八百万 ー渾沌から産まれし島ー (シノネコ)
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八百万 ー渾沌から産まれし島ー 説明書
【主な情報】
タイトル : 八百万 ー渾沌から産まれし島ー
発売日:2026年4月12日
対応機種:アミュスフィア
【システム】
◎稼業/ジョブ
・《侍》・・・攻撃力が高く、防御力もそこそこ高い稼業
・《用心棒》・・・攻撃力がジョブの中で一番高い稼業
・《算術士》・・・魔法力が高い稼業
・《魔導士》・・・算術士の次に魔法力が高い稼業
・《錬術士》・・・防御力が強い壁を作り出して戦う稼業
・《鍛冶屋》・・・防御力が一番高く、唯一 自分の店が持てる稼業
・《吟遊詩人》・・・自分の歌声で味方を強化する稼業
・《召喚士》・・・自分が出した召喚を使って戦う稼業
・《忍者》・・・一番身軽で相手を足止めする術が豊富な稼業
・《狩人》・・・弓を使い、遠くから敵を打ち取る稼業
◎武器
※どの稼業に着くかによって、使用できる武器が異なる。
・侍・・・《刀》のみ使用可能
・用心棒・・・《片手直剣》《両手剣》のみ使用可能
・算術士・・・《袈裟》のみ使用可能
・魔導士・・・《杖》のみ使用可能
・鍛冶屋・・・《金槌》のみ使用可能
・錬術士・・・《手袋》のみ使用可能
・薬師・・・《扇》のみ使用可能
・吟遊詩人・・・《縦笛》《横笛》のみ使用可能
・召喚士・・・《式神》のみ使用可能
・忍者・・・《短剣》のみ使用可能
・狩人・・・《弓》と《短剣》のみ使用可能
◎ランク
ランクとは、それぞれの稼業についているもので、下の表のものが稼業の前に着く。また、その稼業の熟練度によってランクの呼び名が変わる。
0〜100・・・へっぽこな
101〜300・・・ただの
301〜500・・・半人前な
501〜700・・・一人前な
701〜900・・・炯眼の士たる
901〜1000・・・???←稼業によって変化
【フィールド】
《淤能碁呂島/オノゴロシマ》
このゲームの島全体の呼び名。SAOでいう所の《アインクラッド》のようなもの
《八尋殿/ヤヒロドノ》
プレイヤー達が最初に降り立つフィールドで、全部で九つある浮島の中央にある島。伊奘諾/イザナギの依頼を受けることから、このゲームが始まるーー
《淡道之穂之狭別島/アハヂノホノサワケノシマ》
最初に攻略することになる浮島。オノゴロシマの北西に位置する。
《伊予之二名島/イヨノフタナノシマ》
二番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの北に位置する島
《天之忍許呂別/アメノオシコロワケ》
三番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの北東に位置する島
《筑紫島/ツクシノシマ》
四番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの東に位置する島
《天比登都柱/アメヒトツバシラ》
五番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの東南に位置する島
《天之狭手依比売/アメノサデヨリヒメ》
六番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの南に位置する島
《佐渡島/サドノシマ》
七番目に攻略することになる浮島。オノゴロシマの南西に位置する島
《天御虚空豊秋津根別/アメツミソラトヨアキツネワケ》
最後に攻略することになる浮島。オノゴロシマの西に位置する島
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一話『リンク・スタート!』
ちゅるちゅると小鳥が鳴く森の中で、俺は不思議な仮面をつけた男と出会った。白光する真ん中に角が生えたその仮面の奥から俺を見つめる鶯色の瞳は鋭さを含んでいて、同時に何か焦りのようなものが見え隠れしていた。ふと、男の頭上に浮かぶカーソルを見た俺は目を丸くした。
“ホワイトカーソル!?”
