緋弾のアリア~IFエネイブル間宮 あかり (リムル=嵐)
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序曲《プレリュード》
プロローグ
完結は..........出来たら良いな( ̄▽ ̄;)
ジリリリリリリリリィ!!!
「お姉ちゃん早く起きて、ご飯冷めちゃうよ?」
「ううむぅ、もうちょい寝かせてぇ。」
昨日の金曜洋画劇場が面白すぎて、あんまり寝てないんだよぉ~。具体的には3時間位しか寝てない、寝不足はいけないってお母さんが言ってたけど、コマンド―が面白いのがいけないんだ、私は悪くない。
「そんなこと言って、お昼まで寝る気でしょ?月曜日、朝起きれなくなっても知らないよお姉ちゃん。本気で寝ると、手榴弾の爆発音が鳴っても起きないんだから。」
む、それは心外な、人をまるで寝坊助さんみたいに言わなくても良いじゃないか、我が妹よ。
「寝坊助さんはご飯いらないんだね、せっかく今日は早起きしてホットケーキ焼いたのに。」
ののかの声に飛び起きる、朝御飯ホットケーキなの!?
「おはよう、ののか!!」
呆れた様な目で苦笑いしてるののかから、甘い何か焼いたような匂いがしてきた。
本当にホットケーキだ、やった~~!!
「クスッ寝坊助さんじゃなくて、食いしん坊さんだったね。朝ごはんは顔洗って、着替えてきてからだよ、さぁ早く早く!!」
「イエス、マム!」
急いで準備しないと、ホットケーキが冷めちゃう。
えっと、服はジャージでいっか、休日だから一日家に居るし、出かける場所がこの里だと無いし、里の皆にならジャージ見られても平気だし。
そんなことよりホットケーキだ!!
「ののか、早くホットケーキ食べよう、甘い物は出来立ての内に食べるんだよ!!」
実際、温かい方が人間は甘く感じるらしいって、この前テレビでやってた。
急いで着替えて顔洗って歯を磨くと、リビングに突撃する。リビングはキッチンとダイニングがくっついた、結構便利だけど物に溢れてちょっと狭い部屋。
この家は、お父さんが中学の近くのセーフハウスにしてたアパートを改装して作られた部屋で、横4部屋を壁を無くして新たに作り直したから、のびのびと使えるのだ。
「そんな急がなくても、ホットケーキは逃げないよお姉ちゃん。はい、ホットケーキ。」
ののかが、20㎝位のホットケーキを沢山積んだ大皿を、テーブルに乗せた。テーブルにはもう飲み物とハチミツにジャムが用意してあって、出来立てのホットケーキの匂いで、お腹が鳴って仕方がない。
いぃよっしゃぁ~~~!!!
「ののか、ハチミツ頂戴!後、苺ジャム!」
「食いしん坊さんめ、10枚までだからね、朝から沢山食べてもお昼御飯食べれなくなるでしょ。」
そ、そんな、バカな。
「ののかのケチ、20枚位平気だって、それに今は成長期だから、直ぐにお腹空くもん。」
「はいはい、そう言ってこの前焼き肉食べ過ぎて、お腹壊した人は何処の誰ですかね~お姉ちゃん?」
ののかが怒気を発しながら笑顔で凄むせいで、ホットケーキを食べてた手が止まって冷や汗が出てきた。
いや、あれは仕方ないじゃん。お母さんが間違って仕事で居ない、お父さんの分まで買ってくるからすんごい量だったし、それに「ののかもお母さんも内臓系は食べないから、私が食べただけだし。私だってトントロとかハラミとか食べたいよ、でもお肉勿体ないからしょうがなく食べただけだし」
「冷凍すれば良かったのに、お姉ちゃんが無理言って全部食べたんじゃない。しかもしっかりカルビもタンも食べて、デザートのアイスもお代わりしたし。お姉ちゃん体重いくつ?」
な!?
「大丈夫だもん!この前測った時は30㎏ぴったりだったから!!重いのは筋肉だし、腹筋は割れないようにしてるだけで、結構凄いもん!!」
大丈夫何だから、大丈夫大丈夫………大丈夫だよね?
「この前って、二ヶ月前じゃない。お姉ちゃん、ご飯食べ終わったら測ろっか、体重」
~30分後~
そんな、何で、いや、こんなことって、酷い!!
五キロも増えてるなんて、うそでしょ!!?
「いやぁ~~~!!!!!?」
想像もして無かった体重増加に、頭が真っ白になって意識が遠くなる。
…何で……こんなに………………増えて……るのよ…………………
「お姉ちゃん!?まさか、て言うかやっぱり太ってたんだ」
~10分後~
う、頭が痛い、ここは何処?
「あ、お姉ちゃん気付いた?」
「ののか?私って………はっ!?体重!!」
私、五キロも増えてるなんて………そう言えばお母さんからも良く食べる子ね、何てしょっちゅう言われてたし、お父さんはもっと食べて体力つけろ何て言うけど、私、ダイエットしようかな?
でも、お母さんも結構あるけど全然痩せてるし、大丈夫だよね?
………鏡見よう
「あ、お姉ちゃんいきなり動くと危ないよ?」
ののかの注意を無視して、大きな姿見のある部屋に行こうと立って歩こうとしたら、立ち眩みでふらついてこけちゃった……うぅ、お尻が痛い。
「いてて、腰ぶつけちゃった」
「もう、そんなに慌てるから、鏡でしょ?お姉ちゃん、この部屋鏡の部屋だよ、回りをちゃんと見なさい」
え?うそ……あ、本当だ、鏡の部屋だよここ、何で気付かなかったんだろ?
「ほら、確認するなら速くね?」
………ううむ、ジャージの上からは何も変わって無いね、よっと
「もう、ちゃんと畳んでよお姉ちゃん」
ののかは私の、お母さんか!!
「大丈夫、特に変わって無いから、大丈夫、ちょっと筋肉質になってるけど、まだ大丈夫、うん」
でも、体重は増えてるのに、何でここは大きくならないんだ。
むぅ、あれか?運動のし過ぎか?でもお母さんはすんごい大きさだし、ののかも最近ブラつけ始めたし、私なんかブラ要らない位小さいのに。
………ハァ、何でこうなったんだろ、前世では女性の体なんて全く知らなかったのに。
そんなことを考えながら、私はこの体に転生したときの事を思い出した。
次回は期待しないで待ってて下さい
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プロローグ2話
何か筆が動いたんだぜ!!?
夫婦転生は筆が動かないのに何でなんだぜ!!!?
俺が一番驚いてるぜ!!!?
( ・`д・´)
気が付いたら、俺は真っ白な空間に立っていた
「あれ、ここは。」
突然の非常事態に慌てて装備を確認するが、装備どころか、俺は今、知らない病衣の様な服を着せられていた。
「本当に何なんだよこの状況!?」
何でこんなことになった?
落ち着け、俺、落ち着いて思い出せ。
俺はさっきまで何をしていた?
「えっと、確か俺は香港にバスカービルで修学旅行Ⅱに来てた筈だ。」
記憶をゆっくり思い出す。
ただそれだけの事なのに冷や汗が止まらない。
「それで、アリアと喧嘩して、コウに会ったんだ。その後、財布スられて、何とか取り返した時に皆と再会して、藍幇に招待されてデカイ船に乗って、其処で泊まった後、決闘することになったんだ。それで..........」
そこまで考えた所で、脳に激痛が走る。
頭が割れる何て生易しい表現では表せない、まさに激痛とも言うべき痛み。
「ぐっ!!!?」
堪らず考えていたことが霧散し、頭を抱えて蹲る。
一体どれだけの時間をそうしていただろう、頭痛がある程度、二日酔い位まで緩和された時、女が俺の前に現れて、話し掛けてきた。
150cm位で、綺麗な黒髪を腰まで伸ばした、中学生ぐらいの女の子だ。
「大丈夫?まだ記憶が混乱してるのね。あの愚弟、私の真似して引きこもりしたあげく、こんなことしでかすなんて。御父様にもっと叱って貰わなきゃ。」
「誰だあんた、ここは何処だ?」
「ここは、そうね。ドラ◯ンボールの、精◯と時の部屋知ってるかしら?」
そういってこの女子中学生は、まるで自分が別次元の人間だと言わんばかりの、尊大な雰囲気を出していた。
は?
なに言ってんだ、この中学生、あれか?
いきなり支離滅裂な事言って、まるで本当に自分が凄い奴に見せるって、これが理子が前言ってた、中二病ってやつか?
「私達民族は、皆ハイパーステルスでね?これもその力の一つよ。」
何言ってんだ、この中学生は。
本当に意味が分かんないぞ?
「一体何を言ってんだ?つうか、まず名前を言え、普通自己紹介は名前からだろ。」
俺がそう言うと、女は面白そうに言った。
「そんなこと言ったら、人に言う前にまず、自分が名乗るべきじゃない?」
言い返されてぐうの音もでん。
この女、見た目より頭がキレるな、普通の人間は知ってても、初対面相手にその言葉は言えない。
「俺は遠山金次、武偵だ。」
そう言うと女は何でもないように、笑いながら手を振り、何も無い場所に卓袱台と座布団を出すと、座布団に座り、お茶を淹れながら言った。
「あら、知ってるわよ、目茶苦茶鈍感で、稀に見る程の人たらしだって事。」
な!?
人を物語か何かの主人公みたいに言いやがって、失礼な奴、女と言うことも相まって、俺の天敵確定だ。
「む?俺はそんなんじゃない、勘違いするな、普通の武偵だ、まだヒヨコだけどな。」
「嘘つかないで、学生の時点、それも高校二年で、世界有数の戦力になってる時点で、普通じゃないわよ。自覚しなさい、元天才青年君?」
な、何言ってんだ、この女。
確かに俺は、アジアランキングにランクインしたが、それでも下から数えた方が速いんだ、まだ人間は辞めて無い。
それに俺は、普通の武偵を目指してるんだ、そんなふざけたランキングは、こっちから願い下げでだな。
「お前は名乗らないのか、俺は名乗ったぞ?」
「そう急かさないの、時間はまだまだあるんだから、私は、そうね、天照命ってこの星では名乗ってたかしら?宜しくね、金次君。」
そう言って、俺に座布団に座るよう身振りで急かしてきた、この天照と名乗った女。
あ、天照って、日本人なら誰でも知ってる神格。
日本の国教の神道の主神、日本神話のトップとも言うべき存在だぞ!?
こんな少女がそうであるわけ無いだろ!?
「あ、信じられないって顔してるわね、本当よ。今見せたでしょ、力の一部を。人間には、こんなことは出来ないと思うけど。」
そう言って手を振ると、体が独りでに動いて座布団座ろうとっ!?
何で天照の座ってる座布団に座ろうとしてんだよ!!
天照が座布団から退いて俺を胡座で座らせると、俺の足の上に乗って!?
この女、くそ、女神名乗るだけはある、近くで見ると目茶苦茶可愛いぞ!?
アリアや理子みたいなものでも、ジャンヌやメーヤさんみたいなタイプでもない、側に居るだけで安心するタイプ!?
くっ!?
に、匂いが、この干したての布団に飛び込んだ時みたいな気持ちよさと安心感!!
何だよこれ、くっ血流がヤバい!!
もう、軽くヒスってるぞ!?
「うふふ、貴方結構ウブよね、周りにあんなに可愛い子が居るのに、全然女の子に慣れてない何て、可愛いわ。」
くっ、ヒスるのを抑えろ、俺。
ワイズマン、ワイズマンだ、集中しろ、俺ならなれる!
「あら、そんなの無駄な足掻きよ?ほら」
天照が足の上から退いて俺の後ろに周り、俺の事を後ろから抱きついてきた!?
背中に発展途上の、控え目だが確かにある胸に、天照からする、太陽の匂いとも言うべき安心する匂いに、ヒステリアの血流が、完全に、切り替わった。
成っちまった、ヒステリアモードに、初対面の、それも人かも解らない存在相手に!!
ハハ、こんなに速くなるとか、俺はもしかして年下に弱いのな?
いや、天照って言うのがが本当なら、目茶苦茶歳上になるから、でも外見は年下だね.....ふん、この事は考えるのを辞めよう、自分が節操なしに思えてきた。
「実際そうでしょ?お・ま・せ・さ・ん♪」
「ハハ、流石に年上のレディには隠し事は出来ないね。俺がこうなる事も、知っていたんだろう、天照様。」
「まぁね。でも、あんなに女の子周りに侍らせて、しかも皆可愛い子。それなのに貴方は未だ未経験何だから、本当に男なのか疑いたくなるわね。」
そう言って天照は、俺の腰の辺りを優しく撫でて!?
「それで、天照は今の俺に何をさせたいのかな?」
急いで撫でていた腕を痛くない様に掴み、そのまま柔術の要領で俺と天照の体を動かし、天照を胡座をしている膝に乗せる。
「??もしかして、そっちの経験全く無いの!?」
「そっちが何か解らないけど、天照は理由があって俺をこっちにしたんだろう?質問に答えてくれるかな。」
そう言う話題は俺は苦手だからね、はぐらかせてもらうよ。
天照は、そんなこちらの気持ちを知ってるかの様に、意地悪な笑みを浮かべ、言った。
「別になった貴方の方が飲み込みが早いから、ならせたあげただけよ、特にこれといって理由は無いわ。」
「そんな理由でこっちにさせられたのかい?意地悪なお姉さんだ。」
最も、俺の知っている神様は自分勝手な人ばかりだけどね。
「貴方はね、死んだのよ。香港で、如意棒に貫かれてね。」
............................................ああ、思い出したよ、あの時俺は確かに如意棒に貫かれた。
俺が投げたスクラマ・サクスでは長さが足りなかったんだ、アリアが咄嗟に放った銃弾もココ姉妹の四女、機嬢に妨害された。あの時、機嬢が隠し持っていたデリンジャーにアリアが撃たれて、狙いが逸れたんだ。
思わず力が入った手に、天照はそっと手を重ねてくれた。
「そんなに深く考えないで、完全に死んだ訳では無いのよ?貴方は未だやり直せるの。」
................は!?
「ど、どういう事だい、天照、人間の人生にはやり直しはきかないものだろう?」
「普通はね。だけど貴方はちょっと訳あり、って言うか、身内の不祥事でね。やり直せるのよ、特例でね。」
ど、どういう事だ、俺が特例?
しかも身内の不祥事だって!?
それじゃあまるで、あの勝負に邪魔が入ったみたいな言い方じゃないか!!
そう言えばさっき、天照は愚弟とか言ってたね、まさか、月読かスサノオが関わってきてるのか?
確か月読は女神説もあった気がするから、スサノオの方が可能性は有るのか、クソっ!!
日本の武神とも言うべき、スサノオに邪魔されたのか、俺は!!
いつの間にか俺は手を強く握り締めていた。
「やり直すって、どうするんだい?過去の自分にでもなれるのかい?」
そう言った途端天照はクスリと笑うと否定した。
「いくらハイパーステルスでも、過去に干渉して歴史の改変なんて、面倒臭いわよ。」
ハハハ、出来ないとは言わないんだね。
ハイパーステルスって、一体どのくらい凄い超能力何だ。
緋緋色金がハイパーステルスだってシャーロックは言ってたが、緋緋色金がそんな事出来るなんて俺は俄に信じられないぞ?
「だから、時間の流れが遅い、この世界と似てる平行世界に飛ばして、その世界の住民に取り憑いて貰うわ。」
な!?
何を言ってるのか全然理解出来ない。
取り敢えず、また人生をやり直せるって事で良いのか?
「あら?思ったよりバカなのね、貴方って。いや、そこだけ理解できてれば良いのよ、貴方はね。」
天照様は思ってたより毒舌なお嬢様だね、人生をやり直せるなら、文句は無いけど、取り憑く人はどんな人なのかな?
「貴方はこれから女の子に転生してもらいます。拒否権は無いわよ?」
え!?
「ほ、本当に女の子にしか転生出来ないのかい?男が良いんだけど。」
「拒否権は無いわよ。まぁ、安心して、そこら辺は私も考えたから。」
か、考えたって、男じゃなきゃ意味が無いだろう!!
ええい、天照もスサノオと同じ部類の神なのか!
「失礼ね、女の子で転生って言うのは理由がちゃんとあるのよ。」
「どんな理由だい?俺の能力にも関わる事だから、話して欲しいな。」
転生したらヒステリアモードこと、ヒステリア・サヴァン・シンドロームは、使えなくなるのかも知れないが、それでも可能性はゼロじゃ無いんだ、なら使うと弱体化する女じゃなくて、男に成りたいに決まってる。
同じ世界に転生するなら、どうせまた鉄火場に行くことになるかも知れないんだ。
なら、強くなれる力は欲しい。
「あぁ、HSSが心配なのね?なら大丈夫よ、もっと使い勝手良いやつ上げるわ。」
??
どういうことだ?
もっと良いやつってどんな能力だよ、アリアみたいな色金?
それとも白雪やジャンヌの様なステルス?
もしかしたらシャーロックの条理推理?
「違うわよ、貴方の持ってるHSSを改造するの、遺伝型の体質なら、誤魔化しが効きやすいしね。リミッターの外し方と、βエンドルフィンの意図的な過剰分泌と、HSSが出来るように軽い突然変異と、他に..........いや、アドレナリン大量分泌による痛覚の鈍化と脳の処理能力の強化にすべきね。」
あ、アドレナリン?
テレビ何かで聞いた事はよくあるけど、あれでHSSの代用が出来るのか?
「効果は少し違うけど、貴方みたいなタイプにはちょうど良いし、女の子になるんだし少し不安定でも、大丈夫よね。」
「な、何言ってるんだ。不安定って、本当に大丈夫なのか!?」
「安心しなさい、通常よりストレス強度は高くするし、何なら他にも補助能力付けるから、貴方は取り敢えずリミッターの外し方と極限状態の時の脳処理を意図的に上げられる様になるだけだから、発動キーはどうしようかしら。」
な、何か勝手にどんどん決まってるぞ!?
くそ、せめて何かこっちの要求聞いてもらわないと!
「なら、簡単に発動出来るのものが良いな。出切れば外部からの干渉が居ないのがベストだね。」
「むぅ、そうねぇ、なら感情の高まりかしらね、これなら一人でも、出来るかしら?」
か、感情の高まり!?
出来なくは無いだろうが、何とも曖昧なキーだな。
「うん、分かったよ、それと一つ良いかな?」
アドレナリンと聞いて、聞かなければならない事が出来た。
「ん、何かしら?」
「アドレナリン分泌と聞いたけど、その能力のせいで服用してはならない薬とか、有るよね?」
「勿論、あるわよ。そこら辺は来世で少しずつ調べていきなさい。あ、コーヒー飲むのは控えてね、カフェインが危険だから。心臓に負荷が掛かって死ぬわよ?」
どんな地雷能力だよ!!
くそ、食生活に制限が掛かるとか、前世では考えられないぞ?
「さ、能力についてはもう良いわね。一応私達姉弟も、貴方の補助はするけど、力になれるかは分からないから、気を付けて生きなさい。貴方みたいなタイプは、長生きしないからね。もう話すこと話したわ、来世頑張ってね。」
言うこと言った後天照は、また能力を使って俺の身体を固定した!?
「うふふ、もう男でいられるのは最後だけど、やり残したこと無い?」
何てこっちの事を意地悪い眼で見てくるが、見たぞ、俺は!!
能力を使う時に、一瞬だけ動きが止まったのを!!
絶対的な力で、まだどんな能力かも解らないが、それでも発動の兆候は分かった!!
次は絶対に一矢報いる、絶対にだ!!
「むう、こんな可愛い女の子前にしてそんな事考えるなんて、ちょっと私自信無くすわよ?」
「いや、天照は可憐だよ。俺が直ぐに、この状態になるぐらいにはね。」
何て口だけ動いたから自虐して励ましたんだけど、天照は機嫌が全くよくならず、もうこちらを見もしなかった。
「もういいわ、さっさとしましょ。義母様にその為の力も限定的に貰ったんだしね。」
そう言って、天照が手をふった瞬間、俺の意識が無くなった。
続きなんて無いよ( ;´・ω・`)
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少女達の練習《ガールズ・エチュード》
ちゅうがく1ねんせい!
何か、書いてて、こいつとんでもない性癖の扉開いてんじゃね?とか思ったけど、ジャパンなら普通だなハッハッハ∩(´∀`)∩
休み明けの月曜日、今日からまた、学校生活が始まるとなると、ちょっと憂鬱。
「あかりちゃん、おはよー」
「おはよー」
クラスメイトの子に挨拶して、自分の席に座る。
「ねえねえあかりちゃん、遠山先輩がまた告白されたって、ホント!?」
教科書広げて授業の準備してたら、前の席の女の子が話し掛けてきた、名前は
出てきた話題に頭を抱えたくなるけど、そんなことしても意味ないから我慢。
「えっと、私未だ先輩にその話し聞かされてないよ。今度は誰?」
それにしても、あの女ったらし、また女の子ひっかけてるの?
我が事ながら、ちょっと呆れるわ、女の子からみた前世の私って、こんな感じだったのかなぁ。
「三年生の先輩、バスジャックに巻き込まれた時に助けたのが切っ掛けって、告白してたらしいよ。昨日、近くの公園で」
私が虐められる前に助けて、ちょっと女の子の事教えてあげただけなのに、どうしてこうなるの?
………やっぱり、人の人生を変えようとするのが間違いなの?
「そうなんだ、放課後先輩に聞いてみるね?」
取り敢えず、放課後あの昼行灯はお説教だね、懲りない事はしっかり叱らなきゃダメなんだよ。
「ありがと~、校内新聞のネタに困ってたから、助かる!!大好きだよあかりちゃ~ん!!」
「ちょっいきなり抱き付かないでよ、皆見てるから!?」
間に机があるのに、器用な事しないでよ!!
それに、いくら新聞部だからって、他人の恋愛事情は書かない方が良いと思うよ?醜聞屋って言われるかもしれないし。
「私ぃ、あかりちゃんが言うなら、見られても良いよ?」
ッッッッッ!!!!!!?………もう、華ちゃんったら、冗談止めてよ?結構可愛いんだから。
「もう、冗談やめて、私にそっちの気は無いからね?」
そう言って抱き付いてる華ちゃんを、強引に引き剥がす。
「あん!もう、連れないな~。女の子はもっと優しく扱わないと、だめ何だゾ☆」
そんな事言ってニヤニヤしながら、ウインクしてくる級友にデコピンして、隣の席で呆れてる目で見てくる友達に話し掛ける。
「拓君も助けてよ、友達が困ってるんだから」
そう言って拗ねる私に、拓君こと、
「あはは、まぁ華ちゃんがくっつくのは、いつもの事だしね。もう半年何だし、いい加減馴れたら?」
顔は甘い感じのイケメンなのに、口から出るのは辛辣なお言葉。
まぁ半年もしてれば馴れるけど、半年も見てるんだから、止めてくれても良いと思うんだ、私。
「そう睨まないでよ。ほら、華ちゃんが嫉妬しちゃうよ?」
拓君が言った瞬間、お預け待ってた犬みたいに、飛び込んでくる華ちゃん。
「あかりちゃん、私も見て~」
何て言いながら、抱き付いてくるのに回した手で、然り気無くボディチェックしてくるから、流石に私も怒る。
「ちょっ、もう、しつこいよ華ちゃん」
「だからぁ、そんな連れないこと言わないで。ん?………あ、もしかしてあかりちゃんふとっ「それ以上はホントに怒るよ?」はーい、ごめんなさーい!」
こいつ、よりによって男友達の前で、何言おうとしてるんだ、危うく素が出たじゃん。
「ほれ、そこのロリ二人、HR始めっからおとなしくしてろ~」
「「はーい」」
むぅ、華ちゃんのせいで先生に注意されたじゃん。
拓君は笑ってるし、私根に持つタイプ何だからね?前世から。
その後時間が経って、お昼休みになって私がいつも通り、二年生の教室に向かおうとすると、華ちゃんが話し掛けてきた。
「あ、あかりちゃんいつもの?」
そう言って、私の持ってる物を見る華ちゃん。
心なしか、ニヤついてるのが苛つく。
「うん、先輩私が渡さないと、惣菜パンとコーヒーしか飲まないし」
「健気な妹だねぇ、先輩が羨ましいよ」
そう言って話に参加する拓君、何で彼女とか奥さんとかより先に、妹が出てくるんだろう、謎だよ。
「あら?妹キャラが好きなの?」
「いや、そうじゃなくて、
そんな感じで話に盛り上がる二人に、一声掛けて私は二年生の教室に向かった。
「じゃあ私行くね」
「「行ってらっしゃ~い」」
………………むぅ、何でニヤニヤしてたのよ二人とも、納得いかない。
私は
「ひゃ!?」
び、びっくりしたぁ、白雪先輩か、考え事してた時に話し掛けられたから驚いたよ。
「どうしたの?そこ男子トイレだよ?」
「え?………………あ!?ごめんなさーい!」
慌てて周りを見ると私が居る所は、二年生の階の男子トイレの入り口前だった。
周りの先輩達が、心配そうに見てるのが凄く恥ずかしい。
「うぅ、白雪先輩~」
涙目の私が白雪先輩に突撃すると、先輩が抱き締めて頭を撫でてくれた。
うぅ、前世は何て恵まれてたんだ、こんなに良い人が幼馴染だったなんて、前世では考えられなかったよぉ。
「あはははは、よしよし、今日もキンちゃんにお弁当作って来たんでしょ?一緒にキンちゃんの所行こ?」
「ありがとうございます先輩。」
結構な速度で抱き付いたのに、嫌な雰囲気を出さないで優しく背中を叩いてくれる白雪先輩の優しさに、不覚にも胸がときめく。
前世の幼馴染が女神過ぎて、そっちの気が無いのに私、惚れちゃいそう。
「あかりちゃんは今日は何作ってきたの?」
二人で教室まで歩きながら、今日の献立のお話をする。
毎日、学校がある日の前日に、次の日のお昼の献立をメールで連絡するから、私も先輩も何作ってきたのか知ってるけど、大まかにしかメールしないから、その日のお昼のお楽しみになってるのだ。
「筑前煮と、から揚げ作ってきました」
「朝から煮物大変よねぇ、あかりちゃんは妹と二人暮らしだから、尚更だし。」
そう言って頭を撫でてくれる先輩に、ちょっと恥ずかしくなりつつ、先輩が作ってきたお弁当を聞く。
「先輩は何作ってきたんですか?」
「私は卵焼きと、きのこの炊き込みご飯に、茶碗蒸しと、デザートの和菓子、簡単なのだけどね?」
え、スゴ!?
手間が掛かるものが多いし、何が凄いって和菓子だよ、和菓子!!
和菓子って、作る物によるけど、スッゴい手間と時間が掛かる料理なのに、朝から準備じゃ絶対間に合わないよ、前日から下準備しても、先輩私より朝時間無いのに、凄いなぁ。
「先輩、いつも手が込んでて、凄いなぁ。私なんて作れるものが少なくて、あんまり出来も良くないし」
これでもインスタントしか出来ない前世より、かなり頑張った方何だけどね。
お母さんが武術とかより、嫁入り修行の方が大事って言うタイプだったから、今も休日実家に帰ると、家事の勉強が待ってるし。
「そんな事無いわよ、
うぅ、ヤバイ、白雪さんが女神過ぎる。
「うぅ、私、白雪先輩の妹になる~」
「ちょっと、いきなり抱き付かないで。もう、仕方無いわねぇ」
「むふふ、白雪先輩おっきいですよねぇ。幸せ~」
前世から思ってたけど、ホントにおっきいよなぁ、どうやったらここまでおっきくなるんだ。
毎日牛乳飲んでるし、強襲科で運動もしてるのに、全然おっきくならない。自分のと比べて、あまりの戦力差に涙目になってくる。巨乳なんて滅べば良いんだ、白雪先輩とお母さん以外の巨乳は敵だ!!
「ほら、もう教室着くから、いい加減離れなさい」
白雪先輩器用だよなぁ、抱き付いてるのに、普通に歩けるんだもん。
これも星伽の武術の応用なのかな?
「はーい。遠山先輩、今日も端っこの席で、校庭でも眺めてるんでしょうかね?」
男子にはモテ男ってことで僻まれてて、女子には手が早い下半身男って評価。
他にも色々、本人の事よく知らない人達から、言われてるみたいだし。本人は昼行灯だから、ろくに否定しないんだもん。教室だといつも一人なんだよね、昼行灯。
「そんな皮肉止めなさい。キンちゃんは私達を待っててくれてるのよ?」
むぅ、別に自分の事なんだから、良いと思うんだ。あ、過去の出来事が私の前世と違うから、もう別人なのかな?よく分かんない。
取り敢えず頷いとこ。
「分かれば良いんだよ」
白雪先輩はそう言って、ドアの前で軽く身嗜み整えた後、教室に突入する。私も真似して軽く身嗜み整えた後、お弁当持って教室に入る。
「えっと、失礼します」
「キンちゃーん、お弁当持ってきたよ~」
二人して入ると、中の喧騒が一瞬静まり返る。
うぅ………はぁ、いつまで経ってもこれは馴れないなぁ。何か悪い事したみたいで辛い。
で、話し掛けられた
「お前ら、よく毎日飽きないよな。ここじゃあれだ、屋上行くぞ」
何て言って、ろくにこっちを見ることもなく、てくてく歩いてく始末。ここまで酷い男は珍しいんじゃ無かろうか。
クラスの人も、あいつ何言ってんだ、みたいな反応だし。この昼行灯、ホントにあのお兄さんの弟なのだろうか、ちょっと前世が恥ずかしくなってきた。
まぁ、私達の事庇ってくれてるんだけどね。不器用過ぎるよ、ホント。
「あ、待ってよキンちゃん!」
「失礼しました………待ってくださいよ、センパーイ」
上級生のクラスだから、出るときに一礼して、私達も急いで後を追う。
「あいつ、女の子が弁当作ってきてくれるのに、何だよあの態度」「つうか、人としてどうよ、親切には親切で返せって、親に習わんのかね」「私、あいつのくれるのが当たり前みたいな態度、大っ嫌い!」「「「「分かる~!!」」」」「つうかアイツキモくね?」「だよねだよね、いつもスカした態度でさ」「禿げ同だわ、マジでムカツク!」
扉をしめた後直ぐに聞こえてきた声に、一瞬視界が真っ白になった。
クラスメイトを群れて虐めるお前らも、存外に大概だけどな、虐めは駄目だって親に習わんのかね?
「ッ!?………ッッッ!!」
ほら、白雪先輩も顔が強張ってる、手なんて指先白くなるまで強く握り締めてるし、毎日こんな感じ何だもん、学校嫌になっちゃいそう。
「速く行きましょうよ、白雪先輩」
私はいつも通り、後ろの声にも、白雪先輩の事にも気付かないふりで、笑って白雪先輩を急かす。
「………………うん、そうだね」
二人で昼行灯を追い掛けて、屋上に行く。
武偵中の屋上は、入り口のカギが壊れてて、縁を腰ぐらいの高さの柵で囲まれただけの、何も無いだだっ広い空間。
屋上ではもう、予め持っていたのか、小さめのブルーシート敷いて、端の方に陣取ってる昼行灯が居た。
「どうした、白雪、どこか悪いのか?」
何て言って、さっきの時とは違って気遣うもんだから、白雪先輩が態度を良くするんだよね。これが惚れた弱みなのかなぁって、思います。
「だ、大丈夫だよ、私は元気だから、気にしないで?」
「そっか、悪い所あったら直ぐ言えよ?」
「うん、ありがと、キンちゃん」
空気が甘ったるい、何これ、無性に緑茶が飲みたい。でも飲んだら死んじゃうんだよね、私。
昔、お母さんが遠足の水筒の中身を、ののかの水筒と間違ってお茶を容れた事が有るんだけど、その時病院に運ばれて、お医者さんに調べてもらったんだ。
私は一日に250㎎のカフェインで危険域らしい。
普通の人はちょっと寝付きが悪くなるレベルでも、私には致死量だ。この体質のせいで、私は一族の技の継承権が、ののかより低い。
一子相伝の、長女が覚える等の技は、私の変わりにののかが覚える事になってる。
ま、私としてはののかには申し訳無いけど、変な癖が付く前に、この事が分かって良かったと思うよ、自分の訓練が出来るし、お料理とか、勉強とか。
それに、脳内処理速度とか、リミッター制御とか、この体質でのメリットは沢山あるんだから、これぐらいへっちゃらだよ。
「これ、私のお弁当何だよ、きのこの炊き込みご飯と、卵焼きと、こっちが茶碗蒸し。デザートも有るからね」
「ん、どれも旨そうだな。いつもありがとな、白雪」
「ううん、私は良いの、好きでやってるから、あかりちゃんのお弁当も美味しそうなの揃ってるんだよ……………あかりちゃん?」
あ、うっかり考え事してた、この身体になってから、脳内処理速度に任せて、ついつい考え事する癖が付いちゃってる。
まぁ、前世の記憶持ち何て子供何だから、周りに馴染めなくて、いつも一人で遊ぶか、ののかと遊ぶかの二択だっただけ、なんだけどね。
「どうした、あかり、具合でも悪いのか?」
気付いたら昼行灯の顔が目と鼻の先にあって、驚いて後ろに飛び退く。
!!?!!!?
「ん...熱は無いな」
「な、なななななにしてんですか!!」
この昼行灯、いきなり乙女のおでこに自分のおでこくっつけるとか、私を殺す気か!!
「何だよ、元気じゃん」
「もう、キンちゃん!そういうのは家族だけにしなさいって、言ってるのにぃ!!」
そうだそうだ!そういうことばっかりやってるから、勘違いばっかするんだよ!!
私と白雪先輩の為にも、少しは自重しろぉ!
…………は!?
いや、この私と白雪先輩ってのは、決してライバルが増えるからとかじゃなくて、学校生活が辛くなるっていう、れっきとした理由がですね!?
「あかりは、俺の恩人だ、つまり俺の大事な人だ、だから家族と同じ扱いして、何が悪い」
…………………////////ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛、もう!!
この昼行灯、何でこんな殺し文句ばっかり言うんだよ!!
「殺し文句の生き字引ですか貴方は」
二人に聞こえない声で小さく一言呟いて、お弁当を広げる。
昼行灯は聞こえなかったみたい……………良かったぁ。
「ん?から揚げと筑前煮か、旨そうじゃないか。あかり、いつもありがとうな!」
くそう、こいつの笑顔がマジで眩しい、なまじお兄さんに似てるから、勘違いしそうになる。落ち着け私、こいつは私の前世よ?ろくな男じゃ無いわよ!!
「別に、私達が作らなきゃ、片寄った物しか食べない遠山先輩が悪いんです。他意は無いですから!」
そう言って筑前煮を摘まむ。
………ん、もうちょい濃い方が昼行灯の好みかな?……は!?私は今一体何を考えて!!?
「ん、二人とも旨いよ、ホント。学校にはこのために来てるようなもんだ」
そう言って美味しそうにお弁当食べる昼行灯に、何か、クラっとする。落ち着け私ぃ!!この昼行灯は、金一お兄さんじゃないからね!!
「キンちゃん、私、キンちゃんにそう言ってもらって嬉しい!!」
何か白雪先輩が、嬉しさの余りトリップしてるけど、時間は有限なので無視して食べる。
…………うぅ、やっぱり白雪先輩の方が美味しい。何か悔しいなぁ、もっと練習しなきゃ。
「おい、あかり」
やっぱりお塩とかの使い方からして、違うのかな?何て考えてたら、昼行灯に話し掛けられた。
「ん、何です?」
「付いてるぞ」
そう言って頬っぺたに付いてたキノコを取って、パクっと食べる昼行灯………こいつはいつもこうなのか?こうだったな、そういえば。前世からこんなことばっかりしてたわ、私も。
「どうした、いきなり赤くなって、やっぱり体調が「大丈夫です!!」そ、そうか」
恥ずかしくて思わずおっきい声出して、ご飯を掻き込む。
やられる側になって、始めて分かった。これされるのメチャクチャ恥ずかしい。相手が異性だと尚更だ。こんなんされたら、そりゃ落ちるよ、我ながら見た目は、お兄さんに似て結構なイケメンだし...........むぅ。
「ふぅ、食べた食べた、 御馳走様二人とも。」
雑談しながら食べてたら、直ぐにお昼ご飯が無くなっちゃった。未だお昼休み半分以上有るんだよねぇ。
「デザート有るから、ちょっと待っててね、キンちゃんあかりちゃん」
未だHRまで時間は余裕あるし、デザートの時間はあるな、やったー!!あ、お茶出さなきゃ、今日はお母さんが玉露送ってくれたから、水筒に容れて持ってきたんだった。
「私お茶を持ってきたんで、どうぞ」
「お、ありがとな」
「ありがとうね、あかりちゃん」
二人に紙コップ配って、お茶を注ぐ。
今更だけど、やっぱり中学でこれするのは、やり過ぎだよね。
いや、義務教育なのに、給食は食堂に行って受けとる方式っていう、この学校がおかしいんだけどね。任意だから、私達みたいにお弁当オッケーだし。
生徒の自主性とか自立云々って言ってるけど、そんな事やってるからPTAを敵に回すんだよ。
HR前に家に帰ってもお咎め無しだし、担任が朝に、今日はめんどいからHRなし、何て言う日もあるんだから、この学校は教育機関として間違ってるんです。
…………武偵育成って意味では、間違って無いかもだけどね。
「はい、
え、何この量。お昼ご飯と同じ位の量が有るんだけど、流石にこの量はちょっとぉ……ん?この金鍔、色が違う?
「あ、気付いた?普通の小倉あんだけじゃなくて、他のあんも使ってみたの。」
凄い、粒とコシは勿論うぐいすや白あんもある、こんなに手が込んでるなんて、白雪先輩がちょっと眩し過ぎるよ。
「お、どれも旨いな、お茶にも合うし、兄さんにも放課後届けるか」
何て良いながら、パクパク食べてる昼行灯の言葉に、そういえばと思う。
未だお兄さんは『イ・ウー』に入って無いんだよね。
昼行灯が高校一年の時にシージャックが起こるから、私が中学三年の時か。少なくても二年の間に、私はお兄さんと、カナと闘えるように成らなきゃダメか。
お兄さんが居なくなるのは、例えもう、無関係な存在になったとしても、絶対にヤダ。
それと、昼行灯がそのせいで暗くなるのは、何かムカツク。
「あかり、お前、やっぱり調子悪いだろ。全然食べてないじゃないか」
口をモグモグさせながら、喋らないで下さい。それと………………乙女の食事事情は、地雷の宝庫よ、バカ!!
こうなったらやけ食いよ、全部食べてやる!
「遠山先輩、これ食べた後覚えといて下さいよ」
小さく一言呟いて金鍔をパクつく。
全部1つずつ食べて、お茶をゆっくりと飲む。少しなら体調に直ぐに出るような問題はないし、和菓子にはやっぱりお茶が一番合うからね……………むふぅ、どれも美味しいなぁ。白あんも捨てがたいけど、うぐいすも良いなぁ。
けど、カボチャあん、お前がナンバーワンだ!!
美味しい、カボチャあんが美味し過ぎる。あ、ちょっと昼行灯、私のカボチャあん取らないでよ!?
「えっと、キンちゃん、女の子には色々有るんだよ?それより、金鍔どれが一番美味しい?」
あ、白雪先輩、別に女の子の日じゃないです。私のは重すぎるので、その日は登校出来ないですし。
「ん?そうなのか?金鍔はこの黄色いのが良いな、甘さが丁度良い」
ん?昼行灯はカボチャあんが好きなんだ、何か子供っぽいなこの人。いや、私もそれが好きだけどさ。
「私も、カボチャあんが一番好きです。他も美味しいんですけど、後引く感じがあって、後お茶に合うんですよね」
私の感想に、昼行灯が頷いてる。何か微妙な気持ちだよ。
「ふふ、二人ともカボチャあんね、今度作る時に参考にするから、ありがとうね」
そう言って笑う白雪先輩、何この女神、前世で機関銃ぶん回してた人と同じ人とか、考えたくないよ。
……………どうしてああなった!!
三人で談笑してるとHR開始の予令がなった。もう五分前らしい。
「あ、もうそんな時間か、教室戻らないとな」
そう言って寂しそうに笑う昼行灯に、白雪先輩が不安そうに質問する。
「そうだね………………………ねぇキンちゃん、学校楽しい?」
「ん?楽しいぞ、二人と会えるからな」
……………頬っぺた掻いて視線を逸らしてる、嘘ついてるな、昼行灯。
「遠山先輩、私達以外で、楽しいことってあるんですか?」
「それは……………良いだろ、別に、俺は今に満足してる」
不機嫌そうに顔を背けた、これも嘘だ。
昼行灯のバカ、変な所で気い遣って、また一人で背負い込むの?
「そっか、キンちゃんが良いなら、私は何も言わないよ」
また周りが気い遣ってる、こんなのって無いじゃん。お互いが気を遣って、お互いが我慢して、お互いが損してる。何か、ヤダ。
「ほら、二人とも、もう遅刻確定だからさ、ここでサボっちゃおうぜ、何ならこのまま訓練でもするか?」
ホント、バカ……………バカキンジ
どうしよ、一晩で出来たとか、言えない。
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私 本気になっても、良いですか?
「じゃあ、行きますよ?遠山先輩!!」
そう言って昼行灯に向かって飛び掛かる。
「聞いといて返事聞く気無しかよ!?」
く、逃げるなぁ!!
「ええい往生際が悪いですよ!!」
「るっさいわ!下負けしてたまるかぁ!!」
そんなこと行って、鬼ごっこしてる私達を強襲科の先生が怒鳴る。
「真面目にやれや遠山ぁ!!負けたら今日の掃除はお前だからなぁ!!」
「クソが!当番制じゃなかったのかよ!?」
おもっきし暴言を吐き捨てた後、ヤケ糞気味に私と相対する昼行灯。この昼行灯が私の今の格好を、直視出来ないのは理解してる。だけど、舐められてちゃムカツクのが人ってもんでしょう!!?
「往生してください!!」
そう言って
「ええい、こうなりゃヤケだ……覚悟してもらうよ、お嬢さん?」
ムカ、この昼行灯、私で
死ね、そんで生き返って、もう一回死ねぇ!!
「動きが直線的だよ、冷静にならなきゃ、お嬢さん?」
「先輩のバカ、ロリコンじゃないと思ってたのに!!」
「なっ!?」
フッ、隙を作るなど造作も無いわ!
「隙あり!!」
体操着を掴んで、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばそうとした瞬間、手応えがいきなり軽くなる。
「惜しかったね、そら!」
意表を突かれて、動きが一瞬止まった私に、先輩が後ろから足払いをしてきた。
「きゃっ!?」
慌てて転がるようにして距離を取るも、
「はい、僕の勝ちだよ、大丈夫かい?」
立ち上がろうとして、首筋に訓練用のゴムナイフを突き付けてきた先輩に、その場で座り込んで大人しく降参する。
昼行灯を睨み付けながら、私は女の子座りの状態を、昼行灯の手を引っ張って立ち上がる。
むぅ。
あの里のオッサンども、小中までなら、赤ちゃんとかそのレベルの扱いと同じだから、悪意無くセクハラしてくるの止めて欲しい。
「怪我は無いかい?」
「大丈夫です、組手ありがとうございました」
一応、戦兄妹だから、敬意を払わないとダメなんだけど、何かムカツクから、言葉遣いだけ敬語で通す。
「いや、こっちもあかりちゃんと出来て良かったよ。いつもは、してもらってばかりだからね」
おいこら、誤解を生む言い方止めい!周りが勘違いするでしょ!?
「え、いつもしてもらってるって、何を?」「そりゃナニだろ、死ねば良いのにモテ男。ケッ‼」「あんなロリ体形の子まで守備範囲とか」「アイツホントに女なら誰でも良いのか?」「何でそんな奴がモテんだよ、死ね!!」
ほら、勘違いされてる。今ヒステリアモード何だから、多分気付いてるでしょ?
「あかりちゃん、次は仮想訓練しよっか」
あ、ちょっと、いきなり腕掴んで行かないでよ!
「ちょっ先輩、どうしたんですか?」
大方、私に話し声が聞こえないようにだろうけど、私聞こえちゃってるんだよ~。
「ん、あかりちゃんは考えるの得意だし、組手より仮想訓練の方が、経験値になるかなって、嫌だったかな?」
キザッたらしく言ってくるなぁ、もう!
何か嫌な気分じゃないのが、一番ムカツク!!
私は金一お兄さん派だ!断じて昼行灯ではない!!
昼行灯を金一お兄さんに重ねたせいで苛立ったのを、深呼吸をして落ち着ける……………よし、落ち着いてきた。
「いえ、大丈夫です。私のために、ありがとうございます、先輩!」
そっちがその気ならこっちも、思いっきりやってやろうじゃないか!
対年上異性用轟沈モード二『セーンパイ、大好きです!』モード発動!!
「!!………嫌じゃないみたいで良かったよ、じゃあ速く四階に行こっか、時間は有限だしね」
ニコニコ笑うんじゃないわよ、お兄さんと被って見えるでしょ!?
う、ヤバイ落ち着け私、こんなに早く撃墜されるとか、許されないわ!
「私は、先輩となら、ずっと二人っきりでも、良いですよ?」
首を傾げて、ニコニコ笑う、ちょっと上目遣いするのがポイントォ!!
この時、少し目を潤ませていると、効果倍増!!
よし、ヒステリアモードの気配が強まった、これなら、少しずつギアを上げても、平気そうね。
仮想訓練で、仕返ししてやるんだから!!
「嬉しいこと言ってくれるね、そんなこと言われると、サービスしたくなっちゃうよ」
サービスとか、嫌な予感バリバリですがなキャーコワイオソワレルー
っていうか、昼行灯理性大丈夫なのだろうか?思いっきり削りに行ってる身としては、ちょっと心配何だけど。
「サービスって、何です?」
常に笑顔を絶さない、作り笑いと思われない、相槌は、常に相手の味方であるべし。お母さんの教えだよ!
「未だ秘密だよ、ほら、もう着いた。最初はここの部屋から使って行こうか」
そう言って、水難事故の部屋に入ってく昼行灯。
この仮想訓練施設は、シミュレーションした空間をある程度再現し、その空間で参加者が決めた状況にそって、訓練をすることを、目的としている部屋。
で、昼行灯が今入ったのは、水難事故が発生して、沈没しかけてる船の中って構造の部屋。
訓練棟の殆んどを使って、造られているのが、仮想訓練施設。入り口は他にも沢山あるし、同じ部屋を合同で使うこともある。
「失礼しまーす」
前世でも入ったことあるけど、今世では初めて、ちょっとドキドキしますねぇ。ま、一緒に入るのは昼行灯なんだけど。
………あれ?急にドキドキ感が無くなった。
「じゃあ始めようか、最初の設定はそうだね、船に取り残された人の救助、かな。人数は秘密、救助するのはダミーの人形。時間は十五分、範囲は下層階一帯で、出来るかな?」
む、中々難しい、ってかその難易度中学生には無理でしょ!?
「む、難しく無いですか?それ」
そう言って、訓練内容を変えようと頑張ってみる。
あ、何か昼行灯こっち来た、嫌な予感するんだけど?
「あかり、俺はお前の全力がみたいんだ、頼むよ」
あ…………………………………分かりました、先輩。
「はぁい、先輩の為なら私、何でも出来ますよ?」
何か、喋ってる私と考えてる私が別々にみえる、意識が薄い、何これ?
あぁでも、悪い気分じゃないなぁ、ずっと浸ってたい気持ちがある。
「ありがとうあかり、俺が心を許せるのは、君だけだよ」
あぁ、先輩に耳元で囁かれたら、何か気持ちよく、いしき………が……………たも……て……………………ない
「パーフェクトだよ、あかりちゃん」
気が付くと、何故か昼行灯が拍手してた。
周りを見ると、近くにある大量のダミー人形、進んでる時計。部屋の中は、見える範囲は少し荒れた程度。銃の重さから、発砲はしてない。ナイフは使った形跡あり。服は何故かブルマの上から、昼行灯のブレザーを掛けられてる、髪が少し濡れてる。
………………………………
「先輩!!私に何かしたでしょ!!?」
「ん?何かって何だい?」
!!?!?!?
あくまでも知らぬふりで通すつもりの昼行灯に、恥ずかしさとか悔しさとか怒りがごちゃ混ぜになって、爆発する。
こ、のぉ、ド変態!!!!!!!!!
しらばっくれるなぁ!!
「え、いや、ちょっと、あかりちゃん?何をするつもり」
「問答無用!!変態!変態!ド変態!!」
両手でベレッタ90‐Tow TypeFを持ってフルオートで撃ちまくる。本来はフルオート出来ないけど華ちゃんにマガジンと一緒に改造してもらったんだよ!!
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ええい、逃げるなぁ!
私に催眠術使って何したのよ!!一片死んで来なさい!!!
「誤解だ!あかりが変に隠すのが悪いんだよ!!」
む、私が実力を隠してるのが気に食わないと?
なら、こうよ!
リロードして、今度はバラ撒かずに、本気で昼行灯に狙いを付ける。
「だったら、今ここで魅せてあげますよ、先っ輩!!」
感情の高ぶりで発動。発動キーは怒り、時間は五分。掛かり具合は二割って所。もう、キレた、催眠解けた時、すっごく怖かったんだから、思いしれぇ!!
「な!?うぉぉぉぉぉおおおお!!!」
ええい、しぶとい奴め、さっさと怪我して記憶消せぇ!
どうせ、恥ずかしいことしたんでしょ私!?前世の自分に誘惑したんでしょ!!しかも本気で!!!一生の恥じよ!!
だから、記憶を消してやる!!!
「いい加減、記憶喪失しやがれですぅ!!」
「ふざけんなぁ!!!」
何この人、何でヒステリアモードに入ってんの!?まさかアゴニザンテ?この状態がアゴニザンテの発動条件を満たしたと?…………………そんなに、私のこと信用出来ないの?頭の中で何かが切れる音を聞いて、思考が止まらなくなった。ただ、
毎日甲斐甲斐しく、通い妻よろしく、白雪先輩とお弁当作ったり、女の子から守ったり、女の子の体の事教えてあげてるのは誰よ!!
「先輩。そんなに私が信用出来ないの?そう、なら、うふ、うふふふ、うふふふふふふふふふふふふふふ」
「落ち着け、あかりちゃん!落ち着くんだ!!」
何か昼行灯が言ってるけど、無視よ無視。こうなりゃヤケだ、お父さんに言って、任務出してもらおう。
里に呼び出すの、一週間以上欲しいなぁ。
どうせ貰い手は白雪先輩位でしょ?なら、私の男避けにもなってもらおう、セーンパイ♪満面の笑みを浮かべて、昼行灯を見る。
「セーンパイ♪ちょっとオイタが過ぎますよ?怪我しても、看病してあげます。ぜーんぶお世話したあげます。ずっとずっと、先輩が死んだ後も、先輩の事をお世話します。先輩が他の人にいっても、良いですよ?私は許します。だって先輩はモテるんですもん、私としては鼻が高いです。私の先輩が、皆から認められるんですから。でも、何で私を信用してくれないんですか?私が先輩を殺すと!思ったんですか!!」
目の端に溜まってるのは汗だ、塩分だ。こいつなんかに泣いてやるものか。
「!?!!!?……………………くっ、おぉりゃぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
な、何で無理矢理突破しようとするの!!?こいつ、ホントに怪我じゃすまないよ!!ええい、器用に頭周辺だけは無傷だし、私が狙ってないのもあるけど、何なのよホントにぃ!!
