ISの世界で3度目の人生を歩みます。 (ヨーシチ)
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2度目の転生

この物語はフィクションです。
実際の登場人物、団体など一切関係ありません。


 

 

 海に沈んで死にかけています。

 

 足攣って溺れたとか、コンクリとランデブーして投げられたとかそんな理由じゃなくて、船が沈んで一緒に海の底にって言うね、ある意味本望と言うかなんと言うか。

 あ、申し遅れました。私、転生者で海軍の大佐をさせてもらってました田沼業正と申します。少々身の上話にお付き合いいただけますればこれ幸いに思いまする。

 

 平成の世に生まれ、20と余年を生きていた普通の男に過ぎない前世の私でしたが、創作話ではよくある事故死で転生と言うのに巻き込まれたのです。

 気が付けば赤ん坊。神様に会った様な記憶も無いから、恐らく転生特典的な物はなし。己の身一つで生きていけよと放り出されたのは1902年の日本。そうです、あの大日本帝国です。

 これやべえな、どうにもなんねえなと思いながら、海軍兵学校に行ったり、先輩や教官のいびりに吐血したり、地震がトラウマになったりと、まあ私なりに頑張って生きてみたのです。ここだけ抜粋するとなんも言えねえ感じですけども。他にもたくさんトラウマが出来たけども。

 そして今、坊ノ岬で大和と共に沈んでいると言うわけでございます。

 部下達はちゃんと救出してもらってるかな?雪風なんかは最後まで残ってた筈だし、初霜もこの斗いでは残ってたはず……きっと大丈夫だよね?

 

 呼吸が出来ない。

 

 水圧に身体が軋む。

 

 寒い。

 

 内心巫山戯ているとしか思えないでしょうが、こちとら現在進行形で死にかけています。と言うか、ほぼ死んでいます。寧ろなんでまだ生きてるのって感じです。

 歪んだ扉に脚を挟まれ動けない。室内にも浸水してきて顔まで浸かり、呼吸も不可。早く死ねることを祈って待つしか無いのです。なので、早く死ぬ為に空気を吐き出してしまいます。

 正直、心残りしか無いけれど、もう助からない身です。姉を遺して行くのは悔いが残りますが……きっと妹が支えてくれるでしょう。

 

 と言うわけで姉さん、そして妹よ、俺はもう靖國まで逝って参ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……意識がある。

 

 死んだのに?

 

 ……身体が思う様に動かない。

 

 そりゃ死んだんだから。

 

 ……とても暖かい。

 

 知ってる?海の底ってとっても冷たいのよ?

 

 ……眩しい。

 

 海底は真っ暗だよ?

 

 ……目蓋が開かない。

 

 海の中で目を開くなんて俺はやだよ?

 

 ……もう眠ろう。

 

 ……うん、それには賛成。疲れちゃったから、寝てしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目を覚ましたらね、なんと平成の世でしたと言う摩訶不思議な出来事がありました。

 先程まで大和に乗って技術将校の真似事しつつ斗って、結局沈められたはずなんだけれども……あれ、なんだか今の状況にデジャビュを感じる。

 

 ……それもそうだ。こんな感じで明治の世に放り出されたんだから。

 

 なんと言うか、ありがたいと言うべきか?赤子の頃の記憶と言うのは全然無いんだよ。1度目の転生でも最初に何か感じて、眠くなって寝たら、次に起きるのが大体物心ついたくらいと言うね。すごい御都合主義。いやありがたいんだけれども。

 兎に角、またもや平成の世に戻って来たわけですよ。どうでもいいんですが、明治、大正、昭和、平成と、随分いろんな時代を見て来たものです。

 

 話を戻してこの2度目の平成での人生、今度は軍……なんて無いけれど、戦わなくてもいい様な仕事に就こう。なんと言うかね、争いはもう疲れたよ。

 戦争なんて、碌なものじゃ無いよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて考えていたのが、今から10年とちょっと前の事。現在の俺は、なんとIS学園なるところの1年1組の教室でホームルームを待っている途中です。

 

 いや、ちょっと待って! ISってどう言う事さ!?

 

 いやいや、ISそのものは知ってますよ?テレビで何度も見た、現存兵器では全然歯が立たない、全く新しい兵器として使われている、宇宙服的なパワードスーツでしょ?

 そうじゃなくて、ISって女性にしか使えないんじゃ無かったの?織斑一夏とか言う奴が何故か使えたから、結果的に俺もここに入学させられたってのはわかるよ?でも織斑ってやつは世界大会優勝者の身内でしょ?だったらまだ納得できなくも無いけど、なんで俺が動かしてるの?

 

 ISとかめっちゃ斗う為に使われてるじゃん……。

 

 ヘタレでも玉無しでも良いから、俺もう斗いとう無いねん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 田沼業正改め川内紫月は、とても憂鬱な気分で第3の人生の高校入学に臨みましたとさ……。

 

 




作者は歴史に弱いですので、色々と間違うことがございます。
ご容赦ください。
ある方の作品に多分に影響を受けている可能性がございます。


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SHR

お気に入り登録してくださる方がいて、内心ニヤニヤが止まらない作者です。
……ところで、ネタってついつい挟みたくなりません?


※注意※
今回の話は不謹慎な描写がありますので、閲覧の際はご注意ください。
もしかしたら修正するかもしれません。


 ……うつうつします。

 

 内心で何言ってんだこいつと自分で自分にツッコミを入れつつ、男女比が異常な程偏った教室内で、俺は今か今かとホームルームが開始されるその時を待っていた。

 はっきり言おう。此処すごく居心地が悪いです。どれくらい悪いかと言うと、江田島にいた頃、教官の機嫌が悪かったときくらい居心地が悪いです。すみません、やっぱり今の教室のはとても快適です。

 

 改めまして、皆様おはようございます。2度の転生経験を持つヘタレ、川内紫月でございます。こう書いて、「せんだいしづき」と読みます。「かわうち」ではありませんよ?前世では田沼業正って名前だったので、少しだけキラキラしてない?なんて思ってます。

 ところで、気付いた人もいるかもしれませんが、日本海軍の5500トン型軽巡洋艦『川内型軽巡洋艦』のネームシップと同じ苗字なのです。川内とは第三次ソロモン海戦で一緒だったんですよね。その時俺は綾波に乗ってたけども。

 

 さて、私は現在IS学園なるところの1年1組の教室にて、担任の先生及び副担任の先生が来るのを待っている最中でございます。最も、先生を待っているのは俺だけじゃあ無いのですけれども。

 そうです、本日ついに世界初の男性IS操縦者である織斑一夏が、ISの操縦者や整備士の育成を行う教育機関『IS学園』に入学を果たすのです。世界で二番目も同じ日に入学するんだけれどもね。

 

 講堂で入学式が行われ、生徒会長や学園長の話を聞いて、各々のクラスに散らばっていった生徒の例に漏れず、織斑一夏ともう一人の男もまたクラスに入ったわけですが、先程言ったとおり少し居心地が悪い状態です。

 運が良かったのか、私は中央の列、教室の一番後ろの席を陣取る事が出来た……もといその席だったのですが、織斑一夏はなんと一番前の席。しかも私と同じく中央の列というおまけつき。やったね一夏くん、みんなから注目してもらえるよ!女の子の視線を攫っていくなんて、とんだ色男だね!

 まあ、本人の様子から察するに注目を浴びるのに慣れていないというか、彼にとっては今の状況は針の筵のようなものなんだろうけども。あれだ、加賀に乗るよりここはずっと天国だとでも思ってくれ。俺も乗ったこと無いんだけども。それか、俺がいるだけましだと思って耐えてくれ。実際俺の方にも幾つか視線が向けられてるんだから。

 

 そんな、織斑が9、俺が1くらいの割合……?で視線が向けられ小さくざわつく教室の中に、廊下から足音が聞こえてきた。先生が来たのだろうが、足音が一人分であることに疑問を覚える。もしかして担任だけ?

 俺の些細な疑問が解消されたのは、教室の前の扉からが現れた先生の自己紹介を聞いてからだ。なるほど、大方担任の先生は会議か何かで遅れているのだろう。

 

 ひと目見て生徒と大して変わらないと思う程の身長、生徒のそれとは一線を画する胸部装甲、そして童顔という1度目の人生でも2度目の人生でも見たことのない素晴らしい容姿の持ち主だ。個人的に低身長で大きいのは良いと思います。何処がとは言いませんが。あれ、もう遅い?

