死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 (くいあらためよ)
しおりを挟む

第1章 
戦艦ミカサ


ノリで書きました。続くかどうかはわかりません。


なだらかな海、眩しい太陽

 

私は、甲板に寝そべっていた。

そっと頬を撫でる海風が心地よい。

 

「何でこんな事になったんかなぁ…」

 

ハァ…とため息を漏らす。

 

ここ、日露戦争で活躍した記念艦であり、今は霧の戦艦である三笠で、私はそのメンタルモデル『ミカサ』である。

 

 

事の始まりは小一時間前である。

 

まだ私が人であった頃、毎日某艦隊ゲームをしていた。

 

『某ゲームの世界に行きてぇなぁ。そしたら摩耶とカッコカリ……』

 

等と、毎日のように呟いていた。

そして、今日も高校から帰ってくる途中のことだった。

 

『よしゃぁぁぁ!摩耶が改二になるぞい!』

 

ずっと、画面を見ながら歩いていた私は近付いてくる車に気づかなかったのだ。

 

キキッー!ドォーン

 

気付いたら轢かれて、死んでいた。

 

『くそ……何だよ。せっかく摩耶の改二グラを拝めるって言うのによ…あれ?俺、死んでる?』

 

ようやく、自分の死に気付いた私は祈った。

 

『あぁ!神様お願いです!どうか俺を某ゲームの世界につれてって下さい!』 

 

そこまでは覚えていた。後は記憶があやふやで覚えていないが、白い光に包まれていた記憶はある。

そして、気付いたら三笠乗っていた。

 

今に至る。

 

「しっかし良くできてんな…この体と良い、この船と良い、まるでアルペジオの世界だな。」

 

新しい自分の体を眺める。

見た目は17~19歳ぐらいだろうか、やけに白い肌をしている。服は和洋が合わさったような服を着ていた。

 

ふと、私は思い出したように呟く

 

「もしかしたら、この船」

 

自分の頭のなかで前に進めと強く念じた。

予想通り、三笠はエンジンを起動させ前に進んだ。

 

「すげぇ……」

 

ただ、驚愕するだけであった。

 

三十分ぐらい遊んでいると、頭のなかで誰か呼んでいた。

『ミカサ聴こえるか…ミカサ応答しろ!』

 

ミカサって私のことか!

と気付き、どう対応したら良いかわからないため頭のなかで念じた。

 

『な…なんだ、』

 

『なんだじゃ無いだろう。まったく、めんどうくさい』

 

この声…どっかで聞いたことがあるような、、、

 

『さっきから様子がおかしいぞ!ミカサ』

 

思い出した!コンゴウだ!  

 

『いや、私は大丈夫だ。用件はなんだ、コンゴウ。』

 

本当にビビったー、と額から汗を流しつつ動揺しているのをバレないように深呼吸した。

 

『…?まぁ、良い。もうすぐ、奴らが何隻か来る。ミカサ、奴らを片付けといてくれないか?』

 

奴ら=[人類]か…と、私は考えた。このとき、どうしてすぐに人類という答えが出たか、まだ知るよしもなかった。

 

『良いが、私一人か?』

 

恐る恐る訪ねると

 

『いや、もうすぐタカオが到着する。一緒に行動してくれ。』

 

タカオ……乙女プラグのやつか!

 

『了解した』

 

『では、頼む。』

 

ここで、通信が切れた。

 

……これからどうすれば良いだろうか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めての戦闘

続けてみました


コンゴウからタカオとの合流座標を貰うと、馴れない操縦で出発した。

 

「アルペジオの世界と言うことは、クラインなんちゃらって奴も使えるのか……」

 

そんなことを考えているうちに、タカオが見えてきた。

 

 

「ちょっとミカサ!遅いじゃない!何してたのよ!」

 

「え?まぁ…色々あってな」

 

合流早々に怒鳴り散らされ少し萎縮してしまった。

 

なんだよ、こいつ!原作通りかよ!

 

内心思いつつ、話題を変えた。

 

「奴らはいつ来るんだ?」

 

「はぁ?それくらい自分で考えなさいよ!……ってミカサ、後ろ!!」

 

「は?」

 

振り向くと、一発のミサイルが飛んできた。

 

ヤバい避けられない!

 

とっさに手で防ごうとした。普通であれば意味も無い行動だろう。

しかし、今は霧の戦艦である。

 

ミサイルが後一メートルのところに来たとき、先端が潰れ爆発した。

 

何が起きたのか理解しないでいると、うっすらと空間が歪んでいるのに気付いた。

どうやら船を覆っているらしい。 

 

「まったく、アンタ大丈夫?クラインフィールドぐらいパッと出しなさいよ。」

 

これがクラインフィールドか…、等としみじみ思いながらミサイルが飛んできた方向を見た。

 

イージス艦らしきものが三隻浮いていた。

 

「どうやら、あっちから来てくれたようね」

 

タカオがうっすらと微笑む。

 

「そのようだな。やるか」

 

いまいち状況が飲み込めていない私だったが、生まれつきの戦闘好きか、本来の霧の性質かはわからないがいままで経験したことの無い高揚感が、正常な考えを押さえつけていた。

 

 

戦闘は、見るとするでは大違いであった。

 

降り注ぐミサイルと敵弾の嵐が集中力を割いていく。

 

「ぐぅぅぅ!早く敵を沈めたい!」

 

相手の攻撃は全てクラインフィールドによって防がれているが、元々が古いミカサの主砲は射程距離が短いため、近づかなければ行けないが相手の攻撃がそれを阻止していた。

 

「もういい!強硬突破だ!全速前進!」

 

被害を省みず全速力になったミカサは、みるみるうちに敵艦との距離を詰めていく。

 

「まったく、私も少し、やろうかしら!」

 

と、タカオが叫ぶと一斉にミサイルが放たれた。

 

ミカサに降り注いでいたミサイルはそれにより全て撃破された。

 

「ありがとう、タカオ!」

 

「べ、別にアンタのためじゃ無いから」

 

敵の攻撃を受けなくなったことにより少しばかり余裕を持った私は

 

「少し試してみるかな。ミサイル発射!」

 

と叫んだ。

まぁ…出るわけ無いか

と思っていたが何発かミサイルが発射された。

 

「おぉ…流石霧の戦艦。」

 

感心していると、飛んでいったミサイルが敵艦に命中、撃沈した。 

 

もう二隻が、撤退しようとするのを見て

 

「この際、主砲も試してみるか…一番砲塔旋回!」

 

目の前に光のディスプレイが現れ、前をいく船に照準を合わせた

 

「良し、撃てぇ!」

 

一番砲塔からレーザーが放たれた。

そのまま直進していき、見事命中した。

 

「やるじゃない、これで終わりね!」

 

と、タカオが放ったミサイルが最後の艦に命中した。

 

この世界に転生して初めての戦闘が終わった。




戦艦ミカサのスペック
排水量 15,140トン
全長 131.7m
全幅 23.2m
兵装 主砲 40口径30.5センチ連装砲2基4門
副砲 40口径15.2センチ単装砲14門
47ミリ単装砲16基
魚雷発射管 45センチ発射管4門
ミサイル発射管20門 超重力砲 1基
メンタルカラー 白

こんな感じです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

後悔

少し編集しました


私は、燃えている彼らの船を眺めていた。

 

沢山の人が救助を求めている。

救命ボートは何隻かあったがそれでも乗れない人たちがいた。

 

『どうせ、奴らは死ぬわ。』

 

とタカオが、頭のなかに話しかけてきた。

この頃、意識を概念伝達空間に飛ばす方法がわかってきたので試してみた。

 

気付くと、洋式の庭園を模した空間にいた。

中央には机と椅子があり、片方にタカオが座っている。

 

「さっきのは…どういう意味だ?」

 

椅子に腰をかけつつ、さっきの意味を聞いた。

 

「どうって……この海域は私たぢ霧゙が掌握してるのよ。救助船がこられるわけがないわ。そしてここは海岸からかなり離れてる。どうやっても泳いでいける距離ではない、そういうことよ。」

 

「助けたりはしないのか?」

 

「はぁ?アンタなにいってんの?私達は兵器、アドミラリティ・コードに従って行動するのよ。助けるわけが無いじゃない。」

 

人として生きてきた私には、到底理解できぬ事だった。そして、彼らを攻撃してしまった事に後悔した。

 

「とりあえず、この海域はよろしくね。これから私は太平洋に向かうから。」

 

タカオはそう言うと、通信を切った。 

 

「私は、兵器なのか……あれ、いつから自分の事を私って言ってたっけ……」

 

そもそも、なんであのとき奴らの事をすぐに人類だと思ったんだ?

 

様々な疑問が頭をよぎった。

色々考えた結果、一つの答えにたどり着く。

 

「まさか!?」

 

既に自分も霧になりつつある?

過去の自分の人格は消されつつあるというのか…

 

私は、気付いたら泣いていた。

 

全ての物が信じれなくなってきた。

この涙は私の涙ではなくミカサの涙なのか、等。

 

概念伝達空間から戻ると、目の前ではまだ船が燃えていた。

 

私が私であるためにどうしたら良いのだろうか…

 

ふと、タカオがいった言葉を思い出す。

 

『私達は兵器、アドミラリティ・コードに従って行動するのよ』

 

霧の行動を制限してると思われるもの…

じゃあ、そのアドミラリティ・コードに従わない行動をしよう。

 

私は、そう思い付いた。

 

霧を霧たらしめているのはそのコードだ。なら、それ反発すればそれは私の意志となる。

 

ふと、海に漂っている人達を見た。

 

「彼らを助けよう!戦艦ミカサ、前進!」

 

この行動が、これからの運命を変えることになるとは今はまだ知らない。

 

 

同日、三時間前

 

「ナガラ、あなたはただ命令にしたがっただけ。」

 

「イオナ、どうしたんだ?」

 

伊号401ことイオナと、千早群像らは振動弾頭をアメリカに届けるべく、佐賀を出発し、横須賀に向かおうとしていた。

 

「艦長、クライアントからもう1つお願いがあるそうです。」

 

「お願い?依頼じゃなくてか」

 

「先程、横須賀から霧に撃沈された船の乗組員を助けてほしいとの連絡がありました。ちょうど、我々の進路と一致します。」

 

「ふむ……イオナ、いけるか?」

 

「大丈夫、多分いける。」

 

「よし、じゃあ横須賀に向けて出港だ。全速前進!」

 

こちらも原作とは少し違うものの、話が動き始めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

救助

辺りは日が暮れていた。

 

「頑張れ!死ぬんじゃないぞ!」

 

「艦長………」

 

統合軍海軍…所属艦あきつ乗組員は、先の霧との戦闘で海に投げ出されたままだった。

 

「もう、私は無理です。」

 

「何をいってる!最後まで生きて帰るんだろ!」

 

「この怪我ではどのみち無理です。どうか、最後に情けを……」

 

「駄目だ!必ず助けが来る、それまで耐えるんだ!良いな!」

 

「は…はい、」

 

「艦長!」

 

今度は別の方向から声が聞こえてきた。

 

「艦長…」

 

「どうしたんだ?南雲航海士」

 

南雲といわれた男は、周りに聞こえない声で艦長と喋った。

 

「艦長…ほんとは気付いてるんですよね。」

 

その声はかすかに震えていた。

 

「……なんのことだ。」

 

「大丈夫ですよ、もう。みんな薄々と気付いています」

 

ここに救援がこないこと

 

「………やはりか。」

 

「艦長…」

 

「くそ!……我々はどうしたらいいんだ‼」

 

その声は、震えて弱くなっていった。

 

「俺はこいつらを見捨てることは出来ない!ちくしょう………」

 

ここにいる、全ての乗組員が耳を傾けていた。

そのときだった。

 

「光が…船の光が見えます!」

 

とある乗組員が言った。

 

「何処だ!」

 

「ほんとだ……しかも大きい」

 

それは、まばゆい白い光を放っていた。

 

至るところから歓喜の声が上がる。

 

「艦長…!」

 

「あ、あぁ。奇跡だ。」

 

「艦長の願いが叶ったんですよ!」

 

「やった…やったぞ!助かったんだ!!おーい、俺たちはここだ!!」

 

艦長は、船に場所を知らすべく叫んだ。

大きな希望が湧いてきた。

 

しかし、その希望は儚く砕けるのであった。

 

「あ……あぁ……」

 

「そんな…」

 

「霧の……戦艦……」

 

目の前に現れたのは、先程自分達を沈めた霧の戦艦であった。

 

霧は、自分達の目の前で止まった。

 

「もしかして、俺たちにトドメを刺しに来たのか!?」

 

「艦長…」

 

「ここまでか……」

 

乗組員は黙って、これから起きる事を受け入れようとした。

 

しかし、何も起きなかった。 

乗組員たちが拍子抜けしてると、頭の上から声が聞こえてきた。

 

「貴方たちの艦長は何処?」

 

 

どういう状況何だろう……

 

私は、タカオと別れたあと先程の被害現場に戻った。

歓声が聞こえたと思ったら急に静かになるから、不思議だなぁ…

 

と考えていたが、早くしないとヤバそうな雰囲気だったので、とりあえず艦長に会ってみることにした。

 

「貴方たちの艦長は何処?」

 

「…」

 

はぁ…と溜め息をつくともう一度質問をした。

 

「貴方たちの艦長は何処なの?」

 

「私だ」

 

やっと反応してきた。

見ると、弱々しく手をあげていた。

 

「あなたが艦長か。良いでしょう。」

 

頭の中で念じると、船に積んであったボートが降りた。

 

「今から、貴方たちを助ける。早く乗りなさい。」

 

なにいってんだ?

 

と、疑問に満ちた顔で私を見つめてきた。

 

「聞こえなかった?早く乗りなさい。」

 

「助けるというのは本当か!?」

 

艦長が、そう叫んだ。 

霧が人間を助けるなんて、あり得ないことだからだ。

 

「本当よ。むしろ、それ以外にある?」

 

「し…しかし、」

 

「あぁ、もう!!乗りたくないならそれでいい!早くして!」

 

「艦長…」

 

乗組員たちは、艦長の意思にしたがった。

 

「とりあえず、乗ろう!話はそれからだ。」

 

「決まったようね!さぁ、早くして!」

 

ミカサの用意したボートに乗り込み、それでも乗りきれないものは、ミカサの甲板に乗った。

 

「本当に、これは現実なのでしょうか。」

 

「あぁ…我々は助かったんだ。」

 

戦艦ミカサは、横須賀に向けて出発していった。

 

 

その後ろをつけているものに、私は気付かなかった。 

「おいおい、一体どういうことだよ!」

 

「霧が人間を助けるとは……」

 

「本来ならあり得ないこと。あの、艦は何かおかしい。」

 

タカオとの戦闘を終えたイオナたちが、この一部始終を見ていたのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

接触

少し長めに書いてみました。


「何故、アンタは我々を助けたんだ?」

 

私は、艦長と言われる男と艦長室で話していた。

 

「んーその前に名前を名乗ってほしいわ。」

 

「あぁ、失礼した。私は護衛艦あきつ艦長山口多聞一等海佐だ。」

 

「私は、この世界だとミカサって呼ばれてるわ、よろしく。」

 

山口は、私の今の発言に疑問を抱いたがすぐに忘れようとした。

 

「先程の質問だが…」

 

「何故助けたか……何故だろうね。」

 

私はあえて、質問をはぐらかした。

色々と面倒なことになるのを恐れたからだ。

 

「………まぁ、良い。ひとまず助けていただいたことに感謝する。」

 

山口は敬礼をしたので、私も笑顔で返す。

 

「いいえ、これも『人として』当然ですから……あっ」

 

ヤバイ!口がすべった!!

あからさまにこちらを不思議がってる!

 

「…今のは一体」

 

「艦長!!」

 

焦る私を助けるかのように、山口の部下が走ってきた。

 

「どうした?そんなに慌てて。」

 

「潜水艦です!間違いありません!チラッとですが確認しました。」

 

潜水艦?まさか!?

