フェバル〜少女の行き先〜 (月白弥音)
しおりを挟む

第1章 魔法科学の国 モーズ
1.それ、ゆーかいって言うんだよね!


「あなたはもうすぐ過酷な運命を背負わなきゃいけなくなる。だから……」

 

小さい頃に読んだ絵本に出てくるようなとんがり帽子をかぶった女の人があたしの前にいきなり出てきて……

 

「私に殺されて?」

 

すごいことをお願いされました。

 

「ふえええええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えーっと……」

 

「お願い、あなたに時間がないの」

 

「あたし知ってるよ、これってゆーかいって言うんだよね!」

 

「……は? い、いや違うわよ!」

 

「悪い人のお話は聞かないもん!」

 

そう思ったらすぐ行動!

とにかく逃げる!

なんだか、後ろですごい音がした気もするけど気にしないでとにかく走る!

全速力で走って私たちの秘密の通路とかも使ってとにかく走った。走って走ってふと後ろを見ると魔女みたいな人は追いかけてきてなかった。

よかったぁ、逃げ切れたんだ。

走り回って苦しい息と心臓が少し楽になるまで休憩してからお家に帰ろっと。ちょっと疲れちゃったよ……

でも、あの人なんであたしのこと……?

あたし、そんなに可愛いわけでもないし、背もちっちゃいし、胸も……ううん、きっとこっちはこれからだよね!

近くのドリンクスタンドバーに寄っ掛かりながらさっきの人のことを考える。

あれ? でもそう言えばあたしのこと殺すとか……も、もしかしてゆーかいじゃなくて人殺し!?

大変だよ、事件だよ!とにかく大人の人に知らせなきゃ……

 

「見つけたわよ」

 

1番近くにいた大人の人は今一番会っちゃダメな魔女みたいな人。

この人は大人の人に知らせて捕まえてもらわないと……って

 

「ええ!?!?」

 

魔女みたいな人!?

なんで?

ちゃんと逃げたはずなのに!

 

「なんでここに!?」

 

「私の力にかかればこんなもんよ……ぜぇぜぇ……」

 

あ、あたしが逃げた道を一生懸命走ってきたんだ……

この人面白いけど、余計怖いよ!

 

「なんでそこまであたしを狙うのよ! そんなに可愛くもないのに!」

 

「可愛い? 私は別にそんなこと関係ないし、どっちかって言えば可愛いほうじゃない」

 

「え? そ、そうかな……う、ううん! そ、そんな言葉で騙されないんだから!」

 

危ない、ここで喜んだらあの人の思うツボってやつだよね。

でも可愛いっていってもらえてちょっと嬉しかったなぁ……

じゃなくて!

とにかくまた逃げなきゃ!

足に力を入れて走る用意をする。

 

「ま、待って!」

 

あ、転んだ。

 

「……いったーい!」

 

「だ、大丈夫……?」

 

転んだ人をさすがにほっとけなくて振り返る。

 

「大丈夫よ、いつもの……って、それはどうでもよくて。とりあえずあなたセレイル・レッダローズであってるのよね!?」

 

びっくりして近づこうとしてたあたしはすこし後ずさった。

 

「どうしてあたしの名前知ってるの!?」

 

「あなたはもうすぐ過酷な運命を背負わなきゃいけないの。私はあなたにそんな思いさせたくない。だから、お願い、私に殺されて」

 

なんだか、嫌っていっちゃいけない気がしてここから動けなくなる。

そして魔女みたいな人はなにか小さな声で呟いて手に持ってる杖をあたしの方に振り下ろした。

 

 

…………

 

 

 

「え、えっと……」

 

「この世界、許容性は無駄に高いくせに魔法要素は皆無なのね……いえ、なんとなく気づいてはいたけれどもね」

 

なにそれ、魔法?

あれってゲームとか絵本とかに出てくる空想のものでしょ?

 

「まあいいわ」

 

杖を今度はかちゃかちゃいじって杖の先から鈍く光る何かを出した。

もしかして、それ、刃物……!

に、逃げなきゃ!

そう思ったのに足が鉛みたいに重くて動かない。

怖い、怖いよ……

 

「大丈夫よ、一瞬で終わるから。むしろ動いちゃう方が痛いからじっとしててね」

 

優しそうな笑顔であたしに刃物を向けてくる。

じっとしててって言われてもあたし動かないんだけど……

 

「そう、いいこね。……ごめんね」

 

迫ってくる刃物が怖くて私は目をつぶる。

あたし、殺されちゃうんだ。

まだ友達と色々したいことあったのにな……

まだ死にたくないよ……

痛いのも嫌だよ……

 

 

 

嫌だよ……!

 

 

 

 

 

目をつぶって待っているとなかなか痛いのを感じない。

もしかしてもうあたし死んじゃったの?

そう思って目を開けると鬼のような顔をしてあたしの首の寸前で止まっている刃物を押し込もうとしてる魔女みたいな人。

あ、目があった。

 

「「うわああああ」」

 

お互い慌てて飛び退く。

びっくりしたぁ……

でも、あれ?

あたし、死んでない……?

 

「あたし、生きてる……?」

 

「そんな、また……またなの……」

 

殺されなかったことを喜ぼうとした途端

 

ーードクンッ

 

「っ!」

 

凄く胸が痛い。

痛い、痛い。痛いよ……

 

「まさか、もう覚醒が始まってたなんて……」

 

「か、かくせい……?」

 

あ、すこし痛いの治ってきた……

 

「そう、あなたはフェバルとして覚醒した。あなたはもうすぐこの星を離れて星から星へと渡り続ける旅を続けなければならない」

 

この星を離れてって、みんなとお別れしないとなの……?

魔女みたいな人のお話を聞いてる間にもあたしの体が半透明になり始めている。

え、これなに……?

なんであたしの体……!

 

「星脈が動き出したのね。もうすぐあなたは別の星に行かなければいけない」

 

そんな……みんなと一緒にいろんなことしたかったなぁ……

もうさよならなんだね……

 

「フェバルはとても強力な能力を持つの。あなたの能力はなにかわからないけどね」

 

能力……?

そういうのって現実にあるんだ。

 

「ねえ、おばさん」

 

「お、おばっ……」

 

「あ、えっとお姉さん、お名前なんていうの?」

 

「私はエーナよ。ごめんなさい、あなたを助けられなかった……」

 

「えーなさん、ありがとうございます。でもあたし大丈夫だよ。みんなとお別れは辛いけど、またたくさん友達作るもん」

 

「……強いのね。あ、それからいってなかったけど……」

 

エーナさんの言葉は最後まで聞けなくてあたしは一瞬で星の外にいた。

これがあたしがいた星……きれい……

不思議と悲しくはなかった。

もちろんみんなとお別れは寂しいし、辛いけど……

なんだか違う星に行くのもなんだか楽しみだった。

あ、でもパパとママにはちゃんとさよならしたかったなぁ。

多分聞こえないと思うけど、パパ、ママ、さようなら。

どこに行くのかよくわかんないけど頑張ってくるね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2.さあ違う世界の冒険の始まり~!

真っ黒な空間に白い光が点々とある、よくわからないところを私は進む。

なんだか、こんなこと考えちゃうのは違うかもだけど、きれいだなぁ……

せっかくならママとパパにも見せてあげたかったな……

いつも家にいてくれて美味しいご飯を作ってくれた優しいママ。

怒ると怖いけどいつも一緒に遊んでくれるパパ。

もう会えないんだよね、きっと……

ううん、弱気になっちゃダメッ!

これから自分でなんとかするしかないんだから!

でも……

私、英語もできないけど他の星の人となんて会話できるのかな!?

うぅ、なんだか急に不安になってきたよ……

そんなことを思ってるうちに真っ黒なところから抜けて図鑑で見たことある宇宙に出た。

あれ、私、宇宙でも生きてられるんだ……って、今更かな?

あの星が、私の、最初の行き先……?

緑が多そうできれいなとこだね。

あまり、ガズディア、私が生まれ育った星と変わらない感じがするよ。

ところでこれ、ちゃんと着地できるの……?

絶対これ、落ちてるよね!?

ほんとに死んじゃうよ!?

怖い怖い怖い怖い!

ジェットコースターって好きだったけどこれは怖いよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶつかっちゃう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶつからないように祈って私は目を瞑る。

すると不思議なことに落ちてるのが突然ゆっくりになって、私はきれいに着地できた。

なぁんだ、さすがに地面に直撃、なんてことにはならないようになってるんだね。よかったぁ……

それにここの地面思ったよりも柔らかいんだね。

なんていうかふかふかの土みたいな感じで。

学校でお花とか植えるのによく使ったやつみたいな感じかな。

それにしても、地面はちょっと湿っぽいし、周りは木がいっぱいあるしここはどこかの森なのかな……?

とにかくわからないときは歩いてみるのが一番だよね!

さてと、とりあえずこっちに歩いてみればいいかな。

さあ違う世界の冒険の始まり~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ってしばらく歩いてみてもあるのは木、木、木……

もうどこに向かって歩いてるのかわかんなくなってきたよ。

どっちに向かって歩くと元のところに戻れるかもわかんないし、どうしよ……?

おなかもすいてきたし、のども乾いたし、なんだか悲しくなってきた。

そういえばえーなさん、最後に私に何か言おうとしてた気がするけどなんだったんだろ?

まあいっか、えーなさんもいろんな世界旅してるって言ってたしまたきっと会えるよね。また会った時に聞けばいっか。

うん、別のこと考えて紛らわそうとしたけどもう終わっちゃった。

はぁ、おなかすいたなぁ……

誰かいないのかなぁ?

もうそろそろお空も暗くなってきたし、ほんとに不気味になってきた……

夜の森ってこんなに怖かったんだね。

ちょっと怖いけどとにかく誰か探さなきゃ。

こんなところで死んじゃいやだし。

絶対頑張るんだもん。

諦めないんだから……!

 

 

 

 

 

 

 

 

そう決意してから私はかなり長い時間を歩いた。

でも誰かに会うこともなくただただ暗い森が続くばかり。

もうくたくただよ……

やっぱり私がこんなところに来ちゃいけなかったんだ。

私、やっぱり何にもできない子なんだ……

泣かないって決めてたのに、一人で頑張ろうって思ったのに……

一度あふれちゃった涙はもうどうしようもなくて。

 

「ママ……パパ……助けて……」

 

どんなに言っても助けてくれないことはわかってる。

大好きな人はもう一緒にいられない。

それでも、どうすればいいかわからなくて、ただ私は泣くことしかできなくて。

いつの間にか、私は疲れて寝ちゃっていた。

 

 

 

 

 

 

☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~

 

 

ダフォーズルース。フォーズルースと対になるもう一つの森。

フォーズルースと違って抜け出せないといことがなく、自然豊かってこともあって私たちにとっては大切な場所。

たぶんここがなくなったら私たちはみんな死ぬんじゃないかな。

それくらい重要な森を私は駆ける。

村の長から頼まれたフェンルの肉を取りにいかないと。取りにっていうか狩りに、が正しいか。

フェンルはこの森にいる最大の肉食動物。筋肉質の赤身はうまく料理すると固くならずにすごくおいしいらしい。

でも私たちの村では大体この肉を儀式用に使う。

なんでも村の守り神様がこの肉が大好物なんだって。

なんだか案外現実的な神様だと思わない?

もっと空想の食べ物とか、めったに手に入らないものならまだしもよくいるフェンルの肉って。ふふ、なんだか改めて考えるとおかしいや。

おっと、いいところでフェンル発見……ってあれ?

基本的に一頭で行動するはずのフェンルが三頭も一緒のところにいる……

まだ発情の時期でもないと思うしなんだろ……?

木の上から一回様子をうかがう。

あ、あれ!

