遊戯王ARC-V 転生少女の決闘 (YM)
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スタンダード次元編
プロローグ


2018/11/13 アクションデュエルでフィールド魔法が使えないという表現を削除しました。


「シンクロ召喚!来い、レベル7、スクラップ・デスデーモン!」

 

 スクラップ・デスデーモン レベル7 ATK 2700

 

「おお、シンクロ召喚だ!」

「流石、シンクロコースのデュエリスト。後攻1ターン目からシンクロ召喚を決めるとは」

 

 私は花吹雪(はなふぶき) (かおり)。LDSのシンクロコースに通うジュニアユース生だ。といっても、今シンクロ召喚を決めたのは私じゃない。対戦相手の少年だ。どうやらスクラップ使いらしい。

 

「スクラップ・デスデーモンでアロマージ―ジャスミンに攻撃!ガベージ・シュート!」

「私はアクションマジック、ミラーバリアを発動!その効果により、ジャスミンはこのターン一度だけ効果による破壊を免れる」

「それがどうした!そのカードじゃスクラップ・デスデーモンの攻撃は防げないぞ」

「いいや、これで防げるよ。永続魔法、魔法吸収の効果。魔法(マジック)カードが発動するたびに私はライフを500ポイント回復する」

 

 アロマでは魔法吸収が結構役に立つ。アクションマジックで相手ターンにも回復できるようになるからね。アロマは強制効果だから相手に強制的に発動させられちゃうのは気をつけなきゃいけないけど。

 

 カオリ LP 4500 → 5000

 

「そしてライフが回復した時、ジャスミンの効果でカードを一枚ドローする。さらに、アロマージ―ローズマリーの効果発動。自分のライフが回復した時、場のモンスターの表示形式を変更する!対象はスクラップ・デスデーモン!」

 

 スクラップ・デスデーモン ATK 2700 → DEF 1800

 

「く、くそ。俺はこのままターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー!私はアクションマジック、奇跡を発動!魔法吸収によりライフを回復」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 

「ジャスミンの効果で一枚ドロー。ローズマリーの効果でジャスミンを守備表示に」

 

 アロマージ―ジャスミン ATK 100 → DEF 1900

 

「手札からアロマージ―カナンガを召喚!」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400

 

「カナンガがフィールドに存在し、私のライフが貴方のライフを上回っている時、相手モンスターのステータスを500下げる」

「く、僕のデスデーモンが……」

 

 スクラップ・デスデーモン DEF 1800 → 1300

 

「さらにジャスミンがいる時、ライフが相手を上回っていればもう一度、植物族を召喚することが出来る。アロマージ―ジャスミンをリリース!アドバンス召喚、アロマージ―ベルガモット!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「ベルガモットが存在し、ライフが相手より多い時。私の植物族モンスターは、貫通効果を得る!」

「そ、そんなぁ!」

「ローズマリーでデスデーモンに攻撃!」

「ぐっ、うくっ……」

 

 スクラップ使いの少年 LP 4000 → 3500

 

「カナンガとベルガモットで、ダイレクトアタック!」

「うわああぁぁぁ!!」

 

 スクラップ使いの少年 LP 3500 → 2100 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

 突然だけど、私にはある秘密がある。それは前世で女子高生として過ごした記憶があることだ。そしてこの舞網市は前世で住んでいた日本によく似ている。でも、決定的に違うところがある。それはデュエルモンスターズの存在だ。

 前世でもデュエルモンスターズは遊戯王デュエルモンスターズ、という名前で存在した。私もよくやってたし。でもこの世界ではデュエルの存在が絶対的だ。前世ではカードゲームがうまくてもそれで食べていくことはできなかったけど、この世界ではプロデュエリストなんて職業まである。あまつさえLDSのようにデュエルを教える塾もある。

 

 私がこの世界に生まれてデュエルモンスターズの在り方を知った時、私はアニメの遊戯王の世界に転生したのかと思った。私はZEXALが終わるちょっと前、次のアニメの存在が公表される前に死んでしまったので、次回作の情報は何も分からなかったし、ここはその次回作の世界なんじゃないかと勝手に思っていた。でも世界の存亡とか全然起こらないし、融合とかシンクロみたいな召喚方法はレオ・コーポレーションが伝えるまで存在しなかった上、使える人が現在でも非常に少ない。

 そして何より、新しい召喚法がこの世界にはない。5D'sでもZEXALでもその世界ではシンクロやエクシーズが日常的に存在してたし、それがないってことはこの世界はアニメ遊戯王の世界じゃないのだろう。もしかしたら新しい召喚法が次のアニメではありません、ってことだったのかもしれないけど。そんなことあるかなあ?あったとしても融合、シンクロ、エクシーズが全然流行ってないっておかしい。もしかしたらここは次回作のアニメの始まるずっと前の世界なのかも。世界の危機、みたいなのはないから安心だけど、ちょっぴり残念だ。つまらない転生もあったものだ。いや、デュエルモンスターズでプロになれたりするのが既に面白いとも言えるけど。

 

 私も勿論プロを目指している。プロになるにはガチデッキはちょっと問題がある。観客あってこそのプロだし、魅せるデュエルが必要だ。というわけで「アロマ」デッキを使ってる。アクションデュエルだと魔法吸収とアクションマジックでフリーチェーン回復が出来たりして楽しいんだな、これが。

 

 現在の目下の目標は舞網チャンピオンシップで勝ち抜き、ユースに昇格すること。出場条件は満たしてる。目指せプロデュエリスト!



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第一話 やっぱりアニメの世界だった

今回はデュエルなし。


「ペンデュラム召喚!」

 

 今、私は光津真澄――融合コースのエリートにして私の親友、ますみんとLDSのロビーであるデュエルを観戦していた。それはデュエルチャンピオンのストロング石島と榊遊矢のデュエル。遊矢はアクションデュエルの創始者、榊遊勝の息子。遊勝はストロング石島とのデュエル直前に失踪、そのまま現在まで行方不明のまま。遊勝の名声は地に堕ちた。遊矢は父の汚名を晴らし自分もエンタメデュエリストになろうと奮闘しているがいまいち成績もデュエル内容もパッとしないデュエリスト……だった。

 

「何だ、あの召喚法は!?」

「上級モンスターを含めて同時に召喚だと!」

「インチキかトリックじゃないの?」

 

 ロビーはざわついている。私の心もざわついている。だー!見逃してた!榊遊勝は知ってたけど、さすがにオッサン主人公はないだろうなと思ってた。まさか息子がいたとは……。遊戯王主人公共通の「遊」の字を名前に含み、トマトみたいなど派手な髪形と失踪した父という遊馬のように含みの在りそうなバックストーリー。そして新たな召喚法、ペンデュラム召喚。完全にビンゴだこれー!寧ろ数え役満とかいうやつだ!麻雀知らないけど!

 

「ペンデュラム召喚か……。これから大変なことになるかもね」

「ああ、うん。たぶん、ますみんが思ってるより大変なことになるよ」

「その呼び方やめてってば……。っていうか、大変なことって何?ペンデュラムが関係してるの?」

「さあ?わからないけど、彼を中心にきっと大変なことが起こる。否が応にも彼は巻き込まれるだろうね。それとも彼が巻き込むのかな?」

「何それ……」

 

 ますみんの頭にはクエスチョンマークが浮かんでる感じだ。でも、私もこれから何が起こるかなんて知らないし。ただ間違いなく世界の命運とか懸けることになるんだろうなあ、デュエルモンスターズで。

 

◆ ◆ ◆

 

 今、私の前にはゴーグルをかけて落ち込んでいる遊矢がいる。どうしてこうなった。

 

 私はペンデュラム召喚はともかく、遊矢という人物を知りたかった。これから何が起こるのかわからないし、世界の命運を知らない人にかけるのは不安がある。あとアニメの主人公にあってみたいというミーハー的な気持ちもあった。

 

 遊勝塾を訪ねると、先客がいっぱいいた。また後でいいか思ったら、遊矢の幼馴染とかいう柊柚子ちゃんに入塾希望者と勘違いされてそのまま見学へ。で、遊矢がペンデュラム召喚に失敗し、ズルだのインチキだの言われて今に至る。なんかペンデュラム召喚を成功させたときの様子が変だったけど、別人格的なものだったのかなあ。遊矢自身にも秘密がいろいろありそう。

 

 それにしても、メンタル弱いな!主人公なのに!あと相変わらず遊戯王世界の人間は民度低いな!ペンデュラム召喚は出来たばっかりの召喚法なんだから、専用カードがないと使えないなんて愚痴るなよ!それじゃあ融合とかチューナーとかはどうなんだって話だ。大体、融合もシンクロもエクシーズもそれぞれのモンスターをエクストラに入れてないと使えないだろ!専用カードなしでバンバン手札から大量召喚できると思ってたのか!?そんな世紀末環境やばいだろ!……くっ、ツッコミ疲れた。

 

 そして私は自分がもしかしたらヒロインかもとか考えてたので、思いっきりヒロインポジの柚子ちゃん登場で恥ずかしくなっている。妙にテンションが高いのはそのせいだ。いや、別に遊矢に一目惚れしたとかじゃないんだけど。アニメのヒロインかと思ってたら全然違った気分って、他の人に伝わるかな?穴があったら入りたいってやつだ。

 

「まあ、初めてっていうのは何だって難しいよね。それが世界初なら、尚更」

「あ、あなたは入塾希望の……」

「あれ、LDSのバッジだ!」

 

 おう、青い髪の少年は目敏く気付いたか。バッジはちゃんとつけてたからね。そこのストロング柚子ちゃんは今しがた気付いたみたいだけど。

 

「あなた、LDSの子だったの。入塾希望者かと思ってたわ」

「ペンデュラムを見に来たの?」

「いや、ペンデュラムというより、件の遊矢君をちょっと見に来ただけだよ」

「……俺を?」

「ああ、うん。ファン第一号……いや、この様子だと第七号くらいかな?」

「え?」

「高が一度失敗したくらいで、本当のファンなら見放さないものよ。彼らのように」

 

 遊矢が顔を上げる。彼の前には遊勝塾の子供たちと柚子ちゃん、塾長らしい人とあとなんかでっかい人がいる。たぶんこのでっかい人は友達かな?

 

「そうだよ、遊矢兄ちゃん」

「俺も、ずっと前から遊矢兄ちゃんのファンだぜ!」

「私も!」

「タツヤ、フトシ、アユ……」

「そうだ!諦めるな、遊矢!熱血だ!」

「塾長……」

「この男権現坂、お前がペンデュラムに成功するまで付き合おう」

「権現坂……」

「遊矢、大丈夫よ。みんな応援してる」

「柚子……。うん、エンターテイナーがみんなをがっかりさせちゃ、駄目だよな」

「ふふっ、もう大丈夫のようね」

「ああ、ありがとう。大事なことを思い出させてもらったよ」

「本当のファンは、君が諦めない限り付いてきてくれる。それを忘れないでね」

「ああ、勿論だ!あ、そうだ、君の名前は?」

「私は花吹雪香。カオリでいいよ、ゆうやん」

「ゆ、ゆうやん?」

「あ、そうそう。ペンデュラム召喚のことだけど。たぶんペンデュラムのスケールっていうのが関係してると思うんだよね。ペンデュラムスケールが一桁の数字であることを考えると……レベルかな?デュエルモンスターズのモンスターのステータスで一桁なのは他にないし」

「スケールとレベル……」

「ま、参考程度にしといてよ。それじゃあ、またね」

 

 ま、初めての邂逅で第一印象はこれ以上ないくらいに高かったかな?あ、っていうか思いっきりストーリーに関わるフラグ建てちゃったよ。また来るって言っちゃったし。

 

◆ ◆ ◆

 

「ペンデュラム召喚!来い、俺のモンスターたち!」

「……成功、だな」

「ああ、ありがとう権現坂。おかげでペンデュラムを完全にものにできた」

「うむ。……しかし、あのカオリという少女の言ったとおりだったな」

「ああ、ペンデュラム召喚はセッティングした二体のペンデュラムのスケールの間のレベルを持つモンスターを召喚できる召喚法だったんだ」

「たった一度ずつペンデュラム召喚の成功と失敗を見ただけで、そのカギとなる要素を言い当てるとは……凄まじい洞察力だ」

 

 カオリが遊勝塾を去った後、遊矢はペンデュラム召喚の特訓を行っていた。相手は権現坂である。

 

「あの子、結構有名な子だったのね」

「柚子」

「思い出したの。確か隣のクラスで、LDSの無敗女王とか言われてたわ」

「同じ学校だったのか……」

「きっと舞網チャンピオンシップにも出てくるぞ」

「ああ、強敵だ」

「その前に遊矢は出場条件を満たさないとね」

「あっ、そうだった」

「そうだったじゃないわよ!」

 

 ハリセンの小気味いい音がデュエル場に木霊した。



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第二話 LDSの留学生

 一回完全に削除してから投稿し直しました。すいません。元のデュエルでは効果の勘違いで全体が破綻していたので、最初から全然別物になってます。幸先が不安だ……。

 デュエルディスクの先攻後攻の決定はライディングデュエルを除いて今回のようにランダムに決定権が得られるという風にします。そうすると一応アニメとも大体辻褄が合うので。

 あと本作ではアクションカードは奇跡、回避、ミラー・バリア、大脱出、その他クロス・オーバーとクロス・オーバー・アクセルで使用されたアクションマジックを汎用のものとして扱います。

2017/3/3 アロマセラフィ―アンゼリカが除外されてる説明を追加。後書きを修正

2018/12/4 4500円のパフェの名前をちょっとだけ変更


「ちょっといいかな、そこのお嬢さん」

「……ん?私?」

「そうそう。初めまして、僕はデニス・マックフィールド。エンターテイナーで、LDSジュニアユースの留学生さ」

 

 いきなり自己紹介されても。……私も自己紹介したらいいのか?

 

「私は花吹雪香。ジュニアユースのシンクロコースに所属してるよ」

「カオリか。いい名前だね。ところで僕は初めてここ、LDS本部に来たんだけど、よければここを案内してくれないかな?」

 

 えー、今日はLDSの講義もないし、遊勝塾に行こうと思ってたんだけど。最近は暇さえあれば遊勝塾に入り浸っている。子供たちにデュエルを教えたり、柚子りんとデュエルしたり、遊勝塾のデュエルを観戦したり。LDSのデュエルとは違った趣があって結構楽しい。

 

「へえ、女性にエスコートさせるのかな、デニー?」

「おっと、これは手厳しい。じゃ、デュエルをしない?僕が勝ったら案内してもらう。君が勝ったら……」

「それじゃ、駅前の喫茶店でパフェでも奢ってもらおうかな」

「OK。それじゃ、アクションデュエルを始めようか」

 

◆ ◆ ◆

 

 アクションフィールド、オン 『プレインプレーン』

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

「アクション…」

「「デュエル!」」

 

 カオリ LP 4000

 デニス LP 4000

 

 LDSのコートを使ってデュエル。結構観戦に来ている人(LDSの塾生)が多い。私のデュエルは毎回意外と観戦者が多いけど、今回はデニーを見に来た人も多いみたいだ。というか、女性客が多い。デニーはここでデュエルするのは初めて見たいだから、ファンというより興味があって来ている感じかな。

 デュエルディスクには私に先攻後攻の決定権があることが示されている。取りあえずアクションカードを確保しに行きながら始めますか。

 

「先攻は貰うよ。私のターン!まずは手札から黄金の天道虫(ゴールデン・レディバグ)を見せて効果発動。スタンバイフェイズにこのカードを見せて、ターン終了時までこのカードを公開することでライフを500回復する」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「メインフェイズ、手札からアロマージ―ジャスミンを召喚」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「カードを二枚セットしてターンエンド」

 

「あの子、攻撃力100のモンスターを攻撃表示でそのままに?」

「いや、伏せカード二枚で守り切る気なんだろう。ジュニアユースのシンクロコースのエリートだからな、カオリは」

「へえ、あの子が例の無敗女王……」

 

 観客がさらに集まってきたなあ。これは盛り上げないと。もう私のターンは終わってるけど。

 

「それじゃ、僕のターン!まずはEmトリック・クラウンを召喚!」

 

 Emトリック・クラウン レベル4 ATK 1600

 

 エンタメイジ……?エンタメイトと何か関係があるのかな。うわー、この人もメインキャラっぽい。もう私がっつりストーリーに関わってるなあ。

 

「そして手札からEmハットトリッカーを特殊召喚!このカードは場にモンスターが二体いる時、特殊召喚できる!」

 

 Emハットトリッカー レベル4 ATK 1100

 

「おー、便利な効果だね」

「そう、いつもお世話になってるよ。そして、これでレベル4のモンスターが二体!」

「おっと、なるほど」

 

 いや、あんまり使うやつがいなかったから油断してた。同じレベル二体で棒立ちとかよく見るんだよね。私もまだ持ってないからなあ。積極的には狙えないけど、偶に使える状況があるから欲しい。

 

「お、気付いたかい?そう、僕のエースの登場さ!僕はレベル4のEmトリック・クラウンとEmハットトリッカーでオーバーレイ!Show must go on!天空の奇術師よ、華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4、Emトラピーズ・マジシャン!」

 

 Emトラピーズ・マジシャン ランク4 ATK 2500

 

「おいおい、あいつエクシーズ召喚を決めたぞ」

「キャ~!デニス君、カッコイイ!」

「エクシーズコースの留学生だったのか」

「しかも攻撃力2500!」

 

「トラピーズ・マジシャンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、選択したモンスターで二回攻撃できるようにするよ!二回攻撃できなかったら破壊されちゃうようになるけどね。対象はトラピーズ・マジシャン!」

「それじゃ、攻撃の前に破壊しちゃおうかな?永続(トラップ)、潤いの風!続けてこっちも永続罠、渇きの風を発動!まずは潤いの風の第一の効果。ライフを1000支払って、デッキからアロマカードを一枚手札に加える。私はアロマセラフィ―アンゼリカを手札に!」

 

 カオリ LP 4500 → 3500

 

「さらに潤いの風の第二の効果を発動。一ターンに一度、自分のライフが相手より少ない時、ライフを500ポイント回復できる!」

 

 カオリ LP 3500 → 4000

 

「ここで渇きの風の効果!一ターンに一度、私のライフが回復した時、相手の表側表示モンスター一体を破壊する!」

「おおっと、これは大変!」

「さらにアローマージ―ジャスミンは私がライフを回復した時、カードを一枚ドロー出来る!」

「面白い効果だね。でも、トラピーズ・マジシャンは守らせてもらうよ!アクションマジック、ミラー・バリア!モンスター一体を一度だけ破壊から守る!」

「防がれちゃったか」

「さあ行くよ!トラピーズ・マジシャンでジャスミンに攻撃!」

「アクションマジック、回避!攻撃を無効にする」

 

「激しい攻防だな」

「でも、あの子の周りにはもうアクションマジックがないわ」

 

「僕の攻撃も防がれちゃったね。だけど、トラピーズ・マジシャンはもう一度攻撃できる!」

「うぐっ……」

 

 カオリ LP 4000 → 1600

 

 トラピーズ・マジシャン……強力な効果だなあ。殆どリスクなしで二回攻撃とか、インチキ効果もいい加減にしろ!

 

「僕はカードを一枚セットしてターンエンド!」

「私のターン!手札から黄金の天道虫の効果発動。ライフを500回復する」

 

 カオリ LP 1600 → 2100

 

「渇きの風の効果発動!トラピーズ・マジシャンを破壊!」

「くっ……ごめんよ、トラピーズ・マジシャン」

「どんどん行くよ。私はローンファイア・ブロッサムを召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「ローンファイア・ブロッサムは自分の場の植物族をリリースして、デッキから植物族を呼び出せる。ローンファイア・ブロッサム自身をリリースして、アロマージ―ベルガモットを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「さらに潤いの風の効果発動。ライフを500回復する!」

 

 カオリ LP 2100 → 2600

 

「ベルガモットの効果発動。ライフが回復した時、相手のターン終了時まで攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400

 

「ベルガモットでダイレクトアタック!」

「そうはさせないよ。さあ、世紀の復活マジックショーをお見せしましょう!僕は墓地のトリック・クラウンの効果を発動。このカードが墓地に送られたターン、このカードを攻守を0にして特殊召喚する!」

 

 Emトリック・クラウン レベル4 DEF 0

 

「トラピーズ・マジシャンのオーバーレイユニットに残っていたのね。なら、トリック・クラウンを攻撃!」

「くっ……」

「私はカードを一枚セットして、ターンエンド」

「この瞬間、トリック・クラウンを復活!」

 

 Emトリック・クラウン レベル4 DEF 0

 

「何度も効果が使えるのね……」

 

 トラピーズが霞むほどのインチキカードを持っていたとは……。っていうかひどいカードだな!

 

「デニスはあの二枚の罠を突破しなければモンスターで攻撃できない。カオリの方はトリック・クラウンを攻略しなければダメージを与えられない……」

「でも、トリック・クラウンを倒すより罠を破壊する方が簡単だわ」

「つまり、ライフも合わせてデニスの方が有利ってわけか」

「いや、ベルガモットも攻略しなければならない。まだ勝負の行方は分からないぞ」

 

「僕のターン、ドロー!……よし、これなら!僕は魔法(マジック)カード、エンタメイジ・ハリケーンを発動。Emが場にいる時、フィールド上の魔法(マジック)(トラップ)カードを全て手札に戻す!」

「なら、潤いの風を発動!ライフを500回復!さらにチェーンして罠カード、三位一択を発動!融合・シンクロ・エクシーズの中から一つ選び、互いのエクストラデッキを比べてその数が多い方がライフを3000ポイント回復する!私はシンクロを選択!」

「僕のエクストラにシンクロはいないね……」

「私はエクストラに二体のシンクロモンスターがいる。よってライフを回復!」

 

 カオリ LP 2600 → 5600 → 6100

 アロマージ―ベルガモット ATK 3400 → 4400

 

「僕はトリック・クラウンをリリースしてEmウィング・サンドイッチマンを召喚!さらにトリック・クラウンを自身の効果で墓地から特殊召喚!」

 

 Emウィング・サンドイッチマン レベル5 ATK 1800

 Emトリック・クラウン レベル4 DEF 0

 

「さらに手札から魔法カード、二重召喚(デュアルサモン)を発動。これで僕はもう一度通常召喚が出来る。トリック・クラウンをリリースして、もう一体のサンドイッチマンを召喚!トリック・クラウンをさらに復活!」

 

 Emウィング・サンドイッチマン レベル5 ATK 1800

 Emトリック・クラウン レベル4 DEF 0

 

 トリック・クラウンが過労死しちゃう!っていうか、本当にひどい効果だ。

 

「ウィング・サンドイッチマンの効果発動。同じレベルのサンドイッチマンに挟まれているモンスターのレベルをサンドイッチマンと同じレベルにする」

 

 Emトリック・クラウン レベル4 → 5

 

「これでレベル5のモンスターが……三体!」

「It's show time!僕はレベル5のEmトリック・クラウンとEmサンドイッチマン二体でオーバーレイ!降り立て、魔界の芸術家!エクシーズ召喚、ランク5、Em影絵師シャドー・メイカー!」

 

 Em影絵師シャドー・メイカー ランク5 ATK 2600

 

「ここで僕はアクションマジック、奇跡を発動。これをシャドー・メイカーに使うとあら不思議、シャドー・メイカーが何ともう一体!」

 

 Em影絵師シャドー・メイカー ランク5 ATK 2600

 

「シャドー・メイカーのオーバーレイユニットが減ってる……。そいつの効果か」

「鋭いね。そう、シャドー・メイカーはカード効果の対象になった時、オーバーレイユニットを一つ使ってエクストラデッキからシャドー・メイカーを呼べるんだ」

 

「攻撃力2600のモンスターが二体!」

「だが、カオリの場には攻撃力が4400になったベルガモットがいる」

「次のターンになれば手札に戻した永続罠をまた伏せられてしまう」

「じゃあ、デニスはこのターンで決める必要があるのか」

「でも、攻略出来るのかしら?」

 

「これから世紀の大脱出ショーをお見せするよ。新しく呼んだ方のシャドー・メイカーでベルガモットに攻撃!ぐっ……」

 

 デニス LP 4000 → 2200

 

「でもこの瞬間、(トラップ)カード、トリック・ボックスを発動!バトルフェイズ中のモンスターの破壊を無効にする。さらにそのモンスターの効果を無効にして、相手のモンスターと入れ替える!僕のシャドー・メイカーと君のベルガモットを交換だ!」

「なるほど……。これはまずいね」

「ベルガモットでシャドー・メイカーに攻撃!」

「うわわっと」

 

 カオリ LP 6100 → 4300

 

「トリック・ボックスで入れ替えたモンスターが破壊された時、元々の持ち主の元へ帰ってくる。戻っておいで、シャドー・メイカー!」

 

 Em影絵師シャドー・メイカー ランク5 ATK 2600

 

「シャドー・メイカーでダイレクトアタック!」

「うえっ……」

 

 カオリ LP 4300 → 1700

 

「カオリのライフは残り1700!」

「次の攻撃が通れば、デニスの勝ちだ!」

「まさか無敗女王がここで……負けるのか!?」

 

「それじゃあフィナーレだ!シャドー・メイカーでダイレクトアタック!」

「もう少し付き合ってもらうよ。アクションマジック、ダメージ・バニッシュ。戦闘ダメージを0にする!」

「うーん、凌がれちゃったか。それじゃあ僕はこれでターンエンド」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 4400 → 2400

 

「私のターン!まずは黄金の天道虫の効果でライフを回復」

 

 カオリ LP 1700 → 2200

 

「ここからは私の脱出マジックを見せてあげるよ。魔法カード、フレグランス・ストーム!表側表示の植物族モンスターを破壊して、カードを一枚ドローする。ベルガモットを破壊して、ドロー!さらに引いたカードが植物族なら、もう一枚ドローする。引いたのは植物族のアロマージ―ジャスミン。よってさらに一枚ドロー!そして破壊されたベルガモットはトリック・ボックスの効果で戻ってくる」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「ワーオ!僕の場のモンスターを破壊しつつ、ドローまで!」

「まだまだ行くよ。私は手札からアロマージ―ジャスミンを召喚!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「手札のアロマセラフィ―アンゼリカの効果発動。このカードを捨てて、墓地のアロマモンスター一体の攻撃力分、ライフを回復する。対象はジャスミン!」

 

 カオリ LP 2200 → 2300

 

「墓地には他のアロマモンスターがいないからね……」

「でも、こんなちょっと回復しても……」

「いや、量は関係ない。回復したことでベルガモットとジャスミンの効果が使える」

「それに、これで丁度デニスのライフを上回った。このデュエルではまだお披露目されてないけど、アロマはライフが上回った時にさらなる効果を発揮するからね」

 

「ベルガモットとジャスミンの効果発動!ベルガモットの攻撃力をアップし、ジャスミンの効果で一枚ドロー!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400

 

「よーし、ここでジャスミンのさらなる効果!自分のライフが相手より多い時、私はもう一回植物族を召喚できる。おいで、アロマージ―カナンガ!」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400

 

「カナンガは私のライフが相手を上回っている時、相手のモンスターの攻守を500ポイント下げる!」

 

 Em影絵師シャドー・メイカー ATK 2600 → 2100

 Em影絵師シャドー・メイカー ATK 2600 → 2100

 

「おおっと、シャドー・メイカーが!」

「驚くのはまだ早いよ。手札から魔法カード、超栄養太陽を発動!自分のレベル2以下の植物族をリリース、そのレベル+3までの植物族を特殊召喚する!ジャスミンをリリースして、ローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「ローンファイアをリリースしてアロマージ―ローズマリーを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「ここで墓地のアンゼリカの効果発動。ライフが相手より多く、自分のフィールドにアロマがいる時、墓地から特殊召喚できる!」

 

 アロマセラフィ―アンゼリカ レベル1 DEF 0

 

「あっという間にモンスターが四体……凄いね!」

「ふふっ、ありがとう。お返しに、デニーにいいことを教えてあげるよ。実はアンゼリカはチューナーモンスターなんだ」

「へぇー。って、それじゃあ……」

「行くよ!私はレベル4のアロマージ―ローズマリーにレベル1のアロマセラフィ―アンゼリカをチューニング!香り振り撒け、花の妖精!シンクロ召喚!飛び回れ、レベル5、アロマセラフィ―ローズマリー!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー レベル5 ATK 2000

 

「自身の効果で特殊召喚したアンゼリカは墓地へ送られる代わりに除外される。そしてアロマセラフィ―ローズマリーはライフが相手より多い時、私の植物族みんなの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー ATK 2000 → 2500

 アロマージ―ベルガモット ATK 3400 → 3900

 アロマージ―カナンガ ATK 1400 → 1900

 

「おお、これでシャドー・メイカーの攻撃力を上回ったモンスターが二体!」

「それだけじゃない。ローズマリーとベルガモットの攻撃力の合計は6400。シャドー・メイカーは弱体化されていて、攻撃力の合計は4200。その差はデニスのライフと同じ、2200」

「それじゃあ、この攻撃が決まれば……彼のライフはぴったり0!」

 

「ローズマリーでオーバーレイユニットのないシャドー・メイカーに攻撃!」

「うわわっ……」

 

 デニス LP 2200 → 1800

 

「ベルガモットでもう一体のシャドー・メイカーに攻撃!」

「うわぁー!」

 

 煙が無駄にもくもくと視界を塞いでいる。あー、これはやってないパターンだね。

 

「残念だったね、僕もダメージ・バニッシュを拾っていたんだ。これで僕の受けるダメージは0になった」

「それじゃ、カナンガでダイレクトアタック!」

「オーバーレイユニットから墓地へ送られたトリック・クラウンの効果発動!このカードを墓地から特殊召喚!」

 

 Emトリック・クラウン レベル4 DEF 0

 

「トリック・クラウンは何度でも蘇るからね。まだまだ勝負の行方は分からないよ?」

「……そうそう、ライフが相手より多い時のカナンガとローズマリーの効果はデニーに教えたけど、ベルガモットの効果はまだ教えてなかったね」

「そういえばそうだね。……まさか……」

「そいつは盾にリリースにエクシーズ素材に、散々苦しめられてきたけど、それももうおしまい!しつこい男は嫌われるってね!ベルガモットはライフが相手より多い時、私の植物族に貫通効果を与える!カナンガでトリック・クラウンに攻撃!」

「うわぁ~!!」

 

 デニス LP 1800 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

「これだけ楽しめたのは久しぶりだよ。またデュエルしようね」

「僕も楽しかったよ。こっちこそよろしく。じゃ、喫茶店のパフェを奢るよ。約束だったからね」

「そうね。一万円の混沌幻味(こんとんげんみ)アーミタイルDX(デラックス)をお願い」

「高っ!ちょ、もうちょっと安いのをお願い!」

「えー、しょうがないなあ。ま、いいけど。まだ三時のおやつには早いし、それまでLDSを案内しようか?」

「いいのかい?」

「4500円の藍苺氷菓の究極(ブルーベリーアイス・アルティメット)パフェを奢ってくれるなら」

「高い!」

 

 どうやら彼もメインキャラっぽいので、好感度を上げておいて悪いことは無いだろう。もうストーリーに関わらない選択肢は私にはなさそうだし。なんか、既に誰かに目をつけられてそうな予感がするんだよね。という訳で、デニーと親睦を深める意味でもLDSを案内してあげた。デュエルがうまいし、観客を楽しませることやエースのトラピーズへの拘りが凄いみたいで、かなり好印象。イケメンだし。あ、パフェは3000円の混沌帝火龍果(カオス・エンペラー・ドラゴンフルーツ) ―贅沢の使者―を奢ってもらった。「ここの喫茶店、何故かパフェが軒並み高いなあ……」ってデニーは愚痴ってたけど。




 デニスはまだペンデュラムを持ってないので、Emウィング・サンドイッチマンは非ペンデュラムです。モンスター効果だけ残った普通の効果モンスターという設定です。

 シャドー・メイカーの素材展開は、アニメではデニスは必ずペンデュラムを使っていたこともあってスムーズに出来ませんでした。そのせいでデニスがアニメで使っていない二重召喚を使っちゃってます。非力な私を許してくれ……。

 これ以降はアニメキャラはアクションカードと本人が使用したカードに限っていきます。……いけると思います。たぶん。

2017/3/3 本人が使用したカードに限ると言いましたが、本人が使用したカードおよびアニメのイメージを崩さない範囲でそれに関するテーマに訂正します。申し訳ありません。
 例えば遊矢は一部の漫画版EMは使うけどオッドアイズ・ファントム・ドラゴンは使わない、みたいな感じです。


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第三話 怪しさ満天の少年 前編

今回オリジナルのアクションフィールドとアクションマジックが登場しますが、中身は汎用アクションマジックです。雰囲気作りのために名前だけ変えました。


「こうなったら力づくで奪い取ってやるぜ。みんなやっちまえ!」

「「「オーッ」」」

 

 やあみんな、花吹雪香だよ。今、総合コースの沢渡シンゴと遊矢のデュエルが終わったところ。丁度LDSにいた私は途中から見てたからよくわからなかったんだけど、どうも沢渡がペンデュラムを奪ってデュエルを仕掛けたみたい。で、デュエルに負けてペンデュラムも取り返された沢渡が、取り巻きを嗾けて力づくでペンデュラムを奪い取ろうとしてるみたいだ。本当、クズだな。グールズポジか、こいつら。ストロング柚子りんはともかく、ゆうやんはリアルファイト弱そうだし、子供たちがいるし、助けた方がいいかな。

 

「うげっ!」

「ぎゃっ!」

 

 はははー、私のダイレクトアタック(物理)をくらえー!私はアクションデュエルのためにそこそこ体鍛えてるから、運動神経は並じゃないぞ。ゆうやんと違って私のモンスターはアクションカード取りに行くのに向いてないから、自分で取りに行くしかないんだよね。

 

「ほげっ!」

「あぐっ!?」

 

 ん?二人倒したと思ったら、もう二人やられてた。ストロング柚子りんの仕業かな?

