オリジナルライダー設定集 (名もなきA・弐)
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T3仮面ライダーズ
Iを止めろ / 仮面ライダーは二人で一人


ある都市にばら撒かれた新世代ガイアメモリ。その名も「T3ガイアメモリ」。
それは小さくも確実に、ある都市を蝕んでいった。
これは、その全てを破壊する少年と少女の物語…。


某都市の裏路地には、一体の怪人が一人の男を見下ろしていた。

怪人の姿は一言で表すならトンボ、巨大化し人間の姿に近くしたものならばおそらくこうなるであろう。

しかし、細部はまるでトンボと言うにはあまりにもかけ離れたものだった。

両腕は甲虫のような腕、胴体はクモが張り付いたような模様をしており、両足はバッタの脚を模した棘のついた足といった宛ら昆虫のキメラのような姿をしていた。

怪人は恐怖で震えている男の元まで近寄り、胸倉を掴みあげた。

 

「う、すまなかった…!俺が、悪かった。だ、だから戻ってくれ……」

 

掴みあげられた男はかすれた声で謝罪をした。

怪人『ドーパント』の正体は彼の息子だった。

どうして?

男はそう自問自答する。

息子に教育をしていただけなのに、いじめられないよう強くさせるために少々手荒いやり方もした。

男にとって、それは当然のことだと思っていたのだ。

それと同時に、こうすれば母を亡くしても息子は強く立派な人物になれると、そう信じていた。

だが、それは間違いだったのだと分かったのだ。

そうでなければ、息子が自分のことを、怪物にまでなって殺そうとはしないだろう。

きっかけは家の入り方だった。

「入り方がなっていない」と男は叱り、いつものように息子の頭をはたいた。

だがその瞬間、息子は狂ったように叫び、ズボンのポケットからカブトムシと二匹のセミが組み合わさったような意匠の「I」と書かれた灰色のUSBメモリを取り出しそのボタンを押した。

 

【INSECT!】

 

メモリから音声が鳴り、額に挿した途端、息子の姿は変わり、男を掴みあげ窓ガラスを破ってここまで連れてこられたのだ。

そうして、現在に至るのである。

 

『うるさい…うるさい!!僕を殴るお父さんなんか、僕をいじめるお父さんなんか…もういらない!!』

 

怒りに声をにじませながら、ドーパントはもう一方の手でクワガタムシのアゴを生成し、男の首元につきたてようとする。

 

「やめろっ!」

 

一人の少年の声が裏路地に響いた。

ドーパントは男を掴んでいた腕を離し、声の方向を向いた。

そこにいたのは、黒いブレザー・ネクタイに黒いズボンを履いた少年だった。

端正な顔立ちをしており、ハネ毛の黒髪には黒いソフト帽を被っており、ブレザーの下のシャツが黒い服装にマッチしていた。

 

『お兄ちゃん……』

 

ドーパントは驚いたような声を出した。

何しろ彼は、自分に優しくしてくれた知り合いの刑事だったからだ。

だからこそ驚き、なぜここにいるのか問いかけようとした。

だがそれを言う前に少年『左刹那』はドーパントに話しかける。

 

「もうやめるんだ。大人しくメモリを捨ててくれ」

『いやだっ!!こいつさえいなくなれば、もう僕は辛い思いをしなくて済むんだっ!!もう殴られたり、理不尽に怒られることもないんだっ!!!』

 

彼の説得に耳を傾けようとはせず、ドーパントは叫ぶ。

その叫びに刹那は辛い表情をしながらも、彼はドーパントに近づいた。

瞬間、鷹の姿をした青いメカ『ホークショット』が現れると、中心部のレンズから閃光を放つ。

それに驚いたドーパントは顔を覆って光から避けようとすると、刹那と違う方向から人影が飛び出しそのまま男を確保した。

男を救った人影は少女だった。

長い茶髪のロングヘアーをサイドポニーしフード付きのグリーンのパーカーにチェック柄のミニスカートといった服装をしており、その下には黒いニーソックスを履いている美少女だ。

 

「兄さん」

 

男を地面に突き飛ばすと少女『左瀬奈』は刹那の右側に並び立つ。

 

「止めてやるよ。俺が…いや、『俺たち』が……」

 

刹那は懐から緑色のバックルを取り出した。

二つのスロットがあるそれを刹那は腰の前へ軽く押し付ける。

バックル『ツヴァイドライバー』から銀色のベルトが飛び出し、彼の腰に巻きつくと同時に、瀬奈からもツヴァイドライバーが腰に召喚される。

そして、彼らは懐から薄い緑色の端子をしたUSBメモリ…『地球の記憶』を宿すとされる道具『T3ガイアメモリ』を取り出した。

刹那のメモリは全体的に黒い色をしており、道化師の靴のような意匠の「J」の文字をしていた。

対して瀬奈のメモリは全体的に緑色をしており、風の意匠をした「W」の文字のメモリだった。

 

『それって…!!』

 

それを見たドーパントは明らかな動揺を見せる。

構わず瀬奈と刹那はそれぞれのガイアメモリのプッシュスイッチを押す。

 

【WIND!】

【JOKER!】

 

渋い男性の声をした電子音声が鳴り響く。

『疾風の記憶』を宿したウィンドメモリと『切り札の記憶』を宿したジョーカーメモリの起動が確認される。

音声が鳴り終わると彼らはメモリを構え、同時に叫んだ。

 

「「変身っ!」」

 

瀬奈は右側のスロットにウィンドメモリを挿入し、刹那のドライバーに自分の意識ごと転送され、同時に瀬奈の身体は昏倒する。

刹那は右側のスロットに現れたメモリを押し込み、左側のスロットへジョーカーメモリを挿し込み、バックルを「W」の形に展開させ両手を広げた。

 

【WIND! / JOKER!】

 

再び電子音声が鳴り、風を思わせるような爽快な曲と切り札の軽快な音楽が辺りに鳴り響いた。

そして、刹那の身体を緑色と黒い色の粒子が渦を巻きながら彼を覆い隠す。

現れたのは左右非対称の戦士だった……。

中央のプラチナカラーのライン『セントラルパーテーション』を境に左半身『ボディサイド』はジョーカーメモリのように黒い色、右半身『ソウルサイド』はウィンドメモリのように緑色をしているのである。

さらにソウルサイドには首に巻いた薄い緑色のスカーフが軽やかに夜風に舞っている。

額にはV字型のホーンが形成され、大きく紅い複眼が緑と黒に映えて輝いていた。

 

『仮面、ライダー……?』

 

呆気にとられたドーパントは刹那が変身した姿に問いかける。

 

「『そう、俺(私)たちは…仮面ライダーツヴァイ……』」

 

二人の声でそう応えると疾風の切り札の戦士『仮面ライダーツヴァイ』は左手首をスナップさせると一直線にドーパントへと走り、とび蹴りを仕掛けた。

 

「せいっ!はっ!!」

『く、くそ!』

 

ドーパントは困惑しながらも応戦すべく腕をカマキリの鎌に変化させツヴァイへと立ち向かう。

だが、それは全ていなされ逆に蹴りを叩き込まれる。

 

『兄さん。前もって調べておいたけど、メモリの正体はインセクト。「昆虫の記憶」を宿したメモリよ』

「そうか、だったら!」

 

二人の声でそう言うとツヴァイはバックルを閉じ、ウィンドメモリだけ引き抜くと代わりに炎を思わせるようなオレンジ色で炎の意匠をした「B」の文字のメモリを取り出し、起動させる。

 

【BURNING!】

 

そして、右側のスロットに『灼熱の記憶』を宿したバーニングメモリを装填させ、再びバックルを展開した。

 

【BURNING! / JOKER!】

 

再び電子音声が鳴り、ギターのような音色と切り札の音色と共にソウルサイドはオレンジ色へと変化する。

灼熱の切り札『バーニングジョーカー』へと姿を変わったツヴァイは突進してきたドーパント『インセクト・ドーパント』の攻撃を最小限の動きで避けると炎を宿した右ストレートを相手に叩き込んだ。

 

「ゥオラッ!」

『うあああああ!!?』

 

そこから続けてツヴァイは高熱を纏ったソウルサイドによる連続パンチを浴びせる。

さらに渾身の一撃をくらい、遂にインセクトは数十メートルぐらい吹っ飛び、コンクリートの地面を転がり続けた。

 

『くそっ!くっそおおおおおおおおおっ!!何で、何で邪魔するんだよぉ!!!全部、全部こいつが悪いんだっ!僕を道具みたいに扱うこいつがああああっ!!』

『同情はするわ…だけど、それで人を殺したらあなたはその瞬間大嫌いなそいつ以下になるのよ!バカなことは止めなさい』

 

起き上がり、癇癪を起こしたようにインセクトは男を指さし地団太を踏みながら叫ぶ。

ツヴァイは右側の複眼を点滅させ、瀬奈の声で諭すとインセクトは雄たけびを上げながら、トンボのような翅を広げ、バッタの脚で跳躍した。

 

『僕を捕まえることなんて絶対に出来ないっ!!ここまで来るなんて不可能だろっ!!!』

「ははっ、それはどうかな?」

 

余裕の態度でツヴァイはバックルを閉じ、スロットからバーニングメモリを引き抜く。

そして、幻想的な雰囲気を思わせるような水色で雲と玩具の意匠をした「D」の文字をのメモリを取り出し、起動させる。

 

【DREAM!】

【DREAM! / JOKER!】

 

右側のスロットに『夢想の記憶』を宿したドリームメモリを装填させ、バックルを展開させる。

電子音声が鳴り、オルゴールの音色と切り札の音色と共にソウルサイドが水色へと変わった。

夢想の切り札『ドリームジョーカー』は空中にいるインセクトに向けて右腕を伸ばすと右腕は人体の限界を超え、空中へ逃げて安心していたインセクトの身体を捉えるのと同時に、右腕は大蛇へと変化し、その身体を絡めとった。

 

『なっ?!ぐああああああああああああ!!!!!?』

 

何が起こったのか理解出来ぬままインセクトは地面へと叩きつけられる。

引きずり降ろされた衝撃で悶絶しているインセクトにツヴァイは悠々と左手首をスナップさせるとドリームメモリを引き抜き、ウィンドメモリを取り出した。

 

【WIND!】

【WIND! / JOKER!】

 

そして再び、ウィンドジョーカーへと戻る。

 

「『これで決まりだっ!』」

 

宣言し、ツヴァイはバックルを展開したまま左側のスロットにあるジョーカーメモリを引き抜き右側にある黒いスロットへと挿入し、スイッチを叩いた。

 

【JOKER! MAXIMAM DRIVE!!】

 

電子音声が鳴り響くとツヴァイの目の前に緑の竜巻を発生させ、その力と自身の跳躍力で宙に浮き上がりようやく起き上がったインセクトドーパントに向かって急降下していく。

そして、セントラルパーテーションから分割され、時間差で両足蹴りを叩き込んだ。

その名も…。

 

「『ジョーカーエクセリオン!!』」

『ぎゃああああああああああっ!!!』

 

ツヴァイの必殺技を受けたインセクト・ドーパントは爆散。

それと同時に変身していた少年の身体からメモリが排出されると音を立てて砕けた。

ツヴァイはスロットからメモリを抜き取り、ツヴァイドライバーを腰から外すと変身を解除した。

男はわき目もふらず少年に駆け寄ると少年の身体を抱きしめ涙を流しながら謝罪の言葉を繰り返していた。

それを見た刹那と瀬奈は男の背に向けてある言葉を口にした。

 

「「さぁ、お前の罪を数えろ……」」

 

そう呟くと彼らは裏路地から姿を消した。

後に残されたのは、罪を犯そうとした少年と自分の行いを悔い、彼に謝罪をし続けている1組の親子だけだった。

仮面ライダーツヴァイ、彼らの目的はこの都市に散らばったT3ガイアメモリを破壊すること。

あの少年は、偶然にも「T3インセクトメモリ」と適合し、歪な復讐心と共に怪物へと姿を変えてしまったのだろう……。

仮面ライダーの去ったその裏路地は、まるで彼らの和解を望むかのように、雲の隙間から太陽が覗き辺りを照らしていた。




 いかがでしたか、仮面ライダーツヴァイ。
 ツヴァイはドイツ語で「2」を意味していて、ダブルと同じくメモリを組み替えて戦う仮面ライダーです。もう少しダブルと差別化を図りたかったと少し反省してます。
 T3のライダーの名前は基本ドイツ語にしています。いやダブル系の仮面ライダーは使用するメモリで名前が決まるんで被らず中二カッコイイ感じを模索した結果、ドイツ語になりました。
 タイトルにもあるようにメインとなるのはタイプスリー…通称『T3ガイアメモリ』です。見た目は純正メモリやT2と同じですが、最大の違いは使用するごとに「メモリが成長していく点」です。完全に成長し覚醒すると、ゴールドメモリと同じスペックになり、メモリブレイクが不可能になります。しかしその分メモリの毒素も強くなります。それが街中にばらまかれてるって…やばいですね(笑)
 ツヴァイの変身者は例によって言及しません。双子の兄妹ですが詳しくは感想欄で質問ください。可能な限り答えます。


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奴の名はE / 愚者の辿る道

ある都市にばら撒かれた新世代ガイアメモリ。その名も「T3ガイアメモリ」。
それは小さくも確実に、ある都市を蝕んでいった。
これは、己の目的のために全てを裏切った『一角獣』の物語。


某都市・地下……。

非合法と超常的な手段を使って作られたそこは極めて奇妙な風景だった。

都市の最深部にあるにも関わらず、青空が広がっておりコロッセオをモチーフにした闘技場には三体の異形が戦っていた。

 

『ぎゃあああああああ!!』

 

情けない声を上げて吹き飛ばされた異形…『ドーパント』は絵の具とキャンパスと言った画家をモチーフにしており、殴られた箇所である頭部を抑えながら地面をのたうちまわっている。

もう一体の…黄緑を基本カラーに若々しい葉っぱを身体中に生やしたドーパントは仲間なのか、倒れている彼に並び立つようにファイティングポーズを取り、目の前の敵を警戒する。

そして、画家のドーパントを殴り飛ばした最後の一体が姿を現した。

それは、二体のドーパントとは明らかに姿が異なり、さながら戦士の出で立ちをしていた。

バッタやイナゴを彷彿させるような真っ赤に染まった複眼、中央には漆黒のライン、右側は白いファーがあしらわれた緑色の装甲と左側は頑強な紫色の装甲、左側が根本から折れている額のアンテナは一角獣を連想させる。

最も目を引くのは腰に巻かれた黒いドライバーだ、緑と漆黒のメモリ…『T3ガイアメモリ』がセットされている二つのスロットは「W」に展開されていた。

左右非対称の戦士は、黄緑のドーパントとの距離を詰めると鳩尾に拳を一発叩き込み、蹴り飛ばす。

 

「……」

『ひっ!?』

 

無言のまま振り返った彼に画家のドーパントは恐怖しながらも自身の武器である巨大な絵筆を振るい、身を守るための黒い壁を生成する。

しかし、それに焦ることなくドライバーのスロットから紫色のメモリ…『黒騎士の記憶』を宿したT3ブラックナイトメモリを抜き取ると、右腕に召喚されたチェーンソー型ガントレットのスロットに装填する。

 

【BLACK KNIGHT! MAXIMAM DRIVE!!】

 

電子音声が辺りに鳴り響き、両足にエネルギーを溜めると助走を付け跳び上がるとユニコーンの幻影と共に両足蹴りを繰り出した。

 

「ブラックナイトクラッシャー…!!」

『な、そんなっ!?…アアアアアアアアアアッッ!!』

 

自身の作り出した壁を砕きながら進んで行く必殺技を避けることが出来なかった画家のドーパントは爆発した。

爆発地にはスーツを着たやせ形の男が気絶しており、手元には絵筆とパレットで「P」のイニシャルを模ったマゼンタカラーのT3ガイアメモリが転がっていた。

 

「下らない金集めの割には覚醒していたか」

 

そう一人ごちると、緑色の端子をしたマゼンタのメモリ…『画家の記憶』を宿したT3ペイントメモリを拾い上げた途端、景色がぐにゃり、と歪んでいき辺りは薄汚れたカジノ場、つまり本来の姿へ戻る……おそらく、画家のドーパント『ペイント・ドーパント』の能力でカジノ場の壁や天井にコロッセオと風景を描いて具現化し、地下格闘として金を稼いでいたのだろう。

 

「なるほど、用済みになった奴はお前の能力で消していた訳か。『ヤング・ドーパント』」

『っ!?』

 

未だ能力を見せていないにも関わらず、目の前の戦士は自分の使用しているメモリを言い当てたことに驚く。

 

『だ、だったらなんだ!!この場でお前を消せば万事解決だろうがよぉっ!!?』

 

大声で叫ぶと、ヤングは両手を地面に当て黄緑色の粘液のような波…精神干渉波の『ヤング・クリーク』を発生させる。

ヤング・ドーパントの能力は『任意の年月設定で相手を若返らせる』…今ヤングが設定したのはマイナス二十年、戦士の存在を抹消させることも可能な威力だ。

 

「……バカが」

 

浅はかとも言えるヤングの行動に嘲笑すると、戦士はドライバーを閉じてブラックナイトメモリを抜き取ると、先ほど拾ったペイントメモリを取り出し起動させる。

 

【PAINT!】

 

電子音声…ガイアウィスパーが流れると、ペイントメモリをセットされていない左側のスロットに挿入し、再びドライバーを展開させる。

 

【UNICORN! / PAINT!】

 

『一角獣の記憶』を宿した『ユニコーンメモリ』の馬の嘶くような音声とペイントメモリのポップな電子音声が流れると共に左側がマゼンタ・シアン・イエローの絵具に包まれる、右側の一角獣のような装甲はそのままに、左側はマゼンタを基本カラーに、シアンと黄色の絵具チューブの装飾をあしらった装甲へと姿を変えた。

 

「…ふっ!」

『ガアアアアアアアアッッ!!?』

 

変身が完了するや否や、絵筆を模した槍銃『ペイントスピアガン』を生成すると、ヤング目掛けてトリガーを弾いた。

銃口から発射された弾丸は七色の軌跡を描きながらヤングの顔面へと見事命中し、不意を突かれたのもあってヤングは激痛で能力を解除してしまう。

その隙を見逃すほど、戦士は甘くなかった。

 

「さあ、無様な悲鳴をあげろ…」

 

処刑宣告とも取れる発言の後、戦士はペイントスピアガンをヤングへと突き立てた……。

 

 

 

 

 

「はっ、オラッ!!」

『がっ、ぐあ!!』

 

そこからは戦い…いや、一方的な蹂躙だった。

近距離戦へと持ち込むと、ペイントスピアガンを巧みに操りヤングを追い詰めいき、頭を掴みカジノテーブルに何度も何度も叩きつけると、銃口を顔面に押し付け銃弾を零距離で浴びせる。

 

『ぎ、があああああああああっっ!!!』

「……」

 

激痛で悲鳴をあげるヤングを無視するように腹部をボディブローで殴ると、戦士はヤングを投げ飛ばし、薄汚れた地面に叩きつける。

 

『ア、アアァ、ゲエ…も、もう…』

「止めだ」

 

呻きながら満身創痍で立ち上がるヤングを見据えながら、戦士はペイントメモリを抜き取り、己の武器にあるスロットへと差し込んだ。

 

【PAINT! MAXIMAM DRIVE!!】

「ペイントトリッキー!!」

 

トリガーを弾き、発射された球体のエネルギーに向けてペイントスピアガンを振るうと、七色の奔流がヤング目掛けて飛んでいき、そして……。

 

『ギュギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』

 

ヤングを飲み込み爆散した。

人体に取り込まれていたT3ヤングメモリが排出され、砕け散るのと同時に怪人だった姿は、眼鏡をかけた男性へと姿が戻る。

戦闘が終わったことを確認すると、戦士は携帯を取り出し連絡を取る。

 

「…ああ、終わった。収穫は『P』のメモリだけだ……分かった、しばらくは僕が使う」

 

連絡を終えると戦士は倒れた二人に目もくれず、ゆっくりと出口へ向かっていった。

彼に、正義や人を守る覚悟などない……あるのはただ一つ、たった一つの怒りだけ。

 

「……『ガイアゼロ』は、必ず成功させる。AtoZのメモリを覚醒させて…!!」

 

薄暗い感情を燃やしながら、戦士『仮面ライダーアインホルン』は街を彷徨う……。




 第二弾、仮面ライダーアインホルンです。
 イメージとしては、ゲンムのような「怪人サイドの仮面ライダー」。そして落ちるところまで落ちた照井さん。ですが、彼が復讐したいのは……うふふ。
 アインホルンはドイツ語で「一角獣」を意味します。ユニコーンメモリにしたのは彼が落ちた原因である「愛」と七つの大罪「憤怒」から。振られたからではありませんよ?念のため。
 コンセプトは「一人で二つのメモリを使う」です。劇中では触れませんでしたが彼が使用したベルト『ユニゾンドライバー』は使用者の負担を無視した設計だったため封印されていたのですが、ユニコーンメモリのもう一つの能力「毒素の浄化」によって無理な変身を可能にしました。マキシマムスロットが存在しないため、ユニコーンメモリで生成した武器で必殺技を発動させます。
 語るところは語れたので詳しくは感想の方で。ではでは。


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Bのレポート / 変異型ガイアメモリ

 注意!!今回はレポートもしくは日記形式ですので苦手な方はご注意ください!!


『ガイアメモリ』

かつて「ミュージアム」と呼ばれた組織が風都に流通させていた、多くの人間が求める魔性の小箱。「地球の記憶」を内包したUSBメモリを、人体に措置した生体コネクタに挿入することで使用者を変身させ、「記憶を再現」することが出来る。

記憶を再現した人間は「超人」となり、メモリに秘めた固有能力を引き出すことが可能となる。

我々が知る限りでは、往来のプロダクションモデル・仮面ライダーが使用する純正型の次世代ガイアメモリ・人間と適合、陳腐な表現だが運命のように強く惹かれ合う性質を持つ「最新型」とまで呼ばれたT2ガイアメモリが存在する。

今回のテーマは、我々ライブラリーが「ガイアゼロ」へと至るために必要なピースである『T3ガイアメモリ』についてである。

 

T3ガイアメモリは実質的なリーダーであるライブラリーのキングがT2ガイアメモリを元に製造した新世代否、「変異型ガイアメモリ」のことである。

以前キングが冗談交じりに「メモリに魔術式を書き込んだ」と述べたことがあるが冗談と切って捨てるには、極めてオカルトティックな能力を秘めているのだ。

地球の記憶を宿している・人間を超人へと変身させる点ではプロダクションモデル、外装や人間と惹き合う点ではT2と酷似しているが、最大の特徴が存在する。

 

それは、「適合率」というものが存在しない点である。

本来なら、ガイアメモリとは使用者の性質や願望などが近いほど力を強く引き出せる性質があるのだがT3ガイアメモリはそれとは異質なのだ。

T3ガイアメモリは、抱え込んだ欲望や負の感情に反応して「主」とも呼べる生物の元へと勝手に移動を開始するのだ。そうすることでT3は自動で生体コネクタを打ち込み、ドーパントへと変身させる。つまり、適合率=使用者の欲望とも解釈が可能となる。

もう一つは「メモリ自身が進化を続ける」と言う点である。

使用者の体内に収納されたメモリは使用するごとに増幅された性質や負の感情を読み取り、欲望の形を覚えていく。そうすることで形を覚えたメモリはT2と同等の強度を持つようになり、メモリ自体を撃ち抜かない限りは例えマキシマムの威力でも破壊することは困難だろう。

その後も欲望や感情を増幅させ続け、やがてドーパント自身のパワーや能力の上昇へと変化する言わば、成長を遂げるガイアメモリであり「変異型」と呼ばれる由縁でもある。

 

次はT3ガイアメモリで変身した超人、T3ドーパントだがこちらにも最大の特徴が与えられる。

それは、使用する人間による「能力発現」である。

これはアインホルンもとい、ナイトやルークにも共通していることだがT3ガイアメモリは使用者の欲望や感情を読み取って往来のメモリには備わっていない能力を発現することが可能となる。

例として挙げるなら、最初のガイアメモリ犯罪の犯人でもあるスパイダー・ドーパントが妥当だろうか。

最初期のメモリでもある「スパイダーメモリ」は使用者である■■■■■が内に秘めていた感情や精神状況に呼応して異なる能力を得た。このケースのように、T3ガイアメモリによって変身したドーパントにも同様の現象が起こり得ることが、いくつかの個体で確認されている。

もう一つは…(ここからは何かで塗り潰されているのか解読不能)

 

だが、T3にも弱点や欠点も確認されている。

ドーパントが倒されない限りは、メモリが他の使用者を受け入れないのだ。一度使用した時点で生体コネクタが措置されるだけでなく機械による使用者認証の書き換えも不可能なので、商売の観点から見れば極めてデメリットが大きい。

もう一つは、毒素の少なさだ。

井坂深紅郎が遺したドーパント研究の資料では、「ガイアメモリにある毒素を体内に取り込んでこそ、ドーパントの超人なる力を発揮することが出来る」と記されており、このことから見ても毒素と力の上昇は切っても切れない関係にあることが分かる。

欲望の限界が、ドーパントの力の限界へとなってしまうのだ。

 

このように、生物の理性を解放することで抑え込んでいた感情や欲望による力の上昇を図るT3ガイアメモリは往来のガイアメモリとは異質であり、「ガイアメモリ」と呼んで良いのかすら疑問を覚えるほどだ。

しかし、何であろうと我々の計画にとって必要なことに違いはない。第一段階はばら撒いたT3ガイアメモリに導かれて変身したドーパントの進化を観測することだ。

我々は組織だが研究者でもセールスマンでもない、場合によっては進化の促進のために彼らに干渉をしても良いのかもしれない。

 

 

 

 

 

■■■市の刑務所に収監された囚人に「シーフメモリ」を渡して、風都に解き放った「シーフ・ドーパント(本名:■■■■)」が仮面ライダーによって敗北したのをクイーンからの連絡によって確認。嫉妬によるメモリの進化を期待したが、本人の老いも相まって無残な結果となっているらしいが記憶と精神の損傷も激しいため大した痛手にはならないだろう。

以降は、風都より離れた都市でのメモリ収集を強く推奨する。

――――ビショップ・レポートより抜粋




 一度は書いてみたかった幹部格が書いた体でのレポート形式。某カプコンのゲームのかゆうま日記もそうですけど、何だかワクワクしません?


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活動するD / もう一つのビギンズナイト(お試し版)

 ツヴァイのお試し版です。
 (※)少しばかり、ビショップのキャラを変更するために一端削除しました。


時刻は××時○○分…。

とある街の上空を、一機のヘリコプターが飛んでいた。

そこにいたのは運転している肋骨や百足のような模様のマスクのような頭部を持った黒いスーツの異形と、後ろの座席に座る中性的な顔立ちをしたストライプ柄のグレーのスーツを着こなしているメガネを掛けた痩せ型の中年男性。

磨かれた革靴や紫色のネクタイからはエリートサラリーマンに見えなくもないが、紫がかった赤い髪や色の入った眼鏡、そして時折浮かべるニヒルな笑みが多くの血生臭い修羅場を渡り歩いてきたような、不気味な印象を与える。

その横には大きめの黒いアタッシュケースが大事そうに置かれており、時折大事そうにそれを見つめる。

このままヘリコプターは目的地へと問題なく航空を続ける。

……そのはずだった。

 

「『っ!?』」

 

ヘリコプターの機体が前触れもなく大きく揺れ始める。

突然の出来事にメガネの青年は驚きながらも、冷静に状況を判断しようとする、ヘリコプターの扉が嫌な音を立てて剥がれ落ちる。

そこから姿を見せたのは黒いコートに身を包んだ茶髪の青年…鋭い印象を人々に与える彼は、目的のアタッシュケースを奪おうと迫る。

しかし、メガネの青年はその見た目に違わぬ動作で彼の手を払うと掌底を浴びせようとする。

その攻撃を受けながらもコートの青年はアタッシュケースに手を伸ばそうとする。

やがて、運転をしていた異形…『マスカレイド・ドーパント』が機械のような動作で侵入者を撃退するべく手元にあるスイッチを押した。

瞬間、ヘリコプターは大きな爆発音と共に木端微塵になる。

しかし二人の人物はオレンジ色の爆炎の中から現れると、近くのビルの屋上に受け身を取ってから傷一つ負うことなく着地してみせる。

明らかに常人では不可能の動きを見せる彼らは気にすることなく互いに睨みあう。

 

「あーあー…たく、派手にやりやがって」

 

突然の蛮行に呆れたように呟いたメガネの男性は中央に緑色の球体がある左側に時計のようなダイヤルがある白を基調とした黒いラインがあるバックル…『ガイアドライバーオーバー』を腹部に当てる。

そこから無機質なベルトが伸びて完全に固定されると、青年は胸ポケットから鮮やかなグリーンカラーのパソコンのマウスとキーボードで「D」と象られた薄い緑色の端子のUSBメモリ『T3ガイアメモリ』を取り出してスイッチを押す。

 

【DIGITAL!】

【BISHOP!】

 

音声…ガイアウィスパーを鳴らしてから、ガイアドライバーのダイヤルを回して針をビショップの駒に合わせて異なる音声を鳴らすと、T3デジタルメモリを右側のスロットに横へセットした。

瞬間、青年の姿は数式のようなエフェクトに包まれると神官を思わせるような白いローブを着こなし、左腕がパソコンのキーボードに変異した緑と黒の異形へと姿を変える。

中央に青い球体がある怪人…『Bデジタル・ドーパント』へと変貌すると、コートの青年も同型のガイアドライバーをセットして刀剣や盾、槍で「P」と象った赤いT3ガイアメモリとダイヤルを操作する。

 

【PAWN!】

【KNIGHT!】

 

Bデジタルと同じ動作で彼も、Kポーン・ドーパントへと変貌し召喚した双剣を構えて対峙する。

首に水色のマフラーを巻いた右側は西洋の騎士甲冑、左側の方は足軽の甲冑を彷彿させるような独特な見た目の赤い剣士は剣を振るう。

その斬撃はBデジタルを通り過ぎ、見当違いの方へと向かう斬撃に「まさか」と彼が気付いた時には遅かった。

Bデジタルが変身する前から所持していたアタッシュケースに命中し、強烈な衝突音と共に中に入っていた物も砕け散る。

大きくひしゃげたケースの中からは何かの部品らしき物が散らばるがそれに驚いたのは攻撃を行ったKポーンだった。

内心動揺する彼を見透かしたように、Bデジタルは両手を上げておどけたような仕草で語る。

 

『俺はただのフェイクだよ。本物は既にキングが預かっている』

『…あの力は、仮面ライダーの力はお前らが使って良いものじゃない』

『はっ、俺たちを裏切ったドーパント(化け物)が、人々を守る正義のヒーロー様について語るのか?』

 

痛いところを突かれて沈黙するKポーンに対して、「やれやれ」と呆れたように首を横に振ったBデジタルは数式のような模様を出してその場から退散する。

役目を終えたからなのか、それとも彼を倒す必要はないと判断したのか定かではなかったが、戦闘が起こることもなくKポーンは首に巻かれたマフラーを風で靡かせながら、暗くなりつつある空と街の景色を見つめるのであった。



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始動するZ / 新たな仮面ライダー

 とある方々からの素晴らしいアイディアに感動したのでもう一度リメイクしてみました。


薄暗い街を照らすイルミネーションが飾り付けられた明るいその場所に、一人の『怪人』が降り立った。

高所から着地したにも関わらず、大したダメージを負っていない怪人は周囲を見渡して人気がないことを確認するとゆっくりと息を吐いてから左腕に手を当てる。

そして何かを引き抜くような動作をした直後、その怪人の姿がほんの一瞬だけ淡い光が飛び散るようなエフェクトに包まれる。

そこから姿を現したのは一人の男性だった…ピアスやリングを身に着け、派手なジャケットを羽織った男性で顔つきと服装からお世辞にも品があるとは思えない。

右手に持っていたのは音楽プレーヤーのような外見をしたクリアカラーの物体…ダークブルーのクリアな外装をしているアイテムだ。

プッシュボタンのあるそれは玩具などではなく彼に力を与える悪魔の道具であり多くの人々を苦しめる最悪の存在だ。

かつて一つの街を大きく歪め、今なお価値を高める魔性の小箱『ガイアメモリ』と同様で、奇しくもその性質と特性は「後継機」と呼ぶに相応しかった。

超人の力を手に入れた事実を新たに認識した男性はニヤ付いた顔で目的の場所まで近づき、待ち望んだ『戦利品』との対面を果たそうとした時だった。

 

「っ!?な、何だっ!!」

 

突如視界を阻まんばかりの閃光が男性に襲い掛かる。

眩いばかりの光に男性が両腕で必死に顔を隠す中、一人の少年が現れる。

黒いブレザー、ネクタイに黒いズボンを履いた少年だった。

端正な顔立ちをしており、ハネ毛の黒髪には黒いソフト帽を被っており、ブレザーの下の白シャツが黒い服装とマッチしている。

 

「そこに隠していたんだな、宝石強盗」

「…っ!!」

 

鋭い視線を向ける少年…『左刹那』の言葉通り、男性は宝石店で強盗した物品を気づかれないよう店内とは少し離れた場所に埋めて隠していたのだ。

刹那の手元には鷹を模したカメラのようなガジェット(先ほど男性にフラッシュを浴びせていた正体)が収まっており、証拠も押さえられている。

追い詰められた男性…否宝石強盗は右手に持っていた物体……『地球の記憶』を宿すとされる道具『ガイアレコード』のプッシュボタンを押して起動させる。

 

【DIVE!】

 

渋い男性の電子音声が流れた瞬間、画面には人の脚と水飛沫で「D」を象ったアルファベットが画面に映る。

そのダイブレコードを左腕に浮かび上がった挿入口にセットすると、不気味な音楽と共に黒いシルエット状に彼の身体が歪み始める。

やがて全身に緑色の鮮やかなラインがレコード盤のように刻み終わると先ほどの怪人『ホルドープ』へと変えていく。

ダークブルーのメカニカルな装甲『潜水の記憶』で変異したダイブ・ホルドープとなる。

胸部にやや刺々しい潜水艦を無理やり人型にしたような異形に対して、刹那は驚くことなく真っ直ぐダイブを見据えたまま懐から赤い奇妙な物体を取り出す。

右側に青いレバーと中央に「W」を模した縦に二つのスロットがあるバックルを刹那は腰の前へ軽く押し付ける。

ドラゴン……否、肉食恐竜の頭部を模した『ツヴァイドライバー』から銀色のベルトが飛び出し、彼の腰に巻きつく。

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻、刹那の自宅には長い茶髪のロングヘアーをサイドポニーしフード付きのグリーンのパーカーにチェック柄のミニスカートといった服装で、その下に黒いニーソックスを履いている美少女『左瀬奈』は、自分の腰に同型のドライバーが召喚されたのを確認する。

 

(瀬奈!)

「はいはい」

 

繋がった意識から双子の兄である刹那の声を聞いた彼女は、ポケットからガイアレコードを取り出した。

 

 

 

 

 

一方の刹那も同じタイミングでガイアレコードを取り出しており、全体的に濃い紫でカラーリングされた道化師の靴のような意匠の「J」の文字をしている。

それに対して、瀬奈のレコードは全体的に緑色をしており、風で「W」の文字を象っている。

「それはっ!?」と動揺するダイブに気にすることなく、ほくそ笑んだ刹那はレコードのプッシュボタンを押す。

同時に瀬奈もプッシュボタンを押してレコードを起動させる。

 

【WIND!】

【JOKER!】

「「変身っ!!」」

 

ガイダンスを告げる電子音声が鳴り響く。

『疾風の記憶』を宿したウィンドレコードと『切り札の記憶』を宿したジョーカーレコードの起動が確認されると彼らは異なる場所で同時にメモリを構えて叫ぶ。

瀬奈は右側のスロットにウィンドレコードをセットすると刹那のドライバーに自分の意識ごと転送され、同時に彼女の身体は昏倒する。

そして自分のドライバーの右側のスロットに現れたレコードを押し込み、左側のスロットへジョーカーレコードを装填すると両腕をドライバーの下で交差させて右側のレバーを左手で押し込んだ。

 

【WIND! / JOKER! BATTLE START!!】

 

再び電子音声が鳴り、その直後に風を思わせるような爽快な曲と切り札の軽快な音楽が辺りに鳴り響いた。

そして、刹那の身体を緑色と黒い色の粒子が渦を巻きながら彼を覆い隠す。

現れたのは左右非対称の戦士だった……。

中央のプラチナカラーのライン『セントラルパーテーション』を境に左半身『ファンタズマサイド』はジョーカーレコードのように紫色、右半身『ソウルサイド』はウィンドレコードのように鮮やかな緑色をしているのである。

さらにソウルサイドには首に巻いた薄い緑色のスカーフが軽やかに夜風に舞っている。

額にはV字型のホーンが形成され、昆虫のような大きく紅い複眼が緑と紫に映えて輝いていた。

 

『まさか、てめぇは…!!』

 

目の前で変身した仮面の戦士に、ダイブは驚愕した声で一歩後ずさる。

なぜなら彼が変身したのは自分に接触を図った人物が口にしていた『邪魔者』であることに他ならなかったからだ。

そんな彼の様子に気づいているのか、戦士はゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「『そう、俺(私)たちは…仮面ライダーツヴァイ……』」

 

刹那と、もう一人の相棒である瀬奈の声でそう応えると疾風の切り札の戦士『仮面ライダーツヴァイ』は左手首をスナップさせるとダイブへと指さす。

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

脈々と受け継がれてきた、悪党どもに投げ掛ける『あの言葉』をはっきりと宣言し、一直線にダイブへと走ってから跳び蹴りを仕掛ける。

先制攻撃を受けたダイブも負けじと反撃するが、突き出した腕を絡め捕られたことでバランスを崩し、前蹴りで吹き飛ばす。

 

【WIND JOKER! SKILL DRIVE!!】

『なっ…がっ!?』

 

レバーを再度押し込んだ瞬間、緑色の風を纏ったツヴァイの蹴りがダイブの鳩尾に命中していた。

ツヴァイは最も相性の良いレコードで変身した場合、「スキルドライブ」と呼ばれる両方の特性を併せ持った固有能力を発動することが出来る。

今ツヴァイが発動しているのはウィンドの風を操る能力とジョーカーの格闘技術の底上げによって一時的な加速戦闘を可能とするのだ。

ジークンドーのような素早いキックの嵐を浴びせるツヴァイ……しかし、吹き飛ばされたダイブは自身の能力で地面へと潜り込んでしまう。

 

「ちっ!地面に潜りやがった」

『だったら無理やりにでも叩き出すだけっ!!』

【SPIRIT!】

 

動揺する刹那の声に瀬奈は右側の複眼を点滅させながらそう返す。

彼女の言葉に妙案が浮かんだ彼はジョーカーレコードを外し、二つの霊魂で「S」の意匠がある白銀のガイアレコードを取り出して左側のスロットに装填する。

 

【WIND! / SPIRIT!】

 

レバーを押し込んで電子音声を鳴らすと、ツヴァイの左半身は『霊魂の記憶』を宿した神秘的な白銀の鎧を模したボディに変わる。

青い陣羽織のようなマントを纏ったツヴァイは同時に左側の背中に出現したロッドを手に取る。

 

「せー、のっ!!」

 

先端にハンマーが付いた専用武器『スピリットロッド』を両手で構えた後、思い切り地面へと叩きつける。

瞬間、「暴風」と呼ぶに相応しい風が地面へと駆け巡り…。

 

『どわああああああああああああああっ!?』

 

地面を潜っていたダイブが地面へと弾き出され、数メートルまで飛んだ彼は倒れてしまう。

その隙を逃すことなく、ツヴァイは炎で「B」のアルファベットを模したオレンジ色のガイアレコードを取り出し起動させる。

 

【BURNING!】

【BURNING! / SPIRIT! BATTLE START!!】

 

『灼熱の記憶』を宿したバーニングレコードをウィンドレコードを外した右側のスロットに装填し、レバーを押し込む。

電子音声と共に灼熱の霊魂『バーニングスピリット』へと姿を変えたツヴァイはスピリットロッドを構える。

火炎を模したオレンジ色のボディに青い陣羽織を纏う甲冑ような白銀のボディは宛ら勝鬨を上げる武士のようにも見える。

 

【BURNING SPIRIT! SKILL DRIVE!!】

「ウォラッ!!」

『がはっ!?ぐぶっ!!』

 

振り上げた拳で怯ませた後、ツヴァイは灼熱の重い一撃をダイブの胴体と頭部に叩き込んでいく。

次々と叩き込まれる攻撃…そして最大の一撃を受けて吹き飛ばされたダイブは限界へと追い込まれていた。

 

『兄さん、決めるの?』

「当然、マキシマムドライブだっ!」

 

右複眼を点滅させて尋ねる瀬奈の言葉に刹那がそう返すと、バーニングレコードとスピリットレコードを外してウィンドレコードとジョーカーレコードを装填する。

 

【WIND!】

【WIND! / JOKER! BATTLE START!!】

 

再び両手を交差させてレバーを押し込み、基本形態でもある疾風の切り札…ウィンドジョーカーにチェンジするとすぐにジョーカーレコードをベルトの右側に設けた黒いスロット…マキシマムスロットにセットする。

 

【JOKER! MAXIMUM DRIVE!!】

 

装填されたジョーカーレコード内のディスクが高速回転を起こし、ツヴァイが思い切り跳躍する。

同時に風と紫色のエネルギーがツヴァイの身体を空高く浮かび上がらせると、マキシマムスロットのボタンを押して両脚蹴りの態勢へと入る。

 

「『ジョーカーエクセリオン!!』」

 

二人の声でそう叫んだ直後、急降下するツヴァイはセントラルパーテーションを境にファンタズマサイドである左半身とソウルサイドである右半身とで分断し、二人分の威力を秘めた必殺のキックを浴びせる。

 

『ぐっ、うっ…おおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

必殺技のジョーカーエクセリオンを躱すことも出来ないまま直撃したダイブは苦し気な悲鳴と共に爆散。

仰向けにゆっくりと倒れた宝石強盗のすぐ傍には音を立てて砕け散ったダイブレコードがある。

変身を解除した刹那は、気絶している彼の元まで近寄るのであった。

 

 

 

 

 

「仮面ライダー…」

 

その遠くで…人気もない光の当たらぬ場所で、ツヴァイがレコードを変えて異なる戦術で圧倒し撃破した様子を観察する少年がいた。

二人で変身する都合上、戦うことはおろか満足に動かすことすら不可能に近いあの仮面ライダー…阿吽の呼吸で究極のバランスを保って戦っていた活躍にある種の敬意と警戒心を抱く。

 

「お前たちが何をしようと勝手だが、ライブラリーの邪魔はさせない…誰であろうとな」

 

冷たい視線でそう呟いた少年は、ソードオフされた猟銃のようなダークグリーンのメカニカルなデバイスを構える。

一角獣を紋章が刻まれた変身一角銃『アインホルンライフル』は中折れ式の構造になっており、後方にあるスロットには一角獣で「U」を模した同色のガイアレコードがセットされている。

 

「…」

【UNICORN! START UP…! READY…!?】

 

親指で撃鉄のようなフックを起こし、銃身を押し下げることでスロットが出現する。

その直後、次第に禍々しいものへと変わる独特な電子音声とエレキギターのような待機音声が鳴り響く。

少年は気にせず槍と甲冑で「B」を象った漆黒のガイアレコードを起動させる。

 

【BLACK KNIGHT!】

 

ブラックナイトレコード…つまり『黒騎士の記憶』を宿したガイアレコードを正面から見て左側のスロットに装填させると銃身を定位置に戻し、真っ直ぐ構えてから短く呟いた。

 

「……撃昂(げきこう)

【BAN! UNICORN! / BLACK KNIGHT! BATTLE START…!!】

 

トリガーを引いたことで禍々しい不気味な電子音声が鳴り響いた瞬間、アインホルンライフルの銃口からダークグリーンと漆黒のエネルギーが螺旋状に発射されると、それはすぐに彼の身体を包み込む。

「戦闘開始」を告げる不気味な音声と共に、少年の姿は異形へと変わる。

ツヴァイのような真っ赤に染まった丸い複眼、全身が漆黒のスーツに覆われており、上半身と両腕には白いファーがあしらわれたダークグリーンの装甲と頭部を守る獣の口を模したフェイスメットが装備されており、左側が根本から折れている額のアンテナは一角獣を連想させる。

 

『戦闘の始まりだ…!!』

 

憎悪をにじませた声色で、『ブレイクホーン』はフェイスメットを下げると別の場所で暗躍をしている怪人の元へと地面を駆けるのであった。




 というわけで、半ば実験的にツヴァイをガイアレコードというディスク型アイテムに変更し、アインホルンも魔進チェイサーポジへと変えました。
 ホーンハンターは、あれです…「Wの世界にナイトローグや魔進チェイサーが登場したらどんな感じだろう」と妄想した結果こうなりました。ライフルにしたのは完全に趣味です(笑)
 何か、アドバイスがありましたらお願いします。ではでは。ノシ


ガイアレコード
アカシック・レコードの一部を『音のデータ』として抽出した携帯音楽プレーヤーのようなアイテム。クリアカラーになっているのが特徴。
人体にセットすることで怪人…ホルドープへと変異させる。
抱え込んだ願望に反応して「主」とも呼べる生物の元へと勝手に移動する性質を持っており、成長を続ける特性も併せ持つ。
生物の増幅された性質を読み取り、願望の形を覚えることでマキシマムの威力でも破壊することは困難なほどの強度となる。

ホルドープ
ガイアレコードによって変異した生命体。名前の由来は「レコードホルダー(記録保持者)」と「ドーピング」
使用者が持つ願望の形によって様々な姿へとなり、内包されたデータと合わさった能力を発現することが可能となる。共通点は胸部に存在する刺々しい紋章のようなコア。


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Iの末路 / 奴の名はブレイクホーン

 ちょっとホーンハンターの名前とガイアレコードの形を変更しました。
 イメージはモンハンの魂石をクリアカラーにした奴だと思ってくれれば良いです。


暗闇に包まれた街を二つの影が走る。

 

『はぁっ、はぁっ!!』

 

荒い息を吐きながら、『追跡者』から逃げるのは一体の異形。

ギターやドラム、トランペットを身体から生やしたような怪人…『楽器の記憶』を宿した『インストゥルメント・ホルドープ』は逃走を続ける。

アイドルに対して狂気的なまでの執着心を持つ彼は、力を手に入れる前かライブスタッフである立場を活かして何人ものアイドルにストーキング行為をしていたが、ガイアレコードを手に入れてからは自身の奏でる音波で苦しむ様を見ては悦に浸っていた。

しかし、自分に干渉してきた存在を利用しようと脅迫するための材料を探していたところ、逆に特定されてしまったことで組織のメンバーから逃げている最中なのだ。

 

『はぁっ、ひぃっ!?』

 

噴水のある広場まで移動したところで、背後から鳴り響く銃声に思わず動きを止めてしまう。

嫌に聞こえる靴の音に恐る恐る振り向くとそこにいたのは濃いグレーのパーカーを着た一人の少年…。

 

『はっ!な、何だガキかっ、驚かせやがって…』

「インストゥルメント…お前はライブラリーに手を出した。覚悟は出来ているな?」

 

彼の言動に気にすることなく、少年は淡々と告げる。

この少年こそがライブラリーの一員であり『ナイト』の称号を与えられた戦士……。

しかし、それを感情を暴走させた怪人は知るはずがない。

 

『調子に乗るなよっ?俺はアイドルの子たちが恐怖でひきつる表情を観たいんだよっ!!分かったらさっさと伝えてこいっ!』

「正常な会話はもはや不可能、か」

 

興奮したように一方的にまくし立てるインストゥルメントに冷たい視線を向けたまま、ナイトはソードオフされた中折れ式の猟銃を模したダークグリーンのメカニカルなデバイス『変身一角銃 アインホルンライフル』を構える。

一角獣を紋章が刻まれたそのデバイスの後方のスロットには化石のようなクリアカラーのアイテム…一角獣で「U」を模した同色のガイアレコードがセットされている。

 

【UNICORN! START UP…! READY…!?】

 

親指で撃鉄のようなフックを起こし、銃身を押し下げることでスロットが出現する。

その直後、次第に禍々しいものへと変わる独特な電子音声とエレキギターのような待機音声が鳴り響く。

そのままナイトは、槍と甲冑で「B」を象った漆黒のガイアレコードを起動させる。

 

【BLACK KNIGHT!】

 

『黒騎士の記憶』が記録されたガイアレコードを正面から見て左側のスロットに装填させると銃身を定位置に戻し、標準を合わせるように真っ直ぐ構えてから短く呟いた。

 

撃昂(げきこう)

【BAN! UNICORN! / BLACK KNIGHT! BATTLE START…!!】

 

トリガーを引いて禍々しい不気味な電子音声を鳴らして響かせた瞬間、アインホルンライフルの銃口からダークグリーンと漆黒のエネルギーが螺旋状に発射されると、それはすぐに彼の身体を包み込み、「戦闘開始」を告げる不気味な音声と同時に異形へと変えた。

ツヴァイのような真っ赤に染まった丸い複眼、全身が漆黒のスーツに覆われており、上半身と両腕には白いファーがあしらわれたダークグリーンの装甲と頭部を守る獣の口を模したフェイスメットが装備されており、額には一角獣を連想させるホーンがある。

 

『さぁ、戦闘の始まりだ…!!』

 

湧き上がる感情を堪えるような声色で、一角獣の黒騎士『ブレイクホーン』はアインホルンライフルでインストゥルメントを狙撃する。

 

『どわっ!?』

 

それに回避することも出来ず、直撃を受けて怯んだ彼と距離を詰めたブレイクホーンはそのまま殴り飛ばしてから至近距離で銃弾を浴びせる。

煙を上げるインストゥルメントは躍起になって攻撃をするが、それを難なく躱された挙句銃床で思い切り殴打される始末。

 

『…はぁっ!!』

『があああああああああああっっ!!!』

 

そのまま蹴り飛ばされて地面を転がる羽目になったインストゥルメントに対して、ブレイクホーンはため息を吐く。

少しは成長しているかと期待していたが、とんだ肩透かしだ……。

アインホルンライフルを肩に担ぐその姿に、インストゥルメントは思い切り地面を叩いた。

 

『ふーっ、ふーっ!!このっ、クソガキがああああああああああああっっ!!!』

 

自分の欲望すら満たせず、まるで雑魚を相手するかのように振る舞うブレイクホーンに対して感情を爆発させたインストゥルメントは起き上がってすぐに身体から生やしたギターとトランペットなどを鳴らして、爆音による破壊音波を放つ。

その攻撃の射線上にいる彼は、気にすることなくアインホルンライフルに設置されている右側の黒いボタンを押す。

 

【BAN BAN! BLACK KNIGHT…! SKILL DRIVE…!!】

『……』

 

電子音声を響かせた途端、アインホルンライフルの銃口に漆黒のエネルギーが蓄積されていく。

そしてインストゥルメントに標準を定めてトリガーを引くと、禍々しい弾丸が発射される。

 

『なっ!?ぎゃあっ!!』

 

その弾丸はインストゥルメントの放った破壊音波を貫通し、インストゥルメントの顔面へと命中する。

 

『こ、このっ、がっ!?』

 

呻き声をあげるインストゥルメントに気にすることなく、ブレイクホーンは次々と弾丸を撃ってダメージを与え続ける。

そして…。

 

【BAN BAN! UNICORN…! SKILL DRIVE…!!】

『…ふんっ!』

『ぐおおおおおおおおおおおっっ!!?』

 

今度は右側の緑のボタンを押して能力を解放すると、一瞬で距離を詰めたブレイクホーンは螺旋を描くように発生した緑色のエネルギーを拳に纏わせてインストゥルメントを殴る。

がら空きとなった胴体が削られたダメージと共に、インストゥルメントは情けない悲鳴と共に吹き飛び、地面を転がる。

 

『あっ、ああ…!!』

『止めだ』

 

もはや、逃げることすらも出来ないほど追い詰められた彼を見たブレイクホーンは、フェイスメットを閉じてから同時に二つのボタンを押すと電子音声が響く。

 

【BAN BAN BAN! EINHORN! MAXIMUM DRIVE…!!】

『……はっ!!』

『ひっ、ああああああああああああああああっっ!!!』

 

緑と黒の必殺の銃弾『アインホルンシュート』が直撃したインストゥルメント・ホルドープは悲鳴と共に爆散し、ガイアレコードが排出されたことで融合が解除される。

意識が残っていたのか使用者である男性は破壊されたインストゥルメントレコードとブレイクホーンを交互に見ながら、恐怖にひきつった表情で必死に後ずさりをする。

あまりにも情けない姿に、ブレイクホーンは呆れることしか出来ない。

 

『終わったか?』

 

そんな彼に声を掛けてきたのは一人の怪人。

神官を思わせるような白いローブを着こなし、左腕がパソコンのキーボードに変異した緑色のメカニカルな異形…『Bデジタル・ホルドープ』は男性を見る。

 

『……好きにしろ』

 

ブレイクホーンの言葉を聞いて満足したように頷いた彼は、右腕から黒いケーブルを伸ばして拘束した途端、男性の身体がデータへと変化していく。

 

「ひっ!?あっ、嫌だっ!助けてっ、助けてっ!!」

『無理だな、お前は俺たちに干渉しようとした。自業自得だと思って諦めな』

「あっ、ああ…っ!嫌だああああああああああああああああっっ!!!」

 

そのまま彼の身体が完全にデータ状になって完全に消滅したのを確認したBデジタルは「ご苦労さん」と軽く手を振ると姿を消す。

そして最後にブレイクホーンが去った後には、何もない光景がただ広がるのであった。




スキルドライブ:
二つのガイアレコードの力を合わせて『技』という形で引き出す。マキシマムドライブとは異なり、レコードの破壊は不可能。

ブレイクホーン:
ライブラリーに所属する少年『ナイト』がアインホルンライフルと二つのガイアレコードで変身した姿。ユニコーンレコードを起動キーとしているため、使用者は実質ナイト一人。
赤く染まった丸い複眼に全身が漆黒のスーツに覆われており、上半身と両腕には白いファーがあしらわれたダークグリーンの装甲。頭部には一角獣を連想させるホーンが額にある獣の口を模したフェイスメットが装備される。フェイスメットは下ろすことも可能。


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オリジナルライダー設定集
仮面ライダーカリバー KAMEN RIDER CALIBUR


 活動報告で設定を書いたオリジナルライダーの短編です。
 それでは、どうぞ。


――――これは…ある世界で誕生した怪人と戦う、一人の戦士の物語

 

 

 

 

 

某市に存在する公園…時刻は既に夜中を指しており、子どもたちや家族で賑わう誰もいないその場所にオレンジ色に発光する現象が起こっていた。

それを起こしている犯人は見えず、もしこの場に人がいたとしても大半が「気のせいだ」と気にすることはないだろう。

しかし、目には見えずとも『彼』はその場にいたのだ。

正確には街の治安を守っている監視カメラが内蔵するデータに、彼は膨れ上がった自らの自我に満足していた。

 

『ああ、ああっ!うざってぇっ、この目に映る何もかもがうざったいぜっ!!』

 

吐き捨てるように、感情を抑え込むように彼は監視カメラから零れる光を放ちながら一人ごちる。

なぜ自分がここまで激情を隠せないのか分からない、自分が憑代として選んだ人間の存在(データ)が原因なのだろう。

だが、彼にとってはどうでも良かったのだ。

『暴れたい』という自身の欲求と人間が望んだ『上司や同僚への不満』は、自分が存在を得るためのデータとして都合が良かったのだ。

そうして彼はオレンジ色の光を漏らしながら、彼は監視カメラから姿を現した。

 

『はぁぁぁ……!!』

 

念願の現実世界へと足を着くことが出来たことへの解放感で彼は歓喜に満ちた声をあげる。

一言で表現するなら、溶岩と炎で構成されたライオンであろうか…黒く固まった岩の継ぎ目からは赤い溶岩から光っており、鬣もその溶岩が煮え滾っている。

 

『はははっ、これで俺は暴れられる……いけ好かねぇ連中の家族諸共焼き潰してやるよっ!!』

 

実態を持った身体を得たことで誕生したデジタル生命体『マグマ・デジタント』は、標的の一つである場所へ向かおうとゆっくりと歩を進める。

獲物を探す狩人のように、彼は雑草を燃やしながら道すがら周囲を燃やそうとした時だった。

一台の青いバイクが彼の進行を遮るように止まる。

突如自分の邪魔をするように現れた存在に、不機嫌な感情を隠そうしない彼の様子を気にすることなく、バイクに跨った人物はヘルメットを外す。

納めた長く青いツインテールを靡かせながらその少女はバイクから降りる。

可愛らしさのある美貌に恵まれた長身に青い上着とフリルのあるミニスカート、黒いハイソックスを身に着けた豊満な身体の持ち主である。

 

『ヒュー♪こんな夜中にドライブか?危ないぜお嬢ちゃん』

「……」

 

明らかに嘲笑の籠った気障な物言いに少女『剣立(きょう)』は何も言わず、鋭い視線を向けたままバックルのような銀色の物体を取り出した。

左側にはジャックとキング、クイーンのトランプカードのイラストが彫られたプレートがあり右側にはサイドレバーがある。

杏はそのバックル『ジョーカーズドライバー』を腹部に軽く当てると、そこから赤いベルトが伸びて完全に彼女の腰に巻きつく。

そして、ドライバーのカバーを開けた彼女は上着の懐からスペードと一頭身の騎士の絵柄があるディスク『ポーカーディスク』を取り出してボタンを押した。

 

【FOOL・SPADE!】

 

「0」と刻まれた『フールスペードディスク』を起動させた杏はジョーカーズドライバーにセットし、カバーを閉じるとそのままバックルのロックを解除する。

それと同時に待機音声が鳴り響く中、右腕を斜め上にゆっくりと上げる。

 

【Grab a Trump Card! Grab a Trump Card!…】

「…変身っ!」

 

手首の向きを変えた後、掛け声と共に両腕をドライバーの近くまで持っていって包み込むように構える。大きく回す。

そして両腕を大きく回してから広げると同時にジョーカーズドライバーも回転した。

 

【JOKER'S SELECT! 未知の可能性!切り札掴め!お前の名前はSPADE KNIGHT!!】

 

電子音声が鳴り響いた瞬間、彼女の姿はスペードのスートがあるA~Kのトランプカードが宙を舞うと黒いスーツとなって纏わり付き、『愚者』のタロットカードが青い鎧へと変化する。

そこに現れたのは一人の騎士とも武者とも言える戦士…明治を思わせるような青いブーツと手甲を装備しており、西洋甲冑のプロテクターが装着されている。

『仮面ライダーカリバー ザ・フールスペード』……世界に害をなす怪人から人々を守る戦士。

 

『お、お前っ!!仮面ライダーだったのか!?』

「その通りです。切り札を、この手に掴む」

 

宣言したカリバーにマグマは動揺しながらも剛腕による一撃を振り被る。

ライオンのパワーと溶岩による高熱を纏ったその攻撃を受けたら一たまりもないだろう。

だが、それは相手が一般人だったらの話である。

 

「ふっ!」

 

子ども騙しに等しいその攻撃速度と軌道にカリバーは難なく躱す。

攻撃が単調なことに気づかず、マグマは拳を主体とした攻撃を華麗に躱し、時折受け流す。

掌底を主軸としてその攻撃を受け流している彼女にしびれを切らしたマグマは赤い溶岩を纏った拳を振り下ろすが、それをスウェイで躱した後は右の肘打ちで打ち込む。

吸い込まれるように鳩尾に叩き込まれたマグマが怯んだ一瞬の隙を逃すことなく、捻りを加えたハイキックを浴びせる。

次第に彼女の繰り出す攻撃は軽やかに、スピーディになっていく。

攻撃を連鎖的に行うカリバーにマグマはなす術もなく追い詰められる。

 

「はっ!ふっ!はぁっ!」

『ぐおおおおおおおっ!?』

 

連続キックの次に衝撃を流すような掌底に吹き飛ばされて地面を転がるマグマを見たカリバーは専用の武器である『ポーカーウェポン』を取り出して構える。

薄く発光するような青い色は日本刀型のデバイスとなっており、刀身にはJ・Q・Kのトランプカードを模したボタンが取り付けられている。

 

【JACK!…ONE PAIR!!】

「ふっ!」

 

ボタンを押して電子音声を鳴らしたカリバーは攻撃力を上げた『ポーカーソード』で攻撃を行う。

一つの太刀から繰り出される変幻自在な斬撃にマグマの身体から火花が激しく飛び散る。

続けるようにQのボタンを押して2ペアによる斬撃を浴びせる。

流れに乗った斬撃の合間に繰り出す右フックからの回し蹴りによって、マグマは思い切り吹き飛ばされてしまった。

 

『ごあああああああああああっっ!!!』

 

激しい攻撃を受けた彼に対して、カリバーは臆することなく剣先を突きつける。

その行為を挑発だと受け取ったマグマは全身に力を込めて岩の継ぎ目から熱を漏らすと、そこと鬣から次々と火炎球を撒き散らす。

炎が辺りを着弾する中、カリバーは流れるような動作でそれを躱しながら彼と距離を取る。

基本モチーフがライオンだからかその威力は生半可なものではなく、ライオンの顔を模した火炎球が牙を剥いて襲い掛かる。

 

「くっ!(このままじゃ…ならっ!)」

 

デジタントのレベルが想定していたよりも高いことに苦虫を噛み潰したような表情を仮面の下で見せた彼女は攻撃を避けながら、スペードディスクを抜き取ると「VI」と刻まれた赤いポーカーディスクを取り出して起動させる。

 

【LOVERS・HEART!】

 

最初の待機音声が鳴り響く中、カリバーはハートと弓兵を思わせるような一頭身のキャラクターがある『ラバーズハートディスク』をカバーが開いたままのバックルにセットして最初の変身のようにシークエンスを終えると、ドライバーを回転させた。

 

【JOKER'S SELECT! 以心伝心!あいつのハートを狙い撃ち!その名はHEART SHOOTER!!】

 

派手な電子音声と共にジョーカーズドライバーからハートのカードと『恋人』のカードが宙を舞うと、カリバーに張り付いて姿を別の物へと変える。

弓兵を思わせるような赤いロングコートと軽鎧が装着される。

『仮面ライダーカリバー ザ・ラバーズハート』へと完了した彼女はドライバーのボタンを押す。

 

「これで終わらせてあげます」

【JOKER!】

【STRAIGHT!!】

 

召喚したポーカーウェポン『ポーカーアロー』にハートディスクをセットして、電子音声を鳴り響かせたカリバーは弓を思い切り引き絞る。

すると、カリバーの姿は二人に分裂を開始する。

限界まで引き絞っていた手を放した瞬間、大きな矢型のエネルギーを飛ばしたことで、無数の矢へと変化したエネルギー弾は寸分の狂いもなくマグマへと向かった。

 

『ぐおわああああああああああああああっっ!!!』

 

『ハートストレート』が全弾命中したことで既に限界へと来ていたマグマ・デジタントは爆散し、そこからはデータして囚われていた男性も現れる。

脈を確認して生きていることに安堵した瞬間、変身を解除した杏のスマホに着信が入る。

 

「っ?…あっ」

 

誰からの着信か確認した彼女の表情が一瞬で気まずいものへと変わる。

 

「お父さん…」

 

自分の父親からの電話…考えてみれば帰りのメールを送ってから何時間も立っている。

一先ず、それを無視して警察と救急車を呼んだ杏は慌てて過保護気味な父親への言い訳を考えるのであった。

 

 

 

 

 

カリバーがデジタントと戦う世界とは別に、新たな戦士…仮面ライダーも存在していた。

黒いスーツには白狼を思わせるような白く刺々しいデザインの装甲を各部に装着した戦士は、黄色く光る複眼で満月を見上げる。

銀色のバックルにはメカニカルな狼とデジタルカメラが合わさったような大きめのデバイスがはめ込まれるように装備されている。

その仮面ライダーは気怠そうに右手を軽くスナップすると、目の前で対峙する怪人へと走るのであった。




 ブレイドを平成二期風にしたオリジナルライダー…仮面ライダーカリバーです。
 あまりは多くは語りませんが設定は載せておきます。最後に戦っていた仮面ライダーは別の世界に存在する仮面ライダーだったりします。
 ではでは。ノシ

仮面ライダーカリバー 
医大生の少女「剣立杏(キョウ)」がジョーカーズドライバーにポーカーディスクをセットして変身する仮面ライダー。長く青い髪をツインテールにした長身の美少女で誰かを救いたいと願う大らかな性格をしている。
青いスーツにスペードを模した一本角と銀色の西洋甲冑を上半身に纏っており、初見では声を聴かない限り細身な男性型と勘違いされる。スペードディスクは剣士としての集中力とスピードが上昇する。
刀剣型のポーカーウェポンにはJ・Q・Kのトランプカードを模したボタンがおり、押した順番によって使用する技が異なる。また必殺技としてジョーカーが存在する。

デジタント
発達する電脳や電波のバグから発生したデジタル生命体であり、欲望を持った人間のデータ(存在)を奪うことで現実世界に干渉する身体と明確な自我を得られる。
そこで政府は新感覚スマホポーカーバトル「キングオブポーカー」で遊ぶ人間たちの中から、ポーカーディスクに適合する人間を探していた。


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仮面ライダーカギト KAMEN RIDER KAGITO

 似たようなモチーフと既存のアイテムで何処まで差別化出来るか…自分の書くオリジナルライダーはそれを意識しています。
 怖いのはモチーフやアイテムが被ることじゃない…名前が被ることです。




【POSSESSION…!!】

 

太陽の明かりが当たらないとある場所で、掌に収まるサイズの禍々しい赤いスイッチを手に持った女性は無表情のままボタンを押した。

すると、不気味な電子音声と共に砂嵐のような灰色のノイズに包まれる。

ノイズが晴れると、その場にいたのは先ほどの女性ではなくボウガンとアーチェリーをモチーフにした装飾が全身に覆われているマゼンタカラーの異形の名前は『シュート・ゲノピング』……ゲノピングスイッチに宿ったエナジーを肉体に憑依させることで、遺伝子構造を変化させた怪人である。

 

『人間関係?目上の礼儀?くだらないっ、私はアーチェリーが出来ればそれで良いの」

 

「だから」と彼女は召喚した弓を構える。

 

『私の邪魔をする者は、消えなさい』

 

無情にも仲間たちがいる練習場へと矢を放とうとした瞬間だった。

突如聞こえたエンジン音に思わず振り向いてしまう。

そこにいたのは一人の少年であり、ヘルメットをし少しだけパーマがかった童顔が露わになるとそのままシュートへと対峙する。

 

『何、あなたは?』

「仮面ライダー。名前ぐらい聞いたことはあるだろー、ゲノピング」

 

何処かのんびりしたような、それでいてはっきりとそう答えた少年『芦河玲斗』はダークグリーンのバックル『カギトドライバー』を腰に当てると、そこから黄色いベルトが伸びて固定される。

そして次に玲斗が取り出したのはゲノピングスイッチと酷似したオレンジ色のスイッチ。

しかし、それはシャープなデザインをしたそれは何処か洗練されたような印象を与える…戸惑うシュートに気にすることなく彼はボタンを押した。

 

【自由な個性!STANDARD!】

 

音声が鳴ったのを確認してから、ドライバーの左側にあるスロットにスタンダードスイッチをセットする。

 

「変身っ!」

【POSSESSION! STANDARD…STA・STANDARD! FEVER!!】

 

右側に存在するサイドハンドルを掛け声と共に引いた瞬間、新たな電子音声と共にスーツが彼の全身を包む。

そうして変身を遂げた瞬間、最後の電子音声と共に打ち上がったオレンジ色の花火がその姿を照らした。

三角の白いホーンに、鮮やかなオレンジカラーのスーツ…そして赤く丸い複眼がゲノピングを睨む。

 

「俺は『仮面ライダーカギト』。派手に行くぜっ!」

 

そう宣言したカギトは専用武器である片手剣『スタンダードセイバー』を逆手に構えて攻撃する。

突然変身した存在に一瞬だけ困惑していたが、斬撃を受けてしまったシュートはすぐに冷静さを取り戻し、距離を取ってから弓を構える。

 

『くらいなさいっ!!』

 

シュートは弓から矢を引いて放つと、散弾のように弾幕が乱射される。

凄まじいそのスピードを凌駕するように、カギトはスタンダードセイバーで攻撃を弾く。

 

『このっ!私の矢を受け流すなんて!こんなの許されるはずないッ!』

 

自分の攻撃を躱されたことでシュートは両肩のボウガンから放ちながら攻撃の手を激しくするが、攻撃パターンを既に見切っているカギトはスタンダードセイバーと軽やかなステップで回避しながらも相手との距離を詰める。

 

『なっ!?こ、この…』

「遅いっ!ふっ!!」

 

距離を詰められたシュートは弓を近接武器のように振り下ろす。

しかし、それを待っていたかのように武器を一回転させて完全に受け流すと、カウンターとばかりに回し蹴りを浴びせる。

 

『がっ!?』

 

バランスを崩したシュートに追い討ちが襲い掛かる。

スタンダードセイバーを彼女の鳩尾に向かって斬り上げると、シュートが煙を上げながら後退する。

 

『そ、そんな……』

「どうした、そろそろ終わりー?」

 

カギトの鮮やかな連続技を受けたシュートは後ずさる。

剣先をシュートに向け、勝負はついたと言わんばかりのトーンのカギト。

 

『まだっ!まだよっ!!確かにあなたは強いっ!でも、私は絶対に終わらないっ、私は、私は未来のアーチェリー選手なのよっ!?何れアーチェリー界を支える逸材、それが私っ!!』

 

ダメージが蓄積されているにも関わらず、シュートは立ち上がると、上空に向けて矢を放つ。

まるでスコールのように降り注ぐエネルギーにカギトは驚きながらも回避を始める。

しかし、縦横無尽に降る高密度のエネルギーとシュートの追撃によってカギトの身体がから火花が散る。

その様子にショートの余裕も戻ってくる。

 

『ほら、ほらほらほらぁっ!!!』

 

間髪入れずに集中砲火する彼女を横目に、カギトは冷静にドライバーにセットしていたスタンダードスイッチを外す。

そして、この場を打開するためのスイッチを手に取る。

 

「……なら、これだ!」

【聖槍剣!DURANDAL!!】

 

カギトが手にしたのは紫色のデザインをしたデュランダルスイッチ。

それをONにした彼は素早くスロットにセットしてレバーを引く。

 

【POSSESSION! DURANDAL.DURARARA・DURANDAL! FEVER!!】

 

スーツが紫色に染まった瞬間、鮮やかな紫色の花火が新たに打ち上がる。

ボディと両腕には重厚な西洋のアーマーが装備され、手には片手サイズのランスが装備されている。

剣でもあり、槍の伝承も併せ持った聖剣デュランダルの力を憑依した形態『仮面ライダーカギト デュランダルフィーバー』だ。

 

『ふ、ふんっ!姿が変わったところで何になるのよっ!!』

 

構えもせず、ただ仁王立ちするその姿にたじろぐが、自分が優勢であることにかわりはないシュートはカギトに向かって矢の弾幕を放つ。

攻撃を受けているのはカギトの方…しかし彼は全く動くことはない。

それどころか、ダメージが届いている様子すらない。

 

『なっ、嘘でしょっ!?そんな…!』

 

全く攻撃に動じないカギトに調子を崩されたのか、シュートの焦りによる声が響く。

動揺する彼女に、仮面の下でほくそ笑んだ彼は紫色に染まったランス『デュランダルランス』を構えると直進を開始する。

 

『…っ!?く、来るなっ!!』

 

重厚なその姿に恐怖したシュートは攻撃を激しくするが、気にすることなくカギトは突進すると思い切り彼女にデュランダルランスを突き立てた。

 

『きゃああああああああああああああああああああああっっ!!!』

 

鈍重ながらも、一撃の重さに特化したその攻撃にシュートは苦しげな悲鳴をあげる。

ダメージが抜けていないシュートの顔を掴んで持ち上げる。

俗に言うアイアンクローである。

悲鳴と共に逃げようとするシュートだが、完全に力負けしている状況では逃げられるわけがない。

 

「そーら、よっ!!」

『ぐふっ!?』

 

そして、そのままシュートを地面に叩きつけるとランスを持っていない空いた手で鋭いアッパーカットが打ち込まれる。

流れるように足を掴むと、カギトはそのままジャイアントスイングの要領で振り回し始める。

 

『いやあああああああああっ!!!や、やめ…!』

「オラァッ!!」

 

凄まじい勢いで、投げ捨てられたシュートはもはや満身創痍であり、立ち上がることさえやっとの状態である。

そして、止めを刺すべくカギトはデュランダルランスにあるスロットにスイッチを装填する。

 

【DURANDAL FEVER! DOKKA-N!!】

 

必殺技を告げる電子音声が鳴り響くと、カギトはその重厚な姿に似合わぬ跳躍を始める。

同時にデュランダルランスからはエネルギーが収束されていき、許容量ギリギリまでの高圧エネルギーによって紫色に発光する。

怖気つくシュートに気にすることなく、デュランダルランスを下へと向けたカギトはそのまま自由落下を開始した。

 

「やああああああああああああああっっ!!!」

『きゃあああああああああああああああっっ!!』

 

必殺の一撃『パラディンバースト』を受けたシュート・ゲノピングは、激しい火花と煙を上げながら絶叫と共に爆散する。

爆炎からは女性が砕けたスイッチの残骸と共に倒れるように現れた。

 

「……ショウイチ叔父さんに連絡、とー…」

 

スマホを取り出すべく懐をまさぐりながらも、彼は別のことを考える。

結局のところ、この女性はゲノピングスイッチを渡されただけ…スイッチをばら撒いているということ以外、深く知ることまでは出来ていない。

 

「じっくり行きますかー」

 

そう一人ごちた玲斗は叔父へと連絡を取るのであった。




 フォーゼの放映時期に「星座モチーフじゃないゾディアーツを考えてみよう」という黒歴史を自分なりに考えてみたのが仮面ライダーカギトです。

仮面ライダーカギト
「芦河玲斗」がカギトドライバーとアームズスイッチで変身する仮面ライダー。橙色のパーマがかった童顔が特徴の少年で子ども扱いされることもあるが本人は特に気にしていない。ややマイペースだが悪人でも手を差し伸べる優しさを持つ。
『アームズスイッチ』に詰まった世界各地の伝説に登場する武器のエネルギーを憑依することで様々な力を発揮する。

ゲノピング
名前の由来は「ゲノム(遺伝情報の全体・総体)」と「ドーピング」の造語。人間がゲノピングスイッチに宿ったエネルギーを憑依することで遺伝子に変化を起こす。
変身条件は至って単純で『特定の物事や人に対して、ある種の執着心があること』…シュートだった女性はアーチェリーへの真摯さがトリガーとなって変身し暴走した。


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ディケイド The After(お試し版)

 連載予定のディケイドTAのプロローグ…のお試し版です。


何処に存在するのかも分からない荒涼とした山地の中、常識を疑うほどの激戦が繰り広げられていた。

耳をつんざくような爆音が周囲に轟く。

それが引き金となって連鎖し、数多くの轟音が周囲に戦場となった殺風景な山地に響き渡る。

轟音の元は爆発だけではなく、何十もの、幾重に連なる音が聞こえてくる。

目一杯アクセルを回したような猛々しいエンジン音と共に仮面の纏った戦士たちがそれぞれの専用バイクで大地を駆ける。

彼らだけではない……黒いレールを生成しながら、搭載された武装を乱射する白い電車が、洋風の城塞と融合したかのような寸胴で巨大なドラゴンが、凄まじい雄叫びを上げる赤い龍が、空を舞っている。

彼らは自分たちを襲う『何か』を打倒するべく、自身が持てる限りの力を持って『何か』の元へと向かう。

本来なら、強大な敵を打ち倒したことのある戦士たちが苦戦することなどなかった。

しかし、結論を言えば彼らは敗北した。

仮面の戦士たちは『何か』によって数を減らされつつあった。

その存在によって召喚された、仮面の戦士を模倣したような『異形』が彼らに襲い掛かったのだ。

目の当たりにする強大な悪意と戦闘能力によって苦戦を強いられつつある中で、やがて吸血鬼を彷彿させる金色の輝く皇帝が悪魔を模した怪人によって腹部を貫かれた。

貫かれた皇帝は透明なクリスタルに全身を包まれた瞬間、この場から消滅する。

それに続くように武装をした赤い鬼が、トランプのキングのような仮面の騎士が、カブトムシを模したメカニカルな太陽の神が…各々を模した異形たちの手によって次々と消滅していく。

九人の仮面の戦士…『仮面ライダー』が消滅した瞬間、金色に輝く鬼が『何か』…マゼンタの戦士に武器を構えて襲い掛かる。

銀色のサイドハンドルが存在する、何処となくカメラを連想するような白いバックルを腹部に巻きつけている戦士はプレートの刺さった頭部にあるエメラルドの複眼を少しだけ向ける。

まるで吟遊詩人を彷彿させるような灰色のローブを纏った鬼は己の武器の一つであるエレキギターを模した槍もしくは大剣『音撃弦・轟炎』を突き立てようとするが、マゼンタの戦士の方が速かった。

サイドにあった白いブックケースを手に取って銃へと変形させると、引き金を引いてエネルギー弾を鬼に放つ。

彼はどうにかそれを防げるが、それが命取りとなった。

 

【FINAL ATACK・RIDE!…DE・DE・DE・DECADE!!】

「しまっ…ぐあああああああああああああっっ!!?」

 

黄色のカードをバックルにセットしていたマゼンタの戦士の銃撃が命中し、爆発する。

『仲間』を止めようと奔走しようとした鬼『仮面ライダー鳴鬼(メイキ)』もクリスタルに閉じ込められた瞬間、この場へと消滅する。

完全に戦闘が終了したのを確認したマゼンタの戦士『仮面ライダーディケイド』は異形たちを率いてこの場から去ろうとする。

しかし。

 

「ま、待て…!!」

 

マゼンタの戦士によって倒され、黒々とした煙があちこちに上る戦場…その中で一人だけ、ディケイドに酷似したシアンの戦士はもう一度立ち上がる。

プレートの刺さった仮面の下の瞳は目の前の戦士を睨んでおり、動かすことを拒否する身体を内に宿る闘志で立ち上がる。

そして、彼は自らの纏う色と酷似したタッチパッドの画面に触れる。

 

【G4! RYUGA! ΩRGA! GRAVE! KABUKI! CAUCASUS! ARK! SCULL!】

【FINAL KAMEN・RIDE!…DIEND!!】

 

画面に映る紋章を順にタッチすると、胴体の装甲に様々な戦士の顔が描かれたカードが八枚出現し、設置される。

シアンの戦士は白のラインと装飾が入った強化形態『仮面ライダーディエンド コンプリートフォーム』へと姿を変える。

 

「ツカサ…お前は、お前は俺が止めるっ!!」

 

そう叫んだディエンドは己の武器であるシアンの銃『ディエンドライバー』に二枚の黄色いカードをセットする。

 

【ATACK・RIDE!…GEKIJOBAN!!】

【FINAL ATACK・RIDE!…DI・DI・DI・DIEND!!】

「たああああああああああああああああっっ!!!」

 

八体の仮面の戦士の力を己の右足に収束させた彼は、そのまま地を蹴って跳躍して渾身の跳び蹴りを浴びせようとする。

それに対抗するように、「ツカサ」と呼ばれたディケイドも黄色いカードをバックルに挿入した。

 

【FINAL ATACK・RIDE!…DE・DE・DE・DECADE!!】

「……はぁっ!!」

 

迫りくるディエンドの攻撃に、ディケイドはカウンターを決めるように回し蹴りを炸裂させる。

両者の攻撃は、けたたましい音と共に周囲を閃光に包み込むのであった。




鳴鬼はオリジナルライダーです。能力は特にありませんが、音撃棒・音撃管・音撃弦の三つを使いこなします。


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カギトリメイク・仮面ライダーアルセティル KAMEN RIDER ARSETELE

 キュウレンジャーの次の戦隊を情報を読んで思いついたネタです。
 仮面ライダーカギトを思い切って全リメイクです!


