IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫ (初月)
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番外編 - Gryphus Squadron -
番外編1 - Gryphus Squadron - 白騎士事件の日 前編


白騎士事件の日のオーレリアです。
ほとんどオリジナル


あの戦争が終わってから数か月たったころ。

 

私はオーブリーの空を飛んでいた。

 

機体は性能がそこそこいい上に艦載機である Rafale M である。

 

 

 

ユジーンから緊急無線が来た。

 

クラックス≪弾道ミサイルの発射を確認!現在飛行中の航空機は直ちにこれを殲滅してください!≫

 

≪どういうことだユジーン!?≫

 

普通に考えたらあり得ない。なんでそんなことが起きるんだ?

それに弾道ミサイルといえばレサスから接収したSWBMである。誤射で済むような兵器じゃない。

 

だがさらに衝撃的な情報が告げられた。

 

クラックス≪それが・・・発射機構が外部によるハッキングを受けたみたいで・・・≫

 

グリフィス5≪はぁ!?≫

 

≪目標は?≫

 

あまりにも衝撃的過ぎて逆に落ち着いてしまった。

しかしなんて痛手だ・・・。ただでさえ予算がないっていうのに・・・。

 

緊急時に私なんてこと考えてるんだろう・・・。

 

そんなことを思ってたら通信が返ってきた。

 

クラックス≪方角から換算するに日本(ノースポイント)かと思われます≫

 

私はあることに気が付いた。

 

数発だけではこんなに早く目標はわからないはずだ。ここからノースポイントまでの間には様々な国があるはずだ。どちらに飛んでいくのかで変わるがエルジアやユークトバニアを通過する。

 

そのことに僚機も気が付いたようだった。

 

グリフィス5≪待てユジーン!どうやってそんなに早くわかったんだ?≫

 

クラックス≪それが・・・全世界からほぼ同時刻にノースポイントへ向けて弾道ミサイルの発射が確認されました・・・≫

 

絶望感に満ち溢れた声だった。

 

≪な、なんだって!?弾頭は!?あと位置をいってくれ!≫

 

予想はついていたから正気は保てていた。

 

だがここからさらに衝撃的な話が入ってきた。

 

クラックス≪オーレリアから上がったのは通常弾頭です。他国からの弾頭には一部が核のようです・・・≫

 

私は思った。もしこれがノースポイントに着弾したらユリシーズに次ぐ被害になりかねない。

 

次に入った通信は落ち着いた声をしていた。

 

クラックス≪位置ですがあなたたちからみて4時方向です。今旋回すればちょうどヘッドオンできる位置に目標が飛んでいます≫

 

グリフィス5≪わかった。迎撃に向かう≫

 

私たちは安心した。これで一発は確実に落とせる。

 

≪そういえば他の目標はどうなった?≫

 

精神的に余裕が生まれたので自分を落ち着けるためにも聞いた。

 

クラックス≪ファルコ隊が復元したフェンリアを用いて攻撃を行っているようです≫

 

いつものクラックスの声だった。もう落ち着いたのだろう

 

≪ファルコ隊か・・・≫

 

アレクト隊との交戦を思い出した。そういえばあいつの息子って私のファンだとか言ってたね。

この任務が終わったら・・・っとこれはフラグだから基地に帰ってから考えよう。

 

クラックス≪隊長?≫

 

心配そうな声で聞いてきた。あれ?ユジーンってファルコ隊のこと知らなかったっけ?

まあそこらへんは後で聞くとしよう。

 

≪ちょっと物思いに耽っていただけだ。問題はない≫

 

結構物思いに耽っていたようでもうレーダーに目標の表示が出ていた。

 

グリフィス5≪目標をとらえた。FOX3!FOX3!≫

 

僚機に先手を取られたな・・・。まああれの撃墜はグリフィス5に任せるとしよう。

数秒後、目標にミサイルが直撃。しかしそれが弾頭に命中してしまいとんでもない轟音と爆風に包まれた。

 

≪きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?≫

 

グリフィス5≪ああ!ミサイルがぁぁぁぁぁぁ!?≫

 

無線を悲鳴が飛び交う。

 

 

 

気づくと私の機体はまるで木の葉のように落ちていた。

失速しているようだ。

 

ベイルアウトしようかどうが迷ったがエンジンをふかすと機位が安定したので脱出するのはやめた。

 

グリフィス5は・・・あれ?居ないな。死んでないよな?

 

 

電子機器を見てみると現在の状況が分かった。

 

≪こちらグリフィス1、レーダーが死んだ。基地への誘導を頼む≫

 

機体は失いたくはない。

 

クラックス≪それ以外の電子機器は大丈夫ですか?≫

 

ちょっと慌てた声で聞いてきた

 

≪どうやら大丈夫そうだ。ところでグリフィス5は大丈夫?≫

 

すぐ無線が返ってきた。

 

グリフィス5≪ミサイル以外は大丈夫だ。ところであの弾頭はなんだ?≫

 

どうやら大丈夫そうだ。ミサイルはあの爆風で飛んだりしたんだろう。

 

クラックス≪さぁ・・・。ただモンテブリーズ近郊より飛来したものだといのは確かですね≫

 

モンテブリーズと聞いて私たちは妙に納得をした。

M.B.S.R.を2か月で完成させたモンテブリーズの技術力だ。どうせSWBMを応用してつくったんだろう。

 

そのあと機体を損傷した俺たちは近くを航行していた空母に着艦した。

 

 

この事件の結末とその後の世界の流れを見て私は「あと1年早くISが出来ていれば」と思った。

 

 

でも私にとってはその日は白騎士事件よりその後に起きたレサス軍過激派によるオーレリア襲撃のほうが印象に残っている。

 

私の Rafale M の修理が終わったころに緊急発進命令が出た。

 

《国籍不明機の大編隊レサスより接近中!各機スクランブルしろ!》

 

「またレサスからの侵攻かよ!?」とか「また戦争なのかよ・・・」とか悲痛な叫びがあちらこちらで湧きあがった。空母航空隊は被害こそ少なかったが友人を失った人は多い。

 

まあ私みたいに仲間が根こそぎいなくなったなんて人は少ないだろうけどね・・・。

 

 

数分後私はまた空に上がった。

 

そのとき来た無線に驚愕した

 

?≪あー、あー、こちらレサス空軍第103航空師団第1飛行隊隊長のハンター1だ≫

 

なぜレサスから通信が?まあいいや、理由を聞こう

 

≪こちらはオーレリア空軍のグリフィス1だ。貴機の意図を問う≫

 

降伏しろとでもいうのだろうか?だとしたら殲滅するだけだが。

 

ハンター1≪クーデターを起こした航空隊がオーレリア方面へ逃走した。迎撃してくれないだろうか≫

 

え!?あの大編隊がクーデター軍なのか?多過ぎだろ。大体30機はいるぞ。

 

クラックス≪ではそちらのIFFを送信してください。そのあと我々のIFFを送ります≫

 

さすがオーレリアでもっとも実戦経験を積んでいるAWACSだ。冷静に対応してくれた。

こんな感じでA.L.C.が来たことがあったな。あいつら今何やってんだろう?

あとで調べて訪問してみるか。

 

IFFが送信され広域レーダーに表示された。機数は8機。これで敵とほぼ同数だな。

だが安心はできない。レサスのクーデター部隊は多分戦争の生き残り、対するこちらは新人が紛れている。

さらにオーレリア空軍には乱戦経験者が少ない。というかまともな空戦がSWBMによる破壊によって終始起きていなかったのだ。

 

私だって乱戦は対アレクト隊戦ぐらいしか経験していない。

 

でも・・・味方が心配なら自分が頑張るしかないよね。

 

そう思った時にはオーレリア戦闘機隊の先陣に立っていた。

 

≪グリフィス1、エンゲージ!≫




原作買うまでの番外編でも書こうかとおもったらなんかかなり長くなってきたので分けて投稿します。


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番外編2 - Gryphus Squadron - 白騎士事件の日 後編

≪グリフィス1、エンゲージ!≫

 

その一言から28対30の空戦が始まった。

 

機種はオーレリア航空部隊がRafale M、レサス空軍の追撃隊が高速のF-15Cだった。

 

対する敵機はF-35とF/A-18Eの混成部隊であった。

 

そこまでの確認を終えるとF-35に対しXMAAを放った。

 

そのとき空母から無線が入る。

 

空母 ≪敵航空部隊に陸上機はいるか?≫

 

意図は不明だったが私は正直に答えた。

 

≪すべて艦載機のようだ。ただF-35は陸上機型が紛れているかもしれない≫

 

空母は即座に命令を出した。

 

空母 ≪こちらは空母グリスウォール、オーレリア海軍の各艦に次ぐ。レサスのクーデター軍艦隊が領海侵入してきた場合は無条件で破壊せよ≫

 

うわ・・・結構むごいこと言うねこの艦長。無警告撃破はいただけないな。

 

そんなことを思っていると

 

グリフィス5 ≪グリスウォールに報告だが追撃部隊が誤進入してくる可能性がある。警告は入れろ≫

 

代弁してくれる人がいた。

 

この無線を聞いている間に私は撃墜数を3機増やしていた。

 

 

ここからの光景は壮絶の一言に尽きるものだった。

 

まずオーレリア軍の航空隊がヘッドオンでミサイル発射。大体敵一機に付き2発から3発飛んでいった。

 

さらにそれに反撃して敵もミサイルを一斉発射。パッと見200発のミサイルが飛び交う光景なんてそうそう見られるものじゃない。

 

回避機動をとったりで結構編隊が乱れるも距離が縮まったころには正面向き合っての機銃の撃ちあいが始まった。ここで私は味方の機動をみることにした。

 

ヘッドオンの際、敵とすれ違う少し前に旋回をかければ後ろが早くとれるのだ。

 

失敗すれば敵の前に出てしまう危険な技だからこそタイミングが読めなければ使わない。

 

つまり何人ベテランが居るのか見てみたくなったってわけだ。

 

そしてすれ違う時、旋回を仕掛けたのは私たちを含めて12機。

 

さらにヘッドオンだけで撃墜したのが2機だ。

 

これなら頼れると思った私は急旋回で敵の後ろに付きミサイルを発射しながら機銃の圏内におびき寄せていった。

 

そしてハンター隊が飛び込んできた。

 

彼らも飛び込んできた際に追いかけることに夢中になっていた何機かを落とすあたり腕が立つやつらのようだ。

 

おびき寄せていたら前に敵機が集まってきたのでミサイルを叩き込んだ。

 

そのうち一機が後ろからのミサイルを避けた。それが気になった私はそいつに追撃を仕掛ける。

 

? ≪おい!あれはネメシスじゃないか?≫

 

アレ?今まで気づいていなかったのか。

 

てことは案外錬度が高い部隊じゃないのかもしれない。

 

そう思った直後

 

友軍機 ≪エンジンがやられた!脱出する!≫

 

友軍機の悲鳴が聞こえてきた。

 

やはり私が追いかけているやつはエースらしい。

 

 

ただそいつのミスは友軍機を機銃で落としたために後ろに気づかなかったこと。

 

次の敵を探すつもりでうろつき始めたであろうやつに機銃を撃った。

 

 

あえて機銃にしたのは気づかれないためだ。

 

そしてミサイルを撃った。

 

≪グリフィス1、FOX2!FOX2!≫

 

やつは一発は避けたが二発目は避け切れずに機体に直撃した。そしてパラシュートが出て木の葉のように海上へと落ちて行った。

 

久しぶりのエースだったので落ちたと思われる座標を空母へ送信した。あとで話でもしたいな。

 

 

私がそのエースを落とすころには戦闘が終わっていた。ヘッドオンとそのあとのカウンターで結構な数が落ちたようだ。

 

このとき私は思った。

 

味方が多いのはいいことだと。

 

 

 

直後に無線が入った。

 

クラックス ≪レーダーにレサス艦出現。攻撃を確認しましたので直ちに撃沈してください≫

 

まだ続くのね・・・。

 

そう思いながら着艦した。

 

でも軍人だからしょうがないかという半ばあきらめのような気持ちでおしのけた。

 

 

 

 

一日に3回飛ぶのは流石に辛い。でも艦隊攻撃に加わった。

 

 

もちろん護衛の役割ではない。落ちかけたやつが一日に3回も戦闘機動をやらかしたらそれはもはやただのチートだ。

 

甲板要員の錬度が高いのか兵器の換装が早く終わった。

 

もう少し休みたいなとかいう気持ちを置いてまた空にあがった。

 

 

 

ここからが結構な地獄だった。

 

発艦したあと攻撃隊は高度3000mにて集合、その後低空を駆け抜けるベテランと高空を駆け抜ける新兵に分かれたのが問題だったのかもしれない。

 

 

低空部隊はミサイルにロックされる心配がないためかなり近距離から撃てるが新兵はそうではない。

 

だから新兵部隊がまず撃った。

 

 

でも遠距離からでは迎撃されていしまうのだ。中々当るものじゃない。

 

だから機銃座とかそこらへんを片付けるくらいのことにしかなっていなかった。

 

 

でもここまでは問題ではなかった。

 

問題なのは新兵集団が帰ってしまったことだった。

 

 

 

そこに迎撃機が襲来した。

 

 

 

火を噴きあげる友軍機・・・とはいかなかった。

 

私たちが早いタイミングで対艦ミサイルを撃ち、護衛に回ったからだ。

 

 

でも混戦は免れなかった。

 

まず機銃で先遣隊を落としたのはいいが、近づきすぎていたのでまともに高度があげられない。

あげたところでミサイルの餌食である。

 

僚機がつぶやく。

 

グリフィス5 ≪クソッ・・・!なんてやりずらい護衛任務だ!≫

 

≪それでも守んなきゃ!≫

 

誰でもわかっていることを言った。ここで悪態をつくのは攻撃隊に悪い。

 

 

でも私は前言撤回といいたくなった。

 

 

 

レーダーを見ると迎撃機が30機以上映っていたからだ。

 

 

 

 

でもそのころに攻撃が終わった。

 

戦果は空母小破、イージス艦が大破でその他もろもろも小破以上にはなっているようだ。沈没は4隻かな?

 

私は迎撃機を友軍機に任せて弾幕を避けながら空母へと向かった。弾幕は攻撃で弱体化していたのでギリギリ通れるくらいの隙間があった。

 

 

僚機から

 

グリフィス5 ≪おい!何をしに行くつもりだ!≫

 

と聞かれたので

 

≪甲板の機体をぶっ壊してくる≫

 

と答えた。

 

弾幕に飛び込むのは自殺行為だとしっているからみんなから止められたけど来たんだよね。

 

 

薄くなっていた弾幕を抜け空母と発進準備中の戦闘機がみえたので少し高度を上げて上から撃った。

これが近くにあった弾薬か燃料に引火したらしく10秒後に大爆発が見えた。

 

そのあとの離脱方向へは護衛艦船が居なかったので帰りは楽d・・・燃料がマズいな。しかも高度を上げられないと来た。

 

人生で初めて死ぬかもしれないという思考が出てきた。

 

 

空母の甲板を破壊したから迎撃機は来ないがVLSは破壊できていない。つまり対空ミサイルは飛び放題。そして俺は今戦闘機動でもしようものなら2,3分で燃料がなくなって人生終了だろう。

 

 

結局低空を這いずり回るはめになった。

 

空母グリスウォール護衛群が対艦攻撃のために敵艦隊へ接近していたことが私にとって功をそうしたようだ。

 

だって着艦したあと燃料計を見たら0だったし。

 

 

私はこんなスリリング体験のせいで白騎士事件のことはあんまり印象深くは覚えていないのだ。

 

クラックスからあの事件の深刻さとかいわれて勲章までもらったけど正直評価するなら対レサスクーデター軍戦にしてくれよと内心願ったものだ。

 

 

ちなみにクーデター軍は損傷を受け、レサス正規軍に降伏したらしい。

なんかレサスでも内戦終結の立役者的に扱われているそうだ。

 

 

 

空母グリスウォールと航空隊の連中、今何してるんだろうなぁ・・・。




これから投稿ペースは落ちると思いますが了承願います。


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番外編3 - Gryphus Squadron - ハイスペック

ほぼ黒歴史。
でも消さない。


 

戦争が終わってから1年くらいたったころ。

 

 

私は兵器開発部の研究所に来ていた。

 

理由は私のRafaleへどんなカスタムをするのか?と新型機の性能はどんなのがいいかといういたって普通な理由とちょっと変な機体が出来たから意見をくれという特殊な理由だった。

 

え?カスタムをなんで研究所でするのかって?

 

 

それは数日前格納庫で

 

「戦闘機に空中管制機能つけたらどうなるんだろう」

 

と冗談半分で言ってしまったからだ。

 

 

ほんの冗談に過ぎなかったのだがこの発言、ただせさえ人材不足なオーレリアの切り札になるかもしれないとどんどん話が大きくなりいつの間にか試験機を作ることにまでなってしまった。

 

 

そこで呼び出されるのは原案を出した私になったわけなんだが・・・。

 

 

「なに・・・これ・・・」

 

目の前の試作機を見て絶句した。

試験飛行をしたファルコ1曰く「扱いづらいがうまく使えばフェンリアなんて余裕で落とせる」機体だそうだ。

 

だが形はかなり変なものである。というかよく飛んだなとか思ってしまうレベルだった。

 

X-02を元に作られた可変する主翼、カナード、尾翼。

 

Su-37から得た3次元偏向ノズルエンジン。

 

F-22より少しは劣るが高いステルス性。

 

極め付けには機体上部に張り付けられた大型索敵レーダーと機体下部に設置されたショックカノン搭載可能なパイロンである。

 

これがフェンリア2機分くらいの大きさを持つ機体に取り付けられていた。

 

あまりにもとんでもない物だったので気絶しかけた。

 

そこで正気を保つためにあることを開発班の一人に質問した。

 

「予算は大丈夫なのか・・・?」

 

帰ってきた答えは衝撃とかの域を超えていた。

 

開発班員A「グレイプニルよりは安く済みましたよ」

 

私はただ絶句するしかなかった。そのあと飛びかけの意識で正確な数値で聞いたがその金額を聞いて倒れかけてしまった。

 

値段は・・・大体現代戦装備の戦艦が1隻くらいと思ってもらえればいい。

 

航空機にかける値段じゃない。

 

 

 

これはあとで聞いたことだが、設計班が色々載せられることに気づいてレールガンやショックカノン、戦略レーザーやECM防御など色々特殊兵装として追加したせいらしい。

ちなみに特殊兵装は一つしか積めないというところは他の機体と変わらないようだ。

 

でもそれを作り上げる奴らにも問題があると思う。

 

武装の値段を引けばAWACS並で収まるようだ。

 

航続距離は巡航時4000km、最高速度はマッハ1.8とのこと。こっちはふつうかな?

 

 

私は純粋に思ったことを口にしていた。

 

「これ戦闘攻撃機として使えばかなりの高性能機になるんじゃない?」

 

開発員A「なら愛称とか考えてくださいよ!」

 

それから1時間ほど話し合った。

 

その結果、この機体は

 

戦闘攻撃機型・・・AF-XFA-1 Elva

電子戦機型・・・AF-XEA-1 Elva

 

になった。

Elvaは開発員の「これグレイプニル並の強さがあるのでは」という発言からあれの墓場となった都市、サンタエルバからとった。

 

 

新型機関係の話はこれで済んだので私の機体のカスタムについての話となった。

 

 

私があらかじめ考えていた要求は、速度・機動性・装甲をどれも上げてほしいということだ。

 

最初から分かっているがこんなの普通のところに出したら間違いなく即座に断られる。が、今回はM.B.S.R.の設計から製造、配備までを二か月以内ですませたモンテブリーズの研究者が相手だ。

 

遠慮なんて言葉はなかった。むしろ遠慮なんかしたらただの侮辱だ。

 

 

だが相手の答えは予想の斜め上を行った。

 

開発班員A「その程度でいいんですか?」

 

少し驚いた。少しで済んだのはさっき変態すぎる試作機を見たせいだろう。

そのときふと思ったことがあったのでそのまま言ってみた。

 

「じゃああとはレーザーとかレールガンを搭載できるようにして。あと私の愛機を改造するんじゃなくて新造したRafaleを改造して。正直今の愛機のRafaleはすでに軽いカスタムはしてあるし結構慣れてるからね」

 

無茶な要求をしてみたが相手はすんなり受け入れてくれた。流石はモンテブリーズの奴らだ。

 

すんなりだったのでさらに追加注文することにした。

 

「できればF-22のステルスが看破できるくらいのレーダーも乗っけといて。ただしそれによる性能の低下は許さないよ」

 

それも受け入れた。

 

 

 

 

数週間後に私のところに来たRafaleはなんか違うものになっていた。

 

その名も

 

-----Rafale Gryphus

 

垂直尾翼に小さく記されていた。

 

 

 

そのあと各種試験を行い、テスト飛行で空戦も行った。

 

恐ろしいことだが空戦性能としてはF-22複数と互角に戦えるレベルだった。もちろんレーザーとかを載せてはいない。

 

何てものを作る奴らだ・・・。

 

注文の斜め上をいきやがったぞ・・・。

 

その後この機体はRafale Gとして正規採用されてしまったのだった。

とか落ちがつけば笑い話になるのだが改造費が高くて正規採用とまではいかなかった。私が知っているのは予備機として10機ほど生産されたってことぐらいだ。

 

まあその予備機に乗る連中は大体想像がつくんだけどね。




Rafale Gryphus

空中管制機もしくは友軍機との連携により敵ステルス戦闘機を探知することが可能。

特殊兵装は
・戦術レーザー1門(照射回数に制限あり)
・小型レールガン2基(一門につき10発が限界)
・長距離空対空ミサイル(普通のXLAA)
・長距離対艦ミサイル(普通のLASM)
・長距離衝撃波弾頭ミサイル(LSWM)
・QAAM
など

となっている。搭載できるのはこの中の一つのみ。

レーザーやレールガンを搭載しているときは機動性などの性能が低下する。


AIM-9などは常時搭載している。

固定兵装
・20mmガトリング機関砲

機動性的にはSu-37に近い面がある一方である操作をできるようにしたことで安定性も高い。

ただここまでの廃スペック化の反動としてコストと生産性が犠牲になった。

参考値として生産性を挙げると通常ラインなら一年に5機生産が限界である。



AF-XFA-1

フェンリア強化版。一言でいえばそれで済んでしまう機体。

空中管制が可能で色々な機体の組み合わせにより大型だが戦闘機並の機動性を確保した。しかし操縦は難しいものとなっている。

特殊兵装の組み合わせによってはグレイプニルを上回る性能を発揮する。
また軽いステルス性を有する。

特殊兵装および固定兵装だがまだ決定していない。

値段は恐ろしいこととなっているが使用法はアメリカでのB-2の運用に近くなるので問題とはされていない。



と設定的なものを書いてはみたけど出番はないと思います。
発想が多分エスコン世界で第六世代に相当してるADF-1とかCFA-44とかフェンリアとかを越えかけてるんで技術的に最終話までに間に合うことはないでしょう。


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番外編4 - Gryphus Squadron - 飛行実験隊

番外編だけど自己満足要素が強いかな。
というわけでそういうのがダメなかたは見ないほうがいいかもしれません。

自己満足というよりはISの出ない話を書きたかっただけかも?


2023年5月。

 

モンテブリーズ近郊の空軍基地のブリーフィングルームにたった6名の戦闘機乗りがいた。

まだブリーフィングは始まっていないのでざわざわしている。

 

…根も葉もないことを言ってしまえば暇を持て余しているだけである。

 

「なあ、南十字星。最近要撃とかはどんな感じなんだ?」

と聞いてくるのはアクィラ1。

 

ファルコ1の次に腕が良いといわれているパイロットで、

「前ほどじゃないけど週2のペースであるね」

と答えたのが南十字星ことグリフィス1。つまりは私だね。

 

「おかげで教官になれた奴らが羨ましいよ」

とぼやいたのが私の僚機を務めるグリフィス5だ。

 

「そのうち回ってくるんだからいいでしょ。グリフィス5」

「いや、もう待てない。いっそのことユジーンを脅して無理やり…」

そして暴走しかけたグリフィス5に

「やめといたほうがいいと思います」

と忠告したのはアクィラ1の新しい僚機である新生アクィラ2(女性)である。

背は私より少し高いくらいなので小さいほうに入るだろう。

 

「そういえば今回はどんな任務なんだ?」

ふとさっきから気になっていたことを口にした。

 

「さあ?そういえば新型機を開発したって噂を聞いたぞ」

 

「じゃあ試験飛行か…。懐かしいな」

 

そのまま俺が戦争前の試験飛行のことを思いだし、そしてその時のメンバーを思い出して暗い気分に陥りかけたころアクィラ1が口を開いた。

 

「じゃあ俺らも試験飛行するのか?」

そう聞かれたのでふと前に行った試験飛行を思い出した。

 

確か試験機と観測機、それに護衛機がいたはずだ。

試験機は多分経験者である俺で、観測ならユジーンがやってくれるだろう。

 

「アクィラ隊は護衛か観測じゃないか?」

 

「そうか。なら新人つれてても安心だな」

その発言とともに新生アクィラ2のほうを見ると緊張しているのが感じられた。

あの緊張具合はなんだか―――

「もしかして、彼女今日が初陣?」

  ―――初陣という感じがした。

 

「いや、これでも3回目だ」

…随分と緊張してんじゃねーか。これならアクィラ1が心配になるのもよくわかるってくらいに。

普通ならもう慣れ始めてくる頃なんだが…。

 

「もしかして、初陣で何かあった?」

そう聞くと、アクィラ1の反応が変わった。

…なにか、あったんだな。

 

一瞬いうのを躊躇ったがアクィラ1は言葉を続ける。

「やられはしなかったがベイルアウトする経験を初陣でやっちまったんだ」

 

「そりゃ災難だったな。でも初陣で被弾後ベイルアウトの判断ができるくらいに余裕があったなら今後に大きなきたいがもてるぞ!

喜べ!アクィラ1!」

色々気にせず有望株が見つかったことで俺はかなり喜んだ。

だが俺はあることに気づく。

 

たった6人しか居ない部屋でこんなに喜んだら間違いなく有望株(アクィラ2)さんに聞こえているということに。

 

冷静さを失うって怖いなと痛感し、静かにしているとユジーンが入ってきてブリーフィングが始まった。

 

 

 ◇

 

ブリーフィングが終わり、パイロットスーツに着替えた俺たちは歩きながらハンガーへと向かっていた。

…さっきの俺の発言以降さらに落ち着かない様子になってしまった新人らとともに。

 

さっきの発言、完全に失言だったな。

まあ安心なのはうかれている様子ではないので希望が潰えていないということだろう。

 

ちなみに今回私が乗る機体はRafale F。

Rafale G(番外編3参照)の改良?版だ。

正確に言うと中央パイロンにEMLを、主翼パイロンにはLASM、XMAA、SODの中から選択したものを装備でき、サイドワンダーを4連発射できるように改良したうえで、色々そぎ落としたり付け加えたりした結果F-22の2/3ぐらいの値段で作れるように抑えた機体だ。

 

あとグリフィス5はXFA-24の改良型に乗るらしいがそちらは詳しい説明を受けていないのでよくわからない。

 

G型より遥かに使いやすくなっているだろう。

多分…。

 

そんななかアクィラ1に声をかけられた。

 

「どうしたアクィラ1?」

「いやぁ、さっきのお前の言葉のあとから新人がいつも異常に緊張しているんだが…」

 

そう言われて再度新人の緊張具合を確認する。

 

「まあ飛行に支障はないだろ。空戦になったら…退避させたほうがいいかもな」

「それ任務に支障ありってことじゃぁ…」

「そうだけど替えの人材は無いから無理。あ、でもユジーンなら…どうだろうなぁ…」

任務に支障が出ると言っても欠員の時点で既に…でも飛ばすのはもっと危ないかもしれないが…どうしよう。

だけど飛ばさないのも精神的に不安定になっている彼女の心に傷をつけてしまうかもしれない。

 

そのまま思考は堂々巡りし、結局

「心配だが…南十字星なら守れるだろ?な!」

という感じで結局アクィラ1に押し切られてしまった。

 

心配だけど経験は積ませたいみたいだね。

地上で見るよりは空から見たほうが分かりやすいからかな?

 

まあもしものときは守りきってみせよう。

…まだ乗ったことの無い新型機で、だが。

 

 

 ◇

 

特にトラブルは起きずに試験飛行は終わりを迎えようとしていた。

しいて言うならば模擬空戦の相手がファルコ隊だったおかげで機体を壊さないように気を使わなければいけなかったというところだろう。

Rafale Fは機動性安定性ともに良好といえる物で、主力戦闘攻撃機と成りうるだろう。

問題としてはEMLとその他特殊兵装を同時に使うのが少々きついというくらいだな。

 

XFA-24の改良型のほうは無線で聞いてみたら機動性がかなり上がりはしたが安定性が最悪だったようだ。

対地攻撃を考えなければ使えなくもないもの…であると思いたい。

でもApalisは対地攻撃に使う武装をかなりつめる機体だったはず…。

 

そんなことを考えながら空中給油の試験を済ませた。

こちらは特に問題無し。

 

そして補給を終わらせて俺らが基地へと機首を向けたとき、ユジーンより無線が入った。

 

<<所属不明のF-16C4機がそちらへ向かっています!迎撃してください!>>

そうか。

残念だけど俺たちは交戦せず…ってあれ?

別に交戦は禁止されてないのかな?

 

そういえば搭載しているのは実弾だったし、この機体に今のところ異常は感じられない。

なら―――

<<了解。グリフィス1交戦(エンゲージ)交戦!>>

 ―――大胆にいかせてもらおうじゃないか。

 

 

 ◇

 

結果で言えば発見から35秒で敵機を全て撃墜することに成功した。

全機が非常にきれいなヘッドオンで瞬く間に敵機を撃墜したのだ。

 

おかげで今は撃墜ポイントの確認や脱出した敵パイロットがいるのかとかを確認している。

パラシュートは4つ。全員脱出できたようだ。

そのことをオープン無線で報告したあとに今回の先頭に関して少々思い返していた。

 

ファルコ隊は既に降りていたので飛んでこなかったから丁度一人一機撃墜したことになる。

正直アクィラ2はまだ撃墜は出来ないと思っていたがやっぱり素質はあるんだね。

こういうときはちゃんと賞賛の言葉を送ろうじゃないか。

<<グリフィス1よりアクィラ2、ナイスキル!初撃墜おめでとう!>>

 

そして賞賛の言葉に

<<あ、ありがとうございます>>

と無線で返したアクィラ2は緊張していながらも少し嬉しそうではあった。

罪悪感を抱いていないのは脱出を確認できたからかもしれない。

 

彼女がきれいな心を残したまま立派なパイロットとなることを願っていたのであった。

 

ちなみに

<<帰った後はアクィラ2初撃墜のお祝いだ!>>

そういうアクィラ1と

<<やった!>>

と喜ぶアクィラ2の影で

<<後席の俺たちのことを忘れてないか?>>

と突っ込むアクィラ隊の後席たちが居たのだが、

「完全に忘れてました。すみません」

と無線を切った状態で俺は謝ったのだった。

 

単座だとどうも後席の存在を忘れがちだな。

 

 

またあいつとF-15Eあたりで空に上がろうかな。

 

そんなことを思いながら基地へと戻っていった。

明日は休みだから今日は飲み明かそう。




成長物語を書くのって難しい


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番外編5 - Gryphus Squadron - 過去の幻影

グリフィス隊の日常編(オーレリア戦争直後)です


2021年2月。

レサスの暫定政府樹立の話がまとまりはじめたころ。

 

サンタエルバ航空基地、それも予備機用格納庫の前にグリフィス隊の姿があった。

 

何故そんなところに居るのかと言えば答えは一つ。愛機を壊してしまったのだ。

より正確に言うのならばまともな整備を行う時間すら惜しんで出撃したことによりガタが来たというわけである。

 

そういうわけで予備機の出番となった。

 

「俺たちが大丈夫ならなんとかなると思ったんだがな……」

 

そう漏らしたのはグリフィス5だ。

 

「戦闘機たちは結構繊細ですのでもっと丁寧に扱ってください」

 

小言を言う整備員を前にして俺たちは苦い表情することしか出来なかった。

 

「これからは気を付けます」

「その意気でお願いします」

 

説教を受けつつ格納庫で少し埃を被っている機体の前に到着する。

 

「こいつが新しい相棒か?」

「ええ、これがこの基地で最高の状態で残された予備機、ミラージュ50EAです!」

 

目をキラキラさせながら整備員が指示した方向にあったのは小さなカナードを付けたデルタ翼機だった。

 

既に旧式と化していたミラージュ5のエンジンを高出力で低燃費なものへ換装し、レーダー等の電子機器を最新鋭のものにすることでミラージュ2000に近い性能まで持って行ったオーレリアでの近代化改修型である。カナードもその時つけられたもので、これで低空や離着陸時の性能を底上げしたらしい。

 

「デルタ翼機か。興味深い」

 

珍しい機体に巡り合えたからか、そんなことを口走っていた。

 

 

 ◇

 

「それでお前らはそんな機体というわけか。気の毒なことだ」

 

司令部で絡んできたのはミルバス隊の隊長殿だ。

オーレリア南部の掃討作戦等で活躍していたらしく一部では有名なのだが、レサスに侵攻する勢いで北進していた俺たちからしてみればあまり知らない部隊の隊長であった。

最近ではサチャナ基地やサンタエルバ基地勤務が多いのでよく会い、よく飲む仲だ。

 

「少しばかり飛び過ぎたらしい。まあオーレリア戦争のころから酷使してきたから愛機にとってみればいい休暇だろう」

「そんなことを言えるほど余裕があるのは流石オーレリア一のエースといったところか」

 

皮肉を交えた雑談に二人とも笑い、そして自らの現状に溜息を吐いた。

 

「なんで機体が限界を迎えるまで飛び続けてるんだろう……」

「休暇……休暇が欲しい……」

 

気付いた時にはそんなうわ言を吐いていた。

 

「俺の前だからまだいいが他の奴らの前ではそんなこと口走らないでくれ。士気にかかわる」

 

普段とは打って変わって真面目になるグリフィス5に苦笑した。

 

「それじゃ俺らはここでお別れだ」

「次の任務か?」

「ああ、空から逃げられない運命を背負ってるんでね」

 

またいつか、と言い残してブリーフィングルームへと入っていった。

 

 

 ◇

 

ミルバス1に別れを告げてから間もなく。

俺たちは早速予備機格納庫前の駐機スペースに向かっていた。

 

「予備機受領から間もなく出撃とはついてないっすね」

「試験飛行の代わりと思え、グリフィス5」

「了解です、隊長」

 

疲労の籠った声で会話しつつ準備を整える。

声こそ疲れているものの手際は良い。それがまだまだ戦えるという意志を示していた。悪態をついているとはいえ既にマニュアルを把握しているのだって証拠だ。

 

「電撃的侵攻だったとはいえまだ残党が居るというのか……」

「規模的には徐々に小さなものになってるのでそう心配することはないでしょう」

 

グリフィス5の言葉で少し昔を思い出した。

思えばアーケロン要塞を陥落させた直後の戦闘ではレサス国境に近いサルーカだったとはいえ防空網制圧すら必要とする規模であったことを考えれば、今回の自走対空砲が一両しかいない部隊というのは小さいものかもしれない。

 

「そうだな。変に気を張ることもない……か」

「ええ、それでは行きましょうか」

 

グリフィス5はそういうとタラップを一気に駆け上がり操縦席へと移った。

直後ジェットエンジン特有の甲高い音がなる。

相変わらず行動が早いなと少し感心しつつ傍らにいた整備士に話しかける。

 

「こいつに癖とかはあったりするのか?」

「それは分かりませんが……しばらく飛ばしてない機体なんで気を付けたほうがいいとは思います」

 

歯切れの悪い返答に苦笑を浮かべつつ一気にタラップを駆けあがった。

 

「しばらくのことになると思うがこいつを頼むぞ」

「分かりました。幸運を!」

 

整備士の意気の良い返答に手で合図を返し、キャノピーを閉じる。

 

<<遅いですね、隊長>>

 

若干苛立ちの混ざった声が無線越しに聞こえてきた。

 

<<待たせてすまんな。それでは行くか>>

 

謝罪の無線を入れると同時にジェットエンジンの甲高い音が私にも響き始めた。

そして各種機器の確認の後、地上要員の指示に従いエプロンを走り始める。

 

<<グリフィス隊よりサンタエルバ管制塔、滑走路進入許可を求む>>

<<既に許可は出ている。A滑走路に進入せよ>>

<<了解>>

 

確認の後、グリフィス5の前に出て誘導路を通り滑走路に入る。

間を開けずに俺に続いてきたグリフィス5も位置につく。

 

<<グリフィス隊、離陸準備完了>>

<<サンタエルバ管制塔よりグリフィス隊、離陸を許可する>>

<<了解した>>

 

その返答と同時にアフターバーナーを吹かし急加速を開始する。

旧式とはいえ改修されたミラージュ50は瞬く間に空に上がった。急角度での上昇で一気に1000フィートへと到達する。

 

<<グリフィス隊、スプレッド隊形へ移行!>>

 

そう指示を出して、急上昇していった。

ほぼ真上を向いた機体は瞬く間に雲を突き抜ける。

 

そうして雲海の上に躍り出た。

 

<<近代化改修しただけはあるな>>

<<あとはカナードの恩恵ですかね>>

 

初めて乗る機体に対して各々述べながら太陽に向かってサンタエルバを後にした。

 

 

 ◇

 

―――カラナ平原。遺跡や廃墟の点在するこの場所は幾度となくゲリラの拠点となり、その度爆撃されていた。

そして学術機関から苦情が来る、というのがいつもの流れである。

 

そんな空軍パイロットに面白おかしく、割と洒落にならない話が語られる場所を飛んでいた。

 

<<相変わらずこの辺りには残骸しかないな>>

<<ええ、平和なら遊覧飛行とかしてみたい場所ですね>>

 

グリフィス5がふと言った冗談に少し微笑む。

 

<<そんな日を目指して飛び続けるのも悪くない>>

<<……案外理想家なところありますね>>

<<あって悪いか!>>

 

グリフィス5の口撃に少し大きな声で対抗しながら作戦空域に入っていく。

 

<<情報によると敵拠点はこのあたりですが……>>

<<目視では見当たらないな。FLIRには怪しげな反応があるが>>

 

通信しつつ赤外線画像を眺める。

それには遺跡の壁から若干はみ出た履帯らしきものが写っていた。

 

<<どこら辺かわかりますか?>>

<<方位030の遺跡群付近だ>>

<<了解。試し撃ちしてみます>>

 

報告の後、緩降下していったミラージュ50がDEFA機関砲の30mm砲弾をばら撒いていく。

砂漠と遺跡に着弾したそれらは大きな砂煙のみをあげた。そして、爆炎が発生した。

 

<<戦果あり!敵部隊を視認しました>>

 

グリフィス5がそう叫ぶと同時にエンジン出力を上げていく。

 

<<トレード隊形に移行しろ!次に反転したら爆撃だ>>

<<了解!>>

 

指示を飛ばしつつすぐさま展開された敵対空機関砲からの弾幕の中を駆け抜ける。

弾丸が機体を掠める音を聞きながら瞬く間に弾幕を潜り抜けた。

 

俺の後に続くようにもう一機のミラージュが飛び出した。

 

<<被害は無いか?>>

<<ええ。幸いなことに無傷です>>

 

その返答に安堵する。今回の機動はかなりの無茶をしていたからだ。

いくら腕が良くたってどうにもならない状況になりかけていた。疲労で判断力が鈍っているのかもしれないと思いつつも指示を出す。

 

<<それでは空襲を開始する。俺が戦車を纏めてやるからお前は装甲車と対空砲を狙え>>

<<了解。盛大なパーティーといきましょうか>>

 

その無線を合図として反転し、緩降下を開始した。

すぐさま戦車にペイブウェイをロックオンし2発投下。左旋回をして離脱する。

 

<<グリフィス1が敵戦車破壊!俺も続くぜ!>>

 

威勢よくグリフィス5が突撃した。

離脱後に機体を右に傾けつつ、通過した跡を眺めると大きな爆炎と共に炎上する地上兵器が見えた。

 

<<敵車両の全損を確認。作戦完了だな>>

<<ですね。たった一機とはいえ対空機関砲に突撃するのは度胸が入りますね>>

<<そうだな。状況が許すなら対レーダーミサイルで作戦前に掃討しておきたいものだ>>

 

愚痴をこぼしつつ機首をサンタエルバ基地へと向けた。

 

<<グリフィス隊、RTB>>

 

ミラージュシリーズ特有のデルタ翼を輝かせながら舞い戻っていった。



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プロローグ
第0話 プロローグ


プロローグのキャラは

グリフィス1:エスコンXのプレイヤーキャラ。一人で一か国くらいいけるかもしれないレベルの腕を持つ
グリフィス5:オーブリー岬からずっとグリフィス1の横で任務を遂行してきたパイロット。撃墜数は7機
ファルコ1:エスコンXiの主人公。オーレリア軍撤退時に活躍した。
ファルコ2:新人パイロット。ファルコ1いわく腕は悪くないそうだ。
クラックス:ユジーン・ソラーノの乗る空中管制機が使っているコールサイン

という感じです。

2014/7/25 一部改訂


2020年の末にオーレリア戦争はあるパイロットとレサスで起きた革命により終結した。

 

2021年、IS<インフィニット・ストラトス>と呼ばれる機械が開発された。以降はISと表記することにする。

 

その後発生した白騎士事件においてISの圧倒的性能が披露されたことにより世界のパワーバランスが崩壊した。戦闘機や現行ミサイルではISに対抗できないと思い知らされたのだ。

 

 

そして2026年・・・。

 

オーレリア軍最初の反撃を行い解放まで行なったパイロット、グリフィス1こと俺は太平洋上で輸送機の護衛任務をしていた。

 

正直私は軽く心配している。

 

「クラックス、ただでさえ人の少ない俺たちがこんなに動いていいのか?」

 

そうすると落ち着いた声でクラックスに返された。

 

<<隊長、あなたたちはたった6機ですよ。大丈夫です>>

 

6機って対フェンリア戦より一機すくないだけなんだよなぁ・・・。

そうするとまた無線が鳴った。

オーレリアの軍人のあいだでは影の英雄といわれているファルコ1からである。

 

<<流石に神経質過ぎだ、グリフィス1。積荷を考えるとむしろ少ない>>

 

「そうか、少数での作戦に慣れすぎたかな?」

 

言われてみるとあの戦争では少数での作戦しかなかったな。敵の残党軍と味方の防衛隊の戦力が同じなんてざらだった気がする。

 

<<それはあるかもしれませんね>>

 

そう返事をするのは専属空中管制官になりつつあるクラックスだった。

他愛の無い会話をしていると意外そうな声で俺の部下が無線で流した。

 

一回撃墜されたがまた空へと戻って来た男だ。

ただ援護以外は余り上手くない。

 

<<隊長、今日は珍しく喋るな>>

 

そのことあんまり指摘されたくないんだが・・・。

 

<<え!?グリフィス1って無口だったんですか?>>

 

新しいファルコ1の部下が驚いたような声で俺の部下の言葉に返した。

 

ちょっと喋るのやめようかな。からかわれるのは好きじゃない。

 

<<そうだ。あいつは基本黙ってる>>

 

ファルコ1の証言でさらに俺無口説が広まっていくのだが、実際にこれから通信する奴はたいしていないだろうから問題は無いはずだ。…無い…はずだ。

…やっぱりあんまり言わないでほしい。

 

「今日は暇なんだよ・・・。」

 

そのあと俺は少し黙った。いじられるのは好きじゃないからな。

 

友軍機は輸送機とも無線で会話しながらのらりくらりと飛んで行った。

 

 

 ◇

 

もうIS学園が見えてきたころである。クラックスから無線が入ったのは。

 

<<レーダーに自衛隊機6機、機種はF-15J改です。一応グリフィス5は接近および交信を試みてください>>

 

<<グリフィス5了解、行動に移る。>>

 

その数秒後、グリフィス5は叫んだ

 

<<ミサイルアラート!?攻撃してきやがった!>>

 

グリフィス5がミサイルを避け終わったころにまた無線が入った。

 

<<自衛隊に問い合わせたところ強奪された機体と判明、撃墜を許可します>>

 

「了解。グリフィス1、エンゲージ」

 

俺の発言を皮切りに空戦が始まった。

とはいっても流石に錬度差があったようで会敵から30秒でかたがついてしまった。

 

正面からミサイルを何発か撃っただけとか手応えが無いのにもほどがある。

 

<<皆さん腕は衰えてないようですね>>

 

クラックスの発言とともに無線が一気に来る。

 

<<皆さんといっても6機中4機はグリフィス1だけどな>>

<<これがトップエースの機動・・・。>>

<<隊長、正直少し怖いです>>

 

「そんなこと言うな。少し悲しいぞ」

 

また他愛の無い会話がはじまるかと思うとクラックスからの通信が来た。

 

<<皆さんつきましたよ。こちらオーレリア空軍輸送機隊、着陸許可を求む>>

 

管制塔からの通信がはいる。

 

<<貴機らの着陸を許可する。管制塔の指示に従って着陸せよ>>

 

こうして俺らの護衛任務は終わった。

 

 

その後オーレリア軍日本派遣の出迎えの時に俺が逃げた話はちょっとした笑い話となった。

あとでグリフィス5を絞めてやる。

 

 

 ◇

 

着陸から1時間後くらい。

俺はIS学園での上官兼教官となる織班千冬さんと話していた。

 

理由は簡単である。

 

 

本国から運んできたISをここでテストしろとの命令が下りていた。そして追加で来た命令は「あのISはなんとしてでも守れ、そしてできるだけISの操縦を覚えてこい」とのことだった。

 

 

 

なんでそんな役目が俺に回ってきたかって?

