謎の至高Xオルタ (えっちゃんの羊羹)
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一章 1話 プロローグ

一応モモンガ様視点になるので転生やTSっぽい部分はあまりないと思います。


後書きを少し変えました。


 2126年、一大ブームを巻き起こした仮想現実体感型オンラインゲーム「ユグドラシル」の歴史が幕を閉じる。

 

 モモンガとしてプレイしていた自分は前々から休日を取っていたため、朝からユグドラシルにログインして自分の属するギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の本拠地ナザリック地下大墳墓にいた。

 かつてランキング9位にまで上り詰めたこのギルドも、残っているプレイヤーは自分を含め僅か5人。そのうちの1人で今まで引退せずにプレイしていたギルメンからは、忙しいから夜中までログインできないだろうと言われていた。

 しかし、それでもギルドに居たのは、事前に連絡しておいた他のメンバーの中に戻ってきてくれる人がいるかもしれなかったからだ。事実、ギルドに未だ所属しているプレイヤーは、3人とも僅かな時間であったが戻ってきてくれた。3人目のスライムの最強種である古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)のヘロヘロさんがログアウトしてサービス終了まで残り1時間を切った頃、引退しなかった最後の1人がやっとログインした。

 

「モモンガさん、こんばんは。ギリギリですが来れました」

 女性の声、ただしボイスチェンジャーを通した無機質で画一的な声が聞こえる。

「こんばんはオルタさん。惜しかったですね、ついさっきまでヘロヘロさんがインしていたんですが」

「入れ違いですか。ちょっと残念です」

 

 謎のヒロインXオルタ、これがオルタと呼ばれた少女の名前だ。先程までいたスライムや骸骨の怪物である自分とは違い、一見するとただの人にしか見えないが、その実態は霊体系種族の上位種、英霊に属する立派な異形種である。

 

「そういえば、残っていた他の2人も今日来てくれたんですよ。オルタさんによろしくっていていました」

「そう、ですか。本当に惜しいことをしました。せめて半休でも取れてればもっと早く来れたのですが、残業スッポかすのが精一杯で……」

「お疲れ様です。キツイかもしれませんがサービス最終日ですし残り時間はここでゆっくりしていきませんか?」

 

 一息に捲し立てていてどうにかして引き止めたいという気持ちが隠しきれていないことは自分でも理解できた。

 

「そうですね。折角なんでそこの杖持って玉座の間まで行きませんか?有終の美っていう感じで盛大に終わりましょう」

「いいですね。じゃあ、NPCも連れて行きましょう。派手になりますね」

 

 道中にNPCを確認しながら、たわいない話をするうちに玉座の間に辿り着く。一抹の寂しさと引退したギルメンの置き土産に対する警戒とともに扉を開ける。現れたのは圧倒的なクオリティで作り込まれた広大な空間。自然と会話は途絶え2人分の溜息が漏れる。NPCを引き連れた2人は、奥へと進みながらどちらからともなく声に出す。

 

「すごい」

「はい、圧倒的です」

 

 そのまま進み玉座の目前にたどり着き、NPCに目をやりXオルタがいう。

 

「アルベドですね。タブラさんが作った設定がやばいNPCの筆頭です。せっかくですし見ておきませんか?」

「そうですね。タブラさん、設定魔でしたから面白い設定しているんでしょうね」

 

 言われるがままにコンソールを開き設定を開く。

 

「ながっ!!」

「全部読んでいる時間はなさそうですね」

「タブラさん設定魔でしたから。一通り見て終わりますか」

 

 そう言いながらそう言いながら一気にスクロールして最後の一文を見る。

 

『モモンガを愛している。』

 

 目が点になる。

 

「『モモンガを愛している。』どうですか? 設定組む時にタブラさんと話し合って決めたんです。候補としては『ちなみにビッチである。』というのもあったんですが、こっちの方が面白くなりそうだったのでこうなりました」

 

 ギクリとして隣を見る。

 

「な、何てことしているんですか!」

「でも面白くないですか?」

 

 こいつ笑ってやがる。表情は動かないが自分にはわかる。

 

「だったら『Xオルタを愛している。』でも『タブラを愛している。』でもよくないですか?」

「文字数の問題で全角十文字にしたかったらしいです。なので、名前が全角4文字で収まるギルメンのだれかってことになって、嫁に出すならモモンガさんになりました。それに自分たちのことを愛しているとか恥ずかしくて書くわけがないじゃないですか。ペロロンさんですらそこまではしませんよ」

 

 もう言い返す気力もない。

 ふと時間を見ると残り5分を切っている。NPCを待機させ跪くよう指示すると、隣から声がかかる。

 

「残り五分切りましたね……。改めて一言、今までずっとありがとうございました。本当に楽しかったです」

「……オルタさん……」

 

 言葉が続かない。

 

 終わってしまう。

 

 そう考えてどうにか声を絞り出す。

 

「……ありがとうございます。俺も、本当に楽しかったです」

 

 残り10秒ほどのカウントダウン。静かに目を閉じ数える。

 

 23:59:49、50、51……58、59

 

 時計に合わせユグドラシルの終わりを迎えて

 

 0:00:00、1、2、3

 

 目を開ける。変わらずユグドラシルの玉座の間だ。

 

「どういうことだ?」

 

  0時はすぎたはずだ。時計が間違っているはずがない。混乱しつつ周囲を見る。隣には最後まで一緒にいた友人がいるが顔を上げたまま全く動いていない。自分だけログアウトし損ねたのだろうか。

 

「オルタさん! Xオルタさん!」

 

 慌てて肩をゆすり呼びかける。

 

「ひゃうっ!」

 

 悲鳴が上がる。痛みをこらえるように肩を抑えている。申し訳ないという気持ちとともに、一人ではないという安心感が自分を落ち着かせてくれた。彼女はこちらを見ながら口をパクパクとさせている。

 ……口が動いている?ありえないが今はそのようなことを考えるよりも対策を考えなければ。

 

「いきなりすいませんオルタさん。異常事態です」

「あぁ、はい……」

 

 か細い声ではあるがはっきりとした答えが返ってくる。先ほどの反応ではもっと戸惑っていると思っていたが、予想以上に落ち着いているようだ。

 

「サーバーダウンが延期になったんでしょうか?」

「いや……何か違う気がします」

 

 容量の得ない会話を続けながらGMコールや強制終了を試すがうまくいかない。本格的にまずい状況になったと焦る。

 

「どういうことだ!」

 

 この場にいるものでは答えられるものがいるはずのない戸惑いで、思わず怒鳴り散らしてしまう。

 しかし、返答があった。

 

「どうかなさいましたか?モモンガ様?謎のヒロインXオルタ様?」

 

 聞いたことのないきれいな声。発生源を探し、すぐに見つける。先ほどまで跪いていたNPC、アルベドのものだった。

 

「何か問題がございましたか、モモンガ様?……失礼いたします」

 

 アルベドが立ち上がり玉座に歩み寄って来る。NPCが自発的に行動し会話をしようとしている。その状況を認識して思考回路がショートしていた。隣のXオルタも相変わらず動いていないようだ。いや、少し揺れていると思いきやいきなりアルベドに向かって歩き、こけた。

 

「謎のヒロインXオルタ様!」

 

 長すぎる名前を言いながらアルベドが受け止める。名前を呼びきれていないが、支えるのは間に合ったようだ。次の瞬間にはXオルタの顔がアルベドの胸に埋まっていた。

 自分も男だ。目の前のたわわが大きく歪めば目を奪われる。美女のたわわに美少女の頭が埋もれている。ペロロンチーノあたりが見たら大喜びするだろう。

 

「ふわぁ……あんっ……」

 

 しばらくしてアルベドが何かを堪えるような声を上げた。Xオルタがアルベドの胸を揉んでいる。

 一瞬で頭に血がのぼって興奮し、すぐに落ち着く。

 

「何やっているんですか!」

 

 同時にXオルタの後頭部にチョップを落とした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ごめんなさい」

 

 茶番を経て落ち着いたところでXオルタの謝罪を聞きながら先ほどまでのことを振り返る。

 まず、ユグドラシルが終わったのにログアウトしないバグが起こった。キャラクターに表情があらわれるようになった。さらにアルベドが自我を持ち動き出したようだ。どう考えても単純なバグではない。まとめてみると益々訳がわからなくなる。

 

「全くです。明らかな異常事態で何ふざけているんですか。GMコールも強制終了もできないんですよ……。うわぁ……、言っていて絶望してきた」

「まことに面目ございません」

 

 内容とは裏腹に他人事のような軽い調子の中身のない声で話している自分たちに呆れ、目を泳がす。眼下には不安そうにこちらを見ているNPC達がいる。声をかけるのは不安だが放っておくことはできないだろう。近くにいるアルベドに下がるよう手で命じ、執事とメイドに呼びかける。

 

「セバス!メイド達よ!」

『はっ!』

 

 綺麗に重なった声が響く。

 

「玉座の下まで」

『畏まりました』

 

 7人のNPCは命じた通り玉座の下まで来て膝をつく。これでおそらくここにいる他のNPCにもアルベドと同様のことが起きているのだろうと確認できた。

 

「おぉ、凄いですね。こんなマクロ組んでないはずなのに。というかこんなことできるはずがないのに」

 

 隣のXオルタが言う。相変わらず感情のこもらない中身のない声だ。

 

「オルタさんまず何をする必要があるか考えましょう。今何が起こっているのか調べないと」

「確かにそうですね。まずは情報収集からですね。状況確認と他の人の捜索といったところですか?」

「じゃあ……」

 

 会社の重役のように偉そうな演技をして声に出来る限りの威厳を込めNPCに命令を下していく。

 セバスにはプレアデスの1人とともに周辺の調査を、残りのプレアデスには9階層の警備を命じた。

 最後にアルベドに命令を下そうとすると、隣でXオルタがまたアルベドとベタベタしていた。イラつきながら声をかける。

 

「オルタさん、こんな時に何やっているんですか」

「R_18の制限のチェックと脈拍の確認していました。さっきのようにセクハラしてもGMからの警告も垢BAN無いです。そしてアルベドにも私にもちゃんと脈拍がありました。しっかり生きてます。モモンガさんもどうです?」

「えっ?」

 

 白々しいことを。

 自分が詰問していたはずが突然の無茶振りである。アルベドの方を見ると目を輝かせながら見つめ返して来た。

 

「モモンガ様が望むなら如何様にでも。どうぞ、お好きにしてください」

 

 残念ながら逃げられそうにない。アルベドがグッと胸を張る。となりを見ると諸悪の根源が満足そうにしている。もはやどうしようもないと覚悟を決めた。

 

「……アルベドよ、手を出せ」

 

 ゆっくりと手を伸ばす。当たり前だがいきなり胸をもむわけがない。そこまでする度胸は自分にはないのだ。脈を測ろうとアルベドの手に触れた。

 

「……っ」

 

 痛みを堪えるような顔をする。すぐに手を離し何が起こったのか考えて、答えに気がついた。

 

「すまないな。負の接触を解除することを忘れていた」

 

 どのように解除するのかは自然と理解できていた。先ほどXオルタの肩に触れたときもダメージがあったのだろうか。申し訳ない気持ちを押しつぶしながらすぐに解除して再び手を取った。

 目の前で破瓜の痛みなどとのたまっているのは無視して脈を探す。見つけた。確かにトクン、トクン、と脈打っているのがわかる。ここに来て初めて真に理解した。NPC達は生きているのだ。

 続いて自分の手首を見るが、骨だ。脈などあるわけがない。アンデッドのオーバーロードは死を超越した存在だ。自分は死体で目の前のアルベドは生きている。Xオルタの顔にも血が通っているように見えた。

 

 急に途方もない考えが浮かぶ。

 

「オルタさん、もし仮想現実が現実になったっていったら笑いますか?」

「いいえ、それが正しいと思います」

 

 賛同してくれたXオルタを見て安心する。1人でこんなことになっていたらどんな醜態をさらしていたことか。隣に友人がいることに一息ついた時だった。

 

「ところでモモンガさんはアルベドの胸は揉まないんですか?」

 

 前言撤回、1人ならこんなセクハラには遭わなかったはずだ。

 

 




やってしまった……

誤字脱字は気を付けたつもりですがもしあったらすいません。
感想をくれたらうれしいです。

後おまけ、無視しても問題ないです

謎のヒロインXオルタのステータス(改訂)

種族職業などにオリ設定が入ってます。

役職:至高の42人。

住居:ナザリック地下大墳墓第九階層にある自室

属性:中立~悪―[カルマ値:-100]

種族レベル合計30
ゴースト:10lv
幻霊:10lv
英霊:10lv

職業レベル合計70
ソードマスター:10lv
ケンセイ:10lv
ギャラクシーナイト:10lv(設定の都合であの銀河的名作の時代騎士の名前を使えなかったのでこんなことになってます。イメージああいうやつにしておいてください)


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2話 闘技場

二話目です。
すみません、モモンガ様セクハラシーンはカットです。

あと、戦闘シーンっぽいものが一応含まれていますが出来は期待しないでください。




 モモンガは不本意ながらアルベドの胸をもんでいた手を放して指示を出す。内容は一時間後に第六階層の闘技場に来るようにナザリックの階層守護者といわれるレベル100NPC(もとから第六階層にいる二人を除いた)に伝えることだ。

 

「NPC達、ちゃんと生きていましたね。もうただのデータじゃないんだ」

「……そうですね。にしても、アルベドはなんであんなに押しが強いんだ……」

「ベタ惚れでしたね。実際に見るとここまですごいとは。でもそれについては一旦脇に置いておいてください。後で細かいことは話し合う時間を作りましょう。話さなければいけない大事なこともいっぱいありますので」

 

 若干Xオルタの声が重くなったように感じた。

 しかし、確かに時間は押してきている。これから守護者たちと会う前に身の安全を確保して、所持品やスキル、魔法のチェックをしなければならない。やるべきことは山盛りだ。

 

「そうですね。オルタさん、さっきまでいたNPCは私たちに従っていましたがこれから会う守護者たちもそうとは限りません。まずはギミックの確認とアイテムがきちんと働くかチェックしましょう」

「はい。なら、私はアイテムのチェックをしておきます」

「では、俺はここのゴーレムをチェックします」

 

 Xオルタは装備や手持ちのアイテムを確認し、モモンガはゴーレムに指示を出す。モモンガは一通り指示を出せることを確認してから2人以外の指示を聞かないように設定した。

 

「戻れ、レメゲトンの悪魔たちよ」

「壮観ですね。67体の屈強なゴーレムが命令通りに動いている。カッコイイ、です」

「ええ、ですがこれでもしNPCが反旗を翻しても対処するだけの手段は確保できました。アイテムのチェックの方は大丈夫ですか?」

「はい、アイテムボックスはこんな風にすれば開くみたいです。アイテムボックスを開こうと意識しながらやるのがコツです」

 

 モモンガは目の前で手を中空に潜りこませるようにしているXオルタを見て真似る。確かに手首から先が何かに入り込みその奥に何本もの杖が並んでいるのが見えた。まさしくユグドラシルのアイテムボックスだ。これだけのアイテムがあれば相当な敵が出てきてもどうにかなるだろう。ユグドラシルの時と同様に使えることを前提とすればではあるが。

 

 一方で、Xオルタはすでにアイテムボックスの中のチェックは済ませたのか金属製の短い棒から光刃を出したり引っ込めたりしている。「邪聖剣ネクロカリバー」という名前の神器級装備だ。神器級アーティファクトをふんだんに使いたった一つの武器で長剣、両剣、双剣、チェーンソー等といった様々な形態に変化する。しかし、あまりに多くの機能を盛り込んだためか、デメリットもあって武器耐久値は若干低めになっている。

 やはり何の変哲もないロングソードこそ至高。

 

「アイテムも問題なく使えているみたいですね。リングも大丈夫そうですね。そろそろ第六階層に向かいましょう。戦闘用の魔法やスキルの確認もしたいですし」

「了解です、マスターモモンガ。ヒロインXオルタ、行きます」

「では行きましょう。NPCたちに会いに」

 

 そういって2人同時にリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動させる。視界が闇に包まれ次の瞬間、視界は薄暗い通路へと変貌していた。目的地はこの先にある闘技場で、2人の守護者が待ち構えているはずだ。

 通路を抜けるとコロッセウムに出る。数多くの侵入者を迎え撃った場所でその上には夜空が広がっている。偽物ではあるがその美しさは本物にも匹敵するだろう。むしろリアルの空と比べたらはるかに美しい。モモンガは周囲を見回すと視線を感じる。

 

「とあ!」

 

 掛け声とともに飛び降りてきた子供は華麗に着地し、満足気に胸を張る。

 

「ぶぃ!」

「アウラか」

「元気そうです、ね」

 

 小走りで、しかし獣の全力疾走に迫る速度で駆け寄ってくる少女はアウラ・ベラ・フィオーラ、この階層の守護者のかたわれだ。アウラは額をぬぐうふりをして元気に挨拶する。

 

「いらっしゃいませ。モモンガ様、謎のヒロインXオルタ様。あたしの守護階層までようこそ!」

 

 スキルや表情から敵意がなさそうなことは確認できた。モモンガがアウラの話を聞いているとXオルタが言った。

 

「マーレは……他の場所にいるの、かな?」

「すいません! さっきまで一緒にいたのですが……。あの子ったら弱虫なんだから……。モモンガ様と謎のヒロインXオルタ様が来てるんだよ! とっとと飛び降りなさいよ!」

 

 通信機能を持つアウラのネックレスからマーレの弱弱しい声が聞こえてくる。ため息をついたアウラは申し訳なさそうに弁明してからマーレに怒鳴る。2人のことは少し放っておいても大丈夫だろうと思い、隣のXオルタに話しかける。

 

「2人ともいい子ですね」

「はい、これなら何の問題もなさそうです。呼び方に気になる事はありますが集まってから言った方がいいと思いますし」

「あぁ、なるほど。確かに、みんな長いのにフルで呼んでましたね」

 

 話しているうちにマーレも来たようだ。目の前に揃った双子の姿がかつての仲間の思いの結晶である事に満足してモモンガは口を開いた。

 

「2人とも元気そうで何よりだ。それで今日来たのは私たちの訓練と実験をしようと思ってな」

「訓練?え?至高のお方々が!?」

「そうだ少し試したいことがあってな」

 

 スタッフを軽く地面に叩きつけながら言うと双子に理解したような表情が浮かび、続いて驚愕とともに納得し準備に取り掛かる。用意された的にファイヤーボールなどの魔法を打ちユグドラシルと同じであることを確認する。次はXオルタの番だ。

 

「次はオルタさんですね。相手はどうしますか?」

「了解です、マスター。じゃあ状態異常系のやつ何か出せますか?」

「じゃあ、木属性で行きますね」

 

<根源の木精霊召喚>

 

 木属性は毒や催眠などバッドステータスを与えるスキルや魔法を多く持つ属性だ。その分直接攻撃能力が低いことが多いが鬱陶しさでいえばかなり上位に来る。最上位精霊ともなれば火力も高くなるので「面倒な相手」とよく言われていた。モモンガは召喚した精霊とのつながりを感じ取る。Xオルタが位置についたのを確認して先ほどのつながりから根源の木精霊に彼女と戦うよう指示を出す。

 

「うわー」

 

 となりではアウラが感嘆の声を上げる。

 

「気になるのか?」

「はい!至高のお方がそのお力を振るわれるんです!気にならないやつなんていませんよ!」

「そうか、ならしっかり見ておけよ。オルタさんの光刃は見栄えがいいからな。私は少し別の実験を行うためにはなれるぞ」

 

 そういいモモンガはメッセージの魔法を使いGMやほかのギルメンたち40人に送りはじめた。しかし、予想通りというべきか誰一人として返事がない。最後にセバスにメッセージを送りつながることを確認して地上の調査結果を聞くことにした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一方、Xオルタの戦いの序盤は見れたものではなかった。一切の攻撃せずにただ受け続けるのみで光刃は出してすらおらず、腕は動かさない。

 観戦していたマーレが不安を隠しきれずに表情で漏らす。

 

「う、うう……大丈夫かなあ……さっきからずっと攻撃しないし……」

「大丈夫に決まってるでしょ!至高のお方にはかんがえがあるのよ……」

 

 答えるアウラの声も震えているようだった。しかし、その直後Xオルタが持つネクロカリバーから光刃が伸び、迫っていた触腕の一本が消し飛んだ。そのまま光刃は数を増やして両剣となった。それを回転させながらXオルタは触腕の嵐の中を切り進む。己のもとに伸びていた触腕を一掃すると追撃をやめて一気に距離を開け、光刃を手から離す。

 

「「えっ!?」」

 

 観戦している双子から驚きの声が上がる。当然だ。Xオルタは武器の万能性ゆえにほかの武器を持ち歩かない。その唯一の武器を放り捨てたのだ。彼女の能力を知らないものから見たらその驚きは仕方のないものだろう。

 しかし、その驚きはさらなる驚愕で塗りつぶされることになる。地に落ちるはずの両剣がひとりでに浮き上がり回転しながら敵を切り刻んだのだ。光刃はそのままとどめを刺すとXオルタのもとに戻り消えた。

 

「一応ヒロインですし、当然です。ふぅ」

 

 消滅していく根源の木精霊を後目に、決め台詞らしからぬ決め台詞を放ったXオルタは闘技場の端で待つモモンガたち3人のもとに向かう。

 

 そこには頭を抱えるモモンガと目を輝かせている双子が待っていた。

 




プロローグより短くなりました。
そしてほとんど進んでません。ごめんなさい。

戦闘シーンはFGOのスプリガンにえっちゃんが宝具をかますところにSWの念動力を混ぜたものをイメージしています。

描写がひどくて訳が分からないよ、という方はYouTubeなどで謎のヒロインXオルタ、宝具などで検索してみてください。めちゃくちゃカッコいいので一見の価値ありです。

追記
今更だけど木属性の精霊っているのかな?
五行にあるしスプリガンぽいから木にしたけど原作ではプロローグの精霊を見ると四元素っぽい
取り敢えず杖についている宝石の合計7個あるうちの4個が四元素、1個が星、1個が月、残りの1個が木属性だったということにするか?
もしくは完全に別で七曜にするか


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3話 忠誠と守護者

三話です。

まずは感想や評価、誤字修正ありがとうございました。

UAとか評価を見てひっくり返ってました。

今回の話は正直えっちゃんの影が薄いです。


「状態異常のレジストもできましたし、予想よりずっとうまく動けています。そちらは……」

 

 口々にほめたたえてくる双子の頭を撫で回しながら話しかけてきたXオルタをモモンガは遮り、メッセージの魔法を使う。

 

『ここからはメッセージを使いますね。アウラとマーレにはまだ聞かれたく無いので』

 

 急なメッセージへの切り替えに驚いたXオルタはビクリと肩を震わせたが、直ぐに双子とのやり取りを中断してモモンガの報告に耳を傾ける。

 

 もともと沼地だったナザリックの周辺が草原になっていたこと、知性を持った生命体の存在が確認できないこと、周辺にはナザリック以外の人工物すらないこと、そして空が今いる場所と同様に夜空が広がっていること。

 

 言われたことに了承済みだったかのような素振りでXオルタは頷き、焦った様子もなく答えた。

 

『ナザリックが丸ごと他所に転移したということですね』

『はい、そんなところだろうと思います』

 

 断言するXオルタの話し方にモモンガは僅かに違和感を覚えた。しかし、直ぐに守護者達が到着したためメッセージによる繋がりを断ち、意識を切り替える。

 

 最初はシャルティアだった。ついでコキュートス、アルベドとデミウルゴスと続く。呼んでおいた全員が揃ったと見ると、モモンガがゆっくりと口を開いた。

 

「これで皆集まったな」

「はい、モモンガ様。これにてお呼びいただいた階層守護者、皆揃いました。つきましてはここで今一度忠誠の儀を執り行わせていただきたく存じます」

「ん、うむ、良いぞ」

 

 玉座の間で最後に見たときのアルベドとのギャップに呆気にとられたモモンガは勢いに押されて了承してしまう。直ぐに完璧な統制のもと、守護者達がモモンガとXオルタの前に跪いていく。全守護者が忠誠を誓い終えた頃にはモモンガ達は混乱から各種スキルやエフェクトを撒き散らした後だった。

 

 先に冷静さを取り戻し、行動に移せたのはモモンガだった。

 

「面を上げよ」

 

 その瞬間、一糸乱れぬ動きで全守護者の頭が上がる。その様を見てモモンガは出ないはずの唾を飲み込み、言葉を続ける。

 

「では……まず良く集まってくれた。感謝しよう」

 

 感謝を固辞したアルベドはモモンガ達の戸惑いを察して続ける。

 

「モモンガ様、謎のヒロインXオルタ様からすれば私達の力など取るに足らないものでしょう。しかしながら私たち――階層守護者各員、ご命令さえいただければいかなる難行といえども全身全霊を以って遂行いたします。造物主たる至高の42人の御方々――アインズ・ウール・ゴウンの方々に恥じない働きを誓います」

 

 他の守護者達も声を揃えて続く。絶対的な忠誠心に裏打ちされた力強い声が響いていた。

 Xオルタは振り向いてきたモモンガの顔を見て思った。その骨の顔には大きな表情の変化は表れないはずなのに隠し切れない喜びが読み取れた。

 応えるように頷くXオルタを見てモモンガは守護者達に向き合う。もはや不安はない。言葉は滑るように出てきた。

 

「素晴らしいぞ。守護者達よ。お前たちならば我々の目的を理解し、失態なくことを運べると強く確信した」

 

 満足気に守護者達を見回した後、モモンガは異常事態の発生を告げる。

 

「原因は不明だが、ナザリック地下大墳墓がかつてあった沼地から草原に転移したことは間違いが無い。この異常事態について、前兆に思い当たることがあったり、自らの階層で別の異常事態の発生に気がついたりした者はいるか?」

 

 モモンガの言葉を受け守護者達は順番に否定の言葉を述べる。一通りの確認が済んだ頃に小走りで向かって来る人影をXオルタが見つけた。

 

「モモンガさん、セバスが戻ってきましたよ」

「モモンガ様、謎のヒロインXオルタ様、遅くなり誠に申し訳ありません」

「いや、構わん。それより周辺の状況を聞かせてくれないか?」

 

 セバスは顔を上げると跪いている守護者にちらりと目を向ける。

 

「非常事態だ。階層守護者達も何があったのか知る必要がある」

「了解でいたしました。まず、周囲一キロですが――草原です。生息していると予測される小動物は見ましたが、いずれも戦闘能力がほぼ皆無と思われる生き物でした。また、人工的な建築物は一切確認できませんでした」

「そうか……ごくろうだった、セバス」

 

 報告を受けたモモンガはセバスにねぎらいの言葉をかけ、各守護者に警備と連携の強化の指示を下す。九階層、十階層の警備について言及した時、守護者たちに動揺が走ったがそれを押しとどめ双子に視線を向ける。

 

「アウラとマーレだが……ナザリック地下大墳墓の隠ぺいは可能か?幻術のみでは心もとないしコストもかかるからな」

 

 双子は互いに顔を見合わせて考え始めた。先に口を開いたのは弟のマーレだった。

 

「ま、魔法では難しいです。地表部を隠すとなると……。壁に土をかけて、植物を生やすとか……」

「栄光あるナザリックの外壁を土で汚すと?」

 

 アルベドの言葉とともに守護者たちもマーレの提案を批判するような雰囲気を漂わせた。

 

「アルベド……余計な口を出すな。マーレ、土をかけて隠すのは可能か?」

「は、はい。お、お許しいただけるのでしたら……ですが……」

「壁を隠すとなると確かにマーレの手が妙案。であればマーレとアウラで協力してそれにとりかかれ。周囲からはあまり目立たないように工夫しておくこと。その際に必要なものは各階層から持ち出すことを許可する」

「は、はい。かしこまりました」

「さて、わたしからはこれで終わりだ。オルタさんは何かありますか?」

 

 急に話を振られたXオルタは目を丸くしながらモモンガを見て、言いたいことがあったのを思いだす。

 

「じゃあ、私からは一つだけ。私のことはこれからXオルタかえっちゃんと呼ぶようにしてください。ほかのみんなにも伝えておいてください、ね」

『畏まりました。Xオルタ様』

 

 相変わらず完璧な連携で返答を返す守護者たちを見て、Xオルタは安心した表情を浮かべる。ちょっとがっかりしたことはばれていないようだ。

 一方、モモンガは守護者たちに最後の指示を出す。

 

「さて、今日はこれで解散だ。各員休息に入り、それから行動せよ。決して無理をするなよ」

 

 守護者たちが了解の意を示す。

 

「最後に各階層守護者に聞きたいことがある。――お前たちにとって私達二人はどのような存在だ?」

 

 突然始まる圧迫面接のような問掛けに隣のXオルタが固まるが、守護者たちはよどみなく自身の思いを語る。

 

 まずはシャルティアが美しさについて、次いでコキュートスがその力を、アウラとマーレが子供らしく簡潔に二人をほめたたえる。デミウルゴスが美辞麗句を尽くし、セバスが最後まで残ってくれたことへの思いとともにその慈悲をたたえる。最後にアルベドが二人に忠誠を示してからモモンガへの愛をささやく。

 

「……なるほど、お前たちの考えは十分に理解した。今後とも忠義に励め」

「……あぁ、これからも、よろしく?」

 

 モモンガとXオルタは褒められすぎてマヒした思考からどうにか言葉を絞り出し、頭を下げている守護者から逃げるようにレメゲトンに転移した。

 

「疲れた……。あいつら……」

「お疲れ様です。対応ほとんど丸投げしちゃってすいません。でもすごかったですね、あの高評価。本気で言っていますよ。これからどうすればいいんでしょう?下手なことはできそうにないですし」

 

 守護者の前でほとんど話さなかった反動か、Xオルタが怒涛の勢いで述べた。勢いに押されないようにモモンガは身振りでXオルタを抑える。

 

「あっ、すいません。テンション上がってしまって。ちゃんとこれからのことも考えなきゃいけないのに……」

「いや、しょうがないですよ。こんなことが起こった後ですから。今日はしっかり休んで細かいことは明日また話しましょう」

「……そう、ですね。明日しっかり話し合いましょう」

 

 そのままモモンガとXオルタはそれぞれの自室へ向かう。前を歩いていたモモンガは最後までXオルタの表情を見ることはなかった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一方、2人が去ったと知ってなお守護者たちは立ち上がる者はいなかった。しばらくして、最初に立ち上がったのはアルベドだ。続いて残りの守護者たちも立ち上がり口々に言い募る。

 

「モ、モモンガ様、すごく怖かったね、お姉ちゃん」

「ほんと。あたし押しつぶされるかと思った」

「シカシ、スグニ恐怖ハ晴レ重圧ニ耐エラレルヨウニナッタ」

「流石は至高のお方々。私たち守護者にすらそのお力を発揮するモモンガ様、そして、そのお力に竦んでいると見るとさりげなく支えてくださったXオルタ様……」

「我々よりはるかに優れていると知っていましたが、これほどとは……」

 

 守護者に影響した二つの効果の正体。一つ目の重圧の方はモモンガのスキルである「絶望のオーラ」がスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効果によって強力化したもの、二つ目の支えた力はXオルタのエンハンス系スキル「王の見えざる手」の効果だ。どちらも忠誠の儀において混乱したモモンガとXオルタがまき散らしたスキルに過ぎない。ただの偶然から生まれた天然のマッチポンプではあるがその効果は絶大だったようだ。

 

「守護者としての姿を見せた瞬間から、お二方はその偉大なお力の一部を発揮されていました」

「ツマリハ我々ノ忠義ニ応エ、支配者トシテノオ顔ヲ見セラレタトイウコトカ」

「確実にそうでしょうね」

「あたしたちといたときも全然、オーラを発していなかったしね。Xオルタ様の戦い方を見せていただいたときは隣に座らせてくれて」

 

 その瞬間、各守護者から強烈な嫉妬の気配が立ち込める。際立っていたのはアルベドとコキュートスだ。コキュートスが双子に問い詰めた。

 

「Xオルタ様ハ何トドノヨウニ戦ワレタノダ?」

「え、えっと、相手はモモンガ様の召喚した根源の木精霊でした。はじめはずっと攻撃をしないで避けていただけだったんだけど――」

 

 武人であるコキュートスは戦いに純粋だ。Xオルタが力の一端を振るったと知って、ただ手をこまねいていることが我慢できなくなったのだろう。マーレの話に相槌を打ちながら、質問を繰り返す。

 一方、アルベドの嫉妬は業が深い。愛する者の隣という特等席を奪われたのだ。

 

「では私は先に戻ります。モモンガ様とXオルタ様がどこに行かれたかは不明ですが、おそばに仕えるべきでしょうし」

 

 嫉妬のあまり狂いそうになっているアルベドを正気に戻すかのようにセバスが口を開く。ついでに、二人の名前が出たことにより、話し合っていたコキュートスとマーレを含む全員が口を噤みセバスの方を見る。

 

「わかりました、セバス。お二方に失礼がないように仕えなさい。それと何かあった場合はすぐに私に報告を。特にモモンガ様が私をお呼びという場合は即座に駆け付けます。何を放っても!ただ寝室にお呼びという場合は――」

「了解しました。アルベド。一刻も早くおそばに仕えるべきだと思いますのでこれで失礼します。では守護者の皆様も」

 

 再びアルベドが暴走する気配を感じ取りいち早くセバスは職務に戻る。

 残された守護者互いに目を合わせ、最終的にずっと黙り込んでいたシャルティアに向く。

 

「何カアッタノカ?」

 

 コキュートスが不用心にもシャルティアに問いかけた。それを受けシャルティアはとろんとした目を向け答えた。

 

「あの凄い波動の余韻を満喫していたら……少ぅし下着がまずいことになってありんすの」

 

 理解していないマーレと軽蔑の感情を示すアルベドを除いた守護者があきれ返る。

 

「このビッチ」

 アルベドの罵倒を切掛にシャルティアとアルベドによるモモンガの后の座を巡る論争が始まる。

 呆れたデミウルゴスたちはアウラに2人のことを押し付け少し離れて観戦する。背後のアウラの文句は誰にも届かなかったようだ。

 

「全ク。喧嘩スルホドノコトナノカ?」

「個人的にはどうなるかは非常に興味深いところですね」

「ナニガダ、デミウルゴス?」

「ナザリック地下大墳墓の将来という意味でね」

「ど、どういう意味ですか、デミウルゴスさん?」

「ふむ……」

 

 この無垢な同胞にどこまで伝えていいのか悩みながら口に出す。

 

「偉大なる支配者の後継はあるべきだろう?モモンガ様のご子息に忠義を尽くすことを考えるとね」

 

 コキュートスが妄想の世界にトリップしてからデミウルゴスはマーレに向き直る。

 

「しかし、至高のお方の後継について考えるなら大きな問題がある。Xオルタ様の御世継ぎについても考えなければいけない。そうなると私たちも候補の中に入ることになるからね」

「え、え!?ボ、ボクたちもですか?」

「ああ、何せXオルタ様は女性だからね。第一候補はモモンガ様だとしても次点には男性である私たちも含まれることになるかもしれないだろうからね」

 

 そのようなことを言いながら、デミウルゴスは他の同僚の様子を見る。コキュートスは相変わらず夢の中で、マーレも先ほどの言葉に戸惑い顔を赤くしていた。アウラは憔悴しているように見えるが、その甲斐もあってアルベドとシャルティアの論争は幾分落ち着いたようだった。

 

「落ち着いたようだね、アルベド。これから色々と動かなければならないのだから命令をくれないかね?」

「そうね、命令をしないといけなかったわね。――」

 

 守護者統括としての仕事をするのにふさわしい威厳を見せたアルベドに各階層守護者は敬意を示し礼をする。

 

「まずは――」

 




ついに各守護者が出せました。前二つより若干長いです。

正直タグが仕事してない気がしてるんですが次辺り転生とかオリ主の地雷系タグの処理入るつもりです。

よろしくお願いします。



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4話 告白と金

4話です。

お気に入りとか評価がやばいことになってます。
ありがとうございます。
どうしよう

では、今回ですが説明回です。リアルとか前世でえっちゃんがどうなっていたかについてになります。今までも地雷のような話でしたが今回は地雷を敷き詰めた上から土をかぶせただけといった有様です。

それでもよろしければどうぞよろしくお願いします。

あと、うちのえっちゃんは転生オリ主です。
うちのえっちゃんは転生オリ主です。大事なことなので二回言いました。




 ナザリック地下大墳墓の第九階層スウィートルームにある自室、Xオルタはベッドに寝そべり時計を眺めていた。モモンガの自室と比べると極めて狭いが整頓されていて壁際にはぎっしり詰まった本棚と学習机が並んでいた。机の上にはマル秘と書かれたノートと大きめの巾着が置いてある。転移してからもうすぐ6時間が経つ。

 Xオルタの眺めていた時計の短針と長針が一直線に並んだ。

 

『おっはよ〜、えっちゃん!起きて、起きて!』

 

 Xオルタの頼みでぶくぶく茶釜が特別に吹き込んでくれたアラームだ。僅かにはにかんだXオルタは机の上の荷物を持ち部屋の外に控えているメイドに声をかける。

 

「あの……よかったらモモンガさんに今から大事な話をしに行っても構わないか聞いてもらえない、かな?」

「はい、畏まりました」

 

 メイドはそのままモモンガの部屋にむかい二言三言話してから戻って来てモモンガの言葉を伝える。

 

「モモンガ様より、『直ぐにそっちに行くのでちょっと待っていてください』とのことです」

 

 その言葉にXオルタはモモンガの自室の惨状を思いだして納得する。

 

「わかった。待っています」

 

 部屋の奥に戻り話しやすい様にイスをベッドに向ける。直ぐに部屋の外から声がモモンガの声が聞こえた。

 

「オルタさん、今来ました。入ってもいいですか?」

「どうぞ。座ってください」

 

 モモンガを招き入れたXオルタはイスに座りベッドを指し示す。言葉通りにモモンガはベッドに座った。

 緊張している様子のXオルタをみかねて助け船を出す。

 

「あの……話しにくい様でしたらまた今度にしますか?」

「……いえ、大丈夫、です。今しか言えないと思うので」

 

 重苦しい空気の中Xオルタは続けた。

 

「私は以前から昨日起きたことを予想していました。そのための準備もしてありました」

「……なんて?」

「私は昨日の転移を予め知っていました」

「……まじで?」

「はい」

 

 モモンガの頭の回路がショートした。一瞬のうちに様々な憶測が頭の中を飛び交う。僅かに間を置いて鎮静化してから恐る恐る問いかけた。

 

「冗談っていうわけじゃないんですよね。もし、良ければ理由を聞かせてもらってもいいですか?」

「大丈夫、です。ただ、最初に断っておきます。ものすごく突拍子のない話です。ありえない、と思うかもしれませんがどうか最後まで、聞いてください」

 

 Xオルタの真剣な表情にモモンガは静かに頷いた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「モモンガさん、転生というものを聞いたことはありますか?」

「……確かどこかの宗教にある『死んでから生まれ変わる』っていう考え方ですよね」

「概ね間違いじゃありません。私は死ぬ前の、いわゆる前世の記憶を持って転生しました。その記憶に今回の転移とその後の事が含まれていました」

 

 Xオルタの質問に答えたモモンガは、話にカルトじみた雰囲気を感じながら先を急かす。

 

「その『記憶』ってのはどんな内容だったんですか?」

「この先に起こる内容についてはまとめてあるので後回しにしますが、ほぼ現状と同じです。ユグドラシルがサービス終了するタイミングでナザリックにいたモモンガさんが1人でNPCと一緒に異世界に来てしまう。そこから、いろいろな事件が起こることになります」

 

 その回答にモモンガは違和感を覚える。『モモンガさんが1人』だけである。目の前のXオルタはどうなったのか。

 

「オルタさんは一緒じゃなかったんですか?」

 

 Xオルタの顔がゆがむ。聞いてはいけない事だったのだろうかと焦りすぐさま弁明する。

「あっ、いえそれが問題だっていうわけじゃ――」

「かまいません。……確かに私はいなかった。その記憶の中で私はそもそも存在しませんでした」

 

 弁明を遮られたモモンガは固まる。

 

「『記憶』の中ではアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは41人。私が知っていたアインズ・ウール・ゴウンは……『オーバーロード』という小説の中の存在です」

 

 Xオルタは俯きながら吐き出していくように続けた。

 

「私は、前世では20世紀の終わりから、21世紀の初めの、日本に住んでいました。でも、単純に100年前の人間だったわけではない、です。前世と今世はあまりに違いすぎて、それがただひたすらにきつくて。12年前のユグドラシルのサービスが始まった時、小説『オーバーロード』とリアルやユグドラシルの話がほとんど同じだって気が付いて。それで、この世界がオーバーロードをなぞっているんじゃないかと思ったんです。それが、私がこの転移をあらかじめ想定していた理由、です」

 

 途中何度も息継ぎをしながら語り切ったXオルタに対しモモンガが声を絞り出す。

 

「……オルタさんの言っていることは、わかりました。まだ、受け入れきれてないけれど理解はできたと思います……でも、ひとつだけ教えてください。オルタさんにとってアインズ・ウール・ゴウンは、俺たちは何だったんですか?」

 

 モモンガの本音を言えば、最後まで一緒にユグドラシルに残ってくれた、そしてこの先も共にあるだろう友人の事を信じたい、ということになる。

 しかし、それはXオルタが今まで自分やほかのメンバーを騙して仲間に入ってきたということかもしれない。もっと悪く、自分たちを別種の存在、作り物として見下していた事を認めることになりかねない。どうにかして友人に今まで同様の信頼を向けていたいという気持ちで問いかけ、Xオルタの本心を見極めたいという気持ちから、自然と様々な看破スキルが発動された。

 それらに気が付くこともなく、Xオルタは相変わらず俯いたまま震える声で答えた。

 

「……モモンガさんは……、アインズ・ウール・ゴウンのみんなは友達です。私が転生してから周りを受け入れられず、前世の痕を探し回っていた中であった、こんな社会不適合者に優しくしてくれた、他とは比べられない大切な友達でした。……そして……私がだました、いつか必ず謝らなければいけない相手です。ごめんなさい、モモンガさん。私はあなたがこの世界に巻き込まれると知って見逃しました。許されることではないとわかっています。でも、私は、他のみんなに謝りたい。どうか、そのチャンスをください」

 

 話を聞いたモモンガはそこにウソがないことを実感し、その言葉を反芻する。

 

 ――自分と大して変わらないじゃないか――そう思う。

 

 リアルがきつかった。生きているのがつらかった。今の時代そうじゃない人間なんてほとんどいない。その度合いがちょっと特殊な事情で大きかっただけだ。

 アインズ・ウール・ゴウンの仲間たちが他とは比べられないほど大切なものだということ。自分の感じていたものと全く同じだ。目の前の1人を含めた彼らとの思い出、友情は自分のすべてだ。ほかに比べられるものなどあるわけがない。

 仲間達への罪悪感。確かに隠し事をしていたことは悪いのかもしれない。しかし、巻き込まれたのは自分一人だ。結果をみれば上々ではないだろうか。むしろ、これほど苦しんでいた友人に気が付かなかった自分こそ、責められるべきじゃないのかとさえ思える。

 

 一通り自分の中で納得がいく考えがまとまったところでモモンガは呼びかけた。

 

「ありがとうございます、打ち明けてくれて。でもオルタさんは何も悪くない。もっと元気を出してください」

「で、でも、私は身勝手にギルドに潜り込んで、みんなを騙し続け――」

「違います」

 

 自虐し始めるXオルタを遮りモモンガは続ける。

 

「俺はオルタさんの『記憶』にあるアインズ・ウール・ゴウンがどんな物なのか知りませんが俺のいるアインズ・ウール・ゴウンは42人いて、その中にはしっかりと『謎のヒロインXオルタ』っていう貴方が含まれているんです。何も気にすることはないんです」

 

 モモンガの言葉にXオルタの目が大きく広がる。

 

「それに多少の隠し事ぐらい問題ないでしょう。これで問題ならるし★ふぁーさんはどうなるんですか?」

 

 笑いながらモモンガは畳みかける。骨の顔にはほとんど変化はないが眼窩の奥の炎が温かみを増した気がした。Xオルタは言葉を出せず涙を流しながら震えていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 数分後、Xオルタが落ち着いたころを見計らいモモンガが口を開いた。

 

「あ、あの、オルタさん、もう大丈夫ですか?できたらこの先の内容とかも聞けたらなぁって思っているんですが……」

 

 だんだん声が小さくなっていった。Xオルタは顔を赤らめ、慌てた様子で答えた。

 

「っ!そ、そうですね。できることは早めにしないと、ですね」

「いいんですか!この先に起きることについてですよね」

 

 モモンガの声からは期待が隠しきれていない。小声で「未来の情報か、ノストラダムスみたいなのかな」などと漏らす。一方Xオルタは事前に用意してあったマル秘ノートと巾着を持ち出す。

 

「これです。このノートに転移後の事のうち憶えていることを一通り書きました。こっちの巾着は転移後に特に役に立つと思って貯めておいたアイテムです」

「そんなものも用意してあったんですね。折角なので、先にアイテムから見せてもらいますね」

 

 モモンガは巾着に手を入れいくつかのアイテムを取り出す。出てきたのは3つの指輪、いずれも同じ意匠であり自分の指にもはまっているとても見慣れたものだった。見なかったことにして巾着に戻す。中にはまだそれなりの数があったようだがもう見る気力はなかった。しっかりと口が閉まっていることを確かめ、そのままXオルタに返す。

 

「……あの、オルタさん?つかぬことをお聞きしますがこちらの袋にはおいくらほど費やされたのでしょうか?」

「急に妙なしゃべり方してどうしたんですか?その中身なら確か……300万くらいだったと思います」

 

 モモンガが今まで一度も見たことがないような金額が出る。前世の話以上の衝撃だった。理解が及ばずそのまま聞いてしまう。

 

「……ど、どうやって工面したんですか?」

「あぁ、ユグドラシル始める前からの貯金です。お金の使い道がなかったのと、前世知識で勉強はそれなりにできたから12で高卒資格取れたおかげかいい仕事につけてたので」

 

「……前世ってすごい……」

 

 モモンガのつぶやきはXオルタには聞こえなかったようだ。

 




本作ではモモンガ様のボーナスは現在の新社会人のボーナスの平均より少し下を想定し20万に届かない程度と考えています。
また、えっちゃんの転生後の人生の比率はユグドラシル6、仕事3、勉強1、程度と考えています。
貯金は苦行だけどそもそもの使い道がなければすぐにたまるよね、きっと。

ちなみにうちのえっちゃんにとってモモンガ様はFGOにおけるぐだとかあっ君を足して2で割ったようなポジです。ほかのギルメンはダ―クラウンズというか、体験クエのあっ君みたいな感じ。


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5話 歴史と争い

五話目です。

感想と評価と誤字報告ありがとうございます。

さっき、FGOのニコ生があったようですがまだ見れてません。この後寝る前にタイムシフトで見ようと思います。

今回も引き続き説明回みたいなものです。そして、えっちゃんが少しえっちゃんらしくなってたらいいなと思います。


「アイテムの方はちょっと俺には荷が重いので後回しにしましょう。それよりまずはノートです。情報の共有からやるべきです」

「そ、そうですか?」

 

 食い気味に述べるモモンガに押されながらXオルタは「頑張ったつもりだったんだけどな……」等とぼやきながらノートと巾着を取り替える。頑張ったどころではない。重過ぎである。モモンガの感情を理解できていない様子のXオルタはノートを差し出し、モモンガの隣に席を移す。

 

「あまり、期待しないでください、ね。もう、20年以上前のことなので、凄く曖昧、だし」

 

 女の子の部屋で1つのベッドの上で少女と男が隣り合い、間に置かれたノートを覗き込む。傍から見れば一昔前のラブコメの一幕にさえ見える。但し、男が邪神を彷彿とさせるガイコツでなければ、という注釈がつくが。

 モモンガが1ページ目を開くとまず、下手くそな地図の様なものが目に入る。

 

「この周辺の地図、ですか?」

 

 Xオルタが頷いて肯定の意を示す。ナザリックを中心に3つの国がある。左側に◼️◼️◼️王国、右側に同じ様に塗りつぶされた文字の横に帝国、下にも法国と書かれた文字とともにやはり黒塗りがある。その下にさらに3つ、場所がわからないという注釈とともに、竜王国、評議国、聖王国と箇条書きされ、それぞれコメントが添えられている。

 

「ユグドラシルとは随分違うみたいですね。それで、この黒塗りはなんだったか聞いてもいいですか?」

 

 見たままの感想と疑問を投げかけながた。

 

「えっと、そこははっきり思い出せなかったので……」

 

 ボソボソと呟くXオルタの言葉に納得しながら細かなコメントを見て行く。その中でも特に目に付いたものについて尋ねた。

 

「この法国っていう国のプレイヤーとワールドアイテム、後下にくっついている竜王国の狩場っていうのはどういう意味ですか?」

「法国っていうのは確か、昔プレイヤーが作った国とかで、ワールドアイテムがいくつかあったはず、です。竜王国はそのまま亜人か何かに狩場扱いされている国だったと思います」

「やっぱり他のプレイヤーがいたんですね。……でも、昔ってどういうことですか?」

「それについては次のページにあります」

 

 言葉と共にXオルタがページをめくった。左ページには設定、右ページには人物名と書かれていた。

 モモンガはまず、設定から読み進み、『昔』という言葉の意味を理解する。転移は同時ではない。100年毎に行われる。なら、他の仲間が既にいることや、これから来ることもあるかもしれない。無いはずの胸が期待に高鳴る。さらに先にはアイテムやNPC、魔法についての説明が入る。

 

 ――フレーバーテキストでしかない設定が極めて重要な効果を持つ――

 

 モモンガは実際に会ったNPCの様子を思い出して納得し、何故、Xオルタが例の指輪を持っていたのか理解した。効果自体も強力であったが、設定がそのまま事実になれば一部の攻撃にしか使えないワールドアイテムよりはるかに役に立つ場面もあるだろう。

 しかし、あんなに溜め込まなくても良かったのに。

 その思いを押し殺し、隣のページをみた。そこには数々の名前とほんの少しだけ添えられたコメントが並べて書かれている。

 

「ナザリックを含めた、小説の登場人物たちの名前です」

 

 順繰りに見ていけば、随分と奇妙な事になっていた。

 

 村娘と覇王や将軍などという言葉が同一人物に対して並んでいる。NPCに添えられた奇妙なあだ名、きっと間違えているだろう食べ物の様な名前や、散見されるカマセの文字、中には厨二病を患っている様なものもある。

 

 余りにもカオスな有様に『デミえもん』ってなんだろう?等と考えながら、すぐに次のページを見た。

 

 ――ナザリック内の注意事項――

 

 見開きでデカデカと書かれたその下には見覚えのある、しかし、見たくなかった言葉が並ぶ。それは様々なギミック、主に『るし★ふぁー』謹製のイタズラによるものが並んでいた。そこに続く一言、『フレンドリィファイア解禁によってほぼデストラップとなっています』思わず罵倒が漏れる。

 

「何やってんだ、あの腐れゴーレムクラフター!」

 

 呆れながら端まで見て気が付く。

 

 ――シズに任せればすべて済むと思います――

 

 小さく書かれている一言にそのNPC、プレアデスのCZ2128・Δの設定を思い出す。何とかなりそうだということに安堵し、先のページに進んだ。

 

 次のページは見開きになっていた。

 

「そこが最後です」

 

 確かに右ページには途中までしか書いておらず、次のページにも何もないようだった。

 一方、左ページの最初の数行には確かに今までに起きたことが書いてある。最初の1行目に書かれた言葉に堪え切れずモモンガは言った。

 

「……俺って1人の時もアルベドの胸揉んだんですか?」

「そうです、よ。打ち明けるまでの内容はできる限り実現する様に頑張りました」

 

 胸を張るオルタにモモンガはなんとも言えない気持ちになり、昨夜の自分の努力を振り返る。

 

「……わかっていたなら黙ってないで、もうちょっと助けてくれれば良かったのに……」

「っ!たとえ分かっていても、出来ないことはあるんです。……あんなスゴイ物見せられたら、誰だって混乱します。仕方ないこと、です」

 

 憤慨しながら言い訳するXオルタをしり目に続きを読み進める。主観が混ざり、曖昧な部分も多いが、明らかに無視できないこともある。中には、シャルティアの洗脳やエントマの敗北等の断固として阻止する必要があるものもあれば、セバスが彼女を拾って来る、といった祝福すべき?事も含まれている。その中でもとくにモモンガの目についたものが一つ。

 

 ――ぼっちを拗らせたモモンガさんが改名してアインズ・ウール・ゴウンを名乗る――

 

 直ぐに起きるということが気になる一方で、何よりも恥ずかしいと思う。モモンガにとってこのノートをしっかりと読むことは自身の黒歴史を見返すことよりも恥ずかしいことになりそうだ。そう思い、ノートを閉じた。

 

「ありがとうございます、オルタさん。これは凄く役に立つと思います。とりあえず、宝物庫にしまい話し合いの時にでも取り出すという方針でいきましょう」

「……NPCには見せないんです、か?一応コピー機能とかついたゴーレムを用意してあるんですが……」

 

 何言ってやがる、コイツ

 

 モモンガは気がついた。

 ユグドラシルでプレイしていた頃Xオルタは部屋を学生寮の一室に作り替え、教科書や参考書を置くと言ってリアルの本を丸ごとデータ化して取り込んだり、ロールプレイやフレーバーテキストの設定を組むことが好きなかなりゆとりのある、所謂ガチではないプレイヤーだった。だから今までは気がつかなかったのだろう。これらは全て、今この時の為の布石だったのだ。

モモンガは今まさに、真に理解した。目の前にいるこの友人、Xオルタは極度の効率厨である。例えば、それが目的に必要であれば、大恩ある相手であっても襲いかかるくらいのことはしてしまう、そんな狂気を抱えているとモモンガはやっと理解したのだ。

 

「い、いや、いくらNPCでもこれは流石に見せないほうがいいと思いますよ。ほら、俺たちに対する見方変わりそうじゃないですか」

「でも、絶対にNPCの方が頭良いしうまく使えると、思います」

 

 正論ではある。しかし、受け入れたくないモモンガは切り札を切る。

 

「だったら、パンドラに渡しましょう。それなら頭の良いNPCが持っているし宝物庫に置いておけます。良いですよね?」

「モモンガさん、パンドラは表に出ないじゃないですか。それじゃあ、死蔵と同じだと思います、よ。だったらデミウルゴスだけにでも渡した方がいい筈、です」

 

 黒歴史の一括封印作戦、失敗。

 間違ってはいないが、やはり受け入れられない。さらなる対抗手段を練る。

 

「なら多数決です。アインズ・ウール・ゴウンは多数決を重視するギルドでした。それに習って今回も当事者である私達とパンドラにデミウルゴス、これだと偶数なのでアルベドを加えて5人で。どうですか?これならいいでしょう?」

「……多数決、ですか。他の守護者も加えるなら、賛成です。アルベドだけだと必ずモモンガさんの意見についちゃう」

「っ、わかりました。守護者を全員集めて多数決です。そこでパンドラかデミウルゴス、どちらに渡すか決めましょう」

 

 僅かな光明、それにモモンガは縋った。縋ってしまった。

 モモンガならば時をおけばより良い案が出せただろう。だが、待てなかった。一刻も早く未来の黒歴史を隠したいという感情に逆らえなかった。

 

 

 モモンガはそれが後々自身にとって大きな悲劇となることを知らずに。

 




モモンガ様とえっちゃんの争いが今、始まります。

ちなみにモモンガ様が冷静なら思い浮かぶだろう案として検閲してから渡すこととか考えてました。

ところで、この2人、まだ転移から10時間もたってないんですよね……

ニグンさんはいつ来てくれるんだろう?


