白い司令塔(仮) (0ひじり0)
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プロローグ

はじめまして0ひじり0です。
既に2つ書いてるのに書き始めてしまいました。
やっちまったZE☆
…ごめんなさい。


ここ横須賀鎮守府の廊下を一人の女性が歩く。

見た目は日本人とは思えない顔立ちに腰まで伸びる白髪のロングヘアー。真っ赤な眼は鋭く前を見据えている。

彼女の服装は白い軍服を身に纏い歩く姿は堂々としており、彼女から醸し出される雰囲気は他の男性提督と並んでも何ら遜色ない。

近年、再び男尊女卑が主に置かれる様になってしまった現代の日本では異様と言える姿だった。

彼女は一際豪華な扉の前に止まるとノックをして扉を声をかける。

 

「長宗我部(ちょうそかべ)・ティルピッツ・樹(いつき)です。」

 

彼女は呉鎮守府に所属する徳島牟岐海軍基地と言う小規模の海軍基地の司令官であり、規模は小さくもその戦果は目を見張るものがある。

そして彼女の両親は父が戦国時代に長宗我部水軍や長宗我部元親で有名な長宗我部家。母は第一次世界大戦ドイツの海軍大臣だったアルフレート・フォン・ティルピッツを輩出したティルピッツ家のクォーターだ。

 

「入りなさい。」

 

「はっ。失礼します。」

 

中から聞こえる厳格な声が入室を許可されたのを確認してから扉を開ける。

中は様々な勲章や歴代の大元帥の写真等が飾ってあり扉の正面に大きな机が置かれている。

男はそこに座っていた。

男の名は源 慎一郎(みなもと しんいちろう)。

彼の風貌は190cmを超える身長に広い肩幅、熊を連想させる太い腕に蓄えられた顎髭は彼のトレードマークと自称している。

 

「よく来たな少将。まあ、楽にしなさい。」

 

「はっ。」

 

敬礼をした後に後ろで手を組み足を肩幅に開いて休めの姿勢をする。

 

「ふむ。こうして会うのは10年ぶりか。」

 

「失礼ながら11年と記憶しております。」

 

「そうか…儂ももう歳かも知れん。引退も近いな。」

 

「未だに轟沈した艦娘もおらず、演習の成果も全提督の中でトップの大元帥はまだまだ現役かと思いますが。」

 

彼女の答えに源は顎髭をいじりながら立ち上がり、彼女に歩み寄る。

 

「世辞でも嬉しいぞ…樹。」

 

「本当のことですよ。源のおじ様。」

 

源は彼女の前に立ち肩に手を置いてニカッと少年の様に笑う。

彼女も先程の鋭い目付きは鳴りを潜め柔らかく微笑みながら源を見上げる。

 

「見た目はあれだが大人になったな。儂はお前を姪の様に思ってるからな。嬉しいぞ。」

 

「見た目は余計ですがありがとうございます。私もそうですよ。おじ様は父の親類がいない私には日本人の叔父の様に思っております。」

 

その言葉を聞いて源は豪快に笑う。

彼女と源は彼の父である轟児(ごうじ)はもともと同僚で幼馴染み…無二の親友だったのだ。

 

彼女の父は佐世保鎮守府の提督だったが11年前に深海悽艦に鎮守府を奇襲されて戦死しており母は運悪くその戦闘に巻き込まれ死亡。

母の母国であるドイツにある実家に行くが12歳の時に単身で日本に帰国。

提督になるため海軍学校に入学し、今に至る。

 

「さて、この度樹を呼んだのは異動の命令があったのだ。場所は佐世保鎮守府だ。」

 

「小さな海軍基地の私が、ですか?」

 

思い出話もそこそこに源は本題を切り出す。

 

「謙遜はいい。お前の戦果は聞いてる。」

 

「恐縮です。それにしてもいきなりですね。」

 

「ふむ。そこに配属されていた提督が罪を犯してな。逮捕したのだ。」

 

「なるほど。最近問題になっているブラックとか言われているものですか?」

 

「ああ、最低のクズだ。」

 

彼女の発言に肯定し、源は悔しそうに歯を食い縛り悪態をつく。

 

「理解しました。」

 

「有難い。日時や詳細はこの命令書に書いている。」

 

「はっ。」

 

「それと、お前の海軍基地から二名までなら艦娘を連れて行っても良いと許可も取ってある。」

 

「感謝します。」

 

「うむ。では、頼んだぞ。」

 

「はっ!この樹、両親から引き継がれたこの姓に誓ってご期待に報いてみせます!失礼します!」

 

彼女は最敬礼をしてから部屋を後にする。

源はその背中を見送ってから窓際まで歩き空を眺める。

 

「…にしても、あの樹ちゃんが…か。フッ…立派になっちまって。」

 

源はまるで娘の成長を見守る父親の様に優しく微笑みを浮かべた。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

こっちの小説はゆっくり書いいく予定なので気長に待っていただけると有難いです。

――――――――――


人物紹介

長宗我部・ティルピッツ・樹(21)
日本人の父とドイツ人の母のクォーターで白髪のロングヘアーに赤色の瞳の女性。
父は長宗我部の血筋、母はティルピッツ家の血筋を引いている海軍のサラブレッド。
10歳の時に両親がなくなっており、彼女だけが生き残った。
父方の家は既に深海悽艦に滅ぼされていて母方の実家のあるドイツに渡るも12歳の時に中高一貫制の学校に入学するために帰国する。
学校での成績は文武両方とも主席で卒業している。


源 慎一郎(65)
現大元帥で横須賀鎮守府の提督で現時点で世界最強と言われる。
樹の父の轟児とは同僚で幼馴染みであり兄弟の様に育った。
性格は豪快にかつ、大胆不敵で情に厚い男である。
艦娘が轟沈したことがないのと自前の顎髭をが自慢。


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第壱話

ひじりです。
佐世保鎮守府にした訳は自分が寒いのが嫌いだからです。
大湊は青森ですから寒そうですし…。


佐世保鎮守府は長崎にあり、主に九州を中心に西日本を守護する海軍施設で広い海域を守るために艦娘も100名居る大きな鎮守府だ。

 

そこに一人の男性…もとい、男装をした女性が正門をくぐる。

その人物は樹であった。

男装は命令書に記載されていたわけではなく、彼女自身が艦娘の心に刻み込まれた男性への嫌悪や憎悪を無くす為にと考えた結果だった。

女性の自分に馴れても自分の身に何かあり、他の男性提督に変わってまた一からなど効率の悪いことなど意味がない。

 

「お待ちしておりました。私は大淀ともうします。」

 

「出迎えご苦労。長宗我部・ティルピッツ・樹少将だ。」

 

正門をくぐって直ぐの所に大淀が立っており、敬礼をしながら挨拶をしてきたので同じように返す。

樹は挨拶を済ませながら大淀を観察する。

口調や態度は異常はないが大淀の目には強い憎悪とそれと諦めが見てとれる。

 

「では、執務室にご案内いたします。」

 

「ああ。」

 

大淀が歩き出したので樹はそれに続く。

鎮守府内は想像に反して綺麗にされており、推測だが本部の人間や上官からは隠すためと考えるのが妥当だな。

そうこうしてる内に執務室に到着し、大淀が予定を読み上げる。

 

「本日の予定は鎮守府内を見回り、施設の説明をしたのちに経営プランを建てていただきましてその後に編成・出撃・遠征などの指示をしていただきます。」

 

実に事務的な読み上げだ。

確かに仕事としては理想的とは言えるが、私はその仕事ぶりと予定が気にくわない。

 

「…却下だ。」

 

「…え?」

 

私の一言に固まる大淀にもう一度言う。

 

「却下だといったんだ。」

 

「で、では、どうすれば?」

 

動揺する大淀を尻目に時間を確認する。

ヒトマルサンマルか…。

 

「本日は食堂を切り盛りする間宮を除く全艦娘は休日とし、間宮も可能な限り休めと伝えろ。それからヒトヒトマルマルに全艦娘はグランドに集合だ。」

 

「は、はい!かしこまりました。」

 

「では、頼んだぞ。」

 

大淀の動揺は激しさを増すが集合まで30分しかなく、慌てて執務室から出ていく。

 

「…ふぅ。」

 

その間に私は鞄から取り出したあるものを所持してから書類作業を始める。

それから大淀が呼びに来たので私もグランドに移動した。

 

――――――――――

 

グランドには鎮守府にいる全艦娘が集まり、至るところから何事かと口々に声があがるが、そこに樹が現れると声は静まる。

壇上に上がる樹をあるものは睨みあるものは怯えて目を背けてと様々な反応をする。

 

「本日よりこの佐世保鎮守府に着任した、長宗我部・ティルピッツ・樹少将だ。」

 

樹は敬礼をしてから挨拶をするもそれに返礼したりするものは一人もいない。

しかし、樹は臆することもなく続ける。

 

「私が目指すのは一人も轟沈することもなく、安全にかつ効率の良い出撃・遠征を出来るようにしていくつもりだ。」

 

樹は自分が目指すスローガンを語るがそれに言い返して来るものもいた。

 

「はっ!轟沈をなくす?そんなの信じれるかよ!!」

 

天龍であった。

大声で抗議する天龍に樹は言う。

 

「別に直ぐに信じて貰おうなどと甘い考えは持っておらん。」

 

「じゃあ、どうやって信用を得るんだ!あぁ!!」

 

「ふむ…。」

 

天龍はヒートアップしていき今にもつかみかかって来そうな雰囲気に辺りに緊張が走る。

その中で樹は天龍の左の腿にある弾創が目に入る。

 

「待て。その腿の弾創はどうした。出撃や遠征の怪我なら入渠してこい。」

 

「話をすり替えんな!!」

 

「すまないが気になったら我慢できない性分でな。答えてくれ。その後にお前の質問にも答えよう。」

 

樹の言葉に天龍は舌打ちをして答える。

 

「こいつはなぁ…お前ら提督が付けた傷だよ!チビどもを無理矢理犯そうとしたあのクソ野郎に俺を身代わりに出したらやられてる最中に『締まりがよくなるから』とかほざきながら何発も同じところを銃で撃ち抜きやがったんだ!!その後に入渠も許されずに今じゃ入渠しても治りゃしねぇんだよ!!!」

 

天龍は叫ぶ。

その目からは涙を流しており、後ろで整列している何人かの駆逐艦の少女達も泣いている。

樹はその余りに悲惨な姿を見て強く歯を食い縛ったが直ぐに自分を落ち着かす為に深呼吸する。

 

「ふぅ…わかった。辛いことを話させたすまなかった。」

 

「うるせぇ!!それよか今度はこっちの質問に答えやがれ!」

 

「……わかった。」

 

樹は何かを決心して腰に差している自動小銃を取り出す。

艦娘達はいきなり武器を取り出した樹を見てどよめく。

 

「てめぇ!!何をしやがる!!」

 

パンッ、パンパンパンパンパンパンパンパン!!

「ぐっ!!がっ、くっうぅぅ!!」

 

艦娘達のどよめきを他所に樹は自分の足を…天龍が撃ち抜かれた同じ場所、左の腿に銃口を向けて躊躇いなく撃ち抜く。

顔を苦痛に歪めるもマガジンに入っていた9発の弾丸全て撃って銃を後ろに投げ捨てる。

その足は血が流れ白の軍服を真っ赤に染めていくが樹は気にしなかった。

 

「な、なにやってんだよ!!お前は馬鹿か!?」

 

「はぁ…はぁ…天龍…質問に答える。私を信用しなくていい。だから契約をしよう。」

 

「は?契約だと?」

 

「あぁ…ここにいる皆と私の契約だ私は必ずここをいい方向に変えてみせる。もし出来なければ私の命をやる。煮るなり焼くなり好きにすればいい。」

 

「あ、あぁ、わかった。」

 

艦娘達は戸惑うが了承するのを見て樹は満足そうに頷く。

 

「よし。では、ヒトサンサンマルに各艦種のリーダーを決めて執務室に集合せよ。今後の方針についての会議を行う。では、解散。」

 

樹は左の腿から血を流し、激痛が走るが歯を食い縛って我慢して歩き出す。

 

艦娘達はその姿を見送るしか出来ず、その場で暫く呆然と立ち尽くしていた。

 

―続く。

 




読んでいただきありがとうございました。

自分で自分の足を撃つ…自分は絶対に無理ですねー(汗)


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第弐話

ひじりです。
自分も艦これはしているんですが、運営が下手くそなのか艦娘には苦労をかけてしまってます。

精進せねば…。

2017/2/21 鳳翔の言葉使いを訂正しました。


「時間が来たな。では、始めよう。」

 

執務室の椅子に座る樹が皆が集まっているのを確認してから声をかける。

それぞれの艦種の代表は『戦艦代表長門』『空母代表赤城』『重巡代表高雄』『軽巡代表天龍』『駆逐代表響』と『大淀』『明石』『間宮』の8名が樹の前に並ぶ。

 

「早速だがそれぞれの問題点を一人ずつ言ってくれ。」

 

「では、私から。」

 

樹の言葉に長門が一歩前に出る。

 

「まず、現在この鎮守府に中破・大破の者を入渠し、これからは損傷の度合いに関わらず入渠させて欲しい。」

 

「かまわん。元々私もそのつもりだったしな。許可しよう。」

 

長門は納得したのか一歩下がる。

 

「私からも1ついいですか?」

 

「かまわんぞ。」

 

次に発言したのは間宮だった。

間宮は恐る恐るといった感じで続ける。

 

「食の改善をしたいです。今は補給と食事を一度に取るような形でして皆さんに美味しい食事を提供させて下さい。」

 

「なるほど…それも許可しよう。腹が減っては戦は出来ぬと諺でもあるしな。」

 

「ありがとうございます。」

 

間宮は嬉しそうに頭を下げて礼をのべる。

そうして次々に意見は出てきて『補給はちゃんとして欲しい』『艦娘の寝床がぼろぼろで直して欲しい』『連続遠征は止めて欲しい』『休みが欲しい』など普通ならごく当たり前の意見を必死に訴える艦娘達に樹は前提督に対して憎悪が沸き上がる。

しかし、顔に出ていたのか最後に『休みが欲しい』と発言した響が声をかける。

 

「やっぱり、休みはダメだったかい。」

 

「ぁ、いや…すまない。前提督の極悪ぶりに苛立ちを覚えてな。休みに関しては許可だ。」

 

「ハラショー。感謝する。」

 

安堵したように響は顔を綻ばせて下がる。

 

「さて、大体の意見は出たか?」

 

「……。」

 

樹は彼女達を見渡すが唯一発言していない天龍に声をかける。

 

「天龍。何かないか?」

 

「俺は…その、チビどもが笑えて暮らせたらそれでいい。」

 

天龍は目を合わせようとはせずに気まずそうだが答える。

樹は天龍が本当に優しい心を持っているのだと再確認し、微笑む。

 

「フッ…そうか。では、皆に何か問題点が浮上したら直ぐに報告するように伝えてくれ。では、解散。」

 

樹の言葉に皆が執務室を後にする中で天龍は動こうとはしなかった。

 

「天龍どうした。」

 

「いや、その…だな…あ、足は大丈夫なのか?」

 

天龍は樹に負傷した足の事を聞く。

直接自分がした訳ではないが、自分と口論で同じ様な傷を自ら作った樹を心配だったのだ。

 

「あれから医者に診てもらってな。骨などは避けてたから問題はない。」

 

「何であんなことしたんだよ。」

 

意を決して樹がなんであんなことをしたのか訊ねる。

 

「ふむ…何でだろうな…自分でもわからん。」

 

「はぁ?」

 

樹は腕を組み考えるが理由が浮かばなかったのか首を横に振って答える。

その余りにも予想外の答えに天龍は驚愕する。

 

「い、意味もなくやったのか!?」

 

「いや、意味の無いわけではないが…言ってしまえばあれをする必要性はなかった。」

 

天龍は訳がわからず混乱する。

そんな天龍を他所に樹は言葉を続ける。

 

「だが、こうして天龍や他の皆の痛みを少しでも理解出来たなら…私は嬉しく思う。」

 

「っ!?」

 

天龍は優しく微笑みながら自分の左腿を擦る樹にドキッとする。

 

「だが、私は只の人間だ。皆のされた事を全てこの身に受ければ死んでしまうだろう。しかし、私はここを改善するまでは死ねん。」

 

天龍は樹から目が離せなかった。

樹の強い決心が宿った瞳は綺麗で澄んでいた。

 

「だから、残りのは皆との契約が果たせなかった時に受ける。その覚悟はしてきたからな。」

 

「……っ…ば、バカじゃねぇか。本当にバカ野郎だ。」

 

ハッと我にかえった天龍は言葉が浮かばず悪態をついてしまう。

その頬は朱に染まり、慌てた様子で執務室を飛び出した。

 

「………はぁ…。」

 

樹以外に誰も居なくなった執務室で椅子に背を預けて樹の口から小さなため息が漏れる。

それは部屋の中に響いて消えていった。

 

――――――――――

 

バカだ。

あいつは本当にバカとしか言いようがない。

天龍はどこに行くわけでもないが一刻も早くあのバカがいる所から離れたかった。

 

「なんだよ…ちくしょう…。」

 

悪態をつくが真っ赤に染まるその顔は嬉しそうな笑みが浮かんでおり、その心に芽生えた初めての感情に戸惑いながら彼女は歩き続けた。

 

――――――――――

 

その日の夕方に佐世保鎮守府の正門前に二人の艦娘が到着する。

 

「やっと着いたのです。」

 

「ええ。それにしても樹ちゃん大丈夫でしょうか?」

 

「いーちゃんは人見知りなので心配なのです。」

 

「そうですね。早く行きましょうか。」

 

「はいなのです。」

 

二人の艦娘は暁型四番艦『電』と鳳翔型一番艦『鳳翔』だった。

二人は樹がいた徳島牟岐海軍基地から呼び寄せた樹が最も信頼する艦娘だ。

 

「電の本気をみるのです!」

 

「ふふっ…電ちゃんたら。」

 

二人は正門をくぐって樹が居るであろう執務室を目指して歩きだした。

 

―続く。




この度は読んでいただきありがとうございました。

天龍がチョロいん(笑)
これからどうなっていくかは正直自分も未定なんですが和解&ほのぼの&イチャイチャを書きたいなーって思います。


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第参話

どうもひじりです。

最近リリースされて崩壊3ndのクオリティーの高さにビックリしました。

では、どーぞー♪


「本日付で着任しました電なのです。」

 

「同じく鳳翔です。」

 

「ああ、楽にしろ。」

 

電と鳳翔は樹の時と同じように待っていた大淀に執務室に案内されて挨拶を終えた。

 

「大淀。」

 

「はい。」

 

「皆に紹介したい。時間は作れるか?」

 

「少しお待ちください。そうですね…30分程で夕食ですのでその場でいかがでしょう。」

 

「もうそんな時間か。では、そうしよう。先に行って皆に伝達を頼む。」

 

「かしこまりました。」

 

大淀は樹に敬礼した後二人の艦娘を心配そうに見つめていたが執務室から退室する。

それを見届けた樹は頭にかぶっている帽子を脱いで二人の前に立つ。

その顔は俯いており、顔色を伺えない。

 

「…」

 

「司令官?」

 

「ふふっ♪」

 

なにも言わない樹に電は首を傾げて鳳翔は優しく微笑みを浮かべるだけで樹の出方を待っている。

 

「……ぐずっ…電ぁぁ!おかーさーん!!」

 

「あわわ!?」

 

「あらあら♪」

 

樹は顔をあげると先程までの鋭い目付きはなくその目には沢山の涙が溢れんばかりに浮かんでおり、二人に凭れるように抱き付いて溜まりに溜まった涙が決壊してその頬を濡らす。

今では周りの人からは【女帝】と呼ばれている樹は元々は引っ込み思案で泣き虫な女の子だった。

しかし、樹は変わり一時期は無理がたたって過労で倒れるなどを繰り返すが樹の初期艦である電と初めての建造で出会った鳳翔に諭されて二人の前だけは本来の自分をさらけ出せるようになった。

そんな樹に抱き付かれた二人は樹をしっかりと抱き止めて電は頭に鳳翔は背中にと手を回して樹をなだめる。

その顔には慈愛に満ちた笑みを浮かべており、樹は二人の腕の中で泣き続ける。

 

「いーちゃん。どうしたのですか?」

 

「そうですね。ゆっくりでいいから話してください、ね?」

 

「ん…ぐずっ、えっとね…わかってたけど、ね…皆ね…怒ってて、恐くて、恐くて、それに……不安で、いっぱいいっぱいで、でも頑張らないとね、いけないから…。」

 

「そうですか…樹ちゃんは沢山頑張って偉いですね。」

 

「そうなのです。いーちゃんは偉いのです♪」

 

「うぇ、うわぁぁぁん!」

 

二人が優しく諭すと樹は更に泣くので二人とも少し困った様な顔をする。

 

「よしよしなのです。」

 

「致し方ありませんね。少しだけこのままにしてあげましょうか。」

 

「なのです。」

 

二人は泣き続ける樹を暫くの間宥め続けた。

 

「ぐずっ、スンッ…ん、もう大丈夫。いつもごめんなさい。」

 

「お気になさらなくていいですよ。」

 

「そうなのです。」

 

「ありがとう。」

 

10分程で樹は泣き止み二人から離れて頭を下げる。

二人はそれに笑顔で答えて樹を見つめる。

それに対して樹も笑顔で返事をする。

 

「それにしても今回は男装までして困った人なのです。」

 

「ごめんなさい。でも、あの日から無理してでも頑張るって決めたから。」

 

「あの日…あの子が沈んだ日ですね。」

 

「うん。」

 

三人の間に気不味い空気が流れる。

 

「電…。」

 

「いいのです。お姉ちゃん…雷お姉ちゃんの事は仕方なかったのです…だから謝らないで欲しいのです。」

 

「……うん…わかった。」

 

パンパン

「では、そろそろお時間ですから食堂に向かいませんか?」

 

しんみりとした空気を打ち消す様に鳳翔が手を叩いて提案する。

 

「んっんん!わかった…では、案内しよう。」

 

「「はい(なのです)」」

 

――――――――――

 

「暁型四番艦電、本日付で着任したのです。よろしくなのです。」

 

「同じく鳳翔型一番艦鳳翔着任しました。よろしくお願いします。」

 

樹の時とは違って二人が自己紹介をすると至る所から拍手が起こり皆歓迎している様だ。

樹は仕方ないとはわかってはいたものの余りの違いに少し悲しくなるがそれを顔には出さない様に努める。

 

「二人は元々は私のいた所にいた艦娘だ。仲良くしてくれ。それと、鳳翔も料理が出来るから間宮を加えて二人を軸にしてローテーションで皆にも参加をしてもらう。まあ、最初は日替わりしか無理だがゆくゆくはある程度のレパートリーから選べるようにするつもりだ。以上だ。」

 

二人の紹介が終わり、それぞれ行動をし始める。

その中でも二人を取り巻くように集まる艦娘達を横目にまだ食の改善がなされていないため仕出し屋から取り寄せた弁当を食べ始める。

味は悪くないが正直いつも二人の作るご飯を食べていた樹からすると物足りない。

しかし、樹と電に鳳翔を除く皆久しぶり…中には初めてまともな食事をしている艦娘達はある者は喜び、別の者は泣きながら一心不乱に弁当を食べる。

 

「良かった…。」

 

「嬉しそうですね。」

 

「鳳翔か。」

 

「はい。」

 

いつの間にか隣に腰掛けていた鳳翔が樹と同じ様に皆を眺めている。

その目は慈愛に満ちた眼差しでまるで娘をみる母親の様であった。

 

「ふぅ…やっと解放されたのです。」

 

「お疲れ様です。」

 

「だな。」

 

ヨロヨロと電も樹を挟むように鳳翔とは反対側に座る。

三人でご飯を食べていると駆逐艦に囲まれていた天龍が樹の前に歩いてくる。

 

「…提督。」

 

「む…どうした?何か問題があったか?」

 

「いや、ちげぇよ。なんだ…その、チビどもも喜んでてさ…なんつーかあれだ………あ…ありがとよ…。」

 

樹のことを初めて【提督】と呼び、天龍は顔を赤く染めて頭を下げてお礼を述べた。

その言葉に樹は嬉しくて自然と笑顔になって優しく下げられた天龍の頭を撫でる。

 

「ああ…。皆が喜んでくれるのは私も嬉しいからな。礼などいいさ。」

 

「くっ…恥ずぃぜ。」

 

「フッ…いつもは面倒をみてる側なんだ。たまにはこう言うのもいいだろう。」

 

その光景を見てる電と鳳翔も口を挟まずに優しく微笑みを浮かべて眺める。

 

「ちっ…そう言えばよ。自分で撃ち抜いた足だけどよ。なんか困った事があれば言えよ?」

 

「あ、ああ…ありがとう。」

 

天龍はやはり恥ずかしいのか頭を上げて樹の手を逃れてから思い出した様に樹を気遣いその場を後にする。

しかし、天龍は気付いていない。

天龍が樹にとって核爆弾をも凌駕する程の爆弾を放り投げたのを。

 

「「提督?」」

 

「………はい…。」

 

二人を横目で確認すると先程と同じ様な笑顔だが纏う気配が全く違っており、樹は逃れられないのを確信する。

 

「今夜お話がありますから…夜に伺いますからね?」

 

「そうなのです。とっても大切なお話なのです。」

 

「……はい。」

 

笑顔で細められて目から除く目にはハイライトは灯っておらず、かなり怒っているのは明白であり…樹は項垂れるのだった。

 

その夜に予告通りに樹の部屋に来た二人はまず樹を問いつめて叱り、笑顔のまま傷の確認と称して樹の衣服を全て剥ぎ取り体の隅々まで調べられて終わった頃には裸のまま布団の中でしくしくと泣く樹とつやつやの鳳翔にホクホクの電が満足そうに笑みを浮かべたまま三人で川の字で眠った。

 

「…もう、お嫁にいけない。」

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました!!

さあ…ナニがあったんでしょーねー(笑)
おかーさんかわいーよー♪


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第肆話

ひじりでーす♪

いやー遅くなってすみませんでした!(土下座)
今回のお話には残酷な表現が入っておりますのでお気をつけ下さい。

では、どうぞ♪


目の前が赤に染まる。

それは激しく揺らめき全てを飲み込む。

 

ああ…またこの夢か。

 

そこは鎮守府だった。

しかし、今の佐世保でも前の牟岐でもない。

ここは昔の佐世保鎮守府…まだパパがいた時の鎮守府。

その燃え盛る炎の中で金色の髪を振り乱しながら走る一人の女の子がいる。

昔の私。

昔の…弱くて無力な私だ。

 

「パパぁー!!ママぁー!!」

 

幼い私は力の限り叫ぶ。

また走る。

また叫ぶ。

それを何度か繰り返してついに見付けてしまう。

 

「パパ!?パパー!!!」

 

瓦礫の間から大好きなパパの後ろ姿が見えて私は走り寄る。

 

ダメ!

近寄らないで!

…お願い、だからぁ!!

 

「パパ!………パパ?」

 

瓦礫に持たれる様にして座っているパパに声をかけても返事は無い。

当たり前だ。

 

「…ひっ!?」

 

ついに幼い私は正面からパパを見てしまう。

パパは…死んでいた。

顔の半分と右胸辺りから右腕が無くなっていた。

どう見ても即死だろう。

幼い私から見てもそんな事簡単に理解出来るくらいの致命傷だ。

 

「ぃや…嫌嫌嫌嫌いやいやいやいやああぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!」

 

叫ぶ。

叫んで…息もままならない位にまた叫ぶ。

涙は出なかった。

叫ぶのに必死なのか…理解したくないのか今でもわからない。

 

「ああぁぁぁ!!」

 

「樹!!」

 

叫ぶ私を見付けてに抱き締める女性…ママだ。

 

「………ママ…?」

 

「ええ…ママよ。良かった…。」

 

本当に心配していたのか痛いくらいに抱き締めてくれた。

今でも覚えている。

 

「ママ…パパが…パパがぁ…。」

 

「えっ?…っ!?」

 

私の言葉にママはパパを見て悲しくて泣きそうな顔をするが血が滲む程唇を噛み締めて涙を堪える。

 

「轟児さん…先に逝ってしまわれたんですね。」

 

「…ママ?」

 

「樹…辛いだろうけどパパにお別れしましょ…。」

 

「嫌!……だけど…私我慢する!!」

 

「そう。いい子ね。」

 

ママは私の頭を撫でてくれる。

この時の私でも一番辛いのは私ではなくてママなんだと理解出来たから必死で我慢した。

 

「轟児さん…このクラウディア貴方と夫婦になれて…樹と言う轟児さんと私の天使をこの世に産めた事を誇りに思います。本当に幸せでした。」

 

ママはパパの前に膝をついてパパに寄り添う。

 

「…愛しています。」

 

ママはパパの唇に触れるだけの口付けをして体を離す。

 

「…樹。」

 

「うん。」

 

私はママに背中を押されてパパの前に立つ。

 

「パパ。私、パパの分も一杯生きる!だから…だから!……天国から見守ってて下さい。」

 

私もパパの頬にキスをしてから離れてママと手を繋いで走り出した。

 

――――――――――

 

パパとお別れしたママと私は出口に向かって走っているがあちらこちらで火の手があがり、遠回りを余儀無くなっていた。

 

ドォン!!

 

いきなり轟音が鳴り響く。

今思えばそれは副砲位の音だが、当時の私からすれば戦艦級の主砲位に感じたのを覚えている。

 

「ああ!?」

 

「ママぁ!!」

 

私の手を引いて走っていたママが足を払われた様に転んでしまう。

転んだママに寄り添う様にしゃがむ私が見たのは左足の膝から下が無くなって血を流すママの姿だった。

 

「樹…隠れなさい。」

 

「ヤダ!」

 

「樹!!今の砲撃は近かった…見付かったら殺されるわ…お願い!言うことを聞いて!」

 

「やだ…やだよぉ…。」

 

ママは私の頬を叩く。

 

「隠れなさい…早く!」

 

「ママ…。」

 

パパと結婚するまではかつて世界最強と謳われた「氷結の女帝」たるママの気迫に私は慌てて近くに身を隠す。

 

 

「イキノコリガイタカ…。」

 

「くっ…戦艦棲姫ぃ!!」

 

「マサカトハオモッタガオマエトハナ…。」

 

「狙いは…私か。」

 

身を隠す私にも二人の会話が聞こえてきた。

私は二人から見えないように様子を伺う為に顔を覗かせる。

 

「何故私だけを狙わなかった!!」

 

「フンッ…オマエニハカイメツスンゼンニオイコマレルホドニドウホウヲコロサレタカラナ。」

 

「…殺してやる!!」

 

「カンムスモイナイオマエニデキルコトハナイ。ゼツボウシナガラ…イケ。」

 

ドォン!!!

バシャッ!!!

 

這いつくばるママにアイツ…戦艦棲姫は主砲を放つ。

ママの体は上半身が消し飛び、辺りに真っ赤な血が飛び散る。

血は私の顔にもかかり、私は気を失ってしまう。

 

「アッケナイモノダナ。ヒキアゲルゾ!」

 

その間に戦艦棲姫は去ってしまった。

 

「ん…っ!ママ!!」

 

目を覚ました私は慌てて隠れていた所から飛び出してママに走り寄る。

しかし、ママの遺体は燃えてしまっていた。

私は絶望でその場で膝をついてママを見つめる。

 

「くっ、ううううぅぅぅぅぅ!!!」

 

身を屈めてギリッと歯を食いしばって叫ぶのを堪える。

今はまだ叫べない。

近くにまだアイツの仲間がいるかも知れないから。

だから堪える。

身が裂けてしまう程の絶望、苦痛、憎悪。

 

「えっ!?髪が、白くなってる!?」

 

視界に映る金色の髪が白く染まっていく。

怖かったが、今はここから逃げ出すのが先決だからまた走り出す。

しかし、神様は残酷だった。

 

ドガァァン!!

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

運悪く近くで爆発が起こり私は吹き飛ばされる。

そして不運はそれだけではない。

 

ドスッ!

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

吹き飛ばされた際に直径三センチ程の剥き出しの鉄筋が腹部に刺さったのだ。

 

「ぐっ…ゲホッ!」

 

ボタボタ!

 

急激な吐き気で噎せると出たのは胃液ではなく血だった。

大量の血を一気に失った私は意識が朦朧とする。

 

「いやだ…死にたくないよぉ…ままぁ…ぱぱぁ…たすけてぇ…。」

 

私の言葉は虚しくも燃え盛る炎にかき消される。

もうダメかと思った時にそれは現れた。

 

「マダ…イキノコリガイタノネ。」

 

「だぁ…れ…?」

 

「チュウカンセイキ…。」

 

「私を…殺す…ゴホッ!…の?」

 

私は諦めた腹部に刺さった鉄筋を抜いて逃げれる程の気力も体力もないし、逃げたとしても直ぐに捕まって殺されるに決まってるから。

しかし、彼女…中間棲姫は首を横に振る。

 

「コロサナイワ…ワタシハシズカニクラシタイダケダモノ。ココニキタノモムリヤリツレテコラレタダケダシ…。」

 

「そう…なんだ…。」

 

「メノマエデシナレルノハキブンガワルイワ。」

 

そこで私の視界は暗転し、意識を手放した。

 

――――――――――

 

「――ゃん―――ちゃん――――いーちゃん!」

 

「んっ…電?」

 

名前を呼ばれて目を覚ます。

目に入ったのは可愛らしい顔を不安げに歪めた電の顔だった。

 

「電なのです。大丈夫なのです?」

 

「うん…大丈夫。」

 

ぎゅぅ。

 

「…電?」

 

電は私の頭を抱き締める。

子供特有の高い体温と柔らかい体が心地いい。

 

「また、あの夢を見たのですか?」

 

「……うん。ごめんなさい…また、心配かけちゃったね…。」

 

私が謝ると電は頭を撫でてくれて私も甘える様に電の腰に腕を回す。

 

「謝らなくていいのです。」

 

「ん…ありがとう。」

 

「どういたしまして、なのです♪」

 

謝罪ではなくてお礼を言うと電は一度ぎゅっと抱き締める力を強めてから体を離して私に微笑む。

 

「お母さんは?」

 

「もう食堂なのです。」

 

「そっか…じゃあ、まだローテのメンバー決まってないから手伝い行こっか。」

 

「はいなのです♪」

 

―続く。




読んで頂きありがとうございました!

今回は過去のお話になります。
過去の話は時々ぶっこんでいきますのでどうかご了承下さい!

因みに樹の両親の紹介しますね。

長宗我部・ティルピッツ・轟児(享年34歳)
娘である樹が産まれるまでは長宗我部家唯一の生き残りであった。
一族を滅ぼされて憎悪で深海棲艦を滅ぼすことばかり考えていたが将来妻になるクラウディアに出逢い諭される。
荒れていた時に付けられたあだ名がかつて長宗我部元親に付けられていた【鬼若子】だが、クラウディアには一度しか勝てていない。
性格は豪快かつ単純で裏表がなくて明るので皆から慕われていた。

長宗我部・ティルピッツ・クラウディア(享年35歳)
ドイツのティルピッツ家出身の元女性提督。
その腕は【氷結の女帝】と謳われており、越えるものどころかその足元にも近寄れないと言われて世界最強を欲しいままにしていた。
演習で負けたのは轟児に負けた一度だけだった。
性格は基本的にはのほほんとした天然さんだが、一度戦いになると緻密に計算された作戦で冷酷に相手を追い詰める。


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第伍話

ひじりです。
ここ最近既に初夏みたいに暑くてだるんだるんになってます。
春よ。仕事をしろ。仕事を。

では、どうぞ。


私がこの鎮守府に着任し、改善を開始してから一週間がたった。

これまで食の改善を始めとして身を清める為の一日一回の入渠や毎回の補給にローテーションでの休暇。

直ぐに開始出来る事は直ぐに実施してきたがついにある問題に衝突した。

 

「皆集まったな。」

 

その問題を解決すべく私は完全休暇を与えて全艦娘を食堂に集めて声をかける。

ガヤガヤと話をしていた声が静まるのを確認して再度私が口を開く。

 

「うむ。皆がこうして集まり、私の声に耳を傾けてくれるようになって嬉しい限りだな。」

 

少し前まではこうして前に立つと殺意を孕んだ目で此方を睨む者や聞く気がなく出ていく者等が沢山いたが今は殺意はまだ無くならないが少なくとも出ていく者はいなくなった。

 

「では、本題に入ろうか。まずはこれを見てほしい。」

 

近くの者に紙の束を渡して皆に回すように伝えて皆に配り終わったのを確認してからまた口を開く。

 

「これは皆からの要望等を記入したものだが改善済みのものは横線で急を要するものは赤文字で書き記しているんだが、明日からこの鎮守府…前提督がくだらない程に手を加えた執務室等を含めた全ての施設を建て直す予定だ。」

 

私の言葉に納得が五割、驚きが四割、さして興味がないのが一割程度だ。

 

「提督。」

 

艦娘達の中からスッと手が上がる。

私が指名すると立ち上がり、質問を開始する。

 

「どうした。長門。」

 

「この工事はかなり大規模になると思うが…施工期間は?」

 

「ああ、完全に施工完了するには半年程かかると言われたな。」

 

「なるほど。予想は出来たが長すぎないか?」

 

「もっともな意見だ。しかし、いきなり全てするわけではない。先ずは寮と鎮守府本館を始めて、次に工房、最後にグランドや食堂などの細かい施設と順番にする予定だ。これにより工期が何ヵ月か延びてしまうがここが攻撃されないとも言えないから了承してほしい。」

 

「確かにそうだな。私は了解した。」

 

「助かる。」

 

長門は納得したのかその場に座り、此方に見つめてくる。

 

「更に皆の中で先に改修してほしい所などが有れば遠慮なく言って欲しい。二つ返事とは言えないが出来る限り考慮するつもりだ。」

 

今の所は特にないのか手は上がらない。

 

「ふむ。では次の議題に移ろう。寮を改修するに当たって問題が生じる。皆の寝るところだ。」

 

「考えてねぇのかよ。」

 

皆が驚いてる中で声が上がる。

 

「いや、プレハブにはなるが一応グランドに簡易寮を設置する予定だ。天龍。」

 

「チッ…なら文句ねぇな。」

 

「いや、まだ問題がある。」

 

「あ?なんだよ。」

 

「プレハブがおける数は10個が限界だ。

一つに10人で、満室だが艦娘だけで100名いるわけだが…私を含めてこの鎮守府に住んでいるのは101名いるわけだ。つまり、私の寝る場所がない。」

 

そう、由々しき事態なのだ。

鎮守府と寮が工事に一番時間がかかり、今回のプランではこの二つだけで半年かかる予定だ。

男装で見た目は男だが、中身はれっきとした女の私だ。

流石に廊下などで雑魚寝したくない。

 

「「「「……はぁ。」」」」

 

至るところからため息が漏れる。

 

わかっていたとは言え少し悲しくなる。泣きそう。

 

「私も半年近くも廊下等では寝たくはないからな。ホテルなんてもっての他だ。そんな無駄遣いは出来ん。」

 

私も学生時代は寮生活で元々貧乏性なのもあり、ホテルなど論外だ。

 

「そこでだ。私もプレハブで寝ようと思う。無論嫌な者も出てくるだろう。」

 

「「「えぇー!?」」」

 

うん。わかってたよ?

