邪龍の力を宿した白兎 (鬼塚虎吉)
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1話

僕、ベル・クラネルはある夢を見た。

 

その夢は決していい夢ではなかった、その夢の内容は邪龍と呼ばれる存在によって蹂躙されていく夢だった。

 

巨人のような姿をした邪龍が一撃を持ってして大地を裂き

 

三つ首の邪龍が千にも及ぶ魔法円(マジックサークル)から魔法を放ち

 

三つ目の暗黒の大蛇の様な邪龍は暗黒の大河によって全てを呑み込み

 

八つ首の蛇の様な邪龍は毒で空気すら侵し

 

巨大な木を背負った赤眼の邪龍は全ての攻撃を障壁で防ぎ

 

蛇のような龍はどす黒い瘴気を放ちながら目につく物を食い散らし

 

東洋の龍の姿をした邪龍は禁忌級の呪詛を孕んだ黒炎を吐き

 

全ての邪龍をも凌駕する邪龍はたった一回放っただけの火球だけで火の海と化した

 

僕はその夢を見て恐怖を覚えた、これが現実に起こるのではないのかという恐怖に。

 

その夢の事を神様に話すと、こう言ってくる。

 

「ベル君、それはもしかして太古の記憶なのかもしれないね。」

 

「太古の記憶ですか?でも、それだとなんで僕の夢の中に出てきたんでしょうか?」

 

「さぁ、僕にもそれは分からないよ。そうだ、念のために【ステイタス】更新でもしておくかい?」

 

「はい、お願いします!」

 

神様の言葉に対して僕は喜んで応じる。

 

そして、ステイタスの更新を行った結果、あるスキルが発生していた。

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)】というスキルだ。

 

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

 

これがスキルの内容だった。

 

「ベル君、これは一体どういう事だい?」

 

神様が腕を組みながら僕に問いかけてくる。

 

「僕にも分かりません、それに身体の中に邪龍がいるなんて驚きですよ!」

 

僕はそんな神様に対してそう言うと、神様はこう言ってくる。

 

「そうだね、ベル君!でも、このスキルは確実に希少(レア)スキルだ。ベル君、この

スキルに関しては誰にも口外しちゃダメだぜ!!」

神様は発現したスキルに関して口外しないことを強く言って来る。

 

「は、はい、分かりました!」

 

僕はそんな神様に気圧されてそう言った。

 

 

本拠(ホーム)でそんなやり取りをした後、僕はダンジョンにへと向かった。

 

一階層から三階層まで降りていくと、少々物足りなさを感じた僕は少しだけ下に降りて

いった。

 

四階層を飛ばして僕は五階層に行くと、そこで出会ってしまった。

 

中層にしか現れないlevel2の牛頭獣人のモンスターであるミノタウロス、に。

 

「ヴヴォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

「ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

僕はミノタウロスの咆哮(ハウル)を聞いて竦む足を何とか動かして逃げ出した。

 

だけど、相手は格上のミノタウロス。

 

僕が逃げたとしてもいずれは追いつかれてしまう。

 

だから、ある一つの決心をした。

 

ここで僕がミノタウロスを倒す、と。

 

そう考えた瞬間、後ろを振り返りミノタウロスにナイフで斬り込んだ。

 

バキッ!

 

嫌な金属音を立てながらナイフは根元から折れてしまった。

 

あぁ、こんな僕じゃダメなんだ…。

 

そう思いながら僕は諦めにも似た感情が押し寄せてきた。

 

そんな時、神様の泣き顔が浮かんだ。

 

こんな所で死んでたまるか、僕が死んだら神様が悲しむ。

 

神様が悲しむのは絶対に嫌だ!!

 

そう思った瞬間、頭の中から声が聞こえた。

 

{いいだろう、今回は俺の力を使わせてやる。}

 

その声が聞こえなくなると、急にミノタウロスの動きが遅くなった気がする。

 

いや、気のせいじゃない。

 

ミノタウロスの動きが遅くなっている、…これならイケる!!

 

僕は拳を握り締め、拳をミノタウロスの肉体に叩き込んだ。

 

「ヴヴォッ!?」

 

僕の拳を喰らったミノタウロスは呻き声を上げ、灰となって魔石とドロップアイテムのミノタウロスの角になった。

 

「はぁはぁっ、倒した?」

 

僕は息を切らしそう呟きながら周囲を確認をする。

 

そして、周囲にモンスターにいない事を確認すると魔石と角を回収してから座り込ん

だ。

 

「助かった~!!」

 

僕はそう声を漏らすと、あの時に聞こえてきた「声」について考える。

 

「{それにしても、あの時の声って誰の声だったんだろ?}」

 

そうやって考えていると、頭の上から声が聞こえてきた。

 

「あの、大丈夫・・・ですか?」

 

僕が顔を上げると、そこにいたのは金髪金目の剣士がいた。




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2話

今回は長めです。


僕はミノタウロスを倒した後に現れた金髪金目の女性に動揺を隠せなかった。

 

「あっ、大丈夫です・・・。あの・・・あなたは?」

 

僕は緊張をしながら問いかけると、女性はこう答える。

 

「私の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン、アイズでいいよ。君の名前は?」

 

金髪金目の女性ことアイズさんは自己紹介と共に僕の名前を聞いて来たため、僕はそれ

に答えた。

 

「ぼ、僕の名前はベル・クラネルと言います。好きに呼んでください。」

 

「うん、分かったよベル。」

 

僕が挨拶をすると、アイズさんは僕の名前を呼ぶ。

 

そんなアイズさんに僕はこう言った。

 

「あの、僕はもうダンジョンから帰りますのでさようなら。」

 

「うん、またね。」

 

僕はアイズさんにそう言って地上にへと戻っていくのだった。

 

 

 

アイズSIDE

 

私は驚きを隠せないでいた、それは何故かというと、level1の冒険者がlevel2のモ

ンスターであるミノタウロスを倒したから、それもたった一撃で。

 

私はあの兎のような男の子が気になった。

 

だから、話しかけてみた。

 

「あの、大丈夫・・・ですか?」

 

私がそう話しかけると、男の子は緊張気味にこう言って来る。

 

「あっ、大丈夫です・・・。あの・・・あなたは?」

 

そう言ってくる男の子に対して私はこう言った。

 

「私の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン、アイズでいいよ。君の名前は?」

 

私がそう自己紹介をすると男の子も自己紹介をしてくれた。

 

「ぼ、僕の名前はベル・クラネルと言います。好きに呼んでください、アイズさん。」

 

「うん、分かったよベル。」

 

ベルという名前の男の子はそう言ってくれた。

 

すると、ベルは私にこう言って来る。

 

「あの、アイズさん僕はもうダンジョンから帰りますのでさようなら。」

 

ベルの言葉に対して私はこう言った。

 

「うん、またね。」

 

私もベルにそう言って別れた後、後ろから同じファミリアの団員で狼人(ウェアウルフ)のベート・ローガさんがやってきた。

 

「おいアイズ、ミノタウロス片づけたんだったらサッサと戻るぞ!!」

 

そう言って来るベートさんにこう言った。

 

「ベートさん、最後の一匹は他の冒険者に倒されました。」

 

私がそう言うと、ベートさんは振り返ってこう言って来る。

 

「何、その冒険者もう戻っちまったのか?」

 

私がコクリと頷くと、ベートさんはこう言った。

 

「チッ、その冒険者の特徴教えろ。」

 

そう言ってくるベートさんに私はベルの特徴を教えた。

 

「白髪に赤目のガキか、本当にそいつで合ってんのか?」

 

そう問いかけてくるベートさんに対して私は再度首を縦に頷いた。

 

「なら、サッサと戻るぞ。」

 

ベートさんの言葉に同意をして私は遠征組と合流しに行くのだった。

 

 

 

地上に戻ってきた僕はいの一番に向かった先はギルドだ。

 

「あっ、ベル君。」

 

僕の名前を呼びながら近づいて来るのはハーフエルフの女性で、ギルド所属のエイナ・チュールさん、僕の専属アドバイザーだ。

 

「エイナさん、僕五階層に無事辿り着けました!!」

 

僕がそう言うと、エイナさんはこう言って来る。

 

「ベル君、私は君には三階層までしか言っちゃいけないって言ったよね?」

 

この時、僕はこう思った。

 

これは長い説教の時間だ、ということに。

 

「で、五階層まで下りた理由は何かあるの?」

 

約一時間に及んだお説教を終えると、エイナさんは純粋な疑問として聞いてきた。

 

「あのですね、怒りませんか?」

 

「場合によるかな。」

 

僕の言葉にそう言って来るエイナさんに対して意を決してこう言った。

 

「どんな形でもよかったから冒険がしたくなったからです。」

 

それを聞いたエイナさんは額に指を当てて溜息を吐き、こう言ってくる。

 

「ベル君、冒険者になる際にも言ったはずだけど、冒険者は冒険しちゃダメなんだよ。」

 

"冒険者は冒険をしてはいけない" 

 

一見、この言葉は矛盾をしているように聞こえるが、意味は安全に探索をすると言う意味を含んでいる。

 

これは冒険者になる者に最初に教えられる事であり、今ではこれが当たり前となっている。

 

「確かにそれはそうですけど・・・、僕はもっと強くなりたいんです。」

 

僕がそう言うと、エイナさんは呆れを含んだ溜息をついた。

 

「ベル君の気持ちは分かるけど、無茶をして万が一の事があったらどうするの?」

 

「それはそうですけど・・・。」

 

エイナさんの言う通りだ、僕に万が一のことがあったら神様が涙を流させてしまう。

 

それは絶対に嫌だ!! でも、僕はもっと強くなりたい、そう思ってしまった。

 

「大丈夫ですよ、エイナさん。僕は神様やエイナさんを悲しませることはしませんよ。」

 

僕が笑みを浮かべながらそう言うと、エイナさんは何故か顔を赤くさせていた。

 

「どうしたんですか、エイナさん?」

 

「べ、別に!!何でもないよ!!」

 

「えっ、でも、顔が赤いですよ?」

 

「き、気のせいだよ!?」

 

「そ、そうですか・・・。それじゃあ、僕は魔石を換金して帰りますね。」

 

「う、うん、気をつけてね。」

 

僕はエイナさんにそう言って魔石の換金にへと向かうのだった。

 

 

エイナSIDE

 

ベル君もといベル・クラネル、それが私の受け持っている担当冒険者。

 

彼は白髪と赤眼をしていて兎を彷彿させる愛らしい容姿をしていて、冒険者に向いてい

ないというのが第一印象だった。

 

そんな彼は冒険者という職業を簡単に考えていたため、その厳しさを私は一から十まで教えている。

 

私は多くの冒険者が帰らぬ人になった所を見てきた、だからこそ彼には無茶だけはしてほしくないと思ってる。

 

そうしたら、今日の昼頃にやってきたベル君の口から五階層まで言って来たと聞こえた。

 

私は何でそんな事をするのか、一時間ほど説教をした後ベル君にこう言った。

 

「で、五階層まで下りた理由は何かあるの?」

 

私がそう聞くと、ベル君はこう言って来る。

 

「あのですね、怒りませんか?」

 

「場合によるかな。」

 

ベル君の言葉に私はそう言った。

 

すると、ベル君はこう言って来る。

 

「どんな形でもよかったから冒険がしたくなったからです。」

 

それを聞いた私は思わず額に手を当ててしまった。

 

冒険がしたくなったから、それは自分の首を絞めてしまう原因にもなってしまう。

 

だから、私はいつもベル君だけじゃなく自分が担当している冒険者にはこう言っっている。

 

「ベル君、冒険者になる際にも言ったはずだけど、冒険者は冒険しちゃダメなんだよ。」

 

"冒険者は冒険をしてはいけない" 

 

一見、この言葉は矛盾をしているように聞こえるけど、それが意味しているのは安全に探索をすると言う意味を含んでいる。

 

これは冒険者になる者に最初に教えられる事であり、今ではこれが当たり前となっているため、私はそれを徹底的に言っている。

 

私がそう言うと、ベル君はこう言って来る。

 

「確かにそれはそうですけど・・・、僕はもっと強くなりたいんです。」

 

僕がそう言うと、エイナさんは呆れを含んだ溜息をついた。

 

「ベル君の気持ちは分かるけど、無茶をして万が一の事があったらどうするの?」

 

「それはそうですけど・・・。」

 

私の言葉にベル君は同意をしてくれているけど、何か言いたそうにしている。

 

すると、ベル君はフッと笑みを浮かべながらこう言って来た。

 

「大丈夫ですよ、エイナさん。僕は神様やエイナさんを悲しませることはしませんよ。」

 

そう言って来るベル君の顔はやけに大人びていて、綺麗だと思ってしまった。

 

「どうしたんですか、エイナさん?」

 

キョトンとした顔をしながら私の顔を覗き込んでくるベル君。

 

「べ、別に!!何でもないよ!!」

 

私は上ずった声で何とか言葉を返すと、ベル君はこう言って来る。

 

「えっ、でも、顔が赤いですよ?」

 

えっ、嘘!?私ってそんなに顔に出てたかな!?

