を尽くさせていただきます。ですけど、あまり期待しないでくださいよ。ボクは普通の農民なんですから」

 

 

今の時間軸はオルレアンの第四章の辺りか。まぁボクという存在がいたりと、少しばかり違う点があるから、これはそこまで気にしなくていいだろう。

 

問題は相手方のサーヴァントだ。原作通りならマシュとジャンヌ・ダルクだけのハズだ。

 

だがもしかしたら他にもサーヴァントがいる可能性がある。そこだけは注意する必要があるだろう。

 

 

「サクッ……サクッ………ん」

 

「あ、ありがと」

 

 

肩ごしに渡されたクッキーを口で受けとる。

口の中で広がるかぼちゃの甘い風味。うん、我ながら良くできてる。

 

 

「ッ~~~~…!え、エフィーナ!貴女の事は敵の前ではファーマーと呼びます!良いですね!?」

 

「了解です、マスター」

 

 

オルタはそういうと、クッキーをまた一つ口の中に放り込む。そして眼下に見えてきたラ・シャリテの町に視線を向けた。

 

ラ・シャリテの町は荒れ放題になっていてそこら中から煙が上がっている。そして町の一角では、今も爆発が起きていた。

 

 

「どうやら既に始まっているようね。……煙のせいでよく見えないけど、取り敢えず、一発食らわせてやろうかしら」

 

「迂闊に食らわせるとこっちが反撃を食らいます。ここは慎重に────ッ!マスター!頭下げて‼」

 

 

突如ボクのアホ毛に走る嫌な予感。それに従いオルタを引っ張ってしゃがませる。

瞬間、さっきまで頭があった場所を何が突き抜けていった。

 

ええいっ!いきなりか!

 

 

「な、なにが─────」

 

「次来ます!ボクが前に出ますから、マスターはワイバーンに指示を!」

 

 

場所を交代すると同時に、再度放たれる攻撃。

 

3つ同時に飛来する攻撃を急上昇にて回避するも、後方ににいたために避け損ねたワイバーン達に直撃。撃墜され墜ちていく。

 

 

「(くそっ!アーチャーなのは分かるけど一体だれが)───やばっ!?野菜真拳奥義『ラウンド椎茸』!」

 

 

直撃コースの攻撃をとっさに出した椎茸の盾──ラウンド椎茸にて受け止める。衝撃をこらえ、盾に刺さったものを抜こうとして───血の気がひいた。

 

 

「くそったれ!!マスター!退避!」

 

「っ、ワイバーン!」

 

 

ラウンド椎茸をぶん投げ、ワイバーンが後ろに羽ばたく。

 

 

瞬間────爆発が起こった。

 

 

ラウンド椎茸には一本の矢が、いや、剣が刺さっていた。それも、ねじ曲げられたようなものが。

あの捻れた剣のような特徴的な矢、それにあの爆発──。

 

間違いない、向こうにはエミヤが居る!

 

 

「チッ!エフィーナ、狙撃はどこから来ました?」

 

「……すいません、わからないです。こうも煙がひどいと」

 

 

町の至るところから立ち込める煙のせいで、視界が大きく遮られている。この状況でエミヤをピンポイントで狙うのは不可能に近い。

 

逆に向こうからしたら、ボクたちはいい的だ。悠長にしていれば、エミヤを見つける前にこちらが仕留められるだろう。そうなったら最悪だ。

 

………しかたない。ちょっと荒っぽいが、やるか。

 

 

「…………マスター、町で戦闘中のサーヴァント達に攻撃に備えるよう連絡してください」

 

「は?貴女何を」

 

「全部ぶっ飛ばして炙り出します!野菜真拳奥義『ニンジン・デストロイヤー』!!!」

 

 

ボクの宝具『農民の食糧庫』からダンボール箱が呼び出される。それらがボクの腕や足に装着される。さながらミサイルポットのように。

 

 

「発射ぁ!」

 

 

号令と共に箱が開封され、中から人参がミサイルのごとく発射。手当たり次第に爆撃していく。

ダンボールが空になろうと、すぐに新しいダンボールが補充され、再度爆撃が行われる。

 

ボク自慢の絶え間ない弾幕。これにはブライトさんもニッコリだ。

 

そして弾幕が途切れる頃には、町はほぼ瓦礫の山と化していた。

 

 

「───────ハッ。よ、よくやったわ。さあ、降りて連中の顔を拝んでやりましょう。ま、生きてればの話ですけどね!」

 

 

口許をひきつらせるオルタがワイバーンに指示を下す。

平静を装っているが、その目はうっわマジかよとでも言いたげだった。

 

うん、今回は確かにやり過ぎた。反省しないと。

 

 

高度を下げるワイバーン。その際に発生した風が砂塵を吹き飛ばす。そして姿を晒したのは、煤にまみれたガメラのような甲羅。これ、ひょっとしてマルタのもうひとつの宝具『刃を通さぬ竜の盾よ』か?

 

その下にできた穴から、こちら側のサーヴァント達が姿を表す。

 

 

セイバー シュバリエ・デオン

 

ライダー マルタ

 

アサシン カーミラ

 

ランサー ヴラド三世

 

 

「────先の攻撃は貴様か?農民」

 

「………ごめんなさい」

 

「……………次はないと思え」

 

 

静かにぶちギレる皆様に、誠意を込めて謝罪する。

刺すような視線を向けるヴラド三世もおっかないが、一番ヤバイのはマルタだ。にこやかな笑みを浮かべているのに、目は欠片たりとも笑っていない。その手に握る杖から、ベキッと嫌な音が聞こえた。

 

 

「お遊びはそこまでにしなさい。………ふんっ」

 

こちらに渇を入れたオルタは、旗を一振りして砂埃を吹き飛ばす。

 

そして姿が露になるカルデアのサーヴァント達。

その中にはボクと面識のある顔もあった。

 

 

「───嘘でしょ」

 

 

キャスター クー・フーリン

 

アーチャー エミヤ

 

シールダー マシュ・キリエライト

 

ルーラー ジャンヌ・ダルク

 

 

そして…………

 

 

「久し振りだね─────アルトリア」

 

 

セイバー アルトリア・ペンドラゴン。

 

 




良かった………!やっと出せたよ野菜真拳!
これでタグ詐欺じゃなくなった!

ところでエフィーナのプロフィールって、あった方がいいですかね?出来れば意見を頂きたいです。


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仲直り

うーん、ちょっと強引かな?
でもここで過去を精算してくれないと後々困るんだよね………


少し時間を巻き戻して、カルデア側へ。

情報収集の為にラ・シャリテの町を目指した一行は、煙が上がる様子を見てそこに急行。

 

そこで仕事を済ませて退去しようとするバーサーク・サーヴァント達と遭遇。戦闘に入っていた。

 

 

 

「はぁっ!」

 

「フンッ!」

 

 

 

炎を纏う木杖と槍が激突し、弾きあう。

バーサーク・ランサー、ヴラド三世の相手は森の賢者である、キャスタークー・フーリンだ。

 

お互い武人気質な為か、クー・フーリンはともかく、無理に従わされているヴラド三世もとても生き生きとしていた。

 

 

 

「貴様、キャスターの癖にやるではないか!」

 

「おめぇさんもな。───くそっ、ランサークラスならもっと楽しめたかも知れねえのによお!」

 

 

 

軽口を叩きあう二人の口許は、獣のように歪んでいた。

 

 

 

 

 

「……ぅあっ!」

 

「ふふふ──良い……良いわぁ………!聖女の悲鳴はなんとも甘美で良いものねぇ!さあ、もっと啼きなさい‼」

 

「くっ……!」

 

「ジャンヌさん!今助けに「よそ見してんじゃないわよ‼」……きゃぁっ!」

 

 

 

バーサーク・アサシン、カーミラになぶられてるジャンヌ・ダルクを助けようとしたマシュが、バーサーク・ライダー、マルタの拳を盾越しに喰らい砲弾のように飛ばされ、壁にめり込む。

 

はからずも拘束具として働くマルタの杖は、立香の援護を受けたマシュによって弾き飛ばされて、遠くの地面に突き刺さっていた。

 

それによって余裕が出来たと思ったマシュ。

実戦経験がもう少しあればこのようなことにはならなかっただろう。だが、つい最近まで戦闘においては普通の女の子だったマシュにそのようなことを言うのは酷だ。

 

そもそも……聖女ともあろうものがステゴロの方が得意だなんて、誰も予想できないのだから───。

 

 

 

「バカ!早く立ちなさい!」

 

「マシュ!」

 

 

