新人プロデューサーの日記 (限定イチゴパスタ)
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新人プロデューサーの日記

○月A日(晴れ)

  一ヶ月ほど前、自分のもとに内定通知書が届いた。

 アイドルを導くプロデューサー、

 まさか自分がその職業に就くとは誰も思わなかっただろう、よく遊びに来る近所の子も驚いていた。

 ついに社会人へデビューするわけだ、

 なのでこれから日記を書こうと思う、これから忙しくなるぞ!

 

 

○月B日(晴れ→曇り)

 入社1日目、

 驚いた、まさか一日目からスカウトして回る事になるとは…。

 千川さん(事務員)がいうにはこの事務所にアイドル部門ができたのは最近の話らしく、プロデューサーもアイドルもあまり多くないらしい、

 まあスカウトの結果はと言うと全然ダメだった、手当たり次第に顔のいい子をスカウトしたが、全く相手にしてもらえなかった、残念、先が不安になってくる。

 

 

◯月C日(快晴)

 入社2日目、

 今日もダメ、公園のベンチで休んでいたら(サボっているわけではない)一匹の黒猫が擦り寄ってきた、久しぶりの癒しに感じた。

 事務所に戻ると同僚が飲みに誘ってきた、

 どうやら彼もスカウトがうまくいかず行き止まっているらしい。

 もう千川さんをスカウトしようかと思ったが、

 彼曰く、

「やめとけやめとけ!彼女はアイドルになる気なんか無いさ、

『アイドルやりませんか?』って誘っても嬉しいんだか嬉しくないんだか…

『千川ちひろ』25歳独身、出身地は東京、

スリーサイズは上から82-58-84、利き手は右、

仕事はそつなくこなすが金にがめつい女…

なんか可愛らしい顔と物腰をしているため男性社員にはモテるが、裏でスタドリを高く売りつけてるらしいぜ、

わるいやつじゃあないんだが、これといって特徴のない緑の事務員さ…」

 なぜ入社2日目でここまで知っているのか、

  まあ、そこはどうでもいいだろう、また明日頑張ろう。

 

 

○月D日(曇り)

 3日目、

 今日もスカウト、

 俺は昨日の公園へ向かったのだが、そこで異様な光景を目にした。

 昨日の黒猫と白衣を着た少女が戯れているのだ、

 それはもうゴロゴロと、

 するとこちらに気づき、白衣の少女は鼻をスンスンさせながらこっちに近づいて来た、

 そして第一声がこれである

「うーん…、君!いい匂いがするねっ!」

 もう、なんて言えばいいかわからなかった、でも容姿はとてもいい、すごくいい、

 スカウトしようとしたのだが、黒服の男達が現れ、連れて行ってしまった。

 彼女は去り際に

「また会おうね!会いに行くから!」

と言っていた。

 また会おう?名前も知らない相手に?

 理解が追いつかないよ…

 今日は酒でも飲んで寝よう。

 …酒が尽きてた、おいかわ牛乳!飲まずにはいられないっ!

 

 

○月E日(晴れ)

 手当たり次第にスカウトしてちゃダメだ…

 そう思いスカウト術を極めるべく図書館に行ってきた。

 すぐ前に座っている前髪で顔が隠れた子、凄く可愛かった。

 スカウトしようと思ったが、ここは図書館だから…

 あ、わかった、スカウトがうまくいかない理由、ただ俺がコミュ障なだけだわ、知ってたけど

 気づいたら手に取ってた「サイキックを極める本」を読んでいたけど、まあ何かの役にたっただろう(適当)

どこかから視線を感じたが、気のせいかな?