ウィリアム・キッドことキャプテンキッドが島に埋蔵されたとされる隠し財宝、一分間も光り続けたとされる呪われたホープダイヤモンド、嘘か真かすらも曖昧な徳川の埋蔵金etc…。

この世界には、現実と虚構問わず数多くの財宝が存在する…それは多くの人間によって発見し、伝わり続けてきた。

しかし、この世界では人々を不幸へと陥れる呪われた財宝が存在していた。

これは歪んだオタカラだけを狙い、無辜の人々を救う義賊(仮面ライダー)の物語…。

 

 

 

 

 

時刻は夜の七時、街灯が黒い街を色取りどりに照らしている。

そこにあるとあるビルの屋上には一人の人間がいた…その人物は明かりを照らさず、ただただ両手に持っている自身のコレクションに視線を向けている。

それは一枚の絵画で女性の上半身や男性の全体像を描いたような作品を地面に置いて鑑賞しているのだ。

それだけならば、少し変わった芸術好きの男だっただろう。

しかし……。

 

『苦しい…苦しい…!』

『助けて、助けて……!!』

 

鑑賞していた作品が揺らぎ、動き始めたのだ。

それぞれがそれぞれ、悲痛な表情と声で口々に助けを求める。

そんな普通ではない作品を鑑賞していた男も、普通ではなかった……いや、人間ですらなかった。

 

『良いぞ、良いぞぉ…やはり、人間で作った絵画は最高だぁっ…私の魂を揺さぶってくれるっ、実にアメイジングだっ』

 

やがて、月の光がビルの屋上を照らす。

その姿は巨大な額縁を胴体に張り付け、絵の具のチューブやパレットで無理やり画家を作り上げたような怪物『トレシャドー』…「トレシャドーダイヤル」と呼ばれるアイテムによって無機物から誕生した怪人である。

彼は絵の具セットを媒介とした『ペイント・トレシャドー』で自分が気に入った人間を額縁に閉じ込めて鑑賞していたのだ。

歪んだ欲望に従うようにただただ干渉を楽しむペイント……。

だが、彼の楽しみはここで終わることとなる。

 

「…っ?何だ、この音は?」

 

突如、鳴り響いてくる音にトレシャドーが顔を上げる。

楽しみを邪魔するその雑音に不快な表情(とはいってもあまり変化はないが)と共に音の発生源を探す。

しかし、その独特な音は増々大きくなり、それどころか自分の方に向かっているような気がしてくる。

段々と近づいてくる、それでいて聞き覚えのある音に「まさか」と一人ごちた時だった。

 

『んなっ!?』

 

振り向いたペイントの視界に入ったのはスタイリッシュなデザインをしたオレンジと黒でカラーリングされたバイクが、凄まじいスピードで突っ込んでくる姿…。

バイクは速度を緩めることなく、そのままペイントを吹き飛ばす。

 

『うぎゃああああああああああああああああああっっ!!?』

 

勢いよく吹き飛ばされたペイントは無様に地面を転がる結果になる。

気にすることなくバイクの運転手はヘルメットを外して少しだけパーマがかった童顔を露わにすると、少年はそのまま絵画として囚われた人々を拾い上げて安全な場所に確保する。

ようやく起き上がったペイントは地団太を踏み、突如自身の邪魔をした少年を忌々しく睨みつける。

そんな怪人が放つ殺気に怖気つくことなく、少年『芦川玲斗』は涼しげな表情で微笑む。

 

「お楽しみの時間はここまでだよ、トレシャドー」

『誰だか知らんが、邪魔をするなっ!!』

 

彼の呑気とも言える態度に憤慨したペイントは絵の具を模した破壊エネルギーを威嚇として放つがそれを難なく躱すと、宝箱と錠前、鍵を模したダークグリーンのバックル…『アルセティルドライバー』を軽く腰に当てる。

瞬間、バックルから銀のベルトが伸びて完全に腰へ巻きつくとドライバーへとなる。

そして、彼は怪盗とシルクハットを模した黒いダイヤルがあるフィギュアのようなアイテムを取り出してダイヤルを捻った瞬間、アップテンポの音楽が流れる。

 

『っ!?』

 

スタンダードダイヤルをセットしたと同時にジャズのような軽快な待機音声にペイントが驚く様子に口元に笑みを見せる玲斗。

そして…。

 

「変身っ!」

【ガチャリ!STANDARD!…STA・STANDARD! FEVER!!】

 

右側に存在する鍵型のサイドハンドル『スタートキー』を回した瞬間、錠前の開く音と共に新たな電子音声が響き渡る。

そうして変身を遂げた瞬間、最後の電子音声と共に打ち上がったオレンジ色の花火がその姿を照らした。

黒い装飾がある鮮やかなオレンジカラーのスーツに右肩にはコートを模したオレンジの裏地の黒いマントを羽織っており、シルクハットのようなバイザーの下にある赤く丸い複眼がペイントを見据える。

 

『な、何だ貴様はっ!?』

「俺は『仮面ライダーアルセティル』。アルセーヌ・ルパンとスティールを組み合わせてアルセティル、以後お見知りおきを…てねー」

 

驚愕するペイントに何処かおどけたような口調で、変身前と変わらない調子でそう名乗った『仮面ライダーアルセティル スタンダードフォルム』は右手の人差し指をゆっくりと向けて宣言する。

 

「お前の心、頂くぜ!」

『ほざけっ!!』

 

ペイントに一直線向かったアルセティルは勢いを殺すことなく敵の内側を捉えると、一気に距離を詰めた先制の飛び膝蹴りを叩き込む。

 

『うぐっ!!』

 

スピードに任せた一撃の重さでバランスを崩したペイントを転ばせると、地面に倒れたその隙に追い打ちを仕掛ける。

このまま攻撃を続けようと、拳を振り上げたアルセティルの動きが止まる。

ペイントが絵の具のチューブから放つエネルギーで彼の首を拘束する。

 

「しまっ!ぐっ!」

 

不意打ち気味に放たれた攻撃に回避することも出来ず、締め上げる首に意識が向いてしまう。

体勢を立て直したペイントは起き上がり力を強める。

 

『今度は、こっちの番だっ!!』

 

「今までの仕返し」と言わんばかりに更にに締める強さを増していくが、どんな危機にあってもアルセティルは片手をドライバーにセットしたスタンダードダイヤルを再度捻る。

 

【LET'S ILLUSION!!】

『なっ、なぁっ!?』

 

軽快な音声と共に、スモークが噴出するとアルセティルの姿は二体・三体へと分裂したのだ。

突然の奇怪な現象にペイントは思わず拘束を緩めてしまう。

それが命取りとなってしまった。

 

『ぎっ、ぐっ、がっ!?』

 

三人のアルセティルが仕掛けるスタイリッシュな動きと攻撃に怯む。

その拍子に完全に拘束から解放されたアルセティルはアッパーカットでペイントの顎を捉えると、そのまま拳のラッシュでペイントの身体に浴びせる。

 

「そらよっ!!」

『ぐおわあああああああああああああっっ!!』

 

そして、「フィニッシュ」と言わんばかりのストレートキックが完全に胴体にある額縁部分を命中させると、続けて放った中段回し蹴りで、ペイントを吹き飛ばす。

地面を激しく転がりながらも、起き上がるペイントに対して余裕の姿勢を崩さないアルセティルはスタートキーを操作する。

 

「終わり?そんじゃ止めと行きますかー」

【頂きました!STANDARD TRICK! DOKKA-N!!】

 

電子音声が鳴り響いた後、低く姿勢を沈めたアルセティルの右脚にエネルギーがチャージされると、錠前のようなエフェクトがペイントを拘束するように浮かび上がる。

 

「はぁぁぁ……!!」

 

そして、加速に乗ると高く舞い上がり、飛び蹴りの姿勢に入る。

逃げ場を完全に失ったペイントは何とか起き上がって逃走しようとするが……。

 

「せやあああああああああああっっ!!!」

『ぐぎゃああああああああああっ!!』

 

軽快な音楽をバックに放たれた必殺のキック『アルセティルフィーバー』がペイントの胴体を貫いた。

貫かれたペイント・トレシャドーは悲鳴と共に爆散、そして絵の具セットと同時に落ちたトレシャドーダイヤルが砕け散る。

 

「後は…ショウイチ叔父さんに連絡、とー…」

 

変身を解除して、そう一人ごちた玲斗は叔父へと連絡を取るべくその場を後にするのだった。




 完全な一発ネタです。

トレシャドー
特殊なアイテム『トレシャドーダイヤル』によって無機物が有機生命体へと変化した姿で日本では古くから「付喪神」と呼ばれていたりもした。生物的なデザインをしており、バックル部にある金庫のようなダイヤルが特徴。
媒介となった無機物に因んだ能力で、それぞれの欲望を満たすために行動しており我の強い個体が多い。
『アルカディア』というキーワードを口にする。


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星・座・暗・躍

 クロス系になるとISのアンチが多いなと(個人的に)思った作者が思いついた作品『仮面ライダーフォルティ(フォーゼ系オリジナルライダー)』のプロローグです。
 完全なパラレルとなっていますのでご了承ください。


死にたくない……。

極めて単純で、誰もが思い抱く感情を彼は激痛で途切れそうになる意識の中で思っていた。

ようやく、ようやく彼女と正面から見ることが出来る……。

そう強く願っていた想いは無残にも敵わなかった。

近くには自分の愛する女性がうつぶせで倒れている。

表情は分からない、だがもう生きてはいないだろうというある種の直感が彼にそう告げていた。

男性にとって、今日という日はチャンスだったのだ…今まで下から見上げて彼女の機嫌を窺うことしか出来なかった自分が、彼女に提案したのだ。

 

――――「一緒に行こう」――――

 

その時の彼女の驚いた表情は初めて見たかもしれない。

言いたいことを言おう、伝えたいことを伝えよう、娘にお土産を買ってあげよう……思い描いた理想は、不慮の事故で全て砕け散った。

割れる窓ガラスの音、人々の悲鳴、そして呆気にとられる彼女の顔。

そうして気が付けば、自分も死に体の状態で外に投げ出されていた。

 

(まだ、何も出来ていないのに。まだ…)

 

自分が愛した人たちの顔をちゃんと見ていないのに……。

その悔しさが、生き汚さが彼の意識を辛うじて繋ぎとめていた。

しかし、そこでありえないはずの声が聞こえる。

 

「まだ生きているな」

 

聞き覚えのない声に、男性は見上げる。

そこにいたのは黒いフードで全身を覆った人物…声色と口調から男性であることが分かる。

だが、列車にはそのような不審者はいなかったし救急隊とも違う。

 

「選ばせてやる。人のまま死ぬか、人間を捨てて生き延びるか」

 

そう言い放ったフードの男性に渡されたのは掌に収まるほどの奇妙な物体。

複雑な銀の装飾が施された黒い円柱系の構造となっているが、上部には銀の半円で頂点に赤いボタンがある。

奇妙なスイッチを無理やり握らされた途端、それは変化を遂げる。

 

【LAST ONE…!!】

 

不気味な電子音声と共にそのスイッチは黒いオーラのような物を噴出したかと思うと、その形を一変させた。

男性が辛うじて首を傾けてみると、スイッチは表面にいくつもの刺が現れ、銀色だった半円も薄っすらと赤く染まる。

頂点にあったボタンも斜めの位置に変わっており、見ようによっては血走った眼球のようにも見える。

だが、そんなことは男性にとってどうでも良かった。

握った瞬間に感じた溢れ出るような力の感覚……『このスイッチを使えば生きることが出来る』と、直感ながらもそう感じたのだ。

戸惑いはなかった。

 

「……っ!!」

 

問いに答える代わりに、男性は躊躇なく親指に力を込めてスイッチを押す。

カチッ、小気味良い音の後にそこからバグに侵食された黒いエネルギー『コズミックエナジー』が噴き出すと男性の身体を包み込む。

それだけではない、身体には世界で確認されている星座の配置にいくつもの光が輝く。

 

『あっ、ああっ!?ゲホッ、ゲホッ!!』

 

急激なまでの力の奔流に思わず男性は咳き込む。

しばらくして落ち着きを取り戻すと、ふと身体に違和感を覚える。

 

(痛みが、ない……?)

 

そう、先ほどまで感じていた激痛を感じないのだ。

気になって立ち上がり、近くにあった壊れた鏡を見る。

 

『なっ…!?』

 

そこにいたのは、一体の怪人だった。

白いボディに青いライン、そしてレンズのような紫色のコアを身体にはめ込んだ怪物……その背後には白い糸のような物体に体を覆われた傷だらけの自分がいる。

試しにゆっくりと右手を自分の頭に触れてみる、すると掌から伝わる人間とは違う感触と同時に、鏡に映った怪人も同じ行動をとる。

 

「素晴らしいな。こうも容易くラストワンへと至るとは」

 

フードの男性は満足げに怪人となった男性に拍手を送る。

一方の怪人は自分の姿を見つめていた。

 

(これが、私……)

 

最初は戸惑いこそ覚えたが、すぐにそんな感情はなくなった。

身体中に満ちる力……自分が欲していた力、立ち上がって正面から見ることの出来る力。

心の底から望んでいた物に怪人は喜ぶ。

瞬間、男性の身体に異変が起こる。

繭のような糸に覆われていた抜け殻が赤黒く光ると、それは粒子状となって分解されて怪人の身体へと吸い込まれていく。

完全に抜け殻がコズミックエナジーとして取り込まれた途端、怪人の身体にあったコア『スターコア』が再び輝く。

再び星の運命を刻み込んだ怪人に、フードの男性は驚きを露にする。

 

「流石に予想外だったな。こうもあっさりラストオーバー……人間を捨てるとはな」

『未練がなかったので』

 

その言葉に怪人『ゾディアーツ』は言葉を返す。

過去の自分に未練などない、だが……。

ゾディアーツは『彼女』の身体を抱き上げる。

運が良かったのかはわからないが、彼女の亡骸は比較的綺麗な状態だった。

表情からも苦し気な様子は感じられない。

少しだけ安堵したゾディアーツは、フードの男性に改めて尋ねる。

 

『……なぜ、私だけを?』

「まだ生きていた。仲間に出来ると思ったからスイッチを渡した」

 

「それだけだ」と言わんばかりに、フードの男性は答える。

だが、その答えで納得したのかゾディアーツは彼の方へと向き直る。

 

『詳しい話を聞かせてもらいます?』

 

そうして、彼は人間を捨てた。

 

 

 

 

 

「ホロスコープス…いえ、サジタリウス様は敗北してしまいましたか」

 

青いスーツに身を纏い、黒いネクタイを締めたモノクルの『紳士』はポッドに入った紅茶をカップに淹れながらフードの男性の報告を聞く。

彼らの他にも壮年の男性にセレブ然とした金髪の美女、筋骨隆々としたタンクトップの男など国籍も年齢もバラバラの人間が集まっている。

紅茶を全員分用意した紳士がカップを置く中、フードの男性が報告を続ける。

 

「だが、おかげで動きやすくなったのは事実だ。射手座は仮面ライダーを無力化してくれたからな」

「でも、もう一人の仮面ライダーに関してはどうするつもりなの?」

「婆さんの言う通りだぜぇ、アスクレピオスの旦那ぁ」

「……その呼び方、好い加減やめてくれない?」

 

タンクトップの男性の呼び名に怒りを露にした美女が睨むが、当の本人は何処吹く風だ。

その殺気を和らげるのが、紳士の役目となっていた。

彼女の気に入っているお茶菓子を置き、アスクレピオスの方を向く。

 

「つまり、我々の動く時が来たと……そういうことですね」

「そうだ。お前がスイッチを渡して覚醒させたオリオン座の調子は?」

「どうでしょうねぇ。最初は上機嫌でしたが様子が段々と…あの調子ではバグるのも時間の問題でしょう」

 

肩をすくめて答えた紳士の言葉にアスクレピオスは「構わん」と答える。

今回はあくまでも自分たちに対抗出来る勢力がいるかどうかの確認、その過程でオリオンが暴走しようと自滅しようと問題はない。

すると、紅茶を飲み終えた壮年の男性が席を立つ。

 

「どうした?小獅子座」

「もうすぐ鍛錬の時間なのでな。失礼する」

 

それだけを言い、彼はそのままこの場を後にする。

その行動が切っ掛けとなったのかメンバーは席を立って思い思いの行動をする。

アスクレピオスの方も既に伝えるべきことは伝えたのか、何も言うことなくソファに腰を掛ける。

一方の紳士はスイッチの入った銀のトランクを持って立ち上がる。

 

「何処に行くのかしら、紳士?」

「使える傭兵を集めに、ですよ。アンドロメダ様」

 

薄く微笑んだ紳士は、そのまま歩き去ると自らのスイッチを取り出す。

紫の螺旋状になっているそのスイッチは、金と赤の装飾がありボタンには彼が引き出した星座のマークが刻まれている。

 

「次は、狼座のゾディアーツでも作りましょうかねぇ」

 

独り言ちながら彼がスイッチを押すと、その身体は赤黒い粒子状となって崩れ、そこからスターコアを輝かせたゾディアーツの姿が露になる。

まるで剥がれ落ちるように変身したゾディアーツは金の装飾があるクロークを靡かせる。

 

『星に、願いを……』

 

まるで何かに祈るように、今日も堕ちた星座は同族を増やすべく暗躍する。




 ここでちょっとした解説コーナー。

ゾディアーツ:
基本的には原作と同じ設定。だが、バグったコズミックエナジーによって人間を負荷を無視して急激に進化させるという相違点がある。
そのせいか、スイッチャーによっては常軌を逸した行動をとることも少なくない。

紳士:
イギリス出身の男性。妻と共に旅行に出ていたが列車での事故に巻き込まれる。その際フードの男性に渡されたゾディアーツスイッチを使い、人間を捨てた。
妻と娘を愛しているが卑屈になっていたため、今回の計画は意を決してのことだったらしい。

フードの男性:
アスクレピオスと呼ばれている。彼もゾディアーツでリーダーのような振る舞いをするが、単なるまとめ役である。

紳士とフードの仲間:
国籍も年齢もバラバラなメンバー。彼ら全員ゾディアーツであり、完全に人間の身体を捨てたラストオーバーという存在。
ちなみに美女が「婆さん」と呼ばれるのは実年齢が相当高いからである。

ラストオーバー:
幹部格。最終的に人体と融合するホロスコープスと違い、抜け殻となった身体をコズミックエナジーへと分解・吸収することで完全に人間を捨てたゾディアーツのこと。
モチーフこそ往来のゾディアーツと同じで変化こそないが、そのスペックはホロスコープスとほぼ同等。

サジタリウス:
フォーゼと戦ったらしいホロスコープスの頂点に立つ者。結果的に敗北したらしいが、コズミックステイツになったフォーゼと相打ちになったらしい。


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仮面ライダーガードレット KAMEN RIDER GUARDLLET

 昨日パトレンジャーに完全に影響されました。圭一郎先輩カッコよすぎる……!!(パトレンジャー派)


『あーくそっ、ついてないぜっ!!』

 

立ち入り禁止区となっている広場には、黒い機械の怪物が苛々していた。

メカニカルな光沢を持つ鋼鉄の怪人は『ガトリング・トレシャドー』……思考も言動も粗野な彼が苛立っているのには理由がある。

自分たちの頂点に立つ『長老』の方針により、トレシャドーはこの世界から別の地へと活動拠点を移すことにしたのだ。

それ自体に不満などなかったのだが、邪魔者…仮面ライダーに余計なことを感づかれないために何体か陽動を兼ねた見張りを置くことにしたのだ。

それに選ばれたのがペイントと、彼だ。

未開の地へ暴れるのを楽しみにしていたガトリングにとって、これほどストレスのたまることはない。

しかし、長老に逆らうことも出来ず言われるがままにこうして派手なパフォーマンスを起こしているのが現状である。

しかし……。

 

「動くなっ、トレシャドーッ!!」

『ああっ?』

 

敵意を含んだ怒声に、面倒そうに視線を動かす。

そこにいたのは紺色の警官服に身を包んだ一人の青年。

中性的だが短い黒髪と鋭い視線から精悍さを抱かせるが、弱い人間が現れたことにガトリングはさらに苛立ちを募らせる。

そんな彼の心情など知る由もなく、青年『朝花 桜(あさばな さくら)』は目の前の怪人に臆することなく叫ぶ。

 

「人々をこれ以上、危険な目には合わせない!」

 

そう叫んだ彼が取り出したのは赤の装飾やラインがある白い奇妙な物体……長方形のような形をした接続部分があるそれを腰の前に当てると、黄色いベルトが伸びて桜の腹部に完全に固定される。

何かのベルトのようになったデバイス『バーサスドライバー』をセットしてから、今度は片手サイズの物体を取り出す。

見た目は白いラインのある青いバイクだが、ガンマン風のデザインが特徴の『バーサスギア』をドライバーの接続部分に右側からスライドするようにセットする。

 

【HERO A・RISE!!♪ ARE YOU READY!?】

 

ノリの良い軽快な音声が鳴り響いた後、気にすることなく桜は左側にあるグリップハンドルを握ってロックボタンを押しながら回す。

そして、自身にみなぎる熱い感情に従うように叫んだ。

 

「変身っ!!」

【ガチャリ!百発GUNMAN! FEVER!!】

 

前の開く音と共に新たな電子音声が響き渡ると同時に桜の身体を青いスーツと装甲が装備される。

そうして変身を遂げた瞬間、最後の電子音声と共に打ち上がった青い花火がその姿を照らした。

警察官を思わせるようなブルーカラー……しかし、メカニカルなウェスタンハット型の頭部とブーツからは西部劇のガンマンを思わせるようなデザインとなっている。

 

「『仮面ライダーガードレット』ッ!!貴様の排除を開始するっ!」

 

宣言と共にパトカーを模した白と赤の専用武器『執行拳銃ビリー・ザ・リボルバー』を召喚し、両手で構えてからトリガーを引く。

発砲音と共に、弾丸の形となったエネルギー弾は容赦なくガトリングの身体へと命中する。

 

『くそっ!ポリ公が図に乗りやがって…やっちまえっ!!』

 

その言葉に呼応するように現れた戦闘員『ポーンズ・トレシャドー』が襲い掛かるが、それに慌てることなくガードレットは後ろから迫る攻撃を躱すと振り向きざまにカウンターの銃撃を浴びせる。

正面からの攻撃は片手で捌き、一・二体のポーンズに足払いをして転ばせて弾丸を放つ。

型にはまりながらも、何処か変則的なガン=カタにポーンズの数は確実減らされていく。

 

【RAPID SHOT!!】

 

粗方の数が減ったのを確認したガードレットはドライバーにセットしていたバーサスギアにあるボタンを押した瞬間、音声が響く。

そしてトリガーを引きっぱなしにすると、空いた手で素早く撃鉄を何度も起こす。

 

『ギャッ!?』

『グギャッ!!』

 

頭部や心臓へと必中したポーンズうめき声と共に消滅する。

バーサスギアは乗り物と神話や歴史などの英雄が担った兵種が力として宿っており、付属のボタンを押すことで能力が解放されるのだ。

精密かつ素早いガンプレイに周囲のポーンズたちの数は瞬く間に減っていき、最後の一人を撃ち抜いたところで残りはガトリングだけとなってしまう。

 

『こ、のっ…クソ野郎があああああああああああっっ!!!』

 

激昂したトレシャドーは左腕をガトリングの銃身へと変形させると、そのまま高速回転を始めて無数の弾丸を放つ。

命中精度こそ低いが、弾丸の雨は周囲のオブジェクトを破壊していく。

だがガードレットは彼を挑発するように一発だけ銃撃をすると、そのまま相手をかく乱するように移動を始める。

彼が変身しているバーサスギア『ガンマンプラモ』はバイクの力も宿しているため、ローラースケートの要領でスピーディな走行が可能となっているのだ。

弾丸の雨を前転で回避するが、その合間にもビリー・ザ・リボルバーから放たれる弾丸によってガトリングの身体から火花が散る。

 

「止めだっ!!」

【ガチャリ!JUDGEMENT!!】

 

グリップハンドルを握って再び回した瞬間、電子音声と共に膨大な青いエネルギーが銃口へとチャージされる。

しっかりとガードレットは両手でビリー・ザ・リボルバーを構えて引き金を引いた。

 

「はぁっ!!」

『こ、こんなはずじゃあ…ぎゃあああああああああああっっ!!』

 

最後の最後まで抵抗したガトリング・トレシャドーは強烈なエネルギー弾による一撃が直撃し、元の器物である玩具の銃へと戻る。

戦闘が終わったのを確認したガードレットは無線機で上司へと連絡する。

 

「トレシャドーの撃退を確認。これより帰還します」

 

また一つ、市民を脅かす存在から人々を守ることが出来た……。

その事実を改めて感じながら、桜は報告を済ませるべくその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

だが、彼はまだ知らない。

トレシャドーたちが忘れられた存在が住まう地で暗躍を始めたことも、そこで二人の仲間が出来ることも。

そして…。

 

「動くな!怪盗…僕の信念に基づいて君たちを拘束するっ!!」

「俺の信じる正義、止められるなら止めてみなよー……警察っ!!」

 

自らの信念と真っ向から対立する、正義の怪盗と邂逅することも……。

まだ、誰も知らない。




仮面ライダーガードレッド 名前の由来……ガード+バレット
市民の安全を守るべく、トレシャドーと戦う警察官『朝花桜(あさばなサクラ)』が変身した姿。名前で勘違いされやすいが青年で高校卒業と同時に警察官となった。真面目な熱血漢で大儀よりも目の前の人間を助ける警察官になるべくしてなった男。姉と暮らしているがゲロまずの料理を作るため、意外と手先が器用。
両手で構えた専用武器『ビリー・ザ・リボルバー』による精密かつ高速な射撃と空手を組み合わせた接近戦を得意とする。
怪盗である仮面ライダーアルセティルとも真っ向から対立するが、どちらかと言えばルパン三世と銭形警部のような関係で時に敵対し、時に共闘するといった場面もしばしばでアルセティルの正体が未成年であることからも「危険な行為をさせないために更生させる」といった理由で証拠を残さない彼を現行犯で捕まえようとする。


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仮面ライダーファビート(※三次創作)

 この作品は、万年青さんという日ごろからお世話になっている方の作品の設定をお借りし、独自のアレンジを加えたものです。もちろん、ご本人から許可はいただいております。
 扉の開いた見えない世界を、お楽しみください。


『ああ……これで今日の狩りは終いだなぁ』

 

周囲に転がり、辛うじて命に別条のない不良たちを見ながら『その妖怪』は月明かりに照らされる。

ビルを思わせるような灰色のボディに伸び放題になっている艶のない黒い髪に、緑色の不気味な顔の口からは不気味な牙が見える。

 

『はっ!働いたこともねぇゴミどもが社会人様に歯向かうからこうなるんだよっ!!!』

 

相手を蔑む言葉と共に、苛立ちを吐き出した妖怪は更なる危害を加えようと足を上げた時だった。

 

YOUKA-I DERUKA-I!? (ヨウカーイデルカーイ) YOUKA-I DERUKA-I!?…♪】

 

ノリの良い、奇妙な歌が響き渡る。

あまりにも場違いなそれは悦に浸っていた怪物の集中力を乱し、不気味な夜を否が応でも騒がしくする。

音の発生源が何処なのか、苛立たし気に周囲を見渡そうと怪物が振り向いた時だった。

 

「変身」

 

大きくはない、それでいて夜に響く青年の声が聞こえた。

 

【BRAZE UP! 燃えるぜ爆走!爆炎暴走GYUGYU-N!!♪】

 

その後に続く…何かを端的に表したような音声。

同時に怪物の肌を焼くような凄まじいほどの熱気。

そして……足音と共に姿を見せる一人の戦士。

それは人間ではなかった。

オレンジと青を基本カラーとしたその装甲はバイクを模しており、頭部にはバイクのマフラーを模した銀色の装飾がある。

シャッターの下には紫色の複眼が露出しているが、何よりも目を引くのは腹部に装着している物体だ。

リボルバーマグナムとバイクハンドルを模しており、弾倉を模したスロットにはオレンジ色のアイテムが装填されている。

 

『な、何だお前…』

「お前の夜も、ここまでだ」

 

突然の来訪者に驚く怪物に、そう返した戦士はエンジン音と共に距離を詰めると怪物を殴り飛ばす。

 

『うぐえっ!?がっ!!』

 

不意を突かれた攻撃に吹き飛びそうになる怪物の両肩を掴み、そのまま膝蹴りを鳩尾目掛けて連続で浴びせる。

そのままヤクザキックで蹴り飛ばされた怪物は地面を削りながら数メートルまで転がる。

 

『…ああああああああああああっっ!!!何なんだよてめぇええええええええええええっっ!!!?』

「うるさいな。俺はファビート……お前の性根ごと焼き潰す戦士『仮面ライダーファビート』だ。これで満足したか?」

 

戦士…ファビートの言葉に怪物『オトロシ・モノノケ』は苛立ったように頭をかきむしる。

無理もない、無敵に近い身体を手に入れたと思ったら自分と同じ存在に邪魔されたのだから。

 

『俺はなぁ、俺を裏切った連中に正当な裁きを与えているんだよっ。邪魔するんじゃねぇ!!』

「何が正当な裁きだ。お前が会社を首になったのはパワハラしていたからで、最初に裏切ったのはお前だ」

『何だとぉっ!!?』

「新しい文化や社会に馴染めず、ただただ自分が輝いていたことを正当化して下の連中を支配する……頭の固い中年親父の考えそうなことだな」

 

鼻で笑うファビートにオトロシ……彼に憑依されている男性は「ふざけんなっ」と地団駄を踏んで不機嫌さを隠そうとしない。

彼は、ある中小企業での社長だった。

社会人としての意識は高く自らの会社のために行動出来る人間ではあるが、部下に対して非常に高圧的に接し、厳しいノルマを強いていた。

少しでも業績が著しくなければ、何度も謝罪する部下の頭を押さえつけ、怒鳴りつけて突飛ばしたりもした。

だが、部下たちはそんな彼を糾弾して裁判にかけた。

部下たちが密かに集めていた証拠品によって、テレビや新聞にも全て取り上げられ全てを失った。

ふざけんな……。

彼は叫んだ。

会社のために行動したのに、何でこんな仕打ちを受けなければならない。

そんなどす黒い、元部下たちへの憎悪がオトロシを呼び出し憑依されたのだ。

 

『俺は間違ってないっ、俺は悪くないっ、悪いのはあいつらだっ。あいつらのせいで俺はこんな目にあってるんだっ、あいつらが俺に歯向かわなければ……』

「……はぁ。こりゃ重症だな」

『あいつらのせいでアイツラアイツラアイツラアイツラアイツラアイツラアイツラララガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!』

 

紫色の不気味なオーラを纏いながら、獣のように飛び掛かってくる。

オトロシはその恐ろしい表情で落下しファビートごと押し潰そうとするが、やがてほんの数メートルの距離で止まった。

 

『あっ、えっ?』

「悪いな。俺はまだ学生でね、あんたの言ってることなんかミリ単位も理解出来ない」

 

呆然とするオトロシにあっけらかんと言い放ったファビートの右手にいつの間にか武器が握られていた。

赤い柄の部分がバイクハンドル状になっている片手剣を召喚してオトロシの身体を貫いたのだ。

自身に突き刺さっている刀身を必死に引き抜こうと抵抗する怪人に気にすることなく、ハンドルになっている柄を捻ると、蒸気と共に刀身に熱が宿る。

 

『があああああああああっっ!!?熱い熱い熱いいいいいいいいいいいいいっっ!!!』

 

燃え上がるオトロシの悲鳴があがる。

ファビートのセットしているモノノケは『オボログルマ』。

乗り物が持つ馬力とスピード、そして鬼火を自在に操る力をファビートドライバーによって制御することで、火炎を操る高速の戦士へと姿を変えるのだ。

 

「そーら、よっ!!」

 

そのまま武器『オボロスラッシャー』を振るってオトロシを投げ捨てたファビートは続けて赤熱した斬撃を何度も浴びせてから再び蹴り飛ばす。

再び吹き飛んだオトロシに止めをさすべく、ドライバーにあるハンドルに手を掛ける。

そして、燃え広がる炎を消そうと地面を転がる怪物を見据えながらサイドハンドルを捻った。

 

【LET'S BEAT! FIBEAT(ファビート) BREAK!!】

 

瞬間、身体は赤熱すると同時に青とオレンジの炎が吹き上がる。

そして助走をつけてから高く跳躍して一回転する。

 

「だあああああああああああああああああっっ!!!」

『ひっ、あんぎゃああああああああああああああああっっ!!!』

 

そこから繰り出される急降下キック『ファビートストライク』が、炎を消してようやく起き上がったオトロシ・モノノケのボディを貫いた。

絶叫と共に爆散し、そこには髭を生やしたスーツ姿の中年男性が気絶した状態で倒れている。

しかし、戦闘が終わったにも関わらずファビートは何かを探すように辺りを見渡す。

 

「……本体は無事か」

 

破壊されたモノノケのコアが見つからないことから、逃げられたことに舌打ちするも思考を切り替えたファビートは倒れている男性を担ぎ上げ、自身の愛車へと足を進めるのであった。

 

 

 

 

 

同時刻。

人気のない不気味な洋館に、一人の青年が供えられたチェアに腰を掛けていた。

髪を腰まで長く伸ばした彼は背後から聞こえてくる足音に振り向くことなく穏やかな様子のまま、相手の報告を待つ。

 

「……オトロシのコアは回収しておきましたよ。『ソラナキ』さん」

「ご苦労様。『大地』……君は優秀だね」

 

黒い正装に身を包んだ小柄な少年…大地は上司であるソラナキの言葉に「どういたしまして」と年不相応の言葉で返す。

そして立ち上がって振り返った彼は淡く発光するモノノケのコアを見つめる。

 

「『ヒトツキ型』の君が憑依した相手は良かったが……まぁ何れは幽霊電車で地獄行きだったんだ。相性が悪かったとして次の相手を探そう」

 

落ち着いた彼の言葉に反応するように、オトロシのコアは不気味に点滅を繰り返すのであった。




モノノケ
日本の妖怪と同じ妖力を持つ存在。彼らは実態を持たず歯車『モノノケギア』の状態で動いており、物体に憑依して実態を得る『モノツキ』・波長の合った人間に憑依する『ヒトツキ』が存在する。
今回のモノノケ『オトロシ』は人に取り憑くヒトツキタイプであり、パワハラを働いた末に全てを失った中年男性に憑依していた。
撃破の際は、モノノケのコアだけが破壊出来るので問題はない。仮面ライダーの匙加減では憑依した物体や人間ごと撃破することも可能。
共通点として身体の何処かに心臓のような紋章がある。


仮面ライダーファビート 名前の由来はファイヤーとビートの造語。
オボログルマをセットしたファビートドライバーで変身し、オレンジと青を基本カラーとしておりバイクを模しており頭部にはバイクのマフラーを模した銀色の装飾がある。シャッターの下に紫色の複眼が隠れている。
柄の部分がバイクハンドル状になっていてアクセルを捻ると威力を上げる剣「オボロスラッシャー」で相手を追い詰めるだけでなく愛機「マシンヒート」で相手を翻弄したり追跡する。
必殺技は二色の炎を纏ったライダーキック「ファビートブレイク」とギアをセットしたオボロスラッシャーによる赤熱した刀身で相手を切り裂く「オボログルマストライク」
〇ファビートドライバー :青が基本カラーでリボルバーマグナムとバイクハンドルを模しており弾倉を模したスロットにオボログルマギアを縦に装填しハンドルを捻ることで変身する。
マシンヒート :劇中には登場しなかったが鬼火を模したバイクであり基本カラーはメタリックレッド。火炎弾を発射したり、瓦礫を粉砕するなど馬力があるスーパーマシン。


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新人類の誕生

 リマジアギトの世界から持ってきました(大嘘)


昔々……それは、まだ生物が誕生する前のことです。

最初の神秘…宇宙を構成した光と闇はそれぞれに力と意志を持ち、「世界」という箱庭を創造した彼らは自らの分身として使徒を創りました。

後に彼らに『天使』と名前を付けた光と闇は、自身に似せた生命体と一緒に天使の姿を持った生物たちを世界へと誕生させます。

二人は七体の天使を傍に置き、進化と繁栄を繰り返す自身の子……『人間』を愛し、彼らの行く末を見守っていました。

しかし海が満ち、山が並び、そすいて時が流れるにつれて人間たちを見守り、時に導いてきた天使たちは次第に不満を募らせるようになります。

 

「何故我らの眷属だけあなた方の愛を授けられないのか」

 

光と闇は、自らが創造した世界と生命を心から愛していました。

ですが天使は人間より下に置かれている自らの眷属、つまり動物たちに憐憫や怒りの感情を抱いてしまいます。

彼らの意志を尊重した七体の天使たちは彼らの長となり、傲慢な生き物へと成り下がっていた人間に宣告を行うと地上へと降り立ちました。

以降、人間たちは天使と四十年にも渡る全面戦争へと挑みます。

最も天へと近い存在の天使に、特別な力を持たずに生まれた人間は成す術もありません。

しかし虐げられる存在へとなってしまった人間を不憫に思った天使長がいました。

それが、プロメスでした。

火を司り、虫と恐竜のオリジナルとなった彼は追い詰められ、嘆き悲しむ人間に心を痛めます。

彼は地に降り立ち、同じく未来のない争いに心を痛める女性と出会いました。

実際に人間と触れ合い、言葉を交わした彼はこの先の争いに意味がないことに改めて気づきます。それと同時に人間の女性を愛するようになります。

そうして彼と彼女は想いを深め、交わったことで一人の子を産み落としました。

その子どもは『ネフィリム』と名前を与えられ、著しいほどの成長を遂げた彼は赤い竜へと化身する能力と共に、地上から去っていったプロメスの代わりに人間を襲う天使へと果敢に立ち向かいます。

同時に『火』という概念を教えられた人間たちも武器を手に、天使たちへと挑みます。

人々から希望と呼ばれるネフィリムでしたが、生まれてから間もない彼に悲劇が襲い掛かります。

彼の母親はプロメス……敵である天使とまぐわった忌むべき存在として火刑へと処されてしまいました。

息子であるネフィリムは人間を代表していた長に懇願します。「母はもうあの人とは関係ない。だから開放をしてほしい」と。

しかし長はそれを拒みます。

 

「彼女は天使と交わった。それはつまり君のような存在を生み出せる、我々は天使たちから彼女を解放しなければならない」

 

そう信じていた人類の長は、プロメスから授かった火によって彼女は救済されてしまいます。

苦しむ彼女の声に人々は祈り、天使たちの手から逃れたネフィリムの母親に喜びました。

そして、まだ母の愛を必要としたネフィリムは、その儀式を機に人類のために戦うことを決意しました。

自分のような戦力が必要だと判断した彼は、まず子を成すことから始めました。

長の妻と娘を彼の目の前で犯すことを宣言した彼に、長は怒りを露わにします。

しかしネフィリムは「このままでは人間は滅びる。ならば天使の力を持つ私と交わり、その子を戦士として戦わせればあなたたちは生き延びることが出来る」と言いました。

その言葉を聞いた長は言葉を失い、周囲の人間は二人の女性をネフィリムへと捧げました。

彼らの前で行われた繁栄の儀は長だった男の精神を摩耗させます。

三日三晩続いた儀式は、無事に成功しました。

ネフィリムの子は身籠った二人の女性の胎内を食い破り、既に異形となっている幼いその身を周囲の人間の祝福と共に外へと生まれました。

完全に精神を病んでしまった長の代わりに、ネフィリムは瞬く間に成長を遂げた二人の我が子と共に前線へと赴きます。

ネフィリムから十の王冠と権威を与えられた息子の一人は、父と同じ面影を残しながらも光と闇を冒涜する言葉をその身に刻み、熊の足と獅子の口を持つ豹の姿を持って天使たちを蹂躙しました。

もう一人の子は子羊のような姿と角を持ち、人類の女性に眷属を産み落とすよう強制しました。

全ての人間と天使を蹂躙し、やがて天へと侵食しようとする彼らを止めた影があります。

プロメスです。

同胞の手で囚われていた彼は直属の『光』から、この悲劇を止めるよう頼まれたのです。

愛する女性を失った悲しみ、そして我が子が起こしている惨劇による涙を仮面の下で隠しながら一人の天使長と三人の獣は対峙します。

ですが、事態の深刻さを重く見た『闇』は自らの部下である水の天使長に命じ、一度全ての生命体をやり直すことを決定していました。

ネフィリムと二人の子供……そして彼らによって産み落とされていた666体の獣は深く深く、海の底へと抵抗する間もなく沈んでいきましたが、光は全人類と全動物の中からつがいを一組ずつ方舟へと乗せていきました。

結果として、人類を殺戮へと助長させたプロメスと光は贖罪として自らの命を捧げ消滅しました。

再び人類と動物が繁栄していく世界に一人残された闇は、争いを引き起こした天使を攻め、今後何があろうとも地上への干渉を許さないことを原則しました。

こうして、長い争いは終わりを告げたのでした。



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4/1発表予定だった予告集

 四月一日に投稿したかった予告集です。


「終わりだ、闇忍……」

「見事……!」

 

宿敵『闇忍』を倒し、悪の忍者集団『虹蛇(にじのへび)』から姫君である妹の『紅芭』を守る任務を終えた仮面ライダーシノビこと神楽蓮太郎。

しかし、そこでガマノ師匠から新たな任務を授けられる。

 

「……間宮家の娘?」

『そう。今度の任務は彼女の在籍する学校に赴き、護衛することだ』

「はい!でも、仕事が…」

「心配ない。会社にはお前の声で退職を宣言しておいた」

「理不尽っ!!て、おいっ!?」

 

かくして、蓮太郎の護衛兼教員ライフが始まるっ!

そして忍び寄る謎の影……。

 

『これが俺の力……俺だけの力だあああああああああああっっ!!!』

「何だ、あの怪人……!」

 

瓢箪型のスイッチで変身する忍者と人間の欲望をモチーフにした怪人『ノーフェッド』

 

「シノビ……おまえを倒すっ。変身」

【聞いたぞ?出たぞ。確かに見たぞ。CTHURAFT……!召喚……!!】

 

ノーフェッドを守るように立ちはだかる謎の『仮面ライダークトゥーラフト』

新たな力で立ち向かえっ!!

 

【誰じゃ!?鎧じゃ!銃じゃ!SHINOBI・騎士道!見参!!】

【誰じゃ!?仏じゃ!鎌じゃ!SHINOBI・仙道!見参!!】

 

そして……。

 

「蓮太郎先生……あかりちゃんと同じぐらい好きですっ///」

「お久しぶりです。蓮太郎兄さま」

「蓮太郎先生は、私のボディーガードだもんっ!!」

 

一足遅れのモテ期突入……?

 

「いやっ!今の俺教師だし護衛対象と恋愛とか駄目だしそもそも俺未成年には興味ないからっ!!」

 

果たして蓮太郎は社会的体裁を守ることが出来るのか?

ガマノ師匠によってサラリーマンをクビにされた蓮太郎の命運は如何に!?

 

仮面ライダーシノビ ~護衛と忍者とNEW教師~

 

忍びと書いて刃の心!POWPOW言ってる場合じゃないぜっ!!

 

 

 

 

 

心を持ったピノキオは、役目を終えて眠りにつく……。

 

「マルコ、みんな……俺は幸せだった。ありがとう」

 

仮面ライダーキカイとして戦った優しき機械生命体(ヒューマノイズ)『真紀那レント』は自らの創造者を倒し、荒廃した世界に平和を取り戻した。

自らの命という対価として……。

瞳を閉じ、優しい喧噪を耳に機能停止したレントが目を覚ますと……。

 

「ここは?」

「ここはメガミギョウカイ。四人の女神が守護する世界なのです」

 

そこは、女神が世界を守る場所だった。

プラネテューヌの作業員として働きながら、女神やそこに住む住人たちと絆を育むレント。

しかし。

 

『このボルト・ヒューマノイズ様に立てつこうとはなぁっ!!』

「怪物型の、ヒューマノイズ?」

 

突如メガミギョウカイに牙を剥いたのは、人間と怪人の二つの姿を持つ『ヒューマノイズV2』

彼らの凶行に、再びレントは己の手を同胞たちの血で染めることを決意する。

 

「レント……どうして私たちのために戦うの?」

「『WILL BE THE BFF』……俺を信じてくれた友達のために戦える。だから俺は立ち上がることが出来るんだ」

 

そして、レントはヒューマノイズと対峙する。

 

『何だてめぇ。人間か?それとも…」

「キカイさ。変身」

【デカイ!ハカイ!ゴーカイ!KAMEN RIDER KIKAI!!】

「鋼のボディに熱いハート!俺は仮面ライダーキカイだー!!」

 

 

心をもって正義を成せっ!!

 

仮面ライダーキカイ ~メガミギョウカイの冒険~

 

クールなバトルを刮目せよっ!!

 

 

 

 

 

人間は、常の自分の望む正解を求めている。

 

『頼む主水。黒幕の正体を暴いてくれ……!!』

「親父……?」

 

実家の書斎から見つかった謎のDVD。

そこに残されていたのは、亡き父親からの贖罪と懇願とも呼べるビデオメッセージ。

近い内、友人の研究が悪用されるという内容を手に、彼は東京を舞台に奇妙な事件の調査を始める。

精神暴走、世間を騒がせ始める悪党の改心を目的とした心の怪盗団……いくつかのヒントを元に主水は一人の少年に目をつける。

 

「正義の怪盗団について……どう思うかな少年A君?」

「さぁ?少なくとも、何もしない大人たちよりはマシだと思いますけど」

 

暴力事件を起こしたとされる少年『雨宮蓮』との出会いが、彼を常識の外へと導いていく。

 

『上等の心だっ。こいつに寄生してりゃあ、完全体も夢じゃねぇっ!!』

「……はっ。そりゃそうか、こんな上質な餌に食いつかないほど馬鹿じゃねぇよなっ」

 

強く歪んだ心を持つ者の歪んだ認知が具現化した異世界の宮殿『パレス』の主であるシャドウと、パレスに寄生し完全体を目論む心を食らう怪人『メサイアル』

手を組んだ歪んだ悪魔どもに苦戦する心の怪盗団『ザ・ファントム』の前に、主水が降り立つ。

 

「変身っ!」

【パッションファッション!クエスチョン!QUIZ!!】

「救えよ世界、答えよ正解……問題っ!『俺は正義のヒーローである』……〇か×か?」

 

ペルソナと仮面ライダー!二つの力が出会う時、奇跡が起きる!?

正解は君の手で確かめろっ!!

 

仮面ライダークイズ ~正解を求める者たち~

 

情熱をもって答えろっ!仮面ライダークイズ!!

 

 

 

 

 

「問題。陸上の…」

「はいはーいっ!答えはジェシー・オーエンス!」

 

ブブー!

 

「何でだよっ!?」

「問題は最後まで聞け、馬鹿」



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仮面ライダーSHADOW

少しばかり設定を修正しました。


日常は、破壊された。

仕事で革靴をすり減らすサラリーマン、両親と共に遊ぶ子ども、誰もがいつもと変わらぬ生活を送っていた彼らの生活は突如現れた存在によって蹂躙の始まりが始まろうとしていた。

白い煙……身体を震わせるような冷気を吐き出し、それによって凍結されたタイルを砕きながら現れたのは人ではなく、一体の異形……。

人型になった白熊やイエティと連想すれば良いのだろうか、雪原のような白い毛布を全身に纏った鋭い氷柱が両肩と頭部に生えている。

そして何よりも異質だったのは、胸元に存在している液晶画面だ。

長方形のようなそれは埋め込まれるように身体の一部に組み込まれており、楽譜のような映像が映し出されている。

一言で表すなら『怪人』。

明らかに日常を謳歌する人間に対して友好的ではない怪人は逃げ惑う彼らを見てほくそ笑む。

誰もが自分を恐れる、誰もが自分に注目する……。

そして、それを引き起こすことが出来る絶対的な力を持っている……。

 

『くっ、はっははは……』

 

笑いが止まらない、興奮が抑えられない。

自分の力に酔いしれ、まともな思考も出来ない怪人は冷気を更に撒き散らそうと身体を動かそうとした時だった。

風を切る音とエンジン音が彼の集中力を途切れさせた。

 

『あっ?何だこのお…ぎゃあああああああああああああああああっっ!!?』

 

聞こえるはずのない奇妙な音に、首を傾げる怪人…だがその瞬間、赤い五線譜をあしらった黒いバイクによる突進攻撃が雪男のような氷の怪人を吹き飛ばした。

絶叫と共に地面を転がるも、すぐさま起き上がって自分の楽しみを邪魔した乱入者に敵意を露わにする。

 

『痛ってぇなああああああああっっ!!!何なんだてめぇっ!!?』

「何なんだ、か……如何にも三流の悪役らしいチープなセリフだな」

 

怪人の悪意に満ちた殺気に臆さず、ヘルメットを被ったバイクの運転手は軽い態度を隠すことなく相手を挑発する。

アシンメトリーを基調とした、自分のファッションセンスを前面に押し出した青年に、怪人『スコアリプス』は苛立ちを更に募らせていた。

無敵ともいえる、それこそ神のような傲慢とも呼べる歪んだ価値観を相手にぶつける。

だが、それでもなお態度を変えない運転手はヘルメットを外し、ややパーマで赤みがかった髪型の素顔を見せると、赤い結晶のような装飾がある黒いバックル『シンフォギアドライバー』を取り出して軽く腰に当てる。

そして、上着の内ポケットからペンダントサイズのスケルトンキーのようなデバイスを取り出す。

黒く輝く……射手座の星図が刻まれたアイテム『ゾディアックキー』を取り出すと、そこにあるスイッチを押して起動した。

 

【SAGITTARIUS SHADOW!!】

 

黒い結晶のような『サジタリアスシャドウキー』を構えた青年はシンフォギアドライバーの中央部へとセットする。

 

【HENSHIN STANDBY!】

 

電子音声が鳴り響き、J-POPのような軽快な待機音声が変身者の戦意と闘志を上げていく。

同時に、目の前には射手座を裏表に反転させた星図のエフェクトから、黒い甲冑を全身に纏ったケンタウロスが出現しスコアリプスを威嚇する。

そしてバイクに乗ったまま彼は……。

 

「変身っ!」

 

バックルの左右に存在する再度ハンドルを両手で交差させるように押し込んだ。

 

【MUSIC! SAGITTARIUS SHADOW TRON! SHOW TIME!!♪】

 

音楽が鳴り響き、黒い五線譜と音符で構成された旋律のようなエネルギーがベルトから具現化される。

禍々しい…負の感情を増幅させるような呪われた旋律が青年の身体へと覆っていく。

だが、それでも彼の精神が歪むことはない。

水晶のような相応しい正義の心は、決して砕けることはないのだから……。

やがてケンタウロス型のアーマー『星鎧』が全身に装着されることで変身が完了した。

全体的に獣の牙を連想させる刺々しくもシャープなデザインをした黒いスーツとアーマー、一本のホーンに赤い複眼とクラッシャー……ヘッドホンのようなマスクからさながらバッタのようにも見える。

余計な装飾のない、黒い戦士は右手に柄と鍔がトランペットのようになっている取り回しの良いサイズの剣『トランセイバー』を持っている。

 

「俺の名はシャドウ……『仮面ライダーシャドウ』。勝利の旋律、聴かせてやるよ!」

 

氷の怪人『アイス・スコアリプス』へと宣言したシャドウは、バイクから降りると、トランセイバーを構えて走る。

 

『っ!カッコ付けてんじゃねぇよっ!!』

 

突然の出来事に混乱するも、相手への敵意が限界まで膨れ上がったアイスは氷柱を全身に生やし、それらを勢いよく射出する。

普通の人間ならば躱すことなく貫かれるが、シャドウはトランセイバーを振るって氷柱による攻撃が防ぐ。

それでもスピードを削ぐことなく直進する彼に、余裕の表情がなくなったアイスは続けざまに氷柱も放つもシャドウは段々と距離を詰めていく。

やがてシャドウの斬撃がアイスの身体を切り裂いた。

 

『がぁっ!?こ、このっ』

「はっ、オラッ!」

 

トランセイバーの剣撃と、蹴りと拳による打撃を織り交ぜた連続攻撃にアイスの身体には火花が散る。

サジタリアスシャドウの能力によって元来持つ高い戦闘力を底上げしており、反撃する時間さえも与えられない連撃は、着実にアイスに余裕を失わせる。

更にシャドウは中央にセットされたキーを捻る。

 

【SHOOTING!】

「そらっ!!」

『がっ!?』

 

紫色のエネルギーを纏い、まるで放たれた矢の如き威力と速度で攻撃を叩き込んだ。

サジタリアスの力を一時的に開放したシャドウの連撃によるダメージが蓄積されるアイス。

しかし、ほんの少し出来た僅かな隙が生まれた。

 

『っ、あああああああああああああああっっ!!!』

「ちっ!」

 

口から吐き出した冷気がシャドウの黒いボディを凍てつかせた。

白く凍り付き、身動きの取れなくなった彼にアイスの余裕が最初のような悪意に満ちた余裕へと変わる。

 

『ひゃっははははははははははははっっ!!!どうだよ真っ黒野郎っ!こうなったらお前はもう逃げることも出来ないぜっ』

 

シャドウの両脚も地面ごと凍結されており、両手は僅かに動くものの回避することは難しいだろう。

「散々自分を馬鹿にしたツケを払え」とアイスは相手に見せつけるようにわざを拳を高く構える。

 

『粉々に砕けなっ!!』

 

勝利を確信したまま、拳を振り下ろそうとした時だった。

 

【TAURUS ALCHEMIST!!】

【HENSHIN STANDBY!】

 

しかし、シャドウは赤いスケルトンキー『タウラスアルケミストキー』をドライバーにセット。

すぐさま再度ハンドルを押し込んでギアに内包された『音』を開放する。

 

【MUSIC! TAURUS ALCHEMIST TRON! SHOW TIME!!♪】

『ぐおおおおおおおおおおっっ!!?』

 

ロックのような激しい音楽と共に、爆風のような風圧がアイスの身体を吹き飛ばす。

シャドウの身体からは炎が噴き出し凍結された身体を徐々に溶かしていく。

刻まれた星図は反転された牡牛座……そこに召喚されるのは黄金の角を持つ猛牛が激突し、やがてパーツ状に分解された星鎧と真っ赤な旋律がシャドウへと装着される。

現れたのは深紅に染まったスーツと重厚なアーマーに身を包んだ戦士……左肩には黒い裏地のあるマントを羽織っており、頭部にある黄金の角は強大な力を隠そうとしない。

『仮面ライダーシャドウ ミュージックタウラス』……シャドウの持つパワー形態。

 

「……来な」

『くそったれがああああああああああああっっ!!!』

 

怒りで頭に血が上ったアイスは冷気を噴き出しながら、再びシャドウを凍らせて砕こうとする。

しかし、冷気には霜がつくだけで効果がなく、アイスの攻撃も重厚な装甲の前では何の意味もない。

シャドウは専用武器……メトロノームをモチーフにした『メトロハンマー』を召喚し、そこにある錘を一番下に下げる。

 

【UP TEMPO! TANTANTAN!♪】

 

メトロハンマーに火属性と風属性の旋律が纏っていく。

やがてアイスの鳩尾に掌底を打ち込んで、ほんの少しだけ怯んだ隙を逃すことなくシャドウがハンマーを構える。

 

「粉々に砕けな」

 

その言葉…先ほどの意趣返しと言わんばかりのセリフと共に、スコアリプスの身体が強烈な灼熱と衝撃によって、吹き飛ばされた。

 

『ぎゃあああああああああああっっ!!?痛いっ、痛いっ!!』

「まだまだ行くぜ、オラッ!!」

 

激痛により、地面をのたうち回るアイスの戦意は削がれていく。

しかし、シャドウは気にすることなくメトロハンマーを掬い上げるように振り回して追撃を始める。

 

『がっ!がっ、ぎぃっ!?』

「そらよっ!!」

 

ハンマーによる重い一撃に苦しむアイス。

それだけではない、シャドウは炎と風を纏った拳を時折叩き込み再びアイスを地面へと這いつくばらせる。

再び地面に叩きつけられた怪人の精神は、既にへし折れていた。

故に。

 

「さぁ、酔い覚めの一撃だ。強烈なラストコールをプレゼントしてやるよ!」

『ひっ!ひいいいいいいいいいいいっっ!!!』

 

シャドウの宣言に、アイスは背を向けて逃げ出そうとする。

とにかくこの場から離れたかった、もう知らない……。

生存本能による逃走が思考の大半を占める中、シャドウは「逃がさない」と言わんばかりに水属性の錬金術で発生された冷気でアイスの両脚を封じる。

そして、シンフォギアドライバーから外したゾディアックキーをメトロハンマーのスロットにセットにし、錘を一番上へとスライドした。

 

【FINAL CODE! OK ALCHEMIST!!】

 

ゆったりとしたテンポの音が流れる、メトロハンマーには火・水・風・土のエレメントが一つの旋律となって徐々に蓄積されていく。

そのままジェット噴射の要領で勢いよく地面を滑ったシャドウは勝利の旋律を奏でる必殺技を相手へと繰り出した。

 

「ぶっ飛べえええええええええええええええええっっ!!!」

『ぶべええええええええええええええええええええっっ!!!?』

 

フルスイングされたメトロハンマーの一撃『アルケミックインパクト』を顔面に叩き込まれたアイス・スコアリプスは爆散。

地面に摩擦熱を作りながらも、スピードを完全に殺したシャドウはメトロハンマーを肩に担ぎ、振り返って自らが作った爆心地の方を見る。

そこには一人の男性…これといった特徴のない平凡な人物が痙攣しながらも、気を失って倒れていた。

その彼の近くには結晶のような黒と紫色の物体『スコアリプスキー』が粉々に砕けた状態で散らばっている。

 

「まっ、後は警察やらがどうにかしてくれんだろ」

 

そう独り言ちた彼は、倒れている男性を拘束すべく歩くのであった。

 

 

 

 

 

「あーあ。負けちゃいましたか」

 

その戦いを、誰にも気づかれずに観察していた人物がいた。

赤いジャケットとズボンにカジュアルなメガネをかけた青年は、双眼鏡を下ろして息を吐く。

遠くから仮面ライダーとスコアリプスの戦闘を眺めていたその青年のスマートフォンに着信が入る。

 

「はいはーい?」

 

態度を変えることなく、青年は自身と同格であり『先輩』でもある電話の相手に応対する。

 

『……その様子では、アイスは負けたようじゃのう』

「ええまぁ。旦那の予想通りと言うべきか、期待が外れてしまったと言うべきか。こっちはわざわざ『毒』までプレゼントしてやったのに……」

 

アイス・スコアリプスだった人間の醜態に呆れたような声を出す彼に、電話の相手である男性は「構わない」と言いたげな様子だ。

自分たちが欲しいのは、あくまでも同士……アイスのように感情をただ爆発させるだけのスコアリプスなど手駒程度の価値しかない。

冷徹とも言える彼の人間性に気にすことなく、青年は指示を仰ぐ。

 

「どーします?何だったら私が直接出向いても良いですけど」

『必要ない。帰還せい「イチイバル」』

「りょーかいしましたよ。『天羽々斬』の旦那」

【SCORELYPSE STANDBY……!!】

 

短い通話を終えた青年、イチイバルはスコアリプスキーを起動し、怪人の姿へと変貌すると自らの赤い身体をヘドロ状に液体化させてその場から消えるのであった。




スコアリプスキー
人間に超能力または錬金術を扱えるようにするエネルギーが内包されたアイテムで、スケルトンキーのような形をしている。スイッチを押すことで変身が可能となる。
ただし、エネルギーを直接人体に送り込むため姿が怪物じみてしまう、変身中は精神状態の昂揚による人格の変化がエゴの増幅などデメリットが多い。

スコアリプス
スコアリプスキーで変身した怪人。共通した特徴として、身体の一部に楽譜のような液晶画面が存在している。
名前の由来は「スコア(総譜)」と「アポカリプス(ギリシャ語で暴露するの意など)」の造語。
また最大の特徴として、「調律を乱す」・「乱れた旋律では倒せない」という能力がある。スコアリプスは言わば、感情という音を大音量で流している状態ためその音は耳には聞こえないが、周囲に影響を与える。例え、肉体的強さがあっても音が乱れた人間には倒せない。
ただし、仮面ライダーのシステムはスコアリプスの音をシャットダウンし、音を自動的に調律する機能があるため撃破可能。


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疑似ライダー 魔剣士ダインファング

 映画と最新話のリュウソウジャーを観て書いてみたくなりました。
 それではどうぞ。


満月の光だけが照らす夜の公園。

人気もなく、木々の騒めきだけしか聞こえないこの場所で、招かれざる客が一人……。

 

『フーッ、フーッ!フーッ!!』

 

荒い息と共に、獣を彷彿させるような前屈みの姿勢で周囲を忙しなく見渡す。

やがて月明りがその姿を照らす。

人型になったカマキリ……と例えた方が正しいだろうか?

