東方男娘録支援作品集 (いのかしら)
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月夜と縁側

どうも井の頭線通勤快速と申します。

この小説には
・三次創作
・男の娘
・非KENZEN
・原作に対するキャラ崩壊
・ネタバレ
などが含まれます。

今回東方男娘録作者のゆくめで先生に投稿に関する許可を頂きました。本当にありがとうございます。

2月10日から始まる第8話を楽しみに待ちましょう。

ゆっくりしていってね。


小夜はふと目を覚ました。取り敢えず正面を見つめるが、視界に入るのはただ暗闇の中の壁のみ。まだ丑の刻頃だろうか。

 

そして間も無く小夜は目を覚ました要因を理解した。腹の下に感じる嫌な重さ。そう、夜中に厠へ向かいたくなったのである。昨夜のうちに行ったはずとも思ったが、感じてしまったものはしょうがない。

小夜は布団から出ようと布団の端を持ち上げたが、身体が起こせない。理由は明らかだった。背中から聞こえる寝息のせいである。其の者が背中から小夜の腹へ回した腕は、小夜の身体をがっちりと固定していた。

 

手を握って外そうとも思ったが、出来れば起こしたくない。鍛錬で疲れてらっしゃるだろうというのもあるが、厠へ、ということに自身の秘密に対する直感的な恐怖を感じたからでもある。

 

はてどうしたものか。何よりこの場で赤蛮奇の再来を起こすのだけは避けたいのだ。時間がない。しかし下手に身体をよじる訳にもいかない。そこで身体を上方へずらし、腹に巻かれた腕に空間的余裕を持たせ、這い出ることにした。

 

ゆっくり、ゆっくり、下手に背中の人に刺激を与えないようにしていたが、運が良いのか悪いのか、股の秘密に人の手が触れる。思わずextend仕掛けたが、寝息の様子からして気付かれてないようで、それを確認すると漏れぬうちに急いで厠の方へ駆けて行った。尿意に注意を向けると下は治まった。

 

 

「ふぅ……」

離れにある厠へは間に合った。少し身体を震わせる。手を洗い手拭いで拭き、ほっとした顔で寝室の方へ戻る。自分の部屋を過ぎ、霊夢さんの部屋に入ろうとする。

 

さてどう戻るべきか。明日の朝輪の中に入っていなかったら、霊夢さんが不思議に思うだろう。かといって入り方も問題である。腕の輪の中に入るのは、明らかに出るのより難しいからである。しかも外を歩いているうちに少し目も覚めてしまった。このまま入って抱きしめられたら先ほどの下が回復しかねない。

 

小夜は少し縁側で座って考え、入ってすぐ寝る為眠気を待つことにした。爪先を地面につけ深く息を吐く。またゆっくりと行くしかないのだろうか。風がぬるい。それを爪先に触れる砂利が相殺する。

 

 

広い。眼前には色が失せた、ただ広い場があった。鳥居からの参道のみが少し鈍く濃く見える。ボクの今の札はあの鳥居に届くのだろう。来てすぐは前にさえ飛ばなかったというのに、時が経つのは早いものだ。

 

視線を上げる。空に浮かぶは数多の星と月。ウサギがいるように見える、完全な丸ではないが、丸っぽい月……ボクがあの時ふと浮かんだあの人も、月を見ていたのだろうか……

 

 

「おはよう」

「……あ、お燐さん。」

小夜の隣で、1匹の黒猫が丸まっていた。

「早いね、お小夜ちゃん」

「あ、いえ……目が覚めてしまって……」

「厠かい」

「そうです……お燐さんは?」

「いつも通りさ」

猫は尾を縁側に何度かペチンとたたきつける。

「はぁ……」

「で、どうしたの?」

「……はい?」

「なぜ今ここにいる?」

「ああ……月って……変わらないんですかね、と。」

「月?」

「この綺麗な月です……この前上白沢さんに調べてもらったところによると、私は今とははるかに違う時代から来たそうです。」

「食事見たらわかるよ」

「そうですか……それで、もしかしたらこの月、私の知る月とは違うのかも……と。」

「どうなんだろうね」

「……私、分からないんです。私がどうしたいのか。」

両手を膝の上に乗せ重ね、握る。

「永遠亭の八意先生によって記憶を取り戻す薬を飲んで治らなかった時も、悲しみだけじゃなかったんです。確かに喜びがあった。」

「そうかい」

「……どうしたら良いんでしょう。元の月のある所に戻るべきなのでしょうか……それとも……」

「簡単さ」

「えっ?」

軽い発破音ののち、隣の猫は猫耳を生やした少女に切り替わる。

「帰れる時になったら考えれば良い。」

「……帰れる時に、ですか。」

「少なくとも今じゃないんだろう?」

「……はい。いつかは分かりませんが。」

「そうかい。その時、その二者択一を迫られた時、初めて考えれば良い。それまでお小夜ちゃんはそんなこと気にせず、いつも通り鍛錬に励んで、いつも通り生活していれば良いさ。」

ニカッと八重歯を見せる。それにつられ、小夜も口元が緩んだ。

「それより、起きているなら撫でておくれよ。」

「あ、はい。喜んで。」

 

再び黒猫に戻ったお燐が小夜の膝の上に乗ろうとしたその時、小夜の身体が浮いた。両脇の下から日本の腕が飛び出し、胸の方へ巻きつく。

「ひゃあ!」

「さ〜よ〜。うぇひひ……」

「れ、霊夢さん?」

その主は先ほどまで寝ていたはずの霊夢である。

「な〜に起きてんのよ。明日もあるんだから寝なきゃダメでしょ。」

「あ、すこし厠へ……」

「あと勝手に布団から出て行くんじゃないわよ。早く寝るわよ。」

小夜を抱き上げながら、霊夢は寝床の方へ連れて行く。

「はい……あの、降ろしてください……」

「だ〜め。」

霊夢は小夜の髪の中に鼻を埋め、深く息を吸い込む。

「すうぅぅぅ……ふひいぃぃぃ〜。この格好も悪くないわね……」

「あの……」

「じゃ、お燐。おやすみ。」

「あいよ」

その姿のまま、2人は布団の上に倒れこんだ。深い深呼吸の音は、周りの森からの僅かな音を掻き消す。

 

 

「男ってつらいね」

丸に近い月は、ただ静かに空に浮かぶ。

 




東方男娘録 第1話 前編

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm22675479


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原子力は動き出したら止まらない。K

どうも井の頭線通勤快速です。
アリスのせいで性の悦びを知ったる〜ことのIFストーリーとなります。


其の島に天降り坐して、天の御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。是に其の妹伊邪那美命に問曰ひたまひけらく、

「汝が身は如何にか成れる。」

ととひたまへば、

「吾が身は、成り成りて成り合はざる処一処あり。」

と答白へたまひき。 爾に伊邪那岐命詔りたまひけらく、

「我が身は、成り成りて成り余れる処一処あり。故、此の吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の成り合はざる処に刺し塞ぎて、国土を生み成さむと以為ふ。生むこと奈何。」

とのりたまへば、伊邪那美命、

「然善けむ。」

と答曰へたまひき。

(古事記上つ巻 より)

 

古事記は何十度も目を通してはいるが、ここは少なくとも人前では余り読む気がしなくなる。

今日もこうして店番を務めてはいるが、珍しく客がいない。

だからこそ今ここを見ているわけだが。

ここの土地を生む、国土を作るという点でここまでの表現を利用する古代の人間の感性の独自性が窺い知られる。

少なくともこれに近い感性を持った人を、私は知らない。

店の前の往来はあるが、その足のうちこちらに向くものはない。

私は欠伸のついでに息を吹きかけ、再び本を纏めて何枚かめくった。

 

まだ先まで読み進めようとした矢先、やっと入り口の幕が捲れる音がした。

「いらっしゃいませ。」

入って来たのは緑の髪をした女性。買い物帰りなのか、物が詰まった袋を腕にぶら下げている。

確か近くの醤油屋のおばあさんから聞いた博麗神社に新たに来たメイドだっただろうか。

神社とは付き合いがあるが、どういうものかはほとんど知らない。

ただ、人ではないとは聞いた。外の本で少し調べたが、何であるか確証は得られていない。

 

その女性、まぁ人扱いでいいだろう、は棚の背表紙を上から順に流し見て本を探しているようだった。

私は一応本をたたみ、その女性の元へ向かう。

横から近づくと、彼女の視線がこちらを向いた。

「何かお探しですか?」

「あ。だ、大丈夫です……」

「そうですか。失礼しました。」

一礼して席に戻るが、少しこの客変である。

何かやけにそわそわして、周りの様子を異様に気にしている。

顔の赤さから、医者なら風邪だと言うだろうが、そもそもこの者風邪を引くのか分からない。

彼女が、私から遠ざけたい本を霊夢さんから頼まれて探している、というなら分からなくもないが、棚の位置から考えてそういう関連のものでもなさそうである。

借りに来るまで待てば良いかと私は席に戻り、閉じた本を開いた。

 

