役人転生IFルート〜先生になった私はどうしたらいいのだろうか〜 (トマホーク)
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出会いは唐突に

※本作品をご覧になる前に※

本作品はガールズ&パンツァーの三次創作作品となっています。

ガールズ&パンツァーの二次創作作品である役人転生の設定を流用したIFルートとなっています。

時系列を完全に無視しています。

登場するキャラクターがヤンデレ化しています。

主人公にリボンの武者の知識はありません。

以上の事を予めご了承下さい。


あの試合が終わってから早1ヶ月。本当に色々とありました。

 

……聖グロリアーナ女学院の戦車道OGの方々が同窓会と称して各地で戦車道の試合を開催し、チャーチル・クロコダイルで“たまたま偶然”牟田元大臣や文科省の上層部の方達の家々やら別荘やらを焼いてしまったり。

 

懇意にしていた記者がどこから入手したのか、大洗廃校の裏事情を記事にして暴露してくれたお陰で私が聖人の如く持ち上げられてしまっていたり。

 

島田流への移籍を賭けていた事についてかほさんのお説教を受けたり。

 

みほちゃん達の勧誘競争が身の危険(意味深)を感じる程激化したり。

 

口には出せないような出来事があったりと試合後のゴタゴタは本当に大変な事ばかりでした。

 

……まぁ、そんな事等があり少々洒落にならない状況になってしまったため今は雲隠れしてほとぼりが冷めるまで世間やみほちゃん達の前から姿を消しているんですけど。

 

で、雲隠れ中の今は何をしているかと言いますと。

 

楯無高校の学園長に頼んで臨時教師として雇って頂き一教師として働いております。

 

いや〜少々テレビで顔が出回ってしまったので私だとバレてしまわないか赴任当初は心配でしたが、七三分けの分け方を逆にしてメガネを変えたら結構バレないもんですね。

 

まぁ、知り合いに会ったりしたら流石にバレるでしょうけど。

 

とにかく。今は楯無高校の個人用教員室を新天地とし平和に――

 

「頼もう!!」

 

……平和、終わったみたいです。

 

「えーと……鶴姫しずか君に松風鈴君でしたか。君達の話を纏めるとタンカスロン(強襲戦車競技)に出たいという事で宜しいですか?」

 

「然り」

 

それはまた……なんとも……ねぇ?

 

「1つお聞きしたいんですが……戦車道ではいけないんですか?」

 

「否、この学校には戦車道部はおろか戦車の1輌もありませぬ」

 

確かに。楯無高校の戦車道部は10年前に廃部にされていますからねぇ。

 

しかし、何があるか分からないと思って私が大洗と同じ様に何輌か戦車を隠してありますから、部を立ち上げて人数さえ確保すれば始められると思いますよ。

 

まぁ、隠した車輌を使うよりウチにある車輌を使えばいい話なんですけどね。

 

「戦車でしたら私が手配――」

 

「それに私が欲するのはお遊戯(戦車道)では無く、本物の戦車戦(タンカスロン)故」

 

「ふむ。戦車道はお遊戯……ですか」

 

中々に言って――いやいや、面白い子ですね。

 

「っ!!」

 

「ヒッ!!」

 

「うん?どうかしました?」

 

あ……もしかしてやってしまいましたかね?

 

「いえ、何も(この御仁は……一体)」

 

「な、何でも無いです……(先生、一瞬だけ凄い恐い顔に)」

 

いけませんね、昔からの悪い癖です。戦車道の事となるとどうも熱くなってしまい(元)師範代の顔が出てしまいますから自重しないと。

 

「して……さっきもお話し致しましたが、本来タンカスロンは野試合で戦車道の公式試合とは違って誰でも自由に参加が出来たらしいのですが……どこぞの教育熱心な殿方がタンカスロンを管理運営する組織を立ち上げてしまったために、高校生の場合は顧問もしくはそれに準ずる監督官を用意せねば試合に出れなくなってしまっているのです」

 

……目の前にそのどこぞの教育熱心な殿方が居ると教えたら、この子はどんな顔をするんでしょうかね?

 

というか、組織を立ち上げしまったと苦々しい顔でしずか君はおっしゃっていますが……タンカスロンをあのまま放置しておける訳が無いじゃないですか。

 

どんなスポーツであれ最低限のルールと管理者がいなければ最悪の事態を予防する事も対応する事も出来ないのですから。

 

「それで私に顧問になって欲しいと?」

 

「然り。まずは学園長に相談したのですが、貴殿が適任だと言われたためこうしてお願いしに馳せ参じた次第です」

 

学園長……私に押し付けましたね?

 

「ふぅ、分かりました。顧問の件はお受けしましょう」

 

ここで受けなかったらこの子達は隠れてこっそりとやりかねませんからね。

 

「おぉ、感謝致します」

 

「ありがとうございます」

 

ま、出来る範囲で生徒のために働くのが教師の務め。

 

少々暇を持て余していたことですし、この子達の事をしっかりと見守ってあげますか。



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多芸

リボンの武者の第6巻が本日発売との事でしたので便乗?して更新です。(´∀`)


さて。しずか君に大至急タンカスロンに参加するための必要書類を揃えて欲しいとお願いされたので急ぎ揃えて持って来ましたが、ここですかね?しずか君のお宅は。

 

「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」

 

「少々待たれよ――お待たせ致し……あぁ、先生でしたか。無理を言ったばかりか休日にご足労痛み入ります」

 

「いえいえ、構いませんよ。はいこれ。頼まれていたものです」

 

「おぉ、感謝致します。これでようやく……」

 

ハハハッ。目を爛々と輝かせてもうウキウキですね、しずか君は。タンカスロンがやりたくてやりたくて仕方ないみたいです。

 

「姫ー?お客さんが来たんだったらちょっと休憩してていいからねー……って、先生だったんですか。こんにちは」

 

「はい、こんにちは。鈴君もしずか君のお宅にいらしていたんですね。うん?」

 

何か油まみれになっていますけど鈴君。大丈夫なんでしょうか?

