ゴブリン成長記 (補う庶民)
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異世界転生 1話

初めまして。
補う庶民と申します。
拙い文章ではございますが楽しんでもらえたら幸いです。


俺は幸せ者だと思う。

外国みたいに戦争に巻き込まれることもなければ、飢餓に襲われることもない。
当たり前のようにいつもの時間に起きて朝ごはんを食べ、着替えて高校に行く。
電車に乗って座席に座り、鞄から単語帳を取り出す。
他の席ではガラの悪そうな人達やサラリーマン達が漫画やゲーム、スマホで暇を潰している。

自慢ではないが成績は十位以内をキープ出来る位には頭がいい。
文系だけど。
友達もちゃんといて、たまにカラオケとかに遊びにいく。

ガタンゴトン ガタンゴトン

「retain、strain、sensible、……」

昨日覚えた単語の復習をする。
春から夏に変わろうとしているのか、日差しの暖かさが心地良い眠気を誘ってくる。
単語帳から目を離し、眠気を覚まそうと欠伸をして目尻を揉む。
だが眠気が覚めるどころか、どんどん眠くなりウトウトしているといつの間にか眠ってしまった。





眼が覚めると俺は四畳一間の洋室にいた。
目の前には椅子と机とパソコン。

「え、どこだ?ここ」

周りを見渡してみる。
壁の色は白で床は木材のフローリング。
学校鞄が置いてある。何か盗まれた様な形跡はない。
なくなっているのは身に付けていた腕時計だけだった。
携帯の充電は切れている。服装も制服のままだ。
横には冷蔵庫が置いてあり、中には様々な缶ジュースが置いてある。
そして……

「……ドアがない」

どうやってこの部屋に閉じ込められたのだろう。
ドアも無ければ窓もない。脱出は不可能だ。
もしかして俺はまだ夢を見ているのだろうか。
頰をつねってみる。

「普通に痛い」

俺は誘拐されてしまったのだろうか。
誰が?どんなメリットがあって?
取り敢えず椅子に座りパソコンを起動させてみる。

しばらく待っていると画面にこう表示された。

『転生設定画面』

「……何だこれ。転生?」

取り敢えずクリックしてみる。

『転生先: 人間 魔物 』

まず人間を選択してみる。

『転生先: 人間 LP:100

人間、獣人、魔人などに転生できます。
スローライフを楽しむのも良し、世界中を
冒険するのも良し、自由な生活を過ごせる
ことでしょう。 』

戻って魔物を選択してみる。

『転生先: 魔物 LP:100

様々な魔物に転生できます。
人間とは違いLPは多めに消費します。
その代わり人間とは違いレベルマックス
まであげることにより様々な進化をする
ことが可能です。
全人類共通の敵であるため平和に生きて
いくことは諦めた方がいいかもしれませ
ん。
刺激的な生活を望む人向きです。 』

「なにこれ。ゲーム?」

俺は親の教育方針のせいで今までゲームをしたことがない。
親は何よりも勉学を優先する人だった。

「今何時だ?」

腕時計がないから時間を確認することができない。

「取り敢えずゲームでもやってみるか」

待っていればそのうち警察が発見してくれるだろう。
冷蔵庫からコーラを出して一口飲む。

「せっかくだから魔物にしてみようか」

『転生先: 魔物 で決定しますか』

Yesと選択する。

『魔物を選択して下さい。 残りLP100 』

色々な魔物が種族ごとに表示される。
種族の種類は豊富だがその中で選択出来るのは少なかった。
例えば、

スライム族

ベビースライム スライム

という様に基本的にベビーかどうかしか選べない。
進化を楽しむための配慮なのだろうか。
強キャラ無双とかしてみたかった。
ベビースライムを選択してみる。

『転生先:ベビースライム 消費LP:10』

戻って今度はスライムを選択してみる。

『転生先:スライム 消費LP:30』

また戻ってドラゴンを選択してみる。

『転生先:ドラゴン 消費LP:5000』

そもそもLPが足りないという事実。
ベビーの方でも3000と余裕で足りない。

「二足歩行がいいよな。人間も二足だし」

二足歩行する種族を探してみる。
だがそのほとんどがLPが足りず選択できない。
残ったのがゴブリンかオークである。
しかもオークはベビーしか選べない。

『転生先:ベビーオーク 消費LP70』

『転生先:ゴブリン 消費LP50』

「もうこれゴブリン一択じゃん」

ゴブリンを選択する。

『転生先:ゴブリンで決定しますか?』

Yesを選択する。

『スキルを設定して下さい。 残りLP50』

ズラッと色々なスキルが表示される。
剣術とかわかりやすいものからよくわからないものまでたくさんある。
しかもどれだけ下にスクロールしても終わりが見えない。
取り敢えず今あるポイントで取れるスキルを探してみる。
取り敢えず武器を使うスキルは取らない。
なくても大丈夫だろ。
魔法とかもある。ポイントが足りないけど。

「鑑定……おお、凄い便利そう。ポイント足りないけど」

飲み終わったので冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。
飲みながらどんどんスクロールしていく。

「マイナススキル? ほー、凄いな」

デメリットを背負う代わりにLPが少し増えるスキルもあった。

「お、これいいんじゃないか」

言語習得不可 獲得LP35

ゴブリンに言語もクソもないだろ。
武器装備不可とかは流石にキツイし。
いろんな飲み物を飲みつつ結局俺が選んだのは

言語習得不可 獲得LP35
HP上昇(小) 消費LP35
毒耐性(小) 消費LP40

合計75ポイント。
10ポイントでとれるスキルで欲しいものは特にない。
残りのポイントで欲しいスキルはない。

『スキル:HP上昇(小)、毒耐性(小)でよろしいでしょうか』

Yesを選択する。

『ステータスを表示します。
種族:ゴブリン
HP :14
MP :3

スキル
HP上昇(小) 毒耐性(小)
言語習得不可

これでよろしいでしょうか』

Yesを選択する。

『それでは転生します。ご健康とご多幸を心よりお祈りいたします』

と表示されると共に体に何か違和感を感じ始める。
下を見るとつま先からどんどん消え始めた。

「な、何だよ!これ!」

腰まで消えて椅子から落ちる。
飲みかけのオレンジジュースが床に溢れた。
体が消え、両腕も消え、顎も消えていく。

「た……え…」

口が消えて話せなくなり視界もどんどん暗くなっていく。

そして全てが真っ暗になった。



設定変更しました。すみません


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2話

目が覚めると俺は森の中にいた。
見上げると翼が4枚ある鳥が空を飛んでいた。
なぜか目線が低くなっている。
俺の身長は175なのだが明らかに小さくなっている。1m位だと思う。
両手を見ると肌は濃い緑色で全体的に骨張っている。
しかもめっちゃ猫背。
身につけているのは布製の腰ミノだけ。
周りを見渡しても見えるのは木ばっかりで姿を確認できそうなものはない。

不意にさっきまでのことが頭をよぎる。

「グギィ。グギャギャ」

上手く話せない。
間違いない。俺はゴブリンになってしまった。
さっきまでゲームだと思って作っていたキャラクターは本当の自分の転生先だった。

呆然としていると不意に家族や友達の事を思い出す。
顔が真っ青になる。
どうしてこうなってしまったのだろうか。
決まっている。さっきまでいたドアのない部屋でゲーム感覚で始めたことだ。
どうやったら帰れるのだろう。
そもそも人間に戻れるのだろうか。
前を向くと4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪をこっちに向けて勢いよく向かってくる。

「グギャギャギャ!」

急いで鳥から逃げる。
逃げながら思うことはただ1つ。
探して見つけるしかない。
人間に戻り、家族の元に帰るための方法を。
魔物は進化することができる。
いまはそれに賭けるしかない。
進化を繰り返せばもしかしたら人間に戻れるかもしれない。
俺はどうやってかこの世界に来てしまった。
スキル欄では魔法とかもある。
魔法で帰れるかもしれない。
だが魔物は全人類の敵だ。人間に戻らないとそこらへんもどうにもならないだろう
街を見つけても入れないだろう。

「グギィ、グギャギィ」

まだ希望はある。今できることを考えよう。
取り敢えず進化するためにレベルを上げる必要がある。
他には衣食住も揃えなくてはいけない。
衣は腰ミノでいいだろう。
服はあまり重要ではない。
食べ物……ゴブリンは何を食べるんだ?
普通に肉とか野菜とか?
ちくしょう、もっとちゃんと杉元の話を聞いとけばよかった。
住む場所もどうしようか。
木の上を見る。

「グギィ」

俺が乗っても折れないほど太い枝がそこら中にある。
そこで寝れば大丈夫だろう。
いつまでもくよくよしてたって何も状況は変わらない。
何をするにもまず行動するしかない。
まず食料を探そう。
そう考えて俯いていた顔を真っ直ぐに向ける。
目の前に緑の小人がいた。
俺と同じゴブリンである。
俺と違うところは刃こぼれが凄い剣を持っている。

「グギャギァ!」

俺はすぐに背を向けて走り出した。
後ろをチラッと見ると俺を追いかけてくる。
後ろを見ると追いかけてくる。
なんか叫んでいるがグギャとしか聞こえない。
だが俺の方が速く、そのうち振り切ることができた。

「ギャァ、ギャァ、ギャァ」

息を落ち着かせる。
体力のなさが半端無い。
すぐに息が切れる。
今の自分の体の状態を知りたい、そう思った瞬間、

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv1/10
HP :12 LP:10
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv1/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

なんか表示された。
見覚えのある画面。さっきまで自分で作成したステータスだ。
目を引くのは言語習得不可。
多分これのせいでさっきのゴブリンの言葉が理解できなかったのだろう。
ちくしょう。選ばなきゃよかった。
これのせいで言葉を習得することが出来ない。
つまり相手が何を言っているか理解することができないと言うことだ。
ボッチよりもひでぇよ。
一生誰とも話せないのだろうか。
どうにかして失くせないかな。無理か。
………食料探そうか。


何が食えるのか全くわからないということにすぐに気付いた。
キノコを見つけても毒があるかどうかがわからない。
毒耐性は一応持ってはいるが(小)だからあまり期待できない。
そう考えると食べる気がなくなってしまう。

「ギィ」

どうでもいいけどゴブリンってガ行からしか話せないっぽいな。
草もどれが食えるか分からない。
手に持っている先が鋭い木の枝を見る。
最悪、韓流ドラマで見たように木を食べるしかない。
本当の最終手段だけど。
しばらく進んでいるとネバネバした物体を見つけた。
色は透明な緑色で中に目っぽいものが1つある。大きさは小さい
あれがスライムという奴なのだろうか。
多分大きさ的にまだベビーなのだろう。
食べられるのだろうか。
取り敢えず近づいてみる。
相手もこっちに気付いたようで近づいてくる。
するとすぐに食べられないことに気付いた。
液体の中にある葉っぱが少しずつ溶けていくのが見える。
あんなもの食べたら口の中から溶けてしまうだろう。
中にある目っぽいものはたべれるのだろうか。
初戦闘だ。少し緊張する。
持っている木の枝を構え、相手がどう動くかを見る。
………ノロノロと真っ直ぐにしか進んで来ない。
凄いおっそい。凄い警戒してた自分が馬鹿みたいだ。
木の抜けた俺は普通に歩いて相手に近づき、
鋭い先っぽで目っぽいものに刺す。
少し目っぽいものが振動して周りについていた透明な緑の液体がまるで力を失ったかのように目っぽいものから流れ落ちていき、地面に染み込んでいった。

「ギギャァ」

なんかグロいな。
枝に刺さってるものを見る。
これは食べられるのだろうか。
焼いた方がいいのだろうか。でも火がない。
木を使う方法があるが確かひもが必要だったはず。
枝に刺しっぱなしにして他の食料を探しにいく。

ベビースライムを見て俺は気が緩んだのだろう。
俺は自分の後ろについてくる大きな影に気づかなかった。

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3話

森の中をどんどん進む。
今のところ食べられそうなのはそこらへんに生えているキノコとか木の枝に刺さってる目っぽいものだけだ。
たまに遠くに俺と同じゴブリンが見えるが流石にゴブリンを食べる気はない。
あれからスライム系には出会えず、出会えるのは俺と同じゴブリンやツノがあるイノシシとか勝てる気がしないものばかりである。
ゴブリンは集団で動いているため攻撃しようと思えない。
つまりレベルも上げられない。

「ギィギィギィ」

目っぽいもの——もう目でいいか、目を食べるしかないのか?
触ると一年の頃に生物の実験で触った豚の目と同じ感触で食べる気が失せる。
男は度胸。なんでも試してみるものさ。
口の中にスライムの目を放り込む。
噛むと中からドロっとしたのが流れてくる。
無味でとてつもなく臭い。
そして中には小さな石みたいな塊があった。

「グェェェェェェェ!!」

思いっきり吐き出す。凄い気持ち悪い。
食えたものでない。涙が出てくるほど臭い。
吐き出したものの中にあった1センチくらいの透明な石を拾いあげる。
不味くて食欲が無くなった。
上を見ると4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪を俺に目掛けて突っ込んできた。
俺は慌てて前に避ける。
俺を捕まえ損ねた鳥は怒ったのだろう。
俺から一定距離を保ったままこちらを睨みつけてくる。
いつもの俺だったら一目散に逃げただろう。
だがスライムのこともあり俺は少しイラついていた。
レベルを上げるためには敵を倒さなくてはいけない。
ゲームの鉄則だ。ゲームをしたことがない俺でも知っていることだ。
持っていた木の枝を鳥に向かってやり投げのように投げる。
真っ直ぐに鳥に飛んでいったが鳥は飛んでいるのだ。普通に避けられる。
枝はそのまま何処かへ行ってしまった。

「グギャァァァァァァァ!!」

鳥に向かって威嚇するように叫ぶ。
今の俺は人間ではない。ゴブリンなのだ!
鳥はかぎ爪を構えてこっちに突っ込んでくる。
運動しない文系の俺でもどうにか見えるくらいの速度。
横に避けて相手が飛び上がるタイミングで手に持っていた透明な石を投げる。
今度は当たったが効いた様子はない。
挑発されたと思ったのだろうか相手はますます怒ったのだろう。
ピューイとひと鳴きした後、俺に体当たりしてきた。
また避ける。相手は俺に向き直るとまた突っ込んでくる。
今度は避け損ねてしまい羽が太ももに当たり少し切れた。
緑色の血が流れ出す。
死ぬかもしれないという恐怖に駆られたのか、鳥が飛び上がろうとした瞬間に足を掴んで引っ張る。
鳥は飛ぼうと一生懸命に翼を動かす。
いくら力一杯引っ張ってるとはいえ俺は貧弱なゴブリンだ。
耐え切れずに左手を離してしまう。
すると鳥は勢いよく右に曲がり、勢いが良すぎたのか、パキッと俺が掴んでる足の方の骨が折れる音がした。
鳥は地面に落ち、俺もそのまま倒れる。
相当痛いのだろう。鳥は体を震わせ、再び飛び上がる気配はない。
俺は両手で持てるくらいの石を持ち、鳥に近づく。
鳥は慌てて飛ぼうとするがうまく飛べないようだ。
俺は鳥の頭の上まで石を持っていき、思いっきり叩きつける。
あたりに真っ赤な血が飛び散った。
体に力が入らなくなってその場に座り込む。
鳥を殺して急に冷静になり、とんでもないことをしてしまったという感覚が襲ってくる。

