ゼロの使い魔~鋼龍と登場しなかった少女~ (hi・mazin)
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最初の日の話 鋼龍異世界に行く
計画性はほぼないです。
※ 修正の件ですが上記の通り計画性皆無の為現状維持とさせていただきます。
ある夜、俺は夢を見た、夢の中の俺は何処にでもいる普通の『人間の男』であり、家庭や親、友人関係も平凡なりに良好であり何も変わったこともないありふれた人生の夢
しかしこの夢の最後はいつも同じであった
そう、最後はいつも突然目の前が真っ暗になり身体が冷たくなり意識が闇に消えていく・・・
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凍えるような寒さを感じ俺は目を覚ました。
周りの風景は眠る前と変わらず木々の生い茂るジャングルであった
その光景にため息が漏れ、身体を起き上がらせるべく動くと体や関節からギチギチと音が鳴り響き錆びた鱗の欠片が少量だが地面に落ちる
どうやら関節部まで錆が来たらしく体の動きがどうも鈍い、ここまで身体が錆付いたとなると脱皮まであと一週間と言ったところだろう
とはいうもの、まだ2回しか経験した事がないから何日かずれる可能性はあると思う
もう勘の鋭い方なら御分かりと思うが俺は『日本人の男』で転生して『鋼龍クシャルダオラ』になっております
という事で必然的にこの世界は『モンスターハンター』の世界だという事になる
な、何を言ってんだと思うだろうが、俺も何を言ってるか理解に苦しむが気が付いたらこうなっていたんだ
大体こういう転生モノって死んだ時に神様が現れてチート能力を貰って漫画やアニメの世界で無双するモノが普通ではないだろうか
え、古龍に転生した時点で勝ち組だろうって? っはは、確かに基本スペックは群を抜いていると思いますよ、でもね、強いのは上位クエとかG級クエとか極限個体だけであり、今現在の俺は下位クエ位のスペックで最小金冠サイズしかないんですよ、したがって残念だが無双出来るほど強くなるのは何十年も先の事である……イキテイレバノハナシダガ
それと断っておくが俺が人間の時の記憶が戻ったのは何故か最近の事なので古龍の生まれ方とかは全く分からない。まぁ自分の生まれた瞬間を記憶しているなど人間の時も不可能だし年齢を重ねると幼少期の記憶すら曖昧になるしこれは仕方がない事だと思ってもらうしかない
あと人間としての記憶が戻った時に何か葛藤は無かったかと言われれば、すいませんが正直何もなかったです。
何でと言われても私の場合はそうだったのでそうとしか言えない
なので私は人間の心と古龍の本能を持って自由気ままに生きています
強いて言えば退屈という感情が芽生え『クシャルダオラ』にあるまじき行為だが火山を見学に行ったり砂漠に行ったりと刺激的な毎日を過ごしている
食事にも変化があり、昔は金属鉱物の鉱石や鉱脈をかじっていたが記憶が戻ってからは果物や魚や肉を食べ始めた、調味料が無いので自然な味であったが割とうまいとこの古龍の身体は感じているようだ
話が擦れたが今現在俺は『錆鋼龍』と言われる錆状態であり最近は関節まで固まり始め錆びる前の状態と比べてかなり動き辛い状態だ、それでも並みのモンスターなら相手にならない程には強い……と思う
最初の脱皮前の時はモンハンの設定通り身体が思う様に動かないストレスでイライラしており、たまたま近くにいたハンターを襲い鬱憤晴らしをしようとしましたけど、やっぱハンターって人外だわ
あっという間に四人に囲まれて散々な目(角破壊に翼破壊されたが尻尾だけは守り切った)に遭わされましたよ
何とか生き延びられ(リオレウスのワールドツアー戦法で)無事に脱皮出来たが今回は油断はしない
あ、角はかなり時間がかかったけど何とか再生しましたよ
まず周りの環境だが徹底的に人目とモンスターを避け海に浮かぶ小さな孤島に身を隠している
どれだけ人目が無いかとアイルーやメラルーすらいないと言えばお分かりいただけるだろう
ホントあいつら火山から氷海まで人間以上に活動してんだもん居ない所を探すのにえらい苦労をしてしまった
ここまで休まずに飛んできたので流石に疲れてしまい、ひと眠りしようと寝床を探し始めると急に目の前に光り輝く鏡のようなものが姿を現した
もし古龍のままだったら警戒したのかもしれないが人間の心と記憶を取り戻した今の俺ならこの鏡の正体が分かる
自分の身体位の大きさで淡く光る鏡のような物体、まさしくアニメで見たゼロ魔の召喚門である
それの正体を理解した瞬間、もう身体に流れていない筈のアニオタの血が騒ぎだした
モンハンの世界に転生できたばかりかゼロ魔の世界まで体験できるとはホンットォォォォについている!!
古龍の血(アニオタ)が騒ぐぜ、ってやかましいわ(笑)
最早召喚に応じるのは決定事項として俺は誰の使い魔になるのだろう?
最有力候補はやはり主役である虚無のメイジ『ルイズ』であろうか? という事は俺は『ガンダールヴ』のルーンが刻まれるのだろうか?
そうなれば問題が出てくる、勿論古龍ゆえに武器が持てずルーンの効果が丸々無駄になる恐れがある
そうなるといろいろと原作が大きく狂いそうだな、それに俺はサイトとルイズの掛け合いというか、お互い素直になれない関係は結構好きなのでなるべく壊したくはない
次の有力候補は風竜つながりで『タバサ』であろうか?
それでも問題が沢山出てくる
まず俺は風韻竜のように魔法が使えないし人にも変化出来ないためいろいろと原作に狂いが出てきそうだ
それに俺はタバサとシルフィードのデコボココンビは結構好きなので壊したくない
さっきから同じ事ばかり言っている自分に少し嫌気がさしてくるな
しかし向こうの世界に行けば否応なしに戦乱に巻き込まれるのは確実である。最大金冠サイズでG級スペックがあれば怖いものなど無かったがしれないが、今だこの体は幼く下位クエスペックであり、とても戦乱の地で活躍は見込めない
そう思うと恐怖心が身体を支配していき異世界行きを躊躇させる
しかし同時にこんなチャンスは滅多に、いや、この先何年、何十年生きようが二度とないだろうという気持ちが捨てきれない
そう思うと目の前の召喚門から中々離れる事が出来ず鏡の前でウロウロしてしまう
と、しばらくウロウロしていると俺の前に一羽の鳩っぽい鳥が舞い降り地面を突きながら餌を探し始めた
全く、アホ鳥は気楽でいいな、俺なんて一生の問題について真剣に悩んでいるというのに……って、そっちに行くなぁぁぁ!!
あろう事かアホ鳥が召喚門に向けて進み始めたので俺は咄嗟に身体の周りに龍風圧を発生させアホ鳥を吹き飛ばす
おめーみたいなありきたりな奴はお呼びじゃないんだよ
俺は豪快に吹き飛んでいくアホ鳥を見ながら無意識に一歩を踏み出す
今に思えば本当に間抜けだったと思う、そのたった一歩で召喚門に身体が触れてしまい凄まじい力で吸い込まれてしまった
その瞬間この世界から俺という『鋼龍クシャルダオラ』の存在は消えてしまった
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ああ来てしまった。周りの景色は今までいた孤島とはうって変わりそよ風が気持ちいい草原になっており、周りには色とりどりの髪色の制服を着た人間が多数おり、皆一様に俺の姿を見ていた
ああ。さようなら自由と弱肉強食の世界。こんにちはゼロ魔の世界と主人公様……ってダレこの子!
髪はピンクでも青でもないセミロングのストレートの金髪で両目が見えないほど前髪が長く目の色は分からない、身長は高くも低くもなく標準であり、スカートを履いていることから女の子という事がわかる
ちょっと待て、こういう転生モノは主要人物の誰かに召喚されてドタバタに巻き込まれるもんだろう! 誰だよこのモブ子
予想外の事が起こり俺の中に自分勝手な焦りが生まれ自分を召喚した女の子を無視して周りをキョロキョロと見回してみたところ希望の光を発見する
禿げた中年教諭の頭の光に心を落ち着かせた俺は改めて冷静に周りを見回すとゼロ魔の主要人物の皆さまを発見する事に成功する
見た所主人公御一行様は使い魔の召喚を終えているらしくデカい風竜や火トカゲの姿が視界に入る
もちろん主人公はまだ召喚していないけどね
しかし、ここまで役者が揃っているとどうしても原作介入したい気持ちが沸きあがってくる
「あ、貴方がわ、私の使い魔ですか?」
問題はどうやって介入していくかだ、一番手っ取り早い方法はルイズに虐げられているサイトに助け舟を出して『お前良い奴だな』という感じに仲良くなって一緒に事件に巻き込まれては友情を深めたりしていけばこの世界を楽しめるかもしれない
「つ、使い魔ですか!!」
ちっ、良い感じに妄想が滾ってきたのに邪魔すんなよモブ子。一人前のご主人気取りしやがって
まぁ、こんな名も無いモブ子でも俺をゼロ魔の世界に呼んでくれた存在だ、最低限の礼儀は尽くしてやらんとな
そう思った俺はわざわざ『コントラクト・サーヴァント』をしやすい位置に顔を持って行ってやった
「ひっ!」
そしたら今まで自分の事を無視していた龍が急に目の前に顔をもってきた事にモブ子は驚き一歩後退した
ホント使えん奴だな、さっさと儀式を終わらせろよ、それが終わったら後は俺の好きにさせてもらうぞ、てめーのような原作にも登場しないモブ子なんかそれしか価値が無いんだからな
そういえば使い魔のルーンを刻まれると召喚者に対して好意を抱くようになる効果もあったよな、もっともそんなルーン如きに屈するほど古龍の精神はヤワじゃないがな
そうこうしている間にモブ子の準備が終わったらしくこちらに杖を向け呪文を詠唱し始めたようだ
「我が名はサフィーナ・イファナ・ベラ・ラ・ミ・サイファー。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
フン、俺は使い魔のルーンなんかには絶対に屈しないぞ!!