 

「最後までかっこ悪いなあ、この人たちは」

「あなたがやったの?これ」

「ちょっと気を失わせただけだよ」

 

 違った。誰だこのショタ。

 

「僕、紫雲院素良。ペンデュラム召喚、すごいね!ねえ、僕を弟子にしてよ!」

 

◆ ◆ ◆

 

 あれ以来、素良っちはゆうやんの周りをうろついているらしい。ゆうやんがデュエルで勝って弟子入りは回避したみたいだけど、勝手に友達認定されちゃったらしい。遊勝塾に入ったし、LDSじゃないみたいだけど何故か融合召喚が使えるんだよね。いや、別の塾でも教えてるところはあるし、融合召喚自体ルールさえ知っててカードを持ってれば出来るから不思議なことではないんだけど。何か怪しさMAXだよね。

 それ考えると弟子入り回避は英断だね。敵にペンデュラム使われるようになったら目も当てられない。

 

「お、素良っち。珍しいね、LDSにいるなんて」

「うん。ちょっと敵情視察みたいなものかな。でも、こう言っちゃなんだけど、LDSの融合って大したことないね」

 

 やっぱり何か怪しいな。敵情視察……LDSが敵ってわけか。まあ、塾同士対抗してる所があるけど、でも敵って言い方には随分と棘があるなあ。

 

「あ、カオリとデュエルしたことは無かったよね。というか、カオリのデュエルを見たことがないや。ねえ、デュエルしない?」

「んー、いいけど」

 

 ついでにちょっと本性を探ってみようか。

 

◆ ◆ ◆

 

 アクションフィールド、オン 『ソフトトイ・パラダイス』

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

「アクション…」

「「デュエル!」」

 

 カオリ LP 4000

 素良 LP 4000

 

 えーい、ランダム選択で素良っちに有利そうなアクションフィールドが出てしまった。まあいい。アクションデュエル自体そんなに慣れてなさそうだし、得意も不得意もないでしょ。あー、でも地面がふかふかしてて走りにくい。アクションカード取りに行くのしんどくなりそう。それでも取りに行くんだけどね。

 

「誰、あのかわいい子」

「さあ?」

「相手はカオリか」

「あんな子がカオリに挑むとは……無謀なことするなあ」

「こっぴどく負けちゃったら私が慰めに行ってあげようかしら」

 

「あ、僕が先攻を貰うね。僕のターン!ファーニマル・オウルを召喚!」

 

 ファーニマル・オウル レベル2 ATK 1000

 

「ファーニマル・オウルの効果発動!召喚に成功した時、デッキから融合を手札に加える。カードを一枚セットしてターンエンドだよ!」

 

「融合!?」

「あんな顔して融合が使えるのか……」

「何者だ?あの子」

 

「私のターン、ドロー!」

 

 うーん、手札に融合があるんだよね。まだ素良っちの融合モンスター、シザー・ベアしか知らないから何が来るかわからない怖さがあるなあ。

 

「私は永続魔法、魔法吸収を発動。それからアロマージ―カナンガを召喚」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400

 

「バトル!カナンガでファーニマル・オウルに攻撃!」

「アクションマジック、ソーイングニードルを発動!バトルフェイズ終了時まで攻撃力を600ポイントアップする!」

 

 ファーニマル・オウル ATK 1000 → 1600

 

「これで返り討ちだね!」

「それはどうかな?魔法吸収の効果!魔法カードが発動する度にライフを500回復するよ!」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「うわあ、お互いがアクションマジックを使うたびに回復するのかあ。放っておくと大変そう」

「この瞬間、カナンガの効果発動。自分のライフが回復した時、相手の魔法・罠を一枚手札に戻す」

「うわっ、折角セットしたのに!」

「さらに自分のライフが相手より多い時、カナンガは相手の全てのモンスターのステータスを500下げる」

 

 ファーニマル・オウル ATK 1600 → 1100

 

「ファーニマル・オウルが!」

「カナンガでファーニマル・オウルを撃破!」

「うわっ……」

 

 素良 LP 4000 → 3700

 

「アクションカードにも備えてあったんだね」

「楽しんでくれた?カードを一枚セットしてターンエンド」

「僕のターン。それじゃ、僕も驚かせてあげるよ!魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)を発動!デッキからエッジインプと融合を手札に加える!僕はエッジインプ・ソウと融合を手札に!」

 

 げえ、モンスターと融合を補充だと……。パワーカードだなあ。何か融合だから許されてる感じが凄くする。

 

「魔法吸収でライフを回復。素良っちの場に魔法も罠もないからカナンガの効果は不発になる」

 

 カオリ LP 4500 → 5000

 

「へえ、そのモンスターの効果は強制なんだ。僕はエッジインプ・ソウを召喚!」

 

 エッジインプ・ソウ レベル3 ATK 500

 

「エッジインプ・ソウの効果発動。手札のファーニマル・シープを捨てて、デッキからカードを二枚ドロー!よーし、それじゃ僕は魔法カード、融合を発動!手札のファーニマル・ライオとフィールドのエッジインプ・ソウを素材に融合!悪魔宿りし鉄の歯よ。牙剥く野獣と一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く百獣の王、デストーイ・ホイールソウ・ライオ!」

 

 デストーイ・ホイールソウ・ライオ レベル7 ATK 2400 → 1900

 

「うわあ、何あれ!」

「怖っ!」

「あんな融合モンスター、見たことない……」

 

 うわあ、なんか怖い。いきなりシザーベア以外の奴が来たなあ。どういう効果なんだろ?

 

「魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 

「大分ライフが増えちゃったね……。でもそれもここまでだよ。ホイールソウ・ライオの効果発動!相手モンスター一体を破壊して、攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「なるほど……。アクションマジック、ミラー・バリア。カード効果による破壊を無効にする。さらに永続罠、渇きの風を発動。自分が回復した時、一ターンに一度相手のモンスターを破壊する!」

「えっ!?」

「ミラー・バリアで破壊は無効。魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 5500 → 6000

 

「渇きの風の効果が発動。ホイールソウ・ライオを破壊する!」

 

「うわぁ、えげつないなあ」

「子供にまで容赦ない。さすが無敗女王」

「鬼畜」

「悪魔の所業だな」

「そこまで言うほどかな……」

 

 ぶえっくしょおい!……どこかで私の噂話でもしてるのかな?

 

「ああっ、逆にやられちゃったよ。すごいね、カオリ!」

「ありがとう。でも、まだもう一枚融合があるんだよね」

「そうだよ!やっぱり覚えてたんだね。もう一枚の融合を発動!手札のファーニマル・オクトとエッジインプ・トマホークを融合!魔物の爪よ。悪魔の使徒と1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!自由を奪い闇に引き込む海の悪魔!デストーイ・ハーケン・クラーク!」

 

 デストーイ・ハーケン・クラーク レベル8 ATK 2200 → 1700

 カオリ LP 6000 → 6500

 

「さあ行くよ!デストーイ・ハーケン・クラークでカナンガに攻撃!」

「ぐっ……」

 

 カオリ LP 6500 → 6200

 

「これでハーケン・クラークの攻撃力は元に戻る!」

 

 デストーイ・ハーケン・クラーク ATK 1700 → 2200

 

「まだだよ。ハーケン・クラークは一回のバトルフェイズで二回攻撃できる!」

「!!」

「ハーケン・クラークでダイレクトアタック!」

「きゃあっ!」

 

 うわあ、湿ってる!布製なの!?いや、人形モチーフだけど……水につかってるから濡れておる!そしてぬいぐるみだらけのアクションフィールドなのに水があるのはどうなの?

 

 カオリ LP 6200 → 4000

 

「うええ、それでもまだ4000を下回らないんだね……。早めに魔法吸収を何とかしないと。まずはハーケン・クラークのさらなる効果。僕のバトルフェイズ終了時に守備表示になる!」

 

 デストーイ・ハーケン・クラーク ATK 2200 → DEF 3000

 

「僕はカードを一枚セットして、ターンエンド」

 

「融合を二連続とは……」

「それにライフを大幅に削ったわ」

「さらに防御も固めたな」

「だがカオリの優位は変わらないな……。増えたライフが減っただけだし、あの強力な罠はいまだ健在だ」

 

「私のターン、ドロー!グローアップ・バルブを召喚」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 ATK 100

 

「さらに魔法カード、超栄養太陽を発動!レベル3以下の植物族をリリースし、そのレベル+3以下の植物族をデッキから特殊召喚する。私はレベル1のグローアップ・バルブをリリースして、レベル3のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「そして魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「この瞬間、渇きの風の効果も発動!ハーケン・クラークを破壊!」

「やっぱりそうくるよね。読んでたよ!僕もこれを拾ってたんだ。アクションマジック、ミラー・バリア!」

「躱されたかあ。でも魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 4500 → 5000

 

「さらにローンファイアの効果発動。自分フィールドの植物族をリリースして、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する。おいで、アロマージ―ジャスミン!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 DEF 1900

 

「そしてライフが相手より多い時、ジャスミンの効果により私は植物族をもう一度召喚できる。ローンファイア・ブロッサムを召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「ローンファイアの効果をもう一回。私はローンファイア自身をリリースして、アロマージ―ベルガモットを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「おー。でも攻撃力はハーケン・クラークの守備力に届いてないね」

「だからこうするの。まずは墓地のグローアップ・バルブの効果発動。デュエル中に一度だけ、デッキトップを墓地へ送ることでこのカードを特殊召喚できる」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 DEF 100

 

「魔法カード、フレグランス・ストームを発動。表側表示の植物族を破壊して、一枚ドローできる。私はグローアップ・バルブを破壊してドロー!さらにそれが植物族ならもう一枚ドロー出来る。私がドローしたのは植物族のアロマージ―カナンガ。よってもう一枚ドロー!そして魔法カードが発動したため、さらにライフを回復」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 

 グローアップ・バルブが涙目で「またコストなの?」と訴えてきている。済まない。ジャスミンは次のターンにアクションマジックでドロー出来るかもしれないから、残すことにしたんだ。守備力まあまあだし。あとコストじゃなくて破壊するのは効果ね。

 

「この瞬間、ジャスミンとベルガモットの効果発動!ジャスミンは一ターンに一度、ライフが回復した時にドロー出来る。ベルガモットは一ターンに一度だけライフが回復した時、攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400

 

「わわっ、攻撃力3400!?」

「バトル!ベルガモットでハーケン・クラークに攻撃!」

「うわあっ!」

 

 素良 LP 3700 → 3300

 

「貫通効果!?」

「ベルガモットはライフが相手より多い時、自分の植物族全てに貫通効果を与えるの。私はこれでターンエンド」

 

「あの少年、じわじわライフを削られてるな」

「それに対してカオリはライフがかなり増えている」

「これは勝負あったかな」

 

「ハーケン・クラークも倒されたか。所詮LDSだと思って舐めてた。僕もちょっとだけ本気になっちゃおうかな……」




アクションマジックの中身
ソーイングニードル → 飛翔


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第四話 怪しさ満天の少年 後編

 連続投稿です。


「ハーケン・クラークも倒されたか。所詮LDSだと思って舐めてた。僕もちょっとだけ本気になっちゃおうかな……」

「ん?何か言った?」

「大丈夫、何でもないよ!僕のターン!……よーし、お楽しみはこれからだ!僕は罠カード、融合準備(フュージョン・リザーブ)を発動!デッキから融合モンスターに指定された融合素材を手札に加える。僕はエッジインプ・シザーを手札に!さらに、墓地の融合を手札に加えられる。これで準備は整ったよ!ファーニマル・ドッグを召喚!」

 

 ファーニマル・ドッグ レベル4 ATK 1700

 

「ファーニマル・ドッグが手札から召喚、特殊召喚された時、デッキからファーニマルかエッジインプ・シザーを手札に加える。僕はファーニマル・ペンギンを手札へ。そして融合を発動!ファーニマル・ドッグと手札のファーニマル・ペンギン、エッジインプ・シザーを融合!悪魔の爪よ。忠実なる牙と氷海の翼よ!神秘の渦で一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを引き裂く密林の魔獣、デストーイ・シザー・タイガー!」

 

 デストーイ・シザー・タイガー レベル6 ATK 1900

 カオリ LP 5500 → 6000

 

「三体融合……!」

「へへっ、驚いた?シザー・タイガーは二体でも融合できるんだけどね。でもたくさん素材を使って融合した方がいいことがあるんだ」

「素材の数を参照する効果……」

「そう、シザー・タイガーが融合召喚に成功した時、素材の数までフィールドのカードを破壊できる!」

「くっ……」

「その厄介な罠と魔法吸収、それにベルガモットには消えてもらうよ!チェーンして融合素材になったファーニマル・ペンギンの効果発動!二枚デッキからドローして、一枚捨てる」

「アクションマジック、ミラー・バリア!ベルガモットの破壊を無効に……」

「その手はもう通用しないよ。アクションマジック、フェイク・テディベア!アクションカードの発動を無効にする!」

「……っ……でも、魔法吸収は魔法カードの効果が終わった直後、チェーンに乗らずに回復する。よってフェイク・テディベアを吸収して回復」

 

 カオリ LP 6000 → 6500

 

「ミラー・バリアは無効になっているため回復は出来ない」

「それじゃあファーニマル・ペンギンの効果でドローして、その三枚を破壊させてもらうよ」

 

 うーん、破壊されたか。渇きの風もそうだけど、回復手段が潰されたのは痛いな。

 

「私もジャスミンの効果発動。カードをドロー!」

「……へえ~。いいカードを引いたよ。取りあえずシザー・タイガーの効果。僕のデストーイとファーニマルは僕の場のデストーイの数の300倍、攻撃力が上がるよ!」

 

 デストーイ・シザー・タイガー ATK 1900 → 2200

 

「さあ、バトルだ!シザー・タイガーでジャスミンに攻撃!」

「うぐうっ……」

「そしてこの瞬間、速攻魔法、融合解除を発動!融合モンスターをエクストラデッキに戻して、その素材となったモンスターを特殊召喚する!」

 

 ファーニマル・ドッグ レベル4 ATK 1700

 ファーニマル・ペンギン レベル4 ATK 1600

 エッジインプ・シザー レベル3 ATK 1200

 

「くっ……」

「行くよ!エッジインプ・シザーで攻撃!」

「きゃっ!」

 

 危ねえ!ハサミやめて!

 

 カオリ LP 6500 → 5300

 

「ファーニマル・ペンギンで攻撃!」

「うひゃっ!」

 

 凄い勢いで突っ込んできた!吃驚して変な声出しちゃったよ。

 

 カオリ LP 5300 → 3700

 

「最後にファーニマル・ドッグで攻撃!」

「痛たたた!」

 

 噛むな、こら!かわいい顔してなんて攻撃だ!

 

 カオリ LP 3700 → 2000

 

「やっとライフが逆転したね。僕はカードを一枚セットしてターンエンド」

 

「三体融合とは……」

「カオリのキーカードを破壊することに成功したか」

「だが彼女の手札は次のドローを含めて五枚。ライフもまだ余裕があるな」

 

「うーん、巻き返されちゃったか。私のターン!アロマージ―カナンガを召喚!」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400

 

「墓地のスポーアの効果発動!デュエル中に一度だけ、墓地の植物族を除外してこのカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこの子は除外したモンスターのレベル分だけレベルを上げる。私はレベル1のグローアップ・バルブを除外して特殊召喚!」

 

 スポーア レベル1 → 2 DEF 800

 

「いつの間にそんなカードを……グローアップ・バルブの効果か!」

「気付いた?……ふふ、面白い融合召喚を見せてくれたお礼に、私もこれを見せてあげるよ。私はレベル3のアロマージ―カナンガに、レベル2のスポーアをチューニング!香り振り撒け、花の妖精!シンクロ召喚!飛び回れ、レベル5、アロマセラフィ―ローズマリー!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー レベル5 ATK 2000

 

「へえ、カオリはシンクロ使いなんだね!」

「そうよ。滅多に使わないけどね。それに切り札はこのモンスターじゃないよ。素良っちは私に切り札を使わせられるかな?」

「……へえ、言ってくれるね」

 

 ちょっと挑発してみた。うーん、なんだかまだ隠し玉を持ってるみたいなんだよね。まあそれを解き明かしたいわけじゃないけど、これで本性が少しは見られるかな?

 

「死者蘇生を発動。墓地からローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「ローンファイアの効果で自身をリリースして、デッキから桜姫(おうひ)タレイアを特殊召喚!」

 

 桜姫タレイア レベル8 ATK 2800

 

「タレイアは自分の場の植物族の数×100ポイント攻撃力をアップする」

 

 桜姫タレイア ATK 2800 → 3000

 

「タレイアでエッジインプ・シザーに攻撃!」

「ぐあっ!」

 

 素良 LP 3300 → 1500

 

「これでライフはもう一回逆転したよ。これでローズマリーの効果が使える。ライフが相手より多い時、私の植物族の攻撃力を500ポイントアップする!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー ATK 2000 → 2500

 桜姫タレイア ATK 3000 → 3500

 

「ローズマリーでファーニマル・ペンギンに攻撃!」

「うぐぅ!」

 

 素良 LP 1500 → 600

 

「くっ、罠発動、ファーニマル・クレーン。戦闘でファーニマルが破壊された時、それを手札に戻してカードを一枚ドローする」

「……タレイアがフィールドにいる限り、他の植物族モンスターは効果で破壊できない。私はカードを一枚セットしてターンエンド」

「……ちっ。ちょっとムカついてきちゃったな。僕のターン!……永続魔法、エッジ・ナイトメアを発動。一ターンに一度、墓地のエッジインプを特殊召喚する。甦れ、エッジインプ・シザー!」

 

 エッジインプ・シザー レベル3 DEF 800

 

「魔法カード、融合を発動。エッジインプ・シザーとファーニマル・ドッグ、手札のファーニマル・ペンギンを融合!悪魔の爪よ。忠実なる牙と氷海の翼よ!神秘の渦で一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを噛み砕く恐怖のケダモノ!デストーイ・シザー・ウルフ!」

 

 デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 ATK 2000

 

「ファーニマル・ペンギンの効果でカードを二枚ドローして一枚捨てる……来た!僕は魔法カード、魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を発動!墓地のモンスターを除外してデストーイを融合召喚する!僕は墓地の……いや……」

「どうかした?」

「何でもないよ。墓地のデストーイ・ハーケン・クラークとエッジインプ・トマホークを除外!魔物の爪よ。海の悪魔と一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てに牙剥く魔境の猛獣、デストーイ・サーベル・タイガー!」

 

 デストーイ・サーベル・タイガー レベル8 ATK 2400

 

「このカードを融合召喚した時、墓地のデストーイ一体を召喚条件を無視して特殊召喚する!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く百獣の王、デストーイ・ホイールソウ・ライオ!」

 

 デストーイ・ホイールソウ・ライオ レベル7 ATK 2400

 

「サーベル・タイガーが場にいる限り、僕のデストーイの攻撃力は僕のフィールドのデストーイとファーニマルの数×400アップする!」

 

 デストーイ・サーベル・タイガー ATK 2400 → 3600

 デストーイ・ホイールソウ・ライオ ATK 2400 → 3600

 デストーイ・シザー・ウルフ ATK 2000 → 3200

 

「うわあ、3000超えが三体も……」

「なんて効果だ……」

「墓地のモンスターで融合だなんて……」

「マジで何者だよ、あの子!」

 

「ホイールソウ・ライオの破壊効果はまずい……。手札のアロマージ―アンゼリカの効果発動!このカードを捨てて、墓地のアロマ一体の攻撃力分、ライフを回復する。ベルガモットを選択!」

 

 カオリ LP 2000 → 4400

 

「この瞬間、ローズマリーの効果発動。ライフが回復した時、相手の表側表示カード一枚の効果をターン終了時まで無効にする!対象はホイールソウ・ライオ!」

「おっ……それは面白い効果だね。でも残念。アクションマジック、コットン・ガード!効果の対象を別のモンスターに移し替える!対象をデストーイ・シザー・ウルフに変更!さあ行くよ!ホイールソウ・ライオの効果発動!タレイアを破壊して3500ダメージだ!」

「きゃあああ!!」

 

 カオリ LP 4400 → 900

 

「サーベル・タイガーでローズマリーに攻撃!」

「罠発動、ドレインシールド!攻撃を無効にして、その攻撃力分ライフを回復する!」

 

 カオリ LP 900 → 4500

 

「また回復カードか!でもまだホイールソウ・ライオの攻撃が残ってる!ホイールソウ・ライオでローズマリーに攻撃!」

 

 防御策が尽きた!アクションカードを探せー!いや、さっきから探してはいるんだけど。ローズマリーも手伝って!……駄目だ~。アクションカード見つからないや。ローズマリーも駄目だった?あ、ローズマリー、後ろ後ろ!ホイールソウ・ライオが……。ローズマリィィィィ!

 

 カオリ LP 4500 → 3400

 

 ……怖いよ!ホラー映画みたいだったよ!ローズマリーが光る粒子のようになって消える感じだからよかったけど、そうじゃなかったらスプラッタ間違いなしだね。

 何かホイールソウ・ライオは他のデストーイと一線を画した怖さがあるんだよね。っていうかデザインがちょっと違う。他の奴は人形の目が本体じゃなくて暗闇の中にデフォルメされた光る目があるのに、何でお前だけ赤くなった人形の目がメインなの?

 

「シザー・ウルフでダイレクトアタック!」

「きゃあああ!!」

 

 カオリ LP 3400 → 200

 

「僕はこれでターンエンド。シザー・ウルフの効果も元に戻る。これでライフもまた逆転したね。どう?僕がちょっと本気を出したらこんなもんだよ」

「……想像以上だったよ。でも全力じゃないなら、私は倒せない!私のターン!永続魔法、増草剤。一ターンに一度、召喚権を放棄して墓地の植物族を蘇らせる。ローンファイアを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「ローンファイアをリリースして、デッキからベルガモットを特殊召喚!増草剤の効果で特殊召喚されたモンスターがフィールドを離れたから、増草剤自身のデメリットによって増草剤は破壊される」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「速攻魔法、狂植物の氾濫を発動!自分の場の全ての植物族の攻撃力を、墓地の植物族の数×300ポイントアップする!墓地の植物族は九体!よって攻撃力を2700ポイントアップ!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 5100

 

「攻撃力5100……!」

「ベルガモットでデストーイ・サーベル・タイガーに攻撃!」

「くっ、アクションマジックがもうない……!うわぁー!」

 

 素良 LP 600 → 0

 

「カオリが勝ったか……」

「あの少年もいい線行ってたんだが……」

「やはり強いな……」

「二人とも凄かったぞー!」

 

 あー、久しぶりにしんどかった。でも素良っち、墓地融合の時になんか迷ってたから、まだ本気じゃないっぽいんだよなあ。それにイライラはしてたけど、怪しさについて確信が得られるほどじゃなかったなあ。

 

「……参ったよ。強いね、カオリ」

「んー、素良っちもね。今度デュエルするときは本気出してくれると嬉しいな」

「……それはこっちの台詞だよ。またデュエルするの、楽しみにしてるよ。またね」

 

 何かやけに落ち着いてたなあ。デュエル中はあんなにイラついてたのに。恨まれちゃったかな。……よし、ゆうやんに任せよう!途中ゆうやんの台詞真似してたし、きっとゆうやんのことは気に入ってるんじゃないかな。主人公だし、なんとかしてくれるでしょ!

 

◆ ◆ ◆

 

「強力な召喚反応!種類は融合です!」

「どこだ!?」

「ここです!LDSのコートです!」

「何だと!?社長……!」

「すぐに映像を映せ」

 

 画面には水色の髪の少年とカラフルなロングヘアの少女がデュエルをしている様子が映し出された。

 

「融合を使っているのは少年の方か。何者だ?」

「……対戦相手は例の少女か」

「そのようです。いかがいたしましょうか」

「そのまま干渉するな。データだけ取っておけ」

「わかりました」

 

 レオ・コーポレーション社長、赤馬零児はそのデュエルを冷静に分析する。

 

「一進一退の攻防ですね……」

「そう見えるか。だが、両者ともに本気を出していないようだ」

「これで……ですか」

「実力も踏まえれば、この少年は融合次元の人間である可能性が高い。おそらく赤馬零王の送り込んできた人間だろう」

「捕らえますか?」

「いや、泳がせておけ。奴らの狙いを調べ、かつ実力を把握するのに好都合だ」

「畏まりました」

「それにしてもこの少女……カオリ、だったか」

「はい。公式戦で全戦全勝の、ジュニアユース・シンクロコースのエリートです」

「……互いに本気ではないとはいえ、融合次元の刺客と渡り合うか。彼女ならランサーズの資格があるかもしれないな」

「……では社長」

「ああ、彼女の動向も探っておけ。敵は強大だ。味方は多い方がいい。それが強者であるなら、尚更だ」

「畏まりました」

 

 画面を眺めながら、零児は場合によっては自ら実力を確かめる必要もあるだろうと考える。ちょうど画面の向こうでは決着がついていた。




 アクションマジックの中身
・フェイク・テディベア → ノーアクション
・コットン・ガード → ガード・カバー

 香「お前に切り札なんて必要ないよ。NDK?」
素良「(#^ω^)ビキビキ」
鋏熊「……」

 素良君、怒涛の融合連発。本当はデストーイ・マッド・キマイラを呼んでたら勝てた、みたいにしたかったんですが、できませんでした。サーベル・タイガーが強すぎる……。

 カオリはデニスとの関係は良好そうですが、素良のことは初めっから疑ってかかってるので好感度はかなり低そうなスタート。まあ遊矢が何とかしてくれるでしょう。


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第五話 反逆のそっくりさん

 遅くなりました。忙しいので次も遅くなると思います。

8/9 すいません、アロマガーデンの攻撃力上昇を処理してなかったので、修正しました。後半のデュエル構成が大幅に変わってます。

2018/10/28 アクションデュエルでもフィールド魔法を使っていこうと思うので、アクションデュエルでは普通のフィールド魔法を使えないような記述をしていたのを修正しました。


 橋の下に黒づくめの不審者がいるぞ。ってよく見たらゆうやんじゃん。

 

「おっ、ゆうやんだ。どうしたの、そんなパンクな格好して。反抗期?」

「……ゆうやん?誰の事だかわからないが、おそらく人違いだろう」

 

 おう、その髪染めたんじゃなくてもしかして元から?あまりにも顔が似てたからすっかり騙されちゃったね。

 

 ……あれ、もしかしなくてもこの人メインキャラじゃね?主人公と顔が同じとか絶対重要ポジションだよね。あ、もしかしてこっちが主人公だったりして。どうりでゆうやんメンタルが弱いと思ったよ。主人公じゃなくて準主人公だったんだね。

 

「ふーん、人違いかあ。でも君もデュエリストっぽいし、ここで会ったのも何かの縁ってことで、デュエルしない?」

「悪いが俺は暇じゃな……っ!そのバッジは……」

 

 ん?あっ、勘違いして話しかけたから自己紹介忘れてた。

 

「ああ、自己紹介がまだだったね。私はLDSシンクロコースの花吹雪香だよ」

「……悪いが俺は貴様に名乗る名前などない。貴様がLDSである以上は!」

 

 急にどうした。反抗期か?LDSに塾でも潰され……いや、待てよ。メインキャラっぽいってことは何かもっと壮大なバックストーリーがありそうだなあ。

 

「俺とデュエルだ。貴様には聞きたいことがある」

「まあ、初めからそのつもりだったからいいけど……」

 

 無茶苦茶攻撃的だな。LDSなんか裏で悪い事でもやってんのかな?むしろ私が勝ったら色々聞かせてもらおうかな。

 

「「デュエル!!」」

 

 カオリ LP 4000

 ??? LP 4000

 

 さて、久々のスタンディングデュエルだ。私はスタンディングとアクションでデッキがちょっと違うからなあ。やっぱりアクションカードのあるなしではカードの比率が大きく変わっちゃうし、変える必要がある。エクストラのモンスターも新しいのを導入したし、うまく回せるかな?

 

「先攻は貰う。俺はカードを四枚セット!ターン終了だ」

 

 げえ、ガン伏せ!羽根帚が欲しい……。

 

「私のターン、ドロー!それじゃあ行くよ。フィールド魔法、アロマガーデンを発動!」

 

 辺りに花が咲き乱れる。ソリッドビジョンなのでアロマの香りは……あれ、するな。まさかこのそっくりくん、5D'sでいうところのサイコデュエリストか……?いや、あれは自分の使う側だけだっけ。もうよく覚えてないなあ。まあいいや。そのうちわかるでしょ。それよりデュエルを進めよっと。

 

「アロマージ―ジャスミンを召喚」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「アロマガーデンの効果発動。アロマモンスターが場にいる時、一ターンに一度ライフを500回復できる!そして次の相手ターン終了時まで自分の全てのモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 アロマージ―ジャスミン ATK 100 → 600

 

「ここでジャスミンの効果発動。自分のライフが回復した時、カードを一枚ドローする!」

「……」

 

 シャキーン!ドロー!……罠が来ないな。しかし怖いな、あのガン伏せ。

 

「さらに自分のライフが相手より多い時、ジャスミンの効果で植物族をもう一度召喚できる。おいで、アロマージ―カナンガ!」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400 → 1900

 

「カナンガの攻撃力はアロマガーデンの効果で500上昇。そして魔法カード、フレグランス・ストームを発動!場の植物族モンスターを破壊して一枚ドローする。破壊するのはジャスミン。そしてドローしたのは植物族のアロマージ―ローズマリー!よってフレグランス・ストームの効果でさらに一枚ドロー出来る!」

 

 今日も絶好調。ドロー修行の甲斐があった。どういう理屈で効果が発揮されるのかわかんないけど。

 

「私のアロマが破壊された時、アロマガーデンの効果によってライフを1000回復する。そしてライフが回復したことによりカナンガの効果発動!相手の魔法・罠カード一枚を手札に戻す!」

「……」

 

 カオリ LP 4500 → 5500

 

 デュエルが始まってからえらい無口なんだけど、このそっくりくん。今も無言で選ばれたカードを手札に戻したし。もっと楽しくデュエルしよーよ!

 

「バトル!カナンガでダイレクトアタック!」

「俺は罠カード、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ロスト・ヴァンブレイズを二枚発動!」

 

 流石に発動したか。さて、どんな効果かな?

 

「相手モンスター一体の攻撃力を600下げる。合わせて1200の減少だ」

 

 アロマージ―カナンガ ATK 1900 → 700

 

「そしてこのカードをモンスターとして攻撃表示で特殊召喚する」

 

 幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ レベル2 ATK 600

 

「なるほどね……。だけどカナンガは私のライフが相手を上回っている時、相手の攻守を500下げる!」

 

 幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ ATK 600 → 100

 

「攻撃は続行!」

 

 カナンガがフラスコを投げつける。攻撃力が下がってるからか、ヘロヘロだ。中身の液体がロスト・ヴァンブレイズにかかるけど微動だにしない。

 

 ??? LP 4000 → 3400

 

「……破壊されない?」

「ロスト・ヴァンブレイズが発動したターン、幻影騎士団モンスターは戦闘では破壊されない」

「効果多いな。しかもダメージはほとんどなしかぁ。まぁいいや。私はカードを二枚セットしてターンエンド」

「……まだ様子見ということか。ならばこちらから攻めさせて貰おう。俺のターン!俺はレベル2の幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ二体で、オーバーレイ!」

 

 おおう、なるほど……エクシーズを使うのか。他も使うかもわからないけど。

 

「幾万の戦士を貫き、闇に葬る呪われし反逆の槍。降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク2、幻影騎士団カースド・ジャベリン!」

 

 幻影騎士団カースド・ジャベリン ランク2 ATK 1600 → 1100

 

「カースド・ジャベリンでカナンガに攻撃!」

「それは通さない!速攻魔法、ライバル・アライバル!バトルフェイズ中に召喚を行う!カナンガをリリース、アロマージ―ベルガモットをアドバンス召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400 → 2900

 幻影騎士団カースド・ジャベリン ATK 1100 → 1600

 

「……攻撃は続行する!」

 

 !?いや、まだカースド・ジャベリンの効果が不明だ。さっきの一瞬でちらっと確認しようとしたけど、どっちのカードもデータベースには載ってなかったみたいで、デュエルディスクで効果を確認できない。

 

「なら手札のアロマセラフィ―アンゼリカの効果発動!このカードを手札から捨てて、墓地のアロマ一体の攻撃力分回復する!対象はカナンガ!」

 

 カオリ LP 5500 → 6900

 

「そして私のライフが回復した時、ベルガモットは相手のターン終了時まで自身の攻撃力を1000ポイント上昇させる!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2900 → 3900

 

「無駄だ。ダメージ計算前、カースド・ジャベリンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 3900 → 0

 

「さらに永続罠、幻影剣(ファントム・ソード)を発動!対象はカースド・ジャベリン!その効果によりカースド・ジャベリンの攻撃力を800ポイントアップする!」

 

 幻影騎士団カースド・ジャベリン ATK 1600 → 2400

 

「くっ!?」

 

 カオリ LP 6900 → 4500

 

 うおお、衝撃が!や、やっぱりリアル化する系か!この人かそれともデュエルディスクに細工がしてあるのかわかんないけど気は抜かないほうがよさそうだ。

 

「うっ……アロマガーデンでライフを回復!」

 

 カオリ LP 4500 → 5500

 

「俺はカードを三枚セットしてターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 

 よし、いいカードだ。

 

「アロマージ―ローズマリーを召喚!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「さらに永続罠発動、リビングデッドの呼び声!ジャスミンを攻撃表示で復活!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「もひとつおまけに、魔法カード、死者蘇生!墓地のベルガモットを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「そしてアロマガーデンの効果でライフを500回復し、攻撃力を上昇!」

 

 カオリ LP 5500 → 6000

 アロマージ―ジャスミン ATK 100 → 600

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → 2300

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 2900

 

「ジャスミンとローズマリー、ベルガモットの効果発動!ローズマリーはライフが回復した時、モンスターの表示形式を変更する!守備表示にするのは当然カースド・ジャベリン!」

「カースドジャベリンの効果発動。ローズマリーの効果を無効にし、攻撃力を0にする」

 

 アロマージ―ローズマリー ATK 2300 → 0

 

 こっちを無効にしてきたか。けどこれでカースド・ジャベリンの効果は打ち止め!

 

「ジャスミンの効果でドローして、ベルガモットをパワーアップ!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 2900 → 3900

 

「さらに場にアロマがいて私の方がライフが多い時、アンゼリカは墓地から特殊召喚できる!」

 

 アロマセラフィ―アンゼリカ レベル1 DEF 0 → 500

 

「そしてレベル4のアロマージ―ローズマリーとレベル2のアロマージ―ジャスミンにレベル1のアロマセラフィ―アンゼリカをチューニング!」

「!!この召喚方法は……」

「天より舞い降りし、生命の化身!シンクロ召喚!命を照らせ、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100 → 2600

 

「自身の効果で蘇生したアンゼリカはフィールドを離れた時除外される。そしてエンシェント・ホーリー・ワイバーンは相手のライフを上回っている分だけ攻撃力をアップする!ライフ差は2600!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2600 → 5200

 

「攻撃力5200……」

「バトル!アロマージ―ベルガモットでカースド・ジャベリンに攻撃!」

「永続罠、幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)!アロマージ―ベルガモットの攻撃を無効にし、攻撃と効果を封じる!この効果対象のモンスターは攻撃対象にもならなくなる」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 3900 → 2900

 

「ならホーリー・ワイバーンでカースド・ジャベリンに攻撃!セフィロト・ブレス!」

「……」

 

 ??? LP 3400 → 600

 

「幻影剣は対象モンスターの戦闘による破壊の身代わりにできる!」

 

 幻影騎士団カースド・ジャベリン ATK 2400 → 1600

 

 破壊身代わり効果か。ライフも削り切れなかったし。鉄壁入られちゃったのは負けフラグだ。でも何でホーリー・ワイバーンじゃなくてベルガモットの攻撃を止めたんだろ?プレイングミスと言うよりは、なんか狙ってそうな気がするな……。

 

「ライフ差はさらに開いてホーリー・ワイバーンの攻撃力もさらに上昇するよ」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 5200 → 8000

 

 永続効果だからしょうがないけど、負けフラグがどんどん積み重なってる気がする。

 

「ライフ残っちゃったかあ。私はカードを一枚セットしてターンエンド」

「エンドフェイズ、俺は罠カード、幻影騎士団シェード・ブリガンダインを発動。レベル4のモンスターとして特殊召喚する」

 

 幻影騎士団シェード・ブリガンダイン レベル4 DEF 300

 

 あー、もしかして罠モンスターデッキか、この人。それ考えるとやっぱり主人公じゃないのか。主人公が罠モンスターデッキとか流石にないよね。よくよく考えたら新しい召喚法を使ったのはゆうやんだし、やっぱゆうやんが主人公か。

 

「俺のターン、ドロー!俺はもう一枚のシェード・ブリガンダインを発動!」

 

 幻影騎士団シェード・ブリガンダイン レベル4 DEF 300

 

「なるほど……これでレベル4モンスターが二体、と」

「その通りだ。俺はレベル4の幻影騎士団シェード・ブリガンダイン二体で、オーバーレイ!漆黒なる闇より、愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!今降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 ATK 2500

 

 うおお、こいつ……すごい迫力だ!しかもエクシーズ(・・・・・)・ドラゴンだって……?エクシーズモンスターなのにわざわざエクシーズの名前を持ってるとか、明らかにエースだ!ステータスも攻撃力2500だし……。あ、オッドアイズもペンデュラム(・・・・・・)・ドラゴンじゃん!もう間違いない。こいつ、ただのモンスターじゃない!

 

「ダーク・リベリオンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、このターンの間相手のレベル5以上のモンスターの攻撃力を半分にして、その数値分ダーク・リベリオンの攻撃力をアップする!」

「なっ!?」

「対象はエンシェント・ホーリー・ワイバーンだ。トリーズン・ディスチャージ!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 8000 → 4000

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK 2500 → 6500

 

「もう一度効果発動!トリーズン・ディスチャージ!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 4000 → 2000

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK 6500 → 8500

 

「ターン制限もないんだね……」

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでエンシェント・ホーリー・ワイバーンに攻撃!」

 

 あ、アゴに雷が!?なんでそんな演出……いや、そんなこと言ってる場合じゃない!

 

「速攻魔法、非常食!魔法・罠を墓地に送ってその数×1000のライフを回復する!残っていたリビングデッドの呼び声を墓地に送ってライフを1000回復!エンシェント・ホーリー・ワイバーンはダーク・リベリオンに攻撃力を固定されてるから、攻撃力は変動しない」

 

 カオリ LP 6000 → 7000

 

「反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

「ぐっ……!」

 

 カオリ LP 7000 → 500

 

 ふげぇ!痛い!6000オーバーのダメージがリアル衝撃になるとこんなになるのか……。体鍛えてなかったら死んでたかも。

 

「……躱されたか。……」

 

 ん?どうした、こっちをじっと見て。一目惚れか?

