人狼ゲーム『Selfishly -エリカの礎-』 (半沢柚々)
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前書き
始めに


 人狼ゲームが流行り出したのは2、3年前くらいだったかと思いますが、今更のようですが自分でも書いてみたくなって始めました。

 

 オリバトもそうですが、クローズド・サークル物とかデス・ゲーム系が好きです。サスペンス、ミステリー、ホラーが好きで、ロマンスも好きで、ヒューマンドラマも好きでって言う全ての欲求を満たすかの如く始めました。

 SFもファンタジーも好きなのでメタ世界とかループ物とか絡めようと思ったのですが、それはさすがにできそうもありませんでした。いい案が浮かべばプロットに盛り込みます。

 デス・ゲーム物ですのでケムコさんのスマホアプリ『鈍色バタフライ』『トガビトノセンリツ』『レイジングループ』や、

 映画『人狼ゲーム』『SAW』等、様々な作品をモチーフに書き進めたいと思います。

 

 ただ、地の文が得意ではないので、オリバトのように更新が止まることを懸念して、全会話形式で進めたいと思います。

 地の文は私、よっぽど集中しないとすらすら書けないんですよね……。色々気になってしまって……。

 2ちゃんねるのSSのように書ければ良いな、と思っています。

 場合によっては地の文を挿入するかも知れませんが、主人公視点で統一しようと思っています。

 

 完結したら、ケムコさんを真似て『暴露モード』を公開しようと思っています。

 裏ではなにが起こっていたのか、なぜそうなったのか。

 主人公の視線では見えない部分を覗いて、答え合わせするような感じにしたいです。

 ケムコさんの『トガビトノセンリツ』が特にそうだったのですが、二週することで一本の作品になるのが、とても面白かったんですよね。

 エンディングは通常エンドとバットエンドの二つを考えておりますが、暴露モードではバットの方が真のエンディングになるような構成にします。

 同時進行で書いてるので完結すればすぐに公開できると思うのですが、まだまだ先になりますね……。

 

 

 

【登場人物について】

 ハーメルンに投稿しているオリバト『Sincerely-エリカの餞-』の生徒の約半数が登場します。

 主人公は同じく本堂空太、ヒロインに佐倉小桃と間宮果帆を指定し、その他主流人物を寄せ集めた形になりました。

 舞台設定上、エリカの餞ではすぐに退場したキャラやまだ登場すらしてないキャラがでしゃばってたり、あっちの主流人物がこっちにはいなかったりしますが、別物としてお考え下さい。

 キャラクター設定は同じですが、あっちは『大東亜共和国』と言う架空の国が舞台ですが、こっちは普通に日本を舞台としておりますので、大東亜共和国だからこそ起こった出来事や事件はなかったことになっています。

 なので、千景勝平等の一部のキャラクターは少し設定が異なります。

 

 

 

【注意】

 最後に注意書になります。

 

 会話形式なので残虐な描写は少なめになるかと思いますが、デス・ゲームですので苦手な方はご注意ください。

 

 場合によっては性的な描写も出てくるかも知れません。作品の特色上。ボツにならなければですが。

 

 『エリカの餞』でもまだ明かしていないネタバレが満載です。

 

 このページは気づいたことがあったら追記します。

 

 

 

 では、長くなりましたが以上になります。どうぞよろしくお願い致します。



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登場人物

 

【本堂 空太(ほんどう くうた)】

主人公。16歳、高2。のんびりしてるやら、ほんわかしてるやら言われるけど、割と毒舌な方。それなりに人付き合いは上手い。いじられることが多い。とにかくなんの特徴もない、平凡な男。

 

【間宮 果帆(まみや かほ)】

取っ付きにくい感じのスレンダーな美人。本堂空太の彼女。綺麗な女の子だが男勝りで口が悪い。本当は不器用で優しい女の子。所謂ツンデレ。白百合美海とは親友同士。八木沼由絵とは幼馴染み。

 

【白百合 美海(しらゆり みみ)】

校内一とも言われる程の正統派美人。学園のマドンナ的存在。明るくて可愛い、親切で優しい、美人でスタイル抜群、なのに気取らない性格と非の打ち所のない女の子。どこか儚げな一面があり数多の男を虜にしている。

 

【道明寺 晶(どうみょうじ あきら)】

美海の彼氏。ニヒルな笑顔のミステリアスなイケメン。女たらしとして有名人だが、美海と付き合ってからはやめた。曲者。好奇心旺盛で頭が切れるが、自信過剰で皮肉めいたところがある。朔也や直斗とは親友同士。

 

【乃木坂 朔也(のぎざか さくや)】

正統派イケメン。所謂ジャニーズ系。王子様みたいだってことで、女子に絶大な人気がある。顔が良いだけじゃなくて、性格もいい。穏やかで困っている人を放っておけない性分。晶や直斗とは親友同士、美海の事が好き。

 

【有栖川 直斗(ありすがわ なおと)】

高身長で笑うと糸のように目が細くなる。地味系イケメン。朔也に輪をかけたようなお人好し。大人しいが空太にとっては一番気兼ねなく付き合える一緒にいて楽な奴。大らかで大雑把な性格。名字で呼ぶと少し嫌がる。

 

【和歌野 岬(わかの みさき)】

みんなからはサキと呼ばれている。奥ゆかしい感じの淑やかな女の子。正に清純派美人。少し病弱なところがありしょっちゅう胃腸炎に悩まされている。半面結構気が強くて、怒ると怖いところがある等、意外と強かな女の子。

 

【小日向 花菜(こひなた かな)】

身長173センチの大柄な女の子。和歌野岬と二人で宝塚コンビと呼ばれる。美海や果帆とも仲良し。中性的で少年っぽい。絶対スカートは履かない。だが男みたいな言葉遣いはしない。穏やかで朗かな感じの良い女の子。

 

【八木沼 由絵(やぎぬま ゆえ)】

果帆の幼馴染みで勝平の彼女。おっとりしてて甘えん坊、どこかほわんとした感じの女の子。ちょっと天然で結構自由人。言い出したら聞かないなど結構頑固な性格で、果帆とも何度か衝突したことがある。芯が強い。

 

【千景 勝平(ちかげ しょうへい)】

喧嘩が強い名の知れた非行少年。独自でボクシングや合気道をしており絡んできた奴らを容赦なくボコボコにする為、不良として君臨しちゃった感じ。ストレートに物を言うから無神経とか喧嘩売ってるとか思われやすい。