しばらくして彼女の足音が止んだ。お目当が見つかって良かったと少し待っていたが、本棚の向こうから少し息が荒れる音がするのがやけに気になる。

もしかしたらこのメイド、本当に風邪を引いているのではなかろうか。

一人しか客もいないし、気に掛けることは罪ではないだろう、と私は再び席を立ち、彼女の足音が途切れた場へ赴いた。

本に視線の全てを投入し、呼吸音を響かせながら直立している彼女が本棚の前にいた。

角度的に本の中身は分からない。だかこの彼女本当に風邪なのかもしれない。

「あのー。」

「!くぁwせdrftgyふじこlp!」

しかし声をかけた途端ただでさえ紅い顔をさらに紅潮させ、立ち位置から少しずれた場所に持っていた本を素早く仕舞うと、よく分からない声をあげて慌てて駆け去って行った。

背中を追いかけようとも思ったが、安々と店番を離れるわけにはいかない。

「あーあ。全く、本は丁寧に扱ってくれないと……」

仕方なく彼女が読んでいた本の方を見る。乱暴に入れられた為か、本が棚から軽く飛び出ている。

それはかつて数度赤蛮奇が手に取っていた本だった。

裏表紙に書かれているのは、

『18歳未満閲覧禁止』

の文字。

 

小鈴はその薄い本の背表紙を押し込み、全てを見なかったことにした。

 

 

夕刻、斜めに落ちた日は間も無く辺りの葉の散った森の中に紛れる。

霊夢が部屋の中で休息を取っていると、外の方から参道を駆ける足音がする。

その主は博麗神社である限りすぐに検討がつく。

「おかえりー、る〜こと。」

駆ける音の主は確実に霊夢が呼んだ名前であるが、その本人は顔を伏せたまま走り去る。

「る〜こと、食材は台所に置いておきなさいよー。夕餉は作るから。」

返事はないが、向かった先から考えてその通りしてくれそうだ。が、

「変ねぇ……」

「どうしたんですか?」

「ゆっ?」

足元にゆっこに乗った針妙丸が寄り添う。

「る〜ことが帰ってきたんだけど、声かけても返事してくれないのよ。」

「確かに、何時もなら一言返してくれそうなものですが。」

「まぁ、後で話を聞いてみますか。」

 

襖を閉じ、2人と1匹は揃って部屋の中で休息を取ろうとしていると、台所に荷物が置かれる〜ことの部屋に入った後、裏手に出て行くのが耳に入った。

「あれ?こっち来るかと思ったんだけど。」

「どうしたんでしょう?」

「もしかしてお風呂?」

「かもしれませんね。帰りに何か汚れることをなさったのでしょうか?」

「そうは見えなかったけどね。

まぁ、何か風呂に入りながらゆっくり考えたいことでもあるのかしら?」

壁に寄りかかりながら霊夢が頭の後ろを掻く。

「人間ってそういうものなのでしょうか?」

「あの子も人間じゃないけどね。じゃあ、私は夕餉の支度に向かいましょうかね。」

霊夢は片腕とそれに付随する袖を回しながら立ち上がった。

「ゆっ!」

「ゆっこさん、どうなさったんですか?」

いきなり針妙丸の下が跳ね上がる。

「ゆゆっ!」

「何?今風呂に小夜が入っているけど大丈夫か、って?

流石に大丈夫でしょう。いくら何でも小夜のタオルをひっぺがしたりしないだろうし。

それに小夜は時間的にもう直ぐ出て来るはずだしね。」

「ゆ〜……」

ゆっこは眉をひそめながらその顔の向きを風呂の方に変えた。

 

 

ここから起こることは、幾つかの偶然の不幸と幸運の連鎖による産物であった。

 

まずはる〜ことが先程の貸本屋の件で精神的に混乱して、集中力が散漫になっていたこと。

次いで風呂にいた小夜が脱衣所からの音に気づき、少し急いで風呂から出ようとしていたこと。

そしてる〜ことが小夜が予想していたよりも早く行動したことである。

 

これらの要因により、る〜ことは小夜の服に気づくことなく全裸で浴場への扉を開き、小夜の方はタオルを巻き桶を股間に当てた格好で、浴場の扉から人一人分離れた位置に来ることになった。

無論小夜の方は正面に現れたたわわに実る胸の二つのものなどを見た為、即座に桶の上側から鈍い音が鳴る。

勿論頭の中では困惑が渦巻いていた。

 

問題はこちら、る〜ことの方であった。

目と鼻の先に小夜がいた為、踏み出そうとした一歩目の歩幅が大きく縮む。

即ち体重が前方に大きくかかる。

果たしてその足が置かれたのは、扉のレールが成すちょっとした段差であった。

この為、アンドロイドであるる〜ことの身体は前方に大きく傾いた。

普通の人間ならば、地面に手をついてこのショックを緩和せんとするだろう。

しかし彼女がアンドロイドである為か、はたまた他に理由があるのか、彼女の両手はそれぞれ位置的に頭の少し先にある小夜が持つ桶と体に巻かれたタオルに向かっていった。

 

石畳の浴場の床の上を木の桶が跳ね、桶の口を下にして鈍い音を内部で反響させ、縁と床の接点を移動させながら回る。

「あわわわわ。あの!すみませ……」

地面に伏せたる〜ことは直ぐに顔を上げる。

もし怪我をさせていたりしたら靈夢にも申し訳が立たない。

しかしながら彼女のちょうど正面に見えたのは、先程の貸本屋で眺めていた対象に違いなかった。

おまけにそれらの本に見られるような黒の線やぼかしなどが存在しない、正真正銘紛いようのないそれの裏側である。

それが本で見た通り、かなりの角度で上向きに、先の衝撃の為か前後に小刻みに揺れていた。

る〜ことはそれから目を離せずにいた。

桶はいつの間にか安定を取り戻し、その回転を止める。

状況をやっと理解した小夜は、思わずその小さな両手でる〜ことの視線の先を塞ごうとするが、残念ながらどう見ても手遅れである。

目の前の手の動きで我に帰ったる〜ことも、直ぐに顔から火を吹かさんばかりになり、その石畳に顔を擦りつけるように伏せた。

まさに前にアリスに言ったあの言葉の通りになったのである。

二人とも声を上げることもその場から去ることもできず、しばしその場は全裸の人間二人のうち一人が倒れ、もう一人がそれを見下ろしているような奇怪な光景を見せた。

 

 

る〜ことは小夜の依頼通り身体にタオルを巻き、小夜はまだ治らぬそれを覆うように、腰のあたりに自身のタオルを乗せた。

二人はシャワーの前にあるバスチェアをそれぞれ取り、それに腰掛けていた。

無言。

取り敢えず腰を落ち着けたものの、双方とも恥ずかしさから話を切り出せずにいた。

向こうの温泉からの湯気が冷える外気に溶かされていく。

 

最初にそれを打ち破ったのは小夜であった。

「あ、あの……この事は秘密にしていただきたいのですが……」

これへの返しを直ぐにすることをる〜ことは躊躇った。

顔から見て、それが真剣な願いである事は明白である。

だが人間と同じように失敗するように設計された私は、口を滑らさないと言えるだろうか。

いや、言えない。

ドジってなんかの拍子に漏らすことはない、と断言できない。

どうすればそのようなことを無くせるだろうか。

 

そして心の中で、先程目に焼き付いた、未だタオルを押し上げているものへの興味と興奮があるのは事実だ。

アリスから聞いた話を、あの本の中に描かれたものを実現し得るものが目の前にあるのである。

下腹部から湧き上がる熱気に、彼女にインストールされた抵抗力は確実に削がれていた。

 

背中を丸めながら、る〜ことは口を開いた。

「……えっとですね……私もこのことは秘密にはしておきたいのですが……何分私ドジなもので、何かの拍子に言っちゃわないとも限らないんです……」

「ですが、これは……」

「ですから、えと……私も、人に絶対に言えなくなるほど、更に恥ずかしいことを経験して……自分への口止めにしたいんです……」

「はぁ……それで更に恥ずかしいこととは?」

心に決めてここまで口にしたものの、恥ずかしさから更に歯切れが悪くなる。

正面の小夜の真面目な顔を見ればバツが悪くなるものだ。

しかしそれは、貸本屋から高くキープされた興奮に連動した彼女の口へのブレーキにはなり得なかった。

「えっと……その……小夜さんの……ものを……触らせて頂けないかと……」

「えっ!」

「お願い……できません……か?」

 

 

「では……失礼します……」

る〜ことはバスチェアから身を乗り出し、小夜の腰にかけられた布の右を持ち、ヘソの近くを通って左に持ってくる。

その目的地は先程よりは一回り小さくなったものの、再び視界内に入った。

恥ずかしさはさっきの反動か、いささかましである。

「えっと……早目に済ませて頂けると……」

「あ、す、すみません。」

手を伸ばし、指先が触れる。

「んっ」

股間のそれはぴくんと反応し、小夜の体の方に振れる。

本当に別の生き物みたく動くのかと感心していたが、そうゆっくりもしていられない。

下手したら靈夢さんなどが遅いのを気にしてこっちにくるかもしれない。

そのまま卵を掴むように柔らかく指を絡ませる。

熱を帯びたそれは手の中で膨らみ、いつの間にかる〜ことの手を押しのけ、硬度を増していった。

鼓動が手を通じて伝わり、共鳴するが如くる〜ことの鼓動を早める。

「……すごい。」

口から飛び出した感想はそれだけだった。

 

アリスから聞いた体験談を元に、それをゆっくりと上下に動かし始める。

手の中で幼い身体に生えた異形の脈動は、る〜ことの腕を振るわさんばかりになる。

「ほっ……ほっ……」

小夜は一切抵抗しない。

全てをる〜ことに委ねる。

それが生む加虐心と罪悪感、そしてそれに相反して沸き起こる愉悦感が混じり合い、る〜ことをさらなる新境地へいざなう。

少しずつだが、手の中のピストン運動を加速させる。

確実に小夜の息は荒くなっている。

確実に小夜の剛直は頭を中心に大きくなっている。

る〜ことは自身の股の下から液体が滴り落ちていることも無視して、夢中で凝視しつつ手首から先を抽送させた。

「ああっ……で、出る。すいません、る〜ことさん。もう……」

振動が一際激しくなる。

出る。

そう、間違いない。

アリスから聞いた生命の水である。

本の描写なども見るに、止めようとして止められるものではないらしい。

優しく声をかける。

受け入れると。

 