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サフィーナちゃんマジ天使。やべえ、この子マジ可愛い、平均的な身長も大きくも小さくもない胸もマジ愛らしい
「あの、使い魔になってくれて、その……ありがとう」
くふぅ~!! 前髪で目は見えないけれど伏せ見がちでモジモジする姿も可愛えええ! 何この生き物可愛すぎるんだけど、マジでこのご主人様当たりだわ、ヒステリック桃髪でも過去が重過ぎる青髪でもなくてホント良かったわ
「それでね、私こんな性格だからあんまりお友達とかいなくて……だから、と、友達になってくれたらうれしいな」
テレながら両手でもじもじしながらお願いされては紳士として断ることは出来ないな。俺とサフィーナちゃんは心の友と書いて心友だな、ズッ友だよ
そうだ、ちょうど今日から俺は原作に介入する予定だしご主人様も一緒に事件に巻き込まれよう、そうすれば主人公メンバーの皆とも友達になれるし、俺も退屈しないで良いしウインウインの関係だね
そんな感じでご主人様と触れ合っていたらとうとう主人公『ルイズ』の番が来たようだ、その様子を固唾を飲んで皆が見入っていたが、案の定一回目は派手な爆発が起こっただけで何も起こらず周りから笑い声や悪口が聞こえてくる
「ミス・ヴァリエールだって一生懸命にやってるんだから、あんな言い方しなくてもいいのに……」
何度目かの失敗の時ご主人様はそうつぶやく様に言っておられた、ホントマジ優しいわこの子。うん、これなら主役の皆には嫌われないだろう。ほんとサフィーナちゃんの株が俺の中でストップ高だよ
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何度目かの爆発の末についに主人公のがご降臨された!! ようこそサイト君異世界に(笑)
「なにあの子。平民なのかなぁ?」
いえいえ虚無メイジの神の盾『ガンダールヴ』でございますよ。サフィーナちゃんもこれからガッツリ絡むんだから挨拶の言葉でも考えてたほうがいいよ
ルイズとサイトからはかなり離れた位置に居るのに大声で言い合っているのが聞こえてくる
ついに物語が動きだすのを感じ笑い声が思わず漏れてしまう
「どうしたのそんな唸り声を出して。あの二人が気になるの?」
どうやら人間には古龍の笑い声はみな唸り声に聞こえるようだ。しかし、安心しておくれサフィーナちゃん、俺は今猛烈に気分が良いのだ
その後は原作通りに『コントラクト・サーヴァント』を交わしサイト君がルーンを刻む痛みに耐え中年教師が珍しいルーンだとスケッチし解散の流れとなりこの場に居た生徒は魔法で空を飛び学園に戻って行った。もちろんルイズ達は歩いて帰るようだ
この瞬間を待っていた。なぜなら今なら余計な邪魔もなくスムーズにルイズ達に顔を売ることが出来るはずだ、なので俺とサフィーナちゃんの顔を是非とも覚えてもらい今後のお話に参加させてもらおうではないか
「じゃぁ、私達も帰ろうね。そうだ、帰ったら貴方に似合うステキな名前を考えてあげなくちゃね」
わーいやったー新しいお名前だ~(*´▽`*) ……って、ええええええΣ(・□・;)!! サフィーナちゃん何で二人を無視して帰ろうとスンの!? ここからが良いとこなのよ。……て、分かるはずないか、仕方がない強硬手段を取らせていただきます
すでに『フライ』の魔法で数m浮かびあがっていたサフィーナのマントに噛みつき無理やり空中から引きずり下ろした
「きゃぁぁぁ!! 何なの!? ねぇ何するの!?」
慌てふためくサフィーナちゃんの事を無視してマントを噛んだまま親猫が子猫の首裏を噛んで持ち運ぶがごとくご主人様を銜えたまま『ゼロ魔』の主人公ルイズとサイトの下に全力で駆け出していった
「いやぁぁっぁ!! 離してぇぇぇぇ!!」
か~いにゅ~♪ か~いにゅ~♬ 原~作介~入♪
ふふふ、怖がらなくてもいいんだよ、おじちゃんはサフィーナちゃんの為に友達作りに協力してあげてるだけだよ、それにはまず、積極的に相手に関わらなくちゃいけないんだよ
大丈夫、俺の手に掛かれば巨大ゴーレムと戦ったり、戦場にラブレターを一緒に回収しに行けるほどの深い仲にしてあげるから
全力で走っていると目的の人物である二人が面白い様に慌て始めたがそんなの関係ないとばかしに二人のもとに到着した
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原作第一巻の挿絵にルイズとサイトの目の前に錆びた龍にマントを咥えられ宙づり状態の少女の絵が人知れず追加される
この少女が真っ赤になった顔を両手で隠しながら自己紹介をしているシーンはなかなかシュールだが良いシーンであると一部で好評であった
物語には『まだ』あまり変化はみられない……
タグにもあるように時間がある時にまた続きを更新したいと思います
・・・需要があったらの話だけれどね
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次の日の話Ⅰ 鋼龍は朝から忙しい
やっぱり計画性は無いです
誰もが寝静まる丑三つ時、俺は必死に自分の身体から剥ぎ取った鱗(逆鱗)と甲殻の錆の塊を必死に噛みついたり、ひっかいたりして形を整えていた
これは古龍の本能とか歯の形を整えるとかそんなんじゃなくて一応剣を作っているつもりである
何しろ明日の正午過ぎには原作での序盤の見せ場である決闘騒ぎが起こるはずだからである
それと剣を作っているのと何の関係があるのかと言いますと大いにあるのです
原作の決闘ではサイト君は最初は武器も持たずギーシュ(二股薔薇ナルシー)のゴーレムに立ち向かいボコボコに殴られ大怪我を負い、それでも諦めず戦おうとしたのでギーシュ(二股薔薇ナルシー)からお情けで錬金で作られた剣を貰い『ガンダールヴ』の力が発動し勝利する。
というのが一連の流れだが、そのままではサイト君が怪我で何日も寝込んでしまいサフィーナちゃんのお友達増やそう計画+俺の原作介入の為の好感度Up作戦に支障が出てしまう……
そこで今作っているこの剣の出番なのです、決闘が始まったら召喚された初日のようにサフィーナちゃんを咥えて決闘の場に乱入しサフィーナちゃんの手から俺の作った剣をサイト君に渡してもらい最初から『ガンダールヴ』の力を発揮し相手を瞬殺してもらう計画である
それにより剣を与えられたサイト君の中でのサフィーナちゃん株は急上昇+友情フラグ成立、使い魔を助けたことでルイズちゃんとの仲も急接近(キマシタワー) 俺も原作に深く関われると誰も損をしない素晴らしい計画である
……え?ギーシュ君、知らんわ(笑) だってアイツとも仲良くなろうものなら俺の可愛いご主人様があの色ボケに迫られるかもしれないし、もし近づいて来たら龍風圧で延々と吹き飛ばし、動かなくなったら風圧ブレスをお見舞いしてやるぜ
サフィーナちゃんの貞操の為にも危険人物は排除アンド汚物は消毒の方向で行くことにする
だからサフィーナちゃんが起きるまでに俺から剥がれ落ちた鱗と甲殻の塊を最低でも『凄くさびた片手剣』、もしくは『さびた片手剣』位には仕上げないと『ガンダールヴ』のルーンが剣として認証しないかもしれないからな
あ~早く夜が明けてほしい半面、間に合うかどうか不安だな
その後何かを削る音は明け方まで続いたという……
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完成した。どこをどう見てもさびた片手剣だが青銅製の剣でもOKなんだしこれでも『ガンダールヴ』のルーンも剣として認めてくれるだろう
一睡も出来なかったがなかなか良い出来だと自画自賛してしまった……って、もう朝か、サフィーナちゃんを起こしに行かないとな
……って!! 大事なことを忘れてた!! 朝は朝でサイト君が洗濯物を洗うために学園内を徘徊しメイドヒロインのシエスタとの遭遇イベントがあったではないか!
時間的にはギリギリだが是非ともサフィーナちゃんお友達計画にシエスタを加えたい
彼女が加わることで彼女関係のイベントも参加できるはずだし、原作通りに進むなら彼女と仲良くなって損はないはずだ、それに彼女はなかなかアグレッシブなので引っ込み思案傾向のサフィーナちゃんに良い影響を与えてくれるかもしれないしな
俺は急いで翼を羽ばたかせ空に舞い上がりご主人様の部屋に向けて急発進した……
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「うう~ん。使い魔の事が気になって早く起きすぎちゃった。でも今日も良い天気ね。昨日はひさしぶりにメイドさん達や先生以外の人とお話出来たし今日は良い事ありそうだな……例えば新しいお友達が出来るとか、ふふふ、そうだったらどんなにステキな事だろうな」
その願い俺が叶えて差し上げましょう。遠慮は要りませんよ、俺はその為に使い魔になったんですから
しかし、さすがご主人様、俺が帰って来ることが使い魔の共感作用で分かってたんですね(勘違い)、着替えまでして窓を開けて待っててくれるなんてマジ天使可愛すぎる
「あ、おはよう。ねえねえ昨日話したと思うけど貴方のなま……え~~~~!!またなの~!!今度はなに~~!」
窓に顔を突っ込んだ俺は出来立ての剣を床に置き、近くに居たサフィーナちゃんを昨日と同じくマントを咥え水場に向けて飛び立つ、サフィーナちゃんは少し慣れたのか暴れたりせず成すがままであったため大変運びやすかった
……て、いた、ホントにいやがった!!
水場には洗濯かごを持ったサイト君とメイドさんが談笑しているのが古龍の瞳にははっきり見える
このまま急降下して着陸したいがそれではサフィーナちゃんの身体に負荷が掛かってしまう恐れがある
だからまず空中で旋回してスピードを調節し水場の比較的広い場所に・・・着陸!
結構豪快に着陸したためシエスタは腰を抜かしてへたり込んでしまいサイト君もドン引きしている様に見えるが許容範囲だろう
咥えていたサフィーナちゃんを二人の前で下ろし背中を鼻先で押し物理的に距離を詰めさせる
さあサフィーナちゃん貴女の新しいお友達ですよご挨拶して……て、また顔を赤くして両手で顔を隠すなんてどんだけシャイな女の子なんだい
「うおおお!! やっぱファンタジーってすげぇぇぇ! お前昨日の錆ドラゴンだろ、やっぱ錆びてるけどカッケー!と、えっと、ミス・サイファーさん……だっけ?」
覚えていてくれたぞサフィーナちゃん、さあ、私の事はサフィーナで良いですって言え!