でも、そんなに露骨に嫌がらなくてもいいと思うんだ。

本当に泣きそう。

 

「最後まで聞いてくれ。一週間のローテーションで場所を変えつつ皆の部屋に泊まらせてほしいんだ。半年間一緒よりはましだろ?」

 

私の言葉に未だに嫌そうだが渋々といった感じで了承してくれる。

 

「皆、本当にすまない。では、話は以上だ。解散。」

 

皆が各々行動を始めるのを横目に私も食堂を後にした。

 

――――――――――

 

「…………本当にどうしよう。」

 

執務室の机の上に両肘をついて口の前で両手の指を絡める。

俗に言うゲン○ウポーズである…って、それどころじゃない。

 

「どうしよう…私だけが贅沢なんて絶対したくないけど…男装がバレちゃうよ。」

 

コンコン。

 

執務室の扉がノックされて私は頭を切り替えて返事をする。

 

「どうぞ。」

 

「失礼するのです。」

 

「入るぜ。」

 

入って来たのは電と天龍だった。

他の第六駆逐隊が天龍になついている為、自然と電も仲良くなったと聞いたが本当みたいだ。

 

「どうかしたのか?」

 

私がそう問うと電は俯き、天龍は少し困った様に頭をかいた。

 

「司令官さん。天龍さんは信頼出来るのです。」

 

「ふむ…だが、それでは意味がないと思うんだが?」

 

意を決したのか俯いた顔をあげて電は言うが、私は心苦しくてもその意見を一刀両断に切り捨てる。

 

「でも、今回は仕方ないのです。」

 

「…痛いところをつくな。だが、ダメだ。」

 

電が私を心配してくれているのは分かるが自分の都合だけでの行動は慎むべきだし、何より自分勝手は私が嫌いだ。

 

「さっきからなんの話だよ。訳が分からねぇぞ?」

 

天龍の言葉にも反応できないほどに電と私は真剣な目で睨み合うがそんな空気は一瞬で消し飛ぶ。

 

「何をしているんですか?」

 

鳳翔…お母さんの手によって。

 

「おか…鳳翔…。」

 

「鳳翔さん…。」

 

私達二人は明らかに怒ってますオーラ全開のお母さんが立つ執務室の入り口に恐る恐る目を向ける。

 

「さっきから聞いていたら折角来てもらってる天龍を放っといて何をしているんですか?」

 

見た目は優しい笑みを浮かべるお母さんだが、時折覗く薄く開かれる瞳には光がない。

マズイ。マジギレだよ。これ。

 

「それに司令官さん?私達に相談も無しに勝手に工事を決めてしまったのにも私は怒ってます。」

 

ああ…矛先が私に向いちゃったよぉ…。

 

「聞いてますか?」

 

「は、はい!」

 

反射的に椅子から立ち上がりその場で直立する。

 

「決まった物は仕方ありませんが秘密を守る為には私と電ちゃんだけでは不可能ですから何人かに打ち明けましょう。」

 

「いや、それでは意味が…「ナニカモンダイデモ?」いえ!何でもありません!!」

 

あわわわ…。

お母さんが片言になってて反論なんか出来ないよ。

 

「つか、さっきから何の話だよ。説明しろよ。」

 

しびれを切らしたのか、ずっと放っとかされていた天龍がイライラした口調でお母さんに話しかける。

 

「ああ、長い事放置してすみません。とりあえず、私の口からは言えませんから司令官さんから聞いてください。」

 

「???まあ、いいけどよ。」

 

再び私を見るお母さんの目には【ちゃんと言わないと後でキツいお仕置きですよ?】と言ってくる。

仕方ないので観念した私は溜め息を吐いてから天龍に告げる。

 

「騙しててごめんなさい。私は本当は女です。」

 

「は?」

 

【何言ってんのコイツ】みたいな目で見ないで。

その目は心にくるから。

 

「とは言っても信じれませんよね。今証拠を見せますよ。」

 

今だ表情を変えない天龍にチクチクと精神的ダメージを受けながら胸を押さえつけているさらしを解く。

 

「ん…ふぅ。苦しかった。」

 

「………。」

 

「ん?天龍?」

 

今まで押さえつけられていた乳房が元の形を取り戻し、軍服を大きく押し上げてその存在を主張する。

 

「………。」

 

「んん?おーい。天龍ぅー。」

 

「ぬぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

「きゃぁ!?」

 

反応がない天龍に近付いて顔の前で手をヒラヒラしていると突然叫び始めた天龍に驚き後退りしようとして失敗して床に尻餅をついてしまう。

 

ガン!ガン!ガン!

 

「ああぁぁぁ!夢だ!夢だ夢だ夢だぁぁぁ!!!」

 

何故か錯乱した天龍は壁に自分の頭を何度も打ち付けて叫んでいる。

私達が必死に止めようとするが止まらず結局脳震盪をおこして倒れるまで錯乱は続いた。

 

―続く。




天龍ちゃんがかわいそー。
まあ、自分のせいなんですけどね!!

ですが、百合スキーな自分ですからいい感じの仲になってくれたらいーなーって思ってます。

では、今回も読んで頂きありがとうございました♪


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第陸話

ひじりですー。

やっと六話ですね。
ボチボチ頑張って書いていきます。

では、どうぞ♪


気絶した天龍を執務室のソファーに寝かせて私は二人に謝る。

 

「二人ともごめんなさい。また先走って勝手な事して。」

 

頭を下げる私にお母さんは正面から電は背面からと私を包むように抱き締めてくれる。

 

「いつもの樹ちゃんの悪い癖ですよ?きっと艦娘さん達を想っての事だとは分かってますが、大変な事は私も電ちゃんも一緒に背負いますから、ね?」

 

「そうなのです。いーちゃんはいつも頑張りすぎなのです。私達だけじゃなくてきっとここの皆もいつか一緒に頑張ってくれるのです。絶対なのです。」

 

「お母さん…電…。」

 

二人の優しさに涙腺が弛んで涙が私の目に溜まって視界がぼやける。

 

「ですから、まずは天龍ちゃんに打ち明けてみませんか?天龍ちゃんは樹ちゃんの体を心配してましたし、信用出来ると思います。」

 

「電もなのです。此処に誘ったら本人は隠しているつもりみたいですが、嬉しそうだったのです。」

 

「本当?」

 

「「はい。」なのです。」

 

二人は力強く頷く。

その姿に私も覚悟を決める。

とりあえず、天龍が起きるまでに用意しないと。

 

――――――――――

 

「うっ…ここは…?」

 

「…え?」

 

予想してた以上に早く意識が回復した天龍。

あんなに激しく打ち付けていたからもっと掛かると思っていた私はまだ着替えていた。

もっと詳しく言うならショーツだけである。

ブラすらしていなくてその姿を天龍がまじまじと見ている。

一つ言い訳をさせて欲しい。

私は裸を見せたい訳ではなくてちゃんと女の格好をした姿を見せたかっただけなのだ。本当だよ?

 

「ひっ「っ!?ま、待て!」むぅーーー!!」

 

とっさに叫んでしまう私の口を天龍が押さえるが。

 

「きゃっ!?」

 

「のわっ!?」

 

ドサッ!

 

勢い余り押し倒される形で二人とも倒れてしまう。

 

ムニュ。

 

恥ずかしくて何処かとは言えないが天龍の手が私のある部分に触れてしまう。

 

「ひっ!?~~~~~~~!!?!?!?」

 

「いや、ちょっ、これは違っ『バチンッ!!』ぶべっ!!」

 

思いっきり天龍の頬を叩いて天龍が横にふき飛ぶ。

 

バンッ!

 

「いーちゃん!?」

 

「樹ちゃん!!」

 

私の声にならない叫び声を聞いて誰が来ないか見張りをしていた二人が慌てて中に入ってくる。

二人が見た光景は半裸で床にへたりこむ私に顔に真っ赤な手形を残して隣でまた気絶している天龍だ。

 

「どうな状況なのです?」

 

「な、ななななななんでもないから!!」

 

「樹ちゃん。怪我はありませんか?」

 

「だ…大丈夫、です。」

 

「それならばいいのですが…とりあえず、服を着ましょうか。」

 

「…はい///」

 

お母さんの指摘に更に顔が熱くなるのを感じながら今度は天龍が起きるまでに着替えを終わらして天龍を起こす。

二人はまた見張りをお願いして天龍と二人きりだ。

 

「天龍。天龍!」

 

「うっ…。」

 

天龍が目を覚まして私を見る。

その視線が私の目から下に下がる。

先程触れた場所で目線が止まり、天龍の顔が段々赤くなってそれに続くように私の顔も赤くなってしまう。

 

「…天龍。」

 

「…へ?」

 

私が名前を呼ぶと天龍は慌てて視線を外す。

そのまま立ち上がって私から離れてソファーに座る。

 

「いや、その…なんと言うか…すまん…。」

 

「い、いえ。大丈夫だから謝らないで。」

 

二人の間にはかなり気まずい空気が流れる。

しかし、話を無理矢理にでも戻す。

 

「んっ、んんっ!とりあえず、私から話をするよ。」

 

「ああ。頼む。」

 

天龍も私の意図を読み取り、真面目な顔をしている。

 

「名前はそのままですが、見ての通り私は女です。」

 

「そうみたいだな。さっきさらしを取った時にも分かってたが改めて理解したぜ。」

 

「そっか。ありがとう。」

 

「どうしてそんな格好してるんだ?」

 

天龍はソファーに凭れながら疑問をぶつけてくる。

 

「それはここの皆は前の提督…男の提督に沢山の酷い事をされてた。だから、その深く刻まれた傷はきっと簡単には癒えないから…いえ、もしかしたら癒えないのかもしれない。」

 

「その通りだな。」

 

私の言葉に天龍は頷いて肯定する。

 

「そんな皆を少しでも癒せれるのはブラックな運営をせずに絶対に艦娘…いえ、女性に手をあげずに性的な乱暴をしない人でないといけない。」

 

「………。」

 

今度は何も言わずに真っ直ぐ私を見つめる天龍に私も真っ正面から見つめ返して言葉を続ける。

 

「しかし、同じ女性だと提督があんな奴だけではないとは理解してもらえても男性が恐いままではダメなの。」

 

「…何でだ?」

 

「それは…これは極秘計画だがら他言無用でお願い出来る?」

 

「もちろんだ。」

 

これはごく一部…大元帥である源のおじ様と信頼できる部下数名と私のみがしる極秘計画でこの計画を知るのは両手で足りるほどの人数しかいない。

深海棲艦との戦いが終わったら艦娘達を普通の人として社会に送り出すのだ。

もちろん、装備や人間離れした力を抑えるなど幾つかの制限があるがそれも人間に近付けるために仕方ない事なのだ。

しかし、皆が同じ気持ちではなく艦娘を兵器と認識している者も少なくはなくて戦いが終われば解体すると言っている提督も数多いるのも現実だ。

 

「…深海棲艦との戦いが終わったら貴女達を人間として社会に送り出す計画を進めてるの。貴女達にも心があり、私はそんな貴女達が大好きなの。だからそうしたい。いえ、きっと現実化させてみせる。」

 

「だっ!?…大好き…なんて…//」

 

「天龍?」

 

「い、いや、何でもない!気にするな!続けてくれ。」

 

何故か赤くなる天龍だが、話を催促する。

 

「わかった。続けるね。人間の半分は男性で何をどうしても関わらないといけなくなるの。その時にちゃんと話をして関わりを持つために…そして、いつかきっと…貴女達が素敵な男性と恋に落ちて恋人になって…結婚出来たら素敵だと思うの…。そんな私の夢を現実にするために私は頑張るの。」

 

「なるほどな。だから男装して少しでも男に馴れて欲しかった訳か。」

 

「そう。まあ、脇目もふらずに考え無しにここの改正を進めてたら今回の問題に直面したの。」

 

皆と一緒に寝泊まりすればその分バレる確率がはね上がる。

それだけは何とか避けたい。

 

「ドジな奴だな。だから鳳翔は俺や一部の艦娘には正体を明かしてバレないようにフォローを頼みたいわけか。」

 

「そう。ごめんなさい。迷惑かけてるよね。」

 

「謝るなよ。別に悪いことや俺達に危害を加えないなら俺は何もいわねぇよ。」

 

天龍が立ち上がり私の頭を撫でる。

 

「まあ、なんだ。全部俺達のためだったんだろ?なら、感謝しても嫌う理由はねぇよ。」

 

「天龍…ありがとう…。」

 

「いいって。気にすんなよ。」

 

頭を撫でてくれる天龍を見上げると天龍は優しく笑ってくれていて、その顔はかっこよくて思わず抱き着いてしまう。

 

「……。」

 

「お、おい…どうしたんだよ。」

 

戸惑う天龍を余所に私は嬉しくて頑張った私を認めてくれて安心したら涙が次々に流れてしまう。

 

「う…ふぇ…。」

 

「何で泣いてるんだよ!?」

 

「う~~……だって…だってぇ~…。」

 

「ああ、もう!仕方ねぇ奴だな。」

 

天龍は力強くも優しく抱き締めてまた頭を撫でてくれる。

その優しさにまた私は泣いてしまい。

天龍は私が泣き止むまでそうしてくれていた。

 

――――――――――

 

「上手くいったようですね。」

 

「……なのです。」

 

「ふふっ…ヤキモチですか?」

 

「妬いてないのです。」

 

「はいはい。そうですね。」

 

「むぅ…今日はお母さんに甘えます。」

 

「ふふっ♪いいですよ。」

 

―続く。




読んでいただいてありがとうございました。

今回は少し重要なワードが出ましたね。
書いてる途中で思い付いてぶっこみましたから話がおかしい所が出てくるかもしれません。
その時はごめんなさいです!!

では、また次回お会いしましょー♪


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第漆話

はい。ひじりですよー。

今回は中々書けなくて少し勢いで書いてしまった所があるので違和感や読み辛いとこがあるかもしれません。
すみません…。

では、どうぞー。


天龍と和解してから一日がたった翌日、天龍が私の秘密を話しても問題がないと思う艦娘を各仮設寮に一人は居ないとダメだから天龍・電・鳳翔をそれぞれ別々にして後7人を探してくれると言ってくれた。

 

「本当に天龍には頭が上がらないな。」

 

「そうですね。」

 

今日はお母さんが秘書艦をしてくれているが例の工事が迫ってる事もあり、少しでも多くの備蓄が欲しいから出撃を控えて今は遠征等を集中して行っている。

その為、書く書類が多くて私の机も秘書艦の机も書類で小さな塔がいくつも出来ている。

 

「司令官さん。こんなに資材を貯める必要はあるのですか?」

 

「ああ。いくら仮設寮を建てると言ってもプレハブ小屋だからな多少のモチベーションが下がるのは目に見えてるからな。だからちゃんとした寮が出来るまでは出撃と遠征は最低限に抑えるつもりだ。」

 

「なるほど。確かに悪い状態では効率は良くありませんね。」

 

「そう言うことだ。それに何か問題が起きないとも言えないからな。用心に越したことはない。」

 

「わかりました。」

 

「ああ、わかってもらえて助かる。」

 

納得してくれて二人とも再び机の上の書類を片付ける。

 

「鳳翔…誰も来なさそうだからお母さんでいいかな。」

 

「誰か来たら気配でわかりますから大丈夫ですよ。」

 

「そっか。」

 

「はい。」

 

お母さんは呼び方を変えた私に微笑むと作業を再開した。

結局、作業が終わったのはフタマルマルマルを越えた辺りだった。

 

――――――――――

 

「やっと終わった…。」

 

「お疲れ様です。今、お茶入れますね。」

 

椅子に座ったまま伸びをする私を見て笑うお母さんが手馴れた手つきで緑茶を入れて私の前に差し出してくれる。

 

「ありがとう。」

 

「いえ。好きでしてますから。」

 

お母さんと一緒に緑茶を飲んでいるとお母さんが私に声をかける。

 

「司令官さん。誰か此方に向かって来ます。」

 

「ん、わかった。」

 

頭の中を仕事モードに切り替えて来る来客に備える。

そして、ノックも無しに執務室の扉が開かれる。

 

「おい。連れてきたぜ。」

 

「ありがとう。しかし天龍。ノックくらいしてくれ。」

 

「あん?そんな細かいこと気にすんなよ。」

 

「いや、細かくはないだろう。」

 

いきなり入って来た天龍を嗜めるが効果はない様子だ。

 

「まあいい。それでは早速入ってくれ。」

 

「おう。」

 

天龍が頷いて連れてきてくれた皆を招き入れる。

集まったのは以下の7名だ。

長門型一番艦 戦艦 長門

扶桑型一番艦 航空戦艦 扶桑

赤城型一番艦 正規空母 赤城

高雄型二番艦 重巡洋艦 愛宕

長良型六番艦 軽巡洋艦 阿武隈

白露型四番艦 駆逐艦 夕立

給料艦 間宮

そしてこのメンバーと天龍・電が執務室に入ったことによって部屋の中は11名になり、少し狭くなる。

 

「さて、良く集まってくれてありがとう。」

 

「大丈夫だ。」

 

皆を代表してか長門が答える。

 

「いきなりだが皆に見てもらいたいものがある。」

 

「なにかしら~。」

 

「さあ…?」

 

私の言葉に愛宕と阿武隈がヒソヒソ話すが気にしない。

そして軍服の上着脱いで机の上に置いてから胸を締め付けるさらしを解く。

 

「んっ…ふぅ。」

 

「えっ!?」

 

「ええっ!?」

 

「ぽいっ!?」

 

扶桑と赤城と夕立は声を上げて驚くが他の者も声を上げはしないが驚いているようだ。

まあ、当たり前か。

 

「女の子…なんですか?」

 

「まあ…そう言うことなんだ。」

 

間宮の問いかけに声を元に戻した女の声で答える。

 

「ちょっと待ってもらえるかな?ちゃんと分かりやすいように着替えて来るから。」

 

「あ、ああ…。」

 

「どうぞ…ぽい。」

 

なぜか少し狼狽えてる長門と開いた口が閉まらない夕立が何とか答える。

 

「ありがとう。電。手伝ってくれる?」

 

「はいなのです。」

 

電を引き連れて奥の部屋に移動する。

しかし、電が奥の部屋の扉を閉める前にいたずらっ子みたいな笑顔で扉から顔を出して釘を刺す。

 

「あ…覗いたらダメなのですよ?」

 

「っ!?電!!」

 

私が大きな声で注意をすると電はクスクスと笑って扉を閉める。

 

「変なこと言わないで!」

 

「ごめんなさいなのです♪」

 

絶対に反省していない電は笑いながらタンスから洋服を取り出してる。

 

「もう…。」

 

「いーちゃんは恥ずかしがり屋さんなのです。」

 

「からかわないで!ほら、着替えるよ!」

 

「はいなのです♪」

 

―――――――――――

 

「皆さんお待たせしました。」

 

扉を開けて執務室に戻る。

 

「「「「「「「「…………。」」」」」」」」

 

この姿を見せていない天龍も含めて8名が私を見て固まる。

 

「………ねぇ…お母さん。」

 

「なんですか?」

 

「や、やっぱり変なのかな?」

 

「そんなことないですよ。かわいいです。」

 

「うぅ…本当?」

 

「本当です♪」

 

余りにも不安になってお母さんに訊ねるが微笑んで褒めてくれる。

嬉しいけど…なんか恥ずかしいよぉ。

 

「質問いいか?」

 

「あ、うん。いいよ。」

 

長門が手を上げるので頑張って笑顔で答える。

 

「いきなりで失礼だが…年齢は?」

 

「え?年齢?資料に書いてあった通りの21だけど?」

 

「そ、そうか…//」

 

なぜか赤くなってる長門に意味が分からず首を傾げる。

 

「大人には見えないっぽい!!」

 

「…ですね。」

 

夕立が私に駆け寄り私の顔を覗きこむ。

コンプレックスだから話さなかったが私の身長は高くない。

原因は分かっている。

パパとママが死んでしまった時の心的ショックのせいなんだそうだ。

 

「ぅ…気にしてるのに…。」

 

「ええ!?ご、ごめんなさいっぽい!!」

 

慌てて頭を下げる夕立の頭撫でる。

 

「んーん。いいよ。大丈夫だから。」

 

「提督は優しいっぽい!」

 

流石はポイヌこと夕立だ。

頭を撫でるとなついた犬の様に私に抱き付く。

身長が夕立より少し低いため身動きが出来なくなる。

 

「んーっぽい♪」

 

「うぅー!?苦しい!!」

 

じたばたもがいていると追い討ちをかける様に愛宕が私に抱き付く。

 

「ぱんぱかぱ~ん♪かわいいわ~♪」

 

「ぽいぽい♪」

 

「んむぅーー!!??」

 

夕立ごと私を抱き締める愛宕の夢と希望が詰まった物が私の顔面を埋めて息が出来なくなる。

 

「そこまでだ。」

 

「そうですね。」

 

愛宕を長門が夕立を赤城が私から引き離す。

 

「た…助かった…。」

 

「大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう。天龍。」

 

「っ!?くっ//」

 

「天龍?」

 

私がお礼を言うと赤くなる天龍。

なんでだろう?

 

「長門と赤城もありがとう。」

 

「あ、ああ…//」

 

「どういたしまして…//」

 

二人も赤くなってる。

なんで?訳がわからないよ?

 

「はい。そろそろ話を戻しましょうか。」

 

「なのです。」

 

お母さんと電の言葉に皆ハッとしていそいそと元の位置に戻る。

私も机の前に立って咳払いを一つする。

 

「コホン。色々と皆聞きたいこともあるとは思うけど…とりあえず私に話をさせてね?」

 

皆返事がないが異論はないのか私を見つめる。

そして天龍にもした説明をする。

 

――――――――――

 

「と言う訳なんだ。」

 

話終わって皆を見つめる。

 

「なるほどな。」

 

「何か質問ある?」

 

腕を組んで私の話を聞いていた長門が頷く。

私が疑問がないか聞く。

 

「いや、私からはない。」

 

「では、私から。」

 

「ん。いいよ。扶桑。」

 

手を上げたのは扶桑だった。

 

「深海棲艦との戦いが終わるのは…全てを倒したら、と言うことですか?」

 

「………。」

 

「提督?」

 

黙る私に扶桑は首を傾げる。

 

「私は…和解したい。」

 

「そう、ですか。」

 

和解したい。

そう、戦いをしたくはないのだ。

昔は復讐をしたくてたまらなかった。

しかし、ある人がそんな感情から救いだしてくれたから。

私は和解を実現したい。

 

「それは…なぜですか?」

 

「話せば長くなるよ?」

 

「構いません。」

 

私の忠告も食いぎみに了承される。

 

「そっか…他の人は?」

 

「私たちも聞きたいな。」

 

長門が答えて皆が頷く。

 

「わかった。じゃあ、話すよ。皆、座ったり楽にしてね?」

 

そして始まる昔話を頭の中で思い出しながら私は椅子に座って語り出す。

 

彼女…中間棲姫と過ごした数ヶ月の日々を。

 

―続く。




読んでくださりありがとうございました。

はい。皆さんもお分かりかもしれませんが次回は第肆話の続きになります。

ではでは。お楽しみにー♪

あ、感想や励ましを頂けると嬉しいです♪


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第捌話

どうも。ひじりです。

ゴールデンウィーク…なにそれ?美味しいの?
状態な自分ですが頑張って生きていきます!(謎)

では、どうぞ。


ピチョン。

 

「ぅあ…う、ぅ…。」

 

水滴が私の顔に落ちて意識が覚醒する。

 

「ここは…?」

 

目を覚ました私の視界に入ったのはゴツゴツとした岩肌だった。

そこは薄暗くはあるが岩自体が淡く光を発しているのか真っ暗ではなくて辺りを見渡すことが出来る。

 

「……痛っ!?」

 

 

体を起こそうとすると右の腹部に鋭い痛みが走り起き上がれずにその場で呻いてしまう。

 

「アラ?オキタノネ。」

 

「誰!?」

 

奥から声が響いて私は大声を上げる。

腹部が痛んだが気にする余裕もなくてなんとか体を起こして声がした方を向いてそっちを睨み付ける。

 

「タスケテアゲタノニズイブンナイイカタネ。」

 

「あなたは…深海棲艦!!」

 

「ソウダケド…チュウカンセイキッテヨンデホシイワ。」

 

歯を食い縛り睨み付けるが彼女はどこ吹く風で肩を竦める。

 

「殺してやる!!」

 

「ハイハイ…ケガガナオッタラネ。」

 

必死に喚く私に彼女は手をヒラヒラと振りながら奥に歩いて行き姿を消す。

 

「はぁ…はぁ………いっ…た…。」

 

彼女が消えて段々冷静さを取り戻してきた私は今更腹部の痛みが再発して腹部を押さえて蹲る。

私が歩けるようになるまで一ヶ月を要した。

 

――――――――――

 

ここに一ヶ月居て分かった事はここが深海棲艦の住みかで中間棲姫がボスだと言う事だ。

ここは洞窟になっているが何処かから用意したかわからない古いベッドに寝かされて食事は彼女…中間棲姫が運んで来てその度に喚く私だが特に気にしない彼女は食事だけでは無く、怪我の看護や下の世話までも嫌な顔一つせずにしてくれた。

 

「ホラ。ケガヲミルカラヨコニナリナサイ。」

 

「………。」

 

パパとママを殺した深海棲艦が憎い。

でも、彼女は何でこんなにも私にしてくれるのかわからない私は腹部の包帯を取り替えてる彼女を見つめる。

 

「ドウカシタノ?」

 

「どうして?」

 

「ナニガカシラ?」

 

「どうしてここまでしてくれるの?」

 

きょとんとして首を傾げる彼女に問い掛けると彼女は小さくため息を吐いて作業を続ける。

そんな彼女を見つめる。

 

「オワッタワ。」

 

「答えてくれないの?」

 

作業を終えた彼女はベッドに座り話し始める。

 

「ワカッタ。ハナスワ。」

 

彼女は何かを思い出すように目を閉じる。

 

「マズヒトツメノリユウハメノマエデシナレルナンテユメミガワルイカラ。コレハアナタヲタスケルトキニハナシタワネ。」

 

「うん。」

 

「モウヒトツハ…アナタノハハオヤ…クラウディア二タスケラレタコトガアルカラ。」

 

「ママに…?」

 

「エエ。ワタシガアソコニイタノハタタカウタメジャナイ。クラウディアヲタスケルタメダッタノ。」

 

彼女が目を開ける。

その赤い瞳は家族に不幸があったかの様な悲壮の色があり、彼女の白く綺麗な肌に涙が伝う。

 

「ぁ…。」

 

「イツキ?フフッ…アリガトウ。」

 

「ぇ、いや…。」

 

なぜかその悲しい涙を無くしたくて指で拭う。

彼女はお返しにと私の頭を撫でて優しく微笑んだ。

微笑む彼女は綺麗で女の子の私が見てもドキッと心臓が高鳴った。

 

「アノヒト…センカンセイキハクラウディア二ゴウチンスンゼンマデオイコマレタ。」

 

「クラウディアトセンカンセイキハムカシカラインネンガアッタ…ソシテチヲチデアラウヨウナタタカイヲツヅケテキタ。」

 

「そんなことがあったんだ…。」

 

「エエ。デモソレハアノヒトガヨソウダニシナイカタチデシュウシフガウタレタ。」

 

彼女はそこまで言うと私を見つめる。

そして私を引き寄せて抱き締める。

 

「ソレハアナタ…イツキガクラウディアノナカニデキタカラ。」

 

「私が…?」

 

「ソウ…アナタガデキテクラウディアハシアワセソウダッタワ。」

 

彼女は抱き締めたまま優しく私の頭を撫でる。

その手はママの様に慈愛に満ちており、私は気付いた。

 

「ワタシハイツキガデキタトキ二チョウドクラウディア二タスケラレテイテ、ワタシハアナタガウマレルマデイタワ。」

 

この人は敵じゃない。

この人はパパやママと同じ。

 

「フフッ…イツキノオムツモカエタコトガアルノヨ?」

 

家族なんだ。

 

「イツキ…?」

 

「………ごめんなさい…。」

 

私はしがみつく様に抱き着く。

そして彼女の胸に顔を埋めるようにして涙でクシャクシャになっているであろう顔を隠す。

 

「ドウカシタノ?」

 

「ごめんなさい…私…貴女に酷いことをした…。」

 

「イイノヨ。イツキガワタシタチヲウラムノハシカタナイモノ…。」

 

私は謝る。

彼女に沢山酷いことをしたのだ。

ある時は彼女を罵倒し。

ある時は彼女に石を投げつけて。

ある時は彼女に刃物を刺した。

それでも彼女は私を許してくれる。

 

「ぅ…うぇぇ……うわぁぁぁぁん!!」

 

「イツキ…ワタシコソクラウディアヲタスケラレナクテゴメンナサイ。」

 

泣いた。

彼女に抱き締められ私は泣いた。

彼女ももしかしたら泣いていたのかもしれない。

 

――――――――――

 

「オチツイタカシラ?」

 

「うん。」

 

あれから暫く私は泣き続けてやっと泣き止んだ時には彼女の部下達が集まり、私達を見ていた。

 

「ミンナタタカイヲコノマナイワタシノタイセツナナカマタチヨ。」

 

「よ、よろしく。」

 

皆は其々に挨拶をして持ち場に戻って行った。

 

「ねぇ…。」

 

「ナニカシラ?」

 

彼女は私を見つめてくれる。

 

「お姉ちゃんって…呼んでいい?」

 

「オネエチャン?」

 

家族に貴女なんてよそよそしい呼び方なんて私には出来ない。

だから私は前から欲しかった姉を彼女に求めたのだ。

 

「ダメ…かな?」

 

「デモ…ワタシモアナタガニクイシンカイセイカンヨ。」

 

悲しそうに目を伏せる彼女。

 

「確かに深海棲艦だけど…お姉ちゃんは違う。」

 

「…エ?」

 

そう。

お姉ちゃんは家族だから。

家族になりたいから。

 

「お姉ちゃんは優しくて温かい。だから…。」

 

「ダカラ?」

 

「私と…家族になって………下さい。」

 

「!?」

 

お姉ちゃんは驚いて、そして戸惑う。

 

「デ、デモ…。」

 

「お願い…なって…。」

 

「…イツキ。」

 

パパもママも居なくなった私は孤独な身。

そしてお姉ちゃんもママが死んでしまい悲しみにくれている。

そんな二人が家族になってもいいんじゃないかと幼い私は考えた。

 

「……ワカッタ。」

 

「お姉ちゃん!」

 

私は嬉しくてお姉ちゃんに体重を預けると押し倒してしまった。

 

「ぁ…ごめんなさい。」

 

「イイノヨ。ワタシモウレシカッタカラ。」

 

謝る私にお姉ちゃんは微笑む。

大切な家族を失った私に新しく家族が出来た。

それを証明出来るものは何もないけど私とお姉ちゃんは十分だった。

深い絆が出来たからだ。

 

「ふふっ。」

 

「フッ…。」

 

私達は笑い合う。

私がお姉ちゃんに甘えてもお姉ちゃんはそれを受け入れてくれる。

幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ウラギリモノメ。」

 

あいつが来るまでは。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

さてさて、今回は昔話(前編)な訳ですが、カタカナが多くて読み辛いとは思いますが許して下さい。

次回は後編になりますのでよろしくお願いします!!

感想お待ちしております♪

では、次回お会いしましょー。


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第玖話

ひーじーりーでーすー♪

艦これイベントのE-2がクリアできない…。
それはさておき…第七話でいい忘れていたことを今此処で言わせて頂きます!
コホン…グラマーな大人の女性だと思った?残念!合法ロリでした!!
………すみませんでした。反省も後悔もしております。

とりあえずどうぞ。


私とお姉ちゃんが家族になって数ヶ月の時がたった。

お姉ちゃんの仲間の深海棲艦の皆は優しく私が寂しく無いようにと度々顔を見せてくれて遊び相手にもなってくれた。

大人の人達はパパやママは言って無かったけど他の人は深海棲艦は冷酷で人間を虐殺する化け物だと口々にしていたけどそんなこと無い彼女達もまた生きていてその体は温かくて人間と何一つ変わらない。

 

「お姉ちゃん。」

 

「ン?ナニ?」

 

今は夜で私はお姉ちゃんと一緒に寝ている。

あの日から毎日…お姉ちゃんがどうしても出掛けないといけない日はタ級さんやヲ級さん達が一緒に寝てくれているけどそれ以外はお姉ちゃんと寝るのが日課だ。

 

「んーん。何でもない。」

 

「ソウ。」

 

「うん。」

 

一日に何度もこういったやりとりをしてしまう私だが、お姉ちゃんはその度に優しく微笑んで頭を撫でてくれて私は幸せな気持ちでいっぱいになる。

 

「イツキ。」

 

「なに?お姉ちゃん。」

 

今度はお姉ちゃんが私の名前を呼ぶ。

その顔は笑みに陰りが差している。

 

「ホントウニヨカッタノ?ワタシトカゾクニナッテシマッテ「うん!」…イツキ。」

 

お姉ちゃんは優しいけど少し心配症でよくこの質問をしてくる。

だから私は間を開けずに答える。

お姉ちゃんの不安を取り除ける様に満面の笑顔で答える。

 

「…ソッカ。」

 

「うん。私がお姉ちゃんと家族になりたかったから…後悔なんて絶対しないよ?」

 

「アリガトウ。」

 

「うん!」

 

お姉ちゃんは泣きそうな顔で目に涙をいっぱいに溜めて少し強く私を抱き締める。

ちょっとだけ苦しいけど体の小さな私は一般的な女性と比べると体が大きなお姉ちゃんに包み込まれて温かくて安心する。

だから私も精一杯お姉ちゃんの背中に手を回してしがみつくのが一連の流れだ。

 

「ネヨッカ。」

 

「うん。」

 

いつもの様に寝ようとしていた私達だが、その時がきてしまった。

 

ドゴォォォォン!!!!

 

轟音が響き渡り洞窟全体が揺れる。

 

「きゃあ!?」

 

「イツキ!」

 

お姉ちゃんが天上から落ちてくるかもしれない石から守るように覆い被さってくれる。

幸いなことに瓦礫は落ちては来ず二人とも無事だ。

揺れがおさまると直ぐにお姉ちゃんはベッドから降りる。

 

「ヒ、ヒメサマ!!」

 

「ナニガアッタノ?」

 

慌てて部屋にタ級さんが入って来てお姉ちゃんに報告をする。

 

「テキシュウデス!」

 

「ワカッテイルワ。テキハ。」

 

「ソ…ソレガ…。」

 

珍しく困った様に口ごもるタ級さんにお姉ちゃんが再度聞く。

 

「ドウシタノ?テキハダレナノ?」

 

「………センカンセイキ…デス。」

 

「……ソウ。ワカッタワ。」

 

戦艦棲姫。

パパとママを殺したアイツだ。

 

「お姉ちゃん…。」

 

私はお姉ちゃんの手を握る。

不安だった。

パパやママだけじゃなくてお姉ちゃんまでも失ったら私は生きていけない。

 

「シンパイイラナイワ。」

 

「本当に?」

 

「エエ。コレデモワタシハツヨイノヨ?」

 

お姉ちゃんは私を一度抱き締めてくれてから部屋を出ていく。

 

「い、いってらっしゃい!」

 

「…エエ。イッテキマス。」

 

お姉ちゃんは笑顔で戦いに向かった。

その足取りは力強くもあり、どこか気品に溢れていて私は見惚れてしまった。

 

中間棲姫。

又の名を深海の令嬢。

その容姿と振る舞いがまるでどこかの令嬢を彷彿とさせるために名付けられた名前だった。

 

そして戦いが始まった。

 

――――――――――

 

ドオォォン!

 

もう何度目かも分からない轟音が響く。

私は部屋の中で膝をついて祈るしかなかった。

お姉ちゃんやタ級さんにヲ級さん…皆が無事でいますようにと何度も何度も祈った。

しかし、神様は居らず私の望みは無惨にも断たれる。

 

「ホゥ…コンナトコロニイタカ。」

 

「ひっ!?」

 

部屋に入って来たのはパパとママを殺した戦艦棲姫だった。

 

「フンッ…コンナヤツノタメニイノチヲカケルトハ…コイツラモデキソコナイダナ。」

 

奴が引き摺っていたのを私の前に投げる。

 

「ウゥ…。」

 

「ヲ級さん!?」

 

それは特に私の世話をしてくれたヲ級さんだった。

しかし、今の彼女は頭の被り物はほぼ全損し、至るところから血が流れて右腕も肘から先が無くなっている状況だ。

海の上なら轟沈寸前だろう。

 

「イツキ…。」

 

「きゃあ…ヲ級さん!?」

 

そんな状態にも関わらず彼女は奴から私を守るように私を抱き締めて自分の体で奴から私を隠す。

 

「オカシナヤツダ。タオスベキテキヲカバウトハナ。」

 

「…チガウ。」

 

「ナニ?」

 

「コノコハテキジャナイ!コノコハナカマ…イヤ、カゾクダ!!」

 

ヲ級さんは殺気のこもった目で奴を睨む。

しかし、空母の彼女は既に攻撃手段は無くなってしまっている。

 

「…ヤハリキサマラハデキソコナイダナ。」

 

奴が砲身をこちらに向ける。

不思議と怖く無かった。

 

「チガウワ。」

 

ドゴッ!!

 

「グゥッ!?」

 

ヲ級さんや皆が守ってくれて…何よりお姉ちゃんが居るから。

お姉ちゃんは目にも止まらぬ速さで奴の腹に拳を叩き込む。

 

「デキソコナイデハナイワ。」

 

「チュウカンセイキィィィ!!」

 

奴は壁まで飛ばされていたが直ぐに立ち上がる。

 

「キナサイ。コノコ…イツキニホウヲムケタムクイハウケテモラウワ。」

 

「フザケルナァァ!」

 

流石に姫級の奴でも所詮は船である。

しかし、陸上型に近いお姉ちゃんに陸で勝てるはずもなく軽くあしらわれる。

 

「アマイワ。」

 

ドガッ!

 

「グフッ…。」

 

お姉ちゃんも奴も砲撃はしない…いや、地下であるこの場所では出来ないのだ。

 

「グッ…アアァァァァ!!」

 

「ッ!?イツキ!ニゲナサイ!」

 

ドオォォン!!

 

しかし、奴は勝ち目がないと悟ったのか全砲門を一斉射したのだ。

それにより洞窟は崩れて幾つもの瓦礫が落ちてくる。

私は咄嗟に目を閉じて襲い掛かるであろう痛みに身を固くして身構える。

 

ガラガラ!

 

「…あれ?」

 

幾つか衝撃は来たものの痛みは無くておそるおそる目を開ける。

 

「ケガハナイ?」

 

「ダイジョウブダッタ?」

 

「お姉ちゃん…ヲ級さん…。」

 

ヲ級さんは私に覆い被さって庇い。

お姉ちゃんはその上から私とヲ級さんを庇う。

一番上に居たお姉ちゃんが沢山怪我をして頭から血が流れてる。

その真っ赤な血は真っ白なお姉ちゃんの肌の上を流れるが安堵した笑みを浮かべるお姉ちゃんは不謹慎だけど綺麗だった。

ヲ級さんもお姉ちゃん程では無いにしろ怪我をしていて二人の赤い血が私の顔に落ちる。

嫌悪感はなかった。

あるはずもなかった。

優しい二人が私を守ってくれて流した血に嫌悪感などあるわけがない。

 

「ごめんなさい…ありがとう…。」

 

「イイノヨ。イモウトヲマモルノガアネノヤクメダモノ。」

 

「ワタシモ…ナカマヲ…カゾクヲマモルノニリユウヤリクツナンテナイ。」

 

幸せ者だ。

私はパパやママだけじゃなくてこんなにも温かくて優しい家族に出会えて幸せ者だ。

 

「アァアアァァァ!!!」

 

私達の幸せな空気を壊すように奴の叫びが響き渡る。

お姉ちゃんが笑顔から億劫とした顔をして溜め息を吐く。

次の瞬間には戦場に向かう兵士の様に鋭い顔になる。

その表情は初めて見た。

凄く頼りになって安心出来て綺麗だった。

 

「センカンセイキ…アナタハ…ユルサナイワ。」

 

「ガアァァ!!ウラギリモノ、メエェェェ!!!」

 

「ハァ…アナタニ『ヒメ』ノナマエハニアワナイワ。マルデケモノダモノ。」

 

奴は吼えてお姉ちゃんに威嚇をするがお姉ちゃんは受け流す。

 

「ヲキュウ。」

 

「…ハイ。」

 

「イツキヲニンゲンノモトニカエシテキテ。」

 

お姉ちゃんは奴に対峙したまま命令を下す。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「…………ハイ。ワカリマシタ。」

 

「ヲ級さんまで!?どうして!?」

 

お姉ちゃんに近寄ろうとするがヲ級さんに止められる。

そしてお姉ちゃんが振り返る。

 

「ン…んんっ……一緒に練習したけど…上手く話せているかしら?」

 

「お姉ちゃん…うん。話せてるよ。」

 

この半年間でお姉ちゃんは人間のしゃべり方を練習したが今まで上手く話せた試しは無かったが今は凄く上手く話せている。

 

「そう…よかったわ。」

 

「シネェエェェ!!」

 

「チッ…。」

 

ドオォォン!

 

怒り狂った奴が私めがけて砲撃をしてくる。

 

ガァン!!

