メイン盾の軌跡 (爆焔特攻ドワーフ)
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プロローグ
今度こそ中折れしないように頑張りたいと思います。
その少年は有るとき、その人に言われた。
「お前は何を守れるようになりたいんだ?」
「僕は・・・僕はみんなを守れる力を身に着けたい・・・!」
「では、やることはただひとつ!それは防御を固めること。もちろん、それだけではいけない・・・精神力も高めなければ強大な敵に立ち向かうことなどできはしない!」
「そのためにはどうすればいいんですか!?」
「私と共に修行をするのよ・・・!」
「はい!わかりました、ししょー!」
「ししょー・・・いい響きね。今から私はあなたのししょーよ!」
「よろしくお願いします!」
「さぁ、わたしに続けて復唱しなさい! 防御は最大の攻撃なり!」
「こ、防御は最大の攻撃なり!」
「私たち聖騎士の役目は!」
「私たち聖騎士のやくめは!」
「強きを挫き、弱きを守り!」
「つ、強きをくじき、弱きを守り!」
「守ってあげた子からプロポーズされること!」
「守ってあげた子からプロポーズされ・・・ること・・・?」
待て、最後に何を言った・・・?
「細かいことは気にしちゃだめよ♪ 禿るわよ」
貴様が禿てしまえ!この若作りが・・・!
ししょーは虚空に向けてシールドスマイトを放った!
「ししょー?どうしたの?」
「タケル、あなたには関係ないことよ」
その日から彼とししょーの過酷な修行の日々が始まった。
時には彼女の友人であるという人々からいろいろな教えを受けた。
ある時は極寒の中で滝に打たれて、あるときは灼熱の火山の中で全力疾走を繰り返し、あるときは彼女の友人が呼び寄せた金色に煌く魔獣の群れを相手にし、あるときは何百何千もの自分に襲いくる矢を手を覆うだけの小さな盾で弾き続けた・・・何時間も。
またあるときは自らを錬金術師と自称する老人や(本人に言うと烈火のごとく怒るが)背の小さい青年から様様な事を教わった。
物理法則、野草知識、導力現象、貴族制度、世界情勢、言語etc・・・
修行の後半には実際に存在する迷宮に連れて行かれ実戦経験を積んだ。
そこは樹海だった。中央には巨大な樹が存在し、そこにすむ生物は他の地域とは違う魔獣が住んでいた。
驚異的な体力と攻撃力を持ち、集団で襲いくる牡鹿、巨大な鎌を持ちその装甲は硬くやすやすとはこちらの攻撃を通させない大蟷螂、雷を纏ってこちらに突撃してくる金色に輝く鷲、一息つけると思った花畑から飛び出してくる毒蝶など・・・
そして、修行の最後の試練として俺は大陸では絶滅したとされる竜種と戦うことになった。
激闘の果て、結局勝つことはできなかったが師匠からすると十分だとのこと。
俺の目の前でそういいながら、師匠は手に持った盾で三つ首の巨竜を殴り飛ばしていたが、あの人は本当に規格外である。
そんなこんなで、俺は今師匠とその友人からそれぞれ一つずつ餞別を貰い、あるところの前に立っている。
「ここがトールズ士官学校・・・」
ツクヨミと名乗る占星術師によると、「もうすぐここで歴史の転換が起こるらしい」が・・・
俺は、盾と銃砲を背負って校門をくぐった。
ちなみに錬金術師のジジィによると書類については偽造したとのこと。
『なぁに、バレなきゃ問題はないのさ』
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主人公設定
夏ぐらいには落ち着くと思うので拙作を見守ってください
タケル・グランセイバー
年齢:19
性別:男
武器:銃砲
騎士盾
・上記の武器以外にも主人公は様々な武器を使えるが当分は使わない。
・武器の外見はほとんどがゴッドイーターの武器を参考にしている。
世界樹シリーズには様々な武器が登場するが外見が不明なためこうなった。
(作者の個人的な思いれもあるが)
そのうちペロペロキャンディー型の盾やチョコレート型の長剣、ショートケーキの銃が出るかもしれない。
アタックランク
銃砲:突A
騎士盾:壊A
装備
銃砲【白銀】:
知り合いから選別としてもらった銃砲。
アーツを打ち出すことができる高性能な代物。
過去に研究され開発されたこともあったのだがアーツを打ちすぎると銃身が耐え切れず破損する事例が何度も発生しオリジナルを持つ者はほとんどいない。
主人公の持つ【白銀】は特殊な素材で強化してあるため、何度アーツを放っても問題はない。
主人公はこれを応用して???を使えるようにした。
外見は
GOD EATER のガトリング砲。
騎士盾【黒鋼】:
ししょーから授かった盾。
アーツへの抵抗力があり、最下級程度なら打ち消すことも可能。
耐久性も折り紙付きでかつ軽い(といっても15kgはあるが)ため主人公はこれで敵をぶん殴ったり、投剣ならぬ投盾として使うこともある。
外見は
GOD EATER2のクロガネシリーズのシールド。
出身:不明
ステータス:防御と体力が上がりやすく行動力や魔法攻撃力が上がりにくい壁役。
ARCUS:属性指定はなく、ラインは2-6
マスタークオーツ:ティターン
効果1:戦闘開始時に
DFE50%UP
効果2:不明
効果3:不明
アーツ:ラ・クレスト
ガイアシールド
アースランス
所属:特科Ⅶ組
所属2:不明
プロフィール的ななにか:
本作主人公。
幼少期???でししょーに拾われ、つい最近まで???で暮らし鍛錬を積んできた。
彼が住んでいた???は???ではない場所にあり現在では???は他の国々とほとんど交流を行っていない。
彼が「世界樹の守護者」と呼ばれる理由は彼が???から???を与えられた???であるからである。
彼は???に所属しており、???は???と同一の組織である。
クラフト:
シールドアサルト
CP:15
威力:C−
範囲:直線S
追加効果:移動力25%低下 気絶50%
盾を構えて突進、直線上の敵や障害物を吹き飛ばす。
テラーズクラスター
CP:35
威力:A
範囲:敵一体
追加効果:滅焔100%(毎ターンHPとEPとCPが30%ずつ減少する)
非常に燃焼能力の高い粉末を混ぜた特殊弾を放ち敵を燃え上がらせる。
一度ついた火は相手の体を焼き尽くすまで燃え続ける。
以下現在未使用のクラフト
???
???から???を???する魔術。
???
???と???を組み合わせ新たな???を創造する魔術。
???
???に???を加算することで???をさらに上の段階に昇華させる魔術。
???
自らの中に秘められた???の???を開放することで「世界樹の守護者」本来の力を開放する。
用語説明
・グリモア:新・世界樹の迷宮1および2に登場したアイテム?
