魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者- (零式機龍)
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キャラ設定
キャラ紹介1(10話時点)


今更ながらのキャラ紹介。

※注意

一応、魔法うんぬんの話は、10話時点での設定ですので、
なるべくなら、そこまで読んでから見て頂いた方がいいかもしれません。

まぁ先に読んでも、そこまで支障は無いと思いますが。


○神代 祐介(かみしろ ゆうすけ)

 

年齢    :9歳

デバイス(?):美月

魔力光   :緑銀(グリーンシルバーとかシルバーグリーンとも)

 

本作の主人公。ここ1年より前の記憶を失っている。

その割には、自己存在崩壊(アイデンティティクライシス)も起こさずに平然としているのだが。

よくよく図太い神経をしてるものである。

性格は至って平々凡々(のつもり)。熱血でもなく根暗でもなく。お人好しでも卑屈でもなし。

物事を多少理屈っぽく考えてしまう傾向はあるが、基本的にはいいかげんに生きている。

 

何故か(なのはSSなら大抵そうだろうけど)魔力資質に恵まれ、

これまでに知られている魔導技術とは異なる魔法を使う。

既知の(厳密には祐介が知っている訳ではないが)機械的なものを顕現させ、使用する事ができる。

使用する機鋼は、無機・有機・霊的等を問わない(つまりメカっぽければ何でもよし)。

バリアジャケットは薄いグレー地に薄い紫のラインの入るロングコート。

 

何故記憶は失われたのか、機鋼を操る魔法が使えるのはどうしてか、

それは未だ不明である(機鋼に関してはただの作者の趣味ともいう)。

 

 

 

○美月(みつき)

 

祐介の相棒たる翡翠色のクリスタル。

機鋼の力を秘めていたり出自が不明だったりと、色々と謎な存在。

ボケたりツッコんだりと、祐介とはいいコンビである。

元々、祐介の父、誠が持っていたものらしいが、入手した経緯などは不明である。

 

 

 

○神代 咲(かみしろ さき)

 

年齢   :11歳

 

祐介の姉。

神代家の料理長。家事は基本的に各々当番制ではあるが、食事はほとんど咲の担当である。

 

性格は基本温厚。でも芯は強く、困難にめげない。

少々ブラコン気味?(になる予定)

何故か妄想が膨らみ、作者の中ではそんな設定に。その設定が活きる時はくるのか・・・

 

初期設定では存在しなかったお姉ちゃん。

急遽追加されたキャラであるせいか出番が少ない・・・

 

 

 

○神代 真弓(かみしろ まゆみ)

 

年齢   :秘匿(まぁ子供の年齢から大体想像つk)

 

祐介の母。

一言で言い表すなら・・・肝っ玉母ちゃん。

神代家はみんなそうだが、物事に前向きである。

一家の大将である真弓も、生活を支えるべく毎日頑張っている。

子供たちを愛し、信じ、見守る、かっこいいお母様。

 

家事は万能だが、唯一料理だけはできない。・・・なんでそんな設定つけたんだろ?

 

 

 

○神代 誠(かみしろ まこと)

 

祐介の父。故人。

1年前に、祐介と共に原因不明の事故に遭い、祐介を庇い命を落とす。

 

彼のモットーである、

「過去を忘れるつもりはない。

 過去に縛られるつもりもない。

 人生とは常に前へと進むものだから」

は、神代家の家訓となっている。なにげに度々でてくるなぁ。

 

祐介に渡るまで美月を持っていた誠だが、その正体を知っていたかは不明である。

ただのお守りだったかもしれん・・・

 

 

 

 

 

 ⇒第11話 それぞれの誓いを胸にして



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キャラ紹介2(16話時点)

注意!!

キャラ紹介1と違って、かなり設定のネタばれが含まれます。
なので先に、16話まで読んで頂ければ幸いです。


○神代 祐介(かみしろ ゆうすけ)

(16話終了時点)

 

誠の遺言メッセージにより、自分の出生の秘密を知る。

 

プロジェクトF(プレシアの完成させたものではなく、未完成状態)により

生み出された人造魔導師だった。オリジナルは父である誠。

・・・父どころかクローンかよ、と思うなかれ。

フェイトとアリシアが別人であるように、祐介と誠も別の人間なのだ!

 

F理論が未完成だった故か、当初(0話より前)は精神に異常があったが、

セキレア(美月)の稼働により精神は安定。

誠の施した記憶封印を解き、勇輔の記憶を継承し、自分のものとした。

これにより、作者程度にはヲタ知識を身に付け、機鋼能力をより発揮できるようになった。

 

以前までとの違いは、簡単に挙げれば、

 1.能力顕現の高速化

    今までは、美月にアクセス⇒美月がデータベースを検索⇒祐介にフィードバック

    という手順があったが、現在は祐介自身に機鋼の記憶があるので、

    直接データベースから呼び出す事ができる。

 2.機鋼能力の多様化

    単純に、使える機鋼が増えた。

 3.新たな顕現方法

    これも、機鋼の記憶無しには使用できない。

    16話での披露、形態変化(チェンジモード)

    これまでの付与(エンチャント)のように、機械の能力を顕現するだけでなく、

    自分が機鋼となる。まぁ単純に、ロボに変身できると思っていただければ。

    ただ、変化できるのは、人型ロボに留まらない。

    車だろうが戦艦だろうが飛行機だろうが、祐介がイメージできるものなら変化できる。

    ・・・実用的かはさておき。

 

勇輔の記憶とはいえ、祐介にとっては自分の記憶と変わらない。

そのため、性格はたいして変化していない。

少しヲタっぽくなっただけである。

 

 

 

○美月

 

祐介と同じように、誠のメッセージで己の正体を知る。

 

正式名称、セキレアシステム・術者補佐AI機構。

古代、機械・魔導ともに発達した世界で生まれた、機械能力擬似発揮魔力端末。

まぁ、ぶっちゃけロストロギアみたいなモノである。

セキレアシステムは、術者(祐介)・セキレアコア(祐介のリンカーコアと同化している)・

セキレアデータベース・AI(美月)で構成される。

データベースには、人の精神がインストールされる。

データベースとなったのは、当時瀕死だった勇輔。

祐介の振るう機鋼の力は、勇輔の持っていた情報によって発揮されるのだ。

 

彼女も、勇輔のヲタ知識を吸収している。

以前よりもボケやツッコミがネタっぽくなることだろう(作者が忘れなければ)。

 

 

 

○神代 誠(かみしろ まこと)

 

祐介の父。

なんと実はミッドチルダ出身だった。

本名はマコト・ホンダ。

名前の由来は、単純にHONDA。

 

友人に騙され、違法組織の研究員となる。

そしてセキレアシステムを研究。実験過程で勇輔と邂逅。

後に、自分を元とした人造魔導師の存在を知り、その子を連れて組織を脱走。

97管理外世界にて神代 真弓と出会う。

そして1年前、事故から祐介を庇い逝去。

 

生きてたら、祐介は出生の秘密を知る機会があったのか・・・

ひょっとしたら、ずっと秘密だったかもしれん。今となっては分からない。

 

 

 

○群星 勇輔(むらほし ゆうすけ)

 

セキレアシステムの被験者として、時空を越えて召喚された青年。

名前の由来は、SUBARU ⇒ 昴 ⇒ 群れ星 ⇒群星 。

 

趣味はマンガ・アニメ・ゲーム等。

召喚時に事故があったのか、それとも他の要因か、

研究所に出現した時には、瀕死の重傷を負っていた。

マコトの願いが聞き入れられ、手当てを受け・・・

と見せかけて、セキレアシステムのデータベースとされてしまう。

魔力資質もあったらしい。

まぁ本来は、セキレアの術者とするために召喚された訳だから当然か。

 

もし彼が無趣味な一般人だったら・・・

データベース化されても、セキレアは使い物にならなかったかもしれん・・・・・・

 

 

 

 ⇒第17話 告げられる始まり

 

 



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プロローグ的な?
第0話 目覚めし少年と翡翠の石


 

 

 

人生なんて何があるか分かったもんじゃない。

未来予測? そんなの誰にもできっこない。

不慮の事態なんてものは、ごくごくありふれたものだ。

でも、どんな人生を歩もうと、納得できる生き方が出来ればそれでいいと思う。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第0話 目覚めし少年と翡翠の石

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ふと、目を開ける。

しかし違和感。いまいち状況が掴めない。

 

「・・・・・・ここは何処?わたしは誰?」

 

とりあえず言ってみる。・・・・・・が、返事はない。

 

起き上がって、辺りを見回してみる。

白いカーテン。自分の座っているのは白いベッド。傍のテーブルに飾られた花。

て事は、病院か? 何故ここに寝かされているのかは分からんが。

 

次は自身の確認を。

頭。少しボーッとしてるが、寝起きであるせいだろう。

首から下。問題なく動く。小さい指先も、短い手足も問題ない。

ふむ・・・・・・どー見ても、自分はちみっ子である。

 

   ガラララララッ

 

扉の音に振り向く。入り口には女性が1人。あ、こっち見て固まった。

と、とりあえず状況を確認したい。

 

「あ、あの・・・」

「ゆ、祐介ぇぇぇーーーーっ!!」

「どわあぁぁっ!?」

 

いきなり走りこんで来てハグですか!?

ちょ、キツイ、苦しいっす・・・!!

 

とにかく腕をバシバシ叩き、開放を要求。

あぁ、と我に返り腕の力を緩める(意外と逞しい)女性の方。死ぬかと思った・・・

 

「祐介、大丈夫? 痛いところは無い?

 まだ頭が変とか、手とか足とか動かないとか無い?」

 

早口で捲し立てるこの方。とても心配してくれてるのは、その姿勢から分かる。

が、今の僕に言えるのはこの一言しかないわけで・・・

 

「あー、えーと・・・どちら様でしょうか?」

 

空気が死んだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「記憶喪失、というヤツかねぇ・・・」

 

目の前のツルツル先生が呟く。

先ほどの女性が大騒ぎしてくれたお陰で、僕はわりと冷静になっていた。

あれから10分後、駆け付けた医師(見事な頭だった)に、検査・問診を受ける事になったのだ。

正直いってマジで記憶が無いため、分からない、だらけの問診だったが。

自分の事、周囲の状況、人間関係などなどは完全に出てこない。

しかし一般知識は割と充実。なんとも珍妙な話である。

 

記憶喪失・・・ねぇ。

何はともあれ、現在命に別状はないらしい。

かといって周りの事が分からないというのは落ち着かないものである。

 

「あの・・・できれば色々と教えてもらいたんですけど・・・」

「ああ、そうだね・・・

 まず、あんたの名前。あんたは『神代 祐介』。小学2年生の8歳。

 で、アタシは『神代 真弓』。あんたの母親、ね」

「お母、さん・・・?」

「そんな『お母さん』、なんて。母さんでいいのに」

「君は2日前、家屋の倒壊事故に巻き込まれて、この病院に搬送されたんだ。

 奇跡的に軽傷だったんだが、ずっと意識が無くってね・・・

 さっき、ようやく目覚めたと言う訳さ」

 

先生が状況を補足してくれる。

事故・・・か。頭でも打って記憶喪失になったとか?

 

「にしても・・・」

 

ふと、真弓さん、いや母さんか・・・が呟く。

って泣いてる!? え!? 僕なんかしたっけ!?

 

「ちょ、お母・・・母さん!?」

「あんたがそんなに喋ってるなんて初めて見るよ・・・

 いつも、必要な事だけを淡々と言う子だったから・・・

 なんか・・・嬉しくって・・・」

「母さん・・・」

 

ちっと涙腺が潤む。

そんな泣笑い顔で言われたら、こっちが感極まってしまいそうだ。

 

以前の僕はどんなヤツだったんだろう・・・

親とのコミュニケーションすら碌にしてなかったのか。

記憶の無い自分に腹が立つ。この親不孝者め。

 

「でも、あんたが元気に目を覚ましてくれて、ホントに良かった。

 父さんのお守りのお陰かな・・・」

 

言って、僕の首元に目を見やる。

そこには、菱形をした翡翠色のクリスタルが

金色の地金に嵌め込まれたペンダントが架けられていた。

 

「そのペンダントは、あんたの父さん『神代 誠』さんが持ってた物でね。

 いつも大事にしてたよ。・・・今となっては形見になっちゃったけどね・・・」

「父さんの・・・お守り・・・・・・

 って形見!? ということは・・・・・・」

「・・・事故現場には父さんもいてね・・・・・・あんたにお守りを押し付けて、

 瓦礫から押しのけるように手を伸ばしていたそうだよ・・・・・・」

 

・・・・・・ッ! 父さんが・・・僕を庇って・・・・・・

頭を殴られたかのような感覚。

顔も覚えていないとはいえ、父さんの死は僕にとって大きなショックだ。

知らず、涙が流れる。

 

「そんな・・・僕のせ―――」

「言っとくけど、自分のせいだなんて思ったら大間違いだよ。

 自分が代わりになってればとか思う位なら、精一杯生きなさい。

 父さんに守られた命、大事に生きてこそ恩返しになるものなんだから・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・分かったよ・・・」

 

2人とも涙を拭う。

 

父さん・・・守ってくれてありがとう・・・

なのに、それを覚えてないのはごめん・・・

でも、僕は生きようと思う・・・この命、大事に・・・

自分でも、父さんから見ても納得できるよう生きるから・・・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5日後、僕は病院の正面入り口で、先生方に見送られていた。

精密な検査の結果も問題なく、元気だったので退院が許可されたのだ。

しかし・・・

 

「本当に1人で大丈夫かね? 記憶の無い子供1人だなんて、危ないと思うんだがねぇ」

「まぁ、地図で自宅の場所は分かりましたし。

 タクシーも呼んでもらったんで、大丈夫だと思います」

 

そう、1人だ。先生方も呆れていらっしゃる。

普通は付き添いの人間がいるだろうに・・・

え? 母さん?

 

『ひと足先に帰って、お迎え準備しとくからー!

 記憶が無いって言ったって、それだけしっかりしてれば大丈夫でしょ。

 姉ちゃんと一緒に待ってるからねー。早く帰ってくるのよー』

 

とか言ってましたね、確か。

なんともあっけらかんとした性格である。

ん? あぁ、姉さんの話? そう、僕には2つ年上の姉がいるらしい。

とは言っても、僕の感覚では会ったことがない訳だが・・・

この数日、ずっと家に篭ってるらしい。

・・・・・・やっぱり、ショックだったんだろうな・・・父さんの事・・・・・・

母さんだって、父さんの事で色々と心労はあるんだろうけど・・・

 

『「過去を忘れるつもりはない。過去に縛られるつもりもない。

  人生とは常に前へと進むものだから」

 ・・・・・・父さんの言ってた事だよ。

 だからアタシも、前向きに行こうと思うんだよ。あんた達のためにもね』

 

と言って、明るく振舞ってくれていた。

だから僕も見習おうと思う。母さんの様にできなくても、姉さんを元気づけたい。

・・・よし、帰ろう!

 

「それでは、お世話になりました!」

 

そう言って、みんなに礼をする。

みんなの拍手を背にタクシーに乗り込み、行き先を告げ、まだ見ぬ自宅へ向かう。

さてさて・・・これからどうなる事やら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十数分後、とあるマンションのとある部屋の前。

 

「ここ・・・か」

 

表札には『神代』の文字。

あー、無駄に緊張するなぁ・・・

 

意を決してチャイムを鳴らす。

・・・・・・反応なし。

もう一度鳴らす。

・・・・・・・・・・・・やはり反応がない。

ドアを開ける。

あっさりと扉が開く。鍵かけろよ、無用心な。

・・・てか、とーっても静かなんですが。どゆこと?

とにかく、廊下を歩き、正面ドアへ。恐らくリビングなのだろう。

ゆっくりとドアを開け、踏み込んだところで・・・・・・

 

パーンッ! パカパカーンッ!! パカーンッ!!

「のわッ!!?」

 

響く破裂音に思わずのけぞる。

・・・・・・えーと、クラッカー・・・?

 

「おっかえりー、祐介。どう? 初自宅の感想は」

 

おいおい・・・テンション高いな、母さん。

自宅感想といっても・・・正直、家は普通としか言えん。

 

「感想は特に無し! てか何なのさ、この騒ぎは。

 お迎え準備ってコレ? ちと大げさ・・・」

「なーに言ってんの、つれないわねー。

 あんたの快気祝いだってのにー」

 

言って、キッチンへと向かう母さん。

と、横で驚きの表情でこちらを見ているお方が1人。

母さんに良く似ているところから察しますと・・・

こちらがお姉さまでいらっしゃいましょうか?

 

「あー、えと、姉さん・・・?」

「驚いた・・・本当に普通に喋ってるなんて・・・

 一応自己紹介はした方がいいのかな?

 私は『神代 咲』。あなたの姉よ。

 改めて、っていうのは変だけど、よろしくね、祐介」

「あ、うん。よろしく、姉さん」

 

・・・・・・元気に振舞ってはいるが、少し憔悴した感が見て取れる。

だからだろうか、言うべき事は決まっていなかったが、何か言わずにはいられなかった。

 

「姉さん・・・父さんの事は・・・・・・」

「・・・分かってる・・・・・・」

 

少し寂しそうに、それでも微笑みながら言う。

 

「父さんはもう帰ってこない・・・

 でもね、私も母さんと同じなの。前向きに行きたい。

 今はまだ空元気でも、きっといつか心から笑える日が来るって思いたいの」

 

・・・・・・そう、そうなのだ。

みんな、決して小さくはない傷を心に負った。

でも・・・それでも僕たちは、前に進まなきゃいけない。

だから僕は、笑って頷いた。

 

「ちょっとー、まだー? もう準備出来てるんだからー」

 

向こうから母さんの声が聞こえる。

 

「待ってるわね。行きましょ」

「そうだね。なんか飢えた声だけど」

 

2人で苦笑しながらテーブルへと向かった。

 

 

 

 

 

「さー、祝・祐介退院パーティー始めるわよー!!」

 

そう言ってテーブルを示す母さん。

その上には様々な料理が・・・あるのだが・・・

 

「一応聞いておくよ・・・母さん、料理に関するスキルは?」

「無いわよ?」

「躊躇い無く言い切りましたよ!?」

 

テーブルの上には、スーパーの惣菜や冷凍食品が所狭しと並んでいた・・・

あ、でも一部に手作りであろうおかずが存在している。

ということは・・・

 

「姉さん・・・次からは、僕も少しは手伝うから・・・」

「うん・・・ありがと・・・」

 

ちょっと疲れた表情で頷く姉さん。

食事に関しては苦労人だったのね。

 

「なーにしてんのー? 早く食べないと無くなるわよー!」

 

もう食ってるし!?

 

・・・なお、本人の名誉のために補足しておくが、

母さんは料理以外の家事スキルは万能だった・・・・・・

 

 

 

 

 

その後は、まぁドタバタと騒いだ訳だ。

母さんとの料理争奪戦が勃発したり、姉さんの学校の話を聞いたり・・・

初めての家族団欒といっても過言ではない・・・そうな。

まぁ、覚えてはないケド、以前の僕は半端なく人形然としてたらしい・・・

記憶が戻るかは分からないが、この家族が一緒なら何が起きても大丈夫、そんな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングを片付け、それぞれ寝室に向かう。

退院やらパーティーやら色々あって疲れたなぁ、寝よ寝よ。

 

が、僕にとっての事件は、まだ終わっていなかったのだ・・・

寝るために着替え、形見のネックレスを外し脇に置こうとした時、それは聞こえた。

 

「あのー、ちょっと待って下さい。わたしの話、聞いてくれませんか?」

「・・・・・・は?」

 

ちょっと待て、今の声、何処から聞こえた?

部屋には誰もいない。母さんも姉さんも、もう自分の部屋に戻ったはず。

 

「幻聴か? そうか幻聴か。なら問題ない。寝よう寝よう」

「ってこら~! 勝手に自己完結しないで!!話聞いて下さいってば!!」

「・・・何処だよ? 声の主」

「手の中ですー! てぇのぉなぁかぁ~!」

 

はい? 手の中って・・・

翡翠色のクリスタルがキラリと輝く。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

あれか? ひょっとしてこのペンダントは超近代型の通s・・・

 

「言っときますけど、通信機とかじゃないですよ。」

「地の文を読むな。じゃあ何者なんだよ、今喋ってるのは」

「・・・・・・さぁ?」

「一応聞いとくが、ふざけてんじゃないよな・・・?」

「ち、違いますよー! ホントに分からないんですってばぁ!!」

 

なんなんだ、この摩訶不思議な石は・・・・・・謎すぎるぞ。

実は恐ろしい過去の怨念が封じられていました、とかだったら洒落にならないよ!?

 

「・・・・・・祟らない・・・?」

そんな事しません!! っていうか幽霊とかじゃないですよ!!

 ・・・・・・多分

「多分!? 今、多分って言った!?」

「私だって分からないんですからしょうがないじゃないですかぁ!

 とりあえず分かってるのは、この宝石が良く分からない構造である事、

 自分の意識がある事、ここ1週間の身の回りの出来事・・・

 それくらいなんですよぉ!」

「構造が謎って・・・そんな『分からないという事が分かった』みたいに言うなよ。

 意識の始めは・・・1週間前・・・父さんが死んだときくらいか・・・・・・」

「・・・・・・ちょうどそのくらいです。周囲の情報の収集と整理に時間がかかり、

 ようやく会話ができるまでにこぎつけたんです」

「じゃあ僕や周りの事は、もう分かってるんだ? 記憶喪失の事とか・・・」

「ええ、まぁ。過去の記憶がないのは私も一緒ですが」

 

そうか・・・まぁ説明をする必要がないのは助かる。面倒だし。

 

「それで? これからお前はどうするつもりなんだ?」

「正直私だけでは何ともなりませんし。何かあてがある訳でもないので・・・」

「そっか・・・・・・

 じゃあ、とりあえず現状維持でいい? お前が嫌じゃなければ、このまま一緒で。

 記憶のない者どうし、仲良くしようじゃない」

「は・・・はい! こちらこそ、よろしくお願いします!!」

 

僕もそうだけど・・・不思議すぎる展開の割に、すんなりと現状を受け入れてるな。

記憶がないって、神経が図太くなる事・・・じゃないよな? 別に困らないからいいけど。

 

「それはそうと・・・今更だが、お前の名前を訊いてなかったな」

「名前・・・ですか?

 記憶がないんで分かりませんよ。

 そうだ! 祐介がつけて下さい。わたしの名前!」

「え!? 僕が?

 参ったなぁ・・・名付けのセンスなんて自信ないよ」

 

言いつつ、窓の外を見やる。

空にはちょうど、白い月が浮かんでいた。

 

暫し見とれる。

 

「月、か・・・うん、美月。お前の名前は美月だ! いいだろう?」

「美月・・・はい! 気に入りました!」

「そうか、良かった。

 これから・・・よろしくな、美月」

 

 

 

 

 

こうして僕は、月の夜に、新たな出会いをしたわけだが・・・

美月がいなかったら、人生は丸っきり変わってただろうなぁ。

自分で言うのもなんだが、正直、普通~っな生活を送った事だろう。

 

まぁ何にせよ、この出会いが僕の人生において、大きなファクターを占めていた事は間違いない。

これが、その後の数奇な生活に繋がっていったのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

      第0話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「・・・なんで座談会チックに?」

美月「他のSS読んでて楽しそうだったから、だそうですよ?

   まぁ、もともと自己満足で書き始めた物なんですし、いいんじゃないですか」

祐介「そんなもんかね・・・で、一体ここでは何を扱うんだ?」

美月「設定説明とか、言い訳とか、裏話・・・とか?」

祐介「裏話ってなんだよ・・・

   よし、ではまず言い訳を聞こうか。何で僕や美月は記憶喪失に?」

美月「あ、ここに作者からのカンペがあります。

   えーと・・・・・・便利だから、だそうです・・・

   当初は記憶喪失じゃなかったそうですが、この方が都合が良かったそうで」

祐介「その割には何回も改訂してるな・・・」

美月「妄想し過ぎて、収拾がつかないみたいですよ。

   これ、ちゃんと完結するんですかね・・・?」

祐介「不安だ・・・激しく不安だ・・・・・・」

 

 

 



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無印編
第1話 それは不思議な出会い、と言えなくもない?


 

 

 

夢うつつの中・・・・・・誰かの声が聞こえる・・・・・・

 

   ――――・・・れか・・・

   ・・・くの・・・・・・いて・・・

     ・・・らをかし・・・

       ・・・うの・・・・・・からを・・・―――

 

・・・誰だ・・・? 何を言って・・・・・・?

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第1話 それは不思議な出会い、と言えなくもない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン・・・チュンチュン・・・

 

「祐介ー 朝ですよー。起きて下さーい」

「んむぅ・・・あいよー・・・」

 

今日もいつもの様に美月に起こされ起床。

・・・なんか夢うつつに、微かに声を聞いたような・・・気がする。

よく覚えてはないケド、まぁいっか。

・・・・・・ねみー。

 

「おーい、目さめてますー?」

「おぉ・・・8割くらいは。

 おはよう、美月」

「おはようございます。ほらほら、早くしないと遅刻ですよ」

 

そう急かすな。間に合えばいいのよ、学校なんざ。

 

着替えを済ませ、リビングへ。

 

「おはよう、祐介」

「あー、おはよ、姉さん」

 

キッチンから顔を出す姉さんと声を交わす。

 

「母さんは、今日は早朝出勤だっけ?」

 

言いながら、食パンをトースターへ。

 

「ええ。ぶつくさ言いながら出かけてったわ」

 

現在の家計は、母さんのパート+生活保護で運営されている。

いつも母さんは忙しい。でも家族の時間をいつも大事にしてくれているんだよな。

 

「あ、いけない! もうこんな時間! 日直!

 祐介、後お願いね! 私先に出るから!」

「はいはーい、いってらー」

 

時計を見ると、姉さんは慌ててカバンを掴み、走って出て行った。

え? 僕? まだ余裕。

あ、やべ。ちょっとパン焦げた・・・

 

 

 

 

 

あれから―――

記憶喪失が発覚したり、美月と妙な邂逅したりしたあの時から、1年が経っている。

目を覚ましてから、記憶は未だに戻ってはいないけれど、日々は平穏に過ぎていった。

これといって問題も起きていない。

母さんも姉さんも、そして僕の首に架かっている美月も、変わりない。

 

なんにしても、平和じゃね~。

支度して戸締り、学校へ。

 

久しぶりの(僕の主観では初めてだが)学校でも、当初は周りが騒ぐ騒ぐ。

まぁ、事故にあったクラスメートが、まるで人が変わったようになって帰ってきたんだもんなぁ。

色々あったが、とりあえず今は上手くやっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校に関してはとりたてて話すこともないので、時間は飛んで放課後」

「祐介、誰に向かって話してるんです?」

「さあ?」

 

誰だろうね? 自分でも分からない・・・

 

 

 

 

 

とにかく、いつもの待ち合わせ場所へ向かう。

何故か、校内の友達より校外の3人の友達の方が仲がいいというこの不思議。

しかし、3人とも女子というのが若干引け目ではあるが・・・

 

む、少し遅れたか・・・? もう3人とも来てるじゃんよ。

 

「あ! おーい! 祐介くーん! こっちこっちー!!」

「おっそいのよ、あんた。何してんのよ」

「だ、大丈夫だよ。私達も今来たところだから・・・」

 

三者三様な対応で迎えられる。

 

不要かもしれないが、一応簡単に紹介しておこう。

 

「誰にですか?」

「さあ? って同じネタを続けて・・・?」

 

大きく手を振りながら元気にこちらを呼んでいる、短いツインテールの女の子が、高町なのは。

この辺りではちと有名な喫茶「翠屋」の娘で、姉さんに連れられて行った時に知り合った。

「友達百人~」とか平気でやりそうだ。本当にやってはないだろうが・・・

 

会うなり文句を飛ばしてきた、うるさい小娘が、アリサ・バニングス。

両親が大会社をやっている、お嬢である。

とはいえ、よくあるただの我侭お嬢様ではなく、思いやりのある優しい子である事は、皆が知っている。

まぁ、そんな事を言えば照れ隠しでまた怒るだろうけど。

 

最後に、フォローを入れてくれた、おっとりした子が、月村すずか。

彼女もまた、会社経営の親をもつお嬢様である。

なのはとアリサの緩衝役とされることの多い、苦労人だ・・・

 

3人とも、僕と同じ3年生だ。

こうして外で待ち合わせをしてることから分かるように、学校は違うが。

彼女たちが通うのは、私立聖祥大学付属小学校。それなりの学力と学費が求められるトコだ。

僕? 僕はごくごく普通の市立の学校。別に良いトコ行く必要ないし。

 

この3人は1年の頃から付き合いのある仲良し3人組だ。

何故そこに僕が組み込まれたんだっけ?

細かい事は忘れたが、なのはに引っ張り込まれたのは確かだ。

 

《で、祐介は誰が好きなんですかー?》

 

いきなり、美月が話しかけてくる。声には出さずに。

 

《・・・知るか・・・・・・》

 

頭の中で答える。

この1年、美月は自身の内部構造の解析に勤しんでいた。

その結果、結構いろいろ出来るようになったのだ。

今の脳内会話もその一つ。特定の人の脳波に干渉して会話をできる機能を有していたらしい。

秘匿通話、とでも呼んでおこう。便利なんだよコレ。

おかげで独り言の多い危ない人にならずに済む。

 

 

 

おっと、いつまでも説明ばっかりしてる訳にもいかない。いい加減、意識を現実に戻そう。

待たせちゃったんだしな。

 

「悪い悪い。ちと考え事しながら歩いてたもんで、遅れちゃったよ」

「どうせ大した事じゃないでしょ」

「正直言うと、何処の誰とも分からん相手に説明をたれてた」

「ハァ? 何よそれ。訳わかんないわよ」

「自分でも分からん」

 

とか何とか言いつつ出発する。

特にとりとめもない様な会話をしながら歩く、いつもの風景。

彼女たちは、これから塾へ向かう。僕はそこまででお別れだ。

 

 

 

 

 

そして、いつも通っている公園にさしかかる。

 

「あ、こっちこっち。ここを通ると、塾に行くのに近道なんだ」

 

と、アリサが脇の路地を指差す。

 

「あ、そうなの?」

「でも、かなり道が悪いな・・・なんでこんな鬱蒼としてるんだよ」

「あんたが遅かったから近道するんでしょ! ほら行くわよ」

 

仕方が無いので3人でアリサに続く。

 

 

 

夕方のこの時間だと、辺りは少し薄暗くなってきている。

特に心配した訳ではないが、3人の様子を確認しようとして・・・

 

・・・? どうしたんだ? なのはのヤツ。さっきからキョロキョロして。

と思えば、何かを考えるかのように立ち止まる。

 

「どうしたの?」「なのは?」

 

すずかとアリサも怪訝な顔をする。

 

「あ・・・うぅん。なんでもない。ごめんごめん」

「大丈夫か?」「うん、平気」

 

再びアリサを追う。

 

 

 

なのはの様子が気になりつつも、そのまましばらく歩いていた時・・・

 

   ―――――・・・けて ―――――

 

!? 何だ今の? 声・・・?

思わず足を止め、美月に話しかける。

 

《おい美月、今のお前か?》

《いえ、私じゃありません。

 でも、さっきこの周辺から、何か思念波のようなものが検出されました》

 

思念波? テレパシーみたいなやつって事? さっきの声は、心の声って事か・・・?

 

「祐介?」「なのはちゃん?」

 

突然足を止めた僕たちに、アリサとすずかが振り返る。

って、僕()()? 見ると、なのはも僕と同じ様に立ち止まってキョロキョロしている。

 

「今、何か聞こえなかった?」

「何か?」

「なんか、声みたいな・・・」

 

なのはには、さっきのが聞こえていた?

 

「別に・・・」「聞こえなかった・・・かな?」

 

アリサとすずかには聞こえていないらしい。

キョロキョロと辺りを見回すなのは。

 

   ―――――・・・けて・・・! ―――――

 

また聞こえた!?

 

「!!」

 

突然走り出すなのは。

 

「あ、おい! なのは!」「なのは!」「なのはちゃん!」

 

急いで、3人で追いかける。

あいつ、今ので場所の特定できたのか!?

 

《美月! その思念波とやらの発信源は分かるか?》

《なのはさんの進んでる方向、ドンピシャです。何なんでしょうか?》

《知らん。ケド、とにかく今は行くしかないだろうな》

 

 

 

 

 

僕たちが追いついた時、なのはは腕に何かを抱いていた。

 

「どうしたのよ、なのは。急に走り出して」

「あ、見て。・・・動物? 怪我してるみたい」

「う、うん。どうしよう?」

「どうするもこうするも、病院に連れてくしかないだろ。

 この近くに獣医ってあったっけか?」

「あ、待って。家に電話してみる」

 

すずかに連絡を任せ、なのはに抱かれている生物を見る。

・・・イタチ系、か? 色は、何か金色っぽい黄色というか・・・

 

《ハニーブロンドですよ、祐介。

 あと、形状はフェレットに似ていますね》

 

あらそう。で、首には真紅の丸い宝石がかかっている。飼いフェレットか?

 

《で、これが思念波の発信源?》

《今のところは何とも・・・座標は確かに此処でしたけど》

 

まさか超能力を持ったフェレットだったりして・・・

飼い主とはぐれ、野犬に襲われ、助けてーっ! ていう思いを他者へ発した、とか。

・・・それは無いか。そんな事より、早く手当てが必要だ。

 

通話を終えたすずかについて、僕たちは病院に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪我はそんなに深くないけど、ずいぶん衰弱してるわ。

 きっと、ずっと一人ぼっちだったんでしょうね」

 

やってきたのは、槙原動物病院。

どうやらフェレットは持ち直したようだ。

 

「院長先生、ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」

 

優しく笑う先生に続いて、フェレットの近くへ移動する。

 

「先生、これってフェレットですよね。どこかのペットなんでしょうか?」

「フェレット・・・だと思うんだけど。 変わった種類なのよね。

 それに、この首輪に付いてるのは・・・宝石、なのかな?」

 

先生がフェレットの首元に指を伸ばす。

と、フェレットが目を開け体を起こした。そのままキョロキョロと僕たちを見回す。

一瞬、僕と目が合う。が、また目を移し一点で目を止める。その視線の先は・・・なのは?

 

「なのは、見られてるぞ」

「う、うん。えっと・・・えっと・・・」

 

なのはが戸惑いながら、フェレットに指を伸ばす。

フェレットはフンフンと鼻を鳴らした後、その指をペロッとなめた。

とたんに満面の笑みを浮かべるなのは。単純なやつめ。

 

  コテッ

 

「「「ああっ」」」

 

ありゃ、また倒れちゃったよ。

 

「しばらく安静にした方が良さそうだから、とりあえず、明日まで預かっておこうか?」

 

先生の言葉に僕たちは顔を見合わせ、答える。

 

「「「「はい、お願いします」」」」

「良かったら、また明日様子を見に来てくれるかな?」

「分かりました」

 

そうだな、明日になれば、多少は元気になってるだろう。

テレパシーで会話し始めたりして。・・・・・・無いな。

 

 

 

「あ! ヤバ!! 塾の時間!!」「ほんとだ!」

 

アリサが時計を見て慌てる。

 

《そういえば祐介も・・・時間が》

「ん・・・? うわ僕もヤバッ! タイムセール!!」

「じゃあ、院長先生。すみません、また明日来ます」

 

そう言って、僕たちは走り出す。

先生は、病院を去る僕たちに笑顔で手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走って、僕たちは別れる。

 

「祐介くん、また明日ねー」「じゃあね」「また明日」

「じゃ、また明日なー。しっかり勉強してこいよー」

 

そして彼女たちに背を向け、再び走り出す。

目的地は、毎度お馴染みのスーパー! 間に合うかっ!!

 

「タイムセールに必死な小学生って・・・なんかオバサンくさいですよー?」

「うるさいよ! 残っててくれモヤシと豚バラーッ!!」

 

コイツ・・・これから凄惨たる戦場へ向かう勇者に向かって・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場より帰還し、今はお食事の時間。

我が家の夕食はいつも揃って、が基本である。

 

「で、まぁ何とか持ち直したみたいでさ」

「そっかー、でもそんな色のフェレット珍しいねー」

 

食事の時は、その日の事などが会話の主なネタになる。

そこで、夕方の話をしていたのだが・・・

姉さんがフェレットの種類の話をし出した所で、

 

「へー、助かって良かったわねー。で、フェレットって何?」

「・・・・・・」「・・・・・・」《・・・・・・》

 

おいおい、何かも分からず今まで会話してたのかよ。

姉さんと二人して苦笑する。

美月も顔があったら、呆れ果てた顔してるんだろうな。

 

「イタチの仲間よ。人気のペットってやつ」

 

母さんへの講釈は姉さんに任せ、あのフェレットの今後を考える。どうするんだろ。

まず、首輪してた事から飼いフェレットの可能性が高い。

となると、飼い主が見つかるまで何処かで預かる事になるんだろうが・・・

順当にいけば病院。次なる可能性として、発見者である僕たち4人の誰か。

でも、アリサとすずかの家は、それぞれ犬屋敷と猫屋敷だしなぁ・・・

高町家も翠屋があるし。あぁでも自宅と店舗は別だから、関係ないのか。

ウチは・・・どーだろ? 世話できる人間なんているのかなぁ?

 

 

 

 

 

問題は、夜に来たメールによって解決した。

 

   『祐介くん、アリサちゃん、すずかちゃん。

    あの子はうちで預かれることになりました。

    明日、学校帰りにいっしょに迎えに行こうね。

                          なのは』

 

そうか、なのはの家で預かれる事になったか。

ま、これで飼い主が見つかれば一件落着、だな。

 

「そーなると気になるのは夕方の声・・・・・・

 美月、あの思念波って、やっぱフェレットなのかな?」

「どうでしょう? それに、思念波とか言うとオカルト的に聞こえますけど、

 どちらかと言えば、アレは科学的なものに近いと思います。

 何かのエネルギーに、思考を変換したものを乗せて飛ばす・・・

 電話と似たようなものだと思えば分かりやすいんじゃないですか?」

「ほー」

 

分かったような分からんような・・・・・・

まぁ、生物は皆、何らかの信号を発しているみたいな説もある事だし。

そんな事より問題は、なぜ僕となのはが、あの声をキャッチしたのか・・・だ。

 

ベランダに出て病院の方角を向いてみる。

 

「おーい、フェレットー。聞こえるかー?」

 

小声で呼んでみる。

・・・・・・返事は無い。当たり前だ、と苦笑して部屋に戻ろうとした時、

 

   ダンッ! ゴウッ!!

 

突然、何か黒い塊が家の前を横切って行く。

 

「な・・・何だぁっ!?」

「あれは・・・! 昨日の・・・」

「おい美月! アレの事何か知ってるのか!?」

「いえ、それは・・・」

「知ってるんだな! アレは一体何だ!?」

 

なんかイヤな予感がする。どう考えても普通のモノには見えなかったぞ・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 昨日の夜、あの公園で未確認のエネルギーの衝突が確認されたんです・・・

 その時の片方のエネルギーパターンと、さっきの黒いモノのエネルギーパターンが

 一致しています」

「・・・つまり、あの黒いのとフェレットがぶつかっていたと・・・?」

「分かりません・・・

 でも、あのフェレットがただのフェレットじゃなかったと仮定すると・・・

 可能性はあると思います・・・」

 

なら、こうしてる場合じゃない!

急いで服を着替え、出かける準備をする。

 

「ちょっと、祐介! どうする気ですか!?」

「決まってる。病院に行くんだよ。

 アイツの向かった方向、病院の方向だろ!

 フェレットは今動けないんだ。ここでアイツに襲われたら・・・!」

 

夕方の声・・・途切れ途切れにしか聞こえなかったが、

今にして思えば、あれは『たすけて』って言ってたんじゃないのか?

 

「行ってどうするんです!

 祐介に何かできる訳ではないでしょう! 危険です!!」

「だからって放っておけないだろ! それに・・・」

 

公園、そして病院での事を思い出す。

迷わずフェレットを見つけたなのは。

そしてあのフェレット、なのはの方をジッと見ていた。

 

「・・・なのはのヤツ、僕以上にあのフェレットの声を受け取っていたのかもしれない。

 だとしたら、あいつの事だ、やっぱり出てきて巻き込まれてる可能性がある。

 それも危険だろ!」

「・・・・・・・・・・・・分かりました。

 そこまで言うなら行きましょう。ただし・・・

 

 機鋼を司る私の所有者として、正式登録してからにしてもらいます」

 

 

 

 

 

機鋼・・・? 所有者登録・・・?

何か訳の分からない事を言い出したよ?

 

「この1年で解析して得た結果です・・・・・・

 出自は不明ですが、データベースの中に、メカトロニクスに関する膨大な情報が収められて

 いました。そして、そのデータを実空間に顕現させる機能があるようなんです。

 ただしこれは私単体では発現できず、所有者と一緒で初めて稼働するもの、らしいです?」

「ちょ、何で最後疑問形!? そんな良く分からないトンデモ機能使って大丈夫か!?」

「私だって分かりませんよ。でも、このまま行ったって祐介には危険過ぎます!

 少しでも身を護るものが必要だと思うんですよ私は」

「・・・・・・まぁ。僕自身は無力なわけだけど・・・・・・

 なら、少しでも可能性のある布石は打っておくべきかな。

 

 よし、分かった! いや分かってないケド!

 所有者正式登録、受けてやろうじゃんか!」

 

美月を目の前にかざし、深く頷いてやる。

 

「・・・了解しました。

 では・・・登録接続、開始します・・・!」

 

美月が、もといクリスタルが輝きだし、部屋に明るい緑の光が満ちる。

 

 

 

管理AI権限により、能力顕在機能の解放モジュールを起動。

 

 登録者情報、確認開始。

 

 生体パターン検出・・・・・・完了。

 脳波パターン検出・・・・・・完了。

 

 能力顕在者は登録者本人である事を確認、続いて能力設定に入ります。

 

 データベースより、能力情報をアウトプット。

 能力情報を所有者ブースにインポート・・・・・・完了。

 

 能力設定を終了します。

 

 ――― 全工程終了。モジュールをシャットダウンします」

 

光が収まる。

手を開いたり閉じたり・・・

何となく変化は感じられるが、あまり実感はない。

 

「祐介、大丈夫ですか?」

「いまいち実感が無いんだが・・・大丈夫なのかな・・・?」

 

所有者は、あらゆる機械に関する能力を発現できると言ってたな。

しかしやり方とか、分からないんだが・・・・・・

 

「使用できる能力のリストは、適宜検索します。

 まずは使ってみないと何とも言えませんね・・・・・・」

「おいおい・・・激しく不安なんだが・・・・・・

 でも、とりあえずよし! 行くぞ!」

「くれぐれも気をつけて下さい。

 初めて使うんですし、私が持っているのはあくまで機械能力のデータだけで、

 運用などは分かりかねますよ!?」

「つまり、いろいろ試してみるしかないってコトか・・・」

 

呟き、そっと外に出る。

そして僕たちは、夜の街を病院に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懸命に走り、病院を目指していたのだが・・・

なんか不安になってきた・・・このまま行って間に合うのかな・・・?

 

「美月、さっきの黒いヤツの現在位置は!?」

「あちこち飛び回ってましたけど・・・どうやら本命を見つけたみたいです。

 もう病院の目と鼻の先です。 このスピードじゃマズイかも・・・」

 

クソっ! ・・・・・・やってみるか・・・!!

 

「美月! 高速移動が出来る能力ってあるか?」

「検索中・・・出ました! この辺りが、脚に作用するものっぽいです!」

 

目の前に、もとい脳裏に、能力名のリストらしき文字列が浮かび上がる。

・・・・・・分からんっ!! 文字のリスト表示じゃ全然分からんっ!!

やっぱり使って試してみるしかないのか・・・・・・

 

「と、とりあえず一番上の『ランドスピナー』ってやつ!!」

「ランドスピナー、展開します!」

 

両脚が輝きを纏い、その機鋼が姿を現す。

足先から膝あたりまでを覆うブーツ状の機械。

ふくらはぎ部分に付いていた車輪が後ろに引き下ろされる。

車輪の回転をイメージ・・・脚に力を込め・・・・・・

猛スピードで走り出・・・したいところだったケド、慣れるまで安全運転で行かないと・・・

 

間に合うのかな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の近くまで来ると、何か違和感を感じた。

心なしか、景色も色褪せて見える。

 

「・・・? 美月。何かおかしくないか?

 何かこう、妙な雰囲気というか・・・」

「空間に異常が認められます。空間のズレ・・・みたいな?

 ・・・でも、特に身体に異常はないみたいですよ。急ぎましょう!」

「お、おぅ・・・」

 

 

 

 

 

病院に辿り着いたとき、そこは凄惨な有様だった。

塀は崩壊、建物にも大きな穴、脇の木はへし折られ・・・

 

「ズタボロだよ・・・美月、ヤツは?」

「ここから少し離れた所を移動中。その進行方向上に移動する生命反応があります。

 バイタルパターン検出、精査中・・・・・・

 これは・・・なのはさんです!!」

「なっ!!?」

 

やっぱ来てたのかよ、なのはのヤツ・・・!!

 

「急ぐぞ!!」

「はい!!」

 

両脚に力をこめ、全速で追跡を開始する。

 

 

 

 

 

・・・・・・見えたっ!!

激しく飛び跳ねる黒い塊を視認。その先には・・・

 

「なのは・・・!!」

 

道の真ん中で立ち止まってるよ。追われてるって知ってるのか!?

ギリギリで・・・間に合うか・・・!?

 

上空から飛び掛ろうとした黒坊(もう面倒くさいからこう呼ぶ)の下に何とか割り込み、

なのはに背を向ける形になる。

・・・・・・って、割り込んだはいいケド、どーしよーっ!?

とりあえず防御を!!

 

「美月! 盾! 盾ッ!!」

「り、リスト出ます!!」

「――― ッ!! やっぱリスト解りづらすぎだーッ!!

「とにかく上の、一番上のやつ出して!!」

 

とりあえず、リスト最上段の『RX-M-Sh-008/S-01025』を選択する。

すると光が輝き、左手に赤い盾が握られる。

それを両手で構えて、黒坊の突進に備え・・・!

 

   ガンッ!!!

 

「ぐ・・・ッ!」

 

盾の上から衝撃が襲う・・・が、耐えられない程じゃない・・・!

 

「だあぁッ!!」

 

そのまま弾き飛ばし、黒坊は道路にめり込む。

あっぶねぇ・・・ぎりぎりセーフ・・・

安堵の息をつきつつ振り返る。

 

「大丈夫か、なのは?」

「え、え? ゆ、祐介くん!?」

 

目をパチクリさせてるなのは。

 

「話は後。今はあの黒坊をなんとか・・・

 美月、対処法の目処はたったか?」

「何かのエネルギーによる思念体、の様な物だって事は分かるんですけど・・・

 すぐに対処法と言われても・・・」

 

・・・どーすんだよ。思念体って・・・オバケ? お祓いでもしなきゃダメか?

 

「だから、お願い! 君の力を貸して!

 君に眠る資質・・・魔法の力を!」

 

後ろから声。

フェレットが、こっちを見ている。

というか、なのはに言ってるようだ。

 

「ホントにフェレット喋ったよ。

 何か勝算があるのか? なのはに」

「えぇ!? ど、どうすればいいの?」

「これを・・・」

 

そう言って、あの首の赤い宝石をくわえて、なのはに差し出す。

 

「暖かい・・・」

「それを手に、目を閉じて、心を澄ませて。僕の言う通りに繰り返して」

 

そして向き直り、こちらに言う。

 

「それと、少しの間でいいから、時間を稼いでください!」

「へ? 僕!? ・・・取り敢えずよく分からんが分かった!

 とにかく、なのはとお前を護ればいいんんだな!!」

 

そう言って黒坊に向き直る。

 

視線の先には、めりこんだ体をゆっくりと起こす黒い塊。

ヤツも体勢を立て直したか・・・

 

「・・・さて、時間稼ぎとは言ってもどうするべきか」

「とりあえず、近づけないように威嚇してればいいんじゃないですか?

 確か・・・武器のリストもあったような・・・あ、出ます」

「武器って・・・物騒な。

 ――― そして相変わらず分かんないよこのリスト・・・・・・

 例によって一番上のやつ。出してみて」

 

右手に意識を集中。

握られるのはライフル・・・みたいなでっかい銃。

上部に円形の照準器、サイドにフォアグリップもついている。

えーと・・・『XBR-M-79-07G』だっけか?

銃なんて撃った事ないんだけど・・・・・・あったら大変だっての。

とにかく右手で構え、左手でフォアグリップを握り、黒坊へと銃口を向ける。

 

「おりゃあぁッ!!」

 

とりあえずヤツに向かって連射してみる。

先端から、緑がかった銀色のビームの様な光が迸り、黒坊へ向かう。

跳ね回る黒坊に当たりこそしないものの、避けてくれてる間はヤツは無闇に突っ込んで来れない。

時間稼ぎとしては十分、だと思いたい。

 

 

 

後ろからはフェレットとなのはの声が聞こえてくる。

 

「我、使命を受けし者なり」「我、使命を受けし者なり」

「契約の下、その力を解き放て」「えと・・・契約の下、その力を解き放て」

「風は空に、星は天に」「風は空に、星は天に」

 

黒坊を牽制しながら、後ろの様子を伺う。

心なしか、あの宝石の光が強まってるような気がするけど・・・

 

「未確認エネルギー、徐々に増大していきます・・・」

 

美月が報告する。マジ・・・?

黒坊との攻防を余所に、詠唱は続く。

 

「そして、不屈の心は」「そして、不屈の心は」

 

後ろの光が脈打った・・・ような気がする。

 

「「この胸に!

  この手に魔法を!

  レイジングハート、セット・アップ!!」」

「Stand by ready. Set up.」

 

大きな輝きと共に、桜色の長大な光の柱が立ち上る。

 

「なのはさんから、莫大なエネルギー量が検出されています!!」

「なのはのヤツ・・・何者だよ・・・」

 

まぁトンデモ能力を発現してるのは僕も同じなんで、とやかく言えないが。

 

 

 

そして光が収束していく・・・

そして、中心から姿を現すなのは。

ただその姿は・・・・・・

 

「・・・・・・はぁ!?」

「これまた可愛くなりましたねー」

 

白を基調として青いラインの入った服。

手には、紅い珠を冠した杖(の様なもの)。

 

・・・僕はただただ、あっけにとられるだけだった。

 

 

 

 

 

      第1話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「さぁ、あとがき座談会、はじまりです」

祐介「今回は何するか決まったの?」

美月「はい、祐介が変な能力を使い出したので、

   話に登場したメカ等の元ネタを出していくそうです」

祐介「・・・・・・それって必要?」

美月「前回も言いましたけど、自己満足ですよ自己満足」

祐介「何やってんだ作者の奴・・・

   いるよな、こういう知識ひけらかしたがる奴」

美月「で、情報が間違ってたりして恥かくんですよねー」

祐介「ふぅ・・・まぁいっか。で、今回のメカは何だったっけ?」

美月「まずは『ランドスピナー』ですね。

   えっと・・・作者からのメモが・・・

   『コードギアスのブリタニア製KMFの足についてるアレ。

    日本製KMFの高機走駆動輪と一緒ですね。大して違いはありません。

    ちなみに、ブリタニアのは外着式ですが、日本製のは脚部内蔵式で(ry』

   だそうです。知ってました?」

祐介「へぇ~へぇ~へぇ~(ポンポン」

美月「・・・やる気なくトリビアボタン押さないでください。古いですよ」

祐介「気にするな。で、次は・・・『RX-M-Sh-008/S-01025』だな。

   メモによると・・・これは、かの有名なRX-78-2ガンダムのシールド、と。

   へー、たかが盾といっても、構造は単純じゃないのか・・・

   強度を考えると、一枚の金属板って訳にはいかないから・・・多層構造になってるんだな」

美月「段ボールと一緒ですね」

祐介「・・・一気にグレードが下がったな。

   厳密にはハニカム構造とトラス構造の違いはあるけど」

美月「最後は・・・『XBR-M-79-07G』ですが、これは?」

祐介「え~、メモメモ・・・

   さっきのガンダムの持ってたBLASH社製のビームライフルらしい。

   『ビームライフルって言ったら普通はコレだよね!』だって。

   あ、でも構造は面白いなコレ。エネルギーCAPに蓄積された縮退寸前のミノフs」

美月「あー、薀蓄はいいです、長くなりそうだから。元ネタだけで十分です」

祐介「あっそう・・・今回はこれくらい、か」

美月「ですね。どうせ、その時のノリで書いてるみたいですし・・・」

祐介「そのうちネタが尽きるんじゃなかろーか・・・・・・」

 

 

 



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第2話 彼女は叙情詩的で魔法的?

