生き残り大尉の使い魔 (シータが座ったァァア!!)
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Act1 ——召喚
どうも。作者です。
7DTDの方が早くもマンネリ化してきたので気分転換に筆を動かした作品です。なのでその程度のクオリティでしかありません。此方も気に入らないようなら回れ右のみお願いします。
因みにコンセプトは『短く、分かりやすく、下っ端娯楽』 それなりに楽しんで頂ければ幸いです。
では本編、どうぞ。
——声が聞こえる。
突如として存在し覚醒した意識を繋ぎ止めるように草原に立ち尽くしている青年は、目を見開いた。
その網膜に投影される映像はハッキリ言って、映画の世界。レンガ造りの城のような建物を中心に、幾つかの塔が建っており、遠くには門も見える。
自分が先ほどまでいた場所とは違う光景に、何として状況を呑み込めていない青年は、こう思った。
——ビールでも呑むか。
もはや錯乱状態である。
しかし、そんな状態もすぐに終焉を迎える事となる。
「kwbys^wsゅ!!」
謎の言語を喋るピンク色の髪の少女に、いきなり近寄られ、青年の口元に自身の唇を近づけて来たのだ。
この行動には、流石の青年もバックステップを取り、ギリギリの所で回避した。現実逃避をしたらこれである、青年には彼女が何を考えているのか、訳が分からなかった。
ひとまず、例のピンク少女からは距離を取って警戒しておく事にする。この少女は危険だ、主に貞操的に。
ピンク色の少女を視界に入れながら、辺りを見渡してみる。するとなんと言う事だろう、周りに陣取っている人間全てがローブのようなものを羽織り、まるで何処かのカルト集団のようである。
そもそも、何故自分はこんな所にいるのだろうかと青年は思考を回す。もしや此奴らが拉致したのかも知れないと、微かに青年の脳裏に嫌なビジョンが映った。
「whzくあbwmk?」
ふと声を掛けられ、少し警戒しながら振り向くとそこには、(物理的に)頭が可哀そうな中年がいた。何かもの申し訳ないような顔をしているが、どうしたのだろう。
そうして中年の事を確認すると、周りの景色も事細かく見えてきた。目の前の男が冴えない顔をしているのと、先ほどのピンク色の顔が赤くなっているのは恐らく、自分の所為なのだろうと理解する。
何故なら、周りに陣取ったギャラリーが自分とピンク色を指差して笑っていたから。
何がおかしいのだ、ムキになって言い返そうかと言う考えが思い浮かぶが、すぐさま考え直す。こう言った輩は話を聞かない。自身の信じる事柄しか目に見えていないから、当然である。
この場に青年の出る幕など、ありはしない。行く宛はないが、行動しない訳にも行かないだろう。
青年は背を向けて、その場を立ち去ろうとした。が、その目論見は失敗する事となる。
「……!!」
突然ピンク色が進行方向へと回り込み、自身の口元へと接吻してきたからだ。あくびをかきながら振り向いたため、少し油断していたのだろう。愚かである、少しの油断が命取りだという言葉を知っている、軍人として。
しかし、悲劇の失敗劇は止まらない。
自身の胸元に、焼け焦げるような熱量が襲って来たのだ。マグマの中に数時間溶かしていた棒切れを勢いよく心臓に突き刺すような気分、青年は急激に立ち眩み、目眩と頭痛のダブルパンチが直撃する。
なんとか寄りかかろうと適当な場所に手を掛ける。左手は未だに胸元を抑え、自身は鬼の形相。そんな物が寄りかかったモノとは。
先ほどのピンク少女だった。
——ああ、だめだ。
軍人として生きてきた勘が言っている。自分がここまで弱るのは、いつ振りだろうかと。そんな目にあった場合、どんな対処をしていただろうかと。
しかし、青年がとる行動は何もない。何も出来ない。手も足も出ないとは、この事である。
「……ちょっ……大丈——ぇ!……」
歪んだ視界にピンク色の少女が映るが、生憎と音声映像ともにノイズが走っており、理解する事は出来なかった。