 

【小田切 冬司(おだぎり とうじ)】

口調が優しい、穏やかで落ち着いた少年。中等部時代から筒井達とつるんでる。剣道部。どこか小綺麗で頭の回転が早い。知性的で理性的。男にしては小柄な方だけど、剣道は強いみたいだ。気配り上手で女子にもモテる。

 

【目黒 結翔(めぐろ ゆいと)】

金髪。剣道部の幽霊部員。直向きになにかに打ち込むよりは、遊んでいたいタイプ。喜怒哀楽が激しくて直情的、キレやすい。でも単純で素直。騙されやすくてどこか憎めない。美海のことが昔から好きみたいだ。

 

【竜崎 圭吾(りゅうざき けいご)】

野球部所属のバカ。眩しい坊主頭。バリアートとか入れちゃうお茶目な奴。いつも爽快な笑顔。なんでも笑顔で乗り切ろうとしてる。性格は楽天的で豪快。真逆の性格の真面目な惣子郎とは自他共に認める親友同士。

 

【筒井 惣子郎(つつい そうしろう)】

野球部次期主将で生徒会長。優等生。正義感が強くて人望も厚い。真面目で冗談が通じない。細やかな気配りも上手で、周りをよく見てるしちょっと心配性。根っからのリーダー気質。バカな竜崎と親友同士で、和華は恋人。

 

【七瀬 和華(ななせ のどか)】

筒井の彼女で真面目な女の子。女子の相談によく乗ってる。裏から支える影の女。読書家で、家庭的。母親を亡くしており、年の離れた兄弟が多い。常に中立の立場にいて、公平的に物事を見てる。気疲れが多い。

 

【佐倉 小桃(さくら こもも)】

女の子らしい普通の女の子。主人公の元好きな子。控えめだけどそこそこお茶目。か弱そうだけど結構強かな性格。柔らかい雰囲気だが、どこかミステリアスな空気が漂ってる。芯が強くてしっかりしてる。朔也の事が好き。

 

 

 

――――以上16名

 



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――1日目
001.目覚め-1-


 

 高校二年の10月。目覚めたら元クラスメイトたちがいた。俺たちは放課後、拉致された。

 

 

 

【宍銀学園高等学校の皆さんがゲームに参加しました。】

 

 

 

 ――――AM11:00、会議室

 

本堂 空太

「…………………………」

 

 ――――く……た……。

 

(誰かに呼ばれてる声がする)

 

本堂 空太

「…………………………」

 

 ――――い……おき……、……たっ!

 

(なんだ? なんだか体調が悪いんだ……。

 ………………母さん?

 いや、ちょっと勘弁、もう少し寝かせて……)

 

本堂 空太

「…………………………」

 

 ――――……た、く……た、

 

(母さん……うるさいって、静かにしてよ)

 

 ――――く……たっ……!

 

(あれ、ちょっと待って。

 この声ってどう考えても母さんじゃ――)

 

間宮 果帆

「くうたあああああ!!!」

 

本堂 空太

「うわあーーー!!?」

 

間宮 果帆

「起きろっつーの! あ、起きたかよ」

 

本堂 空太

(…………間宮果帆。

 付き合って一年になる俺の彼女だ)

 

本堂 空太

「っつぅ、ちょっとどうしたんだよ、大声出して。

 てか今耳キーンてしたから、耳キーンて」

 

(母さんと勘違いした俺も俺もだけどね)

 

間宮 果帆

「…………………………」

 

本堂 空太

「っ、てぇ……つーか、なんか頭いてーんだけど……」

 

間宮 果帆

「………………たんこぶ出来てる」

 

本堂 空太

「え、マジ?

 …………て、ゆーか。

 

 なにこれ? なんでみんな寝てんの……」

 

間宮 果帆

「知らないけど、あたしが一番最初に目覚めたみたい。

 ……起こさなきゃな」

 

本堂 空太

「え、ちょ――、…………っ!」

(なんかよくわかんないけど、これは……普通じゃない)

 

本堂 空太

「いや、うん! そうだね、起こそう!」

 

間宮 果帆

「美海、……美海、……美海……」

 

本堂 空太

(果帆は白百合たちか。じゃあ俺はあっちを)

 

白百合 美海

「――!! あ、か、果帆……

 っ、首が痛い……っ」

 

間宮 果帆

「大丈夫?」

 

白百合 美海

「うん、ありがと……」

 

間宮 果帆

「たぶんスタンガンでやられたんだ」

 

白百合 美海

「え? スタンガンって、いったい……」

 

間宮 果帆

「ごめん、話は後。みんな起こして」

 

白百合 美海

「え?

 

 ――――――!!

 

 え? え?

 あ、アキラ! 朔也!」

 

道明寺 晶

「っ、……美海?」

 

乃木坂 朔也

「………………?」

 

道明寺 晶

「……なんだ、この状況」

 

本堂 空太

(筒井……よだれ垂らして寝てる……。

 もう! 一番しっかりしてほしい奴がぐーすか寝てんなって!)

 

本堂 空太

「つ、つ、い! 生、徒、会、長! 起、き、て!

 ほら! お、前、ら、も!」

 

筒井 惣子郎

「…………ん?」

 

小田切 冬司

「…………え?」

 

目黒 結翔

「…………あ?」

 

竜崎 圭吾

「…………ふぁ?」

 

目黒 結翔

「ってぇ、背中いてぇ」

 

竜崎 圭吾

「俺は頭なんですけど……頭もげてない?」

 

小田切 冬司

「もげてないみたいだよ」

 

本堂 空太

(こんなときにこいつらは相変わらずだな)

 

筒井 惣子郎

「待て、……おかしいぞ、この状況」

 

本堂 空太

「ごめん、俺も起きたばかりで、全然……」

(俺に目で訴えられても……)

 

間宮 果帆

「……由絵、……勝平」

 

八木沼 由絵

「ふえ~? あ~果帆、おはよ~」

 

千景 勝平

「いてて……はあ? どこだ、ここは」

 

白百合 美海

「花菜! サキちゃん! 起きて!」

 

乃木坂 朔也

「直斗、おい」

 

有栖川 直斗

「んぁ? っ……つぅ」

 

道明寺 晶

「大丈夫か?」

 

有栖川 直斗

「あ、ああ……」

 

小日向 花菜

「美海……?

 え、な……、――――っ!