 

「副担任の山田真耶です」

 

 黒板の前でにっこりと微笑む彼女は、きっと思春期の男子生徒共からしたら憧れの的になったのだろう。だが、如何せん此処は女子校だ。なにより、彼女より人気な教師がいる。

 そして後で気付いたのだが、この人の名前って回文になってるのね。ところで、なんとなくドジっ娘的な雰囲気を醸し出しているが、ちゃんと先月と先々月の家賃は払っているだろうか。多分大丈夫か、教師だし。大きいし。

 

「皆さん、これから一年間よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします」

 

 反応するのは俺一人。他の皆は織斑一夏に夢中で返事もしませんでしたとさ。相手が()()でよかったね?()()だったらと思うと気が気でないよ。まあ、俺がまだ江田島にいた頃、体罰は目に見えては無かった……けども。

 教師としてまだ歴が浅いのか、それとも気が弱い性格なのか……いや、織斑と俺のせいか、生徒が全然返事をしていないのは流石に不味いと思うから、ちょっとくらいは威厳を持って欲しいです。まあ、ここで教師が出来るってことはきっと優秀な先生なのでしょう。

 どれだけ上から目線だって思わなくもないけれど、私、今15歳。加えて、前世では43歳まで生きてます。更に1度目の人生では20と5年程生きています。つまり、私はお爺ちゃんです。それでも100超えないんだけども。

 まあ山田先生には今後に期待するとして……。一先ず山田先生は、一人返事をしてくれたからってすごく嬉しそうにするのは止めてください。

 

「それじゃあ、出席番号順で自己紹介をお願いします」

 

 そう言った山田先生の指示に従い、出席番号1番の人から自己紹介を始める。なんというか、アピールって点では間違ってないんだけども、それ、織斑一夏向けだよねって自己紹介を聞きながら、ついに織斑一夏の番がやってまいりました。

 ただ、どうやら彼は自分の番が回ってきたことに気がついていないらしい。此処まで余裕が無いと、少し可愛そうにさえ思えてきてしまうが……まあ頑張れ、若人よ。

 

「えーっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 先生に呼びかけられ、漸く気がついた彼は少し慌てた様子を見せるも、なんとか気を取り直して自己紹介を始めたのだが……その続きは?おうこら、あくしろよ。どうでもいいけど、俺はホモじゃないからね?

 まあ兎に角、女子生徒達からしたら残念ながら、それ以上言葉が続くことはなかった。

 

「―――以上です!」

 

 思わずずっこけている生徒さえちらほら見える。どれだけ期待していたのやら……いいぞもっとやれ。

 

「あ、あのー」

 

 中央の一番前ということもあり、後ろを向いていた織斑一夏の背後から忍び寄る鬼の影……。流石に不憫だと思ったのか、山田先生が声をかけるも虚しく終わる。

 このクラスの担任であり、元世界王者にして今なおその人気が健在の女性、織斑千冬の登場だ。

 鬼のような形相というわけではないが、かつての教官たちに負けず劣らずの威圧感に、「おぉ怖い怖い」と内心で呟いてみる。先程も言ったけど、あくまで教師だから……ね?あと、実技試験とか言ってイジメるのは良くないと思いますよ?

 そんな織斑千冬と織斑一夏の茶番があったが、此処では割愛しよう。

 

「織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「いいえ、副担任ですから、これくらいはしないと」

 

 彼女の人気は生徒だけではないのか……と思わせる、山田先生の若干熱のこもった声。まあ、ブリュンヒルデだしね、しょうがないよ。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になるように育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

 うん、すごく優しいね。小学生みたいな感想しか出ないけど、超優しい先生で助かったよ。いや、皮肉とかじゃなくて。まじで。だって、出来ない者には出来るまで指導してくれるんだよ?優しいじゃん。体罰はあっても暴力は無いんでしょ?まぁ、いいけどさ……。

 でも、今の世代の子達が聞いたら……と少し心配したけど、無意味な心配でした。

 

 

 

「キャーーー!千冬様、本物の千冬様だわ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて感激です!」

 

 

 

 もうね、黄色い声が凄い響くのよ。なんとなく微笑ましいな、なんて思って聞いてたんだけども、どうしても最後だけは聞き逃すことが出来なかった。

 

 

 

 

『私、お姉様の為なら死ねます!』

 

 

 

 

 ……そうか、凄いな彼女は。

 

 俺は死ぬのが怖いよ。誰かのためでも、やっぱり死ぬのは怖いし、死なれるのも怖い。

 だから、俺は彼女を尊敬しよう。名前は……なんか言ってたっけ……忘れたけども。兎に角、君の勇気を称してISではなく回天の使い方を学ぶ事をお勧めするよ。使い方、そんなに難しくないよ?俺はあれ嫌いだけど。それか零式艦上戦闘機の方がいい?所謂『零戦』ってやつ。俺、整備も出来るし操縦方法も教えられるよ?

 

 ……これ以上はやめよう。流石に不謹慎が過ぎるし、何より彼らを思い出す。

 

 俺に出来ることなんて限られていたけれど、それでも助けられるのなら助けたいと思った、若い彼らの命。

 何時だったかの特攻作戦でさ、決められてたのより少し多めに燃料を入れたり、こっそり海に不時着出来るようにマニュアルも仕込んだんだよ。それで逃げてほしかったから。でもさ、みーんな敵さんに突っ込んで行くんだよ?まだ若いのにさ、もっと欲張って欲しかったよ。金が欲しいとか、女を抱きたいとか、なんでもいいからさ。で、俺はお船の上で生きていると。嫁さん娶って子供がいたら、多分自分の息子くらいかな?そんな年齢の彼らがだよ……本当に、最低の気分だったよ。

 

 さて、娘子への皮肉はこれくらいにして……小さく深呼吸して気持ちを落ち着かせねば。ほら、ちょっと意識したら眉間にシワが寄ってるのが分かる。これじゃあせっかくのイケてるメントスな俺のフェイスが台無しだよ。

 あんな簡単に紡がれる死ぬだの死ねだのなんて言葉、小さい時から聞いてきたじゃないのよ。今更だとは思わんのかね?……多分無理なんだろうな。未だに悪夢に魘される事もあるし。地震も戦争も、兎に角あの時代は色々と精神的に優しくない。滅茶苦茶トラウマ植え付けられたもの。

 

「毎年毎年、よくもまあこれだけ馬鹿者が集まるものだ。寧ろ関心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ集中させているのか……?」

 

 織斑先生の言葉に意識が戻ってくる。毎年毎年この騒ぎを聞かされるなんて……先生、ご愁傷様です!人気は金で買えないと考えると、少しは気が楽になるかもしれませんよ?知らんけども。

 何やら鬱陶しがっている様子の織斑先生に畳み掛けるかのように、更に女生徒共が騒ぐが……今度は耳を塞いでいるので少しはましかな?あれだよ、若い女性の甲高い悲鳴はある種の武器だよ。

 

「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」

「いや、千冬姉俺は――」

「織斑先生と呼べ」

 

 先程の茶番でも叩いていたが、織斑先生はどうやら出席簿で人の頭を叩くのが定番らしい。顔が腫れるほどのビンタとかじゃなくて良かったよ。

 

「さて、時間もないことだ。これで自己紹介も終わり……といきたいところだが、諸君らも気になっていることだろう……川内」

「はい」

 

 時計を見ると、本当に時間が少なくなっている事に気付く。スムーズに言ってたら丁度全員分自己紹介できたんだろうけども……まあしゃあない。

 時間が中途半端なのを見て、俺を最後にして余った時間は授業のための準備にと言うことなのだろう。ちくせう、織斑君め。もっと時間を稼いで潰して俺の自己紹介タイムを無くしてくれれば良かったものを。どの道、ちょっと時間をオーバーしてもさせられてたかもしれないか。

 先生の指示に従い、小さくよっこらせと溢しながらその場に立ち上がる。一番後ろの席だから一々振り向かなくていいのはありがたいね。

 一度、周りを見渡してから、自己紹介の言葉を発する。

 

「川内紫月です。川の内と書いて、せんだいと読みます。趣味は……甘いものが好きなので、ケーキとか食べることかな?IS学園はご飯やデザートが美味しいって聞いてるので、実は楽しみにしています。1年間よろしくお願いします」

 

 趣味の所に何か言いたげな表情を浮かべたが、まあ及第点だったのだろう。

 

「……まぁ良い。さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISに関する基礎知識を半月で覚えてもらう。その後は実習だが、基本動作は半月で物にしろ。いいか、良いなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」

 

 念を押して、兎に角返事をしろという言葉と共に、お許しをもらいました。

 いや、まあ甘いものを食べるのは嫌いじゃないし、どっちかというと好きだけど……趣味って程でも無いのよね。趣味らしい趣味と言えば機械をいじることなんだけど、でも流石にそれはと思って先程言った趣味にしてみました。

 

「よろしい」

 

 俺の趣味云々は今は置いておくとして、先程言われた通り、今度は全員が返事をしたのを聞いて頷く織斑先生。軍でもそうだけど、やっぱり学校も返事は大切だよね。だから、皆さんも今度からは織斑先生が相手でなくても返事をしようね?

 

 織斑先生の言葉を最後に授業の準備に入るのだが、正直不安しかありません。希望なんてものは持てません。

 

 はてさて、この先どうなることやら……。

 

 




前回の後書きで作者は歴史に弱いと書きましたが、ミリタリーにも弱いと追加しておきます。


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のほほんさん

お気に入り登録して下さった方が増えたり、評価していただけたり、激励の言葉を頂いたりと、喜びのあまり調子に乗りはじめた作者です。


あ、ありがてぇっ……!


 

 パン……授業!授業です!