もしかして、あそこにいるの、子供!?

なんでこんなところに倒れてるの?

ていうかなんで襲われてるの!?

いや、そんなことよりとりあえず助けなきゃ。

幸いまだ三頭が獲物を争ってくれたおかげで、まだ食べられてないしここから無音銃で避けられてあの子にあたっても困るから追尾弾をっと……

静かにフェンルの頭に吸い込まれた銃弾は音もなく彼らの意識を奪った。

ねえ、今の、ちょっとかっこいいよね!

っと、その前にあの女の子助けなきゃ!

首に指を当てて……うん、よかった、まだ生きてる。

とにかく村にこの子を連れて帰ろう。

フェンルは……この子おいてすぐ回収に来るから誰も食べないでね!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3.騙したんですか!?

「……では……か!」

 

「でも……し……!」

 

「……に……ば…………がい、ない……」

 

……あれ……?

誰かの話し声……?

私、確か森で……

これってお布団……?

なんで……?

 

自分の体じゃないように重たい体をなんとか起き上がらせようとして私は寝かされていたところから落ちる。

いたた……

全身打った……

 

「大丈夫!?」

 

「っ!」

 

誰かが私がいる部屋のドアを勢いよく開けて声をかけてくれた。

いきなりすぎてかなりびっくりしたけど……

 

「は、はい、大丈夫、です……えっとここは……?」

 

「ああ、ごめん! ここは私の家だよ。あ、そういえば自己紹介してなかったね、私の名前はエリサ・シュトラ。よろしくね」

 

「は、はい! よろしくお願いします! 私、セレイル・レッダローズです!」

 

なんか凄く大人っぽい人だなぁ……私よりだいぶお姉さんな気がするよ。

 

「ちなみに、私13歳だから」

 

「私の一個上!?」

 

うそだよね!?

こんなに大人っぽいし、こんなに胸も大きい、のに……私の、一個上……

 

「ま、まあセレイルちゃんはこれからきっと……ね?」

 

「そ、そうだよね! 私も一年くらい経てばエリサさんくらいになるよね」

 

「い、一年じゃきつくないかなぁ……」

 

ごめんなさい、勢いで言っただけなのでそんなに残念そうな目で見ないでください。

 

「ところであなたこの辺じゃ見ない顔だけどどこから来たの?」

 

「え、え〜っと……」

 

やばい、どうしよ!?

まさか違う世界から来たなんて言うわけにもいかないし……でもこの辺のこと全く知らないし……

う、う〜ん……

 

「もしかして記憶喪失とか?」

 

「そ、そう! そうみたいなの!」

 

「でもさっき自分の名前ちゃんと言ってたよね……?」

 

「え、あっ……」

 

ダメだぁ……ここは素直に言うしかないかなぁ……

 

「まあ、言いたくないなら言わなくてもいいわ。誰だって言いたくないこともあるしね」

 

ごめんなさい、言いたくないわけじゃないんだけど……きっと言っても信じてもらえないから。

 

「そんな素性がわからないやつをこの村に置いておいて大丈夫か?」

 

でっか!

背たかっ!

あとすごく顔怖い……

なんかすごく睨まれてる気がするんだけど……わ、私、何か悪いことしたっけ!?

 

「きっと大丈夫だよ、お父さん。この子からそういう悪意感じないし、何かしようとしてもここなら何もできないでしょ。だからとりあえず睨むのやめてあげて? セレイルちゃんすごく怯えてるよ?」

 

「そ、それはすまん……まあ、確かに何もできないな。それにあそこに行くなら中のやつらより信用できるか」

 

「うんうん! というわけで仲直り! あ、紹介するね、私のお父さんの……」

 

「アレクだ。さっきはすまなかったな。娘共々仲良く頼む」

 

「あ、はい! セレイル・レッダドーズです。こちらこそよろしくお願いします!」

 

「どうせ泊まるところのあてもないのだろう? うちに泊まるといい。幸いこの部屋は空き部屋で滅多に使っていないから使ってくれて構わない」

 

確かに私、これから泊まるところとか全く考えてなかった……

泊めてくれるならとっても嬉しいけどいいのかな……

 

「うちに泊まってよ、セレイルちゃん。お父さん、見た目はちょっと怖いけど結構優しいよ」

 

「見た目のことはほっとけ、今更どうにもならん。ああ、うちの迷惑とか考えてるなら気にしなくていいぞ。突然客が泊まりに来ることも多いし、ここに何かやることがあって来たんだろう? それが終わるまでの間くらいいてくれて構わんよ」

 

やることがあるというかただの偶然というかなんだけど……

きっと私の星を出て来たときと同じように突然連れていかれちゃう気がするからそれまでの間お世話になろうかな。

 

「それじゃあすみません、お願いします」

 

「すまないなんてことないよ〜! わたし、前から妹欲しいと思ってたから嬉しい! ねね、私のことお姉ちゃんって呼んで?」

 

「え、え〜っと……エリサお姉、ちゃん……?」

 

「はうぅぅぅぅぅ!」

 

エリサさんが床にゴロゴロし始めた!?

私、何かしたっけ!?

あれ、なんかさっきもこんなこと考えた気がする!

 

「ああ、あれはある意味病気みたいなもんだ。ほっとけば治る」

 

「病気なら病院行かないとダメじゃないですか!」

 

こんなゴロゴロしてるじゃかなり重症なんじゃないの!?

急いで連れて行かないと!

 

「病院? ああ、魔妖院のことか。久しぶりにそう呼んでるやつ見たな。もう随分と前に病院なんて言葉は消えたぞ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「それに病気って言っても別に本当の病気じゃねえぞ? エリサは単純にセレイルみたいな小さくて可愛い女の子が好きなだけだ」

 

「か、かわっ! そ、そんなことないですよ! っていうか騙したんですか!」

 

「悪い悪い、騙すつもりはなかったんだ。あまりにもお前がピュアすぎたというかなんというかで……まあしばらくすれば戻るから気にしないでくれ」

 

「わ、わかりました……」

 

結局エリサさん……エリサお姉ちゃんが元に戻ったのは日が落ち始めてから。

もう、村の中案内してくれるって言ってたのに……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4.ちびちびって言わないでください

 「本当に昨日はごめんね〜」

 

 「う、ううん! 大丈夫!」

 

 エリサさんに連れられてこの村の案内をしてもらえたのは結局次の日になってからだった。

 なんか、15歳にならないと暗くなってから外にでちゃダメなんだって。

 怖い獣が出るとかいってたけど本当かな……?

 隠し事してる気がするけど……あたしにはよくわかんないや。

 

 「セレイルちゃんは今まで何してたの?」

 

 「えっと、学校でお友達とおしゃべりしたり……」

 

 「学校!? セレイルちゃん実はすごくお金持ち!?」

 

 「え、え?」

 

 あたしのうち、そんなにお金持ちじゃないと思うんだけど!

 いつもお父さんのお給料日の近くはお母さんが家計簿見ながら頭抱えてたし!

 

 「学校ってみんなが行くんじゃないの?」

 

 「そ、そんなことできるわけないじゃない。学校にいけるのは一部のお金持ちだけよ。あなた、やっぱりグズミアとかにいたのかしら……」

 

 「グズミア? よくわかんないけどあたしは行ったことないよ」

 

 でもそっか、学校ってみんな行けるわけじゃないんだ……

 あたしの周りの子はみんないけてたから全然考えたことなかったや……

 

 「……私たちとは違うのにグズミアも知らない……? ってことはモーズとかエジックも知らないってこと……?」

 

 あれ、なんだかすごくエリサさんが悩んでる。

 あたしが知らない単語ばっかりだし。

 ほんとのこと、話したほうがいいのかな……

 

 「あ、ごめんね、セレイルちゃん。とりあえずお話ししながら歩こっか」

 

 「う、うん!」

 

 2人とも立ち止まってたから気を使わせちゃった。

 それともあたしがじっとエリサさんのこと見てたからかな?

 

 「えっと、この村はシュバントって言って私たちがまとまって生活しているの。狩りをしたり、作物を育てたりして協力して生活してるわね」

 

 「お金とかは?」

 

 「一応、違う町に売ったりしてお金は作っているけど、ここで売買をするわけじゃないからあんまり使ってないみたいね」

 

 「そうなんだ」

 

 なんだかのんびりしてる感じでいいなぁ。

 まだ少ししかここで生活してないけど、雰囲気がすごくあったかくていい感じ!

 

 「ここがぞk……村長の家。今はお出かけしてるからいないけど、今度挨拶しに来なきゃだね」

 

 なんかすごくおっきい家だなぁと思ったらやっぱりすごくえらい人の家だったんだ……

 って、エリサさん今挨拶しなきゃって言った!?

 ええ、そんなすごい人とお話ししたことなんてないから今からすっごく緊張しちゃうよぉ……

 怖い人じゃないといいなぁ。

 

 「あはは、そんなに怯えなくても大丈夫。すごくいい人だし、小さい女の子には優しいから」

 

 「そ、そうなんだ」

 

 別にろりこん? とかじゃないよね?

 学校でそういう人がいるって聞いたからちょっと怖くなっちゃう……

 

 「で、ここが村の出入り口。すごく綺麗な門でしょ?」

 

 赤と黄色で綺麗に塗り分けられた大きな木が鳥居みたいに組まれてる大きな入り口。

 すごく綺麗だなぁ……

 

 「村長とお父さんが2人で作ったのよ。すごいでしょ」

 

 「そ、そうなの!? それは本当にすごいね!」

 

 それにしてもエリサさん、本当にお父さんのこと好きなんだなぁ。

 なんだか、聞いててこっちまで幸せになっちゃう。

 

 「バカ娘、どこまであのおっさんのホラ吹きを信じてるつもりだ」

 

 「バカとは何よ。それにお父さんはちゃんとこれは作ってるもん!」

 

 あれ、この男の子は誰だろう……?

 エリサさんとあんまり仲良しじゃないみたい。

 

 「あの……」

 

 「なんだ……っ! お前……!」

 

 「きゃっ!」

 

 鋭く睨まれて私は思わず、エリサさんの後ろに隠れる。

 うぅ、ちょっと怖い……

 

 「こらステラ、こんなに小さい可愛い子を怖がらせちゃダメよ」

 

 「だがエリサ、そいつは……」

 

 「父と長の判断よ。詳しくここで話すわけにはいかないわ」

 

 「……大体把握した。すまなかったな、ちびっ子。俺の名はステラ・シュラウト。怖がらせるつもりはなかったんだが、見知らぬ顔だったからつい睨んでしまった。許せちびっ子」

 

 「ちびちびっていうのやめてください。私にはセレイル・レッダローズって名前があるんです」

 

 「それはすまない、セレイル」

 

 ちょっと怖いけど、悪い人じゃないかも?

 

 「あんたはどうしてこっちに?」

 

 「たまたまだ。少し狩りにでも行ってこようかと思ってな。お前らは……こいつの案内か」

 

 あ、また名前呼んでくれない。

 こいつって言われた。

 

 「まあそんなところ」

 

 「あまり遠くに行きすぎるなよ。今日はフェルニルが騒がしい」

 

 「忠告ありがと。あんたも気をつけなよ」

 

 「俺はそんなヘマしない」

 

 「はいはい」

 

 うーん、実はこの2人仲良しさん?

 言い合いしてるけどすごく楽しそう!

 

 「ねえ、気をつけてって?」

 

 「……ああ、この村の外に出るとね、危ない動物がたくさんいるから」

 

 そっか、確かに動物さんたくさんいるって言ってたもんね。

 

 「さ、私たちも行きましょ」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5.私の能力、発動!