 

 サ、サキ!」

 

和歌野 岬

「……花菜? いったい、どうしたと言うの?」

 

小日向 花菜

「よ、良かった……サキ……」

 

和歌野 岬

「………………?

 

 っ――――――!」

 

筒井 惣子郎

「七瀬、佐倉」

 

佐倉 小桃

「………………?」

 

七瀬 和華

「筒井くん…………?

 わ、たし……お買い物してて……それで……」

 

佐倉 小桃

「…………あ…………、

 

 …………みんな……どうしたの?」

 

道明寺 晶

「これで、全員か」

 

乃木坂 朔也

「ああ、そうみたいだな」

 

本堂 空太

(みんな、元クラスメイトだ。三年間同じ教室で過ごした、仲間だ)

 

(まず、俺、本堂 空太(ほんどう くうた)。

 16歳、高2。あと3日もすれば17歳になる。

 人にはのんびりしてるやら、ほんわかしてるやら言われるけど、自分で言うのもなんだが割と毒舌な方だ。

 それなりに人付き合いは上手い方だと思う。こんなキャラだからか、いじられることが多い。

 けど、とにかくなんの特徴もない、平凡な男だ。

 

 そして、果帆。間宮 果帆(まみや かほ)。

 同じく高校二年生の17歳。

 取っ付きにくい感じの、スレンダーな美人で、俺の彼女だ。

 なんでこんな凡人の俺とってくらい綺麗な女の子だが、男勝りで口が悪い。

 でも、本当は不器用で優しい女の子だ。所謂ツンデレ。そんなところが結構可愛かったりする。

 一年くらい前に果帆の方から告白されて、付き合うことになった。

 中等部時代から仲は良かったが、綺麗すぎて俺なんか相手にしないだろうと思ってて、恋愛対象としては見てなかった。

 今は、とても大切な存在だ。

 

 そして、白百合 美海(しらゆり みみ)。

 校内一とも言われるくらいの可愛らしい、正統派美人で、学園のマドンナ的存在。

 明るくて可愛い、親切で優しい、美人でスタイル抜群、なのに気取らない性格、と非の打ち所のない女の子で、果帆の親友。

 反面、どこか儚げな一面があって、数多くの男が彼女のためなら死ねるとほざいているのを俺は知っている。

 例えば、アキラや朔也、目黒なんかはその代表だ。

 白百合自身は、半年前くらいからアキラと付き合い始めた。

 今まで浮いた話がなかったので、果帆の彼氏としては、幸せになってほしいと思う。

 

 そして、道明寺 晶(どうみょうじ あきら)。

 白百合の彼氏で、ニヒルな笑顔が特徴のミステリアスなイケメン。

 中等部時代から女たらしとして有名人だが、白百合と付き合ってからはやめたようだ。

 むちゃくちゃ頭がいい。って自分でもよく言ってる曲者。

 好奇心旺盛で頭が切れるが、自信過剰で皮肉めいたところがある。

 ……でも不思議と、人に好かれるんだよな。俺もいいやつだと思ってるし。

 朔也や直斗とは自他共に認める親友同士だ。親友と同じ女の子を好きで、しかもその子と付き合うことになったってのも奇妙な話だけど、関係は変わらないみたい。

 

 その、朔也。乃木坂 朔也(のぎざか さくや)。

 正統派イケメン。所謂ジャニーズ系ってやつ?

 王子様みたいだってことで、女子に絶大な人気がある。中等部時代からそうだ。クラスの女子はみんな朔也が好きだった。

 ここにいるメンバーだと、たぶん、佐倉がそうだったと思う。

 顔が良いだけじゃなくて、性格もいいんだからそりゃモテるに決まってる。穏やかで困っている人を放っておけない性分だ。

 アキラや直斗とは親友同士。昔からよくつるんでた。

 白百合のことが好きなんだなってのはなんとなくわかったけど、今はどうなんだろう。

 

 有栖川 直斗(ありすがわ なおと)。高身長で笑うと糸のように目が細くなる。

 アキラや朔也が目立ちまくってるから隠れちゃってるけど、イケメン。地味なイケメンだ。

 朔也に輪をかけたようなお人好しの良いやつ。

 割と大人しい方だと思うけど、俺は一番接しやすいかな。なんか、気兼ねなく付き合える、一緒にいて楽なやつ。

 大らかで大雑把な感じだ。ぜってー直斗はO型だと思う。

 ちなみに名字で呼ぶとちょっと嫌がる。アリスって入ってるのが女みたいで恥ずかしいらしい。

 気にしなくていいのにな。

 

 小日向 花菜(こひなた かな)。170センチの俺より身長が高い、大柄な女の子。

 和歌野と今も昔もよくつるんでるし、果帆たちとも仲が良い。

 和歌野が小柄でいかにも女の子って感じなのに比べると、かなり中性的って言うか、少年っぽい。実際、和歌野とは宝塚コンビって呼ばれてたしもはや名物だった。

 小日向も小日向で、アキラから男子用の制服ズボン買い取ったりして、絶対スカートは履かないし、ちょっとそこは変わってる。

 でも、男みたいな言葉遣いはしないし、穏やかで朗かな感じの、感じの良い女の子だ。

 

 和歌野 岬(わかの みさき)。名前はミサキだけど、みんなからはサキって呼ばれてる。

 奥ゆかしい感じの、淑やかな女の子。正に清純派美人って感じ。

 果帆曰く、ちょっと病弱なところがあって、しょっちゅう胃腸炎を起こしてるらしい。確かに体育の授業とか、よく見学してたなと思う。

 半面、結構気が強くて、怒ると怖いところがある。

 中等部時代に小日向の服装の件で、クラスの風紀委員の女子と揉めたことがあって、なんか、最終的に引っ叩いたんだよな。

 意外と強い女の子。

 

 八木沼 由絵(やぎぬま ゆえ)。果帆の幼なじみだ。

 おっとりしてて甘えん坊で、なんか、ほわんとした感じの女の子。ちょっと天然で、結構自由人。

 だけど、果帆曰く、言い出したら聞かないなど結構頑固な性格でもあるらしくて、果帆とも何度か衝突したことがあるみたいだ。

 要するに、芯が強い。

 勝平と中3の頃から付き合ってる。教室でもよくいちゃついてた。懐かしいな。

 