 

 

 

光が収束していく・・・

そして、中心から姿を現すなのは。

ただその姿は・・・・・・

 

「・・・・・・はぁ!?」

「これまた可愛くなりましたねー」

 

白を基調として青いラインの入った服。

手には、紅い珠を冠した杖(の様なもの)。

 

・・・僕はただただ、あっけにとられるだけだった。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第2話 彼女は叙情詩的(リリカル)魔法的(マジカル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、えとー・・・何? この状況・・・

とてつもないレベルのエネルギーがなのはから検出されて、

なのはが変身(?)しました、以上。

 

「え、えー!? こ、これ何ー!?」

 

当の本人も戸惑いを隠せないようで、あたふたしている。

 

「来ます!!」

 

突然フェレットが叫ぶ。

 

「しまっ―――!」

 

なのはに気を取られて、ついボーッとしてたら抜かれた!?

黒坊が一気になのはに迫る。

 

「なのはッ!!」

 

くそっ!! もう割り込むには間に合わない!!

 

「え!? き、きゃっ!」

 

咄嗟に杖を掲げるなのは。その時、

 

「Protection.」

 

桜色のバリア(みたいなの)が展開され、黒坊を受け止める。

何あれ!?

そのまま黒坊は弾き飛ばされ、散り散りに弾ける。

・・・その破片が辺りに打ち込まれて、周囲が惨状になってるけど。

塀はボロボロ、電柱は倒れる、道路は陥没。

おいおいマジかよ・・・

驚きは尽きないが、体勢を立て直すチャンスではある。

 

「と、とりあえず離れるぞ!」

「う、うん」

 

 

 

黒坊が復活する(のか分らんが)前に、状況を整理しておきたい。

少し距離をとり、フェレットに尋ねかける。

 

「おいフェレット、この状況を説明してくれ。

 なのはの力とか、あの黒坊とかは何なんだ?

 あれがさっき言ってた魔法とかいうやつなのか?」

「はい・・・僕らの魔法は、発動体に組み込んだ、プログラムと呼ばれる方式なんです。

 発動させるためには、術者の精神エネルギーを必要とします。

 ・・・そしてアレは、歪んた方法で生み出された思念体。

 アレを停止させるには、その杖で封印して、元の姿に戻さないといけないんです」

「・・・美月、解った?」

「そりゃそーですよ。私、優秀ですもん。

 魔法とは言っても、よくあるファンタジー的なものではなく、

 プログラムを介してエネルギーを制御する、普通の技術体系みたいですねー。

 まぁ技術的な事は置いといて、とりあえず今言えることは、

 アレを倒すには、なのはさんの魔法とやらが必要って事です」

 

じゃあ黒坊の始末は、なのはに任せないといけない、って事か。

 

「だってよ、なのは。任せた」

「よ、よく分かんないけど、どうすれば?」

「さっきみたいに、攻撃や防御などの基本魔法は、心に願うだけで発動しますが、

 より大きな力を必要とする魔法には、呪文が必要なんです」

「呪文・・・?」

 

・・・美月はあぁ言ったけど、呪文とか言うと、途端にゲーム的な魔法の方が頭に浮かぶ。

なのはもキョトンとした顔をしている。

 

「心を澄ませて。心の中に、あなたの呪文が浮かぶはずです」

 

言われ、目を閉じ集中し始めるなのは。

取り敢えず邪魔しないように見守―――

 

  グオオォォッ!!

 

「げ!!? やっぱ来た!?」

 

振り向くと、再生した黒坊が再び突撃して来ている。

おまけに何か触手みたいなのを伸ばして攻撃してきてるし!?

 

・・・今のなのはは無防備だ。黒坊の接近を阻止するしかない!!

 

「美月! こっちもバリアみたいなのとかない?」

「検索します・・・これです!」

「じゃあこれ! 『Absolute Terror FIELD』ってのを!」

 

腕を前に掲げ、意識を集中。

黒坊との接触と同時に、緑色で八角形の縞模様のバリアが展開され火花を散らす。

おぉ! 何かカッコイイ!! ・・・とか言ってる場合じゃない。

 

しばらく拮抗する。

黒坊も引き下がるつもりはないのか、唸り声と共に押し込んでくる。

 

「くッ・・・このッ・・・下がれってのッ!!

 

こちらも負けじと黒坊を押し返し、力任せに弾き飛ばして距離を開ける。

なのはは? まだか!?

 

 

 

「封印すべきは、忌まわしき器。ジュエルシード!」

 

背後からフェレットの声が聞こえたかと思うと、桜色の光が輝きをます。

 

「ジュエルシードを、封印!」

「Sealing mode. Set up.」

 

なのはの声に続き、その杖が形状を少し変える。

先端部が上昇し、光の翼の様なものが、根元から噴出する。

そして、杖から伸びたロープの様な光の束が、黒坊を捕らえ捕縛。

すると、黒坊の額に浮かぶ、XXIの字。

 

「Stand by ready.」

「リリカルマジカル。

 ジュエルシード、シリアル21。――― 封印っ!!

「Sealing.」

 

光の束が数を増し、黒坊に突き刺さっていく・・・

 

そして激しい光と共に、黒坊の姿は消えた。

 

「あ・・・」

「何だ? アレ・・・」

 

なのはと二人、黒坊の消えた跡へ歩き出す。

そこに残っていたのは、青い宝石。

 

「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

言われる通りに、なのはが杖を差し出す。

すると、青い宝石は、なのはの杖(こいつがレイジングハートらしい)に吸い込まれた。

 

「Receipt number twenty-one.」

 

なのはの服も元に戻り、手元には紅い宝石が残る。

お? いつの間にか、辺りの空間も元に戻ってる・・・

 

「・・・終わり? 美月」

「みたいですね」

「終わった・・・んだ」

「はい・・・あなた達のお陰で。

 ありがとう・・・・・・」

 

そこまで言うと、フェレットは倒れこんでしまった。

 

「あ、ちょっと! 大丈夫!? ねぇ!?」

 

慌てて抱きかかえるなのは。

 

  ウ~ゥ カンカンカンカン ウ~ゥ

 

遠くからサイレンらしき音が聞こえてくる。

あの音は・・・消防!? 警察!?

 

はたと気づいて周りの状況を見てみる。

破壊された塀、倒れた電柱、大穴の開いた道路・・・

なのはと顔を見合わせる。

 

「も、もしかしたら、わたしたち、ここにいるとまずい事に・・・?」

「だ、だよなぁ・・・」

「被害の半分は祐介のビームライフルのせいですもんねー」

 

美月がぼやくが、今は無視。

 

「と、取り敢えず・・・」

「三十六計逃げるに如かず! 撤収だ!」

 

僕たちはすたこらと逃げ出した・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走ってやって来たのは、夕方フェレットを見つけたあの公園。

とりあえず、2人ともベンチに座って休む。

 

「すみません・・・・・・」

 

お? フェレットも目を覚ましたようだ。

 

「あ、起こしちゃった? 怪我、痛くない?」

「怪我は平気です。もう殆ど治っているから」

 

そう言って体を揺すると、するりと包帯が外れる。

言うとおり、その下には傷はなくなっていた。

 

「ほんとだ。怪我の跡が殆ど消えてる」

「ほー、凄いなこりゃ」

 

なのはと2人で関心する。

 

「助けてくれたおかげで、残った魔力を治療にまわせました」

 

あの魔法とやらは、治療までできるのか。

ますますゲームっぽい。

 

「良くわかんないけど、そうなんだ。

 ね、自己紹介していい?」

「あ、うん・・・」

 

それはいきなり過ぎないか、なのは・・・

唐突な自己紹介にフェレットも戸惑ってるし・・・

 

「わたし、高町なのは。小学校3年生。

 家族とか仲良しの友達は、なのは、って呼ぶよ」

 

そこまで言うと、こちらを見るなのは。

え、何? 僕もやれと?

・・・・・・しょうがないなぁ。

 

「僕は神代祐介。なのはと同じ小学3年。まぁ学校は違うけど。

 僕も、祐介と呼んでくれていい。

 で、これが・・・」

 

クリスタルを顔の前に掲げる。

 

「こいつは美月。出自は良く解んないけど、僕の大事な相棒、かな」

「きゃー、私って愛されてます?」

「黙らっしゃい」

 

馬鹿を言い出した美月を指で弾いて黙らす。

そこで、なのはが今更ながらに驚く。

 

「そ、そうだよ! さっきまで気にしてなかったけど、

 そのペンダント喋るなんて知らなかったよ!?

 それにさっきの祐介くんの魔法(?)だって・・・」

「まぁまぁ、その話はまた追々な・・・

 で、そちらのフェレットだけど」

「あ、うん。

 僕はユーノ・スクライア。僕もユーノと」

 

そこまで言うと、何かを思うようにうな垂れてしまう。

 

「すみません・・・あなた達を・・・」

「なのは、だよ」

「なのはさん達を、巻き込んでしまいました・・・」

 

申し訳なさそうにユーノがつぶやく。

それに笑顔で答えるなのは。

 

「えと、多分平気だよ」

「なのははともかく、僕は勝手に割り込んだだけだし」

「あ、そうだ。ユーノくん怪我してるんだし、ここじゃ落ち着かないよね。

 とりあえず、わたしの家に行こ。後の事は、それから。ね?」

 

少々話が強引だが、それがいいだろう。

魔法(?)で治療したとはいえ、怪我人もとい怪我フェレットだ。

当初の予定通り、なのはに任せよう。

 

「じゃ、僕達も撤退するよ。

 後は頼んだな、なのは。色々話すことは、また今度で」

「うん、ユーノくんは任せて。

 また明日ね、祐介くん」

 

 

 

1人と1匹に手を振り、歩き出す。

・・・急いで帰らないとマズイかなー。

 

「真弓さんと咲さん、気付いてるでしょうか?」

「さぁ。時間が時間だし、こっそり出てきたけど・・・妙なところで鋭いからなぁ・・・」

 

 

 

案の定、しっかりと感付いてた2人によって、

夜遊びについて長々と説教される事になったのである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ち、ちかれた・・・・・・」

 

母さん・姉さんから解放され、這う這うの体で自室へ戻る。

 

「波乱に富んだ1日でしたねー」

「他人事みたいに言うな。お前も当事者の1人だろうに。

 ・・・でもまぁ、怪我フェレット拾っただけで、こんな事になるとは思わなかったな」

 

美月に謎な登録したり、機械のブーツ履いて走ったり、黒坊とバトルしたり・・・

 

「器物損壊して逃げたり?」

「おぃ、あれは不可抗力だろうが。

 そうだ、黒坊のせいだ。黒坊が避けるのが悪い。

 でも、これからもアレじゃあマズイよなぁ・・・」

 

どうしたもんか・・・

相手にダメージを与える事ができ、なおかつ傷つけない。

そんな都合のいいシロモノにできればいいんだけど。

 

「なぁ美月」

「はい?」

「あの能力の情報って編集したりできないかな?

 こう、出力の調整とか、効果の変更とか・・・」

「まぁ、多分できない事はないと思いますよ。

 簡単な情報書き換えなら可能じゃないかと。

 根本的な、深い階層の情報は変更できないでしょうけど」

「マジか。なら早速やってみよう。

 これ以上、街壊して捕まりたくないし」

「はいはーい、じゃあ行きますよー。

 落ち着いて、さっきみたいに楽にしていて下さいね。

 

 ――― 管理AI権限により、プログラム編集モジュールを起動。

     能力データベースへのアクセス権を開放。

     所有者による閲覧・編集を行います。

 

     仮想空間を構築、各データとのマッチング完了。

 

     ・・・・・・ダイブ・・・!!

 

美月の声と共に、意識が遠くなる。

 

 

 

 

 

気付くと、そこは不思議な空間だった。

強いて表現するなら・・・電脳空間?とでもいうのか。

景色は数多の光の線が縦横無尽に駆け巡っているだけ、そして周りには無数のディスプレイ。

 

「えーと・・・何ですか此処は?」

「何処も何も、プログラムの内部を分かりやすく仮想表現したものですよー。

 さ、ちゃっちゃとやっちゃいましょう」

「お、おうさ」

 

とりあえず、目の前のコンソールらしきものに近寄る。

 

「で、どうします? 操作は直感的に解ると思いますけど」

「やっぱり、まずは武器関連能力の威力設定かなぁ。

 

 えっと・・・

 Program Fileから・・・Skill Data confirm/editに入って・・・

 Select CategoryはWeaponを選択、と。

 え~と、Master power levelの設定・・・これか。

 ・・・美月、概要を教えるから、エディタ編集は頼む」

「りょーかい。Weapon Data、エディット開始」

 

正直、プログラムの羅列なんか読めないし書けないし・・・直感的に解ってたまるか。

 

 

 

色んなデータを流し見しながら待つこと数分。

 

「終わりましたよー。

 ・・・まぁこんなものですかね」

「お疲れさん。とりあえずはこれで大丈夫か。

 あと何かあったっけ?」

「あぁ、そういえば。

 今って、能力を使う時いちいち検索してから使ってますよね。

 今のうちに、ここのシミュレータでデータを確認しておいて、

 どんな能力なのか把握しときましょうよ。

 で、よく使いそうなのは、Quick launcherを構築して登録しておくとか。

 毎回検索するのも面倒ですし、咄嗟の時に手遅れになるのは困るでしょう?」

「確かにな・・・

 今のうちに、使いやすそうなヤツをピックアップしておくか。

 えーと、じゃあまずはコレから・・・」

 

とりあえず、役にたちそうな能力を探して試してみる。

遠・中・近距離それぞれに合わせた武器を幾つかと、移動系、防御系の機鋼を登録しておく。

 

「よし、こんなもんだろ。美月、エディタ閉じていいぞ」

「分かりました。じゃ、帰りますよー。

 

 ――― 編集エディタ、変更点を保存。

     仮想空間、閉鎖開始。

 

     モジュール、シャットダウンします」

 

 

 

 

 

・・・・・・目を開けると、そこは元の部屋。

どうやら無事に終了したらしい。

 

「・・・そういや、何で僕達わざわざこんな事してんだろ?」

「ですねー。

 戦闘データの編集なんて、また面倒事に首突っ込むこと前提ですよ?」

「まぁ、気にしても今更か・・・

 

 そういえば・・・

 なぁ、この能力の出力源ってどうなってるんだ?

 トンデモクリスタルなだけに、トンデモジェネレータとか積んであった?」

「あぁ、能力源は祐介の精神力ですよー。

 というかエネルギー源的には、

 ユーノさんが言ってた『魔法』と呼ばれるものと同じっぽいんですよねー。

 でも、運用体系が違うみたいで出力は全然似てませんでしたけど」

「・・・さらっと重要な事を今更言うな。

 てか精神力とか言われても、いまいちピンとこないんだが・・・

 あれか? RPGでいうMPみたいなやつ」

「そんな便利に分かれてなんかいませんよ。基本的に肉体と精神はリンクしてるものです。

 MPは0だけどHPモリモリ~なんてのはゲームだけですよ。

 当然、体力とある程度は同調します」

「妙に疲れたと思ったらそのせいか・・・寿命とか縮んだらどーしてくれるんだよ」

「たぶん大丈夫だと思いますけど・・・

 そんな大きな能力使おうとしたら、死ぬ前に気絶とかしますよきっと」

「そんなもんかなぁ・・・・・・」

 

まぁ・・・考えてもしょうがない。

とにかく、疲れを癒すためにも、さっさと寝るとしよう。

今頃なのはとユーノはどうなってるんだろなー、とか思いながら眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、午後の退屈な授業を受けながら、ノートに落書きなどしてた時のこと・・・

突然に、美月がこんな事を言い出す。

 

《祐介、なのはさんから思念波による通話が来てますよ?》

《通話? ユーノが使ってたみたいなのか?》

《はい。もっとも、例の波長による通信は、祐介はまだできないでしょうから、

 私が受信した後で、秘匿通話で繋いでるんですけど》

《ほー。まぁいいや、繋いでくれ》

 

そういえば、ユーノが僕やなのはを呼んだ時、確かに僕は途切れ途切れにしか聞こえなかったな。

 

 

 

《あ、え~と・・・

 祐介くん、聞こえてる?》

《おー、聞こえてるよー。

 お前もユーノみたく思念通信できるようになったのか》

《うん。あ、でもレイジングハートに手伝ってもらってるんだよ?

 あのね、ユーノくんが、魔法の事とか

 ジュエルシードの事とか話してくれるって言うから・・・》

《そうか。おーいユーノ。状況の説明、始めていいぞー》

《その前に・・・悪いんだけど祐介、君の事を話してくれないか。

 君のその力は一体・・・? 僕らの魔法とも違うし・・・

 あのクリスタルも、デバイスというわけでもなさそうだし・・・》

《あ~、良いけどさ、正直話せる事はほとんど無いんだよなぁ・・・

 美月の出自とかは不明だし。稼働したのも1年前だっていうし。

 取り敢えず現時点で分かってるのは・・・

 美月の中にはメカトロニクスに関する情報があるって事、あと理論は知らないけど、

 システムに登録した者は、データベースに存在する能力を発現できるって事。

 あぁ、そういえば美月が言ってたけど、使ってるエネルギーは魔法と一緒らしいよ?

 運用体系が違うらしいけど。

 今はそれしか分かんないや。悪いなユーノ、役に立たなくて》

《いや、気にしないで。分からないものはしょうがないよ。

 でも・・・僕達の魔法とは別の技術系統での魔力運用か・・・

 聞いたことが無い訳ではないけど・・・》

《そう言えば、デバイスって何なの? さっき言ってたけど》

《昨日も言ったと思うけど、僕らの魔法は、プログラムによって魔力と呼ばれる

 エネルギーを制御するものなんだ。その制御は、基本的には使用者本人が行うけど、

 何らかの道具によって補助する場合もある。その道具を一般的に、デバイスと言うんだ》

 

魔法=杖が必須、っていうお約束事情な訳じゃなかったのか・・・・・・

 

《それはそうと、ジュエルシードなんだけど・・・・・・

 ジュエルシードは、僕らの世界の古代遺産なんだ。

 簡潔に言うと、願いを叶える魔法の石、みたいな物なんだけど、力の発現が不安定で、

 昨夜みたいに単体で暴走して、周囲に危害を加える場合もあるし・・・

 たまたま見つけた人や動物を取り込んで暴走する事もある》

《そんな危ない物が、なんでうちのご近所に・・・?》

 

確かに。物騒極まりないな。あんな物、警察で取り締まる訳にもいかないだろうし。

 

《・・・僕のせいなんだ・・・・・・》

 

ユーノが申し訳なさそうに呟く。

 

《僕は故郷で、遺跡発掘を仕事にしているんだ。

 そしてある日、古い遺跡の中でアレを発見して、

 調査団に依頼して保管してもらったんだけど、

 運んでいた時空間船が、事故か、何らかの人為的災害に遭ってしまって・・・

 21個のジュエルシードは、この世界に散らばってしまった。

 今まで見つけられたのは、まだたった2つ・・・》

《あと19個かぁ・・・》

 

ふむ、まだ先は長そうだな。

っていうか、ユーノ働いてたのか。働くフェレット・・・すげー。

・・・・・・あれ? さっきユーノは、自分のせいだー、とか言ってたけど

事故(もしくは事件)なら、別にユーノ悪くないじゃん。

 

《あれ? でもちょっと待って。

 ジュエルシードが散らばっちゃったのって、

 別にユーノくんのせいじゃないんじゃ・・・》

《あ、やっぱりなのはもそう思うか?

 ユーノ、お前はどっちかっていうと被害者だろ?》

《だけど、アレを見つけてしまったのは僕だから・・・

 全部見つけて、ちゃんとあるべき場所に還さないと・・・!》

 

・・・責任感の強いヤツなんだな。

被害者として、届け出(制度があるのか知らんが)とかすればいいのに、

わざわざ危険を冒してまで、異世界くんだりまで来て回収しようとするなんて。

 

《なんとなく・・・なんとなくだけど、ユーノくんの気持ち分かるかもしれない。

 ・・・真面目なんだね、ユーノくんは》

《・・・・・・え・・・?》

 

予想外の反応だったのか、当惑気味な声を漏らすユーノ。

しかし、すぐに気を取り直したのか、真面目な声で続ける。

 

《ええと、昨夜は助けて貰って本当に申し訳なかったけど・・・これ以上は巻き込めないよ。

 魔力が戻るまで・・・1週間、いや5日もあれば力が戻るから、

 それまで少しだけ休ませて貰えれば―――》

《・・・戻ったら、どうするの・・・?》

《また1人で、ジュエルシードを探しに出るよ》

《それは駄目》《そうだな、却下だ却下》《危険ですよねー》

《だ、駄目って・・・》

 

3人でダメ出し。大怪我までして懲りてないな、このフェレットは。

それに、この状況でなのはが黙ってるとは思えない。

 

《わたし、学校と塾の時間は無理だけど、それ以外の時間なら手伝えるから》

《だけど、昨日みたいに危ない事だって・・・》

 

昨日・・・黒坊とのアレか。

確かにあれだけ破壊活動されたなかで、怪我もなかったのは幸運だったと言えるかもしれない。

でも、このまま放っておく訳にもいかないんだよなぁ・・・

 

《だって、もう話も聞いちゃったもの。放っとけないよ。

 それに、ユーノくん、一人ぼっちで助けてくれる人、いないんでしょ?

 わたしにもお手伝いさせて?

 困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、

 その時は迷っちゃいけない、って・・・

 これ、家のお父さんの教え》

 

良いこと言うなぁ士郎さん。流石なのはのお父さんだ。

 

 

 

「きり~つ、礼」

 

おっと、授業終わったか。

 

終礼を終えて、下校を開始。

今日は3人娘と合流はしないため、直接家路へとつく。

その間にも、2人と話をつけていく。

 

《ま、あきらめろユーノ。

 なのはは良くも悪くも頑固者だからな。お前がうんと言うまで納得しないぞ》

《えぇ!? ちょっと祐介くんひどくないかな!?

 でも・・・ユーノくんは困ってて、

 わたしはユーノくんを助けてあげられるんだよね。魔法の力で・・・》

《・・・・・・うん》

《わたし、ちゃんと魔法でお手伝いできるかどうか、あんまり自信はないけど》

《なのはは、もう魔法使いだよ・・・多分、僕なんかよりずっと才能がある》

《確かに、昨夜なのはさんが放出してたエネルギー量は半端じゃなかったですしねー》

《そ、そうなの? 自分では、よく分からないんだけど・・・

 取り敢えず、色々教えて? わたし、頑張るから》

《・・・うん。ありがとう・・・・・・》

 

どうやらユーノも納得してくれたようだ。

これでこの話は決着ついたな。

 

《よし、なのは、ユーノ。

 じゃあ後で合流だな。ジュエルシードの捜索、急ぐんだろ?》

《え? 祐介くんも手伝ってくれるの?》

《当たり前だろ。ここまで聞いといて、じゃあ後は頑張れー、なんて言えるか。

 なのはじゃないけど、僕にもやれる事はあるだろうし、協力させてくれよ》

《うんっ!! ありがとう、祐介くん》

《ユーノも、いいか?

 巻き込んでしまったなんて考えずに、使えるものは使ってしまえ》

《う、うん。2人とも、ありがとう。本当に》

《とりあえず一旦家に帰ってから、出かけるときは連絡を――― ッ!?》

 

そこまで言ったとき、突然何かを感じた。

なんていうか、こう、良くないモノが出現したような・・・

 

《ユーノくん、今のって・・・》

《なのはも感じたか。美月!》

《はい、黒坊と同じ波動を確認!》

《新しいジュエルシード! すぐ近くだ!》

《ど、どうすれば?》

《一緒に向かおう。手伝って!!》

《う、うん!》

《こっちも向かう! 現地で合流だ!!

 美月、発信源は?》

《郊外の神社、境内です!!》

 

え~、あそこの階段って長いから嫌いなんだよなぁ・・・

しかしそんな事を言っている場合じゃないか。

悪態をつきながらも、神社へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

境内への階段の下でなのは達と合流し、一気に駆け上がる。

 

「なのは! レイジングハートを!」

 

ユーノに言われ、紅い宝石を取り出すなのは。

 

「祐介、こっちも心の準備はいいですか?」

「あぁ、やるだけやってみるさ!」

 

 

 

そして境内へと辿り着く。

相手はまた黒坊かと思っていたのだが・・・

そこにいたのは犬・・・っぽい何か。

 

「何だアレ!? ヘルハウンド?」

 

いや、実際に見たことはないが、いたらあんな感じなんじゃないだろうか。

 

「原住生物を取り込んでる・・・!」

「ど、どうなるの?」

「実体がある分、手強くなってる!」

 

原生生物って・・・野良犬でも取り込んだか?

しかし黒坊より厄介な相手か・・・

でも、やるしかないな。

 

「大変です! あそこに女性が倒れてます!!」

 

美月の声に注意して見ると、犬っち(と呼ぼう)の近くに、

トレーニングウェアを着た女の人が倒れている。

ぱっと見では外傷は無さそうだ。恐らく、犬っちを見て気絶したのだろう。

 

 

 

「・・・取り敢えずあいつをあの人から引き離す!

 僕が牽制するから、なのはは昨日の・・・えと、封印?を頼んだぞ!」

 

そう言って、直ぐにランドスピナーを展開、犬っちへと突進する。

相手のベースは犬・・・か。 何とかこっちに注意を・・・!

 

「美月、少し喧嘩売るぞ!」

「了解! 0式レールガン、ユニット展開!」

 

取り回し重視として登録していた武器を選択。

両下腕部に、それぞれ2連装の砲口がついた篭手のようなものが装備される。

そして右手を犬っちに向け、牽制として10発くらい撃ち込む!

 

  ウガアァァッ!!

 

よし、関心はこっちに向いた! そのまま女の人から引き離す。

そして、動きを止める事のないように気をつけながら、犬っちに弾丸を連射する。

 

ダメージ通ってるのか通ってないのか分からないが、

出力は抑えてるから、必要以上に傷つけてはないはず。

後は上手く動きを封じて、なのはに任せる事ができれば・・・・・・

 

「よーし、こっち来いこっち来い!」

 

  グワオウゥゥゥッ

 

突然、犬っちが身を翻して走り出す。

って、なんでそっち行くんだよ!?

 

「くッ・・・! なのはッ! 悪いそっち行った!!」

 

振り返り叫ぶ。しかし・・・

そこには未だあたふたしてるなのはの姿が。

 

「ええぇぇーーー!?」

 

ってまだ準備できてないー!?

マズイ、このままじゃ間に合わ―――

 

「レイジングハートのエネルギーが上昇しています!」

 

なのはの手の中で、あの宝石が強く輝きを増す。

 

「Stand by ready. Set up.」

 

光が収まり、なのはの手には昨日の杖。レイジングハート起動したか。

それを目にした犬っちは進行を止め、様子を伺う。が、再びなのはに向かって飛び掛かる。

 

「なのは! 行ったぞ!!」

「う、うん・・・!」

「Barrier jaket.」

 

  グワオウゥゥゥッ

 

激しい衝撃音と土煙が立ち上る。

ッ!? 間に合わなかったのか!?

 

「なのはッ!!」

 

慌てて土煙の中に飛び込む。視界が開けると、そこには地面に座り込んだなのはの姿。

服装は昨日と同じになっている。防護服間に合ってたか。

ひとまず怪我などはないようだ。ふぅ・・・ヒヤヒヤさせてくれる・・・

 

「美月、犬っちは!?」

「鳥居の上です!!」

 

見ると、鳥居の上から再びなのはに向かって飛び掛かって来ている。

なのははレイジングハートを掲げ、防壁を展開、犬っちと拮抗する。

 

「Protective condition, all green.」

 

しばらくせめぎあった後、犬っちを弾き飛ばす。

あの防壁、硬いなぁ・・・さっきの、結構な衝撃だったと思うんだが・・・無傷ですか。

 

「痛・・・くは無いけど。

 えと、封印ってのをすればいいんだよね。

 レイジングハート、お願いね」

「All right.

 Sealing mode. Set up.」

 

昨日と同じく、デバイスを変形させ、光の帯で犬っちを拘束する。

そして、犬っちの額に浮かぶ、XVIの文字。

 

「Stand by ready.」

「リリカルマジカル。

 ジュエルシード、シリアル16。――― 封印っ!!

「Sealing.」

 

 

 

光と共に犬っちは消え、後に残ったのは、小犬とジュエルシード。

とりあえず小犬に近寄る。

 

「こんな小犬が、あんなヘルハウンドにねぇ・・・

 なのは! これ頼む!」

 

ひょいと宝石をつまんで、なのはに放る。

ジュエルシードは、レイジングハートに格納された。

 

「Receipt number sixteen.」

「ふぅ・・・これで、いいのかな?」

「うん・・・これ以上ないくらいに・・・」

「周囲の反応、全てクリア。状況終了です」

「ふぃ~、なんとかなったか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ・・・? 転んで頭でも打ったかな・・・」

「ワンッ!」

 

小犬は、あの女の人のそばに置いといたのだが、どうやらあの人の飼い犬だったらしい。

抱きかかえられて、神社を去っていった。

 

 

 

石段に腰掛けながら、それを見送る。

 

「お疲れ様、かな?」

「そうだな、とりあえずは上手く収まったか」

 

あー今日も日が暮れる・・・

夕陽を見ながら、この事件に首を突っ込んだことに関して今更考える。

後悔してる訳じゃない。けど不安が無い訳でもない。

これから何が起こるかは分からないが、とにかくやると決めたんだ。

なら、頑張るしかないじゃないか。

 

「よし、僕達も帰るか!」

「うん!」

 

前向きに考えよう。

ジュエルシードは現在3つ。まだまだこれからだ。

色々あるかもしれないけども、できる事をしていこうと心に思いながら、

僕達は階段を駆け下りていった。

 

 

 

 

 

      第2話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「・・・なぁ、ひとつ思うんだけど」

美月「なんですか?」

祐介「ひねり無くない?」

美月「作者に創作の才能がありませんからねー。

   まぁ一応オリジナルの話も多少は考えてるみたいなんで勘弁してあげて下さいよ」

作者「小説書ける作家さんって尊敬するわぁ・・・」

祐介「そんなんで大丈夫か・・・?

   で、今回登場の能力はなんだったっけ?」

美月「前回に引き続き、ランドスピナーが出てましたね。

   あとは、『Absolute Terror FIELD』でしたか? あのバリアーっぽいの」

作者「説明不要じゃないかと。超有名な汎用人型決戦兵器の心の壁」

祐介「うわ・・・説明がぞんざいだ・・・」

美月「それと、初登場は『0式レールガン』です。これはどんなモノなんですか?」

作者「MFS-3 3式機龍の手に装備されてるアレ。牽制に便利」

美月「・・・・・・え、終わりですか!?」

祐介「随分と雑な説明だなぁ・・・・・・」

 

 

 



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第3話 プールだ!水着だ!変態だ!?

 

 

 

「そう、集中して。心の中に、イメージを描いて」

「う、う~ん・・・」

 

ユーノの声に続くようにして、なのはが目を閉じ集中する。

 

「そのイメージをレイジングハートに」

「うん・・・レイジングハート、お願い!」

「Stand by ready.」

「イメージに魔力を込めて。一気に発動!」

「イメージを魔力に・・・」

 

レイジングハートの輝きが増してきた。いけるか!?

 

「リリカルマジカル。

 えっと・・・捕獲魔法、発動!!

 

桜色の光が迸り、こちらを拘束するべく迫ってくる!

 

「成功か・・・!?」」

「いや、してない!!」

「「え・・・?」」

 

目の前に迫る光は、集束しかけたように見え・・・

こらえきれずに弾き飛ぶ!!?

 

ドガアァァン!!

 

「のわあぁぁぁぁぁっっ!!!?」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第3話 プールだ!水着だ!変態だ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、祐介くん! 大丈夫!?」

「お~ぅ・・・なんとか生きてるよー」

 

爆発で吹っ飛ばされたものの、幸いにも怪我は無い。

死ぬかと思ったけどね・・・

 

「ご、ごめんね。上手くできなくて・・・」

「いや、昨日今日でベテランにはなれないって。

 だからこそ、レイジングハートを使いこなす為にこうやって練習してるんだろ?

 僕なら大丈夫。防御はしてるし」

 

そう、ユーノからレイジングハートを託されたなのは。

類まれな才能を持ってはいるものの、魔法に関しては素人。

そこでユーノ監修の下、この数日、早朝特訓に励んでいるのだ。

ついでに僕の能力行使の練習も兼ねている。

今朝は防御能力の練習と効果の確認だ。

 

「この『Phase Shift装甲』とかいうの、結構使えるか。無傷ですんだよ」

「確かに、この物理耐性はかなりのものですねー」

 

さっきの爆発で吹っ飛ばされて、背中から樹にぶち当たったんだが、

傷一つ無いところを見ると、防御は上手くいったみたいだ。

なのはの訓練は・・・アレだったが。

 

 

 

「ふぅ・・・なかなか上手くいかないねー」

「いや、でも凄いよ。たった数日で、ここまでできる様になってるんだから」

 

指南役のユーノからお褒めの言葉。

しかしなのはとしては複雑なようで・・・

 

「う~ん・・・そうなのかなぁ」

 

そこまで言った所で、なのはの携帯から音楽が流れる。

 

「あ、もうこんな時間」

「じゃあ、今朝はここまでって事で」

「おーし、お疲れさん、なのは」

「うん! ありがとう、レイジングハート。また後でね」

「Good bye.」

 

レイジングハートが杖から宝石(待機状態と言うらしい)に戻る。

これを使いこなすのも、ジュエルシードを集めるのも、時間が掛かりそうだな。

 

まぁとにかく今朝の特訓は終了、帰ろう帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・攻撃とか防御とかの魔法は、大分コツが分かってきたんだけどなぁ」

 

帰宅途中、歩きながらなのはがボヤく。

 

「なのはは、エネルギー放出系が得意みたいだからね。

 元の魔力が大きい分、集束とか圧縮とか、微妙なコントロールが苦手なんだよ」

「その・・・それはわたしが、力任せで大雑把な性格・・・という事では」

「おぉなるほど。自己分析はバッチリだな、なのは」

「ふえぇぇ!? ゆ、祐介くんひどいよー」

「で、でも、とりあえず大丈夫。捕獲とか結界の魔法は、僕がサポートできるはずだから」

「そうなのか。でも病み上がりなんだろ? 大丈夫か?」

「大丈夫。少しは魔力も戻ってきたし、元々、そっち系の魔法は得意だから。

 ・・・だけど、ジュエルシードの封印をするには・・・僕の魔力では・・・」

 

とたんに申し訳なさそうになるユーノ。まだその事で悩んでたのか。

すると、なのはがユーノを目の前に抱き上げる。

 

「大丈夫だよ。それはわたしがバッチリやるから。

 魔力が大きくて、攻撃と防御が得意なわたしが封印。

 補助魔法が得意なユーノくんは、わたしの魔法の先生で、現場では封印のサポート。

 それに、祐介くんや美月さんだって協力してくれてるし。

 だから大丈夫。みんな一緒なら、きっとね」

「ああ、できる事は多くないかもしれないけど、僕も協力は惜しまないよ」

「ですねー。私も頑張りますよー」

「みんな・・・ありがとう」

 

お? そうこうしてる内に解散場所だ。

早いとこ帰らないと。この後は学校あるしな。

 

「よし、じゃあ解散! またな、なのは、ユーノ」

「うん! またねー」

 

二人(もとい一人と一匹)を見送り、僕も帰路につく。

ふぃ~。今朝も大変だったなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰り祐介。今日も行ってたんだ?」

「ただいま姉さん」

 

帰宅すると、姉さんが朝食を作って待っててくれた。

母さんは例のごとく出勤。お勤めご苦労様だ。

とりあえず軽くシャワーを浴び、二人で朝食にする。

 

「それにしても、急に早朝ランニングなんてどうしたのよ。

 健康で良いけど、何かあった?」

「いや特には。まぁ思いつき?

 健康な精神は健康な肉体に宿る、ってね。

 精神が健康になれば、密接に関係してるであろう脳への刺激により、

 老化防止・記憶の復旧にも役立ち―――」

「・・・本気で言ってる?」

「いや、まさか。適当に今考えた」

「ま、いいけどね。怪我しなければいいって母さんだって言ってたし。

 それはそうと、今日の準備ってちゃんとしてるの?」

「今日? 何かあったっけ・・・?」

「ほら言ってたじゃない。この前できた新しいプールに、放課後みんなで行くって」

「あー、忘れてた。そういえばそうだった。

 学校から直行だった。後で準備しとかないと」

 

まぁ男の準備って言ったって、すぐ済むけど。

 

「いいわよねぇ、私も行きたかったなぁ。

 知ってたら、友達との約束入れてなかったのに・・・」

「まぁまぁ。また機会があればみんなで行けばいいし。

 だから今回は我慢して。ね?」

いや今からでもキャンセルしてプールに・・・

 そうすれば一緒に・・・

 目移りも防げて・・・私の・・・も・・・・・・・

「・・・何を考えてるのか分からんが、また今度な・・・・・・」

 

妙な計画を立て始めた姉さんをなだめつつ朝食を食べ、いつも通りに登校。

 

 

 

 

 

しかし放課後、家に帰らずに遊びに直行するって・・・

何か興奮しない? 寄り道って。

 

《興奮してる理由ってそれだけですかぁ?

 みんなのカワイイ水着姿を見られる~って期待してるんじゃないんですかー?》

《バッ、バカ言うな。

 僕は純粋に寄り道と言う冒険心くすぐる行為に期待を馳せているのであって、

 そんな事に期待なんか・・・》

 

・・・・・・してない、と思いマス・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、集合場所である温水プールへと向かう。

その途中で、電器屋の前を通りかかったとき・・・

 

   『先日、海鳴市美坂町で発生した、市街地の壁が突然壊れた事件ですが、

    その後の調べで、自動車事故ではない模様。

    爆発の痕跡も無かった事から、ますます謎が深まっています。

    幸い怪我人は無く、最も被害が大きかった槙原動物病院の入院患畜にも、

    怪我人…もとい怪我動物もいませんでした。

    が、近隣の住民は、原因不明の出来事に不安を隠せないようで…』

 

店頭のテレビからニュースが流れている。

・・・・・・え~と、これってこの前の・・・

 

《結構な騒ぎになってますねー》

《かなり暴れてたからなぁ、黒坊のヤツ》

《何気に他人のせいにしてますケド、半分は祐介のせいじゃ?》

《サぁ何ノ事ヤラ? 知ラナイナぁ。

 ア、モウコンナ時間ダ、急ガナクッチャ》

《悪い子ですねー》

 

とかやりつつ、心の中で住民の皆さんに謝っておく。お騒がせしてすみませんでした・・・

これからは器物損壊とかしないように頑張りますです、はい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで現地到着。みんなはまだ来ていないようですな。

え~と、今回は何人になるんだっけ?

いつもの3人娘と・・・なのはの姉さんである美由希さん、

すずかの家のメイドさんの、ノエルさんとファリンさん。

恭也さん、なのはの兄さんは・・・もう中か。今日は監視員のバイトしてるって言ってたし。

 

 

 

おや? あれは・・・美由希さんだ。ちなみにユーノが肩に乗っかっている。

すっかりお気に入りマスコットにされてるな、ユーノのやつ。

 

「どうもです、美由希さん」

「こんにちは、祐介くん。そっか、今日は咲ちゃん来られないんだったね」

「最後までぶーぶー言ってましたよ。

 まぁまた今度遊びにでも誘ってやって下さい」

「そうだね。みんなはまだ来てないの?」

「もうそろそろだと思いますけど・・・

 お、噂をすれば」

 

月村家の立派な車がやってくる。残り5人の到着だ。

 

「あ、お姉ちゃーん! 祐介くーん!」

「なんだ、もう来てたの。早かったじゃない」

「ご、ごめんね。待った?」

「いや、そんなには。さっき来たばっかりだし。

 ノエルさんにファリンさん、お久しぶりです」

「お待たせして申し訳ありません」

「いやーごめんねー。道路が混んじゃって」

 

そんな感じでみんなに挨拶し、全員揃った所で、いざ! プールへ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の着替えなぞ早いもんだ。あっという間に準備を終え、更衣室を出る。

まぁ当然ながらみんなは誰もいな・・・って一人いたよ!?

アリサ早っ!? なんでもういるの!?

と、向こうもこちらに気付く。

 

「あら、遅かったじゃない」

「どんだけ高速で着替えたんだよ・・・早すぎだろ・・・・・・

 まさか、『既に服の下に着てました』みたいな事を!?」

「そんな訳ないでしょうが!! 普通に着替えたわよ!!

 時間を無駄にしない為にも急ぐのは当然よ。

 あ、ほら、あれ。恭也さんじゃない?」

 

見ると、向こうで監視のお兄さんが、はしゃいでいた子供たちに、笛をふいて注意をしている。

 

「恭也さ~んっ!」「お疲れ様です、恭也さん」

「アリサ、それに祐介か。早いな、一番乗りか?」

「はい! なのはとすずかは、まだ着替えてます」

「アリサが早すぎるだけだと思うんですがね。

 まぁみんなも、おいおい来るんじゃないかと。あぁほら」

「あ、アリサちゃーん! 祐介くーん! おにいちゃーん!」

 

どうやら後続も到着したようだ。

 

「ああ、みんなお揃いだな」

「うん! お姉ちゃんとユーノくんも、もうすぐ・・・」

「おまたせー! おぉ恭ちゃん、監視員姿似合う~

 で、こっちはどう? 今年初の、みんなの水着姿は」

「え、あぁ、その何だ・・・」

 

 

 

感想を求められ困ってそうな恭也さん。

そういうフリが来るとは思ってた! 恭也さん、頑張れ! (心の中で)応援だけはしてますから!

 

「ちょっと、あんたはどうなのよ」

「・・・へ?」

「そうだよ、私たちだって頑張ったんだから」

「感想は?」

 

ちょ、矛先が恭也さんに向いてて安心してたのに、

ここでこっちに振ってくるとは全くの予想外!?

 

「あぁ、いやその・・・・・・に、似合ってると思うぞ! 3人とも!」

「・・・まったく」「にゃはははは・・・」「・・・クスッ」

《まったく、つまんない答えですねぇ・・・》

 

・・・・・・無難すぎたらしい。呆れ、苦笑。そんな反応されるとわ・・・

こ、こっちだって困るわ! ていうか美月、つまんないって何だよ!

男の子としては気恥ずかしいっての!

 

 

 

 

 

それはともかく・・・今更ながら、この施設の規模に圧倒されそうになる。

 

「でも、ここ凄いねー。

 飛び込みプールあるし、流れるプールあるし」

「あっちには、お風呂もありましたよ」

 

確かに凄いなこりゃ。ほんと大人から子供まで、誰でも楽しめるようになってるんだな。

 

そうして見回していると何やら妙なものが目に入った。

 

「恭也さん、あれ何です? あの、お立ち台みたいなやつは」

「あぁ、そのまんまだよ。希望者が歌って踊れるステージなんだ」

「「「「「「「えぇ~~~っ!?」」」」」」」

 

何だそりゃ。アイドルイベントでもあるまいし。見世物以外の何物でもない・・・

 

「こ、こんな場所で、歌ですか・・・?」

「いや、これが結構人気あるんだよ。

 ついさっきまでも、女の子たちが歌ってたし」

 

・・・マジか。相当な勇気が要りそうなんだが・・・僕は絶対やりたくない。

 

「へへへ~、誰か歌う?」

「わ、わたしはいいよ」「私も遠慮を・・・」「ぜってー無理」

 

アリサがけしかけるが、なのはもすずかも気乗りしない様子。

そりゃそうだろう。ていうか自分で行け、自分で。

 

「美由希さん? ファリンさん?」

「だ、だめだめ! 私、歌下手・・・」

「わ、わたしなんかもっとです・・・」

「やはりここは、言い出した方が先陣を切られるべきでは? ね、アリサお嬢様?」

「え"・・・」

 

おぉ! ノエルさん、ナイスです!! そうですその通り!!

 

「アリサの歌を聴いてみたい人ー?」

「「「「「はーーーーい!!」」」」」「キュ」

「えぇ~~!? や、藪蛇だわ! こ、これは何かの罠!?」

 

自業自得・・・ 何気にユーノも手を挙げている。アリサに逃げ場は無い。

 

「ほら、受付はあっちだぞ。行っといで、アリサ」

「頑張って、アリサちゃん!」「ファイトっ!」「しっかりやれよ発案者っ!」

 

そしてみんなで囃し立てアリサを追い詰める。

アリサはしばらく困ったようにしていたが、ついに開き直ったのか、叫んだ。

 

「いいわっ!! 泳ぎの前の景気付け!! 歌ってみせようじゃないの!!」

 

そう言って、受付の方へ走っていくアリサ。

思い切りの良さと、切り替えの早さは流石だな。

 

 

 

 

 

そうして数分後、ステージの上にアリサが登ってくる。

 

『え~次に歌ってくれるのは、海鳴からお越しのアリサ・バニングスちゃん!

 曲は[Precious time]です。それでは、お願いしまーす』

 

曲が流れ始める。

はじめこそ少し緊張気味だったが、しばらくするとノッてきたのか振り付けまでして歌うように。

おぉ・・・凄いなアリサ。なかなか上手いじゃないか。

 

気づくと素で聞き入ってた・・・

 

 

 

 

 

観客の拍手と共にステージを降り、アリサが帰ってくる。

 

「凄いよアリサちゃん! 歌上手~!」

「満足できて良かったなアリサ。凄かったぞ」

「あははは・・・ちょっと気持ちよかったかも」

 

みんなで拍手で迎えてやる。

 

確かにステージは凄かった。が、本来の目的はソコじゃない。

ここはプールなのだ。

さて、それじゃあ・・・泳ぐかー!

 

 

 

 

 

みんな思い思いに好きなプールへ突撃していく。

僕も3人娘に引きずられる形で、流れるプールに叩き落とされたのだが、

そのまま放置されたので、しくしくと泣きながらしばらく流れに身を任せていた。

 

《祐介、祐介》

《んぁ? なんだ美月?》

 

突然、美月が秘匿通話を繋げてくる。

 

《ちょっと小耳に挟んだんですけど・・・

 この施設、最近ちょっと物騒みたいですよ?

 更衣室荒しとか、着替え泥棒とか・・・この間も捕まったみたいですし》

《・・・変態がでるのか。そりゃちょっと心配だな・・・

 まぁ、気にしすぎない程度には警戒しとくか》

 

そう言って、とりあえず流れから脱し、みんなの姿を探す。

 

 

 

すずかは美由希さんと競泳中、か。

すずか凄いな・・・なんて速さだ。

別に美由希さんが極端に遅い訳でもないのに。

 

アリサはノエルさんと泳ぎの練習。なんだ泳げなかったのか?

 

 

 

なのはもその横で泳いでるようだけど・・・何かボーッとしてるな。

どうかしたんだろうか?

 

「どうしたなのは。考え事か?」

「あ、祐介くん・・・ううん、大した事じゃないんだけど。

 こうしてのんびり泳いでると、色々考えちゃって。

 魔法使いになっちゃった事とか、なんだか夢の中の事みたい・・・

 でも・・・・・・」

 

そうして、首に掛けたレイジングハートを目の前にかざす。

 

「夢じゃないし、ユーノくんのためにも、わたし・・・頑張らないと」

「・・・そうだな。関わったからには、出来る事は頑張らないとな。

 でも思いつめるなよ? そう一朝一夕に魔法が上手くなる訳でもないんだから」

「うん・・・そうだね。ありがとう、祐介くん」

「そういえば、そのユーノはどうしたんだ? さっきまで一緒じゃなかったか?」

「何か、その辺を散策してくるって言ってたよ。迷子にならなきゃいいけど・・・」

「まぁ大丈夫だろ。ただのフェレットじゃないし。

 さ、そろそろみんなと合流しよう。一応そんな時間だし」

「うん!」

 

 

 

 

 

さて・・・向こうであっぷあっぷしながら励んでいるアリサの練習具合はどうかな・・・?

 

「アリサちゃん、どう?」

「うん! だいぶ・・・!」

「えぇ、アリサお嬢様は本当に飲み込みが早いです」

「ほー、やる時はやるんだな、アリサ」

「ふふーん、どうよ。

 あ、すずか達はまだ競争してるの?」

 

あぁ、そういえばハンパない競り合いしてたな。どうなってるんだろ?

 

 

 

「さぁゴール直前! すずかちゃん追い上げる! 美由希さん逃げ切れるか!?」

 

競泳用プールに向かうと、何故か実況しているファリンさんの声が聞こえてくる。

どうやら接戦のようだ。

僅かにリードしている美由希さんの後ろから、すずかが猛スパートをかけている。

 

「すずかちゃん速い速い! あぁゴール直前!

 後3メートル・・・2メートル・・・ゴールは・・・!?」

 

  ピーッ!

 

ファリンさんがホイッスルを鳴らす。

勝ったのはどっちだ? かなり僅差だったけど・・・

 

  ピッピッピー!

 

「美由希さんの勝ちー!」

 

「残念・・・かな」「あ、危なかった~」

「お姉ちゃん、すずかちゃん、おつかれ」

「はい、タオル」

「本当にタッチの差だったな。おつかれさん」

「すずかちゃん、ほんとに速いねー。手足の長さ、こーんなに違うのに・・・」

 

  ピーッ!

 

と、またファリンさんがホイッスルを吹く。何だ? まだ何かあるのか?

