紅と紫の神装機竜(凍結中) (ラインズベルト)
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反乱と裏切り

アーカディア帝国は圧政を強いていた。圧政による不満から反乱も多々起きていた。そのたびに軍による制圧が行われていた。しかし、何度か制圧に失敗することがあった。

 

理由は紅き機竜に撃退され、失敗に終わっていたのだ。帝国軍は知恵を絞り、その機竜使いを討伐しようと兵を動員した。しかし幾度となく交戦したものの、討伐に至ることはなかった。

 

それから時は進み、ある日、それは起こった。クーデターだ。たった一機の漆黒の機竜により帝都の防衛隊は壊滅的打撃を受けていた。

 

「隊長、このままではっ!」

 

「チッ」

 

すでに防衛隊は13人にまで減ってしまっている。未だに漆黒の機竜は無傷だ。特務騎士団でさえ苦戦している。防衛隊隊長であるジストは溜め息をついた。

 

「これであの紅き機竜まで来たら、終わりだな……」

 

「隊長、特務騎士団が壊滅、ここも危ういかと」

 

「そうか」

 

特務騎士団でさえ手に負えないほどの強さを持つ漆黒の機竜。近衛騎士団や暴徒鎮圧部隊でも勝てないだろう。帝国最強と謳われる"死神"ならば勝てるかもしれないと、ジストは思った。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「あれが漆黒の機竜か」

 

帝国最強の機竜使いである彼は漆黒の機竜を見つけた。顔は見えない。彼は漆黒の機竜を倒すために急いだ。

 

「っ!」

 

後ろから切りつけるが漆黒の機竜はすぐに回避した。そこでようやく漆黒の機竜使いの顔が見えた。

 

「ルクス・アーカディア……!」

 

「シュウ……」

 

漆黒の機竜使いはアーカディア帝国の王子、ルクス・アーカディアだった。シュウは驚きを隠せなかった。シュウはルクスとは仲が良く、昔は遊びあったこともある、いわば親友だった。

 

「退いては、くれないんだね」

 

「俺にも家族がいるからな。退くわけにはいかない」

 

シュウは再び構える。ルクスを止めるために。自身の誓いのために。

 

「悪いけど、道を開けてもらうよ!」

 

ルクスは迷い無くシュウへ突っ込んで行く。ルクスはシュウに一撃を切り込む。ガキン!と剣がぶつかり合い、つばぜり合いとなる。

 

「はあああああ!!」

 

「っ………!」

 

ルクスの剣は弾かれ、シュウはすかさず剣を振るう。ルクスはなんとかそれを避け、シュウから距離を取る。ルクスは剣を下ろしている。

 

シュウはルクスを警戒していた。もはや勝機はないとわかっていても、だ。家族のために、シュウは死ぬわけにはいかないのだ。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「クーデターが起きるなんて……ラッキー……!」

 

クーデターを見ながら少女は少し微笑み、機攻殻剣(ソード・デバイス)を引き抜いた。そのデバイスは赤紫色をしていた。

 

「全ての敵に破滅を、《デモンハダル》」

 

少女は紅く紫がかった機竜を身に纏い、帝都の中心地に向かう。その速さは並みのものではない。

 

「ん?紅い機竜だ!!」

 

「なっ!?こんな時に!」

 

帝国兵の士気は低い。少女は一撃で帝国兵を仕留めていく。帝国兵はものの十数人で、他には見当たらない。少女は辺りを見渡す。

 

「ぐあ!」

 

「あの機竜、かなり強いね」

 

最後の帝国兵を打ち倒し、少女は漆黒の機竜を見て呟く。帝国兵を殲滅していく漆黒の機竜は少女にとって友軍でも敵軍でもない。黒い機竜には攻撃はしない。だが、敵対するならば容赦はしない構えだった。

 

「あれは……!」

 

少女は宮廷でアティスマータ伯爵の娘、リーズシャルテ・アティスマータを発見、救助した。漆黒の機竜はいまだ1人で戦っていた。少女は目的の相手、リーズシャルテを連れ、脱出した。



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信じる心

「シュウ、僕に協力してくれないか?」

 

ルクスはとんでもないことを言い出した。協力?ルクスに?俺は軍人なんだぞ。

 

「…………何故だ」

 

「君の、家族を救いたい」

 

「俺の家族を……?」

 

「うん」

 

こいつはどこまでもお人好しだ。敵である俺を帝国から救いだそうとしている。まったく、バカなやつだ。どれだけ自分が犠牲になっても皆を助けようとする。でも俺は、家族を救いたい。助けられるなら何だってしてやるさ。例えこの国を裏切ったとしても!

