幼女戦記INリリカルなのは (路地裏の作者)
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再びの戦場~第一次海鳴戦線

元ネタがなのは二次だと聞いてw妄想が止まらなくなっての投稿です!勢いだけで一気に書き上がってしまったぜ……!


(……)

 

 白い。なんというか、白い。それにどこか神聖な雰囲気すら漂っている。

 

(…………)

 

 ああ、気づきたくない。一切合切、何があろうとも、気づきたくない。漸く、よ・う・や・く!どこかの正体不明、分類不可、狭量で独善な誰かさんに強制された、第二の人生が終わったのだ。後はもう、眠るだけであろう。自分、頑張ったよね?もうゴールしてもいいよね?

 

(………………)

 

 だというのに、意識が切り替わり、暗転する予感は一切しない。仕方なく、そろそろ~、と薄目を空けると――――

 

 なんというか、何十年も前に一度来たことがあるような白と光に包まれた光景が広がっていた。

 

(……また、ここか)

 

 ああ、クソ。分かっていたさ。以前もそうだったのだ。死後の自分の魂を、無理やり略取し、監禁し、さらには見知らぬ土地に放り出すという暴挙に出た、あの――――

 

「……嘆かわしい。相も変わらず信心の足りぬ輩よ」

「存在、エェックスゥウゥゥゥゥッ!!」

 

 怨敵であり、仇敵であり、宿敵である悪魔的存在が、目の前に現れたのだ。だから出会い頭に、問答無用で爆裂術式を叩き込んでも許されると思うのだ。情状酌量の余地は十分にあると愚考する。

 

「……言いたいことは、それだけか?」

 

 だから、こちらの胸中を読むな。だから、こちらの攻撃を止めるな。というか、当たっとけ!空中で術式が停止するとか、どんなペテンだ!!

 

 ……おい、溜息を吐くな。首を横に振るな。疲れた感じを出しても、私は一切貴様に同情心を抱かないぞ?そもそもあんな面倒事に私を巻き込んだのは、貴様だろうが!

 

「神たる我が、せっかく信仰心の目覚めを期待して、魔法の世界で、女に生まれ、戦争の中で追い詰められるよう苦心したというのに……」

 

 それで信仰心を抱くのは、最初から神を信じていた狂信者か、戦争好きのウォーモンガーだけだ。むしろ『神は死んだ』という言葉の意味を、これ以上なく理解した!生命の値段が、銃弾一発に換算できる世界だったぞ!?

 

「そのような地獄を味わっても、未だ改心せぬとは……これは再び、どこぞの世界へ落とさねばダメか?」

 

 ……よし待て!落ち着こう!まずは会話を行おうじゃないか!相手の目を見て対話することは、相互理解の第一歩だ!!だから待て落ち着け話せばわかるだから思いとどま――――……

 

「黙れい! 貴様は再びかの世界にて、女として生まれ、戦場を駆け巡るがよい!!」

「クソッたれがぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 …………そうして、私はこの世界にて再び生を受けた、という訳だ。

 

 あ゛あっ!今思い出しても腹が立つ!生まれ出でて見れば、かつての故郷、極東の島国に余りによく似た『秋津島皇国』!いや、戦後は国名が変わっているのだったか?とにかくそこだ!戦後の混乱から見事に立ち直り、世界に名だたる経済大国として存在している。それ自体は嬉しい。おかげで文明大国で、戦争に関わらずに過ごすことも出来よう。

 

 だが、またもや孤児でのスタートとは、一体何の冗談だ?それも今回は孤児院の目の前ではなく、ありふれた一般家庭の目の前に捨てていくとは何事だ?その上、何故かその民間人の一般家庭の物置に、彼らの曽祖父がどこかから手に入れたとかいう、私の帝国時代の装備一式(・・・・・・・・・・・)が置いてあったのは、本当に何の配剤だ!

 

 ……いや、実行犯は分かっている。またぞろ貴様なのだろう、存在X!その要らぬ手回しのおかげで、戸籍的には彼らの養子なのにゲルマン系の顔立ちだった私は、またもや前世と同じ名前をいただくという事態に陥ったぞ!

 

 そうして生まれてから数年。私が拾われる数か月前に誕生していた、八神家の第一子を義理の姉として敬いつつ平穏な日々を過ごしていたのに、ある日両親が事故死。その上幼い私たち姉妹の後見を請け負った人物は、一度も姿を見せず表向き健全に援助を続けるという怪しさ。前世で培った危険察知能力が、全開で警鐘を鳴らしていた。

 

 そんな不安な日々から数年、姉の足が突如として動かなくなった。掛かりつけの医師の他に、私個人でも診てみたが、どうにも魔力欠乏による四肢の麻痺が疑われる。姉の私室を調べたら、これ見よがしに鎖が巻かれた本が置いてあったことだし。

 

 ……存在Xよ、そうまでして私を不幸のどん底に落としたいのか?しかも今回は、仮にも同じ家で姉妹として育っただけの一般市民が巻き込まれているのだぞ?性格も性根も、もはや矯正不可能なほどにねじ曲がった私を、それでも家族として受け入れてくれている善良な一般市民だぞ?