 

「次のターンに幻影霧剣を破壊するカードを引かないことに賭けるのは……無理そうだな。速攻魔法、幻影騎士団円卓裂破(ファントム・ナイツ・アラウンド・バーン)を発動!墓地のロスト・ヴァンブレイズ二枚を除外して、フィールドのモンスターを全て破壊し、バトルフェイズを終了する!」

 

 ベルガモットとダーク・リベリオン、それにカースド・ジャベリンが破壊された。

 

 ここにきてそんな効果が!でも、彼の場にもモンスターはいなくなった。このままなら次で私が攻撃力600以上か攻撃力100以上のアロマ(つまりアンゼリカ以外)を引けば勝ち。それだったらサイクロンとかを引かない方に賭ける方がマシだから、おそらくそれだけじゃないんだろうね。

 

「さらに互いにこのバトルフェイズで墓地に送られた自身のモンスターの数×800のダメージを受ける!」

「!私はエンシェント・ホーリー・ワイバーンとベルガモットを、あなたはダーク・リベリオンとカースド・ジャベリンを失ってる……」

「そうだ。よって俺たちは互いに1600ポイントのダメージを受ける!」

「きゃあああ!!」

「ぐうっ……!」

 

 カオリ LP 500 → 0

 ??? LP 600 → 0

 

 いてて……。リアルダメージはやっぱきついなあ。アクションデュエルと違って安全対策されてないし。

 

「引き分け、だね……」

「……聞きたいことはいくつもあるが……ここは引こう。またいずれ会おう」

 

 うーん、逃げられたけど追いかける体力はないな。せめて名前だけでも聞きたかったけど。まあいいや。とりあえず黒ゆうやん(仮)で。もう今日は家帰って休もう。怪我はしてないけどしんどい。

 

◆ ◆ ◆

 

「ゆうやん、か。俺に似た人物がいるなら顔を隠すべきか。それにしても花吹雪香。必殺の一撃を躱し盤面を覆してくる実戦的なデュエルにシンクロ召喚……やつも融合の手先の一人なのか?やはり、シンクロは敵と考えるべきか……」

「ユート、ここにいたのか」

(しゅん)か」

 

 遊矢似の少年はもう一人の黒づくめの人物に声をかけられ、振り返る。

 

「向こうの橋の下で待っていると言っていたが……」

「あそこでLDSの少女に声をかけられてな。デュエルしていた」

「何!?」

「あの場所はもう集合場所に使わない方がいいだろう」

「そうか……そのデュエルはどうなったんだ?」

「引き分けた。シンクロ使いで、実戦的なデュエルをするやつだ」

「お前と引き分ける程か……。それにしてもシンクロ使いとは、やはりシンクロも敵のようだな」

「いや、彼女も敵意を以て向かってきたわけじゃない。まずは話を聞き出して……」

「甘い」

 

 遊矢似の少年の言葉を遮り、その表情に怒りを滲ませながら隼と呼ばれた男は告げる。

 

「敵は強大で、無尽蔵にいる。だが、俺たちは奪われた仲間を必ず奪い返す!そのためには躊躇している余裕などない!」

「隼……」

「ユート、俺は行く。LDSの赤馬零児を人質に瑠璃を奪い返す。そのために俺は何だってやってやる。敵であろうとなかろうと、LDSのやつらを狩りつくしてもな」

「……」

「俺はそのためにここに来た。そのシンクロ使いの女もLDSだというなら俺が狩る」

「……止まらないんだな」

「ああ」

 

 二人はそれっきり押し黙り……暫くしてから情報の交換だけしてその場を後にした。




 ユートの使用カードが少なすぎて苦労しました。漫画版でも出番がまだ少ないので……。

 初登場のエンシェント・ホーリー・ワイバーンがダベリオンの餌に。レベル7でライフが多い時に攻撃力上昇とかアニメのダベリオンの格好の的っていう。主人公の切り札としては優勢な時に力を発揮するオベリオンタイプなので彼と同じ道を歩みそう。

 主人公の劣勢時の切り札が未だ未定。アロマに合う劣勢時の切り札って何だろう……。


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第六話 嵐(というか荒し)の少女

今回はデュエルなしです。


「フハハハ!先を読んで計算し先に罠カードを伏せておいた俺の勝ちだ!」

「易い戦略だ。児戯にも等しい」

「はい?」

「俺は墓地の永続魔法、幻影死槍(ファントム・デススピア)を除外して効果発動。相手の罠カードの発動を無効にして破壊し、相手プレイヤーに100のダメージを与える」

「ええ!待って待って、待て待て待て……うわぁ!」

 

 沢渡 LP 100 → 0

 

 槍が沢渡に命中する手前でデュエル終了のブザーが鳴る。同時にマスクの中の素顔が露わになった。

 

「遊矢!き、貴様だったのか……」

「やべえ、こいつやべえよ!」

「早く逃げろ!」

 

 沢渡の取り巻きが倒れた沢渡を連れて逃げる。柚子は逆に遊矢似の男に近づいた。

 

「あなたが例の……黒ゆうやん?」

「俺はゆうやんとやらではない」

 

 彼は嘆息し、続けて名乗ろうとして……その前に柚子のブレスレットが輝いた。

 

◆ ◆ ◆

 

 黒ゆうやんとデュエルして数日。柚子りんが黒ゆうやんに出会ったらしい。

 

 突然現れてネオ沢渡さんをぶちのめしたらしい。相変わらず過激な人物のようだ。

 

 私?今はLDSのロビーで寛いでるよ。

 

「やあ、カオリ」

「お、デニー。どう?こっちには馴染めてる?」

「君のおかげでね。君の交友関係の広さにはびっくりだよ」

「はっはっは。コツは初対面の相手の不快にならないようなあだ名をつけて勝手に友達認定することだよ」

「適当なこと言ってんじゃないわよ!」

 

 おお、ますみんだ。

 

「大体、初対面の相手じゃどういうあだ名で不快になるかもわからないでしょ!?」

「なんとなくわからない?」

「わかるか!」

「どしたのますみん、そんなにイライラして。牛乳飲んだ方がいいんじゃない?はい、これ」

「あんたの飲みかけなんていらないわよ!?しかも牛乳じゃなくてリンゴジュースじゃない!あとその呼び方やめてってば!」

「今日もキレッキレだね」

「おかげさまでね!」

 

 ますみんのツッコミが冴え渡るね。さすがいじり甲斐がある私の大親友。

 

「フフフフ……仲がいいね」

「仲が良くなきゃこんな口は利かないよ」

「いや、カオリは誰に対してもそんな感じじゃない……」

「そういえば僕も初対面でパフェ奢らされたっけ」

「呆れるほど凄まじい神経の太さね……」

「まあ、あれは冗談みたいなものだったけど。本当に奢ってくれるとは思わなかったよ」

「あれ冗談だったの!?」

 

 どうしたデニー。そんなに驚いて。

 

「いくら私でもいきなり初対面の人に無理やり奢らせたりしないって」

「ええええ……3000円もしたのに……」orz

「美味しかったよ。ご馳走様でした」

「傍若無人か。ああ、こんなことしてる場合じゃなかった。カオリを呼びに来たのよ。理事長からの呼び出しで」

「理事長?帰って来たばっかりとかいう?何の用だろ」

「知らないわよ。とにかく、ここで無駄話してないでさっさと行くわよ」

「ほいほ~い」

 

◆ ◆ ◆

 

「榊遊矢によるLDS塾生の襲撃、か……」

 

 うーん、黒ゆうやん案件だったか。LDSが悪い事してんのかと思って、LDS関係者に黙ってたら何かややこしいことになってる。今はエクシーズコースとシンクロコースのエリート志島(しじま)北斗(ほくと)刀堂(とうどう)(やいば)――私はホクティーとやーくんと呼んでいる――とますみん、私が理事長――赤馬日美香さんに説明を受けているところだ。

 

 ますみんは融合コースの代表として呼ばれたのがうれしいらしくてテンション上がりまくってる。

 

「このままではLDSの面目が立ちません。そこで、あなたたちに遊勝塾との塾対抗戦の代表を務めていただきたいのです」

「わかりました。LDSのジュニアユース融合コースの代表の名に恥じないよう、勝利を!」

「フフフ、丁度俺の連勝記録が40勝を達成したところです。榊遊矢への勝利を50連勝へのスタートダッシュとして見せましょう!」

「あ、私はパスで」

「俺が出れねえのは残念だが、頑張って来いよお前ら……ってええええええええ!」

 

 見事なリアクションだな、やーくん。でもリアクション芸はホクティーの役割じゃないかな?

 

「パスってお前……」

「ちょっとカオリ!?今回はふざけてる場合じゃ……」

「いやいや、別にいつもの悪ノリじゃないって」

「遂に普段の言動を悪ノリって認めたわね……」

 

 むしろ悪ノリ以外の何だと思っていたんだ、ますみん。

 

「それはともかく。私は遊勝塾の面々と交流してるからね。私が負けた時、わざと負けたとか言われてもやだし」

「勝てばよい話では?それとも自信がないと?」

「負ける気はしないね。でも、ただの塾対抗戦じゃないんでしょ?」

「フフフ……」

 

 腹黒いな、このハートの髪型した理事長。

 

「ん?どういうことだい?」

「……ああ、そういうことか。確かに融合、シンクロ、エクシーズはLDSが牛耳ってるようなもんだしな」

「榊遊矢を……ペンデュラム召喚を放っておくわけがないってわけね」

「ナチュラルに僕を会話から置き去りにするのやめてくれないかな……。今のやり取りで流石にわかったけど」

「ええ、確かに。榊遊矢を、ペンデュラムをLDSに取り込みたい。そのために遊勝塾をLDSのものにする必要があるのです」

 

 やっぱり買収的な話だったか。

 

「じゃあやっぱり私は出張らない方がいいね。わざと負けちゃうかも?」

「LDSよりも遊勝塾を優先する、と?」

「私は別にどっちの塾にも深い思い入れがあるわけじゃないけど……ちょっと気になることがあるからね」

「気になること?」

「最近ゆうやんによく似た、でも全くの別人に襲われてね」

「!!」

 

 お、流石に驚いたか。まあ、本当は私が最初に声をかけたんだけど。

 

「そんなことがあったの!?」

「おいおい、どうして黙ってたんだよ」

「さっきも言ったようにちょっと気になることがあったんだよ。……どうもその人、LDSを相当恨んでるらしくてね。何かLDSとかレオコーポレーションに後ろめたい事でもあるんじゃないかと思ってね」

「企業と言うものは多かれ少なかれ後ろめたいことはあるわ。我が社は他の塾の買収などもしていて、それ以前にそもそも規模が大きいのよ。恨まれる理由は星の数ほど。恨まれているというだけでは犯人の見当もつかないわ」

「いや、買収がどうとかじゃなくて……まるで親の仇のように憎んでる感じだったね」

「……」

「今回の事件もたぶんそいつの仕業だと思うけど、心当たりはないのかな?」

 

 黒ゆうやんにあってからLDSを探ろうかと思ったけど、調べる当てが全くなかった。噂も買収がどうだとかその程度。唯一気になるとしたら融合やシンクロとかの召喚方法の発信元らしいこと、それらを開発した経緯が不明なことくらいだった。不貞腐れてロビーで暇してたんだけど……折角だし探りを入れてみることにした。

 

「……」

「その件には私が答えよう」

 

 やってきたのは素足に靴を履き、重力を無視した季節外れのマフラーを巻いた男……。

 

「「「赤馬社長!」」」

「零児さん!」

 

 レオコーポレーション社長にして史上最年少でプロ入りした天才デュエリスト、赤馬零児!と、その秘書っぽい男の人。

 

 ……そのマフラー、風のない室内でなぜそんなに浮いてるの?針金でも入れてるんだろうか?そしてなぜ靴下を履かないんだ。ファッションにツッコミどころが多すぎる……。

 

 いや、それよりLDSが悪者だとしたらボスキャラやで!これはまずい展開か……?いや、でも話があるってことはすぐにどうこうってことは無いかな?うーん、考える時間が欲しい。

 

「シンクロコースのトップ成績保持者、花吹雪香だな。元々君個人に話があったが……」

「ごめんなさい、私には彼氏がいるから……」

 

 すぱーん、と小気味いい音を立ててますみんの平手が私の頭を直撃する。

 

「どう考えてもそういう話じゃないでしょ!?しかもあなた、恋人なんていたことないじゃない!!さっきまで真面目だったのに何故悪ノリした!?」

「さっきまでも話の内容は真面目だったけどふざけてはいたよ。真面目に話すならあんなに回りくどく話さないって」

「あなたは……本当に……」

 

 ますみん振動中。マナーモードか?

 

「漏れそうなの?我慢してないで花摘みに行ったら……ゴフッ!?」

「うお、真澄のボディブローだ!きれいに鳩尾に決めやがった!」

「蹲ってるけど、あれはしばらく立ち上がれないだろうね……」

「……大丈夫か?」

 

 若干困惑しながらも赤馬零児が手を差し伸べてくれる。紳士だ。あ、あだ名はレイ兄さんにしよう。

 

「全然平気」

 

 折角なので手を借りてすっくと立ちあがる。

 

無傷(ノーダメージ)……だと……」

「結構本気で……というかつい全力で殴っちゃったんだけど……」

「どういうことなんだ……。何かもう僕、話の流れにもこの空気にもついていけないんだけど」

 

 はっはっは、デュエリストたるもの坑道で爆破されて吹っ飛ばされて崖から落ちても痛いで済むくらいにしておかないとデュエルで死ぬよ?割と大真面目に。

 

「……話を戻してもいいだろうか」

「どうぞどうぞ」

「どうぞどうぞじゃねえだろ……」

「元々君個人にも話があったが、榊遊矢似の人物に出会ったというなら聞きたいことがある」

「私のスリーサイズ?」

「誰もそんなことは聞いてねえよ」

「上から93、56、76でカップはH」

「聞いてないって言ってるだろ!?」

「H!?どうりで形がくっきりと出てると……」

「北斗、あなた食いつきすぎ」

「本当の数字なわけねえだろ……」

 

 こういうところがホクティーのいじられる原因だよね。

 

「しまった、滅茶苦茶恥ずかしい……!」

「いや、本当の数字だけど」

「おい、カオリ。女子としてのデリカシーとかねえのかよ」

「恥じるようなところは何もない」

「恥じろよ!」

 

 堂々と胸を張る。どやー!あ、秘書の男の人がじっとこちらを見ている。えっち。

 

「……本当にHもあるの?確かに大きく見えるけど」

「多少寄せて上げてるけど」

「うう、少し羨ましい」

「マジマジ見つめてんじゃねえよ、真澄。お前までボケに回られたら俺は突っ込み切れる自信がねえ。あと北斗、顔真っ赤にして視線逸らしてる振りしながらチラ見すんな」

 

 初心だな、ホクティー。そんなチャラい格好してるのに。

 

「……それと、君の疑問にも答えよう」

 

 あ、無視した。秘書の人と違って真面目だ。まさに紳士。

 

「榊遊矢似の人物について詳しくはわかっていないから、推測の話になるがな……」

 

 ほむほむ。まあ、いいか。万が一でも逃げるくらいは出来るだろう。準主人公っぽい黒ゆうやんが関わってるなら割と世界規模の問題かもしれないし。このまま放置していて取り返しのつかないことになるくらいなら話だけでも聞いておいた方がいい。元々目をつけられてたっぽいからここで逃げても話が進まないだけだろうし。

 

 という結論に至った。ますみんたちとのやりとりのおかげで考える時間が出来て助かったぜ。

 

「ん、わかった」

「では、君はこちらに来てくれ。それと、塾対抗戦には彼女の代わりに刀堂刃、君が出てくれ」

「え、あっ、は、はい!」

「彼女が歴代のシンクロコーストップ成績者の中でも抜きんでているだけで、君も代表として十分な実力がある」

「わ、わかりました!」

「それじゃあ行こうか、レイ兄さん」

「私は君の兄ではないが……それとそっちは逆方向だ」

 

 バタム。

 

「……行ったか」

「何ていうか、すごく疲れたわ。これから塾対抗戦なのに」

「赤馬社長がいきなり現れたのも驚いたけど、それよりカオリがやりたい放題だったね。社長相手にもタメ口だし、いきなり自分のプロポーション自慢し出すし、勝手に兄呼ばわりしてるし、いつの間にか仕切ってるし」

「花吹雪っつーか、嵐みてえだよな……」

「……気を取り直して、あなたたちに代表をお願いします。志島北斗さん、光津真澄さん、刀堂刃さん。LDSの力を遊勝塾に、榊遊矢に見せてあげなさい」

「「「はいっ!」」」

 

◆ ◆ ◆

 

 連れてこられたのは社長室、かな?町が一望できるレオコーポレーション最上階の部屋だ。応接室じゃないってことはやっぱりあんまり外に漏らしたくはない話かな。

 

 こっから逃げ出すとなると大変かも。このむっつり秘書の……中島さんだっけ?に捕まったら大変なことになる。

 

「……さて、するべき話はいくつかあるが……順序を考えればまず君とデュエルした榊遊矢似の人物について聞かせてもらえないだろうか」

「おーけー。どうせネオ沢渡さんに聞けばわかることだし、隠すこともないでしょ」

 

 

 かくかくしかじか。

 

 

「エクシーズ使いにドラゴンの切り札、か……確かに彼の証言と一致しているな。強力なエクシーズ召喚反応が発見された位置も君の言う場所と同じだ。……確認するが、本当にそのモンスターが彼の切り札(エース)なのか?彼の扱うエクシーズは一体ではないようだが。それに、エクシーズ以外を操る可能性は?」

「まあ、あれより強力なカードを抱えてる可能性はなくはないけど。あの迫力はただのモンスターじゃ考えられないし、そもそもあのドラゴンには何か秘密があるね。あと他の召喚法も使う可能性はあるけど、メインはエクシーズだね」

「秘密?それにエクシーズを主体にしているという根拠は?」

「オッドアイズ・ペンデュラム(・・・・・・)・ドラゴン」

「……なるほど、言われてみれば確かに」

「社長?どういうことですか?」

 

 中島さん、鈍いなあ。えっちなことばっかり考えてるから気が付かないんだよ。

 

「榊遊矢のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。彼の生み出した召喚法であるペンデュラム召喚の名を冠するドラゴン。そして榊遊矢と瓜二つの人物が操る、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンはエクシーズ召喚の名を冠するドラゴン」

「あっ!」

「付け加えるなら攻撃力が同じで、オッドアイズはレベル5以上(・・・・・・)のモンスターとの戦闘で与えるダメージを倍にする効果、ダーク・リベリオンはレベル5以上(・・・・・・)のモンスターの攻撃力を奪う効果なんだよね」

「ここまで共通点があれば無関係と考える方が難しい、か」

「そだね。ゆうやんがペンデュラムを作ったように彼がエクシーズの創始者なのかとかは知らないけど」

「いや、エクシーズはもっと古く(・・)から存在していた」

「古くから……ふーん」

 

 舞網市じゃLDSが持ち込んだのがつい最近なのに古くから、か。これがこれからする話に関わってくるのかな?

 

「まあ、とにかくあのドラゴンを使う彼はまず間違いなくエクシーズメインだよ。他の(・・)を持ってなければね」

「他の……シンクロや融合のドラゴンがいると君は考えているのか」

「まあね。ここまで来たらまず間違いなくいるでしょ。私からは今のところこんなところかな。これからレイ兄さんがしてくれる話次第だけど」

「……私は君の兄ではないが。そして君から話を聞いた後で付け加えて済まないが、私の話をするのには条件がある」

「条件?口外しないように、ってこと?」

「それもあるが……」

「他にもっと大事な条件がある、と。つまり、実力チェックってわけね」

 

 これデュエルする流れだな。要するにいつもの、って感じ。

 

「素晴らしい洞察力だな。流石だ、と言わせてもらおう」

「まあ、ヒントはいっぱいあったからね。そもそも私が呼ばれたのには理由があると思ってたし。黒ゆうやんの件と遊勝塾の面々と仲がいい事が最初に理由として浮かんだけど、黒ゆうやんの件とは別に話したいことがあるって言ってたから前者は除外。

 んで、遊勝塾との仲を利用してLDSに取り込もうって話なら順序が合わない。今理事長さんとますみんたちが殴り込みに行くところだし、レイ兄さんなら融和政策は喧嘩吹っ掛ける前の方がいいとわかるはず。実力を見せつけてからってのも考えられるけど今回は相手の弱みを突くからLDSが勝ったらそのまま取り込めるし」

「……私は君の兄ではないがな。その二つが消えて、次は?」

「そうなったらあと残ってる心当たりは素良っちが浮かんだ」

「紫雲院素良。彼のことは我々も目をつけていたが……」

「露骨に怪しいからね。でも敵対染みた行動をとっちゃったから、いくら私が遊勝塾と仲がいいって言っても私伝手で行動するのは悪手だろうし。LDSでの出来事だからたぶん把握してるだろうなって思ってね。彼の口振りからLDSとは敵対してるっぽいし」

「……彼のことは泳がせておく予定だ」

「まあ水面下で行動される方が面倒くさいもんね。んで、残った心当たりは実力ってなったわけ。自慢だけど私の成績は歴代でもかなりいい方らしいし?それにレイ兄さんはさっきの部屋で実力を気にしてる風があったからね」

「私は君の兄ではないが……」

「黒ゆうやんとの実戦(・・)もこなして……あ、エッチな意味じゃないよ、零児さん?」

「あっ、呼び方……」

 

 ん?どうしたんだ、中島さん。そっちの実戦を想像しちゃったか?

 

「……申し訳ありません、続けてください」

「……話を続けよう。それと、敬称は不要だ」

「じゃあ零児君」

「くん!?」

「どうかした?中島さん」

 

 さっきから様子が変だな。何か妄想しちゃってるのかな。さっきのスリーサイズの話でも思い出しちゃったのか?

 

「いえ、続けてください」

「じゃあ話を戻すね。実戦ではないし一応彼も本気じゃないとは思うけど、素良っちに勝ってることも理由になるか。あと根拠を上げるとしたらその値踏みするような視線と女の勘、かな。その理由で呼ばれたなら本当の実力を確認しておきたいと思うのは当然ってことね」

 

 本当は女の勘っていうより前世の記憶からこういうパターンでは流れ的にそうかなって思っただけだけど。

 

「それと今のやり取りで推測できたのは、少なくとも融合が古くからあるところ(・・・・・・・・・・・・)がLDSの敵で、LDSはそういう場所から融合、シンクロ、エクシーズを引っ張ってきた。黒ゆうやんはエクシーズが古くからあるところの出身っぽくて、融合とシンクロが昔からあるところに他の召喚法を名前に持つドラゴンを持ったゆうやん似の人がいるかも、ってところ?」

「……!」

 

 中島さん、驚きすぎ。そして私をガン見し過ぎ。むっつりさんめ。

 

「ああ、付け加えるなら。零児君はわざと推測できるように情報を落としてたってところ?」

「……先の部屋で意図的に会話を引き延ばして思考する時間を稼いでいたからな。どこまでできるのか試させてもらった」

「やっぱりバレてたんだね」

「それはこちらの台詞だ。その洞察力なら実力が伴わなくとも関わってもらうことにはなるだろう」

「もし洞察力が足りなければ私は情報を掴めない。洞察力があれば実力関係なしにある程度の話をすることは決定で、なおかつ話す内容を省略できるってわけね。かーっ、流石大企業の社長。頭の回転が早いね」

「そちらこそ。私の想定以上だった」

「デュエルでは想定じゃなくて想像を超えてあげるよ」

「それは楽しみだ。では行こう。実験で使用するデュエルルームを使う」

「へー。社会科見学みたいで何か楽しいな」

 

 バタム。

 

「……ただのふざけている少女かと思ったが、恐ろしいほどの洞察力だ。それに社長曰く公式戦では全力を見せていないとのことだが、実力者という雰囲気は全く感じられなかった。こちらが見ていてもあの態度を崩さない演技力も……いや、あれは素か。嵐のような少女だったな……」

 

 あっ、中島さんに言い忘れてたことがあった。ガチャリ。

 

「……何か御用ですか?」

「中島さん、女の子をガン見するのはよくないよ。サングラスかけてても丸わかりだよ。女子は視線に敏感なんだから」

「あ、ああ、申し訳ありませ……」

「中島さんのエッチ」

 

 バタム。

 

「……え?いや、そういう意味では!ちょっと!誤解!誤解だ!」

 

 ガチャリ。

 

「……もういなくなってる……。はあ、なんだか疲れたな……。まさに嵐だ……」




デュエルしてないのに主人公が暴れまくりました。非デュエル回の方が主人公が生き生きしてる気がする……。

次回は社長戦の予定です。DDD使いの社長は主人公とデュエルさせると大量のライフ回復とソリティアが両方備わり長文に見える。要するに、デュエルが長くなりそうです。


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第七話 VSブラック企業 前編

前後編に分かれました。DDゆえ致し方なし。

遊矢戦前なのでDDケルベロスは非ペンデュラム、その他ペンデュラムも初戦時の効果です。


 アクションフィールド、オン 『古代王の墓場』

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

「アクション…」

「「デュエル!」」

 

 カオリ LP 4000

 零児 LP 4000

 

 どうも、花吹雪香だよ。今はデュエルルームで零児君とのデュエルが丁度始まったところ。

 

「……先攻後攻を選べる権利は私か。ならば先攻を取らせてもらう。既に君が相当な実力を持っていることはわかっている。知りたいのはその先。君が隠している実力だ。そして君の全力を引き出すのに、私も全力を出す必要があるだろう」

「……零児君も公式戦で出したことのない全力を出してくれるってわけね」

「そういうことだ。私は手札から永続魔法、地獄門の契約書を二枚発動。自分のスタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを受ける効果を持つ。さらにもう一つ効果がある。それは一ターンに一度デッキからレベル4以下のDDを手札に加えることの出来る効果。よってDDラミアとDDナイト・ハウリングを手札に」

 

 DD……どういう意味?

 

「DDとは異次元(ディファレント・ディメンション)の略だ」

「おっと、顔に出てたかな?」

「続けよう。私は永続魔法、魔神王の契約書を発動。地獄門の契約書と同じデメリットを持つ代わりに、一ターンに一度融合召喚を行うことが出来る」

「融合……」

「手札のDDラミアとDDケルベロスを融合。牙むく地獄の番犬よ。未来に流される血を吸い、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!レベル7、DDD神託王ダルク!」

 

 DDD神託王ダルク レベル7 ATK 2800

 

 DDD……ん?3D jobって、日本で言う3K産業の英語版じゃなかったけ?なるほど、社長であることともかかってるのか。

 

「さらに私はチューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを召喚」

 

 DDナイト・ハウリング レベル3 ATK 300

 

「ナイト・ハウリングの召喚に成功した場合、墓地のDDを攻守を0にして特殊召喚する。墓地のDDケルベロスを特殊召喚!」

 

 DDケルベロス レベル4 DEF 600 → 0

 

 早速墓地から出勤し始めた。

 

「この効果を発動したターン、私は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。さらにこの効果で特殊召喚したモンスターが破壊された時、私は1000ポイントのダメージを受ける」

「でもそのまま残しておく気はないんだよね?なんたってチューナーと非チューナーが揃ってるわけだ」

「その通りだ。私はレベル4のDDケルベロスに、レベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル7、DDD疾風王アレクサンダー!」

 

 DDD疾風王アレクサンダー レベル7 ATK 2500

 

「やっぱりシンクロ召喚を……」

「さらに墓地のDDラミアの効果発動。場のDDか契約書を墓地に送って手札か墓地から特殊召喚できる。魔神王の契約書を墓地に送り、特殊召喚!」

 

 DDラミア レベル1 DEF 1900

 

「自分の場にDDモンスターが特殊召喚された時、アレクサンダーの効果発動。墓地のDDを特殊召喚する!甦れ、DDケルベロス!」

 

 DDケルベロス レベル4 DEF 600

 

 デュエル開始一ターン目で三回目の出勤。サビ残お疲れ様です。ああ~、動物愛護団体に怒られるんじゃ~。

 

「まだだ。ケルベロスの効果。自分のDDモンスターのレベルを4にし、攻守を400上昇させる。対象はラミア」

 

 DDラミア レベル1 → 4 DEF 1900 → 2300

 

「融合、シンクロと来れば当然次は……」

「そう、私はレベル4のDDケルベロスとDDラミアでオーバーレイ!この世の全てを統べるため、今 世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ、ランク4、DDD怒濤王シーザー!」

 

 DDD怒濤王シーザー ランク4 ATK 2400

 

「DDDは異次元の悪魔にして守護者(ディファレント・ディメンション・デーモン)の略。これが次元を統べる王の姿だ」

「いきなり融合、シンクロ、エクシーズ揃い踏みとは……流石に驚いたなあ。全ての召喚法を統べる王ってわけだね」

 

 手札4枚で融合を素材に融合とか、ソリティアデッキか。

 

「私はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

「改めて本気ってわけだね。なら、私も期待に応えるとしますか。私のターン、ドロー!」

 

 よし、この手札なら暴れてもいいかな。ちなみに零児君のソリティアをただ黙って見てたわけじゃなくて、アクションカードを既に入手済みである。零児君も油断はしていないようで、こちらの様子を見つつアクションカードを探し始めた。

 

「まずは永続魔法、魔法吸収を発動」

「……魔法カードが発動する度にライフを回復するカードか」

 

 汎用カードだからデータベースには載ってるんだよね。アクションマジックがトリガーに出来るけど、カードアドバンテージと攻撃力を重要視する風潮からあんまり注目されてないカードだ。

 

「ローンファイア・ブロッサムを召喚」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「このカードは植物族をリリースすることでデッキから植物族を呼べる効果を持つ。自身をリリースし、同名カードを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「同名カードを呼んだか。そのモンスターは墓地にいるよりもデッキや手札にいることで展開の起点となるカード。しかも他のコスト無しで上級、最上級モンスターも呼べる。わざわざデッキ圧縮のためだけに同名カードの特殊召喚を行ったとは考えにくいな」

「ご明察。私はローンファイアの特殊召喚成功時、速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動!攻撃力1500以下のモンスターを私が特殊召喚した時、デッキ、手札、墓地から同名カードを可能な限り攻撃表示で特殊召喚する。相手も自身の場のモンスター一体を選んでデッキ、手札、墓地から特殊召喚できるけど……」

「なるほど、私の場には融合、シンクロ、エクシーズのみ。さらに墓地に同名モンスターがいないため特殊召喚は不可能と言うわけだ」

「そういうこと。ローンファイア二体を特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「さらに魔法吸収の効果でライフを500回復する」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「なるほど……相手の場の状況を利用して、手札二枚から自分だけ三体のモンスターを揃える戦術……流石だ」

 

 前世の世界ではロンファが制限されるまではみんな使う戦術だったけどなあ。

 

「一体目のローンファイアをリリース。おいで、アロマージ―ジャスミン!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 DEF 1900

 

「そして残った二体のローンファイアをリリースして、デッキからダンディライオン二体を特殊召喚!」

 

 ダンディライオン レベル3 DEF 300

 

「……零児君、さっきのお礼に私も少し驚かせてあげるよ」

「何?……この状況、まさか……」

 

 そして初お披露目だ。この前の黒ゆうやん戦では使えなかったし、シンクロコースの私がこういうのを手に入れようとするといろいろ面倒でつい最近手に入れたばかりのカードだから。

 

「私はレベル3のダンディライオン二体でオーバーレイ!古き大樹の精霊よ、大地に芽吹く草花に神秘の力を!エクシーズ召喚!聳え立て、ランク3、メリアスの木霊!」

 

 メリアスの木霊 ランク3 ATK 1700

 

「……シンクロコースの君がエクシーズとはな。確かに少し驚いた。だが、肝心なのはその力を使いこなせるかどうかだ」

「それは今から見せるよ。メリアスの木霊の効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、二つの効果から一つを発動する。一つはデッキから植物族を墓地に送る効果。もう一つは、墓地から植物族を守備表示で特殊召喚する効果。私は二つ目の効果で、ローンファイアを特殊召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400

 

「そして墓地に送られたダンディライオンの効果発動。このカードが墓地に送られた時、綿毛トークン二体を特殊召喚する」

 

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 

「コストとして取り除いたオーバーレイユニットでモンスターの展開……なるほど、完璧に使いこなしているようだな」

「褒めてくれてありがとう。でもまだまだこれからだよ!私はローンファイアの効果発動。自身をリリースして、デッキからアロマージ―ローズマリーを特殊召喚」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「綿毛トークンではなく自身のリリース……初心者のやるようなミスをする君ではない。何か狙いがあるというわけか」

「その通り。私はここで魔法カード、置換融合を発動!」

「何!?融合!?」

「私はフィールド上のモンスターで融合召喚を行う。綿毛トークン二体を融合!風に乗る命の源よ。一つとなりて、原始の力を呼び起こさん!融合召喚、レベル9、始祖竜ワイアーム!」

 

 始祖竜ワイアーム レベル9 ATK 2700

 

「融合まで操るとは……。しかもトークンを融合素材にするだけでなく、トークンが通常モンスターであることまで利用している。独学でここまで?」

「まあ、そうなるね」

 

 本当は前世で知ってたんだけど。何故かネット上に詳しい情報が落ちてないし、各種召喚法のルールを知ることが出来る環境は限られてるからなあ。私みたいに元々知ってたとかじゃないと扱えなくなる。

 シンクロコースにいながら融合も覚えようとしてシンクロと同じように出そうとしてデュエルディスクに弾かれまくってる塾生とかもいたな。え?教えてあげないのかって?まあ、そいつはシンクロ自体の成績が良くなくて打開策として金の力で融合に手を出そうとしてたアホだったからね。関わってもいいことないし、無視した。私って結構ドライなんだよね。

 

「洞察力はデュエルにも発揮されるというわけか」

 

 洞察力?いいえ、前世の知識です。

 

「まあ、このデッキでは滅多に出ないけど。あと魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 4500 → 5000

 

「ライフの回復をトリガーに、ジャスミンとローズマリーの効果を発動。ジャスミンの効果でカードを一枚ドローし、ローズマリーの効果でダルクを守備表示へ」

 

 DDD神託王ダルク ATK 2800 → DEF 2000

 

「さらにライフの回復と効果の発動に繋げるか。実に無駄がない」

「まだまだ。私の方がライフが多い時、ジャスミンの永続効果により植物族に限りこのターンもう一度召喚できる。チューナーモンスター、グローアップ・バルブを召喚」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 ATK 100

 

「チューナー……シンクロ召喚か」

「そうなんだけどちょっと待ってね。手札から魔法カード、フレグランスストームを発動!場の植物族モンスター、グローアップ・バルブを破壊して一枚ドロー。引いたのが植物族ならさらにもう一枚ドロー出来る。まずは一枚目。ドロー!引いたのは植物族のアロマージ―ベルガモット!よってもう一枚ドロー!さらに魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 

「アロマージ―ベルガモット。君のエースカードか」

「やっぱり知ってるかあ。当然調べてきてるよね。ならグローアップ・バルブの効果も……」

「把握している。デュエル中に一度デッキトップを墓地に送り墓地から特殊召喚できる効果だったな」

「大正解。グローアップ・バルブ、復活だよ!」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 DEF 100

 

「そして今度こそ、レベル4のローズマリーにレベル1のグローアップ・バルブをチューニング!香り振り撒け、花の妖精!シンクロ召喚!飛び回れ、レベル5、アロマセラフィ―ローズマリー!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー レベル5 ATK 2000

 

「自分のライフが相手より多い時、ローズマリーの効果で自分の場の植物族は攻守が500アップする!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー ATK 2000 → 2500

 メリアスの木霊 ATK 1700 → 2200

 アロマージ―ジャスミン DEF 1900 → 2400

 

「バトル!メリアスの木霊でダルクに攻撃!」

「……」

 

 植物の蔓みたいなのがダルクを貫く。意外とエグい攻撃するな、メリアス。

 

「ワイアームでアレクサンダーに攻撃!プリモーディアルブラスト!」

「くっ……」

 

 始祖の竜だけあって、ブレス攻撃も原始的。圧縮された空気が口から吐き出され、アレクサンダーを撃ち砕く。

 

 零児 LP 4000 → 3800

 

「最後にローズマリーでシーザーに攻撃!セント・オブ・フラワーズ!」

 

 花びらを大量に巻き込んだ旋風がどこからともなく発生し、シーザーを吹き飛ばす。だけど、吹っ飛んでいる最中にシーザーのオーバーレイユニットが消費されるのが見えた。

 

「DDD怒涛王シーザーの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、このバトルフェイズ終了時にこのターン破壊されたモンスターを可能な限り墓地から特殊召喚する!ぐっ……」

 

 零児 LP 3800 → 3700

 

「さらにシーザーが墓地に送られた時、デッキから契約書一枚を手札に加える。二枚目の魔神王の契約書を手札に。そしてバトルフェイズの終了により、シーザーの効果で三体のDDDを墓地より特殊召喚!」

 

 DDD神託王ダルク レベル7 ATK 2800

 DDD疾風王アレクサンダー レベル7 ATK 2500

 DDD怒濤王シーザー ランク4 ATK 2400

 

「復活されちゃったか。わかってたことだけどライフもあんまり削れなかったし……まあ、何かあるとは思ってたけど」

「……次のスタンバイフェイズ、この効果で特殊召喚したモンスターが残っていれば、一体につき私は1000ポイントのダメージを受ける」

「スタンバイフェイズ、ね」

 

 どう考えてもコスト支払う気ないよね。合計5000のダメージを自分から受ける間抜けだとは思えない。

 

「私はカードを一枚セットしてターンエンド」

 

 さあ……ここまでは様子見。次のターンからが本番だ!




