ダンジョンに子ギルがいるのは間違っているだろうか (てゐ13号)
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1話目

こんにちは、てゐ13号です。

趣味です。キャラの設定を完全にうろ覚えで書いています。反省はしません。後悔もしません。ぼちぼち書いていく予定です。生ぬるい目で見ていってください。でも「この辺違くね?」とかの指摘はしてくだされば望外の喜びです。

これからよろしくお願いします。


まあ、文句のない人生だった。

 

それが俺の死ぬ直前に心に浮かんだ一言だった。

 

俺、高校2年生の夏。トラックに引かれて見事空中前後左右きりもみ大回転を決めて地面に顔を激しく打ち付けて真っ赤なザクロを咲かせて無事死亡。もしその手の競技があったら、全員10点をたたき出していたに違いない。

 

死ぬ直前は色々と走馬灯やら時間のズレが生じたりとかあるらしいが、しかし俺はそういうことはなく。めっちゃはっきりとした意識できりもみ回転して地面に叩きつけられた。死ぬ直前まできっちりと記憶にある。

 

そう、記憶にあるのである。

 

「…ここどこだよ」

「ここは神様の箱庭だよっ!」

「どわあ!?」

 

視界を一気にさわやかイケメンフェイスがジャックしたので、俺は驚愕に身を任せてその頬に向かってひねり込んだ右ストレートをたたき込んだ。

 

「ぶふぇっふ!?」

 

イケメンが吹っ飛ぶ。

 

イケメンは死すべし…慈悲はない。

 

って、しまった!初対面の人間を思いっきり殴り飛ばしちゃったよ!たとえ相手がイケメンだったとしてもこれは流石にやっちまったって感じだ。俺は恐る恐る「大丈夫ですか…?」と話しかけた。

 

「大丈夫じゃないよ!折角こっちが景気よく話しかけたというのにこの仕打ち…ううう…流石に神様でも予想できなかったよ…」

「す、すんません」

 

よよよと地面に伏せたまま泣き崩れるイケメン。多少胸の奥がイラっとしたが、しかし吹っ飛ばした手前強く出れない。これが同じくイケメンで俺の親友のあいつとかだったら追撃くらい仕掛けてた。

 

「まあいいよ…突然出ていった神様も神様だったし…だけど、次やったらラグナロクだよ!良いね?」

「は、はあ…」

 

「めっ」と人差し指をぐいっとさしてきた。へし折りたい衝動が全身を駆け巡る。抑えろ、抑えるんだ俺…!

 

それよりも色々と聞きたいことがある。ここがどこなのかとか、お前誰なんだとか。ここでこれ以上の狼藉は流石にまずい。

 

辺りは清楚な雰囲気の漂う、花畑が綺麗な小さな箱庭といった場所が広がっていた。そんで目の前の男は…白いローブを着ている。俺に殴られた衝撃で地面に吹っ飛んだ、鮮やかな緑色の葉っぱで作った冠を拾って頭に乗せた。目じりには涙が浮かんでいる。別に罪悪感は感じなかった。まあごめんて。

 

「ふう…はい、仕切り直し。まあようこそ、と言っておこうか。さっきも言ったけど、ここは神様の箱庭だよ。そして僕は神様!偉いんだよ?」

「殴りてぇ…殴りてぇ…!」

「ちょ、顔が怖いから、君。落ち着いて、落ち着いてお話しよう?ね?」

「まあ、冗談はここまでにして」

「えっ?結構本気だった気が…」

 

そんなはずがない。紳士はすぐに暴力に訴えかけない。古事記にもそう書いてある。

 

「古事記にそんな事書いてなかったと思うんだけどな…」

「で?神様…でしたっけ。えっと、色々と聞きたい事があるんですけど…」

「ああ、うん。分かってる分かってる。なんでも聞き給え」

「うっざ」

 

輝かしい笑顔で白い歯をきらめかせながらサムズアップしてくる。それと顔が近い。正直気持ち悪いので離れてほしい。

 