 

 よろしい――――ならば、戦争だ。貴様がこの国、この街、この家に降り注いでくるであろう、ありとあらゆる不幸を、災禍を、害悪を、私が全て叩き伏せてくれる。

 

 ……そんな決意を抱いていたというのに。

 

「だからと言って、これは無いだろう?!」

 

 現在私は、全速力で故郷たる海鳴の街上空を飛行中である。ことの起こりは、数日前から自宅近辺で断続的に感じるようになった巨大な魔力反応である。これが自宅のすぐ近くであったなら放置しなかっただろうが、高級住宅地の方だったり、山の中だったりしたため放置した。それが今朝になって、あのクソッたれの存在Xが、事件の詳細を伝えてきたのだ。

 

 …………なんでも、たった一個の暴走でも街一つくらい消し飛ばす不良品の魔力結晶体が、宇宙人だか異世界人の手によって、この街にばら撒かれたとのこと。その数、なんと21個。

 

「クソッたれのファッキンゴッドの存在Xに、災いあれ……!」

 

 すでに現地では、ばら撒いた張本人である異邦人が、結晶体によって作られた怪物と交戦中とのこと。なお結晶体は、直近の魔力をその裡に吸収し、暴走の危険性を高めるとのこと。現地で何故かお互いに張り合って交戦中の異邦人の集団により、その暴走の可能性は徐々に高まっていること……。

 

 ああクソッ!!この国はかつての我が祖国たる帝国と違って、魔導師の有用性が大して認められていないのだぞ!?こんな緊急事態に対し、即応出来る魔導師部隊など存在するはずもない!私が自ら、回収に赴かねばならないではないか!!

 

 戦闘可能最大速度で飛ぶこと暫し。ようやく目の前に件の異邦人が確認できた。人影は、三人。好都合にも一か所に固まってくれている。

 

「っ、ぐ、ぁ、はぁあぁぁぁ……。『我、神に祈らん。主よ、祖国を救い給え』…………」

 

 存在Xへの最大限の呪詛を込めて、その御名を賛美する……ああクソ。何が悲しくてあのクソッたれを讃えなければならんのか。どうして私の所持品であるはずなのに、『九七式演算宝珠』が入っておらず、『九五式演算宝珠』しかセットになっていなかったのか。そんなに私の精神を蹂躙したいか!?

 

 神への賛美で、久方ぶりに宝珠が目を覚ます。懐かしき奔流、懐かしき感覚。魔力が流れとなり、この身を包む。……ああ!私は再び戦場(・・)へと帰って来てしまった!

 

「ッ、ィヒッ!!」

 

 こちらに気付かれる前に、広範囲を焼き払う爆炎術式を手持ちの小銃より三連射。直前で気付かれ、真ん中の黒いのが他の二人を押しのけた。爆発。いや障壁で防がれた。間違いない。この少年兵が、敵の主力だ!

 

 即座に、魔力刃を銃剣に展開。近接戦闘へと移行する!

 

「っ、止まれ! 君は、何者だ! 我々は時空管理局の――」

 

 そんな組織は聞いたことも無いし、本当に異邦人であるならば、この世界の人権を保有している可能性も無い。つまりは、その身柄に斟酌してやる謂れも無い!!

 

「ウェヒヒィッ!!」

 

 一切足を止めず、展開した障壁ごと渾身の斬撃を叩き込んでやる。バヅンと固いものが断ち切られる音が響き、その少年の左腕(・・)が、肩口から宙を舞った。

 

「――――ッ?! う゛、わぁああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?」

 

 傷口から一瞬噴水のように血が噴き出し、鉄臭い臭いがあたりに立ち込める。……懐かしい臭い。血と硝煙と、糞尿の混じる吐き気のする臭い。正しき『戦場』の臭いだ。

 

「……貴様らが、祖国の土を土足で踏み荒らした異邦人だな?」

 

 たった今腕を落とした黒いのが一人、同い年位でレオタードのような衣服を纏ったのが一人、真っ白なワンピースを纏ったのが一人。後はイタチと狼が一匹ずつ、か。

 

 こちらの誰何に、何らの反応も無い。その癖、武装解除するわけでもない。沈黙は、肯定と受け取ろう。今現在を以て、目の前のこいつ等は全員敵性勢力だ。一様に顔を青く染めているようだが、新兵か。運が悪かったな。

 

 ……ああ!戦果は選り取り見取り!これで無給でなければ、文句無しだったものを!

 

「――――初めまして、我が怨敵。只今を以て、諸君らは殲滅すべき我が敵性勢力に決定だ。なに、遠慮することはない。――さあ! 糞のような『戦争(・・)』を始めよう!!」

 

 その少女の名は、『ターニャ・(デグレチャフ)・八神』。後に、『夜天の悪魔』、『戦場の妖精』など様々な二つ名で呼ばれることになる、管理局史上最凶最悪の魔導師は、こうして歴史の表舞台へと上がったのだった。

 




なお、この後彼女は管理局執務官への暴行・傷害・殺人未遂で捕まりかける件ww

ガチで殺しにかかる、血みどろリリカルなのはへようこそ!

