galaxyangel?違いますSEEDです (シャト6)
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1話

「ん~!今日も平和だね~」

 

窓から外を眺め、昼間から酒を飲んでいる1人の男。彼は昔、軍に所属していた。しかし、軍の闇を見てそれに嫌気がさし軍を除隊したのだ。今は、しがない何でも屋である。

 

「いい天気だな~。雨なんか滅多に降らないけど」

 

彼が今いる場所は宇宙に存在するコロニーだ。今宇宙では戦争が行われており、ここは中立国なのである。戦争の手が及ばないこの場所だが、それも今日で終わりを告げた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

すると、爆発して空いた穴からザフトの機体が数体入って来た。

 

「ザフト兵だと!?なんで中立国なのに襲ってくんだよ!!とにかく俺も避難を…」

 

男もまともな服に着替えシェルターに向かった。しかし、シェルターは既に人が沢山で彼が入る場所はなかった。

 

「ったく、シェルターももう少し効率よく作っとけよな」

 

暫く走ってると、一台のトラックが走ってた。

 

「助かり♪悪いが、あれに乗りゃ最悪人がいる場所には行けんだろ」

 

背後からトラックの荷台に乗り込む。そのままトラックはある戦艦の中に入っていった。

 

「よっと…こいつは」

 

男はその戦艦を見る。

 

「成る程。何処で開発してたかと思えば、こんな中立国で開発してたのか。そらザフト軍の連中が襲ってくるわけだ」

 

そう呟いてると、後ろからチャキッと音が聞こえた。銃をこちらに向けられたのだ。

 

「動くな!」

 

「手をゆっくりと上に挙げろ!!」

 

「おっと」

 

男はゆっくりと手を挙げ、軍人の方に振り返る。

 

「何故民間人がここに?」

 

「シェルターに入れなかったんだよ。で、トラックが走ってたから乗り込めば最悪人がいる場所に行けると思ったんだよ」

 

「「……」」

 

軍人2人は、互いの顔を見合わせる。

 

「どうする?」

 

「既に民間人が数人いるんだ。1人位増えてもバレないだろ」

 

「だな。おい!他の民間人がいる場所に案内するからついて来い!」

 

「了解」

 

そして男は軍人の後について行った。

 

「ここだ。まだ本艦は戦闘中だ。大人しくしててくれよ」

 

「分かりましたよ」

 

中に入ると、部屋に大勢の避難民がいた。

 

(既に俺以外にもかなりの人数が救出されてるみたいだな)

 

そう思っていると、武装した男達が中に入って来た。

 

「動くな!全員そのまま!!」

 

「な、何よこれ…」

 

(一体何が起きてるん…ん?)

 

入って来た連中を見ると、知っている顔がいた。

 

(まさか、こんな場所で元教え子の連中と出くわすとはな)

 

男はゆっくりと立ち上がり、顔を知っている男の場所に行く。

 

「オイお前!」

 

「…誰に口聞いてんだ?お前も随分と偉くなったな」

 

「あ、貴方は!?」

 

すると男は慌てて男の口を閉じる。

 

「おっと、俺の事は秘密にしててくれ。後、悪いが少し話を聞かせてくれるか?」

 

「わ、分かりました」

 

すると、別の男が2人に話しかける。

 

「おい!何をしている!!」

 

「いや、ちょっとトイレが我慢できなくて」

 

その言葉を聞いて、男は呆気にとられる。

 

「…おい、その男を便所に連れて行ってやれ」

 

「わ、分かりました!!」

 

そして、先程話した男と2人食堂から出て行った。

 

「改めて、お久し振りですモリス大佐!!」

 

モリス「おいおい、もう俺は軍を辞めたんだ。大佐はよしてくれ」

 

「いえ!私達教え子の中では、大佐は大佐です!!」

 

モリス「やれやれ」

 

モリスは呆れながら頭を掻く。

 

モリス「けど、まさか君がこんな場所に配属されていたとはな」

 

「ええ…私達はモリス大佐が辞められた後に配属されました」

 

モリス「成る程な。しかし、よりによってアルテミスに配属とは…同情するぜ」

 

同情の眼差しで教え子を見るモリス。

 

モリス「ところで、ここでお前が動かせる連中は何人いる?」

 

「えっと…10人程度ですが?」

 

モリス「悪いが、その人数を使ってアークエンジェルに物資を出来るだけ積んでくれるか?」

 

「えぇっ!?」

 

モリスの言葉に男は驚く。

 

モリス「俺の勘だが…もうじきここは破壊されるぞ」

 

「まさか…」

 

モリス「お前も俺の教え子なら知ってるよな?俺の勘は外れないって」

 

「……」

 

その言葉に、男は黙てしまう。

 

モリス「勿論タダとは言わないさ。お前が動かせる10人とお前、アークエンジェルで働かせてもらえるように言ってやる。丁度、ここも人手不足だからな」

 

「…分かりました」

 

モリス「なら頼む。出来るだけあの馬鹿な連中にばれないようにな」

 

そしてモリス達は食堂に戻っていった。見張りの人数も2人になり、暫くは黙って見護る事にした。すると今度は、ここを管理している男がやって来た。そして、1人の子供を連れて行った。

 

(いくら人手不足とは言え、子供に戦わせるとはな。しかしコーディネーターだったのか。ま、俺にとってはどうでもいいけどな)

 

そう思いながら、1人の赤い髪の女子を見る。

 

(確かコイツは…大西洋連邦事務次官ジョージ・アルスターの娘だったな。なんて言うか、自分勝手な娘だな)

 

そんな風に思っていると、警報が鳴りだした。

 

「ほら来た」

 

思っていたことが現実になり、モリスはそのままアークエンジェルに向かった。ブリッジに到着すると、艦長席であろう場所に座る。

 

「さて、昔と変わってなければいいんだけどな」

 

そう呟きながら端末を操作する。

 

「OK、変わっていないみたいだな」

 

モリスはハッチを開く。

 

モリス「開けば後はあいつが気づくだろ」

 

「何をしてる!」

 

すると、地球軍の軍人がやって来た。

 

モリス「丁度いい。早アークエンジェルの発信準備を進めてくれ」

 

「何であんたが命令するんだよ」

 

「そ~だよ!艦長達は何処だよ!!」

 

モリス「その艦長達が来てすぐに離脱できるようにしておくんだよ!!さっさとしろ!!」

 

少し怒気を含めた言い方をするモリス。すると、それにビビったのかは分からないが渋々と発信準備を進めるのであった。するとモニターに艦長達が乗り込んだのを確認する。

 

モリス「艦長達が乗り込んだぞ。さっさと発進させろ」

 

「チッ!」

 

モリスにそう言われ、操縦士は舌打ちをしながらアークエンジェルを発進させた。

 

「一体何事なの!?」

 

『艦長!』

 

「いや、それがそこの人に…」

 

操縦士が艦長である女性に話しかける。

 

「そこのお前!」

 

すると、黒髪の女性がモリスに話しかける。

 

モリス「おいおい、随分と偉くなったじゃい。ナタル・バジルール?」

 

ナタル「な、何故私の名前を!?」

 

モリス「当たり前だろ。自分が教えた教え子の事を忘れるわけないだろ?特に、女性を教えた人数なんざ数少ないんだからよ」

 

そう言いながら振り返ると、艦長とナタル、そして金髪の男は驚きの顔をする。

 

ナタル「あ、貴方は!?」

 

「おいおいマジかよ」

 

「モ、モリス大佐…」

 

モリス「元大佐な。しかし、まさかこの艦の艦長達がまさかお前とは驚きだな。マリュー・ラミアス艦長?。ま、話は後回しだ。さっさとあの機体に乗ってる奴を回収して、この空域から脱出するぞ!!」

 

マリュー「は、はい!」

 

そしてマリュー達は席に着く。

 

マリュー「ストライクを戻して!本艦はこれより、反対側の港からアルテミスを脱出します!」

 