 

しかし、その砲撃はお姉ちゃんが体を張って阻止してくれる。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「ヒメサマ!!」

 

砲撃による煙が晴れるとこちらに笑顔を見せてくれるお姉ちゃんが居た。

 

「樹。無事でよかったわ。」

 

「でも!お姉ちゃんが!!」

 

「私は大丈夫よ。これでも私は強いのよ?」

 

「で、でも!!」

 

笑顔を浮かべるお姉ちゃんだが不意に真剣な表情になって私を見つめる。

 

「樹。此所はバレてしまったわ。もう安全では無くなったの。だから私は樹を人間達に戻すの。きっと両親も居なくて寂しくて悲しい…辛いことが沢山あるかも知れない。」

 

「…うん。」

 

「でも、負けないで。樹は一人じゃない。私達もクラウディア…沢山の者達が樹を愛して…見守ってるから。」

 

「うん。うん!」

 

お姉ちゃんが自分の髪を少し切ってばら蒔けない様に括って私に投げる。

 

「今はこんなものしかあげれないけど…落ち着いたら必ず会いに行くわ。」

 

「お姉ちゃんの綺麗な髪…私、大好きたがら…嬉しいよ!」

 

おかしいな。

悲しく無いのに目から涙が止まらない。

 

「待ってる!待ってるから!!」

 

「ふふっ…樹、愛しているわ。」

 

お姉ちゃんの顔をちゃんと見るために袖で涙を拭う。

 

「お姉ちゃん!負けないで!そんな奴なんかやっつけて!!」

 

「…任せなさい。お姉ちゃんはこれでも強いから必ず倒すわ。」

 

お姉ちゃんが力こぶを作る様にして答える。

いつもはこんな行動はしないのに私に答えてくれる。

 

「ヲキュウ。イキナサイ。」

 

「ハイ!」

 

私はヲ級さんに手を引かれて歩き出す。

 

「ウラギリモノオオオォォ!!」

 

「シズカニシナサイ。シズメルワヨ?」

 

後ろから奴の叫ぶ声とお姉ちゃんの聞いたことも無いほど冷たい言葉が耳に入る。

お姉ちゃんの声は冷たいが私からしたら頼もしく感じる。

お姉ちゃんが見えなくなるまで私は後ろを見ていた。

 

「イツキ。コッチ。」

 

「うん。」

 

ヲ級さんは大怪我しているのに私を心配してくれた。

そして、洞窟を脱出した。

ヲ級さんに連れられて人気の無い港に着いて私を下ろしてくれたヲ級さんは洞窟に戻って行った。

 

――――――――――

 

「以上かな。」

 

目を閉じてずっと話して居た私が目を開けると皆こちらを見つめて話を聞いてくれていた。

 

「あの…質問いいですか?」

 

「もちろん。」

 

おそるおそる手を上げる間宮。

 

「それから中間棲姫さんとは会っているのですか?」

 

「ううん。まだ会えてないかな。」

 

「そうですか…。」

 

そう。まだお姉ちゃんには会えていないのだ。

私は提督になったのはお姉ちゃんを探すためでもある。

 

「ふむ。そう言えば聞いたことがあるな。」

 

「何をですか?」

 

「ぽい~?」

 

長門が納得したような顔で頷き扶桑と夕立が反応する。

 

「昔、深海棲艦を庇い守った少女がいてな。彼女は『私の家族に攻撃しないで』と体を張って深海棲艦を逃がしてやったそうだ。」

 

「そうなのか?」

 

「あはは…それ、私だ。」

 

ヲ級さんが港まで送ってくれた後に運悪く大人の人に見つかって銃で撃たれそうなヲ級さんとの間で両手を広げて庇ったのだ。

その後、色々聞かれたけど『子どもの言うことだから』と相手にされなかったのだ。

 

「私も聞いたことがありますね。」

 

「私も私もー♪」

 

「あ、私もです。まさか本当だったなんて。」

 

赤城、愛宕、阿武隈もそれぞれ頷く。

あ、あれ?

結構広まってるの?

 

「質問いいっぽい?」

 

夕立が私に近付きながら聞いてくる。

 

「いいよ?」

 

「これ。電や鳳翔さんとお揃いっぽい?」

 

ん!?

話題が一気に飛んだ!?

 

「あ、うん。お、お揃いだよ。」

 

「そっかー。」

 

夕立は気になっただけなのか頷く。

 

ファーン!ファーン!

 

そんな中鎮守府全体に警報が鳴り響く。

 

「敵襲!?」

 

「各艦は艤装を装着し出撃して!!」

 

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

警報が鳴り響く中で私は叫ぶように指令を出す。

間宮を除く八人は敬礼をして執務室から出ていく。

 

「本当は戦いたくないけど…降りかかる火の粉は払わないといけない。」

 

しかし、私は知らなかった。

鎮守府を襲撃した深海棲艦はイレギュラーと呼ぶに相応しい艦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………キヒッ♪」

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました♪

さて、今回で回想が一旦終わりましたね。
中間棲姫!かわいいおー♪

では、感想などお待ちしておりまする。
次回お会いしましょー。


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第拾話

はい、はぁーい!
ひじりです!!

ついに話数が二桁に乗りましたー♪
何とか続けられて嬉しい限りです!!

では、どうぞ!


「敵艦載機来ます!数およそ100!」

 

「空母、軽空母を優先で出撃!迎え撃て!」

 

通信器から大淀さんの声が聞こえて直ぐに指示を飛ばす。

緊急事態だが流石に女の格好では出れない私は急いで支度をしている。

支度は直ぐに終わり指令室に走る途中で赤城さんを始めとする空母達が次々に抜錨していきすぐその後に軽巡洋艦と駆逐艦も次々に出ていく。

そして指令室に着いた私は直ぐに状況を確認する。

 

「状況は?」

 

「現在交戦中です。敵艦載機は赤城、加賀、鳳翔、千歳により殲滅。制空権は此方が有利です。」

 

「そうか。護衛艦は?」

 

「軽巡洋艦から天龍、龍田、駆逐艦から電、響、暁、吹雪の六名が出撃しました。」

 

「わかった。出撃した全艦に通達!迂闊に手を出すな!戦艦、重巡洋艦の殲滅部隊が到達まで牽制と索敵を優先!」

 

「了解!」

 

戦況は此方が優勢で良かった。

内心ホッと胸を撫で下ろした私は指示を飛ばした後に一息つくと提督用の椅子に腰掛ける。

鎮守府にもこれといった被害もない。

精々撃ちこぼした敵機の機銃により弾丸が建物などに着弾したくらいで怪我人もいない。

それも直ぐに鎮守府に待機している艦娘により撃墜された。

 

「鳳翔から通信!繋ぎます!」

 

「頼む。」

 

通信は直ぐに繋がり、海を切る様に進む水音と風の音が通信器から流れる。

 

「鳳翔。状況を報告せよ。」

 

「…………。」

 

「鳳翔?」

 

私が声をかけるも鳳翔からは息を呑む音がなるのみでなにも言わない。

不思議に思い再度声をかける。

 

「司令官…私には………攻撃できません…。」

 

「どうした?なぜなんだ?」

 

「っ……すみません。」

 

謝罪の言葉が響いて後に通信が途絶える。

珍しく動揺していた鳳翔だが『攻撃が出来ない』と言うことは損傷をしている訳ではない。

しかし…。

 

「………何があったんだ。」

 

私は推測しようと頭をフル回転させる。

姫級だったのか?

いや、それなら鳳翔は率先して戦うだろう。

あの人は他の人が傷付くのが嫌いな人だから自ら殿を務めて皆を逃がす。

なら、どうして?

 

「深海棲艦!機動部隊に向かって移動開始!」

 

「ちっ…護衛部隊と機動部隊をスイッチ(入れ替え)!砲撃で足止めだ!」

 

「了解!」

 

今まで動かずに艦載機のみで攻撃していた深海棲艦は急に此方に向かって進みだし、私は思考していた頭を中断して指示をする。

 

「護衛部隊砲撃開始!……ダメです!深海棲艦止まりません!」

 

「クソッ!殲滅部隊はまだか!?」

 

軽巡洋艦と駆逐艦と言えど全艦に一斉射を受けても止まらないとなると相手は戦艦級かそれ以上の鬼や姫級かもしれない。

嫌な汗が背筋を流れる。

 

「殲滅部隊…合流まで10分後です!」

 

「出撃中の全艦に通達!砲撃と艦載機による牽制をしつつ後退!死ぬなよ!」

 

「了解!………え!?い、電から通信!」

 

「繋げ!」

 

砲雷撃戦の途中で通信が入るのは緊急事態の時以外はあり得ない。

直ぐに繋いでもらう。

 

「電!どうした!?」

 

「そんな…なんで………。」

 

「電!?」

 

電は鳳翔以上に動揺…いや、錯乱と言ってもいいだろう。

うわ言の様に言葉が繰り返されるだけだ。

 

「護衛部隊、深海棲艦と完全に接触!!」

 

「電!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………雷ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

なんだと?

今、電はなんと言った?

目の前が真っ暗になっていく。

 

 

 

そんなわけない…彼女………雷は…私のせいで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟沈したのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―ん――ぃ官!―――司令官!!」

 

「はっ!?」

 

大淀の叫ぶ様な声に意識を取り戻す。

 

「現在深海棲艦は停止してます!指示をお願いします!!」

 

「て、撤退!撤退しろ!」

 

「了解!」

 

撤退指示に従い機動部隊・護衛部隊共に撤退を開始すると深海棲艦も徐々に後退を始めて戦闘は終了する。

後で追い付いた殲滅部隊が捜索するも既に離脱したのかなにも居なかった。

 

――――――――――

 

あれから何名か小破以下の損傷があり、直ぐに入渠させた。

そして、鳳翔と電を執務室に呼び寄せた。

理由はもちろん深海棲艦の事だ。

 

「二人とも…私が聞きたいことはわかってるよね?」

 

「「………。」」

 

執務室の外に私の事を知っており、尚且つ真面目な長門を門番としてお願いしているため安心して口調を戻して問いかける。

でも、二人はなにも言わずに俯いたままなにも喋らない。

 

「ねぇ…お願い…何を見たのか教えて…。」

 

「………。」

 

「電ちゃん…。」

 

電はやはり微動だにしない。

お母さんは言えるが雷と姉妹である電に遠慮してか口ごもる。

 

「一応他の人からの報告で深海棲艦は容姿はレ級だとは聞いてるの。」

 

「「………。」」

 

「でも、レ級にしては艦載機の数もいくら軽巡洋艦と駆逐艦と言ってもそれを食らって小破にすらならない装甲も規格外。」

 

そう。

おかしいのだ。

確かにレ級は戦艦だが砲撃・雷装・艦載機の全てが使えるチートの様な深海棲艦だ。

それに加えてスピードもあるが本来は雷装と艦載機は重雷装巡洋艦と正規空母に言わば本職よりは少し劣っているのだが今回のは違った正規空母2艦と軽空母2艦と互角に戦う艦載機を放って来たのだ。

 

「始めにあれだけの艦載機を放っておきながら最後は何もせずに撤退していった。おかしい。」

 

「電は…見たのです。」

 

何かに堪えるように両手の拳を握り締めてポツリと言葉を漏らす。

 

「あれは雷ちゃんだったのです。見間違う訳がないのです。」

 

「私も偵察機で彼女を見ましたが…あれは雷ちゃんだと思います。」

 

「………。」

 

二人がやっと言ってくれるが今度は私が黙ってしまう。

だって彼女は私の目の前で沈んだのだ。

 

「雷は沈んだよ?私の目の前で私を庇って!!」

 

私は段々頭の中がチリチリと焼けるような感覚がして最後には叫ぶようにいい放つ。

 

「はっ…はっ………ぅあ…。」

 

その感覚が私の頭の中を埋め尽くすと同時に目の前が歪みプツリと視界が暗転した。

 

 

 

 

 

――――――――――

3年前 樹18歳

 

「長宗我部・ティルピッツ・樹です!よろしくお願いします!!」

 

「電なのです。此方こそよろしくお願いします。」

 

私はパパやママの様に提督になるために必死に勉強や訓練をこなして海軍学校を首席で卒業した。

そして提督になることが出来た。

 

「では、近海の哨戒に出撃してみるのです。」

 

「は、はい。」

 

初期艦を電に選んだのは元々引っ込み思案であがり症の私でも大丈夫な様にと大元師の源のおじ様が配慮してくれたのだ。

彼女は練度こそ低いが源のおじ様が秘密裏に特別な訓練をこなしており、私をリードしてくれる。

 

「司令官さんは電に敬語でなくていいのです。」

 

「は、は…うん!」

 

彼女がクスクスと笑い顔が熱くなる。

そんな私を見て彼女は優しく頭を撫でてくれた。

本来なら上官に向かってするのはおかしいが私はその優しさが嬉しかった。

 

「では、いってくるのです。」

 

「うん。気を付けてね?」

 

「はいなのです♪」

 

そうして電は出撃をしてはぐれていた駆逐イ級撃破。

そのまま帰投した。

そうして報告のために執務室に入って来た電に連れられて彼女と出会う。

 

「雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!」

 

雷は初期艦を除いて一番始めに私の仲間になった艦だった。

 

「雷ちゃんは私の姉妹艦でお姉ちゃんになるのです。」

 

「そうよ。私になんでも頼ってね!」

 

「う、うん。よろしく。」

 

雷の元気のよさに戸惑ってしまう私に雷は近付いて握手をしてくれた。

 

「では、本日の大本営からの任務を達成したので次は建造をしてみるのです。」

 

「そうね!じゃあ、皆でいきましょ♪」

 

「ふぇ?」

 

「ほら!行くわよ!」

 

「ふふっ…司令官さん。行くのです。」

 

「え!?ちょ…きゃぁ!?」

 

二人に手を引かれて転びそうになりながらも何とか踏みとどまり、そのまま工廠に向かう。

 

「では、早速建造するのです。」

 

「まだ着任したばっかりで戦艦は資材的に無理ね。」

 

「電は空母が良いと思うのです。」

 

「あ、それはいいわね♪」

 

「ぇ…あの…ふぇ?」

 

二人は私の事をそっちのけで盛り上がる。

確かに空母が居れば戦闘を有利には出来るけど。

 

「てな訳で司令官。空母レシピでどうかしら?」

 

「なのです♪」

 

「え、あ…うん。」

 

二人が私に詰め寄るように提案してくるものだから私はつい頷いてしまった。

 

「よし!じゃあ、行くわよー!」

 

「はいなのです!でも、資材ギリギリで二、三日は極貧生活になるかもなのです。」

 

「極貧!?ちょ、待っ!」

 

ガシャン!

 

電の不吉な言葉に制止しようかと思うが時既に遅し、二人仲良く建造開始レバーを下ろして建造開始されてしまった。

因みに残った資材は【燃料20】【弾薬200】【鋼材10】【ボーキサイト0】だった。

私はその場で崩れてしまった。

 

「電。時間は?」

 

「2時間丁度なのです。」

 

「2時間ね?えーと……………わかったわ!鳳翔型ね!…って司令官!ちゃんと聞いてるー?」

 

真っ白に燃え尽きている私の肩を揺さぶる雷だが私は途方に暮れていた。

 

「なんで司令官元気がないのかしら?」

 

「はわわ…わからないのです。」

 

このあとバーナーを(無断で)使い高速建造をし、お母さん…鳳翔と出会う。

初期艦・始めて仲間になった艦・始めて建造した艦の3人とは特別な絆が生まれた。

 

――――――――――

 

そして私を含めて4人が出会ってから一年がたった日に私は3人にプレゼントをした。

 

「私達が出会って一年がたったよね。」

 

「そうね。」

 

「なのです♪」

 

「もうそんなにたつんですね。」

 

「だからこれは皆にプレゼント♪」

 

それぞれ懐かしむ様に微笑む3人に小箱を渡す。

 

「はわわ…そんなの悪いのです。」

 

「そうよ!」

 

「あらあら。」

 

3人は戸惑い小箱を返そうとする。

 

「そう言うと思ってた…でも、受け取って欲しいな…。」

 

「…司令官さん。」

 

「司令官…で、でも!」

 

「…2人とも。頂きましょう。司令官さんもそれを望んでるし…本音は嬉しいですよね?」

 

鳳翔が2人に声をかける。

二人は小箱を見つめる。

 

「司令官さん。開けてもいいですか?」

 

「もちろん。」

 

「では…。」

 

鳳翔がラッピングを解いて小箱を開ける。

それをみて2人も同じ様に開ける。

 

「……凄い綺麗なのです。」

 

「そうね…それにかわいいわ。」

 

「そうですね♪」

 

3人渡したのは私が前髪に着けてるのと同じ髪留めだった。

それは家で見つけたコンコルドタイプの髪留めで小さな白い花の装飾が施されているママのお気に入りだ。

ママの形見としてずっと着けいたが妖精さんにお願いして3人の分と何時か出会えると信じているお姉ちゃんの分を合わせて4つ作って貰ったのだ。

 

「司令官さん。」

 

「なに?」

 

「司令官さんが嫌でなければ…着けて貰えませんか?」

 

鳳翔が淡く頬を赤くしながらお願いする。

 

「いいよ。ぜひ、着けさせて♪」

 

「あ、お母さんずるーい!私も!!」

 

「い、電も司令官さんに着けてもらいたいのです!」

 

2人は慌ててお願いをしてくる。

私の答えは決まってる。

 

「いいよ♪でも、順番ね?」

 

「ありがと!司令官♪」

 

「ありがとうなのです♪」

 

そして、鳳翔が持つ小箱から髪留めを取って額に当たらないように気を付けながら前髪を留める。

 

「ありがとうございます…似合いますか?」

 

「うん。凄く似合うよ。」

 

「ふふっ♪照れてしまいますね…。」

 

「喜んで貰えて嬉しい…お…ぉかぁ…さん。」

 

前から鳳翔の事をお母さんと呼びたかった私は覚悟を決めて言う。

鳳翔は初めは驚いた顔をしたが直ぐに優しく微笑んで暮れた。

 

「はい♪ありがとうございます…樹ちゃん。」

 

この後2人から抗議の嵐が巻き起こるが4人の時だけだけど【いーちゃん】と愛称で呼ぶと言う事で何とか収まってくれた。

 

こんな幸せはずっと続くと思ってた。

お姉ちゃんとも再会して深海棲艦と和解できて争いがない幸せが訪れると思ってた。

 

 

私が…

 

 

 

 

私が…あんなこと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言わなければ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…。」

 

―続く。




読んでいただきありがとうございます♪

あるぇー?
ほのぼのを書きたかったのにどうしてこうなったー?
まあ、今はまだまだ自分の考えてるプロット的には序盤ですから仕方ないの…かな?

とりあえず今は過去の話が多くなっておりますが、色々補足などを含めておりますのでご了承いただけると嬉しいです。

さてさて、今回はダメ提督製造機である雷ちゃんの登場です。
感の鋭い方などは気付いていたかもしれませんね。
今回の話をぶっこんだのは理由はありますがそれは次回にまた書きますので良かったら読んで下さい♪

感想などあると嬉しいです!!

では、次回またお会いしましょー♪


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第拾壱話

どうも、ひじりです。

遅くなりましたが更新ですよー
今回も過去の話になります。

では、どうぞー。


私達が出会って一年がたってから二ヶ月がたったある日。

私は雷にあるお願い事をしていた。

 

「え!?私の背中に乗って海の上を走りたいの!?」

 

「うん!雷!お願い!」

 

雷は驚きと困惑の半々といった様子である。

 

「頼られるのは嬉しいけど…でも、何で私に?」

 

「え、えー…と…電とお母さんにもお願いしたんだけど…。」

 

「怒られた?」

 

「…………うん。」

 

既に二人にはお願いしたが電には『ダメなのです!メッなのです!』と怒られ、お母さんは始めは諭すようだったがしつこくお願いしていると『…樹ちゃん?しつこいですよ?』と床に正座をさされて一時間程お説教されたのだ。

そして唯一残った希望が雷である。

雷はしっかり者だがお願いされると弱いので最後にしたのだ。

 

「んー…いーちゃんのお願いは聞いてあげたいけど二人がダメならダメね。」

 

「そこをなんとか!お願いだよぉ…。」

 

「うぐっ…うー。で、でも、ダメ!」

 

そう言って立ち去る雷。

しかし、それだけで諦める私ではないのだ。

そう…私は意外と頑固者だからね!!

 

秘書艦の時も。

「雷ー。お願い!」

 

食事の時も。

「ね?ね?雷お願いだよー。」

 

寝る時も。

「雷…ダメ…?」

 

と何度もお願いをしていた私に雷は揺らいでいたが。

 

「いーちゃん!雷ちゃんを困らせたらダメなのです!」

 

「樹ちゃん…ちょっとお部屋でお話しましょうか。」

 

「いやあぁぁぁぁ!!」

 

ついに雷にお願いしていたのが二人にバレてしまったのだ。

お母さんに引き摺られて部屋に連れ込まれた私は正座で二人によるお説教二時間とおしりペンペンを三十回されてから解放された。

 

「うぅ…まだ、お尻がひりひりするよぉ。」

 

「自業自得ね。」

 

「あ、雷。」

 

「ほら。歩ける?」

 

「うん。えへへ…ありがとう。」

 

部屋から解放された私を待っていたのか雷が私に寄り添ってくれる。

そのまま私の部屋まで付き添ってくれた。

 

「ねぇ。いーちゃんは何でそんなに海を走りたいの?」

 

「ん?理由を言わないとダメ?」

 

「無理には聞かないわ。ただ、気になったの。」

 

「いいよ。ちゃんと話すよ。」

 

部屋のベッドに座らせてもらい。

雷も隣に腰掛ける。

 

「えっとね…私は艦娘じゃないから何時も指示を出すだけでしょ?まあ、それが私の出来る事だけどね。」

 

「そうね。司令官だものね。」

 

「それ自体には不満はないの。ただね…。」

 

「ただ…なに?」

 

「此処を襲撃されない限り、私では無くて雷や電…お母さん達艦娘が砲撃を浴びて傷付いて…時には命を無くしてる。私はね…それが嫌なの…。そんなこと言っても私には力がないから出ても足手まといにしかならないけど…それでも皆が見てる風景を目に焼き付けたいの。少しでも貴女達の隣に立ちたい。だから、一度でいいから皆が見てる風景を見たいの。」

 

「なるほど、ね。」

 

「あはは…自己満足でしかないんだけどね。」

 

「本当にそうね。でも…その気持ちは嬉しいわ。」

 

雷は立ち上がり私の前に立つ。

そして私の頭を撫でて決意したように頷く。

 

「いいわ。私がいーちゃんのお願い聞いてあげる。」

 

「本当に!?」

 

「ええ。でも、二人には内緒よ?」

 

「うん!ありがとう雷!」

 

私達は他の皆にはバレないように計画を進めた。

実行はお母さんと電が遠征に行かないといけない三日後だった。

 

――――――――――

 

時刻は消灯から一時間たったフタサンマルマル。

雷を秘書艦にしており、執務室に集まる。

 

「いよいよだね。」

 

「そうね。準備はいい?」

 

「もちろん!」

 

音をたてないように執務室を出て足音を殺して廊下を歩く。

消灯したら原則部屋から出てはいけないため廊下には誰もいない。

一応見回り番はいるがルートなどは頭に入っている。

 

「じゃあ、行くわよ。」

 

「うん。」

 

小声で話して工厰に向かう。

一番の問題点は出撃の際に大掛かりな装置が作動するのだが、抜かりはない。

消灯ギリギリに明石に雷の擬装の整備を頼み保管場所から取り出しており、整備は明日に回して貰ったのだ。

見回りルートを避けながら迂回を数回繰り返し工厰に辿り着く。

 

「私の擬装は…あった!」

 

「!?雷!隠れて!」

 

「きゃっ!?」

 

雷に抱き付くように工厰の物陰に隠れる。

 

「あれ?誰か居ると思ったんだけどなー。」

 

「姉さん。どうかしたの?」

 

「ああ…多分気のせいみたいだ。」

 

「二人ともー。先に行っちゃうよー?」

 

声からして川内型三姉妹だろう。

川内が夜型なため妹二人を引き連れて見回り番をよく勤めるのだ。

しかし、三姉妹は工厰から離れていく。

私達はホッと息を吐いて誰も居ないか細心の注意を払いながら工厰を出た。

 

「さて、準備はいいかしら?」

 

「うん。じゃあ、失礼するね?」

 

私達は鎮守府から少し離れた所の砂浜に赴き、雷は擬装を装着して海の上に立ち私が雷の背におぶさる。

 

「行くわよ!」

 

「樹!抜錨します!」

 

「ノリノリね。」

 

「一回言ってみたかったんだ!」

 

雷が走り出して夜の潮風が私の顔を撫でて気持ちいい。

そして、段々速度が早くなって涼しい潮風に反して雷の高い体温が心地よくて少し強く抱き締めてしまう。

 

「ん?どうしたの?」

 

「んーん。何でもないよ。」

 

「そう。いーちゃん。上見てみて。」

 

「え?わー♪」

 

雷の声に空を見上げると灯りがない夜の海の上には満点の星空が広がり通常では見えないくらいの小さな星も見えて幻想的だった。

 

「綺麗…。」

 

「すごいでしょ?」

 

「うん…ずっと見てたくなる位綺麗。」

 

「この景色は私達艦娘の小さな特権見たいなものね。」

 

それから私達は何を言うわけでも無く、夜の海を走りながら星空見上げて互いのぬくもりを感じながら時間を忘れてそうしていた。

そして、夜の空が日が差し始めて夜明けがくる。

 

「そろそろ夜明けね。」

 

「そうだね。」

 

「帰ろっか。」

 

「うん。」

 

雷が旋回をして鎮守府に向かう。

 

ドォンッ!

 

「え?」

 

バシャァァン!

 

「キャアア!」

 

私達の直ぐ右に水柱が上がり、吹き飛ばされて海に落ちる。

 

「いーちゃん!!」

 

ドオォン!

 

ガァン!

 

「ぐうぅ!」

 

樹に気を取られた雷は砲撃の直撃を受けて中破してしまう。

 

「ぷはぁ!い、雷ぃ!!」

 

「はぁ、はぁ…いーちゃん…。」

 

海上に浮かんだ私の目に入ったのはボロボロになった雷だった。

雷はなにも言わずに近くにあった浮かんでた木を私近くに投げて私から離れるように走り出す。

 

「雷!雷ィィ!!!」

 

ドオォン!

 

遠くに見える深海悽艦から赤い煌めきが光る。

私の少し離れた所に水柱が上がり、まだ完全に明るくなってない空を赤く照らして一際大きい爆発音と水柱が上がる。

 

私は声もあげれなかった。

 

しっかりと見たわけでは無いが雷は沈んでしまったのだろうと理解してしまう。

しかし、理解は出来ても納得なんて出来るはずもない。

ましてや自分の我が儘でこんな目にあい、私が居たせいで逃げれずに囮になったのだから納得なんて出来ない。

 

それから私は泣きも叫びもせずに雷に渡された木にしがみつき海を漂っていた。

そして、四日間そのままで四日目の夕方に電が率いる捜索隊に発見された。

 

――――――――――

 

「ん………ここは…私の、部屋?」

 

私が目を覚まして体を起こして辺りを見渡して私室だと分かり、ベッドから降りる。

窓から見えるに時刻は夜みたいだ。

 

「雷…。」

 

窓から空を見える様に設置したソファーに座って星空を見ながら私が殺してしまったと言っても違わない彼女の名前を口にする。

思い浮かぶのは彼女の明るい笑顔ばかりでその一つ一つが鮮明でそれに比例するように私の視界は滲んでぶれる。

そして、私の視界をぶれされていた涙は目から離れて頬を伝って顎から滴り服に落ちる。

誰かが着替えさせてくれた寝間着に落ちた涙は染みになり、一つ二つと何ヶ所も出来る。

 

ガチャ。

 

不意に私室の扉が開く。

そっちに目を向けてはいないが誰かわかった。

 

「……電…。」

 

「いーちゃん…。」

 

入って来たのは電だった。

電は中には入らず扉の前で立ち尽くしている。

 

「ここ…来て。」

 

「…はいなのです。」

 

私がソファーの隣を手で叩いて電を招く。

電は中に入って扉を閉めて私の隣に腰かける。

少しだけ間が空いた空間があるのが寂しくて悲しい。

 

二人とも何も喋らずに時間だけが過ぎていく。

 

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました!

今回の話で雷が轟沈させてすみませんでした…。
今回の話はこの小説を書き始める前から考えてましたので、やっと書けて嬉しいです。

さて、前回に書きました理由なんですが。
雷とレ級のコラがありましてそちらをネタに書きたいなーって思いまして。
ぶっちゃけますと、それが書きたくてそこから逆算してストーリーを考えた所も多々ありますね(笑)

感想などあると嬉しいです!

では、また次回お会いしましょー♪


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第拾弐話

どうもおなじみのひじりです。

お艦は自分の嫁です!!

では、どうぞ。


「ねぇ…電はさ………やっぱり恨んでるよね。」

 

先に沈黙を破ったのは私だ。

 

「……恨んでは、ないのです。」

 

「本当に?」

 

この問いは何度もしたものだ。

何度も問い。

何度も許しを請い。

何度も許してもらった。

 

「はいなのです。」

 

「…ごめんなさい。」

 

「謝らないで欲しいのです。」

 

何度もしたやり取り。

電は優しいから無理してそう言ってくれているのだろうと思う。

 

「やっぱり気になるのです?」

 

「そりゃあ、ね。私が沈めたのと同じ何だから…電にもっと責められても…いや、責められて償いをしないといけないはずなんだから。」

 

「確かにいーちゃんのした事はいけない事なのです。」

 

電はソファーから立ち上がり私の前に立つ。

こんな時なのに不謹慎だけど、私は月を背にした電は綺麗だった。

 

「一つ質問してもいいのです?」

 

「もちろん。」

 

電は私に手を伸ばして前髪を触る。

その手つきは優しくて母が子供に触れる様な慈愛に満ちている。

 

「雷ちゃんは…いーちゃんを庇った時はどんな顔をしてたのです?」

 

「それは…。」

 

そこで電が微笑む。

その顔は姉である雷と被り、あの時の事が頭の中で鮮明な映像となり流れる。

 

「雷は………笑ってた。」

 

あの時、雷は笑ったのだ。

まるで『心配いらないよ』と言うように投げた木にしがみついた私に笑いかけたのだ。

 

「雷ちゃんは恨んではなかったのです。なら、電が恨む事なんてしないのです。」

 

「電…。」

 

「気にするなとは言わないのです。でも、雷ちゃんはいーちゃんを守れて嬉しかったはずなのです。電が雷ちゃんと同じ立場でも雷ちゃんと同じ事をして…守れて嬉しくなるのです。」

 

電を見上げる私の目から次々と涙が溢れる。

その涙は私の中に溜まった負の感情も一緒に流す。

そうすると雷との楽しかった日々が次々と今まで負の感情を占めていた所を埋めてしまう。

 

「いーちゃんは泣き虫なのです。」

 

「ごめ…ううん。ありがとう…電。」

 

「んっ…どういたしましてなのです。」

 

溢れる涙を電が指で拭ってくれて。

泣き止んだその目に優しくキスをしてくれた。

くすぐったくも温かいキスに私は電に甘えるように抱き付く。

 

「いーちゃん。」

 

「ん?」

 

電がふいに声をかけてくる。

 

「お願いがあるのです。」

 

「なに?」

 

電を見上げるといつになく真剣な表情で力強く窓の外…水平線を見つめる。

 

「あのレ級は雷ちゃんなのです。」

 

「根拠はあるの?」

 

「はいなのです。あの時、電の前に立ったレ級は…泣いたのです。前髪にはお揃いの髪留め。それに…言ったのです。」

 

「…何を?」

 

「『電…オ母サン……イーチャン』って小さかったけど確かに言ったのです。」

 

「そんな…でも、艦娘が深海棲艦になるなんて…聞いたことない。」

 

今までそんな事例はなく、艦娘と深海棲艦は敵対を続けている。

もし、そんな事があるのなら和解の足掛かりになるかもと頭の中を過る。

しかし、そんな自分に嫌気が差す。

どこまでいっても職業柄そんな事を考えてしまう自分が嫌いになる。

 

「いーちゃん。いーちゃんは悪くないのです。」

 

「あれ?私口に出してた?」

 

「口には出してなくてもいーちゃんの考えなんて読めちゃうのです。和解の為の一歩になるとか考えてそんな自分に嫌気が差してると思うのです。」

 

「うっ…図星です…。」

 

私が素直に認めて謝ると電はクスクスと笑う。

 

「大丈夫なのです。電はいーちゃんは艦娘全員の事を考えてくれてるのです。」

 

「うん…皆には戦い以外にもっと楽しく生きて欲しいから。」

 

「えらいのです♪それにいーちゃんはきっと雷ちゃんと助けてくれる。電は信じてるのです。」

 

電は一切の疑いもない信頼しきっている眼差しで私を射ぬく。

だから私は頷く。

 

「うん。きっと…きっと雷を助けて見せるから。」

 

「お願いしますのです♪」

 

私達は笑い合う。

そして扉の外で会話を聞いていたであろう人に声をかける。

 

「お母さん。それでいい?」

 

ガチャ。

 

「あらあら。バレていましたか。」

 

少し困った様な表情をしたお母さんが私室の扉を開けて中に入ってくる。

 

「隠れる気なかったくせに。」

 

「ふふっ♪」

 

「お母さんは遠慮しすぎなのです。」

 

電は私から離れてお母さんの元に近付く。

 

「電達は家族なのです。遠慮なんてして欲しくないのです。」

 

そのままお母さんの手を引いてお母さんを挟む様にして三人でソファーに座る。

 

「雷ちゃん。きっとまた昔みたいに皆で笑い合えますよね。」

 

「もちろん。今度は私が絶対に助ける。」

 

「なのです♪」

 

私達三人はその晩は三人で寄り添ってソファーで眠った。

 

――――――――――

 

「ア、アぁア…イ……なず…マ…お…カアサン………いー……チャ…ん…。」

 

「ヤツラハテキダ。」

 

「ウウッ…て……キ…?」

 

「ソウダ。ニクメ。ウラメ。コロセ。アノムスメ…クラウディアノムスメヲ…コロセェ!!」

 

「コ…ロス…。」

 

「クックックッ…サァ…マッテイロ…イマニアイニイクカラナ…。」

 

――――――――――

「フム…どうしたものか…。」

 

源 慎一郎が深くため息を吐く。

大本営の大元師の部屋の椅子に深く腰掛けて机の上に纏められた書類の束を投げる。

その書類の表紙には【極秘】と大きな印が押されている。

 

「どうかなされましたか?」

 

「大和か…。」

 

いつの間にか慎一郎の背後に現れた艦娘。

大和型一番艦 大和が慎一郎に声をかける。

 

「なに。少々厄介な事になってな。」

 

「厄介…ですか。」

 

「読んでみろ。」

 

「では、失礼します。」

 

机の上に置かれた書類を手に取り、読み始める。

本来なら艦娘が極秘書類を読むなど言語道断だが彼女は特殊だった。

慎一郎の大和は数々の歴戦で武功をあげるだけではなく、慎一郎の秘書艦で右腕で提督会議等でも発言力があるのだ。

そして、マスコミにも何度も取り上げられて彼女を知らない人は居ないと思われる程の有名なのだ。

 

「これは…本当なんですか?」

 

「ああ…認めたくはないがな。」

 

「そうですか…なんと低俗な。」

 

大和の目付きが鋭く細められる。

その目には怒りが灯っている。

 

「大和。」

 

「はい。」

 

「青葉と川内を呼べ。」

 

「わかりました。」

 

大和が部屋から出ていく。

それを見送った慎一郎は再度ため息を吐き出す。

 

「……クズどもめ。」

 

そして、一人呟いた言葉は虚空に溶けた。

 

――――――――――

「樹ちゃん。」

 

「ん…お母さん…。」

 

瞼を開けるとお母さんの優しい笑顔が目に入る。

 

「んー…おはよぅ…。」

 

「はい。おはようございます。」

 

目を擦って眠気を覚ましながらお母さんに挨拶をする。

昨日はソファーで寝てしまい体が痛いがそれでも心は軽くてどこかスッキリとしていた。

 

「あれ?電は?」

 

「樹ちゃんが妖精さんに頼んでいたのが出来ましたから電ちゃんは調整に工廠に行きましたよ。」

 

「そっか…って、出来たの!?」

 

お母さんの報告に私は飛び上がる。

 

「あらあら。」

 

「わ、私も行かないと!!」

 

慌てて着替えようとして転けそうになる。

そんな私を見てお母さんが困った様に微笑む。

 

「樹ちゃん。」

 

「な、なに?」

 

お母さんが私に近付いて髪の毛を触る。

 

「頭はボサボサ。服はぐちゃぐちゃ。そんな格好ではいけませんよ?」

 

「あぅ…でも!」

 

「でもではありません。ほら。動かないで下さい。」

 

お母さんに服と髪を直してもらう。

その手つき一つ一つに気遣いの念が込められているのか嬉しくなってしまう。

髪を直して貰っているときに目を閉じると小さい時にママに髪をといてもらっていた記憶が蘇る。

 

「はい。終わりましたよ。」

 

「ありがとう。お母さん。」

 

ママとの記憶を思い出して泣きそうになってしまった私はお母さんに抱き付いてなんとか堪える。

 

「じゃあ、いってきます。」

 

「はい。いってらっしゃい。お寝坊さん。」

 

きっと泣きそうになった私にお母さんは気付いていただろうけどなにも言わない。

私は走って部屋を出る。

そのままの勢いで工廠に向かった。

 

――――――――――

「はぁ…はぁ…。」

 

工廠に駆け込んだ私に妖精さん達がびっくりしている。

 

「はぁ、んっ…ごめんなさい。」

 

そんな妖精さん達に謝りながら奥に進んで行く。

そして、それを見つけた。

 

「い…じゃなくて、司令官さん。待っていたのです。」

 

「お、お待たせ。」

 

危なかっしい電にひやひやしたけど返事をしてそれの横まで近付く。

私の目に映るのは鈍く浅黒い鋼で出来た駆逐艦 電だ。

第二次世界対戦で使われていた実物を再現したものだ。

 

「妖精さん。完成したんだ。」

 

「はい。きぼもとうじのままです。」

 

「そうか。装備は?」

 

「こちらのしょるいにまとめています。」

 

「ありがとう。」

 

妖精さんから書類を受け取り目を通す。

 

50口径12.7cm連装砲 2基4門

25mm連装機銃 3基

25mm単装機銃 2基

61cm3連装魚雷発射管 3基

九四式投射機 1基

 

そこに記されたいた装備は以上だ。

 

「あれは?実現したか?」

 

「まだじっけんだんかいですがとうさいしています。しかし、きんかいでなんどかためされることをおすすめします。」

 

「わかった。」

 

この船を動かしたくてウズウズするがなんとか抑える。

 

「いーちゃん。電は頑張るのです。」

 

「電。ありがとう。」

 

ふんっと気合いを入れる電に笑ってしまう。

ここから始めよう。

私達の戦いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば…改修工事の件は大丈夫なのです?」

 

……………忘れてた。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました!

今回も色々問題を投下してしまいました自分です。(←バカです)
ほのぼのが書きたいよー(泣)

感想をいただけると嬉しいです♪

では、次回お楽しみに!!