「あの、その……えっと」
使い魔の共感作用で俺の言いたいことは何となくだが理解しているはずだよね。だから言え、言え、言え、言うのですお嬢様(半ギレ)
「……そんな畏まった言い方じゃなくてもサフィーナでいいですよ」ゴニョゴニョ
声が小さい! そんなんでは難聴系主人公には一切聞こえないぞ、ほら二人にもっと近づけてやるからもう一回言うんだ
「……サフィーナでいいです、だから私も貴方の事サイト君って呼ばせてもらっても良いですか?」ゴニョゴニョ
「ああ、良いぜ。わざわざありがとうなサフィーナ。それと……なぁサフィーナ、こいつの名前なんて言うんだ?」
よくぞ聞いてくれました俺の名は……
「……実はまだ決まってないの、名前って一生ものだからこの子にピッタリな名前にしたいんだけど全然思い浮かばなくて」
まだ無い( ノД`)シクシク……
「そうなんだ。でもそのくらい真剣に悩んでるんだからきっと良い名前が思いつくさ」
「……そうかな?」
「そうだよ」
お~お、人見知りのサフィーナちゃんがあんなに楽しそうに話すなんて、流石は主人公、話術も冴えてるぜ……でもなサイト君よ、サフィーナちゃんはあくまで『お友達枠』だからな、そこんとこわきまえろよシメんぞコラ
サイト君が謎の寒気を感じて周りをキョロキョロと見回し、その様子を不思議そうに小首を傾けるサフィーナマジ可愛い
しかし、鉄壁スカートならぬ、鉄壁前髪だな、小首を傾けたのに一切目が見えなかった、後で人目のつかないところで確認してみよう
「さ、サイトさんってミス・サイファーとお知り合いなんですか?」
お、シエスタちゃんもようやく回復したみたいだな、そうなんですお友達(重要)なんですよ
「ああ、この世界に来た日にさっきみたいにサビドラの奴に咥えられて来て自己紹介してくれたんだ」
サビドラって、錆たドラゴンの略かい、もっと捻った愛称にしてくれよ……サフィーナちゃんもそれもありかもって顔をやめなさい、虚無の日前後くらいには脱皮するからその名前は無効になるぞ
「そうなんですか。ミス・サイファー、先ほどは貴女様の使い魔を見て情けない姿をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」
いや、あんな感じにドラゴンが空から降ってきたら一般人は大体同じ反応を示すから気にしてはダメですよ、君はこれからサフィーナちゃんのお友達として苦楽を共にしていくんだから
「……大丈夫だから、シエスタさんも顔を上げて」
「はい、わかりました。ところで、ミス・サイファーは何しに水場までいらっしゃたのですか?」
「そう言えばそうだな、サフィーナって貴族だろ、自分で洗濯しに来た訳じゃないんだろ?」
「……特に用事はないの、朝起きて窓からお外を見ていたら急にサビドラちゃんが窓に突っ込んで来て私のマントを咥えてここに連れてきたの」
みなの視線が一斉に俺に突き刺さるがサフィーナちゃんの友達作り+原作介入の為とは言えないから猫みたいに前足で顔を洗うしぐさをして誤魔化すことにする
そんな納得いかないという顔で見たって俺は黙秘するぞ
「って、そろそろ部屋に戻らなきゃまずい。シエスタ、洗濯もの頼んだぞ、あとサフィーナ、また時間があったら話を聞かせてくれよな」
「任せてくださいサイトさん」
「……またね、サイト君」
顔を赤くして小さく手をふりふりするサフィーナちゃんマジ可愛い。まだ朝なのに萌え死にそうだぜ
「……じゃぁ、私も帰るね。またねシエスタ」
「はい、いってらっしゃいませ、ミス・サイファー」
俺は今度は背中にサフィーナちゃんを乗せ部屋に向けて飛び立ち、窓からサフィーナちゃんを部屋に戻したら今度からはちゃんと背中に乗せて運んでねって怒られちゃった。
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皆さんに大変悲しいお知らせがございます。それは私の為にサフィーナちゃんがメイドのシエスタちゃんに頼んで用意してくれた朝ごはんの山盛のお肉がなくなり、はし……何とかという草がお皿いっぱいに盛られています
「あなたはおじいちゃんだからお肉は身体に毒なのねん、だからお肉は育ち盛りのイルククゥが食べてあげるの」
と、犯人はこの様に供述しております……誰がおじいちゃんやねん、バリバリの二十代やぞ
「おじいちゃんはこのニガ……栄養満点の草を食べた方がいいの、きっともっと長生き出来るのん」
と、犯人はこの様に供述しております……錆びてるから老けて見えるけどバリバリの二十代やぞ
まてまてまてまだ慌てる時間じゃない、相手は人間換算で十歳の女の子だ、つまりは小学生、社会人の大人の俺がお肉を取られたぐらいで怒っては体面的にまずい
とりあえずむかっ腹はたったが大人の余裕で我慢しクソ苦いと各方面から評判のはしばみ草を食べてみるか。
ムッシャ、ムッシャ、ムッシャ……まず~~!! 呑み込めない程苦い、草の食べられないところみたいな味がする、イルククゥお茶を入れて来てくれ! 早く!
「ふ~。お腹一杯なのね。……あ! おねえさま~はしばみ草も残さず食べたの~」
無視かよお子様め。おまけに全部俺に押し付けたくせに自分が食ったみたいに主張するな!!
と、怒鳴り込んで行きたいが迎えに来たタバサと仲良く歩いていく姿をみたら今回だけは我慢しようと思えてしまう
しかしどうしようこれ……残すのもあれだし……食うか……一気に口にいれて水で流し込めば苦味も感じないだろう
食べたら俺もサフィーナちゃんの下に急ごう、もうじき待ちに待った授業の始まりだ、このあたりの流れはほぼ完ぺきに把握しているからな
爆発後の後始末をサフィーナちゃんとお手伝いしてサイト君がルイズを必要以上に責めないように二人で目を光らせれば二人の俺らへの好感度うなぎ上りってか
ああ、本当に楽しみだ……
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外伝『タバサの冒険2』番外編『シルフィードの一日』の挿絵に大きなマンガ肉を嬉しそうに頬張るイルククゥとその後ろで大量のはしばみ草が盛られた皿の前でギャグ顔で大口を開け緑色の液体を吐く鋼龍の絵が追加される
外伝作品なので物語への影響は全くみられない・・・
『シルフィードの一日』の挿絵に描かれているのは『錆鋼龍』ではなく『鋼龍』ですので時間的に問題はありません
つまり未来に至るまでずっとお肉を交換という名の強奪が続いているのだ!
相手が子供でも嫌なら嫌と断りましょう
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次の日の話Ⅱ 鋼龍目的を達成する
この投稿作品に計画性はありません
「変わるきっかけが欲しい」召喚魔法を唱えながら私は心の中でそう呟いていた。
恥ずかしがりやで、他人が苦手で、話すのも苦手で、魔法の才能も伸び悩んでいる、そんな自分を変えてくれるきっかけをまだ見ぬ使い魔に託して私は杖をふるった……
そんな消極的な私が召喚したのは強引すぎるほどの行動力を持った錆びたドラゴンでした……
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お~お~、これがゼロ魔の世界の教室か、アニメで見た通りの内装だな。
使い魔を召喚した次の日のだけあって珍獣、鳥類、哺乳類、何でもござれって感じだが俺から見れば地味すぎるくらいだ。
周りを見回しても俺という古龍種鋼龍クシャルダオラを超えるインパクトを持つ使い魔は存在しない
まぁ、インパクトという事だけはルイズの使い魔であるサイトもなかなかのもんだったがこの学園では二番目だな
じゃあ一番は誰かって……言わせんなよ恥ずかしい
しかも壁に張り付いて窓から首を突っ込んで教室を眺めているという行動で更に目立ってしまっている、さあ存分に俺に注目するが良い愚民という名の一般モブどもよ、俺への高評価はそのままサフィーナちゃんの高評価に繋がるのだから精一杯無い頭で俺らを称賛する言葉でも考えるが良い
それにサフィーナちゃんが教壇近くの窓際の席に座ってくれたおかげでルイズの錬金失敗の爆発を間近で拝見する事が出来るぜ……その後はお楽しみの連続で脳汁がヤバいぜ、は~早く授業が始まんないかな~
……しかし、本当にサフィーナちゃんって友達作りが苦手なんだな、教室を見回してみれば仲の良い者同士談笑していたリ、使い魔を見せ合ったり、複数の男子学生が一人の女生徒の周りに群がってその子の気を引こうといろいろやっているのが見える
そんな喧騒の中、うちの御主人様は一人で窓際に座って教科書とノートを出して授業の予習や復習といった勉学に励んでおられた……(´;ω;`)ウッ…
「きゃっ! いきなりどうしたの? くすぐったいよ」
気が付いたら俺はサフィーナちゃんの肩に顔を擦り付け、アメリカンホームドラマのバカ犬みたいに頬をペロペロしていた
もちろんいやらしい事ではない、飼い猫をペロペロする事は猫を飼った事のある人は一度はやった事だと思う
もしいやらしい事だと思われているのならば真に遺憾である
「もう、もうすぐ授業が始まるから、そのあとで遊んであげるから」
うん! いっぱい遊ぼうね、俺で良かったらいくらでも遊んであげるからね、ほかの人には体験できないような事も古龍の俺ならば出来るから思い出をいっぱいつくろうね
やがて教室にこの授業の担当らしい女性の教師が入ってきた
あたりをざっと見渡し召喚された使い魔を見ているようだが窓の外から首を出している俺と目があった
「ミス・サイファーは珍しいドラゴンを召喚したと聞き及んでいましたが、ここまで人の生活に興味を持つドラゴンは珍しいですね」
「……ありがとうございます」
当たり前だろ、異世界の生活に興味が湧かないなんて男の子失格だろ
「それに、珍しいと言えばミス・ヴァリエールも珍しい使い魔を召喚したそうですね」
珍しい使い魔じゃなくて、伝説の使い魔なんだぜ先生。サイト君は『神の盾』なんだからサフィーナちゃんの次に丁重に扱えよ
「おい、ゼロのルイズ。いくら召喚に失敗したからって他所から平民を雇って連れてくるなよ!」
「何ですって!? コイツは私が召喚したのよ! 適当なこと言わないでよ。風邪っぴきのマリコルヌ!」
いかにも子供らしい低レベルの口喧嘩だがこの口喧嘩が伝説の序章の始まりだと思うと感動すら覚える。いいぞもっとやれ
そんなコントは長くは続かず授業中の私語は厳禁だとばかりに教師の魔法によって風邪っぴきのマリコルヌの口には錬金で精製された土が押し込められた
……ついでに鼻も塞いだらいいのよ、こいつの目立った活躍はたしか原作でもここだけだったし、いなくても無問題だ
「それでは、授業をはじめますよ。私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。土系統の魔法をこれから1年間皆さんに講義します。魔法の四大系統はご存じですね? ミス・ヴァリエール」
「は、はい。『土』『水』『火』『風』の4つです」
ここら辺の事は原作、漫画、アニメで散々見たり聞いたりした内容なので正直退屈だ、おまけに教室には授業中特有の緊張感が漂い始め、猛烈に眠気がくる
しかし、ここで眠ってしまえばサフィーナちゃんの評価も下がってしまうと思われるので食い入るように教師の方を見て眠気を誤魔化すことにする
「現在は失われた系統である『虚無』を合わせると、全部で5つの系統があることは、皆さんも知っての通りです。その中でも土系統の魔法は皆さんの生活と密接に関係しているのです……」
俺はある意味授業の予習はばっちりです。だから欠伸が出るのはしかたないんです
「今日は、みなさんに土系統魔法の基礎である『錬金』の呪文を学んでもらいます。1年生のときにできるようになった人もいるでしょうが基本は魔法を学ぶ上で大切なことですので、もう一度おさらいすることにします」
ついにイベントのフラグが立った!! サフィーナちゃん真鍮を金と間違えて驚く準備はOK、ルイズの錬金爆発を回避する準備はOK 一連の流れはトントン拍子に進むから途中セーブは出来ませんよ(笑)
赤土の先生が錬金の魔法を唱え、出来上がった物を見て赤髪ボインねーちゃんが身を乗り出して叫んだ
「ゴゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
「いいえ、これは真鍮ですよ。金を錬成できるのは、残念ながら『スクウェア』クラスのメイジだけです。私は、ただの『トライアングル』ですから」
何気ない魔法の自慢、さすがです。ですがここの教師は頭でっかちばかりで実戦ではてんで役に立ちませーン、だからサフィーナちゃんは頑張って実戦に慣れようね、これからはそんな刺激的な毎日が待っているんだから
ふと疑問に思ったのだが、サフィーナちゃんは何属性の『ドット』なんだろうな。俺を呼んだんだから『風』か『水』かな……まぁいいか、戦闘は俺が中心に戦ってサフィーナちゃんにはほんのりと支援してもらおうっと
「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい」
おや、教師がルイズとサイトの私語を注意するという事はもうイベントの時間か、なんだかんだ言って昔を思い出す楽しい授業でしたよ
「申し訳ありません……」
「そうね。おしゃべりをする暇があるのだから、あなたにやってもらいましょうか」
「え? わたしがですか?」
「そうです。ここにある石ころを使って『錬金』してごらんなさい」
「危険です!」
赤髪ボインねーちゃんの発言に教室内のほとんど全員が同意して頷いていた
「危険ですか?『錬金』の魔法のいったいどこが危険だというのですか。さあ、ミス・ヴァリエール。怖がらずにやってごらんなさい。私は他の先生方から、あなたが大変な努力家だと伺っています。だからきっと大丈夫。失敗を畏れていたら何もできませんよ」
「ヴァリエール。お願いだからやめて」
残念ながら原作、漫画、アニメ、全てにおいてルイズが錬金を辞退する事は無いんですよ、覚悟を決めなさい、俺は出来ている
「わたし、やります」
ほーらやっぱり。赤髪……いやキュルケ、諦めて早く机の下に避難するか、さっき教室から目立たないように退出したタバサみたいに身を守る事に集中しなさい、俺は窓から首を抜くだけでいいから楽勝だけどね
「ミス・ヴァリエール。いいですか? 『錬金』したいと願う金属を、強く心に思い浮かべながら呪文を唱えるのです」
さぁ、俺の原作介入の野望のために……爆発させろルイズ!! お前なら出来る!!