見たことのない色のカーソルに、見たことない仮面に素顔を隠したその男は俺へと向き直ると、静かに頭を下げてきた。
「貴公の腕を信じて頼みたい。某と共に、某の仲間を探して欲しい」
それが不思議なカーソルの色を持った男・オシュトルと俺・キリトの出会いだったーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2026年・4月に新しいVRMMORPGが発売された。
その名は『八百万 ー渾沌から産まれし島ー』
日本神話をテーマとしたそのゲームは、プレイヤーの分身たるアバターの衣装も和風なものか、和服しか着用出来ないようになっている。降り立つフィールドも日本の風景を残しつつもファンタジー的な雰囲気を漂わせるもので、プレイした者たちはその神秘的な景色に心を奪われた。
選べる職業/ジョブは十一種類あり、それによって特化される役柄/ロールも六種類ある。そんな役柄と共に職業も説明してみると、まず、初めに攻撃力が一番高いアタッカーを務めるのは刀が武器となる《侍》と片手直剣と両手剣が武器となる《用心棒》。そして、次に魔法力と術に特化したブラスター的な役割を果たすのは《算術士》と《魔導士》。防御力が高くディフェンダー的な役割を担うのは《錬術士》と《鍛冶屋》である。味方の傷や体力を回復するヒーラー的な役割は《薬師》で、味方を強化するのに特化したエンハンサー的な役割を担うのは《吟遊詩人》と《召喚士》。そして、最後に敵を弱体化させるジャマー的な役割を果たすのが《忍者》と《狩人》である。
武器はその職業によって使える武器が限られるが種類として十二種類あって、紹介すると上で上げた《刀》と《片手直剣》、《両手剣》で三つ。そして、算術士しか使用できない《袈裟》と、魔術師しか着用出来ないのは《杖》である。鍛冶屋は《トンカチ》で、錬術士は《手袋》である。この二つの職業はこの武器からどのような攻撃が出せるのか想像がつかない。しかし、想像がつかない職業の武器というのが、まだまだ続く。次に薬師は《扇》。吟遊詩人の武器は《縦笛》と《横笛》というここまで来たら何が何だかよく分からない。そして、召喚士とはいうと《式神》となっている。そして、最後に残る二つは忍者と狩人である。忍者の武器は《短剣》。狩人は《弓》となっている。
それで、アバターとメインを選択したら、いよいよこのゲームの攻略開始だ!
このゲームの公式サイトによると、攻略フィールドは全部で八つで、真ん中に陣取っている島がプレイヤーが最初に降り立つ《八尋殿/ヤヒロドノ》という島が最初の島らしく、SAOでいうところのはじまりの町ということらしい。まず、最初に攻略するのがヤヒロドノの北西に位置する《淡道之穂之狭別島/アハヂノホノサワケシマ》というところらしい。そして、そこを攻略し終わると次の浮島へ橋がヤヒロドノからその島へと伸びるということらしい。
そして、最後にこのゲームの内容を説明すると日本神話の伊奘諾/イザナギと伊奘冉/イザナミという夫婦神がこのゲームの鍵を握る重要人物となっている。国生みと神生みによって日本列島と神を産んだイザナミだったが、最後に火の神のカグツチを産んだことによって亡くなってしまう。そして、亡くなったイザナミを迎えに行くために黄泉/ヨミへと向かったイザナギはそこで変わり果てた妻の姿に慄き逃げ出してしまう。それに深く傷ついたイザナミはイザナギを黄泉へ引きずり込もうと追いかけ回し、命からがらに淤能碁呂島に逃げ込んだというところで、このゲームが開始される。
八尋殿にいるイザナギからクエストを受けて、フィールドに出向き、イザナミが送った手下となる妖怪達を倒して、報酬をもらい、Level/レベルを上げるというのがこのゲームの醍醐味らしかった。もちろん、フィールドに徘徊する妖怪を倒して行くだけでもレベ上げは出来るが、イザナギや八尋殿に住まう神たちのクエストを受けた方が遥かに効率良くレベルが上げられるらしい。
そして何より、その方が職業のランクを上げることに最適であった。ランクというのは、このゲームが始めて適用したシステムで職業のランクを上げることによって、持てる武器と着用出来る服装が変わるということというものだった。
そして、始めて発売されてから二ヶ月後の6月、俺、桐ヶ谷和人は仲間達と共に新しいフィールド《天之忍許呂別/アメノオシコロワケ》の攻略へと精を出していた。