 

 SHRが終わり早速授業が行われるIS学園は、日本のごく一般的な学生からしたら鬼畜この上ない環境じゃないのかと私は思うわけでありまして……。

 つまり何が言いたいのかというと、超ありがたい。言っておくが、私はMでは無い。

 

 どうも皆様、入学式初日から授業があることに若干ながらも辟易としていたはずが、今ではすっかり助けられたと感じているチョロい男、川内紫月でございます。

 なんせまあ先程までの、SHRが開始する前や織斑先生の登場前にはあった視線が今ではすっかり無くなり、皆が授業に集中しているお陰でゆっくりまったりと過ごすことが出来るというわけなのです。皆優秀な子達ですから。

 とは言うものの、授業が終われば皆が一斉に、再び俺と織斑一夏の方へと視線を向けるのが予想されるので、今から既に辟易としていますが。ついでに言うと、授業もあと少しで終わります。なので、この素晴らしい授業(休憩)時間に祝福を送りつつ、頭のなかに逃走経路を思い浮かべる。ごめん、無理でした。まだ全然この学校のこと知らないのに、逃走経路なんて思い浮かぶはずがないんだよ。

 こういうときはアレだよ、旅は道連れ世は情けって言うでしょ?取り敢えず織斑のところに行ってみるか、若しくは織斑をこっちにこさせるかすれば少しは気が楽になるのではないかと言うものだよ。え、意味が違うって?こまけぇことはいいんだよ。

 しかしこの道連れ作戦には少し問題がある。勿論大丈夫な可能性もあるが、世の中にはこの様な格言があるという。故に警戒していて損はないだろう。

 

 ―――ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!

 

 本当に、誰が言ったんだろうね、こんなセリフ。

 一先ず冗談は此処までにしよう。ちょっとネタにされるくらいなら別に構わないからね。流石にホモであることを押し付けられたり、勘違いされたり、薄い本が出回ったりするのは勘弁して欲しいけれども。

 

 ところで、男の同性愛者の事をなんでホモっていうんだろうね。

 因みに、天一号作戦の少し前に行われた輸送作戦で、同期がホモ船団なるものを護送していたはずなんだよ。此処で言うホモは、香港から九州の門司ってところまで行くから、その二つの頭文字をとっただけなんだけどね。そう言えばこのときにアイツが死んだんだったな。

 

「はい、それじゃあチャイムがなりましたので1限目の授業は終了します」

 

 山田先生の言葉に意識が戻ってくる。チャイムの音も聞こえないのに人の声はちゃんと聞こえてくるって、凄く都合の良い耳をしているよね。これもカクテルパーティー効果の一種かな?違うか。

 それにしてもまさか、ホモでもトラウマを刺激されるとは思わなかったよ。普段はホモなんて一切考えないから初めて気づいた俺の新しいトラウマ。凄いね、今日だけで2つもトラウマを刺激されたよ。片方は自爆だったけど。

 

 ……自爆、か。

 

 2度の転生を経て、後から知った話なんだけども坊ノ岬沖に参戦してた磯風って駆逐艦、この戦いの後で自沈処分されてるんだってね。太平洋の大海戦のほとんどに参加して、金剛や大和型三姉妹の大和、武蔵、信濃と言った大戦艦――信濃は途中で空母になっていたが――大鳳や蒼龍と言った空母達の最後も見届けたんだっけか。真珠湾攻撃に始まり、ミッドウェーや第二次ソロモン、マリアナ沖やレイテなど、色々活躍したこの磯風は最高の武勲艦であるとも言われている。

 武勲艦と言えば、大和と同じく坊ノ岬で沈んだ浜風もそうだろう。金剛や武蔵、そして信濃の最後を見届け、大和と共に沈んだ。加えてこの浜風、乗員239人に対し、様々な戦いで約5000人の命を救った武勲艦だ。これは大戦果と呼ぶに相応しい成果だろう。

 だがまあそれでも、うちの綾波には勝てないんですけどね!贔屓目で見ているって言われそうだけど。

 

 取り敢えずあれだ、ちょっとは気持ちも落ち着いたんじゃねえの。巫山戯られるくらいにはさ。

 というわけで、織斑を巻き添えにして突き刺さる視線を和らげちゃおう作戦、開始!

 ……え、自沈と自爆は違うって?さっき言わなかったっけ?こまけぇことはいいんだよ。

 

「おっす!」

 

 自然と取っていたゲンドウポーズを解き、いつの間にか来ていた織斑の声に顔を上げる。こっちから行く手間が省けて良かったよ、うむ。

 片手を上げて砕けた感じで声をかけてくるこのイケメン様だが、きっと俺が同じようにポーズをとってもきもがられるだけなんだろうな。ケッ。

 自虐はともかく挨拶をされたならば返さねばなるまい。相手が砕けた調子で挨拶をしてきたのならば、こちらは……

 

「おう」

 

 同じように砕けた口調で返事だ。溜めたのは何だったのかって?別に意味なんて無くたっていいじゃない。ここであえてきっちりとした挨拶をしても良かったんだけど、流石に皆の目が痛いと思ったんですよ。

 

「にしても、同じ境遇の男がいて本当に良かったよ。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

「わかったよ、一夏。改めて、川内紫月だ。まあ、よろしく頼む」

「ああ、こちらこそ。紫月って呼んでもいいか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 それにしてもこの織斑一夏ってやつはコミュ力が高いな。初対面でいきなり名前呼びって流石都会の人間は違うよ。

 こうして改めて自己紹介をしてファーストコンタクトを果たしたので、改めてついでに彼について少しだけ観測してみる。

 背丈は俺より低い170の半ばといったところか、特別身体を鍛えている様子はなく、しかしどこか格闘技かなにかをしていた様な名残も感じられる。人当たりもよく、まさに爽やかな好青年と言ったところか。

 

 凡そだが彼の評価を決めた所で、俺達の会話に割って入ってくる声が聞こえた。いや、別に良いんだけれども。

 

「……ちょっといいか」

「え?……箒か?」

 

 先程SHRのときに自己紹介をしていたような、そうでないような……確かまだ聞いていないよね。

 初対面、若しくは暫く振りに会ったであろう異性の名前を呼び捨てにするって流石っす!なんて思いつつ、事の成り行きに身を任せることにした。

 

「すまない、一夏を借りて行ってもいいだろうか?」

「ええよええよ。授業までには帰ってきいや」

 

 突如として現れた謎の少女は、雰囲気からして大和撫子という感じだが、一部がお淑やかではなく随分なじゃじゃ馬のようだ。

 そして、少し頬を赤らめる少女を見て色々と悟る。そうか、一夏は既に攻略済みの女の子と同じクラスになったわけか。

 ただし、一夏に自覚があるかはまだ何とも言えないが。なんせまあ、一夏の声音が旧知の友人に久々に会ったときのものだったし。きっと幼馴染ってやつなんだろう。

 

 もう一度謝り、そのまま一夏を連れ立って教室を出て行く少女の背中にサムズアップをして送り出す。頑張れよ、若人。おっちゃん応援してるから。

 傍から見たら何してんだろコイツってなるかと思い、一先ずサムズアップを解いてゲンドウポーズへと戻ろうとする。

 しかし、突然誰かに肩を突かれる感じがしたので、そちらの方へと振り向いてみる。

 

「かわちーって大阪から来たの~?」

 

 なんか小動物がいた。

 いや、小動物じゃなくて人間なんだけど、なんというか雰囲気が小動物を思わせるというかなんというか。

 

 クラスで一番小さいのではと思わせる背丈、そしてそれに拍車をかけるぶかぶかな制服、子供っぽさが残る髪飾りとツインテール。なるほど、これが所謂合法ロリと言うやつか。いや、知らんけども。

 この娘っ子が、俺が大阪出身と勘違いしたのは先程の返答からかな?

 

「いや、違うけど……え、かわちー?」

「うん、かわちーの苗字って、川の内って書くんでしょー?だから、かわちー」

 

 ああ、うん。分かるんだけど、俺の苗字、かわうちじゃないって自己紹介のときに言ってなかったっけ……言ってなかったかぁ……。そういやあれ、内心の独り言的な、所謂心の声ってやつだったよ。

 冗談はさておき、俺の苗字はあくまで川内だ。かわうちではない。なので、訂正するなら今のうちだろう。

 

「俺は『かわうち』じゃなくて『せんだい』なんだが……」

「かわちー、チョコ食べるー?」

「どうも、かわちーです」

「かわちーで良いんだ!」

 

 合法ロリ……は流石に失礼か、名前も知らない少女との会話を聞いていたであろう近くの少女にツッコまれるが、別にニックネームぐらいなんだって良いじゃないのよ。

 そう思いながら、貰ったチョコレートを口に含む。うん、やはり日本人ってチョコレート大好きだよね。美味しいし。

 

「ありがとう、美味かったよ。えっと……」

「私は布仏本音だよー。よろしくー」

「そうか、布仏本音か……じゃあのほほんさんかな?」

 

 目には目を歯には歯をって言うでしょ、だから俺もニックネームをと考えたのだけれども、出てきたのがそんなのしかありませんでした。

 「のほ」とけ「ほん」ねということで、雰囲気と合わさって凄く良いニックネームのような気もするけども、女子につけるニックネームでもないような気もすると思いきや、本人の反応は意外にも悪くない。なので、これからはのほほんさんと呼ぼう。

 

「ところでのほほんさんや、今日の放課後って時間ある?」

「うん、あるよー」

「じゃあさ、学園の中を見て回りたいんだけど、案内してもらっても良いかな?」

 

 トレーニングルームとか、その他ISに関わる施設とか、兎に角色々と見ておいたほうが良いと思っていたので、試しにと聞いてみたら「いいよー」と二つ返事で了承してもらえたので、放課後はのほほんさんと学内デートをする運びとなりました。

 学内デートは言い過ぎにしても、これで直ぐに施設の把握が出来るのはありがたいよね。

 

「本音だけずるい!私も一緒に案内させてもらってもいいかな?」

「私も私も!」

 

 どうやら一夏だけでなく俺もそれなりの需要があるらしい……まあ直ぐ落ち着くんだろうけども。

 結局、谷本さん、鏡さんも合わせて、4人で学内を周る事になりましたとさ。やったねかわちー!両手に花だよ!