「ギィ」

石をどける。
潰れてグチャグチャになっている。
吐き気がこみ上げてくるが胃の中には何もないため胃がヒクヒクして辛いだけだった。
ステータスを表示する。


『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10
HP :9/18 LP:16
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

レベルとLPが増えて、HPが減っていた。
HPが減っているのは太ももにくらった傷のせいだろう。
俺は鳥を背中に背負って、川のある場所を探しに歩き出した。


しばらく歩いて湖がある開けた場所を見つけた。
湖の中に鳥を浸けて洗い、拾った石の破片で腹を切ってやり方がわからないまま解体を始める。
取り敢えず翼を付け根から切り落とし、皮を剥ぐ。
次は腹を真ん中から掻っ捌き、内臓を全て取り外す。
頭と内臓は湖の中に捨てて、残りの肉を湖につけ、血を洗い流す。
出来るだけ血を出しきって平べったい岩の上に置く。
火の起こし方はわからない。生で食べるしかないだろう。
ゴブリンの胃を信じよう。
ステータスを見るにレベルを上げて進化するにはこれからも殺していかなきゃいけないのだ。
肉を石で切って口に入れて噛む。
血生臭い香りが鼻を突き抜ける。
水を飲んでまた肉を切り分けてまた食べる。
何も考えず一心不乱に食べる。
はっきりいって不味い。ちゃんと洗い切れてないところから鳥の血が流れ込んでくる。それも飲みこむ。
しばらくして俺は全部食べ終えた。



水を飲みにきたのだろう。
ゴブリンが一匹、森から出てきた。
ゴブリンは俺を無視してそのまま湖の方へ行き、水を飲み始める。
水を飲んでるゴブリンの後ろに立ち、石で思いっきり殴りつける。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
反撃される前に殴り殺す。

ステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10
HP :18/18 LP:16
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

レベルが上がらない。
このゴブリンが弱かったのか。鳥の方が強かったのか。
どっちもだろう。
HPが全て回復していた。時間で回復するのだろうか。
LPは何に使うのだろう。
スキルにふることもできない。
進化するのに使うのかもしれない。

さらにレベルアップするため俺は石を持ち、獲物を探しにいった。
太ももの傷はいつの間にか塞がっていた。


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4話

俺が異世界に来て1週間が経過した。
一匹で行動しているゴブリンを狙って倒していったせいかレベルがなかなか上がらない。
だがレベルが上がると俺の体も強化されるようで、やりがいがある。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv7/10
HP :27/27 LP:26
MP :7

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

レベルもなかなか上がらなけりゃスキルもなかなか上がらない。
毒耐性は空腹に耐えかねてキノコを食べてしまった時に成長した。
うまい毒キノコだったよ。HPが1になったときは死んだかと思ったね。
1週間も経つと俺も慣れて来たのか殺すのになんの躊躇もなくなっていた。
今ではただの作業になってきた感がある。
ゴブリンを探してぶっ殺す。ゴブリンを探してぶっ殺す。ゴブリンを探してぶっ殺す。
夜になると木によじ登り枝に寝っ転がる。
落ちる心配からか余り深くは眠れない。
喉が渇いたら湖で水を飲み、腹が減ったら湖に泳いでいる魚を捕まえる。
初日に捨てた鳥の内臓が餌になっているのかよく取れる。
火が作れないから生で食べるしかない。
内臓はまた湖に捨てる。
そのローテーションだ。
あれからスライムも発見できないし、鳥も余り襲ってこない。
ゴブリンが圧倒的に多い。
たまにツノがある一角猪を攻撃してもダメージを与えられない。
俺が貧弱すぎる。



1匹で行動しているゴブリンを発見。
手に持っている石をゴブリンの頭目掛けて思いっきり投げる。
石は当たらずにゴブリンの横を通り抜けていった。
ゴブリンはこっちに気付いて襲いかかってくる。
ゴブリンが殴りかかってくるのを避けて足払いをかける。
ゴブリンは転び、その転んだゴブリンの上に乗って石の破片を頭に突き立ててその上に石を叩きつける。
レベルが上がることによってこういうこともできるようになった。
上がる前までは柔らかそうな胸に突き刺していた。
だが胸だとたまに反撃されるのだ。

ステータスを確認する。


『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv8/10
HP :30/30 LP:28
MP :8

スキル
HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

レベルアップした。
あと2つ。先はまだ長い。
その場から立ち去り湖に戻る。
湖が拠点みたくなってきた。
湖に近づくたびに騒ぎ声が聞こえてくる。
近くの木に隠れて覗き込む。
そこには4人組の男が焼き魚や焼いて萎んだ丸いものに何かを振りかけて食べていた。
丸いものはなんか見覚えがある。
よく見るとスライムの目のような気がしないでもない。
あれはそうやって食べるのか……。
よく見ると剣や杖を持っている。
男たちの近くには死んでる猪があった。
ツノは折られている。
つまりあの男たちは確実に俺よりも強い。
そして俺は全人類の敵である魔物である。
近づけば殺されてしまうかもしれない。
だが、あの男たちについていけば街か村がどこにあるのかわかるかもしれない。
男たちは食事を終えると1番がタオがいいやつが猪を担いで歩き出す。
俺も遠くからこっそりついていく。

「?????????」
「????」

結構声はでかいがなんていっているかは全く理解できない
言語習得不可の所為だ。
ただわかることは日本語ではないということだ。
しばらく進んでもまだ森から出れない。
この森は思ったよりも広いかもしれない。
さらに進むと男たちは森から出て近くには街が見えた。
遠くには結構大きい城も見える。
王様とかいるのだろうか。
俺は森から出ずに木に隠れてみてる。
街は石壁でぐるっと囲まれていて魔物対策をしているようだ。
門には門番がしっかり警備している。
男たちは門番に何かを見せてから門の中に消えていった。
男たちを見届けてから湖まで戻る。
街が近くにあったことに驚いた。
人間に戻れたら是非行ってみたいものだ。



3匹1組のゴブリンを発見する。

「グギャギィ」

不意打ちで石を投げつける。
今度は当たり、当たったゴブリンは頭を抱える。
他のゴブリン達は驚いてキョロキョロと周りを見る。
やっぱりゴブリンは馬鹿だ。投げられた方向を見れば済む話なのに。
少し大きめの石を拾い、投げる。
さっき当たったゴブリンにまた当たる。
今度は俺に気付いたようで頭を抱えてるゴブリンをおいて俺に向かってくる。
距離は開いているのでどんどん石を投げつける。
運良くゴブリンの1匹の目に当たり、うずくまる。
残り1匹になってもこっちに向かってくるゴブリンには足払いをかけて大きめの石で頭を思いっきり叩き潰す。
次は目に当たったゴブリンに近付きさっきと同じように叩きつけて殺す。
頭を抱えていたゴブリンはやっと頭の痛みが治まったようで逃げようとしだすがまた石を投げつける。
今度は外れたがその石を見て少しビビったようで立ち止まってしまう。
立ち止まってるうちにゴブリンの後ろまで移動して後頭部に思いっきり殴りつける。
ゴブリンは倒れる。まだ生きてるようだ。
ゴブリンに乗り、後頭部を殴る。殴る。
死ぬまで殴りつける。
レベルは上がらない。

ゴブリンの中にも緑色の石があることを知った。場所は心臓の中。
俺の中にもあるのだろう。
ゴブリンの死体は放っておいて湖に戻る。
体を洗って返り血を落とし、冒険者がいたところに寝転ぶ。
街は意外と近かった。
湖のところから歩いて1時間くらいである。

疲れたからしばらく休憩することにした。

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5話

街を発見してから3日経過した。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :35/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

とうとうレベルがマックスになった。
進化先が表示される。

『進化先:ボブゴブリン 拳闘ゴブリン
魔術ゴブリン 剣士ゴブリン
槍士ゴブリン 槌士ゴブリン
斧士ゴブリン 盗賊ゴブリン
弓士ゴブリン
種族変化:オークベビー フォーバード』

種族も変化できるのか。
ボブゴブリンの説明欄を表示させる。

『ボブゴブリン 消費LP35
普通よりも強化されたゴブリン。』

LPが足りない。LPは進化に使うのか。

『拳闘ゴブリン 消費LP30
スキル:拳闘術を得たゴブリン。
スキル:拳闘術を取得する。』

他のゴブリンもスキルを取得しただけのゴブリンだった。
種族変化を見る。
オークベビーはいいとしてフォーバードってなんだ?

『フォーバード 消費LP30
4枚の翼を持つ鳥。 』

あいつか。
個人的にはボブゴブリン一択だ。1番LP消費が大きいし。
だがボブゴブリンになるためにはLPが足りない。
ここでちょっとLPの取得条件を考えて見る。
レベルアップでLPが取得できるのはレベルアップしたときに気付いていた。
レベル1の時はLP10。今のレベルで32。
10引く1で9。レベルアップでLP2を手に入れていた。
2かける9で18。合計28ポイント。
差の4ポイントはなんだ?
このポイントは最初の鳥を倒したときに得たときに取得したポイントだと思う。
そのとき以外では2ポイントずつしか増えてなかったからだ。
なんでこのときだけポイントが多く手に入ったんだ?
……もしかしてステータスは俺だけが持ってるわけじゃないのか?

相手の方がレベルが高いと手に入るのかもしれない。
なんでステータスは俺しか表示できないと思い込んでいたのだろうか。
他のゴブリンが表示している所を見たことがないからだ。
ステータスは自分にしか見えないのか?
そんなことはないだろう。
自分だけが特別とかどこの厨二患者だよ。
経験値(レベルアップに必要なものだと杉元が言ってた)は勿体無いがLPを貯めるために進化しないでおこうか。
4も増えるなら1匹だけ自分より強そうなのを狩ればいい。
もっと前に気づいて入ればもっと簡単だったのになぁ。
ステータスを閉じて自分よりも強そうな魔物を探しに行くことにした。

見つけた。ボロボロの剣を持ったゴブリン。
初日に追いかけられたゴブリンとそっくりだ。多分同じ個体だろう。
最初は訳が分からず逃げてしまったが、今回はそうはいかない。
こっちには石という味方がついてるんだ。
本当に石にはお世話になった。
投げてよし、殴ってよし、破片だと肉を捌いてよしと完璧である。
まだ相手はこっちに気づいていない。
まずは観察をする。
ボロボロだが剣を持ってるからあれが剣士ゴブリンというやつなのだろうか。
俺と違って少し大きく、筋肉もうっすらと見える。色は濃い深緑。
隙も今までの普通のゴブリンと比べたら少ない。
俺の進化個体か。LPは手に入りそうだ。
俺の位置は剣士ゴブリンの後ろ。
まさに死角。俺がはずさない限り当たる位置だ。
剣士ゴブリンは動かない。
自分のステータスでも見てるのだろうか。
大きく振りかぶって、頭に向かって思いっきり投げつける!
気分はまるでプロの野球選手。
いないはずのお客さんの歓声まで聞こえるようだ。
これは当たった!と確信したとき、剣士ゴブリンは急に振り向いた。
俺がピッチャーならあいつはバッター。
持っていた剣で石を弾き飛ばす。
剣は今の衝撃で折れてしまったがそれでも剣士ゴブリンは突っ込んでくる。
あの武器奪って使おうと思っていたのに。
まだ距離がある。慌てて別の石を拾い、すぐさま投げる。
今度は全然別の方向に飛んでいった。
相手はもう目の前。前よりも速くなってる。
慌てて後退する。剣が折れてるおかげで普通に避けれた。
俺は石を握ってる方の手で相手の顔面を殴る。
次は石を持ってない方の手で思いっきりビンタ!
剣士ゴブリンは剣を持ってない方の手を顔に持っていき、数歩下がる。
すごい痛かったのだろう。
俺が近づけないように剣をあちこちにぶん回す。
今のうちにもう1つ野球ボールくらいの石を拾う。
これで両手に石を握っていることになる。
この状態で殴ったらもっと痛いだろう。
痛みが引いたのか手を顔から離し、こちらを睨みつけてくる。
そして剣士ゴブリンは折れた剣を後ろにして構えた。
俺も石を握ったまま両手を前に持っていき、ボクシング選手のように構える。
俺と剣士ゴブリンの距離は約2メートルくらい。
先に近づいてきた方が不利になるだろう。
俺はそう思っていた。
そんなことを考えていた俺はまだ異世界のことをよくわかってなかったのだろう。

剣士ゴブリンはいつの間にか俺の前まで迫ってきていた。
そして青白く輝いている折れた剣を振るう。
胸を結構深く切られた。
剣士ゴブリンの動きが一瞬止まる。
その隙を見て俺も相手を殴りとばす。
相手が起き上がってる隙にステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :24/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

HPが11も減ってる。
今のはスキル:剣術によるものだろう。
舐めてた。この世界は思ったよりもゲームみたいだ。
剣が折れてなかったら死んでたかもしれない。
切れた胸の傷がとんでもなく痛い。
少し体を動かすだけでも激痛が走る。
ゴブリンはまた剣を構えた。
また剣をが青白く輝き、ものすごいスピードで俺に迫ってくる。
とんでもなく速いが動きは直線的だ。
なんとか横に避けることができた。
振り返って後頭部を殴る。
胸の傷のせいであまり力は入らないがそれを遠心力で補う。
その勢いで相手は前に倒れ込んでしまう。
急いで剣士ゴブリンの上に跨り、頭を殴る。
殴る。殴る。殴る!殴る!殴る!!
剣士ゴブリンは悲鳴をあげ、折れた剣で無理やり足を刺してくるが手を緩めない。
俺も痛みで思いっきり叫びながらなんども手を上げて剣士ゴブリンを殴る。
だが剣が輝くとともに俺は吹っ飛ばされた。
頭が木にぶつかった。
剣士ゴブリンは剣を支えにしてゆっくり起き上がり、俺を見る。
剣士ゴブリンはじっと俺を見る。
俺も見つめ返した。
しばらくしてゴブリンは背を向けて去って行った。
俺は目の前が真っ暗になり、意識から手を離した。

