GATE もう一つの帝国 (コッコ)
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もう一つの帝国

フォルマート大陸。その大陸は勢力を二分にした大国が睨み合っていた。一つは絶対支配者と言う事で名前が無い帝国と帝国とその帝国と真正面からでも戦えるロイス帝国が君臨していた。

 

帝国とロイス帝国はお互いに総力戦は避けたいので形だけの外交儀礼をして攻め込む隙を常に伺う毎日である。そんな帝国に続く道に多くの武装した兵士が馬車を何重にも囲む様に守りながら進んでいた。

 

「レオン様起きてください。もうすぐで帝国の首都ウラ・ビアンカです」

 

「ふわぁ、もうか・・・」

 

馬車に乗るのはロイス帝国の皇子レオンと側近であるルーレで現在、帝国のモルトの誕生祝いのパーティーに出席する為に態々14歳の二人が出向いてきたのは皇帝が別の案件でどうしても出れないのでルーレと共に代理で出席する事になったのだ。

 

「それにしても父上め。俺に別の案件で出れないからと面倒事を押し付けてくるとはな」

 

「別に良いじゃないですか。見聞が広いのは悪い事ではありませんよ」

 

「・・・そうだな」

 

そうこうい言っている内にウラ・ビアンカに到着した。レオンはウラ・ビアンカを見て珍しそうにしていた。ロイス帝国は例えるなら中世の後半位にあたり文化が大きく違う。それだけで珍しそう見ても不思議ではない。二人はさっそく皇宮に向かい出迎えを受ける。

 

「ようこそおいでなさいました。あなた様が代理でやって来たレオン様で間違いはありませんか?」

 

「そうだ」

 

「では、こちらへ」

 

出迎えの貴族に連れられて二人は大きな広間へと出た。広間は貴族等に溢れており談笑をしながら食べ物やお酒を飲んでいる。

 

「へぇ、私達と変わらないんですね」

 

「そうだな」

 

ルーレは手に肉を持ってレオンに話す。レオンは杯を片手に酒を少し飲んでいる。二人が思い思いに過ごしているとモルトがやって来る。

 

「モルト陛下」

 

「うむ、貴殿はロイス帝国の」

 

「代理で来ましたレオンです。モルト陛下、今回父上が欠席した事をお詫びします」

 

「いや、構わん。今回のパーティーを楽しんで行くがよかろう」

 

モルトはそう言うと立ち去りその場にレオンだけが取り残される。レオンはいつの間にかはぐれたルーレを探す為に歩き始めた。だが、何処にもおらず遂には中庭まで足を運んだ。

 

「まったく何処に行ったんだ・・・」

 

レオンが歩いてしばらく経つと喧騒が奥から聞こえた。行ってみるとそこに赤毛の同い年位の少女とルーレが言い争っており茶髪の少女がオロオロとしながら二人を止めよう止めようしている。レオンは三人の元に行った。

 

「おいルーレ。何をしている」

 

「レオン様!聞いてくださいよ。この人にレオン様が強いと言ったら何故か突っ掛かてきて」

 

「違うだろ!お前が偉そうに自慢するからこうなったのだ!」

 

お互いにまた言い争いを始めてしまいレオンはオロオロしている茶髪の少女に近づく。

 

「おいお前。何故二人は喧嘩をしている?」

 

「えっと・・・それが」

 

茶髪の少女の名はハルミトンと言い赤毛の少女はピニャで帝国の皇女らしい。ピニャとルーレが喧嘩している経緯はピニャ達と迷子になったルーレが会って最初は仲良くしていたがレオンが強いとルーレが話して自慢話となり嫌気がさしたピニャがルーレに否定的な事を言ったからこうなったらしい。

 

「はぁ、まったく・・・ルーレ止さないか」

 

「しかしレオン様・・・」

 

「お前が今喧嘩をしている相手は皇女だ。お前じゃ分が悪すぎる」

 

レオンに咎められたルーレは拗ねた。ピニャは勝ち誇った顔をしているが喧嘩を原因を完全に忘れている。

 

「うちの側近が迷惑を掛けたな」

 

「いや、妾も少し大人げなかった。所でお前がレオンか?」

 

「あぁ、レオン=ディオパルドだ。ロイス帝国の皇子だ」

 

「妾はピニャ・コ・ラーダだ」

 

ロイス帝国の皇子と帝国の皇女。この時の出会いが後に大きな影響を生んだ事はまだ知られていない。



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騎士養成学校

レオンはピニャ達と話した。ピニャは騎士陽性学校と言う騎士育成の為の場所で自らの騎士団を作っているそうだ。

 

「へぇ、お前ずごい行動力だな」

 

「ふふん、そうであろう」

 

ピニャがもっと褒めろと言わんばかりに胸を張る。レオンは別に褒めているつもりは無いが否定したら面倒な事になりそうなので否定しない。

 

「お前達で良ければ見せてやるぞ?」

 

「良いのか?」

 

ピニャの言葉にレオンは反応する。ピニャのお遊びとは言え騎士の訓練を見せると言うのだ。レオンはどんな訓練をしてあるのかを見て脅威になるのかを確める良い機会だと悟る。

 

「ふむ、明日まで滞在するが暇でな。見させて貰おう」

 

「え?レオン様。明日は私と」

 

「おぉそうか!では、明日待っておるぞ!」

 

ルーレの言葉を遮ったピニャは歩いていきハミルトンはその背中を慌てて追いかけていく。レオンも帰ろうとすると隣から視線を感じて見てみるとルーレが涙めで睨んでいる。

 

「レオン様・・・私と街を見て回るのではなかったのですか?」

 

「すまない。忘れていた・・・」

 

「忘れてた?レオン様の・・・バカーーー!」

 

その後、ルーレに追いかけられるレオンが目撃されている。翌日、レオンとルーレは約束通りにピニャの言っていた騎士養成学校を訪れていた。

 

「ここがそうか」

 

「レオン様との・・・」

 

昨日から拗ねてブツブツと何かを言っているルーレをほっといているレオンは中に入っていく。中では木剣が当たる音が聞こえておりその音を頼りに行くと様々な年の少女と少年が訓練を行っている。

 

「おぉ、来たか!」

 

ピニャがレオンを見つけて声を掛けると一斉に訓練が止まる。

 

「約束は守る方でね。こいつらがそうか?」

 

「あぁ!妾の騎士団となる者達だ!」

 

レオンは静かに集団を見る。少年の方が少なく少女が多いと言う奇妙な物だが其なりに訓練をしていると感じた。

 

「なるほど・・・確かに良く訓練を受けているな」

 

「あの姫様。この方は?」

 

教官と思われる図体のでかい男がピニャに話しかける。レオンは経験こそは低いがこの男はかなりの手練れと感じピニャはそれなりに人を見る目を持っているとレオンは思った。

 

「こいつはロイス帝国の皇子でレオンだ」

 

「ロイス帝国の皇子!失礼しました」

 

「いや、別に気にしてはいない。それより見学をさせてくれるな?」

 

「はい。喜んで・・・」

 

レオンはルーレと共に広場の奥に座り訓練を見る。訓練はかなり実戦向きでレオンはピニャのお遊びとは考えるのを止めた。ルーレはまったく興味無さそうに何処から持ってきたのかリンゴをかじって食べている。

 

「(中々の練度だな。隙の無い動きで斬り込む技術はやはりあの教官と思われる男による訓練か・・・)ルーレ

どう思う?」

 

「はい。リンゴ美味しいです」

 

ルーレの能天気な応えにレオンは溜め息をついた。それからしばらく訓練をして生徒は休憩に入った。

 

「どうだ妾の騎士団の訓練は?」

 

「できるな・・・こいつらは騎士の家系の出か何かか?」

 

「いや、全員貴族の出だが?」

 

「貴族か・・・」

 

貴族。レオンは正直貴族は嫌いで自己満足な権力しか振るわず民を蔑ろにすると教わった。教わったと言うのはロイス帝国に貴族は全員粛清され現在は騎士が台頭する様になっている。

 

「まぁ、良いか・・・」

 

レオンは考える事を止めるとピニャが満面の笑みでレオンを見ていた。

 

「レオン。お前一度グレイと手合わせしないか?」



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手合わせと別れ

レオンはピニャからグレイと言う男と手合わせをしないかと言われて考える。しばらくして帝国の者の実力をその身を持って味わうもの悪くないとレオンは思い結論を出す。

 