「止まってよ!どうして!?止めて!!」
視界が何故か歪んできてるけど、汗が目に入ったんだ、そうに決まってる。
「止まらない、絶対に!!」
あ、あぁ、何で目の前に居るの?
「どうして…………………きゃっ!?」
なんで、抱き締めてくるの?私、何で安心してるの?相手は前世の私よ?何でされるがままなの?
「大丈夫だあかり、俺はずっとお前の側に居る。安心しろ、お前のこと見捨てたりなんか、絶対にしない。だから、俺を許してくれよ」
なんで私、もっと言って欲しい何て想ってるの?どうして私、こんなに胸が苦しいの?
「…………もっと」
無意識に口から出た言葉に、自分が一番驚いてる。私何言ってるの?
「ん?」
ほら、
「もっと言って下さい、先輩」
何で、そんな声出してるのよ、それじゃあまるでキンジに!!
「分かったよ、ずっと側に居てくれ、あかり」
あ、…………………もうだめだ、嘘付けないや。
「ギュッとしてください。先輩」
「あぁ、良いよ、あかり。」
私の言った様に、優しく抱き締めてくれるキンジに、私も腕を回して抱き付く、思いっきり抱き付く。
「私、重いですよ?」
「あかりは重くなんか無いよ、俺には丁度良い」
何でこう、欲しい言葉を言ってくれるんだろう、もう毒だよこれは、女の子をダメにする毒。
「先輩、誰にでもこうなんですか?」
私が一番知ってるじゃん、何言ってんのよ、バカ。
「あかりにだけだ」
ほら、キンジはこういう男何だもん、そう言うに決まってる…………………何で嬉しくなってるんだろ、ホント、バカだなぁ。
「男の人は皆そう言うんですよ?」
もっと言って欲しいなら、素直に言いなさいよ、意地悪したらキンジ困るじゃん。
「なら、どうしたら認めてくれる?」
キンジも意地悪、そりゃそうか、中身同じ何だもん。
「私の里に来てください、それで認めます」
何言ってんだろ、キンジを里に呼んで、何するのよ。
うぅ、想像したら恥ずかしくなってきた。絶対に顔真っ赤だ。見られたくないから、キンジの胸に押し付ける。
私、前世でこんな匂いだったんだ、安心する匂いだなぁ。ずっとこのままが良いな。
「良いよ、二人っきりで行こうか。挨拶もしないとね」
!?!!!?!?!!!?!?!!!!???!!!?!
つ、つまり、それは、その、あの、で、でも!!準備が出来てないし、その、そういうのはもっと、大きくなってからって、だから、えっと…………………………うぅ、頭痛い…………
「な、大丈夫か、あかり!おい!!」
最後に聞こえたのは、キンジの焦った声だった。
何か主人公じゃなくて、もうこれヒロイン何だよなぁ、どうすっか( ̄0 ̄;)
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覚悟完了です
おかげでプロット全部やり直しだぜ、チクショウ(;´_ゝ`)
あの後、倒れた私を救護科まで運んでくれて、目を覚ますまで、この昼行灯ことキンジは、ずっと傍に居てくれたらしい。
……………何だろ、無償に恥ずかしいな。
「先輩?」
取り敢えず、あんな殺し文句連発して、私のこと落としたキンジに、文句を言おう。そうしよう。
「ん、どうした?」
文句言おうとしたのに、キンジの顔みたら全然出てこない。何これ、見てるだけでポカポカしてくるんだけど、これがホレた弱みってやつ?白雪先輩、いつもこんな思いしてたの?
でもこれ、何かで感じたことあるんだよね、何だろう?
「いえ、何でもないです」
保健室は今、私とキンジの二人っきり、今私が言えば、キンジはどこまでしてくれるだろう?……………は!?落ち着きなさい私!!いくら前世より感情の制御が出来ないからって、何考えてんのよ!!?
「やっぱり、どこか悪いんじゃないのか?」
はう、心配してくるキンジの顔見てたら、何か苦しくなってきた、顔が真っ赤になるのが分かるよ。
「大丈夫ですよ、救護科の先輩も言ってたじゃないですか、過度の心理的ショックによる、キャパオーバーで気絶って」
「そんな人間滅多に居ないとも言ってただろ、バカ。今日は家まで送るからな、戦兄命令だ」
な、ダメ!それは、心の準備が!!
ど、どうしよう、このままキンジと一緒に帰るとか、メチャクチャ恥ずかしい!!学校の友達に見られたらヤダ無理死んじゃう!!!
うぅ、どうすれば良いのよぉ。私がこれから起こる下校の羞恥に頭を抱えてると、携帯から某特殊部隊のBGMが流れ始めた。
ん?こんな時間に誰だろ。
「あかり電話きてるぞ」
そう言って、私のブレザーから、携帯渡してくれるキンジ。携帯受けとる時に、ちょっと手が当たってビックリしたのは、絶対に内緒だ。
「あ、ありがとうございます」
あ、ののかからだ、どうしたんだろ?
「もしもし、ののか?」
「お姉ちゃん今どこ!?」
ひゃ!?
「えっと、学校だけど」
「それなら連絡してよ!!今日から私、家の修業があってアパートに戻れないんだから、夕方頃に連絡してって言ったじゃん。今七時だよ!!?」
え、嘘!?
急いで確認すると、時計は七時五分を指してた。
ホントにそんな時間だったんだ。
うぅ、すっかり忘れてたや、ののかとの電話。
「ごめんねののか。お姉ちゃんちょっと今、保健室に居て、時間確認出来なかったの」
この学校、救護科の治療室と病室は、時計置かない様にしてるの。武偵は色んなトラウマ持ちが居るから、それ対策らしいけど。私よく分かんないや。
「え、何かあったの!?怪我は!!!」
ののか、声おっきいよ、キンジが呆れてるって。うぅ、恥ずかし過ぎる。
「大丈夫だよ、ちょっと訓練で擦りむいただけだから、平気平気」
「むぅ。なら良いけど、とにかく!私が戻る三日後まで、アパートにお姉ちゃんしか居ないんだから、気を付けてよ!?」
何に気を付ければ良いのさ、分かったけど。ののかは心配性だよ。
「大丈夫だって、お姉ちゃん信じなさい!」
「………分かった、それじゃ切るね。お休みなさい、お姉ちゃん」
む、随分不服そうじゃない、私だって一人暮し位、出来るもん、安心してよ!
「うん、お休みののか」
「意外だな、前に会った時は、もっと大人しい子だと思ってたぞ、ののかちゃんは」
そう言えばキンジは、ののかに一回会ってたっけ、一月位前に。
「む、ののかは大人しいよ?ただ、ちょっと私の事になると、過保護なだけで」
「確かに過保護だな、どっちがお姉ちゃんだか、これじゃ分からん」
うにゃ!?
乱暴に頭撫でないでよ、恥ずかしいから止めて!!
「ちょっと先輩、恥ずかしいから、止めて下さい!」
「ん?誰も見てないだろ、何恥ずかしがってんだ」
キンジが見てるじゃん!!
この昼行灯!女たらし!根暗!
「ぶ~、私は恥ずかしいんですぅ」
「何言ってんだか、それよりもうこんな時間だし、一回歩いてみろ」
ふぇ?
いきなり何言ってんだろ、歩けば良いの?しょうがないなぁ。そんなに私のブルマ姿が気に入ったの?キンジも中学生だったって訳ですか。思わずにやけるのを抑えられなくて、だらしなく笑う。
「何ニヤけてんだよ、速くしろ」
もう、そんな急かさなくても良いじゃん。こっちは体調不良だっていうのに。
「よっと、これで良いんですか?」
何で私に歩かせるのかな?あれかな?まだ着替えてないから、ブルマでも見たかったのかな?それなら言ってくれれば、今じゃなくても着替えるのに………って私!?何でもう、そこまで落ちてるのよ!!
って、あれ?
考え事で足下が覚束ないみたいで、躓いて転んじゃった。
「おっと、やっぱり未だ難しいか。しゃあない、一人で着替えられるか?何なら未だ、白雪残ってるだろうし、白雪に手伝ってもらっても良いんだぞ?」
で、それをキンジに受け止められて、頭真っ白になっちゃってる。冷静なのは、脳が疲れて、パニックになるほど元気が無かったんだね、パニックは体力とか、精神的にも結構疲れる事だもん。私は程度によるけど、一日三回もパニックになれば、キャパオーバーで気絶。その後は疲れきってて、一日ダウナー状態です。テンションはメッチャ低くなる。
まぁ、それでも……はひぃ、キンジの匂い安心するぅ。何か安心し過ぎて、ボーッとしてきた。
あ、そっか、脳に負担掛かって、一時的に身体機能が低下してるんだ、後半で私が使ったコンボ、今考えると二割で出来る範囲越えてるもん。
多分五割は越えてた、今の私は五割を越える感情の、制御が出来ないから、後半は殆んど暴走状態に近かったんだよね。
……………キンジが
「……一人じゃ無理です。先輩、手伝って下さいよ」
あはは、キンジ困ってる。ゴメンね、暴走させるキンジがいけないんだよ?もう、我慢出来ないもん。
「あ、あぁ、白雪に連絡するから、ちょっと待ってろ」
そう言って携帯を取り出すキンジの腕を、掴んで止める。
「おい、連絡出来ないから離せ」
「やです、白雪先輩じゃなくて、
あ、緊張してるんだ私、手が震えてる。目も少し潤んでるのが分かるよ、度胸無いなぁ。ねぇキンジ、ダメですか?
「!?………ダメだ。疲れてるんだろ、少し落ち着け」
はぁ、中学生の頃に期待しゃダメだったの?
そりゃ、高校に入ってからの方が、女の子の扱いになれるような事が沢山起きたけどさぁ、もうちょっと度胸見せてよ。私が勇気出したのに、バカ。
「………そうですよね、分かりました、我慢します」
「我慢も何も、気の迷いだろ。白雪からメール返ってきた。生徒会の仕事終わったら、直ぐに来るってよ」
こっちを見ないで携帯を見てるキンジ、顔真っ赤だよ?ちょっと嬉しいかも。でも、二人っきりの時に、他の
「白雪先輩にも迷惑になっちゃった。ごめんなさい」
あの人、生徒会長で茶道部と華道部部長だから、毎日最終下校時間ギリギリに学校出てるんだよね。
武偵中は、最終下校時間八時だから、白雪先輩家に着くの九時過ぎだし、そこから朝のお弁当の、下準備とかもあるんだよ?
中学生に無理させ過ぎだって、大変ってレベル越えてるよ。前世の高校でも、同じぐらい忙しかったんだろうなぁ。それなのにあんな邪険に扱っちゃって、あまつさえ厄介者扱い、今世は絶対にそんな事させないよ!!
まぁ、私も迷惑かけちゃってるんだけどね。うぅ、白雪先輩は私の女神様、私がお弁当初めて作ってきた時も、事前に言うの忘れてたのに、すっごく優しくしてくれたし、よく勉強教えてもらってるし、女神様だよ本当に。
「バカ、落ち込むな。白雪はすきでやってるんだから、お前のせいじゃない」
でも、キンジが言えば、白雪先輩どこでも付いてくるじゃん。あの人根がお人好しなのに、キンジに対しては恋の力も絡んでくるんだよ?それはもう、とんでもない位言いなりだよ?まるでキンジが、ご主人様みたいな感じだよ?最初見た時、ホントに驚いたんだから。前世で何で普通に感じてたんだろ、おかしいよ絶対。
「なら私、一人で帰りますよ。白雪先輩は、キンジ先輩と、一緒に帰りたいでしょうし」
そう言ってそっぽ向くと、キンジが呆れて私の顔に手を伸ばす。え、何?怒らせちゃった!?ど、どうしよ、どうすればあやまる?でも何にあやまれば痛い!?何するのよキンジ!女の子にデコピンとか、デリカシー足りてないよ!!
「バカだよなあかりは、バカりだ、バカり」
な!?何その言い方!!こっちは好きでバカになったわけじゃないんだよ!!第一、私がバカになるんならキンジだってバカでしょ!!!
「いきなり、何言うんですか!?もぅ!」
ポカポカキンジの事を殴る。力入んなくて、全然威力が出ないからか、キンジ笑ってるし。
「ほら、しおらしくなってるんじゃなくて、そっちの方があかりだよ。第一、お前の為に来てるのに、お前が一人で帰ったら、俺が白雪に怒られる」
そんな感じに頭を撫でてくるキンジ。うぅ、私が悪いみたいじゃん。バカ。
でも、言い返せない。ってか、殺し文句言われて顔真っ赤だよ、何でこう、恥ずかしいセリフ言えるかなぁ。
「ぐぬぬ、先輩が正論言ってる」
どうやったら、こうまでして的確なタイミングで、殺し文句と正論を飛ばせるのか。天性の女ったらしだよ、女の子の天敵だよ、非リアの理想だよ、キンジのバーカ///
「それよりだ、未だ白雪が来るのに大分時間がある。」
キンジが、部屋の内鍵閉めちゃった。私、もしかしてピンチ?
「何で、俺が撃たれてる時にヒステリアモードになったと分かった?」
ぐ、それは、その、ええとあれだ、えと、どうしよ?
「正直に答えてくれ、あかり、そうしないと俺は、お前と戦わなくちゃならない」
そりゃそうだよ、そんな事分かってるよ!HSSは遠山一族の秘密の一つ、.....何かもう結構広まってるけど、それでも知ってるなら、出所調べないとダメな事位、私でも分かるわ!!
「えと、私のご先祖様分かりますか?」
こうなったら、ご先祖様のせいにして、乗りきるしかない!!
「間宮だろ?...............あぁ、そう言うことか」
ご先祖様の一人に、遠山一族の部下だった人が居る。その人が、子孫に伝えていたって事にすれば、私が知っている事に説明がつくんだよ、やったー!!
「あの状況でヒステリアモードになれるのを知ってるのは、分かった。だけど、死にかけるとヒステリアモードが発動するなんて、俺は知らなかったぞ?」
えっと、それは.....いや、それもご先祖様のせいにしちゃえ。実際ご先祖様、達筆な字でヒステリアモードの事書いてるしね。.....まぁ、秘中の秘とも、書いてるけど。
でもごめんなさいご先祖様、仕方なかったんです。悪気は無かったんです!!
「それは、ご先祖様が巻き物に書いてて、えっと、他にも有るんですけど、聞きます?」
う、怖い顔しないでよぉ、キンジに怒られてるみたいで、泣きそうになる。
「お前のご先祖様、忍びなのに情報漏らし過ぎだろ」
それについては、はい。私も思っている所でして、その、上司が怖かったんだと思うよ?
「いやぁ、私も少し思ったんですけど、個人的な日記みたいな物でしたし。結構雑な感じで、蔵に入っていたんです。正直な話、見る人なんて居ませんし、知ってるのは私だけだと思いますよ?」
「………そうか、今度里に行く時に、見せてくれないか?その巻き物」
ん?そう言う事なら、全然平気だけど、そんなに気になるの?
「分かりました。他のヒステリアモードの事も、話しますね」
あ、生徒手帳出したよ、メモするんだ。何か意外だなぁ、前世だと手帳として、ちゃんと使った記憶が無いからなぁ。
「準備オッケーだ、話してくれ」
「はい。まずヒステリアモードには通常のタイプがあります。ノーマルモードみたいな感じです。これに瀕死の時に発動するハードコアモードと………………」
続き言い辛いよ、これ。
「どうした、言い辛いモードでもあるのか?」
う、不安そうにしないで下さいよ、見てる方が辛いです。
「えっと、奪われた女の人を、奪い返す、モードがあります。それと、そのモードを何度も繰り返すと発動する、複数の女性が傷付けられると、発動するモードがあります。」
あ、やっぱり微妙な顔した。そうだよねぇ、私も聞いてて、どうなんだろうこれって思うもん。何度も女の人を奪い返すって、どうやったらそんな状況になるのよって。
ま、まぁ、でも実際、前世では一度あったし?あるにはあることなのかな?珍しい事では、あるんだろうけどさ。
「後は妄想して一人でなる、春水車ってモードと、賢者みたいに無欲になって、興奮しないモードがあります。最後のは、逆に弱くなるらしいですけど」
そこまで話した後、キンジはメモをとって、一息吐いた。まさか、外部の人間からヒステリアモードについて教えられるとは、思わないよね、しかも年下に。
「ありがとうな、教えてくれて。一応、家に帰って爺ちゃんに聞いてみる。助かったよ、特に最後の二つ」
まぁ、そうだよね、普通聞いたら、強いって思うよね。でもヒステリアモードになれるぐらい、強く妄想するって、実際難しいんだよ?
「力になれたなら、良かったです。私、迷惑ばっかりかけちゃってるから」
俯いて言ったら、頭を撫でられた。
はふぅ、撫でるの下手なのに、何でこんな気持ち良いのかなぁ、凄い安心する。何だろ、お母さんとか、お父さんに撫でられてる感じ。優しい感じがする。
「お前には、いつも助けてもらってるんだから、気にすんな。俺の方こそ、
そりゃそうだよ、私が全力で、当たるかもしれないギリギリの位置を狙ってたんだもん。いきなり動かれれば、そりゃ動いたら、直ぐに対応出来ないから、間に合う頃には、もう大ケガしてるよ?
改め考えると、ホントに無茶なことしてたんだなぁ。暴走してたからとはいえ、殆んど殺人未遂みたいなもんだよ。でも、私が暴走しないのは、感情制御の面からして無理だし………もうキンジに私が暴走しても、受け止めてくれるだけの力がないとダメなんだよね。
里に来たときに、お父さんに頼んで、修業させてもらえないかな?
うん、それが良い、これからどうせ、沢山巻き込まれて戦う事になるんだし、強ければ強い方が、死ぬ確率は下がるんだもん。
私は、キンジが香港で死ぬのを防ぎたい。それにその、キンジと一緒に居たい。傍に居るだけで良いから、選ばれなくても良いから、キンジの事を近くで見ていたい。
私は、金一お兄さん派だからね、傍で見られるだけで満足だよ。
あかりちゃんはメインヒロイン、異論は受け付けない。
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過保護なおにいちゃん!おねえちゃん!!
キンジにヒステリアモードの種類を解説した後、直ぐに白雪先輩がきた。
「あれ?カギ掛かってる。キンちゃん?中に居るの?」
「あぁ、ゴメン今開ける」
「カギ何か閉めて、何してたの?キンちゃん」
急いでカギを開けたキンジを、ジト目で見る白雪先輩。浮気を疑ってる彼女みたいだ、私当事者だけど。
「いや、ちょっと説教しててな。あかり、無茶したの全然反省しなくてな」
な!?
矛先を私に向けないでくださいよ!!
げ!?白雪先輩がこっちを見て、黒くなってる!!
えっと、言い訳をしないと、でもこれどうやって言い訳すれば良いの?分かんないよ!!
「私のこれは、その、仕方無いと言うか、避けて通れないと言うか、あの、えっと、だから..........大丈夫です!!」
大丈夫って言ったのに、何でキンジは呆れてるの?
白雪先輩は..........ひぇ!?何か黒いオーラ出てるぅ!!?
「白雪からも、言ってくれ。こいつ全然反省してないからな」
や!いや!!こんな怖いとか聞いてない!!!何でこんな怒ってるの!!?顔とか怖くて見れないよ!!
「あかりちゃん!」
ビクゥ!!
お、お願いします、せめて両手足で許してぇ!!
怖すぎて思わず、ベットの上で正座しちゃったよ!?
「こんなになるまで頑張って、先輩としては嬉しいけど、あかりちゃんが倒れたら、意味無いんだからね!?」
そう言って、扉の近くから歩いてくる白雪先輩。怖くて見られないから、俯いてると、いきなり温かいものに抱き締められる。
「私、あかりちゃんが倒れたって聞いて、すごく心配したんだよ!?キンちゃん詳しい事メールしてくれないんだもん。怪我してたらどうしようとか、傷跡残ったらどうしようとか。私ね、あかりちゃんが傷付いたら、めちゃめちゃ不安定になるらしいの、生徒会の皆に心配されたぐらい.....だから、もう無茶は止めて、ね?お姉ちゃんとの約束!」
あ.....こんなに心配掛けたんだ、私。
目があった白雪先輩は、涙ぐんで鼻を赤くしてた。無理して笑ってるのが分かっちゃう。笑ってるはずなのに、泣いてるみたいで、見てて胸が、罪悪感で締め付けられる。
ごめんなさい白雪先輩、泣かせちゃってごめんなさい。悲しませてごめんなさい。無茶はしないよう、気を付けます。でもまた悲しませちゃったら、ごめんなさい。
「.....ごめんなさい白雪先輩、私、約束したいけど、多分また無茶しちゃいます。」
「おい、あかり、白雪がここまで心配して言ってるのに、それは」
「良いんだよ、キンちゃん。正直なのは良いことだもん。でもね」
ぐっ、痛い、白雪先輩にビンタされたぁ、グスン。
でも、仕方無いか、心配かけちゃってるもんね。
「私、スッゴい怒ってるの。あかりちゃん、私ねあかりちゃんが、無茶しちゃいますって言ったのが、悔しいしはっきり言ってムカツク。」
うぅ、ごめんなさい白雪先輩、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!でも曲げられません、私はキンジが死なない様に、強くなるんです。
金一お兄さんが、『イ・ウー』何かに行かなくて良いように、強くなるんです。だから、無茶はします。暴走もします。
もし白雪先輩に嫌われたって、嫌だけど!!..........割りきります。仕方無かったって思います。だから、ごめんなさい白雪先輩。私は約束出来ません。
「でもそれ以上にね、後輩を助けられない自分に、一番腹が立ってる」
涙流しながら、それだけ言って白雪先輩は、優しく私を抱き締めた。
「白雪..........」
キンジ、ゴメンね。キンジも心配したんだよね、ごめんなさい。
でも、私がやらなくちゃダメだから、この先を知ってる、私しか出来ないから、やるんだよ。だから無茶はすると思う、多分前世と同じ位、無茶な事ばっかり。
「ごめんなさい、白雪先輩、キンジ先輩。ごめんなさい」
「.....さっきのことの変わりに、これだけ約束して、せめて、無茶するなら、私達の手の届く所でね。はい、指切り」
それなら、約束しますよ。キンジがトラブルメーカーだから、基本的にキンジの近くに居るので。
「分かりました、指切りです」
「「指切りげんまん、嘘付いたら針千本のーます、指切った!」」
久しぶりにしたから、ちょっと恥ずかしいな。白雪先輩も、ちょっと居心地悪そうにしてるし、泣いてるの恥ずかしかったのかな?可愛いと思ったけど、すごく。
あ、笑わないでよキンジ、顔赤くなっちゃうでしょ?
「よし、解決したな。じゃあ直ぐに帰るぞ。あかり、急いで着替えろ。もうすぐ最終下校だ」
キンジが見せた腕時計が、午後七時四十分を指してる。
急がなきゃ、校門が閉まっちゃう。この学校、ろくに校内を確認しないで校門閉めるから、取り残される生徒たまに居るんだよね。生徒会の仕事の一つでもあるんだよ、取り残されてる人が居ないかの確認。絶対生徒の仕事じゃないけどね。
「あ、そうだね。じゃあキンちゃん、ちょっと外出てて。直ぐに終わるから」
「別に見られても良い「あかりちゃん?」今直ぐ出ていってくださいキンジ先輩!!」
怖い、一瞬で黒い白雪先輩、略して黒雪先輩になったよ、何でこんな怖いの!?まぁ、キンジをからかったらこうなるよね、知ってたよ。
..........何かホッとした。私、白雪先輩よりスタイル良いって、わけじゃないしね。
「はいはい、分かった分かった」
呆れてるフリしてるけど、キンジ顔赤くなってなかった?もしかして、脈アリ?..........いやいや、いくら私が前世で見境ない種馬野郎だとしても、流石に私の体型で脈アリ何て...どうしよ、心当たりが有りすぎる。
てか、そう言えば今日も、私でヒステリアモードになってたし、私はやっぱり見境ないのかな?むぅ、種馬とか、不名誉が過ぎるんだけど。でも、否定出来ない事実だし。むぅ、どうしよ?
えっと、ストライクゾーンを作る?
いや、ストライクゾーンはお姉さん系の人だ、もうあるや。
じゃあ、ストライクゾーンを変える?
どうやって?誰かにホレさせるとか?でもそんな事したら、その人でしかヒステリアモードになれないとか、そんなオチが待ってる気がする。
だいたい、よく考えればヒステリアモードと種馬みたいな見境ない性癖は、道徳とか倫理観抜きに考えると、相性は良いんだよね。
問題の種馬野郎に.....ホ、ホホ惚れちゃった女としては、不服だけど。
だいたい、ヒステリアモードは、病気みたいなものだし、性欲がいつまでも強いままとは、限らないんだから。落ち着いてくる年代があるはずなんだよね、多分。問題はキンジのお祖父ちゃんと、お父さんが、長いこと現役だったせいで、落ち着く時期が分からない事なんだけど。
でも、そうだよね、落ち着いた時にアタックすれば、良いんだよね、うん。
もしライバルが多かったら、フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ。
私、一人なら問題ないもんね、うん。
「もう、何ボーッとしてるの、速くシャツ着て、後スカートも!」
あ、時間無いんだった、急げ急げ!!
「よし、着替えられたね、カバンはキンちゃんが持ってるし、速く出ましょう?」
結局、体操着の上から、制服来ちゃったけど、この時期寒くなってきてるし、丁度良いかも。
「白雪先輩。ありがとうございます、怒ってくれて」
私が一言言ったら、呆れてる顔した後、仕方無いなぁって感じで、話してくれた。
「私も自分勝手過ぎたかも、ゴメンね?後、私はそっちの気はちょっと.....」
そう言って、扉を開けて部屋を出る白雪先輩。
!!!!
もしかして私、何か凄い勘違いされてる!?
「いや、私もそっちの気は無いですよ!?ただ、怒ってくれる人って、周りに居ないから、純粋に嬉しかったんです!!」
そう白雪先輩に訴えると、白雪先輩が可哀想な目で見てきた。
え、誤解解いた筈なのに、何でそんな目で見るの!?
嘘でしょ?え、何でそんな、私おかしな事言ったっけ?
....................あ!!!?
「いや、私はそっちの気も無いですよ!?勘違いしないでください!私はノーマルです!!」
「そ、そうだよね、純粋だもんねあかりちゃん。お願いだから、今のまま、純粋でいてね?」
だからそんな、子供がいつの間にか大人になってたのを、寂しがる大人の目で見ないで!!
「お前ら、いったい何話してんだよ、訳が分からんぞ」
「えっと、これは知らなくて良いです!」「キンちゃんは知らなくて良いことだよ?」
殆んど同時に二人揃って言ったから、キンジが面食らって、唖然としてる。何か面白いなぁ。
「ほらキンジ先輩、速くしないと置いてきますよ?」
そう言って白雪先輩と歩くと、少ししてキンジが再起動したみたい。
結局、さっきの話題を蒸し返してきたキンジ相手に、私と白雪先輩で適当に誤魔化していると、いつの間にか学校を出てた。
話すのが楽しくて、周りに注意がいってなかったね、反省しなきゃ。いつ『イ・ウー』の連中が..........ううん、『イ・ウー』以外の連中からも、襲われる可能性があるんだから、気を張らなきゃダメなんだよね。
っと、
「大丈夫あかりちゃん!?」
ちょっとふらついたら、白雪先輩が焦った様子で私を支えてくれた。嬉しいけど、テンパって右往左往してるキンジが、面白過ぎてちょっと笑いそう。
「大丈夫ですよ、ちょっとふらついただけです」
「大丈夫じゃないだろ!やっぱり俺が家まで送って「キンちゃん」???何です?」
「私がお家まで送るから、キンちゃんは無理しなくて良いんだよ?」
あ、黒雪先輩だ、端から見ると、何か怒ってるなぁレベル何だね。それでも少し怖いけど。
「あ、あぁ。けど俺は、あかりの
「なら、二人でお家まで送ろう?キンちゃんだけで、お家まで送るのは、止めて欲しいな」
あれ?前まではオッケーだったと思うんだけど..........まさか、もうバレたの?
「わ、分かった、それで良いから!」
キンジが怯えてる、何かもう、産まれたての子鹿みたいな震えかたしてる。私の知らないところで、トラウマでも出来たの?
前世はそんなトラウマ無かったけど、そもそも前世は白雪先輩、武偵中に居なかったし、もう前世の記憶、大まかな流れ以外は、あてになら無いんだよね。
考えれば、だいぶキンジの性格も、私と剥離してきてるし。これなら、香港の孫悟空との戦いも、キンジを鍛えれば何とかなるかもしれない。
となると、大事なのは、自力の向上と、いかに早く一人でもヒステリアモードになれるかって所。
「えっと、すいません。迷惑かけて」
「ううん、気にしなくて良いんだよ。家にはののかちゃんは居るの?」
う、それは、言ったら絶対また迷惑かけるよね。
「はい、家にい「居ないだろ。二、三日は実家らしいぞ」.....ボソッキンジ先輩のバカァ」
何で言っちゃうのよぉ、私白雪先輩にこれ以上迷惑かけたくないんだよ。
「あかりちゃん?」
うぅ、ほら、白雪先輩が睨んでくる。
「ごめんなさい。迷惑かけたくなくて」
「ホントにバカ何だから、そうやって一人で抱え込むから怒るのに、そんなんじゃあかりじゃなくて、バカりだよ、バカりちゃん」
ウソォ!?白雪先輩にまで言われたぁ!!
結構ショック何だけど、うぅ、反省してまーす。
「ごめんなさい」
「私、今日は流石に泊まれないのよね、キンちゃんは?」
え?そこまで!?そこまで心配する普通!!?
ちょっと過保護が過ぎるよ二人とも!!!
「さ、流石にそれは、私この位の気絶なら、何度も経験ありますから、大丈夫ですよ」
「怪我や病気は、例えなれてても、完治するするまで油断しちゃダメだ。兄さんに連絡したから、今日はあかりの家に泊まるからな。」
嘘でしょバカキンジ!!?
ちょ、ちょっと待ってよ、部屋片付いて無いし、そもそもキンジの布団とか無いよ!?えっと、ご飯は冷蔵庫にののかが作り置きしたのと、朝の残りがあるから、大丈夫でしょ?着替えとか、どうしよう?
「確か近くに、コインランドリーあっただろ?強襲科の練習後に、いつもシャワー浴びるから、着替えはあるぞ」
あ、そうですか。でも、明日とか、学校どうするの?私の家から二人で当校とか、ちょっと恥ずかし過ぎるよ、流石に。学校の友達に見られたら、屋上から飛び降りるよ、多分死なないけど。
「キンちゃんが居るなら、あかりちゃんは大丈夫だけど、キンちゃんが..........うぅ、あかりちゃん!!」
!?
白雪先輩が肩を掴んで、すっごい表情で見てくるぅ、何か怖いよぉ。
「私、あかりちゃんの事、信じるからね!?」
こ、これは、私がキンジと間違い的なアレをしたら、白雪先輩に、やられるってやつですか!?
「わ、分かりました!!」
えっと、ご先祖様の日記だと、妄想してヒステリアモードになるんだっけ?..........つまり、その、妄想するための相手が.....ひ、必要って、事なんだよね、うん。
今日はキンジと二人っきりか、ドキドキするなぁ。
...............何だろう、ドキドキの方向性が、恋愛関係じゃなくて、命の危機のドキドキ感だな、複雑だよ。私もキンジも、武偵だけじゃなくて、家とか家族がやったことに対して、恨み持ってる人多いから、なぁんか別の意味で不安だなぁ。
またあかりちゃんかなぁ、次も。
他のも早く書き溜めないと、ダメなんだけどねぇ。
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あかりちゃん、がんばる!
筆が勝手に進むって、楽だけど一種のホラーですよ、自分としちゃ。
「じゃあ、私はここまでだけど、明日は二人とも学校休んでくれると、嬉しい。大事なお話があるの、志乃ちゃんも連れてくるから、聞いてくれる?」
え?志乃ちゃんって、まさかSSRの姫、佐々木志乃!?
日本に居る、国際武偵連盟公認の二つ名持ち最年少で、G20を越える世界最高クラスの超偵の一人。既に日本武偵ランキングに載ってる、凄腕の中の凄腕。
公認の二つ名は、「
確か、ランクはA何だけど、Sランクへの昇格を、年齢を理由に断ったって噂があったっけ?
そんな人と
ホントに、前世からは考えられないよ。前世の白雪先輩は、よく暴走するし、ヒステリアモード的な意味で危険だけど、色々とお世話になってて、幼馴染みだけど、知らない事が沢山ある、何か不思議な人だったなぁ。
なのにこの世界だと、基本何でも出来る完璧超人で、キンジが居ない時は常に余裕があって、一歩引いてる感じのザ・大和撫子って、雰囲気の人何だよね。
キンジが関わってくると、ザ・恋する乙女!って感じ何だよ。何か、その手の少女漫画とかに出てくる、ライバルキャラで世話好きの、幼馴染みのキャラみたいになるんだよねぇ。
端から見てると面白いんだけどね、個人的には。私、自分で考えてみて、キンジに惚れてるって事になるんだろうけど、側に居るだけで満足だし。
他の女の人..........例えば白雪先輩とくっついても、妹みたいなポジション貰えれば、満足何だよね、多分。どっちかって言うと、これは前世でカナに感じてた、親愛とか、兄弟愛みたいなものに、近い気がする。
............私の前世、人として終わってない?何かもう、実の兄に恋に近い感情を抱くのが間違いなのは、私でも分かるんだけど?いくらカナは特別だとしても、実の兄なのに、兄弟なのに、そんな事。..........うぅ、人として終わってるよ完全にぃ。
「おい、あかり、大丈夫か?」
ふぇ?
....................!?!!?!!!?!?
何で私、キンジに抱き止められてるのよ!?
「え!?ちょっと!何してるんですか!!」
「何ってお前、白雪が帰った途端に、ふらついて倒れそうになったんだろ?大丈夫かよ?」
ふぇ!?
何それ、私そんなに長いこと考えてたの?うぅ、白雪先輩に失礼な事しちゃったなぁ。明日謝っておかないと。
「大丈夫です。それよりどうします?ご飯とお風呂、どっち先にします?」
お風呂は、残り湯を洗濯で使うからって、流して無いまま何だよね、そっちが先なら、掃除しないと。
って、あれ?何でキンジ呆れてるの?
あ、ちょっと、何持ち上げて!?
「何言ってんだ、お前が心配だから、家に泊まるのに、何でお前が動こうとしてるんだよ。俺がやるから、あかりはリビングで座ってろ」
ひぁ!?
は、恥ずかしいからお姫さま抱っこ止めてぇ!!!!
うぅ、恥ずかしい、けどちょっと嬉しい。何これ、何か胸が痛いよぉ。キンジのバカ、こういう時だけカッコイイとか、人誑し!女誑し!ハーレムバカ!!
私と白雪先輩が、学校の人間に何て言われてるか分かる?正妻とブラコンだよ!私とキンジ血の繋がり無いんだよ!何でブラコンなの!?理不尽だよ!!
「うぅ、お風呂のお掃除お願いです。ご飯は冷蔵庫に残りがあるので、それで」
「了解だ、風呂掃除してくる。大人しくしてろよ?」
ひぅ!?
頭撫でるなバカァ、顔に血が上ってきて、頭クラクラするよぉ、体調不良の時にドキドキさせるの禁止!!
「キンジ先輩、何か今日は優しいですね」
「いつも優しいの間違いだ」
腕捲り、妙に様になってるなぁ。ちょっとカッコイイかも。
でもキンジ、学校だと、常にぶっきらぼうで、ヒステリアモードにならないと優しくしてくれないのに、よく言うよ。
..........まぁ、そのお陰で、私と白雪先輩はバカな男に強請されてる、可哀想な女子生徒って噂何だけどね。だいたいの先生は、噂が嘘だって気付いてるけど、生徒の殆どを騙せてるって、何気に凄いよね、キンジは。でも素っ気ない態度は、私結局傷付くよ?
「学校でも、優しくしてください。私も白雪先輩も、いじめなんてされませんよ?」
「それでも、不安なんだよ、後少し何だ、進学は神奈川武偵高じゃなくて、東京武偵高にする。卒業すれば、学校の連中ともおさらば何だからな」
そりゃ、エスカレーター式染みてる神奈川武偵高校よりも、東京武偵高校の方が良いのは分かるし、私も前世で東京武偵高校に通ってたけどさ、私も白雪先輩も、それじゃあキンジに迷惑かけてるじゃない、そんなの悔しいよ。
「私、迷惑ですか?」
あれ、何言ってるんだろ、私。ちょっと、何でキンジの袖掴んでるのよ、これじゃあホントにブラコンじゃない!
「ん、な訳無いだろ、いつも助かってるよ。昼飯とか、強襲科の訓練とか、色々な」
そう言って、キンジがまた私の頭を、今度は優しく撫でてくれた。...キンジがお風呂掃除しに行っちゃった、何か物足りないよ。
無意識に、キンジが撫でてくれた場所を触ってた。身体が少し火照ってる、どんだけ嬉しかったのよ、私。
でもなぁ、キンジもカッコイイと思えてきたけど、やっぱり金一お兄さんが一番カッコイイよねぇ。あの人、治す方が得意で、武偵免許も
そんな強さを持ってるのに、人助け第一で、しかも殆ど対価を貰ってない、只働き同然の仕事を進んでするんだから、カッコイイなぁ。武偵としての目標でもあるし、人生の目標でもあるよねぇ、あの人は。
「あかり、風呂掃除終わったぞ、もう沸かせてあるから、何時でも入れるからな」
あ、もうお風呂沸いたの?私どんだけ考えてたんだ、ちょっと自分に驚いてるよ、うん。
「じゃあ、キンジ先輩先に入ってください。私、宿題残ってるので、終わらせてから入ります」
「今日は勉強しなくても良いんじゃないか?あんまり脳を動かすのは、止めておいた方が良いだろ」
ホントに過保護何だから、そこまで心配するほど、私は虚弱体質じゃないよ!
「大丈夫ですよ。それに何かしてないと、無駄な事ばっかり考えちゃって、逆に脳に悪いんです!」
そこまで言って、キンジを脱衣場に追い込む。
「痛くなったら、直ぐに止めろよ?」
もう、そこまで心配する必要無いから!!
「大丈夫ですって!キンジ先輩は、女の子の家のお風呂何ですから、ゆっくり休んでください!!」
あ、キンジが呆れてる、良いじゃん!私だって女の子だもん!!喜びなよ!!!
「ふぅ.....よし、勉強頑張るぞ~、おぉ!!」
このかけ声、一人でやっても虚しいなぁ。
よし、今日は英語を勉強しよう。前世で全然覚えて無かったから、今世で一番力を入れた科目だよ、外国人との戦闘が増えそうだしね、キンジは。だから、世界共通で通じる、英語を一番勉強してるの。
後は、歴史かな?「イ・ウー」も、結局有名な人間の子孫が多いんだけど、結構祖先と同じ戦闘タイプの人とか、伝統がある人とか居たし、情報収集の面で、歴史は勉強してるよ。
えっと、昨日は英語の予習してたんだよね、お母さんに言って、小学校の頃から予備校に通ってるお陰で、もう中学生レベルの英語は分かるし、試しに英検でも取ろうかな?
二級までなら、頑張れば取れるし、キンジに教えるのも良いしね。何かお姉さんみたいで、ちょっと萌える。
二級まで取れれば、日常会話は問題ないみたいだし、TOEICって言うのも、予備校で先生に勧められたから、受けるのも良いかも、どれだけ自分が英語出来るかとか、気になるし。
まぁ、昨日は英語やったから、やっぱり今日は歴史の勉強かな?
えっと、今は邪馬台国辺りの所を、授業で習ってるんだよね、古墳とか土偶とか。
じゃあ、適当に単語と年表の暗記をして..........何これ、年表が殆んど無いんだけど、嘘でしょ?うぅ、暗記で授業を乗り切るのは無理か、地道に勉強しよ、勉強に近道は無いんだよ!!
「風呂上がったぞ、あかりも早く、入った方が、良いんじゃないか?」
ん?もう上がったn...!?何で下着姿なの!!?
「ちょっと先輩!?何て格好してるんですか!!」
キンジがばつが悪そうに顔を逸らす。
「いや、こっちに着替え忘れたから、着替えられなかっただけだ」
それなら顔を逸らさないでよ、勘違いします、私は。
「じゃあ、速く着替えてください!女の子の前で下着姿は常識が無いですよ!!?」
そう言って、私はなるべくキンジの方を見ないように、勉強道具を片付ける。以外と脱ぐと凄いんだ、キンジって。前世では自分の身体だったから、全然考えなかったけど、毎日強襲科で鍛えてれば、そりゃ筋肉付くよ、うん。
「あ、あぁ、すまん。直ぐに着替えるから!」
キンジが着替えを学生鞄から漁って、トイレに消えた。
.....今のうちにお風呂入ろ、明日は白雪先輩が来るらしいし、寝不足は身体に良くないしね。
急いで着替えを持って、脱衣場に入る。タオル忘れる何てヘマは、脱衣場にある収納スペースにタオルを仕舞う事で回避ィ!完☆璧!!
フフフフフフフフフラッキースケベ何て、させるものですか!!
フンフフーン、ゆっくりお風呂入ろっと。
いつも通り脱いだ服を、洗濯機の近くの籠に入れようとすると、中に既に入ってる物があるのに気付く。
「何だろこれ、キンジが忘れたらのかな?..........!!?!?」
バカキンジのバカァ!!何で下着を籠に置き忘れてんのよ!!?
普通は逆でしょ!?前世でもアリアがやってたじゃん!!いや、あれはアリアがお風呂に入ってる時だから、シチュは違うのかな?ってかこういうのは、そういうのを意識してる人同士がやるのが、美味しいのであって、私とキンジがしても、只のラッキースケベなだけで、って、私がキンジの下着見つけたからって、ラッキースケベになるわけ無いでしょ!?何考えてんのよ私ぃ!!
うぅ、これじゃあまるで、恋人みたいな感じじゃん。何それ、私まだそんな事する覚悟無いよ?そもそも私は、キンジの側にいるだけで満足だし。そういうのは、その、白雪先輩とすれば..........何想像してんのよ私!!?
「すまんあかり、中に....忘れ物......して........」
へ?
後ろから声を掛けられて、思わず振り返ったら、ドアノブに手を掛けて、こっちを凝視して顔を真っ赤にしてる、ヒステリアモードなバカキンジの姿があった。
!!!!!?!?!?!!!!?
「何見てんですかバカァ!!!!!?」
こっちを見るな変態!覗き魔!!犯罪者!!!一回死んで生き返って、もう一回死ねぇ!!!!
「すまない、本当に悪かった!許してくれ!!あかりは桃缶好きだったよね、直ぐに買ってくる!!」
あ!?逃げるなバカァ!!
よくも私の裸おぉ.....グスン私汚されちゃった、もうお嫁に行けないよぉ。
..........まぁ、元々行く気は無いんだけどネ!
それでも、生娘の裸を見た責任とってもらうからね。私、粘着だもん、絶対に忘れないから。何年経っても、絶対に責任とってもらうからね!!
.....もしくは金一お兄さんが責任とってくれるのも、全然オッケー。
ただし
私、武偵辞めて普通に就活した方が、平和な人生送れる気がするんだよねぇ。
キンジに死んで欲しくないから、武偵になって、力を付けてるけど、学年がズレてるから、そもそも一緒に香港まで行けないし、どうなるんだろうなぁ。
.....何考えてんのよ私。キンジに裸見られて混乱してるのかな?こんな考えやめやめ!どんどん気分沈んでいっちゃう。それより速くお風呂入ろ、お風呂。
折角キンジが居なくて、覗きの心配が無いんだから、ってかもう覗かれたんだけど。そうじゃなくて!キンジが居ないうちにお風呂入らなきゃ、長湯してたら心配するかもしれないんだし、早めにね!!
「!?結構匂いって残るんだ。何だろ、ちょっとドキドキする」
キンジが入った後、少し時間あったのに、全然匂いが残ってる。
嗅いでると、不思議と安心する匂い、多分前世の頃一番身近な匂いだったから、だと思うけど、生まれ変わっても安心ってするものなの?
..........あんまり考えないようにしよ、考えちゃダメな気がする。
「ふぅ~、いいお湯だなぁ、力抜けるぅ」
身体洗って、湯船に浸かる。
あぁぁぁ、良いよぉぉ、スゴく良いぃぃ。
ちょっと熱めの温度が、身体の疲れとか、IQとか、諸々溶かして癒されるぅぅ。
「...............眠くなってきちゃった」
お風呂で寝るのって、気絶と同じ扱い何だっけ?
何か頭回んないなぁ、そろそろ上がらなきゃ、ホントに寝ちゃいそう。
「上がろ上がろ、このままじゃ溺れちゃうよ」
そう言ってお風呂の扉を開けると、私の着替えを掴んでるキンジの姿を、脱衣場に確認した。
何でよりによってブラ掴んでるんだよバカァ!!!!!?
翌日、キンジの頬っぺたが腫れてるのを見て、白雪先輩が黒くなるのは、全くの余談です。
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佐々木さん is アイドル!
今回は短め、次回から、四人で任務になるかも。
朝、私が早起きして自室で着替えてる所に、キンジが入ってくるハプニングがあったり、朝御飯をキンジが準備してくれていて、ちょっとドギマギしたけど、そこは割愛。
今は八時半頃。本当はもう学校に居ないとダメな時間帯、今日は白雪先輩の話もあったから、二人で学校に電話したんだけど……白雪先輩が、任務を受けるって、私とキンジの欠席報告をしてたみたい。
流石は白雪先輩、何て思ってると、インターホンの音が鳴った、白雪先輩が来たのかな?
「あかり、飲み物の準備頼む」
「はーい」
キンジが玄関に迎えに行ったから、私はテーブルの上を軽く拭いて、飲み物を淹れる。えっと、白雪先輩と佐々木さんの二人って言ってたよね?
「キンちゃん、そのほっぺたどうしたの!?」
「キンジ先輩!?どうしたんですか!!?」
あ、やば、昨日と朝、覗かれた時についひっぱたいたの、赤くなってるんだった。あはは、白雪先輩に怒られるわ、うん。
「何もねぇよ。それよりほら、上がった上がった」
何だかこうやってると、本当にキンジと家族になったみたい。キンジがお客さんお迎えして、私がおもてなしの準備して、二人でお客さん歓迎するの。本当は、キンジのお祖父ちゃんとお祖母ちゃん呼んで、手料理ご馳走したりとか……してみたいなぁ、何て、思ったり、その。
「あ・か・り・ちゃん?」
「ひっ!?」
!?
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!!」
白雪先輩怖すぎぃ!!?
周りの風景、歪んでたよ!?目元髪で隠れてなかったのに、怖くて認識できなかったよ!?
思わず向かい合って、二秒で土下座したよ!!
「お、落ち着け白雪!これは俺が悪いんだ、だからあかりを怖がらせるな!!」
「え?!?ちょっ、キンちゃん!!?」
土下座しててよく分かんないけどナイスキンジ!!
このまま白雪先輩が許してくれると、言うこと無いんだけど、気がかりなのが一人。
「白雪先輩、キンジ先輩がこう言ってるんですし、ちょっと抑えてください。私も我慢してるんですし」
我慢って、まるで自分も怒ってるみたいな………佐々木さんってキンジと関わりないでしょ?今日が初対面だと思うんだけど、キンジが新しい女の子と会ったら、私に言うように言ってるもん。
「それで、あかりさん、でしたっけ?その体制止めてください。ボソッ遠山先輩に、胸元見られてますよ?」
なっ!!?
その声に思わずその場を飛び退く、胸元抑えてキンジを睨むと、不思議そうな目で見られた。
「あかりさんって、純粋なんですね。ちょっとかわいいかも」
騙されたぁぁ!!!!
「そう睨まないでください、遠山先輩を叩いたのでお相子ですよ」
うがぁ!!
私は裸も下着も見られてるんだよ!?ひっぱたくくらい安いもんじゃん!!
「おい、お前もあかりをいじめるな、さっさと席に着け。今日は話す事があるんだろ?」
うぅ、キンジィ、私の味方はキンジだけだよぉ……………キンジが原因なのに、キンジだけが味方って、私もしかして、キンジにマッチポンプさせられてる?
いや、キンジは無自覚だし、今回は周りが勝手にマッチポンプみたいな感じになってるだけだし、前世の私にそんな事する頭ないし、やっぱり私の味方はキンジだけだったんだよ!
「あかり、お前も早く座れ」
「あ、はい!」
キンジに言われて、急いでキンジの隣に座る。向かい側に佐々木さんがいて、こっちを品定めするような目で見てくる。
むぅ、何か下に見られてる感じがする。そりゃ、佐々木さんに比べれば私は、そこら辺の木端武偵と変わんないんだろうけど、それでも見下されるってヤ。私、アジアランキング下位の実力はあるんだから!!
「それじゃ皆、一回自己紹介してくれ。初対面が居るからな」
「私は佐々木志乃、SSRの一年です。白雪先輩の戦妹で、SDA日本部門で58位です」
これみよがしに自慢げにすんなぁ!!
バカにしてるの!?うわぁぁぁん!!!
「私は間宮あかり、強襲科の一年です。ランクはCで、えっと特技は、目隠ししてミスドのドーナツ食べて、名前当てられることかな?」
あ!
何でキンジ頭痛そうにしてんの!?良いじゃん、ミスドのドーナツ当てられるの、スゴいじゃん!立派な特技でしょ!?
「……………っぷふふ」
佐々木さんにまで笑われたぁ!!?
「俺は遠山金次、強襲科の二年でランクはこの前上がってB、特技は無い。趣味は隣のバカの飯を食うことくらい。好きなもの嫌いなものは特に無いが、強いて言えば女性が少し苦手。以上だ」
くくく、どうよ、キンジは私に胃袋を捕まれてる状態何だから、実質上級生をアゴで使える状態なのだよ!!
あ、佐々木さん驚いてる驚いてる。ふふん、いくらSDAランキングで上位になろうと、こっちには
「私の事は皆知ってるし、良いよね?」
白雪先輩が自己紹介省たいみたいだから、頷く。
佐々木さんはさっきと違って、何か勝ち誇ってる自慢げな雰囲気に戻ってるし、何かムカツク!
「今日この家に来たのは、理由があって、実は志乃ちゃんの超能力に関する事なんだけど、二人とも超能力が何なのか、説明するね」
「超能力には何個か種類があって、どれも才能が無いと覚えられないんだけどね、大きく分けて三つ。先天的に覚えている超能力。後天的に覚える超能力。それ以外の超能力。どれも使うには式力………魔力って言った方がわかりやすいかな?それを使って発動するんだけど、三つ目の超能力は本当に大雑把なくくりで、魔力を使わない超能力は、ここに入るの」
う~ん、勉強してたのと同じ感じだねぇ、ためになるわぁ。
キンジが何か信じてない感じだけど、キンジのヒステリアモードも、大概信じられないような能力だからね?