お久しぶりです!
原作者さんからバトンをもらったので頑張ります!w



 「あれ、ここって……?」

 

 「あ、わかった? あなたが迷ってた森の入り口よ。でもこっちのダフォーズルースは迷わないし、抜け出せなくなることもないはずなんだけど……」

 

 「あ、あはは……」

 

 私、もしかしてほーこーおんち? ってやつだったのかな?

 私の世界ではそんなこと言われたことなかったけど……

 

 「ねえエリサさん、村の中を案内してくれるんじゃなかったの? なんで森の中に……」

 

 「そのつもりだったんだけど、魔妖院と取引所はまだやっていないし、神殿には村長の許可がないと近づけないから案内できるところがなかったのよ。だから私の用事に付き合ってもらおうと思って。ここにしばらくいるならこの森のことも知っておいた方がいいと思うしね」

 

 「そうだったんだ。でも説明って?」

 

 「奥への行き方とか帰ってき方とか。変なところに倒れていたからもしかしてと思ったけど、やっぱりあなた道を知らないわね」

 

 「道? 確かに昨日はとにかく歩いてみてた気がするけど……」

 

 「ダフォーズルースは一本道になっていてそこからそれさえしなければ絶対に迷うことがないはずなの。それも知らないなんて本当にどこから来たの……?」

 

 苦笑いするしかなかった。

 だって本当のこと言っても誰も信じてくれるわけないし……

 そういえばえーなさん、私に何かすごく強い能力があるって言ってたけどなんなんだろ?

 前に見たアニメみたいに手からすごいビームでたり、空飛べたりするのかな!

 どんなのかわからないからできればエリサさんがいないところで試してみたいなぁ。

 もし誰かを傷つけちゃうのだったら嫌だし……

 

 「って、感じなんだけど覚えた?」

 

 「ふぇ?」

 

 しまった、自分のこと考えてたら全然聞いてなかった!

 

 「もしかして、今の説明全然聞いてなかった、なんてことないわよね?」

 

 エリサさん、怖いです。

 私が悪いんから仕方ないけど……

 

 「ごめんなさい……」

 

 「もう、本当に聞いてなかったのね。でもわかるわ。私もはじめてお父さんに連れてきてもらった時は綺麗さにびっくりして全然話聞いてなくて怒られちゃったから」

 

 あれ、なんだか勝手に納得してくれてるみたい?

 誤魔化すのはすごく申し訳ないけどここは乗っちゃおう!

 

 「そうだよね! 昨日は不安で全然気にしてなかったけど、改めて見るとすごく綺麗でびっくりしちゃった!」

 

 緑も濃いし、木漏れ日もすごく綺麗!

 でもちょっと開けてるところにはお花も咲いてたりするし本当に素敵なところだなぁ……

 

 「すごくわかる! 他にもね、フェルグっていうカラフルな鳥がいたり、ラタっていう小さくて可愛い動物がいたりもするのよ!」

 

 「そうなんだ! 私もみてみたいなぁ……」

 

 「今日もしかしたら会えるかもしれないけど警戒心が強いからなかなか出てきてくれないし、フェンルやフェルニル、肉食の獣と鳥のことね、もいるから危ないしであんまり探すのをオススメはしないよ」

 

 「そっかぁ……」

 

 みてみたかったけどなぁ……

 でももしかしたらこれから会える機会があるかもしれないよね!

 前向きに考えなきゃ!

 

 「で、さっき説明してたことなんだけどね?」

 

 あ、ごめんなさい。

 

 「この先にずっと行くと奥に行けるの。しばらく行くと大きな壁があるんだけど、そこには絶対近づかないで」

 

 「どうして?」

 

 「その壁の先には危険なものがたくさんあるらしいわ。私も詳しくは知らないけど壁の近くにいるだけで死んでしまうようなガスが出てたりもするらしいの」

 

 「そ、それは怖いね……」

 

 死んじゃうのは嫌だから絶対に気をつけないと。

 でも危険なものってなんなんだろう……ちょっと気になる。

 

 「この道は覚えられた?」

 

 「多分大丈夫だと思うよ!」

 

 「ならちょっと外れて奥に入るわよ。あなたが昨日倒れていた場所に獲物を置きっぱなしにしてあるの」

 

 「……本当にごめんなさい」

 

 「全然気にする必要はないのよ。私の言い方も悪かったわ」

 

 「ううん、助けてもらったのに迷惑かけてばっかで……」

 

 「迷惑だと思ったことはないわ。森の中ではみんなで助け合いをしなきゃ生きていけないもの」

 

 「エリサさん……」

 

 「なんか妹に頼りにされてるって感じでいい……!」

 

 あれ? 確かにかっこいいとは思ってたけどなんか残念な方向に……?

 

 「よし! お姉ちゃんについて来なさい!」

 

 「お、お姉ちゃん……?」

 

 なんか昨日のスイッチ入っちゃった?

 さっきまではすごくかっこよかったのに……

 でも面白い人だよね。

 私にお姉ちゃんがいたらこんな感じだったのかな?

 でも私、あんまり運動得意じゃないしちょっと違うかな?

 なんて考えてたら。

 

 「あれ、エリサさん、どこ……?」

 

 いつの間にか1人取り残されてる……

 うーん、どうしようかな?

 探すために奥に入っちゃうのは私が迷ってまた迷惑かけちゃうだろうけど、ここで待ってるのもなぁ……

 あ、そうだ!

 確か、この道を進むと迷わないんだよね?

 ならもうちょっと奥に行って迷わないように少しだけ横にそれて私の能力? って言うのを確認しようかな。

 そう思った私は道に沿って歩き始める。

 途中で綺麗な小鳥さんに出会ったり、また違うお花畑を見つけてたりしてすごく綺麗だった。

 こんなカラフルな小鳥さん、私の世界にはいなかったなぁ……

 もしかしたら知らないだけかもしれないけど、私の周りにはいなかった。

 通学路とかにいてくれればもうちょっと楽しかったのかもしれないのに。

 毎日、ミーファちゃんやマルニちゃんと一緒に見て可愛いねって話して……

 なんだか思い出したら悲しくなってきちゃった。

 よーし!

 ここら辺ならきっと誰かを傷つけちゃうようなのでも大丈夫!

 じゃあ私の能力、発動!

 …………

 ……………………

 あ、あれ?

 発動! 出て! なんか出て!

 …………

 ……………………

 何にも起きない……?

 私、えーなさんに嘘つかれた……?

 じゃあ私、ここに来ちゃったのってなんで……?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6.きゃあああああ!!!!

 私、能力ないの……?

 私、なんで友達とお別れしなくちゃいけなかったの……?

 お父さん、お母さん……

 寂しいよ……

 多分もうガズディアには戻れない。

 すごく遠くまで来ちゃってるのがなんとなくわかる。

 私、これからどうなっちゃうんだろ……

 とにかく一回エリサさんのところに戻ろうかな。

 ここで過ごさなきゃいけないならいろんなこと教えてもらわないとだし……

 横道から一本道に戻ろうとすると、行っちゃいけないって言われた壁の方から人の話し声が聞こえてきた。

 なんだろ?

 あっちは行っちゃダメなはずなのに……

 気になった私はとりあえずゆっくり近づいてみる。

 気づかれちゃったらなんとなくダメな気がしたから慎重に……っと。

 そろ〜り、そろ〜〜り……

 なんかかくれんぼしてるみたい。

 ちょっと楽しくなってきちゃった。

 木の陰に隠れて見つからないようにして……

 うん、さっきより聞こえるようになったなった!

 

 「シューンの様子はどうだ」

 

 「はい、変わりありませんが近々来る可能性があるかと」

 

 「奴らめ、追放したと言うのにのうのうと近くで生きてやがって。奴らのせいで王は心を痛めておる」

 

 うーん、なんのこと話してるのかよくわからないなぁ……

 それにこの声、どっかで聞いたことある気がする……

 後、この壁の向こうには王様いるんだ。

 それの方がびっくりだよ。

 おとぎ話の中だけかと思ってた。

 

 「彼らのエジックが完全に解明されたいま、我々に必要ない下等種族ですが、だからこそ生命力も強いと考えられます」

 

 「けっ、意地汚い連中だ。エジックしか使えない時代遅れに我々の兵器とまともに張り合えるわけもないというのに」

 

 エジック? それは初めて聞いたかも……?

 もしかしたら朝エリサさんが言ってたのの中に入ってたのかもだけどわからなかったから覚えてないや……

 

 「エジカルトラスター 、ですね。グズミアに近いこともあり使用には慎重にならざるを得ません」

 

 「その通りだ。もっともそれ以外の小型兵器で十分だがな」

 

 「その通りです。我々が負けることはないでしょう」

 

 「だが

 

 「承知いたしました」

 

 なんだかよくわかんないことだらけだけど、とにかく悪いことをしようとしてるのはわかった。

 私じゃどうしようもできないからエリサさんに知らせなきゃ。

 走り初めた私はすぐにそれが間違いだったと気づかされる。

 

 「誰だ!」

 

 そうだった!

 気づかれちゃダメなんだっけ!

 びっくりして止まっちゃった私がいる方をめがけてすごいスピードで走ってくる……

 

 

 見つかりたくない……!

 

 

 そう願いながら走り回って一旦岩の裏側に隠れる。

 

 「くそ、あのガキはどこだ」

 

 「小さいゆえに見失ってしまいましたね」

 

 もう、みんなで私のこと小さいって言うのやめて!

 私だってこれからだもん!

 もっと大きくなるんだもん!

 

 「しかし問題ないでしょう。子供が言うことなど信じるものはいません」

 

 「だが子供でも万が一、と言うことがある。我々の計画がバレてしまったらグズミアへの被害を考えなければならん」

 

 「グズミアには被害は出しません。それに……」

 

 「なんだ、言ってみろ」

 

 「あの子供については心当たりがあります」

 

 心当たり?

 もしかして私のこと知ってるの?

 

 「そうか、ではそちらはお前に任せよう。向こうへの見せしめにするか、危険なら始末して構わん」

 

 私がいる岩には近づかないで、2人は元いた方に戻っていってくれた。

 なんかいろんなこと言ってたけどなんのことだったんだろ……?

 私をどうとかって話だったことはわかったけどイマイチよくわかんなかったや……

 って、いけない!

 今聞いたこと、エリサさんに伝えなきゃ!

 私は周りにあの人たちがいないことをもう一度しっかり確認してから急いで村の方に戻る。

 あ、でも戻ってもエリサさんいるのかな?

 もしかたらまだ戻ってきてないかも。

 エリサさん、私のこと置いてっちゃうんだから……

 本当にひどい!

 

 「あ、いた!」

 

 遠くでエリサさんの声がする。

 私のことかな?

 でもエリサさんどこ?

 

 「こっちだよー! おーい!」

 

 声が聞こえる……

 えっと多分上から……

 上から!?

 

 「よっと」

 

 「きゃあああああ!!!!」

 

 え、エリサさんが……!

 う、上から……!!

 

 「もう、そんなに驚かなくてもいいでしょ?」

 

 「い、いや、だって、上から……」

 

 「上? ああ、木の間を飛んできてたからね。それより大丈夫? いつの間にかいなくなってたから心配したよ」

 

 「それはエリサさんが置いていったからでしょ! いつの間にかいなかったのはエリサさん!」

 

 「そ、そうだっけ? ま、まあなんにせよ無事でよかったよ!」

 「んもう……」

 

 けっこう不安だったのにぃ……

 って、そんなこと話してる場合じゃなかった!

 

 「あのね、エリサさん、さっき村を潰すとか話してる人たちの話を聞いたの! シューンの村をって言ってた気がするけどあの村の名前なの?」

 

 「……」

 

 私の話を聞いてエリサさんは急に黙って怖い顔をする。

 どうしちゃったの……

 私、何か変なこと言っちゃった?

