星に導かれる妖精 (鳥王族)
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楽園の塔編
第1話


サンサンと太陽が眩しく光るアカネのビーチで妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、ナツとグレイとハッピーはエルザ監督のもと準備体操をしていた。三人はぶーぶーと早く海に入りたいと文句を零しながらも怒られるのは嫌なのでしっかりと準備体操をしていた。ルーシィはその隣で日焼け止めを身体中に満遍なく塗っていた。そして、その近くで今回の旅行メンバー最年少(ハッピーを除く)である赤髪の少年ライトは黙々と一人でパラソルを立てていた。

 

そして、準備体操が終わったナツたちは猛ダッシュで海に飛び込んだ。

 

「自分で誘っといてあれだけど、不安しかねえ」

 

ライトは溜息まじりにいうと二日前の惨劇を思い出した。

 

 

 

二日前、

 

「旅行券当てた⁉︎」

「いや、ナツ声でかい」

 

急にナツが叫んで耳を塞いでいると、先ほどのナツの声を聞いてぞろぞろとギルド内にいた仲間たちが集まってきた。

 

「ナツ、何を騒いでいる」

「ライトが街でやってたくじ引きで旅行券を当てたった」

 

注意しに来たエルザに目をキラキラして答えるナツ、それによって他のメンバーもナツが何に騒いでいたがわかるとメンバー達はナツと同様に目をキラキラさせ出し、ライトに向かった。するとやれ、俺を連れて行けだの、私を連れて行ってだのと騒ぎ出した。いつもならこんな時止めに入るエルザも旅行にテンションが上がったのか一緒に騒ぎ始めた。するとどんどん彼らはヒートアップしていき、しまいには

 

「ライト、定員は何人だ?」

「六人」

 

ライトがグレイの質問に普通に答えると

 

「残り五人決めるぞ‼︎かかってこいや〜」

 

ナツが言い出した。すると完全にみんなのボルテージは最高潮に達し、旅行券争奪戦が始まり暴れだした。さすがのエルザも止めようとしたが争いの余波で飛んできたケーキが顔にぶつかると、身体をプルプルと震え始めライトが嫌な予感がした瞬間エルザは怒りながら戦いに参加しだした。

 

「はぁー、またこうなっちゃった」

「だな」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の常識人のルーシィと持ち主であるライトは離れたところに避難しながら仲間達の暴れっぷりに呆れていた。「漢なら姉ちゃん孝行だ‼︎」とナツと一緒に中心で暴れてるエルフマン、「「勝って、レビィと旅行だー‼︎」」と本人のレビィを置いて盛り上がるが瞬殺されてるジェットとドロイなどが特に目立っていた。

そして、結局堪忍袋の緒が切れたマスターにより事態は収拾し元々、以前仕事中に世話になったナツとハッピー、また、違う仕事で助けてもらったグレイとストッパーの役目ということでエルザとルーシィの計五人と一匹できたのであった。

 

 

そして、今に戻るが

 

「まっ、大丈夫か」

 

と細かいことは考えるのをやめてライトも一緒に遊び始めた。そして、大きな事件もなく日が沈みホテルで食事を済ました。

 

食事も終わり各自、自分の部屋に分かれて休憩していた。エルザもまた、バルコニーで休憩しながら今日の出来事を思い出していた。そして、疲れていたのかエルザは目をゆっくりと閉じて眠りについた。

 

 

周りが石で囲まれた不気味なところ子供の泣き声や鞭を叩きつける音が響き渡っていた。そこに一人の男の声が聞こえる。

 

「エルザ…この世界に自由などない」

 

「はあっ‼︎」

大量の汗をかきながらエルザが目覚めた。彼女はゆっくりと息を整えると鏡に映った自分を見て、微笑むと換装した。

 

「やはり鎧の方が落ち着く…私という女はつくづくどうしようもない」

 

などと一人で苦笑しているとルーシィが元気な声で呼びに来た。ルーシィはホテルにカジノがあることを伝えるとエルザはノリノリで先ほどのドレスに再度換装するとカジノに向かっていった。

 

その頃、ライトは部屋のバルコニーの柵に肘をつきながら海を眺めていた。すると、港の方に船がつくのが見えた。だが、漁船でもなく貿易船でもなさそうな船にライトは違和感を覚え一度部屋から出、旅行用に持ってきた単眼鏡で船を見るとちょうど乗組員が降りてくるところだった。そして、ライトはその乗組員を見て驚愕した。

 

「あいつは、シモン。それにあれはミリアーナ何でこんなところに」

 

ダラダラと嫌な汗をかきながらライトは全力で部屋を抜け出し、船に向かった。乗組員の四人がいないことを確認するとライトは船に潜入を始めた。だが、潜入を始めて10分くらいすると四人が帰ってくる音が聞こえたのでライトは大きめの樽を発見し素早くそれに入り隠れた。そのまま、樽の中にうまく隠れたことに一旦安堵していると乗組員の一人であるシュウとエルザの会話が聞こえエルザが捕まっていることがわかった。

 

そして、シュウはエルザにとって。また、ライトにとっても因縁のある男の名前が聞こえた。

 

「なんで…オレ達を…ジェラールを裏切った‼︎」

 

シュウの言葉にライトは眉間にしわを寄せる。

(ジェラールということは楽園の塔関係か今日こそ決着をつける)

 

ライトは樽の中で敵に見つからないよう決意を固めるのであった。

 

魔法評議員会会場ERAでは緊急会議が開かれていた。

 

「Rシステムがまだ残っているだと‼︎?そんなバカな‼︎!」

 

評議員の一人オーグ老師が机を叩きながら叫んだ。禁忌の魔法であるRシステム。全滅したはずのそれが存在してることがわかり評議員慌て出す評議員たち。

 

「Rシステムじゃねえ楽園の塔…だろ」

 

その評議員の面々の中でひときわ若い男ジークレインが発言した。すぐさま、オーグ老師が名前などどうでもいいと言い軍を送るように言うが敵の正体がわからず、唯一わかることはジェラールと呼ばれる男がリーダーということだけだった。しかし、その名を聞いたジークレインは少し顔色を変えたが評議員のメンバーは誰も気付かなかった。ただ一人隣に座っていたヤジマを除いて。

 

 

一方、その頃ナツ、グレイ、ルーシィたち三人と偶然…というよりグレイを追ってアカネに来ていたジュビアとともに楽園の塔を目指してボートで海を漂っていた。

 

「どこだよここはよォ‼︎!」

「ジュビアたち迷ってしまったんでしょうか?」

「なぇ…ナツ本当にこっちであってるの?」

 

ナツの鼻を頼りにボートに乗り込んだのはいいがいつものようにナツは船酔いでグロッキー状態になっていて鼻を使って方向確認ができる状態ではなかった。

 

「オメーの鼻を頼りに来たのに、しっかりしやがれ」

「グレイ様が頼りにしているのです。ナツさんお願いします」

 

だが、ナツは全然回復する気配がなかった。

 

「くそ、一気に三人も仲間が連れてかれるなんて情けねえぜ」

「本当ですね…エルザさんほどの魔導士がやられてしまうなんて…」

「やられてねえよ」

 

ジュビアの一言が気に障ったのかすごい勢いで睨みつけるグレイ。ジュビアは怯えたがルーシィが八つ当たり気味なグレイに落ち着くよう言ったら、グレイは「ちっ」と舌打ちをすると一応は冷静になった。

 

「それにしても、あいつらエルザの昔の仲間って言ってたよね。あたしたちエルザのこと全然わかってなかったね」

 

ルーシィはそう自信なさげに言った。

 

「あと、なんでライトまで攫われたんだろう?もしかしてライトも昔、あいつらの仲間だったのかな?」

「それだったら、エルザもライトのこと知ってたはずだ。でも、あいつらギルド内で初めて会ったとき初めましてって言ってたぞ。まあ、入る時期は確かに近かったが…」

「その、ライトさんってどんな方なんですか?ジュビア、よく知らなくて」

「そう考えるとあたしたち、ライトのことも全然知らないね」

「ああ、基本的に誰かと一緒に仕事行ったりしないしな。というか、俺はあいつが本気で戦ってるところを見たことねえな」

「確かに、あたしなんかどんな魔法使うかも知らない」

「そういえば、そうだな」

 

話していくうちにどんどん仲間の知らないところが出てきてどんどんテンションが落ちていく三人。そんなとき、グレイは遠くに海の上にポツンと一つだけ建っている塔を見つけた。

 

「あれが、楽園の塔か?」

「ジュビアもそう思います」

「あそこに行こう。エルザ、ライト、ハッピーを助けに行くため。そして、エルザとライトのことを知るため」

 

グレイとジュビアは無言でつぶやくと塔に向けてボートを漕ぎだした。

 

 

エルザは捕まり牢に捕らえられていた。ショウによると明日、儀式を開始し楽園の塔つまりR(リバイブ)システムを起動させるらしい。そして、その生贄にエルザが選ばれていた。

 

「姉さん、あの時はごめんよ。あの時の立案者は俺たちだったのに怖くて言い出せなかった。本当に卑怯だよね」

 

ショウの突然の謝罪に困惑するがエルザは何のことか理解した。

奴隷時代、同じ牢にいた。エルザたちはショウ達の立案で脱獄をはかった。しかし、それは見事に失敗。立案者だけを懲罰房に行きと言われたがショウは恐怖で言い出すことができなかった。それを見たエルザも庇おうとしたがまた恐怖で言い出すことができず、するとジェラールが言い出したがジェラールのあまりの堂々としていたため教徒たちはジェラールではなく震えてるエルザが立案者だと思いエルザが懲罰房に連れて行かれたのだった。

 

「そんなことは今となってはどうでもいい。それより、Rシステムで人を蘇らせることの危険性がわかっているのか?」

 

エルザはかつての仲間に人道に外れた禁忌の魔法であるRシステムの使用を止めるため、諭そうとするがショウは聞き耳を持たず感情を爆発させて言った。

 

「俺たちは支配者になる。自由を奪った奴等の残党に…俺たちを裏切った姉さんの仲間たちに…何も知らずにのうのうと生きてる愚民どもに…評議員の能無しどもに…全てのものに恐怖と悲しみを与えてやろう‼︎!そして全てのものの自由を奪ってやる‼︎‼︎

俺たちが世界の支配者となるのだァァァァ‼︎‼︎」

 

そんな狂気とも言える笑い声をあげているショウは隙だらけだった。エルザはそれを見逃さず膝でショウの顎を蹴り気絶させると口で自分を縛っていたミリアーナの管を噛み切ると怒りを爆発させた。

 

「何をすれば人はここまで変われる‼︎?」

 

エルザは思い出す。姉さんと自分をしたい笑顔の可愛いかったショウの姿を

 

「ジェラール…貴様のせいか…」

 

エルザは牢から出てジェラールの所に向かおうとした時、先ほどのショウの言葉が頭をよぎった。

 

(待て、ショウは先ほどあの時の立案者は俺たちと言った。だが、あの時は私、ジェラール、ウォーリー、ミリアーナ、シモン、そして立案者のショウの五人だけだったはず、誰だ?誰がいた?)