 

「という訳で・・・敗者には、罰ゲーム!!」

「えぇっ! き、聞いてないよー!」

「アリサちゃんの発案で、

 負けた人はさっきのステージで一曲歌ってもらう事になってま~す♪」

「アリサちゃん!?」

「おっほっほっほっほー、行ってらっしゃ~い!」

「したたかなヤツ・・・」

「よ、良かった・・・勝って良かったぁ~・・・」

 

美由希さんなんて冷や汗かいて安堵してるし。

 

「では、すずかお嬢様。受付に」

「えぇ~・・・は、恥ずかしいよ~」

「慣れちゃえば、結構気持ちいいよ?」

「まぁ何だ、あきらめて頑張れ・・・」

「うぅ・・・えっと・・・それじゃあ・・・行ってきます・・・」

 

結局折れて、とぼとぼと受付に向かうすずか。

ステージに上がるのにあんなテンションで大丈夫なんだろうか・・・?

 

 

 

 

 

『それでは、月村すずかちゃんに歌っていただきます。

 曲は[きっとStand by you]。どうぞー』

 

・・・・・・なんだかんだ言ってたが、すずかのやつ結構ノリノリだな。

しかも上手い。真面目に上手いじゃないか。

観客だってみんなテンション上がってるし・・・アリサといいすずかといい、やるな。

 

 

 

 

 

歌い終わったすずかを皆で迎え、それぞれ再び自由行動となる。

 

「とりあえず、風呂の方にでも行ってみるか・・・

 ――― ッ!!」

 

突然、何か嫌な気配を感じる。これは・・・ひょっとして・・・

 

《美月! なのはとユーノに連絡つくか?》

《今繋ぎます!》

 

《なのは! ユーノ! 大丈夫か!?》

《祐介くん! うん、わたしは平気。ユーノくん、これって・・・》

《うん・・・ジュエルシードだ。すぐに戦闘になる・・・

 ごめん2人とも・・・せっかくのプールの最中なのに・・・》

《まぁ不可抗力だろ。むしろ捜し物見つかってラッキー、くらいに思えばいい》

《うん、みんなで一つのチームだもん。いいよ、いつでもOKだよ!!》

《すぐにそっちに合流する。美月、行くぞ!》

《りょーかーい!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・何じゃコレ・・・・・・・・・・・・」

 

合流しようと戻ってきた場所は、何だか凄い事になっていた。

 

  オオオォォォォ

 

「いやぁぁっ!」「こんのぉ! やらしい動きすんなぁ!」

「水の・・・オバケ・・・? 命の危機って訳じゃなさそうだけど・・・」

「見てはいけない見てはいけない見てはいけない・・・・・・」

 

水を固めたのであろうジュエルシード暴走体が、

女性客の水着(今の狙いはすずかとアリサ)を奪おうとしてるわ、

なのはは呆けてるわ、ユーノは目を背けてブツブツ言ってるわ・・・

 

しかしまぁ、じっと直視するのも気まずいな。ていうか後でアリサに怒られそうだ。

 

「ユーノ、この状況は何事だよ?」

「見てはいけない見てはいけな・・・え?

 あ、うん・・・想像なんだけど、あのジュエルシードを発動させた人間・・・

 多分、捕まったっていう更衣室荒しの人の願いと興味が、

 形になったんじゃないかな・・・と・・・・・・」

「・・・え・・・?」

「つまり・・・女の子の服を集めたいって願いだから・・・・・・」

「ただの変態じゃねーかッ!!」

 

おいおい・・・まさか変質者のジュエルシードなんて・・・

 

  オオオォォォォ

 

「「きゃあぁぁっ!」」

 

って、水着を取られた2人に大波が襲いかかってく!?

つい慌てて目を逸らす。み、見てない見てない、僕は何も見ていないー!!

 

「アリサちゃん、すずかちゃん!!」

「Protection.」

 

どうやら、なのはが何とか防いでくれたらしい。

ホッと胸を撫で下ろす、が美月に怒られる。

 

「祐介、ちゃんと働いて下さいよ」

「そうは言っても状況的に直視し難いんだが・・・」

「直視して下さい。女性をガン見しなくていいですから状況はちゃんと見て下さいよ。

 女性と思うからダメなんです。他のものだと自己暗示してみるとかどうですか?」

「そうか。よし・・・あれはただの肉塊、あれは肉塊、あれは肉塊・・・・・・」

「それはそれで怒られそうですけどねー」

 

とにかく自己暗示により、ようやく状況を確認する。

しかしどうしたものか・・・このまま戦う訳にもいかないし・・・

 

「・・・ごめん2人とも! ちょっとだけ眠ってて!!」

 

ユーノがそう言って魔法陣を展開、アリサとすずか・・・じゃない、2つの肉塊を淡い光が包む。

すると2人はそこに倒れて眠り込む。よく分からんが催眠系の魔法でも行使したんだろう。

 

「ユーノ、ナイス! よし、これなら・・・なのは!」

「うん! レイジングハート、お願い!」

「Barrier jaket.」

「美月、こっちも戦闘準備!」

「了解! 常時発動防御として全身にPS装甲を付与(エンチャント)

 Quick launcher 全解凍、高速顕現状態へ!」

 

2人とも臨戦態勢に入る。

 

 

 

「個人の趣味や嗜好をとやかく言うつもりは無いケド!

 人様に迷惑をかけるような変態的行動してんじゃねー!

 そのままおとなしく封印されてくれ!

 なのは! 頼む!!」

「了解っ! レイジングハート!!」

「Sealing mode. Set up.」

 

レイジングハートがいつもの様に変化する。

 

「リリカル、マジカル。封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!

 ジュエルシード、シリアル・・・あれ・・・? 番号が・・・読めない!?」

「なに!?」

 

見ると、うごめく水の中にぼんやりと光る部位はあるものの、

数字が判別できない状態になっている。

 

「よ、読めないけど・・・! とりあえず――― 封印っ!!

「Sealing.」

 

光が水に突き刺さっていく。

そして水が弾け飛び・・・

 

「と、止まった・・・か?」

 

四散した水に近づいてみるが、捜し物は見当たらない。

 

「大量の水着と下着ばっかりで、肝心のジュエルシードがないんだが」

「反応も消えてない! まさか・・・分裂してるのか・・・!?」

「「えぇ!?」」

「取り敢えず、急いで反応の方に! ・・・・・・くっ」

 

駆け出そうとしたところで、ユーノの体が傾く。

 

「ユーノ! 大丈夫か!?」

「だ、大丈夫・・・ちょっとクラっときただけ・・・

 結界を張っただけなのに、これじゃあ・・・

 

恐らくは魔力の使いすぎによるものだろう。

ボロボロになるまで一人でジュエルシード捜して、

その怪我だって魔力で治療したとはいえ、まだ治ったばかりだ。

 

「なのは。取り敢えずユーノを頼む」

「うん。ユーノくん、乗って。わたしの肩、しばらくユーノくんの指定席だね」

 

そして改めて反応の方へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  オオォォォ  オオォォォ  オオォォォ

 

「って増えてるしッ!?」

 

現場に着くと、少し小さくなった水オバケがたくさんいた。

 

「分裂して増殖してる! まとめて封印しないと、また増えちゃう!!」

「ど、どうすればいいの?」

「大型の魔力放射砲で強制停止・・・なんて、まだなのはには無理だし・・・

 複数用のロックオン系魔法・・・なんか用意してないし・・・

 ・・・よし。僕があいつらの動きを止めて、何とか一つにまとめるから―――」

「そんなフラフラの体で何言ってんだ! 無理するな!」

「で、でも・・・」

「・・・動きを止めて、一つにまとめるんだよね。

 ちょうど今朝教わってた魔法の応用編・・・やってみる!!」

 

そういうと、なのははレイジングハートを構える。

 

「イメージを・・・魔力にのせて・・・」

 

  オオォォォ  オオォォォ

 

「祐介! 敵がこちらに気づきました!」

 

魔法の発動に反応したのか、水オバケが一斉に向き直る。

 

「狙いは・・・なのはかっ!!」

「一度空に回避を!」

「残念ユーノくん、空飛ぶ魔法はまだ教わってない!」

 

ユーノが「あぁ~そうだった~!」と頭を抱える。おいおい、しっかりしろよ師匠!

 

「でも・・・大丈夫! 祐介くんっ!」

 

なのはがこっちに声をかける。

 

「分かってる! なのはの邪魔はさせない! 美月、いくぞ!!」

 

両手に、小銃『BR-M-79C-1』を構える。

以前使ったビームライフルでも良かったが、今回は質より量だ。

 

「いっけぇぇッッ!!」

 

水オバケの大群に向かって緑銀のビームを連射する。

小さくなった分だけ弱いらしい。ビームの一発で弾けて水になる。

倒すのに苦労はしないんだけど・・・・・・

 

  オオォォォ  オオォォォ  オオォォォ

 

「ぎゃーッ! また増えたーッ!!」

「これはきりがありませんね・・・」

 

後ろでは、なのはが魔法の完成に集中している。

もうちょっと時間を・・・ッ

四方から接近してくる水オバケを片っ端から吹き飛ばす。

しかし、倒すそばから増殖されると本当に厳しいな・・・・・・

 

「なのはさんの魔力、集束していきます!」

「出来たか! よし、任せたぞ! なのは!!」

「リリカル、マジカル・・・

 捕獲、そして固定の魔法! レストリクトロック!!

 

水オバケ達の周囲に光の輪が発生し、水オバケを一つにまとめる。

 

「凄い・・・! 範囲対象の完全固定・・・集束系の上位魔法・・・!!」

 

ユーノもこれには驚いたようだ。

この魔法がどれだけ凄いのかはよく分らんが。

ともあれ・・・

 

「一箇所にまとまってる今がチャンスだ! なのは!!」

「了解! いくよ! レイジングハート!!」

「Sealing mode.」

「リリカル、マジカル。今度こそ・・・!」

 

光の帯が、ぎゅうぎゅうにまとめられた水オバケを貫いていく。

そして今度ははっきりと数字が浮かぶ。

 

「見えたぞ! 17番だ!!」

「うん!

 ジュエルシード、シリアル17! ――― 封印っ!!

「Sealing.」

 

  オオオオオオォォォォォ

 

 

 

 

 

辺りの光が収まる。

 

「・・・・・・成功?」

「うん・・・今度は、間違いなく・・・・・・」

 

残ったのは青い宝石と、大量の水・・・と、またもや大量の水着。

 

「・・・どーするんだ? コレ・・・・・・」

「取り敢えず、祐介が回収・保管、という事にしましょうかねー」

「断固拒否! 僕を変態犯にする気か!!」

 

その時、突然服があちらこちらに飛んで行き始める。

 

「あ・・・服と水着が戻ってく・・・・・・」

「魔法が解けたから、持ち主の所に戻るんだ」

「・・・どういう理屈でだよ・・・」

 

まぁでも助かった。

・・・マジで回収とかさせられて変態扱いはゴメンだ。

 

 

 

 

 

「でも、ジュエルシードもこれで4つだね」

「だな。後17個か」

「う、うん。ありがとう・・・」

「何にしても、今回も無事に解決して良かったですねー」

「あぁ。そういえば・・・なのは、そのままでいいのか?」

「え? あ! バリアジャケット解除しなきゃ!」

 

慌てて元の格好に戻る。

ちなみに僕はずっと水着(の上にパーカー)だったが。戦闘服なんてないもん。

・・・あれ?

そういえば今になって気づいたケド、戦闘中、人の気配あったっけ?

・・・まぁいいか。見られて騒がれるより。

 

「ま、何はともあれ、お疲れ様だな」

「うん! さ、戻ろう! ユーノくんも、バスケットで休んでて」

「あ、うん」

 

取り敢えず事は済んだし、とっとと戻ったほうがよさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってくると、そこには何事も無かったかのような喧騒が広がっていた。

アリサとすずかはまだ眠っていたので、なのはは浮き輪でボ~っと浮かびに行ったらしい。

僕は、騒ぎで行きそこねていた風呂に浸かり、こちらもぼへ~っとしている。

 

「・・・・・・は~、癒される」

《祐介、ジジくさいですよ~?》

 

ほっとけ。

 

 

 

「そりゃぁっ!」「えぇいっ!」  ざっぱ~んっ!!

「きゃあぁぁっ!?」

 

お? どうやらアリサとすずかも目を覚ましたみたいだな。いきなりなのはが撃沈されている。

 

その後結局僕も巻き込まれて引きずり回された訳だけど・・・まぁ楽しんだのでよしとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散々遊び倒した後、それぞれ帰路につく。

 

余談だが、事件時、ボイラー室の見回りをしていた恭也さんは、

お湯の濁流に呑まれて清掃の残業をさせられたそうな。

 

きっと水オバケのせいなんだろうけど・・・お疲れ様です、恭也さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

なのはやユーノと念話で(例によって美月の中継つきで)、今日の事について話していた。

 

《そういえば、新しい魔法ちゃんと使えるようになって良かったな、なのは》

《うん。 でも今になって、どっと疲れがでてきたよ・・・》

《それはそうだよ。なのはが昼間使ったのは、集束系の上位魔法だもの》

《しかし、よくあの土壇場で成功させましたねー。

 今朝はまだ集束出来ませんでしたよね?》

《なんか、出来る時は自然に出来るんだよね。自然に》

《集中力の問題なのかな・・・余計な事を考えると、上手くいかないのかも》

《考えるより集中、か・・・・・・

 なのは、ややこしい事考えるの苦手か・・・?》

《そ、そんな事ないよ!? わたしだってちゃんと頭使うもん!

 ・・・それにしても・・・・・・》

 

なのはの声が曇る。

 

《ジュエルシードって、やっぱり危ないね・・・・・・》

《・・・そう、だな・・・・・・》

 

確かに・・・

今回は、ただの変態想いだったから、まだ服が盗られるだけだったけど・・・

仮に凶悪な犯罪者の想いが発動させた時の事を考えると・・・・・・

 

《明日から、またしっかり探そうね。みんなで一緒に》

《あぁ》《はい》《うん》

 

皆で決意を新たにする。よし、頑張るか!

 

《魔法もいっぱい練習しなきゃ。

 あ! そういえばユーノくん。

 空飛ぶ魔法って言ってたけど、もしかしてわたしも空飛べるー?》

《え、うん。初級の最後くらいの魔法だから、なのはくらいの魔力があれば、簡単に》

《すごい!! 何か準備するものとかある!? ホウキとか、掃除機とか!?》

《こらこら、いつの時代の魔法天使だ・・・》

《そんな発想が出てくる祐介もおかしいですよー?》

 

うるさい。母さんが世代なんだよ、甘いハッカ。

 

《別に何もいらないよ・・・レイジングハートがあれば》

《ちょ、ちょっと外に出て、飛んでみてもいいかな!?》

《待て待て、疲れたんじゃないのかよ。さっさと寝た方がいいって》

《そ、そうだよ。今日はもう遅いし、疲れてる時に飛んで落ちたら大変だよ・・・》

《そっか・・・じゃあ、明日に備えて・・・おやす・・・み・・・なさ・・・・・・》

 

声が尻すぼみになり、途切れる。

 

《・・・・・・寝落ちか?》

《うん、やっぱり疲れてたんだね》

《そっか。お前も早く休めよユーノ。体、まだ本調子じゃないんだろ?》

《ありがとう、そうするよ。おやすみ、祐介》

《あぁ、おやすみ》《失礼しますね》

 

美月が念話を切断する。

 

 

 

「なのは、テンション上がってたな」

「そうですねー。やっぱ自分で空を飛ぶってのは憧れなんですかね」

 

まぁ、人類そういう憧れがあったから飛行機とかも造られたんだろうし・・・・・・

 

「そう言われると、僕もできれば飛びたくなってきた。どうにかなるかな?」

「さぁ? 何か飛べそうな機鋼も探しましょうか?」

「何かあるといいけど・・・・・・取り敢えずは明日だな。今日は僕も寝るし。

 おやすみ、美月」

「はい。おやすみなさい」

 

そう言って電気を消し、布団に転がる。

 

やっぱり遊び回って疲れたのか、すぐに睡魔が襲ってきて、あっさりと意識を手放した。

 

 

 

 

 

・・・・・・その日の夢は、鳥人間コンテストで湖に落下する夢だった・・・・・・

 

 

 

 

 

      第3話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「・・・・・・・・・・・・」

美月「どうしました? 祐介」

祐介「いや、ホウキや掃除機で空飛ぶなのはを想像したら・・・かなりシュールだなぁと思って」

美月「まぁ確かに・・・というか祐介も良く分からないネタを言ってましたね」

祐介「僕は知らないぞ! 作者に言え作者に」

作者「魔法天使がどーのこーのってやつ?

   いや・・・昔、『魔法エンジェル スイートミント』って魔女っ子アニメが

   あったとか。観たことないケド。掃除機で飛んでたらしいから」

祐介「それで・・・スイート=甘い、ミント=ハッカってか・・・・・・」

美月「そんな事より、プールですよプール! やったね水着回!」

祐介「水着の描写なんかほとんど無いケドな」

作者「えぇどうせ表現力無いもんで・・・」

美月「作者がイジけた!?」

祐介「と、とにかく今回の能力説明を! ほら作者出番だから!

   えっと・・・最初と戦闘時に出てきた『PS(Phase Shift)装甲』ってのは!?」

作者「説明しなくても良い気が・・・

   C.E.(コズミック・イラ)(ガンダム種)の、安物じゃないMSには大概積んでる装甲。

   電圧をかける事により、物理的な衝撃をほぼ全て防ぐ材質へと変化するもので―――」

美月「うわ・・・薀蓄モード入っちゃいましたよ・・・」

作者「――― そもそもPhase Shiftの名が示す通り、物質の相転移を用いたものであり―――」

祐介「しばらく好きにやらせとこうか・・・」

作者「――― では相転移とは何かという問題ですが、温度や圧力等の外的要因によって

   位相(物質の状態)が変化する時、物質の性質が変化する事であり―――」

美月「でもこの後はどうやって説明します?」

祐介「大丈夫、作者のメモ書きパクってきたから。

   後は・・・『BR-M-79C-1』か。今回は2丁拳銃の要領で使ったな。

   えっとこれは・・・[RGM-79ジムのビームスプレーガン。

             ガンダムのビームライフルのスペックダウン量産品。名前の由来は、

             命中させ易いようにビームの収束率を下げてるからだとか。

             が、命中率に影響するほど拡散してるのかは謎。

             ビームライフルとかと一緒にしか見えない。

             塗装用のスプレーガンに似てるからという説も。

             ・・・知ったかぶりして書いてるケド、型式合ってるのか自信ない。]

 

   だって」

美月「なるほどー。

   これから先、資料がある物はいいですけど、資料の無いものはどうする気なんでしょうね」

祐介「どうせメチャクチャ簡略した概説になるんじゃないか?」

美月「適当にも程がありますね・・・・・・」

祐介「取り敢えず満足するまで放っておこう。好きなだけ説明させておけばいいか」

 

作者「――― 最も代表的なのは、冷却した時に物質が超伝導体となる現象で―――」

 

 

 



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第4話 失敗と決意

 

 

 

土曜日の夜。僕たちはとある学校に来ていた。

 

「Stand by ready.」

「リリカル、マジカル。ジュエルシード、シリアル20! ・・・封印っ!!

「Sealing.」

「よっし、お疲れ、なのは」

 

言わずもがな、ジュエルシードの探索だ。

今夜で、通算5つめのジュエルシードになる。

それなりに順調ではあるんだけど・・・・・・

 

 

 

 

 

「なのは・・・大丈夫か・・・?」

 

帰り道、フラフラとレイジングハートを引きずりながら歩くなのは。

 

「だ、だいじょ~ぶ・・・なんだけど、ちょっと・・・疲れた・・・・・・」

 

流石に連日の探索で、僕も若干疲れてはいるけど、やっぱり封印担当のなのはには相当な負担が

かかっているらしい。

 

「大丈夫には見えないぞ―――」   バタッ

「わーっ!? なのは!? 大丈夫!?」

 

しょうがない・・・家までの搬送もサポート役の務めか・・・・・・

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第4話 失敗と決意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、日曜日の朝。

 

「眠いっす・・・・・・」

 

僕は河原に来ていた。

今日は、士郎さんがコーチ兼オーナーをしているサッカーチーム、翠屋JFCの試合の日。

僕もなのは、アリサ、すずかと一緒に応援する筈だったんだけど・・・・・・

 

「何故にユニフォーム着て、グラウンドに立たされているのでせぅか・・・?」

《人が足りなくなったから臨時選手として連れ込まれたんじゃないですかー》

 

しかし普通は補欠選手とかいるだろうに・・・・・・何故かいない。

 

「・・・まぁいいか。

 どうせ今日のジュエルシード探しは休みだって言ってたしな」

 

せいぜい頑張るとしますか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ピッピーッ!!

 

「試合終了ーっ! 2-0で、翠屋JFCの勝利!!」

 

審判の声が響きわたり、試合が終わる。

 

「前後半に1点ずつ、快勝だな」

《祐介はあんまり働いてませんけどねー》

 

何か聞こえる気がするが無視。

みんなで士郎さんの元へと集合する。

 

「よーし! みんな良く頑張った! いい出来だったぞ、練習通りだ」

『ハイッ!!』

 

1名ほど練習してないのもいるけどね。

 

「それじゃ、勝ったお祝いに飯でも食うか! 俺の奢りだ!!」

 

歓声が広がり、みんな荷物をまとめ始めた。

 

その時、士郎さんが話しかけてくる。

 

「すまなかったな、祐介君。 おかげで助かったよ」

「いえ、あんまりお役に立てなかったですけどね」

「中々いい動きをしてたじゃないか。

 どうだい、この際うちのチームに入るってのは」

「あはは・・・ま、まぁ機会があれば考えときますよ」

 

でもきっとやらないだろーなー・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~喫茶 翠屋~

 

「応援の筈が、試合に巻き込まれるとは思わなかったな」

「ご、ごめんね。 お父さん、強引に頼んじゃって」

「いや、別に強引でもなかったけどさ」

 

翠屋では勝利の打ち上げが行われていた。

店内は満席になっていたので、僕たち4人は外のテーブルを囲んで休むことに。

 

「流石にあれだけ動いたら疲れた・・・・・・」

「何言ってんのよ、あんた全然活躍してないじゃないの」

「何だよ、僕のプレッシャージャマー機動が見えなかったのか」

「ただボール持ってた人にベタベタくっついてただけじゃない!」

 

そう、特にサッカーの技術など磨いてない僕に出来る事といえば、せいぜいボールをキープしてる

相手に寄ってプレッシャーをかけるくらいしか思いつかなかった。

そのプレッシャーにより、相手の行動にジャミングをかける!

それがプレッシャージャマー機動!!

 

「いいだろ、実際それで2回くらい相手のパスミス誘発したんだから」

「どうせならもっと攻めにいきなさいよ」

「ま、まぁまぁ2人とも落ちついて。そ、そういえばユーノくん、すっかり元気になったね」

「キュ?」

 

すずかの制止によって、事なきを得る。ナイスだすずか!

アリサの興味がユーノに向く。

 

「・・・でも、改めて見るとなんかこの子、フェレットとはちょっと違わない?」

「そういえばそうかな。動物病院の院長先生も、変わった子だねって言ってたし」

 

す、鋭い・・・・・・何とかごまかさないと・・・・・・

 

「あー、ほらあれだ、ちょっと変わったフェレットってやつだ。

 亜種だとかフェレットモドキだとか・・・」

「そ、そうだよ。ほらユーノくん、お手」

「キュ!」 タシッ

 

なのは・・・流石にお手はどうかと思うぞ・・・ てかユーノもやるなよ。

 

そんな調子で、やいのやいの言ってると、店内からチームの皆が出てくる。

 

「みんな! 今日はすっげー良い出来だったぞ!

来週からまたしっかり練習頑張って、次の大会でもこの調子で勝とうな!!」

『ハイッ!!』

「じゃ、みんな解散! 気を付けて帰るんだぞ」

『ありがとうございましたー!!』

 

どうやら解散らしいな。みんなぞろぞろと帰っていく。

 

と、なのはがその中の一人を見ている事に気づく。

あれは・・・・・・ゴールキーパーやってた人・・・?

 

「どうした? なのは」

「う、ううん、何でもない・・・・・・気のせい、だよね・・・

 

何か言ったような気もするが、まだ若干疲れてるんだろう。ボーッともするか。

 

「さて・・・じゃあ、私達も解散?」

「うん、そうだね」

「そっか、そういえばアリサもすずかも、午後は用があるんだったか?」

「うん、お姉ちゃんとお出かけ」「パパとお買い物!」

「なのはは? どうするよ?」

「うーん・・・おうちに帰ってのんびりするよ。祐介くんは?」

「とりあえず一眠りする。後は起きたら考えるよ」

 

欠伸混じりに答える。

いや実際、運動して疲れたし。予定も無いならゆっくりしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お? あれは・・・・・・」

 

みんなと別れて、帰り道の途中で知った顔を見かける。

例のゴールキーパーの人と・・・マネージャーの人・・・?

仲睦まじく並んでいらっしゃる。あの2人、そーゆー関係でしたか?

なかなか美男美女ではないですか。

どうやら男の子の方が、何か渡そうとしているらしい。プレゼントか?

 

《人様の恋路を覗き見するのは、いい趣味とは言えませんよー?》

《いや覗き見じゃないし。 普通に見かけただけ・・・――― ッ!!?》

 

男の子の手にある物に目が止まる。

あれって・・・ジュエルシードッ!?

 

「ちょっ・・・! 待っ―――!!」

 

慌てて駆け出そうとするが、その瞬間、視界いっぱいに光が広がった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change   なのはView

 

 

 

「――― っ!?」

 

突然の感覚に目が覚めた。この感覚・・・もしかして・・・

 

「なのは!」

「ユーノくんも気づいた? これって・・・」

「間違いない。新たなジュエルシードだ!」

 

大変! 急がなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌てて家を飛び出し、発動を感じた近くのビルの屋上へと駆け上がる。

 

「レイジングハート! お願い!」

「Stand by ready. Set up.」

 

すぐにバリアジャケットを展開し、前方を見下ろす。

 

「・・・っ!!?」

 

なに・・・これ・・・・・・

大きな樹が辺りいっぱいに根を伸ばして・・・街が・・・ひどい・・・・・・

 

!! そうだ、祐介くんは!?

 

慌てて念話をつなぐ。

 

《祐介くん! 聞こえる!?》

《なのはか! ジュエルシードだ!!

 悪い、気づいた時には遅かった・・・》

《たぶん、人間が発動させちゃったんだ・・・強い想いを持った者が、

 願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから・・・》

《当たりだ、ユーノ・・・

 あのゴールキーパーの人が持ってた》

 

!! やっぱり・・・あの時の子が持ってたんだ・・・・・・

わたし・・・気づいてたはずなのに・・・・・・

こんな事になる前に、止められたかもしれないのに・・・

気のせいなんて・・・思ってたからっ・・・!

 

「なのは?」

「ユーノくん・・・こういう時・・・どうしたらいいの」

「・・・え?」

「ユーノくんっ!」

「あぁ、うん!

 封印するには、接近しないとだめだ。

 まずは、元となっている部分を見つけないと・・・」

 

そう言ってユーノくんは、祐介くんに聞く。

 

《祐介。そこから何か、大元の場所とか分からないかな?》

《悪い、木の根に・・・ッ 絡め取られて動けそうもない・・・ッ

 美月。エネルギー中心点は分かるか?》

《反応から、大体の位置は分かりますけど、

 それでもまだ広すぎます。現場まで行って探さない事には・・・》

 

祐介くんは動けない・・・なら・・・!

 

《わたしがやる!

 美月さん、探す範囲を教えて下さい!》

《は、はい! レイジングハートに転送します!》

「いけるよね、レイジングハート」

 

呟いて、レイジングハートを前に向け掲げ集中する。

 

「Area search.」

「リリカル、マジカル。 探して! 災厄の根源を!」

 

魔法陣から無数の光が散っていく。そのまま目を閉じて集中を続け、次々と浮かぶ風景を探す。

 

(ビルの隙間・・・・・・いない・・・・・・

 住宅街・・・・・・いない・・・・・・

 いったい何処に―――っ!!)

 

その時、隅で何かが光ったのが見えた。

あれは・・・!!

 

「見つけたっ!!」「本当!?」

 

ここから少し離れた所・・・大樹の中心付近・・・!

 

「すぐ封印するから!」

「ここからじゃ無理だよ! 近くに行かなきゃ!」

「できるよ!大丈夫!!

 そうだよね・・・レイジングハート・・・!

 

願う様にレイジングハートを掲げる。わたしは信じてる・・・!

 

「Shooting mode. Set up.」

 

レイジングハートが形を変える。柄尻が引き伸ばされ、先が音叉の様な形になる。

大樹に向かってレイジングハートを構え、封印態勢に・・・!

 

「行って! 捕まえて!!」

 

光が走り、ジュエルシードを包んだのを感じる。番号は・・・・・・10番!

 

「Stand by ready.」

「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアル10!

 ・・・・・・封印っ!!」

 

一気に力を開放し、ジュエルシードへと撃ち込む。

 

「Sealing.」

 

いつもの封印の感覚と、レイジングハートの声と一緒に、樹が光に包まれた。

 

 

 

   Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「樹が・・・・・・」

 

なのはの魔法の光が辺りを包むと、樹は消滅していた。

 

「・・・どうやら封印は成功したようですね」

「そうだな。取り敢えず現場へ行ってみるか・・・」

 

あの二人を見かけた場所へ向かう途中、街の惨状が痛いほど目に付く。

 

「・・・なぁ、美月。僕たちって・・・甘かったのかな・・・・・・」

「・・・・・・分かりません・・・・・・

 ジュエルシードが危険物だということは認識していた・・・つもりでしたが・・・・・・」

 

そう・・・分かっていたつもりだった。

でも、心の何処かで遊びがあったのかもしれない。

これまで上手くやって来た・・・だからこれからも大丈夫だって・・・軽く見ていたのか・・・?

 

 

 

 

 

「・・・・・・祐介、着きましたよ」

 

二人は気絶している様だった。

ぱっと見た限りでは命に別状はなさそうだが・・・

キーパーの人の手にしたジュエルシードを拾う。

この人がどんな想いを持っていたかは分からない。

でもそれはきっと、誰もがごく普通に持っている願いだったんだろう。

それがこんな形で現れてしまったのは、この人のせいじゃない。

 

「・・・ごめん・・・・・・」

 

直接責任がある訳ではないけど、謝っておきたかった。

 

「祐介・・・・・・」

「うん・・・取り敢えず、なのは達と合流しよう・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れたビルの屋上になのははいた。

レイジングハートにジュエルシードを格納し、街を見下ろす。

 

「色んな人に、迷惑かけちゃったね・・・」

 

ポツリと、なのはが呟く。

 

「・・・そうだな・・・・・・」

「わたし、気づいてたんだ・・・あの子が持ってるの・・・

 でも・・・気のせいだって思っちゃった・・・・・・」

「・・・そっか・・・・・・」

 

うずくまるなのは。なのはも後悔してるんだろうな・・・同じ様に。

ユーノが「なのはは、ちゃんとやってくれてる」とフォローしてはいるけど・・・・・・

 

 

 

・・・やっぱり、このままって訳にはいかないよな・・・・・・

 

「決めるべき・・・なのかな・・・」

「・・・え?」

「これからどうするのか、って事」

 

2人に背を向け、街を見下ろす。

選ぶ道は2つ。続けるか、やめるか・・・

 

 

 

 

 

・・・やめられる訳がない・・・・・・

それは無責任すぎる、と自身が叫ぶ。

確かに、ここでやめても責任を追及してくる人はいない。

ユーノだって怒ったりはしないだろう。

 

(でも・・・・・・)

 

街の惨状を目に焼き付ける。

そして、考えたくもない事だが、考える。

今回のような、またはそれ以上の惨事が起きた時、巻き込まれる人の事。

母さんが、姉さんが、アリサが、すずかが、周りのみんなが・・・

そんな状況を想像し怖くなる。

だから・・・やめる訳にはいかない。

 

「覚悟・・・か・・・」

 

向き直って、ユーノに告げる。

 

「決めたよ。

 これからもジュエルシード探しは続ける・・・

 今までは、ただユーノの手伝いって事でアレを探してきた。

 だけど、これからは・・・

 自分の意思で、自分で決めた目的に従って、ジュエルシードを探す。

 言葉遊びでしかない・・・かもしれないけど・・・

 その覚悟が・・・今は必要だと思うから・・・」

 

知らない人ならどうなっても構わないという訳じゃない。

でも、近しい人が傷つくのは・・・絶対に嫌だ。

さっき感じた恐怖を・・・現実にさせてたまるか・・・!

 

「・・・わたしも・・・・・・」

 

見ると、悲しそうな瞳をしながらも顔を上げているなのはがいた。

 

「わたしも、自分なりの精一杯じゃなく、ほんとの全力で・・・ジュエルシード探しをする」

「祐介・・・ なのは・・・」

 

そう・・・もう絶対こんな事のない様に・・・・・・

自分の力が足りないせいで、誰かが傷ついたりするのはつらい事だから・・・・・・

 

そう、胸に刻んで、僕たちは落ちる夕陽を見つめていた。

 

 

 

 

 

      第4話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「・・・覚悟・・・」

美月「微妙ですね・・・」

作者「それは言わないで。文才無いんだから」

祐介「しかも何故か導入された視点変更。これも微妙」

作者「いや・・・祐介視点だけだと限界あるかなってやってみたけど・・・うん、難しい」

美月「最初から三人称視点で書けば良かったんですよ」

作者「第0話での、『地の文を読むな』がやりたいがためにこうなってしまったんじゃい・・・

   今更全部直すのは面倒だし、このまま一人称でいく!」

祐介「おぉー まあ頑張れ」

美月「そういえば、いつものメカ紹介は?」

作者「ん? 祐介は今回な~んもしてないから無しだが?」

祐介「あんたのせいだから! 事件中ずっと根っこに絡まれてましたから!」

美月「というより面倒になったんじゃ?

   きっと新メカ出てきても紹介しなくなるんでしょうし」

作者「あー・・・きっとなる」

祐介「なるのかよ!!」

 

 

 



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第5話 邂逅、そして戸惑い

 

 

 

   Side  ???View

 

 

 

夜、眼下には静かな町並みが広がっている。

 

「・・・ロストロギアは、この付近にあるんだね」

 

分かっている事だと言えばそれまでだけど、そばにいたパートナーに確認する。

 

「形態は青い宝石。

 一般呼称はジュエルシード・・・」

 

そう言うと、彼女は何か言いたげな顔をして私を見る。

 

「・・・そうだね。

 すぐに手に入れるよ・・・」

 

  オオォォーーーン

 

そして彼女の声が夜空に響きわたった。

 

 

 

   Side out

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第5話 邂逅、そして戸惑い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、すずかの家に行くのも」

 

休日、僕となのはは月村邸へと向かっていた。

 

「そうだね。最近お茶会してなかったから楽しみだよ♪」

「なのはさん達3人はいいとして、祐介が優雅にお茶会・・・似合いませんねー」

「ほっといてくれ。招待されたんだから行ったっていいじゃないか」

「でも想像して下さいよ。

 広い庭に置かれた白いテーブルとチェア。

 そこで優雅にティーカップを傾けながら談笑する祐介・・・

 笑えるほど違和感ありますって。なのはさんもそう思いませんかー?」

「にゃっ!? そ、そんな事ないと思うよ、うん!

 別に、いつもタイムセールに走り回ってるからって、

 オバサンみたいだなとか、そんな事は思ってないよ!?」

「I also think so.」

「あんた達も大概失礼ですね!?

 おい、まさかユーノもそう思ってるんじゃないだろうな?」

「え、えーと・・・・・・ノーコメント?」

「お前らみんな敵だ!?」

 

もう、泣いていいかな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで月村邸に到着。

しかし・・・アリサの家といい、すずかの家といい、いつ見てもでかい家だ。

 

  ピンポ~ン

 

・・・何故にインターホンは、一般家庭的なモデルなんだろう。

まぁインターホンに高級感もなにも無いか。

 

「祐介様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」

 

出迎えてくれたのはノエルさんだった。

 

「どうも、ノエルさん」「こんにちは~」

「どうぞこちらへ。すずかお嬢様もアリサお嬢様もお待ちです」

 

ノエルさんに案内され、部屋に通される。

 

テーブルでは、すずかと、既に来ていたアリサがカップを傾けていた。

 

「あ、なのはちゃん、祐介くん」「おはよ。遅かったわね」

「すずかちゃん、アリサちゃん、おはよー」「2人とも、おはようさん」

 

陣取っていた猫を抱き上げ、椅子に座る。

あ、ユーノが蛇に睨まれた蛙、もとい猫に睨まれたフェレットになってる。助けないがね。

 

 

 

しばらく談笑していると、藪から棒にアリサが口にする。

 

「・・・今日は、元気そうね」

「え・・・?」

「なのはちゃん、最近少し元気無かったから・・・」

 

すずかも、少し言いにくそうにしながら、優しく続ける。

 

「もし、何か心配事があるなら、話してくれないかなって・・・2人で話してたんだけど」

「すずかちゃん・・・アリサちゃん・・・」

「・・・よかったな、なのは。心配してくれる友達ってのは、やっぱり大切にするもんだ」

「あんたもよ、祐介」

「へ・・・?」

 

ちょっと驚いてアリサに向き直る。

 

「あんたとも、なのは程じゃないにしても1年付き合ってきたんだもの。分かるわよ」

「そっ・・・か・・・」

 

・・・・・・参ったな。

自分では何気なく振舞っていたつもりだったけど、心配かけちゃってたのか・・・・・・

 

「ありがとな、2人とも・・・心配かけてごめん。

 ちょっと野暮用で失敗やらかしてさ。気づかない内にヘコんでたのかな・・・

 でももう大丈夫、元気でた」

 

何よ現金ねー、などと笑い合う。

 

その後、ユーノが猫に追い回されたり、それに足を取られたファリンさんがお茶をぶちまけそうに

なったりと、場はドタバタと和みまくり・・・

 

・・・・・・本当、2人ともありがとな。ありがたい友達持ったよ、全く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気分と場所を変えて庭のテーブルを囲みお茶を啜る。

ん、この言い方は少しジジくさいか・・・? もとい、ティーカップを傾ける。

 

「しかしまぁ相変わらず・・・すずかの家は猫だらけだな・・・・・・」

 

そう、屋敷の中もそうだったが、そこかしこに猫、猫、猫・・・・・・猫王国である。

ちなみにアリサの家は犬王国だったりする。

しかし動物は和むねー。猫は可愛いねー。とかやってた時・・・・・・

 

「――― ッ!?」

 

この感じは・・・!?

 

《なのは! ユーノ!》

《うん・・・すぐ近く、だよね》

 

間違いない・・・ジュエルシードか・・・!

しかし今はアリサとすずかもいる。どうしたものか・・・・・・そうだ!

 

《ユーノ、まず1人で向かってくれ。なのはと追いかけるから》

《・・・? そうか! 分かった》

 

ユーノがなのはの膝から飛び降り、茂みへと駆けていく。

 

「あれ? ユーノ、どうかしたの?」

「う、うん・・・何か見つけたのかも。ちょ、ちょっと捜してくるねっ」

 

なのは・・・もうちょっと演技がんばれ?

もっとこう、自然にな。こんな風に。

 

「なんか面白そうだし、僕も行こ」

「あんたも行く気? まったく野次馬なんだから」

「何だよ、そこは少年らしいと言えよー」

 

そう苦笑して、2人を残し、なのはとユーノを追って茂みの中へ走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し走ると、反応が急に大きくなった。

 

「美月!」

「ジュエルシード、発動を確認しました!」

「ここじゃ人目につきすぎる・・・結界を張らなきゃ!」

「「結界?」」

「最初に会った時と同じ空間。

 魔法効果の生じてる空間と、通常空間の時間信号をズラすんだ。

 僕が少しは・・・得意な魔法・・・!」

 

そう言うとユーノは何やら集中を始め、魔法陣が展開される。

 

「あまり広い空間は切り取れないけど・・・この家の付近くらいなら、なんとか・・・」

 

なんとなく周りの空気が変わる。あの夜と同じだ。やっぱり普通の空間とは違うように感じる。

あぁ、今まで事件時にいつも人目が無かったのは、これのお陰だったのか。

 

「祐介くん! あれ!」

 

なのはが指す方向にジュエルシードの大きな光。

そこから現れる巨大な影。警戒して身構える。

 

「くそっ! 今度はどんな奴が・・・!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

  にゃ~ぁお

 

猫・・・・・・だった。

誰がどう見ても立派に猫だった。

ただ大きさが半端なくデカい。高さも10m以上はありそうだ。

 

地響きをたてて歩き出す猫を、全員であっけにとられて眺める。

 

「あ、あ・・・あれって・・・・・・」

「さっき向こうに居た、小猫だよ・・・な・・・」

「た、多分、あの猫の“大きくなりたい”って想いが、正しく叶えられたんじゃないかと・・・」

 

ぶ、物理的に大きくなりましたね・・・・・・

もはや小猫じゃねぇ。いや、大きくなっても仔猫には違いないか。

暴れるでもなくノシノシと歩き回る巨大猫を眺めて、しばし悩む。

しかしこのままって訳にもいかないよな。

 

「どうするんだよ・・・コレ・・・?」

「行動はただの仔猫ですけど、いかんせん大きすぎますしねー」

「やっぱり、このままじゃ危険だから、元に戻さないと」

「そ、そうだよね。流石にあのサイズだと、すずかちゃんも困っちゃうだろうし・・・」

「いやいや、そういう問題じゃないって・・・

 取り敢えず、襲ってくるような様子はない、か。本当にデカいだけで、ただの猫だな。

 もう、さっさと封印してしまった方がいいんじゃないか?」

「そうだね・・・・・・レイジングハートっ!」

 

なのはがセットアップしようとした、その瞬間、突然金色の光弾が横切り猫に命中する。

 

「な、何だ!?」

 

いきなりの事に驚きつつ、光弾の飛来した方角へ振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change   ???view

 

 

 

対象への着弾を確認する。・・・初撃だけでは、それほどダメージもなさそうだね。

 

「バルディッシュ。フォトンランサー、連撃」

「Photon lancer Full auto fire.」

 

ジュエルシードを発動させたであろう猫へと射撃魔法を連射、直撃。

ちょっと可哀想だけど、ジュエルシードの確保のためにも、大人しくしてもらわなきゃ。

さらに連射。

 

ところが、突然飛び出してきた人物が防御魔法を展開、防がれる。

 

「魔導師・・・?」

 

何でこんな管理外世界に魔導師が、とも思ったけど、人の事は言えないね。

多分、私と同じようにジュエルシードの探索に来ていたんだと思う。

1人は、白を基調としたバリアジャケットに、バルディッシュと同じインテリジェントデバイスを

持っている女の子。

少し離れて男の子がもう1人。バリアジャケットは・・・展開してないのかな。

手にしている銃、あれが恐らく彼のデバイス。

 

・・・・・・多分、2人とも魔導師としてはまだ新米。驚きと困惑の表情がありありと出ている。

 

でも、相手が誰であろうと・・・・・・

 

「ロストロギア、ジュエルシード・・・」

「Scythe form Set up.」

 

バルディッシュをサイズフォームへと変形させ、構える。

 

「申し訳ないけど、頂いて行きます・・・!」

 

踏み込み、白い魔導師に向かって肉薄、バルディッシュを振り抜く。

相手は飛行魔法で上昇、それを目で追いながら、追撃体勢へ。

 

「Arc Saber.」

 

そのままバルディッシュを振り抜き、発射された魔力刃は回転しながら命中。

防御魔法で凌いだのだろう、あの子は爆煙の中からさらに上昇するが、それは読んでいる。

待ち構えていた上方から、バルディッシュを振り下ろす。

彼女もかろうじて自分のデバイスで受け止め、鍔迫り合い状態に。

 

「なんで・・・なんで急に、こんな・・・!」

 

その状態から、声をかけられる。

でも・・・・・・

 

「答えても・・・・・・多分、意味がない」

 

そう返す事しかできない。私のするべき事は、ただ一つなのだから。

 

一度距離をとり、バルディッシュをデバイスフォームへ。

彼女もデバイスを変形させ、こちらへ向ける。

 

「Photon lancer Get set.」

 

バルディッシュを相手に向け構え、にらみ合いになる。

 

そして数瞬・・・・・・

気絶していた大猫が鳴き、身を起こそうとする。

彼女がそれに気を取られた瞬間、

 

「・・・・・・ごめんね」

「Fire.」

 

威力を高めたフォトンランサーが彼女に直撃した。

 

 

 

   Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのはっ!!」

 

あの子の光弾をまともに食らったなのはが宙高く吹き飛ぶ。

あんな状態で地面に叩きつけられたら・・・・・・!

くそッ! このまま走っても間に合わない!

 

「美月! 飛行ユニットっ!!」

「は、はい! バックユニット、展開!」

 

瞬間、構築されるパーツ。

『AQM/E-X01』。左右に伸びたウイングと、可動式のスラスターを備えたユニット。

なのはの飛行魔法についていくために、新たにデータベースから探し出した機鋼だ。

それを背負うような形で装着。全開でバーニアを噴かす。

 

「くッ・・・! 間に合えぇっッ!!」

 

落下してきたなのはを、何とかギリギリで受け止める。

パッと見、大きな外傷は見当たらない。

安堵の息を吐いた時、背後で大きく金色の光が走る。

振り向くと、大猫のジュエルシードを、あの子が封印していた。

 

そしてこっちに視線を向ける。

・・・恐らく、僕たちとそう変わらない年頃。

黒を基調とした、レオタード状のバリアジャケットとマント。

長い金髪をツーテールにまとめている。

反射的に銃口を彼女に向けるが、撃っていいものかどうか戸惑いが頭から離れない。

・・・今の状態では、うかつに動けない。

なのはがあっという間にやられた相手だ。勝てるとも思えない。

 

それ以前に、人を撃てるのか・・・? いくら威力を制圧モードに設定してるとはいえ。

 

 

 

 

 

――― 十数秒の葛藤。

突然、彼女は踵を返し、飛び去っていった・・・・・・

 

「反応、消えます。この近辺から離脱したようです」

「・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・」

 

気が抜け、その場にへたり込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を失ったなのはが目覚めたのは、もう夕方になる頃だった。

取り敢えず、ユーノを探している途中で転んで気絶した、と説明はしたが。

みんなに、また心配をかけてしまった。ほんと申し訳ないよな・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。今日の事について、4人で話し合う。

 

《で、いったい何だったんだ、あの子》

《あの杖や、衣装や、魔法の使い方・・・多分、いや間違いなく僕と同じ世界の住人だ》

《ほんと容赦なく魔法ぶつけてきましたねー、あの人》

《うん・・・・・・ジュエルシード集めをしてると・・・

 あの子とまた・・・・・・ぶつかっちゃうのかな・・・・・・》

《・・・そう、だろうな・・・ 向こうもアレが目的なんだろうし・・・

 正直、分からない・・・次に会った時、どうすればいいのか・・・・・・》

 

不思議と、恐怖はなかった。

あったのは、戸惑いと・・・僅かな悲しさ。

同じ物を求めている以上、ぶつかる事もあるのかもしれない。

でも、なんの意志の疎通もできないまま戦う事になるなんてのは・・・

 

 

 

 

 

今は・・・分からない事が多過ぎる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change   ???view

 

 

 

ソファに身を預け、寄り添ってきた彼女の頭を撫でる。

 

「少し、邪魔が入ったけど・・・大丈夫だったよ」

 

彼女は安心したように頬を緩める。

 

「ジュエルシード・・・シリアル14。

 ・・・・・・幾つかは、あの子達が持ってるのかな・・・・・・」

 

今日回収した青い宝石を眺めつつ、あの時逢った魔導師の事を思い出す。

私と同じようにジュエルシードを集めているのなら、持っているはず。

 

ふと目線を下げると、彼女が心配そうにこちらを見ていた。

 

「大丈夫だよ・・・・・・迷わないから・・・・・・」

 

そして、机の上に目を向ける。

そこには1枚の写真。

 

「待ってて・・・母さん・・・・・・

 すぐに、帰ります・・・・・・」

 

 

 

   Side out

 

 

 

 

 

      第5話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「割と???視点多かったな」

作者「これでも削ったよ? 最初はもっとコロコロ視点変わってたから」

美月「今更ですけど、3人称で書けば良かったですねー」

作者「というより、???ってする必要を感じない・・・

   どうせみんな知ってるんだから名前書けばいいんじゃないかとも思う」

祐介「僕達は知らないんだけど?」

作者「さ、そんな事より今回の新しい機鋼の話題に行こう!」

美月「流しましたね・・・・・・

   えー今回は『AQM/E-X01』でした。

   飛行するためのユニットですか?」

作者「どんな物かってゆーと・・・・・・

   つまりはエールストライカーパックの事なのです!(ドヤァ」

祐介「・・・分っかんねーよ」

作者「読む人にはきっと分かる!

   あ、あとどうでもいい話だけど、今回祐介が持ってた銃、

   あれは、プールの時に使ったビームスプレーガンです」

祐介「ほんとにどーでもいいな!」

美月「いつまでこのテンションであとがき続けられるんでしょうね・・・・・・」

 

 

 



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第6話 温泉と再衝突

 

 

 

さて、世間様では連休となっている本日、僕たちは車に揺られて山道をひた走っていた。

高町家の慰安家族旅行に、友人一同ご一緒させて貰える事になったのだ。

神代家からは僕と姉さんが参加。

ちなみに母さんは、ご近所さんと別旅行。そっちはそっちで楽しんでくれぃ。

 

そんな訳で、車2台で総勢12名(+ユーノ+美月+レイハさん)。ずいぶんな人数だねぇ・・・

ちなみに各車の人物配置はこうなっている。

 

<1号車>

 

|(運転手)士郎さん | 美由希さん | なのは |

                  | アリサ |

|  桃子さん   |   僕   | すずか |

 

<2号車>

 

|(運転手)忍さん | ノエルさん |

         | ファリンさん|

|  恭也さん  |  姉さん  |

 

・・・我ながらどーゆー説明の仕方だ。てか誰に説明してるんだ?

 

 

 

 

 

ふと、後部座席が気になり振り向くと、3人で笑いつつも、少し凹んでるっぽい顔したなのは。

 

《なのは・・・色々気にするなとは言わないけど、適当に気は抜けよ》

《そうですよ、なのはさん。折角の旅行なんですからー》

《旅行中くらいはゆっくりしなきゃダメだよ、なのは》

《Master. Cheer up.》

《分かってるよ。大丈夫。ごめんね、みんな》

 

まぁ完全に切り替えるのは難しい、よな・・・

僕だって気になっていない訳じゃない。

 

先週の一件以来、まだジュエルシードは1つも見つかっていないし。

仮に見つけたとして、またあの子が出てきた場合どうするのか。それも迷っている。

 

・・・・・・って、これじゃなのはの事言えないな。

ま、折角の温泉旅行、この際ゆっくりさせてもらいますか。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第6話 温泉と再衝突

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉旅館に来たのならば、何はともあれ風呂だろう!