グリモアを持っているだけで敵や味方のスキルが込められたグリモアを入手できる。
それを使えば本来持てない武器を持ち、本来は特定のクラスしか使用できないスキルが使用可能になったり、敵しか使えない高性能なスキルを使えるようになる(燃費は悪い)。駆使すれば最強のボウケンシャーを作り出すことが可能・・・・・・なはず。
新1では鑑定するまでアイテム扱い(鑑定後は特殊な装備アイテムにかわる)だったためアイテム欄を圧迫することとなった。
また、拠点に帰還するまで鑑定できないのも困りもの。
新2ではアイテム欄ではなく装備欄に含まれるようになり、戦闘後すぐに獲得したスキルを確認できるようになった。
ちょっとしたアンケートを活動報告に投下しますので
よければそちらも見てください。
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入学式
―――新入生の方はこちらでーす。
声が聞こえた。
そちらを見てみると、紅い制服を着た男子生徒が背が小さい女の子に話しかけられていた。
―――武器はこちらに預けてくださいね。
―――ああ、はい。ではお願いします。
男子生徒は背負っていた刀剣・・・おそらく刀の類を渡すと講堂の方に歩いてゆく。
「あ、あなたもこちらで武器を渡して・・・」
「はい、どうぞ」
ドゴオォォォォォン
俺はその場に盾と銃砲を置いた。
この盾と銃砲は特殊な金属で作られているらしく恐ろしく重い。
師匠に散々鍛えられた俺でも、持つのに慣れるまで一ヶ月、実戦で扱えるようになるまで半年もかかったのだ。
それ以外にも靴底にもこの金属と同等の重さの物が仕込んであるため、この靴だけでこの眼前の少女と同じぐらいの重さがあるのではなかろうか?
「・・・えっと、保管場所まで持っていくのお願いできませんか?私の友人もちょっとこれは持てなさそうなので・・・」
「わかりました。では、案内お願いします」
このあと、俺はおそらく先輩であろう人に案内してもらって本校舎裏の収納スペースまで持っていくことになった。
そこで小太りのいかにも技術屋のような先輩に絡まれた。
この銃砲はかなり昔に製法が失われており、今ではその製法を知っているものがほとんどいないらしく、先輩はしつこく出所を聞いてきたのだが入学式があることを盾に逃げ出してきた。
そして、俺は今講堂にて一番端っこの席で話を聞いている。
壇上に立って話をしているのはこの士官学院の長であるヴァンダイク学院長である。
その背丈は2アージュに届く高さであり筋肉の付き方は俺に銃砲を教えてくれたおっさんと同等くらいかそれ以上か。
一度手合せしたいものである。
講堂の前で立っている教員の中にも幾人か知っている顔もある。
一人は若手の軍人であるナイトハルト教官。
もう一人は元A級遊撃士 ≪紫電≫ サラ・バレスタイン
いつかは本気で手合せしたいな・・・
『若人よ、世の礎たれ―――』
◇
「”世”という言葉をどう捉えるのか」
ヴァンダイク学院長の話しは続く。
「何をもって”礎”たる資格を持つのか」
これからの社会を担っていくことになるであろう彼等に
「これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手掛かりにして欲しい。」
ささやかな贈り物としての言葉を託す。
「―――ワシからは以上である。」
拍手が沸き起こる。
そのなかでリィンは頭の中で学院長が贈った言葉を反芻していた。
(『”世”の礎たれ』か……)
言葉自体は短く、その意味は深い。
考えれば考えるほど思考の海に沈んでいく。
そんなリィンに声が掛けられる。
「うーん、いきなりハードルを上げられちゃった感じだね?」
声を掛けられた方を見やると、赤に近いオレンジ色の髪をした少年がこちらへ顔を向けていた。
「ああ、さすがは《獅子心皇帝》と言うべきか。単なるスパルタなんかよりも遥かに難しい目標だな」
「あはは、そうだよね。」
少年は少し眉をよせてそう言った。
「自己紹介しないか?」
「いいよ。僕はエリオット。エリオット・クレイグだよ」
「俺はリィン。リィン・シュバルツァーだ。」
『よろしく。』
自己紹介を終えたリィンはあることに気づく。
「そういえば……同じ制服の色だな。」
「うん、どういう事なんだろうね?」
エリオットはそれに同意した。
改めてあたりを見回してみると、自分たちのように赤い制服を着ている新入生はかなり少ないようだ。
「ほとんどの新入生は緑色の制服みたいだけど……。あ、向こうにいる白い制服は貴族の新入生なのかな?」
確かに新入生が座っている席の前から二列は白い制服の生徒たちで固められているようだ……。
「ああ、そうみたいだな。だが……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
二人で話をしていると、式の終了を告げる声が聞こえてきた。
◇
考えている間に話が終わっていた。
・・・にやついてないよな?
俺、子供のころあの森に棲んでいたから友達がいないんだよな・・・人以外の友達というか仲間はいっぱいいたんだけどなぁ
ぼっちになったらどうすっかな―――
「――以降は入学案内書に従い、指定されたクラスへ移動すること。学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行います」
そう告げると男性教師は「説明は以上。―――では解散。」
と言って壇上を降りて行った。
新入生たちは立ち上がり男性教師の言われたとおりに行動すべく、ぞろぞろと講堂を出てゆく。
「指定されたクラス・・・?」
そんな情報事前に貰ってないのだが。
移動している生徒たちを見ると自分と同じような紅い制服を着た生徒は混じっておらず、講堂内には紅い制服を着た生徒だけが取り残されていた。
ふと、教員が立っていた場所を見るとバレスタイン教官が歩いてきた。
あの顔を見るにこの状況は彼女が知っているとみていいかもしれない。
◇
「指定されたクラスって……。送られてきた入学案内書にそんなもの、書いてあったっけ?」
「いや、無かったはずだ」
困惑するエリオットと同様にリィンもその言葉に同意する。
「てっきりこの場で発表されると思っていたんだが……」
だがそんな様子は無く、他の新入生に取り残される形となってしまった。
リィンはあたりを見回すと自分達の他にも数名、同じ制服を着こんだ者が同じように取り残されているのが目に入り、やはりこの制服の色に何か関係があるのではないかと考えていると、自分達を呼ぶ声が耳に入った。
「はいはーい。赤い制服の子達は注目~。」
そこには先程の入学式において他の教官達と共に脇に控えていた紅色の髪の女性がいた。
「実は、ちょっと事情があってね」
そう言うと。
「――――君達にはこれから『特別オリエンテーリング』に参加して貰います。」
と告げた。
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特別オリエンテーリング
バレスタイン教官の一言により、ざわついていた紅い制服を着ていた生徒たちはとりあえずは平静を取り戻した。
「じゃ、落ち着いたところでみんな私についてきてね~」
・・・
旧校舎:ドライケルス大帝が「来たるべき日まで保存せよ」と言われた建物。
~トールズ士官学院・案内パンフレット~
・・・
俺たちが連れてこられたのは少々古ゆかしい建物だった。
確か、旧校舎だったはずだ。
―――なぜここに?
といったような雰囲気が他の生徒から漂ってくるが、俺はさっきの「特別オリエンテーリング」といった言葉からおそらくここはダンジョンではないかと予想を付けた。
特別オリエンテーリングは俺たちを篩にかけるためかもしれない。
そうであるとすれば、校門前で武器を回収された意図もわかる。
手慣れた武器がない状況でのサバイバル訓練。
確かに、力量を見極めるにはいい舞台だが・・・
俺、素手でもかなりイケる方なんだよなぁ。
それがこの訓練の失敗点だろうか?