キンジ、多分三つ目に該当してるからね?
「遠山先輩は、信じてないですね?」
あ、佐々木さんがキンジに話し掛けてる。
「いきなりアニメの中みたいな設定言われても、すぐに信じられないだろ、普通」
確かに、私も前世で魔剣こと、ジャンヌと出会ってなかったら、信じてなかったし。
あれ、何で佐々木さん髪結んでたリボン二つとも取ってるの?
うん?何かこれ、見たことあるような?
何だっけ、どこかで見たんだけど、えっと?
「白雪先輩?」
「良いけど、ここはお部屋の中だから、加減気を付けてね」
「はい」
えっと、何か見たことあるんだよね、何だっけ、ものすごく寒い所で、周囲がスゴいごちゃごちゃしてる建物の中で………………………あ!?
私が思い出した瞬間、佐々木さんの手のひらの上に、湯飲み位の大きさの火が突然現れて、キンジと二人で目を見開く。
メッチャ驚いた!!
なにそれ!?何!!?
え?佐々木さん火の魔術使えるの!?
「これが魔術と呼ばれる超能力の一つです。分かりやすいように火の魔術を使いましたが、他にも色々ありまして。術式をしっかり勉強すれば、相手の武装解除をする魔術や、魔力を奪う魔術等、こちらの装備が無くても、ある程度の状況を解決することが可能です」
いや、これ見て説明されて思ったけど…………やっぱり超能力ズルい!!
見た目素手でも、中・遠距離の攻撃が可能ってことでしょ!?
攻撃以外にも、占いとかで索敵とか他にも色々、装備が必要なくなるって、どれだけ反則だと思ってんの!!
武偵の一番の悩みは、金銭問題………それも装備の金銭問題何だからね!!?
装備が必要なくなるって事は、それだけ他の必要な部分にお金を注ぎ込めるってことで!!とんでもなく卑怯だよ!ズルだよ!!
うぅ、お金はヒステリアモードや私の能力じゃ、解決出来ないのに、悔しい!!
「とまあ、こんな感じです。私の魔術の一つに未来視って大規模儀式魔術が有るんですが…………えっと、その、こういうのも私、してまして」
あ、佐々木さんが火の魔術消しちゃった。その後何かもじもじしだしたけど、未来視って何?未来が見えるの?何それスゴい!!
「その、名刺です。魔術の儀式に、多数の人間からの、熱狂を集める必要がありまして、その関係で、はい」
恥ずかしそうに出してきた名刺を、キンジと二人で見る。顔近くて何か緊張するんだけど…………………うわ、キンジの息遣い聞こえてるよ!?キャーーーー!!!
コホンッえっと、何々、『ワタナベエンターテイメント所属アイドルグループ「LOVE☆Detective♪」メンバー シノ★ノン』?
「志乃ちゃんスゴいんだよ!今度のシングルのPVセンターで踊ってるんだって!!」
「ちょっ、白雪先輩!?恥ずかしいから止めて下さい!!」
………………………………………………………………………え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!?!!?
「あ、あ、あい、どる?」
「えっと、その、はい。去年から、活動してまして、アイドルやってます。本格的に売り出したのは、今年からで、武偵アイドルのグループ何ですけど、私は二期生でして、未だ未だ新米で怒られてばっかりで、」
何かキンジの声に反応して説明してるけど、そんなの頭に入んない。
佐々木さんがアイドル?しかも二期生?
つか、グループの名前私知ってるし、それ以前に前世の時にも、理子がテレビに応援してたのとか、グッズ持ってきたりしてたから、知ってるグループだよ!?
っていうか私もファンだよ!!
「佐々木さん!!!」
叫んでそのまま佐々木さんの手を、両手で掴む。
「きゃっ!えっと、な、何ですか?」
私は驚く佐々木さんを無視して、メチャクチャ真剣に、佐々木さんのことを見つめる。
「え、えっと、その、間宮さん?」
部屋に居る皆、私の事を見て、私の顔が真剣な事に気付いて、固唾を飲んで見守る。
「佐々木さん」
改めて佐々木さんの名前を呼んだ。
「は、はい、間宮さん」
佐々木さんもこれからの事を緊張してるのか、真剣な表情で私を見る。
私は、天にも祈るような気持ちで、ゆっくりと言葉を発した。
「サイン、下さい」
隣でキンジと白雪先輩がお茶吹いたのは、この部屋に居る人間全員の秘密である。
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あかりちゃん 未来のお話し
志乃ちゃんも勝手に動き回るし、何でいきなり告白してんのこの二人(゜〇゜;)?????
オリ主並みに動き回る二人とか、手に負えないわ(; ̄ー ̄A
やったー!アイドルのサイン貰えた!!
お宝だよ!!ののかも喜ぶよ~!!
「コホンッ、話を戻すね」
はしゃいでた私を見て、白雪先輩が話を戻した。
う、ごめんなさい。
「志乃ちゃんはね、未来視の中でも予知夢って言う、特殊な魔術を使えてね?この魔術は何ヵ月も魔力を貯めて、大量の人間の感情を一度に集めないと、発動できないの。それだけやって、視れる事も自由度がある訳じゃなくて、術者の近くで起こることだけしか、分からないの。」
えっと、つまり未来は視れるけど準備大変で、そのくせあんまし好きなこと視れないって、こと?
何か大したこと無さそうだなぁ、コスパ悪そうだし。
シャーロックの
純粋な推理力のみで、この世の全ての事象の予知が可能な域に達したとか、チートと言わず何と言えと。チートですら、まだ足りない位だよ。
「その魔術が、何だってんだ?」
キンジが聞くと、白雪先輩が言いにくそうに志乃ちゃんの方をみた。何か、嫌な未来でも視たのかな?
志乃ちゃんも言い淀んでるし…………まさか、誰か大変な目にでも遭うの?事故とか?
私がこれから話聞くのやだなぁ、何て考えてたら、志乃ちゃんが私のことを、真剣な表情で見つめながら、ゆっくりと話始めた。
「今から一年後の未来の話です。間宮さん、貴女の里が襲撃されて、キンジさんが死にます。三つ編みの、キレイな女性から、貴女を庇って。」
………………………………………………………………………………………………………………は?
「な…………ッッッッ!!!!!?お前!!!言って良い事と悪い事がわかんねぇのか!!!!!!!!」
隣でキンジがブチ切れてるけど、私の頭に入らない。
「落ち着いてよキンちゃん!!」
「落ち着けるわけねぇだろ!!!!」
先輩二人が言い合ってる中、志乃ちゃんは真剣な表情を崩さずに、私のことを一度も目を離さずに、じっと見詰める。
「里は少数の精鋭メンバーによって襲撃され、私と白雪先輩も里に居ました。私は巨大な人型の化け物に殺され、白雪先輩は氷の魔術を使う魔女と、大量のアヌビス型のゴーレムに………………連中の狙いは、里の壊滅です」
「テメェ!!!!」
「キンちゃん!!!!!」
志乃ちゃんが言った言葉に、キンジがまた怒鳴る。白雪先輩はキンジの事を拘束術式で拘束して、動きを止めた。…………止めないと、志乃ちゃんの事、殴りかかってただろうし。
「今言った事は予知夢の内容でね、この子の予知夢は………………基本的に外れない。」
私の事を心配してくれるのは嬉しいんだけど、私、そんなに好かれる事してないよ?それに、死ぬのはキンジであって、私じゃないのに。ホントにバカキンジ何だから、もう///
それに、気にかかる事がある。
襲撃したメンバーの特徴がね、似てるんだよ、そっくりなの。
「ふざけるな!!!そんなのあるわけねぇだろ!!!!」
「私の予知夢は、外れた事はありません…………………例外を除いて」
全部、あの組織と一致する。世界最高の犯罪組織、
アリアが追い掛けてて、アリアを放っておけなくて、私も追い掛け始めて、皆の力を借りて、そうしてやっと同じ土台に立てて、そこからさらに頑張らないと勝てなかった。勝ってもそれは奇跡みたいなもので、アリアは傷付いて、まだ戦いは終わらなかった。
世界を巻き込んだ戦いに、私は負けてしまって、ここにいる。
私は一度、世界に負けた。負けて、一回全部失って、それでも諦められなかったから、この生き方をしてる。
「ねぇ、佐々木さん」
私が口を開くと同時に、キンジが私に叫ぶ。
「おいあかり!!!こんなやつの言うことなんか「キンジ先輩、大丈夫です」………………ッッッ!!!!!!」
ありがとキンジ。私は大丈夫だから、前世から何度も、死にそうな目には沢山遇ってるし、一回失敗したけど、もう失敗しないから。だから、大丈夫だよ。
「何ですか、間宮さん」
「私にこの話をするって事は、未来は、
私が言った言葉を理解したのか、キンジが驚いて、術式から抜け出そうとする動きを止める。
「…………………………………はい、出来ます」
志乃ちゃんも、私があんまり動揺してないから、ちょっと驚いてる。
ふふん、私がいくら死線を潜り抜けたと思ってるのよ、このくらい平気よ平気。
「さっき言った『基本的に外れない』と『例外を除いて』の所、説明してもらえる?」
「その前に、………私の予知夢は特定の状況しか見ることが出来ないのは、話しましたが………………うーん、説明が難しいんですよねぇ」
「勿体振らないでよ、こっちは好きな人の命掛かってるんだから」
あ、皆固まった、つか、私も何言ってんの!!!?
何口滑らせてんのよ私ぃ!!!!!!?
え?何で!?本当に何でこんな事言ったの!!?私こういう事言うタイプじゃないじゃん!!!つか、ホントに私キンジに惚れた!?嘘でしょ!!?相手は前世の自分だよ!!!?
「お前、ブラコンだったっけ?」
キンジに白い目で見られて、思わず反射的に叫ぶ。
つか、顔赤くしないでよ!!私も恥ずかしくなってくるじゃない!!!
「恋愛とかじゃなくて、家族愛とか、そう言う意味でですキンジ先輩!!」
前世での初恋がカナだったから、ちょっと説得力無いけど、
「…………………………あかりちゃん、後でお話、しましょう?」
「は、はい!!!!」
問題のお方に話し掛けられて、思わず背筋が伸びて大きな声で返事をする。
…………いや、だって、もはや黒いオーラが溢れだし過ぎて、白雪先輩の座ってる席周辺が、視認出来ない位真っ黒だよ。
何アレ?アレも魔術なの?なら効果
アレが白雪先輩だって分かってても、隣にキンジが居なかったら、気絶してたわ!!!!
「まさか、あかりちゃんが裏切る何て……………………フ、フフフ、フフフフフ、フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
いやぁ!!!!!!?!?
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
私裏切り何てしてないからぁ!!キンジには家族愛だもん!!恋愛対象とかじゃないもん!!!
昨日からアレな感じだけど、別にこれは家族愛であって、
これは気の迷いだよ!そうじゃなくても私は白雪先輩の邪魔はしないから!!大丈夫だから!!!
「えっと、話し戻しますね。未来を見ることが出来る方法は、実は結構有るんです」
え!?
……………………………あぁ~、そっか、そうだよねぇ、よく考えたらシャーロックの
「何だ、あんまり大した事無いのか」
「もう、そんな意地悪言っちゃダメだよ?キンちゃん!方法はあっても、どれもろくな方法じゃなくて、安全に未来を視られるってだけで、志乃ちゃんはスゴいんだから!」
うん、そうだよね。私が思い付いた人達?も、意味分からん位チートだし、シャーロックも最初から条理予知が使えた訳じゃ無いだろうしね、そう考えると意外とスゴいのかな?下手にビームとか、ゴーレムとか呪いとか見てるから、感覚麻痺してるね私。
「私の予知夢は、変えられる未来………………つまりは可能性を視認する魔術です。何もしなければその未来になりますが………変えようと願い行動すれば、程度は違えど変えられる、そんな未来です」
そうなると、変えられる未来とは別に、変えられない未来もありそうね。どうあがいても逃れられないもの、加齢とか、寿命?シャーロックが有り得ない位生きてたから、何か微妙な気するけど。
「『基本的に外れない』と『例外を除いて』は、そう言う事だったのね。他には?」
私が質問すると、志乃ちゃんが言いにくそうに口を開く。
「未来は変えられるって、言ったばかり何ですけど…………未来を変えるのってスゴい難しいんですよ?Sランクレベルの小隊相手に一人で特攻する様なものですよ?」
何それ無理ゲー………………………でも、アレ?確かRランクって、Sが束になっても勝てなかった相手だよね?前世でバスカービル相手にして、かなめが勝ってたし、皆ランク詐欺みたいな強さだから、戦力だけならSランクみたいなものだし。
ジーサードはかなめより強かったっていうか、前世の自分と
「そんなの、変えられないって言ってるようなもんじゃねぇか!!」
あ、キンジがキレた。まぁ、この時期のキンジは良くも悪くも、感性は普通の武偵だからなぁ。
私と訓練沢山したから、実力はもう、二年の頃と良い勝負だと思うんだけどなぁ。私の技どんどん吸収していくし、面白い技も作ってるし。
「もう、落ち着いて下さい先輩!たかがSランクの束に、私達が負けるはず無いですよ!!」
あ、またポカやらかしたわ、皆固まってる。つか、志乃ちゃんの固まり具合がヤバイ。何かもう、自分の知ってた人達が突然、性格が豹変したみたいな時の、表情してるね。
「き、今日はね、私達が戦闘で負ける未来を回避するために、特訓するんだよ、学校には任務ってお願いしたの」
お、お願い?たまに白雪先輩がとんでもない遠くの存在にみえるなぁ、バックがどれだけデカイ組織なんだろ?防衛省とか、国家公安委員会とか?
………………………止め止め、下手に考えるとバックに消されるよ。怖いなぁホント、白雪先輩が怖くなってきたよ。
「お願いって、お前、そんなこと出来る訳が」
あ、キンジも冷や汗流してる。だよね、普通そうだよね、平然としてる志乃ちゃんがおかしいんだよね!!
「ちゃんと誠心誠意お願いすれば、先生優しいから、お願い聞いてくれるよ?」
含みのある笑顔止めてよぉ!!さっきから白雪先輩怖いよ!?
「場所はね?丹沢山地の立ち入り禁止場所にね、ちょうど良い場所があってね。お願いしてそこを借りたの」
誰にお願いしたんだろ、怖いよホントに。これって、見えない予算の内訳の一つなんじゃ?
え、何かテレビでよく言われてる、予算の詳しく出されてない部分って、こういう使い方なの?嘘でしょ!?
「車は未だ皆免許とって無かったよね?
そう言うと、白雪先輩が皆のグラスを片付け始めたから、慌てて手伝う。
「あ、あぁ。分かった」
「白雪先輩、私がやりますから!」
「平気よ、あかりちゃん元気そうだけど、これから運動するんだし、今はちょっと休んでなさい」
う、白雪先輩がお姉さんみたい、眩しいよぉ、惚れそう。いや、私にそっちの気は無いから、落ち着きなさい私、どれだけ惚れっぽいのよ!!
でも、前世で男だったし……………いや、今は女でしょ!?何流されてんのよ!!!!
でも、同姓同士とか、そういうのも有るのかなぁ。戦国時代とか、すごかったみたいだし。武将とか、お坊さんが…………男の子とかに……その……させるって………………………………うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
変な事を考えちゃダメ!!頭おかしくなる、今は時代が違う、そもそも武将もお坊さんも男の人!!!今私は女の子!!!!
「間宮さん、ちょっと個別でお話し出来ますか?」
え?志乃ちゃんどしたの?二人っきりでお話し?何か重要なこと?
「良いけど、今必要なの?」
「出来れば訓練前に、確認したい事です。白雪先輩」
「あ、うん。分かったよ、キンちゃんと二人で先に行ってるね。地図は後でメールで送るから。」
私の質問にさらっと答えて、白雪先輩と通じ合う志乃ちゃん。白雪先輩も、何でもないように志乃ちゃんの考えが分かってるし、やっぱり
「ありがとうございます。間宮さん、間宮さんのお部屋で良いですか?」
う、ちょっと散らかってるんだけど、二人っきりでお話しじゃ、そこぐらいしか無いかなぁ。
「分かったよ、こっちね」
私が案内してって言っても、案内する程広くないんだけど、私に続いてきた志乃ちゃんを、私の部屋に入れる。
「ふぅ………これでやっと、挨拶が出来るね。キンちゃん」
え?
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あかりちゃん 前世のつながり
「ふぅ………これでやっと、挨拶が出来るね。キンちゃん」
え?
何?何これ?ドッキリ?え、何で私にキンちゃんって言うの?
あ、もしかして名前間違えた?アハハハハハ、志乃ちゃんってばおっちょこちょい何だなぁ!
あれ?何でいきなり抱き着いてくるの?もしかして結構甘えんぼうさんなの?アハハ、カワイイナァ、シノチャンハ
「今度は、泥棒猫何かに邪魔はさせないから、ね?二人でずっと一緒だからね。もう、誰にも邪魔はさせないから」
ひぇ!?
「何でその事知ってるの!?ってか、貴女誰!!」
耳元で囁かれた言葉に、命の危機を感じて慌てて部屋の奥に逃げて、太股のホルスターに手をかける。
そんな私を見て、志乃ちゃんは笑って、部屋を見渡して、口を開く。
そんなわけ無いもん。だって、この子がホントに
「もう、ベッドはしわくちゃだし、机の上に雑誌が置きっぱなし!物を見えない所に押し込むのは、片付けじゃないからね?」
????………………………………ッッッッ!!!!!!!!
ま、まさか。いや、だって、有り得ないでしょ!!?私は天照に手違いで死んだって言われたから、理由があるし納得できるけど、何で
緊張で汗が止まらなくなって、動悸がする私を尻目に、志乃ちゃんはまた話し出す。
「女の子になって、几帳面になったと思ったのに、細かい所は男の子のままなんだね、部屋の隅ちゃんと掃除出来てないよ?ほら、クローゼットもこんなに雑になってる!」
うげ!?ち、ちょっと勝手に見るなぁ!!
「ちょっと、ちょっと志乃ちゃん!!」
慌てて止めるために志乃ちゃんに近付いて、肩を押さえる。
「ホントに、変わらないね、キンちゃん」
そう言って振り向き様に笑う志乃ちゃんが、前世の白雪の仕草に酷く似てて、嫌な予感が確信に変わった。
……………ホントに、白雪何だね。
ここまで私のこと知ってる人で、『キンちゃん』って呼ぶ人は、前世でも一人しか居ないよ。
「白雪……なの?」
私が震える声で言うと、志乃ちゃんは私に笑いかけてくれた。目尻が真っ赤になって、泣き笑いしながら、私の事を抱き締めてくれた。
「………ッッッ!!!うん、うん!!!!白雪だよ、キンちゃん!!!!!!」
あ、あぁ、白雪何だ、そうなんだ。白雪も、この世界に来てたんだ。
…………………………………………………う、うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「う、うぅ、キンちゃああぁぁぁん!!!」
「ヒグッ、グスッ、白ッ、雪が!!生きてたあぁぁ!!!!」
白雪を思いっきり抱き締め返して、白雪の肩で泣く。
だって………だって!!!!白雪がこの世界に来てたんだ!!あの後、如意棒に射たれた後の事!気にならない訳が無いじゃん!!ずっと考えてたよ!!授業中も!夜寝る前も!心配にならない訳が無いよ!!!だって、私が死んだんだよ?チームリーダーが、敵地のど真ん中で死んだんだよ?皆はバラバラで戦ってたんだよ!?アリアはどうなったの!?理子は!!レキは!!!皆はどうなったの!!?
「キンちゃん、アリアがね、緋緋神になって、皆………みんなが!!う、うぅ、うわぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
!!!!?!?
ごめんなさい、皆ごめんなさい!!私が勝ててれば、あんなバクチみたいな方法じゃなければ、こんな事にはならなかった!!!
私のせいで、私のせいでッッッ!!!!
「ごめん、ごめんなさい白雪!!私が勝ててれば、勝ててれば問題なかったのに!!!!」
「そんなこと無いよ!!だって、私も聞いたよ?
でも、でも!!!!
「関係無いよ、だって、皆が!!」
「…………私が、アリアと相討ちになったとき、藍幇は壊滅してて、ココも孫も殺されてた。静幻も戦いの負荷で、病気が悪化して…………」
そんな、嘘よ、だって、藍幇だよ?構成員百万を越える、超規模組織だよ?それが、壊滅!?
「バスカービルは?」
まさか、誰か…………いや、白雪がここに居るんだから、そうなんだよね…………ッッッ!!!!!!
「皆、緋緋神になったアリアを倒すために………………理子は最初に皆に黙って、ヒルダと二人で挑んで、最後は玉砕覚悟で至近距離で爆弾を、戦ってた旧市街地ごと爆破して………どっちも、髪の毛すら残って無かった」
ッッッッッ!!!!!!!
「レキは理子が起こした爆発音で、気付いて、現場をビルから監視してた時に気付かれて、そのまま戦闘になったんだけど。近距離に持ち込まれて、レキも武偵弾を使って…………ハイマキが、腕だけ見付けてくれた」
いや、もう、止めて
「ワトソンは金一さんとキンちゃんのお祖父様とお祖母様、
!!!!!!?
ジーサードにかなめは、分かる。あの二人達なら、敵討ちだって、言って………でも、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんもなの!?兄さんまで…………ッッッ何で!!!!
「いや、聞きたくない、いやぁ」
私の声が聞こえなかったのか、白雪は構わずに話す、最悪の地獄を。
「最初にワトソンが腕を切り飛ばされて、ワトソンを庇って金一さんが………」
いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!
「やめてぇ、もう、聞きたく無いよぉ」
「動揺したセツさんを庇って鐵さんが、鐵さんが倒れて、激昂したセツさんが、不意を射たれて、」
「やめてよ!!!」
思わず叫んだ私を、強く抱き締めて、まだ白雪は話す。
「ごめんね、キンちゃん。でも、皆の最後、辛いけど聞いて?」
うぅ、うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
まだ泣き出す私を、白雪は自分も泣きながら背中を撫でてくれた。
「ワトソンは、止血する気力も無くて、途中気絶した私に、擬死剤を打って、特攻したみたい」
「玉藻は、緋鬼って名乗る連中の相手を、メーヤさんとしてて、メーヤさんは緋鬼にやられて、植物状態に、玉藻は何とか無事だったから」
何で?何でこんなに酷い事になったの?どうして!?
「生き残った私と玉藻で、他の人達の助けをもらいながら、戦いの疲労で休んでた緋緋神が寝てる所を強襲。全員の武器を
何でよ、何で私が失敗しただけで、皆が死ぬの?何でよ!!!!!
「こんなの、おかしいよ。私が死んだのが悪かったの?あの時、あの時避けてれば良かったの!?私のせいなの!!?」
「キンちゃんのせいじゃない、スサノオが邪魔しなければ、うまくいってたって、天照言ってたもん。キンちゃんは悪くない!!」
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……………………………もう誰も死なさない、絶対に。皆を守る、守ってみせる。その為なら、何をしたっていい!!!!!!!
「キンちゃん………………」
「他の皆はこっちにこれたの?」
私の言葉に白雪が複雑そうに言う。
「鐵さんとセツさんは、断ったって。金一さんも、これも運命だって、『あっちに爺ちゃんと婆ちゃん置いてけない』って言ってたみたい。他の皆は、こっちに来たって、元々キンちゃん以外は予定外の人達で、アリアが緋緋神として殺された後……………天照に直談判して、無理矢理通したみたい」
「そっか…………………白雪、私のことはあかりって呼んで」
力がいる、誰にも負けない力が。
「分かった、私も志乃って呼んで?」
私一人の力じゃ無理、皆が強くならなきゃダメなの。最初の
「分かった。志乃、私強くなるよ、今度は絶対に失敗しない。」
まずは顔洗わないと、目元が真っ赤だもん。
「志乃、顔真っ赤だよ?」
「あかりも真っ赤だよ、顔洗わないとね?」
その後は、二人で洗面所で顔を洗って、急いで家を出た。先に行ってる先輩二人に追い付かないとダメだし。
「ほら、あかり速く速く!」
身長差のせいか走り込みの練習してないからか、志乃の方が速い。前世だと私の方が高くて速かったのに、何か悔しいなぁ。胸も志乃の方がおっきいし。
「ちょっと待ってよ!速すぎ!」
むぅ、こうなったら、少し疲れるけど能力を使おっか?発動キーはえっと、どうしよう…………学校の連中を思い出して、怒りにしよう。
………………………………ブチッよしきた、今メッチャ機嫌悪いわ、私。
「待てぇぇぇぇい!!」
桜花は使わなくていっか、リミッター外せたしちょっとだけ本気で走れば、追い付けるはず!!
「!?え、ちょっとあかり!?速すぎるでしょ!!何したの!?」
「にひひ、裏技だよ、先に駅行ってるねぇ!!」
あっと言う間に志乃を追い抜いて、爆走する。ハッハァ、どうよこの速さ!
これやった後はメッチャ疲れるし、筋肉痛になるから、本当は訓練前にしちゃ行けないんだけど、これからどんどん強くならないとダメなんだから、これくらい出来て当たり前なんだよ!!
「待ってってばぁ!!」
!?
志乃何で追い付けるの!?
「嘘でしょ!?同年代に追い付かれる事無かったのに!!」
「私も、裏技だよ、あかり」
「むぅ、魔術ってズルいよ!」
「ちゃんと努力必要なんだから、ズルくありません!」
ぐ、なるほど、つか、急いで走ってるせいで、もう駅に着いちゃった。
「家から歩いて十分とはいえ、速くない?」
「五分もかかって無いね、目指せ二分!!」
いや、それはもう車だよ。
私に人を辞めろと言うのか、志乃は。
「それはもはや車だよ。それよりほら、もうすぐ電車来るよ!」
「あ、ごめんあかり、Suicaチャージしてなかった!」
おうふ、そこでつまずくの!?ってか、あるある過ぎて何とも言えない。志乃ちゃんとチャージしときなよ、お金は有るんだから。
「もう、速くしてよね~」
しょうがないから少し改札口で待つと、慌てた志乃が改札を通ってきた。
「ゴメンね、電車は?」
「もう来るよ、速く行こ!」
ホームに行くともう電車が来てて、ドアが開くところだったから、急いで二人で入る。
「そう言えば、白雪先輩からメールきてる?」
あ、微妙な顔してる。そりゃさっきまで白雪って呼んでたんだから、違和感あるんだろうけど、そんなこと言ったら私、キンジに家族愛感じてる訳で………何かもう思考がグダグダしてきたなぁ、お腹空いてきた。
「あ、きてるよ。えっと、駅前で、黒服の女の人の迎えが有るから、そこから訓練する所まで、おくったもらうみたい」
ほへぇ、やっぱりこれって、見せられないお金なのかな?白雪先輩のバックは日本政府で間違い無さそうだし。怖いなぁ、その黒服の人も超が付くぐらい強いんでしょ?
「そっか、志乃、やっぱり白雪先輩って、
「ここじゃダメ、今度私のお家で話すから………ね?」
ハーイ、分かりましたぁ。変なこと言って国に目を付けられるのは御免だしね~。
志乃のお家も気になるし、いっそ休日一日使って、遊び倒そうそうしよう!!
「じゃあさ、今度一緒に買い物しようよ!」
「うん、良いよ!」
イヤッホー!!志乃とお買い物キターー!!!
アイドルとお買い物だよ!ののかも連れてって良いかな?良いよね!!
「ねぇねぇ、ののかも連れてきて良い!?」
「妹さんだっけ?大丈夫だよ~」
志乃も機嫌良いし、キタコレだよ!やったーののか志乃のグループ好きだもんね、絶対喜ぶよ!!
「ふんふふ~ん♪どこに行こっか……………あ、お台場行かない!?」
生まれ変わってから、お台場行ったこと無かったんだよね、そういえば。
高校に行くまでまだ時間はたっぷりあるし、いつかは毎日通う事になるとしても、一日位、遊び倒しに行っても良いでしょ?
「お台場が良いの?」
「うん!ののかも喜ぶよ、海が好きだから!!」
「妹さん、海が好き何だ?じゃあ今度三人で行こっか、沢山遊びましょう!!」
『まもなく~〇〇駅、〇〇駅です。お電車降りる際は、足元にご注意のうえ~………………』
あ、電車もう着くみたい。
「もう着くみたい、速いね」
「そうだね、走っても結構かかるから、便利だよねぇ」
二人して年寄臭いなぁ、お婆ちゃんみたい。いや、今時のお婆ちゃんでも、子供の時から電車乗ってるか。私達どれだけ時代逆行してるんだか、アハハ
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あかりちゃん 特訓!深刻な若者の人間離れ!!?
って言っても、いつものはそんな量が無いですけどね。
志乃と話しながら駅を出ると、駅前のターミナルに黒塗りの、いかにも高級車な感じの車が横付けされてた。
そういえば、女の子になってから、車の名前とか全っ然、覚えられないんだよねぇ、ロボとかいかにもな機械系も、名前があやふやだし、料理の名前とか、服の名前の方が直ぐに覚えられるんだよね、どうしてだろ?
「間宮さんと佐々木さんですね?訓練施設まで送迎します」
高級車の近くに立ってた黒スーツの、キレイな女の人が、駅から出てきた私達に話しかけてきた。事前に分かってたけど、ちょっと落ち着かないなぁ、周りの人達も、遠巻きに物珍しそうに見てくるし。
うぅ、何で志乃は平然としてるのよ!
やっぱり前世から、こういうのって乗り馴れてるの!?
「よろしくお願いします!」
志乃が軽く会釈をするだけなんだけど、私は緊張してるのもあって深く御辞儀した。
「そんな緊張しなくて大丈夫ですよ?」
私が緊張してのを、黒スーツの女の人が心配してくれた。まぁ、車酔いされても嫌だだろうし、型の力を抜こう。
「あ、はい。ありがとうございます」
取りあえず笑顔で返事です。笑顔が嫌いな人はほとんど居ないから、初対面には常に笑顔を心掛けるんだよ!
誰だって、仏頂面より笑顔の方が好きだもんね…………キンジももっと笑えば良いのに、そうすればネクラとか昼行灯何て呼ばれないはずだよ。キンジが笑ってる所も、金一さんに似てイケメンだから、絵になるもん、前一回笑った所を見て、自分の前世のイケメン度に、度肝抜いたからね?ビジュアル系みたいな、そんな感じのイケメンだよ、キンジは。
黒スーツの女の人が開けてくれたドアで、後部座席に志乃と並んで座る。ちょっとして黒スーツの女の人が…………言いにくいな、黒スーツの人でいっか。
その黒スーツの人が運転席に座って車を発進させるんだけど……………メチャクチャ静かで全っ然揺れないんだよ!!しっかり窓の外は景色が流れてるし、ホントに少しだけ揺れてるかも?って感覚はあるから、動いてるのは確かなんだよ!?なのに全っ然座ってるだけじゃ分かんないの!!この人すごいよ!こんなに上手い運転、体験したこと無いもん!!
「十時頃には到着しますから、お昼はあちらで準備されてるそうです」
「ありがとうございます」
お昼まであるんだ、どんだけ至れり尽くせりなんだろ、スゴい厚遇されてるよ。ちょっと怖いくらいだし。
「佐々木さん、私のこと、覚えてますか?」
あれ?この二人って、知りあいなの?さっきから初対面みたいな対応だったけど。
「はい、宮内庁直下の白雪先輩の同僚の方ですよね?お名前は未だ伺って無かった気がします。間違っていたら、すいません」
ありゃ、本当に知りあいなんだ。すらすら答えてるよ、志乃。つか、今宮内庁って単語聞こえたんだけど、マジすか?本当に宮内庁なの!?白雪先輩の同僚って何!!?あの人どれだけ隠し事してたの!!!?
「いえ、大丈夫ですよ、合ってます。私は
「ええ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。ね、あかり?」
ちょっ!?いきなり振らないでよ驚くよ!!
慌てて二人の話に合わせる。
「あ、うん!私も、よろしくお願いします」
「うれしいです、将来有望なお二人と知り合いになれて」
え?そんな認識なの?もしかしなくてもメッチャ期待されてる!?私、そこまで強くなれる自信無いんただけどなぁ。前世の身体なら未だしも、今の身体じゃ能力も身体機能も戦闘に関しては負ける。
唯一勝ってるのは能力の発動のしやすさ位かな?これも、コントロール出来なきゃ、ただの暴走なんだけどね。
「期待には答えますよ、私もあかりも、そのくらい出来なきゃダメですから」
うへぇ、強気だなぁ志乃は。う~ん、でも確かに、その位出来なきゃダメかな、
「はい、私もSDA総合ランキング上位狙ってますから、強くなるだけなら、期待に答えます」
「それは、楽しみですね。この国は先進国の中でも、超人が少ない。
!?やっぱりこの人、超人レベルの人なんだ。
ってかやっぱり白雪先輩って、何者なの?この人の同僚何でしょ?…………むぅ、星伽神社が怪しい、スゴく怪しいよ。絶対何かあるでしょ!?
殻金、確か緋緋色金に着いてる、安全装置みたいなものだったよね?あれを外したのはヒルダだけど、事情を知ってる私と志乃なら、事前にヒルダの行動を止められる。
そうなれば、アリアが苦しむことは無くなる。殻金を外された後、時々アリアが苦しそうに胸を押さえて踞ってたの、知ってるんだから。本人は隠したがってたけど、同じ部屋で暮らしてれば、嫌でも分かるわよ。
「ちょっとテンション上がってきました。じゃあ、しっかり捕まってて下さいよ?」
「ふえ?」
「ッッッ!!!!?」
私が考え事してる間に、何か話し進んでたみたいで、佐々部さんがいきなり車をとばし始めた!!
ちょっと!?今までの安全運転はどこ行ったの?明らかにヤバイ速度出てるでしょ!!?
慌ててイスにしがみついて、外の様子を確認すると、何と山中を爆走してるみたいで、スッゴい音と共にメッチャ跳ねる。うえっぷ、酔いそうだよ、うぅ。
「口は開かない方が良いですよ、舌を噛む。なに、少しの辛抱ですから!!」
少しってどれくらいなのぉ!!明らかにこの速度山で出しちゃダメな速度でしょ!?うわぁ!!メッチャ揺れる!!!?
「う、キツ、いぃ、志乃、ぉ」
声を出すけど、揺れと気持ち悪さで、途切れ途切れになって、何か呻き声みたいに聞こえる。
「わ、私も、ちょっと、余裕、無い、よ」
志乃も限界そう、うぅ、酔い止めの魔術とか無いの!?無いから酔ってるんだね、ゴメンね!!
………うっぷ、ヤバ、もう、む
「着きましたよ、二人とも、大丈夫ですか?…………???」
その声が聞こえたと同時に車を飛び出して、森の中に二人して駆け込んだ。……………………何があったかは、黙秘権を行使する。乙女の意地なの、こんなこと、あっちゃいけないの。
「これくらい馴れないと、これから大変ですよ?」
何て言いながら、ミネラルウォーターを渡してくれた、佐々部さんに、ちょっと恨みがましい目線を送って、口をゆすぐ。
「うえぇ、私、乗り物強く無いんですぅ」
近くで志乃が唸ってる。私と同じようにミネラルウォーター渡されてたから、大丈夫だと思うけど、強く無かったんだ、乗り物。
「馴れですよ馴れ。経験すれば、嫌でも馴れます」
嫌だよそんな経験、いったいどれだけこんなことになるんだか…………うっぷ。
「ほら、いつまでもこんな所にいないで、施設に移動しますよ?」
誰のせいだと………うぅ、気持ち悪い。
私と志乃二人して、ふらふらしながら佐々部さんについていく。これじゃあお昼キツいんだけど、ちょっと休憩させて。
そんな事思いながら施設の玄関に入ると、ここは体育館みたいになってるらしく、中は靴を脱いで、下駄箱みたいな所に仕舞って、専用の内履き…………スニーカーみたいなのを履いて、中を歩く。
山奥だから、結構寂れてるのかなぁ何て思ったら、以外としっかり整備されてて、人の出入りも多いみたい。…………出入りしてる人皆、強そうだけどね。
「あ、きたきた、こっちこっち!」
廊下を歩いてると、廊下に備え付けてあるベンチに座ってた白雪先輩が、気付いたのかこっちに手を降ってくれた。
「お待たせしました~」
「白雪先輩~」
二人して顔色が悪かったから、白雪先輩が駆け寄って具合を確認してくれた。
あぁ、白雪先輩が女神様だよ、この人が尊い、何かもう報われてほしいよ、アリアより応援するよ、この人が報われないとか、不条理でしょ。
「ありゃ、元気無いね?どうしたの?」
心配そうにしてる白雪先輩に、佐々部さんが経緯を話してくれた。
「ちょっと車をとばしたら、この状態になってしまって」
「天誅ぅ!!」
話し終わった瞬間、白雪先輩がお札を佐々部さんに投げる。
あれ?何か物騒だよ、白雪先輩?
「のわ!?私は貴女とは相性が悪いんですってば!!」
「相性位どうとでもなるでしょうが!頼んだのは私だけど、いい加減その爆走癖治しなさいよ!!」
そう言って燃え盛るお札を佐々部さんに投げまくる白雪先輩、よく見ると髪をいつもまとめてる、封印のリボンが無い……………あぁ、白雪先輩もそうなのか、う、悲しい、キンジに平穏は一生訪れないんだね、私じゃなくて良かった。
「貴女も、親しい人に関する暴走癖を改めて下さいよ!!」
あ、佐々部さんがお札を全部叩き落とした。何かパンパン、腕が動く度になって、佐々部さんの髪が風圧で揺れてるから、あれ音速越えてるよ、キンジの血筋以外で、音速越えてる人、初めて見た。以外と居るんだなぁ、結構前世だと自慢だったんだけど、ちょっとショック。
「そう言えば貴女とは未だ決着付いてなかったね、姫奈」
「そう言えばそうでしたね、緋巫女」
な、何かヤバイ空気出てるんだけど?
「二人とも、キンちゃんは第二トレーニングルームにいるから。私は
「そういう訳ですので、私はここで失礼しますね。お二人がこちら側に来る日、楽しみに待ってますよ」
怖い、怖いよ二人が!!?
二人が離れて暫く、志乃と二人でぽつんと残されて、二人で体調が戻るまでベンチで休んでたら。目の前にスポドリが出てきて、そっちを見ると、キンジがいた。
「お前ら来てたのか、白雪はどこ行ったんだ?ほら、取り合えずこれでも飲め、お前ら顔色悪いぞ?」
いつも通り過ぎるキンジに、思わず抱き着いた私は、悪くないもん。
「うぅ、キンジ先輩ぃ~」
だって、ここに来るまでに今日一日で色々あり過ぎたんだから、これくらい良いでしょ?役得よ役得。志乃が不満そうだけど、
「ったく、しゃあないな、これじゃおっきい赤ちゃんだ」
キンジが何勘違いしたのか分かんないけど、今は抱き止めて頭撫でてくれてるから、何でも良いや…………むふふ、安心する匂い、何かポカポカしてきた。キンジは女の子を安心させる匂いがする。キンジはあったかいなぁ、皆が本気になるのが分かるよ、確かに離れたくないなぁ、ずっと一緒が良いってなるよ。
「ん、ありがとうございます、キンジ先輩。もう大丈夫です」
「よく分からんが、落ち着いたなら良い。それで、白雪は?」
「私達をここまで送ってくれた、佐々部さんと訓練しに行きましたよ」
キンジの質問に志乃が答えると、キンジが納得したような顔をする。
「なるほど…………二人とも、俺は白雪達の訓練見学するけど、二人も来るか?」
その言葉に二人して頷く。体調も大分戻ってきたし、この施設の設備とかも確認したいし、丁度良いからね。
「なら、着いてきてくれ、白雪が暴れられる所は少ないだろうしな」
そう言って先導してくれるキンジ、ここに来るのは初めてのはずなのに、もう構造覚えたの?スゴい。
すいすい進んでくキンジについて、『観戦スペース』ってネームプレートに書かれた部屋に入ると、ものすごい爆音が鳴り響いてた。
は?何この音!?って!!!?
「な、何ですかあれ!!!?」
「あ、白雪先輩本気になってる。この施設もつのかなぁ」
「俺も一回見たけど、あれは勝てる気がしない」
三人でそんな事言いながら、分厚い強化ガラスの先で、超スピードで動き回る佐々部さん相手に、
いや本当に、何あれ!!!?
火は温度が上がるほど青白くなるって聞いたけど、真っ白って何!?下手しなくても温度が四桁越えてるでしょ!!!!?
どうやって纏ってるのよ!!普通の火でも肺が焼ける!!!!!!
「天誅うぅぅぅぅ!!!!!!!!」
「三速
あ、佐々部さんが見えなくなった。あっちもあっちで、何でそんな速度出せるの!?もうそれ音速越えてるじゃない!!!そもそもそこまで速度出すと、脳処理が追い付かないでしょ!!?いくら処理を加速させてるとはいえ、それこそ電気信号を光信号に変える位しなきゃ無理だよ!?目が追い付かないもん!!!
「ぐッッッ!!………………まだまだぁ!!!!」
うわ、黒雪先輩になってる、怖いよぉ、思わず隣のキンジの裾を掴む。キンジもちょっと引いてるよ、そうだよね、黒雪先輩怖いよね、分かるよ、スゴく。
「あの状態、十分しか戦闘出来ないんですけど、よく粘りますね。佐々部さんも、あれは加速系統の魔術ですね、比較的簡単なものですけど、あの練度は見たこと無いです。有り得ない位善戦してますし、ちょっと驚き。一応、白雪先輩私と同じで
志乃が二人のこと教えてくれるけど、十分もあればそれこそ文字通り、十分な火力だよ、一人で小規模の大隊なら、制圧出来るんじゃないかな?
「私だって、伊達や酔狂で、
あ、ついに移動に衝撃波が追加されたよ、佐々部さんが移動した後に、炎が爆風で吹き飛んでる。もう、どっちも人の領域じゃ無いよ。超偵に武偵は勝てないって、こういうことか。
「キンジ先輩、私達の訓練って、必要なんですかね?」
ってか何かもう、ここで出た情報だけで、私達司法取引しないとダメなんじゃない?冤罪で無期懲役とか、余裕でありそうなんだけど。あ、あはは、あははははははははは、キンジが前途多難過ぎて辛い。よく高校二年まで生きてたな、前世の私。
「聞くな、俺もちょっと疑問だ」
「えっと、一応私達は制限時間が短くてですね、長期戦は無理なんですよ?」
呆れてる目で白雪先輩を観てた志乃が、二人から目を離して私達の話しに入ってくる。
む、ちょっと残念。
「一応聞くが、お前の全力戦闘は、何分持つんだ?」
「五分です。
白雪先輩、パトラと同じ
長期戦ならパトラにも勝ち目はある感じかな?念入りに準備して、対策をしっかり練ってれば、何とかって感じ。
「それだけあれば、戦闘は十分だろ、本当に俺らの訓練って意味あるのか?」
そんな感じに呆れてる私とキンジに、カツを入れるように志乃が言った言葉に、私は冷や水を掛けられたような思いになる。
「今これだけ強くても、一年後までになにもしなかったら、あかり以外、皆死ぬんですよ!?気合い入れて下さい!!」
そうだった、私達の相手は、
つか、よく考えると、白雪先輩の能力が活躍したのって、新幹線の時以降、全く無かった気がする。かなめには負けてたし。うぅむ、明らかに前世より強くなってるんだけど、その辺どうなってるんだろ?
「分かったよ、死にたく無いからな。あかり、戦闘訓練だ、そろそろここも空くだろうしな」
そう言って、準備運動を始めるキンジに返事をして、私も準備運動をする。
「はーい、中の気温戻るまで、ちょっと時間かかるかな?」
「空調設備が温度でやられてなければ、大丈夫だと思いますよ。今もこの部屋は冷房全力ですし、もう白雪先輩がガス欠ですから、後二十分位待ってて下さいね。この部屋に、中の状況をコントロールするコンソールがありましたから」
志乃がコンソールを弄ると、中でガス欠でぶっ倒れた白雪先輩と、同じく疲労困憊で寝っ転がってる佐々部さんに、スプリンクラーから水が掛けられてた。うわぁ、水が蒸発して、蒸気になってる、中どれだけ暑いのよ。
…………………これ、結構不味くない?何か二人とも動かないんだけど、ちょっと!?二人ともあんな暑そうな場所で気絶してんの!!?
「冷房も最低温度でいれ直して、スプリンクラー作動させて、熱気を逃がすために窓も開けましょう、本当に、よく二人ともあんな元気でしたね!?中の気温みたら40℃越えてますよ!!二人が危ないです!!!」
その声に反応して、キンジが中に入るための扉を開ける。中からとんでもない熱気が入ってきて、一瞬しかめっ面になると、中に躊躇なく入っていった。
「あかり!」
「了解です!」
中からキンジに呼ばれて、急いで担架を志乃と二人で持って行く、中はサウナより暑い、スプリンクラーの水が蒸気になってるせいで視界も悪いし、何で訓練で死にかけてんのよこの二人は!!
「白雪は俺が担ぐ、お前らはその女性を頼む!」
キンジが白雪先輩を担ぎながらそう言って、もうダッシュで部屋を出る。私達も佐々部さんを担架に乗せて移動するんだけど、結構重い、人は自分より重いのは原則持てないの!!私35㎏!!!佐々部さん私よりおっきい白雪先輩より高いんだから、私より重いにきまってんじゃん!!!!
「ふぐぅ、重いぃ!!」
「が、頑張ってあかり!!」
ええい、志乃は魔術でも使ってるのか楽そうで良いね!!!私はキツいんだよ!私も魔術使いたい!!…………………しょうがない、本日二回目、能力発動、発動キーは怒り………………………何で二人とも訓練で気絶してんのよバカァ!!!!!!!!
「ええい、ばかすか景気よく戦って、気が済んだら後始末丸投げとか………………ふざけんなバカァ!!!!!」
「わ!?ちょっとあかり待って、いきなり速いよ!!」
志乃の叫びを無視して突っ走る。
口でそんなこと言っても、しっかり付いてこれるでしょ?今朝私と同じ速さで走れたんだから。
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あかりちゃん 私あかり お昼休憩
だが未だ平均以上、いつもよりちょっと長いです。
佐々木さんを担架に乗せて、急いでキンジを先頭に部屋を飛び出して、私達は救護室に駆け込んだ。
手当てをするからと、お医者さんにキンジが追い出されて、佐々木さんはキンジにくっついて部屋を出て、付き添いで私が残って二人の様子を見てた。
……………………はぁ、これじゃあ私達三人訓練出来ないじゃない、ここに態々来た意味は何だったのよ………何てぼやいてると、白雪先輩が起きて、私に話し掛けてきた。
「ゴメンねあかりちゃん、私ちょっとはしゃぎ過ぎてたみたい」
落ち込んでる白雪先輩が、何かしおらしくて、違和感がする。白雪先輩は確かに大和撫子だけど、こうじゃなくてもっと、自信が有って覇気に満ちてる感じ何だよ!武偵は縦社会でしょ?何で後輩にそんな姿見せてるんですか!!前世の先輩達だったら、もっと威厳ありますよ!!!
「本当ですよ。縦社会の武偵業界で、後輩に尻ぬぐいさせるとか、前代未聞です!」
あ、白雪先輩が落ち込んだ、つか、何で私はこんな喧嘩腰なのよ!?普通に励ませば良いじゃん!!
「本当にゴメンね………私、武偵失格だよね」
何か昨日の放課後から、白雪先輩に対する評価がどんどん壊れていくんだけど…………まぁ、こういう白雪先輩も、好きだけどさ……………いつもみたいな白雪先輩の方が良いんだけどなぁ。
「何しおらしくてるんですか、似合わないですよ………いつもみたいに自信満々で、私のこと助けてください!…………調子が狂います」
恥ずかしくなってそっぽ向く。何で私はこんな恥ずかしいこと言ってるの!?穴があったら入りたい。こういうのはキンジの役目でしょ!!
「うん、あかりちゃん、ちょっと良い?」
白雪先輩がベッドから起き上がって、私に両手を広げてジェスチャーしてくる。
え?なに?しろと?ハグしろと!?
いや、同姓同士だから、あんま抵抗無いけどね?うん。やりますよ、やれば良いんでしょ!?
「いきなり甘えん坊にならないで下さい」
せめて少し位は抵抗しても良いよね?…………抱き着くと何処がとは言わないけど、女としてのプライドとか、粉々になるから、嫌なんだよ!
「ゴメンね~、これでおしまいだから。ちょっとだけギューっとさせて、あかりちゃん」
私が覚悟が出来てないのを見て、白雪先輩が強引に引っ張って私を引き寄せる。
「むぐっ!?」
「あかりちゃん、妹達と同じぐらいだから、抱き着くと安心するんだよね~」
うぅ、キツい、大きいとは分かってたけど、こんなに大きいなんて、この胸が未だ成長中何でしょ!?前世で見てたことあるけど、こんな理不尽の塊…………世の中は理不尽と不条理に溢れてるよ!!!!
ぐぅ………憎い、憎くて仕方無い。私はお母さんに似てないせいで、こんななのに。駆逐艦と戦艦並みに差があるじゃん!!!!!!
世の中の巨乳が憎い、私はこんな悲しい現実認めないから!!キンジは私でも
「あれ?あかりちゃん何で泣いてるの!?引っ張った時何処か痛くしちゃった!!?」
「……………心が痛いです」
「え!?抱き着かれるの嫌だった!!?」
いや、先輩何処がとか言わないけど、柔らかいし良い匂いするし、抱き着かれるとお姉ちゃんみたいで安心するけど、違うのそうじゃないの、
「違うけど違いません…………うぅこの脂肪は無駄の塊だもん、戦闘で邪魔だから、別にいらないもん、平気なんだから」
「よく分かりますよ、あかりさん」
後ろから声を掛けられてビックリして白雪先輩を振り払ってそっちを見る。佐々部さんがベッドの上で、上体を起こしてこっちに同情するような目で見た後、サムズアップしてきた。
佐々部さんの小丘は、佐々部さんがサムズアップしても、ピクリとも動かない。何故かそれに無性に安心感を抱いて、思わず佐々部さんは抱き着く。
「佐々部さあぁ~ん!!世の中は理不尽ですぅ!!!」
「えぇ、そうです!どんなに努力しても、理不尽には勝てないんです!!」
私の叫びに、佐々部さんが涙ぐみながら同意してくれる、うん、そうだよね!努力で何とかならないものは沢山あるんだよ!!