 それてもあの人達が言ってたみたいに私の言葉じゃ……

 

 「うちの近くの村のことね。とりあえず伝えておくわ」

 

 「うん! ありがとう! お願いします!」

 

 ほら!

 やっぱり私の言葉でも聞いてくれたもん!

 でもよかった。

 あの村がめちゃくちゃになっちゃうのは嫌だもん。

 

 「とりあえず村に戻ろっか。そろそろ村長も戻ってるはずだから」

 

 ついに来ちゃった……

 緊張するよぉ〜……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7.……失礼します

 はい、と言うわけで戻ってきました。

 村に戻ってきちゃったよ……

 

 「じゃあ一旦私の家で待っててくれる? 村長が帰ってきてるか確認してくるわ」

 

 「べ、別にそんなに急がなくてもいいよ〜?」

 

 「ダメよ、ここにいる以上、一度は村長に挨拶しなくちゃ。一緒に行ってあげるから怖がらないで?」

 

 うう〜……

 怖いもあるけど緊張するんだって〜……

 エリサさんはもう今更かもしれないけどさ……

 あ、今のうちに逃げちゃう……?

 それならいいよね!

 そうと決まればすぐに……

 

 「村長いたから行くよ!」

 

 エリサさんはやすぎ……

 これはもう行くしかないのかな……

 

 「さあ、行くよ! 大丈夫、行っちゃえばなんとかなるから!」

 

 「う、うん……」

 

 もうここまでされちゃったら行くしかないね……

 よし! こう言う時は度胸だよ!

 

 「大丈夫、私も一緒だから!」

 

 ずっとそう言ってくれてるエリサさんもいるし、きっと大丈夫だよね!

 エリサさんの家から連れられて私は朝素通りしたとっても大きなお家の前にきた。

 改めて見ても大きいなぁ……

 

 「さて、ちょっとここで待っててね」

 

 「うん、わかった」

 

 私を置いてエリサさんは家の中に入っていった。

 村長とか王様とかお話の中のことだと思ってたけど……

 なんか不思議な感じ。

 私の元々いた世界じゃ全然知らなかったや。

 

 「お待たせ、村長は奥の部屋にいるっていってたから案内するね」

 

 わぁきちゃった……

 よし、がんばろっ!

 意気込んで中に入るけどとにかく中が広い。

 こんな広いところに何人で住んでるんだろ……

 

 「ここは村長だけで住んでいるの。他にはお手伝いさんがいるけど毎日通ってるから住んではいないわ」

 

 「そうなんだ……なんかちょっと寂しそう……」

 

 「そうね、だから私たちみたいな子供がたまに遊びに行くとすごく嬉しそうよ」

 

 あ、最初に言ってた小さい女の子には優しいってそう言うことか!

 あれ、でもでも、それじゃあ女の子限定な理由は……?

 うん、きっと気にしたら負けだと思う!

 きっとそうだ!

 

 「さ、ここが村長がいる部屋だよ」

 

 「うん……」

 

 ここまできたらもっと緊張してきた……

 お腹痛くなっちゃいそう……

 そんな私のことは気にせずエリサさんはドアをノックする。

 

 「村長、連れてきました」

 

 「おお、きたか。入りなさい」

 

 低くてかっこいいけど優しそうな声。

 それがドア越しに聞いた村長の印象だった。

 

 「し、失礼しまちゅ!」

 

 「し、しまちゅ……ふふふ……」

 

 ……噛んじゃったあああ!!!

 うう、絶対変な子だって思われた……

 エリサさんもめちゃくちゃ笑ってるし……

 

 「……失礼します」

 

 もう一度しっかり言い直して私は扉を開ける。

 

 「は、はじめまして! セレイル・レッダローズと言います! こんな私を置いてくださって本当にありがとうございます!」

 

 よし、最初少しダメだったけど噛まずに言えた!

 

 「なんだ、さっきのは可愛かったのだが……まあ仕方あるまい」

 

 ……さっきのって噛んだやつじゃないよね?

 絶対違うよね!?

 

 「私はユルア・シュルグという。こんな場所によくきた……と言いたいところだが、なぜエリサの報告があったような場所にいたのか教えてもらってもいいか」

 

 見た目はまだ若そう……?

 それでもおじいちゃんみたいな感じはするけど……

 私があそこにいた理由……かぁ。

 

 「私の話は到底信じられない話ですがそれでいいですか」

 

 「信じるかどうかは私が決める。まず話してみろ」

 

 「私、この世界の人じゃないんです」

 

 「……なんだと、転生者ということか」

 

 そしてきっとエリサさんを睨みつける。

 

 「ち、違います! 私は何もしていません!」

 

 「あの、転生者というのは……?」

 

 「ああ、すまない。異世界からこの世界に生まれ変わった者を転生者と呼ぶのだ。セレイルはそれではないのか」

 

 「はい、おそらく。私はフェバル、そう呼ばれている人たちの1人みたいです」

 

 「フェバル……初めて聞くな。それでフェバルというのはなんなのだ」

 

 「私もなっちゃったばっかりなのでわからないんですけど、いろんな星を旅するみたいです」

 

 能力のことは話さなくていいよね。

 だって私、能力ないみたいだし……

 

 「なるほど、それで運悪くあそこに落ちてしまった、というわけか」

 

 「はい、まさにその通りです……」

 

 うん、あれは怖かった。

 別のところに行かないといけない時にはあんな風にならないといいなぁ……

 

 「なるほど、事情は理解した。この村に滞在するといい」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「何、構わんよ。小さな女の子の頼みだ」

 

 あれ、なんか今聞いちゃいけないことを聞いた気がする。

 

 「それはそうと、少し撫でてみてもいいかな?」

 

 あ、え、えっとこれは……?

 お世話になるんだしさせてあげたほうがいいのかな……?

 

 「村長! 私達ならまだしもセレイルちゃんにそういうことはしないでください!」

 

 「お、エリサ、嫉妬か?」

 

 「単純に被害者拡大を防ぐだけです! それに今までそういう文化がなかったのかもしれないんですからあまり変なことしないでください」

 

 「変って軽い挨拶じゃないか」

 

 頭撫でるのって挨拶なの……?

 

 「とにかく! 絶対にやめてくださいね!」

 

 「ふむ、なら仕方がない」

 

 ちょっと安心。

 流石にこの歳になって撫でられるのは少し恥ずかしいし。

 

 「代わりと言ってはなんだが、明日のエリサのお使いに一緒に参加してくれ」

 

 「村長待ってください、それは!」

 

 「向こうのことも知っておいたほうがいいだろう?」

 

 「それはそうですが……」

 

 「あの、私、お手伝いします! どこに行くんですか?」

 

 「あの壁の向こう、この国モーズの首都グズミアさ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8.え、エリサさん! 手! 手が!

 翌日。

 私はエリサさんに着せ替え人形にされかけていた。

 

 「私の小さい頃の服、まだ残っててよかったぁ! さ、セレちゃん、着てみて?」

 

 一山になっている服。

 え、この中から選ぶの……?

 あと呼び方変わってる……懐かしいな。

 元いたところでよく呼んでもらってたあだ名……

 ちょっと嬉しい。

 

 「え、えっと……」

 

 今日って確か壁の向こうの……ぐずみあ? だっけ? に行くんだよね……?

 

 「せっかく向こうに行くんだからオシャレしなきゃ。あ、せっかくだから私と似た格好でも……」

 

 「え、エリサさん、ちょっと……」

 

 「いいからいいから早くそれ脱いで着替えて? ううん、脱がしてあげちゃう!」

 

 「え、いや、あの流石にそれは……」

 

 ピンクのリボンワンピース。

 ターコイズのフリルワンピース。

 オレンジのリボンシャツにチェックのスカート。

 ……他にもたくさん着たけどたくさんすぎてもうよく覚えてない。

 

 「うん、これにしよう!」

 

 ようやく胸に細いリボンがついている青いワンピースに水色のカーディガンに決まった頃にはもう日が高くなり始めていた。

 

 「エリサさん……」

 

 「あはは……ごめんね? あんまり身近に女の子がいないから楽しくなっちゃって」

 

 「私もいろんなお洋服着れて楽しかったけど……」

 

 「ならおあいこってことで!」

 

 「んもう……」

 

 「さて、少し遅くなっちゃったけど行こっか!」

 

 遅くなっちゃったのはエリサさんが私で遊んでたせいじゃん!

 でもあんなたくさんのお洋服から選べるのは初めてだったから楽しかったけど……

 う〜……なんか悔しい……

 

 森を歩きながら私は気になってたことを質問してみる。

 

 「ねえ、エリサさん、あの壁の近くって近づいちゃダメなんじゃなかったっけ?」

 

 「基本的にはね。でも危険なガスが出てないところもあってそこから私たちは行き来することができるの」

 

 「へえ、そうなんだ」

 

 「でも壁の外に住んでる私たちは本当は入っちゃいけないことになってるんだけど……」

 

 「えー! どうして! せっかく隣同士なのに……」

 

 「……ほんとにね」

 

 なんだかすごく寂しそうにポツリと言った。

 なんでだろ……

 仲悪いのかな?

 

 「まあそんなことはどうでもいいじゃん! 向こうなら服とかもお買い物できるから一緒にやろ?」

 

 「え、あ、う、うん……」

 

 またさっきみたいに着せ替え人形されちゃうのは嫌だなぁ……

 お洋服を選ぶのは好きだし、買うのも好きなんだけどね?

 でもちょっと楽しみになっっちゃってるのがちょっと悔しい……

 お世話になってるし少しくらいなら着せ替え人形にもなってあげてもいいかな。

 

 「ここから中に入れるよ。向こう側に人がいると危ないから慎重にね」

 

 「え、ここ……?」

 

 エリサさんが指差したところに穴なんてなくて、ただ丸が書かれてるだけ。

 あ、もしかして……

 

 「エリサさん、また私をからかってるんですか?」

 

 「あ、そっか。セレちゃんは知らないよね。あのね、ここをこうしてみると……」

 

 エリサさんはそういうと丸の中心に手を触れた。

 え、ええ〜!!

 

 「え、エリサさん! 手! 手が!」

 

 壁に飲み込まれちゃったよ!?

 大丈夫なのかな!?

 

 「そう、ここ実は向こう側に繋がってるの」

 

 「ど、どういうこと……?」

 

 「えっとね、なんて説明すればいいかな……この丸の中は壁になってなくて中に入れるようになってるの」

 

 「んー……よくわかんないけど向こう側にここから入れるんだね!」

 

 「あはは、ちょっと難しいかな? とりあえずその解釈で大丈夫だよ」

 

 よくわからないけどとにかく通れるみたいだからそれでいいかな。

 ためらいもなく穴を通るエリサさん。

 ちょっと怖いけど目をつぶって私も穴に入ってみた。

 

 

 

 一旦暗くなってまた明るくなったから目を開けてみる。

 そこに広がってるのはたくさんの大きい建物が並んでるキラキラした街。

 

 「エリサさん、ここが……?」

 

 「……そう、ここがグズミア。この国の首都だよ。さ、とりあえず頼まれた仕事をこなしちゃおっか」

 

 「はーい!」

 

 エリサさんは慣れたように歩き出す。

 私も置いて行かれないように気をつけなきゃ。

 それにしても綺麗なところだなぁ……

 なんかキラキラしてるし、あっちもこっちもキラキラしてるし……

 って、キラキラしてる以外の言葉使ってない……

 でも本当にクリスタルみたいで綺麗だし、なんか綺麗な線とかあるし……

 キラキラしてるって一番あってると思う!