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6話 円卓会議

6話です。

感想、評価、お気に入りありがとうございます。

今回はモモンガ様対えっちゃん

後書きにノートの内容について少しまとめてみました。
この後書きで前回の読まなくて済むかもしれない。

地雷まみれで遅々として進みませんがよろしくお願いします。

追記
一言抜けていたので訂正しました。


 青い空の下、屋外には不釣り合いな程、豪華な円卓が置かれていた。周りには10の席があり、下は10歳に届かないように見える子供、上は総白髪の老紳士、果てには骨や虫にまでに及ぶ様々な者たちが座っていた。

 8つの席に座る者たちは繰り返し賛辞を口にしていく。

 残る2つの特に豪華なあしらいを施されたものに座る内の1人、モモンガが苦笑しながら呟いた。

 

「どうしてこうなったのか……」

 

 額に手を当てて悩むそぶりを見せるものの、その声色からは隠しきれない喜色が読みとれる。

 

「ちょっとナメてました、ね」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 事の起こりは今朝、ノートの処遇についてモモンガとXオルタの意見が一致しなかったことにある。

 そのため、モモンガがアルベドに連絡して守護者を集めるように言ったのが凡そ2時間前、さらに1時間かけて第六階層の円形闘技場に円卓が設置され、守護者が集まった。

 その後、多少の悶着はあったものの、その場にいた10人全員が着席した。

 

「まずは、この席についてくれたことを感謝しよう。さて、今回は、我々の意見が割れたために集まってもらう必要があった」

 

 モモンガの言葉は席に着いたもの全員に重くのしかかる。

 全ての守護者が自分達の仕える主人の間に起きた不和を重く受け止め、いかなる行動をとるべきか考える。

 ある者は自分の愛を貫くことを誓い、また一方では仲裁の方法を得るためにあらゆる手を尽くすべく考えを走らせる。しかし、殆どのものに共通していたのは恐怖だった。

 

「原因はこのノートの管理方法にある。オルタさんが書いたもので、今後のナザリックの為の有用な極秘情報がまとめてある。その為、アインズ・ウール・ゴウンの習いに従い、この場で話合い、多数決の上で決めたいと思う」

 

 守護者達は何も言えない。例えどれほど分不相応な役目を与えられようとしているとしても、今、この場でそれを否定してしまえば主人達の不和を加速させてしまうかもしれない。

 

「異論は無いようだな。では、我々の意見を述べよう。まずは、オルタさんからだ」

「えっと、では、私がどうしたいかと、その理由から、言います」

 

 息を深く吸い込んで口を開いた。

 

「わたしは、このノートはそれなりに有用だと、思っている。だから、最大限利用する為に配下、少なくとも、頭の良い1人、例えば、デミウルゴス辺りに、渡して活用してもらいたいと思っている」

 

 守護者達の目の色が変わる。守護者達にとって至高のお方が直々に作った物を下賜されるということは極めて光栄な事だ。

 一方でモモンガの意見が続く。

 

「次は私だな。私はこのノートに書かれていることは極めて重要であり、厳密に保管すべきだと考えた。その為、これはパンドラズ・アクターに預け宝物庫にしまい、必要な時のみ取り出すべきだ」

 

 そのまま、モモンガは守護者達を見回す。

 

「問題は理解したな。わからないことがあれば随時聞くが良い。では旧金貨は私、新金貨はオルタさんだ。それぞれ、パンドラズ・アクターから金貨を受け取れ。……ふむ、全員に渡ったな。互いに話し合い、各々の意見を固めよ」

 

 席に着いた8人の顔が引き締まったようにも見える。

 最初に声をあげたのはパンドラズ・アクターだった。

 

「では、僭越ながら私めが口火を切らせていただきましょう!」

 

 モモンガの隣で勢いよく立ち上がり、身振りを加えて話し始める。

 

「簡潔に申しますと、私はモモンガ様の案に賛成です。なぜなら、私は、その至宝を管理したいのです!」

 

 そのまま、モモンガとXオルタの方を向いて満足気に最敬礼。

 

「Wenn es meines Gottes Wille」

 

 周囲の者達は余りの傲慢な物言いに唖然としている。いや、メガネを煌めかせながら立ち上がる者が1人。

 

「2人目は私でもよろしいでしょうか?」

 

 デミウルゴスは納得済みといった顔で続けた。

 

「至高のお方々の叡智には及ぶべくもありませんが、私は仮とはいえ、Xオルタ様のお眼鏡にかなうという幸運に恵まれました。なので、その全力を尽くす機会を得たいと思います。さらに、敢えて言うのなら恐らくこの書物を預かった者は、至高のお方々に最も近い場所でお仕えできると思いました。それら2つの理由故にございます」

 

 アルベドとシャルティアが揃ってXオルタの方を向く。まるでデミウルゴスの言うようなことが本当にあるのかと確かめようとするかの様に。そして、あまりにもあっさりと答えは出た。

 

「確かに、モモンガさんか私の部屋とかに呼ぶことはあるかも、だよ」

 

 どよめき、そこから読み取れる渡されるであろう2人への羨望。そんな中、アルベドは次の一手を取る。

 

「Xオルタ様、1つ質問をお許しください。仮に、Xオルタ様の案が選ばれた場合、デミウルゴス以外のものにその至宝を預けることがあり得ると考えてもよろしいのでしょうか?」

「うん、アルベドも頭いいし、使いこなせそうならありだと思う、よ」

 

 アルベドの意思が決まる。僅かでも愛する者との可能性につながる道へ、愛に狂った乙女は突き進む。

 そのまま妄想の世界に突入したアルベドに比較的冷静な他の守護者からの声がかかる。

 

「見苦しいでありんすぇ、アルベド。そんな事ではモモンガ様の寵愛はおろか、見向きもされない事請け合いでありんしょう」

 

 新金貨を出しながらいう一言、それが燃料となった。

 

「はん。貴方にはわからないのでしょうね、この意味が。貴方が理解していないうちに私は完全なる勝利を得るつもりですけどね」

「……完全なる勝利ってどういう意味をふくんでるのか、教えて欲しいな、守護者統括様ぁ」

 

「シャルティア、黙って」

「イイ加減黙レ、至高ノ御方々ノ前ダゾ」

 

 怒気を孕んだ2つの声が響いた。アウラとコキュートスの制止に守護者達の息が止まり、2人が謝罪する。

 赦しを乞う様に皆、一様にモモンガとXオルタの方を向く。

 すると、予想していたものとはあまりに違う反応が返ってきて、守護者達の硬直を解くことを許さなかった。

 

「――あははは!」

「ふぅー、これはかぜっち。こうしてはいられないのでは」

 

 2人は喜んだ様子で笑い、語り合う。

 

「構わないとも、許す、許すぞ!あははは!」

「これ良いです、ね」

「今度また、やりましょう」

 

 2人にはこの光景が、ギルメンで話がまとまらず論争となっているシーンと重なった。この2〜3年間殆ど見なかったシーンだ。懐かしさと喜びで舞い上がっていた。

 しかし、モモンガにとっては喜びもそこそこに感情が鎮静されてしまう。隣で未だ落ち着かないXオルタを一瞥し、続きを促した。

 

「話が逸れたな。まだ、発言していないのは、アウラとマーレ、コキュートス、後セバスだな。折角だから1人ずつ言ってくれ。まずはアウラからだな」

 

「私ですか?私はモモンガ様の案に賛成です。不安なヤツがいるので」

 

 シャルティアとアルベドに視線をやりながら言った。その隣でマーレはコクコクと頷いている。

 

「マーレは――」

「ボ、ボクもお姉ちゃんの言うとおり、だと思います」

 

「じゃあ、コキュートスはどう?」

 

 モモンガの言葉を奪い、Xオルタが問いかけた。

 

「Xオルタ様ノ案ニ賛成シマス。我ガ友デアリ、守護者随一ノ頭脳ヲ持ツデミウルゴスナラバ、キット御期待ニソエルデショウ」

 

「では、最後にセバスだな」

「私は宝物庫に在るべきかと。第9階層を守護する任を負うものとして、より深き場所に保管してあって欲しいものです」

 

 それぞれ

 

「しかし、半分に割れてしまったな」

「それならば、私が意見を変えましょう。これで至高の御方々、どちらの本意も果たされるでしょう」

 

 デミウルゴスの言葉に驚く、守護者達。

 

「ど、どういうことですか?デミウルゴスさん、そうしたらXオルタ様の案が通らないし……」

 

 マーレの疑問に対しデミウルゴスが答える。

 

「何、単純なことさマーレ。私たちはずっと御二方の手の上で踊っていたに過ぎないということだよ。では、モモンガ様、Xオルタ様、私の仲間に御二方の真の狙いを告げておいた方が良いかと思われます」

 

 続くデミウルゴスの言葉の意味がわかってないモモンガは焦りつつも表情を変えず、促した。隣ではXオルタが肘をつきながら手を組んで顔を隠した状態で黙っている。しかし、モモンガが横から見るぶんには隠しきれておらず慌てているのが見て取れた。

 

「……流石はデミウルゴス我々の真意を我々の全てを見切るとは……な」

「いいえ、モモンガ様。至高の御方々の深謀遠慮。私の並び立てるところにはございません。私に理解できたのは一部にだけではないかと思っております」

 

 そこから口々に守護者達が質問してくる。

 

「なるほど、そういうことね」

「アルベドも気がつきましたか」

 

 何に気がついたのかわかっていないモモンガは続きを促す。

 

「では、アルベド、デミウルゴス、お前達が理解したことを他の者達に話すことを許す」

 

 どこまでも深読みを果たしたナザリック最高の知能が牙をむいた。




種明かしは次回です。

では、ノートですが
1ページ目地図
2ページ目設定
3ページ目人物
4,5ページ目注意事項(コメント)
6,7ページ目出来事
のメモ形式で情報ソースは一切書かれてません。
転移後役に立つことためのものなので転生についても書いてません。
一般の原作知識と比べるとかなりザル

ユグドラシルでもあったWIとかについては少しずつ思い出しつつ補強しているので転移後世界の情報より豊富
一方転移後世界の情報はカス、ひとつの単語に十文字あれば多い方

とか考えています。


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7話 劇場

7話です。

今回はすべて勘違いの解説です。

至高が一人増え、勘違いする頭脳が2つ増えました。

頭が痛い話になると思います。

えっちゃんが影くらいしか出ません。
FGOのメンテとタイミングが重なったので泣きそうです。


「御二方の間では今回の結論は初めから出ていたのさ」

 

 滑り込むような声で、デミウルゴスは滑らかに喋り始める。

 

「御二方の仰った2つの案だが、実の所それぞれ別の問題についてのことになるんだ。モモンガ様の案は保管場所について、Xオルタ様の案では誰にこの知恵を授けるかについてだ。どちらの意にも沿った解決方法としてパンドラズ・アクターに知恵をさずけ、それを振るわせるという事なんだ」

 

 守護者達の間で成る程と声が上がる。モモンガは勝ちを確信し、Xオルタは敗北を悟る。

 

「でも、それだと多数決をする必要もないでありんす。何故、御二方のはこのような事をなさったのでありんすか?」

 

「それはだね、この会議こそが御二方の目的であったからさ。この会議を始める時に言われた言葉を覚えているかい?モモンガ様は2人の意見が割れたと仰った。もし、万が一にも実際にそのような事が起きたら我々はどの様に行動すべきか、それを実際に示すためにこの会議を開かれたのさ」

 

 その話を聞いてわかっていなかった守護者達から感嘆の声が漏れた。

 

「だが、それだけで終わらないのが御二方の素晴らしい所でね。パンドラズ・アクターが力を振るう準備として我々に彼を紹介する目的も有ったという事だ」

 

 瞬間、モモンガとXオルタの内心の感情が入れ替わる。

 

「そこからは私が説明するわ」

「では、アルベド、続きを頼みましょう」

 

 モモンガとXオルタを含め、分かってない7人はまだあるのか、と驚愕する。2人の感じ方は若干、他の守護者達とズレているが。

 

「この会議では投票の内容すら御二方の手の内だったのよ。例えば、私とシャルティアはモモンガ様と部屋で会えるという可能性につられ、Xオルタ様の案に賛成したわ」

 

 確かに2人はつられた様に意見を決めた事を思い出す。

 

「でも、御二方のお考えは私たちについてだけでは終わらないわ。全員の票が初めから完璧に想定されていたということよ」

 

 何もした覚えのないモモンガとXオルタは、最早何も考えてずに独り歩きする自分の思惑に聞き入っている。2人とも、ただひたすら頷く程度のことしか出来なくなっていた。

 

「アウラとマーレについてはXオルタ様のお言葉によるものよ。私達の……愛からくる衝動を強く打ち明けさせることによって、アウラ、貴方はシャルティアの暴走を危険視する様に誘導されたのよ」

 

「……アルベドについてもなんだけど……」

 

 アウラのつぶやきは無視された。

 

「マーレがアウラと意見を違えることはそうないでしょう。これで2人がモモンガ様の案に賛成することになったわ。次にコキュートスだけど、貴方は何方を選んでも問題ない様になっていたけれど、やはり誘導通り結果になったわ」

「何方ヲ選ンデモ良カッタトハ?」

 

 自分の名が上がったコキュートスから疑問の声がカチカチと顎が鳴る音とともに上がる。

 

「実際にはコキュートスとセバスについてなんだけど、2人は万が一、私達4人の票の操作でズレが出たときのための保険になっていたの。それでも誘導なさったのは強いて言えば……バランスを保つためかしら?」

「ナント周到ナ……シカシ、私ニハドノヨウナ誘導ガ?」

 

 なおも問い掛けるコキュートスに、デミウルゴスがアルベドの言葉を引き継いだ。

 

「君の意見の誘導には私が使われたのさ。君の後には私とそりが合わないセバスが控えていた。そして、前の2人は立て続けにモモンガ様の案に賛成した。これはXオルタ様の案が否決される事を予感させるには充分な要素だ」

 

 デミウルゴスは一呼吸おいて続けた。

 

「そして、何よりも、君だけなのだよ、コキュートス。Xオルタ様が直々に意見を求められたのは」

 

 コキュートスは自身が特別扱いされたという事実に感動しつつ納得の意を示す。

 

「最後にセバスね。貴方は第9階層からずっと、御二方に付き従ってきたわ。その結果Xオルタ様の隣につく事になった。もし、Xオルタ様に入れる様誘導されるとしたら、最も近い位置から問い掛けられる事になったでしょう」

「成る程、これ程に近い位置で迫られてはXオルタ様の望みを叶える以外の選択はできないでしょう」

 

 セバスが納得のいった顔をして頷いた。

 

「でも、モモンガ様による誘導はもっと早くに行われていたはずよ。これについては、パンドラズ・アクターがわかっているわ。そうでしょう、御二方の元で仕掛け人として動いた貴方なら?」

 

 円卓に着く全員の目がパンドラズ・アクターに向かう。ゆっくりと、しかし、大袈裟に立ち上がったパンドラズ・アクターは語り始める。

 

「もちろんでございます。では、このパンドラズ・アクター、事の起こりについて語らせていただきましょう!」

 

 タメが入った後、大袈裟な手振りで続く。

 

「まず、断らせていただきますが、私は御二方の命令を受けたわけではございません。宝物殿を出てここに至るまでの間に、ただ、あることを繰り返し説かれたのです。そう、己が守護するナザリックの最奥にその至宝を置きたくはないか、そして、この場にて、己の欲する様に述べよ、と」

 

 モモンガは振り返る。

 確かに自分はパンドラズ・アクターに自分の側につく様に、但しXオルタに文句をつけられない様ぼかしつつ、言ったのは覚えている。そして自分に賛同してくれた時恥ずかしくもあったがうまくいったと内心ガッツポーズをしていた。しかし、あそこまで仰々しく言った覚えはない。微妙に変更を加えられ、はずかしさの増したセリフに先ほどの記憶が合わさり身動きできないまま悶絶する。

 一方でデミウルゴスから納得の声が上がる。

 

「そういうことでしたか。パンドラズ・アクター、君はそのお言葉を受けて、あの我欲に溢れた宣言から始めたのだね」

「まさしく、そうでございます。欲望を示すこと、それがなければ我々は己の判断基準の中心に忠誠を置かざるを得ないでしょう。しかし、それは御二方の目的にはそぐわないのです。ならばまず、私が身を以て欲を示し、後から続く皆様のしるべとならねばなるまい、と思いまして」

 

 2人の言葉を受けてアルベドが纏めた。

 

「その会話こそがセバスに自身の守護領域について意識させ、己と至宝の位置関係、例えば、その至宝を守るとき己が盾になれる位置に居たい、という考えを抱くきっかけとしたのね」

 

 守護者達が全員納得し、感嘆の声を上げ始めるとフリーズしていたモモンガが言った。威厳を込めた言葉ではあるが、本心は絶望しきっている。主に黒歴史が晒されていく未来について。

 

「……さ、さすがはアルベドとデミウルゴスだ。私達の策をこうまで読み切るとは。パンドラズ・アクター、お前もよくやってくれた。……さて、皆ももう分かっただろうがパンドラズ・アクターがこのノートを持つ事になる。よろしく頼む」

「あらためまして、守護者の皆様。私がパンドラズ・アクター、この至宝の管理を任せれた宝物殿の守護者です。全て、モモンガ様とXオルタ様の手の上で演じさせていただいたに過ぎませんが、この至宝に触れるに足る頭脳の証明の機会を頂けたことを御二方に感謝します」

 

 その言葉にアルベドとデミウルゴスが答えた。

 

「よろしくお願いするわ、パンドラズ・アクター。しかし、さすがはモモンガ様とXオルタ様、策を読ませ、協力させる事によって、その頭脳の証明とさせてくださるなんて」

「パンドラズ・アクター、至高のお方々によるこの策を演じきった君にならその至宝を任せられる。本心からそう思うよ。よろしく頼む」

 

 続き次々と守護者達がパンドラズ・アクターに挨拶をした。そこから先はただ、ひたすらに守護者達がモモンガとXオルタを褒め称える時間だ。

 

「サスガハ至高ノ御二方、ナザリック最高ノ頭脳ガ揃ッテナオ、ソノ掌デ踊ラサレルトハ」

「さっすが、モモンガ様とXオルタ様。ここまで完璧に考えられていたなんて!」

「で、でも、まだたくさん、お考えがありそうですね」

「当然だとも、今、説明することができた部分は全てにおいて私達のために練られた計画でしかない。これ以外にも何か御二方の間にのみ通じるお考えがあるのは確実のことだろうよ」

「これ程の難解な計画が全て私達のためのものでありんすか?しかも、まだ隠されたものがありんすとは。何という慈悲深きお心でありんしょう。まことに凄すぎんす」

「その慈悲深きお心で私の心を読まれていたのね。ならきっとモモンガ様に私の気持ちも……くふー、ぞくぞくするぅ」

「アルベド様、落ち着いてください。御二方の前ですよ。しかし、私もこの会議において自身の守護する階層について深く考えることができました。これからは、より励まなくてはなりませんね」

「ええ、モモンガ様とXオルタ様の慈悲のお心を受けた以上、粉骨砕身尽くさねばなりません。何より、新しく与えられたこの任を完璧にこなさねばならないのですから」

 

 口々に褒め称える守護者達を見て2人の支配者は誰にも聞こえないよう呟いた。

 

「どうしてこうなったのか……」

「ちょっと、ナメてました、ね」

 




細かすぎる指摘、そしてすべてが勘違い

以下思いついてしまった小ネタ
遊戯王ネタです

モモンガ様(以下モ)
「俺のターン!心変わりを発動する。デミウルゴスを奪うぜ!」
えっちゃん(以下え)
「そ、そんな、どうすれば……」
フィールドが光り、カードが創造される。
デミえもん(以下デ)
(心の声)「Xオルタ様、Xオルタ様、そのカードを使うのです」

「はっ、そういうことか!なら、私はナザリックの間者を発動デミウルゴスの効果を発動する。今だ!ナザリック最高の頭脳発動!」

「すべては至高のお方の計画通り、説明しましょう」
続きはない

後感想を見ると指が動くので感想くれたらうれしいです。
こんなこと書いてもいいのかな

そろそろ2人も表に出られそうです。

ただいま、転移してから凡そ9時間

追記:前の回のパンドラの決め台詞の後のモモンガ様が悶絶していない件について

理由は大まかに二つあって
1つ目が宝物殿から引っ張り出す時に思う存分悶絶したから。
描写してないので伝わるわけなかったですね。
2つ目がこの時のパンドラの行動がほぼモモンガ様の目的通りだから。
今回のパンドラの告白にあるようにモモンガ様が事前にたのみ、その通りにしたのでモモンガ様の内心では
「恥ずかしいけれどとりあえずよくやった」
な感じでした。
伝わりにくい表現ですいません。


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8話 夢と野望

8話です。

感想たくさんありがとうございます。

テンションが上がりました。

そして話の内容ですが、2人がやっと外出できました。

あと、タグにヤンデレとキャラ強化とオリ設定を加えます。

えっちゃんなんてオリ設定の塊なの忘れてた。

追記:最後の方脈絡が無かったので一部書き直しました。


 モモンガは辟易していた。

 

 既にノートはパンドラズ・アクターに渡し、2人で注釈を加えて説明した。他の守護者達も充分に働いてくれていて特に問題は起こっていない。駆け出しとしては万事がうまくいっていると言えるだろう。

 

 しかし、モモンガは疲労を感じないはずの肉体で確かに疲れるような感覚があった。最大の原因は目の前のXオルタの長話だ。互いに常に付き従う配下に疲れていたため、第9階層のロイヤルスイートでヒッソリと愚痴り合っていた。その時、何の気なしにXオルタの前世の思い出を尋ねたところまでは楽しく会話できていたはずだ。

 だが、途中、モモンガがXオルタの琴線に触れる問いかけをしてしまったようで、1時間近くぶっ通しで、熱に浮かされたような話を聞かされる事になってしまっていた。

 既に、自身のキャラクターを作った理由や、その詳細な説明は3回聞いている。モモンガは仮に、アルトリア顔の種類を上げろ、と言われたら即座に5種類は答えられるだろうという確信があった。

 

 Xオルタは今、「謎のヒロインXオルタ」の元ネタの1つとなったらしい映画について語っている。

 

「ですから、モモンガさん。転生して来て、時代的に身損ねたepを見れるんじゃないか、と期待したんです。でも、どんなに探しても、見つかったのは微妙にパチモン臭のする「ギャラクシーナントカ」っていうのがあっただけ。内容は全然違いますし、酷かった。もう、完全に昔の自分はないんだって打ちのめされました」

 

 長ったらしい語りを聞きながら、相槌を打ちつつ打開策を考えた。Xオルタの言う、「ギャラクシーナントカ」とやらはギルド内でも聞いた事があった。100年前の映画で、何かのイベントで話題になっていたはずだ。

 

「あのーオルタさん?とりあえず、その「ギャラクシーナントカ」とやらが何かひどいのはわかったんですが、ちょっと落ち着きましょう。ほら、これでも食べてください」

「はあ、ありがとうございます」

 

 途中で発見した、「食事中は黙る」性質を利用し、うるさくなったらメイドに和菓子を持って来させる方法でXオルタにブレーキをかけた。

 このやり取りも既に3回目だ。皿いっぱいに盛られた大福、週刊誌のようなサイズの羊羹を始末したXオルタは、熱い緑茶の添えられた大量の最中と格闘している。

 いい加減に話を切り上げさせねばならないと思ったモモンガは口を開く。

 

「それ食べ終わったらでいいんで、ちょっと外、見にいきませんか?」

「ん、良いですね。行きたい、です」

 

 Xオルタは最後の最中をお茶で流し込み、席を立つ。モモンガも既にせきを立ち、計画を練りはじめた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 30分後、3つの影が地表部中央霊廟にあった。霊廟の奥から規則正しい足音が響き、デミウルゴスが口を開く。

 

「これはモモンガ様、ここにいらっしゃるとは、一体何事でしょうか?それに、そちらの……」

「ああ、これには色々な事情があってな。ここにいるのは外部の調査についてだ。もう、行くべきだろう」

 

 モモンガの腕がゆっくりと伸び、大袈裟に出口の先を示す。それと同時にモモンガの影に控えていた者らが外に飛び出した。

 一瞬目を奪われたデミウルゴスは驚愕の表情を浮かべる。

 

「こ、これは!」

「細かいことはもう少し奥で話したい。ついて来てくれるか?――」

 

 モモンガの姿が歪み、崩れる様にしてその内側から全く別の物が姿を現した。

 

「――デミウルゴス様」

「わかりました。詳しい話を聞かせてもらいましょう……パンドラズ・アクター」

 

 2人は静かに、しかし、それぞれ逆の思いを抱きながら第1階層の奥へ進んだ。

 

 

 一方、黒歴史の活用によってナザリックからの脱出を果たした2人は周辺にあった小高い丘に寝転び星を眺めていた。

 

「パンドラを使うだけの価値はあったでしょう、モモンガさん」

「……自慢気に変なこと言わないでくださいよ。……でも、確かにその価値はありますね。これがブルー・プラネットさんが見たかった光景なんだ」

 

 感慨深く呟いたモモンガはそのまま〈飛行〉によって舞い上がった。魔法職を持たないXオルタは慌ててアイテムボックスを漁り、若干の間を置いてついて行く。

 

「置いていかないでくださいよ」

「あっ、すいません。で、でもこれ凄いですよ。上から見ると全て手の中に入りそう」

 

 益体も無いことを語り合ううちにモモンガの口からポツリと漏れた。

 

「皆にも見せたいな」

 

 しみじみとした空気を破る様に、Xオルタが口を開いた。

 

「見せますよ、絶対に。きっと皆にこれを見せます」

 

 決意を込めた声で続ける。

 

「皆に謝って、ここに来てもらって、これを見てもらいたい、です。ずっと、皆も、こっちに来れる様に考えていたんです。かぜっちに誘われてクランに入れてもらった時から、ナザリックを攻略した時も、メンバーが増えた時も、ずっと考えていたんです。ずっと準備していたんです」

 

「だから、40人、皆が必ずこれを見れる様にします」

 

 モモンガは耳を疑う。夢物語どころでは無い。余りにも無茶なことを言っている。

 

 ――不可能だ――

 

 そう言いかけた。

 しかし、気がつく。自分自身もそれを望んでしまっていると言うこと。

 どんな無茶だろうと、夢見ずにはいられない願い。Xオルタの準備の内容がどんな物だったかはまだ知らない。僅かな片鱗を見たがそれだけだ。出来るかどうかもわからない。むしろ、出来ない可能性の方が高いだろう。

 でも、その目標は、ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルドマスターであるモモンガが目指すものとして、きっと何よりもふさわしい。

 

「頑張りましょう、オルタさん。きっと、出来ますよ」

 

 2人はそのまま大地に降り立ち、ナザリック外周を歩き続けた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その頃、ナザリック第1階層にて先程まで居た、パンドラズ・アクターとデミウルゴスに加え、アルベドが揃って居た。

 

「説明してもらおうか、パンドラズ・アクター」

 

 デミウルゴスの優しそうな、しかし、その裏に怒気をはらんだ声が響く。

 

「そうね、何故、御二方が供もつけずにナザリックから出ていかれるのを看過したの?」

 

 続くアルベドの言葉にも怒りの感情が見え隠れする。

 それらに応じるパンドラズ・アクターの言葉は極めて落ち着いたものだ。

 

「単純なことですよ。お二方がそれを望まれたからです」

「しかし、至高の御方々の身に危険が迫るかもしれないとしたら、その為にあらゆる手段を講じるべきだろう」

「そうよ。もし、モモンガ様の身に万が一が起きたらどうしたら……あぁ、モモンガ様、わたしは……」

 

 デミウルゴスにXオルタはどうするのだと言いたい気持ちが湧き上がるが、今話す必要がないと考え話を続ける。

 

「まさに、問題はそこなのだよ。パンドラズ・アクター、何故、危険が迫るかもしれないのにこの様なことを行なった?」

「危険があるかもしれないから、と言うことならば一言ですみます。危険がないからです。外周部には守護者第2位のマーレがいて僕を動員した上でさらなる警戒網も敷かれています。また、セバスの調査によって高レベルな敵がもともと存在しないこともわかっていたと聞きます。そして、何よりも、御二方がそれを私にだけ示されたからです」

「な、なぜモモンガ様は私にはそれを伝えて下さらなかったの?」

 

 取り乱すアルベドの言葉に至って冷静にパンドラズ・アクターは答える。

 

「それが我々の決定だからです」

 

 憤っていた2人の顔に理解の色が浮かぶ。

 

「Xオルタ様の記された至宝ですか……」

「あの時点でここまでの事をご存知だったとは流石至高のお方としか言いようがないわ。でもね、パンドラズ・アクター、1つだけ確認したいのだけれど、貴方はあの至宝を読んでこの行動が最適だと考えたのね?」

 

 パンドラズ・アクターは大きく頷き、全身で肯定の意を示した。

 

「まさしく、その通りでございます。私は、Xオルタ様より至宝を理解し、十全に扱う様に命じられ、モモンガ様より決して内容を口外せずに宝物殿に封じておくように命じられましたので」

「なら、仕方ないわね。私たちが口をはさむことではないわ」

 

 納得がいった2人は最後の疑問について考える。

 

「しかし、なぜ御二方はあのような行動をなされたのだろうか?パンドラズ・アクターは思い当たるところは無いか?」

「私ですか。ただ、そうなさりたかっただけかと思いますが」

「やりたいことをやっただけと言うことかしら?」

「ええ、あの異変より以前では常にそのようになさっていましたから」

 

 デミウルゴスとアルベドは今度こそ完全に理解する。

 

「支配者ではない、モモンガ様とXオルタ様としての行動をなさったのね」

「確かに、異変の前は常に新たな何かを求め、幾度と無く外征を行いその利益をナザリックのために持ち帰ってくださっていた。そして、私たちに直接声をおかけくださる事はほとんどなかった」

 

 自己嫌悪を浮かべながらデミウルゴスは続けた。

 

「異変から73時間もずっと、お二方は常に支配者として接してくださった。その慈悲深きお心に私達はすがり過ぎてしまったのか……」

「私たちはなんてことをしてしまったの?これ以上こんな無様を晒すことなど……」

 

 意気消沈している2人を見てパンドラズ・アクターは助け舟を出す。

 

「アルベド様、デミウルゴス様、そこまで気にすることではないでしょう。御二方はわざわざ姿を隠しながらここに来て、しかし、結局はその正体を示された。きっと私たちを叱責することなく自ずと気がつくように仕向けたのでしょう」

 

 なお、この脱出計画はモモンガに頼まれたパンドラズ・アクター立案のため、最も後腐れないであろう演説までパンドラズ・アクターの頭の中で想定済みである。

 

「支配者としての御二方、新しいものを求めて外征する御二方、どちらも揃ってこその至高の御方々なのです。私たちは御二方が何をなさりたいか考え、支え続ければ良いのです」

 

 その言葉から何かを察したアルベドとデミウルゴスは心を新たに今まで以上の忠誠を誓う。

 

「ならば、デミウルゴス、私たちもこれからやらなければならないことがありますね」

「ええ、出来うる限りのことをしなければなりませんね、アルベド」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その頃モモンガとXオルタは外で働くマーレの陣中見舞いにて45個目のリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを渡して霊廟に戻るところだった。これについては事前にパンドラズ・アクターに用が済んでからはマーレの仕事を見ることを提案されていたからだ。

 霊廟前でマーレと別れ、そのまま中に入るとアルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターの3人が出迎えた。

 

「外遊はお楽しみいただけたでしょうか?モモンガ様、Xオルタ様」

「う、うむ。少しやりたい事ややるべきことが見えて来てな。この美しい星空を見て、仲間達にも……」

 

 途中まで話したところで恥ずかしくなったのか言葉は途切れ他の支配者らしい言葉で補う。

 

「いや……、この星空は我等アインズ・ウール・ゴウンに相応しい輝きだと思ってな」

 

 どちらにしろ言い過ぎだと思い、モモンガはリングをアルベドに渡してその場をごまかそうとする。

 

「そ、そうだ……アルベドよ。お前にも渡しておくべきだろう。これからも忠義に励め」

 

 冷静ではあるが感情を抑えきれていないアルベドを見ながら、上手くごまかせていそうだと安心して、リングを起動させる。

 そのまま、背後に上がった、品のない声をBGMにしながら2人は第9階層に転移した。

 




今回は目的設定をしました。

また、えっちゃんがどんなふうにギルメンになったのか少し書いてみました。

後、プロローグのあとがきにあるステータスいじります。

新宿に感化されたので

パンドラえもんになりそう。


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9話 足掛かり

9話です。

感想ありがとうございます。

タグをどうすべきなのかわかってないのでいまいち安定しないです。

新宿でえっちゃんが優秀すぎる。




「これより、計画を開始する。皆、準備はできているか?」

 

 モモンガの言葉が静寂を破る。その場にいる他の3人、さらに控えている8体のシモベが静かに同意を示す。ほかのものは既に配置についており、残るはここにいる12人だけだ。

 

「では、行くぞ。この地に我等『アインズ・ウール・ゴウン』の名を知らしめよう」

 

 そのまま半数がモモンガによる「ゲート」を潜り、外に出る。メッセージを繋ぎ、「遠隔視の鏡」を通し村の状況を監視しながらタイミングを計る。

 

『今です!オルタさん』

 

 鏡の奥で壁が粉砕されたのを確認しメッセージを切る。視点をずらしつつ目的の相手を発見したモモンガは自分たちのためのゲートを開いた。

 

 

 一方、メッセージで呼びかけられたXオルタともう1人、浅黒い肌をしたメイドは向かった先で騎士達を蹴り飛ばしていた。

 

「予想以上に弱い、ね」

 

 蹴り飛ばされた騎士は反対側の壁に穴を開け、ただでさえ荒れていた家をさらに悲惨な状況にしていた。もはや壁が一面しかなく、僅かな振動で崩れそうだ。

 Xオルタはそのままメイドに指示を出す。

 

「ルプスレギナ、怪我している村人を助けて回って。私はこの騎士達を生け捕りに……」

 

 騎士に目を向けて気がつく。両手足は捻れ、木片が胴体を貫いている。首は人には不可能な方向に捩れ、紅い泡を吹きながらピクピクしていた。どう贔屓目に見ても生け捕りにできる相手ではない。よくて余命数分といったところだろう。僅かに逡巡して口を開く。

 

「先にアレを治して。その後、村人を、ね」

「かしこまりました。Xオルタ様」

 

 命じられたメイド、ルプスレギナは直ぐに捻れた騎士を治療し、崩れそうな家に横たわる夫婦の治療に入った。

 ルプスレギナの行動を確認して、Xオルタは捻れていた騎士を引きずりながら次の獲物を生け捕りにすべく動き始めた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 目当ての少女を見つけたモモンガは仮面等で変装してからゲートを開き、アルベドと不可視化したエイトエッジ・アサシン4体を連れて転移する。

 眼前に広がる光景、2人の少女とそれを襲う2人の騎士、に満足して魔法を発動した。

 第9位階の即死魔法<グラスプ・ハート/心臓掌握>をはなつ。すぐさま倒れた騎士からもう1人の騎士に目を向けた。次は遥かに劣る魔法<マジック・アロー/魔法の矢>を使った。

 周囲には10の光球が浮かび上がり、次々と騎士に襲いかかる。瞬く間に騎士がボロ切れのようになり倒れる。

 

「弱い……こんなに簡単に死ぬとは……いや、弱いと聞いていたがこれ程とは……」

「いえ、モモンガ様のお力の前では当然のことです」

 

 独り言のつもりが返事をされて戸惑いつつ、騎士の死体にアンデッド作成のスキルを使用して指示を出す。指示を受けて走り去ってしまったデスナイトに呆れながらもう一つの死体もデスナイトに変え、自分達を守るように指示を出す。今度はその場に留まった事に安心して襲われていた少女達、おそらく姉妹、に向き直る。

 

「……怪我をしているようだな?まずは、これを飲むといい」

 

 そのまま、無限の背負い袋<インフィニティ・ハヴァザック>から、下級治癒薬<マイナー・ヒーリング・ポーション>を取り出し、渡す。

 理解が追いつかずまごつきながら手を伸ばす少女、姉の方、に対しイラつきながら急かす。

 

「早くしろ、もたついている暇はないぞ」

 

 急いで薬を飲んだ少女に確かに効果が表れた。それに納得したモモンガは続けて質問をする。

 

「お前達は魔法というものを知っているか?」

「は、はい。む、村に時々来られる薬師の……私の友人が魔法を使えます」

「……そうか、なら話が早いな。私は魔法詠唱者だ」

 

 そのままモモンガは二人の少女を守護する魔法を唱える。

 

「それと、念のためにこれをくれてやる。ゴブリン将軍の角笛と言われるアイテムで吹けばゴブリンがお前に付き従うべく姿を見せる。そいつらを使って身を守るがよい」

 

 そのまま村に向かおうと足を進めようとして背後から声がかかる。

 

「あ、あの――た、助けてくださって、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

 

 モモンガの歩みが止まり振り返る。少女の顔を見て、短く答えた。

 

「…………気にするな」

「あ、あと、図々しいとは思います!で、でも、あなた様しか頼れる方がいないんです!どうか、どうか!お母さんとお父さんを助けてください!」

 

 一拍おいてモモンガは軽く、楽しそうに調子で答えた。

 

「了解した。だが、頼れるのは私だけではないかもしれないぞ」

「え、あ、ありがとうございます!ありがとうございます!本当にありがとうございます!そ、それとお、お名……お名前は何とおっしゃるんですか?」

 

 問われた言葉に対し僅かな逡巡の後、自信をもって答えた。

 

「我々の名を知るが良い、我らはアインズ・ウール・ゴウン、ナザリック地下大墳墓の支配者だ。そして、私はアインズ・ウール・ゴウンのモモンガだ」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 Xオルタは2人の騎士を引きずりながら歩いている。捕虜を置く場所に困り途中から生け捕りにすることをやめた結果、両手に騎士の襟首を持ちながらアクロバットする羽目になったことに一人、愚痴を漏らした。

 

「……くさい」

 

 巻き込まれた捕虜の2人は振り回されて酔ったためか吐瀉物をまき散らしているので、Xオルタの歩いた道からは異臭が漂っている。

 村人を治療したルプスレギナは背後からXオルタに追いつき、一瞬だけ、ほんのわずかに顔をしかめる。

 

「ケガをしていた村人は治療を終えました」

「死んでいるのはどれくらいいた?」

「はい、途中見かけたもののうち半数は既に死亡していました」

 

 村人側に死傷者が出ていることを確認したXオルタはあまり自身の感情に変化がないことに若干の戸惑いを覚えたが、大したことはないだろうと切り捨てる。

 

「じゃあ、村人たちはどこにいる、かな?」

「村の中央に広場があり、そこに集まっています」

 

 ルプスレギナが前に出て案内を始める。村の中央にはすでにモモンガがいて、村長と交渉を始めていた。周囲には2~3人分のミンチになった死体が散らばっている。

 

「モモンガさん捕虜です。そこらへんに置いておきます。後、途中見かけた村人は死んでなければ治療してあります」

「2人だけですか?まあ問題なさそうですが……」

「モモンガ様、そちらの方は……?」

 

 問いかけに対してXオルタ自身が答える。

 

「ヒロインXオルタ、です。モモンガさんの仲間、です」

 

 時折止まりながら、しかし、満足気に述べる。

 

「では、Xオルタ様もアインズ・ウール・ゴウンの……」

「はい、大事な仲間です」

 

 モモンガが嬉しそうに答え、Xオルタも同様に頷いた。

 その後、モモンガが村長の家で細かな交渉をしている間、Xオルタは暇だった。助けられた村人たちに口々に礼を言われつつ、遺体を埋めているのを眺めていると緊張した様子で見覚えのある姉妹がほかの村人に話しかけているのを見つけた。

 

「あ、あの、お母さんとお父さんがどこにいるか、ご存知でしょうか?どこにもいないし、遺体も見つからないみたいなんです?」

 

 聞こえてくる言葉に一瞬戸惑う。自分は確かにあの姉妹の両親は助け、ルプスレギナに治療させたはずだ。なぜこの場にいないのだろうか?

 

 助けた後また殺された。

 ありえない。背後に抜けていく騎士はいなかった。

 

 治療が間にあわなった。

 ルプスレギナが確かに回復させていたのを見ている。少なくとも片方は生きているはずだ。

 

 そのまま娘を探しに外に出て行った。

 ありえる。どこに逃げたかは把握していないだろうから気が付いてすぐに探しに行ってもおかしくない。

 

「ルプスレギナ、最初に助けた夫婦が村の外にいるかもしれない。どこにいるかわかる?」

 

 おそらく最後までその2人を見ていたメイドに問いかけた。

 

「あの2人ならそのままの場所で寝たままにしてあります」

「は?」

 

 Xオルタが言われたことを理解しようと反芻した次の瞬間、少し離れた場所であばら家が一気に崩れたような音がした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 交渉が終わり、村人たちが葬儀を始めるとモモンガはXオルタとNPCの2人をつれ、捕虜の確認にいく。捕虜はゲートによってナザリックの「真実の部屋」に送られニューロニストに管理させることになっている。汚物にまみれていることについてナザリックに入れてもよいのかとひと悶着あったが原因が知られるとNPCの全会一致で可決された。

 

 

 葬儀が終わり、先ほどの姉妹、エンリ・エモットとネム・エモットが両親について感謝の言葉を述べに来た。両親は家が崩れた時のケガで歩けないようだが命に別状はないとのことだ。

 

 モモンガが常識のすり合わせと、ノートの内容とのチェックを続けるうちに日は沈みかけ、夕日が出浮かんでいた。ルプスレギナの滞在についての話を纏め終わると同時に外で待つXオルタにメッセージを送る。

 

『ノートの内容はだいたいあっていましたよ。人名とかの固有名詞がひどいことになっていた気がしますが』

『よかった、です。ここまで来て全然違ったらどうしようかと……』

『でもこれで対処すべきことがわかりやすくなりました。頑張っていきましょう』

『はい!』

 

 そのまま待つこと、数十分。やはりノートの内容に間違いがあったのではとXオルタが思いモモンガの顔をちらちらと伺い始めたころ、ようやく周囲のシモベたちによる警戒網にもう一つの目的が掛かった。




やっとカルネ村です。短いです。

駄犬がやらかしました。実際は他の騎士に狙われないようにとかあったんですがそこはスルーされました。

あと、感想、批判、評価なんでもほしいです。

文章力ほしい。


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10話 戦士

10話です。

感想ありがとうございます。

短いです。

やっとガゼフです。


「おお、モモンガ様。実はこの村に馬に乗った戦士風のもの達が近づいているそうで」

 

 村長がモモンガの元に走り寄ってきた。

 

「なるほど……」

 

 待ちに待った知らせに感情を抑えながらモモンガは答えた。隣のXオルタはつい先ほど来た周囲のシモベからの連絡以来ずっと脱力したままだ。

 

「任せてください。村長殿の家に生き残りの村人を至急集めてください。村長殿はわたしとともに広場に。オルタさんは影で控えていてください」

 

 戸惑うXオルタはあえて置いていく。彼女には村長との会談内容をまだ全ては聞かせきっていないため、確実にボロが出るとわかっている。また、今はこの世界の住人とあまり会話させたくない理由があった。

 

「ご安心を。今回だけは特別にただでお助けしますよ」

 

 村長は腹をくくったのか、苦笑する。

 一方、Xオルタはナザリックに戻ったらモモンガを問い詰める決意を固めつつ、ルプスレギナと共に村長の家の屋根の上から観察する事にした。

 

 それほどの時を置かず、王国戦士団が現れた。武装の統一性の無さにモモンガは違和感を覚えたがまずは相手の出方を図る。

 

「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ」

 

 やはり、と言う思いがモモンガの胸に去来する。ストロガノフなんて美味しそうな名前の人間がいるわけがない。そのまま、言葉が続いていく。

 

「この近辺を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するために王のご命令を受け、村々を回っているものである」

 

 背後で村人のざわめきが聞こえる。若干高い位置、おそらく屋根の上からの声も聞こえて来てモモンガは眉をしかめる。

 

「王国戦士長……」

「目の前にいる人物が本当にその……?」

 

 村長のつぶやきにモモンガは問い掛けるが、予想通り明確な答えは帰ってこない。ガゼフの方は村長に向き直り、話を進める。

 

「この村の村長だな。横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」

「それには及びません。はじめまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウンのモモンガ。この村が騎士に襲われていたのを見て助けに来た魔法詠唱者です」

 

 それに対するガゼフの行動は異常だったといえるだろう。

 

「この村を救っていただき、感謝の言葉もない」

 

 王国戦士長という要職に就く、おそらくは特権階級の人物が怪しさの塊としか言いようのない不審人物に頭を下げ、敬意と謝意を示す。この行動は周囲で見ている人間にガゼフの人柄を雄弁に語ってのけた。

 そのまま会話を続ける二人を見ながら、Xオルタは自身が二人に混ざれない理由を考える。

 

 まず思いつくのは名前を勘違いしていたから

 ありえなくはないだろうが理由としては弱い。その程度で会談の場から追い払われるだろうか?