気が向いたらA’sも投稿するかも


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真なる主~第二次海鳴戦線(A's編)

皆さんお待ちかねのA's編……なのか、コレ?



 

 えっと、皆さんこんにちは。八神はやてです。今日はなんや、私の妹について報告してほしい言われてここに来たんですけど……。まあ要領とかあんまり分からんけど、とにかく始めさせて貰いますね。

 

 えー、まず私の妹は『ターニャ・(デグレチャフ)・八神』と言います。この子が物凄く可愛くて、ふわっふわの金髪で肌も白くて、まるでお人形さんみたいな感じです。ただ本人はそんな自分の容姿に納得いってないのか、よく鏡の前に立って、

 

「ほとんど前世(まえ)と変わっていないだと……!? 存在Xめ、手抜きもいいところではないか!!」

 

 と、そんなよく分からん文句を言ってました。『存在X』って誰やろ?

 まあでも、そんな風に鏡の前で百面相しとるターニャの後ろから近づいて頭を撫で回したると、すぐに真っ赤になってムッチャ可愛いんやけどな!一般的な日本人の容姿でしかない私に比べると、ホンマに西洋人形みたいなんや!

 

 ……ここまでで分かる人は分かると思うけど、私とターニャには血の繋がりはありません。ターニャはウチの前に捨てられとった捨て子なんやけど、私もターニャもそんなことは気にしとらん。お父さんもお母さんもターニャを私の本当の妹として育てとるし、私も本当の妹やと思っとる。

まあ、ターニャは小さい頃どこか遠慮しとったから、私が強引にでも連れ回したり撫でまわしたりしてたんやけどな!

 

 そんな感じで毎日過ごしとったんやけど、私達家族にある日とんでもない不幸が訪れて……私らのお父さん、お母さんが交通事故で()うなってしもた。それを知った時、私はホントに体のどこにも力が入らんで、ただただ呆然としてました……。その時に真っ先に動いてくれたのが、ターニャやった。あの子は呆然としとる私のそばにいてくれて、すぐさま両親の実家を調べ、親戚一同を呼んで葬式を執り行ってくれた。そん時に天涯孤独になった私らの身を寄せる家も決めようとしたみたいなんやけど、どこも名乗り出ることは無く、葬式には来なかった「ギル・グレアム」いうお父さんの昔の知り合いを名乗る人が後見人に決まったと言われた。ただこの人……ターニャの話によれば財産の管理に不備は無いらしいんやけど、一度も顔を見せないことが怪し過ぎるらしく、私はともかくターニャに一方的に嫌われとる。会ってみんと分からんと思うけどな?

 

 そしてしばらくはそのまま二人で両親の遺した家で暮らしとったんやけど、またある日、今度は私の身体に異変が現れた。突然両脚が痺れて動かんようになったんや。あん時は突然倒れた私に驚いて、ターニャに要らん心配させてしもうたなぁ。

 

 で、病院に入院して一通り検査してみた結果は、『原因不明』。どうしてこんな麻痺が出てるのか分からんらしく、しかも徐々に麻痺は足の先から上に上がって来てると言われた。……私も死んでしまうんかなぁ、とあの時はホントに絶望したわ。

 

 ところが、そこから発展してターニャから驚きの告白をされることになったんや。退院して自宅療養に切り替わった私は、何故か入院中一週間ほど顔を見せてくれんかったターニャに再会した。初対面の栗色のお下げ髪をした女の子を連れて。

 

 そして自宅に入った途端、ターニャから彼女の出自について告白されることになった。彼女はかつての大戦においてヨーロッパの各国に恐れられ『ライヒの悪魔』と呼ばれた魔導師、ターニャ・デグレチャフの完全なるクローンだと語られた。なんでもこの地球の外には『次元世界』と呼ばれる世界が無数にあるらしく、そこには故人の身体の一部から作った体細胞クローンに記憶と人格を焼き付ける技術が存在するらしく、彼女自身そうして造られた存在なんやと聞かされた。そのため、彼女はかつての自分の技術も経験も、何もかも再現することが出来るとも。実際ひい爺ちゃんか誰かが物置に仕舞ってた年代物の『演算宝珠』で空を飛ぶところも見せてもらったし、どっかから押収してきた『プロジェクトF』とか言う資料も見せて(もろ)た。後、一緒に付いて来たなのはちゃんもこの街に住む魔導師で、私の入院中に知り合ったとか。

 

 ……ただ、なぁ……。確かに話の筋は通るし、資料もターニャの技術も本物なんやろうけど……。実際ターニャが、私なんて比べ物にならんくらい賢かったのも事実なんやけど……。

 

 正直、この話については、半分くらいターニャの嘘やと思っとる。話すとき、目が思いっ切り泳いどったし。本人は気づいとらんけど、長年姉妹として暮らしてたからそれ位は分かる。なのはちゃんは、信じきっとったみたいやけどな。

 

 そんで、なんで今になってそんな話を告白されたんや?と疑問に思っとったら、その日のうちになんと外国のお医者さんがウチに大挙してやって来て、色々検査されることになってた。なんでもそのお医者さんの出身国は前世のターニャの出身国であるライヒで、未だに魔導師の疾患や傷病については世界一の医療大国からはるばる私一人を診断するために呼んだとかで……。