青年は少しばかりの恐怖を感じながら、深淵へと沈んだ。
作者「さあ、おゆき。
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Act2 ——保健室(仮)
気分で投稿しています。
——さて、状況を掴もうか。
良い心地のベッドに寝かされていた青年はふとした拍子に目を覚まし、すぐさま周りを確認した。
回りには何やら液体の入った小瓶やら、包帯やら何やらが入った木棚や自身が横になっているものと同じベッド、小さなイスのようなものもある。
そして、その小さなイスに座っている頭が可哀そうな中年男性。彼は誰だろうか。
なんとかしてコミュニケーションを取ろうと思ったが……残念な事に、嫌な記憶が蘇ってきた。彼は自分とは違う謎の言語を喋る。まるで礁賊の意味不言語のように。コミュニケーションは取れないのだ。
「……ん、ああ、目が覚めましたか。どうですか、体調は?」
と、思ったが。どうやら話自体は通じるらしい。通じるならば通じるでさっきの時点でちゃんと喋って欲しいものだ。
ひとまず青年は此処が何処か尋ねる事にした。
「此処ですか? ここはトリステイン魔法学院です。そして貴方はここの生徒によって使い魔に召喚された人間、と言った所ですね」
……使い魔だと? それに魔法とはどういう事だ。
彼の言葉を聞いた瞬間そう問いただした。使い魔というのは青年でも分かる。魔女とかが使役しているコウモリとか、そういう類の奴だ。
そして彼は今、魔法学院と言った。使い魔の事といい魔法学院と言い、まさかここは魔法を学ぶ学校とでも言うのか。
「ええ、その通りです。私たちはメイジですから、当然ですよ」
またしても意味不明なワードが飛び出してきた。
メイジ、知らない言葉だ。恐らくだが、魔法使いに類似する言葉だろうと言うのは、この場所から何となく分かる。
が、納得は出来ない。魔法があるなど。そんな不思議世界に何故自分が迷い込まなければいけないのだと。
怒りが沸点し、自分の体温が急激に上昇するのが感じる。それはさながら、マグマを噴射しようとしている火山のようだ。
「……!!」
しかし、熱量の暴走は止まる事が無い。身体中が焼けるように熱く、酸欠のような症状が続く。それは青年が冷静さを取り戻した今でも変わらない。
そう、この熱量の暴走は怒りによるものでは無い。他の何かが、青年の身体を焼き壊そうとしているのだ。
「だ、大丈夫ですかッ!?」
青年の異変を感じ取った中年はすぐさま液体の入った瓶を手に取り、青年の衣服を脱がせ始める。
深碧のオーバーコートを脱がし、中に着ているワイシャツ他諸々も脱がせるとそこには、驚愕の事実が待っていた。
青年の胸元に中年男性——コルベール教員でも見た事が無いルーンがぎっしりと、何重に繋がり交差して刻まれているのだ。しかも、見るからに痛々しい血の赤文字で描かれており、更にはそこから血滴がポタポタと垂れ溢れている。
「……!! ちょ、ちょっと待っていて下さい!! 今すぐ水メイジを連れて来ますッ!!」
自分の所持する薬では効き目がない、返って逆効果だと判断したコルベールはすぐさま部屋の入り口の方へと駆け出す。
綺麗な作りのドアを乱暴に開けて、ドアの一片が勢いよく壁に激突する。しかしその際に発せられた音が青年の耳の中に入る事は無い。
何故なら青年の頭の中はグチャグチャになっていたから。
「……ッ!」
意味不明の言語に、知りもしない魔法などの知識、体術の使い方など、知りもしない知識や既に体得している知識など、種類様々な知識が脳内にインストール、すぐさま投影される。
脳内に映し出された無数の画面が一瞬になって消えていく。が、その瞬間に青年の頭に急激が痛みが走り、その情報が強制的に叩き込まれる。
しかし、悲劇が終わらない。画面は消えるとすぐさま新しい画面が登場。此方もすぐさま消え去り、脳味噌にダメージを当たえて1秒しないで消え去る。そしてまた画面が出てくる。