 

 

○月F日(雨)

 今日は休み、よく遊んであげてた近所の子が電話かけてきた。

「なんで勝手に引っ越しちゃったんですか!?」

 家が事務所から遠かったからに決まってるだろう、スカウトしかしてないけど…

 

 

○月G日(晴れ)

 今日もスカウト日和、そろそろ捕まえないと千川さんに怒られちゃう、

 だが、探すまでもなかった。

 すぐ背後にいた。

 先日の変わった白衣の少女、名前は一ノ瀬志希というらしい

 「探しちゃったよキミー!ハスハス!くんかくんか!」

 どうやら俗に言う「クンカー」というやつ?なかなかパンチがあるんじゃないだろうか、

 俺はすぐに名刺を差し出した、

 「アイドル?アイドルー、…アイドル?…うーん」

 抱きつかれたままじゃアレなので近くのレストランで軽く説明してやった、興味を引くように、すると彼女はキラキラした目で

 「なんだかおもしろそうだね!なるよ!しきちゃんアイドルに!」

と、結構あっさりと決まった、その時食べたアサリのスープくらい、後ろの席からフフッと笑い声が聞こえた気が、まあいいや

 すまんな同僚、俺がリードしたようだぜ、今日はうまい酒が飲めそうだ…

 …また尽きてた、おいかわ牛乳飲もう

 

 

○月H日(快晴)

 今日一ノ瀬志希を事務所に連れてった、

 千川さんが驚いてた、志希って結構有名人らしい、知った事じゃないけど、

 それにしても驚いたのは、同僚が俺と同じタイミングでアイドルを捕まえてきた事だ、

 しかも金髪のパリジャンヌ!すげえ!

 これから同僚と一杯やってくる、志希とその子も一緒に、

 それに同僚のおごりだ!ヒャッハー!

え?千川さんも来るの?

 

 

 




見ての通り何もかもが新人です、暖かい目で見守ってください


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新人プロデューサーの日記 その2

○月I日(曇り)

 頭が痛い、頭痛がする、吐き気もだ。

 昨日飲みに行ってから何があったっけ?思い出せない…

 今、俺は家のベットの上にいる、そしてすぐ隣で一ノ瀬志希がスヤスヤと眠っている…が、

 …これは…ヤってしまったのか?さっそく問題を起こしてしまったのか?

 ダメだ、思い出せない。

 ここで起こすべきなのだろうか?いや、こいつの性格は大体掴めてきた、起こしてもまともな答えは返って来ないだろう。

 俺はさっさと用意して出かける事にした。

 

…朝ごはんくらいは用意してやるか。

 

 

 

 ただいま帰宅、

 朝からの流れを書くと、俺は一ノ瀬志希担当のプロデューサーになった。

 まあ、俺がスカウトしたんだから当然だろう、

 しかし同僚はまたスカウトに行かされていた、なぜ?

 昨日の飲み会で何があったのか、千川さんは変わらずニコニコしていた。

 一ノ瀬は遅れてやってきて、出会い頭に

 「昨日は凄かったね〜、にゃふふー♪」

と、爆弾発言、

 千川さんが少し険しい顔になっていたが何も見なかったという風に仕事に戻った。

 本当に…やってしまったのか?…俺…?

 朝用意した朝食は綺麗に食べられていた。なんだか嬉しい、

 あ、一味唐辛子が切れてた、買いにいくか、

 

 

○月J日(晴れ)

 ずーっと事務処理でパソコンをカタカタしてた。

 一ノ瀬はどうしてるだろうか、ちゃんとレッスン受けているだろうか、

 同僚がスカウトした「宮本フレデリカ」とはとても仲良くやっているらしい。如何にも「まぜるな危険」って感じの二人だが、

 そのうち仕事が来るようになったらユニットを組ませて見るのも面白いかもしれない、

 まあ、まだ気が早いか、今はレッスンだけさせておこう、

 あ、そういえば飲み会の時、同僚が分身みたいなの出してたな、今度やり方を教えてもらおう、

 

 

○月K日(雨)

 一ノ瀬がコーヒーを入れてくれた、周りの奴らと比べると大分仲が打ち解けてるんじゃないだろうか、

 コーヒーを飲む俺を見て「にゃふふ♪」と目を煌めかせていたが、

飲み干した途端頭に?を浮かばせながら真顔でこちらを見ていた。

 何かおかしい所でもあったのだろうか?分からない奴だ。

 そして同僚に飲み会の時にやっていた手品の仕方を聞いてみた、しかし回答は

「やめとけ!やめとけ!」の一点張り、

 教えてくれたっていいじゃないか…同僚の鞄から矢のような物が落ちたが、これ、なんだろう、拾う時に手を切っちゃったよ、痛い。

 