 

「ダチの、提案だ、協力しよう。だが、どうやって助け出すんだ?」

 

俺はルクスが何か作戦があるように見えた。俺には全く予想できない。この混乱でも、処刑されないとは限らないんだ。

 

「今すぐに君の家族がいる宮廷の牢獄に行く」

 

「了解。下手なことするなよ?」

 

「分かってるよ」

 

ルクスなら、いや、ルクスとなら出来る気がする。俺はルクスに、親友をもう一度信じてみることにした。

 

「急ぐぞ!しっかり着いてこいよ!」

 

「もちろん!」

 

ルクスは俺の全速力に付いてきている。流石としか言いようがない。昔から機竜使いとして才能があったルクスだからこそだと思うが。

 

「ほら宮殿に着いたぞ!俺が敵を止める!その間に家族を、頼む」

 

「分かった!!」

 

俺はルクスを見届けたあと、帝国軍が来ていないか確認するが、やつらの姿はない。先程までの仲間を倒すのは少々、心苦しくなりそうだ。帝国にも、良いやつはいる。ルクスのように。

 

「頼んだぞ、ルクス……」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

sideルクス

 

急がないと。なるべく早く!僕は急いだ。シュウの、親友の家族を助け出すために。

 

「ここだ!」

 

牢獄の中に入る。通路には死体が転がっていた。帝国兵の死体が。

 

「一体誰が……?」

 

僕には想像ができなかった。一体誰が兵士達を殺したのか。今はシュウの家族を助けないと!

 

「!!」

 

シュウの母親の死体があった。僕は諦めかけて、シュウに妹がいることを思い出して走り出した。走りながら牢屋を一つ一つ確認していく。

 

そして見つけた。

 

「いた!」

 

僕は牢獄をこじ開け、中から1人の少女を助け出した。まだ息もあるし、怪我も見受けられない。シュウの妹、ユリシアを抱き抱え、直ぐに脱出した。

 

sideout

 

―――――――――――――――――――――――――

 

sideシュウ

 

「よ、夜架……!?」

 

「お久しぶりですわ。シュウ様」

 

夜架……帝国の凶刃といわれている。相手の殺意を読み取ることが出来、殺すことに何の躊躇もない。何をしに来たんだ?夜架は微笑みながらこちらに近づいてくる。ここまでなのか………!

 

「何のようだ、反逆者の討伐か?」

 

「いいえ、違いますわ。私はあなた様と戦いに来たのではございません。むしろ協力したいと思っておりますわ」

 

協力?何故だ?何で帝国に忠誠を誓う夜架が俺達に協力するんだ?

 

「協力してくれるのはありがたいが、何故協力を?」

 

俺冷や汗出ている気がするんだが。夜架が協力してくれるのは助かる。だが、何故なんだ?夜架は、悪く言えば帝国の狂犬だ。

 

「あなたに着いて行くと言ったではありませんか、シュウ様?私は貴方に真の忠誠を誓うと」

 

その言葉を聞き、俺は思い出した。夜架が帝国と契約する以前に、俺は夜架と出会っていたんだ。まだ俺達が幼かった時に。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

かつて存在した国で俺は暮らしていた。けど隣国に攻められ、国は滅んだ。それで俺達家族は逃げたある国に。

 

それが夜架の国だった。城に迷い混んだ俺を助けてくれたのが夜架だったんだ。

 

「ありがとう。ここまでつれてきてくれて」

 

「いいですわ、お礼なんて」

 

俺はそれから城に忍び込んで彼女と遊ぶようになった。いつも暗くなるまで遊んで帰ったから母さんに怒られたりしたけど。

 

「君の名前は?」

 

「私の名前?」

 

「そう、名前」

 

俺は彼女と過ごして、彼女を知って、いつしか俺は彼女を守りたいと思っていたんだ。

 

「私は夜架といいますわ」

 

「夜架、いい名前だね!僕はシュウ!」

 

それが、俺達の出会いだった。しばらくして、俺達家族はこの国を去ることになった。国を去る前日に俺は夜架に会いに行った。

 

「明日、この国からでて、別の国に住むことになった」

 

「そう……」

 

「でもいつか、帰ってくるよ!君を守りたいから」

 

「私を守る?人の心の無い化け物の私を?」

 