おそらく教官はサブ武器を持たないのだろう。
主武器を盗られた、壊された場合用に師匠から近接格闘術も一通り習っているが、どうにもゼムリア大陸では武器を壊されたら終了みたいな風潮がある。
特にここエレボニア帝国ではそれが顕著である。
確かにアルゼイド流とかの「武器一つで叩き伏せる」といった戦い方は憧れるが、それは本当に一握りしかできないことである。
俺からしたら猟兵の戦い方の方がよっぽど好感が持てる。
どんな状況でも依頼を達成するために自らの命でさえも賭けるその姿には憧憬にも似た感情がある。
流石に猟兵にはなりたくないが。
◇
旧校舎の中は薄暗く、照明の類もないようで窓から差し込む陽の光で何とか見えるといったものだった。
大広間の奥にある舞台に上がった教師は
「――サラ・バレスタイン。今日から君達《Ⅶ組》の担任を務めさせてもらうわ。よろしくお願いするわね」
と宣言した。
「な、Ⅶ組……!?」
「そ、それに君達って……」
みなサラ教官の言葉に動揺し、それぞれが個々の意見を漏らす。
「ふむ……? 聞いていた話と違うな」
青い髪の少女が顎に手をあてそう呟く。
「あ、あの……サラ教官?
この学院の1学年のクラス数は5つだったと記憶していますが……。それも各自の身分や、出身に応じたクラス分けをしていると聞いたのですが…。」
眼鏡の女子が事前に聞いていたクラスの振り分け方についての違いを述べる。
そうなるとこのクラスは学院側から入学する生徒には事前に伝えられなかった。
ということになる。
その言葉を聞いてサラは頷いて肯定するが、逆に否定もする。
クラスがⅠ~Ⅴ組みしかなかったのは去年までの話であり、今年は新たに立ち上げられたため違うと。
その理由は
「君達、身分に関係なく選ばれた特科クラス――《Ⅶ組》が」
「特科クラス《Ⅶ組》……」
「み、身分に関係ないって本当なんですか?」
アリサがⅦ組についての事情を追求しようとするが
そこに激しく問い詰めるような声が響き渡る。
「――冗談じゃない!」
そう叫んだのは緑の髪の眼鏡である。
「身分に関係ない!? そんな話は聞いていませんよ!?」
マキアスは身振り手振りを交えてサラ教官に食って掛かる。
「えっと、たしか君は……」
「マキアス・レーグニッツです!」
サラ教官に自らの名前を名乗った後もマキアスは話続ける。
「それよりもサラ教官! 自分はとても納得しかねます! まさか貴族風情と一緒のクラスでやっていけって言うんですか!?」
「うーん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだからすぐに仲良くなれるんじゃない?」
「そ、そんなわけないでしょう!?」
サラは楽観的な意見をマキアスにいうが、マキアスは納得せずに首を左右に振って否定する。
そんな光景をマキアスの横で見ていた金髪の青年が大きく鼻を鳴らす。
それに反応したマキアスはイラついた顔で青年にも食って掛かる。
「……君、何か文句でもあるのか?」
「別に。”平民風情”が騒がしいと思っただけだ」
「これはこれは……。どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度……さぞ名のある家柄と見受けるが?」
「ユーシス・アルバレア」
彼は体を向け少し挑発するような顔で
「”貴族風情”の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが」
と憮然とした表情でそう言い放ったのだった。
ユーシスとマキアスの会話に場はまたもや騒然となる。
《アルバレア》は帝国東部のクロイツェン州を治めており、帝国貴族の爵位として最上級である”公爵”を冠していた。
つまりは、ユーシスは貴族の息子という立場となる。
またエレボニア帝国における最も家格の高いとされる四大名門の一つに数えられている、帝国に住む者ならば知らぬものなどいない、大貴族の中の大貴族と呼べる存在なのであった。
そんななか、異国人風である男子生徒は首をかしげており、白髪の少女と赤髪の青年は動じておらず、少女の方はあくびをしていたが。
「だ、だからどうした!? その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!」
自分が予想していたものを遙かに上回るビッグネームに気勢を削がれながらマキアスは反論する。
あと一つのきっかけで破裂しそうな雰囲気が漂っていたが、
「はいはい、そこまで」
手を叩いて二人をそう諌めると、全員の意識がこちらへ向くのを確認し、サラは言う。
「色々あると思うけど、文句は後で聞かせてもらうわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしねー」
「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」
「そういう野外活動があるのは聞いたことがありますが……」
サラの言葉にエマとアリサが反応する。
リィンはその言葉に校門で武器を預けていたことを思い出す。
「もしかして……門の所で預けたものと関係が?」
「へぇ、いいカンしてるじゃない。」
そういうとサラはなぜか後ろに下がり、何かのボタンを押した。
「へっ!?」
「わ!?」
「きゃっ!?」
「何っ!?」
突然床が傾き急激な角度の変化に半数がバランスを崩し真っ暗な穴に落ちてゆく。
リィンは耐えようとするが徐々に力が抜け滑り落ちてしまう。
近くの金髪の少女をなんとか助けようと、手をのばし―――――――視界の端に天井にぶら下がる少女と傾いた床を蹴り上げて穴の外へ脱出する赤髪の青年を目撃した―――。
◇
ふぅ、危なかった・・・
樹海では敵の攻撃で地面が砕けて真っ逆さまとか日常茶飯事だったからいつのまにか、「足場が崩落したら即座に壁などを蹴って不利な状況から脱する」というスキルが身についていた。
運が悪けりゃ何十メートルも落っこちて瀕死とか何回もあったし。
自分と同様に落とし穴を回避した少女はワイヤーで天井の梁にくさびをひっかけていたがバレスタイン教官が投げナイフで落っことされて行った。
「タケル・グランセイバー」
バレスタイン教官がこちらに話しかけてきた。
「なんですか、バレスタイン教官?」
「はぁ、サラ教官でいいわよ・・・。あんた、アイツの弟子なんでしょ?」
「師匠の知り合いですか?」
「昔ね、何度か戦ったことがあるのよ」
「ところで、そろそろ行ってくれない?ちゃっちゃとオリエンテーリング開始したいのよ」
「・・・?落とし穴を回避するのが訓練じゃないんですか?」
「どう考えれば、そんな考えに思い至るか謎だけど、違うわよ」
「わかりました、では行ってきます」
俺は穴に飛び込んだ。
◇
「あれが世界樹の守り手ねぇ・・・確かに纏っている雰囲気が独特だけど」
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特別オリエンテーリング2
その首筋にトスッとナイフが刺さった。
その柔肌に鋭利な先端が突き刺さり抵抗することなく食い込んでいき、血があふれ出す。
その小さな体躯は二度三度身を震わせ、動こうとして
追撃の刃で首をすっぱりと斬り飛ばされた。
斬り飛ばされた首はくるくると回りながら地面に落下し、後を追うように体も落ちて―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
黒髪の青年の頬に手が向かう。
鋭いスナップを聞かせたその手のひらは黒髪の青年の頬を反応させずに叩いた。
俺が穴から降りると、黒髪の青年が金髪の少女から平手打ちを喰らっていた。
◇
アリサの平手打ちをくらったリィンは衝撃にふら付きエリオットに心配されていた。
「リィン。大丈夫?」
「あぁ…。厄日だ…」
◇
(厄日って・・・お前が悪いんじゃねえのか?)