きのこの傘が紅く大きく膨らみ、次の瞬間る〜ことに向け白い粘液が放物線を描き発射された。

何度も脈動を繰り返しながら放たれたそれは、右胸から太ももまでタオルを白く染め上げる。

右胸あたりのそれに触れると、粘度の高いそれは指と指の橋渡しを何本も形成する。

小夜は先程までの周期の短い呼吸から、深呼吸を繰り返す形で息を上げた。

先程まで硬くそそり立ち、手に熱と鼓動を伝えていたそれは、今はもう力が抜けたようにしぼみ、向きも斜め下になった。

見るからに小夜の顔に疲れが見えるが、それもそうだろう。

鍛錬を終えた後にこれをしたのだから。

 

 

「本っっ当に申し訳ありませんでしたぁ!」

「い、いえ。その代わり……」

「はい!死んでも話しません!というか絶対話せません!恥ずかしすぎて!」

風呂の床の上で、地面に伏せるる〜ことに対し、立った小夜がそれを宥めていた。

「あの……そろそろお風呂入りませんか?身体冷やしてしまいますよ。」

「そ、そうですね……」

小夜の顔を見ることもできず、る〜ことは顔を手で覆いながら小夜から少し離れて湯の中に浸かった。

アンドロイドではあるが、風呂に入ると心地よさを覚える。

そのままじっと浸かっていると、オーバーヒート仕掛けていた頭も落ち着きを見せてきた。

 

しかし脳内にこびり付いたこの恥は、小夜さんとの約束を守るのに重要な役割を為すに違いない。

こうしてしまった以上、これからの日常生活で不自然なことが生じないように正常な関係を築かなければ。

 

る〜ことは温泉の中を進み、同じく浸かっていた小夜の元に近づき、段差に腰を下ろした。

「あのー、小夜さん。」

「はい?どうしましたか?」

「あ、いえ。今回のこと、靈夢さまはご存知なのですか?」

「いえ、知らないです。ですが、る〜ことさんがお会いした方だと静葉様や穣子様、あとアリスさんなどは知っています。」

「……アリスさん、ご存知なのですか?」

「はい。」

 

アリスはこのことを知っている。

そして風呂の中での話。

おまけに体験談。

これから導き出せる答えは一つしかない。

(ま、まさか……アリスさんの体験談って……相手小夜さん!)

こう考えたものの、それを口にすることはなかった。

それよりも話を早く逸らして、気兼ねない話に持っていきたかった。

幸い、その後はその系統の話題を外すことに成功した。

 

 

浴場への扉が大きく開かれる。

「ちょっと小夜。幾ら何でも風呂長すぎよ。

夕餉もう直ぐできちゃうじゃない。」

開いたのは両腕の袖を外した霊夢であった。

「あ、霊夢さん。すみません、直ぐにでます。」

「る〜ことも早目に出なさいよ。」

「分かりました。」

小夜は霊夢が脱衣所から出る音を聞くと、温泉から出て脱衣所へと歩いて行った。

温泉にはる〜ことただ一人が残される。

アリスさんのお陰か、今日一日で私は大きく成長し過ぎた気がした。

もっとも、いい成長なのかは分からないが。

 

秘密は人の命を楽しませるが、守るための苦労も同時に背負わせるのである。

 

 

こうしてる〜ことの動作回復後の重大イベントは、恥で封ずる形で一先ず終わりを迎えた。

この先る〜ことと小夜がこの博麗神社での安寧を守ることができるのか、それは誰にも分からない。

 



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風呂団藍 K

どうも井の頭線通勤快速です。

今度は藍さんの話です。
8章4話見たら投稿せざるを得ない!やっぱりレティさんは(略


九尾の狐

 

その名の通り九本の尾をもつ狐の妖怪である。それに関する伝説は日本、中国、朝鮮、ベトナムと広い範囲に残されている。

 

初出は紀元前2世紀から紀元後3世紀に中国で著された『山海経』であり、赤子のように泣き人を喰らうが、人がこれを食えば邪気を退けられる、とされる。

 

日本に於いては平安時代の延喜式では神獣とされたが、鳥羽上皇に仕えた美女が実は妖怪だった、という『玉藻前』の影響により、殷の妲己、周の褒姒などの傾国の美女に化ける「白面金毛九尾の狐」として語られることが多い。

しかし室町時代の『玉藻の草子』では二尾の狐と書かれるなど、九尾の狐と示すものはなく、傾国の美女という共通点を用いた後世の人間による2次創作、3次創作の部類だと思われる。

実際曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』では善玉の九尾の狐が登場する。

 

余談だが、那須高原には九尾の狐が討伐され石になったとされる殺生石というのがあり、近くの那須温泉神社には九尾稲荷神社というのがある。退治された後も近づく生き物も人間も殺し続けるとか迷惑極まりない。

 

まぁしかしこの2次創作に乗っかるならば、殷の紂王はいつ死んでもおかしくない年であり(紂王用と思われる空の墓が見つかっている)、鳥羽上皇も玉藻前と思われるモデルの年齢から考えると、玉藻前が入内した時すでに彼は30歳を超えており、若いとは言えない。

まぁつまり、九尾の狐が淫獣だとして、若きモノを望んでもなんら不思議はないのである、多分。

 

以上、筆者の考察とも言えないただの垂れ流しでした。

 

 

その日の守矢神社での鍛錬を終え、風呂に浸かる小夜。

秋姉妹による『男の子の勉強会』の疲れのせいか、不幸にも風呂の中で寝落ち仕掛けてしまう。

再び溺れかけた小夜に対し、それを救った幻想郷の主、妖怪八雲紫に言い渡された条件とは……

 

 

「次、溺れかけたら問答無用で藍を投入するから覚悟しなさいよ!」

 

 

それから幾分時が経ち、地霊殿での仕事も済ませる〜ことが復活し、命蓮寺での鍛錬も始まり、また半ば自動的に新しく小夜の秘密を知る者も増えた。

その初日のことである。

ナズーリンに初めてを与えることに成功した小夜は、一人で少し気分良く温泉に浸かっていた。

これまでの紅魔館や守谷神社、そしてここ博麗神社での激しい訓練の成果が、目に見える形で現れたのである。

無論与えた回数は向こうに大きく劣るが、それでもこの魑魅魍魎が跋扈する幻想郷に於いて、一定の自信になり得るのは嘘ではないだろう。

それともう一つ、代替えとして有効なものが現れた。

命蓮寺の主、聖白蓮の香の香りである。

対象は自分の股の下にある、人類を大まかに2種に分けた時、その最も大きな差となるもの。

その香りはたとえ聖の大きな双丘が顔に押し当てられても、extendを避けられるほどの効果を生んだ。

その香の香りが脳内から意識的に湧き起こすことが可能ならば、お燐ガードが消失した今下手したらこれまでよりも有効なカードになり得る。

 

しかしその香のことを考えていると、急に眠気が小夜に襲いかかった。

その香の再現により脳内の起き続けようとする集中力が溶かされ、鍛錬の疲れもあり、小夜の眠気は危険な領域に突入する。

首、顎、口……次々に水面へめり込んでいく顔の一部。

それが鼻にかかろうとした時、生命の危険からか眠気が弾き飛ばされ、肩まで水面上へ飛び出した。

呼吸が荒れる。

心拍も身体全体に響く。

生命の危険さえある中々に危ない事態であった。

落ち着こうと一度長く息を吐き出す。

今回は自力で危険を免れたが、次はどうなるかわからない。

さらに約束が履行され、藍さんが来る可能性がある。

取り敢えず今後、風呂の中で香のことを考えるのは止めることにした。

 