 

「あ、これですか?ちょうど今タンカスロンで使う戦車の整備をしていた所なんです。そうだ、先生も戦車見てみます?」

 

「はい。是非とも」

 

ほぅ……事前に戦車はあるとお聞きしていましたが九七式装甲車――テケ車ですか。

 

2人しか乗員が居ないしずか君と鈴君には色々な意味でピッタリの戦車ですね。

 

しかし、長い間放置されていたのか所々くたびれています。

 

まぁ、無理をしなければこのままでも暫くは使えますかね。それにいざとなったらパーツを取り替えれば問題は無いでしょう。

 

「……姫、これどうするの?」

 

「ううむ……困った」

 

「どうかしましたか?」

 

テケ車のエンジンルームに頭を突っ込んでエンジンの状態を確かめていたら、何やら後ろでしずか君達が神妙な顔して唸ってます。

 

「えっと、それが……この書類のここなんですけど。タンカスロンに参加する車輌は戦車道連盟の認定試験を合格している一級整備士の方に車輌を確認してもらって使用の許可をもらわないと試合に出てはいけないって事になってるんですけど……」

 

「少々調べた所、その必要経費が高い故。どうするか頭を悩ませていたのです」

 

「……ふむ」

 

あぁ、その件でしたか。

 

「はぁ……学校に部の設立申請はしたけど部員数が少ないっていう理由で同好会扱いにしかならなかったから部費なんて出ないし」

 

「これでは資金集めから始めねばなるまいか」

 

「それでしたら私が一級整備士の資格を持っていますから大丈夫ですよ?」

 

「なんと!?」

 

「嘘!?」

 

そんなにビックリしなくても。

 

「せ、先生って以前は戦車道の整備士だったんですか?」

 

「いえ、違いますよ。元々趣味の一環で2級整備士の資格を取っていましてね。その後、西住流の門下で戦車道をやる事になった時に1級も取ったんです」

 

「2級でも趣味の一環で取れるような資格じゃないと思うんですけど……」

 

「お待ちくだされ!!資格云々よりも先生が戦車道の経験者!?しかも……しかもあの西住流の門下というのは誠ですか!!」

 

西住流と聞いた途端にしずか君の目の色が変わったんですが……。

 

しずか君は西住流に憧れでもあるんでしょうか?

 

「えぇ、まぁ」

 

「なんという僥倖。先生!!私に砲術の稽古を付けてはもらえませぬか!!」

 

「わ、私も整備の事とか戦車の操縦を教えて下さい!!」

 

「はい、構いませんよ。というか、顧問なんですから当然です」

 

「おぉ、これで我々も色々と技を磨く事が出来るというもの」

 

「やったね、姫」

 

うーん。本当はちょっと離れた場所から見守るだけの名前だけ顧問のつもりでしたが……お願いされた以上はしっかり教育を施してあげねばいけませんね。しっかりと。




……姫の口調が難し過ぎる(滝汗)


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歯車は巡りて

しずか君の家にあったテケ車の整備と点検が終わり、試運転と試射をするというので北富士戦車道演習場まで一緒にやって来ましたが。

 

思った以上にたくさんの学生が射撃や走行の練習に励んでいます。

 

いや〜活気があるのは良いことですね。

 

「あの……先生?」

 

「何ですか?鈴君?」

 

「何でサングラスとマスクをしてるんですか?」

 

「……気にしないで下さい」

 

「は、はぁ……」

 

ここでみほちゃん達と会う事はそうそう無いとは思いますが、万が一という事がありますから変装はしておかないといけません。

 

というか、今更ながらに少し後悔が……。

 

みほちゃん達から逃げて――ゲフンゲフン。距離を置いている立場なのに戦車道に近いタンカスロンの顧問になんかなったら自分から遭遇しに行っているようなものなんですよね。

 

後悔先に立たずとはよく言ったものです。

 

「では私は受付を済ませて来ますから、君達は先に場所を確保しておいて下さい」

 

「承知」

 

「分かりました」

 

さてと、受付受付っと。

 

「――改めて御名を頂戴したい!!身共は楯無高校の鶴姫しずかと申す!!」

 

「サンダース大学付属高校のアリサよ。なにその口調。中二病?」

 

……ちょっと目を離した隙に何でサンダース大学付属高校のアリサ君と試合をする事になっているんですか!?

 

というか、やっぱりサングラスとマスクをしてきて良かったです。

 

もししていなければアリサ君経由でケイ君に居場所がバレる所でした。

 

「くくっ……お主も似た者同士だろう?」

 

「一緒にしないでよ。私は彼氏持ちのリア充よ!!」

 

あ、アリサ君が嘘を付いてます……。

 

「では、各々方また後ほど!!」

 

あらら……これはまた厄介な事になってきましたね。

 

しかし、しずか君達は私を放っといてどこへ行くつもりなんでしょうか。

 

完全に置いてきぼりです。

 

「全く……ふざけた奴だったわね。うん?失礼ですけど貴方さっきの子達の保護者か何かですか?」

 

ギクリ。しずか君達の後を追おうとしたらアリサ君に捕まってしまいました。

 

「え、えぇ、まぁ……一応顧問です」

 

「だったら、ちゃんと面倒を見ておいてもらいたいんですけど。あんな素人に好き勝手やられてこっちはいい迷惑なんです」

 

「も、申し訳ありません」

 

好き勝手って……しずか君は何をやらかしたんでしょうかね?

 

「今度からはしっかり――……ちょっと待って。貴方、私とどこかで会った事があります?」

 

「い、いえ、初対面ですよ?あ、急ぎますので私はこれで。では」

 

「あ、ちょっと!!……あの雰囲気……絶対にどこかで会ってるような気がするんだけど……誰だったのかしら?」

 

危ない危ない。

 

もう少しでアリサ君に私の正体を勘づかれる所でした。

 

やはり既知の人物に会うのは危険ですね。しかし、試合をやる際にはまた会う事になるでしょうから何か対策を取らないと。

 

でも、サングラスとマスク以上の変装となると不審者率が大変な事になってしまうんですよね。

 

……まぁ、極力人前に出ないようにして対処しますか。



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調練

話が進まない(;´д`)


北富士戦車道演習場で急遽決まったアリサ君との試合が目前に迫り、またしずか君と鈴君に教鞭を執るようお願いをされていた事もあって楯無高校の演習場で砲術及び機動訓練の、そしてタンカスロンに参加するために必要な精神力を鍛える特訓の指南をしていたのですが。

 

「先生、これはやり過ぎなんじゃないですか?」

 

「……そうですかね?」

 

久し振りに戦車の指導をするという事で少しばかり張り切り過ぎましたかね?

