とある厨二の創世創造(ジェネシスオーダー) (印鑑)
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第一章 創世記 The_Genesis_
学園都市に襲来した者


七月二十日未明:学園都市・ゲート前

 

「…ふっふっふっ…」

 

 学園都市。

その人口の八割を学生が占める、科学の街。

 

「…ふっふっふっふっ…」

 

 そこに入る為の出入口の警備員をしている自分(20代女性・独身)のガラス越しに、上に少しくたびれたワイシャツ、下に此方も少しくたびれている学生服のズボン、そして背中に巨大なリュックサックを背負った少年は立っていた。

 その口を目一杯に開け、聴く者の鼓膜と神経を逆撫でする三段馬鹿笑いと共にだが。

 

「はーっはっはっはっはぁ!!! 学園都市!! お望み通りにこの俺が来てやったぞ!!!」

「…君は外から学園都市に引っ越してきたのかい?」

 

 心の中で溜め息をつきつつも、学園都市に異常な輩を入れさせないという義務感を軸に何とか心を落ち着かせ、少年に問う。ポーカーフェイスも完璧だと自負しているし、これなら相手に不快感を与える事も無いだろう。

 少なくとも今目の前にいる少年は、その様な心遣いを気にする様な人物には見えないが。

 

「如何にも、俺は学生だ! しかしよくぞ俺の正体を見破ったな! 流石は学園都市の(ゲート)(キーパー)、中々に鋭い勘をしている!!」

「…その田舎感丸出しの服装を見れば何となく分かるよ…じゃあ早速だけど、身分証明出来る物を見せてくれるかな?」

「身分証明だと? 成る程、いずれ伝説(レジェンド)となるであろうこの俺の情報を今の内に多く確保しておきたい、という事か! はっはっはっ、良いだろう! だが暫し待て、これより学生証の捜索を開始する…」

 

 少年はそう呟くと巨大なリュックサックのチャックを開けて直ぐ様ひっくり返し、路面にぶちまけられた雑多な塊に両手を突っ込んでごそごそやり始めた。

 

「…これは違う…これも違う…ええい、一体何処に埋まっている?」

「…」

 

 呆然としながら見ている前で、少年はその山の中から服や鍋や目覚まし時計、そして歯磨きセットらしき物を次々と後ろに放り投げ、背後にもう一つの山を形成していく。マナーのなっていない不法投棄野郎でも良心が咎めるであろうレベルの惨状を見、心に憂鬱という名の塵が爆速で降り積もる。

 

「(…ったく、何でよりにもよって私一人の時にこんなのが来るんだ…あぁ、そう言えば今日は星座占い最下位だったな…)畜生、上位の時は全く当たらない癖にこう言う時だけ当たりやがって―――」

「ようし、ようやく発見したぞ! さあ見ろ、そしてお前の記憶(ソウル)に俺の名を深く刻み付けるが良い!!」

「…はいはい…えーと、何々……み…かん?」

「違う! 俺の名は未間(みま)翔助(しょうすけ)だ!!」

「……」

 

 イラッとしつつも、何とか堪える。こう言うのは酔っ払いと同じで、最低限の会話のみでやり取りを済ませるか、もしくは黙ってその道のプロ(アンチスキル)に任せるのが一番なのだ。因みに今は前者を選択している。だから我慢だ。

 

「あぁはいはい、そうですか。みま…しょうすけ…っと。高校一年…転入生ね。はい、確認がとれましたのでIDを発行しまーす…」

「…あいでぃー? それは如何様なる物なんだ?」

 

 駄目だこいつ学園側から許可が出てる癖に検討違いな事言ってんじゃねえよせめて来る前に入る為の手続きの方法とか調べて備えとけよパンフ見ろよノープランで来るなよこちとら最先端科学の街で売ってる天下の学園都市サマなのにIDって何なんですかって学園都市を何だと思って来たんだよこのヤローッ!!! と、ガラス越しに此方の心情を全力で吐露してやりたい所だが、我慢する。今夜呑む酒はきっと美味しいだろう。