 

 とは言うものの、思いの外嬉しくないというか、普通というか……いや、嬉しいんだけども。

 ほら、私って2回も転生してるじゃん?だから、累計年齢は83歳と、既に爺の域まで達してるわけ。故にね、異性として見るよりも先に孫娘的な目で見てしまうのよね。ただ、身体が若いから相応の性欲はあるんだけれども。いずれはいい人が見つかれば良いな……。

 

「やったねかわちー!両手に花だねー」

 

 内心で思っていたことを、実際に声に出して言われると結構怖いもんですね。

 少しだけドキッとしながら、丁度のところで鳴った予鈴のチャイムに合わせて次の授業の準備に入る。

 兎にも角にも、ありがとう、のほほんさん。お陰で、廊下にまで押し寄せてきていた他学年や他クラスの女子生徒の目を気にせずに済んだよ。

 




駆逐艦って良いよね。


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代表候補生と素人と達人と

や、やっと書けたでござる。



3/25:一部加筆修正
10/17:一部加筆修正


 1934年6月29日

 

 済州島南方で演習中に起きた駆逐艦の「深雪」と「電」の衝突事故により、3名の死者と2名の行方不明者を出している。俺はこの時横須賀の工廠に居て大鯨の機関部に関して手伝いをしたり、ディーゼルエンジンの開発に携わっていたから、あくまで聞いた話でしか無いが。

 結局この事故により、深雪は断裂し、後部はその場で沈没。前部は曳航中に断念して放棄したそうで、特型駆逐艦では唯一戦前に沈没となってしまっている。

 

 例え緊張感を持ち、注意して演習に臨もうが事故が起きるときは起きる。深雪と電の接触事故がいい例だろう。ましてや、しっかりとした基礎知識もないまま兵器を扱えば、事故が起こるのは当然といっても良い。

 つまり何が言いたいのかというと、授業は真面目に受けましょうということだ。ISに関する授業は当然として、学生として普通科目もちゃんと受けなければなるまい。

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合には刑法によって罰せられ――」

 

 どうも皆様、山田先生のことを少し頼りないと想いつつ授業は期待していたら、見事期待通りどころか期待以上にわかりやすい授業をしてくださっていることに感動している元軍人の川内紫月でございます。

 こうやってISに関する授業を受けていると、どうにも江田島にいた頃を思い出してしまうものです。軍人になるための教育を受けていたこともあり、また実際に扱っていた身としては兵器の扱いがどれほど危険なものかを理解しているため、こうして授業は真面目に聞いているわけであります。例え予め配布されていた参考書を読めば分かるところでも、復習は大事。その辺りがわかっているのか、流石に此処に居るだけあって皆が真面目に授業を受けているのには感心する。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

 しかしながら、例外というのは必ず存在しているもの。俺と一夏は世界的に見て例外的存在ではあるが、それでも学生としては従来の生徒と変わらないはず。だがまあ、彼の場合は平和な時代しか知らない若い子だ。いきなり理不尽な環境に放り出されたのだから、全てを受け入れられるとは限らない。

 どうやら一夏は今授業でやっている範囲全てがわからないと言うではないか。事前に配布された参考書を読まなかったのか。

 当然ながらわかっているものとして授業を進めていた山田先生は、一夏の言葉に対して引きつった顔で狼狽していた。

 

「えっと……、織斑くん以外で、今の範囲がわからない人はどれくらいいます?」

 

 一応確認のためと、山田先生が挙手を促す。わかっている前提として授業が進められるのだ、当たり前の様に手を挙げる者はいない。

 そんな教室内の様子を見渡し、山田先生に変わり今度は一夏が狼狽し始める。

 

「し、紫月はわかるのか?」

「予め参考書が配布されてたろ?まだ序盤に書かれてる基本中の基本……それと、余計なおせっかいかもしれんけど言っとく。自分がこれから操るのがどういった代物か、一度考えるといい。生半可な知識や技術、覚悟で扱っていてはどうなるのか」

 

 これから仲良くやっていくならば言わないほうが良いのかもしれないが、友人として接するのであれば言っておいて損はない。一応周りの女生徒にも伝えておいたほうが良いだろうと、ちょっとしたおせっかい出た言葉とも言うが。

 例えISに絶対防御があろうが、ISを纏っていない者、生身の人間にはそんな便利な機能は存在しない。自分さえ安全ならばそれでいいなんて、通用しないのが兵器の運用というものだ。最も、ISは本来兵器として作られたわけではないのだが。

 

「……ところで織斑、入学前に渡した参考書は読んだか?」

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

 流石に授業を乗っ取られるのは不味いと考えた……わけではないのだろうが、織斑先生が口を挟む。確かに、今の範囲は参考書を読めば分かる範囲だから。

 しかしまあ、残念ながら一夏はまだまだ甘い人間らしい。兵器の運用のために知るべきことが書かれた本を捨てるなんざ……。だがまあ、こんな甘い人間が増えることを、兵器が無くて済む世になることを願うよ。

 案の定、織斑先生を怒らせてしまい一夏は頭を叩かれる。

 

「あとで再発行してやるから、一週間以内に覚えろ」

「い、いや……あの分厚さを一週間でっていうのは」

「やれと言っている」

 

 織斑先生に睨まれた一夏は結局言い返すことも出来ずに折れてしまった。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と、過去の兵器を遥かに凌ぐ存在だ。そういった兵器を深く知らずに扱えば事故が起こる。川内が言っていたのはそういうことだ。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても覚えろ。そして守れ。それが規則というものだ」

 

 流石に教師を務めているだけあるというべきか。織斑先生が少し言葉を付け足して言ってくれたことに感謝して教科書に目を落とす。だが、どうやら話はまだ終わらないらしい。

 

「……貴様、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

 一夏くんよ、俺だって此処に来たくてきたわけではない。なんなら戦うことを忌み嫌い、兵器としてのISなんざ無くなってしまえば良いとさえ思っている。だが、こうして此処に居る以上は勉学に訓練と励まなければならないのだ。

 

「臨む望まないに関わらず、人は集団の中で生きていかなくてはならない。それすら放棄するというのなら、まずは人であることを辞めることだな……そして川内、お前は何故目から鱗が落ちた様な表情をしている」

「気の所為ですよ、織斑先生」

 

 考えていることが表情に出て来るのは自分がまだまだ未熟な証拠か、はたまたこの15年ですっかり腑抜けてしまったか……。

 しかしまあ、織斑先生の言葉にはすっかり感心してしまった。確かに、人である以上他者とかかわらずに生きていくのは不可能に等しいことだ。しかし、それはあくまで人の身であればの話。人であることを辞めたなら、このIS学園に在籍する必要もなく、争うことも戦うことも無く生きていける筈だ。

 しかしまあ、そんな生き方は私には無理だ。嘗ての大戦で、私は軍人として生きた。戦争だから人を殺す。そんな異常が当たり前な場所で過ごし、人を殺め、時に救い、人として生きてきたのだ。今更変えられる筈がない。

 雷の艦長を務めた工藤君なんかがいい例だ。彼は素晴らしい人格者であり、戦争の最中であっても敵兵を助けたのは有名な話だ。

 

 そうだ、軍人は人だ。戦うことを生業とし、人を殺めることを是としようが、それでも大和の誇りと共に命を繋いできた。故に、我々は人でいられたのだ。

 

 だから、今更人であることを辞めるなんてありえないことだ。故に、織斑先生の言ったことは考えたことがなく、彼女の言ったとおり目から鱗が落ちる思いだったのだ。

 ……流石にくどかったな。

 

 小さく、周りから気付かれないように溜息を溢す。過去は過去と割り切らねば、いつまでもあの頃のままではいられないのだから。

 

「あー、んんっ。山田先生、授業の続きを」

「は、はいっ!」

 