 

「き、気のせいだよ!?」

 

私が誤魔化しにもならない言い訳まがいなことを言うと、ベル君はこう言って来る。

 

「そ、そうですか・・・。それじゃあ、僕は魔石を換金して帰りますね。」

 

ベル君の言葉を聞いて、私はこう言った。

 

「う、うん、気をつけてね。」

 

「はい!」

 

私の言葉にベル君は元気よく返事してから魔石の換金に向かった。

 

ベル君がいなくなった後、私は身体から力が抜けてしまうと、頭の中であの時にベル君の顔を思い出す。

 

『大丈夫ですよ、エイナさん。僕は神様やエイナさんを悲しませることはしませんよ。』

//////!! たぶん、今の私の顔さっきよりも赤い気がする。

 

「あの顔は反則すぎるよ・・・。」

 

ベル君の事を考えてそう言った私の呟きは誰にも届かずに静かに消えていった。




感想・指摘をお待ちしております。

追伸、タグは後でつけておきます。


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3話

今回は短めです。

それとスキルの内容一つ追加しました。


僕は魔石の換金を終えて本拠(ホーム)である廃教会にへと帰ってきた。

 

「今帰りました、神様。」

 

「おかえり、ベル君!!」

 

そう言って地下室の入り口を開くと、神様は僕に抱き着いてくるのでそっと優しく抱き留める。

 

「今日はやけに帰ってくるのが早いけど、何かあったのかい?」

 

そう、僕は普段ならこの時間よりも長めに潜っている。

 

「えぇ、実は中層からミノタウロスが上層にやってきたんです。」

 

「おいおい、それって一大事じゃないか!?」

 

僕がそう言うと、神様は驚きの声を上げながらそう言ってくる。

 

「大丈夫ですよ、()が倒してきましたから!!」

 

「そうかそうか、ベル君がミノタウロスを・・・。って、えええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

僕がそう言った瞬間、神様は大声を上げて絶叫した。

 

そりゃそうだよね、わずか半月のlevel1の冒険者がlevel2のミノタウロスを倒す事は絶対に不可能である。

 

「ベル君、よく勝てたね。」

 

神様は僕の肩をポンポンと軽く叩きながらそう言ってくるのに対して、僕はこう言った。

 

「そうなんですけど、何としても勝とうと思った時に声が聞こえてきたんです。」

 

僕の言葉に対して神様は首を傾げながらこう言って来る。

 

「声?他に誰かがいたのかい?」

 

神様の言葉に対して僕はそれを否定した後こう付け加えた。

 

「いえ、頭の中に直接語りかけてくる感じでした。」

 

僕の話を聞いて少し考えた後、神様はこう言って来る。

 

「・・・ベル君、【ステイタス】の更新をしようか。」

 

「あっ、はい!」

 

神様の更新という言葉に僕は同意をして上着を脱いで備え付けのベッドに横になった。

 

更新が始まると、神様がこう言って来る。

 

「ベル君、これが今の君の【ステイタス】だよ」

 

「えっ、神様この数値ってどういう事ですか?」

 

神様の言葉に対して、僕は共通語(コイネー)に翻訳された自分のステイタスを見てみると、そこに書かれていた数値は異常としか言えなかった。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9999、耐久SSS9966、器用SSS9762、敏捷SSS9865、魔力I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

スキルの内容が増えている上に基本アビリティの数値が異常な数値を叩きだしていた。

 

「ベル君、これはもしかしたら使って初めて効果が現れるのかもしれないよ。」

 

僕が目を見開きながら【ステイタス】の書かれた羊皮紙に目を向けていると、神様がそう言って来るのに対して僕はこう問いかける。

 

「使ったら効果が現れるってどういう事ですか、神様?」

 

そう言うと、神様はこう言って来る。

 

「それはね、最初にこのスキルを確認した時はその内容は一つだけだった。なのに、君がダンジョンに行ってミノタウロスを倒した際にスキルを使った。そして、それが僅かな時間であっても関係なく君の【ステイタス】に邪龍の【ステイタス】が書き写されているのは明らかに可笑しいよ(・・・・・・・・)。」

 

神様の言葉が僕に重くのしかかってくる。

 

だけど、確かにそうだ。

 

邪龍を身体に宿しているからってだけでその肉体と力と特性が使えるのはオカシイ。

 

ましてや、【ステイタス】を丸々書き写すなんて有り得無いのだから。

 

僕がそう思っていると、神様がこう言って来る。

 

「でもね、ベル君これに関してはしょうがないという面が強いんだ。」

 

「しょうがない、ですか・・・?」

 

神様の言葉に対して僕は首を傾げた。

 

「そうさ、だって自動的に書き写されるんじゃ諦めるしかないじゃないか。」

 

「それはそうですけど・・・。」

 

神様の言い分に、僕は頭の中では理解出来てはいても納得は出来ないでいる。

 

そんな僕に神様はこう言って来る。

 

「ベル君、気にせずに行こうじゃないか。これもまた、君の物語だよ。」

 

そう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「分かりました、神様。」

 

こうして、本日のダンジョン攻略はこれにて終了。

 

 

 




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4話

今回は長めです。


本拠で寝ていたハズなのに、何故か真っ暗な空間の中に立っていた。

 

「あれ、僕どうしてこんな所にいるんだろ?」

 

そう言いながら周囲を見渡すと、鱗のような壁があった。

 

「なんだろう、この壁?」

 

そう言いながら壁を触っていると、上の方から声が聞こえてきた。

 

{なんだぁ、このガキは?}

 

僕はおそるおそる上の方を見上げると、そこには夢に出てきた巨人のような邪龍がいた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

僕はそれを視認した瞬間、大声を上げて叫んだ。

 

{うるせぇな、お前ブッ殺し確定だ!!}

 

巨人の邪龍は拳を僕に向かって振り下ろしてくる。

 

僕はその拳を何とか紙一重に躱し、邪龍の攻撃は僕の立っていた場所に減り込んでいて、数十メートルのクレーターが出来ていた。

 

{へぇ、テメェみたいなガキが俺の攻撃を躱しやがるとはなぁ。}

 

巨人の邪龍はそう言いながらまた拳を僕に向かって振り下ろしてくる。

 

だけど、その拳は僕には届くことは無かった。

 

それは何故かというと、邪龍中でも最強の邪龍が巨人の邪龍の拳を受け止めていたからだ。

 

{クロウの旦那、どうして邪魔すんだよ!!}

 

巨人の邪龍はその邪龍の事をクロウと呼び、僕への攻撃を邪魔したのかと問いかける。

 

{今この人間を殺せば復活の時を長引かせるという事が分からないのか?}

 

クロウと呼ばれた邪龍は巨人の邪龍の言葉にそう言い返した。

 

{チッ!!}

 

クロウの言葉に巨人の邪龍は舌打ちをしながらクロウから拳を振りほどく。

 

すると、他の邪龍がその姿を現す。

 

{ギャハハハハ、グレンデル情けねぇな!}

{ダッセェ!}

{ザマァ!}

 

そう言って来るのは千の魔法円(マジックサークル)を操っていた三つ首の邪龍。

 

巨人の邪龍の事をグレンデルと呼び、挑発を交えた嘲笑の言葉を言っている。

 

それに対してグレンデルと呼ばれた巨人の邪龍は怒りを込めた声音でこう言って来る。

 

{アジ・ダハーカてめぇ、ぶっ殺されてぇのか!!}

 

そう言ってグレンデルはアジ・ダハーカと呼ばれる三つ首の邪龍に殴りかかっていく。

 

それに対してアジ・ダハーカもグレンデルに襲い掛かり、喧嘩を始める。

 

{はぁ、あの二匹は相変わらずの様ですね。}

 

そう言いながら嘆息しているのは強固な障壁を張る事の出来る背中に樹を背負った赤眼の邪龍。

 

{どうでもいんだなぁ、それよりおいらは腹が減ったど。}

 

興味無さげにそう言っているのはドス黒い瘴気を身に纏い目に入る物全てを食い散らしていた蛇のような邪龍。

 

{それよりも、我等をこの場に集めたのはどう言う訳なのだ?}

 

そう言ってくるのは全てを暗黒の大河で呑み込んでしまった三つ目の大蛇の様な邪龍。

 

{何も無ければ帰らせてもらうぞ。}

 

そう言っているのは自らが持つ猛毒によって空気すら侵した八つの蛇の頭をした邪龍。

 

{それなら俺も帰らせて貰おうか。}

 

八つの蛇の頭をした邪龍に賛同するかのように禁忌級の呪詛を孕んだ黒炎を吐いていた東洋の龍の姿をした邪龍がそう言った。

 

すると、グレンデルにクロウと呼ばれていた邪龍が口を開いた。

 

{今回、この場に呼び出したのは他でもない。俺達の宿主に俺達の事を教えるためだ。}

 

『!?』

 

その発言を耳にしたクロウ以外の邪龍の顔は驚愕に支配される。

 

喧嘩をしていた巨人の邪龍と三つ首の邪龍すら手を止めるほど。

 

すると、クロウと呼ばれる邪龍が僕の服の襟を器用に掴むと、邪龍達の前にへと出す。

 

そうして、僕の事を見た邪龍達は口を揃えてこう言った。

 

『弱すぎる。』

 

その一言は僕の心に酷く響いてきた。

 

そうだ、僕は弱い。

 

ミノタウロスの時だって邪龍の力を借りなければ倒す所か殺されていたんだ。

 

そう考えていると、クロウがこう言って来る。

 

{確かにこの宿主は弱い。だが、俺達にとっては重要な存在だ。}

 

え? 僕が邪龍達にとって重要な存在ってどういう事?

 

僕がそう疑問に思っていると、グレンデルがこう言って来る。

 

{で、このガキにどうしろって言うんだよ?}

 

グレンデルは僕に向かって指をさしながらそう言ってくるのに対して、クロウはこう言った。

 

{まずは・・・、自己紹介だな。}

 

{ハァ!?}

 

クロウの予想外の発言に対してグレンデルは拍子抜けの声を上げる。

 

そんなグレンデルを無視してクロウは僕に自己紹介をしてくる。

 

{人間の小憎、俺の名は三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)クロウ・クルワッハだ。}

 

クロウもとい、クロウ・クルワッハの自己紹介をした後邪龍達は次々と自分の名前を名乗っていく。

 

{いいか、俺の名前は魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)アジ・ダハーカだ。}

 

{俺の名は原初の晦冥龍(エクリプス・ドラゴン)アポプスだ。}

 

{私の名前は宝樹の護封龍(インソムニアック・ドラゴン)ラードゥンと申します。}

 

{おいらの名前は外法の死龍(アビス・レイジ・ドラゴン)ニーズヘッグだど。}

 

{我の名は霊妙を喰らう狂龍(ヴェノム・ブラッド・ドラゴン)八岐大蛇。}

 

{俺様は大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)グレンデル様だ。}

 

{俺は黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラだ。}

 

邪龍達の自己紹介が終わると、僕も自己紹介をした。

 

「僕は【ヘスティア・ファミリア】所属のベル・クラネルです。」

 

全ての者が自己紹介を終えると、クロウ・クルワッハがこう言って来る。

 

{ベル・クラネル、お前は弱い。}

 

クロウ・クルワッハの言葉に僕は身体を強張らせる。

 

すると、クロウ・クルワッハはこう言葉を続けてくる。

 

{お前は何を求めている?}

 

「出会いと英雄になる事!!」

 

その言葉に僕は即答した。

 

それを聞いたクロウ・クルワッハはこう言って来る。

 

{ならば、それを求め続けろ。貪欲なまでに、その目的を邪魔するものは全て滅ぼせ!!}

 

その言葉を聞いた僕は妙に納得をしていた。

 

それは何故かというと、子供みたいな考えかもしれないけど好き嫌いに似た感じだったからだ。

 

「うん、分かったよ。僕は目的を成就させるために邪龍()達を利用させてもらうよ。}

 

僕がそう言うと、クロウ・クルワッハがこう言って来る。

 

{ならば、もう時間だ。さらばだ。}

 

クロウ・クルワッハがそう言うと、僕の視界は真っ白に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと何故か上に神様が眠っていた。

 

「{えっ、ええっ、なんで神様僕の上に!?}」

 

僕は内心驚きながらも神様が起きないように身体を起こし、立ち上がる。

 

そして、防具を身に着けると眠っている神様に向かってこう言った。

 

「それじゃあ、神様ダンジョンに行ってきますね。」

 

僕はそう言って地下室の扉から外にへと出ていくのだった。

 

「・・・ベル君のいくじなし。むにゃむにゃ。」

 

それと同時に発せられた言葉は僕には届かなかった。

 

 

 

 

 

僕がダンジョンに向かって西のメインストリートを抜けようとしていると、後ろから誰かに声をかけられる。

 

「あの・・・、魔石(コレ)落としましたよ?」

 

後ろを振り向くと、そこには豆粒くらいの大きさの魔石を掌に乗せた鈍色髪ポニーテールの女の子がいた。

 

あれ、換金し忘れちゃったのかな?