 

 他の理由を考えているうちに1人の騎兵が広場に乱入してくるのが見えた。騎兵は大声で緊急事態を告げた。

 

「戦士長!周囲に複数の人影。村を囲むような形で接近しつつあります!」

 

 ついに来たという思いと同時に、兵士の口元を見てなぜ自分が混ざれないのか理解する。

 

 口の動きが違う。それはつまりプレイヤー情報を持つもの、さらに読唇ができたり、日本語を知っていたらXオルタの口の動きからプレイヤ―だと気が付くかもしれない。モモンガにとっては口の形がほぼ動かないので問題にならないが、Xオルタなら大きな問題となってもおかしくない。

 口を覆うなりできるのならまだしも、口を隠せる服装をしていない今はしゃべることは避けるべきだろう。Xオルタは不愉快な気持ちを押し殺し、納得した。モモンガに文句を言うことは変わらないだろうが。

 

 そこまでの思考をめぐらして、モモンガを見ると家の影からガゼフとともに敵を観察して話し合っている。

 Xオルタにも二種類の天使が確認できた。しかし、この場に限り、興味は二人の会話にあった。

 

「ああ、いや、変わった仮面だと思ってな。これであのモンスターを支配するとは……特別に優れた魔法のアイテム……と考えてもいいのかね?」

「そうですね。非常に希少価値の高いアイテムです。もはや決して手にすることが出来ない特別な、ね」

 

 モモンガのあまりにも悲しい言葉にXオルタは一つの決意をした。

 モモンガにこれ以上の嫉妬する者たちのマスクを手に入れさせない。確かに、もう二度と手に入らなくなっているかもしれないが、きっと、もらえる立場じゃなくしてやろう。それは固い、とても固い誓いとなった。

 

「了解しました。村人は必ず守りましょう。我ら、アインズ・ウール・ゴウンの名にかけて」

 

 Xオルタの無駄な決意を他所に、モモンガはガゼフとかっこいいやり取りをしていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ガゼフは馬を駆り、そのまま天使たちの包囲網に向かっていく。

 

「行くぞぉお!奴らの腸を食い散らかしてやれぇえ!」

「おおおおおおおおおお‼‼」

 

 矢を放ち、防がれる。魔法によって馬から降ろされる。天使の群れが殺到する。

 

「――遅い」

 

 周辺諸国最強とまで言われるガゼフにしてみればあまりに遅すぎる。次々と天使を切り裂き消滅させていく。

 

「……魔法っていうのは何でもありか、畜生が」

 

 先ほど以上の天使が目前に集結している。魔法詠唱者もさらに増えている中、内心で罵倒を浴びせ掛け、人数の確認をすます。もはや村の周囲に包囲網はない。

 

「ではモモンガ殿。頼んだぞ……」

 

 部下とともに突撃を仕掛ける。部下が戻り敵の手が割れる今、この瞬間こそが最大のチャンスだ。ガゼフは目の前の天使たちには目もくれず、指揮官に向け一直線に駆ける。

 

「邪魔だぁあああああ‼」

 

 とびかかる天使たちに向けて、武技を放ち、先に進む。

 

<六光連斬>

 6の斬撃が周囲の天使を切りつける。

<即応反射>

 切りかかる天使をすり抜けるようにかわし、切り捨てる。

<流水加速>

 流れるようなうごきで向かってきた天使を切り飛ばす。

 

 繰り返す。倒しても、倒しても、再び召喚される天使たちに対し、幾度も大技を繰り出し切り捨てる。部下たちもすでに敗北を悟っている。

 

<六光連斬>で敵を蹴散らし、<即応反射>で体勢を立て直す。繰り返し武技を使い続けることによって剣を持つ手も震えている。

 

「かはぁっ!」

 

 30を超える数の衝撃を受け、地を転がる。

 

「狩りも最終段階だ。獣を休ませるな。天使たちの手を止めさせずに交互に攻撃させろ」

 

 一撃一殺が出来なくなってきた。部下も倒れ、自身の余力もない。魔法の衝撃波がガゼフを打ち据える。視界が大きく揺れ、地面が立ち上がったように感じた。

 

「とどめだ。ただし1体でやらせるな。数体で確実にとどめを刺せ」

 

 死ぬ。

 しかし、この結末を受け入れてはならない。

 自分を罠にはめるためだけに無辜の民に手を出すような輩に殺されるのは許せない。

 そして、助けられなかった自分たちにも我慢がならない。

 雄たけびとともに立ち上がる。

 

「俺は王国戦士長!この国を愛し、守護する者!この国を汚す貴様らに負けるわけにいくかああああ‼」

 

 村の事はモモンガがどうにかしてくれるだろう。今はここで敵を少しでも多く倒す。

 ただ、それだけだ。

 

「……無駄な努力を。あまりにも愚か。私たちはお前を殺した後で、生き残っている村人を殺す。お前のしたことは少しの時間を稼ぎ、恐怖を感じる時間を長引かせただけに過ぎない」

 

 冷ややかな声を投げかける敵の指揮官にモモンガの事を思い浮かべながらガゼフはかすかな笑い声とともに答える。

 

「くっ、くく……くく」

「……何が可笑しい」

「あの村には……俺より強い人がいるぞ。お前たち全員でも勝てるかどうかしれない……。そんな……はぁ……そんな人が守っている村人を殺すなぞ、不可能なこと……」

「……王国最強の戦士であるお前よりも?そんなはったりが通用すると思うのか?愚か極まりないな」

 

 ガゼフは死を覚悟して薄ら笑いを浮かべながら思った。アインズ・ウール・ゴウンのモモンガ、そう名乗った男に出会い敵の指揮官がどのような顔をするか想像して。

 

 ――そろそろ交代だな。

 

 ガゼフの視界が変わる。草原から土間を思わせる素朴な住居。

 

「ここは……」

「ここはモモンガ様が魔法で防御を張られた倉庫です」

「モモンガ殿の姿は見えないようだが……」

「いえ、先ほどまでここにいらっしゃったのですが、戦士長さまと入れ替わるように姿が掻き消えまして」

 

 村長から事情を聴き起ったことを理解して体から力を抜く。もう問題ないだろう。そのまま意識を失った。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一方、草原にはガゼフたちと入れ替わり二つの人影が立つ。その片方、魔力系魔法詠唱者の姿をした男が明らかに場違いな声を出し、それにフルプレートの鎧の女が答える。

 

「あれ、オルタさんは?」

「離れた場所におられたので転移の対象に含まれなかったのかと」

 

 屋根から屋根へと移動しながら、ずっと戦いを眺めていたXオルタが突如視界に現れたモモンガを見つけてつぶやく。

 

「置いて、行かれた?」

 

 




一応ストロガノフ呼びのフラグはかすかに立てていたので許してください。

後、ストロガノフはたしかロシアの人名です。

モモンガさんは知らなさそうな知識です。

口元問題はえっちゃん(と作者)の邪推が入っています。

えっちゃんは置き去り属性?的なものがあると思う。

感想評価批判くださるとうれしいです。


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11話 獲物

11話です。

感想、誤字報告ありがとうございます。

前書きに書くことが思いつかない。

強いて言えばうちのえっちゃんは病んでます。
FGOでもそんな気配はあった気がするけど


 一瞬のうちに残る全ての天使達が消滅した。

 使役していたもの達が僅かに反応を示すが、直ぐに硬直して音が消えた。そのような場で呆れたような声が静寂を破る。

 

「どこにいたんですか?オルタさん」

「や、屋根の上で観戦していました。それで、置いてかれちゃったみたいだったので急いでこっち来ました。ついでに少し演出しようとしたんですが……」

 

 モモンガは納得し、何が起きていたのか説明する。

 

「転移の範囲外だったみたいですよ。屋内と屋外っていうのが問題なのかな」

「なるほど……。じゃあ、次から気をつけないと」

 

 納得した様子のXオルタにモモンガは告げる。

 

「そろそろ<タイムストップ/時間停止>が切れるんですけどどうします?」

「了承。じゃあ、私は<霊体化>して裏方やります、ね」

 

 <霊体化>はゴースト系の種族スキルで、不可視化などの隠密効果を持つが、物理的な行動が行えなくなるデメリットを持つ。

 Xオルタが霊体化した直後、時間停止が解け、周囲に喧騒が戻ってきた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 天使を従えていたはずの神官達の指揮官、陽光聖典の隊長であるニグン・グリッド・ルーインは驚愕していた。

 目の前の2人組が現れると突如として指揮していた天使達が消滅しているのだ。充分に驚愕に値することではあるがそれはまだ良いことと言えよう。

 

「な、何故、天使が召喚できない⁈」

 

 全ての天使が消えたため神官達は次の天使を召喚しようとするが、新たな天使が形を成したかと思うとその瞬間、赤雷と共に崩れ去る。

 召喚した手応えはあるのに結果として何も残っていない、つまり失敗しているのと同じ結果になっていることに焦る部下達にニグンは檄を飛ばす。

 

「うろたえるな!天使の再召喚をやめ、別の魔法の準備をせよ!」

 

 そのまま、2人組に向き直る。焦りを押し殺していても理解が及ばない相手とともにいるということはニグンにとって無性に恐ろしかった。

 

「落ち着かれたようですね。はじめまして、スレイン法国の皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウンのモモンガ。そして後ろにいるのがアルベド。皆さんと取引をしたいことがあるので、すこしばかりお時間をもらえないでしょうか?」

 

 余りにも慇懃無礼な物言いに一瞬恐怖を忘れてニグンは眉をひそめる。天使が召喚出来ないのはこの2人組のせいなのは分かりきっているが、向こうの話に乗って情報を得る以外に道はないのだと自身に言い聞かせた。

 顎をしゃくり、続きを促したニグンに対し、モモンガは話を続ける。

 

「素晴らしい。……さて、最初に言っておかなくてはならないことはたった一つ。皆さんでは私には勝てません」

 

 ニグンは反論できない。召喚系の魔法は全て不発、敵の背後には明らかに強いとわかる女騎士、極め付けは得体の知れない魔法詠唱者。自身を含めた部下達の魔力も残り少ない。奥の手である魔封じの水晶も、召喚系である以上どのような妨害に遭うかわからないため使えない。

 すべてが自身にマイナスに働いている状況に、思わず神に絶望しかけて、ニグンは目的をこの場から自身が無事に法国の秘宝である水晶を持って報告に帰ることに変える。

 

「……何が目的だ」

「おぉ、思いの外、素直ですね」

「何が目的だと聞いている!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情でニグンは吠える。悲鳴のような声ではあるが怒りが抑えきれなかった。

 

「少し、やかましいな」

 

 空気が凍る。信じられない程の強者の威圧。全身が締め付けられるような感覚、首が閉まり、呼吸が浅くなる。隣で部下達が倒れて行くのがわかった。

 

「それで、目的についてだが、――全てだ」

 

 理解できず唖然とするニグンに興味がないかのように、そのままモモンガの言葉は続く。

 

「お前たちは我らアインズ・ウール・ゴウンが手間をかけて救った村人たちを殺すと公言していたな。我らが目を付けたものを殺すと言ったのだ。その罪をお前たちの全てで償ってもらおうと思ってな」

 

 舌が喉に張り付いたように、顎が上下くっついてしまったように。

 モモンガの呆れるような声が響く。

 

「返事は……できないようだな。はぁ。で、どうなんだ?」

 

 モモンガの手が大きく横に振られると同時に、ニグンは口が動くようになったのを理解して叫んだ。もはや恥も外聞もない。失敗しようと構わない。この場にいて何もせずに死ぬことだけは嫌だった。

 

「最高位天使を召喚する。時間を稼げ!」

 

 クリスタルを取り出し、周囲に呼びかける。ニグンの目に応える者は写らない。全員が気絶していた。そのままクリスタルは浮き上がり、消滅する。

 

「え、は?」

「あぁ……もういい。<マス・ホールド・スピーシーズ/集団全種族捕縛>アルベド、これらを今朝の騎士どもと同じようにニューロニストのところに放り込むよう手配しておけ」

「はい、畏まりました」

 

 もはや何もできなくなったニグン率いる陽光聖典が、アルベドの指揮のもと運ばれて消えていく。それに伴い何もない場所から陽炎のようにXオルタが現れた。

 

「やりすぎじゃないですか?少し可哀想なぐらいテンパってましたよ」

 

 Xオルタの霊体化は相応の感知能力があればちゃんと見える。モモンガには半透明のXオルタが電撃系のスキルで天使を召喚された端から全て始末したり、テレキネシス系のスキルでニグン達を縛り付けたり口をふさいだりしていたのが全て見えていた。

 

「そうですか?まぁ、上手く行ったんでよしとしてください、ね」

 

 そう言いながら魔封じの水晶を取り出す。テレキネシスで奪った後、そのままアイテムボックスに入れることで突然の消失を演出したものだ。

 

「期待しないでください、ね。思っていた以上に酷いです」

「……本当だ。うわぁ、なんて勿体無い使い方してやがる」

 

 2人してクリスタルに封じられた威光の主天使の召喚に対して失望をあらわにする。

 

「村に戻りますか」

「そうです、ね」

「ところであいつの名前聞いてなかったんですけど何だったかわかります?」

「えー、ひどい。たぶん……ニグン? だと思いますけど……」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ニグンはふと目を開く。

 視界に映るのは知らない天井だ。石造りで白色光を放つものがそこに埋めごれている。自分がどうしてそこにいるのか分からず、周囲を見渡そうとする。頭が動かない事に気が付いた。頭だけではなく、手首、足首、腰、胸、といったあらゆる場所が固定されていて、ピクリともできない。叫び声を上げようにも口にも何か詰められた上で固定されている。

 ニグンには現状が理解できなかった。目だけを動かし、必死に周囲を確認しようとしていると、声が掛かった。

 

「あらん、起きたのねん?」

 

 女とも男とも言えない汚い濁声だ。喋り方から考えればおそらく女だろうか?

 しかし、動かない視界に入り込むのはおぞましい化け物だった。膨れ上がった溺死体に灰色の蛸を乗せたような姿を持つ異形。ほとんど裸の上に黒い革でできた帯を申し訳程度に纏っている。人間であれば体の要所を覆うだけの物はおぞましさしか感じないが、一方この化け物のおそらく最も見たくない部分を隠してくれている。

 

「うふふ、目覚めは良好かしらん?」

「ハァハァハァ」

 

 口枷からわずかに漏れる呼気のみがニグンの返答手段だ。目の前の魔神、もはやニグンに自分が相対していた存在が魔神ではないという考え方は無かった、を無視しても意味はない。性格や喋り方から僅かではあるが人間性というものを感じられる。どうにか騙してここから出るためにニグンの頭脳は過去の人生で最も回転する。まずは口枷から外させなければ。

 

「じゃあ、まずは、お姉さんの名前を聞かせてあ、げ、 る」

 

 甘ったるい濁声で続く。

 

「ナザリック地下大墳墓特別情報収集官、ニューロニストよ。まぁ拷問官とも呼ばれているわん」

 

 優しそうに、楽しそうに告げる。

 

「さて、さて。今回は早めに情報まとめないといけないのん。至高のお方々が待っていらっしゃるからこれ以上説明していられないわん。だから、残念だけどあなたの相手をしている暇はないのよね……」

 

 心底悲しそうに言う怪物に、ニグンは安心する。この怪物が相手にしないと言うことは、拷問にかけられないといことだ。

 しかし、ニグンの思考は文字通りそこで止まる。

 

「だからねん、<ドミネート/支配>。手早く答えて欲しいわん」

 

 微かに聞こえる独り言を耳にニグンは死を悟った。

 

「……至高のお方々が直々に捕らえてくださった相手にこの程度で済ませるのは残念なんだけどねん……」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その後、第9階層スウィートルーム、スパリゾートナザリックの男湯の奥にモモンガは隠れていた。具体的には大量のトラウマアイテムを持ってきたXオルタからである。

 

 隠れながらモモンガはXオルタのことを考える。

 

 10年以上自分は彼女の本心に気が付けなかった。仲間に隠し事をしていたことによる彼女の罪悪感は相当なものだろう。その日々はきっと楽しかった分だけ罪の意識を刻み込んでいったはずだ。

 

 そう考えながらユグドラシルでのXオルタの行動を思い出す。

 今だからこそわかるが思い返せばずっと以前からあの人は狂気的だった。

 異常な量の課金。一時期はPKすればほぼ、課金アイテムをドロップする異形種として有名だったらしいとほかのギルメンに聞いたことがある。

 アインズ・ウール・ゴウンの前身であるナインズ・オウン・ゴールに入った時も、別の仲間達が出会う度にPKされているプレイヤーがいるといったことが原因だったはずだ。迎え入れる時に行ったPKKでは相当な利益が出たのを覚えている。

 

 では、今のXオルタはどうなのだろうか?

 随分と箍が外れてきたような気もする。それはいいことだろう。しかし、それだけなのか?夜空を見上げながら話した「そのための準備」。まだ、聞いていなかったが聞くべきではないかとも思う。ギルメン全員を連れ戻す。それは引退してアカウントを消した相手、つまり、ほぼ確実にこの世界に来ていない相手も含むということだ。

 

 そこまで考えたところで背後から声が掛かる。

 

「モモンガ様、Xオルタ様が話したいことがあるとのことです。そろそろ使い道について聞いて欲しいとおっしゃっていました」

 

 セバスの声に応じる。ちょうどいい機会だ。仕方がないだろうが、序でに自分の悩みについても聞いてもらおう。転移後の悩みの原因はだいたいがこの友人なのだ。モモンガは意を決して湯船を出た。

 

「1時間後、私の執務室に来て欲しいと伝えてくれ」

 

 この三日間で整理して執務室として使えるようになった自室を思い浮かべ、再び自身の黒歴史と相対することの決意を固める。

 Xオルタの方がパンドラズ・アクターより黒歴史としてタチが悪いのではないかと懸念はどうにか押し殺せたと思う。

 




えっちゃんのスキルはオルト・ライトニングと念動力オルタ・チョークです。

例の銀河的名作の騎士たちの能力を意識してスキルは設定してあります。

これ書き始めてからとびとびに資料になりそうな部分を読み返しているんですがアインズ様可愛すぎ問題が浮上してきました。

ヒロイン力でうちのえっちゃんが負ける。どうしよう。


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12話 希望と肉と血

12話です。
感想、誤字報告ありがとうございます。

指輪の話回収です。

うちのえっちゃんは知識こそあれど頭でっかちの残念美少女です。

微修正しました。


 Xオルタの部屋は狭い。

 ナザリック第九階層スウィートルームにあるギルドメンバーの個室は本来家のほどの広さを持つ。それに対し、Xオルタの部屋は学生寮の一室といった形に改装してある。

 その結果生まれた大量のデッドスペースはナザリックの匠、タブラ・スマラグティナの協力により悪の組織の秘密倉庫と化していた。

 

 本棚がスライドして、裏にポッカリと開いた穴が現れる。

 内部にはXオルタが唯一手掛けたゴーレムとして「ヴォロイドK6-X4」、通称黒騎士くんがいる。戦闘能力こそ無いものの掃除、洗濯、コピー、翻訳、修理、メンテナンス、通信機能といった一家に一台欲しいタイプの便利な存在だ。

 

「やぁ、黒騎士くん」

 

 呼び掛ける言葉に意味はない。ピーという機械音が続くが、ただのゴーレムである以上、会話ができるようには作られていなかった。

 そのままXオルタは奥へと進み、大量に積まれた生物系のアイテムから、3つほど手に取る。どのアイテムも放置による劣化はないはずだが念のため確認する。

 

「ひゃうっ!」

 

 3つ目をチェックしている途中で微かな悲鳴が上がる。それだけ脇によけて残りの2つを袋に入れた。

 

 そのまま、雑多なアイテムが置かれている棚を覗く。装飾過多な鍵や、ハガキよりも小さい様々なサイズの紙片、オーパーツのような形状をしたものも多い。それらをいくつか纏めて別の袋に入れて、倉庫を後にする。

 本棚の裏から出てきたXオルタは2つの袋とブヨブヨとした歪な塊を持っていた。

 もう直ぐ約束の時間だ。丸2日以上放置していた机の上の袋と歪な塊を持ち替えてモモンガの自室、今は改装して執務室になっている、に向かった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「モモンガさん、入ってもいいですか?」

「どうぞ、準備はできてます」

 

 机を挟んで2つの席が向かい合っている。迷いなく奥の席に座るXオルタの行動にモモンガはある種の慣れを感じた。

 

「あれ、袋増えてません?」

「はい、こっちの2つはさっき用意しました」

 

 一瞬だけモモンガの頭に地雷が増えたというフレーズがよぎる。ため息をつきながら続ける。

 

「はぁ、まずは前回と同じやつから説明してください」

「了解です。これですが……」

 

 袋を逆さまにして中身を机にぶちまける。金属音が響くとともに10を超える同じ意匠の指輪が出てきた。

 

「シューティング・スター、14個です」

「うわぁ」

 

 呆れか、驚きか、納得か、それらが綯い交ぜになった感情でモモンガは声を漏らす。しかし、Xオルタはそのような感情には興味ないようで、そのまま話を続ける。

 

「全部で42回分。ギルメンの全員に使って余裕があるように集めました。どのように使うかはわかりませんが、役に立つはずです」

 

 対する言葉が思いつかないモモンガは頷くことで肯定を示す。

 

「でも、今はまだあっても意味がないというか、どう使うべきかわからないので宝物殿に預けておきたいと思います」

 

 そう言ってXオルタは机に散らばる指輪を袋に詰めなおし、脇に置く。

 

「残りの2つは何が入っているんですか?」

「えっと端的に言えば……メタアイテムかな。それとモモンガさん専用アイテムセット、です。まずはメタアイテムの方から出します、ね」

 

 今度は量が多いのかひっくり返したりせずに少しずつ並べていく。その中にはモモンガにも見覚えのあるアイテムがいくつかあった。

 

「これらは運営がシステム面で使おうとしたり、変なパッチ当ててできた、ユグドラシルの設定と噛み合ってないアイテムです」

「成る程、道理で見覚えがあるわけだ。これとかヴァルキュリアの失墜の時のやつですね」

「はい、バグ対策か何かだったと思います。こっちのは期間限定クエストに再挑戦するためのチケットで、これはコラボイベントのクエスト条件のアイテム、です」

 

 モモンガはオーパーツの様な何かを手に取り、Xオルタは紙片や鍵を示す。

 

「これらはユグドラシル本来の世界観から外れています。ユグドラシルの9つのワールド以外に行くアイテムもあります。そういうの使ったら異世界転移とか出来ないかなぁ、って思って取っておいたものです。これ、使ってリアルに行って仲間を説得して一緒にこっちにこれたりしたらいいなぁ、とか……」

 

 驚愕、そして呆れ。しかし、無理と否定はできない。だが、無茶とは言える。

 

「……運の要素大きすぎません?」

「……はい、おっしゃる通りでございます。でも、がんばれば……チャンスはあるかなぁ、とか……」

「取り敢えずこれは要検証ということで。下手に使ってしまったらどうしようもないですし、召喚したモンスターとかこの世界の協力者を用意して試してみましょう。下手にワールドエネミーとか出てきたらシャレにならないしナザリックで試すわけにもいかない」

「そうです、ね。ただ、1つの可能性として確保しておきたかったので……」

 

 無茶ではあるが確かに微かな可能性は示された。もう一度アインズ・ウール・ゴウンの仲間たちが集まれるチャンスに手が届くかもしれない。それはこれからの行動の活力となる。

 

「じゃあ、最後の俺専用っていうのは何ですか?オルタさんに何かもらうの怖いんですが……ノートの事もあったし……」

「ノートが問題なのは認めますが酷くないですか……。まあ、今回のは凄いです、よ。泣いて感謝するといい、です」

 

 自信満々にXオルタが取り出した袋の中身を見て、さすがのモモンガも堪えた。ブヨブヨとしたピンク色の塊。所々黒くて長い毛の塊が混ざっているのがさらに気持ち悪さを倍増させていた。

 

「うわぁ、本当に涙が出そうな見た目してますね。アンデッドは泣けませんが」

「ふぅー、よく見てください、ね。これです。凄いですよ、このバイオマスクを被るとモモンガさんの顔が人のものになります」

「……はぁ?」

 

 ブヨブヨを広げていく行動に理解が及ばないモモンガに、Xオルタが続ける。

 

「この生体マスク、伝説級で、その中でも下位なので、ゲーム的には大した効果を持っていません。しかし、ある特別な効果があります。例えば、ボイスチェンジャー効果を持っていたり、アイテム自身が食事効果を受けられたりします。さらに、このアイテムは装備していても相手のデータに出てこない、装備隠蔽効果を持っています。変化した見た目は隠せませんが、それは問題ない、と思います」

 

 モモンガはようやくXオルタの言う「凄さ」を理解する。

 

「つまり、これをつけると俺も食事できるってことですか?」

「かもしれないですけど、ね」

 

 僅かにトーンが下がるが、モモンガは食事に対する期待に胸が膨らんで行く。

 

「ちなみに、こっちのは腕から胴体用のバイオグローブです」

「成る程、人間に化けやすくなるってことですね。でも、何でいちいち名前変わるんですか、バイオとか生体とか?」

「正式名称がモモンガフェイスとモモンガハンドなんです。専用アイテムとして作るまでは生体とかバイオとか適当だったので」

「名前がひどい……でも凄いですね。ありがとうございます。明日の朝食、早速これを試してみますね」

 

 2つのアイテムを受け取り、モモンガは朗らかにアイテムボックスにしまい込む。

 

「私の準備しておいた物はこれで全部です。後はリアルのハウツー本とか各種専門書を図書館にない物を選んで自室に置いてありますがその程度です、ね」

「了解です。じゃあ、俺も少し相談したいことがあるのですが――」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その夜、アルベドは愛に狂っていた。

 

「モモンガさまぁあ!」

 

 転移してからの3日で作った抱き枕を抱きしめながら叫び、そのままの体勢で寝返りを打つ。キングサイズを超えるような大型ベッドはどれほど転がり回っても落ちることはないだろう。しかし、そんな愛に溺れているアルベドにも悩みがある。

 

「あぁ、モモンガさまぁ……」

 

 モモンガともう1人の主人についてだ。

 Xオルタは自身にモモンガを愛することを認めた者の1人だ。タブラとXオルタが話し合い、モモンガを愛しても良いと設定してくれたはずだ。

 

「……なぜ、邪魔をなさるのでしょうか?……」

 

 しかし、今の彼女の行動は真逆に位置する。事ある毎にモモンガと2人で部屋にこもったり、出歩いたりして自身にチャンスが回ってこない。

 

 愛することを認め、愛する機会を与えてくれない。

 

 この感情を与えてくれて、自身の愛する相手を支え続けてくれたことには深く感謝している。他のモモンガを捨てていった40人よりも遥かに強く忠誠を誓っている。実際に今、至高の42人の中で優先順位をつけるならモモンガの次の第2位、己の造物主であるタブラ・スマラグティナよりも上位につけるだろう。

 これは愛と忠誠の板挟みということになるのだろうか。

 Xオルタは愛しい人を目の前で奪われていくアルベドを見ようとしてこのような感情を植え付けたのか? 嫉妬で自身の目が曇っていくことが自覚できる。何をするべきなのか? モモンガを愛し続けてもいいのか? アルベドにはわからない。

 しかし、アルベドの悩みは纏まる前に霧散することになる。

 

「アルベド様、Xオルタ様がいらっしゃいました」

 

 部屋の外からメイドの声が聞こえた。

 即座に了承の声をあげ、部屋を出る。自分より一回り小さい、しかし上に立つ少女の前で礼を尽くす。

 

「アルベドにこれを渡そうと思って」

 

 ブヨブヨとしたピンク色の塊が差し出される。

 

「これは……」

「名前はモモンガパンツ、どうするべきかはアルベドに任せる。モモンガさんの為のものだからしっかり、ね」

 

 愛しい人の名前を聞きアルベドの心に震えが走る。そのまま立ち去って行くXオルタが最後に一言呟いた。

 

「アルベドの気持ち、届くと、いいね」

 

 アルベドは最敬礼して自室に戻る。受け取ったものを広げて気がついた。中心部分にのみ穴が開きくの字状にになる。ちょうど核の中心、穴の反対側に突起があった。まるで剝ぎ取られた皮のようだがしっかり生きているのがわかった。これならばもしかしたら、モモンガとの愛を育めるかもしれない。

 

 アルベドがその確信を得たのは翌日モモンガが朝食を食べているのを目撃した時だった。

 




えっちゃんの野望の達成手段。
ザルすぎます。

アルベドのえっちゃんに対する感情。
ドロドロしてました。

ヒロインになれないならヒロインをプロデュースすればいい。

アルベドはやっぱヒドイン。


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13話 衣食

13話です。
感想、評価、お気に入りありがとうございます。

ランキングがちょっとの間すごいことになってた。

後、今朝活動報告に前回の内容について覚書みたいなネタバレがあります。
すぐ消すつもりですが気になったら見てください。
消しました。


 アルベドは浮かれていた。

 今朝目にしたモモンガの執務室を訪れた時の出来事が原因だ。

 

 

 

 1時間前、モモンガは肩から上が肉で覆われていてその部分だけ見れば人間のようにも見えた。普段通りの美しい顔を見れない事に微かに残念に思ったが、食事を行う姿に驚愕する。

 

「モ、モモンガ様、その御姿は……」

「ん、ああ、これだな。オルタさんが用意してくれたものでな。私にも食事を可能にしてくれるのだ。今まで食欲とは無縁だったのだがナザリックの料理はうまいな。いつまでも食べられそうだ」

 

 いつも以上に饒舌なモモンガに驚き、続く言葉はさらに驚かされた。

 

「そこでだな、守護者の皆と昼食を一緒に取りたいと思ってな。今日の昼、時間を取れないか?その場でこれからの事について話したいこともあるのだ」

「はい!かしこまりました。モモンガ様」

 

 アルベドの羽がパタパタと小さく羽ばたく。喜びが隠しきれていない。

 

「そ、そんなに嬉しいか?私達はお前達を家族の様なものと思っている。だから一緒に食事を取りたいと思うのは当たり前だと思っていたのだが……」

 

 アルベドの中で様々なことが繋がり始める。一昨日モモンガから直接受け取ったリング、昨夜Xオルタに下賜されたアイテム、そして今のモモンガの言葉、おもに「一緒に」「これからについて」「話したいこと」「家族」。

 もはやナザリック最高と称されるアルベドの爛れた頭脳が示す解はただ1つだった。

 

「当然にございます。このナザリックで至高のお方々と食事を共にできると聞き喜ばないものはいません」

 

 押し倒したい気持ちを堪え、努めて冷静に答える。今ではない。最高の結果を出すのは今夜、このあと待ち構える最高の出来事、婚約発表の式典を完璧に済ませてからのことと心に決めた。

 なお、この予想と期待が打ち砕かれるのは僅か数時間後だった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 昼、第九階層にある食堂にナザリックに属するNPCのほぼ全てが集まっていた。この場にいないものはニグレドやヴィクティム、プレイアデスの末妹、図書館のアンデッド達、後は五大最悪と称されたもの達くらいだろうか。アルベドに先導されたモモンガとXオルタが最奥に位置する長机の中央に座る。アルベドはその隣に立つ。普段より華美で豪華な服を着ていて目が潤んでいる様にも見える。

 

「モモンガ様、まずは皆にお言葉をお願い致します」

 

 モモンガのみが立ち上がり、演説を始めた。

 

「まずはこれだけの物がこの場に集まってくれた事に感謝しよう。そして、私達から皆に伝えなくてはならないことがある」

 

 隣に立つアルベドの顔に赤味がさす。最前列に位置するシャルティアの顔が何かを察したのか白くなる。

 純白の豪華な服を着たアルベドと、人のマスクを被っている為普段のローブではなくダブルの礼服を纏ったモモンガが2人だけ並んで立っている。

 隣にいるはずのXオルタは少し離れて座ったまま2人の方向を見ている様だった。

 

「今後のナザリックの方針が決まった。私たちはアインズ・ウール・ゴウンの仲間達をこの場に再び連れ戻す。彼等に会い、説得し、戻ってきてもらう。多くの難題が我等を遮るだろう。しかし、必ずやり遂げてみせよう」

 

 アルベドの顔から血の気が引いた。眼前の守護者を含むNPC達の顔に歓喜の表情が宿る。しかし、声をあげるものはまだ居ない。モモンガの話がまだ終わっていないとわかっているからだ。

 

「その為の方針として私達は1つの決意をした。このナザリック地下大墳墓というものを国という形にする。我等の様にこの地に訪れたものが最初に耳にする名がアインズ・ウール・ゴウンであるように。そして、今この世界の何処かに仲間達がいるのならその下にこの名がそこまで届くように」

 

 モモンガの話が終わる。隣のアルベドは完全に固まっている。普段のモモンガの顔よりも白磁の顔という言葉が似合うかもしれないくらい血の気が引いて白くなっていた。しかし、表情が崩れないのはさすがというべきなのだろう。一方、他の守護者達は歓喜に包まれていた。

 

『アインズ・ウール・ゴウン、万歳!』

『ナザリック地下大墳墓、万歳!』

『モモンガ様、万歳!』

『Xオルタ様、万歳!』

 

 口々に声に出す。中には自身の創造主の名をあげるもの達もいる。

 

「さて、話はこれで終わりだ。これからは食事の時間だ。それぞれ存分に楽しんで欲しい」

 

 そのまま席に着くモモンガを追ってアルベドは席に着いた。しかし、相当気落ちしているのか手が動いていない。

 あまりにも哀れな姿をさらしている美女に対して救いの手を差し出せるものはこの場にはただ1人しかいなかった。

 

「お疲れ様、モモンガさん。アルベドも、ね。準備ありがとう。で、モモンガさんーー」

 

 労う時の気の抜けた声に反して続く言葉は固く重い。

 

「今回はアルベドが頑張ってくれたんだから報いてあげてください、ね」

 

 そのまま席を移動してXオルタは2人と距離を取り、給仕として控えているメイドと話し始めた。

 狼の前に放り投げられた子豚、モモンガは自身の状況をそう判断した。今の自分は表情が動く。普段のポーカーフェイス(骨)は通用しない。支配者らしく顔を隠せるポーズでアルベドに問いかける。

 

「そ、そうだな。アルベドよ、今回はご苦労だった。そ、それでだな、何か褒美を与えたいと思ってな。何か、欲しい物はあるか?」

「で、ではモモンガ様の御寵愛を頂ければ……」

「却下だ。そういうことではない。も、もっと健全な事をな……つまりそういう事だ」

 

 意味をなしていない言葉でごまかす。助けを求めて周りを見回すも、頼りになりそうな守護者達は仕掛け人によって隔離されている。Xオルタの頭で顔の下半分が隠れたデミウルゴスのキラキラした視線が癪だった。

 

 アルベドは頭脳を過去最大級に回転させる。どのようにすればモモンガの寵愛を受けられるのか。

 周囲の状況がモモンガの決定に影響を与える事はない。今回は自分がプロデュースした完璧な食事会で婚約発表まで繋げる事が出来るチャンスだったしそうなると思っていた。そのための雰囲気づくりに最大限手を尽くしたのだから今以上に場の空気を整える事は今後出来ることではないだろう。

 ならば、モモンガに己から来てもらうしかない。

 

「では、改めて。私は裁縫を趣味にしており、衣装などを作ることもあります」

「ほう、趣味を持つのはいいことだな」

「なので、お暇な時で宜しいので私が用意した衣装をお召しになっていただけないでしょうか?」

 

 モモンガは転移直前に見たアルベドの設定を思い出しながら答えた。確か家事全般に秀でているはずだ。

 

「なるほど、せっかくだから着てもらいたいということか。良かろう。満足のいくものが出来たら私に声をかけると良い」

 

 望み通りの答えを得たアルベドは内心ガッツポーズをした。その衣装の中にXオルタから下賜された「大切なアレ」を紛れ込ませる。モモンガに「大切なアレ」があればこちらのものだ。サキュバスとしての自身の力を示す未来を思い浮かべて満足気にアルベドは答えた。

 

「はい、畏まりました。モモンガ様にふさわしいものが出来るよう手を尽くします」

「しかし、着るのは私でいいのか?お前のような華やかな者の服の方が見栄えがいいと思うんだが……」

「いえ、モモンガ様にこそ着て頂きたいのです」

「そ、そういうものなのか。なら、頑張ってくれ」

 

 アルベドの計画を遮るものはもうない。

 後はモモンガに着せる様々な服の中に例のスーツを混ぜておけばいい。仮面によって無いはずの食欲が僅かでも出ているのなら、スーツに寄って生じるだろう獣慾こそ最後の鍵になる。

 そこから先はアルベドの腕の見せ所だ。そして、当然の如く失敗するつもりなどかけらもなかった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その夜、アルベドはモモンガの部屋に数着の服を持っていった。うち1つは例の「大切なアレ」と合わせてあり、その存在を意識せずに着れるようになっている。アルベドが思うにこれ以上ない完璧な計画だった。

 

 なお、完璧な計画を立てたからといって上手くいくとは限らない。具体的にはモモンガの理性が想定以上に強靭だった。モモンガは「大切なアレ」による装着後の下半身から湧き上がってきた僅かな違和感から即座にファッションショーを中止、夜の密会を切り上げようとした。

 

「な、なぁ、アルベドよ。今夜はこの辺りまでにしないか?」

「な、何故ですか?ここからが良いところですのに……」

「いや、少しな、今までの疲れが出てきたようでな。お前も私が疲れている時に嫌々やっていては嫌だろ」

 

 急な終了に焦りつつアルベドはこの場に置いての敗北を悟る。しかし、この警戒は僅かといえど自身の策が功を奏したということだろう。

 このまま繰り返しいつしかモモンガの中にアルベドに対する獣慾を蓄積させる。いずれ、その欲望をぶちまけてくる時が来るだろう。

 

「嫌がるなどとんでもない事にございます。しかし、モモンガ様がお疲れならばそれは何より優先するべき事。直ちに切り上げますのでごゆっくりおやすみくださいませ」

 

 そのままアルベドは衣裳をまとめ、モモンガの部屋を出る。最後に哀れそうな表情で一言付け加えた。

 

「あ、あのモモンガ様、もしよろしければまたいつか私の用意した服をお召しになっていただけないでしょうか……」

「あぁ、いいとも。余裕ができたらまた来るといい。待っているぞ」

「ありがとうございます!」

 

 僅かな敗北感、それを超える未来への希望を得たアルベドは弾むような足取りで自室に戻る。

 

「あぁ、モモンガさまぁ」

 

 モモンガはアルベドが部屋を出てから感じるはずのない寒気を感じ背骨をぶるりと震わせた。

 




隠語をいくらかわかりやすいように改訂


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14話 旅立ち

14話です。

感想評価ありがとうございます。

遅れましたが書きあがりました。

やっと二巻に入りました。オリ展開も混ぜていきますのでよろしくお願いします。

PSちょっと映画の冊子のネタバレ注意


「オルタさん実験結果出ましたよ。期待以上とは行きませんでしたが、悪くない結果だと思います」

 

 転移して6日目、モモンガの執務室にてXオルタがモモンガを迎え入れるという逆転現象が起きていた。

 

「っ!……どう、なりましたか?」

 

 モモンガが行なっていたのはXオルタが用意しておいたメタ効果を持つアイテムの実験だ。自身のスキルを使用して召喚したアンデッドにアイテムを使わせていた。

 

「実験に使えた12種の内5種類が無反応、2種類がアイテムの消失、残った5種類が転移した可能性があります」

「可能性、というと?」

「シモベが皆消えました。消えた後召喚者としてのつながりを感じる事が出来たのは2つ。転移した先で消滅したみたいです」

 

 Xオルタの表情が固まり、低い声で答えた。

 

「つまり、今のところ何に使えるかわからないけど何かに使えそう、という事、ですか?」

「そうですね。上位アンデッドを2種類ずつ使ったので、俺が召喚したモンスターじゃこれ以上は無理だと思います。回数も無限じゃないので次は別のアプローチ混ぜたいですね」

「1番手っ取り早いのは使用者の変更、かな。オーレオールをあそこから動かせたら他の視点もできそうなんですが……」

 

 2人の間で既にNPCがメタアイテムに関与するのは最低でも往復機能が確保できてからという事は決定済みだ。僅かでも不安のあるところにナザリックの者を関わらせたくはなかった。

 

「難しいけど現地人使う方向で行きますね。魔法や脅して従わせた連中じゃ行った先で裏切られたらマズイのである程度の信頼関係を作ってから。ところで守護者達の様子はどうです?」

 

 なぜ、Xオルタがモモンガの執務室にいたかの理由はここにある。複数のシモベを調達できて対応力のある魔法詠唱者のモモンガと違い、Xオルタは多少の特殊スキルは取っているものの基本は戦士職のため実験の役に立たなかったからだ。なので実験をモモンガに丸投げして守護者を含めたNPCの監督を行なっていた。

 

「マーレのやった隠蔽はほぼうまくいったみたい、です。今はアウラと森で2ndナザリックを作っています。シャルティアはゲート係です、ね。洗脳される可能性が有るのでナザリックからはあまり出ない仕事を割り振ってます」

「あぁ、シャルティアは確かに不安が解消される迄外には出せませんね。他のデミウルゴスとかはどうですか?」

「デミウルゴスにはカルネ村からの手紙を元に単語帳作ってもらっています」

 

 現在、カルネ村にはナザリックの者としてルプスレギナが滞在している。ゴブリン将軍の角笛を使った事を口実にルプスレギナに指定させた文言の手紙を村長に出させたのだ。その手紙から単語の対応表を作らせていた。ちなみに、その返事として召喚した村娘、エンリ・エモットにしっかりとゴブリンの監督、指揮技術を磨くようにルプスレギナに伝えさせていた。

 

「アルベドはニグレドのところです。セバスとソリュシャンの監視と他の守護者の監督をしています。で、コキュートスはモモンガさんの剣士訓練の為、闘技場で待っています」

「おぉ、やっとですか。これが済めば冒険者が出来る。お供は結局誰になりそうなんですか?」

「シズかナーベラル、大穴でパンドラです」

 

 モモンガが固まる。モモンガとXオルタの息抜きを兼ねた外部活動として冒険者になるつもりだったのに、なぜ黒歴史が紛れ込もうとしているのか。

 

「ちなみに守護者達は全員連れて行ってくれ、です」

「それは無い。じゃあ、ナーベラルで行きましょう」

「シズはダメなんですか?装備がだめなら私の装備もほぼオーパーツなので大差ないと思いますが……」

「いや、機密を握りすぎです。もし、漏れたらマズイので外にあまり出さないほうがいいと思います」

「なるほど、じゃあナーベラルで決定ですね。パンドラはちょっと惜しいですが……」

「っ、闘技場に行ってきますね。オルタさんも冒険者としての衣装とかを考えておいてくださいね」

 

 Xオルタの呟きを無視してモモンガは闘技場でのコキュートスによる剣術訓練に向かう。モモンガは既に冒険者としてどんなキャラクターを演じるか決めていたので、その為の訓練だった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 翌日、Xオルタは自室の奥の倉庫で装備を漁っていた。外装データだけを入れた、性能としては下級にすら劣るものならばたくさん製作したが、装備として役に立つものは現在身に付けているバトルドレスを除くと2つしかない。

 セーラー服と運動服だ。このどちらかを使って現在の謎のヒロインXオルタではなく、謎の冒険者Xオルタを演出する必要があった。

 2つのうちXオルタが選んだのはセーラー服だ。セーラー服に大き目のダッフルコートをはおって、3つの神器級装備、鳳凰のマフラー、アルトリウム(アホ毛)、魔眼殺し(メガネ)を身につける。いずれも戦闘能力に影響する効果は無いが隠蔽、探知、解析に特化した性能をしている。

 なお、ユグドラシルの頃は全て高価な産廃でしかなかったので名前に意味はない。

 それらを装備した上でモモンガが待つ執務室に向かう。

 

「モモンガさん、準備出来ました」

 

 執務室には黒いフルプレートの鎧を身につけた黒髪黒眼の人間がいた。脇に鎧と同じ意匠のヘルメットを抱えている。モモンガの表情を見ると驚愕に染まっていた。

 

「どこかのギャルゲーと勘違いしているんですか?」

 

 モモンガの第一声はXオルタの逆鱗に触れた。

 

「ひどいですね。ちゃんと隠蔽はしています。モモンガさんこそどんな坊ちゃんキャラクターを演じるつもりなんですか?フルプレートとか金かかるに決まっているのに」

「坊ちゃんじゃないですよ!謎の漆黒の戦士、モモン・ザ・ダーク……ンッ、漆黒の戦士モモンです。正体不明の歴戦の戦士ですね」

「へぇ、モモン・ザダークンですか。よろしくお願いします、ね、ザダークンさん」

「うげぇ」

 

 Xオルタがモモンガの失言の揚げ足をとってからかい、うっぷんを晴らすような嫌がらせを続ける。モモンガもネチネチといじられるのは堪えたらしく、両手を上げて降参のポーズをとる。

 

「あぁ、すいませんでした。言い過ぎましたよ。でもですね、セーラー服ってまずくないですか? なんか考えてあるんですか?」

 

 モモンガの謝罪からの一言にXオルタが矛を収めて応じる。

 

「コートの前を閉じて裾を伸ばします。殴り合いとかしなければセーラー服は見えませんし、ちょっと高めのコート着た旅人に見えると思います。私はオルト・ライトニングと念動力以外攻撃に使わない変わった魔法使いで通すので大丈夫です」

「大丈夫……なのかな? 無茶な設定な気がするんですが……」

「文句ありますか、ザダークンさん。漆黒の戦士モモンも大概ですからね」

「はぁ、もう勘弁してください。多少は押し通しましょう。とりあえず名前はどうするんです? 俺はモモンですが」

「えっ、え……」

 

 特に考えてなかったXオルタは答えが出せない。

 

「え、とか、えっちゃん、はなしですよ。特に考えてなかったのなら以前言っていたアルトリアとかペンドラゴンとかでよくないですか?」

「……じゃあ、ペンドラゴンです。『えっちゃん』って呼ばれたいのでエックス・ペンドラゴン」

「了解です。……俺も姓をつけるべきかな……」

「じゃあ、ザダークンで。結構良いと思いますよ、名前っぽくて」

「しつこいですね……」

 

 しかし、下手に意味のある言葉をつけると自動翻訳で妙な形で訳される可能性がある為、言い間違いから生まれた名前なら安全かもしれない。

 

「とりあえず、保留です。ナーベラルの冒険者としての設定はどうします?姓をつけるならナーベだけだとマズイですし……」

「モモンの妹ってことで同じ姓でいいんじゃないですか? 黒髪黒眼だし」

「顔があまり似ていませんが押し通せますかね。ナーベラルはどう思うんだ?」

 

 傍らで冒険者の衣装を着て控えていたナーベラルに流れ弾が飛ぶ。

 

「わ、私がモモンガ様の妹を装うなど恐れ多いかと思います」

 

 モモンガとXオルタが顔を見合わせる。悪い顔が浮かんでいた。

 

「妹役、決定ね」

「じゃあ、モモンとナーベで兄妹ってことにするということでいいな。ただ、姓を名乗らずに済みそうだったらそこはカットしますね」

「了解、です」

 

 2人は戸惑うナーベラルと設定を詰めていく。

 

 まずは漆黒の戦士モモン、その妹としてナーベ、2人の友人としてエックス・ペンドラゴンが加わり3人組の冒険者となる。人に紛れることを前提として、互いにどのように接するかを決めていく。

 

 目的は名を上げること、そして転移実験の協力者を得ることの2つになる。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一通りのことが決定し、目指すはエ・ランテルの冒険者組合、期待の新人冒険者ということになっている3人組が多くの見送りを背にナザリックの地を離れる。

 

「ところでマスター・モモン、アルベドの視線が凄いので一言お願いします」

「私からもお願いします。モモン……兄……様」

 

 2人に頼まれたモモンガはナザリックに向き直り、アルベドに告げる。

 

「……アルベドよ、お前は私がナザリックの者で最も信頼している守護者だ。だからこそお前には私達がいない間のナザリックの管理を任せ、私達の帰るべき場所を守ってもらいたいのだ。頼まれてくれるな?」

「くふー!畏まりました。このアルベド、全霊をもって主人の帰る場所を守らせていただきます!」

「そ、そうか、頼んだぞ」

 

 若干壊れ気味のアルベドを置いて3人組はやっと旅立つことが出来たのだった。

 

 




アルベドはオチ要員。

えっちゃんのアイテム名は全部Fateの形が同じ奴から持ってきています。効果については完全に別物なので気にしないでください。


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15話 都会

15話です。

感想ありがとうございます。

オリ展開とか言ってた気がしたけどまだです。

あと、今回名無しのオリキャラが出ます。

Web版にしかいないはずのキャラも出ます。

追記:冒険者としての口調でギルメンとしての会話をしている部分があったので訂正しました。


 3人組が城塞都市エ・ランテルに着いてまず向かったのはやはり、冒険者組合だった。

 

「やはり名前の登録に姓名揃える必要はなかったようだな」

 

 モモンこと、モモンガの言葉に金髪の少女、エックスこと、Xオルタが眉を顰める。2人のやりとりを無視して冒険者ギルドの受付嬢の声が掛かった。

 

「講習はこれからで良いんですか?」

「講習?」

 

 不思議そうな顔を、ヘルムの中なので見えないが、して鸚鵡返しをするモモンガ。かなり基礎から説明する必要がある事に受付嬢イシュペンは辟易する。

 

「講習、冒険者は危険な仕事なんです。だからちゃんと説明して、命を失っても文句をどこからも言われない形にしなくてはならないわけなんです」

 

 モモンガ達はそれに納得した様子を示す。

 

「えっとどうしましょう。講習自体はさほど時間のかかるものではないですけど、別室で椅子に座ってやりますか?」

「いや……」

 

 断ろうとしたモモンガを横からXオルタが止める。どうやら座りたいらしい。

 

「……はぁ、じゃあ別室で頼む」

 

 モモンガの肯定を受け、席を離れられる事にその場にいた半数が内心ガッツポーズをする。イシュペンによるこのチームに対する評価が+5……いや+10された。

 

「では、あちらへ」

 

 そのまま3人組はイシュペンに率いられ会議室に入り、冒険者の職務について説明を受ける事になった。

 

 内容は大きく分けて3つで報酬、依頼、ランクについてだ。報酬が差し引かれる話でモモンガは現実に引き戻され、依頼内容のほとんどがモンスター退治である事に夢の無さを実感する。

 最後にランクについての説明を受ける。

 

「冒険者にはランクがあります。依頼を受ける時の基準にもなりますね。一番下から銅、鉄、銀、金、と金属の名前で続いていきます。基本、モモンさん達のような新人は銅ランクです。依頼をこなしていけば昇格試験を受けて上のランクに上がれます」

「一番上は何ていうランクになるんですか?」

 

 モモンガの質問にイシュペンは微笑み、答える。この訳のわからない3人組も上を目指そうとする冒険者なのだと思って。

 

「全ての冒険者の頂点と言えばアダマンタイト級ですね。王国には2チームいます。この街で、という意味ではミスリル級で、3チームいます。金級、白金級の上にあってアダマンタイト、オリハルコンの下に続くランクです」

 

 一息に説明をしてから聴衆の表情を伺う。何も読み取れないフルフェイスと無愛想な美人の反応に気落ちして顔の下半分を隠した少女のわかりやすい期待の視線に満足する。確か、部屋の移動の後押しをしたのもこの少女だ。イシュペンにとってエックスと呼ばれた少女こそが今回の講習における癒しだった。

 

「では、他に質問はありますか?」

「え、えっと、王国戦士長はどれくらいのランクになります、か?」

 

 イシュペンはXオルタが初めて発言したことに驚き、女神のような微笑みを浮かべる。この少女にとっての強者であり、目標が王国戦士長なのだろう。少しばかり応援しても良いかもしれない。

 

「そうですね、王国戦士長はおそらくアダマンタイト級になると思います。でも、冒険者はチームで行動するのでミスリル級以上ならずっと凄いことができると思いますよ」

 

 全ての説明を終えたイシュペンは最後に新人冒険者向けの宿の紹介と警告をしてから満足感とともに講習を解散とした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 冒険者組合を出て、そのままの足で3人は宿屋へ向かう。漆黒のフルプレートと南国風の美女、2人の後ろを駆け足で追う小柄な少女の3人組は周囲の視線を集めるだけの素養があった。宿でのプランをチェックしながら、冒険者御用達の中でも最も格の低いものに入った。

 

 Xオルタの役割はいわば「飴と鞭」の飴だ。モモンガの動きを確認してから行動を開始する。

 

 待っているうちにXオルタの目の前で難癖付けてきた鉄級冒険者をモモンガが強引に投げる。見た目だけなら大外刈りという柔道の技に似ている。冒険者はモモンガによって180度回転して背中からテーブルに突き刺さった。

 テーブルが割れた時の破砕音に驚いたようにXオルタは宿屋の主人に掛け寄る。

 

「あ、あの、ポーションです。ケガしていたら使ってあげてください。あ、でも、たいしたことなかったらテーブルの修理にでもあててください……」

 

 自己評価としては完璧な慈悲深い美少女だった。事実、本人の目的とは完全にズレているが演技としては良く出来ていた。仲間のやらかした事件に怯える少女としてだが。そのままモモンガが3人部屋を要求して、その部屋に向かった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 3人組がいなくなってから投げられた男の仲間が治癒の魔法をかけ始める。それをきっかけに宿の喧騒が蘇った。

 

「見掛け倒しじゃねえな」

「ああ、半回転はしていたぜ。どんな技だよ」

「いや、あれは技というより筋力だな。掴んだ腕を軸にして蹴り飛ばしたんだ。俺には見えた」

「グレートソード2本は伊達じゃ無いってか。また一気に抜かされそうだな……」

 

 飛び交う感嘆と驚愕の言葉。冒険者の最初の試練をたやすく潜り抜けた3人組が折り紙付きの凄腕だとこの場の全員が理解していた。

 その騒ぎの中、宿屋の主人は店番のために妻である女将を呼び出していた。

 

「おい、お前」

「なんだい、あんた?」

「俺はちょっと用事ができた。少しの間店番を頼む」

「……わかったよ、行っといで」

 

 事情を察した女将に店番を頼んだ主人はその足で宿の裏口から出て行った。目的地は自身が知る最高のポーション職人の構える店だ。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「さて、シャドウデーモンはポーションの見張りについたな?あのマスターが早めに薬師に鑑定を頼めばいいんですが……」

「さっきのおじさんのケガがたいしたことなければ問題なさそうです。かなり違和感持っていたみたいなので今夜中に出ると思います」

「おっ、早速主人が宿を出たようです。かなり早いですね」

「じゃあ、私は霊体化して今から追跡します。マスター・モモンは定時連絡お願いします」

 

 Xオルタがいなくなり、広くなった部屋でモモンガはため息を漏らす。

 

「はぁ、定時連絡はナーベ、お前がやっておいてくれ。私は町の地形を確かめてくる」

 

 最終的に部屋に残ったのはナーベラル1人になる。魔法詠唱者であるナーベラルにメッセージのための特別な準備は必要ないのですぐさま命じられた仕事に取り掛かる。

 

『ナーベラル・ガンマ。どうしたのかしら?』

 

 ナーベラルのメッセージにナザリックの守護者統括で現在の管理責任者であるアルベドが素早く応じた。

 

「定時報告です」

 

 ナーベラルは今日、エ・ランテルについてから起こったことを話してからアルベドに直接頼まれた事について述べる。

 

「私見ですがモモンガ様とXオルタ様の間に男女関係は存在しないかと思います」

『そうかしら?モモンガ様は偉大なる死の支配者であり極めて魅力的なお方。同じ至高のお方とはいえXオルタ様が魅了されてもおかしくないと思うのだけれど?』

 

 アルベドがモモンガの正妃の座を狙う守護者の1人としてもう1人の「至高のお方」を最も警戒している事に納得しつつもナーベラルは不快感を覚える。

 

「Xオルタ様は英霊です。英霊は人間種の魂魄を核とした精霊、肉が付いていた方がお好みなのではないでしょうか?」

『そうなのかしら? ……はっ⁉︎ なら、そのためにあのマスクをモモンガ様に渡したということなの? でも、それなら最も「大切なアレ」を私に下さる筈が……』

 

 1人で暴走し始めたアルベドに呆れながらナーベラルが伝えた。

 

