ステラを放つその日まで (蓮太郎)
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現実逃避の日

 もし、君が転生を信じるならばあるのだろう。別に君の中ではと言うわけじゃなくて。

 

 そう、俺は転生というものをしたようだ。前は何者だったかということは完全に忘れてしまってるし、思い出しても今に影響はないはずだから大丈夫だと思う。

 

 まあ、前書きはいいだろう。今の俺は駒王学園に在籍する1年生の『芦屋(あしや) 新志(あらし)』と言う高校生だ。特技は弓道、というより弓矢だ。それ以外は運動神経がいい高校生だ。

 

 ただ、弓矢を引く時は本気を出さないようにしている。本気を出せば弓が壊れるし後々が面倒になるということが分かってる。弓矢を使うというのはメジャーだろうけど、何となーく頭の中にある記憶がこう告げている。

 

 

五体四散(ステラァ)したら人生終了ですよ』

 

 

 いや、前世よ五体四散(ステラァ)って何だよ。そりゃ人生終了するわ。でも、これが俺の本気だってことが伝わる。

 

 だからこそ、俺は本気を出さない。そう、Fateというものなんて知らないから!

 

 よし、今日も放課後の弓道部に行こう、そうしよう。弓道できるだけでも安心できる。

 

 弓の腕は明らかに常軌を逸してると言われてるが気にしたことはない。そのせいか友達は1人もできなかったし…………

 

 暗いことは考えるな。今日も矢を放って気晴らししよう。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

「は、廃部?支取会長、本気で言って…………」

 

「ええ、残念ながら」

 

 会長直々から憩いの場である弓道部が潰れるという宣告を受けた。何故だ!何故弓道部が潰れなきゃいけないんだ!

 

「貴方、何故って顔してるけど…………部員は貴方1人だけだからよ?」

 

「ごもっとも…………」

 

 何故とか言う前に理由は既に分かっていた。元々、ほとんど使われていない弓道場で1人練習してるだけの部活が弓道部だ。存在してるかどうかすら怪しいと同級生から言われてしまうほど。

 

 俺自身が何やかんやで別の部活を手伝ったりしてるから存在がさらに薄くなってるんだろうな。

 

 支取会長に言われて今日で廃部になる弓道部、個人的には惜しいが学校側もこんな寂しい部に費用を回すこともない。それが悲しいところだ。

 

 小間使いまがいのことして過ごしながら勧誘してたけど、誰1人集まらなかった。かつての経験者や、やってみたいと希望した人はいても俺の腕を見てすぐ諦めた。

 

 俺が矢を絶対に真ん中に当てるってのが一番響いたんだろうな。まるで英雄みたいな腕をしてるなんて言われたこともあった。

 

 正直、そう言われても嬉しくなかった。なんでか分からないけど例の五体四散のイメージがかなり強く残っているからだろう。

 

 誰だ火種集めるのによく使いますとか言ったやつは。そいつの身にもなってやれよ。毎回飛び散るのは痛いの話じゃないって。

 

 やれやれ、今日が弓道部最後の日だ。悔いのないように何百回もあの名残惜しい的を撃ち抜こう。

 

 

 …………短い間だったけど、ありがとな。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 …………はっ、いつの間にか眠っていたようだ。全力を出してないとはいえ何百回も集中して矢を放ったら疲れるよな。

 

 時間は…………深夜0時過ぎてる!?くっ、深く眠りすぎて時間が分からないほど寝ていたか。

 

 もう、ここに弓矢は置いていけないな。着替えるのも面倒だしこのまま持って帰るか。

 

 専用の袋に弓と矢をしまい道着のままで弓道場を出る。そして、感謝を込めて弓道場に一礼して俺は去った。

 

 虚しさがこみ上げてくる。ここの部活としてはかなり短いとはいえ弓矢は長いことやっていたせいか、短くても名残惜しさが出てくる。

 ありがとう、駒王学園弓道場、俺は忘れないぞ。

 

 と、思っていたら旧校舎に明かりが灯ってるのが目に入った。旧校舎と弓道場に続く道は一緒でほぼ使われていないせいで警備もあまり回らないという特徴を持つ。

 

 既に深夜帯なのになんで明かりがついているのか?気になって仕方ない。

 

 もしかして、不法侵入者?俺のように深夜まで残ってるのはどの部でもいないはずだ。確かめるにも手持ちが教科書が入ったカバンと弓矢しか…………

 

 …………弓矢で撃退できるか?高速で連射することもできるから何とかなるはずだ。いや、何バカな事を考えてるんだ。ここに入るまでの警備は厳重だしそう簡単に入る隙なんてない。

 

 あ、警備が厳重なのはいいけど説明したところで出してもらえるか?ギリギリまでやった後に一眠りしたらこんな時間でしたなんて言えねぇ…………

 

 と、思ってたが日頃の行いのせいか何と見逃してもらえることに。いや、別に計算してるわけじゃないがお人好しと言われるほどの行いのおかげだな。

 

 そのまま帰路に着いたものの、何だか嫌な予感しかしない。まるで人間じゃないような、邪悪なものに見られているような、そんな視線だ。

 

 まさか、通り魔とかいうのじゃないだろうな?競技用の弓矢と教科書で対抗出来るなんざ思ってないぞ。いや、弓矢なら何とかなる、か?

 

 …………見つけた。俺の後ろに何かいる。目で見ずともその気配が伝わってくる。さりげなく弓矢をすぐ手に取れるようにして…………

 

「ケケケ…………人間dギャァァッ!?」

 

 今だ!振り返りながら矢を放つ。正直な事を言うとほぼ勘で放った矢だから当たるとは思っていなかった。

 

 そして、そいつはやはりというかなんというか、人間じゃなかった。上半身は全裸の女性で胸に矢が刺さっている。ここだけ聞けば露出狂に矢を放ったと言える。

 

 だが下半身が人間ではなく獣だったら?もはや化け物退治だ。

 

「キサマァ!下等な人間が歯向かうナァ!」

 

 まずい!完全に相手を怒らせてしまったようだ!逃げ切れるわけがない。そして、間違いなく殺されるだろうな。

 

 でも諦めるわけにはいかない!あの怒り狂っている化け物を殺すしかない!

 

「ガァアァァアァァッ!!」

 

 どう仕留めるか、一番簡単なのは頭を狙うことだが動き回りながら攻撃してくるのを避けるのに精一杯で弓を引く暇がない。

 

 くっ、手詰まりか!しまった、避けられーー

 

「げケケケッ!殺った!」

 

 人ではない足のなぎ払いを避けることができず俺は吹き飛ばされてしまった。ぶつかった衝撃でブロック塀にヒビが入り壊れそうになっている。

 

 だけどそこまで痛くなかった。弓も矢もちゃんと手にある。この体勢からでも放つことは可能だ。そうだ、俺、弓を構えろ

 

 あれ、暗くてよく見えないがなんか弓が少しだけ変わったような?この際どうでもいい

 

 集中しろ、狙うは頭だ。あの化け物を倒すのには頭を狙え!この矢はあいつの命を奪うに十分な威力を持つほど引き絞れ!

 

「アァ?お前まだ生きて」

 

 いたのか、と最後は言いたかったのだろうな。言う前にバガンという何かが破裂した音が辺りに響いた。残念ながら、その時点でお前の頭は吹き飛んでるぜ。

 

 …………え?なんで吹き飛んだの?冷静になってかんがえたら、ただの弓矢で頭を吹き飛ばせるほどの威力なんて出せるはずが、え?いや、そもそもこんなに騒いで誰か来たら困るし、どうしよう…………

 

 ああ、うん、こういう時は逃げるに限るな!そして帰って寝て全部忘れよう!

 

*色々起こりすぎて混乱のデバフかかっています。ご了承ください。

 

 現実から逃げる時も大切だ。裏方が後やってくれると考えろ、都合いいけど多分そうだろうな。

 

 俺は逃げるように頭、よく見たら上半身が吹き飛んだ化け物の死体を放置して家に帰って、腹が減った事に気づいたからカップ麺食って寝た。

 

 これが全ての始まりだったんだろうな。そして、寿命が縮んでいくタイミングも、ここからだった…………



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ザ・アーチャー

 目がさめると何かがおかしかった。家に帰ってから道着のまますぐに寝たせいで道着がくしゃくしゃだ。

 

 でも、道着はしばらく使わないからしまっておこう。今日は祝日で学校は休みだから洗濯でもするか。うーん、清々しい朝だな。

 

 腹が減ったが作るのが面倒で飯はカップ焼きそばを食べた。そして道着をネットに入れて洗濯機で洗う。しばらく放置だな。

 

 しかし、変な夢を見た気がするな。化け物と戦った夢だったんだが、この弓で頭を吹き飛ばしたんだよな。そう、いつも使ってた弓がなんかデザイン変わってて…………

 

 変わったままだから夢じゃないってのがよく分かるか。なんだこれ、シンプルな赤い弓だが引いてみると十分に威力を出せそうな弓だ。昨日はこれで競技用の矢を放ったが、あそこまで威力が出るものなのか?

 

 考えても仕方ない。使う機会もないけど元の弓に戻って欲しいな。と念じてみたら弓が消えた!?待て、出現しろ!今度は出ろと念じてみたらさっきのままの弓が手元に現れた。

 

 もしかしてこれ、ヤバイやつじゃないのか?一度、弓を窓際に置いて玄関まで行って来いと念じてみたら瞬間移動したかのように手元に現れた。

 

 間違いない、この弓は特殊な力を持ってる!とはいえ昨晩のような使い方しかできなさそうだ。お蔵入りだから今は消しておこう。

 

 …………現実逃避がてら外に出るか。ついでにあの時に壊したままのはずのところを見るのを兼ねて外に出る。

 

 ちゃんと鍵を閉めてと、よし。

 

「にょ、芦屋くんおはようにょ」

 

「よおミルたん、おはようさん」

 

 ちょうどお出かけのお隣さんと鉢合わせしたから挨拶はしておいた。いつ見てもインパクト凄すぎて違和感を感じるお隣さんだ。どう見ても武を極めてるだろこの人。

 

 そんなやり取りがあったくらいで昨晩の化け物がいた位置についた。人通りは全くなく、そして化け物自体はもちろん、血痕や壊れかけのブロック塀すら見当たらない。

 

 ああ、錯乱してた時に言ったような(口には出してないが)まるで誰かが後始末したように(・・・・・・・・・・・)

 

 ああ、やはりというか当然というかこの付近に何か仕掛けられてる。人が全くいないのもこのせいだ。何で俺は効かなかったのか何て言われたら、まあ鍛えた肉体のおかげかね?

 

 何処にいるかはもう分かってるが、こちらが見られてるだけで何もしてこないならいい。けれどもそれは甘いと思う。視線は上から来ているから少なくとも人が見てるわけじゃなさそうだ。

 

 ここから高い建物なんてせいぜい3階建ての住宅だ。昨晩の化け物を処理した奴がここを監視してるとみた。

 

 監視されてる源を撃ち抜けるか?的はまだ目視してないが小さいものだと勘が囁いている。

 

 ちょうどいい、相手が誰だか知らないがこう観察するように見られるのは不愉快だ。一泡吹かせるか!

 

 即座に監視源がある方へ向き弓を出現させる。矢はどうする?と思ったがイメージするだけで矢が手元に現れた。そして矢を弓の弦にかけ引き絞り、渾身とも言える一矢を放った。

 

 

     ゴォォォッ!バビュン!

 

 

 擬音に表すとこんな感じで旋風を撒き散らしながら飛んでいった。明らかなオーバーキルとも思えるほどだ。誰かが巻き添え食らわない、よな?そこは考えてなかったが…………視線は消えた。

 

 一体誰だったのか、それは後々接触してくるかもしれないがついでに買い出しをしておこう。一人暮らしだと何が無いか自分で思い出さなきゃいけないのが苦労だな。

 

 さて、買い出しのためにスーパーへ向かう間に考え事をしていた。そう、弓の名前だ。

 

 いつまでも無名の弓として扱うのはどうかと思う。そして頭の中で思いついた名前が『射手の英雄(ザ・アーチャー)』だ。

 

 なぜか頭の中で1本の矢で山を削り取ったり空を矢で覆い尽くすことができるイメージが湧く名前だ。ああ、エジプトの神殿も破壊できる自信が湧いてきた。この高揚をどうしてくれようか?

 

 とは言っても何もないから買い出し行って一度戻ってゲーセン行くか。確か近くのゲーセンに弓矢の模型みたいなのを使って遊ぶシューティングの台が出たって聞いたから行ってみよう。

 

 誰にも超えられないハイスコア叩き出してやる!

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 いやー、楽しかった楽しかった。予想以上に弓が軽くて扱いづらかったけどエイムの修正が強かったから楽にスコアをたたき出せた。

 

 500円使って5回ともエンディング見ちまった。ストーリーはそこまで面白くなかったけどなかなか見ないタイプだったから面白かったな。

 

 ハイスコアを5連続で叩き出してゲーセンを出てすぐにこの街じゃあまり見ないシスター服を着た女性を見かけたが、特に困った様子なく誰かと一緒に歩いていたのを見たくらいだ。

 

 さて、思ったより早く来たか。今思えば感覚がかなり鋭くなってるのが良く分かる。まるで千里眼を手に入れたような感じだ。後ろにいるのに場所がしっかり分かる。

 

「やあどうも。こんな所で会うなんて偶然ですね」

 

 振り返ると意外にも、立っていたのは3年生で美人と有名なリアス・グレモリー先輩だった。また人の気配がない所で会うなんて、本当に偶然と言い難い。

 

「ええ、こちらからしたら初めましてね」

 

「ははは、それで何の用ですかね?どう見ても偶然何て思えませんね」

 

 よく考えたら今この場所は化け物を射殺した化け物の死体が転がってたはずの場所だ。ついでにピリピリと嫌な感じが肌に刺さる。

 

 そして遠目で見ることはあっても近くで見ると明らかに人と違うってのが分かる。もう間違いないだろう、昨晩の後処理にリアス・グレモリー先輩が関わってる。

 

 じゃなきゃここまでお膳立てできるわけがない。あ、そういえばグレモリー先輩はオカルト部というよく分からない部活動に入っていたはずだ。活動場所は確か旧校舎…………そうか、通りで明かりがついてたわけだ。

 

「グレモリー先輩、貴方もあの化け物の類いだったか」

 

「それは失礼よ。確かに悪魔だけど私達は汚れた悪魔とは違うわ」

 

「へぇ、悪魔だったのか。その言い方だとアレは間違いなく敵対関係だったようだ」

 

 もう敬語を捨ててるのは気にしない。そしてペラペラと情報を喋ってくれる。この言い方だと他にも悪魔がいるってことだろうな。おそらく旧校舎に居た、というよりオカルト部全員が悪魔だろうな。

 

 俺の思考が可笑しいほど回っていくのが不気味になっていく。これも『射手の英雄(ザ・アーチャー)』のおかげか?

 

 さっきの弓矢ゲーのお陰で一瞬で構えるコツは掴んだ。重さはかなり違うが何やかんやゲームでも感覚は掴めるもんだな。

 

「そろそろ本題に入るべきね。明日の放課後にオカルト部にいらしてくれる?」

 

「…………え、結局話は後回し?しかもそっちの拠点に来いなんて言われても困るんだけど」

 

「それもそうね。でも私達は貴方の敵じゃないことは信じて欲しいの。そもそも仕事を横取りしたのは貴方で下手したら死んでたはずなんだけど…………」

 

「あいつのなぎ払いなら食らったが、別に大したことはなかったぞ?」

 

「……………………はぐれ悪魔とはいえ神器(セイクリッド・ギア)が覚醒したばかりの人間相手にそこまで弱くはないはずだけど、それも貴方の神器の能力かしら?」

 

「せきくり…………?もう一回言ってくれないか?」

 

「はぁ、そこのところもついでに明日来るならそこで話すわ。尤も、来る以外の選択肢は貴方の中にはないんじゃないの?」

 

 だが断る!何て言えるはずもない。立場が上としてもこっちは弓だけで悪魔のことなんてさっぱりだ。しかも仕事とか言ってたからには俺が何かに巻き込まれたのは確かだろうな。

 

 最後の返事は聞かずにグレモリー先輩は立ち去っていった。向こうの事情も知るためには敵地となるかもしれない場所に足を踏み込まなければならない事を、今実感した。

 

 もし敵対した時は、俺は生き延びられるだろうか?弱気になってはダメだ、生き延びるんだ!それに悪魔とは言っても悪い奴とは限らない!根拠は無いが勘がそう言っている!

 

 明日の放課後に悪魔の巣窟であり謎が多いオカルト部に行く決意を固め家に帰って飯作って風呂入って早めに寝た。




*新志が「せきくり…………?」と言ってる部分は誤字ではありません。素で聞き間違えてます。

*2/24追記
 たくさんの人から『ザ・アーチャー』ではなく『ジ・アーチャー』だという指摘を受けましたがFGOや型月wikiでは異名はアーラシュ・カマンガー。英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャーとされており、そこから『ザ・アーチャー』と名前を取りました。


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オカルト部の悪魔たち

 放課後、この日は陸上部が手伝ってくれと言ってたが断って旧校舎へ来た。そう、やってまいりましたオカルト部。

 

 射手の英雄(ザ・アーチャー)はいつでも出せる準備をしている。ここまできたら何が起こるか分からない。やる気を出したら一瞬で旧校舎吹き飛ばせそうだが可能な限り自重はする。

 

 よし、オカルト部の部室である教室の前に佇んでいたが意を決して悪魔の巣窟に入っていった。

 

「あら、芦屋新志君、でよかったかしら?」

 

 出迎えてくれたのは3年生でリアス・グレモリーと美人ランキングトップ争いをしている姫島朱乃先輩だ。いや、もう(仮称)千里眼で誰が居るかは把握していた。

 

 まずリアス・グレモリー先輩、そして姫島朱乃先輩と3年生組はこの2人。2年生組はイケメン王子と呼ばれてるのを聞いたことがある木場祐斗先輩に…………兵藤一誠先輩じゃないか。そして同学年である1年生は塔城子猫さんだけか。

 

「部長が呼んだ客人って芦屋だったのかよ。地味に固い人気あるんだよなこいつ…………」

 

 変態3人衆の1人で有名なのがここにいるという事は彼も悪魔、いや分かりきってることだ。ここにいる全員が人とは違う感じを出してる。ついでに生徒会メンバーとすれ違った時も似たような感じがした。

 

 思った以上に悪魔がいるじゃんこの学園。一体どうなってる?

 

「早速だけど、芦屋新志君?貴方は最近弓の神器(セイクリッド・ギア)の力に目覚めたわね?」

 

「そのなんたらギアとか前に悪魔の説明が欲しいんだが。そのあとに俺の弓の事についてはあの死体に刺さった矢で判断したんだろ?」

 

「ご明察、それに弓矢を使うとしたら心当たりがあるのはあの日、夜遅くまで弓道の練習をしてた貴方だけよ」

 

「まあ、きっかけは偶然だったんだろうな。あんなもんあったのはビックリした…………じゃなくて悪魔の話だ」

 

「そうね、その話をしなきゃ貴方は怒りそうだし…………」

 

 それを切り口に悪魔の話がグレモリー先輩の口から語られることになった。文字通りこのオカルト部に在籍する彼女らは悪魔だということ、その証明にコウモリの羽を見せてもらった。

 

 当たり前のように見せつけられて呆気に取られそうになったがあの日の化け物、もといはぐれ悪魔&そのおかしな死体を見てたらそうもしてはいられない。

 

 ここでメインの活動としては夜中に悪魔の仕事として人間と契約し、願いを叶えて対価をもらうという何ともビジネスマンっぽいものだった(個人的感想です)

 

 ついでにほとんどの言語がデフォルトで喋ることができ寿命が超長いんだとか。だが、それは人間基準であり他にも天使や堕天使とかもいると言われた。それに続き天界や冥界も存在するんだとか。

 

 何故か冥界と聞いたら金髪ツインテールのツンデレ少女が頭に浮かんだ。早く鯖化して欲しいという謎思考も出てくる。本当に何故だ。

 

 でだ、この駒王学園だけでなく駒王町自体がグレモリー先輩の領土だと聞いたときは耳を疑った。つまり、あの時の視線、彼女が言うには使い魔はグレモリー先輩の眷属だったらしい。

 

 思いっきり射殺しちゃったんだが…………

 

 そして、現在はオカルト部で悪魔式のゲーム、レーティングゲームというチェスを基にしたゲームをする為に眷属集めをしているらしい。

 

 その眷属というのは転生悪魔というものらしい。なんだか単語がどんどん出てきて混乱しそうになる。

 

 転生悪魔は悪魔以外ならほぼ種族を問わずに悪魔になれると言う驚きの物だ。悪魔になる特典は身体能力の向上や、前に言った言語の理解、そして自分が王になるか駒になるかで権力を勝ち取れるレーティングゲームの参加権、が俺の見解だった。語られてもそうとしか思えなかったから簡潔にまとめたらこんな感じだ。

 

「ふーん、それで俺に話が来たか。あのはぐれ悪魔とやらを殺しただけでか」

 

「そう簡単に言ってくれるけど、簡単に殺されるものじゃないわ。それに私の眷属となるなら色んなことは保証するわ」

 

「断る」

 

 たった2文字を言葉として発しただけで反応が様々に分かれた。

 

 予想してたかのように肩を落とすグレモリー先輩と姫島先輩に木場先輩、無視してお菓子を食べてる塔城さん、なぜおっぱいがあるのに断ったのかと驚愕した表情を見せる兵藤、待て、逆になんでそんな理由でなろうとするのかが分からん!