 

そう考えながら魔石を受け取り、感謝の言葉を言う

 

「拾っていただいてありがとうございます、えっと・・・。」

 

「私はシル・フローヴァと言います。」

 

シルさんの自己紹介の後、続いて僕も自己紹介をする。

 

「僕はベル・クラネルと言います、よろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくおねがいしますね、ベルさん。」

 

僕の言葉の後に笑顔でそう言って来るシルさん、可愛いなと思っているとお腹がグゥ~ッという音が鳴った。

 

その瞬間、僕の顔は耳まで赤くなっただろう。

 

シルさんも僕のお腹の音を聞いてクスリと笑っていた。

 

何とも言えない恥ずかしさに苛まれていると、シルさんがサンドイッチの入ったバゲットを僕の前に差し出してくる。。

 

「ベルさん、これ良かったら食べてください。」

 

そう言ってバゲットを差し出してくるシルさんに対して僕はこう言った。

 

「い、いえ、そんな悪いですよ!!それに、これはシルさんのご飯なんじゃ・・・。」

 

「私は大丈夫ですから気にしないでください。」

 

僕の言葉を遮ってバゲットを渡してくるシルさんに敗けて受け取ると、こう言ってくる。

 

「ベルさん、お礼なら私が働いているお店で食事をしてもらうという事で。」

 

サンドイッチのお礼は自分が勤めている飲食店で食事をする事だった。

 

「シルさんの働いているお店で食事ですか?それくらいならいいですよ。」

 

僕がそう言うと、シルさんは笑顔になってこう言って来る。

 

「それじゃあ、よろしくお願いしますね!」

 

「はい、それじゃあまた後で。」

 

僕はそう言ってダンジョンにへと向かって走り出すのだった。

 

 

ダンジョンに潜ると、僕はゴブリンやコボルトなどのモンスターを一体一体確実に倒していき、魔石を回収していく。

 

そうして感じたことは明らかに動きが良くなっているということだ。

 

それはそうだ、邪龍の【ステイタス】が書き写されているんだから。

 

そう思いながら僕は一度深呼吸をすると、下層に続いている道を進んでいくのだった。

 

すると、気が付けば昨日ミノタウロスと遭遇した五階層まで来てしまっていた。

 

でも、僕は気になんてしていなかった。

 

何故なら、僕には夢があるからだ。

 

そう、物語に出て来るような"英雄"になりたいから冒険者になったんだ。

 

だから、僕は前に進む事を決めた。

 

六階層に着くと、天井から影の様なものが十つ程落ちてきた。

 

その正体はは新人殺しの異名を持つウォーシャドウだった。

 

僕はギルドで取り換えてもらったナイフを抜き放ち、構える。

 

左側から飛び掛かってくるウォーシャドウに対して僕は右足で蹴り飛ばして魔石にしていく。

 

そして、ナイフでウォーシャドウの最大の武器である三本の爪を敏捷のアビリティを限界まで使って躱しながらナイフで斬り付けたり、拳や蹴りといった体術で倒していく。

 

そうして倒し終えると、魔石やドロップアイテムを回収をしてから更に奥にへと進んでいき、到達階層を増やしていく。

 

気が付くと、僕は十階層に来ていた。

 

十階層、霧が常に立ち込めている階層でいつモンスターが現れるかが分からない場所でもある。

 

僕は一度深呼吸をしてから前にへと進んで行くと、インプやオークの群れが現れた。

 

オークは十階層に生えている木を引き抜くと武器の棍棒にへと変化する。

 

天然武器(ネイチャーウェポン)か、厄介だな・・・。

 

僕はそう思いながらナイフを構えながらモンスターの大群にへと突貫していく。

 

まず、すばしっこいインプから片づけることに決めた僕は体術だけでインプを魔石にした。

 

大型モンスターのオークはナイフで膝を斬りつけて態勢を崩した後、頭をナイフで突き刺したり、拳や蹴りで首をへし折って魔石にしていった。

 

そうして、バックパックの中が魔石やドロップアイテムで入り切らなくなると、地上にへと戻っていった。

 

 

 

 

 

今回のダンジョン探索で得た魔石とドロップアイテムを全て換金すると、59000ヴァリスという金額になっていた。

 

僕はそれに対して満足をしながらも、本拠にへと帰っていくのだった。

 

本拠に戻ると、神様に頼んでステイタスの更新をしてもらった。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9999、耐久SSS9969、器用SSS9773、敏捷SSS9872、魔力I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

【ステイタス】はあまり成長はしていなかった。

 

それもそうか、邪龍達のステイタスを書き写してあるんだから当然か、とそう思った。

 

「ベル君。」

 

そう考えていると、神様が声をかけてくる。

 

「何ですか、神様?」

 

僕がそう答えると、こう言って来る。

 

「実は今日はバイト仲間同士での集まりがあるから今日の晩御飯はベル君一人になってしまうという事を言いたくてね・・・。」

 

神様が気まずそうにそう言ってくるのに対して、僕はこう言った。

 

「大丈夫ですよ、神様。バイト仲間同士の集まりならしょうがないじゃないですか、ですから僕の事は気にせずに楽しんできて下さい。」

 

そう言って僕は今日稼いで来た金額の半分である27000ヴァリスを渡した。

 

それを見た神様は驚きながらこう言って来る。

 

「べ、ベル君、このお金は!?」

 

「今日ダンジョンで稼いで来たお金です、これを使ってください。遠慮は無用ですよ。」

 

神様の言葉に僕はそう言った。

 

「でも、このお金はベル君が必死になって稼いできたお金なんだぜ。そのお金は君自身が使うべきだ。」

 

その言葉に対して、僕はこう言った。

 

「それはそうですけど、自分だけというのは気が引けますので・・・。」

 

そう言いながら僕は神様の手を取った。

 

「べ、ベル君!?」

 

「ですから、神様遠慮なく使ってください。ね?」

 

「う、うん、分かったよベル君!」

 

僕の言葉に対して神様は同意をしてくれたのを聞いて、防具を脱いでこう言った。

 

「それじゃあ、僕も外で食べる事にしますので。」

 

それを聞いた神様は慌ててこう言って来る。

 

「ベル君、それじゃあこのお金も・・・。」

 

「それは神様の分ですよ。」

 

神様の言葉を遮り、僕はそう言って地下室から出ていき、「豊饒の女主人」にへと向かうのだった。




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5話

僕は本拠を出て真っ直ぐに西のメインストリートにある「豊饒の女主人」にへと来ていた。

 

「あっ、来てくれたんですね、ベルさん。」

 

そう言ってシルさんが出迎えてくれる。

 

「シルさん、約束通り来ました。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

僕がそう言うと、シルさんは笑顔でそう答えてくれる。

 

僕はシルさんの案内で店内に入ると、店内はいろんな種族が酒や料理に舌鼓を打っていった。

 

僕はそんな光景を目を向けながらシルさんに案内された席に座り、メニューを見てこう言った。

 

「それじゃあ、最初なんでパスタを一つ。」

 

「パスタですね、分かりました。」

 

僕が注文をすると、シルさんは厨房に注文を伝えに行った。

 

パスタが来るまでの間、僕は邪龍達の力に関して考えることにした。

 

「{クロウ・クルワッハ、アジ・ダハーカ、アポプス、グレンデル、ヴリトラ、ラードゥン、八岐大蛇、ニーズヘッグ、この八体の邪龍が僕の夢の中に出てきたのは何でなんだろう?何か理由でもあるのかな、それだとしてもなんで僕の体の中に宿っているのかが気になるな。}」

 

そう考えていると、僕の前に山のように盛られたパスタが置かれた。

 

「おまちどうさん、パスタだよ。」

 

そう言って来るのはいかにも女将さんって雰囲気を醸し出しているドワーフの女性がカウンターに立っていた。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

僕はそうお礼を言ってパスタの隣に置かれたフォークを手にして食べようとすると、女将さんがこう言って来る。

 

「私はここの店主のミア・グランドって言うんだ。アンタがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ。」

 

「あ、あははは・・・。」

 

ほっといてください、気にしてるんですから!!

 

そう心の中で言っていると、ミアさんの次の言葉に驚かされる。

 

「なんでもアタシ達に悲鳴を上げさせるほ大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってくれよぉ!」

 

「えっ!?」

 

ミアさんの発言に僕は心底驚いた、それもそのはず僕は見た目通りそんなに食べれる方ではないのでどこからそんな情報が来たのか・・・、そんなウソの情報を言う人が一人いた。

 

「シルさん?」

 

僕は隣にいたシルさんに声をかけると、シルさんはこう言ってくる。

 

「すみません、ベルさん。」

 

シルさんは瞳をウルウルさせ頬を赤く染めていた、可愛いなと思ってしまった。

 

「シルさん、すっごく可愛いですけどダメですよ。」

 

「テヘッ。」

 

まぁ、そんなこんな感じでパスタを食べながら会話を楽しんでいると、ある一団が店にやってきた。

 

その集団の中にアイズ・ヴァレンシュタインさんがいた。つまり、その集団は【ロキ・ファミリア】の人達だということがわかる。

 

僕は【ロキ・ファミリア】の人達から目を話してパスタを再び食べ始めるのだった。

 

すると、右側から話しかけられた。

 

「また会ったね、ベル。」

 

僕の隣にいつの間にやらアイズさんが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、遠征お疲れさん!今日は盛大に飲み食いするでー!!乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

私、アイズ・ヴァレンシュタインはファミリアの遠征の打ち上げに参加している。

 

すると、同じファミリアのベートさんがこう言ってくる。

 

「アイズ、お前の見たって白髪赤目の冒険者はギルドに確認したらlevel1の雑魚一人しかいなかったぞ。」

 

私はその言葉を受けてこう言った。

 

「でも、私は見ました。」

 

私がそう言うと、隣でお肉を頬張っていた女傑族(アマゾネス)の姉妹の妹のティオナ・ヒリュテがこう言ってくる。

 

「でもさ、ミノタウロスを一撃で倒すなんてさ凄くない?」

 

その言葉に姉のティオネ・ヒリュテも会話に参加してくる。

 

「そうね、ミノタウロスを一撃でそんな事をされると燃えて来るじゃない。」

 

ティオネの声音はアマゾネスとしての血が騒いでいるというのが感じとれる。

 

すると、そこへ団長のフィンがやってきてこう言ってくる。

 

「アイズ、君の眼から見てもその少年はlevel1に見えたのかい?」

 

そう言ってくるフィンに対して私はこう言った。

 

「うん、装備もギルドから支給されているものだったし。」

 

それを聞いたフィンは顎に手を添えて考え込み、こう言ってくる。

 

「アイズ、その少年の名前とか分かるかい?」

 

「ベル、ベル・クラネルって言ってた。」

 

フィンの問いかけに私が答えるとロキが反応してくる。

 

「ちょいまち、アイズたん。なんでそのベル・クラネルっちゅー奴の事名前呼びなん!?」

 

ロキの一言に全員の視線が私に向けられた。

 

「ベルが好きに呼んでいい言っていったから。」

 

『ぐはっ!?』

 

私の一言でロキを筆頭にベートさんとレフィーヤが吐血した。

 

「何でや、何でなんやアイズたん!?」

 

「俺なんて名前で呼ばれるのにどれだけかかったと思ってんだよ、しかもまださん付けだしよぉ。」

 

「私も勇気を出してやっと名前で呼んで貰える様になったのに、そのベルという人はあった時点でっておかしいですよ。」

 

三人が鬱蒼とした雰囲気を出しながらぶつぶつと小声で何かを言っている。

 

気になった私が何を言っているのか聞こうとしたらフィンがこう言ってくる。

 

「アイズ、あそこの三人は今はそっとしておくのがいい。それで、そのベル・クラネルの所属ファミリアは分かるかい?」

 

フィンの問いかけに私は首を横に振ると、こう言ってくる。

 

「それじゃあ、この店に入るかどうか分かるかい?」

 

そう言われて周囲を見てみると、カウンター席に白い髪が見えた。

 

「見つけた。」

 

そう言って私は白い髪の見えた方にへと歩いていくと、ベルがいた。

 

すると、ベルがこっちに気付かずにいたから私はこう言った。

 

「また会ったね、ベル。」

 

そう言った後にベルがこっちを向けて驚いた顔をしていた。




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6話

読者の皆様、本当にお久しぶりでございます。

言い訳にしかならないのですが、リアルが忙しすぎて投稿が遅れてしまって申し訳ありませんでした!!