マリューの指示でアークエンジェルは発信準備をする。

 

ナタル「ストライク着艦」

 

マリュー「アークエンジェル発信!最大戦速!!」

 

そしてアークエンジェルがアルテミシアを離れたと同時に、アルテミシアは爆発し消滅したのであった。



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2話

「再度確認しました。半径5,000に敵艦の反応ありません。完全にこちらをロストした模様」

 

「アルテミスが、上手く敵の目を眩ましてくれったって事かな?」

 

モリス「恐らくな。ま、半径5,000に敵艦の反応がないなら少しは気を楽にしてもいいだろ」

 

マリュー「そうですね」

 

その言葉に、ブリッジの張り詰めた空気が少しほぐれる。

 

ナタル「しかし…」

 

マリュー「ええ、分かっているわ。ローラシア級がロストしてくれた事は幸いだけど、こちらの問題は何一つ解決していないわ」

 

モリス「だろうな。機材や食料、人員も足りてないみたいだしな」

 

モリスはブリッジを見る。

 

モリス「そこでだラミアス艦長」

 

マリュー「は、はい」

 

モリス「実は俺の指示で、アルテミシアにいた教え子に、出来るだけこの艦に物資を搬入するように指示をしてたんだ」

 

『!?』

 

その言葉にブリッジにいた全員が驚く。

 

モリス「そして、人員も10人程度だがここで働きたいと言ってる。俺の元教え子の部下だ。信用は出来る」

 

マリュー「……」

 

モリス「ま、どうするかはあんた次第だ」

 

ナタル「艦長、モリス大佐の言葉です。信用してもいいかと」

 

マリュー「そうね」

 

こうしてアルテミシアでモリスと一緒に来た連中は、アークエンジェルで働く事になったのであった。

 

「さて、今度は大佐殿に話を聞こうかね」

 

モリス「だから、元大佐だって言ってるだろムウ」

 

ムウ「なら、少しは言葉遣いを変えてくれないかね?」

 

モリス「今更だろ」

 

ムウ「確かにな」

 

お互い笑いながらそう話す。

 

「あの…艦長」

 

マリュー「なにかしら?」

 

「失礼ですが…彼は?」

 

ナタル「口の利き方に気を付けろ!」

 

するとナタルが怒鳴る。

 

「まぁまぁナタル。そんなに怒鳴るなよ。昔にも言っただろ?もう少し柔らかく物事を言えって」

 

「で、ですが…」

 

落ち着かせる為にナタルの頭を撫でながらそう言うモリス。ナタルは顔を少し赤くしながら抗議するのである。

 

マリュー「……」

 

その光景を、表情は普通であるが内心面白くなさそうに見るマリューである。

 

ムウ(おやおや。相変わらずだなお前さんは)

 

その光景を少し呆れながら見るムーであった。

 

「お、おい」

 

「ああ」

 

「バジルール中尉があんな表情するなんて」

 

ブリッジ居る男連中は固まってヒソヒソとそんな話をするのであった。

 

ナタル「オ、オホン!諸君らは知らないと思うので説明しておく。この方は、1年前まで軍におられ私やラミアス艦長を始めとした色々な軍人を教育なさった方だ。そして、さきの対戦で准将と同等の戦果を挙げられたのだ。それがモリス・マクレーン大佐なのだ!」

 

モリス「昔の話だからな。今は俺は軍人じゃないし、最も地球軍の連中には愛想尽かしたしな」

 

ナタル「それはどういう意味ですか?」

 

マリュー「私も気になります」

 

2人は、モリスが言った一言が気になり詰め寄る。

 

モリス「いずれ話してやるよ。ところで、これからどう進路を進めるんだ」

 

「は、はい」

 

操舵手であるノイマンがこれからの予想進路を見せる。

 

ナタル「これで精一杯か?もっとマシな進路はとれないのか?」

 

ノイマン「無理ですよ。あまり地球に軌道を寄せると、デブリ帯に入ってしまいます。まぁ、こう進路を取れれば月軌道に上がるのも早いんですが…」

 

マリュー「突破は…無理よね」

 

ノイマン「デブリ帯をですか!?そりゃ無理ですよ。この速度を維持して突っ込んだら、この艦もデブリの仲間入りです」

 

モリス「だろうな。それにこの場所…」

 

そう言いながら、予想進路されたモニターを見るモリス。

 

ムウ「しかしここなら…不可能を可能にする男かな?俺は。それに、伝説の凄腕大佐殿もいる事だし」

 

そう言うと、全員がモリスを見る。

 

モリス「言っとくが、俺はあまり口出ししないからな」

 

ナタル「な、何故ですか!!確かに大佐は地球軍を辞められています。ですが、今はその様な事を言っている場合では…」

 

モリス「ナタル」

 

するとモリスは、真剣な表情でナタル達を見る。

 

モリス「何故俺が軍を辞めたのか。辞める原因の1つを教えてやる」

 

マリュー「それは…」

 

モリス「丁度その答えが、これからいる場所にある」

 

そう言いながら椅子に座るモリスであった。それからアークエンジェルは、補給をする為デブリ帯にやって来た。調査にナタルを始めとするキラ達が向かっている。すると、マリュー達はある場所で停止した。

 

『これって…』

 

『大陸…こんな場所に?』

 

キラ『ユニウス7…』

 

モリス「そうだ」

 

キラ達の言葉にモリスは話し出す。

 

モリス「ここはかつて、コーディネーター達が住んでいた場所なんだ。そして1年前、地球軍のたった一発の核ミサイルで、ユニウス7に住む24万3701名が犠牲になったんだ」

 

マリュー「そんな…」

 

モリス「しかも地球軍側はこれを、プラント側の自爆作戦と批判している」

 

ムウ「嘘だろ!?」

 

モリス「確かな情報だ。だから俺は軍を辞めたんだ。これ以上地球軍にいたら自分の正義に反しそうでな。これが、俺が軍を辞めた1つの理由だよ」

 

『……』

 

モリスの言葉に、誰も何も言えなかった。昔から軍に所属してたマリュー達は、自分達が知らない事実を教えられ混乱していた。

 

モリス「お前らにも言っておく。この事を聞いてどうするかはお前らの自由だ。お前らは自分達が信じてきたからここまでこれた。けど、真実を知ったところで現に戦争は行われている。だから、俺から言えるのはこれっだけだ。自分の目で見て聞き、その上でどうするか判断しろ。いいな」

 

『はい!』

 

その姿は、まさしく教官時代であったモリスの顔であった。ムウですら直立不動になり返事をしていたのである。そして、ミリアリアの提案で、折り紙で花を折りそれをその場所にバラまいたのであった。

 

モリス「黙祷!!」

 

モリスの言葉に、全員が無くなった人達に黙祷を捧げたのであった。



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3話

ユニウスセブンから物資を補給していると、キラが救助ポットを持って帰って来た。

 

ナタル「君は、つくづく落とし物を拾うのが好きなようだな」

 

モリス「まぁまぁ」

 

マードック「開けますぜ」

 

そして、ポッドの扉を開けると、中からピンク色の髪の女性が出てきた。その少女を見てモリスは驚きを隠せない。

 

モリス「おいおいマジかよ…何で彼女がここにいるんだ」

 

マリュー「モリス大佐?」

 

「あら?」

 

すると少女はモリスに気が付く。

 

「モリス様!!」

 

そのまま浮遊し、モリスに抱き着く。

 

マリュー「なっ!?」

 

ナタル「な、何をしてる!離れろ!!」

 

マリューとナタルは、慌ててモリスに抱き着いてる少女を引き離す。

 

「な、何をなさいますの?」

 

ナタル「「何をなさいますの?」じゃない!」

 

マリュー「そうです!そんな羨ま…じゃなくて、不謹慎な事は控えて下さい」

 

「??」

 

2人の言葉を疑問に思うのであった。

 

