暗殺教室〜 穢れた少年〜 (狂骨)
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序章の一学期
暗殺の時間


設定です。
名前:神威
身長:145
容姿
双星の陰陽師の神威を小柄にした感じ。髪が鎖骨辺りまで伸びており、過去のある一件で頭のメラニン色素が落ちている為に白髪となっている。

服装
下はボロボロになった黒い道着、上もボロボロに破けている研究員が着るような白衣を纏っている。胸にはサラシを巻いており、胸の印を他人には見せないようにしている。

身体能力
パンチ一発で半径50メートルのクレーターを作る程のパワーを持っているが、脚はそれよりも数倍の力を持っており、本気でジャンプすれば東京タワーよりも高く跳べる。
動体視力も異常で、殺せんせーが何をしているのかが、鮮明に見える。
右目に眼帯を付けており、外すことを嫌う。食べ物は基本的野宿なので木の実などをよく取って食べている。
普段は感情を表に出さず常に真顔である。



渚side

 

僕らは殺し屋ターゲットは先生椚ヶ丘中学校三年E組は暗殺教室始業のベルが今日も鳴る

 

 

 

3年E組。椚ヶ丘中学校・高等学校の中等部に設置されたクラスで成績に問題がある者、または校舎の規律を守らない問題児が集められる特別学級である。

校舎は本校舎から1キロ離れた山の中。皆は険しい道を辿りながら毎日登校しなければならない。

椚ヶ丘中学校は、椚ヶ丘高校と連結して中高一貫校となっている。本校舎のAからD組は試験を受けず、エスカレーター式で進学できるが、E組に入った生徒は3年の2学期末までに本校舎へ復帰できなければその権利は剥奪される。

 

全てにおいて不利な状況下におかれながらも、僕らは勉学に勤しんでいた。

 

そんなある日、人生を変える一つの転機が訪れた。

 

『私が月を破壊した犯人です。来年には地球もやる予定です。皆さんの担任になりましたのでどうぞよろしく』

 

月を破壊した超生物。『殺せんせー』突然だが、先生を殺せば100億円の賞金が支払われる。人生が180度変わるチャンスに皆は目を輝かせ、勉学に加え、体術にまで勤しむようになった。

 

けれども、誰も殺せんせーを殺さなかった。唯一ダメージを与えられたのは、カルマくんが手に刻んだナイフを貼りつけて握手をした時だけ。それ以外は何のダメージも与えられなかった。

 

途中に赴任してきたプロの殺し屋であるビッチ先生でも、僕らは卒業までに、先生を殺せるのだろうか。

 

 

そんなある日、一つの文面が僕らに一斉メールで送られてきた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ある日の朝。いい天気と森の美味しい空気で満たされている山道を友人である杉野と歩いていた。

 

すると

 

「よっ!お前ら!」

 

同じクラスの学級委員である磯貝君が陽気に手を上げながら歩いてきた。

 

「おぅ」

「おはよう磯貝君」

 

僕と杉野が軽く答えると磯貝くんは突然と携帯を取り出した。

 

「お前らさ、烏間先生からの一斉メール見たか?」

 

「あ!確か転校生が来るんだっけか!」

 

磯貝君の言葉に僕らは昨日送られてきた文面を思い出した。

 

 

『明日からクラスに転校生が入る事となった。服装はあれだが仲良くしてやってくれ』

 

僕らはこの文面に一つの希望を抱いていた。転校生はどこの学校でも人気だし、この教室では生徒に個々の能力がある。僕らと同じ暗殺者となる転校生は一体どのような子なのか、楽しみだ。

 

「ついに来たね…転校生暗殺者!」

 

「転校生名目ってことは…ビッチ先生と違って俺らとタメなのか?」

 

そう言い僕と杉野は『オーホッホッホッ!』と高笑いするビッチ先生を思い浮かべる。

 

すると

 

 

「そこよ…!」

 

突然とクラスのエロ男爵である岡島君が現れた。凄い汗だ…

 

「俺も気になってさ!顔写真ないですか?って返信したのよ!そしたらこれが返ってきた!」

 

そこには褐色色の肌と金色の目…僕と同じかそれより長いの髪の女の子が写っていた。しかも待ち受けだ………

 

「おぉ!?女子か!」

 

「普通に可愛いな」

 

「だろ!?すっげー!!可愛いだろ!?眼帯美少女だぜ!!はぁ〜!仲良くなれるかな〜!」

 

「ウキウキ過ぎだろ…」

 

 

 

 

 

 

「胸は勝ってるはず……胸は勝ってるはず…胸は勝ってるはず…胸は勝ってるはず………」

 

「ひぃ!?」

僕の横で突然現れた茅野が写真を見ながらそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、皆さんも知っていると思いますが、このクラスに転入生がやってきます。仲間が増える事は何より!皆さん、仲良くしてあげてくださいね」

その言葉に皆は頷く。

 

「それでは!!入って来てください!」

 

 

茅野「胸は勝ってるはず…胸は勝ってるはず…胸は勝ってるはず…胸は勝ってるはず………

 

渚「どんだけ引きずるの!?」

 

 

 

殺せんせーの合図と共に教室のドアが開かれた。

 

 

ガラガラガラ...

 

 

 

 

 

ペタ...ペタ...ペタ...

 

「…?裸足の音…?」

 

突然と聞こえてきた靴の音とは全く違う、何かが張り付き離れる音に皆の目が集中した。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

教室に入ってきた人物を目にして皆は言葉を失った。ペタペタと音を立てながら入ってきたのはフードの付いた黒衣を着て胸にサラシを巻いている褐色の肌を持つ女の子だった。

 

 

 

岡島「ブバァアーー!!!!」

 

岡島君が尋常じゃないくらいの鼻血を出した…!

 

何人かも同じように鼻を押さえてる……僕もだ……幾ら何でも露出が多すぎる………前なんて殆ど見えてるし…!!

 

 

「では自己紹介を!!」

何故か調子を崩さない殺せんせー。すると、その女の子はゆっくりと答えた。

 

「カムイ」

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

(((((え……?それだけ……………?)))))

 

クラスの全員がそう思った……僕も同じだ……

 

 

 

「では!一時間目は質問タイムといきましょう!!!皆さんどんどん質問してください!!」

 

何故殺せんせーはそんなハイテンションなんだ...いろいろツッコミたいとこあるだろ!