「良いだろう。グレイと言う男と手合わせをしよう」

 

「そうか。グレイ!こっちに来い!」

 

ピニャが叫んだ方向からさっきの教官がやって来た。

 

「何でしょう姫様?」

 

「そこにいるレオンと手合わせをして貰えないか?」

 

「はぁ・・・良いですが」

 

「よし!」

 

レオンのグレイに対する第一印象は強い戦士だがピニャにかなり無茶ぶりをさせられてそうな印象に変わった。

 

「(何か尻に敷かれそうな人だな・・・)」

 

ルーレがグレイに対して口には出していないがかなり失礼な事を思った。グレイとレオンが木剣を持って対峙する。

 

「よろしくお願いします。グレイ殿」

 

「こちらも・・・」

 

レオンは左足を前に出して木剣を右の頬の横に持っていく。その姿は雄牛の角の如くしっかりと構える。グレイはそれを見て身を引き締めた。

 

「(この者・・・雄牛の構えを使うのか)」

 

グレイも木剣を構える。二人の間にはかなりの威圧感を出し集まってきた生徒とピニャは固唾を飲んで見ている。一人を除いて。

 

「(なるほどね・・・これは接戦になりそうです)」

 

一人冷静にリンゴをかじるルーレ。その姿を見たピニャは驚いて話しかける。

 

「ルーレ。お主は何故お前はそんなに冷静にいられるのだ?」

 

「何故て言われてもいつも訓練でこんな感じですし・・・要するに慣れですよ。慣れ」

 

「慣れるのか?この状況を・・・」

 

ルーレの慣れと言う言葉にピニャは唖然とする。そんな二人を余所にグレイとレオンは構え続ける。二人は以前として動かなかったがコイシガ何処からか落ちた様な音がした瞬間、レオンは斬り込む。

 

グレイは木剣で受け止めカウンターでレオンの木剣を受け流して左に斬り込むがレオンはカウンターを難なく受け止める。数分後、二人は以前として斬り合いをしておりかなり激しいタタカイだった。周りは息をしているか怪しい位の静けさだった。

 

「(実力は本物か。このグレイと言う男はロイス帝国にもそうはいないな・・・)」

 

「(腕はかなりの物だな。だが)まだ未熟ですな・・・」

 

グレイはレオンの突き出した木剣を避けて足を出す。その足にレオンが絡んで体勢を崩してグレイに背中を木剣の柄で殴られて転ける。レオンは転けた後、素早く立ち上がろうとしたがグレイに木剣を突き付けられる。

 

「小官の勝ちですな」

 

「参った・・・」

 

激しい戦いは終わりレオンはグレイに差し出された手を掴み引っ張られる様に立ち上がる。

 

「中々の強さでした。小官は最初は負けるかと思いましたぞ」

 

「いや、貴殿もかなりの物でした」

 

二人は互いに実力を認め合い握手をする。その後、生徒は達による弓の訓練を見て終る。そして翌日になり別れの時がやって来る。別れの日でピニャはかなり拗ねておりレオンは無表情でルーレは苦笑いでピニャを見る。

 

「ピニャ殿。またいつかは会えますよ。それまでの辛抱するだけです」

 

「そうですよ。別に永久の別れと言う訳ではないのですよ」

 

「しかしだな・・・こう別れの時が来ると寂しくてな」

 

ピニャの言葉にレオンも少し寂しく思えた。恐らくこの帝国には相当な事がない限りはもう来ないとレオンは思えた。ただでさえ冷戦である両国でこんな風に接する事は無いのだ。

 

「確かに寂しく思えるが・・・また会える。それまでにお前の騎士団の完成させて俺に見せると約束してな」

 

「あぁ・・・」

 

レオンとルーレは馬車に乗り込みウラ・ビアンカを去る。後ろでピニャが大声で別れを告げた声がレオンに響く。

 

「面白い人でしたね。レオン様」

 

「そうだな・・・だが次は敵同士として会うかもしれんな」

 

「ッ・・・そうですね。皇帝陛下が帝国をずっと放置はしないとは思えませんからね・・・・・・」

 

ルーレは暗い表情になる。帝国は二つもいらない、と帝国とロイス帝国が言いあ互いに最大の仮想敵国として見ている。そんな状況で友好的に会える訳がない事はレオンとルーレは分かっていた。

 

「(もうじき大きな戦が始まる気がするがどのみち帝国とは戦は避けられはしない・・・その時は・・・・・・)」



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初陣

ピニャ達との出会いから5年後、漆黒の鎧兜を身に付け紅のマントを纏う顔の見えない騎士が馬上で槍を持って軍勢を率いて前進していた。その人物はこの5年で成長したレオンであった。そこに同じく成長したルーレがレオンの元にやって来る。

 

「レオン様。もうすぐヴォーリアバニーの国です」

 

「そうか。ヴォーリアバニーの国は既に帝国軍の攻撃を受けている筈だ。急ぐぞ」

 

ルーレの知らせを聞いてレオンは急ぐ。何故、この様な事になっているのかと言うと同盟国のヴォーリアバニーの国が帝国に攻撃を受けた知らせがロイス帝国に届きレオンの初陣も兼ねて援軍を出したのだ。

 

「(持ちこたえてくれているのだと良いが・・・)」

 

ロイス帝国軍がヴォーリアバニーの国に入ると荒れ果てた大地が広がっていた。そこかしこに帝国兵の死体の姿もあったが多くあったのは服を引きちぎられ犯された後のヴォーリアバニーの死体だった。

 

「酷いですね・・・」

 

ルーレは顔を強張らせながら言う。レオンは辺りを見渡しながら帝国軍の影を探す。

 

「帝国軍はどこだ・・・」

 

レオンは少し先に進むと土煙が見えた。そこから怒号が聞こえる事からそこで戦いが起こっているとレオンは推測し槍を掲げる。

 

「援軍は間に合った!我らの目的は同盟国のヴォーリアバニー達を救う事にあり敵を逃しても気にする事はない。ただ、敵を追い払え。全軍進め!!!」

 

レオンは馬を走らせるとロイス帝国軍が一斉に馬を走り歩兵も走る。

 

「くッ!このままでは・・・」

 

土煙の発生源ではレオンの推測通り戦闘が起こっていた。戦況は帝国軍が数で優勢でヴォーリアバニーは精鋭だが軍は少なかった。徐々に追い詰められヴォーリアバニーの女王であるテューレは決断を迫られていた。

 

「(もはや自身の肉体を差し出して・・・)」

 

「テューレ様に伝令!」

 

テューレが帝国軍に降服をしようとしていた時に伝令が入る。

 

「援軍です。ロイス帝国の援軍二万が到着し目前まで来ているとの事!」

 

「ロイス帝国が!・・・だとしたらこの戦いは、勝てる!全軍に伝えなさい。この戦いは勝てる・・・だから持ちこたえよと伝えなさい!」

 

「はっ!」

 

レオンは馬を走らせる。土煙が近づいてくるにつれて怒号が大きなる。そして、遂に帝国軍とぶつかった。

 

「な、何だ!」

 

「あの旗は・・・ロイス帝国!ロイス帝国軍の襲撃だ!!!」

 

帝国軍は予期せぬ軍勢に混乱して統率を失う。レオンはその機を逃さず逃げようとする帝国兵に槍で突き刺す。

 

「ぐはぁッ!」

 

「敵は混乱している!全軍掛かれ!!!」

 

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

ロイス帝国軍は次々と剣や槍、ランスに、弓矢で襲い掛かり帝国軍は更に混乱する。レオンは逃げようとする帝国兵を除いて未だに戦おうとする兵士のみを狙う。レオンは槍を片手に振り回して一人で帝国兵を吹き飛ばしていく。

 

「くそ。ぐわぁッ!」

 

「帝国軍の大将は誰だ!俺と一騎討ちをせよ!」

 

レオンは馬を走らせつつ帝国兵を凪ぎ払い帝国軍の大将を探す。帝国兵はレオンの姿を見て恐れ武器を捨てて逃亡し始める。

 

~ゾルザルside~

 

「何だこれは・・・」

 