 

なぜなら俺は女だからだ。

 

 

俺は戦闘機のりのままでいいんだけどなぁ…。なんて思っていたら千冬さんから

 

「お前、案外背が低いから転入生として学んでみるのはどうだ?」

 

と言われた。酷い冗談だ。

だが昔から高校生活というものに若干興味があるのは事実だ。

 

「そんなこと出来るのでしょうか?」

「ああ、何かしらの公的機関の認証を受けていればの話だが」

 

そういわれて心が揺らぎ始めた。

 

ハイスクール程度の知識なら余裕で応えられるといえるほど頭に残っている。

だが自分が学生を演じる姿を想像するととても気持ち悪かった。

 

あんなことやってられるか。

 

そんな思いが顔に出たのか千冬さんが口を開いた。

 

「悩むくらいならやってみるといいさ。なに、今の自分でやるのがいやなら外面だけでも取り繕えば問題ない」

 

「でもそんなことしたら疲れてしまいます」

 

反射的に答えた。

貴族として社交の場に出たときに外面を取り繕うことの辛さをいやというほど実感していたからだろうか。

だが千冬さんは揺らがない。

 

「そうだな。だから選択は強制しない。

ただ今の一年に混ざれば対IS戦闘も事欠かないだろう」

 

「あなたもそのほうが楽だからでは?

まあいいです。受けますよ。仕事のためと思ってやってやります」

 

この際俺が千冬さんの押しに負けただとかそんなことはどうでもいい。

 

私は受けることを決心した。

 

そして千冬さんの顔が少し緩んだ。

やっぱり押してたな。

 

「わかった。では書類の件だが…」

「流石にそれくらいはそちらでお願いします。私は寝るので」

 

そう言い残して応接室のソファで眠りに就いた。

話に乗ってやったんだ。それくらいはいいだろう。




初投稿です。

なんでテストをIS学園で行うのかとかは次の話で明かしたりします。
あと参考のためにできるだけ感想を書いてくれるとありがたいです。

誤字などがありましたら感想のところに投下してください


4/4 一部修正

2015/7/21 大幅修正


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第1話 グリフィス1、転入する

4/4 一部改訂

2014/7/25 改訂

2015/7/21 大幅改稿


数時間後、たたき起こされた私はIS学園へと歩きつつ千冬さんが口を開く。

 

「そういえばなんでで本国テストを行わないんだ?行えないほど小さい国ではないだろう」

 

千冬さんは結構鋭いところをついてきた。

 

「6年前の戦争で出来た古傷がまだ残っているんですよ。」

 

どうにかぼかしながら答える。

正確に言ってしまえば航空機が壊滅している状況でISが出来てしまい判断に困っているし、航空機を使うにしても教官職につける人が少ないという問題も出てきてしまっていた。

そこで転換を考える、というのが最近の小国のトレンドなのだが、生憎国内の復興と外部から侵入してくる国際犯罪組織やテロ集団などの対処に人出を裂かれIS適正の検査に避ける人員すらいないのが現状だった。

 

オーレリア空軍万事休す!となってもおかしくない状況なであり、ISに乗りたいなら支援はしてやるから留学しろというスタイルであった。

 

「6年前の戦争での被害はかなり大きい物だったようだな」

 

「ええ、まぁ」

 

俺が頑張ったんですけどね。

 

なんてつける気はない。地上部隊も頑張っていたからな。

だから俺はオーレリアの英雄と呼ばれるのは好きじゃない。

英雄はあの時戦っていた全員なのに私だけが注目されている気がするからだ。

 

それに俺が支えたのは明くまで奪還作戦で、後方や陣地維持の際に大活躍したファルコ1みたいな人もかなりいた。

 

「まあいい、ところでお前のISの武装とかはわかるのか?」

 

オーレリア戦争の話がまあいいで片付けられてしまった。まあいいか。

本題とずれるのはあまりよろしいことじゃない。

 

「そういえばレーザー兵器を積んだとかは聞きましたね。」

 

「レーザー搭載ということは攻撃特化型か?」

 

「流石にそこまでは把握してません。ただ技術実験機でもあるのでマルチロールではないでしょうか」

 

というかそうじゃなかったら嫌です。試験機なのに特化型だったら怒るよ。

 

「おっと・・・。あとで寮監室に来い。続きはそこで話そう」

 

千冬さんはそういうと同時に携帯端末と荷物が渡された。寮監室の位置が記されているようだ。

 

横を見ると生徒が何人か近づいてきていた。軍服姿を見られるのは構わないが、転入にサプライズは大事だろう。

そう思って格納庫へと逃げ込んだ。

 

それにしても手際がいい。千冬さんが優秀なのか、それとも最初から転入させる気が合ったのか。

まあ、どちらにしろ俺の仕事は変わらない。

 

 

 ◇

 

格納庫に戻ってきたらもう輸送機から荷物は降ろされていた。

 

護衛の戦闘機はまだいるようだ。

 

箱の上に座って雑談しているのはファルコ隊のよう。

トランプがあるからポーカーでもしようとしていたのだろう。

 

近づく俺に気がついたのかファルコ1が話しかけてきた。

 

「テスト飛行の件はどうなった?」

 

「ああ、それなら結構先のことになりそうだよ」

 

学園に入からね!テヘッ★

 

なんて言えるわけない。言ったら「テヘッ★」の部分が無くても軽く引かれるだろう。

なんたって俺は26歳、大学生とかと変わらない年齢だからな。

 

学校生活するならこの口調も直さなければいけないかもしれないな。

まあこんなんでも一応貴族なので口調くらいはお手の物だ。まあ著しく疲れるが。

 

「じゃあ俺たちとはしばらく会えないんですか?」

 

少し悲しげな声で言うファルコ2。慕われるのは悪くないかな。

 

「まあそうだな」

 

そのしばらくは3年くらいだけどね。

 

慕ってくれている後輩に3年会えないのはつらいな。なんて少しだけ思った。

 

でも部下はもう2人しかいないのだけれど・・・。

 

そのあと整備員に注文と機体の癖を言ってから格納庫を後にした。

 

 

 ◇

 

女子寮受付において渡された携帯端末に記された部屋を目指して歩いていた。と言いたいのだが普通に道に迷った。

 

ここ数年基地と空以外にあんまりいなかったからしょうがないよね。

 

もちろん新しく寮に入る高校生にしか見えないように偽装はしてきている。だがなんか先ほどから目線をすごい感じていた。

 

バレたのだろうか・・・?それとも不審者と思われてる?

 

いや、知らない人が歩いているんだから当たり前かな?

 

 

若干そわそわしながら寮監室を目指した。

着いたのは1時間ほどさまよった後だった。

 

 

流石に寮監室の近くまで来たら目線はなくなった。

 

まあ千冬さんはなんか怖い雰囲気をまとっていたから生徒から恐れられてたりするのかな。

 

寮監室の扉は閉まっていた、って当たり前か。

 

とりあえずノック。

すると千冬さんの声が返ってきた。

 

「学年組番号名前を言え。」

 

そんなもん知らないしそしてまだ持っていない。一瞬戸惑ったが正直に答えることにした。

 

「無理です。というか知りません。」

 

「ああ、お前か。・・・少し待て。」

 

どうやらわかってくれたようだ。ちょっと沈黙が気になったけどそこはスルーでいこう。

 

ん・・・?

なんか目線を感じた。別に誰もいないよな?

 

 

数分後千冬さんが出てきた。

 

「一応明日からここの生徒になるんだから私のことは織斑先生と呼べ。」

 

確かに生徒が先生を先生と呼ばないのはおかしいな。違和感があるのは否めないが。

 

「分かりました。」

 

「で、一体どこに行くんですか?」

 

さっきからずっと気になっていたことだ。

 

「応接室だ。あそこなら大丈夫だからな。」

 

 

 ◇

 

応接室の扉を閉めた直後千冬さんが口を開いた。

 

「そういえばお前の名前を聞いていなかったな」

 

入ってそうそうそんなことを言われた。

そこそこ長い付き合いなんだけど言ったことはなかったみたいだ。

 

もちろん答える。

 

今回の件では必要なら話していいとのころだったし、それに友人に名前を言わないのもおかしい。

 

「俺・・・いや私の名前はメアリー・オーブリー。階級は・・・言わなくてもいいか。」

 

階級は戦後表彰されたり指揮をとらされたりしたせいでかなり上がってしまったんだっけな?

 

正直ここ最近階級は忘れていた。オーレリア戦争のときは大尉だったっけ?

そういえばあのときから上官はいなかったなぁ、とか感傷に浸っていると

 

「メアリー。どうかしたか?」

 

と聞かれてしまったのだった。感傷に浸るのは後にしよう。

そういえばこっちも気になることがあったんだった。危うく忘れるところだったぜ。

 

「そういえば今晩どこで過ごせばいいんでしょうか?」

 

野宿とかでもいいけど出来ればベッドで寝たい。

だがその期待は間も無く裏切られた。

 

「生憎空室が無くてな。今日はここで寝てもらうことになるだろう」

 

「なんだって!?そいつは酷い話だな」

 

あまりの衝撃に思ったことが口に出た。

 

「突然の話だったんだからしょうがないだろう。

それにこの部屋の中での話が外に漏れることはない。むしろこの部屋のほうが都合が良い筈だ」

 

織斑先生はそう言い残して応接室を後にした。もちろんプレートは使用中のままにしておいてある。

 

 

 ◇

 

次の日

 

 

ふと起きると自分がソファーで寝ていたことに気が付く。

 

そういえばここに押し込まれたのだった。酷い話だ。

ため息をつきあたりを見回す。

 

そのときふと見えた時計には午前4:50分の表示が…。

昨日昼寝したとはいえ早く起き過ぎじゃなかろうか。

 

まあいい。気分転換にシャワーを浴びに行こう。

今のうちに行ってしまおう。

 

 

シャワーのあとも荷物の整理や確認、格納庫を訪問したりしてやっと6時になった。そろそろ千冬さんと会って説明を受けなければいけないな。

 

 

この数分後、事情を察してかそれとも日常なのかはっきりはしないが早起きしてきた千冬さん…織斑先生と呼ばなきゃいけないんだったな、と遭遇し説明を受けた。

 

割愛するけどまとめれば

 

・俺、これからは私は本名で転入したということ

・クラスは織斑先生が担任の1年1組だということ

・寝室に関しては放課後職員室にてはなす

 

ということだ。

 

これで結構さばを読んだ経験したことのない学園生活の始まりだ!私は高等学校からパイロット養成学校に入っていたので女性と共に過ごす学校生活は送ったことがなかった。それに、筋がいいとのことで高校を卒業するころにはオーブリー基地に配備され、そしてクジで隊長になってしまったのだ。

 

 

でももうあの生活は戻ってこない…。

 

 

 

また感傷に浸ってしまった。護衛任務中の会話以降感傷に浸ることがおおくなっているな…。

そんな自分にため息をついた。

 

 

 ◇

 

色々やっていたらもうHRが始まる時間になっていた。

 

どうやら私以外にも転校生がいたらしい。見た感じ軍人、いや本当に軍人なのだろう。

織斑先生のことを教官と呼んでいたしな。

 

ただ結構な堅物のようにも見えたので声はかけていない。

 

まずその堅物軍人さんが紹介されるようだ。

 

確か…今紹介しているのは副担任の山田先生…だったっけ?

 

「ええと…今日も嬉しいおしらせがあります…また一人、クラスにお友達が増えました」

 

クラスのどよめきや発言から察するに2日連続で転校生が来ているようだ

 

「ドイツから来た転校生の、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

 

どよめきが千冬さ・・・織斑先生に治められラウラさんは言われた通り紹介をはじめた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「ええと…以上ですか?」

 

あまりの短さに副担任(まだ話してはいない)の山田先生が驚いていた。

 

「以上だ」

 

このときに確信した。間違いなくこいつは堅物だ。

まあいいや、堅物がいてもいいだろう。

 

そのあとビンタとか色々聞こえてきたけど気にしないことにした。

思春期の女子は扱い辛いという話はファルコ1からよく聞かされているからな。

 

「では転校生はもう一人いるので…入ってきてください」

 

私の番のようだ。口調、どうしようかな?

男口調のままで言ったら堅物キャラとして扱われそうだな。

 

だからちょっと猫をかぶることにした。

といっても社交会の時とかにつかうやつだ。

 

「私はオーレリアから来たのメアリー・オーブリーです。これからよろしくお願いします」

 

噂で聞いたところ昨日来た転校生に対して黄色い歓声が湧きあがっていたそうだがお…私には反応は別になかったから問題は無し。だよな?

 

とにかく今日からはこのクラスの一員として頑張るぞ!

 

出来れば平凡なクラスメイトとして生活していきたい。

 

そう思いつつ席を目指した。

 

自己紹介?それはさっきすませただろ。




グリフィス1の設定を上げときます

本名:メアリー・オーブリー
年齢:26
階級:オーレリア空軍少将
身長:155cm

備考
 髪は茶色のオーレリア人と日本人のハーフ。オーレリア戦争で家族と家を失っており親類は行方不明の父親のみである。
 体型はスレンダーなマッチョを想定。胸は無いが本人は何一つ気にしていない。
 オーレリア空軍の親しい者と会う時あるいは全力を出して戦っている時には一人称が俺になる。それ以外の時の一人称は私。

顔については未設定。まあ平均よりはいいんじゃねってくらいです。


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第一章 IS学園でのグリフィス1 Ⅰ
第2話 グリフィス1と男性操縦者 前編


2015/7/21 一部改稿


 

 

 

今私達は箒さんと専用機持ち2人に追われている。

 

 

 

ことの発端は昼休みと放課後にあたる。

 

 

私の部屋の件で織斑先生に呼ばれたのだ。

 

 

もちろん今日からの部屋割の件だ。

 

話し合いをする場所は昨日私が寝落ちしたあの応接室である。

 

二人とも席についたところで織斑先生が口を開いた。

 

「メアリー、お前の部屋だが男と同室なのに抵抗はあるか?」

 

口調からもう決まっているようだ。正直に答える。

 

「いえ、別に抵抗はありません。基地でも同室でしたし」

 

むしろ女子と同室にされたほうがつらい。色々な意味で。

 

そこで私はあることに気が付いた。IS学園に男性がいるわけがない。

 

「あれ?でもISって女性しか操縦できないのでは?」

 

…あれ?なんか織斑先生が唖然としてるぞ。なんかまずいことでも言ったのかな?

 

「…お前、最近のニュースとか見てるのか?」

 

どうやら最近なにかがあったらしい。

 

「いやぁ、最近は色々な任務で忙しくてニュースとか見れてないんですよ。それにオーブリー基地は辺境の基地だから情報が来るのも遅いんです」

 

織斑先生が冷静に戻ったな。事情説明は問題なかったようだ。

 

そして織斑先生の説明が始まった。

 

「今年の2月のことだ。一夏がISを起動させてな。それで一夏は世界初の男性IS操縦者として登録されたんだ」

 

知らない間になんかすごいことが起きていたようだ。

まあ俺にはあんまり関係のない話である

 

「ISって謎が多いですね。そのあと誰か男性が起動させたという記録はあるのでしょうか?」

 

ふと気になったことを聞いた。

男性にも適正があるならば空軍内で別の操縦者を発見することも可能かもしれない。

 

そして、それが叶えば俺は本国に帰り模擬空戦に勤しむことができる…かもしれない。

 

だが淡い期待は次なる発言で消えた。

 

「あのあと何人も挑戦したんだが結局起動はしなかったんだよ」

 

…現実そう上手くいくことはないからな。今回は諦めよう。

 

 

 

一連の説明が終わり、私は教室へもどって授業を受けた。

 

 

 

 

 

そして放課後。

 

こんどは職員室だ。

 

織斑君とデュノアさん、そして私が呼ばれていた。

 

勿論部屋の件である。

 

 

ここから千冬さんの説明とこれから同室になるメンバーの会話は省略する。なぜかって?ことの発端とはあまり関係がないからな。

 

これからのために語っておくべきことは織斑君らの部屋に寝具増設という形で空きができるまで過ごすことになったということくらい。

 

そして一番の問題が何故か箒さんと専用機持ち2人に流れたということだ。

 

 

そのことに気づいた瞬間織斑君はとっさに私達を連れて逃げ出した。

 

 

おかげで私は追われている。

 

後ろからは

 

「どういうことですの!一夏さん!」

 

とか

 

「一夏そこまで堕ちたか!」

 

など聞こえてくる。

 

織斑君って普段から悪い行いをしているんだろうか?

 

 

織斑君に私、そしてデュノアさんの逃避行一体どうなるんだろうか?

 

 

正直後ろからくる殺気のせいで死の危険を感じているんだが…。

 

まあ逃げ切るしかないか。むしろ逃げ切らなければ二人の命がないだろう。

恋は盲目という、と聞いたし。

 

 

まあ、もしもの時は織斑君を差し出せばなんとかなるだろう。

 

 

 

 

そこで私はあることを思い出した。

 

訓練から私の専用機のテストまでの作業を一気に今日やるとか織斑先生(織斑君と紛らわしくなりそうだから千冬さんに戻そう)に言われていたのだ。

 

いかなかったら本国と千冬さんから怒られる。こっちのほうが重要だし私の命にも関わってきそうだ。

 

 

 

そう思った私はどさくさに紛れてアリーナへ向かった。

 

勿論全力疾走である。

 

 

 