 

自分ではまだまだ手加減した方だと思うんですけども……。

 

しかし、訓練の様子を見ていた第三者――しずか君と鈴君のクラスメイトである遠藤はるか君にやり過ぎではないのかと言われてしまった以上は私が熱を入れ過ぎてしまっていた部分があるのでしょう。

 

「さ、流石は西住流……これ程とは……無念」

 

「……うぅ、気持ぢ悪い〜」

 

現に2人ともグロッキー状態でダウンしてしまっている訳ですし。特に鈴君。

 

まぁ、通常の砲術訓練と機動訓練でしずか君と鈴君のチームワークを確認してから、準備体操として私が操縦するStrv.103――通称Sタンクとの模擬戦を3時間程やった所まではまだ良かったと思うのですが……。

 

あれは――通常は戦車の内側に施されているカーボンを戦車の外側にも張り付けて戦車が傷付かないようにしてから――2時間ぶっ続けで多方向から機銃やら砲やらの各種弾丸を浴びせ続けたのは素人には少々酷でしたか。

 

しかし、これ(被弾馴れ)をやっておかないと試合中に被弾してパニック状態になったりした場合にアニメでのウサギさんチームのように車外へ出てしまうという一番危険な状況を引き起こしかねませんからねぇ。

 

ま、何にせよ初日だからと極々軽めのメニューを組んでおいて良かったです。

 

この分では最初から厳しめのメニューをしていたら2人とも潰れてしまっていたかも知れません。

 

「では、お2人も限界のようですし今日はこれぐらいにしておきましょうか」

 

「ま、まだまだ……やれ……うっぷ……」

 

「……あぅ……もう立てないよ、姫」

 

あらら、これは駄目ですね。練習がかなり堪えた様です。

 

夜間訓練と明日の早朝訓練は無しにしておいて本当に良かったです。

 

「はるか君。すみませんが2人を介抱して上げてもらえますか?私は戦車の整備や演習場の片付けをしてきますから」

 

「分かりました。ほら、鈴。肩を貸すから立って。鶴姫さんも」

 

「……ありがとう」

 

「か、かたじけない」

 

うーん。本当なら明日から本格的な練習内容にするつもりだったのですが……まぁ、もう少しゆっくりと様子を見ながら段々とギアを上げていきましょうかね。



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かつての教え子

※オリキャラが登場します。


さてはて。あっという間にしずか君がアリサ君と試合をする日になってしまいました。

 

本音を言えばもう少し練習を積んでから試合に挑んで欲しかったのですが。

 

まぁ、こればっかりは言っても仕方ありませんね。

 

とりあえず一定の技量が身に付いただけでも良しとしましょう。

 

……おや?B-29に牽引されたグライダーに乗って空からとはまたド派手な登場の仕方でアリサ君達はやって来ましたね。

 

サンダースらしいと言えばサンダースらしい登場の仕方ですけど。

 

「これでよし。感謝致します、先生。甲冑を着るにはどうしても人の手を借りねばなりません故」

 

「構いませんよ」

 

それにしても用意があるからと言って陣幕を張ったかと思えば、いきなり甲冑を着込み始めるとは……実に個性的な子ですね。しずか君は。

 

しかも、弓矢まで持ち出して。

 

……弓矢は絶対にアリサ君から文句を言われそうな気がしますけど。

 

「失礼します。対戦相手の方々が揃いましたのでそろそろ出てきて頂けますか?」

 

ほぅ。今日の審判兼監視員を務めるのは榛名君ですか。

 

いやはや久しぶりにお会いました。

 

しかし、すっかり監視員が板に付いてますね。私が出会った時は典型的な不良少女だったのですが。

 

今はまさしく出来るキャリアウーマンと言った感じです。

 

「これは失礼。すぐに参ります」

 

「……ちょっと待って下さい。それは何です?」

 

「戦には必須のモノ他」

 

「……こちらでは判断致しかねますので対戦相手の方に使用の判断を仰いで下さい」

 

「分かり申した」

 

まぁ、弓矢についてはそうなりますよね。

 

私が作ったのは管理運営の組織だけで実際の試合ルールは一部(安全面)を除いて以前のまま――何でもありなんですから。

 

今のように相手の許諾を取るように指導するのが精々といった所でしょう。

 

「――姫!!しずか姫出てきて!!」

 

「応ッ!!では行って参ります」

 

「えぇ、頑張ってきて下さいね」

 

さてと。しずか君が出陣した事ですし私はこのまま陣幕の中から試合を見させて頂きましょうか。

 

さっき陣幕の向こうからケイ君の声が聞こえていたので外に出るのは危険ですしね。

 

「全く最近の子は……それで先生?今度は何をなさるおつもりなんですか?」

 

「え、えっと……どなたかと勘違いされていませんか?」

 

あ、あれぇ?サングラスとマスクをして更にロン毛のカツラまでしてきたのに一発で正体を見破られてしまっているような。

 

「その程度の変装で私の目を誤魔化せると?」

 

「ひ、人違い――」

 

「余分なモノを無理やり剥ぎ取っても構わないんですよ?」

 

「すみません。許して下さい」

 

流石元ヤン。眼光が怖いです。

 

「全く。突然姿を消したと思ったら楯無高校で先生をやっているなんて。みんな心配したんですよ?」

 

「いや、まぁ……色々とありまして」

 

「存じています。試合後の痴話騒動は私もテレビで見ていましたから」

 

「……」

 

痴話騒動って……いや、確かに端から見たらそうなのかも知れませんが。

 

しかし、あの一件がテレビに流れたがために世間から身を隠さねばならなくなったんですがね。

 

まぁ、記者の方が大洗廃校の真実とかいう記事を書いた事も影響していますが。

 

「しかし、だからと言っていきなり雲隠れするのはやり過ぎです。あ、まさかまた何かするつもりなんですか?」

 

「いや、そんなに毎回毎回何かをするつもりは無いです」

 

「そうですか。……だったら私にぐらい居場所を教えてくれてもいいじゃないですか」

 

「え?何か言いましたか?」

 

「……そういう所が変わって無いのがムカつきます」

 

「……?」

 

何か榛名君が怒っているんですけど……。

 

「まぁ、いいです。こうして会えた事ですし。あ、そうだ。どうせならこのまま2人で試合を見ませんか?」

 

「それは構いませんけど……審判と監視員の務めを放棄するのは感心しませんよ」

 

「ご心配なく。今回私は遠方監視の副審判ですからここに居ても問題はありません。だから良いですよね?」

 

「……それならまぁ」

 

「では決まりです」

 

……さっきまで怒っていたと思ったら今度はウキウキしているんですけど、榛名君。

 

一体どういう事なんでしょうね?