 

ーーーーーーーー

 

そんなこんなでテンションを崩さない殺せんせーによって質問タイムが始まった。

 

「ではまず最初の人!!!」

 

「はい!!!」

 

「はい!岡島くん!」

 

殺せんせーから指名されたトップバッターである岡島は立ち上がると、真剣な目で神威を見つめながら質問した。

 

「スリーサイ___」

 

 

ドン

 

その瞬間 岡島の背後にいつの間にか現れたクラス委員の女子 片岡メグが彼の肩を掴みながらゆっくりと座らせる。

 

「あはは…ごめんね。うちのエロバカが… 私は片岡メグ。よろしくね」

 

「…あぁ…」

片岡が岡島の暴走を食い止めた事で何とか初っ端からの澱んだ空気への突入を防ぐことができた。

彼女の簡単な自己紹介に神威は軽く頷く。

 

 

 

「では!気を取り直して!次の人!!!」

 

「は〜い」

 

「では倉橋さん!」

殺せんせーが再び質問者を募ると今度は天真爛漫な女子生徒『倉橋 陽奈乃』が手を挙げ、それを見た殺せんせーが指名すると彼女は答えた。

 

「私 倉橋陽菜乃。よろしくね!神威ちゃんって女の子なのに何でそんな格好なの?」

 

その質問に皆は同様の疑問を抱いていたのか、彼女へ答えを求める。だが、それに対して返ってきたのは意外すぎるものであった。

 

「俺は男だ」

 

 

「「「「「「えええええーーーー!!!!!?????」」」」」

 

 

「あれで男!?」

 

「どう見ても美少女だろ!?」

 

「しかも男なのに背丈低すぎでしょ!?」

 

「がギャァァァァアーー!!!!!!詐欺だぁー!!!!!!しかも!!!俺は男を待ち受けにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」

 

三村や菅野、岡野が次々とツッコミを入れていく中、彼を待ち受けにし期待で胸を膨らませていた岡島は目から血を噴き出していた。

 

「皆さん!落ち着いて落ち着いて!で…では気を取り直さず次の人ッ!」

 

「「「「「「取り直さねぇのかよッ!?」」」」」」

 

殺せんせーは宥めながらもこの空気の中、次の質問者を募る。

 

すると

 

「ハ...はい!!」

 

「はい奥田さん!」

 

今度は小柄でメガネを掛けた女子生徒『奥田』が手を挙げた。殺せんせーから指名された奥田は緊張しながらも答える。

 

「え…えっと…神威さんが得意な武器って何ですか?」

 

「お〜!それは先生も気になりますね...教えてくれますか?」

 

皆の視線が神威へと向けられる。このクラスでは一人一人に殺せんせーに対する『対せんせー物質』で作られたぶきを支給され、各々が個性を用いて活用している。

 

故に皆は神威がどのような武器を得意としているのか気になっていた。

 

すると、神威は懐からナイフを取り出す。

 

「これだ」

 

そしてその言葉と共に目の前の殺せんせー目掛けてナイフを振るう。

 

だが、

 

「ヌルフフ!」

 

殺せんせーはそれをアッサリと避ける。それもそうだ。殺せんせーの速度はマッハ20。音速よりも速いのだから。

 

「神威くん、こんな単純なやり方では先生は殺せませんよ!」

 

そう言い避けた殺せんせーは顔に緑のシマシマ模様を浮かべながら神威のナイフを持っている手を撫でる。

 

 

 

その時であった。

 

 

ビチャ__。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

突然と殺せんせーの触手が弾ける音が響いた。その音に驚いた皆は席を立ち、音が聞こえた殺せんせーの足元へと目を向ける。

 

 

そこには 斬り飛ばされた殺せんせーの触手が転がっており、近くでは神威が下段蹴りを行ったのか、脚を少しばかり上げていた。

 

「成る程…脚の裏と踵にくっつけていましたか。これは油断してしまいました」

 

「……バレていたか」

 

殺せんせーの推測に神威は驚いたのか、袴を持ち上げて足の裏を見せる。見れば殺せんせーの言葉通り細かく切られた対せんせー用ナイフが貼り付けられており、踵にもそれぞれ2本ずつナイフが巻き付けられていた。

 

 

「す…すげぇ…袴で隠してたのか…」

 

「だけど、それでも当てるのは難しいぞ!?」

 

前原や磯貝に続き皆も驚いていた。それもそうだ、袴で隠し死角にしていたとは言え、殺せんせーは殺意に敏感なために蹴ろうと思えば即座に察知される。たとえ隠していようとも難しいはずだ。

 

皆は改めて転校してきた男『神威』の力の前に唖然としていた。

 

 

すると

 

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

 

 

丁度一時間目の終了のチャイムが鳴った

 

「おや、チャイムがなってしまいましたね。ではこれにて質問タイムを終了します。神威くん、これからは有意義な1年を過ごしましょう。無事に殺せるといいですねぇ〜」

 

その言葉に神威は遂に声を発する事なくただ頷くのみであった。

 

 

 



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体育の時間

一時間目が終わった後、神威の席には2、3人の男女が集まっていた。

茅野「私は茅野カエデよろしくね神威くん!」

渚「僕は潮田渚よろしく神威くん」

茅野という少女と渚という少年が神威に自己紹介をしていた。

それぞれの名前を聞いて神威はコクリと頷く。

カルマ「そういえば神威ってなんでそんな格好なの?」

神威「俺、家がないし服を買う金がないから拾ったこの服だけを使っている。」

カルマ「なるほど」

渚「じゃあいつも何処で生活してるの!?」

そう言われた神威は窓の景色にある山を指差した。

神威「あの山の最近見つけた古屋で生活してる」

茅野「す...すごいね...」

 

すると

磯貝「お〜いお前ら次体育だぞ。早く支度しろよな」

クラス委員の磯貝という少年が呼びかけに来た。

茅野「うわぁ急がないと!」

そう言われた4人はせっせと着替え運動場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

運動場にて、皆が周りから見守る中、烏間はネクタイを緩め肩を鳴らす。

 

「神威くん。まずは君の力を一度見てみたい。君1人と模擬戦をし、そのナイフが俺に当てられたら君の勝ちだ」

 

「…あぁ…」

それに対して、神威は手にあるナイフを見つめる。その持ち方は素人と言っても過言ではなかった。塚だけを鷲掴みにしており、とてもシンプルな持ち方だ。

 

「ではでは!レフェリーは私が務めましょう!両者とも準備はよろしいですか?」

 

殺せんせーの問い掛けに2人は頷く。

 

「それでは………始めッ!!」

 

殺せんせーの触手が振り下ろされ、開始の合図が出された。

その瞬間 神威の姿が突然目の前に現れた。

 

「…!?」

 遠く離れていた2人の距離は既に縮まっていた。烏間は一歩も動いてはいなかった。神威の走り込みだけで、その差は縮まったのだ。

 

「(なんだ…!?この速さは…!)」

神威のナイフが突きつけられるが、烏間は咄嗟に身体を横にずらし回避する。その速度は確実に自信を凌駕していた。走り込みの初速だけで、E組の中でも俊足な木村を上回る程であった。

 

「ふん」

神威のナイフが振り下ろされる。が、その動きは単純なため、烏間にとっては受け止めやすいものだった。だが、受け止めた瞬間 とてつもない力が烏間へ乗し掛かる。

 

「…!?何だこの力は…!?」

その力は自身が陸上自衛隊で教官として腕を振るっていた時代には感じた事の無い程だった。

 

渚side

 

僕らは二人の戦いを見ていたがとても凄まじいとしか言えない程壮絶だった。烏間先生に真正面から挑んで

圧倒するのは初めて見た。その光景にクラスのみんなも驚きを隠せなかった。

 

前原「す...すげぇ...烏間先生が力で押されてるの初めて見た...」

岡島「ありゃぁ完全に人の域を超えてるぞ...」

 

烏間先生を押している神威くんの姿を見て僕らは少しの恐怖感を得た。

 

side out

 

神威の力に押されていた烏間はまるで超重力にかかったかのように動けなかった。

 

 

その時 神威の目が一瞬太陽に当てられると同時に光り それと同時に 神威と烏間の中心から砂嵐が吹き荒れる。

 

しばらくして砂が晴れ生徒達がそこを見ると烏間の首にナイフを突き立てている神威の姿が入った。

 

烏間「残念だが..俺の負けだ...」

殺せ「勝負あり!!!勝者神威くん!!!」

烏間が降参し勝負が終わり神威の元には皆が寄ってきた。

前原「すげーな神威!!!烏間先生に勝っまうなんてよう!!!」

片岡「これで暗殺成功率も格段に上がっちゃうね!!」

矢田「うんうん!!凄かったよ!!」

神威「あ...あぁ...」

皆からの言葉で神威も圧倒されていた。

 

烏間「では今日の体育はこれで終了。次の授業に遅れるなよ」

「「「ありがとうございました」」」

こうして体育の授業は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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集会の時間

三話目です。
お気に入りありがとうございます!!!完結できるように頑張ります!!!