俺は近くにいた銀髪の少女に状況を聞くことにした。
「えーと、あいつ何で平手打ち喰らってたんだ?」
「金髪の子を助けようとして、胸に突っ込んだみたい」
「ギルティ」
「うん、変態は死すべし慈悲はない」
俺はこの瞬間思った。こいつ気が合うなと
そうやってふざけて話していると、腰につけていた機器が鳴った。
この学校に来る前に制服と一緒に届いたものである。
ししょーやじじいが使っていたものと比べると一回りデカかったのを覚えている。
『それは、特注の戦術オーブメントよ。』
「―――この機械からか?」
「つ、通信機能を搭載しているのか?」
異国風の青年とマキアスがつぶやくと金髪の少女が何かに気づいたかのように声を挙げる。
「もしかして、これって…」
『ええ。これはエプスタイン財団とラインフォルト社が共同して開発した次世代の戦術オーブメントのうちの一つ――――』
ラインフォルトと聞こえた瞬間に少女の肩が一瞬震えた。
彼女はおそらくラインフォルト社の関係者といったところだろうか?
『第五世代型戦術オーブメント。
≪ARCUS≫よ。』
「ARCUS…」
「導力魔法オーバルアーツが使えるという特別なオーブメントのことですね?」
眼鏡の少女が思い返すように発言する。
『そう。回路に七耀石からできたクオーツを嵌めこむことで導力魔法が使えるようになるわ。』
『―――というわけで、受け取りなさい。』
サラ教官の言葉とともに薄暗かった広間に光がともり、ここがさっきまで自分たちがいた場所と同じぐらいの広さの大部屋であることが分かった。
『君たちから預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。
それぞれ確認したうえでクオーツをARCUSにセットしなさい。』
それで、サラ教官からの通信は途切れた。
「まぁ、とにかくやってみるか。」
という青い髪の少女の声と共に彼らは自分の武具があるところへ向かっていく。
自分の武具が置いてある場所はすぐに分かった。
1つはししょーからの譲りものである鈍色の大盾≪黒鋼≫もうひとつは円を描くように配置された小型の銃身とその真ん中に大砲が接着したガトリング砲≪白銀≫。
俺は持ってきたいたポーチから銃帯を取り出し腰に括り付ける。
そして、戦術オーブメントを白銀のくぼみに着けて起動。
青白い光が白銀の表面を伝っていき白銀の砲身に光が戻った。
それを確認すると俺はポーチから煙草を取り出し、火をつけ一息吸った。
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特別オリエンテーリング3
少女は目の前の敵に肉薄した。
敵は背を向けており絶好のチャンスだった。
振られた刃は―――受け止められた、あっさりと。
驚きに目を開かせた次の瞬間、ぞぶりと彼女の腹に長剣が突き刺さった。
長剣はそのまま腹を掻き回し、臓腑を抉った。
彼女は血を吐きながら叫んだ。
「□□□ーーーーーーーーーー!」
そしてそのまま
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
煙草を取り出して一服した俺はちゃっちゃと迷宮の奥に進むことにした。
ここでちょっとばかし裏技を使う。
取り出したのは淡い紫色の結晶、それに触れながら俺は言葉を口にする。
【ステルス】
瞬間、俺の身体は不透明になる。
この結晶はグリモア、樹海の生物の技を封印した不思議な結晶だ。
持っているだけでいろいろな技を使えるようになり戦術の幅が増えるのだが、デメリットも存在する。
雑魚の能力ではそこまで問題ではないのだが、深層や高層のモンスターの技となれば事情が違ってくる。
人間の身で発動すればごっそりと体力が削り取られるのだ。
自分も少し前までは樹海にて強敵と戦う際に慎重に使わなければならなかったが、今ならその負担も気にならない程度には抑えることができている。
さて、この【ステルス】の効果はおおよそ3分前後。
今のうちに入り口でたむろしているあいつらの間を抜けていくことにする。
◇
「いきなりどこへ……。一人で勝手に行くつもりか?」
迷宮に行こうとしたユーシスにマキアスが声を掛ける。
「馴れ合うつもりはない。それとも”貴族風情”と連れ立って歩きたいのか?」
自分の発言を皮肉で返されマキアスは「ぐっ」と言って返答に詰まってしまう。
それを見たユーシスは明らかに挑発するような物言いで
「まあ――魔獣が怖いのであれば同行を認めなくもないがな。武を尊ぶ帝国貴族としてそれなりに剣は使えるつもりだ。貴族の義務として、力無き民草を保護してやろう」と言い放った。
それに対してマキアスは
「き、貴族に守られなくても僕は魔獣を蹴散らせる!!!」
と怒って叫び、肩を怒らせながら迷宮へと走って出て行ってしまう。
ユーシスはマキアスの発言に鼻を鳴らして迷宮へと去って行ってしまった。
残された7名は呆然としていたが、ラウラが再起しある提案をした。
「とにかく我々も動くしかあるまい。念のため数名で行動することにしよう。」
アリサ、エマ、フィーに顔を向けながらこう言った。
アリサとエマはこれに対して
「え、ええ。別に構わないけれど。」
「私も…正直助かります。」
と賛同したが、フィーはラウラたちの制止を聞かず一人で行ってしまった。
何かを追いかけるかのように。
そのあとはラウラたち女子三人は迷宮の中に入っていき、広間にはガイウス、エリオット、リィンの三名が残っていた。
彼等はそれぞれ自己紹介と自らが使う武器について簡単な説明をしあって、迷宮に入っていった。
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特別オリエンテーリング4
少女を守っていた純白の盾は
ぱきんと
儚い音を立てて砕け散る。
自分にとってなくてはならない存在だった【彼/彼女】が目の前で砕け散ったことに呆然としている少女の顔を彼は掴みあげ――――
その幼い体躯に貫手が突き刺さり、ぶちぶちと嫌な音を出しながら引きずり出されたのはどくどくと脈打つ心臓。
そして、彼は勢いよく心臓を毟り取った。
少女は胸から夥しい量の鮮血をこぼしながら床に沈む。
彼は毟り取った心臓を口に近づけ――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
迷宮と言えばF.O.E、F.O.Eといえば迷宮。
といったふうに俺は考えているのだが出てくるのは雑魚ばかり。
ししょーから教わった盾殴り【シールドスマイト】の一撃でセピス残して爆散してしまって歯ごたえがない。
「・・・・来た道戻ってみるか」
俺はため息を吐きながら戻ってみることにした。
◇
斬撃が奔る、火の玉が飛んでゆき魔獣の身体に当たって弾ける。