社長「融合!シンクロ!エクシーズ!」
香「エクシーズ!融合!シンクロ!」

Q.香ってシンクロコースじゃなかったの?
A.ああ!それってハネクリボー?

主人公はOCG次元出身なのでルールを熟知してます。なので召喚法は3つとも使えます。


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第八話 VSブラック企業 後編

同時投稿です。先に前話をご覧下さい。


「ではいくぞ……私のターン!」

 

 ふっふっふ……ドローしたな!

 

「私はアクションマジック、奇跡を発動!メリアスの木霊はこのターン次の戦闘で破壊されず、その戦闘で発生したダメージは半分になる!」

「このタイミングで奇跡……狙いは魔法吸収か」

「そう、魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 5500 → 6000

 

「さらにジャスミンとローズマリーの効果が発動。もちろん事前に私のことを調べてきた零児君はローズマリーの効果も知ってるよね?」

「表側表示カードの効果の無効……。このタイミングでの効果の無効、まさか!?」

 

 ふははは、実戦が足りないんじゃないかね、零児君!その視線の動きでダルクに効果ダメージを防ぐ系統の効果があることが丸わかりだよ!しかもその驚きよう、フリーチェーンでターン中のダメージを無効にするとかじゃあないみたいだね!

 

「ローズマリーの効果をダルクを対象に発動、さらにチェーンしてジャスミンの効果でドローする!」

 

 このチェーンの組み方ならローズマリーの効果に直接発動を無効にする効果は使えない!

 

「くっ……」

 

 零児君がアクションマジックを拾って確認するけど、この場面で使えるカードじゃなかったみたいだね。

 

「私は地獄門の契約書の効果で1000ポイントのダメージを受ける。ぐっ……」

 

 零児 LP 3700 → 2700

 

「だがこの瞬間、手札のDDD反骨王レオニダスの効果発動。このカードを特殊召喚し、受けたダメージ分ライフを回復する」

 

 DDD反骨王レオニダス レベル7 ATK 2600

 零児 LP 2700 → 3700

 

「そしてレオニダスが場にいる限り、私はカード効果によるダメージを受けない。もう一枚の地獄門の契約書とシーザーの効果によるダメージは無効だ」

 

 躱されちゃったか。引き強いな。

 

「……君はダルクの効果を知っていたのか?」

「当然知らないよ。ダメージを防ぐ系統の効果だって見当はついてたけど。最初から疑ってはいたんだ。零児君が何の対策もなく自分に大ダメージを受けるデメリットを許容するわけがないし」

「なるほど……」

「シーザーはもう二つ効果を晒してたから、残るは伏せカードとダルクだけ。アレクサンダーももう一つ効果を持ってる可能性はなくはないけど、効果を一つも晒してないダルクの方が怪しかった。それでローズマリーは回復を挟まないと効果を無効に出来ないから伏せカードはどうにもならない。一応、表側表示である限り適用される永続罠の可能性も考えたけど、零児君なら魔法吸収が永続効果でローズマリーが強制効果なのを利用して先にアクションマジックで発動させられちゃう可能性高いし」

「そういうことか」

「でも確信したのはさっきの零児君の反応だよ」

「何?」

「ローズマリーの効果を思い出させたとき、ダルクに視線をやったからね。それで効果ダメージに対する効果を持ってるって気づいたんだよ」

「そういうことか。私のミスだな……」

 

 前世でやってた時、私は大会に出たことは無かったけど、友達と遊んでた時は話術で相手の視線を誘導して伏せカードを予想したりしたものだ。前世の世界では大会で私語は禁止だったけど、友達と遊ぶ分には問題ない。罵倒したりして心理的揺さぶりをかけたわけじゃないし。

 

 そしてこの世界では話術も立派な戦術の一つだ。でも実際に話術を戦術に組み込んでる人は少ない。結構テクニックがいるからかな?

 

「反応によってはダルクは外れだと考えて展開に使えるアレクサンダーの効果を無効にしたかもね。……零児君ってさ、実は実戦の経験ないよね?」

「ああ、そういう機会には恵まれなかった。一応実戦を考慮した訓練は積んでいるが……」

 

 そういうことなら一回だけとはいえ黒ゆうやんとの戦いをこなしたことがあるし引きの強さが均されている前世の世界でのデュエル経験がある私に教えられることがいっぱいありそうだね。

 

「今回は学ばせてもらった。その礼と言っては何だが、我が社の研究成果を君に見せよう。外部の人間に見せるのはこれが初めてだ」

 

 研究成果……これが初めて……まさか……。

 

「まず私はレオニダスの特殊召喚によりアレクサンダーの効果発動。墓地のDDラミアを特殊召喚!」

 

 DDラミア レベル1 DEF 1900

 

「手札から永続魔法、魔神王の契約書を発動。魔法吸収で君のライフが回復するな」

 

 カオリ LP 6000 → 6500

 

 永続より通常魔法を使ってくれるデッキの方が回復するなあ。永続魔法じゃカードの発動時にしか回復しないから。

 

「その効果でフィールドのDDD怒濤王シーザーとDDラミアを融合。押し寄せる波よ。未来に流れる生き血と交わりて、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!生誕せよ、レベル8、DDD剋竜王ベオウルフ!」

 

 DDD剋竜王ベオウルフ レベル8 ATK 3000

 

「シーザーの効果発動。デッキから三枚目の地獄門の契約書を手札に加え、発動する」

 

 カオリ LP 6500 → 7000

 

 まーたソリティア始まったで。アクションカード回収しに行こっと。

 

「そして罠カード、DDDの人事権を発動!私の場のDDD三体をデッキに戻し、デッキからDDモンスター二体を手札に加える」

 

 一応シーザーの方のダメージを受けないように対策は取ってあったのか。シーザーの効果でダメージを受けるのはフィールドに残っているモンスターの分だけって言ってたし。

 

「レオニダス、ダルク、アレクサンダーをデッキに戻し、DD魔導賢者ガリレイとDDD壊薙王アビス・ラグナロクを手札に加える」

 

 あのカード、うまく下側を手で隠してるけど……。

 

「さらに三枚の地獄門の契約書の効果でDDナイト・ハウリングとDD魔導賢者ケプラー、DDケルベロスを手札に」

 

 うわあ、手札が1枚だったのに一気に6枚になった。一枚はアクションカードだけど。

 

「DDナイト・ハウリングを召喚。墓地の同名カードを特殊召喚する」

 

 DDナイト・ハウリング レベル3 ATK 300

 DDナイト・ハウリング レベル3 DEF 600 → 0

 

「さらに私はレベル3のDDナイト・ハウリング二体でオーバーレイ!難攻不落の無敵の王よ。今、悠久の時を超え、降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ、ランク3、DDD盤石王ダリウス!」

 

 DDD盤石王ダリウス ランク3 ATK 1900

 

「ダリウスの効果発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、自分フィールドの契約書を破棄して、カードを一枚ドローする。破壊するのは魔神王の契約書だ。これで準備は整った。私はスケール1のDD魔導賢者ガリレイとスケール10の魔導賢者ケプラーをペンデュラムスケールにセッティング!これでレベル2から9までのモンスターが同時に召喚可能!」

「これは……」

 

 やっぱりとしか言いようがない。しかもスケールが1と10!

 

「ん?」

 

 カオリ LP 7000 → 7500 → 8000

 

「ほう、ペンデュラムのセッティングは魔法カードの発動として扱われるということか」

「そういうのも分かってないってことは、本当に開発したばっかりなんだね」

「そういうことだ。行くぞ!我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて闇を切り裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!DDケルベロス!」

 

 DDケルベロス レベル4 ATK 1800

 

「現れ出でよ、神々の黄昏に審判を下す最高神!DDD壊薙王アビス・ラグナロク!」

 

 DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 ATK 2200

 

「アビス・ラグナロクの効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時、墓地のDDDを復活させる。甦れ、シーザー!」

 

 DDD怒濤王シーザー ランク4 ATK 2400

 

「DDDが四体……」

 

 これはまずい。すごい展開力だ。

 

「そしてDDD盤石王ダリウスをリリースして、アビス・ラグナロクの効果発動!相手のモンスター一体を除外する!」

「除外!?」

「除外するのは、メリアスの木霊だ!」

 

 ラグナロク・パーンチ!ってパンチで除外すんの!?一瞬、攻撃かと思ったよ!

 

「くっ……ごめんね」

「メリアスの木霊はダンディライオンをオーバーレイユニットに持っていたな」

「そうだよ。だから綿毛トークンが特殊召喚される」

 

 綿毛トークン レベル1 DEF 0 → 500

 綿毛トークン レベル1 DEF 0 → 500

 

「オーバーレイユニットになったモンスターが消費されるまで墓地に行かないことを利用して、二重の防御態勢を敷いていたのは流石だが……今回はそれが命取りとなる。私はこの瞬間を待っていた!」

「!?まさか……」

「墓地のDDラミアの効果発動。場の地獄門の契約書を墓地に送り、特殊召喚!」

 

 DDラミア レベル1 DEF 1900

 

「DDケルベロスの効果発動。DDラミアの好守を400アップし、レベルを4にする」

 

 DDラミア レベル1 → 4 DEF 1900 → 2300

 

「レベ4のDDケルベロスに、レベル4のDDラミアをチューニング!その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を越えていけ!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル8、DDD呪血王サイフリート!」

 

 DDD呪血王サイフリート レベル8 ATK 2800

 

「融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムが揃った……!」

「自身の効果で特殊召喚されたDDラミアが場を離れた時、ゲームから除外される」

 

 あ、残業お疲れ様でした。

 

「バトルだ!まずはサイフリートでローズマリーに攻撃!」

「させない、アクションマジック、回避!」

「それは通さない!アクションマジック、古代王の威光!アクションマジックの発動を無効にする!」

「くっ、魔法吸収で回復。無効になった回避の分は回復できない」

 

 カオリ LP 8000 → 8500

 

「サイフリートの攻撃を受けてもらう!」

「くっ……」

 

 カオリ LP 8500 → 8200

 

「これで君のモンスターの攻撃力と守備力は元に戻る」

 

 綿毛トークン DEF 500 → 0

 綿毛トークン DEF 500 → 0

 アロマージ―ジャスミン DEF 2400 → 1900

 

「アビス・ラグナロクで綿毛トークンに攻撃!ベオウルフの永続効果により、私のDDモンスターは貫通攻撃能力を得ている!」

「っ……待っていたって、やっぱりこういうことか!」

「貫通ダメージを受けてもらう!」

「きゃあああああ!!」

 

 カオリ LP 8200 → 6000

 

「さらにシーザーで綿毛トークンに攻撃!」

「っ……!!」

 

 カオリ LP 6000 → 3600

 

「最後にベオウルフでジャスミンに攻撃!」

「くううう!!」

 

 カオリ LP 3600 → 2500

 

「削り切れなかったな。だが、盤面は返した。私はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

 ははは、私の回復力を舐めるなよ。……ちょー痛い。

 

「エンドフェイズ、永続罠、リビングデッドの呼び声を発動。墓地のモンスターを蘇生させる!対象はアロマージ―ジャスミン!」

「DDD呪血王サイフリートの効果発動!一ターンに一度、場の表側表示の魔法・罠の効果を次のエンドフェイズまで無効にする!この効果は相手のターンでも発動できる。リビングデッドの呼び声の効果は無効だ!」

 

 あ、置物になっちゃった。うぐぐ、面倒な効果を……。

 

「私のターン、ドロー!魔法カード、ハーピィの羽根帚!相手の場の魔法・罠をすべて破壊する!」

「……私は罠カード、契約洗浄(リース・ロンダリング)を発動!自分の契約書を破棄し、その枚数分カードをドローする!」

 

 うお、サイフリートじゃなくてセットカードを使ったか。うーん、ペンデュラムは破壊できたけど躱された感が凄い。この場面ではペンデュラムよりサイフリートの効果温存を優先したんだね。流石の判断力だ。

 

「魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 2500 → 3000

 

「サイフリートの効果を使わせられなかったのなら仕方ない、死者蘇生!墓地のダンディライオンを特殊召喚する!」

「……ならばDDD呪血王サイフリートの効果発動!魔法吸収の効果を無効にする!」

 

 くっ、そっちを無効にしてきたか。回復できなくなるのは結構痛い。

 

 ダンディライオン レベル3 DEF 300

 

「でもこれでサイフリートの効果は打ち止め!永続罠リビングデッドの呼び声を墓地に送って魔法カード、マジック・プランターを発動!カードをニ枚ドローする!」

 

 よし、いい引きだ!

 

「まずはダンディライオンをリリースしてアロマージ―ベルガモットをアドバンス召喚!ダンディライオンの効果で綿毛トークンを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 

「手札からアロマセラフィ―アンゼリカの効果発動!墓地のアロマの攻撃力分、ライフを回復する!対象はアロマセラフィ―ローズマリー!そしてベルガモットの効果発動!一ターンに一度ライフが回復した時、自分の攻撃力を相手のエンドフェイズまでアップする!」

 

 カオリ LP 3000 → 5000

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400

 

「さらに墓地のアロマセラフィ―アンゼリカの効果発動!場にアロマがいて自分のライフが相手より多い時、墓地から特殊召喚できる!」

 

 アロマセラフィ―アンゼリカ レベル1 DEF 0

 

「そしてレベル6のベルガモットにレベル1のアロマセラフィ―アンゼリカをチューニング!天より舞い降りし、生命の化身!シンクロ召喚!命を照らせ、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100

 

「自身の効果で特殊召喚されたアンゼリカは場を離れる時除外される。そしてホーリー・ワイバーンの攻撃力は相手のライフを自分のライフが上回っている場合、その差分アップする!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2100 → 3400

 

「攻撃力3400……いや、さらに上がるな……」

「まだまだ!墓地のスポーアの効果発動!」

「……グローアップ・バルブの効果で墓地に送られていたのか」

「その通り!墓地のダンディライオンをゲームから除外して、そのレベルをスポーアのレベルに加えて特殊召喚!」

 

 スポーア レベル1 → 4 DEF 800

 

「行くよ!レベル1の綿毛トークン二体にレベル4のスポーアをチューニング!地獄より出でよ、茨の女王!シンクロ召喚!羨み妬め、レベル6、ヘル・ブランブル!」

 

 ヘル・ブランブル レベル6 ATK 2200

 

「互いに手札から植物族以外を召喚・特殊召喚する場合に1000のライフを支払わせるモンスター……!」

「そういうこと。バトル!ワイアームでアビス・ラグナロクに攻撃!プリモーディアルブラスト!」

「……」

 

 零児 LP 3700 → 3200

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 3400 → 3900

 

「ヘル・ブランブルでシーザーに攻撃!この瞬間、アクションマジック、古代王の財宝を発動!エンドフェイズまで攻撃力を1000ポイントアップする!」

「っ……」

 

 ヘル・ブランブル ATK 2200 → 3200

 零児 LP 3200 → 2400

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 3900 → 4700

 

「シーザーの効果によりデッキから最後の魔神王の契約書を手札に!」

「最後の攻撃!エンシェント・ホーリー・ワイバーンでサイフリートに攻撃!セフィロト・ブレス!」

「ぐっ……!」

 

 零児 LP 2400 → 500

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 4700 → 6600

 

 倒しきれなかった。強いなー、やっぱり。でもライフが1000を下回ったからヘル・ブランブルで手札からの特殊召喚は封じた!

 

「私はカードを一枚セットしてターンエンド!」

 

 ヘル・ブランブル ATK 3200 → 2200

 

「私のターン!スタンバイフェイズ、ベオウルフの効果発動!互いの魔法・罠ゾーンのカードをすべて破壊する!」

「!私は罠カード、ハーフ・アンブレイクをヘル・ブランブルに発動!対象モンスターの戦闘によるダメージを半減し、戦闘破壊を無効にする!」

 

 魔法吸収が遂に破壊されちゃったけど、これでベオウルフでヘル・ブランブルを排除してから展開っていうのもできなくなった。さあ、どうする!

 

「……君の洞察力は流石だった。実力も見事だった。戦術も緻密だ。だが……運命は私に味方した!私は魔神王の契約書を発動!手札のDDD運命王ゼロ・ラプラスとDDラミアを融合!因果律の悪魔よ。未来に流れる生き血と交わりて、新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ、レベル6、DDD烈火王テムジン!」

 

 DDD烈火王テムジン レベル6 ATK 2000

 

「さらに墓地のDDラミアの効果発動!魔神王の契約書を墓地に送り特殊召喚!」

 

 DDラミア レベル1 DEF 1900

 

「そして手札から余剰召喚の契約書を発動!その効果により、場のモンスターを素材にDDDモンスターを融合召喚する。私はDDD剋竜王ベオウルフとDDラミアを融合!竜をも倒す勇者よ。未来に流れる生き血を浴び、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!レベル7、DDD神託王ダルク!」

 

 DDD神託王ダルク レベル7 ATK 2800

 

「DDラミアは自身の効果により除外される。そしてこの瞬間、DDD烈火王テムジンの効果発動!DDDモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地のDDモンスターを復活させる!」

 

 て、手札からの召喚・特殊召喚を封じたのになんて展開力……!

 

「時の闇に潜むパラダイム。必然の力が因果律の悪魔を呼び覚ます!甦れ、レベル10、DDD運命王ゼロ・ラプラス!」

 

 DDD運命王ゼロ・ラプラス レベル10 ATK ?

 

「……!攻撃力の定まっていないモンスター!」

「行くぞ、ゼロ・ラプラスでエンシェント・ホーリー・ワイバーンに攻撃!ゼロ・ラプラスの攻撃力はバトルする相手の攻撃力の倍となる!」

 

 DDD運命王ゼロ・ラプラス ATK ? → 13200

 

「攻撃力……13200!?きゃあああああ!!」

 

 カオリ LP 5000 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

「うーん、負けた」

 

 負けたのは前世ぶりだ。何だかすごく悔しい。

 

「君の実力が十分条件を満たしていることは確認できた。そして私の課題も明らかになった」

「それは何より」

「極めて有意義な時間だったが……少々時間をかけ過ぎた」

 

 まあ、今回は互いに1ターンがえらい長かったからね。半分は零児君のせいだけど。

 

「私は遊勝塾の方がどうなっているのか確認しておきたい。中島」

「はっ!」

「彼女に説明しておいてくれ。今判明していることの全てを、そしてこれから為すべきことの全てを」

「畏まりました」

 

 零児君はそれだけ言い残して去っていった。

 

「さて、説明をするのだがその前に一つ言っておきたい」

「何?」

「先程視線を向けていた件についてだが……私は別に邪な感情で君を見ていたわけではない」

「ああ、うん。知ってるけど」

「……」

 

 本気だと思ってたのか、中島さん。おちょくりがいのある人だな。




今回のアクションカードの中身

古代王の威光 → ノーアクション
古代王の財宝 → ハイダイブ

社長「ペンデュラム召喚!」
香「手札からの展開封じた」
社長「融合!融合!」
シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム「」

この後遊矢戦が控えてるので、DD魔導賢者にはスタンバイフェイズ前に退場してもらいました。そのためペンデュラムは浮かび上がってません。

ペンデュラムが破壊されるとエクストラに行くことはデュエル後に気付きました。勝手にエクストラに入ってたので。まあ社長ならデュエル中に気付きそうですがそれだけデュエルに夢中になってたってことで。


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第九話 エンタメデュエル 前編

お久しぶりです。用事があったのとラストの遊矢の手札調整で悩んでました。申し訳ありません。


 現在ゆうやんが落ち込みゴーグルモード。マジにメンタル弱いな、ゆうやん。

 

 私は中島さんの説明を受けた後、こっそり遊勝塾にやってきて零児君と一緒に不審者してた。場面的にはますみんが柚子りんボコして「あなたの目、くすんでるわ」とかカッコつけてたところ。あとでいじったろ。

 私は立場的にどっちにも参加しづらいかったので、一勝一敗一分でもう一回デュエルとなったところに零児君と同時に登場してから黙って観戦してた。んで、ゆうやんと零児君のデュエルが零児君優勢――盤面的にはアーマゲドン全部吹っ飛んだ零児君が不利に見えたが、雰囲気と零児君の台詞的に――で中断された。

 そのデュエルで零児君にペンデュラムを使われたのがこたえたらしい。"俺だけのペンデュラム"じゃなくなったのがそんなにショックか……。うーん、手品師が自分の最高のトリックのネタバレされたようなものだろうか?ゆうやんの目指すエンタメにもよるよね。ゆうやんはペンデュラム独占して俺TUEEEってしたかったのか?

 

 うん、まあ、トラブルがあったらしきLDS(むこう)の様子も気になるけど、呼ばれなかったということは大丈夫なはず。折角居合わせてるし主人公のケアに回るとしようか。

 

◆ ◆ ◆

 

「ペンデュラム召喚は俺だけの……」

「大丈夫?おっぱい揉む?」

「何いってんのよ!?」

 

 思わずハリセンでぶっ叩いちゃった。いや、励まそうとしてるのはわかるけど、本当に何言ってるのよ、この子!?

 

「冗談だよ、冗談。励まそうと思っただけだって」

「青春だな!」

「いや、違うから。お父さんちょっと黙ってて」

「(´・ω・`)……」

 

 遊矢も一瞬驚いた顔をしてたけど、すぐに元の顔に戻っちゃった。うう、励ましてあげたいけどかけられる言葉も思いつかない。

 

「柚子りんも心配しなくても、私はゆうやんを取ったりしないって」

「は、はあ!?わわわ、私と遊矢はそっそ、そういう関係じゃななな」

「そういう関係って?」

「恋人同士って意味だよ、フトシくん!前から怪しいと思ってたけど……」

「ちょっと、アユちゃん!?」

「カオリ姉ちゃんと話してる遊矢兄ちゃんを見る目つきが怖かったもんね」

「うむ」

「タツヤ君と権現坂まで!?」

 

 味方がいない!

 

「柚子、負けるな!熱血だ〜!」

「お父さん、うるさい!」

「(´・ω・`)……」

 

 今それどころじゃないでしょ!?

 

「柚子りんが揉ませてあげればゆうやんも元気出るよ」

「なっ!?」

「ほら、ゆうやんもこっち見て期待してるよ?」

「ち、違う!そういう意味で見てたんじゃないって!」

 

 あ、遊矢がゴーグルを上げた!

 

「隠さなくても大丈夫だって。男の子はみんなそんなもんだよ。ね、素良っち」

「え、そこで僕に振るの!?」

「羨ましそうに見てたから」

「違うよ!そういう意味じゃないから!」

「大丈夫、他の人には黙っといてあげるよ」

「誰に!?こっちの知り合いはほとんどここにいるんだけど!」

 

 ……やっぱり外国の子なのかな、素良君。それより、もう完全にカオリのペースね。遊矢も少し元気が出たみたいだし。

 ……あーあ、何嫉妬してるんだろう、私。本当はデュエルで負けて役に立たなかった私が励まさなきゃいけないのに。あの遊矢によく似た人のことが気になって何にも集中できない。

 

「柚子、どうした?」

「あ、うん、ごめん。何でもないよ、お父さん」

「大丈夫?おっぱい揉む?」

「何でそうなるのよ!?」

 

 あっ、また叩いちゃった。もうツッコミが癖に……。っていうか、何で私にも同じネタをブッ込んで来るの!?

 

「いや、ゆうやんとはそういう関係じゃないって言うから、もしかしたらそっち(・・・)の気があるのかなって」

「そ、そうだったのか。大丈夫だ、柚子。お父さんはどんな時でも柚子の味方だぞ!」

「……」

 

 ああ、自分でもわかる。さっきまでは恥ずかしさで顔が真っ赤だったけど、今は別の意味で真っ赤になってる。

 

◆ ◆ ◆

 

 スパァーン、と今日一番のハリセンの音がする。うん、私と修造さんのライフポイントを引き換えに柚子りんが元気になったようで良かった。まだゆうやんも柚子りんも完全回復ではないけど。

 

「さて、ゆうやん」

「な、何だよ?」

「これからどうしたい?」

「どうしたいって……」

「ペンデュラム、独占したいみたいだったけど零児君に使われちゃったよね?」

「それは……って、零児君て……。一緒に出てきたから気になってたけど、赤馬零児と知り合いなのか?」

「今朝知り合った」

「ああ、うん……そういえばカオリは初対面の時もこんな感じだったな」

「で、ペンデュラム独占して俺最強!っていうのを目指してたのかもしれないけど、できなくなっちゃったでしょ?」

「いや、俺はそもそもそんなことするつもりは……」

「あれ、違ったの?」

 

 じゃあ何で落ち込んでるんだろ?

 

「違うよ!俺は父さんみたいに、みんなを笑顔にするエンタメデュエルをしたいんだ!」

「ふーん、そうか……」

 

 そういやゆうやんはペンデュラムを手に入れるまで弱小デュエリストだったんだっけか。ペンデュラムを他の人も使うようになったら自分はまた弱小デュエリストに逆戻り、エンタメデュエリストから遠ざかるんじゃないかって怖くなってるんだね。

 

「んー、そうだなあ。うーん……よし、ゆうやん!デュエルだ!」

「え?何でそうなるんだよ」

「デュエルのことなら言葉よりデュエルで語った方が伝わりやすいと思ったのさ。さあ、行こう!」

 

 腕を引っ張って強引に行く。今のゆうやんにはゴリ押しの方が効果があるはず。

 

「俺、まだデュエルするとは言ってないけど」

「おおっと、エンタメデュエリストがファンからのデュエルの申し込みを断るの?」

「……っ」

 

 お、どうやらゆうやんの琴線はエンタメというワードらしいね。ここを攻めるか。

 

「榊遊勝はどんな時に誰にデュエルを挑まれても拒まなかったそうだけど」

「……くっ、わかった!」

 

 釣れた。ちょっとチョロすぎて心配になるなぁ。

 

◆ ◆ ◆

 

「いつのまにか遊矢とカオリがデュエルをすることに……」

 

 柚子、不安なのか。いや、遊矢が心配なんだな。

 

「二人がデュエルするのって初めてだよね?少なくとも僕は初めて見るけど」

「うむ。なんだかんだ予定が合わなかったからな」

「楽しみだね」

「……私は心配よ」

「柚子……」

「だってさっき赤馬零児にペンデュラムを使われてショックを受けたばかりで……カオリはデュエル強いし、ここで手酷くやられちゃったら……」

「いや、大丈夫だ」

「お父さん?」

 

 本当は俺がやるべきなんだろうが、口下手な俺より彼女の方がよっぽど上手く伝えてくれるだろう。俺が考えている以上のことを考えているかもしれない。

 

「目を見ればわかる。カオリは……熱血している!」

 

 熱血だ〜!

 

「……意味がわからないんだけど」

「柚子、案ずるな」

「権現坂……」

「カオリはデュエルを通してエンタメとは何かを遊矢に教えようとしているのだろう」

「……それで、遊矢は立ち直れるのかな」

「それはわからん。カオリはあくまで遊矢に道を示そうとしているのだ。もし遊矢が立ち直れなければ……」

「……うん、わかったわ。昔から私たちが遊矢を支えてきたんだもの」

 

 ……青春だな!

 

◆ ◆ ◆

 

 アクションフィールド、オン 『マジカル・ブロードウェイ』

 

「ここは……」

 

 修造さん、流石。私の伝えたいことを一番伝えやすいフィールドを選んでくれた。

 

「ゆうやんのお父さん、榊遊勝の得意なフィールドだね」

「父さんの……」

「行くぞ、ゆうやん!このフィールドでお前のエンタメに足りないものを骨の髄までわからせてくれる!」

「俺のエンタメに足りないもの?」

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちがぁ!」

「モ、モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

「アクション…」

「「デュエル!」」

 

 遊矢 LP 4000

 カオリ LP 4000

 

「……先攻は俺だ。手札からEMオールカバー・ヒッポを召喚!」

 

 EMオールカバー・ヒッポ レベル3 ATK 800

 

「オールカバー・ヒッポの効果発動。召喚に成功した時、手札からEM1体を特殊召喚できる。EMスプリングースを特殊召喚!」

 

 EMスプリングース レベル5 DEF 2400

 

「さらにオールカバー・ヒッポの効果発動。自分のモンスターを守備表示にする」

 

 EMオールカバー・ヒッポ ATK 800 → DEF 800

 

「遊矢、ペンデュラムカードが手札にないのかな?」

「……いや、ペンデュラム召喚を赤馬零児に使われたことがショックで、無意識的に避けてしまっているんだろう」

「そんな……」

「遊矢兄ちゃん……大丈夫かな」

「心配ない。遊矢なら必ず立ち直ると、俺は信じている」

「権現坂……」

 

「……ペンデュラムを使わないんだね」

「うっ……、ペンデュラムを使うか使わないかは俺の勝手だろ」

「そうだね、ゆうやん。自由にしたらいいんじゃない?」

 

 ペンデュラムはあくまで召喚法の一つ。使いたければ使えばいいし、それは本人の自由だよね。

 

「えっ?」

「どうしたの?説教でもされると思った?」

「い、いや……」

 

 思うに、ゆうやんはペンデュラムに縋り過ぎている。だから零児君にペンデュラムを使われてショックを受けた。まずはその凝り固まった思考を解す必要がある。

 

「ゆうやんの目標は最高のエンタメデュエル、でしょ?じゃあ必ずしもペンデュラムに頼る必要はないよね」

「そ、それは……」

「それにゆうやんのお父さんはペンデュラムを使ってたわけじゃない。それこそペンデュラムがなくてもエンタメデュエルができる証拠でしょ?」

「くっ……お、俺はこれでターンエンド!」

 

 自分の特技の価値を失うのは誰でも怖いもんだけど、ゆうやんはペンデュラムの輝きに目を奪われて自分を見失ってる感じだね。これを修正するのは骨が折れそうだけど……まあ何とかなるさ。何せ彼は主人公。私が失敗しても柚子りんや権ちゃんがいる。

 

「私のターン、ドロー!私は永続魔法、魔法吸収を発動。このカードが場にある限り、魔法カードが発動されるたびに500ライフを回復する。そしてアロマージ―ジャスミンを召喚!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「速攻魔法、ご隠居の猛毒薬を発動!二つの効果の内、相手に800のダメージを与える効果を選択!」

「ぐっ!?」

 

 遊矢 LP 4000 → 3200

 

「魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「そして自分のライフが回復したことにより、ジャスミンの効果発動。カードを一枚ドローする。……自分のライフが相手より多い時、ジャスミンの効果で植物族をもう一度召喚できる。おいで、アロマージ―ローズマリー!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「流石だね。回復と攻撃、手札増強を一挙にこなしただけでなく、モンスターの展開にまで繋げてるよ。憎々しいくらいに綺麗な流れだ」

「LDSのジュニアユースの中でも抜きんでているな……」

「痺れる~!」

「何度かデュエルをしてるのを見たこともあるし、デュエルについて教わったこともあるからわかってたことだけど……やっぱりカオリ姉ちゃんは強い!」

「遊矢お兄ちゃん……」

「遊矢……」

 

「まだまだ、手札から永続魔法、超栄養太陽を発動!自分のレベル2以下の植物族をリリースし、そのレベル+3までの植物族を特殊召喚する。ジャスミンをリリースしてローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!魔法吸収の効果でライフを回復」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3  DEF 1400

 カオリ LP 4500 → 5000

 

「ライフを回復したことでローズマリーの効果発動!表側表示のモンスター一体の表示形式を変える!対象はスプリングース!」

「しまった!」

 

 ローズマリーが杖を振ると、花の香りが辺りを漂う。その香りに誘われてスプリングースはふらふらと前に出てきた。

 

 スプリングース DEF 2400 → ATK 1100

 

「まだ終わりじゃないよ。私はローンファイア・ブロッサムの効果発動!自分の植物族をリリースして、デッキから植物族を特殊召喚する。ローンファイア自身をリリースして、アロマージ―ベルガモットを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「ローンファイアがフィールドを離れたことで超栄養太陽は破壊される。行くよ、ゆうやん!バトルだ!ローズマリーでEMスプリングースに攻撃!」

「くっ……」

 

 遊矢 LP 3200 → 2500

 

「ベルガモットでオールカバー・ヒッポに攻撃!ベルガモットの効果により、私のライフがゆうやんのライフより多い時、味方の植物族に貫通効果を与える!」

「アクションマジック、回避を発動!攻撃を無効にする!」

「ふふふ、躱されちゃったか。でも魔法吸収でライフを回復。さらにベルガモットの効果発動!ライフの回復をトリガーに、相手のエンドフェイズまで攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400

 

「私はカードを二枚セットしてターンエンド」

「俺の、ターン」

「どうした、ゆうやん。しかめっ面しちゃって」

「……それは、だって、今は負けてるから」

「そんなんじゃダメだよ、ゆうやん。エンターテイナーでしょ?観客を笑わせるにはまず自分が笑顔でデュエルを楽しまないと」

 

 ワクワクを思い出すんだ(キモイルカ並感)!

 

「笑顔?」

「そうそう。デュエルは勝って楽しいのはもちろん、負けても楽しいものなんだからさ」

「負けても楽しい……」

「正確には、そう思えたらいいってことかな。互いの全力のデュエルをぶつけ合って、お互いに楽しんで最高のデュエルにする。それができて初めてエンタメデュエルのスタートラインに立てるんだよ」

「……」

「ほら、みんなを見てみなよ。ゆうやんが暗い顔をしてるから、みんな心配そうだよ?」

 

「遊矢……」

「……大丈夫だ、柚子。顔を上げろ。お前が見てやらないでどうする」

「「遊矢兄ちゃん!」」

「遊矢お兄ちゃん、頑張って!」

「早く元気出してエンタメってよ~」

「元気出せ遊矢、熱血だ~!」

 

「柚子、権現坂……みんな……」

「エンタメデュエリストがデュエルで皆を不安にしちゃだめだよ」

「でも、さっきまでのデュエルは負けられないデュエルで……」

「それでもだよ。ゆうやんはプロになるための負けられないデュエルでエンタメ放り出して相手をボッコボコにするつもり?」

「そ、それとこれとは……」

「同じだよ。遊勝さんだって、デュエルはゆうやんとゆうやんのお母さんを養うための負けられないデュエルは何度もあったはずだよ。それでもデュエルを楽しんで、相手も観客も巻き込んで一緒に楽しんだ(・・・・・・・)

 

 仕事を仕事としてやる人も多いけど、仕事を楽しめたらそれが最強だと思う。特にエンタメデュエリストはそれが最低条件だと思うんだよね。私は別にエンタメデュエリストというわけじゃなく自分が楽しんでるだけだけど、観客が楽しんでくれてる時は私も楽しんでる時だ。

 

「プロのエンタメデュエリストを目指すなら、まずはどんな時でも笑顔を絶やさないこと!人生の先達である私からのアドバイスだよ」

「ははっ、人生の先達って……同い年じゃないか」

 

 しかし人生一個分私の方が長生きなんだよね。知らないから無理もないけど。

 

「だけどありがとう。まずは俺の全力で、このデュエルを楽しむ!」




というわけでカウンセリングデュエルです。修造さんとは違った方向性でカウンセリングします。

前中後編に分かれてしまったのはデュエルが長いというより会話をちょいちょい挟むせいです。


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第十話 エンタメデュエル 中編

中編です。前編からお読みください。


「まずは俺の全力で、このデュエルを楽しむ!改めて俺のターン!スケール3のEMラディッシュ・ホースとスケール8のEMオッドアイズ・ユニコーンをペンデュラムスケールにセッティング!これでレベル4から7までのモンスターを同時に召喚可能!だけどまずは魔法吸収の効果でカオリのライフが回復!」

 

 カオリ LP 5500 → 6500

 

「ああ~、カオリ姉ちゃんのライフが回復しちゃったよ!」

「ペンデュラム召喚するには仕方なかったけど……」

「いや、これでいいんだよ」

「え?どういうこと?」

「カオリがライフを回復したから今ローズマリーの効果を使わなきゃいけない。でもローズマリーの効果は一ターンに一度しか使えないから、これから出てくるモンスターはローズマリーの効果を受けずに済むってわけ!」

「あっ、そうか!すごいよ遊矢お兄ちゃん!」

 

「ローズマリーの効果でオールカバー・ヒッポを攻撃表示に。さらにベルガモットは自身の効果で攻撃力をアップ!」

 

 EMオールカバー・ヒッポ DEF 800 → ATK 800

 アロマージ―ベルガモット ATK 3400 → 4400

 

「まだまだ!オールカバー・ヒッポを守備表示にして、EMドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

 EMオールカバー・ヒッポ ATK 800 → DEF 800

 EMドクロバット・ジョーカー レベル4 ATK 1800

 

「このカードが召喚に成功した時、デッキからEM、オッドアイズ、魔術師いずれかのペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はオッドアイズ・ペンデュラムドラゴンを手札に!」

 

 お、エースカードのお出ましか。

 

「さて、それではみなさんお待ちかね!本日の主役の登場です!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 ATK 2500

 

「さらにEMラディッシュ・ホースのペンデュラム効果!エンドフェイズまで自分のモンスター1体の攻撃力500ポイントを別のモンスターに移し替える!オールカバー ・ヒッポの攻撃力をオッドアイズに加える!」

 

 EMオールカバー・ヒッポ ATK 800 → 300

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2500 → 3000

 

「よし、バトルだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでベルガモットに攻撃!この時、オッドアイズ・ユニコーンのペンデュラム効果を発動。攻撃表示のEM一体の攻撃力をバトルフェイズ終了時まで攻撃するオッドアイズモンスターに加える!ドクロバット・ジョーカーの攻撃力をオッドアイズにプラス!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 3000 → 4800

 

「すごーい!攻撃力が4800に!」

「ベルガモットの攻撃力を上回った!」

「痺れる~!」

 

「螺旋のストライク・バースト!」

「それは通さない!アクションマジック、イリュージョン・ダンス!場のモンスターを全て守備表示に!」

 

 みんなでダンスタイム。オッドアイズも図体に似合わあず軽やかにステップを踏んでる。まあベルガモットとローズマリーの優雅さには敵わないんだけどね!