 

エルザは思い出そうとすると途中から頭の中にノイズのようなものが現れ頭痛がした。

 

「どういうことだ…いや、今はジェラールを止めなければ」

 

そして、エルザは今度こそジェラールの所に向かうために走り出した。

 

 

一方、エルザと一緒に連れてこられたハッピーは目を覚ますとそこにはネコグッズがいっぱいある部屋にいた。

 

「なんだこの部屋〜‼︎」

 

ハッピーが驚いて声を上げると自分の目の前にネコのコスプレのような服を着ているミリアーナが現れた。

 

「みゃあー‼︎!しゃべるネコネコだー‼︎!」

 

ハッピーを見て大はしゃぎするミリアーナに全身カクカクの男ウォーリーが現れてこう言った。

 

「ミリア…もっとダンディになりな。ネコがしゃべるんじゃねえしゃべるからネコなんだゼ」

「そっかー」

「ぜんぜん意味わかんないし‼︎!」

 

二人の意味不明なやりとりについついツッコミを入れるハッピー。そんなコントをしている所にシモンが入ってきた。

 

「ウォーリー‼︎ミリアーナ‼︎エルザご脱走した」

 

それを聞いてウォーリーが塔からは逃げられる訳がないと言うと

 

「逃げねえだろうな…ジェラールを狙ってくる」

 

それを聞いた。ウォーリーとミリアーナはエルザを探すために部屋から出てった。一人残されたハッピーは意味がわからず困惑した。

 

その頃、塔の最上階ではジェラールが笑い出した。

 

「エルザはいい女だ。実に面白い。

オレが勝つか、エルザが勝つか。いや、ここには奴もいるかつまり三つ巴か。いいぞ、楽しもう生と死…そして過去と未来を紡ぐ楽園のゲームを」

「しかし、評議員の動きも気になります」

 

ジェラールの部下のヴィダルダスが口を挟むとジェラールは焦るどころか彼の口角は上がった。

しかし、ヴィダルダスの言ったとおり現在評議員ではジェラール討伐のため軍を派遣する、させないで議論していた。だが、それとは別にジークレインが発言した。

 

「鳩どもめ」

 

突然の侮辱の言葉に一旦議論を中止し議員たちはジークレインを睨んだ。だが、ジークは構わずしゃべりだした。

 

「オレから言わせれば軍の派遣程度ハト派と呼ばざるを得ないと言ったんだ。あれは危険だ危険すぎる。あんたらは何もわかってない‼︎楽園の塔を今すぐ消すなら方法は一つだろ‼︎!

衛星魔方陣(サテライトスクエア)からのエーテリオン‼︎‼︎」

 

ジークの発言に顔を真っ青にする議員たち。それもそのはずジークが言ったのは評議会の中でも最終兵器中の最終兵器。それを使用するなどと言い出して評議員は慌てだした。そんな中、冷静に議員の一人ウルティアが賛成した。

 

「議員は全員で九人、あと三人の賛成でエーテリオンを撃てる。早くしろ、Rシステムを使わせるわけにはいかないんだ」

 

ジークに言われ評議員たちは考え始めた。ただ一人ヤジマだけは考える素振りも見せずただひたすらジークを睨んでいた。

 

(ズークめ、何を考えている)

 

 

その頃、ナツたちはついに塔の中へ侵入を成功したが、早速敵に見つかってしまった。仕方なく、敵を撃退すると上へと続く扉が一人でに開いた。

 

それはナツたちの戦闘を見ていた。ジェラールが開けたらしく、侵入者を中に入れたことにヴィダルダスは疑問感じた。すると、ジェラールは。

 

「これはゲームだと、奴らは一つステージをクリアしたから次に進んだ。それだけだ」

「しかし、儀式を早めないと評議員にかぎづけられます」

「いや、止められやしないさ。評議員のカスどもにはな」

 

ジェラールは不敵な笑みを浮かべて自慢気に言い放った。

 

だが、評議員では三人目の賛成者が手を挙げエーテリオン発射に向けてあと二人となっていた。

 

そして、ジェラールが開けた扉からナツたちは上に昇るとまた敵が向かってきた。戦闘体勢を取った瞬間、エルザが現れて一瞬にして敵を切り倒した。

 

「エルザ‼︎」

 

グレイの声に反応しエルザもナツたちに気づいた。

 

「お前たち、なぜここに」

「やられたまんまじゃ妖精の尻尾の名折れだろ‼︎」

 

ナツは理由を叫びながら進もうとすると

 

「帰れ、ここはお前たちのくる場所ではない

 

理由も言わずに彼らを帰そうとするエルザ、そのため、ルーシィが来た理由をいようとするとナツが割って入った。

 

「ハッピーまで捕まってんだ‼︎このまま戻るわけには行かねー」

「ハッピーが…ミリアーナか」

「そいつはどこだ‼︎」

「さ、さあな」

「よし‼︎わかった‼︎」

 

理屈はわからないが理解したナツにグレイはツッコんだが、ナツはそのままハッピーを捜しに走り出した。

そのため、ルーシィたちがナツを追おうとした。だが、エルザは剣を彼らの前に出し、行き先を封じてこの問題は自分だけの問題だから帰るよう言った。

しかし、ルーシィたちは勿論納得できずルーシィはエルザに仲間だから話して欲しいと言った。するとエルザは目を潤わせながらルーシィたちに話し出した。この塔のこと、ジェラールとの因縁を…

 

エルザがグレイたちに話してる時ERAではまた一人エーテリオンに賛成者が出た。発射まであと一人。



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第2話

そして、エルザはグレイたちにことの真相を話した。自らの過去と今、ジェラールがしようとしていることで彼女が知っていること全てを。その時、偶然通りかかったショウにもこの話が耳に入った。ショウは困惑しながら、叫んだ。

 

「正しいのは姉さんで間違ってるのはジェラールだというのか‼︎⁉︎」

「そうだ」

 

すると、今度はシモンが現れてショウの発言に答えた。シモンは唯一ジェラールに騙されていることに気づき八年間ずっとシモンはエルザを信じてきたのだった。そして、シモンは再会を心から喜びエルザとハグをし和解した。そして、シモンはジェラールの言葉に騙され、エルザを信じきれなかった自分に嫌悪し、また様々な情報が一気に入ってきたため混乱し、泣き崩れた。

 

「くそぉぉぉ‼︎うわぁぁぁ‼︎

何が真実なんだ。オレは何を信じればいいんだ‼︎」

「今すぐに全てを受け入れるのは難しいだろう。だが、これだけは言わしてくれ。

私は八年間お前たちのことを忘れたことは一度もない」

 

エルザの優しい声とともに抱かれ、ショウは少しずつ泣き止んでいった。そして、泣き止むとシモンとともに決意する、今このみんなでジェラールを討つことを。

 

 

ハッピーを探して塔の中を歩き回っているナツはネコグッズがいっぱいある部屋に来た。そして、そこにあるネコの被り物を興味本位で被ると頭が抜けなくなってしまった。その後ろで一人背後からナツを撃とうとする男ウォーリーがいた。そして、ウォーリーが引き金を引いた瞬間、ミリアーナが被り物をしているナツを本物のネコと思いウォーリーの邪魔をした。すると、弾丸はナツを横切り壁に当たった。ナツはそれに気づき後ろを見るとウォーリーに気づき、ホテルのことを思い出した。

 

「あん時はよくもやってくれたなァ‼︎四角野郎‼︎」

 

ウォーリーはミリアーナを振り払うと自らの身体を複数のブロックに分解するとナツに攻撃を開始した。ナツは攻撃を避け、避けれないものは近くにあったネコのぬいぐるみでガードした。

 

「敵?ネコネコなのに?」

 

一人、状況が理解しきっていないミリアーナはまだ、ナツをネコだと思っていた。しかし、ウォーリーがネコじゃなく被り物をした人間だと説明すると、怒りに燃えて自らの魔法であるチューブをナツの左手首に巻きつけた。

 

「よくやったゼミリアーナ‼︎」

「ウォーリー‼︎うそネコやっつけちゃってー!」

「秒間32フレームアタッーク‼︎」

 