 

○月L日(曇り→晴れ)

 一ノ瀬が失踪した、

 これから探しに行くところだ、正直事務処理ばっかだったから抜け出せて嬉しい、

 さて、どこに行こうか、久しぶりに公園に行くのもいいな、

 

 

ーーーーーーここから先はまだ書かれていない

 

 

 

 

 

 




イベ久保のために走らなきゃ…走らなきゃ…


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新人プロデューサーの日記 その3

○月O日(雨→曇り)

 しばらくの間日記を空けてしまった。

 最近本当に忙しくなってきた、それもこれも同僚のせいだ。

 まさかこんなにアイドルを捕まえてくるとは…やるじゃない…

 とは言っても、まだまだアイドルは少ない方だろう、当分プロデューサーも増える事は無いだろうし、ここが頑張りどころだ。

 

 さて、ここからは一ノ瀬が失踪した所からの話になる。

 

 トレーナーさんには「一ノ瀬は体調不良で休みます」と伝え、

俺は一ノ瀬を探しに事務所を抜け出した、が、勿論居場所なんて検討もつかなかった。

そりゃそうだ、メールアドレスすら知らないし、

ってかあいつ携帯持ってるのだろうか?まあそれは置いとこう、

 意外と早く見つかった。

一ノ瀬はギョッとした顔で振り返ったが、

俺もびっくりした、まさかこんな簡単に見つかるとは…

 一ノ瀬になぜレッスンをサボったのか聞きたかったが、すぐに笑いながら逃げてしまった、

 

 俺もすぐに追いかけたのだが、

 そこからだ、そこからがどうしても思い出せない…、

 記憶がすっぽりと抜け落ちている、目が覚めたら俺は事務所のソファーの上にいた。

 そして何があったのか、俺に覆い被さる形で興味深そうな顔をした一ノ瀬がこちらを見つめていた。

…何分くらいだっただろうか、結構長い間無言で見つめ合っていた気がする、

 状況の整理が追いつかないまま、ただ一ノ瀬の目に引き寄せられていた。

 しばらくすると千川さんが事務所に戻ってきたので、すぐに一ノ瀬から離れたが…、

 もしも、千川さんが戻って来なかったら、どうなっていただろうか…まあ、何も無かっただろうけど、、

 

 記憶が抜け落ちてるのはなぜなのか、一ノ瀬に聞いても教えてはくれなかった、不自由は無いから別にいいんだけど…

 とりあえず必要なところだけまとめると、

一ノ瀬見つけた!アイドル増えた!以上、

もう寝る。

 

 

○月P日(曇り)

 あああああああ!!クソッ!ふざけんな!

なんで俺は12歳のガキに論破されてるんだ?

サボってないと言ってるだろ!

何が「ありすとは呼ばないでください、橘です」

だよ!生意気なやつめ!

あーやばい、どうしようこの高ぶった気持ちは…、

近くにいるウサミン星人でも弄って落ち着かせるしかないか…

 他にあった出来事といえば、一ノ瀬志希と宮本フレデリカ二人のユニットができた事だ、

名前は「レイジー・レイジー」、まさか俺の案がいきなり採用されるとは思わなかった。千川さんが褒めてくれた。やったぜ、

 今日は早く帰りたい所だが、今日は残業で徹夜になりそうだ、スタドリでも飲んで頑張ろう…

 

 

○月Q日(雨→曇り)

 どうやら事務所で眠ってしまったらしい、身体中が痛い、

「大丈夫ですか?無理しないでくださいね?」と、コーヒーを入れてくれたナナさんが天使に見えた。いや、17歳とは思えないほどの母性だ、天使に違いない。

 肩には緑色のタオルが掛かっていたが、これは千川さんのだろうか?後でお礼を言っておかねば、

 そしてなぜか一ノ瀬がこちらを見つめている、こんな朝早くから来るとは珍しいな。

 

 

 