・
・
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やあ、皆さんこんにちは。俺は今保健室におります
え? なぜかって? いろいろと過程を省いて説明いたしますと、黒板の近くに居たサフィーナちゃんは見事爆発に巻き込まれてしまい只今ベッドでご就寝中でございます
どうしてこうなった、いや、最初から爆発する事は分かっていたのにサフィーナちゃんが教壇近くの席にいる事を注意できなかった俺の落ち度ですね、はい。
……って、超やばいよ、サフィーナちゃんが起きないとこの次のイベントに参加できないじゃないか
ただでさえ一緒に教室のおかたづけ作戦が潰えてしまい、このまま食堂イベントまで見られないとなると序盤の見せ場全部見逃すことになるじゃないか!
「使い魔君、心配しなくてもミス・サイファーの身体に外傷は無いからすぐに目を覚ましますよ」
お気遣いありがとうございます、名も知らない保健医さん。ですが、すぐって何時ですか!? 食堂イベントには間に合いますか!?
「ひっ! そんなに唸り声を上げなくてもほんとに大丈夫ですから……では私はこれで……」
ちっ、逃げやがって、起きなかったら頭からかみ砕いてやろう
サフィーナちゃんお願いだから起きてくださいよ後生だから……イベントに、原作に介入したいんだよ
今ここで関わらないと主人公との絡みが希薄で好感度不足で次の盗賊イベントに参加させてもらえないかもしれないじゃないか
そんな感じで一人で慌てていたら保健室に青髪の小柄な少女が入室しベッドに寝ているサフィーナに杖を向け始めた
なんでこの子……タバサがサフィーナちゃんに杖を向けるんだよ、意味わかんねえよ! サフィーナちゃんに何すんじゃボケ!
「心配しないで、回復させるだけ」
ますます意味わかんねえよ! 人と関わろうとしないしタバサとボッ……孤高の存在であるサフィーナちゃんとに接点なんて皆無だろう!
「朝のお詫びだから、気にしないでほしい」
朝のお詫びだぁ、……あっ(察し) シルフィードのやつ、黙っていてやったのに結局ばれたんだ
「ん……んん。あれ、ここは?」
やった~サフィーナちゃんが起きた~時間的にも余裕アリアリで最高です!
「……ミス・タバサ? 何故ここに……私は一体……」
「貴女はミス・ヴァリエールの起こした爆発で気を失いここに運ばれた」
「え? そうだったんだ」
「授業は自習扱いとなっているから大丈夫」
言いたいことだけ言って退室していきやがった……もっと説明しろよ、言葉足らずなんだよ
「サビドラちゃんが保健室に連れてきてくれたの?」
はいそうです。……と言いたいが場所も分かんなかったし、この体の大きさでは教室内に入れなかったからただ見てるだけでした
「そうなんだ。でも私が起きるまでそばに居てくれたんでしょう。ありがとう、もう大丈夫だよ」
ああ、まだ時間もあるし起きなくても良いんだよ。サフィーナちゃんの健康が俺にとっては一番……大切なんだから
「サビドラちゃんが私の事心配してくれるのが何となくだけど分かるよ。ふふ、使い魔との共感作用ってこういうとき便利だよね」
全くですよ、言葉が通じないのに何となくお互いに考えが分かるなんて素晴らしすぎですよ
……おっと、忘れてた、サフィーナちゃんが寝てる間に取ってきたんだった。起きたなら『これ』を魔法で加工して貰えないでしょうか
「サビドラちゃん、これ、さびた剣? これがどうしたの?……え、錬金で加工してほしいの!? でもドットの私じゃたいして綺麗にならないよ」
大丈夫、少しでも剣としての機能がつけば万々歳だからそんなに気負う必要は無いよ
「うん分かった、やってみるよ……けど、何に使うのこれ? メイジの私には必要ないよ」
必要とする伝説の使い魔がもうすぐ現れるんですよ。ささ、サフィーナちゃんお願いします……
・
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「諸君!決闘だ!!」
やはり俺というイレギュラーが存在しようと未来は変わらない。見事に原作通りに二股がばれたギーシュがサイト君相手に薔薇杖を振り回しながらカッコつけている
サイト君の方は目の前のキザ野郎をブッ飛ばしたいみたいでヤル気満々で臨戦態勢だ
しかしサイト君よ、ルーンの力が発動していない今のお前はうちの可愛い御主人様以下の実力しかないんだぞ
でもこんなに殺伐とした雰囲気の二人だが原作的に将来良き友同士になるのだから人生って分からないよなぁ
もちろんその中にサフィーナちゃんも仲間入りするんだけどね
「ねぇ、サビドラちゃん。私の気のせいならいいんだけど……まさか……この剣を作っていた理由って……」
お、サフィーナちゃんなかなか鋭い、頭はそんなに鈍くないようだな。そうです、そのまさかなのです(ゲス顔スマイル)
って、そんなことしてる間にサイト君がワルキューレに一発もらって地面に這いつくばってる! 思ったよりクソ弱いぞ主人公! 人並み以上にあるのはラッキースケベだけか。それでも伝説の使い魔か、あらゆる武器を使ってその青銅の鎧を切り刻めよ……って武器が無かったんだー(棒読)
では行きますよサフィーナちゃん。これで貴女も主要人物の仲間入りですよ
「ねぇ、何でまた私のマントを咥えるの? まさか……」
か~いにゅう~♪ か~いにゅう~♪ 原~作介~入~♬ では……飛翔!
「って! やっぱり~~~!!あんな目立つ場所は嫌~~!」
サフィーナちゃんを咥えたまま俺はサイト君に追撃しようとするワルキューレの目の前に着陸し、とりあえず尻尾でワルキューレを薙ぎ払うと面白い様にヘシャゲ吹き飛んでいく
「ミス・サイファー。神聖な決闘に横やりを入れるとは、どういうつもりだい?」
ワルキューレを破壊されたギーシュがサフィーナちゃんを睨み付けてくる。周囲の視線も同時に集まり彼女に弁解の言葉を求めるも残念ながら彼女はさびた剣(錬金により少し綺麗になった)を抱きかかえながらフリーズしてしまったていた
しかたがないので軽めに咆哮をあげ、さも不服があるとばかりにギーシュをにらみつける
「き、君はこの決闘に何か不服があるとでもいうのか!?」
お、今日は誰もかしこも察しが良いな、その通りだよ
「サビドラ。悪いけど引っ込んでてくれ、これは俺の喧嘩なんだ・・・」
さすが主人公。圧倒的不利な状況なのにまだ戦う意思があるなんて、ほんとに平和な日本の一般人だったのかこいつ。でも大丈夫とっておきの武器を用意してあげたからね、いっぱいサフィーナちゃんに恩義を感じてね
サフィーナちゃん、固まってないでその剣をサイト君にあげなさい
「俺は大丈夫だから、サフィーナも下がっていてくれ」
さぁ、君のやるべき事をするのです。それで貴女は大いなる流れに巻き込ま……いや、何でもない
「……あの、これ……サビドラちゃんから……」
「これは、剣か? サンキュー、使わせてもらうぜ」
よく出来ましたサフィーナちゃん、貴女には花マルを差し上げましょう。さ、用事も済んだし帰りは俺の背中に乗ってくださいな
「話は済んだのかい。なるほどね、ミス・サイファーの使い魔君は平民が丸腰なのを気にしていたのか。確かに貴族は魔法で戦う、平民は武器を使い戦う、そこの所は僕の配慮不足だったようだ、フォローをありがとう使い魔君……だがね平民、その武器を僕に向ければ手加減はしてあげられないよ、それでもいいなら掛かってきたまえ」
その言葉とともに薔薇杖の花弁は全て地面に落ち6体のワルキューレが現れ、武器を持った伝説の使い魔のルーンは輝き始め、登場しない筈の使い魔は薄ら笑いを浮かべる
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まぁ、結果は判り切っていたが、サイト君はさびた剣でワルキューレをバラバラに切り刻み、余裕の大勝利を収めた。やはり武器を持った『ガンダールヴ』は無敵だね❤
「……ホントに勝っちゃった」
ポカーンとしているサフィーナちゃんも可愛いなぁ。これからサイト君の活躍を見る機会が増えるんだから今の内から慣れていなさいね
「……ねぇ、サビドラちゃんはどこまで分かって、いえ、知っているの?」
ん? ああ、俺の行動が先読みしているみたいだったから、サフィーナちゃんは不思議がっているんだね
ふふふ、我が古龍の脳は(原作既読済)は全てを記憶している、この程度造作も無い事……なんて言えるか!