ライトグリーンの生物的な姿と頭部にある巨大な複眼は正しくカマキリだが、全身にはナイフのような鋭利な刃物が生えており、左右には巨大になったナイフが両腕を一体化している。

怪人の名は『エヴォルガ』……。

800年前、かつて敵国の王から祖国を守るために製造された動物とスキルの姿を併せ持った怪人。

この個体は現代の人間にエヴォルガの力を捻じ込ませることで素体になった人間のマイナス感情を読み取り、強引に進化・誕生させた一体なのだ。

この手法で生まれたエヴォルガは、最初こそ素体になった人間の人格だが……。

 

『キ、キキキ!斬ルッ!切ルッ!キルルルルルウウウウウウウウッッ!!!』

 

怪人としての人格へと変貌してしまうのだ。

手当たり次第に近くの置物や木々を両腕のナイフで切り裂き、破壊するエヴォルガは『何かを切りたい』という歪んだマイナス感情だけで動いている。

理性もなく、ただただ本能に任せて暴れ回るカマキリのエヴォルガは物を切る度に悦に浸っている。

やがて一しきり暴れた後、住宅街のある方向に目を向けて不気味な笑い声と荒い息を漏らす。

一歩、また一歩と足を進めようとした時だった。

 

「何だよ。少しは成長してるかと思ったら全然じゃねぇか」

『キリッ?』

 

そこに現れたのはフードを被った人物。

声からして青年だろうか?やや粗い口調ながらも落ち着いた声音で、彼が『誕生させた個体』と対峙する。

しかし、目の前のエヴォルガにとっては関係ない。

 

『切ルッ!キキキキッ、斬ルルウウウウウッ!!』

 

切りたいから切る……自らを生み出した人物への忠誠よりも本能がそれを上回っているのだ。

敵対行動を取るエヴォルガに対し、深いため息を吐いた彼は右手首に巻き付けた赤いブレスレットを軽くかざす。

すると、赤い光と共に彼の右手に現れたのは一振りの剣……。

鍔は銀の兜を被った紺色の恐竜のような独特な形状をしており、赤黒い刀身からは禍々しいオーラがほんの少しだけ漏れている。

『変身魔剣ディノスレイブ』を構える彼に、怪人『K(ナイフ)マンティス・エヴォルガ』は唸り声をあげて標的を威嚇する。

それに気にすることなく青年は懐からサイコロ程度の大きさを持った紺色の箱を取り出し、そこにあるスイッチを押し込んだ。

 

【MEGARODON×KNIGHT!】

 

太古の巨大サメと騎士の力を宿した箱『モンスボックス』を起動し、鍔の後部に備わっている黒いレバーを手動で卸して装填するためのスロットを露出させる。

そこに『メガロナイトボックス』を装填した。

 

【GABU…!】

 

掠れたような、低い電子音声が響くと同時に待機音声が鳴り響く。

やがて痺れを切らしたKマンティスが叫び声を共に走り出し、その凶刃が青年の元に届きそうになった途端…。

 

害装(がいそう)……」

『ッ!?ギイイイイイイイイイイッッ!!!』

 

短い掛け声と共にレバーを上げて竜の口を閉じた。

同時に爆風にも等しいエネルギーが青年を包み、その余波でKマンティスが吹き飛ばされる。

 

【SCANNING…! B・B・B・BITE……!!】

 

起き上がり、土煙の向こう側から『剣士』が姿を見せる……。

深海を思わせるような紺色の西洋甲冑に身を包んだ姿。しかし、身体の各部分には肉体と鎧を無理やり繋ぎ合わせるように血管を思わせるようなチューブのような太いコードが露出している。

頭部はメガロドンを模した兜になっており、その隙間から充血したような複眼が獲物を求めるよう不気味に光っている。

ヒーローというよりは怪物、それこそKマンティスのような怪人と呼ぶに相応しい歪な鎧…そんな害ある装備を纏った剣士は名乗りを上げる。

 

『俺の名は「魔剣士ダインファング」……精々足掻いて見せろよ?』

『ギイイイイイッ!切ルッ、斬ルッ!キルウウウウウウウウウウッッ!!!』

 

本能でダインファングの挑発を理解したKマンティスは接近し鋭い刀身で相手を切り刻もうとする。

しかし、その一撃は届くことはなかった。

 

『……こんなものか?』

 

ディノスレイブでそれを防いだ彼は、呆れた様子で振り上げてから相手を大きく仰け反らせる。

そしてがら空きになった胴体に鋭い斬撃を浴びせた。

 

『キリイイイイイイイイイイイッッ!!?』

『…たくっ。戦闘力はねぇし、知性も獣以下……とんだ外れを引いちまったな』

 

自身の不始末とはいえ、改めて自分の作り出したエヴォルガの弱さに嘆きながらもダインファングは追撃の手を止めない。

さながら、血の味を覚えた獰猛なサメの如く魔剣を振って相手を斬り。時には拳と蹴りを織り交ぜながら確実にダメージを蓄積させる。

蹴り飛ばして、無理やり距離を開けたダインファングは鍔のレバーを操作して恐竜の頭部を咀嚼させる。

 

【GABURI…! DINO ARMER……!!】

 

電子音声と共に右肩に肉食恐竜の頭部を思わせる装甲が出現すると、そのまま倒れるように『地面へと潜り込んだ』……。

 

『キ、キリッ?』

『はぁっ!!』

 

動揺するKマンティスだが、自身にぶつけられている殺気に慌てて周囲を見渡し始めたのと同時に地面から出てきたダインファングの斬撃によって再び身体から火花が散る。

しかし、彼の攻撃はまだ終わらない。

 

【GABUGABURI…! WEATHER SLASH……!!】

 

今度は刀身に暴風と雨を纏わせ、圧縮させた高圧の渦巻きを斬撃の衝撃波として飛ばす。

 

『ギイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!』

 

渦巻きに攫われ、身体を切り裂かれて地面へと叩きつけられたKマンティスを見下ろしながら、ダインファングは冷たい声で宣言する。

 

『止めだ』

【GABUGABUGABURI…!】

 

レバー操作で竜の頭部を三回咀嚼させ、全てのエネルギーを刀身に集める。

逃走しようとKマンティスが動かない身体で起き上がった時には、既に手遅れだった。

 

【FULL SCANNING…! ANCIENT END……!!】

『……ふんっ!!』

『キリリイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!』

 

ディノスレイブから放たれた禍々しい必殺の斬撃『エンシェントエンド』の直撃を受けたKマンティス・エヴォルガは爆散、そこから素体となった人間が気絶した状態で地面へと倒れる。

 

『……』

 

ダインファングはゆっくりと近づき、首元に刀身を突き立てる。

こんな奴でエヴォルガを作ったのは紛れもなく自分。なら、こいつを一人消すのは当然のこと……そんな考えが頭をよぎる。

しかし……。

 

『……ちっ』

 

しばらく逡巡すると彼は変身を解除し、そしてディノスレイブのエネルギーで作った紐で手足を拘束してその場を立ち去った。

魔剣士ダインファング……彼の目的は仮面ライダーエクトゥスでさえも、エヴォルガでさえも知らない。




 魔剣士ダインファング。モチーフは言わずもがなリュウソウジャーに登場する彷徨う鎧『ガイソーグ』です。


世界観:
『恐竜(古代生物)×動物』の力を持った仮面ライダーエクトゥスと、世界を救った五人の魔法少女『グリム・テラー』が戦っている。
ダインファングもこの世界で活躍する疑似ライダーである。

魔法少女:
世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。魔法のステッキ『グリムバトン』を手に取ることで心に残った思い出の童話を己の戦闘衣装や武器として具現化することが出来る。
彼女たちは「グリム・テラー」と呼んでいたが、後に魔法少女と自らを呼ぶようになる。
そんな彼女たちも今では高校生……魔法少、女?
 
エヴォルガ:
平和を取り戻した世界に突如出現した怪人で目星をつけた人間に力の根源であるエヴォルボックスを埋め込むことで同胞たちを誕生させる。動植物を基本モチーフとするが、素体になった人間のスキルを能力とする。エヴォルガになった人間は好戦的な気質を押し付けられ、やがて怪人の人格へと変貌してしまう。
800年前、巨大な力を持った敵国の王の侵攻を止めるべく改造手術されたのが現代でエヴォルガを生み出している幹部たちである。


ダインファング ICV??? / 小西克幸
何者かが『メガロドンナイトボックス』にセットした『変身魔剣ダイノスレイブ』で変身した姿。
深海を思わせるような紺色の西洋甲冑に身を包んでおり、各部には鎧を無理やり繋ぎ合わせるような血管のような赤いコードが露出している。
ディノスレイブによる荒々しい獣を彷彿させる剣術と体術で相手を圧倒する。
エクトゥスや魔法少女たち戦い、時にエヴォルガを倒すのに協力するなどその行動は謎に包まれている。
必殺技はメガロドンの頭部を模したエネルギーの斬撃を飛ばす『エンシェントエンド』
 
〇メガロドンナイトボックス……幹部の一人だったK(ナイト)メガロドン・エヴォルガの力を宿したモンスボックス。
〇変身魔剣ディノスレイブ……エクトゥスドライバーよりも初期に開発された800年前の呪われた剣。鍔は恐竜の頭部を模しており、口を開けることでボックスをセットするスロットが出現する。
闘争心を絶やさぬよう変身者の怒りを増幅させる機能があり、数多の所有者が非業の死を遂げた。


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仮面ライダーSHADOWの簡単な設定

 初投稿がこんなもんで大変申し訳ないです。
 シャドウの簡単な設定を更新と同時にプロット版のシャドウ本編もちょっとした修正や追記も行いました。


世界観とキーワード

フェアリーコード:

人間や動植物が奏でている世界の音。

本来なら人間には聴こえないが極まれにフェアリーコードが聞こえ、操ることが出来る者もおり本作の主人公である拓斗もその一人。

その音色が世界の秩序を保っており、昔話などで語られる神隠しなどは音が外れたことで生じる空間に迷い込んでしまった事故のようなものらしい。

また、世界が奏でている風や火などの自然から生まれる音や人々の信仰心から流れる音によって龍や妖精などの『音の生き物』が誕生することもある。

フェアリーコードを操る者は手に馴染んだ楽器を武器に変換、自らの音を翅音として出現させることで武装や飛翔などを可能とする。

〇翅音 :【はね】と読む。その名の通り、フェアリーコードで構成された羽のこと。背中から生やすこともあれば顔や腕に装着することで己の武器とすることも出来る。

一口に翅音と言ってもその形は変幻自在で蝙蝠や龍のような形状や、球体状にして攻撃することも出来る。

 

マジカルアプリ:

イメージや夢などを物質化したフェアリーコードの結晶をアプリという形で封じ込めて加工したデバイス。仮面ライダーや怪人スコアリプスが変身の際に使用する。

 

情念装甲:

読み方は【スピリットクラッド】で心の音色が織りなす鎧のこと。

自身の翅音を全身に装着することで、防御力と攻撃力を上昇させる。主に暴走した妖精が使用する。仮面ライダーとスコアリプスは身に纏う己の翅音とアプリを組み合わせることで鎧の形を変える。 

 

スコアリプス:

マジカルアプリを改造した結晶『スコアリプスアプリ』で人間が変貌した怪人。変異者の中にある強い感情の音を増幅させることで強制的に翅音を引き出し、アプリに宿したフェアリーコードの魔法と共鳴することで怪人へと姿を変える。そのため変身中は理性や感情が増幅し暴走してしまう。

 

 

 

 

 

宝生 拓斗 ICV村瀬歩

本作の主人公で仮面ライダーシャドウの変身者。叔母『政宗湊』の働く喫茶店で居候しつつアルバイトしながら高校に通っている。中性的な声色と可愛らしい顔立ちが特徴の少年でややパーマで赤みがかった髪型が特徴だが、灰色のパーカーについているフードで顔を隠している。

一見すると飄々として掴み所がなく、基本的にはボケ役。しかし、実は女性に耐性がなく恥ずかしがり屋でフードを外されると顔を赤くしてしまう。「小さな親切大きなお世話」をモットーにしており、罪なき者を踏み躙る存在には怒りを露にするなど正義感も併せ持っている(これはフードあるなしに共通)

護身術としてサバットと空手を習得しており、武器と併用した足技の喧嘩殺法で連続攻撃を叩き込む戦闘スタイルを得意とする。

ちなみに母親は音楽会社のOLで仲は良好だが、医者である父親とは少しだけギクシャクした関係となっている模様。

実は中学時代はその女みたいな顔立ちのせいで荒れていたため、カツアゲやいじめをしていた不良どもを片っ端から再起不能にしていたという割とバイオレンスな思い出がある。

 

 

 

 

 

【BLACK KNIGHT!】

【HENSHIN STANDBY!】

「変身!!」

【RESONANCE! 鮮血のBLACKKNIGHT! OK DEATHPAIR SHADOW!!♪】

【BREAKTHROUGH…!】

「勝利の旋律、聴かせてやるよ!」

 

仮面ライダーシャドウ

宝生拓斗が変身する仮面ライダー。『マジカルアプリ』を『シャドウドライバー』に使用することで変身を可能とする。

西洋甲冑のような黒いパーツが真っ赤なラインケーブルによって胴体と両手足などの必要最低限の箇所に固定・装備されており、兜を模した仮面には赤く染まった複眼とV字のようなホーン、ヘッドホンのような黒い耳当てが存在している

スロットに装填されたアプリを術式によりオーバーフロー状態にすることで動物を模した姿で出現したフェアリーコードを変身者の翅音と共鳴させることで装甲へと変える。

装填用のスロットにはマジカルアプリへの負担を抑える制御装置が組み込まれており、再変身を考慮されたシステムへと改良されている。

装着される鎧は不要な箇所を削り、特に衝撃を受けやすい部位に配置することで防護能力の向上と変身者の動きへの負担を極力軽減させている。

見た目のモチーフは滅亡迅雷フォースライザーで変身する仮面ライダーたち。



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仮面ライダーデモウス

 予告もなく投稿です。
 ※名前を変更しました。


罪とは罰せられるべきものだ。

だが、罪とは時に人間が生きる上で必要なものも秘められている。

 

もし色欲がなければ、互いを愛し子孫を残すことも出来ず。

強欲でなければ、何も手に入れることが出来ず。

時に怠惰でなければ、身体を壊し。

時に暴食でなければ、生きていけない。

嫉妬し憧れなければ、向上心を生まず。

傲慢でなければ、自らの可能性に気づくことが出来ず。

憤怒しなければ、己や隣人のために戦うことも出来ない。

 

最も深き罪であり、これを戒めなければ人間は虚飾と憂鬱に塗れたただの畜生へと落ちてしまう。

これは、その内の一つを埋め込まれ、罪と戦う戦士の物語……。

 

 

 

 

 

 

何処かの街の信号機の上で、そこに一人の人物が座っていた。

これは比喩でも何でもなく、本来座るべき場所ではないそこに人物が腰を掛けて眼前に広がる景色を眺め楽しんでいる。

付近には薄いピンク色の紙袋が置いてあり、中身を取り出してシュガーをまぶしてあるドーナツを口元に運んで食べる。

 

「んっ♪美味しっ♪」

 

口の中に広がる甘味に、満面の笑みを零す。

その恰好は些か奇妙だった。

ミニスカート状になっているピンク色の着物に白いフリルとハイソックスを履いてあるその衣装はコスプレみたいだが、柔和な可愛らしい顔立ちと華奢な体躯とマッチしており、これまたお洒落なブラウンのブーツからまるで和洋折衷を思わせる。

髪型の艶やかな黒い髪を花の髪飾りで二つに結んでおり、小さいツインテールが風に揺られて少しだけ靡く。

しかし騙されてはいけない。

女子らしい恰好だが、()()()()()()()()()()()()()()()()

しかし、その笑みと容姿は男女問わず見る者全てを魅了し、場合によっては瞬く間に虜にしてしまうだろう。

それぐらいの危うさがこの少年にはある。

プレーンシュガーを食べ終え、紙袋にあるイチゴミルクがたっぷりかかったドーナツにかぶりつくと、スマホに入れてある可愛らしいアニメキャラクターのイラストを見て更に口元が笑顔になる。

この女装少年……可愛い女の子が好きなのだが、如何せん初対面にセクハラをしでかすという限りなくアウトな蛮行をしでかすため、時々アニメの女性キャラ(しかもセクシーシーン)を見て心を癒しているのだ。

まぁ彼の性癖は置いといて……ドーナツを食べてマイペースな一日を過ごしていてが、ふと自分の太ももをつつく存在に気付く。

視界を移せば、そこにはデフォルメされたサソリ…のようなガジェットがあり何かを伝えるように鋏と尾を動かしている。

 

「んっ、そっか。ありがとスコルピオ」

 

ドーナツを食べ終えて目を細めて笑った少年はガジェットを優しく撫で、瞬時にその表情を変える。

そして白い手袋を嵌めるのと同時にガジェットは淡い光と共にサソリの意匠が残ったバイクへと変形すると信号機から飛び降りた少年がそこに着地する。

 

「……よしっ!」

 

軽く気合を入れた少年は、ヘルメットを着用するとガジェットが提示した場所へとバイクを最大速度で走らせた。

 

 

 

 

 

誰も使われなくなった廃工場……そこに一体の異形が生まれようとしていた。

 

【BLOODY LOADING……】

 

か細く低い音声が鳴り響いた瞬間、鮮血のような赤い結晶が巨大化しやがて音を立てて砕ける。

そこに現れたのは獣の顔を思わせるを持ったクモの怪人……長い筋足は鋭く尖り、ドクロのような頭部を持ちシルバーのカラーリングが特徴の異形だ。

まるで鉄で人型のクモを作ったような怪人の名は『ペイン』……かつて天使と悪魔、吸血鬼伝説の原形になったとされる歪な存在。

未知のエネルギー『ブラッドエナジー』が結晶化し念が込められた無機物を吸収することで誕生する存在だ。

 

『俺の使命、俺が生まれた意味、そうだっ。俺の使命はこの工場を潰した奴らを痛めつけることっ!』

 

自らの誕生の理由と使命で自我を得た怪人『スパイダー・ペイン』は衝動のままに廃工場から出ようとした時だった。

足音が、聞こえる。

大きくはないが、しっかりと響き渡る足音に動きを止めてその方向を睨む。

そこにいたのは一人の少年……先ほどのピンクの着物を着た少年だ。

 

『……何だ貴様はっ?』

 

あまりにも場違いな存在に、スパイダーが苛立たし気に睨むのも気にせず少年は懐から『あるもの』を取り出した。

それはルーペ型のサイドレバーにメカニカルなデザインが特徴の銀のドライバーで中央にはクリアカバーがある独特なデザインのバックルだ。

それを軽く腰に当てると、ピンク色のベルトが伸びて完全に固定される。

 

『……?』

 

何をしているのか理解出来ていないスパイダーに気にすることなく、少年は次にアイテムを取り出した。

それはマゼンタの宝石のようなアイテム……動物の横顔が刻まれている『シンスタル』のスイッチを押した。

 

【LUST!】

 

起動したシンスタルをドライバーにセットし、中央のスロットにセットする。

エレキギターの軽快な待機音声が鳴り響く中で少年は虫眼鏡型のグリップ『ルーペグリップ』を握り、下に降ろしながら叫んだ。

 

「変身!」

【POSSESSION LINK!】

 

グリップを降ろした瞬間、中央にセットされたシンスタルがマゼンタ煌めき始める。

そして、電子音声と共にドライバーから『あるもの』が召喚された。

それは垂れた耳を持ったマゼンタカラーの巨大なエフェクト……兎だ。

 

『なっ、兎だって……!?』

 

驚いたのは誰でもない、スパイダーだ。

一般的に『兎』という生物は多くの人が知っているだろう……寂しいと死んでしまう動物だったり飛び跳ねる可愛い動物だったりと色々想像するだろうが、もう一つの顔がある。

それは『ある大罪』を象徴する動物であること。

とりわけ兎とは大罪の一つである『色欲』の象徴として選ばれているのだ。

気にすることなく、ブラッドエナジーで構成されたエフェクト『ブラッドモデル』は帯のような形状へと変化して縛り付けるように少年の身体へと注入していく。

まるで己の罪を罰するように身を捧げたその身体は明るい色調のマゼンタカラーのアンダースーツへと姿を変える。

 

【情熱のJUMPPING FIGHTER! LUST RABBIT!!】

【WAKE UP SIN!!】

 

そしてそのまま、兎型のブラッドモデルが完全に身体を覆い隠した瞬間、電子音声が鳴り響いた。

ブラッドモデルが弾けると、そこには鮮やかな紫色のアーマーとマスクを装着した戦士が立っており、頭部にある赤い複眼が輝く。

『色欲の罪』の象徴とされたその生物の力を宿した戦士『仮面ライダーデモウス ラストラビット』!

 

「星心大輪拳月の型門弟『操真夕姫(そうまゆうひ)』……参ります!」

 

拳を握り、スパイダーに狙いを定めたデモウスは踏み込み、瞬時に相手との距離を詰めると勢いを殺すことなく強烈な一撃を叩き込む。

 

『なっ、げぼっ!?』

 

鳩尾を殴られたスパイダーが呻くも、その隙を逃すことなく追撃の蹴りが更なるダメージを与える。

星心大輪拳には二つの型が存在する。

一つは強さを研磨すべく編み出された中国武術とジークンドーを元に手数で相手を圧倒する『太陽の型』と、夜盗や外敵との戦いを前提に古武術をベースに編み出された護身術『月の型』だ。

デモウスは月の型を学び、こうして歪な怪人から人々を守るべく鍛え上げた拳を振るっている。

縮地による移動をベースに確実な連撃で相手を追い詰めていく。

だが、スパイダーも雑魚ではない。

最初こそ驚いたが、次第に攻撃パターンを把握して来たのか攻撃を防ぎ回避する頻度が徐々にだが増えている。

やがて動きを見切り始めたスパイダーが反撃に転じた。

腕を振るい、デモウスの身体に一撃を与えようとするが当の本人に焦りの色は見えない。

それもそのはず、月の型は何も拳だけの武術ではないからだ。

 

【COMEN! ASMODEUS DAGGER!】

 

ドライバーの左側にあるボタンを押し込み、武器を召喚するための電子音声と共に両手には短剣『アスモデウスダガー』が握られる。

そして、二つの刃による剣舞がスパイダーの身体に火花を散らした。

 

『ぐああああああああああっ!!』

 

星心大輪拳は時代と共に進化を遂げている。

剣が生まれ槍が生まれ、弓矢が生まれ銃が生まれ、多くの武器が産み落とされると同時にそれらと対峙し、時には手に取って研磨し続けた。それは月の型も例外ではない。

二刀流から繰り出される無数の斬撃によって煙を上げて後退するスパイダーの胸倉を突如掴み、距離を詰めたデモウスが問い詰める。

 

「……知っているなら教えてほしい」

『な、何を言って…』

「俺に『罪』を埋め込んだのは誰だっ!お前たちの言う『天使』は、何処にいるっ!!」

 

その問いは、彼が仮面ライダーとして戦うための理由の一つ。

あの日、十二枚の白い翼を生やした人物に「色欲」という罪を埋め込まれてから、彼の生活は一変した。

発作のように起こる愛と情欲が火照りを引き起こし、非生産的な快楽への欲求が思考を蕩かし、日常生活すらもままならない。

身体の成長にも変化があった……サッカーや護身術をやっていたにも関わらず、十三になってから成長が止まったように華奢なままだし、元々中性的だった顔立ち少女のように可愛らしく、声も高いまま成長した。

性転換したわけではない、身体はきちんと男性のままだ。ただ、身体が『そうあるべきだ』と認識するように成長を遂げたのだ。

だからこそ、この終わることのない衝動を抑え込み、少しでも欲求を満たすべく『女装』をし可愛い女の子がいたら率先して声をかけるようになった。

……まぁ、前者はともかく後者に至っては割と楽しんでいるのは完全な余談だが。

閑話休題、デモウスの言葉に先ほどからぼこぼこにされていたスパイダーが身体を震わせる。

そして。

 

『そんなの、俺が知るわけないだろうがよおおおおおおおおおっっ!!!』

 

逆上したように叫ぶと身体から糸を放出しそれを両腕へと巻き付けていく。

その糸は鋼のように硬質化させ、さながらメリケンサックやガントレットのように装備するとデモウス目掛けて殴りつけた。

 

「うわっ!?」

 

スパイダーのブラッドエナジーを込めた一撃は軽いデモウスを吹き飛ばし工場の壁へと叩きつける。

それを見逃すことなく、一瞬で距離を詰めると二撃目を叩き込もうと拳を振り上げる。

 

「くっ!」

 

辛うじてそれを交差させた両腕で防ぐも、体勢や力の関係から徐々に追い詰められていく。

火事場のバカ力とでも言うべきだろうか。怒りで全身を震わせるスパイダーの力は先ほどよりも上がっており、このままデモウスを押し潰さんばかりの勢いだ。

 

「面倒だなぁ……でも、それならっ」

 

防御を解き、スパイダーの攻撃に首を傾けて回避するとその腕を捉えて動きを一時的に封じる。

そして、今度は青いシンスタルを取り出し起動した。

 

【SLOWTH!】

 

器用にグリップを戻し、猛牛の横顔が刻まれた青いシンスタルをラストシンスタルと入れ替えるようにセットする。

その瞬間。

 

「っ!!」

『ぐべっ!?』

 

不意打ち気味に放たれた頭突きがスパイダーの顔面に命中、怯んだその鳩尾に蹴って無理やり距離を開けるとゆっくりと首を傾けて音を鳴らす。

 

「……はぁー……」

【POSSESSION LINK!】

 

先ほどとは違う気怠い様子で雑にルーペグリップを握り、音声を響かせた。

青く染まったドライバーから現れたのは雄々しい角を生やした巨大な牛型の青いブラッドモデル……しかしその体躯とは裏腹にその威容を誇ることもせずすぐさま重厚なパーツへと変化しデモウスへと装着していく。

 

【不動のSTRONG CHAMPION! SLOWTH BUFFALO!!】

【WAKE UP SIN!!】

 

現れたのは色も何もない深く青い装甲に身を包んだ重厚な戦士『スロウスバッファロー』である。

そして、ボタンを押して召喚されたのは猛牛の角を思わせるような巨大な槌『ベルフェゴールメイス』……それの柄を片手で持ち、引きずりながら迫る。

正面から、何か策を弄するでもなく歩くだけだったがスパイダーはその姿にある種の恐怖を覚える。

しかし。

 

『だ、だからどうしたあああああああああああああっっ!!!』

 

恐怖を振り払うように、硬質化した糸を巻き付けた両腕による人間離れした一撃でデモウスを力の限り殴った。

 

「ふん」

 

しかし、デモウスはその一撃を正面から受け止め、軽く力を入れただけで弾き返す。

スロウスバッファローは『怠惰』……超鉄壁の鎧は防御という面倒な動作をせずとも全てを防ぎ、如何なる攻撃をも許さない。

 

『こっ、こいつっ!!』

 

スパイダーは何度もデモウスを殴りつける。

しかし、それでもダメージどころか一切怯むことなく怠惰の戦士は歩き続ける。

やがて無言の威圧に気圧されたスパイダーの足が、後ろに下がり始めた。

だが……。

 

『おおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

デモウスの発する重圧を跳ね除けるように、半ばやけになったスパイダーは大きく上げた拳を頭部目掛けて振り下ろした。

 

「ふんっ!」

『なっ!……っ!!』

 

その渾身の一撃は届くことはなかった。

デモウスは難なく片手で受け止めてから払いのけると、掌底を相手の胴体に叩き込む。

ラストラビットの通常攻撃よりも何十倍にまで強化された腕力は、スパイダーの身体を軽く仰け反らせる。

 

『こ、この…!』

「ぬんっ!!」

 

パワーを自慢にしていたスパイダーは、プライドを傷つけられた屈辱的な感情が湧き上がる。

だが「ガキがっ」と叫ぶよりも先に、デモウスがベルフェゴールメイスでスパイダーの顔面を殴りつけた。

静かな一撃は歪んだ思考回路を持つスパイダーなぞに叫ぶ暇も猶予も与えない。

ベルフェゴールメイスの一撃一撃が確実に怪人の身体を壊していく。

 

『がっ!ぐえっ、げぼっ!!があああああああああっっ!!!』

 

身体のあらゆる箇所をベルフェゴールメイスで殴られたスパイダーが地面に倒れると、そこを追撃するように何度もメイスを振り下ろす。

躊躇も容赦もない強烈な打撃が反抗心と思考を停止させていく。

やがてゴルフスイングによる攻撃で地面を削りながら吹き飛ばされたスパイダーは、起き上がって満身創痍になった己の身体を必死に動かして逃走を図ろうとする。

だが、そんな面倒ごとを怠惰の戦士は決して許しはしない。

デモウスはベルフェゴールメイスを肩に担ぐと、ドライバーにセットしていたスロウスシンスタルを取り出してメイスのスロットに装填する。

 

【EXECUTION!】

【SLOWTH INPACT!!】

 

デモウスはブラッドエナジーが充填されたベルフェゴールメイスを思い切り地面に叩きつける。

すると、青い衝撃波が発生しスパイダーへと迫り命中した。

 

『あっ、なっ!?』

 

身体が動かない……。

怠惰の力で身体の支配権を完全に停止させられたスパイダーを見据え、両手で持ち上げたメイスを思い切り振り回す。

その度にベルフェゴールメイスからは溢れんばかりの青いブラッドエナジーがチャージされ、許容量を容易く超えていく。

巨大な怠惰の竜巻は周囲の物体を砕き破壊し、そして……。

 

「ぬああああああああああああああっっ!!!」

『いぎゃあああああああああああああああああっっ!!!』

 

「消え失せろっ」と言わんばかりの雄叫びと共に振り下ろされた『スロウスインパクト』により、スパイダー・ペインは断末魔をあげて肉体を粉々に破砕され消滅した。

 

 

 

 

 

その様子を一人の人物が眺めていた。

『色欲』をその身に宿しながらも、それに抗いながら他の罪を使いこなす戦士にその瞳には期待の色が宿っている。

全身こそ黒いフードと手袋で完全に覆い隠しているその人物はこれ以上の収穫はないと判断したのか、踵を返してその場を去っていった。

その人物が去った後には、汚れのない、白い羽根が一枚だけ落ちていた。




簡単な解説
操真夕姫 :
仮面ライダーデモウスに変身する少年。和洋折衷のミニスカート状になっているピンクの着物を纏った可愛らしい少女のような少年。
ペインたちから『天使』と呼ばれる人物に『色欲』という罪を埋め込まれた。

星心大輪拳 :
仮面ライダーフォーゼに登場する人物『朔田流星 / 仮面ライダーメテオ』が使用する拳法の名前。
本作独自の設定として中国拳法とジークンドーベースの『太陽の型』、古武術と実践剣術をベースにした『月の型』の二つの型があるという設定にした。
元ネタの赤心少林拳にも異なる流派がそれぞれあったのでそのオマージュ。

ブラッドエナジー :
未知のエネルギーであり、鮮血のように赤いことから名前が付けられた。仮面ライダーやペインのエネルギー源にもなっている。

ペイン :
結晶化したブラッドエナジーが自我と感情を手に入れ、それに見合った無機物を吸収し自らの血肉とすることで誕生する怪人。基本的にスパイダーなどの通常枠は幹部たちから量産・コピーされた存在である。


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RIDER TIME ドライブ ~Re:Imagination~

注意事項!
この小説は『仮面ライダーディケイドがリマジの平成二期の世界を旅したら』というIFから生まれた作品です!
原作の人物、設定とは一切関係がございません!
このエピソードはリマジドライブの1エピソードという形になっています。
ある方の作品に触発されて書いてみましたが、色々カットされています。⬅️重要

エピソード『その爆弾魔は何を望むのか』


世界の終わり……大げさに聞こえるかもしれないが、この世界じゃ本当にあった。

ディナーをしている時、ゲームで遊んでいる時、恋人や家族と過ごしている時、それが本当に起こった。

周囲の景色がどんよりして、身体が思い通りに動けない。

おまけに、これは自然現象でも何でもない……機械の怪物が引き起こし、疑似的に止まった世界を我が物で征服しようと破壊活動が行われた。

この事件を、俺たちは『グローバルフリーズ』って名付けた。

怪物『ロイミュード』のことを知った俺は、奴らと戦える戦士をサポートするために非公式で選ばれた。

だけど、相棒だった戦士『仮面ライダー』は進化する奴らへの対策が追い付かずに敗北した。

俺を庇って。

……俺のせいだ。俺があの時銃口を向けなければ!

でも、今は考えるのはやめた。止まった世界で走り出せるのが俺だけなら。

共に戦ってくれた『彼』の分まで、走り続けるだけだ!!

 

 

 

 

 

雲一つない青空を眺めながら、穏やかな気候に柔らかい天然の芝生に身体を預ける。

それだけで深い睡魔へと誘われるようだ。

正に絶好のお昼寝日和に、一人の人物が寝転んでいた。

茶色がかった赤いロングヘアーに、可愛らしい顔立ちとスレンダーな身体つき、赤いネクタイを着用した服装にはフリルの付いたロングスカートとシャツを着用している。

もしここに、浮ついた男がいたら声を掛けたくなるような、可憐な少女がだらしない表情で睡魔に身を委ねようとしていた。

だが、その少女『戸走志乃(とばしりシノ)』には奇妙な特徴があった。

 

『……そろそろ、戻った方が良いんじゃないかな?』

 

腰に巻き付けたバックルから渋い男性の声が聞こえてきたのだ。

しかし、少女は焦ることなく睡魔で間延びした声で返答する。

 

「へーきへーき。書類仕事は終わってるし、後は定時まで待つだけ…」

 

その言葉は最後まで言えなかった。

欠伸と共に伸ばした右手に、黒い手錠が取り付けられたからだ。

 

「はい、確保」

 

そこにいたのは青いロングヘアーをポニーテールにした少女で、凛々しさの残る表情と婦警服に身を包んだ少女が、呆れた様子で拘束しているのだ。

 

「……て、毎度毎度それで捕まえるのやめてよ纏ちゃん!」

「仕方ないでしょ。こうでもしないと逃げるんだから」

 

「立て」と言わんばかりに手錠で引き上げた少女『霧園纏(きりぞのマトイ)』はさぼり癖のある同僚兼幼馴染に対して得意げな笑みを見せる。

そんな彼女とは対照的に、絶妙に疲れたような顔をする志乃は立ち上がり反論する。

 

「当たり前だろ。大体、こんな格好じゃなきゃ俺だって…」

「『私』」

 

ふと漏らした一人称に反応した纏が強い口調で窘める。

苦虫を噛み潰したように押し黙る志乃に向かって彼女は続ける。

 

「そんな言葉使っちゃ駄目。いつ何処で誰が聞いてるか分からないんだから、ね?シノちゃん?」

「うぐぅっ」

 

満面の笑みを見せる幼馴染に、志乃は「どうしてこうなったんだ」と改めて自問自答する。

戸走志乃……本名『戸走シンノスケ』は一年前に設立された重加速現象特別捜査課(通称:特捜課)に配属された警察官だ。

彼は初代仮面ライダーのバディとして戦っていたが、彼の敗北と共に自身も重傷を負うも辛うじて生存。

その後は腰に巻き付けたベルト(通称:ベルトさん)と紆余曲折を経て『仮面ライダードライブ』として戦っているのだが、そこで纏があることに気付いた。

もしシンノスケが生きていることを知られたら、周囲の人間に危害を加えるのではないかと……。

ありうるかもしれない可能性への打開策として纏が考えたのが『別人に成り済ます』ことだった。

シンノスケは元々、顔は中性的だし声変わりもほとんどしていない。おまけに身体を鍛えてもあまり筋肉が目立たない体系だ。

そんな名前負けしている彼に待っていたのは……幼少期から無理やりさせられていた女装だった。

特捜課の課長を除くメンバーには『行方不明になったシンノスケの従妹』という設定で新米婦警の『戸走志乃』が配属されたのだ。

ちなみに志乃という名前は纏が付けた渾名が由来である。

 

「まっ。そんなことは置いといて……仕事よ仕事、捜査一課からの協力要請」

「……分かった」

 

手錠を外した纏に短く返事をした志乃は、先ほどまでのだらけた態度を一変させると署内へと戻った。

 

 

 

 

 

警察署内の会議室でしばらく待機していると、三人の刑事と共に会議室に入ってきた。

 

「特捜課の戸走です」

「同じく霧園です」

 

手短に紹介を終えた後、担当した刑事からの説明によると……事件が発生したのは二週間前。

最初に爆破されたのはとある大学にある薬剤などを扱う研究室。

そこで突然重加速現象が発生し、その後爆発が起きたらしく、不運にもそこにいた研究員が爆発地の近くにいたため亡くなっている。

次の爆発は、公園で同じく重加速現象と共に遊具が爆発したらしい。幸いにも死傷者は出なかった。

その次の市内にある学習塾では生徒一人が軽い怪我で入院したらしい。

……と、事件が起こった場所に関連はなく、どちらも共通して重加速現象が確認されたということと外側から爆破だけは間違いなかった。

周囲に出来たクレーターや崩れた建物の現場写真が見る。

 

「不規則な事件現場、か……」

 

差し出されたミルクにMyガムシロップを大量投入しながら、そう一人ごちる。

いまいちギアが入らない時、志乃はこうやって脳に糖分を補給するのだ。

以前「シンノスケもそんな飲み方してた」と知り合いに言われた時は心臓が止まるかと思ったが、上手いこと誤魔化せたのは今となっては良い思い出である。

 

「三件目の事件で怪我をした生徒によると、蝙蝠みたいな怪物を見たとのことで……あの、ロリショーネンとかいう……」

「ロイミュードです」

 

纏からの訂正に刑事は「失礼しました」と謝罪した……どうもカタカナに弱い人らしい。

 

 

 

 

 

三件目の被害者が入院している病院の場所を聞き、病室の扉を纏がノックする。

 

「失礼します」

扉を開けると病室には足に包帯を巻いた中学生ぐらいの少年と母親がおり、互いに頭を下げて挨拶する。

前もって連絡していたため、志乃は相手を怖がらせないよう近くに椅子に座る。

 

「嫌なことを思い出させるかも知れないけど、事件の時にみた怪物の事を教えてくれないかな?」

「……本当に、信じてくれるんですか?」

「もちろん」

 

優しく微笑む彼女(正確には彼)に、緊張が少し解けた男子生徒は思い出すように口を開いた。

塾に忘れ物をした彼は、それを取りに足早に戻って来たのだ。

その時、自分と周囲がどんよりしたと思ったら、破裂したような音と共に吹き飛ばされたのだ。

何が起こったのか……。

混乱しながらも、視界の角に蝙蝠のような怪物を見たのだ。

それは姿を変えたと思ったら、そのまま現場から去って行った。

以上が、生徒の証言だ。

話を聞き終えた纏は、志乃にだけ聞こえる程度の声で尋ねる。

 

「シノちゃん……」

「ああ。ロイミュードで間違いない。しかも…」

 

今の証言が正しいなら、犯人は進化態になっている可能性が高い。

 

「塾が爆発したって聞いて、もしタイミングが違っていたらって、そう考えたら……!!」

 

怪我した時のことを思い出したのだろう……シーツを握り締めて身体を震わせて俯く彼に、志乃がその手に重ねて優しく握る。

 

「ありがとう。ごめんね、辛いことを思い出させちゃって……」

 

恐怖を少しでも和らげるように話す志乃に続くように、纏が頭を撫でる。

 

「ありがと、捜査の役に立ったわ」

「本当、ですか?」

「ええ。あなたが勇気を出してくれたからよ」

 

屈んで視線を合わせると、「約束する」と優しく言う。

 

「絶対に怪物は私たちが退治するわ」

 

生徒とその母に礼を述べると、二人は病室から出る。

この証言は、決して無駄じゃなかった。

胸に秘めた正義感が燃え始めたこと。

そして……。

 

「……」

 

赤いネクタイを締めた志乃……戸走シンノスケのギアが入ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志乃と纏は、病室から出て病院の回りを歩いていると一人の少年と合流する。

名前は『霧園ゴウ』……纏の弟で志乃の弟分でもある。

どうやら彼も、ロイミュードの事件を嗅ぎ付けたらしく事件を調査しているのだが、有力な手掛かりが掴めていないのが現状だ。

今後のことを話し合おうとした時、突如周囲がどんよりと重くなった。

 

 

「……重加速だっ!」

 

その場にいた人たちの動きが重加速で遅くなる中、志乃とゴウの心強い味方であるミニカー型アイテム『シフトカー』と『シグナルバイク』が現れると彼らに装着して重加速を解除する。

 

『シンノスケ、病院の外だ!』

 

ベルトの指示に従い、慌てて外に出る三人。

そこにいたのは五本の指が銃口になっている蝙蝠のような機械の怪物……首回りはオレンジ色になっており、胸部にあるプレートには「019」と刻まれている。

 

「ロイミュード!」

『っ!?』

 

振り向き、重加速の中で動いている人間に驚いたのは慌てた様子を見せるバット型ロイミュード。

しかし彼とは対照的に、ゴウは懐から銀色のマフラーのような装飾がある青いバックルを取り出した。

 

「こんな場所でエンカウント……ラッキーだかそうじゃないんだか」

 

そう言って、バックル『マッハドライバー炎』を腰に当てて伸びたベルトで完全に固定すると、白いシグナルバイクを露出したスロットに装填し再度閉じた。

「レッツ、変身!」

【SIGNAL BIKE! RIDER! MACH!!】

 

現れたのは赤いラインが入った白いボディアーマーとマフラーを靡かせた戦士『仮面ライダーマッハ』。

ロイミュードと戦う高速の戦士だ。

 

「追跡!撲め…」

『隙ありっ!!』

 

名乗りを入れようとするも、ロイミュードが放ったエネルギー弾に命中し口上がキャンセルされてしまった。

「何やってんの」と姉の纏が呆れるも、マッハはすぐに立ち上がりバイクのフロントと前輪を模した白い銃『ゼンリンシューター』を構えて発射する。

 

「よくもやりやがったな!こっからは俺の時間だ!」

 

半ば八つ当たりに近かったが、まぁすぐ戦闘に入ってくれたのは良い方だ。

相手が遠距離がメインの戦法であることを察知したのか、マッハはすぐに高速移動でロイミュードとの距離を詰めるとゼンリンシューターの強烈な打撃で相手を追い詰める。

やがて強烈なアッパーカットで吹き飛んだロイミュードは起き上がると、何やら全身に力を入れ始める。

 

『ぐっ、ううっ。あああああああああああっっ!!!』

 

その身体をオレンジカラーのデータで包み込み、何やら爆弾を模した姿へと変えるとダイナマイトのようなものを投げつけて煙幕を起こす。

強烈な煙にドライブドライバーを装着しようとした志乃や纏も思わず顔を覆ってしまい、気が付けばロイミュードはこの場から姿を消していた。

だが、逃走に専念するあまり気づけなかったのだろう。

自分が落とした証拠品を、志乃が拾っていたことに。

 

 

 

 

 

現場の整理が終わると、三人は特捜課に戻っていた。

事件資料を何度も見直すゴウとは対照的に、纏はロイミュードの傾向を分析する。

 

「あのロイミュード、ただの愉快犯みたいね」

「ああ。けど、手掛かりは掴めた」

 

そう言って志乃はロイミュードが戦闘中に落とした袋をテーブルの上に置く。

 

「そもそも資料を読んで俺が引っ掛かったのは、最初の事件……犯人が何で被害者ごと研究室内を爆発させたかだ」

「どういうこと?」

「二件目や三件目は、外側からの爆破で何れも内部に爆弾を仕掛けた訳じゃなかった。それなのに一件目は大学の研究室っていう内部から爆発させていた」

 

「それに」と火薬の入った袋を軽く持ち上げる。

 

「この火薬……気になって専門家に調べてもらったら様々な原料をミックスさせた奴だった」

 

ただの研究員が…しかも火薬に関する研究を行っていないのに何故あったのか。

志乃が導いた結論はただ一つ。

 

「ロイミュードがコピーしたのは、恐らく最初の被害者だ」

 

その言葉と同時に、スーツを着崩した強面の男性がドアを開けて現れる。

警視庁捜査一課で特捜課の連絡要員でもある男性『追蜂憲一(おいばちケンイチ)』だ。実はシンノスケの先輩でもあるのだが、当然志乃であることは知らない。

 

「嬢ちゃんに言われて調べたよ。被害者は内緒で爆弾を作ってやがった」

 

苦々しげに報告する彼に対して、「ありがとうございます」と感謝する。

とにかく、コピー元が分かれば少なくともロイミュードの傾向も分かるかもしれない。

そんな時、スマホの着信音が鳴った。

 

「はい戸走……何だって、すぐに向かいます!」

「どうかしたのっ」

「また爆破事件が起こった!」

 

ただごとではない様子に尋ねた纏に、血相を変えた志乃が叫んだ。

 

 

 

 

 

通報のあった場所の周囲にある巨大なビル……そこには爆発の影響で巨大な穴と赤い火が黒い煙を起こしており、が多くのパトカーや救急車がその被害に対処しようと集まっている。

その様子をビルの屋上から眺めている影があった。

 

「く、くっくくく……良いぞぉっ、ディ・モールト良いっ!」

 

両手を広げ、恍惚に表情を染める黒いフードを被った男。

それは間違いなくシンノスケたちが目を通していた資料にいた最初の被害者『的場総一郎』の顔であり、彼の歪んだ願望や技術を全てコピーしたロイミュード019の人間態でもある。

元々破壊衝動を秘めていた彼は、偶然忍び込んだ工場現場で爆発物を製造していた的場をコピーした後証拠隠滅も兼ねて最初の爆破事件を起こしたのだ。

つまり、シンノスケが繋ぎ合わせたロジックは正解だったのだ。

周囲の喧騒に笑いを抑えきれない019……しかし、そんな彼に声をかける存在がいた。

 

「ずいぶん楽しそうだなぁ、019」

 

威圧的な声に、不機嫌さを隠すことなく後ろを振り向く。

自身の楽しみを邪魔した人物を睨みつけようするも、すぐに顔色が変わった。

黒い上等なスーツに、黒い手袋をはめたオールバックの男性が眼鏡の奥にある切れ長の瞳を向けているからだ。

 

「モ、モンク……何でここにっ」

 

そこにいたのは、自分よりも階級が上……しかもシングルナンバーのロイミュードのモンクだ。

019もただのバカではない。

規律に厳しいこの男に目を付けられたロイミュードたちが今までどうなったのか知っている。

知っているからこそ、必死に取り繕う。

 

「ま、待ってくれよっ!ぼ、僕ははただ芸術を楽しんでるだけで、別にお前たちに迷惑をかけるつもりじゃ…」

「パニッシャーがいなくなったのを見計らって暴れた奴が言っても、説得力がねぇな」

 

冷や汗を流しながら言い訳をしようとする019の言葉を遮り、モンクは眼鏡を上げて鋭い眼光で睨みつける。

事実パニッシャーという目の上のたんこぶがいなくなったことで、溜め込んでいた破壊衝動をここぞとばかりに発散していたのだ。

 

「これ以上、てめぇに暴れられたら他の連中に示しがつかねぇ……」

 

「だからっ」とモンクは緑色のデータ状のようなエネルギーに包まれるとその姿をロイミュードの姿へと変える。

黒い異形のボディに、チャイナ服のような緑色の前垂れがある衣装に身を包んだ姿。

身体の各種にある黒い数珠はまるで東洋の拳法家とも修道士とも取れるような威圧感と神々しさを併せ持っている。

これこそシングルナンバーの個体が『モンク・ロイミュード』へと進化した姿である。

 

『ケジメ、つけさせてもらうぜ……!』

「ひっ!?」

 

一歩踏み出すモンクに、019が後退る。

コアは破壊されないだろうが、それでも徹底的に痛めつけられた後リセットされる。

せっかくここまで来たのに、せっかくこの幸福を味わおうと思ったのに。

こんなところで……!!

 

「ふ、ふざけるなっ。ふざけんなぁっ!!」

 

フードを乱暴に外した019は自らの身体をバット型ロイミュードを姿を変えると、すぐにその身体をマッハたちが対峙したものへと変化させた。

胸元にある「00:19」と緑の文字で表示された銀色の電子タイマーに、ダイナマイトで構成されたかのようなオレンジカラーの手足。

頭部は人間の顔のような窪みがある黒い爆弾のようで、頭頂部からは導火線のような長く白い紐が垂れ下がっている。

019の進化態『ボマーロイミュード』だ。

 

『おおおおおおおおおおおっっ!!!』

『ちっ、面倒くせぇなっ』

 

ボマーはすぐさま腕にあるダイナマイト型の爆弾を引きちぎって投擲するも、モンクは舌打ちと共にそれを躱して拳型のエネルギー弾を飛ばす。

カウンター気味に放たれた攻撃にボマーはダメージを受けるも、すぐさま立ち上がってダイナマイトを構えた。

それとほぼ同時刻、赤い車で現場に急ぐ志乃と纏。

到着し駆けつけた時にはモンク・ロイミュードとボマー・ロイミュードの二体が戦っているのが見えた。

 

『まだだ!この芸術を終わらせない、絶対に終わらせないっ!! 』

『いい加減にしろや、三流……!』

 

同じことを何度も繰り返すボマーに、そろそろ苛立ち始めたモンクは鳩尾目掛けて殴り飛ばす。

しかし、そこに志乃がドライブドライバーを手に持って現れる。

 

「モンク!」

『……仮面ライダーッ』

 

現れた怨敵に、モンクが視線を彼に向ける。

それが、いけなかった。

 

『締めた…!』

 

その隙に、周囲に小型爆弾をばら撒き、煙幕を発生させてボマーが逃走してしまった。

「待て!」 と、後を追おうとするもモンクが放ったエネルギー弾によって足を止めてしまう。

視線を向けるが、モンクも姿を消していた。

 

『……逃げられたみたいだね』

 

ベルトの言葉に、志乃は「くそっ」と呟くことしか出来なかった。



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その芸術を止めるのは誰か

注意事項!
この小説は『仮面ライダーディケイドがリマジの平成二期の世界を旅したら』というIFから生まれた作品です!
原作の人物、設定とは一切関係がございません!
このエピソードはリマジドライブの1エピソードという形になっています。その後編です。また、色々カットされています。←重要


現場検証後、一晩中爆弾のロイミュードへの対策を考えていた志乃たちだったが、スマホの着信音が鳴り響く。

 

「もしもし……どうしたの伝ちゃん?」

 

電話の相手は、同じく特捜課のメンバーである青年……ハンドルネーム『伝ちゃん』で眼鏡の無造作ヘアーと一昔前のオタクの外見だが、意外にも既婚者である天才ハッカー。

インターネットの情報収集に関しては最上級クラスの逸材だ。

 

『どんより通報でござるよっ!場所は藤森小学校!しかも、教室で犯人も立て籠もてるとの情報もあるなりっ!!』

「っ!行こう纏ちゃん、ゴウも…てあれ?」

「ゴウならすぐに向かったよ!私たちも早く!!」

 

行動が早い弟分に「流石」と思いながらも、志乃たちは現場へと急行した。

 

 

 

 

 

数時間前、某小学校の校門付近にいた警備員がフードを被った男に声をかけていた。

見るからに怪しい風貌の男性に、いつでも対応出来るよう身構えるが、気にすることなくフードの人物は笑みを浮かべながら口を開く。

 

「良い、とても良い……ディ・モールトッ」

「一体何を…」

「僕はね、芸術を作りたいのさ……作った爆弾で壊れる学校と子どもたちという、素晴らしい芸術をねぇっ!!!」

 

そう叫んだフードの男性……019は警備員を人間離れした腕力で投げ飛ばして意識を奪うと、そのまま小学校へと侵入する。

そして。

 

「動くなぁっ!!」

 

近くの教室へと侵入し、所持した小型爆弾を爆発させて、そこにいた担任教師と生徒たちを恐怖の色に染め上げた。

019が教壇に上がると、教師は生徒たちを守るように隅へと向かう。

 

「あはっ♪良いねぇその表情、爆発させたくなるねぇ!!ドッカーンって!!あっはははははは!!」

 

狂喜的なの笑声に怯える子どもたに、教師は「大丈夫」と必死で励ましていた。

 

 

 

 

 

その様子を、一人の影が見ていた。

 

「美しくないねぇ……」

 

019の行動に、思わず溜め息を吐く。

その人物は犯罪を許容するが、そこに確固たる己のポリシーがある。

 

「けど、これはこれで都合が良い」

 

一人ごちると、その人物の周囲にプロジェクターで投影した映像が浮かび上がり、そこから数体の異形が出てくる。

 

「行け」

 

短くそう命令すると、現れた異形たちは019の占拠する小学校へと向かっていった。

 

 

 

 

 

教師と子どもたちを人質に立て籠る019……まるで彼らを怖がらせるようにボマー・ロイミュードとしての姿を現すと、重加速を発生させる。

そして自分の身体に手を突っ込むと、そこから赤と青のコードが露出した電子タイマー付きの物体…体内で生成した爆弾を取り出す。

 

『んふふふふっ。さぁ、史上最高の芸術を…ん?」

 

これから自身で作り上げた爆弾で破壊することに興奮と歓喜を抑えきれない様子のボマー。

しかし、教室の外から何かが光っていることに気づいた。

「警察か」と人質から離れて教室を出る。

そして、光の正体を見ようと覗き込もうとした瞬間…。

 

【マガール!】

『いぎゃあああああああああっっ!!?』

 

突如、間の抜けた電子音声と軌道が曲がった光弾を顔面で受け取る形になった。

火花を散らし、煙を上げている頭を抑えながらも、何とか起き上がる。

 

『くそっ!一体、何だ… 』

 

しかし、攻撃だということに気づきすぐに教室に戻るも、そこには先ほどまでいなかった存在……マフラーを風で靡かせる白い戦士がいた。

手には先ほどボマーが体内で生成した爆弾を持っている。

先ほど光弾に紛れ込む形でシグナルバイクたちがくすねたのだ。

 

『お、お前っ!』

「ふふん♪」

 

挑発するように、爆弾を見せびらかす彼から奪還しようと迫る。

しかし、逆に戦士がボマーを殴り飛ばして名乗りをあげる。

 

「追跡!撲滅!……いずれも~マッハ!!」

 

長ったらしい名乗りをしながらも、標的を子どもたちから自身へと移すべく、彼は開けておいた窓からボマーを叩き落とす。

落下し校庭の地面へと直撃したロイミュードとは対照的に、華麗に着地した戦士は名乗りをあげた。

 

「仮面ライダー……マッハ!!」

 

決めポーズを取る戦士……マッハは手に持っていた爆弾を投げ渡すとゼンリンシューターで狙撃する。

 

『がああああああああああっっ!!』

 

起き上がったボマーは、自分の爆弾でダメージを受けると再び地面へと転がる。

これでも重加速が解除されないのは進化した賜物だろう。

 

「どうだ、自分の芸術品のお味は?」

『この、お前たち絶対に許さないっ!!』

 

煙を上げて立ち上がったボマーは地団駄を踏む。

表情こそ分からなかったが、その怒気と叫びからかなりご立腹であることが分かる。

だが、それは『彼ら』も同じだ。

突如として聞こえてくるエンジン音が静止した世界に響き渡る。

重加速などものともしない、赤きスーパーマシンは校庭に停車すると運転手が現れる。

 

「時間ぴったり、さっすがシノちゃん!!」

「デートの時間には間に合わせる、俺なりのルールだよ」

 

カップに刺さったストローでガムシロ入りのミルクを一口飲んだ志乃は、マッハに軽口を叩くとすぐさまに左手に持ったドライブドライバーを装着する。

 

「行くぜベルトさん」

『OK! Start your engine!』

 

そしてイグニッションキーを回し、構えを取るとシフトブレスにシフトスピードをセットしてレバーモードへと変形したシフトカーを操作し、叫んだ。

 

「変身っ!」

【DRIVE! Type SPEED!】

 

赤いアーマーと黒いタイヤを装着し、燃え上がるような熱と闘志を宿した戦士……そう、彼こそが。

 

「一っ走り、付き合えよっ!!」

『舐めるなっ!!』

 

身を屈めて宣言した仮面ライダードライブに、ボマーは生成した爆弾を投擲して爆破しようとする。

しかし、すぐさまレバーを三回倒して加速能力を発動させたドライブは装着したタイヤを高速回転させながら、ロイミュードと距離を詰めるとアッパーカットを浴びせてからの連撃でダメージを与える。

 

「はぁっ!」

『がぁっ!!』

 

渾身の右ストレートで吹き飛ばされたボマーは地面を転がるも、そこから追撃するようにゼンリンシューターによるエネルギー弾が命中する。

 

『ぐっ、ぐぅっ』

 

立ち上がるもすぐに膝をついてしまうボマー……形勢は既に仮面ライダーへと傾いていた。

だが、そこに思わぬ乱入者が現れる。

 

「うわっ!?」

 

突如現れた存在にマッハが驚いたように身構える。

乱入者……コブラ型とバット型、そしてスパイダー型の下級ロイミュードがそれぞれに二体ずつ現れたのだ。

「仲間か」と構えるドライブとマッハだったが、胸元にあるプレートを見たベルトが声を漏らす。

 

『あのロイミュード、数字がない』

 

そう、現れた下級ロイミュードたちには数字が彫られてなかったのだ。

本来ならばあるはずのナンバーを持たないロイミュードたちはドライブたちに敵意を明確にすると、すぐさま飛び掛かってくる。

一転して有利な立場へと逆転したボマーは笑いながら、爆弾を生成する。

 

『何だか知らないけど、喰らえっ!!』

 

手助けした下級ロイミュードたちごと巻き込むように投擲した爆弾は派手な音と共に爆発し、マッハとドライブはそれによるダメージを受ける。

 

「くっそ!やりやがったな爆弾野郎!」

「なら……車体交換と行こうか。ベルトさん!」

 

ボディから煙を上げるも、ドライブは走行してきた黒いシフトカー『シフトワイルド』をキャッチするとシフトスピードの代わりにセットしてレバーを倒す。

 

【DRIVE! TYPE WILD!!】

 

音声と共に黒いスーツは白銀へと変わり、アーマーもシャープな赤い物から武骨な4WDを思わせる黒いアーマーへと変わり、装着されていく。

変身者のパッション……すなわち熱い心を体現した形態『タイプワイルド』だ。

ハンドル剣を取り出し、ドリフト回転よる斬撃を下級ロイミュードたちに浴びせるとレバーを三回倒してシフトワイルドの能力を解放する。

 

【W・W・WILD!】

「はぁっ!!」

『ひぎゃあああああああああっっ!!』

 

そのまま、宛らアメフト選手の如き強烈なタックルで接近しボマーを吹き飛ばす。

しかし、それだけでは終わらない。

 

「今度はこれだっ!」

【DRIVE! TYPE TECHNIQUE!!】

【タイヤコウカーン! ROAD WINTER!!】

 

作業車を模した黄緑のアーマーが特徴の『タイプテクニック』へとチェンジすると、すぐさま首回りにセットされた横向きのタイヤをアイスカラーのシフトカー『ロードウィンター』へと交換する。

雪の結晶が描かれた円盤をぶら下げたような姿になるも、そこから極寒の冷気を噴射してボマーごと下級ロイミュードを凍結させる。

するとマッハは青いシグナルバイク『シグナルカクサーン』をドライバーにセットし、ドライブもソーラーカーを模した赤いシフトカー『バーニングソーラー』を召喚したドア銃のスロットに装填。

 

【HISSATSU! FULL THROTTLE!!】

【HISSA-TSU! FULL THROTTLE!!】

 

互いに異なる音声を鳴らし、ドライブはドア銃から灼熱の太陽光線を、マッハは拡散する無数のエネルギー弾で下級ロイミュードたちを粉砕した。

一方のボマーも絶叫と共に吹き飛んだが、撃破には至っておらず辛うじて立っている。

しかし動揺することもなく二人は青いシフトカーと赤いサイドカーがあるバイク型のアイテムを取り出し、シフトブレスとマッハドライバー炎のスロットに装填する。

 

【DRIVE! TYPE FOMULA!!】

【SIGNAL BIKE SHIFT CAR! RIDER! DEAD HEAT!!】

 

そして現れるのは、現時点での最強戦力……『タイプフォーミュラ』と『デッドヒートマッハ』だ。

青いF1カーを模した風の戦士は最高加速能力で、青い軌跡と共にボマーに攻撃を仕掛け、マッハも赤いエネルギーを発しながら強烈な回し蹴りを仕掛ける。

下級ロイミュードも全滅し、再度吹き飛んだボマーを見据えながらドライブが宣言した。

 

「決めるぞっ、ゴウ!」

「りょーかいっ!」

 

再び必殺技の電子音声を鳴らすとドライブは青い風を身に纏い、マッハも自身のボディを赤熱させて高く跳躍すると、そのまま勢いよく急降下キックを繰り出した。

 

「「はああああああああああああっっ!!!」」

『ぎゃああああああああああああああっっ!!!』

 

『フォーミュラドロップ』と『ヒートキックマッハー』のダブルライダーキックが直撃したボマー・ロイミュードは今度こそ爆散。

白い光のような019のコアが現れると、小さく爆ぜて消滅した。

 

『Nice Drive!!』

 

ベルトからの賛辞を受けて、ドライブとマッハの二人は勝利のハイタッチをするのだった。

 

 

 

 

 

ドライブピットにて。

 

「んー。疲れたー」

 

ウィッグを外して椅子にだらける志乃……女装を一時的に解いたシンノスケはガムシロ入りのミルクを飲み干して一息吐く。

「お疲れ」と労うベルトに礼を言いながらも、彼は今回の事件で残った『謎』について尋ねる。

 

「なぁ、ベルトさん」

『ん?』

「結局、あのロイミュードたちは何だったんだ」

 

そう、ボマーとの戦闘中に現れたあの下級ロイミュードたちだ。

ナンバーの入っていないロイミュード……あれは何だったのか。

 

「何か、嫌な予感がする……」

 

 

 

 

 

 

人工的な光で輝く街並みに、上等な白いスーツとシルクハット、そして舞踏会用のマスクを身に着けた男性は自然と笑みを零していた。

仮面ライダーのデータ収集と、あわよくばロイミュードの撃破を目的としていたが、思わぬ収穫があったと喜びを隠しきれないでいる。

 

「仮面ライダー……英雄の称号は私が頂こう」

【DRIVE……!!】

 

宣戦布告とも取れる発言と同時に、男は自らの身体を変身させた。

歪んだ車の戦士へと……。

 

 

 

 

一人の青年が喫茶店のような店から出てきた。

その服装は黒いスーツにトレンチコート……さながら刑事ドラマに出てくる刑事みたいだ。

しかし、決定的に違うのは彼の首にマゼンタカラーの変わったカメラをぶら下げていることだ。

上着の内ポケットに入った警察手帳を軽く観察し、先ほどの新聞に記載されていた事件の内容を照合し一つの結論を導き出した。

 

「ここがドライブの世界か……」




戸走シンノスケ / 戸走志乃(シノ) / 仮面ライダードライブ ICV釘宮理恵
霧園ゴウ / 仮面ライダーマッハ ICV田村篤志
ベルトさん ICVクリス・ペプラー
霧園纏(きりぞのマトイ) ICV下田麻美
追蜂(おいばち)憲一 ICV川原和
モンクロイミュード(003) ICV伊藤健太郎
ボマーロイミュード(019) ICV間島淳司
??? ICV吉野裕行
??? ICV井上正大


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ツヴァイ・リブート 奴らの名はK / 俺たちはツヴァイ

 ころころと設定が変わったツヴァイ……再始動です。やはりガイアメモリの方がしっくりきますね。


風都……そこは常に風が吹くエコの街。

良い風も吹けば、悪い風も誘い込んでしまう。

ビルが溶け、人が死ぬ……この街では、それがありふれた出来事になってしまう。

 

『はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!』

 

薄暗い裏路地、常人なら決して近づかないであろうその場所で悲劇が起こっていた。

荒い息を繰り返しながら、獣の呼吸をする一体の異形がいた。

薄暗く、肝心の姿こそ見えなかったが屈強な腕を身体の下にある物体に向かって振り下ろす度に、生々しい音と骨の砕ける音が聞こえる。

馬乗りにされている人物に向かって殴り続けていたが完全に動かなくなったのを確認すると、ゆっくりと立ち上がった。

 

『終わった。やっと、終わった』

 

加工されたような声色でそう呟いた異形は、覚束ない足取りで裏路地から去っていく。

異形の名はドーパント……それは超人。

未知のエネルギーの『地球の記憶』を封じ込めたUSB型のアイテム『ガイアメモリ』を人体に挿し込むことで人間を超越した者の総称。

適合者に引かれた魔性の小箱は、人体を相応しい形に地球の記憶をドーピングさせることで変貌させる。

超人と言えば聞こえは良いが、その実態は異形や怪物と呼ぶに相応しい。正に悪魔の力だ。

しかし、その代償はあまりにも大きい。

強大過ぎるその力には例外なく内包された毒素に精神を蝕まれ、やがて本当の怪物へと身を堕としてしまう。

それは法外なドラッグのように、危険な魅力を放つそれは自身や周囲に悲劇をもたらし、手放すことなど決して出来ない。

 

 

 

 

 

ジャズの音楽が流れる落ち着いた雰囲気の喫茶店『白銀』にて、そこに三人の可愛らしい少女がいた。

店のマスターらしき女性は少女たちの様子を察してか内密な話をするのにぴったりな席へと案内し、サービスとしてコーヒーを用意する。

「ありがとうございます」と会釈した腰まで伸ばした茶髪の可愛らしい少女『桜井望』は砂糖とミルクを入れたコーヒーを一口飲む。

 

(……結構、良いお店だな)

 

そんなことを思いながら、待ち人を待つ。

その内の一人は灰色の長い髪を二つの三つ編みにした『三角千歌』は仕切りにスマートフォンで時間を確認している一方、最後の一人であるピンク色の髪をツインテールにした少女『繭宮つむぎ』はリラックスした様子で白い紙にデザインをスケッチしている。

彼女たちはアイドルグループ『カルミナ』

元々彼女たちはとあるゲームで結成されたギルドだったのだが、望の発案によってそのままリアルグループへと昇格された奇跡のユニットである。

そんな彼女たちがこの喫茶店にいるのには理由がある。

しばらくは各々に時間を潰していたが、客が入店していたことを告げる音が鳴り、思わず視線を向けた。が、すぐに首を傾げた。

そこにいたのは長い茶髪のロングヘアーをサイドポニーしフード付きのグリーンのパーカーにチェック柄のミニスカートといった服装をしており、その下には黒いニーソックスを履いている美少女だ。

その少女は望たちのいるところまで歩いて近づくと、声を発した。

 

「『カルミナ』ってアイドルグループは、あんたたち?」

「う、うん」

 

やや不愛想さが残るクールな顔立ちの同年代の少女に対して望が答える。

すると彼女は少しだけ表情を緩める。

 

「まっ。混乱するのも分かるけど、まずは自己紹介ね」

 

近くの席から適当に椅子を持ってきて腰を掛けると、マスターにコーヒーとケーキを注文して改めて名乗る。

 

「私は『左瀬奈』……兄さん『左刹那』とは双子の妹で鳴海探偵事務所に所属する探偵よ」

「左さんの、妹」

 

そう名乗る彼女に対して千歌はオウム返しする。

刹那に妹がいるというのは聞いてはいたが、双子で…しかもこんな美少女とは聞いていなかった。

まぁ、肉親からしたら滅多なことがない限り妹を可愛いとは言わないだろうが。

 

「兄さんが仕事で忙しいってことだからね。代わりに私が、情けない連中の代わりにハードボイルドに解決しに来てやったってことよ」

 

やたら自信の籠った態度に望は思わず苦笑いするが、逆に言えば頼りがいのある姿にある程度の緊張感が解けてきた。

望たちも自己紹介をし、互いに握手を終えて良好なコンタクトを取ることも出来た。

 

「……泥棒猫の臭いがする」

「えっ?」

 

物騒な言葉が聞こえたが恐らく気のせいだろう、多分。

瀬奈に促され、望たちは依頼を話し始める。

概要としては自分たちにつき纏うストーカーをどうにかしてほしいという内容だ。

ただのストーカーなら警察に相談出来るが、どうにも嫌な予感がするのだ。

最近では連続殺人未遂事件が起こっているのもあり、警察官でもあり友人でもある刹那に相談していたのだ。

内容を聞いた瀬奈は「ふむ」と納得したように頷いて口を開いた。

 

「了解。なら、この依頼は引き受けたわ」

「本当に!?」

「こういう時のために探偵がいるのよ。ま、任せときなさいって」

 

「ありがとう!」と笑顔で瀬奈の手を握ると、彼女はすぐにカルミナの三人を帰宅させる。

幸い、帰りはマネージャーとプロデューサーが送迎してくれるため問題はない。

瀬奈もコーヒーを飲み終えてケーキを食べ終えると代金を払ってそのまま外を出る。

そしてすぐにスマホで兄である刹那に電話をかける。

 

『……そうか。悪かったな、急に借り出して』

「良いわよ、どう考えても普通の警察じゃ無理そうだし」

『だろうな。だからこそ俺たちも動ける』

 

その言葉に瀬奈が笑みを浮かべる……可愛らしい顔立ちの彼女とは思えないほどの獰猛な笑みだ。

つまり、瀬奈のスイッチが入ったことも同義だ。

 

『とにかく、俺は別方向で捜査を進める……が、その前に』

「本棚に…でしょ?」

 