「心がきしむ音が聞こえる…」

「じゃあ、ちょっとお聞きしますけど…俺、死んだんですか?」

「うん。君の記憶の通りにね」

「そっすか。じゃあ、ここはどういった所なんです?後、神様って言ってたけど…」

「あれ?そ、それだけ?」

 

神様が困惑した表情で俺のセリフを遮った。

 

「はい?」

「いや、ほら、君死んだんだよ?何か他にないのかい?」

「ああ、まあ…残念だなとは思ってますけど」

「そ、そうかい…?まあ、神様的にも助かるけど…」

「それで、さっきの質問なんですけど」

「ああ、そうだね。えっとね…ここは僕が作った箱庭さ。どうだい、いい景色だろう?実はここは僕が作った世界の中でも随一の出来でねぇ…」

「あ、そういうの良いんで」

「…そ、そう?あー、それで、次は神様の事だっけ?神様は神様だよ。職業は神をやってて、君の世界を含めて、あらゆる世界を創造、統治するのが神様の仕事さ。まあ君の世界には神様はあんまり関与したことないんだけどね」

「へー…」

 

死んだらどうなるんだろうとか考えたことは何回かあるけれど、死んだら神様に会う事になるのか…それにしても、普通神様っていえばのじゃロリとかかわいい女神様とか、その辺だろうに。何も分かっちゃいないなこのイケメンは。

 

「あの…そういう事言われても…神様困っちゃうんだけど…」

「さりげなく心の中読まないでもらえます?」

「あ、ご、ごめん」

 

イケメンに心の中読まれるとかちょっと承知できない。

 

「…それでなんだけどね?実は白状したい事があってね?」

「なんすか?」

「実は、君は実はあそこで死ぬ運命じゃなくてね…」

「は?」

 

俺は衝撃に固まった。目の前のイケメンはてへっと舌を出して片目を閉じて、俺に謝罪した。

 

「あれ、実は神様のミスでさ。君が死んだことは本当に残念に思ってて。だから、色々と謝罪をしたくて君をこの世界に呼ん…って、いたたたたたたたたたたたあああああ!?」

「おい…おい。どういう事なのか説明をしてくれません…?」

「えっと…その、ちょうど昼時でね…?眠くてね?少しお昼寝してたらね?寝過ごしちゃって…っていったい目がああ!」

 

俺の死因が神の昼寝だという事が判明した。慈悲はない。とりあえず景気づけに目をつぶした俺はイケメンの襟首を思いっきり引っ張って頬に右ストレートをたたき込んで、身体をひねってよろけたそいつの頭に回し蹴りで踵をぶち込んだ。景気よく吹っ飛んで地面に倒れ伏す自称神様のイケメンの頭を踏んづけて、俺はバカ野郎を見下ろした。

 

「で、弁明は?」

「ごめんなさい。本当に心の底からごめんなさい」

「ごめんなさいで済んだら俺が生き返るんですか?」

「いや…その、神様の失態であることは良く存じております故…でも、元の世界に生き返らせる事は色々な諸事情により不可能で…」

 

ぼそぼそとつぶやくバカ野郎の話に耳を傾けるに、お詫びのしるしに生き返らせるつもりらしいが、元の世界には様々な理由(ばれたら神としての権力が失墜したりしなかったり)で不可能なので、別の世界に転生させる形で生き返らせてもらいたいのだという。

 

「却下。俺見たいアニメあるんで」

「アニメと神様、どっちを取るつもりなの…!?」

「もちろんアニメだが何か?」

「本当に、本当にごめんなさい!それだけは許して!許してえええ!」

 

縋りついてくるイケメンが中々にうざい。というかこの状況は神としてどうなのか。あまりにも惨めな姿に、俺の怒りもその矛先を収めざるを得ない。

 

だからと言って許すつもりは毛頭ないが。

 

「いくつか条件があります。一つ、俺の前世の人生に見合う様な素晴らしい世界に転生させる事。二つ、俺に生きていく上で有利な才能、あるいは能力を与える事。三つ、俺の身体を元の通りに生き返らせる事」

「えっと、上二つなら大丈夫です。だけど、身体については…その」

 

言いにくそうにするバカ野郎。

 