大きく仰け反った魔獣の喉に槍の鋭い一撃が突き刺さる。
「崩したっ!」
「追撃行くぞっ!」
「止めだ!」
槍を突き出したガイウスが魔獣から槍を引き抜くと、魔獣は血を吹き出しながら崩れ落ち淡い燐光と七耀石の欠片を残して消え去った。
「だんだん慣れてきたね!リィン。」
「ああ。最初はどうなるかと思ったけど」
「連携も幾分か上手くなって来たな。」
一番最後に大広間を出てきたリィンたちは最初の戦闘を危なげなく終わらせ、現在は迷宮の半分ぐらいまで到達していた。
―――カサ
「ん?」
「どうしたのリィン?」
「いや、なんでもない。」
「それにしても、二人はすごいよね全然疲れてないみたいだし。僕はちょっと疲れが出てきたみたいで……」
よっこいしょ とエリオットは迷宮の床に腰を下ろす。
「まぁ、俺とガイウスは故郷が自然に近いからか魔獣と戦う機会が多かったみたいだし」
「そうだな、直に慣れるさ。」
「そうだといいけどね…」
―――ブゥゥゥゥン、ブゥゥゥゥゥン
「!」
「おい…!」
「え……」
リィンたちがいた場所の上の通路から魔獣が現れる。
その姿は大まかに言い表すなら蟷螂だった。
大きさはおそらく8メートル前後。
灰色の甲殻に身を包み、触れただけでこちらが斬られてしまいそうな大鎌を持っていた。
「くっ、新手か!」
「エリオット下がれ!」
「う、うん」
臨戦態勢をとる三人の前に悠然と降りてきた魔獣は猛然と突っ込んできた。
すぐさま三人は散開してそれを避けた。
攻撃を避けられた魔獣はそのまま直進し壁を『削り取り』ながら旋廻した。
『!?』
それを見たリィンたちは驚愕する。なぜなら先ほどまでの戦闘で武器が床や柱に当たっても弾かれるだけで傷などつけることはできず、それは魔法も同様だった。
驚く三人をよそに魔獣が再度突進してくるリィンとガイウスが避けるが、エリオットは一瞬遅れてしまい、それが悲劇を呼び出す。
エリオットの腕を魔獣の身体が掠り、一瞬で服が裂け腕に骨まで見えるほどの裂傷を作り出す。
「あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
エリオットは激痛に泣き叫ぶが、それを見て蟷螂は喜ぶかのように鎌を摺合せ猛然と追い打ちをかけてくる。
「え、エリオットッッッ!!!」
リィンはエリオットを抱えて横に転がる。
ガイウスは飛んできた魔獣の腹に槍を振るうが当たった瞬間、槍の穂先があっけなくへし折れる。
「なっ!?ガッ!」
そんなガイウスに魔獣が体当たりを仕掛ける。
かろうじて避けたガイウスだが衝撃で壁に叩き付けられる。
「ガイウスッ!」
魔獣は矛先をエリオットからガイウスに変更する。
こちらに飛んでくる魔獣にガイウスが死を感じたそのとき。
パァン
轟音と共に魔獣の身体が強制的に軌道を外れ通路の奥に吹き飛んだ。
「君たちッ!大丈夫か!?」
ライフル銃を持ってこちらに走ってくるのはマキアス・レーグニッツとエリオットの叫び声を聞いて走ってきたエマとアリサとラウラである。
「ひどい怪我ですね。今すぐ治療します!」
エマはそういうと治療用の魔法をすぐさま発動させる。
青白い光がエリオットの腕に降りかかりすぐさま傷をふさぎ癒してゆく。
その向こう側ではガイウスがアリサによって治療用のアーツを掛けられて、なんとか持ち直しマキアスに肩を支えられていた。
「何があったのだ?」
「ああ……」
リィンはラウラにこの状況を説明した。
魔獣を倒してひと段落して休んでいたら唐突に巨大な鎌を持つ魔獣が現れたこと。
その魔獣はとてつもなく硬質な迷宮の壁を抉り取るほどの頑丈さを以ていること。
エリオットの腕にかすっただけでエリオットは腕に重傷を負ったこと。
マキアスが駆けつけなければガイウスが死んでいた可能性があること。
それを聞いたラウラたちは疑問を呈した。
「なぜ、サラ教官は我々をここに攻略させたのだ?そのような危険な魔獣がいたのならばここでオリエンテーリングをしようとは思わなかったはず。
ということは、知らぬうちにその魔獣はこの迷宮に入り込んでいたということか……?」
ところで、話は変わるがガイウスの槍をへし折るほどの甲殻を持つ生物が通常のライフル銃の銃弾ごときで死ぬだろうか?いや、そんなことはない。
彼らはすぐに其の場から離れるべきだった。
魔獣が戻ってくる前に。
―――ブゥゥゥゥン、ブゥゥゥゥン
その音にいち早く気づいたのはエマだった。
「ッ!!!みなさん逃げますよッ!!!」
「なっ!?」
マキアスは驚いた。
通路の奥へ吹き飛んで行った魔獣の甲殻には銃創が一切なかったのだから。
「みんな急いで撤退するぞ!」
リィンはそう叫びエリオットを担いで駆けだす。
ラウラはガイウスに肩を貸しながら逃げる。
アリサとマキアスは弓と銃を撃ちまくって牽制しようとする。
当然彼らの意識は魔獣に向いており床に落ちているものには気づかなかった。そう気づいていなかった。
「きゃ…」
アリサが何かに蹴躓くアリサの足元にあったのは先ほどへし折れたガイウスの槍の穂先だった。
「あ……」
アリサの顔が絶望に染まる。マキアスが手をのばそうとしているが、間に合わない。あとほんの数秒でアリサは胸を貫かれ即死するだろう。
アリサの脳裏に走馬灯が映る。あぁ、自分はここで死ぬんだとあきらめが浮かぶ。
そんなアリサと魔獣の間に筒が投げ込まれ、爆発的な光が迸った。
「ギリギリセーフ」
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特別オリエンテーリング5
その肌は焼け焦げ身体のいたるところから血を流れ出している。
それでも彼は剣を振るう。
友を助けるために。
そんな彼の目の前で仲間が一人、朽ち果てた。
そして彼は――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
◇
「ギリギリセーフ」
昏倒した魔獣の前に姿を現したのは白髪の少女。
魔獣がアリサを殺そうとする直前に閃光弾を投げ入れアリサを間一髪で救い出した。
その姿にリィンたちは一瞬唖然としていたが、白髪の少女に向かって礼を言う。
「あ、ありがとう」
「ん。」
白髪の少女は簡潔に答えると昏倒しているアリサをリィンに渡すとこう言った。
「目くらましをしただけだから、この魔獣もそのうち回復するかもしれないから、今のうちに安全な処まで逃げるよ。」
そう言うと白髪の少女は走り出す。
それを見たリィンたちは協力して、負傷者を運びながら慌ててついていく。
◇
その数分後魔獣は頭を揺らしながら起き上り、自分の獲物が逃げてしまったことを悟ると耳障りな音を挙げながら獲物を探し出そうとする。
その瞬間何を感じたのか、魔獣はその場所を離脱しようとする。