そしてその時、小夜の左肩に濡れた何かが触れた。

というより、掴まれた。

「んひゃうっ⁉︎」

再び身体が水面上へ跳ね上がる。

が、落ち着いてそれを確認すると指である。

白く、すらっと伸びた、滑らかに五本揃った手と指である。

「も……もしかして……」

恐る恐る振り返ると、揺らめく湯気の向こうに浸かっていたのは、耳のある女性。

その女性は和かに微笑みながら、つい先ほどまでいなかったにもかかわらず浴場に馴染みながら、じっとこちらを見つめていた。

間違いなくあの妖怪の式、藍である。

「あ、あの……今回は自力で回避してますよ?」

「駄目です♪さぁ小夜さん。もう大丈夫ですよ。こうやって私が支えていてあげますからね。」

小夜は後ろに引きずられ、藍の膝の上に腰を下ろす形になった。

そこから更に抱き寄せたため、小夜の背中には二つの大きな塊の柔らかさが感じられる。

そして今回は香の香りは存在しない。

藍はその抱き心地に腰が抜けそうになるが、元から腰を下ろしているので問題にならない。

「あ、あのっ!そのっ!せ、背中に柔らかいものが……」

「ふふふっ。小夜さん、素敵ですよ。」

息が荒れる。

小夜ではなく、後ろからである。

原因は簡単、小夜の右肩の上に顎が載せられており、その顔が下の方を向いているからである。

「あっ!だ、駄目ですっ!見ないでください!」

「大丈夫、大丈夫ですよ……」

息の荒さは増すばかり。

その顔が少し後退し、ある場所に息を吹きかける。

「あひっ⁉︎み、耳に息を吹きかけないでくださいぃっ⁉︎」

小夜の身体は再び跳ね上がり、藍の左肩に後頭部が乗っかる。

「ふふふっ。紫様もいらっしゃいませんし、ゆっくり頂きますよ?」

「い、頂くって、何を?」

返事はせず、まずは右耳に食いつく。

再び小夜が声を漏らすが、気にせずそのまま耳の外、そして内側へと舌を進める。

元から小夜をこのようにする気でここに来たのである。

頭の中に躊躇いの文字はない。

膝の上から反応の振動が伝わり、抱き抱える手が胸に触れると、一段と大きな振動が生じた。

「ここが弱いんですか?」

「ひぅっ!」

藍の口角が大きく上がる。

間違いなく手に入る美味しい餌が目の前に転がっているのである。

右手を小夜の左胸へ、左手を右胸へ、それぞれ持っていき、それぞれの指の先にあるボタンを上に、下に交互に弾く。

「んひうぅ‼︎あっ!」

愉悦に歪んだ声が身体の芯を震わす。

顔を小夜の右側に寄せ、指を動かしたままその顔を覗くと、顔は風呂による影響とは思えぬ程真っ赤に染まっている。

それは藍の女という野生の精神が理性の鎖の一本を引きちぎった。

「ふふふっ……では、ヤりますか。」

右手がボタンを離れ、小夜の股の方へ伸びる。

目標に指を触れただけで高揚させる揺れが伝わる。

硬い。

それはまるで熱された鉄の棒のごとく、風呂の湯よりも遥かに熱かった。

そしてこの幼く、抱きしめたくなるような姿に似合わず、指を僅かにずらすだけでも獰猛に上下に荒れ狂った。

思わず指を絡めたままうっとりとそれを眺める。

 

ふとのぼせられると面倒くさくなると思い、手を動かそうとしたが、ただ上下にしごくだけでは面白くない。

もっと、もっと反応した小夜の顔を見たくて仕方ない。

その思案の結果、藍の手は竿から少し上に動き、きのこの傘に被さった。

「ひんっ!」

5本の指のうち薬指と小指を除く3本が、傘の周りと中央の穴を塞ぐ。

一切抵抗らしきものはない。

そしてその3本の指の先は、間も無く傘の上を素早く回り始めた。

左手は変わらずボタンを弄びながら、目尻に涙さえ浮かべかけている小夜の身体を支える。

おまけに耳の裏をひと舐め。

身体を尻尾が支えになるよう若干倒して、小夜の身体をもたれさせる。

安全を確保した上で、今度は左手を右手同様下に持っていく。

竿の下に移動したそれは袋を捉え、皮膚との境を指でなぞる。

これにも面白いように反応し、胸の上で小夜が跳ね回った。

限界は近かった。

もはやパチュリーやアリスや霊夢では味わえないであろう藍の多方面攻勢に対し、小夜の陥落が迫っているのは火を見るよりも明らかである。

その傘が膨らむのを感じ取ると、今度はその指のうち、人差し指と中指の間で棒を挟み、腹側と管に刺激を与え、準備を整えた。

「ら、藍さん……駄目ですっ!あっ‼︎ほっ!ほっ……」

その声の間隔が狭まるのに合わせ、抽送の速度を上げる。

管越しに上がるものを確認し、最後の仕上げを済ませ、登るのと同時に押し出す。

「〜!」

もはや声にも表せぬ音を奏で、小夜は達した。

何度も何度も、脈動が手を通じて伝わる。

その脈動が止まるとともに、小夜は藍の左腕にもたれるように倒れ何度も息を吐き出す。

藍はその様を引き寄せ横から見つめ、頰を擦り当て喜びに浸っていた。

 

息も落ち着いてきた小夜はハッとしたように振り返った。

「す、すみません……温泉の……」

完全に女の可愛らしさが滲み出ている。

「問題ありませんよ。私がヤりましたから、それに関しては対策済みです。」

「え?それは……」

「スキマを使って、問題ない場所に送りましたから。」

「そうですか。え、えっと……あ、ありがとうございます。」

「いえいえ。さて、私としては」

「んひうぅ!」

竿を包み、背中の筋を舌で舐め上げる。

「ここも回復してますし、もう3度ほど頑張って貰いたいところですが、これ以上浸かって怪しまれると面倒なので、もう上がってください。」

そう言うと、小夜を捉えていた両手を外した。

少し下がり、簡単に術をかける。

呆然とする小夜に対し、湧き上がるよだれを誤魔化しながら、藍は問いかける。

「それとも、もう一回しますか?」

「あ、いえ、失礼します!」

今更危機感を覚えたのか、水しぶきを上げて立ち上がった小夜は、恥ずかしそうに身体と顔を覆いながら浴場から小走りで立ち去った。

しかし体の前で揺れる棒は誤魔化しようがない。

勿体無いことをしたかと藍は少し後悔した。

だか、これ以上は霊夢に疑われてしまうだろう。

藍はせっかく温泉に来たのだからと、もう少し浸ってから帰ることにした。

 

 

この世かそれとも違うのかは知らぬが、何れにせよどこかにある八雲家

この家主はただいま冬眠中である。

夕方、橙がこの家に来た。

夕餉を藍と共にとるつもりである。

玄関で雪を払いながら失礼します、と言ったが家の中から返事はなかった。

手を洗ってから藍がどこかにいないかと探しては見たが、見つからない。

「藍さまー。どちらにいらっしゃいますかー?」

再び呼びかけてみたが、抱えているゆっくりの藍々がちぇん?と見上げてくるほかは何もない。

歩き回って台所にたどり着いたが、誰もいない。

代わりに手紙が、少し大きい湯呑みを重石にして机の上に置かれていた。

水で濡れているが、幸い文字を読むのに不都合はない。

置き手紙にはこう書かれていた。

 

橙へ

 

ちょっと出かけてきます。

お腹がすいていたら、戸棚のお菓子を食べていいです。

遅くなるかもしれないのと、今夜は少し忙しいので、夕餉は猫の里で食べてください。

 

 

なるほどと納得した橙は戸棚を開いた。

確かに手紙通り蒲焼◯ん太郎が数枚器に入っている。

とりあえず小腹が空いていたので、橙は蒲焼さ◯太郎を一枚袋を開けて、椅子に座ってかじり始めた。

切れ端を藍々に与えると、美味しそうに食べるので心地よい。

二人で一枚食べたところで、猫の里に戻ることにした。

立ち上がってみると、重石になっていた湯呑みの中に液体が入っているのに気づいた。

上から覗き込んでみる。

白い。

見たことがないものだ。

湯呑みを持って中身を嗅いで見たところ、これまで嗅いだことのない、よく分からない匂いがした。

湯呑みは少し熱を持っている。

揺らすと、中身がとろろ昆布を溶かしたかのように粘度が高いと分かった。

「なんだろうこれ。」

湯呑みを机に置いて、藍々を腕に抱えて頭をひねってみたが、一向に検討がつかない。

もう一度確かめようと、再び上から湯呑みを覗き込んだ。

その時だった。

「ちぇん!」

腕に乗っていた藍々がすべって落っこちた。

橙はすぐに捕まえようとしたが、重力落下には間に合わない。

机の上で跳ねた藍々は回転しながらそのまま湯呑みの中に、多くある尻尾から見事に突っ込んだ。

「藍々!」

思わず橙は湯呑みを持ち上げ、逆さにするが、運悪くしっかりはまってしまったようである。

一応掴めそうなところはあるが、流石に引っこ抜くのは可哀想である。

「ちぇん……」

藍々は苦しそうに悶えるが、なかなか抜けない。

むしろどんどん深みにはまっているように見える。

橙は顔の上に湯呑みを持って来て、逆さにして少し振ってみた。

直後、橙の顔の上で何かが跳ねた。

 

 

「いやー、サッパリした。それじゃ、次はスッキリしようかな。」

温泉からスキマ経由で帰宅し軽く着替え、頭を布で拭きながら水を飲もうと藍は台所へと歩みを進めた。

先ほどのこと、特に指に伝わる熱と表情を思い出すと、下半身が熱を帯びてくる。

水を飲んでさっさとおっ始めたかった。

しかし、台所から物音がする。

橙が来てたとしても手紙を見て帰っているだろうと思ったが、他にこんな所に来る者は居ないはず。

「橙か?」

呼びかけたが返事がない。

とりあえず布を頭に巻きながら行ってみることにした。

たどり着くと、予想どおり橙が台所にいた。

しかし床に座り込んでいるようである。

「橙か。何をしているんだ?」

「……」

尋ねたが、振り返らないし答えもしない。

「橙?」

「……」

もう数歩近づき様子を伺う。

橙はやっと振り返った。

「フシャァァァ!」

「ギャァァァァ!」

もっとも、それは化け猫の姿であったが。

ただの化け猫ならば、橙を式神とする藍には見慣れたものだっただろう。

しかしそれは、顔と服から白い液体をぼたぼたと垂らし続けながらこっちへ飛びかかって来ていたのである。

流石に若干恐怖を覚えたが、中身はただの化け猫の為、藍の前に難なく組み伏せられ、再び式神をインストールされた。

「はぁ……」

「あ、藍さま……これは……」

橙は顔に手を触れ、指の間でブリッジを成す液体をただ眺める。

「橙、顔のそれは、まさか……」

「藍さま、すみません……たまたま藍々がそこの湯呑みにはまってしまって、出してあげようとしたら……」

藍々の尻尾は完全に真っ白に染まっている。

「湯呑みって……これか?」

机の上に転がっているそれを手に取った。

幸い割れてたりはしないようだ。

だが、それよりも藍にとってこれは非常に由々しき事態だった。

藍は湯呑みを机に立て直し、橙の方に向き直った。

「ちえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」

突如、目尻を上げて修羅のような表情で橙に向かって叫んだ。

「何をやってくれたんだ!私のこの後の楽しみを!