とりあえず伏線っぽく唸り声をあげておこう、グルルル
「お~い、サフィーナ~!」
「……え!? サイト君にミス・ヴァリエール!?」
どうやら主人公サイドの好感度を一定以上上げたおかげでエクストラ・ステージに突入しちゃったぽいな
まさか向こうからサフィーナちゃんに接触してくるとは……これはもう勝ったも同然だな。スイカ割りしなくちゃ(使命感)
サイト君からお礼を言われたりルイズさんにツンデレらしく遠回しにお礼を言われたりしてテンパってるサフィーナちゃんマジ可愛ゆす
次のイベントは虚無の日までお預けか……ああ、待ち遠しいなぁ
サフィーナちゃんへのお礼合戦はいつの間にかにサイトとルイズの言い争いに変わっており、二人の間に立って言い争いを止めようとしている彼女を見ながら未来の日々に思いをはせ始めた
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原作第一巻の挿絵にさびた剣でワルキューレを切り裂く主人公サイトの挿絵が追加される。その雄々しい姿はまさに伝説の使い魔に相応しいものであった
ゼロ魔wikipediaにサフィーナと使い魔の項目が追加され『世界』は異物を肯定し『物語』は過程を書き換えるも『伝説』の勝利は変わりなかった……
ゼロ魔 - wikipedia
登場人物
サフィーナ・イファナ・ベラ・ラ・ミ・サイファー
ルイズと同学年の女子生徒で金髪と目が前髪で隠れているのが特徴。
照れ屋で引っ込み思案傾向の大人しい女の子で自分から行動するのが苦手
使い魔として召喚された平賀才人は錆びた龍に咥えられながら自己紹介する彼女を見てここが異世界だと確信したらしい
使い魔は図鑑にも載っていない珍しい竜である『サビドラ』(正式名称ではなく愛称)
サビドラ(名称不明)
サフィーナの使い魔で全身錆付いている龍であり性別はオスと思われる
龍に似た姿のため龍と記載されているが種族は不明でありトリステイン魔法学院のライブラリにも記録が無くあまりに異質な存在である
全長は5メイル強くらいとやや小型であるが才人とギーシュの決闘に乱入してきた時に青銅製とはいえワルキューレを難なく破壊出来ることからそのスペックは高いと思われる
名前はまだ決まっていないため才人が付けた愛称がそのまま名前として使われている
召喚された時からルイズと才人に興味があるような素振りを見せ上記の決闘時に才人に剣を用意するなどその行動には謎が多い
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虚無の日の話 鋼龍は街に向かう
私はもう無理そうです、だからこのお話には計画性がありません
「やはりあの強さは間違いない! 伝説の使い魔『ガンダールヴ』で間違いありません!」
遠見の鏡の前でワンワン騒ぐ禿げ教師に学園の最高責任者であるオールド・オスマンは辟易していた
「オールド・オスマン。さっそく王室に報告して、指示を仰がないことには・・・」
「それには及ばん」
「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ! 始祖ブリミルが召喚した伝説の使い魔『ガンダールヴ』といえば、あらゆる武器を使いこなし、千人という軍隊を一人で壊滅させ、さらには並みのメイジでは全く歯が立たなかったと記録に残っている人物ですぞ」
「そうじゃ、だからこそ、この件は内密にしておきたいんじゃ・・・もしこの事が王室のボンクラどもに知られたら、奴らは『ガンダールヴ』というオモチャを政治に利用し国中、いや隣国にまで戦火を広めてしまうぞい。あの宮廷で暇をもてあましている違中どもならやりかねんわ」
「た、たしかに・・・」
「それにあの錆龍の存在もあるしのぉ・・・」
オールド・オスマンの頭の中には決闘に乱入した錆龍の姿があった
普通、竜種は絶滅したといわれる韻竜を除き、大多数が少し頭の良い動物くらいの知能しか無いのが一般的である。
しかしあの龍はその常識を遥かに逸脱した行動をとっている
他の教師からの報告によれば、召喚された時から暴れたりせず冷静さを保ち、周りを少し確認しただけでまるで状況が飲み込めたといわんばかりに召喚者の女生徒に頭を下げ『コントラクト・サーヴァント』を要求し、嫌がる素振りも見せず受け入れ、契約後もそれが当然とばかりに女生徒に従順であった
問題の『剣』も不確かな情報だが前日の夜から自らの錆た鱗を使い制作し、仕上げを自らの主人に行わせたという
その結果、ミス・ヴァリエールの使い魔は本来なら平民が勝てるはずの無いメイジ相手に勝利して見せたのだ
しかも憎たらしい事に錆龍は自ら目立とうとはせず、まるで主人を隠れ蓑の様に使いその異質さを隠そうと行動している
「奴は確実に『ガンダールヴ』の存在を認識しておる、奴に対してこちらも十分な警戒が必要かもしれんのぉ」
遠見の鏡に映る錆龍は『ガンダールヴ』の少年とその主人のメイジを観察するかのように視線を二人に固定していた
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やあ、こんばんわ。みんな元気にしているかい。俺はいつも元気いっぱいさ
「う~~~ん。これじゃあ少し派手かなぁ? でも、こっちのは地味かもしれないし・・・」
今俺の可愛いいご主人様は鏡の前でドレスを何着もとっかえひっかえし衣装合わせを行っている
これはもうすぐ開催される『フリッグの舞踏会』のための衣装選び・・・ではなく
「ねえ、ねえサビドラちゃん。明日のルイズとのお出掛の服はこっちで良いと思う?私はちょっと地味だと思うんだけど」
どうだ!! 俺の血の滲む様な努力の結果、サフィーナちゃんは主人公であらせられるルイズ様に虚無の日に一緒にお買い物に行こうと誘われたのだ!!
これはいわゆる、デルフリンガー購入イベント参加決定、俺様大勝利である
もう、サイコーだよ! ここ数日毎日サフィーナちゃんとルイズが話しやすい空間を演出したり、ルイズとサイト君の言い争いをサフィーナちゃんに仲裁させたりと好感度稼ぎに邁進してきた結果がついに実を結んだわけですよ
ここまで主人公たちと関われば後はなき崩し的に・・・
街でお買い物⇒デルフ購入⇒夜に学園の校庭で土くれの盗賊に遭遇⇒朝教師の緊急会議に呼び出され主人公と共に盗賊退治に立候補⇒大勝利、ハッピーエンド
完璧だ。文句がないくらい完璧な流れだ、流れは間違いなく俺に向かって吹いている
「ねえ、サビドラちゃん、聞いてるの?」
大丈夫だよ可愛いご主人様の言葉は決して聞きもらしていないよ・・・でもねツッコム事が多すぎるよサフィーナちゃん(汗)
まず、お友達とのお出掛ではドレスは着ないんだよ
次にサフィーナちゃんはそのドレスが地味だとおっしゃっておりますがそのドレス、ニシキヘビが巻き付いたみたいな柄なんですけど・・・ドコが地味なんですか?
趣味悪いよ・・・いや、これは彼女の萌えポイントの一つじゃなんだろうか
可愛いけど趣味が変・・・いける!
じゃなくて、確か学生は学生服の着用が義務づけられてるんじゃないのかな?
いや、アニメとか漫画でも、ほとんど制服だったしそうだよね?
う~ん、ずいぶん昔の事だからその辺の細かい事があやふやになってしまっていが・・・ま、いいか。ここを卒業するまでは制服を着たままでも問題ないし、主人公達も制服で行動してたし大丈夫でしょう
と、いう訳で・・・はいサフィーナちゃん新しい制服だよ
「え? 学園の制服がどうしたのサビドラちゃん・・・えぇ!明日はこれを着ていけって!? まぁ、サビドラちゃんがこれで良いって言うなら制服で行くけど・・・変じゃないかな? 」
全然変じゃないよ。いつも通り愛嬌があって可愛いご主人様だよ。だからその趣味の悪・・・ゴホン、独創的なデザインのドレスは箪笥の肥やしにしましょうね(後で処分決定)
「ふぁ~ぁ、お洋服が決まったら何だか眠くなっちゃった。私、もう寝るね・・・サビドラちゃんも今日はありがとう」
いえいえ、どういたしまして。サフィーナちゃんの為ならたとえ火の中、スカートの中、何処までもお伴致しますよ
はぁ~、手早く寝間着に着替えるサフィーナちゃんまじ可愛い、出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでてスタイルも割と整っていてホントすげーよ
まぁ、こんなに可愛い子が目の前で無防備にお着替えしても俺は全く興奮しないがな
え、何故かって? 普通に種族が違うからだよ
俺がいくら人間の頃の記憶を持っていて人間ポイからといっても俺は『鋼龍クシャルダオラ』なのだ
いくら俺の御主人さまが可愛い子だからと言っても所詮は別種族、愛でる気持ちはあってもそっちの気はまるで起こらない
これはサフィーナちゃんだから特別興奮しない訳ではなく他の女生徒でも検証済みである
え? 誰で検証したかって? ははっ、決闘の後で主人公のサイト君をたらし込む女生徒がいたでしょう
その様子を一部始終窓から覗いていたけど、キュルケは色っぽいなぁ位の感想しかなく格別興奮したりはしなかったなぁ
ただ俺が覗いているのに横入りしようとする男子生徒がうざったかったから尻尾で地面に叩き落としたがな
少ししてルイズも部屋に突撃してきたけど原作とは違ってあまり暴れたりサイトを罵倒したりしなかったなぁ
そのやり取りも見るのが楽しみでジッとルイズを眺めていたのに残念だ
なぜかサフィーナちゃんも部屋にやってきてみんなにしきりに謝っていたけどなんか悪いことでもしたのかなぁ・・・それは無い。断言できるうちのサフィーナちゃんが悪い事は何一つない!