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6話

起きるともうあたりは真っ暗になっていた。
ステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :16/35 LP:32
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

あの剣士ゴブリンは強かった。
そしてスキル。
俺のスキルは効果があるのかどうか分かりづらいのばっかだったから、侮っていた。
体の傷は大体ふさがっている。
周りを見ると血があちこちに見える。
俺と剣士ゴブリンの血だ。
少し前には剣の破片があった。
もう一度進化先についてもう一度考えてみる。

『進化先:ボブゴブリン 拳闘ゴブリン
魔術ゴブリン 剣士ゴブリン
槍士ゴブリン 槌士ゴブリン
斧士ゴブリン 盗賊ゴブリン
種族変化:オークベビー フォーバード』

俺はスキルというものを舐めてたかもしれない。
自分の戦闘スタイルについて考える
俺の戦闘スタイルは石だ。
それを考えると拳闘ゴブリン。
俺は立ち上がり、破片を拾ってから湖に戻る。
俺はボブゴブリンを目指すと決めた。
そのほうが進化先も増えそうだし。
だが今のままではLPを手に入れるのは難しく、拳闘ゴブリンか盗賊ゴブリンを選んだ方が手っ取り早いとは思うが。



しばらく進むと、何か音が聞こえてきた。
その方向に向かってみる。
この前とは別の4人組が一角猪と戦っていた。
4人とも剣で戦っている。
俺では猪にダメージを与えられない。
だが今の猪は図体は普通のより大きいが切り傷があり弱っている。
とどめを奪えば、LPが手にはいるだろうか。
こっそり隠れて見守る。
状況を見ると4人組はたいした傷はない。
だが全員疲れ切ってるようで息が上がっている。
猪は傷こそ多いがまだ余力がありそうだ。
4人組の1人の剣が光る。
すごい勢いで猪に近づくと大きな切り傷をつけた。
あの剣士ゴブリンと同じスキルだ。
だがあれと比べると全然遅い。
猪は呻き声を上げ、その人を吹っ飛ばす。
その人は気絶してしまった。
だが猪の方もダメージがでかく、血がすごい勢いで流れている。
とどめを刺すなら今だろう。
こぶし大の大きさの石を拾う。

「グギャギャギャギャ!!」

大声をあげ意識をこっちに向けさせる。
3人が気を取られている隙に猪に近づき、剣の破片を傷口に突き刺し、そこを石で殴りつける。
すると剣の破片が一角猪の体の中にめり込み、
猪は倒れ、絶命した。
俺は剣の破片を無理矢理引き抜き、急いで逃げる。
幸い3人は追いかけてこなかった。

しばらく走って適当な木に登る。
太い枝を押し、折れないことを確かめてから座る。

「グギャギィ」

すごい緊張した。
とりあえずステータスを表示させる。

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv10/10
HP :22/35 LP:36
MP :12

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

思い通りにLPが手に入った。
前の剣士ゴブリンとの戦闘はなんだったとは思うが、楽に手にはいるならそれに越したことはない。
進化先を表示し、ボブゴブリンを選択する。

『進化先:ボブゴブリンを選択しますか?』

Yesを押す。

瞬間、俺は意識を失った。



目がさめる。
まず目に入るのは明るくなった空。
朝になったようだ。
寝ぼけ眼をこすりながらステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv2/5
言語習得不可 』

思ったより強くなったという実感はない。
木から降りて湖に戻る。
目線が高くなってるから大きくなったのはわかった。
肌を見ると緑色が少し淡くなっている。
湖に着き、水面に映る自分を見る。
身長は高くなり、姿勢が良くなった。
前は完全な猫背だったから嬉しい。
体は全体的成長しているようだ。
身長は1mから30センチは伸びただろう。
筋肉も少しついて前よりも遥かにマシである。
石を持って木を全力でぶん殴る。
木が折れた。
そのことに驚く。進化するだけでこれだけ違うのか。
太い木はまだ無理だった。
しばらく体を動かし調子を確かめる。
前よりも全然強くなっていた。
今ならあの剣士ゴブリンにも勝てるかもしれない。

「ギャギィ」

気分を切り替える。
次に考えることはスキルだ。
どうやったらスキルを手に入れることができるのだろうか。
今知っているのは最初のキャラメイクか、進化で手に入れる方法だけだ。
修行でも手にはいるのだろうか。
とりあえずやってみようか。
次の問題は武器か。
仮にスキルが手に入ったとしても武器がなきゃ何もできない。
木でも削って棍棒でも作ろうか。
バットを振り回すようなものだ。
いいな。作ってみようか。

さっき折った細い木を持ってくる。
剣の破片で夜中まで時間をかけて形を整える。
木製のバットの完成だ。
完成したものを思いっきり地面に叩きつける。

バキッ!

普通に折れてしまった。

「グギャァ!」

強度が足りない。
やっぱり俺には石しかないのか!
石関係のスキルを手に入れるしかないのか!
例えば土魔法とか?かっこいいな。
どうやったら入手できるかはわからないけど。
気に登り、太い枝に横になって寝ることにした。

朝だ。別に清々しくない。
湖に行って魚をとる。
いい加減味も飽きてきた。
塩もないし生である。寄生虫が怖い。
食べ終わると拳大の石を持ち、レベルを上げるためにゴブリンを探しに、いや、せっかくだから一角猪いってみようかな。
今ならいけるかもしれない。
猪を探すことにする。

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7話

すみません。今回は短いです


見つけた。
かなり大きい。以前4人組から横取りしたのよりも断然でかい。俺の身長を超えている。
俺が1m30cmなら高さ1m70cmはありそうだ。
今までで1番大きい魔物である。
ツノも見た中で1番長く、太く、重量感もある。
ゴブリンの死体を雑草やキノコ一緒に食べてる。
意外とグルメ。
俺の食生活よりも全然マシである。
とりあえず観察する。
しばらくして食事が終わったのかゴブリンを食べるのをやめて、そのまま歩き出した。
後ろをこっそりついて行く。
少し開けた場所に行って欲しい。
木が多すぎると俺にとって不利である。
なぜなら自由に動きずらいからだ。
だがどれだけ進んでも進んでも開けた場所に着かない。
というかよりいっそう茂ってくる。
間違いない。森の奥に向かってる。
いつもは俺の活動範囲である森の湖の場所から行動しているからあまり奥にはいかなかった。
湖の場所も街から1時間と、森の手前だ。
だからたまに4人組みたいな人達が来る。
だがここは薄暗く街から遠すぎるから来れないだろう。
あと猪が結構速い!小走りしてやっとだ。
チラチラと見たことがない魔物も見えてくる。
顔が前後ろあるゴブリン(剣を持ってる!)や、でかい亀、でかいカマキリ、ノロノロと動いている木とか勝てる気がしない魔物ばかりだ。
強者の風格みたいのが漂っている。
進化して少し調子に乗ってしまった。
俺はまだここにくるには早過ぎた。
今すぐ戻ったほうがいいだろう。
俺は猪を追うのをやめた。
しばらくして猪はいなくなった。
バレなかったのは幸運なんだろうか。
いや、俺が弱いから見逃してもらってるだけかもしれない。
そう考えながら戻ろうと後ろを向き、気を避けて進もうと——木?
さっきまでそこには木はなかったはずだ。
見間違いか?

「ギャギィ」

思わず漏れてしまった。
俺はさっきまで何をみた?
顔が前後ろあるゴブリン、でかい亀、でかいカマキリ、そして動いている木。

動いている木。

急いで木のそばから離れる。
だがギリギリ間に合わず枝が片足に巻きつき、俺を持ち上げる。
他の枝が伸びて俺を縛っていく。
無理やり足掻こうと枝に思いっきり噛み付く。
だが植物だから痛みがないのか効いた様子はまったくない。

「グ、グギッ」

どんどんキツく締め付けてくる。
細い枝が伸びて俺の背中を突き刺す。
とんでもなく痛いが口が塞がれてるせいで叫ぶことが出来ない。
背中に刺さった枝の先から何か流し込まれているのがわかる。
ステータスを部分的に表示する。

『HP:27/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

流し込まれてるのは毒だった。
しかも俺が持ってる耐性よりも大きい。

『HP:25/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:23/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:21/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

『HP:19/30
MP:8/8
状態異常:毒(中)』

無理やり暴れて逃げようとするが、しっかり縛られてるせいでピクリとも動けない。
こうしてる間にもHPはどんどん減っている。
死の恐怖が、俺の体を駆け巡る。
無理やり逃げようと暴れる。
もしかしたら怒って俺を投げるかもしれない。
そしたら逃げられるかもしれない。
そんなことを考えてとにかく体を動かす。
その結果は体を締め付けている枝が増えるだけだった。
縛られてるからなのか毒のせいなのか身体中が麻痺して感覚がなくなっていく。
ずっと持っていた石が落ちた。
新しい枝が俺を覆っていく。
苦しい。死にたくない。
だんだん視界が暗くなっていく。

そしてそのまま——


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8話

誰かが話し合っている声が聞こえる。
俺は生きているのだろうか。それとももう死んでいて閻魔の前にでもいるのだろうか。
こっそり薄目を開ける。
場所はどこかの洞窟のようだ。
見える範囲だと、武器を持ち鎧を着た人達が座ってたり話してたりしていた。
疲労困憊で倒れ込んで息を整えてるのもいる。
鎧にみんな同じマークが描かれていて結構な人数がいる。
どこかの国の軍隊かなんかだろうか。
俺は死んでなく生きているようだ。
体の痺れももうない。
ステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :3/30 LP:1
MP :8/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
言語習得不可 』

HPがギリギリで、毒耐性が成長していた。
上がりずらいスキルが一気に2つも成長しているところをみるとあの毒は相当ヤバイものだったのだろう。
ステータスを閉じ、ちらっと横を見る。

「????????????????」
「???????????」

相変わらずなんて言ってるかは理解できない。
木じゃなく鎖で縛られている。
もしかして助けてくれたのだろうか。
いや、そしたら縛ることはないはずだ。
しかも俺を見て嘲笑する奴や睨んでくる奴もいる。
……何か嫌な予感がする。どうにかして逃げたい。
逃げられるだろうか。いや、無理だ。
少しでも動くと鎖がジャラッと音がなる。
近くにいる兵士が俺を見る。
目を閉じて寝てるふりをして洞窟の奥を見る。
出口には兵士だらけで逃げられる気がしない。
逃げるとしたら奥だろう。

『HP:7/30』

逃げられないことはわかってる。
だが何かして諦めるのと何もしないで諦めるのとでは意味合いが違う。
必死にレベル上げして進化しようとしたのもゴブリンのままでは生きていける気がしなかったからだ。
だから頑張った。
そしてその結果が今の状況だ。
進化しても弱いものは弱い。

『9/30』

カウントを始める。

10、9、8、

もう一度薄目を開けて周りを見る。
さっきと状況は変わらない。

7、6、5、4

走る方向は洞窟の奥。

3、2、

足に力を込める。

1、

息を吸って、

『HP:10/30』

0


思いっきり立ち上がり驚いて一瞬動きを止めた兵士達を尻目に走り出す!

スタートダッシュは失敗した。
少し足が滑って閉まったのだ。
後ろは振り向かず、ただ前を見て走る。
なぜか追ってきている様子はなかった。



走る。走る。
進むにつれてどんどん暗くなっていく。
真っ暗になってちゃんと前に進めているかどうかわからなくなる。
後ろからはなんの音も聞こえてこない。

そして走ってるうちに先が少しずつ明るくなってきた。
やはり出口があったのだ!
思わず笑顔になる。今の俺は最高に気持ち悪いに違いない。
体は縛られたままだが転ぶことはなく、走るスピードが上がる。

あと少し、あと少しで外に———




———そこにあったのは光る石碑だけ。
出口はなく、進める道もない。
行き止まり。

「ギィ……?」

神も救いもないのか。いや、救いはあった。
だから動く木から助かった。
後ろから足音が聞こえてくる。
音からして歩いてきてるのだろう。
彼らは知っていたのだ。この先に道などないと。
だから、慌てて追いかけてこなかった。
騒がしい声が近づいてくる。
それが笑い声だと気づく。
石碑に近づく。少しでもいいから兵士から逃げたかった。
無駄な足掻きなのは知っている。
だが動かずにはいられない。
俺はゴブリン。人類の敵だ。4人組に狩られた猪を思い出す。
俺は殺されるのだろうか。
それとも何かの実験台でもなるのだろうか。
そんなことを考えながら石碑に着く。
青白く、剣士ゴブリンの時に見た輝きと比べてとても澄んでいる。
書いてある文字は読めない。
『言語取得不可』の所為で俺は文字も習得することはできないだろう。
俺の両手は前に縛られている。
石碑に触れる。

瞬間、頭痛が走る。
平衡感覚が狂って体がふらつく。
ピントがズレたみたいに周りが何重にもブレて見える。

『———を———————』

頭が痛い。頭痛はどんどん酷くなる。
耳鳴りも酷い。寒気もしてきた。
吐き気が止まらない。

「???????????」
「?????????」

後ろで声がする。
俺の真後ろにいるようだ。
肩に手を置かれる。

もう限界だった。

俺は意識を失った。


『スキル:置換を取得しました。』




起きると俺は牢屋の中にいた。
最近の俺は気絶してばっかだな、とまだぼんやりしている頭で考える。
体は縛られたままで、HPは全快していることからかなり時間が経っていると思う。
立ち上がって檻に行き、横を見る。
他の牢屋には少しだが人がいて、兵士が巡回している。
刑務所みたいなところだろうか。戻って地べたに座る。
ひんやりとした壁が心地よい。

「ギィ」

諦めた。もう無理だろう。逃げられない。
洞窟ではまだ希望があった。
ないに等しい希望だが、わずかにはあったんだ。
窓がないから今が朝か昼か夜かわからない。
さっきまでは気づかなかったが近くに水が置いてある。
これは飲めるのだろうか。それともトイレ用とか?……トイレだったら嫌だな。飲まないでおこう。

特にやるべきこともない。
暇つぶしにステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :8/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

見覚えのないスキルが追加されてた。

『置換』

何を置き換えるのだろうか。
レベル表記がないから成長しないスキルだということしかわからない。
デメリットスキルではないと思いたい。
ステータスを閉じる。
あまりいい暇つぶしにはならなかった。

足音で目がさめる。いつの間にか寝てしまったようだ。
巡回だろうか。どうもご苦労様です。
兵士達が俺がいる牢屋の前で立ち止まる。
兵士達の中にとても豪華な鎧を着た奴がいる。隊長か何かだろうか。
ガキが開く音がした。