二人のコンビネーションにより、ウォーリーの攻撃が当たった。それどころかミリアーナのチューブのせいでナツは魔法が使えなくなっていた。魔法が使えなくなったナツはなすすべなく二人にやられさらにチューブでグルグル巻きにされてしまった。そして、動きの止まったナツにウォーリーが決めゼリフを言いながらトドメを刺そうとした瞬間、ハッピーがウォーリーの頭をぬいぐるみで叩いた。決めゼリフを止められ怒ったウォーリーはハッピーに向かって発砲した。しかし、ニ、三発撃ったところで愛猫家のミリアーナにハッピーがネコであるため攻撃の邪魔をされた。その間にハッピーがチューブをほどこうとしたが硬くてなかなかほどけなかった。するとナツは身体を起こすと、

 

「にゃあああ」

 

ネコが泣いてるモノマネを開始した。すると、ミリアーナはついついネコが苦しんでいると思い、ナツの拘束をといてしまった。ナツはその隙を見逃さなかった。

 

「火竜の翼撃‼︎」

 

両手に炎を纏わせ二人に攻撃すると二人は一撃で同時にノックダウンした。

 

 

ナツとウォーリーたちの戦いを見ていたジェラールはウォーリーとミリアーナを模したチェスの駒のようなものをナツの駒で倒した。

 

「やはり、ゲームはこうでないとな」

 

不気味な笑顔でジェラールがなぜか喜んでいるとヴィダルダスが遊んでいる暇はないと口を出すと。

 

「ならば、お前が行くか?ヴィダルダス」

「よろしいので?」

「次はこちらのターンだろ?」

 

そして、ジェラールが盤の上に新たに三つの駒を置いた。すると、ヴィダルダスは変身すると暗殺ギルド髑髏会特別遊撃部隊三羽鴉(トリニティレイヴン)が現れた。

 

 

ウォーリーを撃破したナツは被り物を外してもらおうとハッピーに思いっきり引っ張られていた。すると、急に抜けそのままハッピーは引き抜いた勢いで投げ飛ばした。すると、ウォーリーに偶然スッポリと入ってしまった。ウォーリーはすぐさま取ると戦闘を開始しようとした。しかし、ナツは戦うそぶりをまったく見せなかった。

 

「もうカリも返したし、エルザもハッピーも無事ってんならこれ以上やる意味はこっちにはねーんだけどな」

「オレたちは楽園に行くんだ…ジェラールの言う真の自由人々を支配する世界へ」

 

ウォーリーは必死で立ち上がり戦おうとしている時、塔中に気持ちの悪い口が無数に現れた。すると、口は喋り出しそこからジェラールの声がした。

 

「ようこそ、楽園の塔へ。オレはジェラール、この塔の支配者だ。互いの駒は揃えたそろそろ始めようじゃないか。楽園のゲームを」

「ルールは簡単、オレはエルザを生贄としゼレフ復活の儀を行いたい。すなわち楽園の扉が開かれたらオレの勝ち。もし、それをお前たちが阻止できればそちらの勝ち」

「ただ、それだけでは面白くないのでなこちらは三人の戦士を配置する。そこを突破しなければオレにはたどり着けん。つまりは三対八のバトルロワイヤルだな」

「最後にもう一つ特別ルールの説明をしよう。評議員が衛星魔方陣(サテライトスクエア)でここを攻撃してくる可能性がある。全てを消滅させる究極の破壊魔法エーテリオンだ」

 

「聞いてねえぞジェラール‼︎そんなモンくらったら全員地獄行きじゃねーか‼︎」

「ヴィダルダスはん、臆したのどすか?」

「逆さ‼︎逆‼︎リバース‼︎最高にハイだ‼︎こんなあぶねー仕事を待ってたんだぜーー‼︎」

 

「残り時間は不明だ。しかし、エーテリオンが落ちた時、それは勝者なきゲームオーバーを意味する」

 

「そんな、何考えてんのよ。自分まで死ぬかもしれないのに」

 

一通りの説明が終わり、ジェラールの狂気ぶりに震えるルーシィ。

 

「エーテリオンだと?評議員が?あ、ありえん」

 

エルザは先ほどの説明に違和感を感じていた。その時、再度ジェラールが喋り出した。

 

「では、ゲームを開始しよう。特に期待してるぞエルザそして、ライト。いや、ジークフリート」

「ジークフリート?ライトのことなのか?だが、どこかで…うっ!」

 

ジェラールが言ったジークフリートを思い出そうとするとまた頭痛が起きた。そして、倒れそうなエルザをシモンが支えて、質問した。

 

「エルザ、ジークを覚えていないのか?」

「ジーク?誰だそれは」

「奴隷時代、同じ牢に一緒にいたじゃないか」

「同じ…牢に…ウッ‼︎」

「大丈夫か⁇エルザ⁉︎」

「ああ、おかげで思い出せた。ジークフリート・フェルナンデス。私たちの仲間でジェラールの実の弟だ」

「ライトが、ジェラールの弟⁉︎」

「ああ、私が思い出せなかったのはたぶん彼自身の魔法で記憶を変えられていたんだと思う。そして、あのライトの顔も変身魔法だ」

「なんで、そんなことをしたんだろ」

「たぶん、エルザを守るためだろう」

「エルザを守るため?」

 

シモンの言葉に引っかかったルーシィは質問をした。

 

「なんで、そんなことするの仲間なんだから一緒に戦ったら」

「あいつは、人一倍優しい男だ。だから、エルザを巻き込まないために、一人で戦うためにエルザを避けるためにそんなことをしたんだろう」

「そうなんだ」

「本当に困ったものだ」

「さっきまでエルザも一人で行こうとしていたけどね」

「ああ、すまない。おかげで目が覚めた」

 

ルーシィとエルザは微笑んだ。

 

「急ごう、ジークやナツと合流しないと」

 

そうして、エルザが走り出そうとした時、ショウは魔法でエルザをカードに閉じ込めた。

 

「姉さんは誰にも指一本触れさせない。ジェラールはこのオレが倒す‼︎」

 

そして、ショウはエルザのカードを持ち走り出した。シモンもショウを追って走り出した。

 

「だー‼︎ドイツもコイツも」

 

あまりの周りの身勝手な行動にグレイはついに癇癪を起こした。

 

「では、グレイ様。ジュビアたちも行きましょう。あっ、ルーシィさんはあっちね」

「ちょっと‼︎いちばん弱いの一人にする気‼︎」

 

結局とグレイとジュビア、ルーシィペアに分かれて動き出した。

 

一方、ナツとハッピーたちはジェラールの話を聞き、

 

「ハッピー‼︎ゲームには裏技があるよな」

「あい」

「一気に最上階までいくぞー‼︎」

「あいさー‼︎」

 

ハッピーはナツを持ち上げ塔の窓から出ると最上階に向かって飛び上がった。

しかし、しばらく飛んでいると横から猛スピードでミサイルを背負った鳥男がぶつかってきた。ナツとハッピーは体当たりの勢いで塔の中へ入って行った。すると、ちょうど上がってきたシモンが二人を見つけ駆け寄った。そして、鳥男もナツたち目の前に着地した。

 

「ルール違反は許さない正義(ジャスティス)戦士梟参上‼︎」

「とりだー、とりが正義とか言ってるー」

 

梟と名乗った男の姿を見て驚くナツとハッピー。一方でシモンは震えていた。

 

「こいつは」

 

梟が何者か思い出したシモンはナツを引っ張って逃げ出そうとした。

 

「ナツ、こいつ敵だよ」

「今は、お前たちの味方だ。それより、今はあいつだ。あいつには関わっちゃいけねえ‼︎」

「闇刹那‼︎」

 

シモンは魔法で光を消すと二人を連れて逃げ出した。だが、梟は迷うことなくシモンに追いついた。そして、シモンの頭を押さえると

 

「ジャスティスホーホホウ‼︎」

 

梟はシモンに強烈なパンチを放ちシモンは口から血を吐きながら後ろにふき飛んで行った。

 

「これほどとは、暗殺ギルド髑髏会」

「暗殺ギルド‼︎」

「ああ、まともな仕事がなく行き着いた先が暗殺依頼に特化した最悪のギルド。中でも、三羽鴉(トリニティレイヴン)と呼ばれてる三人組はカブリア戦争で西側の将校全員を殺した伝説の部隊」

「あいつが、その一人…一羽だって‼︎」

「奴らは殺しのプロだ。戦っちゃいけない‼︎」

 

シモンは梟の危険性をナツに伝えた。だが、それを聞いたナツは怒りに燃えていた。

 

「ギルドってのはオレたちの夢や信念の集まる場所だ。くだらねえ仕事してんじゃねーよ」

「よせ‼︎火竜。暗殺ギルドなんかに関わっちゃいけねえ‼︎」

「暗殺っていう仕事がある事自体が気にいらねえ、依頼者がいるってのも気にいらねえ、ギルドとか言ってんのも気にいらねえ、気にいらねえからぶっ潰す‼︎‼︎

かかってこいやーー鳥ーーー‼︎‼︎」

「ホホウ、若いな火竜この世には生かしておけぬ悪がいる。貴様もその一人死ぬがいい」

 

梟がクラウチングスタートの構えを取ると背中のミサイルがジェット噴射し始めた。そして、勢いよく飛び出すとナツの身体をつかんだ。

 

「火力なら負けてねえぞ」

 

ナツはその腕をふりほどいて投げ飛ばしたが梟はジェット噴射を利用して空中で方向転換するとナツの足を掴みそのまま浮かび上がった。そして、ある程度浮上すると、ナツを床に向かって投げつけた。ナツはなすすべなく勢いよく床に激突した。

 

「いってえ」

「ホホウなかなか頑丈だ。これはやりがいのある仕事だな。ホホ」

三羽鴉(トリニティレイヴン)、噂以上だ。こんなのが、あと二人もいるのか」

 

その頃、最上階ではジェラールが梟のコマでシモンのコマを倒していた。

 

「情けねえな、シモン。ゲームは始まったばかりだというのに、そして、次は梟VSナツ・ドラグニル。うーむ、ナツにはここまで来て欲しいが少し分が悪いか」

 