 

 「あ、あっちの穴も入れるのかな?」

 

 「セレちゃん、そっちは入っちゃダメ!」

 

 「え? きゃっ」

 

 強く手を引かれて私はエリサさんに抱きとめられる。

 

 「そこはワープトンネルって言って一瞬で反対側の出口に行けるんだけど、危ないから生身では入っちゃいけないことになってるの」

 

 「そ、そうなんだ……」

 

 危なかった……

 そんな危ないところなんだ……

 

 「だから気をつけてね? 私が行かないところには行かないこと」

 

 「は、はーい……」

 

 なんて怒られていたら。

 ワープトンネルの入口に丸い光が出てきた。

 

 「グズミア警備隊だ。お前に不法退出の容疑がかけられている。大人しく同行してもらおう」

 

 「え、私……?」

 

 「いいから来るんだ!」

 

 「え、た、助けて、エリサさん!」

 

 「……ごめんね」

 

 え……

 

 「さあこい!」

 

 「え、エリサさん! 嘘だよね……」

 

 黙って目をそらされてその間に私は何かの機械に乗せられた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9.やっぱり!

本日2話目です!
全話をお読みで無い方は先にそちらをお読みください!


 どこに行くかもわからないまま、私は手を後ろに縛られて連れて行かれていた。

 

 「あの、いったいどこへ……」

 

 「何を言っている。不法退出者は死あるのみだ」

 

 「死……」

 

 なんで、私こんなところ知らなかったのに……

 

 「ま、待ってください! 私、ここにきたのも今が初めてで……」

 

 「そんなことがあるか。お前の名をこの登録名簿で確認している。さらにこの外で見つけたという証言もな」

 

 「そんな……」

 

 人違い?

 どうして私が……?

 

 「しかしお前も運がなかったな。よりによってシューンと一緒とは」

 

 「シューン?」

 

 「まさか、お前記憶喪失なのか? シューンは魔法を使って俺たちを貶めて破滅させられかけたんだぞ。それを偉大な王、ニド・ヘッグファスト様が追い払いこのグズミアを堅牢な都市にしてくださったのだ」

 

 へ、へぇ……

 私の知らないこと色々話してくれるけどよくわかんないよ……

 エリサさんやお父さんや村長さんがこの街にそんなことを?

 そんなことするわけない……!

 でもそれならさっきなんで助けてくれなかったんだろう……

 やっぱりそうだから?

 優しくしてくれたのも一緒にいて楽しかったのも……?

 もうわかんない、わかんないよ……

 痛いよ……

 

 「おい、どうした。おい……」

 

 いつの間にか外の音が遠くなって目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おい、くそ女。覚えとけよ」

 

 ……覚えてる、全部この言葉から始まった。

 小学校入ってすぐの頃。

 私がクラスのことをわかってなかった頃。

 クラスで一番強い男の子に反論しちゃったことがあって……

 次の日から。

 

 「おはよ!」

 

 「……」

 

 「え、ねえ……」

 

 

 「ねぇねぇ昨日の……」

 

 「……あ、そういえばさ」

 

 「なんで……」

 

 

 「一緒に帰ろ〜」

 

 「……あ、一緒に帰ろ!」

 

 「え、ねぇなんでよ……」

 

 徹底的に無視されるようになっちゃって……

 友達も誰も私のこと見てくれなくて……

 寂しかった。

 私は本当はいないんじゃないかって怖かった。

 怖かったけどお母さんにもお父さんにも心配かけたくなくて相談できなかった。

 だから私はみんなと……

 1人になる子がいないようにしないと……

 

 

 

 

 ふと目が覚める。

 目が覚めると目の周りが濡れてた。

 そっか、夢……

 って、ここどこ!?

 

 「独房よ」

 

 「独房……?」

 

 「そうね、犯罪者を閉じ込めておく場所って感じかしら」

 

 「犯罪者って……私なんにもしてません!」

 

 「でしょうね、私もしてないもの。でもこの国はニドのエゴだけでここに入れられるのよ」

 

 また難しそうな話……

 

 「いい? この国の技術はシューンから奪ったものなの。侵略も嘘、ただニドが迫害するために流した噂よ」

 

 「で、でもエリサさんは私を助けてくれなかった……」

 

 「エリサ……っていうのは外、それもシューンなのかしら?」

 

 私はうつむきながら頷く。

 

 「それなら仕方ないわね。あなたにはかわいそうだけど、この街でシューンが何かをすれば一瞬で警備隊がやってきて射殺されるわ」

 

 「射殺……」

 

 そっか、殺されちゃうなら無理だよね……

 私はもしかしたら助かるかもだけどエリサさんは……

 

 「ふふっ、でもちゃんと助けに来てくれたみたいね」

 

 「え……」

 

 一緒に入ってる人がそういうと大きな音で何かが鳴り始めた。

 

 「な、何!?」

 

 「これは警報機よ。エジックの発動を感知した時に鳴るの。エリサが来るわね」

 

 「セレちゃん! あと……お母さん!?」

 

 「はぁい、久しぶりね、エリサ」

 

 え、ええ! お母さん!?

 確かに言われてみれば似てるけど……ええ!

 

 「お母さん、良かった……」

 

 「エリサ、私も嬉しいけど話は後。とにかくここを出ないと」

 

 「う、うん。今壊すね」

 

 エリサさんはそういうと床に手をついて力を込めた。

 すると突然柵が壊れた。

 

 「今のって……?」

 

 「ごめん、セレちゃん。話は後! とにかくグズミアを出るよ!」

 

 「わ、わかった!」

 

 廊下を走って外を目指す私たち。

 

 「止まれ!」

 

 「エジスト!」

 

 たくさんの人が銃を構えて私たちに撃ってきた!?

 落ち着いたようにエリサさんのお母さんが前に出て声を出すと撃たれた銃弾は壁で止まったように落ちて……た?

 

 「え、エリサさん、今の何!? 魔法!?」

 

 「あれはエジック。私たちが使える魔法だよ。このせいで私たちは……」

 

 なんだろ……

 私、なんか悪いこと聞いちゃったかな……?

 

 「私が後ろから行くからエリサはその子を守りながら先に行きなさい!」

 

 「わかった! セレちゃん、行くよ!」

 

 「うん!」

 

 走る。

 迷路みたいな廊下を走り回ってお外を目指す。

 

 「止まれ!」

 

 「止まらないよ!」

 

 エリサさんが敵をどんどん何かで弾き飛ばしてくれてるから安心できるけど!

 でも魔法ってすごい!

 私も使えるようになるのかな?

 聞いてみたいけどさっきのエリサさんの反応見てると聞きづらいなぁ……

 

 「セレちゃん!」

 

 「え?」

 

 撃たれた銃弾が私に近づいてくる。

 怖い……

 思わず強く目をつぶる。

 

 

 撃たれたくないよ……

 

 

 目を開けると後ろに銃弾が刺さってた。

 あれ、もしかして……

 

 「セレちゃん、大丈夫だった!? 良かったぁ……」

 

 「大丈夫だよ、エリサさん」

 

 私はエリサさんの前に出る。

 

 「セレちゃん!? 何してるの! 早くこっちに!」

 

 「そんなに死にたいなら殺してやる!」

 

 『撃たれたくない!』

 

 私がそう思うと撃たれた銃弾はやっぱり私から逸れて後ろの壁に刺さった。

 

 「なっ……!」

 

 やっぱり!

 前、私の能力が何もないと思ってたけど、きっと私がいやって思ったことがなくなるんだよ!

 【いやっ!】って名前の能力でいいかな?

 なんかかっこいい名前思いついたらそっちにしよ!

 ってそうじゃなかった。

 

 「エリサさん、私には当たらないと思うから気にしないで!」

 

 「え、でも……」

 

 「大丈夫!」

 

 「わかったわ、セレちゃんのこと、信じる」

 

 エリサさんにどんどん敵をとばしてもらいつつ、撃たれたのは私の【いやっ!】で避けてなんとか外に出る。

 

 「いたぞ、撃て!」

 

 「もう! キリがないよ!」

 

 「セレちゃんと私で上手くかわして壁の外に行こう」

 

 「うん!」

 

 私を頼ってくれる。

 それが嬉しくて頑張ってるうちにいつの間にか壁を抜けていた。

 

 「はぁはぁ……セレちゃん、大丈夫?」

 

 「う、うん、私は……エリサさんとエリサさんのお母さんは?」

 

 「私も大丈夫。お母さんは……」

 

 「私も大丈夫よ」

 

 「わ、わあ! びっくりしたぁ……」

 

 また急に出てきた……

 本当にびっくりしたよ……

 

 ――ドォーン

 

 突然、遠くで爆発するような音が聞こえた。

 

 「あの煙、もしかして村から……!」

 

 エリサさんの村から!?

 

 「確認しに行きましょう!」

 

 私たちは急いで村に向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10.ひどい……

 「みんな大丈夫かな?」

 

 「大丈夫、お父さんもみんなも強いもん」

 

 走りながら聞くと今までで見たことがないほど不安そうな顔をしてた。

 見たことないほどって言えるほど一緒にいたわけじゃないけど……

 でもすごく心配してることがわかる。

 私だって心配だもん、エリサさんはもっとだよね。

 急がないと……

 私がいやって思えばそれがなくなるなら私の力でみんなを助けられるかもしれないし!

 みんなに優しくしてもらってきたんだから、今度は私が助ける番だよね!

 

 「とにかく急ぎましょう。何かいやな予感がするわ」

 

 エリサさんのお母さんがスピードを上げたのに置いて行かれないように私も頑張って走った。

 

 「あの、ところでなんであそこに入ってたんですか?」

 

 頑張って走りつつもさっき教えてくれなかったことを聞いてみる。

 

 「そうだよ、急にいなくなっちゃって!」

 

 「あ、えっとそれはごめんね?」

 

 やっぱりアレクさんと一緒でエリサさんには弱いんだ。

 やっぱりいいな、家族って。

 もういっても仕方ないけどやっぱりちょっと寂しい。

 

 「アレクと一緒に外と中、両方から崩そうとしていたのよ。結局バレちゃってあそこに捕まったんだけど」

 

 「なるほど……ってそれ、私だけ知らなかったってこと?」

 

 あ、これはもっと怒りそうな気がするよ……?

 

 「後で色々聞かせてね?」

 

 「は、はい……」

 

 

 

 

 たどり着いた村はもういろんなところが壊れちゃっててあの綺麗な門にも火がついちゃってた。

 

 「ひどい……」

 

 「ニド……ついに私たちを」

 

 「モーズからの攻撃……私たちがいない間にこんなことに……」

 

 朝まで見てた綺麗な村の様子はもうどこにもなくて。

 村の全部が燃えていた。

 

 「村長!」

 

 門の外にある小さな木に寄っかかって座っている村長をエリサさんが見つけた。

 エリサさんのお母さんは任せるわ、とだけ言って村の中に入っていった。

 

 「おお、よく戻った……」

 

 「大丈夫ですか! 一体何が……」

 

 「あやつが裏切りおった……こっちの情報は筒抜けだったのじゃ……」

 

 「それは誰なんですか! 村長!」

 

 ボロボロになっている村長さんが苦しそうに体を起こす。

 

 「無理をなさらないでください……! その怪我ではもう……」

 

 「この村をお前らを守らなくては……」

 

 そういうと村長さんの体が光って私は目をつぶる。

 光が収まって目を開けると村長さんがさっきよりは元気そうになっていた。

 これも魔法?

 

 「これで少しはやれる。まだ若いのには負けん」

 

 「村長……」

 

 「すごい……」

 

 私が思わず声を出すと村長は私を見た。

 

 「こんなことに巻き込んでしまってすまなかった。それと疑ってしまったこともすまない」

 

 「え、私、疑われてたんですか!?」

 

 全然気づかなかった……

 いつから?

 会った時から?