双子同士だからこそ、だろうか。

互いに以心伝心するかのように、瀬奈は瞳を閉じて本棚へと入り込んだ。

 

 

 

 

 

時刻も既に夕方……薄暗くなった人気のない場所を一人の少女が歩いていた。

明るい茶髪が歩く度に靡くその様子は知る人なら分かるだろう、望だ。

誰にも気づかれないよう、足早に歩くその様子を追跡する人物がいた。

ミリタリー風のジャケットにあるフードで顔を隠したその人間は、距離を詰めつつ気配を殺す。

やがてその人物の眼が獣のような鋭い視線へと変わった。

暗い炎のような獰猛な光を宿し、地面を蹴って無防備な背中目掛けて襲い掛かった。

しかし。

 

「ふっ!」

「っ!?」

 

振り向きざまに放たれたカウンターキックを頭部に命中させて、地面へと倒す。

動揺するも、追撃と言わんばかりに放たれたサッカーボールキックを躱すと、その人物は身体に染み付いたファイティングスタイルを構える。

互いに踏み込もうとした時だった。

 

「動くなっ!!」

 

力強い声に、その人物は思わず身をすくませた。

そこにいたのは黒いブレザー・ネクタイに黒いズボンを履いた少年……中性的ながらも端正な顔立ちをしており、ハネ毛の黒髪には黒いソフト帽を被っており、ブレザーの下のシャツがある。

瀬奈の双子の兄である左刹那だ。

後ろからは望たちカルミナが現れ、その人物はようやく自分が罠にはまったのだと理解する。

 

「警察だ。新谷音鳴……殺人未遂及び超常違法物所持法の疑いで逮捕する!!」

 

警察手帳を突きつける刹那から鋭い視線を向けられている人物…新谷がフードを外して素顔を見せる。

風貌は黒髪で特徴のない顔立ちの、何処か平凡な大学生でカルミナのメンバーも驚きを隠せない。

一方の彼も何食わぬ様子で刹那と視線を合わせる。

 

「な、何ですか一体……僕が何をしたって言うんですか?」

「お前が起こしたドーパントによる連続殺人未遂事件……思えば始まりの時点で俺たちは見逃していた」

 

そう言って刹那は相手の視線を自ら向けるよう捜査結果を話す。

 

「最初の事件は、某大学のサークルたちが被害者になった傷害事件……その中にはお前をいじめていたメンバーがいた。けど、この事件とお前が繋がらなかったのは『事故で右手が使えなくなっていた』からだ」

 

新谷の高校時代、いじめられていた同級生から身を守るべくキックボクシング部に入り、逆に立ち向かうことが出来た。

大学に入ってからも続けていたが事故で右手が砕けてキックボクサーとして再起不能になってしまったのだ。

恐らく、そこでガイアメモリを手に入れたのだろう。

 

「そこで実験がてら、そいつがいたサークルを見つけて襲撃した……けど変身した直後でも右手は使えなかったからキックだけで相手を再起不能にした……違うか?」

「……」

「その右手も、メモリの影響だな?大方『相手を倒すごとに身体が治る』……てところか」

 

確かに最初の事件はこれで繋がった。次はそれ以降の被害者の共通点だがこれも刹那はすぐに分かった。

被害者たちの間には面識も何もなかった……表向きはだ。

 

「被害者たち全員が、『レジェンドオブアストルム』の上位プレイヤーたちだった。こう考えたんじゃないか?『強い相手を倒せばもっと強くなれる』ってな。今のご時世、身元を特定することは訳ないからな」

「あ……!!」

 

そこで望が思い出す。

最近のアストルムでは良いゲームプレイをするプレイヤーやギルドにはランキングが載る機能が搭載されており、もちろん非公開することも可能だが、望たちは自分たちのグループの宣伝も兼ねて公開していたのだ。

 

「……なるほど。確かに僕には動機もありますね?最初の事件に関してはまぁしょうがないです。だけど、残りの事件に関しては証拠なんて…」

 

余裕の態度を崩さない新谷に対して、刹那はイヤホンマイクのようなデバイスを投げ捨てる。

それはVRを用いた小型ネットワークデバイス『mimi』……それを見た彼は血相を変えてすぐにそれを踏んで壊すも、刹那は表情を崩さない。

 

「それは俺が使ってた昔の奴。本物ならとっくに鑑識とサイバー犯罪対策課が調べているだろうさ」

「お前っ……!」

「証拠がmimiのデータ内に入っていて助かったぜ」

 

口元に笑みを見せる刹那に対して、新谷が恨みがましい視線をぶつける。

しかし、そこで疑問に思ったのは千歌だ。

 

「で、でもどうやって手に入れたのですか?」

 

そもそも話を聞いた限りでは、新谷は容疑の圏内に入ってすらいないし今までの刹那が導き出したことで警察全体の結論ではない。

だからこそ新谷もmimiを自宅である寮の部屋に保管していたのだろう。

それが何故、警察官である彼が所持しているのか。

 

「私があんたの部屋に入って押収したの」

 

変装用のウィッグを外しながら、瀬奈が当たり前のように答える。

カルミナのメンバーは彼女の方に視線を向けるも気にせず話す。

 

「警察ってさ、捜査令状とか差し押さえとか面倒でしょー?そんなの一々待ってたらキリないから私が潜入したのよ。裏口からこっそりね」

 

得意気な様子で喋るグレーゾーンな彼女に刹那は苦笑いする。

これが彼らの捜査スタイル。

足で事件現場や関係者を調べて事実と事実を繋ぎ合わせることが左刹那で、地球の本棚と父親譲りの直感で調査するのが左瀬奈の戦闘スタイルだ。

やがて彼は、表情を引き締めると再度宣言する。

 

「観念しろ新谷!」

「……ゴングがっ」

「っ?」

「ゴングが、鳴ったんだ。これを使ったら、試合の始まるあの音が聞こえたんだ。だから、だから僕はあいつらを倒したんだ」

 

眼が据わっており、明らかに正気ではない様子の新谷に対して刹那が内心舌打ちをする。

恐らく、ガイアメモリで変身した時点でマイナスな感情が毒素によって増加したのだろう。

完膚なきまでに倒す……それが悪い方向になってしまった結果だ。

 

「倒したら、砕けた拳が治っていったんだ。きっと、僕が相手を倒したから強くなっていくんだと分かった……もっともっと戦ったら、僕は……っ!!」

 

瞬間、新谷の目つきが変わった。

歪んだ色を放つ瞳で刹那を見据えると、ズボンのポケットから何かの動物の頭部を模した紫色のクリアカラーのメモリを取り出す。

 

「『アルカナメモリ』……!!やめろっ、新谷っ!」

「ゴングが鳴った、だから!だからぁっ!!」

【JACKAL!】

 

アルカナメモリ……『ジャッカルメモリ』のボタンを押して起動した彼は砕けて動けなくなっているはずの右拳に出現した生体コネクタに向かって挿入する。

それが吸い込まれるように体内に入っていくと、その姿を異形『ジャッカル・ドーパント』へと変えた。

アルカナメモリ……最近になって新たに蔓延るようになった新型ガイアメモリの通称だ。大アルカナの記憶と地球の記憶を同時に取り込むことで高い適合者へと引き合う性質を高めたそれは、使用者を超能力『ハイドープ』へと瞬時に覚醒させることを可能としている。

『ジャッカルの記憶』を宿した名前の通り、薄い金色もしくは黄褐色にも見える体色に背と尾には黒い毛のような装飾がある正にジャッカルの怪人。

長い耳を動かしながら『ジャッカル・ドーパント』はファイティングスタイルを取る。

 

『試合開始。お前に勝って、僕は更に強くなるぅっ!!』

 

そう叫んだジャッカルは凄まじい脚力で刹那との距離を一瞬で詰めると、そのまま剛腕を振るう。

恐らく今までの被害者も最初の一撃を受け、倒れたところを馬乗りになって殴られ続けたのだろう。

しかし。

 

「ふっ!」

『なっ!?』

 

それを読んでいたかのようにバックステップで躱すと、お返しとばかりにカウンターキックを叩き込む。

超人であるドーパントにとって人間の攻撃など取るに足らない……それを受け止めてから殴り飛ばしてやろうとジャッカルが身構えた時だった。

 

『がぁっ!?』

 

本日二度目の衝撃が走る。

刹那の蹴りはジャッカルに強烈なダメージを与えるほどの威力を秘めていたのだ。

動揺するドーパントを蹴り飛ばして無理やり距離を開けると、その隣に瀬奈が並び立った。

 

「……兄さん」

「分かってる」

 

妹の言葉に短く返してから取り出したのは、左右に赤い横向きのスロットが二つあるバックル……それを刹那は腰の前へ軽く押し付ける。

バックル『ツヴァイドライバー』から銀色のベルトが飛び出し、彼の腰に巻きつくと同時に、瀬奈からもツヴァイドライバーが腰に召喚される。

そして、彼らは懐から薄い緑色の端子をしたUSBメモリ…『地球の記憶』を宿すとされる道具『アルカナメモリ』を取り出した。

刹那のメモリは全体的に紫色をしており、道化師の靴のような意匠の「J」の文字が刻まれている。

それに対して瀬奈のメモリは全体的に緑色をしており、ローマ数字で「ⅩⅤ」と風とバッタの意匠をした「D」の文字のメモリだった。

 

『まさか…!!』

 

それを見たドーパントは明らかな動揺を見せる。

構わず瀬奈と刹那はそれぞれのガイアメモリのプッシュスイッチを押す。

 

【DEVIL!】

【JOKER!】

 

渋い男性の声をした電子音声が鳴り響く。

瀬奈が起動したのは大アルカナ『悪魔の記憶』を宿した『デビルメモリ』と、『切り札の記憶』を宿したジョーカーメモリの起動が確認される。

音声が鳴り終わると彼らはメモリを構え、同時に叫んだ。

 

「「変身っ!」」

 

瀬奈は右側のスロットにデビルメモリを挿入し、刹那のドライバーに自分の意識ごと転送され、同時に瀬奈の身体は昏倒する。

刹那は右側のスロットに現れたメモリを押し込み、左側のスロットへジョーカーメモリを挿し込むと交差させた両手でバックルの中央部にある白いスイッチを押した。

 

【DEVIL! / JOKER! BATTLE START!!】

 

再び電子音声が鳴り、球体状のディスプレイが輝くと同時に風を思わせるような爽快な曲と切り札の軽快な音楽が辺りに鳴り響いた。

その風に思わず望たちは顔を覆って隠す。

そして、刹那の身体を緑色と黒い色の粒子が渦を巻きながら彼の身体を纏う。

現れたのは左右非対称の戦士……。

中央のプラチナカラーのライン『セントラルパーテーション』を境に左半身『アームズサイド』はジョーカーメモリのようにパープルカラー、右半身『アビリティサイド』はバッタやイナゴの足を思わせるようなスプリングが右腕と脚部に搭載された緑色のボディになっている。

更に右側の首に巻いた赤いスカーフが軽やかに夜風に舞っている。

額にはV字型のホーンが形成され、大きく紅い複眼が緑と紫に映えて輝いていた。

 

「『俺(私)たちは…仮面ライダーツヴァイ……』」

 

刹那と、もう一人の相棒である瀬奈の声でそう応えると悪魔の切り札『仮面ライダーツヴァイ』は左手首をスナップさせるとダイブへと指さす。

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

脈々と受け継がれてきた、悪党どもに投げ掛ける『あの言葉』をはっきりと宣言し、一直線にダイブへと走ってから跳び蹴りを仕掛ける。

先制攻撃を受けたジャッカルは、すぐさまボクシングの構えを取ると、カウンターパンチによる反撃を行うが、突き出した腕を絡め捕られたことでバランスを崩してしまう。

 

「そらっ!」

『なっ、がっ!?』

 

まるで水のような流れる動きから繰り出されるジークンドーで培った打撃が顔面へと命中。

そのまま肘打ち、三段蹴りと鮮やかな動きでジャッカルにダメージを与える。

更に攻撃は終わらない。

 

【FIFTEEN! DEVIL!!】

「オラッ!」

『ぐっ!?』

 

バックル中央のスイッチを再度押し込んだ瞬間、緑色の旋風を纏ったツヴァイの蹴りがジャッカルの鳩尾に命中していた。

ツヴァイドライバーはセットしてあるアルカナメモリの力を『技』という形で一時的に発動することが出来る。

今ツヴァイが発動しているのはデビルメモリによる風で纏った攻撃だ。

そのままスイッチを二回押してアームズサイドの技を発動すると、ジョーカーによる強化されたドラゴンキックがジャッカルの顔面に直撃した。

だが、すぐにドーパントは体勢を立て直すと素早いジャブで相手を牽制しながら強烈なハイキックを繰り出そうとする。

 

「うぉっと!?そっちがボクシングならこっちも載ってやるよ」

 

そう呟いてから取り出したのはオレンジのクリアカラーのアルカナメモリ。

それには「Ⅷ」というローマ数字が刻まれ、火山を模した「S」というイニシャルがある。

 

【STRENGTH!】

 

大アルカナ『力』の記憶を宿したアルカナメモリをセットし、中央のスイッチを押してメモリの力を再び開放する。

 

【STERNGTH! / JOKER!】

 

音声と共に現れたのは火山を思わせるような右肩のシンボルがある右半身がオレンジ色の戦士。

 

「ウォラッ!!」

『ぐへぇっ!?』

 

近距離でのパワーファイトに特化したストレングスジョーカーへとメモリチェンジし、溶岩と同等の熱を秘めた右の拳でジャッカルを殴り飛ばす。

デビルメモリやムーンメモリではパワーが低く、パワーとスピードを兼ね備えたジャッカルメモリに勝つことは難しい。

打点が高く相手に最も接近することが出来るストレングスジョーカーがこの場では最適解なのだ。

頭を振って正気を取り戻したジャッカルはすぐさまボクシングスタイルへと移行すると、スピードの乗ったストレートパンチとハイキックを繰り出す。

しかし、その攻撃を軽快なスウェイで回避すると脇腹に強烈なブローを叩き込む。

呻き声と共に身体を屈んで怯むジャッカルの隙を逃すことなく連続して殴りつける。そして炎を纏った右ストレートをその身体に浴びせると、ドーパントは地面を転がる結果となる。

 

『がはぁっ!』

「……たく、こんな形でボクシングする羽目になるとはなっ」

『愚痴なら後にしなさいよ、兄さん』

 

動きを完全に見切ったツヴァイのぼやきに、アビリティサイドの瀬奈が窘める。

そんな余裕を思わせる態度が癇に障ったのだろう。

 

『ぐっ、あぁっ!!舐めるなあああああああああああああああっっ!!!』

 

動物系メモリの毒素に染まった影響なのか、口調を荒らげながらツヴァイに向かって球体状のエネルギー弾を投げ飛ばす。

だが、ストレングスメモリを宿した右腕がそれを粉砕した。

ストレングスメモリは『火山の記憶』を宿したボルケーノメモリが覚醒したもの……強烈な熱と炎を宿したツヴァイにとっては毛ほどにも痛くはない。

呆然とするジャッカルに対して、ツヴァイは青と白銀の二つのメモリを取り出す。

唯一のアイデンティティだったボクシングを捨てたドーパントに完全な止めを刺すために相応しいメモリだ。

青いメモリは「ⅩⅧ」のローマ数字と、雲と満月で「M」を象った『ムーンメモリ』。白銀は「ⅩⅦ」の数字と流星で「S」の意匠がある『スターメモリ』

アルカナメモリをスイッチを押して起動した。

 

「さぁ、いくぜ!」

【MOON!】

【STAR!】

 

左右のスロットをセットし、バックル中央のスイッチを押して変身する。

 

【MOON! / STAR! BATTLE START!!】

 

そこに現れたのは白い雲のような装飾がある夜を思わせるような青いボディカラーに、流れ星を思わせるような星の装飾がある狙撃手を思わせるような白銀のボディ。

 

「ボクシングを捨てるなら、こっちも容赦なしで行かせてもらうぜ!」

『があああああああああああああっっ!!!』

 

ツヴァイのセリフに気にすることなく、獣のような叫びと共に素早い獰猛な動きで突っ込んで来るジャッカルに焦ることなく、左側の太ももにあるホルスターから専用リボルバー銃『スターブラスター』を構えてトリガーを引いた。

発射された弾丸は青い軌跡を一直線に描きながらジャッカルに迫るも、獣の本能を駆使して難なく躱す。

だが……。

 

『あぐっ!あああああああああああああっっっ!!?』

 

いきなり背中からの強い衝撃にジャッカルが前のめりに倒れる。

 

『あぐっ!な、何がっ!?』

 

背中から煙を上げながらも、起き上がったドーパントは後ろを向くが何もない。

仲間か誰かが狙撃したのかと思ったがツヴァイ以外に誰かがいる気配もない。

 

「種明かしをしてやるよっ!!」

 

混乱するジャッカルに対して得意気な様子を見せるツヴァイがスターブラスターの弾倉を回して弾丸を補充すると、トリガーを連続で弾いた。

すると、ドーパントに向かってスターブラスターから放たれた銃弾は意思を持つかのように軌道を曲げ、不規則な動きで相手を狙ってくる。

 

『あぎゃあああああああああああっっ!!!』

 

四方八方から迫る銃撃にジャッカルが火花を散らしながら再び地面へと倒れる。

もはや起き上がる体力も、抵抗する力も残っていないだろう。

 

『兄さん!メモリブレイク、行くよ!』

 

瀬奈の言葉に「了解」と短く返したツヴァイはスターブラスターの弾倉部分にセット。そしてそれを回転させると同時に電子音声が鳴り響いた。

 

【STAR! MAXIMUM DRIVE!!】

 

必殺技を告げる音声が響くと、狙いを外さぬよう両手で銃を構えドーパントを狙う。

 

「これで決まりだ」

 

そう宣言したツヴァイはスターブラスターを両手で構えると、ドライバーにセットされた二つのアルカナメモリの力が銃口へとチャージされる。

 

「『スタードリームバスター!!』」

 

左右の呼吸を合わせるように、技名を叫ぶとスターブラスターのトリガーを引いた。

瞬間、ビームのような白銀と青の弾丸が散弾のように何十発も発射される。

 

『ひ、ひぃっ!!?』

 

流星のような凄まじい速度で迫る必殺の弾丸にジャッカルが恐怖する。

ようやく立ち上がると、ジャッカルの脚力を活かしてこの場から逃走しようとするも時すでに遅し。

 

『ぐっ、ぐおああああああああああああっっ!!!』

 

全ての弾丸が直撃したことでジャッカル・ドーパントは凄まじい音と共に爆散。

爆心地には衰弱した様子の新谷が倒れており、砕けたアルカナメモリを拾おうと必死に手を伸ばそうとする。

 

「あっ、あぁ……ゴングの、音がっ」

「いいや。これで試合終了さ」

 

煙が晴れたと同時に、メモリが弾けると今度こそ意識を失って地へと伏せるのだった。

 

 

 

 

 

そうして、連続殺人未遂とカルミナストーカー事件は幕を閉じた。

保護していたカルミナも解放され、問題なくアイドルとしての仕事も出来るようになっている。

 

「ありがとうね、瀬奈ちゃん」

「まぁ。ひ、左さんはともかく、瀬奈さんのおかげで助かりました」

「本当にありがとうございます」

 

ロケに向かう前に挨拶がしたいということで望・つむぎ・千歌の三人が瀬奈に向かってお礼の言葉と共に頭を下げていた。

無事に犯人である新谷も逮捕されたことで彼女たちを守ることが出来た、報酬よりも一番大事ものを手に入れることが出来たのだ。

 

「……てあれ?刹那君は」

「あれ?」

 

そう、お礼を言いたいのは彼女だけではない。

自分たちの話を聞いて事件捜査に踏み込んでくれた刹那には感謝してもしきれないのだ。

未だ自分たちを友達扱いしている彼に、アイドルとしてのすごさを知らしめたいというのも本音だったが。

しかし肝心の刹那の姿が見えない。

片割れの妹が周囲を見渡し始めた時だった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

 

刹那の興奮気味な悲鳴に思わず視線を向ける。

見れば壁に貼り付けてあるポスターに釘付けになっており、先ほどまで見せていたクールな表情とは違う。

その理由は。

 

「やっべえ……うづきんにちゃんみおにしぶりんのライブだとぉっ!!何で俺が仕事の時に限って……行きたいっ!すっごい行きたいっ!ブースター付きタイムマシンで直行してサインと握手してえええええええええっっ!!!」

 

ネジの外れた様子に望たちは苦笑いするしかない。

何を隠そう、左刹那はドルオタなのである……『アイドル全員推しメン』とまで言い切るほどの残念。

それだけならまだ良いのだが捜査中にアイドルグッズを発見しようものなら経費で買おうとしたり、「デュフ」と気持ち悪い声で笑いだすぐらいの残念さである。

ちなみにカルミナは友達のためアイドルにはカウントされないらしい。

 

「どうする?チケットは経費で何とかなるとして肝心なのは仕事中にどうやって行くかだ?仮病を使うか、いやそれだと……」

 

ポスターにかじりつて独り言を早口でよどみなく呟くみっともない姿に瀬奈が眉間を引くつかせると、助走をつけ……。

 

「この、左家の恥知らずがああああああああああああああっっ!!!」

「ぎゃあああああああああああああっっ!!?」

 

痴態を晒した刹那にエルボーを叩き込むと、そのまま卍固めを決めて制裁行うのだった。

彼らの名は、仮面ライダーツヴァイ。

街の涙を拭う。新たな二色のハンカチ……。

 

 

 

 

 

アメリカ・ニューヨーク空港にて……。

そこには、一人の人物がいた。

丈の長い青い修道服を着た長身の男性で端正な顔立ちからして日本人だろう。

茶髪を緩いオールバックにした彼はポケットから緑色のアルカナメモリを取り出した。

 

「待ってろ日本。主人公である俺が戻ってきた」

 

彼の正体は……?




簡単な用語集
左刹那 :
仮面ライダーツヴァイの左側で主人公。クールながらも熱い心で風都に蔓延る悪と戦う。ハイドープとして『身体能力の強化』が扱える。
どうしようもないドルオタ。

左瀬奈 :
仮面ライダーツヴァイの右側で主人公。基本的に大雑把な性格だが、優しい心の持ち主。幼少の頃の臨死体験の影響で『地球の本棚』にアクセス出来る。
どうしようもないゲーマーでブラコン。

アルカナメモリ :
風都に流通しだしたT3ガイアメモリの総称でT2ガイアメモリと同じ外観を持つ。進化する特性を持ち、完全に覚醒するとⅠ~ⅩⅩまでの大アルカナへと名前を変える。


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仮面ライダーエクトゥス×魔法少女グリムホワイト

性懲りなく短編です。
今回は、完全オリジナルで書いてみました。
苦手な方はバックをお願いします!


宮沢高等学校。

偏差値はそれほど高くはないが、世界の文学や歴史などに力を入れているため、作家や編集関係の仕事を目指す生徒が多い。ちなみに土曜日は午前授業だけである。

穏やかな校風もあってか人気学校の一つとなっている。

そんな休み時間、自販機の前で立ち往生している生徒が一人……。

 

「んー?おっかしいなー」

 

目当ての商品があるボタンを何度も押しているにも関わらず、一向に目当ての飲み物が出て来ないことに首を傾げる少年。

指定の青いブレザーに身を包み、顔立ちはカッコ良いというよりは可愛い系。

茶髪の天然パーマが特徴のゆるふわ系男子といったところだろうか。

時折、自分が入れた硬貨が戻っていないか釣銭口を確認するがない。

腕を組み、しばらく思案して一言。

 

「もしかして……実は自販機に擬態するハイテクバイクだった可能性が微粒子レベルで…」

「多分、違うよ」

 

宛ら某探偵が謎を解いたと言わんばかりに目を見開く彼に一人の少女が声をかける。

振り向けば、赤みがかった茶髪のセミショートヘアの可愛らしい顔立ちの少女……華奢でスレンダーな身体が彼女を可憐にさせている。

声のかけた少女『姫雪眞白』は困ったような表情を見せる。

 

「シロちゃん」

「シ、シロちゃんはやめてよ嶺君っ」

「何で?」

「何でって、それは……///」

 

無自覚に小首を傾げる少年『政宗嶺』に対して眞白は顔を赤くする。

幼馴染の縁でそう呼ばれているが、高校生にもなってその名前は恥ずかしい。

嫌という訳ではないしむしろ嬉しい。でもそれは何だか恋人同士みたいで……。

 

「わ、私の口からは…」

「あー!出てきたー!!」

 

口にするよりも先に、嶺が自販機からお目当ての飲み物を取り出す。

頬を染めて恥ずかしそうにしているのをそっちの気で喜ぶ彼をしばらく見て、毒気を抜かれたのか眞白は溜息を吐く。

 

「っ?どうしたのシロちゃん」

「ううん、何でもないよ……ほらっ!休み時間終わるから早くっ!」

「うえっ!?」

 

お返しとばかりに、眞白は嶺の手を握る。

普段はマイペースな彼だが、女の子への耐性があまりないのも知っている。

知っているから握った手に軽く力を込めて教室まで向かう。

幼馴染とはいえ、女の子特有の柔らかさと自分に向けてくる笑みに顔を真っ赤にするのを見て、眞白はまた笑うのだった。

……クラスメイトの友達にからかわれたのは言うまでもないが。

 

 

 

 

 

昼間の午後……この街に数ある公園の一つはあまり人が来ない。

外で遊ぶ子どもたちが少なくなっているのも理由だが、この公園を活用している人間がいるからだ。

 

「あ~、やっぱ美味ぇなー」

 

上機嫌に右手に持った酒瓶に口を着けて飲むのは公園を根城にしている男性。

煤のある汚れたコートを羽織り、ニット帽を被っているその身なりはボロボロで、赤ら顔の中年……所謂ホームレスである彼は酒瓶を逆さに振る。

まだ底の方に残っていると思っているのだろうか、何度も振っては手に入れた酒を飲み切ろうとする。

 

「……たくっ、もちっと酒入れてくれても良いのによぉ」

 

そんなことをぼやきながら、酒瓶を放り捨てた彼はシートの上に寝転がる。

このホームレスは所謂「公園の主」と呼ばれる人物だ。

最初こそ名のある暴力団に所属していたのだが、組織の金に目が眩み強奪。

無事に逃げ出せたのだが盗んだ金は底をつき、途方に暮れて公園へと転がり込んだのだ。培った暴力で他の先駆者を追い出し、こうして自分の城を手に入れた彼は暴力を持ってその日暮らしの金と酒を手に入れることは出来ている。

しかし、一度膨らんだ欲望は収まらない。

 

「くそっ、組織の屑どもめ。もっと金を入れてりゃあ、こんな暮らししないで済んだんだっ。畜生め!」

 

今の自分に嫌悪感を抱いたホームレスは、その苛立ちを紛らわせようとストックされているカップ酒の蓋を開けて飲む。

すると、苛立ちはすぐさま晴れて上等な機嫌へと変わる。

唯一の娯楽と言えば、酒ぐらいのものだ。

正直な話、酒さえ飲めれば後はどうだって良いとさえ思っている。

幸いありつけるほどの地位を確立しているので、別にそんな運命でも問題ないか……そんな短絡的なことさえ思っていた。

しかし、それは突然に変わる。

 

「……随分と酷い臭いだ」

 

突然、声が響いた。

自分以外、誰もいない自分の住処で聞き覚えのない低い男の声が聞こえたのだ。

「誰だっ」と慌てて周囲を見渡し、声の主は彼のすぐ後ろにいた。

そこにいたのは長身の男……黒いジャケットに黒いシャツ、黒いズボンと手袋を身に着けている黒ずくめの男だ。

強面の顔にはサングラスをかけており、服の上からでも屈強な肉体が分かる。

肌の色以外は全て黒で統一された男がホームレスを見下ろしていたのだ。

 

「時代も変わったな。かつて貴族の娯楽だった物が、貧民でも手が届く代物になっていたとはな」

 

混乱する住処の主に気にすることなく、男は転がっていた酒瓶を手に取り興味深そうに観察する。

そして、ようやく我に返ったホームレスが威勢を取り戻した。

 

「おいっ!てめぇ『新入り』かっ?あー別にどうだって良い。とりあえず酒だっ、酒を献上すりゃあさっきの無礼は許してやるぜぇ?」

 

品のない笑みを見せるホームレス。

摂取したアルコールのせいか、それとも浮浪者生活のせいか定かではないが、人が持つ危機回避などの感覚が麻痺をしてしまっている。

この男の本質は結局それだ。目先の欲望に飛びつき、破滅しているのにも関わらず、それを反省することもなければ暴力も辞さない。

自堕落な運命を進む愚者……それが、黒ずくめの男の目に適った。

 

「そんなに酒が飲みたいか?」

「あぁっ?まぁ、そうだな。酒さえ飲めれば後は何もいらねぇなっ!!」

 

上機嫌に笑うホームレス。

酔いが回っている彼は気づかないだろう。

この男が、口角をほんの少しだけ吊り上げたことに……。

 

「そうか、なら」

「あっ?……がっ!?」

 

黒ずくめの男がホームレスの胸倉を掴んで無理矢理立ち上がらせた。

苦し気に呻く彼に気にすることなく、男は掌に収まっていたサイコロのようなアイテムを取り出す。

群がる昆虫のシンボルが刻まれた青い六面ダイスは虫害や蝗害を連想させ、一の目に当たる部分は赤い複眼にも見える。

本物よりも少し大きめのそれを、男は起動させた。

 

「その運命で遊ばせてやる」

【INSECT…!!】

 

見せつけるように彼の眼前で一の目型のスイッチを押したダイス『エヴォルガダイス』を躊躇なく、ホームレスの身体へと捩じ込む。

すると、変化はすぐに起こった。

 

「ぎっ!?ああああああああああああああっっっ!!!!」

 

体力や欲望、そして自我が奪われるような脱力感と不快感が彼の身体を襲い、禍々しい光が内側から放たれている。

やがて、埋め込まれたダイスはまるで意思を持つかのように絶叫するホームレスの身体から排出され、独りでに宙へと浮く。

 

【Let's Play……!!】

 

擦れたような音声が響いた瞬間、エヴォルガダイスから光が放出される。

ホームレスから奪い取った全てのエネルギーを解き放ち、人の形へと変わった。

 

『うぃ~……ひっく』

 

それは、一言で表すならば蜘蛛を模した怪人……。

右半分は青く、蜘蛛の脚が背中から三本生えているが、左半身はまるで違う。

酒瓶のような装飾が左肩に埋め込まれ、そこから血のような赤いワインが左側を汚すように染まっている。

まるで、ワインの酒気で泥酔している蜘蛛のようだ。

それを証明するかのように蜘蛛を模した瞳には焦点が定まっておらず、何処か覚束ない足取りを蜘蛛を模した棍棒で支えている。

 

「酒狂いの蜘蛛……か」

 

誕生した怪人の特徴を冷静に分析した男は、意識をなくしているホームレスを雑に捨てる。

そして蜘蛛の怪人へと向き直り、その口を開いた。

 

「好きに行動しても構わない……派手に暴れてこい」

『うぃ~。分かりました~よっ』

 

酔いが回っている怪人……人間の感情から生まれた怪人は千鳥足ながらも、しっかりとした足取りで街の方へと向かった。

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、眞白が待ち合わせの場所へと急いで走っていた。

まさか忘れ物をしているとは思わず、取りに戻ってみれば時間が過ぎており、こうして全力疾走しているのだ。

目的地に着いた彼女は、息を整えてからファミレスのドアを開ける。

友達からは店内にいると連絡があったため、あちこち見ていると自分に向かって手を挙げているのが見えた。

すれ違った店員に軽く頭を下げながら、目的の席へと向かう。

 

「もう、姉さん。忘れ物をしちゃ駄目ってあれほど……」

「まーまー『日向』ちゃん。眞白がどっか抜けてるのはいつものことだろ?」

「ちょっと。酷いよ『真琴』ちゃん」

 

少し抜けた姉に注意するのはふわりとした髪型の少女……眞白の妹である『雪姫日向』と、そんな二人の様子に茶髪の髪を一本にまとめた活発的な印象の少女『赤井真琴』が笑う。

他にも白く輝く髪を短くした癖っ毛のある豊満な少女はストローでジュースを飲み、黒く長い髪を後ろに垂らした大和撫子という言葉がぴったりの豊満な年長者らしき少女が上品に笑う。

服装から同じ学校なのだが、どうしてこの五人が集まっているのか……第三者からすれば理解出来ないだろう。

しかし、彼女たちは強い繋がりがある。

時にぶつかり合い、時に励まし合った、強い絆が彼女たちにはあるのだ。

談笑する少女たち。

それは正しく平和の象徴であり、変わらぬ日常……。

そのはずだった。

 

『うわああああああっ!!』

 

悲鳴が響く。

普通の日常では、決して聞かないであろう恐怖の叫びだ。

瞬間、窓ガラスが音を立てて割れる。

 

「な、何っ!?」

 

困惑よりも先に、身体が動いた。

眞白たちは店にいる人たちを避難誘導した後、急いで出る。

 

「っ!これって……」

「何て、酷いっ」

「……!」

 

そこに広がっていたのは、怪物たちの蹂躙だった。

左右を白と黒で塗り分けた鎧を身に纏い、槍を装備している怪物が、群れを為して店という店に襲いかかっている。

その光景に日向は顔を青くし、黒髪の少女と白銀の少女が怒りを露にする。

本来なら、日常を送る彼女たち……しかし、その表情は恐怖ではなく、戦うことを決めた顔だ。

 

『みんなーーーーーーっ!!』

 

そして、ここに『六人目の仲間』が現れる。

高い、少年の声と共に空から現れたのは、リボンを首に巻き付けた白い兎のようなぬいぐるみ。

悪意を感じて飛んできた彼の名は『ヴィルコプ』

優しい童話の想い出から生まれた魔物であり、彼女たちを繋いだ大事な存在である。

ちなみに普段は眞白の家に居候している。

 

「ヴィルコプさん、この怪物は一体……」

『僕も分からないっす。ただ、こいつらからは悪意を感じても、グリムエナジーは感じないっす』

「……じゃあ、あいつらとは、違う?」

「何だって良いだろ」

 

日向の問いに、答えながらもヴィルコプは新たな敵を睨む。

白銀の少女が眠そうな眼を向けながらも、真琴の言葉に全員が頷いた。

目の前の人を助ける。考えるのはその後だ。

 

「ヴィル君。グリムフォンは……」

『ふっふーん。じ・つ・は』

 

思わせ振りな態度をする彼に首を傾げるも、すぐに答えが分かった。

彼女たちのスマホが軽く振動し、取り出して起動すると見たことないアプリがインストールされていた。

 

『あの戦いで破損したグリムフォンは完全には直せなかったっす……けど!力だけを抜き取って今風にバージョンアップしたっす!ついでにみんなの情報もアップデートしたからドレスのサイズもぴったりのはずっす!』

「え、ヴィルちゃん。その話詳しく…」

『さぁ、チェンジっす!』

 

無理矢理会話を遮断したヴィルコプに急かされるように、眞白たちは敵を見据えて並び立つ。

そして、スマホにダウンロードされたグリムアプリを軽くタッチした。

瞬間、それぞれのスマホに白や赤などの優しい灯りが宿る。

 

「目覚めて想い出の物語!グリムリード!」

『セットアーーーーーーップ!!』

 

五人の声が揃った瞬間、彼女たちの装いが変わる。

眞白は白を基調としたフリフリの衣装とミニスカート、紫の装飾が施されておりヴェールのあるその姿はまるで白雪姫を連想させる。

日向は白とピンクを基調とした、まるで海賊を思わせるような帽子を被っており、左右の腰にはカットラスとラッパ銃を備えている。

真琴は赤いフードを被り、何処か猟師を思わせるような赤を基調としたドレスで腰にはバスケットを下げている。

白銀の跳ねた髪を持つ少女は、茨の意匠を象ったストールを首に巻いており緑の刺繍が入った黒いドレスに、頭に帽子を被る。

長く黒い髪の少女は一見すると巫女を思わせるような白い小袖と緋袴……しかし細部には月の装飾がある手甲や鉢巻を身に着けている。

彼女たちは『グリムテラー』……世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』の魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。

 

「みんなっ、まずは逃げ遅れている人たちの避難をっ!」

「分かってるって!」

「ホワイトもお気をつけてっ」

 

赤いフードの魔法少女と巫女服の魔法少女『グリムレッド』と『グリムムーン』の言葉を耳にしながら、変身した眞白『グリムホワイト』はステッキを雑兵に向かって振るう。

ステッキの先端から白い魔力弾が飛び出し、一網打尽にすると襲われていた店員の元まで駆け寄る。

 

「大丈夫ですかっ!早く逃げてっ」

 

店員はお礼を言ってから慌てて逃げ出す。

その間にも襲い掛かる兵士の怪物を、茨姫の魔法少女『グリムスリープ』の蛇腹剣が迫り、楽しそうに笑う『グリムパイレーツ』がラッパ銃を乱射する。

 

「……それ」

「あっはははははっ!バーン!♪」

 

数を減らしたことで余裕が出てきたのか、グリムホワイトは背後から迫る兵士の頭をステッキで殴り飛ばしながらも、敵の正体を考え始める。

カオス・テラーとも違う存在には疑問を覚えるが、それでも足と手を止めることは出来ない。

人々の想い出を護る……それが自分たちの使命であり、やりたいことだからだ。

気を取り直し、ステッキを握り締めた時にヴィルコプの声が飛ぶ。

 

『ホワイト!危ないっす!』

「えっ……きゃあっ!?」

 

慌てた様子のパートナーに振り向いた瞬間、白い糸のような束がホワイト目掛けて迫ってきていたのだ。

慌ててバックステップして回避し、攻撃してきた方向を睨む。

そこにいたのは……。

 

『んくっ、んくっ……ぷはぁっ!良い酒だなぁ……安い店で売ってる奴とは大違いだぜぇっ』

 

上機嫌な千鳥足で現れるのは、蜘蛛とワインを混ぜ合わせたような怪人。

青く染まった蜘蛛の右半身に、左半身は赤いワインと瓶のシンボルがある歪な姿……童話に出てくる動物や植物をモチーフとしたカオス・テラーの尖兵『テラーデビル』とは明らかに違う異形。

言語能力を持つ怪人は、店内から強奪して来たであろう酒瓶をラッパ飲みすると中身を飲んで満足そうに笑う。

謎の怪人に、グリムホワイトが抱いた感情は恐れよりも純粋な怒りだった。

 

「やめてくださいっ!」

『何だ、そこのコスプレ嬢ちゃん?何だってこんなところにいんだー、ひっく』

(っ!やっぱり、テラーデビルじゃないっ?)

 

声を荒げる彼女に気にすることなく、グリムテラーの独特な衣装を見て首を傾げながらも酒を飲み続ける怪人……。

ヴィルコプも、あの怪人がカオス・テラーとは違う存在であることに確信する。

日本刀で兵士の怪人を斬り捨てるグリムムーンが鋭い視線をぶつける。

 

「どうして、このようなことをっ!」

『んあっ?あー……派手に暴れろって言われて、それ以外はなーんも言われてねーし?だったら酒を飲みながら暴れようと思ったからだなぁっ!!』

 

ゲラゲラ笑う怪人目掛けて、既にグリムホワイトは攻撃していた。

威力を込めた一撃を放つが蜘蛛の怪人はふらついたような動きでそれを躱すと、にやついた様子で注意深く観察する。

 

『ちったぁ戦えるみてぇだが、俺様には勝てねぇよっ。この「エヴォルガ」にはなぁっ!!』

 

嘲笑うように吐き捨てた怪人『A(アルコール)スパイダー・エヴォルガ』は右半身から白い糸をを大量に吐き出す。

まるで意志を持つかのように動く糸を躱し続けるも……。

 

「うわっ!」

「みゃー!離せーーっ!!」

 

直線的な攻撃を得意とするグリムレッドとグリムパイレーツが糸に絡まれてしまう。

必死に拘束から逃れようとするも、千切れる様子がない。

その間にも糸は範囲を広げていき、やがて周囲が巨大な蜘蛛の巣へと変わっていく。

見れば逃げ遅れた人々が捕まっており、人質としている。

 

『お前らは、俺様の最高の餌だぁ。抵抗しないよう徹底的に潰してやるよぉっ!!』

 

防戦一方となった魔法少女たちを見て、勝ち誇ったようにほくそ笑むAスパイダー。

決定打を与えられない状況に彼女たちが歯噛みしている、その時だった。

……何かの音が聞こえる。

幻聴かとも思ったが、グリムホワイトが周囲を見渡せばグリムレッドたちも音の原因を探ろうと視線を向けている。

そして、段々と音が大きくなる。

それがバイクのエンジン音だと分かったのは、Aスパイダーだ。

 

『何だってバイクの音が……』

 

疑問を覚えた瞬間だった。

青いラインの入った黒のバイクが現れたのだ。

太陽光に浴びて輝くボディは、まるで武装した騎馬を模している。

操縦者は赤いストールを巻いており、ヘルメットで顔は見えない。

後ろには小柄の少年らしき白いローブの人物もいる。

それは蜘蛛の巣のバリケードを容易く飛び越えて侵入すると、速度を緩めることなく前進する。

……というよりも、むしろ上がっているようだ。

 

「……ああああああああああっ!どいてどいてどいてーーーっ!!」

『はっ、ちょっ!ブルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

突如乱入してきた黒いバイクにAスパイダーが驚きで動きを止めた瞬間、バイクの持ち主は慌てた様子ながらも、アクセル全開で突撃する。

すると当然、機体に吹き飛ばされたエヴォルガの攻撃は阻止される。

呆然とする魔法少女たちに対して、黒いバイクの操縦者は安堵の息を吐く。

 

「あー止まったー」

「いや止まったじゃないですよっ!?思っくそアクセル全開にした人のセリフじゃないですよねっ!てか、わざとでしょっ!?」

「あっはは。まさかまさかソンナコトナイヨー」

「絶対嘘だっ!?」

 

棒読みで言い訳する操縦者に後ろに座っていた少年がヘルメットを外して叫ぶ。

聞き覚えのある声、そしてその顔を見た瞬間ホワイトが確信した。

 

「嶺君っ!?」

「えっ?」

 

自分の名前を呼んだフリフリ衣装の少女に思わず操縦者……嶺が首を向ける。

思わず口に手を当てて視線を逸らすも、まじまじと見つめてから彼が口を開く。

 

「シロちゃん、何してるの?」

「ぶっふ!?ちち、違うよー。わ、わわ私は雪姫眞白なんて人じゃありませんよー」

 

本来、魔法少女に変身している間は認識阻害の魔法を使っており、目の前で変身したりしなければ正体がばれることはない。

しかし、嶺のマイペースさの前では通じないのか。はたまた幼馴染テレパシーの恩恵なのか定かではないがグリムホワイト=眞白と認識出来ている。

必死に隠そうとする彼女を見て「ま、良いか」と嶺が向き直る。

見ればAスパイダーが既に起き上がっており、自分の狩りを邪魔されたことで憤慨していたが少年の顔を見たことで様子が変わる。

 

『お前ぇっ、錬金術師だなっ!!錬金術師の「ヴァン」ッ!まさかこんなところで、見つけるとはなぁっ!!』

「ヴァン、もしかしてあいつが?」

「はい……人間の欲望と動物の力を混ぜ合わせた怪人。封印から目覚めてしまった人造生命体エヴォルガです」

「わー。話には聞いていたけど想像以上にやばい外見」

 

呑気に笑う嶺に、グリムムーンは慌てて逃げるように促す。

 

「お、お二人とも!この怪物のことは私たちに任せて、早く逃げてくださいっ!!」

 

そう、嶺とヴァンは普通の人間。

ヴァンを錬金術師と呼んだことには気になるが、今はそれを考えている暇はない。

立ち上がろうとする彼女の肩に、嶺が優しく手を置く。

 

「大丈夫。僕に任せて」

 

彼女のそう微笑むと、嶺は懐から奇妙な物体を取り出した。

それはバックル部分が肉食恐竜の頭部となっている奇妙な物体。

頭部には羽毛をモチーフにした赤い撃鉄が備わっており、上顎に該当するパーツにはナイトヘルムが覆い被さっているような造形になっている。

一見して奇妙な物体……ベルトを見たAスパイダーの態度が一変した。

 

『そ、それはっ!まさかっ!?』

「ふふんっ♪」

 

何処か得意気に笑うと、嶺はそれを軽く腰に当てる。

すると、そこから黄色のベルトが伸びて一瞬にして巻き付く。

 

『て、てめぇ頭がおかしいのかっ!?このガキの戯言に従って、正義のヒーロー気取りかっ!そいつは、その鎧は…』

「知ってるよ?ぶっちゃけすっごく怖い」

 

Aスパイダーを黙らせるように、嶺が口を開く。

しかしその声は低く、普段の明るい彼からとは思えない。

 

「それでも、僕は放っておけない。それで誰かが傷ついたら、僕は僕を許せないっ!!それに……」

 

そこでようやく、嶺が笑った。

 

「楽して助かる命がないのは、何処も一緒ってね!」

 

サイコロ『モンスダイス』を上空に放り投げる。

まるで運命を委ねるように、己の幸運をこの手で掴み取るかのように……。

落下して来たモンスダイスをキャッチし、一の目を模した赤いスイッチを押し込む。

 

【TYRANNO×WOLF!】

 

音声と肉食恐竜と獣の鳴き声が響くと、ドライバーにある恐竜の横顔を模した口のスロットへと装填する。

 

【GABURI! LET'S CALL!】

 

モンスダイス『ティラノウルフダイス』をセットした瞬間、エクトゥスドライバーは待機音声を周囲に響かせる。

まるでカジノを彷彿させるようなノリの良い待機音を背後に、バックルの上顎『ダイナヘルム』を押し込むようにその口を閉じた。

 

「変身っ!」

 

そして、自らを変える言葉を叫ぶ。

 

【SCANNING! TYRANNO×WOLF!】

【赤くてFANGなKNIGHT!その名は……TYRANNOLF!!】

 

赤い光が彼の身体を覆い、現れた赤い甲冑が戦うに相応しい身体構造へと変えていく。

黒いスーツと赤い甲冑、それを繋ぐように青いラインが刻まれた騎士……。

頭部にはティラノサウルスを思わせるような赤いマスクと鋭く青い複眼、そして牙を思わせるようなフェイスガードで覆われている。

右肩には獰猛な狼の頭を象ったシンボルがあり、そこから黒い裏地のマントが変身の余波で靡く。

 

「んっ?おおっ、本当に変身してる」

「嶺君、が変身しちゃった」

『なな、何すかあれっ!?』

「あれはエクトゥス……力なき民を守る騎士『エクトゥス』ですっ!!」

 

呆然とするグリムホワイト、怒涛の展開にパニックになったヴィルコプに答えたのはヴァン。

そう、嶺が変身した騎士の名はエクトゥス。

 

『仮面ライダーエクトゥス ティラノルフメイル』!!

 

魔法少女が戦いを終えたこの物語に、新たな仮面ライダーが登場したのだ。

 

『こ、こいつうううううううううっっ!!!』

「えっ、うわわっ!?」

 

まるで激情するかのように、こんな展開を認めないかのように棍棒を振りかざしながら、飛び掛かったAスパイダーに驚いたエクトゥスは、両腕を突き出して防御しようとする。

 

『何ぃっ!?』

 

予想した通り、エヴォルガの攻撃は受け止められていた。

ただし、両腕ではなく一振の剣で……。

恐竜や獣の頭部を象った赤い鍔を持つ西洋剣『狼竜剣(ろうりゅうけん)ファングブレード』だ。

ティラノルフメイルから生成された専用武器を握り締めたエクトゥスは、Aスパイダーの攻撃を大きく弾き、その剣を斜め下から一気に振り上げる。

 

『うおああああああああっ!?』

 

悲鳴と共にエヴォルガが仰け反り、がら空きになったその胴体に蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

そこを追撃すべく、肩のマントを靡かせながら鋭い斬撃で追い詰めていく。

その間にもエクトゥスの青いラインが輝き、エネルギーが両脚へと伝達される。

 

「わっ!?何だか力が漲って来る!」

 

沸き上がる力に困惑しながらも、その場で軽く跳ねて調子を確認する。

エクトゥスはそこから一気に助走をつけてから低くジャンプすると、Aスパイダー目掛けて連続でキックを浴びせた。

 

「はぁっ!!」

『ぐおああああああああああっっ!!!』

 

一撃、また一撃と叩き込まれるその蹴りは、ティラノサウルスの如き力強さと狼の如き鋭さを併せ持っており、エヴォルガへと着実にダメージを与えながらその身体を吹き飛ばす。

 

『ぐぅぅぅ……余裕かましてんじゃねぇっ!!』

 

地面を転がるも起き上がったAスパイダーは苛立ちと共に左半身からワインのような赤いアルコールを撒き散らし、地面に叩きつけた棍棒を擦り付けた。

すると付着したアルコールが発火、炎が纏わり付く。

それだけではない。

 

『ブルァッ!!』

「うわっ!」

 

口から白い糸を吐き出したのだ。

不意を打ったその行動にエクトゥスは躱すことが出来ず、無数の糸をその身に浴びてしまう。

雁字搦めにされて身動きの取れなくなった彼の身体を、火に覆われた棍棒が打つ。

 

「ぐあっ!くっ」

『ブラララララッ!!これで消えろぉっ!』

 

滅茶苦茶に振り回すAスパイダーの連続攻撃を満足に防ぐことも出来ず、地面を転がるエクトゥス。

その姿を見て完全に余裕を取り戻したエヴォルガが、止めの一撃を繰り出そうと動いた時だった。

 

「リード!『慈悲深き小人の戦士たち』!」

 

詠唱と共にエクトゥスを守るように現れたのは七人の小人。

赤や青などの甲冑で身を固めた小人たちは一斉に槍や剣、弓矢を構えてAスパイダーの攻撃を妨害する。

 

『ちぃっ!こんな人形で…ブラァッ!?』

「あたしたちを忘れんなっ!リード!『獣裂く正義の一撃』!」

「リード『永遠なる茨の城』」

「リード!『大砲ドッカーン』!」

『ちょっと、待ちなさ…ブルァァァアアアアアアアアッッ!!?』

 

まとめて蹴散らそうとするエヴォルガ。

しかし、いつの間にか糸の拘束から解放されたグリムレッドの鉄拳が炸裂し、吹き飛んだところをグリムスリープが茨の魔法で拘束。

更に追い打ちでグリムキャプテンが召喚した大砲による砲撃がAスパイダーへと見事命中。

黒い煙を上げながら地面へと落ちるのを確認すると、小人を召喚した魔法少女……グリムホワイトがエクトゥスへと駆け寄る。

 

「嶺君っ!」

「やっぱり、シロちゃんだよね?その姿って…」

「うぅぅぅっ///と、とにかくそれは後っ!!ムーン!」

 

拘束されているにも関わらず、呑気に尋ねる彼に少しだけ顔を赤くしたグリムホワイトが無理矢理話題を断ち切ると、グリムムーンを呼ぶ。

 

「少しだけ我慢してくださいね?リード。『火鼠の選別』」

 

短く詠唱した後、ムーンの持つ剣先からライター程度の火が灯る。

するとその火はエクトゥスに絡みついていた糸だけを容易く燃やし断ち切る。

 

「おおっ!?やった動けるっ!」

「お怪我もありませんか?さっ、早くこちらに……きゃっ!?」

「ありがとうございます!じゃ、行ってきます!」

 

グリムムーンの手を握り、お礼の言葉を口にしたエクトゥスはそのまま地面を蹴るとグリムレッドたちと交戦しているAスパイダーにドロップキックを浴びせ、着地と同時にそのまま一閃。

またしても吹き飛ばされたエヴォルガを見たヴァンが大声をあげる。

 

「トリガーを弾いてもう一度バックルの口を閉じてっ!でっかい一撃を繰り出せますっ!!」

「よしっ!」

 

ヴァンの指示通り、エクトゥスは撃鉄のようなトリガーを一度弾いてからバックルの口を開けて再度閉じる。

すると、ダイナヘルムに覆われたバックルの眼が輝き始める。

 

【FULL SCANNING! ANCIENT BURST!!】

「はぁぁぁぁ……!!」

 

スーツにある青いラインが輝くと先ほど以上のエネルギーが両脚に送り込まれる。

そして、極限まで高まったのを確認したエクトゥスは助走して跳躍した。

ビルすらも容易く超えてしまうのではないかと錯覚してしまうほどのジャンプ……起き上がったAスパイダーに照準を合わせると、そのまま跳び蹴りの姿勢へと入る。

赤いティラノサウルスの頭部を象ったエネルギーを纏ったエクトゥスは、そのまま凄まじい速度で右脚を突き出した。

 

「はああああああああああああっっ!!!」

『ブルァアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

高所からの急降下キック『ファングストライク』をまともに受けたAスパイダー・エヴォルガは悲鳴と共に爆散。

 

「きゃあっ!?」

「うわっ!」

 

テラーデビルを撃破した時には決して起こらない、叩き込まれたエネルギーによる爆発の余波に魔法少女たちが顔を覆う。

爆風が収まり、そこに立っていたのは赤い甲冑を纏いし合成生物の騎士……。

それを、魔法少女たちとヴィルコプはじっと見つめていた。

 

「……」

 

エクトゥスも、そしてヴァンも彼女たちの方へ向く。

想い出を守る戦いを終えた魔法少女『グリムテラー』・そして封印から目覚めた騎士『エクトゥス』。

それは、新たな物語の始まりを告げるのだろうか……。

 

 

 

 

 

「エクトゥス……」

 

そして、その様子を遠くから黒ずくめの男が眺めていた。

自分たちを封印した騎士の復活に感情を変えることなく、ただサングラスの奥にある瞳を鋭く光らせる。

そして、徐に口を開く。

 

「『ムエン』」

『はっ』

 

響く声……同時に黒い無数のムカデが男の背後に群がり、形作っていく。

やがて、首を垂れるような姿勢の異形が現れる。

鋭い棘のような装飾とマフラーを生やした右半身は黒く光り、見る者に生理的嫌悪感を与えるであろうその身体はまるでムカデのようだ。

しかし、左半身は日本の僧を思わせる黒い袈裟のようなローブとなっており、その肩からは錫杖の先端を思わせる金属の輪を十二本通している。

 

「この時代の情報を集めろ。文化、年代、とにかく何でも良い」

『了解でござる。「ウォンセクト」殿』

 

彼からの指示に短く了承したムエンは、再びその身体を無数のムカデへと分解してその場から姿を消す。

 

「今度こそ、この世界は俺たちの物になるっ」

 

全てを望むかのように、ウォンセクトと呼ばれた男はその拳を強く握り締めた。




コンセプトしてはオリジナル魔法少女とオリジナルライダーとのクロス。
魔法少女サイドはラスボスを倒した後の時間軸であり、所謂続編みたいな感じです。

以下、簡単な設定
魔法少女:
世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。魔法の携帯『グリムフォン』を手に取ることで心に残った思い出の童話を己の戦闘衣装や武器として具現化することが出来る。
彼女たちは「グリムテラー」と呼んでいたが、後に魔法少女と自らを呼ぶようになる。
そんな彼女たちも今では高校生……魔法少、女?
 
エヴォルガ:
平和を取り戻した世界に突如出現した怪人で目星をつけた人間に力の根源であるエヴォルダイスを埋め込むことで同胞たちを誕生させる。


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二の目 願いと想い、そして共闘

明けおめです!待っている人がいるか分かりませんが、エクトゥスの二話目です。
オーズモチーフなので、オーズの二話目を参考にしました。


エヴォルガを撃破してから四時間後……別喫茶店に連行された嶺とヴァンの二人は五人の少女たちに囲まれていた。

理由は実に単純である。

 

「どういうことか説明して、嶺君」

「うーん。説明かー」

 

代表して口火を切った眞白が問い詰める。

困ったように笑う嶺は、頼んだクリームソーダをストローで啜りながら思案する。

 

「えーと、帰り道にボロボロだったヴァンを見つけて、そんで俺にエクトゥスの資格があってー」

「待て待て待て待て。全・然!分からんっ」

「でもこれぐらいしか説明出来ないし……」

「お気持ちは分かりますが……」

 

ふわっふわした説明に真琴がツッコミを入れるも、当の本人は何処吹く風。

グリムムーンに変身していた少女も苦笑いするが、あまり事情を把握していないと判断する。

ちなみにグリムスリープだった少女は寝ており、日向はむくれている姉を必死に宥めている。

そうなると彼の隣の少年……ヴァンに話を聞く必要がある。

視線を向けられたことで気づいたのだろう。ヴァンは軽く咳払いをすると口を開いた。

 

「嶺の説明に間違いはありません……僕はヴァン。800年以上前に存在した錬金術師、その記憶と人格を写し出したホムンクルスです」

 

そして、話が始まった。

 

 

 

 

 

『なるほど、これが今の時代でござるか』

 

ビルとビルの隙間、そこから人ならざる声が聞こえる。

それは道を行き交う人々には聴こえていなかったが、もしも耳にした一般市民が見れば絶句し卒倒するだろう。

隙間には無数の黒いムカデが蠢いており、そこから先ほどの声が聞こえているのだ。

 

『文化・流行・社会情勢、ウォンセクト殿が望む情報は全て収集はしたでござるが……』

 

一つの意志を持つ百足たちは考える。

このまま集めた情報を持って帰るのは簡単だ。

しかし、エクトゥスの復活と妙な衣装と不思議な力で戦う少女たち……これを野放しにするのは少しばかり不安が残る。

あの錬金術師が完成させた騎士の力、かつては『魔剣』だけでなく、その頭脳を持って800年以上前に存在した我が国を発展させた彼……ヴァンの発明が『あの程度』で終わるとは思えない。

そしてあの少女たち、ただの人間と侮るには些か早計だ。

そこまで考えたムカデたちは蠢き、まるで何かを形作るように集まっていく。

 

『……』

 

一つに集まった無数のムカデ……ムエンへと変貌した彼は周囲を見渡す。

しばらくして『それ』はすぐに見つけた。

 

「ふぅ……」

 

缶コーヒーを置いて一息吐いたのは、それなりのスーツを着た男性。

額縁眼鏡と七三分けにしたその姿は、サラリーマンのように見える。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……老後の貯金には全然かな」

 

人気のない場所で、近くのベンチに腰掛けながら独り言ちる。

男性は、銀行員であり今の時代には珍しく向上心のある人物だ。自分の働く銀行のためにと必死に働いており、上司だけでなく同僚や部下からの評判も良い。

そんな彼が働く理由はただ一つ『老後のため』だ。

まだまだ若い彼だが、「人生何が起こるか分からない」をモットーに仕事に精を出している。

もしかしたら病気が起こるかもしれない、もしかしたら仕事を急にやめることになるかもしれない……。

常に不測の事態を考えていれば、自然とお金が必要になってくる。

 

「まぁ、でも」

 

世の中金が全てではない。

だからこそ、そう思っている彼の周りに人が集まってくるのだろう。

辛いこともあるが、仕事も楽しいことに変わりはない。

休憩を切り上げると、職場に戻ろうと立ち上がった時だった。

 

『金が欲しいでござるか?』

「えっ?」

 

何処か古臭い、鋭い声が聞こえたのだ。

それは間違いなく自分に向けている。

慌てて辺りを見渡し、やがて背後からの気配に振り向いた時だった。

そこにいたのは一体の黒い怪人……。

ムカデのような鋭い棘のような装飾とマフラーを生やした黒く光る右半身に、左半身は日本の僧を思わせる黒い袈裟のようなローブに錫杖の先端を思わせる金属の輪を十二本通した左半身。

 

「ば、化け物っ!?」

『その運命、利用させて頂く』

【INSECT…!!】

 

恐怖で驚く男性に気にすることなくムエン……『B(ビショップ)センチピード・エヴォルガ』は、エヴォルガダイスを取り出して起動する。

そして、躊躇なく男性へと埋め込んだ。

 

【Let's Play……!!】

「あああああああああっっ!!?」

 

苦し気な悲鳴と共に、埋め込まれたダイスが排出されると男性はその場に倒れる。

やがてダイスが淡い光と共にエネルギーを放出しながらエヴォルガへと変わる。

 

『ヴッ、ヴヴヴヴヴヴヴ』

 

生まれたのは、耳障りな呻き声をあげる異形。

六本の脚で細長い身体を支えるその姿は昆虫そのものだが、人間の胴体ほどのサイズを持つ『それ』は宿主の願望を叶えるべく確かな足取りで地面を這って動き始める。

気を失っている男性の一瞥した後、すぐに視線を生み出したエヴォルガへと向ける。

 

『成長するころには、彼奴らも気づくでござろう』

 

そう呟くと、Bセンチピードは再びその身を無数のムカデへと分離させて姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

「エヴォルガは、人間の願望と生物の力が入り混じった改造人間です」

 

その説明に全員が驚く中、お冷を一口飲んで喉を潤したヴァンは続ける。

今から800年以上前の時代では複数の動物の力を宿した敵国の王が蹂躙し、世界の全てを手に入れようとしていたらしい。

その強欲な王に立ち向かうべく、目を付けたのが祖国の労働力でもあった人工生命体だ。

ダイスに宿した動物のエネルギーを解放し、召喚することが出来、今でいうロボットに近い存在であったらしい。

しかし簡単な作業や指令でしか動かない人形では相手にとって取るに足らないことは一目瞭然……それに対してある兵士が行動を起こしたのだ。

 

「騎士団の一人が、ダイスを自分の身体に埋め込んだんです……その時の光景はよく覚えています」

 

今でも思い出す。

歪な光と共に、異形へと変わっていく様を……それに対して羨望とも呼べる視線を、彼らが異形へ送っていたこともっ。

彼に続くように騎士団の兵士たちをダイスを埋め込み、その身を改造しようとした。

しかしそんな付け焼刃にデメリットが存在しないわけがない。

ある者は形が崩れて理性を失い、またある者は異形となった半身に身体を食われた。

そして、唯一生き残った兵士や騎士……所謂適合者たちは自らを願望と生物が混じり合うことで進化した存在『エヴォルガ』と名乗り、敵国の王が祖国に侵入することを防ぐことが出来たのだ。

しかし。

 

「彼らは突如として、国に牙を剥けました……!」

 

エヴォルガたちは自らの国に刃を突きつけ、全てを支配すべく反逆を起こしたのだ。

ダイスの技術を使い、人間の精神と願望を異形の怪人へと実体化させる術を生み出し、何もかも破壊しようとした。

それに気づいたヴァンはエヴォルガを打倒すべく、エクトゥスドライバーを初めとした様々な武器や道具を製造したのだ。

 

「我が友……初代エクトゥスが自らを犠牲に、彼らは地下深くまで封印されたことで大勢の民が救われたのです」

 

だが現在になって封印は解かれ、再びエヴォルガが復活してしまった……。

そこまで言い切った彼は、改めて全員の視線を受け止める。

 

「でも、エクトゥスも再び蘇りました。だから嶺には…」

「……にしてよっ」

 

その言葉を、最後まで言うことが出来なかった。

顔を下へ向けていた眞白が、声を発していたのだ。

 

「好い加減にしてよ!」

 

突然、眞白が大声を出した。

テーブルを叩き、立ち上がる……幸い人が少なかったのであまり注目を浴びることはなかったのだが、それで何か事態が好転するはずもない。

 

「シ、シロちゃん……?」

 

呆然とする嶺に気にすることなく、彼女はエクトゥスドライバーを取り上げる。

 

「さっきから聞いてたら、君は嶺君のことを何だと思っているのっ!?嶺君は、戦いとは関係ない普通の高校生なんだよ!」

 

その憤りをぶつける眞白に、一緒にいた真琴や日向たちも驚く。

彼女がここまで怒ったことなど指を数えるほどでしかなかったからだ。それ故に一度怒らせたら怖いというのも、彼女たちはもちろん嶺も知っている。

 

「嶺君はっ、嶺君は戦えもしない君の道具なんかじゃないっ!危ないことに巻き込まないで!行こう、嶺君っ!!」

「ちょ、ちょっとシロちゃんっ!?」

 

自分と嶺の代金を出し、眞白はそのまま嶺を連れてカフェから出て行ってしまった。

気まずい空気のまま、真琴が困ったように辺りを見てヴァンに声をかける。

 

「あの、さ。ごめんな、眞白は……」

「分かっています」

 

彼の顔は、先ほどとは違い辛く何かに耐えているような表情だ。

膝の上に置いた両手は握り拳を固めている。

 

「僕のやっていることは、どう言い繕ったところで戦いの押し付けです。無関係な人どころか、僕は恩人とも呼べる人を生と死の戦場に駆り出そうとしている……嶺の大切な人が怒るのも無理はないです」

『分かるっすよ』

 

頷いたのは、今までぬいぐるみの振りをしていたヴィルコプだ。

無関係な者を巻き込まないために行動を起こそうとした自分、年端も行かない少女を戦いへと導いてしまった悔恨。

ただ見守ることしか出来ない歯痒さ……そんなヴァンの気持ちが分かってしまう。

 

『ボク、眞白ちゃんたちを探してくるっす』

「わ、私も行く」

 

同じく代金をテーブルに置き、ヴィルコプと共に日向も眞白たちの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

少し離れた広場の近くまで嶺の手を引いていたが、彼女の手を離すと両肩を掴んだ。

 

「どうしたのシロちゃんっ?あんな無理やり話を切るみたいに……」

「どうしたのって、分かっているの嶺君っ!あれは遊びでも何でもない、一歩間違えたら死ぬかもしれないんだよっ!?」

「分かっているよ?だけど…」

「とにかく、あんな危ないことしちゃ駄目だよ!嶺君に何かあったら、私……!」

 

嶺の言葉を遮り、嶺の両手を強く握る眞白……その表情は真剣そのものだ。

グリムテラーとして戦ったからこそ分かる。

戦いとは辛いものだ……特に、カオス・テラーの戦いは想い出の怨念や負の側面とも呼べる存在を相手していたのだ。

あんな辛い思いを、大切な幼馴染にはしてほしくない。

戦いに巻き込まれて欲しくないのだ。

 

「だけど俺は……」

 

少しだけ表情を引き締めた嶺は、眞白の目を見る。

そして口を開こうとした瞬間、轟音が響き渡った。

 

「え、何っ!?」

 

眞白が慌てて周囲を見渡す。

今のはどう考えてもおかしい……まるで何かが破壊されたような、そんな音だ。

 

「何が…」

「姉さんっ!」

『眞白ちゃんっ!』

 

同時に駆け付けたのは日向とヴィルコプ。

二人を見つけたと同時に、音が響いたのだ。

 

「あっちか!」

「待って嶺君っ!」

 

逃げてきた人たちを見て、発生源の検討を付けた嶺が走るのを見た眞白たちも、慌てて追いかけた。

 

 

 

 

 

嶺たちが辿り着いたのは街の中でも大きい銀行。

利用客や銀行員たちが外へと逃げ出していく中、嶺と少し遅れて到着した眞白たちも銀行内へと入り込むと、そこで蠢く影を発見する。

その影は異形……エヴォルガだ。

後ろにいる彼らに気にすることなく、そこにある大量の紙幣や通貨を片っ端から食い漁る。

エヴォルガは求める。もっと金をと……。

自分が安心くらいの金を寄越せと、ただひたすらに目の前の金を貪り続ける。

ひたすらに食らう異形の光景に嶺たち戦慄する。

何故なら、目に見えるほどの成長が起きているからだ。

異形が金を口や脚に取り込んでいく度に、その身体が段々と大きくなっていく。

もはや人間並みのサイズへと変貌したその昆虫は、耳障りな金切り声をあげる。

 

『シュウウウウウウウウッ!』

 

その姿は、巨大なオトシブミのような黒い異形。

特徴的な頭部と触覚、そして茶色い胴体などはまさに実在する昆虫のオトシブミそのもの……。

しかし、左右合わせて計六足もある筋足には通貨の投入口のような穴が開いており、背中には四角い箱のような瘤が浮き上がっている。

その姿は見方を変えれば昆虫になった貯金箱のようだ。

 

『ギシャアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

人間以上の大きさを誇るようになった異形『B(バンク)アテラビデオ・エヴォルガは金切り声を周囲へと響かせると銀行内を暴れ回る。

 

「日向、ヴィル君っ。嶺君をお願いっ!!グリムリード、セットアップ!」

 

妹に嶺を任せた眞白はグリムホワイトへと変身を完了させると、ステッキから放った魔力の弾丸でエヴォルガの意識を反らす。

大したダメージはなかったが、意識をこちらへと向けるには充分だ。

振り返ったBアテラビデオが威嚇の唸り声をあげる中、グリムホワイトは荒らされた惨状を見ると視線を鋭くする。

 

「これ以上、みんなの想いを傷つけさせないっ!リード『毒婦を焼く鉄の靴』っ!」

 

詠唱と共に彼女の両脚に装着されたブーツに炎が灯る。

そして、勢いのままBアテラビデオに迫るとそのまま強烈な蹴り技を仕掛ける。

 

「はぁっ!でやっ!!」

 

その炎は悪しき心だけを焼き、邪悪を払う熱き鉄靴。

二発、三発とキックを浴びせるとエヴォルガの身体が揺らぐ。

どうやら虫をモチーフにしているだけあってか火には弱いらしく、その身体が燃え始める。

「これならっ」とステッキを握り締めたグリムホワイトは追撃を行おうとする。

しかし。

 

『ギッ、キシャアアアアアアアアア!』

「えっ!?」

 

突如として纏わりついていた炎が消失した。

否、消失しているのではない。

よく見れば揺らいだ炎が貯金箱の瘤へと吸い込まれていくではないか……。

動揺し一瞬動きを止めてしまった彼女を、目の前の昆虫は見逃さない。

 

『シャアアアアアアアアアアアッ!!』

「ぐぅっ!?」

 

Bアテラビデオの口から先ほどの炎が吐き出されたのだ。

砲弾のように吐き出された火球に慌てて障壁を張るも、その勢いのまま吹き飛び壁に叩きつけられる。

 

『ホワイト!』

「姉さんっ!」

「シロちゃんっ!」

 

慌てて駆け寄る二人と一匹に「大丈夫」と返す。

邪魔者を排除した気になったエヴォルガはそのまま大量の紙幣や硬貨を背中の瘤へと蓄積していく。

その姿に、グリムホワイトはヴァンの言葉を思い出す。

適合者たちの手で生まれたエヴォルガは人間の持つ願望と既存動物の能力が合わさっている……。

そうなると、あれは貯金が趣味の人間から生み出されたエヴォルガということになる。

だからグリムホワイトの炎が吸収されたのだ。

エネルギーを溜め込み、吐き出す……それがあのエヴォルガの能力だ。

 

『キシャアアアアアアアア!!』

 

雄叫びと共に銀行内にある金を食べ終えたBアテラビデオが外へと出る。

慌ててグリムホワイトが追跡すれば、彼女はその光景に絶句した。

 

『ギシイイイイイイイイイイイッ!!』

 

Bアテラビデオが隣にあるビルその物に襲い掛かっていたのだ。

札束や金だけでは願望が満たせないのだろう、資産価値のある物体へと狙いを定めたエヴォルガはその巨大な口と脚の投入口を使ってビルに皹を入れ始めている。

 

「うわぁぁぁんっ!」

 

そこへ一人の子どもが涙で顔を濡らしながら走ってきた。

慌ててグリムホワイトが駆け寄り、幼い少年に優しく声をかける。

 

「どうしたのっ?」

「ぐすっ。お父さんとお母さんが、まだ……まだっ」

 

どうやらこの子の両親はビルの上階で取り残されているらしい。

それを聞いた嶺の行動は早かった。

 

「嶺君っ!」

「その子をお願いっ!探してくるっ!!」

 

それだけを言うと、そのままエヴォルガがへばりついている高層ビルの方へと走るのだった。

 

 

 

 

 

高層ビルの屋上にて、三十代の夫婦は人生初めての恐怖に直面していた。

顔を覗かせたBアテラビデオの巨体に恐れていた。

その光景に身体を震わせ、互いに抱き合っている。

 

『ギシャアアアアアアアアアッ!』

「きゃあああ!!」

「うああああ!!」

 

やがてエヴォルガの巨体が屋上へと完全に辿り着いた。

歓喜の雄叫びを天に向けてあげる異形に二人が悲鳴をあげる。

それと同時に、自分の命運もここまでかと悟ってしまう……そこまでの境地に辿り着いてしまった二人が揃って思い描いたのは。

 

(神様、お願いしますっ)

(あの子を、あの子だけは助けてあげてくださいっ!)