ムウ「あ~お2人さん」

 

ムウが2人に話しかける。思いっきり睨まれながら。

 

「「何でしょうか?フラガ大尉」」

 

ムウ「取り敢えず、そこの嬢ちゃんに話を聞こうぜ」

 

マリュー「…そうですね。ではバジルール中尉とフラガ大尉、そしてモリス大佐もご一緒にお願いします」

 

モリス「えっ!?俺も?」

 

「「何か文句でも?」」

 

ナタルとマリューに、物凄い表情で言われるモリス。

 

モリス「いえ…何でもありません」

 

ムウ「大変だな…お前さんも」

 

モリスに同情し、肩に手を置くムウであった。その光景を見た他の連中はモリスに合掌を送っていたそうだ。モリス達五人は、艦長室(仮)の部屋に集まっていた。

 

ラクス「ポッドを拾って頂いて、ありがとうございました。私はラクス・クラインですわ」

 

『ハロ!ラクス!ハロ!』

 

ラクス「これは友達のハロです」

 

モリス「相変わらずだな」

 

ハロ『ハロハロ!オ前モナ』

 

マリュー「はぁ…」

 

ムウ「やれやれ」

 

ラクスの言葉に、マリューとムウは頭を抱えていた。外ではモリス達の会話に聞き耳を立てていた連中がいたが、ナタルに説教を喰らい撤退していった。

 

ムウ「クラインねぇ…かの、プラント現最高評議会議長も、シーゲル・クラインと言ったが?」

 

ラクス「あら、シーゲル・クラインは父ですわ」

 

モリス「やれやれ」

 

素直に答えるラクスに、モリスは頭を抱えていた。当然モリス以外にも頭を抱えている連中もいたが…

 

モリス「ラクス」

 

ラクス「はい、何でしょうモリス様」

 

モリス「お前はもう少し発言に気をつけろ。この艦は地球軍なんだぞ?万が一ザフト側にいるお前を利用しないとは限らないんだぞ」

 

ラクス「ですが、モリス様が助けて下さるのでしょう?」

 

モリス「あの時は仕事だ」

 

再び頭を抱えながら答えるモリス。

 

マリュー「そんな方が、どうしてこんな所に?」

 

ラクス「私、ユニウスセブンの追悼慰霊の為の事前調査に来ておりましたの。そうしましたら、地球軍の艦と私共の艦が出会ってしまいまして」

 

モリス「なるほど。地球軍側からしたら、ザフトに味方してるシーゲル・クラインの娘だ。普通に話し合いじゃ終わらないだろな」

 

ラクス「はい。地球軍の方々には、私共の艦の目的がどうやらお気に障られたようで。些細な諍いから、船内は揉め事になってしまいましたの」

 

その言葉に、モリス達は黙ってしまう。

 

ムウ「取り敢えず、悪いが彼女は暫く部屋にいてもらうしかないな」

 

マリュー「そうね」

 

モリス「まぁ仕方ないか。他の連中が何仕出かすか分からないしな。ま、俺が当分面倒見てやるよ」

 

ラクス「よろしくお願いします」

 

これで話は済んだので、モリスは部屋を出ようとする。しかし。マリューとナタルに肩を掴まれる。

 

ナタル「何処に行かれるのかな?モリス大佐」

 

モリス「えっ?話は…すんだだろ?」

 

マリュー「ええ、確かにラクスさんのお話はすみました。ですが、お2人の関係はまだ聞けていません」

 

モリス「……」

 

2人の言葉に、モリスは固まってしまった。

 

ムウ「じゃ、じゃあ俺はお邪魔みたいだからこの辺で…」

 

ムウは巻き込まれまいと部屋を出ようとする。しかし、モリスに足を掴まれてしまう。

 

モリス「お前だけ逃げようとしても無駄だぞ。一緒にいてもらうからな」

 

ムウ「は、離せ!!」

 

モリス「離すか!!」

 

2人は口論するが、マリューとナタルはお構いなしにそのまま2人を部屋に引きずり込んだのであった。ムウは完全なとばっちりである。



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4話

モリスはボロボロの状態で部屋で休んでいる。何故そんな事になっているのか。ラクスとの事をマリューとナタルに根掘り葉掘り聞かれた為である。そして、巻き添えを喰らったムウから秘蔵の酒を一本持っていかれた事も少し混ざっていたりする。

 

モリス「さて…そろそろあれもこっちに近づいてる筈だけど」

 

端末を開き、アークエンジェルのレーダーから認知されないかなり遠くに、赤く点滅してるのがあった。

 

モリス「ハルバートンのおっさんの艦隊の先遣隊がこっちに向かってるみたいだな。で、その艦にフレイの父親であるジョージ・アルスターも一緒と来たか」

 

少し考えると、モリスは起き上がり何処かに連絡を入れていた。連絡が終わったと同時に、艦内に警報が鳴り響く。

 

トノムラ『総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!!』

 

モリス「マジかよ!嫌な予感がする!!」

 

モリスは急いでブリッジに向かった。ブリッジに到着すると、既に戦闘は行われておりストライクも出撃していた。

 

モリス「おいおい、先遣隊は無事なのか?」

 

マリュー「分かりません。ですが、今更反転しても逃げ切れる保証はありません」

 

ナタル「バリアント!一番二番、撃て~!!」

 

アークエンジェルも攻撃に参加する。

 

モリス(マズいぞ…これじゃあこっちは助かっても先遣隊は落される。間に合うか…)

 

そんな事を考えながらモリスは、マリューのフォローをする。

 

「敵ミサイル来ます!」

 

マリュー「!!」

 

モリス「ヘルダート撃て!!」

 

マリューより素早く指示を出すモリス。

 

モリス「戦場では、一瞬の判断が命取りだ!教えただろ!!艦長は誰よりも早く指示を出さなきゃ沈むぞ!!」

 

マリュー「す、すみません」

 

謝るマリューの頭をポンと撫でる。

 

モリス「俺の指示を見て、しっかりと自分の物にしろ」

 

マリュー「はい!!」

 

すると、フレイがブリッジに入って来た。

 

サイ「フレイ」

 

フレイ「パパ…パパの艦は?」

 

マリュー「今は戦闘中よ!」

 

モリス「サイ、君はフレイと一緒にいてやれ」

 

サイ「ですが」

 

モリス「その方が彼女も落ち着くだろう」

 

サイ「…分かりました」

 

そう言い、サイとフレイはブリッジを出て行った。

 

ナタル「ローエングリン、発射準備!ストライクは!!」

 

再び戦闘に集中する。するとムウから通信が入る。

 

ムウ『艦長!駄目だ!!離脱しなきゃこっちまでやられるぞ!』

 

マリュー「しかし…」

 

モリス「ムウの言う通りだ。お前はこの艦の艦長であり、乗組員の命を最優先にしなきゃならない。離脱しろ」

 

判断に迷うマリュー。すると、フレイが再びブリッジにやって来た。ラクスを連れて。

 

フレイ「この子を殺すわ!パパの船を撃ったらこの子を殺すって、あいつらに言って!!」

 

モリス「バカな事を!!」

 

すると、モリスの端末に通信が入った。

 

モリス「来たか!」

 

「ナスカ級、高エネルギー反応!!」

 

マリュー「!!」

 

敵艦が、最後になった先遣隊の艦を狙っている。

 

モリス「貸してくれ!」

 

モリスは通信用のヘッドホンを取る。

 

モリス「威嚇射撃でいい!片方だけ発射しろ!!」

 

ナタル「モリス大佐!?」

 

モリス「ああ。外すなよ…デュアル・クロノ・ブレイク・キャノン…発射~!!」

 

「ナスカ級、攻撃来ます!!」

 

敵の艦が攻撃をした。それと同時に、その攻撃を弾くように上から物凄いレーザー砲が降って来た。

 

『!!?』

 

その攻撃に、敵も味方も驚きを隠せなかった。

 