「実は、魂とは転生する事を大前提として構成されておりまして…同じ身体で生き返るとなると、転生するという事象に矛盾が生じて…」

「…だったら、間違っても不細工とかデブとかにすんなよ?」

「う、うん!約束するよ!うん!」

 

俺はとりあえず溜飲を下げて、頭から足をどかした。

 

「じゃあ、とりあえず今は許す。次はないぞ」

「あ、ありがとう…うう、ただの人間の癖に、超怖いよこの人…」

 

起き上がったバカ野郎は、ふう、と息を吐き出して緊張をほぐした。とりあえず反省はしてるらしい。でもただの人間っていう発言はどういう意味だおい。

 

「ご、ごめんって!あ、それとね、実は転生してもらう世界についてはもうこっちで選定しておいたんだ。君の世界に非常によく似た、とあるパラレルワールドでアニメ化されてる世界なんだけどね。『ダンジョンに出会いを』なんちゃらって作品の世界で、僕は見たことないけど…まあ、なんかハーレムものっぽい世界らしいし、危険はないんじゃないかな?あと、能力と身体についてなんだけど…それは、これをどうぞ!」

 

ごそごそと懐を漁って、何やらくじ引き用の箱を取り出した。

 

「この箱に入っている紙には、様々な世界のアニメに登場したチートキャラ達の名前が載ってるんだけど…君が取り出したキャラクターの容姿、能力をそのまま与える事になるよ!」

「へえ…選ばせてくれないのか?」

「その辺は…得るものには代償が必ず必要というか…創造の権限を使うと足が付いちゃう危険が危ないって感じ!うん!」

「あっそ。じゃあ引きますねー」

「相変わらず軽いね…じゃあどうぞー」

 

俺は箱に手を突っ込んで、一番最初に手に触れた紙を引き抜いた。紙は無駄に三角に折られていて、一面の方に『SSR』と虹色の文字で書かれている。

 

「おお!まさかSSRを引くとはね!確率的には1%だったっていうのに!」

「へえ、そういうのあったのか。っていうか先に説明しろよ」

「ご、ごめん…説明する先に引いちゃったものだから…ま、まあ最高レアランク引けたんだから、いいじゃない!」

「まあ、結果良ければなんちゃらって感じか…?」

 

先に引いちゃったのは俺だしな。それにしても確率1%か。運が良かったと喜べばいいのか。

 

「どれどれ中身はっと…おお、当たりも当たり、大当たりだよ!」

 

中身を俺に見せてくるイケメン殴りたい。じゃなくて、何々…?

 

紙にはでかでかと『子供版ギルガメッシュ』と書かれていた。

 

「って、ギルガメッシュ?あのFGOの?」

「あれ?君の世界ってFateシリーズあったんだっけ?そうだよ、そのギルガメッシュで当たってるよ」

 

ふーん…まあ、当たり…なのか?他人の身体になるなんて非常に抵抗があるが、まあ能力が貰えるっていうのなら仕方ない。

 

それにしてもあのギルガメッシュか…。アニメでは愉悦部を開設したり、マーボー神父を勧誘したりセイバーに振られたりアンリマユで世界を選定しようとして失敗したり片腕吹っ飛ばされたりしてたけど…まあ、なるのは子ギルなんだから別に問題はない…のか?

 

「うんうん、じゃあちゃんとゲートオブバビロンも使えるようにして…あー、エアの出力は半分にしていいかな?まあ使う機会なんてないとは思うけど、一応ね」

「別にいいぞ。そういえば、成長とかはどうなるんだ?」

「ああ、もちろん成長はするよ。ベースは人間にするから老いもする…っていうか、不死の存在は流石に認められないからね」

「別に期待して聞いたわけじゃねえ」

 

不死とか、永劫の時をずっと過ごさなくちゃいけないんだろう?想像するだけで恐ろしいわ。

 

「じゃあ、これで転生の準備は完了ってところかな!早速転生するかい?それともまだ神様とお話ししたい事ある?」

「ねえよ!とっとと転生させろ」

「うん、まあ知ってたよ…そ、それじゃあ、転生した後も元気でね…ああ、忘れるところだった。もし向こうの世界で死んだとしたら、元の世界の輪廻転生にちゃんと戻る手はずになってるから。まあ、希望があればその世界に残ってもいいんだけどね」