俺は絶対に勝てる筈の戦をしていた。圧倒的な戦力でヴォーリアバニーの国を滅ぼしそのヴォーリアバニーの身体を堪能しようと考えていた。だが、突如として傷付いた伝令がやって来たのだ。ロイス帝国軍が現れてと。

 

「おのれ・・・おのれおのれおのれおのれおのれ、おのれ!ロイス帝国軍め・・・俺の計画を滅茶苦茶にしやがって!!!」

 

俺は腹立たしさで叫んだ時にあの言葉を聞いた。

 

「帝国軍の大将は誰だ!俺と一騎討ちをせよ!」

 

~視点終了~

 

レオンは馬を走らせつつ帝国兵を狩っていた。挑んでくる帝国兵や騎士を次々と凪ぎ払い帝国軍の大将を探す。レオンが戦場の奥までやって来ると馬に乗った金髪の偉そうな男が立っていた。

 

「俺が帝国軍の大将で帝国の皇子ゾルザル・エル・カエサルだ!その一騎討ち受けてたとう!」

 

「良いだろう・・・こい。雑魚が」

 

レオンは槍を向けてゾルザルを挑発する。怒ったゾルザルは剣を抜いてレオンに斬り掛かる。レオンは槍であっさりと防ぎゾルザルはそれに更に怒ったのか連続で剣を叩き込むがレオンに全く通じず防がれ続ける。

 

「どうした?その程度でよく大将と名乗れるな。本当は皇子と言うだけのボンボンか?」

 

「黙れ!!!」

 

レオンが更に挑発をするとゾルザルは隙だらけの状態で斬り込む。レオンは槍をしっかりと持ってゾルザルの剣を絡ませて持ち上げる。持ち上げた剣はゾルザルの手から離れて遠くに飛んでいきゾルザルも馬上から落ちる。ゾルザルは立ち上がろうとしたがレオンに槍を突き付けられる。

 

「ひぃッ!」

 

「お前の敗けだ。退けば殺さないでやる・・・どうする?」

 

ゾルザルはレオンの言葉に何回も首を縦に振る。

 

「そうか・・・じゃぁ、早く消えろ」

 

「う、うわぁぁぁぁ!」

 

レオンが槍をゾルザルから遠ざけるとゾルザルは情けない位に逃げ出した。

 

「殿下!」

 

「殿下がお逃げになった・・・た、退却!退却だ!!!」

 

ゾルザルの敗走で帝国軍は逃げ出していき帝国兵が一人もいなくなった。

 

「我々の勝利だ!!!」

 

「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」

 

レオンの初陣は成功し名を挙げ後に兵士の生き残りからの報告で帝国から恐れられる存在となった。



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不穏な空気

ヴォーリアバニーの国を救ったレオンは女王テューレと謁見していた。

 

「レオン様。此度での援軍に一族を代表して感謝します」

 

「いや、自分は身勝手な帝国から盟友を守っただけです。しかしこれからは帝国の動きを監視しなければならないでしょう・・・」

 

「大きな戦が始まると?」

 

テューレの言葉にレオンは頷く。両国の溝はこの5年で更に悪化している。お互いにこの様に小競り合いをする様に互いの同盟国を攻めては滅ぼすようになる。未だに動きは見られないが近いうちにも戦争は起こると予想されていた。

 

「(このまま何事も無ければ良いのだがな・・・)」

 

 

~帝国 帝都ウラ・ビアンカ~

 

ゾルザルがヴォーリアバニーの国を攻めた日から数日が経って元老院に戦果が届く。それはロイス帝国の援軍到来でゾルザル率いる帝国軍はほぼ壊滅的被害を受けて敗北したという内容だった。

 

「敵の将はまるで亜神の如く武勇を振るい兵士を手に持った槍で突き刺したり吹き飛ばしりしました。顔は見えませんでしたが漆黒の鎧兜で紅のマントを羽織る姿を私は見て黒い死神が目の前に現れた様でした・・・」

 

「うむ・・・してその将の名は何と言った?」

 

「・・・それが分かりません」

 

報告をする兵士にモルトは将の名前を聞くが分からないと応えられる。モルトは思考を回して考える。

 

「(ロイス帝国にそれほどの名将がおるならどうして噂にならんのだ。もしや其奴は初陣だったのか・・・)」

 

モルトは考えるのを止める。今考えてもその将の存在は確認できはしないと考え今は本格的にロイス帝国を潰す算段を立てようとした。

 

「(もしロイス帝国を滅ぼせた暁には其奴を勧誘してみるか・・・)」

 

後日、元老院でロイス帝国との戦争を開始する事を可決された。帝国国内で大幅な軍備が進められ近いうちに宣戦布告が成される手筈となった。

 

 

~ロイス帝国 レオンの執務室~

 

レオンは戦いの後に国に帰って自分に回された仕事をこなしていた。羽ペンを使い次々とサインしていくと扉がノックされる。

 

「レオン様失礼します。」

 

扉を開けて入ってきたのは大量の書類を持ったルーレだった。ルーレはレオンが使っている机にその大量の書類を置く。

 

「また回されたのか・・・」

 

「致し方ありませんよ。レオン様はこの国を将来的に皇帝陛下から後を御継ぎになる皇太子に任命されたのですから」

 

レオンはあの後に後継ぎに命じられ皇太子となった。他に男の皇位継承者がいなかった事もあり実際の所、あまり権力と言う物に興味が無いと言うレオン自信も渋々だが了承する。

 

「だからと言って俺に仕事を回して過ぎていないか?我が国の臣下の職務怠慢を発見したくないぞ」

 

「まぁ、良いじゃないですか。こんなに仕事を回されるのは頼られ信頼がある証ですよ」 

 

ルーレが苦笑いでレオンに言う。レオンは渋々回された仕事をやり始める。



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宣戦布告

ヴォーリアバニーの援軍での戦いから数日、レオンはルーレと共に召集され会議室で父である皇帝レオ=ディアパルドを待っていた。

 

「待たせたな」

 

レオがやって来て会議室の一番奥の椅子に座ると内容を話し始めた。

 

「諸君。遂に帝国が我々に対して宣戦布告を告げてきた」

 

「宣戦布告ですか・・・奴らは本腰を入れてきたと言うことですか?」

 

「うむ・・・前日の援軍の件を理由に宣戦布告を言い渡してきてな。こんな事もあろうかといろいろと準備してきて正解だったな」

 

レオンはレオの言葉を聞いて俯く。5年前に出会ったピニャ達が気掛かりで彼女達も戦場に出るのかと考える。

 

「(まさかモルトが女であるピニャとその騎士団を戦場に出しはしないと思うが・・・まさかな・・・・・・)」

 

「どうしたレオン?」

 

「いいえ何でもありません」

 

レオンは考えるのを止めた。今さら始まった戦で情などを掛けるつもりはなく見つけたら殺すつもりでいた。そんなレオンをルーレは心配そうに見ている。

 

「では、今後の戦略だが奴らより先に先手を打ちたいと思う。只でさえ面倒な相手だ。先に攻撃を仕掛け要所を奪い取り敵の士気を挫く」

 

「しかし、敵も黙ってはいませんよ。仮に先手を打てても帝国が何を仕出かすか・・・」

 

「だがやるしかない・・・奴らが戦を望むならな」

 

レオンはレオの決意を聞くと立ち上がる。周りの臣下は一斉にレオンを見る。

 

「分かりました。その先手を打つ役目を俺にください・・・必ず成功させて見せます」

 

「うむ。お前なら必ず出来るだろう。皇太子レオンよお前を攻撃軍指令に任命する。働きを期待しているぞ」

 

「・・・必ず。行くぞルーレ。戦の準備だ」

 

「はい!」

 

二人は会議室を退室する姿をレオは静かに見て思う。

 

「(馬鹿息子。強がりよって・・・)」

 

レオは帝国の皇女ピニャと関わりを持っている事を知っていた。レオンとルーレが帝国との小競り合いを聞いて卑屈な顔をするので護衛の兵士に聞くと帝国でピニャ達と面識を持ち友の様な関係を持っていると聞いたのだ。

 

「(まさかレオンが帝国皇女と知り合うとはな・・・情などを出さんとは思うが心配だ・・・・・・)」

 

 

レオンは鎧兜を身に付けて軍の前に立つ。兵士達は全員覚悟を決めた顔をしており士気も高かった。

 

「レオン様。準備はできております。号令を・・・」

 