 

 あん時は思わず言葉が出んで、気が付いたらターニャに掴みかかってたなぁ。いや、だって私一人のために、まさか外国からお医者さん呼ぶと思わんやん?と言うか、普通はそんなこと出来ん。一体どうやったんやと迫ったら、

 

「昔の知り合いは、根こそぎ軍からいなくなってはいたようだが……それでも退役した将官の影響力が、全て消えるわけではないのだよ。こういう時に、コネクションは使わなければな」

 

 以前(まえ)のターニャは、一体どんなヒトやったんや……。まあともかく、せっかく来てもらったことやし、診てもらう事にはしたんやけど、その結果は『魔力欠乏による四肢の麻痺』。しかも原因は、私が子供の頃から持っていた鎖の巻かれた黒い本。なぜかは分からんけど、その本に魔力がどんどん吸われとるから、私の身体の魔力が足らなくなってるらしい。

 

 そういうことで、とりあえずの解決策として、黒い本から伸びてる魔力の経路(パス)を迂回させて、魔力が十分にある第三者を中継させることになりました。その方法なら、魔力の供給はその第三者が行うので、私の身体の影響も抑えられるらしい。そんで選ばれたのが、歴戦の魔導師にして魔力も十分にあり、また家族でもあるターニャ。

 

 で、早速やってみた結果――――黒い本は、突然火を噴いて、爆発。魔力の吸収がピタリと止まりました。これには皆、大慌て。特にターニャの狼狽え方が一番酷く、「九五式から中継させたのがマズかったか?!」と大声で慌てとった。……原因に、心当たりがあるんか?

 

 ともかく事故みたいやったけど、原因が爆発して機能停止したこともあって、魔力の欠乏は徐々に回復。原因となった黒い本は、ライヒ本国の研究機関に回されることになりました。

 

 そして約一か月後、私がリハビリに励んでいたある日、ライヒから研究者とともに、あの黒い本が戻ってきました。なんでもあの黒い本の解析がある程度終了し、地球外の技術で作られた「演算宝珠」の一種である可能性が高いとのこと。ただその本の主が「八神はやて」に固定化されており、どうやっても書き換えができないとのこと。そんで書物の中に、主を守る『守護騎士』という人たちがいるらしく、さらに詳しい解析のために、是非召喚してみて欲しいということでした。

 

 ターニャは当初反対するかもと思っとったけど、意外にも乗り気。なんでもすぐに使える戦力が手に入るのなら、それに越したことは無い、とか。物の道理も分からん新兵を一から育てる苦労を考えれば、その方がずっといいと言われました。……ホントに、何があったんや。

 

 そうして召喚されたのが、私の第二の家族、『夜天の守護騎士』シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの四人でした。

 

 召喚された皆とは、とりあえず新しい家族として接する方針を伝え、色々事情を聞いてみることになりました。そこで分かったのは……実に頭の痛くなる問題でした。

 

 なんでも彼女らが入っていた『夜天の魔導書』は、何代にも渡って悪意ある主による改悪を受けてバグが蓄積。それによってシステムが暴走して、主を吸収して幾つもの世界を滅ぼした悪名高い『闇の書』と呼ばれていたそうです。今回はバグったシステムも丸ごと消し飛んだので、もう暴走の恐れはないものの、元の機能を完全に取り戻すことも不可能とのこと。

 

 ……ただ問題は、何度も次元世界で暴走して大暴れしたため、時空管理局に追われており、いずれはここにも来る可能性が非常に高いことでした。ちなみに管理局がいつも行う闇の書への対処法は、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を反応消滅させる魔導砲で消し飛ばすことだそうで、確実に中心となる海鳴の街の消滅と、周辺環境への影響によりこの国が滅亡する事は免れないそうで……。洒落にならんやろ。

 

 これを受けて、ターニャはすぐに動きました。ライヒ本国に連絡を取り、そこから合州国とウチの国の政府と交渉。ライヒ本国から特別編成部隊を海鳴に配置する許可を貰ってきました。

 

 そして編成されたのが、今目の前にいる彼ら。即ち、『地球外圏ヨリノ次元航行魔導師ニ対スル即応戦力及ビミッドチルダ式・ベルカ式導入実験ニ伴ウ第二〇三編成航空魔導実験大隊』――――――通称、『第二〇三魔導大隊』。なんでもターニャが前に率いてた部隊に因んだそうです。今後はこの大隊を中心として、守護騎士の皆が使ってた『ベルカ式』となのはちゃんの『ミッドチルダ式』を解析して、今回協力した三か国の魔導部隊に技術提供していくそうです。

 

 後、一応護衛対象である私たち夜天の騎士も、戦闘許可は貰っています。戦闘後に使った術式の解説やら、術式解析に協力することが条件なんやけど。

 

 そんで、結果として。

 

「我々は、『時空管理局』! 多くの次元世界を崩壊へと導いた闇の書の守護騎士と、その主の身柄を渡してもらいたい!!」

 

 海鳴に無断で侵入してきた管理局の人達と、ターニャ率いる第二〇三魔導大隊の皆さんが対峙する現状が生まれました。

 

「――遠路遥々ようこそ、管理局の諸君! ビザはお持ちですかぁ?」

 

 メッチャいい笑顔で煽っとるなぁ、ターニャ。ああ、向こうも怒っとるで?

