ゴブリン成長記 (補う庶民)
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1話

初めまして。
補う庶民と申します。
拙い文章ではございますが楽しんでもらえたら幸いです。


それはいつもの朝だった。

いつもの時間に起きて朝ごはんを食べ、着替えて高校に行く。
電車に乗って座席に座り、鞄から単語帳を取り出す。
他の席ではガラの悪そうな人達やサラリーマン達が漫画やゲーム、スマホで暇を潰している。
ゲームやってる人たちをチラ見して単語帳に目を移す。
自慢ではないが成績は十位以内をキープ出来る位には頭がいい。
クラスでは他の人の話題についていけず、カーストでは二軍に所属している。
ボッチというわけではない。友達はちゃんといる。

ガタンゴトン ガタンゴトン

「retain、strain、sensible、……」

昨日覚えた単語の復習をする。
春から夏に変わろうとしているのか、日差しの暖かさが心地良い眠気を誘ってくる。
単語帳から目を離し、眠気を覚まそうと欠伸をして目尻を揉む。
だが眠気が覚めるどころか、どんどん眠くなり、ウトウトしているといつの間にか眠ってしまった。



眼が覚めると俺は四畳一間の洋室にいた。
目の前には椅子と机とパソコン。

「え、どこ?」

周りを見渡してみる。
壁の色は白で床は木材のフローリング。
学校鞄が置いてある。何か盗まれた様な形跡はない。
身に付けていた腕時計はなくなっていた。
すぐ横に冷蔵庫が置いてあり、中には様々な缶ジュースが置いてある。
服装も制服のままだ。
そして…………

「ドアがない……」

俺はどうやってこの部屋に閉じ込められたのだろう。
ドアも無ければ窓もない。
脱出は不可能だ。
もしかして俺はまだ夢を見ているのだろうか。
太ももをつねってみる。

「普通に痛い」

俺は誘拐されてしまったのだろうか。
どんなメリットがあって?
取り敢えず冷蔵庫からコーラを取り出して椅子に座りパソコンを起動させてみる。

しばらく待っていると画面にこう表示された。

『転生設定画面』

「……何だこれ。転生?俺は生まれ変わるの?」

取り敢えずクリックしてみる。

『転生先: 人間 魔物 』

まず人間を選択してみる。

『転生先: 人間 LP:100

人間、獣人、魔人などに転生できます。
魔物とは違いLPを多めに消費します。
スローライフを楽しむのも良し、世界中を
冒険するのも良し、自由な生活を過ごせる
ことでしょう。 』

戻って魔物を選択してみる。

『転生先: 魔物 LP:100

様々な魔物に転生できます。
人間とは違いLPは多めに消費します。
その代わり人間とは違いレベルマックス
まであげることにより様々な進化をする
ことが可能です。
全人類共通の敵であるため平和に生きて
いくことは諦めた方がいいかもしれませ
ん。
刺激的な生活を望む人向きです。 』

「なにこれ、ゲーム?」

俺は今までゲームをしたことがない。
親が言うには将来何の役に立たないからだそうだ。
親は何よりも勉学を優先する人だった。

「今何時だ?」

携帯がないから時間を確認することができない。

「取り敢えずゲームでもやって時間を潰すしかないかな」

なんせ状況が全くわからない。
そのうち警察が発見してくれるだろう。
それまで待っていればいい。
コーラを一口飲む。

「せっかくだから魔物にしてみようか」

『転生先: 魔物 で決定しますか』

Yesと選択する。

『魔物を選択して下さい。 残りLP100 』

色々な魔物が種族ごとに表示される。
種族の種類は豊富だがその中で選択出来るのは少ない。
例えば、

スライム族

ベビースライム スライム

という様に基本的にベビーかどうかしか選べない。
進化を楽しむための配慮なのだろうか。
ベビースライムを選択してみる。

『転生先:ベビースライム 消費LP:10』

戻って今度はスライムを選択してみる。

『転生先:スライム 消費LP:30』

また戻ってドラゴンを選択してみる。

『転生先:ドラゴン 消費LP:5000』

そもそもLPが足りない。
ベビーの方でも3000と余裕で足りない。

「二足歩行がいいよな。人間も二足だし」

二足歩行する種族を探してみる。
だがそのほとんどがLPが足りず選択できない。
残ったのがゴブリンかオークである。
しかもオークはベビーしか選べない。

『転生先:ベビーオーク 消費LP70』

『転生先:ゴブリン 消費LP50』

「もうこれゴブリン一択じゃん」

ゴブリンを選択する。

『転生先:ゴブリンで決定しますか?』

Yesを選択する。

『スキルを設定して下さい。 残りLP50』

ズラッと色々なスキルが表示される。
剣術とかわかりやすいものからよくわからないものまでたくさんある。
しかもどれだけ下にスクロールしても終わりが見えない。
取り敢えず今あるポイントで取れるスキルを探してみる。
取り敢えず武器を使うスキルは取らない。
なくても大丈夫だろ。
魔法?ポイントが足りない。

「鑑定……何だこれ、凄い便利そう。ポイント足りないけど」

飲み終わったので冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。
飲みながらどんどんスクロールしていく。

「マイナススキル? ほー、凄いな」

デメリットを背負う代わりにLPが少し増えるスキルもあった。

「お、これいいんじゃないか」

言語習得不可 獲得LP35

ゴブリンに言語もクソもないだろ。
武器装備不可とかは流石にキツイし。
いろんな飲み物を飲みつつ結局俺が選んだのは

言語習得不可 獲得LP35
HP上昇(小) 消費LP35
毒耐性(小) 消費LP40

合計75ポイント。
10ポイントでとれるスキルで欲しいものは特にない。
残りのポイントで欲しいスキルはない。

『スキル:HP上昇(小)、毒耐性(小)でよろしいでしょうか』

Yesを選択する。

『ステータスを表示します。
種族:ゴブリン
HP :14
MP :3

スキル
HP上昇(小) 毒耐性(小)
言語習得不可

これでよろしいでしょうか』

Yesを選択する。

『それでは転生します。ご健康とご多幸を心よりお祈りいたします』

と表示されると共に体に何か違和感を感じ始める。
下を見るとつま先からどんどん消え始めた。

「な、何だよ!これ!」

腰まで消えて椅子から落ちる。
飲みかけのオレンジジュースが床に溢れた。
体が消え、両腕も消え、顎も消えていく。

「た……え…」

口が消えて話せなくなり視界もどんどん暗くなっていく。

そして全てが真っ暗になった。



設定変更しました。すみません


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2話

目が覚めると俺は森の中にいた。
見上げると翼が4枚ある鳥が空を飛んでいた。
そして気づく。目線が低くなっている。
俺の身長は175ぐらいなのだが明らかに小さくなっている。1m位だと思う。
両手を見ると肌は濃い緑色で全体的に細身だ。
しかもめっちゃ猫背。
身につけているのは布製の腰ミノだけ。
周りを見渡してみる。
姿を確認できそうなものはない。
木や草など植物しか見えない。
不意にさっきまでのことが頭をよぎる。

「グギィ。グギャギャ」

上手く話せない。
肌色的に人間だとは思えない。
間違いない。俺はゴブリンになってしまった。
さっきまでゲームだと思って作っていたキャラクターは本当の自分の転生先だった。