「えっと、二人とも、どうしたの?」
困惑してる白雪先輩に、二人して叫ぶ。
「貴女には分からないでしょう!?」
「そうです………持てない者の気持ちが!白雪先輩には分からないんです!!」
二人してめそめそ泣いてると、ノックの後キンジの声が聞こえてきた。
「中入るぞ?」
ろくに確認せずに入って来たバカキンジは、朝の事を学んでないと見えるね、昨日もやらかしてたのに、後でお説教しないと。
「キンジ先輩、確認ちゃんと取ってくださいよ」
「ごめんごめん、二人が心配だったから…………って、どういう状況だ?」
ぐすっ、何別世界見るような目で、私達のこと見てるのよ!そんなに異様!?私は起きたばかりの佐々部さんに抱き着いてるだけだし、佐々部さんと私は白雪先輩に対して愚痴ってるだけだし!白雪先輩何かあたふたしてるけど、私は知らないし!!……………………………あ、うん、これは異様な光景だわ。自分の知らない人と、戦妹が抱き締め合って、しかも白雪先輩に二人して愚痴ってるとか、キンジには未知の世界だね、うん。
「キンちゃ~ん!!あかりちゃん取られた~!!!」
そう言ってキンジに突撃する白雪先輩、キンジは白雪先輩が走ると揺れる
「分かったから、抱き着くな!あかりも、相手はさっきまで倒れてた人だぞ?無理させるな」
あ、そういえばそっか、佐々部さん熱中症で倒れてたんだっけ?いや、完全回復してるから、忘れてたよ。
「私は魔術を使って回復しましたので、平気です。それよりご飯にしましょう、私はカロリーを魔力に変換するので、沢山食べないとダメなんですよ」
そう言って私の頭を撫でて、私から離れて入り口に向かう佐々部さん。さっきまでの取り乱しっぷりが嘘みたいにクール何だけど、あれ別人じゃない?さっきまでと同一人物とか、全然思えないんだけど。
「ここのご飯ね、日替わり定食が美味しいんだよ!全部只だから、沢山食べられるよ、キンちゃん!!」
「だぁあ、腕を引っ張るな!あかり、早くしないと置いてくぞ!!」
「待って下さいよキンジ先輩!!」
置いてかれるところだったから、急いでついていく。食堂は入り口近くにあって、学食みたいに食券を選んで、カウンターに渡すタイプみたい。
色んな年代の人が、トレーを持って一列に並んでるのは、ちょっと異様な光景で、ここが本当に国の施設だって事が分かる。
白雪先輩とキンジは日替わり定食、私と志乃は親子丼で……………佐々部さんは日替わり定食にカツカレー、イチゴパフェも頼んでた。カロリーが必要って、本当何だ、何かそう考えると魔術って大変なんだなぁ。
「そう言えば、佐々部さんはカロリーですけど、志乃と白雪先輩は何が魔力になるんです?」
「私は糖分ですね、白雪先輩は何でしたっけ?」
「う~ん、実を言うと無いの、魔力が回復しやすいカテゴリの食べ物」
え!?
「じ、じゃあどうやって回復してるんだ!?まさか回復しないとか」
あ、キンジも慌ててる。そりゃそうよね、回復するものが無いとか、それじゃ使い捨ての能力だし、全く回復しないとかは無さそうだけど、食べ物以外で何があるんだろう?
他の魔術以外の異能だと、
「あ、キンちゃん安心して?私の魔力は精神状態の変化によって、回復量が上がるの」
せ、精神状態?じゃあやっぱりエッチな事で回復するの!!?
「ち、因みに、どんな感情で回復するんですか?」
恐る恐る、追加で頼んだ餡蜜食べながら聞く。この餡蜜美味しいなぁ、いくらでもいけそう。
「えっと、特定の感情で回復って言うよりも、ポジティブかネガティブかで分かれるの。ポジティブの方が回復量が上がるんだけど、一概にそうって訳じゃなくてね?ネガティブでも特殊な精神状態とかなら、回復量が上がる事があるの。条件とかは、よく分かんないんだけどね」
へぇ、
で、志乃は何か顔赤くしてるけど………これはあれか、私の予想当たってたか、志乃に聞くことが増えたなぁ、フフフ。
「そもそも、そう言う話しは密室で、盗聴の心配が無い時に話す話題です。外に聞かれないようにするの大変なんですからね?」
あ、それでさっきからバクバクバカ食いしてたんですか、佐々部さん。
補給した端から、音を消す結界に魔力が流れてると、何かごめんなさいです。
「あ、すいません。気を付けます」
「あかりさんは素人ですし、これから何ですから、次から気を付けてもらえれば良いです。ただし、そこの二人、気が抜け過ぎですよ。国の施設で、認められた人間しか居ないとはいえ、もう少し周りを注意するべきです」
「す、すみません」
「姫奈に言われたくな~い。姫奈だって今朝、車で暴走したじゃない、か弱い女の子二人巻き込んでさ」
あ、白雪先輩が不貞腐れてる、珍しいな。最近、皆の色々な所が見えて、何かギャップ萌えがスゴいよ、萌え死にそう。
「こら、反省しとけ、白雪」
「むぅ、キンちゃんが言うなら、する」
何か幼児退行してない?白雪先輩。いつもより幼い感じで、ちょっと可愛い。いつもは可愛いより美しいとか、そっち系統の人だから。あ、キンジも顔真っ赤にしてる!やっぱり甘えられるシチュが良いのかな?確かに経験的にそっちも沢山あるなぁ。年下と限らず、甘えられるのに、男の人は弱いんだろうね、多分。
「そろそろ私達の訓練もしたいです、先輩方」
咳払いして言うと、二人が赤くして目線をお互いから逸らす。
これ、アリアがつけ入る隙が無さそう何だけど、大丈夫なのかな?
大丈夫だと思うけど、もしアリアが振られたら、キンジイギリスに殺されそうだよ。あっちだから、フリーメイソンとか、00機関とか、絶対狙ってくるよ。
「良いですね、二人の実力は丁度同じくらいのようですし、面白そうです」
三杯目のパフェを平らげながら、佐々部さんが品定めするように私と志乃を見る。
う、何か人に見られるの苦手、生き返ってからだけど、何か視線が肌にチクチク刺さるみたいな感覚があって、やなんだよね。
何かキンジにはそれ感じないんだけど、やっぱり元々私がキンジだったのが関係するのかな?
「私も、訓練はしたいです。時間は未だ有りますし」
「決まりですね、食事が終わったら始めましょうか。皆さん何食べます?」
いつの間にか増えてるラーメンとオムライスに、軽く引く。カロリーが必要って言っても、毎食これなの?食費だけでいくらするんだろ、もはや何かの大会見てる気分だよ、大食い選手権とか。
「じゃあ、デザート追加で頼もっかな、志乃は何食べる?」
糖分が必要なんだよね、ならお餅とかかな、あ!赤福餅あるじゃん!!あれこっちだと中々手に入らないけど、スッゴい美味しいんだよねぇ、お餅が本当に柔らかくて、いくらでも食べれちゃうんだよ。
「あかりは決まってるの?」
あ、志乃悩んで決めらんないんだ、なら私と同じので良いよね?
「赤福餅にするの、志乃も一緒に食べる?」
「うん、そうする!」
「キンちゃんはデザートいる?」
「俺は緑茶飲んでるから、甘いもんあんま得意じゃない」
「そっかぁ。あ、お芋のタルトあるよ、これなら大丈夫じゃない?」
「じゃそれにするよ」
皆してテーブルにあったメニュー表みて、食べたいもの決めるの、スッゴい新鮮だなぁ。前世で同い年と食べてて、こんなに平和なのって、武藤と不知火の二人だけだったし……………理子が荒らしてアリアがキレて、レキは無言で白雪は暴走、ジャンヌはドリンクバーで混ぜて変なの作るし、皆変な所でトンチンカンだし、本当に酷いメンバーだね、ハハハ。
………………キンジに皆を逢わせて良いのかな?キンジが不幸になるだけな気がしてきた。後私がキンジの横にいる時間が減るよ。
でも、そうしないと皆が不幸になるし、もし私が理子と逢わなかったら、理子はブラドとヒルダのペットのまま、アリアはイ・ウーと一人で戦う事になる。白雪先輩は救えてるみたいだけど、これは志乃が絡んでそうだし、私と志乃が皆を救うために動かないと、まずはキンジを前より強くすることだよね。
「じゃあ取りに行きましょうか、お二人はここで待ってて良いですよ。量が有りますし、私とそこの二人で取ってきますから、荷物番お願いします」
ま、ここで盗る人なんて居ないだろうけど、席は結構埋まってるから、席取られないようにってことかな?
「私、さっきまで気絶してたんたけど~」
「それ口だけでしょう?私より炎に適性あって、熱中症何て無様過ぎますよ。少しは体鍛えてください。何ですかそのだらしない体つき、特に胸」
「むっ!貴女みたいな筋肉の塊と一緒にしないでよ、後後半は唯の僻みじゃない!!」
白雪先輩、佐々部さんと喋る時何か年相応だよね、普段より自然って感じがするよ。
「二人とも、仲が良いんだな」
「「これと一緒にしないでよキンちゃん(しないで下さい)!!」」
本当に、息ピッタリだなぁ。本人は絶対否定するんだろうけど、実の姉妹みたい。
「佐々部さん、星伽神社の分家の人で、昔から白雪先輩と仲が良いんだよ、前世では疎遠になっちゃったてたんだけどね」
星伽って、歴史は二千年だっけ?
そこまで長いと、本家も分家も無いと思うんだけど、天皇と同じかそれ以上に長い家とか、下手しなくても世界最古クラスの家でしょ?魔術師は年代を重ねるほど強くなるみたいだし、そりゃ強いわけだよ。
その人が分隊長って、どれだけ連隊の上の人達が化け物か、想像したくないけどね。存在自体が日本の憲法に触れてるような組織何だし、政府の最高機密のひとつでしょ?この年で司法取引かぁ、何枚書類書けば良いんだか、はぁ。
「私、この年で司法取引するのかなぁ」
「前はしょっちゅうだったじゃない。慣れてるでしょ?」
「前の世界の話しはここじゃやだよ、続きは志乃の家でね?」
誰に聞かれるか、分かったもんじゃないもん。私は平和を愛してるのだよ、人間やめた人間も、心は人間何だよ。
そう言ったら、顔真っ赤にして、うつむいてガッツポーズした志乃。
な、何してるの?
「ウフフ、私、アリかもしれない。中はキンちゃん何だし、良いと思うの、うん。苦労沢山したんだから、頑張ったんだから、ご褒美あっても良いよね?バチは当たらないよ」
な、何かブツブツ言ってるんだけど、怖いよ!?
雰囲気が黒雪状態の白雪先輩と似てる、私何かマズイことしたの!!?
「そ、それはそれとして!私、負けるつもり無いからね?」
「あかり……………うん、私も負けるつもり無いから、覚悟してね」
何おう、前世と違って自己主張激しいじゃない、私の努力の成果、見せてあげる!!
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あかりちゃん 模擬戦です
こんなので良いんだろうか、分からない。
後、キャラブレが最近凄い酷い、あかりはもっとバカだ、うん。
「ふぅ………志乃、負けないからね」
「あかりこそ、あっさり負けないでよ?」
訓練用の、貸し出されてるジャージ………がサイズ無くて、丈の短い体操服に着替えて、志乃と二メートル位離れて向かい合う。
デザート食べた後、白雪先輩達が戦ってた訓練室に戻って、訓練を再開した。
最初は私と志乃で、その後チーム戦をすることになったの。私とキンジに白雪先輩と志乃の
「二人とも、準備は良いですね?」
軽く身体を解す……………キンジによく見えるようにして、ヒス血流を高めておく。恥ずかしいけど、そうしないと次のチーム戦で不利だし、これは戦略!!
私自身も感情を高めておく。発動キーは、闘争心…………掛かり具合は二割位かな。
「「うん(大丈夫です)」」
返事をしつつ、志乃を観察する。
志乃は私と同じ体操服姿で、持って居るのは模擬刀と、腰にホルスターが着いてて、入っているのはグロッグ17。ただ外観が少し違う、スライドに違和感が、多分セミ・フルオートの切り替えができる改造、弾倉には違和感が無いから、総弾数は17+1。セーフティーは外れてる。
私はタクティカルナイフとバタフライナイフを一本ずつ、腰に専用のケースに入れてる。銃はベレッタを二丁、両太腿にホルスターで入れてる。弾倉を改造して、一つの弾倉に通常17発を、25発入れられるようにしてるのと、セミ・フルオートの所を改造して、三点バースト出来るようにしてる。
お陰でお小遣いにお年玉も全部注ぎ込んで、分割払いでやっとの値段になったよ。
華ちゃんすごい腕が良いんだけど、勝手に注文に無い魔改造して、しれっとその分代金上乗せしてくるんだよね、しかも欲しいと思ってた機能ドンピシャで、料金も優しめで文句言えないのが、平賀さんより質が悪いよ。
「それでは、始め!!」
合図がなった瞬間に、距離を取る、模擬刀で殴られるのはナイフしか無い私は不利だし、二丁ある私は、一丁しかない志乃より、中距離戦闘で有利だ。
私の意図に気付いて、志乃が何か良いながら発砲してくる。小言で何言ってるか分からないけど、多分術式ってやつ。
飛んできた銃弾を、右手で腰のケースから抜いたタクティカルナイフで
銃弾は志乃が手を振ると、何かに当たったように、変形した後、その場に落ちる。
何かの魔術の発動確認、銃弾の変化から壁と推測、インターバルは?調べるためにベレッタをフルオートにして、弾幕を張る。
志乃は弾幕を全部回避……………加速の魔術と推測。ズルいなぁ本当に。
「ズルくない!?」
「結構疲れるんだから、これくらい良いでしょ!」
良くないわ!!!!
銃弾はもう主武装として使えなさそう、全部見て避けてるよ、志乃。本当に人間なの!?
しょうがない、こうなったら苦手な持久戦をしてやる。五分逃げれば私の勝ちよ!!
丁度練習が上手くいったいくつか技があるし、試してやる!!
「
撃ち終ったベレッタをしまって、もう片方のベレッタをナイフを持ち変えて抜き撃ちする。何発かの銃弾を切りつけて弾道を変えて、志乃の直前で
「な!?」
「くっ!!」
私が放った十発の弾丸は、全て見えない壁に当たって弾かれる。嘘でしょ!?同時発動!!?そんなのどう倒せば……………いや、私が狙ったのは走ってる途中の空中にいる状態だった、なら
「なら!!」
別魔術同士のインターバルは殆ど無さそう、同じ魔術の継続発動時間は?
加速の魔術は身体強化で、コンセプトからみて発動時間は長そう。壁も、攻撃を塞ぐってコンセプトなら、発動時間は長い、八方塞がりじゃない。
壁は防弾出来る強度、桜花で抜ける?いや、無闇に近付くと模擬刀が危ない。本当にこれじゃあ、
でも今の所可能性があるのは近接戦のみか、もう少し情報が欲しいけど……………よし、壁の有効範囲を調べる!
「ええい、ちょこまかと、大人しくして!!」
捕まえられなくて、苛ついてきてる。制限時間がある人は大変だねぇ?私もあるけど、この模擬戦の間はもつから、持久戦に持ち込めば、勝てると思うし。八方塞がりなのは変わんないけど、このまま逃げ切れれば!
「やっだよ~だ、ベー!」
変なこと考えられないように煽って、判断力を削ぐ。
「こうなったら!!」
お、今度は何をッッッ!!?
「危なっ!!」
景色が微かに歪んで見えて、嫌な予感に従って避けると、私がいた場所が凹んだ。何この魔術、念力か何か?
志乃が一瞬地面を見た時、嫌な予感に駆られた。
「全力で捕まえるから!!」
感覚に従って避けると、私がいた場所がまた凹んだ。
多分設置型の罠と同じだ。罠を直接相手の足元に設置するみたいな感覚かな?一瞬地面を見たのが証拠。
志乃がまた私の足元を見る、横に跳びながら銃弾を一発放ってみる。
「ッッッ!!?」
志乃が横に跳んで銃弾を避けた。速度からみて加速の魔術は使ってない。念力と他の魔術は同時に使えないみたいだね。
「まだだよ!!」
なッッッ!!?
今までより数段速くなった志乃の、上段からの振り下ろしを右に跳ねて回避。距離を取って、直ぐにベレッタを閉まってバタフライナイフを出す。今までは速度を誤認させるために、わざと遅くしてたのかな?何ていやらしい戦法!!!!
「あかり、二刀流何て出来たんだ」
模擬刀を私の視線から直線にして、長さを分かりにくくしながら、志乃は左側の腰だめに両手持ちで刀を構える。独特の構え、左手に殆ど力が入ってない、右手が基本持ち、まるで居合いね。
「やったこと無いけど、私は近接戦強いよ?」
「あら、私も
ん、何だかいきなり暑くなってきた?志乃の近くだけ、気温が違う。これは一体?
「巌流秘技、燕返し」
片手じゃ有り得ない速さで振られた下からの斜め斬りを、左手に持ったタクティカルナイフで剃らしながら、身体を刀の通る場所から避ける。熱気で目測を誤って、強引に剃らしたせいで無理な体勢になった私に、志乃が左手でグロッグを抜き撃ちしようとしてくるのを、志乃の横を勢いを消さずに転がるときにナイフの持ち手部分で弾いて止める。そのまま距離を取って、十メートル位で、志乃と向かい合う。
志乃はさっきと同じ構えで、私の事を見てた。
私は左手を下に、持ってるタクティカルナイフの刃先は斜め上に向けて、右手は上に、顔の高さでバタフライナイフの刃先は志乃に向ける。
「二人とも、強いなぁ。あかりちゃんの拳銃技能、もう普通実践で使わないような曲芸撃ちだよ、スゴいね。」
「あかりは、拳銃技能は俺と同等なんだ。近接戦は俺相手に、沢山模擬戦したお陰で、上勝ち出来る位には強いよ。それより俺は、佐々木さんの方が驚きだ。あの剣術は何だい?」
キンジ
「志乃ちゃんは佐々木小次郎の子孫、巌流の正統後継者、そこに魔術が加わって、一対一の近接戦は殆ど最強だよ」
「何にせよ、そこらのプロよりは何倍も良いセミプロですね、あの年でここまで練り上げるとは、二人が就職に困ったら、宮内庁に推薦状書きますよ私」
へぇ、志乃って、佐々木小次郎の末裔なんだ。前世でも野太刀を使ってたし、刀に縁があるんだね。
後佐々部さんその話後で詳しく、今から高校卒業後の事考えるのは、速すぎかもしれないけど、それでもコネを作るのは大事だよ。
「そろそろ時間ですし、次で決めます」
「そう易々と、やられないからね」
さっき私がナイフで弾いた時、志乃は壁を出さなかった。多分身体に近すぎるか、目に見えてない場所だったから、なら、目に見えてない横か後ろからの不意打ちで、試してみるか。
暑さで汗が吹き出す中、私がナイフを握り直した瞬間に、志乃が刀を上段に構え直しながら斬りかかる
「飛燕返し」
音速近い速度をだして斬りかかる志乃に、前世でヒステリアモードの時に見たような、モノクロの世界が視界に広がった私は、絶牢の構えを取って刀をタクティカルナイフで受ける。刃がこぼれないように注意しながら、刀を起点に、弾かれるように横に跳びながら、バタフライナイフを志乃の体操服、脇腹の所に桜花を使って投げる。
亜音速で飛んだナイフは、吸い込まれるように志乃の脇腹に直撃して、志乃の顔が歪んだ所で、桜花気味に地面を蹴って、志乃の後ろに回って、技の硬直と脇腹の痛みで隙が出来た志乃に、太腿から出したベレッタを体操服の上から押し当てる。
「私の勝ちだよ」
そう言って志乃を見ると、志乃が息を吐いて、その場で降参する。
「私の負けです。降参します」
その言葉に、私はベレッタをセーフティーを掛けて太腿のホルスターに仕舞う。
……………ふぅ、勝ったあぁ!!!!!
「この模擬戦、勝者は間宮あかり。どちらも素晴らしい動きでした」
「よくやったあかり。スゴいじゃないか!SDAランカーに勝てるなんて!!」
キンジが試合が終った後、直ぐに観戦室から出てきて、私の所に来てくれた。
「先輩!!」
ナイフを仕舞って、キンジに抱き着くと、キンジが無言で頭を撫でてくれる。
ムフフ、キンジが優しい。あぁ、安心するぅ、頭がスッゴい気持ちいい。ウフフ、今日は頑張ったんだから、もっと撫でて撫でて~。
「あかりちゃんは甘えん坊さんだね、志乃ちゃんも来ても良いよ?お姉ちゃんが抱き締めて「結構です」………グスンッそっかぁ」
「はぁ、貴女は全く、メンタルも豆腐ですか。柔らか装甲ですか」
「どっかの
「誰がカービィですって?」
「あ、ごめんなさい。まな板の方が良かった?」
「貴様、言ってはならぬ言葉を、貴様ぁ!」
「喧嘩売ったのはそっちでしょ!!」
横でライオン二頭がキャットファイトしてるけど、私はキンジにご褒美もらってるから、無視するんだよぉ。キンジィ、もっと頭撫でて?……………って、あら?
「二人とも、女性が男の前で、そんなはしたない事しちゃ、ダメだよ」
いつの間にかキンジじゃなくて、キンジの横にいた志乃に抱き着いてた。志乃も目を丸くしてるっていうかバランスが崩れて危なっ!?
「「きゃ!?」」
床が柔らかい素材でできてたから良かったものの、キンジめ、私へのご褒美をお預けするとか、今度埋め合わせしてもらうからね!!
キンジにどんなことさせるか考えてると、何か胸に違和感が……………って、何で志乃私の胸掴んでるの!?
「ちょ、志乃!?」
「わ、ゴメンあかり!!」
驚いて直ぐに離れる志乃、転んだ拍子に私の胸に手を付いたと、事故なら仕方無いね、うん。
「ご、ゴメンね、あかり」
だからこれも事故なんだよ。
「た、大丈夫だよ、っ!?」
手を付こうとして、汗で滑って志乃に倒れ込む。
「きゃあぁ!?あかり!!?」
「ゴメン、滑った。」
つか、眠いよ、能力使いすぎてキツい、今日三回目の発動だし、全部時間自体は短めだけど、さっきのは全力使ったから、本当に疲れた。
「ちょっと、大丈夫なの?」
「無理、ちょっと
眠気がスゴい、何かもう指一本動かせないよ、もう無理、志乃暖かくて柔らかいし、安心したら眠気が……………意識が………保て……ない…………………
「あかり?あかり!?」
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あかりちゃん 眼が覚めたら知ら(ry
ど、どないしよ?
眼が覚めたら知らない天井が見えた。
いや、ちょっと見覚えがある、最近の記憶だから、直ぐに思い出せた。ここ救護室だ、訓練所の。ちょっと前まで居たところだったから、覚えてたみたい。
何か身体が重いなぁ。今日あの日だっけ?いや、目眩も吐き気もないし、腰も痛くないから、あの日じゃないはず。身体は怠いけど、周期から見ても外れてるし。
「ん、あかり?眼が覚めたの!?」
「うわ!!?な、何!?敵襲!!?」
いきなり横から飛び付かれて驚く。慌てて飛び付かれた方を見ると、志乃が目元真っ赤にして、私にしがみついてた。
「だ、大丈夫!?先生は怪我はしてなくて、脳に強い疲労がみられるって、言ってたけど。どこか痛い場所はない!?」
ちょ、ちょっと!?いきなり身体をまさぐるな!!
「大丈夫だよ!だから身体をまさッッッ!?ちょっ、どこ触って!!?」
結構際どい所まさぐられて、驚いて志乃から距離を取ろうとして、反対側に逃げたんだけど、寝起きだからか身体が言うこと聞かなくて、反対側に落ちそうになる。
「おっと、落ち着けお前ら、あかり大丈夫か?」
「う、はい。ありがとうございます、
落ちないように抱き止めてくれたキンジに、お礼を言ってベッドに座る。周りを見ると私の他にはキンジと志乃だけで、他はカーテンで仕切られてて、よく見えない。
「ともかく、眼が覚めて良かった。医者を呼んでくるから、二人とも大人しくしてろよ?」
あ、キンジが行っちゃった。頭撫でて欲しかったかも、何か寂しい。っていうか本当に、身体が果てしなく怠いわぁ。頭も重いし、食欲もいつもよりないな。あの日じゃないなら、私風邪でも引いた?
「うぅ、あかりぃ!!」
「うわっ!?ちょっといきなり抱き着かないで!」
心配してくれたのは分かったけど、そこまで心配しなくても大丈夫だよ?私気絶はしょっちゅうだし。
「丸一日寝込むんだもん、心配したんだからね!!」
え?丸一日!?嘘でしょ!!?
だから寝起きとはいえ、身体がこんなに怠いのね。風邪じゃなさそうで良かった。っていうか、抱き着かれたままなんだけど、離れる気無いみたいだし、引き剥がす気力も無いから、もう放置することにしよ。一日で色々起こり過ぎだよ、疲れたぁ。
「今何時なの?丸一日って、私学校とか、ののかが心配してるんじゃ」
「今は夕方の七時前位で、ののかちゃんには、キンジ先輩が連絡したよ。学校は、白雪先輩が手を回してくれたの」
あ、キンジが連絡いれてくれたんだ、良かったぁ。白雪先輩にも、また迷惑掛けちゃったみたい。後でお礼言わないと………そう言えば佐々部さんはどうしてるんだろ?
「佐々部さんは、今朝方までは居たんだけど、お仕事があるからって、さっき白雪先輩の携帯に連絡があって、速めに切り上げたから、七時には来れるってメールが」
流石志乃、前世からの付き合いだけはあるね、私の疑問にノータイムで答えられるとは、あかりはあかりは感激してみたり、なんちゃって♪
そこまで言ったところで、カーテンが開かれて、白衣を着た女の人と白雪先輩が入ってきた。
お医者さん?キンジはどこに行ったんだろ、これから診察みたいな空気だし、席を外したのかな?
昼行灯にしては、気が利くじゃない。
「じゃ、ちょっと診察するから、お嬢ちゃん一回離れてね」
「あ、すみません」
お医者さんにそう言われて、志乃が顔赤くして離れる。可愛いよね志乃。流石アイドルって思った。でも中身白雪なのに、ここまで素直とは………いや、前世でもアリアとか、バスカーヴィルのメンバー以外には、普通だったんだけどね?
軽く問診と、診察を終えた後、私の服を渡された。
「寝てる間に、色々調べたけど、
「はい」
乗能力者の所で、志乃と白雪先輩が驚いてるけど、調べてなかったんだ、二人とも。私のこと、自分から言ってくれるって、信頼してたんだ。ゴメンね、二人とも。
「馴れてるから、何て考えて無茶してると。脳機能の酷使で、身体機能に異常が出る可能性がある。そうじゃなくても寿命を削る。推薦状書くから、通院しなさい」
え?いや、通院って、私病気でも無いんだし、これは私が望んでもらったものなんだから、私の責任で「良いね?ちゃんと行くのよ?」何この圧力、この人何者なの!?キンジの父さんが怒った時と、似てる圧力感じるんだけど、こ、怖い!!
「分かりました、行かせてもらいます」
「宜しい、お嬢ちゃん達からも、言っといてあげて?今回は身体に異常が出なかったとはいえ、この子がそれで無理して良い身体じゃ無いんだから」
うぐぅ、耳が痛い。
「分かりました。ありがとうございます先生」
「ありがとうございます」
「仕事だし、良いってことよ、私は推薦状書くから、その間はそこでゆっくりしてなさい」
そう言って、女の人はカーテンの奥に消えた。
「「あかり(ちゃん)?」」
ひっ!?
二人からの圧力がさっきと同じくらい出てるんだけど!!?
何これ、二人とも何でこんなに怖いの!?
「乗能力の副作用の話、キンちゃんには?」
う、そ、それは………
「あかり?」
ひ!?
「い、言って、ません」
それを言うと、白雪先輩は深く息を吐いて、キンジを呼んでくるって言って、カーテンの奥に消えた。
「「…………………………」」
気不味い、スゴく気不味い。志乃に睨まれながら、やることも無いから渡された服に着替えるのが、スゴく気不味いよ。
「あかり」
ビクッ!?
「な、何?」
いきなり声を掛けられてビクッてした。怖いよ、志乃。何か皆過保護だし、私そこまで虚弱?
「自分が乗能力者だって、誰にも言って無いでしょ?どうして?」
う、それは、その………
「あんまり情報を出したくなかったの。私の能力は、外からじゃ分かりにくいから、言わなきゃイ・ウーにバレる事も無いから」
志乃を見ないように、着替えるのをゆっくりにして、そっちに集中してるふりして答える。
「それ、嘘でしょ?」
え、バレた!?
「ど、どうして嘘だって「嘘吐く時、目線合わせない癖抜けてないよ」…………………里の同い年にね、やっかまれてたの」
そう言うと、少しして志乃が息を飲んだ。私が体操服を脱いだ時に背中を見たんだろう。恥ずかしいから、あんまり見られたく無いんだけどね。
「それ、もしかして」
「うん。この能力のせいで、私継承権がののかより低くて、それを皆にバカにされててね、里の小学校とかで、よく
やってきたやつ皆、やり返してやったけど、私は落ちこぼれのレッテルを、皆に付けられてるから。体内の電磁パルスを使う間宮の技は、その速度は雷速、避けることは小学校の私には出来なかった。
キンジには見られないようにしてるけど、学校の皆には小さいときに事故に遭って、古傷だって言ってる。似たようなものだしね。
「大人は?」
「庇ってくれたけど、やっぱり古い里だから、見て見ぬふりもあったよ」
本当は、見て見ぬふりが殆ど何だけどね。子供の喧嘩に
お陰で友達出来なくて、ののかと二人で遊んでたなぁ。ののかも修行があったから、基本家に一人だったけどね。
私が着替え終わると、カーテンが開いて白雪先輩達三人が入ってきた。
「あかり、すまなかった!」
え?
「お前の
え?ちょっと、待ってよ!?何でキンジが謝るの?悪いのは黙ってた私で、ムグッ
「辛かったんでしょ?キンちゃんにも黙ってる位だもん。でも大丈夫だから、私達が知ったから、私達が支えてあげられるから、もう我慢しなくて良いんだよ?」
いきなり抱き付かないで下さいよ、白雪先輩。む、胸で窒息する。無理矢理頭動かして、気道を確保する。プハァ苦しかった、本当にこの胸は駄肉だよ、駄肉!!
っていうか、私、我慢してなんか無いですよ?今も向かしも変わらず見栄っ張りなだけで
「あかり、私はずっと側に居るから、だからもう抱え込まなくて良いんだよ?あかりが辛いと思ってること、私も隣で背負うから、ね?」
志乃まで何言って、あれ?何で私涙ぐんでるの?これじゃ本当に皆が言ってるみたいじゃん。あ、そうだ、疲れてるんだよきっと!うん、だって、沢山濃い出来ごとが、この三日で起こったんだもん。疲れてるんだよそうに違いない。そっかぁ、疲れてるんだ私……………ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、泣いても、良い?
「う、ひぐっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
私、二日連続で号泣きしてるよ、情けないなぁ。恥ずかしいから黒歴史確定だよ。
でも怖かったなぁ、里であんな事があって、大人は助けてくれないから、自分でどうにかしなきゃいけないのに、数で攻めてくるんだもん。挙げ句の果てには、まだ小さいののかを人質にして、私に
それは流石に大人が止めてくれたけど、あいつら止められる所とそうでないところを!試しながらゲーム感覚で私を狙うんだもん!!怖くない訳無いでしょ!!!
ののかだって、私の妹だからって理由で、子供達から避けられてた。私のせいで、私の妹が虐められてた!悔しく無いわけ無いじゃん!!私のせいなんだよ!?生れつき身体が弱いあの子が、私の代わりにキツい訓練受けてるんだよ!!?変な癖が付かなくて良かったとか、本気で思えるわけ無いじゃん!!!!!!
「ヒグッ、ウグゥ、うぅ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
強くならなきゃダメなの、もうののかにも、皆にも心配掛けちゃダメなのに、何で私、こんなに迷惑ばっかり掛けてるの?嫌だよこんなの、いつまでたっても、強くなれない。どれだけ頑張っても、前世程身体は強くならない。挙げ句の果てには女だからって、下に見られる事もある。私が頑張らないと、このままだとキンジが死ぬんだよ!!?
こんなのって無いじゃん、私のせいでキンジが死ぬんだよ?全部私のせい、前世でも私が避けてれば、アリアは緋緋神にならなかった。皆は死ななかった!!!!
もう嫌なの、私のせいで皆が不幸になるのは、嫌なんだよ。止めてよ、私は強くないの、普通の女の子何だよ?何でこんなに背負わなきゃならないの?
何で私は失敗したの?私何かした?精一杯生き抜いただけだよ!?私は私の周りを守りたかっただけ、私の信念を曲げたくなかっただけ、それ以外望んで無かった!!それだけあれば良かった!!!だってそれ以外無かったもん、
お前のせいで、お前のせいで
………また会う時が来たみたい、学校は暫く休もう。行かなきゃならない、日本の全ての神社の総本山、伊勢の大神宮の、内宮、
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神の聖譚《ゴッド・オラトリア》
あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは伊勢に行くようです
悲しいかな、誕生日なのにこんな時間まで一人でパソコンいじってる私です。
虚しさをぶつけたら、一話出来たから投稿です。
先生に家庭事情で暫く休むって言って、伊勢まで行こうとしたら、キンジと志乃にバレて、二人が着いてきた。
何でバレたし!?結構注意して連絡したし、準備も悟らせなかった筈なのに!ののかには
っていうか、今日が土曜だからって、二人とも何で朝から家に居るの!?しかも色々持ち込んでるし!!
ののかは、朝早くにまた修行で実家に帰ったし、あの子ここの所実家に居る期間が、長くなってきたけど、そんなに難しい技があるの?ののかは結構才能ある方だと思うけどなぁ。
「二人とも、私は旅行に行くんじゃないんですよ?」
「分かってるって」
キンジ?旅行雑誌見ながら言っても、説得力無いからね!?
雑誌にマーカーで色付けるとか、付箋貼るとか、キンジそんなに旅行好きだったっけ!?
「大丈夫だよ、分かってるから」
志乃何でそんなに大荷物にするの?いや、そこまで荷物は要らないからね?って何でパスポート用意してるの!!?っていうか何で私のパスポートの置き場わかったの!!!?私言ってないよね!!?
っていうか二人とも、何で私の家にそんな大荷物持ってくるのよ!!泊まる気満々じゃん!?しかもそのまま伊勢まで着いてくる気じゃん!!
あれなの?私また黙って行こうとしたから、怒ってるの!?
………はぁ、白雪先輩は冬休み前の決算があるから、忙しくなってきて手が離せないって、ぷりぷり怒りながら言ってたし、キンジが
白雪先輩、自分が無理だと分かって、
「うふふ、丁度向こうで、シングルの
志乃のMVかぁ、カメラ持っていこ。私も見学出来ないかな?明日は秋葉原行って、カメラの準備だね。小型のバレないやつ見付けてこないと。スパイグッズとか、ミリタリーショップとかに、たまにあるんだよね、横流しされてきたの格安のやつ。
「俺はあれだ、兄さんに土産持って帰らないと。甘いものはカナの時はよく食べるんだが、何が良いかな?」
え、お土産?うーん、そうだなぁ。
「お兄さんには、実用品が良いんじゃないですか?防弾素材の手拭いとか。お祖父様には、郷土料理のサメの乾物とか、お酒に合うみたいですよ?おかずにもいけましたし、オススメですねお祖母様もハンカチとか………あ、おかげ犬って言う犬のグッズとか、招き猫とか、小物類も良いと思いますよ」
他には、海産もお肉も、三重県は美味しいもの多いから、お土産選びには困らないね。松阪牛とか、伊勢海老とかアワビとか。
「もう直ぐ九月も終わりですし、向こうは海産物が美味しい季節ですねぇ。私はMV撮影の後も、暫くメンバーの人達が
へ、へぇ、そうなんだ。芸能界って大変だね。
「私は、二週間休みにしたけど、キンジ先輩本当に大丈夫何ですか?」
いくらガバガバな学校とはいえ、何日も休んでたら大変だと思うんだけど。
「単位は補習で補填出来る。お前一人で行かせたら、無茶するかもしれないだろ、放っておけん」
ま、真顔で変なこと言うなバカ………その、嬉しいけど、また迷惑掛けちゃった。
あ!?何ニヤニヤしてんのよ志乃!!
私が志乃に向かって膨れっ面してると、キンジの携帯に着信が入った。
「ん?すまんちょっと席外す………もしもし、兄さん?」
そう言ってキンジが、家から出てくんだけど、金一お兄さんから電話か、お兄さんこの時期はもう、実家じゃなくて留学生になってたはず、向こうの武偵高校で飛び級して、日本の武偵局に勤めるって、流れだったと思うから。
「あかり、私キンジ先輩相手なら、おうえんするよ?」
ッッッ!!!?!?!?
ちょっ!!!?いきなり何言うの!!!!!?
「な、何の話し!?私は家族愛ってこの前言ったと思うんだけど!!?」
私のは家族愛であって、けして恋愛ではないのです!!そもそも前世の自分に恋心とか!?どんな人間から見ても頭おかしい所業だよ!!!
「この世界は前世とは違う世界だし、あのキンジ先輩とあかりは違う………だから、あかりがキンジ先輩を好きになっても、変じゃ無いよ?」
志乃はそう言って私に微笑む。
こ、このアイドル、可愛い顔して何てこと言うのよ、私のは決して恋心じゃないからね!?確かにキンジの顔見るとたまに
「えっと、声にでてるよ?」
え?
…………………………………………………………カァァ
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
え、何で?そこまで動揺してたの私!?何でそこまで動揺するのよ!!
「まあまあ、私としてはちゃんと女の子してて、嬉しいんだよ?結構心配だったのに、アイドル何かよりも、女の子満喫してるんだもん」
うぅ、下手な慰めは止めてぇ!!体育座りしてのの字書いてる私の背中を、優しくポンポン叩くの止めてよぉ!!
うぅ、こんなのって無いよぉ、よりによって前世を知ってる志乃に、今の生活知られるとか、恥ずかしいってレベルじゃないじゃん!!前世だったら拳銃自殺モノだよ!!!
………………桜花と、秋水に橘花とか、組み合わせれば零距離でも避けれそうなんどけど、私もしかして、拳銃じゃ死なないんじゃ?
いや、考えるのはやめよ、自分のアレっぷりに悲しくなる。心肺停止になっても自力蘇生出来そうなのが、何かなぁ。
「うぅ、志乃ぉ、もし前世持ちの人に会っても、私の今の生活知られるのは嫌だよ、恥ずかしくて死んじゃう!!!!」
「そんな悲しい事言わないで?皆あかりに会えば、喜んでくれるよ、皆あかりが好きだったんだから」
う、うぅ、でも、元々男だった私が、こんな生活してるとか、生まれ変わってから人生を善くも悪くも満喫してるとか…………皆にあわせる顔が無いよ、私のせいで、皆が、皆を殺したのは、スサノオが関わったせいとはいえ、私にも原因は有るんだよ?それなのに………………
「っもう!直ぐに暗くなっちゃうのは悪い癖だよ!?前はそんな事無かったのに、これから一緒に治そ?」
志乃が優しい、うぅ、志乃ぉ!!!!
「私、志乃が最初で良かったよぉ!!」
思わず志乃に抱き着く。私、抱き着き癖があるのかな?最近抱き着いてばっかりな気がする。
「えへへ、あかりがしたいなら、私にいくらでも抱き着いて良いよぉ。あぁ、あかりの体温温かいなぁ、グフフ」
「志乃も温かいよぉ、冷房ちょっと寒いから、ぎゅっとすると温かくて、落ち着くなぁ」
「コホンッ」
「「ッッッ!!!!!?」」
二人してお互いに抱き着きながら、床をゴロゴロしてたら、咳払いが聞こえてビックリする。
キ、キンジ、帰ってたなら言ってよ!!
「驚かさないで下さいよ!?キンジ先輩のバカ!!」
「俺はノックしたのに、いつまでも返事が無かったのはお前らだ!」
え?嘘!?………全然気付かなかった。
「はぁ、兄さんから連絡があってな、夏休みの間、兄さんがこっちに一週間来るんだけど、あかりに会わせろだとよ。弟の
マジで!?金一お兄さんに会えるの!!?
「本当ですか!!!?」
「お、おう、ただ兄さんも休暇で来るわけじゃ無いから、時間を作るの難しいらしくて、こっちに来て二日目の昼に、実家で少し話す位だ。それでも良「絶対に行かせてもらいます!!」………お前興奮しすぎだろ」
キンジが呆れてるけど無視無視!!あぁ、ついに金一お兄さんと会えるなんて、夢みたい!!!服はどうしよ、出来るだけ可愛いのを、でも遊びに行く訳じゃないから、おしゃれ100%じゃなくて、きちっとしたやつのが良いかな?でも先輩の家に遊びに行くんだし、少しはおめかししないと、ワンピースとかどうだろ?夏だし麦わら帽子と合わせれば、いや、もうちょっと落ち着いた感じのがいいかな?上に薄手のカーディガン羽織れば、いい感じになりそう?帽子はやっぱり、麦わら帽子が良いなぁ、あれ蒸れにくくて、好きなんだよね、夏物と合わせやすいし。
「おい、あかり。そろそろ戻ってこい、昼飯どうするんだ?」
はっ!?
いけない、つい思考が加速してた。この癖抜けないなぁ、思い込み激しくなるから、直さないとダメなんだけどなぁ。
時間は、嘘!?もう十二時近いじゃん!!今からご飯の支度しても、食べられるの一時近いし、外で食べよっかな?この人数のは買い込んでないし。
「えっと、ファミレス行きましょう。材料無いですし、帰りにスーパーでも寄って良いですか?」
「ん、大丈夫だ」
「あかりとお買い物、楽しみです!」
二人ともオッケーみたいだし近場だと……………
「ココスにジョナサン、後ガストですね、どこが良いですか?私ココスで包み焼きハンバーグ食べたいです」
「ガスト、安いし」
「私ジョナサンに、行った事無いんで気になってるんです」
ふむ、見事に別れたね、ここで別れて皆バラバラとか、何かやだし、皆譲る気無いみたいだしここは………私は拳を突き上げて叫ぶ。
「じゃん拳!!」
「「なっ!?」」
ふ、こういうのは意表を突くのが勝利のカギ何だよ!!
「「「ぽん!!」」」
私はパー二人はグー、この勝負、もらった!!
「納得いかねぇ!」
「そうよ!再戦を要求する!!」
「勝負は勝負ですぅ、私の勝ちだからココスに行くよ!」
「「横暴だ(よ)!!」」
無視してカバン持って玄関前で待つ。少しして、後ろから二人がのそのそ着いてきた。ふふん、これくらいは自分勝手させて下さいな、前世では振り回される側だったんだから。
「ったくしゃあないな、あかりは」
面倒くさげに頭掻いてるキンジの腕に、抱き着いてキンジに微笑む。おねだりの仕方は、同い年の子達を見て、どうやれば良いのか分かってるんだから!
「妹の我が儘聞くのも、お兄ちゃんの役目ですよ?」
「ッ!?………はぁ、この前の
「やった!キンジ先輩大好き!!」
買い物のお金考えると、結構お金ヤバかったから、ホントに助かる!!
キンジに抱き着いて、頭をグリグリ押し付ける。良い匂いがして力抜けちゃうんだよね、キンジ。
「あかりって、ちゃっかりしてますよねぇ」
あはは、こういうのはやっといて損は無いんだよ?やり過ぎるのはダメだけど、月一位なら、キンジ優しいから、お買い物とか、外食とか、おねだりのすれば付き合ってくれるし、私は奢ってもらわなくても良いんだけど、キンジ結構無理して出すし、開き直るのがキンジとの付き合い方何だよ?
「これ相手にペースを保つのは無理だ。諦めて流されるのが一番だよ」
「何か恋人みたいですね?」
なッッッ!!!!!?
これは
「……………私は、キンジがどうしてもって「誰がこんなちんちくりんと、こいつは
バカキンジ、今まで私で何回なってるか覚えてるの?中学になって直ぐに戦兄妹契約してるんだから、殆ど半年学校で一緒に過ごしてるんだよ?何回なってるか、しっかり数えてるんだからね?
「な、何だよいきなり、別に変なこと言ってないだろ」
私からすればスゴく変だよ?私でなった回数、
「キンジ先輩、嘘は良くないですよ?」
私が笑顔で上目遣いすると、キンジが慌てて目を逸らす。
「ほら、コンビニ着くぞ、ATM使うんだから、離れろ」
顔真っ赤にして私を振りほどいて、コンビニに入ってくキンジを、ニヤニヤしながらコンビニ前で待つ、志乃もコンビニ前で一緒に待つ見たい。
「遠山先輩って、何か可愛いね」
志乃が笑いながら言った言葉に、私も思わず笑ってしまう。
プックフフ、確かに!キンジは格好良い所も沢山有るけど、女の子に弱いのは、何か可愛いんだよねぇ。
「うん、でもカッコイイ所も沢山有るんだよ?例えば、料理出来たり、気が利いたり、他にも、ん?どうしたの?」
話してる時に、志乃がいきなり声だして笑い始めたから、思わず聞くと、志乃が笑いながら言う。そんなに変なこと言ったかな?
「まるで、弟の自慢してるお姉ちゃんみたい。確かにこれじゃ、恋愛感情じゃないのかな?」
あ、未だ疑ってたの!?違うって言ってるじゃん!!
「しつこいよ志乃!私はキンジに恋愛感情何て持ってないし、姉じゃなくて妹ポジもらえれば満足なの!!」
「分かった分かった。もう疑わないけど、それでもキンジ先輩なら、応援出来るんだけどなぁ。何処の馬の骨とも分からない男に、あかりは任せたくないもん」
「志乃は私の、お母さんか!!」
私がそう言った後、思わず二人して笑っちゃう。コンビニ前で、何やってんだろ私達。でも楽しいなぁ、ここまで楽しいのは、前世で武藤達とバカやってた時位だなぁ。
こっちに生まれ変わってから、ずっと友達と遊ぶとか、考えた事も無かった。ずっと一人で遊ぶか、ののかと遊ぶかの、どっちかだったから。ののかがいない時は、修行したり勉強したりで、遊ぶこと殆ど無かったし。
本当に嬉しいなぁ、志乃は親友だよ。志乃になら、私なにされても、笑って許せる。志乃のためなら私、国にケンカ売れるよ。大好きだよ、志乃。
その後キンジにご飯奢ってもらって、三人でお買い物して、二日後、私達は伊勢に出発した。
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは頭が上がらないそうです 1
あかりちゃんが指に宿ってるレベルだよ、書き易過ぎるだろホントに、ビックリだわΣ( ̄ロ ̄lll)
さあ、やって来ました三重県伊勢に!!
っと言っても来たのは三日前で、初日に着いたのが夜中で、カプセルホテルで爆睡して、次の日の昼から、丸一日外宮の参拝に使ったんだけどね。
三日目の今日は、朝から内宮を丸一日使って参拝するんです!それが会うための条件の一つ何だけどね。二日丸々使ってまでしないと会ってくれないとか、ちょっと条件キツいよ。
清廉な雰囲気がする神社の中、私達は内宮の皇大神宮に向かう。
未だ平日の朝五時なのに、人は居るなぁ。信心深い人が、通勤前に来るのかな?スーツの人とか結構いる。
そんな中私服姿の若い男女三人は、結構目立つんだけど、キンジはそんなのお構いなしに写真撮ってるし、志乃は眼を輝かせて、あっちにふらふらこっちにふらふら、本当にこの二人は何のために来たんだ。
「ほら二人とも、広いんだから、寄り道ばっかりしてると。直ぐに時間過ぎちゃうよ?」
そう言ってずんずん進む。
「分かってるけど、人の少ない時間帯じゃないと、良い写真撮れないだろ、婆ちゃんと兄さんに、写真持って帰るって言ってるんだよ」
本当に、金一お兄さんが行方不明になる前は、私もこんなだったっけ?もっとトゲトゲしてたと思うけどなぁ。何か調子が狂う。
「スゴいですねぇ、全然変わってないですよ。昔何度か来たことあるんですが、全然変わってないです」
昔って、前世のこと?やっぱり星伽神社の巫女さんだし、神社の関係者ってここに憧れたりするのかな?一応日本一格が高い神社の一つだし。
なんせどの時代の格式を見ても筆頭か、最早別格のランキング外、神社の中では信仰も知名度もNo.1名実共にあらゆる神社の上に君臨してる存在だからねぇ。
それに比べ星伽はそもそも仏教でも神道でもない、異例の神社。
格はバカみたいに高いみたいだけどね。明らかに官弊大社とか明神大社クラスの影響力は有るよ、女人禁制の宗像大社沖津宮が、裏伊勢何て呼ばれてるけど、男性禁制の星伽神社は、二大禁制大社何て呼ばれて、同じ格の扱いをうけてるし。
「星伽も、格式は負けてないと思うんだけど?」
「そんな事無いです。歴史だけなら最古の自信はありますが、古いだけで他には何も無いですから」
恥ずかしそうに言って、私の手を握る志乃。
「ほら、早く行きましょう?私終わったら神馬に会いたいんです。今日は一日なので八時頃に正宮前に来るはずなんですよ!?」
お、おうふ、そんなに興奮しなくても、どうせ長くても二時間位何だから、大人しくだね?
「そういうことなら急ごう、神馬は殆ど会えないって、雑誌に書いてからな、写真撮れれば婆ちゃん喜ぶぞ」
あ、キンジもやる気出してるよ。でも走るのはダメだよ?石畳の端を歩いて通って、正宮に早朝にお参りするのが、条件の一つなんだから。
「急ぐのは分かったけど、走っちゃダメだからね?正宮から
「それもそうですね」
「急がば回れとも言うしな」
分かったなら、良いです。左手で志乃と手を握ってるから、右手でキンジの左手を掴む。
「おい、写真撮りにくいだろ」
キンジが文句言ってくるけど、これも残念ながら条件の一つ、異性を連れてくる時は、内宮の中では手を繋げ、を守るためだから、仕方は無いんだよ。ったく、何でこんな面倒くさい事を条件にするのかな?おもちゃにされてる感がスゴいするんだけど。
まぁ、守らなきゃ会えないから、諦めるしか無いんだけどね………はぁ。
「これも必要な事ですから、諦めて下さいよ」
私が疲れた顔で言うと、キンジは諦めたように片手でシャッターを押す作業に戻った。どんだけ撮るねん。フィルム………ってそれデジカメか、デジカメの容量、全部使いきるつもりでシャッター押してるよ、キンジ。
「遠山先輩写真好きなんですか?」
志乃の言葉にキンジが写真撮りながら答える。どうでも良いけど、前見ないと危ないよ?
「いや、最近はまり始めてな、結構面白いぞ?」
へぇ、ここまでずっと写真撮ってるし、本当なのかな?
「私も、終わったら写真撮ろっかな?ののか喜ぶかもだし」
「じゃあ記念撮影しましょうよ、正宮前で一枚!お馬さんとも撮りたいですね~」
志乃ってお馬さん好きなんだね~、意外だなぁ。動物好きとは思ってたけど、もっとちっちゃいのが好きだと思ってたよ。チワワとか、ウサギとか。
三人でお喋りしながら正宮前まで来た、明らかに他とは違う神域とも呼べるまでの、静かな空気に、二人とも圧倒されてるみたい。私は何かアホらしいけど。見栄張り過ぎだよ、あんなにちんちくりんのくせして、昔は負けたけど。今は勝ってるんだからね!!