そんな魔獣の上から影が落ちてきて避け損ねた魔獣の脚を叩き潰しながら影が降り立った。
「気配がすると思ったらやっぱりお前か、糞蟷螂」
そう発言したのはタケル。
返答は迫りくる巨大な鎌。
タケルはそれを左手で持った盾で迎え撃つ。
◇
ゴガァァァァァァン
迷宮の終点まで逃げてきたリィンたちの耳は轟音をとらえる。
「ッ!?なんだッ!?」
「たぶん、誰かがあの魔獣を戦っているのかも。」
「た、助けに行かないと!」
「そうしたほうが、いいけど。そうも言ってられないみたいだよ。」
フィーがそういって指をさす。
「何……?」
フィーの言葉にラウラがフィーが指差す方を見つめると終点の壁にある石像が動き出そうとしていた。
「せ、石像が動き出しただと……!」
マキアスがその事実に驚愕する。
石像の外皮が剥がれその中から青色の鱗を持つ魔獣が飛び出てくる。
魔獣が一吠えすれば空中からオオカミのような魔獣が次々と飛び出てくる。
その数12体。
「マキアスとガイウスとエマは俺と一緒に来てくれ!ラウラとフィーはエリオットとアリサを頼む!」
リィンは石像が変化した魔獣とその取り巻きを迎え撃つため即座に体勢を整え指示を出す。
「「「「「了解!」」」」」
こうして迷宮から脱出するための最後の戦いが幕を開けた。
◇
俺と蟷螂の戦いは思ったより長引いていた。
原因は俺に決定打がないこと。
・・・あるにはあるのだが、相手がよほどの隙を見せない限り使えないのが難点なんだ。
さっきから隙を作り出そうと奴の鎌の関節部に盾を叩き込んでいるのだがなかなか怯んでくれない。
「さて、どうするか・・・」
攻めあぐねた俺の姿を好機と思ったのか蟷螂が突っ込んでくる。
「隙ありよ」
奴の頭が消飛んだ。
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特別オリエンテーリング6
サラと主人公の会話の展開で悩んでいました。
街は緑に浸食されていた。中心部から徐々に森に飲み込まれている…
街は緑に浸食されていた。
中心部から徐々に森に飲み込まれている。
人々は逃げ惑うが一人ずつ蔦や幹に襲われ飲み込まれてゆく。
何人かの人が街の外にたどり着いた。
そこには―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ありがとうございます、サラ教官」
俺は蟷螂の残骸を燃やしながら助けてくれたサラ教官に礼を言う。
「・・・大したことはしてないわよ。でも、私が前に確認した際にはこんな魔獣いなかったのだけれど、タケルはこいつがここにいた理由が分かる?」
「おそらくですが、深層から上ってきたのではないでしょうか?」
「深層?」
「ええ、ここの外観は四階建てですが、見て回った感じいくつか吹き抜けになっている箇所が何個かありました。その場所から下を見るとはるか下に通路があるのが確認できました。ってことはこの蟷螂はその下の階層から上ってきた可能性が高いと思います」
俺が吹き抜けから下を見ていた時に、下層から今の階層にいる魔獣よりも強力な気配がいくつか感じられた。
旧校舎には何かしらの意思が介在する。
ここを訪れる者が力をつけて再びやってきたとき下層への道は開かれるのだろうか?
今ではわからないがその時になればわかるのだろう。
俺は蟷螂の死体から鎌をはぎ取るとサラ教官に渡す。
「これどうぞ、俺には不要なものですし旧校舎に誤って生徒が入って死人がでないように言っといてください」
「あんたはどうするの?私なら抜け道を知っているけど」
「いえ、このまま奥に行ってみます。他のやつが心配ですし」
「じゃ、頼んだわよ。私はこのままこれと何がいたかを伝えて来るわ」
「お願いします」
俺は最奥部目指して歩き始める。
・・・
・・・・・・
数分も歩くと大扉が見える。
中からは剣戟の音が響いてくる。
「もう、戦いは始まってんのか!」
俺は盾を装着し銃砲に特殊弾をリロードすると大扉を盾でブチ破ることにした。
「いっくぜぇ!
【シールドアサルト】ォ!!!」
◇
リィンたちは苦戦していた。
ガーゴイルとオオカミ型の魔獣の猛攻に対してリィンたち前衛が攻撃をいなしながら相手の隙を作りマキアスたちの後衛がその隙にアーツなどを打ち込みガーゴイルを倒した――――――かのように見えた。
だが、ガーゴイルの外殻が剥がれ中から若干小さくなったガーゴイルが復活したのだ。
しかも羽が生えて機動性が大幅に上がって後衛にも攻撃を仕掛け始めたせいでリィンたちは防御が精いっぱいになってしまった。
たまった疲労はついに致命的な隙をさらすことになってしまう。
カンッ
「あっ」
フィーのダガーが弾かれそのがら空きになった懐にオオカミがタックルを仕掛け吹き飛ばす。
なんとかフィーは体勢を整え――――上を見る。
GURUAAAAAAAAAA!!!
ガーゴイルが口を開けてフィーの頭に齧り付こうとしていた。
回避は不可能。
救援も離れすぎていて無理。
フィーは目を閉じて思った。
(死んじゃうのかな)
ドパァァァァァン!
ガーゴイルの頭を飛んできた扉が吹き飛ばした。
「ヘーイ!ナイスシュートォ!」
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特別オリエンテーリング7
「おう、大丈夫か!?」
俺はフィーの下に駆け寄って手を差し伸べる。
「ん、大丈夫」
フィーはそう言うと自分で立ち上がった。
「タケル、来てるよ」
後ろを振り向くと先ほどぶっとばしたガーゴイルがこっちに飛んできていた。
俺は盾を構えて銃砲をガーゴイルに向ける。
「いくぜ・・・【テラーズクラスター】!」
銃砲から導力の光に包まれた特殊弾が飛び出す。
それはガーゴイルの翼に着弾し、片翼を焼き尽くした。
◇
ガーゴイルの体勢が崩れる。
その懐に真っ先に飛び込んだのはリィンだ。
『この隙を逃してはいけない』と脳内に浮かんだのだ。
それにしたがってリィンは刀を横に滑らせる。
これまでは表皮しか傷つけられなかったのに今回は驚くほど深く刀が入った。
そのまま刀は滑って行き、すぱん とガーゴイルの前足を断ち切った。
◇
リィンがガーゴイルの脚を断ち切る瞬間Ⅶ組全員の心がつながった。
自分以外の動きが手に取るようにわかる。
タケルは苦し紛れにリィンに振り下ろされようとしていたガーゴイルの前足を《黒鋼》で受け止める。
その俺の肩をフィーが踏み台にしてガーゴイルの背の上に乗り、残った翼に穴を空ける。
タケルとリィン、フィーが飛び退くと
ガーゴイルに【ファイアボルト】と【ルミナスレイ】が身体に叩き付けられる。
見れば戦線復帰したエリオットが少し顔が青いながらも隣りのエマに支えてもらいながら導力杖をガーゴイルに向けていた。
GOAAAAAAAAAAAAA!!!