 千景 勝平(ちかげ しょうへい)。喧嘩がめっちゃ強い、八木沼の彼氏。

 絵に描いたような、ってほどではないけどそこそこ名の知れた非行少年だ。

 でも俺は不良だとはあまり思ってない。厳つそうな顔立ちなのに結構整ってるから、なめられるって言うか、絡まれやすいんだと思う。

 でも勝平は独自でボクシングとか合気道とかなんかやってるらしくて、絡んできたやつらを容赦なくボッコボコにするからなんか不良として君臨しちゃった、みたいな感じ。

 実際、中等部時代につるんでた面々とかそっち系だったし。今もそっちとも仲良いみたい。

 あと、ストレートに物を言うから無神経とか喧嘩売ってるとか思われやすい。だから勝平のことよく知らない人は、暴君だと思ってあんまり近寄りたがらない。

 でも、勝平はそれでいいと思ってるみたいだ。こいつも結構世話好きって言うか、身近な人間放っておけないタイプだから、下手に情が沸くと忙しくて面倒なのかも。

 八木沼と付き合う前まではそれなりに女たらしだったらしい。今はフェミニストを地で行くような優しいやつ。

 

 小田切 冬司(おだぎり とうじ)。口調が優しい、穏やかで落ち着いたやつ。

 中等部時代から筒井、竜崎、目黒とよくつるんでた。共通点は運動部所属ってところかな。小田切は、確か剣道部だったと思う。

 いつもどこか小綺麗で、頭の回転が早い。知性的で理性的なやつだけど、結構冗談も通じるし、バカ話もできる。まあボケよりはツッコミ気質かな。

 男にしては小柄な方だけど、剣道は強いみたいだ。気配り上手だから、結構女子にもモテる。

 でも小田切の浮いた話って、まったく聞いたことないんだよなー。

 

 目黒 結翔(めぐろ ゆいと)。金髪。運動部所属のくせに。昔から変わらない。

 確か目黒も剣道部だったと思うけど、名ばかりで幽霊部員らしい。直向きになにかに打ち込むよりは、遊んでいたいタイプ。

 喜怒哀楽が激しくて直情的、めっちゃキレやすい。でも単純で素直。騙されやすくてそこは心配だけど、どこか憎めない感じ。

 白百合のことが昔から好きみたいだ。本当に色々わかりやすいやつ。

 

 竜崎 圭吾(りゅうざき けいご)。野球部所属のバカ。

 眩しい坊主頭。ちょっと伸びるとバリアートとか入れちゃうお茶目なやつ。

 いつもなんか笑ってる。にやけてると言うより、もっと爽快な感じで見てて気持ち良い。

 でもなんでも笑顔で乗り切ろうとしてるところがある。困ったときも笑ってる。

 性格は楽天的で豪快な感じ。

 真逆の性格のクソ真面目な筒井とは、どこかウマが合うらしくて、自他共に認める親友同士だ

 

 筒井 惣子郎(つつい そうしろう)。同じく野球部次期主将で、生徒会長。

 絵に描いたような優等生。正義感が強くて、人望も厚い。

 クソ真面目で冗談が通じないところがたまにキズかな。

 細やかな気配りも上手で、周りをよく見てるし、ちょっと心配性。

 中等部時代も学級委員だったり、根っからのリーダー気質。ただ振り回されることも多くて、結構気疲れしてそう。

 意外とおバカな竜崎と気が合うみたいで、昔から仲が良い。親友と公言してる。

 いつの頃からか七瀬と付き合い始めた。お似合いのカップルだ。 

 

 七瀬 和華(ななせ のどか)。筒井の彼女で、真面目な女の子。

 女子の相談によく乗ってるようだ。俺の勝手な見方だけど、影の女って感じ。裏から支える感じ?

 本当に困ったことはみんな彼女に相談する。

 読書家で、家庭的。確か、お母さんを亡くされてるんだ。それに、年の離れた兄弟が多いらしい。

 常に中立の立場にいて、公平的に物事を見てる。

 佐倉が中等部時代、ちょっとややこしい人間関係を抱えていたときも、たぶん七瀬は全力で調整してたんだろうな。

 筒井と一緒で、気疲れが多そう。

 

 最後に、佐倉 小桃(さくら こもも)。女の子らしい、普通の女の子。俺の元好きな女の子。

 控えめだけど、そこそこお茶目なところもある。そこが可愛いんだ。

 か弱そうだけど結構強かな性格で、そのギャップもまたいいんだよな。

 なんか、柔らかい雰囲気なのに、どこかミステリアスな空気が漂ってる感じ。

 芯が強くて、しっかりしてる。中等部時代、ややこしい人間関係のど真ん中にいて、結構大変だったと思うんだけど、めげなかったよなあ……かっこいい……。

 昔は朔也のことが好きだったと思うんだけど、今がどうかはわからない。

 彼氏とかできたのかな?)

 

(以上、俺の独断と偏見に満ちた紹介は終わり。

 全員、エスカレーター式の宍銀学園中等部から高等部に上がって、クラスはばらばらになった。

 なのに、なんでこのメンバーが集められてるんだ?)

 

筒井 惣子郎

「にぃしぃろぉ……、

 ………………、16人だな」

 

道明寺 晶

「ああ」

 

本堂 空太

(そんなにいるのか…………)

 

 

 

 

 

【残り:16人】

 



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002.目覚め-2-

 

目黒 結翔

「てゆーか、どこだよ、ここ」

 

竜崎 圭吾

「それな」

 

小田切 冬司

「なんか、古い洋館って感じだけどね。

 ここは……、目的としては会議室なのかな?

 窓は一切ないけど、ホワイトボードもあるし」

 

道明寺 晶

「特殊な作りだな。狭いが、構造は宴会場に近い。

 それにしては厳かと言うか、……気色の悪い部屋だな。

 見ろよ、この彫刻」

 

本堂 空太

「!!」

(うっわ、そんなものわざわざ見せなくていいのに)

 

八木沼 由絵

「うわぁ~気持ち悪~い」

 

和歌野 岬

「悪魔みたいね」

 

道明寺 晶

「悪魔だろ」

 

間宮 果帆

「……なんだか、雰囲気満載って感じだな」

 

本堂 空太

「うん」

(確かになんか不気味だよね)

 

乃木坂 朔也

「それはこの状況の、ってこと?」

 

間宮 果帆

「ああ。どう考えたっておかしいだろ?