 

 「ごめんね、セレちゃん。セレちゃんが私たちと違う種族だったからみんな疑っていたの。だから村長にも会ってもらったし……」

 

 そうだったんだ……

 私、全然気づいてなかった……

 

 「私の方こそ、勝手にお邪魔しちゃって甘えちゃって本当にごめんなさい……」

 

 「セレちゃんは謝らなくていいの。悪いのは全部私たちだよ」

 

 「その通りだ。必ずその償いはさせてもらう。しかしまずはこの戦いをなんとかしなくては」

 

 「そうですね。それで裏切られたというのは……」

 

 村長さんが口を開こうとした時門のところに1人の影が見えた。

 

 「そこにいるのはステラ……? ステラなの?」

 

 「ああ、お前も無事で何よりだよ。そこのちびっこもな」

 

 「ダメだ、エリサ! そやつが裏切りものの正体だ!」

 

 「えっ! ステラ、嘘でしょ……」

 

 ステラさんが……?

 そんな、エリサさんとあんなに仲良しだったのに……

 

 「俺がこんな古臭いお前らの仲間なわけないだろ。俺はお前らがやろうとしていたことをもっとうまくやってやっただけだ。そこのちびっこのおかげで俺に疑いの目が少なくなって本当に助かったぜ」

 

 「そんな……あ、もしかして!」

 

 あの森の奥で聞いた話もステラさんたち……?

 

 「ふん、察しだけはいいらしいな。その通り、お前に聞かれたのは失態だったが、外にいるチビはお前しかいない。念の為不法退出者名簿に登録しておいたが、簡単に網にかかるとは思わなかった。あとはそのバカが魔法を使ってうちの国の兵士に攻撃をしてくれたおかげで正当防衛成立ってわけだ」

 

 「私のこと、全部囮に使ってたの……?」

 

 「ああ、だからも用済みだ。よくわからない力も持っているようだしさっさと消えてくれ!」

 

 今度は銃が見えてないから攻撃が当たるのいやっ! ってする!

 

 「ぐっ……なんだこの力場は……!」

 

 やっぱり私にステラさんが振った剣は当たらなかった。

 でもどうしよう、たとえ裏切ってたんでもステラさんを傷つけたくはないし……

 もう一度仲直りできると思うから。

 

 「ステラさん、もうこんなことやめよ? 誰も幸せにならないよ……」

 

 「うるさい、お前に何がわかる! こいつらのせいで俺たちは死にかけたんだ!」

 

 「そんなことない! きっと何かの間違いだよ!」

 

 「ガキがいうことなど信用できるか!」

 

 私じゃやっぱり何にも変えられないの……?

 子供だからダメなの……?

 

 「セレちゃん、時にはやらなきゃいけない時もあるんだよ。ありがとう。あとは任せて」

 

 エリサさんが風のようにステラさんに近づく。

 

 「ちぃ! 先にお前から始末してやる!」

 

 私から剣を離してエリサさんに向ける。

 エリサさんはそのスピードを落とさないままステラさんとすれ違う。

 きっと一瞬の勝負。

 今までなら見えてないはずなのに今の私ははっきりとそれが見えちゃった。

 エリサさんの体が切られる瞬間。

 真っ赤な血が飛び出す瞬間。

 

 「エリサさん!」

 

 そのままエリサさんは倒れて赤い水溜りを……

 

 

 

 

 し、死んじゃった……の……?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11.……わかったよ

 「エリサさん! エリサさん!」

 

 嘘だよ……

 セレちゃんって私のこと呼んでよ……

 

 「ふん、結局覚悟が足りないからこうなるんだ。戦いに今までのことなど無用だというのに」

 

 「ひどい! あんなに仲良しだったのに!」

 

 「だからどうした。そもそもこいつに近づいたのもこいつの父親が反乱を考えてるグループのリーダーだったからだけのこと」

 

 「それだけじゃないよ! あんなに2人とも楽しそうだったのに……それだけな訳ないよ!」

 

 だってそんな風に思ってるだけならあんなに楽しそうにお話しなんてしないもん……

 私、そういうの知ってる……

 

 「もうこいつに話は通じん。エリサを連れて逃げるんだ」

 

 村長さんが私の前に出てステラさんに斬りかかる。

 

 「死に損ないの爺さんが!」

 

 「まだまだ若者には負けんよ! 早く行くんだ!」

 

 「は、はい!」

 

 行きたいけどエリサさんを抱っこできるほど私力無いし……

 頑張って抱っこして村長さんが寄っかかってた木のとこまでは連れてこれたけどこれじゃ逃げたとは言えないよね……

 

 「せ、セレちゃん……ごめんね……」

 

 「お話ししちゃダメ! 大丈夫だから……」

 

 「私が連れてこなければこんなことに巻き込まれなかったのに……」

 

 「そんなことない、そんなことない! 助けてくれなかったら私きっと死んじゃってたから……」

 

 「ごめんね……」

 

 「謝らないで……もう喋っちゃダメ……」

 

 エリサさん……

 助けたい……けど私ができること……

 あっ……あった。

 私ができること。

 

 『エリサさんが死んじゃうのいやっ!』

 

 そう思ってもエリサさんは何も変わらない。

 なんで!

 いやっ! いやだよぉ……

 なんで、なんで!

 私がいやって思ってるのに……

 なんでよ……

 涙が出てくる。

 痛いのも苦しいのも私じゃなくてエリサさんなのに……

 

 「セレちゃん、もう大丈夫だよ……頑張ってくれてありがとね……」

 

 「ううん、何にも頑張ってないよ……エリサさん、助けられてないもん……」

 

 エリサさんが指で私の涙を取ってくれる。

 

 「泣かない……で……? いつかこうなるかもって、思ってたから……」

 

 「でも……」

 

 「ねえ、セレちゃん……最期にお願い、聞いて、くれる……?」

 

 「最後なんて言わないで!」

 

 「セレちゃんの笑顔、見せて……?」

 

 「こんな時に、エリサさんがこんなに大変な時に笑えないよ……」

 

 「こういう時だから笑って……? 笑顔ってみんなにも自分にも勇気をくれるんだよ……」

 

 「……わかったよ」

 

 うまくできてるかわからないけど私は笑ってみる。

 エリサさんに元気になってもらえるように。

 

 「ありがとう。やっぱりセレちゃんの笑顔は可愛いなぁ……」

 

 「そんなこと、ないよ……!」

 

 「ありがとね……」

 

 私の頭を撫でてくれた震えているエリサさんの手は。

 突然、私の頭から滑り落ちて私の手に収まった。

 

 「エリサさん! え、りさ、さん……」

 

 しん……じゃった、の……?

 えりさ、さん……

 

 「まああの傷なら生きれるはずがない。お前の妙な力も……」

 

 え……

 

 「どうやら、意識の外は対応できないらしいな」

 

 痛い……?

 熱い……?

 寒い……?

 

 なんで……?

 

 下を見るとお腹に何かが刺さってた。

 何これ……

 

 「それはこいつらが作ったエジックの1つ、エインスレイフを解析して作った兵器だ。出血こそしないがその剣がすべての血を吸い尽くしてしに至らしめるらしい。お前はそれで苦しみながらこいつらの最期の時を見届けるがいい」

 

 「最後になんてさせんぞ……」

 

 村長さん……

 よかった、無事だったんだ……

 

 「させないだと? もう遅いんだよ。モーズにあるエグナノンはすでにここに照準を合わせている。もう数分もない」

 

 「なん、だと……」

 

 そんな……

 ここにいる人がみんなみんな……

 そんなこと絶対に……

 動いてよ、私の体……

 みんなを助けなきゃ……

 みんなにたくさん助けてもらったんだから今度は私が……

 そう思っても私の体は少しも動いてくれない。

 ならせめて……

 

 『ここに攻撃くるのいやっ!』

 

 お願い、届いて……

 私の願い……

 そう思ってるうちに七色の綺麗な光が流れ星みたいに凄い勢いでこっちに近づいてくる。

 不謹慎かもしれないけど綺麗だなって思っちゃった。

 

 「来たな、破滅の光が」

 

 お願い、こないで……

 どんなにいやって思っても。

 どんどん光は近づいて来てて。

 私は光に包まれた……

 

 

 「な、んで……」

 

 周りはまるで最初からそこに何もなかったように平らになってるのに私の周りだけは綺麗に残っていた。

 もしかして、私のことだけしかできないの……?

 なんて自分勝手な……

 

 「ほう、生き残ったか。やはりその力、理解できないな。しかし、お前もそれが刺さってればもう終わりだ」

 

 もう体も寒いし、頭もチカチカしてる……

 みんなごめんね……

 お母さん、先に死んじゃって……

 

 

 

 

 

 

 

 はっ!

 あれ、私、あの時死んじゃったはずじゃ……

 ここってもしかして最初に通ってきた光の中……?

 どうして……

 ううん、私、1人だけ生きれちゃったんだ……

 私にしか効かない、私の力……

 仲良しの友達、助けたいのに……

 私がいっぱい悩んでても勝手に私の旅は進められてしまう。

 みんなが死んじゃったことを何も受け入れられないまま、私は次の目的地かなって緑の星に行くことになりそうだった。




これにて第1章、モーズ編終了です
次回からは原作の第1章であるサークリス編をユウちゃんくんが来る少し前から始めます。
絶望の淵にいる幼女がサークリスでどうなるのかお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章 剣と魔法の町サークリス
12.あ、ありがとうございます……


 気がつくと私は路地裏のような場所にいた。

 綺麗になってる私の体。

 刺されたはずのお腹にも傷は残っていなかった。

 お洋服もエリサさんに買ってもらったのだ……

 あの時、ボロボロになっちゃってたのに今は綺麗になってる……

 それより私、死んじゃうんじゃなかったの……?

 なんとなくわかってたけどどうして私だけ死んじゃわなかったんだろう……

 私が別の世界に連れてかれちゃったのはあの時わかった。

 でもどうしてなんだろう……エーナさん……ううん、誰でもいいから教えてよ……

 路地裏から明るい方に歩いて行ってみる。

 そこには綺麗な服を着てる人がたくさんいて。

 綺麗な石造りの街が広がってて。

 気づけば私の目から涙が溢れてきていた。

 助けてあげられなくてごめんなさい

 私だけ逃げちゃってごめんなさい

 私だけ守っちゃってごめんなさい

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……

 

 むねがぎゅってくるしくなって

 あたまがまっしろになって

 めのまえがまっくらになって……?

 

 

 

 

 

 

 エリサさんの村が真っ赤に燃えている。

 私は走り回ってエリサさんを探す。

 

 「エリサさん! どこ! どこにいるの!」

 

 さっきから誰ともすれ違ってない。

 エリサさん……

 村長さん……

 みんな……

 

 やっとの思いでエリサさんの家にたどり着く。

 幸い、まだそんなに燃えてなかった。

 

 「エリサさん!」

 

 見知った後ろ姿を見つけて私は嬉しくなる。

 

 「セレちゃん!」

 

 エリサさんも嬉しそうに私の名前を呼んでくれた。

 

 「エリサさん、今度は私が守るから!」

 

 そう言って私はエリサさんに近づく。

 今度こそエリサさんを……

 

 「セレちゃん……」

 

 私の名前をそう呼んで振り返ったエリサさんは……

 

 「嘘つき」

 

 血まみれだった。

 私が最後に見たのと同じ……

 

 「自分だけ違う世界に逃げて」

 

 違う……

 

 「自分だけ普通に生活できるところに行って」

 

 違うの……

 

 「私は何にもなくなってみんな死んじゃったのに」

 

 ……ごめんなさい

 

 「さよなら、セレイル」

 

 ……待って……

 

 「私のこと見捨てたあなたなんて大嫌いよ」

 

 エリサさん……

 行っちゃう、エリサさんが遠くに……

 待って、待って……

 

 

 

 

 「エリサさん!」

 

 目を開いて最初に見えたのは知らない天井だった。

 今の、夢……?