 すっかり沈んでいた思考も、織斑先生の咳払いと共に浮上する。何やら山田先生と一夏との間でやり取りがあったようだが、全く聞こえていなかった。考え事をして周りが見えなくなるのは、今の俺の悪い癖だ。考え事が出来る余裕があるというのも、ある意味で考えものだ。贅沢な話とも言うが。

 

「それでは、授業を再開しますね――」

 

 そう言って、またスラスラと教科書を朗読する山田先生の声に耳を傾けながら、ちょっとぐらい一夏の助けをしてやろうと決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間目終了直後、中央の列最後尾にて。

 

「紫月頼む、勉強教えてくれ!」

「焼き菓子で手を打とう」

「授業料取るのかよ!」

 

 何故取られないと思ったのか。

 二時間目の休み時間、授業が終わった直後に行われた俺と一夏のやり取りがこれだった。ちょっとは冗談を言い合える仲になれたのではなかろうか。今のところ一方的だが。

 それはともかくとして、現在、実はとても気になっていることがあって仕方が無い。それは何かというと、視線とその主だ。視線に嫌悪感の様なものが混じったとあれば、気にせずにはいられない。

 ただ見られているだけならば無視していても良いのだが、問題はその視線の主がこちらに向かって来ているということ。それに気付いているのは俺だけで、一夏はどうやら気付いていない様子。

 

「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

「いいですよ」

 

 ―――面倒は 向こう側から やってくる。

 

 あれ、これ誰かの言葉だったか。五・七・五になって良かったのだが、ありがちな言葉故に誰かが言っていそうな気がしたが、まあ良しとしよう。

 問題はそのやってきてしまいやがった問題の方だ。女の子を問題と言うのはいささか気が引けなくもないが、こればかりは仕方が無い。

 話しかけてきた少女はイギリスの代表候補生にして、女子の中では唯一実技試験で教官――ただし、手加減をしていた山田先生だと、後から聞いた――を倒した上、勉学でも非常に優秀な入試主席の学生だ。

 さて、そんな彼女だが、第一印象は今時の女性と言う印象を抱かせる。流行りに乗っかった見た目というわけではなく、女尊男卑思考の女性という印象だ。腰に手を当てた姿がとても様になっている。

 余談だが、このIS学園は無条件で多国籍の生徒を受け入れなくてはならないため、様々な国の生徒が入り交じった学園となっている。

 

「まあ!なんですの、貴方のその気の抜けたお返事は。私に話しかけられるなんて、とても光栄な事ですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?そこの貴方はまだわきまえているようですが……」

 

 一夏と俺を順に見ながら、それぞれに辛いコメントをつぶやく。人の反応を見てわきまえている、なんて評価を下すとは、此奴はやはり今時の女性というわけか。

 彼女が女尊男卑だろうがなんだろうが、兎に角厄介事さえ持ってこないのであれば俺からしたらどうでもいいことだ。ただの学友、それだけ。

 

「それで、オルコットさん、どういったご用件で?」

「……まあいいですわ。そこの貴方、織斑一夏さんといいましたか……。貴方ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でありながらISを操縦を出来ると聞いて、少しは期待していたのですが……期待はずれですわね。川内さんは今のところボロを出していないようですが」

「俺に何かを期待されても困るんだが……」

「……」

 

 彼女の言葉に、一夏は消極的な発言をし、それに対して俺は言葉を噤む。思わず言葉を発しかけたが、俺が言ったところで信じてもらえなどしないから。

 嘗て兵器を扱っていたなんて言っても、危ない人としか思われないから。

 というか、今のところボロを出していないようですがってどういうこと?

 

「まあでも、私は優秀ですから、ISのことでわからないことがあれば、そうですわね……泣いて教えを壊れたら、教えて差し上げてもよくってよ?なんせ私、イギリスの代表候補生にして、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「入試ってあれか?ISを動かして戦うっていう」

「それ以外にありませんわ」

 

 オルコットが、入試での成績を自慢するが……確かに凄いな。どんなに手を抜かれようと、俺はISを使っていては教官に勝てる気が一切しないのだが……。

 戦ってみてわかったのだが、ISを用いた戦闘の場合、剣の腕だけでは本職の者には敵わず、それどころか本来の実力する出し切ることが出来ない。少なくとも、今感じている違和感をなくすまでISに乗らなければ、織斑教官には勝てないだろう。

 例え手加減されたとは言え、それでも織斑教官に勝てる辺り流石は代表候補生と言うべきか。

 

「凄いな、弱音になってしまうけど、俺はまだ織斑教官に勝てるイメージが浮かばないよ。攻撃は当たってもあまりダメージが稼げないし……。何より、陸上でのイメージに身体が引っ張られてしまうし」

 

 自分でも性格が悪いなと思いつつ、戦った教官の名前を出して卑屈になって言う。本来、実技試験において織斑先生が出張ることはなく、基本的には山田先生他、元代表候補生クラスの先生方が教官を務めるのだ。

 しかしながら、どういうわけか俺のときに限って織斑先生が試験教官として登場し、戦ったというわけである。世界最強と名高い織斑教官が相手では、例え剣の腕に覚えがあろうと、ISの戦闘では勝てるわけがないのだ。今までの経験が違う。

 

 それでも、俺とてかつては軍人だったのだ。剣術においては免許皆伝にまで至り、同期の奴らよりもずっと強いという自負があった。

 その経験を活かして戦った結果があれなのだから、織斑先生の実力は本物と言うほかあるまい。素直に地上で、剣で戦うのであれば、俺とて簡単に負けるつもりもないし、それこそ勝ちにだっていけるのだが。

 

「紫月、教官って山田先生じゃなかったのか?というか千冬姉相手に攻撃を当てられるだけでも凄いんだが……」

「私のときも山田先生が教官を務めていたのですが……」

 

 つまりはそういうことだ。俺と皆さんでは、入試の結果を比較することなんて出来ないというね。

 

「俺だって普通に山田先生と戦いたかったよ。織斑先生のあの機動は一体なんなのさ、人間じゃ……並の人間じゃ絶対出来ないよ、絶対」

「……命拾いしたな」

 

 突如として背後から人が近付いてきた事を感じ取った俺は、即座に言葉を修正する。後ろから聞こえてきた声を聞いて、途中で修正できて本当に良かったと溜息を溢す。

 どうやら俺達の会話を聞いていたらしい織斑先生が、俺の発言に反応して後ろから近づいてきていたのようだ。なんとも意地悪な先生だ。と、丁度チャイムが鳴った。

 

「全員席につけ、授業を始めるぞ……とその前に、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 教卓の方へと歩きながら、クラス全員に着席を促す。そしてあたかも思い出したかのように、クラス代表について話題を持ち上げた。

 ところで、クラス代表とはどういうものなのだろうか。単純にクラス対抗戦のためだけの選出か、それともクラス委員の様なものなのか。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。クラス対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……所謂委員長だな。因みに対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。自薦、他薦は問わん」

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「じゃあ私は川内くんを推薦します」

「わたしもかわちーがいいと思いまーす」

 

 ちくせうのほほんさんめ、普段のほほんとしてるくせに、こういうときはさらっと爆雷を投下してくるんだから。

 結局その後も、俺か一夏を推薦するという声ばかりで、代表候補生であるオルコットを推薦する声は無かった。高飛車な態度、そして世界で二人だけの男性IS操縦者がいるのだから、それも仕方がないのかもしれないが。

 しかしまあ、このままオルコットを推薦しないでいるのは非常によろしくない。あの手のタイプは、男が代表になっては恥さらしだとかなんとか言いそうだ。

 

 結果として、案の定というべきかなんというべきか、オルコットは爆発してしまった。

 自分が推薦されたのは困るという一夏と、他薦された者に拒否権はないという織斑先生のやり取りを遮って、彼女は言う。

 

「実力から行けば、私がクラス代表になるのは当然のこと。それを物珍しいからという理由で極東の猿どもにされては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は一切ございませんわ!」

 

 流石に猿扱いは不愉快ではあるが、小さな子供が騒いでいるだけと考えれば、まだ許容できないこともないか。

 だが、あまりにもヒートアップしすぎたのだろう。ついには国そのものに対しての批判までし始めた。

 

「良いですか?クラス代表は実力トップの者がなるべきで、そしてそれは私。大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、私とっては耐え難い苦痛で――」

「イギリスだって対してお国自慢ないだろ。世界一料理のまずい国で何年覇者だよ」

 

 それに対して何故か一夏が腹を立てらしく、イギリスの侮辱とも取れる言葉を言ってしまった。

 当然だが、プライドの高く、愛国心の強いオルコットが反応しないはずもなく、怒髪天を衝くと言わんばかりに、彼女の横顔は真っ赤に染まっていた。

 俺とて嘗てはお国のためにと戦って、命を落とした身だ。例え国より身内の方が大事だとしても、国を守りたいという気持ちだってあった。それを侮辱されたようなものだ、俺とて腹が立つ。

 しかしまあ、一夏が先に言ってしまったが為に、俺まで言うわけにはいかなくなったのだから、少し感じている怒りを飲み込んで二人に割って入る。

 