最初は困難だったアバターの身のこなしも慣れたら出来るようになった。やはり昔の日本をテーマとしているからか、戦闘着が和服しかなく、その和服で戦闘というのがなかなかコツがつかめないものだった。その為、慣れてない者からすると初困難だったりする。シリカやリズなどはその困難に苦戦しているらしかったし、意外だったのがシノンが戦闘に熱中しすぎて転けたことだろうか。それを密かに笑っていたら、矢が飛んできたのは想像しやすいだろう。そんな俺はというと、昔、剣道を習っていたのがここで生かされたようだ。その為、和服での戦闘に早い段階で慣れた。そんな俺よりも早い段階で戦闘に慣れたのは意外でもなんでもなく、直葉……リーファである。みんなが苦戦する中、メキメキと本来の実力を発揮していった。リアルでも彼女は剣道着という和服に身を包んで、相手との間合いを見極めたり隙をついたりしているのだから、この手のゲームはもしかしたら俺より彼女の方が得意分野なのかもしれない……と思ったこの頃。
◎2026年・6月5日(金)
《アメノオシコロワケ》森林フィールド/キリト&リーファ
アメノオシコロワケは森林と湖に囲まれた自然豊かなフィールドだ。真ん中に巨大な湖/シエル・ディーオ湖があり、それを取り囲むように巨大な森林がある。入り口からすぐに広がる森林を《ロッソ森林》といい、時計回りに《リュストウング森林》で次に《クー森林》。最後に《ロシェ森林》となっている。
俺とリーファがいるのはリュストウング森林で、今さっきクエストを達成したところである。リーファが俺へと振り返って、微笑んでいる。
そんなリーファの服装だが、外見はALOで愛用しているアバターのもので、黄緑色を基調とした服装をしている。俺は言わずも黒と灰色だ。
「ふぅー、キリト君。ここの敵は倒したよ」
「OK、流石リーファだな。やっぱり、リーファの為にこのゲームがあるようなもんだよ」
「そんなことないって〜」
「いや、そんなことあるよっと……これでクエスト終了だな」
俺はメニューを開くと《依頼》というボタンを押す。達成とよく小学生の時、先生が押してくれた花形のハンコが押されていた。俺はそれに苦笑しながら、リーファへと向き直る。
「一応、クエストは達成したけど…どうする?もう少し、奥まで進んでみるか?」
「んー、そうだね。あたしももう少しだけレベルを上げておきたいし」
「それじゃあ、決定だな」
俺とリーファは身を翻し、リュストウング森林の奥へと進んで行く。とぼとぼと歩きながら、ふと横を見るとどこまでも澄んでいる湖が目に入る。時折、丸々と太った魚が水面を飛び跳ねるのを見ながら、俺の足は自然と湖へと向いていた。そんな俺にリーファはジト目を向ける。
「おにーちゃん。もしかして、あの湖で泳いだら気持ち良さそうだな……とか、思ってないよね」
「うぐ!?」
もしかして、バレた!?とリーファへ振り返るとやれやれと肩をすぼめる愛妹の姿が……
「おにーちゃんの妹を何年やってると思ってるの。それくらい分かるよ。それにおにーちゃんは分かりすぎ」
「うぐっ」
正論すぎて、何も言えない……。俺ってそんなに分かりやすいんだろうか……と湖から視線を逸らした時だった。
「「ッ!!?」」
鋭い地震が俺たち2人を襲ったのが、素早く地面へと伏せて、地震が静まるまで暫くそのままでいる。暫く経つと、地震は終わって、二人で顔を見合わせる。
「終わったの……かな?」
「みたいだな」
リーファに手を差し出して起き上がるのに手を貸すと、辺りを回す。
「特に変わった様子はないな」
「何だったんだろうね」
「んー、アップデートかなんかだろうな。もう暫くしたら、この森林の端だから、そこまで行ったら一旦八尋殿に帰ってみよう」
「おにーちゃん、イキイキしてる」
リーファが俺の顔を覗き込んでくる。そんなリーファに満面の笑みを向けながら、俺は抑えられない衝動に駆られていた。
「だって、アップデートだったら、何かレアアイテムとか手に入るイベントが発生したのかもしれないんだぜ」
「確かに……そうだね。あぁ〜あたしも楽しみになってきた〜!!」
リーファと共にさっきの地震ーーアップデートで更新されたであろうイベントを想像しながら、森林の奥を目指して行く。そのあと、俺はこの『八百万』ともう一つの世界を救うために奮闘することになるのだが、それを知るのはもう少し後のこと…
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二話『ホワイトカーソルの男』
2026年 6月5日(金)
《アメノオシコロワケ》フィールド・リュストウング森林/キリト&リーファ