「全軍!これより帝国へ進軍を開始する。この戦は帝国から国を、恋人を、友人を、そして家族を守る為の戦いだ。臆するな、突き進め。我々に敵はいない事を帝国に知らしめてやれ!」

 

「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

「全軍進軍開始!」

 

レオンの合図で軍は進み始める。百戦錬磨のロイス帝国は帝国領に進撃した事を帝国は察知しすぐに軍を向かわせる。戦争は始まろうとしていた。

 



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ノラトの戦い

レオンが出発したから帝国は油断をしていた。突然の宣戦布告に戸惑い慌てて軍備をしていると思っているからだ。帝国はロイス帝国と国境に挟まれているノラトと呼ばれる城塞都市に軍を集めて遠征を始めようとしていた。

 

ノラトは左右は大きな谷に挟まれて建設されており唯一ロイス帝国への陸上で行ける帝国の重要な通路であり砦でもある。

 

「飲むが良い!今夜は無礼講だ!」

 

帝国軍はノラトに集結し夜に酒を大量に飲んで寝静まった。見張りは動ける者で僅かでかなり疎かになっている。そこにレオン率いるロイス帝国軍がやって来てレオンはルーレと共に自ら城塞を見る。

 

「あれがノラトか」

 

「見た所かなり見張りが少ないですね・・・」

 

「どうせ油断をして酒でも飲んだんだろう。今日は付いてるな・・・まさか要所の守り手が油断をしているんだからな。ルーレ明かりを消させろ。静かに迫るぞ」

 

「分かりました」

 

自ら遠目で確認したレオンはルーレに松明の火を消させ暗闇に紛れさせる。そんな事を知らない帝国兵は呑気にあくびをしながら見張りをしているん。帝国兵はそろそろ交代しようと他の兵士に呼び掛けようとした瞬間、帝国兵は首に矢が刺さる。それを合図に見張りの帝国兵は次々と矢が刺さる。

 

「よし。これで静かに登れるな・・・」

 

「攻城梯子を掛けなさい・・・」

 

ルーレの命令でロイス帝国兵は梯子を掛ける。そして、静かに登っていき城壁の上に到達する。ある程度のロイス帝兵数人が登り終えて内部に降りる。内部はレオンの思った通り油断して寝てしまっている帝国兵でいっぱいだった。

 

「門を開けるぞ・・・」

 

ロイス帝国兵は静かに門を開け放つと外の味方を招き入れる。

 

「油断するからこうなるだ・・・全軍掛かれ」

 

「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

レオンの指示で一斉に帝国軍へと襲い掛かる。寝てしまった帝国兵達は一斉に飛び起きて混乱の中で武器を取ろうとし瞬間、斬られる。

 

「敵の大将は街の館にいる筈だ。敵大将を討ち取った者には望む褒美を取らせる」

 

ロイス帝国軍は街の中心にある館を一直線に目指して突き進む。道中、帝国軍が棒やら斧等武器と呼ぶにはお粗末な物を持って戦い始めているがまともな武器ではないので簡単に殺される。

 

「えぇい!情けない奴らめ。帝国軍としての意地を見せないか!」

 

館の近くで帝国兵とは違う鎧を着た男が怒鳴っていた。その男が大将であり突然の夜襲を受けてどうにか統率しようと試みるが結局失敗している。ロイス帝国軍は男を見つけると一斉に掛かるが男は思っている以上に強く何人も斬られる。

 

「どうした蛮族共!掛かってこい!」

 

男の気迫に押されロイス帝国兵達は少し怯みあがった。武器を構えつつも包囲する中で一人の両手剣を持った青年が出てくる。

 

「私が相手をしよう」

 

「ふん、雑兵風情が・・・行くぞ!」

 

男が剣を振り上げて青年に斬り掛かるが青年の両手剣が先に男に届く。

 

「へ?」

 

「残念だが終わりだ・・・」

 

男の剣は青年の両手剣を振るいぶつかったと同時に折れて男を襲う。両手剣はそのまま男の首を吹き飛ばして血が溢れて倒れる。

 

「敵将を討ち取った!」

 

青年が首を持って宣言すると一斉に歓声が挙がる。そして宣言を聞いた帝国兵達は武器を捨て始め降伏し始めた。ノラトは制圧されレオンは敵将を討ち取った青年の元へ行く。

 

「よく討ち取った。話によると敵将は中々の強さを持っていたそうじゃないか。そんな奴を一撃で倒したお前にほうびを授けたいが何が良い?大きな願いなら父上に掛け合ってみるが」

 

「はい。自分をあなたの臣下に加えさせてください」

 

「俺の臣下に?何故だ。敵将を討ち取る事は領主は無理でもそれなりに高い地位に就ける筈だ」

 

「私はあなたの臣下になりたくてこの軍に志願しました。そして、あなたの望み通り敵将を討ち褒美としてあなたの臣下になる事を望みました・・・」

 

レオンは青年の望みを聞いて少し考え決める。

 

「お前・・・名は?」

 

「ガーウェン=ロードシェルクです」

 

「ガーウェン・・・お前を俺の臣下に加える。存分に腕を振るえ。期待しているぞ」

 

「ありがたき幸せでございます!」

 

新たに臣下に加えたレオンは明日に備えてノラトで軍を休ませる。この戦いを切っ掛けにますます謎の黒騎と名が高まったとはレオン自身も知らない。



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異変と進撃

練習率いるロイス帝国軍はノラト制圧後、新たな命令を下されるまで待機していた。その間にレオンは帝国の情報を集めて次に戦う戦略練ろうとしたが奇妙な知らせが入る。

 

「帝国軍がアルヌスへ?」

 

「はい。密偵からの情報であり他の密偵も同じ報告が入っています」

 

「何故だ・・・帝国が我々に背を向けて他の地にましてや整地と呼ばれる場所に兵を送ったんだ」

 

レオンは帝国の真意について考える。帝国のアルヌスへの進攻はロイス帝国をほったらかして別の地に戦力を送るのは馬鹿のする事でロイス帝国に背後を見せる行為がレオンには掴めない。

 

「(やはりこの現状では分からないな。やはりアルヌスに密偵を放つか)」

 

「ルーレ。アルヌスに密偵を送れ。何があるのか突き止めるように指示しろ」

 

「分かりました」

 

レオンの命令を受けてルーレは密偵の元に行く。レオンは深く椅子に座り大陸の地図を見て戦略を考え始める。

 

「(さて、どうでるか・・・)」

 

数日後、新たな命令と共にルーレからアルヌスに放った密偵の報告をレオンは聞いた。何でもアルヌスに異世界に続く門が開き帝国は奴隷不足を補う事と新たな領土を欲しさに異世界に出兵したらしい。

 

「出兵したのは良いのですがどうやら完膚なきまでに敗北した様で異世界の軍勢に逆進攻されアルヌスを奪われたようです」

 

「自業自得だな。まぁおかげで戦いがやりやすくなったな。では、我々はイタリカを目標に進軍していく。イタリカを目指すまでの街や村を制圧していってな」

 

「イタリカですか?」

 

「イタリカは帝国の食糧の殆どをそこで補っている。イタリカさえ攻め落とせば帝国は深刻な食糧不足に落とす事ができる。新たな命令でイタリカを落とす様に言われているし次いでに付近の攻略もやろうとな」

 

「分かりました。出陣の準備をします」

 

レオンの説明を聞いたルーレはレオンの元を離れる。そして、出陣の準備を終えた軍勢がレオンと共に進軍を開始する。レオンの傍らには副官を勤めるルーレと新たに臣下に加えたガーウェンがいる。

 

「さて・・・ここからが本番だ。これ以上は帝国も奇襲を許さないだろう」

 

「はい。帝国も完全な馬鹿と言うわけではありません。帝国は不名誉な侵略をしていますが実力は本物・・・まともにぶつかればこちらが倒れます」

 

「あぁ、だからまずは地理的に有利な場所を奪う。後方にそういう陣地があれば何とかなる」

 

「地理的有利な場所ですか・・・それなら近くに帝国の砦があります。そこを奪えればあなたの望む陣地が得られます」

 

「ではそこに行く。進め」

 



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連合諸王国軍

帝国の帝都ウラ・ビアンカでは異世界出兵での失態を元老議員のガーゼルが追求していた。総戦力6割の損失は帝国にとって大打撃とも言えた。だがモルトはそんなガーゼルを嘲笑うかのようにのべる。