 

愛する我が子のことだった。

 

「危ないっ!」

 

そこに、聞こえるはずのない少年の声が響いた。

その少年……嶺は途中で拾った消火器をBアテラビデオの脚へと叩きつける。

ダメージはないが意識を向けるには充分、嶺の目的は倒すことではない。

 

「早く逃げてくださいっ!」

 

夫婦……あの子どもの両親を逃がすことだ。

しかし恐怖で腰が抜けているのか、それとも目の前の少年を見捨てて逃げることが出来ないか困惑して動くことが出来ない。

そこに、追いかけてきたグリムホワイトと日向が変身したグリムパイレーツが現れる。

 

「こっちです!早くっ!!」

「すぐに息子さんの元まで行くから捕まっててね、おじさんたちっ!」

 

二人を担ぎ上げたグリムパイレーツはすぐさま自身の船『夢運ぶ自由の海賊船』を召喚すると、すぐさま屋上から離脱する。

これで目的は達した。後は自分も逃げるだけだ。

しかし。

 

『ギシャアアアアアアアアアッッ!!!』

「な、うわっ!?」

 

邪魔をされたことで怒りを露にしたBアテラビデオが暴れ始めたのだ。

地響きにも衝撃でバランスを崩した嶺は放り出されてしまう。

 

「嶺君っ!」

 

グリムホワイトが慌てて彼の腕を掴み、必死に支える。

変身している今なら然程負担はないが暴れるエヴォルガにも意識を向けなければならないうえに、彼女には空を飛ぶ魔法を使えないのだ。

 

「バカッ!どうしてもいつも、こんな無茶ばっかりっ!!どうしてっ、どうして……!」

 

グリムホワイトは涙を溜める。

何故無茶をするのか、どうして傷つこうとするのか……混乱する頭で必死に嶺の腕を掴む。

そんな悲痛な、張り裂けそうな想いが伝わったのか、彼は意を決したように口を開いた。

 

「俺は、嫌なんだ……!」

「えっ」

「もう嫌なんだっ!誰かを放っておくのもっ、誰かが泣いているところもっ!これ以上、絶対に見たくないんだっ!!」

 

切っ掛けは、小さなことだ。

ほんの小さなころの、ちっぽけな事件……それは今も小さな棘となって深く刺さったまま抜けないでいる。

放っておけない。

あの小さな子どもの泣く姿を見て、余計に感じた。

 

「俺は戦いたいっ。世界を守るとか、そこまでのことは考えられない……それでも、何もしないよりは手の届く範囲でみんなを守りたいっ!」

「っ!」

 

その言葉に、グリムホワイト……眞白は小さかったころを思い出す。

保育園の子たちと上手く馴染めなかった自分に、声を掛けてくれたのが嶺だった。

いつも自分を助けてくれたのも、家族には言えない辛い時には、いつも一緒にいてくれた。

 

(ああ、そっか……)

 

思い出した。

エクトゥスに変身出来るから戦うんじゃない。

きっと、知ってしまったから首を突っ込むことを決めたのだ……このお節介な少年は、そういう人物だ。

変わらない彼のことが嬉しいのか、それとも辛いのか、複雑な笑みを零す。

しかし。

 

『キシャアアアアアアアアアアアア!!』

 

屋上へと辿り着いたBアテラビデオが雄叫びをあげた。

その衝撃でビル全体が大きく揺れ動いてしまい、嶺とグリムホワイトは遥か地上へと落下していく。

 

「嶺君っ!」

「っ!」

 

その中で、彼女は懐に入れていたエクトゥスドライバーを嶺の腰に当てて装着させると、取り出したモンスダイスを嶺に渡す。

 

「シロちゃん!?」

「一緒に戦って、エクトゥスッ!」

 

その言葉に、一瞬だけ驚くもすぐさま思考を切り替えた嶺はモンスダイスの一の目型のスイッチを押し込んだ。

 

【TYRANNO×WOLF!】

【GABURI! LET'S CALL!】

 

起動させたティラノウルフダイスをセットし、ドライバーの待機音声を周囲に響かせる。

そして落下しながらも焦ることなく、バックル上部のダイナヘルムを力強く押し込んだ。

 

「変身っ!」

【SCANNING! TYRANNO×WOLF!】

 

光と共に変身したエクトゥスはファングセイバーを取り出し、グリムホワイトを強く抱き締めるとその刃をビルへ向ける。

 

【赤くてFANGなKNIGHT!その名は……TYRANNOLF!!】

「こんのぉっ……止まれええええええええええええええええええええええええっ!!」

 

ファングセイバーを深く突き刺し、無数の火花を散らしながら速度を落としつつ落下していくエクトゥス。

やがて真下にあった瓦礫を両脚でしっかり踏んでジャンプすると、グリムホワイトを抱き締めながら空中で回転し、何とか地上へと着地した。

 

「……ぶはぁっ!た、助かったぁっ」

 

無事に着地出来たことに安堵するエクトゥス。

先ほどまで自分たちがいた屋上を見上げるが……遠慮がちがグリムホワイトの声が耳に入る。

 

「あのっ、嶺君っ」

「え?……あ、ご、ごめんっ!」

 

安心していたせいか、エクトゥスは彼女を抱き締めてたことをすっかり忘れ、腕の中で縮こまっている彼女に言われて慌てて離れる。

 

「う、うんっ。大丈夫……ありがと///」

 

髪先を弄りながら仄かに顔を赤くしか細い声でお礼の言葉を口にする。

そんな初々しい態度にヴィルコプは保護者の如き暖かい視線を送りそうになるが……。

 

「……良いなぁ、姉さんっ」

『日向ちゃんっ?』

 

少し羨ましそうな表情でむくれている彼女たちを見ているグリムパイレーツがいたので、流石に自重することにした。

兎だが、馬に蹴られるようなことはしない。

すると、しばらくしてバイクのエンジン音が響く。

振り向けばエクトゥスの専用バイクに乗ったヴァンがいる。

恐らくオート操作をしているのだろう。血相を変えた様子で彼の元まで走る。

 

「大丈夫ですか、嶺っ!」

「無問題ってね」

 

心配した様子を見せる彼を安心させるように、いつもと変わらぬ態度のエクトゥスに安堵する。

そして、グリムホワイトの前に向き直ると、頭を下げたのだ。

 

「ごめんなさいっ」

「えっ」

「嶺の身内だとは知らず、不躾なことばかり言ってしまい、本当にごめんなさい……!」

「ううん、私の方こそごめんなさいっ」

 

その謝罪に、グリムホワイトも頭を下げる。

まだ伝えたいことはあったが、互いの蟠りを解消した二人は笑みを見せると屋上で暴れるBアテラビデオを見据える。

 

「嶺、これを」

 

ヴァンが渡したのは、くすんだ色のモンスダイス……ブラキオサウルスの絵柄が彫られたそれをエクトゥスは手に取る。

 

「ブラキオサウルスのダイスです。まだ現存生物がないので、プロトタイプですが武器にセット使えば一部の能力が使えます」

「分かった、ありがとう!」

 

頷き、ダイノレーサーに跨がるとエンジンを掛ける。

 

「シロちゃん!」

「うん!」

 

彼の言わんとしていることが伝わったグリムホワイトは後ろに座る。

これで準備が出来た。

 

「よっと!」

 

速度は最初からフルスロットル。

ヴァンが施した魔改造によって生まれたスーパーマシンは崩壊寸前のビルの壁を走り、重力を無視した馬力で直進する。

そして、エヴォルガのいる屋上まで飛び出すと……。

 

「でやぁっ!!」

 

豪快に振るったファングセイバーで前足を切り落とした。

金切り声を上げてもがくBアテラビデオを視界に入れつつも、ダイノレーサーから降りたグリムホワイトが詠唱を開始する。

 

「リード!『眠りへ誘う毒林檎』!」

 

詠唱と共にステッキから三つ発射されたのは赤く毒々しい球体。

見た目以外は速度も通常と同じ……この魔法の真価は別にある。

 

『ギ……!?』

「はぁっ!」

 

その攻撃を身体に受けたBアテラビデオの動きが鈍くなり始めたのだ。

まるで全身が錆び付いたかのように、ぎこちない身体を動かすも、その間にエクトゥスの斬撃が襲い掛かる。

先ほどグリムホワイトが放った魔法は命中した相手の動きや能力など全体的なスペックを低下させるものだ。

 

『ギッ、ギシッ!キシャアアアアアッ!!』

 

Bアテラビデオの体勢は揺らぎ、倒れかねない不安定なものになっていく。

更に今立っているのは屋上の際どい部分……脚を踏み外せば、確実に落ちてしまうほどに危うい。

しかし、人間の願望を悪用する怪人に対して、そんな慈悲も容赦も二人にはない。

 

【FULL SCANNING!】

「「落ちろおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

ヴァンから渡されたプロトダイスをファングセイバーに装填し、ブラキオサウルスの力を宿した力強い一撃と、グリムホワイトの炎の跳び蹴りが炸裂した。

 

『ギシャアアアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

結果として当然、直撃を受けたBアテラビデオは一歩二歩後退すると、そのまま地上へと落下していった。

ダイノレーサーに乗ったエクトゥスとグリムホワイトも屋上から飛び、その後を追う。

その際、彼女の召喚した小人が作り上げたトランポリンでダメージを受けることなく着地に成功する。

 

「嶺っ!」

 

ヴァンの声に頷く。

 

「行くぞっ!」

『キシャアアアアアアアアアアアッ!』

 

エクトゥスは起き上がったBアテラビデオに向けてダイノレーサーを再び発進させる。

アクセルを噴かして直進する彼に負けじと、体内から複数のポーンズを生成し、自身も口からエネルギー弾を放って妨害を図る。

しかし、それらはグリムホワイトの魔法と召喚した武装小人たちによって蹴散らされ、エネルギー弾による攻撃もエクトゥスの剣によって防がれる。

 

「ふっ!」

 

そして、Bアテラビデオの攻撃を防いでいたエクトゥスたちが機体を傾けて真下へと滑り込んだ。

巨体の真下から腹部をファングセイバーで突き立て、縦一直線の傷と無数の火花を散らせながらファングセイバーの鍔にあるスロットへティラノウルフダイスをセットし、レバーを押し込む。

 

「ついでにこれもっ!」

【FULL SCANNING! TYRANNOLF!】

「あなたにあげるっ!ファイナルリード!」

 

スキャナーから電子音声が鳴り響くと共に、ファングセイバーの赤い刀身とグリムホワイトのステッキがより一層、光り輝き始める。

そしてダイノレーサーでエヴォルガの真下を潜り抜けて開けた場所に出ると、Bアテラビデオを見据えながらエクトゥスはファングセイバーを、グリムホワイトはステッキを構える。

 

【ANCIENT SLASH!!】

「はぁぁぁぁ……せりゃああああああああああああああっ!!」

「『スノウホワイト・プリンセス』ッ!!」

 

斜め一閃。

ファングセイバーから放たれた赤い斬撃はBアテラビデオの巨体を真っ二つにし、グリムホワイトのファイナルリード……必殺技の魔力の奔流である白い砲弾が大きな風穴を開けた。

 

『ギギッ!?グッ、ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

強烈な必殺技の直撃を二度も受けたBアテラビデオ・エヴォルガは断末魔の悲鳴を上げながら爆散。宿主の意識を解放して消滅する

完全に撃破したのを確認した二人は、共に笑みを零すとハイタッチをする。

 

「シロちゃん……ありがと」

 

エクトゥスの言葉に、グリムホワイトも笑って頷くのだった。



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仮面ライダーBELIEVES

多人数ライダーをあまり書いたことないので、カリバー(オリライの方)リメイクがてら試しに書いてみました。
イメージとしてはブレイドとゼロワンをイメージしています。
異なる場所で、それぞれの理由で戦う戦士たちの活躍を楽しんでいただければ幸いです。


時風町……それは、時代と風の流れと共に進化を続ける街。

シンボルでもある巨大な時計塔があること以外は至って普通の街並みだが、『とある技術』の実験都市としての側面もあるのだ。

近年稀に見るコンピューターウィルスの進化に対応すべく、この世界では「デジタライズ」と呼ばれる技術を生み出した。

それは、特殊なチップや機械に内包されたデータを実体化させることで視覚化に成功したコンピューターウィルスを自身の手でデリートするという技術だ。

一見すれば未来の技術だが、実体化したデータが人間に害を与えるのかなど課題点が多く、またデジタイズを悪用した犯罪も否定出来ない。

それら全ての可能性をシミュレートし、その解決案の提案や実行を任されているのが、この時風町なのだ。

そんな科学の未来を担うその街中で『怪人』の魔の手が忍び寄る。

裏口の居酒屋が立ち並ぶ通り道に悲鳴が響き渡った。

 

「きゃあああああああああああ!」

 

女性の悲鳴なのだろうか、悲鳴が聞こえた途端に辺りの談笑は一気に消え失せ動揺へと変わる。

そしてそれが、恐怖へと変わるのに然程時間は掛からなかった。

 

『うわあああああああああっ!?』

 

男女の更なる悲鳴が聞こえ、恐怖と不安が伝染すると、一目散に多くの人々が表の通りへと逃げ出した。

中にはその大群に飲み込まれて転んでしまう人もいたが、それでも逃げようとする辺り、やはり必死だった。

しかし、恐怖の根源である『それ』は、気にすることなく食事を続けていた。

 

『おっふ。これが夢にまで見た有名店の味……何て素晴らしい、何て美味なんだっ』

 

恰幅の良い身体と牙を生やした顔は正しく人型になった野生の豚そのもの……しかしそのボディは毒々しいピンクであり、まるで肥えた内臓のようだ。

血管のような赤いラインを全身に走らせたその異形は先ほどまで客が食べていた料理を箸で食べやすいサイズまで細かく分けて、口に入れる。

人の食べていた料理を食す姿は日本のマナー以前の問題だが、異形が丁寧な作法で食べている姿はあべこべで何処か滑稽だ。

やがて、食べ終えた豚の怪人は次の『美食』に目を向ける。

先ほど悲鳴をあげた女性が帰り道の途中で購入した、本格中華料理店の中華まんだ。

 

「あっ、あぁ……!」

 

女性は腰が抜けて立てない中、それでも必死に這いずり逃げようとしていた。

差し出せば助かる確率は高いのだが、恐怖に縛られている今の状況ではそんな冷静な判断をするのは難しいだろう。

 

『それも美味そうだ。なぁ、食わせてくれよ。ほんの少しで良いんだ、頼むよ。なぁ?なぁなぁなぁなぁなぁなぁ……!』

 

そう言いながら、女性の元まで近づいた怪人は鈍く光る巨大なフォークを取り出した。

 

『それを、食わせろおおおおおおっっ!!』

 

そして、その分厚いフォークの刃を尖らせて女性を串刺しにしようと手を引いた。

その時。

 

「ふっ!」

『プギッ!?』

 

女性を飛び越えて一台のバイクが怪人に向かって突進。

暗闇から乗じて試みた奇襲が相手の意を突き、そのままバイクの前部分に怪人の身体がもたれた。

ヘルメットで顔こそ分からなかったが、服装は紺色の上着に白いシャツと長いジーパンの少女……今時の女子大生らしい服装だ。

 

「早く逃げてください!」

 

背後にいる女性に向かって声を飛ばすと、少女は一気にバイクのエンジンをかけて怪人『デジタント』をフロントに叩きつけたまま走り出した。

デジタント……それは時花町に現れた正体不明の電波生命体。

人間の持つ欲望をデータとして取り込み、憑依することで進化するデジタライズとはまた違うイレギュラーで生まれた怪人だ。

少女はそのデジタントから人々を守る組織『GUARD』の協力者として所属している。

 

「……はっ!」

 

マシンを加速させて移動を続ける。

余計な被害を出さないよう、人がいない安全な場所へと移動して戦うつもりなのだ。

前から来る風圧によって意識を取り戻した豚のデジタントは手に持ったフォークを杏の顔面に向かって突き立てるが、それを僅かな初動のみで避ける。

 

『ピギィイイイイイイイイッ!』

(微かなアルコールいや酒の臭い……もしかして酔っているのっ?)

 

それに気づいたのは突進した時だ。

まるで痛みという感覚が鈍ったかのようにゆっくりと倒れる様子を見た時には見た目の割に打たれ弱いのかと思っていた。

しかし、ここは居酒屋が多く並んでおり駆け付けた時には他の店も襲われた痕跡があった。

ならば、このデジタントは料理だけでなく酒も好む人間に憑依したのかもしれない。

事実、近くで対峙して分かったことだが、デジタントの口らしき箇所からは異なる料理の入り混じったような不快な臭いに紛れて微かにアルコール臭が漂ってるのだ。

 

「……きゃっ!?」

 

そんな考察しているところで敵も本格的な戦闘態勢に入る。

バイクを力の限り揺らし、妨害を開始したのだ。

 

「くっ!」

 

だが少女もハンドルを強く振り返して威力を相殺し、そのまま路地裏へと突っ込む。

 

『……ああああああ!好い加減離しやがれごるぁああああああああっ!!』

 

再び喉元を狙った一撃が怒声と共に迫る。

そろそろ、身体の自由が効かない少女では避けるのも難しくなってきた。

辛うじてこれらを避けると、懐から『ある物』を取り出す。

 

【JOKER DRIVER!】

 

それは銀色をメインカラーにした奇妙なバックルのようなデバイス。

所々に赤い装飾があり、右側には横向きにして挿し込むであろうスロット部分とフック型の小さなレバーがある。

デバイス『ジョーカーズドライバー』を腹部に当て、伸びた銀のベルトで完全に固定した彼女は鞘に納めた蒼い刀剣を左腰に出現させる。

 

「これでも……っ!」

 

機体のバランスを崩すことなく、逆手による抜刀を行う。

不意打ち気味に放たれた居合による一太刀が豚のデジタントにダメージを与え、牽制の役割を果たした。

 

「よし!ここならっ」

 

そして、ようやく人が少ない場所へと辿り着く。螺旋状に作られたとても緩やかな下り坂のようなところだ。

急ブレーキをかけて慣性の法則を利用して豚のデジタント『グルメ・デジタント』だけを正面に吹き飛ばすと、愛機から降りてヘルメットを外して素顔を露にする。

恵まれた長身と凹凸のある体型、そして何処か凛々しさの残る顔立ちに青いツインテールを靡かせた少女はバイクから降りる。

 

「……今日は大事なゲームの試合があるの、速攻で片をつけてあげるっ!」

 

宣言した青髪のツインテールの少女『剣立 杏』は、上着から少し分厚いプレートのようなアイテムを取り出した。

それは『ジョーカーズプレート』……様々なクラスと武器でカスタマイズした自身のアバターであり、最高の切り札。

 

【LIGHTNING DRAGON!!】

 

マフラーを身に付けた、蒼い龍騎士が描かれたプレートから起動音声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

時風町の地下放水路に足を踏み入れたのは一人の青年。

紫のコートに白いシャツ、ズボンといった出で立ちをしており、黒い髪と端正な顔立ちだ。

彼はハエのデジタントが出現した情報を組織時代に身に着けたハッキング技術で知り、居場所を特定し現場へと向かったのだ。

 

『えっへへへ。ここは俺の城だぁ……やっと辿り着いた、俺だけの秘密の城っ。へへっ、へっへへへへへへへ』

 

虚ろな声で独り言を呟く姿はまるで自らの場所だと証明するかのように、何処か不安定な飛行を繰り返している。

サイバーチックな白いラインが全身に走っていること以外は等身大になった人型の黒いハエ……真っ赤な複眼の他に身体の至るところに赤く巨大なカメラレンズが埋め込まれており、背中に生やした翅でその身体を浮遊させている。

 

『しーろ、しーろ。俺のしーろっ、俺だけのお城ぉっ♪』

「……」

 

目の前で不快な音を立てながら空を飛ぶデジタントに対して、青年『刃柴 蓮哉(はしば れんや)』。

理想の城へと辿り着いたハエの探索者『シーカー・デジタント』は彼に構うことなく空を飛び続けている。

 

「……『奴』と戦って分かった」

 

二年前……『あのデジタント』に敗北し何も出来ずに逃走するしかなかったこと。

仲間であり、先輩を目の前で失ったこと。そして、もう他者を巻き込むまいと組織を抜けたこと……。

もはや今の自分に、仮面ライダーとなる資格はないのかもしれない。

しかし、それでも目の前のことから逃げるわけにはいかない。

あの時の戦いで得たのは最後まで戦う意志。

例え、自分以外の仮面ライダーを倒してでも、必ずデジタントを倒すという覚悟だ。

 

「俺は……お前たちデジタントを滅ぼす。絶望の仮面ライダーだっ」

【DUEL DRIVER!】

 

腹部にセットしたのは奇妙なバックル。

ベルトの上部には丸いスイッチがあり、紫色の扉らしき装飾と左右の端には巨大な銀色のネジが縦に二つ並んでいる。

それ『デュエルドライバー』から伸びた紫のベルトが完全に腹部へと固定されると、コートの懐からジョーカーズプレートを取り出した。

悪魔を思わせる黒い双角に、西洋甲冑に変化した剣士らしい骸骨が描かれており、そこにあるスイッチを押して起動音声を鳴らした。

 

【DESPIER RAIDER!!】

 

ネクロマンサークラスの剣士が、冥界より反撃の狼煙を上げる……。

 

 

 

 

 

人のいなくなった工場跡地には、一体のデジタントがいた。

象を思わせる灰色のボディと黒いライン……しかし頭部には長い鼻の代わりに鎖の長い小型のモーニングスターが垂れ下がっている。

右肩には鋭い象牙に左手にはハンマーを構えた象の『クラッシュ・デジタント』は作業員たちがいなくなったことを確認しハンマーを構える。

 

『くそがっ、社会の底辺が俺に説教した挙げ句クビにしやがって……こんなくそ工場っ、ぶっ壊してやるよぉっ!!』

 

叫び、感情のままに振り下ろそうとした時だ。

ふと感じた気配に手を止めて振り返る。

その先には、一人の少女。

桜色の瞳と可愛らしい顔立ち、瞳と同色のショートヘアに黒いカチューシャ……豊満な胸元と華奢な身体にはピンクのラインが施された黒いジャケットとミニスカートを身に着けている美少女だ。

 

『……「桜城 刀華(さくらぎ とうか)」っ?アイドルのっ!?』

 

そう、少女はこの世界で活躍しているアイドル。

しかし何故彼女がここにいるのか、何故デジタントである自分に恐怖することなく、それどころか睨みつけているのか……恐らく一生分からないだろう。

そんな相手の動揺を知る由もなく、刀華は少しばかりの落胆を覚える。

 

(……GUARDの仮面ライダーも、組織にいた仮面ライダーも来ていない。外れかっ)

 

幼少のころ、両親も亡くした彼女を引き取ってくれたのが父方の弟である『桜城桜州』だった。

恩人でもありもう一人の父親とも呼べる彼は、ある日突然亡くなった。

分かったのは、叔父がGUARDの仮面ライダーとしてデジタントと戦っていたこと……今自分が所持しているベルトとプレートがその証だ。

しかし、自分のスマホに贈られた動画のメッセージが『ある疑惑』を抱く。

 

───「GUARDは信用するな」───

 

ノイズの入った動画で辛うじて聞こえたのは、言葉のみ。

だからこそ、叔父に何があったのか真実を知るべくアイドルとして情報を収集しながら仮面ライダーとして戦っているのだ。

現在GUARDに協力している剣立杏と、元GUARDのメンバー刃柴蓮哉……目的の二人に会えなかったのが痛いが、目の前のデジタントを放っておくわけにもいかない。

蓮哉と同型のデュエルドライバーを装着し、眼前の敵を見据える。

 

「叔父さん。力を貸して……」

 

胸ポケットから取り出したジョーカーズプレート……桜の木の下で弓と刀を構える武者甲冑が描かれたプレートのスイッチを押して起動した。

 

【吸血桜の武者カゲミツ!!】

 

たった一本の桜に魅せられた狂戦士……刃を振るうは外道のみ。

 

 

 

 

 

同時刻、とある地下通路……。

息を切らしながら走るのは、カメレオンのような一体のデジタント……緑色のボディと特徴的な目は確かにそうだが、赤いラインは唐草模様になっており、何処となく泥棒のようにも見える。

 

『見ーつけた♪』

 

機械で別の声色へと加工した声が響く。

カメレオンの泥棒『シーフ・デジタント』が慌てて振り向けば、そこにいたのは一人の人物。

体格の判断がつけづらいフードを被り、左側に蜘蛛を模した黒いペイントが施された白い仮面を身に着けている。

デジタントの味方をする正体不明のハッカー……コードネーム『スパイダー』にシーフは震える声で必死に言葉を紡ごうとする。

 

『ま、待ってくれよっ。俺はただ泥棒しただけだろっ、それなら別に問題じゃねぇだろっ!?』

『残念だなぁ……お前は、上の連中から見込みなしの烙印を押されたんだ。諦めな』

 

ばっさりと切り捨てたスパイダーは、仮面越しでも分かるような態度で楽しそうに笑うと「さて」と標的を見据える。

 

『んじゃ……お仕事しますかねぇ』

 

懐からジョーカーズプレートを取り出す。

そこに描かれていたのは、蜘蛛の脚を背中から生やした神々しくも悍ましい僧侶……邪教のシンボルとなる呪いの蜘蛛。

 

【SPIDER OF CURSE!!】

 

起動し音声を響かせると、彼の腰に奇妙なバックルがデータ状のエフェクトと共に出現。

紺色の機体はまるで深い闇を思わせるように染まっており、バックルの中央部分には認証リーダーらしき赤い回路が張り巡らされた丸く白いパーツが装着されている。

まるで血走った人間の眼球を彷彿させるような不気味なデバイスが、その名を告げた。

 

【CYBER DRIVER……!!】

 

 

 

 

 

四つの戦場を見下ろす空の下、四人はそれぞれの想いや野望を旨に戦闘へと入る。

 

「さぁ、絶望に沈め……!」

 

蓮哉は起動したジョーカーズプレートを展開し、青白く燃える剣を構えた骸骨剣士の絵柄へと変えると、右斜め前に設置されたスロットへと装填し、両腕を一瞬交差し短く言葉を紡ぐ。

 

「変身」

 

そして、デュエルドライバー上部のボタンを拳で押し、紫色の扉を開いた。

 

DESRAI(ディスレイ)!】

 

バックルから紫色の光が放たれると、ディスペアーレイダーのプレートを模したエネルギーのゲートを構成し、戦いの始まりを告げる電子音声が鳴り響く。

自身の方へと迫り来るゲートに臆することなく、蓮哉はそれを潜り抜け、その姿を変えた。

 

【 I AM JOKER! DUEL START!!】

 

全身を紫色のスーツで身を包み、その上には骸骨を思わせるような白いプロテクターを装備している。

しかし、装甲部分を見るとネジのようなディティールが目立つなど何処となくプロトタイプを連想させる。

頭部には黒い双角が装備され、丸く青白い複眼が輝いた。

『仮面ライダーディスレイ』……ネクロマンサークラスを宿した戦士は左腰のホルダーに納まった西洋剣を抜刀する。

紫の柄と鍔、そして青白い刀身を持つ『ディスペアーカリバー』を構え、標的に向かって地面を蹴る。

一方で、ドライバーからの音声で侵入者にようやく気付いたシーカーが振り向いた。

 

『俺の城へ勝手に入るなああああああっ!』

 

自らのテリトリーに入り込んだ異分子を排除すべく、不快な翅音を立てながら、ディスレイへと飛びかかる。

 

「はぁっ!」

 

その攻撃に臆することなく剣士は、黒い探索者との交錯が始まる。

ハエ特有の身軽な動きから繰り出される黒い拳や蹴りを、ディスペアーカリバーで受け流していく。

 

『ブブウウウウウウウウウッ!』

 

理性の飛んだ唸り声と共にシーカーの攻撃が激しくなる。

 

「単純なんだよ!」

 

その一撃、一撃を払いながら、確実に距離を詰めていく。

次に放たれたシーカーの拳を左手で止めると、その身体をそのまま一回転させた。

 

『なっ!ぐえっ!?』

 

力を利用され、地面に背中から叩きつけられるシーカー。

 

【RISE! 冥界の焔!】

「よっと!」

『ぎゃあっ!?』

 

デュエルドライバーのボタンを押し、ディスペアーカリバーの刀身と両脚に青白い炎を纏わせると、攻撃を開始する。

剣による斬撃が黒い異形を焼き、強烈な蹴りがその悪意ごと穿つ。

そして、渾身の一撃でとうとうシーカーが吹き飛ばされた。

 

『ぎぃっ!?この……!』

 

すぐさま空中で身体を安定させ、翅の音と共に浮遊するシーカー。

全身ある目とカメラレンズを光らせながら、ディスレイを睨み付ける。

もはや理性のないシーカーは目の前の敵を排除することしか考えていない。

それを分かっていたからそこ、彼も必殺の一撃を繰り出せる。

 

『ブッ、ブブブブブブッ!ブブッ!』

「こいつで終わらせてやる」

 

冷たく宣言したディスレイはバックルのボタンを三回連続で押し、音声を鳴らす。

 

【OVER RISE! DESPIER STRIKE!!】

 

先ほどよりテンションの高い音声が響くと、彼の右脚に紫のエネルギーと青白い炎が収束。

恐怖を怒りで押し殺し、シーカーが弾丸のように突進した瞬間だった。

 

「……はぁっ!」

『ブブッ!?』

 

刃の如き上段蹴りがデジタントの顔面を捉えた。

完璧なタイミングで放たれた必殺のカウンターに、防ぐことすらままならない。

吹き飛び、地面に転がり落ちたハエに気にすることなく、ディスレイは背を見せる。

 

『ブブブウウウウウウウウウウッッ!!』

 

しばらくして、絶叫と共にシーカー・デジタントは爆散した。

憑依されていた浮浪者らしき男性が気を失った状態で倒れる。

変身を解除した蓮哉は彼を担ぎ外へと出るのだった。

 

 

 

 

 

桜吹雪の中心にいる紅い甲冑武者の絵柄へとジョーカーズプレートを展開した刀華は、デュエルドライバーのスロットへ装填。

 

「……あの人の正義は、私が継ぐ!」

 

待機音声をバックコーラスにその場で舞うように一回転すると、クラッシュに向けて人差し指を突きつけ宣言する。

 

「変身!」

 

流れるような動作で、バックル上部のボタンを押し込んで扉を展開した。

瞬間、蓮哉と同様に刀華の前方に桜色のゲートが展開する。

本来ならデュエルドライバーで造られたエナジーゲートは変身者の方へと移動するのだが、彼女は鮮やかなステップ踏んでゲートを潜り抜けた。

 

HAZAKURA(刃桜)! I AM JOKER! DUEL START!!】

 

現れるは桜を思わせるような鮮やかなピンク色の武者甲冑を身に着けた戦士……。

しかし、そのスーツはまるで鮮血のような深紅に染まっており、まるで秘めた狂気を武士道精神で抑え込んでいるようだ。

やはり甲冑にはネジの装飾が目立ち、刃の如き一本角を持つ兜で覆われたマスクには菱形の複眼が緑色に輝く。

ベルセルククラスの人斬り『仮面ライダーハザクラ(刃桜)』は愛用の弓剣を取り出し構える。

上のフレーム部分に鋭い銀の刃を備えた『カゲミツアロー』の後部にあるグリップを引き絞ると……。

 

「……はっ!」

 

クラッシュに向けて赤い矢を放つ。

しかし、単純な軌道のそれはクラッシュにとって大したダメージにならない。

連続して放たれる矢の雨をハンマーと強靭な体躯で防ぎながら、突進する。

 

『オラァッ!!』

 

勢いのまま振り下ろされたハンマーをハザクラは難なく回避する。

しかし、攻撃はこれで終わらない。

 

『ふんっ!』

 

左手の武骨な拳が彼女目掛けて迫る。

しかし、彼女は焦ることなくボタンを押して能力を発動する。

 

【RISE! 血桜の加護!】

 

瞬間、ハザクラの身体に紅いエネルギーが纏わりつく。

複眼を光らせると、その重い拳を片手で受け止めたのだ。

 

『なっ!?』

 

クラッシュは驚く。

この華奢な身体の何処にそんな力があるのだろうか……。

しかし、その動揺が命取りとなった。

 

「ふっ!」

『ぎゃああああっ!う、腕っ!俺の腕ええええええええええっっ!!?』

 

力を込めた瞬間、クラッシュの豪腕が容易く握り潰された。

伝わる激痛に喚き、後退りするのを気にせずハザクラはカゲミツアローによる近接戦を仕掛ける。

血桜の加護……それはカゲミツが持つスキルだ。単なる強化だがシンプルな分、今回のデジタントのようなパワー重視の個体には非常に有効なのだ。

 

「ふっ、はっ!とうっ!!」

『くっ、がっ!ぐおっ!?』

 

流れるような連撃を受け、がら空きとなった胴体にゼロ距離で狂化の一矢を放つ。

クラッシュは容易く吹き飛び、手に持ったハンマーをも落としてしまう。

 

「フィニッシュ!」

【OVER RISE! 桜花蹴撃破!!】

 

宣言と共に必殺技を発動したハザクラはリズムに乗って前進。

そして地面を蹴って高く跳躍すると桜吹雪と共に両脚を突き出した。

 

「はああああああああっ!」

『ぐおああああああああああっ!』

 

直撃を受けたクラッシュ・デジタントは悲鳴をあげて爆発。

金髪に染めたチンピラが倒れているのを確認すると、変身を解除した刀華は工場内に落ちていた紐で彼を拘束した。

 

 

 

 

 

出現・装着したサイバードライバーの左側にあるトリガーのような赤いスイッチをスパイダーは手袋で覆われた親指で軽く弾き、音声を鳴らす。

 

【認証開始】

 

無機質な電子音声と共に、心臓の鼓動を思わせる待機音声が響く。

それは、悪意の力……彼が持つこの世界への憎悪を増幅させるためのベルト。

ジョーカープレートを持っていない左手の指を鳴らし、続ける。

 

『お前もデジタントの祖……ソロモンの餌になりなぁっ』

 

つまみ上げるように、ジョーカーズプレートを構えながら、楽しそうな悪意の笑みを浮かべた彼は感情のまま叫ぶ。

 

『あっははははははは!ひーひゃはははははっ!変身(へぇぇんしぃぃぃん)っ!!』

 

そして、認証パスのようにジョーカーズプレートをアイズリーダーにかざした。

 

【認証完了】

 

無機質且つ掠れたような電子音声が静かに響くと、禍々しいバグに犯されたゲートがスパイダーを挟み込むように左右に出現。

分割されたゲートは変身者を取り込むように重なると、ノイズのような歪みが発生し彼の身体を作り替えていく。

 

【KLACK SPIDER.DUEL START……!!】

 

やがてゲートが溶けるように消滅すると、その戦士は姿を見せた。

黒いスーツに白いローブで全身を覆っており、まるで僧侶を思わせる。

しかし、ローブには蜘蛛の脚を思わせる装飾があり、金色のラインが脈動している。

マスクにある複眼の左側は黒だが、右側は三つの複眼が赤く不気味に輝いていた。

 

『花火のように散らしてやるよ!』

 

ビショップクラスの戦士『仮面ライダーカービス』は先制攻撃と言わんばかりに、銃と剣の二つの形態へと変わる複合武器『カースブレードガン』を召喚した。

先制攻撃とばかりに銃のモードへと切り替えて発砲する。

攻撃はそれだけでは終わらない。

 

【認証開始】

【RISE……CURSE ATTACK……!】

 

変身時と同じようにスイッチを押してから左のプレートホルダーから抜き取ったカースオブスパイダーのジョーカーズプレートを読み込ませると、擦れような不気味な電子音性が響き渡る。

改めてカービスが銃口をシーフへと向けて再び発砲するもシーフは迎撃すべく、身体から射出した赤い舌のような鞭を使って打ち落とす。

気にすることなく銃撃を続けるもシーフも負けじと迎撃する。

しかし、しばらくして変化が起こった。

 

『ぐっ、ぎぃ……!?』

 

シーフが突如苦しみ始めたのだ。

最初は小さな痛みだったが、徐々に立っていられないほどの激痛へと変わったことで思わず膝をついてしまう。

自身の毒が回ったことに気付いたカービスはジョーカーズプレートを今度は二回かざしてライズを開始する。

 

【DOUBLE RISE……CURSE BIND……!】

 

今度は剣のモードへと切り替えると、その刃を振るう。

すると刃から白い蜘蛛の糸のような白いエネルギーが纏わりつくと、宛ら蛇腹剣のようにシーフへと襲い掛かる。

透明化して逃げようとするも、意思を持つかのように動いた糸は鋼鉄のように硬貨し締め上げたデジタントを八つ裂きにする。

 

『ぐっ、おっ、いぎぃっ』

『逆境で進化する見込みもなし、か……さっさと消えな』

 

まるで玩具に遊び飽きたかのような声で溜息を吐くと、再びスイッチを押してからジョーカーズプレートを展開する。

呪いの言葉が身体中に刻まれた白い蜘蛛のイラストへと切り替えてから、再びアイズリーダーへとかざした。

 

【最終認証。OVER RISE! CURSE OF END……!!】

 

必殺の電子音性が響いた瞬間、カービスの両手から白い糸のエネルギーを放出すると同時に高速で移動を開始した。

自身に毒を流し込むことで疑似的なドーピングを可能にした彼は、素早い動きでシーフの周りを動く。

見ればすれ違いざまにデジタントの身体を糸で絡めとり、段々と自由を奪う。

そして完全に拘束した瞬間……。

 

『ヒャッハーーーーーッ!!』

『ぎゃあああああああああっっ!!!』

 

強烈なボレーキックがシーフの身体に叩き込まれた。

必殺のキック『カースオブエンド』の直撃を受けたシーフ・デジタントは絶叫と共に爆散。

憑依されていた人間が倒れていたが、気にせず彼は地上へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

杏は、ジョーカーズドライバーにドラゴンクラスの力を秘めた自身のアバター『ライトニングドラゴン』を右側の横にあるスロットへ装填。

待機音声に合わせるように、ゆっくりと右腕を斜めに上げながら呼吸を整え、あの言葉を叫んだ。

 

「変身っ!」

 

叫びと共に、彼女は右下にあるフック型の赤いレバーを弾いた。

 

【JOKER'S SELECT!】

 

レバー操作と同時に装填されたジョーカーズプレートが展開し、イラストが蒼雷を纏う剣を居合で構える龍戦士へと変わる。

 

【YOR ARE BELIEVES! DUEL START!!】

 

音声と同時に蒼いゲートが前方に出現すると、杏はそれに向かって走るとそれを潜り抜けた。

現れたのは黒いスーツに蒼いアーマーに身を包んだ剣士……左肩には龍の頭部を模した蒼い装飾が特徴的であり、赤い複眼が輝く。

『仮面ライダービリーブス』は鞘に収まった刀剣『ライトニングソード』を構えると前方へと走る。

 

「はぁっ!」

『プギッ!?』

 

まずは掬い上げるように鞘に納めたライトニングソードで殴りつけると、完全に不意を突かれたグルメの巨体が揺らぐ。

そこから間髪入れずに鞘による打撃と蹴りで相手を圧倒する。

しかし、体内に回ったアルコールのおかげで痛覚が麻痺しているグルメは負けじと新たに取り出した巨大なナイフで襲い掛かる。

その攻撃を紙一重で躱すとドライバーに配置されているスイッチを押し込んだ。

 

【RISE! THUNDER SLASH!】

「酔い醒ましの一撃、受け取って!」

 

瞬間、ビリーブスはライトニングソードを抜刀。

雷撃を纏った刀身がグルメ分厚い肉の鎧を斬り裂いた。

 

『プギイイイイイイイッ!?』

 

痺れるような痛みと熱に絶叫するも、雷の如き連撃がダメージを蓄積させる。

やがて鋭いハイキックがグルメの巨体を地面を叩きつけた。

 

「ファイナルターン!」

【OVER RISE! LIGHTNING TURBO!!】

 

宣言と同時に、ジョーカーズドライバーのレバーを弾き、必殺技を発動。

蒼い雷を纏ったビリーブスは残像を残しながら電光石火の移動を展開する。

そして、強烈な跳び蹴りを炸裂させた。

 

「ウェエエエエエエエエイッ!!」

『プッギャアアアアア!!』

 

必殺の雷撃を受けて吹き飛んだグルメ・デジタントは絶叫し、爆散すると痩せ細った男性が気絶した状態で倒れる。

 

「……ふぅ」

 

戦闘が終わったのを確認したビリーブスは変身を解いて一息吐くと、応援が来るまでスマホのカードゲームに興じるのだった。



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仮面ライダーディソウル

 巷で話題になっているレジェンドライダー×レジェンドライダー(所謂お借りします系?)の仮面ライダーを考えてみました。
 先駆者様と絶対被っていると思いますが、許してつかぁさい(土下座)


黒い瘴気が、沸き上がる……。

時刻は深夜帯。多くの人が眠りにつくか職場で精を出して働いているころ、この何でもない世界に招かれざる客が現れる。

 

『オ、オォ……!!』

 

何処からともなく噴き上がった瘴気は絶えず、それどころか噴き出す勢いが強くなる一方だ。

やがて噴出が治まっていくと、浮き上がっていた瘴気は人の形を作り始める。

 

『異世界ヘノ到着ニ成功……コノ世界ノ言語機能及ビ文化ノ接続、同調ヲ実行』

 

まるで機械のように、当たり前の作業を行う瘴気は人型になりながらも『この世界』への情報を全て集めていく。

同時に脳裏へ流れ込んでくるのは到着した世界が辿った歴史や物語、そして専門用語の羅列だ。

宛ら早送りで再生されるビデオ映像のように情報を解析し終えた瘴気は段々とその姿をはっきりとさせていった。

 

『アァ。アッ、あーあー……同調を完了。くっ、くく。くははははっ!!素晴らしい、素晴らしいかなっ!こんにちわ、哀れで可愛い世界!そしてさようならっ、穢れを知らぬ無垢なる世界っ!!』

 

喝采を込めて、異形へと自身の姿を確立させた瘴気は叫ぶ。

目的に到着した旅人のように、繁栄のお告げを聴いた預言者のように、両手を上げて喜びの声で叫ぶ。

背中には黒いマントの如き羽根を持ち、全身を黒いスーツの如き造形はまるで人型になった蝙蝠を思わせるようだ。

それは狂気の侵略者であり犯罪者。

あるいは、悪意を持って世界を塗り潰す混沌。

脅威を知らぬ世界に与えられた祝福であり贈り物(ギフト)

ただ一つ分かることは……。

この異形、否怪人にとってこの世界は単なる獲物であり、単なる財宝やコレクション対象でしかないということだ。

欲しい物は奪う。それを邪魔する奴は潰す。

人を襲うことなど蝿や蟻を潰すことと同義だと信じて疑わない。

この世界を塗り潰し、完全に支配すべく一歩踏み出した瞬間……。

一発の銃声が鳴り響いた。

 

『うぐおっ!?』

 

こめかみに衝撃が走る。

異形の身を手に入れた今の状態では微々たるものだが、それでもダメージには違いない。

それはつまり、この世界には『自分たち』と戦える存在がいるということだ。

しかしそれはあり得ない。

接続した情報では、自分たちと戦うことはおろか技術すらも存在していないのだ。

 

『一体どういう……!』

「こういうことさ」

『誰…がぁっ!!』

 

不敵な青年の声、そして再び鳴る銃声。

再び銃弾を浴びた怪人は呻きながらも、銃撃があった方を……自らに攻撃を与えた敵対者を睨む。

そこに現れたのは端正な顔立ちにモデルを思わせるような長身の青年。

青い髪を短くし、その顔には不敵な笑みが張り付けられている。

白いシャツの上に紺色のコートを羽織っており、黒い手袋やズボンも相まって小説や漫画に登場する賞金稼ぎを思わせるようだ。

 

『き、貴様かっ!貴様が俺を撃ったのかっ!?人間がっ、たかが下等生物風情が俺に…ぎゃあっ!?』

 

動揺し指を突きつける怪人を無視して青年は右手に構えた拳銃を発砲する。

強引に黙らせた青年は弾丸を発射するが、やがて弾数がゼロになったことが分かると灰色のオーロラを出現させてそこに投げ捨てる。

丸腰になってしまった彼に対し、怪人は怒りを目に宿しながら混乱した様子で叫ぶ。

 

『何故、何故だっ!どうして俺にダメージを与えられるっ!?』

「言うと思うか?……て言いたいんだが、心優しい俺は特別に教えてやるのだった」

 

不敵な態度を崩さずに言いながら取り出したのは、一つの弾丸。

形状としてはリボルバーマグナムの弾丸を思わせるが、通常よりやや大きめのそれは右側が緑のラインが入った黒、左側が黄色のカラーリングになっており飛蝗を思わせる二人の戦士の横顔が彫られた印象に残るような弾丸で小さなスイッチがある。

 

「『ライドバレット』……幾多の世界に存在する異なる世界の戦士たちの力を疑似再現した弾丸さ。こいつを持っていれば怪物や幽霊はおろか、『本来ならこの世界に存在しないはずの怪人』すらも倒せるようになる。詳しい原理は知らん、専門家を見つけて聞いてくれ」

『さっきから苛正しいぞ貴様っ、何者だっ!?』

「元通りすがりの仮面ライダーの『門矢礼司』……今は、お前たち『ギフター』を破壊する仮面ライダーさ。覚えておけ」

 

叫ぶ異形『バット・ギフター』に対して、不敵にそう名乗った礼司はコートの懐からリボルバーマグナムを模したバックルを取り出す。

右側には銀色のガングリップとシリンダーになっており左側には風車を象った黒いディスプレイある。

それ『ディソウルドライバー』を腹部に当てると、そこから伸びた銀色のベルトが自動で腰に巻きつく。

ディクロスドライバーのバックル部のシリンダーを動かした後、ライドバレットのスイッチを押し込む。

 

【RISING GUARDIAN!!】

 

起動して電子音声を鳴らした愛用のライドバレット『ライジングガーディアン』を装填し、シリンダーを再びバックルにセット。

 

【ZERO-ONE!×W! RIDE FORMATION!】

 

バックルから鳴り響き、ライドバレットに装填された黄色と緑の混じった紫のエネルギーが二つの姿を象る。

現れたのは黒いスーツに黄色い装甲を纏った飛蝗の戦士『仮面ライダーゼロワン』と、左半身は黒に右半身が緑でカラーリングされた風と切り札の戦士『仮面ライダーW』……。

赤い複眼を輝かせた二人の戦士はすぐに元のエネルギーに戻るとバックルの風車型ディスプレイへ収束されていく。

そして、ディソウルドライバーに手を掛けた礼司はグリップの引き金を弾いた。

 

「変身」

【SOUL RIDE!】

 

電子音声が、鳴り響く。

薬莢型のエネルギーが排出されると黄色と紫、そして緑の光を発しながら風車が高速回転する。

眩いほどの光が、礼司の身体を包み込んでいく。

 

【夢へ跳ぶ情熱のジャンプ!街を護る正義の守護者!変身せよ・RISING GUARDIAN!!】

 

強烈な光と、暴風にも相応しいエネルギーの余波が起こり、ギフターが顔を覆う。

やがてそれが治まると、そこにいたのは一人の戦士だった。

黒いスーツの上に装着されるのは緑色の装甲……両腕と両脚、そして胴体に装着されていて何処か身軽な印象を与える。

緑のマスクと触覚のようなアンテナには赤く丸い複眼が輝いており、宛ら飛蝗のようだ。黒いスーツには黄色い電子回路のような三つのラインが張り巡らせている。

紫のマフラーを靡かせた二つの戦士を合わせた一人の戦士……この世界で生まれた新たな仮面ライダー。

 

風蝗蹴撃(ふうこうしゅうげき)!仮面ライダーディソウル……お前の悪意、撃ち抜くぜ!」

 

『仮面ライダーディソウル モデルライジングガーディアン』へと変身した彼の宣言を挑発と受け取ったのか、頭に血を上らせたバットが一気に襲いかかってきた。

 

「よっ!」

『ぐっ、こいつ……!』

 

焦ることなく、迎え打ったディソウルがバットと組み合うが、しばらく力比べをしていく内にテコや重心などの力の入れ方によって徐々にギフターが押され始める。

 

『このっ、離せ……!』

「隙だらけだぜっ!」

 

その組み合いを嫌い、バットが手を離したのを見計らったディソウルは右手を掴み上げると、捻って投げ飛ばした。

 

『ぐおっ!?』

 

投げられた勢いで、そのまま地面へと腰を落とす。

その反動を利用し、少し距離を取るとディソウルはグリップトリガーを弾く。

 

【BULLET LOAD! W!】

「そらっ!」

 

電子音声と共に、薬莢がバックルから排出される。

風を纏い、紫色のエネルギーを右脚に纏わせるとその場飛びの延髄蹴りを繰り出した。

 

『な、ぐはっ!~~っ!~~~~~~~っ!?』

 

えげつない角度からの首に衝撃が走ったバットは蹴られた箇所を押さえるも、容赦なく放たれた追撃のキックによって吹っ飛ばされる。

地面を転がる様子とは対照的に、ディソウルは涼しい様子だ。

 

「まっ。挨拶代わりはこんなもんか」

『ぐっ、こんなことでやられてたまるか!』

 

明らかに余裕のある声で近づく彼とは対照的に、いきなり一撃を貰ったバットは頭を振って自身に襲い来る衝撃を誤魔化してから両の羽根を用いて飛翔する。

そのまま先ほどの余裕すらも消えて再びディソウルへと強襲を図る。

 

「あーあー、なってないなってない全っ然なってない!決めた、見世物レベルにまで上げてやるよ」

 

明らかに余裕綽々になったディソウルは突撃してきたバットに合わせるように走っていく。

まずは顔面に向かって飛び膝蹴りを叩き込んで勢いを削ぎ、地面に倒れるよりも先に無理やり起き上がらせると、容赦なく両腰へ二発ミドルキックを叩き込み、回し蹴りを行う。

そして逆回転での後ろ蹴りをお見舞いすると、更にバットの顎に向かって右足の踵で蹴り上げる。

最後に放たれたヤクザキックによって再びバットの身体が吹き飛ばされた。

 

『あぐ……く、くそっ。くそくそくそっ!くそったれがあああああああああああっ!!!』

 

勢いよく起き上がったバットが地団太を踏み、目の前にいるディソウルを睨みつける。

その眼は憎悪に染まりきっており、たかが人間風情に追い詰められているという汚名を濯ぐべく攻撃を開始する。

 

『ミンチになれっ、仮面ライダーアアアアアアアアアッ!!!』

「おおっと!?」

 

口に当たる部分と掌から放たれた破壊音波にディソウルは慌てた様子で避ける。

先ほどまで彼がいた場所は地面が抉れているのを光景を見て、口笛を吹く。

 

「まだそんな隠し玉があったんだ。でもちゃーんと狙えよ?的当てじゃないんだ、当たってやるほど俺は優しくないんだぜ?」

『さっきからうざってぇんだよおおおおおおおおおおっ!!』

 

未だ叩かれる軽口に怒りを滾らせたバットは一心不乱に音波を放つが、標的であるディソウルは涼しい顔でその攻撃を躱し続ける。

しばらく避けていたが、やがて飽きてきたのか再びグリップを握り始める。

 

【BULLET LOAD! ZERO-ONE!】

「よっと!」

 

トリガーを二回弾くと、今度は黄色い薬莢型のエネルギーが排出される。

そして、その場で軽く跳ねた途端、彼の姿が消えた。

 

『なっ!?何処に……!』

「お前っ、テンパりすぎ」

 

動揺したことで思わず攻撃を止めたバットの背後から聞こえた声と共に鈍い衝撃が走る。

後ろに回り込んだディソウルの膝蹴りが背中へと直撃したのだ。

 

『ごっ!が、なっ!?』

「さぁて、空中遊泳の時間だ。しっかり堪能しろ、よっ!!」

 

更に蹴り上げて上空へと高く飛ばすと、電子回路を思わせる黄色い残像を描きながらバットの後を追うように跳躍し蹴り飛ばす。

蹴り飛ばした方へ先回りして蹴るという繰り返しをしばらく続けてから、強烈な踵落としがバットを地面へと叩き落とした。

次々と繰り出される足技は、バットの戦意を削り取っていた。

 

『……ぐ、ぐっ!くそっ、くそぉっ!!』

 

確実にダメージを積み重ねる蹴りを喰らい続けたギフターは、立ち上がるのでようやくだ。

 

『人間風情が…ぐべっ!?』

 

憎々し気に拳で地面を殴りつけ罵詈雑言をぶつけようとするも、気にすることなくディソウルは距離を詰めてその顔面に蹴りを叩き込んで黙らせる。

再度、蹴り飛ばされて身悶えするバットに視線を逸らすことなく両腕を広げて宣言する。

 

「こいつで終いだっ……最後の一発、きちんと受け取りなっ!」

 

ディソウルドライバーのグリップ部分にある撃鉄を起こし、トリガーを弾く。

二回、薬莢が排出されると同時に音声が鳴り響いた。

 

【FINAL BULLET LOAD! ZERO-ONE×W!!】

「はぁぁぁ……!」

 

低く腰を下ろし、発生させた風を身に纏ったディソウルが地面を蹴る。

その際に黄色く輝いたラインの残影が走り、紫のマフラーが靡く。

 

「そらっ!」

『うぐえっ!?』

 

一瞬で距離を詰めてからの、強烈なムーンサルトがバットの顎に直撃する。

まともに受けたその一撃は脳を揺らし、異形の身体を容易く空へと打ち上げる。

無論、それで終わらない。

既に標的を定めたディソウルは、上空にいる敵に向かって跳躍する。

高く、そして速く、宛ら弾丸の如き速度でディソウルは両脚を突き出した。

 

「これで決まりだ、マキシマムインパクトッ!!」

 

技名を叫び、必殺の両脚蹴りが更に加速する。

バットは必死になって破壊音波を放つするが、ディソウルが纏ったエネルギーの余波によって弾かれ全て無駄に終わってしまう。

やがて、その無駄な抵抗への終わりが近づいた。

 

「はあああああああああああっ!!」

『ひっ!?ぎぃやああああああああっっ!!』

 

直撃を受けたバット・ギフターの身体は完全に砕かれ、情けない悲鳴と共に爆散。

地面へと着地したディソウルは上空の爆発を背後に、勝利を刻むのだった。

 

 

 

 

 

とある世界。

ここでもギフターによる侵略が行われようとしていたが、その悪意はたった今消えようとしていた。

 

「はぁっ!」

『ぐはっ!?』

 

戦士の一撃が、ギフターの異形に打ち付けられる。

バイクヘルメット型の紫のマスクに菱形の複眼を橙色に輝かせたその戦士のバックルにはディソウルと似たドライバーが巻き付かれている。

しかし、リボルバーマグナムをモチーフとしているディソウルと違い、こちらは中折れ式のショットガンをイメージしているようだ。

紫のボディスーツには紫の骸骨をあしらった白銀の装甲を身に纏っており、黒いケーブルで締め付けるように装着されている。

そして左腕に装着された毒針のようなガントレットはまるで滅びへ誘う革命家にも、悪を刈り取る死神にも見えた。

怯んだギフターを見て勝機を得た戦士はバックルのボタンを押し、トリガーを弾く。

 

【FINAL BULLET LOAD……! HOROBI×CHASER……!!】

「スティングエグゼキューション」

 

紫と白銀のショットガンタイプの薬莢を排出した瞬間、擦れたような低い電子音声が鳴り響く。

処刑宣告に相応しいその名を短く呟いた瞬間、左腕のガントレッドが鞭や蛇腹剣のように伸びると狙いを定めた獲物に向かって放たれるとギフターの鳩尾に刺す。

そのまま巻き付いて拘束すると強引に戦士の方へと手繰り寄せ、同時に戦士の右脚に装着された黒いタイヤが紫色のエネルギーを纏って高速回転を始める。

そして生成した猛毒のエネルギーを右脚に充填させた戦士は、無抵抗な状態になっているギフターに向かって強烈な上段蹴りを浴びせた。

 

『いぎゃああああああああああっっ!!』

 

煉獄滅殲……容赦も慈悲の欠片もない必殺の蹴りから伝わる凄まじいほどの衝撃はギフターの身体を貫き、同時に流し込んだ猛毒とエネルギーが内側を粉砕した。

当然、それに耐えきれるはずもなくギフターは悲鳴と共に爆散、戦闘が終了する。

 

「……」

 

ショットガンタイプのライドバレット『デスコーピオンバレット』を弾倉から抜き取ったその戦士は変身を解除し、その姿を露にする。

新たな戦士の足跡も、刻一刻と近づいていた。



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仮面ライダーエクリヴァ ~幻想を記す者~

 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』×オリジナルライダーのクロスオーバー小説です。今回は戯曲と舞台をテーマにしている作品から『小説・物語』をテーマに書いてみました。
 本をテーマにしたセイバーとはまた違う『本モチーフの仮面ライダー』を楽しんでいただければ幸いです。





昔々……とあるクリスマスの夜、一人の少女がいました。
小さな手にかけてある籠には大量のキャンドルが入っています。
寒さで小さな身体を震わせながら、少女は懸命に言います。

「キャンドルはいりませんか?綺麗な火を灯すキャンドルはいりませんか?」

赤いフードを被り、か細い声でキャンドル売りの少女は必死に言います。
キャンドルが全部売れなければ、怖いお父さんに殴られてしまうので全てを売り切るまでは家に帰れません。
しかし、少女には多くの不運が起こります。
気づかれずに馬車に轢かれそうになったり、悪戯っ子に靴を奪われ、その拍子に商品のキャンドルを雪で濡れた地面に落とし、駄目にしてしまいます。
街の人たちはそれに目を向けません。みんな忙しくてそれどころではないからです。
夜も更け、満足な食事や睡眠も出来ていない少女は懐に入れていたマッチを使って暖を取ろうとしました。
その時です。
曇った窓に等身大のキャンドルが映っていたのです。

「まぁ、とっても大きなキャンドル。これなら身体もすぐに暖まるわ!」

少女はすぐにマッチで火を着けると、窓に反射したそのキャンドルに灯しました。
予想した通りに少女の身体はすぐに暖かくなります。
すると驚く光景が目の前に現れます。
温かいスープや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が現れたのです。
幸せな幻影に目を輝かせた少女は、必死にキャンドルの火を消さないようにマッチを使い続けました。
最後のマッチを使って現れた幻影は、自分を可愛がってくれた祖母です。
祖母の幻影は涙を流します。大切な人に出会えた少女の目にも涙が溢れるのでした。
少女が幻影を見て喜んでいるころ、街は大きな火に包まれています。
大きなキャンドルは、少女自身でした。彼女は自分に火を着けてしまったのです。
燃え盛る火はまるで少女の不幸と悲しみを吸い取ったかのように大きくなり、街を巻き込んでいるのです。
大嫌いなお父さんも悪戯っ子も、自分を無視した住民たちをも火に包まれます。
後に残っているのは燃え盛る街と、幻影に嗤うキャンドル売りの少女だけなのでした。


レヴュー……それは歌とダンスが魅惑の舞台。

煌びやかなステージの上で、可憐で華麗な衣装に身を包んだ少女たちは武器を手に躍る。

栄光・再興・成功……それぞれを胸に秘めたキラめきを持って『オーディション』で情熱と絆を歌う。

そして、最もキラめいたレヴューを魅せた舞台少女には運命の舞台に立つ者……『トップスタァ』へと至る。

故に彼女たちは魅せる。

歌って、踊って、奪い合う。それがこの舞台の物語だった。

 

『寒い、寒いよ……』

『っ!?』

 

少女たちの動きが止まる。

似つかわしくないほどのか細い声。何処か浮世離れしたような聞き覚えのない声が彼女たちを止めたのだ。

声のする方へ視線を向ければ、そこにいるのは予想した通り一人の少女。

赤いフードを被り、お世辞にも裕福でない身なりの小さな女の子が立っていたのだ。

細い身体を震わせながら呟く見知らぬ少女に全員が呆気に取られるが、そんな空気を気にすることなく駆け出した少女がいた。

 

「どうしたの、大丈夫!?」

 

底抜けに明るい、けれども抑えきれぬ情熱を秘めた少女は活動的な茶髪のツインテールを靡かせながら女の子の手を握る。

彼女もこのオーディションには迷い込んでしまったことがあるため、自分と同じ迷子なのだろうと直感的に考えたのだ。

しかし、ツインテールの少女の声に赤いフードの少女は答えない。

ひたすらに身体を震わせ「寒い寒い」とうわ言のように繰り返している。

 

『ここは寒いの、だから暖かくならなきゃいけないのっ。だからキャンドルに火を着けるの……』

「んんっ?ねぇ、それってどういう…」

『私が幸せな幻影を見るために、キャンドルに火を着けなきゃいけないってことだよおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

【キャンドル売りの少女……!!】

 

絶叫と共に、少女の姿が変貌する。

赤い炎にその身体が包まれ、やがて炎が消えると同時にその姿を現した。

インクボトルのような黒いエンブレムが埋め込まれた赤いフードに白いシャツ、少女のような出で立ちはそのままだがその身体と頭部は白い蝋燭のようになっており、溶けた箇所がデスマスクのように浮かび上がっている。

頭頂部には赤い火が動きに合わせて揺れているのが見えた。

少女が変貌したことに驚きを隠せない舞台少女たちに向かって、蝋燭の怪人は炎をステージ全体に撒き散らすと、周囲の景色が燃えて変わる。

そして、燃え盛る古い街並みのような景色へと切り替わると怪人は笑い嗤う。

 

『そうだっ、もっと寄越せっ!人間たちの不幸を、恐怖をっ、絶望をっ!私という物語を終わらせるために、幸せな幻影を永遠に見るためにっ、この寒さを消すために!全て燃えろおおおおおっ!!』

 

蝋燭の怪人に動揺し戸惑いながらも、舞台少女たちは互いの身を護るべく武器を手に取るのだった。

 

 

 

 

 

先ほどとは違う薄暗いステージに、紫色の緞帳。そして何百何千人の観客を迎えるのを前提としたような無数の観客席。

そこはまるで劇場のようだった。

しかし劇場と呼ぶには些か不気味であり、廃れていると斬り捨てるには妙な存在感を放っている。

しばらくの無音が続くと、やがて緑のスポットライトがステージの一か所を照らす。

 

『いよいよだね。ようやく美しい僕たちの舞台が上がる……準備は出来ているかな?「兵器の兵隊」君』

 

そこにいたのは、緑色のローブと全身を包んだ異形。

その出で立ちはまるで暗殺者のようだが、その身体は黒い斑点と黄色であり宛ら肉食動物のサーバルキャットを思わせる。

流暢な言葉で、まるで誰かに見せつけるように暗闇へとその手を差し出す。

瞬間、赤いスポットライトがその箇所を照らし出す。

 

真名(タイトル)で呼ぶな!吾輩には「ウェポン」という確固たる名前があるのだっ!タイトルで呼ぶのは貴様の悪い癖だぞ「サーバル」ッ!!』

 

兵器の兵隊と呼ばれたことに憤慨した赤い異形が重い足音と共に暗殺者の猫……「サーバル」と呼んだ異形に近づいてくる。

その姿はまるで兵士と兵器を混ぜ合わせたような異形であり、イギリスの近衛兵のような赤い制服で屈強な身体を包み込んでおり、頭部には戦車の砲台と何かの勲章を胸元にいくつも身に着けている。

しかし、猫の怪人は気にするどころか「ごめんごめん」と軽く笑いながら謝罪する。

 

『だって、君のタイトルは無骨でカッコ良いじゃないか。確かに僕は美しい顔と身体を持った誰よりも美しい存在さ。けど「アサシンになったサーバル」だよ?変なタイトルを持った身としては羨ましいのさ』

『馬鹿者っ!それは貴様が不真面目だからだっ!我らは物語の深淵に潜みし者、人間を支配するに相応しい存在……誇りを持つこそあれ、恥じることなどないっ!!』

『その通りだ』

 

赤い異形の言葉に同意するような声が響く。

冷たく凛とした女性の声と共に青いスポットライトが二階席を照らす。

 

『タイトルの名で価値が決まるわけではないだろうに……そんなことは一先ずどうでも良い』

 

話を無理やり止めた女性の怪人……全身が雪と氷柱で構成されており、まるでドレスを纏った姫を思わせるようだ。

女性の怪人が猫の怪人に問う。

 

『物語の一片がここから出ていくのを見たが、貴様の仕業か?』

『そうだよ』

 

あっさりと、あっけらかんと認める猫の怪人に詰め寄るのはやはり赤い兵器の怪人だ。

「どういうことだ」と鼻息を荒くする彼に手で制しながら猫の怪人は続ける。

 

『人間界では面白い催しが行われているみたいでね。せっかくだから見てみたいと思ったのさ……美しい僕たち「悲劇と狂気の物語」が、人間たちから全てを奪っていく様をねぇ!』

 

猫の怪人の声が愉悦に染まる。

その言葉に赤い兵器も青い氷の姫は何も言わない。

しかし、猫の怪人が言ったことに否定している様子もなかった。

 

『さぁっ!始めようか、僕たち「ストーリオ」が人間界を支配する最高の舞台をっ!』

 

暗殺者の猫『サーバル・ストーリオ』が観客席に向かって両腕を上げて叫ぶ。

その声に合わせるように赤い兵器『ウェポン・ストーリオ』も各箇所に備わった砲塔から砲撃を放ち、ステージにおりたった青い氷の姫『スノウプリンセス・ストーリオ』が氷の結晶をステージに降らせる。

悍ましくも幻想的な光景、悲劇を巻き起こさんとする狂気の物語にいつの間にか観客席に存在していた顔のない白い異形が拍手を行う。

その喝采にサーバルたちが恭しく頭を下げると、緞帳はゆっくり垂れてくる。

 

『ふん、精々踊っているんだな……俺の目的のために』

 

ただ一人、その派手なパフォーマンスを茶番だと言いたげに鑑賞していた黒い戦士が、観客席で脚を組みながらくぐもった声でそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

「えっと、資料資料と……」

 

自分の部屋で、少年は一人必要な書類を探している。

顔立ちは整った美少女であり、黒のショートヘアが似合う中世的な少年だ。

身長も一般男子よりは小さく本人の若干だがコンプレックスに思っている。そんな青空を思わせるような瞳を持つ彼『軌跡昴(きせきスバル)』は今、必要な資料を探していた。

新聞部に所属している彼は翌日、『凛明館女学校』へ同じ部活の友人と共に取材に行くことになっており、事前調査として受け取った書類を探しているのだ。

 

「うーん……あっ!あった」

 

眼を通してはいたが、念のためもう一度と読み始めた時だった。

突如として聞いたことのない電子音が鳴り始めた。

 

「うわっとと!な、何っ?」

 

慌てて発生源を探し、室内を見渡すとそれが自分のスマホから鳴っていることに気付く。

首を傾げながら、スマホを手に取って画面を見ると、そこには横向きのキリンを象ったような白黒の丸いマークがゆっくりと回転しているのが映っている。

見覚えのないそれを不気味に思った彼は、スマホの画面をタップしてアンインストールを実行するが、タップしても反応はない。

最終手段として電源を切ろうとするも、あろうことか電源が切れる気配や様子が一切ないのだ。

 

「一体、何が……!?」

 

訳も分からず、混乱する今度は突然、何の予兆もなく目の前が漆黒に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の浮遊感の後、何処かに足を乗せた。

しかし、急なことで上手くバランスが取れなかった昴は何やら固い物体に腰を打ち付けてしまう。その痛さで少し怯んでいたが、次第に腰の痛みも引き、段々と視界もはっきりしてくる。

 

「これは……!?」

 

視界全体に広がっていたのは、見たこともない何処かのステージ。

その舞台で彼は一人腰を下ろしていたのだ。

しかし、そこに観客はおらず、何処か寂しさを感じる。

少し離れたところに、何かがいることに気づき視線をそちらに向ける。

 

「……キリン?」

 

キリンがいた。

比喩とかそういうのではなく、動物園とかで見る首の長いあのキリンである。

何故キリンがいるのか、そしてここは何処なのか、様々な疑問が浮かんでは消えていく。

混乱する彼にキリンが首を向けた。

 