「アルベド様、お話はお済みですか。もしそうならメッセージを切断してもよろしいでしょうか?」

『待ってまだダメよ。それにあなたにはほかにも伝えておかなければならないことがあるわ。シャルティアに聞いたのだけれどペロロンチーノ様曰く『妹キャラは至高』だそうよ。数多の属性を兼ね備えているとかの問題があるらしいの。エレメンタリストとして一つの属性に特化している貴方はこの言葉に気をつけなければならないかもしれないわ』

 

 完全にズレている爆弾を落とされたナーベラルは焦るがアルベドが助け船を出した。

 

『ただ、至高のお方のお言葉についてだからモモンガ様方にご意見を伺うのも方法としてはありかもしれないわね』

「わかりました。余裕がある時にモモンガ様にご意見を伺っておきます」

『そうね……。それと、話は変わるんだけど……愛しのモモンガ様はどんな感じだったか詳しく教えてくれない?』

「はい、畏まりました」

 

 2人の会話はメッセージを4回使うほど続き、戻ってきたモモンガを呆れさせることになった。その場でモモンガに対してナーベラルはアルベドから聞いた話をする。

 

「アルベド様から伺ったのですが、ペロロンチーノ様曰く、『妹キャラは至高』であり、数多の属性を兼ね備えるとのことで単一属性に特化した私にはやはり分不相応かと思うのですが……」

「はぁ?え、ペロロンさんが?何いってんだあの人?」

 

 一瞬、頭が真っ白になり素が漏れるがすぐに落ち着いて話を続ける。

 

「その言葉は気にしなくてもいい。ペロロンチーノさんの言う属性とお前の魔法の属性は完全に別のジャンルのものだ。何も問題はない」

「し、しかし、私が至高のお方から至高と呼ばれた存在を演じるのは不敬になるのではないでしょうか?」

 

 心の中で面倒の種を残してくれた親友に悪態をつきながら心底楽しそうにモモンガは代案を示した。

 

「ならばこういうのはどうだ?私達が兄妹であるということは秘密にしておくということにしてお前はそのようなそぶりをしなければいい」

 

 モモンガにとって使いたくない姓「ザダークン」をかくし、ナーベラルの混乱の種をなくせる、そして設定は変わらないのでXオルタに文句は言われない、一石三鳥の策だった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 さらに数時間が経って、Xオルタが戻ってくる。

 

「今日の朝、例の薬師が依頼を出しに来ますよ。少し早めに行って待ち構えましょう。モモンガさんたちは何か変わったことはありましたか?」

「ああ、一つだけ。私達が兄妹であるという設定は隠すということになりました。これであの変な家名は表に出ませんね」

 

 勝ち誇るモモンガと絶望に染まるXオルタの表情を夜明けの太陽が美しく照らす。モモンガを睨みつけながらXオルタは何としてでも兄妹設定をばらすことを朝日に誓ったのだった。

 




実はもう御大に土下座する権利は得ていることに気が付いた。

今回の話の最後がナーベラルにモモンさ--んと呼ばせる理由になります。
つじつま合わせに変態が増えることになってしまった。
ごめんなさいペロロンチーノ様許してください。


でも似たようなこと言いそうだよね……


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16話 営業

16話です。

感想、誤字報告ありがとうございます。

えっちゃんの見た目年齢を考えるとセイバーが15歳程度で剣を抜いているのでその年になってしまう。
ついでに言うと第二再臨の衣装に3-2とか書いてあるし中三の可能性が出てくる。

つまり、オバロ世界でえっちゃんは未成年。


 組合についたモモンガ達は周囲を見回し、ゲンナリする。周囲の冒険者達は宿の時とは違いほとんどが金や銀の中堅冒険者だ。モモンガとナーベラルは周囲の喧騒を無視して壁際に陣取る。

 Xオルタは念のため依頼のチェックをしに掲示板を見に行く。Xオルタのメガネは翻訳効果が含まれる為3人組の中で唯一依頼の判別ができるのだ。ちなみに、製作時にレンズの厚みまで再現したのでXオルタの視界は若干ぶれてしまっている。

 

 掲示板の依頼を他の冒険者の後ろから覗こうと飛び跳ねたり目を細めたりしているXオルタを待つ間、モモンガは手持ち無沙汰だ。暇つぶしにモモンガは薬師の関係者が近付くためにどんな手を使うか考えはじめる。直接接触を図るのなら3人の誰に近づくのか。

 まず、ナーベラルは一番可能性が低いだろう。町に着いてから目立つ行動は何もしてないし、その外見から下手に声をかけるとナンパにしか見えないから交渉相手には不向きだ。

 そうなるとチームリーダーの自分かポーションの出所であるXオルタか。

 自分に直接声をかけるのなら社会人として真っ当な感性を持ち、交渉もしやすそうだ。しかし、もしXオルタに声をかけるのならその外見の若さから与し易いととった可能性がある。幼いのは見た目だけだからそうそう手玉に取られることはないだろうが、そういう相手には充分に注意しておく必要がある。

 

 考えが纏まりつつあったところにXオルタが戻ってきた。4人組の冒険者を引き連れている。銀等級、自分達より2つ上の階級だが、この場に限れば特に優れているというわけではないだろう。彼等が薬師が用意した接触手段だろうか。警戒心を強め耳をすます。4人組の内の蜘蛛のような手足の男とXオルタの会話が聞こえてくる。

 

「あの2人がえっちゃんの仲間達かな?かなり腕が立ちそうだね」

「うん。ちょっと相談してくる、ね」

 

 走り寄ってくるXオルタを見ながらモモンガは頭を抱えたい気持ちを抑える。

 

「何があった?」

「同じ仕事をしないかって誘われました。どうですか、マスター・モモン?」

 

 先ほどの親しげな会話はモモンガにはXオルタがこの4人組に籠絡されたように見えた。薬師の手勢がXオルタを先に狙い、成功させた可能性があると見てモモンガは警戒心を強め、4人のリーダーらしき帯鎧の戦士に目をやった。ほかの冒険者チームと比べ少し若い気もするが他に目立った特徴はないか探していく。

 

「貴方がエックスさんの師匠のモモンさんですね。私は『漆黒の剣』のリーダーのペテル・モークです。よろしくお願いします」

「あ、ああ、私はモモンです。それで、仕事とはいったい……。具体的なお話を聞かせていただけますか?」

 

 思索を遮られモモンガは焦りながら答える。Xオルタの外見年齢を考えれば仕方ないことだと理解しているが、友人の師匠と呼ばれるのは居心地が悪い。

 ペテルと名乗った青年が率いる4人組はその答えを聞いて受付嬢に依頼して部屋を一つ用意させた。7人がそれぞれの席に着く。

 

「さて、仕事の話をする前に簡単な自己紹介をしておきましょう」

 

 漆黒の剣というチーム名からはじめて青年は1人ずつ紹介していく。先程、Xオルタと話していた軽薄な男はルクルット、最も老けた髭を蓄えた落ち着いた雰囲気の男がダイン、最後に紹介された最年少の少年がニニャ、二つ名を『スペルキャスター』といい特殊なタレントを持つ天才的な魔法詠唱者らしい。

 

「素晴らしい才能をお持ちなんですね」

 

 タレントは生け捕りにした陽光聖典のメンバーから手に入れた情報にあったこの世界独自のいわゆる「生まれながらの才能」だ。モモンガはその話を興味深く聞いていた。

 

「別にすごいことじゃないですよ、この街にはもっとすごいタレント持ちもいますし」

「バレアレ氏であるな!」

 

 Xオルタが調べていた薬師の名前が上がりモモンガの警戒心が上がる。

 自分達を調べるつもりなら逆に情報を集めてやろうという気持ちと未知の能力への好奇心が重なりモモンガは口を開く。

 

「……その方は確かこの街の薬師ですよね。どんな方なんですか?」

 

 4人が顔を見合わせ、納得したように続ける。

 

「この都市では有名なんですが流石に遠くの都市までは知られていなかったのですね」

「確か、昨日この街に着いたばかりなんだよね」

 

 ルクルットの猫撫で声に頷くXオルタを見ながら何処まで話したのかと思いつつモモンガは口を開いた。

 

「ええ、この街には昨日来たばかりであまり知らないんです。よろしければ教えてくれませんか?」

「名前はンフィーレア・バレアレ。有名な薬師の孫にあたる人物です。多分聞いたことがあるのは祖母の方のリイジー・バレアレでしょう。彼が持つタレントはありとあらゆるマジックアイテムが使用可能という力です。使用制限があるものも問題なく使えるらしいです」

「……ほう」

 

 モモンガは警戒心を押し殺し声を出す。Xオルタも今の話を聞いて真面目な顔でナーベラルと言葉を交わしていた。

 

「どうかしましたか?」

「ああ、いえ、なんでもありません。次は私たちの番ですね」

 

 誤魔化すようにモモンガは自分達の紹介に移る。

 

「まずはご存知のようにこの子がエックス、そしてこちらがナーベ。私はモモン、チームのまとめ役にあたります。よろしくお願いします」

 

 互いに自己紹介を終えたことで仕事の内容の確認を始める。

 仕事の内容自体は単純なモンスター退治だ。強いて特徴的なことを上げれば出来高制になっているといったことだろう。途中ニニャが貴族に対する悪感情を抱いていることが明らかになったが仕事を共同で進める事についてはおおむね同意できただろう。

 

「では、報酬は頭割りということでいいですね。それでなんですがともに仕事を行うのですし、顔をお見せしておきましょう」

 

 モモンガはそういうとヘルムを外す。

 

「黒髪黒目というとこのあたりの方ではないですね。ナーベさんもそうですし南方にそういう顔立ちの国があると聞きますが……そちらですかね?」

「ええ、かなり遠方から来たんですよ」

 

 ペテル以外の3人のおっさんという言葉に苦いものを感じるが再びヘルムをかぶり、言葉を続ける。

 

「それで協力するなら互いの疑問をこの場で解決した方が良いかと思いますが、何か質問はありますか?」

「はい!」

 

 ルクルットの手がぴんと上がる。ほかに質問者がいないことを理解してやけに大きな声でナーベラルに質問を投げかける。

 

「おふた方はどのような関係なんでしょうか!」

 

 静寂が舞い降りた。モモンガがその意味を理解する前にXオルタが口を開いた。

 

「兄妹、です。マスター・モモンとナーベは兄妹、です」

 

 モモンガとナーベラルの顔がXオルタに向く。Xオルタはしてやったりという顔でつづけた。

 

「聞かれたので正直に答えました」

 

 やはり今朝の事後報告はまずかったのだろう。後悔しながらモモンガは言うべき言葉を考えていると席の反対側で別の爆弾が落ちた。

 

「惚れました!一目惚れです!付き合って――」

 

 こちらの爆弾は処理されたようだ。ニニャがルクルットに文句を言っている。

 

「あなたみたいな悪い虫が付かないように兜をしたり顔を隠して身内じゃなくて別の恋愛とかの関係に見えるようにしているんじゃないですか?そのあたり察してちょっと落ち着いてくだ――」

「れ、っれれんあい!何を言うのですか!アルベド様という方が!」

「おま‼何を言っているんだ!ナーベ!」

「あ!」

「「あ」」

 

 モモンガは失言をしたナーベラルの背中をたたき慰める。

 立て続けに漏れていく情報に対し、互いのチームのリーダーが言葉を交わす。

 

「……仲間がご迷惑を。今の話は聞かなかったことにしますね」

「ああ、いえ……ありがとうございます。あまり知られたくはないことなので」

「では質問はもうないということで問題ないですよね?」

 

 ペテルは周囲を見渡し話を終えた。

 

「では、モモンさんたちの準備ができ次第出立しましょう」

 

 全員が立ち上がり準備が必要なモモンガたちから先に部屋を出る。組合受付まで戻ると先ほどとは違う種類の喧騒に包まれていた。中心にいるのは金髪の少年でその姿を見てXオルタがわずかに声を上げる。モモンガがまさかと思い少年と話す受付嬢に目を向けた。驚きの表情を見せた受付嬢はそのままモモンガに近づいて一言告げた。

 

「ご指名の依頼が入っております」

 

 周囲の視線が一息に少年から自分に移ったのがわかった。背後でナーベラルが戦闘態勢に入ろうとしたのをXオルタがおびえたように抱きしめることで力ずくで止めた。ものすごく焦っている気配が伝わってくるが問題はないだろう。戦闘態勢より焦りの方がこの場の雰囲気にはふさわしい。

 

「一体どなたが?」

「はい。ンフィーレア・バレアレさんです」

 

 その名前でモモンガは悟った。ノートに書いてあった有能な現地人の薬師だ。つまり、先ほどまで薬師の手のものかと疑っていた漆黒の剣はただの営業上手な冒険者でしかなく、自身が警戒して狙っていた獲物は今やっと姿を現したのだ。

 

「初めまして。僕が依頼させていただきました。それで実は依頼を――」

 

 モモンガはとっさに思考をめぐらし最善策を考える。そして話し始めた少年の言葉をモモンガは手を上げて止めた。

 

「私たちは既に別の仕事の契約を交わしている。その依頼を即座に引き受けることはできない。なので――」

 

 一歩引いているようなペテルに視線をやって続ける。

 

「先ほどまでいた部屋で詳しくお話を聞かせてもらっても?」

「僕の方は全然問題ないですよ」

「漆黒の剣の皆さんも立ち会ってもらってもよろしいでしょうか?」

 

 いくらか戸惑いの声が聞こえるがモモンガは何とか契約したことを違えずにこの少年の話を聞けそうなことに安堵する。そして部屋から出てきた7人は8人になって再び部屋に戻るのだった。

 




ちょっと短い。

絵柄を見るとJKにしか見えないえっちゃんですが18いってないと思うのでみため15以下の小娘です。覇王将軍より若いです。

あとペテルはリアルにいたら凄腕の営業マンになれると思う。
原作でも最初にモモンに目をつけてうまく取り入ろうとしてうまくいったし目の付け所がシャーフだね。
死んだけど

感想評価批判意見たくさんほしいです。お願いします。


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17話 実力

17話です

感想、お気に入り登録ありがとうございました。

今回はちょっとした改変の準備回みたいなものです。

後フラグ立てたりしてます。


「では、準備を整えて出発しましょう!」

 

 なんとか2つの仕事を同時にできるように話を纏めたモモンガは、溜息をついて受付嬢に保存食を求める。用意ができたらナーベラルとXオルタにあまり余計なことを喋らないように注意してから集合場所に向かう。

 

 準備を整え集まった8人は、エ・ランテルの街を出て森の周囲に沿ったルートでカルネ村へと向かう。護衛としては間違ったルートではあるが8人という人数による安心感とペテルとの仕事が理由だ。そもそも平原との境目なのであまり強力なモンスターもいないとのことから、行きはそのルートを取ることになった。

 

 そうして歩き続け、エ・ランテルを出て正午を回った頃に、鬱蒼と茂る木々が見えてきた。

 

「モモンさん。この辺りからちょっと危険地帯になってきます。念のため注意してください」

 

 ここに来てはじめてペテルが今までとは違う固い声で述べた。モモンガは了承の意をのべるが、若干の不安を抱いた。

 これはゲームではなくリアルだ。つまり、何があるかわからないということだ。そして思いつく限りの悪い想像を働かせる。

 

例えば、レベル100に匹敵する敵が出て来たらどうするべきか。

 

 現状、全力を出せるのはXオルタだけだ。防具こそベストではないが光刃は隠し持っていて、デメリットを負っている状態でもないので充分なパフォーマンスを発揮できるだろう。

 しかし、戦士としては対応力の高いXオルタも、単体戦力としてみればあまり優れたものではない。単純に強い敵が現れたら自分が正体をあらわす必要が生じるかもしれない。

 

 もしそのような事態に陥り、アンデッドである姿を見られたら記憶を消すか殺すかしなくてはならない。アンデッドとして殺人に忌避感を抱かなくなったとはいえ、モモンガにはエゴで人を殺す気は無かった。

 ナザリックが殺人鬼の巣窟にでもなったら、戻ってくるかもしれないギルメンですら近寄らなくなるかもしれない。Xオルタがこれ以上ギルメンに隠し事をしたくないだろうということを解っている以上、突っ込みどころは減らすに限る。事実、ナザリックでもこれを意識できるNPCしかまだ極力、外出はさせていない。

 

 いざという時の為にXオルタとアイコンタクトを交わす。

 そんな2人のやり取りを見て何かを勘違いしたルクルットが戯けた口調で話しかけてきた。

 

「大丈夫だって。奇襲でも受けない限りそんなにやばいことにはならないって。そして奇襲なんか、俺が耳であり目である限りは問題ナッシング。モモンさんも安心してくださいね。2人に危害が及ぶ前にちゃんと対処できるようにするんで」

 

 初対面でナーベラルをナンパするような軽薄な男にしては落ち着いた態度にモモンガは違和感を覚えるが、ナーベラルが「至高の……」だのボソボソつぶやき苦い顔をしているのを見て慌てたモモンガはかき消すように声を出した。

 

「じゃあお任せしますね。でもこの2人も結構優秀ですから。期待してください」

 

 褒められた為に一転してナーベラルの顔がほころぶ。漆黒の剣のメンバーはナーベラルの顔を見てホッとしたような表情を浮かべた。

 モモンガ達は知らないが漆黒の剣では兄弟姉妹というものは特別な意味を持つ。全員が世間知らずに見えるナーベラルや幼いXオルタのことをそれなりに心配していた。

 2つのチームのやり取りを見てンフィーレアが口を挟む。

 

「大丈夫ですよ。実はこの辺りからカルネ村の近辺まで、『森の賢王』と呼ばれる魔獣のテリトリーなんです。ですから滅多なことではモンスターは姿を見せないんですよ」

 

 森の賢王、Xオルタのノートの情報によるとでかいハムスターらしい。確かハムスターを飼っていたメンバーがいたはずだから捕まえたら説得の材料になるだろうと考える。

 

 歩きながら余裕のあるモモンガはニニャに魔法やこの世界の常識を聞く。それは様々な気付きを与えてくれるものだった。特に輪作対策の魔法や海水がしょっぱくないという知識を聞いたときは隣で聞いていたXオルタも驚きを示していた。

 

「動いたな」

 

 ルクルットの遊びのない重く固い声が通った。普段の緩さからは想像もつかないほど緊迫感に溢れたプロの冒険者らしい声だ。

 

「どこだ?」

「あれだよ、あれ」

 

 ペテルの言葉に答えルクルットが答えた。木々の陰になっていてほとんど見えていないがその言葉を疑うものはいない。護衛対象であるンフィーレアを安全圏に下がらせると200メートル程離れた場所に6体のオーガを含む15匹のゴブリンの群れが確認できた。当たり前だがそれぞれに個体差がある。

 

「半分受け持ってもらえるということですが、どのように分けましょう?」

「二手に分かれ来た敵を適当に殺していくのでは駄目でしょうか?」

「それだと片方に集まって来たら厄介です。ナーベさん第3位の範囲魔法で一気にゴブリンを薙ぎ払えますか?」

「できません。使える中で最大火力は<ライトニング/雷撃>でしょうか」

 

 そういうことになっている。背後からXオルタの声が響いた。

 

「私は範囲魔法ができ、ます」

 

 Xオルタのいう範囲魔法とはオルト・ライトニングのことだ。元々は手から前方に電撃を飛ばすだけのスキルだったが転移してから範囲や威力の自由度が大幅に上がった。ダメージの最大値こそ変わらないが細かな調整が可能になったのは威力がほぼ据え置きの魔法と違い大きな利点だろう。

 ペテルが確認の視線をモモンガに送る。

 

「大丈夫です。ゴブリンはエックスに任せられます」

「そうなるとオーガは3体ずつでいいですか?」

「もっといけますよ。というより皆さんには馬車に乗っているンフィーレアさんを護衛しておいてください」

「モモンさん……」

「あの程度たやすく倒さなくては単なる大口叩きになってしまう」

 

 自信に溢れたモモンガの声を聞き納得したのかペテルが答えた。

 

「了解しました。とはいえ私達も敵の突進を見逃すわけにはいきません。出来る限りの戦闘支援はさせてもらいますよ」

 

 ペテルの指示に漆黒の剣のメンバーが互いの顔を見合いながら一度頷くだけで了解する。戦闘方針の決定が実にスムーズでモモンガは感心した。かつての自分達には劣るだろうと思いつつその片鱗を感じられた。

 

 ルクルットの矢がゴブリン達から少し離れた場所に突き立った。ゴブリンの油断を誘い、おびき出すための一手は呆れるほど効果的に決まった。もはやゴブリン達に防御という概念はなくオーガも僅かに遅れて走り出す。

 ルクルットが全体から遅れているゴブリンを狙い撃っていく。両者の距離が徐々に縮んでいく。

 

「沈め」

 

 彼我の距離が50メートルを切ったとき、Xオルタの一言とともにゴブリン達の集団に向かって赤い稲妻が走った。前方を走るオーガを打ち据えてからゴブリン達を足元の草むらに沈める。ゴブリン達に起き上がる気配はない。

 漆黒の剣のメンバーが僅かに息を飲む。

 耐え切ったオーガ達は痺れながらも怒りに任せてXオルタ目掛けて襲いかかってくる。ここでXオルタは一旦チームの最後尾に下がった。

 ダインがオーガの1体を足止めする。

 

<トワイン・プラント/植物の絡みつき>

 

 ダインの魔法によってオーガの足元の草がざわめきのたうつ鞭として絡みつく。

 そんな中、モモンガが剣を取り出しオーガに向かっていった。

 2本のグレートソードをそれぞれ片手で振り回す。左右の剣で1体ずつオーガを両断し、そのまま返す刀でもう2体切り捨てた。

 戦闘中であるのに時が止まったかのように音がなくなった。

 はじめに動いたのは拘束されてない最後のオーガだ。一目散に逃げかえろうとする。

 

「ナーベ、やれ」

 

 冷ややかな声とともにナーベラルが頷く。

 

<ライトニング/雷撃>

 

 雷撃が逃げるオーガを貫き同時に縛られて死にかけていたオーガにも当たる。

 

 戦闘が終わり生臭い焦げた匂いがする中、それぞれダガーでゴブリン達の耳を切り落としていた。

 

「しかし……すごいですね、3人とも。モモンさんは腕に自信がある戦士だと思っていましたが、あれ程とは思ってもみませんでした」

 

 ニニャの言葉を皮切りに漆黒の剣のメンバーが口々に褒め称える。

 

「すごかったですよ!同じ戦士として憧れます!あの腕力はどうやって鍛えたんですか?」

「エックス嬢に声をかけた時の言葉通りである!本人の実力もさすがである!」

「ナーベちゃんのライトニングもすごかったし、えっちゃんのあれも圧倒的だったよな。あんな魔法見たことないぜ」

「そうですね。あの魔法は一体何だったんですか?魔法詠唱者として参考にしたいです」

 

 会話が止まりXオルタに視線が集まっていく。

 

「え、えっと、あれはオルト・ライトニングって呼んでいます」

「つまりライトニングの亜種ってわけか。じゃあ、えっちゃんも第3位階まで使えるってことかよ、すっげぇ」

 

 ルクルットの賞賛を素直に受け止められずXオルタは否定した。

 

「いえ、私はちゃんとした魔法は使えないので……」

 

 一同の顔に疑問符が浮かぶ。

 モモンガは明かしていいものかと止めようかと思うが、この場には引抜き予定の1人とこちらに来てから会った人間では比較的信用の置けるメンバーしかいない。いっそのことXオルタの決めた冒険者「エックス」としての設定がどの様な反応を得られるのかを見る試金石としようと考え直した。

 

「そこまで言ってしまったならそれはもう明かしてもいいんじゃないか?」

 

 モモンガが穏やかな声色でXオルタに話しかけた。その言葉の真意を察したXオルタは自身の2種類の魔法について語った。特異な話に空気が重くなりかけた時にニニャが話題を変えた。

 

「何だか大昔の物語にあるドラゴンの魔法みたいですね。そういうのが使えるってタレントもあるみたいですし。……まぁ、珍しいので隠したほうがよさそうですが」

 

 話を聞いたニニャの言葉にXオルタは僅かに安心する。実際に似た様なものが使えた話があるのなら違和感は少ないだろうと思う。

 

「大昔のドラゴンですか。どんなのがいたのかわかりますか?」

 

 未知のものに惹かれたモモンガがニニャの話に乗っていく。

 

「以前、エ・ランテル周辺には天変地異を操るドラゴンがいたという眉唾な伝承がありますが最近はドラゴンの話自体聞きませんね。あ、いえ、アゼルリシア山脈にフロスト・ドラゴンが多数生息しているっていう話がありますが」

「その大昔のドラゴンの名前とかはご存じですか?」

「いえ、そこまではちょっと……」

「そうですか、すいません。変なことを聞いて」

 

 そのまま漆黒の剣のメンバーにとっては冒険者の頂点に立つだろう3人との会話を、モモンガ達にとっては新しい世界について新鮮な知識を得られる会話を満喫した。

 

 




どうでしたでしょうか?

いくつか突っ込みどころがあると思います。

前回のルクルットのナンパをニニャが止めたわけとかこっそり盛り込んでみたり

ちなみにルクルットは結構好きです。

後、違和感あったら突っ込んでください。感想、評価、コメントください。


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18話 再会

18話です。

感想、誤字報告ありがとうございます。

ちょっと遅くなりましたがどうにかできました。

今回は漆黒の剣の話が多いです。


 夕暮れ時に一行は野営地にて食事を始める。干し肉のシチューと固いパンに各種ナッツ類、ナザリックのものとは比べるべくもないがモモンガとXオルタの目には十分魅力的に見えた。

 

「皆さんは漆黒の剣というチーム名ですが、誰も漆黒の剣は持ってないですよね?」

「ああ、それ」

 

 漆黒の剣のメンバーの表情に照れが見える。特にニニャはパンドラズ・アクターを見る時のモモンガの様な今にも悶えそうなほど紅い顔をしていた。

 

「あれはニニャが欲しいと」

「もうやめてください。若気の至りです」

「えっと、漆黒の剣は昔いた十三英雄の1人が持つ剣にちなんでるんです」

 

 それきり言葉が止まる。聞こえるのは食事に夢中になっているXオルタがシチューを飲む音だけだった。

 反応の無さに漆黒の剣が動揺して4本の魔剣について説明すると横からンフィーレアの口を挟んだ。

 

「あ、漆黒の剣の1本は、持っている方がいらっしゃいますよ?」

 

 稲妻で打たれた様に漆黒の剣のメンバーがンフィーレアに向き直り問い詰める。

 

「あ、えっと"蒼の薔薇"と名乗られている冒険者の方達で、そのリーダーを務められている方です」

 

 漆黒の剣のメンバーは口々に悔しさを漏らし、決意を新たにしていった。モモンガは楽しそうな漆黒の剣の姿にかつての自分達を重ね、Xオルタはシチューを飲み終わりパンに手を伸ばそうとしているところだ。

 話がひと段落すると漆黒の剣のメンバーが話の主導権を握り話題を他の4人に振ってくる。

 

「あれ、えっちゃんそれ何してんの?」

 

 その途中ルクルットが見つけたのはXオルタの手の中にある∞黒餡子というアイテムでパンに餡を詰める姿だ。

 これはXオルタの持つアイテムの中で最も役に立たない伝説級アイテムだ。食べることでHPの小回復と微小なバフを与える餡子を無限に生み出せる。因みにチョコレート版もある。

 効果としては常時HPを回復し続ける護符などの方がよほど優秀で、性能としては本来聖遺物に届くかどうかだ。

 

 話しかけられていたXオルタは数秒の逡巡の後、餡子を詰めたパンを半分に割り、小さい方をルクルットに差し出した。

 

「これ、どうぞ」

「いいの?ありがとな」

 

 受け取ったアンパンを食べ、ルクルットは目を丸くする。

 

「うまっ!なんか甘くて美味ぇよ」

「えっ、その黒いの甘いんですか⁉︎」

 

 ンフィーレアの追撃を受けたXオルタは食べ終わったシチュー皿の端に餡子の山を作って差し出した。

 

「皆さんで、どうぞ」

 

 それぞれがパンをちぎり用意された餡子につけて食べていく。

 

「甘くてすごく美味しいですね。ただ、なんかポーションぽい気が……」

「確かに甘いですね。ポーションぽいっていうのはわかりませんが」

「うむ、まことに美味。だが、私には少し甘すぎるのであるな」

「本当だ。お菓子みたいです。私はこういう味は好きです」

 

 ンフィーレアから漆黒の剣のメンバーに行き渡り、モモンガの前で止まる。

 

「モモンさんは食べないんですか?」

「あ、ええ。甘いものは少し苦手なので……」

 

 そのままナーベラルに皿を回した。

 

 モモンガが甘いものが苦手というのは嘘だ。あらゆる食べ物がことごとく不味いリアルで生きてきたモモンガにとってちゃんと味がすればそれだけで好物になれる。

 しかし、この黒餡子は別だった。回復効果を微小ながら持つためモモンガが食べると舌が痛むのだ。更に吸収できないため、背骨に沿って転がり落ちてしまうだろう。結果、もし食べればモモンガの鎧の腰や足の隙間から丸まった黒い塊、餡子が転がり落ちて来ることになりかねない。

 

 モモンガは少しイラつきながら話を逸らす。

 

「それにしても皆さんは仲がいいですね。冒険者ってこんなに仲が良いのが普通なんですか?」

「多分そうですよ。命を預けますからね。自然と仲が良くなってますね」

「そうだな、うちのチームは異性がいないしな。いると揉めたりするって聞くぜ」

「……ですね。いたらルクルットが問題を起こしそうですしね。チームとしての目標……も、まぁ、ちゃんとあるからじゃないでしょうか?」

 

 ペテル達4人も頷く。

 

「そうですね。皆が同じ目標を持てば全然違いますよね」

「あれ?モモンさんも昔はチームを組んでいたんですか?」

 

 不思議そうなンフィーレアにモモンガは詰まる。今の自分達はチームには見えないんだろうなという気持ちとともに声を出した。

 

「冒険者ではなかったですがね」

 

 モモンガが思った以上に言葉が出て来る。いつか再び会えるだろうかと考えると言葉がスラスラと浮いて来た。

 

「私が弱かった頃、最初に救ってくれたのは剣と盾を持った純白の聖騎士でした。彼に案内されて出会った9人で最初のチームを形成したんです」

「ほぉー」

 

 誰の声かわからないがモモンガには興味がなかった。とりあえず、横でアンパンを食べ続けるXオルタではないことは確かだ。

 

「その後何人も仲間が加わってきて……、そうだ、エックスと会ったのもその頃です。新しく仲間になった姉弟に連れて来られていて、今にも諦めて消えてしまうかと思った」

 

 モモンガは当時、ぷにっと萌えから聞いたXオルタのネットでの蔑称、『無料課金ガチャ』を思い出し苦笑する。

 

 一方、漆黒の剣とンフィーレアの視線がXオルタに集まるが食事の手が止まらないことに苦笑する。アンパンを始末し、そろそろナッツ類に手を出しそうだ。

 

「そうやって少しずつ増えていって……でも、今は離れ離れ、です」

 

 一拍挟み、モモンガは自分の決意を確かめるように続けた。

 

「だから、俺は彼等を必ず見つけ出す。なんとしてでも」

 

 重く固い声が響いた。Xオルタの咀嚼音が場違いなほどに大きく聞こえる。

 

「すいません。ちょっと湿っぽい話をしちゃいましたね。ちょっと夜風に当たってきます」

 

 そのままチョコレートをナッツと合わせて食べようとしたXオルタに食べすぎだと言って引きずっていった。ナーベラルもそれについていくことになった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 先程までいた人物が去るとその人の話になることがある。

 

「すごい人達ですね」

「うむ……、頑張って欲しいのである」

 

 重い空気になり掛けていた時、ンフィーレアが恐る恐る話しかける。

 

「今日の戦闘、すごかったですね」

「ええ、オーガを両断する一撃に第三位階魔法」

「それに、ゴブリンを一瞬で全滅させたあの電撃もすごかったです」

「どんだけだよなぁ、ありゃ」

「確かに凄いことはわかるんですが実際どれくらい凄いんですか?」

 

 ンフィーレアの言葉にペテルが大剣の仕組みから説明するがうまく伝わらない。

 

「私はモモンさんは王国戦士長級じゃないかと思いますね」

「それは……アダマンタイト級の冒険者に、つまりは人間の最高位者に匹敵するという意味ですか?」

「そうです」

 

 ペテル達が頷きンフィーレアは絶句する。

 最硬度の金属アダマンタイトのプレートは人類最高の証明であり、英雄とすら呼ばれる。 それに匹敵する存在ということ。

 

「……すごいんですね。じ、じゃあ、後の2人も同じくらい……」

「ええ、多分近い実力はあると思います。ナーベさんのライトニングも普通より威力がかなり高いように見えました。えっちゃん、いえ、エックスさんはよくわかんないですが」

「確かに、あれは後衛から見たら訳がわからないんだろうな。あの子は戦士みたいに前に出る役だと思うのでイマイチ実力が分かりにくいんです」

 

 ンフィーレアの問い掛けにニニャとペテルが答えた。

 

「エックス嬢は変わってはいるが優秀な後衛だと思っていたのであるが……」

「そう見えることは確かだけど、えっとオルト・ライトニングだっけ?あれは後衛が使っちゃいけない魔法ですしね」

「なるほど、手から放射状に出るってことは前衛を巻き込みかねないんですね。だから前に出る役目ということですか」

「だからえっちゃんは前衛として動けるようになるためにモモンさんのことを師匠と呼んでいるんだろうな」

「あの小さな子がよくここまで遅れずについてこれると思ったがそのような理由があったとは驚きである!」

 

 漆黒の剣のメンバーが納得している姿にンフィーレアは戸惑いながら確認する。

 

「つまり、モモンさんは王国戦士長並の戦士で、ナーベさんは第三位階魔法の特に熟達した魔法使い。エックスさんは魔法が使える近接職で、全員アダマンタイト級に届きそうな実力者ということですか?」

 

 漆黒の剣のメンバーも頷き、話が進む。炎が照らす中会話が弾み、夜も更けていった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 夜が明けて太陽が昇るころ、彼らは野営地を離れた。

 間もなく、カルネ村が見えてくる段階になってンフィーレアが急に立ち止まる。

 

 ンフィーレアの話によると以前はなかった頑丈な柵がカルネ村を囲っていることに違和感を持ったのだという。それに対し村育ちで村の生活に詳しいニニャが渋い顔で不安を付け加えた。

 

 結局ナーベラルが上空から不可視化を併用して調査することになったが特別なものは見つからずそのまま進むことになった。

 街道が終わり、一行は一列になって麦畑の隙間を進む。途中、先頭を歩くペテルがわずかに違和感を覚えた瞬間だった。彼らは屈強なゴブリンに囲まれていた。

 

「武装を解除してもらいましょうかね?」

 

 ゴブリン将軍の角笛で呼び出された10以上のゴブリンたちに囲まれた漆黒の剣のメンバーに打開策は思い浮かばなかった。

 

「あっと姐さんが来るまでちょっと待ってほしいんすよね」

 

 ンフィーレアがその言葉に激高し、ニニャがそれをなだめた。ンフィーレアは苛立ちを抑えきれていないがわずかに落ち着いたようだ。

 

「俺たちは姐さんの村が最近、帝国の騎士の格好をしたやつらに襲われたから警戒しているだけなんだけどな」

「村が襲われたって……!彼女は無事なのか!」

 

 その時、村の入り口に1人の少女が現れた。その姿に驚いたンフィーレアの声が響く。

 

「エンリ!」

「ンフィーレア!」

 

 2人の久しぶりの再会は19匹の奇妙なゴブリン達に囲まれた中で行われた。

 




とりあえずFGOのえっちゃんの設定は全て反映させたい。
∞黒餡子とか∞チョコレートとかFGOのスキルです

知らない人がいたらFGOwikiでもどうぞ
見なくてもわかるようにしたいですがギャグのキノコのネタがオバロにうまく合わせられるか不安

それはともかくとしてやっとカルネ村に戻ってこれました。

アルトリア顔の宿命に漏れず腹ペコしてただけのえっちゃん。
前を向いて大人なモモンガさん、この差はどうして……

本家ヒドインがいないとえっちゃんがひどくなる。

まあ、どうせ元がずぼらキャラだし許してください。

感想意見文句評価待ってます。



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19話 思考

19話です。

感想ご意見ありがとうございました。

今回は一巻でしか出番のなかった人がちょっとだけ出てきます。




「そんなことがあったんだ」

 

 ンフィーレアは想い人の家族が無事なことに安心してホッとため息をつく。

 

「お父さんとお母さんも怪我で働けないから私が頑張らないとね」

「そ、そうだね……じゃあさ‼」

 

 突然ンフィーレアが大声を上げることでエンリが驚き肩を震わせる。

 

「も、もし困っていることがあったら言ってよ。できる限り手伝うからさ!」

「ありがとう!本当にンフィーレアは私には勿体無いくらいの友人だわ!」

 

 満面の笑みを浮かべたエンリと心に敗北感を抱えたンフィーレアの会話ははずむ。

 しばらくして会話がひと段落した時にンフィーレアはきりだした。

 

「それであのゴブリンは何?」

「村を助けてくれたアインズ・ウール・ゴウンの魔法詠唱者様がくださったアイテムを使ったらでてきたの。私に従って色々と働いてくれるわ」

「そうなんだ……」

 

 キラキラした瞳で語るエンリの様子に苦いものを感じ、ンフィーレアが相槌を打ちながらその救い主の話を聞いた。

 

 彼等は通りすがりの4人組で2人ずつ訪れたという。

 エンリを助けたのは仮面を付けたマジックキャスターの男性と漆黒のフルプレートの女性、先行して村に入ったのはXオルタと呼ばれた女性とそれに付き随うメイドらしい。その時のメイドが今も村に滞在しているので後で話を聞くことを決める。

 

 ンフィーレアには思い当たる節があった。

 今までの魔法の歴史を覆しかねないアイテムに対して従来の魔法とは違う独自の魔法を使う少女の事を思い出す。

 更には名前までほぼ同じだ。エックスがオルトライトニングや念動力を使うことに対し、Xオルタという戦士がエンリの両親を助けたらしい事。

 

「それだけじゃないんだよ。真っ赤なポーションをくれてーー」

 

 全てがンフィーレアの中でつながった。念の為、エンリにポーションの説明を求める。その内容は確かにエ・ランテルの宿の主人から買い取った物と同じだった。

 野営の時に聞いた言葉を思い出す。モモンの探す仲間達について。

 彼等が組んでいたチームの名をアインズ・ウール・ゴウンというのだ。

 ンフィーレアは罪悪感を抱きながら悩む。自分はエンリを助けてくれた相手の仲間を利用しようとしている。

 隠し事をしていることに対する罪悪感がンフィーレアの顔を歪めていた。

 

「どうしたの?なんか変だよ?」

 

 エンリの心配するような声を受けンフィーレアはモモンに直接話を聞きに行くことを決意した。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 モモンガとXオルタは村人の訓練を見て考え込んでいた。ナーベラルは背後に控えて静かに立っている。はたから見れば3人揃って村を眺め黄昏ている姿を描いた美しい絵のように見えただろう。

 まだ太陽は高く輝いていたが。

 

 最初に動いたのはXオルタだった。

 

「今夜泊まる場所の確認をしておきます」

 

 まだ日も登りきっていない時間帯だが、仕事を終え森から戻ってきたらこの村で夜を越す事は決まっている。宿屋のようなものは無いので寝床は騎士の襲撃で亡くなったモルガーという村人の家の1つだという。

 エモット夫妻が襲われる直前に殺された村人の名前だ。騒がしいが気立てのいい男、そしてXオルタがエモット夫妻を助けるために村に潜んでいた時、そのすぐ傍で殺された男でもあった。

 Xオルタは気を張りながらその家に入り、人が遺した物を見る。

 

 一方でモモンガが離れていくXオルタを見送ってしばらくした頃、ンフィーレアが残った2人の元に走り寄ってきた。僅かにためらった様子の後意を決したように口を開いた。

 

「モモンさんが探している仲間達はアインズ・ウール・ゴウンの方達なのでしょうか?」

 

 モモンガは僅かに息をのみ、開きかけた口を噤んだ。しかし、それは返答として十分だったようだ。

 

「さっきエンリと話して気がつきました。エンリの両親を助けたXオルタさんが多分エックスさんなんですよね」

 

 一拍おいてンフィーレアが深く頭を下げて続けた。

 

「ありがとうございました。エンリ達を助けてくれて。僕の好きな人とその家族を助けてくれて。後でエックスさんにも直接伝えたいと思います」

「はぁ……。もう頭を上げてくれ」

「はい……、モモンさん。それと実は……隠していた事があるんです」

 

 ンフィーレアの言葉を受けてモモンガはナーベラルをその場に留まらせ、少し離れた場所に移る。おそらくポーションの事なので予定通りとも言えるがナーベラルがボロを出すのを恐れてだ。

 

「実は……」

 

 ンフィーレアが語った内容は案の定ポーションについてで、宿の主人から買い取ったポーションの製法を求めてモモンガ達に接触したとのことだ。

 期待通りの言葉にモモンガは安心しつつンフィーレアを引き込むために話をはじめる。

 

「それの何が悪いんだい?隠し事をしながら手を差し出してきたといえば人聞きが悪いだろうがコネクション作りの一環だろう」

 

 罪悪感を消しきれないンフィーレアにモモンガは畳み掛ける。

 

「それでも納得できないならエンリ・エモット、だったかな?彼女の助けになってほしい」

「ど、どういう意味ですか?」

 

 ンフィーレアの食いつきにモモンガは満足する。戸惑いこそあるものの悪感情は無さそうだ。

 

「彼女は私の仲間が与えたアイテムによるものとはいえゴブリン達の指揮官になってしまっただろう。そのサポートさ」

 

 ンフィーレアの表情に納得の色が見えた。

 

「上に立つ以上責任が伴う。私達はあまりフォローできないだろうし、そういったものの手引き書を渡そうとしても文字がね……」

「はい!やらせていただきます!」

「ははっ、ああ、そうだ。いっそのことこの村に住んでしまったらどうだ。彼女の事が好きなんだろう?」

 

 ンフィーレアの顔が一種で朱に染まり、慌てはじめる。モモンガはここで最後に1つだけ付け加えることにした。

 

「後1つだけ、アインズ・ウール・ゴウンは今のところこの村としか接触していない。理由は察してくれ。だから、ポーションの研究についてはできれば余り村の外でして欲しくないんだ。どうしてもというのならこの村でなら支援できるからここで研究してほしい」

「……はい!」

 

 僅かにためらったようにも見えるが頷きながら答えた。

 

「良かった。感謝する。ところでそろそろ出発の時間かな?」

「あ、はい。後1時間くらいで森に入ろうかと思います。他の方にも声をかけてくるので準備をお願いします。エックスさんにもお礼を言いたいですし」

 

 そう言って去っていくンフィーレアを見てからモモンガはナーベラルに言った。

 

「アウラに伝えろ。1時間後、森に入る。仕事がひと段落ついたら合図を送る。それに合わせて森の賢王と接触できるよう準備をしておくように、とな」

 

 途中、遠くでXオルタの驚くような声が聞こえてきたが問題はなさそうだった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「では、これから森に入りますので、僕の警護をよろしくお願いします」

 

 ンフィーレアが注意事項を説明していく。森を覗けばぽっかりと空いた空間の先に鬱蒼と茂る木々が目に入る。カルネ村の柵にするために伐採された部分だがその景観と相まって巨大な魔獣がその顎門を開いて待ち構えているように見えた。

 森の賢王の話に入ったことでモモンガが声を上げる。

 

「もし森の賢王とやらが現れたなら、殿は私たちが受け持ちましょう」

 

 モモンガの自信溢れる言葉に周囲からの賞賛が引き出される。それがモモンガには少しむず痒い。隣でどこ吹く風といった様子で村の方向を眺めるXオルタや自慢げな様子のナーベラルが羨ましくなってくる。

 

「なので、逃げる場合には即座にその場を離れてもらえますか?巻き込みたくありませんので」

 

 続けた言葉に周囲の了承を受け、彼等はそのまま森の中へと向かっていった。

 

 森の中では口数が少なくなる。先頭を進むルクルットが五感を働かせて注意深く歩いている姿を見える。モモンガは彼が周囲に誰もいないと思っているようなのを見て近くにいるだろうアウラを誇らしく思う。

 

 目的地に着くとンフィーレアを中心として採取がはじまった。モモンガとナーベラルは採取する薬草の種類がわからなかったのでレンジャーであるルクルットとともに周囲の警戒をするために見張りを行っている。Xオルタは薬草を探すポーズを取っているが他の雑草と区別がついていないようで所々生えている茸を集めて食べられるか調べているようだ。

 

 ある程度 採取が終わったと見てモモンガは一瞬だけ<絶望のオーラⅠ>を解放する。これがアウラへの合図だ。これに応じるように、広場から見てモモンガの方向から音が聞こえてきた。

 ルクルットがすぐさま異変を察知して声を出す。

 

「何かがくるぞ。モモンさんの方からだ」

「森の賢王でしょうか」

「撤収だ。最初にあった威圧が圧倒的すぎる。モモンさん。殿はお願いしてもよろしいですか?」

「ええ、お任せください……後は私達で対処してみせます」

 

 不安と羨望の眼差しとともに漆黒の剣のメンバーに護衛されたンフィーレアが撤退していく。

 十分に離れたことを確認した頃にモモンガの脇にはダークエルフの少女が控えていた。

 

「万事うまくいっているようだな。アウラ」

「はい!モモンガ様。例のハムスターは間も無くここに参りますし、マーレと作っているダミー拠点の建築も順調です」

「そうか、なら――」

 

 長い鞭のようなものがモモンガに向かって伸びてきた。グレートソードで弾くがアウラとナーベラルは怒りをあらわにする。

 

「お前たちは下がっていろ。オルタさん、やんちゃなペットの躾です。私がやっても構いませんね」

「はい、いいですよ。頑張って手加減してください」

「大丈夫ですよ。無傷で捕らえて見せましょう」

 

 モモンガが自信満々に言ってのけた後予想外の方向から返答がきた。

 

「それがしを無傷で捕らえるでござるか?なかなか言うでござるな。その実力見せてもらうでござるよ!」

 

 時代錯誤な言葉を話す巨大なハムスターだった。期待に満ち溢れていたXオルタの顔が固まり、はたから見てもモモンガのやる気が一気になくなっていったのがわかった。

 

「ござる?」

「それがし?」

 

 先程までの自信とやる気とは裏腹に一気に腑抜けた声がモモンガとXオルタの口から漏れた。

 




一巻の人はモルガーさんです。エンリのセリフにちょっとだけいます。

人の死に反応しない異形でも、原作でアインズ様はニニャの日記を忘れずに恩義として覚えていました。

モルガーさんの家はえっちゃんにとってそういうものです。それがどう記憶するかはまだ書きませんが。というよりストーリーが進む上でそうなんだなぁとかふと思い出すような事にしたいです。

後、やっぱモモンガさんは敏腕営業マンというか交渉上手だと思います。うちのがうまいかどうかは別にして

感想評価指摘突っ込み待ってます。


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20話 感情

20話です。

かなり遅れましたが少し長めになっています。

あと、最初の方を少しづつ読みやすくしようと手を加えていってます。


 決着は一瞬だった。

 モモンガが相手をする気力を完全になくしたため予定していた実地での戦闘の実験すらせずに<漆黒のオーラⅠ>でケリをつけたのだ。モモンガとしてはちゃんとした戦士の仲間が見ている前で侍ハムスターごときと激戦を繰り広げるようなことは恥ずかしかったというのもある。

 ハムスターが恐怖でひっくり返って命乞いをしているのを見て、モモンガはため息とともに口を開く。

 

「我々はアインズ・ウール・ゴウンという。お前はこれから我々に仕えることができるか?」

「あ、ありがとうでござるよ! 命を助けてくれたこの恩、絶対の忠誠でお返しするでござる!」

 

 見た目と噛み合わない口調にげんなりしつつモモンガは応じた。

 

「ああ、それと家族や部下がいるようなら連れてこい。面通しを済ませておきたい」

「それがしはずっと1人で生きてきたでござる。家族や部下はいないでござるよ」

 

 意外にも重い返答にモモンガは驚き、僅かに憐憫の目を向ける。期待外れな相手ではあるが慣れてくると可愛げも感じてくる。これもタブラ・スマラグティナの言っていたギャップ萌えの一種だろうかなどと考えながら呼びかけた。

 

「じゃあ、ハムスケは私たちの後ろからついてくるように。オルタさん戻りますよ……どうしました?」

「あ、えっと、帰りこれに乗りたいなって思って。歩くの面倒なので」

「なるほど、いいんじゃないですか。従えたって感じがしますから」

 

 そう言った後2人は森の賢王に向き直る。

 

「ところで殿、ハムスケとは誰でござるか?」

 

 最後まで気が抜けることを言うハムスターに今度はその場に居た4人がため息をついた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 空が赤くなり始めた頃、森から出てきた2人を見て待ち構えて居た面々が落ち着きなく話しかけて来る。

 

 

「無傷とは……良かった。無事だったんですね!」

「いや、エックスさんはどこです⁈」

「モモンさんよぉ。あんた後ろに何連れてんだ? 仲間を人質にでも取られたのか?」

「いや、違いますよ。おい、来るんだ」

 

 若干イラっときたモモンガはルクルットの言葉を流して森の賢王を呼び出す。

 背後の森から巨大なハムスターが現れ、その上に乗っているXオルタから声がかかる。

 

「あっ、もう着きました? ただいま、です」

「そうだな、エックスもそろそろ降りたほうがいいだろう。それでですね、これが森の賢王です。先程ねじ伏せて支配下におきました」

「まさに殿のおっしゃる通りでござる。この森の賢王ハムスケ、殿達につかえ、共に道を歩む所存。皆様にはご迷惑をおかけしたりはせぬでござるよ!」

 

 ハムスケこと森の賢王はモモンガたちに従っていることを宣言した。モモンガからして見れば適当な大型モンスターを捕まえて森の賢王と名乗らせていると思われるのが不安だったので周囲を見渡して表情を確かめる。

 

「……これが森の賢王! 凄い!」

「こうしているだけでも強大な力を感じるのである!」

「これだけの偉業を成し遂げるとは、こいつは参った」

 

 予想外に漆黒の剣のメンバーやンフィーレアからの反応は高く、モモンガは逆の意味で戸惑う。

 ジャンガリアンハムスターが大きくなっただけだろ。

 内心でそう呟いてから周囲に問いかける。

 

「……皆さんはこの魔獣の瞳を可愛らしいと思いませんか?」

 

 モモンガは周囲に並ぶ目がハムスケのものよりも丸くなったような錯覚に陥った。そこまで驚くことだろうか?