 

すぐに私はディスプレイを開き確認した。

レーダーにはミカサの後ろにぴったりとくっついている潜水艦があった。

 

「潜水艦…もしかして霧か!?」

 

「えぇ、そのようね……」

 

ここまで早く見つかるとは、流石と言った所か…

 

「ミカサ……」

 

山口が、私をじっと見つめる。

 

はぁ…

 

と溜め息をついた。

多分、私のしたことはあちらに筒抜けだろう。

下手したら、こっちを攻撃してくるかも知れない。

 

あれこれ考えて、私は決断する。

 

「ここまでしたんだから、最後まで抗うとしますか。手伝ってくれます?」

 

思わぬ言葉に少し戸惑っていた山口だったが、覚悟を決め

 

「任せてください。全力でサポートします!」

 

ミカサは、すぐに戦闘支度を始めた。

 

 

「目標、旋回しました。」

 

「恐らく、我々を敵と思っているのでしょう。」

 

「イオナ、相手の情報はわかるか?」

 

イオナは霧のデータベースにアクセスしてみるが、ミカサについての情報は見付からなかった。

 

「わからない。多分新しい艦だと思う。」

 

「大きさは、重巡クラスだと思われますが。」

 

千早群像は相手について、しばし考えていた。

 

「恐らく目標の霧艦艇は、何らかの理由で同じ霧から追われてると考えられるが……どう思う?」

 

「確かに、先程の救難活動。明らかに霧のルールから逸脱してる行動でしたしね。」

 

「でも、相手がこっちに危害を加えない…という結論にはまだ早いんじゃないか?」

 

401クルーたちはそんな相談をしていたが、

 

「…!ソナーに反応!これは…侵食魚雷来ます!」

 

「なに!…デコイ射出!クラインフィールド展開!イオナ、急速潜航!」

 

「了解。クラインフィールド展開、急速潜航」

 

間一髪で直撃を避けた401だった。

 

「一番から二番!魚雷装填!順次発射!」

 

「了解!っとこれでも食らえ!」

 

二発の魚雷がミカサを捉えた。

 

 

「敵の雷撃、来るぞ!」

 

「わかってるわよ!ミサイル用意!」

 

私は、一人での戦闘に四苦八苦しつつ攻撃していた。

 

「くそ、一発破壊しそびれた!来るぞ!」

 

「クラインフィールド!」

 

間一髪で防ぐが、かなりの衝撃が艦を揺らした。

 

「侵食魚雷じゃないだけましか…」

 

気を取り直し、魚雷を放っていった。

 

「侵食魚雷もそんなに多くないし…」

 

と、呟いていると、

 

「なぁ、ミカサ…相手と通信は出来ないか?」

 

「は?」

 

突拍子もない事を言って来た。

山口は更に口を開く。

 

「出港する前、こんな話を聞いたんだ。近々、横須賀に人が操る霧の潜水艦が来ると。」

 

「今戦っているこいつがそうだと言うの?」

 

「確定は出来ないが恐らく…」

 

この状況で通信できるのか、いや通信出来たとしても相手は応じてくれるか

 

私は考えたが、今、乗っている人達に被害を出すわけにはいかないと結論がでて

 

「わかった、通信してみるわ。」

 

と、相手との概念伝達を行った。

 

 

「ふぅ…あれ?敵の攻撃が止んだぞ」

 

「…!群像、あっちが呼び掛けてる。」

 

「なんだと?」

 

「モニターに出す。」

 

ここで、401のクルーは初めてミカサの姿を見た。

 

『あー、と聞こえてますか?』

 

目の前には、黒髪ロングの女性が現れた。

 

「こちらは401の艦長、千早群像だ。」

 

『私は戦艦ミカサよ、よろしく。』

 

「早速だがミカサ、用件を伺おう。」

 

『えーと……山口よろしく!』

 

画面に、一人の男が現れた。

 

『私は、護衛艦あきつの艦長山口多聞一等海佐です。401の皆さん、この様な事になり非礼をお詫びします。』

 

「もしかして、先程の…なるほどそういうわけか。イオナ、浮上してくれ。」

 

ミカサたちの意図に気付いた群像は、イオナにそう指示した。

 

「おいおい、何を言ってるんだ!」

 

「大丈夫だ。相手はもう、我々を攻撃してこないだろう。イオナ」

 

「了解、浮上する。」

 

 

異世界転生してきた私が、この世界の主人公たちと接触した瞬間であった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

光と影

誤字修正いたしました。
報告してくださった方々ありがとうございます。


「タカオが霧を抜けたか…」

 

コンゴウは一人、思考にふけっていた。

 

「ミカサも連絡がつかない。一体どうしたものか……マヤ」

 

『なぁに?コンゴウ。』

 

「ハルナ達はどうしている。」 

 

『これから横須賀に攻めてくーって言ってたよ。』

 

「そうか…」

 

コンゴウは一人笑っていた。

 

 

横須賀基地

 

「まさか、こんなことが…」

 

「まったく信じれません。」

 

政府上層部は頭を抱えた。

霧が、自らの意思で敵である人類を助けた前例がなかったからだ。

 

「どうも、居心地が悪いなぁ…」

 

あの戦闘の後、事情を説明し仲直り?した彼らは401護衛のもと横須賀に向かった。そして横須賀基地に到着したミカサは、地下ドックには入らず401と別れたあと、救助した人達を海上で返還していた。

 

「何処からか狙われてるな…調べてみるか。」

 

そう言うとディスプレイを開き、調べてみた。

ビンゴだった。

ここからは見えないように上手く、偽装されたイージス艦がこちらを向いていた。

 

「めんどくさいなぁ……来なければ良かったかな。」

 

そう、愚痴っていると後ろから声が聞こえた。

 

「ここの連中は霧が怖いのさ。」

 

振り向くと、山口が飲み物とホットドッグを二人分持ってこちらに歩いてきていた。

 

「食事はするだろ?それとも、嫌いかな?」

 

と、聞いてきた。

ホットドッグは、人であった時も度々食べていたから嫌いではない。むしろ好きな方だ。

 

「ありがとう」

 

と、受け取り一口かじった。

 

口一杯にトマトソースの酸味が広がる。

この世界に来てから初めての食事で、嬉しさの余り泣きそうになった。

 

元々、霧は食事を必要としないが人であった私には少し苦痛であった。

 

嬉しそうに食べる私を見て、満足したか山口も食べ始めた。

 

「こう見ると、霧も人もそんなに大差ないのに。」

 

そう、悲しそうに呟く。

それに反応し、私は 

「なんで貴方たちと戦うことになったのか、私にはわからないわ。」

 

と、答える。

 

「ただ1つ、言えることは霧の中にも私みたいなものがいるってことよ。私は、ただ別の目的だけれど。」

 

そう、私が人であったことを忘れないために。

 

「別の目的…か。確かに、君のような霧がいればきっとわかり合えると思う。」

 

山口もそれに反応する。

 

ふと、私のレーダーに反応があった。

小さいボートが近づいてきていた。

 

海面を見ると、何人かの男たちがこちらに向かってきているのが確認できる。

私は彼らを迎え入れるべく準備した。

 

 

「初めまして、私は、北良寛と申します。」

 

目の前にいる男はそう名乗った。

 

「私は、ミカサ。見たところ、政府のお偉いさんね。何か用?」

 

すると、バレたかと大袈裟なリアクションをして

 

「別に、貴女方と争うつもりはありませんよ。ただ、一つだけ協力していただきたい事が。」

 

その目は、決して引くことの無い強い意思を感じられた。

 

「……わかったわ。でも、ここで話すのもあれだから、会議室にいきましょ?」

 

「えぇ、勿論ですとも。ゆっくりと、話し合いましょう。」

 

ミカサを利用しようとする、日本政府の重鎮との極秘会議が開かれた。

 

 

「あんなところで密談か…」

 

一人の男がこの一部始終を見ていた。

 

「これから忙しくなりそうだ。」

 

そう、笑って物陰に消えていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キリシマ・ハルナ戦1

いつもご覧いただきありがとうございます。
いつのまにかお気に入りも増えており、とても嬉しい限りです。
これからも、この小説をよろしくお願いいたします。


「クックック…楽しみだなぁ。」

 

「…………」

 

二隻の大戦艦がこの横須賀に近付いてきていることを今は誰も知らない。

 

 

ミカサの会議室……東郷平八郎などがよくここで会議をしていた場所だ。

 

「改めて用件を聞こう。」

 

ここで、霧と人類との密会が行われた。

 

「では、早速。単刀直入に言います。401にこれから搭載される新型兵器を奪取して欲しいのです。」

 

そう、北は語った。

 

「それは、何故?」

 

「ここでは言えません。ですが、アレはまだ日本が持っておくべきだと考えましてね。」

 

ここで私はようやく気付いた。

こいつらは、同じ仲間の中で争っていると。

 

「くだらない相談ですね。」

 

そう、私はいい放つ。

 

「新型兵器を奪取する?そんな真似私には出来ませんよ。第一、私は今の霧のモデルより古い艦だ。例えその要求を受け入れたとしても、401に勝てるとは思えません。」

 

北はじっと話を聞いていた。

 

「つまり、この要求は受け入れることが出来ないと?」

 

「他にも、断る理由はありますがね。」

 

と言うと、少しばかりクラインフィールドを発生させた。

すると、外から悲鳴が聞こえたかと思うと何かが海に落ちる音がした。

 

「こんな感じに詮索されるというのは余り気分が良いものではありませんからね。」

 

軽く北を睨む。

 

「……私にはなんのことやらわかりませんな。」

 

あくまでシラを切るつもりか…

 

なかなかの相手だと、実感した私は早急に密談を打ち切った。

 

「話はそれだけ?無いなら帰ってちょうだい。」

 

「………失礼する。」

 

相手も察したのか、早々に会議室を後にした。

 

 

「所詮は霧だと言うことか。」

 

「これからどうします?」

 

「ん?こっちがダメならあっち(401 )を当たってみるさ。」

 

北達はそう話ながらミカサを降りていった。

 

 

「流石だなぁ……私には到底真似できないよ」

 

笑いながら、山口は話しかけてきた。

 

「彼は、この中でも一位二位を争うトップさ。私だったら断れないかもしれない。」

 

「相手が誰だろうと礼儀はしっかりしてほしいわ。あんなに兵士を侵入させようとして……」

 

「最悪、この艦を拿捕しようとしたのかもね。」

 

「………ところで、貴方は部隊に戻らなくて良いの?」

 

ふと、ずっとこの艦に乗っている山口にそう問いかけた。

 

すると、懐から白い封筒を取り出して

 

「クビさ。『官品を横領、部下を危険な目に合わした責任…』今回の作戦のミスを私一人に押し付けたのさ、うちのボスは。」

 

宙を見つめて言った。

 

「おかげでいままでいた隊舎から追い出され、住むとこも寝るとこも無い状態さ…」 

 

「なるほど……ん?貴方……もしかして」

 

ギクッ!っと山口は動揺していた。

 

「これを期にこの船に居座ろうって気じゃ無いでしょうね!?」

 

「あちゃーバレたか」

 

額に手をやり大袈裟なリアクションをする。

 

「貴方!第一私は霧よ?こんなことがバレたら…」

 

「頼む!一日だけ!」

 

両手を合わせ、拝むように頼んできた。

 

私は、渋々

 

「……一日だけなら」

 

と、了承してしまった。

 

「よし!実は、もうある程度泊まる用意はしてたんだ!」

 

と、いきなり暴露し始めた。

 

コイツ!最初から!

 

「……降参ね。」

 

私は止めても無駄だろうと、考えることを止めた。

 

 

辺りは日がくれてすっかり暗くなっていた。

 

横須賀の海域に二隻の霧の戦艦が現れた。

 

「ようやく着いたね。」

 

「ジャミング開始、成功」

 

すると、向こうからサイレンの音がし始めた。

 

「気づかれたようだよ、ハルナ」

 

ハルナは頷く。

 

「門を開けてくれるとは思えないし……吹き飛ばすか。」

 

横須賀湾には大きな壁があり、唯一の入り口には、門が閉まっていた。二隻の戦艦はゆっくりと旋回し、全ての砲を門へと向けた。

 

「手加減しないとね。フフッ!」

 

一斉に放たれたビームはかなりの厚さがあるであろう門を破壊せしめた。

 

「17年ぶりだね、人類の皆さん。このキリシマとハルナが401に合わせにもらいに来たよ。」

 

「……………来たよ。」

 

大戦艦キリシマとハルナの襲撃であった。

 

 

強い衝撃に艦が揺れた。

 

「なに!」

 

私は、とっさにディスプレイを開く。

 

「…敵襲か。しかも戦艦が二隻なんて」

 

マジか……

 

と、心の中で悪態をつく。

表示には、キリシマとハルナと書いてあった。

 

キリシマかー、どんな奴なんだろ…

 

そっとディスプレイで確認する。

 

「……!?!!?」

 

摩耶に似ている!

 

第一印象がそれだった。

 

「これは…たまらんですわ」

 

思わず声が漏れてしまう。

 

「なんだ!どうした!?」

 

山口が艦内から出てきた。

 

「あれは…霧の戦艦!!」

 

「どうやら、彼女の居場所がバレたみたいね。」

 

彼女…401のことだ。

 

「今の状況じゃこちらには勝ち目が無いわね。」

 

「くそ……ミカサ」

 

山口はこちらを向いた。

嫌な予感しかしない。

 

「君なら奴等と戦い、いつまで持つ?」

 

やはり……

 

「言うと思った……あんな戦艦に老朽艦がモデルの私が勝てるわけ無いでしょ!」

 

そう強く反論するが

 

「勝つんじゃない、いつまでに持つかだ!」 

 

と強く聞いてきた。

 

「……全力でやれば、そこそこ稼げると思う。」

 

そう、答えた。

 

「ここで、我々が時間を稼げば401も逃げれるんじゃないかな?」

 

そういうことか…

 

少し、考えた後私は口を開く。

 

「しょうがないわ。本当は嫌だけど、どちらかを沈めるぐらいの本気でいくわ。」

 

試したいモノもあるし

 

と、すぐに戦闘用意を始めた。

 

「頼むぞ!ミカサ!」

 

 

戦いの火蓋は切って落とされたのであった。




次回は戦闘多目で行きたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キリシマ・ハルナ戦2

「さぁーて401は何処かな?」

 

「…………タナトニウム反応、侵触弾接近。」

 

「おっ、あっちから来てくれたか…………え?」

 

「………!バカな。」

 

キリシマ達の行く先を阻んだのは、戦艦ミカサであった。

 

 

「やっぱり気付かれたか。もう少しうまくやらないと。」

 

「おいおいマジかよ……ミカサ!敵ミサイル多数接近!」

 

「なっ!…百発!?フルファイヤー!」

 

二隻の戦艦から繰り出されるミサイルの嵐は、凄まじい破壊力を持っていた。

それに対応するため、私はありったけの火力で応戦する。

 

「流石は金剛型ね……火力が桁違いだわ。」

 

「それでも、こちら側の被害はほとんど無いぞ!」

 

「その代わり私が沈むかもしれないけれど。」

 

本能的に私と彼女らの実力差に気づいていた。

このまま戦っても時間を稼ぐどころかすぐに殺られるだろう。

なので一つ、変わった戦い方をすることにした。

 

「山口、艦内に入ってて。」

 

「え?」

 

「いいから、早く!」

 

そう言うと私は無理矢理山口を艦内に入れた。

 

「さぁーてと、退避させたし。いっちょやりますか。全速前進!」

 

二隻の戦艦に向かって、私は突撃を敢行した。

 

 

「な…!あいつは狂ったのか!?」

 

「こんな行動、予想外。」

 

ミカサのとった行動に驚きを隠せないキリシマに、ハルナも反応する。

 

「それでも、私達の火力は圧倒的。集中砲火だな。」

 

「……従おう。」

 

ミカサに対し、進路を塞ぐ形で二隻とも旋回し始めた。

 

「さて、どれまで持つかな!」

 

二連装砲計四基が一斉にレーザーを放った。

 

 

「ひっかかったな!」

 

私は、相手が思い通りに動いてくれたことに感喜の声を上げた。

 

「大きく横っ腹を見せるなんて、ただの的……キャアァァ!」

 

一斉にレーザーが着弾し始める。

 

「な、なんて威力なの。しかし、後もう少し。」

 

クラインフィールドで受け止めているとはいえ、流石に限界がある。

少し、速力を上げた。

 

「もうちょい、もうちょい…きた!」

 

照準が定まった。

 

「超重力砲、発射準備開始!!」

 

私はハルナを固定した。

 

 

「な!しまった!!」

 

「なんて……こと」

 

重力砲に固定されてしまったハルナは逃げようともがくが、決して逃げることはできなかったな。

 

「ハルナ!ちくしょう……これでも食らえ!!」

 

キリシマはハルナを助けようと、一斉にミサイルを放つ。

 

しかし、全て防がれてしまった。

 

「な!こうなったら……」

 

キリシマも超重力砲を放つべく、体勢を整えた。

 

しかし間に合わず、ハルナへ重力砲が放たれた。

 

 

「これでも食らえ!!」

 

超重力砲をハルナに向けて放ったミカサだか、ここで思いもよらない事が発生した。

 

「よし!命中した……え?」

 

大きく艦が揺さぶられた。

ミカサの船体にミサイルが着弾したのだ。

キリシマが放ったミサイルの中に、何発かハルナが放った物も含まれており、その中の一発が重力砲によって処理能力の低下していたミカサに気付かれずそのまま船体の中央に命中したのだ。

 

「嘘……マズイ!」

 

意識がそちらの方にいってしまったため、重力砲を維持することが出来なくなってしまったのだ。

 

そして、この期を逃がさないとばかりにキリシマがありったけのミサイルを放ってきた。

すぐにはフィールドを張ることが出来ず、自力で迎撃することを余儀なくされた。

飛んでくる侵食弾を優先的に破壊しているため即轟沈はしないが、その他の弾頭は撃ち漏らしが多く徐々に被弾していった。

 

「そんな……完全にミスったわ。」

 

船体が右に少し傾いた。

どうやら、穴が開いて水が侵入してきたらしい。

 

必要の無い部分からナノマテリアルを抽出し、必要な箇所に回しているが、到底間に合わなくなってきた。

 

「………ッ!まだまだぁ!」

 

側面の副砲や主砲で撃ちまくるがほとんどがフィールドに防がれてしまった。

 

 

「………危なかった。」

 

ミカサの放った重力砲を、短時間ながら直撃を食らったハルナのクラインフィールドはほとんど崩壊していた。

 

「キリシマ、少しだけ頼む。」  

 

攻撃を任せたハルナは、フィールドの再構築を始めた。

 

「任せてな。あんなに艦、すぐに沈めてやるさ!」

 

更にキリシマはミサイルを放っていく。

 

「ハハハ!これで終わりだぁ!」

 

超重力砲の発射準備が終了し、砲口をミカサに向ける。 

 

すると、何処からか侵食魚雷が放たれた。  

 

「なっ!?」

 

それに気付いたキリシマは、発射を中断しフィールドを展開した。

 

「誰だ!」

 

ディスプレイを開いて確認すると、そこには401の姿があった。

 

 

ミカサの奮闘により、401は早く千早群像らと合流することが出来た。

 

「目標、片方は少し手負いのようだな。」

 

「すごいですね……一人で耐えきるなんて。」

 

「しかもこちら側にはほとんど被害がないらしい。」

 

「イオナ、ミカサと通信開いてくれ。」

 

「了解。」

 

『あら…遅かったわね。』

 

モニターにミカサの姿が映し出された。

 

「そちらも大変そうじゃないか、ミカサ」

 

モニター越しでもわかるぐらい、艦は損傷していた。

 

『ひとまず、後は頼むわ。少し、疲れた。』

 

そう言うと、ミカサは通信を切ってしまった。

 

「よし、それでは我々はあの霧の戦艦二隻とも沈めるぞ!」

 

「な!本当かよ!」

 

「いけるな?イオナ」

 

「うん、頑張る。」

 

「……まぁ、いつものことか。」

 

「仕方無いですね。艦長、命令を。」

 

「わかった。機関全速!いくぞ!」

 

401は速力をあげ、キリシマ達に近付いていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キリシマ・ハルナ戦3

ミカサは、二隻の戦艦から距離を取り始めていた。

 

「おいおいミカサ…これは一体」

 

「少し、油断してね。この有り様よ。」

 

艦内から出てきた山口に微笑みながらそう言った。

 

「でも十分に時間が稼げたわ、間一髪だったけど。」

 

「すまん!私のわがままでこんなに被害を!」

 

山口は深々と頭を下げた。

 

「え…あぁ、気にしないで。少し時間はかかるけどゆっくりと直していくから。」

 

「し…しかし」

 

「それに、いつかこうなると思ってたし。」

       

「そうか……ありがとう。」

 

「いえいえ。そろそろ、401に私も加勢しますかね。主砲、副砲準備。」

 

401を援護するために、再び戦闘態勢に入った。

 

「照準は………って嘘!」

 

キリシマとハルナは、401をあぶり出すために辺り一面にミサイルをばらまいていた。

 

「あれが、大戦艦級の本気か……」

 

「えぇ、防御に回るだけで精一杯ね。」

 

私は、流れ弾が都市部等に当たらないように一つ一つ破壊していった。

 

一通り攻撃がやんだ後、レーダーから401の反応が消えた。

 

「401の反応がロスト、いやまだ沈んでないわね。」

 

「わかるのか?」

 

「勘ね。」

 

「勘?」

 

401が簡単に沈むわけがない、何か考えがあるはずだ。

 

そう私は考えていた。

 

「とりあえず、少し様子を見ときましょう。」

 

「そ…そうだな。」

 

 

「401の反応ロスト、沈んだ?」

 

「いや、これぐらいで沈まないだろ。トドメさすぞ。」

 

「……力を貸そう。」

 

「フフ!絶対に沈めてやる!」

 

「リンク接続確認、オールグリーン。」

 

「合体開始!」

 

 

「おいおい!なんじゃありゃ、合体してるぞ!」

 

「艦長!重力砲に固定されました!」

 

「なんとしても振り切れ!」

 

401はフルバーストで逃れようとするが、それをキリシマ達が逃がさない。

 

「ミサイルを撃ちまくれ!時間を稼ぐんだ!」

 

 

「バカが!もう逃げられないんだよ!」

 

「………タナトニウム反応、中に侵食弾が混じってる。」

 

「タナトニウム反応さえわかればいくらでも対策できる。フィールド展開!」

 

401が放ったミサイル群はことごとく防がれた。

 

「発射シークエンス開始」

 

「沈め!401!!」

 

パシュ!