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第拾参話

はい。ひじりです。

久しぶりに短い間隔での投稿です。
今回はシリアス少なめですよー♪

では、どうぞ。


「さて、集まってもらった理由は分かっていると思う。」

 

あの襲撃があった日から一週間がたち艦娘達には食堂に集まってもらった。

集まったのを確認すると声をかける。

 

「本日から鎮守府の大規模工事が始まるわけだが業者の方々を紹介する。」

 

時間はかかるが従業員一人一人に自己紹介してもらう。

これも人間不振な艦娘達を心配しての事だから我慢してもらう。

一時間かかったが総勢50名近くいる業者の方々の自己紹介が終わり、最後に一番大事な事を伝える。

 

「終わったかな。最後に一つ伝えるよ。ここにいる業者の皆さんにはある誓約書を書いてもらってる。」

 

艦娘の皆は訳がわからないと言った表情でこちらに目を向ける。

 

「それは『艦娘に無理矢理手を出せばその場で死刑に処する』と言った誓約書だ。詳しく説明するから手元の書類を見てくれ。」

 

業者の方々を含めた皆は配られていた書類に目を落とす。

 

「まず、この誓約はこの佐世保鎮守府に属する艦娘に直接・間接・精神的に何らかのダメージを与えた場合に執行される。」

 

艦娘達はざわめくが気にせずに続ける。

 

「なお、この誓約は『お互いの合意がない場合』にのみになる。例えばだが…誰かと恋に落ちて恋仲になれば例外になる。」

 

一応この誓約は私の正体を知っているメンバーで話し合って決めた事なのだ。

 

「最後にもしものために妖精さんに頼んで業者の方々を含めた全員にこの小型レコーダーを配布する。因みにちょっとやそっとの事では壊れないぞ。これは停止は出来ないし、データは妖精さんが管理してくれるから流出等は心配はいらない。」

 

皆に沢山の妖精さん達がちょこちょこと歩き回り一人一人にレコーダーを取り付けて行く。

 

「ああ、忘れてたレコーダーがない場合は妖精さんや私が信頼する艦娘達との話し合いで状況判断するが…不利になることは免れないから気を付けてくれ。」

 

私が話終わると皆沈黙している。

 

「だが安心してくれ。業者の方々は私や代表の艦娘達の面接して信頼に足る人物と判断した上で迎え入れてるから。さて、質問はあるか?」

 

「私から一つ宜しいですか?」

 

凛とした声が食堂に響き、艦娘達の中からスッと手が上がる。

 

「大鳳。構わない。言ってくれ。」

 

「では、失礼します。先程、司令官の『信頼に足る者』と仰いましたが具体的な人物をお願いできますか?」

 

大鳳の少しつり気味の切れ目が私を射ぬく。

 

「なるほど…全員は答えられないが一人代表を教えよう。」

 

私達の中でまとめ役を担ってくれている長門に目を向ける。

すると意味が伝わったのか頷いてから立ち上がる。

 

「私がその一人だ。今回の…そうだな……陪審員とでも呼ぼうか。とりあえずその陪審員が誰か分かれば良からぬ事を考える輩出てこないとも言えないからな。だから極秘にさせてもらう。」

 

「それもそうですね。わかりました。」

 

長門はやはり頼りになる。

厳しくも優しいし、全てを話さなくても理解し助けてくれるのは皆を纏めたりしてるからだろう。

そんな長門は納得した大鳳が座るのを見届けてから自分も座る。

 

「ありがとう。長門。さて、他に質問はないか?」

 

他に手が上がることもない。

 

「では、次の議題なんだが…これは次の資料を見たら分かると思うが仮設寮の部屋割りだ。事前に申請してもらったメンバーでどの寮なのかを書かれてるだけだからこれを元に行動してくれたらいい。では、解散。」

 

皆はそれぞれ思い思いに移動を始める。

そして、先程私を助けてくれた長門が此方に近付いてくる。

 

「提督。今日から一週間は私が班長を務める班の部屋で寝てもらうが構わないか?」

 

「もちろんだ。迷惑をかける。」

 

「なに…構わんさ。」

 

「すまない。感謝する。」

 

長門は格好のいい笑みで任せろと言わんばかりに胸を張る。

何処とは言わないが揺れる。

おっきぃなぁ…。

 

「む?どうした。提督。」

 

「いや、何でもない。」

 

「そうか。では、執務が終わる位に迎えに行く。」

 

「分かった。」

 

短い受け答えをして私達は別れた。

 

――――――――――

現在の時刻はヒトナナサンマルだ。

工事関係の書類が多く終業時刻を少し越えてしまった。

因みに長門は来ていない。

 

「ふぅ…やっと終わったー。」

 

両手を上げて伸びをしていると仮設寮よりかなり狭いプレハブで作られた仮設の執務室の扉がノックされる。

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼する。」

 

入って来たのは長門だった。

タイミング良すぎるような…って、もしかして。

 

「一つ聞いてもいいか?」

 

「なんだ?後、皆は仮設寮にいるし誰か来れば私が分かるから普通で構わない。」

 

「そっか。えっと…もしかして此処の前でずっと待ってた?」

 

「無論だ。終業時刻はヒトナナマルマルだからな着いたが提督は忙しそうだったからな。待たせてもらった。」

 

私の頭の中でこのプレハブ小屋の前で腕を組んで堂々と立つ長門を思い浮かんで申し訳なくなる。

 

「ごめんなさい…。」

 

「いや、構わんさ。」

 

「ありがとう。じゃあ、着替えちゃうからちょっと待ってね?」

 

「出ていようか?」

 

心なしか顔が赤い長門だが同性なのだから気にしなくていいのに。

 

「ん?長門が嫌じゃなかったら居てもいいよ?」

 

「そ、そうか。」

 

お風呂は寝る前派の私は女とバレない程度にラフな格好に着替え始める。

 

「ん、しょっと…じゃあ、案内してもらおうかな。」

 

「………ハッ!?あ、あぁ…行こうか。」

 

珍しくボーッとしていた長門は意識を取り戻したのか返事をする。

それから先に夕御飯を済ましてから寮に向かった。

 

「ここだ。さぁ、入ってくれ。」

 

「うん。」

 

中に入ると軽巡と駆逐艦を主としたメンバーが此方を見る。

中にいたのは以下の9名だ。

 

軽巡

球磨

多摩

五十鈴

 

駆逐艦

雪風

夕雲

清霜

初霜

朝霜

 

軽巡の三人は警戒し、駆逐艦は怯えている。

正直言うと心苦しいがこれも男性に慣れてもらうための訓練の意味も有るため心を鬼にする。

 

「今日から一週間よろしく頼む。」

 

やはり、寝床を共にすることもあり皆は返事もしない。

 

「そう警戒するな。何かある前に私が押さえるから心配はいらない。」

 

長門がそう口にする時の表情はどこか苦しそうで申し訳なくなる。

 

「提督にはこの一週間は私と行動を共にしてもらう。構わないか?」

 

「もちろん。」

 

私が返事をしてもう消灯時刻が近くなって来ている事に気付く。

 

「じゃあ、私は風呂に入ってくる。」

 

「では、私も行こう。」

 

「え?」

 

「なに、私も入渠がまだだからな。」

 

皆は最初は驚いていたが長門がそう言うと意味を理解したのか何も言わなかった。

そして、私と長門は寮を出る。

因みに入渠施設の隣に私のお風呂が作られている。

 

「提督。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「今日は出撃も無かったから身を清めるだけだからそっちの風呂で一緒に入って構わないか?」

 

「へ?……い、いいけど…長門は嫌じゃないの?」

 

「私から提案したんだ。嫌なわけがないだろう?」

 

「そ、それもそうだけど…。」

 

急な長門からの提案に戸惑う私だが。

長門はなぜかこれ程にないくらいに真剣な眼差しをしている。

因みに顔は赤い。

どうしたのだろうか…?

 

「じゃあ…一緒に入る?」

 

「ああ。無理を言ってすまない。」

 

「ううん。大丈夫だよ?」

 

了承すると長門は小さくガッツポーズをしている。

……なんで?

まあ、いっか。

 

「あのお風呂は薄暗くて少し怖いし…。」

 

「なんだと?」

 

「あれ?聞こえてた?」

 

「ああ。薄暗いとはなぜだ?」

 

少し怒ったような険しい表情の長門。

私は少し戸惑いながらも理由を答える。

 

「えっと…元々使われて無かった風呂場を自分で掃除したの。湯は沸かせるんだけど小さな電球一つしかないけど入れるから気にしてないよ。」

 

「なぜそんな風呂を利用する必要があるんだ?建てればようだろう。」

 

「そんな無駄遣いはする気はないかな?勿体無いし。」

 

「……はぁ…変わっているな。」

 

「あはは…よく言われるかな。」

 

ため息を吐いた長門は困ったような表情をしている。

私は苦笑いで誤魔化すしか出来ない。

 

「もういい。ほら、行くぞ。」

 

「うん。行こっか。」

 

長門は手を差し伸べてくれて私は嬉しくてその手を握り返しながら風呂場に向かった。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

ながもん回ですよ!
さてさて…ついに本性が暴かれているながもんですね。
そして、皆さんお気付きかもしれませんが………ふっふっふっ…次回は楽しみにしていてくださいね♪

感想などをいただけると嬉しいです♪

では、次回もお楽しみに!!


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第拾参話 ~裏・長門視点~

ひじりです。
皆さん分かるかもしれませんが今回は第拾参話の裏話…ロリコンながもん視点になります。
会話などは変わりません。

では、どうぞ。


「さて、集まってもらった理由は分かっていると思う。」

 

幼い容姿からは想像も出来ない位に凛とした声が響く。

その声に耳を傾ける。

 

「本日から鎮守府の大規模工事が始まるわけだが業者の方々を紹介する。」

 

提督の言葉で工事をしに来た従業員一人一人に自己紹介をし始める。

やはり、仕方ないとは言え男を見ると嫌悪感が胸の中を埋める。

 

「終わったかな。最後に一つ伝えるよ。ここにいる業者の皆さんにはある誓約書を書いてもらってる。」

 

私や提督の正体を知るメンバーはどうも思わないがそれ以外の皆は不思議そうな顔をする。

当たり前だ。

普通は艦娘相手にあそこまでする方が異質なのだから。

 

「それは『艦娘に無理矢理手を出せばその場で死刑に処する』と言った誓約書だ。詳しく説明するから手元の書類を見てくれ。」

 

一応、私達が決めたのは秘密になっているから周りと同じように手元の書類を見る。

因みにこの書類は提督の手書きをコピーしたものだ。

理由としては提督はパソコンなどの機器でタイピングするより直に書いた方が早いからだ。

私の目に映る文字は丸っこくて可愛らしいがけして汚くはない文字が並んでいる。

 

「まず、この誓約はこの佐世保鎮守府に属する艦娘に直接・間接・精神的に何らかのダメージを与えた場合に執行される。」

 

周りがざわめくが私は提督の可愛らしい文字に夢中になってしまっていた。

 

「なお、この誓約は『お互いの合意がない場合』にのみになる。例えばだが…誰かと恋に落ちて恋仲になれば例外になる。」

 

しかし、文字に夢中になっていても提督の言葉は聞き逃さない。

ビック7を侮るなよ?

 

「最後にもしものために妖精さんに頼んで業者の方々を含めた全員にこの小型レコーダーを配布する。因みにちょっとやそっとの事では壊れないぞ。これは停止は出来ないし、データは妖精さんが管理してくれるから流出等は心配はいらない。」

 

一人の妖精が私によじ登り、頭にある擬装にレコーダーを取り付ける。

 

「ああ、忘れてたレコーダーがない場合は妖精さんや私が信頼する艦娘達との話し合いで状況判断するが…不利になることは免れないから気を付けてくれ。」

 

無理だとはわかっているが、どうせなら提督に付けてもらいたかったものだな。

 

「だが安心してくれ。業者の方々は私や代表の艦娘達の面接して信頼に足る人物と判断した上で迎え入れてるから。さて、質問はあるか?」

 

「私から一つ宜しいですか?」

 

少し攻撃的な声が食堂に響き、私より提督から少し離れた位置から手が上がる。

 

「大鳳。構わない。言ってくれ。」

 

「では、失礼します。先程、司令官の『信頼に足る者』と仰いましたが具体的な人物をお願いできますか?」

 

彼女は装甲空母 大鳳だ。

 

「なるほど…全員は答えられないが一人代表を教えよう。」

 

提督は大鳳の質問に私に目を向けながら答える。

そんな私を信頼しきっていてすがるような目で見ないでくれ。

持ち帰りたくなるだろう。

しかし、頼られてしまえば仕方ない。

私は立ち上がる。

 

「私がその一人だ。今回の…そうだな……陪審員とでも呼ぼうか。とりあえずその陪審員が誰か分かれば良からぬ事を考える輩出てこないとも言えないからな。だから極秘にさせてもらう。」

 

「それもそうですね。わかりました。」

 

ああ、そんな子犬みたいな無垢な目で私を見ないでくれ。

抑えが効かなくなる。

…ダメだ。

あの計画を実行に移すか。

 

「ありがとう。長門。さて、他に質問はないか?」

 

提督がお礼言ってきたので頷いて答えるが

私の頭の中は計画の事では頭が一杯だった。

 

「では、次の議題なんだが…これは次の資料を見たら分かると思うが仮設寮の部屋割りだ。事前に申請してもらったメンバーでどの寮なのかを書かれてるだけだからこれを元に行動してくれたらいい。では、解散。」

 

提督の解散との言葉に皆はガヤガヤとざわめく。

しかし、私は計画の為に提督に近付く。

 

「提督。今日から一週間は私が班長を務める班の部屋で寝てもらうが構わないか?」

 

「もちろんだ。迷惑をかける。」

 

「なに…構わんさ。」

 

「すまない。感謝する。」

 

提督がすまなさそうに眉を曲げた顔が可愛くて自然と笑みが溢れてしまい、バレないように胸を張って答える。

提督の目線が私の胸元に釘付けになる。

こんなもの邪魔なだけだと思っていたが提督が見てくれるなら悪くはないな。

 

「む?どうした。提督。」

 

「いや、何でもない。」

 

「そうか。では、執務が終わる位に迎えに行く。」

 

「分かった。」

 

さて、第一段階は成功だな。

 

――――――――――

今の時間はヒトナナサンマルだな。

実はヒトナナマルマルには着いていたのだが真剣な表情で執務をこなす提督の横顔を飽きることなく窓から眺めたらいつの間にこんな時間になっていた。

 

「ふぅ…やっと終わったー。」

 

両手を上げて伸びをしている提督を見ていていたいがそんなわけにもいかないから執務室の扉をノックする。

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼する。」

 

中に入ると提督が驚いており、その後に何かに気付いたような表情をした。

まずいな…見ていたのがばれていたか?

 

「一つ聞いてもいいか?」

 

「なんだ?後、皆は仮設寮にいるし誰か来れば私が分かるから普通で構わない。」

 

「そっか。えっと…もしかして此処の前でずっと待ってた?」

 

「無論だ。終業時刻はヒトナナマルマルだからな着いたが提督は忙しそうだったからな。待たせてもらった。」

 

良かった。

見ていたのがバレたわけではないみたいだ。

 

「ごめんなさい…。」

 

「いや、構わんさ。」

 

「ありがとう。じゃあ、着替えちゃうからちょっと待ってね?」

 

「出ていようか?」

 

待て。待て待て待て。

そんな無防備に私の前で着替えるのか!?

り、理性が…まずいな。

 

「ん?長門が嫌じゃなかったら居てもいいよ?」

 

「そ、そうか。」

 

あ…あぁ…そんな。

普通の日本人ではあり得ない白く綺麗な肌が私の目の前にさらけ出される。

そして、体の至るところにある生々しい古傷は醜く等なくて白いキャンパスに彩られた絵の様で不謹慎だが綺麗だった。

 

「ん、しょっと…じゃあ、案内してもらおうかな。」

 

「………ハッ!?あ、あぁ…行こうか。」

 

見とれていた私は提督に声をかけてもらうまで飽きずに見続けていたが、我に帰る。

怪しまれたかも知れないが何事も無かったように寮まで案内する。

 

「ここだ。さぁ、入ってくれ。」

 

「うん。」

 

私の班は軽巡と駆逐艦を主としたメンバーだ。

 

軽巡

球磨

多摩

五十鈴

 

駆逐艦

雪風

夕雲

清霜

初霜

朝霜

 

以上9名だ。

彼女たちは私と仲の良い者達だ。

 

 

やはり、男(と思っている)がいると良い感情は芽生えないのか怯えたり警戒したりしている。

どうにか出来ないか考えたがやはりこれしかないのか。

 

「今日から一週間よろしく頼む。」

 

手の平に血が滲みそうになるくらいに拳を握り絞めながら言い放つ。

 

「そう警戒するな。何かある前に私が押さえるから心配はいらない。」

 

私の視界に艦娘達は安堵を提督は悲しみと諦めを孕んだ笑顔がそれぞれ映る。

何がビッグ7だ。

何も出来ないではないか。

不甲斐ない自分を殴りたくなるが必死に堪える。

 

「提督にはこの一週間は私と行動を共にしてもらう。構わないか?」

 

「もちろん。」

 

そして、ついに提督はこの一週間の最大のイベントとも言える事を口にした。

 

「じゃあ、私は風呂に入ってくる。」

 

「では、私も行こう。」

 

「え?」

 

「なに、私も入渠がまだだからな。」

 

そう、それは入浴だ。

皆は驚いているが考えていた言い訳をして皆は納得する。

提督の後ろを追いかけるように寮を出る。

私の目的は入渠施設ではなく隣にある提督が使っているお風呂だ。

そして、覚悟を決めて提案をする。

 

「提督。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「今日は出撃も無かったから身を清めるだけだからそっちの風呂で一緒に入って構わないか?」

 

「へ?……い、いいけど…長門は嫌じゃないの?」

 

「私から提案したんだ。嫌なわけがないだろう?」

 

「そ、それもそうだけど…。」

 

緊張で口の中がカラカラだ。

目の前には驚いて大きなくりくりの瞳を更に見開いている提督がいる。

私の調べでは提督と特に中が良い電や鳳翔とはたまに一緒に入る事もあるようだし大丈夫だろう。

 

「じゃあ…一緒に入る?」

 

「ああ。無理を言ってすまない。」

 

「ううん。大丈夫だよ?」

 

戸惑いながらも了承してくれてついついガッツポーズをしてしまった。

恥ずかしいが気にしてもしょうがないか。

 

「あのお風呂は薄暗くて少し怖いし…。」

 

「なんだと?」

 

「あれ?聞こえてた?」

 

「ああ。薄暗いとはなぜだ?」

 

提督の独り言に反応してしまう。

入渠施設は早い段階で余りにも汚いと言って提督が呼んだ掃除業者に新品の様に生まれ変わったのだが。

提督が困った顔で理由を言う。

 

「えっと…元々使われて無かった風呂場を自分で掃除したの。湯は沸かせるんだけど小さな電球一つしかないけど入れるから気にしてないよ。」

 

「なぜそんな風呂を利用する必要があるんだ?建てればようだろう。」

 

「そんな無駄遣いはする気はないかな?勿体無いし。」

 

「……はぁ…変わっているな。」

 

「あはは…よく言われるかな。」

 

この提督は自分を犠牲にし過ぎる節がある。

最初の自己紹介の時もそうだが、色々と話を聞く限りでは昔から無茶ばかりしてたみたいだしな。

 

「もういい。ほら、行くぞ。」

 

「うん。行こっか。」

 

誤魔化す様に苦笑いする提督に手を差し伸べると天使の様な笑顔で私の手を握り返してくれた。

私の胸は激しく高鳴る。

私はこの少女の様な提督に心を奪われてしまったのかこの人の為なら何でもしよう。

ビッグ7…いや、この命にかけてもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、今はこれから拝めるだろう楽園に私は身も心もゆだねようではないか。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

ながもん可愛いよね。
そして、ながもんの心は樹に奪われてしまいました(無自覚)

感想を書いていただけると嬉しいです♪

では、また次回お会いしましょー。


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第拾肆話

ひじりです。

お待たせしました!サービス回!!
さて、ながもんはどうなってしまうのかぁ!!!

では!どうぞ!!


長門に手を繋いで貰って私が使用してるお風呂にきた。

中に入るとぎりぎり二人入れる位の脱衣所がある。

 

「ごめんなさい。狭いよね。」

 

「いや、たまにはこう言うのも悪くはないさ。」

 

「やっぱり長門は優しいね。」

 

「くっ…。」

 

なぜか長門は胸に握り拳を押し当てて何かに堪えているようだ。

胸が苦しいのかな?

 

「大丈夫?苦しそうだけど…。」

 

「ひぅ!?」

 

力強く握られた拳に手を重ねて長門を見上げる。

余計にわたわたし出す長門だけど何処か悪いならそんなこと言ってはられない。

 

「て、提督!?」

 

「何処か苦しいの?」

 

「だだ、大丈夫だ!!」

 

あわあわと目を回しながら硬直する長門だが本人曰く大丈夫だと言うから手を離して見つめる。

 

「はぁ…はぁ…んんっ……問題ない。心配してくれて感謝する。」

 

「そ、そう?なら、お風呂に入ろっか?」

 

長門はやけに何かを悟ったみたいな顔で答える。

 

「ああ、ビッグ7の名は伊達ではないぞ?」

 

「???」

 

何の話だろうか?

よく分からないけどビック7って言うくらいだからそのたわわな果実のことかな?

まあ、違うよね。

 

「とりあえず私が先に入ってるね?」

 

「ああ。」

 

狭いので長門に肘や膝が当たらないように気を付けながら服を脱ぐがやはりお尻や胸(それなりにある)が当たってしまう。

 

「あぅ…さっきからごめんなさい。」

 

「大丈夫だ。寧ろごほうb…いや、なんでもない。」

 

「?まあ、それじゃあ長門も来てね?」

 

「まかせろ。」

 

私は体を洗うための手拭いで胸と局部を隠しながら風呂場に入る。

湯は入る前に張ったから風呂場全体が暖かくて気持ちいい。

 

「ん、熱っ…んん~~~~はぁ~…気持ちいい。」

 

かけ湯をしてから湯船に入り、長門が入ってきやすくする。

 

「失礼する。」

 

「どうぞー♪」

 

脱衣所からの引き戸が開かれて長門が入って来る。

手拭いは首に掛けられており、女の私でも見惚れる様なメリハリのある体が私の目に映る。

 

「服の上からでもわかってたけど長門はスタイルいいよね。」

 

「む?そうか?」

 

「そうだよ。羨ましいな。」

 

「そんなものなのか。」

 

不思議そうな顔をしながら自分の胸を持ち上げる。

ん~…じぇらしぃ…。

 

「そうは言うが提督も中々大きい方ではないのか?」

 

「んーまあ、そうなんだけど…ほら、私は体が小さいから変に見えるで「そんなことはない!!!」ひゃぁ!?」

 

長門は私に詰め寄り、肩を両手でガシッと掴まれてしまう。

 

「確かに幼い天使達に育った胸は邪魔な物だと思ってはいたが実際見てみると考えが180度変わった!それは世の男どもが考えているような俗物なものではなく!そう!!保護欲を掻き立てられる愛らしさと聖母の様な母性を合わせ持つ日本…いや、世界の宝だ!!」

 

「は、はぁ。」

 

「私はそんな宝を守れるほど近くに存在できて神に感謝しているんだ!」

 

「う…うん。」

 

「だから言わせてくれ!私に提督を守らせてくれ!!!」

 

「え、ぁ…うん………あり…がとう?」

 

長門が変なスイッチが入ったのかスゴい勢いで捲し立ててくるから私は戸惑ってしまう。

余りにも勢いよくかつ早口だった為にあまり聞き取れなかった…って、長門ってこんな艦娘だっけ?

 

「はっ!?」

 

あ、帰ってきたみたい。

 

「…………。」

 

長門はこの世の終わりみたいな顔をしながらその場で崩れ落ちる。

私はその姿を浴槽から見下ろしている。

二人とも裸で。

多分だけど第三者からみたらスゴくシュールな感じになってると思うな。

 

「あぁ…終わった……絶対に嫌われた…こんな変態…。」

 

「な、長門?」

 

ブツブツとそのままの格好で呟く長門に声をかけるが返事はない。

ただの長門のようだ。(←当たり前)

 

「すまなかった…。」

 

「ちょっ、長門!?」

 

風呂場から出ていこうと引き戸を開ける長門を私は湯船飛び出て腕にしがみつく。

出た時に転びそうになったがなんとか持ち直した。

 

「て、提督!?」

 

私も裸だし、長門の腕に思いっきり生で当たってるけど気にしてられない。

だって長門が今にも自殺しそうな顔をしてたから。

……………決していきなり一人になるのが怖いのが理由じゃないよ?ほんとだよ?

 

「何で落ち込んでるかは分からないけど落ち着いて!」

 

「あわわわわ…。」

 

長門がまた目を回してる。

私は目を回してふらふらな長門をそのまま引っ張って湯船に入らせる。

そして、またいきなり出ていかないように長門の上にもたれる様にして私も入る。

 

「…………はっ!?」

 

本日二回目のお帰りだね。

しかもかなり短い時間での。

 

「あれ?ここは…って、のおぉぉ!!??」

 

「長門うるさいよ?」

 

「あ、あぁ…すまない…って、そうではなくてだな!何故こんな状態になっているんだ!?」

 

まあ、確かに意識が戻っていきなり一緒にお風呂に入ってたらビックリするよね。

でも、いきなり出ていこうとした長門が悪いもん。(←無意識)

 

「長門が酷い表情で出ていこうとしたから引き止めたらボーっとしてたの。だから今度は勝手に出ていけないように湯船に入れて私が乗ってみた。」

 

「なるほどな………理屈がおかしくないか…?」

 

「おかしくないよ。」

 

「そ、そうか。」

 

何故か顔の横辺りで両手がふらふらと行き場を無くしている。

だから両手を捕まえて私の肩の上から抱き締めさせる。

 

「ん、しょ…はぁ~♪」

 

言葉にするならあすなろ抱きだ。

これはママにもよくしてもらったし、今ではお母さんにしてもらったりしてスゴく落ち着く。

 

「お、おい!何を!?」

 

「いーからいーから。何時までも腕を上げたままじゃ疲れが取れないよ?」

 

「だがしかし…。」

 

「私がいーからいーの。」

 

今日は長門が珍しく動揺するのが楽しいかも♪

私の前に回された腕に手を重ねる。

 

「気持ちいいからこのまま居たいけどのぼせちゃうから先に体洗うね?」

 

「ああ………私が洗ってもいいか?」

 

「え?洗ってくれるの?」

 

「提督が嫌じゃなければ、だが。」

 

「んー…じゃあ、お願いしようかな。」

 

私はお風呂用の椅子に腰掛けて目を閉じて待つ。

ザバァっと湯船から長門が出てくる音がする。

 

「……では…湯をかけるぞ。」

 

「うん。好きなようにしていいよ。」

 

「っ!?わ、わかった。」

 

バシャァっと風呂桶で頭に湯をかけてもらう。

湯は少し熱いくらいで気持ちいい。

 

「…痒い所はないか?」

 

「ん、大丈夫。」

 

シャンプーでわしゃわしゃと擦られる。

絶妙な力加減で気持ち良い。

そして、再び桶で湯をかけて泡を流してもらう。

 

「次は…体を…洗うぞ…。」

 

「あ、体は手で洗って貰えると嬉しいな。」

 

「な、なななななななんだとぉ!?」

 

スゴく動揺する長門に少し申し訳なくなる。

 

「私の体は傷が多いでしょ?手拭いで洗うとちょっと痛いんだ。一人なら届かない所は諦めてるけど…やっぱり嫌かな?」

 

「…………そうだったのか。わかった。洗わせてくれ。」

 

「ありがとう。長門。」

 

長門は石鹸を泡だててその手で私の背中を洗ってくれる。

長門の手は大きいが指は細い。

そんな手で優しく洗ってくれているが少し震えている。

 

「んふふ…長門の手…震えててくすぐったいよ。」

 

「あ、すまない。」

 

「そんな恐る恐るじゃなくても壊れたりしないから大丈夫だよ?」

 

震えてる手がくすぐったくてクスクスと笑ってしまう。

その後やっぱり震えているが背中を洗ってもらい冷えたらいけないと一度湯で流してくれた。

 

「前は…自分で洗うね?」

 

「わかった。」

 

長門は少し残念そうにしている。

何でなんだろう?

 

「じゃあ、湯冷めしたらダメだから長門は入っててね。」

 

「わかった。」

 

前は流石に嫌だろうから自分で洗わないとね。

お母さんには洗い方が雑って言われてたまに洗われるけどね。

そんなこんなで体を洗い終わり、次は長門の番だ。

 

「終わったよー。」

 

「ああ、わかった。」

 

長門が湯船から出てきて私の座っていた椅子に座る。

 

「……どうしたんだ?」

 

「ん?さっき私を洗ってもらったから今度は私が洗ってあげるの。」

 

「なん…だと…。」

 

椅子に座ることで私の方が背が高くなり長門は私を見上げて驚いてる。

 

「洗いっこは基本だよねー。お湯かけるよ?」

 

「え?あ、ああ…。」

 

頭に湯をかけて十分に髪を濡らしてからシャンプーで洗う。

 

「長門の髪は本当に綺麗だよね。」

 

「そうなのか?あまり意識はしてないからな。」

 

「そうなんだ。髪は女の命だから大切にしないとね。流すよ?」

 

「頼む。」

 

わしゃわしゃと洗ってからお湯で流す。

そして、今度は後ろに回って背中にお湯をかける。

 

「じゃあ、今度は背中洗うね?」

 

「あ、ああ…ひぅ!?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「て、提督…手拭いは?」

 

手拭い?

知りませんねぇ…。(ゲス顔)

 

「まーまー気にしないで♪」

 

「だ、だがしかs…ひゃ!?」

 

お?これはまさか…。

 

「長門って…もしかしてくすぐられるの弱い?」

 

「そうだから…やめっ。」

 

「そっか♪そっか♪………ニヤリ。」

 

いけない。

楽しくなってきてしまった。

 

「提督?んんっ!」

 

「まあまあ♪ちょっと我慢してねー♪」

 

基本的に普通に洗うが時折くすぐるように指を滑らせる。

と言うか、髪だけじゃなくて肌も綺麗だなー。

じぇらしぃ…。

 

「………えいっ!」

 

「わひゃ!?」

 

泡で滑るのを利用して長門の両脇から腕を差し込みたわわな果実を下から持ち上げてみる。

 

「おお!これは…スゴい…。」

 

「て、ててて、提督!?」

 

体が小さい私は長門の前に手を回すと体をくっつけないと出来ないから密着してたわわな果実を堪能する。

 

「ちょっ、や…めっ!?」

 

「まーまー♪」

 

――――――――――

 

それからたっぷりと入念に長門の体を洗った。

長門がちょっとのぼせたのかぐったりとしてきたので洗うのをやめて入浴を終えた。

 

「う~…。」

 

「あ、起きた?」

 

今は風呂場の近くにある扉から外に出た所あるベンチ(自作)に長門を寝かせて膝枕をしてる。

あ、ちゃんと寝間着を二人とも着てるよ?

 

「ここは?」

 

「ん?私の秘密の場所…かな?」

 

この場所は入渠施設の裏側になり、艦娘はほとんど来ない。

だから私はよく夕涼みに来るのだ。

 

「と言うかごめんなさい。やり過ぎたね。」

 

「っ//…いや、構わない。」

 

「消灯時間少し過ぎてるけどもうちょっとだけ休もっか。」

 

「いや、しかし…。」

 

まだ、顔の赤い長門だが困った様に私を見上げる。

 

「私もちょっとのぼせたか、ね?お願い。」

 

「……わかった。」

 

「ありがとう♪」

 

私と長門はそのまま30分ほどそのままで入浴で火照った体を冷ました。

 

「長門。」

 

「ん?」

 

「ありがとう…守ってくれるって言ってくれて。」

 

「ふっ…まかせろ。私が守ってやるさ。」

 

「ふふっ…♪」

 

―続く。




読んでくださり、ありがとうございました!

大丈夫…R-15で大丈夫なはず!!

さてさて今回はながもんとお風呂(ハート)でした(笑)
て言うか、こう言うのを書きたかったんですよ!
最初からほのぼののいちゃこらを書きたかったのにどこで間違えた…。
ま、いっか♪

さて、ほのぼのはまだ続きますよー!
次回(裏は除く)はながもんとゴートゥーベッド(布団)ですよ!
あ、エロい意味ではありません。

裏話(ながもんver)はいるかなぁ?
読者の皆さんいります?
まあ、それを含めて感想を頂けると嬉しいです♪

では、次回お会いしましょー♪


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第拾肆話 ~裏・長門視点~

どうも、ひじりです。

はい。今回も裏話です。
シリアスは暫くお休みですかねー♪

では、どうぞ。


私の計画はついに大詰めを迎えていた。

二人がやっと入れるほどの空間で密着に近い形になってしまう。

 

「ごめんなさい。狭いよね。」

 

「いや、たまにはこう言うのも悪くはないさ。」

 

「やっぱり長門は優しいね。」

 

「くっ…。」

 

私を見上げる提督の目には疑いの念など微塵もない無垢な瞳だった。

故に罪悪感で押し潰されそうになるのを必死に堪える。

 

「大丈夫?苦しそうだけど…。」

 

「ひぅ!?」

 

ふわりと私の握り拳に柔らかいものに包まれる。

それは提督の小さな手で身構えていなかった私は驚いてしまった。

 

「て、提督!?」

 

「何処か苦しいの?」

 

「だだ、大丈夫だ!!」

 

いきなりその柔らかい手でに包み込まれると言った幸せな感触をダイレクトに叩き込まれた脳は混乱する。

 

「はぁ…はぁ…んんっ……問題ない。心配してくれて感謝する。」

 

「そ、そう?なら、お風呂に入ろっか?」

 

そして、私はその混乱の中で見つけたのだ……悟りを…な。

 

「ああ、ビッグ7の名は伊達ではないぞ?」

 

「???」

 

悟りの域に達した私はもう何も心を乱されたりしないのだ。

しかし、その考えは直ぐに破滅する。

 

「とりあえず私が先に入ってるね?」

 

「ああ。」

 

提督は肘や膝などを当てないように気を付けてくれてるのはありがたい。

しかし、その代わりに小ぶりなお尻やその小さな体で考えると大きな胸が私のお腹や足に当たるのだ。

 

「あぅ…さっきからごめんなさい。」

 

「大丈夫だ。寧ろごほうb…いや、なんでもない。」

 

「?まあ、それじゃあ長門も来てね?」

 

「まかせろ。」

 

提督は引き戸を開けて中に入ったのを確認する。

先程の禁断の果実の味を絶対に忘れないように頭の中で何度も反芻する。

 

「ん、熱っ…んん~~~~はぁ~…気持ちいい。」

 

何時までも待たせるわけにはいかない。

続きは後でしよう。

私は手早く服を脱いで風呂場に入る。

 

「失礼する。」

 

「どうぞー♪」

 

中に入ると肩まで湯船に浸かっている提督がこちらを見る。

提督は私の体をまじまじと見て小さなため息を吐いている。

 

「服の上からでもわかってたけど長門はスタイルいいよね。」

 

「む?そうか?」

 

「そうだよ。羨ましいな。」

 

「そんなものなのか。」

 

提督とのやり取りの最中で自分の胸を持ち上げてみる。

こんなもの戦闘や運動の邪魔にしかならないんだがな。

 

「そうは言うが提督も中々大きい方ではないのか?」

 

「んーまあ、そうなんだけど…ほら、私は体が小さいから変に見えるで「そんなことはない!!!」ひゃぁ!?」

 

自分の体を見下ろしている少し悲しそうに呟く提督を見て私の中の何かが弾けた。

 

「確かに幼い天使達に育った胸は邪魔な物だと思ってはいたが実際見てみると考えが180度変わった!それは世の男どもが考えているような俗物なものではなく!そう!!保護欲を掻き立てられる愛らしさと聖母の様な母性を合わせ持つ日本…いや、世界の宝だ!!」

 

「は、はぁ。」

 

「私はそんな宝を守れるほど近くに存在できて神に感謝しているんだ!」

 

「う…うん。」

 

「だから言わせてくれ!私に提督を守らせてくれ!!!」

 

「え、ぁ…うん………あり…がとう?」

 

熱くなった私は提督と鼻先が触れそうな程に顔を近付けていた。

 

「はっ!?」

 

そこで私は気付いた。

今私ははなんと言った?

ロリコン丸出しの変態ではないか。

 

「…………。」

 

終わった。

いくら天使の様な提督でもこんな変態をきっと気持ち悪がるだろう。

私の目の前は真っ暗になり、その場で膝をつく。

 

「あぁ…終わった……絶対に嫌われた…こんな変態…。」

 

「な、長門?」

 

天使に嫌われたらもう生きていけない。

死のう。

今すぐに解体してもらおう。

 

「すまなかった…。」

 

「ちょっ、長門!?」

 

いきなり小さな衝撃が走る。

それと同時に私の腕がこの世の物とは思えないほどに柔らかく温かい何かに挟まれる。

 

 

「て、提督!?」

 

頭でそれを予想できたが理性がそれを否定する。

しかし、それは予想していた物だった。

提督の直に触れる胸が私の視界に飛び込む。

この状況に私の頭は一瞬でショートを起こす。

 

「何で落ち込んでるかは分からないけど落ち着いて!」

 

「あわわわわ…。」

 

ショートした頭の中では妖精見たいな容姿の沢山の私達が大至急で復旧作業をしている。

私本体は先程の光景を頭の永久保存に勤しんでいる。

 

「…………はっ!?」

 

やっと復旧作業と永久保存を終えて現実世界戻った私の視界に映ったのは白くて艶やかな髪の毛だった。

 

「あれ?ここは…って、のおぉぉ!!??」

 

「長門うるさいよ?」

 

「あ、あぁ…すまない…って、そうではなくてだな!何故こんな状態になっているんだ!?」

 

最初は何がなんだかわからなかったが温かい湯船の中で私の体に乗ってるいるのだ。

提督の柔らかいお尻が私の腰の部分に触れている。

 

「長門が酷い表情で出ていこうとしたから引き止めたらボーっとしてたの。だから今度は勝手に出ていけないように湯船に入れて私が乗ってみた。」

 

「なるほどな………理屈がおかしくないか…?」

 

「おかしくないよ。」

 

「そ、そうか。」

 

提督を押し退ける訳…いや、する気もないがな。

そんな行き場を無くしていた手を提督は肩の上から自分を抱き締めさせる様に誘導する。

 

「ん、しょ…はぁ~♪」

 

あすなろ抱きだ。

提督が直ぐに娯楽として導入したテレビでしてたものだ。

一般的に男が女を引き止めたり、深い仲等に使われるらしい。

 

「お、おい!何を!?」

 

「いーからいーから。何時までも腕を上げたままじゃ疲れが取れないよ?」

 

「だがしかし…。」

 

「私がいーからいーの。」

 

提督を引き止めたりしてるわけではない。

もしかしたら深い仲になれているのか!?

そんなことを考えていると不意に手を重ねられた。

 

「気持ちいいからこのまま居たいけどのぼせちゃうから先に体洗うね?」

 

「ああ………私が洗ってもいいか?」

 

「え?洗ってくれるの?」

 

「提督が嫌じゃなければ、だが。」

 

「んー…じゃあ、お願いしようかな。」

 

提督が湯船から出て椅子に座るのを確認して私も出て提督の後ろで膝立ちになる。

 

「……では…湯をかけるぞ。」

 

「うん。好きなようにしていいよ。」

 

「っ!?わ、わかった。」

 

好きなようにだと!?

私は動揺するが何とか押さえる。

提督の頭に湯をかけると艶やかな髪の毛は濡れて白い肌に流れる。

 

「…痒い所はないか?」

 

「ん、大丈夫。」

 

頭を洗って改めて彼女の体は小さくて儚い。

そんな彼女を壊してしまわないように慎重に洗う。

最後に湯をかけて泡を流した。

 

「次は…体を…洗うぞ…。」

 

「あ、体は手で洗って貰えると嬉しいな。」

 

「な、なななななななんだとぉ!?」

 

手!?

手だと!?

正気なのか!?

私にその美しい肌を隅々まで触っても良いと言うのか!?

 

「私の体は傷が多いでしょ?手拭いで洗うとちょっと痛いんだ。一人なら届かない所は諦めてるけど…やっぱり嫌かな?」

 

「…………そうだったのか。わかった。洗わせてくれ。」

 

「ありがとう。長門。」

 

泡立てネットがあり、ふわふわの泡を作って彼女背中に手をつける。

そんなキメの細かい肌はスベスベで私の手は震えてしまう。

 

「んふふ…長門の手…震えててくすぐったいよ。」

 

「あ、すまない。」

 

「そんな恐る恐るじゃなくても壊れたりしないから大丈夫だよ?」

 

提督の鈴の音の様に澄んだ声がクスクスと笑い私の耳に幸せをもたらす。

彼女は笑い。

私の手は震えてしまうが提督は嫌がらなかった。

湯冷めしたらいけないと思って湯をかけた。

 

「前は…自分で洗うね?」

 

「わかった。」

 

しかし、幸福な時間は終わりを告げてしまった。

それが残念でしかたない。

 

「じゃあ、湯冷めしたらダメだから長門は入っててね。」

 

「わかった。」

 

私は湯船に入って提督を見つめる。

提督は素手で体を少し雑だがちゃんと洗っていた。

そして、自分の手で胸を洗う光景は不思議といやらしい事はなくて美しかった。

私は提督の無垢さを神に感謝した。

 

「終わったよー。」

 

「ああ、わかった。」

 

提督に促されて湯船から出で椅子に座る。

 

「……どうしたんだ?」

 

「ん?さっき私を洗ってもらったから今度は私が洗ってあげるの。」

 

「なん…だと…。」

 

何時もは私の140cm位しかない提督は私の胸くらいまでで何時も見上げているが今は違う。

椅子に座るとそれが逆転して私が提督を見上げていた。

 

「洗いっこは基本だよねー。お湯かけるよ?」

 

「え?あ、ああ…。」

 

上機嫌な提督を見て断れない私は大人しく従う。

 

「長門の髪は本当に綺麗だよね。」

 

「そうなのか?あまり意識はしてないからな。」

 

「そうなんだ。髪は女の命だから大切にしないとね。流すよ?」

 

「頼む。」

 

提督は気に入ってくれたのか何度も撫でるように髪を洗ってくれていて私も今まで気にもしていなかったが少し誇らしかった。

 

「じゃあ、今度は背中洗うね?」

 

「あ、ああ…ひぅ!?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「て、提督…手拭いは?」

 

提督の小さな手が私の背中を滑ると変な声が口から漏れてしまう。

 

「まーまー気にしないで♪」

 

「だ、だがしかs…ひゃ!?」

 

手が縦横無尽に這い回り、その度に私の体は敏感に反応する。

 

「長門って…もしかしてくすぐられるの弱い?」

 

「そうだから…やめっ。」

 

「そっか♪そっか♪………ニヤリ。」

 

正直わからなかった。

私にいたずらをしてくる者も居なかったから。

 

「提督?んんっ!」

 

「まあまあ♪ちょっと我慢してねー♪」

 

楽しくなってきたのか只擽るだけではなくて緩急をつけ始めた提督に私はなす統べなく翻弄されてしまう。

そして、私の中で何が変わったのがわかった。

 

「………えいっ!」

 

「わひゃ!?」

 

不意に提督は私の脇に手を差し込む。

咄嗟に脇を絞めるが泡のせいで効果がなかった。

そして、提督の小さな手は私の胸を下から持ち上げる。

 

「おお!これは…スゴい…。」

 

「て、ててて、提督!?」

 

先程の自分で触ったら時は何も感じなかった私の体は提督の手が少し動くだけで背中に電流が流れて頭の中でバチバチと火花が散る。

 

「ちょっ、や…めっ!?」

 

「まーまー♪」

 

――――――――――

 

提督の攻めは止まらずに何度も未知の快楽が私を襲った。

そう…言葉にするなら頂き登ったみたいだった。

一回登る度に私の心は提督に染められているみたいで嬉しくて何度目かに私の意識は朦朧とし始めて湯編みは終わった。

 

「う~…。」

 

「あ、起きた?」

 

気が付くとそこは外だった。

目の前で私の見つめる提督の顔がアップで少し驚いてしまう。

 

「ここは?」

 

「ん?私の秘密の場所…かな?」

 

提督の顔の横から見える満月は綺麗で提督はもっと綺麗だった。

私の心は完全に提督に奪われて提督為なら死をも恐くはないぽどにだ。

 

「と言うかごめんなさい。やり過ぎたね。」

 

「っ//…いや、構わない。」

 

「消灯時間少し過ぎてるけどもうちょっとだけ休もっか。」

 

「いや、しかし…。」

 

私と提督の間に流れる風は優しくて私ももう少しこうしていたくなった。

それに提督の願いなら叶えよう。

 

「私もちょっとのぼせたか、ね?お願い。」

 

「……わかった。」

 

「ありがとう♪」

 

それから互いに何も言わなかったが嫌な沈黙ではなくて穏やかだった。

 

「長門。」

 

「ん?」

 

「ありがとう…守ってくれるって言ってくれて。」

 

「ふっ…まかせろ。私が守ってやるさ。」

 

「ふふっ…♪」

 

守ろう。

この身が朽ち果てるまで。

それが提督の望みなら喜んでこの身を提督に捧げる。

それが私の幸せでもあるのだからな。

 

 

私の誇りは提督だ。

 

―続く。




読んでいただいてありがとうございます。

ながもんのターン?
ながもんはいじるよりいじられる方が可愛いからです!!(確信)

感想お待ちしております♪

では、次回お会いしましょう!!