次回は出来る限り早い投稿ができるよう心がけます。

これからも楽しんで読んでいただけたらと思います。




僕は今驚いている、何故かというとファミリアの人達と食事をしているはずのアイズさんが隣に立っているのだから。

 

「また会ったね、ベル。」

 

「そうですね。アイズさんもここには食事に?」

 

そう言って来るアイズさんに返答してから問いかけるとこう返ってくる。

 

「うん、ファミリアの遠征の打ち上げで。」

 

「そうなんですか。でも、いいのですか?勝手にいなくなったりして?」

 

アイズさんの言葉を聞いて、僕がそう言うとアイズさんの隣から一人の少年がやってきた。

 

いや、少年の姿をしてはいるが身に纏っている雰囲気は年長者のものだった。

 

「初めまして、ベル・クラネル。僕は【ロキ・ファミリア】団長フィン・ディムナだ、よろしく。」

 

「は、初めまして、ぼ僕は【ヘスティア・ファミリア】所属のベル・クラネルといいます、よろしくお願いしします。」

 

いきなりの最強派閥の一角(ロキ・ファミリア)フィン・ディムナ(トップ)との対面に動揺を隠せない。

 

「あはは、そんなに緊張しなくてもいいんだよ。」

 

フィンさんは笑みを浮かべながらそう言ってくるけど、僕はそれどころじゃなかった。

 

すると、フィンさんがこう言って来る。

 

「君が僕たちの不手際で中層から上がってきたミノタウロスの一匹を倒してくれたんだよね、ありがとう。」

 

その言葉に対して僕はこう言った。

 

「いえ、あれはたまたまですよ。アイズさん達があのミノタウロスを一撃で倒せるまでに弱らせてくれていたからじゃないんですか?」

 

僕がそう言うと、アイズさんがこう言って来る。

 

「ううん、私達だと弱らせる前に倒しちゃうからそれはないよ。」

 

アイズさんの言葉で僕の言葉は否定されてしまうが、それに納得している自分もいた。

 

アイズさんのlevelは5、level2のミノタウロスは一撃で倒してしまう。

 

そう考えていると、フィンさんがこう言って来る。

 

「ベル・クラネル、ミノタウロスの件で君にお礼をしたいと思っているんだ。」

 

「お礼なんてそんないいですよ!!」

 

フィンさんの言葉に僕は遠慮するとこう言って来る。

 

「いや、そんな訳にもいかないよ。君には感謝の意を示さないとね。」

 

「しかしですね、僕はただ必死でミノタウロスを倒しただけですのでお礼は気にしないでください。」

 

フィンさんの言葉に僕はそれでもそれを断ろうとするとアイズさんがこう言って来る。

 

「ベル、私もお礼がしたい。」

 

「えぇ、アイズさん!?」

 

「(おや、アイズがそんなことを言い出すなんて初めてだな。)」

 

アイズさんの一言に僕は驚きの声を上げ、フィンさんは顎に手を当てて何かを考えていた。

 

「ダメかな?」

 

そう言いながらコテンと首を傾げるアイズさんに僕はこう言った。

 

「アイズさん、ぼくは気にしてないのでお礼はいいです。」

 

そう言うと、アイズさんがこう聞いてくる。

 

「どうしてお礼がいらないの?」

 

「えっとですね、僕はあの時必死だっただけなのでお礼をされるほどの事はしていません。だから、お礼は結構です。」

 

僕は僕の気持ちをはっきりと伝えるとフィンさんが溜息を吐きながらこう言って来る。

 

「ふぅ、君の意志は固いようだね。仕方ない、今回はこちらが手を引こう。戻ろうか、アイズ。」

 

「・・・うん。」

 

そう言ってフィンさんはファミリアの所へと戻っていき、アイズさんも戻っていった。

 

それを見た後、僕は注文をしたあった料理を平らげて本拠にへと戻っていくのだった。




感想・指摘をお待ちしております!!


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7話

皆さま、お久しぶりです。長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

これからも楽しんで読んでもらえればいいなと思って書いていこうと思っています。

では、お楽しみください!!


【豊穣の女主人】を出た僕はまっすぐ本拠(ホーム)へ戻ると、荷物を持ってすぐにダンジョンにへと向かった。

 

理由はアイズさん達と話をしていて何かモヤモヤするものを感じるからだ。

 

この感情(きもち)が何なのかは分からないけど、今は思い切り暴れたい気分だ。

 

そう思いながら僕はダンジョンへと潜っていき、十階層までは立ち止まることなく突き進んでいく。

 

十階層まで来ると、僕は一度乱れた呼吸を整えながら拳を構えて戦闘態勢にへと切り替える。

 

すると、ダンジョンの広間の至る所からモンスターが生まれて来る。

 

これは確かエイナさんに教えてもらったモンスターの異常発生「怪物の宴(モンスター・パーティー)」と。

 

その数は百は超えていると思っていいと思う。

 

そんな事を考えている間に僕はモンスターの大群に取り囲まれてしまうが、この程度の数で僕の事を取り囲んだとは言えない。

 

襲い掛かって来るモンスターに対して拳と蹴りで応戦し、魔石にへと変えていく。

 

全てのモンスターを倒した後、魔石全部をバッグパックにへと入れ終わるとさらに下の階層に足を踏み入れていく。

 

そうして、モンスターを倒しながら辿り着いた階層が上層最終階層・十二階層にへとやってきたのだが、魔石とドロップアイテムでいっぱいになった為多少は気分が晴れた僕は換金を済ませて本拠にへと帰るのだった。

 

 

 

 

 

本拠に帰ってくると、神様が寝ずに僕の事を待っていたようだ。

 

「ずいぶん遅かったね、ベル君。」

 

そう言って来る神様は帰ってきた僕の格好を見てこう言って来る。

 

「もしかして、ダンジョンに行ってたのかい!?やっぱり、あのお金は大事だったんじゃないのかい!!」

 

慌てながらそう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「いえ、あのお金は僕の意思で神様に渡したんですよ。それに、ダンジョンに行っていたのはもっと別な理由ですから気にしないでください。」

 

僕がそう言うと、神様はこう言って来る。

 

「それならそれでいいけど、あんまり心配させないでくれよ。君が死んでしまったら僕は悲しいんだ。」

 

そう言って来る神様の顔は悲しみに満ちていた。

 

「大丈夫ですよ、神様。僕は絶対に神様を悲しませたりはしません。」

 

「嘘はついていないみたいだから君を信じるけどさ・・・。」

 

ふてくされた顔でそう言って来る神様。

 

そんな神様に僕はこう言った。

 

「それじゃあ少し早いですけど、朝ごはん食べませんか?」

 

僕がそう言うと、神様がこう言って来る。

 

「そうだね、それじゃあ朝ごはんにしようか。」

 

その言葉に従って僕と神様は朝ごはんを食べて、【ステイタス】の更新を行うことにした。

 

「あれ、おかしいな?」

 

更新を終えると、神様が僕の【ステイタス】を見ながら驚きの声を上げる。

 

「どうしたんですか、神様?」

 

頭に疑問符を浮かべながら僕は自分のステイタスが書き写されている羊皮紙を見る。

 

そこに書かれていた事を見て僕も驚きしかなかった。

 

ベル・クラネル

Level1

力SSS9999 耐久SSS9969 器用SSS9773 敏捷SSS9872 魔力I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

そう、羊皮紙に書き写された僕の【ステイタス】の基本アビリティの数値が全く変動していなかった。

 

ダンジョンでモンスターを倒して来たのにだ。

 

「ベル君、昨日何があったんだい?」

 

そう聞いてくる神様の声音は真剣そのものだった。

 

僕は神様に昨日あった事を全て話した。

 

すると、神様がこう言って来る。

 

「これはボクの予想なんだけど、ベル君心して聞くんだよ。」

 

「'は、はい!!」

 

真剣な表情をしながら神様は話し始める。

 

「君の【ステイタス】に発現したこのアビリティ急上昇に共通しているのは君の身体の中にいる邪龍達だと思うんだ。」

 

「しかも、昨日君が【ロキ・ファミリア】からお礼がしたいと言われたんだよね。」

 

「はい、そうです。」

 

「恐らくだけど、邪龍達はそれが気に入らなかったんじゃないかな。」

 

「えっ、どういう事ですか?」

 

神様の言うことに疑問符を浮かべると、神様がこう言葉を続けて来る。

 

「ベル君、どんな生き物になって誇りが存在しているんだよ。」

 

「えっ、どうしたんですか?急に。」

 

いきなりそんな事を言ってくる神様に戸惑っていると、さらに言葉を続けて来る。

 

「その誇りを汚されれば誰だって怒るよね。」

 

「はい。」

 

その言葉に同意すると、神様はこう言って来る。

 

「恐らくなんだけど、邪龍達にとってなにかが癇に障ったみたいだね。」

 

「そうみたいですね。でも、いったい何が邪龍達の癇に障ったんでしょうか?」

 

「それはボクにも分からないよ。」

 

そう話した後、僕は少しだけ仮眠をとるためにソファにへと寝転んだ。

 

疲れていたのか、意外にもすんなりと眠る事が出来た。

 

 

 

 

そして、僕はあの時と同じ真っ黒な空間の中に立っていた。

 

「何か用なの、クロウ・クルワッハ。」

 

僕がそうやって名前を呼ぶと、現れたのは金と黒が入り乱れた髪に右が金と左が黒のヘテロクロミアの双眸を持つ黒いコートを着込んだ長身の男。

 

「クロウ・クルワッハだよね、人間に化ける事が出来たんだ。」

 

「構えろ。」

 

僕がそう言っていると、クロウ・クルワッハは端的にそう言って来る。

 

その言葉に従って構えると、その瞬間クロウ・クルワッハが襲い掛かってくる。

 

「なっ!?いきなり何するんだ!!」

 

僕はその攻撃をギリギリ避けてそう言うと、クロウ・クルワッハはこう言って来る。

 

「お前にドラゴンの闘争(たたかい)を教えてやる。」

 

その言葉を最後にクロウ・クルワッハとの闘争(たたかい)が始まった。

 

容赦なく放たれるクロウ・クルワッハの拳を僕は受け止めようとするが、それは出来ずに殴り飛ばされてしまう。

 

殴り飛ばされた僕は地面に転がると、そのまま頭に向かって踵落としを仕掛けてくる。

 

とっさに腕を交差させて防ぐも僕の寝ている地面には陥没し亀裂が走る。

 

その陥没した瞬間に身体を捩じりながら抜け出すもまた地面に叩きつけられる。

 

叩きつけられた後に左足首をつかまれてまるで棒切れの様に振り回されてしまう。

 

振り回された後に地面に叩きつけられ、頭を押さえつけられて引きずり回されたりもした。

 

これはもう闘争(たたかい)ではなく蹂躙と言う言葉が相応しいだろうと思えた。

 

だけど、僕の心の中では別の感情が湧き上がってきた。

 

その感情の名前は苛立ち。

 

初めての事だった、苛立ちなんて今まで抱いた事が無いからだ。

 

「{おじいちゃんと暮らしていた時もこんな気持ち(こと)思わなかった(なかった)のに・・・。}」

 

そう思いながら攻撃を受け続ける僕はクロウ・クルワッハの事を見ると、何かが爆発した。

 

「オラァ!!」

 

反撃の初手として拳を放つが、クロウ・クルワッハには響いてはいなかった。

 

「この程度か。」

 

そう言って来るクロウ・クルワッハに僕はこう言った。

 

「まだまだ、これからだ!!」

 

そう言ってクロウ・クルワッハの腹に膝蹴りを放ち、いったん距離をとる。

 

すると、クロウ・クルワッハが一気に距離を詰めて来るのに対して僕は拳を構えて真っ向から殴り合うことにした。

 

その理由はあんまり考えてはいない、それは僕にも分からない。

 

でも、ここで引いてしまったらもう邪龍達(かれら)の前に立つ事は出来ないと思ったからだ。

 

僕とクロウ・クルワッハが同時に拳を放つ。

 

その放たれた拳同士がぶつかり合い、爆音と衝撃波が発生する。

 

「ほう、攻撃に関しては少しはマシにはなったか。」

 

そう言いながらぶつけ合っていた拳の力を緩めるクロウ・クルワッハ、その急激な脱力についていけず僕は体勢を崩してしまう。

 

「この程度の事で体勢を崩すな。」

 

「ゲホッ!?」

 

体勢を崩した直後にクロウ・クルワッハの蹴りをまともに受けてしまい、地面に倒れる。

 

が、すぐに身体を起こして立ちあがる。

 

「まだだ・・・!!」

 

そう言って僕は立ちあがるも、今まで蓄積されていた傷で足が震えてしまっている。

 

だけど、眼ではしっかりとクロウ・クルワッハの姿を捉えている。

 

「・・・まだ俺達の望む姿には程遠いな。」

 

そう言いながら僕の所に近づいて来るクロウ・クルワッハに対して拳を放つ。

 

「そんな温い(モノ)が当たるものか。」

 

そう言って僕の拳を避けると同時に踵落としを放ってくるが、腕で防御しようとするけど間に合わず頭に直撃してしまう。

 

「どこまで失望させるつもりだ、ベル・クラネル。貴様は英雄になると言っていたがこの様では犬死が関の山だ。諦めた方が楽だと思わないか。」

 

そう言って来るクロウ・クルワッハに対して僕は身体を起こし立ちあがる。

 

クロウ・クルワッハを見据えながらこう言った。

 

「黙れよ、クロウ・クルワッハ。」

 

そう言いながらクロウ・クルワッハを睨みながら更に言葉を続ける。

 

「お前に言われなくても分かってるんだよ。だからこそ、僕は僕の道を進む。邪魔をするならお前も滅ぼすぞ。」

 

ハッキリと殺意と怒りを込めてそう言い切ると、クロウ・クルワッハがこう言って来る。

 

「そうだ、その眼だ。だが、まだ足りんな。だが、今回はまぁこんな所だろう。」

 

そう言ってクロウ・クルワッハはどこかへと消えていく。

 

その瞬間、僕は強い光にへと包まれ意識を失った。

 

 

 