 

「モ、モモンさん! 貴方はこの魔獣の瞳が可愛らしいと言うのですか! ニニャはどう思う?」

「……深みある叡智を感じさせるものです。どう余裕の態度でも私には可愛らしいとは思えません」

「…………オ、エックスとナーベはどう思う?」

 

 最後に自分に近い価値観をしているだろう2人にモモンガは呆然としながら尋ねた。

 

「私は瞳よりモコモコしてるのがいい、です」

「強さは別として力を感じさせる瞳ですね」

 

 話がズレてないかと思い一度、森の賢王の瞳を覗き込み叡智などカケラも感じられないことを確認する。とりあえず美的感覚の違いについての問題を無視することにした。

 

「……とりあえずこいつは村の外に繋げておいて今は戻りましょう。いいですか?」

 

 モモンガが呼び掛けると漆黒の剣とンフィーレアは我に返り3人と1匹の前を歩いて村に戻っていった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 村に着き、彼らはそれぞれのチームが泊まる空き家に入る。モモンガ達もXオルタが下見をしていた家に居る。ナーベラルだけはモモンガの指示によって村に滞在しているルプスレギナの元に不可視化などを利用して訪れていた。

 

「おおっと、ナーちゃん。どうしたんすか? 何か用事でも?」

「ええ、モモンガ様から互いの情報を報告し合うようにとの事よ。それが済んだら世間話でもして寛いで来るようにとも言われたわ」

 

 そのままナーベラルはルプスレギナと向かい合うようにして座る。

 

「そうっすか。私の方は特に変わったことは無いっすよ。あ、いえ、1つあるっすね。今日、至高のお二方がこの村にお越しになられたっす。これ以上に重要なことは無いっすよ」

 

 ルプスレギナの言葉にナーベラルは完全に納得し、深く頷いた。

 

「その通りね。至高のお方々のこと以上に重要なことは無いものね」

「次はナーちゃんの番っすよ。お二方のそばに仕えているんすから色々あるっすよね」

 

 期待の色が濃くでているルプスレギナの言葉を聞いてナーベラルは自慢気に話し始める。

 

「そうね、ルプー今日あったことを話すだけでも一晩じゃもの足りないのだけれど……。かいつまんで話すわ」

 

 そう言うとナーベラルは今日のモモンガとXオルタの様子を盛りに盛って話し始めた。余計な美辞麗句が散りばめられ、大冒険活劇になってはいるがルプスレギナも特に気にした様子はない。

 

「とりあえずはこんなところかしら。言葉では言い表せないことが多すぎて残念だわ」

「おおー、羨ましいっす。私も見たかったっすね」

「あら、明日この村を出るときにモモンガ様が従えた魔獣については目にすることができると思うわよ。それにもしかしたらそれに騎乗なさるXオルタ様のお姿も拝見できるかもしれないわ」

「それは楽しみっすね。夜が明けるのが待ち遠しいっすよ」

 

 そのまま2人の話は他のプレアデス達のことに移っていく。

 

「そういえばユリ姉とエンちゃんが仕事が少ないみたいでナーちゃんのこと羨ましがっていたっすよ」

「あら、そう。なら、シズはどうなのかしら? あの子もナザリックから出てないけれど……」

「シズちゃんはるし☆ふぁー様のお造りになったトラップの調査でナザリック中を飛び回ってるっすからね。多分ナーちゃんの次に忙しいっすよ」

「そうなの、あの子も重要な仕事を任されているのね。後は……」

「ソーちゃんについては外の任務っすからね。私達には細かいことはわからないっす」

 

 お互いの近況を話し合い、満喫したところで既に夜半を過ぎていることに気がついたナーベラルが席を立った。

 

「私はそろそろお二方のそばに戻るわ。ルプーはどうするの?」

「私はこのままアルベド様に報告しとくっす。ナーちゃんの分も伝えておくっすね」

「じゃあ、頼んだわよ、ルプー」

 

 ナーベラルがいなくなった部屋でルプスレギナはメッセージを送る。

 

『ルプスレギナ・ベータ、何かしら?』

「モモンガ様とXオルタ様が私に任された村にお越しになられたので報告っす」

 

 ルプスレギナにはメッセージの向こう側でアルベドが姿勢を正したのがはっきりとわかった。

 

『詳しく説明しなさい。詳しく、ね』

「了解っす。まず、お二方は冒険者としての仕事でここに来たっす。そのままアウラ様に誘導させた魔獣を従えるために森に入ったっす」

『そう、それで森の中で何が起こったか、貴方は知っているのかしら?』

 

 アルベドの食いつきがいいことにルプスレギナは満足してさらに続ける。

 

「もちろん、ナーちゃんにしっかり聞いておいたっすからね。森でその魔獣にと相対したモモンガ様がその魔獣を一瞬にして従えたらしいっす。あまりの早業にナーちゃんは立ち尽くすしかなかったって言ってたっす」

『流石はモモンガ様ね。でも実際にどんなことをなさったのかしら? 見てみたかったわ』

 

 賛同の意を示しながらルプスレギナは続ける。

 

「その後Xオルタ様がその魔獣に乗って森から戻ってこられたそうっす。先導するモモンガ様と魔獣に乗ったXオルタ様のお姿はまるで一枚の絵の様に素晴らしかったそうっすよ」

『……は? なんて?』

 

 アルベドの声が1オクターブ下がった。ルプスレギナは若干怯みながら捲し立てる。

 

「え、えっともう一度言うっすね。モモンガ様が騎乗するXオルタ様の先導をなさってその時のお二方のお姿は素晴らしかったってナーちゃんが言ってたっす! あ、後Xオルタ様は明日村から出るときにもその魔獣に乗るかもしれないらしいっす!」

『…………』

 

 急に黙り込んだアルベドにルプスレギナは戸惑い呼び掛ける。

 

「あ、あの、アルベド様? どうしたっすか?」

『……まさか、そういうことなの?モモンガ様がXオルタ様の為にわざわざ魔獣を捕まえて贈り物にしたということ……つまり、Xオルタ様がモモンガ様を狙っていたのではなくて……逆ということ? そ、そんなぁ……』

「あれ? 切れちゃったっす。まあ、いうこと伝えたしもういいっすよね』

 

 ルプスレギナは自分に言い聞かせる様に独り呟いた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「モモンガさん、この家って私が村に隠れてモモンガさんの合図を待っている最中に死んだ人の家なんですって」

「え?」

 

 唐突なXオルタの言葉にモモンガは不意を打たれ声を上げた。

 

「いきなりなんですか?」

「いや、私はここに住んでいた人間を見捨てたってことです。その時はなんとも思わなかったくせに今更申し訳ないと思ってしまっている」

 

 自嘲気味に答えたXオルタの言葉にモモンガはなだめるように応じた。

 

「仕方ないと思いますよ。だって俺たち異形じゃないですか。確かに元人間だからそういうことを気にしちゃいますが……、それでも気になるならこれから気をつけてればいいんですよ」

 

 一息ついてからモモンガはさらに続けた。

 

「だって俺たち異形になって1ヶ月経ってないんですよ。言ってみれば異形種0歳です。問題くらい起きます。大事なのはこれから、その事を忘れないようにしてギルメンの皆に胸を張れるように頑張ればいいんです」

「そういうもの、ですか?」

「そういうものです。……それに、人が死ぬことに関しては私も注意しないと仲間に怒られそうですしね」

 

 2人で小さな笑いを漏らし安心したような雰囲気で寛ぎはじめた。

 落ち着いてきた様子のXオルタがアイテムボックスからあん饅を取り出し半分に割る。

 

「なんか暗いところでひそひそ話して修学旅行みたい、ですね。どうぞ、あん饅です」

「お、ありがとうございます。……これ回復効果付いてないですよね?」

「ないですよぅ。ただのあん饅です」

「良かった。オルタさんの∞シリーズは回復ついてて食えなかったので……。それにしても修学旅行、ですか。だとするとナーベラルが巡回してくる先生、ですか?」

「おお、怖いです。ナーベ先生に見つからないようにお菓子を食べきらないと」

 

 2人で本来冒険者としてもう1人いる筈の相手の話をすると、噂をすれば影と言うべきか家の外に気配がした。

 

「ナーベ先生の襲来ですよ。モモンガさんはあん饅食べきれますか?」

「バレちゃまずいんですか⁉︎ ちょっと奥で食べてくるので時間稼いでください」

 

 そのままモモンガが席を立ち玄関から見えない位置に隠れたらXオルタがナーベラルを迎え入れた。

 

「どうだった? ルプスレギナと色々話せた?」

「はい、村の事や他の姉妹のことを聞くことができました」

「へぇ、じゃあプレアデス達の様子とか私にも教えて、ね」

「はい、畏まりました」

 

 モモンガは食べ終えたのか少し急いで戻って会話に加わる。こうして眠らない異形達の夜はあけていった。

 




アルベドの勘違いが加速する。

そろそろ二巻も後半ですね。

オリ展開が徐々に多くなるのとかでペースが少し落ちています。すいません。

感想評価意見質問ください。


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21話 露見

21話です。

感想ありがとうございます。

後一通りここまでの修正はしたつもりです。多少は読みやすくなっていたらいいなと思います。

今回はちょっと長くて暴走しました。
ごめんなさい。
あと、今回は最初の1000文字くらい無視しても意味は通ると思います。


 エ・ランテルを出発して二泊三日の旅、彼らが再び街の城壁を目にした頃には既に東の空で星が煌めいていた。

 先頭を歩くペテルが声を出す。

 

「じゃあ、これからエ・ランテルに入りますがエックスさんとハムスケさんはそのまま1番後ろをついてきてください。衛兵の人達を驚かせてもまずいのでまずは私とモモンさん、そして依頼人であるンフィーレアさんの3人で説明してきます」

 

 そう言ってまずは代表者である3人がエ・ランテルの門番に声を掛け、ハムスケのことを説明しにいく。数分後うまくいったのか手招きしている3人が見えた。

 外で待っていた5人のうち、まず漆黒の剣の3人がペテルに合流して町に入った。それにンフィーレアが馬車を引いて行き、最後にモモンガとナーベラルに先導されてハムスケに乗ったXオルタが進む。

 

 この順番はカルネ村を出た時から同じだ。もともとは感知に優れたルクルットを前に、万が一の背後からの奇襲にも対処できるよう後方に射程の広い尻尾があるハムスケが最後尾についていたのだ。

 

 街の中で一行は立ち止まる。大通りで立ち止まっても直接文句を言うものはいない。むしろ多くのものが集団の最後尾にいる魔獣達に興味を持ち道を開け、背後に回ろうとする。

 彼らの言葉は概ね好意的なものだ。ひそひそとした声で口々に魔獣の勇壮な姿を褒め称えるものがほとんどだ。

 

 しかし、モモンガの耳にはそれ以外のものが僅かに聞こえていた。魔獣の上で全身を使いしがみついている少女、Xオルタについてだ。

 

 ここまで移動しているときはその小柄さと衣服の色、そして揺れによって夜闇に紛れてさほど目立っていなかった。しかし、魔獣が立ち止まったことによってはっきりとその姿を視認できるようになってしまっていた。

 背後から見るその姿はあまりにも無防備だ。

 

 自身には大きすぎる魔獣に両手両足を広げてしがみついている。高い所で蹲ったようにも見える。

 

 魔獣にしがみつくために大きく広げてしまった足は長旅のために乱れたコートの裾をはだけさせスカートをめくり上げている。道の両脇に向けて投げ出された爪先から遡っていくと黒く艶めかしいソックスに締め付けられた太ももから白い、しかし確かに血の通った赤みを僅かに帯びた桜色の付け根をさらけ出していた。黒と肌色の境目にある微かな盛り上がりがその肉感を強調し二色のコントラストを際立たせる。

 その奥には申し訳程度に秘所を覆う黒い布きれがありその形が見るものの情欲を誘う。その布切れも今日1日の汗で肌にしっとりと張り付き、湿った布の奥が透けているかのようにその中身の形を示している。張り付いたショーツの端からは僅かに肉が盛り上がりその柔らかさが見て取れた。

 ガーターベルトが太ももを押さえつけていることも肉感を強調している要素の1つだろう。黒と黒に挟まれた桜色の肌はそれを見るものの目を強く惹きつけたのだ。

 

 Xオルタにとって不幸なことはこれら全てが魔獣の背の上という極めて注目を集める、あまりにも見やすい場所にあった。扇情的で蠱惑的な光景を晒した場所は遮るものが何1つとしてない場所だった。

 さらには対象の外見がまだ成人というには僅かに届かない少女であったことも背徳感を醸し出す。一方で相応に育っていることがその美しさを演出して本来禁忌に当たるであろう幼さに欲情することの罪悪感を少なくしていく。彼女の無防備な姿は男達にいつもの家庭や宿、娼館での妻や恋人、娼婦が示す欲情を示されることを前提とした妖艶さとは違い無垢な物を汚している感覚を与えた。

 見られていることに気がついたのか恥じらいながら身をよじる姿も可愛らしく色っぽかった。

 

 モモンガが聞こえていたささやきはXオルタにも聞こえていたのだろう。身をよじる程度ではどうにもならないと理解したらしくハムスケから降りてくる。その顔はふだんの白い肌からは想像もつかないほど赤く染まって見えた。

 モモンガはどのように慰めるべきかわからなかった。唯一モモンガに取れた方策は放置することのみだった。そのままペテルとンフィーレアの話し合いに入る。

 

「では、私はこれから冒険者組合でハムスケの登録をしてきますね」

「ああ、じゃあ私たちは先に荷物を降ろしておきます。それで森の賢王の登録が済んだらモモンさんはンフィーレアさんの所に来ていただくという形でいいですか?」

 

 話がまとまったところでモモンガはXオルタの降りたハムスケを引いて組合に向かう。するとナーベラルが近寄り疑問の声を投げかけてきた。

 

「あ、あのモモンガ様、Xオルタ様があのガガンボ達と共に行ってしまわれたのですが……」

 

 ナーベラルの演技が完全に剥がれていることにモモンガの全身から力が抜けていく。聞かれている内容があまり触れたくはないことも相まって返答がおざなりになる。

 

「……まあ、そういうのが必要な時もあるのだ。あまり気にするな」

「なるほど、さすがはモモンガ様とXオルタ様です」

 

 何がなるほどなのかは分からないが納得したのなら良いだろう。今日の事は出来る限りナザリックの面々には伝わらないようにしようと心に決めたモモンガはため息をつきながら重い足取りで歩いていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 Xオルタはこっそりとンフィーレアの馬車について行ったつもりだった。しかし、Xオルタの隠密系スキルは霊体化1つだけであり、そうでなければアイテムを利用しなければ人から隠れることはできない。

 端的に言うとすぐにバレた。レンジャーであり、最初に気がついたルクルットが代表してXオルタに尋ねる。

 

「ところでえっちゃんはなんでこっちにいるんだ?」

「あ、え、え……」

 

 聞かれた事にXオルタはうまく答えることができない。焦りつつ、上気して赤くなった顔を隠しながらどうにか絞り出した言葉はとてもか細いものだった。

 

「い、今はハムスケ、と一緒にいたくない……」

 

 それだけで終わりだ。平時は心がけている丁寧な言葉遣いもなりを潜め取り繕う余裕もないことがわかる。多少なりとも事情を察することができたのはニニャだけだった。

 

「……大変、でしたね……。とりあえずンフィーレアさんの店に先に行ってモモンさん達を一緒に待ちましょうね」

 

 そう言ってニニャはXオルタを集団の内側に入れて道行く人々の目から隠す。Xオルタはンフィーレアの馬車の後ろでニニャに元気付けてもらいながらバレアレ薬品店に着いた。家の裏口に回り薬草の保管場所に入った一行はそれぞれ採取した薬草の束を運び始めた。漆黒の剣のメンバーがそれぞれ運びはじめ、Xオルタは念動力で複数の束をまとめて持ち上げるとンフィーレアが悲鳴のような声をあげた。

 

「エ、エックスさん、それはエンカイシです! ニュクリとは分けてください!」

 

 何について言っているのか微塵も理解できていないXオルタは首を傾げて尋ねる。

 

「じゃあ、何を運べばいい、ですか?」

「え、えっと……あっ、こっち側に積んであるものは全てングナグなのでこれを運んでください」

「了解、です」

 

 ンフィーレアの指示に従い今度こそ正しい薬草を正しい場所に運ぶ。

 やがて全ての薬草が所定の場所に置かれたことでンフィーレアが声をかけた。

 

「お疲れ様です! 果実水が母屋に冷やしてあるはずなので飲んで行ってください」

 

 それを聞いた漆黒の剣のメンバーが嬉しそうに声をあげ頷く。Xオルタもその名前から未知の甘味とあたりをつけ、期待してンフィーレアのすぐ後ろに張り付くようにして母屋に向かった。

 ンフィーレアが母屋を案内しようとした時、向こう側から扉が開かれた。

 

「はーい。おかえりなさーい」

 

 短めの金髪が可愛らしい女が立っていた。Xオルタは即座に敵対者と理解した。スキル<直感>の効果だ。ユグドラシルでは戦闘時にはクリティカル成功率を上げるだけの効果しかなかったが今はなんとなく勘が冴え渡る時があるという効果が増えていた。

 

「いやー心配しちゃったんだよ? いなくなっちゃったからさ。すっごいタイミング――。……どうしたのかな? そこの子は?」

 

 声が一瞬重くなる。Xオルタが魔法詠唱者が攻撃するときのように右の掌を女に向けていた。

 

「あなたは、敵、です」

「ふふーん、君結構いい勘してるねー。でも、魔法詠唱者ごときが私に喧嘩売って勝てるわけないじゃん。だってスッといって――ゴフッ」

 

 攻撃のため僅かに短髪の女が前傾姿勢をとった瞬間だった。そのままの体勢で真後ろに吹き飛び壁に当たり崩れ落ちた。

 しかし、あまり大きなダメージを受けなかったらしく立ち上がってすぐに気勢を上げて飛びかかった。

 

「てめぇっ……くっ……っ……あっ……」

 

 今度は飛びかかったその場で止まり首を抑えながら浮き上がっていく。息ができないのか声が出ていない。

 なぜ呼吸ができないのかわからず喉を掻き毟り爪が食い込んでいる。しかし、それも長くは続かない。首が赤くなり皮がむけそうになるにつれ腕からは力が抜けて最終的にはだらんと垂れ下がってしまった。

 

「あ、あの、死んでしまったんでしょうか?」

 

 2人のやりとりから完全に置いていかれたンフィーレアと漆黒の剣が警戒しつつ問いかけた。

 

「あ、いえ、とりあえず気絶させただけ、です」

「なるほどね。じゃあ危険人物っぽいし縛っておくぜ……ゲェ」

 

 ルクルットがロープを取り出し女に近づいてマントをはだけさせた途端、ありったけの嫌悪と憎悪の篭った声を漏らす。

 

「……こいつ、冒険者殺しだ。オリハルコンまでやってやがる」

 

 苦虫を噛み潰したような声だ。両手足を縛って武器を取り上げたルクルットはさらに続けた。

 

「早めに衛兵詰所にやったほうがいいぜ」

「あ、じゃあ、ぼ、僕が行ってきますね」

「いや、ンフィーレアさんはここにいたほうがいいでしょう。こいつの狙いはンフィーレアさんだったと思われますのでここは私が行ってきましょう」

 

 ンフィーレアの提案をペテルが却下してそのまま表に出る。数分もしないうちに彼は衛兵を連れて戻ってきた。

 

「どうもこの騒ぎが外にも漏れていたようで衛兵の方が近くまで来てくださっていたみたいです。このままこいつを連れて……ああ、いや、モモンさんを待ったほうがいいですね。誰もいないとまずいでしょうし」

「うむ、そうであるな。モモン氏にも伝えるべきである。また、恥ずかしながらいてくれた方が安全でもある」

 

 そう言ってペテルは衛兵と話し合い、もうしばらくこの場で待つことにした。

 

 一方、先ほどまでこの場にはもう1人の男がいた。名をカジット・バダンテール、襲撃者の女クレマンティーヌと組んでいた邪教集団ズーラーノーンの幹部の1人だ。

 

「あの女があそこまで容易く敗れるとは……足を引っ張りおってどうしてくれる……」

 

 あまりにも容易く囚われた相方の愚痴を吐くもそれで済ませていい話ではない。

 クレマンティーヌはカジットの計画の全容を知っているのだ。生け捕りにされ、しかも自身より優れた魔法詠唱者がそばにいる状況は最悪に近い。

 せめて死んでくれるか捉えているのが街の衛兵などならどうにかなるのだがと考え、妙案が浮かぶ。

 

 カジットは纏っているローブを脱いで抱えていたアイテム「死の宝珠」を包み近くに隠す。頭髪がなく頰もこけているため特徴的な外見を隠そうと大きめの布でバンダナ状に頭部を覆い一介の町人に見えるよう多少の変装をして大通りに出て喚き始めた。

 

「だ、誰か来てくれ! バレアレ薬品店に強盗だ! 金髪の狂ったような女戦士があそこの坊ちゃんを待ち伏せていたみたいなんだ! 誰か衛兵に伝えてくれ!」

 

 叫びながら街を走り回りそのまま途中で用意していた隠れ家に潜む。もはや5年かけた計画も捨ておくべきだろう。圧倒的な力の差を見せつけられたせいか自身の思い切りがやけにいいことにカジットは僅かに苦笑する。カジットにはこの街でできる行動はもうないだろう。

 その夜1人の魔法詠唱者がエ・ランテルをひっそりと抜け出した。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 モモンガが簡易的な登録を済ませて組合を出るとやけに町中が騒がしい。近くを歩く人に聞いてみると驚くべき答えが返ってきた。

 

「ああ、バレアレ薬品店で捕り物があってな。金髪の女が捕まったらしい。かなり美人らしいぜ」

 

 男の答えはモモンガにとって最悪のものだった。バレアレ薬品店に向かったメンバーは6人、そのうち金髪の女に当てはまるのはXオルタ一人しかいない。簡単に捕まるような存在ではないだろうことがさらに不安をあおる。精神安定化が発動してもすぐに不安が頭をもたげてきてまた安定化が働く始末だ。そのままモモンガは走り出そうとするが場所がわからないことに気が付く。先ほどの男につかみかかり合わせて聞いた。

 

「バレアレ薬品店はどっちだ」

「あ、あっちの方だよ、ほら人が集まっていくのが見えるだろ」

 

 ドスの利いた声におびえたのか若干どもっているが指さしながら教えてくれる。相手に感謝の言葉を伝えて走り出そうとしたところ今度は組合の中から声がかかった。

 

「あん?」

「あ、あの魔獣を置いていかないでください。特別な手続きなしに組合に置きっぱなしにはできません」

 

 モモンガはこの後の予定があったのでまだ自分が街に連れ込むだけの最低限の手続きしかすませてないことを思い出す。そして、ハムスケを連れて魔法詠唱者であることを隠しながら最速で目的地に向かう方法を導き出す。

 

<パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士>

 

 モモンガの導き出した解は単純明快だ。レベル100の戦士であればハムスケを抱えながらでも今の最高速度を優に超える速さで移動できる。下手な魔法で正体がばれる危険もないだろう。

 

「ナーベ、お前はフライで後からついてこい! 私は先に行く」

 

 いうだけ言って返事も聞かずにモモンガは走り出す。

 結果、巨大な魔獣を肩に抱き人の限界を優に超えているであろう速度を出す漆黒の鎧の戦士の都市伝説が生まれた。

 




えっちゃんは黒、異論は認めない。

この辺からオリ展開が本格的に混ざるんじゃないかな……

と思っているけどどうなるか

感想突っ込み意見文句たくさんください。


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22話 関係

22話です。

感想指摘ありがとうございます。

書いていると変なところが重くなる。

前回と比べてシリアス気味のはず


バレアレ薬品店でハムスケを担いだモモンガを出迎えたのは見覚えのない呆然とした老婆だった。

 

「……いやはや森の賢王を従えたとは聞いたがまさか背負って来るとは思いもよらんかったわい……」

 

モモンガは自身の状況を客観的に説明されたことで一気に流れていない筈の血の気が引いた。羞恥心などでは表せない感情だ。すぐに精神安定化が働くが僅かに遅かった。先に冷静さを取り戻し口を開いたのは老婆の方だった

 

「う、うむ。まずは自己紹介からじゃな。わしはリィジー・バレアレと言うんだがお主はモモンさんじゃの。お主の仲間も中にいるので寛いでいってくれんかね?」

 

極めて友好的なリィジーの様子にモモンガは自身の失敗を感じた。Xオルタは捕まったわけではない、むしろ手柄を立てた側のようだ。

 

「……その前に1つ、騒ぎになっていたようですが具体的に何が起きていたのか説明していただいてもよろしいでしょうか?」

「ふむ、そうじゃな。実はわしらの店に入った強盗をお主の仲間が取り押さえてくれたのじゃよ。それが街中で騒ぎになっておってな」

 

リィジーは奥へ案内しながらにこやかにモモンガに大まかな説明をする。

 

「わしはちょうど家を出ていての、騒ぎを聞いて戻って来たんで詳しい話は」

 

奥へ入るとXオルタと漆黒の剣が待っていた。こちらに気がついたXオルタが手を振って来るがコップは口から離れない。

 

「ああ、モモンさん登録お疲れ様です。強盗の件はもうご存知のようですね。では、私達は討伐報酬の申請をしておくのでモモンさんは明日の朝に組合で受け取ってください」

 

ペテルがそう言って漆黒の剣のメンバーがモモンガと入れ違いになる形で部屋を出て行った。残ったモモンガ達にンフィーレアが声をかける。

 

「今回は本当にありがとうございました。カルネ村でのことも戻って来てからのことも皆さんがいなかったら大変なことになっていました」

 

そういいながら追加報酬を渡すと同時にもう1つのアイテムをモモンガに手渡した。赤いポーションだ。

 

「これ、お返しします。おばあちゃんとも相談したんですけど僕たちが持っているべきじゃないだろうって思うんです」

「……わしは惜しいと思うんじゃがな。まあ、仕方なかろう」

 

清々しい顔をしたンフィーレアと苦笑いしながら言ったリィジーの顔を見て最も戸惑ったのはモモンガだ。このポーションは現地の有能なエンジニアとしてこの2人を引き入れるための餌だったのにここで返されてはコネクションが一気に貧弱になってしまう。

 

当たり前のことだがビジネスの世界では恩義だの感情のみで繋がったコネクションより契約書や物の取引を通して繋がったコネクションの方が強固だ。ここでポーションを返却されることは契約を一旦白紙にすることになりそうなると3日間しかない薄い関係になってしまう。さらに悪いことにモモンガからバレアレ薬品店に接触する理由がなくなるのだ。

 

焦った声でモモンガは言った。

 

「ま、待ってください。そのポーションはもうあなた方のものでしょう。それに相応に高価な筈です。こんなついでみたいな形で渡されても困ります」

「ついでなんかじゃないですよ」

「そうじゃの。おぬしの仲間が居なければ孫の命は無かったじゃろう。この子の命の値段と考えればずっと安いわい」

 

モモンガはこの流れで

 

「いいえ、結構です。返されても困ります」

 

などと言えるほど無神経では無かった。代案を考えようと気分を落ち着けて周囲に目をやる。

Xオルタがナーベラルに水の味だとかミネラルについて説教をしていた。あまりの能天気さにイラつくがナーベラルが交渉の場から離れてXオルタの話に集中している事が重要なので一応感謝しておこうと思った。とりあえず黙っているのもまずいので受け取る。

 

「……そういうことなら仕方ないですね。ひとまずこれは受け取りましょう……」

そう言ってモモンガは席に着きンフィーレアが注いできた果実水に口をつけてから尋ねた。

 

「ところで何があったのかについてンフィーレアさんから伺ってもよろしいでしょうか?」

 

Xオルタとンフィーレアの間で視線を行き来させながら肩をすくめて言った。これは抜けてそうなXオルタから聞くよりはンフィーレアから聞いた方が正確な話を聞けるだろうから、というのを示すジェスチャーだ。

実際にモモンガが真面目な話をしている間中、Xオルタがペロロンチーノの香水などと言った間抜けそうな演説をナーベラルにしていた事がそのジェスチャーの説得力に拍車をかけていた。

納得してくれたらしいンフィーレアが話し始めた。

 

「薬草の庫入れを手伝ってもらった後母屋に向かった時に起きたんです。そこに怪しい女が待ち構えていて襲いかかろうとしたのでエックスさんが一瞬でやっつけたんです」

「待ち構えていたのですか? 空き巣を見つけたとかではなく?」

 

バレアレ薬品店がエ・ランテルでは特に繁盛していることはこの短い期間でもわかったしちょうどリィジーもいなかったということで空き巣が入っていたのならわかる。しかし、待ち構えていたという事は事件に計画性があったという事を示す。

 

「それについてはペテルさんもおっしゃっていたのですがどうも狙いが僕だったかもしれないとのことです。詳細は尋問が済んだら詰め所から連絡が来るそうです」

「かなり遅くなりそうじゃがな。相手はオリハルコン級すら手に掛けた冒険者殺しじゃ。余罪が多すぎて尋問も一朝一夕にはいかんじゃろう」

 

2人の顔からは命が助かった事と街から凶悪な犯罪者がいなくなった事に対する安心感が見て取れる。しかし、モモンガとしてはそんな楽観的な考え方はできなかった。

 

「……それはまずいですね」

「どういうことじゃ?」

「相手がその1人だけとは思えないって事です。ンフィーレアさんを狙った目的はわかりませんが既に個人でできることの範囲を超えています。だとすると襲撃者は何らかの組織の構成員の可能性が高く、もう一度ンフィーレアさんを狙うかもしれない」

「ンフィーレアを狙った理由がわからんことには何とも言えんが……確かに厄介じゃな」

 

わからないといってもリィジーには理由に思い当たる節があるようだが、ンフィーレアには自覚がないようで戸惑った様子だ。リィジーはンフィーレアに狙われる理由を悟られないようにぼかしながら前のめりになって話を急かす。その孫を守ろうとする様子がモモンガには自分のために死んだ母の姿とかすかに重なる。モモンガの場合は母と子で彼らは祖母と孫、しかも活発なリィジーとモモンガの母は全然違うタイプの女性だというのに。

守られている自覚があまりないンフィーレアにただ頼ることしかできなかったかつての自分が重なるのだろうか。

僅かに残る人間性がモモンガの策を最後の一要素として完成させた。彼らを守れる策をとる。

 

「でしょうね。そこで相談なのですがこのポーションの研究やってみませんか?」

「いきなりどういうつもりじゃ? ふざけておるのか」

 

モモンガの提案にリィジーが怒気のこもった言葉で返す。孫の命の安全についての話の途中で全く関係の無い、しかも自身のプライドに直結する事を言われたのだ。当然の怒りだろう。その一方でモモンガは極めて冷静に応じる。

 

「いいえ、ンフィーレアさんの護衛を我々で買って出ようという提案です。敵の背後に何らかの組織があるとしたら襲撃は続くでしょうから」

 

ここにきてンフィーレアの表情が一気に硬くなる。自身の置かれた状況に気がついたようだ。その変化を気にも止めずにモモンガは話を続けた。

 

「さらに今の話で相手は銀級冒険者4人以上の護衛がいるのに堂々と襲ってきた事になります。今回はたまたま銅級なのに圧倒的な力を持つエックスがいたから無事でした。それに相手がオリハルコン級すら越えるのならば身の安全を守るなら街最高のミスリル級冒険者を全て雇うぐらいしなければならないかもしれない」

「そこまではわかっておる。さすがにミスリル全てとまでは思わんがの。それがどうしてポーションに繋がるのじゃ?」

 

リィジーの疑問に答えるべくモモンガは言う。

 

「それはこのポーションが極めて貴重なものだからです。もしこれをもったンフィーレアさんが襲われでもしたら私達はなんとしてでも救い出さなければならないことになるでしょう」

「言いたいことはわかったがそれでお主になんの益がある? それがわからん」

 

相変わらずリィジーの警戒心は強くモモンガは行き詰まる。もともとノートに書いてあったから引き込むだけのつもりがどんなアイテムでも使えると言うことで絶対に必要になったのだ。彼なら異世界転移系となるメタアイテムを使えるかもしれないのだ。しかし、それを伝えるにはまだ早すぎるだろう。

 

「そのポーションを返された事が心苦しかった、ではダメでしょうか?」

「釣りあっとらんじゃろ」

「でしょうね」

 

リィジーのダメ出しにモモンガはため息交じりで応じる。

 

「仕方ないですね。本心を言いましょう。少し自分語りになりますが勘弁してください」

 

そういうとモモンガは姿勢を正すと意を決したように語り始めた。

 

「ンフィーレアさんには既に言ったのですが私は散り散りになった仲間を探すために冒険者になりました。そのポーションも元を辿れば仲間の物とも言えます」

 

ギルドの仲間のために用意しておいたものだから嘘ではない。

 

「しかし、私にはそのポーションのルーツがわかりません。それを探す手伝いをお願いしたい。あなた方に頼む研究はその一助になるかもしれないので」

「ふむ、納得はできるが相当に大事なものなのだろう。そんな物を人に預けてもいいのかね?」

「ええ、数と素材は一通り有るので」

 

そこで先程まで殆ど口を開かなかったンフィーレアが言った。

 

「で、でもモモンさんが昨日――」

「そうだ。問題はそこです。ンフィーレアさん、そしてリィジーさんも、です。昨日は冗談のつもりでしたが今日は本気で言いましょう。お二人とも、カルネ村に移り住みませんか?」

 

リィジーが息を呑みンフィーレアが固まる。

 

「決断は今すぐじゃなくてもいいです。襲撃者の尋問が済んでからでも構いません。ですが我々はあの村ならたとえ相手が一国家であろうとも守りきる自信がある」

 

そのまま立ち上がり固まっているリィジーとンフィーレアを置いてXオルタとナーベラルに声をかけた。

 

「そろそろ宿に戻るぞ。……結局襲撃者の背後に何もなかったら気にすることもないんですけどね。今日はお騒がせしました」

 

そう言ってモモンガ達が家から出て言ったのを見届けたリィジーが漏らす。

 

「あやつ言いたいことだけ言って帰って行きおった……ポーションも置いていっておる」

「あ、本当だ。追いかけたほうがいいかな?」

「やめておきなさい、癪だがお前が危険なのは本当なのじゃ。あやつの言葉も何も間違っとらんしの。今日はもう休みなさい、疲れたじゃろう」

 

そしてそれぞれの寝室に2人も戻ってその部屋からは誰もいなくなった。

 

 

◇◆◇

 

 

少し時を遡る。

モモンガ達が店から出る前に立ち去った漆黒の剣のメンバーについてだ。彼等は口々に九死に一生を得た幸運とその立役者について話していた。

 

「それにしてもすごかったよな。あんな超級の戦士が一方的にやられるなんて話あるんだな」

「相性もあったんでしょうがそうだとしても相当の腕です。あの距離で魔法によるカウンターなど普通できません……あんな事が出来たらなぁ……」

「ニニャも慣れればできる様になれるさ」

「その通りである! エックス嬢の魔法はあの2つの技のみである。きっとそれらをずっと磨き上げた努力をしたはず。ニニャも頑張れば良いのである」

「そうだってサポートするから一緒に頑張ろうぜ。……あれ?」

「どうしたんですか、ルクルット」

 

突如立ち止まったルクルットにニニャが問いかける。視線の先にはボロに包まれた歪な黒い珠があった。

 




モモンガさんの母親周りが不安
結構重要人物ですよね。下手しなくてもまだ名前も出てないギルメンよりか

あとえっちゃんはペロロンチーノの香水ではなくペペロンチーノは硬水を使うべきという話をしています。モモンガさんたぶん天然水の種類なんて知らないと思うんだ。だから勘違いということで一つ。



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23話 人間

23話です。

感想ありがとうございます。

ようやくこれで二巻が終わったって言える……かも

後関係ないけどぶくぶく茶釜とぐだぐだ茶器集めって似てる気がした。




 翌朝、ニニャは1人で組合に向かった。もうそろそろエックス達が組合に来てオークなどの討伐報酬を受け取る頃だが仲間達はひっそりと宿で眠っているはずだ。ニニャにはやらなければならない事があったので他のメンバーを眠らせて1人で組合に向かったのだ。

 

 朦朧とした思考を回転させ組合の扉を開いた。そこは既にそれなりの人数の冒険者で賑わっていて普段とは違う緊張した空気をはらんでいた。

 聞こえて来る話は高揚と僅かな失望をニニャに与える。しかし、今その話に意識を割く余裕はない。周囲から目的の少女を見つけて足早に向かった。そしてXオルタの目の前まで来てニニャの意識は一気に白く塗りつぶされた。

 

 ニニャのカバンに入っている黒い珠、死の宝珠にとって人間とは傀儡でしかなく、その感情は宝珠の与えるものとなる。宝珠は今まで使っていた人間が使えなくなったため他の傀儡を探す必要があった。

 先日まで操っていたカジット・バダンテールは優秀な傀儡だったが最高のものではなかった。今操っている少女も将来性はあるが先に目をつけた相手には劣る。

 優秀な筈のカジットが己の力を十全に使いなお勝ちの目の方が少ない女戦士を一方的に蹂躙する若い魔法詠唱者は次の傀儡として魅力的すぎたのだ。端的に言うと浮き足立っていた。だから仕方なかったのだ。声を掛けられるまで相手がそれと気がつかなかったのはどうしようもないことだった。

 傀儡に声を掛けてきたそれの体表に張り付くように存在する歪な生命反応とその奥から醸し出される濃厚な死の気配は明らかに己の全てを捧げるべき相手であることを示していた。その存在による衝撃は洗脳しようとしていた少女の事など記憶から消しさり、死の宝珠が偉大なる死の王に仕える事しか考えられないようにした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 モモンガが漆黒の剣のメンバーからオーガの討伐報酬を受け取りに来ると組合は共同墓地でのアンデッドの大量発生についての話で持ちきりだった。

 どうも昨日の夕方に突然ゾンビの大群が発生したらしい。知性のあるものはいないようで今はまだ封じ込めに成功しているがいつ強力なアンデッドが発生するかわからない状況だ。急な話なので組合もまだ対抗策は組まれていない。受付で漆黒の剣を待ちながらモモンガは呟いた。

 

「私の実力を示すのには絶好の好機だな」

 

 モモンガにとってこの事件は自身の力を昨夜のような奇妙な形ではなく明確に示すチャンスだった。

 本来ゾンビなどといった下級アンデッドは特殊な場合を除き討伐後に組合に報告する事で報酬をもらうものとなっている。なので、組合にはゾンビ討伐クエストなどと言うものは用意していない。それは今から共同墓地に行ってゾンビを討伐することは階級によるクエスト受注制限に引っかからないということになる。

 つまり、銅級冒険者でも勝手に共同墓地に行ってゾンビを狩ってきていいわけだ。

 そこまで確認した上でモモンガは呟いたわけだが説明していた受付嬢のイシュペンには狂人の戯言に聞こえたらしい。吐き捨てるように言う言葉には明らかに呆れが混じっている。

 

「墓地の入り口は完全に封鎖されているのでは今は入れませんけどね」

「入口から入らなければいいのだろ? 簡単な事じゃないか」

「はい、そうですか。頑張ってくださいねー。では次の方来てくださーい」

 

 棒読みの応援と自分の後ろにいた冒険者のバカにした様な表情に対し内心で「後で驚かせてやる」と決意しながらモモンガは組合の隅で待つXオルタに向かっていった。

 

「私は墓地に向かう。エックスはここで漆黒の剣のメンバーを待ってオーガの討伐報酬を受け取っておいて欲しい」

「了解……あれ?」

 

 Xオルタが示した方向にはニニャが1人でふらつきながら歩いていた。モモンガは何故リーダーであるペテルではなく1番若いニニャが来たのか訝しむ。

 

「ニニャか、他の3人はどうしたんだ?」

 

 濁った目がモモンガの方を向く。それと同時にニニャの口が微かな声にならない言葉を紡ぎ始める。

 

「……死の……王……アンデッドの――」

 

 即座に反応したXオルタの念動力によりニニャの呼吸が止まった。そのまま気を失い倒れこむがモモンガの鎧によって受け止められる。周囲は朝からの騒ぎと同一視されているのか話の内容に対して不審に思われている様子はなかった。むしろ突然倒れたニニャに心配そうな視線が集まりはじめていた。

 居心地の悪さとニニャを置いてはいけない状況がモモンガとXオルタに次の行動を決めさせた。

 

「とりあえず……宿に運ぶか」

 

 宿に着いたモモンガは困惑を露わにしてXオルタに話しかける。ナーベラルも主人達の抱える問題が難題である事がわかっている様で組合を出てから一言も口を聞いていなかった。

 

「あれって俺がアンデッドだってバレていましたよね」

「はい、多分」

 

 何故、秘密がバレたのかを明らかにしなければならない。気がついたのがニニャだけのようだが他の漆黒の剣のメンバーも調べる必要がある。鎧を脱いだモモンガは警戒心を露わにしながら言った。

 

「とりあえず彼はナザリックに連れて行って何が起きたのか調べましょう。ここでは調べることもできない」

「じゃあ、私が連れて行きますね。モモンガさんは先に墓地の方に行ってください。あれだけ大口叩いているので何もしなかったら笑い物になりそう、です」

 

 その言葉に受付嬢の言葉と他の冒険者の表情を思い出してモモンガは苦虫を噛み潰した様な顔で応じる。

 

「くっ……そう、ですね。じゃあ、彼のことはオルタさんに任せます。何かわかったらすぐにメッセージを送ってください。後、シャドウデーモンに他の3人を見張らせて起きますので彼らのこともお願いします」

「了解、です。モモンガさんもくれぐれも気をつけて」

 

 そう言ってニニャを背負おうとしたXオルタは一瞬戸惑った様なそぶりを見せ横抱きにしてモモンガの開いたゲートを潜ってナザリックに戻る。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一瞬でXオルタの視界は小汚い宿の寝室から盛り上がった大地と朝日の風景に切り替わった。出迎えて来たアルベドにXオルタは告げた。

 

「この子について内密に調べたい。場所の用意をしてパンドラを呼び出しておいて。後、シャドウデーモンからの報告をすぐに受けられる様にして」

「かしこまりました。ならば第七階層よろしいかと、デミウルゴスにすぐ部屋を用意させます」

「わかった。よろしくね」

 

 シャドウデーモンがデミウルゴスの配下である事が第七階層になった理由だろう。アルベドがメッセージでデミウルゴスとパンドラズ・アクターに連絡している間にXオルタはナザリックを出る時に外していたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを装備した。

 アルベドが準備の完了を告げるとXオルタはその素早さに若干の驚愕を示しながら転移する。

 

「お待たせしました。Xオルタ様。こちらに部屋を用意しております。お荷物は私がもちましょう」

 

 出迎えたデミウルゴスにニニャを預け案内されてついていく。着いたのは第七階層にしては比較的涼しげな色合い正確にはむき出しの石造の部屋で拷問器具が用意されていた。Xオルタは戸惑いを隠しきれずに告げる。

 

「も、もっと普通の……会議室とか応接室みたいな部屋、ないかな」

「も、申し訳ありません! 直ちに別の部屋へご案内します!」

 

 今度こそ目的に沿った部屋に辿り着いたXオルタは後から来たパンドラズ・アクターとともに気絶しているニニャに向かい合った。

 

「この子がモモンガさんの変装を見破ったみたいだから理由を確かめたい」

「畏まりました。Xオルタ様。では、私は再現実験を行うためにモモンガ様の仮の姿、漆黒の戦士モモン・ザ・ダークウォリアー様の役をやらせていただきたいと思います!」

「あ、はい」

 

 パンドラズ・アクターが変装を完了して準備が整ったのを確認したXオルタはニニャにポーションをかける事で意識を取り戻させた。

 

 部屋の外ではデミウルゴスとアルベドが話していた。デミウルゴスは己の失敗を悔いる様に歯ぎしりをしながら言った。

 

「私はXオルタ様のご要望にお応えできませんでした。……この罪を一体どの様に償えばよろしいのでしょう」

「いえ、あれは私の責任でもあるわ。パンドラズ・アクターへの連絡を焦りあなたへの連絡が手短になってしまったの。せめてあの人間がそれなりに重要な存在だとわかっていればもっと方法はあったでしょう」

 

 失敗を悔いる2人は俯きながら話し合う。

 

「しかし、それは不可能な事でしょう。先ほど漏れた話によるとあの人間はモモンガ様の変装を見破ったとのこと。その詳細を暴くまでは何よりも迅速かつ秘密裏に行わなければならなかったのですから」

「ならばどうすれば良かったのかを考えましょう。まずあの人間の詳細ね。あの女何者なの? 変装を見破ったのはあの女1人だけの様なのになぜ始末してしまわなかったのかしら?」

「それは難しいところですね。しかし、殺しも拷問もしないということはそのままで利用価値があるということでしょう。おそらく例のカルネ村でモモンガ様直々にアイテムを下賜された少女の様に扱われるのではないでしょうか?」

 

 深読みが先行していく途中、遠くから一体の悪魔が走り寄って来た。シャドウデーモンの管轄を任せていた個体だ。それに気がついたデミウルゴスが問いかける。

 

「どうしたんだい? 何か奇妙なことでもあったのかな?」

「はっ、モモンガ様より監視を命じられた3人の冒険者についてなのですが……我々が発見した時には既に全員ベッドで死亡しておりました」

 

 その言葉を聞いたデミウルゴスはすぐさまXオルタのいる部屋にノックして入る。部屋ではパンドラズ・アクターがモモンガにメッセージを伝える声が朗々と響いていた。

 

「モモンガ様、変装が露見したのは死の宝珠というアイテムが原因のようです。かなり希少なものらしく2つ目による他の誰かに正体を見破られる事を警戒する必要はないかと思われます」

『成る程、ならば私の正体を知りかねないものはニニャを除けば後の3人位か?』

「死の宝珠を彼らがどこで手に入れたかによりますが今の所その3人だけでしょう」

『なら、報告はそれで終わりだな』

「はい、これで報告内容は全てでございます!名残惜しいーー」

 

ノックとともに侵入してきたデミウルゴスの声がパンドラズ・アクターの報告を遮った。

 

「Xオルタ様、シャドウデーモンより報告です。監視を命じられた3人は確認しに向かった時、既に死亡していた模様です」

 

 部屋の中にいるXオルタとモモンの姿をしてモモンガにメッセージを送っていたパンドラズ・アクター、そして目を覚まし思考力を取り戻したニニャが目を合わせた。

 

「え、い、嫌……」

 

 既に仲間が死んでおり、おそらくそれが洗脳されていた時の自分の仕業であると気が付いたのだろう。絶望に沈むニニャのつぶやきが周囲の喧騒に淋しげに響いた。

 

 その姿を見ることができないモモンガはパンドラズ・アクターによる報告が途中で止まったことを訝しみメッセージの向こう側で言った。

 

『ん、まだ報告するべきことがあるのか?』

「はい、たった今、デミウルゴスのシャドウデーモンより続報が入りました。漆黒の剣の残りのメンバーは宿で死亡が確認されたそうです」

『……そうか、とりあえず漆黒の剣のほかのメンバーの死体は回収しておけ。彼らの死から宝珠の存在が漏れないようにな。それとこちらの仕事は終わったとオルタさんに伝えてくれ。凱旋を済ませたらすぐにナザリックへ戻れるだろう』

 




久々のデミえもんでした。

次から三巻、オリジナル展開が増えそう。

ちなみに墓地のアンデッドはカジットが宝珠とサヨナラしたせいで制御から外れた連中です。ゾンビ150はいたらしいしほかにもいると思うので彼の弟子たちはきっと全滅してます。


感想評価突っ込み質問文句異論なんでもください


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番外編 番外編カジっちゃんの冒険

四月バカです。
ごめんなさい本編に何一つ絡みません。
全体的にむさくるしいです。

月厨として、えっちゃんを作品に出している身としてこの日はちょっと頑張らねばならぬとか

ただ短いです。3000ちょいしかない

追記
次回更新で時系列的に入りそうな場所、23話と24話の間に移します。
追追記
移動済み


 エ・ランテルより脱出したカジットは靄のかかった様な自身の記憶を辿りその行動の愚かさに打ちひしがれていた。その手には母の肖像が刻まれたメダリオンが握られている。

 

「……悩んでいても意味はないんだろうな」

 

 バレアレ薬品店から逃げ出してから妙な高揚感に包まれていたカジットは近隣の森に身を隠そうとしたのだ。そこで過去を振り返るうちに自身の愚かさと罪に押しつぶされそうになっていた。

 暫く思い悩んでいると森の奥から近付いてくる足音が聞こえて来た。不審に思ったカジットは街から脱出するときに使ったスケリトル・ドラゴンを上空で待機させ物音の方向に向かう。

 

「ちっ、ジジイが1人かよ。使えねぇなぁ」

「だが見られちまったからには仕方ねぇ。死んでもらうぜ」

 

 見つけたのは不愉快なことを口走る男達だ。盗賊風のその男達にカジットは思い当たるところがあった。

 エ・ランテル周辺をねぐらにする盗賊団の話は5年もあの街で暮らしていれば嫌でも耳に入る。

 

「たかが盗賊風情が随分と偉そうな口を聞くものだな。……くだらない」

「そのたかが盗賊風情にあんたは殺されちまうんだよなぁ!」

 

 カジットの呟きを諦めと取ったのかその場にいた盗賊達の中で最も偉そうな男がヘラヘラと不快な笑みを浮かべながら切りかかってきた。カジットからすればあまりにゆっくりとした一撃、己の魔法を使うまでもなく上空からのスケリトル・ドラゴンによる奇襲で押し潰した。

 

「くだらないが罪滅ぼしくらいにはなるか……」

「な、何が起こってんだよ⁉︎ たかが老いぼれが何で……」

 

 突然の事に理解が及ばない盗賊達にカジットは言い渡した。

 

「たかが老いぼれ風情のために、死んでもらうぞ盗っ人ども」

 

 蹂躙が始まった。

 スケリトル・ドラゴンは森の木々を押し倒しながら盗賊を爪で切りつけ、倒れた者はカジットの魔法でアンデッドとして蘇ってくる。たとえどれほどの数を揃えようと英雄級に至った魔法詠唱者であるカジットに届くことはなかった。

 殆どの盗賊がゾンビと化して僅かな生き残りが逃げおおせてもカジットの胸には何の感慨も湧かなかった。死の宝珠の元で人を殺め続けた経験がカジットから殺人に対する罪悪感を消し去っていた。ただ、母と暮らしていた頃と変わってしまったという事実だけがささくれたような気持ちにさせた。

 

「ここがアジトか。スケリトル・ドラゴンでは入れんな。なら……」

 

 〈マス・レッサー・デクスタリティ/集団下級敏捷力増大〉

 

 支配下のゾンビに補助魔法を掛け敏捷を強化する。これで狭いところでも多少は戦えるだろう。

 

(まあ、少しでも強い相手が出てきたら瞬く間に蹴散らされるだろうな)

 

「行け、そして引き摺り出してこい」

 

 スケリトル・ドラゴンを再び上空に待機させ、ゾンビ達を突入させる。案の定、最初は優位に戦えていたが一気に3体のゾンビが倒された。それを感知したカジットはすぐに残りのゾンビに撤退の指示を出すがそのまま半数以上が討ち取られた。

 最終的にカジットの元までたどり着いた物は2体しかおらず、片方は死体に言うべきではないが死に体だった。

 

「ちぃ、ネクロマンサー1人だけかよ」

「ふん、そう言う貴様も1人ではないか」

 

 互いに軽口を言い合うが油断は微塵もない。互いに相手の力量を測りかねているのだ。

 カジットから見て敵の剣士の力量はどの程度のペースでゾンビ達を撃破したかと言う点から測れる。ほとんどが一太刀で斬り捨てられたことから導き出された相手の強さはかつての相方クレマンティーヌに匹敵しかねないレベルだ。

 一方で向かい合っていた剣士、ブレイン・アングラウスから見てもカジットの実力は圧倒的なものだった。斬り捨てたゾンビが全てかつての盗賊だったことから手の内が全くわからないのだ。さらに、最下級のアンデッドであるゾンビで自分以外の盗賊を直接指揮をせずに圧倒していた。ブレインはそんなことができるネクロマンサーは1人しか知らない。リグリット・ベルスー・カウラウ、かつて手合わせした剣士としてもトップクラスの実力を誇る老婆だ。

 2人の会話から数秒後、武技を発動させたブレインが先手を打った。〈領域〉によって周囲を警戒しつつ急接近する。しかし、カジットもそのまでは終わらない。上空で待機させていたスケリトル・ドラゴンにブレインを急襲させる。

 

「上かっ!」

「それだけではないぞ! 〈アシッド・ジャベリン/酸の投げ槍〉!」

 

 上と正面からの攻撃にブレインは地を転がるようにして回避する。しかし、そこまでがカジットの策のうちだった。ブレインが倒し損ねた2体のゾンビが待ちかまえている。いかにブレインが超級の剣士だろうとここまでお膳立てされたらゾンビの攻撃も当たってしまう。敏捷を強化されたゾンビの一撃がブレインの肩を打ち、弾き飛ばす。しかし、それだけで終わらないのがブレインという男だ。

 

「神聖属性を持つ武器か……」

 

 カジットがブレインから距離を取りながら呟く。攻撃を避けながらもブレインはスケリトル・ドラゴンに一矢報いて居たのだ。神聖属性の武器による攻撃はスケリトル・ドラゴンに少なくないダメージを与えて居た。

 

「ブレイン・アングラウスだ」

 

 相手の実力を認めたからこその名乗りにカジットは僅かに驚き、苦笑しながら答えた。その名はいつだったか同僚のクレマンティーヌが言っていたものの中にも含まれていた。

 

「かの戦士長と互角に戦ったと言う剣士か。しかし、すまんな。今の儂はお主のように父母に貰った名を名乗ることはできん。そうだな、取り敢えずはデイル、そう名乗っておこう」

「水神の洗礼名か……いや、気にすることではないな。じゃあ、行くぞ!」

 