翼をなくしたガーゴイルが怒りの咆哮を上げる。
憤怒に染められたその顔に銃弾と矢が飛ぶ。
マキアスとアリサの援護射撃がどんどんと飛んでくる。
それを鬱陶しそうに首を振るガーゴイルだが
その隙にラウラが走りよる。
ラウラの動きは飛び出す直前にガイウスが掛けてくれた補助魔法のおかげか正確無比だった。
ラウラはその手に持った大剣で
ガーゴイルの上半身と下半身を両断した。
最後のあがきか、ガーゴイルの口から火がチロリと覗いたが、火は飛び出すことなく首はユーシスの騎士剣によって断ち切られた。
◇
やっと終わった戦闘にみんなが息をつく。
エリオットなど緊張が解けて崩れ落ちてしまった。
「エリオットさん、大丈夫ですか?」
「ああ、エマさんありがとう・・・」
エマがエリオットに回復魔法をかけるとエリオットの顔色がずいぶんとよくなった。
エリオットは一息つくと言った
「それにしても・・・最後のあれ、何だったのかな?」
「そういえば、何かに包まれたような」
「ああ、僕も含めた全員が淡い光に包まれていたな」
エマとマキアスが肯定する。
「確かにあの瞬間、皆がが何をしようとしているのかがわかった。正確には見えなかったはずなのだがな」
ラウラが不思議そうに語る。
「多分、本当に視えたんだと思う」
とフィーが同意し
「ああ、もしかしたらさっきのような力が――」
リィンがその先を言おうとすると
「――そう。《ARCUS》の真価ってワケね。」
階段を下りてきたサラ教官がリィンの言葉を先取りした。
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特別オリエンテーリング終了
「いや~、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん。お姉さん感動しちゃったわ。これにて入学式の特別オリエンテーリングは全て終了なんだけど・・・」
彼女は一旦そこで言葉を切って、リィンたちを見渡してから続ける。
「・・・なによ君たち。もっと喜んでもいいんじゃない?」
「よ、喜べるわけないでしょう!」
「正直、疑問と不信感しか湧いてこないんですが・・・」
各々文句は結構あるみたいだ。
カマキリの魔獣に襲われて、出れると思ったらガーゴイル+αに襲われて
「単刀直入に問おう。この特科クラスは一体何を目的としているんだ?」
ユーシスの問いは、この場にいる誰もが聞きたいことだろう。サラ教官もそれを理解した上で話し始める。
「あーそれ、話さないといけないわね・・・ちょっと長くなるけど大丈夫かしら?」
サラ教官はそう言って周りを見渡す。
全員がうなずく。
「うん、じゃあ始めるわね・・・配られたARCUSは新型の第五世代型戦術オーブメントよ。個人用の戦術オーブメントはここ数年頻繁に規格が更新され続けているのは知ってるわよね?
これが開発される前にエニグマっていう戦術オーブメントが出たんだけど・・・それに合わせてARCUSも発売される予定だったの」
「でも、エニグマは誰でも扱いやすいように調整されている分便利な機能はついてないんだけど、ARCUSは個人の才能が扱えるか否かを左右するのよ」
「そのせいか、テストプレイヤーが思いのほか絞られちゃって発売が延期されちゃってるのよ。だから・・・」
「俺たちが実験台みたいなモンってとこか?」
サラ教官を遮り赤毛の男が言い切る。
「まぁ、そんなもんよ」
「それと、ARCUSの真価は《戦術リンク》、先程あなたたちが体験した現象にあるのよ
。 仲間と仲間をつないで無意識下での連携を可能とする-----
ま、不完全だからとりあえず適性検査を行った結果あなたたち10人が検査を通ったからこのクラスが特別に作られたのよ」
「さて約束どおり、文句の方を受け付けてあげる。トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君たち10名を見出した。やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で《Ⅶ組》に参加するかどうか改めて聞かせてもらいましょうか?」
一通りサラ教官は説明を終えると、俺達に自分の意思で参加を決めるように促した。
皆戸惑っているようで、エリオットは周りをキョロキョロ見ている。
そんな中、黒髪の青年―リィン―が先陣を切った。
「リィン・シュバルツァー。参加させてもらいます」
「え・・・」
「リ、リィン・・・!?」
驚くアリサとエリオット。
「一番乗りは君か・・・何か事情があるみたいね?」
「いえ・・・我侭を言わせて行かせてもらった学院です。自分を高められるのであればどんなクラスでも構いません」
それに続いて私も僕もと次々に参加を表明していく。
マキアスとユーシスも互いにいがみ合いながらユーシスが先に参加を決定し、マキアスが張り合うかのように参加を決める。
そして最後には赤髪の青年が残る。
「俺は・・・「あんたは強制参加よ」おい」
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密談
帝都ヘイムダルの知事が仕事を行う執務室。
そこには鉄道憲兵隊の隊長であるクレア・リーヴェルトと帝都知事であるカール・レーグニッツが密会していた。
彼らはそこで今年の夏行われる、夏至祭についての相談を行っていた。
いつもならば、警備体制の確認や帝国内の情勢などを確認するのだが、今回はそれは行われなかった。
「率直に申し上げます。今回の夏至祭は開催を延期したほうがいいかもしれません」
「それは・・・やはり、あのことが?」
「はい。閣下の政策のおかげであちらの国との流通経路は復活しましたが、それと同時にあちらの国にしかいなかった魔物がこちらに流入しています。現在確認できている魔物の種類は少ないですが、士官学院の旧校舎地下にこの魔物が入り込んでいました」
クレアはそういうと知事に資料を渡す。
そこには既に絶命しているが、巨大な鎌を持つカマキリの魔物の写真とその説明がされていた。
「この魔物は・・・」
「あちらの国では発生が確認され次第、討伐が推奨される危険な魔物の一種『全てを刈る影』です」
「この魔物があの旧校舎にいたのですか?」
「ええ、向こうの教官とも確認しあいましたが、事実です。これまで何度も確認しましたが旧校舎に入った形跡はありませんでしたが、旧校舎内部の構造が変化しているという報告がありました。しかも、屋内ではありえない植物が繁茂していたようです」
報告をしていくクレアの話を聞いていた知事の顔には深いしわが刻まれている。
「ということは、この魔物はその変化した階層から上に上がってきた可能性が高いと?」
「誰かが持ち込んだという可能性は低いのでおそらくそうなります」
「閣下はこの件についてはなんと?」
「問題はない、と」
「それは、なぜだね?」
「あちらの国から一人、優秀な冒険者を入学させたと・・・」
「もしかして、グランセイバー君かね?」
「おそらく・・・」
「一人でどうにかなる問題だと、閣下はおっしゃったのかね?」
「彼は向こうで王族の親衛隊を務めていた時期があります。そこであまたの魔物を討伐したらしいです。また、あちらの国で礼儀作法が整っていてかつ入学しても怪しまれない人物としての筆頭が彼だったようです。そして・・・」
「百日戦役に乱入してきて帝国軍を蹂躙していった一派の教え子か・・・」
かの百日戦役の際、帝国軍の一部がその国から食料を徴収しようとして逆にほんの少数の一団に叩きのめされ、その一団は帝国軍に挑みかかって無傷で多くの導力戦車と大砲を破壊し何百人もの帝国兵を再起不能に追い込んだ。