その後時間は過ぎていき昼休みになった。

神威が席に座っていると皆が何やら移動の準備を始めていた。

神威「なんで皆移動の準備してんだ?」

神威が疑問に思っていると

?「神威くん」

不意に誰かに声をかけられ

神威「!何だ矢田か そう言えば何で皆下山してるんだ?」

矢田「今日は月に一度の全校集会でE組は本校舎の人達より早く並んでないといけないから昼休みを返上して行くんだよ」

神威「なるほど」

矢田「私達も丁度行くところだから一緒にいかない?」

神威「....」

矢田「神威くん?」

神威「ん..あぁすまん、行く行く」

こうして神威達E組は下山を開始した。

 

 

〜下山中〜

矢田「神威くん裸足だけど痛くないの?」

神威「全然」

矢田「そっか」

矢田「神威くん見ると弟を思い出すな〜... 私の弟さ何カ月か前に行方不明になってさ...警察がいくら捜索しても見つからなくて...」

神威(!!)

矢田「身長も神威くんと同じくらいで髪の長さは違うけど、物静かな所は似てるからさ。それで思い出しちゃって...もしかしたらと思ったんだよ」

神威(……)

 

 

 

神威side

 

俺はいま姉と下山している。教室に入った時から気づかれないようにしていたが烏間との勝負で気が高まり

つい力を出してしまい注目を集めてしまった...これもあの[実験]の影響なのだろうか...

気づかれないようにしなければ…。

 

 

 

side out

神威達はようやく本校舎に着き皆はヘトヘトだった。特に岡島という少年はボロボロだった。身体に泥、蛇、蜂に刺された跡など、完全に瀕死状態である。

 

磯貝「おい皆早く並ぶぞ」

全員「「「はぁ〜い....」」」

磯貝が皆に号令をかけたが皆は疲れている為か思い足取りで体育館へ向かった。

 

〜体育館〜

高田「渚く〜ん」

渚「ん?」

高田「お疲れ〜わざわざ山の上からご苦労だねぇ〜」

渚「...」

渚は眼鏡をかけているニキビと小太りな二人にからかわれていた。おそらく彼らが本校舎の生徒だろう。

他の人達も本校舎の生徒からからかわれていた。

こんな不安定な状況から全校集会が始まった。

 

校長「...えー要するに皆さんは全国からより選び抜かれたエリートです。この校長が保証します、が油断しているとどーしようもない誰かさんみたいになっちゃいますよ〜」

 

校長の話で本校舎の生徒達は声を上げて笑い出した。

校長「こ〜ら君達笑いすぎ先生もわらいすぎました」

その気品のない上にE組を指す言い方にE組の皆は頭にきていたが、反論は出来なかった。

 

校長「では次に転校生を紹介します。まぁE組ですけどね」

再び大爆笑が起きた。

 

 

神威side

 

校長「では次に転校生を紹介します。まぁどこぞのど〜しよ〜もないクラスですけどね〜」

 

侮辱とも取れる校長の発言にE組以外は大爆笑する。

 

次は俺か...にしてもこの笑い声うるさいな...何人かだまらしとくか...

 

ガシッ

俺は登壇しようとしたら烏間に肩を掴まれ

烏間「神威くん...できるだけ大事にしないでくれよ...(小声)」

と注意されたので

神威「分かった」とだけ言っておいた。

 

 

登壇中

 

生徒A「だれだ?あいつ?」

生徒B「服装ww」

生徒C「しかも裸足wwあんな貧乏臭い奴がよくこの学校に転校できたなww」

高田「しかも眼帯ww」

田中「バカすぎて目も見えなくなっちまったんじゃねww」

高田「だなw」

 

は はははははははは!!!!!!!!

校長「こ〜ら君達笑っちゃいけません 貧乏にはそれなりの事情があるのですから」

 

ははははははははははは!!!!!!!!!

 

 

 

神威(うるせいな...全然変わってねぇじゃねぇか…)

 

 

side out

 

渚side

 

僕らは今神威くんが登壇しているのを見ていた。でも途中物凄く酷い悪口を言われてたけど、僕らは見守る事しか出来なかった。反論したとしても本校舎の人達の物凄いブーイングでかき消されるだろう。

丁度神威くんが上り終えたところだった。

神威「E組に転入した神威だ。率直に言わせてもらうが……

 

その瞬間 僕らの背筋が氷のように固まった。神威君から発せられた濃い殺気が会場を満たした。

 

神威[さっきからギャーギャーうるせぇんだよ。“殺すぞ”]

 

バキィィィンッ!!

 

ドサ ドサ ドサ

ドサドサ ドサドサドサ

神威くんがマイクを握り潰した。

その予想外の行動の直後 神威くんからとてつもない殺気が溢れ出した。

 

「ッ…!!」

何だこの殺気は…!?素人の僕でもわかる程の濃密な殺気だった。まるで首を掴まれているかの様に。

その本格的な殺気は、本校舎の人達を30人くらい気絶させた。

 

「静かになったところで、E組に編入することになった者です。よろしく。以上」

シンプルな自己紹介が終わると、神威君は早々と降壇していった。

 

こうして全校集会は終わり解散となった。

 

神威side

神威(やりすぎたか...)

俺は今体育館の外で烏間に説教を受けていた。

烏間「幾ら何でもやりすぎだ...幸い気絶した人達はめまいという形で済んでいるが怪しまれるかもしれなかったんだぞ...」

神威「…」

烏間「まったく...もう旧校舎に戻りなさい...」

 

取り敢えず俺は旧校舎に戻ろうとすると渚がデブとニキビ眼鏡の生徒に絡まれていた。

その時

 

“殺そうとした事なんてないくせに”

 

!!

 

渚から殺気が出て本校舎の生徒を威圧した。

 

これはまた面白い物を見たな...