『初めまして、秘めたるキラめきを持つ少年よ』

「声渋っぶ!?」

 

キリンが人語を喋ったことも驚くことだが、その見た目からアンバランスなほどの渋い男声で喋ったのだ。

思わずツッコミを入れてしまった昴に罪はないだろう。

頭の中は大混乱だが顔や態度にそれを出さぬようにしつつ、立ち上がり軽くズボンを払いながら辺りを見回してみる。

無人の客席が山のように広がり、崩れ落ちそうな複数の塔が奥に見える奇妙な世界が広がっている背景。

ベニヤなどではなく大理石みたいなもので作られた本格的な代物だ。そして彼らが立つステージには素人でも分かる大掛かりな仕掛けが数多く見える。

そして何よりも気になるのが、ここには昴とキリンしかいないということだ。

先ほどまで誰かがいた痕跡はあるが、今は一人と一匹だけであり、大きなステージであるにも関わらず世界から切り離されたかのような、何処か空虚な感覚がするのだ。

一度咳払いして、何とか思考と心を落ち着かせてから目の前のキリンに視線を向ける。

 

「えっと……君、いやあなた?もうどっちでも良いや。一体何なんですか?」

 

気を取り直した彼は問う。

敬語を使っているのは彼なりの配慮だろう……困惑する彼とは反対に、キリンはただ渋い男の声で答える。

 

『私は「キリン」。舞台少女たちの感動的な舞台を見るためにここにいます』

「『舞台少女』……?」

 

彼は語る。

舞台に魅了され、舞台で生きる少女たち……それが舞台少女なのだと言う。

 

「それなら、どうして俺を?確かに女の子に間違われることは非常に不本意ながらありますけど、これでも立派な男子ですよ?」

『至極当然な疑問……分かります。ですが、あなたにはこの舞台に入る「資格」があるのです』

「資格?」

 

疑問符を浮かべる昴。

すると、キリンの隣に薄く水色がかったショートヘアーの少女がいつの間にか佇んでいた。

不思議な色彩を持つ青の瞳を薄く開け、黒いタイを着けた袖のない白いブラウスに白のフリルをあしらった紺色のスカートに身を包んだ少女が口を開く。

 

「初めまして、軌跡昴さん。私は『える』」

 

静かな声で自らを名乗った少女……えるは一礼した後、凛とした静かな瞳を彼に向ける。

黒いストッキングに覆われた脚を動かし、彼の元まで近づく。

 

「ここは『オーディション』……秘めたる情熱、眩いキラめきを持つ少女たちがトップスタァを目指して競う場…」

「まどろっこしい話は後で聞きます。何で俺がここに呼ばれたのか……それを教えてくださいっ」

 

彼女の説明を遮り、単刀直入に尋ねる。

少なくともこの場所は本来ならば少女たちが踊るステージ。ならば自分が呼ばれるにはそれ相応の理由があると判断したからだ。

昴の真剣な視線に「分かりました」と頷くと、説明すべく口を開いた。

 

「最初に、この世界には様々な物語があることはご存知でしょうか?」

 

えるの問いに昴は頷く。

桃太郎や金太郎などの日本昔話、グリム童話やイソップ物語など古今東西、数多くの物語が存在している。

それらは小説や絵本、漫画やアニメ、そして戯曲などの様々な媒体で語り継がれている。

 

「その物語には、様々な解釈が生まれることもあります」

「まぁ、そうですよね」

 

その通りだ。

物語の中には当然、当時の情勢や残酷な描写など現代では意にそぐわない描写や結末があり、その部分を読みやすく改編することはありえない話ではない。

えるの説明が続く。

 

「その中には、多くの観衆や読者の認知によって在り方を捻じ曲げられた物語があるのです」

 

そう言って、黒い手袋に覆われた手を軽く上げた彼女はスクリーンに映像を再生する。

そこには煌びやかな衣装に身を包んだ少女たちが、蝋燭の怪人と交戦している様子が映っていた。

 

「何だ、あれっ?」

 

恐らく少女たちは話に出た舞台少女なのだろう。しかし、頭に火を灯している怪人に自然と身体が震えてしまう。

 

『ストーリオです。観衆の歪んだ認識から産み出された狂気の物語……彼らは自らの物語に結末を記すべく、人を襲いキラめきを奪い尽くす』

「そして、あれはハンス・クリスチャン・アンデルセンのマッチ売りの少女に対する悲劇を象ったモノ……タイトルを付けるとするのなら『キャンドル売りの少女』でしょう」

 

キリンとえるの説明に、昴は漠然とだが理解してきた。

つまり、あの怪人は物語に対する負のイメージによって誕生したのだろう。

ストーリオには結末は存在しない。何故なら、本来なら存在しない物語だからだ。

そして彼らは、人を襲うことで自身に物語が記されていく。

結末が存在するということは、自らが存在することを証明することだ。

その映像を観た昴が、無意識の内に拳を握り締める。

 

「物語は、誰かを苦しめるためにあるんじゃない……!」

 

昴は、物語が好きだ。

小さい頃、母が童話を読み聞かせてくれたことが切っ掛けとなり、二人の少女と観た舞台で憧れるようになった。

自分も、多くの人を感動させるような物語を書いてみたいと……。

苦しそうに握り拳を固める彼に、キリンとえるは説明を続ける。

 

『ストーリオが結末へと至ればオーディションと現実、何れはキラめきを奪われ続ける舞台へと変貌してしまうでしょう』

「しかし、今の舞台少女たちではストーリオを倒すことなど不可能です。それこそ、奇跡でも起きない限りは」

「……その口ぶりだと、何とかする方法があるんですね?」

「はい。物語の改訂者『仮面ライダー』になることです」

 

頷いた彼女は指を鳴らすと、その手には分厚い赤の本型のバックルのような道具が現れる。

そして、小さなペンのようなアイテムを差し出す。

 

「舞台少女はあくまでも役者でしかない。作品の新たな可能性を作り出せても、群衆の感情を揺さぶることは出来ても、世界に影響を与えるストーリオの物語には抗えないのです。それが喜劇であれ悲劇であれ……」

『仮面ライダーは、舞台少女たちの代わりに物語を修正し護る役割があります』

 

えるとキリンの言葉を耳に、昴は二つのアイテムを手に取る。

重い……小さなペンには確かな重さがあった。

物語が込められているからだろう。確かな力を感じ取った彼は、手渡した彼女の顔をしっかりと見る。

 

「……覚悟は、言うまでもありませんね。ストーリオのいる場所まで、ご案内します」

「お願いします」

 

了承を得たえるは、再び指を鳴らすと彼女たちはステージから姿を消した。

 

 

 

 

 

視界がはっきりすると、昴たちは一際高い屋根の上へと立っていた。

見下ろせば街のほとんどが炎で燃えており、辛うじて彼らのいる場所は原型を保てている。

そして、中央の広場では舞台少女たちを炎で襲う怪人『キャンドル・ストーリオ』の暴れている姿が見える。

 

「さぁ。ここからはあなたのデビューです」

『華麗なダンスを、期待しています』

 

えるとキリンの言葉に応える代わりに、昴はバックル『ストーリードライバー』を腰に当てる。

伸びたベルトが完全に固定したのを確認した彼は、ノベルペンのキャップ部分にあるスイッチを押し込んだ。

 

【CHARLEMAGNE STORY!!】

 

荘厳なメロディが響く。

そのペンが宿す物語は、フランスに伝わる大帝シャルルマーニュと、彼に仕えた十二勇士の冒険譚……起動したそれをストーリードライバー横にあるインクボトル型のスロットに装填。

 

【執筆開始!】

 

待機音声が鳴り響く中、昴は屋根から飛び降りながらドライバーの横にあるグリップを握り締める。

そして、それを引っ張りながら叫んだ。

 

「変身!」

【OPEN THE BOOK!】

 

瞬間、本型のバックルが開くと同時に空白のページにシャルルマーニュストーリーの物語が文章として浮かび上がっていく。

そしてそこから水色の文字がドライバーから出てくると、昴の身体を覆い隠し戦士の姿へと変える。

怪我なく着地するころには、変身を完了していた。

中央は黒で左右は白銀で彩られたスーツに覆われると、その上に白銀の甲冑が胴体と両手足に装着される。

そしてベルトから下まで垂らした青い裏地のあるローブが変身の余波で靡いた。

 

【幻想と現実の狭間に存在せし聖騎士たちの冒険譚!舞台で踊れCHARLEMAGNE STORY!!】

「後悔・失敗・現実逃避……あの日の軌跡は我が烙印」

 

変身完了を告げる電子音声が響かせながら水色の複眼を輝かせ、白銀のマスクで表情を隠した彼は言葉を紡ぐ。

突然現れた戦士の登場に舞台少女たちは戸惑うも、気にせず彼は台詞を喋る。

まるで戯曲の人物たちのように、自らの想いを伝えるように自然と口から出てくる。

 

「この身一つで救われる命があるならば、今一度輝かせてみせよう昴星!『仮面ライダーエクリヴァ』……悲劇の物語を覆す!」

『何を、しゃらくせえええええええええええっっ!!!』

 

物語の改訂者……エクリヴァの口上を挑発行為と受け取ったキャンドルは苛立ちを露わにしながら、直進する。

真っ直ぐに、舞台少女たちに目もくれずに走る彼女は両手に炎を纏わせると握り締めた拳で目の前の戦士を殴り飛ばそうとする。

しかし、その攻撃が届くことはなかった。

 

「ふっ!」

 

殴り返して逆に弾いたからだ。

舞台少女たちとは違い、対ストーリオ専用に開発されたエクリヴァの力はキャンドルの炎を完全に上回っている。

更に距離を詰めると、キャンドルの身体を殴って徐々にダメージを与えていく。

身体の勢いを利用した左右の手から繰り出される拳がストーリオを怯ませた。

 

『こ、こいつうううううううっ!!』

「女の子を殴る趣味はないけどそれはそれだ……これは君に傷つけられた子たちの分だっ!!」

『ぎゃああああああああっ!?』

 

今度は顎に向かって強烈なトルネードキックを叩き込んだ。

蹴り飛ばされたキャンドルが地面に叩きつけられるも、すぐに起き上がって怒りを燃やすように頭頂部に灯した火を昂らせながら彼を睨みつける。

 

『……ああああああっっ!!!』

 

そして今度は火球を飛ばし始めた。

絶叫と共に放たれた炎はエクリヴァに迫るが、彼に焦りの色は見られない。

 

「ふっ!」

【CHARLEMAGNE STORY!】

 

スロットに装填されたノベルペンを押し込み、電子音声電子音声が響くとバックルから文字の羅列を模した水色のエネルギーが再び出現しエクリヴァの手に収束されていく。

やがて、それは一振りの剣へと形作られた。

 

「はぁっ!」

『何っ!?』

 

その剣を振り、火球を斬り裂く。

西洋剣の形をした水色の刀身を持つ白銀の武器『ジュワユーズセイバー』を構え、そのまま前進すると距離を詰めたエクリヴァがキャンドルの胴体を袈裟斬りにする。

 

『ぐぅっ!!この…』

「でやっ!」

 

青い光が躍る。

輝きが美しい軌跡を描くと同時にキャンドルの身体に耐え切れないほどのダメージと傷が刻まれていく。

ローブを靡かせ、時折放たれた敵のカウンターを華麗なジャンプで回避するとその場で一回転してから、その勢いで相手を斬る。

それはキャンドルが語る悲劇ではない、もはやこの場においてストーリオは単なる引き立て役に過ぎない。

エクリヴァの織り成す物語と舞踏の独壇場だった。

 

「はぁっ!」

『ぐえっ!?』

 

片足で踏切り、そこから捻りを加えた一回転半の回し蹴り……トリッキングの一つであるチートセブントゥエンティキックで吹き飛ばされ、キャンドルが地面を転がった。

もはや起き上がることしか出来ないストーリオを見て勝機を感じ取ったエクリヴァは、グリップを押し込みバックルの本を閉じる。

そして、再びグリップを引っ張って本を開いた。

 

【SHOW TIME! CHARLEMAGNE STORY!】

 

水色の文字型エネルギーを右脚に収束し、地面を蹴る。

跳び上がったエクリヴァはキャンドルに向かって足を突き出し、渾身のキックを炸裂した。

凄まじい勢いで、急降下するその姿はまるで水色の流星。

 

「はああああああああああっっ!!!」

『ぎぃやああああああああああああっ!?』

 

躱すことも出来ず、必殺のキックを叩き込まれたキャンドル・ストーリオは悲鳴と共に爆散。

その爆発を背後に余波でローブを靡かせながら、華麗なポーズでその勝利を収めるのだった。

 

「すごい……!」

 

思わず声が漏れた。

舞台少女とも違う仮面の戦士……周りを引き付ける立ち回りが全てを魅了して離さない。

キリンは何も言わず、えるも予想以上の素質に笑みを見せる。

しかし、それはすぐに終わる。

 

『ぐっ、うう……!』

 

呻き声に視線を向ければ、怪人態が解けたキャンドル売りの少女が両膝と両手を地面につけていた。

その姿は先ほどまでの悪辣さはなく、泣きじゃくる姿は年相応の少女そのものだ。

 

『寒いっ、寒いよ……どうして誰も私を助けてくれないのっ?』

 

少女は必死に口を開く。

苦し気に、張り裂けんばかりの悲哀を胸に秘めた叫びが続く。

 

『私は頑張った!「全部売れ」って言うから頑張って売ったよ!!だって売らなきゃお父さんが怒るからっ、ご飯が食べられないから!クリスマスの寒い日だって必死に頑張った!』

 

「だけど」と小さな手を強く握る。

 

『誰も買ってくれなかった!それどころか、私をまるで邪魔者みたいにっ!!私にだって幸せになる権利はあるのにっ!どいつもこいつも私の邪魔をする!!』

 

自業自得、私は悪くない、悪いのは奴らのせい……。

そう言って彼女は自分の非を認めない。いや、認める訳にはいかないのだろう。

 

『幻影に縋って何が悪いのっ、私には幸せな幻影を見る資格すらないって言うのっ!この寒さに耐え続けろって言うのっ!?誰でも良い、誰でも良いからぁ……!』

 

私を助けてよ……。

キャンドル売りの少女は涙を零す。抑えてきたものが一気に溢れ出したように、再び泣き出す。

その姿に、誰も言うことが出来なかった。

何と言葉を掛ければ良いのか、どうすれば彼女の心が晴れるのか、その術を知らないからだ。

しかし、沈黙していたエクリヴァはバックルのスロットに装填していたノベルペンを取り外し、宙に向かって文字を書きながら少女へと近づく。

泣いているキャンドルの売りの少女と視線を合わせるように膝をつき、語り掛ける。

 

「ごめんね、遅くなった」

『えっ?』

 

その言葉に少女は顔を上げる。

泣き顔の彼女に、エクリヴァは言葉を続ける。

 

「君のお婆さんに頼まれたんだ。『可愛い孫娘が苦しんでいる。助けてほしい』って……」

 

空間に文字が、物語が記されていく。

まるで続きを書いていくように、ノベルペンが独りでに走る。

 

『私を、助けてくれるのっ?』

「ああ。でも、君はこれから天使様とお話をしなくちゃならない……」

 

辛い声で、彼は話す。

『キャンドル売りの少女』の物語を知った彼だから分かることだが、火災の原因は事故の側面が強いのだが、事実はどうあれ結果だけを見れば彼女が犯人だ。

だから、無罪放免とする訳にはいかない。

 

『そう、だよね。私、たくさんの人を苦しめた……!』

「だけど、君が苦しんでいたのは天使様も分かっている。お話が終わったら、お婆さんにも会わせてくれる」

 

それは嘘ではない。

何故なら、キャンドル売りの少女の続きを現在進行形でエクリヴァが書いているからだ。

ノベルペンを走らせ、暗い世界が徐々に明るく、寒い空気が暖かくなっていく。

 

「幸せになれるか分からない。でも、これからはお婆さんとずっと一緒だよ」

『本当?本当にお祖母様と一緒にいられるのっ』

「そうだよ。街のことは牧師様と残った人たちに任せて、今はゆっくりお休みなさい……」

『うん。ありがとう……!』

 

その言葉を最後に、ノベルペンが最後の一節を書き終えた。

途端に少女の身体が優しい光に包まれる。

ゆっくりと瞳を閉じた彼女の身体を、地上へと降り立った天使が優しく抱え上げて天へと昇っていくのだった。

 

【執筆終了!】

 

これこそがエクリヴァの……仮面ライダーが持つ能力。

歪んだ物語を、改訂し修正することだ。

 

「せめて、幸せな結末を……」

 

役目を終えて戻ってきたノベルペンを取った彼の手には、一冊の赤い本があるのだった。

 

 

 

 

 

ストーリオの戦闘を終え、変身を解除したところで昴は自分の部屋にいた。

どうやら、役目を終えると今まで自分がいた場所に戻るようになっているらしい。

一先ずバックルとノベルペンが手元に残っていることを確認し、手に持っていた赤い本を見る……恐らくはキャンドル売りの少女の物語なのだろうがこのまま置きっ放しという訳にもいかない。

どうしたものかと頭を悩ませていた時だった。

 

「お困りのようですね」

「うわっ!?」

 

突然の声に驚いて振り向けば、えるがベッドに座っていた。

変わらぬ表情のまま、手に持った本に視線を向ける。

 

「そちらの物語に関しましては、また後日説明をさせて頂きます。まずは労いの言葉を……デビューおめでとうございます」

「えっと、ありがとうございます」

 

一方的に話題を変える彼女に、どう返すべきか戸惑いながらも昴は軽く頭を下げる。

そこでふと彼女の服が汚れていることに気づく。恐らくストーリオとの戦闘の時、いつの間にか汚れていたのだろう。

 

「っ?ああ、申し訳ありません。お話をする装いではありませんでしたね」

 

視線に気づいたえるは、謝罪するとその衣服に手をかけて……。

 

「……てっ!何やってるのかなぁっ!?///」

 

敬語を忘れて思わず叫んでしまった。

視界にはタイを解き、ブラウスのボタンを外した彼女に顔を真っ赤にする。

意外と着やせするタイプかという雑念を必死に振り払う彼に、えるは小首を傾げながら答える。

 

「見て分からないのですか?汚れたので着替えようかと」

「なるほど納得!でも待って!?俺の性別覚えてるかな!男っ、トイレだと青い紳士マークに行く性別なのっ!分かる!?」

「存じてますよ。ですが、それと私が服を着替えるのは関係ないのでは?」

 

そうしている間にも彼女はボタンを全て外し、今度はストッキングを脱ぎ始める。

何処か艶めかしいような、妙な背徳感に増々顔を真っ赤にした昴は更に慌てる。

 

「あーあー!ちょっと待って!?スカートまで脱ごうとしないでえええええええっっ!!!///」

「きゃっ!?」

 

瞬く間に脱ぎ、今度はスカートまで脱ごうとしたところで昴が動いた……が勢い余って躓いてしまい、えるに覆い被さる形になってしまう。

丁度、その時だった。

 

「やっほー昴ちゃんっ!みんなで食べたスウィートポテトが余ったからお裾分けに来たよ!小母さんにはもう渡してあるからね!」

「お邪魔します」

「ごめんね昴君。華恋ちゃんたちがどうしてもって……えっ?」

「へっ?」

「……あら?」

 

ドアを開けて前触れもなく部屋に入ってきたのは、幼馴染である少女……先ほどまで舞台にいた華恋とひかり。そして申し訳なさそうに謝るのは彼女たちの友人である露崎まひるだ。

手作りのお菓子を持って華恋が満面の笑みで入ってきたのだが、彼女を先頭に残りの二人も固まった。

何故ならドアを開けて入った室内では、昴が衣装を半分脱いだえるを押し倒していたからだ。

 

「華恋……それにひかりと露崎さんまでっ!?い、いいっ、いつの間に……?」

「「「……」」」

 

滝のような汗を流しながら顔を真っ青にしているが、三人は衣服の乱れた彼女を押し倒している姿をしばらく見つめる。

数分後、華恋が慌てて部屋から出た。

そしてよく響く声。

 

「小母さん大変ー!昴ちゃんが女の子を部屋に連れ込んで押し倒しているーーーーーー!!」

「華恋んんんんんんん!待って違う誤解っ!お願いだから俺の話を聞いてえええええええええええええええええっ!?」

 

まずは三人の誤解を解くのが先だと、昴は涙ながらに決意するのだった。




 多分、みんながツッコミたいであろう疑問点。

Q.何でオリ主はまひるとも顔見知りなの?
A.幼馴染の華恋とひかりが昴の家にアポなしで突撃してくるからです。その縁で知り合い二人の話をしていたら何やかんや仲良くなりました。

Q.まひるって華恋の好きだよね?オリ主に嫉妬とかしないの?
A.アニメ後のスタリラ時間軸なので落ち着いています。オリ主は女の子顔なのと手のかかるルームメイトのおかげで姉パワーとおかんパワーがカンストしています。ぶっちゃけオリ主にお世話したいオーラを必死に抑えている状態です。

Q.何でまた女の子風男の子なの?
A.暗殺教室のアニメ見ていたらこんなキャラになりました。俺は悪くねぇ。

Q.スタリラでクロスする意味は?
A.書きたくなったから書いた。今回のオリジナルライダーはスタァライトありきだったからです。


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仮面ライダーフィオーレ(原作:アサルトリリィ)

 懲りず短編です。
 今回はアサルトリリィが原作のオリジナルライダーです!ただ、作者はアニメを一気に見て勢いで書いたので原作設定とかがかなり危ういです。
 それでは、どうぞ。

2024/11/24
アイテムを歯車からカードキーに変更しました。


世界は、一つの脅威に晒されている。

『HUGE』……それはとある巨大化細胞の暴走が生んだ生命体。捕食と寄生、成長を繰り返すことで多様な形状を獲得し、人類に牙を剥いた。

進化と増殖を続けるヒュージに対抗するのは決戦兵器たるCounter Huge ARMSこと通称『CHARM』と、それを扱うことの出来る少女たち『リリィ』……。

これは、一つの節目を終えた彼女たちと少年の物語。

誰よりも死に近かった彼は、胸の鼓動を刻み続ける……。

 

 

 

 

 

赤が、立ち上る。

轟々と音を立て、全てを呑み込みながら大きくなっていく。

それはただの赤ではない。

火だ。

何処にでもある一般住宅を火元に、小さかった火は大きな炎となっていく。

周囲の人が恐れ、消防士が懸命な消火活動を続けるのを後目に『彼』は……。

 

『……くくっ』

 

笑った。

他の連中には見えないようにしてある……この光景を理解出来ない連中のくだらない野次などで気分を害されたくなかったからだ。

視線を少し下げれば、住んでいた家族が困惑し恐怖の表情を浮かべている。

何と素晴らしい、何て美しい、炎という存在は自分の求める感情を一早く生み出してくれる。

それだけではない。

何度か火を放つ内に、彼は炎に対して異常なまでの執着を持つようになっていた。

暗闇を照らす灯りが、悲鳴や絶望を生み出す火が、全てを包み込み灰塵とかすあの炎が……。

彼にはとても扇情的で、愛らしく思えるようになった。

ああ、燃やしたい……!

艶めいたあの赤を、もっと間近で、もっと大きな炎で見たい。

この感情を、何と言えば良いのだったか?世間ではこの強い感情を端的に分かりやすい言葉として使っていたはずだ。

そうだ、確か……。

 

『燃える……!』

 

 

 

 

 

私立百合ヶ丘女学院……鎌倉府にあるお嬢様学校を母体とした、リリィ教育の世界的な育成機関(ガーデン)である。

ここの学生はCHARMを用いた対ヒュージ戦闘を基本に、軍事教育や訓練をハイレベルに施されている。中でも九人一組のレギオンと呼ばれるチームを構成して戦うノインヴェルト戦術においては世界的に有数な名門でもある。

そんな学園の、土曜日の午後に差し掛かった時刻だった。

 

「ふぇー……疲れた~」

 

清潔感のある白いテーブルに突っ伏すように椅子に腰を下ろしたのは、桜色の髪と紅色の瞳を持った少女で、左側のサイドテールにはシロツメクサを模した髪飾りを身に着けている。

白いフリルのある黒い学生服に身を包んだ彼女は、あどけなさが残る幼い顔立ちには疲れの色が出ており、心なしかサイドテールも元気なさげに動いているようだ。

 

「午後の授業、なくて良かった……」

 

少女『一柳梨璃』は顔を上げる体力もないまま、テーブルに上半身を預ける。

かつて自分を助けてくれたリリィに憧れ、彼女のいる学園に入学し、絆の証でもある守護天使(シュッツエンゲル)を結ぶことも出来た。

しかし、それはそれとしてだ。

憧れのリリィであるお姉様の訓練は今まで以上に厳しくなっており、今もこうして追いつくので必死なのである。

それだけ自分に期待し、大切に思っていることは分かるのだが、今回の訓練はいつも以上に厳しかった。

幸い、今日は授業も午前中だけのため、午後からは自由になっている。

このまま部屋に戻って寝てしまおうかと思っていた時だ。

 

「お嬢様」

 

聞こえてくるのは、中性的な『少年』の声。

女子校であるここでは、絶対に聞かないであろう声だ。

反射的に思わず上半身を起こした彼女のテーブルに置かれたのは、白いティーカップ。

音もなく置かれた器には、紅茶が注がれており、そこから湯気が上っている。

未熟とはいえ、リリィとしての戦闘経験のある彼女に気付かれることなく、紅茶を用意したのは穏やかな笑みを絶やさない執事服の少年……。

 

「あ、ありがとうございます。瑠依さん」

 

慌てて手櫛で髪を整えてお礼を言う梨璃に少年『三笠瑠依』は一礼する。

瑠依は数か月前に百合ヶ丘女学院へ来た専属執事だ。

理由は分からないが、理事長代行曰く『異性に慣れるための措置』として迎えたらしく、それ以外の詳細は分からない。

肩書通り、黒いタキシードに白い手袋という出で立ちの彼はやや女性的な幼い顔立ちと透き通るような黄色い瞳が特徴的だ。

赤みがかった茶髪の右側には、桜色の大きなリボンが着けられており、知らない人が見れば『男装をしている少女』に見えたかもしれない。

ひ弱なのかと問われればそうではない。

華奢ながらも力は一般的な男子よりはあるし、私闘を始めようとした生徒二人を無傷で取り押さえていたことからも、腕に覚えはあるのだろう。

仕事がない時は常にぼんやりとしている姿を見ることもあるのと、中性的な外見のため他の生徒たちからも話しかけられたりしている。

 

「先ほどお見かけした時、いつもよりも疲れているご様子でしたので……お口に合うか分かりませんが」

「いえいえそんな!頂きます!」

 

一口飲む。

そうして口の中に広がるのは、紅茶の香りと……丁度良い暖かさと共に伝わるほんのり感じる甘さ。

砂糖やミルクとは違う優しい甘味に梨璃は二口目を含む。

そして一言。

 

「美味しいっ!」

 

目を輝かせた。

昼休みなどで紅茶は飲んでいたが、今まで飲んだ物とは違う味に思わず大きな声で賞賛する。

「勿体ないお言葉です」と瑠依は頭を下げ、紅茶の入れた隠し味を教える。

 

「実は砂糖の代わりに、蜂蜜を入れてあります」

「へー、それでっ」

「気分を落ち着かせてくれる成分もあるので、お嬢様がもし大切なお方に紅茶をお淹れになるようでしたら、是非ご参考に」

 

立てた人差し指を口元に当てて、ウィンクする。

こういったポーズが妙に可愛らしく見えるのも、女顔の彼だからこそだ。

女子よりも似合う女子らしい仕草に思わず笑みが零れた。

しばらく、二人は他愛もない話をする。

そうしている内に、いつの間にか疲れも取れてきた……その時だ。

校舎全体に響くほどの鐘の音が聞こえる。

それは人類の脅威……ヒュージの出現を告げる警報だ。

 

「っ!紅茶、ありがとうございました!」

「行ってらっしゃいませ、梨璃お嬢様」

 

普段は多くを語らない彼だが、料理や紅茶に関しては少しだけ饒舌になるのかと思いながら、改めてお礼を口にした梨璃はその場を後にした。

だからこそ気付かなかった。

恭しく頭を下げていた瑠依の眼が鋭くなったことに気付かずに……。

 

 

 

 

 

嫌な予感がする……。

湧き上がる考えを振り払うように、少女『白井夢結』は長く伸ばした黒髪を払った。

警報を受け、彼女が所属する部隊『一柳隊』は出動することになったのだが、問題はその現場だ。

ヒュージと思わしき反応があった場所は自然公園なのだが、地形に変化がない。

彼らの殆どは巨体であり、動くだけでも地形を変える恐れがある生命体だ。スモール級という小型種は確かに存在するが、それでも疑問が残る。

それは、周囲にある物体と人間にしか被害が出ていないことだ。

電灯や自販機は全て焼き尽くされ、原型すら留めていない。

その周囲には腕や脚を斬り裂かれ、呻き声と共に倒れている人たちが複数いる。

他のメンバーが救護活動や周囲の索敵に準じる中で、夢結は梨璃と共に周囲を見渡しながら歩く。

仮に、今回のヒュージが知性を持つ個体なのだとしたら、今の状況そのものが自分たちの釣るための餌である可能性が高い。

思考を巡らせながら、警戒を更に強めた時だった。

 

「っ!?」

 

不意に、強い悪寒が走った。

冷たく暗い、それでいて強い殺意に怖気が走る。

すぐさま梨璃の方に視線を向ける。

彼女も分かったのだろう……自分たちに向けられている殺気に気付いた梨璃は夢結と共にバックステップする。

同時にすぐ後ろにあったベンチが真っ二つにされて崩れ落ちる大きな音がした。

驚く間もなくベンチは発火し瞬く間に燃え上がり、両断された地面からは焦げた臭いと共に黒煙が上がる。

地面すらも抉り斬り裂くその切れ味に、思わず背筋が凍る。

住民の避難と救護を終えたメンバーたちも合流し、攻撃された方向を見据えてそれぞれのCHARMを構える。

 

『ふん、躱したか。人間にしては大した素早さだな』

 

掠れたような、不気味な声が響いた。

そこにいたのは、あまりにも異様な存在……全身を黒いローブと手袋で覆い隠しており、顔には白い髑髏のような仮面が縫い付けられている。

何より、その人物から発せられる禍々しい気配は明らかに普通ではない。

それ以前に、本来なら女性にしか発現しないはずのマギが流れているのだ。

禍々しい力を隠そうともしないフードの人物……否、異形に対して緊張が走る。

しかし、それをものともしない少女もいる。

 

「リリィやヒュージでもないのにマギを操るだなんて……お話が出来るようでしたら、痛い目に合うだけで済みますわよ?」

 

ウェーブのかかったレッドブラウンのセミロングに蒼い瞳の彼女『楓・J・ヌーベル』は得意げな笑みと共に自身のCHARM『ジュワユーズ』の切っ先を突きつける。

しかし、その目に油断も慢心もない。

得体のしれない存在というのもあるが、本来ならば多くの人が利用している公園を滅茶苦茶にしたことへの怒りを静かに燃やしている。

そんな強い闘志を前にしても、異形はつまらなそうに鼻を鳴らすだけだ。

 

『図に乗るなよ下等生物。我ら「ガーディオス」が、貴様ら人間に憐憫の感情を抱くと思うか?』

 

波打つ刀身が特徴のフランベルジュを手に持ったまま、淡々と言葉を交わす。

慈悲すらも感じない、冷酷な言葉に全員が嫌悪感を露にする。

それどころか、自らの生み出した惨劇に人々の苦しむ声に喜びを様子を隠そうとしない。

 

「……どうして、こんなことをっ」

 

人間のように言葉を話せるのに、まるで雑草か蟻と大差なく見ているのような傲慢さが、梨璃の視線を鋭くさせる。

何故ここまで人を苦しめることが出来るのか……その答えを異形の怪人はあっさりと答えた。

 

『燃えるからだ』

「……は?」

 

あまりにも単純で、常人には理解出来ない価値観。

呆気に取られる梨璃たちの様子に呆れた様子で怪人は溜息と共に頭を振ると……。

 

『分かっていないっ、貴様らは何も分かっていないっ!!』

 

不意に大声をあげた。

フランベルジュを地面に突き立て、両腕を広げながら怪人『ガーディオス』は叫ぶ。

 

『メラメラを燃え上がる灯り、状況に応じて変わる規模っ!そしてそれによって湧き上がる人間どもの悲鳴っ!!これほどまでに愛おしく、エロ可愛い存在はいないだろうっ!火こそ至高っ、炎こそが最強の燃えキャラっ!我は燃えの伝道者、故に我は燃やすのだ!』

 

一息で、早口で淀みなく言葉を羅列する。

その声色に嘘はなく、興奮した様子で炎への異常な執着を語り続ける。

意味が分からない……そんな理由で人を傷つけ、放火したというのか。

興奮した面持ちのまま、ガーディオスはリリィたちを睨む。

 

『特別に見せてやろう、雌の人間ども……!エロ可愛く照らし続ける炎によって、我は自身を成長させるほどの「悪意」をこの身に取り込んだ!!』

 

そう、再び両腕を広げた瞬間だった。

素体の胸元から一輪の花が咲いた……毒々しい、赤い不気味な花だ。

まるで内側から食い破ったかのように咲いたのと同時に、今度は身体のあちこちから芽が出始めた。

それは早送りされた映像の如く、凄まじいほどのスピードで成長を遂げていく。

 

「何、あれ……!?」

 

禍々しく、緑と黒の入り雑じった不気味な植物が素体ガーディオスの全身を覆い隠していく。

これは『成長』だ。

植物は栄養を取り込み、そこに準じた環境に適応することで花や木として成長を遂げる……それは彼らとて同じなのだ。

 

『我の中に眠るマギよ、さあ育て!咲き誇れっ!極上の悪意を貪り、今こそ我らの春を招き給ええええええっ!!』

 

自身が望んで蓄えた悪意がその姿形を変異させていき、やがて呪いの植物が全身の侵食を終えたことで、その姿を露にした。

縫い付けられた髑髏の仮面と胸元に咲いた一輪の花はそのままに、赤を基調とした極彩色のストールと外套のような翅を全身に纏い、両肩には蝶のような特徴的な頭部と触角が生えている。

右手には素体時にも所持していたフランベルジュのような剣を構えていた。

まるで植物が動物を象ったような、あるいは動物に植物が寄生しているような外見をしたの炎の蝶『バタフライ・ガーディオス』は胸元の花から『ある物』を撒き散らす。

 

「ぐっ!?」

「何っ、苦しい……!」

 

黒い瘴気が自然公園全体を侵食し、リリィたる彼女たちの膝を着かせる。

強烈な吐き気と眩暈、頭の中が掻き回されるような不快感が襲い掛かる。

これは完全体となったガーディオスが持つ固有能力『精神汚染』……身体に咲いた花には文字通り生物の精神を混濁させる毒性があり、獲物を逃がさないための瘴気として放つことが出来る。

その瘴気によって苦しむ人々にバタフライは気にも止めない。それどころか、恵みの雨を浴びるかのように悦に浸っている。

彼らは混沌の庭園(ガーディオス)……世界を食い尽くさんとする悪食植物。

混沌を招き、生きとし生ける全ての生命を蹂躙する毒の花。

 

『さて、と……最初はお前に決めたぞ、人間』

「うっ、あぁっ」

 

フランベルジュを構え、必死に立ち上がろうとする梨璃を見下ろすバタフライ。

彼女を助けようと右足を掴んできた楓を蹴り飛ばし、剣を上げる。

 

「この、おやめなさい……がっ!?」

「逃げて、梨璃っ」

 

必死に彼女を守るべく、混濁する精神で身体を動かそうとする夢結たちの姿に嗤いを零す。

まるで、苦しみのたうち回る虫の姿を見て喜ぶ子どもののようだ。

 

『ああっ、素晴らしい光景っ。素晴らしい混沌っ!素晴らしい悲劇っ!!そうだ、もっと怯え震えろ。その絶望が、恐怖が!俺たちの養分となる!』

 

神託を受けた預言者の如き、大袈裟な振舞いで剣を掲げたバタフライは大空へ向けて声を張り上げる。

そして、上機嫌のまま目の前にいる少女の首を切り落とそうと振り下ろした。

 

『ぐおああああああああああっっ!!?』

 

だが、それよりも早く悪性植物の身体は思い切り吹き飛ばされていた。

情けない悲鳴と共に、数メートル先まで地面を転がるバタフライを見て梨璃たちは混乱を隠せない。

だが、夢結だけは何が起こったのかすぐに理解出来た。

 

「……バイク?」

 

先ほどまでバタフライがいた場所に、一台のバイクがあった。

赤いフロントにエメラルドグリーンの車体が特徴的で、白いラインで茨の意匠が施されたドゥカティであり妙な存在感を放っている。

そして、それに跨っているのはヘルメットを被った黒いタキシードの人物……。

ガーディオスの放つ瘴気が未だ残っているにも関わらず、その人物はマシン『マギスパイカー』から降りるとヘルメットを外す。

その顔は、彼女たちが全員知っている少年。

 

「瑠依さんっ!?」

 

そう、三笠瑠依その人だ。

しかしその表情に笑みはなく、目の前にいるガーディオスの鋭い視線を向けるばかりだ。

あまりの違いに一瞬別人かとも思ったが、左側にあるリボンが彼が本物であることを証明している。

 

『ぐっ、ううっ、おのれぇっ!!』

 

衝撃から、ようやく起き上がったバタフライがコートをはためかせながら、憎悪の視線をぶつける。

下等生物である人間に掻かされた恥を拭い去ろうと、事の元凶である瑠依に標的を定めるとフランベルジュを上段に構える。

 

『人間風情が……燃えキャラにしてやるっ!!』

 

人間では決して出せないスピードで距離を詰め、炎を纏った波打つ刃が迫る。

だが、不敵な笑いを浮かべた難なく回避するとバックステップで軽くその場から離れた。

 

「手を出すのが早いな……短気は損気って言葉、知らないのか?」

 

余裕綽々と言ったばかりに手に持ったままのヘルメットを投げ捨てる。

それは寸分の狂いもなく、バタフライの顔へと命中した。

 

『ぐっ!?この……!』

 

ダメージこそないが、良いように弄ばれている事実がガーディオスの怒りに触れる。

そんな事情など気にすることなく、彼は右手に持った大きめなバックルを見せつけた。

 

『さあさあっ、紳士淑女の皆様方!これより先は奇怪な化け花の剪定でございますっ!!』

「えっ、声っ!?」

 

戦場となった公園に響き渡るは、ガーディオスとも違う青年の声。

甘い声のようなハスキーボイスだが、おどけたようなその言葉は好戦的で些かチンピラのようだ。

「一体何処から」と、周囲を見渡すもすぐに分かった。

『彼の持っているバックル』から声が聞こえていたのだ。

 

「行こうか、ローゼン」

『ひゃっはは!さっさと間引いて茶の続きでもしようや!』

 

バックル型デバイス『フィオーレドライバー』を腹部に当てると、左右に伸びたベルトが腰に巻き付き固定される。

右側にあるバイクハンドル型グリップと中央には何かを嵌め込む装填用スロット。

左側にスイッチがある赤いボディ……それがフィオーレドライバーの特徴だ。

 

『その声、そのベルト……そうか貴様がっ!』

 

バタフライは完全に確信した。

そう、彼らには憎き怨敵がいる。

愉悦の蹂躙を邪魔し、自らの開花を妨げる反逆者……『ローゼン』に選ばれた戦士。

その名は。

 

「そのまさかだ、虫野郎っ。冥土の土産だ……特別に見せてやるよ」

『涙流して感激しろよなぁっ!!』

【ROSE GARM!】

 

懐から取り出し、側面のボタンを押して起動させたのは赤と緑の長方形のようなカードキー型のアイテム……掌サイズのプレートの上半分には雄叫びをあげる猟犬と、下半分には赤い薔薇と鋭い茨に覆われた庭園が描かれている。

それ『マギライドプレート』をバックルのスロットに装填。

 

【UNLOCK ABILITY……FIGHT!】

 

まるでエンジンの掛かったバイクのように、ベルトの中にあるプレートが赤と緑に発光すると同時にテンポの速い待機曲が流れ、薔薇の花と茨で構成された猟犬が出現する。

それに合わせて、宣戦布告するように指を突き付けながら、ゆっくりと息を吐く。

そして。

 

「変身」

 

掛け声と同時に右側のグリップを思い切り捻った。

瞬間、フィオーレドライバーから流れるエネルギーが身体を包み、緑色のスーツとなる。

冥界と現世の境目を護る薔薇の猟犬はアーマーとなって分離すると同時に身体へと装着された。

 

【LET'S GO AVENGER! 逆襲の赤き薔薇、咲き誇れSPIKE BEAST!!】

 

高らかに響くは変身を遂げる電子音声。

マスクの中心には赤い薔薇が咲き開いた形状となっており、赤い複眼と重なっている。

しかし、右手と両脚には猟犬をイメージさせる手甲が装備され、何処となく獰猛な獣のよう……。

膝部のプロテクターには口を開いた獣をイメージしており、首元には深紅のマフラーが風に靡いた。

 

「仮面ライダーフィオーレ!覚悟しな、こっからは僕の……オレの叛逆だっ!!」

 

ここに現界するは、悪しき者に虐げられし者への逆襲にして叛逆者……『仮面ライダーフィオーレ』がその名を咲かせた。

 

『図に乗るなよ……人間んんんんんんっっ!!!』

 

バタフライが怒りと共に再び迫る。

炎を纏ったフランベルジュを振り回しながら、フィオーレへと迫る。

しかし、結果は明白だった。

 

「あんまり……人間、嘗めるなよ虫ケラアアアアアアアアッ!!」

『ぶっごばあああああああああああっ!?』

 

荒々しく振り抜かれた右拳によるストレートパンチが、バタフライに命中した。

カウンター気味に炸裂した一撃は火花を散らしたバタフライの身体を大きく吹き飛ばした。

その光景に梨璃はおろか、普段は冷静でいる夢結ですらも目を見開かせる。

立っているだけでもやっとの瘴気に満ちた空間で難なく動けるだけでなく、妙な道具で変身した知り合いの少年が普段とは違う荒々しい言動で怪人を殴り飛ばしたのだ。

それだけではない。

先ほどの攻撃には、バタフライと同様にマギが込められている。

 

「どうして、マギを……!?」

 

左側にシュシュを着けた黒髪のストレートヘアの少女『王雨嘉』が驚く。

男性であるはずの彼がマギを自在に操る姿に動揺を隠せないでいたが、その疑問に答えたのはフィオーレ……ではなくドライバーに内蔵されているAIのローゼンだ。

 

『そりゃあ、そうだろうよ。悪意という負のマギから生まれた化け物に叛逆するための力……仮面ライダーフィオーレが同じ力を持っていなきゃおかしいだろ』

 

あっけらかんと言い放ったローゼンに、フィオーレが苦い声で窘める。

 

「ローゼン。あんまりお嬢たちに変なこと吹き込むな」

『ひゃっはは!悪い悪いっ、あんまりにも驚いた顔が面白れぇからよ!』

「たく……」

 

呆れたように溜息を吐く。その姿はまるで、性格が反対な友人同士のよう……。

そんなやり取りをしていた時だ。

 

『調子に乗るなああああ!』

「おっと?」

 

木々の奥から飛んできた斬撃を象った炎がフィオーレの肩を掠めた。

視線を向ければ、態勢を立て直したバタフライがおり、右手に持ったフランベルジュの刀身を燃やしながら鋭利な三日月型の衝撃波を放ったのだ。

 

『もう許さんぞっ!貴様を燃えキャラにするのは止めだっ、ズタズタにした後で火だるまにしてやるううううううううううううううっ!!』

「だったら、きちんと当ててみな!」

 

木や岩を切り裂き、焼き尽くす無数の炎に対してフィオーレは余裕を崩すことなくグリップを捻ってパワーを上げる。

猟犬の持つ脚力を底上げすると、軽快な動きで翻弄・回避しながらフィオーレはバタフライに接近する。

そして、更にグリップを捻って薔薇のエネルギーを上昇させた。

 

「そらぁっ!!」

『なっ、ごっはああああああああああっ!?』

 

その顔面に綺麗な弧を描きながら強力なボレーキックを叩き込む。

しかもただの蹴りではない。先ほどのグリップを捻った際、茨の如き無数の棘を両足に生やしており、バタフライの髑髏の仮面ごと貫いたのだ。

大きく仰け反ったガーディオスはあまりの激痛に、武器を落としてしまう。

それを逃すフィオーレではない。

 

「まだまだ行くぜえええええええええっ!!」

『がっ!ぐえっ、がぁっ!?』

 

拳と蹴りのラッシュが容赦なく迫り、バタフライの身体にダメージを蓄積されていく。

サンドバッグのように殴り蹴られながらも、斬撃を浴びせようとするが、それらは全て捌かれてしまう。

 

『がはっ!く、くそっ!ふざけるなっ!我らガーディオスが貴様のような、下等生物に……!』

「やかましいっ!!」

『ごはっ!?』

 

憎悪に満ちた罵声を浴びせようとするガーディオスの口を、顎ごとフィオーレは止めとばかりに蹴り上げた。

しかし、宙へと飛ばされたバタフライは落下することなく静止する。

一瞬、何事かと思ったがフィオーレはすぐに理解した。

耳を澄ませば、耳障りな音と同時に外套やストール状の翅が忙しなく、小刻みに動いているのが見える。

 

「へぇっ。本物の蝶みたいに飛べるのか」

『けど品がねーなー。あれじゃ灯りに群がる蛾ってところだな』

『このっ、ゴミカス風情がああああああっ!』

 

自らの尊厳と身体に大きな傷を負わされたバタフライは更に憎悪を膨らませると、両手に野球ボールサイズの火炎を生み出す。

多くの物体を燃やし続けた炎で周囲ごと焼き尽くすつもりなのだろう。

しかし、それを許すほどフィオーレは甘くはない。

 

「そうはさせねぇ……よっ!!」

『なっ、あああああああああああっ!?』

 

グリップを捻り、両脚に生やした茨をスプリング状にして高く跳躍すると顔面に強烈な膝蹴りを炸裂させた。

予想外の方法で制空権を奪われたバタフライは、再びフィオーレのサンドバッグと化してしまう。

逃走しようにも、それよりも速く蹴りと拳が飛んでくるため躱すことも防ぐことも出来ない。

赤い軌跡を描いたオーバーヘッドキックが、苦悶の声を漏らしていたガーディオスを蹴り落とした。

 

『そろそろ決めちまえっ!とっておきだっ!!』

「しゃあっ!」

 

一方的な空中戦を観戦していたドライバー内のローゼンが叫ぶ。

勝機を確信したその言葉に従い、ベルトに備わった左側のスイッチを押し込み、サイドグリップを何度も捻る。

 

【FINAL BREAK! RIDER KICK!!】

 

瞬間、赤と緑の光を放ちながら電子音が高らかに鳴り響いた。

宛ら風車のように激しく回転する度にフィオーレの身体が赤く輝き始め、奥底から溢れるほどのエネルギーが駆け巡る。

滾る感情のまま、身体を回転させると右脚に茨が巻き付き、その硬度と威力を補強する。

地面へと落ちるしかないバタフライに狙いを定め、急降下からの蹴りを繰り出した。

 

「スパイク・スマッシャーァアアアアアアアアアアアッッ!!」

『ひっ!?み、認められるかっ!こんなっ、こんな馬鹿なことが……うぎぃあああああああああああああっ!!』

 

恐怖も絶望も、暗く淀んだ悪意すらもぶち破らんばかりの、強烈な一撃が恐怖で声を引きつらせたガーディオスの身体を蹴り抜いた。

赤い毒花ごと胴体に大きな風穴を空けられ、自らの運命を受け入れられぬまま、バタフライ・ガーディオスは青い大空で爆発四散した。

マギライドプレートを外し、バックルのボタンを押して変身を解除した瑠依は落ちていたヘルメットを拾うと梨璃たちに何も言わずにマギスパイカーへと向かう。

そのまま、マシンに乗ってエンジンを蒸かして走り去ろうとした時だ。

 

「あ、あのっ!瑠依さん……」

「お嬢様方……お話は必ずします。まずは、一度学舎の方に戻って傷を癒してください」

 

呼び止めようとする梨璃にそれだけを言うと、今度こそマシンを走らせてその場から去っていった。

 

 

 

 

 

学園へと戻り、これから戻ってくるであろう彼女たちのために紅茶の準備を進める。

手際良く作業を終えた瑠依は一息を吐くと、右側に着けたリボンへゆっくり触れた。

まるで感謝の意を伝えるように、優しくそれを撫でる。

 

「……」

 

ふと、彼は吸い寄せられるように、近くにある姿見の方へと歩いた。

そこに映るのは当然、自分の姿……それは第三者から見ても明らかだろう。

しかし、彼には『見えている』。

 

『……』

 

本来映るべき自分の姿とは違う『少女』の姿。

百合ヶ丘女学院の黒い制服に身を包んだ彼女は優しく微笑む。

鏡にいる少女に瑠依は触れようと手を伸ばす。

しかし、彼女は同じように手を伸ばすだけだ。

手と手を重ね合わせても、そこにある温もりなど感じるはずがない。

不意に、少女の顔が曇る……申し訳なく思っているのかもしれないと思った。

 

「……あなたは」

 

しばらくして、瑠依は口を開く。

いつものように、帰ってくるはずのない答えを求めて、彼は問い掛けた。

 

「あなたは、『誰』なのですか?」

 

鏡像は応えない。

代わりに、寂しそうな微笑みを浮かべた少女はそこから消える。

時間切れか……思考を切り替えた瑠依はティーセットを運び始めた。




取り合えず簡単な設定解説
ガーディオス:
本作の怪人。環境や個体ごとに抱いた悪意によって成長する性質を持ち、自身に宿った負のマギを花として咲かせることで完全体へと変異する。
髑髏の仮面と胸元に咲いた花が共通点で、人間の精神を混濁させる『精神汚染』と個体ごとに得た能力と姿によって苦しめる。
イメージコンセプトは『人間と動物を真似する植物』・『寄生して養分を吸い取る植物』

オリキャラ
三笠 瑠依 / 仮面ライダーフィオーレ ICV現在考え中
私立百合ヶ丘女学院で専属執事となった少年。生徒のことは「お嬢様」と呼び、常に柔和な笑みを崩さない紳士的な人物だが、ぼーっとしていたり突拍子もないことを言い出すなど全体的に浮世離れした雰囲気がある。
鏡に映る『少女』の正体を探している。

ローゼン ICV谷山紀章
仮面ライダーフィオーレのサポートAI。ハスキーボイスだがチンピラみたいな口調が特徴だが、瑠依の良き兄貴分であり悪友でもある。
音楽好きでもあり、最近の好きなバンドは巷で噂の仏教系ユニット『BoZ』


二川二水ちゃんのとっておき情報
御機嫌よう。実は本編に登場していたけど、セリフも名前も出なかった私『二川二水』がちょっとしたプチ知識をお披露目します!

〇実は幼いころ、瑠依さんは重い心臓の病気で病院にずっと入院していたみたいです!本当なら亡くなっていてもおかしくなかったみたいで……今は手術で完治しているようで安心しました!
〇瑠依さんの着けているピンクの大きなリボンは大切な物なんです。詳しくは教えてくれませんでした……(汗)


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仮面ライダーフィオーレ 毒花の竜ヴェノムレイダー

 最近執筆を休んでいたので短いですがリハビリ感覚で投稿。
 登場キャラは当然の如くオリキャラですが、原作キャラと一方的に繋がっているキャラとなります。


暗く深い、小さな世界に『彼』はまだ眠っていた。

大義を掲げた人間たちの都合によって、倫理の外れた知的好奇心によって、ただ世界の災厄と戦うためだけに生み出された。

それを知らないまま、彼はただ眠り続ける。

正確に言えば、彼はまだ『生まれていない』のだ。

白い繭に包まれ、存在しない母親の温もりを知らぬままその時が来るまで……ただずっと待っている。

そうして、その時がやって来た。

微睡みから意識が徐々に覚醒していく。音を立てて皹が入っていく繭とリンクするかのように、目覚めの時が近づいてくる。

やがて、繭は完全に破られた。

彼の姿は、本当に普通の少年だった。浅紫のショートヘアーに、まだあどけない幼子のような柔らかい顔立ち。

生まれたままの一糸纏わぬ姿の少年は、ゆっくりと目を開いた。赤みの強い桃色の瞳はまだ焦点が定まっておらず、ぼんやりとした表情をしている。

 

『目覚めたかい?』

 

そんな彼に、異形が声を掛けた。

ゆっくりと顔を向けるも、意識のはっきりとしていない少年には異形がどんな姿をしているのかは分からない。

だが、優しい声色の彼は自分にとって友好的な存在であることだけは本能的に理解出来た。

 

『おはよう、そして初めましてだね。「アイボリー」』

「あい、ぼりー……?」

『君の名前だ。外国の言葉で「白」を意味する、君だけの名前……君という存在を証明する名前だよ、アイボリー』

「アイボリー。ボクの名前……」

 

そう何度も復唱する。

彼は今、本当の意味でこの世界に生まれた。

身体を与えられ、祝福を与えられ、名前を与えられた。

そうして。

 

『アイボリー。君の力を貸してくれないか』

 

戦う理由を怪人……怪人ガーディオスから与えられた。

 

 

 

 

 

大きめのバッグを両手で抱えながら、素体ガーディオスは走っていた。

呼吸を荒くし、必死な様子でアジトにしていた廃工場へと逃げ込み、辺りを必死に見る。

人知を超えた脚力は普通の人間では到底追い付かず、難なく追跡を振り切ることが出来るだろう。

では、何故彼は必死になって走っているのか。

 

「見つ、けた」

『ひっ!?』

 

その追跡者が、自分と同じガーディオスから差し向けられた刺客だったからだ。

灰色のストールを首に巻いたコート姿の少年は鋭い視線を向けたまま近づいてくる。

本来なら子どもに怯えるなど情けない話だが、ガーディオスは知っている。この少年が、多くの同胞を葬ってきたことを……。

 

『う、うるせぇっ!何が悪いんだよっ、ちょっと暴れただけじゃねぇかっ!!』

 

バッグを投げ捨て、そこから顔を覗かせたのは札束。このガーディオスは金銭を奪うことで成長を遂げようと暴れていたのだ。

しかし、完全体に進化してもなお素行の悪さは変わらず、挙句の果てには銀行強盗を何度も起こして騒ぎを大きくしていた。

それが、幹部の目に留まった。

 

「君は、成長しない。だから、一度壊して、種に戻ってもらう。それが、みんなのお願い」

『う、うるせぇっ!うるせぇうるせえええええええええええええっ!!』

 

目の前の理不尽に怒りを露にした素体ガーディオスは胸元から花を咲かせると、その姿を完全体へと成長させる。

獣を思わせる黒い身体と至るところから無数に生えた牙……『ハイエナ・ガーディオス』は雄叫びをあげながら、鋭く光った鉤爪を構える。

それを少年……アイボリーは表情を変えることなく、懐から一丁の拳銃を取り出した。

リボルバーマグナムを思わせるアメジストカラーの銃身が特徴的な『トランスギアレイダー』の弾倉部分をずらし、スロットを露出させる。

そして、逆の手で持っていたカードキー型アイテム『マギライドプレート』を起動させた。

 

【TORIKABUTO DRAKE!】

【UNLOCK ABILITY……POISON!】

 

上半分にはガラス玉のような瞳を持つ翼のない邪竜、下半分には紫色の液体を垂らすトリカブトか描かれたプレートを装填した瞬間、エレキギターを思わせる待機音声が廃工場内に響き渡る。

耐え切れなくなったハイエナが地面を蹴って爪を振り下ろそうとした瞬間だった。

 

満怪(まんかい)

【OPERATION UP】

 

短く紡がれた言葉と共に、トリガーが弾かれた。

銃口から現れたトリカブトを頭上に咲かせた竜がハイエナを弾き飛ばし、周囲の物体を溶かしながらアイボリーの元まで迫る。

やがて一人と一体の身体が重なった瞬間、変化が始まった。

 

【LET'S GO NOT RIDER……YES VENOM RAIDER!】

 

低く掠れた音声が鳴り、トリカブトの竜はスーツや装甲となってアイボリーの身体へと同化する。

白いスーツの上には紫色のプロテクターとコートが装着されるように出現し、頭部にはトリカブトの花弁を思わせるバイザーが下ろされている。

そして口元には、緑色の蔓を咥えた竜の如き鋭い牙があった。

 

『毒花の竜「ヴェノムレイダー」……!』

『っ。な、嘗めるなああああああああああっっ!!』

 

起き上がったハイエナは再び身軽な身体を活かして接近戦に持ち込もうとするが、ヴェノムレイダーはトランスギアレイダーの銃口からマギを圧縮した銃弾を放つ。

その精度はかなり高く、ハイエナが攻撃を避けようと動いたタイミングを狙っての射撃だ。防ぐことすら出来ずに命中したガーディオスは身体から煙を上げながらも、恐怖で心を折らないよう立ち上がる。

そして、ヴェノムレイダーの次の攻撃が始まった。

 

『……』

【IKKAITEN TORIKABUTO!】

『っ!?』

 

装填してあるマギライドギアごと弾倉部分を回してトリガーを弾くと同時に、右脚にアメジストカラーのエネルギーが収束される。

本能による危機感を抱いたのか、ハイエナが距離を取ろうとした瞬間だ。

 

『遅い』

『ぎぎゃあああああああっ!!?』

 

一瞬で距離を詰めたヴェノムレイダーのハイキックが鳩尾に叩き込まれた。

悲鳴と共に吹き飛び、ドラム缶などを巻き込みながら地面を転がるハイエナだが、変化が起こる。

 

『がっ、あっ!何だ、身体が……!?』

 

思うように動かくなった自分の身体に動揺するも、すぐに異変の正体が判明する。

先ほど蹴られた個所が毒々しい紫色によって変色していたのだ。

致死性の高いものではないらしいが、麻痺毒の一種なのか完全に動きが阻害されてしまっている。

こうなったらハイエナには何も出来ない。ただ、目の前の毒竜に食われるだけの獲物に過ぎない。

 

『この野郎がああああああああああああっっ!!!』

 

それでもガーディオスは諦めない。

生への執念を燃やしながら、身体中に生やした牙を凄まじい勢いで射出する。

倒すことは出来なくとも、意識さえ反らせればいくらでも逃げ通せる……そんな思惑があっての手段。

その攻撃にヴェノムレイダーは驚くことなく、スロットを二回転させる。

 

【NIKAITEN DRAKE!】

 

再びトリガーを弾いて能力を発動させると、竜の息吹を思わせる猛毒の蒸気が弾丸となった無数の牙を溶かし腐食させた。

牙は一つ残らず消滅し、最後に残ったのは攻撃手段と逃走手段を完全に失ってしまったハイエナのみ。

唖然とするガーディオスに視線を向けたまま、スロットを今度は三回転。

 

【SANKAITEN EXECUTION!!】

 

アップテンポの音楽が鳴り響き、トランスギアレイダーの銃口に膨大なエネルギーが充填されていく。

空気が震えるほどの威圧感にハイエナが動かない身体を必死に動かそうとするも、既に手遅れだった。

 

『……はっ!』

 

放たれた一発の銃弾はトリカブトを寄生させた竜の頭部を象り、大きく口を開きながら対象へと凄まじい勢いで迫る。

やがて、必殺の銃弾が命中した瞬間。

 

『ぐぎゃあああああああああああっ!!?』

 

トリカブトの毒を纏わせたドラゴンの牙が嚙み砕き、ハイエナ・ガーディオスを爆発せしめた。

爆発の余波で揺らめく炎の中を、ヴェノムレイダーはゆっくりと歩く。

変異を解除し、ガーディオスがいた場所から黒い歯車を拾った。

 

「……お仕事、完了」

 

これがヴェノムレイダー……アイボリーの日常なのだ。

生命のルールから外れた形で生まれた彼は、人間の味方をする理由などない。ガーディオスに拾われたからこそ彼らの味方をし、人間がいる世界に疑問を抱く。

そして彼が戦いに身を置いた一番の理由。

 

「ボク、絶対に蘇らせるから。絶対に助けるから」

 

それは『家族』を復活させること。

顔も知らない、思い出もない、それでも自分には同じ遺伝子で製造された『家族』がいたのだ。

だから会いたい、話をしたい、一緒に遊びたい。

細やかな願いを叶えるために彼は戦う。

 

「結梨お姉ちゃん」

 

当たり前の願い、当たり前の感情、純粋であるが故に今は亡き姉を求める。

猛毒の花が宿す欲望の果ては、希望か絶望か。




 疑似ライダーって考えるのは楽しいですけど、武器単体で変身する仮面ライダーもいるので結構差別化するのが難しいですよね。
 てなわけで今回の疑似ライダーはトリカブトとドレイク(翼のない竜)をモチーフにした戦士『ヴェノムレイダー』です。
 変身デバイスは銃型で弾倉部分を回転させる回数によって能力や必殺技が発動します。キョウリュウジャーのガブリボルバーみたいに回す感じです。

 変異者であるアイボリーは所謂人造人間。本来なら家族という概念すらない彼ですが、実は製造過程で同じ遺伝子と血液を使われている子がいたため互いに面識はないけど血縁者という不思議な姉弟となっています。名前をググれば誰のことかはすぐに分かります。
 アイボリーの名前は劇中でも触れていましたが「白」を意味する言葉です。純粋な目的で作られ、純粋な理由で戦う。見た目も精神年齢も幼い少年です。


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仮面ライダーアズール三次創作 仮面ライダーウィリディス

 この度、正気山脈様の作品『仮面ライダーアズール』の三次創作を書きました。本編とは一味違う、仮面ライダーの活躍をご堪能ください。

『仮面ライダーアズール』へのリンク
→ https://syosetu.org/novel/168057/


無機質な機械の音が、規則的に鳴り響く。

白い清潔感のある部屋で、そこにあるベッドには一人の老人が眠っている。

いや、眠らされていると表現した方が正しいのかもしれない。

この老人は人々のために研究を続け、家族のためにと働いていた。

だが、ある時を境に彼は意識を失った。

 

「……爺ちゃん」

 

少年は、眠ったままの老人の手を握る。

暖かい。まだ、生きている。まだ助かる望みがあるのだ。

 

「……っ。来たか」

 

ふと、バイブの鳴った黒いスマートフォンのような機械を取り出し画面を確認する。

瞬間、少年は視線を鋭くした。

 

「行くか」

 

ポケットにしまうと、彼は病室を後にする。

組織は、世界を救うだろう。祖父のいた組織は、脅威から人々を護ってくれる。

なら自分は……。

 

「手の届く範囲で、やれるだけのことをするだけだ」

 

決意を、そう口にした。

 

 

 

 

 

暗い夜、ビルや街頭の灯りだけが照らす町並みを、一人の作業員が歩いていた。

作業帽子を深く被り、軍手を身に着けた両手で段ボールを載せてある台車を動かす。

 

「……」

 

やがて、とある場所で彼は動きを止めた。

そこは古びたビル……誰も使われていない廃棄されたビルだ。

予め用意していた移動手段を使い、目的地である部屋へと足を踏み入れる。

その時だった。

 

「そこまでだぜ」

「っ!?」

 

突如として声が聞こえた。

慌てて振り向けば、そこにいたのは黒いコートの少年。

まだ声変わりもしていないであろう声色だが、相手を委縮させるには充分なほどの威圧感。

そして、闇夜に隠れるような黒いスーツとコート、しかし顔までは判断することは出来ない。

それが作業員……否、作業員へと扮していた男性が緊張していたからか、それとも少年が放つ『何か』によってなのかは分からなかった。

 

「誰だ、お前は?」

「『ロビン』……一先ずはそう呼んでくれ。最も、二度と会うこともないだろうけどな」

 

軽い様子で名乗る彼に男性は警戒を取る。

自分は相手に気づかれないよう動いていたのにも関わらず、目の前の少年は待ち伏せしていた。

しかし、目的までは流石に……。

 

「あんたの調べは付いている、ここで何をしようとしたのかもな」

「……っ」

 

男性は少年を睨みつけるも、気にすることなく彼は視線を段ボールへと向ける。

動こうと思えば動ける、しかし少年の異質さが下手に動かしてはいけないと男性の本能が言っているのだ。

 

「それ……『ガンブライザー』が詰まっているんだろ?しかも普通の奴じゃない」

 

視線を鋭くした少年が、男性を睨み返す。

 

「起動した瞬間に人体を破壊する『時限爆弾』のおまけ付き。見た目の割に中々えげつないことをするじゃねぇか……残党さんよ」

 

そう、男性が運んでいたのは自らが所属していた組織の兵器……しかし、彼は『ある目的』のために改悪を施し、凶器となったそれを大量に運んでいたのだ。

あと一歩のところで……握り拳を固める男性だったが、すぐさま顔を上げた。

 

「……そこまで分かっているなら、致し方ない」

 

その瞬間、彼はベルト型の黒い機械……改悪されていない自分用のガンブライザーを腰に当てて装着していた。

伸びたベルトが腹部を固定すると、黒いプレートを取り出す。

 

Cytube Dream(サイチューブ・ドリーム)……アント!】

 

そのプレート……『マテリアプレート』のスイッチを起動し、奇妙な音声を鳴らす。

そして、ガンブライザーのバックル部分へと装填した。

 

【ハック・ゼム・オール!ハック・ゼム・オール!】

「我が感情に宿りし願い……大欲のコード!今ここに体現せよ!!」

 

叫びと共に、装填されたマテリアプレートを更に押し込む。

瞬間、黒いモザイクのようなエネルギーが男性の全身を包み込んで行く。

 

【Goddamn! マテリアライド!アント・デジブレイン!パラサイトコード、ダウンロード!】

『うおおおおおおおおおっ!!』

 

雄叫びをあげた男性は、異形の肉体へと変異していた。

丸みのある黒い装甲、と特徴的な鋭い口の形、頭部に生やした触覚は黒蟻を彷彿とさせおり、全体的なシルエットは何処か配達員のような異形。

異形の名は『デジブレイン』

電脳世界……サイバー・ラインに潜む情報生命体であり、人間の感情を餌とする怪人の一体。

この個体は、マテリアプレート内に封入されたデジブレインを人間の感情エネルギーごと取り込み、肉体へと寄生するタイプだ。

 

『あのお方の理想は、私が作る!それが、それこそが私の信じる手段っ。私だけが生き残ってしまった唯一の道なんだっ!』

「そうやって迷走するあんたを見て、あのお方とやらはどう思っているかな?」

 

暴走と迷走する『アント・デジブレイン』へと変異した彼に、何処か呆れたような溜め息と共にロビンは懐から『ある物』を取り出した。

それは、スマートフォンに酷似した黒いデバイス……そのディスプレイに映るベルトのアイコンを手袋に覆われた人差し指でタップする。

 

【ドライバーコール!】

 

音声と共に、ロビンの腹部に装飾のついた銀色の機械『アプリドライバー』が装着される。

中央でマゼンタカラーのラインとシアンカラーのラインが交叉しており、右側には横向きに差し込むようなスロットが備わっている。

続けて、彼は一枚の赤いプレートを取り出した。

 

【シン怪盗ピカレスク!】

 

コールされた音声は、この世界に実在するアプリゲームのタイトル。

コンシューマーゲームのスピンオフとして配信されているこの作品は、異能を得た人間たちが現代社会を舞台に罪なき者たちを食い物にする悪党の心を頂戴する……というストーリーだ。

躊躇いなく、少年はバックルのスロットにマテリアプレートを装填。

 

【ユー・ガット・メイル!ユー・ガット・メイル!】

 

繰り返される電子音声、彼の周囲には緑のロングコートと山羊のような黒い角を持つフルフェイスメットを被ったスタイリッシュなデザインのビジョンが現れる。

銀に輝く短剣とリボルバーマグナムを構えるデジブレインとは異なる情報生命体『テクネイバー』を背後に、ロビンはマテリアフォンをドライバーへとかざした。

 

「変身」

【Alright! マテリアライド!】

 

短い呟きと共に、新たな電子音声が響く。

すると彼の身体に光の膜が全身を覆い、闇を負わせる漆黒のスーツへなるのと同時に、ロビンフッドを彷彿させる『シーフ・テクネイバー』が分離する。

やがて、緑色のパーツが装着されることで変身が完了した。

 

【シン怪盗・アプリ!深緑の叛逆者、インストール!】

 

現れたのは、悪魔を思わせる緑色の装甲を纏った戦士。

頭部の横から左右に伸びる双角に、緑のコートを変身の余波で靡かせる。

紫色に光る丸い複眼が、目の前の標的を捉えた。

 

『仮面ライダー……まさかホメオスタシスかっ!?』

「違うさ。俺は(ウィリディス)……欲望を盗み取る者『仮面ライダーウィリディス』だっ!」

 

自らをそう名乗ったウィリディスは地面を蹴るとアントへと肉薄。

動揺して隙を見せているデジブレインの鳩尾に蹴りを入れると、そのまま掴みかかる。

 

「ここじゃ危ないな、表出ろっ!」

『ぐおおおおおおおおっっ!!?』

 

そのまま窓へ向けて蹴り飛ばすと、ガラスの砕ける音と共にアントが空へと投げ出された。

地面を転がるデジブレインとは対照的に、跳躍したウィリディスは華麗に地面へと着地する。

 

【ウィリディスダガー!】

 

音声と共に彼の右手に現れたのは銀色に輝くメカニカルな短剣。

それを握り締めると、再び接近しすれ違いざまに斬撃を浴びせる。

 

『ぐっ、このっ』

「遅いっ!」

 

カウンターを受けるよりも速く、ダガーによる攻撃が炸裂する。

アントは黒蟻のデータを内包されており、身の丈以上の物体を抱え上げるほどのパワーを秘めている。

要は、当たらなければ問題はないのだが……。

 

『嘗めるなっ!』

【フィニッシュコード!Goddamn! アント・マテリアルクラック!】

 

当然、相手もそれを分かっている。

ガンブライザーにセットされたマテリアプレートを再度押し込み、必殺技の音声を鳴らす。

瞬間、アントの両手には毒々しい緑色のエネルギーが零れ出てくる。

垂れ落ちる蟻酸のデータを宿したエネルギーを、目の前のライダーに向けて撒き散らした。

 

「うわっ!」

 

プロテクターを溶かすほどの強酸に思わず仰け反って回避する。

その隙を、逃さなかった。

 

『捕まえたぞっ!』

「やべっ!?」

 

細腕から想像も出来ないほどの力に捕まってしまった。

どうにかして振り解こうともがくウィリディスだが、アントの怪力の前ではどうすることも出来ない。

それどころか、段々と締め上げる力を強めていく。

 

『観念するんだな……私の計画を知った以上、子供だろうが容赦はしないっ』

「か、は……!」

 

やがて、抵抗していたウィリディスの腕が垂れ下がった。

身体も脱力し、全身の力が抜けている。

勝利を確信したアントが、腕を弱める……。

 

「やっと隙を見せたな」

【ウィリディスマグナム!】

 

瞬間、電子音声と強烈なマズルフラッシュ、そして両目へのダメージがアントに襲い掛かった。

頭部から煙を吹き、あまりの痛みに手を離したアントが後退する。

 

『ぐがあああああああっ!?眼、私の眼がああああああっっ』

「げほっ!あー、しんどかった」

 

咳き込みながらも起き上がったウィリディスが左手に握り締めていたのは、ダガーと同じデザインのリボルバーマグナム。

相手が油断した隙を狙って、『ウィリディスマグナム』によるデータの弾丸で撃ち抜いたのだ。

 

「さぁ、行くぜ!今度は俺の番だ!!」

 

叫んだウィリディスが左手のマグナムによる銃撃で牽制しながら、距離を詰めたアントに向かってまずトルネードキックを二発叩き込み、ダガーによる斬撃を繰り出す。

デジブレインとはいえ、人間を素体にしたアントは急所へのダメージがフィードバックされているのだ。両目に残ったダメージが抜けないまま、勢いを載せた回し蹴りで再び地面を転がる羽目になった。

 

『ぐっ、はっ。わ、私は……!』

「これで閉幕だ!」

【フィニッシュコード!】

 

弱り切ったアントに向かって走り出したウィリディスはアプリドライバーに装填されたマテリアプレートを押し込み、必殺技発動のコードを認証する。

そして、右腰のホルダーに収まっていたマテリアフォンを抜き取り、ドライバーへとかざした。

 

【Alright! シン怪盗・マテリアルバースト!】

「ふっ!」

 

両足にエネルギーを込めたウィリディスは勢いのまま跳躍。

自身を見上げることしか出来ないアントへ狙いを定めると両脚を突き出す。

そして、そのまま急降下を始めた。

 

「はああああああああああっ!!」

『がっ!?ぐっ、おおおおおおおおおおおおっっ!!?』

 

強烈なドロップをまともに受けたアント・デジブレインはウィリディスが着地するのと同時に悲鳴をあげて爆散。

やがて、爆心地には倒れた男性が呻きながらも立ち上がろうとしていた。

 

「わ、私は、私はまだ……!」

「誰もあんた恨んじゃいない、少しは頭を冷やすんだな」

 

そういってウィリディスは男性に装填されていたマテリアプレートを奪い、ガンブライザーを破壊する。

その瞬間、男性の身体から光のエネルギーが出ると同時に気を失ってしまった。

 

「この男も外れだったか」

 

悔しそうに、そう零すウィリディス。

祖父を精神失調症にした真犯人。デジブレインを操る組織の存在。

必ず犯人を見つけてやる……!