おっと、つい考え事をしてたらもうサフィーナちゃんは御就寝しちゃったか
よし、俺も寝床に帰って明日に備えますか。おやすみなさいサフィーナちゃん
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あ~たらしい~♬ あ~さがきた~ ♪希~望のあ~さがきた~♫
俺は朝早くからサフィーナちゃんを背中に乗せ街に向けて飛行中である、勿論サフィーナちゃんだけではなくちゃんとルイズ達主人公コンビも一緒に空輸しておりますよ
最初は原作通り馬を借りるとか言っていたが飛行できる俺がいるということで運んでやることにしたわけですよ
だから女の子二人を背中に乗せて飛ぶという役得を味わっております
これで二人に恩を売ったことで只でさえ高い好感度を更に上げる事ができるし、サフィーナちゃんとルイズの間に更なる友情が芽生える事を期待している
え?サイト君は何処にいるかって。背中は女の子で一杯だから俺が抱きかかえておりますよ
男を抱くなんて精神衛生上宜しくないが背中に乗せてハーレムを味わわせるのも、それはそれでむかつくからこの位置という訳である
「うおぉぉぉ!!俺、ホントにドラゴンと共に空を飛んでるよ!! ホントスゲェよ!」
「うっさいわねバカ犬!。少しは静かに出来ないの! せっかくの優雅な空の旅が台無しだわ!」
「ル、ルイズ、少し落ち着いて、サ、サイト君だって悪気がある訳じゃないと思うし」
「サフィーナはアイツに少し甘いのよ。ここでちゃんと言い聞かせておかないと余所でも同じことして恥を掻くのは主人である私なんだから」
「そういうものなのかなぁ・・・あっ、ルイズ、もう街が見えてきたよ」
「本当ね。馬で来るよりも早く着いたからゆっくりと買い物ができそうね」
うはー、俺の背中で女子会ポイこと話してるよ、抱きかかえているサイト君が五月蠅くて何も聞こえんがな
ともあれ予定より遅くなってしまったな
思っていたより早く翼の関節まで錆ついてきてしまったので最盛期の半分以下のスピードしか出せなかったな
早くて今夜くらいが脱皮の時期だろう、身体の内側から筋肉が膨れあがり外殻を突き破ろうとしている
本来なら安全に脱皮出来る場所に移動しなくてはならないがこの世界なら襲われる心配もないし大丈夫だろう
それより今は憧れの王都の観光に集中しましょうか・・・
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「もう、サビドラちゃん、お願いだからここでおとなしく待ってて。貴方は大きすぎるから街に入ったら大騒ぎになっちゃうの」
やだやだやだやだ、他の二次創作主人公が街に入れて、なんで俺が街に入れないんだよ! 可笑しいだろ常識的に考えて、こちとらこれだけが楽しみで錆た身体に鞭打ってここまではるばる飛んできたんだよ!
もう首を横にブンブン振って置いて行かれるのが嫌だってアッピールしまくってやるぜ
「サビドラちゃん言う事を聞いてよぉ~」
上目遣いで迫っても駄目なもんは駄目で、嫌なもんは嫌なんだ!
街に入れないとデルフリンガー購入イベントが見られないじゃないの
サフィーナちゃんは俺の原作イベント全制覇の野望がここで終わってもいいって言うのかよ!
くう~、こんなお話の序盤でご主人様との対立イベントが起こるなんて聞いてないぞ!
「・・・ルイズ。俺の中のカッコいいドラゴンのイメージが崩れていくんだけど」
「奇遇ね。私もサフィーナのドラゴンのこと、錆びてるけど羨ましいなぁと思っていたんだけど、なんかそんな気が薄れてきたわ」
やかましいぞ主人公コンビが俺が街に入れるか入れないかの瀬戸際でそんなどうでもいい事考えてるんじゃねぇ
あっ。良いこと思いついた・・・あそこの道端に落ちてるロープを使って・・・
「なあルイズ。サビドラの奴、拾ったロープを首に巻き付けて何やってんだろうな」
「そうねぇ。巻きつけたロープの先をサフィーナに握らせているから首輪とリードのつもりなんじゃないの」
お、察しがいいな主人公コンビ、これは、題して『犬の散歩だから大丈夫作戦』なのだ。代償は俺のプライドだけで良いと非常にリーズナブルなのだ
原作介入出来るならプライドなんてかなぐり捨ててやんよ
「はぁ~、しょうがないなぁ。ごめんルイズ、サビドラちゃんが言う事聞かないから二人でここで待ってる事にするね」
なにぃぃぃいぃ!! それはいかん! 俺のもう一つの野望の『サフィーナちゃんお友達増やそう大作戦』が破たんしてしまう
ぐぐぐうぅうぅうぅうう!!(葛藤中)
幼気な少女のお買い物を駄目にするギリ20代の男
最悪じゃないか。俺が悪いのか、俺が悪いんか、原作見たさに街に入りたいと駄々をこねる俺が悪いんか!
「確かに、サビドラがこんなじゃ、ちょっと無理っぽいなぁ」
「このバカサイト! サフィーナが今日のお買い物をどれだけ楽しみにしていたか知らない訳じゃないでしょ!少しは考えてしゃべりなさいよね!」
うっっっっわぁぁぁぁぁぁ! 完璧に俺が悪い流れじゃないですか!? そんな目で俺を見るんじゃない
サフィーナちゃんも『仕方がないよね』って感じの哀愁を出さないでくれよ
これは大人としてまずいでしょ、ぐぎぎ良心が痛んでくる
「私は大丈夫だから二人で・・・きゃぁぁ! マントは咥えないでっていつも言ってるでしょう!」
すまんサフィーナちゃん、本当にすまん。このまま咥えてルイズの横まで運んで降ろして、三人の疑問の声を無視して少し離れた場所で休眠ポーズ
・・・・と、これで大丈夫。あとはご主人様たちが都合の良いように解釈してもらうのを待つばかりだ
しばらく狸寝入りしていたらサフィーナちゃんがお土産を買ってきてあげるから大人しくしていてねっと言ってきた
どうやら俺の思惑は成功したらしい
街に入れないのは悔しかったが、年頃の女の子に我慢させてまで我が儘を言うほど人間として腐ってはないしな
自分でそう納得する事にして俺は街に入っていく三人を見送るのであった・・グスン
原作一巻の挿絵に首を振ってイヤイヤする錆龍とそれをなだめるサフィーナ、その様子をあきれ顔で眺める主人公達の姿が追加される
全てを許容する『世界』も龍の街への侵入は許容できない模様
サフィーナちゃんはここ最近明るくなり人見知りも軽減傾向。
彼女に幸あれ
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盗賊と会った日 鋼龍は万全の状態です
今後はちゃんと計画性をもって取り組みたいです
・・・なんて言ってるけど私の計画性はボロボロです。
今日もモチベーションを上げるためにクシャルを狩りに行ってきます(遅れる原因)
「はぁ~」
「ル、ルイズ、元気だそうよ、サイト君だって喜んで?いるんだし」
サフィーナの励ましが半分くらいしか耳に入らないくらいルイズは気が滅入っていた
「いや~おでれいた。まさか再び使い手に巡り合えるなんて」
「いや、だから使い手ってなんなんだよ」
「・・・忘れた」
主人の意志に反しての決闘だったが結果としてはサイトは勝利し、決闘での勝利のご褒美として新しい剣を買ってあげるつもりが武器屋で新しい錆び剣を選んだサイトにルイズは絶句した
確かにインテリジェンス・ソードであるこの剣はとてつもなく珍しいモノではあるが・・・ボロいのだ
何度も言う、錆びてボロいのだ
いや、今サイトが腰に下げている錆龍の剣よりはマシ、いや、五十歩百歩、団栗の背比べなのだがルイズの貴族としてのプライドが従者であり、使い魔のサイトがボロを使うのが嫌なのですぐにでも処分したいが
彼の腰に付けている錆び剣は正体不明の龍の鱗を材料に使われ、学校で初めてできた友人からの送りものであり、背中にあるのは世にも珍しい珍品と言うこともあり処分しずらいというジレンマがルイズの中にはあった
「ごめんねルイズ。私の買い物にまで付き合ってもらって・・・」
申し訳なさそうに隣を歩いている友人は言ってきたがルイズは全く気にしてはいなかった
「気にしなくていいわよ。それにしても、ずいぶん買ったわね」
「うん。サビドラちゃんも街に行きたがってたみたいだからお土産くらいは奮発しようと思って。驚くかなサビドラちゃん」
長い前髪のせいで表情は読みにくいが弾んだ声と口角の上がった口元で彼女の喜びがわかる
それほどあの使い魔が大事なのだろうか?
ルイズは一瞬、錆龍を召喚したサフィーナに嫉妬を覚えたが、すぐにその思いは霧散した
メイジの象徴であるマントを咥えて半分自己的に学内を動きまわり、衛兵の鉄の装備品を勝手に食い漁る錆龍の姿を思い出したからだ
御しきれない使い魔ほど厄介なものはない、そういう意味では勝手に決闘をした自分の使い魔にも言えることだ
この奇妙な価値観の一致があったからこそルイズとサフィーナの距離は近づいたともいえるかもしれない
「ええ、ご主人様がここまでしてあげたんだし、きっと驚くわよ」
「ありがとルイズ」
たわいもない会話だったが心許せる友人がいなかったルイズはそれだけで心が満たされた気がした・・・今でもボロ剣と口論しているバカ犬が視界に入らなければの話だったが
「ただいま~。サビドラちゃん、お土産だ・・・・よ?」
一足先にサビドラのもとに走っていたサフィーナの手から荷物が零れ落ち呆然と何かを眺め固まっている
何事かと思いルイズはサイトと共に駆けつける
「どうしたのサフィーナ!? サビドラに何かあったの?」
「お、おい。ル、ルイズ・・・アレ」
アレ? ルイズはサイトが指さした方に視線を向け絶句した
門の外で待機していたサビドラが蹲りピクリともしておらず、まるで置物の様に微動だにしていなかった
ルイズの脳裏に最悪な結末が浮かび上がる、すなわち、サビドラの『死』だ
元より正体も生態も謎だらけの存在だが身体が錆び付き、関節も固まり始めている事からかなりの高齢である可能性があると言うのが教師たちの見解であった
そんなバカなと言いたかった、何かの間違いだとサフィーナに駆け寄りたかった
意を決してルイズがサフィーナに近づこうとした瞬間、サビドラの背部が急激に盛り上がりベコン、バキンと金属が砕けるような音が鳴り響き、ついには砕け、錆びた身体から白銀の身体が姿を表しそのまま錆びた体を脱ぎ捨てるようにゆっくりと姿を表し、翼を大きく広げる
その姿にルイズ達が見とれている間に、ピシ、ピシと何かが硬化するような音が響き始めると白銀の龍の身体は黒銀色の外殻に変わっていき・・・
「きゅー」
そしてそれが終わると同時に卒倒するサフィーナ
錆びがなくなり真新しい姿になった龍は倒れたサフィーナにすり寄り起こそうとしているようだったが、どう見ても捕食の一歩手前だった
「サ、サフィーナ!?」
自らの使い魔を驚かせようと張り切っていた友人は逆に使い魔に驚かされ意識を手放してしまった
急いで駆け寄るルイズとサイト。状況がイマイチ飲み込めていないのかオロオロする鋼龍
「いや~おでれいた、長生きはすんもんだな」
ただ一人、デルフリンガーだけはこの状況下になってもそれしか言わなかった・・・
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皆様、こんばんわ。錆龍改め『鋼龍クシャルダオラ』です。え?、脱皮は夜くらいじゃなかったって?、ははっ、何をおっしゃっているんだかわかりませんねぇ~(笑)
そんな事は置いといて、今現在、俺はめちゃくちゃ身体が軽くて力が湧き出てきます
まさに『ハイ』ってやつだぁぁぁ・・・とここまでテンションは高くないんだけどね
だって俺の一番カッコいい所を主人公たちや可愛いいサフィーナちゃんに見てもらったのに、主人公たちはドン引きでご主人さまは気絶って、俺何か悪いことしました?