また、その頃ジュビア、ルーシィはナツを探していた。その時、急に恐ろしいほど馬鹿でかい騒音が聞こえてルーシィは反射的に耳を塞いだ。

 

「な、何?ギター⁉︎てかうるさ!」

「ジュビアは上手いと思うわ」

「アンタ、本当にずれてるわね」

 

そんな騒音がする方からゆっくりと気持ち悪いほど髪の長い男が現れた。

 

「暗殺ギルド髑髏会‼︎スカルだぜ‼︎イカした名前だろ。その三羽鴉(トリニティレイヴン)の一羽。ヴィダルダス・タカとは俺の事よ‼︎」

「ロックユー‼︎」

 

タカは髪を鞭のように使い全体を攻撃した。それをルーシィは間一髪で避け、ジュビアは身体を水にし、受け流した。

 

「ジュビアにはいかなる攻撃も効かない‼︎水流拘束(ウォーターロック)‼︎」

「ロック?お前もROCKか⁉︎」

 

すると、タカは球体の水に囚われてしまった。しかし、タカの髪が水流拘束の水を吸収し脱出した。

 

「寝グセには水洗いが朝シャンはよくねえ、髪がいたむ」

「貴様、どうやって水流拘束(ウォーターロック)を?」

「俺の髪は液体を吸収する。油やアルコールはごめんだぜ、髪が傷んじまう」

「水が効かない⁉︎」

「そんな‼︎」

「それにしても、いい女だな二人とも」

 

すると、タカは指を交互にジュビアとルーシィを移動させながら言葉を言っていくとジュビアで止まった。

 

「決めたぜ‼︎お前が今日のサキュバスだ‼︎」

 

そう言うと、タカはギターを弾き始めた。すると、ジュビアが苦しみだした。そして、演奏が終わるとジュビアの様子が変わりタカに操られてしまった。

 

そして、その様子を見ていたジェラールはタカのコマでジュビアのコマを倒した。

 

「水女はここでアウト。そして、星霊使いもアウトだ」

 

ジェラールはルーシィのコマも倒した。

 

そして、ルーシィはジュビアに一方的にやられていた。

 

「あんた妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入りたいんでしょ‼︎だったら仲間に攻撃なんて…」

 

ルーシィは説得を試みたがジュビアは聞き耳持たず身体を水に変えて突撃しそのままルーシィを飲み込んだ。

 

(ダメだ。完全に操られている。どうしよう‼︎ジュビアになんて戦って勝てるわけないし)

(ルーシィさん)

 

打開策を見つけられず落ち込んでいるルーシィにジュビアの声が聞こえた。

 

(仲間なんておこがましいかもしれないけど、ジュビアは仲間を傷つけたくない。妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大好きになったから、仲間思いで…楽しくて…あたたかくて…雨が降っててもギルドの中はお日様が出てるみたい)

(ジュビア)

(せっかく、みなさんと仲良くなれそうだったのに、ジュビアはやっぱり不幸を呼ぶ女)

 

ルーシィはジュビアの水の中で泣いているジュビアの姿を見た。その時、タカからの指示でジュビアは人の姿に戻った。中に入っていたルーシィは床に倒れこんだ。しかし、すぐさま立ち上がった。

 

「仲間のために涙を流せる人を妖精の尻尾(フェアリーテイル)が拒むはずがない」

(ルーシィさん…)

 

操られているはずのジュビアに少量だが涙が流れた。

 

「胸張っていいわよ‼︎アンタのおかげでいいこと思いついちゃった‼︎」

「くだらねえなとっととイカしてやりなジュビアちゃんよォ‼︎」

水流激鋸(ウォータージグソー)でバラバラになりなァァ‼︎」

 

ジュビアは水になり回転することで斬撃性を持たしてルーシィに突っ込んでいった。ルーシィはそれを足で止め、その間に鍵を取り出してジュビアの身体に突き差した。

 

「開け‼︎宝瓶宮の扉‼︎アクエリアス‼︎」

「ジュビアの水を使って星霊を⁉︎」

「水があれば最強の星霊のアクエリアスが呼べる。アンタのおかげよジュビア‼︎」

「やかましいわあ‼︎小娘どもが‼︎」

 

出てきたアクエリアスは力を貸すどころか怒り任せに水を大量にだした。だが、タカの髪はどんどん水を吸収していった。その時、ジュビアとルーシィが手を繋ぎ合わせた。

 

その時、最上階のタカのコマに亀裂が入った。

 

「何‼︎この魔力は、あんな小娘どもが魔力融合、

合体魔法(ユニゾンレイド)だと‼︎」

 

ジェラールは想像を超えた魔力に驚いた。

 

タカは減る勢いが全くない水についに吸収できる容量を超えて耐えきれなくなった髪が抜けてタカは倒れてしまった。そして、タカは気絶し、ジュビアも元に戻った。そして、ジュビアとルーシィが喜びながらハグをしていると、アクエリアスが怒りながらルーシィにせまった。

 

「どこから呼んでんだよ‼︎しまいにゃトイレの水から呼び出す気じゃねえだろうな?殺すぞてめえ‼︎」

 

アクエリアスの怖さに二人は震え上がった。

そして、アクエリアスが星霊界に帰るとルーシィは戦って疲れたのか寝転がった。

 

「あたしたちが一人やっつけたのよ。ジェラールの思い通りになんかならないわよ」

「いいえ、倒したのはルーシィさんですよ」

「二人でよ。あと、さん付けなんかしなくていいよ。だって、あたしたちもう仲間でしょ?」

「あれ、ジュビア…目から雨が」

「面白い表現ね」

 

ルーシィに仲間と認められたジュビアは嬉し涙を流した。

 

合体魔法(ユニゾンレイド)だと?偶然とはいえさすがはエルザの仲間ということか。こちらももう一歩コマを進めよう」

 

ジェラールは不敵な笑みを浮かべた。

 

その頃、ERAでは、エーテリオン使用について四対五によりエーテリオンの使用が見送りなりそうだった。だが、その時ジークレインは血相を変えて立ち上がり再度説得を開始した。だが、完全に議論は終わったとみている議員たちは聞き耳を持とうとしなかった。だが、「黒魔道士ゼレフ」この人物の名を出した瞬間、皆血相を変え始めた。そして、ジークレインはジェラールの使用としていることを話し始めた。ただ一人ヤジマだけは冷静にジークレインの話を聞いていた。

 

そして、場所は戻って楽園の塔ではルーシィとジュビアがまだ休んでいた。

 

「あっ!思い出しました」

「どうしたのジュビア?」

「ライトという名前。まあ、本名はジークフリートさんでしたけど思い出したんです」

「知り合いだったの?」

「いえ、そうではなく数年前新聞を読んでいた時に載っていたんです。その名前が…確かその記事は「若き天才魔導士」だったと思います」

「「若き天才魔導し」か。あっ、思い出した。あたしも読んだことあるけどそうなのライトっていうかジークフリート?めんどくさいからジークでいっかエルザたちもそう呼んでたし。で、話戻すけどジークは魔法学校を歴代最高成績で卒業した天才って言われてたの」

「ということはやはりかなり強いのですか?」

「それなんだけど、あんまりジークが戦ってるの見たことないんだ。そういえば、ナツもジークが本気出してるとこ見たことねえとか言っていたよ。たぶん、距離を置いていたんだと思う」

「そうなんですか」

 

二人がジークについて会話している時、張本人であるジークフリートは最上階に向けて走っていた。だが、その時ジークは直感で危険を察知し後ろに飛んだ。だが、少しタイミングが遅く、お腹のあたりに切り傷が入った。

 

「誰だ?」

 

ジークフリートが尋ねると、前から着物を着て刀を持った女が現れた。

 

三羽鴉(トリニティレイヴン)の一人、斑鳩ともうしますぅ」

三羽鴉(トリニティレイヴン)か、めんどくさいのが来やがった」

「そんなめんどくさいなんて、女性に対して失礼ちゃいます?ジークフリートはん」

「やっぱり、もうバレてんのかじゃあわざわざ変身しておく必要ねえか」

 

そう言うとジークフリートは自らにかけていた変身魔法を解いた。すると、水色よりの綺麗な青髪でジェラール、ジークレインたちと瓜二つの少年になった。ただ一つ違うところはジークフリートはタトゥーがなく左目の上に妖精の尻尾の紋章のスタンプがあった。

 

「ジェラールはんと似て美少年やね」

「それは、一種の侮辱か?あんま、嬉しくねえぞ」

「そうですか」

 

たわいもない会話が終わった瞬間、ジークフリートの腹に切り傷が入った。

 

「よう避けはったね。完全に殺したと思ったのに」

(こいつ、マジかよ。全く殺気を感じなかった)

「じゃあ、こっからは手加減なしで行きましょか」

「クソが!」

 

斑鳩は踏み込んでジークに切りかかった。それを、ジークは全て紙一重で避けてるつもりだったが、ところどころ傷が増えていっていた。

 

(くそ、これじゃやられる一方だ。アレを使うか?いや、ジェラールがどこで見てるかわからない以上。手の内を明かすのは避けたほうがいい)

「随分と考え込んだはるらしいけど、そんな余裕ありますか?」

 

さらに一歩斑鳩は踏み込んでジークとの間合いを詰めた。

 

「ちっ、仕方ねえ‼︎」

 

ジークは舌打ちをすると手を斑鳩の目の前に持っていき、斬られる直前手から強力な閃光を出すと斑鳩は手を止めて、急いで目を閉じた。しかし、間に合わず視界を奪われた。そして、目を開けるとジークはどこかへ逃げてしまっていた。

 

「獲物を逃したのは初めてやわ。流石、ジェラールはんの弟」

 

そう言って斑鳩はジークを追うのを諦め適当に歩き出した。

 

逃げたジークは追ってこないと確信すると壁にもたれかかり腹の傷を抑えた。

 