 

~~~アリーナ~~~

 

 

一通りの熟練訓練を兼ねた測定30分で済ませた私は専用機のテストへと移って行った。

 

ちなみに私は入学前にも一度しかISを操っていない。

 

測定でなんだか山田先生が驚いているところがあったが今やっている作業は急を要するのであとでそこらへんは聞こうと思う。

 

 

さて、私のISのスペックとかを見よう。

 

 

ISの名前はGryphus。

 

 

流線的なデザインからなんだか戦闘機を連想させる。というか胴体後部には戦闘機の翼が取り付けてあるようだ。それに戦闘機のエンジンも積んでいるようだ。

 

IS開発経験がないから既存の技術を応用したのだろう。

 

 

私のコールサインとほぼ同じだがなぜか本国から運んできて来てもらうか検討中のあの専用戦闘機を思い出す。

 

いや、なぜかではないだろう。あそこまでひどい魔改造は初めて見たって言い切れるくらいの変な機体だったからな。それになんか嫌な予感がする。

 

・・・むしろあいつらの作品に嫌な予感がしないほうが異常か。

 

そんなことを考えていると千冬さんから声をかけられた。

 

「まずはフィッティングとフォーマットを行なうからそれに乗れ」

 

うなずいた後まだ灰色のグリフィスに乗り込んだ。

 

「そういえばその作業は誰が操作してやるんでしょうか?」

 

ふと思った疑問をつぶやいた。誰かが操作するなら信頼できる人間以外にはやらせたくない。

 

だが帰ってきた答えにすこし驚いた。

 

「基本的に全部ISがやってくれる」

 

そりゃ私はIS初心者ですから。

 

しかし全自動ってことは緊急時に危なくないのか?いや、そもそもISのコアが不可侵状態だから私が想定しているような緊急事態は発生しないのだろうか。むしろする余地がないのか。

 

そう思うと少し安心した。

 

そして心の中で呟いた。

 

 

 

―――これからの相棒君、よろしく頼む―――

 

 

なぜだか情報がきれいに入ってくる。なんでだろう?

 

フォーマットとかが終了したのだろうか?

 

でも機体の色は大して変わっていない、いや、都市迷彩じみた色にはなってはいる。

あとは背中の翼にグリフィス隊のエンブレムがついた。

 

そんなことを思っていると千冬さんから

 

「フォーマットが終了した。まずは各装備を確認しろ」

 

といわれたので確認してみる。

 

別に問題はないようだ。

唯一不安な点といえばソフトウェアが不明な点である。

下手に情報を通さないほうがいいだろう。

 

そして次の指示が下りる。

 

「次に機体武装を確認しろ」

 

こっちも確認し…。

 

…絶句した。あまりにも見たことのある武器だらけだ。しかもそれらに名前をつけてない。

 

正確にいうと名前付けは操縦者に一任されていた。どういうことなの…。

 

 

色々言いたいことはあるが、とにかく羅列すると以下のようになる。

 

 

メソンカノン(中間子砲)

M.B.S.R.(中間子安定供給器)

LSWM(長距離衝撃波弾頭ミサイル)

SWBM(衝撃波弾頭弾道ミサイル)

HPM(マイクロ波照射装置)

TLS(戦略レーザー)

GAU-8 アベンジャー(対地上目標用機関銃)

M61(汎用機関銃)

アサルトメソンライフル AM-1(銃剣付き中間子ビーム弾頭使用可能アサルトライフル)

対装甲ショートバレル(対装甲ボルトアクションライフル)

レーザーブレード

ショートナイフ

QAAM

SAAM

 

 

と種類が比較的豊富なようだ。増加装甲とかはあるにはあるようだがロックがかかっていた。まだ使うなということなのだろうか。

 

しっかし戦闘機なら一撃で消せるような危ない武器ばかりだな。

 

こんな武装を全力で使う機会なんて来るんだろうか?

 

 

色々考えていると

 

「それでは武装を呼び出してみろ」

 

と言われたので武装を順番に呼び出していく。

 

メソンカノンとM.B.S.R.はグリスウォールで破壊した砲台とあまり変わらない形をしていた。

 

HPMはどこにあるのかが分からないほど小さくて、TLSは両手の小さい箱のようだ。

 

GAU-8とかM61とかはただのガトリングガン。

 

アサルトメソンライフルも見た目は普通のアサルトライフルだった。

 

QAAMは背中の翼に、SAAMは腰にある小さい箱に収納してあった。SWBMは背中に発射機のようなものに入ってついていた。

 

他の武器は特徴とかはなかったので説明を省略する。

というか適当に戦略兵器を載せてくれたおかげで使う機会とかほとんどなさそうだ。

 

 

ミサイルとショートナイフは小さい上に機動戦で使う機会がありそうだから常時展開にすることにした。

 

 

 

その後試射を行ったのだが、光学兵器系のものは戦争の頃に見たものとあまり変わりはなかった。射程が短くなっていたりしたくらいだ。

 

その他の武器は登場時にでも解説していこうと思う。

 

 

私はこの相棒とどこまで行くんだろうか…。

ふとそれが気になった。




原作はまだ買っていませんので修正が入る可能性あり。

次も遅くなります。



Gryphus<ノーマル>の設定(本文に入れられなかったやつ)

メソンカノンやM.B.S.R.などを一基でも展開すると機動性と速度が著しく低下し、戦闘機動は不可能となる。さらに増加装甲無しでの射撃時にはシールドエネルギーも消費する。またそれらを二基以上展開した場合は飛行が出来なくなる上に、火器管制の都合上一つの目標しかターゲットすることはできない。
ちなみにグリフィスは攻撃特化という面があるのでシールドエネルギーは白式より少し多いくらいしかない。
つまり、現状では初撃かトドメくらいでしか中間子砲は使うことができない。


LSWMやSWBMは狭い空間で撃てば自らも被害をこうむる。相殺する方法は今のところはない。

また、初めてオーレリアが作ったISなので欠陥も多い。


これからこの設定は生かされるのだろうか?


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第3話 グリフィス1と男性操縦者 後編

はじめて長めのものに挑戦。


2014/3/1 改訂
2014/7/25 改訂
2014/9/21 改訂
2015/7/22 改稿
2016/7/18 改稿


 

 

 

次に機動性等の試験に入る。

 

射撃目標などが乱雑に置いてある状況から察するに軽い障害物競争みたいなのを行うようだ。

 

アリーナで障害物の設置が終わってしばらくしてから千冬さんに声をかけられた。

 

「次は機動試験だ。はじめてくれ」

 

頷いてから機体を動かし始めた。ISの操縦なら本国で少しだけやっていたから余裕だと思っていたのだが―――

 

 

 ―――グリフィスはとてつもないじゃじゃ馬だった。

 

 

 

 

動かし始めてすぐに高速域に達した。メソンカノンが2基展開しているにも関わらずである。そして急制動をかけたら瞬く間もなく機体が止まる。すると機体後部から爆発音が聞こえてきた。

脊髄に衝撃が伝わり意識が刈り取られそうになる。

 

明らかに本国での訓練とは感覚が違う。こんな変な機動をするにはPICをマニュアルにでもしないといけないはず。マズい、機動がきつ過ぎて体にきているようだ…。

 

とにかくPICの設定を確認した。

 

 

 

 

―――結果は、マニュアルだった。

  後ろに"(制限解除モード)"とかついていたが気にしてはいけない気がした。

 

 

 

 

 

このことはあとでモンテブリーズのやつらに聞くとしてまずは今の上官に報告する。

 

「織斑先生、PICがマニュアルだったので再度機動試験を最初からはじめていいですか?」

 

もちろん許可が下りたので最初まで戻ろうとした。

 

したのだが…機体が動かない。

 

 

 

再度挑戦する。

が、動かない。

 

 

ここで私は先ほどの破砕音を思い出した。

 

HUDで機体損傷を見ると背中が黄色い表示になっている。

 

 

嫌な予感がした私がハイパーセンサーを使い後ろを見ると急激な機動のせいかエンジンが赤くなっていた。

 

温度は……無茶苦茶高い。

 

早速エンジンが逝くってひどいな。まあ過重荷で高速出しちゃったからしょうがないのかな……。

 

そんなことを考えていると千冬さんから

 

「おい、メアリーどうした?」

 

と聞かれたので

 

「さっきの機動でエンジンが―――」

 

そう報告しようとしたところで記憶が途絶えた。

 

 

先程の急加速と急減速が体に来たのだろう。むしろよくここまで意識を保てていたと言えるほうかもしれない。

それとも体が鍛えきれていない証拠なのだろうか。

 

 

 ◇

 

アリーナで千冬さんに起こされた私は保健室で一応診てもらってから一時的な自分の部屋へと向かっていた。

どうやら絶対防御が展開されたそうだが、無事だったらしい。

「人外の域に足を踏み入れているな」とは千冬さんの弁。

 

追跡?そんなものはない。織斑君たちがターゲットをとっておいてくれたからな。

 

……部屋に帰った後がつらいかも。まあいいや、サァ行くか。

 

 

本国への報告も自室でやるか。しかしあんなじゃじゃ馬で兵装のテストまで行なうとは……。今後が不安だ

 

 

そんなことを考えたりしながら教室についたころには結構遅い時間になっていた。

 

1025号室だったっけか。

 

 

 

……少々迷ったが1025号室にたどり着いた。

 

少々(1時間)というは結構問題だったと思う。ついでに夕食まで済ませたのは言うまでもない。

 

 

やっとたどり着いた自室に入ると織斑君とデュノア君と思しき女性がいた。

 

デュノア君が驚いたような顔でこちらを見ている。

 

「……テスト飛行の影響だね。ちょっと保健室行って来るね」

 

多分これは私の見間違いだ。さっきのテスト飛行で脳味噌が揺らされたからその影響が出たんだろう…。

 

いくら男性としての特徴が薄いとはいえ胸が膨らんでいるかのように見えるのだ。

久しぶりに沢山の女性を見たから幻覚でも見ているんだろう。

 

咄嗟にそう判断した。

 

そしてドアを閉めかけたとき織斑君が口を開いた。

 

「あぁ!ちょっと待ってくれ!説明するから!」

 

 

 ◇

 

織斑君が周囲を警戒する素振りを見せて俺を引き込んだ後軽い説明を受けた。

 

―――風呂に入ったデュノアさんにシャンプーを届けようとしたら中にデュノア君に似た女性がいて、それはデュノア君だった…らしい。

 

そしてデュノア君が風呂から出てきてから私が入ってくるまで気まずくて両方とも黙ったまま向かい合っていたということだった。

 

 

 

……初めて現れた男性操縦者と男装してIS学園に入った少女(企業の支援付き)か。どう考えてもスパイとかそこらへんだろうが…彼女からそんな雰囲気を察することは出来ない。

 

あと作戦があまりにも稚拙だし、工作員だとした場合のデュノア君の態度は工作員失格というレベルのものだ。

……まあこれが演技で無能だと思わせて情報を引き出すというような巧妙な手口なのかもしれないが。

 

とりあえず警戒しておくに越したことは無い。

 

また、面倒な話もありそうだ。

 

 

とにかく本性を暴いてから対処を考えようか。

 

 

それでは軽い尋問を始めるとしよう。

 

「何故男装してまでIS学園に入ったのかな?」

 

 

真っ先に湧いてくる疑問はこれだ。織斑君も同じことを思ったに違いない。

 

一応軍人なので尋問くらいはできる。

 

そしてデュノア君は抵抗することもなく答える。危害を加える意思はないようだ。

 

「実家のほうからそうしろって言われてるんだ…」

 

ひどい家族もいたもんだ。企業スパイを娘にやらせるとはな。

そうは思ったがまだ口には出さない。

稀に変なやつがいたりするからな。

 

「お前の実家っていうとデュノア社の……」

 

軽くショックを受けているようでその言葉は徐々に小さくなっていた。

そして一夏の言葉につなげるように私は話す。

 

「大体の目的は技術とかを盗み出したりするため?男性操縦者に関連することを調べたりとかかな?」

 

私の言葉にデュノアが答える

 

「大体はあってるね。正確には白式と織斑君のデータをとってこいっていう命令を受けたんだ……。あとは世界の注目を浴びるための広告塔だろうね」

 

年端もいかない少女を利用する会社とかひどいな。

でもデュノアが吐いた時点でこれは尋問だ。指示した人も聞かなければならない。

 

「で、一体だれから指示されたんだ?本社の誰からだ?」

 

結構強めの口調で言った。ここまでスパイらしくないということを考えるととんでもない凄腕かただの素人かの二択しかない。

 

たださっきの発言が織斑君の癪に障ったらしい。

 

「お前、その言いかたはないだろ!」

 

と怒られた。でも事の重大さを分からせるために反論する。

 

「いいか、織斑君。これは尋問で相手はスパイだ。加減するべき場所じゃない。

 私だってこんなことはやりたくないんだ」

 

諭すような口調で言った。

俺だって同情したい点はいくらでもあるんだ。

 

「でもっ……!」

 

織斑君が抵抗を見せる。

だが理性では理解できたのか黙り込んだ。

 

そんな中デュノアは答えた。

 

「デュノア社の社長……僕の父だよ…」

 

織斑君が「え?」と言った。そして俺は呆れた。

 

親が産業スパイを子どもに命じるとは。前々から思っていたがやはりこの世界は腐っていやがる。

そんなことを思った。

 

―――女尊男卑など叫ぶ馬鹿ども、それに流される根性無、若しくは武力でしか抗えないはぐれ者。どれも身を以て実感してるんだから今更か。

 

 

織斑君の反応があったからだろう。デュノアは話を続けた。

 

「私はね、父の本妻の子じゃないんだよ……。

父とはずっと別に暮らしてたんだけど、2年前に引き取られたんだ。

そしてお母さんが亡くなった時、デュノアの家の人が迎えに来てね。

それで色々検査を受ける過程でIS適正が高いことが分かって。で、非公式ではあるけどテストパイロットをやることになってね」

 

その発言に私は戦慄を覚えた。

テストパイロットだと!?自分の子どもをなんだと思っているんだ!それとも自社製品にそこまでの自信があるのか?

とにかくあんなに危険が伴う仕事を娘にやらせるなど信じられなかった。

 

「でも父にあったのはたったの2回だけ。一時間にも満たないかな。

そのあとのことだよ。経営危機に陥ったんだ」

 

酷い親だ居たものだ。

それが一通りの話を聞いてデュノア父に抱いた感想だった。

 

滅多にあえていない俺の親ですら手紙とともに金まで送られてくるというのに。

 

自分の親との対比をしていると織斑君が口を開いた。

 

「でもデュノア社ってISシェア世界第3位だろ」

 

言われてみればそうである。シェア3位で経営危機に陥るというのは異常事態だ。

少なくとも航空機産業では。

 

その答えをデュノアが出す。

 

「結局ラファール・リヴァイブは第二世代型なんだよ。現在ISの開発は第三世代型が主流になっているんだ」

 

世代が違うだけで経営危機、その言葉で納得がいった。俺たちみたいに2020年になってもF-4Eを使う貧乏国家ですら次に買うのは次世代機だ。

まあ現状オーレリアがそういった機体を買うのは困難に近く、中古品で賄っていたりするのだが。なんだか泣けてくるぜ……。

 

「セシリアさんやラウラさんがIS学園に来たのもそのためのデータを採るためだと思う。

デュノア社も第三世代型の開発に着手はしているんだけど、なかなか形にならなくてこのままだと開発許可が剥奪されてしまうんだ。

 

ああ、本当のことを話したら楽になったよ。聞いていてくれてありがとう。それと、今まで嘘ついててごめん」

 

あれ?これって尋問だったよな。なんで感謝されるんだ?なんで謝れるんだ?

そう思った俺は反射的にツッコミを入れた。

 

「デュノアさん。これは尋問だから感謝したり謝ったりしなくていいんだよ」

「ごめん、ちょっと思い出に浸ってってね」

 

すると泣きそうな声で返された。最近思い出に浸り気味な私が言えることでもない話だ……。

 

 

そしてデュノアさんと俺が哀愁を漂わせ、軽い沈黙が流れる。

 

 

すると織斑君が口を開いた。

 

「いいのか?それで」

 

デュノアを信じきっているようだ。そしてデュノアもこの反応には驚いたようで声が漏れた。

 

「それでいいのか!いいはずないだろ!」

 

今度は一夏が強い口調でデュノアに言い寄る。

 

仕舞いにはデュノアの両肩をガッチリとつかんでいた。彼女は絶句して動いていない。

 

まったく反応できずに「一夏?」とやっということが限界なのが証拠だ。

 

まあそりゃそうだろう。「私はあなたの情報を盗みに来た」と白状してきた相手の肩を持つような馬鹿もしくはお人よしはそうそういない。

 

「親がいなけりゃ子は生まれない、そりゃそうだろうよ。でも、だから何をしてもいいだって、そんなバカなことが!」

 

あっていいはずはない。それに関しては同意だ。が、お前の立場でそれはいけない。

そう口に出そうとしてやっぱりやめた。

 

俺はあくまでも自国のISのために来ているのだ。

もし黒だったとしたら、囮が居た方が動きやすい。

 

思考を巡らせているとデュノアが不思議そうに

 

「一夏」

 

といった。

 

そしてその答えを織斑君が自ら話し始めた。織斑君のターンが終わったら私も秘密を話そう。

 

「俺も…俺と千冬姉も両親に捨てられたから…!」

 

このことにデュノアさんは驚いていた。ここまでの行動を見る限り彼女は素人である可能性が高い、そう判断することにした。あとは経歴等を諜報部に調べ上げてもらってから裏を取るだけだが判るのはいつになることやら。

 

「そんなことはどうでもいい、今更会いたいとも思わない、だけどお前はこの後どうするんだ?」

「どうって…女だってバレたから本国に呼び戻されるだろうね」

 

デュノアさん自身はもう諦めているようだ。まあ素人ならしょうがない。

 

「後はどうなるかわからない、良くて牢屋行きかな」

 

たしかに結局はそうなる。

でもなぜ抵抗の意が感じられないのだろう?

それに対する思考を大声がさえぎる。

 

「だったらここにいろ!俺が黙っていればそれで済む。

もし親父や会社にバレたとしても手出しできないはずだ」

 

どうしてそう言い切れるのか、と聞こうとしたがゴソゴソと本を探しているあたり確信があるのだろう。

 

そのまま答えを待つことにした。

 

手の動きが止まる。どうやら見つけたようだ。

 

「"IS学園特記事項、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない" つまりこの学園にいれば3年間は大丈夫ということだ」

 

つまりは俺も今のところは自由ということだろう。

ふむ、この任務は案外休暇代わりになるやもしれん。

 

「その間になにか方法を考えればいい」

 

呑気なことを考えていたらとんでもない爆弾が飛んできた。

最後のところを丸投げとはどういうことなんだ。

素人が3年で思いつくとは思えん。

 

その時俺はふと思った。

デュノア社と結託しているであろうファト連邦はダッソー社を筆頭に航空機産業がかなり盛んな場所だったはずだ。

で、今のオーレリア空軍は復興や陸海軍に予算が回されているおかげで低予算なのに戦闘機が不足している状態。

 

デュノアさんは割といい状況にいることに気が付いた。

 

「ねぇデュノアさん、無事に過ごす方法はあるよ」

 

再び外面を繕いつつ私は交渉を始めることにした。

 

「え?」

 

驚くデュノア。

まあそうだろうね。

 

「今オーレリアは色々足りない。そして多分今回の件は少なからずファト連邦、そちらの言葉ではフランスだったかな?が関わっているはず」

 

一夏が置いてけぼりなのはこの際気にせず行こう。

 

「だから空軍の偉い人に相談すれば何とかなるかもしれないよ。祖国とデュノア社を見捨てる結果になるけど」

 

その後少しデュノアは悩んで

 

「結論は見送ってもいいかな?」

 

とどっちつかずの答えが返ってきた。

 

「いいけどあんまり時間の余裕はないよ」

 

そう告げここでの交渉は一回流すこととしたらしい。

それを察したのかデュノアさんは話題を切り替えた。

 

「それにしてもよく覚えてたね。特記事項って55項もあるのに」

 

55項もあるのか……。織斑君って意外と記憶力がいいのかな?

まあ私は戦闘機の飛行マニュアルなら1時間で暗記できるけど。

 

「こう見えても勤勉なんだよ、俺は」

 

努力家なのか。

まあそうでもなければISに乗れてもまともなことにはならなかっただろう。

 

織斑君の発言に対してデュノアさんは笑った。

 

そして

 

「一夏」

 

「あ?」

 

「かばってくれてありがとう」

 

そしてさっきの発言で

 

「い、いや」

 

といいながら織斑君は嬉しそうにしていた。

案外と女に弱かったりするのだろうか?

 

この流れだと次は俺かな~とか思っていると

 

「で、なんで転入生さんは"尋問"なんてしたんだ?」

 

と軽く敵意を出した声で聴かれたのだった。

 

正直なところ自分の処遇を話したいし、相手が素人なので色々突っ込まれる可能性も少ないが、嘘を

突き通すことにした。

 

「だって知り合いによく分からないのがいるのは怖いじゃない。

一応私だって専用機持ってるんだから盗難くらいは警戒するよ」

 

「そ、そうだよね」

と軽く受け流すデュノア。

専用機持ちとしての教育も受けているのだろう。

よくわかってくれた。

 

織斑君も無事納得してくれたようだ。

ただ今回の発言には若干問題がある。

千冬さんに専用機持ちとしての教育もしておくようにいっておこう。

突然機密を扱う身になって慣れていないのもわかるが問題が起きてからでは遅い。

 

そういえばシャルルというのは確か男性の名前だったはずだ。

女性に男性の名をつけるという謎な状況が有り得なくはないが極稀と言っていいだろう。

 

なら本当の名前はなんだろうか?

 

「そういえばさ、デュノアさん。本当の名前は何?」

 

一夏が首をかしげた。

まあこれは雑学の域だから知らない人は知らないか。

 

「シャルルっていうのは男性につける名前なんだよ。だから本当の名前は何かな?って思ってさ」

 

ああ、と一夏が小さい声で出す。

 

そしてデュノアさんも口を開いた。

 

「私はシャルロット、シャルロット=デュノア」

 

シャルロットか。シャルロットだからシャルルなんだろうな。

まあどちらでも通じるようにあだ名をつけよう。

 

色々考えていると織斑君が先に答えを出した。

 

「じゃあシャルロットだからシャルでいいな」

 

グットアイディアだ、一夏。

 

シャルルでもシャルロットでもそのあだ名なら問題はない。

 

「いいんじゃない?そのあだ名」

 

といつも間にか返していた。

 

 

 

その直後である。この部屋にノックの音が聞こえたのは。

 

 

 

ここで私は寝たふりをした。

 

どうやらシャルも寝たふりをして、一夏はそれを看病するところを演じたようだ。

 

 

訪れたのはセシリアさんか。

まあこの際誰かは関係ない。

 

あとこの件はあとで一応報告することにした。

本当にオーレリア空軍の保有機問題等には時間が無いのだ。

 

それに根回しはある程度しておかなければならない。



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第4話 Gryphus

グリフィス1の回想とこれからのフラグ回


 

 

 

―――私には数年前まで家族がいた。親友もいた。

 

 

 

だけど、彼らは一日にしていなくなってしまった……。

 

 

 ◇

 

 

俺は、俺たちはオーブリーの空を飛んでいた。

 

 

先ほど作戦目標である爆撃機を撃墜して軽い哨戒をしていた。

 

初戦の疲れからだろう。しばし黙っていると俺の二番機であるリックが無線で話してきた。

 

<<ヒャッハー!全部叩き落としてやったぜ!楽勝だ!>>

 

全機撃墜したから結構テンションが高くなっているようだ。

 

<<グリフィス1、このまま一気に首都奪還てのはどうだ?>>

 

小さな勝利でかなり調子に乗っているな、なんて思いつつ微笑んだ。

でも突っ走ってみるのも面白そうだ。

 

<<それじゃあ首都まで一直線だ!>>

 

その先をいう前にユジーンがツッコミを入れる。

 

<<隊長、あなたまで調子に乗らないでください。もう私達には物資がないってことを忘れてませんか?>>

 

無粋にも事実を突きつけられ、少し顔が暗くなる。そんなことは分かってるんだ……。

でも俺は負けを認めたくはないので言い返す。

 

<<ユジーン、それなら敵から見れば奇襲と大差ないんじゃないか?>>

 

調子に乗りっぱなしのリックが話を入ってきた。

 

<<やつら、慌てふためいて逃げ出すに違いないぞ>>

 

随分強気だな、リック。クジ引きで決めたとはいえ二番機がリックだったのはよかったな。

 

 

 

――――――そこでユジーンから突然入った無線が私達の生死を左右していようとは当時の私は思っていなかった。

 

<<―――レーダーに反応!何かが高速で接近中……ミサイルです!>>

 

編隊が一気に真剣になった。下手すると帰る家を失ってしまうからね。

 

そしてリックが聞き返す。他のみんなも初戦で疲れているのだろうか?

 

<<なに?どこだ?どこだってんだよ、答えろユジーン!>>

 

ユジーンはその質問に冷静な声で答える。そういえば今までユジーンが慌てる姿を見たことがないな。案外すごいやつかもしれない。

 

<<―――プナ平原付近からです。ミサイルはそこから……>>

 

ユジーンが絶句した。そして隊員のあいだに嫌な予感が走る。

 

 

―――そして次の言葉で予感が確信に変わった。

 

<<グレイプニル!?>>

 

悪寒が走った。グレイプニルといえばオーレリアの戦線を瞬く間に吹き飛ばした『あるミサイル』を運用する飛行艇なのだ。

 

勿論そのことに気づいたのは隊員全員だ。

 

でも口にできたのはリックだけだったが。

 

<<おい、それってまさか……>>

 

あのお調子者のムードメーカーであるリックですらやっと声が出たという感じだ。

 

そしてみんなの予想通りの答えがユジーン返ってきた。

 

<<SWBMです!早く退避してください!>>

 

皆予想はしていたのだがやはり答えを聞くと衝撃で動けなくなっていた。

 

しかしリックは正確な判断を下した。ユジーンも焦っているのかもしれない。

 

<<どっちに行けばいいんだ!方向は!距離は!>>

 

リックも焦っている。ブナはかなり近いからだろうか。

 

そんなことを考えていると私は山脈でレーダーに探知されるのを回避したのを思い出し低空へ逃げれば大丈夫なんじゃないかという仮説が出てきたころには反射的に降下していた。

 

でも次のユジーンの発言でさらなる絶望を味わうこととなる。

 

<<駄目だ、間に合わない!>>

 

その発言が終わった後、

 

 

 ―――空が裂けた―――

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

SWBMの炸裂と時をほぼ同じくして三機が砕け散った。

 

 

そして操縦を失った一機が5秒ほどたってから爆発し、私の僚機は煙を噴いた一機のみとなってしまった。

 

 

―――私は隊長失格だ。

 

 

そんなことを思った矢先にユジーンの叫びが聞こえた。

 

<<グリフィス2!グリフィス3!―――みんな!>>

 

IFFを確認してみると生き残ったのはグリフィス5のようだった。あいつはリックの陰に隠れてはいたがムードメーカーになりそうなやつだったな。

 

 

しかし、残り2機の俺らはどうなるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

基地に帰ると追い打ちをかけるような情報が私に流れてきた。

 

 

  それはオーブリー攻撃の際に母親が死んだという報告だった。

 

     弟と妹は行方不明だという話だ。

 

 

 

ちなみに私たち兄弟は長女、長男、次女の順番なのだがみなあまり父にあったことがない。母親曰くちょっと特殊な仕事をしているということだったがどいういうことなのだろうか?

 

 

そんな疑問があったこともノースポイント行きを決心した理由の一つだ。

 

 

 ◇

 

俺は久しぶりに昔の夢を見た。

もう居ない仲間の夢。

俺がエースとなるきっかけの夢。

 

あと何ヶ月かすればあいつらの命日がやってくる。

一体天国で俺のことをどう思っているんだろうな。

 

 

そんなことを考えていると携帯のバイブがなった。

着信は…諜報部から?

 

まずは内容確認だ。

 

……オーレリアの暗号がかかっているな。

 

ただこれは解読機をもらってきているやつだったので手際よく解読をしていった。

 

 

その結果出てきた指令書がこれだ。

 

[グリフィス1、追加任務を伝える。

 

先日メソンカノンなどのデータが流出した。

 

ハッキングした組織は亡国機業。

ただかなり広範囲で活動しているためデータ保管場所を捕捉することができない。

そのために貴官に流出データ若しくはコピー生産品の捜索及び破壊を命令する。

 

また、データ破壊が遅れた場合IS学園が襲撃される可能性があるためIS学園外での行動は避けよ。

 

戦闘機での迎撃はノースポイント側の許可が下りた場合のみ許可する。

 

  オーレリア空軍]

 

なんて物騒な任務だ。まああんなに危ないものを変なところに流すわけにはいかないか。

 

そんなことを思いながら朝の支度を始めた。

 

 

 

  ――――――そのとき私は思いもしなかった。この任務が俺に大きくかかわっているということに…。




次は遅くなると思います。

2/9 一部修正

2015/7/21 一部改稿

2016/7/16 一部改稿


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第5話 Frist fight

2014/09/21 一部追記
2015/07/21 一部改稿
2015/07/18 一部改稿&修正


司令部からの通信を確認したあと時間を確認したら0400だったので格納庫へ行ってみることにした。

 

事実確認等は後程行うことにしよう。

 

 

……あとシャルの件だが空軍の機密扱いで本国に一応流した。彼女には申し訳ないが、タイミング的に報告しない訳にはいかない状況だ。

 

 

IS学園はとてつもなく広いが所詮は軍港と変わらない程度、流石にもう迷いはしない。

 

そんなことを思いつつ廊下を歩いているとふとモノレールが見えた。ふととはいってもパイロットなので距離的に言えば普通の人なら見えにくいだろう。

 

 

しかしIS学園付近から出ていくあの赤いモノレール、かなり古い車両を使ってるな。金がないのか物持ちがいいのか正直わからない。

 

 

そんな他愛の無いことを考えながら人の少ない学園を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

まだ朝日が出て間もない頃、第三格納庫につくと私の愛機のRafale Mが置いてあった。

 

 

他に航空機がない状況から察するに、いつの間にかファルコ1やグリフィス5は帰っていたようだ。

 

ちなみに第一格納庫や第二格納庫にはIS学園の直掩や付近の哨戒を行う戦闘機が置いてある。

機種はF-35やF-15の改造型だった。あとF-22も何機かあったな。

F-3がいないのは気になるがなんらかの事情があるんだろう。

 

……F-35に乗りたいなぁ。

 

いや、ただでさえオーレリアの財政は厳しいんだ。あまり欲を出すべきではないか。

……今回の作戦目標がF-35を持ってたら堂々と盗んでやろう。

 

 

 

そんな考えが沸き起こってきたので良心が働いているうちに私は第一、第二格納庫をあとにした。

 

 

 

で、私は今第三格納庫にいる。

 

 

飛行許可は先ほどとってきたのでこれから上がろうと愛機に近づいた。

 

すると私の機体を整備していた女性整備士が話しかけてきた。確かオーレリアから連れてきた整備士のはずだ。

 

 

「……あなたの機体、とても良い使いかた、してる……」

 

どうやら無口なようだった。なんで私の周りには個性的な技術者がくるんだろうか?

 

そんな疑問を棚に上げて話は続ける。

 

「褒められるのはうれしいかな」

 

「…そう。……ただ……無茶もさせ過ぎてる……」

 

私はムスっとした。褒めたと思ったら苦情か。まあそう言われても仕方のない飛び方をしている自覚はある。

 

だがこちらの気持ちを無視して話は進んでいく。

 

「……でも……無茶しても……出来る限りはフォローしてやる……。思いっきり飛んできてね……」

 

 

……何が言いたいんだ、こいつ。

 

そう思ったが一応了承することにした。

 

「そ、そうですか。分かりました」

 

「あと……飛びやすいように少し改造しておいた…感想聞かせてほしい……」

 

そ、そういうことか。

 

一応頷いておいた。

 

 

若干不安な気持ちになりつつタラップをのぼり乗り込んだ。

座りなれたシートに何故だか落ち着くコクピット。

 

まるで家に帰ったかのようだった。

 

 

深呼吸をしつつ計器を確認するとあることに気が付く。

ただでさえ機動性上昇のカスタムのついていた私の機体にある機能が増えていた。

 

それはエンジン出力をAとBで変えられるようになっていたこと。これのおかげで超機動のバリエーションがふえ……ミサイル回避しやすくなったな。

 

 

これに関してはもう少し時間のあるときにテストをするとしよう。

そう思いつつヘルメットをかぶった。

 

 

しかし暇である。いっそのこと学園上空でアクロバットでもやってやろうか。

などと変なことを思いつき、そして私がそれを実行に移し着陸後に司令と千冬さんから怒られたのは言うまでもない。

 

 

 ◇

 

放課後。

 

私は朝の残り時間で軽い試験を済ませたのでみんなと一緒にアリーナで操縦訓練を行うためにすでに出ていた。

 

朝の試験で分かったことは昨日エンジンオーバーヒートさせたことでIS側で勝手に予備動力の常時展開と替えエンジンのロックが解除されたくらいだ。

 

 

そのときの表示だが―――

 

「[実績]エンジンブレイカーを解除しました」

 

ってなってた。多分こいつのOSにゲーム大好きなやつが関わっているのだろう。

公式のものであんまりふざけたことをするなよ、と思いつつ溜息を吐く。だが子ども心がくすぐられたのか実績の内容は全て確認し、一部はクリアしてしまった。

 

……案外やる気を出すのにはいいのかもしれない。

 

 

あとQAAMとSAAMはある程度なら自動補給してくれるようになった。

 

そしてウェポンベイみたいな形の盾が追加され、頭に機首を縦に切ったみたいな形をした防弾板が追加されていた。

 

 

ほかにもありそうだがそこら辺は後々確認していくことにした。

 

 

さて一体何の訓練をするか迷っていると先にアリーナに出ていたセシリアさんとリンさんが模擬戦を始めるようだ。

 

ある案を思いついた私はセシリアさんらに了承を取ることにした。

 

「今から模擬戦するんだったら周りから見ててもいい?」

 

セシリアさんたちも了承してくれた。

 

他の人の機動を見れるうえにこっちも機動訓練ができる。自分でも良い案だと思うな。

 

 

「じゃあ始めるよ!」

 

とリンさんが威勢のいい声で言ったその時、後方から射撃音が聞こえた。

 

 

私は咄嗟にその方向へ振り向きM61とGAU-8を構えた。

 

不意打ちを仕掛けるとは敵意がむき出しとかいうレベルじゃないからな。

 

 

―――そしてその方向にいたのは私と一緒に入ってきた堅物さん、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。確か特殊部隊出身だったはずだ。

 

機体はドイツ第三世代機、シュバルツェア・レーゲンか。

 

グリフィスなら勝てなくはない。

 

 

彼女の小さな笑い声が聞こえたところから見ると戦闘狂の要素も兼ね備えているようだ。

 

……正直面倒とかいうレベルじゃない。こっちの予定が乱れちゃったしこれからどうしようかなぁ……。

など、名案が出てこないか考えていると言い争いがはじまった。

 

「どーゆーつもり!いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない!」

 

「中国の甲龍に、イギリスのブルー・ティアーズか。まだデータで見たときのほうが強そうではあったな」

 

その後も言葉の応酬がしばらく続いたが私は静観することにした。

 

一人増えただけでさっきと変わらないことをしてれば大して問題はない気がしたからというだけなのだが。

 

 

しかしラウラはこちらの機体情報を知っていたのか。まあこいつに関しては……バレてはいないだろう。3日で調べ上げたとしたら恐怖とかの域を超えるからな。

やっと一次移行した段階だから今頃千冬さんあたりがデータバンクに登録しているはずだ。まあそれですら実績により色々変わるこの機体では正しいものかは分からない。

なにせ俺ですら把握してないのだから。

 

まあ困ったときは本国からのデータだけが頼りということだ。

 

 

若干性能について心配していると、隣で戦いが始まった。

 

乱戦に飛び込む気はないので、偵察行動に移ろうかと思ったとき、こちらに何かが飛んできた。

どうやらこっちもターゲットのようだ。

 

俺としてはもう少しテストをしておきたかったが攻撃されたとなってはしょうがない。

咄嗟に判断し、心の中で開戦の合図をならした。

 

グリフィス1、交戦!と

 

 

ひらりと飛んできた何かをミサイル回避の容量でかわす。

 

―――先端に何かがついていた。ワイヤーがあったあたり有線ミサイルのようなものだろうか。

 

警戒すべきだ。

そう判断すると同時に反転し武器を構える。AM-1に関しては実弾銃を使い切ってからにすることにした。

信用は大事だ。

 

大体回避の目途が付いたので私はM61とGAU-8のトリガーを引く。

 

 

しかしその攻撃は何等かのフィールドによってさえぎられてしまった。どうやらこちらの攻撃は効かないらしい。

 

実弾だから効かなかったという可能性も無くはないがHUDに

 

《警告!レールカノン発射準備中》

 

と出ているので回避に徹することにした。流石に1対3であればあのバリアの弱点も見つけられるだろう。

 

 

……まさかドイツが開発したっていう噂のECM防御じゃないよな?

あれをISにつけられてしまったらもうダメージが与えられる気がしないんだが……。

 

そんな最悪の想定が頭をよぎる。さらに悪いことにISは通常設定では全ての火器管制が機械を通して行われるため対策すら出来ないであろう。

 

さらなる情報収集のため回避に徹し始めてから気づいたがラウラは上手く私を遠ざけながらリンさんやセシリアさんと交戦しているようだ。凄い管制能力だと思う。

 

……いや、単に二人が怒り任せに突撃とかしてくるから戦いやすいだけだろうか?

 

 

まあこちらは牽制程度に攻撃を加えながら逃げることにしよう。

まだ本格的な戦いは御免だ。

 

 

またこちらに飛んできたワイヤーを避けているとリンさんが衝撃波砲と思われるものを放った。

 

砲口の形と大きさからいって単に見えないだけの砲弾だ。

 

そしてそれに対してラウラは避けようとせずあのバリアを張るモーションへ移った。

 

……あのバリアは実弾ではない攻撃も防ぐらしい。

 

 

私も少し牽制を入れる。

 

しかし低空を飛行中だったのでバリアを難なく展開されてしまった。

 

生半可な角度ではすぐに防御されるようだな。上空に行くまで待つしかないか。

 

 

……どうやら衝撃波砲が通らなかったことでリンさんに焦りが出てきてる。

 

これではラウラの勝ちは決定的だ。あれ相手に焦りがあっては回避がままならないはず。

 

 

そう思いながら飛行していると案の定ワイヤーにつかまってなんだか遠くまでいってしまった。

 

 

 

次はセシリアさんの番か。そう思ったときあることに気が付く。

どうやら連携しなかったらしい。……同じ相手を狙う以上組んだ方がいいと思うのだが。

……まあいいや、バリアが上空で発動するまで待とう。

 

 

セシリアさんはまずビットで先制を与え上空へ誘導してきた。

 

ミサイルも撃ち込んでさらに上空へ誘ってくれたようだな。

 

動きも止まっているしビットのおかげでバリアも張ってる。

 

 

―――よし、今だ。

 

「ファイヤ!」

 

その声とともにAM-1とM61を発射する。気づいてこちらにバリアを向けようとしたがセシリアさんがタイミングを合わせてビットからレーザーを撃ってくれたので私の撃ったものは全弾がラウラ機へと当った。

 

 

ラウラは現状では不利と感じたのかレールカノンをセシリアへ向け撃ちこんだ。

 

ギリギリのところで直撃を回避するが、先ほどからワイヤーに繋がれっぱなしだったリンさんをセシリアさんにあて二機同時撃墜という荒業をやってのけた。

 

 

そのあと止めを刺そうとレールカノンを撃とうとしたところでセシリアさんの反撃を食らったようだ。爆発から察するにゼロ距離ミサイルかな?

 

セシリアさんは損失した部位は無いが、リンさんは衝撃波砲を一門消失したようだ。

 

二人とも気を抜いているが、センサーにラウラの反応が残っていたのでそのまま止めを刺すことにした。

 

「メソンカノン2基展開。チャージ」

 

この命令のあとに肩に二門出てきた。これ後ろに展開したまま格納できるんだな。

 

「チャージ完了を確認、ファイヤ!」

 

そうして二門の全力射撃を与えたが

      ―――バリアによって防がれていた。

 

この光景にはリンさんやセシリアさんは驚いているようだ。

 

 

 

しかしバリアのことをすっかり忘れていた。不味いな。

 

……もういい、自棄だ。

 

「メソンカノン全基展開。連続射撃モード」

 

 

そんなことをしているとターゲットされているという警告が出た。でも気にしない。

 

 

「全砲門開け!PICをマニュアルに変更」

 

そうすると私の前方に弾幕が出来た。

 

直後レールカノンが飛んできたのでPIC解除の機動で急加速をして逃げる。…動いたのがほんの3mだということはツッコんではいけない。

 

 

 

だが私は中間子砲の連射でシールドエネルギーが減っていることには気づかなかった。

 

つまりシールドエネルギーが連射を始めてから20秒ほどで1000あったシールドエネルギーが30を切ったのだ。

 

 

……なんて初歩的なミスだ。情けない。まるで新兵じゃないか。

まあISに関しては新兵同然なのだが、それでも情けないと思ってしまう。

 

 

私は回避で駄目になったエンジンを換装し、長距離用武器を全部格納して徹底的な回避機動に移った。残り30じゃどう頑張っても戦えない。せいぜいQAAMをアクティブにして後ろに撃ちまくるしかないだろう。

 

「ごめん!もう持たない!」

 

そう私は叫んで離脱を試みた。

 

 

その直後リンさんやセシリアさんがワイヤーにつかまってしまったが、ショートナイフを投げつけたりするくらいしか出来なかった。

こちらのエネルギー残量がほとんど底をついている。

絞めている場所が首でも反撃はほぼ不可能だった。

 

実弾武器の使用も考えたが、今慣れない対IS戦の回避以外に思考を使えばもれなく首つり集団の仲間入りをするだろう。

 

歯痒いが二人から三人に増えれば一人を助けるまでの時間がさらにかかるかもしれないと考えると下手に介入できない。

 

 

だが、そんな光景を傍観しないやつもいた。

 

一夏だ。

 

 

 

何を使ったのかは知らないが、アリーナのシールドを突き破り突撃してきた。バリアの弱点を伝えようとしたがそのまま飛び去ってしまった。

 

 

その後シャルも来たので今度は引き留める。

 

「おーい!シャルー!」

 

「どうしたの?メアリーさん」

 

よし、一夏とは違いちゃんと止まってくれた。

 

「ボーデヴィッヒのバリアだけど一方向しか対応できないみたい。それに発動中は動くこともできないみたいだよ」

 

「分かった。じゃあ行ってくるね!」

 

「いってらっしゃい!」

 

情報の伝達には成功した。

 

これで俺の役目は果たした

     ―――と思った瞬間後ろからレールカノンに撃たれた。

 

どうやら流れ弾のようだ。

ただなんだか左腕が痛い。

 

 

……エンジンと左側装甲がやられただけでISは小破で済んだが残り30だったので体に直接来たらしい。

絶対防御は明くまでも命を守るものであり、過信は禁物とはこういうことのことを言うのだろう。

 

 

そのことが分かった後私は赤く染まった左手を見ながら意識が遠のいていくのをそのまま感じていた。

 

 

しかし久しぶりの負傷だ。プナ基地制圧して以来初なんじゃなだろうか。



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第6話 見えない影

僕は今いわゆる暗部で色々動く仕事をしている。

 

組織名は亡国機業。その中で諜報の仕事をしている。

 

 

いろんな国の秘密兵器の情報を読み漁るのは結構楽しいんだよね。

 

そしてその中には対ISにも使える兵器があるんだ。

 

 

そういえばなんで僕はこんなことをしているんだろう?

 

 

 

ああ、そうだ。思い出した。

 

 

五年前、

 

母さんが爆発で居なくなって、

 

兄さんとは逃げてる途中ではぐれたんだったっけな。

 

空軍で働いていた姉さんについてはどうなったかは知らない。でも兄さんが「これじゃ姉さんもだめだな……」とか言ってたな。あの口調からしてもう姉さんも居ないんだろう。

 

父さんについてはそもそも行方を知らない。小さいときからいなかったけど母さんに聞いたら嬉しそうな顔をしながら「待っていればかならず帰ってくるよ~」とか言ってたな。

 

 

その日僕は山奥にある崩壊した我が家から逃げる間に遭難した。でも結局オーブリーには帰れなかった。

 

その後聞いた情報によるとオーブリーは壊滅したらしい。

 

 

 

―――そう、五年前に私は家族を失った。そして帰る場所も失ったんだ。

 

 

 

 

 ◇

 

「うぅ……。ここは……どこ?」

 

私は目を覚ますとなんだか白い部屋にいた。

周囲の器具を見るあたり、医務室のような場所だろうか。

 

「あれ?どうしてここに……痛ッ!」

 

体を起こすと左腕が悲鳴を上げた。

 

そうか、残りシールドエネルギーが無い状態で食らったんだったな。

 

血が出ていたから肉が抉られたのかと思ったがそこまでひどい傷ではないようだ。戦闘機に乗れなくなるなんていう事態にはならないだろう。

 

 

……しっかし何て危ないところに食らってるんだ。いや、掠っただけか。

 

 

そして周囲を見回す。

 

すると千冬さんが立っていた。

 

「お前、傷は大丈夫か?」

「痛いですがこのくらいなら大丈夫でしょう。戦闘機で格闘戦やってるのに比べれば楽ですよ」

 

若干力強く返答した。ここで妥協してもいいのかもしれないが、そこは私のプライドが許さなかった。

 

「それなら大丈夫そうだな。

しかしお前が予想以上に早く起きたから骨折とかの検査は出来ていない。

だから、すまないがあと少しここにいてくれ」

 

そういわれて窓から外を見ているとそろそろ夕暮れという感じだった。

 

あの模擬戦は放課後やったから寝ていたのはせいぜい一時間といったところだろうか。

 

「そういえば私が被弾したあとどうなったんですか?」

「……それはお前のルームメイトから聞くといい。あとお前のISだがダメージがたまっているから学年別トーナメントに出たいのなら模擬戦は控えろ」

「了解しました」

 

あのあと何があったんだろうか?まあいいや、先生に言われた通りに聞くことにしよう。

 

「では私は仕事に戻る。検査が終わるまでは安静にしていろ」

 

そういうと千冬さんは去って行った。

 

医師(?)も居ないようだし暇である。

マニュアルとか幾つか読み込んでおきたいものがあったが、それを取りに動くのも避けるべき状況だった。

 

要するに暇が出来たけどやることが無いのだ。

 

……どうせだしまた寝ようかな。

 

その後朝のアクロバットや先ほどの戦闘の疲れがあることも考えて即座に寝た。

空いた時間は有効に使うべきだ。

 

 

 ◇

 

それから数時間たって私は目覚めた。

 

またメモが置いてある。

どうやらもう部屋に帰ってもいいらしい。

 

許可も出たならいい加減戻るか。

 

 

そう思ったとき、少しだけ空の一部が歪んだ気がした。このとき何故だかグレイプニルやフェンリアを思い出した。いや、直感的にそう思った。

 