 

「(そろそろ戻るか…)」

神威は戻ろうと、裏山の入り口に向かう。その時だ。

 

「は…離してよ!」

「…!」

矢田が本校舎の生徒に絡まれていた。その生徒はやや太っており、大柄であるため、女子では高身長に位置する矢田でも振り解けなかった。

 

「へへへ。E組はバカだけど身体が良い奴が結構多いんだよな〜」

そう言い矢田の太ももに手を掛ける。周りの本校舎の生徒達はその状況を嘲笑うかのように、笑い声をあげており、中にはもっとやれと茶々を入れる者もいた。

 

「…!」

その瞬間、神威の首から筋が脇立ち、目には毛細血管が現れ始めた。

そして、威圧するかのようにその男の方へ向かうと、矢田を触っている手を掴む。

 

「うぉ!?テメェは編入生か!?」

掴まれた生徒は驚くと同時に、恐怖感を味わった。普段なら、掴まれても、多少は動かせる。だが、神威の腕に掴まれた瞬間、自身の腕が全く動かなくなっていた。

 

「テメェ……なにしてんだ…?」

怒りのこもった瞳をその生徒に向けると、神威はもう一方の腕を握りしめると、その生徒に向けて、拳を放った。

 

「ガハァ…!!」

 

その拳は見事に顔面に沈むようにめり込むと、その場から10メートルも吹き飛ばした。

 

「…大丈夫か…?」

神威は手を離した際に尻餅をついた矢田に手を差し出す。

 

「あ…ありがとう」

矢田は御礼を言いながらその手を取ると、ゆっくりと立ち上がった。矢田が立ち上がるのを確認した神威はすぐさま手を離すと、裏山の入り口に向かって歩いていった。

 

「ま…待ってよ〜!!」

矢田も後を追い、早々とこの場を去っていった。

 

 



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テストの時間 一時間目

四話目です。


 

渚side

全校集会の次の日

殺せ「では皆さん...」

殺せ「「「始めましょう!!!!」」」

全員「「「いや...なにを...?」」」

殺せんせーが分身で何やら張り切っていた。

殺せ「学校の中間テストが迫ってきました」「そうそう」「なのでこの時間は」

殺せん「「「[高速教科テスト勉強]を行います!!!!」」」

殺せん「せんせーの分身一人一人がマンツーマンで」「苦手科目を徹底して復習します。」

 

寺坂「くだらねーご丁寧に教科ごとにハチマキとか...」

 

ドドン

寺坂「何で俺だけナルトなんだよ!!」

 

殺せんせーはどんどん早くなってきてると思う。前までは4、5人くらいが限界だったのに

そう思っていると

 

ニュヤ

渚「うわぁ!」

殺せんせーの分身が歪んだ。見るとカルマくんがナイフを刺そうとしていた。

殺せ「「「急に暗殺しないでカルマくん!!動きが乱れると全ての残像が歪んでしまいます!!」」」

神威「以外と精細なんだなこの残像」

渚「でも殺せんせー、こんなに分身して体力もつの?」

殺せ「ご心配なく。一体外で休憩させてますから」

それむしろ疲れるんじゃない!?

 

side out

 

神威side

殺せん「〜とここまで分かりましたか?神威くん」

神威「あぁ」

なんかおかしい...前までできなかった事が何故かできてる...初めてやる公式の応用もすぐにできてしまう...

これもあの実験が原因なのだろうか...そう思いながらも俺は勉強を進めた。

 

次の日

殺せん「「「「頑張ってもっと増えてみました!!!」」」」

 

昨日何があったんだ...

sideout

 

何故か殺せんせーは今日は一人3人につき勉強を教えていた。

その後

殺せん「ぜぇ...ぜぇ...ぜぇ...」

前原「さすがにつかれるわな」

中村「今なら殺れるかも!」

岡島「なんでこんなに先生するんだか」

クラスのみんなに好き放題言われていた。

殺せん「こ...これも皆さんのテストの点を上げるため...!そうすれば...!」

 

〜妄想〜

 

岡野「せんせー!!おかげでいい点取れたよー!!」

磯貝「俺達!殺せんせーの授業なしじゃあいられない!!もう殺すなんて出来ないよ!!」

 

[生徒達の尊敬の眼差し

 

女子大生「せんせー、私達にも勉強教えて〜!!」

 

[噂を聞きつけた巨乳女子大生]

 

〜妄想out〜

殺せん「なんて事になってせんせーにはいい事ずくめ...ヌルフフフフ..」

何故か現実ではありえない事を殺せんせーは妄想していた。

すると

 

三村「でも勉強の方はそれなりでいいよな〜」

矢田「うん...だって殺せば100億だし」

中村「100億あればその後の人生バラ色だし♪」

何人かの生徒が口々に暗殺の方が大事と言いだしていた。

 

殺せん「ニュヤ!! ?そんな考えをしますか?!」

岡島「だってよぅ殺せんせー、俺らE組だぜ?」

三村「テストより暗殺の方が身近なチャンスだしな」

殺せん「...」

二人の言葉で殺せんせーは少し黙り込み

 

殺せん「なるほど。よく分かりました。今の君達には暗殺する資格はありません..

せんせー達を呼んで来てください...そして...」

「全員校庭に出なさい...!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は二回に区切って書きます。
すいません...


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テストの時間 二時間目

パート2です。



渚side

僕らは殺せんせーに言われた通りにグラウンドにきた。見ると殺せんせーがグラウンドの中央に立っていた。

 

そして

殺せんせー「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います。あなたは仕事をする際用意するプランは一つですか?」

イリーナ「いいえ。最初のプランがうまく通るのはなかなかないわ。予備のプランを綿密に立てておくのが暗殺の基本よ」

 

殺せんせー「では烏間先生...あなたはナイフ術を教える時、大事なのは一撃目ですか?」

烏間「勿論第一撃も大切だが相手が強敵の時、高確率でかわされる。その後の二撃目、三撃目をいかに高精度に繰り出すかで勝敗を分ける」

殺せんせーは二人の話を聞きながらグラウンドの道具をはじに寄せていた。

殺せんせー「先生達の仰る通り次の手があろから自身を持てる暗殺者になれる。ですが君達はどうでしょう...

俺達には暗殺があるから良いやと考え勉強の目標を低くしている...それは劣等感の原因から目を背けているだけです。」

そう言った途端殺せんせーはマッハで回転し竜巻を起こした。

殺せんせー「もしせんせーがこの教室を去ったら...もし他の殺し屋が先にせんせーを殺したら...暗殺という大きな目標を失った君達にはE組の劣等感しか残りません...そこでせんせーから危うい君達へのアドバイスです...」

 

”第二の刃を持たざるものは暗殺者の資格無し“

 

 

竜巻がおさまり再びグラウンドを見るとたくさん生えていた雑草などが抜かれ整備されていた。

殺せんせー「グラウンドに雑草などが生えていたので手入れをしました...せんせーは地球を破壊できる超生物です。このグラウンドを平にするなど容易い事です。もし君達が第二の刃を示す事ができなければせんせーは

君達が私を殺す資格が無いと判断しせんせーは去ります...」

 

渚「第二の刃...」

茅野「それっていつまで...」

殺「決まっています...明日の中間テストでクラス全員50位以内を取りなさい...