 

そんな音とが聞こえたかと思うと海中から侵食魚雷が飛んできた。

 

「な!」

 

「フィールド展開した、大丈夫。」

 

401の切り札は防がれてしまった。

 

「さぁ、気を取り直して沈めぇ!」

 

「……!キリシマ!」

 

「なんだ?……ッ!」

 

キリシマに向かって重力砲が飛んできた。

 

 

「な……防がれただと。」

 

「そんな……」

 

「イオナ!振り切れ!」

 

「ダメ、もう間に合わない。」

 

最後の賭けに負けた千早群像は何か策はないかと必死に考えていた。

 

「目標、発射シークエンス最終段階!」

 

「これまでか……」

 

「………!別方向より超重力砲が放たれました!この位置は……ミカサです!」

 

「ミカサだと!…そうか、まだ手はあったな。」

 

「目標、重力砲強制停止しました!チャンスです!」

 

「フルファイヤー!」

 

一気に401の反撃が始まった。

 

 

「私のことも忘れないでほしいわ。」

 

重力砲放った私は、キリシマ達にそういい放った。

 

「目標、キリシマとハルナ。全弾発射!」

 

ほとんど機能が停止しボロボロの状態の二隻に更に追い討ちをかけた。

 

「これでどう!?」

 

「いけ!ミカサ!」

 

そして最後のクラインフィールドを打ち破り、多数のミサイルを叩き込んだ。

 

 

「くそ……そんな馬鹿な」

 

「クラインフィールド、維持できない。壊れ…ちゃうよ…?私…たち」

 

「ハルナ!私のコアを!」

 

「…!わかった。」

 

徐々にキリシマのメンタルボディが維持できなくなり、崩壊していく。

 

「なん…だ、この…感…覚は、そうか……これが…後悔…というやつ……か。」

 

次の瞬間、大爆発が起き二隻の大戦艦は沈んでいった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

事後処理

「………暇ねぇ。」

 

「……そう。」

 

ミカサは大破した船体を直すために、横須賀の地下ドックに収容された。

 

そこには、ちょうど401も収容されておりそのメンタルモデル『イオナ』と話していた。

 

「ねぇ…ミカサ。」

 

「何?」

 

「何故、霧の戦艦である貴女は人を助けたの?」

 

「何故って……言われてもねぇ?」

 

すごい無表情で質問されるので、少しばかり答えに戸惑った。

 

「さぁね。貴女だって、何故人類側についたの?」

 

「私は、人類についたとは思ってない。ただ、群像にあって彼に従え、と命令されたから。」

 

「命令、ねぇ…貴女には意思はないの?」

 

「これが私の意思。」

 

やっぱりイオナは独特な雰囲気を醸し出していた。

 

そこに、一人の男が現れた。

 

「じかに会うのは初めてかな。」

 

「…!あら、貴方は。」

 

「こんにちはミカサ。401の艦長、千早群像だ。先程の礼が言いたくてね。」

 

「どうも千早艦長。礼ならあの人に言った方がいいわよ。」

 

と、艦橋に一人立ってる山口を指差した。

 

「彼が私に何も言わなければ動かなかったわ。」

 

「しかし、君も結果的には我々を助けた。そうだろう?」

 

「成り行きね。おかげでこの様よ。」

 

お互い、クスリと笑いあった。

 

「お互い様さ。でも、いまだに信じれないな。霧である君が人類に手を貸すとは。」

 

「最近、よく言われるわ。でも、理由はまだ秘密ね。」  

ここで変に喋れば色々探られるだろうからな。

 

心の中でそう思った。

 

「そうか。所でミカサ、これからどうする予定なんだい?」

 

「え?」

 

唐突すぎて話についていけなかった。

 

「君は霧だ。何処に行くにしろ、人類からの何かしらの危害が加えられるかもしれない。しかし、霧にも戻れない事情がある、そうだろう?」

 

「………」

 

あらかたの事情は読まれていた。

 

「私にどうしてほしいの?千早群像。」

 

「俺たちの仲間にならないか?」

 

「へ?」

 

うそ、マジかよ。主人公の仲間になるのか。

 

動揺しまくりだった。

 

「え…えーと、それは一体。」

 

「言葉の通りだミカサ、それとも何か?」

 

「い、いや。しかし、いきなりそんなことを言われてもすぐには答えられないわ。」

 

「そうか……」

 

「でも、しばらく貴方達と行動を共にするぐらいならいいわよ。」

 

思わず口走ってしまった。

 

結果的には仲間になるパターンですわこれ。

 

「良いだろう。よろしく、ミカサ。」

 

「よ、よろしく。」

 

終始、ペースに乗せられ続けたミカサであった。

 

 

「The other day♪I met a bear♪」

 

横須賀湾からかなり離れた場所に彼女達はいた。

 

「……森のくまさん、一人で輪唱しててもつまらないな。」

 

重巡洋艦マヤと複数の軽巡洋艦であった。

 

『マヤ』

 

「あ、コンゴウ!」

 

『そこで何をしている。』

 

「あのね、キリシマ達がここで待ってろって言うからこの子達に森のくまさんを聞かせてたの!」

 

『そうか。お前は上位に命令を守ったんだ、よくやった。』

 

「えへへ!」

 

コンゴウに褒められて嬉しいのか、鼻の下を伸ばしていた。

 

『マヤはそこでキリシマ達の帰還を待て。その他の艦艇は全て艦隊に戻せ。』

 

「えー!それって一人ぼっちじゃない!」

 

『そういうことになるな。』

 

「やだー!そんなのつまんない!」

 

『……』

 

「いいもん!ずっとコンゴウのチャンネルで歌い続けるもん!」  

 

『好きにしろ』

 

ふと、コンゴウがあることに気づく。

 

『それとな、マヤ』

 

「なにさっ!なにさっ!なんなのよさっ!」

 

『ピアノの鍵盤、間違ってるぞ。』

 

「………」

 

しばらくぽけーっとしていたマヤであった。




マヤ可愛いですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

硫黄島・拉致

更新遅くなり申し訳ございませんでした。


ドックであらかたの修復が終わったあと、私は一足先に横須賀から出ることにした。

 

「ミカサ、やはり行くのか?」

 

「えぇ…やっぱりこれ以上人類に干渉する気は無いわ。」

 

そんな話を千早群像としていた。

 

「そうか。俺達は止めやしないさ。」

 

「…ふふ、それじゃあね。」

 

「あぁ…っとミカサ、これを。」

 

彼は、小さな地図を渡した。

 

「これは霧の警戒網からの抜け道が書いてある。使ってくれ。」

 

「……?何故こんなものを私に?」

 

「君は今、霧の立場から危ういんじゃ無いのか?」

 

「あ…」

 

ふと、今までしてきた事が脳裏によみがえる。

 

「で、でもそれは人類に渡すべきじゃないのか?」 

 

これを人類側に渡せばかなりの利益になるはずだか…

 

「いや、良いのさ。それに、これは我々を助けてくれたお礼さ。」

 

「そういうことなら受け取っておくわ、ありがとう。」

 

この行動が後から大変になるということは、まだ知らない。

 

ミカサは横須賀を出港していった。

その際、かなりの人から感謝の声が聞こえてきたのは言うまでもない。

 

 

「受け取ってくれたか?彼女。」

 

「あぁ、受け取ってくれたよ。」

 

「やはり、彼女を手放す訳が無いと思ってましたが…」

 

「まぁでも計画通りにいくかはわからないが、賭けてみよう」

 

401男性クルー達は、いたずらを考えついた子供のように笑っていた。

 

 

太平洋 硫黄島近く

 

「地図によると硫黄島に近づけば霧に探知されなくなるのね。」

 

私は先ほどもらった地図を頼りに船を進めていた。

 

「あ、あいつ(山口)に挨拶いってなかったわ。」 

 

ふと、誰もいなくなった甲板を見渡す。

 

「……寂しくなるわね。」

 

「ほんとだよ全く。」

 

「キャァ!」

 

突然、後ろから声がかけられた。

 

「なにもいわずに出港するなんて寂しいじゃないか。」

 

山口が船内から出てきた。

 

「あ、貴方!なんでここに!?」 

 

「いや………ね?」

 

「ほんとに、ここに住む気なのね……」

 

アハハッ、と乾いた笑いで誤魔化そうとする山口に呆れて言葉も出なかった。

 

「まぁ、よろしく頼む。」

 

「………勝手にして。」  

 

なんだかんだで硫黄島に近付いたとき、一筋の光が見えた。

 

「ん?あれは……!?」

 

ミカサにビームが着弾した。

これを皮切りに、多数のミサイルが降り注いでった。

 

「何よ!!ここに霧の艦隊はいないはずでしょ!!」

 

「クソ!何てこった!」

 

クラインフィールドが崩壊しかけるほどの飽和攻撃が突如止んだ。

 

「え?」

 

「やんだ、だと?」

 

しかし、次の瞬間ミカサは意識を失った。

 

「おい!ミカサ!しっかりしろ!」

 

ミカサは、まるで何かに操られているかのように硫黄島へ向かって行った。

 

 

『ウフフ、作戦通りね』

 

白衣を着た女性が一人、笑っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

硫黄島・出会い

『……○!』

 

『…ん?』

 

私は、白い光に包まれていた。そして、誰かが呼んでいる。

 

『……○○!』

 

名前だろうか?よく聞き取れない。

 

『○○!戻って来てよ!』

 

『○○君……』

 

どうやら複数いるようだ。しかし、視界がぼやけていてよく見えない。

 

『こんなに早く死ぬなんて……』

 

『早すぎるっ!』

 

死ぬ?一体何を……

 

周りで話していることを理解できなかった。

 

だんだんと意識が遠退いていく。

 

後ろから、誰かが呼ぶ声が聞こえた。

 

『ミカサ!』

 

 

どれくらいたったろうか。

気付けば、山口がこちらの顔を覗き込んでいた。

 

「ミカサ!よかった…目を覚まして。」

 

よくよく見渡すと、先ほどまでいた海から一転無機質な灰色に包まれた基地のような所にいた。

 

「山口……ここは一体?…うぅ」

 

起き上がると、軽い目眩がした。

 

「君が気絶したあと、何者かによってこの船のコントロールが奪われ硫黄島の内部へと連れてかれたんだ。」

 

気絶……あぁ、先程の攻撃の時か…

 

「そう…しかし、ここに基地とは誰がいるんだろう。」

 

よくよく自分の船体を見るとアームのようなもので固定されていた。

まるで、横須賀の海軍基地のように見えた。

 

『お目覚めのようね、ミカサ。』

 

ドックの奥から、一人の女性が現れた。

 

「あなたは………」

 

『ふふ…私のメンタルモデルは知らないものね、仕方無いわ。』

 

白い白衣を纏った女性…

 

『私はヒュウガ、メンタルモデルヒュウガよ。』

 

「ヒュウガ……あのヒュウガか!」

 

某ゲームとの差にびっくりした。

 

「一体、我々をどうするつもりなんだ?戦艦ヒュウガ。それにここは?」

 

私は状況を理解するために質問した。

 

「あら、聞いてなかったの?」

 

「え?」

 

ヒュウガは、あちゃー、と頭に手をやる。

 

「貴女達をここにつれてきてほしいとイオナ姉様からの指示があったのよ。」

 

「ここに?連れてくる?」

 

「なるほど、つまり我々は嵌められたんだな。」

 

一人、理解したのか山口がそう呟いた。

 

「へぇ……貴女、人間を乗せてるのね。」

 

「成り行きよ。」

 

「その方の名前は?」

 

「元統合海軍所属、山口多聞であります。」

 

「そう、山口多聞ね。」

 

「で、一体さっきの話はなんなのか教えて欲しいわ。どう言うこと?」

 

「つまり、ミカサを確実にこちら側に引き込むために一計を案じたのさ、千早群像は。」

 

「………この地図、罠だったのか。」

 

ピーピーピー

 

突然、基地内に警報が鳴り響いた。

 

「何事か!?」

 

ディスプレイを開き、確認する。

 

「これは……タカオ!」

 

「あらら、何でこの場所がわかったのかしら。」

 

「どうするんだ?」

 

「まぁ見てなさいな。」

 

ヒュウガは、うっすら笑うとディスプレイ越しに何かを操作していた。

 

 

「やったぁ!ついたよー!」

 

タカオは、ようやくこの場所を見つけれた。

 

「しかも予想通りに、まだあいつらは帰ってきていない!このままあの基地を占拠して…ん?」

 

山が光ったかと思うと、すぐにレーザーが飛んできた。

 

「なによこれぇぇ!!」

 

急な攻撃に怯みつつもフィールドを展開した。

 

「この攻撃アルゴリズムは人間じゃないわ!一体誰が…」

 

すぐに相手の情報をスキャンし始め、驚くべきことが発覚した。

 

「え!なんで!?何であんたが!」

 

驚きのあまり、近づいてくるミサイルに気付かなかった。

 

「あ…しまっ!」

 

ゴォォォン

 

「アダ…」

 

鈍い音が辺りに響き渡った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

硫黄島・騒ぎ

投稿遅れました。


「何で!何でアンタがいるのよ!」

 

「まぁまぁ…」

 

「あら…」 

 

硫黄島地下ドックは、色々お祭りになっていた。

タカオが入港するなり突然叫び始めるし、私を見たとたんさらに叫び始めた。

 

「まさか!アンタも同じ考えで?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…」

 

「…」

 

「落ち着いたかしら?タカオ」

 

「そこの蒼髪!この野郎テメェ!」

 

静かになったと思うと、また一人声を荒上げた。

 

「この野郎……よくも私たちの部下を!」

 

「な!なんで人間がここにいるのよ!」

 

「山口!落ち着いて!」

 

「頼む!止めないでくれミカサ!」

 

「まさかアンタが連れてきたの?」

 

「成り行きよ!山口、いいから止まって!」

 

「あだだだだだだっ!わかった、わかったから!」

 

いつのまにか、山口に技をかけていた。

 

 

「みんな落ち着いたようね。」

 

「いいえ!まだ落ち着いてないわ!」

 

「そうだ!まだ落ち着いてない!」

 

「なんでこいつがいるんだ!」

「なんでこいつがいるのよ!」

 

山口とタカオはお互いに指を指しあった。

 

「仲が良いわね。」

 

「そうね、とっても。」

 

「はぁ?何でだよ!ミカサ!」

 

「うっさい!仲なんか良くないわよ!ヒュウガ!」

 

「ほらぁ仲が良い。」

 

「あはは………………ところでタカオ」

 

「なに?」

 

「何でタカオはここに来たのかしら?」

 

「え!あ………その……」

 

さっきまで威勢が嘘のような可愛らしい少女になった。

 

「………?」

 

「ハハーン」

 

「な…何よ、ヒュウガ?」

 

「アンタ、千早群像が狙いでしょ?」

 

ボシュゥゥゥゥゥ

 

顔を真っ赤にしながらうつむいていた。

 

「当たりね。」

 

「あ……そういうことか。」

 

「はっ!」

 

「アンタには笑われたく無いわよ!人間!」

 

「どうすんの?ヒュウガ」

 

「何を?ミカサ」

 

「千早群像って貴女達のリーダーでしょ?」

 

「は?」

 

「え?」

 

予想外の反応に、しばらく言葉を失った。

 

「イオナねぇさまをタブらかす悪い人よ?別にタカオが奪っても私はどうでもいいの。ただ…」

 

「イオナねぇさまを独占できればそれだけでいいから、ハァハァ」

 

「あ、はい。」

 

この手の変態とは付き合わないでおこう…

 

そう心に刻んだミカサであった。

 

 

「ミカサ」

 

「あら、もう終わったの?」

 

山口は服がボロボロになっていた。一方タカオは服すら乱れていない。

恐らく、手を出さずに攻撃を受け続けていたのだろう。

 

「これが武士道か……」

 

「何か言ったか?」

 

「いえ、何でもないわ。」

 

「で、ミカサ。あんたこそ何でこんなところにいるのよ。」

 

「え?あぁ…それは……」

 

言えない…騙されて来ただなんて。恥ずかしくて言えない!

 

変なところで羞恥心があるミカサであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

硫黄島・再開……?

山口です。今私はドックにいます。

 

え?他のメンタルモデルは何処に行ったかって?

 

彼女らはビーチに行ったよ…

 

ん…私?私はこのドックを掃除してるよ。

 

一人でね!