 

「おっと、躱されちゃったか!」

「躱すだけじゃないよ?同時に罠カード、戦線復帰を発動!墓地のアロマージ―ジャスミンを守備表示で特殊召喚する!ライフの回復とそれによるジャスミンの効果でドロー!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 DEF 1900

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 4800 → DEF 2000

 EMドクロバット・ジョーカー ATK 1800 → DEF 100

 アロマージ―ベルガモット ATK 4400 → DEF 1800

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → DEF 700

 カオリ LP 6500 → 7000

 

「手札まで補充されちゃったか。大ピンチだ!」

「そう言ってる割にはいい顔になってきたね、ゆうやん」

「おかげさまでね。俺はカードを一枚セットしてターンエンド!イリュージョン・ダンスの効果を受けたモンスターはエンドフェイズに攻撃表示に戻る」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン DEF 2000 → ATK 4800 → 2500

 EMドクロバット・ジョーカー DEF 100 → ATK 1800

 EMオールカバー・ヒッポ ATK 300 → 800

 アロマージ―ベルガモット DEF 1800 → ATK 4400 → 2400

 アロマージ―ローズマリー DEF 700 → ATK 1800

 

「オッドアイズ、ダンスは十分楽しんだか?ならアクションカードを探すぞ、手伝ってくれ!」

 

 オッドアイズが楽しそうに雄たけびを上げる。大分ゆうやんの調子も戻って来たね。

 

「遊矢……ピンチなのは変わらないはずなのに……」

「何だか楽しそう」

「もう大丈夫なようだな」

「いいぞ遊矢、熱血だ!」

「イリュージョン・ダンスを知っててバトル前にオールカバー・ヒッポを守備表示にしてた。冷静さも取り戻してるってことだし、これは次の遊矢のターンが楽しみだね」

 

「ふふふ、なら今度は私のエンタメを見せてあげよう!」

「カオリのエンタメ?」

「そうだ!まずはそのエンドフェイズに永続罠、潤いの風を発動!1000ポイントのライフを払ってデッキからアロマを手札に加える。アロマセラフィ―アンゼリカを手札に!」

 

 カオリ LP 7000 → 6000

 

「そして私のターン、ドロー!アンゼリカを召喚!」

 

 アロマセラフィ―アンゼリカ レベル1 ATK 0

 

「これで準備は整った!レベル6のアロマージ―ベルガモットにレベル1のアロマセラフィ―アンゼリカをチューニング!天より舞い降りし、生命の化身!シンクロ召喚!命を照らせ、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100

 

「シンクロ召喚……!」

「エンシェント・ホーリー・ワイバーンの攻撃力は自分のライフが相手のライフを上回っている時、その分だけアップする!ライフの差は3500!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2100 → 5600

 

「こ、攻撃力5600!?」

「なんてモンスターだ!」

「これがカオリの切り札か……」

 

「さらにジャスミンの効果でもう一度植物族を召喚できる!おいで、アロマージ―カナンガ!」

 

 アロマージ―カナンガ レベル3 ATK 1400

 

「私のライフの方が多い時、カナンガの効果により相手のモンスターの攻撃力と守備力は500下がる」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2500 → 2000

 EMオールカバー・ヒッポ DEF 800 → 300

 EMドクロバット・ジョーカー ATK 1800 → 1300

 

 カナンガがアロマの香りを漂わせると、相手モンスターがヘロヘロと脱力する。……いつも思うんだけど、これやばい薬とかじゃないよね?信じてるよ?

 

「くっ、みんな!」

「バトル!まずはローズマリーでドクロバット・ジョーカーに攻撃!」

「俺はアクションマジック、イリュージョン・ダンスを発動!モンスターを守備表示にする!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2000 → DEF 1500

 EMドクロバット・ジョーカー ATK 1300 → DEF 0

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 5600 → DEF 2000

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → DEF 700

 アロマージ―カナンガ ATK 1400 → DEF 1000

 

「おー、踊れ踊れ!」

 

 折角だから私も一緒に踊る。ダンシングデュエルだぁ!

 

 ゆうやんも乗ってくれて一緒に踊っている。これはゆうやんが相手だからこそって感じだよね。他の相手だったら私一人で踊って空気読めてない子みたいになってただろうし。

 

「私は魔法吸収でライフを回復。そしてローズマリー、カナンガ、ジャスミンの効果発動!ローズマリーでエンシェント・ホーリー・ワイバーンを攻撃表示にして、ジャスミンの効果でカードをドロー。さらにカナンガは自分のライフが回復した時、相手の場の魔法・罠を手札に戻せる。対象はそのセットカード!」

「くっ、俺は罠カード、分断の壁を発動!エンドフェイズまで相手のモンスターの数×800ポイント、相手のモンスターの攻撃力を下げる!」

 

 カオリ LP 6000 → 6500

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン DEF 2000 → ATK 5600 → 6100 → 2900

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → 0

 アロマージ―カナンガ ATK 1400 → 0

 アロマージ―ジャスミン ATK 100 → 0

 

「発動した……か。いい勘してるね」

「まだまだ終わらせない!お楽しみはこれからだ!」

「いいね、楽しくなってきた!私は潤いの風の効果発動。ライフを1000払い、もう一体のローズマリーを手札に!」

 

 カオリ LP 6500 → 5500

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2900 → 1900

 

「さらに手札から速攻魔法、ライバル・アライバルを発動!バトルフェイズ中にモンスターを召喚する!おいで、アロマージ―ローズマリー!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「魔法吸収によりライフを回復。そして新しく召喚した方のローズマリーの効果発動!オールカバー・ヒッポを攻撃表示に!」

「しまった!」

 

 カオリ LP 5500 → 6000

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 1900 → 2400

 EMオールカバー・ヒッポ DEF 300 → ATK 300

 

「行くよゆうやん!エンシェント・ホーリー・ワイバーンでオールカバー・ヒッポに攻撃!セフィロト・ブレス!」

「ぐっ……うわああぁぁぁ!!」

 

 遊矢 LP 2500 → 400

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2400 → 4500

 

「ローズマリーでドクロバット・ジョーカーに攻撃!」

「くっ、ドクロバット・ジョーカー……!」

 

 ドクロバット・ジョーカーに杖で殴り掛かるローズマリー。何か不審者を持ってた傘で撃退する女の子みたいだね……。

 

「バトルフェイズはこれで終わり。でも手を緩めるつもりはないよ!私はレベル4のローズマリー二体でオーバーレイ!」

「えっ!?」

「花の香りに誘われて、美しき戦士が舞い踊る!エクシーズ召喚!闇より誘え、ランク4、フォトン・バタフライ・アサシン!」

 

 フォトン・バタフライ・アサシン ランク4 ATK 2100

 

「あれは……エクシーズモンスター!」

「シンクロコースなのにエクシーズも使うなんて……」

 

「フォトン・バタフライ・アサシンの効果発動。一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ取り除き相手の守備表示モンスターを攻撃表示にして攻撃力を600ポイントダウンさせる。エキサイト・スケールス!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン DEF 1500 → ATK 2000 → 1400

 

「オッドアイズ……!」

 

「モンスターを一掃され、頼みの綱のオッドアイズは弱ってしまっている……」

「容赦ないなぁ、カオリ」

「ゆ、遊矢……!」

 

「ふっふっふ、私のデュエルは……私のエンタメはどうだった?ゆうやん」

「これがカオリのエンタメ……」

「そう、私のデュエルはカードの効果を組み合わせて相手のカードの効果を躱し、時に利用する戦術が要。戦略(タクティクス)で魅せるのが私のエンタメデュエル!」

 

 まあ普段はエンタメとか意識してるわけじゃなくて自分がやりたいからやってるだけだけど。一応見物してる人は楽しんでくれてるし嘘ついてることにはならないよね?

 

「戦略……」

「エンタメデュエルは一つじゃないんだよ、ゆうやん。人の数だけデュエルがあり、戦術がある。それらが組み合わさることで無限の種類のデュエルが生まれる。だからデュエルは面白い」

 

 そうじゃなかったら壁とやってろ、って話になるし。遊戯王のアニメもずっとおんなじ相手とデュエルしてるんじゃつまらない。ライバルとのデュエルもたまにやるから面白いのであって、ずっとライバルとデュエルしてたら代わり映えしないだろう。沢渡さんとか三沢大地ならデッキ変えるからまだあるかもしれないけど。

 

「組み合わせ……そんなの、考えたこともなかった」

「大丈夫、これから考えて行けばいいのさ。もちろんエンタメじゃない、勝つためのデュエルをする人だっていっぱいいる。本当にプロのエンタメデュエリストになるならそういう人たちとのデュエルも楽しんで観客を魅せなきゃいけないけど、まあそれはおいといて。ゆうやん、零児君がペンデュラムを使った時……その時こそ、楽しむべきだったんだよ。これから彼がどんなデュエルを見せてくれるのか、ってね」

「赤馬零児のデュエルを……楽しむ?」

「そう、自分のデュエルが楽しめたら、次は相手のデュエルを楽しむこと。あの時は大事な一戦だったから見えてなかったかもしれないけど……凄かったでしょ?彼のデュエルは」

「……確かに、融合、シンクロ、エクシーズをして……ペンデュラムまで……そうだ、何て言ったらいいかわからないけど、凄かった。圧倒されたよ」

「あれが彼のデュエルだよ。ペンデュラムを使われてショックを受けるのはエンタメデュエリストのするべきことじゃない」

「そうか……。ピンチでも、相手のデュエルを楽しまなきゃいけなかったんだな」

「そういうこと。おんなじデュエルはもう二度とない。折角だし、私のデュエルも楽しんでいってね!」

 

 以上!十代の心理フェイズと遊馬先生のカウンセリングを参考にしたけど上手く行ったかな?取り敢えずゆうやんの顔を見る限り失敗ではないはず。

 

「ああ、もちろんだ!」

「私はカードを一枚セットしてターンエンド。イリュージョン・ダンスの効果を受けたモンスターは攻撃表示に戻り、分断の壁の効果も消える」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 4500 → 7700

 アロマージ―カナンガ DEF 1000 → ATK 0 → 1400

 アロマージ―ジャスミン ATK 0 → 100

 

「さあ、今度はゆうやんの番だよ!最高のデュエルにしよう!」

「ああ!俺のターン、ドロー!」

 

「攻撃力7700……!」

「し、痺れる程強いぜ……」

「オッドアイズも攻撃力が下がっちゃってるし……」

「……大丈夫よ」

「柚子姉ちゃん?」

「始まるわ。遊矢の……エンタメデュエルが!」




エンシェント・ホーリー・ワイバーン「我が世の春が来た!」

 素良は今回は解説役です。からかう者同士で相性が悪い事と第一印象のせいで素良のカオリへの好感度はかなり低いです。カオリは疑ってるだけで素良の好感度は低くも高くもない模様。

 逆にデニスはおどけるもの同士相性がいいのか互いに好感度が高いです。スパイなのは全然気づいてません。


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第十一話 エンタメデュエル 後編

後編です。前編からお読みください。


 遊矢が指を鳴らすと、スポットライトが当たる。

 

「レディース、エーンド、ジェントルメーン!これより私、榊遊矢の……いや、榊遊矢と花吹雪香によるエンタメデュエルショーのクライマックスをお届けいたします!」

 

 スポットライトが遊矢だけでなく、カオリにも当てられる。二人の決めポーズに柚子たち観客は沸き立つ。

 

「うおー!二人ともカッコいい!」

「ペンデュラム!ペンデュラム!」

 

「まずは墓地のEMスプリングースの効果発動!このカードを除外して、自分のフィールドのカード二枚を手札に戻します!戻ってこい、ラディッシュ・ホース!オッドアイズ・ユニコーン!そしてラディッシュ・ホースは相手の場に特殊召喚されたモンスターがいる時、手札から特殊召喚できます!」

 

 EMラディッシュ・ホース レベル4 ATK 500 → 0

 

「さらに魔法カード、ペンデュラム・カード・バーストを発動!自分のペンデュラムモンスター二体を破壊してカードを二枚ドローします!」

 

「ええっ、遊矢お兄ちゃん、オッドアイズを破壊しちゃうの!?」

「いや、これでもう一度ペンデュラム召喚をすればフォトン・バタフライ・アサシンに下げられた攻撃力が元に戻る!」

「あっ!」

 

「魔法吸収でライフを回復。ジャスミンの効果でドロー!カナンガの効果は戻すべきカードがないため不発になる!」

 

 カオリ LP 6000 → 6500

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 7700 → 8200

 

 はしゃぐジャスミンの横でカナンガは目に見えて不機嫌になった。しかし、しっかりと相手の攻撃力を下げている分仕事はしている。

 

「まだまだ!魔法カード、ペンデュラム・ホルトを発動します!EX(エクストラ)デッキにペンデュラムカードが三種類以上ある時、カードを二枚ドローできます!」

「魔法吸収でライフを回復するよ」

 

 カオリ LP 6500 → 7000

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 8200 → 8700

 

「スケール3のEMシール・イールとスケール8のオッドアイズユニコーンをペンデュラム・スケールにセッティング!」

「魔法吸収でまたまたライフを回復!」

 

 カオリ LP 7000 → 8000

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 8700 → 9700

 

「ここでペンデュラム召喚……の前に!EMシール・イールのペンデュラム効果を発動!相手モンスター一体の効果を無効にします!対象はエンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

「それなら永続罠、ディメンション・ゲートを発動!エンシェント・ホーリー・ワイバーンを除外する!」

 

「躱された!」

「でも、これでホーリー・ワイバーンはいなくなったよ!」

「……そう簡単に行くかな?」

「それより、ほら!来るよ、ペンデュラム召喚だ!」

 

「みなさん、お待たせしました!再び揺れろ、魂のペンデュラム!現れろ、俺のモンスターたち!手札からEMフラットラット!EMハンマーマンモ!」

 

 EMフラットラット レベル5 ATK 500 → 0

 EMハンマーマンモ レベル6 ATK 2600 → 2100

 

「エクストラデッキからEMドクロバット・ジョーカー!EMラディッシュ・ホース!」

 

 EMドクロバット・ジョーカー レベル4 ATK 1800 → 1300

 EMラディッシュ・ホース レベル4 DEF 2000 → 1500

 

「そして主役の再登場です!拍手でお迎え下さい!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 ATK 2500 → 2000

 

「すごい!」

「5体同時のペンデュラム召喚とは!」

 

「そしてアクションマジック、イリュージョン・ファイヤーを発動!自分のモンスター一体しか攻撃できなくなる代わりにそのモンスターは他の自分のモンスターの数だけ攻撃できます!対象はオッドアイズ!」

「魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 8000 → 8500

 

「遊矢の場のモンスターはオッドアイズを除いて4体!」

「オッドアイズが四回攻撃!?」

「で、でもカオリ姉ちゃんのライフがすごいことになっちゃってるよ!」

 

「バトル!オッドアイズでカナンガに攻撃!そしてこの瞬間、オッドアイズ・ユニコーンのペンデュラム効果を発動します!ハンマーマンモの攻撃力2100をオッドアイズの攻撃力に加えます!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 2000 → 4100

 

「行け、オッドアイズ!」

「うわわっ!」

 

 カオリ LP 8500 → 5800

 

 オッドアイズのブレスによりアロマージ―カナンガは漂わせていた香りごと吹き飛ばされ、その効果の影響も消え去ってオッドアイズたちは力を取り戻す。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK 4100 → 4600

 EMフラットラット ATK 0 → 500

 EMハンマーマンモ ATK 2100 → 2600

 EMドクロバット・ジョーカー ATK 1300 → 1800

 EMラディッシュ・ホース DEF 1500 → 2000

 

「これでオッドアイズたちの攻撃力も復活!次はフォトン・バタフライ・アサシンに攻撃!」

「ぐっ!」

 

 カオリ LP 5800 → 2300

 

 炎に包まれたオッドアイズが味方のEMとの派手な合体攻撃を行う。その間に遊矢はアクションカードを探していた。恐らくこのままでは最後の攻撃は通らないと直感しているためだ。

 

「さらにアロマージ―ジャスミンに攻撃!」

「くっ……」

 

 アロマージ―ジャスミンがいなくなり、カオリのフィールドはガラ空きになる。少なくとも、遊勝塾の面々にはそう見えていた。

 

「私はライフを1000払い、デッキからアロマセラフィ―アンゼリカを手札に加えてそのまま効果発動!このカードを手札から捨てて墓地のアロマ一体の攻撃力分ライフを回復する!当然対象はアロマージ―ベルガモット!」

 

 カオリ LP 2300 → 1300 → 3700

 

「オッドアイズで最後の攻撃!螺旋のストライクバースト!」

 

「この攻撃が通れば……」

「遊矢兄ちゃんの勝ちだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう簡単には通さない!永続罠、ディメンション・ゲートのさらなる効果を発動!相手の直接攻撃宣言時にこのカードを墓地に送る!そしてディメンション・ゲートの効果により、このカードの効果で除外されていたエンシェント・ホーリー・ワイバーンを特殊召喚する!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100 → 5400

 

「ああっ!」

「ホーリー・ワイバーンが戻ってきちゃった!?」

「しかもオッドアイズより攻撃力が高い!」

 

 立てたフラグが回収されたが、そもそも見えている罠の効果である。遊矢もディメンション・ゲートの効果には続きがあることも、エンシェント・ホーリー・ワイバーンはまだ倒せていないことも確信していた。だからこそ――

 

「……攻撃は続行!」

「ふふ、それなら反撃するよ!エンシェント・ホーリー・ワイバーンの迎撃!セフィロト・ブレス!」

 

 炎を纏ったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとエンシェント・ホーリー・ワイバーンのブレス攻撃が激突し、轟音が鳴り響く。

 

「そしてアクションマジック、奇跡をオッドアイズに発動!」

「魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 3700 → 4200

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 5400 → 5900

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーンに力が漲り、ただでさえ劣勢だったオッドアイズがさらに押され始める。

 

「遊矢お兄ちゃん!?」

「何してるの!?」

「まさか……アクションマジックは手札に一枚までしか持てない。さらにアクションマジックを拾いに行くために、カオリのライフを回復させてでも使わざるを得なかったか!」

 

 そんな中、素良は飴を舐めながらつまらなそうな表情で呟く。

 

「うーん、カオリに運頼りで勝つのは難しいと思うけど。五体同時ペンデュラムは凄かったけど、この結末は想定の範囲内かな……」

 

 しかし観戦する面々の予想に反し、遊矢はその場を動かない。

 

「……この瞬間、EMフラットラットの効果発動!モンスターの攻撃力が変化した時、フラットラットをリリースしてそのモンスター一体の攻撃力を元々の攻撃力に戻す!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーンは輝きを失い、ブレスの威力の優劣が入れ替わる。

 

「なっ!?まさか……奇跡を発動したのは!」

「そう、カオリのライフを回復するためさ!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 5900 → 2100

 

 カオリはオッドアイズの効果を知っている。故に決着が着いたこともわかっている。だが、様式美というものを彼女は律儀に守ることにした。何故ならこれはエンタメデュエルだからだ。

 

「でも、攻撃力の差は2500!私のライフは4200残っている!さらにエンシェント・ホーリー・ワイバーンは戦闘破壊されても1000のライフを払って復活できる効果がある!」

「いや、これで終わりだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはレベル5以上のモンスターとバトルする時、相手に与える戦闘ダメージを2倍にする!」

 

 オッドアイズの宝玉が輝き、エンシェント・ホーリー・ワイバーンのブレスを一気に押し返した。オッドアイズのブレスの輝きがフィールドを埋め尽くす。

 

「リアクション・フォース!」

 

 カオリ LP 4200 → 0

 

 カオリは満足そうな表情でブレスに呑み込まれた。

 

◆ ◆ ◆

 

「いいデュエルだったよ、ゆうやん」

 

 うん、最後の攻防は良かったと思う。魔法吸収を逆手にとってわざとこっちのライフを回復させてくるとは。何かやり過ぎたかもって心配してゆうやんが駆け寄って来たけど、この程度で傷つくほど柔な体はしていない。ゆうやんたちからすると無傷なのは驚いたみたいだけど。

 

「……ああ、そうだな」

「ん?まだ元気でない?」

「いや……次にデュエルするときは、カオリに本気を出させるくらいに強くなってたいなと思っただけだよ」

 

 ああ、本気出してないのバレてたか。まあ、カナンガ棒立ちだったしアクションカードも全然取りに行かなかったからね。エンシェント・ホーリー・ワイバーンの攻撃の時にアクションマジック使って回復できてたらそこで決着つけられたかもしれないけど、今回の趣旨は勝つことじゃなかったし。

 

「楽しみにしてるよ。ああ、そうだ。未来のエンタメデュエリストにこのカードを上げる」

「これは……さっき使ってた魔法カード」

 

 ライバル・アライバル。汎用魔法カードなんだけど黒ゆうやん戦でも使ったし、何となく縁があるから上げようと思ったんだよね。それに名前もちょうどいいし。

 

「私が好敵手(ライバル)と認めた相手にはこのカードを上げることにしたんだ。ついさっき」

「さっきかよ!」

「別にデッキに無理して入れろって言ってるわけじゃないよ?合う合わないがあるだろうし。お守り代わりにね。余ってるカードだから、遠慮しないで持ってって」

「ありがとう」

「それじゃ、ジュニアユース選手権で待ってるよ」

 

 握手を交わす。修造さんじゃないけど、青春だよね、こういう……うっ!?あ、頭が痛い……。

 

「ああ、約束だ!……あれ?ジュニアユース選手権?あ~!忘れてた!このままじゃ俺、プロになれない!」

「そういえば遊矢、年間勝率が……カオリ?どうしたの?」

「……いや、大丈夫。ちょっと頭が痛くなっただけ。もう治まったよ」

「そう?やっぱりさっきの攻撃受けたの大変だったんじゃ……。病院に行っておいた方がいいんじゃない?」

 

 うーん、鍛えてるしあれくらいじゃ何ともないはずなんだけど。

 

「いや、大丈夫だよ。激痛ってわけでもなかったし。んじゃ、またねー」

 

 一応今日は大事を取って安静にしておこうかな。

 

◆ ◆ ◆

 

 花吹雪香、だったか。ふっ、我が分身も随分面白い奴とデュエルしていたものだ。魂と肉体がまるでちぐはぐ。故に我が力のかけらを埋め込む隙があった。万が一復活後にレイに再び封印されそうになったとしても、この力のかけらを利用すれば……。

 

 ともかく、全ては我が分身たちが一つになってから。ペンデュラムも目覚め、我が分身たちの接触も始まっているようだ。長かった……。だが、それももうすぐ終わりだ……。復活の時は、近い!




ダベリ「反逆のライトニング・ディスオベイ!」
ホリワ「あべし!」
運命王「攻撃力二倍で」
ホリワ「たわば!」
オッP 「あわわわ……」
ホリワ「漸く勝てるぞ」
平鼠 「邪魔しに参った」
オッP 「リアクション・フォーーーース!」
ホリワ「ひでぶっ!」
オベリ「ようこそ……負けフラグの世界へ……」

 今回はデュエルを三人称でお送りしました。引き分け負け負けととても主人公とは思えない最近の戦績。展開の都合上とか現時点で赤馬零児 > カオリという強さの関係にしたかったとかカウンセリングが主目的だったとか色々あるんですが、カオリの強キャラ感が薄れてないか心配です。

 ホーリー・ワイバーンをサポートする以外に劣性時の切り札を用意するつもりですが、とりあえずホーリー・ワイバーンを一回勝たせてあげたいです。

 申し訳ありませんが、次回もたっぷり投稿遅くなりそうです。


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第十二話 バーンバウンスハンデス貫通 前編

いつものことですが、遅くなりました。申し訳ありません。

2018/12/22 アニメ版ブリリアント・ダイヤは岩石族ジェムナイト×3という制限があったので、修正しました。


 どうも、一日寝たら復活した花吹雪香です。結局昨日のは何だったのかな。まあいいや。とにかく復活したので今日は零児君の呼び出しを食らった後にLDSにやってきた。

 

 お、ますみんだ。ホクティーとやーくんも一緒だ。あの三人仲良しだなあ。

 

「おっす、昨日ぶりー」

「よお、カオリ。昨日は……」

「カオリ!」

 

 うおお、どうしたますみん!顔近ぇ!

 

「榊遊矢に似た男とデュエルしたのよね!?」

「ああ、うん。その時はマスクは付けて無かったけどね」

「そいつの居場所を知らない!?」

「落ち着け、真澄!」

「そうだよ、いきなりそんな詰め寄ったって、カオリも訳がわからないだろう」

「っ……ごめん」

 

 落ち着いたか。何でいきなり黒ゆうやんのことを聞いてきたんだろ?ますみんと黒ゆうやんって接点ないよね?……いや、そういえば黒ゆうやんは私がLDSだと知って敵対的になったんだっけ。ますみん自身は特に怪我とかしてなさそうだし、知り合いがデュエルでボコされたりとかしたのかな。

 

「いや、別に大丈夫だよ。でも急にどうしたのさ」

「マルコ先生が……マルコ先生がいないの」

「マルコ先生って、あのキャラの濃ゆ〜い先生だよね」

「それ、お前がいうのか……」

 

 そういや零児君に呼び出された時にLDSの教師とかが襲われてるって言ってたっけ。黒ゆうやんと関係あるかはわかんないけど、可能性は高いよね。……いや、そうかなあ。沢渡さんって襲われたけど行方不明になんてなってないよね?他の人が居合わせてたせいかな?

 

「制服組も何も教えてくれないし。だけど、カオリと沢渡を襲った男が関係あると思って、カオリを探してたの」

「ああ、でも知ってることはあんまりないよ?黒ゆうやんとデュエルした場所とか、使ってたカードくらいかな」

「何でもいいわ、今はとにかく情報が欲しいの」

「ふーむ……。でもはっきり言って、ますみんだけだと彼と対峙するのは危ないね」

「それは……」

 

 ますみんははっきり言えば私よりは弱い。公式非公式どっちでもますみんに負けたことはない。私は幼い頃から度々山籠りでドロー力を鍛えたりデュエルマッスル鍛えたりしてたからね。

 単純に考えれば、ますみん < 私 = 黒ゆうやんとなり、私に勝てないますみんは黒ゆうやんに勝てない。

 しかもますみんの主力は融合モンスターで、融合モンスターはどれもレベル5以上。黒ゆうやんのエースモンスターと思しきダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果と相手の攻撃を防いでからカウンターで必殺を決める戦法は、防御薄めで大量の融合モンスターを並べて物量で攻めるますみんの天敵だし。

 

「お前ら、俺たちのこと忘れてねーか?」

「仮にもLDSの講師を倒した実力者が相手だからね。一人で戦うのは危険だ」

 

 あー、なるほど。なんか勝手に一対一でやるのかと思ってた。

 

「なるほどね。三人なら勝機もあるね。っていうか私も協力すればいいのか」

「刃、北斗、カオリ……いいの?いつものデュエルとは違うのよ」

「危険は百も承知だよ。でもエクシーズをそんな使い方する奴は僕が懲らしめてあげないと」

「へっ、お前に心配されるほど俺はヤワじゃねえよ」

「右に同じ」

「……ありがとう」

「うわ、素直なますみんって不気味だね」

「ちょっとカオリ!?」

 

 なんのかんの言って実はますみんがこの三人の中で一番弄りがいがあるよね。和むわー。

 

◆ ◆ ◆

 

 黒ゆうやんの情報を教えた後、私たちはLDSのコートで非アクションデュエルの練習をしに来た。外で戦うとなるとアクションデュエルではなくなるし、三人もスタンドデュエルはアクションデュエルより経験が少ないから、練習が必要だと思ったからね。

 

 そして一対三のバトルロイヤルルールでのデュエルだ。ちょうど黒ゆうやんと引き分けた私がいるので、三人のコンビネーションがどこまで通用するかを測るのにちょうどいいし。私も三人を相手にするとなると出し惜しみしている余裕はない。黒ゆうやんと同等の実力うんぬんは私が出し惜しみしてたら意味なくなっちゃうから、そもそも実力を伏せる理由がないけど。

 

「さて、それじゃあ始めようか」

「行くぜ!」

「マルコ先生のためにも、こんな所で止まってられない!」

「三対一で悪いけど、最初から飛ばして行かせてもらうよ、カオリ」

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 カオリ LP 4000

 真澄 LP 4000

 北斗 LP 4000

 刃 LP 4000

 

 全員最初のターンはドロー・バトルフェイズはなし。順番は……ますみん、私、ホクティー、やーくんの順か。

 

「私のターン!私は永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動!デッキのモンスターを素材に、ジェムナイトを融合召喚できる!デッキからジェムナイト・アンバー、ジェムナイト・ラピス、ジェムナイト・ラズリーを融合!雷帯びし秘石よ!一対の碧き秘石よ!光渦巻きて新たな輝きとともに一つにならん!融合召喚!現れよ!全てを照らす至上の輝き!レベル9、ジェムナイトマスター・ダイヤ!」

 

 ジェムナイトマスター・ダイヤ レベル9 ATK 2900 → 0

 

「ブリリアント・フュージョンで特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は0になる」

 

 確かますみんのブリリアント・フュージョンは手札の魔法カードを墓地に送って攻撃力を元に戻せる効果がある。ジェムナイト・フュージョンで実質墓地コストだけで攻撃力を戻すのがいつものパターンだけど、今回は全員最初のターンはバトルできないから、攻撃力を戻す必要もないってわけか。

 

「ここで墓地に送られたラズリーの効果発動。カードの効果で墓地に送られた時、墓地の通常モンスターを手札に加える。ラピスを手札に!そして手札から魔法カード、ジェムナイト・フュージョンを発動!手札のジェムナイト・ラピスとジェムナイト・オブシディア2体を融合!碧き秘石よ!鋭利な漆黒よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!輝きの淑女!レベル10、ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ!」

 

 ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ レベル10 ATK 3400

 

「墓地に送られたオブシディア2体の効果発動!手札から墓地に送られた時、墓地の通常モンスターを特殊召喚できる!さらに、墓地のジェムナイト・アンバーはデュアルモンスター。フィールドと墓地では通常モンスターとして扱う!ラピスとアンバーを特殊召喚!」

 

 ジェムナイト・ラピス レベル3 DEF 100

 ジェムナイト・アンバー レベル4 DEF 1400

 

「まだよ!私はジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤの効果発動!場のモンスター一体を墓地に送り、そのモンスターを融合素材に含むジェムナイトを融合召喚する!ジェムナイト・ラピスを墓地に送って効果発動!神秘の力秘めし碧き石よ。今光となりて現れよ! 融合召喚! レベル5、ジェムナイトレディ・ラピスラズリ!」

 

 ジェムナイト・ラピスラズリ レベル5 ATK 2400

 

「さらに!墓地のジェムナイト・フュージョンの効果!墓地のジェムナイトを除外して手札に加える!ラズリーを除外して手札に!そしてデュアルモンスターのアンバーを再度召喚!再度召喚されたアンバーは、効果モンスターへと輝きを変える!」

 

 再度召喚……そういやこんだけやってまだ召喚してなかったね。さっきまで原石風だったジェムナイト・アンバーがカッティングされて美しさを増す。琥珀はそのまんまでもきれいだけどねー。

 

「アンバーの効果発動!手札のジェムナイト・フュージョンを墓地に送って除外されているラズリーを手札に。そしてジェムナイト・フュージョンの効果発動!墓地のオブシディアを除外して手札に。さらにジェムナイト・フュージョンを発動!場のジェムナイト・アンバーと手札のラズリーを融合。雷帯びし秘石よ!碧き秘石よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!幻惑の輝き!レベル8、ジェムナイト・ジルコニア!」

 

 ジェムナイト・ジルコニア レベル8 ATK 2900

 

 ひとりでやってるよ~。私も人のこと言えないけど。

 

「マジかよ!いきなり4体の融合モンスターを!」

「カオリ相手に様子見なんてしてる余裕はないし、使うカードの効果を考えれば先手必勝よ!ラズリーの効果で墓地のラピスを手札に!さらにジェムナイト・ラピスラズリの効果発動!EX(エクストラ)デッキから同名カードを墓地に送って、フィールドに存在するEXデッキから特殊召喚されたモンスターの数×100にラピスラズリの攻撃力の半分を加えた数値をダメージとして与える!ダメージは100×4+1200で、1600!」

「ぐっ……!最初から飛ばしてくるね」

 

 カオリ LP 4000 → 2400

 

「まだ終わりじゃないわ。二体目のオブシディアジェムナイト・フュージョンを回収!そして回収したジェムナイト・フュージョンを墓地に送り、ブリリアント・フュージョンのさらなる効果。次の自分のスタンバイフェイズまで、この効果で融合召喚したモンスターの攻撃力を元に戻す!」

 

 ジェムナイトマスター・ダイヤ ATK 0 → 2900

 

「攻撃力を元々の値に戻す効果だからマスター・ダイヤ自身の効果による攻撃力上昇は得られないけど、攻撃力は十分!そしてジェムナイトマスター・ダイヤの効果!墓地のジェムナイト融合モンスターを除外して、その効果を得る!ジェムナイトレディ・ラピスラズリの効果を吸収して発動!EXデッキのラピスラズリを墓地に送ってダメージを与える!攻撃力2900の半分、1450に100×4を加えて、1850のダメージ!」

「うっ!」

 

 カオリ LP 2400 → 550

 

 マジか……ますみん特攻してきたなあ。手札四枚使って大盤振る舞い。

 

「私はこれでターンエンド!」

「私のターン!」

 

 さて……まさか開幕でこんなにライフ削られるとは……。もう鉄壁状態なんですけど。もしホクティーかやーくんのあとにますみん、私と続いてたら私のターンが来る前にワンキルされてたってことを考えると、ギリセーフなのかな。

 

「私は永続魔法、魔法吸収を発動するよ。さらにローンファイア・ブロッサムを召喚」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「ローンファイアの効果発動。植物族である自身をリリースしてデッキから植物族を特殊召喚!おいで、アロマージ―ジャスミン!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 DEF 1900

 

「そしてこの瞬間に速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動!私が特殊召喚した攻撃力1500以下のモンスター一体と、ますみんが自由に一体選んで互いに選んだモンスターをデッキ、手札、墓地から可能な限り特殊召喚する。ただし、私は攻撃表示限定だけど」

「墓地のラピスラズリは融合召喚していないから呼べないし、他も墓地に同名モンスターのいない融合モンスターだから、私は何も呼べないわね……」

「そういうこと」

 

 暴走召喚の基本的な使い方だ。

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「さらに魔法吸収の効果。私はライフを500回復」

 

 いつもの。

 

 カオリ LP 550 → 1050

 

「そしてジャスミンの効果発動。一ターンに一度、私のライフが回復した時、カードを一枚ドローする!三枚ドロー!」

「げっ……」

「三枚もかよ!」

 

 あー、たくさんドローするの気持ちいい~。

 

「魔法カード、おろかな埋葬を発動。デッキからダンディライオンを墓地に送る。魔法吸収で回復して、ダンディライオンの効果で綿毛トークンを二体特殊召喚!」

 

 カオリ LP 1050 → 1550

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 

「さらに置換融合を発動!自分の場のモンスターで融合召喚する!綿毛トークン二体を融合!風に乗る命の源よ。一つとなりて、原始の力を呼び起こさん!融合召喚、レベル9、始祖竜ワイアーム!」

 

 始祖竜ワイアーム レベル9 ATK 2700

 

「何!?」

「カオリが融合だと!?」

「……改めて本気、ってわけね……」

「その通り。一応、解説しておこうか。ワイアームはモンスター効果を受けず、通常モンスター以外との戦闘で破壊されない」

「げっ……」

 

 ホクティー、露骨に嫌そうな顔したな。他の二人も。私は三人がモンスター効果に除去頼りきりなのは知ってるけど。実際に黒ゆうやんとデュエルするときは顔に出しちゃだめだよ……。

 

「魔法吸収でライフを回復」

 

 カオリ LP 1550 → 2050

 

「カードを三枚セットしてターンエンド」

「やっと僕のターンだね。まずはこいつだ。相手の場にのみモンスターがいる時、セイクリッド・シェアトは特殊召喚できる!」

 

 セイクリッド・シェアト レベル1 DEF 1600

 

「さらにセイクリッド・カウストを召喚!」

 

 セイクリッド・カウスト レベル4 ATK 1800

 

「カウストの効果発動。セイクリッドのレベルを一つ上げる。カウストをレベル5に!そしてシェアトの効果発動!セイクリッド一体と同じレベルになる!」

 

 セイクリッド・カウスト レベル4 → 5

 セイクリッド・シェアト レベル1 → 5

 

「さて……」

 

 セイクリッドの星痕を使えばドローができる。けどすぐに手札枚数が変わるわけじゃないし、魔法吸収とジャスミンのコンボでカオリに三枚ドローさせてしまうのは得策じゃない。何よりこれは三体一のチームデュエル。僕一人の手札が増えるよりカオリの手札とライフを増やさない方が重要だ。

 とか考えてるんだろうなあ。悩むなら動き出す前にしなよ。それも相手に戦術がバレる可能性がなくはないからあんまりやらない方がいいけど。即断即決が実戦的デュエル……かも?