全員「「「えぇ!!!」」」

その言葉にクラス全員が驚いた。

殺せんせー「君達の第二の刃は既にせんせーが育てています...本校舎の先生に劣るようなトロイ授業はせんせーはしません...自身を持って第二の刃を振って下さい。ミッションを成功させ笑顔で胸を張りなさい君達がアサシンであるためにE組であるために」

 

こうして中間テストの日がやってきた。

sideout

 

神威side

俺達はテストを受けるため本校舎に来ていた。

 

テスト中〜

 

トントントントン

テスト中なのに試験監督の大野っていう奴がさっきからまじでうるさい。とりあえず

放っておく事にした。

すると

神威(あれ?この問題って範囲内だっけ?まぁいいか分かるし)

そう思いながら大俺は解答を続けた。

sideout

 

〜テスト終了E組校舎にて〜

今E組には冷たい空気が流れていた。なぜなら前日から出題範囲を大幅に変更しクラス全員が50位以内に入る事ができなかったのである。

殺せんせー「せんせーの力不足です...この学校の仕組みを甘く見過ぎていました...皆さんに合わす顔がありません...」

殺せんせーが落ち込んでいた。

 

すると

 

ヒュンッ

 

殺せんせー「ニュヤ!!??」

殺せんせー目掛けてナイフが投げられた。投げたのは赤髪の少年カルマだった。

カルマ「いいの?そんなんで、ずっと後ろ向いてたら俺が殺しちゃうよ〜」

そう言いながらカルマは先生の元へ歩いていった。

殺せんせー「カルマくん!先生は今すごく落ち込んで!!ん?」

カルマが自分の答案を殺せんせーに見せた。

殺せんせー「!」

結果は

 

国語

98点

数学

100点

理科

99点

社会

99点

英語

98点

合計

494点

その高得点に皆が驚いていた。

カルマ「俺の成績にあわせてあんたが余計なとこまで教えたから対処できた。ね神威」

そう言いった瞬間クラス全員が席に座っている神威を見た。

神威「ッ…めんどくせぇ…」

そう言いながら神威も自分の答案を教卓にのせた。

結果

 

国語

89

数学

95

理科

88

社会

90

英語

96

合計

438

 

 

磯貝「すげー...」

前原「カルマにいたっては数学100点だぞ...」

 

カルマ「俺はこのクラスは出る気ないよ。本校舎に戻るより暗殺の方が楽しいしそれとも殺せんせー、クラス全員が50位以内に入らなかった理由でここから尻尾巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ〜殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」

前原「なーんだ殺せんせー怖かっただけなのかぁ〜」

片岡「それなら早く言ってくれれば良かったのに〜」

中村「ね〜」

カルマが言い出したことを切っ掛けにクラスの人達が次々と殺せんせーを挑発し始めた。それで殺せんせーは

 

殺せんせー「ニュヤーー!!逃げるわけには行きません!!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!!」

 

ははははは!!!!!

 

教室中で笑いが起きた。

 

殺せんせー「ニュヤ!?何がそんなにおかしいんですか!?」

 

今回のテストでE組は分厚い壁にぶち当たったそれでもかれらは胸を張った。自分達がE組であるために...

 

 

 




次回は修学旅行の話です。この話で神威の眼帯を外します。


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修学旅行の時間 一時間目

テストが終わりE組では修学旅行の話で盛り上がっていた。

神威side

片岡「神威くん、班は決まった?」

俺が席に座ってると片岡が話しかけてきた。

神威「班?」

俺は何のことかわからないでいた。すると茅野が来て

茅野「忘れたの?来週の修学旅行のよ!!神威くんは班は決まった?」

神威「いや、まだ決まってない」

茅野「だったら私達の班に入らない?」

神威「いいぞ。茅野の他に誰がいるんだ?」

茅野「えっと渚とカルマ君と杉野と奥田さんと神崎さんだよ」

神威「分かった」

俺は茅野達の班に入る事となりメンバーが集まっているところに向かった。

 

茅野「皆〜神威くん誘ったよ!」

渚「よろしく神威くん」

神威「あぁで確かそっちにいるのが...」

杉野「杉野だ!よろしくな神威!」

神威「あぁ」

神崎「よろしくね神威くん」

神威「あぁ」

カルマ「神威と同じ班か〜面白いことが起きそうだな〜」

渚「カルマくん...顔が悪魔だよ...」

茅野「よし!どこを回るか決めよう!!」

俺達はルートを決め始めた。

すると

イリーナ「餓鬼ねぇ世界中を飛び回った私にとって旅行なんて今更だわ」

後ろにいるビッチが自慢を始めた。

すると

前原「じゃあ留守番しててよビッチ先生」

岡野「花壇に水やっといて〜」

 

他の奴らがビッチ抜きで話を進めた。

そして

イリーナ「なによ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

逆ギレし結局こいつも行くことになった。

 

その後タコが来て辞書のようなしおりを渡されいよいよ当日となった。

 

sideout

 

〜駅のフォームにて〜

菅谷「うわ〜A組からD組までグリーン車だぜ...」

中村「うちらだけ普通車...いつものことね...」

高田「学費の用途は成績優秀者に優先される」

田中「おやおや君達からは貧乏な香りがしてくるね〜特にそこのボロボロの服を着てる奴とかw」

 

ピキッ

「あ"ぁ?」

2人の悪口に神威は少し腹を立て巨大な殺気を出した。当然2人はビビって失禁。

するとそこへ

 

ビッチ先生「ごめんあそばせ〜♪ご機嫌よう生徒たち」

ゴージャスな服を着たビッチ先生が現れた。

三村「ビッチ先生なんだよそのハリウッドセレブみたいな格好は...」

イリーナ「うふふ...女を駆使する暗殺者には当然の心得...女は旅ファッションにこそこだわるのよ」

烏間「目立ちすぎだ着替えろ。どう見ても引率の先生の格好じゃない」

イリーナ「固いこと言ってんじゃないわよ烏間〜!ガキどもに大人の旅の魅力を...烏間「脱げ...着替えろ...!」

結局着替えることとなりそんな感じで出発した。

 

〜電車内にて〜

杉野「あれ?電車出発したけど殺せんせーは?」

辺りを見回すと殺せんせーが窓に張り付いていた。

渚「なんで窓に張り付いてんだよ殺せんせー!!」

殺せんせー「いや〜駅中スイーツを買ったらのりおくれたので...ああご心配なく保護色にしてますから服と荷物が張り付いてるだけです」

渚「それはそれで不自然だよ!!」

 

殺せんせー「いや〜疲れました。目立たないよう旅行するのは大変ですね〜」

岡島「そんなクソでかい荷物持ってくんなよ...」

倉橋「ただでさえ殺せんせー目立つのに〜」

中村「てか外で国家機密がこんなに目立っちゃヤバくない?」

殺せんせー「ニュヤ!」

殺せんせーが動揺した瞬間付け鼻がすんなりと外れた。

矢田「その変装も近くでみたら人じゃないってバレバレだし...」

菅谷「殺せんせーまずはその取れやすい付け鼻からかえようぜ。ホレッ」

菅谷という生徒が殺せんせーに自作の付け鼻を渡し殺せんせーがつけてみるとちょうどよくフィットした。

他の人達はスゴロクやトランプ中には京都の周りどころを調べている人がいた。ちなみに神威は座席の隅で寝ていた。

 