鳥居は前で、参道の時と同じようにお辞儀をして、中に入る。中で三人で順番に参拝すると、近くの物陰から音がした。
「貴女相手が遠山って、ナルシストなの?」
「うるさいわ!!どいつもこいつも、事情を知ってるやつ皆して、私はキンジに恋心何て持ってないからね!!?」
いきなり物音の方向からのあんまりな言葉に、思わず怒鳴る。二人が何か驚いてるけど、こちとらこれで会うのは三回目何だから、もう馴れたわよ!!
「久しぶりね、中学生になってから、一度も来てくれないんだもの、寂しかったわ。大きくなったわね、前と比べて強くもなったみたい。未だ振り回されてるけどね」
クスクス、物陰から笑い声が聞こえてくる。時間軸も物理法則も、全部当てはまらないような存在の癖に、よく言うよ。
「好き勝手に覗きが出来るくせに、よく言うよ。後大きくなったって、嫌味かコラ」
おん?いっこうに幼児体形こら成長しない私への、嫌味かちくしょう。
「え、えっと、あかり?大声出しちゃダメだよ?後誰と喋って」
「そ、そうだぞ、あかりの知り合いらしいが、隠れてないで出てこい」
キンジが言った瞬間、気配が物陰から私達の後ろ、丁度正宮の建物の前に、女の子が現れた。
「「ッッッ!?」」
二人は突然の事で驚いて警戒するけど、こいつ相手に警戒とか、ハッキリ言って無駄の極みだよ。人の勝てる領域じゃないんだから。
「あかり、さっきから言葉遣いが、悪くなってるわよ?女の子何だから綺麗な言葉を使いなさい」
ぐ、こいつ、女にしたのはお前の「あかり?」…………分かりました
「よろしい、良い子にしてた?」
神威を纏われた、豊受大御神の御言葉に、私はその場で膝を地面に付いて、頭を深く下げる。土下座にも似た臣下の礼をして、私は答える。
周囲はさっきよりも、神域の強さが増してる。一般の人には、私達を認識することすら無理なレベルだ。最早一つの異界とかしてる。
「………はい。お陰様で、至極平和な日々を送れております。これも全ては、大いなる天照大御神の守護なれば、誠に感謝の念が絶えず」
「ちょっ!?あかり!!?」
「どうしたんだ一体!?」
二人とも慌ててるけど、今はこれが正解なの、二人とも早く私の真似をして、じゃないと大変なことに。
「お二方も、私に
「……………後で聞くからな(聞きますからね)?」
二人は不承不承の形で、私の真似をして臣下の礼をする。
ありがとう。二人が来てくれて本当に良かった。
「で、今日はどういう風の吹き回しなのかしら?」
天照大御神が質問された事を、出来るだけ丁寧に答える。
「本日におかれましては、誠に勝手ながら、天照大御神のお力添えを頂戴したく、御身の前に訪ねさせて頂きたく、お願い申し上げ存じます」
「そう……………大御神は今、所要があり会うことは叶わぬ。」
神威を纏いながら、豊受大御神は私達に神託を出された。
「明日、
「誠に有り難き采配、感謝の極みでございます」
私が感謝の言葉を述べると、豊受大御神は軽く息を吐き、神威を解除されておっしゃった。
「………もう好きにして大丈夫よ、お仕事おしまい」
……………ふぅ、「くたばりなさい覗き魔!!!!」
「だから、女の子が汚ない言葉つかわないの!!」
桜花を使って顔面に殴り掛かる私を、この覗き魔は片手でいなした。
ちくしょう!!強くなったって、貴女を殴れなきゃ意味無いもん!!一発殴らせなさいよバカァ!!!!
「え、えっと?」
「何がどうなってるんだ?」
「私は豊受大御神の巫女………そうね、
「このオバさん、今年で八十二のくせして、若作りしすぎだっての」
「めっ!」
いて!?叩くなバカ!
「私はてっきり、神様だと思ってたんだけど、一体あれは?」
「神卸しよ」
オバさんの言葉に志乃が息を飲む。
キンジは未だ混乱してるけど、志乃は何となく分かったみたい。このオバさんこと小百合は、今年で八十二になる豊受大御神の巫女にして、日本で三人しか居ない、
「よく分からんが、人間なんだよな?」
私の超能力の知識は、この人からの受け売りで、この人の超能力知識で、
「勿論、何なら触って確かめてみる?」
「無理すんなオバさッッッいったぁ!?」
ペンタゴンからダイ・ハード………殺すことが至極困難な存在に認定され、準一級危険人物リストに載ってる人、趣味はお菓子作り、未だに結婚経験無し、生涯現役を謳っている、人間やめた人間だ。叩かれた所がメッチャ痛い、これ絶対アザできてるよ。
いや、痛覚を弄られてるんだ、何か身体に違和感がある。人の身体に勝手に弄って、本っ当にいけすかないオバさんだよ。
…………………………非常に不本意ながら、私の遠縁の親戚でもあり。私の身元保証人の一人でも有るのだ、この人。
「その人が何で、私達がここに居るって、分かったんですか?」
「あら?聞いてないの?ここに来るまでの条件、あれはこの子の魔術の一つよ。特定の条件じゃないと発動しないのしか無いけどね」
べらべら私の秘密バラすなぁ!!
「え!?あかりが魔術士!!?」
「もう、何がなんだか」
「私の家に行きましょうか、そこで説明するわ?ほらあかり、いつまで
いてててててっ!!?
立つ、立つから耳引っ張らないでよ!!!
「そろそろ結界解くから、皆付いてきなさい」
オバさんがそういうと、周囲に蔓延してた、高濃度の神威によって上がってた神域が解除される。人払いの結界も同時に張ってたのか、周囲に人は居なかったけど。
「あ、神馬だよあかり!!」
「すいません小百合さん、写真撮りたいんで、ちょっと良いですか?」
「もちろん、私も久しぶりに見たわぁ」
正宮前で神馬が神官と一緒にお辞儀をしてた。
キンジはオバさんに、写真の許可を取ってる。志乃何かテンション上がって、小声で叫んで携帯のカメラで、メッチャ写真撮ってるし。
神官と神馬が見えなくなった頃、志乃がメッチャ騒ぎ始めた。嬉しいのは分かったから、そこまでテンション上げなくても、そんなに馬が好きなの?
「スゴいよスゴいよ!ものすごい綺麗な白馬だったよあかり!!お行儀もスゴい良かったし!本当に賢い子何だよ、あのお馬さん!!!」
う、うわぁ、ちょっと本当に興奮しすぎだって、確かにスゴいカッコいい白馬だったけど、何もそこまでテンション上げなくても良んじゃ?落ち着きなって。
「お、落ち着いてよ志乃、騒いじゃ駄目だよ?」
志乃が動かないように抱き着いて、上目遣いで言う。
嬉しいのは分かったから、トリップするのはホテルに戻ってから、ね?
「あ………ゴメンね、あかり」
志乃は落ち着いてくれたみたいで良かったぁ。キンジはデジカメで撮った写真の写りを確認してるし、本当に観光に来てるんじゃないよね?何か不安になってくるんだけど。
「もしかしてそっちなの?」
何て意味わかんないこと言ってきたオバさんに、思わずツッコミを入れる。私は至極真っ当な女の子ですぅ!!
「なわけあるかオバさん」
「私はあかりなら、何されても平気だよ?」
そんな事、冗談でも言っちゃ駄目だよ志乃。アイドルなんだし、男の子だったら本気にしちゃうよ?志乃可愛いんだから。
「あらあら、やるわねぇあかり」
「誤解招くようなこと言わないでよ二人とも!!」
女三人よれば
私達のおしゃべりで道中は、行きの静かな雰囲気とは違って、非常ににぎやかな帰りとなったのは、最早必然と言わずして何と言うのか。
「一気に騒がしくなったなぁ」
キンジの黄昏たような呟き声が、早朝の鳥の声に紛れて、空に溶けた。
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは攻略済になるようです
皆で内宮を出て、おかげ通り近くの、アパートの一室。『101』と書かれたプレートの部屋が、小百合オバさんの家だ。
詳しく言うなら
この人引っ越し癖があって、しょっちゅう引っ越すから、来る旅にあの魔術、外宮と内宮を二日掛けて回る必要がある。
私としては、何であんな面倒な条件にしないとダメな位、この人を呼ぶのに必要な力が集まらないのが、腹立たしいけど。
外観より、広く見えるリビングで、皆にお茶を配ったオバさんが、お茶を飲んで一息つく。
「それで、久しぶりに会えたと思ったら、友達連れてきて、お姉さん驚いちゃったんだけど、今回は修業じゃないのね?」
何がお姉さんよ、オバさんでも未だ足りないく「あかり、聞いてるの?」
むぅ、
「神宮でも言ったように、天照大御神に会いに来たの」
「いきなりなんで?今日は平日だし、お友達も含めてズル休み?お姉さん感心しないわよ?」
ええい、何で納得してくれないのよ!!こっちの事情を知ってる癖に!!!
「オバさん覗き魔何だから、知ってるでッッッいたぁ!!?」
輪ゴムをほっぺに飛ばされて、痛くて悶絶する。
何で触っても何かしたようにも思えないのに、また痛覚を弄られてるのよ!!?本当にこの人化け物!!!!
「お姉さんって呼びなさいって、言ってるでしょ?私は覗き魔じゃなくて、貴女がちゃんと生活できてるか、見張る役目が有るの」
天照大御神のバカァ、何もこのオバさんに、監視の役目なんて付けなくて良かったのに!!!
「えっと、何がなんやら、さっぱり分からないんですけど」
キンジの鈍感スキルが、いつにもなく仕事してるなぁ。もうちょっとこう、鋭くなって欲しいけど、無理なのかなぁ。
「じゃあまず自己紹介からしましょうか。私は六条小百合。今は
嘘つけ、本当は外宮の非公式巫女の一人の癖に。しかも筆頭巫女。休日の趣味は、宮内庁に
「私は佐々木志乃、あかりと同い年の十三です」
「志乃ってアイドルなんだよ!!」
少なくとも志乃は、貴女みたいな真っ黒な人間の、何倍もスゴいんだから!!
「あら、本当に?」
「えっと、はい。これが名刺です」
「あらあら、本当なのね。凄いわぁその年で、あかりにも見習って欲しいものね?」
「ふっ、年寄りは説教ずッッッいったぁ!!?」
今度は三発、目元と鼻にやられた。許すマジ年増。
「汚ない言葉遣いをしないの。品位が下がるでしょう?」
何が汚ない言葉遣いよ、自分は国のお偉いさん方に汚ない事してるくせに!!
「それで、貴方は?」
「あ、はい。遠山金次と言います。あかりのひとつ上で、
ま、その制度は説明しづらいよねぇ。私も最初、ののかに聞かれた時、どう説明すれば良いのか分かんなかったし。
「大丈夫、
そういってオバさんは武偵手帳を見せる。
あ、持ってたんだ、その手帳。てっきりもう新しいのになってると思ってたのに。
「え!?でも、日本に武偵制度が出来たのは……え?どういう事だ?」
混乱してるなぁ、分かるけど。これ初めて聞いた時に、キレそうになったよ。
「えっとね、武偵法あるでしょ?」
「それが何か?」
「あれ抜け道沢山あって、武偵が職業として日本で認められた年から、もう結構経つけど、他の………武装検事とかが、武偵免許の試験するってなるとね、殆どノーパスでいけちゃうのよ。私も昔はそういう職に就いてて、いざ辞めるってなった時に、銃検に引っ掛かるの嫌で、取っておいたの。武偵法とか武偵局で、免許の期限なんて定めて無いから。一度取ればずっと、銃火器の取り扱いを認めてもらえるって事なの」
そういう荒事する職って、支給されるバッジとか手帳が、所持免許代わりになるから、仕事を辞めるってなると、武偵免許を取って辞める人が結構居るのよね。
所謂
結局割りを食うのは、実績のない卒業したての
それが何を意味するのか分かったのか、志乃は拳を握り締めてる。
「それじゃあ、私達の学校って?」
「基本的には、成功してる大手に入るのが、どの世界でも定石でしょ?武偵もそうだってだけよ」
つまりは、上にメチャクチャ経験を積んでる人達しか、居ないような場所で、安月給でいつまでも上に上がれなくて、前線にずっと出続ける、立派な社畜の完成って訳よ。
いざ上が居なくなったと思ったら、上に居た人の弟子とか、身内とかが、後釜になるのはもうテンプレね。
「それは、確かにそうですけど!」
キンジも、気づいたみたいで、言葉を悔しさで荒らげる。ま、普通そうだよねぇ。老兵は休めば良いのに、ここぞとばかりに新人の仕事奪ってるんだもん。そりゃ若いのが育つわけ無いじゃん。そんなんだから年々、武偵高の卒業生の死亡率が上がってるんだよ。大人しく引退しろっつうの。
「私は護身用に取ってるだけだから、知り合いの事務所に形だけ入ってるだけだし、今は隠居してる身だもの」
嘘ばっかり。今でもたまに、皇居の警備員、複数相手に訓練って言って暴れてるじゃん。あっちの警察病院の入院患者の三割、オバさんの仕業でしょ?何でそれで捕まんないのか分かんないよ。
「そうだったんですか、私てっきり神職の方だと思ってました。先程も巫女だとおっしゃってましたから。」
「私はそもそも、正式な巫女じゃないもの。非公式に巫女に、何か有った時の替え玉として、名前を置いてるに過ぎないわ」
正式云々はそうだけど、替え玉に出来る人材じゃないでしょ?下手な巫女より重要人物よ。神卸し何て、この国の切り札の一つだもん?
「えっと、あかりが魔術士って、どういう事です?」
「この子の魔術は欠陥よ。この子自身の特性もあるけどね。神卸し特化。神道系統極振りで、性質の近い鬼道すら、初歩の初歩を大儀式までしないと使えない。それ以外はどれだけ理解しようが、どれだけ修業しようが、延び代が無いのよ」
……………フン、それ言わなくて良いでしょ、オバサンのバカ。
「でも、神卸しの才能があるなら、何でわざわざここまで?自分で天照大御神を卸せば」
いや、何無茶言ってんのさ、無理無理、正一位とか、天皇による受勲でこの世に縛られてる神なら未だしも、天照大御神だよ?
「私でも無理よ、主神卸しなんて。そもそもこの世に実態がある神なら未だしも、神話の時代に
「そうだよ、私はこのオバサンより、適正があるとは思うけど?未だ無理無理。後、三年は欲しいもん」
「貴女、修業サボってた?昔のペースなら半年あれば出来るでしょう?」
あ、ええい、昔は塾と修業だけやってれば良かったけど、今は違うの!!
「中学生も忙しいんだよ!!」
そりゃ、ちょっと他の事を優先してたけど、別にサボってた訳じゃなくてね?
「最後に瞑想したのは?」
ええっと、確か。
「保健室行く前だったから、一ヶ月前?」
「サボってるじゃない!!」
う、悪かったよ、ちょっと体術の方に力入れてて、「言い訳しない」………ごめんなさい。
「はぁ、貴女は才能はあるのに、何でこう、オカルト関連に集中出来ないのかしら」
前世でも、そういうの苦手だったし、生まれ変わってからは、克服しようとは思ってるよ?でもやっぱり、苦手は苦手なの、文系が理系になれって言われても、無理くさいのとおんなじでさ。
「そうやって、理屈捏ねるのが悪い癖よ?意外とやればなんとかなるんだから」
それはオバサンが天才肌なだけでしょ?私はそんな感覚派じゃ「貴女も十分鬼才の部類よ。それに私より感覚派じゃない」うぐぅ、分かったよ、修業の時間増やしますぅ。ぶぅ~。
「そんなに膨れないの。貴女が才能を活かせるようになりば、それこそSDAランク一桁は堅いんだから。頑張りなさい」
現役二十番台さんの言うことは、よく分かんないよ。なにさなにさ、いきなり知らない秘境に呼ばれて、新しい修業にわくわくしたと思ったら、始まったのは一ヶ月の山篭りだよ!?石鹸シャンプー無いどころか、お湯を沸かすのも大変なんだよ!!知らない生き物沢山居るし!!緑色の肌の気持ち悪い小人とか、玉虫色のタールみたいな気持ち悪い奴とか!!あいつら一体なんなのさ!!!
「あそこは神様の管轄地、日本でもっとも神秘に溢れてる場所だから、諦めなさい」
何があっても諦めろと!!?ふざけんな!!こちとら得意の銃没収されて、食えるか分かんない魚とか草とか、現地調達だったんだよ!!文句も言いたくなるわ!!!
「だから、「えっと、その?」あ、何かしら?」
「さっきから小百合さんが一人で話してて、何がなんやらで」
「心の中覗くの、このオバサンッッッ避けた!「甘い」ッッッいったぁ!!」
真後ろから雑誌使うとか、卑怯だよ!!
「私は神の依り代、神がこの世界に安全に降りられるように、ある程度の神通力を、使えるの。勿論、条件付きでね」
それを聞いた瞬間、キンジと志乃が警戒する。だから無駄だって、
「あかりに対しては、無条件で使ってオッケーだけど、他の人に対しては、本当に条件が難しいから、覗かれる心配はしなくて良いわよ?」
これこそこの人が覗き魔の由縁、私の考えとか記憶とか、こっちの都合お構いなしに、好き勝手覗かれるんだから、たまったもんじゃないよ!!!!
「あら?貴女の知られたくないことは、出来るだけ見ないようにしてるわよ?寝る前とか、ト「何言おうとしてんの変態!!!!!」酷い言い草ね、貴女のおしめ変えてたの私なのに。あ、あかりのアルバム有るんだけど見る?」
何でリビングに私のアルバムが有るのよ!!?
「是非!!」
「ちょっと待ってよ!?」
さ、流石にそれは不味い!!!このオバサンよりによって撮ってるのが全部変態チックな写真ばかりで!!!!?
「これがあかりが初めておねしょした時に撮った写真で、こっちがあかりのお風呂の時の」
「へぇ、この頃はどれも無愛想な顔してるなぁ」
なッッッ…………カァァァァいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
「あ、おいあかり!!」
後ろから、キンジの声が聞こえたけど関係ない。恥ずかし過ぎて死にそう、顔が赤くなって、頭に血が昇ってくらくらする。キンジのバカ!!!!何でそう平然とアルバム見てんのよ変態!!種馬!!ドS!!もうダメ、私この家に耐えられない!!!!
オバサンの家から抜け出して暫く、こっちに来たらよく行く公園で、ベンチに座って黄昏れる。携帯で確認したらもう夕方、皆心配してるかなぁ。
でも恥ずかしくて無理。少なくとも今日一日は帰れない。どこか格安のカプセルホテルとか、見付けないと。
そんな事考えて空を見ると、キレイな夕焼けで、頭の中が空っぽになる。
「あぁ、空がキレイだなぁ、この公園、花見のスポット何だよね。今度キンジと来たいなぁ」
本当にキレイな景色だなぁ、あ、鳥さんが鳴いてる、
「何精神崩壊起こしてんだよバカり」
え?
誰ですか?あなたはそこに居ますか?何て………キンジ!?
「ッッッ!!」
「逃げんなバカ」
ぐっ!?首根っこ掴まないでよ!私は猫か!!
「放してください先輩!私はこれからサイコフレームの中に」
腕から逃げようとする私を、もう片方の手で強引に抱き寄せて、私の事をじっとキンジが見つめてきた。
え?な、何ですか?まさか写真酷すぎてきらわれちゃった?え、いや、でもキンジはそれくらいじゃ、でも………うぅ。
「何恥ずかしがってるのか分からんがな、別に今更お前の事を嫌いになったりしねぇよ。いつも気にし過ぎなんだよ」
え、本当に?
「………変だとも思いません?」
な、何で私涙声になってるのよ!?つか、いつの間に涙出てきてるし!!私こんなに涙脆い人間だっけ?キンジに出逢ってから、涙腺がストライキ起こしてるよ、うぅ。
「何言ってんだ、元々変だろ、お前も俺も」
そうやって、照れ臭そうに笑うキンジに、つい見蕩れる。
でも………むぅ、そりゃ元が同じなんだから、同じに決まってるけど。私が言いたいのはそこじゃないんだよ!!はぁ、本当に私の気にし過ぎだったのかな?
「ほら、お前は大胆不敵に笑って、俺を散々巻き込めば良いんだ。そうじゃないと、違和感がする。笑ってくれあかり」
う、気配からしてなってない筈なのに………何でそう、笑顔で殺し文句ばっかり言えるのよ、この昼行灯は。
「キンジ先輩はバカです。そんな事他の女の子にも言ってるんですから」
何嫉妬してんのよ私のバカ、これじゃ本当に白雪先輩が、私の事を恋敵認定しても、言い訳出来ないじゃん。
「バカって、
………………………あぁ、ダメだ私、もう無理くさい。我慢できない。抱き締められて、励まされてるのに、嫉妬して。可愛くない所沢山見られて、すっごい迷惑掛けてるのに、それでもこんなに殺し文句、何でもないように笑顔で言ってくれるとか。
ダメ、ダメだよ、私がキンジに感じて良いのは、家族愛までだもん、ダメなんだから、誘惑しないでよ。誤魔化すの大変なんだよ?強がるの辛いんだよ?
「先輩の意地悪。鬼畜、鈍感、モテ体質!」
こんなに誘惑したキンジが悪いんだ、私は悪くない。だから、これは意趣返し、私からキンジに対する、意地悪。一回だけの、これっきりの意地悪。
「おい、いきなりどうしたんだよ」
「……先輩、まつげにゴミついてますから、ちょっと目を閉じてください」
こうしないとキンジ避けそうだし、私も心の準備が必要だし、早く閉じてよ。
「え、いきなりどう「早くして」……分かったよ」
私のすぐ目の前で、キンジが目を閉じた。ヤバイ、メチャクチャドキドキする。でもこういうのって、初めての相手は記憶に残るものだし、キンジの初めてを奪ったとか、皆に対してアドバンテージだし、私はキンジの横に居られれば、キンジに付いていければ、それで良いけど、やっぱりご褒美は欲しいもん。これから大変なんだから、特に明日と来年。
もう会えなくなるかもしれないなら、今ここで。
「おい、どうしたんだよ、あかり?」
「すいません今取りますから」
抱き締める腕を、緩めてくれた事に嬉しく思いながら、キンジの両頬に手を添える。
「……先輩、もうちょっと屈んでください」
「ん、分かった」
キンジが屈んで、私のが届く高さまでくる。緊張するなぁ、心臓が痛い。私キンジにしちゃうんだ。キンジはされたらどう思うだろ。驚くかな?それとも怒る?怒られたくないなぁ、でもキンジなら、私キツイお仕置きされても大丈夫だよ?
「ッん………大好きですよ、キンジ先輩」
その日私は、初めてをキンジにあげた。
あかりちゃん、ちょっとで良いから自重してくれ、指にずっと宿るんじゃない。
他の小説書いてる時に、いきなり出てこないでくれ、いつの間にかあかりちゃんになって、他の小説書けなくなってるから!!(@_@;)
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは昔話をするようです
結局一話書けちゃったから、勿体無いから投稿。
「あら?随分早いわね。いつもなら一日は帰らないのに。遠山君に何かしてもらったの?」
にやにやしながら、帰ってきた私とキンジを見て、オバサンが茶化してくる。
このオバサン、本っ当に腹立つ!!私を見るだけで、無条件で記憶覗けるくせに、何でこう私がイラつく事を言えるのよ!!!
「まぁまぁ小百合さん、早く戻ってきて良かったじゃないですか。ずっとそわそわして心配してたんですから」
志乃がそう言うと、オバサンが気不味そうに目線を外す。……………へぇ、そうなんだぁ。
「ほら、夕御飯出来てるからさっさと食べなさい!その前に手洗いうがい!!」
誤魔化すように言わなくても分かってるって……………私はオバサンがそんな心配してたの…………………………その、結構嬉しいし?
「あかり!?」
オバサンが驚いた表情で固まる。無視して洗面台に凸する、
そう、そうなんだよ。公園から戻るまでずっと、キンジと手を繋いでました。キンジが
でも、なんかもう吹っ切れたよね、私はキンジが好きだ。
家族愛を感じてるとか、兄だと思ってるとかじゃなくて、一人の男性として愛してる。恋心を抱いてる。夜寝る前、ベッドの上で考えるのはキンジだし、ご飯食べる時も、キンジの好みの味付けを考えるし。鏡の前で身嗜み整える時も、キンジに笑われないようにって考えてる。授業中も、キンジが今何してるかとか、キンジが他の女の子に告白されたら、呆れるけど、それよりも寂しい。
キンジが居るから、武偵中に入ったし、キンジのために、女の子の勉強沢山して、キンジに女嫌い治してもらおうと思ってる。
キンジが言うなら、私はどこにでも行く。そのための
……………こう考えると私、とっくに落とされてたんだなぁ。入学した直ぐ後には、もう落とされてたと思う。いや、もしかしたらもっと前かも?キンジと初めて会ったのは、確か学校説明会の時の、一日体験の時に、私の相手だったはず。
「あかり、考え事かい?」
キンジが私の事を心配そうに見てくる。私って二人きりの時は、結構無口だと思うんだけど、何が心配なのかな?
「キンジ先輩と、初めて会った時を、考えてました」
それを言うとキンジが困ったように笑う。
「あの時はまた、とんでもない女の子が来たと思ったよ」
「私はキンジ先輩のこと、ずっと気に掛けてましたよ?」
そう言って抱き着く私に、キンジはまた、困ったように笑う。
「はぁ~」
中学で一日体験とか、やっぱり武偵ってヤバイわ、何かもう、ツッコミが疲れる位ね。保護者同伴じゃないのは、やりやすいけど、中学が家から遠いから、一人で来るの大変だったなぁ。私中学に入ったら、一人暮らしになるのかな?中学生に部屋貸してくれる物件、あんのかな?流石にそこは親の名義か。
「間宮あかりさん、五番ブースに来てください」
三年の生徒に、体育館を仕切りで区切って、小さな部屋を沢山作ってる所を、案内してもらう。何かテレビでやってた、大学の企業ブースみたい。
私、死んでなかったら多分、今三十路なんだよね。もしあのまま生きてたら、高校卒業出来たのかな?もしかして大学通ってる?なわけないか。私、バカだったし、そもそも大学行く意味無いもんね。武偵になるんなら、それこそ高卒で十分だもん。
五番ブースの中に入ると、根暗そうな長身の、ビジュアル系のイケメンになりそうな男の子がいた。何か見たことあるなぁ、こう、昔は毎日見てたんだけど、最近めっきり見る機会がなくなったみたいな。それこそ、毎日見てるような感じなんだけど、何で思い出せないんだろ?私記憶力には自信あったんだけどなぁ。えっと、テレビとかじゃなくて、もっとこう、近くで見てた顔だね、毎朝洗面台で会うレベルの……………ッッッ!?
「……………君が、間宮あかり?」
え!!?………………………嘘でしょ!?事前予約だから、私の名前知ってるのは良いし、確かに会えるかもって期待したけど、こんなドンピシャとか、私は運が良いのか悪いのか。
しかも今の時期は
こんな窮屈な身体になって、あまつさえ女になるなんて、絶対に一発ぶん殴るから。
「えっと、名前確かめたいんだが。俺は今日の一日体験の案内役、一年の遠山金次、呼び方は好きにして構わない」
あ、困ってるな?一日一緒なんだし、コミュニケーションは取っておこう。入学してからとか、未だ決めてないけど。
「ごめんなさい、間宮あかりです。今日はよろしくお願いします!」
笑顔で相手の顔をしっかり見て、ハキハキと話す。これだけで印象は良くなるのよ。この身体になってから思ったけど、笑顔の力は侮れないわ。
特に女性が男に向けて笑ってる時、女になってから分かったけど、半分は作り笑いだもん。女の人って怖いよ、男が居ないと生々しい話するのは、前世でも聞いたことあるけど、あそこまで生々しいとは………男も女の人が居たらしにくい話ってのは、あるけどさ。
男が話す話題って、自分達とは直接関わりのない話題が多いの。やれあの女優さんがキレイとか、あの野球選手がどうのとか。女の人が話す話題ってさ、身近なものが多いのよ、近所の誰々がどうのとか、丸々さんがどうのとか。
性別の違いとか、どっちが良いとかじゃ無いけど。前世で男の会話に慣れてた私からすると、ちょっと生々しいの苦手だなぁ。
「お、おぉ、よろしくな。間宮は
私の目的は一応、この人を香港で、死なないようにすること。つまりはこの人を強くするか、この人の代わりに猴、孫悟空を倒す人を見付けるか、私がなる必要がある。
「ここが通称黒体育館、強襲科の訓練施設だ。間宮は一般中学の出だったよな、銃は見たことないでいいか?」
案内されたのは、前世でも通っていた黒体育館、射撃場と格闘訓練が出来る場所、その辺に薬莢が沢山転がってて、馴れてないと転ぶんだよね。
因みにこの薬莢とかの掃除、
所謂常駐
「いえ、親の仕事の都合で、よく見てはいました。触った事は有りません」
「そうか、なら最初はこの銃からだなグロッグ17のモデルガン、パーツはプラスチックだけど、
そう言ってグロッグ17のモデルガンを、壁際にある棚から取り出してきた。……………実弾撃てる銃を、そんな雑な扱いで良いのか?
でもまぁ、意外と考えられてるじゃん、私の今の身体だと、反動のデカイ銃は無理だから、グロッグとか、ワルサー99みたいな、女性に向いてる反動の少ない銃しか、使えないんだよね。反動を利用して撃つ方法も、家で習ったけど、何か性に合わない。
家の撃ち方は、装弾数の多い、
「わかりました」
「整備室に行こう。ついてきてくれ」
案内されてついたのは、直ぐ近くの部屋で、中は長机と椅子が大量に並ぶ、何とも雰囲気の無い部屋。中は私達以外にも、何人か今日体験者と付き添いのコンビがいて、皆熱心に銃について教えたり、完全分解に苦戦したりと、微笑ましいのか、物騒なのか分からない光景が広がってた。
……………思ったけどさ、何で付き添いが大人の人間じゃ無いんだろう。唯でさえ銃器を取り扱うのに、一年まで付き添いに混じってるって………この付き添いも多分、任務何だろうけど、任務にかこつけて、自分達の面倒事を生徒に押し付けてるだけじゃ?
「じゃあ、まずは分解からだな。実演するから、見ててくれ」
そう言って、中々の手際で分解していき、一つ一つ説明してくれる。意外と早いな、家族が家族だから、そうなんだろうど、燃えてきた。
「こんな感じだ、一度やってみるか?」
部品を組み上げながら、どうすれば組み立てやすいかも、解説してくれる。いやはや、こんなに上手いとは、教え方丁寧だし、教師になれば良いんじゃない?
説明が終わった後、私に聞いてきたから、不敵に笑ってうなずく。私の本気、見せてあげる!!
「はい」
発動キーは闘志………掛かりはギリギリ一割、十分ね。確か二分位だったよね、分解時間。説明しながらだから、一分位が目安か……………四十秒、四十秒でいく。
「いきます」
スタート前に、どこに何の部品があるのかを、一度確認して、手の感触を頼りに、殆ど見ずにどんどん部品を繋げていく。
あまりの速さに、部品が悲鳴を上げて、周りが何事だと見てくる。私はそれを無視して、全神経を手に集中して、部品を組み上げる。
「終わりました」
「……………あ、あぁ、お前本当に初めてか?」
お、驚いてる驚いてる。小学六年が、初めてって言って拳銃の組み立てをプロレベルでしたんだから、そりゃ驚くよね。いよっし!!掴みは良いね、入学後、どうするか決めてないけど、覚えてもらう必要はあるからね、なにかしら印象は残さなきゃ。
「はい、
短機関銃とかのは、したことあるけど、拳銃は死んでからは初めてだから、『昔とった杵柄』ってやつ?
それでも、全力で動かしたから、ちょっと息切れしそう、疲れちゃった。昔はこの位速くないと、先生に怒鳴られたけど、今は違うし、そもそも身体が違うもん。こんなに小さい身体で、戦えって方が無茶よね。
……………前世のアリアと理子の二人が、どれだけ無茶苦茶な事してたのか、実感したよ。何?あの体力お化け!!どうやったらこの体格で、大型拳銃二丁撃ちとかやれんのよ!!!
「……そうか、なら、射撃訓練もしてみるか?筋が良さそうだし、本当は体験は、最後にする予定なんだけど、間宮は他を回る前に、この体育館で訓練の方が、良いだろう」
あ、体力無いのバレてる。何か悔しいな、訓練する時間増やそ。えっと、瞑想の時間減らしても大丈夫だよね、私才能有るって言われたし、大丈夫取り返せる取り返せる。
「分かりました、よろしくお願いします、先輩」
身長のせいで、上目遣いになったけど、これも悔しいなぁ、毎日牛乳飲んでるし、小魚大好きなのに、何で背が伸びないんだろ、一部もちょっとも成長してないし……………ハッ!?いや、そこは成長しなくて良いんだけどね!!?大きかったら肩凝るって聞くし、匍匐前進とか、スナイプとか、邪魔な時多いし。そりゃ、女の子になったら、憧れ的なのはあるけど、でもその…………………前世の私に覚えてもらうのは、やっぱり見た目大事だし?前世の私って、巨乳って言うかお姉さんキャラ好きだし?………ブチッ何か腹立ってきた。
「じゃあ、
「何でもないです!」
「あ、あぁ、じゃあ、弾込めを「出来ました」ッッッ!?本当に今日初めて!!?」
「そうですっ!!レーンはどこ使うんですか!?」
怒りで能力が発動してる………二割か、未だ大丈夫ね。
「す、すまん。二番が空いてるからそこで………手本いるか?」
「大丈夫です」
二割なら抜き打ちだね、
ババババババババッ!!!!
グロッグは、フルオート付いてて楽で良いなぁ。
「なッッッ!!!?嘘だろ?」
あ、注目集めすぎた、生徒どころか、射撃場中に見られてる。やば、思ったより分かるやつが多かったみたい…………逃げるか。
「キミ、名前は?」「今日きた一日体験の子だよね!?」「どこの小学校!!?」「彼氏いるの!?」「この後時間ある?」「キンジがとんでもない子を
収集つかなくなってきた、これだから
「逃げるぞ!」
ッッッ!!?
「ちょっまっ!?」
手を引かれて黒体育館から逃げ出す。これから一日、私どうなるの!?
夢の中にまで出てきたらどうしよ(^o^;)
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは昔話をするようです 2
一応読めるレベルにはなってるはずです。進んでるかはともかく。
「ここまで来れば、もう大丈夫だろう」
手を無理矢理引かれて、普通教室の近くまできた。
ここら辺は、今日が休日で、一日体験のための人間以外学校に来てないから、人気が少ない。どの教室も明かりが無いし、廊下には私含めて二人だけ。
「えっと?」
「あぁ、あそこに居たら危険だったからな。ちょっと強引に引っ張って来たんだ。ケガは大丈夫か?」
「大丈夫です」
「そうか」
「……………」「……………」
……………………………………………………………気不味い、スゴく気不味い。そもそも女嫌いで根暗のコミュ障に、話題をつくれ何て無茶ぶりだろうけどさ?私はそれに加えて前世の自分との会話何て、ハッキリ言って無茶ぶりも良いとこなんだよ!?
「間宮」
「ッッッ!?」
いきなり呼ばれてビクッとする。
いきなり名前呼ぶな、空気が凍ってるの分かんないの?この一日体験はもう、失敗で終わってるんだよ!?
「あ、すまん驚かせるつもりは無いんだが」
ええい呑気なこと言っちゃって、私としては、あんたの女嫌い克服のために、色々しなきゃダメだってのに。
今は未だそこまでじゃないとしても、二年になったら酷くなるんだから、それまでに対策とかしなきゃダメなのに、本人はのほほんとして上級生口説いてるんだもん、腹立つよ本当に。
「何です?」
思わず不機嫌そうな感情が出てきちゃって、それで露骨に気不味い顔しながら話してきた。
「えっと、お前の親って何してるんだ?」
………なぜそれを聞く?
武偵志望の子供にとっては地雷原みたいなこと普通聞く!!?だって武偵だよ!?親がマトモな感性してたら普通、こんな中学に行かさないでしょ!!?
…………………………あぁ、そうか。未だ一年で、家が家だったから、そこら辺分かってないんだ、コイツ。
……………はぁ~、しゃあない、そこも教えるか。
「先輩、武偵目指してる人に、親の話題は禁句ですよ」
あ、どうしてって顔してる。本当に分かってないんだね。金一兄さんもそこら辺教えといてよ、弟メチャクチャコミュ障何だから。
「えっと?」
「そもそも、こんな危険な所に行こうとするのを、許す何て正気の沙汰じゃないですよ。普通に進学して普通の職に就くのが、死なない一番の方法何ですから」
それを言ったら、合点がいったように、押し黙る。自分が不味いこと聞いたのが分かったみたいだ。
でも、なんかなぁ、元自分の見た目のやつが、年下の女の子に言いくるめられるとか、何かやだな。仕方ない、サービスするか。
「………はぁ、私は家が元々
途中、勘違いしてたのを訂正して、鼻のてっぺん押して睨む。されるがままとか、私の怒気でも怯むって、どんだけ貧弱よ。こんなんでよく金一兄さん目標にしてたわね。
「私決めてたんですよ、今年の
来年から行くことになるからって、お母さんが連れてってくれた体育祭で、まさか活躍してるなんて思わなくて、つい目で追ってたんだよね。お母さんとののかが勘違いしてたけど。自分に恋心とか、ナルシストじゃないんだから、あり得ないでしょ。
「………あれは、マグレだ。期待させたなら悪いが、あんなこと出来な「出来ますよ、先輩
あ、驚いてる。
「今日の雰囲気と、体育祭の雰囲気、まるで違うんですよ。別人かと思うくらい。先輩は乗能力者、それも脳に関わる能力者です。知識があれば直ぐに分かります」
私が背を向けて、歩いて距離を取りながらここまで言うと、警戒一色の声音で聞いてきた。
「それを知って、どうするつもりだ?」
こっちの武装はゼロ、相手は銃とナイフ、ただし技能はチンピラレベル。やれないことはない。
「簡単です。入学したら私と、
振り返ると、何を言ってるのか分からないような顔で、何を言ってるんだこいつは?みたいな雰囲気出してる。
ま、そりゃ混乱するよね。敵かと思った相手から、弟子にしてください宣言とか、そりゃ頭の中パンクするよ。
「なぜ?」
そっか、一番分かんないのは理由なんだね、はいはい。
「今日の先輩は確かに、私でも相手できる位には、へなちょこです」
あ、しかめっ面してる、事実は認めなよ?前に進むために。
「でも射撃部門の時の、あの雰囲気の先輩なら、私より強い。だからです」
実際私の能力は、ヒステリアモードの下位互換。しかも、日常生活に制限が付くなんてデメリットもある。
このまま成長を続ければ、抜かされるのは目に見えてる。
「でも先輩、いつでもあの雰囲気になれる訳じゃ無さそうです。だから先輩の近くで、先輩がいつでもあの雰囲気になれるように、お手伝いすることにしました。あの雰囲気の先輩なら、学べるものが沢山有りますから」
だから、私がするのは
なら、なら私が教えよう、私の人生の結晶を
それだけじゃなく、作り続けよう。孫悟空だけじゃなく、それ以上の相手が来ても、
「俺より優れた奴はいる、上級生の中にはごまんといる。なぜ俺なんだ?」
疑り深いね、私が女だからかな?
確か、
「私も乗能力者何です。組み立ての時と、射撃の時に、使ってますよ。先輩と同じ任意の発動型です」
お、驚いた驚いた。
「何でそれを今言う?」
「分かんないんですか?この学校で先輩だけなんですよ、乗能力者の強い人は。私と似たタイプなのも理由の一つです」
実際乗能力者は希少だ。万人に一人ってレベルで、すごく少ない数。そこからこの学校に来てる人は、片手の数でも足りる位。さらに乗能力者の中でも………なんて別けたら、選択肢なんて皆無だ。むしろ居ること事態スゴい。まぁ、居るから来たんだけど。
「……………理由は分かった。お前が何で俺を選んだのかようく分かった。だがお前と組んで、俺にメリットは有るのか?」
ありゃ?もしかしてここまで言ったのに、未だ理解してないの?私は
「先輩、本当に鈍いなぁ。私は
「?……………ッッッ!!!?お前まさか!?」
「白雪先輩でしたよね。お弁当食べてる時に、先輩っていやらしいです。私
体育祭の目的は、どこまで周囲に溶け込めてるのかとか、私の記憶と合致してるかとか、そこら辺を調べるのが目的だったんだから、そりゃ調べてるに決まってる。
午前中に手伝いで、校門前でパンフ配りしてたのは同じだったから、その時にこっそり、ブレザーに仕込んどいたんだよ、小さいカード型の送信機。電波が微弱だから、学校の敷地内じゃないと追えないんだけど、それで十分だったし。仕込むために足引っ掻けて転んだ時に、下着見られたの未だ覚えてるから。つか
「……………………なるほど。で、それは脅しか?」
ありゃ?未だ諦めないの?
それに警戒越えて、戦闘体勢に入りかけてるよ。直ぐに拳銃が抜ける体勢になってる。こっちは小学生なのに、ここまで敵意向けるとか、柄が悪いってレベルじゃないよ、あれなの?自分の敵はどんな相手だろうと、殺気向けられる人種なの?生まれる時代間違えてるわよ、戦国時代の野武士か何かか。
「脅しだなんて人聞きの悪い。私は先輩の戦妹になりたいって、お願いしてるだけです。先程の質問ですが、私と契約してくれれば、先輩にもメリットは有りますよ」
「なんだ、まさか変な事を言い出すんじゃないだろうな?」
「まさか、先輩のメリットは。一つ目、先輩の乗能力をばらさないこと、二つ目、私から技を盗めること。最後に三つ目、女の子のこと、教えてあげます」
あ、三つ目で露骨に嫌そうな顔した。そりゃ、鬼門とも言えるレベルで、嫌なのは分かるけど、知らなきゃ対策なんて出来ないよ。
「やっぱり脅しじゃないか、それのどこがメリットなん「
失礼な。中身はともかく、私は立派な小学六年生だ。
「私は小学生ですよ、年齢詐欺なんてしてません。それより、この話、受けてくれるんですか?」
「はぁ、選択肢何て無いだろう、性悪め」
その言葉に思わずガッツポーズ。よし!戦わなくてすんだ!!この能力、使うとスゴい疲れるから、使わないに越したことは無いんだよね!一日三回って、回数制限もあるしさ。
「小学生相手に性悪とか、ひどいです先輩!」
「お前みたいな小学生が居てたまるか、気味が悪い」
な!?本っ当に性格悪い!これじゃ根暗とか昼行灯って言われても仕方無いよ!昼行灯め!!
決めた、これからは昼行灯って呼んでやる。心の中だけだけど。
「事実私は小学生ですよ?」
私が笑って、昼行灯が胡散臭そうに見てきたその時、お昼休みの鐘がなった。
もう昼なんだ、以外とあっという間だなぁ。もっと長いと思ってたんだけど。
「もう昼か………おい、間宮」
「ん?何です?」
「お前昼はどうするんだ、弁当は?」
あ、どうしよ、ロッカーにカロリーメイト起きっぱなしだ。今から戻っても、また騒がしくなりそうだなぁ。午後は任意で通常授業の内容を、先輩に教えてもらうんだよね、私中学の内容はもう出来るし、もう帰っても良いんだけど。お母さん近所の映画館で映画見てから迎えに来るって言ってたから、それまで時間どうしようかなぁ。
「えっと、ロッカーにカロリーメイト起きっぱなしです、財布は持ってますよ」
それを聞くと、昼行灯が頭痛そうに顔しかめて、ため息吐いて言う。
なに?私変なこと言った?
「はぁ、小学生がカロリーメイトかよ。ロッカーにはあの騒ぎで戻れそうにないし…………ったく仕方無い、間宮」
「何です?」
「ファミレス行くぞ」
こっちの返事聞かずに歩き出した昼行灯を、慌てて追いかける。ファミレスかぁ、ココスのハンバーグ美味しいんだよね、あそこが良いなぁ。
「私ココスが良いで「サイゼだ却下」……ぶぅ~私あの自分で焼くやつが良いのに」
「今度自分で行け、そもそもココスなんてブルジョワの行く所だ、高いのに量がない」
むぅ、何よ、サイゼも量がないのは同じじゃん。和食無いし。
「そんな、私ココス好きなのにぃ」
「どうでも良いわそんなこと、とにかく昼はサイゼだ、おごるから機嫌直せ」
え!?
昼行灯がおごる!!?
あの万年金欠がおごるなんて、まだ秋だけど、雪でも降るの!?…………自分で言ってて虚しくなる、やめよ。
でも昼行灯のおごりかぁ、ふふふ、年の近い男の子におごってもらうのかぁ。これがただの友達とかなら、遠慮するんだけど、昼行灯なら遠慮しなくて良いもんねぇ。むしろゲームとかに使ってた分だけ、私に貢げとすら思う。ゲームとかする暇あげないもん。戦妹になったら下校時間ギリギリまで、体力絞ってあげるからね。
「本当ですか?遠慮なく頼みますよ?パスタとサラダにデザート、後ドリンクバーも」
それを言うと昼行灯が、顔をひきつらせながら言う。
「容赦ねぇなお前、はぁ。好きにしろ、昨日長期任務終わって、少し余裕有るからな、サイゼならいくらでも頼んで良いぞ」
やったぁ!!!
一回デザート制覇とかしてみたかったんだよね!お小遣い余裕無かったから、出来なかったんだけど。っていうか小学生一人でお店に入れないし。速く中学生になりたいなぁ。
「本当ですか?先輩大好きです!!」
「ッッッ!!?抱き着くな鬱陶しい!!」
む、つれないなぁ、そりゃヒステリアモードの都合があるとしても、そこまで邪険にしなくても良いじゃん!
でも、前世の私でもこうするかも、向こうは初対面と思ってるみたいだし、やり過ぎたかな?
「あ、その、ごめんなさい」
「………はぁ、良い、驚いただけだ。背中にいきなり乗っかるのは止めろ」
「じゃあ、腕失礼しま~す!」
背中がダメって言われたから、腕に抱き着く。昼行灯は振り払わないで、ちょっと顔赤くしてぶっきらぼうにそっぽ向いた。あはは、意外と優しいんだ?
自分のことながら、前世で女の子が周りに多かった理由分かったかも。何だかんだ文句言っても、最後はお願い聞いてくれる質何だよね、多分。
そりゃカモにされるよ、ヒステリアモードじゃなくてもこんなに優しいんだもん。女の子からすれば、正義の味方より好い人だよね、都合の。
これから女の子の事を教えて、どんどん耐性着けてもらおう、ヒステリアモードにならなくても、アリアと同じくらい強くならなきゃ。最終目標は、ブラドと一対一で一日戦えるのが目標かな。それだけ出来れば最強クラスでしょ。うん。
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは娘ポジも狙うそうです
あ、やめて、遅かったからって石は止めて!死んじゃう、死んじゃうから!!
…………………コホンッ今回全く進んでないので(いつも通り)、ストーリーの続きを読みたい人は、次の更新を待ってくれれば、はい。
懐かしいなぁ、出会った時は、全っ然気を許してくれなかったんだよね、あの後色々二人で
それなのにキンジ女の子無差別に落とすし、キンジの秘密に気付きそうになった女の子、結構居るんだよ?学年関係なく、キンジ女の子を口説くんだもん。お陰で牽制がキツいキツい。キンジに騙されてる可哀想な
白雪先輩は、キンジの事を調べてる生徒を片っ端からO★HA★NA★SIしてるから、騙されてるとかそれ以前に、一部では恐怖の生徒会長何て呼ばれてるからね鬼姫とか、鬼母神とか。
姫は巫女を
私なら
でも闇討ちかぁ、たまに学校で訓練中とか、狙ったように流れ弾くる時あるよ?その度に避けてるけど。先生が居ないと、女性組は私の事集中狙いするからね、流れ弾でお互いが怪我してたら忙しないけど。
こっちは理不尽に怒りを覚えられれば、直ぐに能力使えるから、良い訓練になるんだけどね。
ま、お陰で先生が見てる時しか、安心して訓練出来ないよ。高校と違って、
「あかり、さっきからどうしたの?ボーッとしてるけど」
あ、考え事してたらいつの間にかリビンクで志乃の隣に座ってた。私考え事しながら別の事する癖ついてるから、たまに何やってたのか覚えてないんだよね。
「ちょっと昔の事思い出してて、これからご飯だっけ?」
「ボケるには未だ速いでしょあかり、さっき食べ終わって、自分で食器洗ってたじゃない。本当に大丈夫なの?」
おばさんにボケてるとか言われた、ショックだ。ボケ老人にボケてるって言われるとか、ショックだぁ!!
「何バカなこと考えてるの、それより、三人とも宿はどうするの?」
あ!?
言われて気付いて、志乃と二人で慌てる。
「あそこのホテル、チェックアウト今日の夜九時だよ!!後一時間しかない!!!!」
「急がないと!!!!」
二人で慌てて飛び出そうとすると、キンジが呼び止める。
「待て二人とも」
何のんびりしてんの!?急がないと荷物が!!
「そんな慌てなくても、あそこは武装ホテルだろ、一日なら違約金も荷物も無事だ」
へ?あそこ武装ホテルだったっけ?
「そう言えばそうでした、慌てる必要無かったですね」
志乃がホッと安堵の溜め息吐いてるから、そうなんだ。
武装職専門ホテル、通称武装ホテル。
こんなご時世、武装する職業は武偵だけじゃない、検事も弁護士も、果ては大学教授まで。
割りが良い仕事ほど、
でも武器って、人を害する為のものじゃない?そんな危ない物持ってる知らない人と、同じ建物で寝るって、結構なストレスなのよ。これはどの武装職業の育成施設でも、教えてることの一つ。
だから、持ってない人が不安がらない様に、武装職業専門の、ホテルが出来たの。
それが武装ホテル。
銃器を保管する専用ケース。ホテル内での弾薬の販売や、銃器のメンテナンスサービス、整備道具にすごい所だと部屋に弾薬を作るための設備がある所もある。従業員の殆どが、銃器の取扱いが出来て、武装職の資格持ちだから、襲撃にあっても、対処しやすいのも、利点の一つ。
仕事の都合で、ホテルのチェックインチェックアウトが遅れる時も、普通のホテルより猶予時間が長めに取られてるから、一日遅れてもさしたる問題じゃないのよ。
その分普通のホテルより高い、そりゃもう比べ物にならない位高い……………………具体的には桁一つ。
いくら武装ホテルだからって、ビジネスが12万ってアホじゃないの!!!?
そんなん全部おばさん宛の小切手切ったわよ、「何気軽にに人の口座使ってんのバカ娘!」いたぁっっっ!!!!?
「お前、気前よく小切手切ってた割りに、小百合さんの口座だったのかよ」
キンジに呆れられた目で見られるけど、あの小切手帳、おばさんが困ったら使えって言って、渡してくれたやつだもん!私悪くないもん!!だっておばさん別に口座作ってるもん!そっちの口座桁がおかしいもん!!