「夜架は化け物なんかじゃない、心のある女の子だよ!だから僕は誓う。いつか夜架と再開できたら、君を守る騎士になるって」

 

「ふふっ。ありがとう、シュウ。なら私も誓いますわ。再開できたら私も、貴方を守りますわ。そしてあなたに真の忠誠を誓いますわ」

 

「約束だよ」

 

「はい、約束ですわ」

 

こうして俺達は離れ離れになった。また再び、会うことを誓って。互いを守ると約束して。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「そうか、覚えていてくれたのか」

 

「忘れるはずありませんわ。あなたとの大切な約束ですもの」

 

夜架は少し顔を赤らめながら、言った。夜架はずっと覚えていてくれた。そして俺に忠誠を誓ってくれた。なら俺も、夜架に答えないとな。

 

「ありがとう、夜架。俺に付いてきてくれるか?」

 

「もちろんですわ」

 

夜架は俺に抱きついた。ありがとう夜架……。あとはルクスが帰ってくるのを待つだけだ。

 

「シュウ、君の妹さんは助けた。でもお母さんは……」

 

「っ!……………そうか、ありがとう」

 

ルクスは夜架に気がついていないんだろうか?

 

「それと、あなたは?」

 

「夜架と申しますわ」

 

「夜架は味方だ」

 

俺がそう伝えるとルクスは警戒を解いてくれた。ありがとうルクス、信じてくれて。夜架の噂を知っていても、ルクスは信じてくれている。

 

「夜架、ユリシアを頼んだ」

 

「分かりましたわ、シュウ様」

 

俺はユリシアを夜架に預け、ルクスの隣に立つ。

 

「そろそろ潮時だな。最後の仕上げだ」

 

「うん、行こう!」

 

俺とルクスは機竜を使い飛び立った。この国を、悲劇を終わらせるために。



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終わり、そして始まる

内容がなかなか決まらず、更新出来なかった………


「ルクス、先にいってくれ」

 

シュウは真剣な面持ちでルクスに告げる。ルクスはコクリと頷き、帝国兵へ向かっていく。シュウはある人物が来るのを待った。その人物はすぐにシュウのもとへ現れ、槍を向ける。

 

「シュウ、お前裏切るのか……!何でだよ……!」

 

「すまないな、特務騎士団長殿」

 

シュウは団長を見る。団長はシュウに機攻殻剣を構えながら睨み付ける。シュウは少し俯きながら同期生の団長を見る。団長は恨みの表情をする。

 

「貴様とあの漆黒の機竜を倒し、反乱軍に終止符を打ってやる!!」

 

団長は一気に加速。神速の勢いでシュウを切りつける。シュウは落ち着いた様子でかわしていく。団長は焦りを感じさらに加速していく。シュウはそれを軽々といなしていく。それにより団長はさらに焦りを増す。

 

「くっ、はぁ!」

 

「まだやるのか?団長さん……」

 

「俺は腐っても帝国軍人だ。皇帝を裏切り寝返ることなど言語道断。お前が何をしようと寝返らないし、寝返るくらいならば死を選ぶ!!」

 

「そうか、ならば死んでもらってでも帝国には降伏してもらうぞ」

 

「っ!!」

 

シュウは一瞬、体をずらした。特にシュウにも団長にも変化は見られない。団長は冷や汗をだらだらと流し、辺りを警戒している。

 

ザシュ!という音と共に団長の体が切り刻まれ、団長の機竜は墜落する。

 

「すまない、特務団長殿」

 

「あとは、ジスト隊長殿だけかな」

 

「呼んだか?死神。いや、悪夢のシュウ」

 

帝都防衛隊隊長のジスト・レンダルフは憂鬱そうに言い放つ。ジストは敵意は無いように見えるが、シュウは警戒したままでいた。

 

「何だ、俺と戦うのか、ジスト隊長殿?」

 

シュウ何気なしに言う。シュウの殺気を込めた言葉にも、ジストは気にしないようにシュウを見つめる。さすがは帝国の切り込み隊長といわれる実力者である。

 

「俺達帝都防衛隊は壊滅状態で、もう戦闘能力など有りはしない。特務騎士団でさえ降伏してしまったのだ、もはや帝国軍に戦闘意思はない」

 

「はっ、そうなら良いな。だが漆黒の機竜はまだ戦っている、終わってないんだ」

 

「シュウ……」

 

ジストは悲しげな表情をする。シュウはそんなことには目もくれず飛び立った。既に帝国軍は特務騎士団、帝都防衛隊、制圧部隊が降伏。帝都は陥落したも同然で、皇族は既に逃げ出している。