ナタル「…はっ!」

 

いち早く正気に戻ったナタルが、驚きの行動に出た。

 

ナタル「ザフト軍に告ぐ!こちらは地球連合軍所属艦アークエンジェル!当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クライン保護している!」

 

マリュー「バジルール少尉!?」

 

モリス「バカ野郎…」

 

ナタルの行動に、モリスやマリューは驚いていた。

 

ナタル「偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが、以降当艦に攻撃が加えられた場合、それはラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、こちらは自由意思でこの件を処理する事をお伝えする!!」

 

そしてナタルは通信を終わらせた。

 

モリス「……」

 

マリュー「……」

 

ナタル「ストライクとアークエンジェルをここで沈める訳にはいきません!」

 

モリス「だから、俺の艦をわざわざ呼び出したんだよ!!」

 

モリスの怒鳴り声が、ブリッジに響き渡ったのであった。相手は一旦距離多い手離れて行った。残った第八艦隊の先遣隊から通信が入る。

 

『無事か?ラミアス艦長』

 

マリュー「はい。そちらもご無事で」

 

『いや、そうでもない。ジョージ・アルスター事務次官が深い傷を負ってしまってな。もう長くはない』

 

マリュー「そう…ですか」

 

その言葉を聞いて、マリューはそう答える事しかできなかった。

 

モリス「今、事務次官は?」

 

『モリス大佐…今は、ウチの医療室で治療中ですが、もって一時間ですな』

 

モリス「…なら、俺の艦に移動させろ」

 

『!?』

 

その言葉に、マリュー達は驚く。

 

モリス「はっきり言って、俺の最新医療でも傷を治すのは難しいだろ。だが、少しくらいは寿命を延ばせることは出来る。それに、父親の最後くらい見届けさせてやりたいからな」

 

マリュー「モリス大佐…」

 

『…分かりました。では至急移動の準備に取り掛かります』

 

モリス「宜しく頼む」

 

そして通信は終了した。

 

モリス「ラミアス艦長。フレイを俺の艦に連れて行く。後、ラクスもこちらで預かる」

 

マリュー「…分かりました」

 

ナタル「艦長!!」

 

モリス「感謝する」

 

そしてモリスはブリッジを出て行った。

 

ナタル「いいのですか!ラクス嬢がいなくなれば、またすぐに敵が…」

 

マリュー「バジルール少尉。だからモリス大佐は、ご自分の艦をこちらに来させたのよ。私達を護衛してくれるために」

 

ナタル「……」

 

その言葉に、ナタルは何も言えなくなってしまった。通路では、モリスがフレイの場所にやって来た。

 

モリス「フレイ・アルスターはいるか?」

 

サイ「モリスさん?」

 

ミリアリア「彼女なら…」

 

見ると、父がやられたショックでその場から動えないでいた。

 

モリス「単刀直入に言うが、ジョージ事務次官はもう長くはない」

 

『!?』

 

その言葉に、食堂にいたフレイ達は驚いた。

 

フレイ「パパは…もう長くないの?」

 

モリス「残念だがな。今、第八艦隊の艦から俺の艦に移動させるとこだ。俺の所だと、完全に治すことはできないが、少しくらい延命する事は出来る。唯一の肉親だろ?最後くらい2人で話をしろ」

 

フレイ「……」

 

モリスの言葉に、フレイは何も言わない。

 

モリス「今ここで決めろ。俺と一緒に来て親父さんの最期を看取るか。それともそこで泣いたまま別れるか」

 

サイ「もう少し言葉を…」

 

そこまで言うサイだが、モリスに睨まれ黙る。

 

モリス「そんなのんびりしてられないんだよ!こうしてる間にも、お前の親父さんの命は刻々と削られてんだよ!!」

 

フレイ「!!」

 

その言葉に、フレイは顔を挙げた。

 

フレイ「…連れて行ってください。パパの…パパの最後は私が看取ります!!」

 

モリス「…分かった。それじゃあ行くぞ」

 

そして2人は食堂を出て行った。途中でラクスとキラと会い、2人も一緒に連れて行くことにした。フレイは、やはり色々とあるようで2人と顔を合わせなかった。ルクシオールに到着し、ジョージ事務事案を受け入れ医療室に連れて行く。

 

「それじゃあ、後は頼むな」

 

『オ任セ下サイ、モリス艦長』

 

フレイを医務室に残し、残った三人はブリッジにやって来た。

 

キラ「うわぁ…」

 

ラクス「これは素晴らしいですわ」

 

モリス「だろ?俺自慢の艦だからな。ま、殆ど一人で動かしてるからAIに頼りっきりだがな」

 

キラ「そうなんですか?」

 

モリスの言葉にキラが聞く。

 

モリス「そりゃそうだ。この艦には俺達以外人間はいない。全部AIが補ってくれてる」

 

『私達は、いつでも艦長のお力になります!!』

 

モリス「ああ、十分頼りにさせてもらってるよ」

 

突然話し出したAIに、少し驚くキラとラクス。

 

モリス「さて…」

 

モリスは艦長席から立ち上がる。

 

モリス「2人とも、少し付き合ってくれないか?」

 

「「えっ?」」

 

2人はそう言うが、モリスは関係なく2人をある場所に連れて行った。やって来たのは、銀河展望公園である。

 

キラ「うわ~凄い…」

 

ラクス「本当ですね。お日様が気持ちいいですわ」

 

モリス「凄いだろ?けど、それだけじゃないぞ」

 

するとモリスは、リモコンを取り出しボタンを押した。すると辺りは暗くなり宇宙空間が映し出される。

 

モリス「こうすれば外の景色も楽しむことが出来るんだ。ほら、向こうにアークエンジェルが見えるだろ?」

 

キラ「本当だ。じゃあ、向こうからも見えるんですか?」

 

モリス「いや、マジックッミラーみたいなもんだ。向こうからはただの壁にしか見えない」

 

ラクス「素晴らしいですね」

 

モリス「だろ?さて…」

 

先程は変わって、モリスは真剣な表情になる。

 

モリス「キラ、君はこれからどうしたいんだ?」

 

キラ「えっ?」



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5話

モリス「キラ、君はこれからどうしたいんだ?」

 

キラ「えっ?どうって…」

 

突然の言葉に、キラは少し戸惑う。

 

モリス「今は、ラクスがいるから俺の艦やアークエンジェルは敵から攻撃を受けない。確かに、民間人であるラクスを人質ってのは、俺も納得はしていない。だが、今のマリュー達にはそれしか生き残る方法がないのも分かってやってくれ」

 

キラ「……」

 

その言葉に、キラは黙ってしまう。すると、フレイがやって来た。

 

フレイ「あの…モリスさん」

 

モリス「ん?どうした?」

 

フレイ「パパが…モリスさんと話がしたいって」

 

モリス「…分かった」

 

ベンチに座ってたモリスは立ち上がる。

 

モリス「出来れば、俺が戻るまでに答えを決めれたら決めておいてくれ」

 

そう言い残し、モリスはフレイと出て行った。

 

キラ「……」

 

ラクス「…キラ」

 

ラクスの小さな言葉だけが、公園内に響いていた。モリスは医務室にやって来た。ベッドには、良き絶え絶えのジョージ・アルスターがいた。

 

ジョージ「君が…この艦の艦長か」

 

モリス「ええ、モリス・マクレーンです」

 

ジョージ「そうか…君に、頼みがあってね」

 

モリス「頼み…ですか?」

 

その言葉に、ジョージは頷く。

 

ジョージ「私は…もう長くない。だから、私の勝手なお願いだ。娘を…娘をお願いしたい」

 

モリス「……」

 

ジョージ「母親に逝かれ、家族である私もこの状態だ。可愛い一人娘を置いて逝く事が、どれ程辛いか…」

 

フレイを見ながらそう話すジョージ。

 