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第拾伍話

ひじりです。

ここ最近は調子がよくて早い感覚での投稿が出来て嬉しい限りです!

では、どうぞ。


私達が寮に戻ると皆は寝ていて私の布団が駆逐艦の皆に占領されており、私は長門の布団で眠った。

長門は大きくて包み込んでくれてよく眠れた。

そして、翌日から本格的に工事が始まった。

 

「中々壮観な景色だな。」

 

「そうだな。」

 

今日から一週間は長門が秘書艦になるため視察目的で安全な所から工事現場を見ている。

 

「そう言えば出撃などはどうするんだ?」

 

「ああ、それは本部が指定している毎日の任務を遂行するだけでいいから近海の哨戒のみでいい。」

 

「了解した。」

 

そして、長門は大淀に出撃などを指示しに私の元を離れていく。

私はその足で仮設の執務室に足を向けた。

 

――――――――――

 

執務をしていると扉がノックされる。

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼する。」

 

入ってきたのは長門だった。

 

「私はどこで仕事をすればいい?」

 

「そうだな…少しだけ待ってくれるか?私のが終われば席を変わろう。」

 

長門は頷いてその場に立つ。

 

私が最後の書類に判を押して仕事が終わる。

 

「終わったから変わる。」

 

「すまない。」

 

私が退いた後に長門が座って仕事をし始める。

その姿を隣でそれを見つめる。

 

長門は見つめられている事を嬉しく思いながら執務をつつけており、そんな中で提督を除いた皆で話し合った事を思い出していた。

 

――――――――――

三日前

 

「皆さんに集まってもらったのはずばり司令官さんの事なのです。」

 

そう言って声を上げたのは電だった。

今いる場所は寮の空き部屋だ。

広い部屋だが10人が入ると少し狭くて皆で円を描くように座ってる。

座ってる順番は時計回りに電、鳳翔、赤城、扶桑、私、愛宕、間宮、阿武隈、天龍、夕立の順番だ。

 

「提督の…事ですか?」

 

そう言って首を傾げるのは私の隣に座っている扶桑だ。

 

「ハイなのです。」

 

「提督がどうにかしたっぽい?」

 

夕立も犬のように首を傾げて電に問いかける。かわいい。

 

「皆さんには司令官さんの正体を見てどうおもったのです?」

 

「最初はやはり男性と思ってましたが女の子で過去の話を聞いて…私は守ってあげたくなりました。」

 

赤城は僅かに頬を朱にして答えている。

私には分かる。

赤城は既に提督に落とされているのだろう。

 

「そうねー。提督ちゃんは頑張ってきたみたいだし、幸せになって欲しいわー♪」

 

愛宕が頬に手を当ててのほほんとした声でそんな声をあげる。

 

「それには私も同感だな。」

 

「ん?長門も提督を認めたのか?」

 

私が同意すると天龍が驚いた様で聞いてくる。

 

「あれほど私達の事を思って行動しているのだ。認めない訳にはいかんだろう?」

 

実際、提督を男と思っていた時もやはり嫌悪感はあったが提督としては認めていた。

 

「他の皆さんも同じ気持ちなのです?」

 

電が再度問うと皆が頷く。

 

「提督のお陰で食事の時に皆の笑顔、笑い声で満ちている食事を提供出来るようになりましたし…私でも力になれるなら力になりたいです。」

 

そう答える間宮の目には強い意思と信頼が見てとれる。

 

「そうだな。チビども笑うようになったし感謝はしてるぜ。」

 

天龍も頷く。

 

「私もこの前の出撃したときに中破したら提督は直ぐにバケツを使ってくれて…その後に私に頭を下げて謝ってくれました。」

 

相当驚いたのか阿武隈は苦笑いを浮かべていた。

 

「司令官さんはそういう人ですから。」

 

「皆さんがそう思ってくれて嬉しいのです♪」

 

その様子を簡単に想像出来るのかクスクスと笑う鳳翔と電。

 

「夕立も提督はいい人と思うっぽい♪」

 

「ふふっ、夕立ちゃんありがとうございます♪」

 

夕立は提督が来てから早い段階でなついてはいたからもちろん同意していた。

 

「そこで本題なのです。」

 

電がそう切り出す。

 

「提督さんはちょっと抜けてる所があるのです。だから皆さんには班長になってもらってこの寮の工事が終わる間は提督の側で支えてあげて欲しいのです。」

 

「支えるってどうすればいいっぽい?」

 

「其々の寮で泊まってる時は眠るときや執務のときに側でいて欲しいのです。もちろん秘書艦もして欲しいのです。」

 

電の言葉に電と鳳翔を除いた皆が首を傾げる。

今まで心を許している二人は知っているかも知れないがまだ提督の一面しか知らない私達はわからなかった。

 

「因みに危険なのはお風呂と寝るときなのです。」

 

「それは何故ですか?」

 

電が困った様に笑ってそれに赤城が問う。

 

「司令官さんはカラスの行水なのです。」

 

「はぁ…。」

 

扶桑が生返事を返していた。

私も少し呆れてしまう。

 

「それに司令官さんは寝るときは何かに抱き付かないと中々寝付けないのです。」

 

「そ、そうなんですか?」

 

今度は間宮が困惑している。

 

しかし、私の頭の中は愛らしい寝間着を着た(イメージです)提督が私にしがみついて寝ている姿を想像してその破壊力に思わず鼻血が出そうになってしまい顔を押さえる。

 

「くっ//」

 

「うぐっ//」

 

指の間から皆を見ると私の他に赤城と天龍が私と同じように顔を押さえる。

二人は同士だった。

 

「…ふふっ♪」

 

そして、ほぼ正面に座る鳳翔の目が怪しく光るのが見えてしまった。

 

「そこで私と電ちゃんからのお願いがあります。」

 

「なのです。」

 

鳳翔がニコニコと電は少しむくれながら言葉を紡ぐ。

 

「班長の皆さんは司令官さんと一緒に寝てあげて欲しいんです。」

 

「お風呂も可能なら一緒に入ってあげて欲しいのです。」

 

なん…だと…?

 

「寝てるときに他の人に抱き付いてしまうと大変ですし、お願いできませんか?」

 

ニコニコと微笑む鳳翔はわざとらしく困った表情をしてお願いをしてくる。

 

「私は…大丈夫ですよ?」

 

「夕立も大丈夫っぽい♪」

 

「大丈夫よ~♪」

 

「少し抵抗はありますが…私も頑張ります。」

 

「私でいいなら構いませんよ?」

 

扶桑、夕立、愛宕、阿武隈、間宮がそれに応じる。

 

「三人は…大丈夫なのです?」

 

今だむくれている電は私と赤城、天龍に問いかける。

 

「俺は…大丈夫だぜ。」

 

「私も大丈夫です。」

 

「私も断る理由はないな。」

 

「なら、決まりですね♪」

 

「……なのです。」

 

鳳翔がポンっと手を叩いて喜ぶ。

電はとうとう限界がきたのか鳳翔の腕にしがみついてしまった。

 

「それでは皆さん。よろしくお願い致します。この会議は提督には内密にしてくださいね。」

 

それに私達は頷いた。

 

――――――――――

 

「提督。終わったぞ。」

 

「わかった。では、私の書類とその書類の提出をお願い出来るか?」

 

「ああ、任せろ。」

 

長門は受け取った書類を片手に執務室から出ていく。

私は長門が座っていた椅子に腰掛けて天井を見上げる。

 

「今日は暖かいなぁ。」

 

私の後ろから差し込む夕暮れ光はほのかに暖かくて眠気を誘う。

 

「ふわぁ…。」

 

欠伸をして私の意識は眠りに落ちてしまった。

 

――――――――――

 

困った。

私が書類を提出してから執務室に戻ると提督が椅子に持たれて寝ていた。

提督の寝顔は愛らしくて穢れを知らない幼子の様で私の中に芽生えた母性本能が擽られる。

本来ならばこう言った行動は注意をしなければいけないがこの無垢な天使の寝顔を邪魔するなど私には出来る筈もなく。

私は食い入るように見つめていた。

 

「ん…むにゃ…。」

 

提督が椅子の上で丸まる。

体の小さな提督は執務室にある大きな椅子の上は簡易的なベッドと変わらないらしい。

しかし、私はそこで気付いた。

 

「んん~…むぅ…うにゅ…。」

 

提督の口の端から涎が伝っているではないか。

それを見付けてしまった私はもう止まれなかった。

 

――――――――――

 

「ぅん…ん?」

 

私はゆっくりと瞼を開ける。

そこにはここ部屋に置いてあったパイプ椅子に座っている長門が腕を組んで凄くかっこいい微笑みを浮かべていた。

……鼻血を流しながら。

 

「な…なが…と…?」

 

「ん?ああ、おはよう。提督。」

 

やっぱり凄く爽やかでかっこいい微笑みをしている………鼻血を流しながらだけど。

 

「う、うん。」

 

「きっと、疲れが溜まっていたのだろうな。大丈夫か?」

 

いやいやいや。

長門こそ大丈夫なの!?

 

「な、長門。」

 

「む?どうした?」

 

少し聞くのが怖いけど私は覚悟を決めて問いかける。

 

「は…鼻血…出てるよ?」

 

「ああ、気にするな。止まらないんだ。」

 

いやいやいやいや。

そんな笑顔で答えられても。

私は立ち上がって机の上のティッシュを持って近付く。

 

「止まらないじゃないよ。大丈夫?」

 

「む、すまない。迷惑をかけてるな。」

 

そのまま数枚取り出して長門の鼻を押さえる。

長門は申し訳なさそうだがどこか幸せそうだ。

……なんで?

 

「長門も疲れてるのかな?」

 

「大丈夫だ。問題ない。」

 

長門の鼻を押さえつつ外を見ると消灯時間までは少し時間があるがもう暗くなっている。

 

「今日はもう寝よ?ね?」

 

「だが、風呂がまだだが?」

 

「また、明日の朝に入ったらいいから。」

 

「そうか。ならばそうしよう。」

 

納得してくれた長門の手を引いて寮まで戻って長門を寝かせる。

 

「また、あとで来るから寝ててね?」

 

「わかった。」

 

他の艦娘達も居るため長門にだけ聞こえるように言うと幸せそうな長門(鼻ティッシュ装着済み)が答えて私はお風呂に入りに行った。

 

――――――――――

 

「ふぅ…いい湯だった。」

 

お風呂から上がり、消灯時間も過ぎてるために音を立てないようにゆっくりと寮に入ると長門を含めて皆寝ていた。

長門の布団まで行くと長門は横向きで寝ていた。

そのまま長門の布団に入って長門の顔を見つめる。

 

「今日はどうしたんだろ?」

 

今日の長門は少しおかしかった。

どこか体調が悪いのか…心配だな。

 

「あ、そうだ。」

 

私は小さい時に体調が悪かったり、嫌なことがあった時にママによくしてもらってた事を思い出した。

 

「ん、しょ…っと。」

 

呼吸を止めてしまわないように気を付けながら長門の頭を抱き締めて片手は背中に回してゆっくりとしたリズムで優しく叩く。

そしてママがよく歌ってくれた子守唄を歌う。

 

「Schlafe, schlafe, holder süßer Knabe,

Leise wiegt dich deiner Mutter Hand,

Sanfte Ruhe, milde Labe,

Bringt dir schwebend dieses Wiegenband.

 

Schlafe, schlafe in dem süßen Grabe,

Noch beschützt dich deiner Mutter Arm,

Alle Wünsche, alle Habe

Faßt sie liebend, alle liebewarm.

 

Schlafe, schlafe in der Flaumen Schoße,

Noch umtönt dich lauter Liebeston,

Eine Lilie, eine Rose

Nach dem Schlafe werd' sie dir zum Lohn.

 

Schlafe, schlafe in der Mutter Schoße,

Noch umtönt dich holder Liebeston,

Eine Lilie, eine Rose

Nach dem Schlafe wird sie dir zum Lohn.」

 

【※和訳※】

『眠れ眠れ 母の胸に

眠れ眠れ 母の手に

こころよき 歌声に

結ばずや たのし夢

 

眠れ眠れ 母の胸に

眠れ眠れ 母の手に

暖かき そのそでに

包まれて 眠れよや

 

眠れ眠れ かわい若子

一夜(ひとよ)寝(い)ねて さめてみよ

くれないの ばらの花

開くぞや まくらべに』

 

後になって知ったがこれはシューベルトの子守唄だった。

ママの優しい声で聞くこの歌が大好きでこの歌を聞きたいが為に眠れないとママに言ったのを覚えている。

その度にママは私を抱き締めてくれて優しく背中を叩いてくれた。

 

そして最後まで歌いきってからも私が寝てしまうまで長門の背中を優しく叩き続けた。

 

そんな風に毎日を送っていたら一週間はあっという間にすぎてしまってたいた。

 

―続く。




はい。
今回も読んでくださりありがとうございました。

さてさて、今回でながもんのターンは一旦終了ですね。
次回から誰になるからわかりません!
てか、まだ決めてません!!

感想などお待ちしております!!

では、次回お会いしましょう♪


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第拾陸話

ひじりです。

楽しんでくれたら幸いです♪

では、どうぞ。


「提督。今日からは私の寮になりますね。」

 

「すまない。迷惑をかけるよ。間宮。」

 

長門の寮で一週間が過ぎて今日からは間宮の寮にお世話になる。

間宮は戦いには参加はしないが100人の艦娘が押し寄せる食堂をいくら手伝いが居るとはいえ、八割の作業は間宮がこなしている。

一言で言うならこの鎮守府の縁の下の力持ちなのだ。

そして、最近になって配属された伊良湖にここでのノウハウを教えているらしい。

 

「電ちゃんから秘書艦も担当して欲しいと言われましたので教えて頂けますか?」

 

「もちろん。構わない。」

 

適当に世間話をしながら執務室に向かう。

 

「そう言えば、食堂は誰が担当するんだ?」

 

「電ちゃんと鳳翔さんに伊良湖の三人が中心に回すらしいですよ?」

 

「そうか。それなら心配は要らないな。」

 

「はい。」

 

執務室に着いて中に入る。

 

「すまないな。狭いが少しだけ我慢してくれるか?」

 

「大丈夫ですよ。狭いところは嫌いではありませんから。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

私の椅子の隣にパイプ椅子を置いて間宮を机に向かわせる。

 

「じゃあ、教えるぞ?」

 

「はい……あの、一つお願いしてもいいですか?」

 

「ん?いいぞ?」

 

間宮は言いにくそうに両手の人差し指を合わせながらチラチラと私を見てくる。

少しして覚悟を決めたのか今度は真っ直ぐ私を見た。

 

「お、女の子の格好になって欲しいです!」

 

「…理由を聞いてもいいか?」

 

「や、やっぱり、その…まだ男の人は怖くて…その…。」

 

ん―…やっぱりまだ男の人に対しての嫌悪感は強いか…。

 

「声だけ戻すのではダメかな?」

 

「ダメ…ではないですけど、えっと…。」

 

「リスクもあるから服装は難しいかな。」

 

「そう、ですか…。」

 

凄く落ち込んでる間宮。

罪悪感が凄いよぉ…。

仕方ないかなぁ。

 

「ちょっと待ってね。」

 

「…え?」

 

私は帽子と上着を脱いでポールハンガーにかけて男装用のウィッグを外す。

 

「…これが限界かな?」

 

「ぁ…ありがとうございます!」

 

パァっと笑顔になる間宮。

そんなに男の人は嫌いなのだろうか。

まだまだ先は長いなぁ。

 

「これから少しずつ頑張ってくれる?」

 

「ぁう…は、はぃ…。」

 

思わず撫でてしまったが間宮は嬉しそうにはにかんでくれたのでよしとする。

何はともあれ今は執務室をしないと。

 

「とりあえず教えるから一緒に頑張ろっか。」

 

「はい!」

 

やはり料理をしてる間宮は記憶力などは良くて教えたら直ぐに覚えて書類を済ませる。

 

「どうですか?」

 

「………うん。記入漏れもないし、大丈夫だよ。」

 

「やった♪」

 

「ふふっ。お疲れ様。」

 

間宮は喜んでいたが私をチラチラと見てきて何か悩んでいる。

そして、自分の頭に手を当ててる。

間違えてたら恥ずかしいけど…。

 

「よく頑張ったね。」

 

「……はい♪」

 

頭を撫でると気持ち良さそうにする間宮。

良かった…間違えてなかったみたいだ。

 

「じゃあ、次は私の済ませちゃうね?」

 

「あ、はい♪」

 

間宮と場所を替わって執務を始める。

しかし、無言ってのも間宮が暇かな?

ちょっと雑談でもしよっと。

 

「間宮。質問いいかな?」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

私を見つめていた間宮は直ぐに返事をする。

 

「食堂での不具合なんかない?」

 

「そうですね…あ、そろそろ包丁とか古くなってきて幾つか交換したいです。」

 

「ん、わかった。そこの棚から申請書取ってくれる?」

 

「はい……えっと、これですか?」

 

「うん。ありがとう。」

 

間宮から申請書を受け取り書き込む。

そして、後ろにある金庫からお金を取り出して専用の財布に入れる。

 

「料理の道具なら早い方がいいよね?執務が終わって買い物に行こっか。」

 

「え!?いいんですか!?」

 

「もちろん。お昼も外で食べよっか。」

 

「はい!!」

 

それから一時間ほどで執務が終わり、時刻は昼前だ。

 

「じゃあ、この書類を提出してくれる?私も用意するから正門前で待ち合わせしよ。」

 

「はい!いってきます♪」

 

「いってらっしゃい。」

 

小走りで走っていく間宮。

あ、躓いてる。

 

――――――――――

 

「お、お待たせしましたぁ!」

 

「大丈夫だ。そんなに待っていない。」

 

正門前で間宮を待つこと10分。

いつもの割烹着のままで間宮が私に近付く。

 

「すまない。他の者には見せられないからな。今はこの姿で我慢してくれるか?」

 

「あ、はい…仕方ありませんもんね。」

 

残念そうに眉を曲げる間宮。

そんな彼女に声を元に戻して小さな声で囁く。

 

「着替えは持って来てるから安心して…ね?」

 

「っ!!はい♪」

 

瞬く間に笑顔になる間宮につられて私も笑う。

 

「では、時間が惜しいな。行こうか。」

 

「はい!」

 

私と間宮は正門の番をする門兵に声をかけてから正門をくぐる。

そして着替えるために近くの公園の公衆トイレに入る。

こういう場所で着替えるのに抵抗がある人も居るかもしれないけど私はなんともない。

着替え終わった私は間宮が待つベンチに駆け寄る。

因みに今日の服装は白いワンピースに丈が短めのデニムの上着を羽織り底がコルクの白を基調したサンダル。

春になって暖かくなってきたと言うことでお母さんがコーディネートしてくれた。

 

「お待たせ。」

 

「はぅ!?」

 

「間宮!?」

 

間宮は私を見ると額に手の甲を当てて仰け反る様に顔を背ける。

や、やっぱり変だったかな…?

私はファッション等には疎い。

服は全てと言っていいほどお母さんか電に決めてもらっている。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「はー…ふぅー…大丈夫、です。」

 

何回か深呼吸をして答えている。

そんなに変だったかな?

 

「やっぱり変だったかな?」

 

「そ、そんなことありません!」

 

間宮は私の両手を取って否定してくれた。

けど、か…顔が近いよぉ。

 

「あ、ありがとう。」

 

「はい!!」

 

まあ、いっか。

とりあえず、近場の金物屋などの調理道具がある場所は調査済みだから行かないとね。

 

「まあ、とりあえず行こっか?」

 

「はい!」

 

歩き出すと間宮は私の半歩後ろをついてくる。

むぅ…。

 

「ふぇ!?て、提督!?」

 

「今は提督じゃないよ?だから、並んで歩こ?」

 

「わ、わかりました。」

 

私は間宮の手を取って横並びになる。

間宮も嫌そうではなくて良かった。

そして、一軒目の店にはいる。

 

「わぁ…いっぱいありますね。」

 

「そうだね。値段は気にしなくていいから好きなのを選んでね?」

 

私がそう言うと間宮は一つ一つじっくりと見始める。

私も料理はする方だから間宮の隣で商品を手に取って見る。

 

「提督も…んむっ!?」

 

「今は樹で、ね?」

 

手を伸ばして間宮の口を指で押さえる。

壁に耳あり障子に目ありと言う諺の通り、人の繋がりはバカにできないものがある。

どこから私の素性がバレるかわからないから名前で呼んでもらう。

 

「い、樹…ちゃんは、料理はするのですか?」

 

「うん。するよ?でも、電やお母さんの方が美味しいから出番がないかなー。」

 

「そうだったんですか。」

 

「あ、もちろん間宮の方が私より美味しいよ?間宮の料理の味付けも私は好きだし。」

 

「す、好き!?」

 

「うわぁ!!」

 

間宮が手にしてた鍋を落としてしまう。

私は何とかそれをキャッチする。

そんなこんながあったけど何とか道具を決めてお会計をしてもらう。

 

「間宮。これ。」

 

「え?あ、はい。」

 

流石に見た目が中学生(願望)な私が十何万もする買い物をしてたら間宮が妙な目で見られるだろうと思い、こっそりと店員さんに見えないように財布を渡す。

そのまま滞りなく買い物を済ませて店を出る。

 

「て…樹ちゃん。」

 

「ん?」

 

「これ。ありがとうございました。」

 

「ああ。うん。気にしないでいいよ。」

 

間宮にお礼を言われて私は笑いかける。

そして、そのまま何軒か回って買い物が終わった。

 

「今は…ヒトゴーマルマルか。帰る前にちょっと休憩しよっか。」

 

「はい。」

 

最初に寄った公園のベンチに並んで座る。

 

「今日は楽しかったです。」

 

「そっか。いつも間宮は休み無しで働いてくれてたから喜んで貰えて良かった。」

 

間宮は食堂で働いている。

いくら手伝いが居ても間宮が丸一日休める日が無いのが現状だ。

私は申し訳なくなり、俯いてしまう。

 

「ごめんなさい。間宮にはずっと無理させてるよね。」

 

「え?無理、ですか?」

 

キョトンとする間宮。

 

「だって、間宮は食堂の仕事をまともに休めてないでしょ?」

 

「ああ、そう言うことですか。無理なんてしてませんよ?」

 

「でも…。」

 

そこで私の口を指で押さえられる。

先程私がしたように。

 

「私、嬉しいんです。」

 

間宮は私の口を押さえたまま語り出す。

 

「この鎮守府が出来て直ぐに着任しました。でも、直ぐにあの人が言いました。」

 

辛そうに顔を歪めて今にも涙が流れそうな程の悲壮が浮かんでいた。

 

「『兵器が生意気に食事をするな』って…。」

 

間宮が目を伏せて続ける。

 

「そこからは地獄でした。どんなに進言しても許可は下りずに補給の資材をそのまま出す日々でした。出されるそれを見て落ち込んで…悲しんで…泣き出す子も少なくなかっです。知ってますか?資材って凄く不味いんですよ?」

 

しかし、そこで間宮が笑顔になる。

 

「でも、貴女が来てくれました。変えてくれました。助けてくれました。私に…存在する意味を再び与えてくれました。」

 

間宮の目から涙が流れている。

その涙に悲しみの色はなかった。

瞳から涙を流しながら浮かべられた笑みはとても綺麗だった。

 

「だから…ありがとうございます。皆を…私を助けてくれて。貴女は私の恩人です。」

 

「間宮…。」

 

「私に出来ることがあったら何でも言って下さい。何でもします。」

 

間宮は私の手を握ってくる。

その手は温かかった。

 

「じゃあ…一つお願いしていい?」

 

「はい。何でも。」

 

「私も頑張るから…笑って、幸せになって欲しいな。」

 

驚く間宮の手に手を重ねて微笑む。

 

「………はい。」

 

皆幸せなんて出来ない。

 

私は無力だから。

 

でも、私の手の届く場所にいる人には幸せになって欲しい。

 

私にはそれすら出来ないかもしれない。

 

でも、この身が果てるまで必死に頑張る。

 

だから…笑おう。

 

笑顔でいよう。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました♪

今回は間宮との絡みになります。

この寮の工事のお話では三人の艦娘がメインになりますが誰かわかりますかね?

感想などあると嬉しいんです!

では、また次回お会いしましょー♪


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第拾陸話 ~裏・間宮視点~

どうも、ひじりです。

はい。
今回も安定の裏話ですね。
シリアスは暫く休憩なので気軽に読んで下されば幸いです♪

読者の方からご指摘がありました時刻についてなんですが次のお話から訂正しますので今回はそのままになってます。

では、どうぞ。


「提督。今日からは私の寮になりますね。」

 

「すまない。迷惑をかけるよ。間宮。」

 

提督今日から私の寮で泊まることになった。

正直まだ大半の艦娘の皆さんは提督の事を苦手…もしくは嫌っていますが私は悪い人には見えないです。

提督を男性の方だと思っていた頃からそう思っていました。

まだ、男性の方は怖いですが…。

 

「電ちゃんから秘書艦も担当して欲しいと言われましたので教えて頂けますか?」

 

「もちろん。構わない。」

 

そして、私は初めて秘書艦を勤めます。

給油艦である私が勤めるのは余りないと思われますが一度してみたかったのでちょっとワクワクしてます。

 

「そう言えば、食堂は誰が担当するんだ?」

 

「電ちゃんと鳳翔さんに伊良湖の三人が中心に回すらしいですよ?」

 

「そうか。それなら心配は要らないな。」

 

「はい。」

 

提督には悪いですが今回の工事で今の状態になったのに少し感謝してます。

だってお料理は好きですがたまにはこう言うしたことの無い事もしたいですから。

私は悪い艦娘なのでしょうか…。

そんな事を考えながら執務室に入ります。

 

「すまないな。狭いが少しだけ我慢してくれるか?」

 

「大丈夫ですよ。狭いところは嫌いではありませんから。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

長門さんもそうしていたと言うことで私は提督が座る椅子に腰かけます。

凄くふかふかで気持ちいいですね♪

提督は隣にパイプ椅子を設置して座ります。

 

「じゃあ、教えるぞ?」

 

「はい……あの、一つお願いしてもいいですか?」

 

「ん?いいぞ?」

 

頭では分かっていてもやはり男性の格好をした方が隣に居ると考えると少し動揺してしまいます。

ですから我が儘ですがお願いをしてしまいました。

 

「お、女の子の格好になって欲しいです!」

 

「…理由を聞いてもいいか?」

 

「や、やっぱり、その…まだ男の人は怖くて…その…。」

 

嘘ではありません。

……少し大袈裟にいいましたけど。

 

「声だけ戻すのではダメかな?」

 

「ダメ…ではないですけど、えっと…。」

 

「リスクもあるから服装は難しいかな。」

 

「そう、ですか…。」

 

やっぱりそうですよね…残念です。

でも、少し困った様な表情をした提督はフッと微笑みました。

 

「ちょっと待ってね。」

 

「…え?」

 

そうしたら提督は帽子と上着とウィッグを取って簡易的に女の子に戻ってくれました。

 

「…これが限界かな?」

 

「ぁ…ありがとうございます!」

 

そんな提督の優しさに嬉しくなってつい大きな声でお礼を言ってしまいました。

やっぱり悪い人ではないと思います。

 

「これから少しずつ頑張ってくれる?」

 

「ぁう…は、はぃ…。」

 

提督はそのまま私の頭を撫でてくれました。

いつもは甘えてくる駆逐艦の皆さんを受け止めている私は頭を撫でられる何て初めてでしたから照れてしまいます。

 

「とりあえず教えるから一緒に頑張ろっか。」

 

「はい!」

 

提督の一言で執務を開始します。

提督は丁寧に一つ一つ教えてくれて簡単に覚える事が出来ました。

 

「どうですか?」

 

「………うん。記入漏れもないし、大丈夫だよ。」

 

「やった♪」

 

「ふふっ。お疲れ様。」

 

提督が確認して不具合もなく秘書艦の執務は終わりました。

そこで駆逐艦の皆さんが頑張ったらご褒美に頭をよく撫でてあげるのですが…先程の撫でて貰った感触が忘れられずに自分で頭を触ってしまう。

 

「よく頑張ったね。」

 

「……はい♪」

 

提督はまるでお姉さんみたいにクスクスと笑いながら私の頭をまた撫でてくれました。

その小さな手の中には優しさが沢山積め込まれてて胸がじんわりと暖かくなりました。

 

「じゃあ、次は私の済ませちゃうね?」

 

「あ、はい♪」

 

次は提督の執務の番ですので場所を交代して私は提督が執務を進める姿を見つめます。

提督は私が手持ちぶさただと思ったのか話しかけてくれました。

 

「間宮。質問いいかな?」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

私は提督の丸っこい文字を見ながら返事をします。

 

「食堂での不具合なんかない?」

 

「そうですね…あ、そろそろ包丁とか古くなってきて幾つか交換したいです。」

 

「ん、わかった。そこの棚から申請書取ってくれる?」

 

「はい……えっと、これですか?」

 

「うん。ありがとう。」

 

提督に教えてもらいながら棚から紙を一枚取ります。

そこには【備品調達申請書】と書かれていました。

それを提督に渡します。

提督はサラサラと申請書に書き込むと後ろにある金庫からお金を取り出しました。

今、チラッと見えましたが結構な額が入っていたと思います。

 

「料理の道具なら早い方がいいよね?執務が終わって買い物に行こっか。」

 

「え!?いいんですか!?」

 

「もちろん。お昼も外で食べよっか。」

 

「はい!!」

 

提督とのお出掛けが楽しみで一時間位かかった執務が凄く長く感じました。

 

「じゃあ、この書類を提出してくれる?私も用意するから正門前で待ち合わせしよ。」

 

「はい!いってきます♪」

 

「いってらっしゃい。」

 

提督から預かった書類を抱えて走ります。

今日は暖かったですし、少し汗をかいてしまいましたから簡単にですが汗を流したかった私は慌てていて躓いて転けそうになってしまいました。

 

――――――――――

 

「お、お待たせしましたぁ!」

 

「大丈夫だ。そんなに待っていない。」

 

汗を流しましたがお洒落な服を持っていないのでいつもの服装です。

出来るだけ急いで支度しましたが提督は先に待ち合わせ場所に着いていました。

 

「すまない。他の者には見せられないからな。今はこの姿で我慢してくれるか?」

 

「あ、はい…仕方ありませんもんね。」

 

流石に門兵さんやお散歩をしてたりする艦娘の皆さんに見られたらいけませんから…仕方ありません。

ですが残念です。

 

「着替えは持って来てるから安心して…ね?」

 

「っ!!はい♪」

 

やっぱり優しい提督は私だけに聞こえる様にそう囁いてくれた。

私はその優しさに自然と笑顔になってしまう。

 

「では、時間が惜しいな。行こうか。」

 

「はい!」

 

提督は門兵さんに声をかけてます。

私は提督の後ろに立ってそれを見つめます。

提督と私は鎮守府から歩いて10分位の所にある公園に来ました。

今は提督か公衆トイレに入って着替えています。

着替え終わった提督の服装は白いワンピースに丈が短めのデニムの上着を羽織り底がコルクの白を基調したサンダルで春らしい格好でした。

その格好は提督に凄く似合ってて可愛いです。

 

「お待たせ。」

 

「はぅ!?」

 

「間宮!?」

 

そんな可愛い格好にヒマワリみたいに明るい笑顔を受けた私は思わず仰け反ってしまいます。

こんな妹が欲しいです。

今すぐにでもお持ち帰りしたいです。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「はー…ふぅー…大丈夫、です。」

 

ざわついた心を落ち着かせるために何回か深呼吸をします。

 

「やっぱり変だったかな?」

 

「そ、そんなことありません!」

 

提督はどこから諦めた様な表情でとんでも無いことを言います。

だから私は答えます。

否定します。

だって凄く可愛いですから。

 

「あ、ありがとう。」

 

「はい!!」

 

提督は私の勢いに驚かれてますが気にしません。

優しい提督にそんな悲しい顔なんてしてほしくないですから。

 

「まあ、とりあえず行こっか?」

 

「はい!」

 

提督の少し後ろを歩きます。

やっぱりこう言う所はちゃんとしないといけませんもんね。

 

「ふぇ!?て、提督!?」

 

「今は提督じゃないよ?だから、並んで歩こ?」

 

「わ、わかりました。」

 

しかし、提督はお気に召さなかったみたいです。

私の手を取って横並びになります。

手を握られた私は照れてしまいます。

そんなこんなしながら一軒目のお店に到着しました。

 

「わぁ…いっぱいありますね。」

 

「そうだね。値段は気にしなくていいから好きなのを選んでね?」

 

提督がそう言ってくださり私は一つ一つじっくりと商品を見ます。

どうせならちゃんとした道具で美味しい料理を出したいですから。

しかし、隣で同じ様に商品を見る提督に質問をする。

 

「提督も…んむっ!?」

 

「今は樹で、ね?」

 

提督の細い指が私の唇に触れてます。

その柔らかい指は目を閉じたら……その…き…きき…キスしてるみたいです。

そして、提督は悪戯っぽく笑ってます。

 

「い、樹…ちゃんは、料理はするのですか?」

 

「うん。するよ?でも、電やお母さんの方が美味しいから出番がないかなー。」

 

「そうだったんですか。」

 

「あ、もちろん間宮の方が私より美味しいよ?間宮の料理の味付けも私は好きだし。」

 

「す、好き!?」

 

「うわぁ!!」

 

いきなりの不意打ちに手に取っていた鍋が私の手から離れます。

そんな無垢な笑顔で好意を伝えられたら誰だってドキッとしてしまいますよ。

 

 

「間宮。これ。」

 

「え?あ、はい。」

 

お会計をしていると提督がソッと店員さんから見えないように私に財布を渡してきました。

提督は見た目が小学生高学年位に見えますから私みたいな大人を差し置いてお金を払うと変な目で見られるからと私でも理解できました。

そして、そんな小さな気遣いに嬉しくなってしまいます。

 

「て…樹ちゃん。」

 

「ん?」

 

「これ。ありがとうございました。」

 

「ああ。うん。気にしないでいいよ。」

 

提督にお礼を言うと笑いながら私の手を引いて次のお店に歩いてくれました。

私が男性ならこんな可愛いくて気遣いが出来る優しい女の子は放って起きません。

 

「今は…ヒトゴーマルマルか。帰る前にちょっと休憩しよっか。」

 

「はい。」

 

提督はお出掛けが慣れていない私を気遣って最初に来た公園のベンチで休憩をしてくれました。

 

「今日は楽しかったです。」

 

「そっか。いつも間宮は休み無しで働いてくれてたから喜んで貰えて良かった。」

 

ベンチに座ってお話をしてると不意に提督が俯いてしまいました。

 

「ごめんなさい。間宮にはずっと無理させてるよね。」

 

「え?無理、ですか?」

 

そして、私に謝ってきたのです。

私はなぜか分からずに首を傾げてしまいました。

 

「だって、間宮は食堂の仕事をまともに休めてないでしょ?」

 

「ああ、そう言うことですか。無理なんてしてませんよ?」

 

「でも…。」

 

私は提督がしてくれたのと同じ様に提督の唇を塞ぎます。

 

「私、嬉しいんです。」

 

そう。

今、私は嬉しいんですから。

 

「この鎮守府が出来て直ぐに着任しました。でも、直ぐにあの人が言いました。」

 

あの人…前の提督の顔が浮かんで嫌悪感が私の胸の中を支配します。

 

「『兵器が生意気に食事をするな』って…。」

 

あの冷たくて絶望のどん底に突き落とすかの様な声は今も私の耳から離れてくれません。

 

「そこからは地獄でした。どんなに進言しても許可は下りずに補給の資材をそのまま出す日々でした。出されるそれを見て落ち込んで…悲しんで…泣き出す子も少なくなかっです。知ってますか?資材って凄く不味いんですよ?」

 

でも、今はその絶望に突き落とされても大丈夫です。

凛とした綺麗な声…樹ちゃんの声がソッと優しく救いだしてくれますから。

 

「でも、貴女が来てくれました。変えてくれました。助けてくれました。私に…存在する意味を再び与えてくれました。」

 

その声…その笑顔に私は救われました。

私達を気遣い…そして、私達を救う為なら自分をも傷付けてしまう樹ちゃん。

 

「だから…ありがとうございます。皆を…私を助けてくれて。貴女は私の恩人です。」

 

「間宮…。」

 

「私に出来ることがあったら何でも言って下さい。何でもします。」

 

そんな樹ちゃんが私達の提督になってくれました。

 

「じゃあ…一つお願いしていい?」

 

「はい。何でも。」

 

「私も頑張るから…笑って、幸せになって欲しいな。」

 

嗚呼、樹ちゃんの優しさが私の胸の中にあった嫌悪感をどこかにやってしまいます。

 

「………はい。」

 

私は今、幸せです。

 

樹ちゃんのおかげです。

 

ですから樹ちゃんも幸せになって欲しいです。

 

こんな戦えない…家事しか出来ない私でも樹ちゃんの幸せに出来るでしょうか?

 

神様にお願いはしません。

 

そんな不確かなのではなくて私自身で幸せにしたいです。

 

ですからこれは最初の一歩です。

 

多分、今の私は涙でくしゃくしゃな顔です。

 

でも、笑います。

 

幸せになりたいから。

 

樹ちゃん…貴女を幸せにしたいから。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

そして、UA10000&お気に入り100を突破いたしました!
皆様ありがとうございます!!

はい。
今回のイベント(仮設寮へのお泊まり)なんですが一応メインにスポットを当てられる艦娘は五話(メイン三、裏二)になってましてそれ以外は三話(メイン二、裏一)となってますのでご了承ください。
……だって…全員五話してたら合計五十話になってしまいます…(泣)

えっと、今回の間宮の裏話はちょっとだけいつもと書き方を変えてみました。
気付いてくれましたかね?

では、感想などあれば嬉しいです♪

次回もお楽しみにしててください!!