「分かった」

 

まあ、それは死んだときにでも考えよう。

 

「じゃあ、目を瞑ってね」

「おう」

 

俺は目を瞑った。これからの新しい人生の幕開けに、ほんのちょっぴり心が躍ってなくもない。これから行く世界については全く知らないが、剣と魔法が飛び交う世界とかだったら個人的にすごく嬉しかったりする。ファンタジーに憧れるのは男の子の性だもの。仕方ないね。

 

…目を瞑って数十秒。何かが起きる気配もない。

 

ふと気になって目をうっすらと開いてみた。

 

「んー…」

 

目を閉じて、唇を突き出して顔を近づけてくるイケメンの姿がそこにはあった。

 

「どわあああ!?」

「ぐっふぉあ!!!」

 

俺の渾身のアッパーがそいつの顎に突き刺さった。

 

 

 




ご感想、心よりお待ちしております。誤字脱字は養豚場の豚を見るような目でスルーしてください。


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2話目

てゐ13号です。

何も考えずにニコニコ動画見ながら書いてます。変なところが多々あると思いますがどうぞ気楽に読んでってください。

それと主人公は前回くじ引きで1%のあたりを当てていましたが、現実ではそう簡単には当たりません。FGOとかいうゲームをやればよくわかります。この前200日ボーナスで石貰えたんで「ここらでいっちょ初星5当てて一花咲かせてやりませう!」って意気込んで引いてみたらド畜生


目の前を鎧を着た男達が、ローブと杖を携えたエルフの女性を引き連れて歩いていく。その後姿を見送りながら、俺ははたと目をぱちくりさせてあたりを見渡した。

 

「…ここ…は…?」

 

そこは大通りだった。剣士、魔術師、弓を背に背負った者や商人といった感じの風貌の男。小学生程の体躯の少女がジョッキを傾けて酒を飲んでいる。

 

喧騒がどっと耳に飛び込んでくる。

 

「…なるほど、もう異世界、という訳か」

 

それにしてもあのバカ野郎、何を思ってあんな奇行に走ったのか。アッパーをかましてからの記憶が無い事を思うに、完全な嫌がらせだった。あいつ今度会った時はあのイケメンフェイスがゲシュタルト崩壊を起こしてモザイクかけてないのにモザイクかけてるかのような顔になるまでボコボコにしてやる。

 

まあ、死なないと会えないのだから、数十年後の話か。そう簡単に死ぬつもりは無いしな。

 

「…小さい」

 

俺は自分の手を見て、愕然とつぶやいた。うん、小さい。しかも細い。肌も白い。鏡が無いからわからないが、きっとそこには絶世の美少年の姿があるのだろう。

 

服装は白いガーディガンの下に紫色のシャツ、そして膝下までの迷彩模様の短パン。FGOの子ギルとまったく同じ格好だった。コスプレした気分だ。

 

別に自分の容姿にこだわった事はないが、前世の慣れ親しんだ身体をもう見る事が出来ないと思うとしんみりとしてしまう。死んでしまったのだから仕方がないとは思うが、それで割り切る事が出来ないのが人間という存在だろう。

 

「はあ…」

「おいおい、店横でため息だなんて。やめておくれよ、少年君」

「は?」

 

真横から若い少女の声が降ってきた。少年君というのが自分を指して言っている事を確認するまで一拍費やして、俺は声の主に目をやった。

 

「やあ」

「…こんにちは」

 

そこには少女がいた。黒い艶やかな髪をツインテールでまとめた、背丈の小さな少女だ。しかしその背丈には似つかわしくない程豊満な胸がどたぷんと膨れ上がっていて、謎の紐がそれをさらに強調している。

 

どうやら店番をしているようだ。見るに看板娘といったところか。

 

「そんなところでどうしたんだい?じゃが丸くんを買いに来たって感じでもないだろうし」

「いえ、そんな気にかけていただくような事では…」

 

俺は思わず口を押えた。

 