 

「ガーゼル侯爵。貴殿の心中は察する物である。此度の損害で帝国の軍事的有利な失せた事も確かだ・・・外国や帝国に服している諸国が反旗を翻して帝都まで進攻するのではと不安なのであろう。痛ましい事だ・・・」

 

モルトは百戦百勝の戦いは無いと言い責任は追求はしないと自分の責任を回避する。その責任を回避するモルトにガーゼルは悔しそうにうつ向く。

 

「しかし如何なさいます?敵は遠くから見た事もない魔法で遠くから襲ってきたのですぞ。奴らは更に丘を奪いそこに陣を築こうとしているのですぞ」

 

「それにロイス帝国の存在もあります。軍を従えている正体も分からない黒騎士と呼ばれる男が常に我が軍を破って進軍しているのは確かですよ。現在もノラトの付近にある砦や街、村を制圧していると言うではありませんか」

 

二人の年輩の議員が異世界の軍とロイス帝国軍について述べる。だがそこに鎧を着た男が立ち上がる。

 

「戦えば良いのだ!兵が足りぬなら属国から集めれば良い!軍勢を整えて再び異世界とロイス帝国に戦いを挑むのだ!」

 

男が言い終わると同時に周りから批難と戦えと言う大声がが殺到する。今にも殴り合いの喧嘩になりかけた所をモルトを手を上げて制する。

 

「事態を座視する事を余は望まん・・・他ならば戦うしかあるまい。周辺諸国に使節を派遣せよ。異世界とロイス帝国の賊徒を撃退する為に援軍を求めるとな」

 

そう言うとモルトは立ち上がる。

 

「我らはコドゥ・リノ・グワバン(連合諸王国軍)を糾合しアルヌスとノラトを奪い返すのだ!!! 」

 

「・・・陛下。アルヌスの丘とノラトは人馬の躯で埋まりましょうぞ」

 

ガーゼルは何かを察したのかモルトにそう告げるとモルトは不適に笑う。その頃、レオンはある知らせを聞く。それは連合諸王国軍と言う帝国の属国かあるいは周辺の諸国を援軍として呼ぶ帝国の中心とした連合軍。その連合諸王国軍の一つが此方に向かってきていると知らせがあった。

 

「やはりか。帝国がこのまま俺達を放置するとは考えにくかったからな」

 

「どうしますか?敵の数は軽く30万達していますよ」

 

「此方は遠征軍で5万がやっと・・・数では完全に負けてます」

 

レオンは二人の言葉に対策を考える。

 

「・・・ではこれならどうだ?」

 

連合諸王国軍がノラトへ進軍をしている頃、一つの旅のキャラバンが通る。

 

「あの連合諸王国軍の方々ですか?」

 

「あぁ、そうだが?」

 

「はい。私達は馬車の積み荷を運んでいる時に聞いた噂なのですがロイス帝国軍があなた方を夜襲をしようと企んでいるみたいなのです」

 

「なに?なるほど奴らは数では勝てないと悟って・・・御苦労。よくぞ知らせた」

 

「いえ滅相もありません。ではお気をつけて・・・」

 

そう言うとキャラバンは再び進んでいく。その後、連合諸王国軍は夜になると起きて敵が来るのを待った。

 

「ふん、浅はかな知恵で夜襲を掛けようとするとは」

 

「情報が漏れて奇襲がばれるなどロイス帝国は大した事はないな」

 

連合諸国王国軍を率いている王達はロイス帝国を侮っていた。奇襲では情報が漏れたらおしまいなのだ。それが簡単に漏れた事でロイス帝国は恐れるに足らずと言う結論になったのだ。

 

「しかし中々来ぬな・・・」

 

「奴らは我々を恐れてにげているのだろう」

 

以前として侮っているがロイス帝国軍は現れない。連合諸王国軍が待ち構え続けるが朝になってしまった。結局現れなかったロイス帝国に嘲笑って進軍を続けるが何度も夜が訪れる度に徹夜で警戒する為、軍の疲労が見られ始めた。

 

「敵は偽の情報に惑わされているか?」

 

「はい。見事にです」

 

「そろそろ次の策を仕掛けますか?」

 

「あぁ、奴らの望み通りに奇襲してやろう・・・」

 

再び夜となり連合諸国王国軍は警戒を始める。だが、警備はかなり雑になりまた来ないだろうと考えて居眠りを始める者まで現れる始末だった。兵の一人が居眠りをしていると何処からともなく怒号が聞こえた。

 

「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」

 

「て、敵だ。敵の奇襲だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「全員武器を取れ!!!」

 

連合諸王国軍は急いで武器を取り隊列を組む。そして、ロイス帝国軍が来るのを待つが現れない。

 

「来ないな・・・」

 

これを切っ掛けに時々、連合諸王国軍の陣地に怒号が響き渡り夜も眠れない日々になった。

 

「まずい・・・兵が疲労し始めている。このままでは脱走者が現れるぞ」

 

「だが敵は暗闇に紛れてあちらこちらと叫んでくる。見つけるのは困難だ」

 

王達は対策を考えようとするが良い案は出ずそのまま緊張感を持ったまま眠りにつく。そして、霧が深い朝を迎える。

 

「ふわぁぁぁ・・・昨日も来なかったな・・・・・・」

 

兵があくびをしながら歩いていると地響きを感じた。兵が何だと地響きのする方向を見ると馬に乗った騎士が現れた。

 

「敵だ!本当に敵襲だーーー!!!」

 

「な!?ぐわぁ!」

 

「ひッ!」

 

「助けてくれ!!!」

 

突然の奇襲に疲労困憊の連合諸王国軍勢に襲い掛かった騎士達の旗を見た兵がいた。その旗は黒い布に赤い竜の紋章が描かれておりその旗に見覚えのある兵は悟った。

 

「ろ、ロイス帝国軍・・・」

 

ロイス帝国軍の騎士による奇襲に絶望する兵はその後、騎士の剣によって命が絶たれる。レオンはルーレとガーウェンを側に置いて自ら先陣を切って本陣にいる王達に攻撃を仕掛ける。王達を守ろうとする兵を三人は息の合った攻勢で突破していく。

 

「邪魔よ!」

 

「雑魚は退け!」

 

「王共は何処だ?奴らの首を取らせろ」

 

人とは思えない武勇に恐れ兵達は逃亡を始める。

 

「待て!貴様ら戦わんか!!!」

 

「逃げたしたらどうなるか知っておるだろ!」

 

「いた・・・」

 

逃げ出した兵を呼び止めようと必死になる王達を見つけてレオンは馬を走らせる。レオンの行動に気づいた王達は剣を抜こうとしたが先にレオンの槍が振るわれる。次々と仕留められる王達を見て兵達は完全に崩壊。逃走を始めた。

 

「勝ちましたねレオン様」

 

「あぁ・・・」

 

ルーレの言葉にレオンは周りを見る。奇襲によって死んだ敵味方を見てレオンは虚しく思った。いくら先に戦いを仕掛けてきた者達でも故郷に帰る事を願っていた者の希望をへし折った罪悪感は消えなかった。

 

「(争うしか道はないのか・・・)」

 

「レオン様?」

 

「いや、何でもない」

 

レオンは馬を進めて当初の目的地イタリカを目指す事にした。だが、そこに偵察を帯びた友人との再開があるとは思わずに。



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イタリカ包囲戦~前編~

ロイス帝国軍は進軍を続ける。レオンの他に既に別の方面軍がやって来て戦いが始まっている。レオン率いるロイス帝国軍は最終目標のイタリカ近くまで到達していた。

 

「もうすぐイタリカです。ここを落とせば我らの優位に立て戦もしやすくなります」

 

「そうだな・・・」

 

ルーレの言葉にレオンは低い声で応える。そのレオンにルーレは疑問に思い心配する顔でレオンに話しかける。

 

「大丈夫ですか?まさか何処か具合でも・・・」

 

「大丈夫だ。お前は俺の事で心配しすぎだ」

 

「私を暗い道から救った主君を心配しない臣下なんていません。私でよければ話を聞きますからどうか・・・」

 