まぁ、学校に着くまでには回復してくれたおかげで夜のイベントには参加できたしね
行きたかった王都探索も我慢したし、途中から来たキュルケたちにもちょっかい出さずにじっと待っていたのにこれは酷い
しかし、悪いことばかりではない、サイト君はちゃんとデルフリンガーを購入してたしキュルケはなんとか卿が作った駄剣を買ってきたし、もうたまりません
「はなせ~!! はなしてくれ~!! 俺が何したって言うんだよ!!」
原作にはないセリフだけどサイト君は『無事』ロープで簀巻きにされて吊るされております
いいぞもっとやれ!
・・・と最初はテンション上げて主人公の不幸を観ていたんですけど画面越しや本で語られているのを観るのと目の前で見ているのは違うわけでして、ちょっと可哀そうに思えてきた。(ワクワク)
「二人ともそんなことしても意味がないよ」ゴニョゴニョ
うん、サイト君を心配する常識人ポジのサフィーナちゃんマジ可愛い。でも残念、声が小さいく唯我独尊状態の二人には何も聞こえておりません、これからの流れを変えることは不可能である。
もちろん大きく言っても二人には聞こえませんけどね(笑)
女同士の男の取り合い。醜いものだな(建前)。しかし、それも若さか。でもヒロインしているサフィーナちゃんも一度でもいいから見てみたいな
だがサイト、おめーはダメだ。チカヅイタラ・・・コロス
「うわぁぁ!何か背中がゾワッときた!」
ち、相変わらずカンの良い野郎だ。これが主人公補正か
お、とうとう茶番劇が始まるみたいだな。ルイズが魔法を外して外壁に亀裂を入れ、それをキュケルが笑い、ファイアーボールの魔法で楽勝にロープを焼き切り頭から落下するサイト君
悔しがるルイズを横目にボロ剣から駄剣に装備し直し、腰に錆び剣を装備するサイト君
いや~原作どう・・・あれ? 俺が知っている『ゼロ魔』と装備が違う気がするんだけど?
あれ?あの剣は決闘時のみのチュートリアル装備のはずなんだけど、ギーシュの馬鹿が作った青銅剣みたいになんで使い捨ててないの?
サイト君、キュルケが「要らないでしょ」と言っているのに「友達にもらった大切なものだから使いたい」って何言ってるの?
どいうことですかサフィーナちゃん!? って、ああ、友達といわれ満更でもない顔してるこの子は天使ですか可愛すぎるんですけど!
じゃなくて。このままではゴーレムが襲撃してきたとき駄剣が折れて、頑丈なデルフリンガーで戦うという場面が腰の錆び剣で戦うに変わってしまうかもしれないだろ!?
うぬぼれではないが錆びているとはいえあの剣は古龍の素材で出来ているのだ、切れ味は黄色ゲージだが魔法で強化されたその剣は硬さだけならそこそこの強度があるんだよ
「きゃぁぁ!!」
どうしたの俺の可愛いご主人様、サイトの野郎がラッキースケベってきたのか!よしコロス。原作なんて関係ねぇサフィーナちゃんを汚すものは残らず排除したらぁ!
って、あぁぁぁ!。もう来ちゃったんだ! まだ来ないでよ!!
見上げる先には巨大なゴーレムが学校の壁に拳を叩き込んでいた
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結果だけ言おう!
秘書のロングビルこと土くれのフーケは、無事に破壊の杖をお持ち帰りいたしました。
古龍というイレギュラーがある中、よくも盗んでくれたな(感動)
まぁ、俺は戦いもせずサフィーナちゃんを咥えて身の安全だけを考えて行動していたからな、危険性なんて皆無だったよ
だって下手に戦って俺の強さが露見したら彼女がどの様な行動に出るのだかわからなくなるから、本気で戦うのは第二回戦目からだな
ただ、サフィーナはとても怖かったらしく、俺が寝ている所に毛布を持ってきて一緒に寝たんだがな
ちょー可愛い寝顔だったと言っておこう
そして、現在。ルイズ達主要メンバーとサフィーナちゃんは、オールド・オスマンに呼び出されていますた。
もちろん俺は勝手についてきて窓に首を突っ込んで中の様子をうかがっていますけど
・・・・これは酷い(誇張無し)
ミス・シュヴルーズを筆頭とするダメ教師団の言い訳&罪の擦り付け合いはアニメや本よりも酷い、まさに人間の本性がむき出しているかのようだ
・・・こりゃぁルイズ達学生が憤るのも分かる気がするよ。だってこいつら犯人を捕まえるより、自分たちの地位が揺らぐことばかり心配しているんだもの
その酷さのせいか、持ち前の正義感からは分からないけど、怖がりで人見知りなサフィーナちゃんが討伐に杖をあげてくれた
手に持った杖は微かに震えており、土くれに対しての恐怖を何とか抑え込んでいるその姿はこの古龍の心を震わせてくれた
ほんとにカッコいいんだから・・・絶対に杖を上げないと思って自分が掲げるように用意した杖もどきの木の枝を握りつぶしたのは内緒だぜ
「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持ち、トライアングルメイジだと聞いておる」
あ、サフィーナちゃんの新しい一面に感動していたらオールド・オスマンの生徒紹介コーナーになってる。
紹介されてもいつもと変わらない無表情のタバサ。サフィーナちゃんもタバサが称号もちだという事に驚いている。
でもねサフィーナちゃん、彼女はそれだけではなく王家の血筋でもあるんだよ。彼女はそこそこ優秀だしこの国の姫様と交換してもらえないかなぁ
いや、どっちも私怨で動くタイプだから国は任せたくないなぁ
「ミス・ツェルプストーはゲルマニアで優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、自身も優秀な炎のメイジだと聞いておる」
「あら、どうも」
さも当然といった感じで微笑むキュルケ。その自信に満ち溢れた表情はちゃんと実力に見合っているから凄いよなぁ
あーあ、将来禿げ教師にぞっこんになるなんてこの段階では信じられないよ
「ミス・ヴァリエールは座学では常にトップ、ヴァリエール家もツェルプストー家に負けず劣らず優秀な軍人を輩出する家系じゃ。彼女自身、学業に真摯に打ち込む努力は評価されておる」
ルイズ自身の魔法に関してはノータッチですかオールド・オスマン?だが、褒めてる事に違いない訳でルイズもちょっと得意げだ。気づけよ座学一位、魔法はまるでダメと遠回しに言われてるんだぞ
「そして彼女の使い魔は、ドットとはいえメイジを倒した凄腕の剣士じゃ。恐らく剣の腕は生半可な騎士くらいでは歯が立たぬじゃろう」
平民扱いのサイト君だけど評価は上々じゃないの。まぁ『ガンダールヴ』だってオールド・オスマンは確信している訳だしその評価は妥当と言うべきかな
「最後になったがミス・サイファーはドットとはいえ四属性全てを使いこなせる将来有望な生徒じゃ」
な、何だって!! サフィーナちゃん!? 貴女そんなに優秀だったの!! 流石は古龍を召喚しただけあって素のスペックは高かったんだね
可愛くて一般常識があり気遣いもでき魔法の才能もありおまけに可愛いなんて貴女は主人公ですか!?
あ、あそこの虚無メイジの方が主人公だった、残念。
こんなに優秀なのに原作ではモブとしての登場もないなんてなぁ。まぁ、俺が知っているのはこの世界によく似た創作の話であって、現在自分の置かれている世界の話ではない
きっとこの学校にはサフィーナちゃん同様『ゼロ魔』では語られないけど優秀な人材は眠っているのだろう
そう考えるとやはり世界は小説より奇なりといったところだろう
「「杖にかけて!!」」
こうして土くれのフーケ討伐隊は組まれた。俺も気を引き締めて可愛いサフィーナちゃんの安全を確保しなければな・・・・と、その前に・・・
「きゃっ、何ですか!? いきなり」
二次創作とかで短時間で移動したのに汗臭くないとか、土に汚れていないなどの理由でよく疑われているフーケさんのにおいを嗅いでみたけど・・・まったくわからん。女の人のにおいはするが不快かと聞かれれば不快ではない、しかし確かに言われてみたら汗臭くないような気がするが、そもそも『クシャルダオラ』って匂いに敏感な古龍なのだろうか?
うーむ、全くの無駄骨だったな。そして、勝手に女の人の匂いを嗅ぐなんて破廉恥な真似をしてフーケさんに平謝りするサフィーナちゃん。本当にすみませんでした
この借りはフーケにバックジャンプと共に眼前に巨大な竜巻を発生させるブレスを放つという大技をぶつける事で返したいと思います。
原作一巻の挿絵に錆びた殻を破り脱皮する『鋼龍クシャルダオラ』シーンが加わった
この凄さは生態ムービーでチェックしよう
『物語』は佳境になり『世界』は異物を組み込み再構築される
モハヤニゲルコトハユルサレナイ
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盗賊を捕まえた日 鋼龍の本当の敵は土くれではなかった
さすがの計画性のなさ。
やあ、皆さんこんにちは。
いきなりですけど、犯人が分かっている二時間ドラマに興味がありますか?
俺はあります、犯人が分かっているとあの時の犯人の行動はそういう意味だったのか、といろいろ考察できて楽しいものだからです
まぁ、あろうが、なかろうが、空を飛ぶ俺の真下を走る馬車に盗賊のフーケが乗っているのは確定なんですけどね(笑)
俺の可愛いサフィーナちゃんも犯人と同じ馬車に乗っています
ホントは脱皮したてで新品の俺の背中に乗ってほしかったんだけど、やっぱり少しでもお友達と一緒にさせてあげたかったから馬車に乗るように勧めてあげた訳ですよ
え?危なくないのかって?
大丈夫です、犯人の目的は俺たち討伐隊を巨大ゴーレムで追い込んで『破壊の杖』を使わせ杖の使用方法を探るためなんですからフーケの拠点(嘘)までは安全だから無問題ですよ
ところでイルククゥちゃん。一緒に飛んでいるのにどうして知らない人(龍)を見るような瞳で俺を凝視するんだ?
君にお肉を強奪されたサビドラさんだよ、付き合いはそんなに長くないけど、おじいちゃん、おじいちゃんって慕ってくれてたんだし、そんな瞳で見なくてもいいじゃないか
「ねえそこのこども、おじいちゃんの親類かなにかきゅい」
は?
「使い魔は一人につき一匹だっておねえさまは言ってたのん、おじいちゃんをどこにやったの」
げー!!この子、新品の俺と錆びた俺が別人とおもってる~~!! ば、バカな! いくら頭がおめでたいとはいえ間違えるか普通(汗) どっからどう見ても同一人物だろうが
「そんなウソついてもこのイルククゥさまにはお見通しなの、さぁ、キリキリ白状するの」
うわ~(呆れ顔) めんどくせーのにつかまっちゃた。このタイプの子は一度疑えばいくら説明しても信じちゃくれないよなぁ
しかたないぁ、今は信じてくれるのを諦めて、この騒動が終わったら夜のうちに回収してきた抜け殻でも見せて納得してもらおう
て、いうか誰が子供やねん。これでも二十数年生きてんだぞ、お前より年う・・・え・・・?