 

「…学園都市での君の身分を証明する物、所謂君に割り当てられた番号みたいな物さ」

「何!? そこまでしてこの俺の情報を管理したいと言うのか!? …はっ、まさかこの俺を狙った陰謀が俺の知らない所で渦巻いているとでも!? これはまずい、直ぐに対策を講じねば…」

 

 人の話聞けやこのクソガキ等という物騒な言葉が口を突いて出かけるが、無理矢理奥歯で咀嚼して呑み込み、何とか衝動を抑え、顎に手を添えてぶつぶつ言い始めた少年に言いたかった最後の一言を突き付ける。

 

「…はい、これで登録は完了。もう通って良いですよー」

「おぉそうか! 感謝するぞ!! だが忠告しておこう、今日の夜道には気を付けた方が良い。俺と話した事で貴女も何者かに命を狙われるかもしれないからな」

「…はいはい、分かりましたからさっさと通って下さい…」

 

 真剣な顔で警告らしき物を発している少年を適当に受け流し、ゲートの奥に続いているトンネルに指を向ける。少年は再三の警告を繰り返した後、傍らに置いてあったドデカリュックサックに散らかした物を全てしまいこんだ後、此方に一礼してトンネルの向こうへと歩いていった。

 

「…はー…」

「ごめんごめーん、お茶っ葉切らしてた事を思い出して買い出しに行ってたら遅くなっちゃったー…ってどうしたの? 一気に五歳ぐらい老けた様に見えるけど…」

「遅いわよ…此方は変な学生の相手で大変だったんだから…やれゲートキーパーだのソウルに刻めだの自分を狙う陰謀だの夜道には気を付けろだの…」

 

 予想よりも随分と遅く戻ってきた同僚に、先程までいたあの少年の事を愚痴っていく。

 

「…挙げ句の果てに自分をレジェンド呼びよ? 多分ああいうのを世間一般では―――」

「ちょっと待って。貴女、学生を通したの?」

「…そうだけど、それがどうかした?」

「ここのゲートは乗用車が出入りする為の専用箇所で、車しか通しちゃいけない場所の筈なんだけど?」

「…え?」

 

 思わず聞き返した途端、クラクションと共にトンネル内から怒号が聞こえてきた。一方は男性の物、そしてもう一方は先程まで聴いていた例の少年の声である。身の内でどす黒い何かが渦巻くのを感じながら、今度こそ叫ぶ。

 

「ああもう、()()()()()()()ぐぅわぁぁぁぁぁぁ――――――――――――っっ!!!」

 

 その場で固まった同僚を押し退け、狭苦しい部屋から出て怒号の下へと疾走する。あの野郎はその道のプロに任せる前に軽くボコボコにしておこうと誓いつつ、更に足を速めた。

 

 

 

 

 

「…で、丁度来た警備員(アンチスキル)に貴女が取り押さえられたって訳?」

「…」

 

 今日は厄日だ。

 もしかしたら自分だけでなく、学園都市にとってもそうかもしれない。

 あんな得体の知れない奇人を入れてしまった、という意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日未明:第七学区・とある能力開発施設

 

 

 学園都市の特異性を示す上で欠かせない物。

 それは何と言っても『脳への人為的な電気操作や薬物投与等による超能力の開発』であろう。

 

「…はぁ…」

 

 その開発者の一人である白衣を着た初老の男性は、手元の書類をちらと眺めて溜め息をついた。細々した文字で書かれた詳細な実験結果を押し潰すかの様にドーンと記載されている、この頃少し目の衰えを感じてきた自分でさえ見間違えようのない、四文字の単語。

 

 

()()()(0)』。

 

 

 この街で能力開発に携わっている者なら最も多く見るであろう字面だが、分かっているとはいえやはり見る度に軽い負の感情が胸に去来し、憂鬱の種を蒔いていく。しかしそれは高位な能力者を発掘出来なかった事への失望、等という科学者的思考からは程遠い、『今回の結果をどの様にして被験者に伝えるか』という悩みから来る物であった。