 ただいま帰宅、今日は疲れた…

 何があったかと言うと、橘が仕事先で問題を起こしたそうなのだ。

 すぐその場に向かい、代わりに謝った、お偉いさんもひどく怒っていた。橘はどうしても自分の意見を曲げようとしなかったみたいで、

 とにかく頭を下げて、その姿に免じて許してもらった。が、

また同じ事が起こりうるかもしれない、と考えるとため息が出た。

 橘もずっと俯いたままだったし、疲れるわあ…

 さっさと寝てしまおう。

 

 

○月R日(雨)

 ありすが謝ってきた、「昨日はすみませんでした」って、

 ありすのこういう姿は初めて見た、何か言ってやりたかったが、反省しているようなので

「お前なりに頑張っているのは知っている、気にするな」とだけ言っておいた。

 それで話を終わらせれば良いものを、気が済まないのか、ありすはさらに謝ってきた、

 2回目の謝罪は今までの俺に対する接し方についてみたいだ、

 ありすは俺が「事務所で寝るほど徹夜で仕事をしていた」と、千川さんから聞いたようで、それから謝りたいと思っていたらしい、

 

 なんだか、この出来事があった後だとあんなにムカつくガキだと思っていたありすがとてもかわいらしく見えてきた。

 しかも「下の名前で呼んでいいですよ」とまで言われた。

なんだよすっげえかわいいじゃん、この方面で売り出して行くのもアリだと思った。本人は嫌がるだろうけど。

 それにしても最近一ノ瀬のスキンシップが激しい、お前体つきがエロいんだから、少しは俺の事考えろよ…。

 

疲れた、明日からも頑張ろう。

 

 

 

 




ところでSSRありすはまだですか…?


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一ノ瀬志希の日記

○月D日

 今日、気になるニオイをした人間と出会った。

 

 うん、すごく気になる、なんて言えばいいんだろう、とにかく異常なまでに魅かれるニオイ、

香水とは違う…なんていうかすごく落ち着くニオイっていうか…。

ああいけないいけない、考えてたらまた思い出しちゃう。日記を書いてるんだからまずキッカケからだね、

 

 

 まずー、そうだね、退屈な学会を抜け出して、近くの公園で日向ぼっこしてたところからだね、

 その時の志希ちゃんは黒い人達の目を盗み、ほんのりと暖かい草むらの上でスヤスヤと眠っていたのでした。

すると何か柔らかい物が足にすり寄ってくるではありませんか!

まあただの黒猫なんだけどねー、

んで、そこで志希ちゃんの鼻はうっすらと香るその匂いを感じとったのです、

もう周りなんて気にしないで無我夢中に嗅いでたね、

「いったいなんだこの匂いは」って感じに、

 

 

 するとそこで、背後からこの匂いの元が現れた。

これが出会いのキッカケ、

 少しほっそりとしてて、身長は170半ばくらいだったかな?まあその時他の事で全くアタマが回らなかったから、あまり覚えてないんだけど。

 今までいろんなものを見て、感じてきたけど、

ここまで心を動かされる思いをしたのはいつぶりだったんだろうにゃー、

あたしのアタマの中は

「嗅ぎたい、そしてこれが何なのか確かめたい」って思考でいっぱいだったね。

 目を合わせてゆっくりと彼に近づき、距離を詰める。近くなるにつれてだんだん匂いが濃くなっていき、後少しでゴール!のハズだったんだけどにゃー…

タイムリミットが来ちゃったみたい、

あーあ、なんでいいタイミングで来ちゃうカナー、志希ちゃんつまんない!

また、いつ会えるかもわからないのに…

ま、こっちから会いに行けばいいんだけどね!

匂いは覚えたし、次がたのしみだにゃー♪

 

 

 

○月E日

 さーって!昨日の彼を探そー♪

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 見つけた!場所は図書館前!

 いやーまさかこんなに時間かかっちゃうとは、

にゃはは、志希ちゃん少し疲れちゃったよ。

もう夜遅かったし、彼の家だけ覚えて帰ってきちゃったケド。

 時間ならタップリとあるし、しばらくは観察かにゃー、

うーん、あの時感じたスメルが忘れられない、でもガマンガマン。

 

 

 

○月F日

もうガマンするの飽きた!