〜旅館到着〜

旅館に着いた時には殺せんせーは既にグロッキー状態でナイフで刺されているが全てかわしていた。

殺せんせー「先生一度東京に戻ります。枕をわすれてきたので...」

岡島「あんだけあって忘れ物かよ!?」

その後スナイパーの狙撃スポットの設定や京都の町並を満喫するため生徒たちは班ごとにちらばった。

 

杉野「修学旅行くらい暗殺の事忘れたかったな〜いい景色じゃん暗殺とは縁のない場所だし」

渚「そうでもないよ」

しばらく歩くと石碑があり

奥田「坂本龍馬ってあの?」

カルマ「1867年龍馬暗殺」

渚「更に歩いてすぐの所に本能寺もあるよこの京都は暗殺の聖地でもあるんだ」

 

その後渚達の班は祇園の奥の狭い通路を通っていた。

神崎「ここは人気も少ないし暗殺にピッタリかと思って私の希望コースにしてみたの。」

茅野「さすが神崎さん!下調べ完璧!!」

渚「よしここで決行しよう」

渚達が暗殺の場所を設定すると

不良「マジ完璧〜どうしてこんな人気のないとこを通るかね〜」

前方と後方から不良が現れ挟まれてしまった。

カルマ「なに?お兄さん等観光が目的っぽくないみたいだけど」

不良「男に用はねぇ女おいてさっさとうせ...

ガシッ!

ドン!!

男が言い終わる前にカルマが男の顔面を掴み叩きつけた。

カルマ「ほらね渚君一目のないとこだったら喧嘩しても問題ないよ」

不良「テメェ刺すぞ!!」

もう一人の不良がナイフを持ち襲ってきたが

ガシッ

ゴキッ!!

今まで黙っていた神威が男の腕を掴みその腕の肘に膝をいれ腕を骨折させた。

不良「ぎゃー!!痛ー!!俺の腕がー!!」

あまりのいたさに不良が絶叫した。

神威「3%くらいしか力入れてねーしそんだけで骨折するとは今時の不良は脆いな」

カルマ「やるね〜神威」

カルマが神威に感心してると

茅野「や!ちょっと離してよ!」

茅野と神崎が他の不良に捕まっていた。

カルマ「!」

不良「分かってんじゃねぇか!」

カルマ「ガハッ!」

神威「!」...ドサッ...

カルマは後ろから不意打ちされタコ殴りにされ神威はスタンガンを背後からうたれ気絶させられてしまった。

渚「カルマ君!神威君!」

杉野「やめろ! グハッ!」

渚「杉野!」

杉野が止めようとしたが吹っ飛ばされてしまった。

不良「おい!車出せ!!中坊が舐めなんなよ」

その後渚も気絶させた不良達は捕まえた茅野と神崎と気絶した神威を女と間違えて連れ去ってしまった。

 

しばらくして渚達は気がつき奥田は隠れていた為無事だった。その直後磯貝から電話がかかってきた。

渚「どうしたの?磯貝くん?」

磯貝「渚!お前らの班は大丈夫か!」

渚「!そうだ!茅野と神崎さんと神威君が拐われたんだ!」

磯貝「こっちもだ...応戦したが...気絶させられてその隙に拉致られちまった...」

渚「磯貝君の班も...とりあえず殺せんせーに連絡しないと!」

磯貝「頼んだ!!俺らも今からそっちへ行く!」

〜通話終了〜

 

女子サイド

捕まった神崎達は一目のつかない廃墟に連れてこられソファに放り投げられた。

茅野「いたた...神崎さん大丈夫!?」

神崎「なんとか...」

茅野「神威君は!...気絶してる...」

神威はまだ気絶していて目が醒めることはなかった。

不良「あとなん人か仲間が拉致ってくるからお前らはおとなしくしてろ」

茅野「クッ...」

神崎「...」

しばらくして

 

ガラガラガラ

不良「へへへ結構いいのがてにはいったぜ」

茅野「矢田さん!倉橋さん!」

神崎「片岡さんや岡野さんまで...」

不良「これでだいたい揃ったな〜楽しもうぜ〜台無しをよ〜」

不良「ねぇねぇリュウキ君俺もう我慢できないからポニーテールの女の子良いかな?」

リュウキ「しゃあねぇなーいいぞー好きにしろー」

片岡「矢田さん!」

片岡が助けようとするが身動きが取れなかった...

矢田さん「や...来ないで...」

不良「ぐへへへ...じゃあいただきまーす!」

矢田「いやぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

不良が矢田を襲おうとしたその時

 

ズンッ

 

その不良の腹が前に飛び出した。いや、正確には盛り上がったと言うべきか、その腹は一瞬そうなると同時にすぐ凹んだ。

 

「が………ガバァ…!」

その不良は口から微量の血を吐くとその場に倒れた。

突然の惨事に周りの不良や女子達は何も言えなかった。

すると

 

矢田「神威君...!」

不良が倒れた場所には神威がいた。見ると神威のいつもつけていた眼帯が外れていた...

 

神威「おい…俺が気絶してる間に何があったんだ...?」

岡野「神威...何...その目...」

神威「目?」

神威が左の頬などを触ると

神威「はぁ...眼帯が取れちまった...。まぁお前らに見られてもいいが流石に一般人はヤバイか...とりあえず…!」

 

不良「ひっ!!」

神威は首から筋を立て上がらせ、鋭い視線を不良達に向けた。

「口封じのためお前ら全員...

 

 

“皆殺しだ”

 




中途半端なところですいません...

あとお気に入り6つもありがとうございました!!


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修学旅行の時間 二時間目

渚side

殺せんせーや磯貝君たちの班と合流した僕等はしおりをたよりにようやく不良達を見つける事ができた。

途中で仲間らしき不良が現れたが、殺せんせーが手入れをし…何というかスキンヘッドに瓶底メガネという昔のガリ勉のような姿にしてしまった…。

磯貝「ここです殺せんせー...」

殺せんせー「...では開けてください」

渚「はい」

僕が入り口を開けるとそこにはとんでもない光景が広がっていた。

不良達が一人を除いて倒れていた。そしてその中心に誰かが立っていた。

茅野より小柄な身体

褐色色の肌

ボロボロの衣服

間違いない神威くんだ。

渚「神威くん!」

思わず僕が呼ぶと神威くんはゆっくり振り返ってきた。その時僕は足元に神威くんの眼帯が落ちていたことが分かり僕はそれを拾った。

渚「神威くんこれ落ちてた...え...!?」

殺せんせー「なっ!!」

前原「な...なんだお前その目...」

僕等が見た神威くんの顔は返り血がついていた。そして何より驚いたのが左目だ。その目をよく見ると

 

“ 人間じゃなかった”

 

眼球はドス黒く瞳は赤色で妖しく光っていた。とてもカラーコンタクトでも再現できる色じゃない。

 

 

sideout

 

渚達が来る何十分か前廃墟の中は冷たい空気に満ちていた。その原因は神威が矢田を襲おうとした不良の体に打撃を打ち込んだ音が響いたからである、その直後 神威は不良達を鋭い眼光で見据えた。

「お前ら全員皆殺しだ。そこの奴は瞬殺だったがお前らにはあっさり瞬殺かじわじわ虐殺どっちかを選ばせてやるよ」

残酷な選択肢を出してきた神威に対し不良達は次々に瓶や金属バッドを持ち始める。

 

リュウキ「チ……チビがいきがりやがって!!お前らやっちまえ!!」

 

リュウキというオールバックの不良の指示で瓶やナイフや金属バットなどの武器を持った仲間達が襲いかかり神威を攻撃してきた。

 

神威「見るからに今指示した奴が首謀者か...」

それだけ言うと神威は不良達の攻撃を余裕で躱しその懐へと入り込む。

 

「ふん…!」

その不良の懐に神威の拳が深く突き刺さる。その鋭い拳の一突きはその不良の意識を刈り取った。

「!や…やっちまえ!」

リュウキの合図と共に他の不良達は一斉に便やバッドを持ち神威に向かっていった。

 

「…雑魚が…」

神威は首を向かってくる不良へ向ける。瓶を持つ不良はすぐさま神威へ当てるため大きく振りかぶる。

 

 

「死ねぇぇぇ!!」

「うるせぇ」

バンッ!