私は自ら確認に赴きたかったが左腕のケガを負っていたので自室へと向かっていった。

 

飛べなくはないのだが、これ以上のダメージは戦闘機乗りとしての寿命を縮めてしまうかもしれない。

 

 

―――その直後私がこの行動に後悔することになるとは思っていなかった。

 

 

 ◇

 

私―――ラウラ・ボーデヴィッヒ―――は先ほどの模擬戦もとい挑発の相手であったメアリー・オーブリーについて調べていた。今掴んでいる情報は奴がオーレリアのオーブリー出身で、地元で名が通っている下級貴族の家系だということぐらいだ。

ちなみにこれは本国が調べた情報である。

 

一般人ならそこまでわかれば十分だと思うだろう。

だが実際に戦ったものとして思ったことがった。

 

それは奴があまりにも冷静過ぎたというところだ。

 

 

無駄撃ちを避けて避けられない箇所まで追い込んで撃つ。

 

もしくはわざと外させてこちらの機動を制限させる。

 

 

そんなタイミングを感情的になって飛んでいる奴らからまだまともにISを動かしたことのない奴が見つけ出したのは大問題だと思う。

 

長時間ISを操縦していてもあそこまで連携していない二人の間に丁度いいタイミングを見つけるのは至難の業だ。

 

 

ちなみに今調べているのは本国にいるクラリッサなどである。私も調査に参加しているといえばしているのだがここの設備では少々心もとない。

 

 

あともう一つ調べているのは奴の機体とその兵装だ。が、期待はしていない。

 

なぜならオーレリアはメソンカノンやSWBMの情報を完全に秘匿することに成功しているからだ。電子戦のプロがいるのは間違いないだろう。

そして我々はそのプロの足取りすらつかめていないのだ。

 

 

もしかしたら奴の戸籍情報とかも操作されているかもしれないな。

 

今日だけでは多分無理だろう。

 

「メアリー・オーブリーの調査は今日はもういい。だが今後も継続して行ってくれ」

 

「なぜ今日はもういいのでしょか?」

 

「相手を考えて奴になにか隠しているがあった場合今日中に調べ上げるのは無理だろう。それにダミーにあたる可能性もある。

急ぎ過ぎては情報を掴みきれないだろう」

 

「分かりました、隊長。では情報が見つかり次第順次報告いたします」

 

 

その通信を終えると私は自室へと戻って行った。これがとんでもない事実にあたるとも知らずに。

 




今回の出来はあまり納得できてないのでそのうち修正入れるかも。


2/9追加
2015/07/22一部改稿

ドイツの設定はノースオーシア州がベルカ公国に返還された際に、ドイツ連邦共和国へと改名したって感じです。


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第7話 グリフィス1の災難

前半:IS学園

後半:模擬空戦

となっております。


エスコン分補充回


私は自室へ帰る途中に恐ろしい集団に遭遇した。

勿論場所はIS学園内である。

 

 

なんだか目つきがすごい集団がこっちに全力で迫ってきているようだ。

よりによって左右から押し寄せているな……。

 

 

……これ私の命ないよね?

 

一瞬そう思ったが、希望は隣にあった。

 

それは保健室である。

医務室であるから逃げ込めば手荒な真似はされないと判断した。

……まあここじゃあてにいならなかったのだが。

 

そしてそれ以外に逃げ道はない。

正確に言えば窓があるが、飛び降りに賭けるくらいならまだ部屋に立てこもるほうがましだ。

 

そう判断した私は全力で保健室へ逃げ込んだ。

 

 

中にいたのは……よりにもよって一夏である。

 

 

その瞬間あの集団の目標を悟り、

 

「終わったな」

 

そうつぶやいた直後保健室のドアが空を舞い、私は窓へ全力疾走した。

どうやら判断を間違えたようだ。

扉を塞ぐことも考えたが、時間的猶予が少ない今実行するのは厳しいだろう。

 

その予想が正しく直後扉はすさまじい勢いで開かれた。

 

「な、な、なんなんだ!?」

 

一夏がそう言った。確かにこいつらいったいなんなんだ?

 

「新手の襲撃じゃない?」

 

さっき自分が本能で察知したことを言ってみた。

 

「どうしたのみんな?」

 

シャルがそう聞いた後襲撃者らは何かの紙を突き出してきた。なんかの申込み用紙のようだ。

 

…しかし、うるさい。

 

「なにこれ?」

 

「"今月開催する学年別トーナメントではより実戦的な模擬戦闘を行なうため二人組での参加を必須とする。

なおペアが出来なかった生徒は抽選で組むものとする"」

 

つまるところそれのペア申請用紙ということか。それで男子の居る保健室に襲撃もとい駆けつけたんだな。

 

私は…誰とでもいいや。

生憎それを頼めるような友人もいない。

 

「締切は―――」

 

ここで一夏の話は途切れる。

 

なぜかって?勧誘合戦が始まったからな。

 

しかし、もう少しくらい静かにできないのかな。

 

「皆悪い!俺はシャルルと組むから諦めてくれ」

 

と一夏が言ったことで騒ぎは収まった。

 

襲撃者らは色々言いながら帰っていったのだが…内容は割愛する。

私にわかる話じゃないんでね。

 

やっと静かになったと思ったら今度はセシリアさんとリンさんで一夏の取り合いが始まった。

 

お前ら怪我人だろ!ってツッコみたかったけどあんなに騒げるってことは私ほどひどくはないようだ。

 

まあそれも山田先生が鎮圧してくれたおかげで保健室は平穏を取り戻しましたとさ。

内容はISのダメージが蓄積してるから無理ってことみたいだな。

 

「山田先生、私のISはどうなんですか?」

 

「オーブリーさんのISは…最後の直撃以外でのダメージがないので出場は出来ますね。

ただ、体のほうが治ればの話になりますけど」

 

「そうですか。一応出場する方向でお願いします」

 

「無理はしないでくださいね」

 

そういうと山田先生は去って行った。

 

私も怪我人だしあんまり動くのは避けよう。

 

「じゃあ私は部屋に戻ってるね」

 

「あの…さっきはごめんね」

 

何故がシャルに謝られた。

 

「何が?」

 

「ケガのことだよ」

 

その瞬間シャルと私以外がキョトンとした。

 

え?知らなかったの?まあいいや。

 

「ケガってなんのことですの?」

 

「ケガってなによ?」

 

「お前いつケガしたんだ?」

 

とこの反応。結構な出血もしたと思うんだけど…何故知らない?

 

「さっきの模擬戦でシールドエネルギーが切れたところで流れ弾が来てね…脇腹を掠っちゃったんだよ」

 

サクッと説明。だいたいあってる。

 

「大丈夫…ですの?」

 

「検査で骨とかには問題ないって言ってたから多分大丈夫だと思うよ。少し痛いけどね」

 

そう思いつつ眺めた傷口は少し赤く滲んでいた。

 

どうやらまだ大丈夫じゃないらしい。検査で骨とかが大丈夫だったのならこの痛みは多分出血だろう。

大方先程走ったのが原因だろうか。

 

痛みをこらえていると一夏が

 

「部屋まで運んで行ってやろうか?」

 

と聞いてきた。断る理由もないのでそのまま甘えることにした。

 

 

…うしろから殺気の籠った目で見られたのは私の気のせいだろう。気のせいに違いない…。

 

 

帰る途中のことは疲れによる眠気のせいで朦朧としていたためあまりよくは覚えていない。

 

ただおぼえているのはシャルが一夏がペアを組んでくれてありがとうみたいなことを言っていたくらいだ。

 

そして部屋に帰ってからはギリギリ保てていた意識も途絶えた。

 

 

余りにも早く寝すぎてかなりの早起きになってしまったのはご愛嬌である。

 

 

 ◇

 

翌日早起きするとかなり不謹慎なメールがクラックスから来ていた。

 

[隊長の送ってくれた情報のおかげでフランス製装備が多数手に入りました。情報提供感謝します。]

 

 

…つまるところあの情報でデュノア社かフランス政府を揺さぶったのだろう。多数手に入ったってところを考えると揺さぶられたのはフランス政府だろうか?

 

もし仏政府がグルだったとしたらシャルの苦悩はただの無駄になっている気がするのだが…そこをとやかくいうのは止そう。

 

 

ちなみに起きた時間は午前4:00。

 

また私は飛行訓練(戦闘機のほう)を行うことにした。

 

 

ただ今日は少し違った。

 

ノースポイント(日本)のパイロットから模擬戦の申請があったのだ。

 

 

そして一番の問題は…相手があのメビウス1だということだろう。

 

ただ機体のハンデはつくらしく、こちらがRafale Mなのに対しメビウス1はF-4Eだ。

 

 

…でも勝てる気がしないのは俺だけじゃないはず。

 

勝てる気どころかミサイルを当てられる気もしない。

 

相手は大陸戦争の英雄。トップエース。

一機で一個師団と同等の戦力を持つとまで言われた隊長と彼について行くことの出来るエースのみで構成された部隊、メビウス中隊。その部隊の隊長だ。

最初は二代目が就任したのだと思っていたが、年齢を見る限り初代隊長のよう。

 

隊員の一人ならまだ余裕が持てるが、初代隊長となると希望を抱くことすら無理だった。

だが諦める気はない。

俺だってオーレリアのトップエース。抗えるだけ抗ってやる。

 

まあ戦って俺の実力を知ることにしよう。

 

 

昨日の整備士からは「…がんばって来てね」と言われた。みんなそもそも出来レースとか言わないあたり優しいのかな?

 

 

まあいいや。

 

≪グリフィス1、テイクオフ≫

 

 

 ◇

 

上空へなぜか編隊を組んで上がった。前がメビウス1、後ろが俺だ。

 

≪こちらメビウス1、同位反航戦で始める。指定座標はレーダーに表示されているのでそこまで向かってくれ≫

 

≪グリフィス1、了解≫

 

 

その指示とともに俺らは逆方向へ機首を向けた。

 

指定位置についてからはだれも何も言わないまま開戦となった。

 

 

まずAIM-9をヘッドオン。ちなみにXMAAやSAAMが出てこないのはそもそも当らないと思っているからである。

 

で、ヘッドオンされたAIM-9を両機ともに回避して、後ろの取り合いになった。

 

ちなみに弾頭はミサイルが近接信管のペイント弾で、機銃もペイント弾である。開発製造はグランダーI.G.社のものであり、かつてのiPodミサイル等よりは危険だが実戦に近いということで1対1の訓練などで稀に使われていた。

 

まず俺が後ろをとることに成功する。距離250まで接近してからXMAAの連射を行い機銃による牽制も入れる。

 

だが俺は甘かった。

 

 

メビウス1は回避機動の直後にF-4Eで疑似コブラを行ったのだ。

 

 

おかげで位置関係は逆転。こっちが追われるはめになるが距離が80程度しか離れていなかったのでバレルロールでAIM-9を回避したあとに急旋回を行うことでメビウス1の視界から逃れることに成功した。

 

また巴戦に入る。

 

しかし巴戦になるとRafaleのほうが分がいいはずなのだがなかなか追いつくことができない。

 

 

エンジンを見るとバーナーが付いたり消えたりしていた。

 

どうやら速度調節を細かく行うことで追いつかれるのを避けているようだ。

 

 

かくいう俺も微細な速度調節で追いかけているんだけどね。

 

 

 

ふとあることを思いつき、俺は速度調節で少し旋回半径を大きくしていきメビウス1をうしろにつけさせた。

 

 

 

勿論射撃も受けるが距離を80~20に保たせミサイルを使わせないようにする。

 

そして機銃はバレルロールや微旋回などを組み合わせて回避だ。

 

 

だがさっきから機銃弾の風切り音が鳴っているので精神的にはつらいところもある。多分普通のパイロットなら判断ミスでエンジンに喰らいベイルアウトとなるところだろう。

 

 

しかしどんなに避けられても正確な攻撃を与えてくるメビウス1もタフだ。

 

 

もういいや、多分メビウスの気が切れるころには両方とも燃料尽きそうだからやってしまおう。

 

そしてひと思いに減速した。オーバーシュートだ。

 

俺を追い越すメビウス機、そこでここぞとばかりにミサイルを発射する。

 

 

だがそのミサイルをバレルロールで避けられそして今度は俺がオーバーシュートされてしまった。

 

 

そして俺がミサイルを食らって撃墜判定を受けたことで試合は終わった。

 

 

 

 

で、基地に帰ると例の整備士からメビウス1が怒られていた。

顔は笑顔だが確実に切れてるね。

 

ちなみにメビウス1は40代後半のおっさんだ。

その光景がシュールなのは言うまでもない

 

隣にあったのは…主翼が格納庫でもげたF-4Eだった。

 

「…どうやったら…飛んでるだけで機体、壊せるの…?」

 

口調自体に威勢はないが雰囲気がとんでもない。あの殺気だけで気絶する人が出るんじゃないかとか思えてしまうレベルだった。

 

「いや、そもそもF-4EでRafaleと空戦させるのが間違いだ」

 

それに普通に言い返せているメビウスさんもかなりのつわものだな。

俺も援護をするとするか。

 

「確かにあんたの機動はおかしかったよ。機体限界の壁は明らかに超えていたね」

 

「そう…なの…?」

 

「ああ、そもそもF-4EでRafaleと同等の旋回をする時点で機体への負荷がかなりかかったはずだ」

 

「そうだよ、そう…って君は誰だ?」

 

「ああ、俺か。グリフィス1だ」

 

「君がグリフィス1か。先ほどの機動は素晴らしかったよ。機体に無理をさせない機動では君を超える人は出てこないだろうな。流石はオーレリアの英雄といったところか」

 

なんだか俺はこの人をどこかで見たことがある気がした。

 

「お褒めの言葉をありがとう。ところで何だか見覚えがある気がするのは俺の気のせいか?」

 

「案外気のせいじゃないかもしれないけど…名前が言えない以上どうとも言えないな」

 

「そうか…。まあ俺の気のせいかもしれないしな」

 

多分気のせいだろう。

そう思うことにした。

 

ノースポイント(日本)での顔見知りは千冬さんと父さんくらいしかいないはずだし。

もしくは親父だが…うちの母さんが知り合う切欠が思いつかない。

 

「そういえばなんで君はここに居るんだ?」

 

「ああ、俺は色々あってIS学園に行くことになってね」

 

少し冗談めかした口調で言う。

 

「…そうなのか。お前も大変だな」

 

「じゃあ俺は任務へ向かうとするよ。また空で会おう!」

 

「またな!」

 

そうしてメビウス1は自らの愛機であるF-22へ向かった。勿論機体には一見リボンに見えるメビウスの輪をエンブレムがついていた。

 

妙に気の合うやつだったな。なんだかまた会いそうな気がする。

 

そんなことを思いながら離陸していくメビウス1の機体を眺めていた。

 

 

そのまま見えなくなっても空を眺めていると唐突に整備士の人が話しかけてきた。

 

「…グリフィス1、オーレリアから、F-35がくるみたい…」

 

「な、なんだって!?」

 

その発言に度肝を抜かれた。

確かに導入計画はあったが、海軍優先であり空軍に回ってくるのはもう少しあとだったはずだからだ。

金に余裕が出来たのか、試験的に運用するのか分からないのが怖いところではあるがステルス機を受領できるのだから喜ぶべきかもしれない。

 

「…カスタムは…されてないみたい。…だけど、私達でやってあげる…」

 

「分かった」

 

「…遠慮はしなくても、いいからね」

 

「じゃあ注文は乗ってからつけることにするよ」

 

「あと…そろそろ戻ったほうが…いい時間…」

 

「そうだな、じゃあまた!」

 

私はそういうと、例の整備士と新鋭機に期待を膨らませながら学園生活へと戻って行った。

 

学園に戻ると千冬さんに軽くにらまれたのは気にしないでおこう…。

 

 

 

その後IS学園に来ている軍人の間で謎の模擬空戦が軽い噂となったのは言うまでもない。




次は学年別トーナメントになると思われます。

2015/7/23 一部改稿


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第8話 ラウラとグリフィス 前編

本国に調査を依頼してはみたがまったく情報が出てこない。

オーレリアは人不足だというのに……。

部下が無能なのかオーレリアの防諜が優秀なのか悩むところだ。

 

まあいい。もう少し待つか。

 

そして奴が本物かどうかを見極めたい。が、トーナメントまで私闘は禁止されてしまった。

理不尽な状況に少し策を巡らせた私はあることに気が付く。

トーナメント……トーナメントがあるじゃないか!

 

私は共闘を苦手としてはいる。しかし、奴が私が思っているほどの状況把握能力を持つならば問題あるまい。

 

では申込用紙をもらってくるとするか。

 

 

 ◇

 

 

私が模擬空戦を終えてIS学園の校舎へと向かう途中。

 

 

……なぜだか何かの紙を持ったラウラに待ち伏せされていた。

 

紙の大きさは学年別トーナメントの申込用紙に似ている。

 

 

……まさかペアを組めというのか?

 

そこまで出てきたとき、ラウラが声をかけてきた。

 

「おい、お前。私とペアを組め」

 

早速命令形かよ。とりあえずそこは置いといてペアか。

そこまで問題があるわけじゃないからいいか。

ただ不安な点があるといえば私のIS乗りとしての実力くらいである。

 

「別に構わないよ。ただし、そこまで期待しないでね」

 

「そうか。申込用紙はこちらで出しておく」

 

「了解」

 

一時的とはいえコンビを組む間柄としてはかなり不自然な会話が流れた。

 

 

これには何らかの目的があるかもしれないな。

 

まあもしもの時はそのまま肯定してしまえばいいか。

 

 

こうして軍人コンビか結成された。二人とも任務を抱えているのは言うまでもない。

 

ちなみに絡んでいるのは思想や陰謀ではなく私情である。

 

 

……そういえば訓練とか私闘禁止になっちゃったしどうしよう。

このままだと最悪ラウラの足を引っ張る結果で終わりそうな気もする。

 

だが気にするほどではない、か。

 

まあいいや、サァ行くか。

 

 

 ◇

 

結局あれ以降射撃訓練ぐらいしか出来なかった。

 

機動訓練は機体と体に負荷がかかるからという理由で禁止されてしまった。

 

 

全然万全じゃないけどもうトーナメント当日なんだという事実が重くのしかかっていた。

 

まあペアがラウラだから何とかなるかな。

そんな楽観的な考えもしてみたが、やはり戦うなら万全でありたいものだ。

 

…まあ優勝したら一夏と付き合わなければいけないらしく、それは回避したいから万全じゃなくて正解なのかもしれないが。

 

回避できなかったら千冬さんに殺されかねない…。

いくらなんでも年齢差が開きすぎだ。

 

 

観客席はほぼ満席。2年以上も相当数居るようだ。

 

 

招待席には……オーレリア空軍副司令官のユジーンがいる。あとは開発局のファルコ1か。

 

ファルコ1のやつ、珍しいことに出撃任務を逃れたらしい。

うらやましい。

それとも新人が使えるようになったのか。

まあ、どちらにしてもうらやましい。

 

ちなみにオーレリア空軍では人員が少なすぎて総司令以外は結構実戦に出ることが多い。もちろん兼任している人も多数いる。

それでも人が足りないのだ。

 

 

着替えを早く終わらせたせいで暇な私はほかに知り合いは居ないかとモニターを眺めていた。

 

ユジーンは緊張してるな。それに比べてファルコ1はのびのびしてる。

……普通逆じゃないのか。

 

そんなことを思いつつくつろいでいるとトーナメント表が出てきた。

 

 

私・ラウラペアと織斑・デュノアペアが一回戦で戦うはめになるらしい。

 

負傷後のことは軽く耳にはさんだくらいだが因縁の対決だ。

 

 

横にいた箒さんに睨まれている気がするのは気にしないでおこう。

裏切り者のような扱いをされてるのだろう。

 

私だって思うところはあるのだが、仕事だ。気にしないでもらいたいところである。

 

 

2番目だがもうハンガーへ向かうことにするか。

ラウラもそのうち来るだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

1番目の試合が終わり私達の番がきた。

 

 

ちなみに既に出撃は済ませており、スタート地点で対峙しているところである。

 

「一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

 

ラウラよ、どれだけの因縁を持っているんだ?まあ俺には関係ないけどさ。

 

「そりゃなによりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

そして一夏も相当な敵意を抱いているらしい。隙を見せそうだな。

まあこの点がラウラにも当てはまってしまうのが現状であるのだが…。

 

 

二人の短い決意表明が終わった瞬間にカウントダウンが始まった。

 

これ絶対狙ってやってるだろ。

それとも二人が上手く時間を見てやったのか。

まあそんなことはどーでもいいや。

 

そして0になった瞬間

 

「「叩きのめす!」」

 

とラウラと一夏が同時に叫んだ。

 

一夏はエネルギーソードを振り回しラウラに突撃もとい特攻をしてくる。

 

もちろんAICが発動し、一夏は足止めを食らう。

敵の武装くらい把握せい。

 

そう突っ込みそうになったが背後を狙われると不味いのでシャルにM61を撃った。

 

牽制なのでいともたやすく回避される。

しかしラウラがレールカノンを展開するのには十分だった。

 

そのことに気づいたシャルが咄嗟にアサルトライフルをラウラの頭目がけて発射。

 

照準を狂わせるには十分だったようでレールカノンによる射撃は一夏から少し外れた。

少しくらいはシールドエネルギーを削れただろう。

 

 

…だが射撃は照準を狂わせる以上の効果を持っていたようだ。

反射神経で後ろへ回避しようとしてAICを解除してしまった。流石に目の前の着弾にはビビったか。

 

「逃がさない!」という声とともにシャルがマシンガンを展開した。

 

そこからマシンガンの雨が降るだろうと思った私はAM-1をシャルへ向け撃った。

 

すると後方から一夏の突撃が入ったのでオーバーシュートしてQAAMを全弾発射した。

…ここまで綺麗なオーバーシュートって中々できない、と思えるほど綺麗にオーバーシュートが決まった。

やはり一夏は未熟だ。

機動に警戒の甘さが見て取れる。

 

大体は失速して追撃しそこなったり速度落としたところを狙い撃ちされたりだったりする。

なお最高速の低い機体で全速力で逃げると最高速の速い機体は勝手に前に出てきてくれる模様。

 

 

余りにも近距離すぎて一夏にQAAMが3発命中。ある意味超近距離でのミサイル回避が当人の精神状態次第なのはISの小さな弱点か。

 

何だか険しい顔をしたので相当シールドエネルギーを削れたようだ。

これでシャルから聞いた一夏の単一能力、零落白夜の発動回数を抑えられる。

 

一夏はラウラの方向へ離脱を図った。

やはり因縁の相手と戦いたいのだろうか?

 

シャルはラウラと交戦中のようだから一夏はこっちに引き付けておこうか。

 

そう思いTLSを一夏に向け照射、腕に兵装があったことに驚いたのか回避が間に合わず命中した。

だが流石ISというべきだろう。

 

1秒ほど照射されたものの落ちることはなかった。

 

機動でTLSを振り切った一夏。

だがやはりその機動は甘い。

 

「俺にもその程度の予測ならできる」

 

そう言った瞬間にTLSを当てる最中に置きミサイルとして放ったSAAMが一夏の機体へと吸い込まれていった。

 

 

流石は千冬さんの弟だ。ここでもう私へ攻撃を与えるのは困難と判断したのだろう。

 

零落白夜を発動させシャルの射撃に対しAICを発動していたラウラに斜め後方から突っ込んで行った。

 

追撃も少しは入ったようだが如何せん加速力が足りていなかった。

この点も報告書に記載しておくべきだろう。

 

 

 ◇

 

ここはアリーナの管制室。

巨大モニターで私と織斑先生はラウラさんのチームと織斑くんのチームの試合を見ていました。

 

「オーブリーさんとボーデヴィッヒさん、大した連携をしている訳でもないのに織斑くんやデュノアさんを撹乱してますね」

 

「ボーデヴィッヒは自分側が複数の状態での戦いを想定していない。それを理解してメアリーが援護をしているんだろう」

 

「オーブリーさんの攻撃は援護なんでしょうか?織斑くんを容赦なく攻撃しているように見えますが……」

 

「十分な援護だ。最初の一撃のような多方向からの攻撃をさせていないからな」

 

その発言の直後に無誘導と思われるミサイルがほぼ全てあたるという衝撃的な映像が流れてきました。

空中機動戦の相手の位置を予測するのはかなり大変なのに……。

 

一体オーブリーさんは何者なのでしょう?

 

そんな疑問が頭を過りました。

 

 

 ◇

 

 

一夏はラウラへ零落白夜を発動させ瞬間加速で突っ込んで行った。

 

そして正面に弾幕を張られていたラウラは回避しようとするがそのときにAICが切れて弾幕と零落白夜の直撃を受けた。

 

ラウラのシールドエネルギもやばそうだ。

 

一夏だけならAICで相手できるだろうがシャルの支援が入ると弱点を突かれかねない。

 

 

ならばシャルを足止めする以外はない。

 

そう思い俺はそこそこ近い距離でメソンカノンとエネルギーパックを展開、シャルにメソンを叩きつけた。

 

一夏は案の定ラウラへ切りかかっているから後ろは安全だ。

 

 

だが俺はシャルの装備を確認するのを忘れていた。

 

IS界にて悪名高きシールドピアスに変わっていたのだ。

ありとあらゆる装甲を打ち砕くと言われている、その武器に。

 

そしてシャルは不敵な笑みを浮かべこちらへエネルギーシールドを出しながら突撃してきた。

 

あんな代物は喰らいたくないのでメソンカノンを格納、AM-1を展開してシャルに向かい弾幕を張りながら距離をとった。多分これは俺を引き離してラウラへ向かうための陽動なのだろうが左脇腹があれな状態で喰らう気にはなれなかった。

 

進路妨害としてミサイルを放ちたいがもうミサイルが無かった。

 

妨害手段がないか考えていると反転してラウラの方へ向かっていった。

 

 

直後シャルと一夏によるラウラ総攻撃が始まった。

 

そして俺は瞬間加速を発動させラウラ援護へと向う。

 

 

よくみると一夏はシャルのアサルトライフルを構えている。

どうやらもう零落白夜を出すほどのシールドエネルギーは無いようだ。

 

そう判断した俺はAM-1を構え一夏へ撃った。

ちなみに一夏は慣れない銃器でラウラを狙うのに集中していてこちらに気づいてはいない。

 

だが俺の撃った弾丸は一夏がラウラに撃つのより少しだけ遅れた。

 

俺の一撃で一夏のシールドエネルギーが切れISが解除されたが、一夏の弾で隙を見出したシャルによるシールドピアス連打によりラウラもシールドエネルギーが無くなってしまった。

 

これはマズい。

 

 ―――そう思った瞬間、ラウラの機体に異変が起こった。




自分が設定したキャラ以外で書くのって難しい。


ちなみにメアリーは本気になったり本気を出したりすると一人称が俺になります。
ですがIS学園での生活でだんだんと丸くなっていくかも?

2/9 一部追記&修正

2015/7/23 一部改訂
2016/7/18 一部改稿


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第9話 ラウラとグリフィス 後編

2014/9/25 一部追記

2015/7/23 一部改稿


―――こんなところで負けるのか、私は……。

 

―――私は、負けられない。負けるわけにはいかない!

 

 

私は戦いのために作られ、生まれ、鍛えられた。

 

その証拠が最初の識別記号だ。

 

C-0037といったか

 

私は優秀だった。

 

私は様々な戦い方にて最高レベルを維持し続けた。

 

しかしそれは世界最強の兵器、ISの出現までだった。

 

直ちに私にもISへの適合性向上のため肉眼へのナノマシーンの移植手術が行われた。

 

しかし私は適応しきれずその結果出来そこないの烙印を押された。

 

そんなとき、あの人―――織斑教官―――に出会った。

 

彼女は極めて有能な教官であった。

 

私はIS専門となった部隊の中で再び最強に君臨した。

 

そんな中私は教官の強さが気になった。

 

それは弟だという。

 

だが私は教官に優しい顔をさせる弟が許せない。

 

認めない。

 

 

―――力が欲しい。

 

 

そう思うと機械質の声が聞こえてきた。

 

『汝、力を欲するか?』

 

「よこせ、力を。比類なき最強を!」

 

そう叫ぶ。

 

直後、私は気を失った。

 

 

 ◇

 

 

突然ラウラの機体が稲妻をまとい始めた。そして同時に爆風が発生し、発光までしだした。

 

ファルコ1なんかは流石はベルカ、やることが違うな、とか考えてそうだ。

 

 

だが私は旧ベルカ(ドイツ)ではないと思い知った。機体が溶け、操縦者であるラウラを取り込んだのだ。

光学迷彩やショックカノンといった攻撃、欺瞞の手段などではない。

 

変形でもするのだろう。

その片鱗を見せるかのようになんらかの流体がラウラの機体を覆い始めていた

 

このアリーナにいるほとんどが衝撃を隠せていない。

まああんなものを見せられればそうなる。

 

そういえばコフィンシステムってISに近いような気がする。

まあ関係は無いだろうが。

あれは未完成だがこちらの思考操縦システムは完成しているといっていいだろう。

機械の補助付きとはいえ動くのだ。対してコフィンシステムは操縦者に多大な負荷をかけてやっと機動のみが出来るレベルである。

 

案外ISをコフィンシステムにリンクさせたら高性能戦闘機になるかもな。

 

そんなことを考えていると警報がなった。

 

『非常事態発令。トーナメントの全試合は中止、状況をレベルDと認定。鎮圧のため教師部隊を送り込む。来賓、生徒はすぐに避難すること』

 

そしてアナウンスが終わると防護壁が出てきて客席を隠した。

 

さりげなくユジーンとファルコ1を見たがファルコ1が随分と残念そうにしていて、早く逃げましょう的な感じでユジーンが説得していた。

 

ファルコ1はこの技術が気になるのだろう。

それは俺も大して変わらない。

最新技術というのは心を躍らせるものだ。

まあ同時に警戒心を向けるものであるが。

 

 

……どうやら変形も最終段階まできたようだ。

 

すると一夏が唖然とした様子でくちを開いた。

 

「雪片……千冬姉と同じじゃないか」

 

そうなのか。

 

千冬さんを慕っているラウラのことだ。案外操縦者の意思も反映されているのかもしれない?

 

だが私は深く考えるのを中断した。なぜなら一夏が感情的になっているからだ。

 

それに黒いなにかがこっちにきた。

 

 

私はとっさに両手にショートナイフを展開し、雪片をそれでうけた。

 

「一夏、なぜそこまであれに敵意を抱く?」

「あいつ千冬姉と同じ間合いを使ってやがる。あの技は千冬姉だけのものなんだ」

「だからといって生身でISに突っ込むのか。死ぬぞ!」

「ならどうすれば……!」

 

無謀な突撃を静止しつつ頭を捻らす。

この場に居るにしろ去るにしろ身を守るもの、つまるところISが必要となる。

どうにか再起動できないものかと思考を巡らし、一つの可能性に思い至った。

 

「俺の機体には中間子攻撃の際に使うエネルギーパックがある。これから用意するから少し待ってくれ」

 

そういうとエネルギーパックをとるまでの戦術を考えた。

あれがこちらに来ている現状で取り出すのは不可能だ。

あれの目標をシャルにすればいいのかな。

 

<<シャル、あれに攻撃を加えて俺から引き離してくれ!>>

 

<<分かった>>

 

そういうとシャルの銃撃が始まる。そしてあれ改め偽千冬さんはそちらの方向へ向かっていった。

 

 

その間に俺はM.B.S.R.を展開、エネルギーパックを取り外し武装をAM-1とLSWM(演習用)に変更した。

 

「じゃあこれを接続してシールドエネルギー等を補給してくれ。俺もイラつくからちょいと攻撃してくる」

 

そういうと一夏のほうへ進まないように攻撃を繰り出した。

 

 

……だが腐っても千冬さんのコピーだということだろう。

俺が突っ込んだ瞬間シャルの機体は切られ、シールドエネルギーが切れたようだ。

実際俺が撃っても大体避けられている。

 

おかげで交戦から20秒立つ頃には接近戦となっていた。

 

もう逃げるのはむりだと判断した俺は両手にショートナイフの形態へ移行、TLSをレーザーブレード代わりにしながら近接戦をしかけた。

 

 

だが俺の攻撃は掠るばかりで逆に偽千冬さんの攻撃は少しづつ確実に俺のシールドエネルギーを削って行った。

 

 

そしてまた俺がケガで運ばれるのかと思ったとき、横から乱入していてきた一夏に零落白夜発動状態で切り付けられ倒れた。

 

そしてそのとき一夏のつけた切り口からラウラが落ちてきた。

 

意識を失っているようだが目立った外傷はないな。

 

 

「ありがとう、助かったよ。あと少しで前の二の舞だったぜ……」

 

そして妙に疲れるトーナメントだったぜ……。

 

 

そう思い一息をつこうとしたら周りを教師部隊に囲まれていた。

 

 

少し違和感を感じた私はログを確認した。

どうやら撤退を勧告されていたらしい。

 

……説教来るかな。まぁいいや、サァ行くか。

 

 

 ◇

 

救護室で私は千冬さんとラウラの目覚めを待っていた。

 

千冬さん曰く「あいつが自ら選んだんだ。何らかの理由があるんだろう」ということなので一応目覚めるまで待つことにした。

 

ちなみに今は暇だから軽い雑談をしている。

 

「流石は本職というべきか。かなり的確な判断をしていたな。撤退以外は、だが」

「はは……。戦場じゃ咄嗟に判断しなければいけないときが多かったんでね」

「そういえばあの時点で光学迷彩の技術が確立していたと聞いたが本当か?」

 

光学迷彩といえばフェンリアとかグレイプニルか。

話すのは全世界中継が行われたフェンリアのほうにしよう。

 

LSWM以外に機密はないはずだ。

 

「ええ。確か全世界へ向けた中継も行われていたはずです」

「そんな情報は聞いた覚えがないのだが」

「直後にISが出たせいで光学迷彩のことなんてすっかり忘れられましたからね。

それにあのあと製造施設が崩壊したせいで今では失われた技術になってしまいました」

 

アーケロン要塞での緊迫した戦いを思い出しつつそう言った。

今ではオーレリアのレーダー基地となっているあの島を訪れてみるのもいいかもしれない。

 

「そうなのか。ならISに搭載される心配も少ないということだな」

 

その問いに一瞬逡巡して答える。

 

「ディエゴ・ナバロや開発者らが関わることが無い限り搭載されることはないでしょう」

「ふむ……」

 

案外光学迷彩については気にかけているようだ。

 

でもISは有視界戦闘の多い兵器だからしょうがないのかな?

グレイプニルの発電量か地上の支援施設無しで稼働するとは思えないが。

 

「何かあったんですか?

まあ答える必要はないですが」

 

「有り難い」

 

 

会話が途切れるとラウラは目を覚ました。

 

 

「私は……。

 

なにが起きたのですか」

 

「一応これは重要案件である上に機密事項なのだがな、VTシステムは知っているな」

 

「ヴァルキリートレースシステム……」

 

VTシステムって何?と思ったけどそれを聞くのは後にしよう。

私以外は知ってるみたいだし。

 

「そう。IS条約でその研究はおろか開発や使用、すべて禁止されている。

 それがお前のISに積まれていた。

 

 精神状態、蓄積ダメージ、そしてなにより操縦者の意思、いや願望か。

 それらがそろうと発動されるようになっていたらしい」

 

「私が……望んだからですね」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「はい!」

 

「お前は何者だ?」

 

「私は……誰でしょうか」

 

「誰でもないなら丁度いい、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「へ?」

 

 

意志を持てということか。

 

かの凶鳥フッケバインも「理想は捨てるな」といったそうだな。

 

 

「それからお前は私には成れないぞ」

 

最後に千冬さんはそう少し微笑みながら話すと救護室を後にしていった。

 

こういうところを見ると千冬さんは教官が適任なんだろうな。

 

 

……そして千冬さんが居なくなったあとにラウラは笑い出した。大丈夫か?

 

 

そしてラウラは私に気づいているのかな?

 

「ラウラ、大丈夫?」

 

「うわ!?お前いつからそこにいた!」

 

……最初からいたのに気づいてなかったらしい。少し悲しいぞ。

まあ私の背ならしょうがないのかもしれないが……。

 

「千冬さんの隣にずっといたよ。気付いてほしかったな」

 

「そのことは置いといてだな、その……素晴らしい援護だったな」

 

「そうかな?まあ褒めてくれるのはうれしいけどでも結局ラウラを援護しきれなかった」

 

「いや、あそこまで戦えたのなら十分だろう。それに織斑に予想以上の度胸があったのもある」

 

「そうだね。でもまだ彼の機動は未熟だよ」

 

「ははっ、違いない。まあそれでこそ鍛え甲斐があるというものだ」

 

ラウラの微笑で少し医務室の空気が明るくなる。

 

「あとお前にもう一つ言うことがあった。これから組まないか」

 

「いいよ、ラウラ。それじゃあまたね、相棒」

 

私は戦闘の時から思っていたことを話した。

 

 

少なくとも戦闘ではコンビを組んでもいいと思ったのだ。

彼女の連携を気にしない戦い方を援護するのは私の訓練になるだろう。

 

プライベートに関してはこれからどうにかしていけばいい。

 

それに千冬さんの言葉でどこか吹っ切れたようだしこれからのラウラは変わっていくだろう。

 

 

……だが私が去った理由はもう一つある。

 

一つはドイツ軍に目を付けられたということ。これはあらかじめ分かっていたことだからいい。

ラウラとかかわった時点で既に決定的なのだ。

 

 

問題は二つ目。

 

フェンリアらしき機体を捉えたとの報告がユジーンからあがったのだ。

あとは諜報にてグレイプニルの情報が流出した可能性があるとのことだった。

 

 

フェンリアに関する情報に関しては未確認とのことだが流出の件が判明し、同項に記載されていることから推察するにもう特定されているのだろう。

 

 

私たちは再び戦うのだろう……。

今度の戦いは敵が未知数だ。

でもためらってはいられない。

 

オーレリアのために。

 

その重圧を感じてため息を吐く。

そして私は気持ちを切り替え食堂へと向かった。明日更なる衝撃に見舞われるともしらずに。

 

 

 ◇

 

結局メアリーの正体はわからなかった。

 

分かったのは性格がよく的確な判断を下せるということくらいだ。

 

オーレリアにも気づかれたようだから続けてもあまり戦果は上がらないだろう。

 

 

ただ一つ言えることは…メアリーは私の相棒だということだけだろうか。

 

 

しかし相棒か……いい響きだ。




最近書くペースが上がったり下がったりしてます。


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第二章 亡国
第10話 アレンフォートの空


今回はエスコン分しかありません。ご注意ください。

あと今後この回は修正が入るかも。


私、いや俺は夏休みに入ってすぐにノースポイントのアレンフォート空軍基地への出頭を命じられた。

 

作戦については各員集合次第ブリーフィングで話すとのこと。

多分フェンリアの件なのだろう。

 

 

だが問題は次だ。

"今回の作戦はISAF、オーレリア、オーシアの合同作戦とする"と書いてあったのだ。

 

超大国2+中小国1という謎編成なのである。多分ISAFは自らの領土内だからで、オーレリアに関しては情報流出によって作られてしまった兵器の撃破かナバロ追撃だろう。

と思ったのだが兵器の件なら情報提供でいいだろう。

 

…それにオーレリアは金と支援さえちらつかせれば喰らいつかざるを得ない状況だ。

 

そしてもっと謎なのはオーシアだ。

一体何がしたいんだ?

 

恩でも売って見返りをもとめたりでもするのか?

 

 

まあいいや。そこら辺はブリーフィングでわかるだろう。

 

それに3番目の記載ということから察するに戦力的にもそこまで多くないのだろう。

 

 

 

そんなことを考えているとアレンフォート空軍基地が見えてきた。

 

 

<<こちらオーレリア空軍第1航空師団201戦闘航空隊隊長のグリフィス1だ。着陸許可を求む>>

 

―――実はIS学園に行っている間に部隊再編が行われたのだ。その結果第一航空師団201戦闘航空隊隊長になった。

 

配備されるのはF-35Aだと聞いた。

久しぶりのステルス機だ・・・フフフ。

 

 

ちなみに受け渡しは今日。ここアレンフォートで行うと聞いている。

楽しみだなぁ…。

 

 

<<こちらはアレンフォート空軍基地。IFF確認、着陸を許可する>>

 

その無線を聞き一応上空とレーダーを確認する。

降りるときを襲われたら反撃は実質不可能だからな。

 

見た感じ上空には哨戒中と思われるF-15Eしかいない。どうやら俺が最後だったようだ。

かなり近いのに俺が最後か…。

 

まあいいや。そこまで気にすることじゃないし降りよう。

 

<<こちらグリフィス1、着陸誘導を頼む>>

 

<<了解、着陸誘導を開始する>>

 

じゃあ降りるか。

しかしこんなに燃料が余る出撃なんて久しぶりだな。

 

降りようとしたとき無線が突然入ってきた。

 

<<緊急事態発生!緊急事態発生!>>

 

ノースポイントのAWACSだろうか?スカイアイからとなっている。

 

<<こちらグリフィス1、何があった?>>

 

<<アレンフォート空軍基地へ向け飛行中の攻撃機をレーダーで捕捉した!地上にいる各機スクランブルに入れ!>>

 

何だと!敵に先手を打たれたのか!

まあいい、迎撃だ。

 

というか守らないと俺のF-35がやられちまう!

 

<<スカイアイより各機へ、敵機方位230、高度8000、距離4000。数8>>

 

<<グリフィス1、了解。迎撃へ向かう>>

 

そう言い終えると飛行場から戦闘機が上がってきた。

先頭はF-22が8機とRafaleMが4機、そしてF-35が1機か。

 

後続はいるようだが機種確認までできるほどの余裕はないな。

 

 

敵機はもうXMAAの射程内だしな。

 

<<グリフィス1、FOX3!FOX3!>>

 

敵機は・・・Su-27が4機とB-52が4機か。

爆撃機は後ろにつけば撃てばあたるからロックオンしたのはSu-27である。

 

Su-27だと・・・避けられるかもな。

 

予想通り1機は避けた。

だが他の3機には当たった。結構上出来だな。

 

<<メビウス1、エンゲージ>>

 

戦闘機を落としたところで上がってきた部隊が爆撃機にXMAAを放ったようだ。

あれ?メビウス1って前に模擬空戦したあの人じゃないか!

 

あんな奴が味方なら心強いな。

 

<<グリフィス1よりメビウス1、また会ったな>>

 

<<おお!お前か。早い再開だったな>>

 

雑談が始まりそうになったがスカイアイが止める

 

<<今は任務中だ、私語を慎め>>

 

すっかり忘れていた。

おかげで俺ら他の友軍機から笑われてるぜ…。

 

俺は笑いから逃げたくなってXMAAを回避したSu-27を追いかけた。

 

減速旋回して敵の後ろ側につきそこから機銃を撃ちながらピッタりくっつくのがいつもの戦法なのだが、どうやらSu-27のパイロットは相当な新人らしい。

 

なぜならこっちが後ろについてから慌ててロールをして、短距離汎用ミサイルの射程に自ら入ってきたからだ。

おかげで楽に落とせた。

 

俺がSu-27を狩り、敵第一波が全滅するとまた無線が入る

 

<<敵機捕捉。方位230、高度7500、距離2000。数12>>

 

どうやら第二波のようだ。

 

敵機はF-15Cが4、F-5が2、B-52が6か。

 

…F-5の奴らは多分エースだな。厄介な護衛だ。

正直巡航飛行と空戦で疲れてきたのでこれはメビウスに押し付けよう。

 

<<俺が爆撃機を叩くから援護を頼む>>

 

そういうと俺はまずすれ違いざまに短距離汎用ミサイルと機銃をB-52へ向け叩き込む。

 

<<グリフィス1、ナイスキル!>>

 

どうやら落とせたようだ。

 

無線で撃墜を確認すると減速旋回を行いB-52の後ろへつく。

 

そこで俺はXMAAを発射。

戦闘機隊はもうメビウス1らの餌食になったようでF-22やRafaleMがB-52へ下方から一撃離脱を行った。

 

だがこれでは落ちない。

 

 

まあ一撃離脱で落ちなくても俺が撃ったXMAAにとどめを刺されたが。

 

敵第二波全滅を確認すると無線が入った。

 

<<敵の全滅を確認、全機帰還せよ>>

 

そこで一安心し燃料計を見るともう不味い域に達していた。

 

<<こちらグリフィス1、燃料が不味いので早く降ろさしてくれ>>

 

<<了解した>>

 

そういうと俺は着陸コースへと向かった。

 

 

 

 ◇

 

 

「あ、貴女がグリフィス1ですね」

 

格納庫で機体から降りた私が整備士に真っ先にかけられた言葉だ。

 

「ああ、そうだがなにかあったのか?」

 

「いえ、機体の受け渡しの件です」

 

それか。早く行きたいが…すこし休んでからにしよう。

 

「あとでもいいか?」

 

この質問に整備士がはいと答えそうになったときにユジーンが答えた。ユジーンも来てたのか

 

「敵に先手を打たれてしまったために作戦が早くなりそうなんです。できるだけ早くお願いします」

 

さっきの攻撃は結構影響を与えるものだったんだな。

それなら疲れてはいるが大したものじゃないし…さっさと受け取るか。

 

「分かった。今すぐ行こう」

 

「それではこちらへ」

 

そういうと整備士はRafaleを置いた格納庫の中に置いてあったF-35へと向かった。

どうやらここはオーレリア空軍の派遣部隊が使用している格納庫のようだ。

 

そしてF-35の前でここまで連れてきた整備士がどこかで見たことのある整備主任へと案内が移った。

 

…こいつ確か首都近郊の空軍基地で整備士やってた奴だ。何故だか悪い印象を持ったんだよな。

なんでだっけ?

 

「やあ、久しぶりだね。グリフィス1」

 

「5年ぶりですね」

 

「そうだね」

 

そこから軽い挨拶を交わすと降りてきたグリフィス5のほうへと向かった。

 

「久しぶりだなグリフィス5」

 

「相変わらず俺のことを名前で呼ばないな。

それよりあいつのことを本当に忘れたのか?」

 

笑いながら返された。

 

「グリスウォールの近くで見た気がするんだが…」

 

「ハハッ、あいつはお前に惚れてたやつだよ」

 

「な、ななんだって!」

 

…厄介なことになったな。

クソッ、なんでこいつが来てるんだ…。

 

多分異常に俺があわてていたのだろう

グリフィス5を見ると笑いを必至でこらえているようだった。

 

そして奴を見ると…何のアプローチもとってこない。

 

 

その時俺は気づいた。

グリフィス5の奴が俺をはめたということに。

 

 

 

…あの野郎、絶対ただじゃおかねぇ。

 

 

 

その後に「隊長!さっきのは嘘だ!」と喚きながらグリフィス1に引きずられるグリフィス5の姿が多数目撃された。

 

グリフィス5の行方を知る者はいない…。




2/9 一部修正

2015/08/01 一部改稿


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第11話 予兆

グリフィス1が連行してから大体2時間後、疲労で気絶したグリフィス5が衛生兵のところへ届けられた。

・・・打撲痕があったのは気にしてはいけない。

 

それから格納庫へ戻った私はファルコ1から整備士についての説明を受けていた。

 

「おい!南十字星」

 

「なんだ?」

 

二つ名で呼ばれたためちょっと睨みながら言葉を返した。

他のエースと同じように二つ名で呼ばれるのを戦場以外ではよしとしていないのだ。

 

「あいつが言っていたことは嘘だ」

 

「じゃあ奴は誰だ?」

 

「あいつは・・・空母グリスウォールで整備士をやってたやつだ」

 

空母グリスウォールか・・・。何回か降りたな。

 

白騎士事件の時も降りたんだっけ?

 

「ほう・・・。じゃあなんで奴と間違えたんだ?」

 

「お前の言う奴の双子の兄だそうだ」

 

あんなやつが二人も・・・。なんてこったい!

 

「弟のほうとは性格が真逆だから安心しろ」

 