「???????」

なんて言っているかわからない。
何も反応を返さない俺を見て焦れったくなったのか、鍵を開けた兵士が俺を掴む。
そのまま俺を牢屋から出した。
そしてまた鍵を閉めると階段に向かって進み出す。俺も後からついていく。
階段を上がり外に出る。
ここは前に見た街中のようだ。
猫耳が生えてる人やら蜥蜴みたいに鱗がある人など異世界チックな人種が色々いる。
しばらく兵士達について行くと城壁にある門を抜けて城に入らず、体育館みたいなところに入った。


そこにいたのは、俺がよく知っているクラスメイト達だった。


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再会 9話 @

高橋君が行方不明になって、1週間が経つ。
1週間なら行方不明というには大げさだけど彼のことが騒ぎになっているのは目撃情報も何もないということだ。
電車にいたということしかわかってない。
いつ出たのか、いつからいなくなってたのか全くの不明。
目撃者はみんな口を揃えて一瞬で消えたと言っていた。
残っているのは彼が身に付けていた腕時計だけ。
その腕時計は杉元君が身に付けている。
高橋君の親から持っていて欲しいと言われたものだ。
高橋君と小学生の頃からの付き合いらしい。
高橋君はクラスでは大人しめであまり交友関係は広いタイプではなかった。
だが、クラスの雰囲気は前よりも暗い。
騒がしいのは進学校には珍しい、いわゆる不良グループの人たちだけだ。

チャイムが鳴り、先生が入ってくる。
今日の伝達事項を伝えて、ホームルームを終える。
先生が去ると皆思い思いに話し始めた。

「ねぇ安藤さん。古典の宿題やってきた?」
「あ、うん。一応」
「ごめん、少し見せてくれない?」
「いいよ」

宿題を谷口さんに渡す。
彼女はありがと、と言って自分の席に戻っていった。
しばらくしてチャイムが鳴り1限が始まる。
1限は現代文。谷口さんの席を見ると私の宿題を一生懸命写していた。
それを見てつい笑ってしまう。
杉元君はノートに何か書いてるようだ。
前までは本当に酷く落ち込んでいた。
自慢の綺麗な茶髪の髪質が少し悪くなってるように見える。
時々腕時計を見ては遠い目をする。
私は高橋君とはそれなりに仲は良い友達だった。
試験が近づくと杉元君を含めて3人で図書室で勉強したり、たまに3人で帰る途中で買い食いしたりとそれなりに良好な関係だった。
彼は両親や知り合いに迷惑をかけることを酷く嫌うタイプの人だ。
私は、高橋君は直ぐに発見されるのではないかと思っている。
だからそんなに落ち込んでいない。

先生が今黒板に書いた文章に黄色いチョークで線を引く。
試験に出すから書いとけとみんなに言う。
みんなは急いで書き写す。
私も今書いた文章に線を引いた。



昼休みになった。
谷口さんは無事に間に合って提出することができ、杉元君は宿題を忘れたと正直に言って先生に怒られてみんなに笑われていた。
私もつい笑ってしまった。
杉元君は放課後居残りになってしまった。

「はぁ、めんどくさいなぁ」
「言えば見せたのに」
「家に置いてきちゃったんだよねー。徹夜して終わらせたのに。はぁー、勿体無い」
「私も手伝おうか?」
「頼んでいい?」
「いいよ。大した手間じゃないし」
「サンキュー。帰りになんか奢るわ」

弁当を食べながら当たり障りのない会話をする。
高橋君がいないからかどこか寂しさが残る。
杉元君がチラッと腕時計を見る。
2万くらいする、高校生にとってとても高い時計だ。
高橋君がバイト代全てを使って買ったと言っていた。

「多分、そのうち帰ってくるよ」
「そうだな」

と杉元君は寂しそうに笑った。

食事が終わり、次の授業の準備をする。
昼休みはあと10分で終わる。
不良グループは相変わらず騒がしい。
高橋君がいなくなったのをなんとも思ってないようだ。
杉元君は彼らを睨んで言う。

「少しは静かにできないものかねぇ。いつも騒がしいったらありゃしない」
「しょうがないよ」

外で昼を食べてたクラスメイト達が教室に戻ってきた。
授業開始5分前。みんなが着席する。
ご飯を食べたばっかだからかとても眠い。
周りを見ると、結構みんな寝ている。
私も寝ようとして違和感に気付く。
本当に全員寝ている。誰1人起きていない。
しかも食べたばっかにしては眠すぎる。
どんどん眠くなってくる。
頭を抑えて隣の席の橋本ちゃんを起こそうと揺らしてみる。
起きる気配はない。

私もついに耐えきれなくなり、寝てしまった。





眼が覚めるとそこは教室ではなかった。
周りにはローブを着た人や鎧を着た兵士みたいな人たちが私達を囲っている。
クラスメイト達は数人しか起きていない。
ほとんどはまだ寝ている。
杉元君は起きているようだ。
なぜかテンションが高い。
起きた私に気付いたのだろう。近付いてくる。

「おお、起きたか。どこか怪我してないか?気持ち悪くはないか?」
「大丈夫だけど……。ここはどこ?どう言う状況かわかる?」
「多分だけどこれ、異世界転生っていうやつじゃないか!」
「異世界転生?」
「ネット小説とかでよくあるジャンルだよ。
ガチで体験できるとはな。人生何があるかわからないもんだ!」
「そ、そう」

そろそろみんな起きたようだ。
困惑した様子で、周りを見渡している。
ローブを着たお爺さんが涙を流しながら言う。

「よくぞいらっしゃいました!私達の世界をお救いください、勇者様!」

は?

「これって異世界転生?」
「え、まじで!」
「俺たち転生しちゃった系?」
「俺の時代クルー」

結構みんな異世界転生について知ってるようだ。
頭の中が?で埋め尽くされている。
ローブのお爺さんが言う。

「ついて来てください。王様のもとへお連れします」

一旦外に出て、城に向かう。
城は結構大きく、中に入るとその荘厳さにざわめきが起きる。
床はレットカーペットだ。
そんな私達を見て兵士達も笑顔になる。

階段を登ったりしてしばらく進むと、王様の元に着く。
王様は玉座に座っていて見た目は優しそうなお爺さん。髭は胸のところまで伸びている。
服装もザ・王様チックで威厳すら感じるようだ。

「王よ。勇者様をお連れしました」
「ご苦労」

王様は立ち上がり、言った。

「ようこそ、勇者様。あなた達にお願いがございましてこうして我が城に召喚させていただいた次第でございます。」

こうして私達は非日常に足を突っ込むことになる。


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10話 @


王様が言うには邪神の封印が解かれようとしているらしい。
だからその邪神を封印し直すか殺すために王様が信仰している神の力を借りて異世界人である私達を召喚したと言う。
杉元君達がテンプレだー!とテンションがさらに高くなる。
もし戦ってくれるなら色々サポートするし、今なら地球に戻してくれると言う。
戦わないにしても、何か仕事をしてくれるなら城で暮らしてもいいと言っている。
だが帰ると決めたなら明日しか帰れないそうだ。
私達を召喚した儀式よる魔力がどうたらこうたらと説明していたが全くわからない。
分かるのは明日帰らなかったら次は邪神をどうにかした後しかチャンスはないと言うことだ。
選択権はこちらにある。
だが大体の生徒は戦う気満々である。
ゲーム感覚なのだろう。
私は地球に帰りたい。
戦うってことは死ぬかもしれないことだ。
私以外にも迷っている人もそれなりにはいる。
杉元君は戦うそうだ。まぁ、彼らしい。

「斎藤はどうするんだ?」
「帰ろうかなって思ってる。死ぬかもしれないからね。」
「ふーん。そっか……。なぁ、後で2人で話せないか?」
「別にいいけど。どうしたの」
「後で話すよ」

とだけ言って彼は何かを考えてるのか黙ってしまった。
さっきまでのテンションが嘘みたいだ。

ざわめきが収まってくると1番豪華な鎧を着た兵士——騎士団長のデリスさんがステータスを見せて欲しい、と言ってきた。
ステータスと念じると自分で見れるらしい。
表示してみる。

『名前:斎藤知恵
職業:魔物使い Lv:1/30
使役:0/1
HP :30
MP :35

スキル
強化魔法 Lv1/5 火魔法 1/5 風魔法 1/5
鑑定 Lv1/10 使役 祈り 』

強い……のかな?
基準がわからない。

「なぁ、斎藤のも見せてくれないか?俺のも見せるからさ」
「これって自分にしか見えないの?」
「普通はそうだけど、許可を出せば他の人に見せれるらしい」
「へぇ、そうなんだ。いいよ」

周りを見れば他の人も見せあってるっぽい。
これが杉元君のステータスだ。

『名前:杉元達也
職業:ウェポンマスター Lv:1/50
HP:60
MP:28

スキル
剣術 Lv1/5 斧術 Lv1/5 槍術 Lv1/5
棒術 Lv1/5 槌術 Lv1/5 暗器術 Lv1/5
弓術 Lv1/5 武術強化 Lv1/5 盾装備不
可 』

「レベル上限が違うね」
「俺は上位職とかなのかね」
「そうですね」

近くにいた兵士が親切に教えてくれた。

「レベル上限が大きいほうがより上位の職業で間違いないでしょう。失礼ですが上限を教えていただけませんか?」
「俺は50ですね」
「私は30です」
「でしたら2次職と3次職です。最大で5次職まであると言われておりまして、それだと100です」
「言われてる?」
「5次職まで行く人は滅多にいませんからね。我々は1次職からレベルを上げるので大抵は3次職、いけて4次職までしかいけないのです。5次職になった人は今まで数人しかいません」
「その人たちは教えてくれなかったんですか?」
「記録にはございません。今だと3人いらっしゃいますがどなたも教えてくれませんでした」
「3人もいるんだ……。ああ、ありがとうございました」
「いえ。また何かございましたら気軽にお聞きください」
「ありがとうございました」

兵士は戻っていった。





「では皆さんそろそろお部屋に案内いたそう」

王様はそういうと大勢の侍女が部屋に入ってくる。猫耳とかいたりして異世界なんだと改めて思う。

「あの〜、すんません。俺たち一緒でいいっか?一緒の方が楽っつうかー」
「大丈夫だ。ではそのようにいたそう。他には?」

不良グループやオタクグループ、クラス内で付き合っている人達が手をあげる。
意外なカップルがいたりして面白い。
先にグループ組が案内され、次にカップル、最後に個人が案内される。

部屋に入る。
まるで豪華なホテルのようだ。

「何かございましたら机の上にあるベルを鳴らして下さい」

侍女は部屋から出ていった。
ベットに飛び込む。すごいはずんだ。
思い切り伸びをする。
意外と私は疲れていたようだ。

ノックの音がなる。

「斎藤、今ちょっといいか?」

杉元君だった。

「いいよ」

さっき言ってた話したいことだろうか。
杉元君は椅子に座る。

「それで話ってなに?」
「ああ、うん」

彼は何か悩んでいる様子で言う。

「斎藤はどうするつもりだ?」
「何が?」
「残るか帰るか」
「帰ろうかなって思ってる。杉元君は?」
「残ろうと思ってる」
「そうなんだ」
「このことにもつながる話だけどさ」
「うん」
「もしかしたら、もしかしたらの話なんだけどさ、あいつもこっちに来てたりしないかな」
「あいつ?」
「浩太郎」
「高橋君も?それはないんじゃない。行方不明だけどさ、そんな偶然はないでしょ」
「もしかしての話だよ。電車から目撃証言はなかったからここに飛ばされたんじゃないかと思ってさ。異世界転移もネット小説でよくあるし」
「ネット小説で言われてもね」
「今の状況はまるでそうだろ」
「そうだけどさ」
「まぁ、頭の片隅にでもおいといてくれよ」
「わかった」
「言いたかったことはそれだけだ。明日王様に探して欲しいって言うつもりだ」
「いないとは思うけどね」

ドアをノックする音が聞こえる。

「夕食の時間になりました。案内致します」

杉元君は立ち上がる。

「じゃぁ行こうか」
「そうだね」

廊下を歩きながら私は帰るかどうかもう一回考えてみることにした。

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11話 @

昨日召喚された部屋にクラスメイト達が集まった。
ローブを着たお爺さん——魔術師団長のステルさんが呪文を唱えている。
顔は真剣そのものだ。
部屋に描かれた魔法陣がまばゆいほどの輝きを放っている。
帰る人達が魔法陣の中に入る。
お爺さんの詠唱がより一層大きくなると魔法陣も目を開けていられないくらい輝く。
光が収まる頃には魔法陣の中にいた数人のクラスメイト達はいなくなっていた。



私は残ることにした。
杉元君が言ってたことが頭から離れなかったのだ。

「斎藤は残ることにしたんだな」
「まぁ、そうだね」
「……俺のせいか?」
「そんな事はないよ。今戻ったってめんどくさくなるだけだと思っただけ」
「そうか」

ステルさんが振り返って私たちに言う。

「皆さん。私たちのために残って下さり感謝の念に堪えません。本当にありがとうございます」

と深々に頭を下げる。

「頭をあげて下さい」

副委員長の服部くんが声をかける。
委員長は無口だから普段は副委員長が話す。

「俺たちがどれくらい役に立てるかわかりませんが、できる限り頑張って行こうと思います」
「爺さん、俺らに任しとけって」

不良グループもやる気満々のようだ。
おぉ、おぉ、とステルさんは感動して涙も浮かべている。
そんなに切羽詰まっているのだろうか。

「では移動しましょう。この世界について説明いたします」

会議室に案内される。
室内はよくニュースで見るような、中央に台座があり周りを机が囲んでいる豪華な会議室だ。
みんなそれぞれ椅子に座っていく。

「隣いいか」
「うん」

私の隣に杉元くんが座る。
ステルさんが台座に置いてある水晶に手を置くと上にでかいスクリーンが表示される。
スクリーンには地図が表示されている。
これも魔法なんだろうか。

「ではまずこの世界について説明します」

ステルさんが色々説明する。
まとめると、

・元々2柱の神が争っていた。聖神と邪神である。
・それを最上位神の創造神が見咎めてこの世界——ミラスイを作り、自分の眷族で決着をつけろとおっしゃった。眷族を使い相手を殺せという事である。
・上司の命令に逆らえるわけでもなく聖神は人族、邪神は魔物を生み出す。
・魔物は1体1体が強く、人族は数は多いが1体1体が弱い。
・魔物が優勢だったがそれを見た聖神が人族に『ステータス』を与えた。
・『ステータス』により人族はレベルを上げ、様々なスキルを使うことによって今度は人族が優勢になる。
・それにより邪神を追い詰めるに至ったがとどめをさせるほどの力を持つ人族が存在せず、封印するしかなった。
・封印したおかげて魔物は弱体化されたがそれでも魔物は脅威だった。魔物と人族が1対1で戦えば余裕で人族が負ける。
・だからいつしか封印した邪神が復活するかもしれない。
・そう考えた祖先が封印の鍵を3つに分けてそれを隠すためにそれぞれ国を作った。