 

「兵士は助けても、皇族は生かしておけない。あんなクズどもは死んで詫びてもらう…………!!」

 

シュウは逃げた皇族の捜索を開始。近衛騎士団を破り、皇族を探す。しかし一向に見つかることは無かった。

 

「クソッ!!」

 

シュウは皇族を見つけられなかったことに苛立った。そんな時だった。帝都の中心地にある城に白旗が上がったのは。帝国が完全に敗北した瞬間だった。

 

「戦闘は終わったか」

 

シュウは城を見つめることしか出来なかった。

 

アティスマータ伯爵が中心となって起こしたこのクーデターは、帝国の崩壊で幕を閉じた。黒き英雄は後世にもなを残す騎士となった。



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新たな始まり

あのクーデターから5年。現在、シュウは賞金稼ぎをしていた。ルクスの借金を返済するためである。ルクスは断ったが、彼は親友であるルクスを助けたいと申し出て、半ば強引に手伝っている。

 

夜架はシュウとともにルクスの借金返済を手伝い、ユリシアは学園に通っている。

 

ここは五つの市街地からなる十字要塞都市『クロスフィード』。

 

その一番街区の中央通りを、三つの影が走っている。

 

「あの猫、中々すばしっこいな!?」

 

「あはは……」

 

 

シュウside

 

ルクスは苦笑いを浮かべていた。たかが猫一匹に手間取ってしまっているのだ。

 

「全く、急ぐぞ!」

 

「うん!」

 

俺達はルクスが受けた依頼の少女のポシェットを咥えている猫を追い走る。途中、町の人に声をかけられながら、猫を追った。

 

猫は逃げ屋根に登った。俺達も急いでそれを追う。かなり大きな建物のようだが今はそれどころじゃない。

 

「ようやく、追い詰めたぞ」

 

足場が少なくなったところで、ルクスはじりじりと猫に近づく。

 

そして、意を決したようで猫に飛びかかった。

 

ルクスが飛びかかり、猫の咥えているポシェットをなんとか取り返した。

 

「やった!」

 

「やっと終わりか」

 

ルクスは何とか猫から依頼人である少女のポシェットを取り返した。これで何とか帰れるな。

 

俺たちは屋根から降りようとした。

 

そんなときだった。俺たちはピシッ!という不穏な音に動きを止めた。

 

「「えっ……?」」

 

音の発生源は俺達が体重を預けている場所だった。つまり、亀裂が入ってしまったんだ。

 

「ちょっと待ってよ!?これって―――」

 

急いで離れようとしたが時すでに遅し、俺達は体重が消える感覚と共に、落下してしまった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

バシャァァアアッ……!!

 

一秒後、俺達は着水した。どうやら水があったらしく、怪我はしなくて済んだ。しかし、ある違和感に気付いた。それは水が暖かいことだ。

 

「ここは、もしかして―――」

 

ルクス、お前はとことんついてない。もちろん、この状況ならば俺もだが……。

 

ここは風呂場。宮殿よりは広くはないだろうが大理石の柱や壁、ランプが見える。

 

最悪だ……。俺は顔を伏せ、そう思った。チラッと見えたのは女性。つまりここは女湯だということだ。

 

「危ないっ!」

 

不意にルクスが叫ぶ。俺は瞬時にルクスを見る。ルクスは少女を押し倒していた。

 

―――は?

 

そこだけ見ればルクスが少女を襲っているようにしか見えない。しかし、すぐ近くに天井の破片がある。ルクスは少女を破片から守ったんだろう。

 

気づけばルクスは何か言っているようだ。よく聞こえない。

 

「……ってあれっ!?」

 

ルクスが青ざめて行く。あぁ……終わったな、ルクス。もしかすると俺も終りかもしれない。

 

「いつまで私の上に乗っている気だこの痴れ者があぁぁああっ!」

 

怒声と共に他の女性も「キャアアアァァァアッ!?」とや悲鳴を上げる。彼女たちはその場にあるものを次々に俺達に投げつける。

 

「す、すみませんでしたあぁぁぁあ!」

 

って俺にもかよ!?これ結構痛いぞ!?俺もルクスも急いで逃走を開始した。

 

「ど、どうしてこんなことに!?」

 

「俺が知りたいわ!!」

 

俺は涙目のルクスと走った。絶対に死にたくないから。

 

シュウsideout



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