「これじゃ、ジェラールと戦えない。仕方ない少し休むか」

 

 

魔法評議会ERAでは賛成票を八票獲得しエーテリオンの使用が認可されていた。だが、それに納得のいかないヤジマが異議を申し立てた。

 

「待て、本当にエーテリオンを撃つのか?」

「ヤジマさん、納得いかないかもしれないが…」

「ジーク、お前の言ってることが真実ではないことはワスはわかっているのだぞ」

「‼︎⁉︎ヤジマ、ジークどういうことだ‼︎」

「みんな、ワスが面倒見ていたライトは知っているか?」

「ああ、魔法学校をあんな輝かしい成績で卒業した者を忘れるわけなかろう」

「そう、そのライトの正体はジェラールの実の弟ジークフリートだ。そして、ワスとジークフリートはジェラールの悪事を追っていた」

「それと、どう関係あるんだ?」

「大有りだ。そのジークフリートが言っていた。自分に兄は一人だと。ということはジークレイン、お前の言ってることは嘘だ」

「ヤジマさん、だったら俺は何なんですか?」

「それは、ワスとジークフリートで出した結論は主はジェラール・フェルナンデスの思念体だ」

「バカですか、ヤジマさん。だったら俺はなんで自分自身を殺さないといけないんですか?」

「そ、それは」

「それに、ジークフリートが俺の弟なのは確かです。向こうが覚えていなくても俺はしっかり覚えてます。昔のひどい行為で記憶が曖昧なんでしょう」

「だったら、なおさら実の弟を殺す気か⁉︎」

「はい、俺はジェラールとジークフリートの二人の弟の十字架を背負って行きます」

「だが…」

「ヤジマ‼︎」

 

ジークレインとヤジマの話に議長が割って入った。

 

「お前の言ってるいることは意味がわからん。これ以上議会の邪魔をするのであれば出て行ってもらう。いや、今すぐ出て行け」

「議長、ワスは…」

「衛兵、早く連れて行け」

 

すると、兵たちはヤジマに腕を掴み外に出そうと引きずって行った。

 

「では、仕切り直してエーテリオン発射の準備にかかれ!」

 

議長が叫ぶと全員動き出した。

 

 

そして、楽園の塔ではナツを飲み込み、ナツの魔力を手に入れた梟。しかし、偶然通りかかったグレイにより倒されたのであった。

 

そして、エルザのカードを持ったショウは最上階に向かって走っていた。その時、正面から斑鳩が現れた。

 

「てめえなんかに用はねえ」

 

ショウは迷いもなく斑鳩にカードを投げた。しかし、カードは綺麗に一枚を二枚にスライスされて勢いがなくなった。それどころかショウが気づかぬ間に胸が×印に斬られていて、ショウは倒れてしまった。そして、ショウの胸ポケットからエルザのカードが飛び出した。それを見た斑鳩はカードを斬った。すると、特別なプロテクトをかけているはずのカードの空間を超えて斬った。そして、連続でそれを繰り返していると、エルザはカードにできた隙間から出てきた。

 

「貴様のおかげで空間に歪みができた。それを利用して出てきた」

「そうでっか。でもな、全部見切れてはいまへんな」

 

斑鳩が自信満々に一旦瞬間エルザの鎧が砕けた。それを見たエルザは斑鳩を強敵として認識し目つきが鋭くなった。そして、二人は激突した。エルザは換装し攻撃をしたが斑鳩の凄まじい斬撃でほとんどの鎧が破壊されてしまった。そして、エルザはある決断を下す。

すると、エルザは何の魔力を帯びないただの服と一本の刀に換装した。

 

「あれだけの剣技を見せられてそんなんするなんて舐めたはりますな」

「舐めてなどいない。この一撃に全てを込める‼︎」

 

二人は同時に走り出し、すれ違いざまにそれぞれ斬った。そして、エルザは肩に負荷がかかったが斑鳩はもっと斬られていて気絶した。

 

そして、三羽鴉は全滅した。



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第3話

今回で楽園の塔編は終了です


斑鳩により傷を負ったジークフリートは目を覚ました。そして、状況を確認するため空を見ると頭上に巨大な魔法陣が描かれていた。

 

「まさか、エーテリオン!やばい!」

 

ジークフリートは魔力を最大限利用し高速に移動を始めた。だが、時すでに遅く塔全体が光に包まれ強大な魔力が塔に降り注いだ。

 

 

 

 

 

しかし、生きている感覚があり光が収まり周りを見渡すとそこには塔の石造りの塔の姿はなく巨大な魔水晶(ラクリマ)が現れた。

 

魔水晶(ラクリマ)、エーテリオン、ジークレイン、Rシステム、27億イデア…」

 

ジークは今までを振り返りワードを次々に口にする。そして、一つの結論にたどり着いた。

 

「まさか、吸収したというのかエーテリオンの魔力を!?ということは後必要なのは生贄。エルザが危ない!」

 

再度魔力を使用し最高速度で上を目指した。

そして、最上フロアにたどり着くとそこには倒れているエルザとナツの姿を見つけた。

 

「ナツ!、エルザ!」

「ジーク…なんで来たんだ」

「エルザが戦ってるのに逃げられるかよ!」

「ナツを連れて逃げろ」

「出来るか!俺はここでジェラールを倒す」

 

二人に駆け寄ると息をしているのがわかり一瞬安心をするとジェラールを睨んだ。

 

「遅かったな。ジーク」

「来させる気なかったくせによく言う。クソ兄貴。やはりジークレインはお前の思念体か」

「そうだ。記憶が曖昧になりジークレインの存在を忘れている。なんて嘘よく信じたな」

「確信が持てなかった。それほど俺はここでゼレフ教やお前にひどい目にあった。それと、もし本当なら優しい兄がいたらいいと思う俺の甘さが招いた。だが、もう迷わない。お前を今、ここで殺す!」

「やってみろ。だが、俺は知っているのだぞ。評議員のヤジマの協力によりライトという偽名と変身魔法を使い魔法学校で天才と呼ばれていたことを。そして、お前の使う魔法も!お前は俺に触れることも出来ん!流星(ミーティア)!」

 

ジェラールは天体魔法の流星を利用し高速でジークの周りを動き始めた。

 

「残念ながら魔法学校時代とは違う魔法を使えるようになってな、星神の流星(ミーティア)!」

 

ジークもジェラールと同様に光を纏い同程度のスピードで動き出した。ただ、違うことはジェラールの光が黄色なのに対してジークの光は黒い。

 

「天体魔法だと!?」

「お前みたいなチンケな魔法と一緒にするな!」

 

二人は高速で動きながら互いにぶつかり合い攻撃を加えていた。しかし、ジェラールの方が体格がよく空中で叩きつけられジークフリートは床に叩きつけられた。

 

「何がチンケな魔法だ。お前と違い俺はただ動いていたわけではない!これを書いていたのだ!」

 

ジェラールが叫ぶとジークの頭上に北斗七星の魔法陣が描かれた。

 

七星剣(グランシャリオ)!」

 

圧倒的な魔力の七つの光線がジークを襲いかかった。直撃すれば致命傷どころではない威力の魔法に避けるかジークはそのまま立ち上がった。

 

「…待っていた。この時をお前が大技で俺を仕留めようとする時を!」

「…何!?」

 

魔法がジークに直撃しようとしたその時ジークはこれでもかというほど口を開けて魔法を食べ始めた。

 

「魔法を食うだと!まさか…貴様、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か!?」

「滅竜魔法?違うな。失われた魔法(ロスト・マジック)、滅神魔法。天体の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だ!」

「滅神魔法だと!」

「神の裁きを受けるがいい!星神の怒号!」

 

黒い光のブレスがジェラールに襲いかかった。ジークの魔法に驚愕したジェラールは防御が出来ず直撃し倒れ床に叩きつけられた。

 

「はあ、はあ、くそ!滅神魔法とは…」

「終わりだ。あんたの攻撃は俺には通用しない。とっとと降伏しろ」

「はははは、はははは!」

「何がおかしい!?」

「実の弟だ。殺さず気絶で済ましてやろうと思ったが気が変わった。殺してやる!」

「負け惜しみは…うっ!ぐは!」

 

ジークは急に心臓が締め付けられるような痛みが走り血を吐き倒れた。そして、身体中に鎖のようなボディペイントがジークを縛るように広がってきた。

 

「何をした?」

「いつか脅威なるかもしれんお前をただで逃したと思うか?いつでも殺せるようにお前がここから逃げ出す前つもり8年前から仕込んでいた。身体を拘束し地道に魔力と体力を奪い終いには死に至る」

「く…そ…」

 

ジークは抵抗しようと試みたがついに倒れてしまった。

 

「はあ、はあ、二人も邪魔が入って塔も傷ついたがこれでいい。やっとゼレフに会える」

「ジェラール、貴様!実の弟まで殺すのか!」

「弟など関係ない。ゼレフ復活が第一」

 

ジェラールがエルザに近づきエルザを立たせようとエルザの腕を掴んだのと同時にジェラールの腕を誰かが掴んだ。ジェラールはその人物を確認しようと横を向いた時炎を纏った拳に顔面を殴られ飛んで行った。

 

「ナツ・ドラグニル。まだ動けたのか」

「エルザは渡さねえぞ」

「貴様らは何度もなんども俺の邪魔をしやがって…天体魔法の塵となれ!」

 

ジェラールが魔力を溜めだす。すると光源が逆になり始めた。

 

「気持ちわりい」

「この魔法は…」

「無限の闇に落ちろォォォォ!」

 

すると、エルザがジェラールの前に立ちはだかった。

 

「ゼレフ復活には私の身体が必要なのだろう!」

「ああ、聖十大魔道クラスの肉体が必要なのだが今となってはもう必要ない」

「エルザ!」

「大丈夫だ。私がお前を必ず守る」

 

ジークは力を振り絞り立ち上がろうと試みるが全然立ち上がれない。

 

(くそ!あれは天体魔法。二人が攻撃くらう以前に俺が食いきれば…だから、だから動け!俺の体!)