 なんで、こんなところに」

 

本堂 空太

(果帆が不安そうにしてる。どうしよう……。

 彼氏としては、なんか元気付けてあげなきゃ……。

 …………てゆーか、なに、あれ)

 

本堂 空太

「果帆っ」

 

間宮 果帆

「……なんだよ?」

 

本堂 空太

「首……首のところに」

 

間宮 果帆

「え? ……なんだ、これ……」

 

本堂 空太

「……絆創膏?」

 

間宮 果帆

「空太……お前もじゃん」

 

本堂 空太

「え……?」

 

有栖川 直斗

「も、もしかして……」

 

乃木坂 朔也

「美海っ!」

 

白百合 美海

「朔也……朔也もだわ。

 …………アキラ……」

 

道明寺 晶

「ああ、俺にもついてるな」

 

千景 勝平

「俺もだ」

 

八木沼 由絵

「由絵も~」

 

筒井 惣子郎

「みんなについてるのか……」

 

目黒 結翔

「なんかこれ痒くね?

 つーか、掻いてたら剥がれるんじゃねえかな…………いってぇっ!

 え? え? なんだよ、これ!!」

 

小田切 冬司

「どうしたの?」

 

目黒 結翔

「なんか引っ張ったらすげえいてーんだよ!」

 

道明寺 晶

「……触らない方がいいな」

 

目黒 結翔

「ちっくしょう……わけわかんねえよ、

 なんなんだよ!」

 

本堂 空太

(本当に……おかしいよね)

 

 

 

 …………。

 

 

 

白百合 美海

「ね、ねえ、みんな、

 ここに来る前のこと覚えてない?」

 

 

 

 ………………。

 

 

 

有栖川 直斗

「わるい、よく覚えてない」

 

本堂 空太

「俺も……」

 

白百合 美海

「そう……。

 あたしは――学校を出たところまでは覚えてるの。

 果帆と一緒だったわ」

 

間宮 果帆

「ああ」

 

本堂 空太

「思い出した。

 果帆、用事あるって言ってたよな、白百合とだったんだ」

 

間宮 果帆

「ああ。美海が――ケーキ作りたいって言うから、買い出しとか、色々する予定だった」

 

白百合 美海

「うん」

 

白百合 美海

「……それで、バス停に行く途中で、由絵と勝平くんに会ったの。

 それで、四人で暫く話し込んでて……それから……」

 

間宮 果帆

「そうだ、その時にやられたんだ」

 

八木沼 由絵

「そうだったっけ? 全然覚えてな~い」

 

千景 勝平

「俺は覚えてる。

 こいつらが喉が渇いたって言うから、自販機まで買いに行ったんだ。

 俺はその時に、後ろからやられた」

 

間宮 果帆

「始めに勝平がやられて、その後、あたしらもスタンガンで」

 

本堂 空太

「…………」

 

小田切 冬司

「俺も、たぶんスタンガンだったと思う。

 部室にいたんだけど、まだ誰もいなかったから掃除しようと思って、ロッカーを空けたんだ。

 そこに変なやつがいて、そいつにやられたんだけど、顔はわからなかったな」

 

筒井 惣子郎

「……俺と圭吾も、部室だった。

 他の部員もいたはずなんだが、

 ………………思い出せない」

 

竜崎 圭吾

「惣子郎は顧問に用があるって部室を出たんだよ。

 それから戻って来なかった。

 他の部員はみんな帰ったんだけど、俺は一応待ってようと思って、んで、気付いたらこれよ」

 

筒井 惣子郎

「そうだったのか……。

 目黒はどうなんだ? なにか覚えてるか?」

 

目黒 結翔

「全っ然覚えてねーよ!

 クラスの連中とゲーセン行こうって話してたとこまでだよ」

 

筒井 惣子郎

「そうか……」

 

七瀬 和華

「わ、わたしは、お買い物の途中だった。

 今日は妹の誕生日だったから、早く帰ってお祝いしてあげなきゃって、急いでスーパーを出たの。

 それから……覚えてないわ」

 

筒井 惣子郎

「そうか……」

 

小日向 花菜

「うちらも、買い物の途中だったね」

 

和歌野 岬

「ええ。……でも、ごめんなさい、

 わたしは覚えてないわ」

 

小日向 花菜

「そっか。うちらは、駅ビルで買い物しててさ、地下の自転車置き場まで戻って、そこだった。

 サキが……最初にやられて……。

 ごめんね、あたしが着いていながら」

 

和歌野 岬

「花菜、謝らないで」

 

佐倉 小桃

「あたしは……自宅だった。

 お風呂に入ろうとしたところまでは覚えてるわ」

 

乃木坂 朔也

「アキラ」

 

道明寺 晶

「ああ。俺と朔也もそうだった。俺の部屋だ。

 ……直斗、お前も来る予定だったんだぜ?」

 

有栖川 直斗

「そうだったのか……じゃあ、その途中で」

 

道明寺 晶

「恐らくな」

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

乃木坂 朔也

「とりあえず、こうしてても仕方ないし、少し動かないか?」

 

道明寺 晶

「そうだな」

 

筒井 惣子郎

「…………出られるんだろうな」

 

道明寺 晶

「出入口は二ヵ所、か。

 とりあえず、あっちとこっちで二手に別れよう」

 

千景 勝平

「女子はここに残った方がいいんじゃねえか?」

 

道明寺 晶

「いや、一緒に行った方がいいだろう」

 

筒井 惣子郎

「そうだな。

 俺たちがいない間になにかあったら、目も当てられないよ……」

 

千景 勝平

「いや、男が一人残れば大丈夫だろ」

 

本堂 空太

(……………………。

 確かに、みんな不安そうだ。

 果帆も強がってるけど、あんな顔見たことないし。

 あんまり連れ回したくないな……)

 

小田切 冬司

「いいんじゃない?

 俺も、女の子に無理させるのはあまり気が乗らないよ」

 

間宮 果帆

「だ、大丈夫だよ!」

 

竜崎 圭吾

「いやいや、間宮が大丈夫でも他が……」

 

白百合 美海

「平気よ? でも、ありがとう。

 気を遣ってくれて」

 

乃木坂 朔也

「どうする?」

 

道明寺 晶

「まあ、いいか。

 勝平、残れよ。お前なら大丈夫だろ」

 

千景 勝平

「あ? まあ、いいけど」

 

有栖川 直斗

「よし、そうと決まれば」

 

 

 

 まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

乃木坂 朔也

「空太、こっちに来れるか」

 

本堂 空太

「お、おっけー。まかして」

 

 

 

 まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

筒井 惣子郎

「お前らは俺と一緒な」

 

竜崎 圭吾

「おうよ!」

 

小田切 冬司

「うん。心強いね」

 

目黒 結翔

「………………」

 

 

 

 まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

道明寺 晶

「こっちは空太を入れて四人か」

 

本堂 空太

「お、おう!