志希ちゃんもう限界!

でも今雨降ってるんだよねー、あー、どうしよう、すぐにでも向かいたい、

なんなんだろうねー、この感じ、さっきからずっと彼の事が気になって仕方がない、

いったい何をしたらこんなに惹かれちゃうんだろ?、もしかして別の意味があったり?

 

 でも、あまりこういうのは熱中しすぎちゃダメだったりするんだよねー、

オモチャや本と同じ、

 いつもいつも、遊び尽くしたら飽きちゃうし、中身を全て知ってしまうと用は無くなっちゃう、

 

 彼は、あたしをもっと夢中にしてくれるのかな?

 

 

 

○月G日

晴れてる!もうげんかい!しゅっぱーつ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

にゃふふー♪、収穫収穫〜♪

志希ちゃんアイドルになりました!パチパチ!

いやー、彼は想像以上に面白いよ、期待していたよりもずっと。

 流れを書くとね、

 

 

 朝、あたしは彼の家の前で彼が出てくるのを待ち伏せてた。

しばらくすると、彼が欠伸をしながらドアを開けて姿を現した。

そこをすかさず回り込んでギュッ!、彼は何が起きてるのか理解できてないような顔してた。

まあ、それはあたしもなんだけど、

一瞬体が固まってしまった、至近距離だからかこの前とは段違いのスメル、脳内麻薬が出るような中毒性、

その時あたしは

「彼はある意味キケンな存在なのではないか?」

と疑ってしまった。

なぜかわからない、彼の近くだと自分を見失う程に夢中になってしまう、

 依存してしまいそうな…いや、もうしているのかな?彼の側にいるといずれあたしは自分を壊す事になるだろう、

 それくらい甘く、キケンな香り、

あたしはそこが気に入った。

 

ーーこの人だけは絶対に離してはいけない

 

でも、どうやってあたしに縛り付けよう?

志希ちゃん特製のオクスリを使ってアタシに夢中にさせちゃおうか?

そう思っていた時、彼はあたしにこう言った。

「アイドルになってみませんか?」

って、

アイドルって言われても志希ちゃんにはよくわからなかったけど、彼の説明を聞くとこれほどの魅力的な好条件は無かった。

彼の側に合理的にいられる、こちらに気を許してくれる、そしてなによりあたしが知らない世界を教えてくれるかもしれないから。

 

 

明日また彼と会える、早く明日にならないかにゃー

 




yuzu!?


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新人プロデューサーの日記 その4

○月S日(曇り)

 

懐かしい夢を見た。

 

今から何年くらい前だっただろうか、近所に小学生の女の子がいた。

名前は…そう、確か「森久保」だった気がする、

 

いつも泣きながら震えていた、『むーりぃー』って、

その子の両親は共働きで帰りがいつも遅く、両親との仲が良い俺はよく世話を頼まれていたが…結局いつまで経っても彼女は俺に打ち解けてはくれなかった。

 俺と会うと怯えるかのように震えて、目すら合わしてくれなかったので、あまりにおかしいと思った俺はこう聞いていた。

 

「なんでそんなに震えてるんだ?」って、

 

しかし彼女は何も答えてくれなかった。

 それがなんだか悲しくて、俺はどうしても彼女の心の中が知りたくて、どうやったら仲良くなれるか、そればかり考えていた。

 心理学の本も買って読んだ。でも結局何も知らないまま、彼女はどこか遠くへ引っ越してしまった。

 

今、どうしてるだろうか…

 

ってこれじゃ夢日記だ、気付いたら時間も無くなっている、早く会社へ向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

あー疲れた。最近定時に帰ってない気がする、

まあ、忙しいって事は良い事だから…ダメだ考えが社畜のそれになりかけている、

 

今日もありすがレイジーレイジーに文句をぶつけていた。

「子供じゃないんですからしっかりして下さい」

とかなんとか、

やめとけやめとけ…ありすじゃあいつらには勝てない、いつものように顔を真っ赤にして立ち去るのがオチだ。まあ、案の定そうなっていたが…。

 

さて、明日も早い、もう寝よう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

○月T日(曇り)

 

なんだこれは…

俺の机の下がキノコハウスになってやがる。

これは何か意図的な物なのだろうか、すっごいジメジメしている。

いや、特に意味は無いのか?ただ生えてきただけ?