 

「…能力検査の結果だが…」

 

 重々しく、言葉を紡ぎ出す。この時点である程度の覚悟をしておいてくれれば此方としては幾分か楽なのだが、不幸な事に今回の学生は『悪い結果なのだろう、早く言え』という諦観よりの表情ではなく、『何を引っ張っているんだ、早く言え』という期待に満ち満ちた表情を浮かべている。

 

「何だ、何を言い淀んでいる?」

 

 そしてこの様にキラキラした眼差しを向けている学生に結果を伝えるとふざけるな調べ直せのお言葉と共に大変元気良く此方に掴みかかってくる事が多いのだ。そんな案件が相次いだせいか、最近ではそういった連中を押さえる為のボディーガードを雇う事が研究所界隈でプチ流行している始末である。因みに給料は研究所負担、保険料云々込みで一人一週間十万は下らない。

 

「…そこまで溜めるとは、余程凄まじい事が判明したのだろうな?」

 

 待ちきれぬと言った様子で被験者である少年は椅子から身を乗り出し、此方に顔を近づける。それに合わせて前に出ようとした左右に控えている助手兼ボディーガードの二人を軽く手を振って制止し、幾度とない経験の中で培ってきた"あまり宜しくない話題を話す為の話術"をフルに使って言葉を続ける。

 

「機械によれば『測定不能』だそうだ。誠に残念だが、君は無能力者として登録される事になる。いや、落ち込むのはまだ早いよ、君に合ったカリキュラムを組めばまだ希望は―――」

 

 事実を分厚い毛布で包みつつ一気に核心まで話を進め、相手に内容を詳しく理解させず素早く話を終える。そうしてさっさと研究所の外に出してしまえば、後はどんなに喚かれようが他人であり、面倒を見る必要も無い。どちらかというと詐欺師に近い思考で、男性は早く喋り終えてしまおうと努力する。

 …だが、目の前の少年の口から不意に飛び出た言葉は今まで聞いた事の無い類いの物だった。

 

「問題無い。そもそもあんな検討違いの測定で俺の真価を測る事など不可能だ。まあ第一、機械なんぞに俺の力が読み取れるとは思っていなかったからな」

「…え?」

 

 能力開発、そしてその研究により発展してきたとも言える学園都市を真っ向否定するかの様な言葉。能力開発に心血を注いできた研究者達が聞いたら発狂して我を失いそうな台詞(ぼうげん)を、少年は一片の遠慮も思慮も無く淡々と紡いでいく。

 

念動力(テレキネシス)? 発火(パイロキネシス)? 水流操作(ハイドロキネシス)? 大気操作(エアロキネシス)? 空間移動(テレポーテーション)? 精神操作(マインドコントロール)? そんな的外れな認識で、俺の力を理解する事など出来る訳が無いだろう!!!」

「いや君、ちょっと…え?」

「よーく覚えておけ! 俺の力の名は―――」

 

「『創世創造(ジェネシスオーダー)』だ!!!」

 

「…」

 

 

 その時、一人の科学者は何かを悟った。

 ああ、これは触れてはいけない類いの人間だ、と。

 

「ほう、余りの衝撃に空いた口が塞がらない様だな。まあそれも仕方ないだろう、何しろ俺の力である創世創造は―――」

「君はもう帰りなさい。自分の住む学生寮の場所は分かっているね? さあ君達、ゲストさんのお帰りだ」

「…おいちょっと待て、気にならないのか!? あれだけ必死に検討違いな実験をしたのに真実には興味が無いのか!? こら放せ! お前達は新たな歴史が誕生する瞬間に立ち会う権利を得ているんだぞ―――っ!?」

「次の方、どうぞー」

 

 自身が無能力者である事を認められず、頭が可笑しくなったのだろう。男性は適当にそう決め付け、部屋から引き摺られていく少年の背中を見送った。

 出来れば二度と来ないで欲しい、と願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白衣を来た研究者の卵みたいな男性二人に両腕を掴まれ、未間は冷房の効いた建物内から焼ける様な暑さの屋外に半ば強制的に放り出される。