 ブレインは今度は複数の武技を発動させカジットに迫る。途中を遮るスケリトル・ドラゴンとゾンビを即座に斬り捨て、カジットの放つ複数の〈アシッド・アロー/酸の矢〉を躱すとその刀をカジットの喉元に突きつけた。

 

「ちぃ、相打ちってところか」

 

 ブレインの背後では2体目のスケリトル・ドラゴンが爪を突きつけて居たのだ。一方がトドメを刺そうとしたらもう片方も相手の命を奪えるだろう。両者の実力は状況次第でどちらにも変わるだろう。盗賊団そのものはカジットのゾンビで半壊状態のためこのまま戦ってもブレインの援軍は来そうにない。むしろ、先に死体の中から新たなアンデッドが生まれカジットの戦力となる可能性もある。しかし、カジットの手勢も随分と消耗しており、切り札の一つもすでに切っていた。カジットの目算では6対4で自分が有利といったところだろう。

 

「ふっ、そうだな。では、どうする? 仕切り直すか?」

「馬鹿なことを言うな。どうも周りがきなくせぇ。いっそこのまま逃げちまうか」

 

 意気揚々と再試合を持ちかけたのにブレインのなげやりな言葉にカジットは驚いたような顔で尋ねた。

 

「おい、お前はここの用心棒とかじゃないのか?」

「仕方ないだろ。お前のせいで『死を撒く剣団』はおしまいだ。それにもうこいつらのために命を張るような理由もないしな」

 

 随分といい加減な様子のブレインにカジットが呆れるがこれでも実力はあるのだと考え直す。自身は今追われる立場だ。少なくともこれまで属していたズーラーノーンとスレイン法国は自分を死に物狂いで追ってくるだろう。外套の中にあるクレマンティーヌから渡された法国の秘宝を思い浮かべる。ブレインを連れて行けば戦力の足しにはなるだろうと考えたカジットは手を差し伸べながら言った。

 

「……はぁ、仕方ないな。なら一緒に来るか?」

「お、頼む。出来れば腕を磨ける場所に行きたいんだ」

 

 調子に乗って図々しいことを言うブレインに対しカジットは呆れたような顔をしてため息をつく。性格に難があるようだがクレマンティーヌよりはましだろうとカジットは自分を納得させる。

 そのまま二人はスケリトル・ドラゴンにまたがり空に飛び立っていった。

 

 数分後、戦闘音を聴きつけてその場に街道警備の依頼を受けていた冒険者達が駆けつける。そこで彼等は散らばるスケリトル・ドラゴンの残骸と半壊した盗賊団を見て驚愕するがそれは何の関係もない話だ。

 




この話は続きません。ただのネタです。

ただカジっちゃんとブレインには頑張ってほしいですね。

ブレインには原作でもまだ出番があるし

でもこのSSではこれがないとブレインの出番が完全に消えるんだ。ごめんね

感想評価指摘いろいろお願いします。あると喜んで悶えます。


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二章 24話 かみ合わない話

24話です。

感想指摘ありがとうございます。

ここから大きく原作と乖離していくつもり

あと、えっちゃんはずぼらだけど働かせたらそこそこ有能です。


「では、次は風花聖典からの報告です」

「良い知らせである事を祈るぞ。陽光聖典の足取りがつかめなくなったのだ。これ以上の痛手は御免被る」

 

 先に発言したのはレイモン・ザーグ・ローランサン、スレイン法国の土の神官長で次に発言したのはドミニク・イーレ・パルトゥーシュ、風の神官長だ。ここはスレイン法国の最深部にある一室であり、部屋の中央にある円卓には彼らを含め12人が席に着き、会議を行っている。

 先ほどの会話は進行役のレイモンの発言をドミニクが遮った形になる。本来なら叱責を受けるべき行いだが今日に限りその様な声は上がらない。その場にいた全員が不満を漏らしたドミニクの苦悩を理解し共感していたからだ。

 失踪、おそらくは全滅したと思われる陽光聖典はかつてドミニクが属していた部隊で、そのメンバーは全員彼の後輩か元部下に当たる。レイモンは彼の感情に配慮して声を柔らげながら報告を続ける。

 

「そうですね。ご安心ください、とは言えませんが比較的良い報告と言えるでしょう」

 

 そう言って手元の資料を配ってから言った。

 

「まず、裏切り者の疾風走破の処理に成功しました。死体の回収はもうしばらくかかる模様です」

 

 周囲から口々に感嘆の声が上がる中、嗄れた声が問いかけた。

 

「しかし、風花には彼奴を殺せるほどの実力者はいなかったと思うのだが」

 

 声の主はジネディーヌ・デラン・グェルフィ、水の神官長である彼の質問はもっともだ。風花聖典は隠密、調査に特化した部隊で漆黒聖典の者と戦える様な実力者はいない。資料を示しながらレイモンは答える。

 

「それについてはこちらに。強盗行為を働こうとしたところを街の冒険者に捕縛され、牢に繋がれたところを暗殺した様です」

「その冒険者について詳しい話はわからないの? 仮にも英雄級の戦士を倒すのだから相当な実力者だと思うのだけれど」

 

 唯一の女性である火の神官長のベレニス・ナグア・サンティニの質問だ。

 

「事件の3日前にエ・ランテルに現れた3人組の1人でまだ成人前の少女とのことです。また、それ以前の足取りは辿れませんでした。ただ、見た者は覚醒した神人の類と考えている様です」

「確かに疾風走破を捕縛できるということは神人に届きかねない実力になるのだろうな」

 

 報告の内容に納得した様に述べるものがいた一方でドミニクが反駁し、議論に熱がこもってくる。

 

「それが良い報告だというのかね? 王国に神人など私にはむしろ最悪の報告に取れるが」

「いや、上手く引き入れることができれば……」

「そうだな、目の前で凶行に及んだあの女を生け捕りにしている。交渉の余地はあるだろう」

 

 レイモンの報告に口々に意見が集まる中、質問した張本人であるベレニスが放った一言は周囲の空気を凍らせた。

 

「……私にはこの冒険者の少女、神人ではなく大元の方にも思えるわ」

「まさか、かの者に連なる存在が現れたというのか?」

「……確かに時期としてはおかしくないだろう。足取りが掴めないのも突如現れたと考えれば納得がいくな」

「落ち着け。どちらにしろ圧倒的な強者である事は変わらん。憶測ばかりで話をする必要はなかろう」

 

 混乱しかけていた場をおさめたのは最高神官長だ。その場における最高権力者の言葉は会議に落ち着きを取り戻させた。

 

「今話し合うべきはその冒険者の正体ではなく、どうするべきかだ。交渉の余地がある様ならば内密に使者を送るべきではないか?」

「ふむ、ならば漆黒聖典が適任でしょうな」

「放置はできん。しかも、神人に匹敵しかねない以上神人を当てるしかあるまい」

 

 話はテキパキと決まっていく。この場にいる12人の能力の高さを表しているかの様だ。

 

「ならば、第一席次を含む何人かをこの任務に当てることにする。人選はレイモンに任せて良いな」

「了解しました。では、次の議題に移りましょう」

 

 

 ◇◆◇

 

 

「全然、来ませんね」

「いい加減来てもいいはず、なんですが……」

 

 モモンガとXオルタはナザリックの執務室である人物を待っていた。しかし、2人とも待っている相手がどの様な存在なのか殆ど知らない。わかっていることはシャルティアを洗脳し得る存在だということだけだ。

 

「場所が悪いんでしょうか? かなり初期の話とのことだからナザリック周辺、遠くてもエ・ランテル程度の距離のことだと思ったのですが……」

「うーん、バタフライエフェクトかなぁ? 一旦、捜索範囲を広げてみましょうか?」

「そうですね。これがわからないうちはNPCは派手に動かせませんし警戒するに越したことはないでしょう」

 

 現在ナザリックの外で活動しているNPCは僅か5人しかいない。トブの森の調査と拠点作成、更にこの来訪者に対する警戒を命じられたアウラとマーレの2人に続き、王都で情報収集及び社会的地位の獲得を任せられたセバスとソリュシャン、カルネ村の監視を任せられたルプスレギナで全てだ。全員が最高クラスの拠点帰還アイテムを持ち僅かでも自分の身に危険が迫ったと感じたら使用する様に言い含めてある。

 この話題に先はないと見切りをつけたのかモモンガはXオルタに別のナザリック内で行なっているプロジェクトについて聞いた。

 

「ところでアインズ・ウール・ゴウンを国にする時のシステムとかはどうなりそうですか? 俺そこら辺全然わからないんでオルタさん任せなんですが」

「あ、はい。大まかな形はできました。今のところ主権は私達で独占してから他を自治権の強い連邦制にしたいな、と思ってます。あまり征服者っぽいのは皆からの忌避感が強そうなので避けたくて」

 

 引っかかる言葉があったのかモモンガは首を傾げながら聞く。

 

「なんで自治権なんですか? この辺りにナザリック以外の支配者はいないでしょう」

「え、だって、国にするのは名前を知らしめるためなので領土の拡大はしますよね。そうなると占領地の統治は自治権与えるのが一番楽そう、です」

 

 2人の間に微妙な沈黙が流れた。この様な雰囲気で先に口を開けるのはギルメンの調停役をしていたモモンガくらいだ。恐る恐るXオルタに聞く。

 

「どれくらい大きな国を想定しているんですか?」

「えっと、どれくらいって言われると答えにくいんですがとりあえず可能な限り、です。どこの村人に聞いても『ここはアインズ・ウール・ゴウンの〇〇村だよ』って、答えられるくらい?」

 

 同じ話をしていると思っていたらスケール感が違いすぎたことにモモンガは頭が痛くなった様な気がした。

 つまり、Xオルタは世界征服を行おうとしているのだと理解する。それによってXオルタの想定している未来絵図がモモンガの脳裏にも浮かんで来た。

 SFによくある地球連邦のような惑星国家やかつての国際連合といった物を想定しているのだ。強引な気もするが悪くない手段だろうと思いモモンガは納得した旨を伝えた。

 

「了解です。でもそれだと最終的にこの星の名前がアインズ・ウール・ゴウンになりそうですね」

 

 それを聞いたXオルタが感嘆した様な表情を浮かべ立ち上がる。

 

「それいいですね。惑星アインズ・ウール・ゴウン、スケール大きくて好き、です」

「そうですか? じゃあ、その方向でアルベド辺りと進めてもらえますか?」

「了解、です。じゃあ、今から行って来ます」

 

 そう言ってXオルタは執務室から出ていった。その後ろ姿を見てモモンガは楽しげに呟いた。

 

「頑張ってくださいね!…………にしてもあの人、やっぱり仕事はできるんだな」

 

 普段のズボラさとは打って変わり、モモンガにはできないことを考えていた仲間が少し誇らしくなる。自分ならアルベドやデミウルゴスに任せる他ない。そうすればきっと上手く行くが制御しきれなくなるという確信があった。その点、ギルメンの中でも最も多くの国家の仕組みを経験として知っているXオルタならしっかり制御できると信じられたのだ。

 仲間に対する信頼と安心感とともにモモンガは立ち上がりモモンとして鎧を纏う。そのまま執務室を出たモモンガは少し離れた場所にある別室へと向かった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 漆黒の剣のリーダーであるペテルはあまりにも豪華すぎる部屋に居心地の悪さを感じていた。そもそもなぜ自分がこのような場所にいるのか理解ができない。

 目を覚ました直後に昨日まで共に仕事をしていた別の冒険者チームの1人、エックスが待ち構えいたので説明を求めたが具体的なことは何もわからなかった。その後、ニニャと引き合わされたが錯乱している様子で話している内容も要領を得ないものばかりだった。

 とりあえず会話が成り立つだけましだと思いエックスに声をかける。

 

「えっと、エックスさん、とりあえずダインとルクルットに会いたいんだがどこにいるか知りませんか?」

「はぁ、その2人とはまだ面会できません。私の判断で部屋を移すことはできないのでしばらく待ってください」

 

 このやり取りも既に数回繰り返している。もはや自分の正気を疑い始めた頃、変化が起きた。黒い鎧の戦士が部屋に入って来たのだ。咄嗟に声を上げようとするが身振りで抑えられる。

 

「さて、ペテルさん。いろいろと聞きたいことがあるでしょうがまずは本題だけ言います。その上で聞きたいのですがこのアイテムに見覚えは?」

 

 モモンガが取り出したのは見覚えのある歪な黒い珠だ。ペテルは気圧されるようにして答える。

 

「えっと、昨日の夜にバレアレ薬品店から宿に戻る途中でルクルットが見つけたアイテムです。かなり強力なマジックアイテムのようなのでニニャに渡したはずだったのですが……」

「なるほど、ありがとうございます。それ以前にこのアイテムが何処にあったかは知らないということでよろしいですね」

 

 ペテルは頷くことで肯定の意を示した。質問の意図が理解できずとっさに声が出なかったのだ。

 

「これで裏が取れました。……次に現状とこの先についてだが、ニニャとコレから詳しいことを聞いてくれ。わからないことがあったら私の後ろにいるパンドラズ・アクター、こいつに質問してくれ」

 

 先ほど取り出した黒い球を示し、続けて背後にいた冒険者エックスの姿をしていたもの、今会話の途中で正体を露にしたパンドラズ・アクター、を指さしながらモモンガは話を続ける。あまりの出来事に固まっているペテルを無視してモモンガは背後にいたパンドラズ・アクターに声をかけた。

 

「パンドラズ・アクターは残り2人の死体を運び込んで彼等に現状について説明しておけ。できれば彼等はここに引き込みたい」

 

 そう言ってモモンガはペテルがいた部屋を出る。扉を閉めると大きくため息をついて壁にもたれた。

 

 モモンガがペテルを蘇生させた理由のうち2つはこれで果たされた事になる。

 1つ目は蘇生時に何処で復活するかを確かめるものだった。これは宿の部屋と死体を確保できた事により問題なくチェックでき、死体のある場所で復活するとわかった。

 2つ目は事件の詳細を確認するためだ。ニニャと死の宝珠からの話は聞いていたが洗脳されて正気ではない者と真犯人、しかもアイテムの証言など信用できるはずがない。結果、新しい事は分からなかったが死の宝珠の証言が基本的に信用できると確認できた。

 

 ここまではうまく運べていると感じていたモモンガはこの先の事について悩んでいた。漆黒の剣の今後の処遇についてだ。

 

 モモンガ自身はペテルを蘇生させた時点で漆黒の剣をナザリックの麾下におさめる事は決めていた。人間がナザリック内で過ごせるかどうかのテストケースにするつもりだ。そして、あわよくばNPCの人間に対する嫌悪感を減らしたいとも考えている。

 

 これはギルメンが戻ってくる時のことを考えると必要不可欠だといえる。例えば、たっち・みー等の身内がいるものがその身内を連れて来たいと言ったとする。そうなれば彼等は人間としてナザリックを訪れる事になる。結果、人間と異形種が同じ場所で生活することになるかもしれない。すると彼等が異形種と馴染めるかどうかはギルメンが戻って来てくれるかどうかにおいて非常に重要な事になるだろう。また、他にも人間がナザリックに馴染めなかったら生じる不利益はいくつか思い浮かぶ。それらを事前に解決するためにもモモンガは意識改革が必須であると感じていた。

 

 ため息とともにモモンガは思考を放棄する。ややこしいことは後回しにして今はパンドラズ・アクターや死の宝珠によってペテルが状況を把握するのを待つべきだ。

 現状ではあまり大きく動けない以上、時間はまだ有り余っているのだから。

 




というわけで二巻が終わって三巻に入れません。

巫女姫がチェックする前にモモンガ様がニグンさんを捕縛したせいで彼女は爆死しませんでした。結果、焦って漆黒聖典が突撃することもなくナザリックの近くにチャイナ婆が来ることはなく、モモンガ様とえっちゃんは待ちぼうけです。でもそれがわかってないから何もできない。

そして気が付いたらペテルだけ復活。ホームポイントと思われる宿屋を確保できたので蘇生実験をさせてみました。情報の確認を兼ねて。

さらに地味に世界征服と国の名前が決まりました。ギルメンがいる以上魔導国にはできないので連邦制でたぶんアインズ・ウール・ゴウン連邦とかになるのかな。

今回はえっちゃんが文系っぽいこと言ってるはず……仮にも高学歴の高給取りだったのでやればできる子のはず
FGOでも銀河に君臨すべき王として生を受けと言ってたし政治能力はあるよねきっと

感想、指摘、評価があると泣いて喜びます。お願いします。

あ、次回たぶんえっちゃんがなんで征服とか考えたのか少し補足するつもりです。大した理由じゃないけど



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25話 加速していく話

25話です。

感想誤字修正たくさんの評価ありがとうございます。

テンション上がったので評価の文字制限は今後も0文字にしておきます。

ps.更新が遅れてすいません。ちょっと忙しくて手が止まってました。


 モモンガの執務室を出たXオルタは先ほどまでモモンガと話していたアインズ・ウール・ゴウンの国家制度の相談のためにアルベドの部屋に向かおうとしていた。途中で、参考書籍を持っていくために自室に立ち寄る。

 

 ここで本来なら上司であるXオルタがアルベドを呼び出すのが筋だがそれをしない理由が2つある。

 

 1つ目は単純に部屋が狭くて話し合いに適さないのだ。本来キングサイズのベッドや様々な装飾に溢れたスイートルームのほぼ全域を潰し小さめの勉強部屋と巨大な倉庫だけになっている。おかげでプレイ期間と課金額も相まってXオルタのアイテム含めた総資産はギルメンの中でもトップクラスにあるが職場としては最悪な事になっていた。

 

 もう1つの理由Xオルタの自室はパンドラズ・アクターの研究室として使われているからだ。研究内容はリアルとの往復手段を手に入れることである。

 元がゲームの存在であるNPCがリアルと関わるのはモモンガにもXオルタにも不安だが、やむを得ない事情があった。

 単純に2人とも科学的に研究開発を重ねていくことが下手すぎたのだ。とりあえずアイテムを使ってみる以外の方法を取れなかった2人による研究は瞬く間に頓挫していた。

 苦肉の策として研究開発プロジェクトのリーダーの座をパンドラズ・アクターに譲り、同時に研究対象のアイテムの宝庫となっていたXオルタの部屋を明け渡す事になったのだ。結果的にパンドラズ・アクターは暇さえあればXオルタの部屋で研究することが日課になっている。

 

 恐る恐る自室を覗き込みパンドラズ・アクターがいないことを確かめたXオルタは手早く目的のものを抱えてそそくさとアルベドの部屋に急ぐ。その様子はまるで盗人のようでとてもナザリックの支配者の1人とは思えない。

 

「アルベドはいる、かな?」

 

 返事は聞こえないが奥の方でガサゴソと物音が聞こえる。広いスイートルームの奥までXオルタの声は届かなかったようだ。先ほど自室に入った時のように忍び足でXオルタは奥へと進んで行く。そばに控えるメイドは主人であるXオルタを止めるようなことはせず、頭を深く下げるだけでそのまま素通りさせてしまう。

 

 1番奥にある寝室の扉を開いたXオルタが見たのは大量のモモンガだった。

 正確には大量のモモンガ型抱き枕だが、初見の相手には大差ないだろう。

 とにかくその光景に驚いたXオルタは抱えて居た本、タイトルは「六法全書・総集編」、を取り落として足の指に直撃させてしまった。

 

 先に説明をするとこの本はXオルタがリアルで集めた法律関係の書籍を全てデータ化して取り込んだものだ。

 そのデータ量はテキストとして読み込ませるためだけに伝説級の素材を必要としたほどだ。つまり、付加効果皆無の伝説級の攻撃力(重さ)を持つ書籍とも言える。

 具体的にはこれで殴ればモモンガの〈上位物理無効化Ⅲ〉を突破できる。

 

 その鈍器を足の指に直撃させたXオルタは声にならない悲鳴をあげながら転げ回る。ここまでくればアルベドもさすがに気がついた。

 

「Xオルタ様! な、なぜこの部屋に! い、一体何があったのですか!」

 

 レベル100の身体能力で転げ回るXオルタは同格の戦士職が全力を尽くさないと止められない。アルベドの努力の甲斐あって言葉が通じるようになった頃には部屋にあったモモンガ抱き枕の半数を破壊した後だった。

 幸か不幸か抱き枕の残骸がクッションになったおかげで調度品の類は全て無事だった。

 

「ご、ごめんなさい……」

「い、いえ私こそXオルタ様がお越しくださったと言うのに気がつけず、このような怪我を負わせてしまうなどと言う失態。守護者統括として許されるものではございません」

 

 アルベドが気がつかなかったのはXオルタの声が小さすぎたせいだというのは関係ないようだ。互いに折り合いをつけた上で本題に入る。

 

「連邦制、ですか。では周囲の国々をアインズ・ウール・ゴウンの連邦区として、その統括として至高のお方々が支配されるという形ですね」

「うん、できればそれぞれの国の特色を残しておきたいから自治権は強めにしておきたいんだけど……」

「なるほど、畏まりました。占領後はその様に推し進められる様にしましょう。では、まずはこの帝国に軍を差し向けますか?」

 

 突拍子のない発言にXオルタは戸惑うがアルベドとしてははっきりとした考えがあっての発言だ。

 法国はプレイヤーの影があるため情報収集が済むまでは大っぴらに敵対できず、王国は最初に攻めるとしたらモモンガ達の冒険者としての拠点であるエ・ランテルになってしまう。そうなると最初に攻め込む先は消去法で帝国になる。

 しかし、Xオルタとしては戦争は避けたかった。できれば自分からアインズ・ウール・ゴウンの配下に収まって欲しかったのだ。その旨を告げるとアルベドは僅かに悩んだ様子を見せた後答えた。

 

「なるほど、そう言う事でしたか。流石は至高のお方です。すでに手を打っておられたとは」

「あ、うん。準備はしていたんだけど……」

 

 Xオルタには何が流石なのかわからないが取り敢えず納得した様なふりをしておく。そのまま、アルベドは了解済みのこととして話を続ける。

 

「はい、お二方の準備のお陰で極めて動きやすくなっております。後は私からアウラとマーレに指示を出しておきましょう」

「え、えっと、よろしく? あ、それと法律のこと考えるときはこれを使ってね」

 

 なぜアウラとマーレが出てくるのかXオルタは理解していなかったがアルベドに鈍器こと「六法全書・総集編」を預けて一仕事終えたつもりで満足げに言った。

 

「じゃあ、モモンガさんとの事も頑張って、ね。協力するから」

「で、では1つ伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 途端にアルベドの纏う空気が変わった。飛びかかる様にしてXオルタに問い掛けるアルベドの姿は一種の恐ろしさすら感じさせるものだ。気圧されるようにしてXオルタは答える。

 

「う、うん。何が聞きたいの?」

「……Xオルタ様はモモンガ様のことをどのように思っていらっしゃるのですか?」

「え、大事な仲間、だよ」

「そ、その様な意味ではなく男性としてどの様に見ているかという事です!」

 

 アルベドにとってモモンガ争奪戦の最大の仮想敵はXオルタだ。しかし、2人が仮に相思相愛になっていたらとても割り込もうなどと思えない。

 さらに、アルベドの中でモモンガはXオルタに惚れている事になっていた。転移直後に互いの部屋を行き来したり、Xオルタの言葉が原因でペットのハムスケを捕まえてきたり、アルベドにはモモンガの行動がXオルタに貢いでいる様に見えたのだ。

 この質問はアルベドがモモンガとXオルタの間に割り込めるかどうかを確かめるためのものだった。自分の行いが不敬だとわかっている以上、アルベドはここでXオルタがモモンガを愛していると言ったら正妻争いからは完全に身を引くつもりであった。なお、正妻戦争は降りても愛人としてモモンガを狙わないわけではない。

 しかし、その心構えは全て無駄に終わる。

 

「ないよ、モモンガさんはそういうのない」

 

 あまりにもあっさりとした返答にアルベドの目が点になる。

 

「で、ではモモンガ様がXオルタ様をお求めになっても……?」

「そういうのないです」

「そう、ですか……」

 

 もはや脈はないのが明らかだった。アルベドは安心感とともに僅かに悲しさを覚える。モモンガを愛する障害が1つなくなったのは喜ばしいが逆にモモンガの恋(勘違い)が破れた事に一抹の寂しさを感じた。

 結果、アルベドの中でやるべき事の優先順位が変動する。1位に繰り上がったのはモモンガの昔の恋(勘違い)を忘れさせる事だ。

 Xオルタは勘違いを暴走させて1人で百面相しているアルベドを尻目に部屋から出て言った。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「……隊長、なぜあの方が此処にいるのですか?」

「仕方ないだろ。そういう命令なんだから」

 

 金髪の三十路あたりの男が、若い射干玉の髪を地面に届くほど伸ばした青年に尋ねた。彼等こそスレイン法国が誇る漆黒聖典、黒髪の方が第1席次で金髪の男が第5席次だ。

 話題に上がっているのは2人の視線の先にいる相手は髪が左右で白と黒に分けられた尖った耳をした少女だ。彼女こそ実力で先の2人を超えるスレイン法国の最高戦力にして漆黒聖典の番外席次"絶死絶命"。血と血の混じり合いとありえない確率で生まれたこの世界における最強の1人である。

 

 彼女は極めて軽い調子で質問をした金髪の男を皮肉った。

 

「それは相手が強いからに決まっているでしょ。私が出てこないといけないかもしれないくらい。……それよりもクインティアの片割れがいる方が疑問だけどねぇ? 相手は"疾風走破"を捕まえたんだよ。あなたの顔は見られたらまずいんじゃない?」

 

 番外席次の言葉に金髪の男、第5席次"一人師団"クワイエッセ・ハゼイア・クインティアが苦虫を噛み潰したような顔をする。

 番外席次の言う疾風走破とはクレマンティーヌであり、クアイエッセの妹にあたる。そして、この場に揃った3人の任務はクレマンティーヌを捕縛したエ・ランテルの冒険者であるエックスの調査と勧誘だ。

 つまり、クレマンティーヌに良く似たクアイエッセの顔は今回のターゲットに違和感を持たれるかもしれないというのが番外席次の指摘だ。

 しかし、当然の如くその様な問題があると言うことは法国の上層部は理解しているし、番外席次もその上層部の1人である以上、3人中では最も任務の裏事情に通じている。全て理解しているのに茶々を入れてくる番外席次にため息をついた第1席次が対処法を示す。

 

「問題ないですよ。その為に今回は"仮面"を私の物の他に2つ持ってきています。2人ともこれで顔を変えるように」

 

 そう言って第1席次が2枚の仮面を番外席次とクアイエッセにそれぞれ渡す。更に番外席次にはもう1つ、黒い粉の入った袋を渡した。

 

「それで髪を染めておいてください。目立ちますから」

「はぁい!」

 

 その張りのある大きな声からは浮かれているのが見て取れた。それもそのはずで彼女はその特異な性質と職務ゆえにこれまで法国の最奥から殆ど出られなかったのだ。

 しかし、今回の任務は彼女が出ていく為にうってつけだった。

 

 まず、相手の戦力が不明瞭ながら第1席次を超えかねないため番外席次が必要であること。

 

 次に、場所が王国であり仮に評議国に発見され戦闘になっても法国は被害を受けにくいだろうということ。神人2人による迅速な行動であれば早々発見されないだろうという前提はあるが。

 また、王国が多少のダメージを受けたとしても帝国が征服しやすくなるだけで法国には益しかないからだ。

 

 最後に仮に戦闘になっても最大の仮想敵"白金の竜王"ツァインドルクス・ヴァイシオンに対し神人2人という法国のドリームチームに加え未知の強者を加えた3対1で相手をすることができるかもしれないということ。これ以上の戦力を法国が用意できる可能性はほぼ無いので此処でケリをつけられるのなら賭けてみようという考えだ。

 

 それら3つが神官長達が彼女の出撃を認めさせた要因だ。ただ、彼等の本音に外に出ることがほぼ許されていなかった彼女に世界を見せてやりたいという気持ちはあったかもしれない。

 

 全員が準備を済ませ、第1席次である漆黒聖典の隊長が号令をかける。今回に限り、番外席次は彼の指揮下に入ることになっている。

 

「準備はできたな。クアイエッセはクリムゾン・オウルで周囲の警戒を担当してくれ。ただ、移動速度が遅くなりそうなので僕らで背負っていく。万が一交渉が決裂して戦闘になったらモンスター達を壁として使わせてくれ」

 

 真剣な表情の指揮官に対し残りの2人もそれぞれしっかりと頷いた。

 

「なら、出発だ。目的地はエ・ランテル、主な任務は冒険者エックスとの交渉だ。途中はカッツェ平原を全速力で突っ切るからエ・ランテルの郊外で風花と落ち合うまで休みなしだ」

 

 2人の様子に満足した第1席次はそのままクアイエッセを背負い番外席次を率いて法国国境に位置する神殿から飛び出した。

 

 




まず、前回のちらっと書いたえっちゃんがなぜ世界征服するつもりなのかについて。
本文に入れ損ねたのでここにかきます。

前提としてうちのえっちゃんはオリ主です。なのでAOGに対するイメージが二つあります。
1つはユグドラシルで仲間とともに築いたギルドとしてのAOG。これには確固たるいまーじがあるはず。

もう1つは原作知識からくる世界征服していくNPCをメインとしたAOG、ナザリックといった方がいいかもしれないもののあいまいな印象。

これから彼女の頭の中ではナザリックのNPCは征服者っていうあいまいなイメージがあるので征服しないという選択に至ったんじゃないかなあとか

これはあくまで理屈でしかないので本当はちゃんと考えてないし
原作で征服してたし……とかいう軽い調子で世界征服言ってるのがうちのえっちゃんです。

そして今回ついに番外さんが出撃しました。ツアーに発見される前に任務の終わらせることができるのかが彼女と法国の分水嶺です。


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26話 恨みを受け継ぐ話

26話です。

感想評価誤字報告ありがとうございました。

ちょっと遅くなりましたがどうにかできました。

今回は番外席次について大幅な独自解釈(ねつ造と妄想)があります。名前も知らないのにどう動かすべきか

もう1つ、後書きがとても長い。

後、サブタイトルがなんか嫌だったので変えました。あまり変わってないけど




 エ・ランテル最高級の宿屋である「黄金の輝き亭」に異常な速さで飛び込んで来る黒い影があった。ほんの1週間ほど前にミスリル級に昇格したばかりの冒険者チーム"漆黒"のリーダーである"漆黒のモモン"だ。食事時ではないため他の人間は宿に居なかったのが幸運だった。彼は誰の目にも留まらずに上の階の自分達が泊まる部屋に向かった。

 

 彼等がこの街に来てからそれほど経ってはいないが既にエ・ランテルの街にその名を知らないものはいない。

 伝説の魔獣を従え、王国のみならず帝国にすら被害を出した凶悪犯を捕らえた翌朝に僅か一時間足らずで共同墓地に発生した無数のアンデッドを討伐し尽くすという功績を挙げているのだ。

 その怒涛の功績により登録して5日でミスリル級に上り詰めるという偉業を成し遂げた彼等を英雄視するものも多い。また、それに嫉妬したもともとこの街にいたミスリル級冒険者チーム"クラルグラ"の挑戦をリーダーのモモンが1人でたやすく退けた話は冒険者御用達の宿では飽きるほどに語られている。

 

 この1週間エ・ランテルに流れる噂は漆黒一色といっても過言ではなかった。冒険者組合長がさらなる昇格のために王都に伺いを立てているという眉唾な噂さえあった。

 その噂の主役である"漆黒のモモン"が何に慌てていたのか、と見たものがいたら思うだろう。彼は部屋の中に入ると音が漏れていないことを確認し中にいた相方に伝えた。

 

「レベル100相当の存在が現れました。街の南側を警戒していたシャドウデーモンがかなりやられてます。彼等はまっすぐエ・ランテルに向かっているようです。多分、例の奴だと」

 

 モモンこと、モモンガの言葉は部屋にいた少女、Xオルタの意識を切り替えさせた。のんびりと用意されていた果物を食べていた彼女も背筋を正し真剣な表情で口を開く。

 

「洗脳系のワールドアイテムの奴、ですよね。ようやくといったところだけど……タイミングが悪い」

「外で迎撃したいですが、もうそろそろ街に入っていると思います」

「じゃあ、どこか外におびき出さなきゃ、ですね」

 

 近づいて来る相手が小説でシャルティアを洗脳した存在と断定した2人は迎撃の準備を始める。既にモモンガは鎧を脱いで神器級装備を取り出していた。

 

「もうちょっと時間があれば色々対策できたんですが……」

 

 モモンガは街の中心で戦闘しなかればならないことに愚痴をこぼした。それを聞いたXオルタは準備の手を止めてモモンガに尋ねた。

 

「……もし……時間があったら、何ができますか?」

「え、取り敢えず山河社稷図とか使えます。後は準備にもっと時間がかかるけど強制転移でアンフィテアトルム行きもありでしたね。後はパンドラズ・アクターにトラップを大量に仕掛けさせた部屋を用意するとか」

 

 じゃあ、モモンガは小さな声で「ほとんどぷにっと萌えさんの言っていた事と同じですけどね」と付け加える。大したことではないと思っているのだろう、会話中も作業する手を休ませていた様子はない。

 だからこそ、続くXオルタの発言はモモンガを驚かせた。

 

「じゃあ、私が時間を稼ぎます。その間に準備をしておいてください」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! わざわざオルタさんがそんなことしなくてもいいでしょ! 危険過ぎます!」

 

「でも、時間があればどうにかなるんですよね。それに私は大丈夫です。囮なら慣れていますから。モモンガさんは一旦ナザリックに戻って山河社稷図の用意をお願いします」

 

 言い切るXオルタの表情はこれ以上の反論を許さないものだった。

 Xオルタの実力なら可能性があることはモモンガにも理解できる。ギルメンの揃っていた頃はPKの囮役として活躍していたし、なんとなく上手くこなしてくれるような気はする。

 しかし、納得はしても不安がないわけではない。現状でできる全ての補助魔法をかけてからモモンガは鬼札を切った。

 

「ああ、もう……わかりましたよ。囮役は任せますが、相手がワールドアイテムを持っているかもしれない。だからこれを預かっていてください。後で必ず返してもらいますから。……じゃあ、15分で山河社稷図持ってきます。それまで絶対に無事でいてください」

 

 モモンガはXオルタの手にこの場にある唯一のワールドアイテムを押し付けると返事を待たずにゲートを通ってナザリックに帰還した。残されたXオルタは渡されたアイテムの重みに戸惑うもしっかりと仕舞い込み気持ちを落ち着けて戦闘準備を整える。

 

 彼女が渡された物はその場にあった唯一のワールドアイテムだ。それはユグドラシルにおいても極めて少ない唯1人のプレイヤーの名を冠することを認められたワールドアイテム、通称"モモンガ玉"。

 ギルド"アインズ・ウール・ゴウン"の頂点、モモンガの力の象徴である。

 

「頑張らないと、ね」

 

 手元にある時計のタイマーを15分に揃えたXオルタは装備外見統一により見えなくなっていたステータス偽造の指輪の1つを外して窓から飛び出した。

 ここからは命懸けの逃走劇だ。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「やけに悪魔が多いね。『破滅の竜王』が蘇りでもしたのかな?」

「それはないでしょう。植物系の『破滅の竜王』は悪魔との関係性は無いかと」

「悪魔については念のために警戒しておけばいい。今は迅速に任務をこなすことを考えろ」

 

 順に番外席次、クアイエッセ、第1席次の言葉だ。確かに「破滅の竜王」とは関係ないとしても警戒すべきであることは変わらない。悪魔は自然発生するようなモンスターではないので背後に何かがいるとわかるからだ。しかし、何らかの未知の存在があるというのは陽光聖典の失踪の時点でわかっていた。

 この時点で当初の予定からはズレが生じているが、計画の変更はしない。大した誤差ではないので対処可能という判断だ。

 

「ターゲットは『黄金の輝き亭』という宿にいるらしい。大通りに出てすぐのはずだから真っ直ぐ行くぞ」

 

 意気揚々と言った感じで熱意に溢れていた第1席次の言葉は次の瞬間には無意味なものに成り下がっていた。何かを見つけた番外席次がドスの効いた声で呟いた。

 

「あ……、見ぃつけた。へぇぇ……ゴースト、だったのね」

「っ!いきなり何を!」

 

 第1席次の言葉を振り切り番外席次は屋根の上に飛び上がりかけて行く。第1席次は追い縋ろうとするが、何が起きているのか理解できてないクアイエッセに気が付き、僅かにためらってしまった。

 それが失敗だった。番外席次と彼女が見つけた霊体は既にかなり遠い場所にいる。視認こそできるものの神人と雖も実力の劣る彼ではもう追いつけないだろう。

 この任務の責任者として状況を制御しきれなかった己を責める。

 

「くそっ! 気づかれていたんだ!」

「ど、どういうことですか⁈」

 

 隣ではクアイエッセが狼狽えながら聞いてくる。第1席次は悔しげな表情を浮かべながら述べた。最早彼に出来ることはこれくらいしかなかったのだ。

 

「先ほど番外席次がターゲットを見つけた。そこで相手が何らかの高等なゴースト種だと看破したんだろう。そして敵と判断して飛びかかっていったわけだ」

「そういうことですか。……任務って交渉のはずでしたよね。かの者達なら外見上、異形でも人類側の可能性もあるとの事では……」

「まあ、仕方ないんじゃないか?割り込めるとも思えないからな」

 

 クアイエッセの言葉には納得と呆れが入り混じっていた。

 それもそのはず、彼らの任務は本来交渉であり戦闘ではない。神人が2人という過剰とも言える戦力は交渉の席に着く、或いは着かせるための前提である。それ以外では有事のための備えとしての意味しかなかったのだ。

 

「それでどうしますか、隊長?」

「取り敢えず戻ってくるまで待つしかないだろ。それで相手がまだ無事だったら一言謝って交渉のやり直しだ」

 

 第1席次は相変わらず番外席次を制御できなかったことを悔やんでいるが次善策を選ぶ。アクシデントにあっても即座に対応しようとする彼の姿は未熟とはいえ優秀な指揮官と言えるだろう。

 

 ミスがあったとすれば一つだけ、番外席次の勝利を疑わなかった事だけだ。

 

 一方で番外席次の方は発見した相手、霊体化していたXオルタを屋根の上で追いかけながら実力を測る。

 確実に第1席次より速いが自分と比べると僅かに遅い。追いかけることに集中すれば何とか追いつけるが追撃の手を緩めれば即座に逃げられるだろう。

 その事実はただでさえ昂ぶっていた彼女の感情をさらに高揚させる。気を抜けば笑い声が漏れてしまいそうだった。

 

 本来であれば番外席次はもう少し落ち着きのある女性だ。種族のせいで子供っぽいところもあるが並の人間の寿命を優に越える年月を生きているだけあって相応の思慮深さを身につけている。

 そんな彼女が暴走した理由は2つある。

 

 1つは単純に溜まっていた鬱憤が弾けたからだ。彼女のこれまでの生活の反動とも言えるだろう。しかし、これは決定打ではなかった。

 

 もう1つの理由こそ彼女の行動を決定づけたものであり、番外席次という個人の根幹にある感情だ。

 

 それは人間以外の対象への敵意。

 

 番外席次という少女はスレイン法国にかつていた神人がエルフの王族による暴行を受けた結果、孕まされた存在だ。彼女の存在が原因で法国とエルフの関係は悪化したと言っても過言ではない。

 そして彼女の母こそがその時の法国で最も人間以外を憎んだ者だった。その女が渾身の愛憎を注ぎ込み育て上げた最強こそが番外席次であり、確かにその根底には確かに母の遺志が流れていた。

 

 結果、人間以外を憎むように育てられた人間ではない少女は折り合いをつける理由を力に求めた。

 

 力が有ったから母は彼女を育ててくれた。

 力が有ったから彼女は法国で生きている。

 力が有ったから彼女は生まれてきた。

 

 そうして彼女は力を求めるようになる。異種族にその憎悪を振るうためより強い血を求めた。奇しくも彼女の憎悪の根源たる父と同じ手段をもって。

 

 全ては番外席次の思想の根底に流れる憎悪によって決められた行動だった。

 

 その憎悪が彼女がXオルタという霊体を襲うことに対するためらいを消した。血を交えることもできない異形の女など番外席次にとって打ち倒すべき敵でしかなかった。

 

 そして、この暴走は番外席次私情の混じった失敗であり第1席次とクアイエッセの計画を乱したが、完全に無価値だった訳ではない。結果論ではあるが彼女の行動はXオルタの計画を第一歩から蹟かせたのだ。

 

 Xオルタの最終目的は襲撃者が全員宿の室内にいる状態で山河社稷図を使うこと。つまり、やるべき事はモモンガが山河社稷図を取ってくるまでの時間稼ぎだ。

 故に、Xオルタの計画はターゲットであるだろう自分が霊体化した状態で一定の距離を保ったまま人混みの中を動き回ることだった。かなり荒い計画だが、Xオルタには成功させる自信があった。

 相手のターゲットは残りの2人が精々30レベル程度にしか見えないようになっていることから自分だと確信していた。さらに、宿に引き込むことも道中のシャドウデーモンに対する行動とユグドラシルでの囮の経験をもとに、面倒な小道を通らせたり、追いつけそうなところで隠れたりして少しイラつかせれば直ぐに突入させることができると思っていた。

 

 事実、不可能ではなかったはずだし、宿に引き込めずとも山河社稷図を持っていれば穴熊を決め込むだけでも意味があった。突入されるまで待ち、突入されたらそのまま異空間に取り込めるためだ。

 しかし、相手の行動があまりにも素早く、窓から飛び出た時に番外席次にいち早く襲撃されてしまった。それさえなければ時間稼ぎは充分うまくいっただろう。たとえ霊体を見られていたとしても人ごみに隠れたらそのまま時間を稼げたかもしれない。

 

 結果、Xオルタの策は破綻して彼女は目の前の1人以外に手を出す手段を失った。だからこそ、Xオルタは目の前の1人を絶対に逃がさないように立ちまわる。もう失敗はありえなかった。

 

 当然、番外席次は目の前のターゲットが何を考えているかわかっていない。彼女にわかるのはXオルタが焦った表情を浮かべ逃げ回っていることだけだ。

 

「ねぇ、何で本気で反撃しないの? 私から逃げられるって事は戦士なんでしょ? なんかしなさいよ、ねぇ」

 

 Xオルタの表情は番外席次の嗜虐心を刺激する。幾度も斬りつけるがそれらは妙な力で押し返される事で決定打に欠けていた。しかし、確実にダメージは与えている。

 斬りつけたり押しのけたりを繰り返すうちに、Xオルタの懐から微かな声が聞こえた。それと同時に番外席次の一撃が入る。相変わらず決定打ではないが今までの傷と比べると明らかに深手だ。

 方向転換し、Xオルタは宿に向かって全力で駆けはじめる。相手が今の深手を回復しようとしていると感じた番外席次はそれを追った。そして、「黄金の輝き亭」の看板が見える屋根の上で追いつき、捕まった。

 番外席次が飛びかかった瞬間、Xオルタがその胴体にしがみついたのだ。腹部に柔らかいものが当たり、自分の胸に淡い金髪が沈み込んでいるのが番外席次には見えた。しかし、四肢はどれも自由だ。僅かに戸惑うも無様な抵抗だろうと番外席次は判断し、直ぐに引き剥がそうとして失敗した。

 力が強い。

 単純に膂力でXオルタの方が数段上にいたのだ。そのままXオルタは屋根を蹴り、弾丸のように宿の部屋に飛び込んだ。

 待ちかまえていたように声がきこえた。

 

「お疲れ様です。此処からはチーム戦ですね」

 

 モモンガが持っていた巨大な巻物を広げた。部屋の風景が瞬く間に変化していく。

 

「ありがとうございます、モモンガさん。この状況を待っていました」

 

 番外席次の見たことのない場所で先程まで追いかけていた相手と見るからに強大なアンデッドが並んでいる。

 

 今、漸く番外席次は自分が罠にかけられ、狩られる立場に回ったと理解した。

 




とりあえずいろいろ突っ込みどころがあると思います。

まず、山河社稷図について
これは発動したエリア内のものを纏めて異空間に転移させるアイテムとのことです。
つまり街中で使うと町ごと転移すると思う。
で、当SSでは屋内使用してますがこれなら部屋の中だけの転移に出来そうだと思った次第です。ゲームって屋内に入ると完全にエリア切り替わりますし……

そして、えっちゃんの囮作戦
まず、ユグドラシルで囮だったことについてそういうことにしました。たぶんPKの食いつきよさそうだし。課金アイテムドロップしそうなキャラということで。
AOGでのえっちゃんの役割考えたらこんなのありかなと思って。

次、番外席次
彼女の父は11巻の幕間のエロフ王と断定しています。
つまり、レ〇プされた母親が犯人の特徴をもろに受け継いだ娘を生んだということ。闇が深すぎる気がする。
そして、その母親に育てられた彼女はきっといろんな影響を受けています。
結論として当時の最高会議が番外を母から引き離さなかった程度には彼女は愛されていて、現在の最高会議が嘆く程度にはゆがんだ教育を受けていたんだと判断しました。

最後におまけ
このあたり考えるとエロフ王ってたぶんツアーの仲間の13英雄の1人かもとか妄想できます。
そうなると二巻のクレマンのセリフだとツアーって友達(レイパー)の娘を見つけ次第戦争吹っ掛けるやばい人になるじゃないですか。
でもツアーってそんな感じじゃないし
だからこれ、クレマンが嘘言ったか(あいつ信用できない)、
戦争吹っ掛けるのは番外の方か(上述の闇深を参照)、
やばいのは他の竜王か(空飛んでばっかりいるやつとか引きこもりとか)
と考えました。
そこから番外の生まれを捏造していくとこんな感じに。

結構面倒なこと書きましたが次回バトルです。今回描写も少なくいじめられていたえっちゃんの応援をよろしくお願いします。

感想評価指摘いろいろお願いします。あると喜んで悶えます。


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27話 雌雄を決する話

27話です。サブタイトル変えました。

感想評価誤字報告ありがとうございます。

ついに、ついに評価がオレンジになりました。やったーえっちゃん大勝利ー!!