 役に立てるかわかんないけど、なんでもコキ使って!」

 

有栖川 直斗

「コキ使うっておいおい」

 

 

 

 まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

佐倉 小桃

「ま、待って、みんな!」

 

本堂 空太

「……?」

 

佐倉 小桃

「あ……あれ……」

 

本堂 空太

(テレビ……か……?)

 

 

 

 まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

 

 

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003.ルール説明-1-

 

まだ部屋から出ないで下さい。

 

 

 

本堂 空太

「ちょちょちょ、なんかまだ出るなって」

 

乃木坂 朔也

「なんだ? テレビ……パソコンか……?」

 

道明寺 晶

「ああ。PCと連動してるんだろうな」

 

目黒 結翔

「な、なんで?

 なんで俺らが出ようとしてるこのタイミングで!」

 

七瀬 和華

「やだ……なんだか怖いわ……」

 

道明寺 晶

「どこかで見てるんだろうな……」

 

本堂 空太

「え!?」

(おいおい、そんなの笑えねえよ)

 

筒井 惣子郎

「これは……」

 

小田切 冬司

「うん、大人しくした方がいいね」

 

千景 勝平

「お前ら、こっちに戻れ」

 

目黒 結翔

「ああん? ふざけんな、関係ねえだろ!

 俺は行くかんな!」

 

竜崎 圭吾

「おいおいおい、待ちなさいって」

 

筒井 惣子郎

「目黒、落ち着いてくれ。

 今は要望に従った方がいい」

 

目黒 結翔

「うるせーなあ、離せよ惣子郎!

 従うとか悔しくねえのかよ!?」

 

道明寺 晶

「あのさー、

 場を乱すようなことするの控えてくんない?」

 

目黒 結翔

「ああ!?」

 

白百合 美海

「ちょ、ちょっと、アキラもやめて。

 ……結翔くん、あれ、気にならない?

 一緒に見ようよ」

 

目黒 結翔

「…………///

 ま、まあ、白百合がそう言うなら……」

 

白百合 美海

「うん(にっこり)」

 

目黒 結翔

「………………」

 

本堂 空太

(さすが白百合……)

 

 

 

まだ部屋から出ないで下さい。

画面の中央に集まって下さい。

 

 

 

 …………。

 

道明寺 晶

「遠隔操作か」

 

本堂 空太

(時間が出てる……午前11時12分……。

 襲われたのはたぶん放課後だったんだから、

 あれから一晩越えたんだ……)

 

筒井 惣子郎

「…………従おう」

 

乃木坂 朔也

「……ああ」

 

 

 

私立宍銀学園高等学校の皆さん。

おはようございます。

良い夢を見られたでしょうか。

 

 

 

目黒 結翔

「ふっざけんな! なめてる!」

 

和歌野 岬

「ちょっと黙って」

 

目黒 結翔

「っ…………」

 

本堂 空太

(身元がバレてる……そりゃそうか、

 完全に俺たちを狙ってたってこと?)

 

 

 

まず始めに、

皆さんにはそれぞれ役割を用意してあります。

具体的な指示が記されたカードが

皆さんのポケットに入れてありますので、

後ほどそちらを確認して下さい。

 

 

 

本堂 空太

「カード……?」

 

 

 

注)

カードは絶対に他人に見せてはいけません。

見てもいけません。

このルールを破った場合は死亡します。

 

 

 

 ――――――!!!

 

間宮 果帆

「ちょ、っと、死亡って……」

 

竜崎 圭吾

「冗談きついんだけど」

 

小田切 冬司

「……冗談とも思えないけどね」

 

八木沼 由絵

「……なにかの比喩じゃないの~?」

 

道明寺 晶

「待て……画面が変わった」

 

 

 

さて、皆さんは市民です。

市民の皆さんは、

自分のことを『村人』と名乗って下さい。

ですが、

この中に三人、『人狼』が紛れこんでいます。

村人の皆さんは協力し合い、

人狼を探し当てて下さい。

 

 

 

道明寺 晶

「……『人狼ゲーム』だ」

 

有栖川 直斗

「『人狼ゲーム』?」

 

道明寺 晶

「ああ、外国のボードゲームだな」

 

 

 

夜8時にこちらの会議室に集まり、

人狼が誰なのか話し合いを行って下さい。

話し合いの次は『投票』に移ります。

それぞれ人狼だと思う人を指差して下さい。

一番票を集めた人を夜9時までに

『処刑』して下さい。

 

 

 

注)

処刑とは、

文字通り殺害すると言うことです。

殺害方法は問いませんが、

道具をいくつか用意してあります。

ご活用下さい。

 

 

 

 ――――!!!?

 

 

 

 

 

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004.ルール説明-2-

 

千景 勝平

「なっ……!!?」

 

竜崎 圭吾

「なな、な、なん、な、な……」

 

小日向 花菜

「な、なに……ウソでしょ……」

 

目黒 結翔

「ふざけんな!

 そんなことあるわけねえだろ!」

 

間宮 果帆

「静かにしろよ!

 まだ最後まで終わってないだろ!」

 

目黒 結翔

「ああ!? なんだとてめ――――っ」

 

本堂 空太

「やめろ!!」

 

筒井 惣子郎

「このバカ!

 気持ちはわかるから今は我慢しろ、

 命に関わることかも知れないんだ!」

 

目黒 結翔

「クソっ!」

 

和歌野 岬

「……画面が変わったわ」

 

 

 

最多投票者が複数いた場合は、

それ以外の皆さんで決選投票を行って下さい。

決選投票でも票が割れた場合は、

その日の処刑は厳禁とします。

 

 

 

注)

投票結果が出ているにも拘わらず

処刑できなかった場合は、

全員死亡します。

 

 

 

乃木坂 朔也

「…………ちくしょう……」

 

 

 

深夜11時までに、

各自割り当てられた部屋に戻って下さい。

戻らなければ死亡します。

部屋は施錠され、早朝6時までは出れません。

6時になれば自動的に解錠されます。

ただし、三人の人狼はこれに該当しません。

 

 

 

人狼の皆さんは、

深夜0時から2時までの間に、

村人を一人選び『襲撃』して下さい。

 

 

 

注)

襲撃とは殺害すると言うことです。

詳しい方法についてはカードをご確認下さい。

特定の事象を省き、

襲撃できなかった場合は全員死亡します。

 

 

 

八木沼 由絵

「やだ……もう意味わかんないよお……」

 

千景 勝平

「…………」

 

白百合 美海

「…………」

 

 

 

これを繰り返し、

勝利が確定するまで続けて下さい。

人狼を全員処刑できれば

その時点で生き残った村人全員の勝利です。

その逆に、

村人と残っている人狼の人数が揃ったときは

人狼の勝利となり村人は全員死亡します。

 

 

 

白百合 美海

「ま、待って下さい!」

 

乃木坂 朔也

「美海っ!?」

 

道明寺 晶

「――――――!」

 

白百合 美海

「あ、あの……聞こえてますか!?