 

止めを刺すために迫るマルタに、マシュはダメージが大きく、動くことができない。

立香の焦る声が響き───

 

 

 

 

「悪いが彼女を殺させる訳には行かないのでね」

 

 

 

 

───そこに後方から矢が放たれた。

 

 

 

 

「よくやったわ赤いの!」

 

 

 

マルタが矢を殴り砕いている隙に立香はマシュに応急手当を掛ける。

 

 

 

「マシュ、サーヴァントには武器が無くても戦えるものは割と多い、油断しないように。マスターは常に冷静に状況を見て、的確に指示を出すんだ」

 

「す、すみません……」

 

「悪いエミヤ……」

 

「なに、次から気を付ければ良い。人は失敗から成長するものだ」

 

 

小言をいいながらもフォローを忘れないエミヤ。

 

───さすがはプレイボーイ。きっとこの手で多くの女性をたらしこんだのだろう。

 

そう思った立香だった。

 

 

 

所かわってバーサーク・セイバー、シュバリエ・デオンを相手取るのは我らの青王こと、アルトリア・ペンドラゴン。

この二人の戦いは───

 

 

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「があっ!?」

 

 

 

───あまりにも一方的だった。

 

 

竜騎兵連隊長を勤めたとは言え、相手は騎士王。一対一ではアルトリアの方が有利だった。

 

 

 

「ぐ、ぬぅ……」

 

 

 

廃墟の壁を突き破る程の勢いで叩きつけられたデオンはすでに瀕死の状態。だが、仲間のサーヴァント達には既に相手がいて救援は見込めない。

完全に詰んでいた。

 

 

 

「これで、終わりです!」

 

 

 

止めを指すべくエクスカリバーを振り上げるアルトリア。これで終わりかと思ったとき、アルトリアの動きが止まる。

 

 

 

「スンスン………っ!この臭い───まさか!」

 

「はぁ………?」

 

 

 

突然空を見始める。その先にはワイバーンの小さな影が迫りつつあった。

 

 

 

「アーチャー!あれを!」

 

「む?……あれはジャンヌ………?にしては黒いが、それと……………はぁ!?」

 

 

 

アルトリアの指差す方を見たエミヤがすっとんきょうな声をあげる。それもそうだろう。黒いジャンヌの後ろにいたのは、セイバーの顔と瓜二つなのだから。

 

 

 

『敵性サーヴァント接近!数は二騎だ!』

 

「エミヤ!狙撃いける?」

 

「あ、ああ。勿論だ──

──I am the bone of my sword……」

 

「ま、待ってくださいアーチャー!彼女は……」

 

 

「──偽・螺旋剣!!」

 

 

 

アルトリアの制止は間に合わずに偽・螺旋剣─カラドボルグは放たれる。だが………

 

 

 

「───な!?避けただと!」

 

 

 

エフィーナの咄嗟の行動でカラドボルグをギリギリ回避される。そして反撃が始まった。

 

 

 

「全員伏せろ!攻撃が───なんでさぁ!?」

 

 

 

迎撃のために矢をつがえるも、あまりの光景に思わず素が出てチャンスを逃すエミヤ。

 

目の前には、無数のニンジンがミサイルのように飛んできていた。

 

 

 

『『『な、何でニンジンがぁ!?』』』

 

 

 

驚愕の声はすべて爆音にかき消された。

もうもうと煙が上がるなか、カルデア組は全員が集まり小声で話していた。

 

 

 

「おいアーチャー!てめぇちゃんと撃ち落とせよ!」

 

「すまん……、料理人としてあり得ない光景に思わず……」

 

「いや、あれは誰でも固まるよ……。ところでアルトリア、なにしてんの?」

 

 

 

クー・フーリンが怒るなか、アルトリアは鼻を利かせ、臭いを嗅ぎとっていた。

 

 

 

「スンスン……!いる。彼女が───エフィーナが!」

 

「っほんとですか!アルトリアさん!」

 

「ええ!間違いありません!」

 

「───いや何で臭いでわかるんだよ」

 

 

 

はしゃぐマシュとアルトリアを尻目に、あきれた顔で言うクーフーリン。その言葉に、男性陣とジャンヌはうなずいた。

 

 

 

『ん?いや待てよ。その臭いが今したってことは──彼女、敵じゃないか!』

 

『あ』

 

 

 

今気づいたと声をあげたとき、衝撃によって煙が吹き飛ぶ。そして見えたのは二人の女性。

 

一人は禍々しい雰囲気のジャンヌ・ダルク。

そしてもう一人──

 

 

長靴に作業服を着こんだ、現代チックな格好をした女性。

厚い作業服の上からでも解るスタイルのいい肢体。長い金髪をうなじの辺りで1つに纏めている。頭の上には一本のアホ毛。そして………

 

 

 

「「あ、アルトリア(さん)!?」」

 

 

 

アルトリアにそっくりな顔。

 

違う点と言えば目元だろうか。アルトリアの凛々しい目とくらべると、柔らかくて優しい目をしていた。

 

 

 

「───嘘でしょ」

 

「──っ!!あな……たは………」

 

 

 

彼女はこちらを見ると目を見開き、アルトリアは感極まった状態で声を絞り出す。

 

 

 

 

「久し振りだね─────アルトリア」

 

 

 

気まずそうに挨拶する彼女、エフィーナ。その隣の黒いジャンヌはアルトリアと彼女を何度も見直しているが、こちらの視線に気づき、咳払いをする。

 

そしてジャンヌに蔑んだ目を向けて言葉を紡ごうとしたとき……アルトリアが真っ直ぐに飛び出す。

 

 

 

 

 

────────エフィーナ目掛けて。

 

 

 

 

 

今のアルトリアは魔力放出によってブーストされている。その状態で突っ込めばどうなるか────

 

 

 

「エフィィィナァァぁああ!」

 

「え、ゴフゥッ!?」

 

 

 

当然こうなる。

 

 

 

「エフィーナ!エフィーナ!エフィーナぁ!」

 

「ぐふぇ!?ちょっ、まっ!」

 

 

 

地面に押し倒され、マウント状態のエフィーナ。なんとか抜け出そうとするも、直感を働かせたアルトリアが無意識の体重移動で完全に拘束する。

 

 

 

「ちょ、どいて…く、くるし「────ごめんなさい………」─!」

 

 

 

もがくエフィーナの頬に水滴が落ちる。それは、アルトリアから落ちた涙の滴だった。

 

 

 

「ごめんなさい………ごめんなさい…………!」

 

「アルトリア………」

 

「わ、私が………ちゃんとしてれば………貴女は…………貴女は死なずにすんだかもしれないのに…………!私がぁ!」

 

「アルトリア!!」

 

 

 

自分自身に怒りを向けようとするアルトリアを、抱き締めることでやめさせる。そのまま優しく、背中を叩いた。

 

 

 

「アルトリア、君は良くやってくれたよ。見ず知らずの農民の話を聞いて、周りの反対を押しきってでも協力してくれたじゃないか。それに身分が下のボクとも対等に話してくれた。友達にもなってくれたじゃないか。だから感謝はしても、恨んだりなんかしないよ」

 

「で、でも!」

 

「でももないよ。人はいずれ死ぬものだ。ボクの場合があのときだっただけだよ。

それでもまだ謝るなら───ボクは君を許そう。

それとアルトリア、ボクは君にまた会えて、とても嬉しいよ」

 

「えふぃ……えふぃぃなぁー……!」

 

 

 

泣きじゃくるアルトリアを強く抱きしめ、髪をすくように頭を撫でる。

 

 

───こうして、アルトリアの抱えていた問題が解決した。

 

その友愛溢れる光景に、白いジャンヌとマシュは涙ぐむ。

 

 

───そして蚊帳の外なサーヴァント達と立香は、居心地悪そうに突っ立っていた。




しまった!全然進んでないじゃん!?