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第拾漆話

ひじりです。

最近…他の小説を書いてる皆様の作品が面白くて創作意欲は湧くのに中々書けないと言うジレンマに囚われております(笑)

では、どうぞ♪


「あむっ……ん!?これ、美味しいです♪」

 

「そっか。それは良かった。」

 

間宮はお出掛けがお気に召した様であの日から既に五回目のお出掛けをしてる。

因みに今日が間宮の所に泊まる最終日だ。

 

「これはなんと言う料理なんですか?」

 

「これ?これは小籠包だよ。」

 

今は間宮と外でお昼御飯を食べてる。

間宮は和食以外は食べたことが無いらしくて私は和、洋、中、仏と様々な料理を間宮と食べた。

その度に間宮が美味しそうに食べる姿を見て嬉しくなる。

 

「どれもこれも初めての物ばかりで凄く楽しいです♪」

 

「間宮が喜んでくれて私も嬉しいな。」

 

それまでパクパクと美味しそうに食べてた間宮が不意に箸を止める。

 

「す、すみません。私一人舞い上がってしまいました。」

 

「ううん。間宮が楽しそうで私も嬉しいよ?」

 

「樹ちゃん…。」

 

嬉しそうに笑みを浮かべる間宮に私も笑顔で応える。

 

「あ、あの…。」

 

「ん?何?」

 

間宮は箸の先を加えたまま上目遣いで私を見てくる。

少しお行儀が悪いけどその姿は小さな子がおねだりをするみたいでいつもの彼女とのギャップもあり、凄くかわいい。

 

「その…樹ちゃんの手料理が食べてみたいです。」

 

「私の?」

 

「はい…。」

 

私の手料理かー。

んー…きっと間宮の作る料理の方が美味しいと思うんだけどな。

でも、間宮を見るとそのままの姿で私を見つめている。

そんな間宮は妹みたいで私の心は擽られてしまう。

 

「…ん、いいよ。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「うん。今日の夕御飯でいいかな?」

 

「はい!ありがとうございます♪」

 

パッと花が咲いたように笑顔になる間宮の頭を撫でてしまう。

間宮は嫌がらずにそれを受け入れて気持ち良さそうに目を細めていた。

 

――――――――――

 

あれから間宮と私はお出掛けを再開して夕御飯の買い物をしてから鎮守府に帰った。

 

「さてと…じゃあ、作るからちょっと待っててね?」

 

「は、はい。」

 

私は寮を優先してるためにまだ着工されていない鎮守府本館の執務室の入室許可を取り付けて私室にあるキッチンに向かう。

 

「ん、しょっと。」

 

私は自前の淡い水色のエプロンを着けて材料を取り出す。

材料はキャベツ1/4、トマト2個、きゅうり1本、卵1パック、玉ねぎ1個、鶏むね肉300gを用意する。

先にサラダを作るために外側の汚れてる葉を剥いで包丁で一ミリ幅に切る。

スライサーなんかあれば便利だけど私は持ってない。

切り終わったらボウルに入れて水に浸す。

そしてきゅうりも先端を切り落としてから輪切りにする。

トマトはへたを取ってから種を避けて果肉を切る。

こうすると種の部分の果汁が流れ出ずに綺麗になる。

後は盛り付けだけを残してメインに取りかかる。

 

フライパンに油を引いて暖めてる間に鶏むね肉を1cm位に切る。

面倒な人はウインナーとかでもいいかもしれない。

 

玉ねぎは5mmに切る。

薄くスライスしてしても悪くないと思うけど今日は人に振る舞うからちゃんとする。

 

そして、十分に温まったフライパンに玉ねぎと鶏むね肉を投入してかき混ぜながら塩、胡椒、味の素で味付けをする。

鶏むね肉は中まで火が通る頃には玉ねぎもきつね色になっており、ご飯を少しずつ分けながら入れていく。

男の人なんかは力があるから一気に入れても大丈夫なんだろうけど非力な私は分けないと綺麗に混ざらない。

そして、木ベらを2本用意して鉄板の焼きそばを焼くようにしてかき混ぜる。

非力な私みたいな女性なんかはこうすると安定して混ぜられる。

 

よく火が通ったら塩、胡椒で味を整えて弱火にしてからケチャップを入れて全体に広がるようにまた混ぜる。

これでチキンライスが完成。

お皿に入れて形を整えておく。

 

そして、一度フライパンを洗ってから水気を拭いて油を引いてまた火に掛ける。

卵を3個ずつ割ってかき混ぜる。

卵には砂糖を入れて少し甘めに味付けをしてから温まったフライパンに流し入れて手早く真ん中をかき混ぜてからオムレツにしていく。

オムレツに出来ない人はかき混ぜて半熟にしたまま火を消して余熱で少し温めるといい感じになるかな。

とりあえず火を消してオムレツをチキンライスの上に乗せる。

そして、ケチャップをかけてパセリを振りかける。

 

浸けておいたキャベツの水を切ってきゅうりとトマトと一緒にお皿に盛り付けてサラダを作る。

 

「よしっ…完成。」

 

間宮の待つテーブルに出来た料理を持っていく。

 

「わぁ…美味しそうです♪」

 

「さっ、召し上がれ。」

 

目を輝かせる間宮にスプーンを渡す。

 

「はい!いただきます♪」

 

「いただきます。」

 

間宮はスプーンでオムレツを割いて中の半熟のトロトロ卵が流れ出る。

それをチキンライスと絡めて口に運ばれて口内に収まる。

 

「あー…むっ………んん~おいひーれふ♪」

 

「そっか♪でも、お行儀が良くないよ?」

 

美味しそうに食べてくれる間宮がかわいくて頭を撫でると彼女は幸せそうな顔をする。

なんか尻尾があったら犬みたいにブンブン振ってそうで笑ってしまう。

 

「料理は逃げたりしないからゆっくり食べて、ね?」

 

「あぅ…す、すみません。」

 

また間宮の上目遣いの目が子犬みたいにうるうるとしてて凄くかわいい。

私はクスクスと笑ってしまった。

 

「んっ…うん。今日は美味しくできてる。」

 

「はい。本当に美味しいです。」

 

「ふふっ、ありがとう♪」

 

間宮は直ぐに食べ終わってしまい、凄く満足そうで良かった。

遅れて私も食べ終わる。

 

「ごちそうさまでした。」

 

「お粗末さま。」

 

間宮のお皿を重ねてシンクに持っていく。

 

「あ、洗い物は私がしますよ。」

 

「ううん。洗い物はまでがお料理だから大丈夫だよ。」

 

立ち上がる間宮を制して洗い物を始める。

 

「拭くだけでもさせてください。」

 

「じゃあ、お願いしようかな?」

 

私と間宮は横並びにシンクに立つ。

私がお皿を洗い、間宮に渡す。

間宮はお皿を受け取り、それを丁寧に拭いていく。

これはまるで…。

 

「なんか新婚さんみたいですね。」

 

「あはは…だねぇ。」

 

間宮も同じ様に思ったのか頬を赤くして照れている。

その言葉に私も照れてしまった。

今まで男の人とお付き合いしたことがない私だから分からないけど結婚がこんなにも幸せなら早く皆にこの幸せを味わって欲しいな。

 

「ねぇ、間宮。」

 

「はい…なんですか?」

 

だから間宮に聞いてみる。

 

「男の人は…やっぱり怖い?」

 

「……はい。」

 

悲しげな表情で頷く間宮を見て私も胸が締め付けられる。

 

「…でも、結婚はしてみたいです。」

 

「そうなんだ。」

 

間宮は楽しそうにそう語る。

 

「結婚…したいです♪」

 

「ん?」

 

私を見つめて微笑む間宮に微笑み返す。

それから間宮はなにも言わずに後片付けをした。

 

――――――――――

 

「提督。」

 

「どうしたの?」

 

夕御飯を食べ終えてから今日は最後と言うこともあり、一緒ににお風呂に入って近くのベンチに座ってる。

間宮や普通に座る私にもたれ掛かりながら脇の下から腕を回して抱き付いてる。

ここ最近で分かったのだが間宮は今まで甘えたりしたことがなかったからか凄く甘えん坊だった。

そんな姿がまたかわいらしくてもたれ掛かる間宮の頭を手櫛で髪を解くように撫でる。

そうしたら気持ち良さそうに目を細めて頭をグリグリと擦り付けながら甘えてくる間宮のかわいさに母性本能がきゅんきゅんと擽られてしまう。

 

「……ぅし…って……結婚は出来ないの、かなぁ…。」

 

「えっと、ごめんなさい。よく聞こえなかったよ。」

 

もしょもしょと蚊の鳴くような声で聞き取れなかったのでもう一度聞く。

間宮や恥ずかしくなったのか私の体で顔を隠してしまう。

 

「女の子…同士って………結婚は出来ないのかなって…。」

 

「女の子同士かぁ…どうかなー…。」

 

同性愛かぁ。

私はそれに抵抗は無い。

好きになったものは仕方ないし、無理矢理でなければ応援もする。

 

「日本の法律でダメみたいだね。でも私は…二人の気持ちが本当の物なら応援したいかな。」

 

「…。」

 

「多分、その道には辛いことや大変な事が沢山あるだろうけどさ…そんなのも笑い飛ばせる位に幸せになってやればいいんじゃないかなって、私は思うよ。」

 

きっと心から愛せる人とならそれくらいにならないと本当大変だと思う。

 

「だから間宮も気にしなくていいよ。」

 

「提督…。」

 

「あ、無理矢理はダメだからね?ゼッタイ!」

 

自分の顔の前で人差し指を立てて力説する。

 

「…ぷっ…ふふっ……。」

 

「あー笑うところじゃないよー?」

 

「あは…ご、ごめんなさい。」

 

「もー…。」

 

いきなり笑い出す間宮。

私は頬を膨らまして拗ねてしまった。

だって…笑わなくてもいいじゃない…。

 

それから消灯時刻までのんびりと二人で夜風で涼みながら過ごした。

間宮はどこか吹っ切れたのか凄くいい顔をしていた。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました!

そしてコラボしてみたいなーとか凄く無謀な事を考えてしまいますねぇ…。
まあ、このイベントが終わらないと書けないので暫くはお預けですねー(泣)

では、感想などありましたら言って下さい!

次回お会いしましょー♪


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第拾捌話

ひじりです。

すみません!
今回のキャラの話ではシリアスが入ってしまいました(泣)
ち、ちゃんと理由はあるんです!
理由は後書きに書いてます。

では、どうぞ。


「鳳翔。」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「すまないが今日から一週間は大本営に行かなければならなくなった。共に来てくれるか?」

 

「はい。わかりました。」

 

今日からお母さんの寮でお泊まりと思ったが大元帥からの速達が届いた。

 

「いつものでしょうか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

お母さんは少し困った様に微笑む。

いつも大本営には2・3ヵ月に一度お母さんも一緒に呼び出される。

理由も分かっているし、私とお母さんはそれを拒んだり何てしない。

 

「では、行こうか。」

 

「はい。」

 

私とお母さんは迎えに来ていた大本営の車に乗った。

 

――――――――――

 

大本営に着いた頃には夜になっていた。

 

「失礼します。」

 

「おお、よく来てくれたな。」

 

大元帥の源のおじ様が笑顔で出迎えてくれる。

私はおじ様とハグをし、鳳翔は頭を下げていた。

 

「お久しぶりです。」

 

「そうだな。息災であったか?」

 

「はい。おじ様もお元気そうでなによりです。」

 

世間話もそこそこに本題に入る。

 

「今回のも…やはりアレでしょうか?」

 

「ああ。そうだ。」

 

やはりそうだった。

おじ様も少し困った様な表情だ。

 

「すまんがまた頼めるか?いつもの部屋に居るからの。」

 

「分かりました。では、行ってまいります。」

 

「うむ。頼んだぞ。」

 

「任せてください。」

 

そう答えるとおじ様は安心したように微笑だ。

それを見届けてから部屋を出ていく。

 

「では、行こうか。」

 

「はい。」

 

――――――――――

 

私とお母さんはある部屋の前で立っている。

扉をノックしてから開ける。

 

「入るよー?」

 

「入りますね。」

 

二人とも声をかけながら中に入る。

中は真っ暗だが和室になっており、真ん中にはちゃぶ台と端には綺麗に畳まれた布団があった。

 

「……。」

 

そして部屋の隅で膝を抱えるようにしてうずくまる人影が一つあった。

 

「みーつけた♪」

 

「あらあら。また部屋を真っ暗にして…目によくありませんよ?」

 

「わひゃ!?」

 

私はその人影に飛び付くように抱き締め、お母さんは部屋の明かりをつけた。

人影が思わず笑ってしまいそうになる声をあげた。

 

「なーに暗い顔してるの?大和。」

 

「本当ですよ?」

 

「……グズッ…。」

 

私とお母さんを見て段々と呆けた顔から泣き顔になっていく。

 

「ぅ…ぅえ……おかーさぁん…おねーちゃぁん…。」

 

大和は私にしがみつくと同時にお母さんにも手を伸ばす。

 

「もー大和は泣き虫だなー。」

 

「ふふっ…仕方ない子ですね。」

 

「うわああぁぁぁぁん。」

 

本格的に鳴き始めた大和を私とお母さんが挟むように抱き締めてお母さんは背中、私は頭をそれぞれ撫でる。

それは大和が泣き止むまで続けた。

 

「どう?落ち着いた?」

 

「う、うん…。」

 

落ち着いた大和を部屋の真ん中のちゃぶ台まで誘導する。

お母さんはお茶を淹れるために席を外してる。

すると大和は私の服の裾をギュッと握り締めて離さない。

 

「私達に会えなくて寂しかったのかな?」

 

「うん…寂しかったよぉ…。」

 

「あー前にここに来たときは居なかったもんね。」

 

ついには私にもたれかかってしがみついてしまった。

ちょっと重たいけどかわいいから許しちゃう。

 

「お待たせしました…って、あらあら♪」

 

「おかーさん。」

 

「はいはい。ちょっとまってくださいね。」

 

お母さんはお茶をちゃぶ台に置いてから大和に寄り添うと大和は甘えるようにお母さんの手に手を重ねる。

 

「今日はもう遅いですから寝ましょうか。」

 

「そうだね。久しぶりに3人で寝よっか。」

 

「うん♪」

 

敷布団を2枚敷いて大和を挟むようにして3人でくっついて眠る。

私とお母さんが大和の手をそれぞれ握り、大和の体の上で私とお母さんの手を繋ぐ。

この大きな妹を守ってあげるように。

そうしたら大和は直ぐに安心した表情をしながら眠った。

 

大和がこうなった原因は人間…提督だ。

今はもうすでに解体されたがブラック鎮守府で建造された。

大和に初めて会った時は驚愕した。

何故あんな酷いことを出来るのか理解出来ない…いや、したいとも思わなかった。

 

――――――――――

 

一年前 樹20歳

 

「艦娘達の救助、ですか?」

 

「そうだ。この前解体した鎮守府の艦娘の救助に一緒に来てほしい。」

 

その日も大本営に呼ばれて護衛役としてお母さんと二人で出向いていたのだ。

 

「鎮守府が解放されたのが昨夜のことなのだが…一つ問題が出てきてな。」

 

「問題?」

 

「ほとんどの艦娘は自由を喜んで救助されたのだがな…一人だけ…まだ出来てないんだ。」

 

おじ様は顔をしかめている。

 

「まあ、見てもらった方が早いだろう。」

 

そう言って私とお母さんはおじ様に連れられてある小さな鎮守府に着く。

 

「こっちだ。」

 

おじ様は見張りをしていた兵に声を掛けてからテープで立ち入り禁止をしていたのをくぐる。

私達も同じ様にくぐって後を追う。

建物の中はいたって普通。

しかし、執務室に着いておじ様が本棚を弄ると壁がガコンっと音を立てて開く。

 

「いいか…彼女の精神は限界を越えている。くれぐれも気を付けてくれよ?」

 

「わかってます。」

 

異様な空気が流れ出ている扉を見つめて気を引き締める。

 

コツン。

コツン。

 

その扉の先には地下に続く階段があった。

そして階段を降りていく。

 

その時には既に私もお母さんも気付いていた。

この階段の先から臭ってくる異臭に。

 

これは獣臭に糞尿…そして血肉が腐った臭いだ。

 

私は込み上げてくる嘔吐感を必死に押さえ込む。

 

一番下におりるとそこにあったのは牢屋だった。

部屋の数は6。

その一番奥に進む。

そして中を見る。

 

「なんてこと…。」

 

「クズね…。」

 

お母さんは口を押さえて顔を背けてしまう。

私はギリッと歯を食い縛る。

 

中は酷かった。

眠るための毛布もなければ水道もない。

極めつけは排泄をするところもなかった。

中には至るところに糞尿がされており、少なからず血も付着している。

そんな部屋の隅で全裸の艦娘が倒れる様に横になっていた。

彼女も首と両手と両足に分厚い鉄の枷がされている。

 

「彼女は大和だ。」

 

大和。

それは技術の粋を集められた最強の艦娘。

その名を知らない者を探す方が難しいくらいに有名な艦娘だ。

しかし、そんな彼女を建造されることは奇跡に近い位のことなのだ。

 

「…入っても?」

 

「近付けば彼女は攻撃してくるぞ?」

 

「構いません。」

 

おじ様の制止を振り切り、中に入る。

後ろからお母さんも後に続く。

 

「………。」

 

体制を変えずに生気の全くない目が私を捉える。

その目には絶望をも通り越してなにもない虚無しかなかった。

でも、私は近付くのを止めない。

 

「ちかづくなああぁぁぁ!!!!」

 

大和に近付いていると急に彼女が叫ぶ。

その叫びはビリビリと私の鼓膜を突き破らんとするほどに憎悪と怒気が含まれていた。

そして、先程まで何も宿してなかった目には全てが敵と見ていると言わんばかりに憎しみの炎が燃え上がる。

 

「………。」

 

私は大和を抱き締めた。

 

「やぁぁめぇぇぇろおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

大和は叫ぶ。

拒絶する。

でも、止めない。

 

「ああぁぁぁあああぁぁぁぁ!!」

 

「ぐっ!?」

 

両手、両足に枷をされている大和は唯一出来る抵抗…私の肩に噛みついた。

ミチミチと肩から肉が切れる嫌な音が響く。

肩から生温かい血が流れて服を赤く染めていく。

 

痛い。

 

けど、大和が受けた痛みはこんな痛みとは比べられないほどなのだろう。

 

「ごめんなさい…。」

 

謝る。

どうすることも出来ないから。

 

「大丈夫ですよ…私達は貴女を傷付けたりしません!!」

 

お母さんが叫ぶ。

そして、私とで大和を挟むように反対から抱き締めている。

 

「はなせぇぇ!!はなせええええええ!!!」

 

大和は叫ぶのを止めない。

私とお母さんは大和が叫び疲れて寝てしまうまでそうしていた。

 

私もお母さんも…大和も泣いていた。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました♪

はい!
今回から鳳翔のお話になります。

さてさて、今回のお話で大和まで出した理由はですね…色々な絵師さんの画像を見てると鳳翔×大和の絡みがありましてですね。
凄く和みましてそのお話が書きたい衝動が自分を襲いました。
だから仕方なかったのです!!
ごめんなさい!

感想などお待ちしております。

では、次回お会いしましょう!


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第拾捌話 ~裏・鳳翔&大和視点~

ひじりです。

今回は二人の視点で書いております。
シリアスがもう少しだけもう少しだけ続きます。
ごめんなさい!

後、タイトル変えようかなーって、考えてます。
中々良いのが思い付かないんですが思い付いたら変えるかも知れませんのでご了承ください。


では、どうぞ。


「鳳翔。」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「すまないが今日から一週間は大本営に行かなければならなくなった。共に来てくれるか?」

 

「はい。わかりました。」

 

今日から樹ちゃんは私と共に寝泊まりをするので執務室に入ると直ぐにそう言われました。

 

「いつものでしょうか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

そろそろとは思った矢先でしたので予想が当たってしまい少し困ってしまいました。

大本営から…いえ、大元帥からと言うことは多分そう言うことなのでしょうね。

もう一人の大きな娘が待ってるなら母としては放っておけませんからね。

 

「では、行こうか。」

 

「はい。」

 

えっと、確かじーぷ…とか言う大きな車が鎮守府の前に停止してるので乗り込みました。

 

――――――――――

 

日も落ちて辺りが暗くなった頃に大本栄に到着しました。

 

「失礼します。」

 

「おお、よく来てくれたな。」

 

大きな扉を開けて中に入ると樹ちゃんは大元帥とハグをしています。

大元帥は何度か会った事がありますがこの人は本当に樹ちゃんを親族の様に可愛がってくれるので私も安心できます。

 

「お久しぶりです。」

 

「そうだな。息災であったか?」

 

「はい。おじ様もお元気そうでなによりです。」

 

二人は積もる話もあると思われるがそこそこで切り上げてしまう。

 

「今回のも…やはりアレでしょうか?」

 

「ああ。そうだ。」

 

二人とも娘の事が心配なのでしょう。

こう言う小さな事の一つ一つに艦娘に対する愛情を感じます。

 

「すまんがまた頼めるか?いつもの部屋に居るからの。」

 

「分かりました。では、行ってまいります。」

 

「うむ。頼んだぞ。」

 

「任せてください。」

 

私が扉を開けて先には樹ちゃんが部屋を出る。

そして、私も一礼してから扉を閉める。

その時の大元帥はニコニコと笑いかけていた。

本当に優しい殿方ですね。

 

「では、行こうか。」

 

「はい。」

 

――――――――――

 

何度か訪れた事のある部屋の前に到着する。

樹ちゃんがノックした後にソッと部屋に入りますね。

 

「入るよー?」

 

「入りますね。」

 

中は真っ暗でした。

もぅ…こんな暗い部屋に閉じ籠るなんて体にも心にもよくありません。

 

「……。」

 

そんな部屋の隅で大きな体を小さく折り畳む様にしている娘を見つける。

 

「みーつけた♪」

 

「あらあら。また部屋を真っ暗にして…目によくありませんよ?」

 

「わひゃ!?」

 

樹ちゃんが自分より大きな妹を元気付ける為に明るく抱き締める。

私は部屋の明かりをつけます。

あら?部屋の掃除はちゃんとしているのですね。

感心ですね。

 

「なーに暗い顔してるの?大和。」

 

「本当ですよ?」

 

「……グズッ…。」

 

あらあら。

かわいいお顔をくしゃくしゃにして…手のかかる子ですね。

 

「ぅ…ぅえ……おかーさぁん…おねーちゃぁん…。」

 

ですがそんな所がまたかわいいので私も大概なのでしょうか。

 

「もー大和は泣き虫だなー。」

 

「ふふっ…仕方ない子ですね。」

 

「うわああぁぁぁぁん。」

 

大和ちゃんが大きな声で泣いてます。

こう言う時は抱き締めてあげるのが一番ですね。

だから私と樹ちゃんで包み込んであげます。

 

「どう?落ち着いた?」

 

「う、うん…。」

 

少しして落ち着いてきた大和ちゃんを樹ちゃんに任せて私はお茶を淹れに行きます。

その時には凄く寂しそうな目で私を見つめるので少し困ってしまいました。

 

「私達に会えなくて寂しかったのかな?」

 

「うん…寂しかったよぉ…。」

 

「あー前にここに来たときは居なかったもんね。」

 

部屋に備え付けられた台所から様子を見ると早速樹ちゃんに甘える大和ちゃんが見えます。

何度か勤務中で見かけた大和ちゃんからは想像が出来ないほどの甘えん坊っぷりですね。

 

「お待たせしました…って、あらあら♪」

 

「おかーさん。」

 

「はいはい。ちょっと待ってくださいね。」

 

大和ちゃんが私に手を伸ばすので体を寄せます。

そしたら私の手を握って甘えてきます。

本当に大きいのに小さな娘みたいでかわいいです。

 

「今日はもう遅いですから寝ましょうか。」

 

「そうだね。久しぶりに3人で寝よっか。」

 

「うん♪」

 

眠るときは必ず一人一組の布団ではなくて二組の布団で密着して眠るのが私達3人の決まり事です。

こうしてると樹ちゃんが夫、私が妻で大和ちゃんが娘みたいです…って、妄想が過ぎますね。

………そうなったら…幸せ過ぎてきっと泣いてしまいますね。

 

大和ちゃんと出会えて本当に良かったです。

人間…特に男性の方は……正直、私も少し苦手です。

きっと素敵な方もいらっしゃるのでしょうが…あの惨劇を見てしまった私は男性の方が怖くなりました。

何故こんな酷い仕打ちが出来るのか…と。

 

――――――――――

 

一年前 樹20歳

 

「艦娘達の救助、ですか?」

 

「そうだ。この前解体した鎮守府の艦娘の救助に一緒に来てほしい。」

 

その日はよく晴れててお洗濯日よりな気持ちいい一日でした。

そんな中で大元帥は暗い顔をしていました。

 

「鎮守府が解放されたのが昨夜のことなのだが…一つ問題が出てきてな。」

 

「問題?」

 

「ほとんどの艦娘は自由を喜んで救助されたのだがな…一人だけ…まだ出来てないんだ。」

 

私は樹ちゃんの背中を見つめます。

ブラック鎮守府ではなく樹ちゃんと出会えた私はきっと幸せ者なのでしょうね。

 

「まあ、見てもらった方が早いだろう。」

 

大元帥が部屋を後にして外で待ってた車に乗りました。

それに私達も続きます。

 

「こっちだ。」

 

着いたのはそんなに大きくはない鎮守府でした。

外観は普通でここで酷いことがあったなんて思えません。

ですが立ち入り禁止のテープで入口を封鎖していました。

そのテープがここでおこなわれていたと物語っているようで少し気味が悪かったです。

私を含めた3人はそれをくぐり中に入ります。

 

「いいか…彼女の精神は限界を越えている。くれぐれも気を付けてくれよ?」

 

「わかってます。」

 

いつもとは違う厳格な声で大元帥が言います。

それがまた一段とここが本当にブラック鎮守府だと嫌でも理解させてきます。

 

コツン。

コツン。

 

無機質なコンクリートの階段を降りていきます。

明かりはなくて大元帥が持つライトのみが頼りになっています。

 

そして、一段…また一段と降りていく度に強くなる異臭。

先程までの普通とは世界が違うその雰囲気に飲み込まれそうになり、それでも私は樹ちゃんを守ると言う使命が正気を保ってくれる。

 

この先にあるのはきっと地獄…。

狂気と憎悪しかない場所。

私は口に溜まった唾を飲み込み後に続きました。

 

――――――――――

 

大和視点

 

「なんてこと…。」

 

「クズね…。」

 

声が聞こえた。

多分…女が2人。

でも、足音は3人だと思う。

そんなことはどうでもいい。

こんな場所に来るのはアイツ位だから…私は自分を守るだけ。

 

この場所の臭いも慣れた。

硬いコンクリートの上で寝るのも首を締め付ける枷も自由にならない両手に両足…全て諦めたら………慣れた。

 

「彼女は大和だ。」

 

男の声が私の名前を口にする。

汚らわしい…。

私の名前を呼ぶな。

 

「…入っても?」

 

「近付けば彼女は攻撃してくるぞ?」

 

「構いません。」

 

一人の女が中に入って来る。

その女は白いの軍服を着ていた。

なんだ…こいつもアイツの仲間なのか。

 

「………。」

 

私はその女を見る。

お前もなのか?

お前も私を殴るの?

蹴るの?

刺すの?

締めるの?

罵倒するの?

犯すの?

 

私を…私を……殺すの…?

 

女は止まらない。

 

「ちかづくなああぁぁぁ!!!!」

 

目の前が真っ赤に燃え上がった。

憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ。

 

そしたら言葉を発するのを放棄していた喉から信じられない程の叫び声が飛び出た。

喉が痛い。

口の中が血の味がする。

 

「………。」

 

女は私を抱き締めた。

 

「やぁぁめぇぇぇろおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

きっと酷いことをする。

だから拒絶する。

やめろ…やめて…これ以上私を苦しめないで。

 

「ああぁぁぁあああぁぁぁぁ!!」

 

「ぐっ!?」

 

噛みつく。

手も足も動かせないから女の肩に噛みつく。

女の血が私の血と混ざる。

 

温かい。

 

不思議だった。

女の体も血も温かかった。

 

「ごめんなさい…。」

 

耳元で小さな声が私の鼓膜に響く。

どうして謝るの?

 

「大丈夫ですよ…私達は貴女を傷付けたりしません!!」

 

もう一人の女が反対から私を抱き締める。

そして、叫んでいた。

でも、アイツが喚き散らしていた汚い声ではなかった。

 

「はなせぇぇ!!はなせええええええ!!!」

 

ダメだ。

頭が痛い。

何も考えられない。

だから叫ぶ。

やめて…苦しい…。

 

もう…殺して。

 

そこで私の意識は暗転した。

 

枯れていた涙が…流れていた。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

あー…自分はシリアスを書かないとやっていけない病気なのかも知れません…。
ストーリーを考えてると先にシリアスが浮かんでしまいますから…。
辛いよぉ…。

感想などお待ちしております。

では、次回お会いしましょう♪


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第拾玖話

どもっ、ひじりです。

鳳翔さんかわゆす。
マジかわゆす。

あらすじに【お知らせ】欄を追加致しました。

では、どうぞ。


彼女…大和の状態は最悪だった。

普通の人ならばとうの昔に死んでいたであろうと医者に言われた。

だけど私は思った。

逆にこんなに辛い状況でも死ねないのだ。

この子は何度死にたいと思ったのだろうか。

 

栄養失調

全身打撲

骨折4ヶ所

内蔵破裂

裂傷10ヶ所

 

ざっと見ただけでもこれだけある。

それでも死ねない。

 

私はおじ様に聞いた。

 

『クズは何処にいるの?』っと…でも、おじ様は答えてはくれなかった。

私はきっとこのクズを殺してしまうからだと言われた。

 

私は初めておじ様に掴みかかった。

おじ様は私を突き飛ばして前から消え去った。

 

自分の無力さに何度も壁を殴り付けた。

血も出たけどこの怒りは収まらなかった。

 

「あぅっ!」

 

「っ!?」

 

何度目かわからないけど殴り付けようとした拳は温かい物に包まれた。

それはお母さんの手のひらだった。

 

「ど、どうして…?」

 

「……どんな理由でも…娘が自分を傷付けるなんて…母としては許せません。」

 

握り締められた私の拳をお母さんはギュッと優しく包み込む。

 

「お母さん…。」

 

「自分を傷付けないで…お願いだから…。」

 

お母さんは私を引き寄せて抱き締める。

 

「ごめんなさい…。」

 

「いいんですよ…でも、次は許しませんからね?」

 

お母さんは凄い。

底がない程の優しさで包み込んでくれる。

それは私の中で渦巻いていた憎悪と怒気を溶かしてくれた。

 

「ねぇ…樹ちゃん。」

 

「ん?」

 

「私ね…あの子……大和ちゃんを救ってあげたいです。」

 

お母さんのそう言う言葉には強い意思を感じた。

 

「うん。助けよう。」

 

私も助けたい。

大和は何一つ悪くない。

だから私も答える。

出来るだけ強く。

 

「痛っ!!」

 

「でも…先にここの包帯を変えましょうね?」

 

お母さんが私の肩をつつく。

その痛みに私は抗議しようと顔を上げる。

 

「ふふっ……うふふふふ…。」

 

私の目の前にあったのは目が全く笑っていないお母さんの笑顔だった。

 

「くっ!!」

 

「あらあら…何処に行こうと言うのですか?」

 

お母さんから逃げようとするが既に抱き締められている私はそのまま持ち上げられてしまいどうすることも出来なくなっていた。

 

「さ…部屋に行きましょうか…。」

 

「やっ、やーだー!!はーなーしーてー!!!」

 

お母さんはそのまま私を部屋に連れ込んだ。

 

――――――――――

 

「痛っ!痛いよ!!」

 

「我慢しなさい!」

 

部屋に入ると同時に私の上半身の服を脱がされてしまった。

観念した私の包帯を取り換え始めたお母さんだけどまだ怒っていてその手つきは荒い。

 

「はい!終わりました!!」

 

「ひぐっ!?」

 

終わった瞬間に肩を叩かれて小さく悲鳴をあげてしまう。

 

「………うぅ…。」

 

「ふんっ!」

 

痛さの余り涙が目に溜まって視界がぼやけながらもお母さんを見つめるがお母さんはそっぽを向いてしまう。

 

「お母さん…。」

 

お母さんに恐る恐る手を伸ばす。

 

「…………なんですか…?」

 

お母さんの手に触れる拒絶はされずにそれを受け入れてくれて嬉しいけど…そっぽを向いたままだ。

 

「ごめんなさい…でも、あの時…大和は消えてしまいそうだったから…ああでもしないと……ダメだって思ったの…。」

 

「………………はぁ…。」

 

私は素直に気持ちを打ち明けて謝る。

お母さんはチラッと私を見てから小さなため息を吐いて私の方を向く。

 

「きっとそれは良いことなのかもしれません。でも、良いことだと言って樹ちゃん自身が傷付いていい理由にはなりませんよ?」

 

「はい…ごめんなさい…。」

 

「樹ちゃんに何かあったら私は死んでしまうほど辛いです。反省してますか?」

 

「はい…。」

 

お母さんの言葉が一つ一つ心に突き刺さる。

 

「でも、いっぱい心配させた罰を与えます。」

 

「え!?」

 

「今日は私が樹ちゃんにいっぱい甘えさせて貰いますからね?」

 

そう言ったお母さんの目には涙が溜まっていた。

その目は悲しみに揺れていた。

 

「うん。わかった。」

 

それから私はお母さんと一つの布団を敷いて横になる。

 

「樹ちゃん…。」

 

今日はお母さんが私にしがみつく。

私の体に腕を回して胸に顔を埋めて甘えるように顔を擦り付ける。

だから私はお母さんの頭を抱えて撫でる。

 

「本当に…心配したんですよ?」

 

「うん…ごめんなさい。」

 

背中に回された手が私の服をギュッと握り締めれる。

そのままお母さんは眠ってしまった。

私は何度も頭を撫で続けた。

 

――――――――――

 

大和視点

 

私は暗闇の中にいた。

上も下も何もない暗闇。

私は…死んだのかな…。

 

やっと楽になれる…そう思った瞬間に現実の世界に引き戻された。

 

「……ぅ…。」

 

目を開ける。

最初に映ったのは真っ白な天井。

 

「起きたかな?」

 

「……お前は…さっきの…。」

 

右から声が聞こえてそちらに目を向けると白い軍服の少女がそこに居た。

後ろに桜色の和服着た女も。

よく見れば艦娘かとわかった。

 

「なに…?私を苦しめに来たの…?人間は物好きね…。」

 

枷などないが体が重くて動かすのが億劫になり、皮肉だけを吐き捨てる。

すると白い女はフッと笑った。

 

「違うよ?でも…物好きには変わらないかもね。」

 

「一体何なの?何が言いたいの?」

 

笑う女を見てイライラする。

そんな私の心境を知ってか知らずか女は笑うのを止めなかった。

そして、あり得ない言葉を言った。

 

「私はね…貴女…大和を妹にしに来たの。」

 

その言葉が私の鼓膜に響いた瞬間に女に飛びかかっていた。

 

――――――――――

 

鳳翔視点

 

ガタンッ!

 

大和が樹ちゃんに飛びかかった。

しかし、それを私が止める。

 

「邪魔だ!どけぇ!!」

 

「お断りします。」

 

ガシッ!!

 

「うぐっ!」

 

彼女の両手が私の喉を捕らえる。

そして、首を閉められる。

 

「お前みたいなのに私が止められるとでも思ったの?」

 

大和ちゃんは私を見下す。

背中には樹ちゃんの怒気を孕んだ視線を感じる。

でも、手を出さない。

私がお願いしたからだ。

 

「ふ、ぐううぅぅぅ!!」

 

「え!?きゃっ!!」

 

大和ちゃんの腕を両手で掴む。

そして、ありったけの力を込める。

大和ちゃんの体は徐々に持ち上がり、驚いた彼女は私の首から手を離した時に私は彼女をベッドに投げる。

 

「きゃああ!!」

 

すかさず彼女の上に跨がる。

そして…。

 

パァン!!

 

大和ちゃんの頬を叩いた。

 

――――――――――

 

大和視点

 

頬が熱かった。

アイツに叩かれ殴られ蹴られた時は痛みと冷たさしかなかった。

呆気に取られた私が上に跨がる女を見上げる。

女は泣いていた。

目から溢れる涙が私の顔に降り注ぐ。

 

涙も熱かった。

 

何故泣いてるのだろう。

私が首を閉めたから?

 

いや、多分違う。

 

じゃあ、なんで?

 

わからない…。

 

わからないよ…。

 

――――――――――

 

樹視点

 

お母さんが泣いている。

私は大和の頭元に近付く。

大和はお母さんを見上げて固まっていた。

 

「ねぇ…。」

 

「……はい…。」

 

「どうして…泣いてるの?」

 

少しの間見つめ合っていたが大和がお母さんに問う。

お母さんはそっと赤子を抱き上げる様に大和の頭を抱き締めて答える。

 

「貴女に…いえ、娘にこれ以上誰かを傷付けて欲しくなかったから…。」

 

「わからないよ…なんで…どうして…。」

 

大和は繰り返す。

しかし、その目から涙が流れる。

だから私が右目。

お母さんが左目の涙を指で拭う。

 

「わからないなら。」

 

「知りたいなら。」

 

「理解したいなら。」

 

「教えてあげます。」

 

「だから…」

 

「「家族になろう。」」

 

私とお母さんが決めたこと。

それは大和を救いたい。

支えてあげたい。

絆を…希望をあげたい。

 

「か…ぞく…。」

 

大和はそれから泣いた。

子供の様にわんわん泣いた。

お母さんにしがみつき。

私の服を握り締めて。

 

――――――――――

 

「ん…。」

 

朝日が私を照らして目が覚める。

懐かしい夢を見た。

 

「すー…すー…。」

 

「んぅ…むにゃ……えへへ…。」

 

隣を見ると大和にお母さんが頬を寄せ合うように寝ていた。

 

「たまには姉らしいところ見せよっかな。」

 

私は布団から抜け出し、朝食を作る。

白米に味噌汁に鮭の塩焼きをちゃぶ台に並べてから二人を起こす。

 

「二人とも。朝だよ。」

 

「んっ、ぅん…。」

 

「ふにゅ?」

 

二人は寝ぼけ目で体を起こす。

 

「ほら、朝食出来てるから顔洗って来なさい。」

 

「……はぃ…。」

 

「ふぁ~…い。」

 

のそのそと二人で洗面台に向かって行く。

その間に布団を片付ける。

そして顔を洗って目を覚ました二人が帰って来る。

 

「お姉ちゃん。おはよー。」

 

「おはようございます。」

 

「ん、おはよう。」

 

挨拶をそこそこに三人でちゃぶ台を囲む。

 

「「いただきます。」」

 

「はい。召し上がれ。」

 

それぞれ思い思いに朝食に箸を付けて食べていく。

 

「おいしー♪」

 

「また腕をあげましたね。とても美味しいです。」

 

「そうかな?ありがとう!」

 

二人に褒められて舞い上がった私はやらかしてしまった。

 

「あはは。じゃあ、いつでも嫁にいけるかな♪」

 

ベキッ!!×2

 

「………え?」

 

二人を見る。

二人とも凄く笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目のハイライトが消え失せた笑顔だった。

 

 

「樹ちゃんが嫁に?そんなどこの馬の骨かわからないよ方に樹ちゃんが貰われる?」

 

「お姉ちゃんが…お姉ちゃんが男の物になる?あり得ない……許さない。」

 

「え!?ちょっ、二人とも!?」

 

「「うふふふふふふ…♪」」

 

「や…やめ……。」

 

暴走した二人は凄かったお母さんは私を押さえ込み、その間に大和は布団(一組)を敷き直す。

そして、合流して二人に目にも止まらぬ速さで服を全て剥ぎ取られて布団に放り込まれた。

 

それから…。

 

それ…から……。

 

私の意識が飛ぶほどに二人にメチャクチャにされた。

 

――――――――――

 

「う、うぅ…。」

 

起きたらもう既に夜で私達3人は全裸で凄い倦怠感が私を襲った。

両隣には幸せそうに眠るお母さんと大和。

 

「……お嫁に行けない…。」

 

私はその場で泣き崩れた。

 

そんな日が一週間続いて帰る頃にはやつれた私にツヤツヤなお母さんと大和が居た。

 

おじ様からは…。

 

「まあ、なんだ…その………つ、強く生きろよ。」

 

と励まされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに後から聞いた話では私の声は大本営の艦娘寮の隅々まで響いていたらしい。

 

………泣きたい…てか、泣く。

 

―続く。




今回も読んでいただきありがとうございました。

最後の内容を知りたいとか思った紳士諸君!
自分もメッチャ書きたかったです!!
あー!
でも、R-18になるから書けないー!!!
くっそっ!!

さてさて、今回で鳳翔&大和がヤンデレ属性を発動させたわけですが…………え?誰得?
もちろん自分の欲望ですがなにか?(笑)

そして、タイトル何にしよー。
迷います。
とりあえず、今のタイトルに(仮)を付けときますので急に変わるかも知れません。
その時はご迷惑をお掛けします。

では、感想などお待ちしております♪

また次回お会いしましょー。


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第弐拾話

どもっ!ひじりです!!

あれー?
感謝感激なんですが…今日凄くUAとお気に入り件数が増えて動揺しております。
いや、本当に飛び上がってしまうほど嬉しいのですが…動揺し過ぎて飲もうと思ったペットボトルを落としてしまい8割以上溢してしまう位でした。

まあ、とりあえず本編どーぞ♪


「ただいま。」

 

「ただいま戻りました。」

 

一週間ぶりの佐世保鎮守府に帰ってきた。

出迎えてくれたのは電と長門。

 

「ああ、おかえり。」

 

「………なのです…。」

 

とても爽やかな笑顔の長門。

とても拗ねてて頬を膨らませてる電。

対極な反応を見せる二人に私と鳳翔が苦笑いしてしまう。

 

「とりあえず、今日から「夕立っぽい!」…急に出てくるな。」

 

長門の後ろからひょっこりと顔を出した夕立が私に笑顔を向ける。

 

「そうなのか。迷惑をかけるな。」

 

「泥舟に乗った気分でまかせるっぽい♪」

 

「いや、泥舟はダメだろう。」

 

「なのです…。」

 

「あらあら。」

 

大丈夫なのかな…不安になってきたよ。

そんなまわりの反応を微塵も気にせず腰に手を当ててふんぞり返り、むふーっと鼻息をする夕立だった。

 

――――――――――

 

「……………で、どうしてこうなったの?」

 

私の目の前に広がるのは青い海、白い砂浜、輝く太陽…そして、黒いビキニタイプの水着を着て浅瀬ではしゃぐ夕立。

引き締まったお腹が丸出しになって健康的で可愛らしいおへそが顔を出している。

そのたゆんたゆん揺れてるのは本当に駆逐艦ですか?