ジョージ「モリスさん…私の勝手な我が儘なのは十分承知している。だが、娘はまだまだ子供だ。残念な事に、本当に信頼できる親戚はいない。だから、私をここまで延命してくれた貴方にお願いしたい」

 

モリス「…分かりました。娘さんの事はお任せください」

 

ジョージ「そう…ですか」

 

その言葉に、安心した表情になる。すると、ジョージの心拍を測っている機械が鳴り響く。

 

フレイ「パパ!?」

 

ジョージ「フレイ…何かあったら、モリスさんを頼りなさい。彼ならお前を安心して任せられる…」

 

フレイ「パパ…いや…」

 

ジョージ「後…サイ君との婚約だが、所詮はまだ口約束だ。もしお前が、本当に嫌なら断りなさい」

 

フレイ「……」

 

フレイは、黙て父であるジョージの言葉を聞いている。

 

ジョージ「お前は…母さんに似てきっと美人になる…出来れば…お前の…花嫁…衣装を…見た…か…」

 

 

ピーーーーーーーーーーーッ

 

 

ジョージは、最後まで言葉は喋れず、医務室には機械音だけが響き渡るのであった。

 

モリス「…立派な親父さんだな。最後の最後まで、娘であるお前の事ばかり心配していた。父親として尊敬する」

 

フレイ「…はい」

 

フレイは、ただ静かに涙を流していた。

 

モリス「…お前は少し休むといい。これからの事など、色々と考える時間が必要だ。部屋はAIに案内させるから、それに従って行けばいい」

 

そう言い残して、モリスは医務室を出て行った。銀河展望公園に向かう途中、通路にいたキラとラクスを発見した。

 

モリス「よう」

 

キラ「モリスさん…」

 

モリス「その様子だと、どうするか決まったみたいだな」

 

キラ「はい。勝手とは思いますが、ラクスをザフト軍に返そうと思います」

 

モリス「そうか」

 

キラの考えに、安心した表情になるモリス。

 

モリス「だが、向こうにはクルーゼがいる。襲ってこないとは限らないぞ?」

 

キラ「そうでしょうね。ですが、それでもラクスを返してあげたいんです」

 

モリス「そうだな…」

 

少し考えるモリス。

 

モリス「分かった。万が一何かあった時、俺がフォローしてやる。まぁ、ムウの奴も出てくれるだろ」

 

キラ「ありがとうございます!」

 

モリス「なら、早く戻って準備しな。艦長達はこっちで気を逸らしといたやるからよ」

 

そして2人は、アークエンジェルに戻っていった。モリスはブリッジに行きアークエンジェルに通信をする。

 

マリュー『モリス…今は艦長でしたね』

 

モリス「あんまり気にするな。俺は別に何処の軍にも所属してないんだから」

 

マリュー『相変わらずですね。ところで、何かありましたか?』

 

モリス「ああ。お前ら最近あまり旨い物食ってないだろ?」

 

マリュー『はぁ…』

 

突然の言葉に、呆気にとられるマリュー。

 

モリス「でだ。今度ウチの艦で食事をご馳走しようと思ってな」

 

マリュー『そうですか』

 

ナタル『ですが、大佐の艦も我々と同じ状態では?』

 

ナタルが会話に混ざって来る。

 

モリス「(よしよし、2人が食いついたな。ま、食事をご馳走するのは嘘じゃないから許してくれ)それは、ウチの艦に来てからのお楽しみだ。学生の子達も、最近は宇宙食が多くなってきただろ?それに、水もそっちはそんなに余裕がある訳でもあるまい。こっちでその子達にゆっくりと風呂でも入れてやろうと思ってな。勿論ナタル達もな」

 

ナタル「そ、そうですか」

 

すると、アークエンジェルのブリッジで警報が鳴る。

 

マリュー『どうしたの?』

 

ナタル『ストライク!何をしてる!!キラ・ヤマト!!』

 

ナタルは必死にキラに呼びかけていた。すると、ムウが通信に割り込んできた。

 

ムウ『坊主が嬢ちゃんを連れだしたんだよ!駄目だ、もうエアロック開けられちまった』

 

ナタル『な、なんだと!?』

 

マリュー『えっ!?』

 

ムウの言葉に、ナタル達は驚く。

 

モリス「やれやれ、キラ君も中々アグレッシブな事をするな」

 

マリュー『モリス艦長!そんな事を言ってる場合では…』

 

モリス『分かってる。一応そっちはムウを出撃準備させておけ。こっちはこっちで、対処するから』

 

ムウ『どうするんだよ!』

 

モリス「こうするんだよ」

 

するとモリスは、AIに話しかける。

 

モリス「AI!シャープシューターを出撃させろ!威嚇射撃程度ならできるだろ?」

 

AI『威嚇射撃以外にも、敵を殲滅させる事も可能です艦長?』

 

モリス「だったな」

 

そう言うと、ルクシオールの右側部分のハッチが開き、一機の機体が発進された。

 

マリュー『あれは!?』

 

モリス「ウチの機体の1つだ。遠距離攻撃に優れててな。ここくらいの距離なら、向こうのナスカ級を威嚇するには十分だ」

 

ナタル『威嚇って…ここからどれ程距離があるのかお分かりですか!!』

 

モリスの言葉に、ナタルは怒鳴る。

 

モリス「ウチの機体なら、これくらいの距離なんか関係ない。百発百中だ」

 

AI『艦長。敵艦から二つの熱源反応。1つは、盗まれたMSのイージスです』

 

モリス「やっぱりクルーゼは裏を読んできたか。ナスカ級に威嚇射撃だ。イージスには当てるなよ?」

 

AI『了解です。シャープシューターエネルギーチャージ』

 

発射準備に取り掛かるAI。

 

『敵艦よりMS発進!』

 

『ナスカ級、エンジン始動!』

 

ムウ『こうなると思ってたぜ!』

 

どうやらムウは予想していたようだ。

 

モリス「この距離なら、長距離のレールガンで充分だ」

 

AI『了解。長距離レールガン発射』

 

その言葉で、シャープシューターからレールガンが発射された。敵艦から出てきたMSの横を掠め、更にナスカ級の横を通り過ぎて行った。

 

ラウ「何!?」

 

その威力に、ラウは驚いている。

 

モリス「AI、敵艦に通信を開いてくれ」

 

AI『了解』

 

そしてすぐに、敵艦艦長が映し出される。

 

モリス「こちらはアークエンジェルの護衛艦、ルクシオール艦長のモリス・マクレーンだ。先程の攻撃は威嚇射撃であり、ストライク並びにアークエンジェルに危害が加えられた場合、そちらを撃ち抜く」

 

『何を馬鹿な事を。先程のは威嚇ではなく、狙って外れたのであろう』

 

モリス「本当にそう思うか?」

 

『!?』

 

モリスは、敵艦艦長を睨み付ける。

 

モリス「もし、狙って外れたと思ってるなら、次はブリッジを直接狙って見せようか?敵艦艦長さん?」

 

『クッ…貴様!』

 

すると、イージスから全域に通信が入る。

 

ラクス『追悼慰霊団代表の私のいる場所を、戦場にするおつもりですか?そんな事は許しません。すぐに戦闘行動を中止してください。聞こえませんか?』

 

ラクスからの通信を聞いて、二機のMSは引き返していった。

 

モリス「よかったな。そちらのお姫様が優秀で」

 

『クソッ!』

 

そして通信は切れた。

 

モリス「…ふぅ」

 

AI『お疲れ様です。モリス艦長』

 

モリス「ああ、AIもお疲れ。シャープシューターを戻してくれ」

 

AI『了解』

 

モリスの指示で、待機してたシャープシューターを戻らせる。

 

モリス「さて、一応フォローの為にアークエンジェルに行くか。AI、立ち入り禁止な場所は全てロックしておいてくれ。勿論ブリッジもだ」

 

AI『了解です、艦長』

 

モリス「じゃ、後は頼んだぞ」

 