「……とまぁ、こういう感じです」
「鍵ってどういうやつ?」

不良グループのリーダー格である関くんが尋ねる。

「わかりません」
「は?」
「鍵が何で出来ててどういう形をしているか、どの国にあるのかすら何も伝えられてないのです」

みんな唖然とする。
そんな話があるのだろうか。
先祖は何を考えていたのだろう。

「次は魔物について説明させて頂きます」

スクリーンに表示されてた地図が消えて今度は緑色の小人が表示される。

「あれはゴブリンかな」

杉元くんが呟いた。

「この魔物はゴブリンといい、魔物の中では最も弱いです」

ざわめきが漏れる。

「ですがそのゴブリンでさえ一般人だと殺されてしまいます」
「そんなに強いんですか」
「ええ。一般兵だと普通に倒せます。ですが魔物の強さにもピンキリありましてゴブリンでも一般兵が複数いないと倒せないこともあります。更に魔物は進化もするんです」

ざわめきが強くなる。

「これが異世界人であるみなさんを召喚させて頂いた理由の1つです」
「どういうことですか?」
「理由はわかりません。ですが聖神がいうには異世界人のステータスは我々のステータスよりも強いのです。
そして今度こそ邪神にトドメを刺すために皆さんに手伝って頂きたい!」

みんなのテンションがテンションがマックスになった。
体育会系は思いっきり叫んでいる。
時間を見ると結構時間が経っていた。
ノック音がなる。

「食事の時間になりました」

扉を開けて侍女が入ってくる。

「もうそんな時間ですか。では参りましょう」

それぞれ腹減ったー、とか言ってるのを聞きながら食堂に向かう。
ふと気になったので侍女に聞いてみる。

「肉ってもしかして魔物ですか?」
「はい。そうです」
「え!?」

周りのみんなも驚いたようだ。

「牛とか豚とかないんですか!?」
「牛も豚も魔物ですよ?」
「ええ!?」

食堂に着く。
この世界の食べ物に対して見る目が変わった。




美味しかった。魔物だとしても肉は美味い。
ちなみに今日の肉はツノシシという魔物らしい。
見た目はツノがある猪だという。

「美味いなぁ……」
「俺は焼いたスライムの目が特に好きだなぁ」

食感は完全にホタテだった。
みんななんとも言えないような顔をしている。
さっきまで人類の敵!という話を散々聞かされていたのに食べると美味しいのである。
ゴブリンはとても不味いらしい。

「次は戦闘訓練を行います。訓練場まで案内いたします」

騎士団長が兵士を連れて登場する。
立ち上がり、騎士団長について行った。


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12話 @

訓練場でスキルについて教わった。
スキルにも色々分類があり、今回は戦闘系スキルを教わった。
戦闘系スキルは武術系と魔法系スキルとその他系スキルに分類される。
武術系スキルは武器などを使いMPを消費することで技を発動するスキル。
魔法系スキルは言わずもがなだ。
そしてスキルは魔物を倒さないと上がらないらしい。

「俺のスキルは武術系だけだな。職業の影響かな」
「私は魔法系だね。『祈り』ってなんだろう」
「『祈り』ですか!とてもレアな回復系スキルですね。回復系スキルを持つ人はあまりいません。いいですね」
「なるほど」

周りの兵士がスキルについて親切に教えてくれる。

「鑑定とは?」
「そのままですね。物や魔物について鑑定することができます。最初は成功率が悪く、分かっても名前くらいですがスキルレベルが上がるとより詳細に知ることができるようになります」

周りを見ると木剣などを使ってスキルを使ってみたりしている。
杉元くんは武術系スキルが多いぶん大変そうだ。
私は魔法系スキルを試してみる。
手を前に出して火魔法を唱えてみる。

「ダーム」

魔法陣が出てきて火の玉が出てくる。
大きさは野球ボールくらい。
人がいないところに飛ばしてみると結構速く真っ直ぐ飛んだ。
次は風魔法。

「フロー」

目の前に魔法陣が出てきて周りに風が起きる。
ある程度コントロール出来そうだ。
強化魔法は次でいいだろう。

杉元くんが悲しそうな顔で近づいてきた。

「なぁ、斎藤……」
「ど、どうしたの?」
「俺さ、武器がなかったら何もできないことに気付いたんだ」
「そ、そうなの」

スキル構成を見る限りまぁそうだろう。
盾も装備できないし。

なんとも言えない空気が流れた。


日が暮れて夜になり晩飯を食べて浴場に入った後部屋に戻る。
訓練場で気付いたのは今の体は地球にいたときよりも強くなっていたことだ。
体力も明らかに上がっている。

私はフカフカなベットで心地よい眠りにつくことにした。





次の日。今日はそれぞれ自由に過ごした。
スキルを練習する者。図書館で勉強する者。
魔法を練習する者。だらだらする者。
不良グループとオタクグループは意外と仲良くスキルを練習していた。
杉元くんはスキルの多さも相まって頑張って練習している。
杉元くんは全部使いこなそうと言うのだ。
せっかくあるんなら使いたいらしい。
大変だろうが頑張って欲しい。
私は図書館に行って魔物について調べてみることにした。
もしかして知っておくことで『鑑定』の成功率が上がるんではないかと考えたからだ。

「うわぁ」

様々な魔物の名前や特徴が書かれている。
魔物も種類によっては魔法は使うようだ。
これは明日みんなにも言っておこうか。
辞典には魔物について色々面白いことも書いてある。
例えばゴブリンの肉は不味いがゴブリンの焼いた肉をミンチにして肥料として畑に撒くとより美味しくなるらしい。
他にも様々な魔物の活用法が書いてある。

「何か飲む?」
「え?」

隣を見るといつの間にか谷口さんが座っていた。

「ここの図書室って飲み物飲んでいいってさ」
「そうなんだ。じゃぁなんか目が覚めそうなやつ。コーヒーみたいな」
「あーあの緑色のやつでいい?」
「うん。お願い」
「お願いって言われても侍女に頼むだけだけどね。すみませーん!」

近くにいた猫耳の侍女に飲み物をお願いする。
侍女は笑顔で頷き、飲み物を取りに行った。

「猫耳可愛いよね〜」
「谷口さん、顔がおじさんっぽいよ?」
「うへへへへ」
「もう」

侍女が飲み物を持って戻ってきた。
感謝を述べて飲み物を受け取る。
一口飲む。うん、コーヒーっぽい。

「ねぇ、ステータス見せてくれない?私も見せるからさ」
「いいよ」

『名前:谷口杏里
職業:召喚士 Lv:1/50
召喚:1

スキル
召喚 Lv1/10 聖魔法 Lv1/10 』

「私と結構似てるね」
「そうだね。聖魔法ってどんな魔法?」
「光魔法が成長したやつで補助寄りなスキルだってさ。私自身の攻撃力は低いから召喚頼りだね」
「私は攻撃魔法があるから、マシかな」
「そのぶん召喚が強いんだろうね」
「試してないの?」
「うん。何が出るかわからないしさ。この世界の生物についてもっと知ってからにしようと思って」
「じゃぁ、この辞典読む?」
「いいの?」
「うん。辞典もこれだけじゃないし。他の辞典も読みたいしさ。読み終わったら貸してね」
「ありがとー」

『魔物辞典その2』を取りに行く。

「あ、魔物辞典は一冊だけじゃないんだ」
「その2は魔物の進化系について色々書かれてるっぽい」
「へぇ、そうなんだ」

こうして谷口さんと和気藹々と話ながら1日が終わった。
そしていろんなものに対して『鑑定』を試していたらスキルレベルが上がった。




次の日。杉元くんは筋肉痛で辛そうだ。
『ステータス』の概念があっても筋肉痛にはなるらしい。
お爺さんに案内されて訓練場に向かう。
今日は実際に魔物を見せてくれるそうだ。
騎士団がゴブリンを捕まえて連れてくるらしい。
まだ外でレベル上げするには早いと言われた。
魔法とか武器に慣れてないからだそうだ。

「どんな魔物が来るんだろうな」

杉元くんは結構楽しみみたいだ。
私は種類によっては使役しようかどうか迷っている。
私は後衛だから盾役が欲しいのだ。

訓練場についた。
あと少しでデリスさんがゴブリンを連れて来るという。
前にスクリーンで見たが実際に見るのとは違うのだろう。

「ゴブリンかよ」
「サキュバスとか見たくね?」
「エロいんだろうなぁ〜」

男子がバカな話をしている。
女子は冷ややかな目で男子を見る。
私も冷ややかな目で杉元くんを見た。
バカなことをしているうちにデリスさんが入ってきた。
後ろには縛られたゴブリン。
だがスクリーンで見たゴブリンよりも大きい。
なぜか私達を見て驚いているように見える。

「ゴブリンじゃなかったのか?」

ステルさんがデリスさんに尋ねる。
ゴブリンじゃないのだろうか。

「なかなかゴブリンが見つからなくてな。
しばらく進んだらトレントに捕まっているのがいたからこれにすることにした」
「そうか。まぁいいじゃろう」

私達に説明する。

「この魔物はボブゴブリンといってゴブリンが進化した魔物です。強さは最弱とは言えませんが弱い部類でしょう」

みんなじろじろボブゴブリンを見てる。
私は『鑑定』を使ってみた。

『失敗しました』

ダメか。もう1回。

『失敗しました』

3度目の正直。

『ボブゴブリン
普通よりも強化されたゴブリン。』

読みあげる。
お爺さんがいう。

「あなたは確か魔物使いですよね。使役してみますか?」
「じゃぁ、試しにやってみてもいいですか」
「どうぞ」

ボブゴブリンに近付く。
みんなの見てる前で使役してみる。

『失敗しました』

もう1回。

『使役:ボブゴブリン』

「成功しました」
「使役したらより詳細にボブゴブリンについて知れるはずです」
「ステータスを見てみてください」

『名前:斎藤知恵
職業:魔物使い Lv:1/30
使役:1/1
HP :30
MP :35

使役魔物:ボブゴブリン

スキル
強化魔法 Lv1/5 火魔法 1/5 風魔法 1/5
鑑定 Lv2/5 使役 祈り 』

「ちゃんと使役してます」
「使役した魔物はより詳細に知れるはずです」
「なるほど」

『ボブゴブリン 特殊個体
より成長したゴブリン。
スキル:置換を持つ。 』

「特殊個体?」
「特殊個体ですか!」
「特殊個体って何ですか?」
「理由はまだ分かりませんが普通の魔物とは違ってなぜかスキルを所有している個体です」
「スキルは人族だけじゃないんですか?」
「滅多にいませんがスキルを持つ個体もいます」
「聖神に聞いたりしなかったんですか?」
「聖神から神託を頂くことがあっても、こっちから聖神に話しかける事は出来ないのです。なので日々研究者が頑張って研究しています」
「スキル:置換ってどういうスキルですか?」
「置換?すみませんが私は聞き覚えがありません。あとで図書室で調べてみて下さい」
「分かりました」

ボブゴブリンを見る。
驚きの表情で私達を見ている。

「なぁ、斎藤さん」

不良グループの関くんが私に話しかけてきた。
ニヤニヤしている。

「スキル使って攻撃して見ていい?」


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13話

『使役されました。主人:斎藤知恵』

クラスメイトがいたことに混乱していたら俺は斎藤さんに使役されることになったようだ。
斎藤さんの近くには杉元もいる。
関が俺を見てにやにやしていると斎藤さんに

「なぁ、斎藤さん。スキル使って攻撃して見ていい?」

関がなんて言っているのか分かった。
日本語だ。
『言語習得不可』でも異世界の言語には聞かないようだ。
素直に嬉しいことである。
関が俺に木剣をむける。
関や斎藤さんはこのボブゴブリンが俺だと気付けるわけがない。
俺は攻撃でもされるのだろうか。
関の木剣が光る。
剣術スキルを持っているのだろう。
木剣を横に振ってきた。
俺は避けるのを忘れて当たってしまう。

『スキル:置換を発動します』

痛くも何ともない。
ステータスを表示する。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :2/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

HPじゃなくMPが消費されてる。
どうやったら発動できるかわからないがMPが盾の代わりになるようだ。

ダメージをくらった様子のない俺を見て豪華な兵士とローブのお爺さんが話し始めた。
なんて言ってるかはわからない。
今度は豪華な兵士が剣で切ってくる。
普通に切られる。

「グギャァ!」


『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :25/30 LP:1
MP :0/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

残ったMPよりも攻撃力の方が勝ったのだろう。
お爺さんが一言呟くと傷が治り、HPが全部回復する。
MPは治らなかった。
関は斎藤さんにお礼を言って戻っていった。
斎藤さんはお爺さんと話し始める。

「?????????????」
「つまり『置換』はある程度のダメージなら自分以外に『置き換え』ることができるんですね」
「???????????」
「盾役としてちょうどいいですね」

お爺さんがなんて言ってるかは分からないが斎藤さんのおかげで何となくわかる。

「すみませーん。私は召喚士なんですけど、召喚して見ていいですか?」

谷口さんが手を上げて言った。

「?????」

お爺さんが何か言っているが谷口さんの様子を見る限り許可を出したのだろう。
谷口さんが前に出てくる。

「召喚!」

谷口さんが唱えると魔方陣が出てきて、ある魔物が現れた。
耳が結構長く、周りが刃になっている兎だ。

「うおー、すげー!可愛い!」

谷口さん大興奮である。
確かに可愛いが耳が危ない。

「戦わせてみようぜ!」

不良グループも盛り上がる。

「可哀想だよ」

女子は否定的だ。
俺もできれば戦いたくない。
豪華な兵士が何かを谷口さんに言う。

「えぇ〜、でも……分かりました」

何が分かったのだろうか。

「斎藤さん、いい?」
「私はいいよ」

戦わなきゃいけないっぽいな。
クラスメイトが斎藤さんと谷口さんから離れていく。

「みみぴょん、いくよ!」
「ゴブリン、構えて」

みみぴょんと兎に名付けたようだ。
体が強制的にファイティングポーズをとる。
主人の命令には逆らえないようだ。
ボブゴブリンは言いにくいからかゴブリンって呼ぶことにしたっぽい。

「まるでポ○モンみたいだな」
「な」

離れたクラスメイトが口々に言う。

「?????」

兵士が真ん中に立って何かを言う。

「「はい!」」
「??、???????!」
「みみぴょん!頑張れ!」
「ゴブリン!」

兎が耳を構えて飛びかかってくる。
勝負が始まったようだ。
言葉がわからないせいで対応が遅れてしまう。
とりあえず石を探したが見つからない。
ちくしょう、俺の武器が!
兎はそのまま突っ込んでくる。
横に避ける。普通に避けれる速度だ。
避けられた兎はまた突っ込んでくる。
耳をぶんぶん振り回すが俺も何とか避ける。