 

「僕はレベル5のセイクリッド・カウストとシェアトでオーバーレイ!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5、セイクリッド・プレアデス!」

「その瞬間、カウンター罠、ポリノシスを発動!植物族一体をリリースして魔法・罠の発動かモンスターの召喚・特殊召喚を無効にして破壊する。攻撃表示のジャスミンをリリース。プレアデスには消えてもらうよ!」

 

 プレアデスは猛烈なくしゃみとをして、鼻をすすりながら墓地へ消えていった。うーん、何か締まらないな……。

 

「ああっ!僕のプレアデスが!?……くっ、ターンエンドだ」

「その瞬間、永続罠、潤いの風を発動。ライフが相手より少ない時、ライフを500回復するよ!そしてジャスミンの効果でカードを二枚ドロー!」

 

 カオリ LP 2050 → 2550

 

 うまうま。手札もライフも回復だ。

 

「!?回復カードがあったのか……何故ジャスミンが三体いるうちに使わなかったんだ!?」

「ホクティーが魔法の発動を躊躇したままターンを終えてくれることを期待したんだよ。今みたいにね」

「……あっ」

「だが、回復手段があるとわかったからには俺は躊躇しねえぞ!俺のターン!」

 

 ハンデスする気かー、やめろー(棒読み)。



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第十三話 バーンバウンスハンデス貫通 後編

後編です。前編からお読みください。

2018/11/11 アクションデュエルでフィールド魔法が使われていないような表現を削除

2018/11/15 セイバー・スラッシュの効果が間違っていたので修正

2018/12/22 アニメ版ブリリアント・ダイヤは岩石族ジェムナイト×3という制限があったので、修正しました。


「だが、回復手段があるとわかったからには俺は躊躇しねえぞ!俺のターン!」

「私は潤いの風でライフを回復!ジャスミンの効果で2(ツー)ドロー」

 

 カオリ LP 2550 → 3050

 

「先にドローされたか。だがこれで憂いはねえ!XX(ダブルエックス)―セイバー ボガーナイトを召喚!」

 

 XX―セイバー ボガーナイト レベル4 ATK 1900

 

「ボガーナイトの効果発動!手札からレベル4以下の戦士族モンスターを特殊召喚する!来い、フラムナイト!」

 

 XX―セイバー フラムナイト レベル3 ATK 1300

 

「さらに場に二体以上のX―セイバーがいる時、手札からXX―セイバー フォルトロールを特殊召喚できる!こいつを特殊召喚だ!」

 

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

「ここで魔法カード、セイバー・スラッシュを発動!場の攻撃表示のX(エックス)―セイバーの数だけ表側表示のカードを破壊する!」

「攻撃表示のジャスミンをリリースして、二枚目のポリノシスを発動!無効にする!発動が無効になったため、魔法吸収での回復はない」

「躱されたか。だが、こっちが本命だ!俺はレベル6のフォルトロールにレベル3のフラムナイトをチューニング!白銀の鎧輝かせ、刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよ!レベル9、XX―セイバー ガトムズ!」

 

 XX―セイバー ガトムズ レベル9 ATK 3100

 

「危険な実戦に向けた練習なんだ、禁じ手を使わせてもらうぜ!魔法カード、ガトムズの非常招集を発動!墓地のX―セイバー二体を召喚条件を無視して蘇生する!フォルトロールとフラムナイトを特殊召喚!」

「魔法吸収でライフを回復」

 

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 XX―セイバー フラムナイト レベル3 ATK 1300

 カオリ LP 3050 → 3550

 

「ガトムズの効果発動!X―セイバーをリリースして相手の手札一枚をランダムに捨てさせる。フラムナイトとボガーナイトをリリースして、二枚を捨てさせる!」

 

 ハンデス始まったかー。ループしてないだけ有情かな。というか、予定通りだけど。

 

「さらにフォルトロールの効果発動!一ターンに一度、墓地のレベル4以下のX―セイバーを特殊召喚する!フラムナイトを蘇生!」

 

 XX―セイバー フラムナイト レベル3 ATK 1300

 

「フラムナイトとフォルトロールをリリースしてさらに二枚手札を捨ててもらうぜ!」

 

 手札なくなった。相変わらずのハンデス性能だ。それはともかく問題は次のターンだね。

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

「その前に潤いの風の効果発動。1000のライフをコストにデッキからアロマセラフィ―アンゼリカを手札に加えて、効果発動!手札のアンゼリカを捨てて墓地のアロマ一体の攻撃力分ライフを回復する。さっきのハンデスで墓地に落ちたベルガモットの攻撃力分、つまり2400のライフを回復!」

 

 カオリ LP 3550 → 2550 → 4950

 

「ちっ……削った手札が仇になったか……」

「問題ないわ。私のターンで決着をつける!私のターン、ドロー!」

 

 このターンからドローとバトルフェイズが解禁される。このターンを耐え抜けるかが勝負だ。

 

「クリスタル・ローズを召喚!」

 

 クリスタル・ローズ レベル2 ATK 500

 

「さらに手札から魔法カード、パーティカル・フュージョンを発動!フィールドのモンスターでジェムナイトの融合召喚を行う!そしてこの時、クリスタル・ローズの効果!フィールドのこのカードは融合モンスターに示された融合素材になることができる。クリスタル・ローズをジェムナイト・ガネットとして、マスター・ダイヤと融合!紅の真実よ!輝きの淑女よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ、情熱の勇士!レベル6、ジェムナイト・ルビーズ!」

 

 ジェムナイト・ルビーズ レベル6 ATK 2500

 

「魔法吸収!ライフを回復!ジャスミンの効果でドロー!」

 

 カオリ LP 4950 → 5450

 

「マスター・ダイヤがフィールドを離れたことで、ブリリアント・フュージョンは破壊される。そしてパーティカル・フュージョンのさらなる効果!墓地のこのカードを除外して、融合素材になったジェムナイト一体の攻撃力をこのカードで融合召喚したモンスターの攻撃力に加える!マスター・ダイヤの元々の攻撃力は2900!ルビーズの攻撃力は5400まで上昇!」

 

 ジェムナイト・ルビーズ ATK 2500 → 5400

 

「さらにジェムナイト・ルビーズの効果!フィールドのジェムナイトをリリースして、その攻撃力を吸収する!ブリリアント・ダイヤの攻撃力は3400!マスター・ダイヤをリリース!」

 

 ジェムナイト・ルビーズ ATK 5400 → 8800

 

「攻撃力8800!」

「すげえ!」

「バトル!さらにルビーズには貫通効果があるわ!ルビーズでアロマージ―ジャスミンに攻撃!」

「貫通効果か!ジャスミンの守備力は1900……つまり6900のダメージ!」

「潤いの風でアンゼリカを加えて効果を使っても、カオリのライフは合計1400しか回復しない!回復してもカオリのライフは6650……これが通れば僕たちの勝ちだ!」

 

 フラグ乙。

 

「私が一枚ドローしたのを忘れた?手札のアンゼリカの効果発動!手札から捨てて、墓地のベルガモットの攻撃力、2400をライフに加える!」

 

 危なかった……。

 

 カオリ LP 5450 → 7850 → 450

 

「なっ!?」

「くっ……既に手札に……」

「ギリギリセーフ。ライフが下回ったから、潤いの風の回復効果を使わせてもらうよ」

 

 カオリ LP 450 → 950

 

「削りきれなかった……。私はこれでターンエンド」

「だが、ライフはあと少し。手札もない。次で決めるぞ!」

「ふっ、やーくん。伏せカードもない三人を相手に次のターンまで回す気は……無い!」

「何!?」

 

 ライフ僅か、手札なしの相手にターンを回す……それはアニメでは負けフラグだ!

 

「私のターン、ドロー!……魔法カード、アドバンスドロー!自分の場のレベル8以上のモンスターをリリースして、二枚ドローする!ワイアームをリリースして二枚ドロー!魔法吸収でライフを回復!」

 

 カオリ LP 950 → 1450

 

「さらに墓地の置換融合の効果!このカードを除外し、ワイアームをEXに戻して一枚ドロー!」

 

 ありがとうワイアーム。壁にドローに、大助かりだよ。

 

「……行くよ。フィールド魔法、ブラック・ガーデンを発動!」

「!?これは……」

 

 カオリ LP 1450 → 1950

 

 (無言の回復)。茨がフィールドを覆っていく。アクションデュエルじゃないからただのソリッドビジョンだけど。私の禍々しい方の庭だ。

 

「この茨の庭の中でモンスターを召喚・特殊召喚した場合、その攻撃力は半分になり、さらにそのモンスターのコントローラー以外のプレイヤーのフィールドにローズ・トークンが生まれる」

「自分のモンスターを展開する前に召喚モンスターの弱体化効果があるカード!?」

 

 このカードは弱体化も強力だけど、相手の場に弱っちい植物族トークンを大量生成できるのが強みだ。その恐ろしさを今からたっぷり味わってもらおう。

 

「その意味は後でわかるよ。私は墓地のグローアップ・バルブの効果発動。デュエル中に一度、デッキトップを墓地に送って、このカードを特殊召喚する!」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 DEF 100

 

「ブラック・ガーデンでグローアップ・バルブの力を利用し、相手の場にローズ・トークンを特殊召喚」

 

 茨が絡みつきグローアップ・バルブがしなびていく。代わりに元気いっぱいのトークンが三体現れた。

 

 グローアップ・バルブ ATK 100 → 100

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 

 ううっ、バルブが涙目でこっちを見ている。やめてくれえ!心に響く!ええい、さっさとデュエルを進めよう!ただのソリッドビジョンのはずなのに、なんだかこのまま放っておくのはかわいそうだ!

 

「墓地のダンディライオンを除外して、スポーアの効果発動。植物族一体を除外してそのレベルを自身に加え、墓地から復活する!さらにブラック・ガーデンでトークンを咲かせる!」

 

 スポーア DEF 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 

「スポーアを墓地に送ってにん人の効果発動。手札か場の植物族をコストに自身を蘇生する!ますみんの場が埋まってるから、ホクティーとやーくんのフィールドにだけローズ・トークンを特殊召喚」

 

 にん人 DEF 0

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 ローズ・トークン レベル2 ATK 800

 

「そしてフィールド魔法、アロマガーデンを発動!フィールド魔法は一人一つまで。これでブラック・ガーデンは墓地に送られる」

 

 カオリ LP 1950 → 2450

 

「そうか、二枚目のフィールド魔法を握っていたからブラック・ガーデンを躊躇なく使えたのか!」

「ということは、狙いはトークンの生成……」

「的を作ったのか?」

「ふふふ、今からその恐ろしさをたっぷり味わわせてあげるよ。まずはレベル4のにん人にレベル1のグローアップ・バルブをチューニング!香り振り撒け、花の妖精!シンクロ召喚!飛び回れ、レベル5、アロマセラフィ―ローズマリー!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー レベル5 ATK 2000

 

「ここでアロマガーデンの効果!場にアロマモンスターがいることで効果発動。ライフを500回復して、自軍の攻撃力を次のターンの終わりまで500アップ!」

 

 カオリ LP 2450 → 2950

 アロマセラフィ―ローズマリー ATK 2000 → 2500

 

「ローズマリーの効果で表側表示のカードの効果を無効にできるけどあんまり意味ないね。一応ルビーズの効果を無効に。そして潤いの風の効果発動。ライフを1000払い、最後のアンゼリカを手札に!そしてアンゼリカの効果発動!ライフを2400回復!」

 

 カオリ LP 2950 → 1950 → 4350

 

「くっ、ライフを上回られた!」

「ということは……」

「そう、アロマの永続効果が使える!ローズマリーの効果。ライフが相手より多い時、私の植物族の攻守を500アップ!」

 

 アロマセラフィ―ローズマリー ATK 2500 → 3000

 

「さらに墓地のアンゼリカの効果発動!私のライフが相手より多い時、場にアロマがいれば復活できる!」

 

 アロマセラフィ―アンゼリカ レベル1 DEF 0 → 500 → 1000

 

「アンゼリカをリリース。ローズ・テンタクルスをアドバンス召喚!ローズマリーとアロマガーデンの効果を合わせて攻撃力を1000アップ!」

 

 ローズ・テンタクルス レベル6 ATK 2200 → 2700 → 3200

 

「自身の効果で復活したアンゼリカはフィールドを離れた時に除外される。さあ、バトル行くよ!ローズ・テンタクルスはバトルフェイズ開始時に相手の場にいる植物族の数だけ攻撃回数を増やす!」

「何!?」

「俺たちの場にいるローズ・トークンは合計で八体……」

「攻撃力3200の九回攻撃!?」

「ローズ・テンタクルスの連続攻撃!ソーン・ウィップ、九連撃!」

「うわあああ!!」

「ぐあああ!!」

「きゃあああああ!!」

 

 真澄 LP 4000 → 0

 北斗 LP 4000 → 0

 刃 LP 4000 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

「三人とも、大丈夫?」

 

 まるでお通夜のような雰囲気だ。三体一で負けたことが相当に堪えたらしい。

 

 あと容赦なくアドバイスしたら、それが余計に彼らの精神へのダメージになってしまった。うん、まあ、これからすることの危険性を考えたら、悠長に彼らのメンタルを気にしながら精神にダメージを与えない程度のアドバイスに抑えるのは逆に危険だったし。

 

「まさかカオリがこんなに強いとは……」

「零児君には負けちゃったけど」

「あー……そんなに強いのか……」

「でも黒ゆうやんも相当な実力者だよ。もうちょいスタンディングデュエルへの対策をしっかりしてから行くべきだね」

 

 全員に共通することだけど、アクションデュエルになれてるせいで除去をモンスターに、防御をアクションカードに任せがちなデッキ構築になってる。アクションデュエルならともかく、スタンディングデュエル用のデッキでも同じ傾向が見られた。だから防御札が呼び込めてないんだよね。それにワイアームに対処できなかった。

 相手がデッキを変えないかどうかなんて確証は持てない。そして何より、負けられないデュエルなのだ。手札が事故って負けちゃった。次は負けないぞ!とは行かない。講師が音沙汰無しになっているし、危険なはずだ。沢渡さんはあんまり怪我してないけど……あれ?何で沢渡さん、無事なんだろ。

 

『お姉ちゃん、お兄ちゃんから電話だよ(高音)!出ろやコラ(ド低音)!』

「うわ、何!?」

「あ、零児君から着信だ」

「今の呼び出し音かよ!?」

「もしもし~。……あ、うん。はーい」

 

 零児君から呼び出しだ。ちょっと前に行ったばっかりなのに、人使いが荒いなあ。

 

「噂をすればシャドールが差すってやつかな。零時君から呼び出されたから、行かなくちゃ。何か大事な用事みたい。告白かな?」

「そんなわけないでしょ!」

「真面目に考えればLDS講師が行方不明になってる事件に関係ある話かもな」

「!じゃあ私も……」

「そうと決まったワケじゃねえし、行っても話に混ぜてもらえねえって」

「うっ……」

 

 どうやらガチでさっきの負けが効いてるみたいだね。

 

「まあ、事件について何かわかって、話せるような内容なら伝えるよ」

 

 ついでに零児君に三人が事件を調べようとしてることも伝えるけど。三人とも予想外にスタンディングデュエルになれてないってわかったし、下手に手を出させない方がいいかもね。

 

「……うん。お願い」

 

 元気もなくなっちゃったな~。でも私が慰めても逆効果になりかねないし。こういうの苦手なんだよね。

 

 取り敢えず今はお仕事に集中しよう。




久しぶりの主人公勝利です。むしろそのためにこの三人とデュエルしました。


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第十四話 人違い 前編

「ハハハハ!もっと速く走れー!」

「ぜぇ……はぁ……」

「も、もう限界……」

「ぐっ……」

 

 どうも、花吹雪香だよ。今、高笑いしながら山でますみんたち三人に修行をつけているところだ。

 

 なんでこうなったかと言うと、それはこの前の一対三変則デュエルのすぐ後、零児君に講師行方不明事件の調査を依頼された後まで遡る。

 

◆ ◆ ◆

 

「はぁ……」

「あれ、ますみんたち、まだ残ってたの?」

「あ、カオリ!どうだった!?何かわかったことある?」

 

 私を待ってたのか。マルコ先生好きだなあ、ますみん。それに付き合ってあげる二人も優しいよね。

 本当は教えない方がいいのかもしれないけど、遅かれ早かれわかることだしなあ……。

 

「これは本当は秘密なんだけど。また講師が一人連絡がつかなくなったって」

「!!」

「で、私も本格的に捜査に加わる……っていうか制服組とは別で捜査しろってさ」

 

 制服組もジュニアユースの私が捜査にちょっかい出してきたら面白くないだろうけど、零児君は私が制服組や講師陣より強いことを知ってるから、下手に組ませるより別口で探せってことらしい。

 

「私にも手伝わせて!」

「んー……NO!」

「なっ、何で!」

「残念だけど、今のままだと足引っ張るだけだね」

「ぐっ……」

 

 ますみん――否、三人の顔が悔しそうに歪む。しかし言い返せないみたいだ。でもこの三人と捜査するにしても黒ゆうやんが犯人の可能性と三人の実力を考えると、別行動は三人を危険に晒すことになる。そして私は修行してたおかげで三人より身体能力が高いので、三人を連れて歩くのは私の行動速度が低下することを意味する。

 

「でも私はマルコ先生のことが……」

「ああ、もう、わかったよ。放っといたら一人で暴走しそうな顔してからに」

「うっ……」

「実力が足りないなら、実力を高めればいい」

 

 デュエルの実力を高める方法はいくつかあるけど、私が提案するのはこれ。

 

「修行を始めるよ!」

 

◆ ◆ ◆

 

 そうして屍が三つ出来上がった。

 

「……死んでないから」

「ぜぇー、はぁー……」

「……」

「おっと、声に出てた?失敬失敬」

 

 今は悪路というか、道無き道を駆け回るトレーニングを終えたところ。言葉にするとなんでもないが、実際走るというかハードなアスレチックのようになっているので一般人にはかなりしんどい。

 

「どうしてカオリは汗一つかいてないのよ……」

「た、体力お化けめ……」

「……」

 

 ホクティーはさっきから一言も喋らんな。そんなにしんどかったか。やーくんは他二人より鍛えてるみたいで、息は切らしてるけど二人に比べると体力が残ってるっぽい。しかし修行はまだ始まったばかりだ。

 

「はい、デュエルするよー」

「マジで言ってるのか……」

「え、だってまだ走っただけだよ?」

 

 まだデュエルのデュの字も出てきていない。今のはウォーミングアップのようなものである。あ、ホクティーの目が死んだ。

 

「いつもこんなきつい修行してるの?」

「私一人の時はもっとハードな修行をしてるけど……最初はもっと軽めから始めたよ。でも三人には時間がないでしょ?」

 

 三人の目標を考えれば、ちんたらしてはいられない。

 

「そう……そうね。こんなところで止まってられないわ」

 

 その言葉を引き金に、三人が立ち上がる。うん、まだまだやれそうだね。メニューを倍に増やしても大丈夫そうかな?

 

◆ ◆ ◆

 

「んじゃ、一旦山降りて事件の調査してくるから」

 

 ちなみに私が付き添うのは今日だけだし、今日もそんなに一緒にはいられない。トレーニングメニューだけ教えて実際に一回やらせたら、あとは自分たちで頑張ってもらう。私の拘束時間が増えたら調査が滞るし、それじゃあ本末転倒だし。

 そのため、熊とかの危険生物がいない安全な山――一応、前日のうちに山全体を確認済み――を選び、その中でも安全な箇所のみを修行に使っている。彼らに熊と戦うのは無理だ。もし出会ってしまったら熊を一頭伏せてターンエンド!どころか熊に三人伏せられて人生終了(ターンエンド)!となりかねない。

 

「「「……」」」

 

 ちなみに三人とも修行で声も出せないほど疲れている。

 

◆ ◆ ◆

 

 それは山を駆け下りている時のことだった。

 

 なんかいきなり光ったと思ったら、目の前にバイクが現れて突っ込んできた。とっさにジャンプして、バイクを駆る男に飛び蹴りをかます。

 

「ぐわっ!」

 

 しかし相手も咄嗟にハンドルを右に切り、打点をずらした。私は衝突の衝撃で右――崖側に飛ばされる。しかしまだ慌てる時間じゃない。満足式デュエルアンカー――個人的にデュエルディスクを改造して作った自信作――を襲撃者のデュエルディスクに接続し、崖下への落下を阻止する。

 

「よっと」

「うおおお!?」

 

 襲撃者は崖側に引っ張られるのをバイクの力で踏ん張って耐える。私はその間にロープクライミングの要領で崖の上に復帰した。

 

「こいつが襲撃者か……」

 

 思わぬところでLDS講師行方不明事件の犯人が判明した。黒ゆうやんは濡れ衣だったようだ。

 

 なるほど、いかに優秀なLDS講師でも、このように目の前に瞬間移動してバイクでリアルダイレクトアタックを敢行されれば回避はほとんど不可能。私のようにデュエルアンカーを持ってる人はたぶんいないだろうし、こういう崖際とかでやられたらどうにもならない。目撃証言がないから人気のないところで――たぶんここみたいな「吹っ飛ばされると危険な場所」でダイレクトアタックされたのだろう。おそらく行方不明のLDS講師はもう……。ますみん悲しむだろうなあ。

 

 悪いね、ますみん。仇は先生方の仇は私がとる。このデュエリストの風上にも置けないリアリストは、私がとっちめてやる!

 

「ふぅ、危なかった――」

「デュエル!」

 

 カオリ LP 4000

 ??? LP 4000

 

 私のデュエルアンカーは長さ変更が効くから、気をつければバイクに振り回されることはない。注意は必要だけど。ここは電波が届いてないから、応援は呼べない。正真正銘、一対一のデュエルだ。

 

「な、何だ!?」

「年貢の納め時だ、覚悟しろ!」

「くっ、あいつらの仲間か!(年貢ってなんだ……?)」

「私のターン!アロマージ―ジャスミンを召喚!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100

 

「さらに永続魔法、魔法吸収を発動。そしてフィールド魔法、アロマガーデンを発動!」

 

 周囲が花畑に代わる。崖が見えにくくなるから少し気を付けないと。

 

「魔法カードが発動した時、魔法吸収の効果でライフを500回復する」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 

「ここでジャスミンの効果。私のライフが回復した時、カードを一枚ドローする!さらに私のライフが相手のライフより多い時、ジャスミンの効果でもう一度植物族を召喚できる。アロマージ―ローズマリーを召喚!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「ここでアロマガーデンの効果発動。アロマモンスターがいる時一ターンに一度ライフを500回復し、相手のターン終了時まで自軍のステータスを500アップするよ!」

 

 カオリ LP 4500 → 5000

 アロマージ―ジャスミン ATK 100 → 600

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → 2300

 

「そして自分のライフが回復した時に、ローズマリーの効果発動。表側表示モンスターの表示形式を変更する。ジャスミンを守備表示に」

 

 アロマージ―ジャスミン ATK 600 → DEF 2400

 

「私はカードを一枚セットしてターンエンド!」

「リンを助けるためにも、ここで負けるわけにはいかねぇ!俺のターン!」

 

 そう言って白いライダースーツを身に纏った男はバイクで私の周りを疾走する。おいおい、またリアルダイレクトアタックする気?

 

「魔法カード、スピードロー!デッキから二枚ドローして、手札のSR(スピードロイド)一体を墓地に送る。俺はSR赤目のダイスを墓地に」

 

 えっ……普通にデュエル続けるんだ。バイクに乗る意味は一体……。

 

「……魔法吸収でライフを回復。ジャスミンとローズマリーの効果!デッキからカードをドローして、ローズマリーを守備表示にするよ」

 

 カオリ LP 5000 → 5500

 アロマージ―ローズマリー ATK 2300 → DEF 1200

 

 魔法吸収はチェーンに乗らず強制的に回復する効果だし、アロマの回復時の効果は強制発動だからしょうがないね。ジャスミンを攻撃表示にする理由がないし。ローズマリーは杖を盾のように構えてかわいい防御態勢。

 

「俺はSRダブル・ヨーヨーを召喚!」

 

 SRダブル・ヨーヨー レベル4 ATK 1400

 

「ダブル・ヨーヨーが召喚に成功した時、墓地のSR一体を特殊召喚できる!来い、赤目のダイス!」

 

 SR赤目のダイス レベル1 DEF 100

 

「俺はレベル4のダブル・ヨーヨーにレベル1の赤目のダイスをチューニング!」

 

 くっ、シンクロ使いか!面倒なことになりそうだね。

 

「双翼抱くきらめくボディー。その翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!現れろ、レベル5、HSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータ!」

 

 HSRマッハゴー・イータ レベル5 ATK 2000

 

 見た感じ、素良っちとは違うベクトルのおもちゃモチーフのテーマかな?だからどうしたって話かもしれないけど。あとは名前的に、速攻でシンクロすることに重きを置いているテーマのような気がする。かもしれないで話しててもしょうがないな、デュエルに集中しよう。

 

「バトル!マッハゴー・イータで、ローズマリーに攻撃!」

 

 くっ、ローズマリー……。魔法カードをあえて発動してローズマリーの効果を逆手にとったのか。このリアリストはテクニカルなタイプかもしれないね。リアリストの割にデュエルも強そうだ。……いや、リアリスト代表ロットンも大概だったしリアリストは総じてデュエルも強いのかな。

 

「だけどアロマモンスターが破壊された時、アロマガーデンの効果発動!ライフを1000回復するよ!」

 

 カオリ LP 5500 → 6500

 

「くっ、ライフを増やしちまったか。俺はカードを一枚セットして、ターンエンド!」

 

 アロマージ―ジャスミン DEF 2400 → 1900

 

「私のターン、ドロー!私はアロマガーデンの効果発動。攻守をアップしてライフを回復!ジャスミンの効果で一枚ドロー!」

 

 アロマージ―ジャスミン DEF 1900 → 2400

 カオリ LP 6500 → 7000

 

「グローアップ・バルブを召喚!」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 ATK 100 → 600

 

「フレグランス・ストームを発動!場の植物族を破壊して一枚ドローする。さらにそれが植物族ならもう一枚ドロー出来る!グローアップ・バルブを破壊してドロー!」

 

 最近バルブにも愛着が湧いてきたから罪悪感があるけど、バルブは結局繋ぎ役だから単体で活躍とかはさせられない。心の中で感謝するにとどめておく。

 

「ドローしたのは植物族のアロマージ・ベルガモット。よってさらにドロー!魔法吸収でライフを回復するよ」

 

 カオリ LP 7000 → 7500

 

「そしてにん人を召喚!」

 

 にん人 レベル4 ATK 1900 → 2400

 

「バトル!にん人でマッハゴー・イータに攻撃!」

「ぐっ……!」

 

 ??? LP 4000 → 3600

 

「バトルフェイズ中にダメージを受けた時、SROMK(オーエムケー)ガムを特殊召喚できる!」

 

 SROMKガム レベル1 DEF 800

 

「まだだ!私は速攻魔法、ライバル・アライバルを発動!バトルフェイズ中に召喚を行う!にん人をリリースしてアロマージ・ベルガモットを召喚!」

 

 アロマージ・ベルガモット レベル6 ATK 2400 → 2900

 

「魔法吸収でライフを回復。さらにベルガモットの効果発動!ライフを回復した時、相手のターン終了時まで攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

 カオリ LP 7500 → 8000

 アロマージ・ベルガモット ATK 2900 → 3900

 

「さらに、相手よりライフが多い時、ベルガモットは自軍の植物族に貫通効果を与える!」

「何!?」

「ベルガモットでOMKガムに攻撃!クリムゾン・パフューム!」

「それは通さねぇ!手札のSRメンコートの効果発動!相手の攻撃宣言時に、こいつを特殊召喚して相手の表側表示モンスターを守備表示にする!」

 

 はあ?地味にインチキ臭いカードだな。きっとOCGになったら修正受けるやつだよ。

 

「さらにチェーンしてリバースカードオープン!速攻魔法、スピードリフト!自分のフィールドのモンスターがチューナー一体だけの時、デッキからレベル4以下のSRを特殊召喚する!この効果の特殊召喚成功時に他のカードの効果は発動できない!俺はチューナーモンスター、SR三ツ目のダイスを特殊召喚!」

 

 SR三ツ目のダイス レベル3 DEF 1500

 SRメンコート レベル4 DEF 2000

 

 ダイスがドリフトを決めるのは何かシュールだな。うっ、メンコートの風凄い……。ベルガモットは吹っ飛ばされて膝をついちゃった。

 

「……魔法吸収でライフを回復。カードを二枚セットして、ターンエンド」

 

 カオリ LP 8000 → 8500

 

 モンスターを揃えられちゃったのは痛いな。チューナーが二体いるし……。

 

「俺のターン!レベル4のメンコートに、レベル3の三ツ目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7、クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 ATK 2500

 

「シンクロ……ドラゴン……!?」

 

 何だって……。頭に血が昇ってて気が付かなかった。よくよく聞けば声はゆうやんと同じだし、体格も同じように見える。LDS襲撃事件の犯人は黒ゆうやんではなかった。しかし白いライダースーツに身を包んだこの男、まさか白ゆうやんだったとは!




???「我が力を植え付けておいたぞ」
クリア「ごめん、勘違いだった」
カオリ「襲撃事件の犯人か!」
ユーゴ「あいつらの仲間か!」
???「どうしてこうなった」

本編で語る場所がないのでここで語りますが、今回の事件はどっかの誰かさんがカオリに植え付けた力をクリアウィングが勘違いしために発生しました。つまり事故です。


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第十五話 人違い 後編

いつもの連続投稿の後編です。前編からお読みください。


「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7、クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 ATK 2500

 

「さらに俺はSRパチンゴーカートを召喚!」

 

 SRパチンゴーカート レベル4 ATK 1800

 

「パチンゴーカートの効果!このカードが召喚に成功した時、このカードの攻撃を放棄して相手モンスター一体を破壊する!アロマージ―ジャスミンを破壊!」

 

 ジャスミンの方を……!?いや、ベルガモットはレベル6(・・・・)。オッドアイズやダーク・リベリオンの例を考えると、クリアウィングもレベル5以上に対するメタ効果があるに違いない。……のはわかるんだけど、アロマガーデンもベルガモットも強制効果なんだよね~。

 

「アロマガーデンでライフを回復」

 

 カオリ LP 8500 → 9500

 

「ベルガモットの効果発動!攻撃力をアップする!」

「クリアウィングの効果発動!フィールドのレベル5以上のモンスターが効果を発動した時、またはレベル5以上のモンスターを対象にフィールドのモンスターが効果を発動した時、それを無効にして破壊する!ダイクロイックミラー!」

 

 げっ!厄介な効果だな……。

 

「さらに破壊したモンスターの攻撃力をターン終了時までクリアウィングの攻撃力に加える!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 2500 → 6400

 

「なあっ!?」

 

 マジか。オッドアイズに比べて強すぎない?

 

「くっ……アロマガーデンでライフを回復」

 

 カオリ LP 9500 → 10500

 

 ライフは1万を超えたけど、私の場はがら空きで向こうには攻撃力6400とシンクロ素材一式。全く安心できる状況じゃない。

 

「さらにレベル4のパチンゴーカートに、レベル1のOMKガムをチューニング!その躍動感溢れる、剣劇の魂。シンクロ召喚!出でよ、レベル5、HSRチャンバライダー!」

 

 HSRチャンバライダー レベル5 ATK 2000

 

「さらにOMKガムの効果!このカードがシンクロ素材になった時、デッキから一枚ドローして墓地に送る。そのカードがSRだった場合、その攻撃力をOMKガムをシンクロ素材にしたモンスターの攻撃力に加える!ドロー!……攻撃力100のSRドミノバタフライだ!」

 

 HSRチャンバライダー ATK 2000 → 2100

 

「バトル!クリアウィングでダイレクトアタック!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

「ぐうううぅぅぅ!!」

 

 カオリ LP 10500 → 4100

 

 くっ、凄い威力……いや、なんかおかしい。頭が痛い……。これは、ゆうやんの時と同じ……!?

 

「チャンバライダーでダイレクトアタック!」

 

 まずい……カードを、発動しなくちゃ……!