 あたしたち、あの、友達なんです!

 もし本当なら、こんなことできません!

 できるわけありません!」

 

道明寺 晶

「美海っ、落ち着け、余計なこと言うなっ」

 

間宮 果帆

「美海…………っ」

 

白百合 美海

「あの、あたしっ、拒否します!

 拒否したらどうなるんですか!?

 教えて下さい!」

 

間宮 果帆

「美海っ、ちょっと、黙って!

 下手なこと言っちゃダメだ!」

 

有栖川 直斗

「美海っ!」

 

白百合 美海

「だって……だってえ……、

 ひどいよ……こんなの……ひどいじゃない……」

 

本堂 空太

(白百合…………)

 

小田切 冬司

「……そうだよ。俺も、そう思う。

 おかしいでしょ、一方的にこんなの。

 暴行、誘拐、監禁、殺人強要!

 誰か知らないけど、あなたたちがしていることは、犯罪だ!

 それにこんなに大勢を誘拐して、警察が動かないわけがない!」

 

本堂 空太

(そうだ! 警察……っ!

 たぶん、捜索願が出されてるはずだ!

 きっとすぐに、助けが……!)

 

筒井 惣子郎

「落ち着けっ……頼む、犯人を刺激しないでくれっ!

 わかるさっ、白百合も小田切も、言いたいことはみんなわかってるからっ」

 

佐倉 小桃

「…………、あっ!

 呼び掛けに応じたわ!」

 

 

 

皆さんには一切の拒否権はありません。

それでも拒否した場合は死亡します。

どのように死亡するかについては

今から流す映像をご覧下さい。

生放送です。

 

 

 

 ――(画面暗転)――

 ――(10秒沈黙)――

 ――(牢屋のような映像)――

 ――(吊るされた元クラスメイトが二人)

 

 

 

本堂 空太

「あっ!!」

 

七瀬 和華

「あ……ああ……」

 

佐倉 小桃

「や、……弥重!?」

 

千景 勝平

「秋尾……っ!!!」

 

 

 

 

 

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005.見せしめ

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《クッソっ、弥重……! 弥重っ……!》

 

都丸 弥重

《俶くん……っ、こわいよ…………っ!》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

八木沼 由絵

「うそ!? 秋尾くんと、弥重ちゃんだよっ、

 …………勝平っ」

 

千景 勝平

「ああ、ああっ!」

 

 

 

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《弥重……、大丈夫だっ、すぐに俺が!》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

本堂 空太

「………………っ」

 

(秋尾 俶伸(あきお よしのぶ)。それに、都丸 弥重(とまる やえ)。

 この二人も、元クラスメイトで、中3の頃からお似合いのカップルだ。

 

 秋尾は、勝平と同じような非行少年で、よくつるんでいたし、今もかなり仲が良いはずだ。

 背は高くないけど筋肉質な体型で、たぶん、ケンカも強い。

 けど本人は、あまり精力がないと言うか、無気力でぼーっとしてる印象が強い。

 少なくとも同じクラスだった時は、問題を起こすこともなかったし、はしゃいでるイメージとかはあまりない。

 けど、どこか存在感があるんだ。黙っていても目立つタイプで、その点は勝平と似ていたんだと思う。

 そんな秋尾だけど、彼女である都丸に関してだけは別だったみたいだ。

 熱心で、一途で、一生懸命で、全力で支えて、心の底から思いやっていた。

 だから、お似合いのカップルだったんだ――――。

 

 都丸は、少し不思議な話し方をする女の子だ。詩人のような。

 中等部時代、佐倉と仲が良かったけど、…………聞いた話によると、佐倉も都丸も、朔也のことが好きで。

 同じ人を好きになってしまったばかりになんとなく、気まずくなって、中2の後半くらいからそれぞれ別のグループになって、離れた。

 佐倉はその時、七瀬も所属してたクラスでも巨大な女子のグループに引き込まれたけど、都丸は保健室に入り浸ってる面々と、細々と交友してたみたいだ。

 休み勝ちだったりで教室にいないことが多い友人の中で、ひとり寂しそうにしてたのを白百合が見かねて、都丸に片想いしてた秋尾をけしかけたり、二人を遊びに誘ったりして、仲を取り持ったと言うのは有名な話だった。

 都丸は少しずつ明るくなったし、おかげでクラスは平和だった。卒業するまで、ずっと――――)

 

白百合 美海

「うそよ……弥重ちゃんと、秋尾くんまでなんて……っ」

 

佐倉 小桃

「…………弥重、なぜ……なぜ……あなたまで……」

 

 

 

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《くそっ、この縄……っ、

 ……、…………っっ!!

 

 ――――てめえか、

 俺らをこんな目に合わせたのは》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

筒井 惣子郎

「いかん!!」

 

間宮 果帆

「あ、秋尾! 刺激しちゃダメだ!」

 

 

 

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《てっめえ……、離せコラ!》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

七瀬 和華

「だめっ、聞こえてないわ!」

 

白百合 美海

「秋尾くん! 弥重ちゃん!」

 

本堂 空太

(秋尾……いつも無気力な感じなのに、

 あんなに血走った顔をして……別人みたいだ……)

 

小日向 花菜

「やめて……やめてくれ、秋尾……」

 

和歌野 岬

「………………なにをする気?」

 

 

 

――(首のアップ)――

――(絆創膏のようなもの)――

 

 

 

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《てめっ、なんのつもりだよええ!?

 聞けよおい!!

 いいか、もしそいつに手を出しやがったら絶対にてめえを殺してやるからな!!

 聞いてんのかよおい!! この変態野郎!!