荷物を置くと、早々にして意気揚々と浴場に向かう。

 

そんな時、泣きそうな声が聞こえる。

 

《祐介、助けてぇ・・・・・・》

《どうしたユーノ。蚊の泣くような声して》

《僕も・・・僕もそっちの方に・・・・・・》

《だめだよ祐介くん! ユーノくんはこっちでみんなと入るから!》

 

あぁ、そういう事か。

さしずめ、みんなの玩具にされるから助けてーって事なんだろう。

愛されマスコットは大変だねぇ。

 

《祐介、祐介》

《ん、何だよ美月》

《祐介はあっち行かないんですか? 子供ですし大丈夫でしょう?》

《・・・遠慮しておく》

 

風呂に行くと言った時からこちらの行動に目を光らせてらっしゃる、

彼女の父上と兄上の視線を感じながら、男湯の暖簾をくぐる。

女湯へ向かおうものならどうなっていたことか。僕はまだ死にたくないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくり湯に浸かってのんびりした所で、外に出る。

ちょうど出てきていたなのは達と合流し、旅館を見て回る。

やれ卓球したいだの売店見たいだのと言いながら歩いていると、

 

「はぁ~い、おチビちゃんたち」

 

声をかけてきたのは1人の女の人。背は高く、長い赤髪。

 

悠々とこちらに近づいてきたかと思えば、

 

「ん~君たちかい、ウチの子をアレしてくれちゃってるのは」

 

とか言ってくる。その目線の先は・・・僕となのは?

な、なんだ? 誰? 何かやったっけ?

 

「あんま賢そうでも強そうでもないし、ただのガキンチョに見えるんだけどなぁ」

 

いきなり失礼な事をのたまってくれるなー。

こちらも怪訝な視線を送るが・・・

 

「あ~っはっはははは!」

 

突然大声で笑い出す。

な、何この人。ちょっと危ない人? ヤバイ人?

 

「ゴメンゴメン、人違いだったかな? 知ってる子に良く似てたからさぁ」

「はぁ・・・・・・」

 

なんだ人違いか・・・

そんなんで、いきなり剣呑な雰囲気を作らないでもらいたいものだ。

まぁ間違いは誰にでもある。そこは気にすまい。

 

にこやかにユーノを撫でていたりしたので、胸を撫で下ろしていたのだが・・・

 

《今日のところは挨拶だけね》

 

突然送られてくる声。

ぎょっとして、相手を見る。

その顔は笑っていたが、声は笑っていない。

 

《忠告しとくよ。子供はいい子にして、お家で遊んでなさいね。

 おイタが過ぎると、ガブッといくわよ》

 

なんて・・・威圧感。

こちらが声も出せないでいると、

 

「さ~って、もうひとっ風呂行ってこようっと」

 

飄々と去っていってしまった。

 

・・・・・・どっと力が抜ける。

一言で言うと・・・・・・マジ怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

布団に入ったものの、色々考えてしまい寝付けないでいると、なのはから念話を飛ばしてきた。

 

《祐介くん、まだ起きてる?》

《あぁ、起きてるよ。・・・・・・昼間の事か?》

《うん・・・・・・あの人、やっぱり、あの子の関係者なのかな》

《まぁ十中八九そうなんでしょうねー》

《なぁユーノ。あの子も近くに来てると思うか?》

《多分・・・そうだと思う・・・・・・》

《また、このあいだみたいな事になっちゃうのかな・・・・・・》

《そう・・・なるだろうな・・・・・・》

 

しばらくの沈黙。

見えはしないが、深刻な顔をしている事だろう。

 

唐突に、ユーノが口を開く。

 

《なのは、祐介。僕ね、あれから考えたんだけど・・・

 やっぱりここからは、僕が一人で―――》

《ストップ!》

 

なのはが言葉を遮る。

 

《そこから先言ったら、怒るよ》

《ここからは自分一人でやるってか? 冗談じゃない》

《今更1人で抜けるなんて、それは酷いんじゃないですかー?》

《・・・で、でも・・・・・・》

 

3人で責め立てる。この論議は前にもしたというのに懲りないフェレットだ。

仕方ない。少し意地悪く言ってやるか。

 

《また1人で行き倒れでもしたら、本末転倒ですよー?》

《それに僕たちを巻き込まないために言ってるなら、全くの無意味だぞ。

 お前が1人で探しに行っても、僕たちはフラフラ出て来て巻き込まれてやるからな》

《そんな無茶な!》

 

困惑とも苛立ちともつかない声で叫ぶユーノ。

そんな中、なのはが声を上げる。

 

《ユーノくん、あのね・・・

 ジュエルシード集め、最初はユーノくんのお手伝いだったけど、今は違うんだよ》

《・・・え?》

《大樹騒ぎの時に言っただろ? 自分の意志で探すって。

 僕たちが今ジュエルシードを探してるのは、自分たちの意思だ。

 強制的に巻き込まれてる訳じゃない》

《そうだよ。わたしたちがやりたいと思ったから、やってるんだよ。

 だから・・・もう一人で、なんて言ったら、駄目》

《・・・・・・わかった・・・・・・ごめん、みんな・・・》

《分かればよろしい。

 さ、もう寝るぞ寝るぞ。おやすみ~》

《あ、うん。おやすみ、祐介くん》

 

 

 

取り敢えず、折角の旅行なんだ。

ま、ジュエルシードも見つかってないし、あの子とぶつかる事もないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがどっこい、単なる偶然か、はたまた神様の悪戯か、事態は急変することに。

夜中に感じた気配。ジュエルシード!?

 

「美月・・・」

 

小声で呼ぶと、こちらも小声で返してきた。

 

「確認しました。少し不安定な波動ですが、間違いありません」

「分かった。行くぞ」

 

士郎さんも恭也さんもいない、か。多分まだどこかで呑んでるんだろう。

こっそり部屋を抜け出し、なのはとユーノに合流する。

 

 

 

「祐介くん!」

「裏の林だ! 急ぐぞ!」

 

なのははレイジングハートをセットアップし、僕も臨戦態勢に入る。

ぼやいても仕方ないが、何もこんな時にジュエルシード発動しなくてもいいのになぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に着いた時、そこにいたのは・・・

 

「あ~らあらあらあら。

 子供はいい子でって言わなかったっけか?」

 

昼間のあの人。

おや・・・? 耳とか尻尾とか生えてるし。何か犬っぽい。

まぁ異世界の住人だし獣人がいたって不思議じゃないが。 

それと、この間会ったあの子も一緒にいた。

手にしているのはジュエルシード。恐らく今さっき封印したものだろう。

先を越されたか・・・・・・

 

「それを・・・ジュエルシードをどうする気だ!!

 それは、危険な物なんだ!!」

「さぁねぇ、答える理由が見当たらないよ?」

 

ユーノが声を上げるが、犬な人にさらりと返される。

 

「それにさぁ・・・・・・アタシ親切に言ったよねぇ。

 いい子でないと、ガブッといくよって」

 

言うや否や、一瞬で彼女の姿が変化する。

大型の犬・・・いや、狼か!?

いつかの暴走ジュエルシード犬っちとは迫力が違う。

 

「やっぱり・・・あいつ、あの子の使い魔だ!」

「使い魔?」

「よく映画とかで魔法使いが使役する、あれか?」

 

獣人が出たり、使い魔ときたり・・・・・・

魔法って何でもアリだな・・・他人の事言えないが。

 

「そうさ。アタシはこの子に造ってもらった魔法生命。

 製作者の魔力で生き、命と力の全てを懸けて守る」

 

そう宣言すると、後ろにいるあの子を見やる。

 

「先に帰ってて。すぐに追いつくから」

「うん、無茶しないでね」

「OKぇぇぇいっっ!!!」

 

咆哮し、大きく飛び上がり、こちらへ飛び掛ってくる。

慌ててなのはの前に踏み出す。

 

「美月ッ!!」

「シールド展開!!」

 

MX2351 ソリドゥス・フルゴール。

左手の甲に設定した発生装置から盾状に緑銀の光壁が展開され、彼女の突進を受け止める。

 

「なのは! あの子を頼むぞ!」

「う、うん!」

「させるとでも・・・思ってんのっ!」

「させる為に僕らがいる! ユーノ!」

「分かってる!」

 

僕たちを中心として、淡い緑色の魔法陣が展開される。

 

「移動魔法・・・まずっ!?」

「付き合ってもらおうかッ!」

「いくよ祐介! ――― 転送っ!」

 

周りの景色が一瞬歪み、僕たちは転移されられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――― ッ!? くッ・・・!!」

 

飛び掛ってきた狼を危ういところで避ける。

転移後、一旦仕切りなおしになったのも束の間、再び襲い掛かってきた彼女と戦闘になっていた。

 

「やっぱり・・・っ、こうなるんだよなぁっ!!」

 

狼なだけあって、俊敏性が高い。縦横無尽に飛び回り、突進や光弾を放ってくる。

けど、走破性ならこちらも負けてはいない。ランドスピナーを展開し、林の中を走り回る。

 

「ちょろちょろちょろちょろ、逃げんじゃないよ!!」

「なら反撃もさせてもらいましょうッ!!」

 

移動を止めない様にしながら、両手にビームスプレーガンを顕現、連射する。

サイドステップで回避されるが、牽制にはなるだろう。そのまま射撃続行。

何発かは命中・・・ではないか。防御魔法で防がれてる。

 

そんな攻防が続く中、肩の上に乗っていたユーノが彼女に叫ぶ。

 

「使い魔を造れる程の魔導士が、何でこんな世界に来ている!

 ジュエルシードについて・・・ロストロギアについて、何を知っている!」

「ごちゃごちゃ煩いっ!!」

 

返答はオレンジ色の光弾。

左手の甲で光壁を展開、斜めに受けて弾道を逸らす。

そのまま突っ込んでくる狼。スプレーガンを連射するが、防御しつつ突進してくる。

こちらの攻撃は脅威でないと判断したらしい。

 

「祐介! 止められない! 来る!!」

「なら・・・美月ッ!!

「はい!!」

 

左手でスプレーガンを連射しつつ、右手をビームライフルに持ち替える。

 

「いけえぇぇッッ!!!」

「――― っ!!」

 

銃口から、威力を高めた緑銀のビームが彼女に向かって放たれる。

先程までとは違う威力を感じ取ったか、流石に彼女も進行を止め、シールドで受け止めた。

防がれたものの、これで向こうにも警戒心も生まれるだろう。足止めには十分だ。

 

けど・・・こっちはいいとしても、なのはの方が少し心配になる。

大丈夫かな・・・・・・

 

 

 

 

 

その時、上空で激しい光が瞬く。

僕たちも、対する狼も、ついそちらを見上げる。

なのはとあの子が魔法を撃ち合っているのか!?

 

「話は聞いてたけど、凄いな砲撃魔法って・・・」

「ビームライフルが鉄砲なら、あれは大砲ですねー」

 

拮抗する桜色と金色の光。

しかし、なのはが威力を上げたのか、たちまち均衡は崩れ桜色の奔流があの子を呑み込む。

 

「なのは・・・凄い・・・・・・」

 

ユーノが呟く。が、犬の人は口角を釣り上げる。

 

「でも・・・甘いね」

「ッ!? なのはッ!! 上だ!!」

 

慌てて叫ぶが、既にあの子はなのはの懐に飛び込んで金色の光刃を喉元に突きつけていた。

 

 

 

一瞬の静寂。

暫くして、レイジングハートから何か排出される。あれは・・・ジュエルシード!?

・・・っ、勝利報酬って事か・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュエルシードを手にした彼女が地上に降りてくる。追うようにしてなのはも。

 

「大丈夫か、なのは」

「うん・・・・・・ごめんね、ジュエルシード・・・・・・」

「いや・・・あの状況じゃしょうがないだろ」

 

そんな僕たちに背を向け、あの子が歩き出す。

 

「帰ろう、アルフ」

「んっふっふ。さっすがアタシのご主人様! んじゃあね、おチビちゃんたち♪」

 

犬の人(アルフというらしい)が人の姿になり、それに続く。

 

「待って!」

 

その背中に、なのはが声をかける。

あの子は足を止めると、振り返る事なく言ってくる。

 

「できるなら、私たちの前にもう現れないで。

 もし次があったら・・・今度は止められないかもしれない」

「それは警告か・・・?」

「なんとでも・・・・・・

 ただ・・・ジュエルシード回収の邪魔はさせない」

 

そう言って立ち去ろうとする。

それを止めるなのは。

 

「名前・・・あなたの名前は!?」

「・・・・・・フェイト。 フェイト・テスタロッサ」

「わ、わたしは」

 

その瞬間、彼女、フェイトの姿は木々の中へと消えていく。

僕たちはその背中を見送ることしかできず、立ち尽くすだけだった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      第6話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「ジュエルシード取られちゃったねぇ」

祐介「あんたのせいだろ」

作者「そんな事はないって」

美月「それはそうと、やっとあの2人の名前がでてきましたね」

作者「そう、これで少し楽になるの。

   名前が分からない彼女たちが2人いると、『彼女』では誰を指すのか分からなくなるから」

祐介「その結果が『犬の人』か。もう少し頑張れよ」

作者「半年後に登場する某守護獣に言ったら『犬じゃない! 狼だ!』とか怒られそうだけどね」

祐介「何の事か分からんから置いといて・・・今回は新機鋼あったっけ?」

美月「MX2351 ソリドゥス・フルゴール でしたね。防御用の物ですか?」

作者「ZGMF-X42Sデスティニーや、ZGMF-666Sレジェンドに装備されてる

   ビームシールドです。別にF91やLM312V04ヴィクトリーのビームシールドでも

   良かったんだけど、型式が分からないので」

祐介「無駄な拘りだな。

   実体盾とどっちが良いんだ?」

作者「実際のところ、シールド維持に込める魔力しだいだから・・・どっちでも一緒かな」

美月「それより、『年齢的に祐介は混浴大丈夫』みたいな事になってましたけど、

   本当に大丈夫なんですか?」

作者「混浴の年齢制限は各都道府県の条例によって定められているらしいけど。

   厚生労働省は『おおむね10歳以上』って言ってるらしいのでいいんじゃないかな、多分」

祐介「父兄に見張られてなくても行かんわい・・・

   そんな事より、一般のプールや温泉に動物(ユーノ)を入れちゃ駄目なんじゃないのか!?」

美月「なお、作者の調べはいいかげんなので全てを鵜呑みにはしないでくださいね・・・・・・」

 

 

 



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第7話 わかりあいたい 伝わらない

 

 

 

「はぁ・・・どうしたもんかなぁ・・・・・・」

「何ですか突然」

「いや、これからの事を考えるとな・・・」

 

ふと、あの子、フェイトの事を思い出していた。

現状、実力行使のジュエルシード争奪戦になっているからな。

向こうの事情くらい知りたい所だが・・・

 

「そう上手くはいかないよなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第7話 わかりあいたい 伝わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なのは、何かあったか?」

「・・・・・・え?」

 

あの夜の一件から数日。

なのはと2人での帰り道(アリサとすずかはヴァイオリンのレッスンだと)、

あまりに沈痛な面持ちで隣を歩くなのはが気になって声をかける。

 

「まぁ、話したくなければ無理にとは・・・」

「ううん、大丈夫・・・

 わたしがぼーっとしてたから、アリサちゃんを怒らせちゃって・・・」

 

そう言って笑うが、その顔に力は無い。

上の空だった原因は聞かなくても分かるけど・・・・・・ふむ。

 

「・・・少し、寄り道していくか」

「え・・・?」

 

有無を言わせず、なのはの手を引く。

友達として、相談に乗るくらいさせてもらっても罰は当たるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――― わたしたち、最初から仲が良かった訳じゃないんだ・・・」

 

海鳴臨海公園。

ベンチに腰をかけ、彼女たちの会ったばかりの頃の話を聞く。

 

当時、アリサはその居丈高な性格でクラスでも浮いた存在で、

クラスメイトをからかって馬鹿にするような子だったらしい。

すずかも、今よりずっと気が弱くて、思った事も全然言えないような子だったという。

 

「あの日・・・屋上で、女の子が他の子のカチューシャを取り上げてるのを見たの。

 取られた子は泣きそうな顔で何か言いたそうにしてたけど、取った子は返そうとしなかった。

 それでわたし、思わずその子をひっぱたいちゃって・・・

 その後その子、アリサちゃんとは大喧嘩。それを止めたのが・・・」

「すずか、か」

「うん。

 それから、少しずつ話をするようになって・・・・・・

 2人とも、本当に大切な友達になったんだ・・・」

「そっか・・・

 それからずっと一緒にいるんだもんな」

 

缶ジュースを飲み干し、ベンチから立ち上がる。

 

「――― アリサの気持ちも、分からないでもないけどな。

 悩みがあるなら話してほしいけど、何か事情があって話さないんだって事も分かってる・・・

 そんな感じなんじゃないか?

 

 ま、元気だせ。 大丈夫だろ。

 1年程しか付き合ってない僕が言うのも何だけど、2人が良い奴だってのは知ってるつもりだ。

 一呼吸置いて、落ち着いたら謝ればいい。それで仲直りだ。

 親友、なんだろ?」

「・・・うん。 ありがとう、祐介くん」

 

少しはマシな顔になったな。

僕にできるのはこれくらいだ。あとは本人たち次第、だな。

まぁあまり心配はしていない。あの2人なら分かってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もうこんな時間か」

「そろそろ今日はお終いですかねー」

 

その日の夕方。時刻は19時を回っていた。

今日もジュエルシードは発見できず、か。

 

《なのは、そっちはどうだ?》

《うーん・・・今日はもう駄目かなぁ・・・》

《こっちもだ。・・・今日は切り上げるか?》

《そうだね。帰らないと、そろそろ晩ご飯の時間だし・・・》

《僕はもう少し、この辺りを回ってから帰るよ》

《1人で大丈夫か? ユーノ》

《うん、大丈夫。2人とも、ゆっくり休んで》

 

その言葉に甘えて、帰路につく。

しかし、なかなか見つからないと、少し焦りも出てくるな。

その時・・・

 

「――― ッ!!?」

 

突然感じた大きな魔力の流れ。少し遅れて、周辺の様相が変わる。

 

「美月! 状況は!」

「周辺市街に分散された魔力反応、続けて結界が展開されました!」

 

直後、ビル街から青白い光の柱が立ち上るのが見える。

 

《なのは! 大丈夫か!》

《だ、大丈夫! ユーノくん、これは!?》

《あの子たちが近くにいる!

 大規模な魔力流を打ち込んで、ジュエルシードを強制発動させたんだ!

 とりあえず、広域結界は展開したから!!》

《強引だけど見つけるには手っ取り早い、か。

 なのは、そこからジュエルシード見えるか?》

《うん、すぐ近く!》

《先手必勝! 先に封印するんだ!!》

《や、やってみる!!》

 

僕も発動地点に行かないと。

飛行ユニットを装着し、飛び上がる。

何とか間に合えばいいけどな・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に着いたとき、既に封印は終わっていた。

なのはの前には沈静化したジュエルシード。

 

「なのは。早く確保を―――」

「そうはさせるかいっ!!!」

「ッ!? またあなたですかッ!!!」

 

飛び掛ってきた赤毛の狼をビームシールドで受け、弾き返す。

 

「なのは! そっちは頼んだぞ!!」

「う、うん!!」

 

そう言って、アルフさんを迎撃するべくバーニアを噴かし飛翔する。

 

 

 

 

 

「何でジュエルシードが必要なんですか!

 それくらい教えてくれたっていいでしょう!!」

「話す必要は無いって言ったろ!!」

 

緑銀とオレンジの光弾が乱れ飛ぶ。

向こうが本気かどうかは分からないが、今のところ互角に持ち込んでいる、か。

ただ、会話も前回から進展してないんだよなぁ・・・・・・

 

「少しくらい話してくれたって減るもんじゃないじゃないですかッ!!」

「ごちゃごちゃうるさい!!

 とにかくアタシたちはジュエルシードを集めなきゃいけないんだよ!!!」

「だからその理由を聞いてるんでしょうがッ!!」

 

射撃の隙間を縫い、アルフさんが突っ込んでくる。

ビームシールドで受け止めるが、刹那、人形態になった彼女はその拳で激しいラッシュを叩き

つけてきた。両手でそれぞれシールドを展開し受け止めていくが、その乱打にはキリが無い。

――― 射撃させずに近接で潰す気か。

 

「このまま寝てなッ!!」

こんのぉ・・・舐めるなぁッ! ――― 美月ッ!!」

「はい! 機鋼顕現!!」

 

右手に握られるのは、10cm強の筒状のパーツ。その先端から緑銀の光刃が伸びる。

THI BSjG01 ビームサーベル。

 

「はあぁッッ!!」

「ちぃっ!!」

 

ビームサーベルから発生させた魔力刃で斬りかかる。

かわされるが、そのまま続けて攻撃、アルフさんが後退し距離が開いた所に左手でビームライフルを3連射。シールドで受けられるが、その顔には苦々しい表情。

ふふん、射撃オンリーだと思って甘くみるからだ。

してやったりと思う反面、あんまり怒らせると後が怖いなぁと思ったりもする・・・

 

 

 

 

 

「フェイトちゃん!!」

 

突然、なのはの声が響き渡る。

確かあっちもフェイトと派手にやりあってた筈だけど・・・

そちらに目を向けると、2人はデバイスを構え睨み合いになっていた。

 

「話しても何も変わらないって言ってたけど・・・言葉にしないと伝わらない事だってあるよ!

 ぶつかり合ったりするのは、それは仕方ないのかもしれないけど、

 だけど・・・何も分からないままぶつかり合うのは、わたし、嫌だ!!」

 

アルフさんがフェイトの近くに移動するのを見て、僕もなのはの傍に移動した。

そして2人を見つめ口を開く。

 

「なのはの言う通り、衝突する事になるのを否定はしない。

 こっちにも、そっちにも、譲れない理由があるんだと思う」

「ジュエルシードを見つけたのはユーノ君・・・

 散らばっちゃったそれを、ユーノ君は集め直そうとしてる。

 最初はわたし達も、その手伝いのつもりだった。

 だけど・・・今は、自分たちの意思でジュエルシードを集めてる!

 この街や、周りの人たちに危険が降りかかったら嫌だから!!」

「そっちの事情に比べれば、小さいものなのかもしれない。

 でも、これは譲れない。譲らないと決めた!

 

 ――― これが・・・僕たちの理由だ」

 

頼む・・・答えてくれ、フェイト・・・・・・

 

「・・・私は・・・・・・」

「フェイト!! 答えなくていい!!!」

「っ!?」

 

その言葉はアルフさんに掻き消される。

 

「優しくしてくれる人たちの所で、ぬくぬく甘ったれて暮らしてる様な

 ガキンチョになんか、何も教えなくていい!

 アタシたちの最優先事項は、ジュエルシードの捕獲だよ!!」

「・・・・・・っ!!」

 

突如、身を翻すフェイト。

その先は――― ジュエルシード!!

 

「なのはッ!!」

「大丈夫!任せて!!」

 

直後にフェイトを追って飛び出すなのは。

そしてジュエルシード至近で2人が交錯し・・・

 

 

 

光の奔流が辺りを呑み込んだ・・・・・・

 

 

 

 

 

      第7話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「戦闘あった割りに文章少ないね」

作者「文才の限界ってやつだな」

美月「他人事みたいに・・・あと私にもっと台詞を」

作者「・・・さぁ次回!

   激しい光に呑まれたみんなの運命は!ジュエルシードの行方は!?

   じゃ、そういう事で!」ピューッ!

祐介「あ、逃げた・・・・・・」

美月「・・・台詞無いと存在を忘れられそうで怖いんですけど・・・・・・」

 

作者「あぁ、言い忘れてたけど」

祐介「うぉ!? 戻ってきた!」

作者「THI BSjG01だけど、あれ RGM-79 ジムのビームサーベルね。

   例によって型式は合ってるか分からないけど。

   背中に展開してるエールストライカーパックにサーベルついてるじゃん! って

   後で気づいたけどね。もういいやってスルーする事に。

   祐介の顕現させたパックはあくまで飛行用で、武装がついてなかったって事で。

   あと、一度登場した機鋼は、もう通称で呼ぶから。っていうか既に呼んでる」

美月「もう、どこまで真剣でどこから適当なのか分かりませんね・・・・・・」

祐介「いつも適当だろ」

 

 

 



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第8話 対峙と乱入者

 

 

 

辺りを包み込む、目を覆わんばかりの光。

続けて、激しい衝撃が襲ってくる。

何が起こってるんだ!?

 

「なのはッ!!!」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第8話 対峙と乱入者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃波を受け、なのはがこちらに後退してくる。

 

「なのは! 大丈夫か!?」

「う、うん。わたしは平気・・・だけど・・・」

「なッ!? レイジングハートが・・・」

 

手にしたデバイスには、損傷の跡。

フレームにも、デバイスコアにもあちこち(ひび)がみられる。

これは・・・酷いな。

 

「ジュエルシード、再活性化します!!」

「ッ!!」

 

美月の声に顔を上げる。

ジュエルシードから激しく光が立ち上り、脈打つように鳴動している。

早く止め・・・ようにもレイジングハートがこんな状態じゃ・・・・・・

どうすれば・・・!

 

「!! フェイトちゃんが!!」

 

見ると、フェイトがジュエルシードに飛びついていた。

デバイスは手にしていない。

その手でジュエルシードを掴み、強く握り締める。

 

「デバイス無しで封印を!? 無茶だ!!」

「フェイト! 駄目だ! 危ないよ!!」

 

ユーノやアルフさんが叫ぶが、フェイトは止めようとしない。

手からはジュエルシードの光が幾筋も漏れ、彼女に苦痛の表情が浮かぶ。

 

くそッ・・・見ている事しか・・・できないのか・・・!!

 

 

 

 

 

どれ位たっただろうか、次第にジュエルシードの波動が小さくなる。

封印・・・できたのか・・・?

 

「フェイト!!」

 

崩れ落ちるフェイトを抱きかかえるアルフさん。

 

「あの・・・」「・・・フェイトちゃんは」

 

声をかける間もなく、ギロリとこちらを睨みつけると、そのまま踵を返し飛び去ってしまう。

残された僕たちは立ち尽くすしかなかった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、それぞれ自宅に戻り、今日の事を話しあう。

 

《なのは、レイハさん大丈夫か?》

《どう? ユーノくん・・・》

《かなり破損は大きいけど、大丈夫だと思うよ。

 自動修復機能をフル稼働させてるから、明日には回復すると思う》

《そっか・・・よかった・・・・・・》

《ひと安心ですねー》

《・・・なぁユーノ。フェイトの封印って・・・あれってやっぱりヤバかったのか?》

《・・・かなり危険な手段ではある。

 封印のプロセスは、稼働中の魔法プログラムに対して外部から割り込みをかけて、

 その プログラムを停止させることで行われるんだけど・・・

 当然、対象よりもこっちの魔力が高くないといけない。

 だから通常、デバイスもその最大出力を放てる形態で行使される。

 ――― それをデバイス無しでやろうとすると・・・

 強い魔力と高い技術をもってしても、負担は相当だと思う》

《フェイトちゃん、大丈夫かな・・・・・・》

《大したこと無ければいいけどな・・・

 ――― 封印、か・・・美月、例のプログラムは出来上がったか?》

《・・・? 何の事だい、祐介》

《前に、レイジングハートにシーリングのプログラムを教えてもらってな。

 それを僕たち仕様にプログラミングし直す事ができればと思ってさ》

《完成すれば、祐介にもジュエルシードの封印が可能になります。

 ――― こちらも明日にはなんとか》

 

これで少しは、なのはの負担も減らせるといいんだけど・・・

危険が及ぶような封印、させたくないもんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。早くに目が冴えてしまたので、散歩がてらランニングに出ていた。

流石に人通りもほとんど無い。爽やかな朝を満喫しつつも、考えるのはこれからの事。

 

「祐介、どう思います?」

「何が?」

「フェイトさんの事です。祐介はどう見ます?」

「どうって言っても・・・一概にどうとは・・・・・・

 まぁ、優しい子なんだろうな、とは思う」

「優しい・・・ですか」

「何が何でもジュエルシードを手に入れるって風を装ってるけど、

 その気になれば、なのはや僕を倒して奪う事もできたと思う。

 昨日だってそうだ。なにもあんな危険を冒して封印する必要はなかった。

 街がどうなろうが、デバイスの修復を待って封印にくればよかったんだ。

 あの状況では僕たちには確保できない事も分かってただろうしな」

「でも、ジュエルシードを集める意思は半端じゃないですね。

 相当な物を背負ってるんでしょうか・・・・・・」

 

あれだけ必死になるんだ。並大抵の理由じゃないだろう。

何がフェイトをそこまで駆り立てるのか。

たとえ戦うしかないのだとしても、それが分からないとスッキリしない。

次は・・・答えを聞けるだろうか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、突然感じた波動。

 

《ッ!? ジュエルシードか!》

《発動地点・・・・・・臨海公園です!》

 

急いで人ごみの中を、目的地へと走る。

 

《封印プログラム、できてるな!》

《いける筈です!!》

《上等! なのは、ユーノ!》

《うん! 分かってる!》

《僕たちもすぐ向かうから!》

《あぁ、現地で合流だ!!》

 

・・・・・・恐らくは、フェイトも出てくるだろう。

正直、どうすればいいかなんて思い浮かばなかった。

もうこうなったら出たとこ勝負だな・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨海公園に着くと、ちょうどユーノが結界を展開したところだった。

今度のジュエルシードは樹を取り込んだらしい。

巨大化した樹が、枝を、根っこをうねらせている。

 

「さて、どう出るか――― ッ!?」

 

突然、横から飛来する金色の光弾。フェイトか!?

しかし暴走体はバリアを展開、弾かれる。

 

「防御まで備えたやつは初めてだな・・・」

「来ます! 飛びますよ祐介!!」

 

唸りをあげて叩きつけられる根っこを、上空に飛んで避ける。

同じ様に上空に移動していたなのはと合流する。

 

「どうするの、祐介くん」

「どうしようかなぁ。まさかのバリア持ちだもんな。

 それにフェイトも来てるし・・・・・・」

 

目を向けると、そのフェイトはデバイスを大きく振り抜き、

回転する魔力刃を暴走体に向けて射出する。

再びバリアによってそれを防ぐ大樹。

 

「――― 便乗してみるか。

 同時や連続で攻撃すれば、バリアを抜けるかもしれないし」

「分かった! やってみる!! レイジングハート!!」

「Shooting mode.」

「こっちもでっかいのいくぞ、美月!」

「了解! 大出力砲撃用意!!」

 

なのはがレイジングハートを変形させ、僕も新機鋼を顕現させる。

FHA-03M1 メガ・バズーカ・ランチャー。

僕の身の丈程も、いやそれ以上の長さの砲身を持つ大型砲。

銃尾から引き下ろしたステップに片足をかけ、正面に構えて両手でグリップを握る。

 

見ると、フェイトの方も次の攻撃態勢に入っていた。

 

「撃ち抜いて! ディバイン―――!」「Buster.」

「メガ・バズーカ・ランチャー・・・!」「発射っ!!」

「貫け、轟雷!」「Thunder smasher.」

 

3つの砲撃が、桃色・緑銀・金色の輝きが、大樹へと殺到する。

展開したバリアも虚しく、暴走体は光の奔流に呑みこまれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封印されたジュエルシード。

それは、僕たちとフェイトとの間に浮かんでいる。

封印体勢のままデバイスを構えての睨み合い。

 

――― 先に口を開いたのはフェイトだった。

 

「ジュエルシードには・・・衝撃を与えたらいけないみたいだね」

「・・・そうだな。昨日の今日で同じ事は勘弁だ」

「うん・・・昨夜(ゆうべ)みたいな事になったら、わたしのレイジングハートも、

 フェイトちゃんのバルディッシュも、かわいそうだもんね・・・・・・」

「だけど・・・譲れないから」

「Device form.」

「わたしは・・・フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」

「Device mode.」

 

デバイスを通常形態に戻す2人。

本格的に戦闘に入る・・・か・・・・・・。

 

「わたしが勝ったら・・・・・・

 ただの甘ったれた子じゃないって分かってもらえたら・・・・・・

 お話・・・聞いてくれる?」

 

フェイトは答えない。でも同意とみていいだろう。

仕方がない・・・やるしかないか。

 

「祐介くん・・・・・・」

 

こちらも戦闘態勢に入ろうと構えた時、

なのはが何か言いたそうな目でこちらを見ているのに気付いた。

――― あぁもう、こいつは・・・・・・

 

「・・・・・・分かったよ。お前に任せる。思いっきりやってこい」

「うん・・・ありがとう」

 

苦笑と共にその場から離れ、地上に降りる。

戦闘中、退避していたユーノを拾い上げ、なのはたちを見上げる。

 

「祐介、なのはは・・・?」

「自分が勝ったら話をさせてくれ、だとさ」

「そんな!?」

「しょうがないだろ。なのはが決めた事だ。

 とにかくまずは、想いをぶつける事に決めちゃったんだから」

「なのはさんの想いは・・・届くでしょうか・・・・・・?」

 

頑張れよ、なのは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに突進する。

大きくデバイスを振りかぶり、振り下ろされる。

2人が交錯するその瞬間・・・・・・

 

「ストップだ!!」

 

水色の光と共に、2人の間に割って入る黒い影。

左手でレイジングハートを、右手の杖でバルディッシュを、それぞれ受け止めている。

 

「ここでの戦闘は危険すぎる!

 時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。

 詳しい事情を、聞かせてもらおうか」

 

――― 誰だよ。

 

 

 

 

 

      第8話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「祐介にも封印できたんだ・・・」

祐介「その適当な設定を書いたのはお前だけどな」

作者「機械とかプログラム関連なら、美月に任せりゃ何とかなるかなーと」

美月「そうです! もっと頼って下さい! 私にもっと出番と愛を!」

作者「まだ言ってんですか。出番は・・・鋭意努力って事で」

祐介「愛は増えん」

美月「(いつか目にもの見せてくれる・・・)

   しょうがないですねー。

   じゃあ切り替えて機鋼の話をしましょう。派手なの出て来ましたね」

祐介「FHA-03M1 か・・・でかかったな」

作者「メガ・バズーカ・ランチャーって書いてあるから分かると思うけど、

   MSN-00100 百式の運用したアレです。えぇい、ままよ!ってね。

   ハイパー・メガ・ランチャーでも良かったんだけど、型式分からなかったから」

美月「・・・何でそんなに型式にこだわってるんですか」

作者「いや、美月に格納されてるデータって名称リストになってる設定だったから・・・

   なるべく見た目にもややこしい名前を用意しようと思って・・・」

祐介「そのせいで僕が苦労するんだけどな・・・・・・」

作者「一度使っちゃえば通称になるから大丈夫!」

 

 

 



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第9話 世界を脅かす遺物

 

 

 

突然に現れた、黒いコートを纏った男、もとい男の子。

なのはとフェイトの戦闘を止めた、のか?

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。

 詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第9話 世界を脅かす遺物(ロストロギア)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時空管理局・・・!」

 

ユーノが呟く。

いや、その管理局って何だよユーノ。てか誰? あ、名前は名乗ってたか。

 

 

 

3人が地上へ降りて来たので、僕たちもそっちへ歩いていく。

 

「このまま戦闘行為を続けるなら・・・

 ――― っ!?」

 

突如、上空から降り注ぐオレンジの光弾。アルフさんか!?

彼、クロノが展開したシールドに弾かれるが、さらに光弾が降りかかる。

 

「フェイト! 撤退するよ!!」

 

魔力弾は地面に着弾し炸裂。慌ててビームシールドで防御しながら、後方へ飛び退る。

辺りを爆煙が包み込み、その中からフェイトが上空へ飛び上がる。

 

「待てフェイト!」「フェイトちゃん!」

 

僕たちの声を背に、ジュエルシードへと手を伸ばすフェイト。

が、そこへ撃ちこまれる水色の光弾。

攻撃を受けたフェイトは落下し、アルフさんに受け止められた。

 

「なッ!? 今のは・・・!」

 

見ると、今の攻撃を放ったであろうクロノは、

更に追い討ちをかけるべくデバイス(だよな? あの杖)を2人に向ける。

 

「駄目ぇっ!!」

 

その間に割って入るなのは。

流石にクロノも攻撃を止めるが、その隙にアルフさんはフェイトを連れて走り出す。

 

「待て! フェイト! アルフさん!」

 

その背に向けて叫ぶが、彼女たちはそのまま飛び去ってしまった。

・・・今回も・・・進展無し、か・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・・・・」

 

ジュエルシードをデバイスに格納したクロノが、こちらに向き直る。

 

「君たちには、事情を聞かせてもら―――」

「クロノ、お疲れ様」

 

突然浮かび上がる魔法陣、そしてそこに映し出される女の人。

 

「・・・すみません。片方は逃がしてしまいました」

「まあ大丈夫でしょう。ちょっとお話を聞きたいから、

 そっちの子たちを、アースラに案内してあげてくれるかしら」

「了解です。すぐに戻ります」

 

通信(だと思う)を切り、こちらを見るクロノ。

 

「聞いての通りだ。一緒に来てもらえるか」

 

あー、これって・・・事情聴取ってやつですかねぇ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移させられ連れて来られたのは、かなりSFチックな部屋だった。

やたら広い。何かのホールみたいだ。

 

《ゆ、ユーノくん・・・ここって一体?》

《時空管理局の・・・次元航行船の中だね・・・》

《次元航行船・・・って何だ?》

《えっと・・・簡単に言うと、

 幾つもある次元世界を自由に移動する、そのための船だよ》

《あ、あんまり簡単じゃないかも・・・》

《つまり、僕たちの住んでるこの世界の他にも、

 ユーノたちの世界みたいなのが幾つもある・・・って事でいいのか?

 で、この船は、その世界間を移動できる・・・と》

《うん、そんな感じだよ》

《じゃあ、時空管理局ってのは?》

《幾つもある世界で、それぞれの世界に干渉し合う様な出来事を、

 防いだり管理したりする機関・・・かな》

《世界間の警察機関みたいな物ですかねー》

国際刑事警察機構(ICPO)のもっと規模でかいverみたいな感じか》

 

そうこう言ってる間に、廊下の様な通路に出た。

クロノが振り返り、言ってくる。

 

「あぁ、いつまでもその格好のままというのも窮屈だろう。

 バリアジャケットとデバイスは、解除しても平気だよ」

「あ、そっか。そうですね」

 

言われてなのはは、バリアジャケットを解き、レイジングハートを待機状態に戻す。

 

「君も・・・元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

「へ? いや僕はもともと・・・」

「あぁ、そういえばそうですね。

 ずっとこの姿でいたから、忘れてました」

 

ユーノ? 何言ってんの??

ユーノが魔力光とともに、その姿を変え―――

 

 

 

・・・・・・開いた口が塞がらない。

隣を見ると、なのはも口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこない様だ。

 

「ふぅ・・・2人にこの姿を見せるのは、久しぶりになるのかな」

「ゆ、ユーノ・・・・・・お・・・おま・・・・・・」

「ふぇぇっっ!? ゆ、ユーノくんが・・・えっ?えっ? えーぇぇっっ!?」

「ど、どうしたのさ!? 2人とも!」

「お、お前は一体何なんだッ!?」

 

ユーノの姿はどー見ても人間。僕たちと同年代くらいだろうか。

 

「・・・君たちの間で、何か見解の相違でも・・・?」

「えぇと・・・僕たちが最初に会った時って、僕はこの姿じゃ・・・・・・」

「いやいやいやいや! 違うって!!」

「最初からフェレットだったよぉ!!」

 

・・・? とばかりに考え込むユーノ。

暫くの後、ハタと気づく。

 

「あーっ! そ、そうだそうだった・・・!

 ご、ごめんごめん! この姿は見せてなかった・・・」

「だよね! そうだよね! びっくりしたぁ・・・・・・」

「まぁ私は知ってましたけどねー」

「だったら何で言わないんだよ!?」

「いや、特に問題は無いかなーと思いまして」

「問題は無くても、結構重要な事だろそれ!」

 

「あー、ちょっといいか?」

 

やいのやいの言ってたら、咳払いをしてクロノが間に入ってくる。

 

「君たちの事情はよく知らないが・・・

 艦長を待たせているので、できれば早めに話を聞きたいんだが」

「は、はい・・・」

「すみません・・・」

「お、お待たせしました・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長。来てもらいました」

 

クロノに連れられ、ある部屋に入る。

が、目に飛び込んできたのは異様な風景。

・・・ここ、SFチックな船の中のハズだよな? 何で盆栽やら鹿威(ししおど)しやらが

設置されてたり、中央に敷物しいて茶器をスタンバってたりするんだ・・・?

そこにいたのは、さっきクロノに通信を送ってきていた女の人。

――― この人、艦長だったんだ・・・・・・

 

「お疲れ様。

 まぁ3人ともどうぞどうぞ、楽にして」

「「「は、はぁ・・・」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そうですか・・・・・・

 あのロストロギア、ジュエルシードを発掘したのはあなただったのですね」

「はい・・・それで、僕が回収しようと・・・・・・」

「まったく・・・危険すぎる!」

 

事情聴取、というほど堅苦しいものではないが(なんちゃって和空間のせいだ)、

これまでに至る経緯を説明。

 

・・・・・・ひとつ疑問に思ったので尋ねてみる。

 

「あの・・・ロストロギアって何なんです?」

「あぁ、遺失世界の遺産・・・って言っても分からないかしらね。

 えっと・・・・・・

 この幾つもある次元世界。その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるの。

 進化しすぎたそれらが、自分たちの世界を滅ぼし、残された危険な技術の遺産・・・」

「それらを総称して、ロストロギアと呼ぶ・・・・・・

 使いようによっては、世界どころか次元空間さえ滅ぼす程の力を持つ事もある」

「あなたたちが探している『ジュエルシード』は、次元干渉型のエネルギー結晶体。

 幾つか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、

 最悪の場合、次元断層をも巻き起こす危険物・・・・・・」

「君たちと、あの黒衣の魔導士がぶつかった時に発生した震動と爆発、あれが次元震だ」

 

・・・たしかにあの時のアレは凄かった。

なんかこう、大地が鳴る!とか空間が揺れる!みたいな感じしてたしなぁ・・・

 

「たった一つのジュエルシードの、全威力の何万分の一の発動でも、あれだけの影響があるんだ。

 複数個集まって動かした時の影響は計り知れない・・・・・・」

「あれで何万分の一ですか!?」

 

仮に10個使ったとして、フル発動したらその威力は、単純に倍加すると昨日の何十万倍。

いやまさか、威力が乗算なんかされたら――― だめだ、想像つかない・・・

 

 

 

数瞬の沈黙。

そんな中、艦長さんが表情を引き締めて言う。

 

「これより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収については、時空管理局が全権を持ちます」

「「「え!?」」」

「君たちは今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

「・・・でも、そんな・・・・・・」

 

なのはが声を上げるが、クロノに窘められる。

 

「次元干渉に関わる事件だ。

 民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

「でも・・・!」

「いきなりそんな事言われても・・・・・・」

 

そうだ、ここまで色々やってきたんだぞ。じゃあ後は任せましたってのはちょっとなぁ。

――― いや理屈では分かるけど・・・・・・

こんな規模の大きな事件には、しかるべき機関が当たるべきだってのは。

でも・・・だからって・・・・・・

 

「まぁ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。

 今夜一晩ゆっくり考えて、3人で話し合って。それから改めてお話をしましょ」

「送っていこう。元の場所でいいね」

 

立ち上がるクロノ。

僕たちはついて行くしかなかった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴臨海公園。

僕たちを送り届けた後、クロノはさっさと帰って行った。

 

「何か、随分と色々ありましたねー」

「そうだな。

 物騒な話とかもあったけど、とりあえず・・・・・・

 一番の驚きは、お前が人だったって事だユーノ!!

「え、えぇっ!?」

 

ユーノをビシィッ! と指差してやる。

 

「ご、ごめん・・・・・・

 そんなつもりじゃなかったんだけど・・・何か、秘密にしてたみたいになっちゃって・・・」

「だ、大丈夫! びっくりはしたけど、それだけだよ」

「あぁ、別に怒ってなんかないって」

「2人とも・・・ありがとう・・・・・・

 えっと、とりあえず・・・・・・」

 

ユーノがフェレットの姿になり、なのはの肩に上がる。

 

「しばらく、普段はこっちの姿でいる事にするよ」

「うん、そうだね」

「・・・後は、これからどうするか、か・・・・・・

 正直言うと、このまま引き下がるってのは、ちょっと納得できないんだけどな」

「『これ以上邪魔するなら逮捕』とか言われれば、あきらめるしかないですけどねー」

「わたしも・・・・・・このままやめちゃうのは・・・嫌かな・・・・・・

 フェイトちゃんとも、ちゃんとお話してないし・・・・・・」

「・・・という訳だから、ユーノ、よろしく」

「えぇぇ!? ぼ、僕が言うの!?」

「だって僕たち、次元世界とかいうのにも、管理局にも詳しくないし。

 なんとかならないか?」

「ユーノくん、お願い!」

「ジュエルシード探索チーム現場監督として、ここはズバッ!といってくださいよー」

「うぅ・・・・・・

 分かったよ・・・なんとか協力者という形で同行させてもらえないか頼んでみる・・・」

 

一晩考えるどころか、即決だったなと苦笑する。

さて、後はユーノ頼みか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

管理局は、僕たちが現地協力者として、ジュエルシードの探索に同行する事を認めてくれた。

ユーノから伝えられた条件は2つ。

 

 1.3名とも身柄を一時、時空管理局の預かりとすること

 2.現地指揮官の指示を遵守すること

 

 

 

「――― という訳で、しばらく家を空ける許可を頂きたく・・・」

 

母さんに事情を話し、長期外出・外泊の認可をとるべく説得する。

もっとも、全てを話す訳にはいかなかったが。

 

「・・・危ない事は無いんでしょうね?」

「あー・・・・・・多分ある、かな・・・?」

「そう、ならアタシは反対よ・・・って言っても、しょうがないか。

 ・・・もう、決めてるんでしょ?」

「・・・・・・ごめん」

「なんで謝るのよ」

「心配、かけるなって思って・・・・・・」

 

母さんは大きく息を吐き、

 

「そりゃね、子供を心配しない親なんているもんですか。

 ・・・・・・でもね。同じくらい信じてもいるわ。

 あんたが自分で考えて、自分で決めた事。だったら、行って来なさい。

 その探し物もちゃっちゃと見つけて、相手の子ともケリをつけて来なさい!」

 

そういって頭を撫でてくれた。

 

「ありがとう・・・母さん。姉さんにもよろしく」

「あ、そういえば聞き忘れてたわ」

「???」

「話したい相手の子って女の子? ひょっとして惚れちゃったとか? それとも―――」

「あのなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荷物をまとめ、家を出る。

 

「・・・ここからは、さらに気合を入れていかないとな」

「公的機関が絡んできた以上、フェイトさんたちも少なからず焦ってくるはずです。

 事態の急変は必至かと」

「ずっと睨めっこするよりはいいだろ。

 勝手だけど、相手の事情や気持ちを知らないまま戦うのは、気持ちが悪い」

 

そう、引き下がる訳にはいかない。

次元振だとか、世界が滅びかねないとかは、スケールが大きすぎてピンとこない。

だけどやる事は変わらないな。

この街に、周りの人たちに被害が及ぶのが嫌だから、その原因たるジュエルシードの早期回収。

そして、フェイトとの対話。

――― 結局はそれだけだ。

 

決意も新たに、僕は走り出す。

 

 

 

 

 

      第9話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「何ですか、この終わり方・・・・・・」

祐介「俺たちの戦いは、まだまだこれからだ! みたいな?」

作者「そんな、打ち切りマンガじゃあるまいし」

祐介「決意も新たに走り出す! ・・・似たようなもんだろ」

美月「あ、じゃあ連載終了ですね。お疲れさまでしたー!」

作者「終わらないから! まだまだ続くから!」

祐介「あーそうかい。

   公的組織が出てきたし、もう終わるんじゃ?」

作者「そういや、調べてて初めて知ったんだが・・・

   ICPO、インターポールって言えば、国際警察ッ!って

   思ってたけど、あれってフィクションの中の話なのね」

祐介「え、そうなのか? 世界中をまたにかけて捜査とかしてないのか?」

作者「『各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い』(by Wikipedia)だと。

   まぁそう言われてみれば、国によって法律って違うもんなぁ。

   そっかー、とっつぁん居ないのかー。『インターポールの銭形です』ってやらないのかー。

   南原さんも、ブラックホール第3惑星人を探して沖縄行ったりしないのかー」

美月「また訳の分からない事を・・・」

 

 

 



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第10話 海上大決戦!

 

 

ここはアースラ艦内。そのブリーフィングルーム。

 

「という訳で・・・本日0時をもって、

 本艦全クルーの任務は、ロストロギア『ジュエルシード』の捜索と回収に変更されます。

 また本件においては特例として、

 問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導師でもあるこちら・・・」

「はい! ユーノ・スクライアです!」

「それから、彼の協力者でもある、現地の魔導師さん」

「た、高町なのはです」「神代祐介です」

「以上3名が、臨時局員の扱いで事態にあたってくれます」

「「「よろしくお願いします」」」

 

さぁ、ここからが正念場だ。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第10話 海上大決戦!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーもう・・・・・・あちこち飛び回りやがって。

大きな翼を広げ、大鳥が逃げる。少し右を狙いビームライフルを連射。

翼をはためかせ左へ旋回、攻撃は避けられる。だがそれは予定通りだ。

反撃として飛んでくるの光弾を回避しつつ、射撃と共に目標を追う。

 

「美月、予定地点は?」

「間もなくです」

 

右に左にライフルを撃ちつつ、目標との距離を縮めていく。

 

「ポイント到達!」

「よし、動きを止めるぞ!!」

 

ライフルを消し、装備を持ち換える。

新たに手にするのは、バズーカ砲「Baz-85-Gry/Ver.045」。

そのバズーカを肩に乗せて構え、狙いを定める。

 

「いくぞ美月!」

「魔力弾選択・・・散弾装填!」

「――― ()ッ!!」

 

発射された弾は目標の手前で炸裂、小さな魔力弾が幾つも命中し、その動きを止める。

 

「ユーノ!!」

「分かってる!!」

 

そこに待ち構えていたのはユーノ。

捕獲魔法を発動し、目標が魔力の鎖によって縛りあげられる。

 

「捕まえた! なのは!!」

「うん!」

 

そこへ光臨せしは我らがなのは嬢。レイジングハートを目標へ向ける。

 

「Sealing mode, set up.

 ――― Stand by ready.」

「リリカル、マジカル・・・・・・

 ジュエルシード、シリアル8――― 封印っ!!