中年男性が何かを連れて来ると言っていたが、それを頼りに出来るような余裕は既に、青年には無かった。
——意識が薄れていく……
青年の視界が徐々に歪んで行く。フラフラと頭が揺れ出し、それを抑えようと右手を動かす。が、その頼みの綱である右手、右腕までも言う事を聞かずにブルブルと揺れるだけ。
何も出来ないと理解した青年は、抵抗することを辞めた。自分は何か、大きな何かに取り憑かれているのだと、理解したから。
最後に意識が消え失せる前、青年は静かに自身を此処へ連れて来た、名も姿も知らぬ他人を呪った。
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Act3 ——目覚めとウインドウ
青年が次に目を覚ましたのは、またしてもあのベット部屋だった。先ほどと違う点と言えば、窓辺から月明かりが注いでいる事と、中年男性の他にピンク色の少女がいる事だろう。
ひとまず、先ほど中年男性に声を掛ける。
「……! 目が覚めたのですね、ミスタッ!!」
言っておくが青年の名前はミスタではない。となるとミスタとは青年の、または男性に対する仮称なのかも知れない。
心底嬉しそうな表情をしている中年男性に、とりあえずは大丈夫だと伝える。
「そうですか、それは良かった……!!」
「……」
だんまりを貫くピンク色の表情が優れないが、今は無視しておく。
それよりも、と言って青年は話題を切り出した。自身が使い魔として呼び出された魔法は『コントラクト・サーヴァント』で合っているか、と。
すると中年男性は驚いたような表情で返す。
「なんと、そこまで分かっているのですか。平民でありながらそこまでの知識を……って、え?」
そこまで至って中年男性は考えを改める。
自身は今までこのピンク色の少女——ルイズが使い魔として召喚したこの青年は、あくまで平民だと思っていた。
しかし、呪文の種類までもを当てられるとなると、話は別だ。この青年は何処かのメイジである可能性がある。下手に出るのはマズい。
「あんた、なに者? 今朝まで意味不明な言葉だったのに今はちゃんと喋べれてるし」
しかし、そんなコルベールの危惧は目の前の少女、ルイズには分からなかった。あくまで青年は平民だと思っていたからだ。
しかし、青年はルイズの言葉には答えない。彼は彼で、目の前の事柄に夢中だったから。具体的には、自身の目の前に展開するウインドウに。
——これは……なんだ?
目の前に表示される画面に青年は、深い違和感を感じた。画面に表示されるは何かの訓練施設や機械工場が立ち並ぶ街並み。そしてこの街並みに青年は懐かしみを覚えていた。何しろ目の前のこれは、自分が今までいた基地の、航空写真と一致していたから。
懐かしみに負けてそのウインドウへと手を出した。
「!? な、何するのよッ!」
手を伸ばした方向、画面の後ろ側にて例のピンク少女が騒いでいるが、青年には関係ない。構わず手を伸ばした。
すると……半透明のそのウインドウに、青年に手が触れた。これは、青年が触れることが出来るのだ。
それと同時に知識が浮かび上がる。これは、どのように使うのか。
早速実行しようと手を動かすが。
「……!!」
何故かピンク少女に指先を噛まれた。これには流石の青年も悶える。指が、指がぁ! と何処かの大佐と同じような行動は流石に、取らなかった。
痛みを我慢しながら少女を深く艶い真黄の瞳で見つめる。いわゆるジト目という奴だ。
「な、何よ! 使い魔のくせに文句あるの!?」
少女は強気な姿勢は崩さない。ビクビクしながらも、プライドが許さない、という事か。
何となく、青年は彼女に仲間意識を持った。それと同時に、ワクワク感も湧いて来た。
故に、青年は答える。使い魔の件、宜しく頼むと。
「え? えっと……あ、当たり前よ! 主人だもの!」
彼女の強気な姿勢を心頼もしく感じ、ぽろっと笑顔が溢れ出す。こんな楽しそうな奴は、自分たちの所でもちゃんとやっていけそうだな、と。