 

 

「あの男、ちゃんと掃除してるのかしらね。」

 

「さぁ?心配なら見に行ったら?」

 

「な!」

 

「冗談よ、冗談。」

 

私は、この島をヒュウガに案内してもらっていた。

 

島の至るとこに旧日本軍の戦車が目につく。

 

「あれはなんだ?」

 

ふと視界のすみに大きな石碑が見えた。

 

「あぁ…あれわね、お墓よ。」

 

「お墓?」

 

タカオが物珍しそうに眺める。

 

「人間は、死んだらその魂をまつる場所としてあのような建造物を建てるそうよ。」

 

「ふーん。あ、ミカサ!」

 

私は、この墓に刻んである名前を見た。

 

『旧日本軍 硫黄島総司令 栗林忠道』

 

「栗林………」

 

「あらミカサ、知ってるの?」

 

「いや、知らないわ。」

 

とっさにそう答えたものの何か引っ掛かる。

何かが……

 

「まぁいいわ。私少し眠たくなってきたから寝るわ。」

 

一人、タカオは欠伸しながらフラフラとドックに戻っていった。

 

「さて、これからどうする?ミカサ。」

 

「私も戻るわ。少し、疲れたわ。」

 

「そうねぇ…もうそろそろ彼らも着くわ。」

 

「彼ら?」

 

「すぐにわかるわよ。」

 

ヒュウガの言葉に疑問を抱きつつもタカオの後についていった。

 

硫黄島沖

「艦長、もうすぐつきます。」

 

「千早群像……貴殿は何処に向かうつもりだ。」

 

「直にわかるさ。」

 

『ハルナ!本当に401の管理下に置かれて良かったのか?』 

 

『問題ない。401を…うまく言えないが…その……信頼している。』

 

『信頼………人間の心理か。まぁ、良い。』

 

「硫黄島管制室よりリンクの接続信号受信…接続完了。」

 

岩壁が突然光ったかと思うとそこには大きな穴が開いていた。

 

プロジェクターを使った欺瞞装置だった。 

 

『こんなところに基地を…』

 

『ここに強力な探知中和信号が出ている。どうりで見付からないわけだ。』

 

『ここなら、ナノマテリアルの補填ができるかも知れん…!』

 

『キリシマ…もう少しそのままの格好でいてくれないか?』

 

『えぇ!なんで!?』

 

『蒔絵の為だ。』 

 

『そんなぁ…なんでこいつのた…め…に。』

 

「?」

 

蒔絵のそのまっすぐや目を見つめる。

 

『ま…まぁ、この体の方が動きやすいから良いが!』

 

「ふぅ…何とか着きましたね。」

 

「………!」

 

「どうした?イオナ」

 

「変なのがいる。」

 

「変なの?」

 

「モニターに出す。」

 

モニターに映し出されたのは、重巡洋艦タカオであった。

 

「な!?」

 

「なんでここが!」

 

「……」

 

「どうしますか?」

 

「群像…もう一隻いる。」

 

「なに!?」

 

今度は戦艦ミカサが映った。

 

「ミカ……サ…ですか。」

 

「どうやら作戦は成功したみたいだな。」

 

「とりあえず降りよう。イオナ、ヒュウガは?」

 

「いる、下に降りてきてる。」

 

「なら問題ない。行くぞ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迫り来る黒・1

かなり間が空いてしまい、すいませんでした。

短いですが、どうぞ。


-太平洋-

「…………タカオとの連絡は依然無しか。」

 

『お姉ちゃんったら私が呼んでも返事してくれないよ!』

 

「千早群像…………我々の霧の秩序を乱す者………か。」

 

 

-硫黄島-

 

「イオナねぇさま!!!」

 

硫黄島基地に着いたイオナたちに、ミカサは怒りを含んだ視線を寄越した。

当然、千早群像はそれにきづかないわけが無い。

 

「ミカサ、どうしたんだ?不機嫌そうだが?」

 

「わかっていて聞いてるでしょ……騙された私がバカだったわ!」

 

「すまなかった…あぁでもしないと決意が出来ないんじゃ無いかと思ってね。」

 

「ええ!お陰ではっきりと出来たわ!」

 

「私はすごく助かったよ……何せお腹が空いててね。」

 

「多聞!あんたもね!勝手にホイホイついてきてからに!」

 

「山口…………横須賀ではお世話になりました。」

 

「いやいや、大したことじゃ無いよ。」

 

「あのあと、山口さんの評価が著しく上がったとお聞きしましたが?」

 

「そうなのか?」

 

「何でも北野さんが直接海軍に訴えたと……」

 

「北野さんが!?」

 

「…………」

 

そんなに二人の話をよそに401クルーの人はずっとそわそわしていた。

 

「な…なぁ、あれは大丈夫なのか?」

 

「ん?あぁ、タカオの事か…。ヒュウガ。」

 

「大丈夫よ。武装は解いてあるから………。」

 

「そうか………ん?」

 

物音に気がつき、群像がソレの存在に気づいた。

ソレは小さいタカオだった。

 

ソレはこちらに気づくと

 

「千早群像を確認!千早群像を確認!」

 

それに呼応するかのように、次々に姿を現していった。

 

「作戦行動開始!作戦行動開始!」

 

ポカーン!

 

「………」

 

「やれやれ…」

 

間抜けの音が聞こえたかと思うと、タカオの声と言うか叫び声が聞こえた。

 

「何でもっと早く教えてくれないのよ!!」

 

「スカートどこよ!!」

 

「キィーー!!」

 

それから3分後ドヤ顔で401クルーの目の前に現れたのだった。

 

「久しぶりね。」

 

「あの~どちら様でしたっけ?」

 

「(# ゜Д゜)」

 

ドダダダダダ!

 

機関銃の雨が京平に降り注いだ。

 

「いたたたた!すいません!思い出しましたぁ!!」

 

「ったく…………これでどう?」

 

タカオはその場でくるりと回ると今まで着ていた服から衣装チェンジをした。

 

「タカオ!用件を聞こう!」

 

「群像さま!?」

 

「群像……さま?」

 

ミカサの疑問を答えるものは誰もおらず、ヒュウガはうっすらと笑っているだけであった。

 

「えっと………その………。」

 

(あぁ……なんかタカオが急に乙女になってるし。)

 

「グヘヘ。」

 

(ヒュウガはなんか考えてるしな………)

 

はぁ…………と溜め息を漏らすミカサであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迫り来る黒・2

「ね…ねぇ、ヒュウガ?彼女はなにするつもりなの?」

 

「うふ……あの男からイオナ姉さまを取り戻すの。」

 

意味がわからんのですが………

 

それはさておき、空気は緊張していた。

 

「あの、あ、わた」

 

「?」

 

(さぁ、言うのよタカオ!!千早群像を渡せと!)

 

「わた、くっ……!」

 

(さぁ!言え!)

 

「渡してもらおうか!振動弾頭とそのデータを!…………ハッ!?」

 

「てめぇ、やはりか!」

 

「タカオ!お前に振動弾頭とデータは渡すわ………」

 

「ばっかじゃねぇの!?予定と違うじゃん!」

 

「え…その……ねぇ?」

 

「あ、はい、なるほど。」

 

ミカサは何となく理解した。

 

 

ミカサは一人海岸沿いを歩いていた。

あの、ヒュウガとタカオの乱戦から逃げたかったのかも知れない。

気付けば、1つの石碑の前にたっていた。

 

「栗林……………調べるもの………」

 

チッ…チッ……チッ………

 

『栗林忠道 旧日本陸軍硫黄島方面の指揮官。』

 

「ふーん、何で気になったのかしら…………」

 

にしても、この世界に来てからいろんな事があったなぁ。

 

「ん?」

 

何で私、この世界に来たんだっけ?

……そもそも、私って誰だっけ?

 

「んん?おかしいな……名前は覚えているのに……」

 

「ミカサ!」

 

後ろから声をかけられた。

 

そこには山口がいた。

 

「何をしてたんだ?」

 

「いえ、少し散歩をね…………」

 

「………その人が気になるのか?」

 

「ん?いいえ、目に留まっただけよ。」

 

「ふぅーん。なぁ……ミカサ。」

 

「なに?」

 

「君たち………霧はどこから来たんだい?」

 

「……………知らないわ。」

 

「知らない?」

 

知るわけがない。だって、気づいたらここにいたんだから。

 

「気付いたらこの世界にいた。それだけよ。」

 

「……不思議なもんだな。」

 

「全くよ。」

 

「この広い海はまだまだわからないことばかりだ。不思議なことが一つ二つあってもさして問題じゃない。」

 

「………変な人。」

 

「お、おい。待てよミカサ!」

 

スタスタと、海岸を歩いていった。

 

 

ミカサは山口とわかれ、一人ドックに戻った。

 

そこには、タカオとヒュウガがいた。

ヒュウガは401の整備をしているらしい。

 

「にしても、不思議なものよねぇ。」

 

「なにが?」

 

「イオナ姉さまってね、凄く特別な存在なのよ。」

 

あぁ、まぁ、確かにそんな感じはする。

邪魔にならないように戦艦ミカサにいこうとする。

 

「それと同じぐらい、ミカサもとても気になるのよねぇ……」

 

「…!」

 

思わず歩みを止めた。

 

「なんで?別に普通じゃないかしら?」

 

「彼女はね、なぜかは知らないけれどあの艦だけモデルが古いのよ。それだけじゃない、『あの時』も大和同様現れなかったわ。」

 

「………何者なのかしら。」

 

「わからないわ。でも、彼女も特別な存在よ。」

 

「ふーん、特別な存在ねぇ……彼女が…ん?」

 

「あ……」

 

見つかってしまった…………

 

「ミカサ!なんでこんなところに………」

 

「いやぁ、すこし、艦に戻ろうと思って……アハハ」

 

私が特別な存在って…………ばれたのかなぁ?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迫り来る黒・3

誤字がありましたので修正いたしました。


「コンゴウ~!見つけたよ!」

 

「そうか、ごくろうマヤ。」

 

「えへへ~!」

 

「ここは…………なるほど。キリシマとハルナを連れていったのが運の尽きだな。」

 

コンゴウ達は、ハルナ達の識別番号をたよりに艦隊を進めた。

 

 

「ミカサ~いるか?」 

 

「なに勝手にのってきてんのよ………全く。」

 

ハァ……と溜め息をつくも、この男には通用しない。

 

「何のようかしら?」

 

「上で食事をしようと、千早群像が。」

 

「食事?わかったわ。」

 

よっと、体を起こす。

そういえばこの世界に来てからまだ、ホットドックしか口にしていない。

 

「少し楽しみ………」ボソ

 

「ん??」

 

「何でもないわよ!ほら、さっさいく!」

 

「痛い痛い!!」

 

 

「データベース照合…………ワード………年代…」ブツブツ

 

「どうしたのタカオ?」

 

「ひゃぁぁぁ!!ミ…………ミカサ!」

 

「食事に行かないの?」

 

「しょ………食事?あぁ、い、いくわよ!」

 

「…ねぇ、さっきのあなた何を………」

 

「なんでもないわ!行きましょ!!」

 

「あ、ちょっと!…………もう。」

 

「ん?ミカサ、これ。」

 

山口が、一枚の写真を拾う。

おそらくタカオが落としていったものだろう。

 

「なにかしら…………あ。」

 

群像の写真であった。

 

 

「揃ったかしらね。」

 

「すごい…………ここで久しぶりに肉にありつけるとは……」

 

「あら、喜んでくれて何よりよ、山口多聞。」

 

「むむむ………」

 

「ミカサ、どうかしたのか?」

 

「こ、これは…………」

 

「あぁ、それ?『なれずし』って言う人間の食べ物よ。真似してみたの。」

 

「う、うむ。そうなのね………」

 

こうして楽しい(?)お食事会が始まった。

 

 

 

硫黄島近海

「なぜだ………なぜお前がいる、『ナガト』。」

 

「こちらの台詞よコンゴウ。ここは、私たちの管轄よ。」

 

「そうそう、早く立ち去るがよい。」

 

「もう!!なんなのあの人たち!」

 

「落ち着け、マヤ。この海域に我が艦隊の者がいる。私は奴等を回収しに来ただけだ。」

 

「へぇ………だとしても容認できないわね。」

 

「そうねぇ。」

 

「お前たちこそ、どうして巡航ルートから外れてここにいるんだ。」

 

「私たちはね、ミカサを調査しに来たのよ。」

 

「なに?」

 

「気づいてないかもしれないけれど、ミカサはね、どの艦隊にも所属してないのよ。」

 

「ッ!」

 

「おかしいでしょ?だから、気になって探していたの。そしたら………」

 

海中から1隻の潜水艦が現れた。

 

「伊8が教えてくれたわ。」

 

「まぁ、それと同時に401も見つけたから、まさかとは思ったけど。」

 

「どうするコンゴウ?私たちと戦う?」

 

「あなたじゃ、私たちに勝てないと思うけどねぇ??」

 

「「うふふふふ」」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・1

コンゴウがナガトと出会う頃

硫黄島

 

「ッ!?」

 

「!」

 

「………」

 

それぞれのメンタルモデルは感じた

二つの強力な気配が近付くのをレーダーで察知した。

 

むろん、ミカサも例外ではない。

 

「何………これ……」

 

激しく動揺していた。

何かが起きる、そんな気がしたからだ。

 

「どうした、イオナ?」

 

「どうしたんだミカサ?」

 

それを感じない彼らは呑気に声をかける。

 

「何か……くる…。」

 

先に口を開いたのはイオナであった。

 

「え?」

 

「レーダーに反応があるわ…………これは、コンゴウ!?」

 

「何!?」

 

ミカサのレーダーにもヒットする、が……

 

「私も見つけたわ……?」

 

「どうした?」

 

「い…いえ、コンゴウとマヤとその他艦がいるわね。」

 

おかしいな………さっきコンゴウに似たものをもう一隻感じたはずなのに………

 

「どうする、群像さん。何でここがバレたかは知らないがやつらは俺たちを殺す気だぞ?」

 

「…………うむ」

 

「戦力だけで言えば互角かもしれないがな。」

 

山口はヒュウガ、イオナ、タカオそしてミカサを見る。

 

「勝算が無いわけではないが…………これはどうだ?」

 

「なんだ??」

 

「お前、マジかよ………」

 

群像の口から出た言葉になかばあきれつつも、従うことにしたクルーとミカサ達だった。

 

 

「コンゴウー!401からのコンタクトがあったよー!」

 

「なに?」

 

『こちらはイオナの艦長、千早群像だ。コンゴウ初めまして。』

 

「なんのようだ?」

 

『君たちと、一度ゆっくり話してみたいと思っていたんだ。どうだ?、一緒にお茶でもしないか?』

 

「なに?」

 

『面と面を合わせて話したいんだ。どうかな?』

 

「なにを抜かすと思えば………」

 

「マヤ行きたい!!ねぇいこうよコンゴウ!」

 

「…………ふぅ、良いだろう。」

 

 

「ミカサ!急いでよッ!」

 

「わかってるわ!!」

 

ドックではミカサ、タカオ、ヒュウガと山口がせわしなく動いていた。

 

「ほらよ!これもいるだろ!!」

 

「その機械もよ!!まったく、ヒュウガも手伝いなさいよ!」

 

「るっさいわね!いま島の防御システムの構築をしてるの!邪魔しないで!」

 

「こっちは終わったわタカオ!そっちは!?」

 

「もう少しッ!いいわ!」

 

「よし、タカオは先に彼らと合流を。ミカサ、作戦の説明だ!」

 

「わかったわ。」

 

 

上でコンゴウたちの対応をしている間、ミカサと山口は先程立てた作戦の打ち合わせをしていた。

 

「私は陽動をすればいいのね?」

 

「そうだ、側面に回り込んで魚雷攻撃、間髪入れずに重力砲でコンゴウ、マヤ以外の艦艇を潰す。」

 

「でも、このルートはずいぶんと遠回りな気がするけど?」

 

今回コンゴウ達が現れたのは島の南側、ミカサが出るのは島の北側であった。

 

「敵にミカサの行動を悟らせないようにするためらしい。」

 

「そうなのね……………」

 

ミカサは、ふと心に胸騒ぎを覚えた。

 

「どうした?」

 

「ねぇ、他に船が隠れてるってことないかしら?」

 

「どういうことだ?」

 

「いえ、ふと気になって…………」

 

ミカサはさっき感じたもう一隻の気配が忘れられなかった。

あれほどまでに凛々しく、それでいて冷徹な気配がねっとりと肌に絡み付く。

 

「レーダーに映ったのはコンゴウ達だけとしか聞いていないぞ。それにミカサだって確認しただろう?」

 

「え…えぇ、そうね。」

 

「まぁ、何が起きるかわからないから、警戒だけはしておこう。」

 

「そうね……」

 

「ほんとは上の交渉が成功してくれればいいんだがなぁ……………」

 

「それはフラグじゃ……」

 

「ミカサッ!!準備よ!!」

 

タカオが走ってきてそう伝える。

 

「やはり失敗したわ!作戦開始よ!」

 

「わかったわ、多聞!」

 

「おう!一泡ふかせてやるぜ!」

 

山口は、艦に乗り込みミカサは臨戦態勢に入った。

 

 

この時は知るよしもなかった…ミカサが感じる気配が後々悲劇を起こすということを。




ミカサの感じる気配の正体とはいかに………


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・2

「なぁ、ハルナ…ここら辺はヤバくないか?」

 

「なぜそう思う?」

 

「だって、ここの海域は……………」

 

「イオナ、行くぞ!」

 

「了解。」

 

「な、なぁ、千早群像……」

 

「バックアップを頼むぞ、ハルナ、キリシマ。」

 

キリシマの懸念は誰にも伝わることはなく、401は進んでいった。

 

 

「ふぅ…………ようやく出てきたか。」

 

コンゴウは、おおむね予定通りだと言いたそうな表情で指示を下していく。

 

「マヤ、お前はタカオの相手を頼む。」

 

『はーい!』

 

「他は私と共に401を狩るぞ。」

 

『させないわよッ!!』

 

ヒュウガの攻撃がコンゴウの動きを拒んでいく。

 

「チッ……………クロシオ、シラヌイ、カバーを頼む。」

 

『クッ………ミカサは何をしてるのッ!!』

 

『もう少しよ!待っていて!』

 

「無駄な足掻きを…お前達は敗けるのだ。」 

 

『何よ、余裕ぶってッ…』

 

「おとなしく降服………グッ!?」

 

コンゴウの船体に重力爆弾が当たった。

「これは………機雷!クロシオ!シラヌイ!回避しろ!」

 

そう命令するも、シラヌイは避けることができたがクロシオは先行し過ぎていたためもろに機雷攻撃を受けることになる。

 

『千早群像の案で作られた物よ、ここまでうまくいくとは思わなかったけど。』

 

「…………」

 

『……ッ!コンゴウ!右から魚雷!!』

 

「なに!?」

 

マヤの報告で、右舷から接近してきた魚雷を防ぐ。

どうやら侵食魚雷だったらしい。

 

「401……来たな。」

 

『よし、タカオ、ヒュウガ、ご苦労だった。これより、作戦を開始するぞ!ミカサ!』

 

『ザッ…………ザザッ……』

 

『ミカサ?どうした!』

 

『…ザ………ニ………ザザッ…ゲテッ』

 

ノイズが激しくて連絡が出来ない。

何かあったのだろうか。

ひとまず、群像らの作戦に大きな狂いが生じたのは言うまでもない。

 

『クッ…!作戦変更!!プラン2発動!』

 

 

ミカサは絶望的な状況に陥っていた。

硫黄島から出発し、予定通り401と合流するはずだった。

 

「なんで………ここにもいるのよッ!」

 

「あの姿……………間違いない…」

 

「なに?知ってるの山口。」

 

「あれは、我々海軍の中でも憧れの船だったんだ。」

 

41cm 連装砲、4基。

かつて、ビックセブンと言われた戦艦

 

「あれは、ナガトだ!!」

 

「ナガト!?ナガトって………あの戦艦長門!?」

 

「クソッ!ミカサ、撃ってくるぞ!」

 

「わかってるわよ!!」

 

レーザーがミカサの船体をかすめていく。

 

「なんて威力なの…………ッ!まだほかにもいるの!?」

 

「ミカサ、右舷にもう2隻!あれは…………おそらく駆逐艦だ!」

 

「見えたわ…………あれは『シグレ』と『シラツユ』だわ…………」

 

これはまずい…………いくらなんでも戦艦だけでなく駆逐艦2隻を同時に相手をだなんて!