 

 

眼を覚ますと、最初に映った光景は心配そうに僕の事を見て来る神様だった。

 

「ベル君、目が覚めたんだね!!」

 

そう言いながら抱き着いて来る神様。

 

「か、神様どうしたんですか!?」

 

僕が戸惑いながらそう言うと、神様の後ろの方から声がその事に答える。

 

「仮眠を取っていた君がいきなり呻き始めたらしいぞ。」

 

その声の主はいつも僕が回復薬(ポーション)などでお世話になっている【ミアハ・ファミリア】主神・ミアハ様だった。

 

「ミアハ様、どうして此処に?」

 

「ヘスティアが寝ていたベルが苦しみ呻き声を上げていると慌てて私の所に駆け込んできたんだ。」

 

僕が質問をするとミアハ様がこう返答してくれた。

 

「そうだったんですか、ご迷惑おかけしてすみません。」

 

僕がそう言って頭を下げると、ミアハ様はこう言って来る。

 

「何、気にすることは無い。私は仕事でも来ているから気にしなくてもいい。」

 

そう言ってくれる事に感謝しているとミアハ様がこう言って来る。

 

「ベルよ、かなり魘されていたが・・・、大丈夫なのか?それに、尋常じゃないほどの汗の掻いていたぞ。」

 

そう言って来るミアハ様に対して僕はこう言った。

 

「はい、大丈夫です。むしろ、最高に調子がいいんですよ。」

 

嘘は言っていない、身体は本当に調子が良いからだ。

 

「・・・そうか。それなら良いのだが・・・。」

 

そう言ってミアハ様は持ってきていた鞄からある物を取り出した。

 

「べル、これをやろう。」

 

そう言われて差し出されたものを受け取って確認すると、それは回復薬(ポーション)1ケースだった。

 

「ミアハ様、これって・・・!?」

 

「なに、遠慮することは無いぞ。これは言うなれば先行投資のようなものなのだからな。」

 

「・・・投資・・・ですか?」

 

僕がそう繰り返すと、ミアハ様は頷きながらこう言って来る。

 

「そうだ、これからも青の薬舗(ウチ)を贔屓してもらうためにもな。」

 

それを聞いた僕は納得をしてこう言った。

 

「分かりました、ミアハ様。そういうことでしたら有り難く頂戴いたします。」

 

その言葉を聞いたミアハ様は満足そうに頷くと、こう言って来る。

 

「では、ベルの様子も別段可笑しくないようだから私はお暇させてもらうよ。もし、身体への違和感を感じたらすぐに来るのだぞ。」

 

「はい、分かりました。」

 

「ごめんよ、ミアハ。忙しいのに来てもらって。」

 

「なに、気にすることはないさ。私とヘスティアの仲ではないか。では、またな。」

 

ミアハ様はそう言って帰って行った。

 

それを見届けた僕と神様は隠し部屋に戻って話を始める。

 

「ベル君、さっき魘されていたのは邪龍が関わっているのかい?」

 

「はい、そうです。」

 

真剣な表情をしながらそう聞いてくる神様に対して僕は正直に答えた。

 

「やっぱりそうだったのかい、あの苦しみ方は普通じゃなかったと思っていたけど・・・。それで、何があったんだい?」

 

「実は、邪龍の一体と戦っていました。」

 

そう言い切ると、神様は大声を上げてこう言って来る。

 

「な、なんだって~~~!?ベル君、いったいどうしたそういう状況になるんだい!?」

 

そう捲し立てながら詰め寄ってくる神様に対して僕はこう言った。

 

「分かりませんけど、神様が言っていたじゃないですか。僕が邪龍達の癪に障る事をしたんじゃないかって。」

 

「確かに言ったけど、それで今回の事と繋がっているって言いたいのかい?」

 

「はい、少なくとも僕はそうなんじゃないかって思っています。」

 

そう言うと、神様は少し考え込み始める。

 

考えることを終えると、僕にこう言って来る。

 

「ベル君、【ステイタス】更新しようか。」

 

その言葉に従って僕は上着を脱いでうつ伏せにベッドにへと寝転ぶと、神様がその上にまたがって更新を始める。

 

「なんだい、これは・・・!?」

 

「今度はどうしたんですか、神様?」

 

更新を終えて羊皮紙に書き写された自分の【ステイタス】を見る。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9999 耐久SSS9998 器用SSS9836 敏捷SSS9927 魔法I0

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・ザ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される

 

龍の肉体(ドラゴン・ボディ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティ超高補正

・使役している邪龍の肉体と同じになる。

 

龍の誇り(ドラゴン・プライド)

・全アビリティ常時超高補正

邪龍(おもい)が続く限り効果持続

邪龍(おもい)の丈により効果向上

 

邪龍の狂気(イビルドラゴン・マッド)

損傷(ダメージ)を負うごとに力、敏捷のアビリティ超高補正

・瀕死時における力のアビリティ超高補正

・耐久、器用のアビリティ低下

 

龍の逆鱗(ドラゴン・ラース)

損傷(ダメージ)を負うたびに攻撃力上昇

憤怒(いかり)の丈により効果向上

憤怒(いかり)の丈により効果持続

 

書き写されていた【ステイタス(ソレ)】を見て動揺を隠せなかった。

 

さっきまでと打って変わって数値が急上昇し、スキルも四つも増えている。

 

「どうなってるの、これ?」

 

そう呟いた僕に対して神様がこう言って来る。

 

「原因は一つしかないよ、ベル君。」

 

「え?」

 

そう言って来る神様の方に顔を向けると、こう言って来る。

 

「君の言っていた邪龍の一体との戦いが今回のステイタス急上昇とスキル大量獲得の原因だ。」

 

「でも、それだけでこんな事になるんですか?」

 

神様の言葉に僕がそう問いかける。

 

すると、神様はこう言って来る。

 

「普通ならあり得ないけど、こうなってしまったらしょうがないよ。」

 

ハハッと乾いた笑みを浮かべながらそう言って来る神様は諦めの境地にいるようだ。

 

しかし、さっきとは打って変わって神様が真剣な表情でこう言って来る。

 

「いいかい、ベル君。改めて言わせてもらうけど、この事は絶対に誰にも知られてはいけない秘密だからね。」

 

そう言ってくぎを刺してくる神様に対して僕はこう言った。

 

「はい、それはわかってます。でも、念のために僕の専属アドバイザーのエイナさんにも知らせておいた方がいいじゃないですか?」

 

「確かにそうだけど、そのアドバイザー君は信用できるのかい?」

 

僕の言葉に理解しつつそう問いかけてくる神様に対してこう言った。

 

「はい、大丈夫です。」

 

僕がハッキリとそう言い切ると、神様はこう言って来る。

 

「分かったよ、ベル君の言葉を信じようじゃないか。」

 

そう言って神様が立ち上がり、言葉を続けて来る。

 

「ベル君、今日はゆっくり休まきゃだめだよ。」

 

「はい、分かりました。」

 

神様の言葉に従って僕はダンジョンに行かずに街にへと繰り出したのだった。




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第8話

お久しぶりです、前の投稿からかなりの日数が過ぎましたがまた投稿を再開することが出来ました。

楽しんで頂ければ幸いです。


ダンジョンに行かずに街へと繰り出した僕は最初にギルドに向かった。

 

理由はエイナさんを僕達側に引き込むためだ。

 

「エイナさん、ちょっといいですか?」

 

受付のカウンターで仕事をしていたエイナさんに声をかけるとこう言って来る。

 

「それじゃ、個室の待合室で待っててくれるかな?やっておかなきゃいけない仕事(モノ)多いけど、すぐに片付けるから。」

 

「分かりました。」

 

エイナさんの言葉に従って僕はギルドの通路の奥にある個室の待合室にへと入ってエイナさんを待つ。

 

しばらく待合室で待っていると、エイナさんがやって来る。

 

「ごめんね、ベル君!」

 

そう言って入ってくるエイナさんは更に言葉を続けて来る。

 

「悪いんだけど、もう少しだけ待ってもらえないかな?受け持ってる冒険者の人が聞きたい事があるって来ててね・・・。」

 

「構いませんよ、今日はダンジョンには行かないつもりですから。」

 

その言葉を聞いて僕がそう返答すると、エイナさんはこう言って来る。

 

「ホント!?じゃあ、できる限り早く来るからね!!」

 

そう言ってエイナさんは受付の方にへと戻っていった。

 

それを見送った後、僕は目を閉じる。

 

理由は寝る事ではなく、邪龍達との対話だ。

 

 

 

 

 

 

 

精神世界に僕がやってくると、出迎えてくれたのはアジ・ダハーカだった。

 

「よぉ、ベル。どうやらクロウ・クルワッハに扱かれたみてぇじゃねぇか。」

 

そう言って来るアジ・ダハーカに対して僕はこう言った。

 

「あぁ、お蔭で神様には心配をかけたけどね。」

 

そう言い返すと、アジ・ダハーカがこう言って来る。

 

「そういえば前から思っていたんだが、何でクロウ・クルワッハのしか使わねぇんだよ?」

 

そう言って来るアジ・ダハーカに対して僕は【ステイタス】事を言っているのだと理解してこう言った。

 

「それは単に使う機会がないってだけだよ。」

 

僕の言葉を聞いてアジ・ダハーカはこう言って来る。

 

「だったら、今度は俺のを使役してみろよ。」

 

アジ・ダハーカ(おまえ)のを?」

 

「あぁ、俺の【ステイタス】ってのは魔法特化だ。魔法でザコを手当たり次第にブッ飛ばすのは爽快だぜぇ~!!」

 

自分の【ステイタス(ちから)】を使う事を勧めて来るアジ・ダハーカに対してい僕はこう問いかける。

 

「何が目的だ?」

 

「アァン?ンナコト決まってんだろ、クロウ・クルワッハ(あのやろう)ばっかりに頼ってねぇで俺を使えって事だよぉ!!」

 

そうハッキリとそう言い切るアジ・ダハーカの言葉を聞いて僕はこう思った。

 

「{子供か!!}」

 

そう心の内で思いながらもアジ・ダハーカにこう言った。

 

「分かった、それじゃあ明日魔法の使い方を教えてくれよ。」

 

僕がそう言うと、アジ・ダハーカは不思議そうな顔をしてこう言って来る。

 

「なんで明日なんだよ?」

 

「今日は色々としなきゃいけない事がたくさんあるんだ。」

 

そう聞いて来るアジ・ダハーカに対してそう言うと、こう言って来る。

 

「ンナコト俺の知ったこっちゃねぇんだよ!!」

 

そう言いながら襲い掛かって来るアジ・ダハーカに対して僕は手を突きだしてこう言った。

 

「言う事を聞け、アジ・ダハーカ」

 

そう言った瞬間、アジ・ダハーカの動きを封じるように鎖が身体にへと絡みついていく。

 

「なんだこりゃ!?」

 

そう言いながら鎖を振り解こうと暴れまわるアジ・ダハーカだが、鎖は解ける所か益々身体に絡まっていき動きを制限されていく。

 

「話は終わりだ。」

 

僕はそう言って現実世界に意識を戻した。

 

 

 

 

 

現実世界に意識を戻すと、目の前にエイナさんが座っていた。

 

「エイナさん、起こしてくれても良かったんですよ。」

 

僕がそう言うと、エイナさんはこう言って来る。

 

「ゴメンね。でも、ぐっすり眠ってたから起こしちゃったら悪いかなと思ってさ。」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「それでもう仕事の方は落ち着いたんですか?」

 

「うん。それで話って何かな?」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕は最初にこう切り出した。

 

「そう言えば到達階層の更新してなかったなと思いまして・・・。」

 

僕がそう言うと、エイナさんがこう言って来る。

 

「そう言えばそうだったね、ベル君てばあの時以来全然ギルドに来なかったから心配してたんだよ。」

 

「いえ、ギルドの換金所には来てたんですけど。」

 

「それなら冒険者の報告書を纏めなきゃいけないから私の所にも来て欲しいだけど。」

 

「すみません、これからはそうします。」

 

その言葉にそう返答すると、エイナさんは満足したような顔でこう言って来る。

 

「それじゃあ、さっそく到達階層の更新を始めよっか。この何日かでどこまで行けるようになったの?」

 

「十二階層です。」

 

「えっ。」

 

エイナさんの問いかけに正直に返答すると、応接室内が静まり返った。

 

「ベル君、何かの間違いかな。私の耳には十二階層って聞こえたんだけど・・・。」

 

「はい、確かに十二階層って言いましたよ。」

 

そう聞き返してくるエイナさんに対して僕は即答する。

 

「何考えてるの、君はまだ冒険者になりたてなんだよ!それも十二階層って!?」

 

驚きのあまり言葉がうまく出てこないエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「その事でも話があるんですよ、エイナさん。」

 

「どういう事かちゃんと説明してくれるんだよね?」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「はい。」

 

そう言って僕は話し始めるのだった。

 

「邪龍が身体の中に・・・。そんな事聞いた事もないよ!!」

 

そう大声を出すエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「確かに信じられませんよね、こんな話。でも、僕が言っている事は全て本当なんですよ。」

 

冷静にそう言って来る僕の反応に対してエイナさんはこう言って来る。

 