 

「…………羨ましい……じゃなくて!!」

 

思わず首を左右にブンブンと振る。

 

「提督ぅー♪」

 

夕立はこっちに走って来る。

どことは言わないが揺れに揺れる。

その光景は女の私が見ても凄くアレだ。

そう…某正妻空母風に言うならこうだ…。

 

「流石に気分が高揚します。」

 

「???」

 

無駄にキリッとした顔の私を見てキョトンとした顔で首を傾げる夕立だがそんな事より遊びたいのか直ぐ笑顔を私に向ける。

 

「さあ、一緒に楽しみましょ!」

 

私の手を掴んでグイグイと引っ張る夕立は二の腕で夢と希望が詰まった果実を挟む。

やめて!私のライフはもうゼロだからぁ!!

 

多分だけど男なら歓喜のあまり発狂してしまうその絶景は私にはほぼゼロ距離で46cm三連装砲を被弾したくらいの威力があり、既に私の心は轟沈したよ。

 

「……ふ…ふふ…。」

 

「?????」

 

乾いた笑いを口から垂れ流す私を見てまた首を傾げる夕立は無垢その物だった。

てか、もの凄く話が脱線したけど本当に何で私は夕立と二人っきりでここに居るんだっけ?

 

――――――――――

 

一時間前

 

「提督ー夕立疲れたっぽいぃ~。」

 

「ほら、あと少しだから頑張って。」

 

「ぶぅ―…。」

 

机に顔をついてむくれる夕立は頬を膨らませて駄々をこねる。

なんだか大和に続いて二人目の妹が出来た見たいで苦笑してしまう…………まあ、大和も夕立も私よりおっきいけどね…はぁ…。

 

「頑張ったら何かご褒美がほしいっぽいー。」

 

「ご褒美?」

 

「うん!」

 

ご褒美かぁ…。

まあ…別にいいかな。

 

「いいよ。無理難題じゃなくて私に出来ることならね。」

 

「本当にいいっぽい!!」

 

ガタッと椅子から立ち上がり鼻が触れてしまいそうな位に顔を近付ける夕立。

いきなり夕立の顔がどアップになり、少し仰け反ってしまうが気にしていない模様だ。

 

「う、うん。」

 

「よーし!夕立頑張るっぽい!!」

 

それから何度か間違えたりはあったものの何とか秘書艦の業務を終わらせて夕立が伸びをしていた。

 

「んん~…はぁ。やっと終わったぽいぃぃ…。」

 

「よしよし。よく頑張ったね♪」

 

伸びをし終わって再び机に頭を乗せてだらけてる夕立の頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。

 

「んふふ~♪夕立、提督に撫でられるの好きぃ…。」

 

「そう?」

 

「ん~♪」

 

そのまま数分間撫でてたがまた急に夕立が立ち上がる。

 

「よし!じゃあ、行きましょ!!!」

 

「……え…どこに?」

 

戸惑う私を余所に夕立は満面の笑みで答える。

 

「海!!」

 

――――――――――

 

そんなこんなで海に来たんだった。

 

「……なんで…海?」

 

「………なんでだろ?」

 

まさかの自分でも分からなかった。

 

「まあ、来たものは仕方ないかな。」

 

「やっぱり提督は優しいっぽい!」

 

私は諦めて無理矢理に納得すると夕立は嬉しかったのか抱き付いてくる。

幻覚かな?

夕立のお尻に尻尾が見える。

そして、千切れんばかりに振り乱してるよ?

 

「あ…でも、私…日焼けしやすいから日焼け止め塗らないとダメなんだった…。」

 

「それは大丈夫っぽい!」

 

夕立がズイッと小さめの手提げを私の前に突き出す。

 

「鳳翔さんが持たせてくれたっぽい!」

 

「………。」

 

お母さんの用意の良さには心底驚かされる。

手提げを受けとると小さな紙が入っていてそれを手に取る。

それはお母さんからの手紙だった。

 

『樹ちゃんへ

日焼け止めとレジャーシートを入れておきます。

夕立ちゃんにちゃんと満遍なく隅々まで塗ってもらって下さい。

もし、塗り忘れがあって日焼けしたら………うふふ♪

 

追伸

電ちゃんがもの凄く拗ねています。

気を付けてくださいね?』

 

「………oh…。」

 

お母さんの手紙を見て落ち込んでしまう。

と言うかうふふってなに!?うふふって!!!

そして、電に関してはごめんとしか言えないよ。

絶対大和に私とお母さんだけで会いに行ったから拗ねちゃってるんだろうなぁ…。

 

「提督?大丈夫っぽい?」

 

「………大丈夫じゃないっぽい…。」

 

落ち込む私に夕立は慰める様に頭を撫でてくれた。

夕立の優しさが心に染みるよ…。

 

「夕立…ありがとう。」

 

「これ位お安いご用っぽい!」

 

ニコッと向日葵みたいに明るくて真っ直ぐな笑顔の夕立に癒され…。

 

「じゃあ、早速塗るっぽい♪」

 

…………ん?

 

「えっと…何を…かな?」

 

「日焼け止め!」

 

固まる私を余所に夕立はテキパキとレジャーシートを敷いて日焼け止めのオイルを取り出す。

 

「えっと…夕立?」

 

「ん?」

 

「何を…してるのかな?」

 

「何って…提督に塗ってあげるっぽい♪」

 

顔がひきつる私とニコニコとしてる夕立。

かくなる上は…。

 

ダッ!

 

「三十六計!逃げるにしk「逃がさないっぽい!」へぶっ!?」

 

ザシャアァ!!

 

背を向けて逃げ出す私だが夕立の野生的な反射神経で私を取り押さえられる。

 

「いや―!!」

 

「観念するっぽい!」

 

体の小さな私が夕立に勝てるはずもなく、そのままレジャーシートまで連行されてしまう。

 

「さあ…素敵なパーティー…始めましょ?」

 

「ひいぃ!」

 

仰向けに寝かされてマウントを取られて身動きが取れない。

しかも、ご丁寧にても足と自分の体で挟まれて抜けずに抵抗も出来ない。

そんな私を見下ろす夕立は凄くニコニコしてるのにオイルを手に付着させた手がわきわきと蠢き私は恐怖する。

 

「えいっ♪」

 

「や、やめっ!!」

 

ぺちゃ。

 

「ひゃっ!」

 

「おおー…提督の肌スベスベで気持ちーっぽい!」

 

ぬるぬると夕立の両手が私の体の上を容赦無く這い回る。

 

「んっ!ゅ…だち…ぁく…く、すぐっ……ひゃう…たぃ…。」

 

多分、顔は真っ赤になっていると自分でも分かるくらいに熱い。

奇声を大声であげる訳にもいかない私は下唇を噛んで必死に堪える。

 

「提督…。」

 

「ゅ、だ…ちぃ…。」

 

私に跨がる夕立に私は必死に目で訴える。

思いが届いたのか手が止まる。

やった!きっと通じたんだ…私は喜びに震えた。

でも…それは違った。

 

「その顔…もっと見せて?」

 

「……………え?」

 

夕立の笑顔は妖艶で目は獲物を見つけた猛禽類の様に鋭く光った。

 

結論から言う。

全身くまなくめちゃくちゃ塗られた。

何度も何度も…時間をかけて。

 

「はっ…ひぅ…。」

 

「ふぅー…満足っぽい!」

 

終わった頃にはレジャーシートの上で倒れてピクピクと痙攣する私とほくほくの夕立が隣で座ってた。

 

私ってこんなのばっかりだよぉ…しくしく…。

 

しかし…今回はやられてばかりではいけない…下克上だ!

 

「んふふー…きゃっ!?」

 

夕立の肩を引っ張り、レジャーシートに倒すと今度は私が素早くマウントを取る。

 

「ゆ・う・だ・ち・ちゃぁ~ん?」

 

「ぽ…ぽい?」

 

今の私なら私達の中で最強のお母さんでさえ倒せる気がする!

 

「お礼に…私が夕立に日焼け止め…塗ってあげるね?」

 

「ゆ、夕立は…いらないっぽい…。」

 

「ダメだよー。女の子なんだから気を付けないとー♪」

 

ちゃー…んと、お礼はしないとねぇ…ふふふ♪

 

日焼け止めのオイルを手に付着させる。

粘りけのある液体が音をたてる。

 

「ゆ、許して…ぽい…。」

 

「んー?」

 

「て…提督…。」

 

夕立は捨てられた子犬よ様な目で私を見つめる。

だが、私は止まらないよ?

 

「だーめ♪」

 

「ぽい…ぽいいぃぃぃぃ!!!」

 

私はめちゃくちゃ塗りたくった。

そして…堪能しました。

夕立の悲痛な叫び声が青い空に響き渡った。

 

――――――――――

 

「うぅ~…。」

 

めちゃくちゃ塗られた夕立はレジャーシートの上で私に背を向けて体育座りをしてすねていた。

 

「夕立ちゃーん?」

 

「…………。」

 

声をかけても返事はしてくれない。

やり過ぎちゃったかなぁ?

 

「ごめんね?つい、楽しくなっちゃって…。」

 

「知らないっぽい!」

 

「もうしないから許して、ね?」

 

後ろから夕立の頭を撫でてなだめる。

嫌われたらって思ったけど抵抗はしないから少し安心する。

 

「また…遊んでくれたら……許す…っぽい。」

 

振り返ってチラリと横目で私を見ながらそう言う夕立。

私は嬉しくなって抱き締める。

 

「もちろん!また、遊ぼう!!」

 

「……♪」

 

また、向こうを向いてしまった夕立だけどもう拗ねている様子ではない。

私は夕立が満足するまで抱き締めて頭を撫で続けた。

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました♪

今回からぽいぬですね。
ぽいぬは多分こんな感じで少しアホの子(いい意味で)だと思うわけですよ!
皆様にのイメージと違ったらごめんなさい!!

感想などありましたら自分は喜びます(笑)

では、また次回お会いしましょう♪


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第弐拾話 ~裏・夕立視点~

ひじりです。

はい。
既にお馴染みになってきました裏視点ですね。
てか、夕立を書くの凄くむずい…。
まあ、楽しんでもらえたら幸いです。

では、どーぞ♪


「ただいま。」

 

「ただいま戻りました。」

 

一週間ぶり提督が帰ってきた!

窓から提督が見えて嬉しくて走り出す。

 

「ああ、おかえり。」

 

「………なのです…。」

 

出迎えかな?

長門さんと電ちゃんが提督とお話してるっぽい。

でも、久しぶりに提督に会える夕立は押さえきれなくて飛び出す。

 

「とりあえず、今日から「夕立っぽい!」…急に出てくるな。」

 

長門さんが渋い顔で注意されてしまうけどしかたないっぽい!

だって嬉しくて仕方ないから。

 

「そうなのか。迷惑をかけるな。」

 

「泥舟に乗った気分でまかせるっぽい♪」

 

「いや、泥舟はダメだろう。」

 

「なのです…。」

 

「あらあら。」

 

夕立は余り頭は良くないけどこれ位は知ってる。

どう?

えらい?えらい?

って、みんな苦笑いしてるっぽい?

多分、間違ってないから胸を張るっぽい!

 

――――――――――

 

「……………で、どうしてこうなったの?」

 

夏用の装備があってそれに着替えていざ、海水浴!

今は夏に入って直ぐだけど今日は熱いし、海の水が冷たくて気持ちいいっぽい♪

提督の水着は真っ黒なパレオ。

なんか鳳翔さんが選んでくれたって言ってた。

いつもは可愛い提督だけど今日はなんだかちょっとセクシーでドキドキしたっぽい♪

 

「…………羨ましい……じゃなくて!!」

 

ついはしゃいじゃったけど提督の声が聞こえて手を振る。

 

「提督ぅー♪」

 

提督は夕立を見つめるだけみたいだから夕立が提督に近付く。

あれ?

なんだか提督…頭を少しだけ上下に動かしてるっぽい?

なんでだろう?

 

「流石に気分が高揚します。」

 

「???」

 

あ、なんだかキリッとした顔してるっぽい

ちょっとかっこいいかも♪

 

「さあ、一緒に楽しみましょ!」

 

折角二人で遊べるんだから一緒に遊んで欲しい夕立は提督の手を掴んで引っ張る。

そう言えば、みんな夕立の事を犬っぽいって言うけどそんな事無いっぽい!

 

あ、あれ?

提督、なんだかあわあわした後に落ち込んだっぽい!?

 

「……ふ…ふふ…。」

 

「?????」

 

力無く笑って落ち込む提督。

何でかな?

訳も分からず首を捻ってしまう。

でもでも!

夕立のワガママ聞いてくれるなんて提督はやっぱり優しいっぽい♪

 

――――――――――

 

一時間前

 

「提督ー夕立疲れたっぽいぃ~。」

 

「ほら、あと少しだから頑張って。」

 

「ぶぅ―…。」

 

難しい漢字がいっぱい並んだ紙の前で夕立は頭の中がぐちゃぐちゃになって力尽きる。

提督はそんな夕立を叱らずに頭を撫でて励ましてくれる。

提督の手で撫でられると胸がほんわかして気持ちいいなー♪

 

「頑張ったら何かご褒美がほしいっぽいー。」

 

「ご褒美?」

 

「うん!」

 

そんな優しい提督についつい甘えてワガママを言っちゃった。

 

「いいよ。無理難題じゃなくて私に出来ることならね。」

 

「本当にいいっぽい!?」

 

提督はダメとは言わずに笑顔でワガママに応えてくれた。

ご褒美が貰えるなら夕立、いっぱい頑張るっぽい!!

 

「う、うん。」

 

「よーし!夕立頑張るっぽい!!」

 

提督は夕立が間違えても叱らずにその度に優しく教えてくれて何とか終わったっぽいぃ。

 

「んん~…はぁ。やっと終わったぽいぃぃ…。」

 

「よしよし。よく頑張ったね♪」

 

だらける夕立の頭を撫でてくれる提督。

ん~…やっぱり提督の手、好き。

 

「んふふ~♪夕立、提督に撫でられるの好きぃ…。」

 

「そう?」

 

「ん~♪」

 

このままでも楽しいけどこんな天気がいい日はやっぱり外で遊ぶのが一番っぽい!

 

「よし!じゃあ、行きましょ!!!」

 

「……え…どこに?」

 

これから提督と遊べるって考えるだけで笑顔になる。

それに今日みたいな日はあそこが一番!

 

「海!!」

 

――――――――――

 

で、提督を引っ張って来た海!

 

「……なんで…海?」

 

「………なんでだろ?」

 

なんで?

理由なんてないっぽい。

 

「まあ、来たものは仕方ないかな。」

 

「やっぱり提督は優しいっぽい!」

 

提督が納得してくれて嬉しくて嬉しくて抱き付いてしまう。

提督が夕立達の提督になってくれて本当に嬉しくて仕方ない。

 

「あ…でも、私…日焼けしやすいから日焼け止め塗らないとダメなんだった…。」

 

「それは大丈夫っぽい!」

 

夕立はここに来る前に鳳翔さんに渡された手提げを提督に見せる。

 

「鳳翔さんが持たせてくれたっぽい!」

 

「………。」

 

提督が中にあった手紙を読んでるっぽい。

夕立も横から手紙を覗く。

 

『樹ちゃんへ

日焼け止めとレジャーシートを入れておきます。

夕立ちゃんにちゃんと満遍なく隅々まで塗ってもらって下さい。

もし、塗り忘れがあって日焼けしたら………うふふ♪

 

追伸

電ちゃんがもの凄く拗ねています。

気を付けてくださいね?』

 

「………oh…。」

 

あ、提督が落ち込んだっぽい。

後、鳳翔さんは怒ると怖いっぽい!

夕立も一回だけ怒られた事があるけど終始笑顔で凄く怖かった。

 

「提督?大丈夫っぽい?」

 

「………大丈夫じゃないっぽい…。」

 

落ち込む提督を元気にしたくて提督がよくしてくれる様に頭を撫でる。

提督の髪はサラサラで指の間を絡まること無く滑ってちょっと気持ちいいっぽい。

 

「夕立…ありがとう。」

 

「これ位お安いご用っぽい!」

 

でも、夕立は鳳翔さんに言われた。

『ちゃんと塗ってあげてね?』って…。

 

「じゃあ、早速塗るっぽい♪」

 

だから提督!ごめんなさいっぽい!

 

「えっと…何を…かな?」

 

「日焼け止め!」

 

提督を裏切りたくは無いけど…夕立は逆らえないっぽい!!

 

「えっと…夕立?」

 

「ん?」

 

「何を…してるのかな?」

 

「何って…提督に塗ってあげるっぽい♪」

 

けっして夕立が塗りたいとかではないっぽい…………多分。

 

ダッ!

 

「三十六計!逃げるにしk「逃がさないっぽい!」へぶっ!?」

 

ザシャアァ!!

 

提督が急に逃げ出すから捕まえる。

逃げられれば鳳翔さんに怒られるのは夕立っぽい!

 

「いや―!!」

 

「観念するっぽい!」

 

提督は軽いから抱っこをしたままレジャーシートに連れていく。

本当にちゃんとご飯食べてるっぽい?

 

「さあ…素敵なパーティー…始めましょ?」

 

「ひいぃ!」

 

提督を仰向けに寝かせて上に跨がる。

ちゃんと抵抗出来ないように手も押さえてるせいか提督が怯えた目で夕立を見上げる。

その顔を見たら夕立の中で何かのスイッチが入った。

 

「えいっ♪」

 

「や、やめっ!!」

 

ぺちゃ。

 

「ひゃっ!」

 

「おおー…提督の肌スベスベで気持ちーっぽい!」

 

提督お腹に両手でオイルを塗る。

スベスベな肌が夕立の手のひらから伝わりなんだか気持ちいいっぽい。

 

「んっ!ゅ…だち…ぁく…く、すぐっ……ひゃう…たぃ…。」

 

顔は真っ赤になってる提督は夕立から顔を背けて必死に堪えている。

その仕草が夕立の中の何かを擽る。

 

「提督…。」

 

「ゅ、だ…ちぃ…。」

 

提督が顔を背けたまま横目で夕立を見つめる。

その目は潤んでて夕立の中の何かをいとも簡単に解き放つ。

 

「その顔…もっと見せて?」

 

「……………え?」

 

きっと今の夕立は悪い子になってるっぽい。

でも、提督が悪いっぽい。

そんな目、そんな声が夕立を悪い子にしたから。

 

提督の隅々までいっぱいオイルを塗った。

塗る度に提督が可愛くて止まれなかったっぽい。

だからいっぱい時間をかけて塗った。

 

「はっ…ひぅ…。」

 

「ふぅー…満足っぽい!」

 

提督のスベスベな肌を堪能して満足っぽい♪

隣で横になってる提督はぴくぴくしてたっぽい。

 

「んふふー…きゃっ!?」

 

提督にいきなり引っ張られて倒れてしまう。

油断してた夕立に提督は夕立がしてた様に跨がる。

 

「ゆ・う・だ・ち・ちゃぁ~ん?」

 

「ぽ…ぽい?」

 

提督から怒った時の鳳翔さん見たいなオーラが見えるっぽい!?

 

「お礼に…私が夕立に日焼け止め…塗ってあげるね?」

 

「ゆ、夕立は…いらないっぽい…。」

 

「ダメだよー。女の子なんだから気を付けないとー♪」

 

『ちゃー…んと、お礼はしないとねぇ…ふふふ♪』

そんな声が聞こえた気がしたっぽいぃ。

 

あまりの雰囲気に体が震える。

て、提督が怖いっぽい…。

 

「ゆ、許して…ぽい…。」

 

「んー?」

 

「て…提督…。」

 

怖くて目に涙が溜まる。

でも、提督はそれを楽しむかの様に笑った。

 

「だーめ♪」

 

「ぽい…ぽいいぃぃぃぃ!!!」

 

夕立も隅々まで塗られたっぽい。

 

夕立の叫び声が海に響いた。

 

――――――――――

 

「うぅ~…。」

 

余りにもくすぐったくて泣いちゃったっぽい…。

恥ずかしくて提督の顔見えないっぽいー!!

 

「夕立ちゃーん?」

 

「…………。」

 

そりゃあ…夕立も悪い子になったけど…それでも提督はひどいっぽい!

 

「ごめんね?つい、楽しくなっちゃって…。」

 

「知らないっぽい!」

 

「もうしないから許して、ね?」

 

提督が夕立の頭をそっと撫でてくれる。

うー!ずるい!ずるいずるいずるいずるい!!ずるいっぽい!!!!

 

「また…遊んでくれたら……許す…っぽい。」

 

そんな事されたら怒れないっぽい…。

だけど何も無しで許すなんてなんか嫌。

 

「もちろん!また、遊ぼう!!」

 

「……♪」

 

だから、いっぱい…いーーー…………っぱい!遊んでもらうっぽい!!

ね?提督♪

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

自分の中では順調にイチャコラさせれてるつもりでけっこう満足してます(笑)

夕立が終わったら後6人…頑張るZE☆

感想などありましたら嬉しいのです♪

では、次回もお楽しみに!!


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第弐拾壱話

ども、ひじりです。
お久しぶりな気がしますね。

さて…現在少し書けなくなっている自分です。
ですから今回は少し残念な出来になっておりまする…ごめんなさい…(泣)

こんなんですが…良かったらどうぞ!


「じゃあ、オイルも塗ったし…泳ごっか♪」

 

「ぽい♪」

 

また遊ぶと約束した夕立は機嫌を直してくれて私の方を向いてくれる。

 

「よーし!どっちが速く海まで着けるか競争っぽい!」

 

「いいけど負けないよー!」

 

「夕立も負けないっぽい!」

 

立ち上がり横並びになる……ふっふっふっ…。

 

「じゃあ、行くっぽい!よー…い…。」

 

ダッ!

 

「あっ!?ずるいっぽい!!」

 

「あははは!」

 

タタタッ!!

バシャ!

 

「ゴール!」

 

「むぅー…!」

 

結果は私が半歩差で勝った。

 

「ずるいずるいー!!」

 

「ふっ…闘いとは常に非情なの。」

 

むくれている夕立に私は勝ち誇る。

まあ、ずるだけどね。

 

「提督のいじわる!」

 

バシャ。

 

「きゃっ!?やったなー!うりゃぁ!!」

 

バシャ!

 

「ひゃう!?」

 

そのまま水のかけあいを始める。

むくれていた夕立も笑顔になっていた。

私達に飛び交う海水は冷たくて初夏の日差しで火照った私の体を冷やしてくれて気持ちがいい。

 

「えいっ!えーい!」

 

バシャ、バシャ。

 

「そりゃ!うりっ!」

 

パシャ、パシャ。

 

飛び散る飛沫は輝く太陽の光が反射してキラキラと眩しい。

そして、その飛沫はお互い全身びしょ濡れになり、髪から海の水が滴り落ちる。

濡れて垂れた夕立の黄金に輝く髪を揺らして笑う姿はとても可愛らしかった。

 

「それっ!」

 

バシャ!

 

「きゃあ!?」

 

夕立が止めとばかりに両手で水をかける。

私は顔に水がかかり、思わず仰け反ってしまってしりもちをついてしまった。

うー…強いなぁ…。

 

「んふふー。夕立の勝ちっぽい♪」

 

「あはは。完敗だよー。」

 

「えいっ♪」

 

「わっ!?」

 

バチャン。

 

しりもちをついた私に夕立は甘えるように抱き付いてくる。

私の顎の直ぐ下に夕立の頭があって撫でてと言わんばかりに頭を擦り付けてくるから私は頭に腕を回して抱き締めるように撫でる。

 

「提督に撫でられるの好きー♪」

 

「私も夕立の髪は綺麗でサラサラだから撫でるの好きだよ。」

 

「そーしそーあいっぽい!」

 

「あはは♪そうだね。」

 

夕立は私を見上げて私も目線を下げて笑い合う。

なんだか犬が喋れたらこんな感じなのかなって思う。

流石はぽいぬと呼ばれる程はあるね。

この子飼いたい。

本当に切に願うよ。

 

「提督ぅ。」

 

「んー?」

 

「ごめんなさいっぽい。」

 

「えっと、どうしたの?」

 

眉をへの字に曲げて急に夕立が謝ってくる。

 

「提督が来たときいっぱいいじわるな事したっぽい…。」

 

「ああ…そんなことか。」

 

「そんなことって…そんなので済まないっぽい!」

 

「ん?済むよ?」

 

「なんで!」

 

珍しく夕立は少し怒った顔で私の言葉に噛みつく。

申し訳ないだけじゃなく、彼女なりに私を心配してくれてるのが分かる。

 

「だってさ。皆、自分や仲間達を守るのに必死だったんだよね?」

 

「うん…。」

 

「自分達を傷付けるかも知れない存在から身を守るのは当たり前だよ。」

 

「でも…。」

 

夕立が潤んだ目で私を見つめる。

その姿は捨てられた子犬みたいで母性が擽られてしまう。

 

…ちょっと。

合法ロリが何言ってるとか思った人…失礼だよ。

こんな子供みたいな私でも立派な成人だから母性だってあるもん。

 

「夕立や天龍…長門に赤城……艦娘の皆は何も気にすることないんだよ?悪いのは酷い事した奴。責任を取るのはそんな奴を野放しにしちゃった私達。わかった?」

 

「でも、でもぉ…。」

 

納得がいかないらしい夕立はごねる。

そんな夕立を見て私は可笑しくて笑ってしまう。

 

「もう…仕方ないなぁ。」

 

「うぅ…。」

 

子供をあやすように頭を撫でる。

夕立はまだ唸っているが撫でられて気持ちいいのを堪えて少し変な顔をしている。

 

「納得いかない?」

 

「うん。」

 

「んー……じゃあ、また私が大変な時に甘えさせてほしいな。それでおあいこにしよ?」

 

「うん!わかったっぽい!」

 

私がお願いをすると夕立はパッと明るい笑顔を咲かせて了承してくれた。

それがまた可愛くて夕立の頭を抱き締める。

 

「でも、今日はいっぱい遊ぼっか。」

 

「ぽい♪」

 

それから私達は言葉通りにいっぱい遊んだ。

因みに夕立は泳げるも犬かきしか出来なかった。

もう…可愛すぎて飼いたいんだけど…。

 

――――――――――

 

「夕暮れ綺麗っぽい…。」

 

「そうだね。」

 

いっぱい遊んだ私達は砂浜に座り、沈んでいく夕日を眺めている。

遊ぶのは楽しくてなんだか帰るのが少し名残惜しくしていると夕立が何も言わずに寄り添ってくれた。

 

「提督、寒いっぽい?」

 

「ちょっとだけ寒いかな。」

 

「じゃあ、こうするっぽい。」

 

風が吹いて身を震わせると夕立は私を後ろから抱き締めて体を拭くために持ってきた大きめのタオルを自分ごと私の体に被せる。

背中から伝わる温かさがじんわりと私を温めてくれる。

 

「ありがとう。夕立。温かいよ。」

 

「えへへ♪」

 

夕日は私の肩に顎を置いてニコニコと笑う。

その笑顔を見てふと思う。

どうしてこんなに私を慕ってくれるのだろうか?

そんなことを聞く勇気がない私は同じように笑って誤魔化す。

でも、いつかは聞いてみたいな。

 

私は本当に皆の為に頑張れてるかな?

 

正直、分からない。

 

怖い。

 

でも、私は皆には普通の女の子みたいに笑って欲しかった。

 

だから、頑張るしかないよね。

 

頑張れ!私!!

 

――――――――――

 

夕立視点

 

あ…提督がまたこの表情をしてるっぽい。

笑顔だけど何かを誤魔化すような…見てて少し胸がキュッて苦しくなる表情。

その顔を見るたびに思い出すのは提督が皆に初めてご飯を出した時。

あの時は時間も材料も無くてお弁当だった。

それでも久しぶり…もしくは初めてのご飯に大半の艦娘は涙を流しながら目の前のご飯を食べた。

あのお弁当はそこまで高くないって言ってたっぽい。

でも、夕立はあれが初めて食べたご飯だった。

だからあの味は二度と忘れないっぽい。

ご飯を食べてる時に不意に提督が目に入って見つめてるとそれが目に飛び込んできた。

 

提督が夕立達を見て優しく…今までに見たこともないくらいに優しく微笑んでて…でも…どこか悲しそうで…。

それを見て夕立は思ったっぽい。

 

『この人は今、心で泣いてる。』

そう思ったっぽい。

夕立は頭は良くないから説明なんて出来ないっぽい。

でも、それは夕立の中でストンってはまった。

 

それからは夕立は提督を目で追ってしまうようになったっぽい。

そしたら提督は本当に夕立達を最優先で考えてくれてるのがわかったっぽい。

その気持ちは本当に嬉しくて…でも、泣いてほしくはなくて。

夕立はバカだからどうすることも出来なくて…悔しくて…。

 

だから天龍さんに誘われて夕立は本当に嬉しかった。

提督の役にたてる。

提督を支えてあげれる。

そう考えただけで嬉しくて飛び付いてしまいそうだったけど頑張って我慢したっぽい。

皆で決めたことだから、破るのはダメっぽい。

 

そして夕立の番が来て爆発したっぽい。

もう、かまって欲しくてどうにも出来なくて気が付いたら海に来てたっぽい…って…夕立のことはどうでもいいっぽい!

 

とりあえず、夕立が言いたいのは!

…えっと………なんだっけ?

………あ!思い出したっぽい!

 

夕立は提督にもっともっと笑顔になって幸せになって欲しいっぽい!

胸が苦しくなる笑顔をじゃなくて…こう…胸が温かくなるような笑顔っぽい!

だから夕立はいっぱい頑張るっぽい♪

 

「提督♪」

 

「ん?」

 

「夕立は幸せっぽい♪」

 

「………そっか…夕立が幸せなら私も嬉しいよ。」

 

「ぽい♪」

 

あれ?

何か違う気がするっぽい?

 

まあ、今の提督の笑顔はほんわかするっぽい!

だからいいっぽい♪

 

夕立は提督をいっぱい笑顔に出来るように頑張るっぽい!

だからいーーーっぱい!遊んでね♪

提督♪

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

なぁ―!!
かーけーなーいー!!!
……はぁ…。

さてさて、今回でぽいぬさん終了になります…(泣)
次は誰だそうかなぁ…。

まあ、次回お楽しみに♪

あ…感想などあればお願いいたします!!


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第弐拾弐話 ~中休憩~

どもっ!ひじりです。

えっと…いきなりですがコラボが決まりました!!
お相手様は【女装提督の受難】のバンバニッシュF様です!!
自分みたいな者とコラボしていただき感謝感激です!!

ですが、バンバニッシュF様の子達が出れるのはまだ暫く先になりますので気長に待って頂けると嬉しいです。

では、この場をお借りして改めましてお礼を言わせて下さい。

この度は本当にありがとうございました♪

では、本編をどうぞ。


「工事の方はどうですか?」

 

「今の所は順調ですよ。」

 

今は帽子ではなくてヘルメットを被って工事中の寮の中を視察している。

中はまだほとんどの部分がコンクリートか鉄骨で無骨な感じがし、やはりまだ工事中なのもあり埃っぽくて息苦しかった。

 

「提督さんからの要望通りにテレビにネット回線、娯楽施設もちゃんと設計内に組み込まれていますよ。」

 

「ありがとうございます。本当に色々と無理を聞いて貰ってすみません。」

 

「いえ、貴女に僕達はお世話になりました。ですからこの位何でもありませんよ。」

 

「あはは…皆さんには私の事は色々とバレてるから気取ってもしかたないなぁ…。」

 

電と鳳翔の二人以外の艦娘には言わなかったがここで工事している人間の半分以上は私の地元である徳島の建設業の人達なのだ。

理由はもちろん着工を始める前に決めた条約の為に人が集まらなかった。

他人の為に自分の命を掛けれるのはいつの時代も少数派なのに少し嫌気が差す。

 

「でも、話したと思うけど艦娘の皆には私が女であることも秘密だから迂闊に話さないでね?」

 

「わかってるよ。ほんと耳にタコが出来ちゃいますよ。」

 

そう言って笑う男性は私の前に務めていた基地の近くに事務所を構える社長さんだ。

因みに5代目だと聞いた。

 

「さて、折角だから色々見て行って下さい。」

 

「もちろん見させて貰うよ。エスコートお願い出来ますか?」

 

「はい。畏まりました。」

 

そう言って二人で笑い合って視察を続けた。

 

――――――――――

 

樹が視察をしている時に今となっては使われていない倉庫に立つ三人の影がそこにはあった。

 

「……由々しき事態ですね…。」

 

「うん。」

 

「なのです。」

 

それは電、鳳翔、大和だった。

電と鳳翔はまだいいとして大和がなぜ居るかと言うと彼女から立ち上るオーラと鋭い眼光だけで深海棲艦を倒せるのではないかと思う出で立ちで大元帥に半ば強引に休日をもぎ取りここに馳せ参じていた。

流石の大元帥も最強と吟われる彼女には勝てずに許可を出したのだが樹が絡んでいることなど容易に想像が出来て心の中で樹に謝った。

 

「お母さん。」

 

「なんですか?」

 

「嫌な予感がしたから来たんだけど…最近……お姉ちゃんが男と仲良さげって…………本当?」

 

「ええ。」

 

大和の眼光もさることながら鳳翔の笑みから覗く目はどす黒く渦巻き、大和のそれさえも凌駕する程の威圧感が漏れていた。

 

「電ちゃん…あれを。」

 

「はいなのです。」

 

返事をした電が3人が囲む机に何かをばらまく。

それは写真だった。

樹と工事業者の男達と楽しそうに話をしているものばかりだった。

 

「……こいつが要注意人物なのです。」

 

「なるほどね…一目でわかったよ。」

 

大和が1枚の写真を取り上げるとそこには先程樹の視察をサポートしていた社長が樹とツーショットで写っていた。

 

「こいつの目…お姉ちゃんに色目を使ってるよね…。」

 

「そうですね…私達の可愛い樹ちゃんを目で汚しています。」

 

そこで3人が黙ってしまう。

空気は鉛のように重たくて心臓の弱い人ならこの場に居ただけで倒れてしまうであろう程の緊迫感が場を支配する。

 

「…判決は?」

 

「有罪ね。」

 

「有罪なのです。」

 

3人は頷く。

そして今からどうやって彼を樹の前から消し去るか計画を練ろうとする。

 

バァン!!

 

「こらぁぁ!!」

 

しかし、計画は練る前に破綻する。

こうなってしまった彼女達を止められる唯一の存在である樹本人の手によって。

樹は倉庫の扉を大きな音を鳴らしながら荒々しく開け放つとこれまた大きな声で怒鳴る。

 

「樹ちゃん!?」

 

「はわっ!?」

 

「お、お姉ちゃん!!」

 

もちろんバレる訳がないと思っていた3人はいきなりの本人の登場に驚愕する。

樹は視察の途中のはずなのに此処に居る訳は30分程前に遡る。

 

――――――――――

 

ピリリリリ。

 

「あ、すみません。」

 

「いえ。構いませんよ。」

 

彼に工事中の寮を視察していたが樹の携帯(機械が苦手な為にスマホを扱えない)が鳴り響いて少し彼から離れて電話を受ける。

 

「もしもし。樹です。」

 

『儂だ。』

 

電話に出ると相手は大元帥の源だった。

因みに大元帥は高齢なのにスマートフォンを使いこなしている。

 

「おじ様。どうかなされましたか?」

 

『先に謝らせてくれ。すまない。』

 

「え?どうかしたんですか?」

 

『大和が…な。』

 

嫌な予感が樹の頭の中に過る。

大和…過酷な時期があったせいか少し過激になることがある彼女はこれまでにも色々とやらかしてるのだ。

 

「………因みに…どんな感じでした。」

 

『ふむ…こうは言いたくないのだが…………殺されるかと思ったな。』

 

「失礼します!」

 

大元帥にそこまで言わせると言うことは本気でヤバい。

電話を切って社長に声をかける。

 

「すみません!急用が出来ましたので失礼します!!」

 

「あ、はい。」

 

言葉を言い終わる前に走り出す。

走ったままで携帯のボタンを押す。

すると画面に地図が表れて電と鳳翔と大和と書かれたポイントが表示された。

おじ様に頼んでボタン一つで3人の居場所がわかるようにしてもらった特注品だ。

 

「やっぱり3人集まってるし!」

 

場所は倉庫みたいだ。

そしてその場所に着いて扉を開ける。

 

バァン!!

 

「こらぁぁ!!」

 

――――――――――

 

大和視点

 

なぜここにお姉ちゃんが!?

ここには電ちゃんとお母さんの手引きで密かに来たはずだ。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

走って来たお姉ちゃんは息を荒くしてこちらを睨んでいる。

その目は怒っているのが一目でわかる。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「お仕置き。」

 

「「「へ?」」」

 

お姉ちゃんがゆらりとこちらに歩いてくる。

疲れているのかその足取りは少しふらついているが一歩一歩が重い。

そして…。

 

パァン!パァン!

 

「ひぐぅ!はうっ!?」

 

「今度は!何をしようとしてたの!!?」

 

こうなってしまったお姉ちゃんに敵うものは居らず、お尻を思いっきり叩かれる。

1番手に私。

その次は電で最後はお母さんの順番だと言われた。

私達は逃げない…否、逃げられない。

 

パァン!パァン!パァン!

 

「ごめんなさいは!?」

 

「ごめっ、ひうっ!なさぁぁい!!」

 

「もうしたらダメだからね?」

 

「うぅ…はぁい。」

 

やっと離して貰えたがお尻がヒリヒリして未だに痛い。

 

パァン!パァン!

 

「痛っ!?痛いのですぅ!!」

 

「痛いのは当たり前だよ!ごめんなさいは!?」

 

2番手の電が思いっきり叩かれていた。

うわぁ…私もされたけど痛そぉ…。

お姉ちゃんのお尻ペンペンはお母さん直伝だから容赦がなくてかなりいたいのだ。

そして、お姉ちゃんにそれを教えた本人…お母さんの番が回って来た。

 

――――――――――

 

鳳翔視点

 

「い、樹ちゃん?」

 

「お母さん。早く。」

 

「で、でも…。」

 

樹ちゃんが本気で怒っています。

過去に何度か樹ちゃんを狙うやろ…殿方を陥れてそれがバレて怒られたことはありますが今回は本気で怒ってるみたいです。

…どうしましょう。

娘達の前で娘にお尻ペンペンなんて恥ずかしくて死んでしまいます。

なんとか抵抗したいです。

 

「は!や!く!」

 

「……はい。」

 

出来ませんでした。

ここまで怒るなんて思ってもいなくて後悔してしまいます。

ですが、悪いのは私達ですから致し方ありません。

 

パァン!

 

「ひゃう!?」

 

樹ちゃんの掌が私のお尻を叩きます。

もの凄く痛いです。

 

パァン!パァン!

 

「お母さんは!止めないとダメでしょ!」

 

「ひうっ!はひぃ!」

 

樹ちゃんの叩く力は弱まる事は無く、それどころか強さを増していく。

 

パァン!パァン!パァン!

 

「ごめん!なさい!は!?」

 

「ひぐぅ!ごめんなさい!ごめんなさぁい!!」

 

やっと樹ちゃんのお仕置きが終わりました。

お尻が痛くて熱いです。

そして、3人の前に立つ樹ちゃんが私達を見つめていました。

 

――――――――――

 

電視点

 

電なのです。

お尻がいたいのです。

 

「もう…今回は何してたの?」

 

そして、今は樹ちゃんが尋問中なのです。

もうさっき程は怒ってないけど嘘や黙秘は許さないとわかるのです。

 

「だって…お姉ちゃんが男と仲良さげだったから…。」

 

樹ちゃんを守り隊のメンバーで多分精神年齢は電と変わらないと思う大和ちゃんが答えるのです。

 

「はあ…またそれかぁ…。」

 

樹ちゃんが大きなため息を吐いて呆れてるのです。

 

「提督にここの改善。雷の救出にお姉ちゃんの捜索。」

 

指折り数えて樹ちゃんがしてることを数えていく。

 

「こんなにすることがあるのに悠長に恋愛をしてる暇なんてないよ。」

 

少しむくれてそう答えてるのです。

かわいいのです。

 

「電?聞いてる?」

 

「は、はいなのです!」

 

そんなことを考えてたら怒られちゃったのです。

反省なのです。

 

「もう…3人とも…変な心配は要らないから。」

 

「「「…はい。」」」

 

樹ちゃんが電達を抱き締めるのです。

 

「私はどこも行かないからみんなと居るから、ね?」

 

そんな優しいことを言われたら嬉しくて泣いてしまうのです。

ずるいのです。

もっともっと樹ちゃんを好きになっちゃうのです。

 

「さ…今日は四人で外食でもしよっか?」

 

「はい。」

 

「うん!」

 

「なのです♪」

 

この後、皆でご飯を食べに行ったのです。

ファミレスなのです。

ハンバーグなのです♪

凄く美味しかったのです♪

 

―続く。




この度は読んで頂きありがとうございました。

なにも言わないでください!
わかってます…わかってるんです!
今回の話はコラボ告知の為だけに書いたんでメチャクチャなのはわかってるんですよぉぉぉ!!!(泣)
うぅ…本当にすみませんでしたぁ…。


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第弐拾参話

皆様お久しぶりでございます。
ひじりです。

そして大変申し訳ありませんでした。
全く書けない日々が続いておりました(泣)
ですが、ついに…ついに!
完全とは言えませんが復活を果たしました!!