「あのお金は、緊急時の為のお金なのよ?」
「今回だって緊急時だよ!私の人生が掛かってるんだから!!」
私が言い返すと、オバさんが溜め息を吐いて、確認するように言った。
「普通のホテルには、泊まらなかったのね?」
勿論、武装してたって普通のホテルには泊まれるけど、その代わりホテルに武装を預けることになったり、ホテル内で武装を人目の有るところでは見せないとか、果てはホテルが襲われた時に、救助義務を付ける所まであるんだもん、そんなん泊まれるわけ無いじゃん。
「一応、二駅先の、武装ホテルのビジネスクラスに。あかりが小百合さんの家に泊まれるから、繋ぎで四人部屋一つで良いって」
「私連絡してもらってないんだけど?」
そんな恨めしそうな顔で見ないでよ。一人二人位、オバさんなら誤差の範囲じゃん。今日だって、連絡入れてないけど、人数分ちゃんとご飯作ってくれたし。
「でもこの人数なら誤差でしょ?」
「それでも、貴女なら省庁経由で連絡出来るでしょう?」
それは、使いたくないんだよ。つか、
「あんなのでも、貴女の事真っ直ぐ見て、好きになってくれた人じゃない、邪険にしちゃダメよ。この前会った時、最近連絡来てないって、加藤君ショボくれてたわよ?」
うげ、そろそろ会わないとダメか、一ヶ月持たないって、どれだけ執着してんのよ、怖いな。
「加藤?」
「えっと、
そう、ただの知り合いよ、それだけよ、うん。あいつの事はあんま考えたくないわ。
「あら、それだけ?」
うぐっ、あんまり掘り返さないでよオバさん、考えたくないんだって。
「…………………けです」
言いたくない、特にキンジには言いたくない。
「あかり?」
「よく聞こえなかったぞ?」
二人が何か訝しげな目で見てくるから、つい強気な口調で言い放った。
「
あんな奴、親が乗り気じゃなかったら、絶対に初対面の時に振ってたよ!!
「………は?」
「…………………なんて、言った?」
あれ?てっきり本気にされるとは思ってなかったんだけど、何か二人とも反応が鈍くない?
「えっと、二人ともどうしたの?」
私たちの変化に、あえて無視するように、オバさんが問題の人間の事を話す。
「
オバさんが言った事が、良い面しか無くて、思わず嫌な部分を思い出した。
あいつ、私が嫌われる為に言った無理難題を、私の為だけに全てこなすんだもん。しかもメッチャ紳士で優しいし。それに金一お兄さんとか、キンジとかと似た、強面な格好良いタイプのイケメンだしさ。
だけど
そこだけが一番腹立つ、私はロリじゃないもん!!幼児体型で悪かったなこの変態!!!会う度に抱き締められる身にもなれバカァ!!抱き着き癖あるだけでダメ!!つか抱き着くのが長い!平気で十分やそこら無言で抱き付いて来るんだよ!?そこ以外は完璧なのに!!!!
まるで身体に必要なものを、必死で取り込むように、ひたすら私に抱き付いてくるんだもん!会話があるならまだしも、無言で頭とか背中とか撫でてくるんだよ、好きでもない人にされると、ただただおぞましいだけよ!!!!お尻とか胸は無いから、未だ撃つ理由が無いのが悔しい。理由さえあれば、痴漢で即
「そうか、で、そいつは今どこに?」
「そうですかぁ、白雪先輩と佐々部さんに、お願いしなきゃ」
え!?
何でそんな、ほの暗い雰囲気になってるの!!?
何かキンジが雰囲気変わってるんだけど!!!!?
まさか、ベルゼになってるの!?
「俺の
「私のあかりに手を出そうなんて、命知らずも良い所だよ。生きてる事を後悔させてあげる」
あ、絶対正気じゃないよ二人とも!?
つか、何で私に許婚が居るってなった途端にこれなのよ!!?
「え、ちょっと二人とも!?一回落ち着いて!!」
「これが、」「落ち着いてなんて、」「いられるか!!」
今にも飛び出しそうな雰囲気になってる二人を、落ち着かせるために、とりあえずキンジから、アイコンタクトでオバさんには志乃を見てるようにお願いする。
「キンジ先輩!私は大丈夫だから!!親が決めた話だし、この許婚はお互いが成人して、本命を見付けるまでの、虫除けみたいなものなんです!!だから大丈夫ですキンジ先輩!お互いが相手に本気になって無いんです!!」
キンジに抱き付いて、呼蕩気味に話し掛ける、掛けた事はあっても、掛けられた事は無いんだから、防御なんて出来ないでしょ?一端落ち着いて、これからの事話さなきゃダメなんだよ!!
「…………あかり」
「なんです?キンジ先輩」
「呼び捨てで良い」
落ち着いてくれたかなぁ、なんて思ってたら、とんでもない事言ったキンジ。
「え?」
「敬語も止めろ」
頭ん中フリーズして、何が何やら分かんない状態で、キンジがまた爆弾発言をしてきた。
「は?……………えぇ!?」
何が、何がどうなってんの!?
何でキンジがいきなりこんなこと言い出すのさ!!?
え?私なんか選択間違えた?
「子供はもう風呂入って寝る時間だ。そら、早く行ってこい」
そう言って、私を自分から引き離すキンジ。
な、何が起こってるの?え?キンジの目が、まるで休日のパパみたいな目なんだけど?
こんなヒステリアモード見たことないよ。なった事も、聞いた事もない。ヒステリアモードって、未だ私の知らないモードがあるの!?
「それじゃあ、久し振りに一緒に入りましょうか。キンジ君と志乃ちゃんは、ホテルから荷物取ってきなさい、着替えは流石に私用意出来てないから」
いや、一人で良いよ、オバさんとは入りたくない。
「分かりました、あかり、直ぐに戻ってくるからね」
「女の子一人に行かせる訳に行かないな。あかり、良い子にしてるんだぞ?」
そう言って私の頭を撫でるキンジ。
何で二人ともそう簡単に納得しちゃうかなぁ………あ、頭が気持ちいい…………じゃなくて!!
何でキンジがこんなパパみたいな言動になってるのさ!!?これってつまり、私はもう完全に子供扱いって事なの!?
そりゃ、私は見た目が幼児体型だし、迷惑も結構掛けてるつもりあるけどさ。それでも、いきなりこんな扱い納得出来るかぁ!!
「どうしたんだ?不機嫌そうな顔して」
「私は、いつも通りですけど!?」
私の反応に、三人とも呆れた様子になる。何でさ!!?
「ほら、すねるなよあかり。帰ってきたらあかりがしたいこと、一つ聞いてやるから。」
「本当?」
思わずキンジの言葉に反応して詰め寄る。
今、言うこと聞くって言ったよね!?嘘じゃないよね!?嘘だったら、学校にキンジがロリコンだって噂流すから。
「あんま無茶苦茶言うなよ?」
私の考えてることが分かってないから、キンジが困ったように笑う。
…………むぅ、子供に我が儘言われて困ってるパパみたいな顔して、やっぱりこの顔されるの腹立つ。
「分かった、早く帰ってきて」
ぐぬぬ、キンジに
「おう、良い子にしてろよ?」
「それはもういいから!!」
あくまでも子供扱いのキンジに、流石に私もちょっと文句を言う。
結局二人が荷物を取りに、ホテルに向かうまで、ずっとパパみたいに頭を撫でられてた、嬉しいのに嬉しくない、何これ。
次はいよいよ、神様とのお話の予定(未定)
お話会が、1話じゃ全然終わらなそうで、今から頭抱えてます。
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは悩むようです
読んでくださる読者の人達には申し訳無いです、これも作風だと思って、諦めてくださると楽かも知れません。
「ふぅ~、生き返るぅ」
見た目が十代の戦前から生きてるオバさんが、お風呂に浸かって恍惚の表情を浮かべてる。
本当にこの人、世の中の女の敵よ、八十過ぎてるのに、何でそんなに若いのよ、前に聞いたら『神降しとか、超常現象とか、非現実的な事に関わってると、自然と若くなるの』って言ってたっけ。
絶対それだけじゃないだろうけど、シャーロックが百歳越えても、見た目二十代だったのを考えると、色金クラスの遺物なら、それも可能だって、思えちゃうのがねぇ。本当に超能力って何でもありよね。
「婆臭いこと言わないでよ」
「そんな酷いこと言わないでよ、老い先短い老人の、数少ない趣味なんだから」
「趣味ねぇ、算盤教室で可愛い男の子に
つか、オバさんの癖に見た目は年上が好きって、倒錯し過ぎよ。私の趣味とか性癖、絶対この人に歪められたわ。
「いいのよ、若い子の強い感情が、私と契約してる
のほほんと言ってるけど、やってること最低だからね?
「その天狐はどこに居るのよ」
「外宮の
天狐、純粋な狐の中では、最高峰の格の存在で、半分神格、地域によっては祀られる存在。気性は穏やかで、若くても千年以上生きてる狐が、天狐と呼ばれる。
つまり、下手すると日本列島に、国が出来る前から生きてた存在も居るってこと。茜社の天狐は、若い狐みたいだけど。
「あの娘が寂しがり屋で、地域の小学校に通ってるのも知ってるわよ」
「あら、
茜って言うのは、天狐の名前で、基本は人前ではあまり呼ばない。契約してる幻獣にとって、名前は危険なものだからだ。
「オバさんと違って、あの娘は居場所が分かるからね。外宮に行った時に、ついでに変則的な術式組んで、呼んだのよ」
「あら、理論の方は成長してるのね。私と茜を、両方呼び出せる条件で、式を組めるようになるなんて、私嬉しいわぁ」
そう言って私の頭を撫でようとしてくるのを避けて回ッッッ!?金縛りとか、どんだけ容赦ないのよ!!
「ほら、逃げないの、本当にもう、貴女は素直じゃないわね。深層心理と考えてる事が、大分離れてるわよ?危ない兆候ね、あなたはもっと周りに弱音を吐いて良いのよ、最近泣くことが多くなったんじゃない?」
え?、何でそれを、いや覗いたんでしょ?
それに、泣くことが多くなったのは、別に良いのよ、オバさんの言ってた弱音を吐くってやつだから。
「はぁ、あかりの泣き方は、感情の処理が追い付かなくて起きるものよ。あかりくらいの歳にはたまに居るけど、感情の制御が出来てないの。あかりの境遇には、私は同情するわ、同じ神に台無しにされた者同士だもの」
だったら!!
「なんで、何で私を、弟子になんてしたの?」
同情してるなら、助けてよ。
私は、もう嫌だよ、痛いのも辛いのも!!
「それじゃ、貴女は納得しないじゃない、自分で助けなきゃ、安心出来ないじゃない。だからよ、貴女には才能があって、私は才能を伸ばす事が出来たの、だから私は貴女を弟子にしたの」
その言葉に、涙腺が緩くなるのを、無理矢理堪える。
「私、なれるかなぁ、
ちょっとダミ声になった私の声に、オバさんは優しく抱き締めてゆっくり話してくれた。
「大丈夫よ、私より才能有るもの。大丈夫だから、自信持ちなさい」
なんか、小学生の頃に戻ったみたい、懐かしいなぁ。強姦されそうになった後、学校はそのままで、こっちで暫く生活してたんだよね、ののかは来なかったけど、あの娘は私よりも特別だからねぇ、家の武術の才能なら、あの娘の方があるし。私は無理、効率的に人を殺す為だけの技とか、
キンジ達が帰って来るまで、オバさんにずっと、相談に乗って貰った。
神降しが出来る巫女は、神の
その生涯を、神の為に捧げ、神の先兵となり、人を導く。
こう言うと、耳触り良いけど、神のおもちゃになるに決まってる。
神の気まぐれで死地に赴き、言われれば命も差し出す、人間じゃなくて人形、意思無き人型。それなのにその力はICBMや戦術級の核兵器を越える。一人で小国なら一国を落とせるRランクが、束でも敵わない超常世界の核兵器。
過去の事例だと、国が個人に対して不可侵条約を結ぶレベル。
歩く災害、意思持つハリケーン、
強過ぎる故に、その殆どが、
生きてる時代が人生って規模じゃなくて、人類史レベルの規模なんだよね。
私、そんな存在になれるのかなぁ。
キンジを助けるためになったとしても、それで香港に行けなくなるとか嫌なんだけどなぁ。
オバさんにそんな話を聞いて、オバさんはどういう立場に居るのかとか、オバさんにどうすれば良いのかを聞いたりしてたら、玄関が騒がしくなってきた。キンジ達が帰って来たみたい。
「そろそろ上がりましょうか」
「うん」
オバさんがお風呂の扉を開ける時。
「ほら、帰ったら手洗いうがいですよ」
「いや、今二人が風呂に入って、」
「未だ大丈夫ですよ」
志乃とキンジの声が聞こえた。
「オバさんストップ!」
「何よいきなり?」
私の言葉に反応して、オバさんがぎりぎりの所で止まってくれた。危ない危ない、このままだと、キンジにまた裸見られる所だった。つかバカキンジは学びなさいよバカ!そんなに裸みたいの?変態!!
オバさんの問い掛けに無視して、扉越しに志乃に話す。
「志乃、お風呂上がるから早くして!」
「分かってるよ、ちょっと待っててねー」
私と志乃の言葉に、オバさんも志乃達が脱衣所の所に居ることに気付いたみたい。
「あぁ、この家洗面所と脱衣所同じ場所だから、ごめんなさいね」
「気にしないで良いですよ~、直ぐに退きますから。あ、キンジ先輩はどうします?残ります?」
「何で残るって選択肢があんだよ!!」
そうよ、キンジは即刻出ていって!こっちは裸なんだから、早くしなきゃ風邪引いちゃうでしょ!?
「っくしゅん!!」
「あら、あかり大丈夫?お風呂に浸かってなさいよ」
「うぅ、寒い」
お風呂に浸かって二人が出るのを待ってると、外からおっきな音と、小さく「キャッ!?」って志乃の声が聞こえて、嫌な予感がしてくる。
「!?す、すまん!!」
「ちょ、今動かな、ひうっ!!」
「なッッッ!!?!?」
案の定、外が愉快な事になってる。私の心は不愉快だけどね。人が寒さに震えてるのに、この仕打ち、覚えてなさいバカキンジ。
「ちょっと、早くしてよ、風邪引いちゃうでしょ?」
私が言うと外がまたドタバタして、二人が脱衣所から出ていったのが分かる。
「楽しそうなお友達ね」
「二人ともトラブルメーカーだけどね」
パジャマに着替えてリビングに行くと、二人が何か書いてた。
二人して何書いてるんだろ、教科書とか無いから、宿題じゃないよね、なんだろ?
「お風呂上がったよ~」
「お次どうぞ~」
オバさんは二人を促した後、冷蔵庫から麦茶を出して、二人分注いで私に渡した後、自分のを一気飲みして寝室の方に行った。
多分寝室の押し入れから、布団人数分出すんだろうなぁ、これ飲んだら手伝お。
「佐々木、先に入ってこい」
「あ、じゃあお言葉に甘えて、お先失礼しま~す」
パタパタと忙しなくスリッパを鳴らして、志乃が着替えを持って脱衣所に駆け込む。
あ、そう言えばアイス冷凍庫に入ってたよね~、棒の一箱に結構入ってるやつ。一本貰お、ついでに志乃にも言っとこっか。
「上がったら、冷凍庫にアイス有ったから、それ食べなよ~」
「はーい」
バニラの棒アイスペロペロ舐めながら、志乃にアイスのことを言うと、脱衣所から声が聞こえてきた。
今のうちに二人が何書いてたのか見よっと、キンジは未だ書いてる。「あかり!?ちょっと待て、これは見ちゃ」キンジが止めるけど、気になるから無視して見る。一体二人して、何を書いてるのよ、何々?『二日目報告書、あかりが魔術士と判明、能力は神道、似た体系の鬼道でも、適性は低く、神降しに関わる適性が………………………あかりの能力が、天照大御神に面会することにより、どう変化するかは不明、少なくともあかり本人は、この旅を通して成長する事を確信してる様子』???何これ。
「あ~、見ちまったか………これ白雪と佐々部さんから言われて、書くことになってるんだよ」
「何でまた?」
これを書く理由が分かんないんだけど、私そこまで目を付けられる事したっけ?
「佐々部さんからなんだがな?『書くことで客観的な立ち位置で見られる』って、白雪も『志乃の観測した運命を変えるために、出来ることはした方が良いよ』って言ってな、あかりに教えて変な影響が出ないよう、内緒で書いてたんだ」
成る程ねぇ、確かに見る限り、私のデータばっかり、オバさんの事も書いてるけど、凄すぎてオバさんの所だけ娯楽小説みたいになってる。あの人の規格外っぷりは、間近で見ると際立つからねぇ。あれで
「そうだったんですか、でも二人でですか?」
キンジに質問するけど、頭の中の考えがマイナス思考になってる。
こちとら
考えれば考えるほど、何であの時如意棒を防げるなんて考えたんだろ、流石強さでは最強格の妖怪、正直
でも頼むから、ギリシャ神話とか、インド神話とか、存在するだけで世界を滅ぼすような化物は、出てこないで欲しいなぁ。でたら例外でも無理だよ?まぁ、存在してたら人類なんて、とっくのとうに滅亡してるだろうし、考えるだけ無駄だよね。
「俺は魔術とか、よく分かんないがな、
真っ直ぐ私の目を見て、ちょっと顔赤くしながらキンジが言った。
………………………あぁ、幸せ。
キンジに言われるだけで、ここまで幸せな気持ちになれるんだ、白雪先輩が前世で暴走してた気持ち、ちょっと分かるかも。これは、独り占めにしたい。私だけに言って欲しい、私だけを見て欲しい。
これが惚れるって事なのかなぁ、もっと私を見て欲しいって思う、私以外を見ないでって思う、
……………自分で考えててあれだけど、私ってヤンデレ?これ絶対重たいよねぇ、自分で思うもん。前世だったらドン引きだよ、ここまで強く思ってたのは、前世だと白雪だけかな?アリアは相棒って感じだし、理子は表裏激しくて、本心が分かんないし。レキは未だ未だロボットだったし。
こう考えると女の子多かったんだなぁ、チームも私以外女の子だったし、武藤も不知火も、チームじゃなくて戦友って感じだし。
チームを組んで、大きな
男の子の知り合い、少なかったね、うん。
ブラド…………小夜鳴先生は、たまに話してたけどさ、刑務所に行っちゃったし。ワトソンは女の子だったし。
「それ、私の気持ち分かってて言ってます?」
私、キンジに告白してるんだけど、その日のうちにこんな殺し文句言って、しかも返事は未だって、むぅ。
「返事は、もう少し待ってくれ、考えたいんだ。つかよ?」
「なんです?」
「俺の何処が良かったんだ?こう言っちゃ何だがな、自分でも色々面倒な奴だと思うぞ?」
「えっと、お兄ちゃんみたいでも、頼りになるわけでも無くて、家事が出来る訳でも無いですね、優しいですけど、それだけですし」
あ、キンジが沈んでる、まぁでも他人からの人物評価は、聞いといて損は無いんだよ。
「年下の女の子に暗示掛けたり、可愛ければ何でも良いの?って思うくらい色々な人に手を出してますし、コミュ力無い昼行灯ですし、男だ女だって言ってる癖に、甘えん坊だし、何ででしょう?」
言ってて自分でも不思議に思っちゃった、何で私キンジを好きになったんだろ?
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あかりちゃん ~因縁との邂逅~ あかりちゃんは巫女さんになるようです
オリジナルの方が詰まってるので、こちらを投稿しました。
結局、落ち込んだキンジに何も言えないまま、天照大御神が降臨の場所に示した宇治橋に、カラスが鳴いている夕方、私達四人は集まった。
本当は私一人のが良いんだけど、オバさんは言った所で無駄だし。キンジと志乃も、離れる気無いって雰囲気で、私から目を離さないし…………もうしょうがないから振り切るの諦めた。どうせいつかは話す事だし、今話しても大丈夫よね。
夕方六時頃、天照大御神が指定した時間になった時に、辺りの空気が変わった。
「ッッッ!?」
「なっ!?ぐぅッッッ!!!!!」
「………………」
「二人とも深呼吸して、肺の中カラッポにするくらい息を吐いて、直ぐに馴れるわ」
空気が変わった事で、苦しそうにもがく二人を尻目に、深く息を吐いて、身体をこの空間に慣れさせる。
超高純度の神域、昨日の豊受姫の時とは、比べようが無いほどの純度、あっちも高密度だったけど、これはもう別次元、あっちが異界なら、こっちは異次元。
空間に満ちてる神気の密度が濃いのもあるけど、それよりも神気の純度が高い。ここまで行くと本当に別世界ね。
私も余裕が無いから、二人ともごめん。
これから降臨する存在を考えて、背筋が凍る。冷や汗が止まらない。
天照大御神
この国の主神であり、別天神や神世七代を除く、ほぼ全ての日本の神の頂点、神の国を統べる女王であり、三貴子の長女、およそ考えられる太陽神の中で、最も穏和な神だけど、所詮は神。
私は恩があるから、あまり考えたく無いけど、でも気紛れで世界を滅ぼせる存在の一柱なんだよ、信用なんて出来ない。
そんな存在が、私達の前に今、降臨して…………
「ヤッホー皆、皆の大好きなアマちゃんだよ~♪」
「もうちょい考えて登場しなさいよバカァァ!!!!!」
一昔前の女子高生姿で、ガラケー弄りながら登場したバカに、思わずツッコミを入れた。
「は?え!?」
「だ、誰だお前」
「お久しぶりです、大御神」
各々がリアクションをする中で、私はこのミーハーにツッコミを続ける。
「なんなのその格好は!?いつもの神子服はどうしたの!!」
「え~、最近はコレ流行ってるっしょ?」
「いつの時代の流行よ!!つかその口調も流行ってないから!!」
私が言った事を信じてくれたみたいで、あっけらかんと雰囲気を変えて、真面目な空気になる天照大御神。最初からそうして欲しいよ、本当に。
なんで態々一昔前の女子高生の格好なんだか、頭のネジがダース単位で抜けてんじゃないの?
「あら、そうだったの。最近は流行が速くて、直ぐに変わるわねぇ」
そりゃ、昔と違って、今は毎年変わるものだか…………………なにやってんのこの神様は!!!?
「何してんのいきなり!!!!」
突然服を脱ぎ出した大御神を、無理矢理止める。
「いや、いつものに着替えようと、」
「それならせめてキンジさんが居ない所でしてよ!!!!」
油断出来ないったらありゃしない、この神様は人の常識に興味が無いからか、基本的に自己中なんだよ。
「でも、今回は宇治橋のみの限定降臨だしぃ、橋の上はどこで着替えても同じじゃない?」
そりゃそうだけど、せめてその部分が………………むぅぅぅ!
「俺は後ろ向いてるよ、うん。ボソッ佐々木、あれが本当に天照大御神なのか?」
「……………ボソッ私も初めて見ましたよ?っていうか見たことのある人なんて、それこそ数人だけでしょうし、宮内庁でも居ないんじゃないですか?見たことのある人なんて」
「ボソッ神道関係者でも居ないわよ!それよりあかりのバカ、何でそんな危ないことするのかしら!?」
キンジが後ろ向いてる中、天照大御神が着替えをする。
ったく、何も無い場所から物を取り出すなんて出来るんだし、着替える位、プリキュアとかみたいに一瞬で出来ないの?
思わず目を細めて天照大御神を見ると、大御神が話し出した。
「それ、光速でやるから、周り大変な事になるのよ?」
あれ、現実だととんでもなく危険だったのね、知りたくなかったわそんなこと。
「ま、周りの被害無くする方法もあるけど、
そう言って帯を投げてきたから、仕方無く着物の着付けを手伝う。
一時間しか無いのにこんな事してていいのかな?
「ん、ありがと、あなたももうすっかり女の子ね、好きな人も出来たみたいだし?」
にやけながら言われて、顔が赤くなる。
「今はそんなこと話してる時間無いの!!」
「もう、せっかちねぇ、別に良いけど」
飄々とした態度の天照大御神を睨もうと、大御神の顔を見たら、そこには景色が広がっていた。
「……………………ねぇ貴方、キンジ君だっけ?」
な!?いつの間に移動したのよ!
慌てて周りを見回したら、キンジの前に居た。
今目の前に居たはずなのに、離れてるキンジの所に一瞬で!?
「ッッッ!?………そうですが、何か問題が?」
驚いて後退ってるキンジを尻目に、天照大御神を睨む。
音しなかったから瞬間移動ね、しかも予備動作が分からなかった、見た所余裕綽々だし、本人にとっては手品みたいなものなのね。
「
そう言ってゆっくりとした動きで、キンジの腕に
うがぁァァ!!
キンジに媚び売るなバカァ!!
キンジもなにドギマギしてんのよ!!
「ちょっと、話が出来ないでしょ!!?」
無理矢理割り込んで引き剥がす。
オバさんが顔面蒼白になってるけど無視無視、気を付けないとキンジが盗られちゃうよ。
「あら、怖いわぁ。それで、話ってなにかしら?」
余裕の表情でこっちを見るな、ドヤ顔するんじゃないわよ、メッチャ苛つく!!
「私の
キンジと志乃が驚いてこっちを見てくるけど、無視する。また後でこってり絞られるのはもう分かってるんだから、もう何も怖くないわよ!
「えぇ~、それがあるから貴女生きてられるのよ?態々車のリミッター外す人なんて居ないでしょ?」
「車を改造して、とことんまで速くする人達は居るけどね」
なんで車で例えるのよ、今一分かりにくいわね。
「そんな、チキンレースじゃないんだから」
あぁ、っもう!
どうせそうやって渋って、私の事巫女にするつもりでしょ!?
絶対嫌だから!私未だやりたいことも、やらなきゃいけないこともあるんだから、人形なんて、絶対に嫌よ!!
「チキンレースよ、私来年に死ぬかも知れないのよ!?」
「あら……それで?巫女になるつもり無いなら、貴女の強化なんて嫌よ。
なにそれ?
私が神と敵対するってこと?
「意味分かんないわよ、
「それはもう清算したでしょ?」
全くこっちの話を聞く耳持たないじゃない、こうなったら仕方無い、これで………
私がスカートの下の拳銃に手を伸ばすと、大御神が面白そうに笑った。
「止めときなさい、音の速さじゃ、私はささくれも出来ないわよ」
なら、本当かどうか試してみようじゃない!!
私が銃に指を触れた瞬間に、志乃が私を押さえ付けた。
なんでよ!!!!?
「離して志乃!こいつには一発キツいのを「やめてあかり」…………………」
押さえ付けから離れようともがきながら、志乃を睨み付けると、志乃が泣きそうな顔でこっちを見てきた。
「私、あかりと離れ離れになるなんていや…………お願いだから」
私達にしか聞こえないような声で、志乃がすがるように呟いた。
驚いて志乃を見てると、オバさんの方から神気が流れ出てきた。
豊受姫が強制降臨したみたい、流石に敵意を出せば、黙ってないか。
「あら?お豊、何で来たのかしら?」
「いえ、私も大御神のお気に入りが気になりまして」
豊受姫の登場を、口調とは真逆に、まるで来るのが分かってたとばかりにニヤつく大御神に、思わず怒鳴りたいのを堪えて、ゆっくりと臣下の礼をとる。
大御神に敵意を向けた私に、釘をさすように殺気を飛ばす豊受姫に、裏目裏目に出る私の行動に私自身が苛立つ。
志乃は、私が銃に手を伸ばす気がないのを悟って、私を押さえ付けるのをやめて、横で私と同じように臣下の礼をとった。
「大御神、どうか御慈悲を」
「お願い致します」
キンジはいつでも動けるように、警戒しながら私達の近くに陣取った。
相手が神様でも、私達の事守る気なんだ、何か嬉しい。
そうだよ、キンジは私の事守ってくれるんだ、なら、私はもう満たされてる。キンジに大切にされてるってだけで、私は満足なんだよ、だから……………………………
「嫌よ、私に得が無いわ」
一日の八分の一、これが最大の譲歩よ。直ぐに止められるように私が起きてる間だけでね。
「四時間」
「なに?」
私の言葉に、大御神が満面の笑みで聞き返してきた。
「一日のうち四時間を、貴女に捧げます」
私の言葉を聞いた瞬間、待ってましたとばかりに大御神が笑いだす。
やっぱり、これが目的だったのね、現世に自由に降臨するのが貴女の目的。
こんな神域を展開しないと降臨出来ないような不完全なものじゃなく、自由になるための手段。それが巫女で、私は限定的にそれになるのよ。
「アハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!貴女やっぱり面白いわ!!
………………え?
「たったそれだけで私が動く?これでも私、神様よ?生贄とかで、人の一生なんていくらでも手に入った時代もあったのよ?」
あんまりな言葉に、私が思考停止してると、愉快そうに笑いながら、天照大御神が言う。
「あなた本当に面白いわ、そうね……………うん、決めた。一日の内、貴女が寝てる間、貴女の身体の所有権を渡しなさい」
なにそれ、じゃあ私は、寝てる間大御神になにされても止められないってこと?
「そしたら、リミッターの解除なんかより、もっと良いものあげるわ。あなた面白いから、特別よ?
「大御神、ここに私が居るのですが?」
「あなたは言わないでしょ?」
何よ勝手に話進めて………そもそも、能力の強化より良いものって何よ?まさか貴女の力が使えるって訳じゃ「色金」
!?
「正確には違うけど、あなた達からすれば同じようなものだしね。貴女にあげるわ、紛い三色じゃなく、純粋な神の物質をね」
そう言って大御神が私の手をとって、掌に橙色の金属を乗せた。
「これは……………」
「
掌に乗ってる金属は、淡く橙色に発光して、ほんのり温かい。
「これに、色金クラスの力が?」
一緒に覗いてた志乃が、信じられないような声を出す。
「青生生魂の中でも、私のは特別製よ、誰でも使えるがコンセプトなんだから」
つまり、色金みたいな面倒な性格の適性が要らないってこと?
「その分、出力は他の青生生魂よりも低いけどね、色金三種と同じ位ね、後
それ、性能が低いって言えるの?
ってか、金って?
「後、貴女にはこれもあげる」
そう言って大御神は、志乃に古めかしい手紙を渡してきた。
なにこれ、達筆過ぎてなんて書いてるか分かんないんだけど。
「それ、紹介状よ、賽銭箱の上に置いて御詣りすれば、運が良ければ交渉できるわ、神と」
はぁ!!!?
「なんて危険物出してんのよ!?要らないわよ!!」
慌てて志乃から手紙を盗って、大御神に押し付ける。
ただでさえ豊受姫と大御神の二柱でお腹一杯なのに、これ以上神と繋がりが増えてたまるもんですか!
「あら、そう。もしかしたら他の神が、この娘に青生生魂くれるかもしれないわよ?」
それって、
「志乃が複数の神の人柱になるじゃない、そんなの絶対にさせない」
「いいえ、これをすれば
きっぱり言うなぁ、何でそこまで私達に入れ込むの?
裏がありそうで怖いんだけど。
私と志乃が反則みたいな存在だから?
「私の力に耐えられて、神降しが出来る位才能があるのは貴女位だもの、これくらいはサービスするわ。勿論、引き受けてくれるわよね?」
つまり、私以外に替わりが無いから、私を厚遇すると。
納得できないし、ふざけんなって思うけど………………それでも、キンジが死なない為には、神の力は、必要で…………………………………
「引き受けて、くれるわよね?」
でも、私が今より強くなれば………いや、今の私じゃ一人でヴラドにも勝てない。そんなんじゃ、たった一年でなんて、でも………………うぅ。
「………は、い……受け、賜り、ました………ッギリッッッ‼」
下唇を噛んで、地面を睨みながら言う。
そんな私に満足そうに笑うと、私の近くにいたキンジに、小声で何かを言って、大御神は還った。
結局、また勝てなかった。転生前に完膚なきまでに負けて、今回も手も足も出なかった………
「それじゃ、皆バイバイ!次逢うときは、味方同士が嬉しいわ」
そんな、意味深な言葉を残して。
やっと伊勢から帰ってこれそうな雰囲気になってきたなぁ。
志乃がどうなるか、あかりはどうするのか、そしてキンジは天照になに言われたのか。つか強制降臨させられたオバさんは無事なのか。
……………………………………どうやってこれ畳もう?(広げられた風呂敷の大きさに困惑)
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あかりちゃん トラブルは休ませてくれません。
はぁ、どうしてこんな事に……………
予想の斜め上を行く展開に、頭を抱えたくなるのを堪えて、皆とオバさんの家で相談することになった。
「………ふぅ、それじゃあ。現状の整理といきましょうか」
オバさんがお茶を飲んで、一息吐いて疲れた顔で言った。
「取りあえず、あかりは
うぅ、分かったよ。
「まず、私の家系は、乗能力を持たないんです。私は突発的な発現をした存在で、妹も乗能力には目覚めてません」
「まさか、天照大御神に言ってた事って………」
驚きでこっちを見る志乃に、苦笑いして言う。
本当はちょっと違うんだけど、流石に転生の時の話なんて言えないもん。
「うん、天照大御神による加護、本当は私なんかの血筋じゃ、受け賜る事の出来ない事何だけど、私は神降ろしの適正が、日本で一番高いって、だから加護を付けたって、大御神が言ってた」
神降ろしの適正は、多分生前逢ってた事が、要因の一つになってるんじゃないかと思う。
基本的に、神降ろしとか悪魔召喚とか、降臨させたり呼び出したりする魔術とか儀式何かは、呼び出す相手と縁を結んだり、縁の有るものを触媒にするけど、神降ろしで縁を使うのって、凄く難しい。
できて縁のある場所……神社とかでの降臨になる。
二回目以降は、神と直接縁を結べるから、少しはマシになるんだけど、それも神降ろしの条件によって、縁の強さが決まるから、一概に難易度が凄く下がるって訳でもない。
でも、私は生前、
対等とは言えずとも、巫女と神程の差が開いてなく、殆ど同じ目線での会話。
これは縁を繋ぐのに、これ以上無い効力を発揮するの。
何せ、神の見た目も声も、話し方から性格までも、情報としてお互いに持っていんだもん。そりゃ神社で縁が殆ど無い、赤の他人との神降ろしよりも、お互いに人となりを知ってての神降ろしの方が、成功率が高いに決まってる。
それに、
「それで、天照に乗能力を貰ったと、天照はそういう能力があるのか?」
う~ん、どうなんだろ?
たしか、義母様から能力を貰ったとか、なんとか。
「たしか、日本書紀でも、古事記でも、そんな事書かれて無いですよね?」
志乃の疑問に、オバさんも唸る。
「うぅん、天照大御神は、権能や神性の創造・付与は伝承に無い筈よ。まぁ、神話なんて曲解とか外典とか、数え切れない位あるから、絶対とは言い切れないわね」
「えっと、義母様から能力を貰ったって、聞きました」
二人してスゴい勢いでこっちを睨んできた、え?私何か不味い事言った?
「「それ本当!!?」」
あまりの勢いに思わず引いちゃう。な、何がそこまで重大なの?
「それが本当だとすると、イザナミノミコトまで、出張ってきたってこと?」
「………あり得なくは無いわね、国産みや神産みで、自分に無い能力を持つ存在を創造してる存在だし、能力の創造・付与位してくるかも」
「でもそれは、イザナギノミコトにも言える事では?」
「イザナミノミコトはあの世、死後の世界の神で、転生にも……………」
二人で盛り上がって、どんどん話が難しくなってる中、私とキンジが取り残されてる。
「何が何やら、あかりは分かるか?」
「正直半分も無理です、あそこまで飛躍すると最早別の言語ですよ」
こっちの事は意識の彼方に飛ばしちゃってる二人を、呆れながらお茶を飲む。
デデンデンデデン、デデンデンデデン
ん?
電話だ、ののかから?
キンジに一言言って、廊下に出て電話に出る。
「はい、もしも「お姉ちゃん今どこ!?」……………小百合オバさんの家だよ。どうしたの?」
「はぁ~、良かった。お姉ちゃんまで居なくなると思った」
ん?
疑問に思った私に、ののかが深刻そうな声で言った。
「お姉ちゃん、
え?
………………………………………………………………………………………………………………………………………
「いやいや、そんな筈無いでしょ、
信じられなくて聞き返す、だってあのお父さんが、
冗談でももっとマシな嘘を言いなよ、洒落にならないよ本当に。
「………………………………………………」
そんな、私の言葉に返ってきたのは、ののかの重い沈黙だった。
「嘘、でしょ?」
「三日前から、定期連絡が無いの…………今回は、海外の仕事だから、捜索も難しくて……………………う、お祖父ちゃんはっ、万が一もっ!、考えろってッッッ!!」
涙声になって、最後は泣き叫びながら言ったののかの声を聞いて、意識が遠くなる。
そんな、嘘だよ、だってこれからなんだよ?今お父さんが抜けるなんて、来年のイ・ウーの襲撃はどうするの?対抗できる人なんて、それこそお父さんとお祖父ちゃんだけだったんだよ?そんな、どうしてよ、嫌だよ、何でいなくなっちゃったの?お父さん!!
目頭が熱くなって、口元を手で押さえる。
私は、お姉ちゃんだから、ののかが泣いてる時に、泣けないよ、うぅ。
「落ち着いてののか、こっちが落ち着いたら直ぐに行くから、絶対お父さんは見付けるから、だから心配しないで」
「なん」
ののかが何か言ってるけど直ぐに電話をきる。
時間が無い、スカートのポケットから、天照大御神に渡された金属、陽生魂を出す。
震える身体を、深呼吸して落ち着かせる。
……………スゥー,ハァー……スゥー,ハァー……………よし、落ち着いてきた、大丈夫、私はお姉ちゃんだもん!!
…………最近皆に甘えてばっかりだけど。
別の事を考えて、思考が落ち着いたのか、だいぶ調子が戻ってきて、手の中の陽生魂を見る。
「さっそく、これの出番、か………仕組まれてそうだけど、先にキンジ達に話さなきゃ」
陽生魂は淡く点滅するように光ってる。
神秘的な光景何だけど、見ようによっては発信器みたいにも見えるから、何か複雑。
今度は、ちょっと大きい事になりそうだし、キンジには大人しくして欲しいんだけど、志乃に頼もうかなぁ。
部屋の中に入ってきた私を見て、オバさんが真面目な顔になる。
「そうなると、大国主命が絡んできて……………どうしたんですか?小百合さん」
オバさんの雰囲気が変わって、オバさんと話してた志乃が戸惑ってる。
キンジも、私の顔を見て、只事では無いって思ったみたい、遅れて志乃も私に気付いた。
「見た?」
「ええ、三日で使えるようにしたげる」
「ありがと」
「お礼は終わってからよ」
私とオバさんの会話に戸惑ってる二人に、椅子に座って、電話の内容を話す。
「こりゃ、学校に暫く戻れないな」
事情を話した後、開口一番にこの台詞だもんなぁ。
やっぱり、ついてくる気満々だよ、シスコンめ。
いや、嬉しいけど、こんな過保護で良いのかなぁ。
無茶は許さんって感じに睨んでくるキンジに、思わず顔を逸らす。今直視したら顔が赤くなる自信あるよ、今回は海外なのに、お節介でついてくるって、嬉し恥ずかしで、情けない不甲斐ないも出てきて、感情が制御出来ない。
「仕方無いです、先生には家庭事情でゴリ押ししますよ」
結局ぶっきらぼうに言って、オバさんにキンジの説得を丸投げする。私じゃ無理、直ぐに落とされる、即落ちする気しかしないわ。
「俺はそれに巻き込まれたって事にするか、どうせ理由なんてロクに確認もしないしな」
「はぁ、私はついていけませんね、仕事があるので。あかり、無理は絶対ダメだからね?」
「分かってるよ、ののかにこれ以上負担掛けたくないし、キンジ先輩に未だ返事貰ってないもん」
返事、いつまでも待ってるから、早くしてよね?
視線でそう訴え掛けると、キンジが気不味そうに顔を逸らした。
「あかりは陽生魂を使えるようになったら、一度里に出発ね。志乃ちゃんはお仕事終わるまでここに居なさい。遠山君は、
オバさんの言葉に、キンジが信じられないような目でオバさんを見る。
「…………は?」
「聞こえなかった?帰りなさいって、言ったのよ」
あっさりとそう言って、オバさんはキンジを見る。
「どうしてです?あかりは俺の
「ええ、戦妹よ、それだけ」
続けて言ったオバさんのその言葉に、キンジが絶句する。
「そもそも、
見も蓋も無いって言うか、ドストレートって言うか、頼んだのは私だけど、中学生相手にそんなキツい言い方しなくても………キンジ固まっちゃってるし。
私の為にってのは分かるし、キンジに大切にされてるって考えると、顔を直視できない位には嬉し恥ずかし何だけど、今回ばっかりはキンジに引いて貰わないと困る。
お父さんはSDA総合ランカーと戦える位強い、里の皆から鬼神って呼ばれる位、近接で負け知らずな人だったんだ。
その人が行方不明になるレベルの相手………本職が隠密のお父さん相手に、裏工作とか小細工なんて、現実的じゃ無いから、真正面から戦って勝ったって可能性が高い。私は、色金に匹敵するって言ってた陽生魂の力と、
そもそも海外だから、英語が出来ないキンジは向こうでの生活すら危ないから。
「でも、」
納得出来ない顔で、拳を握り締めるキンジ、ゴメンね、今回は私の問題だから。約束破ってごめんなさい。
「今回は運が無かったと思いなさい。私も捜索には参加するし、あかりには万が一も起きないから。」
「……………ッッッ!!……あかりを、お願いします」
「ええ……ま、未だ少しの間時間はあるのだから、その間は好きにしなさい」
暫くの間、誰も喋らなくて沈黙が続く。
私が原因だから、何か気不味い。
キンジが部屋に戻って、志乃が事務所からの電話で部屋を出た後、オバさんが話し掛けてきた。
「遠山君は、優しいのね」
「お節介なだけよ、後お人好し」
気恥ずかしくて、突き放した言葉が出てくる、本当はもっと、キンジの話しをしたいのに、話を切る言い方しか出てこない。
「英語は大丈夫そうだけど、探すとなると、他の言葉も必要ね。私の又甥はどこに行ったのかしら?」
こうして聞くと、やっぱりオバさんって歳なんだなぁ、お祖父ちゃん今年で未だ五十八じゃなかったっけ?
戦前から巫女やってる大先輩なんだよね、全然そう見えないけど。
「出発前に、お土産何が良いって聞かれて、アメリカに行くって言うから、自由の女神のキーホルダーと、向こうの写真お願いしたの」
「アメリカねぇ、また面倒な。あそことは不可侵条約結んでるのよねぇ、私が表に出られないか、茜に頼むしか無いかしら?」
茜と?
やった!!
ってか、もう驚かないからね、個人で国と不可侵条約結んでるとか、マンガの世界みたいな事、これからいくらでもあるだろうし。
「貴女も、この件が終われば、嫌でも結ぶ事になるわよ。今回ばっかりは、貴女自身の力でどうこうは無理だもの」
ってことは、私も巫女の仲間入りかぁ。
あ~あ、SDA総合ランキング、トップテンになるの、夢だったんだけどなぁ。
巫女になったら、もう無理だよねぇ、オバさんはランキングに載ってから、巫女になったって言うし、巫女のオバさんと、ランキングに載ってるオバさんって、別人扱いだからなぁ。
戸籍複数の名前で持てるのは、巫女位だよ。
しかも国からのお墨付きの戸籍、SDAランキングに登録時のオバさんの名前は姓は同じで名は
見た目も変わったらしいしね、巫女の影響なんだろうけど、若返りとか、本当にファンダジーの世界だなぁ。
「貴女の存在も十分ファンダジーよ……………………ほら」
ポスッ
ちょいきなり引っ張るのやめてよ、つか、何で抱き締めてるのさ?
「二人は暫く来ないでしょう、今のうちにすっきりしちゃいなさい。少し位泣いても、誰も文句言わないわよ、これからは泣く暇なんて無いんだから、ね?」
若干涙声のオバさんに言われて、身体の緊張が解けたのか、震えが止まらなくなって、視界がぶれる。
何か、泣いてばっかだなぁ。
以下、次回予告(多分今回だけ)
結局現場整理に入る前に、トラブルの発生。
妹のののかからの連絡を受けて、あかりは行方不明の父親の捜索に、アメリカ行きを決める。
一方のキンジは、小百合から現実を突き付けられ、傷心状態に…………
志乃は芸能活動で身動きがとれず、小百合は条約のせいでアメリカに行くことが出来ない。
あかりとアメリカに行くことになった狐、茜とは………
次回「神様って、以外と皆ミーハー」
次回も見ないと、風穴開けるわよ!
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最新鋭の英雄譚《エロイカ・プレスト・ストリンジェンド》
キンジ 無力を知る
今回はシリアス注意 後今回、あかり視点では無く、キンジ視点でのお話になります。
女の子の文が読みたいんだ!とか、キンジはこんなんじゃない!!とか、考えちゃう人は、閲覧注意です。
タグ的にはキャラ崩壊と、他視点とかですかね。よくわっかんねぇ(⬅おい)
「俺、
あかりには貰ってばっかりなのに、何一つ返せてない。
「心配してくれるだけでも、あかりは嬉しいと思いますよ?」
荷物整理をしてる俺の横で、手帳に何か書き込んでた佐々木が、気不味そうに言ってくる。
「心配なんて、赤の他人でも出来る。俺はあかりに貰ってばっかりなんだよ」
最初の出会い方がアレだったから、俺は警戒心剥き出しで接してたのに、向こうはそんなのお構いなしに、ずかずかと俺に近付いてきて、いつのまにか
当たり前になったのは、あいつが弁当を、作り始めた時からかもしれない。
俺は最初、結構キツく断ってたのに…………最終的に白雪を説得して、二人で泣き脅しとか、昨日だって告白されて、俺のどこにそこまでの価値があるのか、自分じゃ分からん。
『好きです、これからもずっと、側にいさせてください、キンジ先輩』
告白された時の事を思い出して、慌てて頭を振る。
確かに俺はあかりの事は嫌いじゃない、でもそれと好きって事とは、また違う気がするんだ。
あいつはなんと言うか、料理も家事も出来るし、面倒見も良いし、気遣いも出来る。座学の成績はトップだし、人に教えるのも上手い………自然と皆の輪の中心に立ってるタイプ、リーダーとか指揮官とか、そういう才能を持ってる人間なんだ。
それに比べて、俺はがさつ、テキトウ、優柔不断で中途半端、しかもコミュ障の根暗ときたもんだ。家事も料理も人並みには出来るし、拳銃技能なら、あかりを越えると自負してるが、それだけ。
あかりに対して誇れるものも、戦兄として教えられるものもない。ましてや俺が教わってるような状況だ、近接戦闘で全力を出したあかりに、俺は勝てるイメージが浮かばない。
あいつの近接戦闘は、文字通り音を置き去りにする。
身体中の細胞を全てフル活用して、マッハに近い速度で動き回るから、風圧だけでこっちが動けなくなるんだ。
超小型の戦闘機が、自分の周りをマッハで旋回してるようなものだからな。
「どうしたんですか?遠山先輩」
さっきから身体が固まってたのが気になったのか、佐々木が話しかけてくる。
「ん、いや、少し考え事しててな」
「あかりの事ですか?」
「…………あぁ」
言い当てられて、何か気恥ずかしくなって荷物整理をする手を早める。
「心配しなくても、あかりはちゃんと戻ってきてくれますよ。もう、一人で居なくなったりなんてしませんって」
でも、
「それでも、心配するのはダメなのか?俺は信頼してるからって、それだけで納得出来るほど人間出来てねぇんだ」
荷物整理をしてた手を強く握りしめる。
「なら、遠山先輩はどうしたいんですか?」
俺がどうしたいかなんて、決まってる。
あかりに格闘技術を教わった、拳銃技能の基礎もコツも教わった、学校の連中にヒステリアモードがバレそうになった時、バレないように矛先を、あかりは自分自身に変えた。女に対する一般的な知識も………抵抗はあったし、乗り気じゃなかったけど、『無用なトラブルは厳禁です。相手も先輩も、傷付かない為に必要ですから!!』って言われて、渋々教わった。
「あかりに恩返しがしたい。あかりは俺の恩人で、俺の事を慕ってくれる後輩で…………俺の、大切な人だ」
それでもあいつは、あかりは俺の
この前なんて、料理酒と
あの時の、あかりが煮物を食べた時の顔を思い出して、少しにやける。
「大切な人………ですか?」
「あぁ………正直俺は、愛だの恋だのの、恋愛感情とかよく分からん。でも、あいつが俺にとって掛け替え無い存在なのは、確かなんだよ。だからあかりの助けになりたい、困ってたら放っとけ無いんだよ」
まだ返事してないしな。俺としては愛だの恋だのは分からないからな。
あかりには、世間一般でいう恋愛観とか、恋に堕ちたとか、男女的な意味で好きとか、そういうのは当てはまんないんだよな、世話の焼ける後輩………もっと近いな、親戚の子供?……………戦
「そうですか、放っておけない……か。遠山先輩、お人好しですね、普通なら
そうなんだろうけど、
「俺は、ただ恩返しがしたいだけだ」
女にいつまでも借りてばかりとか、爺ちゃんに知られたら殺されるからな。
うちの家訓の一つだ、『女は守れ』『借りは死んでも返せ』数え切れない位ある家訓で、覚えやすいから直ぐに覚えたんだよな、俺も未だ家訓を全部覚えて無い。
「なら、どうやって恩返しするんですか、今回の件で、遠山先輩が力になれる事なんてあるんですか?」
まるで、現実を見ろとでも言いたげな顔で、こっちを見てくる佐々木に、俺は考えてた事を話す。
「向こうでの生活の手助け、後は頼れる歳上の手配だ」
バカな俺でも、小百合さんが気軽に国外に行けるような人だとは思えないからな。
少なくとも外宮の祭神の巫女で、しかも神降ろしっていうトンでも全開な摩訶不思議な事出来るわけだろ?あかりを公園から連れ戻した時に、宮内庁に出入りしてるとも聞いたぞ?
そんな重要人物、気軽に国外に行けないだろ、少なくとも大人は、気軽に仕事を休めないんだから。
「歳上って、先輩交友関係そんなに広かったですか?」
失礼な
「俺だって困った時に助けてくれる先輩はいるわ………兄貴だけど」
「あぁ、お兄さんですか、でも今留学中では?」
その『やっぱり居ないんじゃないですかぁ』みたいな表情をやめろ。
つか、何でその事知ってんの?
あかりと白雪にしか言ってな………二人が話したのか。
「今は
「断られたら?」
その時は腹を括る。
「兄さんの秘密をバラして、YouTubeに画像集をバラ撒く」
俺は死ぬだろうが、借りを返して家訓は守るし、あかりの問題も、兄さんがいればなんとかなるだろう。
「えげつないです、ちょっと引きました」
有り得ないものを見る目でこっちをみる佐々木に、ちょっとショックだ。
「……でも、お金はどうするんです?あかり一人で行くよりも、何倍も掛かりますよ?」
それは、どうするか。
正直全く宛が無い、今から向こうまでの移動と向こうの生活費…………それこそ何十万、下手すると百万越えるような金額だろ?銀行に強盗とか、ギャンブルで一山当てる位しか、思い浮かばん。どっちも実行できないから、実質手詰まりだな。
「何も考えて無いんですね、はぁ…………ボソッそこら辺前世と同じね」
ん?