 

「罠カード、戦線……復帰を……発……動!」

 

 アロマージ―ジャスミン レベル2 DEF 1900 → 2400

 

「くっ……!攻撃は中止だ!カードを二枚セットしてターンエンド!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 6400 → 2500

 アロマージ―ジャスミン DEF 2400 → 1900

 

 頭が……。なんか変な声が聞こえる。

 

 『い……そひ……』

 

 これは……怒りだ。クリアウィングの怒りが私の心の中に響いてくる。

 

「私の……ターン!アロマガーデンの効果発動!ライフを回復し、ジャスミンの効果で一枚ドロー!」

 

 カオリ LP 4100 → 4600

 アロマージ―ジャスミン DEF 1900 → 2400

 

「さらにグローアップ・バルブの効果!デッキトップを墓地に送り、自身を蘇生!」

 

 グローアップ・バルブ レベル1 DEF 100 → 600

 

「墓地に送られた絶対王 バックジャックの効果発動!デッキトップの三枚を並び替える!」

 

 砂塵の大嵐とデストラクト・ポーション、あとは……。

 

「……私は墓地のにん人の効果発動。手札・フィールドの植物族をコストに自身を蘇生する。手札のダンディライオンを墓地に送り、特殊召喚!」

 

 にん人 レベル4 ATK 1900 → 2400

 

「さらに墓地に送られたダンディライオンの効果発動!綿毛トークン二体を特殊召喚!」

 

 綿毛トークン レベル1 DEF 0 → 500

 綿毛トークン レベル1 DEF 0 → 500

 

「レベル1の綿毛トークンに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!限界まで加速しろ!シンクロ召喚!駆け抜けろ、レベル2、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 フォーミュラ・シンクロン レベル2 DEF 1500 → 2000

 

「シンクロチューナー……!?」

「フォーミュラ・シンクロンの効果発動。デッキからカードを一枚ドローする!そしてレベル4のにん人とレベル1の綿毛トークンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!天より舞い降りし、生命の化身!シンクロ召喚!命を照らせ、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100 → 2600

 

「ホーリー・ワイバーンは相手よりライフが少ない時にその差分攻撃力が下がる代わりに、相手よりライフが多い時、その差分攻撃力をアップする!これは発動を伴わないため、クリアウィングの効果は受けない!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2600 → 3600

 

「くっ、攻撃力3600か……!」

「さらにローズマリーを召喚!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800 → 2300

 

「バトル!ローズマリーでクリアウィングに攻撃!」

「攻撃力の低いモンスター……一体何を……」

「この瞬間、永続罠、女神の加護を発動!発動時にライフを3000回復する!」

「ローズマリーの効果か!だがクリアウィングの効果で……」

「それはできない。私のライフの方が多い時、ローズマリーは植物族の攻撃中の相手のモンスターの効果の発動を封じる!」

「クリアウィングの効果を封じてきた……!?なら、永続罠、バーニング・ソニック!攻撃を無効にして、攻撃されたモンスターの攻撃力を500アップする!さらにチェーンして永続罠、SRシュリケーンハリケーンを発動!」

 

 クリアウィング ATK 2500 → 3000

 カオリ LP 4600 → 7600

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 3600 → 6600

 

「ローズマリーでクリアウィングを守備表示に!」

「シュリケーンハリケーンの効果も発動だ!一ターンに一度、モンスターの攻撃力が変化した時、その数値分のダメージを相手に与える!ホーリー・ワイバーンの攻撃力変化分、3000のダメージだ!」

「……」

 

 カオリ LP 7600 → 4600

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 6600 → 3600

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 3000 → DEF 2000

 

「エンシェント・ホーリー・ワイバーンでクリアウィングに攻撃!」

「だが、ホーリー・ワイバーンは植物族じゃねえ!墓地の三ツ目のダイスの効果が使える!三つ目のダイスを除外して、攻撃を無効にする!っ、うおおおおお!?」

 

 『い……つに』

 

「グッ……ウオオオオ!」

「……カードを一枚セットしてターンエンド!」

「オオオオ!!俺のターン!魔法カード、ステップ・オン・シャドーを発動!相手の特殊召喚されたモンスター一体のレベルより低いレベルを持つ、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを墓地から蘇生する!マッハゴー・イータを特殊召喚!」

 

 HSRマッハゴー・イータ レベル5 ATK 2000

 

「魔法吸収でライフを回復!ローズマリーとジャスミンの効果発動!ローズマリーは自身を対象にする!」

 

 カオリ LP 4600 → 5100

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 3600 → 4100

 アロマージ―ローズマリー ATK 2300 → DEF 1200

 

「マッハゴー・イータの効果発動!相手モンスターのレベルを変更する!クリアウィングで無効にして破壊!ダイクロイックミラー!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 3000 → 5000

 

「シュリケーンハリケーンの効果でダメージを与える!」

「……」

 

 カオリ LP 5100 → 3100

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 4100 → 2100

 

「クリアウィングを攻撃表示に変更!バトル!チャンバライダーで攻撃!戦闘ダメージ計算時、攻撃力を100アップする!クリアウィングで無効にして破壊!ダイクロイックミラー!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 5000 → 7100

 

「自分の場にSRが居なくなったことにより、シュリケーンハリケーンは破壊される!クリアウィングでエンシェント・ホーリー・ワイバーンに攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

「罠カード、砂塵の大嵐を発動!魔法・罠を2枚まで破壊する!女神の加護を破壊!そして破壊された女神の加護の効果!私は3000のダメージを受ける!」

 

 カオリ LP 3100 → 100

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2100 → 0

 

「さらに墓地のバックジャックを除外して効果発動!デッキトップをめくり、通常罠ならこのターンに発動できる状態でセットする!デッキトップのカードは通常罠、あまのじゃくの呪い!セットして発動!このターンの間、攻撃力の加減算を逆転する!」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ATK 7100 → 0

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 0 → 5100

 

「エンシェント・ホーリー・ワイバーンの迎撃!セフィロトブレス!」

「ぐあああああ!!」

 

 ??? LP 3600 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

 ……はっ!あれ!?えっ、何!?……何で私あんなにキレてたんだ?……あっ、そうだ、いきなり轢き殺されそうになったからだった。

 

「取り敢えず白ゆうやんを拘束してっと」

 

 でも白ゆうやん、リンを助けるとかなんとか言ってたから、誰かを人質に取られたかなんかして、仕方なくやってるっぽかったけど。それを聞いて、取り敢えず一発殴るにしても話は聞いてやろうと思ってたんだけど……。あれ、本当にどうして私、キレちゃったんだろ。やっぱり轢き殺されそうになった怒りが許したつもりで心の中で燻ってたとか、そんな感じかな?……うーん、釈然としない。

 

「うーん……あれ、ここは……」

「よし、目が覚めたな。ふん!」

「うごっ!?」

 

 まあ結局殴るは殴るんだけど。

 

◆ ◆ ◆

 

 完全に勘違いだった。LDS講師襲撃事件は無関係だったらしい。この白ゆうやん改めユーゴっちの証言が正しければ、だけど。冷静になってみればLDS講師が何人も崖でバイクに轢かれたってかなり無茶な考え方だったね。私も頭に血が上っていたのかもしれない。

 

 でも轢かれかけたから、ふんじばったり殴ったりしたことは謝ってない。

 

「それにしても……本当にそっくりだなあ」

「だな。こんなことってあるんだなあ」

 

 ユーゴっちが見せてくれたリンという少女(渾名未定)の写真――バイクにデータがあった――は柚子りんそっくりだった。今見ているのはそのデータのコピーだ。代わりにゆうやんと柚子りんの写真データを渡して、間違わないように注意を促した。

 

 リンという少女が柚子りんにそっくりな点は、まあ、今のところさほど不思議がることもない。

 

 私は既にこの世界に少なくとも四つの次元があることを聞いている。私たちのいるスタンダード次元、黒ゆうやんたちの出身と思われるエクシーズ次元、ユーゴっちの故郷シンクロ次元、そして零児君が敵対している融合次元。どうも召喚法ごとに分かれてるらしい。スタンダードはこれからペンデュラム次元になるのか?零児君は次元間を移動してこれら召喚法をスタンダードに持ち込んだわけだ。

 

 そして各パラレルワールドにはそれぞれそっくりな人物がいるというのはパラレルワールド物の定番パターンだ。どっちも幼馴染というのも、運命的なものが働いているのだろう。

 

 問題は、ユーゴっちが自分と同じ顔の男――黒ゆうやんにリンを連れ去られたと言っているところ。零児君はエクシーズ次元が融合次元に襲われたという情報を掴んでいたけど、黒ゆうやんはエクシーズ次元の裏切り者か何かなのかな。ユーゴっちのことを信じるなら、取り敢えず敵っぽい?私に対してもすごい攻撃的だったし。

 

 今は荒れた山道をバイクで走るのが危ないので――ユーゴっち一人ならともかく、ただでさえ危険な二人乗りをこの道なき道でやるのは危険を通り越して無謀なため――徒歩で下山しているところだ。

 

 さらに不思議なのはクリアウィングの次元転送能力。オッドアイズには当然そんな能力は備わってない。実際のところ、ゆうやんには悪いけど、単純な能力もクリアウィングの方が強いよね。オッドアイズは発動するモンスター効果がないからクリアウィングの対象外だけどさ。

 

 クリアウィングは5D'sのタクシーの能力を受け継いだんだろうか?

 

「ああ、そうだ。記念にこのカードを渡しておくよ」

「これは?」

 

 ライバル・アライバル。何の因果か、いままでゆうやんシリーズとのデュエルでは皆勤賞なので、取り敢えず渡しておいた。

 

「なんとなく。お守りにしてもいいし、デッキに入れてもいいし。その辺は任せるよ」

「そっか……ありがとな。リンのことまで……」

 

 今は電波が届かない場所だけど、届く場所に言ったら今回の話を零児君にして、目的にリンの捜索も加えてもらうつもりだ。エクシーズ次元は多少情報を掴んでるけど、シンクロ次元についてはあんまりわかってないらしいからね。シンクロ次元の味方が一人増えるだけでもありがたい。あと目的もなく誘拐したんならともかく、リンという少女を攫ったことに目的があるのなら、そこら辺についての情報を共有しておくことにも意味があるし。

 

「上司に言うだけならタダだし、たぶんいずれにしろ戦うことになるからね……」

 

 零児君曰く、本丸は融合次元らしいからね。何かいつの間にか完全に巻き込まれてるな、私。あれ?自分から巻き込まれに行ったんだっけ?

 

「うおっ!?」

 

 ピカッと光ったと思ったら、ユーゴっちはいなくなっていた。どうやらクリアウィングのランダム転移が発動したみたい。

 

「……ランダムじゃなかったら便利なんだけどなあ」

 

 それとも転移に規則性があるのだろうか。とにかく今はどうにもならないことを頭から追い出して、襲撃事件の捜査のために先を急いだ。 




ホリワ「初☆勝☆利」

カオリは所詮ちょっと力を植え付けられただけなのでカオリに負けても遊矢シリーズは吸収されたりしません。

ちなみにドミノバタフライは非ペンデュラムの設定です。墓地に行っただけですが。

SRのアニメ効果、ハンドアドバンテージの回復が一切ないんですね。そのせいで手札調整にかなり苦しみました。アリガトウ、スピードロー……。アニメのSRはとにかく速攻でシンクロするという一点に特化したデザインのようです。

あと、ユーゴの渾名が地味に決まらなくて悩んでました。

黒咲さんとの合流前に赤馬零児がどこまで情報を掴んでいたのかはよくわからないですが、赤馬零王が変なことやってるくらいだと対抗する理由としては薄いですし、黒咲さんとの初邂逅時の会話の流れもそれっぽかったので、エクシーズ次元が襲撃されたことを知ってるのかな?と考えてこういう風にしました。


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幕間その一 カオリの影響

「榊遊矢……まさか君の方から訪ねてくるとは」

 

 ここのところ私はLDS講師襲撃事件への対応とペンデュラムの開発に力を注いでいるため、通常の面会は断っていた。だが、他ならぬペンデュラムの始祖、榊遊矢が重要な要件と言うのであれば時間を作る価値はあるだろう。こちらからも舞網チャンピオンシップの出場権について伝えたいところだったので、丁度いい。

 

「どうしても頼みたいことがあるんだ。零児にしか頼めないことが」

「私にしか頼めないこと?」

「ああ。えっと、あのペンデュラムのカードって、レオ・コーポレーションで作ってたんだよな?」

「そうだ。君のペンデュラムのデータを集めて作成した」

 

 正確にはまだ研究中だ。出来れば次の舞網チャンピオンシップには間に合わせたいが、かなりギリギリになるだろう。

 ……ペンデュラムが流行するのが気になっていたのだろうか?彼はペンデュラムを手に入れるまでは連戦連敗だった。相手もペンデュラムを使えるとなれば前の連戦連敗の状態に戻ってしまうと危惧しているのかもしれない。実際、私がペンデュラムを披露した時もかなりショックを受けていたようだった。

 

「あの時、まだ不安定だ、みたいなことを言ってたから。だから、もし必要ならこれを使って欲しいんだ」

「これは……」

 

 ペンデュラムカード。榊遊矢のオリジナルのものだ。流石に彼のエースは入っていないが、これがあれば研究は一気に進むはず。しかし、一体なぜ?

 

「確かにそれがあればペンデュラムの研究は捗るだろう。しかし私は少なくとも、君にとって友好的な相手には映らなかったはずだが。何故、塩を送るような真似を?」

「……ペンデュラムを使われた時は正直、ショックだったんだ。俺だけのペンデュラムだったはずなのに、って。でも、カオリにそれじゃダメだって言われた。それで気付いたんだ。俺はただ臆病なだけだった。また前みたいに負け続けるのが、何の特徴もないデュエリストになるのが怖いだけだったんだ」

 

 花吹雪香の仕業か。彼女は意外にも世話焼きな性質がある。遊勝塾とのデュエルをした三人にもなにやら特訓をさせていると聞く。

 

「逆だった。俺は父さんみたいに、広めなきゃいけなかったんだ。俺だけペンデュラムを独占してるのはエンタメじゃない。デュエルは一人でやるものじゃないから、お互いに最高のデッキでやるデュエルが最高のエンタメデュエルになるはずなんだ」

「……そうか」

 

 生死をかけた戦いが待ち受けている今――つまり戦うための兵士が必要な現在においては、その考え方は歓迎できない。だが、エンターテイメント・デュエリストとしては素晴らしい心構えだと私は思う。私は、私がペンデュラムを披露した時の彼の反応に少なからず落胆していた。だが、今の彼はいい目をしている。

 

 ……これから始まるであろう生死をかけた戦争(デュエル)は彼の望むものではない。しかし、もし彼が十分な実力を有しているのならば、彼も我々とともに戦ってもらわなければならない。選りすぐらなければならないが、選り好んでいる余裕はないのだから。この先の戦いは、彼の目を曇らせることにしかならないだろう。それが残念でならない。

 

「俺が自分で作るペンデュラムだけじゃ、全然数も種類も足らない。だから、頼む。みんながペンデュラムを手に入れられるように、ペンデュラムを普及させて欲しいんだ」

「……しばらくの間は、君の意向に沿うのは難しい」

 

 ペンデュラムは我々の武器になる。だから、敵の手に渡らないよう、すぐに普及させることは出来ない。

 

「だが、いずれ必ずペンデュラムを普及させると約束しよう」

 

 しかし、戦いが終われば話は別だ。レオ・コーポレーションが融合やシンクロ、エクシーズをLDS塾生だけでなく一般に広く販売しているのはこの次元のデュエリストの質を高めるためだけではなく、単純にその方が利益が出るからという理由もある。つまり、ペンデュラムを普及させない理由がないのだから。

 

「……!ありがとう!」

 

 それまでは、ペンデュラムは我々の武器に使わせてもらう。彼は望まないだろう。だが、私情は切り捨てなければならない。経営者として、そしてこの戦いに挑む責任者として。

 

◆ ◆ ◆

 

 あれから、LDS連続襲撃犯だと思われる黒マスクの男について、カオリから追加の情報があった。どうやら他にもリンという少女をさらった疑惑があるらしい。やっぱりあいつがマルコ先生の仇なんだ。きっとそうだ。

 

 情報の代わりというわけではないけど、先走らないように再三再四注意された。実際、三人がかりでも一度もカオリに勝てていないから、反論はできない。

 聞いたところによると、社長――赤馬零児はそのカオリよりもさらに強いらしい。デュエルをして負けたとカオリが口にしていたのを聞いただけだから、その一回が偶々ということもあるかもしれないけど、少なくとも私たち三人よりは強いはず。そのまぐれさえ引き起こせていない状態なのだから。

 ……あんなに修行をしているのに。効果がないわけではないけど、差がなかなか縮まない。こんなざまでマルコ先生の仇を討てる日は来るのか?

 

 ……いや、弱気になっちゃダメだ。いつか絶対に仇を取る。意思を強く持って、目標を達する。それがマルコ先生の教えだから。

 

 今日は修行を休んで体を休めている。だけど全く動かないのもそれはそれで体に悪いから、散歩を兼ねて事件のことを調べる。本当は事件のことを調べるのはまだダメだとカオリに忠告されているけど、ただじっと待っていることは私にはできなかった。

 

 そして、ついあの倉庫の所まで足が向いてしまう。黒マスクと会ったあの場所。

 

 そこには柊柚子と、紫雲院素良がいた。

 

「……柊柚子か」

「あなたは……光津真澄!」

 

 柊柚子。榊遊矢似の黒マスクの男と面識のある女。だけど既にカオリは彼女に話を聞いた後だ。カオリ曰く、新情報はなかったらしい。面識と言っても沢渡が襲われた時のが初邂逅、そしてこの前――私たちが修行に明け暮れている時――もう一度会ったらしいが、ほとんど話をする間もなくいなくなってしまったらしい。

 

「……黒マスクの男について、調べているの……」

「あなたも?確か、LDS講師が襲われてるってカオリが……」

「そうだ。マルコ先生……私に融合を教えてくれたマルコ先生が、襲われたみたいで……。カオリが、話は聞いたと言っていたが……何か、何か他にない?何でもいい、どんな些細な事でもいいから……」

 

 それでも諦めきれない。何か手がかりが欲しい。あれ以来、事件の調査は遅々として進んだいないらしい。

 

「私が知ってることは、もう全部カオリに話したはずだけど……」

「何でもいい、何でもいいから!」

「ねえ、僕を無視して話を進めないで欲しいんだけど。っていうか、修行の邪魔だからどっかいってくんないかな……」

「そ、素良、そんな言い方は……」

「しゅ、修行……」

 

 いや、今日は休みだ。あの過酷な日々を今日だけは忘れていい。うう、修行というワードがトラウマになってしまった。パパが宝石商だから、私はかなりの箱入り娘な自覚はある。だからあんな過酷な体験は初めてだった。

 

「どうしたの?大丈夫?」

「あ、うん……私は大丈夫」

 

 ちょっとふらついてしまった私を、柊柚子が助け起こしてくれる。その時に彼女の瞳が見えた。……彼女はどうやら、迷いを吹っ切ったらしい。あのデュエルの時に瞳に見えた迷いが消えているのがわかる。

 

「あなたも、迷いは吹っ切れたみたいね」

「あ、うん。あなたを倒すまで、彼のことは忘れるって決めたの」

 

 目標は私か。まあ、あのデュエルがあったから理解はできるけど、最近の自分の情けなさを考えるとなんだか気恥ずかしい。最近は私より強いデュエリストが、それこそ身近にもいるってことを知って――

 

 ん?彼?

 

「彼って?」

「あ……その……つまり、あの遊矢に似た彼のことよ。何故だかわからないけど、ずっと頭に残って離れなくって……。私にも何で気になるのかよくわからないけど。遊矢に似てるからなのかしら」

 

 彼女の瞳がくすんでたのも、黒マスクの男のせいだったのか。だけど、ヤツの居場所に繋がる情報でもないし……。いや、待て、本当にそれでいいのか。些細なことでもいいと言ったのは私だ。そしてこれはカオリも聞き逃している情報かもしれない。

 

 でも柊柚子が気になってるからなんだっていうんだろう。

 

「まあ、その……もし何かわかったら、私でもカオリでもいいから、教えてほしい」

「わかったわ」

「それじゃあ……邪魔をして悪かったわね。また舞網チャンピオンシップで会いましょう」

「ちょっと待って」

 

 ん?何?紫雲院素良が私に用事というのは……ちょっとわからないな。彼のことはあまり知らないし。

 

「さっき柚子は実戦で磨き上げるって言ってたでしょ?だから折角だし、デュエルしてみたら?」

「ええっ!?」

 

 ……柊柚子は私を倒すために修行してるんじゃなかったの?私を倒すための修行として私とデュエルって、何か本末転倒な気がするんだけど。いや、でも目標の高さを知るのは悪い事じゃないと、最近学んだ。

 

「……わかったわ」

「ちょ、ちょっと」

「ほらほら、早くデュエルディスクを構えて。僕が教えたんだから、LDSの融合召喚ぐらいちゃちゃっと超えてもらわないと僕の立つ瀬がないよ」

「何!?」

「素良!そういう言い方は……」

 

 思いっきり言い返してやりたいところだけど、カオリが独学で覚えた融合召喚に翻弄されてしまった経験があるせいで強く言い返せない。私のデッキだと戦闘破壊不可でモンスター効果無効(ワイアーム)が全然突破できない……。

 

「ううっ……。LDSの……、いや、マルコ先生に教わった融合召喚を見せてやる!」

 

 辛うじて口に出せたのはそんな台詞だった。その時――

 

「お前もLDSか?」

「「「!?」」」

 

 どこから声が……うっ!?

 

「きゃあっ!」

「LDSなら俺が相手だ」

 

 どこからともなく現れ、柊柚子を突き飛ばしたこの男……。まさか……。

 

「お、お前が連続襲撃事件の犯人……」

「さあ、来い。俺とデュエルだ!」

 

 まずい。今の私はまだカオリに刃たちと三体一で勝てないような実力。講師を倒す実力の相手に一人で挑むのは無謀すぎる。

 

「やめろ、隼!これ以上無茶なことはするな!」

 

 今度は誰だ!?……ああっ、黒マスクの男!

 

「ユート!」

「この前も言ったはずだ。ここは俺たちの戦場じゃない。彼らは我々の敵ではないと」

「ここは俺の戦場だ。瑠璃を取り戻すにはこうするしかない。邪魔立てするなら貴様も倒す」

 

 仲間割れか?黒マスクの男――ユートとかいうヤツは連続襲撃事件の犯人をむしろ止めようとしている。とにかく、今の内に助けを呼ぼう。デュエルディスクの連絡機能でカオリに連絡を取る。

 

「カオリ、襲撃犯がいた!」

「待って。彼が本当に襲撃犯かまだ……」

「瑠璃!」

「え?」

 

 今度は何!?

 

「何故瑠璃がここに?自力で脱出を?」

「えぇ?」

「瑠璃!」

 

 まずい、なんだかわからないが今度は柊柚子が襲われている!現れた時の動きから身体能力にも長けていると思われる襲撃犯だけど、柚子に気を取られている今、背後からの攻撃を防ぐことはできないはず。

 

 今こそ修行で鍛えた成果を見せる時!一か八か、カオリから念のために教わっていた当身だ!

 

「ぐっ……瑠璃……」

「彼女は瑠璃では――なっ!?」

「ふっ!って、ちょっと――」

 

 ユートとかいうやつが正面から当身を食らわせたせいで計算が狂った。三人でまとめて倒れ込む。

 

「ますみん!」

 

 あっ、カオリ!

 

「あっ」

「きゃあっ!?」

 

 うっ、何だ、今度は柊柚子のブレスレットが!?

 

◆ ◆ ◆

 

 光が収まると……ここは、舞網市の外れの方か?

 

「……またか」

 

 うっ、ユートと襲撃犯。幸い襲撃犯は先の私たちの一撃で気絶しているようだけど……。

 

「一体何が起きたんだ……」

「それは俺にもわからない。彼女の側にいると偶に起こる。彼女のブレスレットが光り、俺だけが別の場所に飛ばされてしまうことが。今回は隼や君も巻き込んでしまったようだが」

 

 私はその現象だけじゃなくて一連の流れ全体について言ってるんだけど。

 

「迷惑をかけたな」

「ま、待て!」

「……何か用か?」

 

 引き留めたのはいい。だけど、いくらユートという男にこちらに攻撃する意思がなくても、引き渡しには応じてくれないだろう。電波状況も悪くて助けも呼べない。だとすれば……取り敢えず私にできるのは二、三個の質問をすることくらいか。

 

「その男が、マルコ先生を……LDSの講師を襲っているのか?」

「……そのはずだ」

 

 やっぱりそうなのか。

 

「マルコ先生はどこにいる?」

「……すまない、その質問には答えられない」

「……そうか。あとは……リンという少女を知っているか?」

「心当たりはない」

 

 今、聞けることはこれくらいか。後は――

 

「その男に伝えて。マルコ先生の仇は、私が……私たちが必ず取ると」

「……わかった」

 

 今は見送るしかない。だけど相手がはっきりした分、大きく前進した。あとは、私が実力をつけるだけだ。首を洗って待っていろ!



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第十六話 再会・再戦

申し訳ありません。黒薔薇の魔女の効果に誤りがあったので、展開を修正しました。

デュエルの内容が少し変わっただけで、前に投降したものとあまり変わっていません。

2018/11/15追記 以下に削除前と同様の内容を追記します。修正後に書き忘れていました。

今回は関係ないですが、各話においてアクションデュエルでフィールド魔法が使えないかのような表現を削除しました。これからはアクションデュエル中にフィールド魔法を使っていくこともあると思いますが、ご了承下さい。
 仕様としては、フィールド魔法を発動するとアクションフィールドは一旦退避(アクションカードを使える効果は残る、墓地には送られない)、フィールド魔法が破壊されるとアクションフィールドが戻ってくる、という形にしたいと思います。


 連続襲撃犯がようやく確定した。結局、黒ゆうやんも仲間ではあったけど本人ではなかったらしい。

 

 そして今、襲撃犯をおびき出すための作戦中。襲撃犯の顔を知ってるますみんが街を練り歩いて襲撃犯をおびき出し、いつもの三人+私でフルボッコにする作戦……だったのだけど……。

 

「君を行かせるわけにはいかない」

 

 黒ゆうやんの登場だ。ますみんの話では、確か名前はユートだったか。

 

「聞いた話ではあなたはLDSの襲撃には反対だったらしいけど、違ったのかな?」

「……」

「まあ、そもそも私との出会いは友好的とは言い難い感じだったしね」

「一つ、聞きたいことがある」

 

 おい、会話しろよ。

 

「君は、本当にこの次元のデュエリストなのか?」

「はい?」

 

 そうだけど……あっ、私が転生者だってことを疑ってるのか!?……いやいやいや、普通に考えてそれはないか。流石に突拍子なさすぎるし。

 

 まあ、でも私のデュエルの癖みたいなものに違和感を持たれたのかも。なるべくこっちに合わせてデュエルしてるつもりだけど、前世のデュエルの記憶と癖は中々抜けないし。何にしろ、答えは決まってるね。

 

「いや、普通にここ出身だけど?」

「……なるほど、別の次元があることは知っているわけか」

 

 あう、やっちまった。自分の特殊な生い立ちを知られたのかもと思って、ちょっと冷静じゃなかったかな。

 

「私からも二つほど聞かせてもらうよ。あなたたちは融合の方に味方してるの?それとも――」

「俺たちがヤツらの味方などという事は、決してあり得ない!!」

「……ほーん」

 

 なるほど、なるほどね。うーん、じゃああんまり争う意味なさそうだな、私たち。私たちも融合が敵なんだけど。

 

「もう一つ。ますみんが少し聞いたらしいけど……リンっていう少女がシンクロ次元から攫われたらしい。……あなたと同じ顔の男にね」

「……俺はリンという少女は知らないし、シンクロ次元に行ったこともない。だが、俺と同じ顔の男なら知っている」

 

 ふーむ、やっぱり外れか。まあ、融合次元が元凶っぽいな。そして彼の言う同じ顔の男っていうのは、融合次元の――

 

「バイクに乗った、融合次元の手先だ」

「ああ、そっちか……」

 

 そういやユーゴっちもユートを疑ってたんだった。融合のゆうやんの情報が得られるかと思ったのに。

 

「そっち?」

「いや……彼はむしろ探してる側だよ。あー、お互いに勘違いしてたのか」

「どういうこと……いや、そうか。俺たちを誘拐犯だと思っていたのか」

「まあ、そうだね。次に会ったら誤解を解いてあげるといいよ。この次元出身のゆうやんは他の次元があることすら知らないし、消去法で犯人はわかるからね。共闘できるだろうし」

「それは……つまり、その誘拐犯も融合次元の手の者というわけか」

「たぶんね。まあ、同じ次元にそっくりさんがまだいる可能性もなくはないけど……同じ顔の男がこことエクシーズ、シンクロ次元にいて融合次元にだけいないってことはないよね」

 

 俺は儀式次元の何某だ、とか言い出さない限りは。

 

「そしてそれを教える君も……君たちも、敵ではないと言いたいのか?」

「そんなとこだね」

「いずれにせよ、こちらにはそれを信じる根拠がない」

「だろうね。でも私もますみんたちがカードにされるのを見過ごすつもりはないし」

 

 争う理由はないんだけど、信じさせる方法がないからね。というか、少しのんびり話しすぎたかもしれない。勘だけど、ますみんたちにはまだ襲撃犯の相手は荷が重い気がする。まだ負けてないとは信じてるし、零児君が後詰めを手配してるはずだけど。取り敢えず今は説得している時間が惜しい。押し通るしかあるまい。

 

「「デュエル!」」

 

 カオリ LP 4000

 ユート LP 4000

 

「先攻はもらう。俺はカードを五枚セットして、ターンエンド」

「前と同じかぁ……。だけど、私は前とは違うよ。私のターン!手札からホワイトローズ・ドラゴンを召喚。効果発動!手札・墓地のローズ・ドラゴンを特殊召喚できる。手札からチューナーモンスター、レッドローズ・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 ホワイトローズ・ドラゴン レベル4 ATK 1200

 レッドローズ・ドラゴン レベル3 DEF 1800

 

「チューナー……来るか」

「レベル4のホワイトローズ・ドラゴンに、レベル3のレッドローズ・ドラゴンをチューニング!冷たい炎が世界の全てを包み込む。漆黒の花よ、開け!シンクロ召喚!現れよ、レベル7、ブラック・ローズ・ドラゴン!」

 

 ブラック・ローズ・ドラゴン レベル7 ATK 2400

 

「ブラック・ローズ・ドラゴンの特殊効果!シンクロ召喚成功時にフィールドの全てのカードを破壊する!」

「!!」

「それにチェーンしてホワイトローズとレッドローズの効果も発動。ホワイトローズはシンクロ素材になった時、デッキからレベル4以上の植物族を墓地に送る」

 

 レベル4以上だと墓地アドバンテージを得られるのはにん人くらいだけど、レッドローズとそれにより呼び出すブルーローズのことを考えれば呼びたい強力な植物族を墓地に送る効果って考えられる。というかそういう風にデザインされたカードだね。

 

「レッドローズはシンクロ素材になった時、手札・デッキからローズ・ドラゴンを特殊召喚できる。さらにブラック・ローズ・ドラゴンか植物族のシンクロ素材になった時、特定のカードの中から一枚を手札に加えられる」

 

 ここは一気に攻め込む!

 

「さらに手札から速攻魔法、冷薔薇の抱香(フローズン・ロアーズ)を発動!自分の場の表側表示モンスターを墓地に送って、その種族によって異なる効果を発動する」

「破壊の確定しているブラック・ローズをコストにする、というわけか」

「そういうこと。私はブラック・ローズを墓地に送り、植物族以外を墓地に送った時の効果を発動。デッキからレベル4以下の植物族を手札に加える」

 

 でも、ただで全部破壊されるなんてことはなさそうだね。

 

「ならばそれにチェーンして罠カード、幻影騎士団(ファントムナイツ)ダーク・ガントレット二枚と幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズを発動」

 

 !!やっぱり発動したか。確かロスト・ヴァンブレイズはモンスターになり、弱体化と戦闘破壊耐性の付与ができる。今の状況で意味があるのは耐性付与か……。ブラック・ローズでリセットしちゃうから場には残らないし。ダーク・ガントレットとやらが効果破壊耐性を付与しなければの話だけど。

 

「ダーク・ガントレットはデッキからファントム魔法・罠カードを一枚墓地へ送る。俺は幻影死槍(ファントム・デススピア)二枚を墓地へ。ロスト・ヴァンブレイズは相手の攻撃力を600下げ、モンスターとして特殊召喚される。さらに、ロスト・ヴァンブレイズの効果でこのターン、幻影騎士団は戦闘で破壊されない!」

 

 幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ レベル2 ATK 600

 ブラック・ローズ・ドラゴン ATK 2400 → 1800

 

「冷薔薇の抱香の効果で薔薇の妖精を手札に加える。そしてレッドローズの効果でデッキからブルーローズ・ドラゴンを特殊召喚して漆黒の薔薇の開華(ブルーミング・ローズ)を手札に加え、ホワイトローズの効果でアロマージ―ベルガモットを墓地へ送る」

 

 ブルーローズ・ドラゴン レベル4 DEF 1200

 

「最後にブラックローズの効果を処理。ブラック・ローズ・ガイル!」

「……」

 

 伏せを全て破壊されても動じない。墓地発動のカードがあるな。ヴァンブレイズの効果を考えると、たぶんモンスターを呼ぶやつ。っていうか送ったのかな?だけど、こっちも破壊だけじゃ終わらないよ。

 

「手札に加えた薔薇の妖精と破壊されたブルーローズの効果。薔薇の妖精はカード効果で手札に加わった時、特殊召喚できる。ブルーローズは破壊された時、墓地から植物族かブラック・ローズを特殊召喚する。薔薇の妖精とベルガモットを特殊召喚!」

 

 薔薇の妖精 レベル3 ATK 600

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

「さらにフィールド魔法、アロマガーデンを発動!その効果で、場にアロマがいる時ライフを500回復し、相手ターン終了時まで自分フィールドのモンスターのステータスを500アップ!さらにベルガモットはライフが回復した時、相手ターン終了時まで攻撃力を1000ポイント強化する!」

 

 カオリ LP 4000 → 4500

 アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 2900 → 3900

 薔薇の妖精 ATK 600 → 1100

 

「さらに永続魔法、補給部隊を発動。一ターンに一度、自軍のモンスターが破壊された時にカードを一枚ドローする。そしてバトル!ベルガモットでダイレクトアタック!」

「墓地のダーク・ガントレット二体の効果発動。直接攻撃に対して墓地のこのカードをモンスターとして特殊召喚できる。そしてダーク・ガントレットは墓地のファントム魔法・罠のカードの数×300ポイント守備力をアップする」

 

 幻影騎士団ダーク・ガントレット レベル4 DEF 600 → 2100

 幻影騎士団ダーク・ガントレット レベル4 DEF 600 → 2100

 

 やっぱり来たか。だけど墓地に送ったカードじゃなくて、そっちの効果か。

 自分で墓地を肥やして自己強化につなげる……そして墓地に送ったカードはおそらく墓地発動効果持ち。ヴァンブレイズで耐性も付与してるから、次のターンで素材になれる。実に無駄がない効果と戦法だね。だけど――

 

「攻撃は続行!さらに自分の方がライフが多いため、ベルガモットの効果で自軍の植物族は貫通効果を得ている!」

「くっ……!ロスト・ヴァンブレイズの効果で破壊はされない!」

 

 ユート LP 4000 → 2200

 

「バトルを終了するよ。そして魔法カード、フレグランス・ストームを発動。場の植物族を破壊してドローする。それが植物族なら互いに確認し、さらにドロー出来る。薔薇の妖精を破壊してドロー!」

 

 引いたのは――

 

「植物族のフラボット。よってさらにドロー!補給部隊でもう一枚ドロー!カードを三枚セットしてターンエンド!」

「俺のターン!俺はレベル4の幻影騎士団ダーク・ガントレット二体でオーバーレイ!漆黒なる闇より、愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!今降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 ATK 2500

 

「来たか……!」

「ダーク・リベリオンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、相手のレベル5以上のモンスター一体の攻撃力の半分を吸収する!トリーズン・ディスチャージ!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 3900 → 1950

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK 2500 → 4450

 

「もう一度効果を発動!トリーズン・ディスチャージ!」

 

 アロマージ―ベルガモット ATK 1950 → 975

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK 4450 → 5425

 

「バトルだ!」

「それなら罠発動、漆黒の薔薇の開華!互いの場と墓地のフィールド魔法の数だけトークンを呼び出す。私は自分の場に――」

「そうはさせない!墓地の幻影騎士団トゥーム・シールドの効果発動!このカードを除外して、相手の表側表示の罠の効果をターン終了時まで無効にする!」

「うっ!」

 

 まずい、守備表示のトークンを出して漆黒の薔薇の開華の墓地発動効果でベルガモットを一時退避してやり過ごすつもりが……。

 

「なら永続罠、渇きの風を発動!自分のライフが回復した時、相手モンスター一体を破壊できる!」

 

 これでアロマガーデンとのコンボでダーク・リベリオンを破壊できる。アロマガーデンは自分のアロマが破壊された時に回復できる効果があるから――

 

「この瞬間を待っていた!相手の罠カードが発動した時、墓地の幻影死槍を除外して効果発動!」

「!?」

「相手の罠の発動を無効にし、破壊して相手に100のダメージを与える!」

「うっ!?」

 

 カオリ LP 4500 → 4400

 

 やばい、しくじった。この攻撃を通したら私が受けるダメージは4450。つまり、今のでこの攻撃は絶対通せなくなった!しかも、もう一枚幻影死槍は残っている。つまり、もう罠は使えない!