「はいはい、猿扱いはこの際置いておくから、二人共相手の侮辱は一回ずつってことで、これで終了ね。一夏、イラッとしたからと言って感情に任せて発言するのは子供のすることだから、今後気をつけるように。そしてオルコットさんは、自分がどういう立場で、此処がどういう場所で、自分が何を発言したのかを考えてみなさい」

 

 割って入ったことが気に触ったのか、オルコットがこちらに振り向いて来るが……俺だって軽いとは怒りを抑えてるんだ、多少それが態度に出ても仕方が無いことだろう。これ以上不穏な発言をされても困るので、これ以上は黙れという気持ちを込めて睨んでおく。本当なら睨まないのだけれども。

 それで少しは落ち着いたのだろう、オルコットは少し顔を青くして着席する。なんせまあ、イギリスの代表候補生が日本にあるIS学園にて日本の侮辱をしたのだ、下手をすれば国際問題に発展する可能性だって無くはないのだから。

 流石に同級生に対して説教をしたとなると、色々と俺の立場が危ぶまれる可能性だってある。小うるさい奴なんて言われたくはないからね。

 

「というわけで織斑先生!二人を諌めたのでクラス代表争いから――」

「却下だ。拒否権はないと言ったはずだぞ?」

 

 淡い期待を込めて言ったのだが、にべもなく却下されてしまってはどうしようもない。別にクラス代表になってしまってもよかったので、兎に角教室内の空気を弛緩させる事が出来たので良しとしよう。

 おどけた調子で言ったのが良かったのだろう、なんて馬鹿なことを考えつつ、オルコットと一夏の2人を観察してみる、

 オルコットの方はまだ少し顔が青いが、少なからず反省はしている事が伺える。一夏の方も、子供扱いされたのが効いたのか少し俯いている。きっと二人共、もう大丈夫だろう。

 

「ではこうしよう。織斑、オルコット、川内の三人で決闘を行い、その結果を持ってクラス代表とする」

 

 先程のほほんさんが爆雷を投下してきたと思ったら、今度は織斑先生が酸素魚雷を撃ち込んできたでござる……。

 冗談はともかくとして、これはある意味チャンスと捉える事もできる。結果によってはクラス代表にならずに済むということは、手を抜いて2人に勝ちを譲ればそれでクラス代表にならずに済むだろう。オルコットが相手だと、手を抜かずともまだ勝てない可能性だってある。なんせ相手は代表候補生だ。

 しかしまあ、戦いにおいて手を抜くことなんて出来はしない、このあたりは前世の影響だろうか。

 こちらの事情はともかくとして、オルコットはどうやら息を吹き返したらしく、

 

「川内さん、言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使い――いいえ、奴隷にしますわよ?」

「……あれ、一夏は?」

「紫月がさっきあんなこと言うからだろ……と言うか巻き込もうとするなよ!」

 

 大胆にも人権を侵害して俺のことを所有物にすると宣ってきやがった。最も、手を抜いて敗けた場合なので、特に問題はないのだが。

 まあ奴隷云々は別に構わないだろう。問題はその直後の一夏の発言だった。

 

「それで、ハンデはどのくらいつける?」

「あら、早速お願いかしら?」

「いや、俺らがどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

 きっと一夏は、男が女相手に本気で力比べするのも、と考えたのだろう。しかしだ、一夏の発言はあまりにも馬鹿馬鹿しいことこの上ないものだ。

 案の定、クラスからドット爆笑が巻き起こった。

 

「……一夏、いくら相手が女性だからと言って、武術の有段者相手に初心者がハンデをつけるなんてしないだろう?」

 

 どうにも例えと言うのは難しい。

 しかし、相手は代表候補生である。ということは、それ相応の努力をしてきた上で実力を認められているということだ。動かしてからまだまともに訓練を受けていない俺達がハンデをつけるなんて、あまりにも傲慢が過ぎるのだ。

 そんな一夏の発言も大概だが、俺の直後の発言もまた頭を抱えたくなるものだった。

 

「それに、男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

 何故、彼女はそう思うのだろうか。

 確かに、男のほうが女より強いというわけではない。当然、女だから男より強いという話でもない。ISに乗れるからと言って、女の方が強いと言うのはあまりにも早計が過ぎるというものだ。

 強い兵器を扱えるから強いのではない。強い力を正しく、適切に使いこなせる者が強いのだ。

 残念ながら、同年代となっている俺が言ったところで、彼女たちの考えを変えることは出来ないだろう。まだ幼い頃から女のほうが偉いと教わって成長してきたのだ。

 そう考えると、ある意味彼女たちもまたかわいそうではなかろうか。間違いを正してくれる者が存在せず、間違った考えが常識となった世で生きてきたのだから。

 

「……じゃあハンデはいい」

「ええ、そうでしょう。むしろ、私がハンデを付けなくて良いのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男性はジョークセンスだけはあるのね」

 

 まあ若者達のやりとりはこの際置いておくとして、俺は俺で誰か指導してくれる人を見つけなくてはと考える。

 だが、此処で誰に頼るかというのが問題となってくる。先生方に頼むとしたら、一番は織斑先生だが忙しくてあまり時間を割いてもらえるとも思えない。何より、クラス代表決定戦に担任があまり干渉するとも思えない。山田先生も同様だ。

 では同じ生徒に頼むとしたら、敵であるセシリア・オルコットか。流石にそれはやめとくほうが良いだろう後々面倒臭い未来しか見えない。

 そうなると、上級生のお姉さまに頼むか……しかし、適当に頼んだ人が学年最弱とあっては目も当てられない。

 

 ―――じゃあ、学園最強なら?

 

 世界最強が織斑先生だとしたら、学園最強はこのIS学園の生徒達の長である生徒会長だ。生徒会長ということは、男である俺でも今後接触する可能性はある。

 ならば、これを機にこちらから出向いて頼んで見るのも良いかもしれない。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後、第三アリーナで行う。織斑、オルコット、川内はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

 今回の決闘騒ぎが収まったことを確認し、授業を始める織斑先生の声を聞きながら、これから決闘までの過ごし方について思案し始めた俺だった。

 




凄く中途半端な終わり方な上に内容も滅茶苦茶……。
未だ明記していませんが、主人公は剣の達人です。
前世では戦争があることを知っていたので、凄く真面目に剣術に取り組んでいた結果、免許皆伝に至りました。
次回以降少しずつ実力が見えてくると思います。

どうでもいいけどキーボード買い替えて見ました。
メカニカルキーボード、良いですね。
そしてグラボの交換作業もしなきゃ……。




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ファーストかんちゃん

いつの間にかお気に入り登録数が三桁に突入して、狂喜乱舞の作者でございます。
そしてすみません、遅くなってしまいました。
言い訳は後書きにて。
序に『チート』タグを追加させていただきました。


 

 放課後、それは学生達の開放を意味する言葉であり、特に一刻も早く体が休みを欲しているような疲れた生徒が待ち望むものだ。

 例えばそう、教室中央の一番前という本人からしたら何のイジメだと言わんばかりの場所でうなだれている、世界で初めての男性IS操縦者である織斑一夏君とか。

 

 お疲れ様でございます。放課後に3人の美少女を侍らせて校内デート、もとい学園内を案内させようとしているモテナイ男の敵、川内紫月でございます。ですが安心してください。普段は皆さんの味方でございます。顔は整っている方だとは思うけど。

 冗談はともかくとして、約束通りのほほんさん、谷本さん、鏡さんの3人の乙女にこの学園の施設を色々と紹介してもらうとしよう。だが、その前に、

 

「のほほんさん、谷本さん、鏡さん。一夏の奴も誘っていいかな?」

「さすがに両手に花はきつかったー?」

「この娘っ子が!」

 

 流石に女三人に対して男一って言う状況が辛かったというわけではない。だが、ちょっとだけ腹がたったので、両の手で頭をわしゃわしゃと撫でておく。フハハハ、髪型が乱れるが良い!

 ところで、されるがままとなっているのほほんさんや、抵抗しなくても良いのかい?というかちょっと喜んでない?