 気づいたら右手をまっすぐ伸ばしてて私はそれをゆっくり降ろす。

 ここは……?

 私、どうしたんだっけ……?

 なんでここにいるのか、前に何してたのかうまく思い出せない……

 体がなんだかすごく重たい。

 なんとか体を起こして周りを見る。

 そうして初めて私が柔かい何かの上にいることがわかった。

 これってベッド……?

 ふかふかだ……

 

 『自分だけ普通に生活できるところに行って』

 

 夢の中のエリサさんの言葉が蘇る。

 

 ごめんなさい……

 私のほっぺたを涙が流れる。

 胸がチクチクする……

 

 「あ、あの……だ、だい……じょう、ぶ……?」

 

 不意に横から声が聞こえた。

 ゆっくり顔を上げるといきなり目が合った。

 

 「きゃっ!」

 

 「ぁ……」

 

 行っちゃった……

 ここの人、なのかな……

 迷惑、かけちゃってるよね……

 今のうちに出て行こうかな……

 でもお礼も言わないでっていうのは失礼だよね……

 

 「あ、目が覚めたんですね」

 

 「ぁ……」

 

 なんでだろ、うまく声が出ない……

 

 「すみません、7日近く寝ていたのですから喉が乾燥してしまっていますよね。すぐに飲み物をお持ちいたします」

 

 え、私、そんなに寝てたの……!?

 そんなに迷惑かけちゃってるんだ……

 でもなんかそう言われたら喉がイガイガしてる感じするかも……

 

 「お待たせいたしました。どうぞ、ユーフです」

 

 ゆーふ? が何かはわからないけどとりあえず飲んでみる。

 うーん……ちょっと辛いようなすっきりしてるような……でも美味しいと思う。

 喉のイガイガが少し取れたところで私は持ってきてくれた人にお礼を言う。

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 まだ少しうまく声が出ない。

 

 「いえ、大丈夫ですよ。当主様もお嬢様もあなたを快く受け入れております。あ、申し遅れました、私、セアンヌと申します。そしてあちらにいらっしゃるのが、お嬢様のミリア様でございます。よろしければあなた様のお名前を教えていただけますか?」

 

 セアンヌさんとミリアさん……

 セアンヌさんはメイドさん……なのかな?

 なんだかお金持ちみたい……

 

 「えっと私はセレイル・レッダローズ、です」

 

 「セレイル様とおっしゃるのですね。ではセレイル様、なぜあそこにいらっしゃったのか、なぜ泣いていらっしゃったのか教えていただけないでしょうか」

 

 あんなところ……?

 私、どこにいたの……?

 それに泣いてたって……?

 この世界に来るまでの話をしても信じてもらえるわけないし……

 

 「セアンヌ、私もお母様も気になっていますが無理に聞いてはいけません」

 

 「ですがお嬢様……」

 

 「レッダローズさんはしばらくうちにいていただきましょう。お母様にお話ししてきます。セアンヌは彼女をお風呂に入れてあげて軽食を用意してあげてください」

 

 「かしこまりました。ではセレイル様、参りましょう」

 

 私の知らないところでお金持ちのお家での生活が始まっちゃったみたいです……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13.ごめんなさい……

 お風呂……ってここ?

 前に行ったことがある温泉みたい……

 

 『自分ばっかり』

 

 っ!

 また……

 胸がドキドキする……

 きゅって締め付けられるように苦しくて痛くて。

 いつの間にか私はその場でしゃがみこんでしまった。

 ごめんなさい……

 

 「大丈夫ですか?」

 

 セアンヌさんが声をかけてくれる。

 優しいなぁ、セアンヌさん……

 なんて思っていたらぎゅっと抱きしめられた。

 

 「何かお辛いことがあったのですね。ここにいれば安心ですから、大丈夫ですから……」

 

 抱きしめてくれながら頭を撫でてくれる。

 お母さんみたい……

 お母さんも私が不安な時いつもこうやってぎゅってして頭をなでなでしてくれたや……

 

 「ありがとうございます、セアンヌさん……」

 

 「いいえ、とんでもございません。私は当然のことをしただけですよ。さあ当主様とお嬢様が待っておられます。入浴を済ませてしまいましょう」

 

 失礼します、そう言われながらなれたように私の服を一枚一枚脱がしてもらって裸になる。

 お風呂はすごく広かった。

 前にお母さんと一緒に入った温泉よりももっとずっと大きくて。

 

 「すごい……」

 

 「お褒めいただきありがとうございます。まずお背中をお流ししますね」

 

 

 

 

 

 体も髪も全部綺麗に洗ってもらってなんだかわからないけど髪にいいって言われた薬? オイル? も塗ってもらって。

 用意してもらったお洋服に着替えて……

 う〜……すごくヒラヒラしてて可愛いけど私じゃあんまり似合ってない気がしてちょっと恥ずかしいよ……

 

 「お嬢様、お待たせいたしました」

 

 「ありがとうございます、セアンヌ。私の小さい頃の服でしたがサイズはぴったりのようですね」

 

 「あ、ありがとうございます……でもちょっと落ち着かない感じがします……」

 

 こんなに可愛い、というかお姫様みたいな服初めて着たし……

 

 「すみません、明日、洋服を買いに出かけましょうか」

 

 「お嬢様、大丈夫なのですか?」

 

 「……ええ、そういえば大丈夫なようです。なぜでしょうか」

 

 んー? なんの話だろ……?

 

 「とりあえず食事ですね。お腹も空いているでしょうから詳しい話は食事をしながらにしましょう。お母様にも改めて紹介しないといけませんし」

 

 「わ、わかりましたっ!」

 

 この前もおんなじようなことしたのに……

 前は噛んじゃったから気をつけないと……

 

 『一人だけ逃げおって』

 

 村長さん……

 胸が痛い。

 心が痛い。

 

 「セレイル? どうしました?」

 

 ミリアさんが声をかけてくれてる。

 我慢するので精一杯で答えられない。

 

 「ごめんなさい……」

 

 「突然どうしたんですか?」

 

 「私、みんなを見殺しにしたの。私だけ生き残ったの。私だけ助かって普通にいきてて……」

 

 「……そうだったんですね」

 

 ごめんなさい

 謝っても許してもらえないけど……

 でもごめんなさいしかいえない……

 

 「大丈夫ですよ。あなたはちゃんといきていいんです」

 

 ごめんなさいを言わせないように胸にぎゅってされた。

 ミリアさん、実はすごく大きいんだ……

 強くぎゅってされてるのに全然苦しくはなかった。

 

 「せっかくそこから生きてこれたならその人たちの分までちゃんと生きなきゃダメです」

 

 「お嬢様……」

 

 「私だけそんなこと……」

 

 「いいんですよ……って言ってもすぐにはわかりませんよね……ですからそう思えるまでここにいてください」

 

 「もういいの、仲良しでもすぐに離れ離れになっちゃうならもう悲しいのは嫌なの……」

 

 ミリアさんもセアンヌさんも何も答えてくれない。

 でも二人とも私のことをぎゅって抱きしめてくれた。

 

 

 

 ミリアさんたちは私がすっかり泣き止むのを待ってくれて食堂に連れて行ってくれた。

 

 「遅くなって申し訳ありません」

 

 「構いませんよ。大体の事情は察しましたから。それでその子が……」

 

 「はい、セアンヌが保護した女の子、セレイル・レッダローズです」

 

 「は、はじめまして! セレイル・レッダローズと言います」

 

 「はじめまして。私はミリアの母のテレリアよ。落ち着くまでうちで生活するといいわ。前からミリアに妹がいればと思っていたの」

 

 「ちょ、ちょっとお母様!」

 

 「半分は冗談よ」

 

 あ、でも半分本気なんだ。

 お姉ちゃんかぁ……私も一人っ子だったし憧れはあるよね。

 でもミリアさんはお姉ちゃんというよりはお友達みたいな感じがする。

 

 「でも本当の家族だと思ってくれてもいいわよ。私はそのつもりであなたと接するから」

 

 「は、はい、ありがとうございます……」

 

 なんかそういう風に言われるのはちょっと気恥ずかしいな。

 

 「セレイルちゃんのことも気になるけどミリアの魔法学校の試験も気になるわ。大丈夫だと思ってはいるのだけど」

 

 え、魔法?

 

 「はい、セアンヌにも手伝ってもらいながら勉強しています」

 

 「あの、魔法って……?」

 

 「魔法を知らないの? ここは剣と魔法の町というくらい有名なのに」

 

 そういえばエーナさんも魔法がなんとかって言ってたっけ。

 それにエリサさんも……

 エリサさんのことを思い出すだけでまた胸が苦しくなる。

 あの時私に守ってあげられるだけの力があればよかったのに……

 

 「魔法って私でも使えるんですか?」

 

 「そうねぇ……魔力があれば使えると思うけど……」

 

 「魔力……?」

 

 あれだよね、魔法を使うために体の中に蓄えとくやつ。

 前に見たアニメでそれを取り込む専用の器官があるとか言ってたけど……

 

 「まだあなたくらいじゃ詳しいことは知らないかもしれないわね。魔力っていうのは空気の7割を占めている魔素っていう物質を取り込んで作るのよ」

 

 やっぱり前に見たのと似てるんだ!

 

 「セレイルも魔法に興味があるんですか?」

 

 「使えるなら使えるようになりたいなって」

 

 魔法で攻撃とかできるなら私も……

 自分だけじゃなくてみんなを……

 

 「そうだわ、ミリア。明日セレイルちゃんのお洋服を買いに行くんだったわよね。そのついでに魔力測定をしてもらってきなさい」

 

 「ですが年齢的には……」

 

 「まずはあるかどうかからよ。あとは私がなんとかするわ」

 

 「わかりました」

 

 なんだかよくわかんないけど私にも魔力があることを信じて明日行ってみよう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14.あ、あの……

 次の日。

 私はやっぱり着慣れない可愛いフリフリのお洋服を着せられていた。

 

 「あ、あの、ミリアさん……もうちょっと大人しい服って……」

 

 「ごめんなさい。趣味に合わないですよね。今日までなのでもう少しだけ我慢していただけますか?」

 

 違う、違うの!

 こういうお洋服はお姫様みたいでずっと憧れてたんだけど……

 憧れてただけになんていうか気恥ずかしいの……

 似合ってないんじゃないかなとか、いろいろ考えちゃって……

 

 「大丈夫ですよ、セレイル。よく似合っています」

 

 え、今口に出てた!?

 だったらすごく恥ずかしい……

 

 「ふふ、大丈夫です。口には出していませんでしたよ」

 

 また!?

 なんでわかるの!?

 

 「なんで、と言われても困りますが……そうですね、セレイルがわかりやすいから……でしょうか?」

 

 「なんだか、すごくバカにされた気がします……」

 

 「いいえ、素直で可愛らしいと思います」

 

 むぅ……なんだかうまくごまかされた気がする……

 でもそう言ってもらえるのは嬉しいかな。

 

 「ではお母様、行ってまいります」

 

 「はい、気をつけて行ってらっしゃいね。セレイルちゃんのこともしっかりみるのよ」

 

 「もちろんです、お母様」

 

 「セレイルちゃんも好きなものはなんでも買ってちょうだい。ミリアにお金は渡しておくわ」

 

 「あの、そんな……」

 

 「いいのよ、気にしなくて。好みの服もあるでしょう。これから魔法学校に通うつもりならうちの服じゃなくて自分の服を持っていた方がいいでしょう?」

 

 「そ、それはそうですけど……」

 

 「もしどうしても気になるなら……」

 

 そこで区切ったテレリアさんに私は首をかしげる。

 あんまり大変なことだとできないけどなんだろう……

 

 「ミリアと魔法学校に行くとしても行かないとしてもずっと仲良くしてあげてください」

 

 「は、はい! もちろんです!」

 

 私もミリアさんとずっと仲良くしたいって思ってるもん!