しばらく呆然としていると不意に家族や友達の事を思い出してしまった。
寂しい。
どうしてこうなってしまったのだろうか。
何か悪い事とかした覚えはない。
今までただただ平凡に過ごしていた普通の高校生だったはずだ。
ところがどうだ。今の俺はよくわからないゴブリンとやらになってしまっている。
一人ぼっちで地球かどうかもよくわからないどこかの森の中にいる。
もう会えるかどうかもわからない。
会えたとしても俺は今、ゴブリンだ。
化け物扱いされるだけだろう。
目の前に木の枝が見える。
木の枝を持ち、鋭いところを喉に向ける。

もし死ねば元に戻れるのだろうか。
だが手が動かない。
腕を思いっきり引けばいいだけだ。
遠慮することはない。
どれだけ力を込めても木の枝の先が喉に触れるだけでこれ以上動かすことができない。
自分で自分を刺すことができない。
見上げると4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪をこっちに向けて勢いよく向かってくる。
このままジッとしていれはこの鳥が俺を殺してくれるのだろうか。

「グギャギャギャ!」

だが俺の体は意志と反して鳥から逃げ始めた。
がむしゃらに、思いっきり間抜け面を晒しながらどんどん森の奥に入っていく。

しばらく走って立ち止まる。
足遅くなったなとどうでもいいことを考えながら息を整える。
俺は思う。
俺は自殺をすることができないようだ。
何かに殺してもらおうと考えても体が言うことを聞かない。
俺の意思は死のうと考えても俺の体はそれを許さない。
死ねない。ならどうすればいいのか。
探して見つけるしかない。
人間に戻り、家族の元に帰るための方法を。
取り敢えず、魔物は進化することができる。
いまはそれに賭けるしかない。
家族の元に帰る方法は当ても何もない。
魔物は全人類の敵だ。
街を見つけても入れないだろう。

「グギィ、グギャギィ」

絶望を無理やり抑え、気分を切り替える。
取り敢えず進化するためにレベルを上げる必要がある。
他には衣食住も揃えなくてはいけない。
衣は腰ミノでいいだろう。
服はあまり重要ではない。
食べ物……ゴブリンは何を食べるんだ?
普通に肉とか野菜とか?
ちくしょう、もっとちゃんと杉元の話を聞いとけばよかった。
住む場所もどうしようか。
木の上を見る。

「グギィ」

俺が乗っても折れないほど太い枝がそこら中にある。
そこで寝れば大丈夫だろう。
いつまでもくよくよしてたって何も状況は変わらない。
何をするにもまず行動するしかない。
まず食料を探そう。
そう考えて俯いていた顔を真っ直ぐに向ける。
目の前に緑の小人がいた。
俺と同じゴブリンである。
俺と違うところは刃こぼれが凄い剣を持っている。

「グギャギァ!」

俺はすぐに背を向けて走り出した。
後ろをチラッと見ると俺を追いかけてくる。
後ろを見ると追いかけてくる。
なんか叫んでいるがグギャとしか聞こえない。
だが俺の方が速く、そのうち振り切ることができた。

「ギャァ、ギャァ、ギャァ」

息を落ち着かせる。
体力のなさが半端無い。
すぐに息が切れる。
今の自分の体の状態を知りたい、そう思った瞬間、

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv1/10
HP :12 LP:10
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv1/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

なんか表示された。
見覚えのある画面。さっきまで自分で作成したステータスだ。
目を引くのは言語習得不可。
多分これのせいでさっきのゴブリンの言葉が理解できなかったのだろう。
ちくしょう。選ばなきゃよかった。
これのせいで言葉を習得することが出来ない。
つまり相手が何を言っているか理解することができないと言うことだ。
ボッチよりもひでぇよ。
一生誰とも話せないのだろうか。
どうにかして失くせないかな。無理か。
………食料探そうか。


何が食えるのか全くわからないということにすぐに気付いた。
キノコを見つけても毒があるかどうかがわからない。
毒耐性は一応持ってはいるが(小)だからあまり期待できない。
そう考えると食べる気がなくなってしまう。
さっきまで死ぬことを考えていたくせにいざとなると日和ってしまう。
つい失笑がもれる。

「ギィ」

どうでもいいけどゴブリンってガ行からしか話せないっぽいな。
草もどれが食えるか分からない。
手に持っている先が鋭い木の枝を見る。
最悪、韓流ドラマで見たように木を食べるしかない。
本当の最終手段だけど。
しばらく進んでいるとネバネバした物体を見つけた。
色は透明な緑色で中に目っぽいものが1つある。大きさは小さい
あれがスライムという奴なのだろうか。
多分大きさ的にまだベビーなのだろう。
食べられるのだろうか。
取り敢えず近づいてみる。
相手もこっちに気付いたようで近づいてくる。
するとすぐに食べられないことに気付いた。
液体の中にある葉っぱが少しずつ溶けていくのが見える。
あんなもの食べたら口の中から溶けてしまうだろう。
中にある目っぽいものはたべれるのだろうか。
初戦闘である。少し緊張する。
持っている木の枝を構え、相手がどう動くかを見る。
………ノロノロと真っ直ぐにしか進んで来ない。
凄いおっそい。凄い警戒してた自分が馬鹿みたいだ。
木の抜けた俺は普通に歩いて相手に近づき、
鋭い先っぽで目っぽいものに刺す。
少し目っぽいものが振動して周りについていた透明な緑の液体がまるで力を失ったかのように目っぽいものから流れ落ちていき、地面に染み込んでいった。

「ギィギァ」

なんかグロいな。
枝に刺さってるものを見る。
これは食べられるのだろうか。
焼いた方がいいのだろうか。でも火がない。
木を使う方法があるがうまくいく気がしない。
枝に刺しっぱなしにして他の食料を探しにいく。

ベビースライムを見て俺は気が緩んだのだろう。
俺は自分の後ろについてくる大きな影に気づかなかった。

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3話

森の中をどんどん進む。
今のところ食べられそうなのはそこらへんに生えているキノコとか木の枝に刺さってる目っぽいものだけだ。
たまに遠くに俺と同じゴブリンが見えるが流石にゴブリンを食べる気はない。
あれからスライム系には出会えず、出会えるのは俺と同じゴブリンやツノがあるイノシシとか勝てる気がしないものばかりである。
ゴブリンは集団で動いているため攻撃しようと思えない。
つまりレベルも上げられない。

「ギィギィギィ」

目っぽいもの——もう目でいいか、目を食べるしかないのか?
触ると一年の頃に生物の実験で触った豚の目と同じ感触で食べる気が失せる。
男は度胸。口の中にスライムの目を放り込む。
噛むと中からドロっとしたのが流れてくる。
無味でとてつもなく臭い。
そして中には小さな石みたいな塊があった。

「グェェェェェェェ!!」

思いっきり吐き出す。凄い気持ち悪い。
食えたものでない。涙が出てくるほど臭い。
吐き出したものの中にあった1センチくらいの透明な石を拾いあげる。
どこからか怒りがこみ上げてくる。
見上げると4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪を俺に目掛けて突っ込んできた。
俺は慌てて前に避ける。
俺を捕まえ損ねた鳥は怒ったのだろう。
俺から一定距離を保ったままこちらを睨みつけてくる。
いつもの俺だったら一目散に逃げただろう。
だがスライムのこともあり俺は怒っていた。
溜まっていたものが溢れるかのように俺は怒り狂っていた。
俺はこの理不尽な状況に対して何かに八つ当たりがしたかったのだろう。
俺は何を考えたのか持っていた木の枝を鳥に向かってやり投げのように投げる。
真っ直ぐに鳥に飛んでいったが鳥は飛んでいるのだ。普通に避けられる。
枝はそのまま何処かへ行ってしまった。