その一団の頭は周りからこう呼ばれていた
「ししょー」
と
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自由行動日・前
あのオリエンテーリングから一週間後の休日。
毎週の最終日は自由行動日とされ、生徒によってはトリスタ近郊の町に鉄道を使って買い出しに出かけたり、トリスタ周辺の池や山に散策に行くなど思い思いに過ごしている。
かくいう俺も山に来ている。
目的は散策ではない。学院からの依頼で近隣の山などの生態調査に駆り出されたのだ。
まずは、森近くの導力灯の点検を行う。
つい一か月ほど前に交換したらしいのだが、俺が学院に入学する前に結構でかい嵐が来たらしく、それで故障してないかどうかの点検をしてほしいらしい。
俺は技術棟で受け取った説明書と導力灯の内部を確認しながら順繰りに回っていく。
数時間後
とくに故障らしい故障はなく中にある導力灯の光も正常通りだったのでよしとする。
もう一つは本題である生態調査だ。
近年、世界樹の迷宮の生物が各地でちらほらと出現しているらしく、もしいた場合は本国に連絡して討伐隊を派遣してもらう予定らしい。
まぁ、俺が討伐隊に組み込まれるのは確実だろう。
ここに入るときに帝国側はししょーのことを持ち出してきた。
「貴殿の師によってこちらの軍隊に甚大な被害をこうむった。それを償ってほしいのだが、金銭ではなく貴殿の国の魔物が発生した際貴殿の働き具合によっては金銭的な問題等はこちらが受け持とう」
要はししょーの尻拭いだ。
「なんで俺が・・・」とは思ったが、ししょーが素直に責任を取るかといわれると
『絶対嫌!』という光景しか見えない。
ししょーの仲間も拒否するだろう。
そもそも俺が住んでた国はつい最近までほかの国との交流を断絶していたからか、外交に慣れていない。
執政院や元老院のお歴々がいなかったら帝国に飲まれていただろう。
あいつら頑固だが、さすがは魔物の巣窟で生き抜いてきたやつらだから外交については丸投げでもOKだった。
姫様もこの時ばかりは感謝していた。
父親もやっと最近になって病から復帰したばかりだったからな・・・
ししょーたちのせいでこうして小間使いのごとく駆り出された生態調査だったが、結果は空振りに終わった。
特に世界樹の魔物が出現したような痕跡はなかった。
出現すれば、魔獣の生息域が大幅に変わることが報告されているのでその変化がなかったところを見ると問題はないようである。
上を見上げてみれば太陽はもう頂点に差し掛かっている。
今戻ってもトリスタの町にあるレストランは満杯だろうし、キルシェや学生食堂もほぼ満員に近いだろう。
そうなったら、あとは
「自炊か」
俺はオリエンテーリングの日に向こうから持ち込んだ食材で料理を振る舞ったのだが、それに目をつけられてか毎日晩御飯は俺が作っている。
俺の部屋には深海樹の幹で作られた冷蔵庫もどきが置いてあるから食料が腐ることはない。
のだが・・・
「もう食材がゲテモノ系しか残っていないのがなぁ・・・」
冷蔵庫の中身はシカの肉が少しとあとはマイマイの切り身や泥やら壁やらカエルの肉だったり蝙蝠の羽だったり普通の方法では調理できないものしか残っていない。
もしこれまでの食事の質を提供しようと思ったら、どこかで調達してこなければいかないのだが・・・
「あ、カマキリの肉があったか・・・でもなぁ」
俺はぼやきつつトリスタ街道を歩いて学院に戻ることにした。
オリジナルアイテム
深海樹:
海の都で伐採される青い幹が特徴の樹木。
老齢な樹木になればなるほど幹の色は濃くなり、最終的には深海のような色になることからこの名前が付けられた。
特徴としてはある程度の冷却効果が働くため部屋に加工したものを置くことで涼しくしたりできる。
老齢の樹木であれば冷却効果は極めて高く、たとえ炎天下にあろうとも深海樹でつくられた保冷庫の中は真冬並みの温度が保たれるという。
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自由行動日・中
「旧校舎の探索?」
「ああ、学院長から鍵を渡されて・・・」
「で、3人じゃ心もとないから暇そうだった俺に目を付けたと?」
「ほかの皆はクラブ活動で忙しいみたいだしさ・・・」
「しゃーない、わかったよ」
◇
結局、寮の食堂で自炊することになった。
冷蔵庫から出してきた鹿肉とかみつき草を取り出して、鹿肉を自家製ソースに絡めながら焼き、かみつき草のバンズに鹿肉と溶かしたチーズ、肉汁とソースを絡めた野菜を挟めば出来上がりだ。
で、俺が飯食ってくつろいでいたらリィンがやってきた。
なんでも、会長の手伝いしていたらサラ教官に学院長室に行くように促されて
行ったら、「サラ教官から頼まれごとをやってくれないかね?」と言われて鍵束を押し付けられたそうだ
「リィンってパシリの素質あるよな」
「言わないでくれ・・・」
「で、前衛が二人と後衛が一人か・・・リィンはどっちがいい?」
「どっちって?」
「前衛一人するか後衛一人追加するかってことだよ。前者はエリオットを守りやすくなるが、回復がエリオット一人だと追いつかなくなる可能性がある。後者はサポートも回復もできるようになって安定性が取れるけど、突破力とか火力が低くなるから前衛二人の負担が重くなる。で、どっちがいい?」
「うーん・・・じゃあ、後衛追加のほうで。安全第一だし、もし危なくなったら戻ればいいし」
「そうか・・・じゃあ、準備してくるからちょっと待ってな」
◇
「しかし、後衛か・・・ウォーロックは駄目だな。ネクロマンサーも使えないし・・・ハウンドかなぁ?」
後衛職とは言っても、あっちとは文化が違うからうかつに技術を漏らすわけにもいかんからなぁ・・・そこが面倒なところか。
重砲に関しては、導力革命時代に作られた痕跡があったから、その時のものを回収して現代風のアレンジを施した・・・みたいな感じで誤魔化せたけど
印術とか古代魔法漏らして、戦争の引き金引いちゃったら不味いし
ハウンドだったら、鷹とか犬とか呼ぶぐらいだし問題はないはず。
(あーでも、さっきまでいなかった犬とか鷹とか魔方陣で召喚するから駄目だな・・・何気に獣笛ってアーティファクトみたいなもんだしなぁ)
ハーバリストは薬効があるとはいえ、帝国で使用されていない薬物を使うわけにもいかんし・・・
候補としては
・レンジャー
・バード
・バリスタ
・スナイパー
・ダンサー
・・・・・・・見事に後衛職ばかりだな。
「いざというときに何もできないやつしかないじゃん」
俺は溜息を吐く。
あのカマキリが出てきたときに何もできずにやられるのは勘弁だ。
「ほかに何かあったかなぁ・・・お?」
俺が倉庫から掘り出したものは・・・・鞭だった。
「そういや、プリンスの技術も教えてもらったな・・・たしか、言霊によって強化を行ってサポートしつつ、狂化した肉体で相手を打ちのめす・・・だったけ?」
◇
「お、出てきたな・・・・タケルそれは?」
「ああ、これは自分の国で作られていた狩猟鞭ってやつでな。たまたま、見つけたんで持ってきたんだ」
「で、使えるのか?」
リィンが怪訝な顔で聞いてくる
「失礼な。これでも自分の師匠たちに主な武器の扱い方とかはさんざん叩き込まれたんだ。苦労はさせないぜ?」
「そうか。ところで、タケルの師匠って誰なんだ?」
「あー・・・・なんて説明すればいいかな?喩えるとすれば・・・
【最強の冒険者】かな?」
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