「邪龍を身体に宿していて何か悪影響とかなかった?」

 

「全くとは言い難いですね、邪龍を宿している事で【ステイタス】は規格外なんで。」

 

「えっ、どういう事?」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「じゃあ、確認してみますか?」

 

そう言って上の服を脱ぎ捨てて背中に刻まれた恩恵をエイナさんに曝け出した。

 

「それじゃあ確認お願いします。」

 

「う、うん。」

 

そう言ってエイナさんは僕のステイタスを確認し始める。

 

「・・・なにこの【ステイタス】!?」

 

そう大声で驚きの声を上げるエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「これで分かってくれましたか、エイナさん。」

 

そう言いながら僕は服を着直すと、エイナさんがこう言って来る。

 

「うん、これを見ちゃったら信じるしかないよ。君の身体の中に邪龍が八体宿っていることを。」

 

そう言って来るエイナさんに対して僕はこう言った。

 

「エイナさん、僕があなたにステイタスを見せたのは僕のアドバイザーである事と誰にも口外しないと信頼しているからです。勿論、ステイタスを見せることは神様からも許可は得ているので安心してください。神様にもエイナさんは信頼出来るって伝えてありますから。」

 

「・・・ベル君」

 

エイナさんは頬を赤らめながら嬉しそうな表情を浮かべた後、顔を引き締めてこう言って来る。

 

「解ったよ、ベル君。」

 

そう僕の名前を言った後、エイナさんは続けてこう言って来る。

 

「ここで見たものは誰にも他言しない事を誓うよ。もし、ベル君の【ステイタス】が明るみになるような事があれば、私はそれ相応の責任として君に絶対服従を誓うよ。」

 

それを聞いた僕はこう言った。

 

「いやいや、エイナさん、絶対服従って・・・。」

 

この先を言おうとしたらエイナさんに遮られてしまった。

 

「ベル君、君も知っていると思うけど【ステイタス】っていうのは冒険者にとって一番知られてはいけないものなのね。・・・それを見せてくれたって事に対して私もそれ相応の覚悟をしないと対等じゃないもの。」

 

そう言って来るエイナさんの言葉に対して僕はこう言った。

 

「エイナさんがそんな事をするとは思いませんけど、分かりました。心に留めておきます。」

 

「ありがとう、ベル君。」

 

言葉の内に秘められているエイナさんの覚悟を感じて、僕の方が折れる事になってしまった。

 

「ありがとう、ベル君。」

 

そう言って来るエイナさんの言葉に疑問を覚えた僕はこう言った。

 

「急にどうしたんですか、エイナさん?」

 

僕がそう問いかけるとエイナさんはこう言って来る。

 

「だって、冒険者にとって【ステイタス】は自身と素の加護を与えた神のみしか知られてはいけないからだよ。

それなのに、ベル君は私に教えてくれたでしょ。」

 

「それはそうですけど・・・。」

 

同意をしながらも言葉を詰まらせてしまう僕にエイナさんがこう言って来る。

 

「だから、ベル君が私を頼ってくれたことが嬉しかったんだよ。」

 

そう言って来るエイナさんは綺麗だなと思った。

 

「お礼を言うのは僕の方ですよ、急にこんな突拍子のない話を信じてくれたんですから。」

 

そう言って僕はエイナさんの手を握り、こう言葉を続けた。

 

「僕のアドバイザーがエイナさんで良かったです。」

 

そう言いながら笑みを浮かべると、顏を赤面させているエイナさん。

 

「ベル君、そういうのは女性に言うのはあんまりオススメしないかな。」

 

「えっ、どうしてですか?」

 

エイナさんの言葉に意味が理解出来なかった僕は聞き返した。

 

「そ、それは・・・。」

 

エイナさんが言い淀んでいると、突然応接室の扉にノック音が響いた。

 

「エイナ~、そろそろ戻って来て~!!」

 

その助けを求めてくる声を聞いて、エイナさんがこう言って来る。

 

「ごめんね、ベル君もう仕事に戻らないといけないみたいなの。」

 

「分かりました、僕もそろそろ本拠(ホーム)に戻りますね。」

 

「うん、気をつけてね。」

 

「はい、それじゃあまた明日。」

 

「うん、また明日。」

 

応接室から出たエイナさんはすぐに仕事にへと戻っていき、僕も本拠(ホーム)へと帰っていった。




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第9話

今まで投稿が停止してしまってすみませんでした。


これからは出来る限り早く投稿できるように尽力いたしますので読者の皆様が楽しんで頂ければ幸いです。


昨日、エイナさんを引き込む事に成功した僕はダンジョンに潜る為に身体の調子を確認していた。

 

「よし、昨日一日休んだから体が軽いな。」

 

そう言いながら腕を回していると神様がこう言って来る。

 

「ベル君、君は病み上がりなんだからくれぐれも無茶だけはしないでくれよ。」

 

そう言って釘を刺してくる神様に僕はこう言った。

 

「神様、いつ何が起きるか分からない冒険者にそう言われて返答に困っちゃいますよ。」

 

「何を言っているんだい、ベル君!僕は君の主神だよ、眷属(こども)の事を大切に想うのは当然さ!!」

 

そう胸を張って言って来る神様に僕はこう言った。

 

「分かりました、出来る限りは善処しますね。」

 

「出来る限りじゃなくて絶対だよ!!」

 

「分かりました、神様。でも、少しだけ待ってください。」

 

「どうかしたのかい、ベル君?」

 

疑問符を浮かべながらそう聞いて来る神様に対して僕はこう言った。

 

「実は、昨日邪龍の一体から自分の【ステイタス】を使えと言われまして・・・。」

 

それを聞いた神様の顔は真剣みを帯びてこう言って来る。

 

「・・・邪龍からそう言って来たのかい?」

 

「はい。」

 

僕がそう返すと、神様はこう言って来る。

 

「分かった、それなら早速【ステイタス】更新をしようじゃないか。」

 

「はい!!」

 

神様の言葉に僕はそう言いながら上着を脱いでベッドにうつ伏せに寝る。

 

「それじゃあ、行くぜベル君。」

 

「はい、神様。」

 

そうして、僕は神様に【ステイタス】の更新をして貰ってクロウ・クルワッハからアジ・ダハーカの【ステイタス】にへと書き換えた。

 

「終わったぜ、ベル君。これが今の君の【ステイタス】だ。」

 

そうして神様に書き写してもらった羊皮紙にはこう書かれていた。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9995 耐久SSS9963 器用SSS9987 敏捷9989 魔力SSS9999

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・エイツイビルドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力と特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

龍の肉体(ドラゴン・ボディ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティ超高補正

・使役している邪龍の肉体と同じになる。

 

龍の誇り(ドラゴン・プライド)

・全アビリティ常時超高補正

邪龍(おもい)が続く限り効果持続

邪龍(おもい)の丈により効果向上

 

邪龍の狂気(イビルドラゴン・マッド)

損傷(ダメージ)を負うごとに力、敏捷のアビリティ超高補正

・瀕死時における力のアビリティ超高補正

・耐久、器用のアビリティ低下

 

龍の逆鱗(ドラゴン・ラース)

損傷(ダメージ)を負う度に攻撃力上昇

憤怒(いかり)が続く限り効果持続

憤怒(いかり)の丈により効果向上

 

これがアジ・ダハーカの【ステイタス】か・・・。

 

この【ステイタス】を見て神様がこう言って来る。

 

「どうやら今回の邪龍って言うのは魔法戦が得意みたいだね。」

 

「そうみたいですね。でも、魔法なんて【ステイタス】に記載されていませんよ。」

 

それを聞いた僕も神様に同意するも、アジ・ダハーカの魔法が記載されていない事に気づいた。

 

「あぁ、それは僕も疑問に思っている所さ。魔法を得意とする邪龍の魔法が何故出てこないのかね。」

 

「何か特別な条件でもあるってことでしょうか?」

 

「それは邪龍自身に聞いてみるしかないと思うよ。」

 

「分かりました、それじゃあ聞いてきますね。」

 

僕はベッドの上に座り込み、目を閉じて意識を内側に集中させる。

 

すると、意外にもすぐに精神世界に入る事が出来てアジ・ダハーカの前にやって来た。

 

『ん?おい、ベルお前いつになったらダンジョンってのに行くんだよ?こっちは待ちくたびれてんだぞ!!』

 

そう文句を言って来るアジ・ダハーカに僕は問いかける。

 

「ねぇ、さっき【ステイタス】を更新したんだけどお前の魔法が書かれてなかったんだけど?」

 

「ハァ?そんなの俺が知るかってんだ!!」

 

「あっそ、じゃあいいや。」

 

アジ・ダハーカの言葉を聞いて僕は精神世界から出ていった。

 

現実世界に戻ってくると、神様が僕の顔を覗き込んでいた。

 

「ベル君、どうだったんだい?」

 

「ダメですね、あっちも知らないみたいでした。」

 

「そうか、まぁダンジョンに行ってみて確認するしかないのかもしれないね。」

 

「そうですね。」

 

そう話しながら僕はダンジョンに行くための武装を整えていき、こう言った。

 

「それじゃあ、神様行ってきますね。」

 

「いってらっしゃい、ベル君!!」

 

こうして、僕はダンジョンにへと向かった。

 

 

 

 

「グォオオオオオオオオオ!!」

 

上層は今まで通り拳と蹴りでモンスターを倒し、魔石とドロップアイテムを回収していきながら攻略していく。

 

僕は遂にやって来た、ダンジョンの中層に。

 

初めて挑む中層に僕は一度深呼吸をして息を整え、そして中層への第一歩を踏み出した。

 

中層は上層よりも光が弱く視界が狭まっている。

 

だからこそ、もっと意識を周囲に向けなければならない。

 

一瞬でも隙を見せれば殺られる、そう思っていなければならない。

 

一定の広さがある大広間に出ると、ようやくモンスター達が姿を現した。

 

それはアルミラージという角を生やして石斧を持った兎のモンスターの大群が迫ってきた。

 

すると、頭の中からアジ・ダハーカが話しかけてくる。

 

『おい、ベル。丁度良い的が大量にやって来たぞ。魔法を使え。』

 

そう言って来るアジ・ダハーカに僕はこう言った。

 

「いやだから、【ステイタス】になかったのにどうやって魔法を使うんだよ!!」

 

俺の言葉に対してアジ・ダハーカはこう言って来る。

 

『チッ、しょうがねぇな。今回は俺が手ぇ貸してやるから感覚で覚えろ。』

 

そう言った後、僕の身体の奥底から何かが沸き上がってくる感覚に襲われた。

 

なんだこれ、もしかしてこれが魔力ってやつなのか?

 

疑問に思っている間もアルミラージの大群は迫って来ている。

 

僕は大群の目の前に立ち、手を向けてたった一言こう言った。

 

「【ヘル・フレア】」

 

その瞬間、僕の手から黒炎が噴き出しアルミラージの大群を飲み込み、魔石にへと変えたのだった。

 

「なに、この威力・・・。」

 

『なにを驚いてやがんだ、あんな程度じゃまだまだ俺に遠く及ばねぇよ。』

 

「えっ?」

 

アジ・ダハーカの言葉に僕は驚きを隠せなかった。

 

今の威力でアジ・ダハーカの魔法の威力に遠く及ばないってどれだけの威力なんだよ、思った。

 

『よし、この調子でもっと下に行くぞ!!』

 

「あぁ。でも、まずは魔石を集めないとな。」

 

『チッ、メンドクセェな。』

 

そうやって話しながら僕が歩きだそうとした瞬間、急な脱力感に襲われた。

 

「・・・な、何だ…これ!?」

 

いきなりの事に戸惑ってしまう僕にアジ・ダハーカがこう言って来る。

 

『こいつは魔力を使いすぎた時に出る症状だな。おいおい、あの程度の魔法一発撃ったくらいでヘバッてんじゃねぇよ。』

 

「うるせぇな、分かってるよ。」

 

僕はアジ・ダハーカにそう言いながらなんとか身体を動かし、魔石を全て回収する事が出来た。

 

「今日はもう終わりにしておくか。」

 

『何でだよ、俺はまだ暴れたりねぇぞ!!』

 

「じゃあ、今の状態で戦えると思ってるのかよ。」

 

アジ・ダハーカの言葉に俺はそう言うと、こう言い返してきた。

 

『当然だ、お前の力の源は邪龍(おれたち)なんだぞ。』

 

アジ・ダハーカの言葉の後、身体が急に軽くなった。

 

「!? 体が軽くなった・・・?」

 

『そりゃそうだ、俺の魔力をお前の魔力にしてやったんだからな。』

 

「なっ、そんな事が出来るのか!?」

 

アジ・ダハーカの言葉に僕は驚きながら問いかける。

 

『当然というよりもこいつは俺達に適合したお前だからこそ出来る芸当だ。』

 

邪龍に適合した僕だけが出来る芸当・・・。

 

「まぁ、この話は本拠(ホーム)で聞かせて貰うとして・・・。これでまだダンジョンに潜っていられるな。」

 

『そういうこった、サッサと行くぞ。』

 

「あぁ、分かってるよ。」

 