「グギャァァァァァァァ!!」

鳥に向かって威嚇するように叫ぶ。
普段の俺では考えられない。
鳥はかぎ爪を構えてこっちに突っ込んでくる。
運動しない文系の俺でもどうにか見えるくらいの速度。
横に避けて相手が飛び上がるタイミングで手に持っていた透明な石を投げる。
今度は当たったが効いた様子はない。
避けたことで相手はますます怒ったのだろう。
ピューイとひと鳴きした後、俺に体当たりしてきた。
また避ける。だが相手は俺に向き直るとまた突っ込んでくる。
今度は避け損ねてしまい羽が太ももに当たり少し切れた。
緑色の血が流れ出す。
それを見て俺はさらに怒り狂い、飛び上がろうとした瞬間に鳥の足を掴んで引っ張る。
鳥は飛ぼうと一生懸命に翼を動かす。
いくら力一杯引っ張ってるとはいえ俺は貧弱なゴブリンだ。
耐え切れずに左手を離してしまう。
すると鳥は勢いよく右に曲がり、勢いが良すぎたのか、パキッと俺が掴んでる足の方の骨が折れる音がした。
鳥は地面に落ち、俺もそのまま倒れる。
相当痛いのだろう。鳥は体を震わせ、再び飛び上がる気配はない。
俺は両手で持てるくらいの石を持ち、鳥に近づく。
鳥は慌てて飛ぼうとするがうまく飛べないようだ。
俺は鳥の頭の上まで石を持っていき、思いっきり叩きつける。
あたりに真っ赤な血が飛び散った。
体に力が入らなくなってその場に座り込む。
鳥を殺して急に冷静になり、とんでもないことをしてしまったという感覚が襲ってくる。

「ギィ」

石をどける。
潰れてグチャグチャになっている。
吐き気がこみ上げてくるが胃の中には何もないため胃がヒクヒクして辛いだけだった。
ステータスを表示する。


『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10
HP :9/18 LP:16
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

レベルとLPが増えて、HPが減っていた。
HPが減っているのは太ももにくらった傷のせいだろう。
俺は鳥を背中に背負って、川のある場所を探しに歩き出した。


しばらく歩いて湖がある開けた場所を見つけた。
湖の中に鳥を浸けて洗い、拾った石の破片で腹を切ってやり方がわからないまま解体を始める。
取り敢えず翼を付け根から切り落とし、皮を剥ぐ。
次は腹を真ん中から掻っ捌き、内臓を全て取り外す。
頭と内臓は湖の中に捨てて、残りの肉を湖につけ、血を洗い流す。
出来るだけ血を出しきって平べったい岩の上に置く。
火の起こし方はわからない。生で食べるしかないだろう。
俺が殺したのだ。食すことは供養だと聞いた事がある。
ステータスを見るにレベルを上げて進化するにはこれからも殺していかなきゃいけないのだろう。
スライムでは感じなかった感覚だ。
肉を一部切って口に入れて噛む。
血生臭い香りが鼻を突き抜ける。
飲んでまた肉を切り分けてまた食べる。
何も考えず一心不乱に食べる。
不味い。ちゃんと洗い切れてないところから鳥の血が流れ込んでくる。それも飲みこむ。
寄生虫などの問題もあるかもしれない。
俺はそんなことも気にせずに飲み、食べていった。


全てを食べ終える頃、自分の何かが変わった気がした。

水を飲みにきたのだろう。
ゴブリンが一匹、森から出てきた。
ゴブリンは俺を見るとそのまま湖の方へ行き、水を飲み始める。
水を飲んでるゴブリンの後ろに立ち、石で思いっきり殴りつける。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
反撃される前に殴り殺す。
殺しても余り罪悪感は感じなくなった。
感情の一部が麻痺してしまったのだろうか。
ステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10
HP :18/18 LP:16
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

レベルが上がらない。
このゴブリンが弱かったのか。鳥の方が強かったのか。
どっちもだろう。
HPが全て回復していた。時間で回復するのだろうか。
LPは何に使うのだろう。
スキルにふることもできない。
進化するのに使うのかもしれない。

さらにレベルアップするため俺は石を持ち、獲物を探しにいった。
太ももの傷はいつの間にか塞がっていた。




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4話

俺が異世界に来て1週間が経過した。
一匹で行動しているゴブリンを狙って倒していったせいかレベルがなかなか上がらない。
だがレベルが上がると俺の体も強化されるようで、やりがいがある。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv7/10
HP :27/27 LP:26
MP :7

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

レベルもなかなか上がらなけりゃスキルもなかなか上がらない。
毒耐性は空腹に耐えかねてキノコを食べてしまった時に成長した。
うまい毒キノコだったよ。HPが1になったときは恐怖を感じたね。
1週間も経つと俺も慣れて来たのか殺すのになんの躊躇いもなくなっていた。
今ではただの作業になってきている。
ゴブリンを探してぶっ殺す。ゴブリンを探してぶっ殺す。ゴブリンを探してぶっ殺す。
夜になると木によじ登り枝に寝っ転がる。
落ちる心配からか余り深くは眠れない。
喉が渇いたら湖で水を飲み、腹が減ったら湖に泳いでいる魚を捕まえる。
初日に捨てた鳥の内臓が餌になっているのかよく取れる。
火が作れないから生で食べるしかない。
内臓はまた湖に捨てる。
スライムも発見できないし、鳥も余り襲ってこない。
ゴブリンが圧倒的に多い。
たまにツノがある猪を攻撃してもダメージを与えられない。
俺が貧弱すぎる。
1匹で行動しているゴブリンを発見。
手に持っている石をゴブリンの頭目掛けて思いっきり投げる。
石は当たらずゴブリンの横を通り抜けていった。
ゴブリンはこっちに気付いて襲いかかってくる。
ゴブリンが殴りかかってくるのを避けて、足払いをかける。
ゴブリンは思いっきり転び、倒れているゴブリンの上に乗り石の破片を頭に突き立てる。
レベルが上がることによってこういうこともできるようになった。
上がる前までは胸に突き刺していた。
ステータスを確認する。


『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv8/10
HP :30/30 LP:28
MP :8

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

レベルアップした。
あと2つ。先はまだ長い。
その場から立ち去り湖に戻る。
湖は拠点みたくなってきた。
湖に近づくたびに何故か騒がしくなってきた。
近くの木に隠れて覗き込む。
そこには4人組の男が焼き魚や焼いて萎んだ丸いものに何かを振りかけて食べていた。
丸いものはなんか見覚えがある。
よく見るとスライムの目のような気がしないでもない。
あれはそうやって食べるのか……。
よく見ると剣や杖を持っている。
男たちの近くには死んでる猪があった。
ツノは折られている。
つまりあの男たちは確実に俺よりも強い。
そして俺は全人類の敵である魔物である。
近づけば殺されてしまうかもしれない。
だが、あの男たちについていけば街か村がどこにあるのかわかるかもしれない。
男たちは食事を終えると1番がタオがいいやつが猪を担いで歩き出す。
俺も遠くからこっそりついていく。