「それなら安心だ」

 

これで懸念事項が一つ消えたよ・・・。

これなら安心して受け取りが出来る。

 

「でもなんで奴の口調なんだ?」

 

「グリフィス5の奴がそう仕向けたんだよ」

 

つまりグリフィス5をとっちめたのは正解だったのか。

・・・もう少しやってもよかったかもしれない。

 

「あとあいつが派遣部隊の整備主任だ」

 

「分かった。じゃあ受け取りしてくる」

 

そう言うと私はF-35の隣にあったRafaleの整備をしていたそいつに声をかけた。

 

整備しているのは・・・隼と南十字星のエンブレムだからファルコ隊の機体のようだ。

 

「整備中済まないが受け取り作業を進めてくれ!」

 

「分かりました」

 

そういうと主任はF-35の機体の説明を開始した。

 

要約すれば高機動戦が十分にできる機動性と地上攻撃が十分できるヨーの効きを兼ね備えた戦闘攻撃機ということだった。

 

ただ対空兵装で長距離に撃てる兵装がないから1対多のときは機動戦に持ち込まなければいけないということだ。

 

 

つまりは軽戦闘機に攻撃機の機能を追加したもの。

・・・一応ステルス機ではあるのだが最近の技術発展で近づけばあっさり捉えられることが多いので長所には含めない。

 

性能的にはRafaleMより全体的に少しよくなったというくらいらしい。

 

だが・・・やはりF-22に戻りたいという気持ちは変わっていない。

まあオーレリアの財政事情を鑑みるに今のところF-35が限界だろう。

 

オーレリア復興をコツコツとやっていけばそのうち乗れるかな・・・。

 

そんなことを考えていたら召集がかかった。

 

<<操縦士及び管制官は至急ブリーフィンングルームへ集合しろ>>

 

多分ブリーフィングが始まるんだろう。

 

・・・グリフィス5はちゃんと起こしていくか。

 

 ◇

 

 

ブリーフィングルームには3か国の管制官らやメビウス1らパイロットが集まっていた。

もちろん今回の作戦に繰り出される人々である。

 

「よう、グリフィス1」

 

そう声をかけてきたのはファルコ1だった。

 

「ファルコ1か。最近のオーレリアはどうだ?」

 

「相変わらずさ。みんな復興のために働き通しだ」

 

「そうか。この任務も一種の休暇と言えるかもな」

 

「ハハッ、確かにそうだな。帰ったら激務かもな」

 

「・・・前例があるから怖いな」

 

そこまで終わるといつの間にかスクリーンのほうへ移動していた管制官の一人が

 

「それではブリーフィングを始める」

 

と言った。さっき管制していたスカイアイという管制官のようだ。

 

「先日"亡国機業"と名乗る組織から謎の攻撃を受けISAF海軍の強襲揚陸艦メガリスとオーシア海軍の駆逐艦エイカーソンなどオーシアやISAFの艦艇17隻が大破した。またこれにより付近を飛行中だった民間機が墜落、オーレリア人が多数犠牲となった。

要求はあったがとても呑めるものではなかったので、却下。その後

これにより亡国機業を敵性分子と断定、ISAF・オーシア・オーレリアの連合で攻撃に踏み切ることになった。」

 

100km離れた船を大破に追いやれる兵器なんてあるのだろうか?

SWBMにそれくらいの威力があったという話が・・・まさかショックカノンを強化したのか!?

ということは司令部が言ってきた"ハッキングし情報を盗って行った組織"というのは敵である亡国機業なのだろうか。

 

犠牲となった方々には申し訳ないが民間機に関してはこの作戦に参加するための口実として最大限に利用されたんだろうな。

 

「この謎の攻撃に関してだが、どうやら超大型航空機からのようだ。

この大型航空機についてオーレリア空軍が可能性としてあり得るものを提示してくれた。これに関する説明はオーレリア空軍から派遣されたユジーン・ソラーノ大佐に行ってもらう」

 

そういうと説明が多分オーレリアで一番グレイプニル関係の兵器に詳しいユジーンに変わる。

 

「私が説明を担当させていただくユジーン・ソラーノです。

こちらの映像にある大型航空機ですがオーレリア戦争にて撃墜されたグレイプニルの強化版として設計され、製造が少し進んでいたXB-340かと思われます。

その後何らかの者が手引きして亡国機業の手に渡ったものかと」

 

これを聞いて俺は戦慄を覚えた。

つまりはこれだけでは終わらない可能性があるということだ。

 

「具体的な強化箇所の説明をしますと機体下部にショックカノンという近距離の殲滅兵器があるのですが、射程が10倍となっています。

ただこれによりXB-340では内部に発電施設を設置することで解消されていた"ショックカノン発射時に光学迷彩が使えなくなる"という弱点が解消されていない模様です。

具体的な時間で言うと5~7分ですね」

 

威力が桁違いか・・・。多分電力系統がかなり強化されてるんだろう。

でも光学迷彩が5分消えるのはいいな

 

「この強化型ショックカノンやそれを搭載するために大型化した航空機を維持するために使用する電力を算出しましたが、小都市などで消費される電力量と同等の消費であることが判明しました。

この発電量の上昇を可能に出来るのは中間子加速器を使用した発電と思われます。

一応ですが対空兵装として中間子砲があるかもしれません。警戒してください」

 

おいおい中間子砲があったらどうやって攻撃すんだよ!

 

ここで中間子砲(メソンカノン)について説明すると一定速度以上で飛べば照準から逃げ切れる中間子ビーム砲台である。

だが、接近する際には高度をこまめに変えて行かないとかなり近くに撃ってくる厄介な砲台だ。

 

これでユジーンの説明が終わったのかまたスカイアイが話し出した。

 

「つまりは最初から航空機を用いた攻撃をすることは難しいということだ。

そこでこの大型航空機に対し、オーレリア海軍の潜水艦ナイアッドを旗艦とした潜水艦隊を囮として、おびき出し光学迷彩を解除させる。

発見次第潜水艦隊には急速潜航後離脱してもらい、周辺に待機している潜水艦のミサイル攻撃でショックカノンを破壊している最中に航空部隊が接近、攻撃する」

 

潜水艦を多用する作戦か・・・。

ショックカノンの影響が海中まで出たりはしないのだろうか?

 

「ショックカノン破壊後は航空隊にかかっている。

任せたぞ。

あとはUAVを搭載している可能性もあるので注意せよ」

 

飛行空母だったらかなり厄介だな・・・。

だがそういう説明はないのかスカイアイが

 

「座標等は離陸後に送信する。

質問が無ければ1時間後の出撃への準備に移れ!」

 

と言ったことでブリーフィングは終わった。

 

特に質問はないので俺はそのまま少し嫌な予感を抱きながら格納庫へと向かっていった。

 

―――その嫌な予感は的中することになる。




ブリーフィングがかなり難しくて大変でした。

誤字脱字等あったら教えてください。


ここは修正が結構入るかも


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第12話 XB-340

<<こちらナイアッド、囮艦隊は行動を開始する>>

 

その無線とともに作戦が始まった。

 

<<スカイアイより航空隊各機へ、これより一部空域への侵入を禁止する。禁止空域はレーダーに表示させておくので確認するように>>

 

侵入禁止空域は…潜水艦隊周辺120kmのようだ。

その間潜水艦隊は無防備となる訳だが…敵に航空機がいないことを祈ろう。

 

<<グリフィス1、なんか嫌な予感がしないか?>>

 

<<それについては同感だ。俺は艦載機を積んでいると見た>>

 

あの大きさで何もついていない訳がない。

そしてその中で一番可能性としてあり得るのは艦載機だ。

 

<<艦載機か…。潜水艦隊の奴らは大丈夫なのか?>>

 

<<大丈夫だろう。艦載機を出した時点で位置が割れてしまうぞ>>

 

光学迷彩を展開した状態で発艦なんてやったらどうなるかは考えなくてもわかる。

だから発艦させるなら一時的でも光学迷彩を解かなければ無理だろう。

 

UAVなら発艦可能かもしれないが、発進させた時点でAWACSのレーダーに映って隠密行動ではなくなる。

 

<<真面目に考えればそうだな。しかし敵は出てきてくれるのか?>>

 

<<さあな>>

 

無駄足になる可能性は十分にあるということだ。

俺はこれが無駄足になって更に情報が集まることを望んでいる。

 

―――だがそんなに甘くはないと実感させられた。

 

 

<<スカイアイより航空隊各機へ!高度90000にてXB-340の出現を確認!グレイプニルより上の高度をとって目標に接近、攻撃をしかけろ!>>

 

その発言と同時に広域レーダーから潜水艦が消え始めた。

 

見事におびきだしは成功したってわけだ。

 

<<こちらナイアッド!ショックカノンにISAF海軍潜水艦ドラゴネットのミサイルが命中!よし、壊せたぞ!>>

 

おお!ショックカノンを壊せたのか。これで楽に―――

 

<<こちらオーシア海軍潜水艦N-11、XB-340よりUAVの発進を確認。何て数だ!>>

 

 ―――はならなかったようだ。

 

レーダーに機影が60ほど出てきた。

UAVの大きさから考えたとしても内部にはかなり大きなスペースがあるようだ。

そして潜水艦隊のほうへと向かっていくが既に多くの船が潜航できたらしい。

 

その直後

 

<<ナイアッドより全軍へ、数隻被弾したが潜水艦隊全艦潜水完了した!これより離脱する>>

 

と無線が入った。

 

多少被害が出たようだが潜航に問題はないくらいの軽微なものらしい。

 

 

そしてその無線が終わるころ俺たち航空隊は消えかけているXB-340を長距離ミサイルの射程内におさめた。

 

生憎短距離ミサイルしか積んでいないが、機体下部黒いから煙が出ているので光学迷彩を発動させても逃げ切れないだろう。

 

 

―――そう思った矢先赤い光が前を飛んでいたF-22を4機爆散させた。

 

 

 

<<メソンカノンだ!気をつけろ!>>

 

咄嗟に俺は叫んでいた。

 

そして叫ぶと同時に各機が散開していく。

だが、散開の遅れた何機かが犠牲になった。

 

<<メビウス1よりメビウス隊各機へ、まずメソンカノンを叩くぞ>>

 

メビウス1の無線の終了とともに突撃していく8機のF-22。かっこいいなぁ・・・。

 

…一瞬気を抜きかけたが俺もまだ動けていない味方機へ指示を出す。

 

<<グリフィス1より各機へ、メビウス隊が近づく前に光学迷彩にダメージを与えろ!>>

 

この無線で散り散りになっていた戦闘機もバラバラだがXB-340へと向かっていた。

 

だがXB-340に近づくにつれ少しづつ戦闘機の数は減って行った。

 

 

そう、俺は重要なことを言うのを忘れていたのだ。

メソンカノンへ接近するときの回避法である。

 

そしてそのことに気づいた俺は真っ先に無線でそれを言った。

 

<<メソンカノン接近時には高速を保ちながらこまめに機動をとれ!さもなくば落ちるぞ!>>

 

俺の発言が終わると多くの戦闘機が変則的な機動でXB-340へ迫って行った。

 

バレルロールをしながらいくもの、

縦旋回中に横旋回をかけたりするもの、

微妙に高度を変えながら蛇行するもの、

不規則に飛んでいくもの、

 

実に様々である。

 

 

だが近づくにつれ何機かがUAVに喰らいつかれ空戦へ巻き込まれていく。

 

空戦に巻き込まれた戦闘機は墜ちることはないのだがUAVの物量のせいで乱戦から抜けられないようだ。

多分レッドアラートが鳴りっぱなしだろう。

精神的に大丈夫かは気になるが、俺の居るところからでは少々遠いので他の友軍機に援護を救出させることにした。

 

かくいう俺は強行突破はせずに接敵したものから落としながらXB-340へと向かっている。

 

大体ヘッドオンだから大分楽なんだけどね。

 

 

ちなみにそんなに楽に落とせるもう一つの要因はUAVが機銃1~2発で落ちるからというのもある。

いくら小さくても耐久が無いためかなり落としやすかった。

 

襲来してきたUAVの第三派にヘッドオンや急旋回して後ろをとったりなどでUAVを20機ほど葬ったころでファルコ1から茶々が入った。

 

<<グリフィス1、今日の調子はだいぶいいようだな>>

 

<<この程度、敵でもない>>

 

俺の発言があらわすようにメビウス隊やファルコ隊なども文字通りUAVを瞬殺していた。

機動もかなり悪かったからな。

 

…ファルコ1は完全に落としにかかってるから実はもう俺以上に撃墜しているのである。

 

 

しかしあんなことが言えるということはまだまだ余裕があるんだな。

そう判断した俺はファルコ1への逆襲をしかけることにした。

 

<<そんなに余裕があるんだったらUAV全部落とせば?>>

 

だが俺の反撃は裏目に出たらしく

 

<<分かった。やってやるよ>>

 

といってバーナーを吹かしながらUAVの群れへと突っ込んで行った。

 

 

調子がいいのはファルコ1なんじゃないか?

 

そんなことを思っていると正面上方でUAVが6機ほど墜落していくのが目に入る。

…調子良すぎだろ。

 

直後スカイアイから

 

<<UAVの全滅を確認、各機直ちにXB-340を攻撃せよ>>

 

という無線が入ったあとファルコ1に盾つくやつが居なくなったのは言うまでもない。

 

 

 ◇

 

 

UAVの攻撃を躱してXB-340の懐に潜り込めたのは作戦参加機のうち80%だった。

 

光学迷彩にノイズが走っているところを見るとだいぶダメージは与えたようだ。

ちなみにメソンカノンはメビウス隊の攻撃で沈黙した模様。

 

<<各機総仕上げだ。まずは光学迷彩から破壊しろ>>

 

スカイアイがそう言うとともに残存戦闘機はノイズの走っているところへ攻撃を仕掛けた。

 

何機か距離を見誤ったり光学迷彩でわからないところに突っ込んでいく。

だが、それを横目で見ながら俺は機銃とミサイルを叩き込んだ。

 

 

おかげでだろうか。

総攻撃開始から2分立つ頃には光学迷彩が完全に壊れた。

 

<<光学迷彩の破壊を確認!HUDに新しいターゲットを表示しましたので攻撃してください>>

 

…何故だか管制がクラックスに変わった。

というか、そもそもお前来てたんだ。

 

<<グリフィス1、了解。いやまて、XB-340からカタパルトが出てきたぞ!>>

 

見た目はオーシア戦争のころから水上機を発進させるために使われていた火薬式カタパルトのよう。

だが、水上機を上げるには明らかに空いたスペースが少ない。

 

どこかで見たような形をしている。

  ―――そうだ!ISのカタパルトだ!

そう気づいた俺は無線で叫んだ

 

<<IS用カタパルトだ!>>

 

<<マジかよ!おい、AWACS!指示を!>>

 

誰かがその一言を返した瞬間に混乱に陥りかけていた味方を一瞬にして落ち着かせた。

 

意外にも返答はクラックスから来た。突発的な問題には慣れているのだろうか?

 

<<グリフィス隊は直ちにカタパルトを破壊し、ISの発進を阻止してください。

それ以外の航空機はXB-340攻撃を続行してください>>

 

よし、やってやるか。

 

そう思った俺は汎用ミサイルと機銃をカタパルトへと撃ち込んだ。

するとすぐに爆発し、カタパルト落ちて行った。

 

だが、俺はここで気を抜いてしまったのだ。

 

その代償は直後の無線とともに俺たちへやってきた。

 

<<カタパルト破壊を確認しました。グリフィス隊も…カタパルト跡にアンノウンの反応あり!ISです!>>

 

そう、ISは結局出てきてしまったのだ。

 

 

直後俺が見たのは8脚の蜘蛛みたいなやつがF-15Eを何機か落としていく光景だった。

 

なんてことだ…。




7/27 修正入りました

2015/08/01 一部改稿


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第13話 RTB

2015/08/01 一部改稿


俺は結局ISの発進を防げなかった。

 

そして味方に損害を出した。

 

だから、俺はこの蜘蛛みたいなISを叩き落とす。

 

 

その後の俺の行動は速かった。

 

まずガトリングの雨をアフターバーナーを吹かしながらのバレルロールで回避したあと積んできていたQAAMを発射、そのすぐ後に急旋回してガトリングの射程から逃げた。

 

その後敵性ISは別の友軍機―――リボンらしきエンブレムだったから多分メビウス隊―――の誰かに喰らいついた。

そのまま遠くまでいったので俺は再攻撃の態勢を整えた。

 

直後オーシア海軍の潜水艦N-11からオープン無線が入る。

 

<<アンノウンのデータが本国から転送されてきた!全機確認してくれ>>

 

…データを見ると対ISに特化しているようだな。

でもなんでオーシアがこんな情報を持っているんだ?

 

まあ情報戦は専門の奴らに任せておこう。

 

<<スカイアイより全軍へ通達!これよりアンノウンをアラクネと呼称する。

クラックスは電子支援を、指揮はスカイアイが行う>>

 

クラックス出番少なかったな。

しかしAWACSが2機いると色々面倒だな。

 

<<それではメビウス、グリフィス、ファルコの3隊はIS攻撃を、それ以外はXB-340攻撃を敢行せよ>>

 

IS攻撃隊は腕のいい奴らをかき集めた感じな編成だな。

まあそうでもなきゃ勝てないけど。

 

さてどうやって勝つのか・・・。

 

考えていたら早急に無線が入った。

 

<<メビウス3よりIS攻撃隊へ、格闘性能は向こうが上だから一撃離脱戦法をとるのはどうでしょう?>>

 

一撃離脱、か。F-104でF-15を落としたときにも使われたというし連携して追撃させないように出来ればかなり有利だ。

 

一撃離脱で行こうと決めた俺は無線を開く。

 

<<今のところ連携さえできれば最高の戦法だろうな>>

 

<<よし、決まりだ!メビウス隊、交戦!>>

 

そういうと散開し、多方向から一撃離脱を仕掛けた。

勿論同じタイミングで突っ込んだりはしていない。

 

…惚れ惚れする連携じゃないか。負けたくはないが…多分負けている。

非常に悔しいが、事実だろう。

 

どういう経験を積めばメビウス隊並の連携が取れるようになるか考えていると

<<ファルコ1より各機、遅れるな!>>

との無線が入った。

 

その無線で攻撃のことを思い出した俺は目標後方20°付近からダウンピッチ70°で降下を始めた。

 

そこそこ余裕があったのでメビウス隊の攻撃を見ていたのだが、進行方向を変えずに180°スピンをしながら機銃を撃つなどといった常識を軽く超える機動を行っていた。しかも失速してない。

何か特別なカスタムでもしているのだろうか?

 

それにフラットスピンで失速してないなんて未だ輸出がほとんどされていないPFA-KAの試験映像でしか見てないのだが…戦闘で使えるものだったということに驚きだ。むしろメビウス隊だからこそ使えるのか?

 

…本国に帰ったらアクイラ1にでも相手してもらいながら練習しようかな。

 

色々考えていると近くからミサイル発射音が聞こえた。

レーダーで見たところファルコ1が撃ったらしい。

 

そこで俺は援護できるように敵の未来予測位置へと汎用ミサイルを発射した。

 

発射した直後には機関砲の射程内にも入ったので、アラクネ前方に弾幕を張る。

さらにどういうことなのか察したファルコ2~3やグリフィス5、メビウス隊が敵の周辺へ弾幕を張った。

 

おかげで回避に一瞬の躊躇いが生じたようで、ファルコ1が近距離で放った中距離ミサイル4発と俺の撃った汎用ミサイル2発が全弾命中したようだ。

 

脚を数本失ったようだが墜ちていないところを見ると流石ISというべきだろうか?

 

 

でも、戦意は奪えたようなのか急降下し逃げ始めた。

 

離脱時にこちらを撃ってこないところを見る限り武装がやられたのだろう。

 

そこで俺らは戦闘機がISを落とすチャンスだと思い追撃を仕掛けようとしたがクラックスから止めが入った。

 

<<味方がXB-340攻撃に苦戦しています!直ちに救援に向かってください>>

とのことだ。

 

本当に昔からユジーンは変わらないなぁ・・・。

 

オーレリア戦争でのユジーンを思い出しながらXB-340へと向かっていったのだが、生憎F-35の足は大して早くはない。

 

おかげで俺はミサイルの射程外からメビウス隊の容赦ないミサイル攻撃で止めを刺されたXB-340が黒煙を吐きながら落ちていくのを見ているだけだった。

 

そして

 

<<作戦終了。各機基地へ帰還せよ>>

 

という無線で作戦の幕は閉じた。

 

そういえば衝撃波弾道ミサイルの爆発を感じなかったが積んでいなかったのだろうか?

 

 

 

―――そう思ったとき、空を衝撃波が覆った。

 

 

 

 

 

衝撃波で頭を揺らされ一瞬意識を失いかけた私は吐き気を抑えながら無線を開けた。

 

<<グリフィス1より味方機へ、生きているものは応答して!>>

 

そういうとメビウス隊とファルコ隊やグリフィス5、それとノースポイント空軍の数機が応答した。

空中管制機も勿論応答する。

 

直後レーダーを確認したスカイアイが無線で残存機を言った。

その声はどこか暗いものだった。

 

<<味方機残存16、被害率60%だ>>

 

状況は分かっていたが流石に空気が重くなった。

 

一瞬で16機落ちたのだ。しかもそれはベテランとか精鋭とか言われる人たちである。

それにISAFから参加している者からすれば墜ちたのは昨日まで笑い合っていた同僚という場合もあるだろう。

 

実際仲間が居なくなる悲しさはおれ自身も体感しているからな。

 

 

そんなことを考えて、自分のことを棚に上げていた俺だったのだが少し不味いことに気が付いた。

燃料がアレンフォートまで持ちそうにないのだ。

 

精々持ってIS学園になるだろう。

俺はその事を本作戦でXB-340攻撃以外の指揮を務めているスカイアイに報告した。

 

<<燃料がIS学園までしか持ちそうにない。空中給油機を回してくれないか?>>

 

<<あらかじめ用意していたのだが先ほどの攻撃で機器に異常が出たらしく補給ができない。

グリフィス1はIS学園飛行場で燃料補給後アレンフォートへ向かえ。貴機が到着し次第デブリーフィングを始める>>

 

俺だけ別行動になるのかと思っているとメビウス1の無線も入った。

 

<<当機もアレンフォートまでは燃料が持ちそうにない。いっそのことIS学園飛行場でデブリーフィングをするのはどうだ?>>

 

後半は多分冗談だろう。でもこの調子だとIS攻撃隊はほとんど燃料不足になっていそうだからいいのだろうか?

 

そう思ったが数秒後スカイアイは

 

<<予定変更、各機一旦IS学園飛行場で給油してからアレンフォート飛行場へ向かえ>>

 

と言った。

 

 

至って普通の対応なのだが俺としてはなんだか残念だった。

 

あぁ、IS学園のフカフカなベッドで早く寝たい…。

 

そう思いながらIS学園へと向かっていった。




XB-340討伐は今回で終わりです。

それにしても超兵器との空戦が書き辛かったというのが投稿者の感想ですね。
なのでこれから少しずつ修正していきたいと思います。


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第14話 可能性

閑話的な何か。伏線があるかも。

4/4 一部再編

2015/08/01 一部改稿


俺らはIS学園に燃料補給で降りた。

 

だがそこで俺はある問題に気付く。

 

 

どこかからIS学園の生徒等に見られてたら不味いということだ。

 

見つかれば任務(休暇)終了となるだろう。

 

まあ空に戻れる以上終わっても良いと思うことすらあるのだがIS学園には色々注意しなければいけない諜報屋が居るとも聞いた。

俺がグリフィス1であるとバレるのは不味い。

コックピットに籠るのもいいけどそうすると味方に勘ぐられるし、それに燃料を積みきるまでは時間がかなりある。

 

どうしようかなぁ…。

 

ちなみに味方は俺がISの操縦を習っていることは知っているが、IS学園の生徒となっていることは知らない。

 

そういえばここって基地兼IS学園生用空港だったような…。

 

でももうエプロンに入ってるし…この際気にしたら負けだ!

 

そうやけになって私はF-35から降りた。

 

 

そこで早速来たのは千冬さん。突然20機弱の軍用機が下りてきたのだからしょうがないのだろうか?

 

実際千冬さんはユジーンに

「これは一体何事ですか?」

と聞いている。

 

オーレリア軍がノースポイントにいることやノースポイントの国防軍といることも珍しくは無いのだが、煙を吹いてるのが混じってた上にここはIS学園との共同管理だからしょうがないのだろう。

 

随分と困っているようだ。

でも俺も困りたくないし気にしないで行こうか。

 

オーレリアとISAF、そしてオーシアの共闘の件はまだ当事者しか知らない。

 

ここまで大規模な作戦が極秘裏に展開された事実が知られれば大問題となることだろう。

 

まあここにいるのはノースポイントとオーレリアの昔から仲が良い国として一部に有名な組み合わせだ。

問題は無い。

 

とか考えていると千冬さんに声をかけられた。

 

「メアリー、事情を説明してはもらえないか?」

 

どうやらはぐらかされたらしい。ユジーンは上手く嘘をつけないからしょうがない、のかな。

生憎公式作戦ではないので私は嘘を伝えることにした。

 

「演習中にトラブルが発生しただけです」

 

「じゃあなぜ彼ははぐらかしたんだ?」

 

痛いところを突かれる。

だがここで間を開けるのは相手に嘘と伝えるようなもの。

 

咄嗟に更なる嘘を吐いた。

 

「緊急着陸のドッキリもとい訓練ですよ。たまに無報告で始めて錬度を確認するんです」

 

「では何故オーレリアが訓練に協力した?」

 

「外国のほうがリアリティーが出るでしょう」

 

ここまでいうと千冬さんはむすっとしてしまった。

ブリュンヒルデの称号を持つ人だから何かを察したのだろう。

 

でも彼女は知るべきではない。

 

―――"公式にはまだ世界は平和のうちにある"ということを。

 

 

…ラーズグリーズの記事を投稿してたジュネットならこの事実を勘ぐってしまいそうだ。

 

まあそれはどうにかなるだろう。寧ろどうにかしないと不味い。

それより今は見学に来たIS乗りへの対応。

 

そう決めた俺は周囲を見回しファルコ1らを探した。

 

エプロンに居ないということは格納庫か?

 

…あ、F-35格納庫に入れなきゃ。

 

 

この後グリフィス1がファルコ1らに笑われたのは言うまでもない。

ちなみに整備員の怒りの「みんな揃ってこんなに無茶しやがって」という怒りもぶつけられた。

 

精神的に少し来るものを含む口撃にどうにか耐えていると、国家を超えた搭乗員の雑談が俺のF-35の前で始まった。

 

「亡国機業ってどうなると思う?」

 

「さあ?ただオーシア情報部に本拠地掴まれたら終わりだろうね」

 

とこんな感じ。雑談とはいえども軍関係者でもない限り知らない情報も紛れている。

 

「そういや今回使った対IS戦術はどうするんだ?」

 

「教本にでも乗るんじゃないか?でもあれ連携が取れて錬度が高くないと無理だぞ」

 

「なんでだ?」

 

「ミサイルの発射タイミングと機銃の発射タイミングを見誤ると間違いなく逃げられる」

 

ちなみにお互い実名どころかコールサインすら知らない人と話している人が大半だ。

まあ大半の整備士は整備士同士、パイロットはパイロット同士である程度知っているが。

 

「つまりはトップエース専用戦術か。でも化け物級になってくると単機で相手出来そうだけどな」

 

そんなF-15E乗り(前席)の発言に"化け物級"のエースが反論する。

 

「やってみなきゃ分かんないけど流石に単機で挑みに行く勇気は無いな」

 

と俺。それにメビウス1が付け加える

 

「丁度いい高性能機体があればやれなくはないがやる気にはならん」

 

その発言を聞いたパイロットの一部が少し引いた。

だがここに横槍を入れる人が一人。ファルコ1だ。

 

「でもISって制約無しに近い超機動と耐久さえどうにかすれば勝てるんじゃないか?」

 

確かにそうだ。が、それが分かっていても出来る奴らは少ない。

同じことを誰かが言う。

 

「確かにそうだけどそれを克服できる奴らといったら極少数だ」

 

「でもそのごく少数の数はISの数と比べてどうなんだ?」

 

良く考えたらISもたかが467機程度だ。どうにかなる数なんじゃないだろうか?

そのことについて考えているのか皆が黙った。

 

だが俺はこの議論を吹き飛ばすようなことを思いつく。

 

「SWBMやショックカノンを使えばISなんて一撃なんじゃないか?」

 

「確かにな。じゃあなんで世界は女性優位になんかなったんだ?」

 

「ISは汎用としては最強なんだろう。それにデカブツのほぼ全部に言えることだが国を挙げて存在が隠されている場合が多いだろ」

 

「国は自分ら男の利権じゃなく世界平和を望んだか」

 

「いいことじゃないか。まあ世の中の何も知らない男性たちは気の毒といったところだろうか」

 

つまりは大量破壊兵器を闇に葬りさり、世界で再び戦争が起きることを避けようとしたということだ。

だが、ISを利用した武装集団が出てきた以上また日の光を当てるのだろうか?

 

その結果起こる破滅も想像できるが使わなければベテランやエースを失うことになりかねない。

どう動くかは神のみぞ知るということなんだろうか。

 

そこまで言うと管制官勢もやってきた。

 

「ISに対抗する戦術を練るとは…流石トップエース達だな」

 

その発言を聞くとF-15E乗り達が顔をしかめる。

だがスカイアイがフォローした。

 

「お前たちは"大陸戦争で戦線を支えたもう一つの部隊"なんだから少しくらい自信を持て」

 

「でも俺らはまだキルレート200を超えてませんよ」

 

僻んだ声でそう言った。

でもスカイアイはめげずにフォローを続けた。

 

「メビウス1と張り合えたのにか?」

 

これには搭乗員全員が驚いた。

手合せを申し出る者すらいる始末だ。

 

だがF-15E乗りは自ら反論する。

 

「全員で挑んだからですよ。そういえばSWBM攻撃後のベイルアウトは?」

 

「損傷大で高度を落としたF-15Eが4名脱出したのを確認した。多分シグマ隊の奴らだ

救助に輸送ヘリを何機か向かわせてある」

 

「なら安心です」

 

そうつぶやくとシグマ隊の隊長と思われる人は自らの愛機のところへと戻って行った。

 

あのF-15E乗りもといシグマ隊がそんなに強い部隊だったとは…。オーレリアで言うファルコ隊と同じ立ち位置なのだろうか?

 

そのうち模擬空戦でもしてみたいものである。

 

そんなことを考えていたらとんでもない提案をしたやつが居た。

勿論ファルコ1だ。

 

「メビウス隊とファルコ・グリフィス隊連合で模擬空戦でもしないか?」

 

数的不利でメビウス隊と戦えとか無茶ブリにもほどがある。

そう言おうとしたのだがグリフィス5とメビウス8に邪魔された。

 

「「いいんじゃないか?それ」」

 

と言われてしまったのだ。

正直メビウス1と戦ったりアラクネ戦においての連携をみると追加でアクイラ隊を連れてこなければ勝機は少ないと思う。

 

しかし模擬空戦の話は直後の管制官らの全力の制止でつぶれたのであった。

 

そのとき俺が安堵したのはメビウス1だけが気づいたようだ。

…それにしてもなんだかメビウス1には親しみ易さを感じる。まるで知り合いのような―――

 

そこまで考えたときに呼び出しがかかった。

燃料補給及び整備が終わったようだ。

 

そこまでわかると俺らはアレンフォートへと飛んでいった。



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幕間 南十字星inIS学園 日常編
閑話1 とある平和な一コマ 1


XB-340討伐作戦の数日前。

 

シャルの女性宣言とかトーナメントとかがあって部屋が入れ替わり1025号室は私と一夏の部屋となっていた。

 

おかげでフカフカのベットで寝れている。

 

すげー寝心地がいいです。

この寝心地の良さが兵舎のベッドにあったなら一週間空戦続きでも気力を保てそうなくらい疲れがとれる。

 

 

だけれども俺は相変わらずかなり早く起きた。

なんだかここ最近早起きが習慣化している気がする。

……それとも早朝アレクトに慣れてしまっただけなのか。気にしたら負けかもしれない。

 

 

今日起きたのは0510。

 

平日だったら格納庫で機体点検だけしか出来ないが今日は休日なのでまたアクロバットでもやろうかな。

 

 

そう思い起き上がると、一夏のベッドが何だか膨れていた。

 

布団からは足が4つ出ている。

 

……だれか夜這いを仕掛けたな。

こんな度胸のある奴は誰だろう?

 

 

誰が仕掛けたかも気になるが正直一夏の反応が一番気になるな。

 

そう思った私は隠しカメラを仕掛けてから一夏を起こすことにした。

 

 

鈍感すぎて好意に気づいていない一夏だが、ここまで派手に来られたら流石に反応するだろう。

そう思い一夏をつついた。

 

「ねぇ、一夏。とりあえず起きてみて」

 

「ん、どうした?」

 

「体を起こせばわかるよ」

 

すると一夏は何だかわからないという様子で体を起こし始める。

 

未だに気づかないとは流石一夏。

 

 

だが流石の一夏でも掛け布団をめくり上げた後フリーズしたようだ。

 

 

なぜなら一夏のベットの中には全裸(何故か眼帯だけはつけている)のラウラが寝ているのだから。

……いくらなんでも大胆すぎるだろ、相棒。

 

 

とにかく起こそうと思い私がラウラをゆすりだした数秒後一夏の絶叫が1025号室に轟いた。

まるで出力全開のジェットエンジンみたいな音がした。

 

そしてラウラも一夏の悲鳴で起きたようだ。

 

「なんだ。もう朝か?」

 

……だがかなりとぼけていやがる。なんてこったい。

 

「お前いつの間に入ってきたんだ!?あとメアリー、分かってたなら説明してくれ!」

 

一夏の慌てようが予想以上で思わず笑ってしまった。

こいつには直球がよさそうだ。

 

「メアリー!笑うなよ!」

 

「だってお前がそういうので慌てるところ初めて見たからさ」

 

おかげで一夏にキレ気味に返される。

…この場合はむしろ逆効果の気がするんだけどね。

 

 

だが一夏が私に気をとられている奥ではさらに事態が進行していた。

寝ぼけているのかラウラが羽織っていた毛布が落ちてしまっていたのだ。

 

そして一夏がラウラのほうに向きなおるとほぼ全裸のラウラがちょこんと座っているわけで

 

「おいばか!隠せ!」

 

というような絶叫がまた聞こえたのだった。

 

そして

「夫婦とは互いに包み隠さぬものだと聞いたぞ。ましてお前は私の嫁」

とかえすラウラ。

これもはやギャグだろ。

 

一連の発言に

「なんなんだよこの間から」

と引いている一夏。

 

キスされても気づかないとは流石一夏。鈍感すぎるだろ。

 

……この状況を見ていても面白いのだが篠ノ之さんとかの鈍感に悩まされている人たちがこの部屋に来ることだろう。

逃げる準備をしておくか。

 

そう思い笑いながら後退し、退路として窓を開け、降りるときにつかえるワイヤーをひっかけた。ちなみにこのワイヤー、陸軍特殊部隊等が作戦に使用しているワイヤーで何かに使えるだろうとユジーンに渡されたものだった。

 

まさかこんな時に使うことになるとは。

 

 

時間的にもそろそろ篠ノ之さんが来そうな時間だったので寝技を仕掛けられている一夏を見捨てて窓から降下していった。

…捨てられた子犬のような目をしていたが逃走劇に加わる気はないのだ。すまない。

 

直後聞こえたのはドアが勢いよく開けられる音と竹刀特有の音。

どうやら一夏は間に合わなかったようだ。

 

予想はつくがあとで一部始終をカメラで見ておくか。

そんなことを考えつつ格納庫へと向かっていった。

 

 

 ◇

 

 

朝の一件のあと、飛行場へと向かう道で以外な人物と遭遇した。

ブリュンヒルデこと千冬さんである。

どうやら朝のジョギング中のよう。体力維持を欠かさないとは流石元?世界一といったところだろうか。

 

「おはようございます、先生」

 

「ああ、オーブリーか。こんなに朝早くに何をしに行くんだ」

 

そうジャージ姿の千冬さんが聞いてくる。

 

「愛機の整備です。今日は暇なので少し飛ぼうかとも思ってます」

 

「そうか。今日は少しお前にもついてきてもらいたい事があったのだが、大丈夫か」

 

突然入れられた用事に軽く驚いた。

千冬さんと一緒ということで、IS学園かオーレリア関係の用事なのかとも思ったがそれなら事前連絡とかあるだろうし、一体何なのだろう。

 

「大丈夫だとは思いますが、何をするんですか?」

 

「それは後で伝える。私服に着替えて気づかれないうちに裏門に来てくれ」

 

千冬さんに軽く相槌を打ちつつ、少し考えて了承した。

 

IS学園の朝はトレーニングとかで早い。

格納庫には諸事情に合わせて更衣室もある。

 

私服を更衣室に置いて整備をすることにしようか。

 

 

 ◇

 

朝の遭遇からしばらく後、裏門に私服姿の大人三人が集合していた。

私と千冬さん、そして山田先生である。

 

「…千冬さん、どうして山田先生がいるんですか?」

 

私は疑念を隠さず口を開いた。

この件、バレると少々不味いにも関わらず大丈夫なのだろうか。

 

「ああ、そういえばお前には言ってなかったな。副担任である山田先生も十分知ってるから安心しろ」

 

「そういうことですか。了解です」

 

ため息を吐きつつ答える。

無駄にあせってしまった。だが警戒を欠かさないのは問題ない…筈である。

 

「ええと、私何か不味いことしてしまいましたか?」

 

少し怯えたかのような声で山田先生が口を開いた。

 

…自分のことで周りが不穏な空気になってたから居心地が悪いのだろう。

やはり過度の警戒は表に出さないほうがいいかもしれない。

 

「いいえ、こちらの問題です」

 

先程の自分の考えと山田先生を安心させんとする気持ちが同時に顔に出たのか苦笑いのような表情を作りながら返答した。

 

おかげで若干気まずい空気である。

 

半分くらいこうしてしまった責任もある以上、何かで打破すべきだ。

がしかし手段がない。

 

そう思ったとき頭の中を電撃が通る―――なんてのは言い過ぎだが、あることを思い出した。

 

「そういえば今日何をしに行くんですか?」

 

「ああまだお前に言ってなかったな。今日は臨海学校に備えた買い物だ」

 

余りにも以外な答えに体が硬直する。

そして溜息が出た。

 

「そういう用事は先に言ってください。今朝言ってくれなかったら危うく模擬空戦申請しちゃうところでしたよ」

 

肩を落としつつそう答えた。

すまなかったなという千冬さんの返答と共に歩き出した。

 

 

 ◇

 

その後私は千冬さんと山田先生とともに特に書くようなことは何もなくショッピングモールで買い物をしていたのだが―――

 

―――どうみても怪しげな試着室を発見した。

 

 

概要を説明すると

1.試着室なのになぜか靴が2人分出ている(しかも多分男性用1組と女性用1組)

2.さっきからカーテンの隙間が広がったり閉じたり

3.なんだか嫌な予感がする。

とこんなかんじ。

 

ちなみに1、2、3ともに俺が戦闘機乗りとして鍛えられた索敵能力(1,2はおもにネベラジャマー攻略戦で役に立った)もあるので千冬さんと山田先生は気づいていないようだ。

でも私の様子が少し変なのには気づいたようで千冬さんが「向こうに気になるものでもあるのか?」と聞かれた。

 

だが伝えるのに困った。

知らない人の色々問題があるアレな行為を妨害すべきか、関わらないべきか。

通報するという選択肢は、下手を打つと水着等を買うのに時間を食いそうなので除去した。

まあ公共の場と大して変わらないところでやっちまう奴の面を見てやりたいとも思ったが。

 

そう思った私はあることを思いついた。

誘導していけば正義感とか強そうな千冬さんが一気にやってくれるのではないだろうか、と。

 

そうすれば回答は決まりだ。

 

「ええ、あそこら辺の水着も見ておきたいんです」

 

そういって露骨に試着室へと誘導していった。

 

ちなみに実際にそこで見た割と露出の少ない水着は私の購入候補に入っていたりしている。

露出が多い恰好は慣れないのだ。

 

 

 ◇

 

案の定色々アレなカップル?は馬脚を現し、千冬さんが反応した。

そして普通に晒し上げたのだが―――

 

「シャルに一夏、揃って変な性癖でもあるの?」

 

  ―――色々アレな奴らはシャルと一夏だったのだ。

 

まあ一夏が鈍感すぎて、一部が過激なアプローチを始めているのは今朝見たが一日に二度とは不運と言うべきか、自業自得と言うべきか。

 

とにかく試着室という鍵すらかけられない上に多くの人が付近を通過するであろう場所で男と同じ空間にいる上に水着に着替えたシャルは有罪ってことでとにかくいじることにした。

 

「もしかして前からそういう関係だったりしたのかな?お楽しみの機会邪魔しちゃってた?」

 

「そ、そんな関係じゃないよー!」

 

顔を赤面させつつ試着室から顔を出すシャル。

その反応が嗜虐心を刺激する。

 

「ということはシャルは男性の前でもためらいなく着替えられる鋼のメンタルの持ち主なのか。そうなのかぁ」

 

「違うよ!もう!」

 

だが少しやりすぎてしまったようだ。

シャルは怒ってしまった。

 

それに

 

「オーブリー、いい加減いじるのはやめてあげてください。デュノアさんの着替えが終わり次第で私が説教しますから」

 

という山田先生のストップもかかってしまった。

 

それに本人が怒った以上いじるのも潮時だろうとかつての経験から判断してやめた。

やりすぎれば最悪反撃され、いじる側がいじられる側になったり痣が増えたりするのだ。

 

 

その後千冬さんに「山田君が説教してる間に決めて来い」と言われた私は店員さんに勧められた水着を購入したのだった。

結局露出の多いものになったが、プライベート用だし問題ないだろう。




後編が案外短くなったので合わせました。

11/19 本文誤字修正

2015/07/31 大改訂


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第三章 臨界
第15話 臨海学校


クラリッサからメアリー・オーブリーについての情報が来た。

 

今回はいつもの口頭連絡ではなくメールで来たようだ。

もちろん暗号回線を使っている。

 

そして私――ラウラ・ボーデヴィッヒ――が見たのは―――

 

 

 

 ◇

 

 

 

凶星はいま海に居る。

 

 

 

…とかっこよく書きだしてはみたが続かないな。却下、却下。

 

 

まあ冒頭のとおり海にきている。

 

臨海学校とかいうやつで端的にまとめるならば海にきて色々する行事だろうか?

 

 

だが中学時代は操縦訓練に勤しんで高校も行事となると全然出ることが出来てなかった私はこういう経験が全くなく、一体何をすればいいのかわからなかった。

 

ただ泳ぐだけなら時間は潰せるだろうが同時に体力も使い果たしそうだし…。

 

 

そこまで考えてあることを思いついた。

ただただ浮いてるだけで過ごすということである。

 

今日くらいはぼけーっと空を眺めていてもいいだろう。

この任務が終わればまたあの空を駆け巡ることになるんだろうから。

 

じゃあ夕方まで沖に流されないようにプカプカ浮いてるか。

 

 

…一夏の野郎、完全に遊ばれているが放置で行こう。

 

 

 ◇

 

 

プカプカ浮くこと十数分。

 

一夏がリンさん連れてやってきた。

 

「くそ、なんで俺が殴られなきゃいけないんだ…」

 

何があったかは知らんが胸中お察し致します。

そんなことを思っているとリンさんが

「一夏!向こうのブイまで競争ね!」

と言い出した。

 

海水浴場にあるブイと言えば一種類しか思いつかないので一応

「ブイは越えるなよ!沖に流されるからな」

と注意を促し私はプカプカ浮き続ける…。

 

はぁ…。

何もないのはいいことだけど、いい加減飽きて来た。

 

 

そんなことを思い始めたので砂浜まで泳いで戻ろうかと思ったとき何故だかは知らないが溺れ掛けたリンさんを抱えた一夏がやってきた。

 

あの泳ぎ方じゃ水を飲みかねないな。

 

そう思い

「この浮き輪使って運んであげなよ」

と一夏に声をかける。

 

その後一夏は

「ありがとう」

とだけいって浮き輪にさっきまで私がしていたようにリンさんを乗せ急いで砂浜まで泳いで行った。

 

その後砂浜にゆったりと泳ぎながら戻るとビーチバレーをやっていたので私はそれを観戦したりまたプカプカ浮いたりしながら夕方までの時間をつぶしたのだった。

久しぶりの休みらしい休みだった。

 

あとかき氷おいしいです。

 

 

そういえば一夏が千冬さんの水着姿に妙に反応していたのだがまさかシスコンなのfsろうか?

だとしたら姉弟そろって(ここで記録は途切れている。ナニカサレタヨウダ)

 

 

 ◇

 

 

時は経ち夕食。

 

止まるのが旅館だけあって結構豪華な和食がでてきた。

 

和食自体は日本スキーだった母親の影響もあり幼いころから食してはきていたのだがやはり本場のは雰囲気から違うな。

どこぞの雲のキャラみたいに「じゅるるー」とか言いたくなってきたが流石に不作法なので言わないことにした。

 

さて、頂くとするか。

 

 

ちなみに隣はシャルなのだが―――

 

―――一夏の「うん、うまい!流石本わさ!」という発言を真に受けわさび全部を一口で食べるという罰ゲームに近いことをしていた。

 

…大丈夫だろうか。

そう思ってかけた

「「お、おい、シャル大丈夫か」」

という一言が一夏と完全にハモる。

 

だが流石シャルというべきだろう。

鼻をつまんで目に涙を滲ませながら

「大丈夫、風味があっておいしいよ」

と返答してきたのだった。

 

シャル強いな。

 

 

そのあとは一夏が安定の鈍感スキルを発動させて「食べさせてやろうか」という失言までしたせいでかなり騒がしくなったのだが千冬さんの

「お前たちは静かに食事も出来んのか!」

という一喝で静かになった。

 

千冬さんって教官向きな気がする。

 

そして騒動の責任を問われてしまった織斑君。少し同情したくなった。

 

 

そういえば私の部屋はどうなるんだろうか?

 

 

 ◇

 

二日目。

朝早くといってもいつもの癖で4:30に起き旅館をぼーっと歩いていると機械製のウサギミミをつけた人がなんだか妙な仕掛けを埋めていた。

 

…どっからどうみても篠ノ之博士である。

 

 

暇なのでそのままじーっと見ていたら流石に気付かれたようで、そして俺の正体にも気づいたようだ。

 

「なんでパイロットさんがこんなところにいるのかな?」

 

「それは貴女が"Operation The Dawn of a New Chronicle"に協力する交換条件として出したことについての報告とISについての勉強です」

 

「実際どのくらい進んでいるのかな?もしかして下っ端だから分からない?」

 

若干嘲笑が混ざっている発言で精神衛生を悪くしながらそれを表に出さないように答えた。

 

「詳しくはこちらの資料でご確認ください。あなたの言うように私はパイロットであって技師ではないので」

 

あらかじめ届いていた封筒を博士に渡す。

直後何等かの機械にそれを放り込むと口を開く。

 

「箒ちゃんたちに手出しをしないでね」

 

そんなことはしません、と口に出そうとしてやめた。

篠ノ之博士は身内以外には辛辣なことで有名だ。そんなお方が部外者の私に警戒心を抱くのは当たり前のことであり、気にするようなことではない。

 

…本音を言えば面倒なものには関わりたくないということである。

 

とりあえずそういうともう篠ノ之博士は何も返してこなかったので私の目的は果たされたとみるべきだろう。

所詮俺らは博士にとって"目標遂行を援助してくれる何か"に過ぎないのだ。

 

どういう風に怪しい機材を置いていくのかは気になったが博士の機嫌を損ねたくはないので俺はここを立ちさることにした。

 

 

とにかくこれで司令部からつい先日渡された重要任務クリアだ。

何のことかは軽くしか説明されていないが何だか危険な予感がしたので俺はもっと詳しく聞く気はない。

 

今俺が分かっておくべきことは"Operation The Dawn of a New Chronicle"の情報が流れたら世界は大混乱に陥るだろう、ということだけだ。

 

…暇だし潮風にでもあたっていようかな。

 

そう思った俺は部屋に戻ったのだが、そこで兎のマークが書いてある得体の知れない書類を見つけてしまったために結局砂浜まではいけなかった。

流石は“天災”の名を持つお方である。

 

 

兎マークの書類をどうにか片付けて安心していると、俺と博士が会った場所のあたりにオレンジ色のミサイルが落ちていくのが見えた。

あの怪しい装置は誘導装置だったのだろうか?

 

 

 ◇

 

「よし、専用機持ちは集まったな」

 