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拗らせたアルトリア

すいません遅くなりました。
レポートがなかなか終わらなくて……


「あーー……、そろそろ良いかな?」

 

「あ、はい。アルトリア、ほら」

 

「ん~?んん───………」

 

 

 

先に口を開いたのはカルデアの男性陣、藤丸立香だった。このままでは埒が明かないと判断したのだろう。

 

先程の会話でエフィーナを比較的良心的なサーヴァントだと判断したから、とりあえず促して二人を離そうとしたのだろう。

 

これにはエフィーナも賛成だった。自分でやらかした事とは言え、アルトリアが動かなくて困っていたのだ。

立香の意見は渡りに船だった。

 

 

 

「ごねないのアルトリア。ボクらは一応敵同士なんだから、離れないと」

 

「───エフィーナは私の事が嫌いになったのですか?」

 

「っ、い、いや。そんなわけないじゃないか!」

 

 

 

少し力を込めて引き離そうとすると、胸元に顔を埋めていたアルトリアが顔を上げる。

目には涙が溜まり、今にも溢れんばかりだ。

 

正直たまったもんじゃない。

 

 

 

「……エフィーナは私の事が好きですか?」

 

「ん?好きに決まってるじゃないか(likeの方)」

 

「そうですか……好きですか……!(loveの方)」

 

 

 

お互いの認識が致命的に違うことに気づかないまま、好きと答えてしまうエフィーナ。

それを見たエミヤは『ダメだこりゃ』と頭を抱えた。

 

 

 

「ちょっとアンタ!いつまでくっついてるのよ!離れなさい‼エフィ……そいつは私のものよ!」

 

「嫌です。エフィーナは私のもの。それはずっと前から決まってたことなんですから!」

 

「いやボク物じゃないし。──って!こらアルトリア!何処に手ぇ突っ込んでんの!」

 

 

 

アルトリアを引き剥がす為オルタが肩を掴んで引っ張るも、アルトリアは離れるのを拒絶。エフィーナの作業服の隙間から手を差し入れてさらに絡まる。

 

 

 

「い、い、か、ら、離、れ、な、さ、い!!」

 

「嫌、で、す!意地でも離れ────スンスン………エフィーナ!何故黒いジャンヌから貴女のかぼちゃクッキーの臭いがするのですか!?浮気ですか?浮気なんですか!?」

 

「なに言ってん────ひゃい!?こ、こら!背筋を撫でるな!そんなとこ擦るなぁ!」

 

 

 

作業服の下で手が暴れ、思わず変な声が口からこぼれる。しかしそれを聞いてもアルトリアは手を止めない。それどころか、どんどん服を剥ぎ取ろうとしていた。

 

 

 

「あぁもう!エフィーナ!全力で抵抗なさい!」

 

「え!?まさかの二画目ぇ!?アルトリア!

逃げ──野菜真拳奥義──『蓮根バルカン』!」

 

「くぅっ!?」

 

 

 

オルタの令呪の大盤振る舞いに面食らい、慌てて逃がそうとするが時すでに遅く、攻撃が開始された。

 

左手に装着された蓮根から放たれる弾丸。アルトリアはそれを持ち前の直感とエクスカリバーによってかわしていく。

そのまま、カルデア組の方へと押しやられていった。

 

 

 

「ふう……これで静かになったわ。

───こんにちは私。何か言おうと思ったのだけど、忘れちゃったわ。だから取り敢えず、貴女達を殺すことにします」

 

「………貴女が竜の魔女ですね。

貴女の目的は一体………」

 

「今から死ぬ貴女達に教えるわけないでしょう。

さあ!やりなさい、サーヴァントども!」

 

 

 

号令を掛けられ、動き始めるバーサーク・サーヴァント達。各自相手を見つけて戦い始め────

 

 

 

「風王鉄槌!」

 

「うわあぁぁぁ………──」

 

 

 

デオンはアルトリアの一撃をもってぶっ飛ばされた。

 

相手がいなくなったアルトリアは、直ぐ様オルタを目指して駆け出す。だがそれを護衛であるエフィーナが許すはずがない。弾丸によってアルトリアは立ち往生だ。

 

 

 

「何故邪魔をするのですか、エフィーナ!」

 

「いやだからボク達敵同士だからね?それにボクはマスターの護衛だし」

 

「え?そいつがエフィーナのマスターなんですか!?

なんて羨まけしからん!」

 

 

 

エクスカリバーを振り回して納得いかないと駄々をこねるアルトリア。それを見かねた保護者エミヤが干将・莫耶を投影しながらこちらに来る。

 

 

 

「セイバー、彼女は私が相手をする。君は黒いジャンヌを」

 

「──わかりました。ここは任せます」

 

 

 

いつもの凛々しい顔に戻ったアルトリアは、名残惜しそうにしながらもオルタの方に向かっていった。

 

 

 

「……まったく、今日は驚いてばかりだな」

 

「それはボクも同感です。………まさかアルトリアがあそこまで拗らせているとは思わなかった………。

もともと物事を引きずるとこはあったんだけど」

 

「あれはそれとは違う気がするが………。

まあ、あえて助言するなら、垂らし込むのもほどほどにしたまえと言うことだな……」

 

 

 

どこか青い顔のプレイボーイエミヤ。十中八九過去に何かあったのだろう、プレイボーイも楽じゃないらしい。死ねばいいのに。

 

 

 

「では──行くぞ!」

 

「うわっと!──野菜真拳奥義──

 

 

──『ダブル蓮根バルカン』!」

 

 

 

エミヤの攻撃を横に跳んで避け、右腕にもう一門の蓮根バルカンを出現させる。

 

 

 

「食材をそのように扱うのは、あまり感心しないな!」

 

「これがボクの戦い方なんだよ!」

 

 

 

銃弾をばら蒔くも、それを平然と避けられ距離を詰められる。蓮根バルカンを振り回して攻撃を弾くが、速さは干将・莫耶の方が上回る。エフィーナは劣勢に立たされていた。

 

 

 

「このぉ!」

 

「貰ったぞ!」

 

「あ、やべっ!?」

 

 

 

エフィーナの野菜真拳で出す物は一部の例外を除いて基本的に脆い。蓮根バルカンは攻撃に耐えかね、砕けてしまった。

 

首目掛けてつき出される干将・莫耶。このままでは首を断たれてしまうだろう。

だが、彼女とてサーヴァントの端くれ。この程度で殺られるほど弱くはなかった。

 

 

 

「首領パッチソォォォォドッ!」

 

「なんだと!?」

 

 

 

エフィーナの手に現れた一本のネギ。それは干将・莫耶を弾くどころか粉砕し、剣圧でエミヤを退かせる。

 

直ぐ様投影しようとするも、その前に、エフィーナの手には新たな物が現れていた。

 

 

 

「──野菜真拳奥義──

 

 

──『刺し穿つ死棘の竹(タケ・ボルク)』!」

 

「それは野菜じゃないぞ!?」

 

「こまけぇことは、いいんだよ!」

 

 

 

エミヤに向けて投げられたタケ・ボルク。

この武器はゲイ・ボルクを模した物だが、因果逆転は流石に出来ない。

 

その代わりに───ジェットエンジンを搭載していた。

 

 

 

「ぐぅ!?ぬおおおぉォォォォ─…………」

 

 

 

投影した干将・莫耶を交差させ、タケ・ボルクを受け止める。だが、ジェットエンジンの馬力には勝てず、タケ・ボルクに押されて戦場からフェードアウトしていった。

 

 

 

「───さてと」

 

 

 

辺りを見渡しオルタを探すと、少し離れたところに黒炎が上がる。アルトリアとかなり激しくやりあっているのだろう。

廃墟同然の町が瓦礫の山と化していた。

 

 

 

「はぁぁぁーー!!」

 

「グッ!?」

 

 

 

アルトリアの上段からの攻撃を、オルタは旗で受け止める。筋力値はオルタの方が上だが、今のアルトリアは魔力放出によって同等かそれ以上のはず。

 

現に今の二人はお互いにギリギリの状態だった。

 

 

 

「こっ──のぉ!いいから倒れなさいよ‼」

 

「嫌です!私は!エフィーナと添い遂げるまでは!絶対に死ねません!」

 

「はぁ!?アンタ女でしょ!なに言ってんのよ!」

 

「愛を前にしたら、性別なんて関係ありません!」

 

「本人が了承してないでしょうが!」

 

 

 

 

─────なんか凄い会話してんな。

 

 

 

 

「くっ!」

 

「そこです!風王──鉄槌!!」

 

 

「──野菜真拳奥義──『なめこ壁』!」

 

 

 

アルトリアの放つ不可視の一撃を、突如生えてきたなめこが見当違いの方向に受け流す。

『なめこ壁』は野菜真拳の中では防御系の技に入り、打撃系と炎系にはめっぽう強い技だ。

 

 

 

「マスター、ここは引きましょう。些か分が悪いです」

 

「チッ……仕方ありません、ここはそうしましょう」

 

 

 

呼び出しに応じ集結したワイバーン達の幾らかを足止めに回し、ボク達は残った方に乗る。

 

 

 

「ま、待ちなさい!」

 

「ふん!次こそは貴女を焼き殺して上げるわ、覚悟することね!」

 

「マスター、それじゃこっちが負け犬です」

 

「うっさい!」

 

 

 

ワイバーンがボク達を乗せて飛び立ち、一気に高度をあげていく。

 

 

 

…………去り際に「せめてエフィーナだけでもぉぉぉ……」とか聞こえたような気がしたが、気のせいということにしておこう。



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腹が減っては戦はできぬ それは万国共通です

すいません遅くなりました。
バレンタインイベントで忙しくて………。でもおかげで山の翁が最終再臨出来ました!後は聖杯を捧げるだけです。


「ああもう!ムカつく、ムカつく、ムカつく!!」

 

「まあまあ、落ち着いてマスター。カリカリしてると可愛い顔が台無しですよ」

 

「─ッ~~~!? う、煩いわね!いいから早く準備しなさい!」

 

「はいはい、ちょっと待っててくださいね」

 

 

 

ラ・シャリテの町から逃げ「逃げてないわよ!あれは戦術的撤退よ!」いやそれ同じだから。ただオブラートに包んだだけだから。

というかなんでボクが思ったことがわかったんだ?