ルーレには敵わないとレオンは思い打ち明ける。帝国と戦争が始まってから多くの敵兵を殺した事を悔やんでいる事を帝国とロイス帝国の戦争に無関係な連合諸王国軍を完膚なきまでに潰した事を悔やみ悩んで事を打ち明ける。ルーレはそれを静かに聞いていた。

 

「確かに戦いでは多くの血が流れ罪を得ます。その罪は例え戦と言えど変わりません。ですが、それで救われる者もいます」

 

「救われる者?」

 

「奴隷にされた人々の解放とされかけた者を救う事です。先の戦いでヴォーリアバニー達を救えました。それだけではありません。あなたは奴隷として連れられていた私も救ってくれました。だからあなたはそれを誇りを持って下さい。例え辛くても私が支えますから・・・」

 

「ルーレ・・・すまないな心配させて。お前のおかげで少し気が晴れた。では、行こうイタリカへ」

 

レオンはイタリカへと赴く。そして、レオンはイタリカに到着してイタリカを包囲する。

 

「敵の動きは?」

 

「以前としてありません。しかし、衝突は避けられません・・・」

 

「そうか・・・一様だ降伏の使者を出せ」

 

「はい」

 

ルーレはレオンに命じられて降伏の使者を出す。レオンはいったい誰が守っているのかイタリカの城壁を見ているとそこに赤髪をした女性が現れた。レオンは兜越しから目を見開いて驚く。

 

「ピニャ・・・!?」

 

「ピニャとは・・・まさか」

 

「あいつと戦うのか・・・少し出てくる」  

 

「ちょっと!レオン様!」

 

馬に乗って走るレオンをルーレも馬に乗って追いかける。

 

 

~イタリカ ピニャside~

 

妾はアルヌスへの偵察の途中、イタリカにロイス帝国が進攻して来ていると聞いて帝国の要所たるイタリカを守る為に来た。だが、思いの外にイタリカは正規兵は少なく民兵が中心とする軍になりまともな戦力も無いままイタリカはロイス帝国軍によって包囲されてしまった。

 

「使者だと?」

 

「はい。姫様に目通りがしたいと。どうしますか?」

 

「・・・恐らく降伏の使者をだろう。このイタリカを奪われる訳にはいかないからな。会って追い返す」

 

妾はハミルトンにそう言うと城壁に昇り城壁の下を見るとロイス帝国独特の鎧兜を身につけた騎士の使者がいた。

 

「あなた様がこのイタリカを守る将ですか?」

 

「そうだ。帝国皇女ピニャ・コ・ラーダだ」

 

「あなた様にお伝えしたいのは我が国の軍門に下って貰いたい。そうするば無駄な血は流さないと約束いたします」

 

「悪いが断る。貴様らにこの地を渡すほどお人好しではない」

 

妾はそう言って城壁から立ち去ろうとした時、馬が走る音が聞こえ振り替える。そこには帝国で噂となっている黒騎士と5年前に別れた成長したルーレが立っていた。

 

~視点終了~

 

レオンはルーレを見てか驚いて硬直しているピニャを見て美しく成長した姿に少々驚いていたがすぐに気を取り直す。

 

「ピニャ殿。久しいな・・・」

 

「貴殿は誰だ?まさか・・・」

 

「そのまさかだピニャ殿」

 

レオンは兜を取り顔を晒す。ピニャはレオンの顔を見て相当驚いているのか完全に硬直してしまった。

 

「ピニャ殿・・・悪い事は言わない。今すぐに降伏してくれ。お前と戦うのは気が引けてしょうがないんだ」

 

「ピニャ様。お願いですから街の人達にも危害は加えません・・・だから」

 

「・・・いや、例えお前達でも降伏はしない。早く去れ」

 

ピニャはそう言うとイタリカへと戻る。レオンとルーレは失意のうちに本陣に戻りどのように攻めるか検討し始めた。

 

「何とか戦わずに落とす方法は無いのか?」

 

「無理です・・・ピニャ様の決心は相当硬いと思います。例えあなた様でもピニャ様は縦に首を振って降伏はしないと思います」

 

「・・・仕方がない。イタリカを武力で落とす。戦闘の準備をしろ」



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イタリカ包囲戦~中編~

翌朝、ロイス帝国軍は身構えてイタリカに向いていた。見ただけでも分かる大軍でイタリカを囲み補給も退路も全て絶った状態でいつでも攻めれるように準備していた。

 

「レオン様。ご命令をください。私はどの様な結果になろうと受け入れるつまりです」

 

「・・・全軍。掛かれ」

 

「角笛を鳴らせ!攻撃開始!」

 

ルーレが叫ぶと兵士が角笛を鳴らす。それを合図に兵士達は雄叫びを挙げる。攻撃が開始されカタパルトと呼ばれる投石械を使い城壁を攻撃し始め兵士と共に屋根付きの破城槌が城門を破壊しようと迫る。

 

「怯むな!矢を放て!」

 

ピニャは負けてなるものかと矢を放つように命じて民兵達は弓で矢を放つ。次々とロイス帝国側の兵士は矢を受けて倒れていく。ルーレは状況を打開する為に全線で指示を出す。

 

「可動防護壁を前に出せ!」

 

可動防護壁と呼ばれる大型の盾を出して矢を防ぐ。可動防護壁を盾にしつつ開けられている隙間から矢を放つ。次々とイタリカ側の兵を仕留めていくがイタリカ側の兵に煮えたぎった油をかけられる者が多く現れ怪我人や死亡者が続出し始める。ロイス帝国軍はイタリカ側の思わぬ攻勢に怯み始める。

 

「敵は怯んだ!押し返せ!」

 

「くそ!退却。退却よ!」

 

「退却だ!」

 

兵士の士気が下がったのを気にルーレとガーウェンはやむ終えず退却の命令を下して後方に下がる。レオンは大軍で攻めたのにも関わらず落とす所か一度引かされるとは思っていなかった。

 

「なるほどな。どうやらこの5年でそれなりに戦いの技術を身に付けてきたか・・・」

 

レオンは本陣でイタリカの戦いを見ていたがイタリカ側の兵士は民兵が殆どでろくに訓練を受けていない者ばかりだと睨んだ。

 

「恐らくは異世界での敗北が大きな痛手となってそんな事態になっているのだろうが俺は容赦はしないぞ・・・ピニャ」

 

戦いが始まって1日が経った。ロイス帝国側は攻撃を止めて包囲を保ちつつ布陣し続けていた。

 

「敵が動きを見せないだと?」

 

「はい。敵は布陣を保ってイタリカを包囲を続けていますが動きが無いのです」

 

「・・・恐らくは我々の兵糧が無くなるのを待っていると小官は思います」

 

「それは兵糧攻めを相手はしてきていると言うのか?」

 

兵糧攻め。相手の防衛する拠点を完全に退路と補給路を絶って囲んでの持久戦の基本的な戦術。メリットは安全に拠点を落せるがデメリットで敵の援軍の到達を許したり長期戦になるなどデメリットの方が多い。下手をしたら奇襲をされる事をあるので相当念入りに条件を揃えなければいけないのだ。

 

「ハミルトン。兵糧の方は?」

 

「はい。イタリカに備蓄されている兵糧はまだ充分にありますが・・・」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「民兵達の疲労は大きくとても持久戦には・・・」

 

ピニャはハミルトンの言葉を聞いてうつ向く。一度はロイス帝国側を引かせたが次は持久戦とくる。ピニャはこの状況ををどう対象するか考えるのだった。

 

「レオン様。何故イタリカを攻めないのですか?」

 

「一回退けられましたが我々はまだ負けてはいません」

 

「・・・分かっている。だが父上からある兵器の実験をしてほしいと頼まれてな。その兵器が届くのを待っているだけだ」

 

「兵器?」

 

レオンの兵器と言う言葉にガーウェンは疑問に思う。何故持ってくる必要があるのかと。殆どの兵器は簡単な物でその場で作る事ぐらいはできる。それを持ってくるのは相当な大掛かりな物だとガーウェンを推測する。包囲してから更に1日が過ぎるとその兵器が届いた。

 

「これがそうなのですか?」

 

「台に大きな鉄の筒を乗せているだけではありませんか」

 

二人は兵器を見て更に疑問に思い始める。見た目は台に大きな鉄の筒を乗せただけの物でその傍らに鉄の大玉と何かの黒い粉まで同封していた。

 

「この兵器は火薬を使うらしいな」

 