 

 全く、悪魔になるなんて嫌だぞ。得るものは多々あっても人として今を生きる事が大切なんだ。

 

「そうね、もし貴方が眷属になってくれるなら…………弓道場の取り潰し、なんとかしてあげるわ」

 

 

 なん…………だと…………?

 

 

 一瞬、思考が止まってしまった。あの弓道場は日数は少ないものの思い入れも多々ある。それが無くなるのをやめる事ができる?

 

「あ、悪魔…………それを取ってくるとは…………悪魔め!」

 

「いやいやいや、何で弓道場で釣られそうになってんの!?」

 

 胸に釣られそうな人は黙ってて欲しいな、と思うも口には出さない。くっ、このままだと本当に釣られてしまう!いや、待て待て、何でこんなに屈しそうになってるんだ俺!耐えろ俺!

 

 いや、逆に考えろ。無くなることで誰かの役に立てるんだ。俺のわがまま一つで今だけの満足が何百何千の利益にっ!

 

「想像以上に悩んでるわね」

 

「えーと、何であそこまで思い入れあるんだ?そもそも数ヶ月もいないだろ?」

 

「…………スケベな先輩にはスポーツマンの心が分からないんです」

 

「いや、それとこれとは違うとおm「やっぱり断る」」

 

 そう言い放ち、姫島先輩が淹れた紅茶を飲む。あ、これマジで美味いな。

 

「その理由を聞かせてもらっても?」

 

「言う義理はないと思うんだが、イマイチ信用できない。人間をやめるってのが何らかのデメリットになりそうな気がしてならないんだ」

 

「そのデメリットというのは?」

 

「さぁてね、自分の直感がそう言ってるんだ」

 

 上手く回避できたと俺は思う。別に弓道場に未練があるわけじゃないが、ここは心を鬼にして断るもんだ。

 

 ここで一つ、考察を考えよう。もし、俺が駒となるならどの駒になっていたか?

 

 場合によってはオールラウンダーな兵士、魔力を扱う僧侶、高い防御力を誇る戦車、高機動能力をもつ騎士、そして最強の駒である女王。その中で既に女王枠は姫島先輩で埋まっていて他も一つは入ってる。

 

 おそらくだが兵士の駒を使ったのは兵藤だろうな。それも話を聞く限りじゃ大量に使わなきゃいけない力を持ってる。あの変態に何が眠ってるんだ?

 

 それで木場先輩が騎士で塔城さんは戦車だろう。だが、枠が余ってることもあって、個人な事としては騎士かね?弓矢を扱うからにはスナイパーの立ち位置にならないといけない。その時に撃った場所を把握されてはいけないためすぐに移動しなければならない。そうでなければ集中して狙われる、なんてことをどこかで聞いた。

 

 ほら、これだ!俺がなるとしたら騎士の駒だな!

 

「じゃあ、敵対は無し、悪魔にはならないけど仲良くは出来ますかね?どうせ生徒会も絡んでるんでしょ?」

 

「そこまで気づいてたのね。まあ、そっちの話はソーナから聞いてちょうだい」

 

「えっ、生徒会も!?」

 

 悪魔になったばかりの兵藤先輩は知らなかったようだ。しかし向こうは敵対してこないと言ったが、本当か?悪魔という限りは信用がならない。

 

 とは言っても、根本的なところは優しさが見える。悪魔なのに優しいとはこれいかに。

 

 信用度がゼロどころかほぼマイナススタートという、ただ自分の色目を使った結果だが向こうは俺をある程度信用してくれているというのはよく分かった。

 

 そこまでは悪くないと思う彼女らとの関係の始まりだった。

 

 その後、連絡が入ったのかどうかは知らないが生徒会にも捕まった(任意同行だったが律儀に行くことにした)上に同じ話を聞かされて眷属にならないかという話を持ちかけられた。丁寧にお断りして帰らせていただきました。

 

 何で弓道場を餌として俺を釣ろうとするんだろうね…………っ!本当に…………おのれ悪魔め!




弓道場「くっ、俺を餌にしても彼はやらせない!新志!俺のことはいいから悪魔の契約に乗るなぁ!」


 弓道場の犠牲により芦屋新志は悪魔の手から救われたのだった…………


 冗談のつもりが割と合ってる気がする…………


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堕天使は敵か味方か

 眷属にならないかと誘われてからかなり日が経った。意外と仲良くできてるのが不思議だが、悪いやつじゃなかったな。

 

 でも仲はいいからって隙をみてはちょくちょく眷属に誘うのはやめてほしい。それは生徒会にも言える文句だが仲良く付き合っていくなら当然だろう。

 

 あ、そうそう、オカルト研究部では何やかんやあって新しい眷属が入ったとのことだ。名前はアーシア・アルジェント、2年生として転校だったか?うちの学園に入ってオカルト部に入部した。

 

 そこまでの経緯を聞くと、まあ酷い。兵藤先輩の彼女として一度近づき殺した、つまり兵藤先輩が悪魔になるきっかけを作った女でありアルジェント先輩の神器を命ごと強奪したということだ。

 

 ゼロに近いマイナスな好感度が一気にマイナスになった。ちなみに転生の際に使用した駒は僧侶だ。彼女の神器が種族を問わずに回復できるからものすごく合ってる。まるで運命としか言えないな。

 

 最近は手伝いはたまーにしかせずにオカルト部に寄ることが多くなってる。それでも一般の人たちから見たら「あいつはいい人だからオカ研に居てもおかしくはない」という感じで仲がいい程度の認識だ。

 

 うん、地味に固い人気があるって兵藤先輩が呟いてたのがようやく実感できた。良いことするのは悪い事じゃない。

 

 姫島先輩が淹れた紅茶を飲んでアルジェントさん達と悪魔家業についての雑談をした後で学校を後にした。もちろん俺は1人で帰る。

 

 ふと弓矢のゲーム台のことを思い出した。ふとした時にどうでも良いことを思い出すのはあるが、ハイスコアを更新されてないか気になってきた。久々にあのゲーセンに行ってみるか。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

「オラオラオラ!」

 

 例のゲーセンに行くといい歳した和装のおっさんが弓矢ゲーをやっていた。野次馬に紛れて後ろから覗き込むとかなりのスコアをたたき出している。あ、今ダメージ受けた。ライフギリギリじゃないか。

 

「くっそ、あぁ!ゲームオーバーだチクショウ!それなりにできると思ってたんだがなぁ」

 

 いやいや、舐めてはいけないぞ。俺も弓矢を扱ってても思うようにいかないことが結構あるからな。

 

「もう一回だ!」

 

 100円を入れてコンティニューを行い再開する。よく見たらこれ最終ステージじゃん。そりゃムキにもなるわな。

 

 そして10分程度でエンディングが流れ始めた。ハイスコア画面では上位5名がアーラシュと入れられていて6番目にアザゼルと記入された。

 

 もうお察しだろう。このゲームをプレイしていたのは人間じゃない。アザゼルってことは堕天使の総督だろうな。見るだけでどれだけ強いのか分かるしトップクラスなんだろうという雰囲気を一般人には分からないが醸し出している。

 

 グレモリーの領地に単独で来たなんて考え辛い。どう考えても厄介事が絡んでるんだろうな。まさか、純粋にこのゲームしに来たとか赤龍帝に興味持ったとかで来たんじゃないだろうな?

 

 ひと段落したっぽいからこっちに来た、のを俺はスルーして台へ向かう。アザゼルがえっ、て顔をしていたが無視して100円を入れる。

 

 ランキングからアザゼルの名前が消えるのは30分も満たなかった。

 

「にゃろ…………」

 

 交代でアザゼルがプレイを始める。その時には野次馬がかなり減っていたが俺のプレイを見て神プレイだと言ってる人しかいなかった。

 

 だがアザゼルは本気を出した。凄まじい速さで弓を操作しながらエネミーに矢を放ちつつ高得点アイテムも狙っていく。これには場も盛り上がった。

 

 ああ、これを見て確信した。悪魔では魔力というエネルギーを見ることができた俺だが、アザゼルはそれもまた別のエネルギーを使っているのが目で見える。ちなみに魔力が見える件についてはオカルト部の面々に協力してもらい見えるようになった。

 

 俺にも射者の英雄(ザ・アーチャー)を使うための魔力のようなエネルギーはあるが一般人より多めで魔術や魔法を使う者からしたらかなり少ないらしい。矢も魔力で生成するが何千何万と放っていたら限界がくるだろうな。

 

 眺めてるうちにゲームは終わった。順位は3位とランキング内に入ってきた。流石は堕天使の総督、ゲームにムキになるもやってくれる。

 

「よし、なんか食いに行くか?奢るぜ」

 

「はっはっはっ、やっぱり積もる話はあるってことか」

 

 あえて仲がよさそうな感じを出してるが俺は腹を探ろうとしている。そして結論としては純粋に話をしたいだけではないかとこっちは思ってる。

 

 こうして見るとただ気前のよさそうなおっさんなんだよな。ただ若干だが兵藤先輩と似たような部分を持ち合わせてそうな…………

 

 そして着いたのは近くにあったファミレス。ついでに晩飯も奢らせよう。俺はチーズinハンバーグとフライドポテトを頼んだ。アザゼルはドリンクバーのみ。俺のフライドポテト摘むとか言ってたがアザゼルの奢りだしそれくらいは許そう。

 

「それで、何の用かいアザゼル総督」

 

「やっぱ正体が分かってたか。単刀直入に言うとしたらうちの陣営に来るか?」

 

「今は悪魔側と一応仲良くしてるんで無理だ。レイナーレの件も聞いてるしな。どうして信用できるかは、聞いても意味ないぞ?」

 

「はーっ、やり辛い相手だな。千里眼でも持ってんのか?」

 

「さぁね?」

 

 ハンバーグを一口食べて水も一口飲む。うん、ここのファミレスのハンバーグは美味いな。そしてまーた勧誘か。前に天使側からも勧誘してきたし、どこも俺を勧誘してくるな。

 

 天使は天使でも最上級の天使だったけどな。なんだ、キューピッドの天使役を頼む訳でもあるまいし。

 

 まあなんにせよ、裏は少なそうな堕天使だな。堕天使のくせに裏が少ないとはいかに。

 

 まあ、何にせよ今は友好的なんだし勧誘するほどだ。どこも有能だという人物は何としてでも手に入れたいんだろう。しかもトップが来るほどだ。俺にどれだけ期待がかかってるんだ?

 

 ただ、アレを試したのはまだ二度だけ、つまりはぐれ悪魔の頭を吹き飛ばした時とグレモリー先輩の使い魔を射た時のみだ。それでも全力ではないから本気がどれくらい出るかわからない。

 

 と、言うのをアザゼルと会話してる時にポロっと、不覚にもポロっと言ってしまったのが間違いだった。

 

「ほぉ?ならウチの施設でちいと試してみるか?用途は少しばかり違うがいいとこあるぜ」

 

 ニヤニヤと笑いながらそう提案してきた。この顔は俺の神器の力を見たいのと俺自身のやり方を見たい、そして面白そうだと思ってる顔!

 

 話の中でアザゼルは神器の研究をしてるということを聞いていたので、一方的に研究されそうで怖いが自分のことを知れるチャンスでもある。

 

 悪魔の契約に天使の誘い、そして堕天使の提案がこう一ヶ月も経ってないうちに来るとかおかしすぎるぜ。俺は神代の英雄でもないんだからさ?

 

 でも、この提案は悪くないと思う。俺の本当の実力を知る機会でもあるが誰かに知られる機会でもある。逆に言えば本拠地で未知数の力を持つ奴に暴れて欲しいと聞かれたら否だ。

 

 わざわざそんな敵を連れ込むメリットとデメリットが釣り合っている。それは俺も相手を知り自分も知ることができるメリットでもあるしな。

 

「よし乗った。どれだけ力持っているか俺も知りたい。だから利用して利用されよう」

 

「よーし、決まりだな!暇な日は何時だ?」

 

 その施設に行く段取りを決めた時に俺の食事も済んでいた。そしてファミレスを出た後、別れ際に弓矢のゲームのコツを弓道をしていた人に聞くゲーマーっほいのも完全に素なのだと、かなり子供っぽく純粋なところはプラス加算となった。

 

 悪魔や堕天使でもああいう人種(?)ばっかりならいいんだがなぁ…………




 アザゼルの提案に乗った新志。だが新志が持つ実力に彼らは度肝を抜かれる!そして吹き飛ばされる戦隊モノの悪役にハマったおっさん!次回、研究施設死す!


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刺さりは刺さり砕けは砕けて

 芦屋新志はアザゼルに連れられ某所、一応日本圏内であるところに連れて行かれた。ちなみにグレモリー先輩は結婚云々でこちらには気が回ってないんだとか。

 

 そして、それから1時間も経たないうちに惨状が出来てしまった。

 

 砕けまくった壁があれば砕けずに矢がびっしり大量に刺さった壁、それになんか壁に刺さった悪役っぽい衣装を着た堕天使。そして泣き崩れる堕天使。

 

 これは混沌(カオス)と言っても過言ではない。本気じゃなかったが(・・・・・・・・・)はっちゃけ過ぎてしまった…………

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 惨劇が起こる時間より遡る事3時間、昼を過ぎて約束の時間が来た時の事だった。堕天使総督であるアザゼルが俺のアパートまで迎えに来たのだ。

 

 俺はこう、はっきり言ってやった。

 

「すっごい今更だが首領(ドン)が堂々と敵地に単独で入るってどういう神経してるんだ?」

 

「悪魔と契約とはいかないが、それなりに仲良くやってるお前が俺とコソコソ会ってついて行こうとしてるお前はどうなんだ?」

 

 どっちもどっちだったという事が証明されてしまった。俺も人じゃないが他堕天使の事も言えないようだ。

 

「ただ、内緒にしたかったんだが面倒くさい奴が聞き耳立ててたらしくな、多分行くとこに既に入ってる可能性がある。悪い奴じゃないんだがな」

 

 堕天使の幹部が悪い奴じゃないとはどういう事だ、誰か説明してくれ。

 

 さて、ここから先の記憶は…………正直言ってほとんどない。戦隊モノにハマった堕天使がいるというのを聞いてたが、本格的すぎてほとんど流す感じで対応していたおかげか名前をすっかり忘れてしまったからだ。

 

 あと何を喋ってたのかすら忘れた。

 

 戦隊オタクの話を聞き流しながらも着いたところは実験場の試作機を扱う広い場所だった。そこには鉄板のような板状の物がぶら下がっていたり壁に貼り付けてあったりしていた。

 

「現状、少ない予算で作れる最大の硬さを誇る金属板です!材料はナニと申しませんが並大抵の弓矢の神器で壊れる事はありません!」

 

 ものすごく自信満々に答える鉄板の製作者であろう研究員。だが、目の前にいるのは並のアーチャーではなかった。実はうろ覚えでもあった転生の内容を思い出してきたんだ。

 

 アーラシュ・カマンガー、それが俺の肉体の元となった人物であろう神代の人間の名前である。あらゆる病や毒に侵されず、数多の戦で傷一つ負うことが無かったという最高ランクの頑健スキルを持ち、山をも削り取る威力を持った矢を、視認できないほどの超遠距離から高速射撃できる超人だ。

 

 その一矢が下手な宝具を上回るほどの威力を持ちマジな意味で宝具いらずというほどだ。その技術も試して分かったがまだまだいける感じだった。本気を出せば空を矢で覆うほどの量を放てる事を確信するほどに。

 

 そして、ステラが何かも思い出した。本当にとっておきで一回限りだが、本当にB++なのかと疑うほどの威力を持っている。流石に死ぬのでここでは撃たない。

 

 そして、データを取る準備が終わったところで開始の合図があり試し打ちを開始した。そこから先はお察しだ。

 

 まあ、一度は説明しておこう。悪役にハマった堕天使が何故か堂々と立ちふさがったので4発ほど同時に撃ち込んだら吹き飛ばされて壁に頭から突き刺さって動かなくなった。

 

 アザゼルは溜息を吐きながら(冷や汗をかいてたのを見逃してはいない)頑丈だから続けて構わんと言ったので、どれだけ連射できるか試したところ壁から矢が生えてるんじゃないかというほど連射できた。

 

 そして、敢えて放置してあった金属板に向けて矢を構える。並大抵の弓矢の神器なら壊せない自信作と言っていたから強度に期待していたのだ。

 

 結果はアッケナイモノヨ。少し力強く矢を引いて射ると金属板を粉砕、そして壁も破壊しながら飛んでいった。それを一瞬で全部の金属板に当たるように連射したので大きい爆発音が鳴り響きまくった。

 

 そして矢が大量に刺さった壁、幹部が刺さった壁、粉砕された金属板、自信作を呆気なく壊されて泣く研究員が存在する空間になってしまった。

 

「マジで収拾がつかなくなっちまったぞこれ…………」

 

「今の総督様の心の中では後処理面倒だと考えてると見た。流石に俺もこれは想像以上だったというか予想外というか…………」

 

「下手すりゃ神滅具(ロンギヌス)に届くぞこりゃ。それにまだ何か持ってそうだしな…………」

 

 渋面を作り何かを考えている素振りを見せるアザゼル。こう黙っていたら渋いおっさんで人気が出そうなんだよな。

 

 待機時間にアザゼルが独身だってのを漏らした堕天使に灰皿が飛んできたから事実だんだろうけども。

 

 さて、かなり破壊してしまったが弁償しろとか無しだよな?こういう所で賠償金代わりにこっちサイドで働けとか言わないよな?そうなったらどこにも後ろ盾のない俺にとってはぐうの音も言えないんだが…………

 

 逃げようにも転移系の何かでこの場所に着いたのでここがどこか見当もつかない。北海道とか沖縄だったら完全に詰みだ。

 

「まー、なんつーか…………舐めてた。こりゃ手痛い被害だが勉強にもなったな」

 

「はぁ?勉強にって…………?」

 

「人間舐めてたらこうなるってこった!アルマロス、生きてるよなー?」

 

 壁に刺さっていた堕天使に声をかけると、壁を破壊して飛び出てきた。一体どうやってあんな事しているのか?あと、なんか悪の組織云々に勧誘されて丁重にお断りした。

 

 弁償は要求されなかったものの電話番号を要求された。それくらいいいだろうと番号を交換したのが大きな失敗だったと後悔する日は近かった。

 

 その後はたまにゲームしようぜというアザゼルに送られて帰宅した。随分あっさり過ぎて怖いんだが信用はできるように感じた。悪魔はグレモリー先輩らの所しか知らないが、堕天使のトップがアレだと慕うのも多いんだろうな。

 

 その日の晩はネットを通じて堕天使の事を調べた。そしてトップが信用できるという理由が何となく理解できた。

 

 アザゼル達は人間臭いんだ。その探究心やモノに注ぐ愛情、それが天使として合わないために堕天使になったんだと、俺はそう思っている。

 

 どうせアザゼルの事だから女の尻を触って堕天したとか変な理由で堕天してるわけないだろうが、かなり俗世的な部分を施設で垣間見る事ができたのは大きい。

 

 でも、流石に黙っておこう。どうせアザゼルがあそこに出没したとなれば何かあるのは間違いない。特に赤龍帝の周りは、な。

 

 しっかし、俺の弓はアーラシュと同じだとは思い出さなければ気づかなかったな。明らかに最強のサーヴァントの部類に入る英霊だし、宝具縛りを解いたら命と引き換えに全てを救えるほどの威力を持つ矢を放てる。

 

 俺はその日が来ない事を願うばかりだ。死にたくないし、友も死なせたくない。いや、友というより誰かを死なせたくないが正しいか。

 

 俺はこの日、堕天使の事を調べたあとにすぐに眠りについた。明日は学校もあるから早めに寝ておきたかった。

 

 翌日に学校に登校するとグレモリー先輩の結婚話は兵藤先輩が潰したというのをオカルト部に行くと散々聞かされた。

 

 いつの間に終わってたのやら。人間の俺が参加できることのないレーティングゲームを見たかったと言ったら苦笑いされた。また今度見せると言ったのでそこに期待しておこう。

 

 楽しい悪魔との貴重な雑談の時間が過ぎていった。




 サラッと二巻をすっ飛ばしましたが、主人公を参加させたら大番狂わせな上に一誠の禁手が出来なくなると踏んだので飛ばさせていただきました。
 アーラシュはマジでバランスブレイカーだからね!