 

 

 

「貴女はすぐ顔に出るからわかりやすいのよ」

 

「え゛っ」

 

 

 

し、知らなかった………。

 

 

ま、まぁそれはともかく。

 

ラ・シャリテの町から戦術的撤退をしたボク達はオルレアンへ帰還。そこで新たな戦力としてアサシンのサンソンとバーサーカーのランスロットを召喚。再度突撃しようと逸るオルタを諌め、取り敢えず夕飯にしようとして今に至る。

ランスロット卿を召喚した際にいろいろあって、思わずノックアウトしてしまったが、それについては割愛しよう。

 

 

───あのスケベ野郎、狂化されても本質は全く変わってなかった。

 

 

 

「よしっと、できましたよ!」

 

 

 

テーブルの上に魔術仕様のガスコンロ擬きをセットし、そこに土鍋を乗せて火に掛ける。

今日のご飯は簡単にチーズフォンデュにしてみた。つける具はボクお手製のパンとジャガイモ等の根菜類、それとソーセージだ。

 

 

 

「はふっ、はふっ」

 

「美味しい?マスター」

 

「はふっ───…コクン」

 

「そう、よかった」

 

 

 

チーズを絡めたパンを食べて顔を綻ばせるオルタを眺めながら、ボクもソーセージをチーズにつける。

 

うん、今日のもうまくいッ──

 

 

 

「あちゅっ!?」

 

 

 

───ぬおっ!?肉汁が‼

 

 

 

「み、みじゅ───!」

 

「なにやってんのよ……」

 

 

 

ソーセージの思わぬ反撃に悶えるボクに、呆れながらも水を注いでくれるオルタ。

 

あぁ助かった……。サーヴァントになっても痛いものは痛いんだな──。

 

 

 

「はむっ──そういえば貴女。ランスロットと知り合いみたいだったけど」

 

「ふー、ふー、──ええまぁ。ボクの出身はブリテンでして、いろいろあってアルトリア達……アーサー王や円卓の騎士と知り合ったんです」

 

「アーサー王………。あのアホ毛?」

 

「くせ毛って言ってください。あちちっ」

 

「へぇーーー!あれが王だなんて、世も末ね!」

 

「前はまともだったんだけど、ボクが死んだ後にいろいろあったらしくて。ちょっと拗らせちゃったみたいなんですよね…………」

 

「…………あれはちょっとじゃないと思うわ。はっきり言って病気よ」

 

「はぁ──なんであぁなっちゃったかなぁ。ボクはただご飯作ったり、相談に乗ったり、慰めたり、一緒に寝たりしただけなのに……」

 

「はむ──ひょんらへへぇあひへひゃらはへらっへひひょふひゅう(そんだけ世話してたら誰だって依存す─)

 

 

 

 

 

 

 

 

────んぐっ!?貴女今なんて!?」

 

 

「え? 慰めたり……」

 

「違う違う!その後よ‼何!?一緒に寝たって!?」

 

「あ、はい。なんか寝つきが悪かったらしくて……」

 

 

 

あれはアルトリアと仲良くなって暫くたった頃だった。

その日は城に呼ばれて、来賓室のベッドでベディさんから借りた本を読んでたら寝間着姿のアルトリアが枕を抱えて部屋に入ってきたんだ。

 

 

 

 

 

》》》》》》》》》》》》

 

 

 

 

 

「ん? どうしたのアルトリア?こんな夜更けに」

 

「…………………………」

 

「アルトリア?」

 

「……………………んっ!」

 

「うわっ!?ちょっ!」

 

「……………………んん──」

 

「え? 撫でて欲しいの?──よしよし」

 

「んん~~~~♪」

 

「まったく、甘えん坊だな………満足したら部屋に戻りなよ~~」

 

 

 

 

 

》》》》》》》》》》》》

 

 

 

 

 

「────ってことがあって、気が付いたら寝落ちして一緒に夜を過ごしたって訳です」

 

「───────…」

 

「あの時は大変だったな。アグラヴェイン卿の胃に穴が開きかけたりして────」

 

「その話はもういいです!するなら他の話をしなさい!」

 

「え?もういいんですか? じゃあ代わりにマッシュポテト製造器────間違えた。ガウェイン卿の話でも………」

 

 

 

円卓組の武勇伝を話しながらも食事を続ける。

この日の夜はゆっくりと、穏やかに過ぎていった。

 

 

 

「────それでポテトサラダを教えたんですが、今度はポテトサラダしか作らなくなって…しかもだんだん手抜きになっていって、挙げ句の果てには生のまま……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、朝食を済ませたボクは城の中庭、臨時発着場へ来ていた。

 

時間軸は第7節の序盤辺りか。原作と変わりがなければこれから向かうのは都市リヨンのはず。たしかそこにはすまないさんこと、ジークフリートがいる筈だ

 

あれ? てことはファヴニールに乗ることになるのか?

 

 

 

「………チラッ」

 

「グルルルッ」

 

 

 

………オルタはまだ来てないし、今のうちにファヴニールのご機嫌取りでもしとこう。

 

 

 

 

 

 

「…………エフィーナ、何をしてるの?」

 

「あっマスター、おはようございます。今ちょっとファヴニールに挨拶を「グルルルッ‼」あぁごめんごめん!今あげるから。───しっかし意外だねお前、まさか野菜もいける口とは」

 

 

 

ボクの宝具『農民の食料庫』から野菜を取り出していると、城からサンソンとランスロットを連れたオルタが、首をかしげながら出てきた。

 

 

 

「───まあいいです、行きますよ。サンソンとランスロットはワイバーンに、エフィーナは私と供にファヴニールに乗りなさい」

 

「了解です。 よろしくね、ファヴニール」

 

「グォォォ」

 

「……………ファヴニールって、なつくものだったかしら───」

 

「誠意を込めて賄賂を送れば何とかなるものです」

 

 

 

ボクとオルタが乗り込んだところでファヴニールが飛び立ち、それにワイバーン達が続いていく。

 

 

 

「マスター、戦況は今どんな感じなんですか?」

 

「昨日の夜にマルタが殺られたわ。デオンからの情報によると奴等はリヨンに向かったらしい。リヨンにはファントムを配置してるからそこで足止めさせて………」

 

「ファヴニールで一網打尽、てとこですか」

 

「そういうことよ」

 

「そうですか────それじゃあ朝御飯にしましょう!サンドウィッチを作ってきたんですよ!」

 

「────っ! あ、貴女!ピクニックに行く訳じゃないのよ!」

 

「あれ、じゃあいらないんですか?」

 

「食べるわよ!」

 

 

 

籠から取り出した玉子サンドをオルタがひったくって口に運ぶ。

 

 

 

「─────……」

 

 

 

顰めっ面をしてはいるけど口許は緩んでいる。

どうやら気に入ってくれたみたいだ。

 

 

 

「ふっふっふ……、待ってなさいアホ毛王。このファヴニールで消し炭にしてくれるわ!」

 

 

 

声高らかに悪役笑いをして悦に浸るオルタ。アルトリアの事はアホ毛王で固定なのか聞きたいが、微笑ましいので放っておこう。

 

あ、だけどこれは言っとかないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、ほっぺにマヨネーズついてますよ」




しまった…今回もあんまし進んでない……


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椎茸って小さい頃は美味しさが解らないけど、成長すると解るようになるよね

遅くなってすみません。個人的な都合で書く時間が取れなかったり、納得のいく出来に成らなくてなかなか投稿できませんでした。
これから先も投稿が空くことがあるかもしれませんが、そのときはゆっくりまっていてください。