「?????????」
「????」

結構声はでかいがなんていっているかは全く理解できない
言語習得不可の所為だ。
ただわかることは日本語ではないということだ。
しばらく進んでもまだ森から出れない。
この森は思ったよりも広いかもしれない。
さらに進むと男たちは森から出て近くには街が見えた。
遠くには結構大きい城も見える。
王様とかいるのだろうか。
俺は森から出ずに木に隠れてみてる。
街は石壁でぐるっと囲まれていて魔物対策をしているようだ。
門には門番がしっかり警備している。
男たちは門番に何かを見せてから門の中に消えていった。
男たちを見届けてから湖まで戻る。
なんとも言えない感情が俺の体の中を駆け巡る。
3匹1組のゴブリンを発見した。

「グギャギィ」

不意打ちで石を投げつける。
今度は当たり、当たったゴブリンは頭を抱えた。
他のゴブリン達は驚いてキョロキョロと周りを見る。
やっぱりゴブリンは馬鹿だ。投げられた方向を見れば済む話なのに。
少し大きめの石を拾い、投げる。
さっき当たったゴブリンにまた当たる。
今度は俺に気付いたようで頭を抱えてるゴブリンを放っておいて俺に向かってくる。
少し距離が開いているのでどんどん石を投げつける。
石は向かってくるゴブリンのうちの1匹の目に当たり、うずくまる。
残り1匹になってもこっちに向かってくるゴブリンには足払いをかけて大きめの石で頭を思いっきり叩き潰す。
次は目に当たったゴブリンに近付きさっきと同じように叩きつけて殺す。
頭を抱えていたゴブリンはやっと頭の痛みが治まったようで逃げようとしだすがまた石を投げつける。
今度は外れたがその石を見て少しビビったようで立ち止まってしまう。
立ち止まってるうちにゴブリンの後ろまで移動して後頭部に思いっきり殴りつける。
ゴブリンは倒れる。まだ生きてるようだ。
ゴブリンに乗り、後頭部を殴る。殴る。
死ぬまで殴りつける。
レベルは上がらない。

ゴブリンの中にも緑色の石があることを知った。場所は心臓の中。
俺の中にもあるのだろう。
ゴブリンの死体は放っておいて湖に戻る。
体を洗って返り血を落とし、冒険者がいたところに寝転ぶ。
街は意外と近かった。
湖のところから歩いて1時間くらいである。
よく今まで人と遭遇しなかったもんだ。
目を瞑る。
疲れたからしばらく休憩することにした。

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5話

街を発見してから3日経過した。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :35/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

とうとうレベルがマックスになった。
進化先が表示される。

『進化先:ボブゴブリン 拳闘ゴブリン
魔術ゴブリン 剣士ゴブリン
槍士ゴブリン 槌士ゴブリン
斧士ゴブリン 盗賊ゴブリン
弓士ゴブリン
種族変化:オークベビー フォーバード』

種族も変化できるのか。
ボブゴブリンの説明欄を表示させる。

『ボブゴブリン 消費LP35
普通よりも強化されたゴブリン。』

LPが足りない。LPは進化に使うのか。

『拳闘ゴブリン 消費LP30
スキル:拳闘術を得たゴブリン。
スキル:拳闘術を取得する。』

他のゴブリンもスキルを取得しただけのゴブリンだった。
種族変化を見る。
オークベビーはいいとしてフォーバードってなんだ?

『フォーバード 消費LP30
4枚の翼を持つ鳥。 』

あいつか。
個人的にはボブゴブリン一択だ。
だがボブゴブリンになるためにはLPが足りない。
ここでちょっとLPの取得条件を考えて見る。
レベルアップでLPが取得できるのはレベルアップしたときに気付いていた。
レベル1の時はLP10。今のレベルで32。
10引く1で9。レベルアップでLP2を手に入れていた。
2かける9で18。合計28ポイント。
差の4ポイントはなんだ?
このポイントは最初の鳥を倒したときに得たときに取得したポイントだと思う。
そのとき以外では2ポイントずつしか増えてなかったからだ。
なんでこのときだけポイントが多く手に入ったんだ?
……もしかしてステータスは俺だけが持ってるわけじゃないのか?

相手の方がレベルが高いと手に入るのかもし
れない。
なんでステータスは俺しか表示できないと思い込んでいたのだろうか。
他のゴブリンが表示している所を見たことがないからだ。
ステータスは自分にしか見えないのか?
そんなことはないだろう。
自分だけが特別とかどこの厨二患者だよ。
経験値(レベルアップに必要なものだと杉元が言ってた)は勿体無いがLPを貯めるために進化しないでおこうか。
4も増えるなら1匹だけ自分より強そうなのを狩ればいい。
もっと前に気づいて入ればもっと簡単だったのになぁ。
ステータスを閉じて自分よりも強そうな魔物を探しに行くことにした。

見つけた。ボロボロの剣を持ったゴブリン。
初日に追いかけられたゴブリンとそっくりだ。多分同じ個体だろう。
最初は訳が分からず逃げてしまったが、今回はそうはいかない。
こっちには石という味方がついてるんだ。
本当に石にはお世話になった。
投げてよし、殴ってよし、破片だと捌いてよしと完璧である。
まだ相手はこっちに気づいていない。
まずは観察をする。
ボロボロだが剣を持ってるからあれが剣士ゴブリンというやつなのだろうか。
俺と違って少し大きく、筋肉もうっすらと見える。色は濃い深緑。
隙も今までの普通のゴブリンと比べたら少ない。
俺の進化個体か。LPは手に入りそうだ。
俺の位置は剣士ゴブリンの後ろ。
まさに死角。俺がはずさない限り当たる位置だ。
剣士ゴブリンは動かない。
自分のステータスでも見てるのだろうか。
大きく振りかぶって、頭に向かって思いっきり投げつける!
気分はまるでプロの野球選手。
いないはずのお客さんの歓声まで聞こえるようだ。
これは当たった!と確信したとき、剣士ゴブリンは急に振り向いた。
俺がピッチャーならあいつはバッター。
持っていた剣で石を弾き飛ばす。
剣は今の衝撃で折れてしまったがそれでも剣士ゴブリンは突っ込んでくる。
あの武器奪って使おうと思っていたのに。
まだ距離がある。慌てて石を拾い、すぐさま投げる。
今度は全然別の方向に飛んでいった。
相手はもう目の前。前よりも速くなってる。
慌てて後退する。剣が折れてるおかげで普通に避けれた。
俺は石を握ってる方の手で相手の顔面を殴る。
次は石を持ってない方の手で思いっきりビンタ!
剣士ゴブリンは剣を持ってない方の手を顔に持っていき、2歩下がる。
すごい痛かったのだろう。
俺が近づけないように剣をあちこちにぶん回す。
今のうちにもう1つ野球ボールくらいの石を拾う。
これで両手に石を握っていることになる。
この状態で殴ったらもっと痛いだろう。
痛みが引いたのか手を顔から離し、こちらを睨みつけてくる。
そして剣士ゴブリンは折れた剣を後ろにして構えた。
俺も石を握ったまま両手を前に持っていき、ボクシング選手のように構える。
俺と剣士ゴブリンの距離は約2メートルくらい。
先に近づいてきた方が不利になるだろう。
俺はそう思っていた。
だが俺はまだどこかで勝てるだろうと油断していた。
さいしょの鳥以外は自分より弱い相手しか相手にしてこなかった。
ゴブリンと殴り合ったこともある。
今まで負けたことがない。それゆえの油断。