こうして、僕はアジ・ダハーカの魔力を受け取ってダンジョン探索を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アジ・ダハーカに回復してもらった僕は十三階層を最低限の抜けて十四・十五・十六階層も制覇し、やって来たのは十七階層。

 

最初の階層主が出現する階層であり、五階層で出会ったミノタウロスがいる本来の階層。

 

僕は攻略をするために先へと進んでいくと、一面真っ白で綺麗に整えられた壁が広がっていた。

 

『何だよ、この小奇麗な場所はよぉ。ダンジョンにはこんな場所があるのかよ。』

 

そう言って来るアジ・ダハーカに僕はこう答えた。

 

「ここは【嘆きの大壁】って言う場所で、階層主のゴライアスって言うモンスターが現れる場所だ。」

 

『ほう、それならかなり愉しめるんじゃないのか。』

 

「どうだろうな、お前の魔法は埒外だからな。」

 

そうやって話していると、大壁に罅が入った。

 

その瞬間、僕は臨戦態勢に入り拳を構えると壁が崩れ、ゴライアスが出てくる。

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

僕を見つけて雄叫びを拳を振り下ろしてくるゴライアス。

 

それを僕は躱す事はせずに魔法で対抗することにした。

 

「【カタストロフィ・レイ】」

 

僕の左掌から夜の様に黒い閃光が放たれ、ゴライアスの拳に直撃してそのまま本体を丸ごと飲み込んでしまった。

 

だが、ゴライアスでは大した壁にはならずダンジョンに直撃し、揺れた。

 

「これは・・・やり過ぎたな。」

 

『そうか?俺からしたら小石を蹴っ飛ばした程度だけどな。』

 

「そうか。」

 

ダンジョンの壁に大穴が開いているという目の前の惨状を見ながら呟くと、アジ・ダハーカがそう言って来る。

 

僕は一言返すのが精一杯だった。

 

あの魔法を使った結果、ゴライアスと魔石は消滅したがドロップアイテムは無事で「ゴライアスの歯牙」が手に入った。

 

「よし、今回はこれくらいで十分かな。」

 

今日の成果に満足しながら僕はドロップアイテムを担いで地上にへと戻っていくのだった。

 

 




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第10話

ダンジョンから地上に戻ってくると、何故かギルドでは職員の人達が忙しなく動き回っていててんてこ舞いの状態だった。

 

そこに丁度良い所にエイナさんが通りかかって来たので話を聞くことにした。

 

「エイナさん、この状況何かあったんですか?」

 

僕がそう聞くと、エイナさんはこう答えてくれた。

 

「ベル君、それがねつい先刻ダンジョン内部で大規模の地震があってねそれの対応に追われてるんだ。」

 

それを聞いた僕は首を傾げてしまう、少なくともダンジョンの中にいた時は地震なんて一度もなかったからだ。

 

そんな事を考えていると、ある事を思い出した。

 

それはゴライアスと戦った時に使用した魔法の事だ、ダンジョンの壁に大穴を開ける程の威力のある魔法を使ってダンジョンに何の影響が無いというのは可笑しな話だ。

 

思わずこれからの冒険では魔法の使用は控える事を考えてしまった。

 

「ベル君、どうかしたの?」

 

そう言って僕の顔を覗き込んでくるエイナさんにこう答える。

 

「エイナさん、後で時間貰えませんか?話しておきたい事があるんです。」

 

小声でエイナさんにそう伝えると、エイナさんも小声で答えてくれた。

 

「うん、分かった。それじゃあ一時間後に講義に使ってる部屋で話そっか。」

 

「はい。」

 

エイナさんは僕の返事を聞いてからすぐに仕事にへと戻っていった。

 

僕もダンジョンで得た魔石とドロップアイテムを全て換金してヴァリスにへと変えた。

 

換金を終えた僕は一人先に講義室に入ってエイナさんが来るのを待つ間アジ・ダハーカと話す事にした。

 

本拠(ホーム)に帰ってからと思っていたけど、早めに聞いておいた方がいい気がした。

 

 

 

 

 

 

精神世界に入った僕は早速アジ・ダハーカに話を聞くことにした。

 

「おい、アジ・ダハーカ話がある。」

 

『何だよ、ベル。』

 

「ダンジョンで言っていたことの事だ。」

 

『あぁ、あれか。』

 

僕がそう言うと、アジ・ダハーカはめんどくさそうにそう言って来る。

 

「そうだ、キッチリ話してもらうからな。」

 

『チッ、メンドクセーがしょうがねぇか。いいか、よく聞いとけ。』

 

アジ・ダハーカの話はこうだ。

 

僕の魂は何故か邪龍の魂と適合し合い一つの魂と存在しているにも拘らず邪龍達が意識を持っている事が出来ているのは分かっていないらしい。

 

普通であれば魂同士の主張が強すぎて壊れてしまうからだそうだ。

 

確かに、邪龍達は個性が強いからな・・・。

 

だけど、そのおかげで僕にアジ・ダハーカの魔力を分けたり出来るというのだから凄い事だろうなと思う。

 

「そうか、分かった。」

 

僕はそう言って現実世界に戻っていく。

 

誰もいなくなった精神世界でアジ・ダハーカがこう呟く。

 

『さて、お前が進むのは果たして王道(にんげん)としてか、邪龍(おれたち)としてか楽しみにしてるぜベル・クラネル。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界に戻ってくると、講義室にはまだ誰もいなかった。

 

結構な時間アジ・ダハーカの話を聞いていたからエイナさんが来ていても可笑しくないと思っていたんだけどな・・・。

 

「仕事が長引いてるのかな・・・。」

 

そう呟いていると、講義室のドアが開きエイナさんが入ってくる。

 

「遅くなっちゃってごめんね、ベル君!!」

 

「いえ、僕もさっきまで寝ていたので気にしてませんよ。」

 

エイナさんの謝罪に僕はそう言って答える。

 

「それで話って何なのかな?」

 

「それなんですけど、まずは到達階層を更新したいんですけど・・・。」

 

「そうなの、それじゃあ今日は何階層まで到達したのかな?」

 

「十七階層の【嘆きの大壁】です。」

 

「えっ?」

 

到達階層を伝えた途端、エイナさんが固まってしまった。

 

「それって部隊(パーティ)じゃなくて個人(ソロ)でだよね・・・?」

 

「はい、そうですよ。」

 

エイナさんの質問に即答すると、こう言って来る。

 

「ベル君、いくら君が邪龍の【ステイタス】を使用出来るからって十七階層まで降りるのは危険過ぎるよ!!」

 

そう言って来るエイナさんに、僕はこう言って返す。

 

「大丈夫ですよ、エイナさん。僕はここで死ぬつもりはありませんから。」

 

僕はそうハッキリと言い切ると、エイナさんは黙ってしまう。

 

「それとですね、階層主のゴライアスを邪龍の魔法で撃破しました。」

 

「えっ、えぇ~~~~~~~~~~~~~~!?」

 

ゴライアス撃破の話をしたらエイナさんは大声で叫び出した。

 

「階層主を一人で!?それに邪龍の魔法って何!?」

 

勢いよく質問してくるエイナさんに戸惑いながらも僕は説明する。

 

「実は【嘆きの大壁】に着いたら丁度ゴライアスが生まれましてそれで邪龍の一体が使う魔法を使って撃破したんですけどダンジョンに大穴を開けちゃいまして・・・。」

 

それを聞いたエイナさんが僕にこう言って来る。

 

「もしかして、あの時のダンジョン内部の大揺れは・・・。」

 

「たぶん、僕の使った魔法のせいだと思います。」

 

それを聞いたエイナさんはフラッと背もたれに背中を預ける。

 

「うん、分かった。ベル君があの時いつも通りだったのが解けたわ。」

 

そう言うと、僕の方に視線を合わせてこう言って来る。

 

「いいかな、ベル君。今後魔法を使う時は緊急時の時だけにして欲しいの、そうじゃないとね・・・。」

 

このエイナさんの言葉は疲労感が物凄く伝わってくる。

 

「分かりました、これからは出来る限り強力な魔法の使用は控えるようにしますね。」

 

「ありがとう、ベル君。」

 

僕がそう言うと、エイナさんは嬉しそうにそう言って来る。

 

すると、エイナさんがこう言って来る。

 

「やっぱり無茶だけはしないでね、ベル君がいなくなっちゃったら悲しむ人が居るんだからね。」

 

「はい」

 

エイナさんの言葉に僕はそう言わざるを得なかった。

 

 

 

 

あの後、僕はエイナさんと別れて本拠(ホーム)に戻ってくると、神様が出迎えてくれた。

 

「おかえりー、ベル君!!」

 

そう言いながら抱き着いてくる神様を軽く受け止めてから僕はこう言った。

 

「ただいま帰りました、神様。」

 

そうやった後、僕は装備を外して普段着に着替える前にこう言った。

 

「神様、さっそく今日の【ステイタス】の更新をお願いします。」

 

「うん、分かったよベル君。」

 

僕の言葉に神様はそう言って同意してくれる。

 

ベッドの上でうつ伏せになると、神様が【ステイタス】の更新が始まる。

 

着々と更新が進んでいくと、突然神様がこう言って来る。

 

「べ、ベル君、今日は一体何をしていたんだい?」

 

「えっ、何ってダンジョンに潜っていたんですけど・・・。」

 

不思議な質問に対して僕がそう答えると、神様がこう言って来る。

 

「じゃあ、何で昇格(ランクアップ)が可能になっているんだい!?」

 

「あぁ、それは階層主を撃破したからでしょうね。」

 

捲し立てる神様の問いに僕は平然と答える。

 

その言葉を聞いて顔を引き攣らせながら神様はこう言って来る。

 

「階層主って君は今日どこまで潜っていたんだい?」

 

「十七階層です。」

 

その問いに僕が即答すると、神様はこう言って来る。

 

「なるほど、君がランクアップ出来るのはゴライアスを倒したからか。それでも、他の冒険者と一緒に倒したんだろ。」

 

なにやら縋るような顔をしながらそう言って来る神様に対して僕はこう答える。

 

「いえ、個人(ソロ)でですけど。」

 

その僕の言葉を聞いた神様は崩れ落ちるかの様にベッドに倒れた。

 

「か、神様、どうしたんですか?」

 

そうやって聞くと、神様は飛び起きてこう言って来る。

 

「ベル君、君のスキルはただでさえ異常過ぎるんだ。だから、自重というものを覚えてくれ・・・。」

 

「出来る限り善処しますね。」

 

「そこは分かりましたと言って欲しかったよ・・・。」

 

神様はそう言いながらランクアップを済ませて羊皮紙に僕の【ステイタス】を書き写してくれた。

 

【ステイタス】を書き写したその羊皮紙を受け取ると、そこにはこう記されていた。

 

ベル・クラネル

 

level2

 

力SSS9998 耐久SSS9970 器用SSS9989 敏捷SSS9991 魔力SSS9999

 

邪龍SSS 魔導SSS 精癒SSS 耐異常A 魔防SSS 破砕A 拳打A 狩人I

 

邪悪なる八つの龍の魂(ソウルズ・オブ・エイツドラゴン)

・身体の中にいる八体の邪龍の肉体と力、特性を使役する。

・使役した邪龍の【ステイタス】(level以外)が自動的に書き写される。

 

龍の肉体(ドラゴン・ボディ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティ超高補正

・使役している邪龍の肉体と同じになる。

 

龍の誇り(ドラゴン・プライド)

・全アビリティ常時超高補正

邪龍(おもい)が続く限り効果持続

邪龍(おもい)の丈により効果向上

 

邪龍の狂気(イビルドラゴン・マッド)

損傷(ダメージ)を負う事に力、敏捷のアビリティ超高補正

・瀕死時における力のアビリティ超高補正

・耐久、器用のアビリティ低下

 

龍の逆鱗(ドラゴン・ラース)

損傷(ダメージ)を負う度に攻撃力上昇

憤怒(いかり)の続く限り効果持続

憤怒(いかり)の丈により効果向上

 

魔源の禁龍の魔法(マジック・オブ・アジ・ダハーカ)

・邪龍アジ・ダハーカの魔法を使用できる。

・同時に複数の魔法を行使できる。

・詠唱破棄

 

邪龍の精神(マインド・オブ・イビルドラゴン)

・邪龍の精神力を己の物にする

損傷(ダメージ)を負う度に攻撃力上昇

・耐久のアビリティ低下

 

この【ステイタス】は異常過ぎる、神様の言う通りだ。

 

これは【ランクアップ】したからといってもだ。

 

それに、levelが上がった事で発展アビリティも邪龍のモノが発現している。

 

「ベル君、【ランクアップ】した事で更に君の【ステイタス】は絶対に隠しておかなければならない代物になっている。」

 

真剣な表情で神様はそう言って来る。

 

「はい。」

 

僕は短く返事をすると、神様は優しくこう言って来る。

 

「それでも、君の目的(英雄になる事)にはこの力は必要になっているのなら存分に奮うといいさ。」

 

「はい、神様。」

 

そう話し合った後、僕達は夕食を食べて今日の疲れを取るために就寝するのだった。



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第11話

お久しぶりです!!