 

肋骨が砕ける音と共に叫びながら向かってきた不良の腹に神威の蹴りが炸裂した。

 

「ぐぼぉぇ…!」

その不良は汚物を吐き出しながら見事に吹き飛ばされ廃墟の壁に叩きつけられ気絶した。

 

だが、その隙をバッドを持った不良がついた。

 

「ゔぁぁぁ!!!!!」

 

ゴシャァァァンッ!!

 

 

ヤケクソで放ったそのバッドの大振りが神威の頭へ直撃した。その瞬間 神威の首が大きく横へよじれた。

 

 

その結果

首の骨が折れ 顔が折れた木の枝のように垂れる。

 

「や…やってやったぜ…!!は…ハハハ!!!」

神威を倒した優越感なのか、人を殺した現実から逃れようとしているためなのか、その不良は発狂しながら笑った。

 

「!神威君…!!」

人質に取られていた神崎や矢田達はその光景を見た瞬間 絶句してしまった。

「う…嘘……でしょ…?」

「…!!」

 

矢田だけではない。その場にいた女子たちはその壮絶な光景に声も出せなかった。

 

 

 

 

 

 

だが、次の瞬間

 

 

「ん?一撃 当てられたか」

 

 

『!?』

 

現実にはあり得ない事が起きていた。

 

首を折られたというのに神威がまるでダメージがないかのような表情を浮かべていたのだ。すると、骨が粉々になっていてもおかしくない自分の頭に手を触れた。

 

 

グキ…グキグキ…バキ…!

 

そして その垂れた頭を自力で元の位置に戻したのだ。周りの皆は何が起こったのかさっぱり理解が出来なかった。神威の首の骨の音がその場に響き渡った。

この不可解な光景を目の当たりにしたバッドを持った不良は限界なのか気絶した。

 

「……首を折っても俺は殺せねぇぞ」

神威は残りの不良へ目を向けると殺意を剥き出しにした。不良達は既に後ずさろうとする者もいる。

あんなものを見てしまっては確実に精神が持たないだろう。

だが、神威は逃すほど甘くはない。

 

「来ないなら……いくぞ…?」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

 

あれから数分後、今まで瓶やバットを持っていた不良達は リーダー格の不良を除いて全て神威によって叩きのめされ気を失っていた。見る限り 全員 必ずどこか一箇所を複雑骨折させられていた。

神威「雑魚が。大勢でこの程度か…」

 

そして神威は首謀者であるリュウキを鋭い目で見据えた

その時

 

ガラガラガラ

 

後方から光が差し込み、扉が開いた。

 

〜現在〜

殺せんせー「これは…神威くん...何があったんですか...?」

殺せんせーは困惑しながら神威に問う。

神威「矢田を襲おうとした奴がいたからソイツをぶちのめした。そして周りの奴らにも同じ事をしてやったよ」

殺せんせー「そうですか…。いや…皆さんが無事でなによりです。さぁ帰りましょう。皆さんお怪我はないですか?」

茅野「なんとか」

神崎「大丈夫です」

殺せんせー「矢田さんも大丈夫です...ってアレ!?矢田さん!?」

殺せんせーが見るとそこに矢田の姿がなかった。その時

リュウキ「テメェらッ!よくも俺たちの邪魔してくれたなぁッ!!」

その叫び声のする方を見ると矢田を人質にしたリュウキが立っていた。

殺せんせー「矢田さん!!」

殺せんせーが助けようとすると

リュウキ「おっとちょっとでも近くとこの女を殺すぜ?」

矢田「...!!」

リュウキが矢田の首筋にナイフを突きつけた。

皆は手出しができなかった。殺せんせーも下手には動けない。いくらマッハとはいえあそこまで近づけられたら流石に間に合わない。

皆が困惑していると、一人 歩いて近づく者がいた。

 

神威「どけ」

 

神威は殺せんせー達を押し退け ゆっくりとリュウキに近づいていた。

リュウキ「な……何近づいてんだよ…!マジで殺すぞっ!!!」

矢田「ッ!!」

リュウキは更に矢田の首元にナイフを近づけた。

 

すると神威は立ち止まった。

 

 

 

…!!!

 

 

その場にいるモノ達は死を予感する。まるで神威の腕が鋭利な鎌と化し、首筋に突きつけられるようだった。

 

離れていた皆が正確な死に方を想像させる程の殺気を神威は放っていた。見ると赤く染まった目が怪しく輝き、首から次々と筋が沸き立っていた。

 

 

神威「手を離せ…!!」

 

遂には首筋だけでなく、額からも筋が沸き出つ。大切な家族を何の理由もなく危険な目に合わすこの高校生に対し、神威は激怒していたのだ。

 

 

リュウキ「な...舐めやがって...だったらマジでぶっ殺してやるよぉぉぉぉぉ!!!」

リュウキが矢田に向かってナイフを大きく振りかぶり矢田の首元目掛けて振った。

 

 

ザシュ…

 

リュウキ 「な……!」

だが、

刺したのは矢田の首ではなく目の前にある神威の腕だった。

矢田「!」

神威「………」

そして神威はナイフの刺さった手で不良の頭を掴むとバーベルのように持ち上げた。

 

「きえろ」

それだけ言い添え投げつけた。

 

ドガァァァァァァンッ!!!!!