「火薬?」

 

「火薬は火を着けるとな・・・爆発する」

 

「爆発!」

 

ルーレは驚いて火薬から離れる。レオンはそれを見て兜越しで苦笑いをする。

 

「大丈夫だ。火薬は火さえ着けなければ安全だ。それより早く使って威力を見るぞ」

 

「わ、分かりました」

 

レオンは新兵器を一直線に並べると準備する。最初は兵達は戸惑っていたが何とか使用可能な状態にできた。ルーレはレオンの元に来ると使用可能と伝える。

 

「準備できました。何時でも撃てます」

 

「では・・・撃て」

 

「発射!」

 

ルーレの合図で次々と新兵器が大きな音と共に火が噴く。そして、飛ばされた玉は一直線に城壁に向かっていきそして再び大きな音を起こして直接では確認できない程の煙が立った。煙が晴れるとそこにはボロボロに半壊している城壁がそこにあった。

 

「とんでもない威力だな・・・」

 

「これ程の兵器・・・敵に渡ったら怖いですね・・・・・・」

 

「あぁ・・・」

 

三人は思った以上の威力に驚きを隠せなかった。その兵器の名は大砲。地球の時系列からすると相当前に作られた兵器だが現在でも改良された大砲を使用されている位に有能な兵器なのだ。

 

「装填を急げ」

 

「まだ撃つのですか・・・?」

 

「どっちにしろまた使う事になるだろうからな。俺達が拒んだとしても他が使うだろう・・・」

 

「・・・各自装填を急げ!」

 

大砲の弾が装填をされ始めた頃、一つのこの世界ではあり得ない物がやって来ていた。その物は鉄でできており下には車輪が着いている。そして緑や土色の色で何より馬を使っていなかった。その中には緑の服を着た男達とプラチナブロンドの少女と神官服(ゴスロリ衣装)を着た少女とエルフの娘が乗っている。

 

「隊長。何か武装した人が多いです。何でしょう・・・」

 

「これは・・・戦」

 

「あの旗はロイス帝国の物ね」

 

「ロイス帝国・・・?」

 

「もう一つの帝国よ。帝国が宣戦布告して今も戦争をしているのだけどまさかもうここまで攻め混んでいるなんて」

 

男達は再び前方を見ると発見されたのか馬に乗った数人の騎士と数十人の兵士が走ってくる。

 

「こっちへ来ます!」

 

「全員警戒体勢を取れ。戦闘になりそうなら逃げるぞ」

 



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イタリカ包囲戦~後編~

レオンは一つの問題が生じて考えされられた。それはイタリカの付近に怪しい馬車らしき物が現れ取り囲みながらこちらに運んで来たと言うのだ。

 

そして、今レオンの目の前に馬車らしき物に乗っていた代表者らしき緑の服の男とプラチナブロンドの少女とエムロイの神官服を着た少女と更にエルフの娘がいる

 

「で?こんな戦場に何をしに来た。理由によっては生かしては帰せなくなる・・・」

 

「私達はイタリカに竜の鱗を売りに来た」

 

「竜の鱗?何故、希少な竜の鱗を売りに」

 

彼らが言うにはかの炎竜の襲撃で異世界の軍、自衛隊に匿われる形で避難しており流石に何時までも頼りぱっなしはできないと言う事でプラチナブロンドの少女レレイの賢者カトーの知り合いの商人の元を訪れる筈だったのだと言う。

 

「そうか・・・だが、だからと言ってイタリカへ向かわせない。仮に許してもイタリカ側は敵だと認識するだろう」

 

「そ、そうですか・・・」

 

自衛隊の男伊丹がそう言うとガックリと頭を下げる。

 

「以上だ。話す事は無い・・・帰れ」

 

「ちょっとぉ。このまま売らずに帰れてどう言う事」

 

「あなたは神官のロゥリィ殿でしたね。噂は兼がね聞いてはいますが例えあなた様でも通しません。売るなら他をお辺りを・・・」

 

レオンの礼儀を尽くした態度に流石のロゥリィも押す事はできなかった。だがその場に突然伝令が来る。

 

「伝令!盗賊の大群衆が迫っております!」

 

「なに?盗賊の数は?」

 

「10万の規模です・・・」

 

10万と聞いてレオンは何処から集まったのか考える。ただの盗賊に10万となるのは流石に不可能なのだ。だがレオンは一つ思い当たる事があった。

 

「連合諸王国軍・・・」

 

「それはまさか・・・」

 

「奴らは俺達が蹴散らした連合諸王国軍の残党を集めてそれだけの数になったんだろう」

 

「どうしますか?」

 

「・・・」

 

レオンはどうするべきか考え始めると伊丹が手を挙げる。

 

「何だ?」

 

「その件おれたちにも手伝わしてくれませんか?」

 

「ほぉ・・・10万の盗賊を共に相手をすると言うのか。勝機は殆ど無いぞ」

 

「自分が増援を呼びます。それまで持ちこたえてくれれば・・・」

 

レオンは伊丹の提案について考える。10万の盗賊を相手にこの伊丹と言う男は勝つつもりでいる。ロイス帝国軍はイタリカの死傷者を除くと3万ちょっと。アルヌスからイタリカまで何日か掛かると考えて持ちこたえるとなると厳しい戦いになると予想した。だがレオンは使えるものは全て使うしかないと考え伊丹に視線を向ける。

 

「・・・分かった。お前を信じて持ちこたえよう。だが負ける事は許さん」

 

「はい」



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自衛隊の実力

レオンはイタリカの包囲を一時的に解いて戦力を盗賊に集中する。盗賊が来れば戦い所かイタリカの民に危害が加えられる可能性もある事からイタリカから離れた場所で野戦をする事を決めた。イタリカ側には一時停戦の使者を出して背後を固めてだ。

 

「ルーレ。敵は何処にいる?」

 

「ここからかなり離れた場所で移動中ですがもう間もなく来ます」

 

「そうか・・・まさか戦の最中に盗賊退治をする事になるとはな」 

 

「しかし、ここで潰さないと面倒な事になるのは明白です」

 

「そうだな」

 

レオン達が布陣して盗賊達を待っているとかなりの数の盗賊が現れた。どれも装備はバラバラだが元正規兵と思われる盗賊は分かる。レオンは槍を持って馬に乗ると兜を被る。

 

「では、行くぞ」

 

レオンは馬を走らせると盗賊に向かっていく。ルーレも手綱を手に命令を出す。

 

「レオン様に続け!!!」

 

「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」

 

レオンに続いてロイス帝国軍も攻勢に出始めて盗賊に向かっていく。盗賊もロイス帝国軍に大盾を構えつつ迫ってくる。

 

「敵は大盾を構えている騎馬の機動力を活かしてルーレは右翼、ガーウェンは左翼を攻めろ!」

 

「「了解!」」

 

二人はレオンの指示通り軍を右翼と左翼へ攻撃を始める。盗賊は突然三つに別れたロイス帝国軍に混乱をする。数が少ない状態で軍を割くのは愚の骨頂でレオンはそれを平気でやってのけたのだ。当然、盗賊は真正面からぶつかると予想を大きく外した盗賊は慌てて右翼と左翼を固めようとするが遅くルーレとガーウェンの挟撃にあった。

 

「くそ、体勢を立て直せ!我らの方が数は上だ!」

 

指揮官と思われる盗賊の男が叫んだ瞬間、槍が盗賊の体を貫く。その槍はレオンの物で盗賊が突き刺さると同時に投げ飛ばす。レオンは槍を振り回して盗賊を次々と仕留め続ける。

 

「レオン様は本当にすごいですね。私も頑張らなきゃ」

 

「流石は自分の見込んだ主君。負けてはいられない」

 

レオンの奮戦振りにルーレとガーウェンも武器を振るう。ルーレは剣で、ガーウェンは両手剣で盗賊を仕留めていくが数が多い盗賊に徐々に苦戦を強いられ始める。

 

「潮時か・・・引くぞ」

 

レオンは部隊を率いて退却し始める。ルーレとガーウェンはそれを見るとすぐさま退却命令を下す。ロイス帝国軍は盗賊を倒しつつ退却し始めそれを盗賊は追いかけ始める。

 

「追え!我々を苔にした奴らを殺せ!」

 

「しつこい奴らだ」

 