「Sealing.」

 

ジュエルシードは封印され、レイジングハートに確保される。

 

「Receipt number eight.」

 

 

 

 

 

「・・・・・・終了、か。今回は鳥だったからなぁ・・・飛び回りすぎ・・・

 でもまぁ、上手くいったかね」

「うん! コンビネーション、ばっちりだよ!」

「本当に2人とも、魔法上手くなったよね」

 

3人でハイタッチ。

アースラに乗艦してからのジュエルシード探索。

ジュエルシードの位置特定をアースラのスタッフにお任せし、

実際の現地捜索・確保を僕たちが担当していた。

3人の役割分担も上手くいっている。

僕が暴走体を誘導⇒ユーノがバインドで固定⇒なのはが封印、という流れだ。

 

「それに祐介くん、そのバリアジャケットもかっこいいよ!」

「そ、そうか?」

 

言われて、自分の格好を見下ろしてみる。

薄いグレーを基調として、所々に明るい紫のラインの走ったロングコート。

アースラにお世話になっている間、ユーノとかクロノとか他の局員の人たちに、魔法の基礎

を教えてもらっていたのだが、『バリアジャケットが無いのは見ていて危なっかしい』とか

言われてしまったのだ。

実際の所、ちゃんと防御機能は働いてるんだけどなぁ・・・見た目が変わらないだけで。

普通は、それぞれの能力に合わせた防護服を構築するのがセオリーだそうな。

例として、なのはのジャケットはかなり防御が厚い。

まぁあの砲撃力だからなぁ・・・防備を固めた砲台ってことか。

で、僕は・・・特に何もなかったので万能バランス型、と判断されたのだが・・・

みんなであーだこーだと相談した挙句、クロノのジャケットを参考に、

このジャケットが完成した。

 

「ま、状況を問わず活躍できるのは利点だと思っておこう・・・

 せいぜい、ただの器用貧乏にならないように頑張りますか」

 

そこへアースラから通信が入る。

 

『状況終了です。ジュエルシードNo.8、無事確保。

 お疲れ様。なのはちゃん、祐介くん、ユーノくん。

 ゲートを作るから、ちょっと待っててくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちがアースラに乗艦してから10日が経っていた。

その間確保したジュエルシードは3個。

本日捜索した範囲も空振りだったため、僕たちは食堂で休憩していた。

 

「フェイトちゃん、なかなか会えないね・・・・・・」

「うん・・・こっちとは別にジュエルシードを集めてるんだと思うけど」

「こっちで見つけたジュエルシードも、2つくらい先に取られたみたいだしな。

 なのはが確保したのが合計9個。とすると・・・・・・」

「残りは6個、ですねー」

「こりゃもう少し時間かかるかもな・・・」

 

そんな時、ユーノが呟く。

 

「ごめんね・・・2人とも・・・寂しくない・・・?」

「・・・どうした、急に。

 大丈夫だよ、独りきりって訳でもないしな」

「うん、わたしも、全然寂しくなんてないよ。

 それに独りでも・・・多分平気。

 昔は・・・結構独りだったから・・・・・・」

「そうなのか?」

 

そういえば、高町家の昔の話とか聞いた事無かったな。アリサたちとの話は聞いたけど。

 

「わたしがまだ小さい頃ね・・・・・・

 お父さんが仕事で大怪我しちゃって、しばらくベッドから動けなかった事があるの。

 喫茶店も始めたばっかりで、お母さんとお兄ちゃんは、いつもずっと忙しくて。

 お姉ちゃんも、ずっとお父さんの看病で・・・・・・

 だからわたし、割と最近まで、家で独りでいる事多かったの。

 ・・・だから、結構慣れてるの・・・・・・」

「そっか・・・・・・」

「小さい頃の経験って、やっぱ尾を引くもんなのかな。

 まぁ僕には分からんが・・・・・・記憶無いし」

「えぇっ!?」

「そ、そうだったの祐介くん!?」

 

そりゃまぁ、普通は驚くか。

そうそうあるもんじゃないしな、記憶喪失なんて。

 

「1年くらい前か、父さんと僕は事故にあったらしくてな。

 病院で目覚める以前の記憶がまるっきり無いんだ。

 医者に言わせれば事故のショックらしいけど。物理的にも精神的にも」

「精神的・・・?」

「・・・事故の時、父さんは僕を庇って・・・・・・死んだらしい。

 美月は、その父さんが大事に持ってた、形見なんだ・・・・・・」

「そんな・・・・・・」

「あーもう! そんな顔するな。昔よりも今だ。

  『過去を忘れるつもりはない。

   過去に縛られるつもりもない。

   人生とは常に前へと進むものだから』

 これが家の家訓だからな」

「その『過去』を忘れてる人がいますけどねー」

「ま、前に進んでるからいいんだよ!

 はいもうこの話終わり! 次、ユーノ! お前の家はどうだったんだ?」

 

暗くなる前に、半ば強引に打ち切り、ユーノに訊ねる。

 

「え? あぁ、僕は元々独りだったから。

 両親はいなかったんだけど、部族のみんなに育ててもらったから・・・

 だから、スクライアの部族みんなが、僕の家族」

「そっか・・・」

「お前も色々大変なんだな」

 

みんな、それぞれ何かあるもんなんだな・・・・・・

 

「・・・色々かたづけたら、もっと沢山色んなお話できるかな・・・・・・」

「うん・・・色々かたづいたら、ね」

「そうだな。

 フェイトとも・・・・・・きっとできるだろ。

 もう残りの数も少ないし、そろそろ遭遇しても―――」

 

  ビーッ! ビーッ!

 

「「「!!?」」」

 

突然響く警報。揃って顔を上げる。

 

『エマージェンシー!

 捜査区域の海上にて、大型の魔力反応を感知!!』

 

「言ってるそばから早速ですかねー」

「なのは! ユーノ!」

「うん!」

「分かってる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリッジに上がると、目に入ってきたのは凄まじい光景だった。

海上の嵐の中、フェイトが戦闘を開始している。

その周りに屹立する竜巻、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・6つ!?

 

「フェイトのやつ、残りのジュエルシード全部発動させたのか!?」

「あ、あの! わたし、すぐ現場に―――」

「その必要は無い」

「何でだよ!? 暴走体6体を同時に相手なんか、2人じゃ無理だろ!!」

 

クロノの制止に思わず食って掛かる。

 

「放っておけばあの子は自滅する。

 仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」

「そんな!!」

「今のうちに、捕獲の準備を」「了解」

 

事務的に指示を出すクロノに腹が立つ。

いや、理屈では分かってる・・・公的組織としてそれが正しい方策である事も・・・・・・

もちろんフェイトたちを見殺しにする事はないだろうが、それにしたって・・・!!

 

「私たちは、常に最善の選択をしないといけないわ。

 残酷に見えるかもしれないけど、これが現実・・・・・・」

 

モニターには、どんどん疲弊していくフェイトの姿。このままじゃ・・・!

――― けど、彼らを説得できる理由が見つからない。

今の段階でフェイトの助けに入りたいっていうのは、所詮は子供の我儘だ。

でも何か・・・何かないか・・・・・・!

 

 

 

「待て! 君は・・・!!」

 

クロノの声に、ハッと振り返ると、なのはが転送ポートに走り込んでいた。

何を・・・ってポートが起動してる!?

 

「ちょ!? おい、なのは!?」

 

そして僕たちと彼女の間に立ち阻むやつ。

ゲートを開いたのはお前か、ユーノ・・・・・・

 

「ごめんなさい・・・・・・

 高町なのは、指示を無視して勝手な行動をとります!!

 

そう言って、なのは、続いてユーノの姿はブリッジから消えた。

 

 

 

 

 

「あ~ぁ、行っちまった・・・」

 

頭を掻きながら、モニターに視線を戻す。

モニター上では、なのはがフェイトに接触しようとしていた。

 

「馬鹿な! 何をやってるんだ! 君たちは!!」

『ごめんなさい! 命令無視は後でちゃんと謝ります!

 だけど・・・放っとけないの!!

 あの子きっと・・・独りぼっちなの・・・・・・

 独りきりが寂しいのは・・・わたし少しだけど分かるから!!』

 

まったく・・・たいした行動力だよ。

あれこれ考えてモタモタしてたら先を越されちゃったな。

・・・しょうがない、こっちも行くとしますか。

 

「リンディ艦長」

 

艦長席に向き直り、進言する。

 

「このまま静観するって訳にもいかないんじゃないですか?

 こうなってしまった以上、この事態はさっさと片付けた方が良いと思います。

 ・・・出動許可、もらえませんか」

「・・・・・・はぁ。仕方ないわね。

 祐介くんは、なのはさん達と合流。ジュエルシードの封印とフェイトさんの保護を」

「ありがとうございます!!」

 

待ってろなのは! フェイト! すぐ行くから!

 

《アルフさん忘れてません? あとユーノさん》

 

わ、忘れてない忘れてない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上に転送され、すぐに飛行機鋼を発動する。

 

「なのは! フェイト!」

 

2人の所に到着すると、ちょうどなのはが魔力分与を終えたところだった。

ユーノは・・・アルフさんの所か。バインドで暴走体を抑えてくれている。

 

「とにかく、さっさとアレを止めるぞ! この際ジュエルシードは半分ずつな!」

「え・・・?」

「ユーノくんとアルフさんが止めてくれてる! だから・・・今の内に!!」

「Shooting mode.」

 

なのはが飛び出し、高度をとる。

それじゃあ、こっちも・・・!

 

「美月、砲撃準備!」

「りょーかいっ! メガ・バズーカ・ランチャー、よーい!!」

 

ランチャーを正面に構え、砲撃体勢に入る。

隣を見ると、目に入ってきたのは戸惑いの表情。

なのはを、そして僕を交互に見ていたフェイトに笑ってやる。

 

「どうした? ジュエルシード欲しいんじゃなかったのか?

 このままだと全部貰っちゃうぞ?」

「そ、それは・・・・・・」

「Sealing form, setup.」

「バルディッシュ・・・?」

 

封印体勢に入るバルディッシュ。

空気の読める、良くできたデバイスだこと。

 

「なのは! 準備いいか!!」

「うん!! 行けるよ!!」

 

隣を見ると、フェイトが激しく雷を迸らせていた。

 

チャージ完了・・・いっけえぇぇぇッ!!」

「サンダー――― レイジッ!!」

「ディバイン――― バスタァァっ!!」

 

臨海公園で大樹を封印した時よりも格段に規模の大きな一斉攻撃。

瞬く間に6つの光柱を呑み込み、嵐が沈静化する。

 

・・・何とか、なったか・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはがこちらに降りてくる。

目の前に上がってきた6個のジュエルシード。

そしてそれを挟んで向かい合う、僕たちとフェイト。

・・・・・・いざ事が一段落してしまうと、何を言っていいか分からない。

とりあえずの目的、危険な状況だったフェイトを助ける・・・それは終わった。

でもその後の事は考えてなかったな・・・

向こうも同様なのか、困惑と思案の表情を浮かべている。

 

「わたしが・・・」

 

ポツリと最初に口を開いたのは、なのはだった。

その声に、フェイトもハッと顔を上げる。

 

「今わたしがフェイトちゃんに言いたい事は・・・実は決まってるの・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・友達に・・・なりたいんだ」

 

・・・・・・・・・・・・そっか。

難しく考える必要なんて無かったんだ。

無理に色々と、もっともらしい理由付けをしなくってもよかった。

その寂しそうな瞳で、何か重いものを抱えてるなら助けてやりたい、そんな理由でもいい。

 

「・・・単純な事だったんだな・・・・・・

 フェイト。僕たちは―――」

「空間に異常発生!! 上空より攻撃が来―――!!!」

 

突然の美月の叫び。

その警告が終わらないうちに、周辺に降り注ぐ紫色の雷。

 

「なッ!!?」

「っ!? 母さん・・・!?」

 

その時、雷の一筋がフェイトを打つ。

 

「フェイトちゃん!!」

「フェイト!! ――― ぐッ!!」

 

助けに行こうとした瞬間、別の雷に弾き飛ばされる。

なんとか体勢を立て直し、周囲を見回す。

フェイトは・・・・・・アルフさんが受け止めていた。

良かった・・・・・・

 

――― って、アルフさんがそのまま向かう先にはジュエルシードが!!

この状況でジュエルシード6個全部持ち逃げする気か!?

 

「ちょ!? アルフさん!!それはあんまり―――!!」

 

ここからじゃ間に合わない!

そう思った瞬間、アルフさんの前に立ち塞がる黒い影。

クロノ・・・あいつも来たのか。

 

「邪魔ぁ・・・すんなぁぁっ!!!」

 

突進するアルフさんに、あっさり殴り飛ばされるクロノ。

 

「おいおい・・・しっかりしてくれよ・・・・・・

 これじゃジュエルシードが・・・」

 

そう思って、アルフさんの手にしているジュエルシードを見上げる。その数3つ。

・・・あれ? 3つ?

慌ててクロノの方に振り返ると、その手には3つのジュエルシードが。

 

「ちゃっかりしてる人ですねー」

「こんな状況でも冷静なやつだなぁ・・・」

 

あとはアルフさんを・・・って、超怖い顔してるー!?

 

「うあぁぁぁっっ!!!」

 

アルフさんによって海面に撃ち込まれる魔力弾。

大きく水しぶきが上がり、全てを飲み込む。

 

 

 

視界が収まった時には、2人の姿は無く・・・

降り注ぐ雨の中、僕たちはただ空を見上げていた・・・・・・

 

 

 

 

 

      第10話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「後で怒られますねー」

祐介「命令無視の事? え、僕も怒られんの? ちゃんと許可もらったよ!?」

作者「一刻も早くフェイトを助けなきゃならん時に・・・このやろう、出遅れてやんのー」

祐介「あんたが書いたんだろうが! だったらもっと早く出動させろよ!」

作者「いやー、祐介はそこまで熱血キャラじゃないし・・・

   ――― そういえば、今回はバズーカぶっ放してたね」

祐介「話の切り替えが唐突だな・・・

   序盤でジュエルシード鳥に撃ったやつ? 『Baz-85-Gry/Ver.045』だっけ?」

美月「しかも散弾でしたよ?」

作者「RX-178 ガンダムMk-Ⅱの持ってたハイパーバズーカですねぇ。

   装填するカートリッジで、通常の炸裂弾と散弾を撃ち分ける事ができるのよ」

祐介「便利だなー」

作者「ただ散弾って事は至近距離でもなければ威力は低めだから、適当には撃たないように。

   考え無しに撃ったら『散弾ではなぁ!!』って反撃くらうぞ。某少佐から」

祐介「何の話かさっぱり分からん」

美月「それはまぁ置いといて・・・そろそろ事件も終盤なんじゃないですか?

   ジュエルシードも全部見つかった訳ですし」

祐介「こちらに12個、向こうに9個か・・・・・・」

作者「さてさてどうなることやら・・・」

祐介「あんたが書くんだよ!?」

 

 

 





一応、10話時点でのキャラ設定を書き出してみたり・・・

 ⇒キャラ紹介1

よろしければ。


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第11話 それぞれの誓いを胸にして

 

 

 

雨の降りしきる中、空を見上げる。

 

『・・・4人とも、戻ってきてちょうだい』

「了解・・・」

 

リンディさんからの通信にクロノが答える。

 

『・・・で! なのはさんとユーノくんには、私直々のお叱りタイムです!』

 

ま、そうなるよなぁ・・・

お叱りで済むといいけど・・・・・・

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第11話 それぞれの誓いを胸にして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指示や命令を守るのは、個人のみならず集団を守るためのルールです。

 勝手な判断や行動が、あなた達だけでなく周囲の人たちをも危険に

 巻き込んだかもしれないという事・・・それは分かりますね?」

「「はい・・・・・・」」

 

アースラのブリーフィングルーム。

リンディさんのお説教タイムである。

被告は、なのはとユーノ。

(単に出遅れただけなんだが)命令違反した訳ではない僕は外されると思ってたが、

この後の事もあるとか何とかで、クロノに連れてこられた。

 

「本来なら、厳罰に処すところですが・・・結果として、幾つか得るところがありました。

 よって今回の事については、不問とします」

 

僅かな驚きとともに顔を上げる2人。

お説教だけで済んだか・・・良かった・・・・・・

 

「ただし・・・・・・2度目はありませんよ。いいですね?」

「はい・・・・・・」

「すみませんでした・・・」

 

ほっと胸を撫で下ろす。寛大な処置に感謝だな。 

安心したところで、なのはの頭に手を置く。

なのはも、どこか安堵した表情で微笑み返してくる。

 

リンディさんがこちらに向き直る。

 

「さて・・・・・・問題はこれからね。

 クロノ。事件の大元について、何か心当たりが?」

「はい。エイミィ、モニターに」

『はいはーい』

 

中央のモニターに、1人のオバ・・・もとい妙齢の女性が映し出される。

 

「あら・・・!?」

 

リンディさんが驚きの声を上げる。

知ってる人なんだろうか。

 

「そう・・・・・・僕らと同じ、ミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ。

 専門は、次元航行エネルギーの開発。

 偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって、放逐された人物です。

 登録データと、さっきの攻撃の魔力波動も一致しています」

 

帰ってきてから聞いたが、あの雷攻撃があった時、アースラにも攻撃が加えられていたとか。

 

「物騒な人だなぁ・・・・・・

 ん? ちょっと待て・・・テスタロッサ? って事は・・・」

「ああ。あの少女、フェイトは恐らく・・・・・・」

「フェイトちゃん・・・あの時、『母さん』って・・・・・・」

「・・・親子、ね・・・・・・」

 

リンディさんが頷き、それに続いて美月が呟く。

 

「・・・上手くいってないのかもしれませんね。

 驚きというより、どことなく怯えが感じられたような気がします」

「・・・だよなぁ・・・・・・」

「・・・・・・エイミィ。プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる?

 放逐後の足取り、家族関係、その他何でも」

『は、はい! すぐ探します!』

 

 

 

 

 

数分後、エイミィさんが資料を持って入ってくる。

 

「プレシア・テスタロッサ。

 ミッドの歴史で、26年前は中央技術開発局の第3局長でしたが、

 当時開発していた、次元航行エネルギー駆動炉 “ヒュードラ” 使用の際、

 中規模次元震を起こした事で、地方へと異動。

 辺境に異動後も、数年間は技術開発に携わっていました。

 そのしばらく後、行方不明になって・・・それっきりですね・・・」

「家族と、行方不明になるまでの行動は?」

「その辺のデータは、綺麗さっぱり抹消されちゃってます。

 今、本局に問い合わせて調べてもらっていますので」

「時間はどれくらい?」

「一両日中には、と」

「・・・プレシア女史もフェイトちゃんも、あれだけの魔力を放出した直後では、

 そうそう動きはとれないでしょう。

 その間に、アースラのシールド強化もしないといけないし・・・・・・」

 

こちらに向き直るリンディさん。

 

「あなた達は、ひと休みしておいた方がいいわね。

 特に、なのはさんや祐介くんは、あまり長く学校を休みっぱなしでも良くないでしょう。

 一時帰宅を許可します。ご家族と学校に、少し顔を見せておいた方がいいわ」

「はぁ・・・・・・」

「分かりました・・・・・・」

 

とりあえず、相手の出方次第ってことか・・・・・・

まぁ、ジュエルシードがもっと必要だっていうなら、向こうから出向いてくるしかないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・しかし本当に来るんですか?」

「えぇ、お子さんを預かっているんだから、お家の方にご挨拶するのは当然ですもの」

 

リンディさんと連れ立って我が家へ向かう。

なのはと帰る時間をずらすように言われ、なんでだろうと思ってたがこのためだったか。

さっきまで、高町家に行ってたらしい。

 

「そんなに気を遣わなくてもいいと思いますけどね・・・

 ウチの人間って細かい事気にしないから」

 

一応、こっちの世界に帰って来た時に、連絡はいれておいたが、いつも通りな感じだったし。

 

「いやいや、詳しい事も訊かずに送り出してくれた神代家や高町家がおかしいんですってばー」

「そうですよ、やはり保護者として、事情の説明はしなくてはいけません」

「はぁ・・・そんなもんですか・・・・・・」

 

 

 

結局、当たり前といえば当たり前なんだけど・・・・・・

リンディさんの、家庭への事情説明とやらは、大半が嘘八百だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、学校から帰宅後、自室で窓の外をボーッと眺めていると、突然に念話が入る。

 

《ゆ、祐介くん祐介くん!》

《どうした、なのは。今日はアリサの家に行ってるんじゃ―――》

《そのアリサちゃんの所に・・・その・・・アルフさんが・・・・・・》

《はぁ!?》

《なんか、凄い怪我してて・・・・・・》

《フェイトは?》

《ううん、アルフさんだけ。これからお話を聞くところなんだけど・・・・・・》

 

 

 

 

 

クロノによる事情聴取によって、大体のことは分かった。

 

目的は不明だが、プレシア・テスタロッサはジュエルシードを欲していて、それの回収を、

娘、フェイトに命じた。しかし彼女の求めるだけの成果を上げられなかったフェイトに、

虐待じみた折檻を幾度となく行っていた。それに(実力行使で)抗議したが返り討ちにあい、

命からがら転移してきたところをアリサに拾われた、と。

 

これがアルフさんの語った現状である。

 

《なのは、祐介。聴いたか》

《うん・・・》《あぁ。色々と大変みたいだな》

《君たちの話と、現場の状況。そして彼女の使い魔、

 アルフの証言と現状を見るに、この話に、嘘や矛盾は無いみたいだ》

《これから、どうするんだ?》

《プレシア・テスタロッサを捕縛する。

 アースラを攻撃した事実だけでも、逮捕の理由にはお釣りがくる程だ。

 だから僕たちは、艦長の命があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更する事になる。

 ・・・君たちはどうする・・・?》

 

・・・・・・まぁ、答えは決まっているようなものだけどな。

恐らく、なのはも決まってるんだろう。

 

《わたしは・・・

 わたしは、フェイトちゃんを助けたい!

 アルフさんの想いと、それから、わたしの意志。

 フェイトちゃんの悲しい顔は、わたしも何だか悲しいの。

 だから助けたいの! 悲しい事から・・・

 それに・・・・・・友達になりたいって伝えた、その返事をまだ聞いてないしね》

《僕も、ここで降りる訳にはいかないな。

 あの寂しそうな瞳を放っておくってのは、ちょっとな。

 お節介だろうが何だろうが、できる事があるのなら、助けてやりたい》

《分かった。

 こちらとしても、君たちの魔力を使わせてもらえるのはありがたい。

 フェイト・テスタロッサについては、君たちに任せる。

 ・・・それでいいか、アルフ・・・?》

《あぁ・・・・・・

 なのは・・・それに祐介、だったね・・・》

 

アルフさん・・・?

 

《頼めた義理じゃないけど、だけど、お願い・・・・・・

 フェイトを助けて・・・!

 あの子・・・今ほんとに独りぼっちなんだよ・・・・・・》

《うん・・・大丈夫》

《任せてください》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

出発は明日の早朝となっている。

ベランダで月を眺めていると、隣に並ぶ影があった。

 

「どうしたの、ボーッっとしちゃって」

「姉さん・・・・・・

 いや、明日からの事をちょっと考えててさ」

「また・・・行くのよね・・・・・・」

「うん・・・・・・母さんにも姉さんにも、心配かけるけど・・・・・・

 多分、もう少しでケリはつくと思う」

「そっか・・・・・・

 ま、気が済むまでやってくればいいわ。

 ただ・・・無事に帰って来なさいよ・・・・・・」

 

後ろに回り、頭を抱きかかえてくる姉さん。

その腕に手を添えて呟く。

 

「約束する。

 ちゃんと帰るよ。全部片付けて・・・・・・」

 

なんか大げさになってきたな・・・

死地に向かう勇者じゃあるまいに。

まぁ、それなりに危ない事ではあるかもしれないけど・・・

約束は守るさ・・・・・・

 

そう決意して、2人でただ月を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝。

時刻は5時過ぎ。

玄関に向かうと、そこには母さんの姿があった。

 

「母さん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

無言で拳を突き出してくる母さん。

・・・まったく・・・・・・

こちらも拳を出し、打ち合わせる。

 

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

それだけを言い、隣を通り過ぎる。

扉を出るとき、もう一度振り返った。

そこには、まるで学校に行くのを見送るかのような、いつも通りの笑顔。

 

・・・行ってきます。

心の中でもう一度呟き、親指を立てて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所でなのは達と合流し、走り出す。

道中、これからの事を尋ねる。

 

「・・・今日は、計画通りいくのか?」

「うん・・・・・・きっと来てくれると思うから・・・・・・」

「そうだな・・・きっと・・・・・・

 ・・・おや?」

 

気づけば、僕たちに並んで走るオレンジ色の姿があった。

アルフさん・・・・・・

無言で頷き合い、僕たちは目的地へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴臨海公園。

最近は随分と、この場所によく来るような気がするな。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ただ彼女を待つ。

もう全てのジュエルシードは回収された。

これ以上の数を望むなら、もう一度接触してくるしかない。

 

 

 

 

 

――― ふと、空気が揺れた。

 

「・・・美月」

「はい・・・ご客人です」

 

背後の街灯の上に佇む黒い影。

 

「Scythe form.」

 

フェイト・・・・・・いきなり臨戦態勢ときたか。

 

「フェイト・・・! もうやめよう!」

 

前に出たアルフさんが訴えかける。

 

「あんな女の言う事、もう聞いちゃ駄目だよ!

 フェイト・・・・・・

 このまんまじゃ、不幸になるばっかりじゃないか・・・!

 だからフェイト!!」

 

首を振るフェイト。

 

「だけど・・・・・・

 それでも私は・・・あの人の娘だから・・・・・・」

 

予想はしていたが・・・やっぱり単純な説得では無理か・・・・・・

 

隣では、レイジングハートをセットアップするなのは。

今回の接触は、なのはに任せる事にしていた。

 

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね・・・

 逃げればいいって訳じゃ、もっとない・・・」

 

正面からフェイトと向き合う。

 

「賭けよう・・・

 お互いの持ってる、全部のジュエルシードを・・・!」

「Put out.」

 

レイジングハートから吐き出される12個のジュエルシード。

 

「Put out.」

 

応える様に、バルディッシュもジュエルシードを排出。

その数9・・・・・・

 

「それからだよ・・・・・・

 全部、それから・・・!」

 

そしてデバイスを向け合う2人。

 

「わたし達の全ては、まだ始まってもいない・・・・・・

 だから・・・・・・本当の自分を始めるために・・・!

 始めよう・・・・・・最初で最後の、本気の勝負―――!!」

 

僕に今できるのは、見守る事だけだ。

・・・任せたぞ、なのは・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      第11話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「うーむ・・・・・・」

祐介「どうしたんだ?」

作者「何この姉弟・・・」

美月「禁断の愛フラグでも立ててるんですかねー」

作者「何だって!? おい、そうなのか!?」

祐介「知らないよ! あんたが書いたシナリオだろうが!!」

美月「で、このシーン、何かの伏線に?」

作者「いや、咲の出番が全然ないなーと思って・・・・・・

   思いつきで書き足した部分だから、特に意味は・・・無い。

   さして長いシーンでもないでしょ」

祐介「まぁそうだけど・・・・・・」

作者「・・・何、祐介×咲シナリオ作ってほしい?」

美月「それより私のルートを!」

祐介「いつからこの話はギャルゲー風になった!?」

 

 

 



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第12話 決戦、そして真相


しばらく間が空いてしまいました。申し訳ない。

仕事が忙しかった+ゲームばっかりしてたせいです・・・



 

 

 

――― クロノから通信を受けたのは昨夜の事だった。

 

『祐介、今いいか』

「クロノ? どうしたんだ一体」

『いや、今回の作戦において、フェイト・テスタロッサについては、

 君たちに一任する事になったが、プレシア・テスタロッサについて

 伝えておきたい事があってね・・・君も当事者として、頭に入れておいてくれ』

「なんだよ、そんな重要な事なのか?」

『ああ・・・・・・

 プレシア・テスタロッサの家族と、事故の事だが―――』

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第12話 決戦、そして真相

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まったか・・・・・・」

 

海上では、なのはとフェイトが交戦を開始していた。

何度も激突し、魔力弾の応酬が繰り広げられる。

 

《・・・いいんですか?》

《・・・何がだよ》

 

ふいに、美月が念話を送ってくる。

 

《あの話、なのはさんに内緒にしておいて》

《クロノにも、他言無用だって言われただろ》

 

この戦いの勝敗は、作戦全体においては、あまり関係は無い。

フェイトが帰還するか、プレシアさんがまた攻撃してくるか・・・・・・

いずれにせよ、その時に本拠地を突き止めるための準備が、アースラでは行われているはずだ。

でもやっぱり、想いを伝えるためにも、なのはには勝ってもらいたい。

だからこそ、クロノも僕だけに連絡してきたんだろう。

 

(ならこの話は、まだ話すべきじゃない。

 なのはを・・・迷わせたくないしな・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side change  なのは side

 

 

 

「Photon lancer.」「ファイアッ!」

「Divine shooter.」「シュートッ!!」

 

フェイトちゃんの直射弾を回避しつつ、誘導弾を放つ。

シールドで防がれるけど、動きは止まった!

 

「シュートッ!!」

 

さらにディバインシューターを5発。

 

「Scythe form.」

 

魔力刃で切り払いながら、そのまま突っ込んでくるフェイトちゃん。

1つ、2つ、3つ、4つ・・・・・・速い!!

 

「っ!!」

「Round shield.」

 

振り下ろされる魔力刃を、かろうじてシールドで受け止め、そのまま拮抗する。

でも・・・!

 

(お願い・・・行って!!)

 

生き残った1発を、フェイトちゃんの背後から強襲させる。

慌てて防御魔法で防ぐフェイトちゃん。

その隙に、フラッシュムーブで彼女の頭上へ。

 

「っせえぇぇいっ!!!」

 

レイジングハートを思い切り振り下ろす。

受け止められた直後、激しい衝撃と閃光。 

 

――― 突然手応えが無くなった!?

フェイトちゃんは・・・!?

 

「Scythe slash.」

「―――っ!?」

 

頭上からの一撃。

かろうじて避けたけど、ジャケットを軽く裂かれる。

とにかく距離をとらないと・・・!!

 

「っ!!?」

 

離脱しようとして体をひねると、そこにはフェイトちゃんの射撃魔法。

いつの間に・・・!!

 

「Fire.」

 

飛来する直射弾をシールドで弾きながら、体勢を整える。

視線の先には、わたしと同じように肩で息をするフェイトちゃん。

・・・やっぱり、強い・・・!

 

 

 

 

 

   Side change  フェイト side

 

 

 

距離をおいて睨み合いになる。

予想以上に消耗が激しい・・・・・・

 

(・・・初めて会った時は、魔力が強いだけの素人だったのに・・・・・・)

 

今は・・・強くなってる・・・・・・

このままじゃ・・・迷ってたら・・・やられる・・・!

 

「バルディッシュ・・・!」

「Phalanx shift.」

 

一気に勝負をつける・・・!

周囲に発生する無数のフォトンスフィア。

同時にライトニングバインドで、あの子を拘束する。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。

 疾風なりし天神、いま導きのもと撃ちかかれ。

 バルエル・ザルエル・ブラウゼル。

 フォトンランサー・ファランクスシフト―――」

 

もう一度、あの子を見据える。

 

「撃ち砕け・・・ファイアッ!!」

 

無数の魔力弾が殺到し、閃光と爆煙の中、彼女の姿が掻き消える。

 

「・・・・・・っ!!」

 

ふっと、これでいいのかと躊躇する気持ちがよぎった。

だけど・・・・・・

迷いを振り捨て、撃ち続ける。

容赦は無しだ、遠慮は駄目だ・・・!

あの子が言った、『本気の勝負だ』と。

全力でいかないと・・・・・・勝てない!!

 

「ハァ・・・ハァ・・・・・・くっ・・・!」

 

連射を止め、爆煙が収まり始めた。

残りの魔力も多くはない。

掲げた手に、トドメの一撃を集束させる。

これで・・・!

 

「・・・っ!!?」

 

爆煙の中から現れた白い姿。

そんな!? 防ぎきった!?

ほぼ無傷。しかも・・・・・・

 

「今度はこっちの―――」「Divine―――」

 

自身のデバイスを掲げ、砲撃体勢に入る。

 

「番だよ!!!」「Buster.」

 

放たれる砲撃。

 

「うわあぁぁっっ!!!」

 

おもわず、ランサーを撃ち返す。

しかし砲撃は私のランサーを消し飛ばし迫ってくる。

かろうじてシールドで受け止めるが、凄まじい勢いで押し潰されそうになる。

 

(でも・・・耐えてみせる・・・!

 あの子だって・・・耐えたんだから・・・!)

 

バリアジャケットの端々が魔力を維持できず千切れ飛ぶ。

腕も痺れてきた。

でも・・・・・・

 

(まだだ・・・まだいける・・・!)

 

 

 

気の遠くなるような時間を耐え、砲撃が止む。

正直なところ、ほとんど力は残っていない。

でも、あの子の魔力も限界に近いはず。

一撃を入れさえすれば・・・!

 

「・・・・・・えっ!?」

 

見上げた先、そこにはあの子を中心に集まる魔力の輝き。

そんな・・・集束魔法(ブレイカー)!?

 

「受けてみて・・・ディバインバスターのバリエーション!」

「Starlight breaker.」

 

魔法陣が展開され、魔力が集束されていく。

 

(でも、集束の時間を与えなければ・・・!)

 

距離を詰めようとしたとたん、動きが止められる。

 

「なっ・・・! バインド!?」

 

私の手足を拘束する4つのリング。

いつの間に・・・・・・

そんな私の驚きを余所に、魔力は集束していく。

 

「これがわたしの全力全開!!

 スターライト―――」

「っ!?」

「ブレイカァァッッ!!!」

 

放たれる砲撃。

目の前いっぱいに、桜色の奔流が迫ってきていた・・・・・・

 

 

 

 

 

      Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげー・・・・・・」

 

なのはの砲撃がフェイトを捕らえる。

・・・これはもう、決まりだろう。

 

「容赦の無い一撃だなぁ・・・」

「フェイトさん、生きてますかねー?」

「行くか・・・」

 

とりあえず勝負ありを宣言するべく飛び出すが、

 

「って落ちたぞおい!」

 

フェイトが海へと落下する。

そこまで限界だったのか!?

そのまま、急いで海へ飛び込み、フェイトを抱え上げ、上空へ。

 

「おい、しっかりしろフェイト!」

 

程なく目を開けるフェイト。

 

「大丈夫か?」

「・・・うん」

 

よかった・・・大した事なさそうだな。

胸を撫で下ろす。

 

「フェイトちゃん! 大丈夫!?」

 

お、なのはが降りてきたか。

とりあえず大丈夫だと伝えてやる。

 

「よかった・・・・・・

 

 ・・・わたしの、勝ちだよね・・・・・・」

「・・・そう、みたいだね・・・・・・」

「Put out.」

 

バルディッシュがジュエルシードを吐き出す。

 

「飛べるか?」

 

頷くフェイトを腕から下ろしたところで、クロノから通信が入る。

 

『よし、なのは。ジュエルシードを確保してくれ。

 それから彼女を―――』

「空間に異常!!」

「ッ!? こっのぉぉッッ!!!」

 

僕たちを狙って降る雷。

即座に2人の上に出て、範囲を拡大したビームシールドを展開、

上空から来た攻撃をギリギリで受け止める。

そうそう何度もやらせるか!!

 

「なのは! フェイトを連れて離脱しろ!!」

「で、でも・・・・・・」

「早くしろ!! いつまでもッ・・・保たないッ・・・!!」

 

正直、かなり押されている。

かなり魔力を込めてるつもりだが、このままだと押し切られる・・・!

 

「ジュエルシードが!!」

「ッ!?」

 

なのはの声に、つい振り返ってしまう。

集中が緩み、身体を打ちのめす衝撃。

 

「祐介くんっ!!」

 

最後に見たのは、虚空へ消えて行く9つのジュエルシードだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side change  美月 side

 

 

 

アースラへと帰還し、祐介は医務室へと放り込まれた。

なのはさん達は、フェイトさんを連れてブリッジへ。

ユーノさんに頼んで、私も一緒に連れてきてもらっている。

 

「なのはさん」

 

ブリッジに入ると、リンディさんがこちらへ歩いて来た。

 

「祐介くんの容態は?」

「あ、はい、魔力ダメージで昏睡しているだけで、特に心配はいらないそうです」

「そう、よかったわ・・・・・・お疲れさま。

 それから・・・フェイトさん。 はじめまして」

「・・・・・・・・・・・・」

 

フェイトさんは無言で正面のモニターに目を向けた。

ちょうど武装局員の皆さんが、プレシア・テスタロッサの本拠地へと突入していく所だ。

 

「・・・フェイトちゃん、良かったらわたしの部屋―――」

 

母親の逮捕を見せないようにとの気遣いだろう、なのはさんがフェイトさんを促すが、

フェイトさんは動こうとしない。

 

「総員、玉座の間に侵入。目標を発見!」

 

モニター上では、多くの局員さんがプレシアさんを包囲していた。

 

『プレシア・テスタロッサ!

 時空管理法違反、および管理局艦船への攻撃容疑で、あなたを逮捕します!

 武装を解除して、こちらへ』

 

その状態のまま、別の一隊が、玉座の背後にある部屋へと入る。

 

『こ、これは・・・・・・』

 

映し出されるのは、人が入れる程の、SFにでも出てきそうな、無数のカプセル。

そして、部屋の中央にある、唯一稼動しているらしいカプセル・・・・・・

 

(あれは・・・・・・まさか!?)

 

そこに入れられていたのは、フェイトさん、いえ、彼女と瓜二つの少女。

誰も彼も、言葉を失ってモニタを見つめる。

 

カプセルを調べようとした局員が近寄るも、激昂したプレシアさんに阻まれる。

 

『私のアリシアに・・・近寄らないで!!』

(アリシア!? それって・・・・・・)

 

再びプレシアさんを包囲し攻撃を加えるも、一度の反撃で局員は全滅。

リンディさんの指示で、局員の緊急転送が行われる。

 

・・・そして残され、カプセルに向かうプレシアさん。

 

『時間が無いわ・・・たった9個のロストロギアでは、

 アルハザードに辿り着けるかどうかは分からないけど・・・・・・』

 

そして、こちらに向き直り、言葉を続ける。

 

『でも・・・もういいわ・・・・・・終わりにする・・・・・・

 この子を亡くしてからの、暗鬱な時間を・・・・・・

 ・・・この子の身代わりの人形を、娘扱いするのも・・・・・・

 あなたの事よ、フェイト・・・

 アリシアにそっくりなのは見た目だけの・・・

 ちっとも使えない・・・私のお人形・・・・・・』

「・・・・・・そういう・・・事でしたか」

「美月さん・・・?」

(あ・・・しまった・・・・・・)

 

思わず漏らした呟きに、なのはさんが反応する。

クロノさんから聞かされた、なのはさんには内緒にしていた話・・・・・・

でも・・・今のプレシアさんの言葉で、薄々は理解しているんだろう・・・・・・

 

「美月さん、知ってるなら教えて・・・・・・

 あれは! どういう意味っ!?

「(今更、隠し通せそうには・・・ありませんね・・・)

 ・・・・・・・・・・・・例の事故の時・・・・・・

 プレシアさんは、一人娘アリシア・テスタロッサを亡くしているんです・・・

 その後彼女が行っていた研究は、人造生命の生成、そして死者の蘇生・・・

 そしてその研究の開発コードは―――

 “プロジェクト F.A.T.E.(フェイト)・・・・・・」

「・・・! そんな・・・・・・」

 

言外に告げる。

プレシアさんによって生み出された、

在りし日のアリシアの記憶を転写した人造生命、それが・・・彼女(フェイトさん)なのだと・・・

 

『そうよ、その通り・・・・・・

 ・・・だけど駄目ね・・・・・・ちっとも上手くいかなかった・・・・・・

 作り物の命は、所詮作り物・・・・・・

 失ったものの代わりにはならないわ・・・・・・』

 

こちらを、いや、フェイトさんを見やる。

 

『フェイト・・・・・・やっぱりあなたは・・・アリシアの偽者よ。

 せっかくあげたアリシアの記憶も・・・あなたじゃ駄目だった・・・・・・』

「やめて・・・もう、やめて・・・!」

 

なのはさんが呟く。

フェイトさんは目を見開いて震えるばかりだ。

 

『アリシアを蘇らせるまでの間に、私が慰みに使うだけのお人形・・・・・・

 ・・・だからあなたは、もういらないわ・・・・・・

 どこへなりと・・・消えなさいッッ!!

「お願い! もうやめてぇっ!!」

 

なのはさんの悲痛な叫びをよそに哄笑するプレシア・テスタロッサ・・・・・・

 

『アッハハハハ・・・・・・・・・・・・

 いい事を教えてあげるわ、フェイト・・・・・・』

 

この人はまだ・・・!

 

『あなたを作り出してからずっとね・・・・・・

 私はあなたが―――』

 

その言葉を言わせまいと思わず叫ぶ。

 

「もういいでしょう!

 これ以上なにを―――!!」

『―――大嫌いだったのよッ!!』

「―――ッ!!!」

 

崩れ落ちるフェイトさん。

 

「フェイトちゃん!」

 

なんて事を・・・この人は・・・!

私に身体があれば、モニターを睨み付けていただろうが、それはかなわない。

 

 

 

そんな中―――

 

「屋敷内に魔力反応、多数!!」

 

異変。

モニターに映し出される多数のモノ。

まるで西洋の飾り鎧のような人形(ヒトガタ)が、斧や大剣を手に手に湧き出てきていた。

 

「庭園敷地内に魔力反応、いずれもAクラス!

 総数60・・・80! まだ増えています!!」

「プレシア・テスタロッサ・・・いったい何をするつもり!?」

 

プレシアさんが、アリシアのカプセルを伴い歩き出す。

 

『私たちの旅を、邪魔されたくないのよ・・・

 私たちは旅立つ。忘れられた都、アルハザードへ・・・!!

 ・・・取り戻すのよ! 全てを!!!

 

その手にはジュエルシード。

9つのそれが、激しく輝き、直後激しい震動が艦を襲う。

 

「次元震です! 中規模以上!!」

「震動防御! ディストーションシールドを!!」

「ジュエルシード、9個発動! 次元震、さらに強くなります!!」

「転送可能距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動を!!」

「り、了解!」

「乱次係数拡大! このままだと、次元断層が!!」

 

全てを揺らす震動の中、ただ1人笑うプレシアさん。

 

『あっははははっははは―――

 私とアリシアは、アルハザードで全ての過去を取り戻す!!

 あっははっはは―――   アーハッハハハハ―――』

 

高らかに・・・彼女の声だけが響く・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      Side out

 

 

 

 

 

      第12話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「他者視点ばっかりだったな」

作者「だって、なのはとフェイトの勝負時に祐介視点だと、

   遠くから眺めてるだけだから臨場感に欠けるでしょ?」

祐介「本人視点でも臨場感ねーよ・・・・・・」

作者「・・・・・・ほ、ほら!

   アースラ以降は、祐介不在だから必然だし!!」

美月「初めての私視点! 活躍? これから先も活躍の予感?」

作者「いや、特にそんな予定は・・・祐介が倒れてる間の状況を

   後でちゃんと把握できる様にするための代理視点・・・かな?」

美月「・・・また思いつきですか?」

作者「割と初期から決まってたよ?

   この先、祐介が生きてると困るから」

祐介「物騒な事言った!? え、何!? 僕このまま死ぬの!?」

作者「冗談冗談。ちょっと倒れただけだから。すぐ出番あるから」

美月「ちゃんと復帰できるんですかねー・・・・・・」

 

 

 



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第13話 己が宿命受け入れて

 

 

 

「――― の事、頼んだよ・・・・・・」

 

そんな声を聞いたような気がした・・・・・・

ここは・・・どこだ・・・?

周りが揺れたような気もする・・・・・・

何だ・・・? 何が起こってる・・・?

夢半分の中、ふと、耳に届く音。

 

『次元震さらに増大! 次元断層発生まで、長くはかかりません!!』

「なぁっ!?」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第13話 己が宿命受け入れて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛び起きる。

ここは・・・・・・アースラの医務室か・・・?

あぁ、そうだ・・・・・・あの時、プレシアの攻撃で・・・・・・

あれからどうなった・・・?

 

「・・・美月」

「はい」

「今の状況は?」

「それが、かくかくしかじか・・・」

「それじゃ分からん」

「結構いろいろありましてねー」

 

倒れている間にあった事を、美月から聞かされる。

逮捕失敗で返り討ち。カプセル内のアリシア。

そして――― 真実を突きつけられたフェイト・・・

 

「そっか・・・そんな事が・・・・・・」

 

隣のベッドに眠るフェイトを見やる。

・・・相当ショックだったんだろうな・・・・・・

ずっと母親のために頑張ってきたはずなのに、それを一瞬で拒絶されたんだ・・・

 

  ズズゥンッ!!

 

また艦が揺れる。

 

「そうだ、次元震!

 なのは達は! 今どこに!!」

「現地に飛んでます。あ、ほらあそこに」

 

美月が機器を操作し、モニタを表示する。

そこに映っていたのは、なのは、ユーノ、そしてアルフさん。

なのは達はともかく・・・アルフさん、ご主人様の近くにいなくていいのかな・・・

 

あれ・・・? そういえば・・・・・・

 

「・・・なぁ・・・・・・ひょっとして、アルフさんにフェイトの事頼まれた・・・?」

「はい。出動される時に」

 

あぁやっぱり・・・・・・

夢うつつで、あんまり覚えてないけど。

アルフさんだって、フェイトの傍にいたかっただろうに・・・

 

 

 

「・・・う・・・・・・」

 

身じろぎする気配。

振り向く事無く声をかける。

 

「・・・起きたか?」

「・・・うん・・・・・・」

 

しばらく無言でモニタを見つめる。

 

 

 

「・・・身体は・・・・・・」

 

ぽつりと、フェイトが声を漏らす。

 

「身体は・・・大丈夫・・・?

 私たちを・・・護って・・・・・・」

「気にするな、ピンピンしてるよ。

 お前の方こそ・・・色々と・・・あったんだろ?」

 

振り返り、フェイトと顔を合わせる。

そこにあるのは、暗く沈み、たくさんの想いを抱え込んだような表情。

 

「・・・母さんは・・・最後まで私に微笑んでくれなかった・・・

 私が頑張ってこれたのは、母さんに認めて欲しかったから・・・・・・

 どんなに酷い事をされても・・・笑って欲しかったから・・・

 あんなにハッキリと捨てられた今でも・・・私・・・まだ母さんに縋り付いてる・・・」

 

モニタを見やるフェイト。

そこに映し出されている、彼女の使い魔。

 

「・・・アルフは・・・ずっと傍にいてくれた・・・・・・

 言う事を聞かない私に、きっと随分と悲しんで・・・・・・」

「・・・本気で心配してたな。

 本当に・・・お前の事が大好きなんだろ・・・」

 

振り返った彼女と目が合う。

 

「あなた達とも・・・何度もぶつかった・・・

 初めて・・・私と対等に、まっすぐ向き合ってくれた・・・

 何度も出会って、戦って・・・何度も、私の名前を呼んでくれた・・・」

「あぁ・・・そうだな・・・・・・

 特に、あいつは・・・なのはは頑固だ。

 決めた事は、とことん突き進む。手ごわいだろ?」

 

身体を起こそうとするフェイトを支えながら、少し笑ってやる。

他人に話す事で少しはすっきりしたようにも見えるが、

その表情には未だ悩みや葛藤が見て取れる。

 

「・・・生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらたいからだった・・・

 それ以外に、生きる意味なんか無いと思ってた・・・・・・

 それが出来なきゃ・・・生きていけないと思ってた・・・・・・

 それを・・・忘れる事なんて―――!」

「忘れる必要なんて無いと思うぞ」

 

その言葉に、フェイトが顔を上げる。

 

「これまでの事を忘れる必要は無いんだ。

 ・・・勝負の前に、なのはが言ってた事、覚えてるか?

  『捨てればいいって訳じゃない・・・・・・

   逃げればいいって訳じゃ、もっとない・・・・・・』

 これまでの事を捨てたり、逃げたりしちゃいけないんだ」

「・・・逃げたり・・・しない・・・・・・」

「ああ。過去は変えられないからな。

  『過去を忘れるつもりはない。過去に縛られるつもりもない。

   人生とは常に前へと進むものだから』

 これはウチの家訓なんだけどな。

 過去を受け入れて、その上で、未来を見なきゃいけないんだ。

 

 お前はこれまで母さんのために頑張ってきた。

 それは『過去』だ。それを忘れる必要は無い。

 そして、母さんに拒絶されたという『今』がある。

 後は・・・『未来』をどうするか、だ。

 

 フェイト・・・お前自身で、決めるんだ。

 始まりは、そこからだ・・・」

 

立ち上がったフェイトに、サイドテーブルに置いてあったバルディッシュを渡してやる。

手のひらを見つめるフェイト。

 

「私の・・・・・・

 私たちの全ては・・・まだ始まってもいない・・・?」

 

バルディッシュを起動させる。

デバイスは、至るところに罅が入り、ボロボロになっていた。

 

「そうなのかな、バルディッシュ・・・・・・

 私・・・まだ始まってもいなかったのかな・・・?」

 

その時、コアに光が灯り、ギシギシと音を立てながらヘッドを動かしつつ、声が返る。

 

「Get set.」

「!!」

 

こいつ・・・こんなボロボロになっても、それでも応えようと・・・・・・

フェイトがバルディッシュを抱きしめ、涙を流す。

 

「そうだよね・・・バルディッシュも、ずっと私の傍にいてくれたんだもんね・・・

 お前も・・・このまま終わるのなんて・・・嫌だよね・・・!」

「Yes sir.」

 

コアを明滅させ、力強く答えるバルディッシュ。

その声に、フェイトの表情も変わる。

 

・・・決めたみたいだな・・・・・・

魔力を込めバルディッシュを修復、さらにバリアジャケットを纏うフェイト。

 

「・・・行くのか・・・?」

「うん・・・・・・

 私たちの全ては、まだ始まってもいない・・・

 だから・・・本当の自分を、始めるために・・・!」

「そっか・・・・・・

 お前が自分で決めたなら、文句は無い。

 ただ・・・ひとつ頼みが」

 

そう言ってフェイトの前に立つ。

そしてバリアジャケットを展開。

 

「僕も連れてってくれ。

 1人だけ蚊帳の外ってのは嫌だし」

 

少し笑い、頷くフェイト。

 

さぁ・・・この騒動も終焉だ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これからどうするんですかー?」

 

転移後、フェイトをなのは達の方へと向かわせたはいいが・・・迷子になった・・・・・・

時の庭園とかいったっけ? 3人しか住んでないのに、何でこんなに無駄に広いんだよ・・・

次から次へと鎧のお化け(フェイトは傀儡兵(くぐつへい)とか言ってたっけ)は出てくるし。

 

振り下ろされる斧を身体を捻ってかわし、

その柄を踏み台にして跳躍、頭上からビームライフルを撃ち込む。

 

「どれだけ出てくるんだか・・・・・・」

 

かれこれ10体以上は潰したが、いつまでもこの場に留まっている訳にもいかない。

 

「・・・やっぱりオペレーターに訊くしかないかなぁ・・・・・・

 美月、エイミィさんに連絡を」

「はぁ・・・でもそうすると―――」

『ちょっと祐介くん!?