サンドウィッチを食べ終えた所でリヨンの町に到着したボク達。そのときには既に足止め役のファントムがやられていたが、そんなに時間がたっていないことからまだ町にいると考え、ランスロット達を使って探させることに。

 

町の端の方に向かったランスロット達とは反対の方に行くと、ジークフリートが潜伏していたと思われる城から出てきたジャンヌ、マシュ、アルトリア、ぐだ男の四人とばったり遭遇。

 

そして今、その四人と命懸けの鬼ごっこをしているのだが…………。

 

 

 

(どー考えても罠だよな、これ)

 

 

 

アルトリア達は積極的な攻撃はせず、こちらの攻撃の迎撃と回避に努めながら、建物の密集している方へと逃げていく。それに対してオルタはファヴニールを歩かせ、障害物をなぎ倒して追い詰めてから仕留める気なのだろう。

オルタの嗜虐的な表情が何よりも物語っていた。

 

一応注意はしてみたけど──────

 

 

 

「あっはははははははははははは!無様!ほんっとに無様ね!まるで地を這う虫けらのよう!生きてて恥ずかしくないのかしら?ねえファーマー?」

 

「あ──……それについてはノーコメントで。

それよりマスター、彼らはボク達を誘い込むつもりみたいですよ?一応警戒して上昇した方が………」

 

「何ビビってるのよ。奴等はどうせ何もできやしないわ。………ふふふ、愚かな私は焼き殺して、アホ毛王はあのアホ毛を引き抜いてからバーベキューにしてやる……!」

 

 

 

──────このとおり、まったく聞く耳を持ってくれない。頭の中には雪辱を果たすことで一杯みたいだ。

 

 

 

「っ!──野菜真拳奥義──『ラウンド椎茸』!」

 

 

 

飛来した矢を椎茸でできた円盾で叩き落とす。『ラウンド椎茸』が破られることは滅多にないが、相手はエミヤだ。『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』を使われたらたまったもんじゃない。

 

 

 

「そらぁ!」

 

 

 

今度は少し間を置いて飛んできた赤黒い剣を弾き飛ばす。だがその剣は落ちること無く、軌跡を描きながら再度飛んでくる。

 

これはたしか──『赤原猟犬 (フルンディング)』だったか。射手が無事なら対象をどこまでも追いかけ続けるというめちゃくちゃ厄介な代物だったはず。

しかもこいつ、どうやらボクを狙っているらしい。くそっ、なんて面倒な。

 

こうなったらボクも、それ相応の仕返しをするとしよう。

 

 

 

「マスター!耳塞いどいてくださいよ!」

 

「ははは───ん?何か言っ「──野菜真拳奥義──!」え、ちょ」

 

「『ラディッシュランチャー』ぁぁ!!」

 

 

 

どこからか引っ張り出した四連装ロケットランチャーを肩に担いで標的を見据え、腰に力を入れて衝撃に備える。そして引き金をひいた。

 

轟音と供に射出された4発のロケット弾───ではなくラディッシュは、1発はフルンディングに直撃して勢いを殺し、次の2発目はフルンディングの横から当たって爆発し破壊。

残る二発はエミヤを目指して飛んでいき、空中で射ぬかれ、爆発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター、こっちはいつでもいけるぜ』

 

「わかった! みんな、ポイントまで走るぞ!」

 

「了解です!」

 

「殿は私が務めます!」

 

 

 

エフィーナの読み通り、カルデア組は町に罠を張っていた。

 

リヨンの町。この町に竜殺しがいると聞いたカルデア組の面々は、戦力として加えるためにこの町に訪れた。

 

途中、ファントム・ジ・オペラと遭遇、妨害を受けるが、アルトリア、マシュ、ジャンヌ、立香の四人と残りの四人で双手に別れ、迅速に動くことで、原作よりも早く竜殺しであるジークフリートを仲間に加えることに成功。

 

治療を施して、仮契約をしている最中に超極大の生体反応を感知したと知らせを受けた一行は、最初は撤退しようとするも、接近してくるものがドラゴンとわかった所でキャスター・クー・フーリンがある案を思いつく。

 

それは、リヨンの町を使った大規模なトラップだ。

 

内容はいたってシンプル。

まず、オルタが降りてきたところで囮がわざと見つかる。

次にオルタから逃げつつ、身動きが取れにくく、なおかつルーンを仕込みやすい住宅の密集地帯に誘導。

 

そしてクー・フーリンがルーンで創った偽の袋小路に逃げ込み、オルタが油断したところで仕込みを発動させドラゴンの動きを止める。

 

最後は令呪によってブーストされたジークフリートの宝具で仕留める、という作戦だ。

 

 

始めは聞いた誰もが『いくらなんでも引っ掛からないだろ』と考えていた。これに引っ掛かるのはどこぞの慢心しまくった金ぴかぐらいだと。

 

 

 

………オルタには効果は抜群だった。

 

 

 

しかも邪魔になると懸念していた二騎のサーヴァントをわざわざ遠くにやってくれて。もしこの二騎がいた場合はアルトリアとエミヤが相手をする予定だったが、その必要がなくなり、お陰で作戦に全力を注ぐことができるようになったのだった。

 

 

 

「ここだ!」

 

 

 

目的地へと滑り込む立香達。ルーンで作られたダミーの壁を背に体制を整える。そこに地響きをたてながらファヴニールが迫る。その頭の上では、何故か涙目のオルタを慰めるファーマーの姿が。

どうやらファーマーが、フルンディングを迎撃した際の轟音でオルタを驚かせてしまい、その事を謝っているらしい。それを見たアルトリアは、静かに歯を噛み締めた。

 

 

 

「………マスター、今すぐジークフリートと役を変わりたいのですが」

 

「え」

 

『なに言ってんだセイバー。ダメに決まってんだろ』

 

 

 

アルトリアの提案をクー・フーリンがにべもなく切り捨てる。アルトリアが渋々引き下がった所で、何かを話し終えた(なお、聞いていたのはジャンヌだけだった模様)オルタがファヴニールに指示を下した。

 

 

 

「ファヴニールっ!あの人の話を聞かない連中を燃やしてやりなさい‼」

 

「ガアアアアァ!!!」

 

 

 

口を大きく開き、こみ上げる業火を吐こうとするファヴニール。だがそれは、突如表れた木の根によって邪魔された。

 

ファヴニールの丁度顎の下辺りから生えた根が顎をかち上げ、強引に閉じると同時に口を縛り上げる。

慌てふためくファヴニールに、更なる根が迫る。

 

 

 

「やっぱこうなるよね……」

 

「上昇なさい、ファヴニール!」

 

「おっと!そうはさせねえよぉ!」

 

 

 

翼を広げて一気に飛び立とうとするファヴニールの上空に表れたルーン文字。そこから重圧が放たれ、一時的だがファヴニールに腹を付かせた。

 

そこに殺到する木の根達。ファヴニールはあっという間に四肢と翼、尻尾を縛り上げられるのだった。

 

 

 

「グゥゥゥゥ……」

 

「くそっ!こんなもの、直ぐに焼き払って──」

 

 

 

焦るオルタに、更に追い討ちをかける声が響き渡る。

それは、ファヴニールにとっての死刑宣告だった。

 

 

 

「令呪をもって命ずる───

 

───ジークフリートよ!宝具を使え!」

 

「了解した、マスター。────久しぶりだな、ファヴニール。再びこの世に帰ってきたのなら、今度もまた、俺がお前をあの世に送ろう………!」

 

 

 

ダミーの壁が消え去ると、そこには剣を構えるジークフリートの姿が。とたんに怯え出すファヴニールに、オルタはこの剣士の正体に気付く。

 

 

 

「まずい……!逃げ──」

 

「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!」

 

 

 

無慈悲にも、放たれる半円状の黄昏の波。ここにいる誰もが決まったと思った。

 

 

 

 

──────だが……

 

 

 

 

「──野菜真拳進化系奥義──‼」

 

 

 

 

それは、イレギュラーによって防がれた。

 

 

 

 

「『熾天覆う七枚の椎茸(ロー・シイタケ)』!!!」

 

 

 

ファヴニールの鼻先に、オルタを庇うように立つエフィーナは、腕につけた『ラウンド椎茸』を掲げる。

 

そして現れる、飾り切りされた光り輝く七枚の椎茸。

そこにぶつかる『幻想大剣・天魔失墜』。当たった瞬間に三枚の椎茸が砕け散る。

だがそこから先は、罅は入っても、砕けること無く受け止め続ける。

 