今のは俺的には『いや、気にしないでいいっすよ』といったつもりだったのだが…どうやら口調が身体に引きずられているようだ。あのクソ神め、こんな事一言も説明しなかったじゃないか。

 

「ん?なんだい?」

「いえ、なんでも…ところで、ここはどこなんでしょう?実はここに来たばかりで、地理がよくわからないのですが」

 

よくわからないじゃなく、全くわからないの間違いだろう。

 

「ああ、そうなのかい。地方の村から来たのかい?その、ここには何をしに?」

「地方…そうですね、ここから遠い所から来たんです。それと、その…言いにくいのですが、実は何をすればいいのかわからなくて…」

「分からない?どういう意味だい?」

 

俺は困ったという色を顔ににじませた。

 

「ここにたどり着いたまではいいのですが、身寄りも無ければ当てもないという感じでして。それに、ここがどういう場所なのかもわからないんです」

「…何か事情があるのかい?」

 

訝し気に尋ねてくるその女性。こういう時どういえばいいのだろうか…うーん…あ、そうだ。

 

「どこかで頭でも打ったのかなぁ。記憶がおぼろげで、ここまでくるまでの記憶がないんです」

 

必殺、記憶喪失!アッパーかました後からここに来るまでの記憶が無いのは確かだし、嘘は言っていない。これぞ完全犯罪と言わずなんと言おう。

 

「なるほど…嘘は言っていないんだね。僕に出来る事があればいいんだけど…」

「じゃあ、色々と教えて欲しいことがあるんですけど…今お時間とか大丈夫ですか?」

「ああ、もちろん!休憩時間はまだあるしね!困ってる下界の子を助けるのも神としての務めさ!」

 

んん?

 

今ちょっと聞き逃せない単語が聞こえた気がした。あのイケメン面がサムズアップしながら頭によぎった。いや、あいつはもうここにはいないはずだ。頭をぶんぶん振って悪霊退散する。『悪霊じゃないよ!神様だよ!』と聞こえた気がしたけど、あえてスルーする。

 

「あの…今なんておっしゃいましたか?」

「ん?ああ、自己紹介がまだだったね!僕はヘスティア。神ヘスティアさ!」

 

はあ?おいおい、待て、何がどうなってる。今度こそあのイケメン面が今度は白い歯を輝かせながら思考をジャックしたのを感じた。

 

「あの、宗教の方か何かでしたか?」

「ええ!?いやいや、そういうのじゃないよ!?僕は本当に神様なのさ!あれ、ちょ、なんで少しずつ距離を取っているんだい?ねえ、待ってよ!ちょっと!」

「いえ、初対面の女性の方に対して、ちょっと距離が近すぎたかなと思いなおしただけですよ」

「絶対他に思う事があっての行動だよね…?」

 

それにしても、自分を神様だと宣う少女の様子は、自分の事を本当に神だと信じて疑っていない様子だ。もしかしてこの世界は、本当に神様がそこら辺にいて、その辺でバイトしてたりするような世界なのだろうか。

 

いや、もしかしたらこの少女が自分の事を神様だと信じ切っている痛い子なだけかもしれない。今は深く考えずに、情報を収集することにだけ集中しよう。

 

「それでは、色々と聞きたいんですけど…」

 

そうして俺はそれからしばらく自称神様の少女、ヘスティアに話を聞いた。

 

ヘスティアの話をまとめるに、この街は『迷宮都市オラリオ』という場所らしい。世界で唯一迷宮(ダンジョン)の上に出来た街であり、ダンジョンの中は魔物がはびこる危険な場所なのだという。

 

しかし、魔物からとれる魔石は結構便利なモノらしく、さらにダンジョンには危険もあるがその分様々な利益があるので、ダンジョンを攻略する事に特化した職業があるらしい。

 

その職業の名が冒険者。冒険者は下界に降りてきた超越存在ーー神の作ったコミュニティ、『ファミリア』に入り、神に様々な恩恵を与えてもらいながらダンジョンに挑んでいるらしい。

 

それにしても、神、ねえ。

 