そしてブリッジを出て行った。

 

モリス「さて、荒れるだろうな向こうは…」

 

そんな事を思いながら、キラのフォローの為アークエンジェルに行くのであった。



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6話

ザフトの艦隊が去り、第八艦隊との合流を急いでいるアークエンジェルとルクシオール。今、アークエンジェルでは、キラ・ヤマトの処遇について話し合っている。

 

ナタル「被告は、自分の行動が艦の安全をどれ程脅かしたのか、全く理解していません」

 

ムウ「今の発言は、類推に過ぎません。議事録からの削除を求めます」

 

マリュー「削除を許可します」

 

キラを囲むように陣取る三人。キラの正面には艦長であるマリュー。左にはキラの弁護役のムウ。右には検察官役のナタルがいた。

 

ムウ「え~っと…そもそも民間人を人質にとるという事は、コロシカ条約4条に抵触すると思いますが?」

 

ナタル「今回の行動は、同条特例項目C…戦時下における措置に意そうします」

 

ムウ「え?特例項目C?知らねえよそんなの」

 

ムウは、ナタルが言った特例項目Cを軍事条約が書かれた本から探していた。

 

モリス「しかし、その特例項目Cは、艦長又は少佐以上に処置する権限が与えられている」

 

マリュー「モリス艦長」

 

ムウが必死に調べている間に、モリスがキラを弁護する。

 

モリス「ってかムウ…少しはナタルを見習えよ。どこの世界に、弁護する人間が軍事条約が書かれた本をあたふた読みながら弁護するんだよ」

 

ムウ「仕方ね~だろ!こんな事、今までする機会なかったんだしよ」

 

モリス「やれやれ…」

 

ムウの言葉に呆れるモリス。

 

モリス「マリューや、お前より階級が下のナタルはきちんと知ってたみたいだが?キラも大変だな。こんなのが弁護役じゃ」

 

キラ「あ、あはは…」

 

マリュー「さて…キラ・ヤマトには、何か申し開きしたい事がありますか?何故あのような勝手な事を?」

 

キラ「…人質にする為に助けた訳じゃありませんから」

 

その言葉に、ナタルはキラを見る。

 

モリス「ま、そうだろうな。けどなキラ、今回は大事にならずに済んだのも事実だ。お前の行動がアークエンジェルにとって、マイナスだった部分もある事を忘れちゃいけない。それは分かるな?」

 

キラ「…はい」

 

モリス「それが分かってれば十分だ。ナタルもだ」

 

ナタル「わ、私もですか!?」

 

まさか自分も言われるとは思っていなく、ナタルは驚いた。

 

モリス「さっきも言ったが、特例項目Cの発動権限は、艦長又は少佐以上の階級が必要だ。お前は少尉であるにかかわらず、ラクス…民間人を人質にした」

 

ナタル「……」

 

モリスの言葉に、何も言い返せないナタル。

 

モリス「だが、今回の場合は仕方がない事だ。確かに、あのままではアークエンジェルが沈められていたのも事実。だが、特例項目の話をするんなら、その辺もしっかりと予習しておくべきだったな」

 

ナタル「…申し訳ありません」

 

モリス「な~に、お前のそう言う行動も大切だ。艦長と言い合いにもなると思うが、それはお互い自分の考えをしっかりと持っている証拠だ。何も恥じることはない」

 

そう言いながら、落ち込んでいるナタルの頭を優しく撫でるモリスであった。しかし次の瞬間、モリスの背後から物凄い視線を感じたのである。

 

モリス「……」

 

ゆっくりとそちらの方を向くと、マリューがモリスとナタルを思いっきり睨んでいた。

 

モリス「……」

 

取り敢えずモリスは、命が惜しかったので空いてる手でマリューの頭を同じように撫でるのである。すると、マリューからの視線はなくなった。

 

キラ「……」

 

ムウ「あ~…」

 

そんな光景に、キラは唖然とし、ムウは空気に耐えられず話し出す。

 

ムウ「いい雰囲気なとこ悪いけど、さっさと終わらせちまわないか?」

 

モリス「そ、そうだな」

 

モリスは慌てて、撫でていた手を2人の頭から離した。しかし、2人はモリスの手を掴み、再び自分の頭に置くのであった。

 

モリス「…キラ・ヤマトは、本来ならば軍事法廷では銃殺刑になるが、生憎ここにいる連中は誰一人そんな権限は持っていない。だから、キラ・ヤマトには今後、熟慮した行動を求める事になる。以上だ」

 

最早何も言うまいと思いながら、2人の頭を撫でながら結論を言う。

 

キラ「え、えっと…」

 

ムウ「要するに、もう勝手な行動はするなって事だ」

 

モリス「そう言う事だ」

 

そして、軍法会議の真似事は終了となったのであった。

 

モリス「あの~…そろそろ離してくれない?」

 

「「駄目です!」」

 

モリス「さいですか…」

 

2人の言葉に、モリスは諦め満足するまで頭を撫でるのであった。因みに、部屋を出ていくムウの顔がニヤケていたので、頭に愛の拳を振り下ろしたことをここに記しておこう…



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7話

あれからマリューとナタルは、満足そうな表情でブリッジに行き第八艦隊との合流を急いでいた。モリスは自分の艦に戻っており、アークエンジェルと並行しながら飛んでいる。

 

モリス「AI、後どれくらいで第八艦隊と合流できる?」

 

AI『後三十分ほどで合流できます』

 

モリス「三十分か…周囲に敵艦は?」

 

すると、別のAIが答える。

 

AI『今現在、周囲にはアークエンジェル以外に反応はありません』

 

モリス「了解した。しかし…」

 

AI『艦長?』

 

モリス「いくら神に貰ったとはいえ、お前らみたいに色々な性格のAIがいるなら、そろそろ名前でもつけようかと思ってな」

 

AI『名前…ですか?』

 

1つのAIが話す。

 

モリス「ああ。折角この世界に来て、ギャラクシーエンジェルの紋章機とルクシオールを貰ったんだ。なら、それにちなんだ名前がいいと思ってな」

 

AI『はぁ…』

 

モリス「…決めた。お前らは今日から、アルモとココだ。ま、見事にGAのキャラの名前をパクったけどな」

 

こうして、二つのAIの名前が決まったのであった。

 

モリス「ま、まだ決まってない連中は後程出いいだろ。基本はお前達と話す事が多いしな」

 

そう言うと、ブリッジに警報が鳴り響く。

 

モリス「報告!」

 

ココ『Nジャマー反応!四時方向より敵艦確認!オレンジ・アルファーにローラシア級です!!』

 

モリス「紋章機出撃準備!本来は、人が乗ってる方がAIとリンクして力を発揮するんだが…」

 

アルモ『仕方ありません。流石にあの方も人までは呼び出すことは出来ませんので』

 

モリス「分かってるよ。アークエンジェルに通信を繋げ」

 

アルモ『了解です』

 

すぐにアルモは、モリスの指示でアークエンジェルに通信を繋げた。

 

マリュー『モリス艦長!』

 

モリス「落ち着けマリュー!こちらでも敵艦を既に確認済みだ。しかも、向こうはMS三機投入していたとはな」

 

ナタル『あいつら…チィ!合流を目前として!』

 

モリス「ストライクの発信準備を急がせろ!こちらも既に紋章機の発進準備中だ!!」

 

マリュー『は、はい!』

 

そしてアークエンジェルも、ストライクとメビウス・ゼロの発信準備を急がせるのである。

 

ココ『敵機確認!ローラシア級から高エネルギー反応!』

 

モリス「狙いはアークエンジェルだ!本艦は、アークエンジェルの背後に周り楯になる!後方にエネルギーシールドを集中させろ!!」

 

アルモ『了解!!』

 

ルクシオールは、アークエンジェルの後ろに回り込む。

 

ココ『敵艦から攻撃…来ます!』

 

モリス「艦全域!衝撃に備えろ!!」

 