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球技大会の不安

今回はいつもより短めです。


 これは球技大会が迫ってきた放課後の話である。

 

「芦屋ぁ!俺んとこの助っ人として来てくれ!」

 

「そっちは男子多いでしょ。混合リレーのチームでいいから、ね?」

 

「いやいや、こっちの方なら待遇をよくするって先輩言ってた!」

 

 ああ、球技大会の時期がやってきたな。本当にこういう時はモテるんだよな。

 

 芦屋新志という男は運動系のイベントでは引っ張りだこである。自分で言うのもなんだが元々の身体能力が現役の部活動をしている人より上回っていると言われることがたまにあるほどだ。

 

 野球だと内野でも外野でもボールが手に渡ると正確にコントロールしてアウトにさせたり、ドッジボールも一度に3人連続で当てるのを3連続したりという伝説じみた事を言っていた。

 

 上記の事は本当に成し遂げたことだが、それでも本気ではないのは俺しか知らない。

 

 中学校の頃は全般的に強すぎて中学最後の球技大会は運営から「その、本当に申し訳ないけど、出場は、諦めてくれない、かなぁ?」なんて震え声で頼まれたくらいだ。

 

 『約束された勝利の助っ人』と呼ばれたこともあった事をふと思い出した。そこまで大層なもんじゃないがなぁ…………

 

 まあ、そういう話をどこかで聞きつけたらしく部活動が盛んなウチの学校では俺の引き抜きに躍起になっている。

 

 もうこれはある種のパニックになっていた。しかし、先手はもうすでに打たれていたことを打ち明けよう。

 

「いやー、誘いは嬉しいんだけど無理だな」

 

「えー、何でー?」

 

「生徒会に出場は控えろって言われた。文句は生徒会に言ってくれよ?」

 

「マジかよ!生徒会め!」

 

「…………ちょっと抗議してくる」

 

「俺も行くぞ!寂しい思いをさせるな!」

 

 いや、単に勝ちたいんだろうとツッコミをしたくなったが苦笑いだけで済ませておいた。止めても止まらないんだろうというのは一目で分かるからな。

 

 そして即座に却下されるという未来が見える。千里眼なんて必要ないほど分かりやすい。

 

「…………引っ張りだこですね」

 

 一気に人がいなくなった瞬間にぴょこっと現れたのは塔城さん。当然だが彼女はオカルト部として出場する。

 

 絶対にあの部が負けることなんてないだろう。だって普通の人間をはるかに超す力を持つ悪魔しかいないんだから。

 

 正直なことを言うと、何処かのチームに入ったとしても俺1人でオカルト部の面々と対決しなきゃならん場面に持ち込まれるだろうな。

 

 つまり、どちらも本気を出さないが数の利で負けてる俺の苦労が多すぎて対処しきれない。

 

「オカ研は昼休みと放課後に野球の練習してるな」

 

「…………部長が勝ちにいってるから」

 

「ああ、あの件が響いてるのか。まあ、無理もないか」

 

 名前は忘れたが不死鳥の名を継ぐ三男坊との戦いで負けた事がとても悔しいと話をするたびに聞いた。

 

 不死鳥は文字通り不死だが、遥か格上の攻撃だと倒される上に精神的な傷は治らないため搦め手に弱いという弱点を持ってるというのも聞いた。

 

 兵藤先輩がよく倒せたなと思う。例のバランスブレイカーという名前のおかげだな。いや、神殺しと称される神器の潜在能力は計り知れないな。

 

「…………参加しないのがちょっと残念」

 

「いやいや、そこは普通の人間だよ。俺の取り柄は弓だけだからな」

 

「…………本当に?」

 

「何でそこで疑うのかな…………」

 

 これは思わず苦笑いをしてしまう。俺の力については弓が撃てる以外に何も喋ってない。堕天使陣営からはたまに電話かかって来て隙あらば、という風になっている。

 

 悪魔側にもいつかはバレるだろうな。いや、天使側にも目をつけられてるから厄介な事になりそうだ。

 

 そこは人間なんとかなる理論を立てて置いとくが、今は心配な事がある。

 

「今からオカ研の練習行くんだろ?俺も見に行くぞ」

 

「…………やっぱり」

 

 この時期は部活動としての手伝いを頼まれるのはほとんど無く特にする事もないから暇なんだ。あと、ここの部を見てるだけでほっこりするシーンがあるからいつも行くんだよな。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 場所は変わってグラウンド。ここでオカルト研究部がノックの練習をしている。

 

 何人か除いて、とてもいい動きをしてる。塔城さんなんかホームランばっかり打つもんだから他の部は勝ち目なんてないじゃないか。

 

「はぅ!あぅあぅ…………」

 

「アーシア!取れなかったボールはちゃんと取ってくるのよ!」

 

「は、はいっ!」

 

 グレモリー先輩はかなり気合い入っているな。こうして見るたびに思うが、試合に負けた事がかなり悔しかったのが分かる。内情を知らなきゃ張り切ってる理由が見えないもんな。

 

 まあ、分かるようにさっき言った何人か除いての部分にアルジェント先輩が入る。問題はもう一人の方なんだが…………

 

「……………………」

 

 心ここに在らずという風に棒立ちの木場先輩の頭にフライのボールがコーンという音とともに落ちた。それでもまだぼーっとしている。

 

「木場ぁ!シャキッとしろよ!」

 

 兵藤先輩の叱責に対しても全く聞いていない様子だ。間違いなく自身の心の闇について考えてる感じがする。ただ、俺はその内容までは踏み込むことはできない。

 

「あっ、すみません。ぼーっとしてました」

 

 最近はずっとあんな感じだ。会っても話しかけても反応がかなり薄い。いくらなんでも放置しっはなしは出来ない。一度聞くべきだろうな。

 

 しかし、本人がそう簡単に口にしてくれるか?繊細な部分でもあるだろうし、どうしたものか…………

 

「いったい何を恨んでるのやら…………」

 

 ポツリと呟いた俺の言葉は誰にも届かない。だが、その原因が俺が、いや、俺だけでなくこの力の持ち主も知る聖剣だという事を知るのは球技大会が終わってからの話だった。



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狂った神父と1/7の聖剣

 ぱんっ、と乾いた音が響いた。

 

 球技大会が終わり、オカルト研究部の扉を開けようとしたら一番先に聞こえた音だ。間違いなくグレモリー先輩が木場先輩にビンタを放ったのだろう。

 

 ずっと様子がおかしい木場先輩は球技大会でもぼーっとしており何の活躍も見せなかった。それはチームワークを崩していたとも言える。

 

 そろそろ話を聞こうと思っていたが、頃合いだな。っと、木場先輩が出てきた。

 

「あ、芦屋君、今の聞こえてたかな?」

 

「ひっぱたかれる音はバッチリ聞こえましたよ」

 

「はは、そうか…………」

 

 軽い会釈をしてからそのまま表情を変えて立ち去った。こりゃ相当きてるな、見るに堪えないぞ。

 

 開きっぱなしの扉から俺は入る。ああ、さっきの出来事のせいで何とも言えない表情の部員の方々がいる。理由なんて聞くまでもない。

 

 あそこまで見てると、流石にほっておけない。せめてああなる理由だけでも聞いて任せよう。

 

「芦屋君、やっぱり来たのね。あなたの性格上間違いなく来ると思ってたわ」

 

「伊達にお人好しとか言われてないですから」

 

「なんか頼りにされてるのがよく分かるぜ…………」

 

「ははは、友達はいないけどな」

 

「…………芦屋さんは頼られてる人なのに友達が居ないのは不自然だと思います」

 

「あー、そう見える?これでも避けられてる方なんだけどな」

 

 頼られているが避けられている、これは俺が手伝うものとしてもなんでも出来すぎる為にそう感じている。何でも屋みたいな扱いだが不満は無い。

 

「貴方、首を突っ込むつもりじゃないでしょうね?かなり複雑な事情なのよ?」

 

「いずれにせよ何らかの形で絡むんじゃないのか?ここにいる間に何が起きても不思議じゃない。訳も分からずドンパチやるなんてしたくも無いからな」

 

 嘘は言っていない。木場先輩の抱えてるものがこの町に関することであるからこの町に住む俺も巻き込まれる可能性を否定できない。ましてや俺は神器使いだ。何処からか情報が漏れてるのは確かだ情報が真っ先に神器を使える人間を排除しないという保証もない。

 

 ここは素直に話してくれる、何て俺の考えは甘かった。

 

「ダメよ。いくら貴方でも私の眷属の過去には触れさせないわ」

 

「っ、あのまま放置しておけと言うんですかね?」

 

「ええ、貴方はね。ここから先は私達の問題だから邪魔はしないで」

 

 そう簡単に話に介入させてはもらえなかった。これは自分の甘さでもあるし、何時ものように問題に入ってハイ解決、という事は許されない。

 

 俺は決して万能ではないと思っているけど…………無意識的な部分ではそうなのか?

 

 人の心、いや、ここは悪魔の心か?でも転生悪魔という事は元は人間だろうし、グレモリー先輩に策があるってなら何も言えないし邪魔できない。

 

 ったく、プライベートな所まで突っ込む事は出来ない。解決に協力はしたくても、何もできなきゃお手上げだ。ここは大人しく引き下がるべきだろう。

 

 流石に今日はこれ以上ここにいる訳にはいかない。空気を読んでさっさと退散しよう。人間である以上、今のここにいる俺は邪魔な存在だ。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

「ったく!傘持ってきてない俺の馬鹿野郎…………」

 

 既に雨が降っていたが、傘を持ってきてない俺は走って帰路を急いでいた。知っている細い路地を駆使して最短距離でアパートに向かっていた。

 

 流石に傘を貸してくれるのは誰もおらず、俺はびしょ濡れになりながら走って帰る他なかった。

 

 オカルト部に傘が余ってるか聞いとけばよかった…………っ何の音だ!

 

 雨よけ代わりの鞄を頭の上から降ろして立ち止まる。これは、鉄と鉄がぶつかり合う音、それもかなり激しく鳴っている。こんな住宅街で馬鹿な事をやる奴が…………

 

 いや、剣でいうなら一人だけ心当たりがある。木場先輩は剣に関係する神器持ちだって言っていた。出来れば予想が外れて欲しいんだが…………

 

 不吉な予感を覚えて雨の音が大きいが剣戟らしい音の方へ向かっていく。俺の予想通りにならないでくれよ!

 

 音がどんどん近くなっていく。よし、まだ視界には入ってないが

この家を超えた先に二人がいる。肌で感じるのはやはり木場先輩が二人のうち一人だ。そしてもう一人の方は剣は光のエネルギーのようだが、それを持つ人物が邪悪な感じだった。

 

「木場先輩!」

 

「なっ、芦屋君っ!?」

 

「隙ありゃっ!うおぅっ!?隙潰すんじゃねぇよこのタコ!」

 

 一瞬だけこっちに気を取られた木場先輩を斬ろうとした神父らしき男に『射手の英雄(ザ・アーチャー)』を即座に放つ。神父は聖なるエネルギーらしきものを放つ剣で矢を弾いた。

 

 場所が場所だから手加減しなきゃ住宅に被害が出るからまともな力を出せない。ここは神父の剣に矢を当てて木場先輩のサポートに回るしかない。

 

 あの神父の男、明らかに狂気と殺意に満ちている。木場先輩とあの神父どっちが敵かと聞かれると100人中100人が間違いなく神父の方だと答えるだろう。

 

「あァン、なんですか増援ですかァ?全くチミっこいことしやがって!それに人間がクソ悪魔に絡むっつーことわー、テメェはクソ人間だな!」

 

「先輩!後ろから援護します!」

 

「いや、君や僕の武器は互いに邪魔になるだけだ!」

 

「そんな事はないっ!俺の弓を信じて攻めてくれ!」

 

 この時にタメ口になっていたのは仕方ない。だが、あの剣は明らかに悪魔特攻だしそんなのを見過ごすわけにもいかない。ちゃっかりあの神父の殺すリストに俺もちょうど入ったようだしな。

 

「くっ、もう好きにしてくれ!」

 

 俺を追い払うのを諦めたかのように言い捨て持っている魔剣らしき剣で神父に斬りかかる。これは剣の才能の差はそこまでなさそうだが武器の性能では木場先輩が圧倒的に負けている。

 

 だが、木場先輩の顔が憎しみに満ちている。明らかに冷静じゃないぞ。あの神父、いや、あの剣に対しての憎悪だ。いつもクールそうなあの人がこんなに憎悪を表に出すなんて知らなかった。

 

 剣戟から10メートルほど離れて『射手の英雄(ザ・アーチャー)』を構えて矢を放つ。矢は神父の振りかぶった剣の中腹に当たり砕けるが剣が受けた反動で振り下ろす速度がかなり落ちる。

 

 それを見て木場先輩も斬りかかるが、矢が当たった反動に合わせて剣を持ち変える神父の方が一枚上だった。木場先輩の攻撃は届かずまた剣と打ち合う。

 

「いい腕してんねぇ!でもそんなチンケな弓矢でこの聖剣エクスカリバーちゃんに傷一つ付けられないよーん!」

 

「今すぐその口を閉ざしてやる!」

 

「思ったより早い…………っ」

 

 まてよ、今あいつはエクスカリバーと言ったか?あのアーサー王が持っていたとされる聖剣の名を?

 

 じゃあ、あの手に持っているのが?いや、それはおかしい、本物の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』はあんなに弱くない。

 

 それじゃ、あれは『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の名を騙る偽物!

 

「あんれぇ?なんか君うおっと!エクスカリバーが弱いってほいっ!思ってないわっと!残念ながらこれぶっ壊れたエクスカリバー、うぉ!の7本のうち1本だから仕方ないよねっとと!」

 

 俺の矢を弾きつつ木場先輩の剣を捌きながら俺の思考を読んでんじゃねぇ!いや、聞き逃せない単語が聞こえたぞ。エクスカリバーが壊れた?は?

 

「あれま、お友達の支援止まったよ?大人しく死になよ?」

 

「くっ、ふざけるな!」

 

「おっと、そんくらいじゃご自慢の魔剣は当たらないぜ?そろそろ遊んでる時間ないし、次に殺す時に楽しむから生かしとくわ」

 

 ふざけて馬鹿にして蔑んで上から目線で侮辱して神父は高く跳躍し誰かの家の屋根に登る。

 

「ほな、ばいちゃ☆」

 

「待て!」

 

 あの神父は逃げ出したが木場先輩は追いかけていく。その追跡に俺は参加しなかった。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)が…………折れた…………?一体いつに…………」

 

 アーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンの最強である剣が折れたという話に頭がついていかなかった。

 

 ただ、折れることがないと俺の中で思っていた聖剣の事だけ考え、雨に打たれながら歩いていたらいつの間にかアパートに着いていた。

 

 …………ネットじゃあ絶対にそんな神話レベルの話題が出るはずがない。そして木場先輩とエクスカリバーの関係、オカルト部から話を聞けない以上、謎が深まっていくばかりでその日は眠ることすら出来なかった。




 今までの中でまともな戦闘シーンがありますが主人公はまったく本気ではありません。木場と聖剣の関係がただならないということで聖剣を壊さないかつ弾くようにしています。戦闘描写が下手くそですみません……

 あとクソ神父の喋り方もあれでよかったのか自信がない!


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その剣の過去

 眠れなかったまま翌日を迎えた。一睡もしていないせいで授業中は寝落ちしないように格闘し、午前中の休み時間はずっと寝ていた。

 

 聖剣の謎、7本のうちの1本があの神父の手にあるのには怒りを感じるが、分けられた剣も他の手にあるということだ。未だにあの剣が約束された勝利の剣(エクスカリバー)の欠片とも思えない。

 

 内情を知ってるとすればグレモリー先輩なんだけど昨日の今日で聞けるわけないし、俺を巻き込ませないようにしようとしてキツくなってたからには話を切り出せないどころか行くことも気まずいほどになってしまった。別れ際も大切だってこと、本当に身に染みたぜ。

 

 塔城さんからワンチャン聞けるか?いや、絶対に口が固いから喋らないだろう。聖剣に詳しい人物…………あっ、超長生きしてる奴が俺の携帯電話の連絡先にいるじゃないか。

 

 話が長くなるだろうから今日は学校が終わったらすぐにアパートへ帰った。そして聞き耳を立てられていないか確認して電話をかける。

 

『よう、そっちからかけてくるなんて珍しいじゃねえか。なんだ、やっぱこの前話したキャバクラに興味が』

 

「エクスカリバーの事について教えてくれ」

 

『あるわけ無いよな。妙に切羽詰まった声で言うなよ、つーことは聖剣使いに接触したか?』

 

「お陰様でな。狂人神父が持っていたぞ。アレが本当に神父なら教会には狂人しかいないはずだ」

 

『あー…………もしかしてフリード・セルゼンのことか?そいつ白髪で言動がふざけてたらフリードで間違いないぜ。あいつは異端くらってるから堕天使(こっち)側だ』

 

 やっぱりな。アルジェント先輩は元々教会にいたのに対してあんなのが一緒だと言われてたまるかっての。

 

『まあ、大体何が起きたか察した。フリードが今のところ聖剣持ってるのか』

 

「ついでを言うとグレモリー眷属に襲いかかっていたぞ。それもお前の指示か?」

 

『なーにを言ってんだ、それ確信して聞いてるだろ。答えはNOだ』

 

 それを聞いて一安心する。だが、堕天使側の一人、それも明らかに戦争の火種となる人物を御していないのは総督としてどうなのかと思う。

 

『つーことはやっぱそこかぁ。コカビエルのやつ、フリードまで使うか』

 

「待ってくれ、事情を説明しろ。お陰でこっちも聖剣に恨みもある奴に火が点いてるんだ」

 

『それ、十中八九木場裕斗の事だろ?仕方ないとはいえ、尻拭いさせる形になるが…………』

 

「内容知ってんのか!?」

 

『うるせぇ!大声で叫ぶんじゃねえよ!』

 

 これはいいチャンスだ。グレモリー先輩から聞けないならアザゼルから木場先輩と約束された勝利の剣(エクスカリバー)の関係を聞き出せる。

 

 そして、今回の件にアザゼルが関わっている事も聞き出さなければならない。最悪の場合、こいつが黒幕だという可能性もある。その時は…………

 

『安心しろ、今回の件はコカビエルの独断だ。怪しい動きをしてたのは分かっていたが、今は所在がつかめてなかったところだ。とりあえず情報感謝と言っておく』

 

「……………………そうか」

 

『んで、エクスカリバーの事だったよな?口で言うの面倒だからメールで内容送っていいか?』

 

「いくらなんでも浮つき過ぎるだろ。それに俺のメアドは教えてないから知らないんじゃ」

 

『そのツテに頼んで電話番号なら割り出してもらった。ちょっと待ってろよ』

 

 こいつ、サラッとハッカー紛いな事頼んでやがる!一度電話が切れてツー、ツー、と言う音しかしなくなった。

 

 数分後、差出人不明のメールが俺の携帯に届いた。そこには『エクスカリバーの件について』とタイトルが書かれている。中を開くが…………1秒で閉じてメールを消した。ついでに感情も絶対零度になった。内容は、あの堕天使のR-18な秘蔵ファイルだった。

 

 再度アザゼルに電話をかけるとすぐに出た。そして何かを喋る前にキレ気味に声を出す。

 

「ふざけるようなら次会った時に本気で矢を打ち込むぞ」

 

『いやマジで冗談だから、ごめん本気のトーンで切れるな、だから許してくれ』

 

 俺の怒りが伝わっているのか棒読みではない謝り方をしてくるので本当にふざけただけのようだ。全く、こっちは本気で困ってるのに…………

 

 今度はメールでふざけないように口頭で教えろと何度も言った。流石にアザゼルも折れて口で約束された勝利の剣(エクスカリバー)の事情を話してくれた。

 

 エクスカリバー、かつて最強とも謳われた伝説の聖剣だったが、大昔の戦争で折れてしまった。

 

 いやいやいや、そんなはずはないと思うがその大戦争の時に生きていたアザゼルが頑なに折れたと言うので折れたと信じるしかない。

 

 その聖剣の破片を教会が回収し、錬金術を用いて7つの特性を7本の聖剣に分けて作り直された、が真相のようだ。しかし、あの神造兵器が折れるだなんて…………

 

『何そんなにショック受けてんだ?確かにエクスカリバーなんて剣士からすれば憧れの聖剣だがお前は何かと言ったら弓兵だろ?そこまで気にかける必要はないんじゃないか?』

 

「…………ほっとけ。憧れも気に入りもあるんだ」

 

『そうか。ま、お前もロマンを持つ男だって事だな!』

 

 全く腑に落ちていないがこれで一つの重要な疑問が解決(仮)した。さて次の問題だな。

 

「アザゼル、コカビエルが独断で動いてると言ったな。それはどうしてだ?」

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 アーラシュという英雄の幸運値はDである。それは高くもないしやや低いとも言える(新志談)。まだ自害させられるような令呪がないだけEよりはマシだ。何タイツとかは言わない。

 

 どうしていきなりその幸運の話をしたかというと、その幸運の低さにもかかわらずある話を聞いてしまったのだ。アザゼルが知る範囲でコカビエルの計画と木場先輩の過去を聞いた次の日だ。

 

 その日は休みだったし外食の気分になったので、とある店に寄ったらちょうど兵藤先輩と匙先輩、そして塔城さんが入ってくるのを見た。奇遇だと思い声をかけようとしたら他にも客がいたのだ。それも女性二人。

 

 服装もシスター服のようなものだし、身体からは聖なるタイプのオーラが滲み出るような感じから教会関係者だろう。しかし、一体なぜ悪魔である3人と教会関係者が一緒に?