「ゴブリン!攻撃して!」

どうやって!?
耳を振り回してるせいで攻撃しようにも隙がない。
ふと思いついて俺は地面を思いっきり踏みつける。
地面は割れなかった。
石の床だから破片でどうにかしようとしたが俺の方が弱かった。
ステータスを開く。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :5/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

MPがある程度回復している。
ステータスを開いたまま俺も兎に突っ込んだ。


『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :2/8

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

少しMP盾のおかげでどこも怪我をせず兎の眼の前に移動できた。
兎を思いっきり蹴り上げる。
兎は吹っ飛んでそのまま倒れる。
息はあるようだがもう戦えないだろう。
こっちもそれなりに修羅場をくぐってるんだ。
自慢げに斎藤さんを見る。
斎藤さんはちょっと引いた様子で俺を見る。

「みみぴょーん!」

谷口さんは兎に駆け寄った。

「ヒール!!」

兎を回復させる。
回復した兎は俺を見るとすぐに谷口さんに逃げる。
谷口さんは兎を抱き上げた。

「どうしたの?」
「ちょっとね」

急に俺に近づいてきた男子がいきなり俺の腰ミノを奪い取った。

「「「「「きゃー!!」」」」

女子は叫ぶ。
その男子はゴブリンに息子があるのか気になったのだろう。
だから腰ミノを取った。

答えはちゃんとついてる、だ。

俺の息子がここにいるクラスメイト全員に見られた。
急いで腰ミノを取り返し、身に付ける。

「サイテー!何してんのよ!」
「そーよそーよ!」

女子たちの大ブーイング。
男子も何とも言えない表情で俺を見る。

「ねぇ、切り落としましょうよ!」

誰かがとんでもないことを言い出す。

「それはダメだろ!」
「それだけはやめてくれ!」

男子が俺の味方になってくれる。
俺は股間を抑えて身を守る。

俺の腰ミノを奪った男子のせいで場が可笑しくなった。

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14話

日が暮れると俺は城の地下にある牢屋に入れられた。
牢屋の中はランタンとトイレ代わりの桶しか置いてない。
兵士がランタンの中に見覚えがある石を入れる。
これはゴブリンとかの中にあった石だ。
この世界では魔物の中にある石——魔石を使うことで生活するようだ。

他の兵士が山盛りのパンを持ってきた。
パンを牢屋に入れた後、鍵をかけられる。
パンを食べる。固かった。
個人的には硬いのが好きなので満足だ。
今までは生肉とよくわからない野草とキノコぐらいしか食べられなかったのに比べると豪華になったものだ。
炭水化物は最高だな。

「グギィ」

クラスメイトのことを考える。
みんなで邪神とかいうやつを倒すそうだ。
出来るのだろうか。みんなはまだ実感が薄いのかもしれない。
死ぬかもしれないとちゃんと分かっているのだろうか。
俺の正体をクラスメイトに知らせるつもりはない。
俺は地球では行方不明扱いのようだ。
ゴブリンになってると知られたくない。
怖いのだ。どう言う反応されるのかが。
想像するだけで震えが止まらない。
パンをやけ食いする。
日本語はわかると言うことで字が書けることにも気づいたが、日本語を使うと気づかれるかもしれない。
俺はただのゴブリンとそして振る舞うしかないんだ。

俺は寂しさや悲しさを抱くと共に久し振りにクラスメイトに会えたことに安心感を覚えていた。





次の日。起きると目の前には山盛りのパン。
補充されていた。
相変わらず硬いが美味い。
食べ終わる頃に斎藤さんが迎えにきてくれた。
牢屋から出て斎藤さんについていく。
周りにいる兵士と仲良く話している斎藤さんを見ると自分の正体について話したくなる。

今日は城から出て協会に向かうらしい。
なぜか俺も連れていくようだ。
協会に向かいながら斎藤さんは俺に色々話しかけてくる。
祭司のトップは王様らしい。
この世界について色々話してくれた。
教会の中に入る。
奥にとても大きな女神像が置かれている。

「これが聖神」

斎藤さんが呟く。
みんな呆けた顔で女神像を見上げる。
魔物の俺からしたら聖神は敵になるらしい。
だが、俺はいつの間にか聖神に祈っていた。

俺の正体がバレませんように。
みんな無事に地球に帰れますように。

周りを見るとみんなも目を瞑り、静かに祈っていた。

『誓約:偽自 を誓いました。』

誓約:偽自?クーフーリンとかのやつだろうか。
ステータスを開く。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :50/50 LP:8
MP :20/20
誓約:偽自

スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』

スキル以外のステータスが全部上がってる。
LPも増えていた。
誓約を破ると酷い目に遭うと言われている。
偽自、つまり自分の正体がバレてはならないということだと思う。
聖神に感謝を述べる。
気付くとみんなは教会を見学していた
いくつかグループに分かれて移動している。
そこら辺の人に話しかけてたりして楽しそうだ。
俺は椅子に座ってみんなが戻ってくるまで聖神像を眺めながら待つことにした。

しばらくして城に戻る。
訓練場に行き、クラスメイトたちは戦闘訓練をする。
斎藤さんのスキル、『使役』によって俺は斎藤さんの命令に逆らえない。
例え聞こえなくても体は斎藤さんの命令に従ってしまう。
戦闘訓練中たまに体が勝手に動くことが多々あったので間違いない。
俺もその辺の兵士と戦ったりした。
いつもと調子が違う。
より素速く、力強く、動体視力も上がっている。
誓約によるものなのかレベルも上がってないのに戦闘面で大幅に強化された。
誓約が破れたときにどうなるか、怖くて仕方ない。

今日は街から外に出された。
今は俺がいてもあまり出来ることはない。
だから閉じ込めておくよりも外に出しといたほうがいいと考えたのだろう。
運が良ければ進化して帰ってくるかもしれないと考えているようだ。
俺を他のゴブリンと見分けるために腕輪をつけられる。
なんの変哲もないただの腕輪だ。
斎藤さんの名前が日本語で彫られている。
俺は森に向かった。
森に入ると近くを飛んでいたフォーバードが俺に突っ込んでくる。
俺は石を拾って突っ込んできたフォーバードの頭にむかって思いっきり殴る。
これだけでフォーバードは絶命した。
死体の中にある魔石を取る。
これを貯めて斎藤さんにプレゼントすれば褒めてくれるだろうか。
湖に行って地面を掘り、魔石を埋める。
目印に不自然に見えないように木の枝を突き刺しておく。

斎藤さんに教わった。
この世界には冒険者と言われる人たちがいるそうだ。
最初に来たときにあった4人組もそうなのだろう。
ギルドに所属していて、調査、落し物探し、魔物討伐などの様々な依頼で動く何でも屋みたいなものだそうだ。
依頼がないときは魔物を狩って魔石を集めて売ることで生計を立てるらしい。
冒険者にはランクがあり、こなした依頼の質や量、売った魔石の希少度や量によってランクが上がる。
つまりランクが高いほど強いと考えていい。
そんな奴らに目印がバレたら奪われるに違いない。
出来れば遭遇すらしたくない。

俺はレベルを上げながら、魔石も集めることにした。

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15話

この世界について主人公はよくわかっていません。
斎藤さんたちやこの世界の人々と認識が色々違います。

なので色々混乱するかもしれません


1週間、俺は1度も呼ばれることはなかった。
斎藤さんや杉元は元気だろうか。
これが今の俺のステータスだ。

『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv12/15
HP :320/320 LP:45
MP :150/150
誓約:偽自

スキル
HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5
置換 言語習得不可 』

ゴブリンを倒しまくって作った袋の中に魔石を入れる。
初日に集めたのは冒険者たちに奪われてしまった。
それで味を占めたのか湖によく冒険者が集まるようになってしまい、度々奪われてしまった。
だから俺は生活圏を湖から離れることにしたのだ。
森を難易度で考えると湖がある手前のところが、【小】。
トレントに襲われたところが、【中】。
さらに奥の奥に進むが、【大】。
難易度:【大】の場所はもうジャングルである。
日の光も中々入ってこない。
そこに住んでる魔物ももう化け物である。
かすっただけで多分死ぬ。
レベルが10を超えたときに記念に行ってみたら何も起きなかったのに死にかけたのだ。
一瞬でHP一桁になるとかヤバすぎる。
普段は【小】と【中】の間で活動して、調子がいいときは中で暴れる。
『偽自』のお陰で1つレベルが上がるだけで普通よりも強化されてるから、【中】でも普通に戦えるようになったのだ。
俺よりも進化を繰り返したであろう、顔が2つあるマッチョなゴブリンにもなんとか勝てるようになったのだ。
そのゴブリンが持っていた鉈は今は俺が使っている。
使いやすくて仕方ない。
ごめんよ、石。今の時代は鉈だわ。
あの憎っくきトレントも鉈があれば普通に勝てる。
両手で鉈を持ち、トレントに向かってなんども振り下ろす。
毒も『毒耐性』でもう怖くない!
はっはっは!好きなだけ刺して注入するといい!その間に鉈で何度も斬る!
刃物は偉大だ!最高だ!

ハイなテンションでそこらじゅうの魔物を殺してレベルを上げる。

『レベルが上がりました』

綺麗な女性の声が聞こえる。
お、やった。レベルが上がった。
ステータスは色々と便利だということに気づいた。
わざわざステータスを表示しなくても色々と知らせてくれるのだ。
MPがなくなったら知らせてくれる。
レベルが上がっても教えてくれる。
わざわざいちいち表示しなくてもよくなった。

『MP残量は30です』

わかりました。いつもお世話になっております。
あと2つレベルを上げれば進化できる。
前みたいにLPが足りないということがないようにしたい。
トレントから魔石を取り出し、袋の中に入れる。
初めて作ったにしては頑丈だ。
結構重宝している。

適当に歩いているとでかい蛇を見つけた。
体長何メートルもある。【中】と【大】の地浮かんで生息するような魔物だ。
そんな蛇がオークに巻きついて締めていた。
まだどっちにもバレてないので袋を置いてこっそり近付く。
漁夫の利を狙うのだ。
鉈にトレントの毒を塗っておく。
そしてオークを切る!刃は抜かずに石で思いっきり叩く!
それでオークは体から力が抜けたように倒れる。
そして蛇はオークを丸ごと呑み込んだ。
バキバキ、とオークが中で潰れる音がする。
蛇はオークを飲み込んだにもかかわらずスルスルと木に登っていく。
そして俺がいることがバレてしまった。
木の上から俺を餌を見るかようにみてくる。
まだ食べ足りないのだろうか。あんだけでかいオーク食べたばっかのくせに。

睨み合っていると蛇が巻きついていた木が折れてしまった。
蛇は耐えれても木がダメだった。
慌てて避ける。
蛇は急いで木から離れる。
多分蛇は木から俺をどうにかして食べようとしたのだろう。
なぜか俺にキレた蛇が突っ込んでくる。
ギリギリ避けれる速さだ。
避けながら鉈で切り傷をつけていく。
慣れたものだ、と戦いながら思う。
最初は石で叩くという馬鹿の一つ覚えでやってきたが、今では武器を持ってそれなりに戦えてる。
避けながら切り、避けながら切るを繰り返す。
この蛇は魔法も使えるようで時々蛇の口のところに少し大きい魔法陣が出てくるがそれは石を投げてぶつけることでキャンセルする。
これは杖を持ったゴブリンが魔法を使ってきたときに気付いた。
魔法を使うと必ず魔法陣が出てくる。
出てきたあと効果が現れるのだ。
だから出てくる前に魔法陣をどうにかすると不発で終わってしまう。
それは石をぶつけるだけでもいい。
蛇が口を開けるとすぐに魔法陣が出てくる。
今度は間に合わず、避ける。
この蛇は氷の塊を飛ばす魔法を使ってくる。
細かい塊を複数飛ばしたり、大きな塊を飛ばしたりしてくる。
しかも食べたオークを消化してきているのだろう。
少しずつ速度も上がってきている。
また突っ込んできた。
今度は避けずにぶつかる寸前にその鼻面に鉈を叩き込む。
かなりの勢いでぶつかり吹っ飛ばれる。

『MP残量が0になりました』

ギリギリMPが足りた。
鉈は鼻に刺さったままだ。
蛇は痛そうに暴れまわっている。
そしてしばらくして動かなくなった。
蛇に近づいて、刺さった鉈をとる。

鉈に塗っていたトレントの毒が役に立った。
やっぱり備えって大事だね。

『レベルが上がりました。レベルマックスになりました。進化先を設定してください。』

2つも上がった。
この蛇のレベルは相当高かったのか。
LPと進化先を表示する。

『LP:62
進化先:ビルトゴブリン
ゴブリンハンター
ゴブリンアサシン
フォーゴブリン
種族進化: ランダム 』

最初にボブゴブリンに進化したのは間違いだったっぽい。
武術系のスキルが1つも手に入らない。
ビルトゴブリンはボブゴブリンより力がとても強くなる。
ゴブリンハンターはより足が速くなる。
ゴブリンアサシンは影が薄くなり、相手に見つかりずらくなる。
フォーゴブリンは手足が2つ増える。

フォーゴブリンは無しだ。
つまり強さはボブのままで手足が増えるだけだ。
できることは色々増えるだろうが瞬間的な強化は何もない。
それを考えるとビルドかハンターどっちか。
個人的には攻撃力が欲しいからビルドにするか。
袋を持って木に登る。
そして太い枝に袋を結んで、進化先を選択する。
LP消費は60。大丈夫だ。

そして前と同じように俺は意識を——

『誓約:偽自によりランダムでスキルを取得します』

——失う瞬間、そんな声が聞こえた。

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16話

目がさめると日が高くなっていた。
丸一日が経過したっぽい。
体の色は渋い緑色になった。
身長は少ししか上がってない。
140から150cmの間くらいだろう。
ガタイは大幅にゴツくなった。
腕は少し太いが全体的に細マッチョなゴブリンになった。

『名前:高橋浩太郎
種族:ビルドゴブリン Lv1/40
HP :200/200 LP:2
MP :150/150
誓約:偽自

スキル
HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5
咆哮 置換 言語習得不可 』

スキル:咆哮 が追加されてた。
咆哮だから叫ぶのか?
息を吸って喉も張り裂けんばかりに叫んだ。

「グギャァァアアアアアアアア!!!!!」

思ってたより威圧感があって自分の声なのにビビる。
すると遠くなら何かがこっちに向かって走ってくる音が聞こえてくる。
しかもあっちこっちから。

「グギャ!」

鉈と袋を持って急いで逃げる。
走りながら振り返るとさっきまで俺がいたところに大量の魔物が集まっていた。
雑魚から勝てない奴まで乱戦が起きてる。

俺知ーらないっと。

俺はそのまま走って逃げた。
途中でレベル上げのために魔物を倒していく。
しばらくして体が言うことを聞かなくなった。
方向を考えると街に向かって走ってるようだ。
斎藤さんに呼ばれたのだろう。
まぁ少しレベル上がったし万が一があっても大丈夫だろう。
結構遠くにいるから着くのに時間がかかりそうだ。





街の門の前に着く。
そこには装備を着て盛り上がってるクラスメイト、そんな彼らを見守る兵士や魔術士たちである。
俺はまっすぐ斎藤さんのところに向かう。
斎藤さんは杉元と話していた。
斎藤さんは杖。杉元は背中に槍、そして帯剣していて膝には複数の短剣。
杉元、武器多くね?