艦全域とは言っても、艦に乗ってる人間はモリスとフレイだけである。まぁ、他のAIがフレイに指示を出しているので心配はない。

 

モリス「ぐっ!?」

 

ココ『敵艦の攻撃直撃!ですが、シールドで防げたので無傷です!!』

 

マリュー『モリス艦長!』

 

マリューから通信が来る。

 

モリス「そっちの回避アルゴリズムは解析されてるみたいだぞ?」

 

マリュー『その様ですね』

 

敵のMSは、3機が集まり敵艦の砲撃を隠していた。

 

モリス「…アルモ!今回出すのはトリックマスター、ハーベスターの2機だ!残りの4機はアークエンジェルの護衛だ!」

 

アルモ『了解しました』

 

モリス「見た感じ、向こうは3機しか出撃していない。イージスやクルーゼがいないなら、それで十分なはずだ」

 

そして、2機の紋章機が発進された。

 

モリス「トリックマスターはMSの1機を相手に!ハーベスターはメビウス・ゼロのフォローだ!」

 

『了解』

 

紋章機六機は、各機モリスが指示した通りに動く。

 

ムウ『まだ他にもあったのかよ!!?』

 

モリス「ああ。流石に出し惜しみはしてられないからな。今回は六機全て出撃させた」

 

ムウ『ありがたいことで』

 

そう言いながら、再びブリッツとの戦闘に戻るムウ。しかし、流石はMS。動きが素早く紋章機と引けを取らない。すると、アークエンジェルのオペレーターが叫ぶ。

 

『艦長!ブリッツに取り付かれました!』

 

マリュー『何ですって!?』

 

モリス「くそっ!ミラージュコロイド・ステルスで近づいたか!」

 

アルモ『艦長!あのままでは紋章機で攻撃が出来ません!』

 

ギリッと口を噛むモリス。すると、ストライクが今までにない動きでアークエンジェルに近づき、取り付いてるブリッツを蹴り飛ばした。そしてすぐさま、背後から来たデュエルの攻撃をかわし、ダガーで胴体部分を貫いた。

 

モリス「なんて奴だ…」

 

ココ『ブリッツ、デュエル、バスター離脱していきます』

 

モリス「そうか。なら、警戒レベルを引き下げて紋章機を帰還させろ」

 

『『了解』』

 

何とか無事に艦隊と合流できモリスはホッとする。

 

モリス「俺はアークエンジェルに行く。後の事は頼んだぞ。何かあれば向こうから指示を出す」

 

そう言い残して、ブリッジを後にした。通路でフレイと出会う。

 

フレイ「モリスさん」

 

モリス「…もういいのか?」

 

フレイ「はい。何とか気持ちの整理が付きました」

 

モリス「そうか…俺は今からアークエンジェルに行くが、一緒に来るか?」

 

モリスがそう言うと、フレイは首を横に振る。

 

フレイ「いえ、私は良いです。まだ、キラ達とは会いにくいので」

 

モリス「分かった」

 

そう言うと、モリスはブローチの様な物をフレイに渡す。

 

フレイ「これは?」

 

モリス「通信機だ。俺も右胸に同じのを付けている」

 

そう言いながら、自分の右胸の部分を見せる。

 

モリス「これからこの艦にいるんなら、渡しておいて損はないと思ってな。この艦、無駄に広いし…」

 

フレイ「フフッ、確かにそうですね。公園に食堂、ラウンジに温泉に娯楽室にジム、挙句の果てに映画館まであるんですもの。驚いちゃいました」

 

モリス「ま、初めてこの艦を見れば誰でも同じ反応をするよ」

 

呆れながらモリスはフレイに言う。

 

モリス「因みにこの通信機の使い方は、横のボタンを押しながら話したい相手の名前を言えば、その相手に繋がるから」

 

フレイ「随分と簡単なんですね」

 

モリス「まぁな。じゃ、俺は向こうに行ってるから、何かあれば通信してくれ」

 

フレイ「分かりました。いってらっしゃい」

 

フレイに見送られ、俺はアークエンジェルへと向かったのであった。



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8話

ザフト軍の攻撃を何とか搔い潜った一同は、第八艦隊と無事合流した。

 

ノイマン「しかし、いいんですかねぇ?メネラオスの横っ面になんかつけて」

 

マリュー「ハルバートン提督が艦をよくご覧になりたいんでしょう。後程、自らもおいでになるという事だし。閣下こそ、この艦とGの開発計画の一番の推進者でしたからね」

 

モリス「確かに、ハルバートンのおっさんはこの計画に一番力を入れてたからな」

 

ナタル「モリス大佐!いくらなんでも、言葉を慎んでください!」

 

モリスの言葉にナタルは怒る。

 

モリス「だって、俺もう軍人じゃないしな。それに、おっさんとは個人的な付き合いもあるんだよ」

 

マリュー「そうだったんですか」

 

その言葉にマリューは驚いていた。

 

モリス「そういえば、民間人はどうするんだ?」

 

マリュー「ハルバートン提督の艦に移動することになってます。その後にシャトルに乗せて地球に降ろすそうです」

 

モリス「そうか…」

 

その言葉に、モリスは少し考え事をする。

 

マリュー「少しお願いね」

 

ナタル「艦長!」

 

マリューとナタルはブリッジを出て行った。

 

モリス「まぁいい。俺は少し格納庫に行って来る」

 

モリスも格納庫へと向かった。格納庫では、クルー達が壊れたメビウスを修理している。

 

キラ「艦隊と合流したってのに、何でこんな急がなきゃならないんです?」

 

ムウ「不安なんだよ!壊れたままだと!」

 

マードック「第八艦隊っつったって、パイロットはヒヨっ子揃いさ。なんかあった時にゃ、やっぱ大尉が出れねぇとな」

 

モリス「確かにな」

 

すると、格納庫にやって来たモリスが会話に混ざる。

 

キラ「モリスさん」

 

モリス「お疲れ」

 

ムウ「珍しいな。お前さんがここに来るなんて」

 

モリス「いや、お前の機体の様子でも見とこうと思ってな。確かに、万が一の時はお前の腕が必要になるからな。直していて損はないだろ」

 

その言葉にムウは少しうれしそうな表情になる。

 

モリス「ま、一応俺の艦に警戒させてるがな」

 

マードック「ん?何か言いましたか?」

 

モリス「いや別に。独り言だ」

 

キラ「それよりストライクは!本当にあのままでいいんですか?」

 

その言葉に、四人はストライクの方を見る。

 

ムウ「ん~分かっちゃいるんだけどね~。態々元に戻してスペック下げるっつ~のも~なんかこ~」

 

モリス「確かにな~」

 

「出来れば、あのまま誰かがって思っちゃいますよね」

 

するとマリューまでもが格納庫にやって来た。

 

キラ「艦長!?」

 

ムウ「あらら、こんな所まで」

 

モリス「珍しいな」

 

マリュー「ごめんなさいね。ちょっとキラ君と話したくて」

 

キラ「え?」

 

その言葉にキラは、マリューを疑うような表情で見る。

 

モリス「ま~キラ、少しくらい話聞いてやれ」

 

キラ「…分かりました」

 

そして2人は、ストライクの方へ跳んでいった。

 

ムウ「坊主、随分お前さんの言う事を聞くな」

 

モリス「ま、向こうで少しカウンセリングと息抜きをな」

 

ムウ「なるほど」

 

モリスとムウは、2人を遠くから見つめていた。暫くして、ハルバートンを乗せたシャトルが到着し、マリュー達は敬礼して出迎えた。

 

ハルバートン「おおっ!いやぁ…ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時はもう駄目かと思ったぞ。それがここで、君達と会えるとは!」

 

マリュー「ありがとうございます。お久しぶりです閣下!」

 

互いに敬礼をする。するとハルバートンはキラ達の所へやって来た。

 