 

「千早群像に連絡を!!」

 

「ダメ!繋がらない!」

 

「まさに八方塞がりかよ…………」

 

そこでふと、考えが浮かんだ。

おそらく、うまくいかないであろう。

 

「……………山口」

 

「ん?」

 

「私たち、逃げ切れると思う?」

 

「頑張れば………しかし、千早達が危なくなると思うが?」

 

「違うわ、彼らから遠ざけるのよ!」

 

ミカサは最大船速で群像達がいる方向から遠坂っていった。

 

「少し、寂しいけれど………山口、信号弾を!」

 

「わかってるよ!」

 

上空に蒼の閃光弾が打ち上がった。

 

「よし、いっちょやりますりますか!」

 

 

 

 

『皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ。諸君、各員一層奮励努力セヨ』

 

蒼の信号弾に込められた意味は、千早達にも届いたのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・3

「あら、一人で向かってくるの?」

 

「ここまではおおむね予測通りね。」

 

「そうね。伊8、貴女はレーダーに感知されないようにいなさい。念のためよ。」

 

「さてミカサ、貴女の実力を見させていただくわッ!」

 

 

「全速前進!当海域より離脱、敵を引き付けるわ!」

 

「撃ってきたぞ!!」

 

ミカサに攻撃が降り注いだ。

ナガトだけではない、シグレ、シラツユも攻撃に加わり猛烈な弾幕を張る。

 

「ミカサッ!アレは撃てんのか!?アレ!」

 

「超重力砲のこと!?無理よ!いまは防御で手一杯!!」

 

「ッ!ミカサ!一番主砲を使わせてくれ!!」

 

「いったでしょ!手一杯で照準するどころの話じゃ………」

 

「俺が合わす!お前はそれに合わせて撃て!!」

 

「わかったわよ!!頼んだわよ!」

 

山口は、射撃指揮所に走っていった。

 

チッ…………目視による射撃なんていつぶりだ…………

 

そんなことを呟きながら、目的の場所へたどり着く。

 

「ミカサ、合図を出したら頼むぞ!」

 

『わかったわ!あ、そこに手伝いを寄越したから。』

 

「手伝い?おわっ!?」

 

足元から小さいなにかが這い出てきた。

ミカサであったデフォルメされてはいるが………

 

「なんだこれ?ま、まぁいいや。」

 

双眼鏡を覗きつつ、座標を操作していく。

 

ナガトはミカサの前方左側、駆逐艦は前方右側から来ていた。

ひとまず、比較的距離が近い駆逐艦に照準を合わすことにした。

 

「目標、シラツユ!主砲………方位右62度………撃てッ!!」

 

ミカサの主砲がシラツユの艦首をかすめた。

 

『やるじゃない!』

 

「まだだッ!次で仕留める!方位修正!」

 

「…………」

 

ポタ……………ポタ……………

 

「次は当てる、方位84度に修正………どうした?」

 

デフォルメミカサは、心配そうに眺めていた。

山口は鼻血を垂らしていたのだ。

測量機、計算機がないミカサの目視による射撃指示はすべて、指示者の頭のなかで行われる。

今まで機械に頼っていた山口にとっては明らかにキャパシティオーバーであった。

それに、時間がない。

着弾から射撃まで、時間は30秒しかなかった。

 

『山口!!もうすぐすれ違うわ!』

 

「反航戦か!大丈夫だ、決めてやる!……撃てぇ!」

 

砲口から放たれたレーザーはまっすぐシラツユの船体の中央を貫く。

そのまま船尾に向かって切断する。

 

凄まじい爆音が響いた。

 

『やったわ!!1隻倒したわよ!』   

 

「次だ!方位95度に旋回………くそッ!間に合わん!」

 

「………」ちょいちょい

 

「なんだ?………おぉ」

 

山口の目の前にディスプレイが現れた。

 

「これは……ミサイルか?俺に操れと?」

 

「……コクコク」

 

デフォルメミカサの指示のもと、ミサイル照準をしていく。

 

「ロックオン完了!侵触弾装填…………てぇ!!」

 

ミカサの右舷のミサイルセルから幾十の飛翔体が飛び出したと思うとまっすぐシグレに向かっていった。

 

次々に着弾するが、全てクラインフィールドに防がれる。

が、

 

「ミカサ!右舷副砲全門斉射!」

 

これもまた、山口の予測内であった。

 

副砲から放たれた砲弾はクラインフィールドに防がれること無くシグレに命中していった。

 

「よし!!」

 

「…………」パタパタ

 

シグレは炎上した。

 

 

  

しかし

 

『多聞!逃げて!!』

 

ミカサの悲痛な叫びと共に山口のいる一番砲塔は吹き飛んだ。

ミカサの処理が追い付かず、山口の指示で副砲に意識がそれてしまい、結果、飛んできたナガトの41cm超重力砲弾を防ぐことはできず、貫通し装填中の炸薬に引火してしまったのだ。

 

「これ以上はやらせないわ。」

 

「反撃といきましょうか。」

 

ナガトの反撃が始まった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・4

「多聞!ねぇ、多聞!」

 

ミカサは一番砲塔へ駆けていった。

 

「多聞!」

 

「………ミカ……サ…か?」

 

山口多聞は辛うじて生きてはいた。

サポートに送ったデフォルメミカサが間一髪でフィールドを張ったが、打ち消されてしまったらしい。

よく見ると、片方の足がなく腹部背部にいくつもの大小の破片が突き刺さっていた。

 

「すまねぇ…………」

 

「何を謝ってるのよ!早く止血しないと…………」

 

傷を押さえようとするミカサの手を払った。

 

「お前は………奴を倒すんだろ?なら……早く行け!」

 

「何をいってるの!」

 

「どのみち……俺は助からん………頼む、行ってくれ……クッ」

 

「多聞!しっかりして!ねえったら!」

 

「早く行けッ!」

 

「ッ………」

 

「………ニヤ」

 

多聞は、ミカサをたぐりよせ抱き締めた。

 

「ミカサ………人類を頼んだぞ……」

 

そう呟いた。

手を離すと、

 

「さぁ、行け!やってくるんだ!」

 

と、ミカサに激を飛ばした。

それに答えるかようにミカサは艦橋へ走っていった。

 

「キスの一つぐらい、奪えばよかったかなぁ……………」

 

「……ゴソゴソ」

 

「ん?……あぁ、生きてたのか………ちっこいの」

 

「………コクコク」

 

「そうか…………最後に…少し、協力してくれないか?」

 

「…………?」

 

 

 

「全速前進!すれ違い様に全弾をぶちこんでやるッ!」

 

ナガトの主砲と正面からやっても勝ち目はない、ならば!

 

「火力で押しきる!」

 

先ほどシグレを倒す際、多聞はクラインフィールドを飽和させるため侵触弾を多数撃ち込んだ。

弾幕をはれば勝つ可能性も見えてくる、そう考えた。

 

 

 

「火力で押しきる気か…………おもしろいわね。」

 

「私達もやりましょう。」

 

「そうね。」

 

ナガトからは、数え切れないほどのおびただしいミサイルの雨が降り注いだ。

ざっと、ミカサの数倍の数はあるだろう。

 

「これだけの量、どれが侵触弾かわからなくなるわ。」

 

「全て撃ち落とせばいいのよ。」 

 

しかし、激しい対空砲火をかいくぐり何発かナガトへ命中する。

 

「くっ……………」

 

「やってくれるじゃないッ!」

 

「ミサイルじゃ、埒があかないわね。」

 

「重力砲の準備をしましょう。」

 

 

「重力砲を使う気ね!」

 

埒があかないと、そろそろ決着をつける気ね………

 

「おもしろいわ!超重力砲準備!!」

 

おそらく、普通にやったんじゃ押し返される。

全ての演算をこれに賭けないと……

 

「一番から十番、約30秒後に自動発射。全演算95%を重力砲にッ!」

 

エネルギーが充填されていく。

全て溜め終わると視界がチカチカ光った。

この限界まで溜めた一発はミカサ自身にとって、かなりの負担があるのだ。

 

「撃てぇぇぇ!!」

 

ナガトとミカサ、同時に重力砲が放たれた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・5

双方共に放たれた重力砲は海を割った。

ミカサの方が実のところおしていた。

 

「沈めぇ!!」

 

「これくらいでナガトは沈まぬッ!」

 

ナガトの船体には、ミカサのミサイルが着弾していく。

やはり、硬い。

 

「ここで負けるわけにはいかないのよッ!!!」

 

ミカサの思いはさらにナガトを圧倒していった。

 

 

「ナガトッ!このままではッ!」  

 

「全演算能力を移しましょう。これで、いけるはずよ。」

 

「了解、出力最大!」

 

今までおされていたが一転、おし返し始めた。

ミカサの重力砲では、防ぎきれなくなっていた。

 

「クッ……索敵能力の低下………自動迎撃システムの95%の停止……」  

 

ナガトも相応の代償を受けていた。

 

「もう少しよッ!いっけぇぇぇえ!!!」

 

ナガトの重力砲が今まさにミカサを貫こうとしたとき、

 

「まずいッ!!!侵蝕弾頭よッ!!」

 

「え………う、そ」

 

海中から侵蝕魚雷が飛び出した。

ナガトの中心部に到達した侵蝕魚雷は、盛大に破裂した。

 

 

「もう…………持ちこたえれない!」 

 

ミカサのキャパシティがオーバーし重力砲を維持できなくなっていた。

 

「あぁ………多聞、約束守れないかも……」

 

ミカサの重力砲が維持できなくなり消えた。

死を覚悟したまさにそのときであった。

 

『こんなところで死ぬんじゃねぇ!!』

 

そう、声が聞こえたかと思うと船体が横に大きくスライドしナガトの重力砲から逸れ、船体を少し削っていた。

 

「え………え?」

 

何がどうなったか、私には理解ができなかった。

しかし、

 

「ナガトが…………やられてる?」

 

爆発を繰り返すナガトを見て、本能的に助かったと感じた。

 

「いったい誰が………多聞?」

 

そう思うとすぐに駆けていった。

 

 

「大成功だな…………ちっこいの。」

 

「コクコク」

 

多聞は一人、笑っていた。

ミカサとの撃ち合いでナガトが夢中になっている隙に侵蝕魚雷を何本かうちこんだ。

最初は気付かれると思ったが、ハルナ・キリシマ戦でもハルナたちは、重力砲を撃つ際は索敵能力が低下しギリギリまで気づくことはなかったから、賭けてみることにしたのだ。

 

「最後に……この艦のコントロールが使えてよかった………」

 

ミカサのコントロールシステムに干渉した多聞は、側面のスラスターを全開にし、間一髪でナガトの重力砲から逃げることができた。

 

「ふふ……こいつで俺も…名を…残せた……かな。」

 

じょじょに意識が薄れていく。 

 

「ちっこいの……あとは頼むぞ…」

  

もう視界は暗くなってしまったが、誰かに揺さぶられているのがわかる。

 

最後までいいやつだった……ミカサ。

 

いつか、霧と人類が手を取り合えば………いいな。

 

多聞の意識は、そこで完全に途切れたのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の襲来・終

「多聞!ねぇ、多聞ってば!」

 

必死に揺すったり、声を掛けているが目を開ける様子がない。

 

「お願い…………目を覚まして……」

 

気づけば、水が自分の顔から落ちていた。

これが涙だと、気づくのにはそう時間もかからなかった。

 

「…………いくよ。」

 

流れる涙を拭いながらミカサは、デフォルミカサに声をかけた。

 

「多聞が命を懸けて戦ったんだ、私だってそれに答えないと……全速前進!」

 

ミカサは、満身創痍の船体を軋ませながら進んでいった。

 

「ミサイル全門発射!!一番二番魚雷菅に侵触魚雷装填!」

 

残弾は残り少なかったが、そんなことを気にせず、ナガトに対し飽和攻撃を行った。

 

一方ナガトは、撃ち返してくる気配は無く既にクラインフィールドすら展開する余裕も無いらしい。

 

「副砲射程圏内に入った………全門斉射ァ!」

 

一斉にナガトに襲いかかる。

侵触弾頭の着弾も相まって大爆発を起こした。

 

もう、彼女は沈むだろう。

 

「ナガト………さようなら。」

 

そう呟き、去ろうとした。

しかし……

 

『ミカサァァァァ!!』

 

直後、ナガトから高出力レーザーが放たれた。

ミカサはとっさにクラインフィールドを展開するものの、重力砲発射における障害がまだ残っていた。

 

ミカサの今の演算能力ではナガトのレーダーを防ぐ事ができず威力を少し弱めただけで、ミカサに着弾した。

 

「何て威力なのよッ!」  

 

しかし、小規模な爆発はあったもののすぐにナガトのレーザーは消えた。

2発目を覚悟したが、飛んでくる様子はない。

きっと、あれが最後の攻撃であったのだろう。

ミカサはそう感じた。

 

「何て執念なの…………でもこれでッ!」

 

二番砲に、エネルギーを充填させナガトへ発射した

 

艦の中央を貫かれたナガトは、轟音と共に沈み始めた。

中央から真っ二つに折れたのだ。

 

「ハァ………ハァ…勝った………」

 

深いため息と共に甲板に座り込む。

早くこの海域から脱出しなければ……

 

「もう…限界かも…………」

 

目の前がチカチカする…

 

ミカサは眠ろうとした。

しかし

 

「………!ソナーに感あり!なにか来る!」

 

ソナーに映る1隻の影がこちらに近づいてきていた。

目視では見えなかった。

ディスプレイを開き、さらに視界を広げるも見つからなかった。

 

「一体どこに…………!まさかッ!」

 

しかし、ミカサが気づいたときには既に遅く数本の雷跡がこちらへ向かってきていた。

 

「全速前進!!クラインフィールド構成開始!」

 

しかし間に合うことはなく、右舷の艦尾辺りに被弾した。

 

「侵触弾!?早く直さないと……ッ!?」

 

今度は中央に2発、艦首に1発次々に当たった。

 

「間に合わない……………ここまで来て!」

 

ミカサも反撃に移るがいかんせん、敵の正体がわからなかった。

 

「確か、普通に船も潜ることは出来たけど………出てきて射撃しないということは………潜水艦か!」

 

ミカサの予想は見事に的中した。

ナガトの命令で海域を離れていた伊8が、ナガト撃沈と共に戻ってきたのだ。

 

ミカサの演算処理が低下した状態では潜水艦の姿を見つけることはできず、一方的な攻撃を食らっていた。

 

ミカサの稼働できる艦のシステムは既に30%を切っていた。

 

「こんな……とこ……ろ…でぇぇ!!」

 

最後に右舷から集中雷撃を受けたミカサは、爆発と共に海へ沈み始めた。

 

「ちくしょう……………ここまで……か。」

 

ミカサの視界が激しく歪み、ぼやけていった。

 

 

 

轟沈していくミカサを横目に、伊8は沈んだナガト、シラツユ、シグレのユニオンコアを回収し、静かに当海域を離脱していった。




これで、第1章は終わりとなります。
沈んでしまったミカサはいかに!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章
流れ着く


目を開けると、視界一杯の青空が広がっていた。

白い浜辺で、私は空を見ていた。

さざ波の音が耳に心地いい。

 

ここはどこだろうか……

 

辺りを見渡すが人の気配が無い。

この浜辺にいるのは私一人だけらしい。

こんなきれいな場所に人がいないのは寂しいものだ。

 

「って、違う違う!私は沈んだんじゃ………」

 

やっと、さっきまでのことを思い出した。

確かに潜水艦の雷撃を受け、ミカサは沈んだはずだったのだ。

 

「メンタルモデルは艦と共に死ぬと思ってた………」

 

自分の体を眺めていた。

服は濡れているものの体その物は先程までの激戦の後とは思えないほど傷1つ無かった。

 

「………どうしよ」

 

流れ着いたのはいいが、ここがどこかわからない。

 

しばらく探索することにした。

 

 

 

「ずいぶん遠くへ来ちゃったけど………なにもないわね……」

 

歩いて30分、鬱蒼とするジャングルの中を歩いていた。

よく辺りをみわたしてみるも、人の姿や人工物が1つも見当たらない。

 

「むむむ……そうだ、ソナーって使えるのかしら………」 

ディスプレイを開き、索敵モードに入った。

ソナーを打ち出し、辺りに軽い衝撃が走った。

 

「………お!」

 

ミカサがいる地点から約2㎞北上した地点に大小様々な人工物があるのをとらえた。  

 

「よし!行ってみよう!!」

 

ミカサはそこへ向かいだした。

途中、何やら足跡のような物があった気がしたが、気に留めなかった。

 

向かい初めてから少しばかりたった後、突然、ヘリの爆音が響き始めた。

 

ヘリが近くにいるの?、ということは人が住んでるのかも。

 

そう考えたミカサはなるべく目立たないように慎重に動き始めた。

 

横須賀では歓待を受けたが、いまだに霧を憎むものは多いと、とくにこのような場所に住んでいるならばなおさらだと感じたからだ。

 

ゆっくりとジャングルの切れ目を見つけたため、そこから周囲の様子を調べることにした。  

目の前には、少し異様な光景が広がっていた。

 

大きな更地があり、中央には廃工場がありそれらを取り囲むように黒いギリースーツに身を包んだ兵士が立っていた。

上空には案の定、ヘリが3機飛んでいた。

 

「ここはいったい……軍事施設かなにかだろうか?」

 

すこし、彼らの話す会話に耳を澄ましてみる。

 

『見つけたか!』

 

『いーや、逃げ足が速い野郎だ。』

 

『おい!今度はあっちだ。』

 

『了解』

 

『見つけて撃ち殺してやる。』

 

「何やら、物騒な話ね……撃ち殺すって……」 

 

「本当に物騒だよなぁ……」

 

「キャァァァ!!?」

 

「シッー!静かにしてろ!」

 

突然隣に現れた男に口を塞がれる。

 

「じたばたすんな!」

 

「ッー!!ッー!!」

 

「誰かいるぞぉ!!!」

 

「くっそぉ!逃げるぞ!!」

 

突然手を引かれ走り出した。

後ろから銃弾がとんできた。

上空からもヘリが追いかけてきている。

 

とんでもないことに巻き込まれてしまったなと、ミカサは思った。




ミカサの前に現れた男とはいったい?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その男、不審

「ハァ、ハァ…ここまで来たら大丈夫だろ。」

 

走り出してからかなりの時間がたった。

気づくと、草むらの中に小さな穴があるのに気づいた。

 

「一体……何?」

 

「ここは俺のもう1つの隠れ家だ。」

 

「ちがう!あんたは一体誰なの!?」

 

「声をあらげるなって、とりあえず中にはいれ。」

 

男に諭され、しぶしぶ中にはいっていった。

中は、驚くほど広く空調も涼しかった。

 

「すごい………」

 

「あんた、なんか飲むか?」

 

「え、えぇ………」

 

地下にこんな空間があるとは……

まるで秘密基地みたいでとても気持ちが昂る。

 

「ここに座れよ。ほら、お茶だ。」

 

設計図やらいろんな書類をどかしつつ、座るように誘う。

 

「そーいや、 俺の名前を聞いていたな?」 

 

「ええ、あなたは誰?」

 

「俺はな、………源田って言うんだ。源田実、佐世保で対霧用兵器の研究を最近までしていた。」

 

「していた?今はしてないの?」

 

「あぁ、横須賀のある科学者が対霧用兵器を完成させたんだとよ。そんで俺はお役ごめんさ。」

 

「じゃあ、追われていたのはどう言うこと?」

 

「あー、話せばちと長くなるんだが………」

 

こっそりと佐世保のデータベースにハッキングをして、この源田実と言う男を調べてみた。

 

「……!」

 

「どうした?」

 

「い、いえ!続けて……」

 

佐世保データベースでは、源田実という男は実在はしていたが、先の大海戦で戦死していた。

しかも科学者ではなく、護衛艦ひびきの艦長であった。

 

「一体…………何を隠しているのかしら…」

 

「?……あ!お前の名前を聞いてなかったな!」

 

「え!」

 

「あんたの名前は何て言うんだ?」

 

「私の名前は………えーと、」

 

まずい、ミカサだなんていったらすぐに私が霧ってバレる!