長く投稿していなかったこと、誠に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

久々の投稿ですので文章がちゃんとできているか不安ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


階層主(ゴライアス)を撃破し昇格(ランクアップ)した日の翌日、僕は目を覚ますとすぐにダンジョンに行く準備を整えてランクアップの報告をするためにギルドに向かう前にバックパックにある魔法を試してみる。

 

【キャパシティ・エクステンション】【ウエイト・オリヴィエイション】

 

この二つの魔法は鞄や袋の容量を倍増させてくれる魔法と重さを軽減する魔法だ。

 

こうしておけば長時間潜る事も出来るし、魔石やドロップアイテムで嵩張(かさば)る事も無いしね。

 

そう言った準備も終えて本拠(ホーム)を出てギルドに向かっている途中、またも妙な視線を感じて周囲を見渡すけど人の気配を感じ無い。

 

そんな不可解な事に疑問に思いながらもギルドにへと向かうのだった。

 

ギルドに着くと、エイナさんが真剣な表情をして書類整理をしていて声を掛けるのは悪いと思い、先にダンジョンへ赴く事にした。

 

ダンジョンにやって来ると、僕は魔石やドロップアイテムを回収しながら上層から中層にへと降りて行く。

 

その際、バックパックを確認したらまだ四分の一も満たしていなかったし、重さも全く感じない。

 

これは良い魔法だなと思いながら中層の道を進んで行き、安全階層(セーフティーポイント)である十八階層にへと辿り着いた。

 

ここには冒険者のならず者の街(ローグタウン)であるリヴィラの町があるけど、今回は立ち寄る事はせずにそのまま十九階層にへと向かう事にした。

 

 

 

「ここが十九階層か・・・。」

 

十九階層から二十四階層の層域は『大樹の迷宮』

 

僕は目の前に広がる自然の光景に感嘆の声を漏らしながら階層の中へと足を踏み入れていく。

 

すると、歓迎するかのようにソードスタッグが一匹突っ込んで来る。

 

対して僕は突っ込んで来るソードスタッグの角を掴むと、持ち上げてから地面へと叩きつけると魔石とソードスタッグの角へと姿を変えるのだった。

 

それをバックパックに入れてすぐに先へと進んでいくと、ダーク・ファンガスが毒胞子を僕に向かってばら撒いて来るが、邪龍の【ステイタス】のおかげで規格外の耐異常(アビリティ)を持っている僕には無効になる。

 

毒が効いていない事に驚くダーク・ファンガスを尻目に僕は蹴りを叩き込み、魔石に変えて回収する。

 

次々と襲い掛かってくるモンスターの魔石やドロップアイテムを集めながら下の階層にへと進んで行き、中層の最下層である二十四階層に辿り着いた。

 

そのまま歩みを進めていると、通路から広間(ルーム)の奥に佇む白大樹(ホワイト・ツリー)を発見した。

 

そこで僕はナァーザさんから前に教えて貰った事を思い出した、白大樹(ホワイト・ツリー)に生えるその葉っぱである白樹の葉(ホワイト・リーフ)回復薬(ポーション)制作の材料になるとか・・・。

 

その事を思い出した僕は早速採取に取り掛かろうとすると、ホブゴブリンの大群が現れて僕の事を取り囲んでくるけどそんなのは通用しない。

 

襲い掛かってくるホブゴブリン達を拳と蹴りを駆使して魔石やホブゴブリンの牙などのドロップアイテムへと変えて行く。

 

ホブゴブリン全てを倒し終えると、再度白樹の葉(ホワイト・リーフ)の採取を開始するのだった。

 

「これだけあればナァーザさんとミアハ様、喜んでくれるかな?」

 

大量の白樹の葉(ホワイト・リーフ)を採取する事が出来た僕は更に階層の奥にへと足を踏み入れる。

 

しばらく進んでいくと、そこには赤や青などの美しい宝石の実が生っている宝石樹を見つけた僕は早速採取していこうと近付いて行くと、そこに現れたのが緑の鱗を持つ木竜(グリーンドラゴン)

 

「グオオオォォォォォッ!!」

 

雄叫びを上げる木竜(グリーンドラゴン)に僕は思い切り蹴り上げると、木竜(グリーンドラゴン)は宙を舞い、そのまま重力に従って地面と激突し、魔石と木竜(グリーンドラゴン)の鱗に変わるのだった。

 

それをバックパックに収納してから宝石樹の実を採取した所でようやくバックパックが一杯になった所で僕は地上に戻る事にした。

 

 

 

地上に戻ってくると、巨大な檻が目に入って来る。

 

しかも、その檻の中に入っているのはモンスターだ。

 

何故、ダンジョンからモンスターを連れ出しているのかと思ったが、僕はまず集めた魔石やドロップアイテムを換金する事にした。

 

今日集めた魔石とドロップアイテムで57500000ヴァリスを稼ぎ出し、それをバックパックへと入れてからエイナさんの元へと向かおうとしたけど、仕事の最中だったため僕は声を掛けるのを止めて本拠(ホーム)に戻るのだった。

 

本拠(ホーム)に帰って来ると、神様がどこかに出かける準備をしていた。

 

「神様、どこか出かけられるんですか?」

 

「あっ、ベル君おかえり。そうだよ、今日は【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)神会(デナトゥス)があるんだよ。」

 

「そうだったんですか。でも、なんでこんな時期に?」

 

僕がそうやって疑問を投げかけると、神様はこう言って来る。

 

「あぁ、ベル君は知らなかったね。」

 

そう言って神様は僕に説明をしてくれた。

 

怪物祭(モンスターフィリア)、年に一度【ガネーシャ・ファミリア】が開催する催事で一日闘技場(コロッセウム)を貸し切ってダンジョン生まれのモンスターや都市の外で捕獲してきたモンスターを調教(テイム)する所を見せる祭りらしい。

 

「へぇ、そんな祭りがあるんですか。」

 

「中々に面白そうなお祭りだろ、ベル君も三日後の祭りの日はダンジョンも休息日にして参加しなよ。きっと楽しいよ!!」

 

笑顔でそう言って来る神様に僕はこう言った。

 

「そうですね、明日は【ゴブニュ・ファミリア】へ建築の依頼をしようと思っていたので休息日にする予定だったので。」

 

「【ゴブニュ・ファミリア】に建築の依頼ってお金はどうするんだい!?」

 

僕の話を聞いて驚きの表情を浮かべながらそう言って来る神様に対してこう説明をする。

 

「実は今日の探索で57500000ヴァリスほど稼いできたのでこれを機に改築をしようと思いまして。」

 

「57500000ヴァリス!?」

 

今日稼いできた金額を聞いて固まってしまう神様。

 

「神様、改築しても構いませんか?」

 

「ウン、モチロン構ワナイヨ。」

 

「なんか、片言ですけど大丈夫ですか!?」

 

あまりの巨額に思わず片言になってしまった神様、しかも目が死んでいるようにも見えてしょうがないのは気のせいだろうか・・・。

 

「とにかく、ボクは今から出掛けてくるからベル君も外食して来ていいんだぜ。」

 

「ちょっと待って下さい、神様。」

 

そう言って本拠(ホーム)を出ようとする神様を僕は呼び止めた。

 

「何だい、ベル君。」

 

神会(デナトゥス)にいくならドレスが必要ですよね。」

 

呼び止められた神様は僕の事を不思議そうに見て来るのに対してこう言うと、神様は諦めに近い表情でこう言って来る。

 

「うーん、そうなんだけどね。お金が無いから・・・。」

 

じゃらっ!!

 

硬貨の擦れる音と共に僕は金の入った袋を神様の前に出す。

 

「お金ならここにあるじゃないですか。」

 

「それは改築費の必要なお金だろ、そんな大事なお金使えないよ!!」

 

僕がそう言うと、神様はそう言って反論をしてくる。

 

「いえ、改築費ならまた僕がダンジョンで稼いで来ればいいんですからドレスを買いに行きましょう。」

 

「しかしだね、ベル君・・・。」

 

「行きましょうか、神様。」

 

「はい。」

 

僕は神様を押し切ってドレスを買いに行き、蒼を基調としたドレスに深紅石(ルビー)首飾り(ネックレス)贈呈(プレゼント)してから【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)であるアイ・アム・ガネーシャへと入って行く所を見送った後、本拠(ホーム)へと帰って行った。




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12話

夜空に月が浮かび、この迷宮都市・オラリオを静かに照らしてくれている。

 

『本日はよく集まってくれたな皆の者!!俺がガネーシャである!!さて、積もる話もあるのだが今年も例年通りに三日後には怪物祭(モンスターフィリア)が行われる!!皆のファミリアにもどうか是非とも・・・・・・・・・・。』

 

今回の神会(デナトゥス)の主催者であるガネーシャが挨拶をしている中、他の神は思うように行動していた。

 

ボクはベル君が贈呈(プレゼント)してくれた蒼を基調としたドレスに深紅石(ルビー)のネックレスを身に着けて会場に入るとどよめきが起こった気がした。

 

けど、ボクはそんな事を気にせずに

 

「アンタ、変わったわね。」

 

「!?」

 

突然、背後から声をかけられた事に驚いて喉を詰まらせてしまうけど、水を飲んで流し込んだ。

 

「ぷはぁっ、急に驚かさないでくれよヘファイストス!!」

 

後ろを振り向くと、僕が天界にいる時からの神友である鍛冶神ヘファイストスが呆れた表情をしながら立っていた。

 

「まぁ、元気そうで何よりだわ。ヘスティア、アンタも派閥(ファミリア)を持つ事になったんだからちゃんとした振る舞いをしなくちゃダメよ。」

 

「それくらいは僕だって分かってるさ。でも、こればっかりは仕方が無いじゃないか、僕の所は零細ファミリアなんだからさ。」

 

「そんなこと言っても主神であるアンタががそんなんじゃダメなんじゃないの。」

 

「うぐっ!!」

 

ヘファイストスの的確な指摘にボクは呻き声をあげてしまう。

 

「ねぇ、二人だけで話さないで頂戴。一緒に会場を見て回りましょうって言ったじゃない。」 

 

そう言って言いながらヘファイストスの隣から現れたのはオラリオ最強の一角である【フレイヤ・ファミリア】主神のフレイヤだった。

 

「ゲッ、フレイヤ何でここに!?」

 

「あら、ヘスティアお久しぶりね。」

 

ボクの言葉をスルーしたフレイヤはそう言って来て、ヘファイストスがこう続けて来た。

 

「さっき会場の入り口で偶然出会ったのよ、それで一緒に会場を回る事にしたのよ。」

 

ヘファイストスは軽いノリでそう言って来るが己の苦手としているフレイヤが目の前にいるだけではなくて、その美の神(フレイヤ)の美貌に目を奪われた男神達の視線が集中しているため鬱陶しい事この上ないとばかりにボクは顔を顰める。

 

「それにしても、フレイヤが参加してくるなんて何時ぶりかしらね。」

 

「さぁ、そんな事一々覚えていないわ。強いて言うなら気分が乗らなかったって所かしら。」

 

ヘファイストスの問いに葡萄酒(ワイン)を一口踏みながらそう言っているフレイヤ。

 

ボクはフレイヤとヘファイストスの話を聞きながら料理を食べていると、一人の女神がやって来る。

 

ボクの嫌いなアイツが・・・。

 

「おーいファイたーん、フレイヤー、ドチビー!!」

 

騒々しくこちらにやって来るのはフレイヤと同じ最強の一角とされている【ロキ・ファミリア】の主神のロキだ。

 

心底嫌な顔をするボクとは正反対にヘファイストスとフレイヤはロキの事を受け入れる。

 

「あら、ロキじゃない。宴に来るなんて珍しいじゃない」

 

そう言うヘファイストスにロキはこう返す。

 

「まぁな、どうせ暇やったしな。それにこの宴に貧乏人のドチビが・・・って、なんやねん!!そのごっつぅ高そうなドレスは!?」

 

そう言いながらボクの方に顔を向けてくると同時にそう言ってくる。

 

「ふふん、このドレスはボクの眷族(こども)が用意してくれたんだ。ボクの眷族(こども)がね!!」

 

そう言って自慢するヘスティアに対してロキは顔を歪めてこう言ってくる。

 

「ウチかて眷族(こども)らに贈り物位される時くらいあるわ、その脂肪の塊揺らすなや!!」

 

「なんだとー!!君こそそんなドレスを着てただでさえ無乳なのが更に強調されているじゃないか!!」

 

「なんやと、このクソドチビがーーーーーーーー!!」

 

「なんだよ、この無乳め--------!!」

 

言い合いの果てに女神二柱は頬の引っ張り合いを始めるとその際、他の神々による勝敗の賭け事の的にされたのは言うまでもない。

 

そして、ロリ巨乳(ヘスティア)無乳(ロキ)はこの喧嘩を不毛に感じ引っ張り合いを止めて勝者無しとなってその後、無乳(ロキ)は帰って行くのだった。

 

その後も神々の宴(デナトゥス)は続き、ヘスティアは神友のヘファイストスやフレイヤと共に楽しむのだった。

 

宴の余韻に浸りながら本拠(ホーム)に戻ってくると、ベルがソファで眠っているのを見て一言。

 

「ただいま、ベル君」

 

 

 



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