 何やってるのそんなとこで!!』

 

まぁ、やっぱり怒られるよなぁ・・・内緒で出てきたのはまずかったかな。

 

「か、勝手に現場に出たのはすみません・・・

 まぁそこには目を瞑ってもらってですね・・・・・・

 今、結構やばいんですよね。状況を教えてもらっていいですか?」

『はぁ・・・・・・でも確かに緊急事態なんだよね。

 現在、プレシアが発動させたジュエルシードによって、次元震が発生。

 ついでにその施設の駆動炉も暴走を始めて・・・

 それによって、今にも次元断層が発生しそうなの』

「なのは達は?」

『なのはちゃん、ユーノくん、アルフは駆動炉の封印に。

 クロノくんがプレシアの逮捕に向かってる』

「なのは達の方には、フェイトが向かってます。

 僕はクロノの方に合流しますから。ナビゲート、お願いできますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイミィさんの誘導で回廊をひた走る。

飛行するようになってから久しく使ってなかったランドスピナーも、

こういう狭い屋内では面目躍如だ。

正面から向かってきた傀儡兵の脇をビームサーベルを構え斬り抜ける。

振り向きざまに、追ってくる3体をハイパーバズーカで撃破。

 

「ったく! しつこいっての!!」

 

そのまま前に向き直り、再び疾走。

湧き出る鎧をビームライフルで打ち抜く。

 

「美月! クロノは!?」

「確かこの辺・・・あ! いました!」

 

見回すと、下の階にクロノを見つけた。

すっげー・・・誘導弾1つで5、6体を相手取ってるよ・・・・・・

 

「あっ・・・!」

 

その背後に、5m程の大きめの傀儡兵が迫っているのに気づく。

 

「クロノ!!」

 

咄嗟に飛び降りた。

顕現させる『MMI-710』。身の丈ほどもある巨大な片刃の長剣。

両手で振りかぶり、刃部分に魔力刃を発生させ、振り下ろす。

 

「でりゃあぁぁぁッッ!!!」

 

一刀両断。真っ二つになって崩れ落ちる鎧を背に、軽く手を挙げる。

 

「よっ、クロノ」

「よっ、じゃない! 何なんだお前は!!

 アースラにいたはずだろう! 何でいきなり出てくる!!」

「目覚めたのに留守番なんてつまらないしな。

 そう怒るなよ、助けてやったんだし」

 

まぁクロノなら放っといても大丈夫だっただろうけど。

 

「結構やばい状況で人手不足なんだろ。

 せっかくここまで来たんだ。手伝わせてくれよ。

 ・・・ほら、次のお客さんだ」

 

通路の奥から、傀儡兵の集団が向かってくる。

大剣をメガ・バズーカ・ランチャーに持ち換え、そちらに向ける。

 

「プレシアの逮捕は局の仕事だ。

 ここは1人でいい。

 なのは達の援護に向かってくれ!」

「そっちはフェイトが向かったよ。

 まぁそう邪険にするな。

 逮捕するって大仕事があるんなら、なおさら元気な人に露払いは任せなって」

「そうですよー。執務官どのは、力を温存しておいて下さいな」

 

背後で吐かれるため息を聞きながら、緑銀の砲撃をぶっ放した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく・・・滅茶苦茶なやつめ・・・・・・」

「そう言うな―――よッ!!」

 

ぼやくクロノと並んで通路を奥へと走る。

姿を現す傀儡兵にビームライフルを撃ちこみ沈黙させる。

 

「世界規模の災害が起きそうだって時に、戦力の出し惜しみは良くないぞ」

「そういう問題じゃないだろう・・・

 エイミィ! 状況は!」

『なのはちゃんとユーノくん、駆動炉へ突入!

 フェイトちゃんとアルフは最下層へ!

 ・・・大丈夫。いけるよ、きっと』

「あぁ!」

「順調だな・・・このまま行けば・・・ッ!!」

 

前方にまた新手。

正面から迫ってくる相手に0式レールガンを連射し、体勢を崩す。

そのまま突撃し、すれ違いざまにビームサーベルを一閃。

崩れ落ちる傀儡兵を眺め、一息つく。

 

「しっかし何体いるんだよ、この鎧お化け・・・・・・」

「さぁ・・・・・・

 でも、これだけの数を運用しているプレシアさんも、結構な化け物ですよねー」

「それはそうと・・・そこらへんのアレって何だ?」

 

屋敷のあちこちに入った亀裂。

そこから覗いているのは、暗い・・・宇宙にも見える空間?のようなもの。

 

「虚数空間だ。気を付けろ。

 あの中では全ての魔法はキャンセルされる。

 落ちれば、二度と上がっては来られないぞ」

「マジか・・・怖いなそりゃ・・・」

 

その時、激しく屋敷を震わせていた震動が、ふいに弱まった。

 

「・・・なんか急に揺れが弱くなったか・・・?」

「恐らく艦長だろう。ディストーションシールドで次元震を低減させているんだ」

「リンディさんも凄いんだな・・・」

「無論、屋敷全体を抑えるには、アースラからの魔力供給は必要だが、

 それを制御するには、それなりの技術は必要さ・・・・・・

 

 ――― 着いたぞ・・・ここだ」

 

目の前には扉。

この向こうがプレシアさんの居る部屋らしい。

扉を蹴り開け、踏み入った瞬間―――

 

「っ!!?」

 

突然後ろから蹴り飛ばされ前方に転がり込む。

慌てて振り返ると・・・そこには瓦礫の山。

 

「クロノ!?」

「祐介! 大丈夫か!?」

「大丈夫だ! 助かった!」

「すぐに迂回する! いいか! それまで余計な事をするな!」

 

瓦礫の向こうで遠ざかる足音。

――― 余計な事するなって言われてもな・・・

 

部屋の前方に目を向ける。

広大な空間。20m程離れた所に、彼女の姿はあった。

アリシアのカプセルと、その傍らにプレシア。

手にはジュエルシード。それを使われたらマズい事になる。

・・・・・・黙って見てる場合じゃない・・・時間くらいは、稼がないと・・・

 

 

 

 

 

歩を進め、彼女と相対する。

先に口を開いたのは、あちらだった。

 

「・・・何の用?」

「もちろん、あなたを止めに。

 プレシア・テスタロッサ、投降して下さい」

「私たちの旅立ちを邪魔すると言うの・・・

 何の権利があって?」

「そうですね・・・

 普通に旅立つだけなら、それを止める権利はありません。

 でも、旅立ちの代償が普通じゃない。

 逆に聞きますけど、何の権利があって世界を滅ぼすと?」

「アッハッハッハ!

 それこそ権利なんて必要なのかしら。

 アリシアを取り戻す以上に重要な事があるとでも!?

「アリシアの事については、僕にはどうこう言えません。

 何て言ったらいいかも分かりません。

 でも・・・あなたのしようとしてる事を見過ごすわけにはいきません。

 

 ――― 僕も子供なんですよ・・・

 だから! 我儘を言うくらいしかない!

 迷惑なんですよ!

 そっちの勝手な都合で、僕の生活を破壊するなッ!!

「あなたに何が分かると言うの!!」

「分かりませんよ!! 我儘だって言ってるでしょう!!」

 

お互いに譲れないもの・・・

視線がぶつかり合う。

 

「・・・どうしても、止めようと言うのね」

 

杖(デバイスだろう)をこちらに向けるプレシアさん。

 

「・・・どうしても、です」

 

こちらもビームライフルの銃口を向ける。

 

「・・・邪魔はさせないわ・・・・・・

 私は取り戻す・・・私とアリシアの・・・過去と未来を・・・!

 ・・・取り戻すの・・・こんなはずじゃなかった・・・世界の全てを!!

「心中お察しします、とは言いませんよ・・・

 でも、その悲しみに、無関係な人間まで巻き込んでいい権利なんて――― ん?」

 

上階を見上げると、フェイトとアルフさん、そしてクロノがすぐ傍に飛び降りてくる。

 

・・・ここまで、かな。

さっきは声を荒げてしまったが、元々の目的はクロノが来るまでの時間稼ぎだ。

もちろん本音ではあったけども。

武器を向け合う僕たちに驚いていたフェイトだったが、

僕が銃口を下ろし、数歩下がるのを見て安心したようだ。

黙って親指を立てる。それに、少し笑って頷くフェイト。

その瞳には、確かな意思。

そっか・・・向き合う覚悟、したんだな・・・・・・

 

 

 

 

 

足を踏み出すフェイト。

 

「・・・何を、しに来たの・・・!」

 

静かな、しかし強い語調で睨み付けられ、数歩進んだところで足を止める。

 

「・・・消えなさい・・・・・・

 もうあなたに、用は無いわ・・・・・・」

「・・・あなたに・・・言いたい事があって来ました・・・・・・」

 

後ろからでは顔は見えないが、はっきりと、決意を込めた声で話しかけるフェイト。

 

「私は・・・アリシア・テスタロッサじゃありません・・・・・・

 ただの失敗作で・・・偽物なのかもしれません・・・・・・

 だけど、私は・・・フェイト・テスタロッサは・・・

 あなたに生み出してもらって、育ててもらった・・・あなたの娘です・・・!

 今までずっと・・・今もきっと・・・!

 母さんに笑ってほしい・・・幸せになってほしいって気持ちだけは・・・・・・

 私の、フェイト・テスタロッサの・・・本当の気持ちです・・・・・・」

「・・・・・・だから何・・・・・・

 ・・・今更あなたを、娘と思えと言うの」

「・・・あなたが・・・・・・それを望むなら・・・・・・」

 

プレシアに向かって手を差し伸べる。

 

「それを望むなら・・・私は・・・

 世界中の誰からも、どんな出来事からも・・・あなたを護る・・・・・・

 私が・・・あなたの娘だからじゃない・・・・・・

 あなたが・・・私の母さんだから!!」

 

宣言。

それは、フェイト・テスタロッサの・・・・・・

これまでの自分を受け入れた上で、これからに進む事を決めたフェイトの・・・心の声。

 

「・・・くだらないわ・・・・・・」

「なっ・・・何ぃ!?」

 

返るのは否定。完全な拒絶。

その言葉に愕然とした。

 

「なんで!? なんでそこまで拒絶するんですかッ!!!」

 

口を出すまいとしていたが、思わず叫ぶ。

ここまで言われて・・・この状況で・・・それでも受け入れないってのか!? この人は!!

 

プレシアの足元に魔法陣が展開される。

輝きを増すジュエルシード。

 

「おわッ!?」

「ジュエルシード、エネルギー開放寸前です!!」

 

屋敷を襲う震動が大きさを増す。

 

『艦長、駄目です! 庭園が崩れます!! 戻って下さい!!

 この規模の崩壊なら、次元断層は起こりませんから!!

 クロノくん達も早くッ!!!』

「了解した!

 ・・・脱出するぞ! 祐介! フェイト! アルフ!」

 

エイミィさんの警告に、撤退指示を出すクロノ。

しかし、まだフェイトは動かない。

 

「フェイト!」

「フェイト! 急ぐぞ!!」

「でも・・・! 母さんッ!!」

 

アリシアの傍らのプレシアも動かない。

揺れはさらに激しさを増し、亀裂からは虚数空間が覗いている。

 

「私は行くわ・・・・・・

 アリシアと一緒に・・・アルハザードへ・・・・・・」

「母さん・・・・・・」

 

フェイトの声に背を向け、呟くプレシア。

ついにその足元も崩れ始める。

 

「・・・言ったでしょう・・・・・・

 私はあなたが・・・大嫌いだって・・・・・・

 これは私とアリシアの旅・・・・・・

 だからこそ―――」

「!!!」

 

崩壊する足場。

プレシアとアリシアが落下する!

 

「母さんッッ!!!」

「駄目だフェイトッ!!」

 

追って飛び降りようとするフェイトを、後ろから飛びついて押し倒す。

そのままの体勢で、彼女の視線の先を追うと、そこには・・・・・・

次元の狭間へと落ちて行く・・・プレシアとアリシアの姿。

 

「アリ・・・シア・・・・・・母・・・さん・・・・・・」

「フェイト・・・・・・」

 

かける言葉が見つからない中、ますます激しくなる震動。

 

「祐介! フェイトさんを連れて早く脱出をッ!!」

 

叫ぶ美月。

時の庭園は・・・崩壊しようとしていた・・・・・・

 

 

 

 

 

      第13話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「う~ん・・・・・・」

祐介「どうしたよ?」

作者「結構いいシーンだったはずなのに・・・

   祐介が出てくると全然グッとこないな」

祐介「お前が書いてると、の間違いじゃないのか」

美月「文才の無さは、今に始まった事じゃないんですから・・・

   それより機鋼復習やりますよー」

祐介「おぉ・・・忘れてた。

   あのデッカイ剣な。『MMI-710』とかいったっけ?」

作者「ZGMF-X56S/β ソードインパルスガンダムの装備、

   『MMI-710 エクスカリバー レーザー対艦刀』です。

   今回は1基しか出してないので、アンビデクストラスフォームでは使いませんでしたね」

祐介「そのアンなんちゃらフォームってのは・・・」

作者「エクスカリバー2基を連結した両刃刀形態で―――」

美月「あー、おそらく使わない設定は説明しなくていいですから。

   次回はついに、事件終了! になるはず・・・本当でしょうか・・・・・・」

 

作者「新機鋼、エクスカリバーとアロンダイト、どっちにしようか悩んだんだけど―――」

祐介「しつこい!!」

 

 

 



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第14話 終演、そして未来へ

 

崩壊する屋敷。

 

『お願いみんな! 脱出急いでッ!!』

 

エイミィさんの声が響く。

周囲はほとんど崩れ落ち、虚数空間に飲み込まれつつあった。

 

「・・・行くぞフェイト」

 

いつまでもここに留まってる訳にはいかない。

アルフさんは・・・クロノの近くか。

フェイトを立たせ、先に歩き出す。

 

「フェイトちゃん! 祐介くん! クロノくん!」

「なのは!?」

 

天井を撃ち抜く桜色の砲撃。なのはが降下してきていた。

全くこいつは・・・この状況で、こんな深層にまで来るなんて・・・・・・

降り立ったなのはに走り寄る。

 

「お前無茶しすぎだろ・・・・・・」

「だって建物崩れてるし、祐介くん達だってまだ脱出してないっていうから!」

「ああ、今から出るよ。

 全く・・・お前だって結構あっちこっち怪我してるじゃ―――おっと!!?」

 

ひときわ激しい震動。

もうこのフロアも限界が近いな・・・・・・

 

「フェイトちゃんッッ!!」

 

なのはの叫びに振り返ると・・・・・・

 

 

 

そこには・・・僕たちを隔てる亀裂があった。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第14話 終演、そして未来へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイトッ!! 何やってんだお前ッ!!」

 

僕たちとフェイトとの間に走る亀裂。

その向こうで立ち尽くし、俯いている彼女。

 

(くそっ、なんでついて来てないんだよ!?)

 

ちゃんと手を引いて連れてくるべきだったと、今更ながらに後悔する。

 

「フェイトちゃんッ!! 早くこっちに!!」

「早くしろ! 崩れるぞ!!」

 

僕たちの言葉にも、フェイトはまだ動かない。

その足場が沈下を始め、距離が開き始める。

 

「くッ・・・! 美月ッ! ワイヤー伸ばせ!!」

「駄目です! 既に虚数空間の影響範囲内に入りかけてます!

 防護服等の維持で手一杯です!! 放出系魔法はキャンセルされます!!」

「フェイトちゃん! 手を伸ばして!!」

 

ようやく顔を上げ、こちらに手を伸ばしかけるが、すぐにその手が下りる。

 

「でも・・・母さんも・・・アリシアも・・・もう・・・・・・

 私は・・・・・・」

「この馬鹿ッ!!!」

 

叫ぶ。

 

「“これまで”を受け入れて・・・

 “これから”を見るって決めたんだろ!!

 逃げるな!! 自分で未来を閉ざすなッ!!」

「フェイトちゃん!! 跳んで!!!」

 

ここまで来て・・・死なせてたまるか・・・!!

フェイト・・・誰も、お前が死ぬ事なんて望んでない!!

僕だって、なのはだって、アルフさんだって、アースラのみんなだって!!

――― プレシアさんだって・・・!

 

「・・・・・・っ!!」

 

彼女は顔を上げる。

ゆっくりと上げられる手。

 

 

 

そして、足場が崩壊する。

僕の右手と、なのはの左手は・・・・・・

 

しっかりと、フェイトの両の手を握っていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、えらい目にあったな」

「ほんとですよー。

 皆さん軽傷でよかったですねー」

 

時の庭園崩壊後。

僕たちはアースラの医務室に叩き込まれていた。

 

「勝手に飛び出すからだ。

 アースラで待機していれば、そんな目にもあわなかったんだ。

 おまけに、大人しくしていろと言ったのに単独で先行しただろう」

 

エイミィさんに包帯を巻かれながら、クロノがため息をつく。

もうその話はいいじゃんかよぅ・・・・・・

 

「・・・あれ? フェイトちゃんは?」

 

同じく治療されていたなのはが声をあげる。

 

「アルフと一緒に護送室だ。

 彼女はこの事件の重要参考人だからね。

 申し訳ないが、しばらく隔離になる」

「そんなッ! あいたたた・・・!」

「なのは、じっとして!」

 

思わず立ち上がるなのはだったが、治療していたユーノに窘められた。

 

「今回の事件は、一歩間違えば次元断層さえ引き起こしかねなかった、重大な事件だ。

 時空管理局としては、関係者の処遇には、慎重にならざるを得ない。

 それは分かるね・・・・・・」

「・・・うん・・・・・・」

「分かる・・・けどさ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・くっ・・・ぷくくく・・・・・・

 すまん・・・緊張感が・・・っ」

 

・・・笑いを堪えられない。

クロノは真面目に話しているのだが・・・

その頭の包帯は・・・エイミィさんの手によって、リボン型に結ばれていた・・・・・・

 

「・・・・・・エイミィ。やり直し」

「え~・・・かわいいのに・・・・・・」

 

ため息を一つ。遊ばれてるなぁ。

まぁ・・・緊張感はともかく、フェイトが拘束されるのは当たり前で仕方の無い事だろう。

それは分かってる。なんせ事件の規模が規模だ。

でも・・・このままって事は無い・・・よな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

次元震の余波も収まりを見せ始め、事件は収束へ向かっていた。

 

「今回の事件解決について大きな功績があったものとして、

 ここに、略式ではありますが、その功績をたたえ・・・・・・」

 

そんな感じで感謝状を貰ってしまったりもした。

 

 

 

部屋を出て、廊下を歩く僕たち。

ふと、なのはがクロノに尋ねる。

 

「クロノくん。フェイトちゃんは・・・これから、どうなるの・・・?」

「事情があったとはいえ、彼女が次元干渉犯罪の一端を担っていたのは事実だ。

 重罪だからね・・・数百年以上の幽閉が普通なんだが・・・」

「そんなッ!!」

「それはあんまりだろ!?」

「―――なんだが!!」

 

思わず食って掛かる僕となのはだったが、それを遮るクロノ。

振り返り言葉を続ける。

 

「状況が特殊だし、彼女が自らの意思で次元犯罪に加担していなかった事もはっきりしている。

 後は偉い人たちに、その事実をどう理解させるかなんだけど・・・・・・

 ・・・その辺には、ちょっと自信がある。心配しなくていい」

「クロノくん・・・・・・」

「何も知らされず、ただ母親の願いを叶えるために一所懸命だった子を

 罪に問うほど、時空管理局は冷徹な集団ではないよ」

「そっか・・・少し安心した。

 その辺りはクロノに任せるよ」

 

なのはに、優しいとか言われて照れまくってるクロノ。

執務官として当然だとか言ってごまかしてるが・・・そんな照れなくてもいいだろう。

なんだかんだ言って、やっぱいい奴なんだよなぁ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、なのはとユーノと食堂で食事をしていた時。

ちょうど一緒になったリンディさんから、プレシアの話が出た。

 

「あの人が目指してた、アルハザードって場所・・・ユーノくんは知ってるわよね」

「はい、聞いた事があります・・・旧暦以前、前世紀に存在していた空間で、

 今はもう失われた秘術が幾つも眠る土地だって・・・・・・」

「だけど、とっくの昔に次元断層に落ちて滅んだって言われてる」

「クロノ・・・」

 

いつの間に来てたんだよ・・・エイミィさんも。

 

「あらゆる魔法の究極の姿、叶わぬ望みは無いとさえ言われた、アルハザードの秘術・・・

 時間と空間を遡り、過去さえ書き換える事ができる魔法・・・

 失われた命をもう一度蘇らせる魔法・・・彼女はそれを求めたのね・・・・・・」

「だが、魔法を学ぶ者なら誰でも知っている・・・

 過去を遡る事も、死者を蘇らせる事も、決してできない・・・

 だから彼女は、御伽噺に等しいような伝承にしか・・・頼らざるを得なかった・・・・・・」

「でも、あれだけの大魔導師が、自分の命さえ懸けて探してたんだから・・・

 彼女はもしかして、本当に見つけたのかもしれないわ・・・アルハザードへの道を・・・・・・

 あなた達はどう思う?」

「え、え? ど、どうだろう・・・祐介くんは?」

 

突然振られたなのはが困惑気味にこっちを見る。

 

「・・・正直な所、そのアルハザードが在るか無いかは、何とも言えないからなぁ・・・・・・」

「まさに悪魔の証明って感じですよねー」

「? 祐介くん、悪魔の証明って何?」

「大雑把に言うと・・・

 ある事柄について『それは絶対にない』って事を証明するのは、かなり難しいって話。

 今回の場合だと・・・アルハザードは現在確認されてないケド、

 だからって、アルハザードが存在しないという証明にはならないって事だ」

「存在はしてるけど発見されてないだけの可能性がありますからねー」

 

アルハザードが実在するにせよしないにせよ、プレシアさんはそれを命懸けで目指した。

その行為は、現実から目を背けた逃避だったのか。彼女は伝説に縋る狂人だったのか。

 

「・・・あの人は、そこまで狂ってた訳じゃないと思うんだよな・・・・・・」

「どういう事だ、祐介」

 

僕の呟きに、クロノが声を返す。

 

「いや、プレシアさんが落ちて行く時にな・・・・・・」

 

そう言って、僕はあの時の事を思い出していた。

 

 

 

   あの時・・・プレシアさんはフェイトを拒絶した。

   崩れる足場。落下していくプレシアさん。

 

   「これは私とアリシアの旅・・・・・・

    だからこそ―――」

 

   その言葉の続きを、僕は確かに聞いた。

   こちらに視線を向け、確かに発せられた念話。

 

   《だからこそ・・・偽物を連れて行く気はないわ・・・・・・

    その人形は・・・あなた達の好きにすればいい・・・・・・》

 

 

 

「勝手な希望だけどさ・・・

 あれは、『フェイトまで道連れにはできない。その子の事は頼む』って

 意味だったのかもしれないと思ったんだ。

 いや、むしろそうであってほしいなぁ、と・・・」

「祐介くん・・・・・・

 うん、きっとそうだよ! フェイトちゃんの事、ちゃんと心配してたんだよ」

「今となっては、プレシアの真意を知る事はできない。

 だが・・・そうであったなら、尚のこと今回の件、上手く始末してみせるさ」

 

さっすがクロノ。

 

「ありがとうクロノくん!」

「頼りにしてるぞ。執務官殿。やっぱいい奴だなー、お前は」

「う、うるさい! 執務官として当然の事だ!

 それより! 君たちの世界へだが、明日には到着する。

 ・・・色々あったが、これで君たちの役目も終わりだ。

 恐らく、アースラでの最後の食事になるだろう」

「お別れが寂しいなら、そう言えばいいのにー」

「エ、エイミィ!」

「なのはちゃんも祐介くんも、いつでも遊びに来てくれていいんだからねー」

「ありがとうございますエイミィさん!」

「エイミィ! アースラは遊び場じゃないんだぞ!」

「まぁまぁ、いいじゃない。

 どうせ巡航任務中は暇を持て余してるんだし」

「か、艦長まで!」

 

そっか・・・もうアースラともお別れなんだな。

まぁ仮にも公的機関の艦なんだから、遊びに来るのは自重するが・・・

みんなとはまた会いたいもんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、ついにアースラを発つ時が来た。

ホールには、リンディさん、クロノ、エイミィさんが見送りに来てくれた。

 

「それじゃ・・・今回は、本当にありがとう」

「協力に感謝する」

 

なのははリンディさんと、僕はクロノと握手を交わす。

 

「お世話になりました」

「フェイトの処遇は、決まり次第連絡する。

 大丈夫さ。決して悪いようにはしない」

「うん、ありがとうクロノくん」

「頼むな」

「ユーノくんも、帰りたくなったら連絡してね。

 ゲートを使わせてあげる」

「はい、ありがとうございます」

 

リンディさんに答えるフェレット。

そう、ユーノはフェレット状態でなのはの肩の上にいた。

帰りの航路がまだ安定していないので、しばらくはこれまで通り、なのはの世話になるそうだ。

 

機器を操作していたエイミィさんが声を上げる。

 

「・・・じゃあ、そろそろいいかな?」

「あ、はい!」「お願いします」

 

転送ポートが起動する。

 

「それじゃ」

「またね! クロノくん、エイミィさん、リンディさん!」

 

手を振る3人に見送られ、僕たちは転移された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・帰って来た、か・・・・・・」

「・・・ですねー」

 

そこは海鳴臨海公園。

・・・・・・なんか気が抜けた。

燃え尽き・・・てはいないが、妙な寂しさがある。しかし、やりきった感はあった。

数瞬ぼーっとしていたなのはも笑顔を浮かべる。

 

「・・・帰ろっか!」

「・・・そうだな」

 

走り出す。それぞれの帰る場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー、っと」

 

いつも通りにドアを開ける。

一回帰ったとはいえ、なんだかんだで結構家を空けてたな・・・・・・

ありゃ、靴がある。母さんも姉さんも在宅でしたか。

まぁ帰って誰もいないよりはいいか。

廊下を歩き、リビングのドアを開けようとする。

ん? なんかリビングが騒がし―――

 

  バタンッッ!!「のわあぁっっ!?」

 

突然ドアが開けられ、すさまじい勢いで何かが突進して来た。

そのままの勢いで吹っ飛ばされ、尻餅をつく。痛い・・・

胸に飛び込んできたものの正体は・・・・・・

 

「・・・何してんの姉さん・・・・・・」

「・・・・・・おかえり」

 

縋りついたまま声を漏らす。

心配したのは分かるけど、そこまで思い詰めんでも・・・・・・

とりあえず、頭を撫でながら声をかける。

 

「ほら、ちゃんと無事に帰って来たから。

 約束・・・守っただろ?」

 

胸に顔を埋めたまま頷く姉さん。

 

「おかえりー」

「あ、ただいま、母さん」

「・・・なーにやってんの、あんた達」

「・・・何だろう?」

「まーったく、この子は・・・ほら咲、しゃっきりする!」

 

母さんが姉さんを引っぺがす。

 

「あー! もう少しー!」

「いや姉さん、少しは自重しような・・・・・・」

「そうだよ、祐介も今日は疲れてるだろうから、愛でるのは明日からにしな」

「そういう問題でもない!!」

 

なんか嬉しいな。これぞ日常。

 

しばらく騒いだ後、母さんが訊いてくる。

 

「で? 色々と、問題は片付いた・・・?」

 

その問いに・・・親指を立て、笑顔で頷いてやった。

 

 

 

今回は大きな事件に関わった。でもそれは終わり、いつもの場所に帰ってきた。

・・・ただ、一つ気がかりだったのは、やっぱりフェイトの事だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

けたたましく鳴り響く携帯電話に叩き起こされる。

 

「・・・何だぁ・・・朝っぱらから・・・・・・」

 

寝ぼけ眼で通知者を見ると・・・そこには『時空管理局』の文字。

慌てて電話に出る。

 

「もしもし、祐介です」

「あぁ祐介、クロノだ」

「おー久しぶり、って程でもないか。どうしたんだ?」

「とりあえず今後の動向が決まったからな。連絡しておこうと思ったんだ。

 フェイトの身柄は本局に移動。その後、事情聴取と裁判が行われる。

 まぁ任せておけ。必ず無罪にしてみせるさ」

「ああ、任せた。頼りにしてるぞ」

「それでだな・・・これから出てこれるか?」

「??」

 

 

 

 

 

電話を切った後、急いで家を出る。

 

「フェイトさん来るんですか?」

「ああ・・・移動の前に、なのはと僕に会いたいって言ってるそうだ」

 

やっぱり心配だったからな。少しでも時間を作ってくれたリンディさんやクロノに感謝だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って臨海公園に辿り着く。

ベンチにクロノ達の姿を見つける。

 

「おいっすクロノ。アルフさんも、久しぶり」

「久しぶり。今回は・・・あたし達の事で、色々と世話になったね」

「いや、結局、やりたいように好き勝手やったようなものだったし。

 ・・・フェイトは?」

「ああ、あそこだ」

 

クロノの指差す先、少し離れた所に、なのはとフェイトの姿があった。

あ、こっちに気づいた。なのはが手を振って招く。

 

 

 

 

 

2人に走り寄る。

軽く手を上げて声をかける。

 

「フェイト。久しぶり。元気だったか?」

「うん・・・大丈夫」

「話、ちゃんとできたか?」

「うん・・・・・・

 なのはとも・・・友達に・・・なれた・・・・・・」

「そうか・・・

 で、何でなのはは泣いてんだよ・・・」

「だ、だってぇ~」

 

まぁ気持ちは分からんでもないけどな。

やっと、ゆっくり話ができたんだ。僕だってそれはうれしい。

 

なのはの頭を抱いていたフェイトが、こちらに向き直る。

 

「あなたにも・・・色々と迷惑をかけた・・・・・・

 なのはと一緒に、心配してくれたのに・・・・・・」

「気にするなって。自分のしたい事をしただけだからな。

 友達が悩んでるなら力になりたいのは当然・・・ん?」

 

何か忘れてるような・・・・・・

 

「・・・ああぁっっ!!」

「な、何!?」

 

突然叫ぶ僕に、驚きの声を上げるなのは。フェイトも同様にびっくりしてる。

 

「肝心な事を言うのを忘れてた・・・・・・

 なのはが先に言ってたもんだから、すっかりその気になってたけど・・・

 これが一番大事だった」

 

そう言って、右手をフェイトの方に差し出す。

 

「僕は祐介。神代祐介だ。

 フェイト。僕と、友達になってくれないか」

 

そう。これを最初に言うのを忘れてたんだ。

寂しそうな顔や悲しい顔を見たくなかったのは、心配だったから。友達になりたかったから。

色々考え過ぎて、その考えに行き着くのに、回り道ばっかりだったな。

 

返るは笑顔。

そして手と手が握られる。

 

「ありがとう・・・祐介。

 私は・・・これからも頑張れる。

 なのはと友達になって・・・祐介と友達になって・・・

 “これまで” を忘れずに・・・そして “これから” を・・・生きていける」

「ああ・・・・・・

 時間は・・・前に進むからな・・・・・・

 みんな・・・未来へ向かうんだ・・・・・・」

 

3人とも、目に浮かぶは涙。

くそぅ、そんなに涙もろいつもりはなかったんだけどな・・・・・・

でも、その涙は悲しみじゃない。喜び、嬉し泣きだ。

涙は見せても、そこには晴れやかな笑顔があった。

 

 

 

 

 

「時間だ。そろそろいいか」

 

クロノか。流石にここで、空気を読んでくれと言うつもりはない。

わざわざ時間を作ってくれたんだ。感謝こそすれ文句は無い。

 

「ああ、サンキュな、時間作ってくれて」

「あっ! 待って!!」

 

なのはが声を上げ、髪のリボンを解き、フェイトに差し出す。

 

「思い出に出来るもの・・・こんなのしかないけど・・・・・・」

「じゃあ・・・私も・・・・・・」

 

フェイトも髪を解き、リボンが交換される。

 

「ありがとう・・・なのは・・・祐介。

 きっとまた・・・・・・」

「うん・・・きっと・・・・・・」

「ああ、きっとな・・・・・・」

 

ポンッと、なのはの肩にユーノが乗せられる。アルフさんか。

 

「アルフさんも、お元気で」

「ああ、色々とありがとね。なのは、祐介、ユーノ」

「クロノも、またな。元気でやれよ」

「ああ」

 

転移の魔法陣が展開される。

 

またな、クロノ。

お元気で、アルフさん。

きっとまた会えるからな、フェイト・・・・・・

 

手を振り見送る。そして・・・・・・

3人は消えていった。

 

 

 

 

 

「行ったか・・・・・・」

「うん・・・・・・」

 

しばらく彼らの去った場所を見つめていたが、気を取り直して歩き出す。

 

「さ、行くぞ、なのは」

「・・・うん!」

 

 

 

 

 

こうして、ひょんな事から参加するはめになってしまった、一つの舞台は幕を閉じる。

 

そして、僕たちは歩き出す。それぞれの未来へと。

その道は、いつかまた交わるだろう。

 

その時まで・・・しばらくのさよならだ。必ず・・・また会えるから。

 

 

 

 

 

      第14話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「お、終わった・・・・・・」

祐介「お疲れー。リリカルなのはMC、これにて完!」

作者「終わってたまるか!! まだ1期が終わっただけじゃん!!」

美月「まだ続けるつもりなんですかー?」

作者「妄想は続く! まだ続くよ!!」

祐介「大丈夫かなぁ・・・・・・」

作者「次は、オリジナルな話! 祐介の過去が明らかに! なるといいなぁ」

美月「ホントに大丈夫ですかねー」

 

 

 



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(ちょっと)幕間
第15話 父の回顧録


 

 

 

「祐介、そっち持って」

「あいよ」

 

姉さんと、カラーボックスを持ち上げる。

朝から働き通しだな。

 

「なーんでこのクソ暑い中、こんな事しなきゃいけないんだか」

「私が聞きたいわよ・・・・・・」

 

うんざりした顔で、姉さんが答える。

 

時は夏休み。

普通なら、この類のイベントは年末にやるのが正しいような気がするが。

 

そう、神代家は・・・大掃除を実施していた。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第15話 父の回顧録

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく・・・母さんの思い付きには困る・・・・・・」

 

押入れの物を引っ張り出す。

うへぇ・・・埃かぶってるなぁ・・・・・・

 

《今朝いきなりでしたもんねー。

 いったい何処から思い立ったのやら》

《唐突すぎるんだよな。この真夏にやることないだろうに・・・・・・》

 

愚痴りつつも、埃を拭いた物品を、掃除機をかけた押入れに戻していく。

と、その時、妙な感覚があった。

 

「・・・何だ?」

 

長さ60cm程の黒いケース。そんなに重くはないが、結構頑丈そうだ。

上部に貼られたシールには『誠』の文字。

・・・え、これ、父さんの・・・?

 

《祐介、祐介! シールの下! 見てください!》

 

下って・・・そこには変な刻印が記されているだけだ。

・・・・・・あれ? 読めないけど、この書体、どっかで見たような気が・・・・・・

 

《これ・・・ユーノさんやフェイトさんの世界の文字なんじゃ・・・・・・》

《それだ!! アースラで見た字!!

 ・・・いやちょっと待て! 何で父さんの私物に、こんな文字が・・・・・・》

《しかもこのケース・・・魔力で施錠されてますけど・・・・・・》

《なんなんだよ、これ・・・・・・》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

ベッドの上には、昼間の謎ケース。

あれから母さんに聞いてみたが、このケースは父さんの遺品整理の時に

出てきたものの、鍵が開かないので放置したまま忘れてたらしい。

 

「あっちの世界の文字に、魔力による鍵・・・か」

「この状況だけ見ると・・・答えは予想できますけどねー」

「やっぱそうだよなぁ・・・・・・」

 

それを確かめるためにも・・・・・・

 

「・・・とりあえず、開けてみるか?」

「ですねー。施錠と言っても、ほんの少し魔力を流せば開くみたいですし」

「こっちじゃ魔力もってる人なんて、そうそういないしな。

 複雑な術式もいらないと思ったんじゃないか」

 

言いながら、錠に魔力を流す。

パチンと音がして錠が跳ね上がり、ケースの蓋が持ち上がった。

 

「・・・・・・杖?」

 

だいたい長さ40cmくらいだろうか、質素なステッキ。

先端に小さな青い宝石があしらってある。

 

「これって・・・・・・」

「デバイス・・・ですかね」

 

やっぱりそうか。

これが父さんのデバイスだとしたら・・・父さんは魔導師だった可能性が高い。

まぁ誰か他の人のデバイスを預かっていた可能性もあるけど・・・・・・

いずれにせよ、父さんが魔法と関わりを持っていたのは確かだと思う。

 

デバイスを調べてみる。

これといって特殊な物でもなさそうだ。

(教えてもらった)ストレージデバイスってやつかな。

 

「何かの魔法の術式が残ってるんだけど・・・ロックされてるなコレ。

 後は・・・妙な物はこれといって無いかなぁ・・・・・・」

「祐介。これ、メッセージが記録されてますよ」

 

ホントだ。デバイスにメッセージデータが残されていた。

 

少し迷うが、意を決して再生することにする。

 

 

 

『―――― 万一に備えて、これを残す事にする』

 

映し出される男性。父さんだった。

 

『願わくば、家族に危機など迫らぬ事を・・・・・・

 だが、俺に何かあった時のために、我が息子、祐介に伝えなければならない事を残しておく。

 母さんを大事にしてるか? 姉さんと仲良くやってるか? 俺は心配だよ』

 

・・・・・・何言ってんの、この人。

そんなメッセージを残すためにデバイス使ったのか?

呆れかえるが、流石にこれで終わりな訳もなく、メッセージは続く。

 

『まぁ、ここまでは軽い冗談だ。

 さて・・・・・・

 祐介。これを聞いているという事は、お前は既に魔法と接する機会があったんだろう。

 お前はどんな魔導師になるのか、それも心配だが・・・・・・

 セキレアシステムを持つお前なら、大丈夫だろう・・・と思ってるよ』

 

セキレアシステム・・・? 何の事だ・・・・・・

 

『おっと、セキレアの話をしても分からないかもしれないな。

 既に知っているなら聞き流してくれていいが、やはり説明しておくべきだろう。

 だが・・・・・・お前には酷な内容になるかもしれない。

 ここで止めるのも一つの選択だ。それでも聞くか・・・?』

「・・・祐介・・・・・・どうします?」

「・・・・・・ここまで来たら・・・最後まで行くさ。

 ここで止めても・・・モヤモヤするだけだからな」

 

勝手に一時停止になっていたデータを再生する。

 

『・・・・・・分かった、話そう。

 お前の人生に関わる話だ、心して聞け。

 

 あのプロジェクトが、始まりだった―――――――――――』

 

そうして、父さんは語りだす。全てを・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side Change   マコト Side

 

      ~6年前~

 

 

 

「ホントに進めるんですか所長!? このプロジェクトを」

「ああ、君も主任として参加してもらいたい」

「しかし、実験にはまだ問題が・・・・・・

 被験者として己を差し出す研究員なんていませんよ」

「被験体については、他プロジェクトとの協力で何とかなるはずだ。

 超長距離次元召喚システム、並びに人造魔導師の研究チームに依頼したまえ。

 君には期待しているのだ、マコト・ホンダ研究員・・・・・・」

「・・・分かりました・・・・・・

 失礼します・・・・・・」

 

ドアを閉め、廊下に出る。

溜息を一つ。ゆっくり歩き出す。

 

 

 

 

 

この研究所に入って5年。もうウンザリしている。

表では、全うな魔導研究施設だが、その実は違法組織の研究所だ。

友人に騙され組織に引き入れられ、ヤバイ研究ばかり。

しかも、その友人は急に姿を見せなくなった。

直前に、組織を裏切ったとか噂されてたのを考えると、恐らく始末されたんだろう。

俺だって死にたくはないから、コツコツ仕事はしてきたが・・・・・・

 

「遂にプロジェクトとして立ち上げられちまったか・・・・・・」

 

最近俺が研究していた、ロストロギア『セキレア』システム。

回収班が違法発掘してきた、このロストロギア。

研究の際、情報を集めるのに苦労したが、古代文献によると、

このシステムは、使用する魔導師・それを補佐する人格AI機構・データベース機構からなる。

そしてデータにあるイメージを、魔力を用いて再現することができるという。

ただ・・・・・・

 

「事故ったら取り返しが付かないからなぁ・・・・・・」

 

これを使用するためには、セキレアの核ユニットを、

使用者のリンカーコアに融合させなければいけない。

そうなってしまえば、分離はできない。問題が起きればただじゃ済まないのだ。

そして、データベース機構のデータは、人間の記憶からインプットされる。

それは、いわば精神を吸い出すような作業だ。

下手をすると、いや、十中八九データ元の人間は抜け殻になるだろう。

だから研究はしてるものの、まだ実際にセキレアを稼働させた事はない。

被験者がいないから、割と安心して研究していたんだが・・・・・・

 

「他プロジェクトと協力しろ、か・・・・・・」

 

ロストロギアの次元召喚装置を研究してるチームに頼んで、魔力を持った別世界の人間を

攫ってくるか、人造魔導師研究のチームに、実験のための魔導師を造らせるか。

あのジジイめ・・・そういう事なんだろう。

 

「・・・どうしたもんか・・・・・・」

 

人権も何もあったもんじゃない。

誘拐される人にしろ、造りだされる人にしろ、実験される方はたまったもんじゃない。

正直やりたくねぇ・・・・・・

でも・・・・・・

 

「死にたくねえからなぁ・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次元召喚装置、稼働」

 

数日後。

召喚装置『ブラス』を使う事が決まり、被験者を召喚する実験が始まろうとしていた。

・・・召喚される人、すまない・・・・・・恨むだろうな・・・・・・

でも・・・謝ったところで、どうにもならないか。

嫌だ嫌だと言っても、この実験に参加している時点で、俺だって同罪だ・・・・・・

 

「魔力反応検知! 転移させます!」

 

研究員の声に、意識を現実に戻す。

装置が激しく輝き、やがて光が収束し・・・・・・

そこにいたモノを見て、目を疑う。

 

「おい! 大丈夫か!!」

 

思わず、走り寄る。

倒れているのは、全身血だらけの男。

・・・歳は俺と同じくらいか。

 

「おいしっかりしろ!」

「う・・・うぅ・・・?」

 

意識は朦朧、か・・・・・・

早いとこ治療しないと・・・・・・

 

「早く医療室へ!!」

「待ちたまえホンダ君」

「所長・・・・・・」

 

ジジイ! 今は邪魔すんな!

 

「この死に体では使い物になるまい。

 新しい被験体を召喚した方がいいのではないかね?」

 

一瞬、葛藤する。

このまま死ぬのと、生きて実験体にされるのと、どちらがこの人にとってマシなのか・・・

 

「・・・・・・待って下さい!!」

 

考えてもしょうがない! 今はとにかく生かす事を!!

何かいい手は・・・・・・あれだ!!

 

「これを見て下さい!

 この男の魔力量はかなりのものです。

 瀕死とはいえ、魔導師としては優秀な素材だと思われます。

 やはりここは、延命して実験に使うのが得策ではないでしょうか」

 

とっさに、召喚時に見たデータを並べ立てる。

所長のジジイは、それを見てすこし考える。

 

「・・・いいだろう。君の意見を採用しよう。

 この男を医療室へ。

 丁重に扱え。貴重な被験体の患者だ、ははは―――」

 

胸を撫で下ろす。

これで、すぐに死ぬ事はないだろう。その後は・・・どうなるか・・・・・・

 

 

 

結局、実験は彼の容態を見て行われる事になった。

ただの時間稼ぎだったかもしれないが、ここで死ぬよりはいいと思ったんだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし3日後。

俺のプロジェクトチームの解散が決まった。

 

「何故ですか所長!? 彼はどうしたんです!?」

「ああ、あの男なら死んだよ」

「なっ!?」

 

言葉を失う。

俺の行動は、結局無駄だったのか・・・?

あの人を生き延びさせる事はできなかったってのか・・・・・・

 

「被験体がいなくては、実験もはかどらないだろう。

 実験は、PF研究班が引き継ぐ。彼らに任せるように。

 軌道に乗り次第、君にも参加してもらう」

「Fチームがですか?」

 

Fチーム。人造魔導師の製造を目的とする、プロジェクトF.A.T.E.の研究をしてる所だ。

今度は、被験者を造りだすつもりか・・・・・・

ここの連中にとって他人の命なんて、いや、場合によっちゃ自分の命でさえ、

所詮はモノ扱いって事なんだ・・・・・・

 

「話は以上だ。下がりたまえ」

「・・・はい・・・・・・」

 

何も言えずに退室する。

俺は・・・無力だ・・・・・・

罪悪感から逃げようとして、何とか命は助けようとしても、このザマだ。

俺も所詮は、自分の命惜しさに、他人を食いつぶしてる連中の片棒を担いでいるだけ、か・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1ヵ月。

以前にも増して俺は黙々と研究に打ち込み、周りからは、『ロボット主任』だの

『感情の無い仮面』だのと囁かれる存在となっていった。

 

そんな中、俺は再び、セキレアプロジェクトに参加する事になった。

 

「明日から来い・・・か」

 

呟きながら、渡された資料に目を通す。

 

人造魔導師創造計画・プロジェクトFは未完成ながら、

既存の魔導師のデータを流用する事で、被験体となる素体を生み出す事には成功したらしい。

被験体『M1』。モルモット1号、て事か・・・

現在、推定3歳児程度まで成長が確認されている。

既に、セキレアの核ユニットと被験者のリンカーコアの融合は完了しているようだ。

後は、その子供がある程度成長したら、本格的に実験に入る事になる訳か・・・・・・

 

「結構気長なプロジェクトだな・・・・・・

 ――――――ッ!!?」

 

被験者の情報を読んでいた時、俺は目を疑った。

2つの項目。生み出された被験者の元となった魔導師。

そしてセキレアデータベース機構のデータ元。

 

  ○被験体M1 データ提供者・・・・・・マコト・ホンダ

  ○(セキレア)(データ)(ベース) データ提供者・・・・・・E1609-8010 (D)

 

M1の元魔導師が・・・俺・・・・・・?

俺を元にして・・・生み出されたってのか・・・・・・?

しかも・・・データベース化された生贄たる人物・・・・・・

それは、あの人・・・・・・

1ヵ月前、死んだと聞かされた・・・次元を越え呼び出されたあの人・・・・・・

 

「・・・ふっ・・・・・・くくくくくっ・・・」

 

笑いがこぼれる。

・・・この研究所の人間はバカか?

確かに最近、無気力に研究に打ち込んではきたが、

こんなデータを見せられて、俺が何も感じないとでも思ったか?

 

「・・・ふざけるな・・・・・・

 そこまで人間捨てちゃあいないんだよ・・・・・・」

 

 

 

 

 

その夜。

研究所は大爆発を起こし、壊滅した・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まぁ早い話、いい加減腹に据えかねて、お前を連れて脱走し、施設を爆破してやった訳だ。

 自慢じゃないが、俺は魔導師としてもそれなりに優秀だったからな、派手にやってやったよ』

 

・・・・・・なんていうか・・・衝撃の真実。

父さんが、そっちの世界の人だってのは、デバイス見つけた時から予想できてたけど・・・

・・・まさか、ここでプロジェクトFを再び耳にするとは思ってなかった・・・・・・

ましてや、自分の出自がそれだなんて・・・全く予想していなかったし。

 

「祐介・・・冷静ですね」

「・・・自分でも不思議だよ。

 何でこんなに落ち着いてるのか」

 

これは神経が図太いというのか、それともただの精神異常なのか・・・後者は嫌だが・・・

 

しかしそんな簡単に脱走できる組織でいいのか? セキュリティ甘くないだろうか。

とか思ってたらその答えもしっかり返ってきた。

 

『こっそり逃げ出そうとするには、やっぱり防備体制がしっかりしてたからな。

 潔く、全力の砲撃魔法を一発。もちろん物理破壊設定でな。

 後は逃げるが勝ちだ』

 

なかなか無茶をやったもんだ。

確かに、強行突破できる自信があれば、その方が手っ取り早いけどね。

 

『逃げ出した後、多重転移魔法を何度も繰り返して追手を撒き、この世界へとやってきた。

 その頃には心身ともに疲労困憊だった。

 そこで真弓・・・母さんと出会った、いや拾われたのかな。

 後は・・・苦労もあったなぁ・・・咲も最初は懐いてくれなくて・・・

 ってそれは関係ない! ・・・まぁ色々あって結婚とか・・・うん、とにかく色々あった!」

「・・・随分とまた話を端折ったな」

「話すのが面倒だったのか照れくさかったのか・・・微妙なところですねー」

 

どっちも可能性としてはありそうだけどな。

 

『ただ・・・

 連れ出したお前は、極端に感情を有していなかった。

 ・・・恐らく、プロジェクトFが未完成のまま、実験を行ったせいだろう』

 

・・・・・・1年前の事故以前の僕がそんな感じだって母さんや姉さんも言ってたっけか。

じゃあ何故今は、普通にできてるんだ・・・?

 

『正直に言えば、お前に感情を与える方法はあった。

 ・・・セキレアシステムを、人格AIも含めて本稼働させる事だ。

 本稼働の際に、使用者に心神喪失などの異常が認められた場合、

 セキレア内の、データベース化された人物の人格を植え付けるという、

 非人道的とも言える安全装置があったからだ。

 その機能を使えば・・・お前に人格を与えることはできた。

 

 ――― 少し悩んだが、その方法は取らなかった・・・

 あの人が実際に生き返る訳じゃないからな。

 ただし、これからもセキレアが稼働しないという保証は無い。

 セキレアに緊急防衛機能があるのかどうかまでは分からなかったからな。

 もしかしたら、使用者の身に危険が迫った時、自動的に稼働してしまう可能性も考えられる』

「・・・結局稼働しちゃいましたねー。

 私、誠さんに悪い事しちゃったでしょうか・・・・・・」

「いや、美月が悪いわけじゃないだろ。自動稼働だったんだろうし」

 

あの事故で危機に陥った僕に反応して、セキレアAI、つまり美月は起動、

そして人形同然だった僕に、『あの人』の人格が・・・?

これまで特に気にした事も無かったが・・・次第に自分に自信が無くなってくる。

今の僕は・・・この心は・・・データにされた人(のコピー)にすぎない・・・のか・・・?

しかし、父さんの言葉は続きがあった。

 

『だから、自動的に稼働する可能性を見越して、俺はセキレアに細工をしておいた。

 データの解析に時間がかかって、完了したのは、つい先日の事だけどな。

 ・・・セキレアの一部のデータを封印した。

 恐らくあの人の『記憶』に関わるものだと思うが・・・・・・

 これで、もしセキレアが稼働しても、あの人の人格そのものが

 お前に植え付けられることはないと思う。

 ・・・似た性格くらいにはなるかもしれないけどな』

 

び、微妙すぎるフォロー・・・・・・!

安心していいのかダメなのか・・・・・・

 

「・・・ま、いいか・・・・・・」

「いいんですか? 一瞬悩んだ割に、随分とあっさりしてますねー」

「いいんだよ。

 この楽観的性格が、『あの人』のものなのか、僕自身のものなのか・・・

 そんな事はどうでもいいよ。気にしない。悩んだ所でどうにかなる訳でもなし」

 

う~ん・・・自分でも感心するね。細かい事は気にしない性格。

 

『ただな・・・・・・』

「?? 何だ、まだ続くのか?」

『データを封印した事で、セキレアシステムはその力をフルに使えなくなると思う。

 お前が魔導師として生きていくつもりなら、それは大きな負荷になるだろう。

 ――― だから、俺の封印を解除する術式を、このデバイスに残しておく』

 

あのプロテクトかかってたやつか・・・

 

「あ、プロテクト解けてる。

 美月、これ起動できるか?」

「え? もう今すぐ封印解いちゃうんですか?」

「やって損はないんじゃないか? 興味はあるし」

「はぁ・・・じゃあ行きますよ。

 ――― 術式解凍。データシール、リリース開始!」

 

調子にのって、意気揚々とデータを解放しようとした所に、父さんの一言が・・・・・・

 

『あぁ、でも封印を解除する事で、人格に影響がでる可能性もあるから気を付け―――』

「なっ!?