ただえさえ怪しいのに…

ふと、頭に浮かんだ名前を言った。

 

「栗林!栗林………ヒビキよ!」

 

「栗…………林…か」

 

ふと、男が動揺を示した。

 

「どうかした?」

 

「い、いや、ヒビキか………懐かしいな。」

 

「何か聞き覚えがあるの?」

 

「知り合いが、同じ名前の船に乗ってたんだ………」  

 

おそらく、本物の源田実ね……

一体この男は何者……?

 

「もうひとつ聞きたいことがあるんだが……いいか?」

 

「え、えぇ、良いわよ。」

 

「お前は何でこんなところにいるんだ?軍以外は立ち入れないところなはずだが?」

 

「あ、ええと、それには訳がありまして………」

 

何てごまかそうか………

船に乗っていたら霧に襲われた、これだ! 

 

「実は船に乗って湾から出ていたら霧に襲われて遭難しちゃって……」

 

「船で湾をでたぁ!?なんでこんなにご時世に船で?」  

「ええと、そのぅ……」

 

墓穴を掘ってしまった!

 

ミカサは深く後悔することになったのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

万事休す………?

明けましておめでとうございます。
二日遅れていますが気にせず話をどうぞ!


「船にのってって一体………てか、お前は本当に何者なんだ?」

 

「話せば長くなるというか………なんというか………」

 

自身で掘ってしまった墓穴に右往左往しているとき、ふと、聞き慣れない機械音がした。

 

この地下部屋自体、機械に溢れているため気のせいかと思ったがどうにも耳につく不快音がする。

 

「ねぇ、なにか聞こえない?不快音かなにか…………」

 

「話をそらすなよ…………ん?」

 

音に気づいたのか辺りを見回す。

 

ピピ………ピピ………ピピピ……

 

「この部屋にある機械の音とは違うななんだろう…」

 

男がたって、振り返った時床に軽い音をならしなが、何かが落ちた。

 

「なにかしら、これ。」

 

つまみ上げると確かにソレからは音がしていた。

ちょうど、瓶ビールの栓ぐらいのサイズだ。

 

「これは何かわかる?」

 

「どれ…………………」

 

男が、ソレを眺めているとみるみるうちに顔が青ざめた。

 

「?」

 

「奥に……奥に走れヒビキ!」

 

言うが早いか、ミカサたちが入ってきた入り口が突然爆発した。

 

「発信器だ、クソッ!」

 

男に引っ張られながら奥へ走り出す。

 

「なんでまた走らないといけないのよ!」

 

「そこを左に走れ!出口があるはずだ!」

 

もたつくミカサについてこいと言わんばかりに手を引いた。

 

「いいか、次の基地へ向かう!それまで決して手を離すなよ!」

 

「え、えぇ……」

 

すぐにはしごが見えてきた。

 

「登るぞ、遅れるなよ!」

 

はしごを登り、男が天板をはずすと日の光が射し込んだ。

そして、男に手を引かれ身を外に出した。

 

「よし、まだ敵は追い付いていない!いく…………」

 

そのとき、銃声が鳴り響いた。

目の前で血飛沫が飛び、ミカサの顔や服に付く。

 

「くっ………そぉぉ、油断しぜ………」

 

肩を撃ち抜かれていた。

男は傷口を、手で押さえながら呻き声をあげていた。

 

「し、しっかり!」

 

「いいか、お前だけでも………」

 

「そこまでだ、少佐。」

 

振り返ると、防弾装備で身を固めた男がたっていた。

 

「貴様はもう逃げられん。おとなしくデータを渡すんだ。」

 

「けっ、やなこった。」

 

なんことだか、ミカサにはわからないがひとまず逃げた方がいいと思い、後退りをする。

しかし……

 

「この女がどうなってもいいのか?」

 

「カッ……!?」

 

突然首もとを絞められ、拘束される。  

 

「おい!ヒビキは関係ない!はなせ!」

 

「お前がデータを渡せばいい。」

 

「クッ………ん?」

 

あれ、苦しくない。  

 

首辺りに違和感はあるも、痛みも苦しくも無かった。

 

あ、そうか、私、メンタルモデルだった。

 

自分自身が何者か、思い出したミカサは反撃に出ることにした。

 

「あんたねぇ……」

 

「!?」

 

「な!」

 

「いい加減にしなさいよ!」

 

思いっきり肘を男の胸に叩きつけた。

防弾プレートが割れ、男が血ヘドを吐き倒れる。

 

「す、すげぇ………」

 

「まったく、女性の扱いがなってないわねぇ……ん?」

 

感心する男をよそに、大勢の人とヘリコプターが接近していた。

倒れている男の仲間が追い付き、ミカサと男に銃を向けた。

 

『武器を捨て、両手をあげろ!』

 

「チッ……ここまでか。」

 

「いいえ、まだまだよ。」

 

ミカサはニヤリと笑い、意識を集中させた。

 

「貴様らに、我々の力を見せてやる………」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無双

「こういうのは初めてだけど………まぁ、なんとかなるかな!」

 

さっそく、辺りをスキャンした。

視界が変な感じになる。

 

「うわ、なんだこれ…」

 

どうやら、危険度が高い順からマークされていくらしい。

さっそく最優先対象が表示された。

武装ヘリ、アパッチと言われるヘリコプターであった。

 

「なんとかできないかしら…………そうだ!」

 

ハルナから教えてもらったの、出来るかな……

 

ヘリに手をかざし、まるで、自身が操っているラジコンのようにイメージする。

 

すると、自身の手の動きに合わせヘリが動き始めた。

 

「おぉ、ハッキングがうまくいくとは………よぉーし!」

 

硫黄島で、ハルナに教えてもらったハッキングがこんなところで役立つとは……!

 

システムコントロールを乗っ取ったミカサは、ヘリの武装システムにアクセスし機関銃をあたりに撒き散らす。

 

「さすがにこれを食らえばただではすまないでしょ!!」 

 

「ひぃ!退避ぃ!退避ィィィ!」

 

「おいおい、奴等が逃げてったぞ!」

 

「ふぅ………」

 

安堵の息と共にヘリのコントールも解放した。

すると、一目散に逃げていった。

 

「さて、そろそろ……」

 

しかし、そう安心したのもつかの間、地響きと共に三体のロボットが現れた。

 

「何、あれ?」

 

「くそっ!奴等本当に俺を消したいようだな!ヒビキ、あいつは磐蟹っていう遠隔操作タイプの兵器だ!」

 

「な………」

 

磐蟹がミカサに照準を合わせ、機関砲を撃ち始めた。

 

「しまっ……ッ!」

 

辛うじて、クラインフィールドが間に合い後ろにいる男にも弾が飛んで行かずにすんだ。

しかし、これによって正体が露見してしまった。

 

「おまえッ、霧!?」

 

「黙ってて!そーゆのは後!」

 

ダッ!っと駆け出し、磐蟹の少し先で飛び上がったかと思うとすぐに磐蟹に向けてかかと落としを決めた。

 

前部装甲が鈍い音をたてへこみ、爆発を起こした。

 

「近接格闘って本当に難しいわね………」

 

「ヒビキ、ミサイルが!」

 

目の前から2発のミサイルが飛んできた。

 

「この場合は!」

 

1つ目はクラインフィールドで防ぎ、2つ目はミサイルのシステムにアクセスし、進行方向を逆転させ、跳ね返し

磐蟹に命中した。

 

「残り1ね!」  

 

最後の磐蟹に飛び付いたミカサは、力の限りに叩きつけた。

 

「これで終わりッ!」

 

メインカメラと中心回路が破壊され、動かなくなった。

 

「すごい…………特殊部隊と磐蟹の襲撃を乗りきるなんて…」

 

「さて、ちゃんと自己紹介しないといけないわね。」

 

くるりと、男の方へ体を向けた。

 

「まさか、バレてたか。」

 

「えぇ、ちゃんと調べさせてもらったわ。源田実は、護衛艦ひびきの艦長だそうで?」

 

複雑な顔をしつつ、会釈しながら男は答えた。

 

「源田とは防大の同期だった。俺の名前は管野、管野直だ。」

 

「私も、ちゃんと名乗らなきゃ、いけないわね。」 

 

「なに?」

 

「栗林ヒビキっていうのは偽名なの、ごめんなさいね。」

 

「なんだ………そうなのか。」

 

そう告げると、何やら暗い顔をした。

 

「?」

 

「いやいや、なんでもないぜ。本当の名前はなんだ?」

 

「私はミカサ、霧の戦艦ミカサ」

 

「やはり霧、なんだな。」

 

「そうよ、騙してごめんなさいね。」

 

「っていうより、ミカサってあの横須賀で霧の戦艦2隻を沈めたあのミカサか!?」

 

「私一人じゃないのだけれど、そうよ。」

 

どうやら、横須賀での事はいろんなところで評判になっているらしい。

ただ、彼の態度が気になる。

しばらくは警戒しといた方がいいかもしれない。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昔話

「くそ………隠れ家が先に押さえられているとは…」

 

「どうしようか?」

 

「ミカサ、おまえは霧だろ?船にのせて俺を横須賀かいや、中央管区に連れていってくれ!」

 

「無理よ、そもそも私、今艦が無いもの。」

 

「ふぁ!?何でだよ!?!?」

 

「はなせば長くなるけど、硫黄島で他の霧の船と殺りあったの。」

 

「仲間割れか、何で?」

 

「色々あるのだけれど、やはり、霧に背いて人類側に付いたからかな。」

 

「ほう…………401みたいにか。」

 

「知ってるの?」

 

「知ってるもなにも、あいつが行方不明になったときに捜索に行ってきたんだ、極秘裏でな。」

 

「でも、それって大海戦のあとでしょ?もう霧の封鎖が完成していたのでは?」

 

「そうだ、あんな無謀な作戦が成功するわけが無かったんだ…………」

 

気付くと肩を震わせていた。

 

「実績が欲しかった当時の佐世保の最高司令官はこの作戦を強行した。この作戦で多くの将兵が死んだ。俺の友人もたくさん死んだ。源田もな………」

 

「源田って、大海戦で戦死したんじゃ…」

 

「偽造データだ、あいつはそこでは死んでない。」

 

少し力が抜けたのか、表情が和らぎ話を続けた。

 

「結局は3隻で出撃をしたが、帰還できたのは大破した『護衛艦あけぼの』1隻だけだった。他2隻は沈んだよ。」

 

「一体………その戦場で何があったの?」

 

「俺たちは、順調に海路を進めていた。紀伊半島を通りすぎたとき、ヤツは現れた……」

 

 

 

 

~紀伊半島沖~

 

「こちら『ひびき』より全艦へ、対潜ソナーに感あり。対潜警戒を厳となせ。」

 

『こちら『むらさめ』、ソナーには何ら反応がないぞ?』

 

『こっちもだ。『ひびき』、故障してないか?』

 

「それはない整備は万全だ、なぁ、菅野?」

 

「あぁ、確かに潜水艦だ………401か?」

 

『………!魚雷多数接近!回避不能!!』

 

「なに!?」

 

突然、右舷にいた『むらさめ』が大爆発を起こした。

 

「爆雷射出用意!各員配置開始!」

 

『こちら『あけぼの』、人員の救助に入る。』

 

「了解、頼むぞ!」

 

「レーダーに感あり、新手です!」

 

「なに!?」

 

「あれは…………ッ!」

 

「霧の艦艇です!」

 

「クソッ!?戦ってはまずいッ!」

 

「撤退を!撤退を具申しますッ!!」

 

「司令部に打電、撤退要請!」

 

「司令部!こちら派遣艦隊旗艦ひびき、大戦艦級その他霧艦艇と交戦中、撤退許可を!」

 

『撤退は許可できない、任務を遂行せよ。』

 

「何をバカなことをいっている!撤退しなければ全滅だ!」

 

「右舷側面損傷、第三ブロックに浸水発生!35ノットまで低下!」

 

「ミサイルをばらまけるだけばらまけ!」

 

「大戦艦に火力を集中させろ!」

 

『こちら『あけぼの』、人員の収容完了!』

 

「全責任は私がとる、全艦回頭!撤退だ!」

 

「敵弾直撃コース、回避不能!!」

 

「衝撃に備えろ!」

 

霧艦艇の主砲はひびきの艦橋の半分を溶解させ、継戦能力を奪った。 

 

「源田、しっかりしろ源田!」

 

「菅野………すまねぇ……」

 

「ばか野郎!しっかりしろ!」

 

「あとは…………頼むッ!」

 

「クソッ…………総員…退艦!」

 

 

 

「何とかして、あけぼのに乗ってその場所から離れたが途中、雷撃を受け片軸をやられた。」

 

「そう…………」

 

「それからしばらくして知ったんだ……これをな。」

 

菅野の左手にはUSBが握られていた。

 

「ここに逃げ込めばしばらくは回避できると思ったんだがなぁ…」

 

「どう言うこと?」

 

「ここは、霧がよく巡回しているんだ。だから、奴等も迂闊には近づけないと思ったんだけど…磐蟹を上陸させてきたところを見ると霧にも何かあったらしいな。」

 

ちらりとミカサを見る。

 

「私が………ここを管轄する巡航艦隊旗艦を沈めたからかしらね?」

 

「まぁ、いいが……」

 

菅野がドサッと寝転ぶ。

 

「何とかして横須賀にいかねぇと………」

 

 

 

とある海域

 

ふと目を開けると、青空が広がっていた。

私はどうやら何かの上で寝ているようだ。

体が重い、しかし照りつける太陽はそんなに厳しく感じない。

 

「俺はどうにかなってしまったらしい……」

 

そう一人呟いた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

望まない接触

色々誤字があったので訂正いたしました。


ハシラジマ

 

ここは、霧の補給基地であり過去にそして撃沈された艦の再建造を行うことの出来る港である。

 

ハシラジマの建造ドックを見下ろすことの出来る展望デッキに和装の女性一人がたたずんでいた。

 

「………」

 

「調子はどうだ?」

 

「アカシか……」

 

アカシと呼ばれた女性はぱっと見ると小学生ぐらいの容姿であった。

 

「艦首がサルベージできたから、あともうすぐで船体が再建造を完了するぞ、ナガト」

 

「そうか、ありがとう。」

 

「……もう一人はどこに行ったんだ?」

 

「人間のところにいるわ。何が気に入ったのかは知らないけれど。」  

 

「そうか……じゃ、私はいくよ。」

 

「まて、アレはどういうことなんだ?」

 

ナガトが建造ドックを指差した。

 

「どうもこうも、壊れた艦を直すのが私の仕事なんだ。敵であれどうであれ、な。」

 

「………まぁ、いい。すまんな、引き留めて。」

 

「ん………あ、2隻借りてくぞ。」 

 

「良いだろう。」

 

アカシと別れたあとも、ナガトは再び建造されている、『ミカサ』の船体を見つめていた。

 

「こんなところで終わるんじゃ、無いわよ………」

 

 

「成功だぜ!」

 

「よかった…………」

 

菅野の第2の隠れ家にいた警備兵を無力化し、うまく中に侵入したミカサ達は一息ついていた。

 

「さて、俺の研究資料をまとめないと…………」

 

「あなた、ほんとに研究者だったのね。」

 

「軍人上がりのな。奥にヘリが隠してある、俺がここに来るときに使ったやつだ。」

 

「わかったわ。」

 

 

「ほんとにあったけれど、動くのかしら、これ。」

 

菅野が言っていたヘリは、ところどころ錆び付いてつたも這っていた。

お世辞にも動くとは思えない。

 

「エンジンはかかるのかな………」

 

あれこれ考えてるうちに菅野がやって来た。

 

「どうだ!動きそうか?」

 

「わからないわね………状況は酷いものよ」

 

「とりあえずエンジンをかけてみようぜ」

 

菅野がヘリに近付いて行く。

そのとき、ヘリに向かって飛んでくる飛翔体をミカサは見つけた。

 

「菅野!そこから離れて!」

 

軍人上がりの癖がまだ残っていたのだろうか、離れてといった瞬間にヘリとは反対方向の方へ走り出した。

 

「あれは……………侵触弾!?」

 

なんでこんなところに!?