あと、エイプリルロマニロスで遅くなりました。すいません。

そして特効にえっちゃん。交換に勲章と胆石があるので残り十個の勲章とQPでスキルマです。長かった。

では、今回の内容ですが前半はただのオリ主をえっちゃんに寄せるための解説です。

追記
番外編を一章と二章の間に移しました。
3月31日の26話更新から順番がややこしくなっていると思います。ごめんなさい。


「あの、大丈夫ですか? かなり派手に血が出ていますけど」

「ちょっとヒリヒリするけど平気です。途中でHP偽装スキル使ったらやけに血が出やすくなって。……この血ってシミになりそう。洗濯とかできるのかなぁ?」

「ああ、安心しました。無事で良かった。上手くいったんですね」

 

 モモンガの心配はXオルタの普段通りの気の抜けた言葉で霧散する。安心感と共に仲間を傷付けた相手への怒りがふつふつと湧き上がってきた。しかし、Xオルタの続けた言葉はモモンガの警戒心を再び呼び起こすには充分なものだった。

 

「あ、いえ、ちょっと失敗しました。アレ以外にあと2人、レベルが90くらいと30くらいのを取り損ねました。多分宿の近く――」

「あぁああああ‼︎」

 

 番外席次が絶叫しながらモモンガに向かって突貫してきたことによってXオルタの言葉は途中で遮られる。モモンガがこの異空間を発生させている犯人と判断したのは正しかった。山河社稷図の使用者を狙ったのは最善の選択だったと言える。

 しかし、ウォーサイズを大上段に振りかぶった番外席次は横から割り込んできた赤い光によって弾かれた。

 

 弾き飛ばされた番外席次の前には装備を変えた先程までの獲物が赤く輝く長剣を携えて立ちはだかっていた。

 

「じゃあ、俺は上で支援と拘束の準備しておきます。攻撃魔法はフレンドリィ・ファイアが怖いので今回はなしにしときますね」

 

 モモンガはそう言ってフライで上空に飛び上がった。安全圏まで浮かび上がると戦場の全域を視界に収める。

 その眼窩にはこれから始まるアインズ・ウール・ゴウンが誇る1人の戦士の戦いに対する期待を示す紅い焔が灯っていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ユグドラシルというゲームで近接職になるという事は実はかなり敷居が高い。別に近接職になる為に特別な条件が必要だというわけではない。近接職として役に立つと言えるだけの技量を得る事が難しいのだ。

 ダイブ式のゲームにおいて近接戦闘を行う際、そのプレイヤーの技量が大きく反映される。つまり、どれほど体の動かし方を知っているかがキャラクターの力量に大きく反映されるのだ。

 

 22世紀においてこれは非常に重要な事だった。貧困層には走るときに「右手と右足を同時に出さない」ということすら知らないものもいた。環境破壊の進んだ22世紀において運動をするには万全の空調や非常に高価な設備が必要だからだ。また、たとえ富裕層でも運動が可能というだけでありその機会を得ることは難しい。

 

 結論としてユグドラシルで近接職を志すならまず、体の動かし方を知らなくてはならない。これが大前提としてあり、近接職に対する大きなハードルとなっていた。

 

 しかし、近接職として優秀なプレイヤーの多くはスキルなどのゲームらしい特殊技術を用いこのハードルを乗り越えて来た。

 例えば、武人建御雷は「五大明王撃・明王コンボ」に代表される特殊技術を駆使して最大の一撃を与える「二の太刀いらず」をモットーとしていた。純粋な近接職ではないが彼の親友、二式炎雷もスキルによる隠密からの一撃や最大火力としてサポート前提の「素戔嗚」を用いた。

 

 一方で、極少数のプレイヤーは高いはずのハードルをゲーム要素の助けを借りずにまるで存在しないかのように容易く踏み越えた。アインズ・ウール・ゴウンではたっち・みーがその筆頭だ。

 彼は圧倒的な才能と警官として武道を嗜んでいた経験を糧に一足跳びに戦士としての実力を伸ばし、その勢いでワールド・チャンピオンになった。彼の技量はワールド・チャンピオンである事を無視しても極めて高かったのである。

 

 ただ、ここで勘違いしてはならない事として武人建御雷のようなタイプがたっち・みーのような戦士に劣っているというわけではないという事だ。事実、たっち・みーに勝ったワールド・チャンピオンの1人は多様なスキルやアイテムを使う戦士だった。武人建御雷もたっち・みーには多少劣るもののユグドラシル屈指の戦士だった。

 

 あくまでユグドラシルの近接職にはスキルにあまり頼らず自身の技量を武器としたプレイヤーがいたということだ。

 そして、今モモンガの眼下で始まる戦いにおいて重要なのはXオルタがその技量を武器としたプレイヤーの極点に到達した内の1人だったという事だ。

 

 Xオルタの前世は21世紀であり、多くの自然が残っていた時代だ。22世紀の現実で彼女ほど体を動かした経験を持つものはいなかった。

 

 彼女以外に海辺で砂に足を取られそうになりながら走った人間はいない。

 

 彼女以外にでこぼこした歩きにくい山道を歩いた人間はいない。

 

 彼女以外に大量の水を掻き分け泳いだことのある人間はいない。

 

 彼女以外に小学校の授業で校庭を走り回った人間はいないし、休み時間にジャングルジムや登り棒のてっぺんから見える景色を知る人間はいなかった。

 

 21世紀なら誰もが持っている他愛無い記憶がXオルタというプレイヤーに圧倒的なアドバンテージを与えた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 番外席次の振り下ろしは勢いが乗り切る前に逸らされた。弾かれた先から振るった横薙ぎはバックステップで躱された。屋根の上で追いかけていた時に当てた攻撃が1つとして当たらなくなっている。

 罠に嵌められ絶対強者たる自分が翻弄されている。焦りは人を慌てさせるがそれも過ぎれば逆の意味を持つ。

 立て続けに起こる想定外の出来事は昂ぶっていた番外席次を冷静にさせた。

 

 戦っているのは1人だがもう1人アンデッドの魔法詠唱者が上空にいる。各個撃破がベストだが不可能だろう。まず、目の前の女の相手をして魔法詠唱者を引きずり出さなくてはならない。上手く引きずり出せば自身のタレントで2人纏めて対処できるかもしれない。

 Xオルタのバックステップに合わせて距離を取った番外席次が見出した僅かな活路がそれだった。

 ウォーサイズを低く構え、槍のように突き出す。武器の間合いは番外席次の方がXオルタより幾分長い。距離を置いて小技を挟めば番外席次も有利に立ち回れるだろう。

 

「……ん」

 

 Xオルタの口から僅かに漏れた音を聞いて番外席次は足元をウォーサイズで払うように振るう。飛び跳ねるようにして避けられるが今までとは違う手応えを番外席次は感じた。

 

 本来、小技を使うのは絶対強者たる彼女の戦い方ではない。常に一撃で勝敗が決まるのでこれほど次の攻撃を意識した戦い方は初めてだった。

 僅か三合の撃ち合いに互いの技術の差が明確に現れていた。

 しかし、一対一の戦いとしてはまだ番外席次に分があった。武器の間合いの差は明白で、屋根の上で負わせた傷はXオルタを蝕んでいる。

 それでも、番外席次はダラダラと削り合いをするつもりはなかった。自分より巧みな剣士と戦い続けるのは危険だし、もう1人のアンデッドを忘れていないからだ。

 

 番外席次は全身を使いXオルタの胴を目掛けてウォーサイズを振るう。当たり前のように弾かれたが、それを含めて番外席次の策のうちだった。

 

 〈即応反射〉

 

 攻撃の隙をキャンセルする武技で元の体制に戻り再び同じ攻撃を繰り返す。先ほど番外席次の一撃を弾いた光刃は大きく投げ出され、どれほど早く振るっても次の一撃には間に合わない。Xオルタ空いている左手で遮ろうとするが素手で防げるものではない。

 

「うぁあぁああ!」

 

 番外席次の絶叫とともにウォーサイズが振るわれ、一瞬の後に地面に固い金属が落ちて高い音が響く。それが合図となりモモンガの拘束魔法が番外席次を縛り意識を奪った。

 

 仮想空間の床を叩いたのは番外席次のウォーサイズだ。その中程を切断された番外席次の両腕が握りしめていた。

 

「お疲れ様です。危なげなく勝てましたね」

「……そうでもないです」

 

 モモンガの賛辞をXオルタは素直に受け入れられなかった。上空から見ていたらXオルタが全ての攻撃を振るわれた横薙ぎに対しカウンターで勝負を決めたように見えていただろう。しかし、実態はそれほど甘くなかった。

 

「この子戦っている途中でどんどん強くなっていきました。正直勝てたのは武器の差だと思います」

 

 確かに番外席次は小技や武技を絡めた連携を使いこの戦いの中で大きく変化した。両手にそれぞれ持つ2本のネクロカリバーを掲げてそれを告げたXオルタの表情は若干重い。

 この戦いの決まり手はネクロカリバーが変形機能によって双剣となったことで左手に出現した2本目が番外席次の腕を切り落としたことだ。

 もしこれがなんの変哲もないロングソードだったらXオルタに番外席次の連撃は防げなかったかもしれない。しかし、そうはならず結果として番外席次は深手を負い倒れ伏した。Xオルタの振るった刃に敗れたのだ。

 

「邪聖剣ネクロカリバー」

 

 Xオルタの主武器であり、今回の勝敗の決め手となったこの神器級武器は極めて特異なもので本来ユグドラシルではあり得ない形をしている。

 

 別に作ることが出来ないということではない。大量の希少金属などを消費するが極めて真っ当に作られている。

 問題は作っても扱いきれないということだ。ユグドラシルというゲームのシステム上、複数種の武器を使いこなせる戦士は少ない。特に神器級の武器を手に入れられる上級プレイヤーはたった一種類の武器を突き詰める。複数の武器を使えるというのは本来あり得ない事でありそんなプレイヤーはいないはずだった。

 しかし、Xオルタだけは圧倒的な経験を糧に数多の武器種を十全に使えるようになった。この長剣、両剣、双剣、チェーンソーといった多様な武器種を扱えるということがXオルタがたどり着いた武器使いとしての極致であり、ネタビルドの彼女にアインズ・ウール・ゴウンの最前線で戦えるだけの力を与えた。

 そして、ネクロカリバーの変形機能が彼女の能力を完全に開花させる。従来のアイテムボックスを通した武器変更ではなく圧倒的な速度で武器の切り替えが可能となったことで彼女の戦闘の多様性は増し、誰にも予測しきれない深みを与えたのだ。

 

 Xオルタはネクロカリバーの奥の手を1つとはいえ使わせた敵に対する賞賛を胸に仕舞い込み、意識を切り替えた上でモモンガに言った。

 

「じゃあ、モモンガ玉は返しておきますね。残りの2人は人質がいれば特に問題なさそうですし」

「わかりました。じゃあ山河社稷図と交換で。やっぱりワールドアイテムを一つは持っていて欲しいので。あ、あと……その格好だと……」

 

 バトルドレスを身に纏ったXオルタでは冒険者として振る舞えない。そのことに気がついて着替えるように言おうとしたのだが、魔法使い直前の骸骨には異性に着替えを促すのは難しかったようで言葉が詰まっていた。

 しかし、意図は伝わったらしく頰をわずかに紅く染めたXオルタ手早く互いのワールドアイテムを取り替えて言った。

 

「……じゃあ、き、着替えるので、奥を向いていて、ください」

 

 たどたどしい言葉とともに隔離空間が解除され元の屋内に戻る。山河社稷図の所有権が移動したためだ。モモンガは回れ右してXオルタから目を逸らし魔法で作った漆黒の鎧を身に纏った。こちらは魔法を使っているだけあって一瞬で済んだがXオルタはぴっちりとしたバトルドレスを着替えるため時間がかかっている。

 モモンガは背後を気にしないように意識して外の様子を伺った。Xオルタは霊体化していたが屋根を飛び回っていた番外席次はかなり目立っていたらしい。新しく屋根を飛び回るモノクロ少女の都市伝説が生まれたようだ。

 両腕を失い縛られた捕虜に目をやった。あまり目立たないようにシーツを被せてあるが早くナザリックに送り尋問するべきだろう。

 宿の中にも騒ぎが及んでいるようでドタバタした音が聞こえていた。

 

 バタンとドアが開く大きな音が響く。一瞬だけ周囲の音が消えた気がした。

 

「……あ、⁉︎ ッッやぁあぁあああ!」

 

 Xオルタの悲鳴と共に何かが叩きつけられた音が聞こえた。モモンガはとっさに振り向いて何が起こったのか確かめようとする。確かめてしまった。

 

 モモンガの目線の先、開いたドアの前に這い蹲る2人の若い男がいる。その2人と自分の間、丁度真ん中のあたりにXオルタがいた。セーラー服を胸元に抱えてモモンガの方に背を向けてしゃがみこんでいた。

 

 バトルドレスを脱いだばかりでブラを着けようとしていた途中だったのか、ストラップが両肩にかかっているだけで2つのホックが形の良い肩甲骨の少し下から垂れていた。

 2つのホック間、背骨に沿ってできた窪みが緩やかなS字を描いている。その頂上は結い上げられた金髪の根元のうなじが露わにされてはらはらするような雰囲気があった。シニヨンから漏れた毛がゆらりと揺れるに合わせモモンガの視線はS字に沿って下にずれていく。

 セーラー服を抱きしめて前面を隠そうとしているせいか肩甲骨は大きく開きその間の白い肌は視線すら弾くような張りがある。その上を緩くブラのショルダーストラップが通っていた。

 さらに視線をずらすとまだ固定されていないアンダーが呼吸に合わせ微かに揺れている。揺れるカップの隙間からちらちらと小さなふくらみが見えた。その先微かに桜色の蕾が覗ける気がした。

 

 美しい。

 

 脳裏に浮かんだモノに嘆息しながらモモンガは急いで視線をそらす。

 再び背中に視線を戻し下の方へ進んだ。ウエストで僅かに影がかかってその先から円錐形に膨らんでいく。骨盤の上にまかれたガーターベルトが留め具で作られた黒い円が丸くお尻を囲っている。それは中心にある股上の浅いヒップハングのショーツを強調しているように見えた。

 腰の横から太腿の裏に伸びる留め具は間にある柔肉を少しだけ中心に寄せていく。それは黒いショーツの股上に届きその下で谷間を作る。谷間はショーツのゴムとの狭間に小さな空間を作り出し吸い込まれるような闇を生み出した。

 

 モモンガの理性が視線の移動を止めた時纏っていた鎧が小さな金属音を立てた。ぎこちなくギリギリと音を立てるように振り向いて来たXオルタの顔とモモンガの目があった。

 

「―――――!」

 

 声にならないXオルタの叫びと共に腕が振り上げられた。念動力が振るわれてモモンガは床に叩きつけられる。

 その腕が振り上げられた瞬間、モモンガには今度こそ、ほんの一瞬だったが、桜色の乳頭がハッキリと見えた。

 




えっちゃんの服の着方

ガーターベルト→ストッキング→ショーツ→ブラ→肌着→スカート→上着→カラー→スカーフ

肌着はないかも。この四段階目に入ったあたりで事件が起きました。以上

おまけで

今回は建御雷さんお話が出ました。彼の五大明王コンボを私なりに解釈したところ武蔵ちゃんの宝具になったので斬り合いよりスタンドとかスキルみたいので戦うタイプと考えました。ちなみに彼はうちのオリ主より強いです。明王コンボを突破できる手段がえっちゃんにはない。運良く状態異常抵抗出来たら勝てるかも?

ちなみにたっちさんは化け物。100回やって1回勝てたら奇跡。

感想評価指摘いろいろお願いします。あると喜んで悶えます。


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28話 二分された話

28話です。

感想評価誤字報告ありがとうございます。

そして遅れてすいません。全部ノッブが悪いんです。あのシスコンが悪い。

FGOイベントでえっちゃんがちょい役で出てきました。ただの腹ペコでしたがほっこりしました。

そして今回はえっちゃんの出番が少ない。後半にちょっとだけです。


「良かった、治りましたね」

「はぁ、安心した。おい、クアイエッセ、聞こえているか?」

 

 頭の両側から聞こえた2人の男の声でクアイエッセは意識を取り戻した。声の主は漆黒の鎧を着た戦士と直属の上司である漆黒聖典の隊長だ。

 意識にかかる靄を振り払い目の前を確かめる。起き上がった自分の前にいる2人の男は辛く苦しい経験を共に乗り越えて来たような奇妙な絆があるように見える。

 微妙な居心地の悪さを感じながらクアイエッセは記憶を遡り始めた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「まずは宿ですね」

「ああ、流石に無視はできないからな」

 

 番外席次がXオルタの霊体を見つけて飛び出したあと、残されたクアイエッセは第一席次にターゲットの仲間である冒険者"モモン"に接触を取ることを提案したのだ。2人は相手が居る宿の部屋を訪ねて接触することにした。

 今回の任務でクアイエッセは唯一の大人と言える。番外席次は種族のせいで幼さが残っていて、第一席次も法国最高級の戦力を持ち最高の教育を受けているがまだ成人には幾年もかかる。だから、不慮の事故や有事の際には単独任務が多く経験豊富なクアイエッセがサポートすることになっていた。

 

「では、場所はわかりますか?」

「ゴーストが出て来た方向に向かえばあるはずだ」

 

 ゴーストが出て来た方向というのは透明化看破能力を持たないクアイエッセにはわからないが第一席次にはわかっていたようだ。若い上司の後を歩いていると5分も掛けずに目的地「黄金の輝き亭」に着いた。冒険者が泊まる宿としては随分と高級な部類だ。いきなり客に会いたいなどと言うような怪しい連中はそのまま門前払いされかねない。

 

「まずいですね。実際にモモンに会えるまでかなり手間取りそうです」

「なんとか受付まで呼んでもらうか?」

「いいえ、身内が迷惑を掛けているのです。こちらから強引に呼びつけるのは避けた方が良いでしょう。上手く取り計らうので交渉は私がやります」

 

 第一席次に許可を取ってクアイエッセは宿に入っていった。

 数分後、クアイエッセが宿の者を連れて出てきた。

 

「お待たせしました。例の冒険者の隣の部屋を取れました。すぐに向かいましょう」

「は、え?」

 

 第一席次の困惑をよそに連れてきた従業員の案内に従ってクアイエッセは進む。途中、目の前の従業員に聞こえないよう小さな声で第一席次に説明した。

 

「これで隣部屋の客として自然に接触できます。いちいち怪しまれることもないでしょう」

「……だが、失礼ではないのか? いきなり押しかけているようなものだぞ」

「確かに失礼かもしれませんが彼らのためになることです。エックスが異形である事が今回の番外席次の行動の原因です。人目につかないやり方であることが重要です」

 

 内容を聞いて納得したところで部屋に着いた。2人は部屋に荷物を降ろしてから隣の部屋に向かう。ノックをしてみたが反応はない。

 

 彼らは知らないがこの時モモンガはナザリックに山河社稷図を取りに戻っていて部屋にいなかった。そのまま彼らはXオルタと番外席次の戦闘が終わるまでモモンガ達との接触を持つことはできなかった。何もしなかったわけではないが山河社稷図の効果で隔離、封鎖されている空間と関わることができなかったのだ。

 

 暫くして隣室に番外席次が飛び込んだことで状況は緊迫していた。風の音すら聞こえなくなった部屋は明らかに魔法的な影響下にあるとわかっていた。

 

「結界ですね」

「エックスの手によるものだろう。決着がつく前に接触したいが不可能だろうな。結界が維持できないレベルまで追い詰められるまで待つしかない」

「ではなんらかの音が聞こえるまでは待ちましょう。確認は隊長に任せても?」

 

 第一席次が頷き壁に耳を当てる。高レベルの聴力なら隣の部屋で何がおきているかくらいは感じ取れるだろう。

 暫く静かに待っていると第一席次が何かにきがついたようだった。

 

「声がする」

「番外席次の物ですか?」

「いや、違うだろう。聞き取りにくいがエックスの物じゃないかな」

 

 彼らにとってそれは朗報だ。

 音が聞こえるという事は魔法効果が途絶えたという事だ。番外席次が負けるという発想がない以上、魔法詠唱者であるエックスが敗れ結界を維持できなくなったと考えた。

 エックスが負けたのに会話ができているという事は番外席次がとどめを刺さずに我慢しているということになる。

 

「隣に行くぞ」

 

 第一席次の一言で2人は部屋を出る。我慢しているとはいっても番外席次は自制がきかない。エックスを助けるために部屋に割り込む必要があったのだ。

 完全な勘違いに基づき彼らはモモンガ達の部屋の前に来た。再び第一席次が耳を澄ませ内部の情報を得ようとした。

 

 その時だった。

 部屋の中から重苦しい金属音が響いた。モモンガの鎧が出現した時にたてた音だ。

 

 しかし、第一席次とクアイエッセは部屋に2人しかいないと思っていた。魔法詠唱者は金属武器を身につけないので音の原因は番外席次だと考えた。

 遂に我慢の限界がきたのだ。番外席次がエックスにとどめを刺そうとしていると考えた2人は多少もたつきながら第一席次、クアイエッセの順に慌てて部屋に飛び込んでいった。

 

 ノックをしなかったのが最大の失敗だったかもしれない。

 

 2人の目に映ったものは着替えている途中でほぼ裸のターゲットだった。扉側に向かってお辞儀をするようにしながら両手を背に回していた。下半身はともかく上半身は下着がぶら下がっているだけでほとんど裸だ。

 先に入った第一席次は女性の裸など初めて見たのだろう。完全に目が泳いでいた。

 クアイエッセは咄嗟に第一席次の手を引いて部屋を出ようとしたができない。レベルが違いすぎる。所詮は30レベル程度のテイマーでしかないクアイエッセの筋力では完全に硬直した高レベル戦士の筋肉は微動だにしなかった。

 

 直後、響いた悲鳴とともに圧倒的な力で押しつぶされる。

 

 ――妹もこんな風に叩きのめされたのだろうか――

 

 全身の骨が折れるような激痛とともにそんな場違いな思いを抱いたのがクアイエッセの最後の記憶だ。

 

 記憶を取り戻したクアイエッセは再び目の前の2人を見る。漆黒の戦士と第一席次の間にある生温い絆の意味を理解してしまった。

 初めて風俗に連れ立っていった男友達の間にできるものだ。

 現代風に言えば一緒にエロ本を買った仲間だ。その直後に身内にバレる所まで合わせてワンセット。

 

 2人とも申し訳なさを全身から醸し出しているが相当混乱しているようで部屋の状況は気を失う前とほとんど変わっていない。

 

 一か所だけ変わったところといえば奥で黒いマントにくるまって震えているものくらいだ。マントのてっぺんから重力に逆らう金髪が一房だけ飛び出ていた。その手前には着替えが散らばっていて未だにXオルタが下着姿であることがわかる。

 クアイエッセは何故ここにモモンがいるのかなどといった状況は理解できていないが、最初に言うべきことはすぐに分かった。

 

「とりあえず3人で私たちの部屋に移りませんか? このままでは彼女も辛いでしょう」

 

 その発想は無かったらしい。激しい同意を得てクアイエッセは先頭に立ち隣の部屋に第一席次とモモンガを連れて行った。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 部屋に残されたXオルタは部屋に誰も残っていないことをしっかりと確認して羽織っていたマントを脱いだ。

 周囲に注意を払いながら着替え始める。隣の部屋から聞こえる男どもの声をできる限り無視して手早く着替えると再び蹲ってしまった。思考が纏まらず、どうしたらいいのかわからない状態だ。

 

「ねえ、あなた何を落ち込んでいるのよ。私に勝ったんだからもっと偉そうにしなさいよ」

 

 番外席次の言葉だ。モモンガの魔法の効果が切れたのか意識を取り戻したらしい。Xオルタがびくりと飛び跳ね警戒心を露わにすると彼女は慌てたように言葉を続けた。

 

「別に今更何かしようってわけじゃないわよ。こんな腕で何ができるとも思えないし……。単純に私より強いあなたがそんな態度しているのが気にくわないのよ」

 

 肘から先がない両腕を広げて語る番外席次は心配しているようで声からは微かな不安が感じられた。本心からの言葉だろう。

 Xオルタは何が起こったのか説明するべきか悩む。襲撃者とはいえこの場にいる唯一の同性だ。メッセージが使えないXオルタはナザリックの女性陣に相談したければモモンガを通さなければならない。それだけは絶対に避けたかった。

 彼女にとって同性に今回の事を相談する最後のチャンスかもしれないと思ったら自然と口が動いていた。何より彼女はXオルタの着替えを見た犯人ではない。

 

「……着替えを見られた」

 

 しかし、特別詳しく説明するわけではない。Xオルタにとって思い出したくない記憶でもあるのだ。

 微かな声ではあるが番外席次には聞き取れた。ある意味で納得のいく理由だが引っかかることがあった。

 

「あのガイコツに見られたんだ。でも私と戦った時みたいに一瞬で着替えたりはしなかったの?」

「……あれは課金アイテム、だから何度も使えない。あと、変な2人組も……」

「2人組……?」

 

 Xオルタの声がますます小さくなっていく。説明された2人組は同じ任務を受けていた同僚だ。番外席次としては何故第一席次とクアイエッセがその場にいたのか気になったがXオルタに聞いてもわかることではないだろう。

 会話が途絶える。番外席次もコミュニケーション能力が高い部類ではない。基本的に引きこもっていただけの彼女に他人を慰めるのはハードルが高過ぎた。しかし、この沈黙はもともと活動的な彼女には居心地が悪い。強引な形ではあるが話題を変える。

 

「次の話。私は強かったかしら?」

 

 普段は使わない武技を用いて戦い、勝てると思った瞬間の敗北は番外席次のプライドをへし折っていた。高圧的な口調は性根に染みついているもののようで変わる様子は無いが真剣な問いかけだった。

 急に質問されたことはXオルタを驚かせたが自分の痴態と関係のない話ができるのなら彼女にとっても望ましい。彼女は率直な感想を述べていく。

 

「強くはなかった。ただ、弱かったわけじゃない」

「……そう。なら少しは自信を持っていいのかな」

 

 己の力を信じられなくなった番外席次にとって明確な強者が力量を保証してくれたことはありがたかった。強敵と言ってもらえなかったことは残念だが納得はできる。

 自分を打ち倒した異形がこんな人間臭い相手だとは思っていなかったが。

 

「あなたが男だったらよかったんだけどね」

「……え?」

「もし男だったらあなたの子を産めたかもしれないじゃない。どんな強い子が生まれていたのかしら」

 

 Xオルタの人間臭い側面に触れるほど番外席次は惜しいと思ってしまう。普段から自分より強い男の種を孕みたいと公言している身としてXオルタが男だったらと思ってしまった。

 当然の事だが本当に男だったら子を産みたいなどと考えないだろう。彼女にとって子作りは未だ想像の中にしか存在しない非現実のものでしか無い。

 Xオルタが同性だという気安さと現実感の無さがくだらない発想を許しただけに過ぎない。

 

「……えぇぇ……。そういうの無いです」

「ちょ、ちょっと待って。冗談よ、冗談。ここであなたに引かれたら私何もできなくなるのよ。いなくならないでよ」

 

 Xオルタは大袈裟に距離をとるが肘までの腕を上げた番外席次の言葉ですぐに戻る。ほんの数分前まで殺しあっていたことが嘘のように2人は話に花を咲かせていた。

 

 




今回の話も突っ込みどころが多いと思います。

前半についてモモンガさんはテンパっているというよりやるべきことがわかってない。だって生の女の子の着替えなんて見たことないし。
後はクアイエッセがメインです。唯一の非童貞がどう行動するのかですね。

後半、番外さんの強い男の子をはらむ発言は彼女の中二病が現れたようなものってことになってます。ウン十年物の処女が相手が欲しすぎて暴走してる妄想?
多分あの子の中身は穢れのない乙女が歪んだ感じの中二病

そして最後、うちのオリ主の性認識は完全に女性です。
一応TSタグをつけていますがこれは二回も体が変わっているので(転生時と転移時)どっちかで性転換していた方が自然だからです。確か75%でTS経験者。
正直なところ元の性別は設定してないのであまり気にしないでください。

感想評価指摘いろいろお願いします。あると興奮して周回速度が上がります。
執筆速度も気持ち早くなるかもしれません。




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29話 再会のための話

29話です。

感想評価誤字報告ありがとうございます。

ちょっとうまくまとまらなくて時間がかかりました。

今回はクアイエッセが頑張ります。本当に頑張ります。

若干壊れ気味



「先ほどは失礼しました。窓が割れるような音がして緊急事態かと思ったのでノックをしたのですが反応がなく、暫くすると室内で金属音がしたので事件かと思い無礼とは知りながら押し入ってしまいました」

 

 3人の男が部屋に入って最初に口を開いたのはクアイエッセだ。多少無理がある話だが今のモモンガではすぐにその粗に気がつくことはできない。

 

「正式な謝罪は後ほどエックスさんに直接したいと思いますので、まずは自己紹介をさせていただきたいと思います」

 

 クアイエッセはこの場の誰よりも現状を冷静に理解していた。

 それは、八欲王に匹敵する相手と敵対関係になりかねないということだ。番外席次が敗北した事実に戸惑っている余裕はなく、意識を切り替え今後のために力を尽くさねばならない。互いの実力をある程度理解している第一席次より遥かに弱く雲の上のこととして考察を切り捨てたクアイエッセの判断は的確だった。

 だから、彼は会談の主導権を握り自分の優位に話を進めようとモモンガが口を挟む暇がないように捲し立てた。

 

「私はスレイン法国のクアイエッセというものです。本日はモモン様とそのチームメイトの方々に会うために参りました」

 

 しかし、モモンガも混乱しているからといって一方的に丸め込まれる程愚かではない。交渉事はモモンガにとって得意分野だ。するべきことがはっきりしているという点で先程のような男女関係とは段違いにわかりやすい。

 

 "スレイン法国"

 

 その単語はモモンガを警戒させるには十分だった。捕らえた陽光聖典の背後にいた国だ。過去にプレイヤーとの関係があった国だとXオルタのノートにはあった。モモンガは注意深く交渉にあたる。

 

「法国の方が他国の冒険者に何のようでしょうか? 依頼というわけでもないでしょう」

「確かに依頼ではありませんね。しかし、ある意味で似ています。それというのもあなた達が既に依頼を果たしてくださった、と言えるからです」

 

 クアイエッセはモモンガの質問に対し迂遠な形で答える。クアイエッセにとってモモンガがこのタイミングで口を挟んで来たのは予想外だった。

 さっきまで異性の着替えを見た程度で狼狽えていた男がこれ程素早く会話の舵を取ろうと割り込んでくるとは思わなかったのだ。

 しかし、次の言葉は決して遮られるわけにはいかない。クアイエッセは息継ぎをしないで口早に言い切る。

 

「我々はその調査の後、可能であれば友好関係を結ぶために参りました」

 

 番外席次がXオルタに襲いかかったのに白々しいと思われるかもしれない。しかし、法国の最高戦力が相手の手にある以上敵対は法国の滅亡、ひいては人類という種の滅びを意味する。

 多少強引だとしても敵意が無いことを示す必要があったのだ。主導権を握り続けられないならせめて対話は続けたい。

 しかし、彼の言葉はモモンガの警戒心を掻き立てる。国が個人と接触するということはモモンガの常識ではありえない。つまり、彼らはモモンガの背後に組織があると想定していると思われたからだ。

 

「……ほぅ、私には心当たりがないのですが聞かせてもらっても?」

「もちろんです――」

 

 番外席次の行動に対して即座に報復される可能性がなくなった事にクアイエッセは安心して説明する。

 

 クアイエッセの話は大きく分けて2つ。

 秘密組織ズーラーノーンの計画と裏切り者クレマンティーヌの存在だ。モモンガ達がミスリル級に昇格する原因となった2つの事件に繋がる。

 

「本来ならどちらも国家レベルの戦力で対処するべきものです。しかし個人でそれを成し遂げた者がいた。これは周辺諸国のパワーバランスを大きく揺るがすものです。なので我々はあなた方が身軽なうちに、王国のアダマンタイト冒険者という柵に囚われる前に接触したかったのです」

「……アダマンタイトとは、お世辞だとしても嬉しいですね。しかし、少々性急すぎるのではないでしょうか? 我々は冒険者です。国家の柵に囚われることはありません。それに恥ずかしいことですが今の私では所詮はミスリル級、法国の使節殿のお話を伺うのは荷が勝ちすぎます」

 

 モモンガは何とかして時間を稼ぎたかった。自分は情報が足りず、クアイエッセは明らかに焦っている。時間がモモンガの味方をすることが明白だからだ。

 しかし、情報の不足は致命的だ。クアイエッセが苦虫を噛み潰したような顔で語ったのはモモンガの計画に罅を入れかねないものだった。

 

「王国以外の冒険者ならそうするでしょう。しかし、王国の冒険者に限りそうはいかないのです。端的に言うとこの国のアダマンタイト級冒険者は半ばヴァイセルフ家の私兵と化しています。組合に聞けばすぐにわかるでしょう」

「ヴァイセルフ?」

「ん、ああ、モモンさんは異国の方でしたね。ヴァイセルフ家はこの国の王族の名前です。しかし、これを知らないとは随分と遠くからいらしたのですね。私は仕事柄旅をよくするのですが一度モモンさんのお国にも伺ってみたいものです。あなた方の様な優れた冒険者の故郷ならばさぞ素晴らしい方々がいらっしゃるのでしょう」

 

 新たな神人やプレイヤーを発見した場合、その故郷を明らかにするのは極めて重要だ。神人ならばその親族は次の神人になり得るしプレイヤーならギルド拠点や従属神ことNPCがいる。

 クアイエッセとしては蒼の薔薇とラナー王女の蜜月の説明で王国から引き離すよりモモンガの拠点の情報の方がはるかに重要だ。しかし、モモンガの無知につけ込んだクアイエッセの問いに、彼が期待した答えは返ってこない。

 

「そう、ですね。確かに素晴らしい仲間たちがいます。いつか紹介できると願っています」

「……ありがとうございます。私もその機会があることを神に祈っております。しかし、随分と話が逸れてしまいましたね。話を戻しましょう」

 

 周囲の気温が僅かに下がった様に感じた。モモンガの言葉が今までの慇懃さで塗り固めた表面だけのものではなく本心からだと理解したからだ。

 

 "仲間"

 

 その言葉がモモンガにとって大切なことは明らかだ。目的の内容ではなかったがクアイエッセは付け加えただけの世辞が望外の幸運を引き当てたことを感謝する。

 この圧倒的な存在も仲間を大切にする一個人であるとわかり、クアイエッセは初めてモモンガに対する親しみを抱いた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 Xオルタはアイテムボックスから明石焼きを取り出して食べ始めていた。食事とは偉大なもので男達が部屋を出た頃は沈んでいた表情にも明るさが戻っている。

 一方で、それを見る番外席次はなんとも言えないモヤモヤしたものを抱えて言った。

 

「……色気より食い気ってまさにこういうことなのね 」

「はにはほんはいへも?」

「何言っているのかわからないわよ。喋るときくらい食べるのやめなさい」

 

 口の中のものを胃袋に流し込みXオルタは再び答える。

 

「何か問題でも?」

「食べ物でご機嫌になるって子供っぽいと思って」

「……美味しいのが悪い。いや、美味しいのは良いことですけどね」

「ふぅん、そんなに美味しいのかしら? 1つ分けてもらってもいいかしら?」

 

 僅かにためらいながらXオルタは楊枝に1番小さな明石焼きを刺して番外席次の口元まで運んだ。礼を言ってから番外席次は一口でパクリと食べてしまう。

 

「……確かに美味しいわね。もう1つは……無いのか。あなた食べるの早いのね」

 

 Xオルタからの返事はない。残りを番外席次に取られないように一気に口に放り込んだせいで頰が餌を貯めているハムスターのように膨らみ声を出せないからだ。

 

「仮にも自分を殺そうとした相手の前でよくそんな無様な顔を晒せるわね」

 

 引っかかるところがあったのかXオルタは咀嚼しながら首を傾げた。流石に6個の明石焼きを一気に食べるのは辛かったようで両手で口を押さえながら首を傾げている姿はますますハムスターらしくなっている。

 番外席次は呆れながら先に食べきることを促しXオルタを待った。Xオルタが喋れるようになったのはそれから2分は経ってからだった。

 

「私のこと殺したかったの?」

「殺したいとかじゃなくて、街のど真ん中にゴーストいたら危ないじゃない。普通の人間なら退治しようとするでしょ」

 

 当たり前のように番外席次は告げた。Xオルタにとってもそれはわかりやすかった。ユグドラシルで言えば異形立ち入り禁止の街に異形種が突然現れたようなものだろう。危険視するに決まっている。

 

「じゃあ、私のこと殺そうとしてここに来たの?」

「いくらなんでも見たこともない相手を殺したくなるほど狂ってないわよ。殺そうと思ったのは実際に見てゴーストだって気がついてから。その前は強いやつがいるって聞いたから戦いたいなって思っていただけ」

 

 それでも十分に物騒な話だ。しかし、Xオルタが少し引くような素振りを見せると慌てて訂正する。

 

「い、今はそんな事考えてないわよ! 戦って勝てるとも思えないし、あなたの事だって、嫌いじゃぁないし……」

 

 尻すぼみの言葉を聞いたXオルタの目が生暖かいものに変わった。それに対して番外席次が文句を言おうとした時、ドアからノックの音がした。焦る番外席次を無視してXオルタが応じるとモモンガとクアイエッセ達が入って来た。

 3人とも番外席次が起きている事に僅かに驚いた様子を見せたが既に彼女の扱いにも話し合ってあるようでそれ以上のものはない。むしろ童貞2人がXオルタの顔を見るなり直ぐに顔をそらした方が問題だ。そのせいでXオルタの脳裏に嫌な記憶が蘇りそうになった時だった。

 

「覗き魔の変態が勢揃いね」

「返す言葉もございません。エックスさん先程の件は全て我々の不徳によるものです。誠に申し訳ございませんでした」

 

 番外席次の罵倒が澱みかけた空気を壊し、続くクアイエッセが示した謝罪が一気に場を整える。流されるようにしてモモンガと第一席次も謝った。

 Xオルタが渋々ながら納得した様子を示してからクアイエッセが話しはじめた。

 

「では私達は国に戻ります。是非一度私達の屋敷にもいらしてください。準備が整い次第組合に宛てて手紙を送らせていただきます。それと番外……いえ、彼女は怪我をしているようなのでここに残していきます。療養中よろしくお願いします」

「ええ、わかりました。是非伺いたいと思います。その時はもっと腹を割った話ができるといいですね」

 

 置いていかれる事になった番外席次は若干不貞腐れているがモモンガとクアイエッセは互いに次の話し合いの予定を確認していた。2人の間に隔意はあれど敵意はない。次の会談が互いに実りあるものになると予感しているからだ。

 スレイン法国の2人は礼を尽くして部屋を出ていった。

 

 残ったモモンガはXオルタに告げる。

 

「えっと……、さっきはすいません。……それとナザリックでスレイン法国と交渉する準備を進めたいので協力してもらえますか?」

「はい、もちろんです。ただ、覗きは私じゃなくてアルベドにしてくださいね。あ、あと彼女もナザリックに連れていきますね。ここでは腕のないエルフとか匿えません。それに私は彼女の事、嫌いじゃないし」

 

 Xオルタの背後で番外席次の顔が羞恥心で紅く染まっていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ところでクアイエッセ。なぜ彼女を置いてきたんだ?」

「ああ、評議国対策です。今の彼女ではあの竜王には対抗できません。彼らにかくまってもらうのが最も安全です。それに、謝罪でもあります。彼女を人質として預けておくことでいざという時に国全体に彼らの怒りを受けずにすむでしょう」

「かなり危険だな。彼女の命は大丈夫なのか?」

 

 第一席次にしてみればクアイエッセの言葉は薄情に過ぎた。番外席次の命を度外視しているように思えたからだ。

 

「初めからあの部屋にいることはわかっていましたから無事を確認してから治療してほしいなどの名目で預けるつもりでした。約束さえすればモモンという男は相応に義理堅い男です。誇るべき仲間がいればその仲間に恥ずかしい行いはできません。きっとうまくいくでしょう。それに彼女とターゲットはあの短時間でずいぶん親しくなったようです。エックスさんも悪いようにはしないでしょう」

 

 クアイエッセの言うモモンの人物像は二人の会話中ずっとXオルタの裸体などの事が頭から離れなかった第一席次にはいまいち把握しきれてなかったが、信頼する仲間の言葉だと受け入れる。彼らはその後評議国の目を番外席次からそらすため風花聖典に連絡を頼んでから少し遠回りして法国に戻っていった。

 




モモンガ様とクアイエッセのやり取りで脳汁絞りつくしました。
頭脳戦のつもりで書いて無理だと悟りました。

あと第一席次はたぶん中学生くらいの年です。一番異性に興味深々でむらむらしている年頃

そして番外席次はスーパー箱入りお嬢様。

明石焼き食べたい。
お汁粉食べたい。
お好み焼き食べたい。
感想、評価ください。質問や文句もなんでもください。
あると喜びます。


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30話 曖昧さと真実の話

30話です。

感想、評価、誤字報告ありがとうございます。

まず、更新が非常に遅くなったことをお詫びします。

そして今後も多分週1~2くらいになりそうです。ごめんなさい。

今回は所謂、確認回です。どんな情報があるのかっていう感じの事を確かめたくて書きました。


「オルタさん。厄介なことがわかったので少し相談に乗ってくれませんか?」

「また自称最強ちゃんが変なこと言ったんですか? 前はエルフの王族って話でしたよね。今度は何事ですか?」

 

 草臥れた様子のモモンガに対しXオルタが気の抜けた声で答えた。彼女の言う"自称最強"とは番外席次を指す。この渾名は彼女のもたらす曖昧な情報に振り回される2人がどちらともなく呼びはじめたものだ。元ネタは番外席次が明かした彼女の属する部隊のメンバーにつけられた香しい四字熟語の二つ名をもじったものだ。

 

 番外席次はナザリックに連れてこられてからシャルティアに預けられていた。真正面から戦った時に1番勝率が高いのがシャルティアだからだ。そこで彼女はナザリックに対し様々な情報を提供しているが一つ極めて大きな問題があった。

 番外席次の情報は曖昧なのだ。つまり精度が足りない。番外席次は法国の幹部にあたるが書類にあまり手をつけないから正確なことを知らずうろ覚えな答えが多い。

 さらに、肉体年齢や精神年齢は14,5歳程だが実際にはそれより遥かに長いこと生きている彼女の記憶はかなり時系列がいい加減だ。

 

 例えば、10年前に起こった事件を最近の事として話したり、逆につい数週間前のことを遠い昔のことを思い出すように話したりする。

 その影響が特に大きかったのは神人についてだ。プレイヤーの子孫で高レベルまで届き得る存在についてモモンガが詳しく説明を求めると過去の神人の話なども混ざってしまうのだ。時には10歳や50歳の神人がいてどちらも老衰死しているなど不要な情報が入り込んでいる。

 結局、モモンガ達にわかったことはスレイン法国には未成年の神人と年齢不詳の神人が1人ずついることだ。人数についても番外席次が覚えている限り2人というだけで、想定より戦力が少ないことはわかったがそれ以上はお手上げだった。

 

 しかし、質問にはかなり素直に答えてくれるため多くの情報を得ることができた。評議国や竜王国と大陸中央の大国について、八欲王と彼らの都市の存在は大きな収穫だ。ただ、そのほとんどが曖昧で信頼性を確保するために下取り調査が膨大な量必要だった。

 そしてモモンガが今持ってきた情報も曖昧だが、迅速に対処する必要があるものだ。

 額を抑えながらモモンガは説明をする。

 

「……ここ凄いドラゴンが封印されているらしいです」

「……ふぅ、聞かなかったことにしたい。あっ、お汁粉いりますか?」

「誤魔化さないでください。先住民がいるってことは俺ら不法浸入者ってことになるんですよ。無視するのはまずいです。それとお汁粉は要りませんから」

 

 モモンガは語気を強めて告げた。ナザリックの支配者として神器級装備に身を包み、生体装備などの遊びがない姿には彼の真剣さが見て取れる。

 しかし、Xオルタはそのドラゴンの存在に半信半疑で気の抜けた態度のまま2杯目のお汁粉を食べながら答えた。

 

「この辺に凄いドラゴンがいた覚えはないんですが……。それにもし居たとしても封印されているなら放っておきませんか? 触らぬ神に祟りなし、です」

 

 Xオルタの原作知識ではこの近辺にいるドラゴンはアゼルリシア山脈のフロスト・ドラゴンだけだ。また、モモンガの言うドラゴン、正確には破滅の竜王の事を彼女はドラゴンと認識して居なかった事もあって話が噛み合わなかった。

 

 この食い違いの最大の原因はスレイン法国にある。彼の国は神人にしか対処できない仮想敵を全て竜王として分類する癖がある。これは手を出せない物を一括りにしておくという点でそれなりに有効な方法だが、彼等より強い存在にとって意図しない偽情報による遅延工作となることがある。

 

「オルタさんは覚えてなくてもこの辺りには天変地異を起こしたドラゴンが居た伝説があります。その調査は必要です。これについては冒険者としての立場を使って調べたいと思います」

「……了解です。じゃあ、私はエ・ランテルの本屋を漁ってみますね」

 

 見縊られたように感じたXオルタは嫌々ながら納得する。しかし、軽んじられたのも仕方ないことだった。仮にも未来の情報があるのに頻発するアクシデントはXオルタのノートに対する信用を下げていた。転移以前は可能な限り原作通りに進めなければならないと脅迫観念に苛まれていたXオルタと比べれば遥かに上手く未来の情報と向き合えているだろう。

 Xオルタが不機嫌になりかけているのを感じてモモンガは話題を変える。

 

「もう一つ、一時的に冒険者活動を控えようと思っています」

「……何故ですか? 外貨も集めないといけないのでむしろ増やすべきだと思うんですが?」

 

 言っていることが理解できずXオルタは質問した。本来なら彼女の言葉は何も間違っていない。しかし、モモンガには2つの理由があった。

 

「まず、さっき言ったドラゴンに対して警戒したいから。天変地異を起こしたって事は〈ザ・クリエイション/天地改変〉が使えるかもしれないという事です。無視できる相手では無いし封印した技術も気になるので、できれば友好的にファーストコンタクトを取るためナザリックからあまり離れたくないんです」

「……そこまで警戒する存在とは思えませんがわかりました。もう1つの理由はなんですか?」

 

 慎重派のモモンガといい加減なXオルタでは認識に差があって納得していないようだ。しかし、2つ目の理由は極めて曖昧だがXオルタの危機感を煽るには充分だった。

 

「もう一つ、王国が信用できなくなってきました。セバスの報告ですでに滅びかけなのはわかっていたけど、法国との会談でアダマンタイトになると王族の子飼いになる危険性まであるようだったのである程度の立場を確保するまで昇級しないようにしたいと思います」

 

 国家というものはリアルで貧困層だった彼等にとって極めて警戒すべき存在だ。2人とも上位者に対して疑心はすぐに抱けるが、信頼するのは難しい。

 

「王国にいるアダマンタイトは紅の雫と蒼の薔薇、どちらも同じ貴族家の出身で蒼の方が頻繁に王女と個人的に接触を取っているそうです。アダマンタイト級冒険者は王族と親密になるべきとかいう暗黙の了解があったら目も当てられない」

「うわぁ、胡散臭い。なら、クエストのペースを落とすのはいいですけど、もっと詳しく知りたいですね」

「なのでデミウルゴスをセバスと同じ任務につけたいと思います。警戒対象がノートにあった"天才的な変態"のラナー王女なので賢いNPCが必要です」

 

 Xオルタをおだてるためにわざわざモモンガはノートから引用した言葉で説明する。また、デミウルゴスが比較的暇だったこともあり、この提案はXオルタにすんなりと受け入れられた。

 

「いいかもしれませんね。法国との接触で洗脳に警戒する必要減ったのでNPCも動かしやすいですし」

「ですよね。それにたっちさんとウルベルトさんは喧嘩するほど仲がいいって感じだったので、あの2人も色々有っても上手くやってくれると思うんですよ」

 

 意見に納得してもらえたことと少しだがギルメンの話ができたことがモモンガのテンションが上がっていく。一方でXオルタにはたっち・みーとウルベルトに仲がいい部分があった覚えが無いので置いてけぼりになっていた。

 Xオルタは慌てて強引に話を切り変える。

 

「と、ところでモモンガさんはアルベドとは進展ありましたか? 彼女の設定には少し絡んだので気になります」

「え……いや、いきなり何ですか⁈ 突拍子のないことを言わないでくださいよ!」

 

 Xオルタの言葉にモモンガは僅かに違和感を覚えたがそれ以上に内容に心を乱される。

 

「アルベドはモモンガさんのこと真剣なのでしっかり考えてください。で、では、私はこの後暫くエ・ランテルで調査するので先にアルベドと建国の予定について話し合っておきますね」

 

 男女関係に言及するのは恥ずかしかったらしくXオルタが飛び上がりながら駆け出した。食べかけだったお汁粉をしっかり飲み干してから立ち上がるあたり徹底している。

 行動と言動がかみ合ってない様に呆れながら僅かな違和感を抱く。しかし、すぐにモモンガはアルベドをけしかけられる確定した未来を想像してげんなりするのだった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「法国との対談を見据えて明確に組織があると示すために領土を確保したいと思います。つきましては範囲をまずはトブの森以北、アゼルリシア山脈までとして、その征服任務にコキュートスを推薦したいとXオルタ様が仰っていました」

「いいんじゃないか? 森に関してはコキュートスにアウラとマーレと力を合わせて任務に当たるように言っておこう。住民は将来我々の臣民になるのだからあまり強引にならないように気をつけるようにも言うべきだな」

「かしこまりました。戦力はシャルティアの配下である下級アンデッドをメインとしてナザリックの財政に影響を与えないようにします。続いてデミウルゴスをセバスの元に派遣するにあたって活動資金をどうするかについてですが――」

 

 モモンガはアルベドからXオルタとの会議の報告を聞きながら思考の海に囚われていく。Xオルタはアルベドと話し合った後は常に報告をアルベドに任せている。また、今振り返れば常にアルベドとの仲の進展を望んでいたような行動をしている。その事実がXオルタとの会話で感じた僅かな違和感に明確な形を与えていた。

 

「――鍛治師に王国、帝国及び交易用の金貨3種類を複製させています。外見上は同じものができているので問題ないでしょう。これで今回の報告は全てです。何か問題はございますか?」

「ん、いや無いとも。流石はアルベドだな。いつもお前には助けられてばかりだ」

「そ、そんな勿体無いお言葉! ……で、では……」

 

 張りのあるアルベドの声に徐々に湿り気が混ざる。モモンガとしては自分の好みを悉く網羅したアルベドに好意を寄せられる事は嫌ではないが強引さに辟易しているのも確かだった。

 アルベドの恋愛感情を応援するXオルタにけしかけられる事には慣れたが、Xオルタがわざわざ他人の恋愛事情に口を出すとは思えなかったのだ。特別な理由があるはずで、モモンガには1つ心当たりがあった。

 アルベドの暴走を止める意味もあって、モモンガは確認のために問いかける。

 

「話は変わるがアルベドの創造主はタブラさんだったよな。彼がお前の設定を決めた時の経緯を覚えているか? 例えば別の誰かが設定した部分があるとかについてだが」

「設定ですか? 詳しい経緯はわかりませんがXオルタ様がタブラ・スマラグティナ様との討論の末に最後の一文を書き換えてくださいました。そのおかげで私はモモンガ様のことを――」

「ああ、やはりか」

 

 再び惚気に入りかけたアルベドを無視してモモンガは1人納得する。

 やはり因果関係が逆だった。

 Xオルタはアルベドの恋心を知って応援しているのではなく、アルベドの感情を設定したからけしかけているのだ。

 

 何を以てNPC制作から距離を置いたXオルタがアルベドの設定を書き換えたのか。

 転移のことを知っていた以上アルベドの設定にあった最後の一文には何かしらの考えがあるはずだ。

 

 "モモンガを愛している。"

 

 この10文字の裏にあるXオルタの真意を彼女がエ・ランテルでの調査を終える前に突き止める。モモンガは密かに決意した。

 




番外さんは名前がわからないのが最大のネック。適当なあだ名でごまかしました。
そして彼女の情報はあまり信用できないという話でした。でも膨大だから有用。

ラナーと蒼の薔薇についてはクアイエッセフィルターを通しているので警戒心マシマシです。モモンガさんの彼女らに対する第一印象は結構ひどい。

最後にアルベドの設定。ちょこちょこと書いてはいたんですが”モモ愛”に変えるように仕向けたのはえっちゃんです。
ついでにえっちゃん作のNPCはいない。強いて言えば黒騎士くんだけどあれゴーレムってことになっているので

色々と伏線もどき入れてみたせいで相当わかりにくいことになっているかも。
ごめんなさい。
感想、評価ください。質問や文句もなんでもください。


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31話 未来を見るための話

31話です。
非常に遅くなりましたすいません。

感想評価ありがとうございます。

今回は整理と今後の予定を大雑把にまとめた感じです。
前の1.5倍くらいの量になってます。

後これを投稿した時点でCCCコラボできると思っていたのは秘密。0時からじゃないのね




 ナザリックを離れてエ・ランテルで正体不明のドラゴンについて調べようとしていたXオルタだが、彼女の計画は1日経たずに頓挫していた。正確にはできる事は全てやりきったとも言えるがろくな成果が無いので大差はない。

 

 Xオルタの調査方法は大きく分けて2種類になる。聞き込みと資料の確保だ。

 どちらも悲惨だが特に聞き込みは酷いものだった。冒険者としての交渉はモモンガが全て取り仕切っていたからXオルタには伝手が殆ど無い。何故か彼女を気に入っている組合の受付嬢のイシュペンと大きな貸しのあるバレアレ家の2人だけが彼女がコミュニケーションを取れるエ・ランテルの住人だった。そして両方ともXオルタに望む情報は与えられなかった。

 

 まず、バレアレ家の2人は今朝方カルネ村に引っ越してしまっている。クレマンティーヌの獄死が決め手となり転居に踏み切ったのだ。

 エ・ランテルという王国の中では比較的クリーンで治安の良いはずの王家直轄地、その公的機関でも特に警備の強固な牢獄での暗殺はクレマンティーヌの背後にある組織の力を彼らにまざまざと見せつけたのだ。

 その恐怖にさらされたバレアレ家の決断と行動は極めて早かった。瞬く間に引っ越しの準備を済ませ後は信用できる護衛を雇うだけという状況になっていた。

 この信頼できる護衛がモモンガであり、冒険者稼業を暫く控えようとしていた彼はエ・ランテルから距離を取れる機会とみて一も二もなくその仕事に飛びついたのが今朝の事。もともとバレアレ家の2人もこれまでの経緯からして"漆黒のモモン"以外を雇うつもりは無かったので話はトントン拍子で進み1時間も掛からずに3人揃って街から出て行ったのだ。

 この話の最悪な点は全てのやりとりが朝、つまりXオルタの朝食の時間に行われたという事だ。食事に命を賭ける彼女は結局バレアレ家の2人から情報を得られず、旅立つ事を許すことになる。モモンガがこの交渉でバレアレ家の2人から引き出したものは街に残るXオルタとナーベラルの大きな助けになるが長生きした知恵袋を頼れなくなったのは痛手だった。

 

 次にイシュペンについてだが、こちらは素晴らしいことに対話のチャンスがあった。しかし、問題は彼女が冒険者組合の受付嬢という下っ端に過ぎないということだ。重要度の高い情報は彼女から得られず、唯一Xオルタが新しく得た新しい情報は一昔前に帝国のワーカーがドラゴンを討伐したという逸話だけだった。

 当然、役に立つはずもない情報だがイシュペンは短い時間でできる限り調べてくれた。彼女の話に意味がない以上、伝説やお伽話の領域になってしまう。

 

 冒険者組合という事実に裏付けされた情報しか扱えない立場のイシュペンに頼れないとわかったXオルタは大幅な方向転換をする事になる。古書や伝説についての書籍などをかき集めたのだ。

 しかし、この方法にも大きな欠陥がある。金だ。

 識字率の低いこの世界で本は金持ちの物だから超高級品である。更にモモンガが街から離れ、受ける依頼を減らすため収入がガタ落ちする。

 収入についてはナザリックの鍛治長に偽造硬貨を作らせる事になって表面上は解決したようにも見えた。しかし、当たり前だが偽造硬貨に頼り切ることはできない。更に冒険者の収入は受けた依頼に応じて変わるため他所から見てわかりやすく、あまりに金遣いが荒いと悪目立ちしてしまう。

 ここでモモンガがバレアレ家の2人との交渉で勝ち取ったものが役に立った。エ・ランテルにあるバレアレ薬品店の保持の仕事だ。引っ越しても収入が無くては生きていけないバレアレ家の2人にとって店は命綱に等しい。店を捨てられないならそこを守る存在が必要だった。

 これによって宿代が浮くだけでなく、僅かだが安定した継続収入も得る事ができる。また、この仕事は街に残る2人の助けになるだけでなく、ナザリックの外貨問題に大きく寄与する事になるがこの場ではあまり関係がない。

 

 結局、白金貨に相当する大金を使って買い込んだ大量の本をXオルタがバレアレ薬品店に運び込んだ頃には既に日暮れに差し掛かっていた。

 

「私は今から部屋に篭ってこの本を読み漁ってくるけれどナーベラルはどうする? 暫く暇になると思うけれど……」

「まずはモモンガ様とアルベド様に今日の報告をします。その後Xオルタ様のお世話をさせていただければと思います」

「あ、うん。わかった。よろしくね」

 

 予想外に筋が通った答えにXオルタは僅かに焦りながら答える。翻訳用アイテムを持ち、本を読めるのがXオルタだけなのでポンコツのナーベラルは手持ち無沙汰になると思っていたのだ。

 しかし、若干対人能力に難があってもナーベラルはナザリックのメイドであり、ナザリックのメイド達の設定欄には常に「完璧なメイドである」と文面に多少のブレがあるが書かれている。外部の人間が関わらなければナーベラルはその真面目さに見合った有能さを示せるのだ。因みにこの設定のせいでポンコツ属性持ちメイドが設定上いなくなった事でアインズ・ウール・ゴウンのメイド製作担当者たちの中で一時期論争になっていたが、この場では関係ない。

 しかし、一日中失敗し続けたXオルタから見れば自分がナーベラルと比べて仕事が出来ないように感じてしまう。今から取り掛かる作業はナーベラルにはできず、自分でなければならないのだとXオルタは気持ちを切り替えるが、彼女の仕事に結果は伴わないだろう。

