天使と神と転生者 (アカルト)
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天使と神と転生者
ふと思いついた短編なので短いです。
天使と神と転生者
理不尽だ、その考えは可笑しくない、いや、我々はそう考えている
近頃、いや、大昔からそれは存在するのだが……この世界には普通とは違った生まれ方をする人間がいる
俗に言う『転生者』、神の暇潰し、ミスなどによって本来死ぬ筈でない時に殺され、異世界にトリップさせられる者達
ある者は理想を抱き、ある者は己の欲望のままに、ある者は介入さず、その未来は様々だ
だがその殆どに当てはまるのは転生の際に受け取る『特典』、これは神によって様々なのだが大概三つや五つといった『マンガやアニメの能力』を対価無しで授ける以下にも『テンプレ』な設定、まぁこんな事を言っても実際そういった事があるので仕方がない
そして、故意で無くても神に『選ばれた』人間は地上に降り立ち、その力を使って物語を変える、これも大概の転生者が起こしている事なので今更だ
ぶっちゃけ物語なんてどうでもいい、そんな事私達『天使』にとっては取るに足らない、一つの世界がぐちゃぐちゃになっても天界には影響がないのだ、人間は人間で暴れておけばそれでいい
正直今の発言は数多の世界を管理し、制御する天使にあるまじき職務放棄なのだが目を瞑ってもらいたい、世界なんて数えきれない程あるのだ、今だって新たな世界がどんどん創生されている、制御しようとしても最低限の事だけをしておけばいい
問題はそんな世界の事ではない、『転生』という行為に神が関わっているという事だ
生憎、私達天使に輪廻の輪を乱す事は出来ない、というかそんな事をすればまた世界が異常をきたす、いつもいつも後処理をするこちらの気持ちをいい加減神も察してほしい
それに、だ、私達からすると自分を殺した事で神に怒鳴り散らし、向こうの世界でも面倒を見て貰おうとする、又、その華麗な容姿から神に好かれる人間を見ているとイライラする
私達天使という物にも階級は存在する、そしてそれは全て『神』が決める事だ
より上の階級を目指して、より偉くなる為に、天使達は必死で神達にアピールする、世界の統治、悪魔達の駆除、飢えた世界に救いの手を……そしてそんな偉業を達成してもこちらに見向きもしないのが『神』だ
彼らにとって天使というのはただのパシリ、使い勝手の良い手下、その手下がどんな偉業を達成しようとも神にとっては『そんな事』、彼らと私達では勝手が違う、私達が努力して成し遂げた偉業を神という存在は一瞬でこなす力がある
我々天使が数千年、数万年、数億年苦労して苦労して神と話す機会を得、その才能を見出されて位を貰い、力を貰うのにどれだけ大変か……なのに人間達は、その小さな、私達にとってはたったの数十年の命を奪われたからと言い張って神に横暴な口をきき、我らが苦労の果てに授かるような『力』を何個も何個も授かる
そしてその事にロクに我らの神に感謝もせずに世界を荒らし、私達の仕事を増やす……これに対して私達天使が何も思わない訳がない
誰が荒らされた世界の後始末をすると思っている、私達の数億年の苦労はなんだ?
『ふざけるな』
これが、私達天使達が共通して持つ思想
だからこそ、私達は神にバレないよう、最新の注意を払いながら転生者の駆除を行っている
正に『修正者』、世界を正す者、これで終わればいいのだが……問題はまだある
『幻想殺し』『エヌマエリシュ』、触れただけで天使そのものを消滅させるスキル?
世界の管理者でしかない私達の力を超える世界を創生する武器?神の写し身?
そんな物に私達が敵う筈がない、数えれば途方もない数だ、たった数十年の命だけで、人間如きが天使さえも超える力を持つ
『あり得ない』
これも私達の神経を逆撫でする、たかが人間だ、私達がいなければ生きていけない弱者の集まり、それが……そんなちっぽけな存在が何故天界に住まう我々以上の力を保有する!!
今日も私達は世界の『守護者』として世界を管理する
転生者の抹殺、それが我らの第一の目的
ただ……天使の中にも『人の命が尊い』など言って転生者狩りに反対する者も少数いる、まあ彼らは大多数の天使を敵に回した事で堕天、天界から追放されたのだが……
だがそれも全てでもない、堕天した天使でそんな思想を抱いている存在もまれ、殆どが神に逆らい、離反した天使なので処罰する大義名分も立つ
まぁ、元より堕天使など皆殺しなのだが……
「ミカエル様、新たな転生者、捕捉いたしました」
「ああ、すぐに行く」
我は『ミカエル』、天使長にして大天使
我らに仇となす転生者に然るべき処罰を
彼らを保護する堕天使に粛清を
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