 彼は直ぐ様振り向いて食い下がろうとしたが、建物内に繋がるドアはドデカリュックサックを吐き出し、バタンと拒絶の音を立てて閉められた。未間は暫くの間もう一度扉が開かないかどうかじっと待っていたが、やがて諦め、頭を掻きながら愚痴を垂れ流し始める。

 

「…全く俺の力を理解しようとすらしない愚か者共がまあ良い元々あんな分からず屋共に付き合う道理などないのだからな所詮は既存の基準にしか物を当てはめられない頭の凝り固まった馬鹿共の集まりだ気にする必要もないそれはそうと取り敢えずこれで当分の住居である学生寮へと赴く事が出来るな良しそうと決まれば直ぐに向かおうこの様な灼熱地獄の中棒立ちになる意味など無い」

 

 目的を声に出す事で頭の中を無理矢理整理し、未間は大通りへと足を動かす。

 雑踏の中に足を踏み入れる瞬間、ふと未間は呟いた。

 

「『神は迷わず、常に正しき道を往く。その道程を乱す物は存在せず』」

 

 刹那、無数の靴音の反響と共に、人垣が割れた。決して広くは無い歩道の両端にぎゅうぎゅう詰めになった人々は、

しかしまるで歩道の中央部分など存在しないかの様に歩き続ける。

 

「ああ何だ、意外と近いじゃないか。こんな事ならもう少し粘っても良かったな。いや、今頃大きい荷物も届いている頃だろうし、部屋の整理の事も考えればあそこで諦めて良かったんだ、うん」

 

 誰一人歩こうとしない歩道中央を悠々自適に歩きながら彼は、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何号室だったか…まあどうでもいい取り敢えずドアの前に大量の荷物が置いてある部屋に入れば良いだろう鍵も忘れずに受け取っておかなければなしかし部屋の間取りはどんな物だったか…ああそうそう確か今まで住んでいた部屋×2程度の広さのリビングがあるんだったな果たして部屋に付属しているソファーはどの程度の大きさだろうか」

 

 頭の中で問題を一つ一つ解決しつつ、ついでの様に足を動かす。

 それだけで未間の体は細い路地を幾つも通り抜け、不良の溜まり場の中心を突っ切り、立入禁止区域内を横断し、確実に学生寮へと近づいていく。

 

 

 

 

 

「…ウォシュレットはあろうがなかろうが問題無い、と!」

 

 未間が思考を整理し終えて顔を上げると、

いつの間にか茜色に染まっていた空をバックに黒々とそびえ立つ学生寮がそこにあった。

 迷わず入り口に突入し、エレベーターに乗り込んでボタンを押す。

 

「…さーて、今日から新しい神話が始まるぞーっと! 舞台はこの世界、役者は不特定多数! 勿論神はこの俺だ!!」

 

 他人が見たらドン引きするであろうテンションで興奮する未間の前で、ゆっくりとドアが開く。直ぐ様飛び降りて右に曲がり、薄暗い通路の先に目を凝らすと、通路の一番奥に大量の段ボールが積まれて置かれているのが見える。

 

「やはりもう既に引っ越し業者が来ていたか。まあそこまで大きな家具とかは持ってきていないし、後は一人で何とかなるか―――」

 

そんな事を呟きつつ部屋に向かって歩いていくと、ふと通路の前方、丁度奥から二番目の部屋の玄関付近で何かが動き回っているのが目に入る。

 

「…?」

 

 近づくにつれ、その動いている物の正体は三つの円柱型ゴミ箱らしき何かであると分かってきた。その正体は学園都市の何処にでもいる、いやある清掃ロボットなのだが、ロボット=人型という認識をしている未間にはそれがロボットであるだなどとは当然分からない。唯一分かる事と言えば、それらは何度も前進→停止→後退→前進を繰り返し、まるで何かを通路から退けようとしているかの様な動きを続けているという事だけである。

 

「何だ、何かでかい障害物でもあるのか?」

 