これはとっても貴重なものなんだぞ!

もういい!今日は布巾で顔と手を拭いたら帰ってくれ!」

叫び声に驚いた橙は涙目で床に座っていたが、藍に布巾を渡されると、自身の顔と手と藍々の尻尾を丁寧に拭いて、しょんぼりとしながら八雲家から去った。

藍も怒りながらも机と床を雑巾で拭いて、湯呑みの僅かな残りを飲み干した後、棚のそばに置かれた汲み置きの水を一杯飲んだ。

 

この後藍さまが一人上手に一時間以上興じたのは、いうまでも なかろうよ!

 




ぶっかけ(遠距離)

これ思いついたネタ元がニコニコ大百科ってどうなんだよ……


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闇に光が差す時 K

どうも井の頭線通勤快速です。

金曜の17時には間に合わなかったよ……







はじめに神は天と地とを創造された。 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。

神は「光あれ」と言われた。すると光があった。 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。

神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。

(旧約聖書 創世記 第1章 冒頭)

 

 

その夜、ある妖怪は飯を求め、だが当てらしき当ても無くふよふよと彷徨っていた。その名をルーミアという。

 

黒い空からは白い粒が、彷徨っているように見えて実はしっかり下に向かっている。周囲は雪景色であったがそれを見ることはない。だが木々の枝が吹かれて織りなす甲高い音は存分に感じることが出来た。

 

この妖怪は周りから姿を隠せるが、一方それにより周囲を確認することが出来ないでいる。飯を探していながら外を見ない形態をとるとはなんともおマヌケなように見えるが、飯を探すとは其奴にとって面倒くさい行為でもあるため、手を抜くのも最もでもある。

 

周りが見えなければ、甲高い音がする中危険を察知するのは至難の技となる。ましてやそれを同時に被るものが、空を飛ぶことで周囲に吹雪を生じさせているならば。

 

そのもう一人、こちらは正真正銘根っからの人間である小夜というが、雪の中修行のために飛んでみせよう、と言って寺から神社へと空を駆けていた。

 

しかし飛べば自ずと、雪は身体のそばを高速で過ぎるようになる。見通しもかなり悪いその恐怖が神社の明かりが視界に入って弛緩したことが、運悪くもそれがぱっと消えた時の対応を遅らせた。原因が何か、など判断する暇なんぞなかったであろう。

 

そして小夜からすれば半ばめり込むような形で内部に突っ込み、無論周りの見えぬルーミアも対策なんぞ取りようもなく、両方を抱えた黒丸は舞う雪と同様雪原へと吸い込まれていく。

 

果たしてルーミアがうつ伏せで仰向けの小夜の上に覆い被さり、揃って気を失いながら白い布地に赤と黒と黄色が刻まれる状況が成立したのである。

 

 

暫くした。取り敢えず小夜が凍傷を発症しない程度である。ただでさえこの寒々しい環境であるのに、それを助長し、背筋を凍らせそうなほど寒そうな服を着た幾回り大きな妖怪が、その上を通り過ぎようとした。名をレティという

 

レティはちらりと見て、そのある妖怪の存在を確認した。妖怪なら雪に突っ伏してようと大したことはなかろう、と通り過ぎようとしたが、少しその光景に違和感を覚え、立ち止まった。

 

もう一度、今度は少し時間を置いて眺めてみる。違和感の理由は、ルーミアの少し上に黒い塊が落ちているからだった。

 

そうしてさらにじっと見てみると、人間らしきものが下敷きになっているようである。服は赤と白、この警戒色はあの鬼畜巫女と同系統だと示している。どうやら本物の人間のようだ。

 

なるほど。どれほどの者かは分からぬが、これを見逃し、のちにそれが発覚したら巫女に真剣勝負をさせられ、いや虐殺されるやもしれぬ。ここは保険も兼ねて保護するのが得策だろう。

 

その大きな妖怪は雪原上に二つの足跡を付けると、ルーミアと人間を共に拾い上げ、自らの住処へと悠々と飛んで行った。

 

 

このレティの住処は木で出来ている。扉を開けて二人を一度床に降ろすと、湿気ったぶんの服を冷気に溶かしてから、奥の押入れから敷布団を二つ取り出し並べて広げた。それに波が生じないように伸ばすと、それぞれが着ている濡れた服を取っ払うことにした。

 

まずはルーミア。黒い胸掛けにしては後ろまで覆っている服、次いで白いシャツを脱がせる。あとは身体の周りにある小物を取って、右側のタオルケットと掛け布団の下に突っ込めば終わりである。

 

次いで人間。こちらは格好を見るにやはりあの鬼畜巫女関連の人間に違いない。ならば尚更風邪など引かせるわけにはいかぬと袖の部分を外してから上着、下の布を脱がせ、下着姿にする。

 

そうしてみたはいいものの、なかなか奇妙である。巫女と同系統な上髪からしても女のようであったが、どうも下着が成す形状からして、そうではなさそうな気がしなくもない。

が、ともかくもその下着も濡れていたため、両はしを掴んでずり下ろした。

 

その時この妖怪は、この人間が幻想郷に現れて以降の重大な秘密をその目で確認したのである。その股にある象を。それなのにこの者はあの巫女の関係者なのか。謎が新たに生まれはしたが、妖怪同様今度は左側の布団に突っ込んだ。

 

だが雪で冷やされた身体は布団だけでは体温を回復しきれないだろう。布団の周りの冷気を吸えるだけ吸い込んでみたが、十分かは分からぬ。それにしても、久々にまともなものを見た。

 

このレティ、先程の行動からも分かるように冬を象徴する妖怪であり、それ以外の季節は苦手で眠りこけており姿を現さない。そしてレティが起きている冬は、雪が積もり薪を拾うのも一苦労な為、人里の人間があまり好き好んで出かける季節ではない。無論子供もである。

 

そしてこの幻想の郷に住む一部の妖怪の習性から考えると、レティには他の妖怪より経験値が少ないことが幾つかある。そのうちの一つが、食べる経験である。これは他の妖怪よりも圧倒的に少ない。とすれば、これは大きなチャンスだと考えられる。

 

もはや迷う必要はなかった。簡単に布団をもう一枚出して人間の右隣に敷くと、冷気で出来た服を取り払い、人間の方の布団の中に潜り込んだ。

 

ふむ。やはり身体が自分でも分かるほど冷えている。私自ら温めようと、レティは人間の腰の下から腕を通し、人間の右腕を自身の胸の間に埋めるようにして抱きしめた。周りの冷気を少しでも奪っていけば、相対的に温めることができる。やはりまだまだ冷気は残されていたようだ。

 

人間の若干苦しげだった息は収まり、ルーミアの方はもうすやすやと安らかな寝息を立てている。この人間、抱き心地が良い。もう片手を人間の腹の辺りに伸ばし、そっとへそを中心に輪を描く。上質な絹のような腹というのも、なかなかよいものである。

 

その手を足の方へと伸ばし、途中の障害物で止める。腹の側に倒れる竿とその下にぶら下がる二子玉、確かに見た通りに感じられる。そしてここが一番冷えている。ここは集中的に冷気を取り払うとしよう。

 

段々と温かみが手に感じられるようになった。竿をそっと手で包むと、体を通じて伝わっていた鼓動が手からも伝わるようになる。指先を動かしていると、手が成す輪が膨らんでいく。少し強く握るとそれはこんにゃくから石へと変わり、手を力強く押しのけた。それどころか竿そのものが手をぐいと持ち上げたのである。

 

この硬さ、この力強さ、只者ではないッ!

 

ますます食わずにはいられなくなる。巫女の嫌がらせとしても悪くない。が、隣にルーミアがいる以上下手に起こす訳にはいかない。ましてや巫女の系統なのだから尚更である。だがこの機会、逃してなるものか。

 

飛び込むまでは潔かったが、そのあとが詰まる。悩んだ挙句、レティはその竿を除く性別と若さが織りなす要素を味わいつつ、目を覚ますのを待つことにした。

 

足、腕、腹、首、胸、肩、頰、髪。時には頰を擦り付けつつ、時にはくちづけをしつつ、時には舐めつつ、時には抱きしめつつ。まるで時とまだ触れていない場を恋しがるように徹底的に身体に染み込ませた。

 

レティが布団に入ってから一刻と少し経った頃、人間が身体をよじりながら言葉を漏らし始めた。目を覚ます時が近いようである。妖怪はさらに愛撫したい気持ちを抑えて、第一印象を少しは、少しはまともにすべく隣の布団に入って寝顔を眺めていた。

 

よくよく見ればルーミアも寝返りを頻繁に打っている。悪くない。寧ろ良い。仕上げの時は近い。

 

 

人間が薄く目を開いた。自身の状況については十分に理解出来てないようだ。脇から一声かけてみると、一瞬返事をしたがすぐに顔を紅潮させながらばっと反対側を向いた。残念ながらその先も、タオルケットがずれて外気に触れたルーミアが横になっているのだが。

 