「何か言ったか?」
「何も言ってないですよ。それより、私と取引しません?」
なんだ、手掛かりがあると思ったんだが。取引って、一体いきなり何を?
「あかりとの
は?
「今、なん
身体の芯に熱が籠る、血流は通常時のまま。
頭が重たい、視界がチカチカ明滅する、ドス黒い感情が身体を支配して、今すぐ目の前の佐々木に殴り掛かりたい。
「あかりと契約を解除して下さいって言ったんです。遠山先輩はあかりの足枷にしかならない」
それを聞いた瞬間、思考が冷水を掛けられた見たいに冷たくなった。
「先輩、あかりは遠山先輩よりも強いです。学校での評判や人間関係を調べました。遠山先輩よりも、あかりは人望も能力もある。そして、あかりは遠山先輩の事を、女性として好きだと言ってるんです。
続けられた佐々木の言葉に、何かが軋む音がする。とても大切な何かが、壊れる音がした。
「女の子は、守ってもらいたいって、本能で思う生き物なんです。それなのに………
やめろ、やめてくれ、それ以上はダメだ。
あかりに告白された時から………いや、出会った時からの疑問が今、鎌首を傾げる。
何であかりは俺の事を好きになったんだ?何で俺何かにここまでしてくれる?出会って半年の、自分よりも頼りない歳上のネクラのコミュ障に、何でだ?
考えたくない、考えないようにしてた疑問が溢れ出てきて、考えを頭から追い出したくて、頭を強く振る。
「あかりは、それでも好きって言うかもしれません。愛してるって言うかもしれません。でもそれは、本当に恋愛感情なんですか?」
嫌だ、何でだよ、
「あかりの
佐々木の言葉を遮りたくて、耳を手で塞いで目を瞑る。
脳裏に、俺がさっき小百合さんと話してた時のあかりの表情が浮かぶ。親が行方不明と聞いて、悲痛そうな、それでいて覚悟を決めたような表情だったのが…………俺を見た一瞬、落胆したような表情になったのを想像して、俺はもう嫌だった。
こんな状況が嫌だ、何も出来ない自分が嫌だ、あかりに、妹に嫌われるのが嫌だ。
「年下の女の子に、ましてや自分の事を好きだと言ってくれた子に、
そんなの、そんな気持ち、悔しいに決まってるだろ!!!!年下の女の子に負けて、悔しいはずが無いだろッッッ!?
ふざけんなって思うさ!劣等感も諦めも、何度も感じたよ!!
最初の頃、何度あいつから、離れたくなったと思ってんだよ!
……………その度に、あかりは、俺の側に居るんだよ。あいつは犬みたいに懐いて、無邪気に俺に向かって笑いながら、話し掛けてくれるんだ。『先輩、私今凄く楽しいです!』って、悪意の欠片も無く、唯々純粋に。
それ見ていつも思うんだ、悔しくても、諦めたくても、この笑顔台無しにしちゃ、男が廃るって。
だから噂を流した。
俺と自発的に関わってるって知られたら、
俺の事を毛嫌いしてて、俺が何かする度難癖つけたり、陰口するしか能が無い奴等だけど、数が居れば面倒だし。
何よりもあかりにとって、上級生が敵になるなんて、普通じゃない事、あいつが傷つかない訳無いだろ、絶対にダメだ。
だから、色々手を回して、あかりが無理矢理俺の戦妹にさせられてるとか、弁当とかも、俺が命令して作らせてるとか、噂流してる訳だしな。
あいつが小学校で虐められてたって聞いて、尚更思ったさ、せめて中学ではマトモな生活を送らせたいって、赤の他人でしかも
ゆっくり、目を見開いて、佐々木を見る。
佐々木は真面目な顔で、俺を試すようにあかりについて語る。
「今のあなたじゃ、一年後、あかりは守れない。あかりは今、この世界で最も強力な力を手に入れた。
色金が何か分からないし、いきなり核兵器だなんて言われても、実感も真偽も分からん。でも、佐々木が本気で言ってるのは、声と表情で分かった。
ハハハ、そうなるとますます、俺があかりの近くにいる意味が無いな。
「強くなりたい、
そうなれば………これが、あいつを助けられるかもしれない、借りを返せるかもしれない、最後のチャンスだ。
「分かりました、家に連絡します。先輩はこれから来る車に乗って、大坂国際空港まで移動して、そこから羽田空港に飛んで貰います。後二十分で準備してください」
随分手際が良いな、俺を追い出す気満々だな。
「その後は、東京武偵高の
「そこまでするか普通?」
学校まで変わることに、何故そこまでしなきゃならないのか疑問になる。つか勝手に転校したら、爺ちゃん達に怒られるだろ!?
「そこまでしなきゃ、あかりは諦めませんよ?」
「流石に勝手に転校したら、爺ちゃん達に怒られるぞ。そもそも子供だけで転校手続きなんて「手続きは私に任せて下さい、遠山先輩は保護者の説得だけ考えれば良いです」…………何でそこまでしてくれるんだよ」
何でここまで、甲斐甲斐しく世話を焼くのか、しかも結構規模の大きい事を。
純粋な疑問を、佐々木に言う。
「俺はお前に、何かした訳じゃないだろ?」
「感謝してるんです。あかりの事も、私の事も」
だから、肝心な部分が分かんないんだが?
「遠山先輩は、黙ってされるがまま、東京に戻れば良いんですよ!」
そう詰め寄ってきた佐々木が、上目遣いで俺の鼻頭に人差し指を押し付けてくる。
!?
この態勢、佐々木の胸元が見えッッッ!!!
「わ、分かったよ!」
慌てて顔を逸らして、荷物整理を急ぐ。
集まりそうになるヒス血流を、強襲科の
ええい、あかりと同じくらいだと思ってたのに、意外とあるのかよ!って、落ち着け俺、何考えてんだよ!!?
佐々木が何かニヤついてるのにイラつきつつ、速攻で荷物を纏めた俺は、一言言って部屋を出て、トイレに行った。
暫くキンジ視点が続きます。
つかこの章は今の所、キンジ視点ばかりになる予定、つまりは暫く閲覧注意です。
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キンジ 決意の後退
今回は新キャラ登場です。
「はぁ、半年か、自分で言っといてだけど、ちょっと想像つかねぇなぁ」
洗面所で、鏡に映ってる目付きの悪いネクラを睨みながら、ぼんやりと呟く。
そもそも、来年のいつ襲われるかも、詳しく分かってないんだから。今年の残り約半年で、
そもそも青生生魂も色金も、実際に使われた所を見たこと無いから、どれだけぶっ壊れてるか分かんねぇんだよなぁ。
「考えても仕方無い、か」
取り合えず、そろそろ迎えが来る頃だろうし、最後にあかりに一言言って、車に乗ろう。
そう思ってリビングに近づくと、中から小さな泣き声が聞こえてきた。
「!?」
驚いてリビングの扉の近くで、気配を消して聞き耳を立てる。
「お父さんっ、何で居なくなっちゃったの?お父さんっ、
泣いてる声に混じって、そう聞こえた瞬間、握り締めた拳を思わず、壁に叩き付けたい衝動に駆られる。
「…………ッッッ!!」
何で気付けなかった………あかりが傷付いてるって、何で気付けなかったんだよ!!!!
悔しさで唇を噛んで、口の端から血が流れる。
また俺はバカやったみたいだ。リビングの中で小百合さんがあかりに付き添ってるのだろう。たまに小百合さんの涙声も聞こえてくるせいで、否応なしに自分が大バカ野郎だって気付く。
俺は妹が泣いてる時、何やってたよ。自分勝手にへこたれて、嫌々に言われたことやってる時に、妹の友達から活入れられたんだろ?
しかも、自分勝手に妹との関係を決め付けて、あかりが傷付いてるのに、勝手に離れるって決めたんだ。
俺があいつから離れたら、あかりは、妹は何て思う?
あかりが、今みたいに泣いてる事を想像して………今さらそんな事を考える自分を、殴り飛ばしたくなる。
女々し過ぎるだろ、バカ野郎!!
今ここでリビングに入って、別れを告げるなんて出来ん、あかりは泣くのを俺達二人に見られたくないから、今リビングで泣いてるんだ。
書き置きをしておくことにする。
なに、離れても携帯があるし、神奈川とお台場だ、そこまで離れてる訳じゃあ無いだろ。
取り合えず、いつまでもここで気配を消してる訳には行かないからな、とっとと部屋に戻ろう。
「車、後五分で来る見たいです」
「分かった。佐々木、紙とペン、貸してくれないか」
佐々木からペンと紙切れをもらって、急いで手紙を書く。
………俺って筆無精だったみたいだな、全然書けない。
時計を見ると後三分。時間がないな、仕方無い、これやると罪悪感で一杯になるんだが、四の五の言ってられんし。
春水車
正確には、女性のあられもない姿を写した写真や絵を、集めて保管し、いつでもヒステリアモードになれるようにする技なんだが。
俺の場合、カナが不定期に俺の部屋を掃除に来ることと、そもそもそんなの俺の歳で集められん事から、実際に遭った
新学期が始まる頃に起こった、バスジャック事件。その時に助けた先輩のあられもない姿を思い浮かべる。
???
効きが悪いぞ?
ええい、ならこの前事故で見た白雪の下着姿で!
…………よし、上手く掛かった。
先輩には申し訳無いけど、こういう妄想って、記憶が古くなるほど、上手く思い浮かばないからね、常日頃から一緒にいる女性の方がなりやすいんだよね。
時計を見ると残り二分を切った所。ヒステリアモードで限界まで書いてやっとって感じかな?
佐々木さんから貸してもらった、花柄のペンを壊さないように限界まで握って、書き殴っているように見えないよう注意しつつ、手紙を仕上げる。
「遠山先輩、車来たみたいです」
佐々木さんがそう言ったと同時に、手紙が書き終わる。
丁寧に三つ折りにして、分かる場所に置いておく。
「待たせたね、それじゃ行こうか」
「何かキザっぽいです先輩」
このモードになったらデフォルトだから許して欲しいな。
二人で足音をたてないように、慎重に歩いて玄関のドアも、音が鳴らないように気遣う。
あかりがあの調子で泣いてるなら、後三十分は二人ともリビングから出ない。修行の話もあるだろうから、時間はありそうだ。
「私はここでお見送りです。必要書類は、後で実家の方に送らせていただきます。先輩は成績が優秀ですから、奨学金の書類も入れておきますね。後の事は、追ってメールで連絡します。これ私のメアドと番号です」
佐々木さんから渡された紙切れを胸ポケットに仕舞って、礼を言う。
「何から何まで、ありがとう佐々木さん。必ず強くなって戻ってくる。約束するよ」
「それはあかりに言って下さいよ。遠山先輩と新しく
俺の荷物をトランクに放り込みながら、佐々木さんが言う。手伝おうとしたけど、今は時間が惜しいから、車の中に入って待つ。
運転手の老年の髭がイカした男性が俺の事を暖かい目で見てくる。
「そうするよ、何から何までありがとう佐々木さん。あかりの事が気になったら、連絡するよ」
こっちから別れるって言っておいて、連絡するなんて男らしく無いからね。
「気にしないで下さい。私がしたくてしてるんですから、それに……」
佐々木さんはそれから俺の事を、意地悪な目で見て言う。
「後でたっぷり、返してもらう予定ですから、今は気にしないで良いですよ」
ハハハ、怖いなぁ。
一体何を要求されるんだか、考えたくないよ。
「武蔵さん、後お願いします」
俺が苦笑いしてると、佐々木さんが運転手のお爺さんに話し掛けてた。
「ハハハ、任されよお嬢。遠山殿は大事なお方故、無事に送り届けると誓いますぞ」
渋い声で笑うと、何やら意味深な目で佐々木さんを見て、車を発進させた。
後ろから何か聞こえてくるけど、あかりに気付かれでもしたら…………大丈夫なのかな?
それに、武蔵さん、か………まさかね。
「なにやら儂の事が気になるようで、御母上の葬儀では、泣いてばかりだった子供が、まさかここまで大きくなるとは。いやはや時が過ぎるのは早い」
!?
「母を知っているのですか?」
母さんの事は、俺が物心付く前に死んだから、俺自身も詳しく知らない。カナに似てるのは、昔の写真から分かるが、それだけだ。
その母さんの事を知ってる、聞かずにはいられなかった。
「ええ、優しい人でしたなぁ。
懐かしむように笑う武蔵さんは、俺をバックミラーから除き見て言う。
「あなたは覚えて無いかもしれんなぁ、御母上の葬式より昔に一度、会った事がある」
それを言われて、過去の記憶を漁るが、全然分からん。ヒステリアモードはもう切れ掛かってるが、未だ続いてる。それなのに見付からないって事は、だいぶ前の記憶か。
「すいません、なにぶん幼い時だったもので」
「ハハハ、仕方無い事で。キンジ殿は未だ二歳、オムツも取れて無かった。御母上の腕に抱かれていました、それはもう幸せそうに」
昔を懐かしむように、目を細める武蔵さんに、俺は思わず両親について口に出る。
「両親とは、御知り合いで?」
「金叉………御父上には昔の昔、少し刀の手解きを。御母上は家族ぐるみの付き合いでして、嫁入りする前までは、よく連れ回されたものです。『新しい遊園地に行きたい』と」
か、母さん、遊園地好きだったのか。記憶にある母さんとのギャップに衝撃的過ぎて、思わずカナが遊園地に行きたいとゴネてる姿を想像して、意外とアリじゃね?なんて考えて頭を振る。
何考えてんだよ、今の兄さんにバレたら俺殺されるぞ!?
「意外ですかな?儂でよければ、空港までの時間、御両親の話をしますぞ」
「お願いします、俺は二人の事を………特に母さんは、写真でしか知らないんです」
父さんは、未だ少し記憶がある。父さんが忘れてったから、弁当と一緒に公安に拳銃届けに行ったっけ、そういえば。
「そうですな、御母上は~」
その後、俺は両親について教えてくれる武蔵さんと、連絡先を交換して、空港で別れた。
「まさか母さんの事を知ってる人だとは、それとやっぱり宮本武蔵の子孫だったか、奥さんは亡くなって息子夫婦と双子の孫が俺と近い歳でいると」
武蔵さんの情報を頭で整理しながら、時たま口に出して覚える。
人の学習法は大きく分けて、見る・聴く・話す・書くの四つと聞いたことがある、その中で自分にあった勉強方法を取るのが、成績を上げるコツとも言ってたな、確か。俺はヒステリアモードになれればどれでもいけるんだが、普段の俺だと、聴く・見るの二つがあってそうだ。書くのも良いが、武偵の訓練をしてると、どうしても見聞きで覚えることが多いからな、メモなんて書いてる暇実技に無いし。
つか実技の最中でメモなんてしようものなら、先生達から怒られるわ。『お前そんな事する余裕あんだな?』って、難易度バカみたいに上げられるから、武偵って本当にスパルタ教育だよなぁ。
手続きを片手間に済ませながら、そんな益体も無い事を考える。なんと志乃は、チャーター便を無理矢理ねじ込んだみたいで、準備が未だ出来てないから暫く待つ様に言われた。
自販機でお茶を買って、長椅子に腰掛けて一息吐く、今から真っ直ぐ帰って、大体夜には着くだろう、家に帰ったらまず爺ちゃん達の説得だな、うん。
難色示すって、事は無いだろうけど、勝手に学校変えようとしてるんだから、少し位詮索があるは「すみませぬ」???
ペットボトル見ながらボーッと考え事してると、聞き慣れ無い声が、直ぐ近くからしてきてつい身構える。多分同じ長椅子に座ってた人だろう、ここら辺長椅子が複数あるから、人が結構集まって「あの、遠山先輩で、よろしいでしょうか?」……………………俺かよ。
名指しまでされたら、気付かないフリも出来ないから、仕方無く顔を上げて声のしてきた方向を見る。
声が高かったから多分女性、後先輩って言ってたから多分武偵中の一年。どこの武偵中かは分からんが、制服見れば分かるだろ。そんな事考えながら声の主を、生来の目付きの悪さで見ると、相手が肩を少し揺らして、一歩下がった。
俺、そんな目付き悪かったか今?つか、そんな臆病ならこいつ強襲科の訓練みたら気絶するんじゃ、そんなんで武偵やってけるのかよ………ちょっと相手の事を心配しながら、声の主を観察する。身長は160㎝ピッタリ位ポニーテールで、服装は俺と同じ
それと一番の問題は、何故か風呂敷を背負ってる事だな、後左手に籠手と、肩に掛けてる竹刀袋、それのせいでメッチャ目立ってる。
「今日から
そう言ってペコリと頭を下げる風魔に、俺は固まる。
おい、ちょっと待て、空港ってこっちなの?俺、てっきり会うのは羽田空港だと思ってたよ?
「あの、
時代錯誤な口調で、自分が何かやらかしたと思って、俺に不安そうな目を向ける風魔に、慌てて答える。
「いや、その口調が珍しいと思っただけだ。半年の間だが、よろしく頼む」
そう言って、半ば強引に握手する。
この手つき、銃よりも刀剣主体か、掌に
俺は掌中にあかりとの特訓のせいで出来た胝があるから、掌だけじゃどっち主体か分からない様になってる。あいつどっちも強いからなぁ、何度も模擬戦用の木刀折られてるからな、その度に先生にバカ力って笑われてるんだけど。
「遠山先輩、お互いの情報を交換しませぬか?某、志乃殿に言われて急いでこちらに来て、先輩の戦妹になること以外、何も知らぬのです」
そう言ってこちらを見る風魔に、ちょっと頭が痛くなってくる。佐々木の奴、せめて転校の話位してやれよ。俺からどう説明しろと?俺が悩んでると、携帯にメールの着信が入って、風魔に一言断ってから確認する。
差出人:佐々木志乃
件名:ごめんなさい(>_<)
本文:転校の話するの忘れちゃってました\(^o^)/
下に資料纏めたURL張っとくので、そっちで何とか説得お願いしま~す(。・ω・。)ゞ
後、陽菜ちゃん成績良いから、奨学金は降りますよ~今のうちに粉掛けときます?(^^)b
思わず顔を手で覆って空港の天井を見た俺を、誰も責められまい。何だこのメールは!!!?
最早煽りかよ!?って思う位顔文字多いし、文面がそもそも軽すぎる!!謝罪のメール何だからもう少し何かあるだろ!!?あいつ現代文の授業何してたし!!
俺がメールを見て再起不能になってると、風魔が困り顔で俺を見てるのに気付く。
「すまん、これからの情報だよな、今か《遠山様、遠山様、XX番ゲートまで、お越し下さい。繰り返します、遠山様、遠山様…………》……話は飛行機の中でだ、行くぞ」
ここからならそこまで遠くないゲートだし、大丈夫か。手続きはさっきまたされる前に済ませたし、後は荷物検査して、飛行機の中に入るだけだ。
荷物検査を終わらせて、機内での自己紹介の時に、パイロットの人に急なフライトに対しての謝罪とお礼を言って、小型の飛行機に乗り込む。小型って言っても百人近く入るプロペラ機に俺と風魔の二人だから、座席がガラーンとしてて、のびのびと使えて良いんだが、これを即日に用意出来る佐々木の凄さに、改めて思う。金とコネってスゲェんだな、あかりの兄貴として、やっぱりこういう力も必要なのかね?
「あの、遠山先輩、先程の話の続きをお願いしたく………」
備付けのアイマスクを付けて、寝る体勢に入った俺に、風魔が話し掛けてきた。
「俺も佐々木に言われたのがついさっきで、大した事は知らないが……」
そう前置きしてから、俺の知ってる事を話す。風魔は話終わった後、「ち、父上に何と言えば………」なんて頭抱えてるから、やっぱり転校って子供だけで何とかするもんじゃねぇよなって、風魔に同情する。
予定通りに着いたチャーター便から降りて、羽田からバスで移動する。何故か風魔も付いてくる。
「………なぁ、お前そういえば何で関西国際空港にこれたんだ?」
「丁度今日まで、
なんともまぁ、俺はあかりの為に資金が欲しいから取引に応じたんだが、風魔も似たような状況なのかね?
「お前と佐々木って、どういう関係なんだ?」
「腐れ縁のようなもので。志乃殿は抱えてることが多過ぎるので、某が背負うのを手伝うのです」
俺の質問にそう返した風魔は、歳に似合わない、達観した表情をしてた。
結局どういう関係なのか、よくわかんねぇな。
書いといてあれですが、キンジ視点って需要ありますかね?無くても書かなきゃ矛盾とか出てきて気持ち悪くなるんで、書くんですけど。
あかり以外のキャラの視点の需要って、どれだけあるか分からないんで、感想とかに書いて頂けると、プロットの参考にします。まぁ、この章はほぼキンジオンリーなんてすけども。
後、陽菜ちゃんの口調が原作と違い過ぎるのは、わざとです(←技量の無さのこじつけ)
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キンジ 兄弟喧嘩をする
そして、お久しぶりでございます、私です。
活動報告を見ていただいた方は分かるかもしれませんが、最新刊とネタが被ってしまって、ちょっと錯乱気味でした。こういうことってあるんですねぇ、リハビリに書いたお話の投稿です。
後2話投稿するのでどうぞ、作者からのお年玉みたいな(?)感じです
家に帰ったら兄さんがいて、泊まるところがない貧乏仲間の風魔を家に連れてきて、居間で今までの経緯をお土産を渡した後に話した。爺ちゃんは「
「キンジ、お前……………」
兄さんの前に出されたお茶が、全然減らないまま、冷めきってる。兄さんも声が一段と低い。
これは兄さん怒ってるな、まぁこれから土下座交渉するんだが。
「兄さん、頼みがあるんだけど…ッッッ!!!?っつう!!」
「それで、お前はおめおめと逃げ帰ってきたのか!!」
兄さんはぶち切れて俺を今から縁側に投げ飛ばすと俺に向かってガンガン殺気をぶつけてきた。
「ウグゥッッッ!!!?」
兄さんの拳を腹に受けて、縁側から庭に放り出される。
「先輩!?」
兄さんの声につられて台所から出て来た風魔が、殴り飛ばされた俺を見て悲鳴を上げる。ハハハ、これくらい普通普通、未だ軽い説教だ。婆ちゃんはそもそも台所から出て来てない。このくらい良くあることだし、止められるのは爺ちゃんだけだからな。婆ちゃんは基本的に、爺ちゃんに判断を任せる放任主義だし。
「………
庭で正座して、頭を下げる。土下座は未だしない。
「ふざけるな!!何で俺が弟の尻拭いせにゃならん!!家訓の『最後までやり遂げろ』を覚えてないのか!」
顔真っ赤にして怒ってる兄さんメッチャ怖い。いや、俺も格好悪りぃと思うし、こうやってうだうだ考えてるのもダサいと思う、
あかりの助けになれるのは、兄さんに頼るしか無いんだよ。渡米経験があって英語ペラペラで向こうの土地勘も多少ある兄さんが適任で、もう兄さんにしか俺は頼れないんだ。
「俺一人じゃ、もうあかりを助けられ無い。お願いだ、兄さん、助けてくれ」
土下座をして頼み込む。兄さんからの殺気が一段と強くなった。常人ならもう気がおかしくなるレベルの殺気に、庭の木に止まってた小鳥がバサバサと飛び立ち、爺ちゃんが呆れたように溜め息を吐いた。
「心底お前には落胆したよ…………立て、キンジ。俺が介錯してやる」
底冷えする声で言われて、急いで今の位置から離れる。
離れて一瞬、そこにナイフが三本、《パパパンンンンンッッッ!!!!!!!》と音を立てて突き刺さる。音越えのナイフ投げとか、やっぱりうちの兄さんは怖いな。つか兄さんも『春水車』使えんのね、俺も急いで白雪との
…………うし、掛かったぞ、ヒステリアモード。
なるまでに少し時間が掛かったけど、兄さんはこの俺を真正面から殺す気で来るらしい。
武偵が殺人なんて、中国とかなら大丈夫らしいが、日本ですると犯罪だ。殺人の許可が降りる職もあるが、少なくとも武偵にはそんなこと許されない。だから兄さんも本気じゃないと信じたいが………………………大丈夫だよな?
「ふぅ………『羅刹』」
兄さんが身体の倒れる動きを加速に使う、遠山家の歩方『
兄さんの掌打に、強烈に嫌な予感がして、腰から下で『桜花』を使い、直ぐに後退して回避するが、兄さんも『地滑り』で追従する、兄さんは右拳を起点に、当身から投げ技に繋げようとするが、袖を掴まれた時に、逆に掴み返して組み合う。
「弟相手に殺気なんて、物騒だぞ兄さん」
体格が殆ど同じで、拮抗してた組み合いの力を、一気に抜いて兄さんの顔に頭突きをするが、兄さんも頭突きをしてきて、鈍い音と共に激痛が走る。
「今は、お前は弟じゃない」
兄さんの視線に耐えきれず、蹴り技で兄さんと距離を取ると、兄さんが左腕を少し身体から離した、俺も左肩に掛けてるショルダーホルスターから銃を抜こうとしたけど、兄さんの投げナイフの方が、一瞬速く俺の防刃の制服の上から、左腕を強打する。まるでバットでフルスイングされたみたいな衝撃が、左腕を襲う。
衝撃で思わずホワイトアウトしそうになる視界を、奥歯を噛み締めて耐えながら、銃を抜くのを止めて『桜花』で接近する。まだ近接の方が安全だ、音より速いナイフとか、当たればさっきみたいに視界が真っ白になる。銃弾じゃナイフの軌道を殺しきれないし、無理にでも近付いて近接戦に持ち込むしかない。体術はあかりとの特訓で、とんでもなく高レベルのものを身に付けられたんだ。
それにしても兄さんのナイフ投げはスゴいな、まるで初動が見えないぞ、気付いた時には目の前にナイフが迫ってる。『不可視の銃弾』のナイフ
背後を家に、兄さんを睨む。
「もう、庭がぼろぼろじゃないか、婆ちゃんに怒られる」
「死んだ後の心配は……するなッッッ!!」
背後の家にナイフが当たる可能性があるから、兄さんはナイフを投げずに『地滑り』で近寄ると、また右腕起点のコンボをしてこようとする。
「未だ未だ詰めが甘いな」
「ッッッ!!!!?」
上半身の対処に気を削がれていると、兄さんが蹴り技を出してきてバランスを思わず崩してしまう。
「『指固め』」
「………っつうッッッ!!!!?」
掴んでいた俺の右手の指を固めてきた!?
なんだこれ、指所か肘先から全く動かない!!
右手を兄さんの左手で固められ、兄さんの
「無理に動くと腱を痛める、そう固めた。これで最後だ金次、『羅刹』!!」
兄さんがそう言って繰り出してきた拳を、見て直感で分かった、あれを食らったら死ぬ、問答無用でもっていかれる。
明確に訪れる死に、過去の事が頭を駆け巡る。
小さい頃に兄さんと遊んだこと、小学五年生で初めてヒステリアモードを発動して、ちょっとした騒ぎになったこと。初めてなった相手は、カナだったっけなぁ。中学の制服姿が可愛くてつい。最後に、あかりの笑ってる顔が頭を駆け巡って………あぁ、これ走馬灯なのかと、まるで映画でも観ているような、他人事な感覚で思った。
それと同時に、あかりの泣いてる姿を思い出す。
「先輩!!!!」
風魔の声のお陰で、トンでいた意識が戻る。
助かったぜ風魔、俺は未だ死ねないんだ。
死ねない、まだあいつが救われてない、あかりに恩を返していない、あかりには救われたんだ、あかりにまだ、
視界がモノクロになり、俺の思考以外のあらゆるモノが遅くなる。急にクリアになった思考で、今の状態を認識する。『死際のヒステリアモード』、あかりの言ってたヒステリアモードの派生系。兄さんの拳という、明確な死に本能が反応して、覚醒したみたいだ。
止まった世界で今の状態の打開策考える。右手を封じられて、後退も出来ない、左腕はさっきのナイフのせいで少し痺れてる。体勢から銃を抜くのは無理、兄さんはどういう原理か、当たれば即死な拳を、鳩尾の上、心臓の真上に当たる部分に向けて放ってる。
選択肢を出せ俺、このままじゃ何も成せずに死ぬぞ!
ナイフで迎撃、ダメだ予備動作が遅すぎる、拳銃で何とかする………論外、今の兄さんは拳銃じゃ止まらない、それに住宅地で昼間っから銃声なんて出せるか、警察呼ばれるわ。
足技、固められてる右手のせいでバランスが取れない、もし足技が決まっても、回避出来ない可能性がある。そもそも上手くいかない可能性の方が高そうだ。
指固めから無理矢理抜け出す。
これも論外だな、骨なら未だしも、腱を痛めるのは不味い。俺の桜花は骨と筋肉を酷使する、必然的にその二つを繋ぎ止める腱は俺の急所だ、まさにアキレウスのアキレス腱、ジークフリートの背中といった所、変な傷め方してみろ、一生右手での高速戦闘が出来なくなる可能性すらある。
……………なら!!
「ッッッ!!!!!?」
それでも、兄さんの拳は速い訳じゃないし、『秋水』を乗せられる程体重移動がお互い出来ていない、体格もほぼ同じ俺達なら、
兄さんの拳に俺の音速を越え、弾丸すら置き去りにする拳を真っ正面からぶつける。本当なら兄さんの腕を完全に破壊する攻撃は、兄さんが直前で指固めを程いて絶牢を使って俺にカウンターを決めてきた。
「………金次お前、なんて速度で拳を、」
兄さんの絶牢を橘花を使って減速、そのまま殴り飛ばされた空中で、中国雑技団みたいな体をくるくる回転させる受け身で衝撃を殺す。
「兄さんの即死攻撃よりマシだ。それで兄さん、まだ納得してくれないか?」
お互い距離が少し離れて、睨みあってた時に、兄さんが呟く。
「……………………それだけ力があっても、逃げ帰るしか無かったのか?」
「あぁ、土台が既に違う。
俺が言った例えを、兄さんは微妙な顔して受けとると、至極嫌そうな顔して髪をかきむしる。
「休暇は延長だな、こりゃ大学になんて言い訳するか。」
それを聞いて、俺は思いっきりガッツポーズをした。
「よっしゃあ!!」
「スゴいです先輩!!」
駆け寄ってきた風魔と思わずハイタッチ、その後気付いて顔赤くしてそっぽ向く。なぜ俺は出会って一日目の女子とハイタッチなんて、ウゴゴ。ヒステリアモードがキレて普通の俺に戻ったせいで、女子に対して免疫が落ちている為、こういう事でも直ぐに気恥ずかしくなって誤魔化すような仕草を取ってしまう。
「何をやってるんだ」
いやぁでも、良かった良かった、兄さん即死攻撃してきて本気で殺されるかと思ったからな…………即死かどうかは勘なんだけど、さっき俺が兄さんに言った時に否定しなかったし、あの拳は本当に即死攻撃だったんだよな、多分。
「兄さん、さっきの兄さんの拳、どうゆう原理なんだ?」
「鎧通しの要領で、心臓の真上から、打撃で振動を心臓に直接当てて、心臓麻痺にする技だな。」
何て凶悪な、文字通りの即死技じゃないか。
それに気軽に鎧通しとか言ってるけど、それは拳法家の奥義の一つだ。習える道場どころかまず使える人間が皆無だよ。
「どんな状況で使うんだよそんな技、凶悪過ぎる」
「何を言っている、この技は部位欠損や外傷を残さず、食らった後も痛みを感じない、人道的な技だ」
「食らった後痛みも感じないって、何で分かるんだよ」
「俺が一度食らって体感してるから、それは間違いないぞ」
って、うちの兄は人間止めてるなと、つくづく思う。
風魔と二人して兄さんに微妙な目線を送ると、兄さんが気不味そうに言う。
「それならお前のあの拳、あれの方が危険だろうに、使ってる方も使われた方も」
話題をそらすにしては真面目なトーンで言われた事に、どう答えようか詰まる。
「あれは、その、そうでもしなきゃ追い付けないっつうか、あの技も盗んだものっつうか」
「まどろっこしい、あれは危険な技だと言うのは分かるな?」
「それはそうだろ、本来相手がアホみたいに強いか、人以外に向けて使う技何だから」
俺がそう言うと、兄さんが半眼で俺を見詰めてきた。え、俺何か不味いこと言ったっけ!?
「それをお前は俺に向けた訳だが」
あ………いやでも兄さんも殺意マシマシだったから
「兄さんも俺相手にバカみたいに殺気出して、即死技ばかり使ってきたじゃないか、ナイフとか羅刹とか!!」
「殺気はフェイクだ、いや、怒ってたのは確かだが。それよりお前が逃げ帰ってきたのが気になったんだ」
「ふざけんな、後からだったら何とでも言えるじゃないか!!」
こっちはガチで死の危険を感じたんだぞ!!
「あ、あの、御二人共に、少し落ち着いて「「少し黙ってろ(くれないか)」」う………はい」
横から話し掛けてきた風魔を黙らせて、兄さんと睨み合う。
だいたい最近の兄さんは、勝手が多過ぎるんだ。この前だって約束してたのに結局はあの女が選ばれて………いかん、怒りが沸々と湧いてきた。
すわ、このまま第2ラウンドかという空気をぶち壊したのは、我が家で誰も逆らえない最強の御方だった。
「あんた達、何やってんだい!!!!!!」
声に驚いて三人で声の方向に目を向けると、縁側の方から特大の怒気を纏った婆ちゃんの姿が見えた。あ、これダメなヤツだ。なんて思わず考える。
今日から、しばらく晩飯抜きだろうなぁ。
「ボソッだから言ったんですよ」
もっと詳しく言ってくれと、この時俺は強く思った。
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キンジ 準備を始めるみたいです
兄さんとガチファイトした翌朝、俺と兄さんが飯抜きにされて、風魔のくれたメザシを二人でかじっていると、携帯にあかりからの留守電が複数と、一通のメールが来てた事に気付く。
昨日はケンカの後、婆ちゃんの説教で死にかけて、携帯なんて気にしてられなかったからな。
『件名:キンジ先輩のバカ
なんで電話出ないんですか!!
あんな手紙で納得なんて出来ないですから。私、勝手に帰ってしかも転校なんて絶対許さないですからね。許さないですから。絶対見つけますから、勝手に戦兄妹契約解いたこと、後悔することになりますからね。私、諦め悪いですから、いつまでも追い続けますから、覚悟してて下さい。
未だ返事、返してもらってないのに、キンジ先輩のバカ
後、東京武偵高校の
ファイルが二つ送付されてて、一つは書いてあったファイルで、もう一つは
取り合えず写真をメモリーカードに保存してから考える。
…………これガチで怒ってるやつだな。いつも絵文字使って短文のあかりが、ひたすら長文でろくに改行もしてないメール送ってきたとか、これはヤバイなぁ。アメリカに行ったとして、あいつに気付かれずにサポートなんて出来るのかなぁ。
ま、まぁ、なんとかなるだろう……………多分。
それはそれとして、改行を無駄にして、一目で分かんないようにしてから返事の催促とか、自分勝手に離れたのに未だこっちを心配してくれて、役立つファイルとか送付してくれるとか、微笑まし過ぎてヤバイ。
あかりに無理矢理やらされた、恋愛シミュレーションゲームの主人公が言ってた『尊い』って、こういうことか。
尊い、あかりが尊過ぎてヤバイ。
「遠山先輩、これから某はどうすれば?」
俺と兄さんはメザシ一匹だったのに、羨ましいわ。
………そのメザシは風魔がくれたものだから、文句も言えないんだがな、くれるならそのハンバーグくれよ、メザシよりイワシの方が俺好きだよ。
つか、何でこいつだけ飯があるんだ、昨日三人で怒られたばっかりなのに、理不尽!!
「うーん、そうだなぁ」
そんな奴でも今は
えーと……俺と兄さんはアメリカに行くし、風魔は大人しく日本で転校の件を親に納得させてくれれば、それで良いかね。
「風魔さん、英語は出来るか?」
「はい、出来まする。英語、フランス語、ルーマニア語、ドイツ語、中国語、の読み書きが、他にも数ヵ国、話すだけなら出来まする」
あらやだハイスペック、それで諜報科なら、相当のエリートでは?
佐々木はなんでこんな娘を、俺の戦妹にしたのか。
下の世代が有望株多過ぎて、先輩としての立つ瀬が無いな。
「キンジ、お前より優秀なんじゃ無いか?」
兄さんに睨まれたから、慌てて風魔に話を振る。
「戦闘はどれだけ出来る?」
「えっと、クナイを使った近接戦が少し、ガン=カタはあまり得意ではありませぬ」
そう言って風呂敷から火縄銃を取り出した風魔。
火縄銃ってお前、それは近接で使うと確実にオーバーキルだぞ!?
火縄銃は中・近距離での想定の拳銃の十倍近い射程持ってるオバケ威力の遠距離武器だぞ?
元々の想定運用が固定砲台と同じだから、有効射程が100M以上あるのと、弾に使うのが鉛のせいで、ホローポイントやダムダム弾みたいな衝撃と傷になるのが特徴で、100M先の鉄板もぶち抜ける、威力面で非常に優秀過ぎる武器なのだ。
欠点は装填に手間が掛かる事。一発限りの切札って事ならアリかもしれないが、非殺傷って事も考えると精度と高過ぎる威力で不安が残る武装だ。
それこそ、ゾウやサイ等の硬く分厚い皮膚と骨を持つ相手や、人以外の害獣相手なら未だ活用法は有るだろうが、人相手には完全にオーバーキルだ。鉄板や鎧で防げるのなら、信長の三段射ちは、後世までその名を轟かせていない。
当たれば死ぬ
なんと言っても火縄銃の恐ろしさはこれに尽きる。
当時の技術では、防弾技術も、射たれて体内に入った鉛の摘出も、どちらも難しい、出来る人間なんて当時居たのかすら俺は分からないし、聞いたことはない。
射たれて運良く生きても、体内に入った鉛による中毒で、被害者を必ず殺す、しかも弾は柔らかい鉛を直接火薬で打ち出すので、ほぼ打たれた人間の体内に、鉛の欠片が残るというオマケ付き。死に至らない微量でも、中毒で一生身体を激痛が蝕む。
あまりのイロモノに、口端を引きつらせる。
それをどう感じたのか、風魔は火縄銃の利点を良い始めた。
「えっと、古いですが、ちゃんと使えるのでありまする!某の家は、家柄しか取り柄がなく…………家の押し入れにあったこの火縄銃が、なんとか自前で用意できた物で。手入れはしっかりしていますし、一発の威力と射程は良いですし、頑丈さが取り柄で、打撃武器としても使えるのです!!」
あ、焦ってるせいか口調が変わった、いつもは作ってるのな。
「いや、切札的な運用なら、大丈夫だと思うが。遠距離の攻撃手段が無いと危なくないか?」
「基本は隠密行動や諜報活動が主ですので、遠距離から拳銃で音を出してながら仕掛けるよりも、何食わぬ顔で近付いて不意討ちが良いのでありまする」
うわ、えげつな。
「それなら尚更、暗器となる銃が必要だろう。デリンジャーでもグロッグでも良い、一丁位は持っておくべきだ」
俺が風魔の闇討ち発言に表情を引き連られていると、兄さんが真面目そうな顔して拳銃を勧めていた。
そういやこの人も大概な武器使ってたな、最早骨董品な拳銃とか、鉄板入りのブーツとか。そりゃ、火縄銃位じゃ驚かないか。
「ですが、弾も只ではありませぬし…………武装が増えると隠すのに苦労しますので。元手も心持ち足りないと思いまする」
うん、金がないなら仕方無いよなぁ。潜入任務するなら武器の持ち込みは毎度自由って訳じゃ無いだろうし、最初から諦めて近接での動きに磨きをかけるのは、選択肢として間違っていないと思うぞ。
「そうか………キンジ、お前「イヤだ」」
兄さんが言いそうな事が分かったから声を被せるようにして拒否する。
「なったばかりとは言え、お前の
「
俺がそう返すと、兄さんが難しい顔をする。
「お前の装備の相談、俺は何回乗ったと思っている?」
「実の兄弟と戦妹は違うだろ!」
兄さんは通常時でも、いや通常時の方が周りに甘いから、そんな事言えるんだよ。
おにぎり一つでゲリラ基地落とすような
「いえ、今でも十分過ぎるほどお世話になっているのでありまする。これ以上は流石に申し訳無いです」
そうだそうだ、昨日の今日知り合ったばかりの相手に、ホイホイ金出せる程俺はお人好しじゃねぇ。
「
何でそこでアイツの話が出るんだよ!!
「高千穂は関係無いだろ!」
半年前、ぽっと出で兄さんの
元々俺が兄さんの
それに、兄さんの戦妹なのに、妙に俺と自分を比べたがる所とか、後は実家の金に無遠慮に手を付けてる所とかも嫌いだ!!
「はぁ、あいつも悪い人間では無いんだがな、どうして仲良く出来ないのか………」
「悪人じゃ無くても、あいつは人が悪い、あれと仲良くとか無理だって」
俺がそっぽ向いてそう呟くと、兄さんが困った顔して言う。
「もう反抗期はやめて欲しいんだがな。……………風魔さん、変装は自信あるかい?」
はぁ?
いきなり何を言って………………おいおいまさか、風魔を連れていくつもりなのか!?
「!?………私に任せて下されば、完璧な成果を上げてみせまする!!」
そう言ってキラキラとした目で返事をする風魔に、嫌な予感をヒシヒシと感じて、部屋に一人戻った。
「なら、丁度育児休暇の友人が居るし、巻き込んで四人で行くか。武偵庁に連絡を入れて、今回の担当を変わってもらおう、大学の方には連絡を昨日入れたから、それで問題は無いはず。」
なんて不穏な声が背後から聞こえるのを無視して部屋に戻ったものの、打合せは兄さんの性格からして今日じゃなく明日、出発は早くても明日の夜か明後日だ。もってく装備は伊勢からの旅行鞄に容れっぱなしだし、正直準備も何も無いんだよな。
向こうではあかりの父親の捜索・救出が主な目的になるんだろうし、加えるならあかりにはこちらの動向を分からない様にしなければならない。
携帯で映画を流しながらブツブツと英単語を呟いていると、部屋の襖が開けられて爺ちゃんが入ってきた。
爺ちゃんは俺の前に腰を下ろすと、俺が携帯を閉まったのを確認してポツリと言った。
「金次、アメリカに行くのか」
持ってた木箱を横に置いて、今回の事を聞いてきた。
「そうだよ、妹分の父親を探しにな」
「なんじゃ、嫁の父親探しじゃないのか」
呆れたような目で見てきたので、思わず叫ぶ。
「なんでいきなり嫁なんだよ!?」
「お前、女の話は星伽の奴か妹分の話しかせんじゃろ、相手は間宮と言うし、縁が強くなって良いと思うんじゃがのぉ」
「あいつはそんなんじゃない!!」
俺が強く否定すると、爺ちゃんは溜め息と共に俺に聞いてきた。
「なら金次、お前がこれからする事は、なんのためだ」
爺ちゃんは何について言ってるのか。転校なのかそれともアメリカへあかりの父親を探しに行くことなのか。どちらにしろ言えることは決まってるけどな。
「………俺が俺であるため、俺の誇りの為だ」
結局は独り善がりな俺の我が儘だ。このままじゃあかりに……………皆に甘えて前に進めない。男として胸を張れない、だから俺が俺の為にあかりから離れた。
それでもあかりを諦められなかったから、戻ってくるって決めたのに、小百合さんに関わるなと言われたのに、俺の為にあかりの事情に首突っ込んで引っ掻き回すんだ、俺が決めたから。
だからこれは、俺の為にする我が儘で、独り善がりの自己満足。
「そうか、それで何が起こっても、お前後悔するなよ?」
真剣な目で俺を見る爺ちゃんに、堂々と目を射抜く勢いで睨んで言う。
「絶対にしない、誰にもさせない、
「それがお前の義なら、もうこれ以上言わん」
俺の言葉に満足したのか、爺ちゃんが持ってきてた木箱から古いノートを一冊、俺の前に置いた。
「それを使う時は、見た奴を必ず殺せ。そのつもりで使え」
それだけ言うと俺が何か言う前に部屋を出た爺ちゃんに、一体何だったんだと思って、ノートを見る。
表紙はもう古ぼけて、元の模様が分からなくなってる。だいぶ使い古されたもので、表紙にはタイトルも書いた人間の名前も、何も書かれていない。
「ったく、爺ちゃんいきなりこんなん渡して何…………!!!?」
ペラペラとページを捲ると、見たことのある名前や説明が、びっしりと書かれていた。知らないものも沢山あるが、これってまさか。
慌てて部屋の押し入れから、小学校の時に道徳で出された原稿用紙を引っ張り出して、ノートの文字と比べる。
「やっぱり、これって父さんの字だ。爺ちゃんこれ俺に渡して良かったのかよ!!」
名前の由来を親に書いてきてもらうって宿題を出された、小学校の時の道徳の原稿用紙に書いてある文字と瓜二つなノートの文字を見て、頭を抱えたくなる。
明らかに、いくつもの家訓を破っているだろう爺ちゃんの行動に、今度こそ分からなくなる。爺ちゃんは何のために俺にこれをくれたんだ?
これは俺贔屓が過ぎる、長男は兄さんで、技だって父さんは俺と兄さんに百の技を別けて教えたんだぞ!
何で俺に、俺の知らない攻防百技が書いてあるノートを渡したんだ!!
まぁ、覚えられるものは覚えるけどよ、強くなるって決めたし。
そう思ってヤケクソ気味にノートを捲っていると、まぁポンポンと出てくるわ、アホみたいに強い技が沢山。
秋水や絶牢は勿論、昨日兄さんが使ってて、俺が最後食らいそうになった即死技、羅刹まで懇切丁寧に説明文が細かい字で載ってた。他にも無手で銃の真似事出来る技とか、超高速で動くものの受け流しとか、死んだフリをする技何てのもある。
これ下手しなくても、覚えたらとんでもない超人になれるんじゃ……………俺が特大の爆弾を置いていった爺ちゃんを、やっぱり父さんの親なんだなと、競馬中継聞きながら昼間っから家の中をパンツと肌着だけで過ごしてる爺ちゃんに、内心戦々恐々としていると、部屋の入り口の襖の向こうから風魔が声を掛けてきた。
「あの、すみませぬ、金一殿が出掛ける支度をしろと」
その言葉に慌てて机の引き出しにノートを入れて、振り替える。
「わ、分かった!!五分で行くから、お前も準備してろ、着いてくるんだろ!?」
「は、はい、そうでございまする」
風魔が襖の前から移動して、少し経っていつの間にか止まってた息を吐く。
「心臓に悪過ぎる。強くなりたいとは思ったけど、これノートの中身の訓練は、誰にも見られない所でしないと、ヤバイな」
父さんの技は強力なものばかり、その分リスクも難易度も高いものばかりだけど、強くなるにはこれ以上無い位のものだからな。
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キンジ お招ばれしました忍者のお家
リハビリなんで、許してください!!
「もう勘弁してくれ、そろそろ帰らないと、ミカが寝付けないんだよ」
遊園地のベンチで赤ん坊を抱えながらぼやく獅童さんが、今晩家に来ることを言って帰った後、俺は風魔の親御さんに呼ばれて、ご飯を風魔の家で食べる事になった。
いやぁ、良かった良かった、婆ちゃんにはカナが連絡いれてくれたし、家に帰っても飯抜きだからな、只飯食えるなら行こう、今は金欠なんだ。
俺がそんな貧乏根性丸出しで、電車に揺られて新横浜駅にきた俺は風魔から自前の忍者論を聞かされていた。
「故に
いや、まぁそれは一利あるんだろうが、それを電車の中で言うか?
周りの『あぁ、あの子もそういう時期か』みたいな男性の目と『うるさいんだけど、何とかしろよ連れ』の目線が酷く刺さる。
「お前の忍者論は分かった、だがそういう話をするなら、せめて人気の無いところでしろ。後、電車の中で騒ぐな」
デコピンも追加して説教すると、風魔がどんどんしおれていった。電車を降りる時なんて『ダメ忍者でごめんなさい、来世でもう一回やり直します』なんて言ってふらっとホームに吸い寄せられたから、慌てて止める。
「バカお前、いきなり自殺は止めろ!」
「行かせてください先輩!もうこうなったら神様に直談判して、来世はもっと良い感じの人間として生まれ変わるんだ!!!」
お前、巣の口調意外と男っぽいのな。
「今お前が死んだら、俺はお前の親に
「某は、先輩の言葉に感銘を受けて、来世に実践しに言ったと」
「俺が気不味いわボケ!!」
思わず頭来て、風魔の頭を叩くと、『うぅ、先輩に叩かれたぁ』なんて言って涙目でうずくまり始めた。
「ねぇ、あの男の子酷くない?」「聞いてたら男の子が原因でしょ?」「あれはねぇよなぁ」「あんな可愛い子泣かせるって」
!!!?
騒いでたせいで、周りの人達から変な目で見られてたのは分かってたが、何でこうなる!?
駅員が近付いて来たので未だうずくまってる風魔の手をとって改札に走る。
駅から出て暫く、風魔が無言になったので家の方角を聞きながら歩く。風魔は俺の手を握って下向きながらとぼとぼ歩いてるので、進みが遅くて仕方無い。
「この信号をどっちだ」
握られてない方の手で指を指す風魔に、どうしてこうなったと思いつつ、下手な事言ったらまた暴走する可能性があるから、結局は無言で二人して住宅街を歩く。
いかにも忍者な風魔の家だから、ちょっと期待してた俺の幻想は、木造モルタル二階建ての何の変哲も無い一軒家で、打ち砕かれた。
風魔は久し振りの家に、テンションが少し戻ってきたのか、駅からここまでずっと背負ってた風呂敷を前に抱えて、家に先に入っていった。
「ただいまー」
家族には普通の口調なのか、風呂敷を横に置いてゴム製のブーツをほどいて家の中に入って行く。
中はカラクリ屋敷とか、そんな落ちだろ多分。
「お邪魔しますー」
中は至って普通の家に、また幻想が打ち砕かれた。
なら家族の人達が風魔のような懐古的な口調を作ってる事に賭けて、風魔の後に続こうとすると、エプロン姿の女の人と、小太りのワイシャツにスラックス姿の男の人が出てきた、多分ご両親かな。
「どうも初めまして、もうすぐお夕食を出しますから、お口に合うかわかりませんがー」
「どうも、貴方が遠山君かい?この度は陽菜が世話になって」
普通だ、ザ・普通の人だ!?