 美月!! ストップ!! ストッォォプッ!!」

「も、もう遅いですよー!!」

「そういうヤバイ事は先に言えバカ親父ぃぃっ!!!」

 

大津波の様に押し寄せた膨大な情報に、僕の意識はあっさりと飲み込まれた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

天井が見える。

 

「・・・知らない天井だ・・・・・・」

 

いや知ってるけどね。すごく良く知ってる。

 

「祐介ー。大丈夫ですかー?」

「・・・たぶん。

 ・・・どのくらい落ちてた?」

「ざっと7時間ほど。

 まぁ起きてすぐボケをかませる程度には大丈夫そうですねー」

「今のをボケだと分かるって事は・・・・・・

 お前も受け取ったのか。『群星(むらほし) 勇輔(ゆうすけ)』の記憶・・・・・・」

 

父さんの封印した、「あの人の記憶」。

――― さすが人ひとりの記憶。とてつもない量の情報だった。

人格に影響どころか、下手すれば人格が丸ごと書き換わる可能性だってあったんじゃなかろうか。

元々彼をベースにした人格だったからか、はたまた僕自身に1年分の記憶しかなかったからか、

原因はともかく、僕は「神代 祐介」という人格のまま、「勇輔」の記憶をも持つ事になった。

 

「・・・普通に、自分自身の記憶って感覚だな」

「そうですね。よかったじゃないですか、記憶喪失が治って」

「治ったっていうのか、コレ・・・?」

 

まぁ事故以前の記憶が無い理由は分かったしな。

 

「ま、1年より前の記憶が無かろうと、勇輔さんの記憶を持っていようと、僕は僕だ。

 それは自信をもって言えるからな。

 ――― 今の僕は神代祐介だ。それ以上でも、それ以下でもない・・・」

「・・・知らない人が聞いたら、疑問を抱くこともないんでしょうが・・・・・・

 そのセリフ、使い方間違ってますよー?」

 

うーん、いいツッコミだ。

別にどっかの大尉みたく、大きな役目を負う事から逃げてる訳じゃないからな。

 

 

 

『・・・最後にこれだけは言っておく』

 

おっと・・・まだメッセージは残ってたのか。

 

『俺には、お前がどんな人生を歩むのかは分からない。

 でも、ひとつ願う事は、お前や真弓、咲が幸せになってほしい、それだけだ。

 ありきたりな言葉だが、それが本心だ。

 もちろん、お前がこのメッセージを聞く事なく、家族全員が揃っているのが最善だが・・・

 

 祐介・・・・・・

 これを聞かせて、お前には余計な重荷を背負わせてしまう事になったかもしれない。

 だが・・・勝手な言い分かもしれないが、強く生きてくれ。

 確かに生まれは特殊だったかもしれない。でも、お前はお前だ。誰でもない祐介だ。

 自分という存在を否定するな。

 俺も、真弓も、咲も・・・きっと周りの他の人だって、お前を肯定してくれる。

 お前を生んだのは、クソったれな研究だったが・・・

 それでも俺は、お前に会えて良かったと思ってる。

 繰り返すようだが・・・幸せに生きろ。

 

 ・・・そろそろ切り上げ時かな。

 もし俺がいなかったら・・・・・・・母さんや姉さんを頼むな。

 

 ――― 我が愛する息子 祐介へ』

 

 

 

メッセージの再生が終了する。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・祐介・・・?」

 

・・・あー、なんていうか・・・・・・

・・・・・・涙が・・・止まらない・・・・・・・・・・・・

 

「・・・記憶は無いけど・・・・・・

 やっぱ、生きてて欲しかったよ・・・父さん・・・・・・」

 

そう呟き、デバイスをケースに納め、立ち上がる。

 

 

 

 

 

カーテンを開ける。

朝日が昇ろうとしていた。

溢れる光に目を細め、父さんの言葉を反芻する。

 

「強く、幸せに生きろ、か」

「できますかね?」

「・・・できるさ。だって、僕は一人じゃない。

 美月が、母さんや姉さんがいる。なのはも、アリサも、すずかもいる。

 他にも沢山の人が僕と繋がりを持ってくれているんだ。

 それは、僕がここにいる・・・ここに存在していてもいいという証だと思うから」

 

右手を光へと伸ばす。

 

「(そうだよな、父さん。

  確かに、自分の生まれの秘密を知って、ショックは受けたよ。

  でも、そこで人生を終わりにする理由にはならないよな。

  それは、僕が生まれた良かったって思ってくれた父さんを否定する事だ)

 

 よっし!! 難しい話は終わり!!

 結論! 先の事は分からないけど、とりあえず人生を頑張る!!

 

宣言。立会人は美月しかいないが、まあいいだろう。

宣言先は自分、そして父さんと・・・セキレアとなった勇輔さんだ。

 

「そ、それだけですか?

 大層な決意とか無いんですかー!?」

「無い!

 人生なるようにしかならん!

 とにかく、いろいろと頑張って、幸せになる!」

 

そう、それが父さんの願いで・・・・・・今、父さんとした約束だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていつもの日常が始まる。

 

その日常を積み重ねる・・・・・・幸せになるために・・・・・・

『あなたが命を懸けて護った息子は、ちゃんと幸せになりましたよ』 と、

胸を張って言えるように・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      第15話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「まさに衝撃の真実!!」

作者「ほんとにねぇ」

美月「まさかのプロジェクトFでしたねー」

作者「(まさかっていうか・・・なのはSSでは割とよく見る設定のような・・・

    転生ではないケド、『神様転生』のタグがついてる理由はここにあった!!)

 

   ――― 最初は、祐介の元となった魔導師は勇輔っていう設定だったんだけどねー。

   それだと、マコトさんのM1に対する感情移入が薄いかなーと思って、

   より息子っぽくするために、マコトさんを元にしてみました」

美月「そもそも、勇輔さんって何処の人なんです?」

作者「一応、作者や読者の世界の人間のつもり。

   だから機鋼の能力がああなったの」

祐介「それにしても・・・ゆうすけが多いな」

作者「研究所に召喚された時、勇輔が来てた服に、『YUSUKE』って書いてあって、

   それでマコトさんは、M1に祐介って名付けた、という裏設定が有ったり無かったり」

美月「本編で書きそびれたんですね・・・・・・」

祐介「結局の所・・・僕ってどういう存在なんだ?

   僕は気にしない事にしたけど、設定的には」

作者「設定でも、祐介は祐介だよ?

   データ元の人の記憶があろうが、今を生きているのは祐介であって勇輔じゃないから。

   勇輔の魂が祐介の身体に憑依したわけでも、

   勇輔の精神は今でも祐介に根付いてるとかいうわけでもないよ?

 

   それはともかく・・・・・・

   今回の話で、祐介も美月もパワーアップだね!」

祐介「そうなのか?」

美月「まぁ2人とも、作者程度にはヲタ知識を手に入れた訳ですし、

   機鋼の能力はフルに活かせますしね」

作者「そう、そしてこれまで使えなかった新たな能力、その名もチェ―――」

祐介「今言うなよ」

美月「えー、過度の期待はしないように。

   どうせ、そう頻繁に使う能力でもないですしねー」

作者「カッコイイのになー・・・・・・」

 

 

 



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第16話 咆哮! 鋼を纏った龍

 

「ほらほら! まだまだ行きますよッ!!」

「―――くッ!!!」

 

周りを縦横無尽に飛行する多数の物体から、次々と魔力弾が発射される。左から来る魔力弾を身を

捻って躱し、脇をすり抜けようとした発射元に、ビームサーベルの魔力刃を一閃。消え去るそれを

最後まで見ることなく、次に攻撃をかけようとしていた2つの飛翔物体に対処する。

 

「あと・・・3基・・・・・・」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第16話  咆哮! 鋼を纏った龍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・疲れた・・・・・・」

 

部屋で横になる。

今日は練習、張り切りすぎたか・・・・・・

 

「次回は、もっとファンネル増やしましょうかねー」

「止めて下さい。殺す気か・・・

 まったく・・・倒しても倒しても、次々相手させやがって・・・・・・」

 

あの日、父さんのメッセージを聞いた日から、1週間が過ぎていた。

まぁ特に環境に何か変化があったかといえば、そんな事はなかったけど。

世は事もなし。中々に充実した夏休みを送っていると言えるんじゃないかね。

 

なのはと一緒に、魔法の鍛錬も続けている。

早朝と夕方。基本的には、なのははユーノ監修のもと、練習に励む。

流石に、僕の術式はユーノに見てもらう訳にもいかないので、ほとんど自主練だが。

たまに、なのはと試合したりするけど。・・・とりあえず砲撃怖い。

今日の練習は、美月の操作するファンネルを仮想敵としての高速機動戦闘。

1基倒しても、即座に美月が補充するせいで、

意地悪く飛んでくるファンネルを常に4基迎撃する羽目になった。

結局35基くらい倒したかね・・・ まったく容赦無ぇ・・・・・・

 

「今日はこれからどうするんですか?」

「んー、何も考えてないな。

 3人娘は今頃買い物してるだろうけど」

「祐介も買い物行ったらどうです? 咲さん誘って。

 きっと喜びますよ?」

「姉さんも出かけたろ?

 つーか家には誰もいないって」

 

そんな事を言いながら、とりあえずゲームでもするべく準備していたところ・・・

 

「!! レイジングハートからエマージェンシーコール!!」

「はぇ?」

 

思わず間抜けな声が出てしまった。

そこへ間髪いれず、なのはから念話が。

 

《ゆ、祐介くーん。えーと、大変な事に・・・・・・》

《何だ、何があったんだよ》

《えー、簡単に言うと、誘拐されちゃった、かな・・・?》

《・・・はぁ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで家を飛び出し、目的地へと走る。

 

《・・・しかし今時、こんなベタな誘拐あります?》

《ベタだろうが何だろうが、事実なんだからしょうがないだろ》

《ユーノさんはどうしたんです?》

《今日はアースラに行ってるってよ。タイミング悪ぃなぁ・・・・・・》

 

なのはからの連絡によると、3人で買い物の帰り、後ろから来た車に突然連れ込まれたとか。

流石に、魔法で撃退するわけにもいかず、取り敢えずいいなりになっているらしい。

今は、レイジングハートが位置情報を送ってくれている。

3人がいるのは・・・街の外れか・・・・・・

・・・普通に走っていくにはちょっと遠いな。

 

《美月! 飛ぶぞ!》

《この真昼間にですか?》

《見られなきゃいいんだろ!》

 

手近な路地に入り、周りを見渡す。

・・・よし。

即座に飛行能力を顕現し飛び上がる。それと同時に、

 

「ホログラフィックカモフラージュ!!」

 

自分の姿を周囲の景観と同化させる。

これで一般の人には見つからない・・・!

そのまま全速。3人を助けるべく飛ぶ。

 

「行くぞ!! 待ってろ3人とも!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた街の外れ。そこは寂れた倉庫街になっていた。

その倉庫の1つ。レイジングハートの信号はそこから発せられていた。

息を殺して、そっと窓から中を伺う。

 

(居た・・・・・・)

 

奥の壁際に、腕を後ろ手に縛られた3人が座らされていた。

まだ無事だった事に安堵する。

 

《なのは・・・到着したぞ。

 今、倉庫の外から、中を伺ってる》

《祐介くん・・・!

 ごめんね・・・心配、っていうか迷惑かけて・・・》

《謝るなよ・・・

 助けにくるのは当然だろ。大丈夫か?》

《うん。大丈夫だよ。アリサちゃんとすずかちゃんも》

《そっか、取り敢えずは良かったよ。

 というか・・・状況は?

 何か・・・もっとヤバイ人たちを想像してたけど、ただのチンピラっぽくないか?》

 

もっとこう・・・カタギじゃない職業の方たちが、

ご令嬢であるアリサやすずかを狙ったものかと思ってたが・・・・・・

中に居たのは、不良学生以上、任侠未満っていうか、街のチンピラくずれって感じの奴らだった。

 

《う、うん・・・・・・

 別に、アリサちゃんやすずかちゃんの家を狙ってた訳じゃないみたい・・・

 さっき2人の事を知って、大騒ぎしてたよ。

 諦めてこのまま帰すべきかもって悩んでたし》

《・・・悩んだ結果は?》

《にゃはは・・・誘拐継続・・・・・・・

 流石に、ここまできたら後に引けなくなったみたい・・・・・・

 でも、やっぱり怖いのかな・・・まだ家に連絡はしてないみたい》

 

まぁこの連中には、2つの大会社相手に身代金を要求するのは、荷が重いだろうな。

今のうちに潰した方が、こいつらのためにもいいかもしれん。

 

《美月。奴ら何人だ?》

《倉庫内スキャンの結果、敵性反応は15人。

 全員が、鉄パイプやら特殊警棒やらで武装してます》

《銃とかは?》

《それは流石に・・・あ、1人持ってました。

 何処から手に入れたんでしょうねー?》

《何でも手に入るご時世だからなー。

 さて・・・蹴散らすのは簡単だけど・・・・・・

 3人の近くには、と・・・》

 

再びこっそりと中を伺う。

3人を座らせている場所のすぐ近くには、1人が見張りについていた。

 

(普通に入口から入ったら・・・遠いか。

 人質に取られたら面倒だからな・・・・・・)

《祐介。3人の上、見て下さい》

《上・・・?》

 

縛られているなのは達の上を見ると、そこには窓が。

しかも、3人のいる場所は壁から板が張り出している。

あれなら、窓から飛び込んでも、ガラスを被る心配もなさそうだ。

決まり。あそこから突入しよう。

 

《なのは。今から突入する。

 お前たちの上にある窓から飛び込むから。

 ガラス被る事はないと思うけど、注意しててくれ》

《え!? ちょっと祐介くん、そのまま来るの!?

 アリサちゃん達の前で、魔法とか使うのは―――》

《心配するな。バレない方法はある》

 

そう言って、場所を移動。目標の窓の外に陣取る。

 

《・・・行くぞ美月》

《新技のお披露目ですねー》

 

全身に意識を集中する。

――― イメージする。我が身は鋼。猛る龍の如く。

 

形態変化(チェンジモード)――― 3式機龍ッ!!」

 

同時、目の前の窓から飛び込む。

さぁ・・・騒動の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change  なのはSide

 

 

 

わたし達の上の方で、ガラスが割れる音。

その直後、目の前でわたし達を見張っていた人が吹き飛ぶ。

 

「っ!!!」「何・・・あれ・・・・・・?」

 

アリサちゃんもすずかちゃんも驚いている。

わたしだってびっくりした。

だって、そこに立っていたのは・・・今、見張りの人を蹴り飛ばしたのは・・・・・・

 

「何よ・・・あれ・・・?

 ど、ドラゴン・・・?」

 

アリサちゃんが呟く。

その姿は・・・大まかには人のフォルムをしているけど、尻尾があって、背びれがあって・・・

頭はドラゴンの顔をした・・・・・・銀色のロボットだった・・・・・・

 

《ゆ、祐介くん・・・なの?》

《おう。ちょっと待ってな。取り敢えずこいつ等ぶっ飛ばすから》

 

念話で応えながら、掴み掛ろうとしていた相手を殴り飛ばす竜人ロボット。

バレない方法はあるって言ってたけど・・・

 

(ユーノくんみたいな・・・変身魔法、なのかな・・・?)

 

確かにあれなら祐介くんだって分からない。

・・・何か正体を隠して戦うヒーローみたいだね・・・・・・

次の相手をタックルで突き飛ばしているロボットを見ながら、そんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

      Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(残り・・・12人!!)

 

タックルで吹っ飛ばした相手が気絶したのを確認し、視線を巡らせる。

 

《どうです祐介。安定してますか?》

《ああ、問題はなさそうだな》

 

形態変化(チェンジモード)。それが新たな能力だ。

今までは、機鋼の力を付与(エンチャント)という形だけで行使してきた。機鋼の多くは運用方法が

分からず、手持ち系の武器等、人が違和感なく使用できるものが関の山だったからだ。

だけど今は、その機鋼の元ネタたる記憶がしっかりある。

つまり、能力の運用も幅が広がったのだ。

そのなかで、形態変化(チェンジモード)は、簡単に言うと自身を機械に変身させる技だ。

結構魔力使うけど・・・・・・

 

今回変化したのは MFS-3 3式機龍。

ただ、今は不要だろうからバックユニットは着けてない。アームユニットだけだ。

 

《祐介ー。楽しんでますねー?》

《・・・否定はしないけど。さて・・・・・・》

 

そろそろチンピラどもも、何人かは目が本気になってきてるなー。

・・・キレてる10、困惑1、怯え1、か・・・・・・

実質、11人だな・・・

 

《美月、銃持ってた奴を警戒しててくれ。

 後ろの3人を狙われたら敵わん》

《はーい》

《取り敢えず、人質には近づけないように――― ッ!!》

 

2人が鉄パイプで殴りかかってくる。

それに対し、身体を回転させて尻尾を一振り、吹き飛ばす。――― 残り9人。

背後から振り下ろされる鉄パイプ。敢えて避けなかったのでに頭に直撃する。

当たり前だがダメージは皆無。

 

「なっ・・・何だこいつ!? おもちゃのロボ着ぐるみじゃねぇのかよッ!?」

 

残念、そんなチャチなもんじゃあございません。

裏拳で沈める。――― 残り8人。

 

(次は・・・・・・

 ―――くそッ!!)

 

回り込んで、なのは達の所へ向かおうとするのが2人。

そちらに向き直り口を開け、そのまま99式2連装メーサー砲を後ろから浴びせる。

勿論言うまでもないが、非殺傷設定だ。

ぶっ倒れるチンピラ。――― 残り6人。

流石に今のメーサーには驚いたようで、皆さん、ちょっと腰が引けているようですな。

明らかに、未知の存在に怯えている人が増えている。

 

「ふ・・・ふざけやがって!! た、たたんじまえぇっ!!!」

 

リーダーっぽい奴が叫ぶが、それに応えて殴りかかってきたのは3人。

残りの2人は腰を抜かしている。

襲い掛かって来る相手に向けて手を伸ばし、0式レールガンで一挙に3人を鎮圧する。

・・・はい、残り1人。

 

リーダーっぽい、そのサングラスに一歩歩み寄る。

奴は一歩後退する。

その震える手が、シャツの後ろに回され―――

 

(させるかッ!!)

 

奴が拳銃を構える前に、一気に肉薄。メーサーブレードを奴の眼前に突き付ける。

・・・チェックメイト、と。

 

「くっ、くそっ! なんなんだテメェは!!」

 

名乗るほどの者ではありません故。

その腹に拳を一発、黙らせる。

 

さて・・・残りはどうするか・・・

そう思って振り向くと・・・・・・

 

《・・・いねぇし・・・・・・》

《さっき逃げて行きましたよー?》

 

そこには誰もいなかった。

 

(ま、いいか・・・・・・)

 

わざわざ追いかけて殴る必要もあるまい。

 

 

 

 

 

なのは達のもとへ戻り、縛ってあるロープを引きちぎる。

まったく・・・大事にならなくて良かったな・・・・・・

 

「あ、あの・・・・・・」「あ、ありがとう・・・ございます・・・」

 

2人とも困惑してるなー。当たり前か。

チンピラに攫われて、そこに突然現れたロボットが、チンピラを蹴散らしたんだからな。

状況が上手く掴めないんだろう。

とりあえず無事なようだし、撤収するか。

踵を返し、倉庫の入口へと歩き出す。

 

《ふっ・・・すp―――》

《すぴーどわごんはくーるにさるぜ》

 

ひどい・・・先に言われた・・・・・・

 

 

 

倉庫から出る時。

後ろから、アリサが何か言っていたように聞こえたが、

振り返る事はなく、軽く手を振ってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

なのはから電話がかかってきた。

 

『祐介くん、今日はありがとう。

 アリサちゃんも、すずかちゃんも無事で良かったよ』

「結局、今日の出来事はどうなるんだ? あの2人としては」

『うーん、謎の正義の味方に助けられたって事にして、あまり気にしてないみたい』

「そっか・・・

 そういえば、あのチンピラたちはどうした?

 僕あのまま帰っちゃったけど」

『えーと・・・そのまま放ったらかしてきちゃった。

 アリサちゃんは、何回か踏んづけてたけど。

 それより祐介くん、今日のあれって・・・あれも祐介くんの魔法なの?

 ユーノくんみたいな』

「ん? あぁ形態変化(チェンジモード)か。

 まぁそうだな。最近の新技だ。

 変身魔法・・・とはちょっと違うかな・・・?

 あーでも、一緒なようなもんか。

 ざっくり言うと、今までは機械の能力を使えるだけだったけど、

 今は機械に変身もできるようになった、みたいな」

 

そんな感じで適当な説明をし、後は世間話で通話を終わる。

 

「・・・あれも結局の所、使いどころ限られるよな」

「まぁ趣味の強い能力ではありますねー」

 

それに燃費も、そんなによろしくない。

まぁ僕が未熟なだけかもしれないけど。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしました? 祐介」

 

今回の事で考えた事がある。

そうそう自分の周りでトラブルなんて起きるもんじゃない、そう思っていたけど・・・

今日は未遂だったとはいえ、事故・事件は実際に起きると実感した。

この先・・・もっと危機的な事態が起こったら・・・?

また魔法の絡むような事件が起きたら・・・?

そう考えると・・・やっぱり・・・強くなりたい、そう思う。

 

「修練あるのみ、だな・・・」

 

日常を大切にしたい、それは今でも変わらない。

その日常を守るために、力が必要な時もあるんだろう。

なら・・・努力しなければならない。

 

 

 

 

 

さてさて・・・

そうと決まれば、明日からもまた、忙しくなりそうだな。

新たな決意をもって・・・新たな力を手に入れるために・・・・・・

 

 

 

 

 

      第16話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「趣味だねぇ・・・」

作者「そーだねぇ・・・」

美月「変身しちゃいましたねー。

   ・・・役に立つんですか?」

作者「まぁ趣味的なものだから、実用的かどうかはなんとも・・・

   でもこの先も、たまに使うかもしれん。

   いやー、趣味全開でいきたいねー」

祐介「もう1話の時点から趣味全開だったろーが」

美月「これからが不安ですねー」

 

 

 




微妙に祐介たちの設定を更新

 ⇒キャラ紹介2


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A’s編
第17話 告げられる始まり


 

 

 

声が聞こえる・・・・・・

何だ・・・冬の朝は寒くてつらいんだから・・・・・・

 

「・・・朝ですよー?

 起きて下さーい。祐介ー?」

「・・・起きてるよー・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・ぐぅ・・・

 

《起きろっつってんだろ!! このグズがぁっ!!!》

「どひゃあぁっっ!!?」

 

こうして今日も、神代祐介の一日は始まる・・・ってね。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第17話  告げられる始まり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ仕上げか・・・

僕は両手に持った空き缶を掲げる。

 

「よっし・・・行くぞなのは!」

「うん! オッケー!」

 

集中に入るなのは。

足元に魔法陣が展開される。

 

「リリカル、マジカル・・・

 福音たる輝き、この手に来たれ。

 導きの下、鳴り響け!」

 

僕も、4基の射撃台をスタンバイする。

そして、空き缶の一つをなのはの、もう一つを自分の上に放り投げる。

 

「フィン・ファンネルッ!!!」

「ディバインシューター・・・シュートッ!!!」

 

なのはから放たれた誘導弾が、落下する空き缶を何度も何度も打ち上げていく。

こっちも負けてられないな・・・・・・

ファンネルをコントロールし、次々と位置を変えつつ空き缶を撃つ。

 

レイジングハートのカウントが増加していく・・・・・・

 

「Ninety-eight…One hundred.」

 

目標達成だ。ラストっ・・・!

最後に大きく打ち上げた空き缶を見据え、次の機鋼を顕現。

 

「グラビティ・クレッセントッ!!」

 

くの字に曲がったブーメラン。そこに魔力を集中させ・・・

 

「――― シュート・・・!!!」

 

――― 放つ。それは狙い違わず缶に命中し、粉砕する。

・・・しゅーりょー。

 

 

 

 

 

見ると、なのはも練習を終えていた。

 

「どうだ、なのは。調子は」

「まあまあかなぁ・・・

 ・・・採点すると何点?」

「About eighty points.(約80点です)」

 

レイハさんは厳しいねー・・・・・・

 

「さて・・・そろそろ時間だな・・・帰ろうかね」

「うん!」

 

この朝練習も、始めて随分たつなぁ・・・もう12月だもんな。

ここ最近は、ユーノもアースラに行くことが多くなって、

なのはの練習もレイジングハート監修になっている。

訓練メニューはよく貰ってるみたいだけど。

 

 

 

なのはと別れ、家へと向かう。

今日も元気に頑張りませう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

いつも通りの風景。我が家は平和である。

おや、今日は母さんも朝ゆっくりなのね。

 

「祐介ー、郵便来てたわよ」

「うぃ。誰だんべ」

「海外郵便ね・・・あぁいつもの」

 

その封筒を受け取る。中はいつものDVDだろう。

なのはと僕、そしてフェイトとは、ビデオレターの遣り取りが続いている。

 

(元気にやってっかなー?)

 

クロノやユーノの途中経過を聞く限り、裁判はいい感じで進んでるようだ。

恐らく判決無罪、しばらくの保護観察処分、ってな具合になるらしい。

みんな頑張ってるんだな。

 

そんな事を考えつつ、朝食をとる。

 

「フェイトちゃんだっけ? もう半年になるのねー、文通」

「そうだなー。

 ・・・って、なんで姉さんそんなブスっとして」

「べっつにー」

 

これもいつもの事だ。

ぬぅ・・・ブラコンの姉妹は、マンガでは良い味を出すキャラだろうが、

身内にいると対処に困るんだぞ。

いやもちろん姉さんの事は好きだが、姉さんの場合愛が重い・・・

 

・・・しょうがない。

ディスクは後でこっそり観るとして、姉さんには後日買い物に付き合って機嫌をとるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の夜。

 

「どーなったかなー。最終判決」

「大丈夫でしょう。問題なく終わったと思いますよ?」

 

ま、そうだよな。みんな、あれだけ色々と頑張ってたんだ。

無罪は確定だろう。

 

「まぁまた連絡も来るだろうし―――」

「魔力反応! 広域結界が展開!!」

 

美月の声と同時、辺りが結界の影響下に入る。

 

「な、なんだ!?」

「接近中の魔力反応感知。まっすぐこちらに向かってきます!」

 

何かよく分からないが、ただ事じゃない。

場所を移すべく、慌てて家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れたビルの屋上。

 

「目標接触まで30秒」

「分かってる・・・っていうか、もう見えてる」

 

そして・・・その人が目の前に降り立つ。

長い髪はポニーテールにまとめられ、凛とした顔立ちの、長身の女の人。

甲冑、というには軽装なジャケット。そして手にした長剣。

その姿、纏う雰囲気は、まさしく――― 騎士。

・・・魔導師であるのは間違いない。

しかし、何故ここに、僕のところに来る・・・? それも臨戦態勢でだ。

 

「え、えーと・・・こんばんは・・・?」

 

取り敢えず、声をかけてみる。

この人が何者かは分からないし油断はできないが、いきなり攻撃するわけにもいかない。

まずは相手の出方を見て・・・・・・

 

「多くは言わん・・・・・・大人しくしていてもらおう」

「―――!!?」

 

その手の剣を、こちらに向けつつ告げる彼女。

おいおいおい・・・なんかヤバイ人なんじゃないの・・・?

こちらを殺す気かどうかは分からないが、少なくとも攻撃はしてきそうだ。

 

「襲われるような事をした覚えは無いんですけど・・・」

「こちらには理由がある。恨みは無いが、その魔力、貰い受ける!!」

 

発せられる圧力が強まる。

あーもう、訳が分からん。

けど、黙ってやられるわけにもいくか!

 

「鋼纏烈華ッ!!!」

 

バリアジャケットを装着する。

夏休みの事件後、新しく構築したジャケットは、以前のコートとはデザインが異なっている。

黒のズボンとインナーシャツは同じだが、外套を変更した。

白地に薄紫のラインが何本か走る・・・陣羽織だ。

背中には 『鋼』 のひと文字。

 

「――― 来ます!!」

 

美月の警告と共に、突っ込んでくる通り魔(それ以外の何者でもないだろう)さん。

振り下ろされる剣先を、後ろに大きく跳び回避する。

上空に飛び上がり、

 

「容赦なしか・・・!

 良く分からんが抵抗はさせてもらう!

 名刀カゲムラサキ!!

 

機鋼顕現。手にした刀で、続けて繰り出される彼女の剣を受け流す。

 

「それがお前のデバイスか――― はあっ!!

「そういう訳でも――― ないんだけどねッ!!

 

次々に繰り出される連撃を、正面から受ける事を避け、回避を中心に飛び回る。

体格の面でも、武器の面でも、真正面から打ち合うのは難しい。

 

(まったく・・・事情がさっぱり分かんねー・・・・・・)

 

そんな事を考えている隙に、一気に距離を詰められていた。

しかも、その剣が・・・炎に包まれている。

 

「なっ・・・・・・しま――― ッ!!」

「はぁぁっ!!!」

 

咄嗟に、カゲムラサキを掲げ防ぐ。

しばらく耐えたものの、機鋼は高い音と共に砕け散る。

ちっ・・・・・・込めた魔力が少なかったか・・・!?

 

「くッ―――!!」

 

そのまま堪えずに、衝撃を使って後ろに飛び、距離をとる。

 

 

 

相手はすぐに飛び込んで来なかった。再びにらみ合う。

・・・今は、彼女の持つ剣から炎は上がっていない。

 

「今の一撃・・・妙に威力高くなかったか・・・?」

「はい・・・一瞬、魔力値が跳ね上がりました。

 どういう機能かはわかりませんが・・・剣の基部で何か炸裂したのが見えましたよ」

「しかも、まさかの炎の剣だよ・・・RPGかっての」

「魔力変換資質・・・ですか。それの炎熱タイプですねー」

 

彼女が剣を構え、一歩踏みだす。

 

「武器を失ってなお、抵抗するな・・・

 命までは取らん・・・大人しくしていろ」

「はいそうですかって言うとでもッ!?」

 

そうそう諦める訳にもいかない。

事情が分かるまで、倒れる訳にいくか!

両手に、ビームマシンガンを顕現。弾幕を展開し、距離を広げる。

とにかく、あの必殺っぽい一撃を食らいたくはない。

彼女の今の魔力は普通に戻っている。

よく分からないが、必要な時に魔力を上げる事ができるんだろう。

 

距離を詰めさせずに、魔力弾を高速連射する。

人の魔力を貰い受けるとか、冗談じゃない。どういう意味かは分からないケド。

 

・・・ん? ちょっと待てよ・・・・・・

 

「・・・美月。さっきあの人、魔力を貰い受けるとか言ってたよな。

 手段はさておき、言葉通り魔力を奪うのが目的だとしたら・・・

 まさか・・・なのはの所にも・・・!」

「か、確認します!

 ・・・!? なのはさん、戦闘中!!

 

やっぱ悪い予感当たったー!?

くそっ! すぐ行きたいけど・・・・・・

 

「どうした・・・諦める気になったか」

 

目の前に立ち塞がる剣士。

この人から逃げないと・・・なのはの所に駆けつける事ができない!

 

こうなったら・・・・・・一撃を入れて、隙をつくって逃げるしかない。

 

「フレイムソードッ!!」

 

今度はこちらも長剣を顕現させる。

目には目を、歯には歯を。――― 炎には炎を!

 

《美月・・・相討ちでもいい、一撃入れるぞ》

《・・・はぁ・・・・・・無茶だと言いたいですけど、それが一番可能性が高そうですね》

《一撃入れたら、退散しよう。見つからないように隠れてな》

 

お互い剣を構えて対峙する。

 

「そろそろお暇させて頂きたいんで、これで終わりにしませんか」

「私の一撃を正面から受けるか・・・いいだろう」

 

彼女が剣を振りかぶる。

それに応じ、こちらも剣を頭上に掲げる。

 

「レヴァンティン!! カートリッジロードッ!!!」

「フレイムソード――― チャージアァァプッッ!!!」

 

お互いの武器が炎を纏う。

 

「はああぁぁっ!!」

「でりゃあぁぁっ!!」

 

刹那、交錯。

 

「――― ッ!!」

 

腹部に痛み。

ジャケットを裂かれてはないが、かなりの衝撃を食らった。

けど・・・・・・

 

「手ごたえは・・・あった・・・

 美月! とんずらだ!!

 

後ろも見ずに、急速降下。

ビルの谷間に姿を隠し、機鋼を顕現させる。

 

「ミラージュ・コロイド散布、並びに急速定着・・・!」

 

ステルス機能を施し、そこから走り出す。

これで撒ければいいけど・・・・・・

 

(なのは・・・無事でいてくれよ・・・!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side change  通り魔(笑) Side

 

 

 

奴の姿を見失う。

 

「・・・レヴァンティン」

「Es gibt keine Reaktion.(反応、ありません)」

「・・・逃がしたか・・・・・・」

 

レヴァンティンを下ろし呟く。

若かったな。主と同じ年頃だろうか。

この土地にあれ程の魔導師がいたとは・・・・・・

だが妙な奴だったな・・・・・・

最初に奴が使った細身の剣(この国の古い剣、刀といったか)、あれが奴のデバイスかと

思ったが・・・その後に用いた銃や長剣・・・複数のデバイスを所持しているのか・・・?

それに最後の交錯・・・

 

「紫電一閃を真っ向から迎撃するとはな・・・・・・」

 

だが正しい選択ではあった。自分の攻撃で相手の攻撃を相殺してダメージを抑えたか。

腹部に手をやる。この私に一撃を入れるとは・・・・・・

奴にも一撃は入れたが、私と同じで大したダメージにはなっていまい。

 

「惜しいな・・・奴を蒐集すれば、かなりのページを稼ぐことができたろうが・・・・・・」

 

だが居なくなったものはどうしようもない。

それに・・・・・・

 

「レヴァンティン、ヴィータとザフィーラの方はどうなっている」

「Sie traf den Feind. Sie kämpft.(目標と接触、戦闘中です)」

「よし・・・援護に向かう」

 

余計なお世話と文句を言われるかもしれないが、構うまい。

彼女の事だ。不覚をとるとは思えんが・・・

だが、自分と同じように撒かれる可能性も無い訳ではない。

 

溜息をひとつ、飛び上がり、目標へと向かう。

 

 

 

 

 

      Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそぉ・・・・・・無駄に時間かかった・・・・・・」

 

ようやく、なのはのいるであろうエリアまでたどり着く。

ほぼ完璧なステルス性能を誇るミラージュ・コロイドといえど、流石に高速飛行に伴う魔力光までは隠せない。そのため高速で飛ぶ訳にもいかず、こっそりと移動していたせいで、かなりの時間を使ってしまった。

 

ここにくるまで、遠目にだったが桃色と赤色の魔力光の激突が見てとれたが・・・

 

「なのはは―――」

 

空を見上げた瞬間、轟音と共に吹き飛ばされた白い姿がビルに激突する。

それを追う赤い魔導師。

 

「なのはッ!!!」

 

くそッ! 今更こそこそしていられるか!!

飛び上がり、2人を追ってビルに侵入する。

 

 

 

 

 

そこで目にしたのは――――――

力なく壁に寄り掛かるなのはと・・・・・・

真赤なジャケットを纏った魔導師。

その手にしたハンマー状のデバイス、それを頭上に持ち上げる。

 

「やめろぉぉッッ!!!」

 

そして・・・・・・その手が振り下ろされる――――――

 

 

 

 

 

      第17話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「まったく物騒な話ですねー。いきなり通り魔に襲われるなんて」

祐介「なのは大丈夫なのか・・・?」

作者「大丈夫だって。ちゃんと助けるから。お前じゃないけど」

祐介「・・・さいですか。しかしもう劇中の季節は冬になってるんだな」

美月「早いですねー。機鋼の扱いも随分慣れてきてるみたいですし」

作者「登場機鋼の説明、まだいる?」

祐介「いや僕たちにはいらないけど・・・やりたいならどうぞ」

美月「では参りましょー。出典作品と機体を。えー・・・・・・

 

   フィン・ファンネル・・・・・・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア >>> νガンダム

   グラビティ・クレッセント・・・超重神グラヴィオン >>>グラヴィオン

   名刀カゲムラサキ・・・・・・・勇者指令ダグオン >>>ダグシャドー

                            (もしくはシャドーダグオン)

   ビームマシンガン・・・・・・・ガンダム系 特に指定はなし 強いて言うなら、

             機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY >>>ガーベラ・テトラ

   フレイムソード・・・・・・・・太陽の勇者ファイバード >>>ファイバード(武装合体)

   ミラージュ・コロイド・・・・・機動戦士ガンダムSEED >>>ブリッツガンダム他

 

   以上でしたっけ?」

作者「おつかれさん。それより気になるのは、鋼纏烈華って何? バリジャケも微妙に変えたし」

祐介「言わせてんのはお前だろうに。特に意味は無いよ。

   仮面ライダーが『変身ッ!』ってやるのと同じで。

   ちなみに“こうてんれっか”と読む」

美月「他の魔導師の皆さんも、セットアップを言う時と言わない時あるじゃないですかー」

作者「そのとーりー。要は気分の問題」

祐介「バリジャケ変更は・・・なんとなく。陣羽織ってカッコよくない?」

美月「でも背中に『鋼』って・・・新撰組じゃないんですから」

作者「いや、こういうのは気分の乗ったもん勝ちだ!

   技名は叫ぶと威力が上がるという法則もある事だし!」

 

 

 



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第18話 再来せし戦いの嵐

 

 

 

振り下ろされる武器。動けないなのは。

何とか助けたくとも、間に合わない距離。

絶体絶命。その単語が頭をよぎる。

 

 

 

 

 

―――――― 結果から言えば、なのはは無事だった。

もちろん、瀕死のレイジングハートがギリギリで防御したわけでも、

僕が攻撃に割り込む事に成功したわけでもない。

直前で展開された魔法陣。転移してくる影。

相手の武器を受け止めたのは、黒い機体(からだ)に金色の(コア)をもつ戦斧。

 

「なッ!?」

 

そこにいたのは――――――

 

「ちっ・・・仲間か・・・!」

 

かつて思いをぶつけて戦い――――――

 

「Scythe Form.」

 

半年前に別れ――――――

 

「仲間・・・そうじゃない・・・・・・」

 

なのはと2人で再会を心待ちにしていた――――――

 

「・・・友達だ・・・!」

 

大切な友人だった。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第18話  再来せし戦いの嵐

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だってフェイトがここに・・・・・・

だけど助かった!

 

「なのはッ!」

 

急いでなのはに駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

「・・・ゆ、祐介くん・・・・・・う、うん・・・・・・」

 

なのは自身もレイジングハートも、まさに満身創痍といった態だった。

何とか離脱したい所だけど・・・・・・

 

後ろでは、僕たちを護るように相手に立ち塞がるフェイト。

 

「・・・民間人への魔法攻撃。軽犯罪ではすまない罪だ」

「あんだテメェ。管理局の魔導師か」

 

改めて相手を見やる。

全体的に真赤なゴスロリ風?なバリアジャケットを纏った赤毛の少女。

僕たちと同じか多少年下にも見える。

しかし態度といい、言動といい、偉そう・・・というか小生意気な印象を受ける。

 

「時空管理局 嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。

 ・・・抵抗しなければ、弁護の機会が君にはある。

 同意するなら・・・武装を解除して」

 

油断なく構えながら、相手に警告するフェイト。

 

「誰がするかよッ!!」

 

突然背後に跳び退り、赤い少女はそのままビルから離脱する。

 

「祐介、なのはをお願い・・・!」

「お、おぅ・・・・・・」

 

それを追って飛び出すフェイト。

しかし・・・どうする?

取り敢えず、なのはを安全な場所に・・・・・・

 

その時、再び展開される魔法陣。

そこに転移してきたのは、

 

「ユーノ!!」「ユーノくん・・・」

 

淡い緑色の魔力光と共に現れたのは、またも見知った顔。

すぐさま、なのはに回復魔法をかけるユーノ。

 

「来るのが遅れて、ごめん」

「いや、助かった。でも何で2人ともここに?」

「フェイトの裁判が終わって、みんなで2人に連絡しようとしたんだ。

 そしたら、通信は繋がらないし・・・調べたら、広域結界ができてるし・・・

 だから、慌てて僕たちで来たんだ」

「・・・そっか・・・・・・

 ごめんね・・・ありがとう・・・・・・」

 

弱々しくも微笑むなのは。

治療を続けつつユーノが問う。

 

「・・・あれは誰・・・? 何でなのはを・・・!」

「分かんない・・・・・・急に、襲ってきたの・・・・・・」

「ついでに、僕も襲われた。

 さっきの子じゃなかったけど、ひょっとしたら仲間の可能性もあるかもしれん」

「交戦中に、なのはさんも襲われてると分かって、途中で何とか逃げて来たんですよねー」

 

ユーノは驚いたような顔をするが、すぐに(なのはを安心させるためだろう)笑い顔を返す。

 

「・・・でももう大丈夫。フェイトもいるし、アルフもいるから」

 

そっか、アルフさんも来てくれたのか。

あの2人なら、少々の事では・・・・・・やっぱちょっと心配。

 

「・・・ユーノ、ここ任せていいか?」

「え? う、うん」

「ちょっと心配になってきた。

 もし僕を襲った人が、あの子の仲間だったとしたら・・・

 僕を見失った後、こっちへ応援に向かってるかもしれない」

「そ、そんな・・・! フェイトちゃん・・・!」

「杞憂だったらいいけど。

 ・・・なのははもう無理するなよ!!」

 

そう言い残してビルから飛び出す。

 

 

 

その瞬間、突然目に飛び込んできた、吹き飛ぶ金色。

 

「フェイトッ!!!」

 

ビルに激突するフェイト。

急いで瓦礫の中に飛び込み、フェイトを助け起こす。

 

「・・・大丈夫か、フェイト」

「うん・・・ありがとう、祐介」

「バルディッシュは・・・?」

 

見ると、柄の部分から真っ二つに分断されたバルディッシュ。

 

「No problem.」

「大丈夫、本体は無事・・・」

「Recovery.」

 

魔力を込め、バルディッシュを修復する。

 

「さて・・・どうするか―――」

「フェイト! 祐介!」

 

そこへ飛び込んできたのはユーノ。

 

「お前、なのははどうしたんだよ!?」

「大丈夫。治癒と防御の結界を残してきたから。

 それより、どうする?

 見たところ、相手は現在3人。内1人がアルフと交戦してる」

「何人いるんだか・・・

 取り敢えず、怪我人もいるし、なるべく早めに逃げたい所だな・・・」

 

思案しているとフェイトが口を開く。

 

「ユーノ。この結界内から、全員同時に外に転送、行ける?」

「う、うん。

 相手の結界が特殊だから、少し時間がかかるかもしれないけど・・・なんとか」

「なら、その時間は僕たちで稼ぐしかないな。

 数の上では3対3。なんとかするか」

《ちょいと頑張れば大丈夫―――かなッ!!》

 

戦闘中であろうアルフさんも了解してくれる。

 

「それじゃあ・・・行こう!!」

「おう!!」

「みんな、気を付けて!」

 

 

 

 

 

ユーノを残し、フェイトを追って飛び上がる。

そこにいたのは、ゴスロリ娘と・・・通り魔剣士。

 

「・・・また逢いましたね、通り魔さん」

「心外だな。

 我らは・・・仕えるべき主と、守るべき仲間を持つ・・・騎士だ」

「嫌味の一つでも言いたくなりますよ。

 やってる事は、まんま通り魔じゃないですか」

「ごちゃごちゃうるっせぇッ!!」

「待て」

 

いち早く戦端を開こうとしたゴスロリ少女を制する剣士さん。

 

「ならば名乗ろう。

 私はベルカの騎士、ヴォルケンリッターの将、シグナム。

 そして我が剣、レヴァンティン」

 

宣言と共に、その長剣を構える。

 

「名乗られたからには、こちらも名乗るのが礼儀ですか。

 姓を神代、名を祐介―――」

「そしてわたしが愛され相棒(バディ)、翡翠の光、美月!」

「ミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託、フェイト・テスタロッサ。

 この子はバルディッシュ」

 

一人、妙な名乗りを上げた奴もいたが無視。警戒態勢に入り、MVSを二本、両手に構える。

隣では、フェイトもバルディッシュを構え、前を睨んでいる。

 

「神代に美月、テスタロッサにバルディッシュか。

 覚えておこう」

 

さて・・・どう出るか。

1on1、2on2、3on3・・・どう展開したものかな・・・・・・

 

「祐介」

 

考えていると、フェイトが声をかけてくる。

 

「私は・・・あの剣士の人とやる。

 祐介はもう一人の子をお願い」

「・・・まぁ別にいいけど・・・・・・

 気を付けろよ。なんか一時的に魔力ブーストしてくるから」

「・・・うん、ありがとう。

 それじゃ・・・

 行きます―――ッ!!

 

剣士の人に打ち掛かっていくフェイト。

 

 

 

激しく打ち合いながら遠ざかっていく2人を見送る。

 

「・・・さて、そうなるとこっちの相手は―――ッ!!?

 

振り返った瞬間、頭上から振り下ろされるハンマーを両手のMVSを交差させて受け止める。

眼前には歯噛みする相手。

互いの武器が、火花を上げて拮抗する。

 

「いきなりとは・・・ッ、随分な挨拶だなゴスロリ娘・・・ッ!!」

「うるっ・・・せえッ・・・!!!」

 

素早く後退する赤っ子。取り出した鉄球(?)をハンマーで打ち、叩き込んでくる。

その数4つ。

 

「魔力弾、来ます!!」

「見りゃ分かる!!」

 

大きく右に回避。相手の左から回り込むように弧を描いて飛行する。

 

(どう攻める・・・いや攻めるより回避しつつ誘導か。時間を稼げばいい訳だし)

 

そんな事を考えていると、再び鉄球を放ってくる姿が目に入る。

今度は2つ。

 

「美月! 突破すr ―――」

「6時方向より魔力弾!!」

「ッ!!?」

 

前後から挟まれる形に。どうする!?

 

(――― 取り敢えず先に前を対処!)

 

両手のMVSを投擲。

1本で、前方の2発の魔力弾を迎撃。もう1本をゴスロリ娘に投げつける。

結果は見ずに、そのまま急速垂直上昇。振り返り、追ってくる4つの魔力弾を見下ろす。

 

「直射弾だと思ってたけど、誘導弾だったのか。

 意外とテクニカルタイプだったのな」

「ですねー。武器といい、さっきまでの言動から推測される性格といい、

 パワーファイター的だと思ってたんですけど」

「実際はどうなんだろうねぇ―――

 マーキュリオン、行けッ!!

 

両手を振り抜き、光弾を4発。互いの魔力弾が激突、炸裂する。

その爆煙を突っ切って、ゴスr・・・もう赤っ子でいいや、が突撃してくる。

 

「アイゼン!!」

「Raketenform!」

 

ハンマーの基部で炸裂が起こり、魔力上昇と共にデバイスが変形していく。

赤っ子のハンマーは、一回り大きくなり、片方の先端には鋭いスパイク、

反対側にはロケットエンジンのような噴射ノズルが見て取れる。

 

「例の魔力ブーストか! えげつない形になったなッ!」

「分かり易い攻撃力強化ですねー」

「ラケーテンッ!ハンマァァッッ!!!」

「――― くッ!!?」

 

ノズルに点火、鉄槌を振りかざし、突っ込んでくる。

慌てて後退しようとするが、距離は一気に縮まっていた。

速い・・・!? あのロケット、打撃の強化だけじゃなく、自身の加速にも使ってるのか!?

軽い武装じゃ押し負ける―――!!!

 

「重量級武器ならこっちにだって!!

 ライアット・ジャレンチィィッ!!!

 

顕現するは巨大なレンチ。

大きく振りかざし、迫りくる鉄槌に叩き付ける。

一瞬の拮抗。が、すぐさま弾き合い、間合いが開く。

しかしすぐにまた突っ込んでくる赤っ子。

振り下ろされる武器に対し、何度も打ち合う。

 

「大人しくッ・・・! ぶっ倒れろッ!!」

「冗談じゃッ・・・! ないってのッ!!!」

 

くそ・・・話の通じない奴め・・・!

 

その時、彼女のデバイスのロケット噴射が止まる。

そうそういつまでもブーストは続くまいと思っていたけど、案の定だ。

その隙に距離を開け、睨みあう状態になる。

 

「・・・威力はある、な」

「ですが、あの形態の時は振り回すだけしかして来ませんねー」

「射撃を捨てての打撃攻撃力に特化・・・なんじゃないか、多分。

 ・・・一撃いれるチャンスかな・・・・・・

 美月、クスィフィアス用意しておいてくれ。 瞬時発動できるようにな」

「・・・まさか、あのモーションやるつもりですか?」

「流石にあのハンマーを白刃取りするつもりは無いぞ」

 

そんな恐ろしい事ができるか。

 

「来ます!!」

 

再びの激突。

今はロケットブースターは止まってるとはいえ――― ってまた点火したッ!?

 

「こんの野郎ッッ!!!」

「――― ぐッ・・・!」

 

横殴りの一撃を、すんでの所で躱す。

 

《美月! 次に振り下ろしが来たら―――!》

《了解!!》

 

振り回されるスパイクハンマーを、時には正面で受け、時には弾いて逸らす。

打ち合うこと数合。一際大きく、得物が頭上に振り上げられる。

 

(――― 今ッ!!)

 

振り下ろされるハンマーを、ジャレンチで受け止める。

同時に、両腰にクスィフィアス・レールガンを瞬時展開、どてっ腹に撃ち込む!!

 

「――― がッッ!!?」

 

大きく後方へ吹っ飛ぶ赤っ子。

よっし!

スーパーコーディネイターばりのカウンターモーションは大成功である。

 

「・・・祐介ー」

「あん?」

 

ほくそ笑んでいるところに、美月が声を発する。

 

「相当に怒ってますよー?」

「・・・・・・本当ね」

 

必要以上に傷つけるつもりは無かったのだが、どうやら加減し過ぎたようだ。

これまで以上にギラギラした目で睨まれてる。

 

「おおぅ・・・これは・・・大丈夫かなぁ・・・・・・」

 

この赤っ子、相当手強いな・・・

途端に、通り魔剣士さんと戦っているフェイトが心配になってくる。

 

《フェイト! そっちは大丈夫か!?》

《何とか・・・大丈夫。

 けど・・・強い・・・!》

 

確かに、赤っ子にしろ通り魔剣士さんにしろ、油断できる相手では無い。

そろそろいいかげん離脱を図りたいところなんだけど・・・・・・

 

《ユーノ! まだかかるのか!?》

《・・・転送の準備はできてるけど・・・!

 空間結界を破れないんだ! もう少し頑張って!!>>

 

もう少し時間を稼がないといけない、か・・・・・・

会話では誤魔化せないだろうな・・・・・・この子、直情的っぽいし。

 

「祐介、隙を見て捕まえちゃいますか?」

「そうは言っても・・・簡単にいくかなぁ・・・」

「こちらが隙を見せて、突っ込んできた所を狙うのが一番じゃないかと」

「ベタだが・・・取り敢えずやってみるか」

 

相手に目を向ける。

ロケット噴射は未だ止まらない。こちらを睨みつけ、突撃してくる。

ここで・・・迎撃しつつ隙を見せる・・・ッ!