 兎に角、のほほんさんを愛でるないし撫でるのは適当なところで切り上げる。そして、ぐったりとしていて動かず、客寄せパンダとなっている一夏の元へと向かう。

 

「いーちーかくーん、あっそびーましょー」

「し、紫月?」

 

 いきなりのハイテンションな声にびっくりしたのだろう。一夏が少しだけ引いているが、これくらいでへこたれるかわちーではありません。

 

「兎に角、おつかれさん。……結局、授業全然付いていけてなかっただろ?」

「まあな……専門用語が多過ぎてややこしいんだよ」

「気持ちはわからんでもない」

 

 授業中、時折一夏の様子を確認していたのだが、きっとついていけてないのだろうなと思っていた。

 そしたら案の定、授業が全然理解できなかったらしい事を知る。兎に角今は、愚痴でも吐いて楽になっちまえと思ったが、いつまでもお三方を放っておくわけにも行かない。特に谷本さん、鏡さんの2人は一夏と話をしたそうにしているし。

 

「ところで一夏くんや、これからのこちらの3人に学園内を案内してもらうことになってるんだけどさ、一緒にどうよ?」

 

 というわけで、この辺りで今回案内をしてくれる3人を紹介しようとする。だが、残念ながら素直に紹介は出来なかった。

 我らが副担任である山田先生の登場である。これだと山田先生が悪いって言い方だな。山田先生は悪くないよ、いい人だよ。

 

「ああ、織斑くん、川内くん。まだ教室に居たんですね。良かったです」

「どうかしましたか、山田先生」

「お二人とも、一週間は学外から登校してもらうことになっていたのは聞いていますよね?」

 

 山田先生の質問に、俺も一夏も頷く。

 本来ならば女子しか居ない学園だが、今年は俺と一夏と言う例外がいる。若い男女を同じ部屋に割り振るというのは問題があると、しかしそうなると直ぐには部屋を用意できないとなり、一夏は自宅から通学を、俺は近くのホテルから通学をとなっていたのだ。 

 

「ですが事情が変わってしまいまして、一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいんです」

「……学外からの通学は危険ということですか?」

 

 申し訳なさそうに言う山田先生に対して問いかける。正し、他の生徒に聞かせる話でもないと考え、山田先生に耳打ちするように。

 現在、男性でISを操縦することが出来るのは、俺と一夏の二人だけだ。言い換えれば、世界で二つしか無い貴重な資源だと言える。

 何処かの暗い研究機関や組織が、狙っていても何らおかしな話ではないのだ。

 それはそうとして山田先生、男の顔が近いのが慣れてないからと言って顔を赤くするのはやめてください。なんですか、その生娘みたいな反応は。ちょっと捗ってしまいますよ。

 

「ええ、そういうわけで、政府特命もあって、兎に角寮に入れることを最優先したみたいです。一ヶ月ほどで個室の用意も出来ますから、それまでは相部屋で我慢してください」

「わかりました……ということは、もう荷物は誰かが取りに行ってくれているということですか?」

「ああ、そうだ。私が手配しておいてやった。ありがたく思え」

 

 先程も言ったとおり、俺はもともとホテルから通学する予定だった。それだけ金を持っているとかではなく、単純に自宅からの通学が出来ないからだ。三重と東京を毎日往復なんて、出来るはずがありません。そう言えば昔、東京に住んでいた頃があると親が言っていた気もするが、此処では置いておくとしよう。

 そういった訳で、必要最小限の物や、手放せない物は全てホテルの方へ持ち込んでいたのである。俺の場合はそれを全て移動させればいいだけだから……。

 だが、一夏は?

 

「ありがとうございます」

「ど、どうもありがとうございます……」

「まあ、織斑の方は生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」

 

 俺、色々と持ち込んでおいて良かったよ。着替え、充電器、木刀、パソコンと、少々荷物になったけど。

 というか織斑先生、それは流石に大雑把すぎませんかね、とは思いつつも声に出して言うことはない。下手に藪をつついて蛇――いや、鬼を出す必要なんて無いのだから。

 ともかくとして、これで話は終わりということだろう。山田先生が残りの注意事項を伝えるのだが、なんと一夏が爆弾を落とそうとしてきやがったので、脇腹をつついて食い止める。

 

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時。尞の一年生用食堂でお願いします。因みに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年語に使える時間が違いますけど……えっと、織斑くんと川内くんは今のところ使えません」

「え、なん――った!」

「さっき言ったろ、考えて発言しろ」

「あ、あぁすまん」

 

 まあ、人間一度言われただけで実行できる事なんて少ないからね、これからゆっくり学んで行けばいいよ。

 おっちゃんみたいな過去の遺物は、今を生きる子らに道の歩き方を示してやることしか出来ないからね。今のうちにどんどん間違えなさいな。悪い方に進みそうになったら、その時は助けちゃるけん。

 じゃあなんで力関係を勘違いしている女子生徒に対しては正しい道を示さなかったのかって?既に言ったと思うけど、今のおっちゃんの言葉だけじゃ皆に知らしめる事が出来ないのよ。残念ながら。

 仮に正体を明かした所で信じてもらえずにおしまいだから、先ずはどれだけ面倒臭くても、オルコットに勝つなりなんなりして、力を示さなきゃいけないのよね。そうして初めて彼女たちに言葉が届くだろうから。

 

 ……さて、シリアス?はこの辺りにして、改めて話は終わりだ。

 

「え、えっと、それじゃあ私と織斑先生は会議があるので、これで。二人共、ちゃんと尞に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ?」

「オコトワリシマス」

「そんな!?」

「ちょっとこちらのお三方に施設の案内をお願いしていますので」

「あぁ、そういうことでしたか……」

 

 打てば響くと言うか、山田先生は実にいい反応をしてくれるので、少しからかってやるのが楽しいのだが……織斑先生の睨みが怖いのでこれ以上はやめておこう。

 そんなやり取りのあと、鍵を受け取った俺達は織斑先生と山田先生が教室から出ていくのを見送った。

 

「ねえねえかわちー、何号室だったー?」

「俺は……ほれ――」

 

 俺が何処の部屋に入るのか気になったらしい3人を代表して、のほほんさんが質問してくる。

 まだまだ人が多い教室で、あまり大きな声で言うのも問題があると思った俺は、渡された鍵のタグを見せた。

 

「本音と同じ部屋だ」

「そだねー」

 

 どうやら同室の方は、のほほんさんらしい。だが、のほほんさんは何か疑問に思うところがあるらしく、小さく首をかしげる。それと、ちゃっかり二人もタグを見ていたのは気にしてはいけない。

 流石に同年代の男と同じ部屋で過ごすというのは思うところがあるのだろう。幾ら彼女がのほほんとしているからと言って花の女子高生、つまりは年頃の乙女なのだから。

 

「でも私、かんちゃんと同室だからー……3人部屋?」

「そうなるといろいろと大変だろうけど……まあよろしくお願いするよ」

「うん、お願いされました―」

 

 そう言って、お互いに頭を下げる。親しき仲にも礼儀ありだ。こういった挨拶は大事なのである。

 それはそうと、のほほんさんは異性と同室であることには大して抵抗はないようだ。さっきの俺の心配は何だったのか。まあ良いや。

 一先ず同室の一人に挨拶を済ませた俺は、改めて一夏を誘うことにする。

 

「それで、一夏はどうする?一緒にどうよ」

「あぁ……俺はやめておくよ。先に同室の相手にも挨拶しておきたいし」

「その点俺はもう同室の相手がわかってるし、片方には挨拶も済ませたし、何ならこれからデートするから」

「「ねー」」

「仲いいなぁ、二人共。というか、俺はもう疲れたよ」

 

 わけの分からない授業に加え、不慣れな大人数(女子)からの視線に、本当に疲れてしまったのだろう。朝とは違って、一夏の声にあまり張りがない。

 それならばあまり拘束しておくのも悪いし、明日からも頑張ってもらわねばなるまいということで、一夏とは此処で別れることにした。

 

「じゃあのほほんさん、谷本さん、鏡さん。案内の程よろしくお願いします」

 

 それはそうとして谷本さん、鏡さん。二人が一夏と話す機会を作れなかった、不甲斐ない俺を許しておくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒトナナフタマル

 

 時刻は午後5時20分を指す現在、3人にISアリーナや整備室、トレーニングルームといった様々な施設を案内してもらった後、夕食まで後40分という中途半端な時間の間にのほほんさんと二人でIS開発室へと向かう。

 谷本さんと鏡さん?あぁ……2人はとてもいい人だったよ……。

 冗談はともかくとして、彼女たちには申し訳ないが、これから同室になる者へと会いに行くために別れてもらったのだ。今度一緒にご飯を食べる約束もしたし、特に問題はないはずだ。

 

「同室の子ってのほほんさんの幼馴染なんだ」

「そうだよー、かんちゃんって言うの」

 

 もう一人の同室の人物が居るという開発室へと向かう途中、のほほんさんから話を聞く。

 名前は更識簪と言い、日本の代表候補生なんだとか。しかし、代表候補生でありながらISを持っていないが為に、IS整備室に籠もっていると言う。

 それは何故か。自分でISを完成させようとしているから、らしい。

 

 それにしても更識か……何故かこの苗字に引っかかりを覚えるのだけれども。

 

「質問なんだけどさ、普通専用機って企業が製造するものなんじゃないの?」

「それがねー酷いんだよー」

 

 彼女が言うには、本来ならば更識の専用機を倉持技研が製造する予定だったというのだが、突如として男性操縦者が登場したことにより、そちらの――一夏の機体の開発にかかりきりとなってしまい結果的に更識の機体の開発が凍結したというのだ。

 嘗ては軍人として戦い死んでいった身ではあるが、これでも様々な艦の開発、改良に携わってきたという前世を持つ。正直に言うと前世では、軍人としてではなく技術者として生きればよかったのかもしれないと考えたときだってあった。

 ISを作り出すということは、新たな生命を生み出すことに他ならない。そんな風に考える俺から言わせてもらうとすると、

 