 

願いとは裏腹にどんどん体力と魔力が抜けていき倒れてしまった。

 

(ちくしょー、何にもできないのかよ!)

 

「終わりだ!天体魔法 暗黒の楽園(アルテアリス)!」

 

ついにジェラールの魔法は放たれた。黒球の魔法はエルザたちに向かって直進しそして、大爆発を起こした!

 

「エルザー!」

「エルザ!」

 

魔法に直撃したであろうエルザを心配し叫ぶナツとジーク。そして、煙が晴れてエルザの姿が見えたが無事だった。しかし、その真ん前に大きく手を広げボロボロな姿のシモンがいた。

そして、力が尽きシモンは倒れ込んだ。

 

「まだ、うろうろしてやがったのか虫ケラが」

「シモン!」

「ずっと、お前の…ゴホ、役に…ガハ、たちたいと思っていた」

「わかった!もう喋るな!」

「お前は優しくて…だい…」

 

シモンは生き絶え、身体がガクと倒れた。

 

「イヤァァァ!」

 

シモンの死に絶叫するエルザ。対象的にジェラールはシモンをバカにし大口を開けて笑っている。

 

「黙れ!」

 

ナツが立ち上がり右手でジェラールを殴り飛ばした。今まで以上の拳にジェラールは血を吐いた。

態勢を立て直しジェラールはナツを見てみるとその左手にはエーテリオンを取り込んだ魔水晶(ラクリマ)を持ち食べているナツの姿がいた。

 

しかし、複数の属性が混ざるエーテリオンの魔力に身体が拒絶をし苦しみだす。

 

(炎の代わりに大量の魔法を食べればパワーアップすると思ったか。その短絡的な考えが自滅を招く)

 

一瞬、驚いたが脅威がないとジェラールは思ったのも束の間ナツはエーテリオンを取り込み自らの力へ変換した。

 

「何!」

 

床を蹴り一瞬にしてジェラールとの距離を詰め殴る。その拳は先ほどよりも速く、そして強く。ジェラールは血を吐く。危機を感じたジェラールは「流星(ミーティア)」で距離をとる。このスピードにはついてこれまい。そう考えての行動だったがナツは再度床を蹴るとそれに難なく追いつきジェラールの胸に頭突きをする。

 

(くそ、エーテリオンを食って力にするか。ナツ(滅竜魔導士)が出来て(滅神魔導し)に出来ないわけがない!)

 

ジークも勢いよくその場の魔水晶のかけらを口にする。

 

「ごはっ!」

 

心とは別に体がエーテリオンを拒絶し吐くジーク。だが、それをさらに気力で押さえ込みかじりつく。すると、ジークは魔力の高まりを感じた。

 

(イケる!)

 

そして、ジェラールの方を向くとジェラールは煉獄砕破(アビスブレイク)の魔法陣を書いていた。

 

「塔ごとお前たちを消滅させてやる。また、8年。いや、今度は5年で完成してみせる。待っていろゼレフ」

 

(やらせるか!)

 

ジークは立ち上がり渾身のブレスを吐き出した。そして、それは煉獄砕破(アビスブレイク)発動の直前にジェラールに当たりジェラールは体勢を崩し発動を阻止した。

 

そして動きの止まったジェラールに今度はナツが殴りジェラールの体は塔の床を貫通し気絶した。

 

(私の(俺の)…8年間の戦いが終わった)

 

戦いが終わり安心するジークたちであったが一箇所に集めていたエーテリオンの強大な魔力が暴走を始めた。

 

「早く脱出せねば」

 

エルザは立ち上がり力を使い果たしたナツを支え歩き出した。ジークは自力で歩きジェラールの元へと歩き出した。

 

「ジーク何処へ行くんだ!?」

「エルザはナツを連れて先に出てくれ、俺はジェラールを…兄さんの所へ行く。殺すつもりでいたのに放っておけば死ぬとわかると見捨てられないらしい。やっぱり、兄弟だから。それに罪を償わずに死ぬなんて許さねえ、だから先に行ってくれ必ず追いつく」

「わかった。必ずだぞ」

「ああ」

 

エルザはまた歩き始めた。そして、ジークはジェラールの所までたどり着くとエルザがいないことを確認した。

 

(エルザ、ごめん。このままじゃ全滅だ。…俺がこの魔水晶と一体化してこの暴走を止める)

 

ジークは覚悟を決め魔水晶(ラクリマ)に手を置いた瞬間体は吸い込まれ始めた。

 

(よし、これならいける)

 

ジークがそう思った時視線を感じた。何かと思い確認するとジェラールが目を覚まし立ち上がっていた。だがジェラールの目は先ほどの野心に満ち溢れた目をしておらずどこか虚ろだった。

 

「兄さん!?」

「評議員を騙しお前やエルザたちの自由を奪い、シモンを殺してまでして得たかった理想は崩れた。もうおしまいだ」

「そうだな。…じゃあ兄さんここで黙って死ぬのを待つなら最初で最後の俺のワガママを兄貴らしく聞いてくれよ」

「…いいぞ。お前は何がしたい?」

「共に…罪を償おう」

「…そうか」

 

ジェラールも魔水晶(ラクリマ)に手を置くと二人は吸い込まれた。するとエーテリオンは大きな魔力を放出し出した。しかし、ジェラールとジークの力によりそれは上空へと放出され爆発よる被害が起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から一週間後、ジークとジェラールは帰って来ずナツたちはギルドに戻り今回の事件について話しジークは死亡扱いとなった。

そんなジークに対し評議員は命をかけてエーテリオンによる被害を抑えた功績や魔法学校を最高成績で卒業した実績などからジークレインつまりジェラールによって抜けた聖十大魔道の称号を永久的に与えることを決定したのだった。

 

 

 

だが…彼らは思いもよらない再開を果たす。

 



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復活編
第1話


だいぶ、話が飛びます。


 

ニルヴァーナをめぐる六魔将軍(オラシオンセイス)との戦いが終え、化猫の宿(ケット・シェルター)の真実を知りウェンディとシャルルは仲間になった。そして、そんな妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、ハッピーの五人。そして、元は化猫の宿(ケット・シェルター)のメンバーだったウェンディとシャルルの二人の計七人は深い森の中に入っていた。

 

理由は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間の一人。そして、つい先日目の前で捕まったジェラールの実の弟であるジークフリートを迎えに行くためである。

迎えに行くと言ってもどこかをふらついてるのではなくジェラール同様、楽園の塔の事件の時エーテリオンと融合したことにより封印状態になっているジークフリートのところに向かっている。場所は元六魔将軍(オラシオンセイス)のメンバーのホットアイ。本名リチャードに教えてもらった。

 

「着いたぞ」

 

エルザが皆に到着を伝えるとそこには大きな洞窟があった。

 

「行くぞ」

 

エルザの声にみんな頷く。そして、洞窟内へと入っていった。

奥に行くとそこには洞窟には似つかわしくない物語に出てくる吸血鬼が入ってそうな棺桶が一つ立てて置かれていた。

そしてそれをエルザがゆっくりと開けてみるとそこには鎖に繋がれているジークの姿があった。

 

「ジーク!」

 

すぐさまエルザは剣を装備し鎖を切りジークを解放した。

 

「ウェンディ頼めるか?」

「はい、頑張ります」

 

エルザに言われ拳を握り気合いを入れるとウェンディはジークの回復を始めた。そして、始めて1分ほど経つとウェンディは汗だくになりながらも作業を終えた。

 

「出来ました。これで多分大丈夫です」

 

ウェンディがそう言うとみんなは緊張がほぐれ安堵した表情になる。それをみてウェンディも役に立てたと感じ少し微笑んだ。

 

そして、回復をしてもらったジークはというとゆっくりと眼を覚ました。

 

「…ここは」

「ジーク、起きたか」

 

起きたジークにエルザは優しく声をかけた。

 

「…あなたは?」

「やはり、記憶を失ったか。大丈夫だ。私たちはお前の味方だ。安心しろ」

「…そうか、じゃあもう少し休ませてくれ」

 

そう言ってジークはもう一度目をつぶった。だが、先ほどまでとは違い昼寝のようにどこか気持ちよさそうな寝息をたてている。

 

「よし、では帰ろう。皆も心配しているだろうしな」

 

エルザがジークを背負うとみんなは洞窟から出ていった。

 

 

●●●

 

 

 

ジークはゆっくりと眼を覚ました。そこには彼の知らない天井。周りには見たことない植物などがあった。状況がわからず上半身だけ起こし首を動かし周りを見渡していると一人の年老いた女性がこっちに向かって来た。

 

「起きたのかい?調子はどうだ?」

「調子?悪くない」

「そうかい」

「…あの、あなたは?」

「私かい?妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師のポーリュシカだよ。エルザがお前を連れて来たんだよ」

「エルザ?」

「ああ、記憶を失ってるんだったね。お前は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導師でその仲間がお前を連れて来たのさ」

「魔導師ギルドの魔導師。俺が?」

「ああ、お前の詳しい事情はエルザに『ガチャ』ちょうど来たようだね」

 

ポーリュシカは玄関の音に反応するとエルザが入って来た。

 

「ちょうど今眼を覚ましたよ」

「本当ですか?ジーク!!気分はどうだ?」

「あなたが…エルザ?」

「ああ、お前の仲間だ」

「そうか」

 

ジークは知らない女であることは変わりないのだがエルザには本能的にどこか安心する感覚を感じた。

 