そういえばこのお子様は龍換算では十歳だけど約200年くらい生きてたんだっけ?
はい、普通に年上のお姉さんでした。
どうしたもんかと悩んでいるとフーケさんが到着しましたと馬車を止めた
ああ、到着したんだね。ありがとうフーケ、これでこのめんどくさい状況を一旦リセットできる
お礼に高速回転する2つの竜巻を発生させるブレスでぶっ潰してあ・げ・る♥
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ついに来たぜフーケのアジト(誤情報)。さあサフィーナちゃんこの作戦が終わったら貴女も称号持ちの仲間入りですぞ・・・まぁ、難癖つけられて貰えないんですけどね
そしてみんな揃って目の前の廃屋を見ながら作戦会議を行つつ、フーケさんは『一人』で偵察に向かいました
危ないよフーケさん。一人になると土くれの盗賊にやられちゃうよ(棒読)
作戦は原作と同じ、違う点は俺とサフィーナちゃんも上空で待機している点かな?
しかし静かだなぁ、ホントにフーケは原作と同じように巨大ゴーレムを嗾けてくるのだろうか?
原作と比べこちらの戦力はメイジ一人に古龍一体増員されているが、果たしてフーケはそこんとこをどう思っているのだろう
まぁ、恐らくなんとも思っていないんだろうな
百戦錬磨の盗賊様が原作と手口を変えてないあたり、この程度は問題ないと判断したのだろう
ふふふ、しかし『鋼龍クシャルダオラ』を相手にその思考がいかに愚かな事だか教えてやるグルル
「どうしたのサビドラちゃんそんな怖い声出して?」
おっと、つい暗い愉悦に浸ってたらサフィーナちゃんが怖がっちゃたみたいだね。大丈夫だよ君は俺が必ず守るから安心して背中に乗っていなさい
偵察隊が廃屋に突入していくとしばらくして地面が盛り上がり巨大な土のゴーレムが生成されていくのが肉眼で確認できた
「みんなー! 逃げて!!」
聞いたことのないような大声で廃屋に入っていったサイト達に危険を知らせるサフィーナちゃん、マジヒロインぽい
ゴーレムはそのまま廃屋を破壊する勢いで攻撃を始めるとゴーレムの表面に爆発や炎の塊が被弾するのが確認できた、恐らく突入隊がゴーレムに攻撃を仕掛けているようだがな
残念ながら相手は巨大すぎてほぼノーダメージだ。突入隊もそれが分かったのか急いで逃げだしていた・・・もちろん主人公であるルイズさんは立ち向かっていますけどね
「サビドラちゃん! お願いルイズを助けて!!」
はいはい、あとあと。今からが良いところなんだから・・・
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よし、原作通りサイトがルイズを助け絆を深め合ってる・・・ルイズを助け叱咤するサイト。いや~序盤の見せ場だね
「・・・ねぇサビドラちゃん・・・なんで・・・ルイズを助けに行ってくれなかったの・・・?」
ん? 何をおっしゃってるんですかサフィーナちゃん、こんな名シーンを邪魔するなんて俺にはできないね
サフィーナちゃんも見たでしょあの二人の溝が少しずつ埋まっていくその過程を
・・・ん? 何か決定的に間違えた気がするけど気のせいだよね
ふふふ、しかし流石はサイト君。大切なルイズさんはタバサに預け自分はゴーレムに立ち向かっていく。
男だね~惚れそうだよ
しかしそのゴーレムは自己修復機能が備わっているからどんなに切り裂いてもすぐに元通りになり、だんだんと分が悪くなっていくサイト君。そろそろ破壊の杖の出番かな(ワクテカ)
「サビドラちゃん・・・」
どうしたのサフィーナちゃん?そんな真剣そうな声をだして
「貴方がルイズとサイト君の何を見ているかは私にはわからない・・・」
え? 何、いきなりどうしたの
「ルイズ達を助けなかったのは貴方なりの理由があるのかもしれない。貴方が助けなくても結果的にサイト君が助けてくれましたけど、貴方ならもっと早く助けられたはずです!」
まぁ、あの距離なら余裕で間に合いますし、風圧ブレスの射程距離内ですけど?
「私は確かに実力も才能も低く貴方につり合わないのかもしれません・・・でも、でも、私は必ず貴方に相応しいメイジになります! だからお願いします友達を助けるのに貴方の力を私に貸してください!」
・・・・ルイズ達を助けなかったことを変に深読みしてサフィーナちゃんが覚醒してしまった・・・
しかし確かによく考えると俺は『ゼロ魔の原作』のシーン見たさにある意味ルイズを見殺しにしよとしていた
主人公ばかりに目が行って自分の召喚者であるサフィーナちゃんと向き合っていなかったかもしれない
ふふふ、滑稽な話だ今だ俺は演劇を見ているお客様気分だったようだ。
原作介入、それはつまり主人公たちと同じ舞台に立つということで、もう他人事では無くなるということだ
目が覚めたよご主人様・・・原作目的じゃなく、俺は本当の意味で貴女とこの地で生きていくと誓うよグルォォォ!!
目が覚めたとばかりにこの地に来て初めて本気で咆哮を上げるとその場にいた全員が例外なく耳を塞ぎ動きが硬直する
その咆哮の迫力に魔法によって作られたはずのゴーレムすら動きを止めるほどだった
龍の咆哮が止むのと同時にポツリ、ポツリと滴が空より振ってきた
雨? と誰かが口にするのと同時にその勢いは増していきついには視界が狭まるほどの大雨となり、土で出来ているゴーレムの身体が水を含み動きが鈍くなっていた
「これがサビドラちゃんの本当の力・・・」
サフィーナちゃん。『鋼龍クシャルダオラ』の力がこの程度だと思わない方が良いぞ
さぁ!受けろや木偶人形。俺の全力の大竜巻ブレスを!!
首を持ち上げる独特のモーションからバックジャンプの勢いに乗せて一気に空気の塊をゴーレムに向け発射する。
空気の塊は着弾と同時に白い竜巻に変化し無敵の再生力を誇っていたゴーレムを引き裂き粉砕していく
ゴーレムも何とか竜巻より逃れようとするも風に煽られその場を動くことのできず一切の抵抗もできずにその身を砕かれていく
その様子を見ていた龍はもう一度天に向け咆哮を上げると降りしきる雨は止みゴーレムを飲み込んでいた竜巻はその姿を消し半壊のゴーレムが佇んでいたが竜巻が消えたことにより再生を始めていた
ち、この幼い身体ではこれが精一杯か。まさか俺の全力の攻撃がロケットランチャーより弱いなんてちょっと情けないな
だが三十メイルを超えるゴーレムをあそこまで破壊できまわりの木もかなり巻き込んで吹き飛ばしたんだ、多分対人戦に使用したら竜巻の吸引力も加わって大惨事になるだろうな
・・・人に向けるのはやめておこうっと
お、あそこでサイト君がゴーレムにとどめを刺すために破壊の杖を構えていることだし、この騒動はこれにて一見落着だな
「凄い爆発・・・あれが『破壊の杖』の力、サビドラちゃんの竜巻より強いなんてなんだか悪い夢を見てるみたい」
まぁ、瞬間的な攻撃力は向こうが『今は』上だろうね。だがこの身体が成長しきったその時は災害レベルの古龍の力をお見せしますよ
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戦いは終わった。
サイト君がゴーレムを破壊の後、原作よろしく『私の正体は土くれのフーケだ』『『な、何だって!!』』て感じの茶番があり、サイト君がフーケを気絶させて終了になりました
しかしサイト君よ、君は平和な日本生まれの普通の高校生だよね、どうやったら大人の女の人を気絶させられる技量が身につくの?それもガンダールヴの力なのか?
帰りの馬車では破壊の杖の話とフーケの事で盛り上がってました
え? 俺の話? もちろんサフィーナちゃんが代わりに質問攻めにあってくれました
だって俺喋れないんだもーん
この戦いでは俺も精神的に成長でき原作に介入したいという気もちもだいぶ薄れていた気がするのでサフィーナちゃんを無理に付き合わせるのは今日で最後にしよう。彼女には彼女の生き方があるんだし、俺は使い魔としてそれを支えてあげなくちゃね
さて、冗談抜きで人見知りによりコミュ力が低いサフィーナちゃんがパンク寸前だから助けてあげなくちゃ
フーケも捕まった事だし今夜は『フリッグの舞踏会』が予定通り再開されるだろう
・・・さて、今夜サフィーナちゃんに群がるであろうゴキブリどもを処分する方法を考えるか。俺の目の黒いうちは誰もサフィーナちゃんに触れさせるものか
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怒りだ。純粋な怒りしか目の前の敵には感じない
サフィーナちゃんが後ろから彼を許してあげてと言ってるが。もはやそんな言葉で俺は止まらない
「うわぁぁぁ!! わざとじゃない! わざとじゃないんだーーー!!」
ク、クズガァァアァァァッァ!! 少し目を離すとこれだ!! このラッキースケベ野郎が!!
ルイズの頼みでサフィーナちゃんに伝言を伝えに来ただとぉおお!! ノックもせず入りやがって、サ、サフィーナちゃん着替えを覗くだとぉおぉ!!
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
サイト~~この中庭がお前の墓場だぁぁ!!念仏でも唱えな!
「やめてサビドラちゃん。私は全然気にしてないから」
だめだよサフィーナちゃん、例え下着だけだと言ってもこいつはここで去勢しないと同じ事を繰り返す動物なんだ
このハーレム型主人公め、サフィーナちゃんはお友達枠だと何度も言ってんだろうがボケェ!
「何だよあの黒い風は! フーケの時はあんなの纏ってなかったじゃないか!!」
この俺の怒り状態の龍風圧は如何なる攻撃も無駄だ、今ならどんなガンナーの弾も弾ける気がするぜ
感謝するがよいサイト。この状態を見たのは貴様が初めてだ光栄に思うがよい
ようやくわかったよ・・・俺の真の敵は『ガンダールヴ』貴様だ!!
『こうなったら戦うしかないぜ相棒。俺っちは何時でもいけるぜ』
「無茶言うなよ! 風のせいで近づけないのにどうやって接近すんだよ!」
神の盾!今日ここで貴様の伝説を砕いてくれるわ!
「逃げてサイト君!」
覗いたくせにサフィーナちゃんから声援を送られるとはやはり貴様は度し難い!
フリッグの舞踏会が始まるまでサイトの野郎を追い回したが結局ヤレなかった クソガ
だがあいつを追い回した結果気持ちは晴れたし、まあ今日のところはこれでいいか
俺はそんな悔しい思いをしながらバルコニーでサフィーナちゃんと一緒にルイズと踊るサイトを見ているのであった
原作一巻の最後を飾るのは『ガンダールヴ』の少年と『虚無のメイジ』の少女のダンスシーン
そしてそれを見守るのは鋼龍と主人の少女
伝説を見守る二人の表情はとても優しいものであった
『物語』の序章は終了し再構築された『世界』は動き出す・・・
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