ハルバートン「君達のご家族の消息も確認して来たぞ。皆さんご無事だ」

 

その言葉を聞いて、キラ達は安堵の表情になる。

 

ハルバートン「そして…久し振りだねモリス大佐」

 

モリス「ええ、お久し振りです。ですが、俺はもう軍人ではありません」

 

ハルバートン「構わんよ。君は私と同じこの艦やGの推進者なのだからね。出来れば、この後の話し合いにも参加してほしいのだが?」

 

「閣下!?」

 

そう言うと、後ろに控えてる男が驚きの表情になる。

 

ハルバートン「構わん。責任は私が取る。それでいいだろ?ホフマン大佐」

 

ホフマン「…分かりました」

 

渋々だが、ホフマンは後ろに下がる。

 

ハルバートン「では、ついて来てくれたまえ」

 

ハルバートンを始め、ホフマン、モリス、マリュー、ナタル、ムウは艦長室に向かった。中に入ると早速話が始まる。

 

ホフマン「しかしまぁ、この艦1つとG1機の為にヘリオポリスを崩壊させ、アルテミスを壊滅させるとはなぁ」

 

マリュー「……」

 

事実を言われ、マリューは少し落ち込む。

 

ハルバートン「だが、彼女らがストライクとこの艦を護った事は、いずれ必ず我等地球軍の利となる」

 

ホフマン「アラスカはそうは思ってないようですが?」

 

『??』

 

その言葉に、モリスを含めた4人は疑問に思う。

 

ハルバートン「ふん!奴等に空での戦いの何が分かる。ラミアス大尉は私の意思を理解してくれていたのだ。問題にせねばならぬことは何もない」

 

マリュー「閣下…」

 

モリス「……」

 

その言葉にマリューは感動し、モリスは黙っているが流石と思っている。

 

ホフマン「このコーディネーターの子供の件は…これも不問ですかな?」

 

マリュー「キラ・ヤマトは、友人達を護りたい。ただその一心でストライクに乗ってくれたのです」

 

ハルバートン「……」

 

モリス「確かにそうだな。後半は、俺の艦もアークエンジェルの護衛に当たってたが、それまでこの艦を護ったのはストライク。キラ・ヤマトだ」

 

話に初めて参加したモリス。

 

ホフマン「しかし、このまま開放しては…」

 

ナタル「…私はホフマン大佐と同じ考えです」

 

その言葉に、マリューとムウは驚き、モリスは再び黙る。

 

ナタル「彼の能力は目を見張るモノがあります。Gの機密を知り尽くした彼をこのまま降ろしては…」

 

ハルバートン「既にザフトに4機渡っているのだ。今更機密もない」

 

ナタル「し、しかし!彼の力は貴重です。出来れば、このまま我が軍の力にすべきだと私は…」

 

ホフマン「ほう」

 

ホフマンだけは、ナタルの意見をしっかりと聞いてる。

 

ハルバートン「しかし、ラミアス大尉の話だと、本人にその意思はなさそうだが?」

 

ナタル「彼の両親はナチュラルで、ヘリオポリス崩壊後に脱出し今は地球にいます」

 

モリス「で、両親を保護という名の人質にし、無理矢理戦わせるつもりか?ナタル・バジルール少尉?」

 

突然部屋の中の空気が重くなる。その原因はモリスだった。モリスは、今までにない表情でナタルを睨んでいる。

 

ハルバートン「モリス元大佐の言う通りだ。そんな兵が何の役に立つ。そんな事より、問題はこれからだ」

 

マリュー「えっ?」

 

ハルバートン「アークエンジェルは、現状の人員のままアラスカ本部へ下りてもらわねばならん」

 

ホフマン「補充要員を乗せた先遣隊も沈み、今の我々にはもう、アークエンジェルに割ける人員はないのだ」

 

マリュー「……」

 

その言葉は、マリュー達に重く圧し掛かる。

 

ハルバートン「そこでだ。モリス元大佐、君にはこのまま引き続きアークエンジェルの護衛をお願いしたい」

 

モリス「なるほど。だからこの話し合いに俺を呼んだのか」

 

ハルバートン「そう言う事だ」

 

モリス「…いいでしょう。大事な元教え子達だ。安全が確保されるまでアークエンジェルの護衛引き受けましょう」

 

その言葉を聞いて、マリューやナタルは嬉しそうな表情になる。

 

ホフマン「後、君の艦にある機体だが、何機かこちらに貸し与えたまえ」

 

モリス「…はっ?嫌に決まってんだろ」

 

先程とはうって変わって、言葉が変わるモリス。

 

ホフマン「嫌とは言わせられんのだよ。あれ程の戦力のある機体、君も元地球軍軍人なら、この戦争に協力したまえ」

 

モリス「嫌に決まってんだろ。俺は、お前ら地球軍が嫌で軍を辞めたんだよ。何でわざわざ地球軍に協力しなきゃなんないんだよ」

 

ホフマン「なんだと!?」

 

その言葉にホフマンは怒り出す。

 

モリス「俺は、個人的に交流もあるハルバートンのおっさんの頼みだから聞いたんだよ!地球軍に手を貸すわけじゃない!」

 

ホフマン「黙って聞いておれば!…!」

 

すると、ホフマンは何かを思いついた。

 

ホフマン「そう言えば、君の艦にはアルスター事務時間の令嬢が乗っていたな」

 

モリス「確かに乗ってる。それが?」

 

ホフマン「だったら…おい、今からフレイ・アルスターを人質にとれ」

 

『!!?』

 

その言葉に、マリュー達は愚かハルバートンですら驚いていた。

 

ハルバートン「ホフマン大佐!何を馬鹿な事を言っている!即刻止めさせるんだ!!」

 

ホフマン「ですが閣下、あれだけ貴重な機体を、一個人が所持するのはどうかと思われます。我々地球軍に協力しないのならば、強引ですが無理矢理にでも協力させるしかありません」

 

ハルバートン「……」

 

ホフマン「さぁ!早くしないとお前の艦に我が軍の人間が乗り込み、アルスター嬢を人質にされるぞ?」

 

モリス「……」

 

その言葉に、モリスは特に反応せずゆっくりとホフマンの方に歩き出す。

 

ホフマン「なんだ?協力する気にな…!!?」

 

その瞬間、モリスはホフマンの顔面を思いっきり殴った。部屋の壁が凹むぐらいに。

 

マリュー「!?」

 

ナタル「なっ!?」

 

ハルバートン「!!」

 

ムウ「おいおい…」

 

4人は突然の出来事に、その程度しか言葉を話す事が出来なかった。

 

モリス「もっぺん言ってみろ?誰を人質にするって??あぁ?」

 

顔面がこれでもかと凹んだホフマンの胸倉を掴み。無理矢理立たせる。

 

モリス「さっきから聞いてりゃ、随分と調子に乗った事をほざいてんな?」

 

ホフマン「あ…あぁ…」

 

モリス「何とか言えよコラッ!」

 

壁にホフマンを叩き付け、顔面目掛けて殴りかかった。誰もがそれから視線を逸らした。そして、ドゴン!と大きな音が部屋に響き渡る。マリューは恐る恐る目を開ける。見ると、モリスの拳はホフマンの顔真横で突き刺さっていた。

 

ホフマン「…はぁ」

 

ホフマンは腰を抜かし、いい歳して漏らしていた。

 

モリス「テメェはもう殴る価値もねぇ。つくづく地球軍の連中に嫌気が察したぜ」

 

そのままモリスは部屋を出て行こうとする。

 

モリス「…悪かったな。お前らをビビらせて」

 

マリューとナタルの頭に手を置き、そう告げて出て行った。

 

「「…モリス艦長(大佐)」」

 

ムウ「ふぅ…おっかなかった~」

 

ハルバートン「そうだな。だが、彼が勝手な行動をしたから仕方ないがね」

 

そう言いながら、未だに気絶してるホフマンを見るムウとハルバートンであった。



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