剣士ゴブリンはいつの間にか俺の前まで迫ってきていた。
そして青白く輝いている折れた剣を振るう。
胸を結構深く切られた。
剣士ゴブリンの動きが一瞬止まる。
その隙を見て俺も相手を殴りとばす。
相手が起き上がってる隙にステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :24/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

HPが11も減ってる。
今のはスキル:剣術によるものだろう。
舐めてた。この世界は思ったよりもゲームみたいだ。
剣が折れてなかったら死んでたかもしれない。
切れた胸の傷がとんでもなく痛い。
少し体を動かすだけでも激痛が走る。
ゴブリンはまた剣を構えた。
また剣をが青白く輝き、ものすごいスピードで俺に迫ってくる。
とんでもなく速いが動きは直線的だ。
なんとか横に避けることができた。
振り返って後頭部を殴る。
胸の傷のせいであまり力は入らないがそれを遠心力で補う。
その勢いで相手は前に倒れ込んでしまう。
急いで剣士ゴブリンの上に跨り、頭を殴る。
殴る。殴る。殴る。殴る。
剣士ゴブリンは悲鳴をあげ、折れた剣で無理やり足を刺してくるが手を緩めない。
俺も痛みで思いっきり叫びながらなんども手を上げて剣士ゴブリンを殴る。
だが剣が輝くとともに俺は吹っ飛ばされた。
頭が木にぶつかった。
剣士ゴブリンは剣を支えにしてゆっくり起き上がり、俺を見る。
剣士ゴブリンはじっと俺を見る。
俺も見つめ返した。
しばらくしてゴブリンは背を向けて去って行った。
俺は目の前が真っ暗になり、意識から手を離した。

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6話

起きるともうあたりは真っ暗になっていた。
ステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :16/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

あの剣士ゴブリンは強かった。
そしてスキル。
俺のスキルは効果があるのかどうか分かりづらいのばっかだったから、侮っていた。
体の傷は大体ふさがっている。
周りを見ると血があちこちに見える。
俺と剣士ゴブリンの血だ。
少し前には剣の破片があった。
もう一度進化先についてもう一度考えてみる。

『進化先:ボブゴブリン 拳闘ゴブリン
魔術ゴブリン 剣士ゴブリン
槍士ゴブリン 槌士ゴブリン
斧士ゴブリン 盗賊ゴブリン
種族変化:オークベビー フォーバード』

スキルは馬鹿にできないことを知った。
だが俺は武器を持っていない。
俺の戦闘スタイルは石だ。
それを考えると拳闘ゴブリン。
俺は立ち上がり、破片を拾ってから湖に戻る。
これは予測だが、スキルを得られるゴブリンに進化するともうその派生でしか進化できなくなると思う。
だから俺はボブゴブリンを目指すと決めた。
そのほうが進化先も増えそうだし。
だが今のままではLPを手に入れるのは難しく、拳闘ゴブリンか盗賊ゴブリンを選んだ方が手っ取り早い。


しばらく進むと、何か音が聞こえてきた。
その方向に向かってみる。
この前とは別の4人組がツノのある猪と戦っていた。
4人とも剣で戦っている。
俺では猪にダメージを与えられない。
だが今の猪は図体は普通のより大きいが切り傷があり弱っている。
とどめを奪えば、LPが手にはいるだろうか。
こっそり隠れて見守る。
状況を見ると4人組はたいした傷はない。
だが全員疲れ切ってるようで息が上がっている。
猪は傷こそ多いがまだ余力がありそうだ。
4人組の1人の剣が光る。
すごい勢いで猪に近づくと大きな切り傷をつけた。
あの剣士ゴブリンと同じスキルだ。
だがあれと比べると全然遅い。
猪は呻き声を上げ、その人を吹っ飛ばす。
その人は気絶してしまった。
だが猪の方もダメージがでかく、血がすごい勢いで流れている。
とどめを刺すなら今だろう。
こぶし大の大きさの石を拾う。

「グギャギャギャギャ!!」

大声をあげ意識をこっちに向けさせる。
3人が気を取られている隙に猪に近づき、剣の破片を傷口に突き刺し、そこを石で殴りつける。
すると剣の破片が猪の体の中にめり込み、
猪は倒れ、絶命した。
俺は剣の破片を無理矢理引き抜き、急いで逃げる。
幸い3人は追いかけてこなかった。

しばらく走って適当な木に登る。
太い枝を押し、折れないことを確かめてから座る。

「グギャギィ」

すごい緊張した。
とりあえずステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :22/35 LP:36
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

思い通りにLPが手に入った。
前の剣士ゴブリンとの戦闘はなんだったとは思うが、楽に手にはいるならそれに越したことはない。
進化先を表示し、ボブゴブリンを選択する。

『進化先:ボブゴブリンを選択しますか?』

Yesを押す。

瞬間、俺は意識を失った。



目がさめる。
まず目に入るのは明るくなった空。
朝になったようだ。
寝ぼけ眼をこすりながらステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

思ったより強くなったという実感はない。
木から降りて湖に戻る。
目線が高くなってるから大きくなったのはわかった。
肌を見ると緑色が少し淡くなっている。
湖に着き、水面に映る自分を見る。
身長は高くなり、姿勢が良くなった。
前は完全な猫背だったから嬉しい。
体は全体的成長しているようだ。
身長は1mから30センチは伸びただろう。
筋肉も少しついて前よりも遥かにマシである。
石を持って木を全力でぶん殴る。
木が折れた。
そのことに驚く。進化するだけでこれだけ違うのか。
太い木はまだ無理だった。
しばらく体を動かし調子を確かめる。
前よりも全然強くなっていた。
今ならあの剣士ゴブリンにも勝てるかもしれない。

「ギャギィ」

気分を切り替える。
次に考えることはスキルだ。
どうやったらスキルを手に入れることができるのだろうか。
今知っているのは最初のキャラメイクか、進化で手に入れる方法だけだ。
修行でも手にはいるのだろうか。
とりあえずやってみようか。
次の問題は武器か。
仮にスキルが手に入ったとしても武器がなきゃ何もできない。
木でも削って棍棒でも作ろうか。
バットを振り回すようなものだ。
いいな。作ってみようか。

さっき折った細い木を持ってくる。
剣の破片で夜中まで時間をかけて形を整える。
木製のバットの完成だ。
完成したものを思いっきり地面に叩きつける。

バキッ!