 そもそもザイトルクワエをドラゴンと勘違いしている時点で最初の舵取りを盛大に間違えているのだ。この後、ろくな情報を得られずにXオルタが仕事を放り投げるまで然程時間は掛からなかった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 Xオルタが情報収集で失敗した翌日、モモンガはバレアレ家の2人の護衛としてカルネ村に到着した。このまま彼はトブの森の調査に向かおうとした所でナーベラルからのメッセージに出鼻をくじかれた。

 

「つまり封印されたはずのドラゴンについての情報はなかったのだな」

「はい。全ての書籍に目を通した訳ではないとのことですが特別強力なドラゴンについての記述は無いそうです」

「ん、まだ全部読みきった訳ではないのか。どれくらい残っているんだ?」

 

 結果が出ているのならば残りも僅かで近いうちに合流する事になるだろうと思い尋ねたモモンガだが、ナーベラルの答えは予想を大きく裏切るものだった。

 

「はい。今のところ数の上では1割程読み進めたと伺っています。残りはスクロール状の古書が6巻、Xオルタ様曰く『人を殺せるサイズ』の物が15冊、『武器になるサイズ』の物が更に――」

「もういい。随分あるのだな。……オルタさんが無茶しない様に手伝って上げてくれ。それと、必要なものがあったら言ってくれ」

 

 ナーベラルの報告からXオルタの失敗を察したモモンガは呆れながら何らかのフォローをしようと考えた。遠くのモモンガがそう考えたのだからXオルタのすぐ側にいるナーベラルも助けになりたかったのだろう。控えめに恐る恐るモモンガに頼みごとをしたのだが少々答えに詰まるものだった。

 

「かしこまりました。……では、早速なのですが1つお願いしたいのですが、Xオルタ様のメガネの様な翻訳用アイテムをお貸しいただけますか?」

「ああ、なるほど。……たしかセバスに……。そうだな、すぐにはできないが対処しよう。後、アルベドには私から伝えておく。ではご苦労だったナーベラル」

 

 メッセージを終えて立ち上がったモモンガはバレアレ家の2人に声をかけてからナザリックに戻った。初めは直接トブの森に入るつもりだったが、ナーベラルの要望を聞いて気が変わった。

 ナーベラルの頼み、個人的な狙い、そしてナザリックの抱えるメッセンジャー不足の解決、3つの目的を同時に成し遂げる一石三鳥の策のため、モモンガは骨の顔に僅かに浮かびそうになる喜色を抑えてアルベドに会いに行った。尚、アルベドは何故か骨の顔に浮かぶ表情に気が付いて暴走することになる。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ココデ飲ム機会モコレカラ少ナクナルナ」

「ええ、明日からは我々もナザリックの外で任務に着く。暫く顔を合わせる事が減るのは寂しくなるけれど……」

「シカシ、我々モ遂ニ新タニナザリックノ外ノ仕事ヲ任サレタノダ。此レ程喜バシイ事ハナイ」

 

 ナザリックの第九階層にあるこじんまりとしたショットバーで2人が持つグラスから澄んだ音が静かに響いた。

 其々にグラスに口をつけるとおもむろにデミウルゴスが口を開いた。

 

「確か君は第一〜第三階層のアンデッドによる部隊を率いてトブの森に向かうんだったね」

「アア、アウラトマーレガ調査シタ森ヲ私ガ武ト威ニヨッテナザリックノ存在ヲ知ラシメ、支配下ニ置クノダ」

「成る程、それはまさしく武人として創造された君に相応しい仕事だ。アインズ・ウール・ゴウンの最初の領土を手に入れるという意味でも極めて重要なものだね。少し羨ましさすら感じるよ」

 

 与えられた任務を説明するコキュートスの声に熱がこもり始めたところでデミウルゴスが遮った。ここのマスターは静かに酒を楽しんでもらうことを好む。コキュートスの調子では放って置くとバーの雰囲気を壊しかねないと思ったのだ。

 しかし、マスターであるナザリック副料理長も常連が少し羽目を外しそうになったからといって気を悪くする様な茸ではない。何せ彼らにとって初めての仕事だ。シャルティアですら客人という名の捕虜の応対という大任を賜っているのに彼ら2人は明確な仕事がなかったところでやっとなのだ。

 しかも聞く限りではコキュートスの物はナザリック史に残ってもおかしくない。興奮しないというのが無茶というものだ。

 明日の仕事を2人がしっかりとこなすためならば多少バーの雰囲気が壊れてもいいだろう。存分に楽しんでほしいと思い副料理長はグラスを拭きながら落ち着きを取り戻し、静かになった2人の話に割り込んだ。

 

「私も羨ましく思いますね。異変の後のナザリックの一番槍。誇るべきことですね」

「ソウ思ッテクレルカ。気ヲ引キ締メテカカラネバナ。デミウルゴスハドウナノダ?」

「ふむ、私は君ほど目立つ仕事ではないがとても重要で難しい仕事だよ。Xオルタ様のサポートと王都で情報収集にあたるセバスのサポートを同時にしなければならない」

 

 難しいというデミウルゴスだがその声と表情には何としてもやり遂げるという強い意志が見えた。しかし、詳しい事情を知らない副料理長はともかくコキュートスには引っかかるところがあった。

 

「ナント! 王都トXオルタ様ガ拠点トスルエ・ランテルト云ウ街ハ随分ト離レテイタ筈。難シイ仕事ニナルナ」

「ああ、私も最初に聞いた時その点をどうするべきか悩んでいたんだ。しかし、さすがは至高の方々。私程度が思いつく悩みなど既に解決策を用意しておられたという事さ」

「オオ、サスガハ至高ノ方々ダ。一体ドノヨウナ策ヲ用イラレタノカ聞イテモイイダロウカ?」

 

 自分達の主人の活躍を聞く事は創造されたNPCにとって最高級の喜びだ。コキュートスの質問に合わせ副料理長もつられる様に耳を傾ける。デミウルゴスもそれに応じて説明しはじめた。

 

「至高の方々の策を全て説明する事は難しいからまずは結果から説明しよう。お二方はエ・ランテルの街に住居を手に入れたのさ。お陰でセバスの購入した屋敷と恒常的な転移門を設置できる様になったのだよ」

「成る程、2つの屋敷を転移できる様に繋いでしまえば距離は関係ありませんね。単純ですが素晴らしい方法です。しかし、デミウルゴス様の任務のためだけに家を用意するのは少しばかり出費が気になります」

 

 デミウルゴス話を受けて副料理長が言葉をつなげた。食料を扱うクラスのため経費に不安があったのだと彼は小声で付け加えたのだがそれを待っていたかの様にデミウルゴスが続けた。

 

「確かに出費は重要だ。しかし、そこが至高の方々の凄まじいところでね。この住居を得るに当たって金銭的な支出は皆無なのだ。しかも併せてパンドラズ・アクターの研究に有用な人材を確保なさったらしい」

「パンドラズ・アクターノ研究カ! ソレハ素晴ラシイ!」

「確か他の至高の方々を呼び戻すための研究でしたね。ナザリックにいる全てのシモベにとって喜ばしいことです」

 

 デミウルゴスの説明からコキュートスと副料理長が其々に感嘆の声を漏らす。

 

「ああ、最早私ごときでは足下にも及ばないとはっきりわかったよ。遡るとこの策は異変の後、最初に外部と接触を持った事から始まっている様なんだ」

 

 デミウルゴスの話の余りのスケールに話を聞く2人は既に呆然として声も出ない。客と店主という境目も曖昧になって聴き入っていた。

 

「全てはポーションが軸になっているんだ。――」

 

 デミウルゴスはバレアレ家の2人を引き入れた経緯を説明する。伝聞なので正確さは欠けるが足りないのはモモンガとXオルタの葛藤と戸惑いだけなので9割り増しに2人が賢く聞こえてくる。

 

「――結果、バレアレ家の2人と協力関係を結び、これからパンドラズ・アクターと引き合わせられる様に徐々にナザリックのことを明かしていくらしい。Xオルタ様はここでバレアレ家の2人が居なくなったバレアレ薬品店に今いらっしゃる」

「成る程、店の管理を行うという事は外貨の入手手段も手に入れたことになりますね。凄まじい手腕です。それで忙しくなったXオルタ様は昨日から食堂にお越しにならなかったのですか」

 

 デミウルゴスの話を聞いて感動に打ち震えながら副料理長は本職の方を思い出し嘆息した。しかし、それはデミウルゴスには無視できないものだった。

 

「まさか、Xオルタ様が食堂にすらいらっしゃらなかったとは……」

「ソレダケ多忙デアラレルト云ウコトダロウ。デミウルゴスハXオルタ様ガシッカリナザリックニ戻レルヨウニセネバナ」

 

 気落ちしたデミウルゴスはコキュートスの激励を受け、気を取り直すがやはり不安があるようで声に普段の張りがなかった。

 

「ええ、それは当然の事。しかし、Xオルタ様がナザリックに戻られなかったのは大きな問題だ。それが気掛かりなのだよ」

「フム、デミウルゴスガ言ウノナラ確カナノダロウ。一体何ガ問題ナノダ?」

「そうだね。守護者である君とXオルタ様がよく利用する食堂に勤める副料理長なら言っても構わないだろう。最大の問題はXオルタ様に我々が頼りすぎていると言う事なんだ。モモンガ様もだけれどXオルタ様には特にその度合いが大きいんだ」

 

 デミウルゴスの悩みというのはナザリックにおいて極めて特異だ。彼の叡智で答えを出せないことなど基本的にはないからだ。しかし、この時ばかりは違った。

 

「お二方は何よりもまず御自身でこの世界を見ることを優先した。外に出て活動して居たシモベは基本的に隠密に優れるアウラとマーレで我々は庇われていたようなものだ。守護者としてあまりにも不甲斐ない。更に本来立ち入ることすら許されるべきではないお二方の居室すら解放されている」

 

 デミウルゴスは絞り出すように己の苦悩を吐き出す。

 

「特にXオルタ様はその居室を全てパンドラズ・アクターに研究室として解放されていると聞く。これではXオルタ様はナザリックに帰る場所がないではないか! 今では食堂に寄られる事も難しい有様。このままではXオルタ様がナザリックの為にその身すら投じてしまわないかと不安なのだ」

「オオ、コレデハシモベトシテアマリニ不甲斐ナイ……。看過デキルコトデハナイ!」

「ナザリックのシモベの1人として私も微力ながらできることはないでしょうか?」

 

 デミウルゴスの言葉はコキュートスと副料理長の心を動かしたのだ。彼らはどうにかしてXオルタのためになろうと考えていた。しかし、2人とも武人や職人に過ぎずデミウルゴスのような知恵はない。デミウルゴスもそれに応じて覇気のある声で答えた。

 

「そうだな。ありがとう。当たり前だがまずは2人とも命じられている仕事を完ぺきにこなせるよう努力してくれ。コキュートスの仕事は外征の第一手であり、本来ならば他の至高のお方がなさるかもしれなかったものだ。これを成し遂げることでお二方の負担を我々が少しでも肩代わりできると示せるかもしれない。マスターは食堂にて料理長とともに変わらずうまい料理を頼む。食堂はXオルタ様がナザリックで最も重視した場所だ。きっと大きな力になる」

「アア、我等ノデキル限リ、イヤ、ソレ以上ヲ以テ至高ノ御方々ニ尽クシテミセヨウ!」

「ええ、私も料理長ともどもさらなる料理を用意してお待ちしましょう。それが至高のお方の一助となれば……」

 

 バーのカウンターをはさんで3人の男たちが互いに明日のため、これからのための意気込みを語り合った。意思を固め、全力を尽くすことを改めて誓い合った3人は明日の仕事のためにバーを離れていくのだった。

 




主役がほとんど出てこない不思議。

今回の状況整理なんですがまとめると以下のようになります。

トブの森
モモンガ、アウラ、マーレ、コキュ、骨軍団

ナザリック
アルベド、エントマ、他

カルネ村
ルプー、バレアレs、他

エ・ランテルと王都(つなげて一個扱い)
えっちゃん、ナーベ、セバス、ソリュシャン、デミ衛門

となっています。四方面作戦ですね。私の脳みそが死にます。
6000字がまとめると200文字足らずで終わった悲しさ。
もう1つ付け加えるとすべてのグループに1人以上メッセージが使えるメンバーがいます。このSSデミ牧ないからスクロール補給できないので使わない方針です。

問題はメッセージが使えるとわかっているキャラが少ないこと。
そもそも使えるキャラも少なそうだけど

もう一度。
今回すごく遅くなってすいません。許してください。
あと、4方面作戦で作者の頭がパンクしていますので粗があると思います。
変なところあったら突っ込みください。
感想、評価ください。質問や文句もなんでもください。


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32話 戦争と過去の話

32話です。
感想評価ありがとうございます。

ちょっとだけ伏線を回収しつつ伏線を張る。
なお、今回は原作でいうトカゲ編の序盤の序盤になります。

えっちゃんは王国にいるので基本的に出番はなしです。ごめんなさい
地味に存在感はあるけど


 コキュートスが木製の扉を開けると部屋の中では既に3人が待ち構えていた。同僚であるアウラとマーレ、そして彼等の最高支配者モモンガである。

 

「遅クナリマシタ、モモンガ様」

「うむ、よく来た。さて、早速始めよう」

 

 モモンガはコキュートスが出入り口に最も近い席に着いたことを確認するとアウラに声を掛ける。指名されたアウラは元気よく立ち上がり、ホワイトボードを使いながらテキパキと説明をし始めた。

 

「私たちの任務はこの辺りにいるナザリックの事を知らないやつらにその凄さを教えてやって支配することです」

 

 少し過激な言い方だが間違ってはいない。モモンガに促されるままに説明は続く。

 

「このナザリックを知らない奴らっていうのは3つに分けられます。東にトロールの洞窟、北にリザードマンの住む湖、西には特定の種族というわけではないですけどそこそこの種類のモンスターがいます」

「ご苦労、アウラ。大まかな状況は掴めたな。今回はコキュートスの連れて来た軍を使い彼等を征服する。気になることがあるものはいるか?」

 

 アウラが一通りの説明を済ませた後を継いでモモンガが3人を見回した。アウラは直々に労われたことで嬉しそうにして、コキュートスは変わらず武人然として疑問など無さそうだ。1人だけマーレが緊張からかもじもじしながら恐る恐る手を挙げて言った。

 

「あ、あの、僕達3人でそれぞれ一つずつやっつけるということでしょうか?」

「ちょっとやっつけるんじゃなくて征服でしょ! モモンガ様の前で間違えないでよ!」

 

 マーレの言葉にアウラが小声で注意したがモモンガは2人を手振りで抑え、質問に答えた。

 

「良い質問だな、マーレよ。確かにその方法が最も簡単で素早く事が済むだろう。しかし、今回は3人にはできる限りまとまって行動して欲しいと思っている。理由は3つ有るのだが解るものはいるか?」

 

 慌てていたマーレはモモンガの言葉に落ち着きを取り戻し分かったような分かっていないような曖昧な表情を浮かべながら頷いた。アウラは活発な彼女らしくもっとわかりやすく戸惑っている。わかりにくいのはコキュートスだが、俯いていて答えられないようにモモンガには見えた。

 

「ふむ、少し難しかったか? では、……どうした?」

 

 3人が答えられないことに少し気落ちしながらモモンガが前にアルベドに説明され、暗記してきた事を説明しようとする。

 その時だった。僅かな間を置いてコキュートスが静かに挙手していた。

 予定通りにならなかったがモモンガとしては子供が一つ成長したような気がして非常に喜ばしいことだ。先程とは一転して弾んだ声で問いかけた。

 

「いいぞコキュートス。気がついた事が有るのなら話してみろ」

「ハッ、アリガトウゴザイマス、モモンガ様。間違エテイルカモシレマセンガ説明サセテ頂キマス。マズ、我ラノ任務ハナザリックノ名ヲ知ラヌ者ニナザリックノ存在ヲ教エル事……デス。ツマリ我ラノ……実力ヲ示ス必要ガアリマス」

 

 コキュートスは考えを整理しつつ話しているせいか所々間が空いて聞き取りにくくなっている。しかし、モモンガにとっては考えながら話しているという事実が嬉しくて、相槌を打ちながら話を促す。

 

「ソウナルトマーレノ考エデハ……守護者1人ノ『武』ヲ示セテモナザリックノ……集団トシテノ『威』ヲ示スコトガデキマセン。我ラ3人ガ共ニアレバナザリックヲ知ラヌ者ニモヒトツノ組織……トシテナザリックノコトガ伝ワルデショウ」

 

 コキュートスが話し終えたところでコツコツと骨を打ち鳴らす音が響いた。例え拙い説明であっても守護者が自力で考えて述べた事がモモンガにとっては望外の喜びだった。

 

「素晴らしいぞ、コキュートス! お前が言ったことはお前達が3人でいる必要がある理由のうち最大のものだ。更に言えば……ッ、精神安定の抑制か……」

 

 一気に興奮から引き戻され若干気分が悪くなったモモンガだが、その内心は未だ暖かなものが残っていた。しかし、その様子を見ていた守護者達は僅かに身を硬くする。

 

「ヤハリ足ラヌ部分ガアッタノデショウカ?」

「いや、問題ないとも。先程の続きだがこの理由はコキュートスに軍を率いらせることにも通ずる極めて重要なものだ。相手は将来的に我らの民となる存在、示す力は明確な方が良い。素晴らしい答えだったぞ、コキュートス」

「アリガトウゴザイマス」

 

 無機質でわかりにくい声でありながらその短い一言には込められる限りの喜びが込められているのだとはっきりと解る。その態度がこそばゆくてモモンガは急いで話を切り替える。

 

「残り2つの理由を説明しておこう。1つ目は安全のためだ。この世界にも数は少ないようだが我々に迫る力を持つ者はいた。警戒は必要だ。2つ目はナザリックにおけるメッセンジャーの不足だな。緊急時はスクロールを使うがそれ以外ではできる限りメッセージを使える魔法詠唱者を軸としたチームで活動することによって各チーム毎の報告、連絡、相談をやり易くしたい。因みにこのチームでメッセンジャーになる魔法詠唱者は私になるが遠慮はするなよ」

 

 僅かに慌てる守護者達を見てモモンガは部下の私用の連絡すら管理することになる自分に嫌気がさしてくる。湧き上がる自己嫌悪を抑えつけ、尊大な態度でモモンガは立ち上がった。

 

「さて、やるべき事は理解したな。最後になるがこの仕事はコキュートスをリーダーとしてアウラとマーレがサポートせよ。ただし私はあまり手を出す事は無いだろうからお前達自身の力で励むように」

 

 そう激励したモモンガは解散の指示を出すと、扉に近い守護者から順に部屋を出ていく。コキュートス、マーレと続き、最後にアウラが扉をくぐる時にモモンガが呼び止めた。

 

「アウラ、1つ聞きたい事があるから少し待ってくれ」

「はい! かしこまりました」

 

 部屋から出て行こうとしていたアウラはキィと音が聞こえるようなUターンでモモンガの前に戻ってきた。あまりの反応の良さにモモンガは面食らうが悟られないように切り出した。

 

「聞きたいことというのはこの森の状況についてなのだが……お前から見て明らかに他と違う、神殿だったり何かがあった痕跡などがあったかについてだが……思い当たる事は無いか?」

 

 

 ◇◆◇

 

 

「凄かったです! コキュートスさん、モモンガさまのお考えがわかるなんて!」

「イヤ、偶然ダ。昨日ノ夜デミウルゴストバーデ話シテイタ内容ヲ整理シタダケデ私ガ思イツイタコトデハナイ」

「でも前日からモモンガさまに命じられた仕事のことを考えて素晴らしい結果を出したんですよ! 凄いんです!」

 

 普段の吃音もなりを潜め、興奮しながらマーレはコキュートスを讃える。しかし、コキュートスからしてみると特別なことは何もない、偶然の産物なのだ。妙な気恥ずかしさがあり、誤魔化すために話題を切り替えた。

 

「ソノ話ハモウ良イダロウ。ソレヨリコレカラノ仕事ノ話ヲスルベキダ」

「あ、そ、そうですね。頑張らないと」

 

 コキュートスの言葉に納得してマーレが先程とは違う部屋の扉を開ける。そのままコキュートスは部屋に入ったが、マーレは扉を開けたまま周囲を見回し姉を探す。少し待つと自分達が歩いて来た道を走ってくる姿が見えた。

 

「お待たせー」

「あ、お、お姉ちゃん。モモンガ様とのお話が済んだんだね。ど、どんな話だったのか聞いてもいいのかな?」

「別にいいわよ。森の中に変な場所がないかっておっしゃられたから小さな荒地のこと言っただけだし。念のため近寄らないようにしておけって言われたけど」

 

 部屋の入り口での姉弟の会話にコキュートスが口を挟む。

 

「フム、モモンガ様ハソノ荒地ニ我々ニハワカラナイナニカガ有ルトオ考エナノダロウ」

「そうだね。取り敢えず後で監視用のモンスターを出しとく」

「モモンガ様ガアウラダケニオ尋ネニナッタトイウコトハソレデ充分ダトイウコトダロウ。サテ、コレカラノ話ニ移ロウ。我々ハ三方ニ攻メ入ル必要ガアル。何処カラ相手ニスルベキダロウカ?」

 

 3人は其々の知恵を寄せ合いどうするべきか話し始めた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 アウラから荒地の話を聞いて1人残されたモモンガは一息つく。窓からはアンデッド達が今いる屋敷を増築している姿が見えた。

 

 実のところ、この木造の屋敷はまだ完成していない。早急に国土を得るための前線基地が必要になったため、建築途中であってもモモンガとコキュートスはこの屋敷に入ることになったのだ。

 

 窓の外を眺めながらモモンガはナザリックの未来について考えていた。とはいっても彼自身リアルでもユグドラシルでも周囲をリードするタイプではないのですぐに何かが思い浮かぶわけではない。

 ため息とともに視線を室内に戻すと今回の遠征に連れてきた一般メイドの姿が見えた。ナザリックを拠点にした後、ギルメンが増えるのに合わせて作るプランがあったはずだ。結局、ギルメンの募集が42人目で打ち止めになったことで殆ど無意味なことになったようだったが。

 モモンガはナザリックを手に入れたばかりの頃のことを懐かしみながら声をかけた。

 

「確か……、フォアイル、だったか?」

「はい、モモンガ様」

 

 短く切り揃えられた金髪が返事に合わせて微かにゆれた。外見と同様にその声も溌剌として普段の性格が伺える。

 

 沢山いるメイド達のうち彼女が今回モモンガについてくるメイドに選ばれたのには訳があった。以前、ナザリックのNPCを集めて昼食会を行った時にXオルタと一緒にいたメイドが彼女だったのだ。2人とも大食いで同じように頬を膨らませながら話していたのをアルベドに迫られながら見ていたのだ。

 Xオルタがアルベドの設定を変えた理由を探りたいモモンガとしては自分の知らない彼女の姿を知っているかもしれない相手だ。彼女を含めた他のメイド達もモモンガの傍にメイドが控えていることを強く望んだため多少の危険があると理解していたが連れてきたのだ。

 

「以前食堂でオルタさんと話していたようだが……」

「は、はい!何度か食事をご一緒させていただいています。な、何か問題があったのでしょうか……?」

 

 たかがメイドが主人と同じ席について食事をする無礼を見咎められたと思い焦ったのだろう。怯えるフォアイルにモモンガは若干慌てながら告げる。

 

「いや、問題はないとも。ただ私はあまり食事を摂らないのでな。少し気になったのだよ。何度かということは良く会うのだろう。どんな話をしているのだ?」

「普段は食堂のメニューについてです。好みの和菓子やお好み焼きの作り方などをうかがいました。あっ、後、インクリメントはお勧めの小説を紹介してもらったと言っていました!」

「……他のメイドとも親しかったのか」

 

 モモンガは驚きと共に小さく呟く。態々フォアイルに話を聞く必要は無かったかもしれないと思い話を切り上げようとした。しかし、呟きから会話を続けようとしたフォアイルの言葉がモモンガを止めた。

 

「はい。一般メイド41人、全員がそれぞれにXオルタ様と食事をご一緒させていただいています」

「……どういうことだ?」

「ッ、Xオルタ様は食堂を毎日の様に利用くださるのでご一緒させていただく機会が多くなるので……」

「そういうことではない!……いや、すまない。声を荒げてしまった。問題はそこではないのだ。今、一般メイドが41人と言ったな。それは確かなのか?」

「は、はい。一般メイドは合計41人となっております」

「……仲間の数に合わせた筈じゃなかったのか。プレイアデスのように1人だけ別の場所に居るということはないのか?」

「……申し訳ありません。私はそのような事は聞いた事がありません」

 

 深く謝罪するフォアイルを見てモモンガは頭を抱える。戸惑いながらも既にモモンガは何故1人足りないのかなんとなく理解していた。この犯人もやはりアルベドの設定と同様にXオルタだろう。

 

 41人

 

 この数字に特別な意味を見出すものはこのギルド、アインズ・ウール・ゴウンにおいて1人しかいない。

 

 しかし、証拠を探す必要がある。モモンガは精神安定化を超えてくる困惑を抑えながらフォアイルに聞いた。

 

「……もし42人目のメイドが居るとしてだ。その存在を知っているかもしれないNPCに思い当たりはあるか?」

「メイド長のペストーニャ様ならご存知かもしれません。……あっ、あとは私達の設計図を描かれたホワイトブリム様に創造された者ならばもしかすると何か知っているかもしれません」

「成る程……。儘ならないものだな」

 

 後で他のメイドにも確認を取ろうと決めたモモンガは先程までの自分の態度を思い出す。フォアイルには随分ときつい事を言っている。

 

「……済まない、少々取り乱していたようだ。詫びと言ってはおかしいかもしれないが今日は私も何か食べようと思う。夕食でも一緒に食べないか?」

 

 妙にズレた謝罪ではあるがフォアイルは少し慌てながら大喜びで受け入れた。その夕食はトブの森に来ていた3人の守護者を交えて非常に賑やかなものになった。

 




 主人公が一瞬たりとも出てこない回になりましたがご容赦ください。
 今回はオリ主がえっちゃんになる前の話とでもいうものに触れました。
 このあたりFGOファンの方はえっちゃんに変な感じがして嫌いかもしれませんが彼女の過去の説明は展開の都合上どうしても必要だったのでご容赦ください。
 で、今回はオバロ二次で書きたいことが二つも盛り込めたので結構満足しています。
 コキュートス将軍記(これから始まる)と一般メイドの人数について。

感想、批評、突っ込み、質問なんでもください。お願いします。

最後にCCCコラボで思いついたネタを一つ。オバロとEXとCCCのクロスです。白野多分無し

 CCCを100年ずらして2130の事にしてAOGの崩壊の切っ掛けをを実はギルメンの誰か(ウルベルトあたりが面白そう)が月の聖杯戦争に巻き込まれたからということにする。
 聖杯戦争中も同じ電脳世界みたいなものだしユグドラシルにログインはできたということにして他のギルメンは人を殺しながら死の恐怖に狂っていくその人を見て徐々にユグドラシルから離れていく。モモンガは他の皆をどうにか引き戻そうとするが失敗。崩壊の切っ掛けとなった誰か(月で死亡済み)を内心恨みつつ原作突入。
 電脳世界つながりでムーンセル側がユグドラシルの転移に気が付いて死んだギルメンを蘇生させてオバロ世界に放り込む。この先はなんか適当に頑張ってねって感じで

誰かこのネタ書いて




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33話 気づけない愚か者の話

えたった?えたった?
えたってないよ。

うそです。ごめんなさい。石投げないで。めっちゃさぼりました。言い訳はいっぱい用意してあるのですが割愛します。

とりあえず33話です。よろしくお願いします。


 モモンガがメッセージ越しにアルベドにさせたメイドへの面接でわかったことは、42人目はどこにも存在しないということだけだった。そもそも、NPCのレベル上限は1レベルの隙間もなく使い切られ、一般メイドすら追加する余裕はなかった。

 

 しかし、何もわからないこと自体がモモンガの曖昧な過去を想起させる。

 

 確か、一般メイドには各ギルドメンバー付きメイドとなることを意識していたはずだ。少なくともるし★ふぁーがギルドに参加するよりも前にそのような話があった気がする。

 

 思考の泥沼にはまりつつあったモモンガはノックの音で現実に引き戻された。

 

 

 

「し、失礼します」

「マーレか、何だ?」

 

 

 

 思索を止められたモモンガは微かな苛立ちを隠しながらマーレの報告を聞く。内容はトブの森に住む者たちの征服についてだった。軍勢は威嚇として先制攻撃等に用いモモンガのアンデッド作成用の死体を稼ぎつつ、本格的な戦闘はコキュートス自身がそれぞれの集団の最強の物たちと行うということだ。

 

 

 

「問題は無さそうだな。それでは実行に移せ」

「は、はい。かしこまりました」

 

 

 

 深々とおじきをして、立ち去ろうとするマーレを僅かな躊躇いの後に引き止めた。

 

 

 

「ところでマーレよ。お前は一般メイドの人数を知っているか?」

「え、は、はい。41人です」

「そうだ。では、なぜ42人ではなく41人なのだと思う?」

 

 

 

 無茶振りである。上司に「最近娘が冷たいんだけどどうしよう?」と聞かれるのと同じくらい対応に困る質問だ。精々マーレが真剣に答えようとしている程度の違いしかない。そして、モモンガも意地の悪い質問をしたと気がつかなかったわけでもなく、申し訳なさそうに問いを取り消そうとする。

 

 

 

「あ、あの、42 人というのは至高の御方々のことですよね」

「ん、そうだな。実際には1人少ない41人しか創造されなかったのはなぜかと思ってな」

 

 

 

 食らいつくような忠誠心がマーレにモモンガが会話を打ち切るより早く発言をさせたのだ。主君の役に立つチャンスを逃すまいとする思いが彼に発言させたのだ。しかし、マーレ自身が何か知っているわけではない。そしてどうにか紡ぎだした言葉も根拠が弱く、尻すぼみになってしまう。

 

 

 

「そ、それなら、別の事をしているとか……」

 

 

 

 モモンガの反応を確かめながらマーレは続ける。

 

 

 

「た、例えばですが、ペストーニャさんやプレアデスの人たちが42人目だったり、他のだれかがメイド服を与えられていたりするのかなと思いました」

 

 

 

 マーレがこのような発想を持てたのは自身がメイド服を持っていたからだ。彼は姉とともにぶくぶく茶釜達による着せ替え人形のようにして遊ばれていたことがある。その頃にメイド服を含めたいくつもの衣装を与えられていた。

 

 

 

「ふむメイド服か……、面白い着眼点だな。曖昧な質問だったがよく答えてくれた。感謝する。さて、余計なことを考えさせてしまったがそろそろ本来の役目に戻るべきだな。期待しているぞ」

 

 

 

 モモンガに促されマーレは退出する。その足取りは主君を失望させなかった安心感によるものか心なしか軽く、早足だった。

 

 

 

 コキュートスとアウラのもとに戻ったマーレは不安げな視線によって迎え入れられた。

 

 

 

「モモンガ様ハ何ト?」

「は、はい。作戦に問題は無いとのことです」

「……ふうん、じゃあマーレの準備が整えば今すぐにでも始められそうね」

「えっ、じゃあ、もう順番が決まったの?」

 

 

 

 マーレの問いに頷きながらアウラが一歩下がった。入れ替わりにコキュートスが前に出てきた。このような作戦の説明はこの場の総責任者の仕事だ。

 

 

 

「アア、マズハ東カラ行コウト思ウ。ソコデ上手ク行ッタラ西、最後ニ距離ガアリ部族毎ニ分カレテイテ手ノカカル北ノリザードマンダ」

「それで、モモンガ様からお預かりした兵は準備できているしマーレさえ準備できれば出発できるんだけど、どう?」

 

 

 

 実際にはマーレが準備するべきことなどほとんどない。NPCである彼等には用意すべき荷物などはなく心の準備さえ済ませればいいだろう。

 

 すぐに頷き彼は姉と同僚の後についていった。

 

 

 

「出発したようだな……では、私もやるべき事をやるとするか」

 

 

 

 守護者たちがいなくなったことを確認したモモンガは持ってきた本を開きそれに応じて現れた存在に告げる。

 

 

 

「召喚は上手くいったようだな。ハンゾウ、状況はわかるか?お前に任せたい仕事がある」

 

 

 

 目の前で恭順の意を示す者にモモンガは命令をくだしていく。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

「あそこが奴らの根城だね。かなりごちゃごちゃしているみたいだけど」

「け、結構時間がかかったね」

「シカタナイダロウ。モモンガ様ガオ預ケクダサッタ兵ハ森ヲ進ムニハ適サナイカラナ」

 

 

 

 先頭を行くダークエルフの姉弟にそのすぐ後ろを追うコキュートスが答えた。彼の言葉通り3人の背後には彼等の直属の配下以外にゾンビとスケルトンがそれぞれ2200、他にアンデッドビースト、スケルトンアーチャー、ライダーが合計550、まごうことなき大軍である。これでは隠密行動等そもそも不可能でその証として東の巨人と呼ばれるトロールを中心とし、複数のオーガ、奴隷らしきゴブリンを含めた集団は既に戦闘体制を整えつつあった。

 

 

 

「スケルトンに黒いチビどもに……なんだ?でかいエビか!それで何しに来た!食われに来たのか!たくさん連れてきたことはほめてやるぞ!」

 

 

 

 あまりに場違いな発言に一瞬度肝を抜かれたが、すぐにコキュートスがアウラとマーレの前に出て告げる。

 

 

 

「私ハアインズ・ウール・ゴウンノ偉大ナル御方々ニ仕エル守護者、コキュートストイウ。我ラハコノ地ヲ支配シニ来タ。オ前達ニハ支配サレルニ足ル力ヲ示シテモラウ」

 

 

 

 ナザリックの守護者として、そして最高クラスの武人として恥じない威風堂々とした宣言だ。背後で聞いていた配下やアウラとマーレも思わず息を飲むほどの出来だった。

 しかし、相手から返ってきたものは全く逆の耳障りな哄笑。理由はすぐにわかった。

 

 

 

「ふぁふぁふぁふぁ!臆病者どもの名前だ!俺のような力強い名前ではない!だが、気に入ったぞ!お前は頭からバリバリ食ってやる!一番うまそうだからな!」

 

 

 

 トロールのリーダーらしき存在の言葉はもう守護者達にはほとんど聞こえてなかった。ぽつりとマーレが呟いた言葉が彼等を乗せる魔獣達を一気に怯えさせた。

 

 

 

「ねぇ、お姉ちゃん。あいつら……」

「うん、私も多分同じこと考えているから言わなくていいよ。コキュートスもそうでしょ」

「アア、コノ者達ニハ従エル価値ナドナイ。予定トハ違ウガ全テ始末スルベキダ」

 

 

 

 コキュートスはそう言った直後、未だ哄笑がなりやまないトロール達の中心に踏み込む。そのままトロールたちの意識の隙間を縫って集団の中心まで瞬く間にたどり着いた時。

 

 

 

 "フロスト・オーラ"

 

 

 

 ナイト・オブ・ニヴルヘイムのクラス能力であるそれを全開にして一気に解き放つ。

 瞬間、哄笑が止み後には醜く嗤ういくつもの彫像が出来上がる。凍りついた森のなかで無様に立ち並ぶそれらはあたかも己の醜さを嗤うようにも見えた。その様を見て守護者達は一息ついて話し合う。

 

 

 

「コンナモノカ。武器ヲ振ルウ価値モナイナ。配下ニハナラナカッタガ新鮮ナ死体ガ得ラレタノハ悪クナイダロウ」

「うん、何よりこいつらをモモンガ様やXオルタ様に会わせなくてすんでよかったよ」

「じ、じゃあ、仕事も済んだしモモンガ様からのメッセージがくるまで待つの?」

「イヤ、死体ヲナザリックニ運ブ為ノゲートモ必要ダカラナ。氷がガトケル前にニ早メニ連絡ヲ取リタイ」

「だったら私が行くね。フェンに乗ればすぐだし」

 

 

 

 そう言った直後、アウラはフェンリルにまたがると出発した。残されたコキュートスとマーレは一気に見えなくなっていくアウラを見送る。

 

 

 

「シカシ、コレラガ愚カナノハシカタナイトシテ、コレカラ他ノ者ヲ支配デキルダロウカ?」

「つ、次の相手はもうちょっと頭がよければなぁって思いますよね」

「ソウダナ……」

「そういえばあのトロールの名前聞いてませんでしたね……」

 

 

 

 最も活発なアウラがいなくなり、残された男2人は互いにため息交じりに漏らし合った。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 一方で、アウラの報告を聞くモモンガもまた不承不承といった様子だった。彼女の報告内容はベストではないもののベターではあり満足すべきものだ。

 しかし、モモンガとしてはコキュートスを含めた3人に統治者としての経験を積んでほしかったのだ。モモンガとXオルタが求める世界征服の形として連邦制のようなものを目指す以上、複数の統治者は必須だった。

 

 

 

「仕方がないか。取り敢えずは死体を第五階層に送り、保管しておくとしよう。さて、次に攻める場所だが決まっているのか?」

「はい。西にしようと思っています。西の方が近く、1つの集団になっているので対処しやすいと考えられるからです」

 

 

 

 筋は通っているがモモンガにとっては嬉しくない答えである。Xオルタのノートからモモンガは被支配者としてはリザードマンが最適だと考えていた。

 

 

 

「悪くない考えだが少し問題があるな。西の者達は支配されるに足るのかと言う点だ。民を得ることも1つの目的なのだから北の方がその意味では確実だ。まあ、確かに、アウラの言う通り西の方が容易いだろうがな」

 

「では、北のリザードマンから相手にするべきでしょうか?」

「私としてはその方が望ましいと思っている。だが、難しいことも事実。なので、北からやるのならば少しヒントを出そう」

 

 

 

 ヒントといってもノートからカンニングしたことを逆算したに過ぎない。しかし、モモンガの言葉はアウラを驚かせ、喜ばせるのに充分だったようでとすぐさま首肯を返させた。その態度に若干引きながらモモンガはヒントの内容を続けた。

 

 

 

「あ、う、うむ。リザードマンを相手にするときのヒントだな。複数に分かれていて対処に手間取るのであれば1つに纏めてしまえばいいというものだ。単純だが、問題の一元化は重要だし効率的だぞ。後は、自分達で考えるべきだな。しかし、拠点との距離が離れてしまうのは不安だな。これを渡しておこう」

「ありがとうございます、モモンガ様!大事にします!」

 

 

 

 モモンガが渡したのはスクロールだ。スクロールの補給手段がないため貴重だが、連絡手段を確保することの方が重要だ。

 

 

 

「メッセージの魔法が込められている。1人につき1つだ。行き詰まった時や緊急時に使うようにしろ。もったいないからと言って使いそびれるなよ。では、次は北だな。十分に休んだら出発せよ。お前達がナザリックに新たな配下を加えられる事を期待しているぞ」

 

 

 

 感謝を述べて元気良く飛び出していくアウラが去るのを見送るとモモンガは一息ついた。そのままそばに仕えるメイドに声をかけた。

 

 

 

「フォアイル、お前達のメイド服について聞きたいんだが、それはホワイトブリムさんのデザインだったな」

「はい、至高の御方々のお1人、ホワイトブリム様が手ずからデザインしてヘロヘロ様、ク・ドゥ・グラース様によって形作られました」

「つまり、彼ら以外にお前たちのメイド服と同じものは作れない。そういうことだな」

 

 

 

 重々しく言ったモモンガは42人目の消失の目前に迫るために最も信頼する頭脳へとメッセージを飛ばした。

 

 




もうどういう書き方してたのか完全に忘れかけていたのでかなり難産でした。
書式とか空行とか訳が分からない。
えっちゃんだしたい。ちなみにFGOの方はXもえっちゃんも当たりませんでした。
天井の実装を強く所望する。
若干駆け足で東の巨人が消えました。馬鹿だからしょうがないね。


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34話 探り探られ知られる者の話

えたった?えたった?
えたってないよ。

うそです。ごめんなさい。石投げないで。めっちゃさぼりました。言い訳はいっぱい用意してあるのですが割愛します。

前回のコピペでごまかそうとしているくずです。ごめんなさい。34話です。
空きすぎているので作者のうろ覚えあらすじ?流れ?出来事のまとめです。

転移
カルネ村の茶番
冒険者になる
ハムスケ・座・フトモモガーター
カジッチャン逃走
漆黒の剣自滅
覗き三人組
番外と明石焼
バレアレ買収
世界一名前が短い名前を呼ぶほどの価値もない情けない感じの例のあの人の短い生涯について
メイド

です。
今回はメイド疑惑でモモンガさんが例の頭のいい眼鏡にメッセージを送った後の眼鏡たちの話からです。
よろしくお願いします。



「セバス、準備はいいかな?」

「もちろんです、デミウルゴス。この屋敷の所有権は確保しており、パンドラズ・アクターより店番のための人員も借りて来ました。いつでもXオルタ様をお連れできます」

「ならば十分だ。これから随分と忙しくなるから準備くらいは万端でなければ……、モモンガ様にも念入りに言われてしまったしね」

 

 

 

 カーテンが閉めきられ魔法による灯りのみで照らされた高級感のある一室で使命感にもえた2人の男の声がした。

 

 ここはリ・エスティーゼ王国、王都リ・エスティーゼ、高級住宅街のはずれにある小さな屋敷、その中で最も奥まった部屋だ。そこにはデミウルゴス、セバス、そして黒い子供の背丈ほどのゴーレムが居る。

 彼らの前にはブラックホールような黒い穴ものがあり、その穴の先につながっているバレアレ薬品店にこそ、2人の主君の1人、謎のヒロインXオルタが待っているのだ。

 はやる気持ちを抑えながらそれぞれに準備が整ったことを確認してゲートをくぐると、途端に薬草をすり潰した強烈な臭いが彼等の鼻腔を刺激してきた。

 

 

 

「随分とひどい臭いだね。Xオルタ様が短期間とはいえここで過ごしていらっしゃったというのを考えると気が滅入るよ」

「王都の屋敷には湯浴みの準備もしてあります。もし、Xオルタ様が屋敷にいらっしゃったらすぐにお身体を清められるでしょう」

「まあ、あの屋敷では君がどれほど努力してもナザリックには劣ってしまうが仕方ない。それがベターのようだ。……さて、来たようだね」

 

 

 

 デミウルゴスの自虐を遮る床の軋みとともに黒髪をポニーテールに纏めた美女が現れた。

 

 

 

「ナーベラル・ガンマ、ここに」

「ナーベラル、Xオルタ様は?」

「別室で書物をお読みになっていらっしゃいます。お2人の到着に気がつかれたので私に出迎えるようにと仰られました」

「わかりました。では、まずはあれらについて説明を、」

「セバス、それについては今話す必要はないと思うよ。私たちはXオルタ様の負担を軽くするために来たのだ。やる事は分かりきっているのだから、まず、Xオルタ様をお迎えすることの方が重大だろう」

 

 

 

 セバスを遮るデミウルゴスの強い言葉で僅かに空気が硬くなる。どうしても互いに噛み合わないのか、鼻につく言い方になってしまうようだ。

 

 しかし、いつまでも睨み合ってもいられない。ここではセバスが折れた。

 

 

 

「そうですね。では、ナーベラル、Xオルタ様の元に向かいます。案内してください」

「では、私は Xオルタ様がいらっしゃるまでにこの部屋の匂いをどうにかしておこう。さて、――」

 

 

 

 ナーベラルとセバスが薬品臭い部屋を出ると残されたデミウルゴスは懐からアイテムを取り出し、足早に部屋を回りながらぼそぼそとつぶやきつつ、主君を迎え入れる準備を始める。数分後、入ってきたXオルタは深い敬礼と以前の青臭さがほとんど覆い隠された部屋に迎え入れられた。

 

 

 

「わざわざお呼び立てしてしまい申し訳ありません。これよりXオルタ様には王都の屋敷に移っていただきます。そちらでは王国に対する計画の総指揮をお願いします」

「うん、聞いている。デミウルゴスがやるならあまり私が口を出す必要があることはないだろうけどよろしく」

「では、早速なのですが Xオルタ様の所有するゴーレム、ヴォロイド“K6-X4”をこの拠点にお借りしたいのです」

 

 

 

 デミウルゴスの背後にから黒光りするゴーレムが押し出される様に前に出る。バケツを逆さまにした様なヴォロイド“K6-X4”、通称黒騎士くん、 Xオルタの個人所有のゴーレムであり、制作に守護者1人分の全身装備に匹敵するコストをかけられた逸品だ。

 ゴーレムなので操作しなければ何の役にも立たない置物だが、有効活用できればリターンは大きい。しかし、言い換えれば有効活用できるかがネックなのだ。

 使用者がデミウルゴスの様な知恵者なら充分に役立てられるが、シャルティアの様なポンコツでは精々が時代遅れの黒電話程度だ。

 デミウルゴスが王都に行く以上使用者は彼ではない。誰にその役目が回ってくるかは重要な問題だった。

 

 

 

「別にいいけど……、誰が使うの?デミウルゴスじゃないよね?」

「ありがとうございます。使用者にはナザリックでパンドラズ・アクターの指導を受けたシモベが参ります。街の検閲を通るため今日の昼頃の到着になる予定なので入れ違いになってしまいますがその点はご容赦ください」

「……なんか大変そうなことしてるんだ。うまくいきそうならいいけど、おつかれさま」

 

 

 

 Xオルタは他人事の様に言っているがこの件については彼女が原因だ。黒騎士くんを使うのもXオルタのサポートをよりよく行いたいがためだし、もともとナザリックになかったパンドラズ・アクターの配下を使うのもXオルタが黒騎士くんを預けてまで彼に頼んだ研究を滞りなく進めるためだ。

 

 それら全てをカバーしつつ副次的な効果を得られるように、彼女には察することのできない高度なやりとりがデミウルゴスとパンドラズ・アクターの間で行われていたのだが、そんなことは露とも知らないXオルタは軽い言葉しか出てこない。しかし、手を回してくれたのだろうということは察したようで、わからないままに労いの言葉をかけた。そして、それはデミウルゴスのようなNPCとっては十分以上の褒美となる。

 

「もったいなきお言葉でございます。このデミウルゴス、御方々のためであればいかなることも成し遂げて見せましょう」

 

 

 

 感動に打ち震えるデミウルゴスは跪いて感謝を綴りはじめようとする。だが、話が終わるとその感動をかき消すかのようにセバス前に出て急かし始めた。

 

 

 

「デミウルゴス、Xオルタ様にこの部屋であまり長居していただく必要もないでしょう。先に屋敷に案内してはいかがでしょうか?」

 

 

 

 間違っていることではないがデミウルゴスとしては主人に与えられた喜びに浸る時間を遮られたのだ。冷静なままではいられない。何よりセバスに言われたという事実が癪に触る。

 

 

 

「ああ、セバス、確かにそうだね。しかし、帰りの転移は屋敷に残っているソリュシャンに任せてあるのは知っているだろう。両御方の指示を忘れてスクロールを無駄にしたいわけじゃないのならば待つべきだ」

「なっ……!そんなことは!」

 

 

 

 詭弁である。待ち時間など残り1分もないのだ。

 しかし、口論ともなればセバスがデミウルゴスに勝る余地はない。続けざまに言葉を吐き反論の余地を潰す。ここからはデミウルゴスの独壇場だった。

 

 

 

「ならば待っていたまえ。どうせ向こうへ着いたら君にはこれまで以上に働いてもらわなくてはいけなくなる。せっかく Xオルタ様がこの店で大量の外貨を手に入れてくださったのだから有効に活用するためにね。おや……ちょうどいいですね。ソリュシャンの準備が整ったようです」

 

 

 

 言い終えたデミウルゴスが半歩ほど左にずれ Xオルタの正面を空けたちょうどその時、4人の前にゲートが開いた。予定通りという様に腰を曲げたデミウルゴスに促される様にして3人は Xオルタを先頭にゲートをくぐり抜けていく。そして最後に残った悪魔は期待を抑えきれないというように口角を吊り上げながら少し遅れて彼らの後を追った。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 王都の冒険者ギルドの酒場のあまり人が寄り付いてこない一角で話声がしていた。対照的な姿をした目立つ2人組だ。

 

 オーガと見紛うかの様な筋肉と巨軀を持つ女戦士と、その半分くらいのサイズの仮面とローブでいかにもといった姿をしたマジックキャスターだ。いずれも王都で活動するアダマンタイト級冒険者の蒼の薔薇のメンバーで戦士がガガーラン、マジックキャスターがイビルアイという。

 

 

 

「そういえばよ、最近近くでブレイン・アングラウスの目撃情報があったらしいんだが知ってるか?」

「ブレイン・アングラウス?あー、あのばばぁに負けた剣士か。久々に聞いたが、それがどうかしたのか?」

「リグリットに負けたというよりガゼフのおっさんと競り合ったってことの方が有名なんだがな。そいつがどうやらハゲの魔法詠唱者とつるんで妙なことしているらしいから面白そうだと思ってよ」

「なるほど、戦士長クラスの戦士とおそらくそれに釣り合う魔法詠唱者か。唐突に現れる様な存在ではないはずだし気にはなるな」

 

 

 

 もしかしたらアダマンタイトクラスのワーカーの出現である。同業他社のライバル出現と見てもいいかもしれない。それは王都の裏組織「八本指」に秘密裏に敵対している彼らにとって笑い事では済まされないのだ。王国では違法な冒険者とも言えるワーカーは容易く八本指に吸収される。それがアダマンタイト級ともなれば最悪の場合、彼女達が最も警戒する八本指最強の武闘派集団「6腕」が2本増えて「8腕」になるかもしれない。硬くなる声を抑えながらイビルアイは聞いた。

 

 

 

「目的とかはわからないのか?目的もなく王都に舞い戻って来たっていうわけじゃないだろう」

「さあな、俺はガゼフにリターンマッチみたいなことだと思うが……、まあ、悪いことではなさそうだぜ」

「どうしてだ?ガゼフに匹敵する連中なら下手を打つと大問題になるぞ」

「なぜって、聞く話がいちいち評判がいいんだよ。近くを通った時に病人を直したとか村を襲おうとしたモンスターを退治したとかよ」

 

 

 

 毒気を抜かれたような顔で、仮面の下なので周囲にはわからないが、イビルアイは言葉を失う。

 

「なら、いいが……」

「なんだか納得いってない感じだな。なら会いにいってみるか?ちょうど暇だったし少しくらい油売っていても誰も文句は言わねぇだろ」

 

 

 

 からかうような言い方だが長い付き合いのイビルアイにはガガーランの言葉が本気だとわかる。

 もともと会ってみたかったからこの話題を振ったのだろう。大方自分より強いかもしれないし、相手を見てみたいが騒ぎになった時に1対2では都合が悪いから誘ったのかもしれない。それに興味深い相手であることは確かだ。長考しているうちにイビルアイも徐々に会いに行きたくなってきた。

 

 

 

「仕方ない、そこまでいうなら居場所はわかっているのだろう。私も鬼では無いからな。ついていってやろう」

「おう、態度はむかつくがありがてぇ。場所はここの近くの新人が良く泊まる宿があるだろ?そこに居るらしくてな。それで話題になってたんだよ」

 

 

 

 その宿についてならイビルアイ自身は使ったことが無いが知ってはいる。あまり質がいいとは言えないが冒険者が利用するだけあって信用はある。何より、冒険者としての彼女達のコネが最大限に使えるのがいい。

 警戒心こそ消えてはいないがその2人組、ブレイン・アングラウスと禿頭の魔法詠唱者に会うのが少し楽しみになってきたイビルアイはガガーランが立ち上がるとそれに連れ添うように宿に向かった。

 




シトナイちゃんきましたね爆死しました。
心折れた。

一応ですがいろいろと責任を感じているのでいくつか

ちゃんとこの話のけりのつけ方は考えていて途中展開がどれほどグダグダになってもそこは変わらないと思うので完結はさせられると思います。いつまでかかるかは知らんけど

夏のボーナスは沖田さんに消えました。

えっちゃんのフィギュア買いましたせんちねるの奴。
さいかわ

感想返しは予約投稿の後にやると決めているのでとても遅くなってしまっています。ごめんなさい。

これでも懲りずに読んでくれる人がいたらぜひ感想をください。えたってる最中のモチベとしては最高級です。感想来るとろくに進んでない原稿の文字数が倍になるので

見苦しいやつですがほどほどに相手していただけたら幸いです。またよろしくお願いします。

一番大事なこと
今回出ているナザリック勢はみんな眼鏡をかけます。メガネメガネ


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