千冬さんの掛け声がかかる。

 

ここにいるのは俺、一夏、シャル、リン、セシリア、ラウラ、篠ノ野さんだ。

兎マークの資料によると篠ノ之さんに専用機が届くらしい。多分ここでお披露目をするのだろう。

 

まあそんなことを知っていたら怪しまれるので驚いているフリをしておくことにした。

 

そしていち早く篠ノ之さんの存在に気づいたリンさんが口を開いた。

「ちょっと待ってください。箒は専用機を持ってないでしょう」

 

「私から説明しよう。実はだな」

と千冬さんが説明を始めようとすると「やっほー」と叫びながら異常な速さで砂煙をあげながらやまを降りてくる博士の姿があった。

 

…やはり変人だったか。天才と馬鹿は本当に紙一重なのかもしれない。

 

そう思った矢先盛大なジャンプを行い「ちーちゃーん!」と叫びながら千冬さんへアタック。

そして顔を千冬さんの手で押さえられて着地。

 

「さあさあ会いたかったよちーちゃん。さあハグハグして愛を確かめ…」

千冬さんは博士が言い切る前に無理やり手に力を込めて中断させる。

なんだか博士が悶えているのだが・・・まあいいか。

 

そしてその後の

「相変わらずうるさいぞ、束」

という発言から察するに普通のテンションであれのようだ。

マジかよ…。

 

 

その後博士はいつの間にか隠れていた篠ノ之さんを発見しちょっとした失言をしたせいで木刀でぶん殴られたのだった。

 

良く考えると博士結構災難じゃないか?

因果応報だとも思うが。

 

そして他の専用機持ちに至っては引いてる。当たり前だな。

 

 

そのあと軽い自己紹介を博士がしたおかげで引いてる顔から驚愕の顔へと何人かがかわったのだが、

「さあ!空をご覧あれ!」

と言って高速でものを落とすのは非常に心臓に悪いと思う。

 

ちなみに速度の参考にする情報を述べるのなら地上にあたっていないのにもかかわらず少々遠くにあった岩が少し崩れたのか石が落ちる音が聞こえてきたということがあった。

衝撃波の干渉なのだろう。音速、超えてたんだな。

 

その後は篠ノ之さんの専用機となるらしい第四世代型IS、赤椿の説明をしていたのだが正直な話をしてしまえば余りの演出と博士の性格のおかげでポカーンとしたまま過ごしたおかげであまり覚えていない。

Rafale Gを作ったあいつらを見ていたってここまでポカーンとはしたことがないのに…。

 

そして遠くを飛ぶISを見た感想としてはかなり機動性が高いということだった。

 

 

しかし天才っていうのは変人だらけなのだろうか?

 

 

だがそこに山田先生が駆け込んでくる。

 

「た、大変です!織斑先生!」

と言っているあたり何かが起きたのだろう。

 

…私の携帯にも何か来ているかもしれないが確認しにいくほど時間は無さそうだ。

 

何故なら小さな声で千冬さんが

「匿名任務レベルA、直ちに準備を始められたし、か」

っていってたからな。多分余裕はない。

それにこのタイミングでの情報伝達だ。大方同じ事件だと思われる。

 

「テスト稼働は中止だ!お前たちにやってもらいたいことがある」

 

千冬さん独特のしっかりとした声で飛ばされた指示に従いつつ、目標はなんなのか邪推を始めた。

 

そして直後山田先生が博士に驚いたのはご愛嬌だ。




伏線回かもしれない。


11/19 修正

2015/7/24 一部改稿


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第16話 ブリーフィング

旅館のとある一室。

 

暗くされた部屋のスクリーンに様々な情報が展開されていく。

ソフトが違うからなんだろうが随分とオーレリアのものとは違うようだ。

 

まあ軍は信頼性を結構大事にしているからこんなハイテクブリーフィングを見るにはあと何年か待たなければいけないだろう。

 

 

色々考えているとスクリーンにいくつかウィンドウがでて、ブリーフィングが始まった。

 

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったオーシア、イスラエル共同開発にあった第三世代のIS。

"シルバリオ ゴスペル"通称"福音"が制御下を離れて暴走、監視空域より離脱したとの報告があった」

 

試験機の暴走ね。初陣である博士の妹と博士がいることだし…仕組まれたものみたいに思えてこなくもない。

 

ただ戦闘に雑念は無用だ。

雑念を抱き散っていく奴らをこの目で見てきたんだ…。

まあ雑念を抱いている者はあまりいないようだから別にいいか。

 

それに裏を考えるのは別に今じゃなくてもいいだろう。

 

「その後衛星による追跡の結果福音はここから2km先の空域を通過することが分かった。

時間にして50分後、学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処することとなった。

教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う」

 

そういうとスクリーンに空域を駆け抜ける福音と作戦のために海上封鎖を行なう教員機がマップに表示された。

やっぱりこういうところには凝るんだな。

 

「よって本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

 

…やっぱりこれは仕組まれてるだろ。

交渉事に専用機持ちを出せないのは分かるが攻撃隊全員が専用機持ちというのは少々おかしい。

 

まさかこれも博士への報酬とやらに入るのだろうか?

 

そこまで考えたとき私と同じく驚いたのか一夏が

「は、はい!?」

と裏返った声で言った。

現実逃避も含んでいるんだろうとか思っていたらラウラが

 

「つまり暴走したISを我々が止めるということだ」

 

と簡潔に説明してくれた。

流石は私の相棒だ。

 

だが一夏はそれに

「マジ!?」

と驚きながら返しやがった。

 

一般人だったのならそれでもいいのだが専用機持ちなのだからその自覚くらい持ちなさい。

まあつい最近まで一般人だったのだからしょうがないのかな?

とか思ってるとリンさんに

 

「一々驚かないの」

 

という至極真っ当なつっこみを入れられたようだ。

 

そして場が落ち着いたのを確認して千冬さんは

「それでは作戦会議を始める!意見があるものは挙手するように」

と発言した。

 

すると即座にセシリアさんが

「はい!目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

といった。

 

いい質問だな。

敵の性能は戦術に大きくかかわってくる。

 

「ふむ、だが決して口外するな。情報が漏洩した場合諸君には査問委員会による裁判と最低でも2年の監視がつけられる」

 

もはや軍だな。まあ実際に戦略兵器になりかねない物だから至極真っ当か。

そんなことは分かっているのでセシリアさんも即座に

「了解しました」

と返答したのであった。

 

すると銀の福音についての情報が送信された。

バックご苦労さんです。

 

で、パッと見で高機動・広域殲滅型だということは分かった。

しかしそんなものに福音をつけるなんてネーミングセンスがないな。

 

それとも昔からよくある偽装か?

まあそんなことは後ででいいや。

 

そしてほかの専用機持ちの方へ目を向けるとどうやらこれに対する作戦を話し合っているようだった。

 

そして格闘性能が不確定だということに気が付いたラウラが千冬さんに偵察の是非を聞いた。

が、あまりにも目標が早すぎるため却下されてしまった。

 

そして結果として出てくるのは"一撃必殺"。

つまりは失敗が許されない上に一回で破壊しなければならないということのようだ。

 

それが出来るのは白式にある零落白夜だが一夏を出すのは精神面的に危険な気がする。

ふむ・・・どうしたことか。

 

 

そして一夏の輸送手段についての話し合いになったとき、

―――天井裏から博士が下りてきた。

 

もう少し精神面に優しい登場をしてくれないのだろうか?

 

 

千冬さんも呆れて頭に手を当ててるよ。

 

「ちーちゃん!ちーちゃん!もっといい作戦が私の頭のなかにナウプリンティング~!」

 

「出ていけ」

おかげでかなり冷たい対応である。

だが博士は懲りずに

「聞いて!聞いて!」

といいながら千冬さんを揺さぶりだした。

…こんな人が知り合いだったら頭が痛くなりそう。

 

だが次の発言で千冬さんの態度が一変した。

 

「ここは断然赤椿の出番なんだよ~」

と言い放ったのだ。

 

これには皆も驚いていたようだ。

 

まあそりゃそうなんだろうけどいくらなんでも博士、本気出し過ぎだろ。俗に言うシスコンってやつかな?

 

 

 

で、面倒だから詳細を省略するが話し合いの結果攻撃隊は篠ノ之さんと一夏になったのであった。

 

 

 

ここから先はブリーフィング後のこと。

 

 

「千冬さん、失敗したらどうするんですか?」

 

「そもそも失敗は許されない、だが確かにそれも検討すべきだったな。

何故質問の時に言わなかった?」

 

「完全に質問のタイミングを見失いました」

 

そういうと罰が悪そうに

「…まあ、そうだな」

と答えた。やはり博士乱入のことを悪く思っているようだ。

まあ博士だからしょうがないだろう。

 

「でだ、メアリー。日本には言いだしっぺの法則というものがあってだな」

と千冬さん迫られる。

あ、俺にやれってことだな。

そう思い、準備も済ませておいたので二つ返事で了解した。

 

そのあと軽く段取りを話し合った結果俺は一夏たちより少し早く出て戦域近辺にて待機することとなった。

 

…頑張ればマッハ3近くまで出して一夏たちより後にでて一夏たちより早くつくことも可能だったが初めてやることはすべきではないという千冬さんの判断である。

 

ちなみに救助隊のことを言ったとき千冬さんの表情が少し暗くなったので一夏と篠之野さんのことが心配だということを実感した。

やはり千冬さんも錬度に不安を感じているのだろう。

 

そう思うとなんだか今回の作戦が不安になってきた。

 

最悪の場合は単機で福音と交戦するはめになるかもしれない。

まあセントリー島要塞での空中戦と比べれば相手が見える分ましだろう。




ナターシャさんは出しますが、基本はアニメ版を優先させます。

12/20 後半部分に加筆しました。


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第17話 IS乗りでも南十字星は化け物なのか?

間に試験をはさんでいたので投稿まで2週間以上かかってしまいました。
あとは他にくらべてかなりの長くなっています。


援護任務を授かった俺はIS学園の指揮下で行動を開始した。

そろそろ報告を入れるポイントだろう。

 

そう思った俺は教師陣にしか聞こえないようにISのプライベートチャンネルを使用して報告を入れる。

 

<<あー、あー、こちらはグリフィ・・・メアリー。現在規定の航路を飛行中>>

 

<<目標ポイントまであと3分、ポイント到達後は遠くで爆炎が見えるまで待機していろ。あとコールサインはくれぐれも間違えるな。お前の場合シャレにならないからな>>

 

<<すまない、千冬さん。でもやっぱり職業病に近くてな。ところでこのことは攻撃隊は出たのか?>>

 

<<お前がポイントにつき次第出すつもりだ>>

 

まあ救援援護をやる可能性のある俺より先に攻撃隊がやられたりなんかしたらシャレにならないからな。

あと攻撃隊員や控え員等の動揺を防ぐ為に俺が出たことは教師陣以外は知らないこととなっている。

 

…まあ勘づいている奴はいるだろうけどな。正直篠ノ之さんは新しい武器を貰い浮かれている新兵と大して変わらない状態だから100%に近い確率で失敗するだろう。

 

『ポイントにつき次第』と言っているところも鑑みると千冬さんも成功する確率は低いと思っているのかもしれない。

 

そんなことを考えていたら目標地点に到達した。

 

 

遠方を確認するも機影は無いからまだ来ていないのだろう。

では報告を入れるか。

 

<<目標地点に到達。機影無し>>

 

<<こちらでもポイント到達を確認した。それでは攻撃隊を出す>>

 

<<了解。これからは観測及び遊撃に移行でいいんだな?>>

 

<<ああ、では織斑と篠ノ之を頼んだ>>

 

そういうと空から俺のISのスラスターの音以外が消えた。

 

攻撃隊発進40秒後、赤椿の物と思われる推進音をキャッチ。

50秒後、交戦開始。

 

 

交戦してから遠目で見ていたのだがどうやら既に二回外してカウンターを許したようだ。

一応接近しとくか。

 

そして接近を図ったそのとき、俺は雲の切れ間に航跡を視認した。

 

あのタイプの航跡だと高速艇…って報告だ!

 

<<こちらメアリー作戦域内において高速艇の航跡を視認。対応に移る>>

 

そういうと俺は全速力で高速艇へと向かっていった。

 

 

やはりオペレーターにも人員を割かれたおかげで哨戒しきれていないようだ。

速力から考えて漁船に偽装した情報収集船か。

 

…沿岸警備隊のやつらを呼んで領海侵犯で捕まえてやりたいものだ。

 

 

そんなことを考えていたからだろう。

 

―――俺は白式のシールドエネルギー残量が残り少ないことを見逃してしまったのだ。

 

 

そしてそれに気づいたときにはもう混乱している篠ノ之さんと気絶している一夏が視界に入ってしまった。

なんてことだ。

 

そして篠ノ之さんは海面ギリギリで墜落は阻止したようだ。」

惨事は免れたな。

 

<<…白式墜落、離脱援護に移る>>

 

そう報告をいれた私は篠ノ之さんにプライベートチャンネルで

 

<<私が銀の福音の攻撃をしておくから一夏を旅館まで運んで!>>

 

と捨て台詞のように残していくとそのまま福音攻撃へと移った。

 

 

 

…そして今頃撃墜命令が軍人としての私に下された。対応遅すぎるだろ…。

まあベルカ事変の情報公開後の世界情勢を上手く利用して作られた国連がオーシアにあまり大きくものを言えないのもわかるけどさ…。

 

 

それを知った俺はSAAMを銀の福音に向け放った。

直後M61AとGAU-8の弾幕も同時に展開する。

 

そしてこちらの攻撃に気づいた銀の福音は光弾の雨による弾幕を展開し、SAAMの撃墜及び俺への直撃を試みる。

が、あらかじめ近接信管に設定しておいたSAAMは福音周辺にて爆発。

 

軽いダメージとセンサー系への妨害を成功させ、GAU-8を5発当てることに成功した。

 

ただその代償としてこちらも光弾数発を掠らせ、F-22のウェポンベイみたいになっている盾で2発防いだ。

そして次はその盾の中に入っているAMRAAMを全弾発射、AM-1を展開し福音へ叩き込んだ。

 

だがAMRAAMは3発外れ、AM-1も後部の翼に被弾するだけにとどまる。

 

 

そして福音のカウンター。密度を上げ範囲を減らした光弾の雨だ。

 

コブラのような機動をとりそれを回避し今度は腕についているTLSを使った。

 

 

これにより福音の攻撃態勢突入を阻止、TLS一射目が切れるまでに計1秒当てることに成功した。

機動戦におけるTLS使用では上々の出来だろう。

 

だが切れたら速攻で光弾の雨が展開された。

 

しかしかなり荒くばら撒いてくれたので回避はたやすくできた。

と言いたかったのだが安定翼を焦がしたうえにSAAMの発射機が飛ばされた。

 

シールドエネルギーもこれで数十単位で減った模様。

そろそろ俺も離脱を検討すべきなのだろうか?

 

そうして考え事を始めた瞬間隙をつかれてまた光弾の雨にさらされる。

 

回避には成功しているのだがそろそろ俺の気力もまずくなってきたな。

そんなときに無線が入った。

 

<<既に攻撃隊は帰還している!お前も帰ってこい!>>

 

どうやら千冬さんから・・・福音の光弾についてる追尾は面倒だな。

誘導弾が飛んでくる状況下で離脱を図っても回避機動でまともに進めず気力を消費するだけだ。

 

今すぐ帰りたいところだが帰れそうにない。

そう思った俺はAM-1を乱射しながら千冬さんへと無線を繋いだ。

 

<<機をみて離脱する!それまで待ってくれ!>>

 

そして一言だけ言ったあとに無線を切った。

 

機関銃を牽制のためにかなり使ったためもうM61AやGAU-8の残弾が厳しくなってきたな。

…やられる前にやらなければ死にかねないな。

 

そう判断した俺は一撃離脱に戦法を移した。

そこで俺はまず低空を全速力で駆け抜ける。

 

後方で着弾による水柱が上がり始めたことを確認し即座に急上昇し太陽の方角へと向かった。

 

視界を主な索敵手段とするIS戦では戦闘機による空中戦以上に太陽が使えるのだ。

おかげで急降下しながら撃ったAM-1のうち7割を当てることが出来た。

 

 

だが離脱が対福音としては甘かった。

離脱時に後ろに張り付かれ光弾の雨を浴びさせられたのだ。

 

後方への警戒も欠かしてはいなかったためエンジン被弾に止まるがそれによって起きた動きのラグが致命的となってしまった。

 

 

エンジンパージ中にまだ撃っていなかったQAAMとGAU-8の残弾を福音へ向け放ったのだがパージしてから展開する2秒足らずの間に光弾を4発直撃、一部で誘爆が発生し戦闘継続を行うには困難になってしまった。

 

だがQAAM回避を強いられた福音とはかなり距離が離れたので出せる限りの速度を使い俺は旅館付近の砂浜へと向かった。

 

 

高度でいうと10フィートくらいのところを飛び離脱を始める。

 

だが福音は俺のことを逃がす気がないようで光弾を俺の前方へと放った。

疲労が重なっていたがそれにギリギリ気づけた俺は左に避けた。

 

だが光弾落下による水柱ですこし操縦が狂い着水しかけてしまう。

そしてそれにより残りシールドエネルギーが残り13となってしまった。

 

 

しかし福音はそれ以降の追撃をしてくることはなかった。

AIが攻撃の必要無しと判断したのかそもそも一定範囲の外に出られないようになっているのか・・・。

 

あ、千冬さんに報告入れとかなきゃ。

 

<<こちらメアリー離脱に成功した>>

 

無線を切ったあと色々考えながら飛んでいた俺はあることに気が付く。

 

…今の速度が速すぎて降りれない可能性があるということだ。

 

 

そしてその予想は残念ながら当ってしまい、減速は出来たものの着陸の衝撃でシールドエネルギーが減ったようだ。

 

あと着陸してから気が付いたのだが誘爆の時に一部がエネルギーシールドを貫通したよう。

おかげで出血しているところがある。

 

絶対防御、あんまりあてにしていいものじゃないね。

 

単騎で挑んだとはいえこのザマとは何だか不甲斐なく思えてきた。

そして同時に俺は砂浜でISを展開したまま意識が遠のいて行った。

 

 

 ◇

 

目が覚めるとそこは旅館の一室。

 

現状確認とその他報告のため起き上がろうとすると痛みが走った。

それでも一応起き上がる。

 

…一部がシールドを貫通したようだ。

よくみると包帯が巻いてあった。血が滲んでいるようだからそろそろ取り替えないとまずいだろう。

 

そういえば私の部屋には誰も来てないのか。

 

…まあ来てくれそうな人が千冬さん、一夏、ラウラくらいしか思い当たらない時点で来れるやつが居ないということに気づいておくべきだろう。

 

で、諦め半分で部屋を見回したところ案の定だれも居なかったので隣にあった多分俺の物と思われる制服を着てブリーフィングルームへと向かうことにした。

 

だがケガはかなり重傷なようで手を壁につかないとまともに歩けなかった。

脚がやられていたらもう戦闘機に乗ることは出来ないが…大丈夫なのだろうか?

 

最悪の事態を考えた私ギプスが無い以上大丈夫だということにしてゆっくりとブリーフィングルームへ向かっていった。

 

多分この体では数日間戦闘はできないだろうから戦って感じたこととかは話していったほうがいいだろう。

少なくとも命令が解除されていない以上最悪一人でまた突っ込まなきゃならないからな。

 

・・・専用機持ちに直接話すことも考えたがそれだとあいつらが勝手に突っ走りそうなのでハブられると思いやめたのは私だけの秘密である。

 

 

 ◇

 

 作戦は失敗した。

 

密漁船の出現で混乱していた私を織斑がかばう形で被弾、そしてそれを援護しに行ったメアリーもISに乗ったまま気絶し、砂浜を赤く染めているところを発見された。

 

 

そして二人ともまだ起きていない。

 

何時間もたっているのに…。

 

 

(私のせいで・・・私のせいで・・・ッ!)

 

そういいながらスカートの端を握っている手は白くなっていた。

 

そもそも私は自分を律するために修行してきた。それなのにこのザマはなんだ。

結局律することなんてできなかったではないか。

 

この程度のことすらできない私にもうISに乗る資格なんてない。

 

私はもうISには乗らない、そう決心しかけたとき一夏の眠っていた一室の襖がに開いた。

 

「…あれ?部屋間違えたかな?」

 

そこから遠慮も無く入ってきたのは血の滲んだ包帯を巻きつけたメアリーだった。

 

いつの間にか起きていたという事実とここまで来たという事実で数秒間固まったあとに出てきた言葉は

「メアリー!お前安静にしていなくていいのか!?」

といういたって普通の言葉だった。

 

そのときの私はかなり動転していたのかもしれない。

 

だが動転してもいい要素なら十分にあった。

 

まずは一夏はISの絶対防御が発動しているためにエネルギー回復まで昏睡状態に陥るだけなのだが、メアリーの場合は疲労と出血による気絶だったということ。

 

次に、脇腹を怪我した人がこの部屋まで来たということだ。

普通出会い頭に誰か止めるだろうし、気付いたら怪我人が居なくなっていたなんて洒落にならない。

 

そしてメアリーの怪我も元はといえば私のせいだったからだ。

 

 

正直罵倒も覚悟したのだがメアリーが次に言った言葉は違うものだった。

 

「別に…このくらいの距離なら問題ない…。あと…私の怪我は私のミス…。篠ノ之さんのせいじゃない」

 

「しかし私が自惚れたでそんな大けがを・・・」

 

切れ切れに出てきたことばに咄嗟に返す。

だがメアリーは

 

「原因が分かっているなら直せばいい」

 

と言った。

だが話はそこでは終わらない。

 

「それより、もう一つ、言うことがある。篠ノ之さんは…落ち込みすぎて今やるべきことを見失ってる…。

落ち込んだり反省したりするのは終わってからにして…。

作戦は終わっていない…」

 

つまりは無駄なことを考えている場合ではないと言ったのだ。

 

そして私はある結論に至った。

 

反撃すればいい。

シルバリオ・ゴスペルを落とせばいい。

 

 

だがシルバリオ・ゴズペルを落とすのは一人では無理だろう。

 

―――なら友達(ライバル)に頼もう。

 

 

私の頼みを聞いてくれるかどうかは分からないが動かないよりはマシだ。

 

 

そう思って動こうとしたとき一夏の眠る部屋の襖が開いた。

容赦のない速さで。

 

 

そしてそれに気をとられている間にこの部屋に来た病人は気絶したのだった。

…やっぱり無茶してたじゃないか。




12/20 一部修正を加えました。
9/21 一部修正&追記


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第18話 慣れた無茶

前回の投稿から二ヶ月以上…。

いくら不定期更新とはいえ時間がかかりすぎたことにお詫びを申し上げます。


ものすごい速さで扉が開くとそこからでてきたのはリンさんだった。

 

そんなことをする理由とすれば・・・企んでいるであろう無断出撃のメンバーに篠之野さんを誘い込もうとでもしたのかな?

まあ私が気にすることではないからいいや。

 

そんなことを考えている間に私の意識は徐々に遠のいていった。

流石に大怪我した状態で動くべきじゃなかったな・・・。それに本来の目的も話してないし・・・。

 

 

起きてからじゃおそいだろうけど千冬さんに行っておけばラウラ達にも伝わるだろう―――

 

 

 

 

―――なんて思っていたのだが起きたのは案外早かったようだ。

 

そして出血も止まったみたい。

本来は安静にすべきなんだろうけどあいつらに追いつくためにちょっと無茶をすることにした。

 

さっきの無茶のように痛みが走ったりはしてないところから察するに怪我はマシにはなってきたようだ。

 

これなら無断出撃もいけるかな?

と思ったが俺が気絶している間にいってしまったかもしれない。

 

ま、そうだとしても増援出撃には行ってもいいかもね。

 

 

・・・なにかを忘れている気がしなくもなかったが気にする必要はないと俺は判断し仕度を始める。

 

 

もう普通に動くことはできるようだから戦闘機に乗れなくなるなんて自体にはならないだろう。

そう思うとなんだか安心はできたのだが無断出撃で悪化するかもしれないな。

 

でもあんなものに戦闘時の情報を持たずに挑むのはいくらなんでも無謀すぎるだろうと思うことにして不安を取り払った。

 

 

生体再生とかの機能がISにそなわっていればいいのになぁ・・・

 

とか他愛の無いこととかも考えながら誰にも見つからないように出撃準備を整えていった。

 

・・・見つかっても問題はないんだけど説明が面倒だからな。

 

 

 ◇

 

 

さて時は立ち(といっても1時間はたってない)俺は洋上にいた。

ちなみに飛行速度は巡航より低めで飛んでいる。

 

流石に今の怪我で音速域を長時間維持するのは無理だしね。

 

 

そんなことを考えながら福音の背後に回り込もうと飛行をしていると千冬さんからの通信が入った。

 

<<メアリー、お前もか>>

 

いたって予想通りな質問である。

これについての釈明は・・・まあ千冬さん相手なら問題はないだろう。

 

<<一応司令部から直で指令が来ているんで無断じゃないですよ>>

 

<<そのことは分かっている。だがお前は今の体で出撃して何の意味があるというのだ?>>

 

予想とは違う質問だったがこの質問に返す答えも用意はしていた。

むしろこっちのほうが本命だな。

 

<<いくら専用機持ちとはいえアレは危なすぎる。下手すれば死人が出てしまう。それだけは回避したいんだ>>

 

<<お前がそういうのならそうなのだろう。だが死ぬなよ>>

 

<<了解>>

 

そういうと千冬さんとの会話は終わった。

俺の理由には納得してくれたようだが確かにこの体では被弾は許されないだろうな。

 

最悪空中管制だけを行うのもありなきはしない。

 

これからについて考えていると雲の切れ間から戦闘中のISを捉えた。

 

 

遠くてあまりよく確認できないがさっきから光弾で弾幕はってるところを見ると作戦目標のアレだろう。

しかし動きを見る限り再生されてしまったか・・・。これじゃ私活躍できないね。

 

火力支援ぐらいしかできないと思った俺はSAAMの照準を福音を射程距離に収めるべく接近した。

 

 

俺が予想していたとおり皆さん苦戦しているようで。

少なくとも決定打を欠いているせいであまり攻勢に出れてないみたいだな。

 

なら俺が決定打になろう。

丁度回避機動をとってこちらに背を向けているから追撃をしかけやすいしな。

 

そう思い俺は福音の後ろからSAAMを発射した。

 

 

でも福音の放った光弾により照準をはずす羽目になりSAAMは奇跡的にあたった1発を除き外れた。

なんてこったい。

 

SAAMの欠点が見事に出てしまったが俺はめげずに残りのミサイルを全弾発射した。

 

 

ちなみに雲の陰から攻撃しているのでラウラたちからみたら少々不思議な光景だろう。

 

そして直後に戦域から福音の反応が消失した。

 

 

だが俺がラウラたちのところへ向かおうとしたとき突然衝撃波が飛んできたので旋回しながら徐々に距離をつめていくことにした。

 

ミサイル用のレーダーとかを使いながら爆発の中心地を見る限り海水の壁のなかで福音が停止し何かしているよう。

なんだか悪寒が走ったので千冬さんに通信を入れることにした。

 

<<千冬さんへ、こちらメアリー。ターゲット海上にて行動停止している模様>>

 

<<周辺の状況はどうだ?>>

 

即座に返信が入る。

なんだかちょっと焦りが混じっているようにも聞こえたがもしかしてやばい状況だったりするのだろうか?

 

そんなことを考えた俺は詳細を伝えることにした。

 

<<なんだか光っているようだが巻き上げられた海水で視界が悪すぎて視認できない・・・っ、動き出した!!>>

 

通信中にミサイル用のレーダーが福音と思われる反応が動いたのを検知した。

そして通信が即座に返ってこないところから察するに少々不味い事態になっているのかもしれない。

 

今の体で空戦機動をとりたくは無かったが知り合いを見捨てたくも無かったので俺は交戦域に突っ込んだ。

だが明らかにISの数が足りない。

福音含め6機いなければおかしいのだがどう見ても2機しかいないのだ。

 

もし今見えない4機が撃墜されたのだとしたらかなり脅威だろう。

そこまで考えたとき俺は自分の考えの甘さに呆れた。

 

 

骨折はしていないとはいえかなりの大けがをした状態での機動戦なんてほぼ自殺行為だ。

フェンリア戦の時ですら疲労していたとはいえ怪我はしていない。

 

さらにこの短期間(レーダーでIS6機の交戦を確認した1分前から今まで)で4機撃墜したのだとしたらかなりの脅威だ。離脱するには超低高度での高機動戦を行い着水による失速を狙うか誰かを犠牲にして逃げるぐらいしなければ追撃を振り切れないだろう。

 

つまりは落とされる前に落とすしかないのだ。

 

 

そうと決まれば交戦するのみ。

福音への突撃を始めると千冬さんからの通信が入った。

 

<<福音は二次移行している!先の戦闘のダメージは無いものと思え!>>

 

それを聞いてなぜこんな短期間で3機も落ちたのかを理解した。

 

専用機持ちとはいえ訓練生には変わりない彼女たちが完全状態の福音に対し連戦できるほどの気力や技能をもっていたかといえば答えは否。

つまりは圧倒的な戦力不足だろう。

 

周囲の海水を巻き上げはじめた時点で再集合をかけていればここまであっさりとやられることはなかったかもしれないがそもそも単機での交戦の多いIS乗りに集団戦まで望むのは荷が重い。

 

・・・やっぱり最初からついていくべきだったかもしれないな。

そんな結論には至ったが過去のことを言ってもどうしようもないので俺は攻撃を再開した。

 

AM-1を展開し、福音に対して牽制射撃を始める。

だが全弾回避される。

 

先の戦闘での機動から1,2発は当たるようなところへ撃ち込んだのだがどうやら機動性まで上がっているようだ。

外れた中間子弾が海面に着弾したのを離脱しながら確認するとラウラからの通信がはいった。

 

<<メアリー、なぜお前が居るんだ!怪我はどうした!>>

 

<<そのままだよ。そんなことより他の皆は?>>

 

<<落とされた・・・ってメアリー!無茶はやめろ!>>

 

落とされたと聞いたとき既に私は空戦機動へと入っていた。

 

予想はしていたが脅威度が高すぎる。

でも逃走をすれば最初にわたされた救援任務すら果たせないだろう。

 

なら任務の障害を排除するのみ。

いや、今回の場合は殿を務めて逃がしたほうがよさそうだな。

そう判断した俺はラウラに通信を入れた。

 

<<福音の注意は引き付けておくから落ちた奴らを回収してくれ!>>

 

そして返信を聞かずにAM-1やGAU-8を福音へと叩き込み始めた。

 

威力がGAU-8より高そうに見えて少し低いAM-1で福音の機動を制限しながらGAU-8を叩き込んではいるのだが中々あたらない。

流石は純粋な軍用ISというべきか。

 

まあそんなことに関心していられる戦況ではないのだ。

 

こちらが全力で攻勢に出ている中でも反撃の機会を見つけては光弾を叩き込んできている。

その度に敵に正面を向けたまま回避機動が取れるのはISならではの利点だろう。

 

おかげで福音は光弾をあまり使えていない。やっぱり数も大事なんだろうか?

 

少しずつ心に余裕が出てきたころ、最初からほとんど引き金を引きっぱなしだったGAU-8の残弾がなくなった。

 

リロードすればまた撃てるがその間に光弾を撃たれる危険性を考慮して俺は威力は少し劣るもののかなりの連射性をもつM61を展開し、GAU-8を格納した。

 

このときのタイムロスを限りなく小さくしようとGAU-8が玉切れになるすこし前からM61を展開してみたりなどと試みたのだがいくらエースとはいえ精々一ヶ月半くらいしか乗っていないISだったので0.5秒ぐらいにわたり弾幕が途切れる。

 

そしてその僅かな時間で反撃された。

 

立場は逆転し弾幕を撃つ側が福音へと変わり避ける側がグリフィス1となった。

 

避ける側になってから福音を見てみるとGAU-8があたった後にできる爆発痕があまりないことに気がつく。

 

やっぱり戦闘機乗りの俺にはあまり爆撃機の後部銃座みたいな撃ち方はあってないのかもしれないな。

 

とか思いながら隙を見てM61を叩き込んでいく。

 

 

ここまで俺が稼げた時間は5分ほど。

お堅い軍人並の冷酷さを持つ人間であるラウラなら合理的に判断しもう墜落した奴らの回収を済ませて離脱していることだろう。

 

そうは思いレーダーで友軍機の位置を確認する。

 

 

そしてそこには索敵圏外へと離脱していくISの反応と違う方向から突撃してくるIS1機の反応が出ていた。



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第19話 慣れない仕事は終わるのか?

ラウラと仲がいいって設定生かせてないけど・・・日常回書くのがきつい・・・。


レーダーに出た"unknown"の反応、それを見て咄嗟に俺は身構える。

戦場においてわからないものほど怖いものはないのだ。

 

事実オーレリア戦争においてもグレイプニルがサンタエルバの戦いではじめて使った衝撃波砲はその特性を見出すためにいくつかの部隊が全滅することになってしまった。

 

だがISであったことが有利に働いた。

 

IS同士であれば相手のコアを識別すれば誰が乗っているのかまでは大体わかる。

つまりは高性能な識別信号を持っているのだ。

 

それにより「unknown」は「白式」との表示に変わる。

レーダー波の反射が変わっていたということは二次移行でもしたのだろうか?

 

まあ二次以降とかの話は終わってからにしようか。

空中戦に集中しないと光弾を食らってしまいそうだ。

 

実際今もバレルロールを繰り返したりブレイクしたりしてはいるのだが光弾の弾幕からは抜けられていない。所詮AIとはいえ人間に近いと言われるだけはあるということだろうか。

 

とにかく今は近接攻撃しかできない白式ものでもいいから援護を受けられるようにしなければと思った瞬間福音に着弾と思われる爆発が発生した。

今いるISは俺のやつと一夏の白式(二次以降済み)だけだから白式からだろうか。

 

射撃ユニットが増えたと考えるとレーダーだけではわからなかったのも頷ける。

よし!誤射が少々心配だが援護を頼もう。

そう思いプライベートチャンネルを一夏につなげた。

 

<<こちらg…メアリー、援護して!>>

 

ちなみに拒否されたくないときは返答まで聞かないのが私流ね。

 

まあ今は返答を聞いている場合ではないんだけど。

相変わらず光弾の弾幕は止まずに俺の近くを通り抜けて海面で爆発している。

 

弾切れを起こさないなんて恐怖の代物じゃないか。

 

ISの怖さは装弾数と連射性にもあるのかもしれないと思い始めたそのとき

福音が墜落した。

正確に言うと量子変換されて搭乗者は一夏が回収したって感じなんだけどね。

 

それにしても瀕死状態ですら弾幕を張り続けられる機体か…。

 

とにかくGAU-8弾幕は結構凶悪だったようだ。

ということでいいのかな?

 

さっきまでの苦戦が嘘のようにあっさりと落ちてしまったので空で旋回していると一夏が操縦者らしき人を抱えて俺に通信してきた。

 

<<ほかの皆は?>>

 

<<ラウラが連れて帰ったよ。今はぐっすりと休んでるんじゃないかな>>

淡々と答える。

今頃痛みが戻ってきた上にまだ特性とかを掴みきれていないISで性能で勝る機体に対し空中戦を行ったので正直またゆったりと休みたいと思ってるので早く帰りたいのだ。

 

…千冬さんというラスボスを越えていかなければいけない気がするのだが気にしないことにしよう。

気にしてたら気力が持ちそうにないしね。

 

<<なぁ、メアリー。終わったんだよな>>

 

不意に一夏が話しかける。

終わりがあっけなかったからまだ終わった気がしてないんだろう。

 

そしてレーダーに映る反応、こいつをやり過ごしてからじゃないと帰れそうにないかもしれない。

 

<<多分終わったんだろうね。でも私は少しここに残るよ>>

 

謎の高速飛翔物体を目視するために残ることにした。

でもレーダーとかに疎い一夏なら気づかないだろう。

 

<<そうか、じゃあ俺はこの人のこともあるし先に帰ってるな>>

 

そういって一夏は飛び去った。

 

 

そしてその16秒後、グリフィス1の横を弾丸が飛びぬけた。

 

 

 ◇

 

私はあいつのことを信頼していた。

だが同時に怪しさも感じたのだ。

 

メアリーは攻撃的なISに乗っておきながらあまり派手な攻撃をしないのだ。

そして戦闘中のメアリーの冷静さは一般的な軍人を凌駕している場合すらある。

さらにドイツ軍からは一夏だけではなくメアリーを監視しておけという司令が降りていた。

明らかに一般人ではないと思わせるだけの事実は重なっている。

 

だから調べて・・・結果は黒だった。

 

現在の所属のところに関してはオーレリア軍の最高機密に匹敵する防御があったせいで分からなかったが軍属という事実だけは確実だ。

 

無茶苦茶な事情を並べてでも無理やり人を送り込んだオーレリアに失望すると同時に、

世界初の男性操縦者である一夏の周辺から危険は排除しておきたい。

 

そう思って私は再度戦場へと向かい、

          ―――あいつを、相棒を撃った。

 

 ◇

 

レーダーと衛星で飛来するISを捕捉していたがラウラだったとはね。

そして突然の攻撃には驚いた。

しかし数秒で攻撃を受けた理由を悟る。

 

俺の所属が遂にばれたのだ。

 

それくらいしかあいつが攻撃してくれる理由なんて無いだろう。

さらにあいつはそれを知ることができる環境下にいたはずだ。

ISを持っている軍人という時点でかなりの立場にいるのは確定しているんだし。

 

おかげでIS学園に来た時に千冬さんが言っていた秘策とやらを使ってもらうしかない状況になったわけだが今ラウラはジャミングをしてここの状況をごまかしているようだ。

しかも素人じゃ分からないような高性能なものを使ってだ。

多分ベルカ事変のときに用いられていたタイプのものだろう。

 

どこから手に入れたのかは気になるけどそれを考えるのは後。

今は現状の打破だ。

 

なんて危ない状況なのかと思うと同時に残弾が減ってきている状況で交戦すべきかどうか迷った。

でも撤退する場所もないことに気づく。

 

逃げようとした場合まず千冬さんに情報を流してくれれば問題はないのだが今ラウラは専用機持ちとも仲がいいから運が悪ければこんなコンディションで多対1っていう状態に…なんか懐かしさを感じた自分を殴りたい。

 

とにかく多対1は嫌なのでECCMをするタイミングを窺いながら交戦することにした。

 

まずはレールガンによるロングレンジ攻撃をかわしつつTLSで反撃を行う。

だがあまりいい成果は上がらなかったようでかなりの速さで突っ込みながらプラズマの刃をかざしてきた。

 

典型的な一撃離脱だったから引き付けてから急制動を行って回避し、その後M61A1をレールガンへむけて撃った。

ただカウンターも想定されていたようでレールガンへの直撃を回避され、反転してきたラウラ機はワイヤーブレードを放ってきた。

 

これで拘束し、レールガンで避けられない相手を狙撃するというそこそこエグい運用法だがこれには一つ欠点がある。

ワイヤーブレードを切られると乱戦において速射性の無いレールガンが使えないため火力不足に陥るのだ。

 

というわけなのでTLSを使い一気に全てのワイヤーブレードを切った。

戦闘機相手ではある程度の時間当てなければならないので使いにくいともいえるがただのワイヤー相手なら一回当てれば切れるのでかなり楽だった。

 

たださらなる問題が発生する。

 

AICのおかげで1対1では当てられないのだ。

一方向からの攻撃ならまず止められてしまう。置きミサイルでもしない限り無理だろ…っとその手があったな。

 

しかし思いついたはいいがミサイルはQAAM2発と衝撃波弾頭を積んだものが4発のみ。

衝撃波弾頭ミサイルは効果範囲が広すぎて使えない。

…置きミサイルは得意じゃないのに最大1発しか外せない状況じゃないか。

 

でもこれ以外に手は無いので、気づかれないようさり気無く投下する。

 

おかげで機動に乱れがでてレールガンの衝撃波で少しシールドエネルギーと右のTLS及びQAAM発射機の一部を削られた。

いやはや、ストーンヘンジみたいな弾頭じゃ無くてよかったぜ。

 

だけどTLSを一基失ったのはかなり大きな損失だ。

レールガン破壊を行うときに瞬時に壊せなくなってしまった。

 

そんなことを考えながらM61を引き撃ちしていると先ほど落としたQAAMがラウラ機の後方に直撃した。

 

突然の爆発と衝撃に驚いたのかラウラの機動が鈍くなったところに色々叩き込んでは見たがまだ撃墜はできなかった。

流石は戦術兵器最強のIS、打たれ強いな。

 

<<さすがは軍人。だけど詰めが甘いな>>

プライベートチャンネルでラウラにそう告げると、低空へ降下し機動の鈍ったラウラ機をPICマニュアル操作でエンジンを全開にすると出せる捨て身の加速で引き離し一気に戦域を離脱した。

 

この状態はかなり操縦が面倒ではあるが低空ならそのまま着陸することも可能…だと思いたい。

その点が心配になった俺は仰向けになり背中の装備で衝撃を吸収するようにしながら着陸した。

 

かなりの速さで降着したために土煙は上げてしまったがそこそこ静かに降りれたのであの空戦のことがバレることはないだろう。

 

 

さて、この後は千冬さんというラスボスを回避しなければいけないのだがどうすればいいのやら…。




まだまだこの物語は終わりません(多分)。


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第20話 小さな終わりは小さな始まり

今回は量が少し多いです。


敵地でベイルアウトする羽目になったときのために養ったスニーキング技術を使いながら私の病室へと向かっていたのだが、結局千冬さんというラスボスを回避することは出来なかった。

 

おかげで応急処置の後説教を30分くらい聞かされた。

こんなの訓練生のとき以来だよ…。

 

そして今は

「何故この者をむざむざと置いておくのですか、教官!諜報員ですよ!」

「いや、それには事情があると何度言ったら」

「事情があるからって諜報員を残しておくのは問題があります!」

「まず事情を聞いてからに」

「お前の言うことは聞いていない!スパイめ!」

とラウラが乱入してきて荒れに荒れている。

こっちは連戦で疲れてるんだ。いい加減休ましてくれ…。

 

おかげで回収した操縦者さんの尋問の用意に遅延が生じているということに気づいているのだろうか?

まあ未だに操縦者さんが起きてないので問題はないけど。

 

このままだと終わりそうにも無いので私は寝ることにする。

 

…そういえば最近戦闘中以外の一人称が私になってきている気がするが、こんなに短期間でも人の習慣って変わるものなんだろうか?

 

まあいいや、サァ寝るか!

 

 

だがそのときの私はこの後に起きる災難を予想してはいなかった。

よく考えれば予想できたはずだったのだが…。

 

 

 

口論が始まり15分くらいたった頃だろうか。

どうやらそのころには千冬さんとラウラの話がまとまっていたようで、俺の居眠りに気づいた二人は容赦無い起こし方を仕掛けてきた。

千冬が頭を、ラウラが首筋を狙い攻撃してきたのだ。

 

軽い命の危機を感じとっさに起きた私は全力で回避を行った結果二人の攻撃が見事頭に命中し一瞬気絶、その後頬を叩かれて起きた…と思っている。

正直なところ何がなんだかよく分からなかった。

 

気絶したことにより混乱している間に脇腹の痛み増してきたことに気づき、千冬さんにそのことを報告すると、もれなく病室送りとなった。

ちなみにもう一夏は居ないので部屋に帰っていないのは私一人だけである。

 

その中でどう暇を潰そうか悩んでいたときに封筒を千冬さんから渡されていたことに気がついた。

確かばれた時のためにと渡された書類だったはず…。

 

一体なにが入っているのかと思って中身を確認するとそこに入っていたのは新たな指令だった。

 

指令の内容を要約すれば『生徒(仮)から臨時戦闘員に格上げするのでそのまま居続けてね。もちろん支援は増やすよ?』というもの。

これ新手のいじめなんじゃないか?

 

それよりも臨時戦闘員ってなんなんだ?緊急時には出撃しろってことは分かるが、俺は地上じゃ一般的な陸軍兵士並みくらいにしか戦えないっていうのに…。

 

…それとも航空戦力のほうに不安があるのだろうか?

だとすれば夏休みの間に予備機体までを確保しておいたほうがいいかもしれない。

今の配備状況から考えて…予備はRafale MかRafale F(番外編4参照)だろう。

 

でもそれでは飛行場までいかなきゃいけないから使える機会とかは限られてくる。

VTOL機というのも考えては見たが緊急時とはいえIS学園内に戦闘機を運び込むのはかなり難しいし、置いておく場所がないはずだから居ても居なくても変わらないだろう。

 

戦闘機は基本的に使えないとなるとISの腕を上げておかないとだめか…。

 

短期間で慣れろっていうのは無理があると思った俺は同時にこんな任務を受けるはめになった理由を見つけた気がした。

準備なんて出来ない状況で普通の人間を国家代表には出来ない。

 

その点すぐ機体になれることができる、むしろ慣れなければならないテストパイロットは適任だったのだろう。

 

んでその中で適正が出たのが俺だったのだ。

本当に迷惑なことだが、政府としては検査費がかなりおさえられたはず。

 

でも今のオーレリアじゃしょうがないか…。

 

そう思い書類を処分した後、眠りに入った。

明日起きれるかどうかが心配だが…気にしないことにする。

 

いくらなんでも一日に三連戦は疲れたな…。

 

 

 ◇

 

日が落ち暗くなった海岸、柵がつけられているとはいえ普段は人が寄り付かない。

そんなところに人影があった。

 

その人影は投影ディスプレイに表示された戦闘映像を見て口を開く。

「は~。それにしても驚くなぁ。操縦者の生体再生まで可能なんてまるで―――」

「―――まるで、白騎士のようだな。

 コアナンバー001にして初の実戦投入。お前が心血を注いだ一番目の機体に、な」

 

私は束の言葉を紡いだ。

 

二人はその後軽い挨拶を交わすが、そのときに互いのほうを向くことはない。

どんな顔をしているかわかる

そのような確信が私たちの中にはあるのだ。

 

今回のことについて聞きたいことが幾つかあったのでそのことを口に出そうとするとまず束のほうから話を始めた。

 

「ちーちゃんが招き入れたあのイレギュラー。気をつけたほうがいいよ」

 

イレギュラーとは多分メアリーのことだろう。

 

「メアリーがどうしたっていうんだ?」

 

なぜメアリーが出てくるのか?

そう聞くと束の纏っている雰囲気が変わった。

そして口を開く。

 

「そいつが軍人だって話を聞いて経歴を調べてみたらさ、彼女の履歴途中から消えてるんだよ」

 

「なに?」

私は自分の耳を疑った。

だが続く言葉が思考を遮る。

「それにね、ここ最近のやつとなると断片的に残されているんだよ。初めて見る残し方だったなぁ」

 

「つまりはよく分からないから警戒しておけということか?」

 

今までの話をまとめるとそうなるが…日本政府までもメアリーを推してきたのだ。

まだ親友の話を信じ切れてはいないが信じるべきなのだろうか?

 

「そういうことだね。あとそいつのISが異常値をたたき出してるから気をつけてね」

「…ああ」

 

とにかくこの場では信じておくことにした。

 

少なくともメアリーを良くは思っていないようだがメアリーがもたらしたと思われる変化も楽しんでもいるみたいだった。

 

具体的なことは分からないがなにかを企んでいるらしい。

それに束の楽しむことがまともなことであるわけがない。

被害受けるこっちのことも考えておいて欲しいものである。

 

そっと心の中で溜息をつき、話題を変えることにした。

メアリーの件も重要だが、ここに来た目的はそれではないのだ。

 

まだまだ束には聞かなければいけないことが沢山ある。

本当に天災の名に相応しい奴だ…。

 

 

 ◇

 

福音襲撃のあった修学旅行だが、襲撃以外には特に問題は発生せずに終わった。

なお襲撃事件の際に無断出撃をした二人(私と一夏)は罰として機材搬出の手伝いをするはめとなった。

 

まあ怪我をしていた私が確認をしてISの治癒機能で全快していた一夏が力仕事をする形になったので負担は一夏に集中していた。

 