リーファと穏やか森林の中を歩きながら、俺は右手を横へとスライドする。すると、そこに広がるのがメインメニューというわけだ。右に大きく表示されているのが、俺のアバターの情報でレベルや攻撃力や防御力などが書かれている。そして、左側にあるのがスキルやアイテムを整理するメニューが広がるものなんだが……
「おにーちゃ……キリト君が面白そうだからって、和風にするのが悪いんでしょ」
「うぐっ……いや、だってリーファだって気になるだろ?」
「気になるのは気になるけど…そういうことは弁えるもん」
「……」
リーファの言うとおり、俺は好奇心に負けてメインメニューの表示を《和風》にしてしまったのだった。そのため、左横に並ぶメニューが何を意味しているのか分からなくなる。まぁ、基本的な操作をするところは何と無く分かるので、そんなに苦労はしてないが……ただ一つ、運営部に言いたいことはなんで簡単な漢字を使ってくれなかったんだッ!?ということだろうか。
《輿図》というところをタッチすると、このリュストウング森林の地図が現れる。《黄緑色の矢印》で表示されているのが俺がいる現在地で、その現在地から三十mくらい行った所に《白い札》のマークがあるのがこのアメノオシコロワケフィールドを攻略するのに必要となるアイテムがあるイベント場所ということだ。
俺は隣を歩くリーファへと顔を向けると尋ねてみる。
「んー、ここから暫く行くと《白虎の札》が手に入りそうだな。行ってみるか?」
「ん〜、白虎の札をドロップするボスだから強いよね……。どんなのか下見してからにしよ?」
愛妹の言葉と挑戦したい気持ちを天秤にかけ、愛妹の言葉を尊重することにした。
“まぁ、無理して……全滅とかなったら、大変だし……”
俺もこのゲームを始めた当初は、無謀な特攻を繰り返しては死に戻りして、そこで始めて、このゲームの死に戻りの恐怖を思い知った。なんと、このゲームで死に戻りをしてしまうとランクが一番下の《へっぽこな》になってしまうのだ。
その時の俺はやっとの思いで、ランクを《一人前な》まで上げていたので……相当ショックだったのを覚えている。
「あっ、キリト君、そろそろじゃないかな」
「ん?あぁ、そうだな……」
さっきまでの美しく澄んだ空気から一変して重々しくどんよりとした息苦しささえ感じる空気へと早変わりしてしまった光景は視覚でも違いが認識出来た。重々しくどんよりとした紫色の霧が辺りを一面を覆っているのを確認して、リーファを顔を見合わせて、ゴクリと生唾を飲む。
「#%$€$3*々〒〆#」
何かをわけの分からない事を言って踊っている巨大な琵琶が顔の法師に俺らは顔を見合わせる。
【琵琶ぼくぼく/Level36】
真っ赤に釣りあがった目が一瞬、俺らと目があった気がして……俺とリーファは一瞬で身を隠すと小声で話す。
「あれは強そうだな……。仕方ない、出直すか……」
「うん、そうだね、キリトく…ーー」
「リーファ?」
俺は言葉を不自然な形で切るリーファに眉を顰めつつ、リーファの視線を辿り、同じく目を丸くした。
そこにはーー
「ッ!はぁッ!」
白光する仮面から覗くその瞳は鋭利で、妖怪を斬りつけていく腕前は俺が見る限りではトッププレイヤー……それ以上のものだった。
“しかし何だろう……あのプレイヤー、何かに焦ってるのか?”
「次から次へとッ!」
襲い掛かってくる【さざえ鬼/Level31】【かっぱ/Level34】に手元に持っている物と腰からさげている刀で交互に巧みに扱っては、あのプレイヤーへと群がる妖怪達を葬っていく。
その腕前と身のこなしに俺が目を奪われていると、クイクイと袖を引っ張られ、横を見るとリーファがそのプレイヤーの頭の上を指差していた。
「おにーちゃん、あの人のカーソル。真っ白だよ」
「はぁッ!?」
リーファに言われ、プレイヤーの頭の上に浮かぶカーソルを見ては、目を丸くした。
“ホワイトカーソル!?”
「何かのイベントNPCかな?」
「うーん、どうだろうな。初めて見る色だし……」
“NPCにしてみても、身のこなしや武器の扱いが《慣れ》を含んでいる気がする…”
「ッ!これで終いだ!」
ついにそのプレイヤーは最後の妖怪を倒し切り、さらに奥へと足を進めていく。
「どうしよう、あの人…回復もせずに、琵琶ぼくぼくがいる方行っちゃった…」
そう呟くリーファに俺は立ち上がると、リーファへと振り返る。
「俺らも追うぞ!念の為に武器も準備しておいてくれ」
「了解!いつでも準備出来てるよ」
「良し!行くぞ!!」
西区リーダー《琵琶ぼくぼく》出現フィールド/キリト&リーファ、???