レオンがそう言った瞬間、突然大きな爆発が起こる。それは盗賊に向けられた物で空に大きな聞き慣れない音が聞こえる。

 

「何だこれは・・・」

 

空には無数の空を飛ぶ何かがあった。回転して飛ぶそれは次々と盗賊を仕留めあっという間に10万の規模はあった盗賊はほぼ全滅した。

 

「これが異世界の軍勢か・・・」

 

レオンは自衛隊の実力を間近で見て帝国の様に敵対していなくて良かったと心底思った。



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交渉

自衛隊の実力を見たレオンは自衛隊と交渉する事になる。レオンは帝国と無関係なロイス帝国にあの強大な力を向けられまいと必死にどう交渉するか考える。

 

「(あんな力が向いたら帝国諸ともロイス帝国は滅びる。だとしたら何が何でも交渉を成功させなければ)」

 

交渉はイタリカ内で行われる事になりレオンはルーレとガーウェンと数人の護衛の騎士を引き連れてイタリカへと入る。中は痩せてボロボロな姿をした民兵と民がおりひどい状況だった。

 

「ひどい有り様です・・・まさかここまで追い詰められていたなんて・・・・・・」

 

「あと少し押してたら勝てたと言うことか?」

 

「今はそんな話はするな。今はあの強大な力を持った自衛隊と交渉し穏便に納めるんだ」

 

レオンはイタリカの奥へと進むとイタリカの領主のミュイとピニャがいるフォマル邸へ辿り着き中へと入る。そして、広間まで通されるとそこに伊丹とピニャとハミルトンとミュイと思しき少女がいた。

 

「遅れてすまない」

 

「いや、構わない・・・こうして会うのは久し振りだなレオン」

 

「あぁ、元気で何よりだ。お前を殺さずにすんだ事は自衛隊に感謝しなければな・・・」

 

レオンの言葉を聞いてピニャはうつ向く。ピニャに遠目とは言え大群衆の盗賊をあっという間に粉砕した自衛隊の力を見たのだろう。そうでなければイタリカで交渉はしない。レオンは兜を脱いで抱えると交渉を開始する。

 

「さっそくだがイタリカ領有の件でだが・・・お前達自衛隊はどう考えている?」

 

「ど、どう考えるとは・・・?」

 

「誤魔化すな。あれだけの力を見せておいて弱っているイタリカをほっていく国はいない。遠回しで言わないで言うとお前達はこのイタリカが欲しいのかと聞いている?」

 

レオンのイタリカが欲しいのかと言う問いにピニャの生唾を飲む音が聞こえた気がした。レオンも実際に冷や汗をかいており自衛隊がイタリカを望むなら素早く引かないといけないと考えていた。

 

「いえ、私達自衛隊はイタリカを望みません。私達は求めるのは」

 

伊丹が提示した物はイタリカにおける商売に掛かる税金の免除と捕虜数人の引き取りと無条件でのイタリカの通行だった。かなりあまい条件にレオンは心底驚く。あれだけの物を見せてあまい条件で終わらせる自衛隊とは何なのかレオンは分からなくなる。後ろに控えているルーレとガーウェンも恐らく同じ考えをしているとレオンは思った。

 

「それだけか?他に何か無いのか?」

 

「あ。後、もう一つだけ。あなた方ロイス帝国軍はイタリカから撤退して頂きたいです」

 

「イタリカから撤退だと?・・・それは無理だな。ここは帝国を滅ぼす為に必要な要所だ。帝国の食糧流通を防ぎ我々の補給をする為のな」

 

「しかし、それだと最初に提示した条件が・・・」

 

「それなら我々が占領した後でもそれと同じ条件で行う」

 

レオンはイタリカから自衛隊が動かないと分かるとイタリカから退却をできる限り拒もうと考えた。イタリカがロイス帝国か自衛隊が落とせばどの道、帝国は食糧難になりどっちに行っても得するが占領もせずに帰るのは食糧難も無く帝国に反撃の機会を与えると同じなのだ。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

ピニャは慌ててレオンを止めに入るがレオンは止まるつもりはなかった。

 

「いや待てない。伊丹殿。どうか決断を・・・」

 

「・・・やはりできません。イタリカからどうか引いてください」

 

拒まれた条件にレオンは落胆する。これ以上は自衛隊と戦闘をしなければいけなくなるかもしれないのでレオンは提示された条件で了承して暫く滞在してから撤退を約束した。

 

「では、我々は野営地に戻ります・・・」

 

レオンはそう言ってルーレとガーウェンを引き連れて広間を後にする。

 

「レオン様。本当に撤退するのですか?」

 

「あぁ、自衛隊を敵に回す訳にはいかないからな・・・そらに成果は何も戦いだけが全てではない」

 

「あの新兵器の事ですね」

 

「そうだ。それに戦争は終わった訳ではない。イタリカから手を引くだけで帝国を滅ぼせば自然と手に入るかもしれないからな」

 

「レオン」

レオンはそう言って歩いていると後ろから声を掛けられたので振り替える。そこにはピニャがいて真剣な目でレオンを見ている。

 

「ピニャ殿。どうかしたか?」

 

「話がある・・・来てくれるか?」

 

ピニャから話があると聞いてレオンはルーレとガーウェンの二人を見る。二人は構わないと言いたげな顔をしておりレオンはそれを見るピニャに向き直る。

 

「分かった。何処で話す?」

 

「私に宛がわれている部屋だ」

 

レオンは二人を先に野営地に戻る様に言うとピニャに着いて行く。



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密談

ピニャに連れられたレオンは部屋に入りピニャがソファに座るのを待つ。ピニャがソファに座ったのを見計らって自分も座ると本題を出す。

 

「話とは何だ?」

 

「お前はあの自衛隊の力を見たか?」

 

「・・・あぁ、見た。俺は自衛隊を敵に回っていなくて良かったと心底思ったよ。イタリカは落とせなかったがな」

 

レオンは自衛隊の力を見た事を言うとピニャはうつ向く。無理はなかった。自衛隊の力は想像の遥か先に行き今の自分達では絶対に勝てないのだ。

 

「ピニャ。俺は今回はお前を見逃す・・・が、一度だけだ。次の戦場では容赦はしない」

 

「待ってくれ!別に妾達に味方に着いてくれとは言わん。ただ・・・私はこのまま帝国が日本との戦争を止めるか止めるべきか分からなくなってしまったのだ・・・」

 

「・・・それはお前が決めろ。お前が正しいと思う道ならそれを行けば良いし行かなくても良い。その道はお前が決めて進むんだから俺がどうこう言えはしない」

 

レオンはピニャに諭す様に話すと立ち上がって窓から外を見る。自衛隊の乗り物が空を飛んで去ろうとしておりそれをイタリカの住民が手を振って見送る。その光景を見て自衛隊がイタリカを明け渡す様に迫ればイタリカは手に入ったと考える。

 

「(自衛隊、伊丹・・・何故、あの時あの男はイタリカ開城を迫らずにあの安価な条件のみに限ったのだ)」

 

レオンは未だに自衛隊の条件が信じられないと思っていると後ろから抱きつかれた。レオンは見てみるとそこにはピニャが涙を流しながらレオンの背中に顔を埋める。

 

「レオン・・・妾を一人にしないでくれ・・・・頼む・・・・・・」

 

「ピニャ・・・」

 

レオンは抱き締め返したいが堪える。流石に敵国の皇女であるピニャと関係的になるのは流石にまずいとレオンはそっとピニャの腕を外す。それに男勝りなピニャの思考を考えると絶対に恋愛的な物ではなく自衛隊に怯えているだけだと考える。

 

「そろそろ戻る。ではまた・・・」

 

「レオン!」

 

レオンはピニャの止めようとする声を聞かずに廊下に出る。レオンは野営地に戻る為に足を進める。レオンはピニャに抱きつかれた感触を思い出して頬を少し赤く染める。

 

「(まったく・・・誤解を生むような事をして・・・・・・)」

 

レオンは悪態をつきながら野営地を目指してフォマル邸を出て街を進む。戦いで疲れた住民が地面に腰掛けたりして休んでいる。その住民から警戒、憎悪、奇異の視線を感じるが気にもせずに進む。

 

「これが戦、か・・・血に塗られた争いにいったい何が生まれるのだろうか・・・・・・」

 

レオンは街を出て野営地に戻るのであった。



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