神はその名の通り、そのまんまの意味での神である。天界での退屈な日々に嫌気がさして、刺激を欲して下界に降りて人間たちと共に過ごす事を選ぶ神たちが無数にいるらしく、そういった神はファミリアを作ってダンジョンに挑むだけでなく、店を構えたりといった事もするらしい。

 

「なるほど…」

 

この世界の事についての大まかな情報は…まあ、理解はできた。要は神々の遊び場。遊技場という感じか。それにしては目の前で得意げに説明をするヘスティアの様にバイトをしないと食っていけない貧乏神もいるらしいので一概には言えないようだが。

 

「それで、君はこれからどうするんだい?」

「僕ですか?そうですね…やはり食べていくにはお金が必要ですから、何か手に職をつけて…」

「ほう?で、当てはあるのかい?」

「…」

 

俺はヘスティアの顔を見た。ヘスティアは目をキラキラさせて、俺の手を握ってもう一度。

 

「で、当ては?」

「…ないですけど」

「うんうん、だよね!そうだよね!よし、じゃあ僕のところにくるといいよ!確かに零細ファミリアだけど、でもこれからどんどん大きくなっていく予定さ!それに君が入ってくれればベルk…うちの子もきっと喜んでくれると思うんだ!」

 

興奮気味で俺の手をつかんで離さないヘスティア。

 

うーん…まあ、確かに当ても身寄りもないのは事実だしなぁ…。ここで断る理由がむしろ皆無というか。でも、このヘスティアの反応を見ると、ちょっと不安がよぎる事も無きにしも非ず…。

 

「…」

「うっ」

 

キラキラした瞳で見られると弱い。美少女に頭が上がらないのは男の性だろう。

 

「分かりました。では、僕をヘスティア様のファミリアに入れてください」

 

俺がちょっと迷う素振りの後そういったのを見て、不安そうにこちらを見ていたヘスティアの目が輝いた。

 

「ほ、本当かい!?やった、やったよベル君!やっと眷属(かぞく)が増えるよ!君は栄えある僕の二人目の家族だ!」

「ふ、二人目ですか?」

 

思った以上に零細。

 

「うん!君で二人目さ!あ、そういえば今からバイトがあったんだった!えっと、君、名前はなんだっけ!?」

「え…っと、ギルです。ギル・メッシュ…?です」

「じゃ、じゃあギル君!今日はバイトは休んでくるから、ここで待ってておくれよ!すぐに戻ってくるから、ああ!?」

 

わたわたと背中を向けて走り出したヘスティアが足元につまずいてこけた。健気にすぐに立ち上がって、照れたようにこちらに笑顔を向けるとすぐに出店の中のおじさんに何やら話しかけた。

 

凄い嬉しそうなヘスティアの顔に強く出れないでいる様子のおじさん。うん、まあ、分かるよ、その気持ち。

 

「よし、休みを貰ってきたよギル君!早速僕らのホームへ行こうか!」

「は、はい」

 

腕を引っ張ってくるヘスティアを見ながら、俺はまあこの分だとどうにかなるだろうと黙ってヘスティアについていくことにした。

 

 

 

 

 

 




ちなみに主人公の名前はギルガメッシュをもじってギル・メッシュ君に決定しました。まあ中身別人だし、区別つけたかったから名前も変えちゃえ、みたいな?


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3話目

どうも、てゐ13号です。

ゆっくり実況動画見ながら書いてます。特にTRPG大好きです。なので色々と変なところや抜けてるところがあるかとは思いますが、運が無かったと思って冷めた目でスルーしてやってください。


「じゃあ、早速ファミリアの証として『神の恩恵』を刻むとしようか」

「…ヘスティア様」

「ほらほら、ベッドに寝転がってごらん?大丈夫、痛いのは最初だけだからさ…」

「あの、ヘスティア様」

 

俺は耐えきれなくなってヘスティアに向き直った。

 

「ここがホームって、なんの冗談ですか?」

「ふぁ!?」

 

俺が連れてこられた、ファミリアの拠点ーー彼女のいうホームは、街はずれの廃墟群の一つ、寂れて今にも崩れ落ちそうな廃教会だった。

 