人間が顔を天井の方へ戻した。共に胸の先は出していないから、レティからすれば反応としてはいささか大袈裟すぎる気がした。確かに寝顔を眺めている間それにかまけていた為、また身体を冷やした可能性がある、と再び布団を移り抱きついてみる。

 

体温は大して変わらなかったが、理由は明らかだった。竿の硬さ、暑さ、その何れも先程よりもさらに力強くなっていたのである、触れてもないのに。顔の通りウブだったようである。これは解放させねばなるまい。これは保護した者による正当な治療であり、保護に対する正当な見返りである。

 

人間が何か言っているが気にせず布団の奥の方へ潜っていく。おお、あのウブな顔のウブな反応に似合わず反り返るそれが、見事に布団を押し上げていた。やはり只者ではない。これに対する対応は二つ、まずは舌用いることにした。

 

 

さてこれまでレティの方を重視してきたが、ルーミアの方も見てみるとしよう。ルーミアは少しずつ身体の感覚を取り戻しつつあった。意識が薄っすらだが戻った時、腹の方が寒いことに気づいた。そして度々の寝返りにより小夜の方に近づいていた。おまけに小夜の右側にレティが入っていった為に布団が引っ張られ、ルーミア側の布団は腕が見えるほどになっていた。

 

頭がまだ寝ぼけているルーミアにとって、自身にかかる布団ではなく、目と鼻の先にある空間を成す布団が自身の布団であった。薄眼を開きながら少しずつ接近し、そこに入る。中には丸い棒がある。布団にしては触り心地が変だが。とりあえず温かかったので気にせず掴み、身体の正面を温める糧とした。

 

ここで何かを聞いてはっと目が覚めた。正面は上が赤、中が黒、そして下が白。後になってそれらが順に顔、髪、枕だと分かった。そして先程抱えた棒は正面の者の腕だった。そして何より、自身が全裸であった。

 

小夜とは以前森の中で会ったことがある。はっきりいって弱々しく、頼りには無さそうな人間であった。布団の奥から聞こえる声と経験からここがレティの家だと知った。まだこちらが起きたことには、共に気づいてないようである。

 

布団は自身の腹の辺りで水っぽい音を響かせつつ、しきりに上下している。そして小夜からは腕を通じて痙攣が伝わる。呼吸は荒いながらもしっかりしているので、問題はなさそうだが、辛そうである。ルーミアは自身の腕に少し力を込めた。

 

上がる息の合間から僅かだが声が漏れている。向こうの鼓動が速くなる。共鳴するように自身の鼓動も激しさを増す。何かを堪えようとしているのか、布団の辺を咥え、それを握る手を強く握り締めている。

 

何だろうか。鼓動だけならともかく、この腹の下の辺りから感じられるこの熱いものは。

 

小夜は口を離すと、腹の辺りからの吸引音に続いて言い表し難い奇声をあげた。腹の辺りがさらに何度も突き上げられている。妖怪はそれに動じることなく、腰が止まるともう一度一際長く吸引音を立てた。また少し布団が盛り上がる。喉を鳴らす音の後に、顔を一つ跨いでレティが頭を出した。ルーミアは何故か狸寝入りをしなければならない気がし、そうした。

 

 

レティは冷気で服を纏うと人間の枕元に服を渡し、それを着る様をじっと見物した。そして少し話した後、吹雪く外へと舞い上がっていった。ルーミアは鼓動が収まるのを見計らって布団から這い出て、乾かされている自身の服に手をかけた。

 

まずは一番下に積まれていた下着である。それを抜き取り広げて足を突っ込むと、まだ股のところだけが濡れているようだった。一度脱いでその濡れている箇所を眺めてみるが、他の箇所は乾いていてここだけ濡れているのも変である。ルーミアは眠っていた布団もめくってみたが、漏らしたわけでもない。

 

恐る恐る自身の股の下に手を当てた。手に水が付いた。目の前に持って来てみたが、どうも尿とは違うようだ。だが身体から、しかも股の何処から出ているのは間違いない。

 

何だこれは。先程の下腹部に感じた感覚と関係あるのだろうか。それとも他に理由があるのだろうか。吸血鬼に血を吸われた気がした。

 

拭けるものを探したが、身近にはない。止むを得ず近くの布団の端で拭いてしまった。その後は早く着替えた。他に変なところは無さそうである。空腹を除けば。だがルーミアとにかく怖かった。万が一これが妖怪の存在に関わるものであれば、どうしたら良いのか。

 

とそこへ扉が開き、レティが帰宅した。ルーミアはレティへ抱きつき、ことの顛末を喚くように語った。レティは始めは真顔でそれを受け止めだが、話を聞くにつれそれが歪んだ。少し焦ったが、今日のことは秘密にすると裏付けを取った上で、腹が減ったというので食事を作ることにした。

 

食事は無論全て冷たいものだった。それを共に食べながら、その液体は何ら害のないものであること、心が興奮すると出るものであることなどを簡単に説明すると、一安心したようである。が、レティは何をしていたのかと聞かれたのには黙秘を貫いた。その為にはあの人間の秘密を伝えねばならないのだから。

 

食事を終えると、レティはルーミアを帰し、布団を洗濯することにした。そして今、この季節をさらに楽しもうと決めた。




中身が薄いなぁ……

今後は支援作品の頻度減らします。


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ゆっくりたちのたのしいえんそく

どうも井の頭線通勤快速です。
今回は健全ほのぼの路線です。
ていうかあの話で「風呂団藍」を紹介されたのは運命としか言いようがないw


常識と非常識を分かつ結界内に存在する、忘れられたものが集う地、幻想郷。

この幻想郷という場所には、ゆっくりという生き物がいました。

人間の首から上しかなく、見た目はまん丸、饅頭のようです。

この見た目から恐れられていても仕方ない生き物は、ゆっこさんという博麗神社に住むゆっくりの頑張りで、人里の皆さんにも受け入れられていました。

ゆっこさんは博麗の巫女の代理として、人里の人々のささやかな異変や問題を解決していく事で、人々のゆっくりに対する信用を得たのです。

その後、この幻想郷には多彩なゆっくりがその姿を現しました。

ゆっこさんが関与したもの以外にも、森で拾われたりして、飼っている者も増えていきました。

ゆっこさんを筆頭に、紅魔館というお屋敷にうーちゃんとふーちゃんの二匹、さらに橙が飼っている藍々、霧雨魔理沙が飼うこまり、そして赤蛮奇が飼う、ゆっこさんの子供?のゆっきです。

こうして仲間は増えて、体調の悪い時の治療などゆっこさんとそれぞれとの繋がりはあるものの、それ以外の繋がりは余りありませんでした。

特に紅魔館に住む二匹は飼い主に愛でられているためか、余り外に出てきません。

そこでゆっこさんはゆっくりのみんなが楽しく交流できる機会を作ろうと考えました。

何をしようかと考えましたが、ゆっきなど若い子もいるので、下手な事は出来ません。

神社の巫女の霊夢さんに相談すると、皆を連れて人里にでも行ってきたら、と言われました。

なるほど人里の人たちにも新たなゆっくりを知らせることが出来る良い機会になる、とその提案を呑むことにしました。

ですがその為に飼い主の皆さんを呼んで欲しい、 と頼みましたが、霊夢さんはどうしてそんなことをしなきゃいけないの、と乗り気ではありません。

そこをいつも乗っけている針妙丸さんの力も借りて何とか説得し、夕餉の支度と掃除の手伝いと引き換えに、一週間後に日程を組んでもらうことができました。

 

一週間後の朝早く、博麗神社の前にはゆっくりたちとその飼い主が一堂に会していました。

天気は綺麗な晴れ、あたりには薄く雪が積もっています。

「霊夢に呼ばれたから何事かと思ったが、そういうことか。まぁ、こまりを幻想郷一のゆっくりにするためには敵を知ればなんとやら、しっかり学んでこいよ。」

「じぇー!」

ゆっくりの会する場を見て、魔理沙さんがうなづき、こまりを撫でます。

「藍々、気をつけてね。」

「ちぇん!」

尻尾に小さなカバンをぶら下げ、藍々は元気に答えます。

「ゆっき、気をつけて……て、お前……」

「ゆ〜。」

ゆっきは飼い主さんから離れ、ゆっこさんと戯れています。

「二人とも気をつけて行ってくるのよ。あんまりお菓子食べすぎちゃダメよ。変な妖怪には注意して。」

「うー☆!」

「うー☆!」

「お嬢様がそれを言いますか……」

レミリアさんの後ろに立つメイドの咲夜さんは傘をさして少し身を前に倒しながらため息をつきました。

「……気をつけて行って来なさいよ。」

「今日はゆっこさんなしで頑張ってみせます!」

「ゆっこさん、楽しんできてください。」

「ゆゆっ!」

姿勢を正してゆっこさんは霊夢さんから渡されたカバンを頭に乗せて返事をしました。

正す姿勢は無いですが。

「ゆー!」

ゆっこさんが一声掛けると周りにゆっくりたちが集まります。

「ゆっゆっゆ。」

どうやら今回の遠足の為の注意を伝えているようです。

「ゆーゆっゆゆ。」

他のゆっくりはその話をじっと黙って聞いています。

五つ注意を述べ終わると、横一列になるようゆっくりたちを並べました。

見る先は彼らの飼い主さん方です。

「ゆっ!」

「じぇー。」

「ゆ〜。」

「うー☆。」

「うー☆。」

「ちぇん。」

ゆっこさんの合図に合わせ、残りの五匹は飼い主さん方に向けて頭を下げました。

「楽しんで来いよー。」

「行ってらっしゃい。」

飼い主さん方が見送るなか顔を正面に戻すと、ゆっこさんを先頭に博麗神社の参道をゆっくりと進んでいきました。

飛べるものは飛び、そうでないものは地上を跳ねていきます。

やがてその背中は人里に向かう道の向こうに消えていきました。

「それじゃ、夕方には帰るよう言ってあるから、その頃になったら迎えに来て。」

「分かりました。」

「りょうかーい。」

「おう。」

「分かったけど、霊夢。約束は守ってもらうわよ?」

レミリアさんが霊夢さんの顔を覗き込みます。

「分かったわよ。それじゃ、来週あたりね。それまでは小夜の相手するから。」

「お嬢様、宜しいですか?」

「ええ、いいわ。またね。」

こうして飼い主さん方は夕方の再会を約束して、各々の家へと帰っていきました。

 