 首を捻り、更に前進する。どうせ自分の部屋に入る為にはそれを通り抜けなければいけないので、ついでにちょっとどけてやろうかなどと軽い事を考えつつ未間はゴミ箱もどきを見下ろし、

 

そこに横たわっている『モノ』を見た。

 

「…!?」

 

 うつ伏せになって倒れている、銀髪で長髪の少女。着ている白い修道服らしき服の背には、太筆を何度も乱雑に叩き付けて書いたかの様な赤黒い模様が浮かび上がっている。その模様は乾いている様子が無く、むしろ気持ち悪いぐらいに湿り気を感じさせる。そして処理中の脳に追い討ちをかける様に漂ってくる、鉄の匂い。

 ああ、これをゴミ箱もどき達は"拭き取ろう"としていたのだと、未間は何となく理解する。

 

「………」

 

 しかし、頭で理解しても体は直ぐには反応しない。思考の後付けを取るかの様に、両目はじっくりと少女の背中の模様を端から端まで眺めていく。

 そして、その行動がようやく終わろうとした時。

 

「あれ、どうかしたのか?」

 

 後ろから、声が聞こえた。

 未間が思わず首だけをぐるりと回して後ろを見ると、ワイシャツに黒ズボンという如何にも普通の学生です、といった風貌の頭髪ツンツン少年が不思議そうな顔をして此方に歩いてくる最中だった。やがて少年は未間の奥で動くゴミ箱もどきに気付いたのか、笑顔になって話しかけてくる。

 

「ああ、もしかして隣の部屋に引っ越して来た人か? はは、やっぱり最初は誰でも驚くんだな、そいつを見ると。けどまあその内慣れると思うぞ―――」

 

 不意に、少年の表情が固まる。タイミングからするに、恐らく倒れている少女が目に入ったのだろう。

 

「イ…インデックス!?」

 

 少年は一言そう言うと、自分とゴミ箱もどきを押し退ける様にして少女の側に屈み込む。そのまま彼は暫く先程の自分の様に少女の体を眺めていたが、直ぐに背中の模様に目を止めた。

 

「…え?」

 

 呆然とし、ふと自分の右手を眺める少年。

そこには、模様と同じ赤黒い色をした液体がべっとりと付いていた。

 

「…」

「知り合いなのか? 名前らしき言葉を発していたが…」

「…お前がやったのか?」

「は?」

「お前がインデックスをこんな風にしたのかって聞いてるんだよ!!!」

 

 思えば最初から危惧するべきだった。こんな場面を誰かに見られたら、まず真っ先に疑われるのは自分だろう。しかし未間もいわれの無い事で殺人者扱いされる事を許容する様な変人では無いので、直ぐ様否定する。

 

「知らん。俺は今日初めてこの街に来たんだ。勿論この少女の事も知らないし、ましてやこの少女の背中を血塗れにした覚えもない」

「………そ、そうか…確かに清掃ロボットを見た事無さげだったからな…すまない、いきなり怒鳴ったりして」

「まあ気にするな、分かれば良い。ところでその少女の名前らしき言葉を発していたので聞かせてもらうが、この少女は何者で、そしてどうしてこんな所で倒れているんだ?」

「…俺にも詳しい事は分からない…畜生、一体何処のどいつがこんな事を…」

 

 カツン、と。

真後ろから、足音が聞こえた。

 

 二メートル以上の長身に、神父が着るような黒い服。赤毛、と言うには濃すぎる赤色の髪。耳には複数のピアス、そして向かって左目の下には何故かバーコードが描かれている。

 振り向いた未間の目と鼻の先に、そんな身体的特徴の男は立っていた。

驚愕している二人に向け、そいつは何の気無しに言葉を放つ。

 

「何処のどいつって、僕達『魔術師』だけど?」

 

 瞬間、未間は思った。

神話の始まりにしては、一章目から飛ばしすぎではないかと。




次回は不良神父との対決。未間の力も少し明らかに。
脱字・誤字などがあったら報告下さい、速攻で直します。


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