 

「あ、それはそうと私が楯無高校で教師をしているというのはくれぐれも内密に……」

 

「分かっています。私だって恩人を売ろうとは思いませんから」

 

「助かります」

 

ありがたい事です。

 

「……誰が教えるもんですか」

 

凄い小さな声で何かをボソッと呟いた榛名君の顔が怖いんですけど。

 

本当に黙っていてくれるんですよね?……不安です。




お知らせ。

次次回ぐらいに修羅場予定(愉悦)
(´∀`)


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勝敗

不定期更新(連続更新をしないとは言ってない)




あぁ〜あと少し、あと少しだったんですが……残念です。

 

しずか君のムカデさんチームがアリサ君のフライングタンカースに敗北を喫しました。

 

3対1のフラッグ戦でアリサ君率いるM22ローカスト3輌と戦ったしずか君は2輌を立て続けに撃破する事に成功したのですが、2輌目のローカストを撃破する際に体当たりの様な形で右の履帯をローカストの車体にぶつけてしまった事や無茶な機動を繰り返した事が仇となり、3輌目のローカストに乗るアリサ君に向かって突撃を開始した所で履帯と起動輪が外れて行動不能になり敗北してしまいました。

 

……まぁ、初陣にしては上出来ですかね。元々がズブの素人であった事や練習量の事を考えれば。

 

これから本格的なメニューをこなして行けばもっといい所まで行くでしょう。

 

しかし、本格的なメニューと言っても昔のような鍛え方は出来ませんからね。

 

時間が必要です。

 

「……随分と嬉しそうですね、先生」

 

おや?ついつい顔がにやけてしまっていたようです。

 

「えぇ、まぁ。教え子の晴れ舞台が見れましたし。それにあの子達のやりきった満足気な顔も」

 

「そうですか。(そういう所も昔から変わっていませんね)……では試合の決着もつきましたし私はこれで」

 

「はい、ではまた」

 

「えぇ、また……あぁ、そうだ。後で仕事用のでは無くプライベート用の連絡先を送っておいて下さいね?」

 

「アッハイ」

 

……さてと。最後にとってもいい(怖い)笑みを見せてくれた榛名君も戻って行きましたし、帰りの準備でもしますかね。

 

「ナイスファイト!!中々やるじゃない貴女達」

 

「賛辞の言葉、感謝致す」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

おや?しずか君や鈴君、ケイ君が陣幕の向こうで喋っていますね。

 

うんうん。試合後の交流は良いことです。

 

「そう言えば試合を見ていて1つ気になったんだけど。貴女達、誰から戦車の事を教わったの?」

 

「うん?師は学校の先生であるが……」

 

「学校の先生?自衛隊とか戦車道連盟とかにお願いして来てもらった人じゃなく?」

 

「はい。最近転任してきた先生が私達の顧問とコーチを兼任してくれているんです」

 

「へ〜最近……この時期に転任ね……どんな人なの?」

 

あれ?なんか嫌な胸騒ぎがしてきたんですけど……どうしてでしょう。

 

「どんな……うぅむ。我々から見ても高い技量を持ち、しかも整備まで完璧にこなせる御仁でとても頼りになる方であるな」

 

「練習とかの時は凄く厳しいんですけど、いつもは優しくて……ねぇ、姫」

 

「そうだな。それに聞けばかの西住流の門下であると」

 

「ふ〜ん。西住流の門下……」

 

な、なんか……陣幕の向こうでドス黒いオーラが漂っているんですけど。

 

あれは一体……?

 

「ねぇねぇ、その人と是非とも会ってみたいんだけど、いいかしら?」

 

「うむ。それは構わぬが……どうしてその様に笑っておられるなりや?」

 

「フフフッ。さぁ、どうしてかしらね?」

 

ッ!?ま、不味い!!ケイ君がこっちに来る!?

 

「? まぁ良いか。こちらへ」

 

「フフフッ……あ、そうだ。アリサは帰りの準備をしておいてね」

 

「イエス、マム……うぅ……反省室行き……」

 

逃げないと大変な事に!!




さてさて、役人は逃げる事が出来るのでしょうか(ニッコリ)


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邂逅のち開戦

長くなってしまったので分割しました。(;´д`)

そのため本格的な修羅場は次回となります
m(__)m


「先生、ただいま戻り――む?姿が見えぬな」

 

「本当だ……どこに行ったんだろ?」

 

「チッ、勘づいて逃げたわね。……まぁいいわ、手掛かりは掴んだんだし」

 

ふぅ……危ない危ない。しずか君達が入って来た方とは反対側の陣幕を捲って間一髪脱出に成功しました。

 

「……」

 

ここでケイ君に捕まってしまうと大変な事になるのは目に見えていますから……しずか君と鈴君には申し訳無いですけど、このまま先に学校へ戻らさせて頂きましょう。

 

帰りの準備や諸々の手配は既に済んでいますし、急用が出来たので先に帰るという旨を大急ぎで書いた置き手紙も置いておきましたから問題は無いはずです。

 

「……」

 

あ、そう言えば観戦している途中で邪魔になって外してしまった変装道具を忘れてきてしまいました。

 

……まぁ、放っておきましょう。今さら考えていても回収は無理なんですし。

 

さて、それではケイ君やサンダースの子達に見付からないように帰りましょうか。

 

「……何をしているんですか?」

 

へ?

 

「ナ、ナオミ君!?」

 

言ってる側から見つかってしまったんですけど!!というか、ナオミ君はいつからそこに!?

 

「ウチの隊長が探してますけど」

 

「い、いやーその……ね?ちょっと、ハハハッ……」

 

「……?」

 

ま、不味い……ここでケイ君を呼ばれてしまっては逃げる事など到底不可能です。

 

となれば致し方ありません。ここは最終手段を使うしか無いようです!!

 

「……ナオミ君」

 

「何ですか?」

 

「お願いです!!見なかった事にして下さい!!」

 

必殺、ジャンピング土下座!!

 

捕まれば死の瀬戸際に最早恥も外聞も関係ありません!!

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

あ、あのー沈黙が怖いんですが。

 

「……まぁ、いいですけど」

 

「ありがとうございます!!」

 

良かった……これで最悪の事態は回避出来ました。

 

ナオミ君には後で何かお礼の品を送っておかないといけませんね。

 

「では、私はこれで」

 

「あぁ、そうだ。状況が落ち着くまで私達が持って来たあの救護車の中に隠れていた方がいいんじゃないですか?ウチの隊長の事だから非常線張るでしょうし」

 

「それもそうですね。ではお言葉に甘えてさせて頂きます」

 

よいしょっと。

 

ふぅ。とりあえずナオミ君の助言通りにこの救護車――牽引車の荷台に積まれたコンテナ型の救護所の中で暫く時間を潰しましょうか。

 

……しかし、それにしても私が楯無高校に居ることがケイ君に感付かれてしまったのは痛いですね。

 

まぁ、しずか君と鈴君に協力する事を約束した時点でこんな未来が来る事は避けられない定めだったんでしょうが……バレるのが些か早すぎます。

 

まだ全然ほとぼりが冷めてないですし……はぁ、困りました。

 

――ガチャ、バタン。

 

あれ?誰かが入って――ッ!?