 

「でりゃあぁぁッッ!!!」

 

その場で大きく横回転。ジャレンチを振り回し、投げつける。

 

「なめんなぁッ!!」

 

赤っ子が左に躱し、そのまま突っ込んでくる!!

今こっちは丸腰に見えているはず。油断して来いッ!!

目の前で大きくハンマーが振りかぶられる。

 

「ぶっ潰れろおぉッッ!!!」

 

――― ここだッ!!

 

「ゴッドソニックバスタァッッ!!!」

「――― なッ!!?」

 

動きが止まる。

緑銀の光波リングで拘束され、身動きを封じられた赤っ子。

 

「てんめぇ・・・ッ!!」

捕獲(バインド)技の1つや2つ、用意はあるんでね!!」

 

余裕を見せてはいるが、それなりに集中しないと破られそうで怖い。

このまま・・・ユーノが結界を破るまで維持できるか・・・ッ!?

 

 

「下方4時方向、魔力反応!!」

「何ッ!?」

 

下!? 何が・・・・・・

 

「ッ!? なのはッ!!?」

 

ユーノの結界から出てきてる!?

レイジングハートを構え魔力を集中している。

 

「自分もレイハさんもズタボロだってのに・・・!

 何してんだアイツは!!」

《フェイトちゃん、祐介くん、ユーノくん、アルフさん!

 わたしが結界を壊します。タイミングを合わせて転送を!!》

 

なのはからの念話。

結界を壊す!? なのはが!?

 

「周辺魔力、集束していきます!

 まさか・・・! スターライトブレイカーをッ!?」

「あの状態でか!?」

 

確かに改良型SLBには、『結界機能の完全破壊』という追加効果があったが・・・

今のなのは達には負担が大きすぎる!!

 

《無茶だッ!! やめろなのはッ!!》

《大丈夫! 撃ち抜いてみせる!》

《Count 9...8...7...》

 

レイジングハートのカウントが始まる。

 

「させっかッ!!」

「――― ッ!!?」

 

突然赤っ子が身を翻す。

注意が逸れている間に、拘束を破られたか!?。

魔力の集中に気づいたらしく、なのはの方へ向かおうとする。

 

「そっちこそ! させるかッ!!

 美月! 両肩頼む! 弾幕張れッ!!」

「了解ッ!!!」

 

その間に割り込み、両手にビームマシンガンを顕現。

両肩にはガトリングスマッシャーをセット、制御を美月に任せる。

総計10門の砲口から吐き出される大量の魔力弾。

1発1発の威力は小さくなるが、そこは弾数で圧倒する。

前方に撃ち込み、赤っ子の接近を阻止。

 

《4...3...2...》

(そろそろか・・・)

 

そう思って、なのはの方を確認したその時―――

 

「――― なッ!!?」

 

言葉を失う。

なのはの胸からは・・・・・・人の手が突き出ていた・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

呼吸が止まる。視界が狭まる。

周囲は真っ白になり、思考がクラッシュする。

・・・なん・・・だよ・・・・・・何なんだよアレはッ!?

 

「なのはぁッッ!!!」

 

身を翻してなのはの下へ向かおうとするが、それを赤い物体が阻む。

 

「どけぇッッ!!!」

 

マシンガンを破棄し動輪剣を顕現。

両手で大きく振り下ろすが、しっかりと受け止められる。

 

「―集の邪――させ――ッ!!」

 

何か聞こえた気がするが、知ったことではない。

ただ目の前の障害を排除すべく、幾度も剣を振るう。

しかし、その全てが捌かれていく事に苛立ちが高まっていく。

 

「祐―ッ! しっ――して下――!!」

「うるさいッッ!!」

 

どけッ! 邪魔だッ! 壊れろッ! 何だこの壁はッ!!

なのはッ! なのはをッ!!

 

焦る気持ちとは裏腹に、いくら打ち込もうとも赤い壁は崩れない。

 

 

 

「スターライト・・・・・・」

「――― ッ!!」

 

かすかに聞こえた声に、周囲の景色が色を取り戻す。

 

「祐介っ!」

「・・・美月・・・・・・」

 

僕は何を・・・

・・・そうだ、なのははッ!?

 

赤っ子の後方、魔力の集束ポイントに、なのはは立っていた。

虚空から伸びた腕に胸を貫かれ、ふらつきながらも、レイジングハートを振り上げる。

――― 撃つ気か!?

 

「スターライト――― ブレイカァッッ!!!

 

叫びと共に・・・桜色の閃光が夜空を貫いた。

 

 

 

 

 

      第18話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「・・・珍しいね」

祐介「何が?」

作者「いつも割と冷静な祐介が我を失うなんてさー」

美月「ホントですねー。

   私の声も聞こえないくらいでしたし」

祐介「だったらシナリオ直せよ・・・」

作者「まぁ最初は無かったシーンだけどね。思い付きで追加したのよ」

美月「バトルシーンだと、思い付きでシーン追加する事が多いですよねー。

   例のカウンターアクションとか」

作者「ビームだったら終わってるって! そう言いたいのk―――」

祐介「でも文章量はあまり増えない、と」

作者「最後まで言わせてくれんのかぃ。

   文章量はしょうがない。妄想を文章化するのって難しいんだから」

美月「それにしても相変わらず、機鋼に趣味入れてますねー」

作者「今回も結構たくさん入れたなぁ・・・

 

   MVS(メーザーバイブレーションソード)・・・・・・・コードギアス 反逆のルルーシュ >>> ランスロット等

   マーキュリオン光弾・・・・・・・奏光のストレイン >>> ストレイン系全般

   ライアット・ジャレンチ・・・・・スーパーロボット大戦Z >>> ガンレオン

   クスィフィアス・レールガン・・・機動戦士ガンダムSEED(カウンターネタはDESTINY)

                       >>> フリーダムガンダム(もしくはストフリ)

   ゴッドソニックバスター・・・・・勇者エクスカイザー >>> ゴッドマックス

   ガトリングスマッシャー・・・・・機動戦士ガンダム戦記 等 >>> RX-81 ジーライン等

   動輪剣・・・・・・・・・・・・・勇者特急マイトガイン >>> マイトガイン

 

   ・・・以上かね?」

祐介「作者の趣味の方向性が分かるなぁ・・・・・・」

 

 

 



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第19話 結集! 迎撃準備開始せよ!

 

 

 

夜空を貫く桜色の閃光。

その奔流は渦を巻き、周りの魔力を吹き飛ばしていく。

 

「結界機能の破壊を確認!!」

 

美月の報告を聞きながら、なのはの下へ急行する。

レイジングハートを取り落し、その体が傾く。

 

「なのはッ!!」

 

地面に倒れ込む前に、すんでの所で抱き止める。

胸を貫いていた腕は消えていた。

 

「なのはッ! おいしっかりしろなのはッ!!」

 

返事は無い。その瞳は開かれる事はなく、体にも力は入っていない。

 

「転移魔法を確認。相手勢力、離脱するようです」

「そんな事はどうでもいい!!

《ユーノッ!! 急いでくれ!!!

 あとアースラに連絡をッ!!!》」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第19話   結集! 迎撃準備開始せよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生・・・容態は・・・?」

 

時空管理局本局。

次元空間に浮かぶそれは、その名の通り、管理局の本拠地たる巨大な施設である。

あの事件からすぐ、アースラに保護された僕たちは本局へ急行、なのはは医務室へ移送された。

 

『外傷は大したことはない。

 ただ、リンカーコアが異常に小さくなっている。

 だが問題ない、若いからね。

 十分な休養をとれば、すぐに回復するさ』

「そう、ですか・・・・・・」

 

モニタの向こう、先生からの連絡を受けて、胸を撫で下ろす。

 

「大事はなかった様だな」

「ああ、少し休めば大丈夫だってさ」

 

隣にいたクロノも少しホッとしたようだ。

 

僕らは医務室ではなく、情報解析室の一つにいた。

ちょうどクロノに状況の説明を求められていたので、戦闘データの提出と報告を行っていたのだ。

 

 

 

 

 

報告を終え、2人でメンテナンスルームへと向かう。

 

「すまなかったな。本当は医務室に行きたかったんじゃないか?」

「まぁ・・・ちょっとはな・・・

 でも、何かできる訳じゃないからな。邪魔になるかもしれんし」

「そうは言うが、かなり心配だったんだろう。

 聞いてるぞ、なのはが攻撃された時、かなり取り乱したそうじゃないか」

 

クロノが意地悪い笑みを浮かべて言ってくる。

な、なんでそれを・・・ってバラす奴なんか1人しかいない。

 

「美月ーッ!!」

「私は悪くないですよー?

 ありのままに戦闘報告しただけですしー♪」

 

そんな話をしながら、デバイスメンテナンスルームに着く。

ユーノが、レイジングハートとバルディッシュを調べているはずだ。

ドアが開くと、中にはユーノとアルフさん、そして・・・・・・

なのはとフェイトの姿があった。

 

「なのは! ・・・良かった元気そうで」

「にゃはは・・・ごめんね祐介くん、心配かけて」

「いや、無事でなによりだ・・・

 フェイトも、怪我は平気か?」

「うん、大丈夫。ありがとう、祐介」

 

大事ないという連絡はあったけど、実際自分の目で見ると、改めて安心した。

・・・しかし、検査台の上にある2人のデバイスは、無残な姿になっている。

 

「ユーノ。レイジングハートとバルディッシュ、どんな感じなんだ」

「・・・あんまりいい状況とは言えない。

 今は自動修復をかけてるけど・・・

 基礎構造の修復が済んだら、他は部品交換とかが必要になると思う」

 

自動修復で済まないって事は・・・半年前の損壊の比ではないという事、か。

そんな中、アルフさんが口を開く。

 

「そういえばさぁ・・・

 アイツらの魔法、何か変じゃなかった?」

「あぁ、そういえば・・・魔法陣の形が変だったな。

 みんなの魔法陣はさ、丸っぽい形してるだろ。

 あの人たちは・・・何かこう、三角みたいな形で・・・」

「こんなのです」

 

美月が映像を出す。

頂点に円を持つ三角形。変わった形してるなぁ・・・・・・

 

「あれは恐らく、ベルカ式だ」

 

クロノが答えを口にする。

 

「ベルカ式? 何だそれ?」

「遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法・・・

 優れた術者は騎士と呼ばれる」

「万能性を排した、タイマン仕様魔導師って事か?」

「必ずしもそういう訳ではないんだが・・・・・・まぁ概ねそんなものだ」

「確かに、あの人・・・ベルカの騎士って言ってた・・・・・・」

「そう言われてみれば・・・そんなこと言ってたな」

「最大の特徴は、デバイスに組み込まれた『カートリッジシステム』って呼ばれる

 武装だよ。儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に

 爆発的な破壊力を得る事ができるんだ」

「あの魔力増大には、そんなカラクリがあったんですねー」

 

フェイトやユーノも加わり、美月の映し出す映像に目を向ける。

長剣やハンマーの基部で炸裂しているもの、あれがカートリッジか・・・

 

しかし・・・魔力ブーストの正体は分かっても、不明な事はまだある。

リンカーコアが小さくなったなのは。あの腕に何をされた?

相手の人数。赤っ子、剣士(シグナムさん、だったか?)、

使い魔(アルフさんが戦ってた)、なのはを貫いた腕。

マドハンドを召喚したのでもなければ、最低でも4人。あの通り魔集団は全部で何人なのか?

いや、そもそも・・・・・・何故、僕やなのはが襲われた? 

 

様々な疑問や憶測が頭の中をぐるぐると回る。

そんな時、時間を確認したクロノが、僕たちに声をかける。

 

「フェイト。そろそろ面接の時間だ」

「あ・・・うん」

「なのは、祐介。君たちもちょっといいか」

「・・・え?」「・・・何なんだ・・・?」

 

2人で顔を見合わせる。首を傾げながら、クロノとフェイトについて部屋を出た。

 

 

 

 

 

「・・・なぁクロノ。フェイトの面接って何だ?」

「大した事はない。PT事件関連の、最後の確認の様なものだ」

「え゛・・・」「それに、私たちも・・・?」

 

PT事件。プレシア・テスタロッサの起こした、半年前の事件。

記憶にも新しい、思い出深い出来事である。

 

「裁判は終わったんだろ? まだ事情聴取とかあるのかよ」

「言っただろう。本当に確認の様なものだ。

 別に、事情聴取とかそんな大層なものじゃない。

 君たちに同席してもらおうというのは、面接官の意向だ」

「何でまた・・・」

「行けば分かるさ」

 

 

 

そして連れて来られた一室。

 

「失礼します」

「クロノ。久しぶりだな」

 

部屋の中にいたのは老年の男性。

うわぁ・・・何ていうか・・・すっげーかっこいい。

素敵に歳を重ねた紳士(ジェントルマン)って感じ。

頭髪には白い色が混じるものの、その風格は老いを感じさせない。

かといって威圧的ではない、柔らかな雰囲気。

 

「ご無沙汰しています。グレアム提督」

 

ギル・グレアム提督。

管理局の階級制がどうなっているのかは知らないが、まぁ提督ってくらいだから偉いんだろう。

・・・そういやリンディさんも提督だったか。

 

「保護観察官といっても、まぁ形だけだよ」

 

席を勧められ、僕たちはグレアム提督の対面に座る。

そういえば、フェイトの処分は保護観察措置だったな。

この人が、観察官をするのか。

 

「リンディ提督から、先の事件や君の人柄についても、聞かされたよ。

 とても優しい子だとね」

 

柔和な笑み。

おかげでフェイトもリラックスしたような風で微笑んでいる。

 

資料を見ていたグレアム提督が何かに気づく。

 

「そうか。なのは君や祐介君は、日本人なんだね」

「あ、はい」

「懐かしいな。日本の風景は」

「え・・・?」「以前にいらした事が?」

「私も、君たちと同じ世界の出身でね。イギリス人だ」

「えぇ・・・!?」「そうなんですか!?」

 

おぉぅ・・・マジの英国紳士だったのか。

 

「ははは、魔法との出会い方まで、私とそっくりだ。

 私が助けたのは、管理局の局員だったがね。

 ・・・もう、50年以上も前の話だよ」

 

懐かしむかのように語る提督。

世間は広いのか狭いのか分からないもんだ。

知らないだけで、僕たちの世界にも結構魔導師が埋もれてたりして。

 

 

 

「さて・・・フェイトくん」

「はい」

 

話に区切りがついた所で、提督が切り出す。

・・・本題か。

 

「君は、2人の友達なんだね?」

「はい」

「約束してほしい事は1つだけだ。

 友達や、自分を信頼してくれている人たちの事は、決して裏切ってはいけない。

 それが出来るなら、私は君の行動について、何も制限しない事を約束しよう。

 ・・・出来るかね?」

「――― はい、必ず」

 

真剣な提督の眼差しに、真っ直ぐ答えるフェイト。

 

「いい返事だ」

 

提督に笑顔がこぼれる。

僕らにも安堵の笑みが浮かぶ。

これで・・・本当に終わりだ。

フェイトもクロノも他の人たちも・・・半年間、みんな頑張ったな。お疲れ様。

 

 

 

 

 

「提督」

 

面接も終わり、退室しようとした時。

クロノが口を開く。

 

「もう、お聞き及びかもしれませんが・・・

 先ほど、自分たちがロストロギア『闇の書』の捜索・捜査担当に決定しました」

「そうか、君がか・・・

 言えた義理ではないかもしれんが・・・無理はするなよ」

「大丈夫です。

 『窮時にこそ、冷静さが最大の友』・・・

 提督の教え通りですよ。

 それでは・・・失礼します」

 

クロノは何かまた仕事が入ってるみたいだな。執務官どのは忙しそうだねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親子に・・・?」

 

あの後、一応の手続きなどへ向かったフェイトやクロノと別れ、

僕たちはエイミィさんと雑談していた。

 

「つまり、フェイトがハラオウン家の養子になるって事ですか?」

「うん。まだ本決まりじゃないけどね。

 フェイトちゃん、事件で天涯孤独になっちゃったでしょ。

 それでリンディ艦長が、養子縁組の話をね」

「フェイトさんの方はどうなんですかー?」

「まだ心は決まってないみたい。

 まぁ急いで決めるような事じゃないからね。

 艦長も、じっくり考えてくれればいいって言ってるし。

 みんなはどう思う? この話」

「僕は良いんじゃないかと思いますよ。いい家族になりそうだし」

「んーと、私も、すごくいいと思います」

「私も、良いお話なんじゃないかと。

 もっとも、フェイトさんの気持ち次第ですけどねー」

「そっか」

 

エイミィさんが微笑む。

僕らもつられて笑みが浮かぶ。

 

「でも、そうするとクロノくんお兄ちゃんですね、フェイトちゃんの」

「そうそう。でも、結構気が合うみたいだし、案外いい感じの兄妹かも」

「何だかんだで妹に甘い兄貴になりそうだな」

 

そんな話をしていると、エイミィさんに通信が入る。

モニタに浮かぶのは――― リンディさんか。

 

『エイミィ。主要スタッフ、第1ドック前に集合よ』

「分かりました、艦長」

『そうそう、なのはさんと祐介くんは一緒かしら?

 2人にも来てもらって頂戴』

 

おや? 僕たちも?

呼ばれたって事は、今回の仕事は僕たちにも関係あるって事か・・・?

クロノの言ってた『闇の書』とやらの事件だよな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私たちアースラスタッフは今回、ロストロギア『闇の書』の捜索、

 および魔導師襲撃事件の捜査を担当する事になりました」

 

ドック前の歓談所。アースラの主要スタッフが集まり、リンディさんの言葉を聞く。

・・・こんな所で集まって迷惑じゃないかと思わないでもないが、まぁいいんだろう。

 

「ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、

 事件発生地の近隣に、臨時作戦本部を置く事になります」

 

そういえばアースラは整備ドックに行ってたんだっけ。

それで本陣を現地に置く、と。

 

「分割は・・・

 観測スタッフのアレックスとランディ」

「「はい!」」

「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同」

「「「「「「はい!」」」」」」

「司令部は、私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん。

 ――― 以上3組に分かれて駐屯します」

 

そっか。フェイトは嘱託とはいえ管理局の魔導師だから、正式な頭数に入ってるのか。

僕たちはまた、現地協力者って事で参加になるのかね。

 

「ちなみに司令部は・・・

 なのはさんや祐介くんの保護を兼ねて、なのはさんのお家のすぐ近所になりま~す」

 

リンディさんが笑顔で口にする。マジですか。

予想もしていなかった展開に驚く。

僕やなのはも襲われたから、海鳴が事件発生場所の1つであるのは分かってたけど。

まさか本陣を海鳴に持ってくるとは思わなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と。こんなもんかね」

「あぁ、だいたい揃っただろう」

 

翌日。

ハラオウン家のお引越しを手伝い、クロノと必要物の買い出しに出ていた。

 

「しっかしまさか、海鳴が本拠地になるとは思ってもなかったな」

「詳しい事はまた話すが、色々と条件が揃っていたんだ」

「そういや、お前やフェイトって学校行くのか? カモフラージュ的に」

「フェイトは、なのはと同じクラスへの編入手続きを済ませたよ。来週から通う事になる。

 なのはの護衛、という名目はあるが・・・それが無くても通わせてやりたいとは思うさ」

「やっさしー。流石お兄ちゃん。で、お前は?」

「茶化すなよ。

 僕にそんな時間があると思うか?」

「それもそうか。

 ・・・平日の朝とか昼間は出歩くなよ? 補導されるぞ」

「・・・気を付ける」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー」

 

両手に荷物を抱え、ハラオウン家の住むマンションへと。

荷物を下ろし、一息つく。ふぃ~、疲れた疲れた。

・・・おや?

 

「エイミィさん、みんなは?」

 

リンディさんやフェイト、僕と同じ様に手伝いに来ていたなのはもいない。

アルフさんとユーノも。

 

「さっき、なのはちゃんのお友達が来て、外に休憩しに行ったよ。

 艦長も、なのはちゃんのご両親にご挨拶に行くって」

 

大方、アリサとすずかでも来たんだろう。

うーむ、入れ違いで置いて行かれたか・・・まぁいいが。

 

「クロノくんと祐介くんも休憩したら? お茶入れるね」

「ああ」「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

エイミィさんのくれたお茶でひと休み。

ふと、クロノに聞きたい事があったのを思い出す。

今回の事件について、まだ聞いていなかったな・・・

 

「なぁ、そういえば・・・今回の事件ってどんな事態になってるんだ?

 本拠地をここに持ってきたのも、条件がどうこうって言ってたし」

「そうだな・・・今の内に説明しておこう。

 エイミィ、モニターを」

「はいは~い」

 

大型モニターに映し出される姿。

どっかの魔導師みたいだが・・・

手に、何か本の様なものを持っている。

 

「僕たちの任務は、ロストロギア『闇の書』の捜索・捜査だ。それは知っているな」

「ああ。ロストロギアって事は、どうせまた厄介なシロモノなんだろ」

「まあな。最大の特徴は、そのエネルギー源だ。

 闇の書は、魔導師の魔力と魔法資質を奪うために、リンカーコアを喰う」

「なのはのリンカーコアが小さくなったってのは、その被害か・・・

 ――― ってこの袖ッ!!」

 

モニターに映る魔導師。闇の書を持つその手に見覚えがあるのに気付く。

 

「・・・・・・間違いない」

「なのはさんの胸倉に手突っ込んだのはこの人ですねー」

「突っ込んだっていうか、手が生えてきてたけどな」

 

マドハンドじゃなくて、転送魔法の一種だろうか。

それはともかく、だ。

 

「つまり、僕やなのはが襲われたのは、

 その闇の書とかいうのにリンカーコアを喰らわせるため、って事か」

「そうだ。そして、同じような魔導師襲撃事件が、多数発生している。

 それも、ここから個人転送で行き来できる範囲で、だ」

「あの集団の根城がこの近くにある、という事ですねー」

「それで海鳴に司令部か。

 闇の書にリンカーコアを喰わせると、どうなるんだ?」

「闇の書はリンカーコアを喰うと、蒐集した魔力や資質に応じて、ページが増えていく。

 そして、最終ページまで全てを埋める事で、闇の書は完成する」

「完成すると・・・?」

「・・・少なくとも、碌な事にはならない」

 

全く・・・物騒な物を持ち込んでくれたもんだ。

 

クロノの険しい顔を横目に考える。

あの人たちは、何が目的で闇の書を・・・・・・

 

「また理由が不明なままの戦い、か」

 

半年前――― フェイトとのジュエルシード争いが思い起こされる。

あの時の様な、相手の事は何も分からずに戦うしかない状況。

あまりいい気分ではない。

 

「ま、目的は分からなくても・・・

 僕たちを襲って、なのはを傷つけた仕返しは、させてもらうけどな!」

「そうですそうです!

 何処からでも来いやー!ですねー」

 

とにかく・・・事件解決に向けて、こちらの態勢は整えた。

事態がどう動くかは分からない。

 

今は・・・自分に出来る事をやるしかない。

 

 

 

 

 

 

      第19話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「なのはさん無事で良かったですねー」

祐介「そうだな。リンカーコアは喰われたけど」

作者「・・・うーむ」

祐介「どしたよ?」

作者「・・・機鋼が出てこないと寂しい」

祐介「出てきても文才の無さは誤魔化せないぞ?」

作者「それでも、趣味的に」

美月「まぁまぁ、今回は情勢の変化する場面ですし」

祐介「ハラオウン家も引越したしな」

作者「海鳴が事件の中心地になっちゃったねぇ」

美月「ホントに解決に向かうんですかねー」

作者「楽しみですねー」

祐介「いやお前は楽しみにしてる場合か!

   ちゃんとシナリオ考えろよ!」

作者「・・・分かってますよー」

 

 

 



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第20話 戦う意志

 

 

 

――― 相手に向かって走る。

横に振り抜かれる武器を、身を低く屈め躱す。

同時に、左手の得物を突き上げるが、相手は上体を反らして回避。

そのまま後退する――― と見せかけて蹴り上げられる足。

サマーソルトの要領で放たれるその蹴りに、今度はこちらが上体を反らす。

その勢いと共に、右手の武器を振り上げるが、今度こそ後退していた相手を捉える事は無かった。

体勢を立て直し、少し距離をとった相手を視界に収める。

 

お互いに間合いの外からの睨み合い。

・・・先程から、何合か打ち合って離れてを何度も繰り返している。

そろそろ何か打開策を考えないとな・・・

 

攻めるか、受けるか―――

一瞬の逡巡。

先に動いたのは相手だ。

素早く距離を詰め、手にした長柄の戦斧を振りかぶる。

振り下ろされるそれを、両手の刀で横から叩いて打ち払い、そのままの勢いで上段蹴りを放つ。

しかし、それは身を捻って躱され、すぐさま反撃に、戦斧が振り上げられる。

すんでの所で躱し、再び武器を振るう。

 

戦斧と二刀の攻防が続く。

そんな一瞬、相手の体勢が崩れ、武器が泳ぐ。

その隙を逃さず両手で戦斧を打ち飛ばした。

――― だがその瞬間、違和感に気付く。

 

(――― 軽い!?)

 

手応えの軽さに異常を感じ、拳を振りかぶる相手を見て、瞬時に理解する。

相手はあえて武器を手放していたのだ。

いやもしかしたら、体勢を崩した所から策だったのかもしれない。

 

突き込まれる拳は、すぐそこまで迫っていた―――

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第20話   戦う意志

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐介くん、フェイトちゃん、はいタオル」

「サンキュ」「ありがとう、なのは」

 

なのはの差し出してくれたタオルを手に、座り込む。

 

ハラオウン家の近く、とあるマンションの屋上。

リンディさんのコネで(どんなコネだよ)屋上を貸し切って、3人で訓練に来ていた。

もっとも、なのはは見学のみにさせているが。

 

「あー・・・疲れたー。

 流石にフェイトは強いよなー」

「そんな事ないよ。裕介だって相当だよ。

 まさか、最後の一撃を捌かれると思ってなかったし」

「いや、あれはたまたまだって」

 

使っていた木刀を片付けながら答える。

 

先程の模擬戦の最後。

眼前に迫るフェイトの拳を、肘打ちで軌道を逸らす事ができた。

本当にギリギリだったけど・・・・・・

実戦だったら、あれに雷撃付与されるのかなーとか思うと冷や汗が止まらんな。

 

「そういやフェイト、そのウッド・バルディッシュは使えそうか?」

「うん、形状とか重心も本物と同じにしてくれてるんだね。

 バルディッシュがいない今、練習にはもってこいだよ。

 わざわざありがとう、祐介」

 

手にした戦斧、木製のバルディッシュを掲げるフェイト。

 

「大したものじゃないけどな。

 丸太を削り出して、金属片で重量や重心を調整しただけのものだけど、

 喜んでもらえたなら何よりだ」

「本当にそっくりだねー。

 ねぇねぇ祐介くん、わたしにはないの? レイジングハート」

「お前は安静中だろうが。

 来週にはレイハさんも復活してくるんだろ?」

「えぇーそんなぁ・・・」

「いやまぁ、欲しいってんなら作ってやらんでもないが・・・」

 

そんな風に雑談しているうち、話題は事件に関するものにシフトしていく。

 

「フェイト。クロノが言ってたが、昨夜もまた襲撃事件あったんだって?」

「そうなのフェイトちゃん!?」

「うん。ここからちょっと離れた世界だったみたい。

 魔導師が十数人と野生動物が、約4体って・・・」

「野生動物?」

「リンカーコアがあれば、人間じゃなくてもいいらしいんだ」

「管理局が出てきて、なりふり構っていられなくなったってトコか」

「ねぇ、闇の書が完成するとどうなるの?」

「さぁな。ロクでもない事になるらしいけど。

 次元干渉の可能な程の力を発揮するらしい、だとさ」

「一番の厄介は、その転生機能って言ってましたねー。

 闇の書が破壊されるか、持ち主が死ぬかすると、別の世界で再生するらしいんです。

 まったく、たちが悪いですねー」

 

そんな中、フェイトが静かに切り出す。

 

「・・・あの人たちの事、どう思う?」

「あの人たち・・・って闇の書の? フェイトちゃん」

「うん、闇の書の・・・守護騎士たち」

「「通り魔」」

 

美月と2人で即答する。

 

「そんな身も蓋もない・・・

 でもわたしも、急に襲い掛かられて、すぐ倒されちゃったから・・・

 フェイトちゃんは、あの剣士の人と、何か話してたよね」

「うん・・・少し、不思議な感じだった」

「不思議?」

「上手く言えないけど・・・悪意みたいのを全然感じなかったんだ。

 祐介は? あの赤い子と戦って何か感じた?」

「・・・目的をとにかく果たそうとする強い意志は感じたかな。

 いちいちセリフが乱暴だったけど。あれはただの性格だろ」

「目的、かぁ・・・

 闇の書の完成を目指す理由とか、分かればいいのにね」

「強い意志で自分を固めちゃうと、周りの言葉って、なかなか入ってこないから・・・

 私も・・・そうだったしね・・・・・・」

「フェイト・・・」「フェイトちゃん・・・」

 

半年前の事を思っているのだろうか、フェイトの顔は、少し憂えて見える。

確かに・・・プレシアさんの助けになる事を何よりも信じていた、

信じようとしていたフェイトは、当初誰の言葉にも耳を貸さなかった。

だけど・・・

 

「でも・・・言葉をかけるのは、想いを伝えるのは・・・

 絶対無駄なんかじゃないって・・・私は思う。

 なのはが・・・祐介が・・・

 みんなが何度も言葉をかけてくれたから・・・私は今ここにいる」

「うん! そうだよフェイトちゃん」

「そうだな・・・

 お互いの気持ちが分からないまま戦う事になったとしても・・・

 言葉を重ねれば伝わるかもしれないんだ」

「私たちが、その証明ですもんねー」

 

そう、無駄になんかならない。

あの出来事を乗り越えた僕たちだからこそ、それを信じられる。

 

「そのために・・・想いを伝えるために・・・

 戦って・・・勝利が必要なら・・・

 私は迷わない、迷わず戦える。

 だから・・・強くなるよ。想いを貫くために」

「うん・・・わたしも、もっと強くなる。

 頑張ろう! フェイトちゃん、祐介くん!」

「ああ。

 向こうも必死なんだろうけど、負けられないのはこちらも同じだからな!

 ――― ただし!!」

 

まだ言うべき事がある。

ただでさえ、この2人は無茶しがちなんだから。

 

「2人とも、滅多な行動は自重するように!

 クロノも言ってたと思うけど、連中が来たら、今はまず逃げろよ。

 間違っても相手にしようとしない事!」

「は、は~い」

「分かってるよ、祐介」

 

本当に分かってるのか不安だが・・・2人が復帰するまで、僕たちが頑張らないとな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日の刻が過ぎ・・・

魔力蒐集の痕跡は発見されるものの、捜査に大きな進展は無いまま週が明ける。

いい知らせといえば・・・・・・

 

「それでユーノくん、なのはちゃん達の具合は?」

『はい、なのはも、デバイス2機も、無事完治です』

「そっか、まずは一安心だな。ユーノ、今どの辺りだ?」

『2番目の中継ポートだよ。

 後10分くらいで、そっちに戻れると思う』

「了解。気を付けて戻って来てね」

 

本日、なのは達は管理局の本局へ出向いていた。

なのはの検査、そして修復整備の済んだレイジングハートとバルディッシュの受取。

僕はハラオウン家で、その知らせを待っていたのだ。

 

「重ね重ねすまないな、祐介」

「気にすんな。

 有事の際を考えると、クロノ1人にここを任せるのは、それこそ申し訳ない」

「でも、みんな無事に完治して良かったね。

 みんなが戻ったら、少しデバイスの説明しないと――― っ!!?」

 

   ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 

その瞬間、モニターにアラートが表示される。

 

「な、なんだッ!?」

「エイミィ!!」

「これはマズいよ! 至近距離で、緊急事態!!」

 

リンディさんが慌てて部屋に入ってくる。

 

「エイミィ、状況は?」

「艦長、周辺警戒中の武装隊より緊急連絡です!」

 

モニターに映るアースラの武装隊員。

 

『都市部上空にて、捜索指定の対象2名を補足しました。

 現在、強装結界内部で対峙中です』

「相手は強敵よ。交戦は避けて、外部から結界の強化と維持を!

 至急、現地へは増援を送ります!」

『はっ!』

 

リンディさんがこちらに向き直る。

 

「クロノ! 現地へ急行して指揮を!」

「了解です! 行くぞ祐介!!」

「あいよ!!」

 

いよいよおいでなすったな。

自分を貫くため、やれる事をやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現地上空に到着すると、眼下では10人程の武装局員たちが、2人の人物を取り囲んでいた。

 

「あれは・・・」

「赤っ子ですねー」

 

見覚えのあるゴスロリ娘。傍にはもう1人、男の人がついている。

アルフさんと戦ってた使い魔か。犬耳生えてるし。

 

「どうするクロノ」

「まずは封じ込めが優先だ。

 各員、結界の強化を最優先しろ!」

『了解!』

 

そう言って、魔力を集中させるクロノ。

 

「クロノ、このままみんなを結界に回すと、あいつら攻撃に転じてくるぞ!!」

「だから――― こうするのさ!

 スティンガーブレイド・エクスキューションシフトッ!!

 

水色の魔力刃が無数に放たれる。

降り注ぐ剣の雨、優に100は超えるだろうか。

使い魔の人がシールドを展開するのが見えたが、そこに殺到する攻撃。

大きな魔力爆発と共に、爆煙が立ち込める。

 

「なるほど。着弾時の爆煙による視界攪乱か」

「あーでも、攻撃自体はあんまり通ってなさそうですねー」

 

視界が晴れ、現れる姿。

ワンちゃんのシールドを抜けた魔力刃は、雀の涙ほど。

赤っ子にいたっては無傷。

 

「・・・さて、どうするよ?」

「結界強化のために散開する時間は稼いださ。

 後は・・・あの2人を確保するほかないだろう」

「ああ、そうだな」

 

どっちがどっちを相手するか・・・・・・

その時、エイミィさんから通信が入る。

 

『武装局員、配置終了! OKだよ、クロノくん!』

「了解!」

『あとそっちに今、助っ人を転送したよ!』

「助っ人!?」

「って事は! あぁもう、また無茶するんだよなぁ!」

 

このタイミングでここに来る助っ人なんて、あいつらしかいないだろ!

視線を巡らせると、その予想を裏切ることなく、眼下のビル上に立つ彼女たちの姿。

 

それぞれの愛機を手に、声を上げる。

 

「レイジングハート・エクセリオン!!」

「バルディッシュ・アサルト!!」

「「Drive ignition.」」

 

そして、彼女たちもまた・・・戦いの場へと降り立つ―――

 

 

 

「祐介、君は彼女たちと合流しろ」

「クロノは?」

「幸い人手は増えた。

 僕はユーノたちと合流して策を練る。連中との直接戦闘は任せるぞ」

「了解」

 

クロノを残し、ともかく一度下へ降りる。

 

「よ。なのは、フェイト」

「祐介くん・・・」

「状況は見ての通りだが・・・大丈夫か?」

「あ! 裕介、見て下さい!

 お2人のデバイス、修復だけじゃなくて、改装されてますよ!」

「(レイハさんにはマガジン形状のパーツを追加、

  バルディッシュにはリボルバー状のパーツが追加・・・)

 まさか・・・それって・・・」

「うん・・・カートリッジシステム・・・みたい・・・」

 

全く・・・使い手が使い手ならデバイスもデバイスだな。

聞いた話じゃ、カートリッジシステムはミッド式とは相性良くないらしいのに。

ましてや、デリケートなインテリジェントデバイスならなおさらだ。

 

「無茶するなぁ・・・」

「It may be so.(そうかもしれません)」

「But it's that we wished.(しかし、私たちが望んだ事です)」

 

はっきりと答える2機。

 

「ま、覚悟があるのなら何も言うまい。

 それよりも・・・だ」

 

上空の2人を見上げる。

どうしたもんかな・・・

 

 

 

「私たちは・・・あなた達と戦いに来た訳じゃない。

 まずは話を聞かせて」

「闇の書の完成を目指してる理由を―――」

「あのさぁ・・・」

 

なのはの言葉を遮る赤っ子。

 

「ベルカの諺に、こういうのがあんだよ。

 『和平の使者なら槍は持たない』」

 

意味が分からないのか、首を捻るなのはとフェイト。

言わんとしてる事は・・・まぁ何となく分からないでもない。

 

「話し合いをしようってのに、武器を持ってやって来る奴がいるかバカ!

 って意味だよバーカ!!」

 

ある意味正論ではあるが、こちらにも言いたい事はある。

 

「いきなり有無を言わさず襲い掛かって来た子がそれを言う!!?」

「そりゃそうだ。いくら正論でも通り魔に言われたかないな」

「それにそれは、諺ではなく、小噺のオチだ」

「うっせ! いいんだよ細かいことは」

 

そんなどうでもいい言い合いをしてると、激しい音とともに上空から何かが急降下してくる。

あれは・・・結界を突破して来たのか・・・!

そんな事するのはあちらの仲間くらいだ。

 

(・・・って事は・・・・・・)

 

轟音とともに、隣のビルに着地した姿が、ゆっくりと立ち上がる。

その姿にフェイトが呟く。

 

「シグナム・・・!!」

 

この構図は・・・また1on1かなぁ・・・

なのはもフェイトも間違いなくリベンジしたいだろうし。

 

「2人とも、シグナムの相手は・・・私にやらせて」

「分かってる。わたしも・・・あの子とはお話しないといけないし・・・!」

 

・・・ですよね。うん、分かってた。

 

《アルフさん、あの使い魔の人どうします?》

《アタシも野郎に言いたい事はあるんだけどね。あんたに任せるよ。

 アタシはユーノたちのサポートに回る》

《分かりました。了解っす》

 

さて・・・

相手は決まった。

 

再び・・・戦いの幕が上がる―――

 

 

 

 

 

      第20話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「再戦までになのはさん達の復帰が間に合って良かったですねー」

祐介「ギリギリだったな」

作者「間に合わないシナリオも考えたんだけどね。

   ・・・まとまらなんだ」

祐介「もっと妄想力を高めろ!」

作者「妄想を文章に書き起こすのって大変なんだぞ!

   戦闘シーンなんか、頭の中では激しく展開してても、書くとショボくなるし」

美月「それは作者の問題ですよー」

祐介「そうだぞ、もっと頑張れ」

作者「悩んでも悩んでも、シナリオは進まないのよ?」

祐介「それでもだ」

作者「鬼・・・・・・」

 

 

 



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第21話 激突! 唸れ鋼の拳

 

 

 

相手と対峙する。

数は3対3。

 

「行くぞ」

「うん!」

「2人とも気を付けて」

 

それぞれの目標へと飛び出す。

なのはは赤っ子へと、フェイトはシグナムさんへと。

そして僕は、使い魔の人へと。

 

(2人とも・・・頑張れよ・・・!)

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第21話   激突! 唸れ鋼の拳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デバイスを強化してきたようだな」

「らしいですよ」

 

僕たちの目線の先には、激しくぶつかり合う2つの戦い。

それとは対照的に、こちらは静かな幕開け、いや、まだ戦いが始まってすらいないが。

 

「きっと、リベンジに燃えてるんじゃないですかね」

「お前はどうなのだ」

「僕は別にリベンジのつもりはないんですが」

「管理局としては、是が非でも我らを捕らえようと思うのではないか」

「そうですね・・・

 僕と、あの白い子は局員じゃなくて、一応はあくまで協力者なんですが・・・

 まぁ、自分の住んでる街に物騒な物が持ち込まれる事件なんか、

 早く解決してほしいとは思ってますよ」

 

お互いに向き直り、視線が交わる。

 

「だが我らにも、譲れんものがある」

「でしょうね。そう言うと思ってましたよ」

 

両者とも構える。

 

「お名前を伺っても?」

「ヴォルケンリッター、盾の守護獣ザフィーラ。

 お前は・・・神代だったか」

「ご存じ頂いたとは光栄ですね」

 

ザフィーラさんの眼に油断は無い。

こりゃ・・・こっちも油断できないな・・・

視線が交錯し、相手の出方を伺う。

 

 

 

 

 

(――― 来る!!)

 

正面から突進してくるザフィーラさん。

相手の特性がまだ分からない以上、まずは様子見だ。

取り敢えず、装備がガントレットっぽいので、アルフさんと同タイプだと仮定する。

 

「ふんッ!!」

 

繰り出される正拳突き。

身を捻りながら急上昇して回避。

右手の指先を伸ばし、相手へ向ける。

 

「5連メーザー砲ッ!!」

 

指先から5筋の小規模砲撃魔法を発動。

ザフィーラさんはシールドを展開、防御の構えに入る。

砲撃が着弾し、爆煙が発生する。

ここで追撃する!!

 

「美月ッ!!」

HPD(ハイパープラズマドライブ)、右脚に着装!!」

 

右脚脛部に、タービンの様な形状の機鋼を顕現、そして突撃。

HPDが激しく回転を始める。

爆煙が晴れ始め、姿の見えた相手に向けて、右脚を回し蹴りの体勢で振り抜く。

 

「旋風回転脚ッ!!!」

「――― くッ!!」

 

両腕をクロスさせ、そこにさらにフィールド系魔法で強化して、攻撃を受けるザフィーラさん。

そして逆らわずそのまま後退して衝撃を軽減する。

 

 

 

少し距離が空く。

再びにらみ合いに。

 

「祐介、どうですか?」

「こんな一瞬のぶつかりで分かる訳ないだろ。

 取り敢えず、防御が堅いってのは分かった。

 クロノの攻撃も、ほぼノーダメージで防いでたしな」

 

さて・・・そうすると、どう相手するか。

考えている間にも再度突っ込んで来るザフィーラさん。

最初の時より速いッ!?

 

「ハアァッ!!」

「ピっ、PS装甲の顕現魔力アップ!!」

「ぐッ!!」

 

先程のお返しとばかりに振り抜かれる回し蹴りを、思わず肘で受け止める。

美月が防御力を引き上げてくれたおかげでダメージこそ無かったものの、

強化前だったら肘が砕けてたかもな・・・

 

「ハアアァァァッッ―――!!!」

「うわわわわわッ!?」

 

考える間もなく、息もつかせぬラッシュを打ち込んでくる。

あるものは受け、あるものは逸らしと、防戦一方に追い込まれる。

とにかく状況を変化させないと―――

 

《美月! 拡散ビーム砲スタンバイ!!》

《了解!!》

 

その間にも、拳が、蹴りが叩き込まれてくる。

――― ここから反撃だ!!

 

「くッ! こんのぉッ!!」

「むッ!?」

 

左胸部に顕現した機鋼から、激しい光が瞬き、相手の視界を奪う。

そこへすかさず、

 

「ビームブレイドキイィックッ!!」

 

MR-Q15A グリフォン ビームブレイド。

脛部前面、つま先から膝にかけて魔力刃を展開、脚を振り上げる。

が、素早く後方に飛び退いていたザフィーラさんを捕らえる事無く空を切る。

 

 

 

間合いが開くが、すぐさま相手も体勢を立て直す。

ぬぅ・・・もうそろそろ視界は戻るよな。ただの目くらましだし。

相変わらず、その眼には油断も侮りも無い。

 

「シグナムから聞いてはいたが・・・

 本当に油断のならない奴だな。

 我らの将に一撃を入れただけはある」

「どうも・・・

 感心してもらったところで、話とか聞いて頂けると嬉しいんですがね」

「聞けん・・・なッ!!」

 

また来たッ!!

受けだけに回ってたらきりがない!!

魔力消費は多少かさむが・・・やるか!!

 

形態変化(チェンジモード)ッ!! シャイニングガンダァァムッッ!!!」

 

変じるは、白・青・赤を基調とし、想いを拳に乗せる闘士の姿。

GF13-017NJ シャイニングガンダム。

これなら―――!!

 

突き出される拳を、正面から受け止める。

 

「でやああぁぁッッ!!!」

 

そのまま反撃に、超高速で拳の連打を打ち込む。

防御に回るザフィーラさんへ、続いて回し蹴り。

前腕で受けられるが、さらに追加で頭部バルカン砲と胸部マシンキャノンを至近距離での斉射。

 

「ぬぅッ!!?」

 

これは流石に入ったか!?

――― と思ったのも束の間、反撃の拳が繰り出される。

腕部アーマーで受け止め、左脚で蹴り上げからの踵落とし。

相手は半身で躱し、その体勢から後ろ回し蹴りが飛んでくる。

その脚を下から拳で叩き上げ、軌道を逸らし、そのまま後方に跳躍。

追撃のために突き出される拳に、こちらも拳で迎撃すると見せかけて―――

 

「シャイニングショットッ!!」

 

腕部アーマーに内蔵されているビーム砲から魔力弾を発射、展開された

シールドに着弾し怯んだ隙に、左腰サイドアーマーにマウントしてある

ビーム・ソードを右手で抜き放ち、上段から振り下ろす。

 

「はあッッ!!!」

「させんッ!!」

 

右手首を左手で掴まれ、押さえられる。

間髪入れず、左手で2本目のビーム・ソードを逆手で振り上げるが、

これも右手で展開した小さなシールドで防がれる。

 

「・・・くっそッ!」

 

相手の左手に向けバルカンを発射。

掴む力が緩んだ所に、展開されていた右手のシールドを蹴り飛ばすようにして後退する。

 

距離が開いたのも一瞬。

再び、お互いに突撃する。

繰り広げられる拳と脚の応酬。

躱し、受け止め、捌き、拳を打ち込む。蹴りを放つ。

 

一進一退の攻防。

その中でも何とか情報を引き出そうと粘る。

 

「闇の書を完成させようとしてる理由を! 教えてはくれないですかねッ!!」

「話す事など――― 無いッ!!」

「ああもうッ! またこのパターンッ!!」

 

左右の拳の連打から左脚の後ろ回し蹴り。躱されるが、その勢いのまま

右の腕部アーマー後部のブースターを噴射、威力を増した拳を突き出す。

ザフィーラさんは両手をクロスさせて受け止め、素早く後方に跳び退る。

 

「埒が明かないな・・・

 いつまでも格闘戦に付き合う必要もないか。

 美月、どう思う?」

「確かに、このままでは膠着したままですもんね。

 この機鋼だけでは汎用に欠けますし」

 

そう、それが形態変化(チェンジモード)の欠点ではある。

一部の飛行能力機鋼などを除き、その時点で変化している機鋼の能力しか使えなくなるのだ。

つまり、この状態では、捕まえようにもバインドは使えない。

代わりに、その機鋼に関わる能力に関しては効果が上昇する。

例えば、腕部アーマー内蔵ビーム砲を撃った場合、

通常時と形態変化時では、後者の方が威力が高くなる。

 

「よし、最後に一撃入れる。

 吹き飛ばすくらいは出来るはずだ。

 その隙に形態変化(チェンジモード)を解除して間合いをとるぞ」

 

右手に魔力を集中させる。

再び前方から突進してくる相手を見据え、間合いを測る。

 

(――― ここだッ!!)

 

距離にして約10m。

普通なら拳の届く事のない間合い。

緑銀の輝きを纏った拳を開き、前へと突き出す。

 

「シャイニング・フィンガァァッッ!!!」

 

指関節が伸長し、隙間から放出された魔力流が、

指向性をもったエネルギー波動となって襲い掛かる。

 

「――― ッ!? ぬおおぉぉぉッ!!」

 

相手はシールドを展開するが、激しい魔力波動の奔流を受け止めきる事はできず、

勢いよく吹き飛び、眼下のビルに激突する。

それを確認し、形態変化(チェンジモード)を解除。着弾地点から少し距離をとる。

 

 

 

ザフィーラさんが瓦礫の中から姿を現す。

ノーダメージではないが、そこまで消耗してはいないようだ。

 

「・・・やっぱ堅ぇなー」

「呆れたタフさですねー」

 

こちらまで上がって来る。

それに応じて、いつでも動けるように身構える。

 

「む・・・? 先程の力はもう終わりか?」

「色々と考える事もありましてね。

 そちらは・・・まだまだ余裕そうですね・・・」

「伊達や酔狂で、盾の守護獣の名を与えられている訳ではない。

 だが・・・シグナムを相手取った事といい、

 俺とここまで戦える者を相手にしたのは久方ぶりだ」

「そりゃどーも・・・

 余力があるのはどちらも同じ、ですか。

 勝負はまだまだこれからってトコですかね」

「・・・いや、残念だがそうもいかん。

 我らは捕らえられる訳にはいかんのでな。

 ここは退かせてもらう」

 

ザフィーラさんの言葉と同時、轟音が響く。

その音に上空を見上げると、なにやら強力な攻撃が結界を揺るがしていた。

身を翻し、離脱しようとするザフィーラさん。

慌ててその後と追おうとする。

 

「待てッ!!」

「自分と仲間の身を守るのだな!

 直撃を受ければただでは済まんぞ!」

 

見上げれば、結界はすでに突破される寸前。

くそッ・・・! これじゃ追いかけるのは無理かッ!

結界が破壊されれば、3人とも逃がす事になるけど・・・

 

「結界、突破されますっ!!」

 

――― ッ!! ぐだぐだ考えてる暇は無いッ!!

 

「美月ッ!! 全力防御ッ!!!」

 

咄嗟に、複数の防御機鋼を多重展開する。

その直後、激しい雷撃が空間を震わし、轟音が響き渡る。

 

「のおおぉぉぉぉッッ!!!?」

 

そして――― 視界は閃光で満たされた。

 

 

 

 

 

      第21話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「赤っ子と違って、話の分かりそうな人だと思ったんだけどな・・・」

美月「結局は戦う羽目になりましたねー」

作者「半年前と一緒だな」

祐介「考えてもしょうがないか。

   それにしても・・・まーた趣味に走ったな」

作者「何が?」

祐介「形態変化(チェンジモード)の事に決まってるだろ。

   今度は機動武闘伝かよ」

作者「実用性に疑問があるとは言ったが、使わないとは言ってない。

   何が気にいらんのだ。

   あれか? シャイニングよりゴッドが良かったとか」

祐介「そういう話じゃない!」

美月「あ! 私ノーベルがいいです!」

作者「能力の機鋼顕現はともかく・・・形態変化には使わないだろーなー」

美月「えー、そんなぁ・・・」

祐介「もういいや・・・

   今回の機鋼にいこう。

 

   5連メーザー砲・・・・・・・・・・・勇者王ガオガイガー >>> キングジェイダー

   HPDと旋風回転脚・・・・・・・・・GEAR戦士電童 >>> 電童

   拡散ビーム砲・・・・・・・・・・・・機動戦士ガンダム >>> ドム

   グリフォン ビームブレイド・・・・・ 機動戦士ガンダムSEED DESTINY

                         >>> インフィニットジャスティスガンダム

   シャイニングガンダム(形態変化)・・・機動武闘伝Gガンダム >>> シャイニングガンダム

 

   ・・・楽しいか?」

作者「とっても。ロマンがあっていいよねー」

祐介「そんな事より。あのままザフィーラさん逃がして良かったのか?」

作者「追ってたら結界破壊した攻撃に晒されるのよ?

   ザッフィーも言ってたけど、直撃したらシャレにならんだろうしね」

美月「ちゃんと防御しきれたんですかねー?」

作者「さぁねぇ・・・次回につづく!」

祐介「グダグダだ・・・」

 

 

 



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