 

 席は離れていたものの高スペックな聴覚も活かしつつ口の動きを見て会話の内容を聞き取った。

 

 会話を聞いているうちにこの二人も約束された勝利の剣(エクスカリバー)の持ち主だということが分かり、しかし扱うにはまだ早すぎると感じ取れた。

 

 話を聞いてるうちに事情が読めてきた。兵藤先輩は木場先輩の恨みを約束された勝利の剣(エクスカリバー)を破壊させることで晴らしてやりたい。だから『壊す』ことを手伝わせてくれと言うことだ。

 

 なかなか美味い話でもあるし教会側からしたら悪魔と手を組むこと以外はメリットしかない。そしてゼノヴィアと言う一つ上っぽい女性が悪魔ではなくドラゴンの力を借りると言ったことに感心した。

 

 成功率はもともと低いが先輩達の協力があれば生還率が上がると踏んでの話だ。これで契約(?)が成立した。そしてすぐに兵藤先輩が携帯電話を取り出して誰かを呼び出した。

 

 少し待っている間にもガツガツと食べるシスター服を着た女性二人、もしかして飯に釣られたとかじゃないんだよな?一応、君達は聖剣使いだよね?

 

 そんなどうでもいいところに不信感が募る中、呼び出した人物、いや悪魔が現れた。

 

 呼び出した相手は木場先輩だった。いや、兵藤先輩はいい噂は全く、まっったく聞かないけど仲間思いのいい奴だな。性格がアレだけども。

 

 そこで幾らかの話し合いの末、悪魔側は何をすればいいか話し合った。俺は参加せずにこっそり聞いているだけだが…………

 

 フリード神父が狙っているのは教会側の神父、あれ、そういえばあの日は神父の姿なんて見てないが…………それは置いといて現れる場所は人気がかなり無いところ。

 

 そんな場所はかなり絞られてくる。だが、駒王町はかなり広いしそんな地点も数多く存在する。千里眼を使っても場所を特定できないんじゃなぁ…………

 

 いや、特定するとなれば兵藤先輩達をマークしておけばいい。そうしたら彼等の作戦につられて現れる可能性がぐんっと高くなる。となると、マークしつつ早めに全方位を見渡せる高い建物に俺がいればバレずにサポートできる。

 

 矢を放ったところでバレると思うけど、そこは許してもらうしかない。

 

 そして教会側の二人が出ていったところで事情を知らない匙先輩がなぜこのようなことをしたかという理由を聞いた結果、号泣して協力すると泣きながら言っていた。

 

 

 他にも塔城さんも心配してるアピールで木場先輩は一人でやり遂げるのを諦めたようだ。いい人に恵まれてるじゃないか。

 

 そして、そのままいい話みたいな感じで3人とも店から出ていった。

 

 このことは敢えて誰にも話さないし、直接兵藤先輩達に協力するとも言わない。敵の得物は剣で俺の得物は弓だ。そうなるとリスクが高すぎる。

 

 本当は言えばいいと思うけど、アザゼルは論外でグレモリー先輩はああ突き放されてからまだ気まずくてまだ行けてないけどな。でも、こう事件を知ってしまったからには影ながらも協力する。

 

 偽善と言われようとも、自己満足と言われようとも、俺の目で見える者達を全てを救いたい。たとえ隣に誰も居なくても…………




 次回、イッセー達が探す中、どこかの紅茶を思い出させるような場所に主人公が張り込む!

 これで分かったら凄いと思います(ヒントはバーサーカー戦)


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破壊と甘さ

やや短めになってしまった……駄文だし……

あとおき太が来てくれないよぉ……


 夕暮れ時、神父の服を着た高校生がとある地区を徘徊していた。

 

 目的は神父を狙う狂神父が持つ聖剣エクスカリバーの破壊。計画を立てたのは兵藤一誠であり友人の木場祐斗の為に一肌脱いだと言ったところだ。

 

 ちなみに計画はシンプルなもので彼ら二人に加えて塔城子猫に匙元士郎が神父服を着て夕方までず現れると予想された地区を徘徊するだけのものだった。

 

「神父の一団に神のご加護をってね!」

 

 数日間粘りようやく目的の狂神父が現れる。神父服の見た目に釣られすぎではないかと思う。だが狂神父であるフリードには関係ない。戦い斬れば楽しいのだ。

 

 フリードが持っている聖剣は避けられ誰も切ることなく空を切る。

 

「ひゃー、神父かと思ったら悪魔ちゃん達だった!俺ちゃんついてるな!オマエラはついてないけど!」

 

「うるせぇ!」

 

 予想通りだがフリードが持ってる聖剣を見るだけで鳥肌が立つ兵藤達。それでも破壊しなければならないと自らを奮い立たせる。

 

「頼むぜドライグ!」

 

 兵藤は自らの神器(セイクリッド・ギア)の上位互換である神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開。

 

 それに応じて木場も匙も神器を展開する。子猫は神器を持っていないので戦う時の構えを取る。

 

 悪魔と戦闘狂の戦いが始まる、が、悪魔は自らの手で聖剣を破壊することは叶わなかった。自らの手では(・・・・・・)

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 もっと高いビルが良かったと愚痴を言う男が居た。そう、兵藤一誠達が神父服を着て街を徘徊する行為を行い始めた日からそのポジションでずっと待機していた芦屋新志である。

 

 彼はそこら辺にいるセンスある若者の服を着ていて一般人とは変わりないと言える。だが、それは全く人気がなく彼一人しかいない屋上では目立つ。

 

 無論、空から見ればの話だが見る者は誰もいない。見られたとしても最終手段として飛び降りたらいい。死ぬと思うかもしれないが意外と平気だと男は言う。

 

 これは頑健EXの恩恵だと思われるが本人はそこまで重要視をしていない。

 

 それより簡単に屋上に行けるほどセキュリティがガバガバなビルを選べた幸運に感謝すべきだと思うが。

 

 

    『是は、生きる為の戦いに非ず』

 

 

 既に戦いが始まっているのは2km離れたところから確認した。だが、彼はあそこに混じり戦いに参加する権利はない。

 

 

    『是は、己より強大な者との戦いに非ず』

 

 

 行うのはただ一つ、聖剣の破壊、ただそれだけを彼は狙っている。

 

 

   『是は一対一に非ず』

 

 

 この力の持ち主の当時の記憶が宿ってるのか分からない。だが彼はフリードの持つ聖剣に対して大きな怒りを持っている。

 

 

   『是は人道に背かぬ戦い非ず』

 

 

 狙え、ただ狙い破壊しなければならないという義務感(強迫観念)があるのは否めないと彼は心の中で自嘲する。既に弓を構えているのにこんなことを考えているのは未熟だ。

 

 

   『是は、真実の為の戦いに非ず』

 

 

 弓矢で届く範囲かと聞かれたら普通は否と答えるが、彼の射程は30km、最終手段を使えば2500kmの射程を誇る。それ、本当に弓なのかと。

 

 

   『是は、精霊との戦いに非ず』

 

 

 だが、狙うのがやや難しい。彼はあの7分割された聖剣のうちの一つの能力が速度上昇だという事は知らない。

 

 

   『是は、邪悪との戦いである』

 

 

 予想以上に動かれるため矢を放つタイミングが掴めない。下手をすると戦ってる彼らに誤射をしかねない。元々、聖剣を砕くつもりで放つ矢なので誤射だけは絶対にしてはいけない。

 

 

   『是は、私欲なき戦いに非ず』

 

 

 より早く当てるためにより強く弓を引き絞る。焦れったいがスナイパー紛いな事をするためには我慢も必要である。本気を出したらそこの地区は軽く消し飛ぶので却下。

 

 

   『是は、心善き者へ振るわれる刃である』

 

 

 匙元士郎の神器がフリードの腕に絡みつきフリードの体勢を崩した。もしかしたらこのままやれるのでは?と考えたがそう甘くはなかった。

 

 

   『ここの戦いは誉れ高きものに非ず』

 

 

 

 そこで神父の格好をした初老の男性が現れる。どうやらフリード側の人間らしい。 なにやら助言をして匙の絡みついた神器を切り払った。大幅に劣化しているとはいえ、あれくらいなことをできるようだ。

 

 

   『共に戦うものは勇者に非ず』

 

 

 そして、ようやく逃げの態勢に入った神父達を見れて安心した。ようやく放てる、と。だが、その数秒後に乱入者が現れる。そう、教会が派遣してきたシスター、ゼノヴィアがフリードに切りかかった。

 

 

   『是は、正き戦いに非ず』

 

 

 それでも撤退する事は決まっておりフリードはスタングレネード、ではないがそれに似たような丸い球体を路面に投げつけ目眩しを行い姿をくらまそうとする。

 

 

   『そして、これは世界を救う戦いに非ず』

 

 

 その時、フリードが持っていた聖剣が砕かれた。

 

 砕かれた聖剣の刃の破片が舞い地に墜ち消えていく。何故消えるのかは分からないが破壊出来たことに満足する。

 

 この時、彼は大きな過ちを犯した。ここから矢を放つと間違いなく殺してしまうことに躊躇いを持ってしまい初老の男性とフリードが少しの間騒いだが兵藤達の視力が戻る前にエクスカリバーが何者かによって破壊された事を悟られず撤収を行った。

 

 まともな戦場に立ったことがない故に、未熟であるが故に躊躇ってしまった。恥ずべき事だが殺してしまっては何かと問題があるのではと考えてしまう。

 

 悪魔を殺せても狂人とはいえ人の命を軽く奪えるほど芦屋新志という人間はまだ(・・)できていない。そもそもこの件に関して何かを殺そうと思ってすらいないほど甘く考えている。

 

 この日を境に『英雄』としての力を出せるようになるまで大きく悩む事となる。

 

 双方共に予定外の事で頭を抱えるも、堕天使側は決戦をこの日の夜にするという事は変わりなく、新志はもしかしたらという事で時が来るまで屋上で待機していた。

 

 屋上で何時間も待機する羽目になるが、予め張り込みのための食料として大量に購入していたゼリー飲料を消費することで耐え、学校に結界が張られる時まで待った。

 

 結界が張られた事によりどこで行われるかは把握したがここから狙うと内側の衝撃等を出さないための結界を破壊しかねないので全速力で学校に向かった。

 

 非常にどうでもいいがビルからの飛び降りはしなかったが階段をいちいち降りるのは面倒くさかったという。




 次回、結界が張られてるって事は中から外に出さないし外から中に入れないってことじゃね?と気づいちゃう新志くん!あとアザゼルに決戦の場所を報告する事も忘れてる新志くん!まあ、そこはなんとかなるてしょ!

 どう書いてもぐだぐだすぎるんじゃが……駄文ですまない……


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悪魔は眺め、そして嗤う

 長く失踪してました。リアルが忙しかったりCCCコラボ頑張ってたりと…………
 皆さんはCCCコラボどうでした?我がカルデアにフランちゃんとリップが来たから満足です。


 芦屋新志が結界に穴を開けて戦場に侵入した時、統合されたエクスカリバーを持つフリード神父と木場佑斗の戦いが終盤に差し掛かっていた。

 

 突如結界を破られたことに気づき一瞬だけ気を取られたフリード、その僅かな隙を見逃さず、新たに得た『 双 覇 の 聖 魔 剣 (ソード・オブ ・ビトレイヤー) 』を持ってして叩き折ったのだ。

 

 木場佑斗は遂に念願のエクスカリバーの破壊を達成したのだ。

 

 乱入した新志は割とあっさり(・・・・・・)折れた『約束された勝利の剣』に失望しつつ、間近ではないとはいえ、よく見ると「ああ、そういうことか」という納得の表情を見せた。その表情を見た者はその場にいない。

 

 名すら覚えるに値しない小物(バルパー・ガリレイ)が表情を強張らせ何かをつぶやいている。

 

 今回の事件の元凶でもある男は何としてでも消さなければならない、その考えは恐らく悪魔側全員が思っていた。

 

 何故、どうしてと思考を巡らせ、肝心のところを叫ぼうとした時に小物(バルパー)の胸が光の槍で貫かれーーーーなかった。

 

 コカビエルがバルパーを殺そうと放った光の槍は1本の矢によって消されたのだ。

 

 肝心の所が言えず、その上上司とも言えるコカビエルに殺されそうになったバルパーはその場で尻餅をついてしまう。

 

 そして、新志が光の槍を落としたことによる怒りを見せつつ睨むコカビエル。

 

 傍目には格好つかなかった事を怒るように見えるが…………

 

 コカビエルからしたら、下等な人間に慢心していたとはいえ、自慢とも言える力を簡単に破ったのだ。

 

 明らかに赤龍帝の倍加と譲渡を使っても勝てるはずもないグレモリー眷属を無視して確実に新志を始末しようと先ほどより力の入った槍を放つ。

 

 新志も自身の神器である『射手の英雄(ザ・アーチャー)』を即座に構えて放ち相殺する。

 

 相殺したということは、少なくともそれほどの力を有しており、また余裕の表情からして加減されたということを理解したコカビエルはさらに吠える。

 

 今度こそ仕留めんと前方のみとはいえ数十もの光の槍を展開し放つ。弓矢は連射できないと決めつけているからこそ数を揃えて放ったのだ。

 

 しかし仕留めきれなかった。連射できないという常識を覆し矢を高速で連射することで光の槍を全て相殺したのだ。それも、また余裕といった風にしながら。

 

 怒りに怒り我を忘れたように叫ぶコカビエルはあることを口から滑らせた。神は既に死んでいるという、ここにいる元を含めるシスター二人にとって衝撃的な事を喋ったのだ。

 

 神の不在という単語はシスター二人を今だけとはいえ動けなくするほどの衝撃であった。新志は特に何も感じてないが。

 

 そして改めて芦屋新志に殺意を向け接近戦に持ち込もうとしーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映像はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、いいところだったのに」

 

「いえいえ、もう結果は分かってるでしょうに。コカビエルと『アーチャー』の戦い、あれはどう見ても『アーチャー』の勝ちです」

 

「それは、まだ分からない」

 

「割と気になるんですね。少し意外です」

 

 場所は映されていた戦場から遠く離れた一室と記しておく。

 

 観戦していたのはサングラスを掛けている男と黒髪で露出がやや多めな幼女。しかし、どちらも普通の人間ではない雰囲気を出していた。

 

 だが幼女の方は気になっていたテレビ番組を消されたように少しむくれていた。

 

「アーチャーらしく正々堂々と弓矢を使ってましたが、見たところ一発一発が宝具よりやや弱い程度。何の手がかりにもなりませんねぇ」

 

 サングラスの男は顎に手を当てて考える。現代ではパソコンで英雄達の詳細を調べることはできるが、アーチャーは本当に弓矢しか使っていないので対象を全く絞れないのだ。

 

 実際は双剣使いのアーチャーとか居るので簡単に絞れるはずもないが。

 

「アーチャーは、そこまで弱くない」

 

「ええ、コカビエルの槍を矢の一本で弾くのはリアス・グレモリーには出来ないでしょう。というか既に天使に堕天使、それに悪魔にまで目をつけられてる時点で面倒ですね…………」

 

「何か不都合?」

 

「彼の力が目立つと他の陣営が彼を得ようとします。そうしたら彼にバックがついて面倒になるんです」

 

「ん、そんなの倒せばいい」

 

 簡単に言ってくれますね、と肩を落とす。この男は既に自分の敵を半分ほど見つけて観察している。

 

 そして一緒にいる幼女はある組織にいたところを口八丁でこっそり引き抜いたという。別にロリコンという訳ではなく彼女の力が必要になるからだ。

 

「あのアーチャーはまだ何か持ってると見たほうがいいでしょう」

 

「『キャスター』、何か甘いもの」

 

「さっきポップコーン食べてたじゃないですか。ダメですよ、食べ過ぎは」

 

「分かった、さよなら」

 

「冷蔵庫に昨日作ったプリンがありますから」

 

 注意していたものの結局自らプリンを差し出すサングラスの男。甘い物を与えたせいでこういう事が多々あるのが彼の悩みでもある。

 

「貴女がどこかへ行ったら世界も私も本当に困るんですよ。前の組織では完全に騙されてたじゃないですか。今頃は貴女が居なくなって大慌てでしょうけど」

 

「じゃあ、キャスターも、我を騙してる?」

 

「いえ、あんな負けフラグ乱立してるような組織にいるよりこちらの手段が確実かと」

 

 二人には目的があった。二人には個人的な願いがあった。

 

 片や静かに暮らす場所を。

 

 片や自身が存在する証明を。

 

 そしてそれは二人が一緒でないと手が届かない戦いに身を投じることにした。

 

 本来なら行われないはずの戦争に、一介の人間下すことで始まる戦いに。

 

 既に七騎の英霊が降りている。キャスターは知らぬが芦屋新志にアーラシュ・カマンガーが降りている。

 

 キャスターはかなり特殊なケースだが『ーーーーーーーーーー』が降りている。

 

 まだ動いてない者もいるが、戦いは本格的に始まろうとしていた。

 

 

 

ーーーーーーさあ、聖杯戦争を始めよう。




〜幼女がプリン食べてる一幕〜

幼女「もぐもぐ、甘い」

術「まあ、案の定あのエクスカリバーは偽物でしたけどね」

幼女「全盛期は、あれと比べ物じゃない」

 急展開な上に真相を明かしちゃうキャスターさん家。


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堕天使は地に落ち信徒は追われる

注意・グダグダ回でもあります


 堕天使コカビエルとの槍と俺の矢の撃ち合いから2日経った。昨日も学校はあったのだが流石に一晩戦ったので疲労がたまり怪我も少しだけしたので休む事にした。

 

 あの日、2日前の夜はコカビエルは俺の矢で腹を貫いて仕留め、約束された勝利の剣(エクスカリバー)を馬鹿にしたような実験をしていた科学者は堕天使陣営の使いに連れて行かれた。

 

 あー、コカビエルの槍は強力だったな。あの槍の多さに対処しきれず食らった時は頭からちょっと血を流したほどだ。最終的には翼と腹を矢で貫いて倒したのだが。

 

 ま、その怪我もアルジェント先輩の神器で治してもらったから跡も残っていない。

 

 そして今日、もう大丈夫だと思うが大事をとって休む事にした、というのは建前で訪問者が来るから時間空けとけと言われただけだ。

 

 普通なら無視するところだが、まあアザゼルだからそう簡単にあしらえない。話す内容はコカビエルのことだろうけど…………

 

 サボりとも言えるが悪魔側も何も言って、というより電話してこないから大丈夫だろう。アザゼル総督はうちに来るって言ってたし、外に出る必要もないから暇だ。

 

 なのでアザゼル総督に電話で早く来いと催促してみた。

 

「今こっちでも色々と処理してるから待ってろ!あとヴァーリは意地でもついてこようとするな!」

 

 めっちゃ怒鳴られた。これを玉藻猫で言うなら「解せぬ」だろう。

 

 電話からヴァーリという人名が聞こえたな。そういや、コカビエル倒した時に遅れてやってきたのが白龍皇のヴァーリだったか。

 

 まさか、あの時に言ってた「一度は戦ってみたいものだ」を実行しようとしてるのか?いや、そんなことはないと願っておこう…………

 

 電話してから30分後、玄関のチャイムが鳴った。アザゼルが来たんだろう。予想より少し早かったとだけ記しておく。

 

「まだ朝っぱらって言うのに急かすなよ、と言いたいが待たせたのはこっちの都合だし仕方ねえか」

 

「こんな部屋だけど流石にカフェには行けないぞ。下手に見つかったら補導される」

 

「かーっ、学生ってのは自由なようで割と不自由だな」

 

 この総督が学生なら結構な頻度でサボってそう。あ、そういえば元は天使だったから大昔は真面目だったのかもしれない。今では真面目の影はほとんどない。

 

 立ち話ですませるような事じゃないと思うから中に入れる。ちっぽけな部屋だが、我慢してほしい。

 

「まあ、何言うかわかってるだろ。コカビエルとバルパーの処置だ。ま、コカビエルはコキュートス、一応説明しておくが、地獄の最下層に位置する氷の地獄だ。そこに幽閉された。もう二度と出てくることは無いだろうな」

 

 その時のアザゼル総督の顔は、まるで友人を失ったような悲しい顔をしていた。長年連れ添った仲間がこうなると悲しいものか。

 

「で、バルパーは今までしてきたことを自白させて処刑した。ま、バルパーの記録はそれなりに調べてたから自白してもあまり大差なかったがな」

 

 バルパー、お前のこと筒抜けだったのかよ。コカビエルが拾ったと聞いたとはいえ、総督に筒抜けだとダメじゃねえか。

 

 いや、待てよ。ほとんど筒抜けだったのにここまで放置していたのは何故だ?