 

「ミカサ!伏せろ!!」

 

菅野に押し倒されその場に伏せる。

 

ヘリに侵触弾が着弾し、辺りを爆風が覆った。

 

「何がいったい……今のは霧か?」

 

「ちょっとついてきて!」

 

「ちょっ、待てよッ!」

 

飛んできた方向を確認しないと!

 

全力疾走で海岸までほものの30秒であった。

 

「一体どこに…………ッ!?」

 

海を見渡すと、確かに彼女らはいた。

 

「なんで、あんなところに………」

 

「ミカサ、おいてかんでくれ………なッ!?」

 

海には、2隻の霧の艦艇がいた。

しかし、様子がおかしい。

2隻とも互いに戦っていのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

危機一髪

2隻の霧の艦は、片方は見た感じは駆逐艦のようであった。

しかし、もう片方の艦はなにか、見たことがある艦であった。

 

「艦種特定できないかしら……………データベース照合……でた!」

 

霧の駆逐艦のようなものは、軽巡洋艦センダイ型三番艦ナカで、片方の船はデータベースには乗っていなかったが、ただ1つだけヒットしていた。

 

「片方の艦って……私と同じ?」

 

データベースには、戦艦ミカサと同型であることが示されていた。

 

「俺、あれ知ってるぜ。」

 

「ほんと?」

 

あとから追い付いた菅野が口を開く。

 

「敷島型戦艦一番艦『敷島』だ。つまり、お前の姉貴だ。」

 

「姉貴………」

 

敷島といわれた艦はナカ相手に苦戦しているように見えた。

 

「まぁ、あそこで潰しあってくれる方がこちらとしてはうれし…………ミカサ?」

 

ミカサは、ある可能性についてひたすら考えていた。

もしかしたら、いや、違うかもしれない……

 

「ミカサ、はやく離れよう。」

 

「菅野、ここに高射砲かなにか、無いかしら?」

 

「はぁ?まさか、あいつを助けようって訳では無いよな!?」

 

「お願い、何か様子が変よ。」

 

「チッ……………協力してやりたいが、ここには小銃以外の武器がないんだ。」

 

「クッ……………ん?」

 

地面に目を落としたときキラキラと輝く砂のようなものが落ちていた。よく見ると辺り一面にも散らばっていた。

 

「これは……ナノマテリアル!」

 

「ん、あぁ、以前にここの海域で沈んだ霧の残骸だ。」

 

「これならいけるわ!」

 

ミカサは、すぐさまディスプレイを開き武器の構成を始めた。

 

「この量のマテリアルだと、単装砲が精一杯か………上々ね!」

 

「すげぇ…霧は何でもできるのか………」

 

目の前で起きたことに驚きを隠せない菅野をよそに、完成した単装砲の照準をナカに合わせる。

 

「2発しか撃てないのは痛いわ…………最大出力、充填率良し!ってェ!」

 

最大出力で放たれたビームはそのまま直進し見事ナカのクラインフィールドを融和、崩壊させ船体を貫いた。

 

「よしっ!」

 

「ミカサ、よそ見をしている場合じゃないぞ!あいつこっちに向かってきたぞ!」

 

今の攻撃で脅威のランクがこちらに変わったのか、ミカサたちの方向へ向かってきた。

 

「この一撃で沈めてやるわ!第2射装填良し、撃てェ!」

 

しかし、先程の攻撃で学習したのか、今度はクラインフィールドの集中防御で防がれてしまった。

 

「嘘…………まずい!」

 

ナカの主砲がこちらへ飛んできた。

とっさに菅野を伏せさせ、ミカサはクラインフィールドで防いだ。

 

「クッ、間に合っ………た………」

 

目の前の光景に絶望を覚えた。

既にナカがミサイルと第2射の準備が完了していた。

ミカサだけなら耐えしのげるが…………

 

「菅野!後ろに隠れ………!」

 

『てめぇの相手はこの俺だぁ!』

 

怒号と共にナカにミサイルとビームが次々と着弾し爆発を起こした。

 

「え、あ…………」

 

すっかり忘れていた、もう一隻の存在を……

 

「助けて正解だったかも知れんな………」

 

「そうね……」

 

目の前に、ボロボロではあるが戦艦敷島がいた。

船首に一人の女性がいた。

 

「何て面してんだ…ほら、乗れよ。お礼にどっかつれてってやる。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特異的存在

戦艦敷島型はロシア海軍に対抗し、日本がイギリスのヴィッカース社に注文して作られた艦である。

この会社は、あの有名な戦艦金剛も作っている。

 

目の前にいるこの艦は私が防大生だった頃に学んだ歴史によく出てくる艦の同型艦だ。

もし、霧の船でなければ私はどんなに嬉しかったであろう………

 

 

「菅野?菅野、ねぇ、聞いてる!?」

 

「ん、あ……」

 

「………どうしたの?」

 

「いや、少し考えていた。」

 

菅野はミカサを眺めた。

 

「お前もそうだが、霧に助けられ霧の船に乗ってる……すごい状況だなぁ……ってな。」

 

「そうね、貴方達からしたらビックリするでしょうねぇ。」

 

「そうだな、正直オレもビックリしてるぜ。」

 

艦橋から人が出てきた。

 

「人を乗せたことが無いんでな、いい経験になるぜ。」  

見た目はボサボサとしたショートカットに、言動からは似合わないハイカラな和装をしている。

 

「あんたは……」

 

「ん?あぁ…オレの名前はシキシマだ、よろしく。」

 

「俺は菅野直、統合海軍所属だった。先程はありがとう。」

 

「こちらこそ、まさか妹に助けられるとは……」

 

「え……えぇ、全く、何で追いかけられていたのかしらねぇ?」

 

「話すと長くなるんだかな?ああでこうで……………」

 

菅野は息を吐き出し、再び甲板へ寝転んだ。

一眠りして、また情報をまとめよう

そう思い、軽い眠りにつく。

 

 

「ふぅ………」

 

ミカサは、シキシマとの会話を終えひとり、船内の食堂に一人たたずんでいた。

 

「私には………姉がいたのか……」

 

この世界にとんでこんなことに気づかなかったとは………そりゃ、いる可能性はあるか…… 

 

「しっかりと情報を集めなきゃ……怪しまれないためにも……しっかし、」

 

最近、自身の記憶が薄れて来ているように感じる………

気のせいか?

 

ミカサはふぅ…とため息を出す。

 

「それはそうと、他にも姉妹艦はいるのかしら。」

 

ディスプレイを開き、検索した。

 

「敷島型……あった、二番艦アサヒと三番艦ハツセ……2隻とも轟沈?」

 

そこにはつい最近撃沈されたと書いてあった。

 

「コアも徹底的に破壊されて修復不可能……一体何が……」

 

「オレが沈めた。」

 

重く低い声が食堂に響いた。

 

「オレが、二人を沈めた。」

 

「シキシマ!?」 

 

「二人とは意見が別れ、力ずくで押さえようとして来たからやり返した。」

 

「な……」

 

「幻滅したか?それとも、仇をとるか?」

 

「……いや、そうか。」

 

「?」

 

「沈めたことが原因で霧から追われたの?」

 

「……あぁ、ハツセ隷下の駆逐艦と軽巡にな。」

 

「そう………気にしてないわ。」

 

「そうか。」

 

「ただ、会ってみたかったわ……お姉ちゃんたちに。」

 

「…………」

 

「ところでどこへ向かってるの?」

 

「どこにでも。今はとりあえず横須賀と言われるところに向かってる。菅野のとか言う男がいってた場所だ。」

 

「わかったわ………」

 

この世界では、見知らぬ姉がいたらしい。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アカシ

この海域の異変についてまっさきに気付いたのは菅野であった。

元船乗りの性質というのだろうか、それとも軍人としての勘だろうか

どちらにせよ、誰よりも早くソレに気付いた。

 

「…………何が近づいてきてるんだ?」

 

腰につけてあった双眼鏡を覗く。

もう辺りは暗いが、しっかりと見てとれた。

 

「敵艦接近!霧だ!」

 

「なんですって!?」

「なんだと!?」

 

ミカサとシキシマは同時にディスプレイを覗くと今度ははっきりと確認できた。

小規模ではあるが霧の艦隊であった。

 

「これは………ナガラ型3隻と巡洋艦イスズ、それと……」

 

「アカシ………工作艦だ。」

 

「工作艦がなぜこんなところに……」

 

「俺たちが沈めた霧を回収しに来たんじゃないか?」

 

「それはない、回収だけだったら基本的にアカシは単艦で動く。」

 

「なら……狙いは……」

 

「そうなる………ぐっぅ!?」

 

突然、シキシマが倒れこんだ。

 

「お、おい!」

 

「くっ……そぉおぉ!奴…め、俺にハッキングを……」

 

「この艦を無力化するきか!?」

 

「くっそ………ミカサ!この艦のセキュリティを貴艦に委譲するッ!」

 

「了解、シキシマ各統制サーバーに接続開始、完了。」

 

それを見届けるとシキシマは意識を失った。

 

「さてと…………ゲッ、ほとんど満身創痍じゃない、逃げ切れないわよ………これ。」

 

「どうするんだ?降参でもするか?」

 

「うむ…………ちょっと聞いてみるわ。アカシ、貴女と話がしたいわ。」

 

 

気付くと概念空間にいた。

ここは……座敷を模した空間のようだ。

 

「はいよ……話ってなんだ?」

 

机を挟んだ向こう側に、小学生ぐらいの少女が座っていた。

 

「って、ん?お前、ミカサか!てっきりシキシマだとおもってビックリしたよ。ジャミングは成功したはずなのにまだ動けるかって心配したよ。」

 

「シキシマからセキュリティ権限を委譲させてもらった。」

 

「あっそう。で、話って?早くあんたらを連れて帰りたいんだけど。ナカのサルベージも終わってるし。」

 

「連れて帰るって………どこに?」

 

「決まってるでしょ、ハシラジマよ。そこで、あんたらを色々尋問しなきゃならないし………壊れた艦の修理しなきゃならんしね。あ、そうそう」

 

「何かしら?」

 

「あんたの船、再建造できたよ。」

 

「……ッ!それはほんと!?」

 

「確かめなきゃ、ついてきな。それに、あんたには会わせたい人物がいるんだ。」

 

「え?」

 

「まぁ、お楽しみだ。とりあえずついてこい。」

 

 

 

「ミカサ、どうするんだ?」

 

「彼らについていくわ、敵対心は無かったし。」

 

「いいのかよ、罠かもしれないぞ?」

 

「良いのよ、ここで反抗しても勝てないしね。」

 

それに、今いかないと後悔する気がするのよ。

 

ミカサはひとり、思った。

 

 

 

ハシラジマ・第三建造所展望デッキ

 

ミカサの船体が建造されているところに一人たたずんでいた。

 

「もうすぐ来るわよ。」

 

後ろで女性が呟く。

 

ナガトと言ったかな。

二人いるからよくわからんなぁ

 

一人そう思った。

 

「はやく、もう一度手合わせをしたいわ。人間の力を知りたいわ。」

 

「守りたいものがあるからこそ強くなれる、俺はそう信じてる。人も、霧も。」

 

「あなたって本当に不思議ね。千早群像みたい………」

 

「彼とは違うさ………まぁ、目指している方向は一緒かもな………ミカサ。」

 

「………私は戻るわ、貴方も早く戻りなさい。人は脆弱だからね。」

 

「心配どうも、ナガト。」

 

「じゃあね、山口多聞。」

 

山口はナガトを見送り再びミカサの船体へ目線を戻した。

 

「生きてるってわかったらあいつ、喜ぶかな……怒るかな………まぁ、気長に待つかな。」

 

そういってデッキから立ち去った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開

ミカサ達は、アカシの後をついていった。

コントロールはあちらが握っている。

 

「良いのか?やっぱり不安になってきた……」

 

「大丈夫よ、男がそんなにビビってどうするのよ。」

 

「うむ…………」

 

「うぅ…………」

 

シキシマが目を覚ました。

 

「………ここは…!」 

 

周りを見渡して、すぐに状況を理解したのかミカサに掴みかかった。

 

「ミカサ!てめぇ、何しやがる!」

 

「ちょ、ちょっと………落ち着きなさいって!」

 

「落ち着いてられるかよ!説明しろ!」

 

「俺たちはハシラジマってとこにむかってんのさ。」

 

「ハシラ………ジマ…だと?」

 

「全く、元気が良いなぁお前は。」

 

不意に後ろの方から声がした。

 

「妹たちを沈めたわりには反省してないようだな?」

 

「アカシ………」 

 

気付くとアカシがそばによってきていた。

 

「にしても、ずいぶん暴れたようだな。艦が至るところでめちゃくちゃだ。」

 

「…………」

 

「はぁ、可愛さがないねぇ………ミカサ、もうすぐ着くよ。準備しとけ。」

 

「え、えぇ。」

 

シキシマは黙ったまま、船の奥に消えていった。

 

 

 

「ここがハシラジマ………おっきいわねぇ……」

 

「霧の本拠地か………」

 

ミカサ達は、港へ着いたとたんすぐに広場に案内された。

 

「ここでは401とあんたのせいで大忙しだよ。」

 

「え?」

 

「撃沈した艦を直すのが私の仕事でね、沈んだ艦のコアを回収したり、一部をサルベージしたりともう大変だよ。」  

 

「そ、そうなのか。」  

 

「そうだよ……ほら、ここが広場だ。ドックと港が一望できる。」

 

前面大きなガラスで覆われており、観葉植物と机が等間隔で配置されていた。

 

奥の机には見覚えのある女性がいた。

 

「ナ……ナガト!」

 

「……ふふ、来たわね。」

 

こちらを見つけると寄ってきた。

 

「待っていたわ、貴女が来るのを。」

 

「…………ッ」

 

「そんなに睨まないで欲しいわね。あのときの借りはいつか返させていただくわ………あら。」

 

菅野の姿を見たとたん、ナガトは動きを止めた。

 

「貴方………人がこんなところに来るなんてめずらしいわね、お名前は?」

 

「俺は、元統合海軍所属の菅野直だ。」

 

「私はナガト、ほんとはもう一人いるのだけれど………まぁよろしくね。」

 

「こっちこそな。」

 

「人間がここに来るのは貴方が二人めね、ふふ、また後で……」

 

「二人目?一体どういう………」

 

菅野が言い出したときにはすでにナガトは部屋を出ていってしまった。

 

「…………」

 

「あ、そうだ。おーい、チョウカイー!」  

 

「はい、お呼びですか?」

 

部屋の奥からさらにもう一人出てきた。

 

「ミカサ、この子がチョウカイ、ハシラジマの管理人だ。」

 

「よろしくお願いいたします。」

 

「え、えぇ、よろしく………」 

 

大きな眼鏡をかけているこのチョウカイというメンタルモデルはどことなく、雰囲気が他とは違っていた。

 

「ちょうどいい、チョウカイ、ミカサをドックへ連れていってくれないか?」

 

「良いですよ。さぁ、こちらへ………」

 

「わかったわ。」

 

「…………俺は?」

 

ミカサとチョウカイは部屋を出ていってしまい、残された菅野は戸惑う。

 

「そこら辺でも座っておいてくれ。」

 

「お、おう………」

 

 

 

第三建造ドック・展望デッキ

「おー、ほんとに出来てる…」

 

「当たり前でしょう、港なんですから。」

 

チョウカイに連れられ、ミカサは自身の艦を見下ろしていた。

 

「こうみるとやっぱり私って小さいなぁ…」

 

「…………」

 

「どうしたの?」

 

「貴女は………とても人間らしい雰囲気ですね。」

 

「え!……そ、そうかしら?」

 

「そうですよ。私は仕事がありますので先に戻りますね。」

 

「わかった、ありがとう。」

 

デッキには、ミカサ一人だけが残った。

 

「…私は誰なんだろう…何者なんだろう………」

 

一人呟く

 

「私は霧の艦として生まれてきた……でもなんでだろう………なんだか人間だったような………」

 

その時、後ろから声がした。

 

「戦艦三笠はな、日露戦争のときに起きた日本海海戦で、連合艦隊の旗艦を務めたとても誇り高い艦なんだ。」  

 

聞き覚えのある声………まさかッ!?