 

「いいから、闇の書の主をこっちによこしな、ガキんちょ! さもなきゃ痛い目じゃすまないよ!」

「そうだよ! アンタ等なんかに父様の気持ちが分かるのかい!」

「ロッテ! アリア!」

「――お持ちではない? これは困りましたなぁ。宜しければ、早々に捕虜となられてゆっくり観光などいかがでしょう? 我らが地球の名所である、合計三か国の軍事裁判所巡りツアーがお薦めですよぉ!」

 

 その言葉に怒ったのか、三々五々杖の先から魔力の玉を飛ばしてくる管理局の人達。これで反撃という口実をターニャに与えてしもたな。しかし、ホントに非殺傷設定なんてモン使っとるんやな。なのはちゃんも最初はあんなの使ってたけど、今では……。

 

「えーい!」

 

 轟ッ!ととんでもない音を立てて、桃色の極太光線が管理局の軍勢を薙ぎ払う。ちなみに現在のなのはちゃん、ターニャにスカウトされて、第二〇三魔導大隊の副官をしています。元々はミッドチルダ式の研究の為やったんやけど、第二〇三魔導大隊の先輩方から、先の大戦で軍事用に使われてた術式を提供されて、その超効率主義の術式に感化され、自分の使っていた速度の遅い誘導弾の弱点を理解。最終的に、『直進のみでも弾丸並みの弾速で大規模破壊可能な砲撃を形成出来れば、集団の防御無視して吹き飛ばせるから一番効率が良い』というエキセントリックな結論を出してました……。しかも、それを大剣のように振り回す始末……。ターニャは顔が引きつってたで?

 

「――時間の無駄だな。各自の判断で撃ってよし! 術式は『試作型非殺傷術式』! 奴らの流儀に合わせてやれ!!」

 

 そうして次々と撃たれ、墜落していく管理局の魔導師たち。まあ、死ぬことは無いやろ。『試作型非殺傷術式』言うんは、シグナムやなのはちゃんから向こうの流儀を聞いたターニャが開発したオリジナル術式。どんな術式かと言うと、小銃に搭載したゴム弾やゴム製の銃剣に仕込むタイプの術式で、相手のバリアジャケットや生身に当たった時点で強制的に精神干渉して、無理矢理意識を落とすとか。具体的には、神経に誤認させて身体を強制麻痺、その後ドーパミン?とかいう物質を過剰に分泌させて意識混濁を招いて失神させてるそうです。この説明聞いてた時、シグナムやヴィータは滅茶苦茶ターニャに引いてたけど……なんでやろ?

 

 そうこう思ってると、突然通信が来た。

 

『――――主はやて』

『お、シグナム? そっちはどうや?』

『はい、衛星軌道上の次元で停泊していた次元航行艦をシャマルが捕捉。その後一気に艦橋を制圧し、内部の局員を捕虜に致しました。そちらの戦闘が終わり次第、ターニャに引き渡しの段取りを伺いたいのですが』

『んー、ちょっと待ってな。今最後の一人が――――あ、落ちた』

 

 最後まで生き残っとった黒いレオタードを着た同い年位の女の子が、たった今なのはちゃんの振り回してた桃色の光線に飲み込まれた。

 

 ……これで、戦闘は終わり。後は向こうの政府と地球の政府の話し合いになるから、私らはお役御免やな。さて、そうと決まれば!

 

「帰って来る皆のためにも、美味しいご飯を作らんといけんな! 『ターニャ? なんか食べたいものあるか?』」

『……卵かけご飯』

『栄養偏るから、それだけやったら駄目やよ? そんなら、納豆とネギも入れたるわ』

『なあああああああああっ?!』

 

 ターニャの半泣きの声が聞こえてくるけど、そんなのは知らん。いつまでも好き嫌いばかりやと大きくなれんで。

 

「そんなら予備兵の皆さん。帰って来る皆のためにご飯作りますから、手伝ってもらえますか?」

「「「アイアイ、マム!!」」」

 

 ……それにしても。なんでこの大隊の人達は、私に最敬礼なんてするんやろな?

 




存在Xの祝福(呪い)により、夜天の書、死亡。描写された中では、初の原作死亡者ですね。

A's編は管理局との抗争へと発展しました。そしてこの世界特有の非殺傷設定も、ターニャは率先して導入。一発で意識を飛ばして苦しませない術式なんて、デグさん優しいな!(白目)
なのは本編の描写に従えば、当人の意識があろうがなかろうが、例え高空から墜落してもバリアジャケット着てれば死にはしないみたいなんですよね。さすがに墜落速度の自動減衰くらい安全装置としてストレージデバイスにも入っているだろうし。

ちなみにターニャさんを家族として手玉に取るはやてさんを見て、第二〇三魔導大隊の皆さんは本能的にはやてに逆らえません。

はやて>ターニャ>>>越えられない壁>>>第二〇三魔導大隊の皆さん

こういう事です(笑)


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沈む夕日、昇る旭日~ミッドチルダ宇宙大戦(sts編)

非常に、やっちまった感がある……!