人里へ続く道、ゆっこさんたちは人よりも遅く、まさにゆっくりと踏みしめられた雪の上を進んでいきます。

ゆっくりは身体があったかいので、冬の寒さの中で特に何も身につけなくとも問題ありません。

跳ねつつ、飛びつつ、雪の道に新たに跡をつくりながらゆっくりたちは進みます。

「ゆっ?」

「うー☆!」

「じぇー!」

時たまゆっこさんが後ろを確認しますが、みんなまだまだ元気です。

葉っぱの落ちた森の中を進んでいきますと、森の中から何かが現れました。

みんな驚いてそちらを見ましたが、その相手は立ち止まり何もしてこないので、敵意はないと皆安心しました。

「ふー。」

その相手はこちらに声をかけてきました。

よく見ると、これもゆっくりです。

髪の色は茶色、大きさはうーちゃんよりも少し大きいくらいです。

「ゆっ。」

「ふふふっ?」

「ゆゆっゆー。」

ゆっこさんが少しその者に近づいて言葉を交わします。

どうやら知り合いのようです。

「ふーふ。」

そのゆっくりはその場を離れましたが、ゆっこさんは先に進もうとしません。

少し待っていると、そのゆっくりは頭の上に別の、一回り小さなゆっくりを乗せて戻ってきました。

しかし上のゆっくりは挨拶をしようとしません。

顔色があまり良くなく、体調が悪いようです。

「ふー。」

下のゆっくりは上の子をゆっこさんの前に降ろします。

ゆっこさんは二本のおさげを上手く使い、その子をカバンをずらしてから頭の上にそっと乗せます。

「ゆっ!」

「く?」

一度息を吸ってから、木の上の雪が落ちるような大きな声でゆっこさんは叫びました。

すると頭の上の子の顔色は、みるみるうちに薄赤くなり、元気そうに頭の上から飛び降りました。

「ふー。」

「ゆゆっ。」

「くー!」

その子は一声あげて連れてきてくれた仲間の方へ駆け寄ります。

近づくと二人仲よさそうに頰同士を擦り合わせていました。

「ゆ。」

「ふー?」

「ゆーゆっ。」

「ふふっ。」

連れてきたゆっくりと少し話すと、小さなゆっくりは宙に浮かびながら、もう片方は跳ねながら森の中へ帰っていきました。

「ゆー!」

「うー☆!」

「ちぇん!」

そしてゆっこさんたちもまた道を進み始めました。

 

そこからさらに進むこと暫く、ゆっこさんたちは人里にたどり着きました。

街の中では人が行き交い、店も威勢良く声をあげています。

雪は路肩に避けられ、まだ少し残ってはいますが、かなり歩きやすくなっています。

ゆっこさんを先頭に里の中を歩いていると、時々里の人に呼び止められます。

子供から大人まで、男女問わず多様な人々がゆっこさんに声を掛けます。

ゆっこさんは嫌がる様子など微塵もなく、道中その人たちとおさげで握手を交わしていきました。

他のゆっくりも里の人と軽く話したり、ほっぺを揉まれたりと気軽に触れ合いました。

里を歩く中で他のゆっくりが気になる店を見つけると、ゆっこさんを呼び止めてそこにお邪魔します。

こまりは魔理沙さんに頼まれた小瓶を一本、うーちゃんとふーちゃんは甘い金平糖の入った袋を一つ、藍々はふきん用の布を一枚、ゆっきは飼い主の赤蛮奇さんのためにお酒を買おうとしましたが、断られてしまいました。

そんなこんなで巡っていると、いつの間にか陽は高い位置からゆっこさんたちを照らしていました。

誰か一人、お腹を鳴らしました。確かにお昼時です。

他のゆっくりもお腹を空かせているようなので、ゆっこさんたちは近くの店で昼食を取ることにしました。

入ったのは余り大きくはない一軒の食堂。残念ながら他の店よりお客さんが入っていません。

「ゆっ。」

ゆっこさんたちは店に一言告げてから奥の机に向かいました。

店のおばあさんは大きめの台を用意し、ゆっこさんは椅子に置かれたその上にぷもっと乗っかりました。

他のゆっくりは渡された手拭いで身体の下を拭いてから直接机の上に乗っかりました。

お品書きをみてから注文したのは、山菜うどん、魚の混ぜご飯と取り皿です。

調理場の奥でご主人の老人が腕をふるって作る姿と香りが、食欲をさらに刺激します。

先にうどん、次いでごはんが皿とともに机に運ばれてきました。

ゆっこさんは器用におさげを使ってそれらをそれぞれの大きさに合わせて取り分けます。

匙とお玉を借りて汁まで入れると、それを皆の前に配ります。

「ゆっ。」

ゆっこさんはが声をかけると、他のゆっくりも頂きますと発してから昼食を摂り始めました。

うどんの出汁、恐らく椎茸でしょうか、それの美味しいこと。

うどんもしっかりとコシがあり、汁を連れて口に入ります。

入っている川魚もしっかりもともとの味が付いていて、ご飯にもそれが伝わっています。そしてそれを微かな醤油の風味がかきたてます。

まだゆっきとうーちゃんとふーちゃんは上手く箸を使えていないようでしたが、他のゆっくりは器用に箸を使ってうどんとご飯を口に運びます。

うーちゃんとふーちゃんは代わりにスプーンとフォークを借りて頬を緩ませながら食べていました。

店にいる他のお客さんはその様を和かに見つめていました。

 

最後に器を傾けてゆっこさんがうどんの汁を少し飲み大きく息を吐いて、ゆっこさんたちの満面の笑顔と共にご飯は終わり。

ですがせっかく遊びに来たのですから、少しくらい贅沢してもいいでしょう、とゆっこさんは追加であるものを注文しました。

すぐに平らに乗せられたそれが机の上に来ました。

緑色の草餅が三つ、それに竹でできた小さな刃が脇に添えられています。

ゆっこさんは餅を刃で切り分けます。

小さめのものはこまりとゆっきに、中ぐらいのはうーちゃんとふーちゃんと藍々に分け、自身は残った一個の餅を一口に放り込みました。

あんの甘さと餅の適度な硬さを噛んで味わった後飲み込んで、みんなの食事は終わりました。

ゆっこさんはお会計をしようとカバンから財布を取り出しました。

すると他のゆっくりもそろって自身の財布を机の上に置き、中から小銭を引き出します。

それを掻き集めてゆっこさんがお札を一枚上に乗せると、ぴったりお会計と一致しました。

ゆっこさんは頰をほころばせ、おばあさんも笑顔でそれを受け取り、ゆっこさんたちは床の上に降りて、入り口でお礼を言ってから店を後にしました。

 

それからまた暫く里を歩き回っていましたが、頭上には灰色の雲が見えるようになってきました。

冬は陽が落ちるのが早いということもあり、まだまだ早めですがゆっこさんたちは博麗神社へと帰ることにしました。

自分たちが人里に入った場、森に入る道でおさげを人里に向かって振ると、寺子屋帰りらしき数人の女の子がそれに返してくれました。

ゆっこさんたちは再び森の中、雪道を進みます。

初めは皆ゆっこさんに付いて行きましたが、暫くしてはしゃぎ過ぎたためか、疲れを見せるものが現れ始めました。

まずはゆっき。飛ぶのに疲れて地面に落ち、そのままゆっこさんの頭の上に収まりました。

次いで藍々。これも同様にゆっこさんの頭に乗っかって、移動の揺れにもかかわらずいつの間にか眠っていました。

そしてこまりも頑張ってはいましたが、小瓶の重さに耐えきれなくなり歩けなくなってしまい、結局前の二人と同様になりました。

うーちゃんとふーちゃんは動きはまだまだ元気でしたが、顔に少し疲れが出ています。

流石のゆっこさんでも三人を乗せながら進み続けるのは大変です。

かといって残りの二人に任せるわけにもいかず、息を切らしつつ黙々と先を急いでいました。

もう三人は完全に疲れて眠りに落ちています。

神社まで暗くなる前に着けるか不安に襲われたその時、道の脇から何かが飛び出しました。

「ゆっ!」

思わず声を上げてしまい背中の三人を起こしてしまいましたが、よくよく見ると朝に会ったうち髪が茶色のゆっくりです。

「ふー?」

「ゆゆっ。ゆー。」

「ふっ!」

そのゆっくりが飛び跳ねると、あたりからぞろぞろと森に住むゆっくりたちが姿を見せました。

そのゆっくりたちはゆっこさんの頭の上のゆっくりを背負い、荷物も分けて持ちます。

そして軽くなったゆっこさんを先頭に、時々歌いながら神社へと帰って行きました。

「ゆっゆー♪」

「むっむー♪」

「ふっふー♪」

「うっうー☆♪」

 