 

「久し振りね、レンタ」

 

「ヒィ!!」




次回、割りと大変な事になります。
(´∀`)


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受難

※ご注意※

愉しい愉しい修羅場回ですが、若干の桃色展開があります。


PS,後書きにアスパラガスside(前々回ぐらいに入れようと思って忘れていました)がありますので良ければそちらもご覧下さい。


ど、どうしてケイ君がここに!?

 

ハッ、まさか!!

 

「……」

 

窓の外でナオミ君がサムズアップしてるんですけど!?ハメられた!!

 

って、ナオミ君!?何で窓ガラスに濡れた新聞紙を貼るんですか!?

 

いやいや、もう一回サムズアップされても意味が分かり――よく見たらサムズアップじゃない!?女の子がそんなジェスチャーしちゃ駄目ですよ!!

 

いつものクールさはどこに行ったんですか!?

 

「ようやく見付けたわよ」

 

「ヒィイ!!あわ……あわわわ……」

 

ま、不味いです!!逃げ場が、逃げ場が無い!!

 

唯一の出入り口はケイ君の後ろにしか無いですし、ナオミ君によって新聞紙を貼られてしまった窓は固定式でそもそも開かないですし。

 

……あれ?もしかして詰みました?

 

「フフフッ、そんなに怯えなくても大丈夫よ、レンタ」

 

ならまず凄くイイ笑顔でにじり寄って来るのをやめてもらえませんかね!?

 

「私ね、分かったの」

 

な、何がです?

 

「やっぱりレンタも男なんだし、押されっぱなしは嫌なんだって」

 

……いや、押されっぱなしが嫌というか高校生である君に手を出したら犯罪なので逃げているだけなんですけど。

 

それにそもそも私は自分からグイグイ行くタイプでもないですし。

 

「だからね、押してダメなら――」

 

おや?勘違いしていますけど何はともあれケイ君は方針を転換して引いてくれるようです。

 

これは助かったんでしょうか?

 

「もう有無を言えないぐらい押し切ればいいって!!」

 

違った!?引くんじゃないんですか!?

 

ッ!!どうして制服の上着を脱ぐんです!?いやいやいや!!ネクタイを外す必要はありませんよ!!

 

「フフッ、だから……既成事実さえあればもう逃げられないわよね?」

 

「ヒィイイッ!!」

 

何かケイ君がとんでもない事を言い出したんですが!?黙って雲隠れした事が完全に裏目に出ました!!

 

というか……ケイ君の目が本気……く、食われる!?

 

「密室で2人っきり……逃げられるなんて思わない事ね」

 

ま、不味い、不味過ぎます。ケイ君が自分で作り出した場の空気に呑まれて正気を失っています。

 

「あぁ、大丈夫よ。大人しくしてれば天井の染みを数えている間に終わるから」

 

そのセリフは普通男性側が言うのでは!?

 

「フフッ、フフフッ!!さぁ、覚悟なさい!!」

 

ッ!!ツッコミを入れている場合ではありませんでした!!このままでは事案が!!事案が!!

 

「えい」

 

「ふぁ!?お、お、落ち着いて下さい!!ケイ君!!」

 

診察台兼寝台に押し倒され――力が強い!?何で片手で私の両手を押さえ込めるんですか!?

 

ノォオオー!!スーツとシャツのボタンを外さないでー!!そんな手つきで腹筋をまさぐるのは止めて下さいー!!

 

「フフッ、私は落ち着いているわよ」

 

嘘だ!!か、神様!!お助け下さい!!この場の空気を壊すだけでいいですから!!

 

そうすればきっとケイ君も我に返ってくれるはず!!

 

なのでどうかッ!!

 

「ケ、ケイ君!?今ならまだ間に合います!!ですから!!」

 

「シャラップ。うるさいわよ……そうだ。口を塞いじゃえばいいのね。ん〜」

 

ケイ君の顔が近付いて――神……様。

 

「――失礼します、隊長。撤収の準備が……」

 

「……」

 

「……」

 

神は居た。

 

「あ、あれ?あーぁー……し、失礼――」

 

ナイスタイミングです、アリサ君!!助かりました!!お陰で場の空気は完全におじゃんです!!

 

「ではでは私はこれで!!」

 

ケイ君が背後を振り返ったままの状態で硬直してしまったお陰でマウントポジションから逃げ出せました。

 

さて、無表情かつ瞳孔が開いた目でケイ君がアリサ君を凝視している隙に逃げましょう!!

 

「え、あ、ちょっと!!お願いだから行かないで!!」

 

おっと!?アリサ君に手を掴まれてしまいました。

 

「大丈夫です!!アリサ君なら大丈夫です!!」

 

だから、その手を離して下さい!!

 

「大丈夫って、何が大丈夫なんですか!!お願いだからこのまま隊長に襲われて下さ――あぁ!?」

 

「さようならッ!!」

 

アリサ君には申し訳ないですけど、私が助かるにはこうするしかッ!!

 

「お願いだから……戻って――……うっ!?」

 

「……」

 

「あ、あの、あの……隊長?」

 

「……なぁに?アリサ?」

 

「その……怒ってますよね?」

 

「怒ってる?アハハハッ、怒ってなんかないわよ〜。フフフッ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「えぇ、だって誰にでもミスをする事はあるでしょ?」

 

「そ、そう言ってもらえるとありがたいですけど……その、顔が笑ってないですよ?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……ねぇ、アリサ」

 

「は、はい!!」

 

「懲罰房、行こっか」

 

「ヒッ!?」




……アリサに幸あれ。

さて、ストックがスッカラカンになってしまったため更新は暫く先になります。
m(__)m




アスパラガスside

「メルド(ちくしょう)!!なんて醜い戦いざますか!!サンダースの成り上がり共!!私達から取り上げた戦車を無様に浪費するなんて!!戦車道の風上にも置けないざます!!」

あの方の指導を受けておきながらなんという結果ざます!!

「いかがします?アスパラガス様」

「よろしいざます。我が輩達が戦車道のなんたるかを教育してやるざます!!」

そして、あの方に鍛えて頂いておきながら無様な戦いをしたサンダースとは格が違うという事を知らしめてやるざます!!

……しかし、あの素人達はやけにあの方の様な戦い方をしていたざますね。

まさか……いや、そんなはずはないざます。


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元役人の影響力

ちょっとばかり設定を盛り過ぎたかもしれません(遠い目)


しずかside

 

ふむ。困った。職員室や教員室にも姿が無いとなると先生は何処に居られるのであろうか?