 初めまして、皆さん。ティアナ・ランスター二等陸士です。本日は私が現在所属している管理局地上本部所管・古代遺物管理部機動六課について報告させていただきます。

 

 機動六課は、ミッドチルダ近縁に危険を齎し得るロストロギアに即応すべく、新設された部隊になります。その設立にはベルカ聖王教会からの肝入りがあったと言われ、書面上の課長は存在していますが、それとは別に、管理世界の外から出向した部隊長が隊を統括しています。

 

 彼女の名前は、八神はやて部隊長。本来の所属は、近年になって独立自治が認められ、次元世界でも目覚ましい発展を遂げている『第97自治世界・地球』だと聞いています。その世界では珍しい魔導適性者だけで構成された国際的軍事組織――『サラマンダー戦闘団』の副団長を務めているとか。その上彼女は、正式にベルカ聖王教会から叙勲された騎士でもあり、現在では稀少な古代ベルカ式の継承者でもあります。彼女を部隊長に迎えている以上、聖王教会の介入が疑われても仕方がないことだと思います。

 

 そして、この機動六課は、その幹部メンバーが全て彼女の関係者で構成されていることが大きな特徴です。彼女の個人保有戦力である『ヴォルケンリッター』が各小隊の副隊長を務め、医務官も同様。他にも彼女の知己が多く流入しており、発足当初は地球からの政治的介入が懸念されたほどです。今のところそんな様子もありませんでしたが。

 

 ちなみに私の機動六課での所属は、前線フォワード部隊。その中のスターズ分隊に所属して指揮系統を任されてることが多くなります。ただ、色々と気苦労も多いです。陸士学校から一緒なスバルは天然ですぐ突っ走るし、ライトニング分隊のチビッ子二人はライトニング分隊の隊長であるフェイト・T・ハラオウン執務官の保護児童だし、オマケにもう一つの分隊が問題で……。

 

 その分隊とは、『クロイツ分隊』。管理局の外郭団体が主体となる分隊で、隊長も副隊長も管理局内の階級は無し。その上、その分隊に所属するのは、階級的にも上なギンガ陸曹とヴァイス陸曹。センターガードで指揮が執りやすいからって全体の指揮を任されても、階級無視では指示が出し辛いし、かと言って上官に煩く言う訳にいかないし……。ちなみに現場指揮権を私に譲る提案をしたのは、フェイト執務官でした。

 

 そして……この部隊の最も大きな特徴は、私たちフォワード部隊の他に、もう一つ実働部隊が存在するということでしょう。それは、八神部隊長の出向元であり、はるか地球からたった一年の設置期間を設けられた機動六課のためだけに出向いて来た、生粋の戦闘集団。『サラマンダー戦闘団』が、この機動六課のバックアップ部隊として、ミッドチルダまで出向いているのです。彼らが管理局内でも稀有な人材の宝庫であり、恐ろしい程の戦闘狂であることは、私たちスターズ分隊の隊長であるサラマンダー戦闘団の団長補佐と、クロイツ分隊の隊長を兼任する団長を見れば一目瞭然です。

 

 彼女らの名は――――高町なのはと、ターニャ・デグレチャフ。管理局内の地位など持たない彼女らではありますが、間違いなく次元世界でも指折りの実力者であると断言できる魔導師です。

 

 その片鱗は、全員の就任当初、部隊発足の初日から現れました。

 

「初めまして、諸君! 貴様らの教官を務めるターニャ・デグレチャフだ。とりあえず、地獄へようこそ」

「えぇと……初めまして、ヒヨッコ魔導師の皆さん! 高町なのはです! それじゃあ、『山』に行きましょう!!」

 

 片方は獰猛な笑みを浮かべ、もう片方はまるで丸暗記してきたように妙に棒読みな挨拶だったが、その後訓練着一丁で連れていかれた景色を見て、絶句した。そこは、管理世界からはほど近い所に存在する、とある自然豊かな世界。そこの『雪山』の中に、Tシャツと訓練服のズボンだけ履いた状態で放り出されたのだ。そして、上空からかけられた彼女らの声は、ある意味死刑宣告に近かった。

 

「えー、みなさーん! これから10分後、山麓一帯の危険生物駆除のため、皆さんがいる辺り(・・・・・・・・)に砲撃が降り注ぎまーす! 砲撃は合計36時間延々と降り注ぐ予定ですので、全員その場に塹壕を掘って身を守ってくださーい!!」

 

 そう言って落とされたのは、人数分のスコップ。そして目の前の空間に投影されたのは、部隊転属前に何故か署名させられた『死亡案件自己責任同意書』――つまり、死んでも自分の責任だと、同意する書類。

 

 ……そこからは、必死でした。全員一心不乱にスコップで塹壕を掘り、その上に蓋をするようにラウンドシールドを設置。そこからただひたすら降り注ぐ砲撃に耐え続け、外に満ちる爆音と光に精神を削られ続ける地獄のような時間……。何故か私たちの上空で、高町分隊長とハラオウン分隊長が口論しながら戦っているようにも見えたけど、余り記憶に残っていません。ただただ音と光に耐え続けるだけ……。