人の手が入らないようになってどれだけ経ったのだろうか。少なくとも人が住んでいいような環境ではないだろう。家具も必要最低限だし、部屋は一つだけ。現代日本で豊かとは言わなくとも平均的な暮らしを過ごしてきた俺にとってはあまり住もうとは思えない。

 

「…」

「あの、吹けてないですよ、口笛」

 

ひゅぴーと吹けてない口笛ですっとぼけようとするヘスティア。俺はため息を一つこぼして、これが一体どういう事なのか説明を求めた。

 

「説明も何も、ここが僕らのホームさ…ぼ、僕のファミリアが弱小で零細だって話はもうしただろう?実はちょっと前まではホームさえなくて、友神の所でお世話になっていたんだけどね。この前ついに愛想つかされてさ…」

 

それでこのボロホームを与えられて、追い出された、と。

 

なんだこの駄女神。正直今の話から俺が抱いた印象は、長年ニートやってたけどついに親に追い出されたどうしようもないダメニートといった具合だ。本当に神様なのだろうかこの人は。零細ファミリアであるよりも、この神様と一緒にいる事に不安を感じてやまない。

 

「まあ、今はファミリアも二人だし?この調子でどんどん大きくなって、ゆくゆくはこのホームも改装してもっといい場所にしていくつもりさ!大船に乗ったつもりでいてくれよ、ギル君!」

「そこはかとなく不安ですけど、まあいいです…はあ、不安だなぁ…」

「そこぉ!微妙な顔しない!」

 

ヘスティアはそのままの勢いで俺をベッドに押し倒して、背中に馬乗りしてきた。

 

「まったくもう、じゃあ『神の恩恵』を刻むよ?」

「お願いします」

 

服をめくられる。美少女に馬乗りにされて服を剥がされるというのはなんとも変な気分になっていけない。まあ、俺ももうガキじゃないんだ。動揺は隠すさ。

 

「それにしても酷いなぁ、押し倒してくるなんて。僕はもっとお淑やかなお姉さんの方が好きなんですけど」

「知らないよっそんな事!」

 

ちなみにお淑やかなお姉さんが好きってのは本当の事だ。いいよね、おとなしくて清楚な感じのお姉さん。ヘスティアには一つも当てはまる所はないだろう。

 

「ヘスティア様って呼ぶのなんか違和感があるので、ヘスティアとお呼びしてもいいでしょうか?」

「別にいいけど…なんだい、そんなに僕は威厳が無いってのかい…?」

「まあ、そうですね」

「そこで肯定するなぁ!」

 

背中を指でこねこねされる事数分。「できたっ」と嬉しそうな声を発したヘスティアが、俺の背中の内容を見て一瞬で身を固まらせたのが気配で分かった。

 

「な、なんだこれ…スキルだけじゃなく、魔法も?それにこんなに発現するなんて…しかもなんだこの効果!何がどうなってるんだい!?」

 

何やら大変な事になっているらしい。というか一人で驚いてないで、さっさと見せてほしい。自分の事なのでなおさら気になる。

 

しばらくわちゃわちゃ騒いでいたヘスティアだったが、俺の視線に気づいてため息を漏らした。人の顔を見るなりため息をつくなんて酷いな。

 

「…これが君のステイタスだよ」

「あ、ありがとうございます」

 

硬直から復帰して、紙にステイタスの内容を書き込んで渡されたので早速内容に目を通した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ギル・メッシュ

Lv:1

力:I0

耐久I0

器用I0

敏捷I0

魔力I0

 

《魔法》

【王ノ財宝(ゲートオブバビロン)】

・王の宝庫とつながる門を作る

・門の数は消費魔力に比例する

《スキル》

【対魔力】

・あらゆる魔術的干渉に耐性をつける

【黄金律】

・人生においての金との因果を上げる

【王ノ風貌(カリスマ)】

・圧倒的なカリスマ性により味方の攻撃力を上げる

・認めた者にだけ効果を発揮

・相手により効果の増減あり

【神性】

・神性を得る

・与ダメージを上げる。

・自分の意思でオンオフ切り替え可能

【紅顔の美少年】

・性別を問わず相手に魅了効果を付与する

【全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム】

・|常時発動型(パッシブ)スキル

・自分の意思で効果のオンオフ切り替え可能

・万物の真実を見通す目を持つ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「まあ、こんなものでしょうね」