 

「えぇ、ですから……そのね?はい、はい。ケイ君の言う事も分かりますけど……うっ……黙って姿を消した事については申し訳なかったです」

 

……む、あちらから微かに先生らしき声が。

 

「しかし、姿を消さ――え?会いに来ないと楯無高校に居る事を皆にバラす?ちょ、ちょっと待ってください!!そんな事をされたら大変な事に!!」

 

おぉ、そこに居られたか。うん?携帯を片手にワタワタと何やら取り込み中のご様子……仕切りなおすか?

 

「……わ、分かりました。時間を作って会いに行きますから落ち着いて下さい。はい、はい。え?あの……何でサンダースの第3戦車倉庫で待ち合わせなんですか?第3戦車倉庫ってほとんど物置状態でいつも人気が無いとか聞いて……え?細かい事はどうでもいい?いや、そうは言っても――ッ!?分かりました、分かりましたから。それで構いません……えぇ、では……また。はぁ、困りましたね」

 

いや、まぁ……ちょうど終わったみたいであるし、よいか。

 

「失礼します、先生。少し宜しいでしょうか?」

 

「っ!?はい、構いませんよ。何ですか、しずか君?」

 

「次の戦――対戦相手がBC自由学園に決まりました故、そのご報告を」

 

「ほぅ。BC自由学園……ですか」

 

うん?先生はBC自由学園と何か関わりがおありなのだろうか?

 

何やら懐かしむような悔いるような筆舌に尽くし難い表情を浮かべておられているが。

 

「えぇ、それでそのBC自由学園の物見に鈴と共に明日行く予定なのですが、先生もご一緒に如何かと」

 

専門的な知識がある先生に見てもらえばBC自由学園の弱点等が分かるかも知れぬし、是非とも付いて来て頂きたいのだが。

 

「明日……ですか。すみません、明日は先約がありまして」

 

「む、そうでしたか……」

 

残念ではあるが先約となれば致し方なしか。

 

「また今度誘って下さいね。あぁ、そうだ。BC自由学園は色々と面白いチームですからしっかり見て勉強してきて下さい」

 

「? 承知致しました」

 

――さて。というわけで鈴と共にBC自由学園が試合を行っている会場にやって来たのだが。

 

おぉ、やっておる。しかし……。

 

「解せぬ」

 

「え?どうかした?姫」

 

「いや、あそこの部隊を何故動かさぬのかと思ってな。今投入すれば一息で勝負がつくというのに」

 

出し惜しをしている訳ではなさそうだが。

 

「お、お前さん“通”だね」

 

「え!?嘘!?」

 

うん?誰ぞ?鈴は相手の事を知っているようだが。

 

「ありゃ旧BC高校側だからさ」

 

「ペパロニ!!出店をさぼるな!!」

 

「あ、いけね」

 

「アンツィオ高校のアンチョビさんにペパロニさん!?何でここに!?」

 

ほぅ。この方々が彼のアンツィオ高校の隊長殿と副隊長殿であるか。

 

「全く、ペパロニのやつはちょっと目を離すとすぐにさぼる……あぁ、すまない。ウチもタンカスロンはちょくちょくやってるから偵察兼資金稼ぎにな。――で、BC自由学園の話だけど……“お客さん、ご注文は?”」

 

む?……あぁ、なるほど。そういう事か。

 

「この店で一番いいモノを」

 

「了解。――でだ。“今の”あいつらは要するに味方同士で足蹴り合いながら戦車道をしてるんだ」

 

「それは何とも穏やかな話ではないな。しかし、今のとはどういう意味か」

 

“今の”をやけに強調していたが。

 

「あぁ、それを説明するとなるとちょっと話が長くなるんだが……その昔BC自由学園は元々BC高校と自由学園というマジノ女学院の分校――独立した2つの学園だったんだがな、生徒数の減少と学園艦の老朽化が原因で生徒達の意思を無視して無理やり統合されてしまったんだ」

 

「ふむ」

 

それが尾を引いたという訳――いや、それでは話の辻褄が合わぬな。

 

「まぁ、統合自体はとある人の尽力があったお陰で結果的には上手く行ったんだが……」

 

「そうそう。上手く行ったお陰で両校で培われてきた伝統や校風を失わないようにって互いに互いを尊重し合う形で右舷と左舷で分かれて暮らしていたりとかっすね。あ、で面白いのが戦車道チーム。書類上はBC自由学園という1つの戦車道チームなんすけど実際はBC高校と自由学園の伝統を踏襲している2人の隊長とその仲間達で構成されている2つで1つの特殊なチームになっているんすよ」

 

「ほぅ、それは面白い」

 

「ペパロニの言ったように2つで1つの特殊なチームなもんだからオルトロスって渾名があった程だ」

 

オルトロス……双頭の犬か。話が事実だとすると言い得て妙であるな。

 

「であるならばなおさら解せぬ。それほど仲が良かった者達が何故今は反目しあっているのか?」

 

「……お前達も知っているとは思うが大洗廃校の一件でBC自由学園の統合計画を最終的に上手く収めたその人、先輩――辻元局長がクビになった事が原因だ」

 

「……辻元局長……」

 

おぉ、大洗廃校を撤回するため、そして腐りきった国賊共を誅するために獅子身中の虫となり己が身命をとして生徒に忠を尽くした彼の御仁が関係しておられたか。

 

「全責任を負わされてクビになった先輩の仇を討とうと、文科省討つべしを唱えたタカ派――アスパラガス率いる旧自由学園勢と自らが引くことで事態の沈静化を図った先輩の意思を汲み、動く事をよしとしなかったハト派――ボルドー率いる旧BC高校勢の間で意見の食い違いが起きて喧嘩が始まり、そして今じゃ学園艦全体が旧BC高校と旧自由学園に別れて喧嘩状態っていう顛末さ」

 

「なるほど。そうであったか」

 

「まぁ、雲隠れしてしまった先輩が見つかれば解決するだろうけどな。あいつら単純だし。あ、そうだ。お前達、先輩について何か知ってないか?あの人の事だから戦車に関係する所に必ずいるはずなんだ」

 

「いや、知らぬな」

 

彼の御仁には私も一度会ってみたいものだが、姿を消しておるというのであればそれも容易い事では無かろうな。

 

アスパラガスside

 

「アスパラガス殿、御身にとってタンカスロンとは……何ぞや?」

 

誰ざますか、こいつは。

 

役立たずの旧BC高校の連中がアンチョビの出店で買い食いをしているのを叱り付けに来たら妙な奴に絡まれたざます。

 

……まぁ、いいざます。質問に答えてやるざます。

 