私は確認作業を早起きして終わらしたこともあり全然疲れていない。

 

今ある心配事といえばこの傷で何週間搭乗禁止になるかということぐらいだ。

できれば一週間以内がいい。

 

そんなことを考えながら窓際の席でボーっとしていると、隣に一夏がやってきた。

 

予想を裏切らないというかなんというか…随分と疲れているようだ。

 

処罰を執行したのは多分千冬さんのはずだ。

それ以外の人が生徒をここまでこき使うことは無いと思うね。

 

…だとすれば千冬さんはいつ休んだんだ?

という疑問が出てきたが、篠ノ之博士がアイアンクローと言っていたを思い出して俺は納得することにした。

前にIS用装備を生身で持ってたから元から体力はあるんだろう。多分。

 

暇つぶしに千冬さんのアイアンクローを証明できそうなことをさらに考えていたらなんだか寒気がしたので俺は考えるのをやめた。

そのとき窓を見るとそこには―――

 

 

 

 

 ―――誰も居なかったが、こちらを軽く睨んでくる千冬さんがいた。

 

睨まれるようなことが何個かあってこまるね、アハハ。

…これからある程度は行動に気をつけておこうか。あの人怒ると怖いし。

 

その後考えることすらなくなり時間を完全に持て余していた俺は寝ようとしたのだが、

「なあ、なんか飲み物持ってないか?」

という一夏の言葉で妨げられた。

 

「あぁ、まだ口つけてないのが一本余っているけど…」

 

そう反射的に返したらまるで希望を見つけたかのような眼差しで私のことを見てきた。

 

「そんなに欲しいならあげるよ」

「おぉ!」

 

あげるといった瞬間になんだかすごい喜びを見せる。

どんだけ水分補給したかったんだよ。

 

まあ水がどんだけ重要なのかは…オーレリア戦争のときに色々なところで体験したからわからなくもないのだが、普通の生活の中であんなに水を欲しがる状態に置かれるとは。

 

私の想像以上だったのかもしれない。

 

 

だが問題はそこではなかった。

 

セシリア、シャル、ラウラ、箒の四名が俺に殺気を向けてきたのだ。

身の危険を感じた俺は一瞬で体を覚醒させすぐ応戦できるようにした。

勿論周りに不審に思われないように、だが。

 

そこで突然クラスメイト数名がいきなり一夏の名を呼んだので、護身用に持っていたH&K USPを構えかけたが違うことに気づき元の姿勢にもどる。

 

いくらなんでも警戒しすぎだったな。

それとも疲れているのか…。

 

また寝ようと試みたときに

「ねえ、織斑一夏くんっているかしら」

と金髪女性が言った。

 

「あ、はい俺ですけど」

となんの警戒心も持たない声で言った。

 

相手を知らないのに警戒心無しとは…。

これからかなり苦労するんだろうな、あいつは。

 

そんなことを隣の奴が考えているとも知らずに一夏は興味深そうに見られている。

 

教師陣を越えバスまで来たことから察するに誰かの知人とかなんだろうが俺にとってみれば知らない人だったので、金髪女性が立ち去るまでは起きていることにした。

それに嫌な予感もしたんだ。

 

そこまで疲れているわけでも傷が痛んでいるわけでもないので戦闘機で15分くらいなら空中戦できるくらいの体力は残っているはずだから最悪でも千冬さんが制裁を下すまで逃げることはできるだろう。

 

そんなことを考えていると興味深く見られるのが嫌になってきたのか一夏が口を開いた。

 

「あ、あの、あなたは……?」

 

「私はナターシャ・ファイルス。『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の操縦者よ」

 

その発言を聞き一夏は驚いているようだったが私は納得した。

 

通りでバスまで来れる訳だ。

多分教師の誰かが知り合いで、というところだろう。

 

だがそんなことを考えている間に嫌な予感は的中してしまった。

 

ナターシャさんが一夏にキスをして去っていったのだ。

ただでさえ朴念仁なあいつの周りの恋愛事情は複雑だというのに…。

 

そして一夏は衝撃的すぎたのか固まってるし。

 

そんな状況に呆れてため息をついた時、私に殺気を向けた4人から私か一夏にあたればいいってくらいには精度の甘い500mlペットボトル(未開封)が飛んできたのだった。

 

…丁度いい。予備として一本貰っておくか。

 

そう思いペットボトルを拾おうとしたとき、ナターシャさんが残していったと思われる紙の存在に気がついた。

 

その紙には「灰色のISの操縦者さん、またいずれ」と書かれていたのだった。

 

 

 ◇

 

バスから降りたナターシャは目的の人物をみつけ、そちらへと向かう。

 

「おいおい、余計な火種は残してくれるなよ。ガキの相手は大変なんだ」

そういったのは目的の人物、言い換えれば千冬さんである。

 

「その割にはあの子、楽しそうだったわよ」

あの子がメアリーのことだと気づいた千冬は一瞬真面目な顔になり口を開く。

「案外あいつにはそういう経験がないのかもな」

 

私をおちょくろうとしたら暗い話になってしまい一瞬話が止まった。

IS関係では実際にある話でもあるのだから冗談として笑うこともできないのだ。

 

だが、そんな空気を千冬が破った。

 

「それより昨日の今日で動いて大丈夫なのか?」

 

「ええ、それは問題なく。私は『あの子(銀の福音)』に守られていましたから」

 

操縦者を守った。つまりは正常に動いていたということ。

 

「―――やはり、そうなのか?」

 

「ええ。あの子は私を守るために望まぬ戦いへと身を投じました。

 強引な二次移行、それにコアネットワークの切断…あの子は私のために、自分の世界を捨てた」

 

そう言葉を続けるナターシャは先ほどまでの陽気な雰囲気など微塵も残さず鋭い雰囲気を纏っていく。

 

「だから私は許さない。あの子の判断能力を奪い、全てのISを敵に見せかけた元凶を

 ―――必ず追って報いを受けさせる」

 

その言葉は復讐心に燃える人のものだった。

今回の暴走事故を受け、福音はコアに凍結処理がされることが決定したのだ。

 

「…何より空が好きだったあの子が翼を奪われた。相手が何であろうと私は許しはしない」

 

翼を奪われた福音は初期化をしない限りもう二度と、とまでは言わないが空に戻れる可能性は限りなく低い。

足を折ってしまったパイロットが空に戻るくらいの確率でしかないだろう。

 

「あまり無茶なことはするなよ。この後も査問委員会があるんだろ?しばらくはおとなしくしておいたほうがいい」

 

「それは忠告ですか、ブリュンヒルデ」

 

その発言の直後一瞬千冬さんが眉をしかめたが、ナターシャは幸いなのかそのことに気がつかなかった。

敬意などからくる二つ名ではあるのだが、私はあまりその名前を好きではないのだ。

 

まあグリフィス1が凶星(ネメシス)と呼ばれるのを嫌っているほどではないのだが。

 

「アドバイスさ、ただのな」

 

「そうですか。それではしばらくおとなしくしていましょう…。

 ところでメアリーっていう子は本当にISだけにしか乗ったことが無いの?」

 

突然の問いに一瞬固まる。

さらにこれが的を得ていただけに少し返答に困った。

 

束の報告により一気に信頼性が落ちてはいるが、ユジーンとかいう男から受け取った履歴書の内容を話すことにした。

 

勿論私とあいつが友人であることは内緒である。

 

「元々戦闘機乗りになりたかったようだが、その夢が叶う直前でIS適正が出てしまったらしい。

 おかげで戦闘機はある程度なら乗りこなせるようだな」

 

「色々と不遇な子ね。IS学園に居る間くらいはそんなことが無いようにしてあげてね」

 

どうやらあいつはナターシャから見たら可愛い後輩のようなものらしい。

 

友人でもあるが、メアリーは後輩にもなるんだな。

 

「そうだな。私が居る限りは善処しよう」

 

自然と口から出た肯定の言葉は私の本心を表していたんだと思う。

 

メアリーは私にとって色眼鏡をかけずに見てくれる数少ない知り合いであり、同時に可愛い後輩でもあるんだ。

 

それ以上話すこともなくお互いにそれぞれの帰路へとついた。




今回で三巻までが終わりました。

次回は多分夏休み編です。


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第四章 暑さを嫌うエース
第21話 パッケージ:レイダー


かなり遅れてすみません。

夏休みって前半部分になにもないから完全オリジナルな話です。

2014/12/26 一部改訂

2015/08/02 一部改訂


7月の終わり頃。

オーレリアの季節感覚を維持していた私はなんだか不思議な気分のまま数日を過ごしていた。

 

普通なら夏→秋→冬とつづくはずなのに微妙な時期で日本に来ていたため夏→秋→夏という感覚的には異常事態になってしまったのだ。

 

そもそも私は暑いのが嫌いなので冬の代わりに夏が来るというのは地獄でしかない。

 

何度か所属基地をグリスウォール近郊の基地やモンテブリーズ基地に変えてみないかと打診はされたことがあったのだが暑いところは好きじゃないといって断った覚えもある。

 

要するに私は今すぐオーレリアに帰りたいのだが、そうはさせてくれない事情もあった。

 

臨時戦闘員に任命されてしまったので一応指揮官的な人に会いに行かなければならないのだが、その人がいないのだ。

まあIS学園の生徒でありながら最終的な防衛を一任しているような人間だからなにかあるんだろう。

 

でも空けて欲しくはなかったかな。早く涼しいオーブリーに帰りたいし。

それに一応役職を持っているので溜まっているであろう書類を片付けたいのだ。

 

そんなことを考えながら木陰に座りつつメモ帳に私のISについて書いていた。

近接戦用にIS用のPDWやコンバットナイフがあってもいいかもしれない。

TLSで代用出来なくもないが、あれではリーチが長すぎる。

 

あとAM-1がガトリング砲やらTLSやらを装備できる腕を片方使えなくしてしまうから現状ではただのハンデもしくは予備にしかなっていない。

 

考えれば沢山でてくる欠点。

これも早くオーレリアに戻って解決しておきたいものだ。

…まあこの量だと改造になりそうだけど。

 

多分適当に仕上げられただろう専用機を見てそう思った。

 

 

ああ、オーレリアに帰りたい。

 

 

そんなことばかりを考えていたからだろう。

 

自分の後方数メートルにいる人に気がつけなかった。

 

 

普通に歩いているのではなく、忍び寄ってくる。

 

敵かどうかはまだ分からないが私は相手の死角を利用して姿をくらますことにした。

どこかで狙われてもおかしくない身なのでこういうのには慣れているのだ。

 

そして丁度いい生垣を見つけたのでそこから相手を確認することにする。

 

ちなみにこんなときのために小さな双眼鏡をいつも持ち合わせている。

 

unknownは青い髪のIS学園2年生…。

 

まんま現場指揮官じゃないか。

 

武装はなし。

この距離では殴り合いはできない。

 

そう判断した私は生垣から出ることにした。

 

ただこの判断が危険だと直後に思い知ることになる。

一瞬のうちにナイフが使える距離まで縮められてしまったのだ。

 

「すぐ気を抜くのは悪い癖よ」

 

と説教まで吐かれる始末。

 

「本職なのに不甲斐ないのをみせちゃったかな」

ふと思ったものが口に出てしまうほどに動揺してしまった。

 

「いいえ、問題はないわ。

 私が近づいた時ナイフでの近接戦に対応できるようにしてるし」

 

まあ私はナイフなんて使わせないけど、と小さな声で言った現場指揮官は手に「及第」と書かれた扇子を広げた。

よく見ると鉄製の上にあまり風流というものを感じないデザインだから違うものかもしれない。

そんなことは置いておくとして結局のところ本当に司令官が敵だったら私は最低でも気絶していたということだけは確実。

もっと地上戦の訓練はしておくべきかもしれない。

 

「はぁ、私もまだまだ精進しなければいけませんね」

こんなんじゃ狙われたときに死にかねない。

 

「ふふっ、自分の実力に自惚れない子。お姉さんは嫌いじゃないわ」

そういうと司令官は去って行った。

 

そういえば更識楯無ってどう読むんだろう?

聞き逃したことを若干後悔しながら手元を確認すると名刺があった。

 

どうやら"さらしき たてなし"と読むらしい。

 

日本語のほうもまだまだなのかもしれない。あと、私のスニーキングスキルも。

 

「あ、二学期から私一夏君の部屋に行くから引越しの準備しておいてね」

 

そんな突然の発言に少し固まっていたのは言うまでもない。

 

 

 ◇

 

私がオーレリアに帰れると、涼しい場所にいけると小躍りしながら準備を進めていると携帯電話が突然鳴った。

…オーレリアのIS開発の広報担当者をやってるエリナからだ。

女尊男卑が浸透してしまった世界で、対外的対応に男性を起用すると面倒だからこその女性起用なのだが、エリナは優秀な変人であり、フェンリア復元や例の使い捨てエンジンを開発した本人でもある。

そして特別な用事がない限りは向こうから連絡がくることは基本的にない。

 

そんな奴からの連絡なので嫌な予感がするが…出ることにする。

 

『あ!メアリーちゃん、出るの少し遅いよ!』

 

「たかだか数秒の話だろ!」

 

『空戦じゃ1秒が命取りなんだ~とかいって私たちを困らせたのはどこの誰かな~?メアリーは知ってる?』

 

ああ、こいつとは本当にやりづらい。

ちなみにエネルギー系の武器が多い俺の機体にM61A1を積めるように頼み込んで完成を1ヶ月近く遅らせたのは紛れもなく俺だ。

否定するつもりはない。

 

「知っているぞ、それは俺だ。

 そんなことはともかくお前からかけてくるとはどういう用事なんだ?」

 

『あ、まだ言ってなかったっけ。私のほうからそっちに行くから帰ってこなくていいよ』

 

どうやら俺の予感は的中してしまったようだ。

ああ、オーブリーのはずれにある自宅で過ごす夏休みが遠ざかっていく…。

 

そのときの俺は声も出さずに涙を流していたということをのちに山田先生から聞いた。

 

 

でもこれだけでは終わらない。

 

 

この電話が終わった直後、私の部屋のドアがたたかれた。

 

「オーブリーさん、いますか」

という山田先生の声。

 

オーレリアに帰省するときに持っていくはずだったトランクをベッドの上に置いたまま私はドアを開ける。

 

するとそこには

「やあ!久しぶりだねメアリーちゃん」

とつい先ほどまで電話で聞いていた声を話す人がいた。

 

悲しみが怒りに変わった俺は全力でそいつを殴り飛ばし反対側の壁へと飛んでいった。

 

 

 ◇

 

ところ変わって第1アリーナ。

ここで私は新しい機体もとい改修パッケージを装備してテスト飛行を行っていた。

 

現在装備中のパッケージ、レイダーはその名に恥じない機体となっていて、メソンカノンやM.B.S.R.が設置される場所にサブブースターを設置することによりかなりの高速・高機動になった機体である。

なお、8基のブースターの出力はマニュアル操作にすれば一つずつ調整できるが、同時に8基も操りながら腕の装備を撃つのは難易度が高すぎるのでブースターはオートにしたままだ。

 

まあこのパッケージのときはメインブースターも使い捨て可能なほど耐久力のない消耗品ではなくなっているので精神的には優しいのだが。

 

『ブースター系の動作は問題なさそうだね。じゃあ次は射撃系の武装を展開して』

 

アリーナの放送で流される指示に従い次は武装を展開した。

 

右腕にM61A1とTLS、N/MG1000-1。左腕にGAU-8、M/PDW-1L、盾型ミサイル発射機が展開される。

 

直後続々と出てくるターゲットが出てきた。

撃ちぬけということなのだろう。

 

テストなので使ったことのない右腕のN/MG1000-1と左腕のM/PDW-1Lからにした。

N/MG1000-1はただのマシンガンで、M/PDW-1Lは見た目がPDWのメソンカノンのようだ。

 

両方とも射程はそこそこで弾速も速いので近距離での機動戦とかにはちょうどいいかもしれない。

 

そう思い試しにジグザグに飛びながら撃ってみる。

 

右腕のMGはそこそこあたっているのだが、左腕のPDWは重力の影響を受けないのが災いしたのか予測照準の通りに撃ってしまうとひどい命中率になってしまった。

 

その癖して異常に消費するエネルギーのおかげでPDWは慣れるまで使い物にならないかもしれない。

 

 

まあそこらへんの文句は今管制室あたりから見ているであろう開発者にぶつけることにする。

 

『目標全部破壊確認!じゃあ次は私特製のエネルギーブレードだ!』

 

そう言われたので確認してみると、未だに使っていないレーザーブレードが、LGB-2 FALCHIONとかいうものに変わっていた。

試しに展開してみると中型のレーザーブレードが展開された。

 

ラウラのプラズマ手刀と一夏の剣の中間くらいサイズと言えばわかりやすいかもしれない。

サイズ的にファルシオンというよりサクスじゃないだろうか?

 

エリナのネーミングセンスを疑いつつLB-2を眺めているとトリガーのようなものがあることに気がつく。

なぜブレードにトリガーがついているのか考えているとまた放送が流れはじめた。

 

こんなに放送するくらいなら事前に全部言ってくれた方がよかったのでは?

ふとそんなことを思ったが直後思考する暇はなくなった。

『それガンソードだから撃ちながらザッシュザッシュ斬っちゃって!無人ロボット出すよ!』

 

突然出てくる無人ロボット。

機動性はかなり悪そうだが持っているのがミサイルなので、LGB-2についている銃で迎撃しながら突っ込んで斬りつけるといとも簡単に真っ二つに折れた。

 

まあ無人ロボットならしょうがないかな。

 

なんて燃えさかる無人ロボットの残骸を見ながら思っていると

『これでテストは終わり!感想は後で聞くから早く戻ってきてね!』

 

という放送が流れた。

 

 

まだ操作をつかみきれていないから誰かと模擬戦でもやっておきたいが、それは夏休みが終わった後でもいいだろう。

Gをあまり感じない状態での高機動だったから違和感もかなり感じた。

 

しかし…わざわざ同じ機体にしておく必要があったのかを疑いたくなるほどの性能の違いな気がしてならない。

まだIS操縦者を探していないということなのだろうか?

 

だとすると、まだ金はないんだな…。

 




祝お気に入り登録100件超。

PAの無いアーマードコアネクストと戦闘機を掛け合わせたみたいな専用機になってます。
要するに高機動・紙装甲・超高速。
多分もっと速度を求めた機体にすると戦闘機乗りであるメアリーに使いやすくなっていくはずなのでキャノンボール・ファストでは独走するかもしれません。


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第22話 急襲者

2015/08/02 改稿


パッケージのテストも無事に終わり、反省会的なものを行うことになったのだが

「何故感想を聞くためにIS学園を出て一部のマニアに人気がありそうなメイド喫茶にしたのか小一時間問いただしたい」

 

「ここはメイド喫茶じゃないよ。向こうに執事さんもいるじゃない!」

 

「問題はそこじゃない!」

 

まるでコントのような会話をしているのは@クルーズという名前の喫茶店。

ただ、この店は普通の喫茶店とは違い店員が使用人の格好をしているのだ。

 

俺はこんなところより普通の喫茶店のほうがよかった。

 

それにISの武装に関する情報とかも照らし合わせて話さなければいけないのに大衆の面前とか不便でしかない、と俺は思う。

 

「で、なんでここにしたんだ?」

 

「なんだかメイドさんっていいよね…って私の性癖を聞きだそうとしないで!」

 

「天と地がひっくり返っても聞き出す気はない」

 

こんな会話ばっかりで結局本題が進まない。

本当にこいつとは付き合いたくない。

 

軽いため息をつくと遂に本題へとシフトした。

 

「で、レイダーはどうだった?」

 

「尖ってるけど十分な性能だと思うよ。

 ただM/PDWは専用のFCSをつけるか照準器を装備するかしないと当てにくいな」

 

「わかったよ、改良しておく。で他には?他には?」

 

嬉々として聞いてくるエリナ。

まじめな話になろうが大体はこのテンションを貫いてくるのはある意味すごいと思う。

 

「まだ少ししか乗ってないが燃費が悪いところかな」

 

「他には?」

 

お前は完璧なものを作らないのか。

と突っ込みたくなったがやめておくことにした。

 

自分の作品に過剰な自信を持っていて意見を聞き入れないような人よりはましだろう。

 

それにこいつなりの優しさでもあるから。

 

「まだ1時間も乗ってない機体に対してそこまでの感想は持てないよ」

 

「ちぇ」

 

まあ最後の一言で大体台無しにしてくれるんだけどね。

 

しかし、これだけですべて用事がすんでしまった。

 

「一体何のためにわざわざここまで来たんだろうな…」

 

ふと呟いた。

 

「まあいいじゃない。ゆっくり休んだら帰ろう!」

 

「そうだな」

 

このあと俺たちはオーレリアの復興具合とか予算が少ないことを愚痴ったりしながらのんびりと時間を過ごした。

 

本当に予算どうにかなんないかな…。

 

 ◇

 

結局ほとんど駄弁ってはいたものの一応目的を果たした私たちだった。

しかし現実は非情である。

 

元々持ってきていた金も多かったしノースポイントにもそこそこ来ていたので銀行口座を作っていたからだろう。

数時間過ごして結構な額になっていたのを全額払わされた。

 

オーレリアに戻れば余りすぎて自宅を全面リフォームした上に使用人(本物のメイドさん)を雇って防衛と管理を任せても全然減らないくらいには有るのだが、ノースポイント駐留部隊になる可能性が無いに等しいのでそこまで金を持ってきているわけでもない。

そんなところで大出費になれば金欠になるのは火を見るより明らかだ。

 

というわけで銀行へ向かったのだが

「銀行に行くということはこれから奢り三昧だね!?やった!」

…面倒な奴が引っ付いてきているのは相変わらずだ。

 

「これ以上奢ったらここでの行動に支障が出るから無理。というわけで諦めろ」

 

「絶対ダメ?」

 

上目遣いで俺を落とそうとしてくるが、元々戦闘機が病的に好きだった俺に不覚は無かった。

ちなみに好みは小型の…って俺の性癖を言う場じゃ無かったな。

 

「ダメ」

 

「分かった」

 

珍しくエリナがすぐに引いた。

いくら自由奔放でも金は慎重に使っているのだろう。

 

エリナとそんなやり取りをしながら俺の順番を待っていた。

 

一部では部隊員の寄付金で一部経費を賄っているとも聞く。

余ってる金を寄付しようかと思い出した時、突然銃声が銀行内に木霊した。

 

騒然とした店内。

 

大陸戦争において地上戦の起きなかったため初耳の人が多いのだろう。

 

エリナが「皆伏せて!」と叫ぶまで固まっている人がほとんどだった。

 

でも俺は違った。

相手は5人、全員拳銃の携帯を視認したが、即応出来そうなのは一人。

4人はただの荒くれ者だろうが、リーダー格の者は本物の動きをしていた。

 

幸いなことにリーダー格は遠くにおり援護不能、一番近い標的は一撃で仕留められる。

 

そう判断し、近くにいた素人を気絶させた。

敢えて音たてて気絶させ、残りの敵の注意を気をこちらに引かせる。

 

思った通りに事が運んでいくが、まだ油断できる状況じゃない。

 

動くのをやめれば蜂の巣になってしまうのには変わりないので、周りにあった机やプリントで撹乱しつつ、机の影へと移動した。

 

ノースポイントの銀行員はかなり訓練されているようで、発砲音と机や紙がばら蒔かれる音でうるさくなった数秒で通報ボタンを押す。

 

勿論犯人側も抵抗という名の乱射を行ってきたので"犯人から奪った"拳銃で敵の拳銃を撃って破壊したあとグリップで殴って気絶させた。

 

そしてリーダーと思われる男に飛びかかるが、ネックレスらしきものを引き裂いただけで終わった。

 

残る3人は既に屋外へと脱出を開始していたのだ。

攻撃の失敗で態勢を崩した俺が追撃することは不可能だろう。

 

自分の失態に対して溜息を吐きつつ引きちぎったネックレスを見た。

 

そこにあったのはエルジア軍のものと酷似した年季入りのドックタグだった。

ある考えが脳裏をよぎる。

リーダー格はISの影響で軍を出された退役軍人かもしれない。

 

そう思うとなんだかやるせない気持ちになった。

元はと言えば平和や財政のための軍縮に、戦術兵器としては最強のISが出来た事を盾にしただけに過ぎない。

民衆も望みでもあった軍縮で民衆が危険に晒されるとは…。

 

そんな事を思いながら気絶した犯人を拘束した。

 

しかし三人も捕り逃してしまうとは。

まだまだ訓練が足りないな。

 

正当防衛で犯人以外は傷付けてはいないが警察にそこをつつかれるのは面倒かもしれない、なんてことを安心とかで沸き起こる歓声の中で考えようとしたのだが、

 

「ここを見られると面倒だから帰るよ!」

 

と言うと同時にエリナに引っ張られていった。

人は見かけによらないを体現化したかのような人間だよ、まったく。

 

 

 ◇

 

逃走劇の後、IS学園に帰ってきた私たちは二人そろって整備室でレイダーの改良をしながら一夜を明かした。

 

IS学園の校内巡回も案外ザルね。

 

そんなことを思いながら一応完成させたレイダーの隣で寝てしまったメアリーにそっと毛布をかけて私は日本を後にすることにする。

 

ここ数年の恐ろしい数の出撃のおかげかメアリーがすっかり忘れていた誕生日。

それが昨日だったのだが結局なにもしてやれなかったので、ついでにIS用の爆雷を置手紙と一緒においていくことにした。

 

体の大きさからか年齢よりかなり幼く見える彼女だが、背負っているものの大きさゆえに気を休める機会すらない。

 

昨日のアレで少しだけでも気を休められたのなら幸いだ。

 

 

そんなことを思いながら私はIS学園をあとにする。

 

 ―――また会おうね。私の親友。

 

小さく呟いたその一言は風に打ち消されて消えて行った。



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第23話 unknown

僕は相次ぐ失敗のせいか後方から最前線へと回されてしまった。

 

昔は色んな国の新兵器の情報やISの警備状況なんかを盗み出していたころが懐かしいくらいだ。

飛行拠点の情報が流出したあたりからだろうか?

色々な失敗をして遂には組織から厄介者扱いされてしまったようだ。

 

とにかく素人では生存できない可能性しかない敵地潜入任務だ。

バックアップはあるが、間接的なものにしか過ぎない。

 

多分本気で僕を殺しに来ている。

拒否しても任務のどこかでさりげなく殺されるだろう。

 

でも幸いなことにこの任務では僕は一人で動くことになる。

逃げる、いや生き残る最後のチャンスだろう。

 

なら行くしかない。IS学園に――――

 

 

 ◇

 

 

そこそこ長かった夏休みも終わり、今日からは授業が再開される。

 

もう特殊なことが起きないと思っていたのだが、それは私の思い違いだったようだ。

 

「また転校生か。それも企業所属とは…」

 

名前はアリス・ヘイズ。

自由国籍を持っているエイプリルインダストリー所属の専用機持ち。

容姿はすこしメアリーに似ているだろうか。

 

ただ、エイプリルインダストリー自体は装備のみを開発しているため機体はゼネラルリソースの物らしい。

これを良いことにゼネラルリソース社も支援しているようだ。

 

背景がややこしい奴め…。

 

さらにエイプリルインダストリーは色々尖っている装備を発表することで有名な会社だ。

そんな会社の専用機となると…正直背筋に悪寒が走る。

 

今年はなんでこんなに濃い連中が集まるのだろうか。

 

そして何故厄介な奴は大体私のところになるんだ···。

教師なんか向いてないこの私のところに。

 

まあいい。私の務めは果たさねばならない。

気分を切り替えてさらなる転校生を向かえにいくとしようか。

 

 ◇

 

「それでは今日のホームルームを始める」

 

千冬さんの一言で夏休みの終わりを実感した。

まあ前半はノースポイントの暑さに耐え、後半は任務中とはいえ降りてくる書類の処理と改造されたグリフィスへの慣熟訓練に消えた。

あとはたまに輸送機の護衛に向かったくらいだ。

 

銀行での一件以外は戦うことはなかった。

久しぶりの平和な夏休みだったな。

だけどやっぱり私は飛んでいたい。あの綺麗な青空を。

 

そんなことを窓の外を見ながら考えていたからだろう。

 

「ホームルーム中に外を見るとはいい度胸だな」

 

という千冬さんの言葉と共に突然上方から聞こえてきた風切り音。

 

動かなければ頭に当たる。

しかし体を傾けただけでは肩か腕への被害は免れない。

 

咄嗟にそう思い体を捻らせつつ横に動いた。

 

すると風切り音を発していた物体が私の机に直撃し、衝撃で筆箱が少し浮いた。

 

「ほう、私の出席簿を避けるか」

と言った千冬さんに

「とにかくホームルーム中に外を見るな」

という軽い説教と同時に小突かれた。

 

「すみません」

少し考え事をしていました、とかは続けない。

余計なことを言ってしまえば地雷を踏むだろう。

 

この件はこれで終わり、と私は思ったのだが

 

「千冬様の出席簿を避けるなんて」

「避けた人初めて見たよ」

「千冬姉の攻撃を避けウグッ」

「おお~。メアりんはすごいね~」

 

などの驚愕と称賛の声が教室中に満たされてしまった。

 

まあ

「お前ら静かにしろ」

と千冬さんの一声で静まるから問題は無いんだけど。

 

まるで士官学校みたいだ。

 

ふとそんなことを思ったが、二回も出席簿攻撃を受けたくないので真面目に聞くことにした。

 

―――しかし私の災難はまだ終わらない。

 

「実は今日からこのクラスに転入してくるやつがいる」

 

ざわめく教室。

まあ当たり前だろう。

二学期の時点で同じクラスに4人も転校生がいるなんて尋常ならざる事態だ。

 

でも1組のメンツを考えると納得出来る。

性能を見極めるにはちょうどいい。

 

また場を静める千冬さん。

 

だが私の心の安静はここで崩れる。

 

なぜなら入ってきた車椅子に乗っている彼女は―――

「はじめまして、僕はエイプリルインダストリー所属のアリス·ヘイズといいます」

 ―――行方不明になった妹にそっくりだった。

 

僕っ娘なところまで同じとかどういうことなの?

 

思わず口に出してしまったその言葉と一瞬顔に出た驚愕が黄色い悲鳴にかきけされたのは不幸中の幸いだ。

 

しかし、もしも転校生が本当に私の妹だったら色々と危険なので要注意人物として監視しておくべきかもしれない。悲しいことに。

 

もし妹であったにしてもそうでなかったとしても複雑だ。

 

というか九割方妹だろう。

そう言い切ってしまいたいくらいエイミーと同じだった。

 

違うところといえば車椅子だけだが、エイミーが空襲で脚を怪我した可能性も否定できない。

 

…会うならもっと違う会いかたをしておきたかった。

 

そう思った時ジェットエンジン特有の甲高い音が聞こえる。

 

ふと空を見るとノースポイントの新鋭戦闘機が飛行機雲を作りながら通り過ぎていった。

 

 

 ◇

 

「はじめまして、僕はエイプリルインダストリー所属のアリス·ヘイズといいます」

そう亡国機業にこれから襲撃される人々に告げた。

 

前なら内心嘲笑えたかもしれないが今の立場を考えるとせいぜい哀れむくらいだろう。

私も亡国機業に狙われているであろう身だ。

幸いこの学級には代表候補生とかイレギュラーが多い。

 

亡命のために上手く使うとしよう。

このためというわけでもないが僕の本名を知っているのは亡国機業内では誰も居ない。

 

使えなくても完全に失敗するわけではないだろう。

 

 

先ほどからずっと悪巧みを考える僕自身にすっかり悪いことを考えるようになったと思った。

 

同時に今は亡きかつての家族が見たらどう思うのだろうか、とも思ったが死人に口はない。

どう思われようが僕の勝手だ。

 

そう思ったのが運のつきだったのかもしれない。

 

だけどこのときの僕はそのことには気がつかなかった。




新鋭戦闘機はACAHのF-3震電Ⅱのつもりです。


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第24話 転校生の本気 前編 

今回もオリジナル。
おかげで楯無さんの出番はもう少しあとです。

※7/10 アリスの機体名を変更しました。

2014/7/25 一部追記
2014/8/4 1・2組合同授業から一年合同授業に変更しました。


一体上層部は何を考えているんだ。

 

ドイツ軍少佐であるラウラは転校生のことそっちのけでそう思っていた。

 

部下であるクラリッサから告げられたのはメアリーがオーレリア軍の機密にふれかねないような人物であるという報告と、同時に軍属であることを示す資料であった。

 

そしてそのオーレリア軍は今の女尊男卑の世の中で男女平等を訴えることを利用し戦力の拡大をはかっているというのは有名な話。

 

早い話女尊男卑を揺るがしかねない織斑一夏を暗殺してもおかしくはないのだ。

 

だがそのことを報告したら情報の口外を禁止され監視を命令されただけで、情報ごともみ消されかけている。

腐りきっているのか、何か意図があるのかはわからないが一夏の近くに不安要素を置くこと自体をしたくないのに排除できないのが怒りとして表れていた。

 

 

彼女がその他社会的に攻撃を行うことが出来れば状況は変わるのかもしれないが、戦闘に特化して製造されたモデルであるラウラはもどかしい思いをするだけであった。

 

だがこの教室にはその変化に気づく者はいなかった。

いや、気づく前にラウラが去ったという方が正しいのかもしれない。

 

次の時間は専用機持ちの生徒同士での模擬戦観察。

のんきにしているものも数名いるが、彼女たちに時間的余裕はないのだ。

 

 

 ◇

 

3限目。

 

1年合同の専用機持ちによる模擬戦が始まろうとしていた。

 

全て2対2の形で行われるもので、

最初が私・一夏vsリンさん・転校生。

次が篠ノ之・ラウラvsシャル・オルコット

という順番である。

 

夏休み明けということもあり、最初授業にはしないのかもしれない。

まあこのおかげで専用機持ちは夏休みの間もあまり休んでいられないのだがISに乗るまで基本空にいた私には関係のない話だった。

 

なぜか私が一夏と組む羽目になったのだが多分千冬さんの差し金だろう。

そして負けると昼食を奢らなければいけないなんていう話が出ているのだが夏休み明けであり、また銀行に行っていない私の財布はすでに悲鳴を上げていた。

そのことを一夏に告げると「ああ、いいぜ。」と気前良く全額引き受けてくれたので多分私に損はない。

 

と思いたかったんだけどちょっと空気が重くなっているのは一夏の朴念神によるところが大きいのだろう。

おかげでさっきからずっと睨まれている。

 

・・・はぁ、問題はあまり作りたく無いのだが。

 

内心そんなことを思いながら試合開始までの残り時間を確認した。

 

今回の対戦カードは一夏と私の高燃費ペアにリンさんと妹(多分)のペア。

リンさんの視線は辛いがunknownであるアリス・ヘイズの機体性能及び戦法を確認するにはいい機会だろう。

 

そう思ったときアリーナにブザーが鳴り響いた。

 

開幕瞬間加速で突撃する白式。

最初はミサイル戦を展開するつもりだったがこれでは一夏がただ自滅するだけなのでファルシオンを展開し全ブースターを使って甲龍へと突撃した。

 

斬撃に移れる姿勢で目標へ突進する機体を左右に揺らす。

 

目標はこちらに龍砲を向けつつ白式へと近接武器を投げた。

瞬間加速終了直後に飛来したそれは白式の装甲を抉った。

 

対するこちらだがサイドブースターを使って龍砲を全回避していた。

おかげで早速弾幕状態だがむしろこちらのほうが避け易い。

ファルシオンについている銃で攻撃しながらミサイルを斉射した。

 

それでも8発だが、驚かせるには十分だったようで目標は後退しながらの回避をこころみ始めた。

 

この行動で軽く減速した目標に白式が突撃を敢行し、雪片弐型による斬撃を行う。

できれば雪羅で弾幕を張りながら零落白夜を使って突っ込んで欲しかったのだがそこは見逃そう。

 

それに斬撃の直後に速射モードの龍砲による反撃を行っているところを見ると三次元機動がまだ上手くはない一夏の判断は間違ってもいなかったのかもしれない。

 

まあそんなことはどうでもいい。

 

今の私がやるのはアリスのデータ入手だ。

 

こちらへの牽制をすっかり忘れていた甲龍をいいことに速射ライフルと背部のミサイルによる支援を行っていた白・灰・水色の迷彩柄の四脚型ISへと突撃する。

 

直後機体データがコアネットワークから流れてきた。

機体名はホワイトフォート。

多種多様な装備を持つ汎用型ISで、イメージインターフェイスを6種以上の武器の火気管制に利用しているという第二.五世代型に近い第三世代試験機だ。

 

まあ私の機体もイメージインターフェイスは機動制御に利用しているため第二.五世代型に近いので人のことだけを言っても居られないが。

 

でも正面火力が厄介なのは事実だ。

127mm速射砲2門と対ISミサイル多数、対ISライフル2丁に25mmくらいのガトリング砲2門という恐ろしい火力を保持しているために接近すらままならないだろう。

 

だが長い武器が多いので接近戦には弱いはず。

 

そう思い一気に距離を詰める。

しかしこの判断が間違っていたことに気がついたのはこの直後である。

 

ホワイトガンナーがライフルをパージして短機関銃を展開し更に濃い弾幕を形成したのだ。

 

不意打ちだった上に至近距離だったこともあいまってガトリングや短機関銃弾数発の直撃を受ける。

 

他の機体なら大した損害ではないがレイダーは装甲を犠牲に機動性を特化した機体。

シールドエネルギーを20%ほど削られた。

 

ISとしてはかなり危ない装甲であることを露呈したが、元々戦闘機乗りだった私はあまり驚くことでもなかった。

日々進化する武器によって今では喰らったら戦闘不能といっても過言ではない。

 

そんな空を飛んでいた私にとってはあまり驚くことはなかった。

 

6種以上の武器を同時に予測射撃可能とはいえ所詮は機械の予測。

 

バレルロールを行いつつスラスターの出力を変え砲撃や銃撃を避ける。

 

続いて迫ってくるのはバレルロール終了間際に撃たれたミサイルだがサイズやその機動性から赤外線誘導の気がしたのでブースターで地面を炙り疑似フレアを作ってサイドブースターとサブブースターを利用し急上昇でミサイルの誘導範囲から離脱、直後地上に小さな爆炎が上がった。

 

やはりブースターも熱を持っているようだ。

まあ戦闘機ほどではないのだろうけど。

 

 

ふと離脱方向を見ると甲龍に押されている白式の姿があった。

 

やはりエネルギーを切らしたか。

それも半分くらい玄人向け過ぎる機体が悪いので別に問い詰める気はない。

 

だが今落とされると私一人になり少々面倒なので全速力でN/PDW-1Lを撃ちながら突っ込む。

 

後方から砲弾がかすめる音が聞こえるが、それらはすでに徹甲弾から炸裂弾へと変化していた。

おおかた甲龍への誤射を恐れたのだろう。

 

もしくは威力より命中を重視しはじめたのか。

どちらにしろ私には好都合だった。

 

速度をそのままに甲龍への直撃コースをとる。

そして武器をファルシオンを変え機動を少し後方を通るように微調整する。

 

直後腕にかなりの衝撃がかかる。

 

白式撃破に集中し過ぎていた甲龍にファルシオンが直撃したのだ。

 

こちらは音速手前までいっていたのでかなりの威力だったはず。

そのことを示すかのようにファルシオンはもがれた翼のように変形していた。

 

アリーナ壁面への衝突を避けるように旋回すると、砂煙が上がっていたから大打撃は与えられたはずだ。

だが油断は禁物。

残弾の制限がない携行型メソンカノンを撃ちこんだ。

 

直後COMが 甲龍撃破 と言った。

 

 

 ◇

 

専用機持ちの演習があると聞き、兵装試験とかをメインで行おうと思っていたのにそれをさせてくれる状況ではなくなっていた。

 

unknown、メアリー・オーブリーの存在によってだ。

 

専用機持ちでありながら少なすぎる情報から過去の情報等不明な点が多かったが、IS学園でふつうに生活している以上別に問題はないと思っていた。

 

まあ僕の姉と同じ名前で似すぎている容姿。

同一人物もしくはクローンだと即決できるレベルなんだけど、姉が乗っていたであろう機体が爆発四散する光景はこの目でみたのでクローンだと即決できだ。

 

オーレリアのIS社会への不干渉具合と頭がよかったから何らかの実験とかに作られてもおかしくはない。

 

でもそれは僕の思い違いだったよう。

 

異常ともいえるほど機動と速度だけ突き詰めた機体をかなりうまく使いこなせている。

おかげでライフルはあまり撃てなかったし12.7cm砲の射撃データもあまりとれなかった。

 

仕舞いにはミサイルの弾幕までよくわからない方法で避けられる始末だ。

 

最後やけになって張った対空弾幕はもちろんのごとくあたらなかった。

 

そして最後には体当たりに見せかけた強烈な斬撃で甲龍を吹っ飛ばして動けなくなったところに光学系武器乱射で追い打ちをかけ撃破。

 

人間にある慈悲や油断のかけらをほとんど感じることができない戦闘。

なのにIS学園で問題も起こさずに過ごしている。

ラウラ・ボーデヴィッヒとかいう試験管ベビーのように浮いているという話もない。

 

戦闘用クローンに近いがそれですらない可能性がでてきた。

 

最早異常だ。

 

でも逃げるわけにはいかない。

 

これからもっととんでもないことをやらなければ僕は生き残れないのだから。

 

そう思いつつガトリング砲と76mm砲を白式とグリフィスに撃ち始めた。




低空ミサイル避けはエスコンXのOPのミサイル避けをイメージしております。


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第25話 転校生の本気 後編

最近戦闘機分が欠乏している気がする。


7/26 タイトルの誤字を修正


まだ土煙の晴れない中再び銃声は鳴り響く。

 

そのなかで瞬間加速により突撃を敢行する一夏。

 

「待て一夏!」

 

そう叫んだが既に手遅れだった。

 

甲龍との戦闘で死にかけだった白式にガトリングと127mm砲

が一門ずつむけられ、そして火を噴いた。

もれなく爆炎に埋もれる白式。

 

瞬間白い線が127mm砲を貫き、装填済みだった炸裂弾ごと爆発を起こしたが直後白式戦闘不能とFCSが喋った。

 

ホワイトフォートは背部に127mm砲の代替としてGAU-10を展開しさらに濃い弾幕を展開する。

接近は危険と判断し距離を離すとCIWSの射撃が止んだ。

 

そこであることに気づく。

 

普通にあんな連射をしたら銃身が燃え上がるはず。

でも燃え上がらない。

 

さらに離脱に入ったとき2秒弱弾幕が薄くなっている。

 

ここから立てる仮説としては銃身を冷却するさいに格納し予備を展開する方法だろう。

 

立証する手段は無いに等しいが、それも実際に試せばいいだけだ。

 

ホワイトフォートの右前方から突撃を開始しそのままジンキングを始める。

エネルギーパック残量なしの表示が出たのを確認すると旋回戦に移行した。

 

アリスの顔が少し歪む。

 

そして照準が軽く甘くなってきたところで全速飛行に移りブースターに炙られかなり高温になったエネルギーパックをホワイトフォートのガトリング砲に目がけて投棄、ついでに曲がってまともに使えなくなったファルシオンを127mm砲に投げつけた。

 

離脱後後ろから吹いてくる爆風。

 

ハイパーセンサーを使って確認して急上昇。

 

そして盾型ハードポイントで守りながら急降下しつつ全門斉射し、無理やり着地姿勢に移行するときの回転で加速された脚を叩きつけ、ホワイトフォートの左腕ハードポイント破壊に両肩武器の誘爆を起こさせたときに

 

「おねえちゃん?」

 

という声が聞こえた。

 

その発言の衝撃で数瞬動きが鈍ったのが原因だろう。

 

―――ホワイトフォートの砲撃で10mほど吹っ飛ばされた。

 

 

直後ホワイトフォートが爆炎に包まれ機能を停止。

 

1秒足らずの差で私の負けとなった。

 

 

やっぱりまだISには慣れていないみたいだ。

 

試合終了と同時に沸き起こった拍手の中でそんなことを思った。

 

そのときふと空を見ると、着陸態勢に入った一機のF-3の姿が見えた。

 

 

 ◇

 

私は内心ほっとしていた。

クジで対戦相手を決めたら鳳の機体を除き攻撃特化(白式)、機動特化(グリフィスレイダー)、手数特化(ホワイトフォート)というあまりにも突き詰めている機体ばかりが集まってしまったためどのような試合になるか多々の不安があった。

 

例えば手数特化でありながらある程度の装甲を持つホワイトフォートに攻撃特化で防御なんて考えられてないといっても過言ではない白式が突っ込めばよくて相討ちに終わり、完全に防御を捨てているグリフィスレイダーにはかなりきつい戦いとなっていただろう。

メアリーの腕も中々あるだけにかなりの長期戦になることが予想され、確実に授業に影響を及ぼすだろう。

 

幸い今回は無理やりとはいえ甲龍を撃破したのだが完全にあの馬鹿がやらかしたおかげで白式・グリフィスレイダーチームの敗北となってしまったものの、授業時間的には丁度いいものとなった。

 

それにしてもまだまだあいつは訓練が足りないようだ。

あとでこってり絞ってやろう。

今朝から少しおかしい上に大事な局面で機動ミスをしたメアリーを巻き添えに校庭10周ぐらいがいいだろう。

 

メアリーは大丈夫だろうが一夏はどうなることやら。

 

軽い溜息をつきつつ山田先生に

「ちょっと愚弟に会ってくる。校庭も抑えてくるから管制室を頼む」

と言い残し管制室をあとにした。

 

このとき少し引き攣った笑みを浮かべたことを気づかれた山田先生は塩入コーヒーを飲まされたとか飲まされてないとか。

 

 

 ◇

 

0934、伊豆半島沖上空をF-3D震電Ⅱ4機で構成されたファルシオン隊が駆け抜けていた。

 

F-3Dとは大陸戦争時に迎撃・奇襲用として開発が開始され航続距離・最高速度以外ではF-2を超える性能を得た準ステルス機であるF-3Aに特殊増層用のパイロンを追加し航続距離を長くした改良型である。

開発が遅れたのはステルス性とミサイル搭載数を減少させないように機体ラインに沿った増層とパイロンを開発したためであり、その形状はかなり特殊なものとなった。

所謂CFTを装備可能にしたF-3なのだが、この機のCFTは増槽として切り離せるのだ。

そのため特殊増槽によって機体膨らむため「デブ震電」という愛称があるくらいである。

 

<<最近要撃任務多いっすね>>

<<まあしょうがないだろう。ISのせいというのが食わんがな>>

 

IS学園のある湘南方面で要撃任務に就くことの多いファルシオン隊は軽い雑談をしながら飛行していた。

ローテを組んで行っている要撃だが、8月の終わりごろから回数が増えてきたのだ。

 

それも周辺国から飛んでくる定期便ではなく反IS組織のものと思われる機体や所属不明の機体がである。

 

最近ではオーシアで第四艦隊が離反したとのうわさも聞いているので不気味でならない。

 

表面上だけはまるで平和が訪れたかのような言い草だがその実世界各国で退役軍人や軍所属部隊の離反、一部の女性優位社会反対派の武装蜂起が多発していて対艦ミサイルを積んでの要撃もかなり多い。

もはや戦争状態なのに世界はそのことを認めようとしていなかった。

 

<<まあそう言わないであげてよ。IS部隊もミサイル防衛に明け暮れてるようだしさ>>

 

そういうのは万年4番機という謎な称号を持っているファルシオン4。

外見は20代前半くらいだが自由エルジア掃討戦の時には既に空にいたらしい。

女性というのを生かして女尊男卑に染まりきったクソ基地司令と交渉したりIS部隊の掩護をとりつけたりとかなり交渉事をやるのがうまい。

そして空中戦の腕も確かだ。

 

<<司令部より通信。無警告撃墜許可がおりたよ。それにしてもなんで私・・・>>

<<前方にunknown確認。数は4>>

 

3番機がそういった瞬間前を飛んでいた3,4番機がミサイルを発射した。

 

<<2機撃墜確認。残り2機はいただいた!>>

 

そういって2番機もミサイルを撃つ。

俺も少し後にミサイルを発射した。

 

<<隊長が2機撃墜。ファルシオン2、いい囮だったな>>

<<副長としてはなんだか微妙な気分だ>>

 

流れとしてはフレアとチャフに2番機のミサイルが吸い込まれその直後俺の撃ったミサイルが当たったという感じだ。

これがいつもの流れであるおかげで副長は撃墜数が乱戦で仕留めた2機なのに対して俺が7機である。

・・・もう少し撃墜数を副長に分けてやりたい。

 

<<敵機殲滅。RTB>>

 

3番機の通信とともに編隊は帰路へとついた。

以前使っていたF-3Aとは違いまだ燃料に余裕がある。

 

あともう一回空中戦ができる。

 

そんなことを思った時だった。

 

<<海中よりunknown出現!>>

 