改めて決意を固めた彼は、段ボールに収まったガンブライザーたちを処理するべく、廃ビルへと戻っていった。




デジブレイン紹介
アント・デジブレイン
とある組織に所属する幹部の部下だった男性がCytube Dream(アント)のマテリアプレートを黒いベルト『ガンブライザー』に装填して変異したデジブレイン。
身の丈以上の怪力を持ち、重機程度ならば軽々と持ち運べる他、蟻酸を凝縮した爆弾を生成することが出来る。
その名の通り黒蟻のデータが内包されているのだが、何故か配達員のデータも取り込まれている。餌を巣に運んでいる姿から連想したのだろうか?


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仮面ライダー■■■■

どうしてこうなったのだろう……。

『この力』を手に入れてから、自分のものと受け入れてしまってからずっと頭から離れない。

戦いなんてしたくない、理想を創ることなんて考えたこともない。まして誰かの命を奪ってまで、誰かの理想を踏み躙ってまで勝ちたくない。

最初はそんなことばかり考えていた。だけど、自分が命の危機に晒された瞬間、当たり前の感情は消える。

まるで元々あった絵を塗り潰すように、異なる絵の具同士を混ぜ合わせるように、自分の中にあった何かが失っていくのを感じた。

 

 

 

 

 

濁った黒い空と、誰も存在しない灰色の建造物。

何処までも無機質な光景が広がる世界の中、張り詰めた攻撃と衝撃音が響く。

 

「……おおおおおおおおおおおっっ!!」

『がぁっ!?ゲボッ!!』

 

緑色のスーツの上に七色の甲冑を纏った戦士が剣を振り下ろす。

視線の先にいる存在に憎悪と嫌悪を宿した一撃を叩き込むと、異形の姿をした『それ』は火花とインクのようなエネルギーを撒き散らしながら大きく仰け反った。

 

『げぇっ!はぁっ、はぁっ……ゴブッ!ぶざげるなっ!素材風情がっ、使い捨での道具如ぎがごのボグによぐもおおおおおおおおっっ!!!』

 

生物を寄せ集めたような造形の怪人は何処か子どもっぽい口調ながらも屈辱と激情の籠った絶叫をあげる。全てを見下し、嘲笑っていたであろう言動に出会ったころの余裕はない。

それが感じたことのなかった痛みと恐怖、最後の最後で自分の思い通りにならなかった憤りが怪人を突き動かしていた。

腹と胴体から濁ったインクを撒き散らしながら、拳を振り下ろそうとする。

当たればただでは済まないだろう。最悪の場合『死』だ。

そう、当たればの話だ。

 

【GOOD IDEA! RAINBOW BASH!!】

 

強力ながらも単純な軌道で放たれた一撃は戦士が身を屈むだけで回避された。

同時に、腰に装備されているバックルを操作し特殊音声を鳴らす。

七色の美しいインクのエネルギーが右脚へと収束する。

そして。

 

「はあああああああああああああっ!」

『ぐっ、ぎっ、ぎぃやあああああああああああああっ!!?』

 

カウンターによる強烈なハイキックが、怪人の身体を打ち砕いた。

蹴り飛ばされた怪人は呼吸すら出来ないほどの衝撃と共に廃墟ビルに叩きつけられる。

そして、全身が濁ったインクへと変わって徐々に溶けていくと潜んでいた『本体』が露わになった。

 

『くそっ、くそっ!また、こんな惨めな姿に……ふざけるなっ!ボクは、ボクは黄金なんだぞっ!?錬金術師どもが作り出した、万能にして完璧の生命体!それが、こんな屑に……!』

 

癇癪を起こしたように叫ぶのは、デフォルメされた錆びた金色の頭蓋骨。まるで小さなぬいぐるみにも見えるそれは声変わりのしていない高い声で何度も叫ぶ。

 

「終わりだ『ドルゴ』。お前のくだらない計画も、お前のくだらない理想も、全て……!!」

『黙れ黙れ黙れ黙れっ!ボクに向かって生意気な口を利くなぁっ!イデア・アルケミカルのために選ばれた素材がこのボクを見下すなあああああああああああっっ!!』

 

それ……黄金錬成によって生み出された生命体であるドルゴは罵声を浴びせる。

その惨めな姿に、戦士の憎悪は既に哀れみへと変わっていた。

 

『イデア・アルケミカル』

 

黄金錬成を参考に編み出された理想の錬金術にして、ドルゴが考案した最も簡単で最も残酷な儀式。

錬金術とは人の心から生成されるインク型エネルギー『カラー』使って物質を錬成する技術のことだ。

108人の錬金術師『仮面ライダー』が戦い、最後まで勝ち残った者に理想を錬成するための錬金術が与えられる……というのが彼らが戦う表向きの理由だった。

しかし、ドルゴは最初から彼らの理想を叶えるつもりはなかった。彼の理想である『自分の黄金の輝きを取り戻す』ためだけに多くの人間が犠牲になり、命を弄ばれたのだ。

理想の錬金術を取り込んだドルゴは怪人の姿となり、戦士と壮絶な戦いを繰り広げた。

だが、それももう終わる。古代より生み出された不完全な黄金はこの殺し合いを持って終わる。

理想の錬金術を行使する権利は、既に戦士の手へと渡ったのだ。

 

『はっ、ははっ。良いよ、好きに叶えたら?だけど、何を願うっ。これまでの使われた素材どもを戻す?それともボクを消す?はたまた蹂躙されたこの世界を元に戻す?ざーんねーん♪』

 

嘲るように、自棄になったドルゴは邪悪な笑いを漏らしながら言葉を続ける。

「だけど」と、目の前の戦士を絶望に叩き落すように叫ぶ。

 

『理想の錬金術は一回限りのものだっ!お前がどれを願ったところで理想が叶うのはたったの一つだけだっ!あっははははははっ!ざまーみろっ、ざまーみろっ!!素材どもへの勝利なんて、最初から存在すらしていないんだよブァァァアアアアアアアアアカッ!!』

 

ドルゴは古来の錬金術師たちの手で生み出された完璧なる黄金。しかし、永劫にも近い歴史は人格を腐らせ、輝きを鈍らせた。

他人の蹴落とし合いでしか喜びを得られず、自分が害されたことでしか怒りを抱けない。完璧に錬成されたが故に欠点を持てず、成長すら出来ない。

そして、人の持つ可能性と善性を学ぶことも出来ない。

 

「確かに、それだけじゃ足りないな。『それ』だけじゃな」

 

戦士がバックルに装填していたカラースプレー型のユニットを外し、理想の錬金術が封入された石を混ぜ合わせる。

 

「108人の生命で理想を錬成するなら、それと同等のものを代わりに使えば良いんだろ」

『はぁっ?』

 

荒唐無稽な言い分に思わず吹き出したドルゴが耳障りな言葉を口にしようとした時だ。

 

「一つ目。イデア・アルケミカルによって引き起こされた悲劇と惨劇、その全てをなかったことにするっ!」

 

宣言と共にドルゴの身体が光ったかと錬成陣が展開。

封じ込められていた膨大なインクが放出された。

 

『がっ、あっ、身体がっ!ああああああああああああああっっ!!!』

 

瞬間、モノクロの世界が色彩を取り戻した。

黒い空は元の青く美しい白い雲が浮かぶ空へと戻り、廃墟の街は元の煌びやかな景色へと塗り替わる。

構成物質を奪われたドルゴは荒い呼吸を吐きながらもほくそ笑む。

理想が叶った。ならばもう目の前の戦士は何も出来ない。

悪意を言葉に乗せて放とうとしたが……。

 

「二つ目!理想の錬金術の素材となった仮面ライダーたち、その中の善良な者と理想のために殉じた者たち全てを元に戻せっ!!」

『はっ!?なっ、ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?』

 

間髪入れずに放たれた宣言と共に再び錬成陣が展開。

再びドルゴからインクが強引に吐き出されると優しく淡い色となってあらゆる方向へと飛んでいく。

その光景に安堵した息を吐く戦士とは裏腹に、黒く錆びていく黄金が「何故だっ」と思考する。

 

(あり得ないありえないアリエナイッ!理想の錬金術は一つしか使えないっ、こいつは何をしたっ?どうして錬金術が起動したっ!?)

 

混乱した頭で戦士の方を睨む。

見れば、戦士のバックルにあるプレート型アイテム『アルケミーインク』の色が全て喪失している。

そして気づいた。

戦士は108人の魂と同じ価値のある物質……自分が今まで浸かっていたアイテムとユニットを対価に理想の錬金術を行使したのだ。

勝ち残った仮面ライダーの使用するインクなら、確かに理想の錬金術が使えるだろう。

 

『ふ、ふざけるなっ!ボクのっ、ボクの考えた錬金術が、こんなっ、こんなゴミカス風情の屁理屈で…!』

「仮面ライダーアルカル、最後の錬成だ」

 

短く、ドルゴの怨嗟をかき消すように戦士否、虹色の錬金術師『仮面ライダーアルカル』が告げる。

最後に使う対価は、勝利者となり生き残ってしまった『自分自身の存在』。

 

「黄金錬成のドルゴ。人間の善性を嘲笑い、理想を利用し尽くしたお前は存在するに値しない……お前が錬成されたという事実そのものを、この世界と歴史から抹消するっ!!」

『なっ!?』

 

聞き捨てならない理想。

しかし無情にもドルゴの意思とは無関係に錬成陣が展開される。

先ほど以上の眩い光が解き放たれ、凄まじいほどのインクが流れ落ちた。

それは全ての色と混ざり合い、やがて何もない黒へと変わってドルゴへと纏わりつく。

 

『ひっ、ああああああああああっ!やめ、やめてくれっ、アルカル!その理想を止めてくれっ!これが錬成されたらお前も消えるんだぞっ!?意味が分かっているのかっ!やめろやめろやめろおおおおおおっ!?』

 

塗り潰される。

黄金も悪意も存在も、全てが黒く黒く染まっていく。そしてアルカルの身体は反対に白く潰される。

どちらもこの世界から消える……恐怖するドルゴは必死に懇願するも錬成は止まらない。

 

『分かった!もうこんなことはしないっ、これからは君に仕える、雑用でもサンドバックでも奴隷でも何にでもなるっ!だからやめてくれっ!消えたくない消えたくない消えたくない!』

 

命乞いしても止まらない。

ドルゴは既にチャンスを逃した。変わろうとする時間も人間を知ろうとする時間も、充分にあった。

それを捨てたのは、ドルゴ自身だ。

不完全な黄金であろうとした彼が選択した結果に過ぎない。

 

『何でっ、何でだよっ!ボクは完璧で万能の黄金なんだっ、それが、それがこんな素材如きに……人間なんかにっ!何でえええええええええええええっっ!!!』

 

そして、ドルゴの身体は黒へと呑み込まれた。

恐怖と自己愛に満ちた絶叫は、この世界から完全に消し去った。

元通りの世界に染まる光景をアルカルはただじっと見つめている。

気づけば自分の両脚は既に白く塗られている……この世界から完全に消えるのも時間の問題だろう。

怖くない、と言えば噓になる。もう一度『彼ら』に会いたいと今でも思っている。

でも、もう良い。

 

「ああ。世界はやっぱり、こんなにも……」

 

彼が最後に何を言いたかったのか。それはもう誰にも分からない。

普通の日常を愛した青年は、普通の理想を叶えて消えた。

こうして現代の錬金術師たちはいなくなり、こうして血塗られた錬成も葬られた。

 

 

 

 

 

可愛らしい服が汚れるのも気にせず、一人の少女が走っていた。

その様子はただごとではなく、明らかに遅刻などの可愛らしい理由ではない。

必死に足を動かさなければ背後から迫る『何か』に追い詰められてしまうからだ。

しかし。

 

「きゃっ!」

 

無理をして走ったせいで転んでしまった。

カバンに入っていた絵の具セットが散らばってしまい、反射的にそれを拾おうとする。

しかし。

 

『ひゃはっ!随分と余裕だねぇお嬢ちゃん』

「ひっ……!」

 

悲鳴を漏らす少女の眼前には、異形がいた。

全身が赤で統一された身体に猟犬を思わせるような装飾を上半身に纏った怪人で、下半身と左腕には甲殻類や蟹を思わせる鋏を生やした悍ましい存在だ。

それはまるであろうことか意思を持ち、人の言葉を口にするのだ。

自らに怯える少女を笑い、嗜虐的な笑みを浮かべながら異形は鋏を開く。

 

『安心しな、俺は慈悲深いんだ……その華奢な右腕を斬り落としたら解放してやるよぉっ!!』

 

そう怪人が左腕を突き出そうとした瞬間、その身体は吹き飛ばされていた。

「がへっ」と情けない悲鳴をあげて地面を転がる怪人、そして怪人の近くには絵の具パレットを思わせるような装飾が施されたバイクがある。

 

「下がってな」

「えっ、あの……」

 

バイクから降りたその青年は散らばった道具を全て集めてから少女に渡すと、逃げるように促す。

一方の彼女は混乱しながらも、彼に対して何処か既視感を覚えていた。

何処かであったような、懐かしさを感じるような。

「良いから」と優しく背中を押されるまま、少し離れた場所に隠れた少女はその様子を見る。

 

『ガルルル……この俺「カッティング」様の邪魔をして、ただで済むと思うなよっ!』

「そりゃあ、こっちの台詞だ犬蟹擬き」

 

唸る怪人に軽口を叩いた青年は焦ることなく、中央に四角いディスプレイが存在するバックルを腰に装着する。

そして、取り出した赤いプレートを起動してスロットに装填。

軽快な待機音声が鳴り響く中、スタンプ型起動キー『トランスタンプ』を掲げて叫ぶ。

 

「変身!」

【錬成開始!】

 

ディスプレイに押印すると同時に、ディスプレイから赤いインクが解放されると同時に青年の身体を包み込む。

やがて、機械の赤い鎧とスーツが構成されたことで変身が完了した。

 

【MY IDEA! BOOST RED! KAMEN RIDER ALCAL!!】

「さて、世界を塗り替えようか!」

 

緑色の複眼を輝かせながら、仮面ライダーアルカルが地面を蹴った。

 

 

 

 

 

最終回『虹色の錬金術師』→第一話『とある青年の錬金術(アルケミカル)』

 

古い終わり、新たな始まり。

このライダー、錬金術師で、ライダーバトルサバイバー!




今回はアイテムやモチーフよりも、自分がやってみたいと思ったストーリーとなっています。
ライダーバトルを軸とした仮面ライダーは数多くありますが、ライダーバトル後の世界で戦う仮面ライダーというのはないよなと思い、このストーリーを考えました。
ライダーバトルを生き残り、自分の存在が消えた世界で未知の怪人と戦う。そんな物語となっております。イメージとしては平成一期の陰鬱なライダーバトルで勝ち進んだ主人公が、平成二期の作風で怪人と戦うみたいな……分かり辛くて申し訳ないです(汗)

仮面ライダーアルカルの由来は「アルケミスト」と「カラー」を足したものになっています。錬金術をイラスト作成として考えました。モチーフは決まっていません。

新年一発目は短編でしたが、本編の方も書いておりますのでご安心ください。
ではでは。ノシ


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仮面ライダーバーサルド

お待たせしました。以前語っていたアルカナモチーフのオリジナルライダーとなります。
今回はリバイスのエピソード0みたいな、簡単なプチストーリーとなっております。
それでは、どうぞ!


この世界には、一風変わった研究が存在した。

それは何とも奇妙なもので『絵具を使わずに絵を描けるようにする』というものだ。

これは人間の精神力をインクのエネルギー状に変換し、技術や知識などなくても『自分の想像した絵を誰もが描けるように、更にそこから精神の奥深くにある才能の開花にまで発展させる』と極めて珍妙かつ画期的な研究……妄想と呼んでも相違がない。

これを完成させるべく多くの研究者や画家、果てにはオカルトに造詣の深い海外の研究家を集めて実験が行われた。

しかし、そんな机上の空論は実現されることなく、目立った成果もないまま終わったことで人々から忘れ去られ、色褪せていくこととなった。

 

あくまでも表向きは……。

 

 

 

 

 

この街には、こんな噂がある。

ある人は「優秀な何でも屋がある」と言い、またある人は「グータラな駄目人間がこの事務所に巣くっている」と。

一見すると、矛盾しているがこの噂はどれも間違いではない。

どれも事実だ。

 

「あー、また爆死した。今日はいけると思ったんだけどなー」

 

事務所『何でも屋 いろいろ』の主であるその青年『色ケ谷零彩(しきがや れいあ)』は課金の果ての敗北に溜め息を吐いた。

端正な顔立ちにやや高めの声から実年齢よりも若く見える彼はスマホのゲームを終了すると、昨日買った焼きそばパンを食べながらソファに寝っ転がる。

完全なる駄目人間、ちなみに起きたのはついさっき……朝の十時頃であり仕事がない時は常にこんな生活を繰り返している。

当然、そんな彼に物申す人間はいるわけで。

 

「零彩……またそんな生活をしているのか」

 

呆れたような声の主は彼の友人『白峰義正(しらみね よしまさ)』だ。

彼とは幼少期からの幼馴染みであり、今でもこうして彼の世話を焼いている。ちなみに趣味は料理と家事。

 

「よっし~お腹が空いたよー。温かいご飯をプリーズ」

「俺は家政婦じゃない。それぐらい自分でやりなさい……リクエストは?」

「明太子入りの卵焼き」

 

口では説教臭く言うものの、結局料理や掃除をしてしまうため、零彩が堕落していく原因にもなっているのだが本人たちに自覚はない。

お手製エコバッグから卵を取り出し、お米を炊きながら慣れた作業で調理を進めていく。

 

「後、お小遣いの前借りも……」

「働いて貯金しろ社会のゴミ」

 

流石に金銭関係はしっかりしているのだった。

 

 

 

 

薄暗い、その裏路地で一人の少年がゴミ箱を蹴飛ばす。

ガラの悪い、金髪に染めた彼は不良に当てはまる存在でお世辞にも善良な市民ではない。

多くの問題行動を起こし、鬱憤が溜まった彼はそれを発散するように人通りの少ないこの場所で憂さ晴らしをしていたのだ。

彼は適当に暴れ、後から報いを受ける。それが当たり前の運命……。

しかし、この日は少年にとって最も幸福で最悪な日になった。

 

『あらあら。物に当たるのは良くないことよ?』

「あぁっ!?」

 

突如、自分に向けられた女性の声に少年が振り向くも、先ほどの威勢は完全に削がれる。

何故なら目の前に、常識では考えられない異形がいたのだから。

 

『ふふっ』

 

左腕にスプレー缶を模したマゼンタとシアン、イエローのインクをぶち撒けた配色のブレスレットを装着したシックな黒いドレスにシルバーグレーの身体を持った細身ながらも美しい色合いをしている。

胸元が女性らしく大きく膨らんでいるにも関わらず、貴婦人や『女帝』を思わせる品のある立ち姿が印象に残る。

しかし両腰に差したリボルバーやショットガン、背中に携えてある不釣り合いな西洋風の大剣は見た者全てを萎縮させ、物騒で何処か強権的だ。

ティアラを身に着けた顔にはローマ数字の「Ⅲ」を象ったバイザーを装着しており、その下にある怪人の瞳が少年を興味深そうに見下ろしていた。

 

「ひっ!?あっ、なっ」

『その感情を否定するつもりはないわ。だからこそ、丁度良いの』

 

恐怖し、壁際に追い詰められた彼の値踏みを終えた異形……『女帝』と仮称しよう。

彼女は懐から取り出した小さな道具を、彼に差し出す。

それはアンティーク調の奇妙な円柱状で、文房具マニアが見ればインクポットみたいだと表現するだろう。

インクのような黒い液体の詰まったそれにはラベルイラストがあり、黒い爆弾が描かれている。

 

『怖がる必要はないわ。ただ、あなたはスイッチを押すだけ』

 

優しく、慈愛に満ちた柔らかい『女帝』の声に言われるまま、少年は無意識にインクポットにある蓋を模したスイッチを押し込んだ。

 

【DRAW……BOMBER!!】

 

不気味な音声と共にインクポットから黒いインクが放出し、少年の身体を包み込んでいくと『爆弾』のインクを題材に塗り替えられていく。

やがて、その場に立っていたのは人間ではなかった。

キャンバスを思わせる紙のような灰色の異形に、ダイナマイトの装甲や爆弾を思わせる黒い頭部が特徴だ。

胸元に埋め込まれた銅の額縁にはインクポットに描かれたのと同じイラストが刻まれており、絵画の擬人化を思わせる。

 

『すげぇっ!力が漲る、力が漲るっ!こいつで俺は、おおおおおおおっ!!』

『そうよ。感情のままに描きなさい……「ボマー・グラフィティ」』

 

怪人の身体へと塗り変えた少年に慈愛の視線を向けたまま、『女帝』はそう呟いた。

 

 

 

 

「ん~!やっぱ、よっしーのご飯は美味しい!」

「褒めても事務所の掃除は手伝わないぞ。ちなみに今日は少しだけ隠し味を入れてある」

「ふーん」

「……興味がなさそうで何よりだよ畜生っ」

 

能天気な会話をしながら、食事をする二人だが義正は少しだけ視線を鋭くすると『本題』へと切り出す。

 

「『あれ』は届いたのか?」

「……んっ」

 

食事を終え、デスクから一つの箱を取り出す。

そこに入っていたのは奇妙なバックルと小さなアイテムがいくつか入っている。

 

「こいつは俺専用、よっしーのは調整が終わり次第送るってさ」

「ようやく始まるんだ。俺たちの手で奴らを倒し、あいつを救う……」

 

彼らには『約束』がある。決して破ってはならない、硬い決意と共に決めた想いがある。

それが例え、自分たちの命がどうなろうとも……絶対に助けると誓ったのだ。

瞬間、アラームが響き渡る。それは目覚まし時計などではなく、杯を思わせるような小さな機械であり、彼らの「敵」が出現したことを意味する。

 

「奴らが動いた」

「頼む」

 

これ以上のやり取りは、必要なかった。

 

 

 

 

 

爆発音が響き、建物が壊れて焦げる。

その惨状に恐れ逃げる人々を嘲笑うように、まるで狩りを楽しむようにボマー・グラフィティは余裕の態度でゆっくり歩いていた。

 

『ははっ!最高だ、のほほんと暮らしている連中が逃げ惑う姿が楽しくてしょうがねぇ!』

 

威力を調整出来るダイナマイトを生成し、それを適当に放り投げるだけで多くの悲劇が作られる。

ふと、彼の目に一人の小さな少女が目に入った。

恐らく親とはぐれてしまったのだろう、泣き叫ぶ声に気分を害したボマーは目障りだと言わんばかりに爆弾を作ろうとした時だ。

 

『……あっ?』

 

バイクのエンジン音だ。

あまりにも場違いなその音に最初はバイクで逃げ出したのかと思ったが、それはすぐに違うと悟る。

それは段々と大きくなり、騒ぎの元であるこちらへと近づいているのだ。

やがて、その音を噴かす緑と黒で塗り分けられたマシンが姿を現す。

それは更にスピードを上げると、少女を無惨な目に合わせようとした醜悪な落書きに直撃した。

 

『ぐべあああああああああっ!!?』

 

内臓が吹き飛ばんばかりの一撃に、吹き飛んだボマーは壁に叩きつけられて倒れる。

ヘルメットを外してバイクから降りた青年は出現させた白い鳩を少女の前に出現させて落ち着かせると、優しい声で語りかける。

 

「この子がお母さんたちの場所を知ってる。ここらから離れて」

 

その声と鳩に促されるまま、頷いた少女が頷いてその場からいなくなったのを確認した彼はボマーを睨む。

あれが自分たちの戦う敵、あれが怪人、あれがグラフィティ。

これから始まる戦いの相手。

 

「さて、随分と派手に暴れたな」

『うざってぇっ、よくも俺の邪魔をしやがったな!許さ…』

「許さねぇのはこっちの台詞だ」

 

底冷えするほどの声色に怯んだボマーに視線を向けたまま、懐から奇妙なバックルを取り出す。

中央にタロットカードを思わせる形状のディスプレイを配置し、右側には何かを差し込むようなスロットがある。

左側には横向きにしたような長方形型のユニットが接続されており、青空の中をバイクで駆ける小さな王冠を被った仮面の黒い旅人が映っている。

「No.0 THE FOOL」と記されたユニット付きのバックルを腹部に当て、そこから伸びたベルトによって完全に固定される。

左腰のベルトには色取りどりの綺麗な液体が詰まったインクポットのようなお洒落な円柱状の小さなアイテムがホルダーに納められていた。

 

【THE FOOL DRIVER!】

 

ドライバーとなったバックル『ザ・フールドライバー』が自らの名を告げるのを耳に入れながら、ホルダーから翡翠色のインクが詰められたインクポットを取り出す。

ラベルイラストには紙吹雪の中でパフォーマンスをしている仮面の手品師が描かれており、蓋に該当する上部のスイッチを押し込んでアイテム『アルカナライドポット』を起動する。

 

【ONE MAGICIAN!!】

 

『Ⅰ魔術師』の大アルカナを宿したマジシャンアルカナライドポットを右側のスロットに装填。同時にアップテンポな待機音声が鳴り響き、否が応にも周囲の視線を釘付けにする。

不敵な笑みを崩すことなく、彼は左側のユニットに手を置くとそれを思い切り押し込んだ。

そして、自らを変えるあの言葉を呟く。

 

「変身」

The JOKER was drawn(切札は描かれた)!】

 

ディスプレイに映し出されたのはトランプを自在に操る緑色のスーツとシルクハットに身を包んだ仮面の手品師……魔術師を宿した緑のインクがその身体を塗り替えていく。

 

【一番目の奇術が零の旅人と交わる! MAGICIAN WILD 招来!!】

 

全身がインクに包まれた瞬間、その姿は異形の戦士へと変わっていた。

金色の王冠型の小さなバイザーを装備したシルクハット型の仮面から光る薄紅色の丸い複眼。

翡翠色のスーツとプロテクターに手品師を思わせる風で靡く神秘的なローブ……。

その名を。

 

『何だよっ?何なんだよ、お前ぇっ!?』

「『仮面ライダーバーサルド』……勝利の色を見せてやる!」

 

動揺し、喚くボマーへ不敵に名乗ったバーサルドは飛び蹴りで攻撃と同時に距離を詰めると、そのまま膝蹴りを鳩尾に叩き込む。

丁度ボマーの額縁にあるイラストを壊すように攻撃を続けると、今度は顔面に向かって強烈なフックを浴びせる

 

『がっ!?こ、このっ!!』

 

爆弾の投擲を恐れることなく攻め続けるバーサルドにボマーは素手で応戦しようとするも、単調な攻撃など当たるはずもない。

ローブを靡かせながら、華麗な動きを崩さないバーサルドはスロットに装填したマジシャンライドポットのスイッチを押して能力を発動する。

 

【正位置COLOR! MAGICIAN!】

 

ザ・フールドライバーは大アルカナを宿したインクを調整する機能があり、正位置と逆位置で能力を変える。

正位置なら身体能力や属性付与、逆位置なら特殊能力の発動と状況に応じてアルカナライドポットのスロットを回転させるのだ。

 

「そらっ!」

 

右手に炎と風、左手に冷気を発生させるとボマーの身体に叩き込んだ。

 

『があああああっ!?』

 

防御すら行えないまま、直撃を受けたボマーは吹き飛んで地面を転がる。

しかし、勢い良く立ち上がると地団駄を踏んで雄叫びをあげた。

 

『……ぁぁぁあああああっ!どいつもこいつもムカつくんだよおおおおおおおおっっ!!』

「うおっと!?」

 

全身から再び爆弾を生成すると、手当たり次第に投擲して周囲を爆発させる。

怒りが降り切れて精神が暴走したのだろう、発狂したように爆破するボマーに呆れながらもこれ以上の被害を出さぬようバーサルドはスロットに手を添える。

 

「なら」

【逆位置COLOR! MAGICIAN!】

 

今度はスロットを回転させてからアルカナライドポットを起動すると、緑のエネルギーが収束される。

 

『くたばれぇえええええっ!!』

 

ボマーの爆弾が迫るも、バーサルドは冷静に跳躍して回避する。

そして、そのまま壁へと着地すると怪人目掛けて一気に走り出した。

変幻自在な動きと攻撃に対応出来ず、再びボマーはライダーの攻撃を浴びる羽目になる。

強烈な回し蹴りを側頭部に叩き込まれ、再び飛ばされたグラフィティを見据えながら愚者ユニットを押し込む。

 

「これで仕上げだ」

【LAST COLORS! FOOL BREAK!!】

 

ディスプレイから魔術師のアルカナが点滅すると、愚者ユニットと同じイラストのアルカナがカードとなって出現。それはバーサルドの右脚に張り付き、増幅したエネルギーが充填される。

ローブを靡かせるように軽く助走してから高く跳躍し、勢いのままボマーへ飛び蹴りを放つ。

風を纏ったバーサルドの必殺技『フールブレイク』にボマーは躱すことすら出来ず、満身創痍となった身体で受けるしかなかった。

 

『ぎぃやぁああああああああっっ!!!』

 

直撃したボマー・グラフィティは絶叫しながら爆散し、不良の少年が泡を吹いた状態で変異を解除されている。

専用のインクポットである『グラフィティポット』は空中で音を立てて消滅。それが仮面ライダーと怪人の決着だった。

 

 

 

 

 

その活躍を、覗いていた『球体』があった。

キャロットオレンジで彩られた熱気を放つ球体には棘のような装飾が施されており、両手で持てるほどの大きさは宛らバスケットボールのようだ。

しかし、周囲の空気が揺らめくほどの熱気を放つそれは炎と形容するにはあまりにも神々しく、高い空から愚かな人々を祝福している錯覚すら感じる。

 

『……ふぅ』

 

やがて、仮面ライダーの勝利で終わった結果を見届けた炎の球体は溜息と共に動く。

ゆったりとした速度でビルの屋上にまで辿り着くと、そこに立っていた人影へ近づき始める。

紺色の身体とコートを持つ異形の身体には首がないにも関わらず、しっかりとした意思を持って二本足で立っていた。

右腕に『女帝』と同じ奇妙なデバイスを装着している首なし胴体は両手で球体を掴むと、まるでヘルメットを被るように頭部に該当する箇所に乗せた瞬間、先ほど以上の凄まじい熱気が軽く周囲を焼き、本来の首としての役割に戻った球体には「ⅩⅨ」と象られたバイザーが出現した。

紺色のコートと球体のようなオレンジの頭部、それはまるで青い炎と『太陽』を思わせる怪人は接続した首を軽く動かして不調がないか確認する。

 

「おやおやおや?アームズ君のグラフィティ、やられてしまったようですねぇ、ヒート君」

『……』

 

背後から優しげな低い男性の声が聞こえた。

『ヒート・ソル』と呼ばれる怪人は、面倒そうに振り向くと自分と同じ存在となった大柄の男に視線を向けた。

首まで伸ばした白髪に、穏やかな笑みを浮かべた中年の男性は神父服を来ているが、首に下げた十字架は逆さまになっており、その瞳もガラス玉のような無機質さだ。

 

「仮面ライダー……なるほど思った以上に手の掛かるお方だ」

『……』

「しかし、彼もまた迷い救いを求める者であることに違いはありません」

【SIXTEEN TOWER!!】

 

ソルの隣に立った男性は、取り出したアルカナライドポットの上部スイッチを押して起動する。

雷雨と竜巻、日光や吹雪などの天候と崩れた塔のラベルイラストが描かれたピュアホワイトとスカイブルーの『タワーライドポット』を左腕のブレスレット『アルカナライザー』の中央スロットへ装填。

 

装色(そうしょく)

【PAINT UP】

 

ブレスレットに配置されたボタンを押し込み、自らを変異させる呟きと低く無機質な音声が響き渡った。

瞬間、まるでカラープリンターやAIイラストのようにディスプレイから映像が映し出される。

晴天にも関わらず雷雨と突風が吹き荒れる崩壊した巨塔のイラストが出現すると、神父の身体はインクが霧状になった二色のエネルギーに包まれた。

 

【THE TOWER! 破滅と災害のCLIMATE……COMPLETE!!】

 

全身に包まれたインクが霧散し、怪人としての大柄なシルエットが露になる。

スカイブルーの煉瓦で構成された重厚な煉瓦の鎧は、皹が入ったような白いラインが所々に走っており、描かれたイラストと同じ塔を思わせる。

更に、鎧の小さな窓から気流となったピュアホワイトの雲が両腕と両脚に纏わり付いている。

そして、頭部には「ⅩⅥ」を模したバイザーが装備されていた。

 

『何でしたら、ワタクシが動きましょうか?んふふふふっ!仮面ライダーに救いを与えるのも悪いものではありませんしねぇ』

 

『クライメット・タワー』が興奮した面持ちで全身から竜巻にも似た風を巻き起こし、仮面ライダーの元へ駆け出そうとする。

しかし、ソルがその手を掴んだ。

 

『おやおやっ?』

『……っ!!』

 

小首を傾げるクライメットは、炎を噴き出す彼の抗議に何故か嬉しそうに微笑むと、大人しく抵抗をやめる。

 

『ええ、ええ。ならば今回はやめましょうか、んふふふふっ』

 

不気味な笑みを絶やさないまま、タワーは雷雨と竜巻を発生させて姿を消した。

自分以外、誰もいなくなった屋上でソルは拳を握り締める。

 

『……俺はっ』

 

そこから先は何も言えぬまま、彼もまた同じようにその場から立ち去ることしか出来なかった。




バーサルドの由来は万能や多用途を意味する「Versatile(バーサタイル)」と、ワイルドカードの「ワイルド」の造語となっており、この二つを合わせて「VERSALD(バーサルド)」です。

怪人「グラフィティ」のコンセプトは落書き。決められた題材で勝手に描いた姿が能力となります。基本的に一色ですが上級になると二色になります。


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仮面ライダーリベジャス

時計の針が夜の十時を指した頃、一人の男がビルの屋上から街を見下ろしていた。

雑踏の中を光が漂い、暗闇の中で動く人々の様子を観察している。

 

「社会、不満、崩壊、革命……」

 

それは人間観察を趣味とする者の視線ではなく、虚ろで焦点が定まっていない。

にも関わらず、だ。

ブツブツと呟く様子はある種の執着を感じさせ、何処か追い詰められているようにも見える。

 

「破壊、毒して、変えるっ」

【DRAW……TOADSTALL!!】

 

毒々しい赤いキノコのラベルイラストが描かれたグラフィティポットを起動し、中に詰まっていたラジカルレッドのインクが放出。

男性の全身が塗り潰されると、その姿がグラフィティへと変異する。

灰色に染まった身体の上半身に毒々しい斑点を持つ赤いキノコを生やし、インクポットのラベルと同じイラストが胴体の額縁に収まった『トードストール・グラフィティ』は手すりに異形となった手を置く。

そうして、このまま地上へ飛び降りようとした時だ。

 

「やめろ」

『……うっ?』

 

大きくはない、だがトードストールに響くほどの冷たい声だった。

動きを止めて思わず声の方向に振り向けばそこにいたのは白銀の髪色を持つ美丈夫の青年……ジャケットとズボンを着こなした白峰義正は鋭い視線で目の前のグラフィティを睨む。

 

「指名手配犯、紅崎毅……かつて学生運動で多くの負傷者を出しながらも自らの正義を遂げようとした革命家。手段はどうあれ、お前の正義を否定するつもりはない」

 

淡々と、自らの集めた情報を語る彼にトードストールは唸り声をあげる。

毒キノコの能力を宿したインクは変異者の脳を汚染し、ただ毒の胞子を撒き散らすだけの災害そのものと化している。

 

『う、あー……革命、革命革命革命かくめいカクメイ……俺の毒で、全部塗りたくる』

 

正気でないトードストールは身体を左右に揺らしながら、目の前にいる標的へと優先順位を変える。

体内で胞子を生成するグラフィティから視線を逸らすことなく、義正はアルカナドライバーを装着する。

形状自体はバーサルドが使用するのと同型だがアルカナライドポットを装填するスロット部分も外されており、両側とも接続部分が露出している。

 

「その正義が無関係な人を巻き込むのなら……俺の正義でお前ごと撃ち抜く」

 

懐から取り出したのは二つの装置。

右手にはマグナムのような奇妙な形状をしたホワイトシルバーでカラーリングされた装置には撃鉄と青いガングリップがあり、銃身に当たる部分には横向きにした筒状のスロットがある。

左の手に持つのは長方形のカードを模したユニット……その下には「No.Ⅺ THE JUSTICE」と記されており、剣と一体化した王冠を被った白い法服の案山子が描かれている。

一対の装置『ジャスティスグリップ』をアルカナドライバーの両側に接続する。

 

【THE JUSTICE DRIVER!】

 

義正専用のドライバー『ザ・ジャステイスドライバー』へと姿を変えたことを伝える音声を耳にしながら、今度はアイスブルーのアルカナライドポット……杖と冠が刻印された『エンペラーライドポット』を起動させた。

 

【FOUR EMPEROR!!】

 

銃身に存在するスロットへ装填した瞬間、義正の周囲に白い冷気が発生。

動揺するグラフィティに意を介することなく、グリップを握る手に力を込めて『あの言葉』を短く呟いた。

 

「変身」

【COLLAR SHOT!】

 

トリガーを弾いた瞬間、ディスプレイに描かれたのは右手に金の杖を持った鎧の戦士。

椅子に腰を掛けた戦士は左手に拳銃を持ち、頭には金色の冠を被った気高さを感じさせるイラストと同時に音声が鳴り響く。

 

【氷の皇帝が悪を撃ち抜く!】

 

ホワイトシルバーのインクが義正の全身を包み、同時にジャスティスグリップの銃口から発射された壺を象ったアイスルブルーのエネルギーが彼の真上で静止する。

 

【正義の銃弾・EMPEROR JUSTICE招来!!】

 

インク壺を象ったエネルギーは意思を持つかのように回転するとアイスブルーのインク型エネルギーがその身体を重ね塗りするように装甲を形作っていく。

白銀のスーツにアイスブルーの鋭利な装甲と左肩から生やしたマント……白銀の王冠を象った装飾を持つマスクの複眼が赤く輝いた。

 

『き、貴様はっ!?』

「Revenge of Justice……『仮面ライダーリベジャス』」

 

短くそう名乗った戦士はドライバーからジャスティスグリップを抜き取ると、真っ赤な双眼と共に銃口を突きつける。

 

「氷の弾丸に葬られな」

 

その言葉と同時にトリガーが弾かれた。

放たれた銃弾は宛ら小型の氷柱であり、対象を射抜くほどの威力を持ってトードストールに命中する。

 

『ぐっ、あ……ヴアアアアアアアアアアアアアッ』

 

ダメージでよろめく身体から火花を散らしながらも、明確な『敵』と判断したグラフィティが理性のない獣の如き悲鳴をあげた。

上半身に生やした毒キノコから胞子を放射し、リベジャスの息の根を止めようとする。

常人なら意識が昏倒するほどの猛毒胞子は仮面ライダーですらも意識を混濁させ、倒れ伏すほどの脅威を持っていた。

しかし。

 

「ふっ!」

『ガッ!?』

 

胞子が撒き散らされた空間に物ともせずに走るリベジャスはトードストールの顔面に鋭い掌底を叩き込み、ジャスティスグリップの銃口から発射された銃弾を至近距離で浴びせる。

自分の能力が通じない異常事態にトードストールは混乱する。このグラフィティは気づいていないが、自分の撒いた胞子がビルの屋上だけに止められているのだ。

その疑問は、すぐに氷解する。

 

「俺が凍らせた」

 

短く、その事実だけをリベジャスが伝える。

見れば彼の撒いた骸骨の胞子は彼の全身から放つ白い冷気によって全て凍結されており、小さな結晶となって次々と砕けていく。

エンペラーライドポットは『氷を操る能力』だが、変身者である義正の抱く絵図によって凍らせた対象の性質や概念を停止させることが出来る。

 

「絶対零度は静止の世界だ」

 

冷たく、それでいて熱い闘志を秘めた想いが冷気となって放たれる。

それはまるで、全てを凍てつかせるゼロ度の炎。

 

「だからこそ俺の正義は揺るがない……この力で全てのグラフィティを倒すことが、今の俺が望む『正義』だっ!」

【LAST COLORS! JUSTICE BURST!!】

 

ジャスティスグリップをバックルに再び装着してから撃鉄を起こしてトリガーを弾いた瞬間、氷の銃弾が吸い込まれるように右脚へとチャージされると、周囲に冷気を纏ったアイスブルーの暴風が吹き荒れる。

その力で宙に浮き、余波で身体を鈍らせたトードストール目掛けて冷気の力を得た強力な蹴りを放った。

 

「はぁっ!」

『グギャッ!?』

 

必殺技として繰り出したキックはグラフィティの腹部へと命中し、凄まじい勢いで吹き飛んでいく。

そして、攻撃を受けた場所から次第に凍結する。

段々とアイスブルーの氷に覆われていく毒キノコに、フィンガースナップを鳴らしたリベジャスが冷たく言い放つ。

 

「これで決まりだ」

『ギギャアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

絶叫と共に、トードストール・グラフィティの全身が粉々に砕け散った。

変異が解除されて気絶した男……紅崎の近くには白い煙を立てて粉砕されたグラフィティポットが転がっていた。

 

 

 

 

 

XXX(トライクス) DRIVER!】

 

とある廃工場、誰もいないはずの寂れた空間に奇妙な音声が響く。

音源となるショッキングピンクで塗り分けた奇妙なバックルを腰に装着した人物は光の当たらない暗闇で詳細な容姿は分からないが、その様子を興味深そうに観察している異形……グラフィティがいた。

アッシュグレーの細身と白衣のような丈の長い上着を纏い、身体中からフラスコのような形状をしたガラスとボトルグリーンのコードを生やした異形は「Ⅴ」のローマ数字を刻んだ緑のバイザーが装備されていた。

 

「……」

 

そのバックルは右側が空洞となっており、左側にある長方形型のディスプレイと上部にアルカナライドポット用のスロットがある奇妙な形状をしている。

それ『XXX(トライクス)ドライバー』を巻いたその人物は左手に持ったアメジストカラーのアルカナライドポットを起動させる。

 

【FIFTEEN DEVIL!!】

 

様々な動物のイラストが描かれた『デビルアルカナライドポット』をスロットに装填し、エレキギターのような待機音声が響く中、彼の背後に女性らしきドレスを纏った影が出現する。

そして、右手に持った道具……翼を生やした男女のような仮面の機械天使が描かれたナックルダスターを右側の接続部分に押し込んだ。

 

「『変身』」

【SIX LOVERS! ENGAGE!】

 

まるで割れたハートが元に戻るように二つの装置が口づけを交わし、男女の声が重なると同時に変化が起こる。

バックルのディスプレイに山羊や羊のような角を生やし、蝙蝠の羽を持った鉄仮面の悪魔が互いに向き合ったイラストが浮かび上がり、ショッキングピンクとアメジストのインクが全身を覆い隠す。

混ざり合った二色のインクは、やがて『二つ』に分離して戦士としての姿を現した。

 

【DEVIL × LOVERS……HIGH PASSION!!】

 

一人はショッキングピンクのスーツにアメジストとアイボリーブラックの刺々しい悪魔のような装甲を右半身に纏った戦士、隣に立つもう一人は女性的なラインを同じスーツで纏い、左側にアメジストとパールホワイトのシャープな柔らかい雰囲気を放つ装甲を装備している。

ライトグリーンの複眼を光らせて変身を完了させた戦士二人に、『隠者』の大アルカナを秘めたグラフィティは満足したように拍手を贈る。

 

『素晴らしい、これで「君たち」は私たちの同胞となった……共に世界を塗り潰す側へと回ろうじゃないか。仮面ライダートライクス』

 

天使が描かれた『恋人』の大アルカナを纏った悪魔的な二人『仮面ライダートライクスD(デビル)/A(エンジェル)』はゆっくりと頷いた。




 色とアルカナをモチーフにしたオリジナルライダー・バーサルドの続きです。今回は二号ライダーのリベジャスと敵ライダーとなるトライクスの顔見せ。
 リベジャスはサイバーチックな銃戦士。今回は屋上だったのであまりアクションはありませんでしたが、広い空間だとガンカタみたいな戦闘をしてくれます。裏モチーフはグリスブリザード。
 最後にちらっと登場したトライクスは恋人と悪魔のアルカナで変身する。変身方法に関してはイクサナックルでの変身を参考にしています。リバイとバイスのように一人で二人の戦士に変身します。名前の由来は三つのXでトライクス、コナンで
「XXX」はキスを意味するみたいなことを言っていたので「恋人」モチーフの仮面ライダーにぴったりだと思ったので、ちょっとお洒落な感じにしました。
 今回はこんな感じで。 ではでは。ノシ


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仮面ライダーレクイス

 懲りずに短編です。
 様々な作品に触発されたオリジナルライダーとなっております。

2023/10/2
基本フォームのカラーリング及び変身音声を変更しました。


それは、突然のことだった。

時刻は昼……とある街にある繁華街で、大きな爆発が起きた。

 

『ひひ、ひゃははっ。俺の天下だ……誰もが俺にひれ伏す、最高の気分だ!』

 

人々が逃げ惑う中、この爆発を引き起こした犯人……否『怪人』は笑う。

それは一言で表現するならば、人型になった蝋燭だろうか。灰色の蝋で構成された身体と心臓の部分に該当する箇所には炎を象った紋章が輝いている。

その上半身は橙色の歪な装飾が貼り付けられており、蜥蜴の舌を包帯のように巻き付けた頭部と蜥蜴の顔を模した火炎放射器を両腕を装着している。

その姿は宛ら伝承に登場する火の蜥蜴・サラマンダー……それを連想するパーツや要素が蝋燭の身体に飾り付けられているのだ。

怪人の周囲には、頭部に炎を灯したような白い人型の蝋燭が燭台を思わせる黒い軽鎧に身を包み、親玉らしき火蜥蜴の蝋燭怪人に従っている。

 

『もう誰にも媚びへつらったりしない。俺が、俺が街を支配するんだぁああああああああっ!!』

 

湧き上がった高揚感に身を任せた怪人は、雄叫びをあげる。

獣の如き咆哮が街の中に木霊し、逃げ続ける人々は恐怖する。

怪人の名は『ディストーチ』……人工的に錬成した妖精や幻獣の力を封入した道具によって人間が変異した存在。

その在り方はまるで人間が抱く理想の灯りに惹かれた妖精のように、伝承の力に取り憑かれてしまった彼らは人類に災厄を撒き散らす。

サラマンダーを宿した怪人『サラマンダー・ディストーチ』は、上機嫌に街を歩きながら右腕から火炎を放とうとする。

その時だった。

 

『あぁっ?』

 

折角の上機嫌に水を差さされたように、怪訝な表情を浮かべるサラマンダー。

逃げ惑う人々とは反対に、バイクに搭乗した少年が一人いた。

少年の衣装は黒いコートに白い手袋、山高帽を思わせる小さな帽子……まるで一昔前の紳士や探偵を彷彿させる出で立ちの少年で、首元にはマゼンタカラーの奇妙なトイカメラを吊り下げている。

しかし、その顔立ちは少女のような可憐さを併せ持っており、何処となく背伸びをしているような印象を与える。

だからこそ、解せない。

サラマンダーから見て、明らかに非力なコスプレ紛いの少年が自分の道を妨げている……それが気に食わない。

 

『おい、邪魔するんじゃねぇよ……焼くぞ』

 

軽く炎を吐き出しながら、陰湿な笑みを浮かべたような声色で脅す。

一見すると威嚇のようだがサラマンダーには相手を見逃すという選択肢は既にない。

慌てて背中を見せた少年を、生きたまま火炙りにしてやろうと考えているのだ。

しかし、少年の表情は恐怖でも狼狽でもない。

はっきりとした、敵意だ。

 

「やってみろよ、そのちんけな炎でな」

 

挑発するように言い放った言葉に、サラマンダーの頭が一瞬で熱くなる。

妖精を憑依したことで思慮が短絡的になったディストーチはお望みどおりに両腕の火炎放射器を向ける。

しかし、そこから炎が放たれることはなかった。

 

【REQUITH DRIVER!】

 

首元に下げていたマゼンタで彩られたトイカメラ……否、バックルをストラップから外して軽く腹部の前に添える。

瞬間、オレンジ色のベルトが伸びて少年の腰へと完全に固定される。

トイカメラ型バックル『レクイスドライバー』を装着した彼は、次にベルトの腰に出現したホルダーから筒状のアイテムを取り出す。

カメラのフィルムや弾丸にも見えるそのアイテムの中央には可愛らしいキャラクターが描かれている。

灰色に彩られた四枚の大きな翼を持つ道化師の如きポップな紫色のフードを被る幽霊のイラストが印象的なアイテム『フェアリーシリンダー』の上面のスイッチを押し込む。

 

【WRAITH!】

 

スコットランドの伝承に存在する亡霊を再現した『レイスシリンダー』を起動した少年はドライバーの右側面にあるスロットへ装填。

待機音声を響かせながら、左腕を自らの右肩辺りに重なるように前へ出し、逆の右手でシャッターボタンを切る。

 

「……変身」

【PASHUT EQUIP!】

 

緑色のフラッシュが焚かれ、左側の液晶画面に翼を動かす幽霊のアニメーションが動くと、突如として吹かれた風が彼の身体を包む。

同時に紫色のスーツが全身を包むと、右側に竜巻や風車などの風を連想させる灰色の軽い装甲が装着されていく。

そうして、左右非対称のデザインを統一させるように緑色のマフラーが風で靡かれながら出現したことで変身が完了した。

 

【WIND & POISON! JOKER WRAITH!!】

 

赤く丸い複眼を光らせ、軽装な出で立ちは余計な荷物を持たない気ままな道化師……しかし、その妙な存在感はまるで亡霊であることも連想させた。

 

『な、何だお前はっ!?』

「仮面ライダーレクイス」

 

動揺するサラマンダーに、それ以外は必要ないと言わんばかりに自らの変身した姿を名乗る。

そして街の支配者を気取っていたディストーチへ向ける。

 

「さぁ、罰の時間だ」

 

宣戦布告にも似た言葉を相手へと向けると、サラマンダーへと歩み寄る。

その姿勢に焦りは見られない、むしろ格闘技の経験者が粋がることしか出来ないチンピラと相対しているような余裕さえも感じられる。

 

『っ!姿が変わったからって、どうしたってんだよっ!!』

 

それを挑発行為と捉えたサラマンダーが炎を放出しながら突進する。

そうして、両腕から放つ火炎を纏った一撃を繰り出そうと拳を振り上げようとする。

 

「遅い」

 

しかし、その一撃は仮面ライダーレクイスには届かない。

強烈な蹴りを叩き込んで強引に攻撃を中断させ、そのまま逆の脚で蹴り飛ばす。

見た目に違わない軽快な動きから繰り出される蹴り技は宛ら嵐の如く降り注がれる。

華麗なハイキックやサマーソルトキックを叩き込んだかと思えば、今度は荒々しい膝蹴りやヤクザキックがサラマンダーの身体を抉る。

 

『くそがぁあああああああああっ!!』

 

一方的な展開に屈辱を覚えたサラマンダーが両腕から火炎を放射してレクイスから距離を取ると、待機させていた蝋燭兵『トーチドール』に指示を与える。

零れ落ちた蝋から構成されたトーチドールたちはそれぞれ武器を構え、ゆっくり近づいてくる。

 

『よくも俺を虚仮にしやがったな……ボコボコにして生きたまま火葬してやるよっ!』

「……はっ」

 

しかし、レクイスに焦りは見られない。

数を増やして調子を取り戻した小悪党に嘲笑すると、ホルダーから新たな赤いフェアリーシリンダーを取り出す。

中央には銀色の槍を振り上げた、ボールのように丸く太った赤い鶏のキャラクターが描かれており、極彩色の尻尾が特徴的だ。

 

【PHOENIX!】

「きついお灸を据えてやる」

 

上面のスイッチを押し込んで起動させてレイスシリンダーと入れ替えるようにスロットへ装填、間髪入れずにシャッターボタンを切る。

 

「グラデーションチェンジ!」

【PASHUT EQUIP!】

 

赤いフラッシュが焚かれ、液晶画面に可愛らしく動く鶏……否フェニックスが映し出されると同時にレクイスのスーツがメタリックな輝きを放つ黒へ変わり、右側に装甲が追加されていく。

燃え盛る炎と翼を象った重厚かつ赤いアーマーはまるで鎧武者のような無骨さを誇り、装着が終わると同時に火の粉を散らしながら同色の陣羽織が出現する。

 

【FREE YOUR HEAT! METAL PHOENIX!!】

 

熱き鋼の不死鳥武者『フェニックスフィルム』へと切り替えたレクイスは出現した巨大な槍『ヒートスピア』を肩に担ぎ、ゆっくりと歩いていく。

メタリックシルバーの重量感溢れる柄と赤い輝きを放つ槍を難なく振るう度に火の粉が舞う。

その様子が、サラマンダーの歪んだプライドを刺激した。

 

『うざってぇ……その仮面ごと焼け爛れろおおおおおおおっ!』

 

感情に任せた火炎放射がレクイスを包み、それに続いてトーチドールたちが武器を突き立てる。

レイスフィルムの状態であったならば、致命傷となっていたであろう。

しかし、その攻撃は全て防がれていた……防御姿勢を取ってすらいないレクイスにだ。

ヒートスピアで群がる連中を吹き飛ばし、そのままサラマンダーへと距離を詰める。

 

「そらっ!」

『あっづううううううううううっっ!!?』

 

火炎を宿す拳が蜥蜴の顔面に叩き込まれた。

宛ら焼き印のようなその一撃は、耐熱性を持つサラマンダーに強烈なダメージを与えて地面に転がす。

再び攻めてきたトーチドールを蹴って強引に距離を取ると、背後からの奇襲を試みる個体に向きを変えないまま拳を振り上げた。

 

『あ、なっ』

 

砕けた鈍い音が響くと同時に、ふらついた足取りで立ち上がったサラマンダーが絶句する。

何の変哲もない普通の裏拳がトーチドールの頭を叩き割ったのだ。後から続く兵隊も同様に殴り倒し、ヒートスピアを大きく振り回して蹴散らしていく。

フェニックスフィルムの固有能力は単純なパワーとディフェンスの強化……拘束する相手や力強い敵と相対するのに使用する。

欠点としてはエネルギーの放出を抑えられない短期決戦型のため長時間による活動は難しいのだが、それを補う効果が付与されている。

 

「オラァッ!」

『ギッ!?』

 

穂先を突きつけてトーチドールを貫くと、そこから漏れた炎がレクイスへと取り込まれていく。もう一つの特性であるエネルギーの吸収能力によって活動時間を引き延ばすことが出来るのだ。

雑兵を片付け、エネルギーをある程度チャージしたレクイスは満足に動けないサラマンダーへと近づいていく。

 

『ひっ!?』

 

この時点で、既に戦意は削がれていた。

自分の身体すらも焼き潰す火力、無数にいたはずの兵隊、その全てが瞬く間に崩れ去っていく姿に恐怖すら感じてしまう。

 

『た、助け……誰か助けてくれええええええええっ!』

「逃がすか、よっ!」

 

慌てて火の蜥蜴は背中を向けて逃げ出そうとするも、当然見逃されるはずがない。

持ち方を変えて、穂先に炎を纏わせたヒートスピアをレクイスはあろうことか全力で投擲した。

 

『ぐっげええええええええええええっ!?』

 

刺し貫かれたサラマンダーは悲鳴をあげ、内部から自分の生成したものとは異なる火炎によって焼かれる激痛に耐え切れず地面を転がる。

勝機を捉えたレクイスは、すぐさまドライバーの操作を開始した。

 

【PASHUT OUT! THE PHOENIX MAXIMUM!!】

 

必殺技を告げる音声と共に軽くその場で跳ねる度に、ドライバーを通して右脚に霊力がチャージされていく。

やがて炎が灯るまで充填が完了すると、串刺しにされたサラマンダー目掛けて走る。

宛らジェット噴射の如き勢いで一気に距離を詰めたレクイスは必殺の一撃を叫んだ。

 

「フェニックス・インパクトッ!」

 

ようやく起き上がったその首元に炎を凝縮させた強烈な後ろ回し蹴りを叩き込み、役目を終えたヒートスピアも煙のように消滅する。

吹き飛ばされたサラマンダーは数メートルまで地面を転がると、辛うじて起き上がり……。

 

『ぎゃああああああああああああっ!!!』

 

絶叫と共に爆散した。

サラマンダー・ディストーチが立っていた場所には金髪の青年が気を失った状態で倒れており、その付近にはレクイスが使用していた物と酷似したシリンダーが砕け散っている。

 

「後は、警察の出番だな」

 

一仕事を終えて軽く息を吐く。

彼は仮面ライダーレクイス……妖精の力を元に戦う仮面の戦士。




仮面ライダーレクイス
妖精を再現した道具『フェアリーシリンダー』で変身する仮面ライダー。霊力と呼ばれるエネルギーで製造した妖精関連の事件を解決する探偵が主人公。探偵イメージはエルキュール・ポワロとエラリー・クイーンのような紳士探偵。

フェアリーシリンダー
秘術によって妖精を人工的に製造し、筒状のアイテムに封入したアイテム。上面のスイッチと中央にポップなキャラクターイラストが描かれている。
妖精とは霊的存在を指し、人狼や龍のような幻獣や日本の妖怪なども妖精として該当する。

レクイスドライバー
トイカメラ型ドライバーで、普段はストラップで首元に下げている。シャッターボタンを押すことでフェアリーシリンダーの妖精を一時的に解放し、鎧やスーツとして投影することで変身する。
裏設定:レクイスドライバーの設計者は仮面ライダーWとディケイドの資料を読んで一目惚れし、バックルやライダーのデザインに組み込んでいる。

ディストーチ
本作の怪人。蝋燭のような灰色の身体に妖精の伝承を連想させる装飾を貼り付けたような特徴をしている。戦闘員である『トーチドール』を生成する能力を持つ。

設定協力者
ミスタータイムマン様(https://syosetu.org/user/156641/)


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仮面ライダーレクイス 執行剣士ザンスラッシャー

 前回の世界観で登場する疑似ライダーです。こちらもミスタータイムマン様に設定協力をいただきました。


「ようこそ、おいでくださいました」

 

一人の女性が笑う。

腰まで伸ばした金髪のロングヘアーに青い瞳、露出の多い青のドレスと手袋を豊満な身体で包んだ長身の美女は品のある声と仕草で挨拶をする。

 

「今宵始まるのは、仮面ライダーとは違う戦士の物語……我々が飼っている不愛想な猫のお話です」

 

ドレスとは不釣り合いなベルトを腰に巻き、そこから青い液体が杯へと注がれていく。

淡く光る青で満たした奇妙な杯を掲げ、彼女は続ける。

 

「きっと、これだけでは何が起こっているのか分からないのでしょう。きっと、仮面ライダーの活躍を知る皆様方も……そうでしょうとも。だって、これは戦いの一部なのですから」

 

そう、女性は笑い嗤う。

困惑し、翻弄する様を楽しむように……彼女は整った美しい唇で笑みを浮かべた。

 

「分からないまま、一度は考えてみるのも良いかもしれません。それでは、素敵なショーをお楽しみくださいませ」

 

それだけを言うと、彼女はグラスに入った液体を飲み干した。

 

 

 

 

 

深夜、誰もが寝静まった街で一人の青年が街を歩く。

緑色のパーカーの上に、水色の上着を羽織った彼は日常世界に不相応な大剣を肩に担ぎ、整った顔立ちに酷薄の表情を浮かばせながら、迷うことなく歩みを進める。

そして、その途中で足を止めた。

道にでも迷ったのか……違う。

探していたものを見つけたからだ。

 

『リジーの嬢ちゃん斧取って、ママを四十回滅多打ち♪』

 

上機嫌に『それ』は詩を口ずさんでいた。

マザー・グースの一節を、まるで歌詞の意味を知らぬ幼子のように、楽しそうに紡ぐ。

 

『自分のしたこと気が付いて、パパを四十一回滅多打ち♪』

 

暗闇から、悪臭と共に異形が現れた。

蝋燭のような身体と胸元にある炎のような紋章、ガスマスクの顔を持つ上半身は古びた布切れを巻き付けており、右腕に絡みついた右腕の切れ端は口を開いた蛇や龍のような頭部となっている。

そこから垂れる粘り気のある黒い液体は、コンクリートの地面を軽く溶かしている。

 

「『シロウネリ・ディストーチ』……どうやら、適合者に引かれて憑依したみたいだな」

 

ディストーチ……それは古今東西の伝承に登場する妖精や幻獣、妖怪などの精霊をモチーフに製造されたアイテム『フェアリーシリンダー』によって人間が変異した姿だ。

内包されているのは感情エネルギーによって製造された人工精霊……それを憑依させることでディストーチ化するという仕組みだ。

 

『みんなが言うんだ。汚いし不潔だねって……だけど、これで誰もが汚くない。だって僕が汚しちゃえば関係ないもんね』

 

誰に聞かせるでもなく、シロウネリは一人で喋り続ける。

その間にも右腕から垂らした黒い粘液は周囲を汚し、徐々に溶かしていく。

 

『おいで駒鳥ちゃん、怖がらないで。羽一本も傷つけないから♪』

 

そうして、またマザーグースを口ずさむ。

まるで自分が無害な存在だと主張するように、楽しそうにシロウネリが詠う……先ほどからずっとこの調子である。

明らかに正気ではない様子に青年は溜め息を吐いた。

 

「理性はなしか……奴らも勝手なものだ。ばら撒いておきながら後始末を任せるとは、なっ!」

 

肩に担いでいた大剣……銃と剣が一体化したような奇妙な武器を突きつけた青年は、トリガーを弾いて銃弾を発射。

それはシロウネリの頭に命中し、視線をこちらに向けさせることに成功する。

 

『あぐっ。誰、君っ』

「すぐに教えてやる」

【SYNCHRO RISER!】

 

ゆっくりと振り向き、威嚇するディストーチに青年は中折れ式となっている銃剣……『シンクロライザー』の刀身を折り曲げた。

そこから何かを装填するためのスロットが露出し、次にフェアリーシリンダーを取り出した。

描かれていたのは二本足でハイブーツを履き、背中に大量の剣を納めたシアンカラーの毛並みが特徴的な子猫の可愛らしいイラスト。

それのスイッチを押して起動させる。

 

【CAIT SITH!】

 

封入されている妖精の情報を告げたフェアリーシリンダーを露出したスロットへ装填し、宛ら弾丸をリロードしたように刀身を元に戻す。

 

【CAIT SITH!……ACCELERATE!】

 

バイクのエンジン音とエレキギターを掻き鳴らしたような待機音声を響かせながら、青年はグリップに搭載されているトリガーを弾いた。

 

「調律」

【SYNCHRO EQUIP!】

 

シンクロライザーを振るった瞬間、白銀のラインが走るライトグリーンのスーツが構成され、同時に彼の背後に抜剣したシアンカラーの猫が出現。

それは鎧状のパーツとして再構築し、青年が纏うスーツの右側に装着……やがて、一体の異形を形作った。

 

【YOU ARE ZANSLASHER……!!】

 

その姿は、噂となっている仮面ライダーに酷似していた。

猫の耳を思わせるような三角状の装飾を持つ頭部はフルフェイスのヘルメットとなっているが、左側には弾痕状の、右側には切り傷が残ったような紋様が浮かび、複眼の機能を担っているのか時折緑色に淡く発光する。

右半身に装着されたシアンの鎧は騎士を思わせるようで、猫の双眼を思わせる装飾が右手のガントレットに埋め込まれており、右脚に装着された装甲はまるでハイブーツのように特徴的な形状をしていた。

 

『執行剣士ザンスラッシャー……処刑の時間だ』

 

自らをそう名乗ったザンスラッシャーはシンクロライザーを肩に担ぎ、ゆっくりと歩き始める。

淡々と、迷いなく歩を進める姿に一瞬だけ動揺するも『明確な敵』と認識したシロウネリが身構えた時には……既に距離を詰められていた。

 

『ふんっ!』

『ぎっ!?』

 

袈裟切りにシンクロライザーを振るい、よろめいたところは右脚で蹴り飛ばす。

体勢を立て直したシロウネリは全身に纏った包帯状の布切れを動かすと、それを使って拘束しようとする。

しかし。

 

『はっ!』

『なっ』

 

跳躍して回避される。

無論、ディストーチにとってもこれは想定内だ。

更に布を操って空中で無防備になっているザンスラッシャーを今度こそ縛り上げようと無数の布が迫る……しかし、そこで信じられない光景を目にした。

 

『無駄だ』

 

何と、ザンスラッシャーは足場の存在しない空中でもう一度跳躍したのだ。

まるで見えない踏み場を使ったかの如く、彼は野良猫のように宙を跳ね回る。

ケットシーとは人間のように二足歩行と人語、果てには魔法を操る猫の妖精。それ以外の目立った伝承や逸話こそ持たないが、童話に登場する『長靴を履いた猫』と同一視されることがある。

無論、関連性や根拠こそないがケットシーシリンダーは両者の性質が混ざり合うことで跳躍力と戦闘力の強化させること能力を持っている。

更にフェアリーシリンダーの持つ使用者の解釈によって、ザンスラッシャーは空中跳躍を可能にした剣士となっているのだ。

 

『ふっ!』

『ぎぃぃぃやぁああああああああああっ!!』

 

空中からの銃撃と自由落下による縦一文字の斬撃が、蝋燭の身体にダメージを与えた。

火花を散らしながら地面を転がり続けると、震える脚で必死に立ち上がる。

 

『お前、溶かしてやるっ!溶かして、二度と消えない汚れにしてやるっ!!』

 

激情のまま、シロウネリは右腕から大量の溶解液を発射する。

粘液を放つ液体は直撃を受ければ、ザンスラッシャーの装甲とスーツすらも溶かしてしまうだろう。

しかし、彼に防御策がないわけではない。

 

【KASABAKE!】

 

一本足を生やした一つ目の傘が描かれたオレンジ色のフェアリーシリンダーを取り出して起動。

ケットシーを排出させて代わりに装填した。

 

【TUNING! KASABAKE!】

 

ザンスラッシャーへ調律した時と同じようにトリガーを弾くと、切っ先から出現したのは巨大な傘を模した武器。

それが液体を全て防いだのだ。

 

『うっ!?』

 

動揺するシロウネリに再度ザンスラッシャーは巨大な傘型ウェポンで思い切り殴打し、壁と叩きつける。

完全な不意打ちと動揺によって身動きの取れないシロウネリに止めを刺すべく、ケットシーシリンダーへと戻したザンスラッシャーがシンクロライザーの撃鉄付近にあるネジマキを捻った。

 

【SLASH OUT!】

 

音声が響き、シアンカラーと緑のエネルギーが刀身へと充填されていく。

そして、三本の軌跡を描いた斬撃がディストーチの身体を斬り裂いた。

 

『がっ、あぁぁぁああああああああああああっ!!?』

 