「決まっているざます。全力を……全身全霊を賭けるべき戦場ざます!!」

 

「ほぅ……」

 

やっぱり妙な奴ざますね。私の答えを聞いてまるで好敵手とでも相見えたような嬉しそうな顔をしているざます。

 

「最もそれはタンカスロンだけでなく、戦車道全般に言える事ざますが」

 

あの方のご指導を受けた者として当然の心構えざます。

 

「それは頼もしい。応援しておりますぞ」

 

「? メルシー」

 

「では、我らはこれで」

 

……何だか最後まで妙な奴だったざますね。

 

しかし、あのリボン……どこかで。




次回は意外?なキャラが登場します(´∀`)


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密会

題名が若干不穏ですが、ただの閑話です
(´∀`)

なお、前話で少々紛らわしい話の進め方をしましたが、今回のメインキャラはケイではありません。


ふむ。しずか君と鈴君は今頃BC自由学園の試合を観戦している頃合いでしょうか。

 

彼女達のチームはしずか君達がこの先の事に備えて学ぶべき……学んでおかなければいけないノウハウを持つチームですからね。是非とも多くの事を見て学んできてくれればいいのですが。

 

……おっと。考え事をしていたら待ち合わせの場所を通り過ぎてしまいそうになりました。危ない危ない。

 

さて、目的の人物は……あ、居ましたね。

 

「お待たせしました」

 

「いえ、こちらこそコーチが大変な時にお呼び立てして申し訳ありませんわ」

 

ふぅ。無事にマジノ女学院の戦車道チームの隊長であるエクレール君と合流出来ました。

 

「いやいや、構いませんよ。では、とりあえずそこのカフェにでも入りましょうか。いつまでもここに居るのは少々人目につきますから」

 

「……はい」

 

うーん。エクレール君の顔色があまり良くありませんね。

 

相談があるという事で緊急用回線を介して呼び出された訳ですけど、まさかまた何かマジノ女学院であったのでしょうか?

 

以前はマドレーヌ君から隊長の座を勝ち取った際のゴタゴタで体調を崩すほど精神的に参っていたので手を貸しましたが。

 

今回は一体何なんでしょう。

 

「コーヒーを2つお願いします。――それで早速ですが相談というのは?」

 

「はい。それがその……」

 

「……?」

 

よほど言い出しにくい事なんでしょうか?

 

しかめっ面のエクレール君がすごく言い澱んでいます。

 

「BC自由学園の事なのです」

 

「BC自由学園?」

 

はて、母校であるマジノ女学院の事ではなく他校――BC自由学園の事でエクレール君が相談にやって来るとはどういう事なんでしょうか。

 

「実はコーチが学園艦教育局長をクビになった事を受けてBC自由学園の隊長であるアスパラガスとボルドーの意見が真っ二つに割れてしまいましたの。片や報復、片や忍耐という風に。そしてアスパラガスとボルドーが意見の相違から喧嘩を始めたのを切っ掛けに今現在学園艦全体で旧BC高校と旧自由学園に分かれて争っている有り様で」

 

「……はぁー……」

 

そういう事ですか……うん。もう何か大体分かりました。

 

「っ、申し訳ありません。最初は宗校である私達の力で収めようとはしたのですが……力及ばず、ますます争いが拡大する始末で」

 

「あぁ、すみません。今のため息は自分に対してですから気にしないで下さいね」

 

「え、あ、はい……」

 

全く、未だに統合計画の一件の事で私に恩を感じているあの子達の反応を読み間違えた私の失策です。

 

時間が無かったとはいえ、姿を消す前に会いに行っておけば良かったですね。

 

というか、自分のゴタゴタでBC自由学園がそんな状態になっている事に気が付けなかったなんて……一生の不覚です。

 

「それで……その……コーチも大変な時だとは存じておりますが、どうにかお力添えを頂きたく」

 

「分かりました。ちょうどいい機会がありますし、そこで手を打ちましょう」

 

エクレール君にお願いされましたし、何より我が身から出た錆びの不始末はきっちり付けなければいけませんからね。

 

断る理由はありません。

 

「お願いします」

 

しかし、それはそれとして私如きの事でチームの結束が揺らいでしまうのは頂けませんね。

 

さてさて。どう(教育)してあげましょうか。




恐らく次回の更新が遅れます。
(;´д`)


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威光と意向

またまたお久しぶりでございますm(__)m

気が付けばもうクリスマス。皆様どうお過ごしでしょうか?作者は例年通りにクリボッチでございます(#^ω^)

リア充は爆ぜろ(ボソッ)

さて、更新ついでに近況報告とお知らせを少し。

・近況報告
いやー…もう小説が全く書けておりません・゜・(つД`)・゜・書けなさ過ぎてかなり危機感を感じている今日この頃です。

なんとかメイン作品と役人転生関連は完結までは持って行きたいのですが…かなり時間が掛かりそうです。

・お知らせ
時折聞かれる役人転生の増刷についてですが。残念ながら増刷は赤字などの理由で行えないのですけれども……東京のとある場所に足を運んで頂ければ役人転生が(初版本ですが)読む事が出来ます(笑)

さて、それでは本題?です。

今回のお話で、ようやくBC自由学園と役人のご対面となります。

BC自由勢と役人の再開はどんな波乱を巻き起こすのか。

では、ご覧下さい。


「準備は万端……さぁ、出陣ぞ!!」

 

「え!?ちょ、ちょっと待ってよ、姫〜!!」

 

やれやれ、何故かは知りませんがしずか君の士気の高いこと高いこと。

 

よっぽどBC自由学園との試合を楽しみにしていたみたいです。

 

この前見に行った試合で何かあったんでしょうか?