「巫山戯るなよ……」

「かわちー」

「……っと、ごめんよのほほんさん。俺が怒って良いことじゃなかったね」

 

 自分だけの専用機を楽しみにしていたであろう少女が居た。生まれてきた事を祝福され、主と共に宙を翔けるはずだったISが居た。

 それを勝手な都合で踏みにじり、無碍にしたことに対して怒っても良いのは、ISの生みの親である篠ノ之束と、主となるはずだった更識簪だけだ。

 何より、他でもない俺が怒るというのが問題だろう。なんせ、今の状況を作り出したのは、男の操縦者が現れたことに起因するのだから。

 例え操縦者自身が悪いのではないと頭ではわかっていても、心のほうが納得するとは限らないわけである。

 余談だが、現状俺に専用機が渡されるという話は聞いていない。

 

「さて、着いたみたいだね。かんちゃんとも仲良くなれるよう頑張らなきゃね」

 

 俺が勝手に怒っている間に、どうやらIS整備室に到着していたらしい。一つ深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 一つ決意を新たにし、そして、のほほんさんとアイコンタクトを交わすと、

 

「「かーんーちゃーん、あっそびーましょー!」」

 

 二人で同時に勢い良く扉を開け放ち、大きな声を出しながらかんちゃんへと突撃する。これでかんちゃんがいなければ、俺とのほほんさんは少々恥ずかしい思いをするが、言ってしまえばそれだけだ。

 

「え、ちょ……な、何?本音と……かわうち君?」

「はいかんちゃんアウトー!」

「あうとー!」

「かんちゃんは俺の苗字を間違えました。てなわけで罰ゲーム!かんちゃんにはこれからも、俺とのほほんさんからかんちゃんと呼ばれ続けるのだー!」

「のだー!」

「序に俺のことはかわちーって呼んでねー」

 

 よく此処まで、アイコンタクトだけで成功したよね。

 本当に、のほほんさんは凄いよ。

 一応解説しておくと、第一声に関しては流石のほほんさんとしか言いようがないが、一夏に対しても同じような声のかけかたを、のほほんさん達の前でしているが、よくわかったものだ。そして次に、かんちゃんは一体どの人なのかについては、彼女が反応してくれたのでその人物の元へと馳せ参じれば良いだけだ。

 それと一つ言っておく。先程のアイコンタクト、俺は彼女の考えてることが全然理解できなかったし、深く何かを考えていたわけでもない。だからのほほんさんは凄いのだ。

 

「えっと、取り敢えず二人共落ち着こうよ」

「はい、わかりました」

「うん、わかったよ」

 

 かんちゃんの言葉のあと、先程のテンションが嘘だったかのように急に真顔を作って姿勢を正す。気分はまさしく、江田島の頃のものだ。

 踵を揃えて背筋をまっすぐ、流石に敬礼するわけにもいかないので両の手は体側に。威圧するわけではないので両手は後ろでは組みませんよ。

 

「え、えぇ……」

 

 急にこちらのテンションが落ちたせいか、かんちゃんはどう反応したら良いのかわからないらしく戸惑っている。実際には引いていると言い表したほうが正しいが。

 一応弁明しておくと、本来俺はこんな妙なハイテンションではない……筈だ。なんなら、昔は口数が少ない方だと言われてたくらいである。ただ、問題児扱いされることもあったけれども。よく船に忍び込んで、点検したり造りを調べたりだとかしてたんだよね。

 若い頃はそれでよく怒られたけど、次第に歓迎される様になったっけ。昔は俺も若かったということさね。

 

 閑話休題

 

 本来の目的はかんちゃんに挨拶に来たのだから、一先ず流れを変えて自己紹介へと移る。

 

「まあ俺が変態でも変人でもなんでも良いんだけども……改めまして、この度寮が同室になった川内紫月です。以後宜しくお願いしますね」

「……え?同室って……どういうこと?」

 

 しかし、俺と同室になったということは聞かされていなかったらしく、今度は本当に戸惑いを見せた。

 

「のほほんさんや、これが本来の反応だと思うよ?」

「んー?どーいうことー?」

 

 本気でわかっていない様子で首をかしげる彼女だが、如何せん相手が悪かった。一夏辺りならば騙せていたのだろうが……当時の海軍上層部(一部)のお腹がどれだけ黒かったと思ってんのさ?

 

「狐さんめ」

「きつねさんってかわいいよねー」

 

 戸惑っているかんちゃんを余所に、俺とのほほんさんは他者からすればわけのわからない言葉を交わす。

 のほほんとした女の子かと思っていたが、やっぱり彼女も人間ということだろう。のほほんとした様子は彼女の本当の姿かも知れないが、周りには見せていない顔を持っているのは間違いない。

 それがどういったものかはわからないし、あまり踏み込んでいくつもりもないからなんだっていいのだけれども。

 

「それで、かんちゃんは名前教えてくれないの?」

 

 いつまでも彼女を放っておくわけにもいかないと、のほほんさんとの会話を区切って再び彼女に向く。

 

「……更識簪。簪でいい」

「じゃあやっぱりかんちゃんだね」

「……簪」

 

 どうやら俺からかんちゃんと呼ばれるのが嫌なようで、名前の方で呼ばせようとする。が、そこで違和感を覚えた。

 初対面の相手に苗字じゃなくて名前を呼ばせるということは、苗字に対して何か思うところがあるということの筈、確かに更識という苗字は少し珍しい気がするが……。

 繰り返しになるけどこの更識という苗字、どこかで聞いたような気がするんだよ。川内紫月としてではなく、前世の田沼業正として。

 しかし聞き覚えはあっても、更識という人物と関わった覚えは一切ない。それに心当たりは……あった。

 ああ、そうだ。思い出した。更識って言うと、所謂暗部に所属する家系のことだ。なるほど、だから彼女は苗字で呼ばれるのを嫌う……という感じにも見えないか。この辺りはおいおい聞ければいいかな。のほほんさんの普段見せていない顔とも多少なりとも関係ありそうだけど。

 

 それにしても更識と来たか……本当に驚いたよ。一部の将官にしか知られていない存在だったんだけど、俺もひょんなことから知ってしまったんだよね。

 幾らむしゃくしゃしたからといって、弱みを握るためにトラッシングなんてするもんじゃないよ。これ、おじさんとの約束ね。

 何か他にもいらんことまで思い出してしまいそうなので、この辺りで区切っておくとしよう。

 

「仕方ない、罰ゲームも撤回ということでいいか。改めて宜しく頼むよ、簪」

「こちらこそ」

 

 こちらが手を差し出せば、それを握って握手に応える簪。

 男性IS操縦者に対して煮え切らない想いを抱いているかと思っていたが、どうやら冷静に話せるらしい。これは俺としてもありがたい限りだ。

 

「ほんじゃあまあ、これからのほほんさんとも一緒に、三人で食事でもどうよ?プチ懇親会ってな感じで」

「……いい、私は此処ですることがあるから」

 

 話すことはともかく、まだ馴れ合うつもりが無いのか、それともそれだけ追い詰められてしまっているのか。理由はわからないが、暗にISの開発の続きをしたいからと断られてしまった。

 本当なら一緒に食事をしてもっと打ち解けたい所ではあるのだが、無理に誘って嫌われてしまっては元も子もない。

 

「そっかぁ、残念。また今度一緒にご飯でも食べよう」

「うん、ありがと……」

 

 そう言って、俺とのほほんさんは簪と別れ、食堂へと向かう……のだが、その前に。

 

「余計なお世話かもしれないけど、一つだけ」

「なに?」

「ISは兵器として扱われている機械だけど、俺たち人間が生み出す子だ。そして、共に空を翔け、戦う友でもある。決して唯の道具ではない。その事を忘れないで欲しい」

 

 本当に要らぬ世話というか、お節介というか、蛇足になっているけれど、彼女がISの開発に携わるというのであれば言わずにはいられない。

 これから仲良くなりたいから、今嫌われるわけにはいかないとか言ってたのは何処のどいつだってツッコミはなしね。

 と言うか、凄く偉そうなこと言う阿呆って思われたらどうしよう?しかしこれは俺の性分というか、技術元帥なんて揶揄される事もあった身としてはね、やっぱりちょっとしたプライドというかなんというか、そういうのも持っているのよ。

 かんちゃんならば大丈夫だとは思うけど、それでもやっぱり言わないと後悔するだろうからね。

 




最近ラズベリーパイを買ったは良いものの、どの様にして遊ぼうか持て余し気味の作者です。

……ちゃうねん、ただ遊んでたわけや無いねん。
最近ちょっと社会人始めてん。

おふざけはともかく、今年の春から社会人のペーペーとなりました。
なのでこれからも遅くなってしまいますが、何卒本作を宜しくお願い致します。




補足説明
トラッシング……ようはゴミあさり。個人情報やパスワードなんかが書かれた書類等は、ちゃんとシュレッダーにかける等、適切な処理をしましょう。くしゃっと丸めて捨てるだけだと、誰かに拾われて読まれてしまいます。うっかり大事な情報が流出しては、誰も彼もが困りますからね。寧ろ、困るだけで済めば良いんですけど。


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