 

「行け、ダーク・リベリオン!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

「私は速攻魔法、ライバル・アライバルを発動!手札からモンスターを召喚する!」

 

 フラボット レベル3 ATK 1500 → 2000

 

「もう一枚の伏せは魔法だったか……」

 

 くう、召喚であって通常召喚じゃないから、セットはできない。

 

「そしてベルガモットを除外して墓地の漆黒の薔薇の開華の効果を発動!このカードをデッキボトムに戻す!」

 

 墓地から発動する効果は罠カードの発動に含まれない。魔法・罠の発動とはカードを表側表示で場に出す、あるいは伏せたカードを表側表示にすることだからね。つまり幻影死槍に防がれない。

 

「だが、攻撃は続行だ!」

「ぐっ……!」

 

 カオリ LP 4400 → 975

 

「仕留めきれなかったか……」

「くっ…‥ぐう、あ……ああああああ!!」

 

 頭が痛い……うう、何だコレ……。

 

「……大丈夫か?尋常じゃない様子だが……」

「……こそ……とつに」

 

 頭の中で声が響く。知っているような、知らないような声。つられて私も呟いてしまう。なんて言ってるんだ?

 

 その声に合わせて、ダーク・リベリオンが咆哮を上げる。

 

「ダーク・リベリオン?一体何が……」

 

 そうだ、ますみんたちを助けに行かないと。そのためには早くデュエルを終わらせなくちゃ。早く、早く……。

 

「私はフラボットと補給部隊の効果発動。補給部隊の効果でドロー。さらにフラボットの効果でデッキからカードをドローし、手札一枚をデッキトップに戻す」

「聞こえてるか?」

「……ターンを……進めろ……」

「本当に大丈夫か?」

「くどい!」

 

 早く、早く勝利を!

 

「雰囲気が……二重人格か?いや、それにしては……。何にしても、今はデュエルを進めるしかないか。俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!漆黒の薔薇の開華で除外されたモンスターは次のスタンバイフェイズに特殊召喚される」

 

 アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400

 

 ベルガモットがいればダーク・リベリオンは倒せる。だけど、足りない。ライフを削りきるには――

 

「手札から、星呼びの天儀台(セレスティアル・セクスタント)を発動。手札か場からレベル6のモンスターをデッキボトムに戻し、二枚ドローする」

 

 手札にはさっき引いたローンファイアがいる。多少無理をして失敗しても何とかなる。だから、勝利のために突き進む!

 

「場のベルガモットを戻し、ドロー!……魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動。手札のモンスターを墓地に送り、デッキからレベル1のモンスターを呼び出す。ダンディライオンを墓地に送り、スポーアを特殊召喚!」

 

 スポーア レベル1 DEF 800

 

「ダンディライオンの効果。墓地に送られた時、綿毛トークンを生み出す」

 

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 綿毛トークン レベル1 DEF 0

 

「レベル1の綿毛トークンにレベル1のスポーアをチューニング!集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚!レベル2、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 フォーミュラ・シンクロン レベル2 DEF 1500

 

「シンクロチューナーだと!?」

「フォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚成功時、その効果で一枚ドローできる!そして墓地のスポーアの効果発動。墓地の植物族を除外し、そのレベルを自身のレベルに加えて復活する!レベル3のフラボットを除外して特殊召喚!」

 

 スポーア レベル1 → 4 DEF 800

 

「レベル1の綿毛トークンにレベル4となったスポーアをチューニング!昏き花園から荊を手繰り、漆黒の憎悪を呼び覚ませ!シンクロ召喚!目覚めよ、レベル5、ガーデン・ローズ・メイデン!」

 

 ガーデン・ローズ・メイデン レベル5 DEF 2400

 

「ガーデン・ローズ・メイデンの効果。特殊召喚成功時、デッキ・墓地からブラック・ガーデンを手札に加える。さらに魔法カード、貪欲な壺を発動。墓地のモンスター5体をデッキに戻し、カードを二枚ドローする。レッド、ブルー、ホワイトのローズ・ドラゴンと黒薔薇の魔女、ダンディライオンをデッキに戻し、ドロー!」

「連続シンクロ……しかも片方がチューナーということは……」

「レベル5のガーデン・ローズ・メイデンにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!天より舞い降りし、生命の化身!シンクロ召喚!命を照らせ、レベル7、エンシェント・ホーリー・ワイバーン!」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン レベル7 ATK 2100

 

「ホーリー・ワイバーンはライフ差の分、攻撃力を増減する」

 

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 2100 → 875

 

「ライフが低い時にホーリー・ワイバーンだと……?」

「まだだ。墓地のガーデン・ローズ・メイデンの効果発動。自身を除外し、ローズ・ドラゴンかドラゴン族シンクロモンスターを復活させる。蘇れ、ブラック・ローズ・ドラゴン!」

 

 ブラック・ローズ・ドラゴン レベル7 ATK 2400

 

「ブラック・ローズを復活させるためにシンクロしたのか……!」

「さらに手札からローンファイアを召喚!」

 

 ローンファイア・ブロッサム レベル3 ATK 500

 

「ローンファイアは場の植物族をリリースしてデッキから植物族を呼び出す。ローンファイア自身をリリースし、アロマージ―ローズマリーを特殊召喚!」

 

 アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800

 

「アロマガーデンの効果発動!ライフを回復し、ステータスをアップ!ホーリー・ワイバーンは自身の効果でさらに攻撃力を上昇!」

 

 カオリ LP 975 → 1475

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 875 → 1375 → 1875

 ブラック・ローズ・ドラゴン ATK 2400 → 2900

 アロマージ―ローズマリー ATK 1800 → 2300

 

「そしてライフが回復したことで、ローズマリーの効果発動!表側表示のモンスターの表示形式を変更する!ダーク・リベリオンを守備表示に!」

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK 2500 → DEF 2000

 

「さらに墓地のローンファイアを除外してブラック・ローズのもう一つの効果を発動!相手の守備モンスターを攻撃表示に変え、攻撃力を0にする!」

「何!?」

「ローズ・リストリクション!」

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン DEF 2000 → ATK 2500 → 0

 

「ダーク・リベリオン……!」

「バトル!ブラック・ローズでダーク・リベリオンに攻撃!ブラック・ローズ・フレア!」

「そうはいかない!リバースカードオープン!速攻魔法、幻影騎士団(ファントムナイツ)円卓裂破(アラウンドバーン )!墓地の幻影騎士団二枚を除外して場のモンスターを全て破壊し、バトルを終了させる!幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ二枚を除外!」

「チェーンして速攻魔法、神秘の中華鍋を発動!場のモンスターをリリースして、高い方のステータスの数値分、ライフを回復する!ブラック・ローズをリリース!」

 

 カオリ LP 1475 → 4375

 エンシェント・ホーリー・ワイバーン ATK 1875 → 4775

 

「仕留めきれなかったか……!だが、円卓裂破でモンスターは全て破壊!そして互いのプレイヤーはバトルフェイズ中に墓地に送られたそれぞれのモンスターの数×800のダメージを受ける!ぐっ……!」

「くっ……!」

 

 カオリ LP 4375 → 1975

 ユート LP 2200 → 1400

 

「この瞬間、手札の森の精霊 エーコの効果発動!相手のカード効果でダメージを受けた時、このカードを特殊召喚し、受けたダメージを相手に与える!」

「しまった!対策されていたか!」

 

 森の精霊 エーコ レベル4 DEF 1000

 

「ぐはっ……!」

 

 ユート LP 1400 → 0

 

 勝った!私の勝ちだ!……いや、違う。そうじゃない。私はますみんたちを助けに行くために……。

 

「うっ……くっ」

 

 頭痛……頭痛だ。前にユーゴと戦った時もそうだった。どうして忘れてたんだろう。前よりずっと酷くなっている。最初は、確か遊矢と戦った時。

 違う、今はそんなことを考えてる場合じゃない。

 

「……真澄……」

 

 そこで私の意識は途切れた。




(以下、前の投稿と同様)

というわけで、新切り札はブラック・ローズ・ドラゴンになりました。

ご意見をくださった方々、本当にありがとうございました。


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第十七話 鉄の意思 前編

(いつものごとく)お待たせしました。初の主人公以外のデュエル回です。

アニメキャラはアニメで使用したカードやその関連カードしか使わないと言いましたが……すいません、どうにもLDS三人組は各テーマだけでは防御札が足りなかったりしてデュエル構成がうまくいかなかったので、汎用魔法・罠を使わせてください。アニメでも刃がメテオレイン使ってるし……修行とかカオリのアドバイスによるものということでここはひとつ、ご容赦ください。


「……一人か?あの時のガキと女はどうした?」

「知らないわ」

 

 連続襲撃犯が現れた。ついにこの時がやって来た。

 

「ずっと黒マスクの男だと思ってた。マルコ先生を襲った犯人は……。マルコ先生をどうした!?」

「マルコ?」

「私に融合召喚を教えてくれた、LDSの講師の名前よ!」

「アイツか……。フン、大した腕じゃなかったな。実戦経験のなさが露骨に現れた、哀れなほど薄っぺらな……」

「黙れ!マルコ先生は私の恩師。侮辱は許さない!」

「マルコだけではない。LDSでは誰もが薄っぺらだった。ヤツらのデュエルには鉄の意思も鋼の強さも感じられなかった」

 

 コイツ……。

 

「それじゃあ、他の事件もみんな――」

「俺がやった。許さないというのなら、俺を倒して恨みを晴らせ!」

 

 会話しているだけで怒りがこみあげてくる。だけど、連続襲撃犯はLDS講師を何人も下している。つまり、格上の相手だ。これまでの修行の日々で確実に私は強くなったけど、黒マスクの男――ユートとカオリが同程度の実力者で、目の前のこの男がそれと同程度の実力なら、明らかに私一人で勝てる相手じゃない。

 

 だからこそ、修行ではチームワークに重点を置いた。

 

「北斗、刃、カオリ!早く来て!」

「仲間を呼んだか……」

 

 くっ、予想はしてたけどカオリが通信に出ない。

 

「カオリは黒マスクの男が相手をしてるってわけね……」

「ユート……あいつ勝手に……いや、まあいい」

 

 ん?この様子だと、話し合って決めたわけじゃないみたいね。黒マスクの男が黙ってカオリの足止めに向かったって感じか。まあ、元々LDS襲撃もこの男の独断だったみたいだから、今更不思議もないけど。

 

「でもカオリだけじゃないわ。あんたのことはもうLDS中に知れ渡ってる。あんたの顔を知ってる私が街を練り歩き、あんたが現れるのを待っていた。つまり、あんたは罠にかかったって事よ!」

「その通り!」

 

 北斗の声。それにもう一つの足音もする。修行中によく聞いた、仲間の足音。

 

「安心しろ、真澄。マルコ先生の仇は僕らが必ず討たせてやる」

「トップチームが来る前に片を付けちまおうぜ。襲撃犯をとっつかまえれば、俺たちのチャンスも広がるってもんだ」

「刃、北斗……」

 

 一人で居ると感じる不安も、この二人といるとどこかに吹っ飛んでいく。修行を通じて、私たちは実力を上げただけじゃなく、絆も深まった。絆が私に勇気を与えてくれる。

 

「バトルロイヤルルールでいこう。全員一ターン目はドローなし、バトルなしだ」

 

 刃がルールを提案する。修行中、最も私たちのコンビネーションを発揮できたルールね。

 

「いいだろう。仲間ともども片付けてやる」

 

 襲撃犯の威圧感が増す。この凄み……これが"実戦"を経験している人間の迫力か。気圧されちゃだめだ。気合を入れなきゃ!

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 真澄 LP 4000

 北斗 LP 4000

 刃 LP 4000

 黒咲 LP 4000

 

 デュエルディスクは私にターンの順番を決定する権利があることを示してる。よし、私が先手を取れた。

 

「私のターン!永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動!デッキのモンスターを素材に、融合召喚を行う!」

「融合……」

「デッキのジェムナイト・サフィアとジェムナイト・ラズリーを融合!堅牢なる蒼き意志よ。碧き秘石と一つとなりて、新たな光を生み出さん!融合召喚!現れよ、高貴なる騎士!レベル7、ジェムナイト・アメジス!」

 

 ジェムナイト・アメジス レベル7 ATK 1950 → 0

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃力・守備力が0になる。そして墓地に送られたジェムナイト・ラズリーの効果発動。墓地の通常モンスターを手札に加える。サフィアを手札に!」

「なるほど……わかったよ、真澄。その手で行くんだね」

「へへっ、目にもの見せてやるぜ!」

「後は任せるわ。私はこれでターンエンド!」

「俺のターン!俺は手札からRR(レイドラプターズ)―バニシング・レイニアスを召喚!」

 

 RR―バニシング・レイニアス レベル4 ATK 1300

 

 RR……それがこの男の使うモンスターね。何が得意なモンスターなのか、見極めないと。

 

「このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに一度、手札から同名カードを特殊召喚できる。二体目のバニシング・レイニアスを特殊召喚!」

 

 RR-バニシング・レイニアス レベル4 ATK 1300

 

「さらに永続魔法、RR―ネストを発動。同名のRRが二体場に揃っている時、デッキからその同名カードを手札に加える。そして二体目のバニシング・レイニアスの効果で三体目を特殊召喚!」

 

 RR-バニシング・レイニアス レベル4 ATK 1300

 

 これは……展開が得意なテーマか。エクシーズのための展開力ってわけね。

 

「手札から魔法カード、RR―サンクチュアリーを発動。場にRRが三体いる時、カードを二枚ドローする。俺はカードを二枚セットしてターンエンド」

 

 !?エクシーズせずにターンを終えた……?舐めているのか……いや、何かあると考えて動いた方がいいわね。でも、既に布石は打ってあるわ。頼んだわよ、北斗!

 

「次は僕のターンだ。まずはセイクリッド・シェアトの効果発動。相手フィールドにだけモンスターがいる時、手札から特殊召喚できる」

 

 セイクリッド・シェアト レベル1 DEF 1600

 

「さらにセイクリッド・レオニスを召喚」

 

 セイクリッド・レオニス レベル3 ATK 1000

 

「レオニスの効果で僕はもう一度セイクリッドを通常召喚できる。来い、セイクリッド・グレディ!」

 

 セイクリッド・グレディ レベル4 ATK 1600

 

「さらにグレディが召喚に成功した時、レベル4のセイクリッドを手札から特殊召喚できる!セイクリッド・カウストを特殊召喚!」

 

 セイクリッド・カウスト レベル4 ATK 1800

 

「カウストの効果。一ターンに二回まで、セイクリッドのレベルを上下させられる。カウスト自身とレオニスのレベルをアップ!」

 

 セイクリッド・カウスト レベル4 → 5

 セイクリッド・レオニス レベル3 → 4

 

「僕はレベル4のレオニスとグレディでオーバーレイ!聖なる光とともに駆け抜けよ!エクシーズ召喚!ランク4、セイクリッド・オメガ!」

 

 セイクリッド・オメガ ランク4 ATK 2400

 

 セイクリッド・オメガは魔法・罠への耐性を自分フィールドのセイクリッドに付与できるモンスター。これで北斗はあいつの伏せカードを警戒せずに動ける。

 

「まだだ!シェアトの効果!他のセイクリッドと同じレベルになる!カウストと同じレベル5に!」

 

 セイクリッド・シェアト レベル1 → 5

 

「レベル5のカウストとシェアトでオーバーレイ!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5、セイクリッド・プレアデス!」

 

 セイクリッド・プレアデス ランク5 ATK 2500

 

 来た!北斗のエースモンスター!そしてこれで――

 

「僕はオメガのオーバーレイ・ユニットを一つ取り除いて、効果発動!このターン、自分のセイクリッドは魔法・罠の効果を受けない!これでカウンター罠も無力化した!さらに僕はプレアデスの効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、フィールドのカード一枚を持ち主の手札に戻す。僕はブリリアント・フュージョンを手札に戻す!真澄!」

「ブリリアント・フュージョンがフィールドを離れた時、このカードで融合召喚したモンスターは破壊される!そして破壊されたアメジスの効果!フィールドから墓地へ送られた時、フィールドの全てのセットされた魔法・罠を手札に戻す!」

「……」

 

 よし!これで伏せは除去できた!しかもブリリアント・フュージョンも回収して、使い回せる!

 

「そして手札から永続魔法、セイクリッド・テンペストを発動。自分の場にセイクリッドが二体以上いる時、効果を発動できる。このターンのエンドフェイズに、相手のライフを半分にする!僕はこれでターンエンド」

「……」

 

 黒咲 LP 4000 → 2000

 

 さらにライフ半減!最高の流れね!

 

「刃!仕上げは任せたよ!」

「ああ、任せろ!俺のターン!俺は手札から魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動!手札からモンスターを一枚捨てて、レベル1のモンスターをデッキから特殊召喚する!手札のX―セイバー パロムロを捨てて、XX―セイバー レイジグラを特殊召喚!」

 

 XX―セイバー レイジグラ レベル1 ATK 200

 

「レイジグラの効果発動!特殊召喚された時、墓地のX―セイバー一体を手札に戻す!パロムロを手札に戻して、召喚だ!」

 

 X―セイバー パロムロ レベル1 ATL 200

 

「そして場にX―セイバーが二体以上いる時、手札からXX―セイバーフォルトロールを特殊召喚できる!フォルトロールを二体特殊召喚!」

 

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

「そして手札から魔法カード、セイバー・スラッシュを発動!攻撃表示のX―セイバーの数だけ、表側表示のカードを破壊する!俺の場のX―セイバーは4体!RR―ネストとバニシング・レイニアスは全て破壊だ!」

「……」

「これでお前のフィールドは更地だな!だが、それだけじゃ終わらねえぜ!お前には最大級の禁じ手を使ってやる!レベル6のフォルトロールにレベル1のパロムロをチューニング!光差する刃持ち、屍の山を踏み越えろ!シンクロ召喚!出でよ、レベル7、X―セイバー ソウザ!」

 

 X―セイバー ソウザ レベル7 ATK 2500

 

「さらにフォルトロールの効果発動。墓地のレベル4以下のX―セイバーを復活させる!パロムロを特殊召喚!」

 

 X―セイバー パロムロ レベル1 ATL 200

 

「北斗、頼むぜ!」

「ああ!プレアデスのオーバーレイ・ユニットを取り除いて、フォルトロールを手札に戻す!」

「そのままフォルトロールをもう一度特殊召喚!これでもう一回効果が使えるぜ!」

 

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

「レベル1のレイジグラとレベル7のソウザに、レベル1のパロムロをチューニング!白銀の鎧輝かせ、刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよ、レベル9、XX―セイバー ガトムズ!」

 

 XX―セイバー ガトムズ レベル9 ATK 3100

 

「ここでフォルトロールの効果発動!墓地のレイジグラを特殊召喚!」

 

 XX―セイバー レイジグラ レベル1 DEF 1000

 

「レイジグラの効果で墓地のフォルトロールを手札に加え、特殊召喚!」

 

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

「そしてガトムズの効果!X―セイバーをリリースして、相手の手札を一枚捨てさせる!レイジグラと効果を使い終わったフォルトロールをリリース!手札二枚を捨ててもらうぜ!」

「俺は墓地に送られたRR―ファジー・レイニアスの効果発動。同名カードをデッキから手札に加える」

「無駄だ!フォルトロールの効果で墓地のレイジグラを特殊召喚!フォルトロールを手札に加えて、特殊召喚!」

 

 XX―セイバー レイジグラ レベル1 DEF 1000

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

 X―セイバーの極悪コンボ、無限ハンデス。いくら手札を増やしても、あのコンボの前では無意味ね。対戦では想像したくもないけど……今は最高に頼もしい。

 

「効果を使い終わったフォルトロールとレイジグラをリリースして、手札を捨てさせる!」

「ファジー・レイニアスの効果で、最後の一枚を手札に」

「無駄だって言っただろ!フォルトロールの効果でレイジグラを蘇生!フォルトロールを回収して、特殊召喚!」

 

 XX―セイバー レイジグラ レベル1 DEF 1000

 XX―セイバー フォルトロール レベル6 ATK 2400

 

「レイジグラをリリース!最後のファジー・レイニアスも墓地に行ってもらうぜ!」

「……」

 

 やった!これであいつの手札は0!

 

「おまけだ!フォルトロールでレイジグラを蘇生!パロムロを手札に!」

 

 XX―セイバー レイジグラ レベル1 DEF 1000

 

「見たか!俺はこれでターンエンドだ!」

「これが地獄の修行の成果だ!」

 

 ……マルコ先生のためとはいえ、あの修業は本当に地獄だったわ。何度か本気で死ぬかと思ったくらい、きつかった。私のために同じ修行を受けてくれた二人には感謝しかない。一応後でもう一人増えたけど……まあ、彼は別に私たちのために一緒に修行をしてたわけではないから、ノーカウントね。

 

「……地獄、か」

「何だ?」

「追い詰められて驚いたか?もうサレンダーは認めねえぜ!」

「……貴様らが本当の地獄を知っているとは思えないが……ならば、その成果とやら、見せてもらおうか」

 

 ここまで追い詰められて、なおこの自信……いや、どんな状況になろうとも決して諦めるつもりのない、強い意思。こんな男の味わった"地獄"……それは一体……。

 

 いや、今はデュエルに集中するべきだ。この男は未だに諦めていない。追い詰められた敵こそ、本当に警戒するべき相手なのだから。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 このターンからドローとバトルが解禁される。そしてこの手札なら――

 

「手札から永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動!デッキのジェムナイト・ラピス、二体目のラズリーを融合。神秘の力秘めし碧き石よ。今光となりて現れよ!融合召喚!レベル5、ジェムナイトレディ・ラピスラズリ!」

 

 ジェムナイトレディ・ラピスラズリ レベル5 ATK 2400 → 0

 

「ラズリーの効果でラピスを手札に。さらに魔法カード、ジェムナイト・フュージョンを発動!ジェムナイト・アンバーとラピス、サフィアを融合!雷帯びし秘石よ!碧き秘石よ!堅牢なる蒼き意志よ!光渦巻きて新たな輝きとともに一つにならん!融合召喚!現れよ!全てを照らす至上の輝き!レベル9、ジェムナイトマスター・ダイヤ!」

 

 ジェムナイトマスター・ダイヤ レベル9 ATK 2900

 

「墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!墓地のラズリーを除外して、このカードを手札に戻す!そしてブリリアント・フュージョンのさらなる効果!手札の魔法カードをコストに、この効果で融合召喚したモンスターの攻撃力を元に戻す!ジェムナイト・フュージョンをコストに、ラピスラズリの攻撃力を復活!」

 

 ジェムナイトレディ・ラピスラズリ ATK 0 → 2400

 

「そしてラピスラズリの効果発動!EXデッキからラピスラズリを墓地に送って、フィールドのEXデッキから特殊召喚されたモンスターの数×100に自身の攻撃力の半分を加えた数値分のダメージを与える!フィールドのEXデッキから特殊召喚されたモンスターの数は5体!ラピスラズリの攻撃力2400の半分、1200を加えて1700のダメージ!」

「……」

 

 黒咲 LP 2000 → 300

 

「よっしゃあ!あともう一息だぜ!」

「まだよ!マスター・ダイヤは墓地のジェムモンスターの数×100ポイント、攻撃力がアップする。墓地にはアメジス、ラピスラズリ、二体目のラズリー、ラピス、アンバー、サフィアがいるから、攻撃力は600ポイントアップ!」

 

 ジェムナイトマスター・ダイヤ ATK 2900 → 3500

 

「マスター・ダイヤのもう一つの効果を発動!墓地のラピスラズリを除外して、エンドフェイズまでその名前と効果を得て、発動!EXデッキのラピスラズリを墓地に送り、500にマスター・ダイヤの攻撃力の半分、1750を加えて2250のダメージで!」

 

 これで……決める!




次回「LDS三人組死す」

デュエルスタンバイ!


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第十八話 鉄の意思 後編

後編です。前編からお読みください。


「マスター・ダイヤのもう一つの効果を発動!墓地のラピスラズリを除外して、エンドフェイズまでその名前と効果を得て、発動!EXデッキのラピスラズリを墓地に送り、500にマスター・ダイヤの攻撃力の半分、1750を加えて2250のダメージで!」

「やった!」

「勝った!」

 

 黒咲 LP 300 → 10

 

「……それで終わりか?」

「!?」

「ライフが……残ってるだと!?」

「墓地のRR―レディネスを除外し、その効果を発動した。ライフを10にして、効果ダメージを無効にする!」

「くそっ、踏みとどまりやがった!」

「だけど、このターンからバトルも解禁されてる!」

「バトルよ!マスター・ダイヤでダイレクトアタック!」

 

 マスター・ダイヤが襲撃犯を切り裂く。これで――

 

「……」

「ライフが……減らない……」

「レディネスの効果を発動したターン、俺が受ける戦闘ダメージは全て0になる」

「うっ……」

「これじゃ、戦闘ダメージも……」

「……私はカードを二枚セットして、ターンエンド」

「……やはり、この程度か」

「!!!」

「貴様らのデュエルには鉄の意思も、鋼の強さも感じられない!」

 

 くっ……この凄みは……!

 

「何だと!?」

「崖っぷちまで追い込まれていながらよく言うよ!」

「そう。俺たちは正に崖っぷちに追い込まれている」

 

 俺たち……黒マスクのこと?……いや、それだけじゃないような気がする。

 

「俺たちだぁ?」

「何言ってんの?こいつ」

「貴様らは地獄を味わったと言ったな。だが、本当の地獄というのは……平和に暮らしていた所を突如襲われ、街も家も容赦なく砕かれ、親しい友や家族が為す術もなく失われていくことを言う」

「何だよ、それ……。まるで、戦争じゃないか」

「戦争ですらない。宣戦布告もなく、嗤いながら行われるそれは、正に狩り(ハンティング)だった」

 

 そ、そんなことが――

 

「だが必ずこの地獄から這い上がり、仲間を奪い返し――最後は圧倒し、殲滅する!俺のターン!俺は魔法カード、ディメンション・エクシーズを発動!ライフが1000以下で場・手札・墓地のいずれかに同名カードが三枚揃っている時、それを素材にエクシーズ召喚する」

 

 この土壇場で……墓地からエクシーズ!?

 

「俺は墓地のバニシング・レイニアス三体でオーバーレイ!雌伏の隼よ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼、翻せ!エクシーズ召喚!現れろぉ!ランク4、RR―ライズ・ファルコン!」

 

 RR―ライズ・ファルコン ランク4 ATK 100

 

「攻撃力100?」

「このモンスターは場に特殊召喚されたモンスター一体につき一度ずつ攻撃することができる」

 

 攻撃力は低い……いや、攻撃力の低いモンスターを攻撃表示で晒すという事は……次のターンまで回す気はないという事。そして全体攻撃の効果という事は――

 

「ライズ・ファルコンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、エンドフェイズまで相手の場の特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を自らの攻撃力に加える」

 

 セイクリッド・オメガ ATK 2400

 セイクリッド・プレアデス ATK 2500

 XX―セイバー レイジグラ ATK 200

 XX―セイバーフォルトロール ATK 2400

 XX―セイバーフォルトロール ATK 2400

 XX―セイバー ガトムズ ATK 3100

 ジェムナイトレディ・ラピスラズリ ATK 2400

 ジェムナイトマスター・ダイヤ ATK 3500

 

 RR―ライズ・ファルコン ATK 100 → 19000

 

「い……19000!?」

「マジかよ!?」

「バトルだ!RR―ライズ・ファルコン!全ての敵を引き裂け!ブレイブクロー・レボリューション!」

 

「「「うわあああ!!」」」

 

 北斗 LP 4000 → 0

 刃 LP 4000 → 0

 真澄 LP 4000 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

 終わったか。この詰めの甘い感じは……ユートの言う通り、こいつらはアカデミアには関係なさそうだな。いずれにしろ赤馬零児を誘き出すためにカードにはなってもらうが。

 

 いや、LDSの連中が連絡を受けてもうじき来るはずだったな。カードにする意味はないか……。しかし――

 

「……連絡がないが、ユートはどうなった?それに連絡を受けているはずのLDSの連中は、まだ来ないのか?」

 

 ん?これは……足音か。それも複数。

 

「今頃お出ましか。だがもうザコどもの相手はたくさんだ。お前らのボスを連れて来い」

「私ならここにいる」

「!ということは……貴様が赤馬零王の息子、赤馬零児か」

「その通りだ」

「……この時を待っていた。さあ来い!俺とデュエルだ!」

「待て……隼……」

 

 この声は――

 

「ユート!?何故そちらに……いや、その傷は何だ!?」

「傷の話は後だ……」

 

 いや、明らかに深い傷だ。応急処置は受けているようだが……。

 

「それよりも隼。彼らは……敵ではない」

「なっ!何を根拠に!?」

「手当をしてくれたのは彼らだ……。俺とカオリのデュエルが終わった後、カオリともども応急処置をしてくれたんだ」

「そもそもその傷はそいつらのせいじゃないのか!」

「先も言ったが、その話は後だ……長くなる。とにかく彼らは味方だ」

 

 ……洗脳などをされているわけではないようだな。目を見れば正気の、いつものユートであることがわかる。しかし――

 

「そいつらがアカデミアではないとしても……やることは変わらない。赤馬零児の身柄を人質に――」

「赤馬零児を人質にとっても仲間は……瑠璃は帰ってこない」

「何!?」

「赤馬零王は……息子である赤馬零児のことを、家族のことを捨てて次元戦争を始めたらしい。それに……詳しい話は省くが、瑠璃は偶々ではなく、必要だから連れ去られたようなんだ。恐らくは次元戦争に深く関係する理由で。だから……彼を人質にしても、帰ってこない」

 

 抽象的でよくわからないが……この落胆ぶりを見ると、少なくともユートはそれを確信しているようだ。だが――

 

「それでも、諦められるものか……!」

「彼は――赤馬零児は、次元戦争に備え、反撃するための備えをしているらしい。俺たちもそこに加わるのが一番現実的だ。そうすればきっと瑠璃を取り返すチャンスも――」

「備えだと!?あの程度の講師を据えて、ぬるま湯でデュエリストを育成してきたことが備えだというのか!?それでアカデミアに勝てるわけがない!」

 

 俺たちが一番よく分かっているはずだ。俺たちだって、デュエルの腕を磨くことを怠っていたわけではない。デュエルは生活に密着しているものだったし、何よりプロのデュエリストに憧れてデュエル三昧の日々を送っていたのだから。

 

 だが、エンターテイメントとしてのデュエルと実戦は、わけが違うのだ。アカデミアは、真正面から一人ずつ、正々堂々とデュエルを仕掛けてくるわけではない。昼夜問わず不意打ちで、数を以て攻めてくる。そして何より、敗北すればカードにされるという恐怖は判断を狂わせる。エンターテイメントとしてのデュエルがいかに得意でも、実戦では何もできずに敗北し、カードにされる。それが当たり前の光景だったのは、誰よりも俺たちが知っている。

 

 アクションデュエルだのエンターテイメントだのと言っている温室育ちをいくら育てようが無意味だ。

 

「今も、三体一でこの様だ!」

 

 これでアカデミアと戦えるわけが――

 

 

 

「マルコ先生と……北斗と刃を……馬鹿に、するな……!」

 

 背後から、誰かが立ち上がる音と、女の声。この声は……。

 

「……ライズ・ファルコンの攻撃を受けて……まだ立ち上がるとは……」

 

 融合使いの女か。存外、タフだったようだな。

 

「だが、事実だ。ライズ・ファルコンの攻撃を受けきれず、バトルフェイズが解禁されてからワンターンで決着はついた。その程度で――」

「いや、まだだ……!」

「……何?」

 

 その時、デュエルディスクから音が鳴り、思わずデュエルディスクを確認した。そこにはターンプレイヤーが交代したことを示す文字。……デュエル継続中だと!?

 

「バカな……ライフは0になったはず……!」

「罠カード、魂のリレーと……ハーフ・アンブレイク。魂のリレーは手札からモンスターを特殊召喚する。そのモンスターがいる限り私の受ける全てのダメージは0になり、代わりにそのモンスターがフィールドを離れるとデュエルに負ける」

 

 ジェムタートル レベル4 DEF 2000

 

「デュエルの勝敗をモンスターに託すカードだと……!?」

 

 ダメージが無効になったにもかかわらずライフが0なのはそのためか……。ダメージ無効というより、ライフを超えるダメージを受けようとも、そのモンスターがいる限り敗北にならない効果と言うべきか。

 

「ハーフ・アンブレイクはそのターンの間、対象の戦闘破壊を無効にする……」

「そいつで、敗北を防いだのか……」

「北斗と刃のお陰で……攻撃を終えても私の手札に余裕ができた。だから、攻撃を凌げた……」

「……」

「待つんだ、君」

 

 ユート……。

 

「俺たちのデュエルディスクはアカデミアから奪った物をチューンした、特殊なものだ。デュエルのダメージが現実にフィードバックされる。ましてや君はライズ・ファルコンの強力な攻撃を受けて、ライフが尽きてすらいる。これ以上デュエルを続けるのは危険だ」

 

 いや……説得は無駄だな。

 

「ユート。デュエルは続ける」

「隼……!」

「ヤツの目を見ろ。あれは……俺と同じだ。地を這ってでも追いすがり、獰猛に喉笛に食らいつかんとする……反逆者の目だ」

 

 さっきまでとはまるで違う。追い詰められたことで、目が覚めたのか。それとも……まあいい。いずれにしろ、答えは一つだ。

 

「ヤツに諦めるという選択肢はあり得ない。俺と同様にな」

「……」

「デュエルを……続けるわよ……。私のターン、ドロー。……ターンエンド」

 

 ヤツのモンスターの攻撃力は0。ライズ・ファルコンは倒せない、か。だが、ヤツは諦めたわけではない。そして攻撃力が0ということは、ライズファルコンの効果も無意味という事だ。今の状態、俺にもあのモンスターを倒す手段はない。

 

「俺のターン!カードを一枚セット。……ターンエンドだ!」

「私のターン!……墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!アメジスを除外して、手札に戻す。ジェムナイト・フュージョンを……発動!手札のジェムナイト・ルマリンと、ジェムナイト・サフィアを融合。雷帯びし秘石よ。堅牢なる蒼き意志よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!レベル6、勝利の探求者、ジェムナイト・パーズ!」

 

 ジェムナイト・パーズ レベル6 ATK 1800

 

「バトル!パーズでライズ・ファルコンに攻撃!」

「……俺はRUM(ランクアップマジック)―エスケープ・フォースを発動!」

「ランクアップマジック……?」

「その効果でエクシーズモンスターへの攻撃を無効にする」

「まだよ……!パーズは一ターンに二回攻撃できる!」

 

 二回攻撃でより確実に仕留める算段だったか。だが――

 

「エスケープ・フォースの効果はそれだけではない。エスケープ・フォースはそのエクシーズモンスターを一つ上のランクのエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

「!?」

「俺はライズ・ファルコン一体でオーバーレイ!獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!RR―ブレイズ・ファルコン!」

 

 RR―ブレイズ・ファルコン ランク5 DEF 2000

 

「くっ……ターンエンド」

「……前言は、撤回しよう。ライフが尽きても立ち上がる貴様は、確かに鉄の意思の持ち主だった。だが……これで終わりだ。ブレイズ・ファルコンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!」

「っ……きゃああああ!!」

 

 翼から放たれた爆撃がフィールドを覆う。煙が晴れると……そこにモンスターはいなかった。

 

 ……今度こそ、終わったか。

 

「中島、彼女たちの応急処置を」

「はっ!」

「……フン」

 

 地獄の修行とやらのせいか知らないが、温室育ちだけというわけでもないらしい。融合使いの女……いや。

 

「あの女の名前は何という?」

「……彼女の名前は、光津真澄という」

「真澄、か。……名前と、その鉄の意思は記憶に留めておこう」

「隼……」

「赤馬零児。貴様の下につくわけではない。だが……共同戦線を張るというのなら、考えておく」

「承知した。受付には話を通して置くから、アポイントメント無しで来てもらって構わない。……その場合は、必ず時間を取れるかは確約できないがな」

「……」

「それと彼は私の指定する病院に入院してもらう。彼は顔が知れているから、他では騒ぎになるかもしれない。病院の場所は、この紙に書いてある」

 

 ユート……俺の思っているより傷が深いのか。

 

「ユート。怪我をしているところ悪いが、詳しく話を聞かせてもらうぞ」

「ああ」

 

 瑠璃を助けるための手立てが、一つなくなってしまった。いや、最初からこの手段は失敗だったのか。……俺は、焦りすぎていたのかもしれない。今は雌伏の時だ。耐えなければならない。これまでと、同じように。

 

 だが、俺は決して諦めない。……瑠璃を取り戻す、その日まで。




魂のリレーの処理が滅茶苦茶ですが、演出です。

進行に影響はないので許してください……。


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