 

ま、それはさておき。

 

今日はアスパラガス君とボルドー君の対立問題を解消しないといけませんから、私もしずか君の様に気合いを入れないと。

 

……しかし、局長という立場を失った私に出来る事は限られているんですよね。

 

まぁ、状況に合わせて臨機応変に動きましょうか。

 

さて。それではとりあえず布石としてアスパラガス君とボルドー君にご挨拶(宣戦布告)といきましょう。

 

「――メルド(クソッ)!!ぬかったざます。まんまと手の内を探られた訳ざますか」

 

両チームが揃い試合開始前の挨拶中なのですが……やっぱりこの前の試合の時にしずか君とアスパラガス君の間で何かあったみたいです。

 

お互いに面識がありますし。

 

「はて、何の事やら。我らは一観客として試合を見ていただけ故。しかし、1つ言わせてもらえば――既に勝負は決せり!!」

 

「ハハ……中々に言ってくれるざますね。結構、あの方の教えを頂いたBC自由学園の実力……とくと――なッ!?」

 

おや?アスパラガス君がしずか君の後ろにいる私の事に気が付きましたね。

 

観客に私が居るという事がバレないようにと、つなぎを着て髪型をオールバックにしてあったせいか多少時間が掛かりましたが、この程度の変装であればやはり既知の相手には私という事がバレてしまうようです。

 

「お久し振りですね、アスパラガス君」

 

「は、はい!!――お前達何をやっているざますか!!全員整列するざます!!」

 

「は?何なんだ、アスパラガスの奴。整列ならここで……ッ!?整列、整列だ!!」

 

ふむ。アスパラガス君が後方に停車させてある戦車の隣に並んでいたボルドー君や他の子達を呼び寄せてくれたお陰で呼ぶ手間が省けましたね。

 

しかし、呼ぶにしてもそんな風に怒鳴ったりしなくていいんですよ。アスパラガス君。

 

それにボルドー君達も全速力で走って来なくて大丈夫です。

 

……あぁ、言わんこっちゃっない。1人コケました。

 

「これは一体……」

 

「え?え!?」

 

おっと。いきなり直立不動で整列したBC自由勢の姿にしずか君と鈴君が状況を飲み込めず混乱していますね。

 

観客も少々ざわついていますが……まぁ、話はすぐに終わりますし少しだけ待ってもらいましょう。

 

「ゴホン。では、改めまして。皆元気そうで安心しました」

 

「ありがとうございます!!我々もコーチの御壮健なお姿を見ることが出来て光栄ざます!!」

 

……光栄って、そんな大袈裟な。

 

まぁ、アスパラガス君はいつもこんな感じでしたか。

 

「さて、挨拶はこれぐらいにして……本日私がここに来たのは他でもありません。君達のとある噂を耳にしたからです。何でも“私のせいで”君達が不仲になってしまったとか」

 

「「「「……」」」」

 

あらら。さっきまで喜色満面だったアスパラガス君達の表情が180度変わってしまいました。

 

さすがに付き合いが長いと顔が笑っていても本当は怒っている事が分かるようです。

 

「ねぇねぇ、姫。先生とアスパラガスさん達って知り合いなのかな?」

 

「うむ、恐らくは。しかし――うん?アスパラガス殿はどうされたのだ?歯の根が合っておらぬし、顔も真っ青であるが」

 

「本当だ。……あれ?他の人達も何か震えてない?」

 

しかし、そこまで怯えなくてもいいと思うんですけど。

 

「はっきり言って……今回の件は少々ガッカリしました」

 

「……申し訳ありませんざます」

 

「……返す言葉もありません」

 

あれ?いや、ちょっと待って下さい。

 

何かアスパラガス君とボルドー君……涙目でチラチラお互いを睨み合ってません?

 

あれ?これ……お前のせいで怒られたじゃないか的な感じになって溝が深まってます?

 

……不味い。



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嫉心

ガールズ&パンツァー最終章、第3話の劇場上映記念の更新です。

そのため3作品同時更新となっています。


「あぁ、誤解が無いように言っておきますが私のために怒ってくれたアスパラガス君や私の意を汲んでくれたボルドー君、君達2人の意見自体はとても嬉しく思っていますからね」

 

「コーチ……」

 

「先生……」

 

危ない危ない。

 

溝を埋めに来たのにもう少しで溝を深めてしまう所でした。

 

「しかしながら私如きの事で対立し、チームを……引いては学園全体の分裂を招いてしまった事については頂けません」

 

慕ってくれるのは嬉しいですしありがたい話ですが、部外者の問題で内紛を起こすのはいけません。

 

「……ですが、ですが!!あのような無体はあまりに酷すぎるざます!!コーチ1人に全てを押し付け安穏としている愚物共には思い知らせてやる必要があるざます!!だからこそコーチに大恩のある我々が革命を起こし、この閉塞しきった戦車道の世界に風穴を空け、時ここに到っても平気で惰眠を貪る奴らを叩き起こし、この不条理に満ちた世界に鉄槌を下さねばならないざます!!」

 

何か我慢ならぬとばかりに声を上げ目をギラギラさせたアスパラガス君が革命家の様な演説をしているのですが、私の様な者の事よりも戦車道に情熱を燃やし青春を楽しんで欲しい所です。

 

「お、おい、アスパラガス!!やめろ!!」

 

「君の気持ちはよく分かりました。アスパラガス君。しかし、君は1つ勘違いをしています」

 

「勘違いざますか?」

 

「えぇ、責任を取るのが私の仕事なんです」

 

「「「「……」」」」

 

うん?場が静まり返ってしまい――いや、なんでそんなに私の事をキラキラとした目で見詰めているんですか、君達。

 

当然の事を言ったのに何か好意的な解釈をされているような……。

 

「……では、コーチはあれで良かったざますか?」

 

「うーん。欲を言えばもう少し局長として皆を見守っていたかったですかね。……っと。私の個人的な事はどうでもいいんです。今回の本題は君達の事なんですから。」

 

「……」

 

「……」

 

本音をポロッと漏らしたら今度は見るからにしゅんとなりましたね。何だか悪戯をして怒られた子犬達みたいです。

 

「まぁ、本当なら他にも色々と言いたい事はありますが、以前なら露知らず今の私は完全な外部者ですし、今回の件の引き金となった原因でもあり、語る資格がありません。ですから今一度君達にはチームとは何なのかを試合の中で学んで頂きます」

 

「試合の中で学ぶ……ざますか?それは……つまり!!コーチがまた我々のコーチとして――」

 

「いえ、先も言いましたが私にはその資格も立場もありません。ですから私の教え子との試合の中で学んで頂きます」

 

「教え子?まさか……ッ!?」

 

「えぇ、訳あって今は楯無高校で教師兼戦車道のコーチをしています。あぁ、この事はくれぐれも内密に」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

「な、何ぞ!?」

 

「ヒッ!?こ、怖いよ、姫!!」

 

あれ?今度は何故かアスパラガス君達が一斉にしずか君と鈴君を睨んでいるんですけど。

 

「そういう事ざますか……通りで戦い方が似ていたはずざます……ッ!!」

 

「姿を消す前にいくら頼んでもウチには来てくれなかったのに……ッ!!」

 

うーん。分かりません。

 

ほぼ無名のしずか君達から学ぶ事なんて無い!!みたいなプライドですかね。

 

「それではアスパラガス君、ボルドー君。君達の活躍を楽しみにしていますよ」

 

さて。挨拶も無事に終わりましたし、後はしずか君と鈴君にお任せしましょう。



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