 最近雨や曇りが多かったし、キノコの1つや2つ…生えるわけないよなぁ…、原木まであるし、

 あ、千川さんが見てる、そろそろ仕事に戻ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 犯人がわかった。ウチのアイドルの「星輝子」だ。

 動機は友達(キノコ)がこの机の下が心地良いと言っていたから、らしい。まさか住み着く気か。足のやり場に困るんだが…

それより驚いた事にこの子、俺が来る前からこの事務所でアイドルをやっていたそうだ。

会ったの初めてだよな?うーん、影が薄いと言うかなんと言うか…

あれ?今見たけどこの子パッションとして登録されてるぞ?

んん?なんで?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

○月U日(曇り)

 

 おう…どうしよう、凄く苦しい…

ちょっとした、本当にちょっとした好奇心だったんだ…、本当に…。

最近冷えてたから…

『このキンキンに冷えた手を菜々さんの背中に突っ込んだらどんな反応するだろう』

って、そんな馬鹿みたいな事を考えてしまったんだ…。

最近疲れてたからかな…、どうしても衝動を抑えられなかったよ…。

 

 気がつくと『ピギィッ!』って声と共に地面にうずくまっている菜々さんの姿がそこにあった。

 この文だけ見ると面白いかもしれない、

でも苦痛に顔を歪ませている菜々さんの姿は決して笑えた物ではなかった。

 大急ぎで仮眠室に運んで謝った。それはもう何度も、何度も、

そして菜々さんは苦痛を堪えながらもこう言うのだ。

 

「な、ナナはじゅうななさいですから、こ、このくらい、大丈夫ですよ…?キャ、キャハッ☆ひうっ、こ、腰が…」

 

もう涙が出そうだった、同情なんかじゃない、自分がなんて愚かで軽率な事をしたのか…菜々さんが何をしたというのか、罪悪感で苦しいばかりだ。

 

本当にごめんなさい…菜々さん…。

 

 

 

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○月V日(曇り)

 

いつまでたっても一ノ瀬が打ち合わせに来ない、

寝坊でもしているのか?最近仕事が増えて来たってのに…、

仕方ない、千川さんに場所を教えてもらって家まで迎えに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何が起きてるんだ…?理解を超えていてどう書けば良いのかわからない…夢でも見ていたのか?

ただ、起きた事だけを書いとこう、

 

 

 俺は千川さんに一ノ瀬の家を教えてもらい、携帯と財布だけ持ってそこへ向かっていた。

 その最中だ、事が起きたのはその家へ向かう最中だった。

俺の目に映ったのは嫌がる小柄な女の子と、しつこく絡む柄の悪い男達、どんな状況かは一目瞭然だった。

その光景を前にして居ても立っても居られなくて、すぐに止めに入ったものの、男達の容姿通り、話し合いで解決はしなかった。

 

 普段鍛えているわけでもない俺に勝ち目などある筈もなく、ただ彼女を逃がそうと必死になって囮になりながら走っていた。

 結局俺は捕まってしまい、顔面を何発か殴られて気絶したわけだが…そこまでだ、そこまでしか覚えていない、そこから先に何があったのかわからない…。

目を覚ました時、周りで不可解な事が起きていた。いや、もう起きた後だろうか、見たままのその状況を書くと、

 

柄の悪いその男どもが、泡を吹いて地面に転がり込んでいた。

 

 

 

俺が気を失っていた間、いったい何があったのか、よく調べれば何かわかったかもしれない。でもそんな冷静に物を考える事もできず、走って、ただ走って、家に帰ってきた。

殴られた頬が痛む、間違いなく現実だ。

 

一ノ瀬の迎えに仕事、いろいろとすっぽかしてしまったが、何も考える気になれない。

本当に、何があったのか。

 

もう、寝てしまおう。

 

 

 

 




来るなら来やがれ…フェス…!


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