普通に折れてしまった。

「グギャァ!」

強度が足りない。
やっぱり俺には石しかないのか!
石関係のスキルを手に入れるしかないのか!
例えば土魔法とか?かっこいいな。
どうやったら入手できるかはわからないけど。
気に登り、太い枝に横になって寝ることにした。

朝だ。別に清々しくない。
湖に行って魚をとる。
いい加減味も飽きてきた。
塩もないし生である。寄生虫が怖い。
食べ終わると拳大の石を持ち、レベルを上げるためにゴブリンを探しに、いや、せっかくだから猪いってみようかな。
今ならいけるかもしれない。
猪を探すことにする。

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7話

すみません。今回は短いです


見つけた。
かなり大きい。以前4人組から横取りしたのよりも断然でかい。俺の身長を超えている。
俺が1m30cmなら高さ1m70cmはありそうだ。
今までで1番大きい魔物である。
ツノも見た中で1番長く、太く、重量感がある。
ゴブリンの死体を雑草と一緒に食べてる。
意外とグルメ。
俺の食生活よりも全然マシである。
とりあえず観察する。
しばらくして食事が終わったのかゴブリンを食べるのをやめて、そのまま歩き出した。
後ろをこっそりついて行く。
少し開けた場所に行って欲しい。
木が多すぎると俺にとって不利である。
なぜなら自由に動きずらいからだ。
だがどれだけ進んでも進んでも開けた場所に着かない。
というかよりいっそう茂ってくる。
間違いない。森の奥に向かってる。
いつもは俺の活動範囲である森の湖の場所から行動しているからあまり奥にはいかなかった。
湖の場所も街から1時間と、森の手前だ。
だからたまに4人組みたいな人達が来る。
だがここは薄暗く街から遠すぎるから来れないだろう。
あと猪が結構速い!小走りしてやっとだ。
チラチラと見たことがない魔物も見えてくる。
顔が前後ろあるゴブリン(剣を持ってる!)や、でかい亀、でかいカマキリ、ノロノロと動いている木とか勝てる気がしない魔物ばかりだ。
強者の風格みたいのが漂っている。
進化して少し調子に乗ってしまった。
俺はまだここにくるには早過ぎた。
今すぐ戻ったほうがいいだろう。
俺は猪を追うのをやめた。
しばらくして猪はいなくなった。
バレなかったのは幸運なんだろうか。
いや、俺が弱いから見逃してもらってるだけかもしれない。
そう考えながら戻ろうと後ろを向き、気を避けて進もうと——木?
さっきまでそこには木はなかったはずだ。
見間違いか?

「ギャギィ」

思わず漏れてしまった。
俺はさっきまで何をみた?
顔が前後ろあるゴブリン、でかい亀、でかいカマキリ、そして動いている木。

動いている木。

急いで木のそばから離れる。
だがギリギリ間に合わず枝が片足に巻きつき、俺を持ち上げる。
他の枝が伸びて俺を縛っていく。
無理やり足掻こうと枝に思いっきり噛み付く。
だが植物だから痛みがないのか効いた様子はまったくない。

「グ、グギッ」

どんどんキツく締め付けてくる。
細い枝が伸びて俺の背中を突き刺す。
とんでもなく痛いが口が塞がれてるせいで叫ぶことが出来ない。
背中に刺さった枝の先から何か流し込まれているのがわかる。
ステータスを部分的に表示する。

『HP:27/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

流し込まれてるのは毒だった。
しかも俺が持ってる耐性よりも大きい。

『HP:25/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:23/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:21/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:19/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

無理やり暴れて逃げようとするが、しっかり縛られてるせいでピクリとも動けない。
こうしてる間にもHPはどんどん減っている。
死の恐怖が、俺の体を駆け巡る。
無理やり逃げようと暴れる。
もしかしたら怒って俺を投げるかもしれない。
そしたら逃げられるかもしれない。
そんなことを考えてとにかく体を動かす。
その結果は体を締め付けている枝が増えるだけだった。
縛られてるからなのか毒のせいなのか身体中が麻痺して感覚がなくなっていく。
ずっと持っていた石が落ちた。
新しい枝が俺を覆っていく。
苦しい。死にたくない。
だんだん視界が暗くなっていく。

そしてそのまま——


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8話

誰かが話し合っている声が聞こえる。
俺は生きているのだろうか。それとももう死んでいて閻魔の前にでもいるのだろうか。
こっそり薄目を開ける。
場所はどこかの洞窟のようだ。
見える範囲だと、武器を持ち鎧を着た人達が座ってたり話してたりしていた。
疲労困憊で倒れ込んで息を整えてるのもいる。
鎧にみんな同じマークが描かれていて結構な人数がいる。
どこかの国の軍隊かなんかだろうか。
俺は死んでなく生きているようだ。
体の痺れももうない。
ステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :3/30 LP:1
MP :8/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
言語習得不可 』

HPがギリギリで、毒耐性が成長していた。
上がりずらいスキルが一気に2つも成長しているところをみるとあの毒は相当ヤバイものだったのだろう。
ステータスを閉じ、ちらっと横を見る。

「????????????????」
「???????????」

相変わらずなんて言ってるかは理解できない。
木じゃなく鎖で縛られている。
もしかして助けてくれたのだろうか。
いや、そしたら縛ることはないはずだ。
しかも俺を見て嘲笑する奴や睨んでくる奴もいる。
……何か嫌な予感がする。どうにかして逃げたい。
逃げられるだろうか。いや、無理だ。
少しでも動くと鎖がジャラッと音がなる。
近くにいる兵士が俺を見る。
目を閉じて寝てるふりをして洞窟の奥を見る。
出口には兵士だらけで逃げられる気がしない。
逃げるとしたら奥だろう。

『HP:7/30』

逃げられないことはわかってる。
だが何かして諦めるのと何もしないで諦めるのとでは意味合いが違う。
必死にレベル上げして進化しようとしたのもゴブリンのままでは生きていける気がしなかったからだ。
だから頑張った。
そしてその結果が今の状況だ。
進化しても弱いものは弱い。

『9/30』

カウントを始める。

10、9、8、

もう一度薄目を開けて周りを見る。
さっきと状況は変わらない。

7、6、5、4

走る方向は洞窟の奥。

3、2、

足に力を込める。

1、

息を吸って、

『HP:10/30』

0


思いっきり立ち上がり驚いて一瞬動きを止めた兵士達を尻目に走り出す!

スタートダッシュは失敗した。
少し足が滑って閉まったのだ。
後ろは振り向かず、ただ前を見て走る。
なぜか追ってきている様子はなかった。

走る。走る。

進むにつれてどんどん暗くなっていく。
真っ暗になってちゃんと前に進めているかどうかわからなくなる。
後ろからはなんの音も聞こえてこない。

そして走ってるうちに先が少しずつ明るくなってきた。
やはり出口があったのだ!
思わず笑顔になる。今の俺は最高に気持ち悪いに違いない。
体は縛られたままだが転ぶことはなく、走るスピードが上がる。

あと少し、あと少しで外に———




———そこにあったのは光る石碑だけ。
出口はなく、進める道もない。
行き止まり。

「ギィ……?」

神も救いもないのか。いや、救いはあった。
だから動く木から助かった。
ないのは神か。
後ろから足音が聞こえてくる。
音からして歩いてきてるのだろう。
彼らは知っていたのだ。この先に道などないと。
だから、慌てて追いかけてこなかった。
騒がしい声が近づいてくる。
それが笑い声だと気づく。
石碑に近づく。少しでもいいから兵士から逃げたかった。
無駄な足掻きなのは知っている。
だが動かずにはいられない。
俺はゴブリン。人類の敵だ。4人組に狩られた猪を思い出す。
俺は殺されるのだろうか。
それとも何かの実験台でもなるのだろうか。
そんなことを考えながら石碑に着く。
青白く、剣士ゴブリンの時に見た輝きと比べてとても澄んでいる。
書いてある文字は読めない。
『言語取得不可』の所為で俺は文字も習得することはできないだろう。
俺の両手は前に縛られている。
石碑に触れる。