防御すら行えなかったシロウネリ・ディストーチは爆散。

清掃業者らしき男が気を失った状態で倒れると、手元にあるフェアリーシリンダーが音を立てて小さく砕ける。

 

『執行終了』

 

相手の事情も、街の被害も気にすることなく、ザンスラッシャーの変異を解除した青年はその場を後にする。

その場には倒れた男性以外、誰も存在しなかった。

 

 

 

 

 

とある場所、とある洋館、そこには複数の男女がいた。

全員が自分たちの個性を通した服装をしており、薄暗い暗闇で分からなかったが、彼らには共通して奇妙なベルトと西洋の杯を掲げていた。

 

「実りある進化と我々の救済を願って……乾杯」

『乾杯』

 

響く声を切っ掛けに、全員が注がれた液体を飲む。

淡く光るそれを体内へと取り込んだ途端、彼らは歪な姿へと変貌した。

 

フェアリーシリンダーは何故この街にばら撒かれているのか、ザンスラッシャーの目的とは何なのか……それは、誰にも分からない。




 本作の疑似ライダーはヴァルバラドとゼロワンのガセバレにいたウルフェッサーがモチーフとなっております。ガセバレのデザインで意外と面白い奴が多いんですよね。
 フェアリーシリンダーの能力や姿はある程度決まっていますが、人工精霊を憑依させた人間の解釈や感情によって変化する場合もあります。


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仮面ライダーエイゲツ

 前回と前々回書いたレクイスの反省点を活かしてみました。
 ちなみに、今回は忍者ライダーとなります。仮面ライダーシノビやタイクーンとは関係ありませんのでご注意。忍者ライダーはもっと流行るべき。


────忍────

 

それ即ち、刃の心を秘めた耐える者。

 

────忍者───

 

それ即ち、闇夜と共に生きる者。

 

 

その古くより彼らは主君のためにと己の技術を持って暗躍を続けてきた。

やがて時代は流れ、世が平和になったことで彼らの存在は歴史や絵物語の中へと消えていった……ように見せかけられた。

 

 

人々は知らない。

忍者とは、世の調和を正す存在であったことを。

人々は知らない。

忍が戦うべき本当の敵が何なのかを……。

 

 

 

 

 

この公園が、好きだった。

楽し気に遊ぶ子どもたちの声、見た者の心を癒して受け入れてくれるような芝生と木々……昼は人々の憩いの場となる庭園のようなこの場所が本当に好きだった。

 

『どうして、こんなことに……』

 

そう嘆いたのは、一人の老人だった。

動きやすい服装に庭師エプロンを掛けた白い髭で顔の下半分を覆った彼は公園の惨状を悲しむことしか出来ない。

老人は、この公園の管理人だった。

庭師をしていた彼は引退後、幼い頃からの遊び場でもあったこの場所でゴミを拾ったり木の剪定や手入れをしていた。

全ては、この場所の思い出を風化させないように……これからも子どもたちの遊び場であって欲しいという純粋な願いから。

 

『ここは、汚されて良い場所じゃない。綺麗であるべきなんだ、それなのにっ』

 

彼の目に映っているのは軽薄な数人の男女。

お世辞にも品が良いとは言えない彼らは手持ち花火を使って騒ぎ、缶ジュースやお菓子の袋を地面へと捨てている。

しかし、老人の姿も声も彼らには気づかない。

老人の身体は薄っすらと透けており、僅かな灯りから生まれるであろう影すらもない……それもそのはず、既に老人はこの世に存在しない魂だけの存在だからだ。

 

『やめろっ、やめてくれっ』

 

抗議の声も懇願する嘆きも聞こえない。

既に亡くなった者の声は、今を生きる者たちの耳には入らない。

生者と亡者……二つの境界が交わることなど在り得ないと、それが世界のルールだった。

 

「悲しいことだ」

 

ふと、目の前にいる男女とは違う声に老人が振り向く。

先ほどまで誰もいなかった自分の後ろに立っていたのは、長身で大柄の男性。

筋骨隆々とした肉体の上には黒い袈裟を羽織り、数珠の代わりに灰色のストールを巻いた装いをした僧のような人物。

しかし、目元を隠すように黒いサングラスを装着した強面のスキンヘッドはまるで裏社会の人間にも見える……そんなちぐはぐな印象を与える。

 

「今を生きているにも関わらず、そのありがたみを知らずに贅を肥やす……悲しいことだと思わないかな、ご老人?」

 

サングラスの僧は語りながら、老人に視線を向ける。

自分の姿が見えること、そして透けていない身体から生きている人間だと気づいた。

 

『お、お坊さん……で良いのかな?彼らに注意をしてやってくれないか、この公園を汚すことをやめるように言ってくれるだけで構わない。どうか、どうかお願いします!』

 

老人が必死に頭を下げる。

彼は別に追い払って欲しいわけではない、ただこの公園で迷惑行為をしないだけで良いのだ。

その様子にサングラスの僧はしばらく逡巡すると、しばらくして口を開く。

 

「それならば、あなたが代わりに言えば良い」

『だが、私には……』

「心配はない」

 

サングラスの僧が取り出したのは、筒状の奇妙な形状をした小さな道具……何かの容器にも写真のフィルムにも見えるそれには、複眼を持つ仮面を身に着けたシオマネキが映っている。

 

「未練を晴らす力を授けよう」

【FIDDLER CRAB!】

 

上部のスイッチを押し込み、音声を鳴らした道具『ライドエマキ』をサングラスの僧は老人の身体へと埋め込んだ。

 

『がっ、あぁっ!?あぁぁぁぁああああああああああっっ!!!』

 

胸元を抑え、苦しむ老人に変化が起こる。

筒状の道具はまるで巻物を広げるように展開すると、彼の全身に巻き付きながら霊体を変異させていく。

 

『はぁぁぁぁ……!』

 

やがて、老人の姿は完全に変貌していた。

布を纏った素体の上に甲殻類を思わせるような黒い装甲を持ち、蟹脚がまるで人間だった老人の名残であるかのように顔の下半分から生えている。

宛らシオマネキを人型にしたような異形だが、右腕に生やした巨大な鋏は植木鋏のように鋭利かつ禍々しい気を放っている。

そして、その気配に気づいた数人の男女が『実体を得た老人の変異する怪人』を見て悲鳴をあげた。

 

「えっ、うわあああああああああっ!!?」

「な、何よあ…」

『貴様らあああああああああっ!この公園を汚すなあああああああああっ!!』

 

怒りの声を響かせながら老人の霊が変異した怪人『レヴスト』が巨大な鋏を開閉しながら男女へと襲い掛かる。

その様子を見たサングラスの僧は僅かに笑みを浮かべている。

 

「行け、『フィドラークラブ・レヴスト』。お前の未練を断ち切ってこい」

 

そういった彼の腰には酒の醸造道具を思わせるベルトが装着されており、その横に下げてある杯に色がどんどん溜まっていく。

 

「素晴らしき幸福な夜に、乾杯」

 

不気味な光を放つ液体の入った杯を手に取り、フィドラークラブの災害を肴に液体を飲んだ。

 

 

 

 

 

どれくらいの時間が経ったのだろう。

サングラスの僧が視線を向ければ、先ほどまで花火を撒き散らしていた若者たちが地面に倒れている。

切り傷や打撲の跡こそあるが、意識ははっきりとしている。

その中心には、肩で息をしているフィドラークラブの姿。

 

「何を手加減している?」

『いや、私はただ……』

「こいつらに生きている価値はない。お前の公園を壊そうとした度し難い悪党だ……同情する必要な容赦する必要もない」

『……』

「何、命を奪うつもりがないなら腕なり足なり切り落としてしまえ。この公園を守るためだ」

 

そう囁かれたフィドラークラブはゆっくりとリーダー格らしき少年を見据えると、右腕を鋏を見せつけながら近づいていく。

 

『この場所は、私が守る。そうだ、私だけだこの場所を』

「来るな、やめてっ。俺たちが悪かったから、だから……」

 

命乞いの言葉も聞こえない。

現世へと舞い戻った怨霊……レブストに生者の声など響かない。

あるのはたった一つ、自らを縛る未練を晴らすこと。ただそれだけだ。

やがて、フィドラークラブの右腕が少年の足を剪定しようと動かした瞬間だった。

 

『っ!?』

 

黒い何かが視界を横切った。

動揺し、一瞬だけ動きを止めると少年の姿が消えている。

「何処にっ」と周囲を見渡す。

そして。

 

「ここさ」

 

青年の声が響いた。

サングラスの僧とも、先ほどまでの少年たちとも違う声……慌てて振り向けば、離れた場所に非行少年たちが気を失った状態で寝かされている。

そして、一人の青年が彼らを守るように立っていた。

軍服のような制服と白い手袋に身を包み、端正な顔立ちをした青年の姿を見たサングラスの僧は舌打ちをすると、その場から音もなく消え去る。

それに気づきながらも、青年は被害者の安全と目の前の怨霊を打ち倒すべく思考を切り替えて対峙する。

 

「そこまでだ。死んでから罪は重ねるものじゃない……ってことでさ、大人しく成仏を受け入れてくれないか?」

『黙れっ!この公園を守るっ、私だけが守れるんだっ!邪魔をするというのなら』

 

フィドラークラブが右腕の植木鋏を広げる。

威嚇するように激しく開閉する様子に息を吐いた青年は懐からある道具を取り出した。

右側が忍者道具である苦無の持ち手を思わせるようなレバーと、中央に黒いディスプレイが配置された奇妙な形状の道具……それは軽く腰の前に置くことで両側からベルトが伸び、バックルとしての役割を果たす。

 

「だったら、強制的に成仏させてやる」

【HOPPER!】

 

次に取り出したのはライトグリーンのライドエマキだ。

日本刀を口に咥えた飛蝗が描かれたホッパーエマキを起動させると、それを中央上部のスロットに装填。和太鼓とギターの妙に軽快な待機音声が響き渡る。

動揺するフィドラークラブにほくそ笑みながら、彼は苦無の持ち手型レバー『ニンポウスターター』を引っ張り、自らを変えるあの言葉を叫ぶ。

 

「変身っ!」

【霊装体現!】

 

ライドエマキに秘められた情報を読み取り、跳ね回る飛蝗忍者のアニメーションがディスプレイに映し出されると同時に青年の身体が和を思わせる忍者のような黒いスーツに包まれる。

その上からライトグリーンの軽装甲が音を立てて装着され、変身が完了した。

 

【風の忍法、風の術!HOPPER NINJA!】

銀色の触覚と赤く光る飛蝗の如きマスク、首元から生やした白いマフラー、和風でこそあるがメカニカルな意匠を持った装甲は忍者というよりは戦士。

ライドエマキを使用しているにも関わらず、自分とはまるで異なる姿に動揺するフィドラークラブは反射的に叫んでいた。

 

『お前っ、何者だっ!?』

「霊装忍者……またの名を『仮面ライダーエイゲツ』」

 

自らの名を告げた彼はバックルの左側にあるボタンを押すと、右腕を自身の前にかざす。

 

【口寄せ忍法、コゲツ抜刀!】

 

音声と共に出現したのは一振りの小太刀。

メカニカルな造形をしており、柄頭の部分にはライドエマキを装填するスロットがある。

 

「ふっ!」

 

専用武器『コゲツ』を逆手に構えたエイゲツはフィドラークラブを見据え、地面を蹴った。

距離が離れているにも関わらず、強化された脚力によって一瞬で距離を詰めるとコゲツによる高速の斬撃が襲う。

 

『がっ!?こ、このっ!』

 

不意を打たれたフィドラークラブはすぐさま体勢を立て直し、右腕の鋏による攻撃を仕掛ける。

木の枝どころか人間ですらも両断する切れ味を誇り、まともに受ければただでは済まないだろう。

しかし、それは当たればの話だ。

エイゲツはその鋏を躱し、確実に自身の攻撃を連続して当てていく。

ただ躱しているだけではない。

右腕以外の攻撃は防ぐか捌き、フィドラークラブの鋏にだけ回避をするように専念しているのだ。

やがて、自分の攻撃が当たらずに焦りを覚えたレヴストは次第に冷静さを失っていく。

 

『ふざけるなああああああああああっ!私の、私の邪魔をおおおおおおおっ!!』

 

眼光を光らせたフィドラークラブが右腕から刃状の衝撃波を放った。

風を切る音と共に放たれた斬撃にエイゲツは慌てて側転して回避する。

その隙を逃すまいとフィドラークラブが接近する。

 

「しまっ」

 

自らの不覚に気が付くも、もう遅い。

その巨大な右腕は、容赦もなくエイゲツの胴体を上下に両断した。

 

『は、ははははっ!やったぞ、これで……』

 

邪魔者を排除し、笑う怨霊は真っ二つになったエイゲツを見下ろす。

しかし、次の瞬間には驚愕に染まっていた。

何故なら、その場所には単なる木が転がっていたからだ。

 

【変わり身忍法!危機一髪!】

『な……ぎゃああああああっ!?』

 

動揺する間もなく、後ろからの強烈な蹴りを受けたフィドラークラブの身体が吹き飛んだ。

防御姿勢も取れずに地面を転がり、混乱する思考を必死に整理しようと顔を上げる。

 

「あっぶな……」

 

そこにいたのは自身が両断したと思っていたエイゲツの姿だ。

マフラーを風で靡かせながらも、仮面の下では僅かに焦りの色が見える。

エイゲツの使用するベルト『エイゲツドライバー』は霊装忍法と科学を混ぜ合わせた退魔道具……古来より、怨霊の類と戦うべく存在する霊装忍者は時代と共に進化を遂げてきた。

そしてエイゲツドライバーには致命傷になり得る攻撃を一回だけ完全無効化する『変わり身の術』が組み込まれており、それが作動したことで命拾いしたのだ。

 

「さてと、あんたの業を晴らす時だ」

 

立ち上がろうとするフィドラークラブを睨み、レバーを操作する。

瞬間、エイゲツドライバーから必殺技となる忍法が告げられる。

 

【超NIN-PO! HOPPER NINJA!!】

 

ハイテンションな音声と共にドライバーのディスプレイから飛蝗のアニメーションが躍動し、自然エネルギーが飛蝗の形へと構築されていく。

エネルギーは複眼を赤く光らせたエイゲツの両脚にチャージされると、そのまま地面を蹴った。

 

『くっ!?』

 

その速度は、まさに電光石火。

極限まで高められた脚力は一瞬でエイゲツの姿を敵から隠し、相手の動揺と混乱を誘う。

そして、それを感じ取ったかのように若き霊装忍者は飛び蹴りの構えでフィドラークラブの前に現れた。

 

「はぁあああああああああっ!」

 

その一撃は弾丸の如き勢いのまま加速して怨霊の身体を貫き、少し離れたところで着地する。

風穴を空けられたフィドラークラブはしばらくよろめくも、致命傷となった攻撃にどうすることも出来ず。

 

『ぎぃぃぃやあああああああああっ!!』

 

絶叫し、地面へと倒れながら爆散した。

エイゲツは振り返り、先ほどまでいたフィドラークラブ・レヴストの場所まで歩く。

 

『う、ううっ』

 

そこには、先ほどまで怪人となって暴れていた老人の霊がいた。

足元にはフィドラークラブのライドエマキが破損した状態で転がっており、それは完全な決着を意味していた。

 

『私は、私はこの公園を守りたかったんだ。子どもたちが遊んでくれる、この場所を……』

「後のことは俺に任せな。あんたの未練は、俺が晴らすさ」

 

明るい調子で笑うエイゲツに老人の霊は「ありがとう」と微笑むと、優しい光と共にこの世から旅立っていった。

霊装忍者の使命とは、未練に縛られた霊を解放し本来のあるべき場所へと旅立たせること。

無事に彼が旅立ったのを確認したエイゲツは変身を解除し、バカ騒ぎをしていた連中の応急処置と……ついでにほんの少しだけお灸をすえるべく、次の行動へと移るのだった。




 実はフェアリーシリンダーを書いた際、自分の中にある手応えを感じられず、四苦八苦しておりました。
 そこで、前々から構想のあった魔法科学ならぬ忍法科学の忍者ライダーに組み込んでみました。てなわけで、ここからアイテムや用語の紹介。

・ライドエマキ
動物のチャクラを科学技術によって封入された絵巻型アイテム。絵柄の特徴としてホビーアイテムのようなデフォルメ化しているのが特徴。
普通の人間が使うには影響はないが、式神や地縛霊などの霊的存在に使用するとレヴスト化してしまう危険性も孕んでいる。

・レヴスト
現世に未練を残した霊が変異した姿。エイゲツの世界では幽霊などは現実世界に影響を及ぼすことはないが、強い未練によって怪人化してしまうことがあり、怪人化した霊は実体を得て暴走してしまう。昔は怨霊と呼んでいたが、現在は外国にも怨霊が確認されたことから共通の用語としてレヴナントあるいはゴースト……二つの造語でレヴストと呼称するようになった。

・霊装忍者
霊術を扱う忍者の総称であり、退魔師とも。エイゲツの世界において、歴史の教科書で語られる忍者とは仮の姿であり、怨霊から人知れず戦っていた霊装忍者こそ本来の忍の姿である。


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仮面ライダーファルベ 色を失くした色彩ライダー

以前短編で投稿した色彩ライダーのリメイクです。

リメイク前はこちら →https://syosetu.org/novel/114713/32.html


それは、バケツをひっくり返したような酷い雨の日だった。

何処までも広がる青空が灰色の雲に覆われ、近年稀に見る豪雨の中を一人の男性が慌てたように走る。

 

「あーったく、買い物帰りって時に!」

 

年は四十代ぐらいの、それでも背筋がしっかりとした長身の彼『色ヶ谷縁(しきがやエニシ)』は人懐っこい印象を与える顔立ちをしかめながら、買い物袋を抱えたまま転ばないように足を動かす。

片手で差している傘は頭を守る程度の役割しか果たせておらず、上下の衣服もずぶ濡れとなっていた。

「帰ったら最初に風呂だ」と今日の天気に愚痴を零す代わりにそう独り言ちながら、慣れ親しんだ道を走っていく。

 

「……んっ?」

 

やがて自宅まであと少しのところで、思わず足を止めた。

気になった縁が路地の方に視線を向けると、一人の少年が座り込んでいた。

傘も差さず、雨や土で汚れたコートで身を守るように……。

 

「なっ!?」

 

この雨の中で服を着ていない少年に慌てて駆け寄り、自分が濡れるのも構わずに雨から彼を守るために傘を向けると安否を確認する。

 

「おい、大丈夫かっ?」

「……」

 

ここで、ようやく少年は顔を上げた。

虚ろな表情は焦点が定まっておらず、呆けたようなあどけなさの残る顔で男性を見つめる。

同時に、縁は少年の姿を見て驚いた。

短く切られた髪は白くなっており、ストレスや遺伝子による白髪……というよりは色素が一切なく、まるで色が抜け落ちたよう。

虚ろな瞳もまた色がなく、硝子のような無彩色の視線が縁に向けられている。

 

「……俺は」

 

少年が口を開く。

必要以上に低くもなければ高くもない、声色すらも何処か色味が感じられない。

それでも言葉を聞き逃さないように、縁は次の言葉を待つ。

だが……。

 

「俺は、誰なんだっ」

 

頭を抱え、悲痛な表情で少年は問い掛けてくる。

同時に、縁は気づいてしまった。

目の前にいる少年は記憶も姿も声も、自分自身という『絵』を構成する全てが失ってしまったのだと……。

それは、モノクロに染まった酷い雨の日のことだった。

 

 

 

 

 

人が集まり、賑わうテーマパーク内で悲劇は起こっていた。

大勢の家族連れや恋人たちが恐怖と混乱で逃げ惑い、パーク内のスタッフたちが懸命に避難誘導を行う。

多くの来客を楽しませるためのアトラクションは全ての機能を停止し、束の間の休憩地である飲食店も破壊され尽くしている。

しかし、それは強大な力によって破壊されたものではない。

 

『……』

 

騒ぎの根源であるエバーグリーンの霧がゆっくりと動く。

それが過ぎ去った場所は瞬く間に砕けてしまう……が、それは暴風などではない。

周囲の器物は壊れたというよりは、奇妙なことに無数の生物が齧った痕跡が残っている。

実際に、その印象は正しい。

あれは霧などではない。

 

『ギシィィィィィィィッ』

 

甲殻類の如き棘を生やした小さな蝗が、夥しいほどの群れで構成されている。

それらは見境なく周囲を貪り尽くしながら、逃げる人々を追跡する。

やがて、蝗の群れが動きを止めた。

 

「ひぃっ。あぁ……!?」

 

腰を抜かし、必死に逃げようと足掻く小太りの中年男性。

スタッフの中でも問題児に該当する彼は、肥えた身体を引きずりながら「どうして自分が」と自問自答する。

自分は支配人になるべき人種、それなのにどうして自分は選ばれない、何故こんな無様な姿を晒して逃げねばならないのか……そんな自分本位の考え。

歪に彩られた彼の理想に、蝗の群れが気づいた。

 

『お前、飢えているのか?』

「……へっ?」

 

霧のように見えるほどだった蝗の群れが集まり、徐々に人の形へと成していく。

その姿は、蝗を人型にしたような異形……。

手足や両肩には口を大きく開いた蝗の顔が埋め込まれており、インクで構築されたような鈍い緑に彩られた細い身体から放たれる威圧感はまるで『蝗害』のようだが、背中から生やしたダーククリムゾンの筋足はまるで巨蟹を思わせる。

ちぐはぐでありながら、何処か芸術性を感じさせる異形……怪人の腰には三つのボタンがあるカラースプレーやエアスプレーのようなバックルが装着されており、右側にインク壺のような小さいアイテムを装填したスロットとグリップが備わっていた。

 

『お前、飢えているのか?』

「ひぃっ!?な、何を言って……」

『自分の理想を理解しない連中に苛立ち、理想が描かれない今の状況に飢えているんじゃないか?』

 

まるで心を見透かされたように言い当てられた男性の恐怖心が少し消え、問われるままに頷く。

それで充分に満足した怪人『グラフィティ』は愉悦の混じった笑い声を漏らすと、懐から小さなインク壺を取り出す。

円柱の容器にはフレイムレッドのインクが詰まっており、ラベルには火を噴き出しているゴツゴツした溶岩のイラストが描かれている。

 

『理想を描け。描いた理想の自分で、この遊園地を塗り潰せ』

 

受け取ったインク壺『カラーライドポット』を暫く見つめていた男性は言われるがままに、蓋の形状をした上のスイッチを押し込んだ。

 

【DRAW……MAGMA!!】

 

不気味な音声と共にインクポットからインクが噴き出し、彼の身体を塗り潰す。

全身を包むインクは肉体を男性が思い描く理想の姿へと描き、その姿を変貌させた。

 

『何だこれ、力がっ!力が漲って来るっ!?これなら、ここの支配人に……いや、もっと上の地位にだってなれるっ!!』

 

画用紙を思わせる歪な灰色の身体に、フレイムレッドに染まった溶岩を纏ったような不気味な上半身を持つグラフィティ。

岩の隙間からは燃え盛る炎のような装飾があり、見ようによっては溶岩や炎を人型にしたような不気味な造形をしていた。

力を込めて全身を赤く染めた異形『マグマ・グラフィティ』は雄叫びをあげて身体中から炎を撒き散らすと、既に人がいないテーマパークの中心で自らの理想を形にするべく破壊活動を行う。

それに満足した蝗害のグラフィティは再び身体を無数の蝗に変化させると、今度こそ完全に姿を消してしまう。

それに気づくことなく、暴走するマグマは更なる破壊活動を進めるべく歩き始めた。

 

『は、ははっ、ひゃっはははっ!』

 

グラフィティに芸術性などない。

手前勝手に描いた理想に酔いしれ、歪みに歪んだ価値観で全てを塗り潰すまで止まることはない。

この世界は、悪意を抱いた人間の生み出した落書きによって蹂躙されようとしていた。

しかし、それを許さない者がいる。

 

『……あっ?』

 

一人の少年が、真っ直ぐと歩いているのが見えた。

緑色のストールを首に巻き、青いジーンズを履いた彼はグラフィティに恐れることなく近づいてくる。

赤と青の靴が印象に残る彼の服装はカラフルだが、奇抜ながらも何処か様になっている。

 

「うーわ、派手にやったなぁ」

 

少年が荒れたテーマパークを見ながら溜息を零す。

その様子は警戒心ではなく残念そうな感情が見え隠れしており、目の前にいる怪人よりも荒れ放題となっている惨状に対して関心を向けている。

当然、それに面白くない反応を見せたのがマグマだ。

人知を超えた力を手にした自分に興味を持たない少年に苛立ち、威嚇とばかりに炎を軽く噴き出す。

しかし、それすらも少年の心に恐れの色が付着することはない。

 

「親っさんから聞いたけど……『遊園地』ってのは色々な人が楽しむ場所なんだろ?それを台無しにするってのは、許せないよな」

 

瞬間、色素のない瞳がマグマに向けられた。

無彩色の視線は僅かながらの怒りが宿り、目の前の怪人に明確な敵意を込めて睨む。

そして、懐からタブレット端末のような形状をした機械を取り出した。

右側には小さなスロットと中央には横に配置された長方形型のディスプレイがあり、左側に持ち手のようなサイドハンドルがあるそれを腰に当てて左右から伸びた銀色のベルトによって固定する。

 

【FARBE DRIVER!!】

 

自らの名を告げる『多彩装色ファルベドライバー』を装備した少年『色ヶ谷彩人(しきがやアヤト)』は、今度はブライトグリーンのインクが詰まった小さなインク壺を取り出す。

 

『それはっ!?』

 

マグマが分かりやすい動揺を見せる。

それもそのはず、それは自分が変異した物と同じカラーライドポットだったからだ。

彩人は得意気に笑うと、旅人を思わせる仮面の戦士が描かれたライドポットのスイッチを押して起動する。

 

【SEEKER!】

 

『シーカーライドポット』の音声が鳴り響き、すぐにスロットへと装填。

ドライバーから流れる待機音声を背後に、左側のサイドハンドルを押し込んだ。

 

「変身!」

【GRADATION UP!】

 

短く紡がれた言葉と共に音声が響き、ディスプレイにラベルイラスト同じ戦士の絵図が映し出されると、全身を黒いスーツに包んだ彩人の頭上にスロットへ装填したカラーライドポットと同じ形状をした壺型エネルギーが出現。

それは下へ傾くと同時にインク型のエネルギーが降り注がれることで彩人に変化が起こる。

上塗りを繰り返すエネルギーは小さなハット型のマスクと軽鎧型のプロテクターを徐々に形作り、スーツの上から覆うように描き出していく。

腰の下半分から伸びるローブを靡かせ、一人の戦士が完成したことを証明するように橙色の複眼を輝かせるのは、探索者を彷彿させる甲冑の戦士だった。

 

【色彩を求めるWIND SEEKER! FANTASTIC!!】

 

完成図に賞賛するようなファンファーレが鳴り響くと、ブライトグリーンに彩られた柄が特徴的なショートソードが出現し、それを握る。

刀身は白く、切っ先が淡く緑色に染まった独特な形状の筆剣『シーカーソード』を軽く振って風の軌跡を描く戦士。

その姿は英雄……自分という色彩を失った彼が想像する『理想の英雄像』そのもの。

狼狽するグラフィティに向けて、剣を構えた戦士が高らかに名乗る。

 

「俺は『仮面ライダーファルベ』。勝利の色を見せてやるよ」

 

瞬間、彩人の変身するファルベが地面を蹴った。

踏み出した足で確実に距離を詰め、勢いを削ぐことなくマグマに向かってシーカーソードを振り下ろす。

不意を突かれた形となったグラフィティが避けることも出来ず、岩のような身体から自身の炎とは違う火花を散らして大きく仰け反る羽目になる。

 

『がぁっ!?あ、このっ!』

「よっと」

 

プライドを刺激されたマグマが怒りを露にして反撃を繰り出すも、単調な軌道を描く攻撃は瞬く間に躱されてしまう。

それは気ままな風のように、自分の求めるままに道を探し求める旅人のように、歪な理想に染まることなく探索者の英雄は余裕のままだ。

ファルベの基本形態でもある『シーカーカラー』はスピードとパワーのバランスに優れており、ショートソードによる剣術を織り混ぜた格闘戦を得意とする。

 

『ふざけっ、がっ!ごあぁぁああああっ!』

 

マグマの攻撃が大降りになった隙を縫うように強烈なミドルキックを叩き込み、その身体を吹き飛ばした。

 

『ぐぶぅっ!?くそっ、がぁぁあああああああっ!!』

 

激情に染まったマグマが絶叫し、半狂乱となって全身から溶岩を噴き出した。

放たれた溶岩は火球のようにファルベに向かって降り注がれる。

当然それも回避するが、着弾した個所は炎と共に溶解しており、決して侮れない威力を物語っている。

 

「マジかっ!?」

 

怒りのマグマは絶え間なく溶岩を撒き散らす。

攻撃は激しくなり、シーカーソードで弾いたりもしているが時間の問題だ。

 

「ならっ!」

 

しかし慌てることなく、ファルベはドライバーに装填されたシーカーライドポットのスイッチを押し込んで起動する。

 

【SEEKER PAINT!】

 

インクを補充されたドライバーが鳴ると同時に、突如として激しい風が巻き起こる。

緑に彩られた旋風はファルベの周囲を薙ぐだけでなく、あまりの強風にマグマが怯んでしまう。

その隙を逃さなかった。

 

「はぁっ!」

『ぎぎゃあああああああっ!?』

 

風邪を纏ったファルベの一撃が、またしてもマグマの身体を斬り裂く。

情けない悲鳴を漏らすグラフィティに連続蹴りを浴びせ、その勢いを利用してシーカーソードを何度も振るう。

そして、柄にあるトリガーを弾いて切っ先からインク型のエネルギーを纏わせると片手斧のような形状へと変化させ、強烈な一撃がマグマに叩き込まれた。

 

『がっ、はぁ……うぁっ』

 

どうにか立ち上がるも、その身体には色が失われており、苦しそうに胸元を抑えている。

その覚束ない様子から勝機を確信したファルベがサイドハンドルを再び押し込んだ瞬間、ドライバーから新たな音声が鳴り響いた。

 

【SEEKER! FINISHING COLOR!!】

 

両の複眼が一際強く輝き、緑の風が不規則に流れながらも右脚へと収束される。

そして、空高く跳躍すると強い光を放つ片足を突き出して急降下を始めた。

 

「でりゃああああああああーっ!!」

 

圧縮させたエネルギーを一気に解き放ち、緑の軌道を真っ直ぐ描きながら止まることなくマグマへと暴風が迫り来る。

それは衝撃と音が周囲一帯を揺らし、理想を騙る歪な溶岩の落書きを捉えた。

 

『ぐっっぎゃあぁああああああああっっ!!?』

 

必殺技のキックが直撃し、壮絶な断末魔の叫びをあげたマグマ・グラフィティは爆散。

変異していた男性も白目を剥いて気絶した状態で地面を転がり、近くに落ちた空のインクポットが爆ぜるように小さく砕け散る。

戦闘を終えたファルベは先ほどまでグラフィティとなっていた男性の元まで駆け寄り、安否を確認すると何事もなかったようにその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

マフラー部分が絵具チューブを象った緑色の専用バイクを走らせながら、ファルベは誰に聞かせるでも一人問う。

 

────自分は何者なのか────

 

縁に拾われ、彼の養子となったファルベ……彩人が覚えていたのは一般的な現代社会の知識だけ。

携帯や箸などの道具の使い方、食事の作法や動物の名前なら人並みに分かる。

だけど、自分の名前や家族のことが何も分からないし何も思い出せない。まるで色が抜けたデッサンのように、『自分』に纏わる記憶や情報だけが思い出せない。

手元にあったのはカラーライドポットとファルベドライバーだけで、身分を証明するものすらなかったのだ。

 

「それでも、俺は戦わなきゃいけないっ」

 

グラフィティと仮面ライダーの確かな共通点、それを明らかにするまで彼は戦う。

自分の記憶だけではない、心の奥底に宿る優しい熱を、それが名前すらも失ってしまった自分がやりたいことだと信じている。

 

「目の前に映る景色は、絶対に消させない」

 

そう決意を口にして今の自分である『色ヶ谷彩人』を新しく塗り直すと、ファルベはアクセルを噴かしてマシンを加速させた。




アルカナ要素を廃止し、色の要素を強くする形で再構築したのが本作の仮面ライダーです。
ファルベはドイツ語で「色」を意味していて、シンプルかつお洒落な名前になりました。改めてですけど、ドイツ語やラテン語って日本人の中二心に刺さりますよね。
『色』がモチーフとなる本作のコンセプトは『理想』がテーマとなっています。仮面ライダーはファンタジー職業をモチーフとし、インクの色とモチーフから『理想の英雄像』を思い描くことで変身、その真価を発揮します。反面、己の理想に縛られて偏った姿や解釈をしてしまったのが本作の怪人グラフィティです。
幹部クラスはドライバーを使うドーパントタイプ。モチーフは黄道十二星座……ではなく、黄道十二宮の天使(デーモン)です。理想を守っていた天使が理想で全てを塗り潰す悪魔に変じたというイメージです。
主人公はアギトの翔一やビルドの戦兎みたいな記憶喪失系。髪が白かったりなどまるで彼を構成する何かが抜けてしまっています。色モチーフの仮面ライダーで服装もカラフルなのに、身体に色素がない容姿の変身者にしました。


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★アルカナライダーテスト版 仮面ライダーウルーガル

 アルカナライダーのテスト版です。設定は変更される場合がありますのでご注意を。


月のない闇夜に、それは起こっていた。

助けの来ない廃墟の中で、一人の男性が逃げ惑う。

その顔は恐怖の表情に染まっており、ただひたすらに足を動かすか息を殺して隠れ潜むかしか手段が残されていない。

この人間は『獲物』だ。

トラブルになるようなことも炎上するようなこともしていない、SNSでほんの少しだけ有名になっただけの人間に過ぎない。

「何で自分が」と問い掛けたが、彼を拉致した『狩猟者』は事もなく理由はないと言い放った。

 

────「そういう奴を狩るのが、楽しいから」────

 

そうして制限時間内に逃げ回ることを強要された。

廃墟から外に出る暇さえもない。相手が普通の不審者ならば知恵を巡らせることも出来ただろう。

しかし、相手は己の理解や常識を軽々と超える怪物だった。

 

 

『あっれー?追い詰められちゃったねぇ』

 

軽薄な男の声が聞こえる。

肩を震わせ、慌てて振り返れば、自分の命を狙う『狩猟者』がゆっくりと近づいてくるのが見えた。

それは見紛うことなき『怪人』だった。

灰色の簡素な身体の上半身は熊のような屈強な肉体で両肩に拳銃のような巨大な銃口が生えており、頭部はフクロウの頭部と翼を思わせる。一見するとアンバランスだが、それを白い糸で強引に縫合したような痛ましい姿が印象的だった。

宛ら敗れた縫いぐるみを補強したかのような怪人『ディスピール』こそ男性の命を奪う狩猟者であり、人間狩りを『楽しい』と思っている歪な存在だ。

 

「何でっ、何でこんな……!」

『楽しいからだよ、良い気になっている奴が逃げ惑って泣き喚く姿を見るとすっきりするんだ……犬や猫を撃つよりもずっと爽快で!リアルな反応が最高に楽しいんだよっ!!』

 

狂喜するように嗤うディスピール『オウルベア・ディスピール』は鬱屈とした感情と悪辣な持論を意気揚々と語り、男性は直感する。

この怪物は何度も同じことを繰り返し、今回はたまたま自分が選ばれたのだと……。

それは自分がどれだけ逃げても隠れても絶対に助からない事実であり、希望の道が断たれた決定的なものとなった。

顔を青ざめる彼にオウルベアは楽しそうに嗤い、ゆっくりと確実に歩いてくる。

体力はもうない、逃げ場もない、自分に出来るのは悲鳴をあげて恐怖の表情で人生を終えることだけだ。

 

『見せてくれよ有名人、無様に泣き叫んで助けを乞う姿を、俺にっ!!』

 

距離を詰めたディスピールが巨大な爪を持つ腕を振り上げた。

瞬間、異常な悪寒が廃墟内に広がる。

 

『っ!?』

 

背後から刃物を突き付けられたような鋭い敵意、同時に響く足音。

ブーツの踵から生じる音が徐々に近づいてくる。

最初はゆっくりだったが、それは段々と速くなる。

やがて、足音の主がこちらまで走って来ること気づいた時にはオウルベアが大きく怯んでいた。

 

『な、あっ!?』

「……」

 

異形の身体に飛び蹴りを叩き込んだ影は着地と同時に襲われていた男性の方を振り向く。

その人物は、奇妙な出で立ちをしていた。

紺色のコートとフードで全身を隠し、顔には白い仮面を被った怪人物。

背丈や体格から青年であるのは間違いない……しかし仮面の右側には三日月を思わせる赤いペイントが施されており、その下にある冷たい視線が背筋を凍らせる。

 

「……行け」

「へっ?」

「出口が既に破壊した。この場で死にたくないなら、全力で走って逃げろ」

 

その言葉に、男性は慌てて走った。

警察に助けを求めるのか、それとも病院に行くのか、それとも今夜の不運を夢だと思い込んで家に帰るのか、少なくともフードの人物からすれば興味などない。

目的は、人間狩りのディスピールそのものなのだから。

 

『……人の狩りを邪魔して何のつもりだ?「人狼」さんよぉっ』

 

不機嫌さを隠そうともしないオウルベアにフードの人物……『人狼』は口を開く。

 

「お前の勝手な行動で仮面ライダーどもが勘付き始めた。こちらは忠告したにも関わらず犯行を続け、更にはエスカレートしている始末……『アルカナノーツ』は貴様の処分を決定した」

『ディスピールの基本原理は「楽しいこと」だろ。だったらお前らの話なんか聞かねぇっ!俺は、俺を無視した雑魚どもをっ、狩りたいんだよっ!!』

 

手前勝手に吠えるオウルベアが威嚇するも、人狼の動揺はない。

むしろ、最後の警告すらも無視した相手の矮小さに侮蔑の感情すら宿っている。

 

「俺の仕事は、他のディスピールの『楽しい』を邪魔する連中の排除だ」

 

そう言い放ってからコートを軽く開き、腹部に巻き付けていた奇妙なベルトを露にする。

右側に口を開いた獣を象ったゼンマイ(巻鍵)が備わった、奇妙なバックルだ。バックル前部分の両側には緞帳のような赤い装飾が施され、中央のディスプレイは宛らミュージカルや演劇を行うステージのような形をしているなど全体的に舞台を思わせる。

ステージを象ったディスプレイには既に何らかのアイテムが装填されており、赤い眼を光らせたデフォルメチックな三日月のキャラクターが描かれている。

しかし、三日月には獰猛な牙を剥き出しにて笑う獣のようでもあり、まるで月に向かって吠える狂気の人狼をも彷彿とさせた。

 

【WOLOUPGAL DRIVER!】

 

名を告げたドライバーがスロットに装填されたアイテムを認識し、待機音声を鳴らす。

流れる音楽は物語の始まりを告げるように壮大ながらも音程の外れた音色が敵対する者の不安を煽る。

右手で巻鍵を摘まみ、左手の人差し指をゆっくり突きつけた後に首を掻っ切る仕草をしながら慣れた様子で『あの言葉』を呟いた。

 

「変身」

【LIGHT UP!】

 

持ち手を回した瞬間、認証した音声と共にディスプレイが赤い光で淡く彩られる。

人狼の頭上に紅い満月型のエネルギーが質量を持って出現すると、彼の身体を照らし始める。

まるで主人公に向けられたスポットライトのように、これから起こる運命を暗示するように……鮮血の光を浴びた人狼の身体に変化が起こった。

月と同じ鮮血のスーツが全身を覆い、その上に闇夜を思わせる紺色の刺々しいアーマーが装着されていく。

両手足にはアーマーと同色の毛皮が装備され、首元から狼の尻尾を思わせるマフラーを靡かせる。

 

【EIGHTEEN THE MOON……! THAT IS BERSERK HUNTER WOLOUPGAL】

 

頭部は狼を思わせる三角の角を生やしており、左側に「ⅩⅧ」のローマ数字を象った赤い複眼が不気味な存在感を放つ。

最後に左手で右側のマスクを引っ掻き、傷跡のような赤い三本線のバイザーを光らせて変身が完了した。

その姿はワーウルフ、ライカンスロープ、ルーガルー……世界各地の伝承にある人狼そのものであり、月夜に狂う狂戦士(ウールヴヘジン)

名はウルーガル。『月』の大アルカナを宿した『仮面ライダーウルーガル』……それが変身した人狼の名だ。

 

「ハンティングタイム・スタート」

『幹部どもの飼い犬風情が……!』

 

先制攻撃をしたのはオウルベアからだ。

肥大化した腕から繰り出す熊の如き鋭い爪で引き裂こうとするが、ウルーガルからすれば単調な攻撃でしかない。

難なく回避すると、カウンターとばかりに強烈な右フックを打ち込む。

 

『ぐぶぅっ!?』

 

前のめりになったオウルベアの隙を見逃すはずもなく、ウルーガルの追撃が始まる。

顔面に左ストレートを叩き込み、両肩を掴んだかと思えば今度は膝蹴りを何度も浴びせる。

それはオウルベアの屈強な肉体に確実なダメージを与え、まともな反撃すらも与えないほどに苛烈だ。

やがて、ディスピールが妙な違和感を覚える。

 

『げぇっ!がっ、あぁっ!?何だ、攻撃が急に重く……ぐえっ!!』

 

そう、攻撃の威力が徐々に上がっているのだ。

見ればウルーガルの全身には返り血のような赤いエネルギーが纏わり憑き、攻撃だけでなく戦い方さえも苛烈となっていく。

増していく攻撃は次第に暴力的となり、鳩尾に拳を叩き込んだかと思えば顔面に膝をめり込ませる。

 

「……ラァッ!」

 

強烈な頭突きを浴びせたウルーガルが、脇腹を抉るような蹴りでオウルベアの巨体を吹き飛ばした。

呻き声と共に地面を転がる怪人はすぐに起き上がれず、苦しむことしか出来ない。

 

「所詮は弱い奴にしか粋がれない雑魚か」

『っ、あぁぁぁあああああああああっ!!』

 

その嘲笑に怒りをプライドを刺激されたオウルベアが叫んだ。

屈辱に身体を震わせながら、両肩に生やした銃口からエネルギー弾を発射する。

しかし、ウルーガルは躱すこともせずに拳と蹴りだけで弾いた。回避する必要もないと言わんばかりに、それを見せつけるように……。

 

『あっ、あっ、ひっ!?』

 

狩猟者を気取った小悪党の足が、一歩下がった。

目の前にいるのは絶対的な強者であり狩人。オウルベアの戦意は既に失われており、その表情は恐怖に染まっていた。

 

「見せてみろ、お前が無様に這い蹲る姿を」

 

吐き捨てた言葉と共に高く跳躍すると、巻鍵を二度回して必殺技を起動。

オウルベアが苦し紛れに銃弾を発射するも、その全てが弾かれる。

それでも恐怖から逃れようと滑稽に乱射する怪人の頭部に向かって、渾身の蹴りが放たれた。

 

【SHOW TIME! MOON FINAL!!】

 

マスクの複眼とバイザーが光り、スポットライトに照らされたウルーガルの全身に赤いエネルギーが迸る。

三日月のような獣が噛み砕くエフェクトと共に踵落としが頭頂部に炸裂。「うげぇっ」と短い悲鳴をあげて倒れそうになるオウルベアの顎を、今度は思い切り蹴り上げた。

 

【SHOW`S OVER!】

『ごっ、がっ!ぎゃああああああああああああっっ!!!』

 

壁に叩きつけられたオウルベア・ディスピールは爆散。そこから金髪に染めた男性が倒れると同時に何かが砕ける音が小さく響く。

身に着けている衣服はボロボロ、身体中も傷だらけで誰が見ても再起不能なのは明白だった。

 

「ひっ、ひぃぃぃっ」

 

目の前の狩猟者から必死に逃げようと身体を這って動く男性にウルーガルの変身を解除した人狼は、その顔面を思い切り蹴り飛ばして気絶させる。

首根っこを掴み、溜め息を吐くとその場を後にするのだった。




 以前活動報告で紹介した狼モチーフの仮面ライダーウルーガルです。自分の思うカッコ良いを寄せ集めたダークライダー寄りのオリジナルライダーとなっております。立ち位置としては魔進チェイサーで怪人を逃がしたり意にそぐわない個体を始末する役割を持っています。
 専用の武器はありませんが、必要となればその辺にある鉄パイプなどを使いますし敵の武器を奪うことも辞さないダーティな戦法がウリです。相手にダメージを与えたり自分がダメージを受けるとスペックが上昇するという性質を持ち、持久戦になればなるほど強くなります。ただし、体力などは回復しないため変身者自身のスペックが問われます。
 大アルカナがモチーフなので狼から連想して『月』をモチーフにしています。先行きの不安を暗示するため、朧気な不安≒情緒の安定しない狂気みたいに解釈しつつ三日月と人狼の要素を掛け合わせました。
 ドライバーのデザインは舞台劇。月のタロットカードはザリガニや狼が地上から見上げている構図となっているため、上空にある月をスポットライトに見立てました。摘まみを捻って照明を点けるようにゼンマイを回して変身します。ギーツに登場したゾンビバックルをイメージしてもらえれば。
 怪人の名前はドイツ語でゲームを意味する「シュピール」と歪などを意味する「ディスリスペクト」から。縫いぐるみが共通モチーフで継ぎ接ぎのような身体が特徴となっています。


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剣士外典 ワンダーライダーズ
嵐の剣士 仮面ライダーティルヴ


アニガサキと仮面ライダーセイバーの最新話を観ていたら、いつの間にか出来上がっていました。
それでは、どうぞ。


皆さん……ボンヌ・レクチュ~ル!僕はタッセル。

僕は今、小説家にして炎の剣士である『仮面ライダーセイバー』の『神山飛羽真』に注・目・中!

仲間たちとの溝は深まり、苦しい戦いを強いられている彼のこれからにと~~~~っても目が離せないっ!!

で・す・が……今回僕が皆様に薦めたいのは、この三つの本。

これは一つのお話から生まれた三人の剣士たちの物語……皆様の知る世界とは一味も二味も違う、全く別の剣士たちの戦い。

互いを輝かせる虹を護る嵐の剣士・九人の歌の女神たちを見守る蒼き炎の剣士・太陽と海を愛する月の剣士。緑・青・橙の三冊に分かれているよ。

僕がまず薦めるのは、この嵐の剣士。

それでは……バッドエンドから始まる物語をご覧ください。

 

 

 

 

 

人の賑わうショッピングモール。

休日というのもあってか男女や大人子ども問わず賑わっており、全員が楽し気な笑みを見せている。

 

「買い物付き合ってくれてありがとう!」

「ううん、こっちこそありがと。おかげで欲しい本も買えたし」

 

楽し気に談笑するのは二人の少年少女。

少年の方は少しだけ丈の長い長袖の少年……一般男子よりやや少し身長にグリーンの短い髪に可愛らしい顔立ちで、黒いメッシュが入っている。

服装はシングル型のブレザータイプの黒い上着とズボンであり、ボーラーハットを被った少し背伸びしたようなお洒落な格好だ。

帽子の位置を少し調整しながら少年『進藤虹哉(しんどうコウヤ)』は文庫本の入った紙袋を手に持っている。

対して笑顔を見せている少女は虹哉の幼少期からの幼馴染。

ライトピンクのミディアムヘアをハーフアップにし、右サイドは三つ編みのシニヨンで纏めている。前髪は左に流したぱっつん、真ん中の毛だけ特に左に跳ねている。

一見すると凝ったヘアアレンジだが、本人はそれを苦もなくしているのだから如何に女心に鋭くない彼でも、何となく「すごい」というのが伝わる。

 

「っ?どうかした」

「いや、別に……///」

 

髪を軽く掻き上げながら、視線に気づいた少女『上原歩夢』が微笑む。

その仕草に何故か高鳴る鼓動に疑問符を浮かべながらも、少し頬を赤く染めて「何でもない」と返す。

そんな気恥しさを誤魔化すように話題を変える。

 

「そ、そういえばさ!『あの件』なんだけどさ、本当に大丈夫?」

「え?うん、同好会の加入の件だよね」

 

虹哉の急な話題転換に戸惑いながらも、歩夢が頷く。

同好会……それはこの二人が所属する東京・お台場にある中高一貫校『虹ヶ咲学園』に存在する同好会『スクールアイドル同好会』のことだ。

彼らの高校にいると思われるスクールアイドル『優木せつ菜』と、そして他校のスクールアイドルグループ『μ's』と『Aqours』の合同ライブの配信を見て感銘を受けたのだ。

すごい……!

それが、虹哉の受けた印象だった。

元々作家志望でもある彼は、様々な文化に触れるべくこの学校の音楽科を専攻しているのだが、あの時のライブにとても心を奪われたのだ。

あの輝きを見れば、きっと自分の世界が広がるのかもしれない……。

そうして現在廃部寸前の同好会を立て直すべく、歩夢に協力を要請しているのだ。

 

「全然大丈夫だよ、私で役に立てるか分からないけど……」

「歩夢なら無問題だよ!ありがとっ!!」

 

可愛らしい顔から見せる満面の笑みに、頬を赤くした歩夢も笑顔で返すのだった。

 

 

 

 

 

 

『ついに来た……』

 

とあるビルの屋上。

本来ならばいるはずのないその場所に、三つの影があった。

一人は錆びて焦げたかのような漆黒の鉄仮面と甲冑、そして全身に紅のスーツで全身を覆い隠した存在……太陽の光のせいで詳細は分からないが、腹部にはバックルらしき物体と紫色のベルトが巻かれており、下半身に垂らした赤いローブからまるで『剣士』を思わせる。

しかし、景色を見下ろすその視線は禍々しいほどの悪意に満ち、並外れた憎悪を宿している。

左の腰にあるホルダーには赤と金に染まった西洋剣を納めており、剣士の感情に呼応するかのように火の粉が舞い散っている。

対してもう一人は人間の男性。

だがその姿は全身に西洋の甲冑を身に着けており、顔も兜で覆い隠しているためその容姿は判別出来ない。

見る人が見れば、まるで伝承に出てくる勇者を連想するだろう。

 

「さぁ、伝説の幕開けだ……お前の活躍に期待しているぞ」

 

甲冑の男性が最後の一人に振り向く。

それは明らかに人間ではなかった。

空洞状の目と口を持つ青白い顔と骨格を思わせる白黒の甲冑……まるで亡霊や骸骨を思わせるような異形が取り出したのは一冊の本。

背景は燃え盛る炎となっており、タイトルは禍々しいフォントの文字で掌に納まるほどのものだ。

男性の言葉に頷いた異形は、その本を躊躇なく開いた。

 

【KABE KARA GALGOYLE……!!】

 

ページに刻まれるは赤く目を光らせる不気味で醜悪な彫像。

瞬間、異形が開いた本『アルターライドブック』からは弾かれた封印の鎖の残骸と共に、灰色と黒の装甲が飛び出す。

宙へと浮かんだそれらは、しばらく開いた持ち主である異形の周囲を旋回すると音を立てて装着されていく。

頭部は悪魔を思わせるような黒く不気味な角、そして両腕には醜悪な翼のような装飾を持つ灰色の鉤爪……異形『素体メギド』の姿が本の力をその身に宿していく。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

やがてアルターライドブックの力を全て宿した素体メギドはその姿を大きく変えた。

まるで悪魔の彫像を思わせるような姿……『壁からガーゴイル』の伝承を宿した本の魔人。

 

『さぁ、この腐った世界を地獄へと叩き落せっ!ワンダーワールドの残骸……「アルターゾーン」へと染め上げろぉっ!!』

 

復讐の剣士『仮面ライダースルト』の叫びに呼応するように、完全体『ガーゴイルメギド』は再び雄叫びをあげた瞬間、この世界は黒く塗り潰された。

 

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

突然襲った謎の光に彼等の目に飛び込んだ光景、それに思わず顔を覆い隠す。

光が治まり、次に視界を開けた瞬間、世界を一変していた。

それを一言で表現するなら、極めてファンタジーな光景。

自分たちがいたのは間違いなく大型ショッピングモールだったはず……しかし、地面からは見たこともない植物たちが生えており、宙には竜や魚みたいな何かの化石骨が浮かんでいる。

まるで、異なる世界が現実世界へと浸食しているような、そんな景色が広がっているのだ。

当然、彼らだけではなく巻き込まれた一般人たちもいる。

 

「これは、一体……?」

「コウ君っ」

 

不可思議な世界に、虹哉が抱いたのは好奇心だ。

普段から創作意欲を掻き立てるべくアンテナを張り巡らせている彼からすれば、この光景は写真に収めたいほどだ。

しかし、それをしないのは隣で自分の腕を抱き締めて身体を震わせている歩夢がいたからだ。

「大丈夫」とその手を握り返した時……。

凄まじいほどの爆音が、辺りに響き割った。

 

「っ、何だっ!?」

 

何かの崩れるような音を耳にした虹哉は、反射的に発生源の方へと走る。

慌てて歩夢も後を追うが、数分もしない内に追いついた。

 

「な、何あれ……!?」

 

歩夢が眼前の光景を震えながら指差し、虹哉もその指が示す先を見て息を飲む。

そこにいたのは骸骨のような白い亡霊の異形……。

悪魔のような彫像を連想させる鎧を身に纏った、怪物だ。

その怪物……アルターワールドを展開させたガーゴイル・メギドが視線に気づき振り向く。

 

『何だっ?随分と意気が良さそうだな』

 

近くにある建造物を破壊しながら、明らかに人間の言語を喋るのに向かないであろう魔人の口から声が響く。

それは傲慢で、プライドの高さが鼻につくような言動だ。

しかし、それは何の力も持たない人間たちにとっては恐怖そのもの。

 

「……歩夢っ!」

「きゃっ!?」

 

ガーゴイルの声を聞いた瞬間、虹哉は即座に彼女の手を握り、庇うように連れ走り出す。

歩夢が短い悲鳴を漏らすが、一刻も早く彼は目の前の化物から逃げる。

自分でも何処まで走ったのか分からないぐらい息を切らせながら周りを警戒する。

後ろに視線を送り、怪物が追って来ていないことを理解し、一息吐いた瞬間だった。

 

『どうしたんだい君たち?これじゃ追いかけっこにならないぜ!』

 

魔人の声が響いた。

慌てて見上げれば、背に持たれていた建造物の壁からガーゴイルが出てきたのだ。

上半身を出した魔人はせせら笑うように、恐怖する少年少女の顔を見下ろす。

壁との同化を解除したガーゴイルが地面へと着地した。

 

「ひっ!?あっ、あぁ……」

『良いぞ!恐怖しろっ、絶望しろ!その感情が我らの世界、アルターゾーンを拡大させるのだっ!』

 

腰を抜かした歩夢が、怯え小さく悲鳴をあげる。

その姿に愉悦を抑えきれないガーゴイルが叫ぶ。

 

「歩夢っ!」

 

そんな怯えすくむ彼女を守るために、恐怖心を無理やり抑えた虹哉がガーゴイルに向かって必死に組み付く。

 

「僕がどうにかするから、歩夢は何とか逃げて!」

「コウ君っ!」

 

しかし、その勇気は無謀に他ならない。

ガーゴイルは乱暴に振り解くと、彼の身体を拳や肘、両脚で滅多撃ちにする。

 

「がっ?!逃げてっ、ぐっ!早く……かはっ!?」

 

奮闘虚しく地面に転がる虹哉。

動けなくなった彼を鼻で笑った魔人は、再び歩む夢に狙いを定めると鉤爪を構える。

それを見た虹哉が気力で必死に立ち上がろうとした時だった。

 

【……いつまで待たせるのだ?】

 

声が、聞こえた。

大きくはなかったが、まるで頭の中に響くような声が聞こえてくる。

聞いたことあるような、知らないような声だ。

 

【こちらの準備は整っている。後はお前の番だというのに、何を手間取っている?】

 

声が問いかけてくる。

恐怖や痛みへの逃避で聞こえてきた逃避かと思ったが、どうやら違うらしい。

今の虹哉が置かれている状況を気にすることなく、声は続ける。

 

【それとも、このまま見て見ぬ振りをするか?】

「っ。そんなわけ、ない……!」

 

拳を握り締める。

そうだ、そんなわけがない。

自然と口を開く。

そうだ、分かっているはずだ、

目の前で誰かの命がなくなりそうなのに、見なかったことにするのか……?

違うっ。そんなのは絶対に違うっ!!

沈静化した怒りが再び湧き上がり、目に精気が宿る。

 

【それで良い。その怒りは、お前の持つ優しさから生まれるものだ……なら、既に答えは出ているだろう】

 

分かってる。

目の前の人を助ける。この怒りは、決して間違っているものではないのだから。

瞬間、吹きすさぶ風が周囲を襲う。

 

「きゃあっ!?」

『ぐうっ!?』

 

軽く悲鳴をあげる歩夢は吹き飛ばされまいと屈み、ガーゴイルも突如巻き起こった暴風の発生源を突き止めようと周囲を見渡す。

それはすぐに見つかった。

虹哉の目の前に突き刺さっている剣……そこから風が発生していたのだ。

しかし、その刃から電流が走っている。

 

【我は汝。その剣はお前の心より生まれし聖なる剣……さぁ、臆するな】

 

頭に響く声に従うように彼はその柄に触れる。

瞬間、膨大なほどの暴風と雷が襲う。

痛い、苦しい……。

しかし、それでも虹哉は諦めない。

 

「こんな結末認めない、誰かを不幸にする終わりなんて僕は……だから、抜けろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

柄を握る手に力を込め、そして勢いのまま引き上げる。

するとその剣は抜けた。

まるで主を長い間待ち侘びたかのように、その覚悟の応えるかのように。

虹哉の掲げた剣に、雷と風が収束する。

そして、形を変えた剣だった物体を腰に当てる。

 

【聖剣ティルヴドライバー!】

 

荘厳な声が響く。

それは奇妙な形をしたバックル。

右側には、ダークグリーンの柄と嵐を連想させるシャープな鍔を思わせるグリップハンドルに、黒い鞘もしくはタブレット思わせるような液晶画面。

そして、聖剣は新たな力の欠片を生成し虹哉の手に一冊の本が収まる……それは間違いなく、根源たる大いなる本の一部『ワンダーライドブック』だ。

虹哉は焦ることなく、機械の竜が描かれているダークグリーンの小さなワンダーライドブック『カソクドラゴン』の起動し、そのページを開く。

 

【KASOKU DRAGON!】

【かつて、あらゆる障害を破壊し駆け抜けたのは……たった一体の神獣だった】

 

紡がれるは封じられし伝承。

嵐のように全てを振り切る、竜の神獣……再び閉じた本を右側のスロット……鍔らしき部分へと装填。

目の前にいる魔人を見据えながら、ソードグリップをバイクハンドルのように思い切り捻った。

そして叫ぶ。

 

「変身!」

 

瞬間、ティルヴドライバーのスロットにセットされたワンダーライドブックが展開される。

そのページにあるのは、加速する竜を纏いし剣士の姿!

 

【DOWNLOAD!KASOKU DRAGON~!!♪】

 

カソクドラゴンの持つエネルギーが、嵐の聖剣の持つエネルギーと混ざり合うことで凄まじいほどの暴風が彼の体を覆う。

やがて、それが治まった後に現れたのは一人の剣士。

ダークグリーンのスーツで覆い、メカニカルな銀色の仮面とプロテクターを纏い、右肩には機械竜の頭部をあしらったシンボルがある。

頭部には赤い複眼、Vの字を象ったようなホーンが特徴の機械剣士。

 

【聖剣創造!邪道を征する雷風が、機械の竜と共に走り抜く!】

嵐風剣征嵐(らんぷうけんセイラン)!】

 

その音声と共に、剣士の右手にはソードグリップと同じ柄と鍔、そして白い刀身に緑色のラインが刻まれた一振りの西洋剣が生み出される。

嵐の剣士『仮面ライダーティルヴカソクドラゴン』……新たな聖剣と剣士が、今ここに誕生したのだ。

 

「コウ、君……?」

「待ってて歩夢。すぐに終わらせるから……」

 

不安気な瞳を向ける彼女の頭を優しく撫でると、ティルヴは自身の聖剣である征嵐を構えて走る。

感覚としては、普通に走っただけ……しかし、カソクドラゴンの力で更なる加速を得た彼は、狼狽えていたガーゴイルの懐まで詰め寄ったのだ。

 

『な、何…』

「でやぁっ!!」

 

動揺する隙を逃すことなく、ティルヴは雷風を纏った刃を振るう。

その一撃は、ガーゴイルの彫刻の如き身体を削り、体内に蓄積されたエネルギーを外へと散らす。

呻くメギドに気にすることなく、ティルヴは更なる斬撃を見舞う。

その戦い方は完全なる我流だが、変身者の虹哉の特技でもあるトリッキングがここで活かされる。

嵐の力によって勢いが付与された蹴りが一撃二撃と炸裂し、まるで舞うように繰り出されるアクロバティックな動きはまさに暴風の一言。

 

「よくも歩夢を怖がらせたなっ!これはその分だっ!」

【速読!KASOKU DRAGON!】

 

変身用のソードグリップを握り、二回三回と捻ると音声と共にティルヴの両手足に雷と風のエネルギーが蓄積される。

 

「はぁっ!」

『ぐおああああああああああああああああっっ!!?』

 

止めとばかりに放たれた聖剣の斬撃がガーゴイルの身体を大きく吹き飛ばした。

大量に火花を撒き散らしながら、地面を転がるメギドを前にようやく普段の余裕が出てくる。

 

「どうしたの、もう終わり?見た目通りの古臭くて鈍重な彫刻だな」

『何だとぉっ!!』

「いっそのこと僕が綺麗に研磨してやろうか?そうすれば多少はマシになるかもねっ!」

 

剣先を突きつけながら挑発するように言い放ったティルヴの言葉に、何とか起き上がったガーゴイルが地団太を踏む。

たかが人間如きに、それも聖剣に選ばれたばかりの子どもに舐められている……それはメギドからすればプライドを傷つける行為にも等しい。

『幻獣』のジャンルに選ばれた自分が追い詰められるなど、絶対にありえない……!

 

『くっ、おおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

雄叫びと共に地面を叩いたガーゴイルが周囲の景色を変える。

そこはまるで古びた廃教会……ステンドグラスや照明が粉々に砕かれた内装となっている。

 

『図に乗るなよクソガキッ!俺の力を見せてやる……!!』

 

驚くティルヴにほくそ笑みながら、ガーゴイルは廃教会の壁に背を向ける。

すると、その身体がゆっくり壁と同化を始めたのだ。

慌ててティルヴがメギドを斬ろうとするが、その攻撃は空振りへと終わってしまう。

しばらくの静寂、そして。

 

「ぐあっ!?」

「コウ君!」

 

ティルヴの背中から鋭い衝撃が走ったのだ。

歩夢の悲鳴を聞きながらも、急いで振り向けばそこには鉤爪を光らせるガーゴイルの姿。

 

「このっ!」

『おっと!』

 

征嵐を振るうも、再びガーゴイルは壁の方まで下がると、壁と同化して姿を消す。

そこからはメギド側の優勢だった。

ティルヴの死角から攻撃し、再び同化して逃げるといったヒット&アウェイの戦法だ。

歩夢を人質にする手段をあったが、距離がある上に幻獣のジャンルとなった自分が子ども一人のためにわざわざ人質を取るなどあってはならないからだ。

しかし、攻撃を受け続けているティルヴは冷静だった。

しばらく相手を観察して分かったことだが、あの魔人は攻撃と壁の同化は同時に行えない。

つまり壁と同化しながら自分を狙い撃ちすることは絶対に出来ないということ……ならば話は簡単だ。

 

(攻撃する方向が分かれば良いっ!)

 

ティルヴは征嵐を構え、仮面の下で目を瞑る。

聞こえてくるのはガーゴイルの嘲笑う声、廃教会の軋み、そして……風の流れ。

聖剣を握り直し、深く呼吸する。

一瞬の静寂……左後ろからの異常な風の動き。

 

「そこだっ!!」

『があああああああああああああああっっ!!?』

 

死角に当たる壁から狙って飛び出したガーゴイルを、鉤爪ごとティルヴの斬撃が叩き折った。

勝ちを確信していたメギドは動揺の叫びと共に地べたに叩きつけられる。

 

「壁中遊泳の時間は終わりだよ!こっからは、小細工なしの一本勝負だあああああっ!」

『がっ、ぐべっ!?ぎいいいいいいいいいいいっっ!!!』

 

今度は壁と同化する時間など与えない。

斬って切って斬りまくり、蹴って蹴って蹴りまくる。

ソードグリップを捻り、更に嵐属性のエネルギーを加速させると強化された斬撃と蹴撃がガーゴイルの身体に強烈なダメージを蓄積させていく。

最後に強烈な蹴りを受けたことで、ガーゴイルが吹き飛んだ。

途端に、周囲は再び元の街並みへと戻る。

 

『ぐへっ、がぁ……!!』

 

満身創痍となっているメギドを見据え、嵐の剣士は力強く宣言する。

 

「この世界のバッドエンドは、僕が変えるっ!」

【必殺征覇!TE・TE・TE・TEMPEST!!】

「はぁぁぁぁ……!」

 

ワンダーライドブックを一度閉じてからソードグリップを捻り、再びページを開く。

それと同時に一際高い音声と、嵐の如き暴風と雷が右脚へと集束する。

緑色のエネルギーを光らせながら、ティルヴが地面を蹴って走り、そして空高く跳躍する。

そして、ようやく起き上がったガーゴイル目掛けて右脚を突き出した。

 

「シュツルムシュラーク!はあああああああああああああっっ!!」

『そんなっ、そんなバカなっ!?ぎぃやああああああああああああああっっ!!!』

 

嵐の一撃による直撃を受けたガーゴイル・メギドは自らの敗北を受け入れられぬまま、爆散。

瞬間、体内に宿していたアルターライドブックも音を立てて消滅する。

後に残るは勝利の祝う優しい風を吹かせるティルヴと、その戦いを見守るしかなかった歩夢だけだ。

バックルにセットされているワンダーライドブックを閉じてから外し、ソードグリップを捻ることで変身が解除された。

ゆっくり自分の手を握って開く……身体の何処にも異常はないらしい。

見れば周囲の景色が淡い光に包まれて元通りになっていく。

その光景を見て安堵し、歩夢の安否を確認しようとするよりも早く。

 

「コウ君!」

 

彼女に抱き締められていた。

余程怖かったのだろう、目に涙を溜めて「良かった」と安堵の言葉を漏らし抱き締める力を強くする。

 

「あっ、えと、あのっ///」

 

伝わってくる女子の体温と柔らかさに、思春期の虹哉はただ顔を赤くし動揺することしか出来なかった。

 

 

 

 

 

そんな光景を遠くから一人の少女が見ていた。

毛先が緑色のグラデーションになって首元まである黒髪のツインテールの少女。

実はアルターワールドが展開されたのを察知した少女は『師匠』から受け継いだ聖剣を手に、メギドの討伐へと動いており、囚われた人たちを助けようと動くよりも先に虹哉が変身し、あろうことかメギドを撃破したのだ。

そんな、一連の出来事を見ていた少女。

新たな聖剣の覚醒、嵐の剣士の誕生と色々な出来事があった……それに対して彼女は身体を震わせる。

 

「~~~~~~すっごいっ!!」

 

そして、眠たげな目を見開き輝かせた。

面白いものを見たと言わんばかりに翡翠色の瞳を欄々と煌めかせ、胸に高鳴る鼓動を抑えきれないでいる。

久しぶりに、ピリッとではなくビリリと痺れるほどのときめきに出会うことが出来たのだ。

 

「うん決めた!私っ、あの子を剣士にスカウトする!!」

 

ランプの魔人が描かれたワンダーライドブックを掲げながら少女『高宮侑』は宣言した。

 

 

 

 

 

ひらひらと舞う桜の花びらを、少年が見つめる。

転校して数日だが、この落ち着いてくつろげるこの場所は少年にとってのお気に入りになりつつあった。

オレンジ色の髪を短くし、頭にアンテナのようなアホ毛を生やしており顔立ちは端正だ。

服装こそ学校指定の濃紺のブレザーと青いズボンに、落ち着いた色合いの緑のネクタイを少し緩めている。

何処にでもいる至って普通の高校生だ。

しかし、その手に持っているのは蒼いワンダーライドブック。

何をするでもなく、それを開いたり閉じたりしながらただ穏やかな風を感じている。

 

「平和だなぁ……」

 

細く開けた蒼い瞳を見せ、自然と笑みが零れる。

そんな自分だけの時間を楽しんでいる時だ。

 

「お兄ちゃーーーーーんっ!!」

 

遠くから聞こえた声に視線を向ければ、義妹が手を振っている。

もう高校二年生だというのに、小さいころから何も変わっていない。

彼女が手を振って元気よく跳ねる度に、少年が結んであげた茶髪のサイドポニーが合わせて活動的に揺れる。

そんな彼女に苦笑いしながら、青年は手を軽く上げる。

ワンダーライドブックを懐に入れた彼は、彼女たちの元まで向かうべく立ち上がった。

 

【KING OF ARTHUR!】

 

次なるお話は、蒼き情熱の炎を燃やす騎士王の物語……。




吸収型メギド
この世界で活躍する本の魔人。目を付けた人間から奪ったスキルからアルターライドブックを生成し、アルターワールドで自然発生した素体メギドが本を開くことでその伝承を纏った魔人へと覚醒する。
自らの世界であるアルターワールドを現実世界に干渉させる能力を持ち、メギドが暴れることで侵食させていく。
イメージコンセプトは盗作作家。他人の想いから作った本を使って好き勝手に手を加えるところから着想を得た。

ガーゴイル・メギド ICV子安武人
素体メギドがアルターライドブック『壁からガーゴイル』の伝承を吸収することで覚醒した姿。
頭部に生やした黒く不気味な角、両腕には醜悪な翼のような装飾を持つ灰色の鉤爪を生やした悪魔のような外見で全体的に彫像のような外見をしている。
鉤爪による攻撃が主だが、最大の武器は壁と同化すること。これにより常に死角からの攻撃を可能としている。


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