カキィン、カキィンと鉄と鉄がぶつかる音が聞こえる。俺は更に加速すると、琵琶ぼくぼくが現れた空間へと足を踏み入れていく。すると俺の予想した通り、あの不思議なプレイヤーが一人、琵琶ぼくぼくと対峙していた。
「くっ」
琵琶ぼくぼくの強烈な一撃をくらい、後ろによろめく謎のプレイヤーの前に構うように立った俺たちは其々の武器を手に持った。
「貴公らは?」
「話は後だ。まずはこの化け物を倒すぞ!」
「はい、これ飲んでください。これで元気になれる筈です」
「かたじけない、頂くとしよう」
リーファがあのプレイヤーにアスナ特製の《ポーション》を手渡している間に俺は琵琶ぼくぼくのタグを取り続ける。
ラスボスの他に用意されているこのイベント上、倒さなくていけないもう一人のボスを《リーダー》と俺らプレイヤーは読んでいる。名前の由来はそのフィールドに徘徊する敵たちのリーダー的存在という感じだった気がする。
「#/@3*$¥」
「おいおい、そんなつれないこと言うなよ。俺だって、それなりに強いんだぜ」
俺を潰そうと振り下ろされる右手を交わすと、愛剣『黒剣』を取り出し、無防備な横腹へと斬りかかる。
「#/#&/@ッ!?」
「どうだ?そこそこ、やるだろ?」
驚いたように真っ赤に染まった目を丸くした琵琶ぼくぼくに俺は愛剣を肩に置いて、こいこいと挑発するように琵琶ぼくぼくへと手招きする。そんな俺の様子にカチンときたらしく、琵琶ぼくぼくが俺へと襲い掛かってくる。
「→♪☆1→11☆$¥!!!!!」
「おっ、やる気になったみたいだな。リーファ、そっちの方はどうだ?」
琵琶ぼくぼくの攻撃を後ろへジャンプして交わすと、丁度向かい側へとなってしまった愛妹へと声をかける。すると、返事が返ってきた。
「うん、大丈夫だよ!」
「済まなかった、某も加勢致す」
「あたしも行くよ!」
二人が其々、武器を手にする音が聞こえる。それに俺はニカッと笑うと、愛剣を構え直す。俺へと拳を振り下ろしてくる琵琶ぼくぼくの懐へと潜り込むと、スキルを発動する。
片手直剣スキル『進歩』/斬の連続三回
愛剣が淡く光出すのを見て、俺は声を絞り出す。
「うおぉおおおお!!!」
「いっけェ!!!」
「これで終わりだ!!!」
三人の声が重なり合い、琵琶ぼくぼくはポリコンの塊となり、 辺りに立ちこまれた重苦しい雰囲気が消え、近くに一枚の札が落ちる。その真っ白な札を手に取ると、アイテム欄へと入れる。
「貴公らには助けられたな。ありがとう」
頭を下げてくるあのプレイヤーに、俺とリーファは慌てたように声を出す。
「いや、俺らは当たり前の事をやったまでですし、そんなにかしこまらなくても……」
「はい、そうですよ」
「そうか……」
そこで言葉を切ったそのプレイヤーはーーその白光りする仮面の奥から俺らを見ると、もう一度頭を下げた。
「その力を見込んで頼みたい。某と共に、某の仲間を見つけるのを助けて頂きたい。頼めるであろうか?」
リーファと顔を見合わせて笑い合う。
“なるほど…このプレイヤーの焦りはそういうことだったのか……。じゃあ、尚更協力しないわけにはいかないな…”
「あぁ、俺たちはいいけど、という前にそのつもりだったしな。その…あんたの名前を聞いていいか?」
「うん、あたしはリーファでこの人はキリトって言うんだ」
「キリト殿にリーファ殿か……実に良い名だ。某はオシュトル。オシュトルというのが某の名前だ、宜しく頼む」
「あぁ、宜しく、オシュトル」
「オシュトルさん、宜しくお願いします」
これが俺、キリトと謎の男・オシュトルの出会いであった……
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