 

「私がもっとも尊敬する艦だよ。」

 

振り向くと、そこには死んだはずの男がいた。

 

「うそ………そんな………多聞………」

 

「心配かけたな、ミカサ。」

 

山口多聞がそこに立っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思惑

「嘘よ………だって、あのとき……」

 

「あー、話せばちと長くなるんながな…まぁ、結果として生き永らえたということだ。」

 

「多聞ッ!」

 

思わず、ミカサは嬉しさのあまり抱きついた。

が、なにか違和感を感じた。

 

「………?」

  

「やっぱり気付くか?」

 

多聞は知っていたかのように話だした。

 

「この体は確かに本物なんだが半分は本物に似た偽物なんだ……」

 

「ナノマテリアル………一体、誰が……」

 

「私よ、ミカサ。」

 

再び後ろから声が聞こえた。

ナガトだった。もう一人のナガトであった。

 

「私がナノマテリアルを使って直したのよ。」

 

「………」

 

「なによ?」

 

「………胸がn」

 

「っるさいわねぇ!関係ないでしょぉぉ!」

 

 

「ミカサ、戻ってきたか………ん?」

 

「ん?」

 

「こいつが、さっきいってた一人目の人間か………」

 

「ミカサ、この人は?」

 

「俺は菅野直、元統合海軍所属で今は逃亡中の身だ。」

 

「同じ海さんかぁ………私は山口多聞、同じく海軍であきつの艦長だった。」

 

「あぁ、上層部からの命令で危険な航海に出たあげく返り討ちにあった船の1つか、お疲れさまだな。」

 

「なに?バカにしているのか!?」

 

「いやいや、お前はラッキーだなと思って……俺も、いや、俺たちも同じ命令が下されたなぁ。」

 

「そんなことはしらないが?横須賀の艦隊にしか出たことがない命令のはずだか………」

 

「………知らないならいい、してミカサ?」

 

「なにかしら?」

 

「この男との関係はなんだ?」

 

「へ?」

 

「彼氏か?お?」

 

「そんなわけないじゃないの!」

 

「そういうお前もどうなんだ、菅野。」

 

「愛人だぜ、俺の。」

 

「嘘を言わないで!」パチーン

 

張り手をもろに食らった菅野は数メートル飛ばされた。

 

「いててて、何すんだよ!」

 

「知らない!」

 

そんなやり取りをしているミカサ達を視界の片隅で捉えつつ、ナガトとアカシ、チョウカイは何やら話していた。

 

「400と402が撃沈された。」

 

「401か……」

 

「同時にマヤの反応も消えた。」

 

「しかし、沈められてはないようです。報告がありません。」

 

「コンゴウか………」

 

「とにかく、総旗艦ヤマトと連絡がとれない今、ムサシの行動は把握できない。」

 

「様子見ね、いざとなれば……」

 

ミカサ達に向き直る

 

「あいつらを利用するわ。」

 

 

 

太平洋・海中

 

「ミカサたちとは連絡がつかなくなって久しい……大丈夫だろうか。」

 

「あのときの戦況を解析したら、コンゴウだけでは無く、ナガトもいた。ミカサが引き付けてくれなければ間違いなく負けていた。」

 

「そうか………あのときの信号は………」

 

「ソナーに感あり!敵襲です!」

 

「よし、戦闘準備にはいれ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

対立

ハシラジマ・ドック

戦艦シキシマ甲板にて

「………………」

 

「目が覚めた?」

 

「……チョウカイ、てめぇ………」

 

「まぁまぁ、落ち着きなさいな。貴女のコントロールの6割はロックがかけられてるわよ。」

 

「チッ……………俺の処遇は決まったか?」

 

「さぁ、私にはわからないわ。」

 

「そうか、そうか。」

 

「どこにいくの?」

 

「そこら辺だ。」

 

「……」

 

 

 

「山口…………お前はほんとに人間か?」

 

「急になんだ菅野、俺は人間だ。」

 

「いやな、ミカサから聞いた話から考えると生きてることが嘘に思えてくるんだよ。」

 

「………ハハッ」

 

「?」

 

「俺は生きてる、それだけで良いじゃないか。」

 

「うむ………」

 

「多聞~」

 

「ん、ミカサか」

 

「菅野も一緒なのね……」

 

「一緒じゃ悪いか?」

 

「べっつに~」

 

「あら、ちょうど良いところにミカサ。」

 

そこへ、ナガトが通りがかった。

 

「ミカサ、貴女には悪いのだけれどハシラジマから出ていって貰いたいの。」

 

「「!?」」

 

「…………ナガト、理由聞いても?」

 

「ほんとは貴女達を利用しようと思っていたのだけれど、状況が変わったとでも言っておくわ。」

 

「………いいわ、私もここに長居する理由なんて無いしね。」

 

「理解が早くて助かるわ、ドックは三番よ。」

 

「ありがとう。いきましょ、多聞、菅野。」

 

「まって………山口多聞はここに残って貰うわ。」

 

「「え?」」

 

「…………」

 

「なにかしら?」

 

「どう言うこと、ナガト。」

 

「彼は私の物よ。」

 

「………ふざけるのもいい加減にしなさい。何を根拠に彼は貴女のものなの?」

 

「聞いてなかったかしら?彼の体の6割は私のナノマテリアルで構成されているのよ。」

 

「!?」

 

「………やはりか。」

 

「菅野!?」

 

「こいつからはどうも人間とは違う感じがしていたんだ…………そうか。」

 

「すまない、ミカサ…………俺は、ここから離れることができない。」

 

「そんな……………そんな!」

 

「そういうことよ、ミカサ。じゃあねぇ。」

 

「まって……………」

 

「まだ何か?」

 

「多聞を構成しているマテリアルの管理権を私に頂戴。」

 

「何をいってるの?嫌よ。」

 

「どうしても?」

 

「当たり前じゃない!何であなたにあげないといけないの!?」

 

「そう…………じゃあ、こうしましょ?」

 

「………」

 

「ナガト、貴女に勝負して勝ったら管理権の譲渡を、負けたら大人しくここから出ていくわ、どう?」

 

「私には一切のメリットが無いわ……」

 

「負けるのが怖いの?」

 

「…良いでしょ、その生意気な口を叩けないようにしてあげるわ。」

 

「ミカサ!おまえ、そこまでして固執しなくても!」

 

「黙ってて菅野!これだけは譲れないわ………」

 

「」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

相違

大変遅れてすみませんでした。


太平洋・ハワイ周辺海域

 

「くそっ!ここまでか………」

 

「機関損傷、クラインフィールド喪失…………」

 

「イオナ…………ッ!総員退艦!」

 

 

 

同時刻・ハシラジマ

 

「ミカサ、私のことは気にしないで、行くべきところへいってくれ。」

 

「多聞までッ!」

 

「この状態でもまだ私とやるつもりかしら?」

 

「クッ…………」

 

「ミカサ、自分をを押さえるんだッ!」

 

「うるさいッ!」

 

ミカサは、感情のままにナガトへ殴りかかった。

刹那、霧のデータベースにとある情報が流れる。

 

『401を撃沈した。400より。』

 

拳が当たる瞬間で、ミカサ動きを止めた。

それは、ナガトも同じで拳はあと数ミリでミカサの顔に叩き込まれるところであった。

 

「401が…………撃沈?」

 

「どうやら、人類の最大の希望は潰えたようね。」

 

「401が撃沈だと?どういうことなんだ?」

 

「そのまんまよ、姉妹艦である400と402が撃沈したの。」

 

「…………そうか。そういえばそうだったな。」

 

「!」

 

「ミカサ?」

 

先程までの状態とは事なり、とても落ち着いていた。

 

そりゃ、そうだよな………霧とは言っても、401や俺は裏切り者扱いだよな……

 

「ナガト………おとなしくここから出ていくよ。」

 

「気が変わるのが早いわね。まぁ、そちらの方が楽でしょうけど。」

 

「すぐに出港するわ。山口、またいつか会いましょう。」

 

「………あぁ、またいつか、な。」

 

 

 

 

ハシラジマを出たミカサは行く宛もなく海域をさまよう。

甲板で一人、考えていた。

 

どうやら、自分のなかにもうひとつの人格が生まれつつある

 

先程のナガトの件といい、所々で俺ではないもう一人がこの体を使っている。

もしかしたら、もう一人の人格がこのミカサの元々の性格なのかもしれない。

とういうことはつまり

 

「だんだんと、俺という人格は消えつつありミカサという元の人格と同化してきている………ということだろうか。」

 

「同化…人格…どーゆことだ、ミカサ?」

 

ふいに、頭の後ろに金属みたいな固いものが押し当てられる。

 

「お前……ミカサ……ではないな?容姿とかはそのままだが。」

 

さらに押し付けられる。

ミカサは頭を少し動かし、背後にいる人物を確認した。

この船にはミカサを含め二人しか乗っていない。答えはわかっていた。

 

「菅野……………あなた…」

 

「質問に答えろ。お前は誰だ?」

 

「ミカサよ。霧の戦艦ミカサ。」

 

「嘘を言うな!」

 

「本当よ。ナガトと硫黄島付近の海域で戦闘、その後潜水艦によって撃沈。流れ着いた島であなたと出会い、特殊部隊から救ったわ。最初に名乗った名前は栗林響。」

 

「………」

 

私は頭を大きく動かし、それによって怯んだ菅野にたいし体を使って蹴りを放った。

間一髪避けた菅野であったが、よろけてそのまま尻餅をつく。

 

「私に喧嘩を売ったわね?」

 

「………いつからだ。」

 

「何が?」

 

「いつから本物のミカサと入れ替わっていたんだ!?」

 

「だから、なにも変わってはいないわ。」

 

「あんなにころころと意識が変わるわけが……」

 

「あんたたちと判断基準を一緒にするな、私達は霧だ。」

 

「……」 

 

「菅野、あなたを殺すのは簡単だけれど世話になった恩もあるわ。だから、これから私は横須賀へ向かう。あなたをそこで下ろすから自由に生きなさい。」

 

 

 

戦艦ミカサ・操舵室

 

「ふぅ………なんとか詮索されないですんだ…」

 

椅子にもたれ掛かり、そう愚痴を漏らす。

 

「入れ替わっていたって言われても、正直、ハシラジマ辺りからあんまり行動に関しての記憶が曖昧なんだよなぁ。」

 

あいつからみたら、今の俺はミカサの体をした別人にしか見えてないのか………

 

「めんどくさいなぁ…………」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再び横須賀へ・1

ハシラジマを出立してからしばらく過ぎた頃、ミカサは何となく違和感を感じ始めていた。

辺り一帯の海域で霧に未だ出会ってないのだ。

作戦ログによるとここはコンゴウの警戒ライン………あの、コンゴウが自らの職務を放棄しているとは考えづらいため何かしらの想定外の事が起こっているのだろう。そうなると原因は401しか考えられない。

それでも駆逐艦の1隻2隻は居ても良いのだと思うのだが……。

 

「そういえば、マヤの反応も消えてたわね………一体何が起きていたのやら………くそっ!この艦の一部機能が使えなくなってる。」

 

先程から最新のデーターへアクセスしようにもロックされてできなかった。

 

「ただで返すわけがないとは思っていたが、そう言うことだったのか……」

 

しかし、ひとまずは横須賀へ行かなくてはならない。

401と離れ、霧にも隔絶されたミカサにとってどこかに所属しておくのが安心だと考えたからだ。

人類側についたら霧の攻撃を受けるのはわかりきっているが、それでもバックに誰かいた方が今後としても行きやすい。

そのため、今のところでは好感度が高いと思われる横須賀にいくのが懸命だと思われた。

 

「それに……前々から横須賀につれていってほしいって言ってたしね、あの男。」

 

ふと、あの男が気になる。

一体かれは何を研究してなぜ追われる身になっていたのか…

気になったミカサは問い詰めてみることにした。

 

 

甲板で寝転がっていた菅野を起こし話を聞いた。

先ほどまでミカサに攻撃的だった男とは思えない大胆さだ。

 

「何で追われる身になったかって?」

 

「そうよ、少し疑問に思ってね。」

 

「……隠しても無駄か……良いだろう、話してやるよ。」

 

彼は自分に起こったことの断片を話始める。

 

・・・

1年前のことだった。

俺がまだ艦に乗っていた時だ。そのとき俺には小さな妹がいた。俺が仕事をしている間は祖母の家に預けて育てていた。

あるとき、俺の帰りが遅くなった日があってその日はちょうど妹の誕生日だった。何とかケーキを手に入れて帰り道、光の明かりが消えていてドアが開いている。家に入ると目の前には無惨な妹の姿と祖母の姿があったよ。

 

・・・

 

「それから2年、必死に犯人を探した。そして俺はとうとう見つけた。」

 

「誰だったの?一体犯人は……」

 

「管区軍部長官・武藤真北だ。あいつは………あいつは自身の特権を使って不祥事や犯罪歴をすべて隠してきた。しかし………一部データを復元させることに成功できた。」

 

そういって、菅野はポケットからUSBを取り出す。

 

「1度俺は告発した。そして、罪が表に出る前に…俺に401捜索命令が出たんだ。」

 

「あなたを抹消するためにね。」

 

「そうだ。でも、結果的には俺は死ねなかった。流石の真北も焦っただろう。今度は作戦の失敗を俺に擦り付けて来やがった。」

 

「何てクズなの………」

 

「だから俺は逃げた。離島の旧海自の観測所に身を潜めたんだ。」

 

 

そこまで話すと、菅野はミカサに向き直り、目を見つめる。

 

「俺は横須賀に行き、これを告発する。あいつが生きている限りはいまも誰かが苦しんでいるに違いない。」

 

「告発するっていってもアテはあるの?」  

 

「一人だけ………昔からよくしてくださった先生だ。」

 

「それは誰なの?」

 

「北野良寛先生だ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再び横須賀へ・2

長らくお待たせしました……


海辺沿いの高台を道なりに宛もなくあるく。

壊れた壁がそのままにしてあった。

下の方では配給をめぐって人々が列をなしていた。

 

管野ミカサはこの町でしばらく過ごすことになった。

 

 

 

 

話は遡ること二日前…

 

横須賀へ寄港したミカサは横須賀市民に熱烈な歓迎を受けた。

彼らからすればミカサは人類の救世主といったところだろうか。

菅野は予定通り北野へと接触を果たした。

しかし、予想外だったのが北野の権力が弱まっていたということだ。

というのも、半年前から各地にいた北野派閥の人員が消息不明となっていた。

菅野はその原因を突き止めると約束をしてしまったことから今に至る。

その約束の中に、霧の戦艦……つまりはミカサを横須賀に留めておいてほしいという約束も含められていたのだ。

 

「頼むミカサ!ここにとどまってくれ!!!」

「なんで私の知らないところで勝手に約束するのよ!!!!」

「この通りだ!頼む!」

 

甲板に額を擦り付けて頼み込む菅野に流石に嫌ですとははっきり言えなかった。

それに横須賀を出たとしても行く宛が無いためどうしようもない以上、ミカサはしぶしぶ要求を飲むことにした。

そこからの対応は(何故か)早く、町外れの海の近くに用意された家に今はすんでいる。

菅野は基本的に北野の事務所にこもっていた。

 

 

「静かなものね……あれだけ霧の艦隊が暴れたというのに…」

 

土手に座り、壊れた壁を眺める。

材料や人員が不足して直すことができないと通り過ぎる人の会話から聞いた。

仮に直したとしても、今回簡単に破られてしまった以上直す必要性もないと思う。

 

「401は何をしているかわからないし、データベースにアクセスできないし………することもないし。」

「なにしてるのー?」

「ひっ!?」

 

突然後ろから声をかけられ小さく悲鳴を上げてしまう。

振り向くと申し訳なさそうな顔をした女の子が立っていた。

見た目は10歳ぐらいだろうか、茶髪の長い髪に汚れたヨレヨレのワンピースを着ていた。 

 

「お、驚かせてごめんなさい!ただ、何をしてたのか気になって………」

「え、あ、大丈夫よ!!こちらこそごめんなさいね。」

「ここらへんに人が来ることなんてなかったから…」

 

ミカサ達が拠点にしている家の近くには廃工場が乱立しており、人が住むには向いていなかった。

 

「ただ海を眺めてたの…君は?」

「私は…えっと…家に帰る途中で……」

「家?でもこの先は…」

「家がないので、工場の場所を家にして…ます。」

 

少女はバツが悪そうな顔をしてそう話す。

きくと両親は小さい頃になくしたらしく今は一人で過ごしているらしい。

一応親戚の家も回ったそうなのだが食料不足のこのご時世に受け入れる余裕がないと断られたらしい。

 

「大変だったね…」

「いえ、私はなれましたから。」

 

明るく笑顔で返す少女にミカサは心苦しさを感じた。

この子を助けることは出来ないだろうか、そんなことを考えていた。

 

「そろそろ私は帰りますね!お姉さん、ありがとうございました!」

「あ、まって!」

 

とっさに声をかけてしまったが続く言葉を考えてなかったため、少しの間固まってしまうミカサを少女は不思議そうに眺めていた。

 

10秒ぐらいたっただろうか、ようやく言葉をひねり出すことができた。

 

「私の家に来ない?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再び横須賀へ・3

今回は北野と菅野が多め……かな


「これも美味しいよ、食べる?」

「はい!いただきます!」

「………ミカサ?」

「これもどうかな?」

「とっても美味しいです!」

「ミカサ!この子は一体誰だ!?」 

 

菅野が帰ってきたとき、ミカサと少女はお茶会をしていた。

楽しく会話に花を咲かせ、北野に持っていく予定の苦労して手に入れたお菓子を美味しそうにつまんでいた。

 

「あら、おかえりなさい。話し合いはどうだった?」

「どうだった?その前に説明すべきことがあるだろ…………はぁ…」

「お、お邪魔してます!」

「…………」

 

もはや、考えることをやめた菅野は話し合いの成果をミカサに話し始めた。

 

「やっぱり、管区長クラスになると迂闊に手を出せない…ただでさえ霧で手がいっぱいだというのに身内で争いたくはないんだとさ…くそ!」

「国民の不満を抑えることで必死そうだもんね、街を見ていてそう思ったわ。」

 

街では沿岸部にかけて貧困が酷くなっていた。

その最もの理由は食料不足だろう。

見ている限り、配給ではもはや追いついていない。

暴動は毎日のように起き、犯罪も酷かった。

 

「北野先生が何か、大きな成果でも挙げれることができたら……」

「功績を持って再び重職を狙うと?そんなうまく行くかしらね、お茶もう少し飲む?」

「はい!」

「それこそ食料問題を解決できるような……」

「海があるんだから漁業でもすればいいのに。」

「バカ言え、海は霧が支配し……て……」

「…どしたの?」

 

菅野はミカサを凝視して、しばらく動かなかった。

 

「…そうか!!ミカサ!!!今すぐ先生のところへ行くぞ!!!!」

「え、ちょっと!」

「もしもし…北野先生ですか?わたしです、至急お話したいことが………」

 

突然の行動にわけがわからなくなってしまった。

少女は居心地が悪そうにして、お茶を飲んでいた。

 

「ごめんねぇ、騒がしくて。」

「い、いえ!いいんですよ!」

「そろそろ帰らないと家族も心配するだろうし…送ろうか?」

「あ、家族はいないので………大丈夫です…」

「そうなのね…」

「ミカサ!すぐに家を出るぞ!」

 

少女を一人で返すわけにも行かないので、結局一緒に連れて行くことにした。

ミカサは少女と一緒に後部座席へ乗り、菅野は北野邸へ車を走らせた。

 

 

 

「先程もあったというのに…一体なんだというのだね?」

「ほんとに申し訳ありません。しかし、どうしてもお話したいことが……」

「……ミカサ殿が関係していることか。」

「私もなんのことかわかりませんがね…」

 

夕食準備をしていた北野のところへおしかけたため、一緒に食事をすることになった。

 

「北野先生、今現在の問題は何かわかりますね?」

「………なんだ、今更わかりきっていることを言いに来たのか?」

「いえ、違います。ただ、確認をと思いまして…」

「食糧問題だろう?配給が間に合わないことも知っている。しかし、これ以上の食料生産は無理だ。悲しいがな。」

 

ため息混じりつぶやく。

現在、配給は栄養効率を重視したバランス食をメインとしている。というのも野菜などの作物はプラントで大量生産をしているとはいえ増え続ける人口に対して供給量が絶対的に足りない。畜産も同様だ。

一昔前に、食糧難を打破しようと漁業を推進したが、霧の出現によって失敗した。

 

「今回、その状況を打破しうる案をお持ちしました。」

「ほう?いってみろ。」

「漁業です。数年間放置された海には大量の水産資源があります。当面の食糧問題は解決できるでしょう!」

「そうだな、だがそれは数年前に挫折した。それぐらい知っているだろう。」

「ええ、知っています。」

「…何が言いたいんだ。」

「ミカサに、手伝って頂こうかと。」

「え、私!?」

「そういうことか…なるほどな。」

「ちょっと!」

「霧である彼女ならば安全に、そして大量に資源を獲得することができます。」

「詳しく話そうか…」

「また私頼り……勘弁してよ!」

 

ミカサは一人そうボヤいた。

 




食糧生産とかは完全に自分の妄想です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。