「じゃあ、エルザも来たことだし。今のジークフリート。お前の状況を言うよ。エーテリオンを食ったらしいね。それの副作用は基本数日間寝込むことで解消されるんだがお前の場合解消する前に封印なんてされたから体がおかしくなっている。だから、一週間は安静にすること。空いた時間は睡眠に時間を割きな、そして、一週間は絶対安静魔法を使うんじゃないよ。徐々に慣らしていくんだいきなりその体の魔力を一気に使おうものなら体が耐えられなくなって最悪死ぬ。わかったね!」

「は、はい」

「わかったならとっとと出て行きな!人間臭くて気分が悪い」

「えっ!?あっ、はい。ありがとうございました」

「ポーリュシカさんおせわになりました」

「2度と来るんじゃないよ」

 

そう言って追い出されるようにジークとエルザは家を出ていった。

 

「あの、エルザさん」

「エルザでいい。以前はそう呼んでいた。敬語も使わなくてもいいぞ」

「あー、そうか。じゃあエルザ、俺は…これから…どうすればいい?ごめん、ゆっくりな…喋りで」

「お前は封印されていて脳にも負担がかかってるゆっくりでいい。お前は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導師だ。今から妖精の尻尾に向かう。みんな、お前の意識が戻るのを待っていたからな」

「俺には仲間がいたのか?」

「「いた」ではない「いる」んだ。記憶をなくそうと私たちはジーク。お前を仲間として大切にする」

「…ありがとう」

「では行こう。帰ったらたぶん宴だぞ」

「へー」

 

ジークはそうしてエルザに連れられ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に行くとみんなは大泣きした後、大声をあげて宴を始めた。それの行儀悪さというか騒々しさによりジークは半分苦笑しながらも宴を楽しみだした。

そんな時、一人の少女を見つけたエルザが言っていた自分を助けてくれたウェンディという少女と見た目が一致したのでジークは彼女に礼を言おうと彼女に近づいた。

 

「君がウェンディか?」

「えっ!?あっ、ジークくん。うん、あのウェンディです。よろしくお願いします」

 

ジークは深々とウェンディにお辞儀をされ礼を言うタイミングを失った。

 

「えっーと、あの、ウェンディ」

「はい」

「ありがとう」

「……えっ!?」

「封印を解いてくれたのは…ウェンディと聞いたんだ…違うのか?」

「あっ、そうです。どういたしまして」

 

また、ウェンディがお辞儀をする。自分がすべきなのにされてジークは少し戸惑っている

 

「ウェンディ、すぐに頭下げすぎ。ジーク、あなたはあなたで言葉足らずなのよ。最初何のことかわからなかったわ」

「シャルル言い過ぎだよ」

「ネコ?」

 

急に現れた喋るネコを不思議がるジーク。するともう一匹喋るネコが魚を持ってシャルルの元へやって来た。魚をプレゼントしようとしてるのだが無視されている。

 

「なあ、あいつらは」

「あの子はシャルルで隣にいる青いのがハッピーで、二人とも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士なんですよ」

「そうか。…ウェンディ、歳が近いから…敬語じゃなくていい」

「えっと、うん、わかった。あっ、そういえばジークくんはどんな魔法を使うの?」

 

ウェンディは興味本位で尋ねると話が聞こえた他のメンバーから俺も知りたいなどの声があちこちから聞こえて来た。

 

「?あなた、元々ここのメンバーじゃなかったの?何で他のメンバーまであなたの魔法を知らないのよ」

 

シャルルが疑問に感じ尋ねたが勿論ジークにはわかるわけもなく首を傾げた。

 

「ジークは少し事情があって正体などを隠していたんだ」

 

戸惑ってるジークにエルザが助け舟を出した。シャルルもこれ以上深入りすべきじゃないと感じたのか納得した。

 

「えっーと、それでジークくんの魔法なんだけど」

「あー、俺の魔法か?俺は…天体魔法を使う滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)。天体の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だ」

「ゴッド?」

「スレイヤー?」

「滅竜魔法とは違うのか?」

 

聞いたことのない魔法にギルドのメンバーがざわつき始めた。すると、マスターがやって来て滅神魔法の説明を始めた。

 

「滅神魔法。失われた魔法(ロスト・マジック)の一つじゃな。その歳でそれを使うとは中々じゃな。ヤン坊から聞いたぞ昔魔法学校の卒業祝いにあげた滅神魔法のことが書いてある魔導書をプレゼントしたらそれを天体魔法に組み込みオリジナルの滅神魔法を作り上げたそうじゃな」

「オリジナル!?」

「誰かに教わったんじゃねえのか!?」

「すげー!」

「しかも、失われた魔法かよ!」

 

マスターがジークの魔法について説明するとみんな騒ぎだした。

 

「あの、ヤン坊とは?」

「わしの友達じゃ、お主の父親代わりもしておった。今度会いに行ってやれ。あっ、それとほれ」

 

マスターは何かを投げるとジークは一瞬驚いたがそれをキャッチした。それを見てみると何かのネックレスだった。

 

「これは?」

「聖十大魔道の証のネックレスじゃ、お主ののものだ」

「聖十大魔道?」

「この国の優秀な魔導師十人が与えられる称号じゃ、ちなみにわしも持っておる」

「…俺が?その聖十大魔道なのか?」

「ああ、お主のものだ。大事にするんじゃぞ」

「あっはい」

 

ジークはネックレスを受け取ると首にかけた。すると、みんなから似合ってねーなどのいじる声が聞こえたが皆、仲間がその称号を持っていることに誇りに思っているのをジークは感じたのだった。



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第2話

「はあ、何の仕事がいいんだ?討伐系は言うなれば戦闘だし今は正直やめたい、洞窟で宝探しもモンスターなんかがいないとは限らないから結局は戦闘があるだろうから却下かな。…劇の魔法演出の手伝いも俺の魔法は綺麗じゃないから向いてないし。魔法初心者の子供に魔法の基本レッスンなんてなー」

 

現在、ジークは目覚めてから一週間たち体もほとんどかいふくし会話もゆっくりではなく普通のスピードで話せるようになり始めたので仕事を探している。とはいえ、病み上がりなため、ポーリュシカの言った通り一気に魔力を使おう者なら倒れてしまう。そのため、出来る仕事は限られている。

 

「ジーク、仕事は決まった?」

 

看板娘のミラジェーンが声をかけてくれるが、ジークはクエストボードを見ながら無言で首を横に振る。ミラジェーンもクエストボードを見てみるが、彼女から見ても彼一人で出来そうな仕事はなかった。

 

「うーん。あっ、一人で出来ないならチームを組んだら?」

「チーム?」

「うん、仕事は別に一人でしなければいけないわけじゃないのよ。チームを組んで協力して難しい依頼を攻略するのもありよ。そうね、ウェンディ〜、シャルル〜!」

 

ミラジェーンはギルド内を見渡し、ちょうどデザートを食べながら休憩していたウェンディとシャルルを見つけた。

呼ばれた二人は首を傾げながらもミラジェーンの元へとやって来た。

 

「どうしたんですか?ミラさん」

「ジークと一緒に仕事に行ってくれないかな?」

「ジークくんとですか?」

「ええ、ジークは病み上がりだから一人で仕事に行くのはちょっと心配なの」

「ごめん、ウェンディ。そういうわけで付き合ってくれるか?」

「はい!任せてください。いいよねシャルル」

「まあ、いいわよ。でも危険が少ない依頼に限るけど」

「それなら、これなんかいいんじゃない?」

 

ミラジェーンが選んだのは護衛任務だった。

 

「ミラ、できるだけ戦闘は避けたいんだが……。護衛ってことは襲われる危険があるってことだろ」

「違うの。この依頼主は心配性で、商談で移動するときはいつも護衛をうちに依頼しているんだけど、みんないつも言ってるわよ。この任務は何もなさすぎるって」

「……ミラがそう言うなら。いいかな?ウェンディ、シャルル」

「はい、大丈夫です」

「いいわよ」

 

こうして、三人はチームとして依頼を受注した。

 

「じゃあ、明後日の朝7時にここ集合な」

「はい」

「俺は今日は帰るわ。じゃあな」

 

ジークは別れを告げギルドから出ていった。

そのあと、ウェンディたちもやることがないので帰ることにした。

 

そのあと、ミラジェーンはあることに気づいた。

(あれ?なんでいつもより依頼料が高いのかしら?)

 

 

 

●●●

 

 

 

2日後

朝の7時に集合した三人は依頼主の所に行き仕事の詳細を聞き、今は移動中である。ウェンディとシャルルは依頼主を守れるように依頼主と一緒に馬車に乗りジークはすぐに行動に移れるように馬車の屋根の上に乗り待機している。

 

(ミラの言ってた通り驚くほど何も起きないな。やっぱり、無理してでも討伐系とかにするべきだったか?)

 

などと、ジークはもう少しで目的地という所で警戒を一瞬解いてしまった。そしてその時、馬が急に荒ぶり始めた。手綱を握っていた御者は暴れだした馬に引かれて落下し、馬車は道を外れて走り出した。急な方向転換で車体が大きく傾き、ジークも落下した。

そして、ジークは急いで馬車を追おうとしたが、その前に二人の男が立ちはだかった。

 

「おいおい、妖精の尻尾(フェアリーテイル)って言ってもガキかよ」

「黙れ、俺たちは与えられた任務を遂行するだけだ」

「……何者だ」

「俺たちは闇ギルド【二角獣の蹄(バイコーンフーフ)】だ」

 

その二人の男の体には、二角獣を模した紋が覗えた。

 

(闇ギルドか。あの依頼主、荷台になに載せてやがんだ!)