 

「アザゼル総督、何故危険因子となる人物を放置していた?どこにも害になるしかないと分かってたのに、どうして?」

 

「あー…………悪りぃがそれは言えん」

 

 バツが悪そうにアザゼルは視線を逸らした。都合の悪いことなのだろうか、追求したところで答えを得られるとは思ってない。どうせはぐらかせるだろう。

 

 そして話を逸らそうとアザゼルは別の話題を持ちかけてきた。

 

「そういや、グレモリーのとこに新しい眷属が出来たってよ。例のデュランダル使いが悪魔になるとはなぁ」

 

「デュランダルって、今回この町に来た教会側の片割れか?あの時は虚空の目をしてたが…………まあ、何かを決意したんだろ」

 

「天使が堕天使になるように信者も悪魔になったりするさ。ま、神の不在を知った事が一番の原因だろ」

 

 しかもそれで上司に電話越しとはいえ聞こうとした波紋を言い渡された云々をアザゼルから聞かされた。一体どこでそんな情報手に入れてるんだ。

 

「エクスカリバーは無事、じゃないな、欠片になったが、悪魔にならなかった方のシスターが教会に空便で送り返された。ミカエルの奴、なんで空便なんだ?」

 

「そんなのは教会に聞いてくれ。ここで言われても困る」

 

「だよなぁ。向こうも所属不明のお前さんをどうしようか考えてるとこだろう」

 

 そう言われたら「うっ」となってしまう。事実、悪魔が集う駒王学園に在籍してるとはいえ、かなり宙に浮いた存在だ。実力も堕天使幹部を軽く倒せるほどだからどこの組織も引き抜きたいだろう。

 

 だが、俺は乗り気じゃない。これでも家族はいるし、いきなりどこ所属になれなんて言われても抵抗する。望むなら干渉してほしくはないが…………

 

「大きい力は代償がつく、か。強すぎても平和なんて得られないのが辛いところだ」

 

「お、よく分かってんじゃないか。俺はお前さんの神器が『神滅具(ロンギヌス)』に片足突っ込んでると睨んでる。実際、神滅具持ちは何らかの争いに巻き込まれてるぞ〜」

 

「神滅具が何かはよく分からないが…………」

 

 必殺技でもある流星一条(ステラァァ)はある女神が持っていたEX宝具の千倍とも言われるほどの最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)を相殺できるほどだからな。

 

 その代わり、俺が死ぬわけだが…………自分を切り捨てて他を救ってるもんだ。

 

「そうだそうだ、どうせ外に出られないし暇だろ?この前出たゲーム機買ったんだ。一緒にやろうぜ!」

 

「ゲームか…………どうせ暇だし付き合うぜ」

 

「よーし、んじゃテレビ借りるぞ」

 

 今思えばこの総督ってここに来るまで忙しかったんじゃなかったか?なのにここでゲームするって…………ああ、サボりか、

 

 忙しい時こそ現実逃避したくなるよな。俺も神器覚醒した時から…………あれ、そういやこれ本当に神器なのだろうか?もしかしたら宝具になるのかもしれない。

 

 現状だと分かるはずもないから今はアザゼルとゲームするか。

 

 某配管工のレースゲームしてる最中、アザゼルのマナーモードの携帯電話がめっちゃ震えてたのは見逃さなかった。ついでに全戦全勝した。

 

 さらに言うと昼抜きでかなり熱中していた。いやはや、学生が何してるんだ。

 

「それじゃ、お暇させてもらうとするかね」

 

「ところで携帯がずっと鳴っ「あー、これただのアラームだから」いやでも「アラームだ!」…………」

 

 うわぁ、これ絶対向こうの人、じゃなくて堕天使怒ってるよ。ほぼ一日中ゲームしてたって言ったら怒られるに決まってるじゃないか。

 

「あ、そうだった。近々お前さんは魔王に会うと思うぞ」

 

「待て、何を藪から棒に」

 

「なんたってお前さんの通う学校で天使と堕天使と悪魔の三陣営で会議が行われる予定だ。グレモリーからも伝えられると思うが、絶対に出席せざるを得ないと思うぞ。そんじゃあな」

 

 そう言ってアザゼルは颯爽とどこかへ消えていった。

 

 いや、待て、流石にそれはないだろう。だから言わせて欲しい。

 

「何故そんな機密っぽい重大な事ををゲームする前に言わないんだ!?」

 

 このあと隣の住民であるミルたんにうるさいと怒られた。




 本日未明、行方不明になっていた総督が重要案件を重要人物に対して軽く投げた事が分かりました。総督は「だってまだ先の話だしゲームして時間潰したかったから」と供述しておりグリゴリ一同は今日は何をしていたか徹底的に調べるつもりです。


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嗚呼、悪夢だ

 授業参観日、それは生徒にとってある意味悪夢を見る日でもある。

 

 普段の授業を真面目に受けてない生徒はあえて真面目に受けてるふりをし、真面目な生徒はいつも通り過ごすはずが親が来ていてあまり落ち着かない。

 

 この授業参観日を親に言わず隠してる生徒もこの学園にいた。魔法少女にどっぷりとハマった姉を持つ生徒会長とか。どこかの魔神柱がキレると思う。

 

 もちろん今日が授業参観日だという事を親に伝えてないのもいる訳で、伝えてない筈なのにいつの間にかちゃっかりいたりする親もいて…………

 

「自然に連絡したはずだから来ないはずだ…………」

 

「…………なんか芦屋の様子おかしくね?」

 

「お前知らないのか。芦屋のお母様は息子の事を溺愛しすぎてるって話」

 

「下手したら『ちょっと』歳の差が空いたカップルに見えるって噂もあってな…………」

 

「なにそれ気になる」

 

 知ってる人は知ってる噂、これを機に広まり始めようとしていたのは別にいい。評価が落ちるわけでもないからだ。

 

 そんなことより親が来るほうが問題だ。授業参観のことを伝えてないと安心しきるのは早とちりだ。直接目で見なければ来てるかどうか分からない。

 

 そんな悩みを抱えたまま芦屋新志、支取蒼那、リアス・グレモリーが恐らくトップクラスで被害を被る授業参観が始まろうとしていた…………

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「……………………っはぁぁ」

 

 ドーモ、芦屋新志は疲弊しておりまする。口調が変になるくらい気張っていました…………

 

 視覚と気配に母さんらしき人物は無かった。つまり、母さんは来なかった!気張って来るか来るかと恐れてた俺が馬鹿だった…………

 

「はぁぁ…………帰ろ」

 

 授業参観は最後の授業のみ行われる。よって、このまますぐ帰るということを選択した。いや、だってアザゼル情報だとグレモリー先輩の兄、つまり魔王が来るとかなんとか。

 

 もう目をつけられてるだろうけど、堅苦しそうな人とはあまりなぁ。アザゼル総督は堕天使のトップでもああフランクすぎるのはどうかと思うけど、普通に話をするならあれくらいがいい。

 

 沢山の親がいるなか、俺は誰にも気に留められず教室を出た。

 

 そこまでは良かったんだが…………ふと寒気がした。まるでカンカンに怒った鬼がいるような、そんな感じの感覚がした。

 

 やっばいヤバイヤバイヤバイ、この感じは間違いなくいる!走って逃げきれ…………るのか?

 

「見つけましたよ新志、ちょっとこっちに来なさいな?」

 

 一人の女性の声、それは俺がよく知ってる声だった。

 

「あ、いや、そんなつもりじゃ」

 

「そんなつもりとは?意図的に授業参観のことを黙ってたことならお母さん泣いちゃうかなー?」

 

「すいませんでしたッ!」

 

 速攻で謝らないとぐずりだして大変なんですよ、それも人前で本当にビービーと泣きだすから困るんだよ!

 

 いつもこういう光景が見られると授業参観の時に話題に上がってたな…………

 

「ええ、黙ってた事はその謝罪で許しますとも。でも、呼ばなかった事は許しません」

 

「それ同じだよな?黙ってたのと呼ばなかったこと同じだよな!?」

 

「言い訳は無用です。説教ですよ説教?今度というばかりはこってり絞りますからね」

 

「…………勘弁してくれよ」

 

 腕を引っ張られて半泣きになってる母さんに説教されたのは言うまでもない。ちなみに日が暮れそうになるほど説教された。

 

 母は強し、まさにこの事だ。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

「こうして一緒に帰るのも久しぶりね。転勤してからこういう機会がなかったんですもの、ゆっくり行きましょう」

 

「今となってなぜ転勤するまで俺が帰るタイミングに居たんだ…………?」

 

 母さんはとある大企業の重役の一人らしく、会社を辞めずに子育てをしてくれたという他の人たちから見たらかなりすごい母親だ。本人はこれが普通だと否定してるが、簡単に出来るレベルじゃない。

 

 だが、その働きを認められたのはいいが上の命令によってさらに重要な立場となり転勤する事になった。

 

 そして、俺の前世の記憶がかなりハッキリし、俺の力が判明したのもその時だ。いつまでも甘えず自立しなければと一人残ると母さんに言ったんだ。

 

 めっちゃ泣かれた。「そんなに母の事が嫌いだったのですか!」と丁寧な口調で癇癪をおこされて宥めるのに3時間、説得するのに2日かかった。

 

 流石に自立には早すぎると思っただろうが、俺も家事はそれなりに出来るし、何より何らかの事で巻き込みたくなかった。

 

 これは本当にもしもの可能性だが、こうして俺がアーラシュの力を持ってるなら聖杯戦争が勃発するかもしれない。その不安を拭いきれなかったんだ。

 

 本当に、本っ当に渋々といった形で母さんは一人暮らしを認めてくれた。その際に分厚い『我が家のルール』という冊子を渡されたが今は部屋の隅にあると思う。

 

「あの時は一人暮らしすると言ってついて来てくれなかったのか今でも昨日のように思い出せます。身が割かれるほど心が痛みましたが、自立する事は悪い事ではないですね、ええそうです」

 

「かなり根に持ってるよな…………」

 

「ええ、もちろんですとも。今でもちょっと裏切られた気分になりますから」

 

「その他人みたいな喋り方も相まって…………その喋り方だけどうにかならないのか?やっぱその話し方されたら他人行儀に思えてさ」

 

「…………ごめんなさいね、これはもう癖みたいなもの。でも新志が言うなら3日で変えてみせますとも」

 

「い、いや、母さんはそのままでいい」

 

 母さんなら本気でやれるし、そうなったら逆に違和感しかない。そのままでいいって言ったら母さんの機嫌も良くなってるし、何だこれは。

 

 まあ、こうして一緒に帰ってるだけで機嫌が良くなるからいいか…………ん?一緒に帰る?

 

「新志、私はちゃーんとホテル取ってますからね?あなたの考えてることはお見通しです」

 

「…………ほんと、流石だよ」

 

 やっぱり母さんだけには敵わない。文武両道を体現したような人だし、昔は俺に弓を教えてくれるほどだ。

 

 魔王が来てるため勝手に帰ったら帰り道に現れるかと思っていたが、何事もなくアパートまで着いた。そして母さんはホテルの方に戻っていった。

 

 話を聞いたら、授業参観に合わせて無理矢理こっちに来る仕事を入れて、その仕事を抜け出してきたらしい。ほんと何してんだ…………

 

「では新志、また明日」

 

「また明日って、来るのか?」

 

「もちろん、息子に会いたくない母親なんて塵以下の価値しかないですから」

 

 澄まし顔で毒を吐くのも母さんらしい。的を得てるものが多すぎて何も言う気にならない。明日は普通に俺の部屋に入ってきそうだなぁ。

 

 母さんがの後ろ姿が見えなくなるまで見送った。たまにチラチラとこっちを見て居なくなってないか確認してるから本当に見えなくなるまで見送らないといけない。

 

 そうしなかったら電話でメソメソと泣きながら怒られる。はぁ、本当に困った人だ。

 

 母さんを見送った後は弓を整備するか。どこかに弓道場があれは行きたいんだが近くにはないし、思い浮かぶのはアザゼル総督のとこしかない。

 

 部屋に入って弓を弄ってるといつの間にか1時間も経過していた。かなり集中していたようだ。

 

 その集中が切れたのは魔力らしき揺らぎを遠からず感じてしまったから。

 

「おい、まさかこれって!」

 

 慌てて外に出て揺らいだ方角に千里眼スキルを発動させた。だが、何も見えなかった(・・・・・・・・・)。古いテレビにノイズが走るように、視覚が完全に封じられて状況を見られない!

 

 この千里眼のランクは低くはないはずなのに見えない、これは完全に妨害してるしかない。妨害特化なら何とかなるが、想像を超える化け物だったら?

 

 つっ!?千里眼で見てるはずの視界に横一線が入った瞬間、千里眼が解除された!?くそっ、反動のせいか目が痛い!

 

 こんなんじゃ弓を放とうとしても外す。チッ、愚策になるだろうけど篭るしかない。恐らく悪魔陣営もこの揺らぎを感じ取ってるはずなんだが…………

 

 やっぱこの感じ、初めて感じ取ったんだが………間違いない。俺の想像が現実になっていたんだ。この街に最低一人、間違いなく居る。

 

 俺が東の大英雄の力を授かったのは、まさか、そんな、あくまでも代理ということ、なのか?全てこのための…………この戦争のための(・・・・・・・・)

 

 

 7騎に渡る英雄の力を授かりし者たちの戦争が、もう既に始まっている事にアーチャー枠の力を持つ青年はようやく気付いた。

 

 既に世界を巻き込む代理戦争は始まっているのだと、平和ボケしている青年を嘲笑うかのように。




〜現在確認できているサーヴァント枠別能力〜

セイバー・???
アーチャー・アーラシュ
ランサー・???
キャスター・???の悪魔
アサシン・???
ライダー・???
バーサーカー・???

キャスター枠はもう大体の人が分かってると思いますが、一部分だけ伏せさせていただきます(無意味)


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弓兵の憂鬱

アガルタの女楽しかったです、ガチャは☆4礼装ばっかりでした


 芦屋新志の様子が少しだけおかしかった、と数々の生徒が証言した。

 

 授業参観が終わり三日経った日のことだ、たった二日とはいえ遠くから戻ってきた母親を見送った日を境に憂鬱な顔をしている。

 

 それはいつかの木場佑斗の様子と似ていたのはどうでもいいことだ。

 

 この時、塔城小猫は主であるリアス・グレモリーからメッセンジャーを頼まれていた。内容は三陣営の会談を行う予定日、それに加えて始まる時間を伝えること。

 

 こそっと一般生徒に気づかれずに伝えるだけのはずだった放課後になるとがいつの間にか新志の姿が見えなくなっていた。

 

 これはいけないと思い新志を探すも既に学校内にいなかった。これは既に帰宅してしまったのだろう。新志の住所を知らないので主人(リアス)から教えてもらうしかないと思い、一度部室へと向かった。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

「…………ここですか」

 

 どこにもありそうな平凡なアパートの前に小猫は立っていた。もちろん新志が住んでるアパートだ。

 

 普通すぎて先日に堕天使コカビエルを撃ち倒した人間にしては質素すぎると思うが、なんにせよあくまで『人間』なので仕方ない。簡単に城を建てたりとかピラミッド建てたりする奴がおかしいのである。該当する人物はこの世界には存在しないのだが。

 

 トテトテと錆びつきかけてる階段を登り、かの人物がいる部屋の扉をノックする。

 

 …………返事がない、もう一度ノックする。

 

 ……………………返事がない。またノックする。

 

 ………………………………返事がない。もしや留守なのかもしれないと思い始める。

 

「…………芦屋さん?」

 

 今度は声をかけながらノックしてみる。

 

 

 

…………………………………………ガチャ

 

 

 

 少し間が空いたが中から住人が出てきた。

 

「なんだ、塔城さんか」

 

「…………まるで違う人が来ると思ってた顔」

 

「あー、もしかしたら別の奴が来たのかもしれないって思ってた」

 

 ジト目の小猫に対して新志は苦笑いをしていた。ついでに妙な警戒も混じってたような気がしたがすぐに霧散した。

 

「うちまで来たってとこは、外じゃ話せない内容か。言っとくけど暫くは部室に行かないからな」

 

「…………なんでですか?」

 

「なんつーか、心配事があってな。どうも厄介な事で他のに相手しづらいってのがな」

 

「…………なんか怪しい」

 

「そっち関係で簡単な話ですみそうなら中で話すべきじゃないか?」

 

 ここはアパートだ、いつ誰に聞かれるか分からない玄関で話すよりある程度密室になっている部屋の中で話す方がいいだろう。

 

 新志は部屋の中へ戻り小猫が続く。ドアはちゃんと閉めた。

 

「まあ座って、それで改めて聞くけど話ってのは何だ?」

 

「…………明日の夜に天使、堕天使、悪魔の首脳陣が集まって会談することに決まった」

 

「互いに争いあってる勢力の会談?かなりの極秘事項っぽいけど、授業参観に大きな存在があったのは視察の為か」

 

「…………大体あってる」

 

「大体?」

 

 二人の魔王からしたら視察より授業参観の方をメインとしてやって来ていたことを小猫はあえて黙っておくことにした。あれはある意味で傷を抉ることになる。

 

「まあ、アレだろ?コカビエル倒した人間に興味がある、とか我々が討ちとるはずだったのにどうしてくれるんだと言ってくるか…………まあ、前者だろうな」

 

「…………」

 

 なぜ分かってるかのように言うのか謎であるが、小猫から見て彼は無理をしてるようにしか見えなかった。

 

 明らかに何か焦っている。外敵に怯えてるとも思えるほど警戒している。その様子は先輩である兵藤一誠でも僅かに読み取れそうなほどだった。

 

「まあ、どうせ行かなければ厄介なことになるのは目に見える。心配しなくてもちゃんとぐっすり寝て行くさ」

 

「…………本当にですか?」

 

「本当もなにも、そこまで信じてもらえないか?」

 

「…………芦屋さん、怪しいです。なにを警戒してるんですか?」

 

 そう問いかけた時、新志は目を細くして困ったような表情になった。いや、これは困ったより憂鬱に近い表情だ。

 

「……………………(小猫から目を逸らしている)」

 

「……………………(じっと新志を見ている)」

 

「……………………嫌なところに目をつけてくれるな」

 

「…………少しあからさますぎたので」

 

 一つため息を吐いて観念したかのように思い詰めた顔をした。本来、言うべきではないのだがせめてここは疑問を解消しなければずっと疑われたままになる。その様子をリアス・グレモリーに伝えられたら速攻で問い詰められる可能性だってある。

 

 だから、彼は言った。

 

「もうすぐ俺の戦いが始まりそうでな、あれからずっとそのことを考えていたんだ」

 

「…………戦い、ですか?まさか堕天使に」

 

「そっちじゃない。いや、そっちも関わってるかもしれんが…………まだ敵がはっきりしていない」

 

 余計に意味がわからない。いったい何と戦っているのかすら掴めない。堕天使なのか、もしかしたら天使なのか、はたまたそれ以外か。

 

 この時、まだ何も知らないことを後悔する事はなかった。ただ何があるのかを知りたいだけだ。

 

「塔城さん、聖杯って知ってるよな?」

 

「…………聖杯、というとキリストが最後の晩餐に使われた杯のことですよね?」

 

「ああ、俺は聖杯を取るための戦争に参加せざるをえなくなった。ま、その本物の聖杯じゃないんだがな」

 

「…………戦争!?」

 

 明らかに規模がおかしいと小猫は誤解したが、実際はそこまで迷惑はかからない(ファラオの兄さんや冬木のキャスター諸々は除く)が魔力、エネルギーの揺らぎにより全勢力に観測される可能性が非常に高い。

 

 新志に宿るアーラシュの宝具は「それ本当に弓なのかと!」と言われてもおかしくないほどの威力を持っているため、逆に察せない方がおかしい。

 

「これを俺は、いや俺たちは聖杯戦争と呼んでいる。規模は七人、イレギュラーが混じったら八人で殺し合うってのが俺が持つ知識だ(・・・・・・・)。何にせよ、この聖杯戦争はイレギュラーが起こってる事は確かだ」

 

「…………芦屋さんが憂いてる事は分かりました。実力もあの時に見ました」

 

コカビエル程度を軽く捻るくらい(・・・・・・・・・・・・・・・)じゃダメなんだ。あいつは聖杯戦争に加担する中でよっぽど戦闘に向いてない奴じゃない限り負ける要素がない」

 

 非常にイラつかせるような発言だが、新志の実力は本物、それにあの時は手を抜いていた節も見られていたため、グレモリーと最後まで観戦していた白龍皇ですら実力の底が見えていない。

 

 そんな彼が警戒するほどの正体不明の敵がこの世界に最低六人いるのだ!