博麗神社の前では、小夜さんと霊夢さんが鍛錬を続けていました。

「夢想封印!」

「甘いわね!」

ボムの行き先に意識を向けた間に霊夢さんは喰らいボムをした後小夜さんに近づき、札を撃ちます。

それらは大量に放たれましたが、速度が遅めでした。

それから避けようとしたその時、その札の群れの中から一枚の札が加速し、小夜さんの体勢を崩します。

そこに残りの加速した札が次々と襲い掛かり、音とともに小夜さんを地上に撃墜させました。

「まだまだね。ほら、次行くわよ。」

この鍛錬を始めてから小夜さんピチュったのは計67回、まだ4日目で後何回かピチュれるだろう、と霊夢さんは最終日に胸を馳せていました。

「霊夢ー。」

「あら、来たのね。あいにくまだよ。」

「お邪魔しとくぜ。」

魔理沙さんが箒に乗って縁側に腰掛けました。

「ていうか、大丈夫なのぜ?」

「小夜のこと?大丈夫よ。魔理沙だってこの子の残機カンストしてんの知ってるでしょ?」

「いやまぁそうだけどさ。」

「霊夢、迎えに来たわよ。」

そこに傘を持ったメイドを従えて、レミリアさんが現れました。

「まだよ。じきに帰ってくるけど。無事に帰ってくるって勘がそう言ってる。」

「それじゃ、見物してるわ。」

魔理沙さんの隣に座ります。

その後赤蛮奇さん、橙さんも集まって、一行の帰りをもう一度ピチュられた小夜さんを眺めつつ待っていました。

 

曇り空の中の日が雪を照らしている頃、ゆっこさんたちは博麗神社にたどり着きました。

そしてその後ろには何十という大小様々なゆっくりが、ゆっこさんの荷物を分担しつつ付いて来ていました。

ゆっこさんは手伝ってくれたゆっくりたちに礼を述べてから、森に帰るのをおさげを振って見送っていました。

飼い主の皆さんは動き回るゆっくりの大群に少し驚いているようでしたが、各々のゆっくりが手元にやってくると、安心したようにそれを抱きしめていました。

特にお使いをこなしたことに魔理沙さんが大喜びし、あるもので宴だと宣言し、家主の同意も十分に得ないまま神社に上がり込みました。

まだ宴には早い時ですが、こうなったらどうしようもありません。

結局霊夢さんも諦めて鍛錬を中止し、ゆっくりの飼い主たちによる交流会が執り行われ、元々眠かったゆっくりたちが眠りに落ちても気にせずに、その騒ぎは夜が更けて雪が舞い始めても続きました。

 

この時鍛錬が中止されたお陰で小夜さんの下が無事だったとか何とか。

 



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原子力は深夜でも止まらない K

どうも井の頭線通勤快速です。久々の支援作品です。
そういえば前に小夜の性別がるーことに風呂場でバレる話を書きましたが、本編でも風呂場でバレていたことが判明した模様。


正邪の思わぬ場所に性感帯があることが判明し、小夜の命蓮寺での鍛錬も終わり、小狐が鈴奈庵に本とともに訪れていようと、幻想郷の時は大河の如く、そのような些細なことを全て受け入れつつも、気にも止めずに流れてゆく。

さてこちらは博麗神社。この幻想郷の根幹を成すと呼んでも過言ではない場所である。

ここが異変で破壊された時には、この幻想郷の主がガチギレしたという話を聞いた気がする程度には重要な場所だ。

だが既にこの博麗神社のあちこちには爆弾が仕掛けられている。

これまで訪ねてくる爆弾だけだったが、ついに常設の爆弾が取り付けられたのだ。

その爆弾の名はるーこと。古の技術者によって作られた冥土ロボ、おっと間違いメイドロボだ。まぁ蘇ったと受け取るなら冥土ロボかもしれないが。

メイドロボというご大層な性質を持ちつつも、高性能すぎて人間同様な失敗をしてしまう。皿を割るとか。

その為風呂掃除、巨大な露天風呂の精巣、おっと間違い清掃を任されている。

 

しかしここの見習い巫女の立場である小夜もかなり面倒な立場である。れっきとした男である故に、そのアクア・ヴィタエは魔法使いと魔女(兼痴女)に狙われることになるし、何より失った記憶を取り戻さねば男でなくなるのだ。

おまけにそれを出来るだけ隠しながら過ごさねばならない。バレまくってるけど。

自分なら未来永劫出会いたくない運命である。

そしてるーことはこれを知った。かつ小夜の持つ魔性の魅力、天にも昇るような抱き心地に囚われている。ロボットなのにもかかわらず、性行、おっと間違い精巧に作られ過ぎているために、月の者には分からぬそれを感じ取れてしまう。

 

この小夜、アクア・ヴィタエを月に2回、それぞれ別の魔法使いと魔女に抜き取られている。そしてそれは、毎回一度や二度ではない。

それで繋がれている命もある故に仕方のないことなのだが。

その場にそれぞれアクア・ヴィタエを狙う者もいるのだが、まぁそれはほっとこう。

 

そしてこの日、2週間前に魔女のもとを訪れていた小夜であるが、この次の日には魔法使いのもとを訪れなければならなかった。

これまで幾度か訪れて採取され、果てには淫魔に直に飲まれたこともあるから、不安がないと言えば嘘になる。

だがこれは必要な代償だ、秘密を守ってもらう為の、という割り切りも、心の何処かにあった。

その日もいつも通り自らの最大の中毒患者に背中から抱きしめられて、その温かみに触れつつ寝床に入った。

眠る前に髪の毛と首筋あたりをくんかくんかされるのもいつものことだ。

初めは恥ずかしさがあったものの、腰より下に警戒していれば慣れてしまうのも人間の性である。

だがその日他の日と異なったことは、博麗霊夢なるその患者が早急に眠りについたことである。自分を楽しむには遥かに短い。

だが次の日体力を使うことは必定。夜であるし、そのまま深い眠りに落ちることにした。

薄明かりが部屋の障子を通って薄く照らし出すが、眠りを妨げるものではない。

 

さてこのまま翌朝を迎えられるかと思いきや、そうは何者かが卸さない。

小夜は夜中に違和感を覚えて目を覚ました。

背後からは寝息がするのみ。そちらに変わりはない。

そう確かめる間に、違和感の原因がが自分の腰元に存在することを把握した。

温かい。その一部のみ。

血流が増しているだけではない。外的要因がそこには存在する。

身体が跳ね上がりそうな感覚を何とか食い止めつつ、冬の熱い布団を恐る恐るめくってみると、見慣れた黄緑に縦の一本筋が入った丸い物体があった。

「る、るーことさ……んひっ!」

小声で声をかけようとすると、るーことは小夜の方を上目遣いしつつウィンクした。そう、それ以上不用意に発言したり動いた暁には、背後の患者が動き出す事になる。

小夜に出来る数少ないことの一つは、口を両手で抑えることだけであった。

 

初めはるーことも小夜の足に抱きついた上で太腿を口に含むだけであった。それだけでも体積の増加は止まらない。

だがるーことから見て奥側の患者が本当に眠りに落ちていることを察するや、まずは下によって舐め回し始めた。

これにより小夜の手の指の隙間から、息が漏れ出す程度にはなった。

怒張が増すやいなや、続いてるーことの頭が前後運動をし始める。

そこに蕎麦をすするような音が加わり、布団の中を通じて小夜の耳にも入ってくる。

されどもそんなことを気にする余裕はなく、口をふさぐ手の代わりは掛け布団になり、手もまた布団を力強く握っている。

「ほっ……ほっ……」

「ほっ」、より歯の隙間をすり抜けるような「ふっ」に近い音が微かにその部屋に響く。

2週間と言う期間は長いものである。

あることを知ってしまった若い者からすれば、その間を耐えきが耐え、忍び難きを忍び続けることは至難の技である。

彼は知らなかった。だが押し寄せる波に耐えられるほど反本能的な存在でもなかった。

「ほっ…ほっ…ほっ」

息の上がる周期が短くなれども、音が高くなるわけでもなし。されどるーことは何かを察したのか、それに合わせて頭の運動と太腿を吸い込む行為を早くした。

それは最早最後の一撃に等しいものであった。

へその奥の少し下。そこから湧き上がる力を強くさせ、声に出来ない叫びと共に臨界点を突破することを、あまりに容易にさせる原動力であった。

 

勢い良く噴き出すそれを、るーことは耐えることなく口に含んでゆく。

長い、長い時であった。噴き出す最中もるーことは喉の奥に送り続け、噴出し終わってから暫く舌の上下でこねくり回し、布団からわざわざ顔を出して、音を立ててその全てを飲み込んだ。

声を抑えていた小夜への最大の皮肉のようであった。

最後に管に残るものを残さず吸い出して完食となる。

荒れる息に対し疲れにより瞼が重くなっていく中で、るーことはぼんやりとした障子の壁となって、そしてその向こうへ静かに消えていった。

 

次の日になったが、特にどうこうあるわけではない。

基本霊夢に同行している小夜が咲夜のこと、おっと間違い昨夜のことを口に出せるはずもなく、るーことも何もなかったかのように霊夢に、針妙丸に、ゆっこさんに接している。

確かに疲れはしたが、紅魔館に向かうに支障はないだろう、と小夜はそれ以上気にするのをやめた。

一方るーことは自身のメイド服の内ポケットをちょっとした時間に密かに覗いては、ひと月先の次の機会を夢想するのであった。



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