 でもそれじゃあ……

 いつかまた離れ離れになっちゃうかもしれないのに。

 私は心配をかけないように笑顔を作る。

 

 「うん、よろしく頼むわね」

 

 「では行って参ります」

 

 部屋を出る私たち。

 うまくごまかせたかな……?

 

 「セレイル、私はずっと友達だと思っていますよ」

 

 「え……?」

 

 「いいえ、なんでもないです。さあ行きましょう。まずは役所からです」

 

 不意に言われたミリアさんからの言葉は私も不安を全部見抜かれているようで。

 ごまかせないって怖くなったけど、すごく安心もした。

 だから今度は絶対守るんだ。

 もうお別れなんてしなくていいように。

 

 

――そんな力なんてないくせに

 

 

 

 エリサさんの声が聞こえる。

 苦しい……

 怖い……

 

 「大丈夫ですか? 今日は外出するのやめましょうか?」

 

 ミリアさんが私をそっと抱きしめてくれた。

 本当に、私のこと、なんでもわかっちゃうな……

 

 「大丈夫です。行きましょう」

 

 心配そうに顔を覗いてくれるミリアさんに笑顔を見せた。

 仕方ないなぁって顔をしてミリアさんは私の手を取る。

 

 「さあ行きましょう。今日はお買い物もしなくちゃいけないですから」

 

 「はい!」

 

 手を繋いでもらって私は外に出る。

 久しぶりのお外……って言っても私的には一日外に出てないくらいにしか感じないけどね。

 でも改めてみると本当に綺麗な街だなぁ……

 石? で作ってあって、街の灯りはとってもおしゃれだし……

 この服とかミリアさんのお家とかでなんとなくわかってたけど、やっぱりここってお金持ちさんがたくさんいるところなんだね。

 私には全然縁がないと思ってたよ。

 あ、あれってもしかして昔読んだ絵本に出てきた馬車!?

 うーん、でもちょっと違うかも?

 馬は確か角なかったし……

 

 「あれはドズーという車を引いたり仕事を手伝ってもらったりしている動物ですね。初めて見ましたか?」

 

 「あ、いえ、その……」

 

 どうしよう、絵本で読んだお姫様が乗ってたのに似てるからとか言えない……

 もう流石に恥ずかしい……どうしよう……

 

 「まだ、セレイルくらいなら夢を見てもいいのではないですか?」

 

 「あ、あははは……」

 

 きっとこれも私が何を考えてるのかわかってるんだろうなぁ……

 本当にミリアさん怖い……

 

 「ここが役所ですね。まずはあなたの魔力値を測定してみましょう」

 

 ごくり……これでもし魔力が0とかだったらどうしよう……

 

 「まずこの申請用紙に必要なことを書き込んでください。あ、でもセレイルの身長ではここだと高すぎますね。あっちの低いところに行きましょうか」

 

 「いろいろ気にしてもらって本当にありがとうございます……」

 

 「書きやすいところで書くほうがいいですからね」

 

 あれ? そういえば私ってこの世界の文字知らない……

 そもそも私、エリサさんともそうだったけどどうしてお話しできるんだろ……?

 

 「セレイル? どうかしましたか?」

 

 「う、ううん、なんでもない! 書いちゃうね!」

 

 どうやってもごまかせなさそうだし、私の世界の文字で書こっと……

 あれ? こんな文字知らない……でも横に書いてある文字と似てる……

 もしかしてこれがこの世界の文字?

 私、知らないうちにこの世界の文字、かけるようになってる?

 わかんないけどとにかく書き進めてあっという間に全部埋まった。

 う〜ん……コミュニケーション取れるようにするために新しい世界に行くと自動的に教えてくれるのかな?

 うん、今はそれでいいや、きっとわかんないし。

 

 「すみません、お願いします」

 

 「はい、セレイル・レッダローズさんですね。こちらの機械にどうぞ。あとは機械音声の案内に従ってください」

 

 「わかりました」

 

 機械になんか輪っかみたいなのが付いててそこに手を通すみたい。

 なんだか不思議な形。

 あ、測定が始まったみたい。

 数字がだんだん大きくなっていって……あ、終わりかな?

 

 「はい、お疲れ様です。魔力値は5274ですね。魔法に関してはかなり才能があると思います。妹さん、すごい才能をお持ちですね」

 

 「あ、あの……」

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 「すぐに証明書をお作りしますので少々お待ちください」

 

 なんだか普通に姉妹で通っちゃった……

 あれ、ミリアさんすごくちっちゃくなってるけど大丈夫かな?

 

「ごめんなさい、姉妹といってしまうのは迷惑でしたか?」

 

 「い、いえ! 全然! むしろ私なんかが妹っていってしまうのが申し訳なくて……」

 

 「そんなことはないですよ、セレイルは可愛いですし、本当に妹にしたいくらいです」

 

 そんな可愛いなんて面と向かって言われると照れるよぅ……

 

 「そ、それよりも! 私の魔力値ってどうなんですか? 才能があるっていってましたけど……」

 

 「一般的には魔法使いは数百から千数百くらいだそうですよ。全体の平均は数十くらいだそうですからかなり魔力値は高い方ですね」

 

 「そうなんだ……あれ、ちなみにミリアさんは……?」

 

 「私は4500くらいですね。魔力値だけでいえばあなたの方が才能はありますよ、セレイル」

 

 そうなんだ。

 私、才能あるんだ……

 それなら今度こそ……

 あんなことに……

 

 「……イル、セレイル」

 

 「あ、ご、ごめんなさい……」

 

 「出来たそうですよ、証明書」

 

 「はい、お待たせしました」

 

 「ありがとうございます!」

 

 えへへ、これが私の才能の証……!

 これなら私も魔法学校行けるかな?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15.み、ミリアさん!?

 魔力測定が終わってからは私のお洋服を買うためにたくさんお店を回ることになった。

 うん、それはもう本当にたくさん。

 私も最初は楽しかったんだよ?

 お洋服見るのはやっぱり楽しいし、今まで見たことないようなお洋服もたくさんあったから。

 ミリアさんのおすすめのお店に連れてってもらった。

 お金持ちさんが多いからなのかな、ミリアさんみたいなフリフリしてるお洋服が多かったけど……

 私はTシャツとかワンピースとか着やすいもの欲しいって思うのに……可愛くて好きだけどやっぱり私が着るのは緊張しちゃう……

 なんて思っていると……

 

 「セレイルの希望ならある程度は考慮しますが、その前にこれも着てみてください」

 

 私の思ってることを見透かしたみたいに渡されたのはフリフリ、どころかフリフリフリフリしてる本当にお姫様みたいな服。

 

 「み、ミリアさん!?」

 

 「きっと似合うと思うんです。一度でいいので……」

 

 お願いします、を控えめに、でもいやとは言えない雰囲気で差し出されちゃったらもう着るしかないよね。

 でもこんなの私には絶対似合わないと思うんだけどなぁ……

 

 「わ、わかりました、試着だけ、してみます……」

 

 「はい、お待ちしていますね」

 

 試着室のカーテンを閉めて改めて自分と抱えてるお洋服を鏡越しに合わせてみる。

 全体的に淡いピンクの生地に白いレースがたくさんついてるワンピース。

 背中には大きいレースリボンがついてる。

 うん、すごく可愛い。

 でも着る勇気が……

 

 「セレイル? 着方わかりますか?」

 

 なかなか出てこない私を心配してくれたのかミリアさんから声がかかる。

 とにかく着てみよう、うん!

 

 「だ、大丈夫です!」

 

 そう答えておいて私はもともと着ているワンピースを脱ぐ。

 そういえばこれも朝、私がうまく着れなくてミリアさんに教えてもらったんだっけ。

 一回教えてもらったから今回は簡単に脱げた。

 多分、こっちも着方はおんなじだよね?

 えっと……ここをこうして……あれ? あれれ……?

 こうだったかな……んと、わかんなくなってきちゃった……

 どうしよ……ミリアさんには大丈夫って言っちゃったし……

 

 「セレイル? ふふっ、やっぱり困ってましたね」

 

 「え、ミリアさん、どうして……?」

 

 声に振り返るとカーテンから少しだけ顔を覗かせていた。

 

 「いえ、だんだん唸っていたのでもしかして、と思いまして。入ってもいいですか?」

 

 「は、はい……お願い、します……」

 

 もう覗いてるのに聞いてくれるミリアさん。

 優しいな、と思いつつも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

 「申し訳ないと思わなくていいですよ。これは私のわがままで着てもらっているものなので」

 

 「でも、またこうやって迷惑を……」

 

 「迷惑なら何もやっていません。私がセレイルにしたいだけなので」

 

 前の世界でもそうだったけど、みんな優しいな……

 そう思って、また思い出してしまう、あの、ひどい……

 

 「セレイル? ほら、みてください」

 

 「え……」

 

 呼ばれて顔を上げるとそこにはドレスを纏った私がいた

 

 「ほら、やっぱり似合うじゃないですか。可愛いですよ」

 

 「えへへ、そうかな……」

 

 自分ではわかんないけど……

 恥ずかしいけど似合うって言ってもらえるのは嬉しいな。

 

 「そういえば迷惑をかけてるって話をしていましたね」

 

 「え、はい……」

 

 「では、そのお礼ということでもう少し私に付き合ってください」

 

 ミリアさんの目が怪しく光った気がした。

 

 そこからはもう大変で、さっきのフリフリフリフリしたお洋服みたいなのをたくさん着せられて、私が欲しかったきやすいお洋服の試着もたくさんして、着せ替え人形みたいになっていた。

 ミリアさん、大人しそうな感じに見えたのに……

 もしかして実はいたずら好き?

 

 「お待たせしました、買ったものは全てうちに届くように手配しましたので帰りましょうか」

 

 「ありがとうございます。すみません、全部お願いしてしまって……」

 

 「私も楽しませていただきましたし気にしないでください」

 

 あ、やっぱり楽しまれてたんだ。

 いろんなお洋服、特に私が絶対に選ばないようなのが多かったし、楽しかったは楽しかったけど、緊張しちゃって疲れちゃった……

 

 「すっかり暗くなってしまいましたね。この辺りは明るいですが、急いで帰りましょう」

 

 「はい、急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 ミリアさんの家に帰ってテレリアさんに魔力測定の結果を報告した。

 

 「あら、うちの子よりも高いなんて少し妬けちゃうわね」

 

 「す、すみません……」

 

 「ふふ、冗談よ。よかったわ、魔力値が高くて。私がねじ込んだ甲斐があった」

 

 ねじ込んだ?

 ネジか何かかな?

 私の魔力値と何の関係が……

 

 「お母様、まさか……」

 

 「ミリアと魔法学校に通えるように申請を出したの。こんな形でも一応貴族の端くれだからある程度顔は効くのよ?」

 

 「お母様……ある程度予想はしていましたが……」

 

 「私も一緒に……?」

 

 「ええ、ミリアと一緒に……通えるかはミリアが合格すれば、なんだけどね」

 

 「必ずします。今の話からしてセレイルは試験なしなんですね」

 

 「一応あるわ、面接だけね。魔力値が高くて暴発する危険が高いから制御の方法を学ばせて欲しいって伝えたら面接以外は全部免除してくれたの」

 

 「もし普通だったらどうするつもりだったんですか……」

 

 「ほら、その時はその時よ」

 

 「お母様は本当に……」

 

 ミリアさんとテレリアさん、やっぱり似てるなぁ……

 魔法学校……私も、そこならみんなを守れる力が……

 

 「セレイル、試験がないとはいえ何も知らないのも良くないと思うので私と明日から勉強しましょう」

 

 「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。