 

「…………何で芦屋さんは聖杯戦争、に参加しようと?」

 

 その言葉に新志が示したのは沈黙、答えないという意思表示だった。

 

「……………………悪いが、聖杯戦争については他言無用だ。もう既に始まってる上に無闇に俺の居場所を明かされたくはない。さあ、帰ってくれ」

 

 沈黙の末に他言無用と言い小猫を追い出すように言い放つ。どう見ても巻き込ませたくはないのだろうと分かるほどの露骨さだ。

 

 小猫も空気を読めない悪魔ではない。これ以上の詮索をしたら襟を摘まれてポイッと外に捨てられそうだと感じ、自主的に立ち上がり部屋から出る。

 

「…………会談には出席してください」

 

「それは善処する」

 

 最後にそれだけを言い残して小猫は主人(リアス)の元へ帰るために歩き出した。

 

「………………………………はぁ、聖杯戦争で気が立ってたな。しかも会談だけでも荒れそうな気がする」

 

 セイバーでもないのにそう直感が言っている事にため息を吐き、不用意に会談を行う三陣営に接触していたことがバレるという事についてさらに頭を悩ませることとなった。




だが不夜城のキャスター、貴様は赦す赦さないの話に非ず、偉大なるかの王の最期を侮辱したお前は全力を持って殴り倒す(ギリ倒せました)


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その剣、ほぼ使いきり

思ったより不夜城のキャスター関係の感想が多かった。まあ、あれは様々な意見がありますからね。


 後の駒王会談と呼ばれ、波乱が巻き起こる発端となった会談が始まるまでもう既に10分を切っていた。

 

 こんなことを言うのもなんだが…………眠い。みんな夜行性な種族、天使はどうかは知らないが人間にとって昼夜逆転生活はサイクルを作らない限り難しい。

 

 聖杯戦争が始まってるため警戒しつつ、オカルト部の部室で眠気覚ましにコーヒーを飲みつつ待機してるけど早く始まって欲しいと思う。

 

 ちなみに、オカルト部の面々は塔城さんと段ボールを残して既に会場入りしてるとのこと。

 

 この段ボールにはいったい何が入っているのかは知らない。たまにガタッと動き「知らない人怖いですぅぅぅぅぅ!」とか言って…………ほんと何なんだあれ?

 

 あんなビビりがいるとは聞いてないが、待つとしよう。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 しばらくしてようやくお呼びがかかった。長いような短いような、そんな感じだ。

 

 呼びに来たのは姫島先輩だ。そのまま会場に案内されて…………

 

「よお、英雄さん」

 

「君がコカビエルを倒した人間だね」

 

「目をつけていたのは正しかったですね」

 

 上からアザゼル総督、魔王ルシファー、大天使ミカエルの順だ。全員から目をつけられていたからほんと困る。魔王様に至っては初対面だしな。

 

 各陣営の上層部が集まっている中で注目を一身に得るのはなんだか緊張するな。こういう場に慣れていないってのもあるが、今俺が置かれている状況は…………

 

「芦屋君?やっぱりこの空間はダメか?」

 

「あ、いや、天使に堕天使、それに悪魔がこう同席してるなんて夢にも思ってなくてつい」

 

「ま、そりゃそうだろうよ。いがみ合ってる種族がなんかよくしてるなんて禁断の愛くらいじゃねぇか」

 

 白々しい嘘になるはずだったがアザゼル総督のジョークによってその場をしのげた。大天使ミカエルがアザゼル総督に向ける視線が、というか大体の方々から白い目で見られている。なんかごめん、アザゼルさん。

 

 その中で例の白龍皇だけは俺を見ていた。そういや戦いたいとか言っていたな、まだ戦いを残しているから戦闘狂と戦うのはごめんだ。

 

「さ、コカビエルを倒せる人間も来たことだし始めるとしますかね」

 

 そして会談を自分から始めようなんてやっぱり肝が据わってるな。まだ白い目を向けられてるってのに。

 

 ここからは前に襲撃してきたコカビエルの事件について関わった者、リアス・グレモリーと支取会長、その眷属たちによる報告が始まる。

 

 そこで俺の行動も問われた。さすがに今ここで嘘をつくことは信頼を失う羽目になるからファミレスで話を盗み聞ぎしたところから白状した。

 

 グレモリー先輩と支取会長はは眉間をつまみ後でお仕置きみたいな事を呟き、アザゼル総督は「もっとはよ言えよ」とツッコミをいただきました。

 

「そろそろ本題に入る、さっさと和平を組もうや」

 

 報告もある程度済んだことでアザゼルが話を切り出した。あれ、俺がこの三大勢力と接触していたことについての言及はないのか?てっきりあると思ってたんだが…………

 

 まあ今回の目的は今後についての和平、というのは聞いていた。テロリストが暗躍しているらしく、しかもかなり悪質らしい。

 

「その前に一つ…………」

 

「どうしたミカエル?お前にしちゃ随分と歯切れが悪いな」

 

「…………完全にこちらの不手際なのですが、その」

 

 和平を結ぶって時にミカエルが挙手して何かを言いだそうとしていた。この会談の主な話である和平より大切なことって?

 

「おいおい、お前の不手際って一体何やらかして」

 

「破壊されたエクスカリバーが空輸便で運ばれている最中に何者かに強奪されました」

 

「「「「「はぁっ!?」」」」」

 

 いやいやいやいや、おかしいだろ!?空輸便で運んだって時点でおかしいぞ!今のところ神の不在より重要事項じゃねえか!

 

 そもそも運ばれてる最中に強奪ってまさか例のテロリストが関わってる?くそっ、千里眼で約束された勝利の剣(エクスカリバー)の所在を追跡しておけばよかった。

 

 偽物ということは分かってる、分かってるんだが…………今の状況を考えて『もしも』が起こる可能性が高い。

 

 何せ、聖杯戦争の真っ只中…………

 

「まずエクスカリバーが空輸便で届けられているというところで管理が杜撰だと思うけど、悪魔として聖剣を何者かに強奪されたと聞かされたら困ったどころの話じゃない」

 

「全くだ、つーか何で空輸便なんだよ!」

 

 魔王様とアザゼル総督に文句を言われてるが、ミカエルだってどうすればいいのか分からないだろう。

 

 

 

 

 だが、事態は俺たちが思ってる以上、何倍もいくほど早かった。

 

 

 

 

 

「っ、この感じ!」

 

 この異変に気づかない者はいなかった。俺もこの感覚は知っている、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の波動だ!まさか盗んだ奴がここに戻って…………?

 

 ……………………いや、しらばっくれるのはやめよう。会議室の外、グラウンドあたりに俺と同じ奴(・・・・・)がいる。絶対俺を嗅ぎつけたんだろうな。

 

「まさか、禍の団(カオス・ブリゲード)がエクスカリバーを!?」

 

「奴らどんな情報網してるんだよちくしょう!」

 

「もしかしたら旧校舎も制圧されてるかも!」

 

「うそ、あそこには小猫とギャスパーが!」

 

 気配を感じ、千里眼をを使う必要すらない。俺はちょっとしたパニックになっている会議室から出た。

 

「おい!どこ行くつもりだ!」

 

 アザゼル総督が声をかけてきたがここは無視させてもらう。これはもはや俺達(・・)の領域だ。

 

 まあ、無視したせいでアザゼルもついてきちゃったが巻き込まれる心配がある。ま、そこは堕天使総督という肩書きに恥じぬ実力を見せてくれるだろう。

 

 そして俺とアザゼル総督は飛び出すように外に出て見たものは…………

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

「そんなっ、私は真なる魔王の血族なのn」

 

 

 光の奔流に何者かが飲み込まれる景色だった。それに思いっきり約束された勝利の剣(エクスカリバー)って言っていた。あの時に見た約束された勝利の剣(エクスカリバー)の比じゃない!

 

 その聖剣を握ってる人物の姿は、獅子を模した白き鎧に身を包んでいて、気高い人間だと思えた。内面は知らんが。

 

 もしかしたらただのそっくりさんかとも思ったが、何せイントネーションが…………その、やっぱり彼女というかなんというか。

 

「……………………やはり、これだと力不足ですか」

 

 そんな呟きが聞こえた途端、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の刀身がボロボロと崩れた。そりゃあ、偽物があの本物を再現しようとしたところで耐えられるわけが無い。

 

「なんだありゃ…………しかもエクスカリバーって」

 

「堕天使の総督、あなたには興味無い」

 

 その獅子の鎧から凛とした女性の声が聞こえた。あらかた敵を殲滅したらしく、いつの間にか現れた馬に彼女は跨る。

 

「用があるのは貴方だ、アーチャー。さっきまで私は邪魔されていただけにすぎない」

 

「アーチャーって弓兵…………おい、お前の知り合いか?」

 

「知り合いじゃないが、関係者って言ったところだ」

 

 一言で言うなら最悪だ。なんかアーチャーってことバレてるし、どこかで監視の目をつけてたんだな。チッ、警戒が浅すぎた。

 

「あんたも参加者なんだろ、獅子王、と呼べばいいか?」

 

「獅子王、その呼ばれ方はされたことはありませんね。今度名乗るなら獅子王と名乗らせていただきましょう」

 

「待て獅子王とやら、お前がさっき使ってたエクスカリバーは」

 

「貴方に発言権はない、と言いたいが質問には答えよう。アレは出来の悪いレプリカだが、それなりに修復できたら私が知る剣の十分の一は放てる」

 

 あれで十分の一の威力、いや、7つに分かれたうちの幾つかを集めてるはずだから、今のはそれにも満たないといったところだ。それでもあの威力とは恐れ入る…………魔力の方は大丈夫なのか?

 

「さあアーチャー、弓を構えなさい。でなければ仲間ゴッコをしている連中ごと消し飛ばさない保証はない」

 

「ああ、わかってるさ」

 

 獅子王は馬に乗せてあった槍を手に取り、俺は神器である弓を構え…………今思えばこれって本当に神器なのかと思ったが、どうなのだろう?

 

 でも、今ここで考える事じゃない。

 

「征くぞ、アーチャー!」

 

「圧倒的に俺が不利だなちくしょう!」

 

 地の利もクラス相性も最悪な相手と初戦を始める事には変わりなかった。




オーフィス行方不明で半ばヤケの襲撃のはずが突然の乱入者に出番を取られたカテレア!

三陣営をそっちのけで始まる聖杯戦争!

裏切るタイミングを見失ったヴァーリ!

圧倒的に不利な戦いを強いられた新志に勝ち目はあるのか!

次回、主人公vs獅子王、お楽しみに!

追記・クラス相性は本人の思い込みで本作には一切関係ありません


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惹かれる者

今回はアザゼル視点になります。


 今、俺ことアザゼルの目の前で芦屋新志と獅子王と呼ばれた鎧女がいきなり戦闘を始めた。

 

 そして今見てる光景は何なのか、と自分で問い詰めている。それほど今の光景が異常ということになる。

 

 最上級堕天使である俺ですら辛うじて目で追える範囲の猛攻が、馬に乗ってる鎧女、これから獅子王と呼ぶ者と芦屋新志が繰り広げている。しかも、槍と弓が互いの射程範囲に入っていながらだ。

 

 新志が獅子王に矢を放つも槍に落とされ、獅子王が槍で新志を貫こうとしても辛うじて回避して即座に矢を放つ、そんな猛攻が繰り広げられていた。

 

 ようやく非常事態に対応したのかミカエルとヴァーリ、サーゼクスにセラフォルーも出てきた。

 

「アザゼル!なんですかこれは!」

 

「俺が聞きてえよ、今下手に介入しようとしたら酷い目にあうぞ」

 

「あれが芦屋新志の実力、やはりコカビエルの時は全力を出していなかったか」

 

 ヴァーリはそう言うが、まだ何か隠してるように思える。そもそも弓は遠距離で戦う武器だ。今このように近距離でやりあえてる事自体が奇跡だと感じるんだが…………

 

「なかなかに素早い、それに何発か当たっている(・・・・・・・・・)筈なのに無傷とは」

 

「生憎だが俺の頑丈さは筋金入りでね、お前の一振りの余波(・・・・・・)じゃ倒れんさ!」

 

 あいつは一振りの余波、と言ったが槍と矢がぶつかっただけの衝撃がここまで届いてるんだぞ。獅子王はともかく、生身のお前が無傷っておかしいだろ!

 

 あいつらの神器、いや、本当に神器と言えるのか?少なくとも俺が研究してる中で既存の神器に関する資料に何一つ当てはまらない。

 

 弓も気になるんだが獅子王の槍も気になる。マジで研究し尽くしてやりてえ…………

 

「部長!っおわっ!?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!?なんなんですかこれぇぇっ!?」

 

 思ったりよりも早く赤龍帝が時止めヴァンパイアと猫又を連れて戻ってきた。禍の団が奴らを利用すると思っていたが、誰かが事前に排除していたか?鎧女がさっき禍の団をエクスカリバーで消しとばしたところは見たが…………

 

「なんすかあれ!?なんで芦屋があんなのと戦ってるんだ!?」

 

「私が聞きたいわよ。だけど…………」

 

「…………無理です。あんな中に私たちが入るなんてただの自殺行為です」

 

 思ったより冷静に事態を見ているな。俺ですら介入はかなり難しいと思えるやり合いだ。新志の分が悪いにも関わらず馬に乗ってる相手にあそこまでやれるとは感心せざるえない。

 

 あいつらの強さに圧巻されるのはいい、やはりあいつらの強さの元が気になる。

 

「てりゃあ!」

 

「ぐはっ!」

 

 マズイ、横薙ぎとはいえ新志のやつが吹き飛ばされた!さっきのやり合いからわかる通り尋常じゃない威力を誇っているはずだ、ろくに動けなくなるほどのダメージを受けているはずだ!

 

 このままあいつを失うわけにはいかない、この状況を説明してもらうためでもあるが色々と聞きたいことがある!

 

 だが、新志が吹き飛ばされた隙を獅子王が見逃すはずがない。そのまま馬で駆け抜け槍で突く…………かと思っていた。少なくともこの場にいる全員がそう思っていた。

 

「飛べ!」

 

「「「「「はぁっ!?」」」」」

 

 獅子王が言うように馬が飛んだ。いや、ジャンプ的な意味だろうが少なくとも馬が跳躍できる高度じゃないぞ!校舎よりも高く見上げるほどの位置まで飛ぶ馬ってなんだよ!?

 

「はああああ、貫け!」

 

 槍が光りを放ち始めてるぞおい、しかもありゃ聖なる光だ!聖なる光を放つ槍の神器なんざかなり数が限られてくるが、間違いなく既存のとは当てはまらない、俺らが助けに行こうとしても間に合わん!

 

 そのまま駆けるように空から突進していくのに対しあいつは…………

 

「真名解放なしでそれかよ!」

 

 突撃してくる獅子王に向けて一瞬で2桁の矢を放っていた。

 

 いつ体勢を立て直したのかはいい、なんだその連射速度!お前はマシンガンか何かか!?むしろそれ本当に弓なのか!?

 

 矢は鎧女にはほぼ当たらなかった。当たらなかった理由は恐らく槍が纏っているオーラに逸らされたからだろう。だがほぼ(・・)当たらなかったという結果だけでも十分すぎた。

 

「ぐっ!」

 

 一本、ただ一本の矢が掠っただけで獅子王が大きくよろめいた。当然ながら軌道も大きくそれて新志から少し遠く離れたところに着弾(?)した。

 

「貴公、なかなかやりますね」

 

「あれだけやって当たったのは一本、厄介なことこの上ないな」

 

 いや、お前らかなり荒らしてるからな?決闘みたいなとこしててこっちに被害を与えてないのもすごいが周りがクレーターだらけになってるからな?

 

 そりゃあ奴さん(禍の団)も敵わないわ。俺ですら勝てるかどうか怪しいところをやってるのに有象無象が幾ら襲いかかろうが無双されてしまいだ。

 

「しかし、貴公は相当疲労が溜まってますね?」

 

「そりゃお前、馬に乗ってるやつが言うことかよ!」

 

 そしてまた撃ち合いが始まった。禍の団の残党はもういないし見てるだけしかない。人工神器も試してみたかったが、こりゃ見送りだ。

 

 見てるだけでも長く、しかし時間は短かったが二人の争いは止まった。

 

「なあランサー、いま少し槍を収めないか?」

 

「ほう、その理由は?」

 

「お前も分かってるだろ、こんだけ派手にやってるのに見られてないわけがない」

 

 獅子王から目を背けずに全く別の方向に矢を放ったぞ?全く見当違いのところに飛んでいったが、今そんなことしていいのか?

 

「うむ、やはり気づいておったな!余の皇帝特権で得た気配遮断程度ではお主らにバレてたか」

 

 なっ、いつの間に居たんだ!?あんな赤い服を着ていたら目立つに決まってるのに俺が気づかなかったんて、いや、サーゼクスとセラフォルー、ミカエルも表に出してないが驚いてやがる。

 

 少なくとも、結界は張ってあったのに気づかれずに通ったということは相当な手練れというこのなのは間違いない。

 

 なんなんだあの少女は?見かけによらない剣を持ってるが、間違いなく人間なんだろうが神器使いと違う。だが、同類なら今目の前に二人いるな。

 

 改めて戦っていた二人を見るとやはりか、という顔をしていた。こりゃ確定だ、あいつの関係者だ。

 

「私の消耗は全くないですが、アーチャー?」

 

「俺も大して疲れてないさ。ただ三つ巴になると…………少しばかり不利になるな」

 

 剣と弓と槍、この三つ巴の中で誰を最初に狙うとなったら弓を選ぶだろうな。三つ巴戦になっている間に弓持ちが離れられたら厄介だ。

 

 そもそも弓を使ってて槍や剣の範囲内でやりあえてることが奇跡だが…………剣と槍が戦っている最中に矢を放たれて漁夫の利を取られたら意味がない。

 

 どう足掻いても新志が不利すぎる状況だ。あいつが双剣でも使えたらまだなんとかなったかもしれんが…………

 

「まだ隠れてるだろ?アサシンがセイバーより杜撰な隠れ方をする訳がない。つーことはキャスターかバーサーカー、いや、バーサーカーの線はないな」

 

「いえいえ、出来損ないの礼装で戦ってる最中なら魔王も気にかけてくれない程度の気配なら私は満足です」

 

 今度はサングラスをかけたスーツの男が拍手しながら現れやがった。虫程度の気配で瀕死の禍の団の奴かと思って気にしてなかったが、こいつも関係者かよ!

 

「まあ、三騎士が揃ってる中でクラス名を言わないのもアレでしょうし、アーチャーの予想通り私はキャスターですよ。すぐに帰りますが」

 

 三人から四人に増えやがった。しかも新志しかまともに見えないのは気のせいか?

 

 …………待て、あのキャスターとかいう野郎の隣に居るのは!

 

「キャスター、今戦う?」

 

「いえ、消滅の魔王サーゼクスに歴代最強と言われている白龍皇が今1番厄介だと思うので、組まれて戦うと貴女はともかく私が危ないんですよ」

 

「我、早く静寂を得たい」

 

 間違いない、あの男の隣に居るのはオーフィス!風の噂だと禍の団にいると聞いていたが…………

 

「むむっ、キャスターは幼児を連れているのか。確かに力はあるが…………もしやその趣味が?」

 

「ふざけているのか真面目なのか分かりませんねセイバー」

 

 この状況でよく言えたなセイバーとやらは。ちくしょうどうなってやがるんだ、生きて帰れたなら新志を問い詰めるしかねぇな…………




出てくるFate勢は既に決まってます。ぶっちゃけセイバーは正体を隠す気はありません()

出ていないのはライダーとバーサーカーのみ、誰が出てくるか予想してみてはいかが?


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真・聖杯戦争初戦

ホンッットにお待たせしました!リアル忙しすぎて書けない状況に…………

今回は一誠の視点が途中から入りますのでご注意を。(こっちの主人公全く活躍させてないどうしよう…………)


 これは本当にいただけない状況だとアーチャー枠の俺は思う。

 

 ここはあえてクラス名で呼ばせてもらうがランサーだけならまだなんとかなったかもしれないがセイバーとキャスターまで出てきやがった。

 

 そしてこの状況だとアサシンが隠れている可能性もある、近くに近接戦をメインとする二人がいるだけでも厄介なのに!

 

「しかし、アーチャーやるではないか!馬に乗った相手に対し弓と矢だけで凌ぐとは!余もやろうと思えばやれるかもしれんが難しいぞ!」

 

「普通はできないんですけどね」

 

 セイバーの言うことにキャスターが速攻でツッコミを入れた。まるで読んでたかのようなツッコミ…………侮れん。

 

 いや待て、変な空気になってるけど俺とランサーは対峙したままなんだぞ、そっちに視線向けないでどうする。

 

「なぜ今、我々が戦っている最中に現れたんですか、セイバー。催促されたとはいえ堂々と現れる貴女は隠れても良かったはずだ」

 

「何を言うか、こんな剣戯(モノ)を見せつけられて出てこないなど言語道断ではないか!それこそ堂々と見るべきであろう」

 

「…………なんつーか、我儘だな」

 

 言葉に出てしまったが、我儘なのは間違いない。何たってあのセイバーは見覚えがある。前世の記憶を辿ると…………ネロ帝だった筈だ。

 

 真名が分かったところで獅子王と同じくこれと言った弱点も無い。頭痛持ちとか言われてるが芸術面くらいでしかデメリットが無いと聞いたことがある。

 

 そしてキャスターだが…………全くもって謎だ。誰だあれ、隣の幼女も見たことも無いぞ?あの二人と比べて間違いなく不確定要素なのは確かだ。

 

 そして『アーチャー』としての勘だが最もやばいのはあの幼女だ。キャスターなんかより何倍もヤバイ感じがする。

 

「で、どうするんだ?あんたらが現れたということは、このまま弓兵が苦手とする乱戦に持ち込むのか?」

 

「私は一向に構いませんが」

 

「むしろ二人だけで楽しむことは余が許さん!」

 

「あ、私は見ておくだけにしておきますね」

 

 キャスター以外参戦、と。知ってたけどキャスターは参戦しないって空気読めと思ったのは俺だけか?