 

 

 

●●●

 

 

 

馬車内では、ウェンディが依頼主の盾になるように位置どりしていた。

 

「ミラったら何が安全よ」

「シャルル、文句を言っても仕方ないよ」

「ていうか、何で襲われてるのよ!」

 

危険が少ないと言われていたのにかなりのピンチになったことでシャルルが依頼主に詰め寄った。

 

「……どこで漏れたかは不明だが、たぶん滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)が目的かと」

「滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)ですって!」

「はい。特別な物で、適応者が体に埋め込むことで滅竜魔法が使えるようになります。適合しないにしても高値で取引されるものです」

「なるほど、この馬車を襲う動機は十分ね」

 

滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)という物があることに驚きはしたが、相手の狙いがわかったシャルルはこの状況を打開出来るか思考を巡らす。だが、ここには戦闘が出来る者などほとんどいない。そのことにシャルルは頭を悩ます。

 

「ねえ、シャルル。馬を止めることって出来るかな?」

「無理ね。あの馬はもう自分の意思で動いてないわ。たぶん、精神操作系の魔法ね。まあ、止める方法があるにはあるんだけど」

「あるの!?どうするのシャルル」

「簡単よ。馬を殺せばいいのよ」

「えっ!?」

「ほらね、あなたのことだから絶対にそんなことは出来ないでしょ」

 

ウェンディという少女はとことん甘い。若さゆえもあるが、それを踏まえてもなお甘い。そんな虫も殺さぬような少女は、依頼のためとはいえ、自分の意思ではなく操られているだけの馬を殺すのでさえ躊躇してしまった。

 

「……でも、それしか方法がないのなら」

 

ウェンディは覚悟を決め馬を攻撃しようとした時、シャルルがそれを停止させる。

 

「もう、手遅れよ。敵のアジトに着いてしまったわ」

 

シャルルに言われウェンディは前方を見ると石造りの建物が見えた。

 

 

 

●●●

 

 

 

「おい!お前たちのアジトはどこだ!」

 

立ちはだかった二人の男はあまり強くなかったのか、ジークはあっさりと倒してしまった。一人は気絶させたが、もう一人はわざと気絶させず、胸ぐらを掴んでアジトの場所を聞き出す。その顔は子供が出すにはおっかなすぎる顔であった。

 

「ここから先の森の中にある石造りの建物だ」

 

ジークは場所を聞くと男を一発殴って気絶させた。

 

(間に合ってくれ)

「星神の流星(ミーティア)

 

ジークは黒い光を纏うと、光速で移動し始めた。

 

 

 

●●●

 

 

 

「邪魔だ、小娘!」

「行かせません!天竜の咆哮!」

 

ウェンディとシャルルは分かれて行動することにした。ウェンディが囮となって二角獣の蹄(バイコーンフーフ)の追っ手を防ぎ、その間にシャルルは翼で依頼主と滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)を安全な場所に運んでいる最中である。

 

「バーニア、アーマー」

 

天空魔法で自らを強化するウェンディ。攻撃を避けることに専念する。

しかし、敵は1VS1ではなく見た所数は少ないが腐っても1ギルド。彼女はどんどん傷付いていった。そして、後退していた時地面からはみ出た木の根にかかとが引っかかりこけてしまった。

 

「きゃあ!」

 

そこを見逃さず、一斉に彼女に襲いかかる。ウェンディは目をつぶり体を丸めて少しでも衝撃に耐えようとした。その時、黒い光と共に青髪の少年が間に割って入った。

 

「星神の怒号!」

 

その少年から口から放たれた光線は、ウェンディを襲いかかろうとした者に直撃し、吹き飛ばした。ウェンディは目の前の少年に、以前自分を助けてくれた恩人の面影を重ね、懐かしく感じた。

 

「……ジェラール?」

 

そう呟くように言った彼女は、急に脱力感に襲われ、倒れてしまった。

 

「……ジェラール?誰だ?悪いけど俺はジークフリートだ」

 

そうして苦笑するジークは、彼女の背中と膝裏に手を回し持ち上げると近くの木にもたれさすように優しく置いた。

そして、残っている二角獣の蹄(バイコーンフーフ)のメンバーを睨むその顔に、数滴の汗が流れた。

 

(くそ、魔力はあるが体がきついな。正直一人一人はそんなに強くなさそうだが数が多い。倒せても体が耐えてくれるかわからない。だけど……)

「仲間傷つけられて手加減するほど、俺は賢くねえぞ!」

 

ジークが叫ぶその瞬間、無数の黒き光の玉が彼の後ろに現れた。

 

「星神の流星群(メテオシャワー)‼︎」

 

ジークの声と共に光の玉が一斉に発射され、二角獣の蹄(バイコーンフーフ)を襲う。だが、それを耐えたり避けた者が距離を詰めて来た。それを手や足に光を纏い白兵戦で対応する。

 

「星神の星雲(ネビュラ)

 

次にジークが地面を突くと、黒いガス状の物が噴き出し二角獣の蹄(バイコーンフーフ)の視界を塞いだ。そうして動きを止めたところを、今度は星神の流星(ミーティア)で敵に捕まらないように順に倒していく。そして、トドメをさそうと思った瞬間、ジークの全身が悲鳴をあげ、その場で倒れ伏した。それにより星神の星雲(ネビュラ)がとけ、視界が晴れてしまった。

 

「がはっ!」

 

体の不調は続き、さらに吐血してしまうジーク。それに気づいた二角獣の蹄(バイコーンフーフ)の連中はジークに向かって、手加減するどころか先ほどまでの恨みを晴らすように最大級の技を連続でくり出してくる。

 

その攻撃により、体の内側だけでなく外側にも激痛が走る。ジークは立ち上がって戦うどころではなく腕を動かすのがやっとだった。

 

「くそ、こんな子供一人にほとんどやられるなんてなどうなってんだ」

「だが、ほっといてもこいつは直に死ぬ。それより、そこの小娘殺して早くあのネコを追うぞ。評議員を呼ばれたら厄介だ」

「そうだな」

 

二角獣の蹄(バイコーンフーフ)の一人が無防備のウェンディに近づきトドメをさそうとする。それを止めるためにジークは腕を伸ばし、そして、地面に手を置いた。

 

(よし、まだ使える)

 

そして、ジークは地面に魔力を流し込むすると、三箇所輝き出した。その後その点同士をつなぐ様に地面に光の線が現れ、三角形が出来る。

 

「なんだ!?」

「あいつ、まだ何かやる気か!?」

「先にあいつを殺せ!」

 

二角獣の蹄の連中は危機を感じ、ウェンディからジークに標的を変えて迫って来た。

 

「もう遅い。さっきは攻撃しながらこれを画いてた。ありったけの魔力だ。くらいやがれ!」

 

ジークが叫んでさらに魔力を込めると、三角形の内側も輝き始めた。

 

「星神の三角陣(デルタフォース)S!」

 

光はさらに濃くなり、そして、爆発が起こり火柱が上がった。

 

 

 

●●●

 

 

 

ジークはゆっくりと目を開ける。そこには見慣れない天井が見える。状況を確認しようと上半身を起こすと、いつもより動かしにくく感じ、体を見ると全身包帯が巻かれていた。

 

「えっと、何が起きたんだ?まずここは?」

 

ジークが考えてるとガチャっと扉を開く音がし、ウェンディとシャルルが入って来た。ウェンディの腕にも少し包帯が巻かれていて顔にもガーゼが貼ってあった。

 

「あっ、シャルル!ジークくん起きてるよ!」

「言われなくてもわかってるわよ」

「あっ!二人とも。ここは?てか、ウェンディはその怪我大丈夫か?」

「あなた、自分の方がひどいのよ」

「こんなの大したことない。ていうか、状況は?」

「ジークくん!大したことあるよ!私も途中から治療を手伝ったけど、本当に危なかったんだから。もっと自分を大切にしてね」

「ご、ごめん」

 

ジークは急に歳下であるはずのウェンディに怒られて少し緊張した。

 

「えっと、急に怒ってごめんなさい。でも、本当に自分を大切にしてね。私、ジークくんが目を覚まさないんじゃないかって、心配だったんだよ」

 

今度は歳相応の涙を見せ、いたたまれなさを感じた。

 

「本当にごめんな。もう、ウェンディを心配させるようなことはしない。そうだ!約束する。俺は強くなってどんな敵が相手でも余裕でウェンディを守れるようになってやる。そうすればウェンディもそれなら安心だろ?」

「……うん!」

(ジークもウェンディも、他人にはプロポーズにしか見えないってこと、気づいてないのかしら?)

 

シャルルは目の前の純粋な会話にため息をついた。

 

「えっと、ジーク。状況が知りたいんでしょ」

「あっ、そうだった。頼む」

「はい。シャルルが依頼主さんを目的地に送った後、評議院に通報したらすぐに駆けつけてくださった検束部隊の方々の働きで、二角獣の蹄(バイコーンフーフ)はみんな捕まったらしいです」

「あと、一応依頼主の護衛ってのは達成されたから報酬は貰ったけど、あなたとウェンディの治療代でほとんどなくなったわ」

「そうか。でも、無事ならいいか」

「で、体の方はどうなの?」

「大丈夫だ、問題ない。だから、マグノリアに帰ろうか」

 

ジークが言うとウェンディは頷き、シャルルも了承したので三人はマグノリアに向かった。

 

 

 

●●●

 

 

 

マグノリアに戻り、一応ポーリュシカの所に顔を出したジークは現在呆れられてる。

 

「全く、あれほど魔力の使いすぎはダメだと言ったのに、お前はそんなことも守れないのかい?ったく、奇跡だね。無理に魔力を使ったから、それに合わせて体が耐えられるように急成長してる。だから、これからは普通に魔法を使って大丈夫だよ」

「本当ですか!」

「そうだよ。わかったらとっとと出て行きな」

「ありがとうございます」

 

ジークはポーリュシカの家を飛び出すと、森の真ん中で叫んだ。

 

「よっしゃああ!完全復活だ!」




書いてて思いました。技名がセンスないなって


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