瞬間、頭痛が走る。
平衡感覚が狂って体がふらつく。
ピントがズレたみたいに周りが何重にもブレて見える。

『———を———————』

頭が痛い。頭痛はどんどん酷くなる。
耳鳴りも酷い。寒気もしてきた。
吐き気が止まらない。

「???????????」
「?????????」

後ろで声がする。
俺の真後ろにいるようだ。
肩に手を置かれる。

もう限界だった。

俺は意識を失った。


『スキル:置換を取得しました。』




起きると俺は牢屋の中にいた。
最近の俺は気絶してばっかだな、とまだぼんやりしている頭で考える。
体は縛られたままで、HPは全快していることからかなり時間が経っていると思う。
立ち上がって檻に行き、横を見る。
他の牢屋には少しだが人がいて、兵士が巡回している。
刑務所みたいなところだろうか。戻って地べたに座る。
ひんやりとした壁が心地よい。

「ギィ」

諦めた。もう無理だろう。逃げられない。
洞窟ではまだ希望があった。
ないに等しい希望だが、わずかにはあったんだ。
窓がないから今が朝か昼か夜かわからない。
さっきまでは気づかなかったが近くに水が置いてある。
これは飲めるのだろうか。それともトイレ用とか?……トイレだったら嫌だな。飲まないでおこう。

特にやるべきこともない。
暇つぶしにステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :8/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

見覚えのないスキルが追加されてた。

『置換』

何を置き換えるのだろうか。
レベル表記がないから成長しないスキルだということしかわからない。
デメリットスキルではないと思いたい。
ステータスを閉じる。
あまりいい暇つぶしにはならなかった。

足音で目がさめる。いつの間にか寝てしまったようだ。
巡回だろうか。どうもご苦労様です。
兵士達が俺がいる牢屋の前で立ち止まる。
兵士達の中にとても豪華な鎧を着た奴がいる。隊長か何かだろうか。
ガキが開く音がした。

「???????」

なんて言っているかわからない。
何も反応を返さない俺を見て焦れったくなったのか、鍵を開けた兵士が俺を掴む。
そのまま俺を牢屋から出した。
そしてまた鍵を閉めると階段に向かって進み出す。俺も後からついていく。
階段を上がり外に出る。
ここは前に見た街中のようだ。
猫耳が生えてる人やら蜥蜴みたいに鱗がある人など異世界チックな人種が色々いる。
しばらく兵士達について行くと城壁にある門を抜けて城に入らず、体育館みたいなところに入った。


そこにいたのは、俺がよく知っているクラスメイト達だった。


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9話 @

高橋君が行方不明になって、1週間が経つ。
1週間なら行方不明というには大げさだが、
彼のことが騒ぎになっているのは、目撃情報も何もないということだ。
電車にいたということしかわかってない。
いつ出たのか、いつからいなくなってたのか全くの不明。
目撃者はみんな口を揃えて、一瞬で消えたと言っていた。
残っているのは彼が身に付けていた腕時計だけ。
その腕時計は杉元君が身に付けている。
高橋君の親から持っていて欲しいと言われたものだ。
高橋君と小学生の頃からの付き合いらしい。
高橋君はクラスでは大人しめであまり交友関係は広いタイプではなかった。
だが、クラスの雰囲気は前よりも暗い。
騒がしいのは進学校には珍しい、素行の悪い数人の生徒達だけだ。

チャイムが鳴り、先生が入ってくる。
今日の伝達事項を伝えて、ホームルームを終える。
先生が去ると皆思い思いに話し始めた。

「ねぇ安藤さん。古典の宿題やってきた?」
「あ、うん。一応」
「ごめん、少し見せてくれない?」
「いいよ」

宿題を谷口さんに渡す。
彼女はありがと、と言って自分の席に戻っていった。
しばらくしてチャイムが鳴り1限が始まる。
1限は現代文。谷口さんの席を見ると私の宿題を一生懸命写していた。
それを見てつい笑ってしまう。
杉元君はノートに何か書いてるようだ。
前までは本当に酷く落ち込んでいた。
自慢の綺麗な茶髪の髪質が少し悪くなってるように見える。
時々腕時計を見ては遠い目をする。
私は高橋君とはそれなりに仲は良い友達だった。
試験が近づくと杉元君を含めて3人で図書室で勉強したり、たまに3人で帰る途中で買い食いしたりとそれなりに良好な関係だった。
彼は両親や知り合いに迷惑をかけることを酷く嫌うタイプの人だ。
私は、高橋君は直ぐに発見されるのではないかと思っている。
だからそんなに落ち込んでいない。

先生が今黒板に書いた文章に黄色いチョークで線を引く。
試験に出すから書いとけとみんなに言う。
みんなは急いで書き写す。
私も今書いた文章に線を引いた。



昼休みになった。
谷口さんは無事に間に合って提出することができ、杉元君は宿題を忘れたと正直に言って先生に怒られてみんなに笑われていた。
私もつい笑ってしまった。
杉元君は放課後居残りになってしまった。

「はぁ、めんどくさいなぁ」
「言えば見せたのに」
「家に置いてきちゃったんだよねー。徹夜して終わらせたのに。はぁー、勿体無い」
「私も手伝おうか?」
「頼んでいい?」
「いいよ。大した手間じゃないし」
「サンキュー。帰りになんか奢るわ」

弁当を食べながら当たり障りのない会話をする。
高橋君がいないからかどこか寂しさが残る。
杉元君がチラッと腕時計を見る。
2万くらいする、高校生にとってとても高い時計だ。
高橋君がバイト代全てを使って買ったと言っていた。

「多分、そのうち帰ってくるよ」
「そうだな」

と杉元君は寂しそうに笑った。

食事が終わり、次の授業の準備をする。
昼休みはあと10分で終わる。
不良グループは相変わらず騒がしい。
高橋君がいなくなったのをなんとも思ってないようだ。
杉元君は彼らを睨んで言う。

「少しは静かにできないものかねぇ。いつも騒がしいったらありゃしない」
「しょうがないよ」

外で昼を食べてたクラスメイト達が教室に戻ってきた。
授業開始5分前。みんなが着席する。
ご飯を食べたばっかだからかとても眠い。
周りを見ると、結構みんな寝ている。
私も寝ようとして違和感に気付く。
本当に全員寝ている。誰1人起きていない。
しかも食べたばっかにしては眠すぎる。
どんどん眠くなってくる。
頭を抑えて隣の席の橋本ちゃんを起こそうと揺らしてみる。
起きる気配はない。

私もついに耐えきれなくなり、寝てしまった。





眼が覚めるとそこは教室ではなかった。
周りにはローブを着た人や鎧を着た兵士みたいな人たちが私達を囲っている。
クラスメイト達は数人しか起きていない。
ほとんどはまだ寝ている。
杉元君は起きているようだ。
なぜかテンションが高い。
起きた私に気付いたのだろう。近付いてくる。

「おお、起きたか。どこか怪我してないか?気持ち悪くはないか?」
「大丈夫だけど……。ここはどこ?どう言う状況かわかる?」
「多分だけどこれ、異世界転生っていうやつじゃないか!」
「異世界転生?」
「ネット小説とかでよくあるジャンルだよ。
ガチで体験できるとはな。人生何があるかわからないもんだ!」
「そ、そう」

そろそろみんな起きたようだ。
困惑した様子で、周りを見渡している。
ローブを着たお爺さんが涙を流しながら言う。

「よくぞいらっしゃいました!私達の世界をお救いください、勇者様!」

は?