 

 まあ参戦しないならそれでいい。一番の問題は二人をどう相手にするかだ。

 

「私じゃなくてオーフィスが行きますが。私より彼女の方が圧倒的に強いので」

 

「ん、キャスターの代わり、我がやる」

 

「「なにっ!」」

 

「やっぱりか!」

 

 オーフィスが何だか知らないが1番ヤバイのを投入してきたか!安全地帯にいながら漁夫の利を得ようってことか!

 

「くそっ、オーフィスを出してきやがるか!新志、そいつだけは相手にするな!そいつは無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)だ!」

 

 アザゼルがかなり焦りながら忠告してくる。ウロボロス、と言ったら(無限大)文字の元になった昔の龍って聞いたことが…………待て、そんな奴がキャスター陣営にいるってのは俺たち危ないんじゃないか?

 

 未知数の戦力でも無限大には敵わない、何てことが起きうるのが今の状況、勝ち目が見当たらない。

 

 …………本気で宝具放つ事も視野に入れておかないといけないな。

 

「オーフィスと言いましたね。貴女は何のために戦うのですか」

 

「我、静寂を得たい。キャスター、我に静寂くれると約束」

 

「キャスター?まさか幼女をそのように誑かしておるのか?」

 

「マジかよキャスターだっけ?最低だな、せめてそこはおっぱいでかい人を仲間にするだろ!」

 

「いや私は好きでオーフィスの姿を変えてるわけじゃないですから。あとサラッと会話に入ってきた赤龍帝は黙っててください」

 

 いや、兵藤先輩なんで会話に入ってきたんだ。アレか、女の好みの話だからか?あ、何か獅子王が引いてるように見える。確か獅子王も巨乳だった…………鎧が割と厚いから兵藤先輩は巨乳だって見抜いてたりするのか?

 

 あれ、噂通り最低な人間じゃない?と今更ながら思ったのは置いておこう。少なくとも緊張した空気に口を出せる度胸はあると思っておく。

 

「まあ良かろう。キャスターを倒した暁には余が存分に可愛がってやろう、うむ!」

 

「…………セイバーもなかなかアウトだと思うんだが、そこのとこはどうだランサー?」

 

「私に投げないでくださいアーチャー。いくら何でも私はあの中に入りたくない」

 

 と仰ってるのでそろそろ始めるとするか。いつまでもグダグダな空気でいる事はないからな。

 

 下手すりゃ誰かが言いださなければこの漫才が延々と続くかもしれない、だから俺が言おう。

 

「そろそろいいか?俺もランサーもある程度疲れてるが支障があるほどじゃない。なぁ、これはまだ前哨戦だろ?」

 

「…………アーチャーから言い出すとは、出来れば貴方との戦いは一騎打ちで終わらせたかった」

 

「おっと、そうであったな。しばしオーフィスの事で頭から離れておったわ」

 

 若干緩んだ空気から先ほどより緊迫した空気が流れ始める。

 

 俺は弓を構えランサーも槍を構える、そしてセイバーは己の剣を掲げキャスターの前にオーフィスが立つ。

 

「では、やっちゃってください」

 

 キャスターの抜けたような一言で俺、セイバー、ランサー、オーフィスが動いた。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 何だかよく分からない状況になってるけど説明を受けてある程度は理解できた。

 

 俺は兵藤一誠、ある事件に巻き込まれて今は部長の元で悪魔として転生した赤龍帝だ。今回もなんか事件に巻き込まれたと思うんだけど…………

 

「お兄様、これは…………」

 

「絶対に手を出してはいけない、あの中に入る隙なんて全くない」

 

 部長がお兄様と呼んだのは現魔王のサーゼスク・ルシファー様だ。悪魔の中でもトップクラスに位置するすごく強くて偉い人なんだけど、俺も何が起こってるのかわかんねえ!

 

 コカビエルを倒した後輩は剣と槍と幼女相手に引けを取らず目で追えないほどの速さで矢を放ってるし、ランサーとか言われてる人も明らかに馬に乗ってる動きをしてないし、セイバーと呼ばれた女の子も全員の動きに対応しつつ戦ってる。

 

 なにより1番やばいのがオーフィスだっけ?何回も攻撃を受けてるのにビクともしてない!俺があんなのくらったらゾッとするくらいの音出してるのに無傷ってアリかよ!

 

『……………………まさか、いや、そんな事は』

 

 ドライグ?さっきから黙ってたんだけど、どうした?

 

『…………あの槍を持った者が使う力は知っている。だがありえん、ここにある事はありえんのだ!』

 

「天龍がここまで焦る人物なのか…………?いや、まさか」

 

 籠手から声を荒げて言うほどなのか?確かに素人でもあれは凄いって思うけど、もしかして知り合い?

 

『知り合いという言葉などでは足りん、血を分けた娘といっても過言ではない、はずなのだが…………』

 

「…………赤き龍がそこまで言わせるほどの人物?っ、まさか!」

 

 アザゼルの方は何か思い当たったらしい。俺にはさっぱりで分からないけど、かなり重要な件なのか?

 

「おいおいおい、それならさっきエクスカリバー使ってた理由と辻褄が合う。じゃあ、あの槍は…………」

 

『堕天使の総督よ、恐らくその考えは間違いではない。だからこそありえんのだ』

 

「ちくしょうなんてこった!仮に偽物だとしてもドライグの因子を持ってるという事はあの鎧女はペンドラゴン家の直系の子孫になるか。だがロンゴミニアドの確認はされてないぞ!」

 

「待ってください、あの槍はロンゴミニアドなのですか?」

 

『間違いない、あの丘で使ったはずの槍だ』

 

 話の内容が全く分からない。ロンゴミニアドとかあの丘とか俺には分からない単語で喋られても事態を把握できないって、聞こうとした時だった。

 

 こういう場合、俺の視界に入ってしまったというべきか?ヴァーリがキャスターと名乗る男を禁手の状態で殴り飛ばした光景を。

 

「ドフォーウッ!?」

 

 たった一撃、殴られただけで錐揉みしながら飛んでいくキャスターを見てしまった。もしここが映像化されるなら三カメ位使うかスローモーションになると思うほどの不意打ち&ぶっ飛ばされ具合だった。

 

 そして地面に落ちたと同時にピクリとも動かないキャスターは光の粒子になって消えた。え、マジで死んだ?

 

「…………割と弱いな。オーフィスを前衛に置いてあるだけで本人自体大したことなかったな」

 

「何してんだヴァーリィィィィッ!?」

 

「俺だって戦いたいが、ああ余裕を見せて隙を見せてるやつに殴りかかるのもいいだろう?」

 

「そういう問題じゃねえよ!むしろこの中で1番話をベラベラ喋りそうなやつ倒すなよ!胡散臭そうだがあの中でも1番弱そうだしとっ捕まえることさえ出来たらこの事を説明できるだろ!」

 

 た、確かにそうだ。専門用語とか多く使って曖昧にしそうだけど他の人たちなら理解できるはず。不意打ちを行ったヴァーリを怒鳴りつけるアザゼルだが、ヴァーリの野郎どこ吹く風してやがる…………

 

 そしてあの中でやっぱりというか、キャスターが消えてやる気をなくした人物(?)がいた。

 

「キャスター消えた?我、帰る」

 

 いや、帰るってどこに?しかもキャスターが消えたからって言ってさっさと徒歩でどこかに行っちゃったよ!それに、あの3人はオーフィスとやらを3人で相手してて疲労困憊だし。

 

「…………う、うむ、まさかこのような形でキャスターが脱落するとは。余も疲れたし初戦はこのくらいでよかろう」

 

「………………………………行くぞ」

 

 セイバーはキャスターが死んだことで少し動揺しつつも戦いをやめ、ランサーは馬を走らせてどこかに行った。あ、さらっと結界破っていったぞ!

 

「アーチャー、余はオーフィスという少女を手篭めにしてからそなたに挑むとしよう!さらばだ、とぅ!」

 

「いや、手篭めにするなセイバー!」

 

 後輩が叫んでるのをよそにセイバーはランサーが出たところから飛んで出て行った。

 

 …………あれ、俺たち何しにここに来たんだっけ?いろいろ衝撃が多すぎて何が何だか…………あ、そうだ、せめてランサーの正体くらいドライグに聞いておかないと。

 

「なあドライグ、結局あれは誰だったんだ?」

 

『セイバーの方は知らんが、ランサーと呼ばれた女なら一応知っている』

 

「一応?」

 

『…………否定したいが、奴は間違いなくアーサー、いや、ここではアルトリア・ペンドラゴンとでも言っておこう。俺が知っている人間の中であの槍をあのように扱えるのは彼女しかいない』

 

 アーサーってあのアーサー王物語の?俺でも聞いたことがある名前の人物じゃん!でも遠い昔に死んで物語は終わったはずじゃ?

 

『だからこそ分からん。まず、アルトリアは聖剣の力で最期まで少女の体だったはずだが、あそこまで成長していない。本人であるが全くの別人…………くっ、どうなっている』

 

 ドライグでも困惑するほど成長している?もう何が何だか分かんねぇ…………

 

 この戦いに何の意味があったのかは今は分からない。だけどこの戦いが後に世界に響く要素の一つになるなんて、この時は思いもしなかった。




術「え?この展開何処かで見たような気がする?細かいことはいいんですよ」

龍「我、帰宅、約束のプリン」

術「はいはい、今出しますから」


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誰も手に持たない聖杯を

水着イベント前半、もちろんサティスファクションを応援しました()

そして今回の水着ガチャ前半は10連が本当に強かったです。

「誰を当てた?美女だ!? ローマだ!? もちろん、余だよ♪」

そういうことです。


 聖杯、それは『最後の晩餐』において、キリストが弟子達に「私の血である」としてワインを注ぎ、振舞ったという杯。

 

 その弟子達の手によって各地へと運ばれており様々な神話にも関与しており、アーサー王伝説において聖杯探索に探されたのもこの杯である。

 

 ただ、この世界(・・・・)では神滅具(ロンギヌス)としての聖杯が存在しているが、他の聖杯が無いわけではない。

 

 神滅具の聖杯は所在不明とかなんとか。神の不在により全ての神器を把握できなくなった上に神滅具の捜索すら上手くいってない状況になっているため仕方ないとのこと。

 

 神滅具のことは置いといて、俺が話すのはある意味原始的な聖杯と言えるだろう。

 

「文字通り万能の願望機、か。そんなもんあるならとっくの昔に俺たちの誰か、もしくは当時生きてた人間が確保してるはずだ」

 

「まあ、色々と可能性はあるんだろうけど俺も詳しくは知らない。『与えられた知識』だけで戦ってるようなもんだからな」

 

 今ここにいるのは三陣営のトップの方々、熾天使ミカエル、堕天使総督アザゼル、そして魔王ルシファーだ。流石にあれを見せつけてはいさよならと行かなかった。

 

 トップシークレットということもあり一人面識があるらしい赤龍帝の籠手、確かドライグというドラゴンが宿る兵藤先輩以外のオカルト部はともかく、本当にトップクラスしか残らないとは思ってなかった。なんか面接を受けてるような錯覚になるな…………

 

「与えられた知識と力はいつから自覚をし始めたのですか?」

 

「高校に上がってから、としか。はっきりと自覚したのは初めてはぐれ悪魔に出会った時です。あれはあれでびっくりした…………」

 

「コカビエルを倒すほどの力を持つ弓矢なら低級のはぐれ悪魔は障害にすらならないのは当たり前か。サーヴァントだったね、英雄の魂を降ろして仕えさせる儀式…………明るみに出たら混乱が生じる」

 

『マスターとやらが居ない特殊なもので助かったな。もし、彼女が使役させられていたらと思うと俺は真っ先にそいつを殺すかもな』

 

 明らかな不満を漏らしているのがガッチガチに緊張した兵藤先輩の籠手から喋るドラゴンだ。

 

 ドライグはアーサー王に深く関わりがある龍であり、彼女を娘のように思っていたとのこと。そこら辺は俺も知らないが、もしかしたら…………

 

「アーサー王を直接見て知ってるドラゴンが保証してる訳だから言うけど、ランサーがアーサー・ペンドラゴンだという事は確定だ。ランサーだから約束された勝利の剣(エクスカリバー)は持ってない訳だ」

 

『待て、それに疑問がある。なぜ彼女があんなに成長しているのだ?聖剣を手に入れた年で肉体年齢は止まってそのまま亡くなったはずだが』

 

「俺はかなり特殊なタイプだけどランサーも特殊だ。英霊にも多岐に別れた物語がある。それを『もしも』の形で召喚されるのも聖杯戦争だ」

 

「つまり、どこかで聖剣を捨てて体の成長が再開し、聖槍に持ち替えたいうことか」

 

 そういうことだという感じで首を縦にふる。実際のところは分からないが、アザゼルが言ったことが1番有力な説だからな。

 

「それで、新志はどういうタイプだ?戸籍を洗ったが偽名使ってる訳じゃないはずだが」

 

「サラッと詮索してますね。彼は自分で特殊なタイプとおっしゃっていました。あなたは英霊ではないのですか?」

 

「正確に言ったら英霊擬きというところだ。知識からして、英霊が俺に宿って戦う代わりに肉体の強化と技術の譲渡をしてもらってる擬似的なサーヴァントだ」

 

 どこぞの盾系最硬後輩デミサーヴァントみたく『現時点で生きている人間』に英霊が宿ったという形だろう。実際に俺はアーラシュと会話したこともないし、俺がアーラシュ本人な訳がない。

 

 力を与える代わりに願いをかけて血を血で洗う戦いを強制されてる訳だ。俺はその中で偶然、何十億分の一の確率で当たっただけに過ぎない。

 

 最も恐ろしいことがあの場にいた俺以外のサーヴァントは『本物のサーヴァント』だった。俺のような奴は誰一人いなかった。

 

 セイバーこと皇帝ネロ、ランサーことアーサー王はいい。キャスター、あいつの正体だけが分からない。奴も物凄く特殊だってことは感じたが正体を掴むまでには至らなかった。

 

 オーフィスとやらを味方につけていたが白龍皇の一撃でアッサリ消滅したし、まあ肉体的にガチガチな白龍皇の全力(?)でキャスターが殴られたら消滅待ったなしだよな。

 

「真名だけは勘弁してくれ。真名が判明するだけで致命的な弱点が露見する場合があるんだ。それに加えて宝具もばれて対策を組まれる可能性もある」

 

 俺の口調が気さくになってしまっているが真剣な顔をして聞いてくれている。兵藤先輩だけ置いてけぼりにされているけど仕方ない。

 

「宝具?それは各々の英霊が使用する神器みたいなものと言えばいいのですか?」

 

「そういう認識で構わない。…………俺も随分と勘違いしてた」

 

 俺が使っていた弓は神器ではなく保有スキルの『弓矢作成・A』による弓矢だった。確かに弓の英雄だからザ・アーチャーとか名付けたけど…………今でも使いまわしてるから別にいいとするか。

 

 『ジ』ではなく『ザ』なのはその方がしっくりくるからだ。別に間違っていてもいいじゃないか、雰囲気さえよかったら!

 

 口外していないことはともかく、ロンゴミニアドは俺の手に余るものだ。セイバーの宝具もキツイんだが、というよりキツくない宝具なんてない。

 

 あの皇帝の黄金劇場は完全に独壇場&勝利フラグと言われるほどだ。しかもほぼ完全に近接に持ち込まれるからアーチャーにとって致命的だ。エミヤさんは帰ってください。

 

 一応は近接にも対応しているがセイバーとランサー相手だと力不足に思えた。やっぱり矢を放たないと弓兵の名折れだ。

 

 話を戻すがランサーの宝具は完全に突進型とも言えるだろうな。女神ロンゴミニアドだと最高ランクの宝具の数千倍という威力で文字通り大地を焼くが、今回戦った時はアルトリアだからそこまでの威力は出ないはずだが真名解放せずともあの威力、学校くらい軽く吹き飛ぶんじゃないか?

 

「そういえば擬似的な宝具として約束された勝利の剣(エクスカリバー)を使用していたな」

 

『あの剣は感じたところレプリカのはずだが、恐らくアルトリアが何かしらの手を加えたのだろう。本物には程遠いとはいえかなりの無茶をさせていたはずだ』

 

「最後には刀身がボロボロになっていたけど…………使い捨てと言えないだろうな。ま、あれを治せる奴が向こうにいたらの話だけどね」

 

 魔王ルシファーがそう呟くけど、本当にいるんじゃないかと思ってしまう。カリスマ性あるアーサー王が一人でいるとは思えない。流石に円卓の騎士はいないだろうけど鍛冶職人とかならついて行きそうだ。

 

 この世界は未だに神代の部分が多く残っているイメージが大きいし、時間をかけたら作り出すだろう。

 

『…………アルトリア、お前の願いは一体なんなんだ?何を後悔してこの様な戦いに現れたんだ?』

 

 ドライグの呟きが喋っている最中の俺たちに聞こえた。そこに込められているのは怒りなのか悲しみなのか分からない。もしかしたら欲望溢れる戦いを終わらせるために現れたのかもしれないし、あるいは自分の国を…………

 

 考えても答えは出ないが自分が知っていることは話した。まだ寝なくてもいけるがもう夜が明けそうになるため話はここまでとなった。学校もあるので長居はしたくない様だ。

 

 外を見たら既に俺たちの戦いで出来たクレーターが無かった。しかも何も起こっていなかったと言われても信じるほどに自然な校庭に戻っていた。

 

 …………それでも始まってるんだ。何でもない日常の中で俺達の聖杯戦争が、誰も知らない聖杯を取り合うための殺し合いが。待てよ、肝心なことをすっかり忘れていた。

 

 

 俺の願いって何だ?

 

 




アルトリアもネロもクラスが増えてきました、さてどうしましょう?

帝都術「そろそろ私の礼装も出てきてもいいんじゃないですかね?」

帝都殺「その前にわしが出るわ!ほれ、かの宮本武蔵が出てきそうな7本勝負にな!」

帝都術「(まあ三下臭いし無理だろうなぁ、多分)まず貴方どこから湧いて出てきたんですか」

帝都殺「え、わし今回の聖杯戦争の参加者やないがか!?」

*ここでの出来事は本編とは一切関係ないし触れもしません。

帝都殺「なんじゃとー!?」

帝都弓「文字だけだとワシと被っておらんか?」


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夏の休日

 夏休み、それは学生にとって課題さえ終わらせていれば余程のことがない限り自由になる長期間の休みだ。

 

 三大陣営の和平締結後、すぐに夏休みの時期になった。当然ながら学生である俺も夏休みだ。課題は割とすぐに終わりそうだけど、もっと重要なことがあるからな。

 

 この夏休みの間は外に出ることが多くなる。それ故にいつ、どこで、何回敵と接触するというリスクも大きくなる。流石に街中じゃ始まらないだろうけど、本当に用事が無ければ場所を変えて殺し合うことになるだろう。

 

 下手すれば例のテロリストやらが接触してきて所構わず戦闘になりかねない。全くもって嫌な時期だ。

 流石に空いた期間がかなり長かった故にセイバーがうちの近くまで来て戦いに来た時はヤバかった。セイバーが宝具を解放しようとした直前でミルたんが近くを通らなければやられていた。

 

 その後はセイバーがミルたんを問い詰めつつ何処かへと行ったんだが…………それはまた別の話。

 

 そう言いつつも今、買い物で外に出なきゃいけないんだが…………

 

 そんな考えをしていたら携帯に電話を知らせるメロディーが流れ始めた。相手は…………またアザゼルか。あんた三日に一回の頻度で電話をかけてくるなよ。

 

「もしもし?また軽率に電話してって怒られるぞ?」

 

『何で知ってんだ…………まあ今回はちょっとした用件だ。冥界に行く気はないか?』

 

「死ぬ予定なんてないんだが?」

 

『それは冥府行きだ。俺が言ってんのは悪魔の領地の方の冥界だ』

 

 あ、冥府もあるんだ。冥界と冥府ってなんか似たような感じがするけどかなり違うんだろうな。

 

「いや、悪いけど遠慮させてもらう。俺に興味ある人達はいると思うけど、誰かの眷属になるつもりもないし、例の関係者がそっちにいかないとは限らない」

 

『…………ああ、アーサー王とセイバーの時みたいにか。確かにあれは俺たちでも気づかないほどだったからな。分かった、俺が話しつけといてやる』

 

「ところで何でいつもアザゼルが俺の連絡係みたいになってるんだ?オカルト部顧問になった訳だしリアス部長でもいいんじゃないか?」

 

『それは無理だな。お前らの件は俺たち上層部が預かることになってる。イッセーにもそこら辺の口止めはしてあるから簡単に聖杯戦争の情報は漏れないはずだ』

 

「そっちでも探ってるんだろうけど、まあ結果はないか」

 

『神器の捜索だけでも難航してんのに神器じゃない聖遺物を堕天使に向かって探せはキツイぜ?』

 

 だろうな、と一応言っておいた。故聖書の神とやらは自身ですら殺す物の管理すらまともに出来てない杜撰な奴だと思えた。天使も信徒も割と杜撰なところあるんじゃないかなーと思うこともしばしばだ。

 

 ゼノヴィア先輩とか勢いで悪魔になったりとかしてたし、本当に大丈夫なのかと何度も聞き直したくなるほどだ。

 