 弥重をこんな目に合わせやがってぜってーぶっ殺してやる! 殺してやる!

 

 殺してや――――――――っ、!!》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

――(首から引き出す血)――

――(真っ赤に染まる画面)――

 

 

 

竜崎 圭吾

「うわああ!」

 

佐倉 小桃

「きゃああ!」

 

 

 

-----------------------------------------------

 

秋尾 俶伸

《…………………………》

 

都丸 弥重

《き、きゃあああああああ!!

 俶くんんん俶くうううんんんん!!

 うぁあぁ……あぁあ……あああ俶くんんんんわああああああああ!!

 あああああああああ、ああああああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!》

 

秋尾 俶伸

《…………………………》

 

-----------------------------------------------

 

 

 

目黒 結翔

「う、うわあああああああ!!」

 

八木沼 由絵

「きゃあああああああああ!!」

 

白百合 美海

「あ…………あ…………」

 

 

 

 

 

――(画面暗幕)――

 

 

 

このようになります。

ご理解いただけたでしょうか。

 

 

 

 

 

千景 勝平

「うそだろ……秋尾…………」

 

乃木坂 朔也

「…………っ」

 

道明寺 晶

「……くそっ…………」

 

 

 

 

 

秋尾俶伸さんは死亡しました。

都丸弥重さんは人質になりました。

これより反抗的な態度は慎むようお願いします。

 

 

 

 

 

白百合 美海

「あ……あ……っ」

 

乃木坂 朔也

「美海…………」

 

白百合 美海

「あたしのせいだ…………、

 あたしが……あたしが……っ」

 

小田切 冬司

「……白百合さんだけのせいじゃないよ、

 俺も……っ、同罪だよっ、……ごめん!」

 

筒井 惣子郎

「……お前たちのせいじゃない」

 

有栖川 直斗

「ああ……どこの誰かしらんが、悪いのは奴らだ。

 …………くそったれ!」

 

道明寺 晶

「………………」

 

本堂 空太

(……画面が…………)

 

 

 

 

 

説明を続けます。

村人は一刻も早く、

人狼を探し当て処刑して下さい。

人狼は仲間と協力し合い、

処刑されないよう気を付けて下さい。

 

 

 

 

 

白百合 美海

「うう……ひっく……」

 

八木沼 由絵

「うう……っ、

 美海~……泣かないで~……ううっ」

 

間宮 果帆

「く…………っ」

 

 

 

 

 

特殊能力について・・・

村人の中には、特殊な能力を持った者が

多数潜伏しています。

『占い師1人』、『霊媒師1人』、

『用心棒1人』、『共有者2人』、

『裏切り者1人』、計6人です。

 

 

 

 

 

本堂 空太

(特殊能力……?)

 

 

 

 

 

『占い師』は毎晩、市民の中なら一人を選び、

その者が『村人』か『人狼』かを

占うことができます。

『霊媒師』は翌日、前日に処刑された者が

『村人』だったのか『人狼』だったのかを

知ることができます。

 

 

 

 

 

注)

占い結果、霊媒結果、

どちらも対象者の能力までは

見破ることができません。

あくまで『村人』か『人狼』かのみです。

 

 

 

 

 

和歌野 岬

「ちょ、ちょっと待って。

 誰か、メモ書きかなにかできない?」

 

目黒 結翔

「く、ぅ……ああ?

 お前……このゲームする気かよ……っ」

 

和歌野 岬

「そうじゃないけれど……念の為よ」

 

目黒 結翔

「念の為ってなん――――っ」

 

道明寺 晶

「やめろよ。……心配ないさ。

 ちゃんと把握してる」

 

和歌野 岬

「そう…………」

 

 

 

 

 

『用心棒』は毎晩、市民の中から一人を選び、

その者を人狼の襲撃から守ることができます。

用心棒の防御が成功した場合、その日、

人狼はそれ以上襲撃することができません。

 

 

 

 

 

注)

深夜11時から深夜0時までに

対象者を選んでください。

0時以降になりますと能力は使えません。

用心棒は自分自身を守れません。

 

 

 

 

 

小日向 花菜

「サキ…………」

 

間宮 果帆

「………………」

 

 

 

 

 

『共有者』は2人います。

特別な能力を持ちませんが、

互いに人狼ではないことを知っています。

 

 

 

 

 

乃木坂 朔也

「…………」

 

小田切 冬司

「…………」

 

 

 

 

 

『裏切り者』は反逆者です。

村人でありながら人狼勝利のために働きます。

人狼が敗北したときは一緒に滅びます。

 

 

 

 

 

注)

占い結果、霊媒結果共に、

裏切り者を見破ることはできません。

裏切り者は人狼が誰かを知りません。

人狼も裏切り者が誰かを知りません。

 

 

 

 

 

本堂 空太

(なんだよそれ……、

 敵は『人狼』だけじゃないってこと?

 ……いや、『敵』って……敵は、俺たちを誘拐した犯人だろ?

 なにを考えてんだよ、俺は……)

 

佐倉 小桃

「………………」

 

筒井 惣子郎

「………………」

 

 

 

 

 

続いて施設に関する説明です。

窓の類いはありません。

外へ出ることはできません。

施設内であれば自由に移動できますが、

一部、施錠された部屋に関しては

使用することができません。

 

 

 

 

 

皆さんにはそれぞれ自室を用意してあります。

トイレは完備されていますが、

シャワーは公衆浴場をご利用下さい。

食糧や衣類等の生活用品は、

地下倉庫にて深夜に補充されます。

 

 

 

 

 

投票・処刑は原則として会議室にて行って下さい。

処刑用の道具は会議室から持ち出さないで下さい。

処刑・襲撃とは関係のない暴行・殺人、

建物の損壊等の器物破損は厳禁とします。

違反した場合は先ほどの映像のようになります。

ご注意下さい。

 

 

 

 

 

さて、最後になりましたが、

自己犠牲や心中を目的とした

人狼による自白を禁じます。

ゲームの性質上、必要に迫られた場合のみ、

会議室にて名乗り出ることを許可します。

それ以外の場合は全員死亡しますので、

無駄な自己犠牲精神は捨てた方が吉です。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

それでは、

これよりゲームを開始します。

 

本格派『人狼ゲーム』をどうぞお楽しみ下さい。

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

勝てば自由、負ければ死。

 

『汝は人狼なりや?』

――Are You a Werewolf?

 

――――ゲームスタート

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 …………………………。

 

 

 

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