 

 そうして、悪夢は終わりました。音と光が止んでしばらく、全員が穴の中から這い出してきて、未だ生きていることに呆然としていました。分隊員の数が減っていなかったのは、奇跡としか思えません。皆が未だ呆然とする中、ハラオウン執務官をバインドで拘束した高町分隊長が、私たちの奮闘を讃えました。

 

「うん、皆よくがんばったね!」

 

 ……正直、褒められてうれしい気持ちよりも、やり遂げて安堵した気持ちしかありませんでした。本当にほっとしたんです。だから、彼女の頭上に「さっきまで撃たれ続けて周囲に拡散していた残留魔力」がどんどん収束し、巨大な球体を形成している光景を見た時は、本当に絶望したんです。

 

「諸君らの根性に、高町分隊長からプレゼントがあるそうだ。丁重に受け取り給え」

「それじゃあ皆の健闘を称えて、今から6時間、今度は私が砲撃し続けるね!」

 

 ……悪夢の次には、地獄が待っていました。その段になって高町教導官が類まれな空戦魔導師であると理解できたのですが、正直あの光景は思い出したくないです。皆揃って精根尽きた状況で、天より降り注ぐピンクの魔力光。一撃で積雪はおろか地盤までめくり上げる、ピンクの砲撃。まるでインターバルのように、周辺の地表や大気から上空目掛けて収束していくピンクの光。あ゛ぁぁぁ……ピンクのピンクがピンクでピンクにピンクピンクピンクピンクピンク――――――――――……!!

 

 ……はっ。失礼しました。ともかくそんな感じで高町教導官の訓練が始まり、様々な地獄すら生ぬるい鍛錬を行ってきました。デグレチャフ教導官はミッドやベルカ式の魔法は使用できないとのことで、軍隊組織に必要な様々な基礎的訓練を施していきました。途中行われた対尋問訓練では心は何度もへし折られましたが……私はブラコンじゃない百合でもない違う違う絶対違う……!

ともかく、そんな感じでした。なお、対尋問訓練はどういう訳かフェイト執務官も一緒になって受けていて、終わってからもしばらく部屋の隅から動きませんでした。

 

 そんなこんなで訓練開始から一か月後、ようやく地獄の訓練課程が終了。私たちはミッドチルダの海岸に立つ六課の隊舎に戻ってきました。みんな、涙を流して喜びました。かく言う私もです。嗚呼、生きてるって素晴らしい!

 

 久しぶりに寮のベッドで眠れる幸せに心躍っていると、解散前に高町教導官が一言。

 

「えー本日を以て、ヒヨッコの皆さんが現場で早々に死亡しないための訓練を終了します! 明日以降は『実戦訓練』に移りますので!」

「「「「えっ」」」」

「え?」

「……教導官、それでは今までの訓練は?」

「え? えーと、準備体操、かな?」

「まあ、ようやく蛆虫を卒業して、ヒヨッコになれたという事だ。もっと喜び給えよ、諸君」

 

 ……涙が止まりませんでした。その日を境に毎日もたらされるのは、朝夕に根こそぎ意識を奪い去るピンクの洗礼。朝起きて、訓練でピンクの光に薙ぎ払われて、仕事して昼食べて、またピンクの光に吹き飛ばされて、意識が戻ったら寮のベッドの中……。…………あの人、真性のどSなんじゃ――あああ!窓に!窓に!スイマセン高町教導官!何でもありません、何でも!だからその後ろのピンクのチャージはやめて止めて止め――(一度文章が途切れている)

 

 ……報告に戻ります。実際高町教導官の行われる訓練の効果は、非常に高いものと言わざるを得ません。おおよそ一か月の訓練で如何なる任務にも耐えうる精神力と体力を養えますし、またその後の戦闘訓練で極めて実戦に近い経験値を得られます。両教導官は、管理局にとって得難い教官であると言わざるを得ません。流石は『夜天の悪魔』と『ピンクの悪魔』と呼ばれ、次元世界にその名を轟かす魔導師です。

 

 ですが、連日の訓練に加え、徐々に実地での任務に就くことも多くなり、私も含め全員心身ともに疲れ切っていったと言わざるを得ません。最初の貨物リニアからのロストロギア『レリック』奪取任務、散発的に出現するガジェットドローンへの対応任務、極めつけはホテルアグスタでの警備任務です。施設防衛こそ上手くいきましたが、眩暈を起こしたせいで魔力弾が制御を外れ、スバルに当たりそうになりました。

 

 隊舎に戻って自分のミスショットに落ち込んでいると、極めて珍しいことに、デグレチャフ教導官が話しかけてきました。親身になって悩みを聞いてくれたその姿勢は、とても普段から想像できないものでした。いただいたアドバイスは、直射弾の活用法とか、射線を取ることの重要性とか、普段の体調管理や報(告)・連(絡)・相(談)の重要性などなど……。

 

 そして最後に、自分が執務官試験の受験を目指しており、ここにもキャリアアップのために来たことを迂闊にもポロッと話してしまったところ――――彼女の目つきが変わりました。

 

「素晴らしい考えだ!! そう! キャリアアップは、何よりも重要なのだよ!!」

 