やがて『幻想大剣・天魔失墜』が消え、砂埃が晴れると、そこには残り四枚となった『熾天覆う七つの椎茸』を構えるエフィーナと、無傷のファヴニールとオルタが。

 

 

大英雄の剣を、農民は防ぎきったのだった。

 



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冷奴っておかずが足りないときに重宝するよね。ただし豆腐ハンバーグ、テメーはダメだ。

「ふぅ…………」

 

 

 

よし、止められたな。

令呪ブーストの掛かったバルムンクを止められるかは博打だったけど、何とかなって良かった。

 

 

だけど、切り札の一つを使うことになるとは思わなかったな。

 

 

『熾天覆う七枚の椎茸』はボクの防御系の奥義の中ではトップクラスの性能を誇るが、代償としてボクの宝具『農民の食料庫』に貯蔵してある菌類を消費する。

 

一枚二枚なら大して痛手じゃないけど、今回は最大展開の七枚だ。消費量も洒落にならない。次に出せるのはギリギリ一枚って所だろう。戻ったら何処かで栽培しないと。

 

 

(問題は帰れるかどうか………)

 

 

脳きn……負けず嫌いの節があるオルタが二度目の撤退を許してくれるかどうかだけど───

 

 

 

「マスター、状況も悪いですし、ここは撤退したほうが…………」

 

「────────」

 

「マスター?」

 

「────────────きゅう…」

 

「………………」

 

 

 

背中に何か柔らかいものがぶつかる。横目で様子を見てみると、そこには目を回して気絶したオルタが寄りかかっていた。

 

………バルムンクの迫力に耐えきれなかったのか?変なところでヘタレだな……。

 

 

まあこうなったら仕方ない。オルタには悪いけど、勝手に撤退するとしよう。

 

 

 

「ファヴニール、今から根っこを斬るから、そしたら城に向かって飛んでくれないか?報酬として何か旨いものでも作るからさ。なあ、どうだ?」

 

「…………グルル」

 

「よっし、交渉成立だ」

 

 

 

オルタを背負い、さつま芋の蔓で縛って固定する。

これで落っこちる心配は無くなったな。

 

それじゃあ次は……………

 

 

 

「『約束された勝利の剣』を封じる!

──野菜真拳奥義──『ダイナミック差し入れ』!さあ召し上がれ!」

 

 

 

おやつにと作っておいた特大どら焼きをアルトリアの頭上に放り投げる。詠唱中だったアルトリアは一瞬目を見開くもすぐに目をそらす。……が、本能には逆らえなかったらしい。ボクが瞬きをした瞬間、アルトリアはどら焼きに飛び付いていた。

 

 

 

「なにやってんだセイバー!?」

 

「ぐむぎゅ!?(しまった!?)」

 

 

 

予想通り、アルトリアなら食いつくと思っていた。

特大どら焼きならアルトリアでも食べきるのに30秒は掛かる。それだけあれば十分だ。

 

 

 

「──野菜真拳奥義──『木綿ドー召喚』!!」

 

 

 

空中に放られた木綿豆腐は自動的に分割、ブロックの一つ一つがグチュグチュと音をたてて膨張していく。

 

やがてそれは人型に、いや、コマンドーへと姿を変え、荒ぶる鷹のポーズで地面に降り立つ。

そうして出来たのは、全身真っ白無表情の筋肉モリモリマッチョマンの集団。どこから見ても異様な集団だった。

 

 

 

「作戦開始!」

 

 

 

ボクの号令で一斉に動き始める木綿ドー達。半数はチェーンソーでファヴニールに絡み付く根の伐採を、残りの半分はカルデア組の妨害をし始める。

 

 

最初の犠牲者はジークフリートだった。

膝をつく彼を囲み、瞬時に仕事を終わらせ次の獲物へ向かう。残されたのは、首から下を地面に埋められ晒し首にされ、顔に〈竜殺し(笑)〉と落書きされた無惨な姿のジークフリート。

彼は虚ろな瞳で「すまない………竜殺し(笑)ですまない………」と呟き続けていた。

 

 

次の獲物はジャンヌだった。

果敢に木綿ドーに挑むも、旗を奪われ、それを自慢するように振り回される。

 

 

 

「ああっ!?そ、それは私の旗です!か、返してください~~~!!」

 

 

 

旗を取り戻そうとぴょんぴょん跳ねるが、身長差があって届かない。目にうっすらと涙を浮かべたジャンヌは完全に弄ばれていた。

 

 

 

「まあ!これもくださるの?ふふっ、ありがとう♪」

 

「マリー!そんなもの後にし「これ持っててくださる?」ふがッ!?」

 

 

 

それを助けに行こうとするマリーとアマデウス。だがそれは花束を大量に渡しに来る一部の木綿ドーによって阻まれる。

 

満更でもないマリーもわざわざ一つずつお礼をいいながら受け取るためにいっこうに先に進めない。いつもは嗜めるアマデウスも荷物持ちにされて顔が見えない状態だ。

 

 

残りの面子も、アルトリアはいつのまにか席に着かされ、熱いお茶と大量のどら焼きによる接待で蕩けているし、クー・フーリンは顔面に激辛麻婆豆腐でノックアウト。

 

ぐだ男はなぜか木綿ドー達に胴上げされて顔面蒼白、口を押さえて助けを求め、マシュが「待っててください!今すぐバケツを持ってきます!」と、パニックのあまり謎の珍行動。

 

残るエミヤは一体の木綿ドーを『壊れた幻想』で粉々にしたのだが、「ふざけやがって!!」とぶちギレた木綿ドー達にラディッシュランチャーによる集中爆撃の迎撃で手一杯。

 

 

─────一番の脅威であるファヴニールが放置されてるってどういうことなの。

 

しかも何このカオスな状況。やった張本人が言うのもなんだけどさ。

 

 

 

「─────!」

 

「よし、総員!足止めに専念‼ファヴニール、飛んで!」

 

「グルオオォオ!」

 

 

 

角にしがみついた所で飛び立ち、空中の魔法陣を砕いて一気に上昇。オルレアンへと進路を変えた。

 

 

 

◇=====◇

 

 

 

「───さて、色々と考えを改める必要が出てきたな………」

 

 

 

ボクはオルタの護衛としての仕事をしつつも、シナリオには出来る限り手を出さないつもりでいた。下手に手を出せばぐだ男達の成長を妨げたりするかもしれないならだ。

 

 

だけどもう、そんなことを言ってる場合じゃなくなってきた。

 

 

オルタは真っ正面から圧倒的な力で叩き潰すやり方を好む。この脳筋チックなやり方は原作では通用していた。だけどそれは相手の戦力がショボかったからだ。戦力が揃ってからは通用せず、ファヴニールを討ち取られてオルレアンに逃げ帰ることになっていたし。

 

 

別にここまではシナリオ通りだからいい。だけど今回は相手側の戦力が最初から整っていて、オルタは原作のような残虐さを無くしてギャグキャラと化している。

おまけに慢心もしているときた!

 

 

 

……まずい………非常にまずい…………………。

 

 

 

今回助かったのは彼らがボクを脅威と見なさずに油断したから助かっただけ。このままだと次の会合で確実に殺られるだろう。

 

 

それは非常に宜しくない。

もしオルタが倒され、聖杯が彼らの手に渡ればその地点で終了。シナリオよりも早く終わってしまうことで彼らが経験を積めず、現地サーヴァント達とも深い絆を結ぶことが出来なくなってしまう。そうなったら最悪だ。

採集……じゃない、最終決戦の時に支障が出るかもしれない。

 

 

それにだ。ここでの戦いや経験はオルタの成長にも影響がある。だからその辺でアッサリ殺られる訳にはいかないのだ。

 

 

 

「────戻ったらジル・ド・レェさんと相談しなきゃなぁ……」

 

「グルルルルルル……」

 

「ああ、その前に報酬だったね。ちゃんと用意するから」

 

 

 

帰ったら忙しくなるな。

ジル・ド・レェとの今後の相談にファヴニールのご飯の用意。ああそれと茸の栽培もしとかないと。オルタに頼んで城の一角を使わせてもらおう。



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(勝手に)大改造ビフォーアフター!~肥料の計算ミスったら殴られても文句言えないと思う~

すみません、遅くなりました!
新生活が始まってなかなか筆跡時間がとれずにいまして……。
これからも不定期更新が続くと思います。
それでもよければ、待ってやってください。


リヨンの町の戦いから3日。カルデア組はオルタが本拠地としているオルレアンへ向けて、町を巡って仲間を増やしつつ、順調に進軍していた。

 