青年はふと窓辺の方を見つめた。その先には真っ赤に輝く赤の月と、真っ青に輝く青の月、現実ではあり得ない2つの月があった。
——俺は、ここにいるぞ……
それは、誰に向けてのメッセージなのか、誰にも分からない。
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Act4 ——使い魔の仕事
場所は変わってここは、ルイズの私室。綺麗に丁寧に使われているであろう棚などの家具は未だに、傷は少ない。
そんな場所の一角で、青年はピンク色少女——ルイズと話を交わしていた。
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。使い魔である貴方のご主人様よ、ちゃんとご主人様って呼びなさい」
——了解。
因みに先ほどの医務室を出る前に、各員はちゃんと話し合っている。青年は自分の名前を【タイイ】と称して仮称を教え、自分は此処とは違う世界から来たであろうという事も伝えた。まあ、信じられてはいないようだが。
因みに青年——【タイイ】は今日この度使い魔となった。生きて初めての体験である、人間でありながら魔のモノとなるのは。
使い魔になったのは理由がある。一つはルイズは自分を使い魔に出来なければ進学出来ないという事。一つは自分はこの世界では寄る宛てがないという事。タイイを決断へと導いたのは後者である。理不尽なり。
「それじゃ、使い魔のあんたに使い魔の仕事を説明するわ」
唐突にルイズが話の話題を切り替えた。今までルイズがタイイに行ってきた地理や歴史についての話は、ひと段落ついたらしい。最低限の事は伝えたという訳だ。
さて、次はタイイ自身の仕事についてだ。
「まず、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるわ。視覚聴覚の共有化と言った方が良いわね」
でも、と言ってルイズは顔を顰める。その顔には、落胆の意志が現れていた。
「残念だけど、何も見えないわね。人間の使い魔だからかしら?」
どうやらそんな能力は与えられなかったらしい。使いこなせば面白い物だと思うのだが。共有化、実に面白そうである。
他には? と言って続きを催促する。
「次に挙げられるのは秘薬の材料集めね。けど……あんた、何も知らないんでしょう?」
魔法の事は知ってる癖に、と余計な尾ひれがついたが、だいたいはその通りである。何故なら、ここは魔法が存在する不思議世界、タイイのいた世界では銃と戦争だらけの世界だったのだ。住む世界が違う。
だからタイイから言えば秘薬と言われてもよく分からないし、どんなものが材料なのか、検討もつかない。まあ、調達マラソンも面白そうであると感じてはいるが。
「最後に挙げるとすれば、主人である私を守る事ね。……でも、あんた戦えるの?」
怪しむように覗き込む彼女に勿論だ、と言って胸を叩いて誇らしげな表情をする。
タイイはこれでも『大尉』である。軍人として戦闘・戦術・戦略のノウハウは学んでいる。一対一の戦いでもそれなりに活躍できるし、指揮も出来る。というかタイイの本領は部隊指揮である。
軍人であるからには、戦闘に関してがスペシャリストと言えるだろう。
「ふーん、そうなの。じゃ、ちょっとだけ期待しててあげるわ」
任せておけ、と良好の返事をして、この会話を終了させる。仕事のうち上記2つは無理そうだが、戦闘に関してはそれなりのものはある。頭の中にある情報通りならば、自身は一軍に匹敵する力を有する事となる。
——やはり、自分には戦いが似合っているのかもな。
そんな考えは、青赤の月光の中へと消えて行った。
余談だが、ルイズが就寝する前にタイイはルイズの衣服を洗うように言われた。あんたみたいな使えない使い魔は雑用してなさいとは、ルイズの談である。
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