「お、来たか」
「マッチョになってる……。しかもなんか担いでるし。鉈持ってるし」

斎藤さんの前に袋を置く。
中からいくつか魔石がこぼれ落ちた。
これを見て斎藤さんと杉元は驚いたようだ。
周りにいる人たちもこっちを見てる。

「???????????!!!」

兵士や魔術士たちが盛り上がる。
兵士の1人が袋を持ち上げようとするが持ち上げられない。
それを見て感慨深くなる。
頑張ったなぁ……俺。

「これ、くれるの?」

斎藤さんが首を傾げて聞いてくる。
首を前に振って肯定する。

「あ、ありがと」

ちょっと引いてるようだ。集めすぎたか。

「??????????」

兵士が何か言うとみんなも返事をしてグループに分かれ始める。
斎藤さん、畑中さん、杉元、岡本と兵士と魔術士。そして俺。
6人1組のグループだ。
兵士と魔術士は保護者みたいなものだろう。
最初に不良グループが森に入っていく。
少しして別のグループがいく。
これはとうとうみんなもレベル上げに行くのだろうか。
俺のグループも森に入った。
杉元と岡本は結構元気そうだが女子は少し怯えていた。
斎藤さんの肩を叩き、安心させようとサムズアップする。
そんな俺を見て少し笑ってくれた。
それを見て安心する。
どこかから金属の音が聞こえてくる。
どこかのグループが戦い始めたのだろう。
その音を聞いて4人ともビクッとする。
兵士と魔術士はそんな4人を見て微笑ましそうだ。

「グギャイ」

俺ではない。
目の前にゴブリンが2匹出て来た。

「じゃぁ、俺からいくか」

杉元が剣を抜いて前に出る。

「気を付けてね」
「頑張れよ!」

みんなが応援する。

「おらぁ!」

スキルを発動させ、一瞬で相手に詰め寄り切り裂く。
前に剣士ゴブリン、そして冒険者が使ったのと同じだ。
剣士ゴブリンよりは遅いが冒険者より全然速い。
ゴブリンは普通に切られる。
だがまだ生きてるようだ。
他のゴブリンが慌てて構えるがもう遅い。
杉元が剣を腰に構え、これもスキルなのか剣が光り、勢いよく横に払う。
最初に切られたゴブリンは絶命した。
だがもう1匹のゴブリンはそこまでダメージを受けていない。
最初の奴はレベルが低かったのだろう。
ゴブリンが杉元を殴り飛ばす。
右腕でガードしたが折れてしまったようだ。
それを見て女子が悲鳴をあげる。
それを聞いた敵のゴブリンはニヤリと笑う。
杉元は腕を抑えて蹲っている。
そりゃ痛いだろう。
ゴブリンはこっちに向かってゆっくり歩いてくる。
斎藤さんが手を組み、一言呟く。
杉元の折れた腕が光り、治っていく。
だが治りきる前にゴブリンに攻撃される方が早いだろう。
俺が前に出る。ゴブリンは俺を見ると立ち止まって怯えて逃げるように後ずさる。
それを俺は逃さずに殴って殺した。
戻る頃には杉元の腕は治っていた。

「あ、ありがとな」

杉元が俺に言う。
肩をポンと叩いた。

「次は俺か……」

岡本が怯えたように言う。
彼は大きめの盾を右腕に1つ、左腕に1つ装着している。

「グギャァ!!」

わざわざ移動するのも面倒だ、と思った俺はその場で小さく叫んだ。

「え!?」
「どうしたの!?」

みんなが驚いたように俺を見ている。
『スキル:咆哮』のおかげで魔物が近付いてくる。
声を抑えたおかげか一体しかこない。
来たのはツノのある猪だ。
一直線に俺に向かって走ってくる。
慌てて岡本が俺を庇って盾で受け止める。
吹き飛ばされはしなかったがそのままジリジリと下がっていく。

「おおおおおお!!」

威勢はいいが押し返すことができない。

「???????」

隣にいる兵士が何か言う。

「今からどうにかするのは難しいと思います。タイミングを合わせるって相当難しいと思います」
「????????」

畑中さんと兵士の会話から考えると最初にぶつかった瞬間にどうにかしないといけなかったっぽい。
それは悪いことをした。

「すまん!誰かお願い!」

とうとう耐えきれなくなったようだ。

「じゃぁ、私が」

と、畑中さん。

「頼む!」
「『ホール』!」

猪の真下に魔法陣が出てその後落とし穴が出来、猪が落ちていく。

「次は私か」

斎藤さんが穴に近付き、唱えた。

「ダーム」

魔法陣が出て火の玉が現れて穴に入っていく。

「ダーム」

また火の玉を出して穴に入れる。

「ダーム」

また火の玉を出して穴に入れる。

「ダーム」

やり過ぎじゃない?

「も、もういいだろ」

杉元が止める。

「でもまだ生きてるかも……」
「いや、もう死んでるから。大丈夫だから」

穴を覗くと猪が焦げていた。
焦げを取らなきゃ食べれそうにない。

「?????????」
「いえ、もう少しやらせて下さい」

魔術士が帰るかどうか聞いたのだろう。
だが杉元はもう少しやりたいらしい。
他の人もまだやる気があるっぽい。

「ゴブリン、叫ばないでね」

斎藤さんに止められた。
仕方がない。
兵士を先頭に魔物を探して歩き出す。

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16話 @

本日2本目です。視点変更しただけなのでどっちかだけを見ても大丈夫だと思います


「今日は魔物を討伐しに行こうと思う」

騎士団長——モルザさんがとうとう言った。
それを聞いて盛り上がる人もいれば怯える人もいる。
私は怯える側の人間だった。
杉元くんは盛り上がっている。
それを見て安心する自分がいた。
訓練場に行き、防具を渡される。
服の上から胸当てを着けてローブを着る。
その後に手袋をはめる。
胸当てもローブも手袋もエンチャントされてて、来てるだけで防御力や耐性といった見えないパラメータがかなり上昇する。
ゴブリンなどの弱い魔物ならどこを攻撃されても傷1つ追わない装備らしい。
胸当て1つで一般市民の月給3ヶ月分に相当するという。
武器に杖を選択する。
魔法の威力が上がるタイプと魔法のコントロールが良くなるタイプがあったが私はコントロールが上がるタイプを選んだ。
最後に支給された腕輪を身に付ける。
この腕輪は1回だけ自分を守るシールドを出すことが出来る。
その代わり使ったら壊れてしまう。

「装備には必ずMPを流し忘れることがないように気をつけて下さい!流さなかったらなんの効果もありません!」

兵士が大声で注意喚起する。

杉元くんも胸当てを着けてる。
私の胸当てと違って防御力は低いがそのぶん速度が上がる装備だ。
他には特に防具をつけてない。
彼は腕輪をつけられない。
『盾装備不可』の所為だ。
武器は背中に槍を背負い、帯剣して太ももに短剣を複数しまっている。

「よお」
「軽装備だね」
「まぁな」

会話が続かない。
杉元くんも緊張しているようだ。
自分のステータスをチェックしておく。

『名前:斎藤知恵
職業:魔物使い Lv:1/30
使役:1/1
HP :30
MP :35

使役魔物:ボブゴブリン

スキル
強化魔法 Lv1/5 火魔法 1/5 風魔法 1/5
鑑定 Lv3/5 使役 祈り 』

「ゴブリン呼ばなくていいのか?」
「あっ、そうだ。忘れてた」
「おいおい」
「街から出たら呼ぶよ」
「そうか」

周りを見渡すと大体みんな装備が終わったようだ。

「では行きましょう!」

兵士の後に続いて街から出る。


外に出る。
初めての外だ。奥には森が見える。
かなり広そうだ。
そして私はゴブリンを呼んだ。

「ゴブリン、来て」
「本当にそれでくるのかね」
「さぁ、来るんじゃない?」
「進化してると思うか?」
「してたらいいんだけど」

「グループに分かれて下さい!人数は最低4人から!兵士と魔術士が護衛につきますので!」

「組むか」
「お願い」
「他はどうする?俺は岡本呼ぶよ」
「谷口さんは他の人と組んじゃったからなぁ」
「あ、あの、私、入れてもらってもいいかな」

畑中さんが恐る恐る話しかけてくれた。

「うん。喜んでお願いするよ」
「ありがとう!仲のいい友達は他の人と先に組んじゃってて……」
「あー、なるほどね」

杉元くんも無事に了承を得られたようだ。
そのことを報告してくれてるうちにゴブリンが戻って来た。
……マッチョになって。

「お、来たか」
「マッチョになってる……。しかもなんか担いでるし。鉈持ってるし」

ゴブリンは私の前に来ると持ってた袋を私の前に下ろした。
中から石がこぼれ落ちる。

「とてつもない量の魔石ではないですか!!!」

周りにいた兵士や魔術士が盛り上がっている。
近くにいた兵士が持とうとしても持ち上げられなかった。

「これ、くれるの?」

ゴブリンに聞いてみる。
ゴブリンは嬉しそうに首を前に振る。

「ではそろそろ行きましょうか!」

グループに分かれる。
魔石は後で小分けにして城に持って行くらしい。
まぁかなりの量だからね。



まず、関くんのグループが森に入って行く。
遠足に行くかのようにすごい楽しげだ。
しばらくして私たちの順番になった。
男子たちは楽しそうだが私達は怖い。
肩を叩かれる。
その方向を見ると私のゴブリンがサムズアップしてた。
それを見てつい笑ってしまう。
どこからか遠くから金属の音が聞こえる。
体が強張る。
どこかのグループが戦闘を始めたのだろう。
そして私達の前にゴブリンが現れた。
しかも2体もいる。

「じゃぁ、俺からいくか」

杉元が剣を抜いて前に出る。

「気を付けてね」
「頑張れよ!」

私達も応援する。

「おらぁ!」

スキルを発動させて一瞬で相手に詰め寄って切り裂いた。
杉元くんの速度に反応できなかったのかゴブリンは普通に切られる。
だけどまだ生きてるようだ。
他のゴブリンが慌てて構えるがもう遅い。
杉元くんが剣を腰に構え、これもスキルなのだろうか、剣が光って勢いよく横に払う。
最初に切られたゴブリンは死んだようだ。
杉元くんの狙いは2体とも一気に倒すことだったのだろう。
だけどもう1体のゴブリンはほとんど傷が付いていない。
スキル硬直の所為で一瞬動けなくなった杉元くんに向かってゴブリンが拳を振るう。
ぎりぎり動けるようになったのか片腕で受けたけどそのまま吹き飛ばされてしまう。
しかもそれで腕が折れてしまった!
魔力を通してなかったのだろう。

「きゃぁぁぁ!!!」

思わず叫んでしまった。
私は急いで手を組んで唱える。

「『祈り』」

このスキルの不便なところはいちいち手を組んで集中しなくちゃいけないことだ。
しかも治るのに少し時間がかかる。
杉元くんの折れた腕が光りだす。
ゴブリンが悪い笑みを浮かべながら近づいて来る。
恐怖で岡本くんと畑中さんは動けないようだ。
兵士や魔術士も何もしない。
それを見ていた私のゴブリンはやれやれといった表情で前に出る。
私のゴブリンを見たゴブリンは途端に格上を相手にした表情で逃げ始めた。
岡本くんと畑中さんはぽかんとした顔でそれを見る。
私も『祈り』使ってなかったら同じような顔をしてただろう。
私のゴブリン、そんなに強かったのか。
逃げるゴブリンにすぐに追いついてその筋肉質な拳で殴る。

それだけで杉元くんが苦戦したゴブリンは死んでしまった。
杉元くんの腕が治ったのか、腕の光が消えていた。
私のゴブリンが杉元くんに近づき、慰めるように肩を叩く。

「あ、ありがとな」

杉元くんは困惑した表情で言う。
やけに人間臭さのあるゴブリンだ。

「次は俺か……」

岡本くんはすごい不安そうだ。
気持ちは分かる。
岡本くんの職業は『剛盾士』。
名前の通り、守備専門職で攻撃できるスキルはほとんど持たない。

「グギャァ!!」

私のゴブリンがいきなり叫んだ。
しかもやけに威圧感がある。

「え!?」
「どうしたの!?」

ドドドドドド、とこっちに何かがこちら近づいて来る音が聞こえる。
とびだしてきた猪がそのままゴブリンに突っ込む。

「おおおおおお!!」

両腕の盾で威勢良く受け止めたが勢いを殺しきれず少しずつ後ずさって行く。

「やっぱタイミングがなぁ」
「今からどうにかするのは難しいと思います。タイミングを合わせるって相当難しいと思います」
「だけどねぇ。使えるようになったら強いんだけど」

兵士と畑中さんが言ってるのは、『盾術』にある数少ない攻撃系スキル、『シールドバッシュ』だ。
ダメージもそれなりでノックバック効果もある。
だがタイミングがすごいシビアで当たった瞬間に発動させなきゃ成功しない。
今回は流石に無茶だろう。
なんで私のゴブリンが叫んだら来るんだよ。

「すまん!誰かお願い!」

とうとう耐えきれなくなったようだ。

「じゃぁ、私が」

と、まず畑中さん。

「頼む!」
「『ホール』!」

猪の真下に魔法陣が出てその後落とし穴が出来て猪が落ちていく。

「次は私か」

私は『火魔法』で攻撃しようと考えた。

「ダーム」

手を前に出し、魔法陣が出て火の玉が現れ穴の中に入っていく。

「ダーム」

1発で大丈夫だろうか。
もう一度火の玉を出して穴に入れる。

「ダーム」

万が一を考えてまた火の玉を穴に入れる。

「ダーム」

念のためもう一度……

「も、もういいだろ」

杉元が止めてくる。

「でもまだ生きてるかも……」
「いや、もう死んでるから。大丈夫だから」

穴を覗くと猪が焦げていた。
やり過ぎてしまったようだ。

「では、もう帰りますか?」
「いえ、もう少しやらせて下さい」

杉元くんはもう少しやりたいらしい。
私も少しでもいいからレベルを上げたいし、色々と慣れておきたい。
岡本くんと畑中さんも同じ考えだろう。

「ゴブリン、叫ばないでね」

ゴブリンがまた変なことをしないように注意しておく。
兵士を先頭に魔物を探すために移動を始める。

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17話

「ふぁあああ〜。眠いな……」

カチャカチャ カチャカチャカチャ

完全に暗い部屋の中。窓もなければ明かりを灯す道具もない。
部屋の内装はベットだけでそれ以外は何もない。
部屋の主は今起きたようで布団からかおをだした。
ドアの開く音がする。