 

記憶の中のFate/GOの子ギルのステイタスや、他のFateシリーズの能力と変わりはほとんどないだろう。

 

それにしても【王ノ風貌】って…確かにこの身体は王のものだけどさ。中身は一般人なんですけど俺。

 

と、俺が紙から視線を外して顔を上げた瞬間、視界を美少女の顔がドアップで独占した。眉間にしわを寄せて俺を追い詰める。

 

「どういうことか説明をしてもらおうか、ギル君?」

「説明って、やだなぁヘスティア。ステイタスって自分で変えることはできないんでしょう?」

 

事前に『神の恩恵』やステイタスについての説明は受けているが、ステイタスの成長は大まかには本人の意思は反映されないらしい。

 

「だからってこれは無いだろうこれは!別に僕もねえ、入ったばかりの眷属にこういう事を言いたくはないけれど、でも限度ってやつがあるよ!初めから魔法もスキルも持っていて、しかもそのほとんどが反則級の効果ばかりじゃないか!何よりもこれ!」

 

そういってヘスティアは紙の一か所を指さした。

 

「神性ってなんだよ!君、もしかして他の神のスパイか何かだったのかい!?」

「何でですかね。僕記憶喪失ですから」

「そうだったね…!」

 

ぐぬぬと文句を何とか腹の中に収めているらしいヘスティア。半人半神である事をばらすのは色々と面倒なので彼女にはこのままわからないでいてもらおう。

 

「うーん…ま、まあ君も僕の眷属である事に変わりはない、か。今はあらゆる疑問や聞きたいことを飲み込んでおくことにするよ」

「うん、ありがとうございます、ヘスティア」

 

そうしてくれると正直助かる。どうやらこの世界の神たちは嘘を見抜く能力を持っているらしく、あれこれ質問されると色々と話さなければいけない事が多くなって面倒になってしまう。

 

「うん、とにかくまあ、歓迎するよ、ギル君。これで君は僕の眷属だ。もう一人の子のベル君は夕方になると帰ってくると思うからその時に紹介するね」

「そういえばもう一人いるんでしたっけ?どんな方なんですか、そのベルさんって方は」

「僕の愛すべき一人目の眷属さ。自慢の子なんだぜ?なんたって、優しくてしかもとってもいい子なんだ!」

 

でへへ、と体をくねくねさせるヘスティア。もしかしてこいつ、そのもう一人の眷属にホの字なのか?これからの人間関係には色々と気をつけなきゃいけないことが多そうだ。

 

「へー、そうなんですか?早く会ってみたいです」

「うん、きっと君とは気が合うと思うよ」

 

「ところで」とヘスティアは話を始めた。

 

「いいかい、ギル君。君が一体何者なのか、それはもう聞かないでおくことにするよ。だけどこれだけは言っておく。君のスキルー主に疑似神格や全知なるや全能の星は、あまりに危険すぎる代物だ。他の神にばれると確実に面倒ごとに巻き込まれると思う。特にうちは弱小ファミリアだ。できれば封印しておいて欲しい」

「分かりました。僕も流石にこんなとんでもスキルをぽんぽん使うつもりはありませんので安心してください」

「そうかい?じゃあ信じたからね?君がもし僕の信頼を裏切るような真似をしたら、僕は柄にもなく泣いてしまうかもしれないよ」

「一度交わした約束を破るような悪い子じゃないつもりです」

「じゃあ安心だね!これからよろしくね、ギル君!」

 

これで俺はヘスティアファミリアの一員か。

 

後はもう一人の眷属ーーその、ベルとかいう人と会うだけだ。悪い印象を与えないように、第一印象に気を付けなければな。

 

そういう事で、夕方でベルさんが帰ってくるまで俺は廃墟でヘスティアと親睦を深めたのだった。

 




紅顔忘れてたので引っ付けました

間違えてた所直しました


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