「これって異世界転生?」
「え、まじで!」
「俺たち転生しちゃった系?」
「俺の時代クルー」

え、みんな異世界転生って何か知ってるの?
頭の中が?で埋め尽くされている。
ローブのお爺さんが言う。

「ついて来てください。王様のもとへお連れします」

委員長が先導して動く。
一旦外に出て、城に向かう。
城は結構大きく、中に入るとその荘厳さにざわめきが起きる。
床はレットカーペットだ。
そんな私達を見て兵士達も笑顔になる。

階段を登ったりしてしばらく進むと、王様の元に着く。
王様は玉座に座っていて見た目は優しそうなお爺さん。髭は胸のところまで伸びている。
服装もザ・王様チックで威厳すら感じるようだ。

「王よ。勇者様をお連れしました」
「ご苦労」

王様は立ち上がり、言った。

「ようこそ、勇者様。あなた達にお願いがございまして、こうして我が城に召喚させていただいた次第でございます。」

こうして私達は非日常に足を突っ込むことになる。


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10話 @

王様が言うには邪神の封印が解かれようとしているらしい。
だからその邪神を封印し直すか殺して欲しい。
その為に王様が信仰している神の力を借りて異世界人である私達を召喚したと言う。
杉元君がテンプレだー!とテンションがさらに高くなる。
もし戦ってくれるなら色々サポートするし、今なら地球に戻してくれると言う。
戦わないにしても、何か仕事をしてくれるなら城で暮らしてもいいと言っている。
だが帰ると決めたなら明日しか帰れないそうだ。
私達を召喚した儀式よる魔力がどうたらこうたらと説明していたが全くわからない。
分かるのは明日帰らなかったら次は邪神をどうにかした後しかチャンスはないと言うことだ。
選択権はこちらにある。
だが大体の生徒は戦う気満々である。
ゲーム感覚なのだろう。
私は地球に帰りたい。
戦うってことは死ぬかもしれないことだ。
私以外にも迷っている人もそれなりにはいる。
杉元君は戦うそうだ。まぁ、彼らしい。

「斎藤はどうするんだ?」
「帰ろうかなって思ってる。死ぬかもしれないからね。」
「ふーん。そっか……。なぁ、後で2人で話せないか?」
「別にいいけど。どうしたの」
「後で話すよ」

とだけ言って彼は何かを考えてるのか黙ってしまった。
さっきまでのテンションが嘘みたいだ。

ざわめきが収まってくると1番豪華な鎧を着た兵士——騎士団長がステータスを見せて欲しい、と言ってきた。
ステータスと念じると自分で見れるらしい。
表示してみる。

『名前:斎藤知恵
職業:魔物使い Lv:1/30
使役:0/1
HP :30
MP :35

スキル
強化魔法 Lv1/5 火魔法 1/5 風魔法 1/5
鑑定 Lv1/10 使役 祈り 』

強い……のかな?
基準がわからない。

「なぁ、斎藤のも見せてくれないか?俺のも見せるからさ」
「これって自分にしか見えないの?」
「普通はそうだけど、許可を出せば他の人に見せれるらしい」
「へぇ、そうなんだ。いいよ」

周りを見れば他の人も見せあってるっぽい。
これが杉元君のステータスだ。

『名前:杉元達也
職業:ウェポンマスター Lv:1/50
HP:60
MP:28

スキル
剣術 Lv1/5 斧術 Lv1/5 槍術 Lv1/5
棒術 Lv1/5 槌術 Lv1/5 暗器術 Lv1/5
弓術 Lv1/5 武術強化 Lv1/5 盾装備不
可 』

「レベル上限が違うね」
「俺は上位職とかなのかね」
「そうですね」

近くにいた兵士が親切に教えてくれた。

「レベル上限が大きいほうがより上位の職業で間違いないでしょう。失礼ですが上限を教えていただけませんか?」
「俺は50ですね」
「私は30です」
「でしたら2次職と3次職です。最大で5次職まであると言われておりまして、それだと100です」
「言われてる?」
「5次職まで行く人は滅多にいませんからね。我々は1次職からレベルを上げるので大抵は3次職、いけて4次職までしかいけないのです。5次職になった人は今まで数人しかいません」
「その人たちは教えてくれなかったんですか?」
「記録にはございません。今だと3人いらっしゃいますがどなたも教えてくれませんでした」
「3人もいるんだ……。ああ、ありがとうございました」
「いえ。また何かございましたら気軽にお聞きください」
「ありがとうございました」

兵士は戻っていった。





「では皆さんそろそろお部屋に案内いたそう」

王様はそういうと大勢の侍女が部屋に入ってくる。猫耳とかいたりして異世界なんだと改めて思う。

「あの〜、すんません。俺たち一緒でいいっか?一緒の方が楽っつうかー」
「大丈夫だ。ではそのようにいたそう。他には?」

不良グループやオタクグループ、クラス内で付き合っている人達が手をあげる。
意外なカップルがいたりして面白い。
先にグループ組が案内され、次にカップル、最後に個人が案内される。

部屋に入る。
まるで豪華なホテルのようだ。

「何かございましたら机の上にあるベルを鳴らして下さい」

侍女は部屋から出ていった。
ベットに飛び込む。すごいはずんだ。
思い切り伸びをする。
意外と私は疲れていたようだ。

ノックの音がなる。

「斎藤、今ちょっといいか?」

杉元君だった。

「いいよ」

さっき言ってた話したいことだろうか。
杉元君は椅子に座る。

「それで話ってなに?」
「ああ、うん」

彼は何か悩んでいる様子で言う。

「斎藤はどうするつもりだ?」
「何が?」
「残るか帰るか」
「帰ろうかなって思ってる。杉元君は?」
「残ろうと思ってる」
「そうなんだ」
「このことにもつながる話だけどさ」
「うん」
「もしかしたらさ、もしかしたらの話なんだけどさ、あいつもこっちに来てたりしないかな」
「あいつ?」
「浩太郎」
「高橋君も?それはないんじゃない。行方不明だけどさ、そんな偶然はないでしょ」
「もしかしての話だよ。電車から目撃証言はなかったからここに飛ばされたんじゃないかと思ってさ。異世界転移もネット小説でよくあるし」
「ネット小説で言われてもね」
「今の状況はまるでそうだろ」
「そうだけどさ」
「まぁ、頭の片隅にでもおいといてくれよ」
「わかった」
「言いたかったことはそれだけだ。明日王様に探して欲しいって言うつもりだ」
「いないとは思うけどね」

ドアをノックする音が聞こえる。

「夕食の時間になりました。案内致します」

杉元君は立ち上がる。

「じゃぁ行こうか」
「そうだね」

廊下を歩きながら私は帰るかどうかもう一回考えてみることにした。

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