では、微妙かもしれませんがどうぞ(笑)


「提督。これでよろしいですか?」

 

「どれどれ……うん。大丈夫だよ。」

 

「色々と丁寧に教えてくださり、ありがとうございます。」

 

「これ位いいよ。」

 

ホッと息を吐いて椅子に持たれるのは赤城だ。

いつもは凛とした彼女のそんな仕草は珍しくて少し笑ってしまう。

 

「どうかなされましたか?」

 

「ううん。何でもないよ。それより、今日からよろしくね。」

 

夕日の所に泊まって一週間を過ごして今日から赤城が私を泊めてくれる予定になってる。

私がこの鎮守府に来た当初は赤城は他の皆と同じ様に必用以上に私と接しようとはしなかったが女と分かり、絶対に危害を加えないとわかった今では色々と気にかけてくれているみたい。

 

「少し休憩しよっか。飲み物はお茶でいい?」

 

「あ、私がします。」

 

「いいから座ってて。慣れないことして疲れたでしょ?」

 

「でも…。」

 

「いーから。座ってて。」

 

立ち上がる赤城を座らせてポットでお茶を入れる。

いくら暑くてもやっぱり温かいお茶は外せないよね。

 

「はい。どうぞ。」

 

「ぁ…す、すみません。」

 

流石に上司になる私がお茶を入れたから申し訳ないのかな?

恐縮してる赤城の隣にあるパイプ椅子に腰掛ける。

赤城は私が渡したお茶を見つめているままだ。

 

「次からはお願いしてもいいかな?」

 

「っ!は、はい!」

 

流石にそのままではいけないと思ってお願いをすると赤城は元気よく返事をするから私はニッコリと笑って頷く。

 

「あ…茶柱。」

 

「本当ですね。」

 

頷いた拍子に湯飲みの中で浮かぶ茶柱が目に入る。

赤城も隣から覗き込んで来て顔が近くなるとフワリと優しくて少し甘い匂いが鼻腔を擽る。

それは赤城の髪から漂ってきていた。

隣に目を移すと赤城と目が合う。

 

「どうかしましたか?」

 

「ううん。何でもないよ。」

 

「?」

 

お茶を飲んで一息つくと1枚の書類が目に入る。

書類には【現在使用していない倉庫について】と記されており、提案者は夕張みたいだった。

 

「なになに…。」

 

「ああ…昔使われてた倉庫ですか。」

 

「知ってるの?」

 

「はい。何でも深海棲艦が出没した当初に攻撃を受けない様にと奥まった所に建てられたみたいなんですが、私達艦娘が出現してからは立地が余りよくないとかで使用されなくなったみたいですよ?」

 

赤城の説明を聞きながら書類に目を通すと同じ事が書かれていて、夕張はこの機会に取り壊してはどうかと言うことだった。

 

「なるほど…これは一度この目で確かめないといけないかな。」

 

「それならお供しますよ。」

 

「本当?ありがとう。赤城。」

 

「いえ、これ位お安いご用です。」

 

正直に言うと昼間とはいえ、使われていない廃倉庫に一人でなんて怖くて仕方がなかった。

でも、赤城が共に来てくれるとの事でかなり心強い。

そんな訳で私と赤城は倉庫に向かう。

場所的にはさほど遠くもなくて歩いて30分でそこにたどり着いた。

外見はまだそこまでは傷んではいる様子は無いが場所は現在の鎮守府から少し林に入った先にあって周りは木々に囲まれてる。

それに加えて鎮守府からは少し離れている上に小高い丘の上にあるために物資を取り出したりするのも手間になりそうだと直ぐにわかった。

 

「これがそうなの?」

 

「はい。昔は食料庫や資材庫として活用していたみたいです。」

 

「確かに余り良い立地では無さそうだね。」

 

「そうですね。取り壊すにもお金がかかるみたいでそのまま放置されているみたいです。」

 

「仕方ないとはいえ…世知辛いねぇ。」

 

「提督…何だかお婆ちゃんっぽいですよ?」

 

赤城とのやり取りをそこそこに大きな門の鍵を開ける。

そのまま扉を開けようと力を込めるが重たい上に錆び付いているのもありびくともしない。

 

「ぬぅぅぅ!!」

 

「だ、大丈夫ですか?私が開けましょうか?」

 

「はぁ、はぁ…お、お願い…。」

 

「はい。」

 

赤城がにこやかに返事をして私と場所を交替する。

艦娘は艤装がなければ本来の力の半分も出せないがその半分の力でも屈強な男の力を凌駕し、自動車位ならば軽々と持ち上げる。

普通なら身の回りの物を色々と破壊してしまうだろうし、なにより自身の体も壊れてしまう。

しかし、それならばなぜ私生活に支障が出ないか…それは妖精の加護があるからだ。

妖精達は単独では長くは生きれない…そこで彼女達、艦娘に憑依させて貰って命を繋いでいる。

そして代わりに加護と言う名の力で彼女達を護っているのだ。

まあ、長々と話したけどつまり…。

 

「えい!」

 

ガラガラ。

 

艦娘の力を持ってすればこんな扉は意図も簡単に開くわけだ。

 

「おおー流石だね。ありがとう。」

 

「この位朝飯前ですよ。」

 

にこやかに笑いながら力こぶを作る赤城だがその腕は細くて成人男性を優に越えた力があるとは思えない。

まあ、そんなこんなで扉を開けてくれた赤城に感謝をして本題に取りかかるかな。

 

「それじゃあ、中を確認してみよっか。」

 

「はい。ダメ!慢心!」

 

「………どしたの?」

 

「はっ!?い、いえ…何やら言わなければいけない気がして…。」

 

「???」

 

「と、とりあえず中に入りましょう。中に。」

 

赤城に背中を押されて中に入った。

中は暗くて持って来ていた懐中電灯の灯りをつける。

灯りの先に見えるのは木箱が数個。

 

「何かあるみたいですね。」

 

「だね。ちょっと中身を確認してみよっか。」

 

木箱の大きさは大体1m四方でそこまで大きくはないが大人一人で持つには大きすぎで、まだ艦娘が居ない時って聞いたから人力で運んだのかな?

そんな木箱の上は埃が溜まっていたけど異臭などは無いが外側から叩くと中身は詰まっているのか音は響かない。

 

ガラガラ…ガシャン。

 

ガチャ。

 

ん?

今、なんか変な音がしたよーな。

そしてさっき聞いた事があるんだよなー。

 

「て、提督!」

 

「………どう…したの?」

 

いや、まさかねー。

そんなわけないよねー。

 

「と、扉が…。」

 

「……うん。」

 

「し…。」

 

「し…?」

 

いやいやいや。

『し』ってあれでしょ?

しんだい(阿波弁で疲れた)とか…しわしわ(阿波弁でゆっくり)とかそう言う事を言いたいんでしょ?

そうだよね?よね?

…お願いだからそう言って?ね?

 

「閉まってしまいました…。」

 

「…………oh…。」

 

ですよねー?

いや、分かってたよ?

けど信じたくない事ってあるじゃない?

 

「ど、どうしましょう。」

 

赤城が珍しくあわあわとしてて困惑状態になっている。

私は現実逃避を止めて赤城に向き合う。

 

「とりあえず、落ち着いて。」

 

「は、はい。」

 

「携帯は執務室に置いてきちゃったから誰かが見付けてくれるのを待とう。」

 

「はい。わかりました。」

 

「後は…何かないか調べてみよ?木箱の中に食糧とか役立つものがあるかもしれないし。お願い出来る?」

 

赤城にお願いして木箱を開けてもらってる間に私は予備のペンライトで辺りを散策しながら状況を整理する。

携帯は無くて連絡は取れないから捜索隊、もしくは通りかかった誰かに見付けて貰わないといけない。

赤城は現在艤装をメンテナンスをしてるために妖精の加護が弱まっていて扉や壁をぶち破るのは出来ても赤城も大怪我をしてしまうから却下。

後は木箱の中身だけど私の予想が正しければ中身に食糧がある可能性は高い。

何せ艦娘が出現したから放置したなら不要と見なされたものは?

それは大量の人を乗せた軍艦では大量に必要だった非常食だろう。

何せ何十人もで動かしてた軍艦に比べて艦娘は一人でそれを上回るのだから戦時が激化してた時に態々ここから運び出すか?

いや、そんなことに労力を回すなら他の事に回すだろう。

それ位に人類は追い詰められていたのだから。

 

「提督!食糧!食糧がありましたよ!」

 

「本当?良かった!」

 

やっぱりあった。

中身はまだわからないけど食糧があるなら水もあるかもしれない。

 

――――――――――

 

結果から言うと食糧は乾パンと缶詰が木箱の中に沢山あった。

水も同じだ。

他には鋼材に弾薬。

ボーキサイトはなかったのは助かった。

 

「なんとか餓えずにすむね。」

 

「はい♪」

 

これだけあれば暫くは大丈夫だね。

それに寝るのも余り綺麗ではないけど毛布も1枚見付けたから安心だしね。

 

「提督…。」

 

「ん?」

 

「やっぱり私が扉を「ダメ。」ですが…。」

 

赤城は自分が大怪我をするのを厭わずに扉を壊す気だ。

でも、私はそんなのは許さない。

 

「ダメだからね?絶対に許さないから。」

 

「うぅ…わかりました。」

 

しゅんと落ち込む赤城の頭を背伸びして撫でる。

 

「私は大丈夫だから。食糧も水もあるし、気長に待とうよ。」

 

「…はい。」

 

まだ落ち込んでる赤城に微笑みかける。

私が居なくなればお母さんや電…それに他にも何人かの艦娘が気付いてくれる筈だから心配はしていない。

それに一人では無くて赤城も居るし、私は助けが来るまで何をしようかと考える事にした。

 

―続く。




読んで頂きありがとうございました。
あー…マジで書けなかったぁ…。
かなり辛い日々でしたよぉ。

話は変わりまして今回のお話なんですが、余りイチャコラはなかったですが今回は前置きになりますから安心してください。
次の話…あ、裏話は除きますよ?
次はたんまりとイチャコラさせるつもりです!
目指せ!百合ハーレム(笑)

では、裏話でお会いしましょう♪


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第弐拾参話~裏・赤城視点~

どうも。
最近、アズールレーンにハマってしまったひじりです。

って、毎度毎度遅くて申し訳ないです…。

では、どうぞ。


「提督。これでよろしいですか?」

 

「どれどれ……うん。大丈夫だよ。」

 

「色々と丁寧に教えてくださり、ありがとうございます。」

 

「これ位いいよ。」

 

提督の手助けもあり、なんとか秘書艦としての業務にも一段落つけました。

今日は私。

一航戦の赤城が提督のお供です。

すると提督は私の方を見て微笑んでいました。

 

「どうかなされましたか?」

 

「ううん。何でもないよ。それより、今日からよろしくね。」

 

提督が何でもないと言うなら私もそれ以上は追及はしません。

まあ、気にはなりますが。

それよりもついにこの日がやって来ました!

そう…提督と寝食を共にする日が!!

この日をどれだけ待ちわびたか…。

因みに順番は公平にじゃんけんで決めました。

……くっ!何で私はあそこでチョキを出したんですか!!

 

「少し休憩しよっか。飲み物はお茶でいい?」

 

「あ、私がします。」

 

「いいから座ってて。慣れないことして疲れたでしょ?」

 

「でも…。」

 

「いーから。座ってて。」

 

私が心の中で悔やんでいると提督が飲み物を用意し始めます。

私が立ち上がるも手で制されては大人しく座るしかできません。

 

「はい。どうぞ。」

 

「ぁ…す、すみません。」

 

提督は上官なのもありますし、こんな自分より幼い容姿をした人に入れて貰うなんて色々と複雑な気分です。

そんな風に考えていると提督は私の隣に腰掛けて此方を見つめます。

でも、提督の方を見れなくて入れてくれたお茶を見つめます。

 

「次からはお願いしてもいいかな?」

 

「っ!は、はい!」

 

少し間が空いた後に提督がそう口にします。

多分気を遣ってくれたんでしょうが、私は嬉しくて大きな声で返事をすると提督は笑ってくれました。

 

「あ…茶柱。」

 

「本当ですね。」

 

再び湯のみを見ると茶柱が立っていました。

気持ちが落ち着くと先程は気付かなかった物に気付く。

そしてこの人の隣ではこんな小さな事でも嬉しくて口角が上がってしまいます。

私を心を嬉しくさせるその人に目を向けると目が合う。

 

「どうかしましたか?」

 

「ううん。何でもないよ。」

 

「?」

 

私が問いかけると提督は目線を外してお茶を飲む。

照れたのでしょうか?

そうだったらさらに嬉しいのですが。

 

「なになに…。」

 

「ああ…昔使われてた倉庫ですか。」

 

「知ってるの?」

 

「はい。何でも深海棲艦が出没した当初に攻撃を受けない様にと奥まった所に建てられたみたいなんですが、私達艦娘が出現してからは立地が余りよくないとかで使用されなくなったみたいですよ?」

 

提督は目線を外した先にあった書類が気になったみたいで私もその書類を見ると少し離れたら所にある倉庫についてでした。

これでも私はこの鎮守府ではかなり前から居ますからそれなりに詳しいんですよ?

 

「なるほど…これは一度この目で確かめないといけないかな。」

 

「それならお供しますよ。」

 

「本当?ありがとう。赤城。」

 

「いえ、これ位お安いご用です。」

 

私がそう提案すると提督は嬉しそうに私を見ます…かわいい。

んんっ!!…森とまでは言いませんが鬱蒼としたそこは安全とは言い切れません。

流石に熊は……多分出ません。

ですが、野犬や蜂なんかの人を襲うもの沢山います。

護らないと、いけません!!

そんなこんなで二人で30分程かけて倉庫に着きました。

着いて直ぐに提督は顎に手を当てて倉庫を見つめます。

この仕草は何か考えてる証拠です。

情報提供者は電ちゃんですから信頼できる筋の情報です。

因みに提督は気付いて無いそうです。

 

「これがそうなの?」

 

「はい。昔は食料庫や資材庫として活用していたみたいです。」

 

「確かに余り良い立地では無さそうだね。」

 

「そうですね。取り壊すにもお金がかかるみたいでそのまま放置されているみたいです。」

 

「仕方ないとはいえ…世知辛いねぇ。」

 

「提督…何だかお婆ちゃんっぽいですよ?」

 

提督は錆びた南京錠を持って来ていた鍵で開けます。

ああ、提督の手が赤茶に染まってしまいます。

後で拭いてあげないといけませんね!

 

「ぬぅぅぅ!!」

 

「だ、大丈夫ですか?私が開けましょうか?」

 

「はぁ、はぁ…お、お願い…。」

 

「はい。」

 

提督にお願いされてそれに答えます。

あ、ちゃんと自前の手拭いで汚れた手を拭いてあげてから扉に向かいます。

肩で息をしていた提督に囁くようになってしまっていたお礼の言葉が私の力の源になります!!

 

「えい!」

 

ガラガラ。

 

私は頭は悪くはないと思いますが良くもありませんし、皆さんからよく「抜けてる」だの「天然」等と言われてしまっています。

つまり、詳しくは答えれませんがこの位の扉なら簡単に開けれます。

 

「おおー流石だね。ありがとう。」

 

「この位朝飯前ですよ。」

 

拍手を下さる提督に元気良く答えます。

…流石に力こぶは恥ずかしかったでしょうか。

 

 

キュピーン!!

 

ハッ!!

 

私の中で何かが駆け巡ります!

 

「それじゃあ、中を確認してみよっか。」

 

「はい。ダメ!慢心!」

 

「………どしたの?」

 

「はっ!?い、いえ…何やら言わなければいけない気がして…。」

 

「???」

 

「と、とりあえず中に入りましょう。中に。」

 

謎の衝動で変なことを口走ってしまった恥ずかしさから提督の背中を押して中に入ります。

中は埃っぽくて広い空間の中に数個の木箱があるだけです。

 

「何かあるみたいですね。」

 

「だね。ちょっと中身を確認してみよっか。」

 

木箱の一つに近付いて提督が叩いたりして調べています。

その姿は……その…探偵ごっこをしている子供みたいで見ていてなんだか和みますね。

こんなこと口が裂けてもいえませんが。

 

ガラガラ…ガシャン。

 

ガチャ。

 

しかし、その和みを無機質な騒音と共に書き消されてしまう。

全く!

なんですか?

私の『スーパー提督タイム』を邪魔して怒りますよ?

因みに今名付けました………って…と、ととと扉がぁ!!??

 

「て、提督!」

 

「………どう…したの?」

 

閉まってしまった扉を唖然と見つめながら提督に声をかけます。

 

「と、扉が…。」

 

「……うん。」

 

「し…。」

 

「し…?」

 

私も動揺していますが提督も相当な様子で小声で「しんだい」とか「しわしわ」とか口走っています。

 

「閉まってしまいました…。」

 

「…………oh…。」

 

私が事実を伝えると提督は顔に手を当てて落ち込みます。

 

「ど、どうしましょう。」

 

いきなり閉じ込められて動揺に動揺を重ねてしまいます!!(意味不明)

 

「とりあえず、落ち着いて。」

 

「は、はい。」

 

「携帯は執務室に置いてきちゃったから誰かが見付けてくれるのを待とう。」

 

「はい。わかりました。」

 

「後は…何かないか調べてみよ?木箱の中に食糧とか役立つものがあるかもしれないし。お願い出来る?」

 

提督の指示に従って木箱を調べます。

とりあえず、開けないことにはわかりませんし…何か道具は無いでしょうか。

辺りを手探りで探すと小さなバールがありました。

これで楽に開けれます。

ベキベキと大きな音を鳴らしながら蓋を開けると中身は乾パンが入っていました。

これは直ぐに報告ですね!

 

「提督!食糧!食糧がありましたよ!」

 

「本当?良かった!」

 

辺りを調べていた提督も此方に合流して二人で他の木箱も開けてまわりました。

他にも色々あると嬉しいのですが。

 

――――――――――

 

結果は乾パンと缶詰と水が木箱の中に沢山ありました。

節約すれば3週間程もつと提督が言っていましたが。

私は少し…いえ、すみません…。

大食いな私がいるからもって1週間と数日間位だそうです。

 

「なんとか餓えずにすむね。」

 

「はい♪」

 

私は断食を申し出たのですが食いぎみに脚下されてしまい。

食べる量もある程度融通してくれるとまで言ってくれた提督の優しさに涙が零れそうになりました。

 

「提督…。」

 

「ん?」

 

「やっぱり私が扉を「ダメ。」ですが…。」

 

何度目かのやり取りを繰り返します。

私が扉を破る案です。

しかし、提督は首を縦には振ってくれません。

理由は私が怪我をするから…他の大勢の方々は私達を兵器として扱うのにこの人は私達を人……一人の女の子として扱ってくれます。

 

「ダメだからね?絶対に許さないから。」

 

「うぅ…わかりました。」

 

私達が落ち込めばこんなにも優しく頭を撫でてくれる人は他に居るのでしょうか?

 

「私は大丈夫だから。食糧も水もあるし、気長に待とうよ。」

 

「…はい。」

 

私はこの鎮守府から外に出たことはありません。

ちゃんと関わった事がある人はのは前に居た最低な男。

なので人は信用出来ません。

出来ませんが…私達を想い、自らの命をかけてまで近付いて来てくれた提督は…信用したいです。

 

 

――――――――――

 

~真相~

長門視点

 

「ふっ、ふっ……ん?」

 

あの日、提督を守ると誓ってから私は更に訓練を過酷にした。

毎日の走り込み等の基礎体力の向上を含め砲撃の制度、陸上での護衛の為の格闘術、庇った最にダメージを最小限に出来るようにダメージコントロールの訓練。

出来ることは何でもしている。

そして今は足腰を鍛える為のランニング途中なのだが何時もは閉まっている使われていない倉庫の扉が開いているではないか。

 

「全く…ちゃんと閉めておかないとダメだろう。」

 

ガラガラ…ガシャン。

 

ガチャ。

 

古めかしいが頑丈な作りの南京錠もちゃんとかける。

しかし、誰が開けっ放しにしたのか。

駆逐艦の子達が入ったら危ないだろう。

 

「さて…もう一走りするか。」

 

タッタッタッ。

 

―続く。




読んで頂きありがとうございました。

前書きでも言いましたがアズールレーンにハマってしまいました。
ん~…ぶっちゃけゲーム性は艦これより好きなんですが、キャラ的には艦これが好きなんですよねぇ…。
てか、いつかifでもいいからクロスさせてみたいなぁ。
こんなことを思うのは自分だけでしょうか?

感想等があれば嬉しい限りです!!

さてさて、では次回もお楽しみに♪


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第弐拾肆話

ひじりです。

アズールレーン…してる人いるかなー?
自分は結構頑張ってレベ上げしたから程よく強いと思ってます!
…ごめんなさい。
全く関係のない話ですよね(笑)

後、赤城編が終わった後の予定を後書きに書いておりますので一度目を通して頂けると嬉しいです。

では、どうぞ!


閉じ込められてから三日がたった。

そして、はっきりと分かった事が一つある。

それは…。

 

「大丈夫ですか?寒くはありませんか?」

 

赤城が居てくれて良かったという事だ。

 

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう。」

 

「いえ、寒かったりしたら言ってくださいね?」

 

「うん。」

 

この倉庫は頑丈な作りなのもあって昼間でも殆ど光が入ってこない作りになっている。

暗闇の中で一人…発狂ものだよ。

だから、隣に誰か居てくれるのがこんなにも心強いとこの三日間で痛感した。

 

「赤城。」

 

「なんですか?」

 

「支えてくれてありがとう。」

 

毛布を羽織った赤城に後ろから抱き締められてる状態のままお礼を言う。

すると赤城の体か少し揺れる。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「こんな暗闇の中でさ…赤城が居てくれて良かったなって思ってね。」

 

「そ…そうですか。」

 

「うん。」

 

会話が途切れて静寂に包まれる。

聞こえるのは自分の息と頭のすぐ上から聞こえる赤城の息の音だけ。

 

「…提督。」

 

「うん?」

 

「提督の昔の話が聞きたいです。辛くないのを。」

 

「どうしたの?急に。」

 

「いえ、あの…提督の事を知りたくて…ではダメですか?」

 

背中に感じる赤城の心臓の音が少し早くなるのがわかった。

 

「ん、いいよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

昔の話かぁ…。

んー……あ、あれでいいかな?

 

「それじゃあ、昔…お父さんの所に居た艦娘のお話にしよっかな。」

 

「はい。」

 

私は目を閉じて昔の記憶を掘り起こす。

お父さんの秘書艦だった。

加賀さんの事を。

 

「昔…あれは私が6才の頃初めてお父さんの鎮守府にお邪魔したことがあってね。そこで出会った初めての艦娘が加賀さんだった。」

 

「加賀さんだったんですか?」

 

「うん。当時、加賀さんはお父さんの秘書艦をしててね。お父さんが抱っこしながら鎮守府内を案内してくれてる時にずっと後ろから着いて来てくれてたんだけど…ほら、加賀さんって無表情じゃない?」

 

「あ―…そうですね。加賀さんは不器用な人ですから。」

 

「そうなんだよね。私と目があったらさ…逸らすの。目線を何度も。」

 

お父さんに抱っこされた私は背の高い加賀さんより少し高い位置に目線があり、何度も目が合うけどその度に背けられて不思議で仕方なかったのだ。

 

「そんな事を何度もされたら子供だった私は苦手意識が芽生えちゃって近付けなかったんだ。」

 

「あはは…加賀さんったら…。」

 

「そんな時にお父さんが緊急の用事が入っちゃってお父さんってばいきなり私を加賀さんに抱っこさせて押し付けちゃうの。あの時は本当に困ったなぁ。」

 

「それからどうなりました?」

 

「ん?加賀さんに抱っこされた私は借りた猫の様になってたんだけどね。ふと加賀さんの顔を見ると無表情なのに冷や汗がダラダラ垂れてるんだよ?もう、ビックリしちゃったよ。」

 

「ぷっ、あはは!なんですか?それ。」

 

今思い出しても笑ってしまう。

目を見開いて口を固く結んだ加賀さんの額を何筋もの冷や汗が流れる光景は異様としか言えなかった。

 

「あはは…はぁ…それでどうしたんですか?」

 

「私がママに持たしてもらってたハンカチで拭いてあげたの。そしたら凄く驚いて私を見つめてきて、その時初めて加賀さんと目があったんだ。」

 

私と目があった加賀さんは信じられなかったのだろう。

何せあの当時は今よりもっと艦娘を兵器と扱う者が多かったから。

もちろん、お父さんやママは違うけど秘書艦の加賀さんは何かと他の人と接する機会が多くてその度に人の汚い部分を多く見てきたと教えてくれた。

 

「驚く加賀さんに私が『どうしたの?』って聞いたら加賀さんは『何でもありません』ってだけ言ってそのまま執務室に連れていってくれました。それからお茶やお菓子をくれて一緒に食べた。あの時のお茶にお菓子は美味しかったな。」

 

「それからどうなったんですか?」

 

「お腹一杯になった私が加賀さんに抱き着いて寝ちゃったの。それで目が覚めたら加賀さんが慌てながら私に謝るの。『すみません。起こしてしまいましたか?』って…後ろでお父さんも居てそれ見て大笑いしたんだけど加賀さんがお父さんに怒っちゃって私をソファーに座らせてからお父さんの首根っこ捕まえて奥の部屋に連れてったんだよね。」

 

「ふふっ…きっと恥ずかしかったんですね。」

 

「うん。多分そうだと思う。少しして加賀さんは戻って来て私の前に立ったんだけど、どうしたらいいのか分からないのかその場で立ち尽くしてるの。」

 

幼い私の前に立ってどうしたらいいのか分からず目を左右に泳いでる加賀さんの姿に私は幼いながらもこの人は不器用な人だと理解した。

 

「加賀さんはもっと甘えて欲しかったんでしょうか?」

 

「流石同じ一航戦だね。その通りだよ。」

 

「ふふっ…加賀さんらしいですね。」

 

耳元で赤城の笑い声が聞こえる。

その声は懐かしむ様な雰囲気が含まれている。

 

「子供は無邪気なものでね。まだ眠たかったのもあって抱っこをねだったの。そしたら加賀さんも恐る恐るだけどそれに答えてくれてその日は帰るまで加賀さんに抱っこされてたよ。」

 

「そうでしたか。懐かしいですか?」

 

「うん。それからは鎮守府にお邪魔する度に加賀さんに抱っこをせがむようになって加賀さんも困った表情をするんだけどどこか嬉しそうで楽しかったよ。」

 

それを何度か繰り返す度に加賀さんから抱っこしたくれる様になっていて幼い私もそれが当たり前になっていった。

 

「そうですか…あの、提督。」

 

「ん?どうしたの?」

 

赤城が良いこと思い付いた様なこれから悪戯をしようとするような声色で私を呼ぶ。

 

「加賀さんがしてたみたいな抱っこをしてもいいですか?」

 

「ええっ!?」

 

加賀さんがしてた抱っこって、子供にするみたいな向き合って抱き着くあれだよ!?

ダメ!恥ずかしすぎるもん!

 

「いやいやいや!恥ずかしすぎるよ!!」

 

「今は私達しか居ませんし、真っ暗ですから大丈夫ですよ。」

 

「ダメ!恥ずかしい!」

 

「あ…。」

 

恥ずかしさの余り立ち上がり、赤城から離れると暗闇の中から切なそうな声が聞こえてくる。

 

「あの、提督…。」

 

「……なに?」

 

キュッ。

 

私の袖を赤城が摘まむ。

そんないじらしい赤城の行動に私の心が揺れる。

 

「ダメ…ですか?」

 

「うぐっ…。」

 

暗闇で姿は見えないが子犬が母親を呼ぶ様な切ない声で私に問いかけてくる。

その声に私の中の母性本能が擽られる…って、することは私が子供にみたいにならないといけないのにおかしいよね?よね!?

 

「……はぁ…。」

 

「提督…。」

 

「うーわかったよ。いいよ!するよ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

嬉々とした声が響き渡る。

私って甘いのかなぁ…。

 

「では、どうぞ♪」

 

「うぅ…。」

 

鏡を見なくても顔が赤いのが分かるほどに熱い。

幼い頃ならいざ知らず、こんな姿でも21歳なのだ。

恥ずかしくなるのは正常な反応だろうと私は思うわけですよ。

それに…こんな抱き着き方はお母さんにもしたことがないし。

 

ギュッ。

 

「んふふー♪」

 

「あぅ…恥ずかしぃ…。」

 

小柄な体型な私は赤城の体にすっぽりと収まり、調度頭が赤城の顎の下にあって心音が聞こえてくる。

その音は穏やかで聞いていると徐々に瞼が重みを増してくる。

 

「どうですか?提督?」

 

「恥ずかしいけど………落ち着く。」

 

「それは良かったです。」

 

上機嫌な赤城はゆっくりと左右に揺れて鼻歌を歌い出す。

 

「~~~♪」

 

偶然にもそれは加賀さんが歌っていた鼻歌と同じで私の心は退行を始めたかの様に昔の記憶が映像として流れる。

瞼は完全に落ちきっていた。

 

そして私は思い出した。

幼かった私が加賀さんと交わした約束。

私の大切なお友達である加賀さんとの…大切な約束。

 

――――――――――

 

「~~~♪」

 

「ん…ぅ…?」

 

「あ、起こしてしまいましたか?」

 

「ん~ん…らぃじょうぶ…。」

 

「まだ帰るまで時間があります。もう少し寝ますか?」

 

「んーん。」

 

「では、何をしますか?」

 

「んー…おはなししよ?」

 

「わかりました。」

 

「ねぇ、かがさん。」

 

「なんですか?」

 

「かがさんはいっこうせんなんでしょ?」

 

「そうです。よく知っていますね。」

 

「うん!ママにおしえてもらったの。」

 

「そうでしたか。ですが、一航戦は私だけではありませんよ。」

 

「そうなの?」

 

「はい。一航戦はもう一人…赤城さんが居ます。」

 

「あかぎ…さん?」

 

「そうです。」

 

「そのひとはかがさんのおともだち?」

 

「そうです。大切なお友逹です。」

 

「じゃあ、わたしもおともだちになる!」

 

「ふふっ…そうしてくださると赤城さんもきっと喜びますよ。」

 

「うん!あかぎさんともかがさんともおともだち!」

 

「はい。お友達です。」

 

「じゃあ、やくそくしよ!」

 

「はい。」

 

「「ゆーびきーりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます。」」

 

「「ゆーびきった。」」

 

「ふふっ…。」

 

「あはは♪」

 

―続く。




はい!
読んで頂きありがとうございました!

さて…今回のお話はまあまあ甘く書けたつもりです。
楽しんで頂けたなら幸いですね。

前書きに書いた今後の予定なのですが、この赤城編が終わりましたら一度本編に戻る予定です。
そろそろ本編進めないとなーって思ったのとシリアスを書きたくなってきたのでそんな感じにします。
それに赤城が終わったら調度半分ですから調度良いかと思いますしね!

感想等がありましたら励みになります!
お願いします!(土下座/笑)

では、次は裏編でお会いしましょー♪


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第弐拾肆話~裏・赤城視点~

どもども!ひじりです。

年末…かぁ…。
時がたつのは早いなぁ…。

そして後、一ヶ月とちょっとで一周年な訳ですよ!
あー…本当に早いなぁ…。

まあ、どーぞです!


私と提督がこの倉庫に閉じ込められてから三日目を迎えました。

 

「大丈夫ですか?寒くはありませんか?」

 

いくらまだ日中は暑いと言えど木々に囲まれたこの倉庫は朝晩は肌寒く艦娘である私は大丈夫ですが提督はそうはいきません。

 

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう。」

 

「いえ、寒かったりしたら言ってくださいね?」

 

「うん。」

 

おまけにこの倉庫は敵に見つからないように高さはそれほど高くはなくてその殆どが木々の影になっていて日中もそんなに暑くはありません。

 

「赤城。」

 

「なんですか?」

 

「支えてくれてありがとう。」

 

そんな場所で体温を保持するために身を寄せ合い暖を取っています。

仕方ないのです。

そう。

仕方ないのです!

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「こんな暗闇の中でさ…赤城が居てくれて良かったなって思ってね。」

 

「そ…そうですか。」

 

「うん。」

 

ああ!

この人はこうも簡単に心を乱してくる言動をしてくるのでしょうか。

無自覚なのが余計にたちが悪いですよ。

 

「…提督。」

 

「うん?」

 

「提督の昔の話が聞きたいです。辛くないのを。」

 

「どうしたの?急に。」

 

「いえ、あの…提督の事を知りたくて…ではダメですか?」

 

早鐘を打つ心臓を必死に抑えようと試みながら少しでも気が紛れる様にと話題を振る。

 

「ん、いいよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

提督が何か思い出そうとしてか上に目線を向けたらしく近くなった提督の髪から私の鼻に女の子特有の甘い匂いが届く。

 

「それじゃあ、昔…お父さんの所に居た艦娘のお話にしよっかな。」

 

「はい。」

 

何を話すか決まった提督が懐かしむ声色で語り始める。

それは私がよく知る艦娘だった。

 

「昔…あれは私が6才の頃初めてお父さんの鎮守府にお邪魔したことがあってね。そこで出会った初めての艦娘が加賀さんだった。」

 

「加賀さんだったんですか?」

 

「うん。当時、加賀さんはお父さんの秘書艦をしててね。お父さんが抱っこしながら鎮守府内を案内してくれてる時にずっと後ろから着いて来てくれてたんだけど…ほら、加賀さんって無表情じゃない?」

 

「あ―…そうですね。加賀さんは不器用な人ですから。」

 

「そうなんだよね。私と目があったらさ…逸らすの。目線を何度も。」

 

可笑しそうにクスクスと笑う提督の声を聞きながらお世辞にも表情が豊かとは言えない加賀さんが幼い女の子に戸惑っている姿が用意に想像出来てしまう。

 

「そんな事を何度もされたら子供だった私は苦手意識が芽生えちゃって近付けなかったんだ。」

 

「あはは…加賀さんったら…。」

 

「そんな時にお父さんが緊急の用事が入っちゃってお父さんってばいきなり私を加賀さんに抱っこさせて押し付けちゃうの。あの時は本当に困ったなぁ。」

 

「それからどうなりました?」

 

「ん?加賀さんに抱っこされた私は借りた猫の様になってたんだけどね。ふと加賀さんの顔を見ると無表情なのに冷や汗がダラダラ垂れてるんだよ?もう、ビックリしちゃったよ。」

 

「ぷっ、あはは!なんですか?それ。」

 

おもわず苦笑が漏れてしまう。

瑞鶴や他の空母の皆さんには恐れられる加賀さん。

だけど提督の娘さんとなればどう扱っていいのか分からなかったのでしょう。

 

「あはは…はぁ…それでどうしたんですか?」

 

「私がママに持たしてもらってたハンカチで拭いてあげたの。そしたら凄く驚いて私を見つめてきて、その時初めて加賀さんと目があったんだ。」

 

やはり提督は優しい方みたいですね。

提督が此処に着任した日から私を含めて数人の艦娘が色々と調べて回りましたが不正などは何も見付からなかった。

そこで提督の両親についても幾つかの情報を得ましたがどれも良い所ばかりでした。

しかし、二人は行方不明扱いです。

理由は死体が見当たらなかったから、だそうです。

 

「驚く加賀さんに私が『どうしたの?』って聞いたら加賀さんは『何でもありません』ってだけ言ってそのまま執務室に連れていってくれました。それからお茶やお菓子をくれて一緒に食べた。あの時のお茶にお菓子は美味しかったな。」

 

「それからどうなったんですか?」

 

「お腹一杯になった私が加賀さんに抱き着いて寝ちゃったの。それで目が覚めたら加賀さんが慌てながら私に謝るの。『すみません。起こしてしまいましたか?』って…後ろでお父さんも居てそれ見て大笑いしたんだけど加賀さんがお父さんに怒っちゃって私をソファーに座らせてからお父さんの首根っこ捕まえて奥の部屋に連れてったんだよね。」

 

「ふふっ…きっと恥ずかしかったんですね。」

 

「うん。多分そうだと思う。少しして加賀さんは戻って来て私の前に立ったんだけど、どうしたらいいのか分からないのかその場で立ち尽くしてるの。」

 

提督の話に耳を傾けながらも思考は止まらない。

なぜ提督はこんなにも辛い目にあっても人や私達艦娘にも優しく出来るのでしょうか?

 

「加賀さんはもっと甘えて欲しかったんでしょうか?」

 

「流石同じ一航戦だね。その通りだよ。」

 

「ふふっ…加賀さんらしいですね。」

 

心は大人でも体は小さい提督。

その原因も心的ショックだと聞きました。

髪が白くなるほどのショックなんて普通の人間に耐えられるのでしょうか?

 

「子供は無邪気なものでね。まだ眠たかったのもあって抱っこをねだったの。そしたら加賀さんも恐る恐るだけどそれに答えてくれてその日は帰るまで加賀さんに抱っこされてたよ。」

 

「そうでしたか。懐かしいですか?」

 

「うん。それからは鎮守府にお邪魔する度に加賀さんに抱っこをせがむようになって加賀さんも困った表情をするんだけどどこか嬉しそうで楽しかったよ。」

 

そして、昔に比べてもましになったとは言え未だに男尊女卑の色が濃いこの国でどれだけの努力をしていたのか…。

 

「そうですか…あの、提督。」

 

「ん?どうしたの?」

 

私には理解できない位に血の滲むような努力を経て今の提督が居るのではないか?

そう思った私は提案する。

でも、少し恥ずかしくて悪戯だと思わせる様に笑って。

 

「加賀さんがしてたみたいな抱っこをしてもいいですか?」

 

「ええっ!?」

 

あわあわと腕を動かして慌てる提督がかわいいですねぇ…。

おっと、暗くて見えないでしょうがきっと私の顔はだらしなくなってしまってるに違いありません。

 

「いやいやいや!恥ずかしすぎるよ!!」

 

「今は私達しか居ませんし、真っ暗ですから大丈夫ですよ。」

 

「ダメ!恥ずかしい!」

 

「あ…。」

 

提督が立ち上がり、温もりが消えてしまう。

 

「あの、提督…。」

 

「……なに?」

 

キュッ。

 

きっと今の私の顔は幼子みたいになっていると思いますが、そんな事など気にも止める余裕も無くて提督に我儘を言ってしまいます。

 

「ダメ…ですか?」

 

「うぐっ…。」

 

提督が困ったと言う感じに声をあげる。

それでも私は提督を離せなくて…困らせてるのが心苦しいけど、どうしても出来なかった。

 

「……はぁ…。」

 

「提督…。」

 

「うーわかったよ。いいよ!するよ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

やけくそ気味に提督が了承してくれると私の落ち込んでいた心は一気に天にも昇る程に明るく照らされる。

 

「では、どうぞ♪」

 

「うぅ…。」

 

提督が私に甘えてくれる。

その事が待ちきれなくて両手を広げて迎える準備をする。

 

ギュッ。

 

「んふふー♪」

 

「あぅ…恥ずかしぃ…。」

 

提督が恥ずかしそうに抱き付いてくれると私の胸に頭を乗せる形になる。

ビックリしたのか一瞬躊躇うが大人しくしていて私は抱き上げるように提督のお尻の下で手を握る。

 

「どうですか?提督?」

 

「恥ずかしいけど………落ち着く。」

 

「それは良かったです。」

 

落ち着くってことは嫌ではないと言うことですね。

その言葉を聞いて嬉しくて鼻歌を歌ってしまう。

 

「~~~♪」

 

私と加賀さんが軍艦時代によく聞いて、艦娘になってからはよく歌った曲。

私達の思い出が詰まった曲。

その歌と共に昔の記憶が暗闇の中に浮かび上がる。

あれは数年前の大規模掃討作戦の前日。

この鎮守府にいた加賀さんが沈む前日。

 

――――――――――

 

「加賀さん。」

 

「赤城さん。どうかしましたか?」

 

「もう寝ますか?」

 

「いえ、まだですね。」

 

「少し…夜風に当たりませんか?」

 

「…はい。」

 

「……加賀さん。」

 

「はい。」

 

「明日、ですね。」

 

「そうですね。」

 

「………。」

 

「………。」

 

「加賀さん。」

 

「はい。」

 

「歌を……歌いませんか?」

 

「………はい。」

 

「「木枯らし吹きて 想いは深し

夕日は沈みて あわれを誘う

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ

 

夕闇せまりて 星影あわし

み寺に光れば 楽の音ひびく

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ

 

ふるさと離れて 遠く来し いま我れ

夜ごとに夢見て 在りし日の面影

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ」」

 

「……加賀さん。必ず生きて帰って来ましょうね。」

 

「はい。もちろんです。」

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

んー…無理矢理感が半端ないですよね今回(泣)
因みに今回の歌は1928年に出た『君恋し』って歌です。
時代背景がおかしいかもしれませんが許してください!お願いします!!(土下座)

後、一話で赤城編の終了ですね。
この話が終ればメインに話を戻す予定な訳ですが。
皆様楽しみにしてて頂けると嬉しいですね。

ではでは!
また、お会いしましょー!!


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