え、本当に忍者なの?って思うくらい普通の家に普通の人達で、肩透かしにあって、生返事を出してしまう。
「あ、はぁ………お邪魔します……」
淡く抱いてた想像を、ことごとく普通で撃破された俺の足元に犬が近寄ってきて、やったこれがあの忍犬だ!って思ったら、普通のトイプードルだったよ、くすん。
風魔の家はダイニングキッチンで、台所と食べる場所が一部屋にされている間取りだ、そこにご両親と風魔、風魔の弟に俺が、集まって夕食を食べる形になった。
忍者っぽい兵糧丸何てものは出てくるはずもなく、今晩のメニューはコロッケとキャベツに味噌汁、後白米と漬物が出てきた。
風魔のお母さんの飯は旨い、遊園地で遊び回ったのもあって、メチャクチャ旨くてご飯が進む、揚げたてでサクサクで、中のポテトがホクホクしててソースとキャベツと一緒に食べると幸せだ。
男三人でモリモリ食ってたからか、山盛だったコロッケがあっという間に無くなって、風魔のお母さんが追加のコロッケを作ってきてくれた、それも飢えた男三人の手によってドンドン消えていく。
「気持ちの良い食べっぷりねぇ、ドンドン食べてねー」
思わず無言でバクバク食ってると、風魔のお母さん……面倒だな、風魔ママがそう言ってくれた。
「あ、すみません、つい美味しくて」
「気にしなくて良いの良いのー、うちは虎太郎と旦那が食道楽で、いつも大量に作ってるから」
「そうですそうです、気にせずドンドン食べて、家内の料理は絶品でしょう」
俺がちょっとやらかしたかなと、食べるのを自重しようとすると、二人とも進めてきてくれて、ありがたくて沢山食べる。大量に作ってるのは本当らしくて、無くなりそうな度に更にコロッケが補充されて、米も炊飯器がデカイ……あれ一升炊きの奴か、スゲー。
「ええ、スゴく美味しいです」
そう言って風魔ママさんが追加してくれたコロッケに、ご飯のおかわりをして、コロッケにブルドックソースを掛けてかぶり付く。このコロッケ、さっきよりも衣の色が少し濃いな………ッッッ!?口の中に溢れる肉汁とホロホロとした肉の食感、アクセントのポテトが肉汁と合わさって優しい味わいが、メンチカツだこれ!!?
「メンチカツとカキフライ追加よ、未だ未だあるからね」
「「いよっしゃ!!」」
「な!?」
目の色かえて食べるスピードを上げた風魔パパと風魔弟こと虎太郎君を見て、負けじと箸を動かす速度を上げる。
最終的にメンチカツもカキフライも追加してもらい、ご飯も二回おかわりをして、男三人で、服の上からも分かるくらい膨らんだ腹を撫でながら、食後のデザートのミカンをパクついた。
「いやぁ、久し振りに見事な食いっぷりの人と食べられましたなぁ、見てて実に気持ちの良い食いっぷりで」
そう言われてちょっと恥ずかしくなって、頭を掻きながら言う。
「いやはや、久し振りにこんなに美味しいご飯が食べられまして、こちらこそこんなに御馳走になってありがとうございます」
そんな感じで世間話をしてると、大分良い時間になってきて、兄さんから電話が来たので断ってから席を外して廊下に出る。
「もしもし」
『キンジ?、今家に獅童さんが来たの、それで今日はあなた帰って来なくて良いわ。獅童さんとミカちゃん寝る場所が無くて、あなたの部屋を使わせてもらうから』
はぁ!?
「ちょっと待ってくれよ!?俺に野宿知ろってのか!!?」
『ホテル位止まれるでしょう?私の名前で領収書切って貰えれば、後で返すわよ』
「獅童さんが来るのは分かってただろ!?何でこんなギリギリに………あっ、カナ電話切りやがった」
こりゃ今夜はカプセルホテルか、はぁ………………
俺が携帯をしまって部屋に戻ると、虎太郎君が着替えの服を持って風呂に入ろうとしてる所だった。
「あ、キンジ兄ちゃん、もう帰っちゃうのか?」
「それがな、今姉貴から今日は帰ってくるなって」
子供相手だからポロッとさっきの事を言っちゃって、ヤベっと思ったときにはもう遅く。
「なら、泊まっていかれてはどうかな、私も未だ遠山君と話したい」
「それなら客間のお布団出さなきゃ、お着替えはどうしましょうか」
「なら、いっそのこと皆で銭湯に行くのは?」
「やった、フルーツ牛乳飲める!」
「それなら支度しなくてはな、キンジ君はここで陽菜とミカンでも食べててください、直ぐですから」
そしてご両親が階段に消えて虎太郎クンモ持ってた着替えを持って隣の部屋に消えた。
この間僅か一分である怒濤の勢いで決まった事に、ちょっと呆然としてると、風魔が苦笑いしながら俺に聞いてきた謝る。
「すみませぬ、某が銭湯等と言い出した結果で」
「いや、俺はホテルを探す手間が無くなったから、それでもいきなりで迷惑じゃなかったか?」
流石にほぼ初対面の相手を家に止めることになるんだぞ?
「そこは大丈夫でありまする、先輩の事は今年の
今年って、また嫌なもん見られたな、まさかあかりみたいに競技以外の所も見てないだろうな、去年の失敗で、一般公開されてない屋上で飯食ったから、大丈夫な筈だし、今回は競技や必要な時以外は、基本人気の無い校舎裏とか屋上に隠れてたから、問題ないはずだ。
また、ヒステリアモードがどこからバレるか分からないし、出来るだけ露出を下げる以外に対策の取りようがないしな。女と距離を取ろうとしても、向こうがそのつもりなら無意味だし。
「そうか、でもそれだけで信用するか?」
「勿論、某が
自分が調べられてたと分かって、あんまり気分が良いとは言えないが、今までの初対面とは思えない位親切にしてもらってた理由が分かって、ちょっとホッとした。
「なら、その期待には答えないとな」
俺がそう言うと、風魔が嬉しそうな顔した。
「これからご指導ご鞭撻、よろしくお願い致しまする」
そう言って頭を下げた風魔に、俺は思い付いた事があって先輩っぽくちょっと偉そうに言う。
「おう、俺に任せろ。さっそくだけど、その口調禁止な、俺にも家族を相手してる時みたいに、巣の口調で話せ、敬語じゃなくても気にはしないから」
その口調分りにくくて嫌なんだよ。年下からそう言う丁寧な言葉遣いとか、普通の敬語とか丁寧語なら未だしも、郭言葉とか舟場言葉とか、方言を云々じゃなくて、聞き慣れてなくて純粋に辛い。
後あかりで馴れたせいか、年下からタメ口でも平気になってるからね、俺は。あの敬う気ゼロな敬語程、心に響かないもので、やっぱり言葉ってその人の心だと思います。
「な!?で、ですがそれは、その」
「さっき言ったろ?ご指導ご鞭撻よろしくお願い致しまするって、これからは俺はお前の
心云々と分かりやすさは別問題だから、ちょっと強めにそう言って聞かせると、風魔は少しうつ向いて何かを考えると、顔を少し赤くして、俺を見上げた。
「承知致したでありま…………分かりました、これで良いですか?」
口調が未だ堅いな、取り乱してた時はもっと砕けてた。
「もっとだ、家族にはもっと砕けた言い方をしてたろ」
「う、うぅ~………………分かったよ、これで良いかい?遠山先輩」
顔を真っ赤にして唸って言う風魔が、何かこうグッときてヤバい、ヒス血流が高まってきて慌てて目をそらす、落ち着け俺、落ち着いて素数を数えろ。1、2、3、5、7、9、11、13、17、19………………よし、落ち着いてきたか?
「う、うむ、やっと本音で話せるな。それはそうと、遠山先輩だと兄さんと区別しにくいな………名前で呼べ」
「いや、それは、あなたは先輩で年上で、私は教わる身何だけど」
「名前の方が呼びやすい、俺も名前で呼ぶからな、陽菜」
「ひゃうッッ!?」
俺が名前で呼ぶと、肩を震わせて驚いて距離を取られた。自分で言っといて、いざこういう反応をされると、ちょっとショックだぞ?
「ほら、お前も呼んでみろ」
「き、キンジ、先輩……………」
「うん、それで良い」
俺がうなずいてミカンを食べてると、少ししてご両親がバックを持って部屋に来た。
「準備が出来たので行きましょー」
「近くに良い銭湯があるんです」
「そうなんですか、それは楽しみだ」
どうせなら中で下着とか揃えられたら楽だなぁ、とか考えつつ、案内されたのは福美湯という銭湯。
銭湯と言えばデカイ湯船が富士山の絵の下にドカッと鎮座してて、手前側にズラリとシャワーと洗う場所が並んでるイメージだが、ここの銭湯は露天風呂やサウナ、電気風呂に炭酸泉と、色々な風呂が楽しめてワンコイン、洗濯機と乾燥機があるから、入ってる間に着替えの用意まで出来てしまった。
「本当にいい湯だねぇ」
のんびりと湯船に浸かってると、風魔パパが話し掛けてきた。虎太郎君はもう風呂を上がって、女性陣を待っている。俺は風魔パパに誘われて露天風呂に居る。
「そうですねぇ………今日は突然こんな事になって、すみません」
「いやいや、実はこれは想定の範疇でしてな、元々出来ることなら、遠山君には泊まってもらおうと思っていたんですよ」
「えっと、それはどういう?」
ちょっと考えが理解できなくて思考が止まる。
「遠山君は、うちと遠山家の方は縁があるのは知っているかな?」
「はい、確か七代前でしたよね、未だ江戸時代で」
思考が固まっている時に話し掛けられて、反射的に答えた。縁と言ってももう200年以上前、だいぶ昔の縁だと思うけど、それがどうしたんだ?
「合っているよ……………忍びと言うのはね、武家に使えるのを本懐としているんだ、今の風魔は、使えるべき武家が、主がいない」
唐突に始まった大事な話に、だらけた体を起こして、周りを見る。さっきまで居た筈の他の客はもう居なくなっていて、露天風呂には俺達二人だけみたいだ。
「私はね、陽菜が君との縁を持ってきてくれた時、嬉しさのあまり目が滲んだ、使えるべき主を失って100年近く、やっと見付けた主となれる人だったからね」
あまりに大きな話に、言葉を失う。
「キンジ君」
「…………何でしょうか」
「君の活躍も強さも見させてもらった、君がどれだけの逸材なのか、忍びとして人を見てきた私からみても、驚くほどだ。どうか、風魔の主となってはくれないか」
そう言って頭を下げた風魔パパが本気だと分かって、呆然としてしまう。風魔パパが、風魔家の当主が言ったそれは、一介の中学生の身には考えられない程のことで………子供に対して、あまりに役者不足な願いだった。
「殆んど面識が無い相手ですよ?」
「私と家内が調べた、私は自分達の腕に自信を持っているよ、君は任せるに足る人だ」
俺の目を真っ直ぐと見て言う。兄さんに少し教えてもらった心理学では………本気だ、この人は。
「未だ、中坊のガキですよ?」
「それでも君はその歳で、単独でバスジャックを解決し、神の降臨に立ち会い、そして実力はSDAのアジアランカーに並ぶ」
「買い被り過ぎです」
「その時は、私の見る目が無かっただけだ」
「俺はあなた達に何も出来ません」
「ただこの身にある技を、主君の役に立つことに使えさえすればそれで本望なれば」
反論がもう浮かばなくて、それでも俺には荷が重く、断ろうと口を開こうとすると、風魔パパが先に喋りだした。
「なに、君が困った時に助けてくれる人が増えたと思ってくれれば構わない、基本的には後輩の家族だからね、忍びは世を忍ぶ者故に」
助けてくれる大人が増えた…………か、それならまぁ、納得は出来ないことは、無いかね。
俺の事を二日もせずに調べあげて、こんなに大胆な行動に移せるほどに行動力ある人達、風魔一家の情報収集能力があれば、あかりの助けになるかもしれない、メリットの方が大きいのかな、俺の心労を除けば。
「引き受けてくれるね?」
「……………分かりました。ただし、俺じゃなく
俺が日本を離れた時も、家族に何か無いように、それだけを考えて言うと、風魔パパは片膝をついて、まるで本物の忍者みたいに言う。
「承知致した、これより我が風魔一族、遠山家の方々を主君と崇め、一生の忠誠を誓います」
「あ、えっと、その、普通にして頂ければ………」
ここ銭湯なんだけど!?
あまりの気合いの入りっぷりに、どう対応して良いか分からなくてあたふたしてると、風魔パパが苦笑いして立ち上がった。
「あっはっはっ……そろそろ上がろうか、家内ももう上がってるだろうし」
「……はぁ………そうですね、上がりましょう」
ケロッと言ってズンズン歩いてく風魔パパに、さっきのは一体なんだったんだよと突っ込みたい気持ちを押さえて、後に続く。
脱衣徐で乾燥機から服を取り出してもぞもぞと着替えて男湯を出ると、三人で牛乳瓶を片手に俺達を待ってるのが見えて、ちょっとホッとする。
「お待たせしました」
さっきの風魔パパの話、あれは独断なのか、それとももう話はされてるのか、まぁ家に着いてからで良いかね。
「いえいえ、のんびりとして下さって良いんですよ」
風魔ママがそう言ってくれたので微笑んで会釈をする。
「ありがとうございます」
顔をあげると風魔ママの隣に居た陽菜と目があって、ちょっとドキッとした。
ママさんも若いけど、陽菜はいつもはポニテにしてあった髪を下ろしてて、風呂上がりでちょっと火照った顔にダボダボのシャツで、胸元がちょっと見えててヒス的にヤバイ。
ヒス血流が間欠泉のように吹き上がって来て、直ぐに目をそらさなかったらなってた、何かボディソープなのか、良い匂いがするし、ちょっとクラっと来たね。白雪だったらなってたかもな、危ない危ない。
若干甘くヒステリアモードになった思考でそんなこと考えてると、風魔パパが気を効かせてくれたみたいだ。
「遠山君、何を飲むかい?」
「あ、じゃあコーヒー牛乳を」
「………ほう」
俺が答えた瞬間、若干目を細めた風魔パパに、ちょっと警戒してると、虎太郎君まで俺に向ける目が細くなった。
「兄ちゃん……」
二人の視線の訳を考えて、二人が持ってたモノに視線がいって分かった。
「…………なるほど」
「「風呂上がりは普通の牛乳だろう!(フルーツ牛乳だろ!!)」」
つまり、派閥戦争だな。
「こればっかりは譲れませんね、風呂上がりはコーヒー牛乳だ!」
風魔パパが気を効かせてくれたのは理解した。二人とも口角が少し上がってる、楽しんでいるのが分かったから、俺も合わせてその戦争に乗っかる事にした。
男三人で風呂上がりはどの牛乳かの議論を家につくまで延々としていると、女性側は呆れて笑っていた。
「遠山君、結構食道楽の気があったのね」
「私の知らなかった…………母さん」
「はいはい、やっと我が子が料理に興味持ってくれたわ」
……………………ヒステリアモードになったお陰で上がった聴覚で、聞こえてきたひそひそ話に、顔が赤くなるのが分かる、今の流れで料理って、そういうことか?
…………聞こえなかった事にしよう。
あかりと白雪の弁当を思い出して、ちょっと懐古的になってきた気持ちを押さえる、あの弁当、本当に旨かったんだよな、あかりはたまにミスるけど、基本俺の好きなちょい濃い目の味付けで、白雪はザ・王道これがこの料理本来の味だって感じの味なんだよ。
議論の途中でそんなこと考えてたからか、虎太郎が変な目で見てきた。
「つまり、フルーツ牛乳はバナナオレやイチゴ牛乳で味わう事の出来な…………兄ちゃんどうかしたか?」
「いや、本当に楽しいなって、今がさ」
俺がしみじみと呟くと、風魔パパが爆弾を投下してきた。
「いっそのことうちに婿にでも来ますかな?」
「なッッッ!!!?」
「お父さん!!?」
ビックリして二人して風魔パパの方を見るも、常談だよと笑ってる姿を見て、ちょっとタメ息を吐いた。
「遠山君は客間を使ってくれ、自由に使ってくれて構わないからね、陽菜が案内してくれる」
「こっちです、キンジ先輩」
そう言って二階まで案内をしてくれた陽菜は、自室で寝るらしくそのまま、隣の部屋に入っていった。
中は畳張りの和室で、押し入れを開けると布団が入ってたのでそれを出して寝ることにする。
腹一杯食べたゆっくりと温泉に浸かって、一日遊んでた体には疲れが未だたまっていたのか、布団に入ると直ぐに寝れた。
えぇ、活動報告の方に閑話のアンケをやらせて頂きました、利用規範大丈夫だと思う、多分。
で、時間空いてる方や、興味ある方は、是非とも活動報告覗いてコメントください!!
1/5 20:40頃追記:アンケ締め切らせて頂きました、詳細は活動報告に書かせて頂きます、興味のある方は、覗いて下さい
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皆の思惑 飛行機に乗るみたいです?
今回とんでもなく長くなってます、いつもの1.8倍位、後活動報告でアンケ取った記念のお話、新しく短編集で別に小説を投稿したので、そちらでどうぞご覧下さい。そっちも3話構成になってて長くなってます。
昨晩、夜中に風魔が部屋に忍び込んでたらしく、朝起きた時に一悶着あったが、それ以外は特に問題もなく、今朝なんて、朝ご飯の後にお土産と言って鳩サブレまで頂いて、何から何までお世話になった風魔の家を、二人で出て家に戻ると
あれよあれよと言う間に獅童さんの車に乗せられて、空港まで連行されたのは一時間前のこと。
車の中で荷物の確認を必死こいてしてた俺に、取り合えず聞いとけとばかりに当面の方針を言われ、いい加減にしろよと俺が怒りをこらえていると、あかりが俺たちよりも二つ後の便で来ると知って、気が気じゃなくなった。
あいつの修行は三日じゃなかったのかよ…………未だ二日しか経ってないぞ?
やっぱり女何て苦手だ、何て黄昏てると、ラウンジで、風魔があったかい飲み物を猫舌の癖に、ロクに冷ましもせずに飲んで、悲鳴上げてスタッフの世話になってた、変な所抜けてる忍者である。
「キンジ、向こうに着いたら直ぐにホテルでチェックインだ、時差で頭が動かないなんて事無いように、計算して動けよ?寝れないなら渡した薬で、無理にでも寝ておけ」
俺が昨日の疲れからボーッと外の景色を見て黄昏ていると、兄さんが手帳をチェックしながらそんなことを言ってきた。
「分かってるよ、乗ったら直ぐに寝ることにする」
どうせ疲れが溜まってるから、薬なんて飲まなくても直ぐに寝れそうだけど。
「隣の席は風魔にした、連席が取れなかったのは残念だが、緊急時の対応は覚えているな?」
「大丈夫だって、
俺の言葉に納得した兄さんは、ベンチに腰掛けていた俺の横に座って、小さな声とベンチを叩くモールスで話始めた。
「分かっているなら良い。今回俺達が早く動けたのは、
モールスは非公式の武偵庁からの依頼って言ってるな。
「あぁ、速度を重視するために、メンバーは獅童さんに一任って話だったろ?」
「俺から頼み込んで、育児休暇のあの人を巻き込んだ、メンバーも俺とキンジ、獅童に風魔、現地に先行した一人含めた五人だ」
これは公安とプロの武偵との協同捜査とも言われて、否応にも体が強張る。
「灘さん、だっけ?」
「あぁ、お前と風魔には基本的に
風魔も俺も、他のメンバーと違って未だ子供だからか、兄さんも未だ未成年だけど、俺達と違って海外で飛び級して今はもう学士も約束されてる、充分大人扱い出来るってか、何か悔しいなぁ。
俺が外の景色を見ずに下向いて拳を握っていると、兄さんが俺の頭をポンポン叩きながら言う。
「向こうに着いたら俺も基本カナで動くが、カナで動けるのは二週間が限界だ。途中戦闘もあれば更に短くなる。キンジ」
「何だよ兄さん」
こっ恥ずかしくて振り払って立つと兄さんが、どこか寂しそうな目で俺を見る。
「頼りにしてるぞ」
その言葉に、何て返事をしていいか分からなくて、そうこうしてると搭乗アナウンスが流れて、それに流されるように肩掛けバックをもって逃げるように飛行機に乗った。
「あいつも未だ未だ子供か、
あの人の勘は嫌な程当たるからなぁ。後ろからよく知った視線を感じながら、俺は考える。この視線は多分教授が言ってた事だろう、予定より早いが、まぁ誤差の範囲だ、予定通りに交渉すれば問題ない。
それにしてもあの人の超直感から更に進化させた
脳内で猫を被った様な、いたずら好きなあの人の底意地の悪い笑みを思い出して、思わず半眼になる。
「金一、そろそろ行かないと不味いぞ?」
「あぁ、
さっきまで
「この
途中で俺の手を握って引き止めて、上目遣いで見てくる同僚に、思わせ振りな反応は止めてくれと思った。この同僚はいつも俺に対して過剰なスキンシップを求める。
「いつもありがとうな、パトラ。お前が居てくれるから、俺は安心して日本を離れられるんだ」
いつもの様にパトラを抱き締めて、頭を優しく撫でる。
「うぬ、うぬ、安心して行くがよい、金一の大事なものは、妾が絶対に護るのじゃ」
嬉しそうに笑って手を振って見送ってくれたパトラに、後ろ手で手を振り返しつつ、今回の事件について考える。
教授が言うには間宮現当主の失踪は、
あの人だって人間、ミスはある。最初、パトラが俺をイ・ウーに連れてきた事が推理出来なかったりな。
『分かっているな?彼の嫌疑は、もしそうだと分かれば決して許されない事だが、同時にまたとない千載一遇の機会なのだよ』
「あの組織にスパイを入れるまたとない機会、ですか」
「そうだ!あの組織は世界各国でテロ活動をしている、それなのにも関わらず、メンバーの殆どが素性不明、それどころか本拠地の場所すらも分からない…………あの組織の前身は我が国とドイツが主導していたのにだ!!」
あまりの煩さに耳から話して聞いていると、電話の向こうでドカドカと物音がして、息を乱した上司が俺の今回の任務に隠された追加任務を言う。
はぁ、こういう任務は嫌なんだがなぁ、何でよりによってあの人の忘れ形見を国の敵かどうか、なんて見定めなければならないのか。
「はぁ、はぁ………いいな、お前は今回の間宮現当主捜査任務と同時平行して、
昔憧れた人間の子供を、殺すかもしれない任務を命令されて、
「承知しました。獅童 虎厳、公安0課として職務を全うします」
俺の言葉を聞いた大臣は、満足そうに息を吐いて、電話を切った。
「はぁ…………育休取ってるんだぞこっちは、職権濫用しやがって」
愚痴を行ってタバコを吸おうと懐に手を伸ばして、ミカを前に抱いていたのを思い出して苦笑いする。
「お前に苦労させる世界には、させねぇからな、絶対」
俺と同じ
今回の任務で発生する金は全て国持ちだから、飛行機も個室を用意出来たし、仕事は灘と金一主導でなんとかなる、この子との旅行を楽しもう。
それにしても……………あの女
この国の高レベルの超能力者は暗記してるが、あんな褐色美少女見たこと無いんだよなぁ。
電話をしつつ、監視してた金一の言動が、明らかに疑ってくれと言わんばかりの動きで、こりゃガチで疑わないとダメなのかと、娘との二人旅を邪魔されてる感じで気分が落ちる。
あいつが簡単に尻尾見せるわけ無いし、こりゃ飛行機の中でお話しだなぁ。
俺の不機嫌を感じ取ったのか、ぐずり始めたミカをあやしながら、飛行機の搭乗ゲートまでゆっくりと歩き始めた。
「キンジ先輩、アメリカとの時差は14時間、機内食を食べたら眠るのが一番効率が良いです」
まさか陶器で食事を出してくれるとは思わず、しかもどれも下手なレストランより旨いせいで、これがファーストクラスかと、戦慄していると、デザート後の紅茶を飲んでいた風魔が、俺に寝るように言ってきた。
こいつ貧乏仲間の癖に、何かこういう場所に慣れてる感じなんだよな、謎だ。
「分かった、もう寝るから」
だからお前は早く自分の席に戻れと、俺の席で一緒に機内食を食ってた風魔をジト目で見ると、いきなり赤面してソワソワしだした。
「え、その……わ、分かりました……………………いきなりそ、添い寝とか、ハードル高くないかい?」
何でそんな顔を赤くするし、最後なんて言ったんだ?
面倒だな、
パジャマも折角だから使わせてもらおう、料金に含まれているんだろうし、勿体無いからな、うん。
「こちらをどうぞ、到着まで後10時間程です、5時間後にもう一度機内食をお出しします。よき空の旅を」
なんて言って、若い女性添乗員さんは去っていった。毛布とパジャマを2セット置いていって。
おい、これはどういう事だ?
2セットあるのが分かったのか、風魔がそれはもう顔を赤くしてテンパってるし、俺はあの女性添乗員の意図が分からなくて顔をしかめる。一体何の為に2セット、あれか?俺の席に風魔がずっと居たからか?こいつもしかしなくても疫病神だぜこんちくしょう!
「はぁ、俺は寝るから、お前も早く寝とけよ。時差ボケは辛いらしいからな」
その場でパッと着替えながら言ったが、こいつ俺が脱ぎ始める時点でアワアワ言って、絶対俺の話聞いてないな。
パジャマに着替えて毛布を被って寝る、風魔に背中を向けてだ、何か後でモゾモゾしてるけど無視。
ファーストクラスの席にはベットがあるんだよ!
それもシングルじゃなくセミダブルレベルのデカイのがな!!
エコノミーとの違いはもう言うまい。俺もこのくらいのクラスのを、バカスカ乗れる様になりたいもんだ、金欠は辛いね。
キンジが毛布を被って暫くの間、キンジに言われたことで思わず頭が一杯になってパニクってた思考を、やっと落ち着ける。よくよく考えると私の勘違いだと思うし。
私がそんな事に時間を使ってる間に、キンジはもう熟睡してたみたい。
「……………………」
キンジが寝たかどうか見るために、少し声を掛けてみる。
「あ、もう寝てます?」
ん、寝てるみたい。
しかしキンジが口調に文句を言うなんて、想定外だよ。でも確かこの子って、懐古的な感じの口調だったし。なぞれる所はなぞっていかないとダメなんだけど、未来が変わるかもだし。
すやすやと、私が近くに居たのに速効で眠ったキンジの横に座って、眺める。
嫌な夢でもみたのか、ちょっとうなされてるのを見て、頭を撫でて手を握る。
落ち着いたみたいで、寝息が規則的になったのを確認して、ホッとすると同時に、覚悟を決める。今度はもう失敗しないから、挫けないから、もう諦めないから。だから、貴方を守らせて。
キンジと会う前に合流した志乃の言葉を思い出して、握っていた手に力が籠る。
『貴女がどうするかは、貴女に委ねる。でも、遠山金欠はあかりの
志乃は、間宮あかりの味方だから、私の応援はしてくれないんだろうね。
「ん…………んぅ……」
手に力が籠り過ぎたのか、キンジが目を覚まし掛けたから、頭を撫でながら優しく声を掛けて眠らせる。
「未だ寝ていても大丈夫ですよ」
無事眠ったみたいだ、良かった。
未だ次の機内食までだいぶ時間があるし、私も寝ないとなぁ、時差ボケはこの身体が未だ馴れてないんだ。
チラッとキンジを見て、思わず頭に浮かんだ欲望を頭を振って思考の隅に追いやる。起きた時に私が隣にいたら、キンジ驚くだろうし、今朝お母さんに怒られたばかりじゃない。こういうのはもっとお互いに、近い距離になってから、その……でも昨日は同じ部屋で寝たし………………思考がピンク色になってきてるな、この考えは一旦やめよう。
それにしても、未だ会って数日の人と、同じ部屋のベットですやすや眠れるほど、キンジは無警戒じゃないはず何だけど。志乃からの紹介って言うのと、実家に連れてって家族が反応しなかったのが、一番大きいんだろうなぁ。
………………やっぱりその、ベットが大きいし、は、端っこならその、だ、大丈夫だよね?
CAの人も、わざわざ2セット持ってきてくれたんだし、私もここで寝ていいって事だもんね、よし。
女は度胸、やってやりますとも!!
「………っ、緊張するなぁ」
パジャマに着替えて、毛布を持ってベットに上がる。心臓が五月蠅い、すごく五月蠅い。だ、大丈夫だよね?この音でキンジ起きないよね?
「お、お邪魔します」
うわ、何かもうヤバイ、キンジの隣で横になるだけで、幸せ過ぎてなんかもう凄く良い。
私決めた、今度こそキンジについていく、ずっとキンジの手助けをしたい、キンジの役に立ちたい。
「……………えぇ…」
どういう状況だよこれ、何で目の前に風魔がいるの?
しかもパジャマ姿で。
ポニテを下ろしてるから、一瞬誰か分からなかったぞ。
日頃出会わない、同年代の異性の安心しきったパジャマ姿の寝顔に、二度目とはいえもの珍しさで思わず、マジマジと風魔を見つめていると、この残念忍者は寝相があんまりよろしい人じゃないらしく、うんうん唸って暑かったのか毛布を蹴飛ばした。
うっっっ!?
何でお前胸元そんなはだけてんの!!?
しかもお腹思いっきり見えてるし。
「………………んにゅう、こたろー?」
思いっきり蹴飛ばしたのか、眠りが薄くなって薄目を開けた風魔が俺を見る。見られた俺は寝顔を盗み見てた罪悪感で固まった、それをなに勘違いしたのか、風魔はニマニマ笑って俺に抱き付いた。俺はお前の弟じゃねぇ!!
「なぬッッ!?」
真っ正面から伝わる二つの柔らかい感触に、危うくなり始めた血流を必死に押さえて、風魔を起こそうとするも。
「遠慮しなくていいのに、むふふ~」
俺を誰と勘違いしたのか、胸元に抱き付いた風魔は、そのまま寝始めた。
おいおいマジかよ、この体勢ヤバイぞ、風魔が上に乗ってるから、体重が俺にのし掛かってきてキツイ!!
なんとか動こうともがくと、何を思ったのか風魔は足を絡めてきて身動きが全く取れない状況に。
……………こうなったら風魔起こすしかないか、はぁ。起こすだけなのに何か緊張して、落ち着くために深呼吸をすると、女の子特有の良い匂いが鼻から肺まで一気に満たした。
ヤバイ、非常にヤバイ!!!!
こんな状況でヒステリアモードになってみろ、俺はアメリカに着く前に、兄さんの手によって天国に行くことになるぞ!?
お、落ち着け、こう言う時は素数を数えるんだ。
1、2、3、5、7、9、11、13、17、19……………
「んんぅ……………ふぇ?」
必死に素数を数えてると、風魔がまた声を出し始めたので、薄目で恐る恐る風魔の方を見る、
「…カァァァ………~~~~~ッッッ!!!!」
まあ、そうなるよなぁ。腕に抱きつくだけなら未だしも、身体の上に乗っかって足までしっかり絡めて背中に手を回して、しかも体勢的に自分から行ってたんだもんなぁ。
「そ、その、あの、えと、これは、あの…………あ、はは離れますぅ!!」
小声でどこにするわけでもない弁解を、ぶつぶつ呟いて顔真っ赤にして離れようともがく風魔には悪いが、この体勢を長くしてるせいで、俺の身体中は痺れてマトモに動けないんだ。
「あ、あれ?なんかがっちり組まれてて外せない、え嘘だよね?」
風魔が外せないでもがいてるせいで、風魔のむ、胸が俺に思いっきり押し付けられて!?ムニョンって、ムニョンって形変わる位思いっきり!!?
このままだとヤバイと感じて、もう既に少し掛かってるヒステリアモードの思考で、寝相を装って体勢を変える事にする、俺一人の力じゃそこまでスムーズにいかないから、風魔が腕を俺の背中とベットの間から出そうともがいてる力を利用する。風魔が重心を片側に寄せた瞬間を狙って………よし、ここだ!!
「んん……………ぅんん」
「え、ちょ!?」
何か一瞬聞こえたけど、そのまま勢いで体勢を横にする。だがこれはとんでもない悪手だった。
………風魔は片手を抜けたみたいだが、俺は痺れた身体を無理矢理動かしたのと、そもあんな体勢を長く続けたせいで寝違えたのもあって、身体中の痺れと肩から腰に掛けての背中の微妙な痛みで悶絶中。
「ぐぬぉぉぉ、か、身体が~!」
思わず声を出して悶絶してると、風魔が気付いて体勢何かそっちのけで俺の事を心配してきた。あ、やめろ無理矢理動くな!?身体が痺れてッッッ
「ぬぐぁぁぁ!!」
痺れで思わず目をきつく閉じて、まぶたの痛みで目を開けると、目と鼻の先に風魔がいて目を見開く。
「先輩!大丈夫ですか!?」
そんな俺の気持ちを知らず、お構いなしに俺の心配をする風魔は、腕が痺れたのか、おでこを俺の額に当てて熱を取り始めた………って近!?近いよホントに!!?
「熱は無いですね………あ、この体勢で痺れましたか!?どんだけ長いこと抱き着いてたのか私は」
考え事すると、回りが見えなくなるタイプなのか、俺の額におでこを当てたまま話始めた風魔に、思わず叫ぶ、もちろん小さい声でだが。
「おまっ、近い近い!!」
「ッッッ!?すみません、今離れ!??」
慌てて俺から離れようとしたのか、勢いよく顔をそらした風魔だが残念、今は俺の身体と知恵の輪状態、抜け出せないのだ。
そして俺は痺れた身体を風魔が刺激したので悶絶、それで背中の寝違えた部分を刺激して痛みが走って………の無限ループに入って言葉にならん悲鳴を噛み殺して顔真っ赤にして風魔に言う。
「兎に角ッッッ、俺の言うことを聞けッッッ!!、今身体中痺れでッッッ、動かないんだよ!!」
その言葉に風魔の動きが止まる。よし、よく止まった風魔!!
「まずは足を~~~」
そのまま5分程四苦八苦して、やっと離れた俺達は安堵のため息を吐いた。
「「はぁ~~」」
こいつにはキツイ仕置きをしなきゃダメみたいだと風魔を睨むと……………む、胸元がはだけて、ボタンがもがいてた時に外れて中身が大胆に見えてらっしゃる!!!?
明らかに中学生にさせちゃダメな格好になってる風魔に、思わず目が丸くなる俺。
「えっと、その申し訳ありませんでした!!」
俺が怒って睨んでいると思ったのか(それは正しかったけど今は正しくない)風魔が土下座し始めるので、はだけた胸元がも、モロ見え。ライトグリーンのチェック柄の下着がガン見え状態。
さっきから甘く掛かってるヒステリアモードの血流が強化されるのを必死に堪えるも、風魔の動きに合わせて揺れたのを見て、あれが柔らかい感触の正体かぁ、なんて一瞬考えたのがオウンゴールになって、なりました。
「これは、その、つい魔が差したと言いますか、出来心で…………誠に申し訳ありませんでした!!」
あぁ、そんな一回顔上げてこっちを見てからまた土下座とか、お胸様が揺れて凄いことになってるよ。
「とりあえず、服を着替えよう」
この状態だといつ風魔に襲い掛かるか分からない、ひとまずその服装をどうにかしないと、ヒス血流が強化されっぱなしになっちゃうからね。
「え………あ!?あうぅ……………」
顔真っ赤にして胸元を必死に隠すのが可愛すぎて、理性の鎖にヒビが入るけど、必死に堪えて何でもない様な顔で背を向けて着替え始める。
いやはや、仮眠を取るだけでこんなハプニングが起きるとは、持ってくれ俺の理性。チラッとベット脇の時計を確認すると、CAの人が来るまで後20分程、何だかんだ言って二人ともよく寝てたみたいだ。
折角ヒステリアモードになったのだから、この状態で何か出来ることは…………あ、一つあったな、とんでもなく重要で有用な事が。
「さて、
今なら兄さんが、何で映画を観ろとあんなに言ってたのか分かる。兄さんもあくどいなぁ。
人の脳は、見たものを全て記憶領域に閉まっている、思い出せないのは記憶を見るための鍵と呼ばれる切っ掛けが無いからで、猾経はその鍵を作る技だ。
「は、はい、何でございましょう!」
口調をまた作り始めた陽菜ちゃんに苦笑いしつつ、お願いをする。
この技は御先祖様が寺のお経をそれで丸暗記して、お坊さんに怒られたから、日本での使用を禁ずるって使用法と共に書いて、庭の地蔵の中に隠していたものを、俺と兄さんが小学校低学年の頃に、キャッチボールの球をぶつけて割ったのを切っ掛けに知った技である。
これとヒステリアモードの記憶能力があれば、脳内の映画の記憶を使って英語を喋れるようになる、足りない英語は陽菜ちゃんに教えてもらえば良いからね。
文法は授業で少しだけど習ってるし、それを元に陽菜ちゃんと英会話すればなんとかなる。
「僕に英語を教えて欲しいんだ、日常会話位は実践できた方が便利だろう?」
その言葉に納得したのか、さっきの事がお咎め無しで有耶無耶になりそうで嬉しいのか、陽菜ちゃんは直ぐに食い付いてきた。
「勿論お手伝いさせて頂くのでありまする!」
それからCAの人が来るまでの間、英会話を続けて、陽菜ちゃんにお墨付きを貰うまでに英会話を上達出来た。
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キンジ ビバ ニューヨーク!!
オリジナルがスランプで、こっちを息抜きに投稿です。
ビバ、ニューヨーク。
世界の中心地、今世界で最も人の熱意がある国アメリカ。その一都市である、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に、俺達は降り立った。
「あの野郎、俺は日本の公務員だっつってんのに、疑いやがって」
隣で、入国審査で散々疑われた挙げ句、最後は仕事でごり押しした獅童さんがボヤく。そりゃそんな厳つい顔で、明らかに堅気じゃない雰囲気と図体してる人が、ただの公務員ですって言っても説得力ないわ、中南米とかでドンパチしてる傭兵部隊所属ですとか言われても、違和感が無いし。つか本人は凶悪犯相手にドンパチする公安だし、あながち間違いでは無いのがまた……………
「未だそっちは良いじゃないですか。俺は中学生なんで、歳のせいで来た理由説明しても納得してくれないんですよ、武偵手帳と、その場でベレッタの
あの黒人の兄ちゃん、俺がネクラだからって理由で、武偵だって信じなかったからな『こんな内気そうなもやし野郎が武偵何てヤクザな仕事出来るわけ無いだろHAHAHA(和訳)』って、人を見た目と話し方で判断するんじゃねぇ!!
「それはお前の自業自得だ、日頃から身嗜みや話し方を意識すれば改善出来る」
「兄さんには言ってない」
「それよりほら、皆さん。早くホテルにチェックインするでありまする」
男三人でガヤガヤと騒いでると、風魔が急かすように言ってきた。今はポニーテールじゃなくて、ストレートで髪の下の方で緩く縛る髪型だ。白雪とか佐々木の髪型に似てる。
「あぁ、そうしよう。タクシー拾う前に………キンジ、風魔、これを渡しておく」
兄さんに呼ばれると、俺と風魔に財布が渡された。よく見る千円均一で売られてる財布だ。俺は追加でピンクの財布が乗っけられたけど。
「1
兄さんが次々と荷物から俺達に渡してくるので、二人して慌てて受け取っては、手持ちの荷物に突っ込んでいく。金銭の支給と移動手段の説明書は助かるけど、なぜ空港で?
「部屋は俺と獅童の名義で3つ借りてある、お前たちはペアで一部屋、ホテルの名前はこの紙に、俺の名義で借りたのが書いてある、お前たちはそこに泊まれ。2週間借りてあるが、足りない場合の延長手続きはこちらでしておく」
ちょっと待て!!
「兄さん、何でこいつと俺が相部屋何だよ!!」
「キンジ、兄さんじゃない、お兄ちゃんだ。後今からトイレで変装してもらうからな」
はぁ!?
「なんでだよ!!別にチェックインの後でも良いだろう!?」
「ホテルの従業員を混乱させるな、それにもう直ぐここに間宮の長女が飛行機で来るぞ、急がないとバレるからな」
な!?
それを聞いて急いで変装セットを持って風魔の手を引っ張って多目的トイレに入る。
「あかりが来るのを先に言えよったく………風魔、頼む」
「お任せください、
二人きりだとあの時代錯誤な口調を止めてくれる風魔に、未だ変装が終わってないのに変装後の名前で呼ばないように注意する。
「その名で呼ぶな」
俺は未だ納得してねぇ、今回は変装が女装しか無かったから仕方無くだが、街で男物見付けてやるからな、絶対。
俺が風魔にバレないようどうやって男物を集めるかと、ブツブツと赤セーラー姿で考えていると、風魔がシェービングを持ったのでストップを掛ける。
「それはダメだ」
「どうしてですか?これくらいは皆やっていますよ」
その皆に男は入ってねぇ!!
俺が何とかシェービングだけは阻止すると、風魔は「カナさんはやってたのに」何て言ってメイク道具を取り出した。
ええい、カナは性別カナだから良いんだよ、俺は男だからダメ!!
っつか兄さん剃ってたのか腕と足、そっかぁ……………
「終りました、やっぱり若菜さんは凄いです、才能の塊です」
自身も同学年で面識のあるあかりにバレないよう、髪をヘアスプレーで赤に染めて、サイドテールに纏めてメイクをした風魔が、俺の姿を見てうっとりと溜め息をしながら言う。
俺はそんな才能要らんかった、要らなかったよ。
「ありがとう、風魔さん」
この姿だと口調を変えるよう
「この姿の私は
あぁ、トラウマ時空の方の。確かに言われてみれば似てるなぁ。
あれ白雪がタイトルに釣られて見て、一人じゃ怖いからって、続きを観るのに俺も巻き込んで、最後は結局あかりも含めた三人で観たんだよな。白雪とあかりの涙腺がやられたのが大変だった。俺も最初はバカにしてたけど、最後はちょっとうるっと来たし。
「杏、それから取ってるなら、サイドじゃ無くてポニテの方が良くないかしら?」
「それだと私だってバレますよ、私いつもポニテですし。ウィッグしてても普段の髪型怖いですもん」
あかり、勘はそこまで良い訳じゃ無いんだけどな。まぁ、保険を掛けるに越した事はないか。
「それもそうですね、さっさと兄さんと合流しましょうか」
これ以上トイレに
「もう、若菜さんの時はお兄ちゃん呼びだ!!……って言われてるじゃないですか」
「そのマネ似てないわね、私恥ずかしいからあまりそう呼びたくないのだけど」
「私は良いと思いますよ。兄さんじゃ、あかりさんの前でもそう呼んでるなら、バレるかも知れませんし」
う、それは、そうだが、カナのあの目は恐くて嫌なんだよな。
俺が嫌そうな顔してると、風魔は折角の変装なんですから、成りきらないと勿体無いですけどね~何て言ってた。
片付けが終わって、うんうん唸って考えながら兄さん達と合流する。
兄さんはもうカナになってて、獅童さんの娘のミカを抱いてあやしてた。隣で獅童さんがベビーカーを準備して、色々と荷物を付けてるせいで、もう出来ちゃった婚した学生夫婦にしか見えない。獅童さんは未だしも、カナは15だから、下手しなくても犯罪だなぁ。歳の離れた姉妹の方がしっくり来るかね。
そうなると獅童さんはカナの兄貴になるのか。
「カナは私のお姉ちゃんよ、貴方には渡さない」
「いや、いきなり何言ってんのお前?」
あ、口に出てた。
恥ずかしくてその場で顔を手で隠してうずくまる。ヤバい、何考えてたんだ俺は、ちょっと落ち着け。
「いえ、ちょっと混乱してたの、察してよ」
口調は何とか誤魔化せたけど、自分でも今顔真っ赤だって分かるぞ、くそう。
「あら、若菜、うずくまってどうしたの?」
「思春期特有の二律背反です、よくあることです」
「こんな葛藤しょっちゅうあったら、私心折られてますよ!!」
「もう、そんな怒らないの、ミカちゃんが寝たばかりなのだから」
カナがベビーカーにミカを乗せながら俺を嗜める様に言ってきた。
カナの隣で獅童さんが腕を組んで俺達に今後の指示を出す
「俺達はこれから灘と現地での情報の精査をする。お前たちはホテルに荷物を置いて、一回休め。今は日付が変わったばかりだからな、俺達のホテルはこっちの武装ホテルだが、そっちは普通の観光ホテルだから、そこは配慮しろよ。いくらアメリカだからって、お前達の歳で大っぴらに
「分かりました、明日の集合は?」
「携帯にメールする、旧B型だ」
「あなた未だ馴れてないから、色々気を付けるのよ」
うわ、ダルいの来たなぁ。これは風魔に投げるか、旧B型暗号なら、コードシートが携帯のメモリにあったから、それを風魔の携帯に送って解読させよう。
俺が考えて返事をしようと顔を上げると、もう二人とも結構遠くを歩いてた。
「言うだけ言って、はぁ。何かあの二人似てるわ」
「まぁまぁ、早くホテルに行きましょうよ」
ぶつくさ歩きながら文句を言いながら、ターミナルでタクシーを拾って、目的地を言う。
「あ、すみませんホテル近くでランチが美味しいお店とかあります?」
風魔が運転手にオススメのお店聞いてた、こういうのはタクシーのおっちゃんが良い店知ってるのは、どこの国でも共通なんだなぁ。
「昼は、そうだなぁ………嬢ちゃん達可愛いし、ビジネス街の方の『Active horse』って店が上手いステーキが食えるぜ、あそこは日本人が店主で馬のステーキが食えるんだ。《horse special》ってメガ盛りメニューがあんだよ。後は『sugar star』って店のクレープは、最近人気だな。何でも普通の砂糖だけじゃなくて、色んな甘味料を独自にブレンドしてるらしい。はまって2週間毎日食ってた奴が、高血圧でぶっ倒れたって噂もあるな」
へぇ、『sugar star』は甘過ぎて無理そうだけど、『Active horse』は旨そうだ、量がアメリカンだけど。
「それはまた、場所は分かります?」
「おう、地図を貸しな、
路線図と一緒に渡されたタウンマップを渡すと、赤信号の時に慣れた手付きでページを開いて、赤ペンで印をつけてくれた。
「ありがとうお兄さん、また機会があったら使わせてもらうよ」
俺が礼を言うと、突然運転手が笑い始めた。
「ガハハハ、普通はターミナルでは黄色タクシーに乗るんだぜ?それ以外は基本詐欺だからな」
「お兄さんは親切だったじゃない」
詐欺って聞かされて、ちょっと警戒する。車は別に裏路地に入ってなく大通りを走ってるし、俺達は武偵だ、襲われても何とかなる。
「嬢ちゃん達が可愛いかったから、親切にしたんだ、いつもはぼったくりだぜ?」
風魔が首を傾げながら運転手に問い掛ける。
「じゃあ、私たちにもぼったくり料金吹っ掛けるの?」
「可愛い娘相手にあこぎな商売しねぇよ、ほらもうすぐ着くぜ」
運転手はちょっと顔をしかめてそう言うと、また別の店の情報をくれた、スゲェ親切な人である。歳も未だ二十歳くらいか、アジア系の顔だし、同じアジアのよしみでよくしてくれてるのかね、人種でそう言うのがあるのかはよく分からんけど。
それから殆んど時間も掛からずにホテルに着いた。揺れも少なかったし、この運転手やり手だなぁ。
「はい、着いたよ。料金は15$だ」
チップは料金のの15%~20%だっけ?
どんぶり勘定で20$位か。
「これ、お釣りは要らないから」
俺が金を渡したら、気を良くして名刺をくれた、個人事務所のタクシーだったのか、日本でもよく見る黒タクだったから、分からなかった。
「お、払いが良い客は嬉しいね、これ名刺な。これでも武偵だったんだ、どんなところでも運んでやるよ」
降りる時にもわざわざ運転席から降りて、ドアを開けてくれた。ここまでくると下心ありなのかと疑いたくなるな、表情からして純粋な親切何だろうけど。
「ここのルームサービスにこの番号を言えば、うちの事務所に繋がる、困ったことがあったら言ってくれ
降りてきた俺にそっと紙を渡して教えてくれた事に、至れり尽くせりで驚く、なぜこんなに親切なんだか、ちょっと怖いな。後で変な連中が出てきたりとかしないよな?
「ありがとう運転手さん、またね」
俺が返答に困ってると、風魔が俺の手を引っ張ってホテルに早足で歩き出した、ビックリして風魔の顔見るとちょっと不機嫌そうだし、運転手が手を振ってたからこっちではそういう習慣なのかなぁって振りかえしたけど、更に風魔の機嫌が悪くなるし。
ホテルの部屋に入って、ベッドに腰掛けて風魔を睨む。
「何であんな不機嫌になったんですか?」
いきなりあんな態度、親切にしてもらったのに酷くないかと、先輩として風魔を叱ろうとすると、風魔が俺を睨んで指を指してきながら言った。
「先輩が鈍感だからですよ!」
「は?」
鈍感?何を言ってるんだこいつは。
「分かってないみたいですね、あの運転手先輩の事狙ってましたよ」
え、は?いやでも俺は男だぞ?
「ちょくちょくバックミラーで先輩見てましたし、名刺を渡す時も然り気無く手を触ってましたし、それにタクシーから降りる時だって、あの人私が後で睨んで無かっったら先輩の手を取ってエスコートする気満々でしたよ!!!」
あの親切心にはそんな思いがあったのか!?
どうしてだ、俺は男なのに………なぜ男からアプローチ掛けられなきゃいけないんだよ。ぐぬぬ、何で隣の風魔じゃなく俺を。
「気を付けて下さいよ。今の先輩、中学生なのに背丈が良いから、メイクも相まってメッチャ大人びて見えますし、元々の才能が才能だから、下手なモデルよりキレイで可愛いんですからね!?」
嘘、だろ……………カナ程じゃ無いから全然平気だと思ってたのに。
「カナ程じゃ無いから平気だとばかり………」
「あんな芸術品と一緒にしちゃダメです!!あの人は近寄りがたい雰囲気があるから良いですけど、先輩は遊びなれてない雰囲気が駄々漏れで、お忍びのお嬢様的な雰囲気があるんですから、カナさんよりタチが悪いですよ!!」
マジかぁ、そんな感じなのか俺~。ショックだわぁ、男にモテるとか、そんな才能があったことにショックだわぁ。
後輩にボロクソ言われてベッドでいじけてると、風魔が良いこと思い付いたみたいな顔して、また変な事を言い出した。
「今日は休みって言われましたし、朝から観光ついでにナンパ馴れでもしましょうか、慣れとかないと任務に支障が出そうですし」
そこまで!?そこまでモテるの俺は!!?
「え、は?いや、ナンパとか流石に無いで「甘いですよ!!さっきされたばかりでしょう!!」…………うぅ、分かりました行きますよ」
あまりの気迫に押されてつい頷いたけど、ナンパって…………男の俺がナンパ馴れって、悲しくなるな、いっそ惨めだ。
まぁ、観光自体はホテル周辺の地理の把握とか、逃走経路の確認とかにも繋がるし、結構な妙案なんだけどね、主目的がね、いっそ殺せ。
その後も、女性的な仕草のレクチャーとか、上手いナンパの断り方とか、一時間長々と話された後、メイク落としの方法とコツまで教えられて、泥のように眠った。女ってこんな大変なのか。
未来を先取りしまくったアニメ、『魔法少女マホラ☆マジカ!』どこぞの社会現象起こした絶望時空と同じアニメですね、放送された年がおかしいですけど。
後忍者に芸術品扱いされるカナぇ、個人的にカナは剃ってると思う、それか脱毛。じゃなきゃあの美しさで男とか、理想の先輩とかドラゴンとかと同列でしょ(アリア時空にどちらも居るとか考えてはいけない)。
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