 そこから延々と、軍形式の組織体における出世の秘訣やら、可能な限り早期に手柄を立てて後方勤務になることの重要性やら、何故かとんでもなく実感のこもったお話を聞き続け、解放されたのはそれから二時間後でした。

 

「いやぁ、まさかこんな所で『同志』に出会えるとは! やはり籠っていては分からないものだな!!」

 

 その後我らが六課は、一連の事件の主犯と目されるジェイル・スカリエッティの逮捕に向けて動く方針でまとまっていたのですが、地上本部で開かれた公開意見陳述会で事態が一変。なんと、管理局の最高評議会を名乗る一団が、旧暦最悪のロストロギア『聖王のゆりかご』を発掘。その恐ろしい威力を完全に掌握し、次元世界支配に乗り出したのです。

 

 そして、これらの詳しい内情を私たち六課にもたらしてくれたのが……。

 

「初めまして、諸君! 私の名は、ジェイル・スカリエッティだ」

 

 先日まで主犯と思われていた、次元犯罪者本人でした。何でも彼は、今まで最高評議会の命令で数々の違法実験を強要されてきたらしいのですが、先日『天啓』を受けたとかで最高評議会の陣営を離脱。その際置き土産として、『聖王オリヴィエ』の遺伝子データと、ゆりかご起動に必要なレリック、更にはそれを埋め込んだレリックウェポンになる方法まで、研究の全てを書き残してから逃げてきたそうです。これら全て、天啓による『天の導き』なんだとか。

 

 ――なんて事を、してくれたんですか!!

 

 おかげで次元世界は、現在進行形で新暦始まって以来の大戦が始まりかけてますよ!!まあ一応、彼らが施設を引き払って逃げ出したおかげで、違法実験に供されていた人々とか、彼が作り上げた戦闘機人は助かりました。その中にはかつて全滅した筈だった地上本部の精鋭魔導師や、プロジェクトFで生み出された聖王オリヴィエのクローン体の『ヴィヴィオ』という少女も。未だ幼い少女がゆりかごに乗せられて殺戮の限りを尽くすことが無くなったのは、本当に喜ばしいことではあります。

 

 でも、ミッド郊外から浮上したゆりかごが、これから次元世界でどれほどの被害を齎すか考えたくもありません。恐らくそうした被害予測を立てているであろうデグレチャフ教導官も、スカリエッティの話を聞いて、憤懣やるかたない顔をしていますし。

 

 やがて、それでもやるべきことをやるべきだと気持ちの整理をつけたのか、一度目を瞑り、大きく息を吸い込み――――告げた。

 

「諸君――――戦争のお時間だ」

 

 その顔は、獰猛な肉食獣のように歪んでいました。

 

「事もあろうに、時空管理局が手ずから我々に立身出世の好機をプレゼントしてくれるそうだぞ? 彼らは寄りにもよって、次元世界全土に既に放言しているのだ……自分たちは次元世界の統一支配を目指すと。つまりは、現在の次元世界全体の平和を崩す『賊軍』だとな」

 

 その言葉に、全員身の引き締まる思いでした。

 

「諸君らそれぞれ、一年間の六課所属以降は、希望する部署ややりたい仕事があるだろう。時空管理局は自ら悪役となって、諸君らの希望通りに進めるよう、ラッピングしてご丁寧にリボンなんかもつけて、手作り感満載のプレゼントを用意してくれた。これに応えずに何とする?」

 

 ……あるいはそれは、初めて生命のかかった戦いへと臨む新兵を励ますためだけの言葉だったのかもしれない。それでも、その言葉はその場の全員に響いた。

 

「なに、気負う必要などどこにも無い。やることはあまりに簡単――――勝てる戦争で! 勝てる軍隊で! 安全な場所から、敵を叩いて昇進するだけの簡単なお仕事だ!!」

 

 そうだ、気負う必要などどこにも無い。確かに敵軍は多いけれど、ハラオウン提督を始め、時空管理局本局にも向こうに付かずにこちらに合流した勢力があると聞く。それに伝説の三提督は全員こちら側だし、ベルカ聖王教会も完全にこちらに味方すると表明してきた。風向きは完全にこちら側なんだ。

 

「諸君らの為すべきことはただ一つ――――――地獄を創造(つく)れ!!」

 

 こうしてデグレチャフ教導官の言葉と共に、史上空前の『大戦』は幕を開けました。

 




最高評議会終了のお知らせ。存在Xに状況を操られて、次元世界の支配を企む悪の親玉にランクアップ。

フォワードメンバーは、順調にピンクの光線へのトラウマを形成中。デグさんの容赦のなさが、魔王様にマズい方向で影響してる……!しかも何故か、最初から一緒にしごかれてるギンガさんとヴァイスさん(笑)

スカリエッティに天啓齎したのは、毎度おなじみのアレです。おかげで世界大戦超える、『宇宙大戦』だぜ!これ全部、デグさんに神への信仰芽生えさせるためなんですよ?どんだけ考え無しなのか、存在X……。

-追記-(18:45)
書くの忘れてましたが、一応こちらの短編はこの話で完結です。皆さん読んで下さり、ありがとうございました!


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