「ノックぐらいしてくれないものかね……。 まぁ別にいいけどさ」

部屋に入ってきたものはなにも言わない。

カチャリ

「はぁぁぁぁぁー」

部屋の主は面倒臭そうにため息をはく。

「面倒臭いなぁー。何もしたくないなぁ」

はーっ、とまたため息をつく。
またドアが開く音がする。

「だからノック……、もういいや」

ボフッ

顔を枕にうずめる。

「好きにしなよ。どうでもいい。私は寝る」

それだけを言うと部屋の主は寝てしまった。
そして残った奴らも何も言わずに部屋から出て行った。


==============================

「やっぱ、熟練度が足りないからだよなぁ」
「基本的にそこらへんはゲームと同じ考えでいいと思うぞ」
「どういうこと?」
「レベル上げには経験値、スキルレベルには熟練度ということ。斎藤さんも『鑑定』使い続けたら上がったって言ってたじゃん」
「3からめっきり上がらなくなったけどね」
「今でも使ってる?」
「あ、忘れてた」
「これから魔物を見つけたら使って内容を教えてくれ」
「わかった」

杉元たちはレベル上げに対して色々相談し合っている。
その様子を見ている俺は頑張れと心の中で応援する。
兵士と魔術士は周りの警戒で忙しい。

「次は連携してやってみるか」
「俺が前衛、斎藤さんと畑中さんが後衛で杉元が遊撃かな」
「私のゴブリンはどうする?」
「あー……。俺たちがどうしようもない時に手伝ってもらうとか?」

えー。

「なんか不満そうな目でこっちを見てるけど」
「あいつも闘いたいのかな」
「レベルとかないくせにな」

俺にもちゃんとあるわ!
あいつら、魔物にはレベルとかのステータスがないと思い込んでるらしい。
そんなわけあるか。俺にもちゃんとあるから。
話せれば1番楽なんだが、あいにくゴブリンではグギャとかしか話せない。
文字も書けないし。ちくしょう。

「?????????!」

兵士が何か言ってきた。

「スライム!」
「定番だな」
「ドラ◯エと同じなのかな?」
「いや、凶悪な方だった。目みたいな核があって、それを酸性のジェルみたいなのを纏ってる。岡本のシールドバッシュは効かないから杉元の火魔法で焼いてくれ」
「分かった」

さっきのゴブリンのことがあってか慎重に行動する。
うんうん、良いことだ。
俺はベビーしか相手にしてなかったけど結構弱いから大丈夫だよ。

「とりあえず俺が前な」

岡本が前に出て盾を構える。
杉元も今度は槍を構えた。
その後ろで斎藤さんが火の玉を出しておく。
杉元と畑中さんはさらに後ろで様子を見てる。

スライムがあらわれた。
俺が見たベビーよりも大きい。

「これ、俺いらなくね?」
「……だね」

だが遅い。ベビーの頃よりは速いのは分かるがそれでも遅い。
斎藤さんが火の玉を飛ばす。
それだけでスライムはすぐに燃え尽きた。

「弱かったな……」
「そうだね……。あ、レベル上がった」
「俺たちも上がってる……パーティ共有なのか」
「あ、だから最大6人なんだ。ますますゲームっぽいな」
「でも初のレベルアップがこれって……」

俺のレベルは上がってない。
俺は来る前に少しレベル上げしたからなのかな。

『名前:高橋浩太郎
種族:ビルドゴブリン Lv5/40
HP :380/380 LP:4
MP :250/250
誓約:偽自

スキル
HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5
咆哮 置換 言語習得不可 』

あれ、LPが僅かだけど増えてる。
なんでだ?

「どうしたの?行くよ」

斎藤さんに声をかけられる。
みんなはまた移動を始めたようだ。
今日でできる限りレベルを上げておきたいのだろう。

「グギャイ」

LPのこととかあとで考えよう。
この世界は一歩間違えれば死ぬ世界だ。
今はクラスメイトを守ることを考えよう。

そんなことを考えながら俺はみんなの後ろをついて行く。




それからは順調だった。
主にゴブリンを倒してまわった。
岡本が受け止め、畑中さんがホールで相手の邪魔をして斎藤さんと杉元でとどめを刺す。
安定している。
兵士と魔術士も問題ない様子で見守っている。

「おらぁ!」

杉元が剣でゴブリンのとどめを刺した。

「レベル上がった。これで8か」
「私は10だね」
「私も8だ」
「俺はやっと6になった。俺だけ遅くね?」

杉元はレベルが上がりずらいようだ。
俺は今のでやっと1上がった。
貢献度によって変わるのだろうか。
それにしては杉元は上がってない。

「?????????????」
「上位職の難点だな。ちくしょう」

上位職?職にも色々あるのか。

「???、???????????」
「ですね。帰りましょう」

お、帰るのか。まぁ、日も暗くなってきたからな。

「最初はやばかったけど、今はもう大丈夫だな」
「慣れたっていうこともあるよね」
「生き物を殺すことに慣れるってのもねぇ」
「あんまり衝撃受けなかったな」
「やらなきゃ殺されるって思うとそれどころじゃなかったからね」
「俺は腕折られたからな」

和気藹々と色々話しながら歩く。
みんな楽しそうだ。
俺は話せないことに寂しさを覚える。

「どうしたの?」

斎藤さんが聞いてくれた。
なんでもないと首を横に振る。

「なぁ、そいつに名前つけねぇの?」
「あ、そうだね。いつまでたってもゴブリンだとかわいそうじゃん」
「可愛い名前にしようよ!」
「ゴブリンに可愛い名前?」

俺の名前を決めてくれる。
高橋浩太郎は人間の時の名前だ。
ゴブリンとしての名前だったら俺もこいつらにつけて欲しい。

「五月雨ってどうだ!」
「厨二病かよ。無難なのでよくね?」
「それじゃつまんないだろ」
「プッチーとか」
「見た目を考えろよ」

うーん、とみんな悩んでいる。
それだけで嬉しくなってくるから不思議だ。

「私はナズナがいいなぁ」

斎藤さんがポツリと呟く。

「ナズナって花の?」
「うん。なんか語感いいじゃん」
「まぁ、飼い主が言うならそれでいいんじゃね」
「じゃあこれで決定!」

俺の名前はナズナになった。

『名前:ナズナ【高橋浩太郎】
種族:ビルドゴブリン Lv6/40
HP :420/420 LP:13
MP :280/280
誓約:偽自

スキル
HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5
咆哮 置換 言語習得不可 』

それによってステータスの表示も変わる。
俺はナズナ。ナズナになった。


きゃぁぁぁああああああああ!!

何処かから叫び声が聞こえる。

「ど、どうしたの!?」
「とりあえず行くぞ!」

さっきまでの楽しい雰囲気は消えた。
急いで叫び声が聞こえた方向に向かって走る。
意外と遠くない。すぐに着いた。

そこにあったのは

まだ息はあるようだが血まみれで倒れている、関悠人と田中里志。
未だに泣き叫んでいる、町田涼子と里中百合。
そしてまだ戦闘中だが限界が近い二ノ宮和彦と葛城秀水。
もう死んでいる兵士と魔術士。

不良グループが全滅しかかっていた。
相手は線は細いが両手剣を軽々と片手で振るっているゴブリンだ。
身長は俺より少し高い。
160くらいだろう。

腰には見覚えがある折れた剣があった。


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18話

「グギャァァァァァ!!!」

『咆哮』で注意をこっちにむける。

「ギィィィィィィ!!!」

あいつも俺を見るとさっきまで戦っていた二ノ宮と葛城を無視して俺に向かって走ってくる。
まず俺がしなくてはいけないことはみんなを逃がすための時間稼ぎだ。
持っていた鉈を相手に投げる。
持っている両手剣で普通に弾かれるがその隙に近付いて殴る。
両手剣の腹で拳をいなされ、腹を切られる。
『置換』のおかげでHPも減らないし傷もつかない。

「ゴブリンガーディアン!スキルを使うレアモンスター!『属性付与』を使うって出てる!」

斎藤さんが叫ぶ。

「そいつは剣術スキルも持ってる!『スラッシュ』使ってきたんだ!スキル持ちは希少じゃないのかよ!」
「おい!俺たちは逃げるぞ!」
「ナズナを置いて行くの!?」
「しょうがないだろ!あいつの足止めができるのはナズナしかいない!」
「でも!」
「関とかヘタしたら死ぬぞ!」
「……ごめん。絶対に後でまた戻ってくるから!」
「武器とか置いとけ!運ぶのに邪魔だ!」

みんなはそれぞれ不良グループを担いで逃げていく。
この場には俺とゴブリンガーディアンしかいなくなった。

「ギィ」

ニヤリと相手は笑う。
あいつ、わざわざ待っていやがった。
落ちてた両刃斧を持つ。
さっきまで葛城が使っていたものだ。
斧は俺よりも長く、刃も厚い。重さもそれなりにある。
刃に血が付いてないことから相手の強さが伺える。
両刃斧を両手で持って上段に構える。
ゴブリンは両手剣に手をかざす。
すると剣が火を纏った。
あれが『属性付与』なのだろう。
そして剣を中段に構えた。

唾を飲み込む。
何処かから鳥が羽ばたく音がした瞬間、
一瞬で俺の目の前に移動して刺してくる。
以前戦った頃よりも断然速い。
これが『スラッシュ』なのだろう。
『置換』のおかげで傷1つつかないがかなりMPが削られた。
急いで振り下ろすが避けられてしまう。
ゴブリンガーディアンがスキルで横薙ぎの一撃を放ってくる。
斧で受け止められたが柄が切れてしまった。
斧をすぐに捨てて敵の攻撃を受けないように捌いていく。
上から、下から、右から、左から。
様々な方向から飛んでくる斬撃をできるだけ最低限の動きで対応する。
少しぐらいミスしてもいい!MPがある限りダメージを受けることはない!
ゴブリンガーディアンは飛び上がる。
叩きつけるように振り下ろされた両手剣を両腕で受け止める。
足が地面にめり込んだ。
両手剣の刃をそのまま掴んて投げ飛ばし、その上に拳を叩き込む!
やっとの攻撃チャンスだ!重ねて殴る!

「グギャァァァァ!!!!」

顔を中心に狂ったように殴り続ける!
たまに肘で打ち、頭突きをする。
だが途中で腹を蹴られて距離を取られてしまった。
ゴブリンガーディアンは所々血が流れ、体もけっこうボロボロだがまだまだ余力がありそうだ。
俺は逆に体に傷こそはないが体力的にもう限界が近い。
一撃一撃全力で殴り続けたのだ。
今倒れてない自分を褒めてあげたい。

『MPがなくなりました』

しかもMPが切れてしまった。

ゴブリンガーディアンがさっきと同じスキルで俺に近付き、一撃を入れる。

ブシュッ

「グギャア!」

横腹を斬られる。
痛い!熱い!斬られたところから焼けた肉の匂いがする。
遅れて拳を振るうが当然あたらない。
急いで拳を引き戻し顔面めがけて後ろ回し蹴りを見舞う。
蹴り上げた足を掴まれる。
そして横薙ぎをしてくるが掴まれた足を軸に思いっきり飛び上がることでその一撃を避けてもう片方の足でかかと落としを頭に叩き落とした。
ゴブリンガーディアンが手を離してしまい受け身を取れずに倒れるが急いで立ち上がりまた殴りにいく。
とにかく接近して『スラッシュ』を使わせない。
あのスキルは速すぎて避けることもガードすることも出来ない。
MPがない今では一番の脅威になる。
運良く落ちてた剣を拾う。
多分関あたりが使っていたのだろう。
なんの変哲もないただの片手剣だ。
ゴブリンガーディアンと鍔迫り合いになる。
ゴブリンガーディアンがスキルを発動させる
それだけで俺は吹っ飛ばされてしまう。
そして『スラッシュ』で俺の目の前に現れてその手に持つ両手剣を俺の左腕目掛けて振り下ろす。
筋肉の断裂音、そして骨までも切れる音が聞こえる。
だがそこで止まった。切り落とされることはない。
まだ繋がってるがなんの役にも立たない。
むしろ邪魔になるだけだろう。
痛みで心が折れそうになる。
無理やり立ち上がり、睨み合う。
ゴブリンガーディアンはまた両手剣に手をかざす。

「ギィ」

火がさらに燃え上がる
俺も剣を構える。
半分切れてる腕は放置だ。指一本動かせない。
ゴブリンガーディアンは下段に構え、今度は普通に歩いて近づいてくる。
だがそれでも俺の体は反応できない。
せいぜい睨むことが限界だ。
体がもう限界なのだ。
相手もわかっているのだろう。
あいつは俺よりも力強く、見切れないほどのスピードを持つ。
そして俺が使いたくても使えない『剣術』、『属性付与』を持つ。
もともと勝てる戦いではなかったのだ。
ゴブリンガーディアンはまた何か俺の知らないスキルを発動させる。
右から切り上げ、左から袈裟切りして右薙ぎ、そのまま体を回して両手剣を上げて振り下ろされる。
切られるたびにできる傷が『属性付与』による火で焼かれていく。

「ギィ!」
「グギャァァァァ!!」

全身あっちこっちが焼き切り傷だらけ。
膝を地面についてしまう。

「グギィ……」

持つ剣を支えにして立ち上がる。
ゴブリンガーディアンも構える。
ゴブリンガーディアンの両手剣が輝きだす。
またスキルを発動するのだろう。

『HP :12/420
MP :0/280 』

HPももう殆どない。
これで俺は死ぬのだろう。

「????????????????」

何処かから声が聞こえる。
相変わらずなんて言ってるかはわからない。
ゴブリンガーディアンが上を見る。
俺もつられて見上げる。

そこには鎌を持ったガーゴイルが飛んでいた。

「ギィィィィィィ!!!」

ゴブリンガーディアンが何か叫んでるが俺はあいつがなんて言ってるか分からないからなんの反応もできない。
ガーゴイルもそのことに気づいたのだろう。
いろいろ話しかけてくるが何1つ理解できる言語はない。
この世界の全ての言語は俺は理解できない。
だが、

「????——これナらわかるカ?」

あいつは日本語を喋った。

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