『引き続きこっちでも例の物を探す。そっちでも何かあったら知らせてくれ』

 

「ああ、分かった」

 

 用件はそれだけで電話が切れた。さて、そろそろ買い物にでも行くとするか。

 

 異例だろうけど異形が蔓延っているせいか随分と長期にわたる静かな聖杯戦争だ。ほんと、いつ誰が襲い掛かってくるか警戒し続けないといけないし精神が擦り切れるかと思うよ。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 アーチャーこと芦屋新志が拠点としている駒王学園から約100km離れた某所の街の夏休みに入ってすぐの事である。

 

「ここら辺はスイーツ店が多いですね。流石に全部は回りませんよ?スイーツは特例がない限り1日5回までです」

 

「我、あのクレープ食べてみたい」

 

「ずいぶんバナナやリンゴを盛ったクレープですねぇ。まあ、今日はまだ何も食べてないですしいいでしょう」

 

 白スーツ姿でサングラスをかけたキャスターとお供(?)のオーフィスが街を歩いていた。

 

 キャスターは街を歩くことについて迂闊だと進言はした。しただけでオーフィスを止めることはしなかったので保護者としてついていくことにした。

 

 まずオーフィスが金銭を持っていないことと、幼い姿をとっているもあり下手に目を付けられてオーフィスを警察に連れて行かれるのは後が面倒だからだ。

 

 なお、オーフィスの服装はキャスターが用意したゴスロリ調の物で彼女だけでも目立つのにお付きがついてはようでさらに目立っている。

 

 そんな中で屋台のクレープを買おうとしているのだから神経が図太いとしか言いようがない。

 

「すみません、この夏限定フルーツ盛り盛りクレープアイス付きを一つ」

 

「いえ、それを二つでバナナクレープを一つ追加です」

 

 キャスターの横に割り込む形で知っている声が勝手に追加注文をしてきた。

 

「奢りですよねキャスター」

 

「いや、何で貴女が割り込んでくるんですかねぇ?」

 

 もう既に店主がクレープ生地を三つ分作り始めているので手遅れだがキャスターが予想していなかった人物がいた。

 

 それはもちろん腹ペk…………ではなくランサーである。さすがに鎧姿ではなく現代に合わせた私服だ。

 

「まず貴女別のところにたはずですよね?確かヨーロッパあたりに」

 

「あそこにライダーがいると聞いたので旅行ついでにで行ってきました。私たちが着いた時には既にアフリカ大陸へ移動してましたが」

 

「旅行、というのはあの少年とですか」

 

 ランサーがただ一人で来てきたわけではない。彼女の隣に一人の少年がついてきていた。赤毛でまだ中学生くらいで特殊な力を保有していて、心のどこかが死んでいる少年とキャスターは判断した。

 

「私が彼と一緒にいることは貴様には関係ないことだ。手出しするなら分かっているな」

 

「おお、怖い怖い。貴女の聖槍は恐ろしいですからね。現代だと私、かなり弱いですし」

 

 緊迫感が強くなっていく中でクレープが出来たらしい。支払いは全てキャスターだった。

 

 本当に遠慮がないと呆れつつも律儀に支払うキャスター。そのクレープを少年とオーフィスに渡すランサー。まるで養子二人を連れた夫婦にも見えた…………

 

 もちろん、そんなフラグは微塵もない。立つとすればランサーと少年だ。

 

 しかし、キャスターはランサーと少年の様子を興味深く観察していた。実はランサーとセイバーから計6回ほど殺されている判定を受けているのだが、その中で明らかに手を抜いていたのがランサーだった。

 

 戦いに消極的な部分を不審に思って調べてみたが結果はなし。偶然にもここで出会ったことにより理由は分かったのだ。

 

「ランサー、貴女しばらく本気で戦うつもりはありませんね」

 

「さて、何のことだか。行くぞシロウ」

 

「ちょ、待ってよアル姉!」

 

 夏限定フルーツ盛り盛りクレープ(アイス付き)を食べつつ少年を置いてけぼりにしようと歩き出し、少年はその背中を追う。

 

「やれやれ、思った以上に長くなりそうですね。ライダーは今アフリカにいると言ってましたが、アサシンとバーサーカーはまだ行方が分かっていないですし」

 

 目立つような戦う力のない彼は普通の時はもちろん、特殊な聖杯戦争故に念入りに準備を行わなければならない。自身が現れてから既に何年も経過していてもだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

「まあ今は英雄派をこっちに引き込むことを優先すべきですかね」

 

「はむはむ、甘い」

 

「まあクレープですからねぇ。そういえばランサーに肝心なことを聞き忘れてました。いつ現れたのでしょうかね(・・・・・・・・・・・・)

 

 ま、答えてくれるはずないんでしょうけど、と最後に付け加えた。敵同士でペラペラと情報を喋る者などいないのだ。ランサーの場合はほぼ真名がばれている為あまり気にしていない節もあるが、アーサー王の信仰がかなり大きすぎるのは確かだ。

 

 その子孫を名乗る一族を調べた結果、カリバーンに値するものがあったらしい。もしかしたらそれも回収しているのかもしれないとキャスターは踏んでいる。

 

「キャスター、次はあれ」

 

「はいはい」

 

 このあと4時間街を歩いて食したスイーツは12個。キャスターと縁を切るという脅しを覚えたオーフィスは5個の約束を軽く破ってたくさん食べたのでした。

 

「結局私の財布が打撃を受けただけのオチにすり替わってませんか?割と重要なこと入ってた筈ですけど」

 




術「最近、私ネタキャラ化してません?」

無限龍「しらない」

術「前触れなく殴り飛ばされたり脅されたりで踏んだり蹴ったりですよもう」

帝都狂「だったらオレを出させろ!強いやついっぱいいるだろうが!」

術「貴方もお帰りください。書き手が帝都好きなのは分かりましたから、オーフィスさんやっちゃってください」

帝都狂「グハァッ!オレが幼女に一撃で倒されるだとー!?」

突如現れた帝都狂、オーフィスのパンチで心臓消滅して撃沈。


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ライダーの行方

リアルは辛い、ガチャも当たらない、更新全くできない、最近再燃してたまにパックを買う遊戯王…………

Wヘリックス×2&クリスタルW×2「やあ」

間違いなく遊戯王に運を吸われてますこの頃


 最近はあまりつけないテレビをつけてみた。聖杯戦争が始まってから常に警戒しつつ自宅で過ごしているが、そろそろ全陣営に場所バレしている可能性もあるからどうしようか悩んでる時だった。

 

 深く考えすぎてもダメだと思いつつテレビのニュース番組を見たんだ。それがキッカケになるなんてその時は思いもしなかった。

 

「いつの間にかあの芸能人離婚してたんだ」

 

 独り言を言いつつアザゼル総督から来ていたメールを確認する。そういや冥界に行ってたんだっけ。そこで猛修行してレベルアップを図ろうとしてるらしいけど大丈夫かな?

 

 特に姫島先輩と塔城さんが自分の力に向き合ってない感じを出してたし、さらにトラウマになってると見ている。正しいかどうかは定かではないけど少し心配だ。

 

『速報が入りました。アフリカ大陸の一部がテロリストに占拠されたとの情報が入りました』

 

 テロリストがアフリカの一部を占拠ってある意味スケールでかくないか?神器を使ってもそんな簡単に。

 

『テロリスト首謀者はイスカンダルと名乗っており全世界に向けて世界征服を行うと宣言をしました。なお、映像は入手できませんでしたが首謀者の写真はこちらになります』

 

 ……………………いや、まさかそんなことはないだろう。俺の知ってるイスカンダルはマケドニアから征服して行ったんだし世界征服なんて頭がおかしい奴らが言うことだ。

 

 そしてテレビ画面いっぱいに首謀者の画像が映し出された。

 

 横からでも分かる筋骨隆々の偉丈夫。ひげ面には粗野な印象と威厳、そしてテレビ越しでも不思議な愛嬌が混在するように感じる。そして隣にいるのはロングヘアーで不機嫌そうな顔をしている男性。

 

 

 …………………………………………おい、何してるんだあんたら。

 

 

 思いがけずライダーの正体を知ってしまった。いや、宝具は分かるけどいろんな意味で相手が悪い。

 

 ライダーことイスカンダルがこの世界で何が厄介なのかというと、彼のカリスマ性と俺は思うんだ。考えてみよう、割と欲望に忠実な彼だが圧倒的カリスマ性でFGO内のマスター達とZero視聴を感動させた男でもある。

 

 力があろうが無かろうが征服王に忠誠を誓う者もたくさんいるだろう。それが神器使いであろうともだ。

 

 困った…………もしもの話だが悪魔や堕天使の上位に値する奴がライダー側についたらこっちの情報も漏れるだろう。固まった思想をほぐすのも上手いのが征服王だ。

 

 行方不明とされている神滅具所有者を誘ってるかもしれないけどそう簡単にはいかないだろう。なにせ兵藤先輩みたいな曲者ばかりが歴代の神滅具所有者だってアザゼルから事前情報を貰っている。

 

 それにやっぱり単純な弓矢だけじゃ攻略が難しくなってきたことを感じてきている。宝具は威力が高いけど俺が死んでしまうデメリットがキツすぎる。せめて5回は使いたいんだが…………

 

 もし神器に一回死ぬのを堪えるってものがあれば借りたいもんだ。それくらいじゃないとこの聖杯戦争には勝てない。

 

 …………叶えたい願いもないんだけどな。マスターの立場にあたる人がいれば何か変わってたかもしれないけど、はぐれサーヴァントみたいな感じだからなぁ、俺。

 

 あの時、ランサーとセイバーはともかくキャスターはパートナーと一緒にいた。もしかしたらキャスターだけでなく俺やランサー達にもマスター的な存在がいるんじゃないかって思うんだが、誰かとのつながりは全く感じられない。

 

 話が逸れていったな。今はライダーのことについてどうするべきか考えよう。

 

 ライダーは今アフリカ大陸にいるってことだから俺が向かおうにも遠すぎる。魔法とか使ったら別だが向こうの人材によってはすぐに対応される可能性だってある。

 

 人材によって状況が変わるが、ライダーの純粋な戦闘力は明らかに上位になるだろう。FGOじゃなかったけど例の戦車を出して雷を放ちつつ移動されまくったら矢が当たるかどうか怪しくなってくる。

 

 ゲームのようにぽんぽんと当たるわけがない、現実を見て練習もしないとな…………

 

 うーん、練習場所はないがどうするべきか。弓道場も既に立ち入り禁止にされたんだけど、バレなきゃ大丈夫か。

 

 動かない的を撃ち続けるのは意味ないのかもしれないが、もっと連射をスムーズに出来るように訓練しておこう。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 一方その頃、彼の隣の部屋にて。

 

「……………………なんということだ。魔法少女なのに熱い演出と泣かせるシナリオ、これを名作と言わずになんというか!」

 

「まさか全部見るとは思ってなかったにょ」

 

 セイバーがミルたんの部屋に上がり込んで魔法少女ミルキーのDVDを一括で視聴していた。なお、これは隣の住人にバレてるがどうしようか悩んで今のところは何もないという結論に至ってアクションを起こしていなかった。

 

「この世界の仕組みはある程度理解できた。なるほど、セイバーという立場に甘えていたが、転職するのも悪くない!」

 

「セイバーちゃんは聖杯?をめぐって争ってたのには理由があるのかにょ?」

 

「もちろんだとも。だが、余は聖杯に願うことは今の所ない。ううむ、此度はかなり異色な上に神秘が残ってるせいで本当に願いが叶うかどうか」

 

「それはミルたんが魔法少女になることも?」

 

「無論、願えばなれるだろうな。いや、待てよ。彼女(?)の魔力は目をみはるほどあるはずなのに一切漏れていない…………マスターとしては最適なのではないか?うむ、最適であろう」

 

「ちょっと聖杯を手に入れてくるにょ」

 

「待つのだ!」

 

 案外マスター候補(・・・・・・)として悪くない人材を見つけたセイバーは本気で単身で聖杯を取りに行こうとするミルたん(漢の娘)を止める。

 

 …………何故だろう、放置してても本当に聖杯を取ってきそうだ。

 

「魔法少女を目指す者よ、余のマスターにならんか?無論、聖杯を手に入れた暁にはその願い叶うであろう。…………ほっといても叶いそうだ」

 

「やるにょ!セイバーちゃんと一緒に魔法少女を目指すんだにょ!」

 

「うむ、これで契約は成立だ!これでようやく魔力不足を補える」

 

 こうして破天荒な二人組が出来上がる。これが聖杯戦争に、いや、世界にどう響くかはまた別のお話…………

 

「……………………嘘だろ、おい」

 

 隣の住民はセイバーに(ある意味)最強の共がついたことにより軽い絶望を覚えたとか何とか。




術「明らかに主人公より主人公しそうなペアができましたよ!?」

龍「英雄派、ライダーに取られてた」、

術「それもそれで危険事項なんですが…………展開が無理矢理すぎる、これも世界の意思ですか…………」

龍「キャスター、何を言ってる?」

術「いえ、こちらの話ですよ」


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王の兵達とみに○○

 

 ウェイバー・ベルベットにとってそれは理不尽だった。魔術の講師をしていたある日突然イスカンダルを名乗る大男に連れ去られて閉じ込められた挙句話をしようなどと言い出された時はどうするか悩んだ。

 

 魔術師としては三流のウェイバーだが、講師としては分かりやすく教え子が優秀になるため人気があるが、本人は気づいていない。

 

 逃げようにも魔術は軽くいなされ弾かれるため話し合いに応じるしかなかった…………その話し合いはただの夢の語り合いになることも知らずに。

 

 イスカンダル大王は大嫌いな人種だ。卑屈なウェイバーにとって彼はウザく見え、そして眩しい存在だった。

 

 言い出しっぺのイスカンダルから夢を語り、ウェイバーはそれを眉をひそめながら聞いた。

 

 世界征服、かつてイスカンダル大王が成し遂げようとして道半ばで潰えた夢。日本で例えるなら馬鹿な子が七夕に短冊に書く程度だ。それでもタチが悪いことに大男は本気だった。

 

 最近胃痛が増してきたばかりのウェイバーに追い打ちをかけるのかと頭を悩ませる彼に対して夢を語れとせがむイスカンダルの図はある意味面白いものになっていた。

 

 それが大きな間違いだったと今は後悔しているが。

 

「先生、またため息をついてるんですか。日本じゃため息をしすぎていたら幸せが逃げていくと聞きましたが」

 

「…………曹操か、そんなものは迷信だ。少なくとも魔術では立証されていない」

 

「相変わらず堅苦しいですね」

 

 曹操と呼ばれた青年があきれた様子で言うが、ウェイバーは眉間のしわを寄せるだけだ。

 

「大体、なぜ私が軍師なんだ!別に私でなくとも最良の参謀がいるだろうにあの馬鹿は!」

 

「まあまあ、先生のおかげで俺たちは勝ててるんですから。王の参謀として、俺たちのような馬鹿者を導けることほどの技量がある貴方はもっと誇ればいい」

 

「自覚があるなら問題を起こしてくれるな!いつも私にスカウト後の教育という名目でお守りまで押しつけやがって…………」

 

「それはヘラクレスとジャンヌに言ってください」

 

 かつて禍の団に所属していた曹操が率いる英雄派はイスカンダル大王を名乗る男が現れたという話を聞き、テロリスト特有のフットワークの速さで現地に向かった。

 

 本人たちは美香氏の英雄の子孫であり魂を受け継ぎ英雄を目指しており、イスカンダルもその魂を受け継いだ者だと考えていた。

 

 蓋を開けると逆にスカウトされた。

 

 イスカンダルは彼らを逆に世界征服に勧誘したのだ。もちろん一回は断ったが、なぜ英雄を目指しているかなど問答をしているうちに曹操らの心は折れた。

 

 相手がイスカンダルを名乗る現代人だったら一笑に尽きる話だ。だが、本人という本物という英雄の前では彼らが英雄の子孫だから英雄になると言い張っても論破される、何を言おうと穴を突かれ勝てないのだ。

 

 さらに極めつけにイスカンダルは彼らに宝具を見せつけたのだ。かの砂漠には彼らより力、武器は衰えど一人一人が英雄の軍勢を。

 

 軍勢に負けたが殺されず、ライダーは彼らに考える時間まで与えたのだ。結果、英雄派は禍の団を裏切りライダー陣営につく事になった。

 

「まったく、あの時はライダーが大体の魔力を使ったとはいえ私からも不意打ちでエネルギーを取られて意識を失いかけたんだぞ…………」

 

 今でもぐちぐち言うほど根に持っている先生に曹操は苦笑するしかなかった。

 

「それはいいでしょう、ところで次の侵略先は…………」

 

「予定が変わった。日本に行くぞ」

 

「日本?なぜいま極東に?」

 

「まったく、侵攻もそうだが本来私とライダーにはまずやることがある」

 

 またため息をついて今後のことを思う。力を安定化させていないのにこんなに部下を増やして後のことは考えていない能天気なライダーを思い、眉間にしわを寄せた。

 

「王の覇道に聖杯は必要だ」

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「…………まずい、非常にまずい」

 

 寝そべりながら俺、芦屋新志は考えていた。

 

 隣の部屋からセイバーの声が聞こえたと思ったらミルたんをマスター認定していた。つまり、だ、キャスターがオーフィスとやらと一緒にいたのは彼女がマスターであるからではないか?

 

 ニュースになったライダーもロード・エルメロイII世っぽいのが見えたため彼がマスターなんだろう。

 

 そして俺はマスターに当たる人物はいない。令呪を持つマスターがいないとダメじゃんこれ。

 

 まず最初から野良サーヴァントという事なのが疑問に残るが、敵にマスターが居るとなれば令呪ブーストをしてくるだろう。

 

 不意打ちで令呪ブースト攻撃食らったらどうなる?流石に俺もひとたまりない。

 

 本格的にまずくなった…………ん?インターホンが鳴ったな。まだ昼前だが何か宅配便でも来たか?

 

「すみませーん、お届け物でーす」

 

 敵意どころが魔力反応すらないただの人だ。本当に宅配便のようだ。多分だけど母さんが何かを送ってきたんだろう。

 

 ひとまず判子を押して少し大きめのダンボール箱を受け取る。たまに送ってくる食品にしては少し大きいような?

 

 いや待て、これ俺でも見逃しそうなくらい隠蔽をかけてやがる。送ってきたのは母さん名義だが、これは何なんだ?全く中身が見えない(・・・・・・・・・)

 

 ガタガタッ

 

 こいつ動くぞ!?魔法生物でも入ってるのか!?それやりそうなのはキャスターだが生きてたとしても生物を送りつける回りくどい事をしない筈…………多分?

 

 弓矢を出して鏃でガムテープを横から切る。ガタガタと動いてるけど、人目がある場所で開けられるわけもない。

 

 人がいなくても昼前にこれを外に持って行きたくないし下手に中身をぶちまけた時が怖い。

 

 縦に貼ってあるガムテープを鏃で切りすぐに構える。

 

「…………ふぅ、宅配便で運ばれるのはダメですね」

 

「………………………………は?」

 

 中から出てきたのは、その、ミニくーちゃんやイアソンくんとかエジソン君は分かるだろうか?それの母さん版だった。

 

 …………ああ、なんか似てるとは思ってたよ、でも世の中には似てる人は何人かいると言うくらいだし気にしていなかった。だが、それで確信したよ。

 

「久しぶりですね新志、元気にしてましたか?」

 

「…………母さんがバーサーカーだったなんて知らなかったよ」

 

「あらまあ、何故私のクラスを?」

 

「アサシンとバーサーカー以外は知ってる。んで、母さんにアサシンは似合わない」

 

 首をかしげる小さな母さん、いや源頼光はクスクスと(これが本人の姿なら)妖艶に笑った。

 

 新志がまだ直接、間接的に知らないクラスはアサシン、親子で殺し合いをしなければならない事実を突きつけられるも、悲しい事だが聖杯戦争はまだ序盤であった。




*注意、ここから勢いとノリが熱いうちに書いた経験値次元です。違和感覚える人はさっと読み飛ばしてください。









術「時械神ラツィオンを召喚、ターンエンド」

龍「む、ドロー、スタンバイに千ダメージ受けてメイン、トーチ、トークンからリンクリ2枚、アカシックでトーチ戻す、トーチ」

弓「まーてい!何でお前ら遊○王やってんの!?」

龍「黙って、今いいとこ」

術「ギャグ空間とはいえ来ちゃダメでしょう。この作品サボってたのはリンクスが楽しくて遊戯○熱が再燃したからですよ。他の作品も遊戯王ネタメインで進めてますし」

弓「それ言っちゃダメだと思うんじゃが」

帝都弓「儂の真似をするんでない!」

弓「登場人物ですらないのが来た!?お帰りください!」

龍「FWDでトーチとラツィオンバウンス、総攻撃」

術「あー、これ私の負けですね」

弓「さらっと○戯王続けんなし!」

帝都弓「あ、儂も混ぜて。六武衆持ってきた」

弓「何で精通してる!?刑部姫来ませんでした!」

ちゃりん娘「すみません、この人連れて帰りますので」

弓「また別の人キター!?」


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