 

彼らがこの3日間に倒した敵対サーヴァントは4騎。

 

アルトリアを見て突撃をかまして開幕カリバーされたランスロット。

 

マリーとアマデウスによって倒されたサンソン。

 

諜報活動中にヘマをしてバレたデオン。

 

そしてアーチャーなのに白兵戦を仕掛けたアタランテ。

 

 

幾多の戦いを乗り越えた一行は、とうとうオルレアンを視認出来る位置にたどり着いたのだが…………。

 

 

 

「……………ねぇジャンヌ。一応聞くけど、アレがオルレアンなんだよね………?」

 

「…………場所はあっています」

 

 

 

オルレアンは原型を留めないほどに変わり果てていた。

 

上空に大量のワイバーンが飛び交うのはまだわかる。

問題は城と、その周辺だ。

立香は道すがら、ジャンヌにオルレアンの城について話を聞いていた。

 

 

彼女曰く「とても立派で凄いです!」らしい。

 

 

……………その話を思い出した立香は再度城を見る。

 

 

 

「……ジャンヌの感性って、変わってるね」

 

「な!? ち、違います! 私が見た時の城はあんな風では無かったんです!信じてください!」

 

 

 

ジャンヌにあんな物呼ばわりされた城は、そう呼ばれてもおかしくない程に酷かった。

白かった壁は薄暗い紫に変わり、至るところに気持ち悪いナニかが張り付いたり、壁を突き破ったりしている。

 

エミヤが投影した望遠鏡で見てみれば、城には至るところに不気味な装飾が施されている。

 

ハッキリ言って悪趣味だった。

 

 

 

「ありゃ『工房』だな。どうやら敵さんにはキャスターがいるらしい。………ところでセイバー。お前さん、アレを知ってるみたいだな」

 

「…ええ、以前聖杯戦争で会ったことが」

 

 

 

突然クー・フーリンに話題を振られたアルトリアは、ぶっきらぼうにそう答える。

思い出すのは第四次聖杯戦争で戦ったあのキャスター。罪のない子供達に暴虐の限りを尽くし、なぜかこちらを他人と間違え、追いかけ回したあの男。

出来れば二度と会いたく無かった。

 

 

 

「まぁアレに関しちゃどうとでもなる。いざとなったら宝具で燃やしちまえばいいしな。………問題はその周りだな……。 なぁ聖女サマよう、彼処はもとからああだったのか?」

 

「い、いえ。私がいた頃はそうでは無かったはずですが…」

 

「ということは……」

 

「十中八九、彼女の仕業だろう。………覚悟した方がいいぞマスター」

 

 

クー・フーリンが指し示した先を見て立香とエミヤが顔をしかめる。

 

そこにあるのは、城を囲む広大な農場。

これがもとからある畑ならなんの問題も無かった。

 

だがつい最近処刑されたばかりのジャンヌが知らないと言うことは、この畑はジャンヌの没後に出来たもの。

その短期間にこの大規模な畑を作るような人物は、思い当たる中に一人しかいなかった。

 

 

 

「またアレと闘うと思うと気が参りますが、彼女に会えるなら、そのくらい乗り越えて見せましょう……。

あぁエフィーナ、今会いに行きますからね………!」

 

 

 

やる気満々のアルトリアがずんずん進み、その後ろには重たげな雰囲気の被害者達が続いていく。

そんなチグハグな光景を見たマリーと事情を知らないサーヴァント達は不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 

◇=====◇

 

 

 

「あーーもう! トロトロともどかしいわね! 早く来なさいよ!いっそワイバーンでもけしかけてやろうかしら!」

 

「ダメですよマスター。ワイバーンごときじゃ効果なんて出ません。どのみち彼らはここに来なきゃいけないんですから、今は待ちましょう」

 

「むぅ………わかったわよ………」

 

 

 

城の最深部、ジル・ド・レェの魔改造が施された玉座に座り、遠見の魔術が掛けられた水晶を覗くオルタを嗜める。

 

今はオルタに動かれては困る。

なんとか流れを元にとはいかなくても、せめて原作に沿って行くように調整したんだ。これ以上のズレはなにがなんでも回避したい。

 

 

 

「マスターはそこで座って、ポップコーンでも食べててください。味はどうします?甘いのとしょっぱいのがありますが」

 

「……甘いのがいいわ」

 

 

 

ポップコーン(キャラメル味)を食べて顔を綻ばせるオルタを横目に、この3日間の事を思い出す。

 

 

城に帰ったボクはオルタを部屋のベットに寝かせ、ジル・ド・レェのもとに今後について話に行った。

 

顰蹙をかって傀儡にされる事も覚悟していたが、意外なことにちゃんと話を聞いてくれた。……なんであの人いつもこうじゃないんだろうか。普通にしてればいい人なのに。

 

とりあえず話は通せたので、オルタに許可をもらいに行った。負けず嫌いなオルタがネックだったが、びっくりするくらいあっさり通った。

 

───何故か顔を真っ赤にして目を合わせてくれなかったが、もしかしてアレか?

寝かせたときにほっぺをムニムニしたのがバレたのか?

どんだけ初なんだよ可愛いなオイ。

 

 

 

「ところでエフィーナ。アレで本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「その辺は問題ありません。これだけの規模なら十分に仕事を果たしてくれますよ」

 

 

 

オルタがアレと言ったのは城を囲む広大な農場。ボクのスキル【農地作成:EX】で作成した、オルタを守護する為の防壁の一つだ。

 

【農地作成】はその名の通り農地を作るスキルだが、これには農地にした面積に比例して製作者のステータスを上昇させる効果がある。

 

ボクが農地にしたのはオルレアンの外周一帯。かなり苦労したが、そのぶんボクのステータスは大幅に上がっている。今のボクならアルトリアとの鍔迫り合いにも勝てるハズだ(たぶん……)。

 

 

もっとも、ボクのステータスアップは副産物にすぎない。そもそもボクのステータスを上げたところで大して役に立たないし

 

本当のメインは農場に仕掛けたトラップの数々だ。

 

殺傷性は高めだが、まあ死んだりはしないだろう。

狙いはカルデア組の消耗。サーヴァントが相手なら、このくらいがちょうどいい。

 

 

 

 

──────そう考えたのだけど…………。

 

 

 

 

(あ、あっれぇ~~!?)

 

 

 

遠見の水晶を覗き込む。

そこに映るのは、右ストレートを叩き込む大玉トマト。

地面を抉り進むキュウリ。弾け飛ぶとうもろこし。

そして、必死に応戦するカルデア組。

 

 

 

(よ、予想以上に苦戦してる……… もしかして、やり過ぎちゃった……!?)

 

 

 

流れを調整しようとしたボク自身が、とんでもないポカをやらかしていた。




流れが悪いですが、次で一気に進められるようにします。


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土地の広さを現すときに東京ドームで言われると分かりにくいけどヘクタールとかで言われると詳しくない人はちんぷんかんぷんだよね

三ヶ月も遅れて申し訳ありません。
学業やらイベントの集会やらで時間がとれませんでした………。
九月も九月で色々面倒事があり投稿が遅れてしまうかもしれませんが、待っていただけたら幸いです。


時折襲ってくるワイバーンをあしらいつつ、農園へと侵入したカルデア組。そんな彼らを、エフィーナが用意したトラップ──「野菜真拳複合奥義──『殺戮農園』(ジェノサイド・ファーム)」が出迎えた。

 

 

 

『殺戮農園』は専守防衛型の奥義だ。

 

この奥義の発動条件は3つ。

 

 

①野菜を引っこ抜くなどの破壊活動。

②許可なく野菜を採って食べる。

③野菜を盗む。

 

 

これらのどれかを行った時、『殺戮農園』は下手人達に牙を剥く。植えられた野菜達がそれぞれの奥義を発動させて下手人達を血祭りにあげるのだ。

 

 

…………と言っても、エフィーナは今回、これが発動することはないと思っていた。

 

理由は簡単、生前にアルトリアに話していたからだ。

アルトリアが忘れていなければ発動させることは無いだろう。そう高を括っていた。

 

 

 

アルトリアは話しを覚えていてくれたらしく、それを伝えることで、カルデア組は安全に進むことができていた。

 

 

順調な道のり。だけどそれは、トラブルメーカーこと、エリザベートの手によって砕かれた。

 

 

 

「ねえねえ子ジカ!これすっごく美味しいわよ!」

 

 

 

エリザベートが見せたのは真っ赤に色づいたかじりかけの大玉トマト。それを掲げて走りだし───

 