突然通信が入る。

 

直後レーザーが隣を駆け抜けた。

 

<<こちらファルシオン2!上部エンジンをやられた。脱出する>>

<<敵機視認!人型ユニットのようだな>>

<<フレア発射口がやられた!小型飛行体がいるみたい!>>

 

一気に全機からの無線が入る。

この無線を聞いたのか空中管制機からの通信が入った。

 

<<敵をISと断定。対IS部隊が到着するまで持ちこたえろ>>

 

了解の声を発する間もなく乱戦が開始される。

何もないところからレーザーが発射されているのだ。

 

幸いF-22を圧倒している格闘戦能力のおかげで掠るくらいで済んでいるが劣性なのには変わりはなかった。

 

<<敵レーザーは同時に5発まで射撃可能なようだ>>

 

戦域から軽く離れていたファルシオン3がそう無線を発した瞬間機動が乱れる。

 

<<ファルシオン3!応答して>>

 

乱戦をしながら叫ぶファルシオン4。

だが返答はない。

その時俺はあることに気が付いた。

 

レーザーの数が2本まで減っていたのだ。

 

直感で敵の隙だと思いミサイルを撃った。

 

<<FOX2!FOX2!>>

 

だが敵が爆炎に包まれることはなかった。

迎撃されたのだ。

 

<<こちらファルシオン3、主翼を切られた。脱出する>>

 

またレーダーから友軍の反応が消える。

残るは俺とファルシオン4の2機。

 

そう思ったときに赤いレーザーが敵にあたった。

 

<<こちらトキ1。援護射撃を開始する!>>

 

すこし遅い無線。

 

安堵するとともに機体を青いレーザーが貫く。

 

火を噴きだした機体を見て俺は決断した。

 

<<ファルシオン1、脱出する!>>

 

直後キャノピーを破砕して燃え上がる機体から飛び出し見た光景は赤いレーザーと青いレーザーの中で舞う青い鳥だった。

 

 

 ◇

 

隊長の墜落により一人となってしまった私は離脱を始めようとしてあることに気が付いた。

 

レーザーが何らかにより防がれていたのだ。

 

ミサイルも先ほどレーザーにより迎撃されているのを確認できた。

 

なら残すは実弾兵器、つまり私の機体のバルカンだけ。

 

そう決断し赤と青のレーザーの中を駆け抜ける。

 

かつてF-2でX-2と戦ったときのような緊張感。

実際に1mm操縦を間違えれば死にかねない状況の中を飛ぶのはかなりのスリルがあった。

 

でもそんな突撃は相手の想定外のであった上に洋上と青空の中では非常に役立つ青い塗装のおかげか気づかれることなくバルカンによる攻撃に移る。

 

<<ファルシオン4!FOX1!>>

 

叫びながらバルカンを乱射した。

一部が小型の何かやレーザーにツッコみ防がれたが多くの弾丸がISにあたる。

 

もちろん発砲音が至近距離で聞こえれば気づかれるわけで青いレーザーによる弾幕が展開される。

 

でも1秒たたないうちに弾幕は消えた。

 

戦略レーザーによる攻撃での消耗で離脱を開始したのだ。

 

航続距離強化型とはいえあまり長くは飛べないF-3。

仲間の敵討ちに追撃を行いたくもなったが離脱した。

 

燃料は残り24%。

帰れるか不安であったが無線を開く。

 

<<ファルシオン4、RTB。あとこの空域に救助ヘリの派遣をしてね>>

 

そういった後少し機体を傾け洋上と空中の白いパラシュートを3つ視認したあともっとも近い基地へ機首を向けた。

 

念のためミサイルもAIM-9Xを除いて全部捨てたあと赤いレーザーが消える。

 

今回の要撃も終わり。

 

いつもならそんなことをつぶやいていたのだが今日は呟く気にはなれなかった。

 

「随分と久しぶりの一人寂しい帰還ね」

 

自然とそんなつぶやきが漏れた。

 

 

これが公式戦においての初めての対IS戦における通常兵器使用側の戦術的勝利であった。

まあこの敵ISはストーンヘンジ砲台跡守備隊襲撃後に無補給でIS学園襲撃に向かっているのだが所属不明機である以上そんなことを知る由もない。

 

 

 ◇

 

そろそろ織斑一夏に接触しようと思っていた更識楯無は少し焦っていた。

自分が躊躇っている間に亡国機業所属部隊がIS学園目前まで来ていたのだ。

 

幸いISのほうは日本国防空軍のADF-1部隊の攻撃により後退させることには成功したようだが、母艦である中型潜水艦は取り逃がしたらしい。

 

ISが戦略レーザーを積んでいたとはいえただ戦闘機に負けたという事実も大変重要なことではあるのだが織斑一夏の件でただでさえ苦情が来ている更識の長としては亡国機業の攻撃開始に間に合わなかったという事実それ自体が問題であった。

 

まあ幸いなことに今目標は更衣室に一人でいる。

 

早速接触をかけるとしよう。




転校生の本気とかいうタイトルでありながらあんまり戦果あげられてない気がする転校生のことは気にしないでください!相手が悪すぎるだけなんです!

それにしてもグリフィス1の実力をどのくらいの速度で上げていくかはかなりの問題になりそうです。
ISは空を飛んではいるけど地上戦に近いものですし苦手そうではあるけどグリフィス1の立場を考えると一般兵士から特殊部隊並には地上戦ができそうとも思ってます。


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第26話 少佐の意地

Vitaからの投稿ですので誤字があるかもしれません。
あと日常回の練習も兼ねているのをご了承ください。


アリーナにいくつかある更衣室のうち一つをそのまま使ったためにかなり広いスペースとなっている男子更衣室。

色々と有名な人物なら警戒しそうなくらい広くそして死角も多いその空間で一人のんびりしているのがいた。

 

言わずとも知れた有名人の織斑一夏である。

 

先ほどの授業で行った模擬戦では甲龍を抑えたのと決死の突撃でホワイトフォートの127mm砲を道連れにしたくらいしか活躍はなかった。

 

まあまだISに触れて一年も経っていない素人なのだからしょうがないのだが彼の場合ではそう言っていられるほど周りの状況がいい物ではない。

さらに度重なるIS学園襲撃若しくは襲撃未遂事件の発生で主に日本政府が神経をとがらせていたのだ。

 

だから一人の教官兼護衛(更識楯無)を差し向けた。

 

そして護衛は早速任務を開始する。

 

「だーれだ?」

目標の目を手で覆う。

元々暗殺とかの訓練を受けている人間だったので足音一つ立てずに背後へ立つことに成功する。

突然そんなことをされた護衛対象も驚いて思考停止しているがむしろそれくらいがいいと楯無は判断した。

 

「はーい、時間切れ」

 

そういうと手を離す。

私も大して時間があるわけでもない。

「・・・誰?」

だが顔を見ても気づくことはなかった。

・・・私、これでも生徒会長なんだけどな。

ちょっとおねーさん悲しいよ。

 

「あっ」

 

そう扇子で織斑の後ろを指さして振り向いた先に男子更衣室を後にした。

今は学年ごとの成績優秀者(1年のみ専用機持ち)による模擬戦中とはいえ仮にも授業中。早くピット戻らなくては。

 

 

第二試合開始まであと3分の時である。

 

 

 ◇

 

4時間目。

 

授業に遅刻とのことで一夏が開幕説教を受けていた。

まあ10分もある休み時間の間に着替えられない一夏が悪い。

 

さらにこれのおかげで試合が始まるのが少し遅れたのだがまあ私には関係ない話である。

もう私達の出る試合は終わったからな。

 

まあ専用機持ちもレポートを出さなきゃいけないんだけど戦闘の詳細くらいなら見ればわかるし、一応カメラで撮影してるから困ったら再確認するだけの話だ。

 

「ね~ね~めありん」

 

間延びした声が後ろの席から聞こえてきた。

確か布仏本音と言っただろうか。

めありん・・・多分私のことを指すのであろう。

 

「なんでしょうか?」

 

つまりかけていたがIS学園にいるときの口調で話すことに成功する。

なんだか久しぶりな気がするのは気のせいだと思いたい。

しかし私に一体何の用事があるというのだろうか。

 

「そのビデオ、あとで貸してくれない?」

「あー、それならいいですよ」

 

なんだそんなことか。

内心でそんなことを思いながらかえした。

 

ありがとね~という布仏さんに少し応答しながら今回の試合の観察を始めることにする。

部屋にあまり持ち帰りたくはないし、布仏さんに貸すことを考えると時間をかけるのも申し訳ないしな。

 

「オーブリーさんはどっちが勝つと思う?」

 

またもや後ろから声をかけられる。

この声は確か相川さんだな。

相川さんからの質問に私は少し悩んで、でもすぐ結論を出すことに成功した。

 

「シャルとオルコットさんのほうじゃないですか?」

「なんで?」

 

あらかじめ用意していた答えを口調を変えつつ話す。

これがなんだかんだ言って面倒な作業だ。

一人称は変わったというのに口調は変わる気配を見せないのは私のせいなのだろうか?

 

「バランスとしてはどちらも悪くはないと思うんですが、篠ノ之さんの専用機は色々玄人向けなんで多分性能を生かし切れないと思います。そうなったら機転の利くシャルがいるほうが有利になるんじゃないかな」

 

「ほほう、その予想に何円賭ける?」

 

おどけた声でそう聞いてきた。

これは創作の軍とかでよく見るノリだな。

オーレリアでもやってる連中は見たことがあるが私は大抵賭けの対象だった。

 

「1000円・・・ですね。」

篠ノ之さんの頑張りで戦況は変わるし、とは口に出さなかった。

ただの賭けとはいえ負けたくはないし、言い訳を作るのはなんだか自分自身に納得できないから。

 

「じゃあ私は篠ノ之さんたちの勝利に500円賭けよう!」

「え!そこ数合わせないんですか?」

「だって専用機持ちの言うことなんだもん!これくらいのハンデはいいでしょ?」

 

少し溜息をつきつつその発言を認めた。

たしかに一年も勉強していない一般生と既に年単位での勉強を重ねた専用機持ちが同じのでは割に会わないからな。

 

「あ~、戦闘始まったよ~」

 

布仏さんが言い終わるころにはすでに交戦状態に入っていた。

 

予想通りに紅椿は瞬間加速で突撃、ブルーティアーズが後退して、援護でカスタムⅡが前衛に回ったようだ。

 

シュバルツェアレーゲンは少し遠いところから戦況を見つつ支援中といったかんじ。

1対1を二つ作るのか2対1で叩き潰すのか気になるところではある。

 

「あれ?ビットまだ撃ってない?」

 

確かにビットは滞空したまま複雑に飛んでいた。

近くを見ると複雑な機動で飛ぶワイヤーブレードが見える。

 

まず相手の手数を減らしにきたか。

 

しかしさっきからレールキャノンが使われていないのは意外だ。

 

正直な話レールキャノンの衝撃波に巻き込んだ方がワイヤーブレードを展開するよりいいはずなのにしない。

まあ動かなくなればレーザーの雨かもしれないが母機の機動は制御に思考がさかれて鈍るのだから火力で勝てるはず。

もしくは全て破壊してからAICを使用しての撃ちあいを行うのだろうか。

 

そのままワイヤーブレードとビットの攻防を見ていると離れた場所から多数の衝突音が聞こえた。

 

「あちゃー。あれはなんか駄目だね」

「完全に機動に振り回されてますね」

 

紅椿がアリーナに次々と空く穴を見て思ったことはただ一つだ。

 

篠ノ之は機体に振り回されている。

 

彼女には高機動・高消費型なんかより打鉄強化版くらいのものにしたほうがよかったのではないだろうか?

それとも姉である博士が何か秘策でも容易しているのか。

 

私が知ることではなさそうだ。

それに天災の渾名を持つ博士に自ら接触しにいくほど私は馬鹿じゃない。

 

「持久戦にでも持ち込むつもりでしょうか?紅椿は不利になる一方だというのに」

「やっぱり篠ノ之さんは打鉄の感覚が強いみたい」

 

そのまま相川さんが機体くれと言いそうになった時、試合は大きく動いた。

ブルーティアーズのビットがすべて破壊され、紅椿が移動用エネルギーの調整をした瞬間にシールドピアスを打ち込まれて撃破されたのだ。

 

「最初からこれが目的でしたか。でも紅椿が居なくなったのは痛いですね」

そう呟くと後方から大声が聞こえた。

「頑張れラウラちゃん!私の500円のために!」

「ちょっとゲスいよ~」

 

軽いツッコミが入ったあと相川さんが「あっ」と声を漏らした。

 

真っ先にビットを失った分機動が鋭くなったブルーティアーズにワイヤーブレードとレールキャノンが向けたのだ。

いくらAICがあろうと多方面からの攻撃には耐えられないのに。

 

予想通りシュヴァルツェア・レーゲンの背後にラファールリヴァイブカスタムⅡが回り込む。

 

だがラウラはそれを狙っていたらしく後退しオーバーシュートするとすぐにレールキャノンを発射。

シャルは突然の攻撃で一瞬驚いたのが仇となり直撃してしまった。

これで発生した硬直を利用しワイヤーブレードで拘束することに成功。

 

至近距離で背後からレールキャノンを連射されカスタムⅡに撃破判定が出た。

完全に学年別対抗トーナメントの仕返しである。

 

だが流石はシャルというべきだろう。

撃破される寸前にグレネードをばら撒き、撃破判定が出て間もなく黒い機体が砂塵に包まれ撃破判定が下りた。

 

試合は終了、無事に私の1000円は守られたのだった。

 

相川さんは俯き、それを布仏さんが慰めていた。

···別に私はそこまで金が欲しいわけではない。

 

だがそれを言おうとしたら制止された。

 

「言いたいことは分かるよ、オーブリーさん。でも賭博の元締めをやってた人間として引けない一線があるんだ」

 

熱く語りながら私に500円を渡された。

ここで彼女の意志を否定するほど私は酷ではないつもりだ。

 

「わかりました。有り難く受け取らせて頂きます」

 

「そう、それでいいのよ」

そんなことを大げさなリアクションをしながら呟いて相川さんは帰っていった。

 

これで授業も終わり。

念のため4ヵ所に設置した撮影機材を片付けて帰路につこうとしたときふと横を通った千冬さんに

「あとで教育室に来い」

と言われた時、背筋が凍り付いた。

 

まあ実際は賭博の件ではなく私の映像資料を使いたいって話であったのだけれど。




次は多分9月下旬です。


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第27話 虚空

遅れてすみません。
4か月も待たせてしまって申し訳ないです。

決して世界樹の迷宮とかACSLPをやってたからとかじゃありません。
ええ、決して。

12/26 一部改稿&追加


いつもなら昼休みであるはずの時間帯。

私は戦闘機で空にいた。

 

どうやら所属不明の航空隊が出現したらしいのだが、基地が騒然としていた上になんだか司令の様子もおかしかった。

で、そんな状況で出撃したところ日本国防空軍所属のF-3D 1機が僚機になった。

わけが分からん。

 

唯一安心できるのは僚機のパイロットは即興で普通に編隊が組めるくらいに錬度が高いということだ。

 

<<こちらはシリウス、司令部より伝言だ。君のコールサインは一時的にチャーリー1とする>>

 

唐突に入った無線に対して私はため息をついた。

何をやっているんだ、ノースポイントは。

まだ編隊を決めてから出撃したのはいいものの、こんな重要情報を飛んでから伝えるなんて混乱の元だというのに。

 

まあもう上がってしまった以上何かについて考えるのは後だ。

不明点から片付けなければ。

 

<<僚機のコールサインはチャーリー2でいいのか?>>

<<ああ、その通りだ。では哨区へと向かってくれ>>

 

了解、と返すとそのまま機体を傾けた。

 

未だにレーダーの表示には味方しか居ない。

 

<<チャーリー1よりチャーリー2へ、詳しい状況とかは聞いてる?>>

<<いいえ、そんなこと聞いてないわ。むしろ私が聞きたいくらい>>

 

挨拶ついでにつないだ無線から返ってきた声は予想を裏切った。どうやら僚機も女性らしい。

なんという偶然だろうか。少なくとも今まで味方に女性パイロットがいるという状況はあったが僚機になるというようなことはなかった。

 

そんな事態が起きて心が和らいだのか、返答も少し柔らかい声となった。

 

<<了解。何か起きる前に終わらせてしまおうか>>

<<そうね>>

 

そっけない返答もこの状況では信頼の証のようにも思えた。

だがそんな平和も警報により終わる。

 

<<ミサイル接近!ブレイク!ブレイク!>>

<<チャーリー1よりシリウスへ。敵はステルスだ>>

 

長距離ミサイルで後ろから狙われたのだろう。

そんなことを思いながらチャフの発射ボタンに指を置く。

 

旋回性能が良くても保険はかけなければならない。

 

パイロンから切り離された増槽が残っていた燃料を散らしながら落ちていく。

 

翼端から白い帯が流れ出す。

 

天と地が変わる。

 

主翼が水蒸気に包まれ白くなる。

 

そのときふと二発の航跡が通り過ぎていくのが見えた。

 

<<チャーリー1、回避成功。反転後アブレストで攻撃に移る>>

<<了解>>

 

機体を水平に戻しつつアフターバーナーを点けた。

直後機体は音速に入り始める。

 

だがレーダーどころか視界にも敵は映らなかった。

おかしい。

そう思ったのは束の間。

 

また警報が鳴り出す。

 

今度は赤外線のほうだ。

とっさにフレアを撒いてバレルロールを行った。

 

レーダーに映るチャーリー2は急旋回中。

やはり虚空からミサイルが撃たれてる。

 

ここまで来て私はふとフェンリアを思い出した。

私自身があれと戦ったのは衛星とリンクをして一時的なロックが可能になった状態のときだけ。

 

たしか撃墜された偵察機のパイロットの報告では突如として警報が鳴り響き、ベイルアウトした後に初めて視認できたとあった。

 

今の状況もこれに似ているのではないだろうか。

 

そう思い無線を繋ごうとしたとき、横を曳光弾の雨が駆け抜けた。

 

格闘戦は私の得意分野だ。

いいだろう。かかってこい、相手になってやる。

心の中で呟きながらラダーペダルに足を掛ける。

 

咄嗟に機体を滑らせつつ減速。

横を駆け抜けたのは少しオレンジ色に染まった虚空。

直後トリガーを押した。

銃弾が敵のエンジンノズルと思われる部分に吸い込まれていく。

そして爆炎が上がりオレンジ色の虚空は黒い姿を現し、黒い残骸となって煙を引きながら落ちていった。

 

<<一機撃墜。クロスして!>>

 

無線機に叫びつつクロス機動に入る。

機体下部を駆け抜けるF-3D。

その後ろには見覚えのある半透明のオレンジ色。

 

まだFCSの反応が無い中ミサイルと機関砲を同時に発射した。

 

瞬く間に私の若干下方で上がる爆炎。

 

破片が機体にあたったのか損傷した音が聞こえた。

 

そしてクロス機動を終えるとすぐに無線がつながった。

 

<<チャーリー1、燃料漏れてるわよ>>

 

補助翼の動作確認を終えてから右主翼を確認すると綺麗な帯を引いていた。

完全に漏れていやがる。

だが、今帰れば十分帰れるだろう。

 

<<了解、じゃあ帰りましょうか>>

 

そういうと機内で軽くため息をついた。

無茶をしたとはいえ久しぶりの空戦で燃料漏れだ。

さっきの模擬戦での敗北もあった。

 

腕が落ちたんじゃないだろうか。

 

そんな疑問が湧きあがっていた。

 

破片に当たるなんて運が悪いだけだと自分に言い聞かせようとしても、それは出来なかった。

 

 

 ◇

 

IS学園の飛行場に降りてからサボタージュや早着替えを駆使しつつ全力疾走をすることで五時限目に間に合うことには成功した。

だがここで大きな壁が立ちはだかる。

 

睡魔だ。

 

昼休みにスクランブルがかかってその後もほぼ全力で行動したゆえに重なった疲労と昼独特の睡魔、そしてスクランブルがかからないという安心感が見事に重なり非常に眠いのだ。

多分某携帯食料を食べたのも効いているのだろう。

 

1時限目にあった集会で文化祭で優勝した部活にこの学園のアイドルもといほぼ唯一の男性である一夏を強制的に編入するとかいう爆弾を指揮官さんが投げ込んでくれたおかげなのか周囲の熱気もいつも以上となっており寝たらバレるのは確実。

 

非常につらい。

 

千冬さんが担当じゃなかったら確実に寝てる。

 

そんな状況だ。

 

 

学園祭というものに興味はあるのだが、それはあくまで客としてである。

正直に言ってしまえば運営する側に興味は無いのだ。

皆でやれば楽しいのかもしれないが、予算等で苦労した記憶を思い出してしまって気が乗らない。

 

それにだ。

マスコットキャラクターもとい織斑一夏を全力で売り出したいのか出ている案は色々と、主に倫理的な面で問題のあるものばかりである。

本人が認めているなら推してもいいが、司会進行をしている彼の姿を見るととてもそうとは思えなかった。

 

誰であろうと蔑ろにする気はない。

そんな信念を持っている者としては、どれであろうとあまり関わりたくなかったのだ。

 

そんなことを思っていたからだろう。

ついに私は静かな眠りに就いてしまった。

 

このあとどうなったのかは言うまでもない。




学園祭の催し物を決めてるあのシーンに相当な時間がかかってしまいました。
その結果居眠りで逃げるという話に…。

やっぱり日常回って書き慣れないです。


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第28話 新たな任務

どーもお久しぶりです。
毎月更新心掛けてるとか言った矢先に8か月も更新が遅れたことを謝罪致します。

ここ最近色々と忙しいので次回更新も遅れると思いますがこれからもよろしくお願いいたします。


授業中に堂々とやってしまった居眠りのせいで放課後に千冬さんからの呼び出しをくらい、職員室を経由する羽目になったものの一夏より早く部屋に帰ることに成功した。

 

これでちょっとしたドッキリを仕掛けることが出来る。

昨晩まで同室だったものが突然知らない少女に変わっていたとなれば相当驚くに違いない。

ただ、驚いたという事実がわかればいいのでカメラの設置とかはしていないが。

 

今日からは部屋が変わるというのに部屋に幾つか私物を残してしまっていたのだ。

オーレリアに行こうとして荷物を詰め込んだまま残されていたスーツケースがあったのを利用して即日中にほとんど済ませたのだが、一部の小物がそのままとなっていた。

 

まあ軍の宿舎にいたときから置いている小さな観葉植物とラジオ付きデジタル時計、そして暇つぶしに読んでいる小説数冊だけだから大して時間はかからないだろう。

でも慢心は禁物。

 

いつも放課後は訓練に励んで夕食前くらいに帰ってくるかどうかというあいつでも休み明けくらいは休むかもしれない。

それにゆっくりやって見つかったところで面倒だ。

 

さっさと済ませてしまおう。

 

そう思い小説をまとめたとき、仕事用の携帯が震えだした。

 

送り主は…更識。

場所は保健室。

 

現場指揮官殿直々に呼び出しとは。

昼のスクランブルの件もあるし何か起きたのだろうか?

 

 

 ◇

 

「失礼します」

人通りの少ない廊下にて、そう告げて静かにドアを開けた。

 

稀なこととはいえ怪我人や病人がいることだってある保健室だ。

入るのなら病人とか怪我人を連れていない限りは慎重にするべきだと私は思っている。

ここで普通に仮眠とってる人もいるからね。

 

人が休むのを邪魔する奴は万死に値すると思っている。

 

まあ先程述べたとおりそんなことは稀だと思っいつつ入ると何ということだろう。

今日に限って寝ている奴がいた。そして同時に納得した。

…私が知る中で並ぶ者のいないほどのトラブルメイカーで何故か更識さんの膝枕で寝ていたのだ。どうせまた何かやらかしたんだろう。

 

「思ってたより遅かったわね。何かしてた?」

「引っ越しを済ませてきただけです」

「そう、それならいいわ」

 

とても小さな声での会話が続く。

 

外なら聞こえないだろうがここらへんはあまり人通りもないので十分聞こえた。

この静かさが本当に仮眠にいいのだ。

 

放課後とかによく使っている。

 

…少し余談が過ぎたな。

 

「ところでどのような用件でしょうか?」

 

早速本題を切り出した。

いくら疲れているとしても今日の模擬戦の分析とかは早いうちにしておきたい。

 

こちらの意志を察してくれてなのかどうかはわからないが、返答は早かった。

 

「わかったわ。じゃあ早速本題に入るけどここで寝てる坊やの訓練をすることになったの。超高速戦に慣れてるのって君くらいしかいないでしょ?」

「ええ」

 

即答だった。

 

他の専用機持ちたちには申し訳ないが飛行時間の時点で既に桁が違うはずだ。

そして私の場合はほとんどが戦闘機での飛行になる。

勿論これらの半数くらいは戦闘任務。当然のことながら音の壁を越えているだろう。

 

疑う余地など無かった。

 

「というわけで標的役、やってくれない?戦闘機の飛び方でいいから、ね?」

 

少し悩む。

私は明くまでもISの操縦を学びに来た代表候補性という身だ。

戦闘機乗りとしての機動をしに来たわけじゃないし、身元の判明をある程度防ぐため派手な動きも避けなければならない。

つまるところ今回の任務はかなり機動に制限がかかるということである。

 

戦闘機ならまだしもあのじゃじゃ馬とも言うべき機動性を持っているISで可能だろうか。

 

そう思った。

 

「…いいですよ。引き受けましょう」

 

だが私は受け入れた

 

IS特融の意識で操縦するというやり方自体はコフィンシステムに若干通じるところがあるため、ある程度は出来ていた。が、所詮はその程度だ。

戦闘機の飛び方を忘れずにISに慣れるには良い機会だと、そう判断した。

自分だけでは射撃や機動の訓練は出来るが回避の練習は出来ない。

 

今までは戦闘機と同じ感覚で避けてきたが、そろそろ手段を増やすべきだと思っていたところだった。

それに訓練内容が少し変わるくらいはいいだろう。

 

本来ならついでであるべき訓練だが、生憎ついでにする気などない。

一夏には申し訳ないけど全て避けさせてもらおう。

 

まあそんな思考など軽々と見抜かれたようで

 

「私が指示したときはちゃんと機動の手を抜いてね?英雄さん」

 

と言われた。

 

まあ私は所詮標的だから当然のこと。

そう考えることにして自分の感情を抑える。

 

「機動とかで指定はありますか?」

「それは訓練前に伝えるわ。とりあえず最初の訓練では全部避けてね」

 

さらりと無茶振りをしてくる更識さん。

私だから出来ると踏んだのだろうが、若干不安になった。

 

そのときである。トラブルメーカーが目覚めたのだ。

 

「お目覚め?」

「おはよう、一夏。女の子の膝の上はどうだったかな?」

 

顔を覗き込みつつそう言った。

 

鈍感な癖にウブな一夏はやはり慌てだす。

そして咄嗟に起きようとしたのが不味かった。

 

私と一夏の頭が衝突したのだ。

かなり勢いづいていたためかなりの衝撃となって襲いかかる。

 

どうにか立っていようと踏ん張ったものの、それは叶わず私はうずくまった。

 

しかし災難は続く。

 

 

 ◇

 

情報通りなら一夏はここにいる。

そう思い、保健室のドアを勢いよく開けた。

 

「一夏!」

 

何があったのだ、と続けようとして室内の状況に気付いた。

 

微笑んでいるunknown。

unknownの膝の上で気絶している一夏。

そしてその前でうずくまるメアリー。

 

軍人の勘が告げる。

こいつは危険だと。

 

「目標を排除する!」

 

そう言うと同時にシュバルツェア・レーゲンを部分展開し、突撃した。

そして切りかかる寸前に目の前に障害物が現れる。

 

メアリーが模擬戦で使っていたガンソードだ。

 

「どうして邪魔をする!」

「色恋沙汰で殺人が起きるのを見過ごせというのか」

 

相棒が頭を抱えつつ呟いた言葉で冷静になった私は自らの過ちに気付くと同時に見知らぬ少女に土下座した。

 

「突然攻撃して済まない」

「うん、素直でよろしい」

 

少女の返答の後、私は頭をあげた。

そして新たに質問をする。

 

「では、今まで何が起こっていたのか説明してもらえないだろうか」

 

苦笑しつつ聞いたメアリーの答えで赤面したのはまた別の話。

 

 

 ◇

 

ちょっとしたひと悶着の後、訓練は明日からということを伝えられた私は新たな部屋でくつろぎつつクラックスへと電話をかけていた。

 

「そっちはどうだ?」

『何も問題ありません。いつも通りです』

 

そういつもの口調で言ってくるクラックスに安心する。

俺が居なくても大丈夫なくらいに空軍が再建されてきたということと、今まで様々な組織の侵入で荒れていたオーレリアが平和という事実に。

 

「それは良かった。無事再建も進んでるみたいだな」

『ええ、戦前の規模はまだ遠いですが来年には皆さんも休暇を取れそうです』

「そうかい。生憎とこっちは厄介事があったよ。あとで詳細送っとくからマークしといてくれ」

 

溜息を吐いてそう答えた。

 

同時に脳裏に浮かぶのは、戦前家族と共に遊んだ記憶や崩れていた家。

そして妹のエイミーと今日転入してきたアリス・ヘイズとかいう少女。

 

『大丈夫ですか?』

 

クラックスの心配する声で感傷から引き戻される。

どうにか軽口を混ぜた返答は弱弱しい言葉となって出ていく。

 

「さあな。ちょっと家族のことを思い出しちまったから今日は悪夢でも見るやもしれん」

『そうでしたか…。何か頼りになることがあれば声をかけてください』

「はは、そうだな。そんなときはお前を頼ることにするよ」

 

それじゃあ俺は早いとこ寝ることにするよ、と言って電話を切った。

 

瓜二つな顔と口調を持つ少女、アリスのおかげで幸せだった家族との思い出をどうにか脳裏に仕舞いつつ書き上げたデータを暗号化して送ると同時に泣き出す。

 

「エイミー、ケント。お前らどこに行っちまったんだ」

 

未だ行方の分からない兄妹のことを嘆いた言葉は誰にも聞きとられることなく闇夜へと消えて行った。



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第29話 序章

かなり遅くなってしまって申し訳ないです。
ですが用事が立て込んでいるので次も一年後くらいになりそうです……。


アリーナで白亜の機体(白式)灰色の機体(レイダー)が舞っていた。

光る剣と光速の弾丸のみで仕留めんとする白亜の機体を錯乱するかのように高機動により生じる水蒸気を纏った機体は駆け抜けていた。

遷音速域で行われる機動戦、白亜の機体はまだ未熟さを隠せない。

 

だがそれは相手も同じ。

まだ拙い機体制御システムも合わさってかサブブースターの推力に若干振り回されていた。

が、操縦士の技量でシステムが補われているためブースターの噴射炎ほど機動は乱れていなかった。

それどころか不安定さを利用した急制動すら行っていた。

 

次々と行われる一撃離脱攻撃が白亜の機体の装甲を掠めていく。

そして白亜の機体によって放たれる致死の斬撃を余裕を持って回避していく

そのような状況が続いた。

 

しかし時間が経つにつれ、両機ともに機動に乱れが生じ始めていた。

長時間の緊張による思考の乱れと、不慣れな機体で発生した小さな誤差の積み重ねという差が若干白亜の機体を不利にしていた。

 

遷音速状態で飛び続ける灰色の機体に観客席から見守る青髪の少女がさりげないアイコンタクトを送ると同時に灰色の機体の機動が乱れた。

 

「よし、行ける!」

 

大きな意志の籠った言葉と共に無表情で立て直しを図るメアリーに対し、零落白夜による追撃を仕掛ける。

そして白亜の機体にも追跡可能な急制動を行ったとき、戦局が動いた。

 

「くぅ!」

 

白式の限界に近い高速機動のGに操縦者がうめいたとき、爆発的な音と共にレイダーが突然視界から消えた。

再度の急制動を行いオーバーシュートしたのだ。

その状況に唖然とする一夏に重い衝撃と遅れたガトリング砲独特の炸裂音が響いたのは直後のことであった。

 

「撃墜確認。お前はもう少し機動に慣れたほうがいいな」

 

メアリーはそう呟くと同時に楯無先輩のところへと飛んで行った。

そして急激な加速が轟かせた爆音と共に戦いの余韻が収まっていった。

 

 

 ◇

 

「今回の一夏君どうだった?」

 

ここ数日よく聞いていたその言葉から私たちのデブリーフィングが始まった。

 

「徐々に上達してきてます。もうISらしい戦い方であれば私と十分やり合えるのではないでしょうか」

 

そして思ったことを率直に述べるのが定番の流れである。

実際、一撃離脱を繰り返すという戦闘機じみた戦い方ですら彼の刃を掠めそうになっていた。

まるで私が一方的に攻撃しているかに思える試合内容だが、白式の攻撃であれば一撃を掠めることすら許されないレイダーが勝つという時点で彼の攻撃が命中するなどということは在り得ないである。

 

「あなたもそう思うのね。次からは手加減無しでお願いできる?」

 

ふと出た楯無さんの言葉に口端が少し吊り上る。

なんの制限もなく飛べるという事実がただ嬉しかった。

そして、彼と全力でぶつかり合えるということも少し嬉しかった。

 

「ええ、いいですよ。まだ彼の攻撃に当たる訳にはいきませんから」

「期待してるわ」

 

私の自信を肯定する発言とともに小さなデブリーフィングは幕を閉じた。

 

そしてふとアリーナに目が移ったとき、白式を展開したまま眠る一夏が目に移った。

 

「楯無さん」

「なぁに?」

「もう少し彼の休みを増やしてあげたほうがいいのでは?」

 

彼が体を壊してしまわないか心配だ、と言葉を続けようとしたとき楯無さんが呟いた。

 

「もう私たちには時間が残されてないのよ」

 

その一言に私は波乱の訪れを感じた。

再び迫ってくるのは硝煙の臭いなのか、それとも醜い人間同士の潰し合いなのかは分からないがもう平穏な日常ではいられないのだという事実が私の心に少し圧し掛かった。

 

 

 ◇

 

訓練の終了後、私たちは食堂に集結することになっている。

デブリーフィングを行うという名目だが、実質的には休憩時間である。

大抵の場合主役の一夏がかなり疲れているのだからどうしようもなく、また私も疲れていたのが大きかった。

 

私の機動はISのパワーアシストを用いたG軽減処置を極力減らすことで余剰エネルギーを生み出したことにより無理やり成り立たせたものすらある。

感触としては戦闘機で交戦したときとあまり変わらないものであり、いつものような疲れを感じていた。

 

背もたれに体を預けつつ沈みゆく夕日を眺めていた。

 

「おお、メアリーは先に上がってたのか」

「ええ」

 

新たに疲れ果てたメンバーが追加されたテーブルはやはり会話が無かった。

 

小さくため息をつきつつまた空を見上げると突然視界がふさがれた。

 

「だーれだ?」

 

聞き覚えのある声に更なる溜息をかさねる。

 

「楯無さんですね。普通に登場してもいいんですよ?」

「普通に登場したのにあなたたちが気づかなかったんじゃない」

 

そう言い返す楯無さんに自身の疲労のひどさを痛感させられる。

ふと正面を見ると、デブリーフィングを受けるべき一夏は寝ていたのだった。

 

どおりで二人とも気づかないわけだ。

 

内心納得しつつ呟く。

 

「一夏はすごいですね。短期間で凄まじく成長している」

「そうね。あなたの操縦に追いつくほどかしら」

「ISに限ればその通りでしょう。私も鍛えなければなりません」

 

少し冗談めかした声での問に考える間も無く答えた。

 

「その時は私を頼ってもいいのよ?」

「考えておきます」

 

軽口の応酬の直後私の携帯が鳴り響いた。

 

届いたのはメールが一件。

その差出人を見て疲れが吹っ飛んだ。

 

「すみません。司令部から呼び出されました」

「なんですって?」

 

一言を合図としたかのように仕事を出来る体制を瞬時に整えつつ事務的な会話に転向する。

 

「先日の空襲の件かと」

「ああ、あの件ね。まあ頑張ってらっしゃい」

 

オブラートに包まれ吐かれた毒に軽く笑い返す。

直後、何かに気付いたかのように楯無さんが口を開いた。

 

「貴女、私口調あまり似合ってないわ」

 

突然の口撃に歩みが止まる。

そして数瞬の後、逃げるかのように食堂を後にした。

 

 

 ◇

 

夕方。他の工作員によりマークされているであろう行動している僕は食堂を訪れた。

そこで紅茶を飲みつつ、携帯端末で亡命の手助けと成り得る人材をリストアップする作業をするためである。

 

生徒会長である更識楯無と正体不明な専用機持ちであるメアリー・オーブリーが唯一の男性操縦者を挟みつつ会話していた。

先日の会話から訓練を付けているらしいのでそのデブリーフィングだろうと思いつつ空を見上げる。

 

片や暗部でも有名な家出身の者、その片割れもあの取り巻きをすり抜けて織斑一夏に接近できるような逸材だ。

恐れるには越したことはない。

そう思うにも関わらず何故か彼女らの会話を聞き続けていた。

 

更識楯無に思うところはない、そしてメアリー・オーブリーにも思うところはないはずなのに何故か気になっていた。

彼女の容姿は若干死んだ姉ににている、がそれだけなのだ。

 

しかし何かが僕の心を揺さぶっていた。

 

何が揺さぶるのか、その想像がもたらす根拠のない希望にすがることから逃げるように紅茶に口をつける。

そのまま無心にコップ半分くらい飲み干した後テーブルの上に置かれたメモに気が付いた。

 

“目立つ行動は避けることね。新人さん。”

 

まるで僕のことを見透かしたかのようなメモを咄嗟に回収し、ただ空を見上げながら残り少ない紅茶に口を付けた。

 

 

 ◇

 

浮足立ちながら薄暗いIS学園寮を歩いていた。

 

先日の空襲の件で呼び出されたかと思っていたのだが少々想定外のことになっていた。

確かに最初はフェンリアとの戦闘に関する詳細な報告始まった。

だが次から色々とおかしな方向になっていたのだ。

 

まず最も光学迷彩を搭載したフェンリアと戦っており、また復元されたフェンリアについても最も知っている者としてIS学園防衛を主任務とする戦闘機隊の隊長となった。

そして今回の防衛隊はオーレリアが主体だからとオーレリア空軍の極東派遣部隊の副司令にまでなってしまったのだ。

 

ここまでなら絶望に暮れていたであろうが、最後にとんでもないものが待っていた。

 

今回の作戦のためという前置き付きとはいえオーレリアの数少ないF-22が回されることになったのだ。

それもオーレリア戦争時に私が使っていた機体とのこと。

 

昔の相棒との再会である。

 

そのことがとても嬉しかった。

直後の簡素な着任式にてIS学園に生徒として在籍している旨のことを何一つ恥ずかしがることもなく、そして包み隠さず言うくらいには気分が良くなっていた。

 

そんなわけで浮足立っていたのだがそれが完全に裏目に出た。

 

鼻歌混じりのスキップをしながら待機していた寮監に気付くことなく通り抜け、そして彼女の説教を延々と受けることになってしまったのだから。

まあ夜間に騒いでたこちらに非があるのだからどうしようもないのだが。



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第30話 結合と崩壊Ⅰ

長時間かかりそうとか思っていると早く書きあがるジレンマ


日が水平線に沈み始めるころ。

2機のF-35がIS学園上空を通過していた。

 

<<グリフィス5、いいやジャック・バートリー大尉>>

<<なんでしょう隊長>>

 

溜息を吐きつつグリフィス5に話しかけた。

 

<<さっきの殴り合い、お前が原因作ったんじゃないだろうな?>>

<<そんなわけないでしょう。まあ隊長を貶す無礼者に鉄槌を下しはしましたが>>

 

悪びれる様子もなくそう答えたグリフィス5に安心すると同時に溜息を吐く。

 

<<ここはオーレリアじゃないんだ。直接力に訴えるのは慎め>>

<<隊長も愛機との再会だからと言ってテンション上げ過ぎです>>

<<ははっ、違いない>>

 

軽口を叩きつつ指定された空路に侵入する。

レーダー上に映る4つの機影を眺めながら決闘という事態に至った顛末を思い出していた。

 

 

 ◇

 

その日、私が基地を訪れたのは授業終了直後である。

愛機の受け渡し等の日程を再確認し、あわよくば混成部隊の軽い結成パーティーを行おうとしていたのだった。

 

だがそんな目論見は早速打ち砕かれる。

格納庫内で盛大な殴り合いが行われていたのだ。

片や我が僚機のグリフィス5、対するのは昨日見かけた操縦士数名である。

 

ブナ基地制圧時の教訓から陸軍のやつに格闘術を学んでいたグリフィス5が優勢ではあるが、数の暴力によって押されかけていた。

 

「おい!一体何があったんだ?」

 

大声でそう聞くと一瞬場が静まり返った。

 

「ご主人のお出ましだぞ、犬っころ」

「なんだとっ!」

 

だが誰かの罵倒から殴り合いが再開された。

そうして周囲から野次も飛ばされ始める。

 

……どうやら私に関係があるようだ。

 

面倒な状況へ溜息を吐きつつ輪へ吶喊し取りあえず交戦中の全員をぶちのめす。

小柄な女一人で男数人をなぎ倒すという光景に唖然としている周囲を見ながら指示を出す。

 

「衛生兵を呼んでくれ。あと、誰でもいいからこの状況に至った経緯の説明を頼む」

 

一拍おいて気を取り戻してから動き出す各員を眺めつつ混成部隊の状況を思い溜息を吐いた。

 

 

 

「―――以上が今回の乱闘騒ぎの原因かと」

 

そう整備班長が説明を締める。

事態は私が思っていた以上に悪かったようだ。

 

纏めるならば私が女であることに一部から不満が募り、そいつが自らの立場を掻っ攫っていった「IS」というものに乗る訓練をしているという事実がそれを加速させ、私を知っているであろうグリフィス5―――いや、ジャック・バートリー大尉につっかかり、そしてやつが珍しくブチ切れた結果がこの惨状、ということらしい。

 

駆け付けた衛生兵に介抱される隊員を見つつ溜息を吐く。

 

「60分後にブリーフィングルームに集合してくれ。それまで解散だ」

 

その後は機体と各種施設を確保するため基地を駆けずり回った。

 

 

 ◇

 

思い出すと同時に溜息を吐く。

そんなに信用ならないならドッグファイトで勝負だと宣言したはいいもの、こんな様で部隊をまとめ上げられるのか甚だ疑問だ。

そんなことを思っていた。

 

<<どうしたんです?>>

<<我が隊の今後と飛び続けてる間に積み重なった社会問題を憂いてるだけだ>>

<<そうですか>>

 

短い会話をこなした後、空中管制機から戦闘開始を知らせる通信が入る。

 

<<アルファ1よりアルファ2へ、アブレスト隊形へ移行しつつヘッドオンだ!>>

<<了解!>>

 

今回のルールはBVRの禁止、機関砲の使用禁止、敵機に30秒間射線に捉えられたら負け、900km/hで向かい合ったら試合開始、両チームとも同じミサイルのシュミレーション装置を使用するということだ。つまり最初のすれ違いである程度勝負が決まる。

 

AIM-9を撃てる距離まで接近あるのみ。

全員そう思っているらしく、両チームともに開幕でアフターバーナーを点火した。

 

瞬く間に接近してくるBチームのF-16CJ。

そうして射程に入った瞬間、正面の3機へ向けサイドワインダーを撃ち上昇を開始した。

勿論フレアをばら撒くことも忘れない。

 

LOALに期待してばら撒いたサイドワインダーは1機を撃墜するに留まった。しかし、ミサイル回避の必要に迫られた敵編隊は散開してしまう。

 

<<イヤッホゥ!隊長が一機撃墜!>>

 

無線で雄叫びを上げるジャックを微笑ましく思いつつ回避機動を続ける。

バレルロールを行いつつ下方を確認すると、敵機に貼りつくグリフィス5の姿があった。

 

数秒後、全体無線で一機墜落の報告がなされる。

 

現状は私と追いすがる敵機2機。そしてフリーのグリフィス5。

完璧な状況だ。ダナーン海峡での空中戦を思い出すほどに。

 

<<ジャック、敵機の後方に回れ!>>

<<了解!>>

 

そうして後方に回ろうとしたグリフィス5に敵機が気づかないわけはない。が、それへの対応を迷った時間は命取りとなりうるのだ。

 

グリフィス5を抑えにいく機動を見せた敵機にウェポンベイとフラップを開きつつ旋回するという無茶な機動で後ろに貼りつき2発のサイドワインダーを発射。それと同時に急降下し離脱、エネルギーの回復機動へ移った。直後に一機撃墜を知らせる無線が鳴り、シュミレーション装置から一機のマーカーが撃墜を示すものへと変わる。

既にグリフィス5は敵機の後ろに控えている。私の追撃をすればグリフィス5に無防備な背を晒すことになる。勝つ可能性があるのは二つに一つ。そのことに気付いていたのか残ったF-16CJはグリフィス5にヘッドオンをしかけ、そして相討ちとなる。

 

シュミレーション装置から私以外の生存を示すマーカーが消え、賭けに成功したことに安堵したあたりで状況終了との無線が入ったのだった。

 

 

 ◇

 

機体を格納庫に入れ、ブリーフィングルームに向かい歩いていると悪態をついているBチームの面々に遭遇した。

私に気が付くと未だに敵意を示す目線を向けてくる彼らに溜息を吐く。

 

「殴り合いでも空戦でも勝てない相手に敵意を向けるのはまだいい。

 だがそんな悪態をついている暇があるなら腕を上げる策を練るべきだ」

 

早々に問題を引き起こしてくれやがった奴らにそう吐き捨てるように言った。

ここは精鋭を集めた部隊じゃなかったのか?なんて言葉も出そうになったがどうにか押しとどめる。

 

そうして既に一触即発の空気に陥ってる現場を見てさらに溜息を吐いた。

場を沈黙が支配し、グリフィス5とBチームの隊長が臨戦態勢で構える。そんな状況を打ち壊したのはBチームの一人の言葉だった。

 

「どうしてそんな腕がありながらISなんかに乗っている?」

「適正が出たから乗れと命令された。ただそれだけだ」

 

また沈黙が流れる。

そして私を試すかのように聞いてきた。

 

「ISに乗りたいと思って乗っているのか」

「違うといえば嘘になるがアレよりは戦闘機で空を駆ける方が好きだね」

 

そうか、と小さい声を残すとBチームの面々は肩を落とした。

 

「小娘だと思っていたのは空に魅入られた者だったってことか……」

「心配して損したぜ。俺たちはお前を隊長として認めるよ」

 

そんな発言に私の頬が緩んだ。

 

「よろしく頼むぞ、そして今後の精進にも期待している」

 

了解しました、新隊長!という全員の応答の後、共に雑談をしながらブリーフィングルームへと向かっていった。

 

 

 ◇

 

ブリーフィングルームでドックファイト訓練のデブリーフィングが終わった後、当隊の結成祝いが行われることとなった。

そんなわけでまた隊長就任のあいさつを即興ですることとなったのだ。

 

「それでは新隊長殿!就任の挨拶をお願いします」

 

良い顔をしながらそう振ってきたのはグリフィス5、いやこれからはジャックだ。大方今度の口撃の材料作りだろう。

 

「まかされた」

 

今回は真面目に、普通に行う。そう決心しつつ返答すると同時に回ってきたマイクを受け取った。

 

「しばらくの間貴官らを指揮することとなったメアリー・オーブリーだ。

 皆も知っている通り私たちの目的はIS学園周辺の防空であり、もっと詳しく言うならば所属不明機の撃墜とISの撃退もとい時間稼ぎだ。

 だが私たちならその先も狙えると私は確信している!」

 

昨日徹夜しそうになりながら考えてきた演説を読み上げているとグリフィス5からもっと巻けとのジェスチャーが出た。

そうして辺りを見回すと隊員の目が若干厳しいものとなっていた。

 

「長ったらしい演説はいらなかったか」

 

小声でグリフィス5に聞くと静かにうなずく。

 

少し先走っていた自分を深呼吸で落ち着かせ、咳払いを挟んだ後口を開いた。

 

「それでは本日は無礼講だ!」

 

全員の了解という掛け声と共に盛大なパーティーが始まったのだった。

 

この後に色々派手にやらかしたおかげで私が基地司令官の呼び出しをくらい、そして翌日二日酔いでIS学園を欠席したりと色々あったのだがそれは余談である。

 

そして私が重大なことに気付くことが出来ないままIS学園防空隊という扱いの対亡霊機業部隊は発足した。

 

 

 ◇

 

メアリーが無断で学校を休んだ日、暗号通信で本国からの連絡が来た。

 

『ボーデヴィッヒ隊長ですか?』

 

「ああ、私がラウラ・ボーデヴィッヒだ。クラリッサか?」

 

ええ、と聞きなれた声が返ってきた。

だが、その口調には深刻な音色が混ざっていた。

 

「何があった?」

 

『以前隊長が調査を命じていたクラスメイト、メアリー・オーブリーですが―――

 

 

 

 

     ―――どうやらオーレリア空軍特殊部隊の指揮官ようです』

 

その報告に背筋が凍るようなものを感じた。

私の懸念が当たっていたかどうかは分からない。

 

「奴は黒か、それとも白か?」

 

『まだ分かりません。ですが不自然な点が多いので警戒しておくのに越したことは無いかと』

 

でもその情報だけで警戒するに値するほど奴の行動に不明点が多いのは事実であった。

何せ軍人としての使命を曝け出していた私が受け入れてしまうほどの人物だったのだから。

 

相棒として共に動いた戦友の真意を確かめるときが来たようだ。



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