 

 

「ふぎゃ!?」

 

 

 

盛大にスッ転ぶ。

その際に持っていた槍が投げられ、トマトの株を切り裂いていく。

 

 

これで条件は整ってしまった。

 

 

まず発動したのは「──野菜真拳奥義──『トマト畑の悪夢』」だった。

 

周囲のトマトが絡み合って人の形になり、グローブになったトマトで殴りかかる。ひょろい見た目とは裏腹な強力な右ストレートにカルデア組は面食らう。

 

すぐに体制を立て直し、反撃に移ろうとするサーヴァント達。

それをぐだ男が制し、一気にここを抜けようと指示を出した。

 

 

 

突破力のあるアルトリアを先頭に、トマト畑を駆け抜ける。

 

トマト畑を抜けた先には、青々と茂る蔓の森、キュウリエリア。最後の一人が入った瞬間、このエリアの奥義が発動する。

 

 

「──野菜真拳奥義──『唐瓜発掘隊』」

 

 

育ちすぎたキュウリが地に落ち、そのまま地面を掘り進んでカルデア組に襲いかかる。

 

 

 

「これ以上ますたぁには手を出させません!『転身火生三昧』!」

 

 

 

しかしキュウリは届かない。

現れた炎の竜が、迫るキュウリを地面もろとも飲み込んでいく。水分量95%を誇るキュウリであっても、宝具の熱には耐えきれずに片っ端から塵となっていった。

 

 

『唐瓜発掘隊』は高速回転するキュウリが相手の体を抉り、内臓をズタズタにする奥義だ。

生身の人間は勿論、サーヴァントとて食らったら霊器に取り返しのつかないダメージを受けることになる。

 

だからこそ、宝具を使って危険を徹底的に排除したのはいい選択だと言えた。

 

 

だが、安心するにはまだ早い。

『殺戮農園』は既に次の手を打っている。

 

 

始めに『ソレ』に気がついたのはエミヤだった。

上空から迫る『ソレ』を撃破するために矢を射る。

矢は正確に目標を射抜き、破壊したが────

 

 

 

「なぁっ!?」

 

「おいおいなんだぁ!またニンジンか!?」

 

「…………いや、あれは───トウモロコシだ!!」

 

 

 

エミヤの上げた驚愕の声は、爆音によってかき消された。

 

 

「──野菜真拳奥義──『クラスタートウモロコシ』」

 

 

トウモロコシの芯から分離した粒が黄色い爆弾となり、畑を巻き込んで辺り一体を蹂躙していく。

奇しくもラ・シャリテの町と似た展開。ただ、ラ・シャリテの時とは違い、今回は攻撃を防ぎきっていた。

 

 

 

「──『熾天覆う七つの円環』(ロー・アイアス)

その程度の攻撃では、この盾は破れはしないぞ……!」

 

 

 

着弾の寸前で『熾天覆う七つの円環』を投影したエミヤはそう言いながら、挑発するようにニヒルに笑い─────すぐに顔をひきつらせた。

 

 

 

 

 

──────後にエミヤは語る。“余計なこと言わなきゃ良かった”と…………。

 

 

 

 

 

エミヤ達カルデア組の目に映ったのは、空を埋め尽くす大量のトウモロコシだった───。

 

 

 

◇=====◇

 

 

 

「どうしたのよエフィーナ?汗が凄いことになってるわよ」

 

「……いえ大丈夫です。なんの問題もありません」

 

 

 

オルタの問いに返事を返す。

表面上は冷静を装っているけど、頭の中は全然大丈夫じゃなかった。

 

遠見の水晶に写し出されるのは今もまだ続く爆撃シーン。爆煙から一瞬見えた『熾天覆う七つの円環』は残り3枚にまで削られていた。

それに対してトウモロコシはまだ7割ほど残っている。つまり、残弾はまだまだ沢山あるということだ。

このまま爆撃が続けば『熾天覆う七つの円環』はまずもたない。かといって、爆撃を止めようにも『殺戮農園』は発動したら最後、目標を消すまで止まらない。

 

完全にお手上げ。

ボクに残されたのは神頼みぐらいだった。

 

 

 

 

 

ま、必要なかったけど。

 

よくよく考えれば彼等には防御系宝具を使えるジャンヌとマシュがいるんだ。防がれるのは当然だろう。

まあ防がれたとはいえカルデア組を消耗させるという目的は達成出来た。しかも誰一人として欠けること無くだ。こんだけできたんだし上出来だと思うことにしよう。

 

 

 

 

 

それから事態は良い方に……いや、ボク今の立場からしたら悪い方にか。どんどん進んでいった。

『殺戮農園』を抜けた先に待ち構えるのはオルタを守る第二の防壁、ファヴニール。

オルタがこれで仕留めると自信満々に送り出したは良かったんだけど、その後が不味かった。

カルデア組の前に降り立ち、高らかに吠えようとしたところにエミヤの投影したありったけの閃光手榴弾と催涙弾が直撃。

なんの準備もしてなかったファヴニールは悶え苦しみ、その間にすまないさんとゲオルギウス以外のカルデア組にあっさりと突破されてしまった。

 

 

ファヴニール、まさかのいいとこなしだ。

 

 

だけどそれを責めるのは可哀想だ。抵抗できないのを良いことに足止め役の二人にボコボコにされているファヴニールを、ボクはこれ以上責められない。

だからせめて、敬礼ぐらいは送るとしよう。

 

 

………因みにオルタだが、閃光手榴弾の光を諸に食らって絶賛ムスカ状態だったりする。

だから遠見の水晶は離れて見ようって言ったのに。

 

 

 

「ううー……目がぁ……目がぁぁ………」

 

「大丈夫ですかマスター。ほら、治療するから手をどけてください」

 

 

 

まぶたに手を添えて治癒魔術を発動する。

これは昔あのくそったれに師事していたときに覚えた、ボクの使える数少ない魔術の一つだ。

あの常時お花畑に感謝するのは業腹だけど………そうだな、次会うときは去勢だけにしてやろう。

 

 

 

「はふぅぅ~~………」

 

「どうですかマスター。………ダメだこりゃ。聞こえてないや」

 

 

 

ここ最近オルタはずっと遠見の水晶を見てたからな。目が疲れてたんだろう。ボクのマッサージ効果がある治癒魔術が絶妙にヒットして蕩けちゃってる。

緊急事態に備えていろいろ仕込んどきたかったんだけど、今はオルタに膝枕をしてて動けそうにない。参ったな………。

 

 

とりあえず監視だけでも続けておこう。

 

カルデア組が今いるのは大広間。

そこに配備されているのはカーミラとヴラド三世の吸血鬼コンビだ。

それに対してカルデア組からは、カーミラにはエリザーベートと清姫のは虫類コンビが、ヴラド三世にはキャスニキが相手をするらしい。

 

ここら辺は想定の範囲内だな。

予想外なことと言えば、キャスニキがボクのタケ・ボルクを持っていることだろうか。

あれは今まで育ててきたタケ・ボルクの中では一番出来が良くて気に入ってたやつだ。あとで返してもらおう。

 

 

次の部屋にいるのはキャスター、ジル・ド・レェだ。

既に準備万端なのか、いつも以上に目をギョロギョロさせて待ち構えている。

 

 

そして扉が開かれ────いや、吹っ飛んできた。

 

 

ちょうど斜線軸にいたジル・ド・レェは扉の直撃を喰らい、ずたぼろになるもすぐに立ち上り『螺湮城教本』を開く。

 

そして今度はマリーの宝具『百合の王冠に栄光あれ』にはねられ、鯱スライディングをしながら壁に激突した。

 

 

 

「……………」

 

「んみゅ…?どうしたのエフィーナ?」

 

「……いえ、何でもないです」

 

 

 

こっそりと遠見の水晶の電源を落とす。

これはオルタには見せられない。いくらなんでも刺激が強すぎる。

 

………いやグロ的な方じゃなくてホラー的な方でだ。

 

首が逝っちゃいけない方になったまま血走った目で怒鳴り散らすジル・ド・レェを見た日には、トラウマ再来でポンコツになりかねない。ラストバトルを前にそれは困る。

 

 

 

「マスター、そろそろ準備しましょう。時期に彼らが来ます」

 

 

 

ジル・ド・レェは、多分だけどこっちには来れないだろう。つまりこの戦いがこの特異点でのラストバトルだ。

少しでも良い方向に行くよう、ボクも頑張るとしよう。

 




なんか今まで出た奥義の殆どが爆発系な気がする……。


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