 

 

そして投げつけられたリュウキは幸いに破けたソファーの上に落下したが叩きつけられた衝撃で気絶した。

 

神威「骨折で済ましてやったんだ。ありがたく思え...」

そう言い捨てた神威は刺さったナイフを抜き放ると解放された矢田の元にいき手を出した。

神威「大丈夫か?」

矢田「...うん」

矢田は差し出された神威の手を掴みゆっくりと立ち上がった。

 

それと同時に矢田は神威に抱きついた。

矢田「...うぅ...怖かった…………...」

限界なのか矢田は泣いていた。

それに対し神威は突然の出来事に赤面していた。

神威「!やめろ...矢田.…アイツらもいるんだぞ…」

神威の言ったことが聞こえないのか矢田はさらに力強く抱きついてきた。

神威が見回すとカルマと殺せんせーがゲスな笑みで見ていた。

神威「…なんだよ..」

カルマ「いや〜普段いつも無表情の神威がこんな顔するとはねぇ〜」

そう言いながらカルマが神威に自分が赤面した画像を見せた。

神威「今すぐ消せ...」

カルマ「保存完了〜♪」

殺せんせー「さぁ!邪魔者は退散しましょう!!」

神威「ぐぅ…!」

 

 

神威side

その後俺は姉が泣き止むまで抱き着かれたがしばらくしてようやくおさまった。

神威「気は済んだか?」

矢田「うん...ありがとう」

俺達はその廃墟の外にあるベンチに座っていた。

神威「だったら早く旅館に戻るぞ...あとこの目のことは秘密にしとけ….」

矢田「うん…わかった。……その手は…」

姉はナイフで刺された俺の腕を見た。包帯を巻いてあるが出血が酷いためか包帯がもう真っ赤に染まっていた。

「気にするな。ほっとけば治る」

それだけ言った。その後は何も喋らなかった。

その後俺達は立ち上がると皆が待つ場所へと歩いた。

 

 

 



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修学旅行の時間 三時間目

神威達が旅館に戻り廊下を一人で歩いていると殺せんせーと会った。

殺せんせー「神威君……あの時のことを…」

神威「話す気は微塵もねぇ。それと、あいつらにも伝えとけ。広めんなって」

殺せんせー「分かりました磯貝くんや前原くんにも伝えておきます...

それとね神威くん」

神威「?」

殺せんせー「せっかくの修学旅行なんですからもう少し楽しみましょう?」

神威「…分かったよ」

神威は頷いた。

殺せんせー「ヌルフフフフ!!あぁそれと旅館の部屋割りが決まったので見ておいて下さい」

神威「ん?〜

...おい」

殺せんせー「はい?」

神威「なんで俺が女部屋なんだぁ…?」

そう言いながら神威はナイフを殺せんせー目掛けて思いっきり振った

殺せんせー「ニュヤー!!!だって神威くんその見た目だと男子達の部屋はちょっ…

神威「死ね」

殺せんせー「ニュヤー!!」

ナイフを当てようとしたがにげられてしまった。

神威「....風呂にでも入るか...」

神威がまた廊下を歩いていると矢田と会った。

矢田「あ、神威君!どうしたの?」

神威「矢田か、いや風呂に入ろうかと思っていた」

矢田「それなら私も丁度入るところだけど一緒に行く?」

神威「あぁ」

 

移動中〜

矢田「ねぇ神威くん」

神威「?」

矢田「あの、あの時助けてくれてありがと」

神威「.別に...あれは偶々俺がいいタイミングで起きただけだ...」

矢田「でも、助けてくれたのは事実だから…本当にありがとう!」

矢田の笑顔に神威は頬を染める。

神威「…///」

二人が話してるともう大浴場に着いた。

神威「じゃあ...俺こっちだから...」

神威が男湯に入ろうとすると

従業員「お客様!女湯はそちらです!こちらは男湯ですので!!」

神威「え…」

抵抗する暇もなく神威は女湯に入れられてしまった。

神威「なんで...」

矢田「まぁ仕方ないとりあえず入ろう」

神威「...」

 

〜風呂にて〜

現在風呂には神威と矢田しか入っておらず、他の生徒は男女それぞれの部屋で休んでいた。

今二人は湯船に浸かっていた。

「ふぅ〜疲れが取れる〜。神威くんもう少しこっち来なよ」

神威は矢田と少し距離を置いて浸かっていた。神威は風呂の時でもサラシを解かなかった。

 

「別にいい…」

矢田の誘いに断る。すると、矢田は何かを思いつきこっそりと 神威に近づいた。

そして

「えいっ!」

「!?」

矢田は神威の背後まで近づくと手を回し抱きついた。いきなり抱きつかれた事により、神威の顔は真っ赤に染まる。

 

「は…離せ…」

「い〜や♪」

 

フニュ

 

矢田は更に身体を密着させてきた。矢田の胸が神威の背中に当たり形を変形させる。

「お…おい…」

「ふふ♪」

神威の普段見せない反応に矢田は面白がっていた。すると、少しずつ神威の体温が上がってきた。

 

「…熱い」

「あ…ごめん」

流石にやり過ぎたのか、矢田は抱擁をやめた。

 

「はぁ…俺はもう出る。じゃあな…」

「うん」

そう言い神威は一足先に早く風呂を上がった。

 

ーーーーーーー

 

矢田も風呂を上がると脱衣所に出る。そこには既に神威の姿は無かった。

「早いな。もう行っちゃったのかな?」

自分も着替えると部屋へと向かっていった。

 

 

「ふぅ…気持ちよかった〜」

「お?お帰り」

部屋に戻ってきた矢田を倉橋が迎える。

「あれ?神威君は?」

部屋に戻っても、神威がいない事に疑問に思い皆に尋ねた。

 

「何か帰ってきた途端にどこか行っちゃったよ?」

「そっか」

 

 

〜しばらくして

片岡「え?好きな男子?」

中村「そうよ!こういう時はそんな話で盛り上がるものでしょう?」

倉橋「はいは〜い!私は烏間先生!」

中村「はいはい皆だいたいそうでしょう。クラスの男子での例えばよ」

倉橋「え〜」

中村「うちでマシなのは磯貝と前原くらい?」

片岡「そうかな〜...」

中村「そうだよ前原はたらしだからしょうがないとしてクラス委員の磯貝は優良物件じゃない?」

矢田「顔だけならカルマくんとかかっこいいよね」

岡野「素行さえよければねぇ...」

女子全員「「「そうだねぇ〜...」」」

奥田「あ、でも普段はおとなしいですよ」

速水「野生動物か...」

茅野「神崎さんは?」

神崎「いや...私は別に」

茅野「えー?本当かー!」

そう言い茅野は神崎をくすぐりはじめる。すると茅野は何か思い出したのか神崎のくすぐりをやめると矢田へと目を向けた。

 

茅野「そう言えば矢田さん……今日神威君に抱きついてたね〜?」

岡野「あ〜!あの時ね!」

 

矢田「え!?ちょちょちょ……ちょっと!ここでその話は!」

いきなり自分があの時神威に抱きついたことを話され矢田は赤面した。

 

すると中村はニヤニヤしだし矢田の肩に手を回した。

中村「おやおやおや〜?それは面白い事を聞いたね〜?」

矢田「ちょっと!莉桜!!」

茅野「写真もほら…♪」

そう言うと茅野はゲスな笑みを浮かべながら昼間に撮った写真を見せた。それは泣きながら矢田が神威に抱きついている様子だった。

中村「ほほ〜う…これはこれは…衝撃の一枚ですな〜」

速水「うん…背丈的に姉と弟みたい……………LOVE………」」

狭間「クックックッ………………」

 

矢田「莉桜も凛香もやめて!!あと狭間さん何か怖い!!!!私はただあの時神威君に助けてもらったから…///」

そう言うと矢田は頬を赤く染めながら小声になった。

片岡「でもさ、神威君いいんじゃない?意外と優しいし強いし頭もいいし何しろカッコいいというより可愛いよね」

矢田「う………うん////」

 

 

すると

イリーナ「お〜いガキども〜そろそろ就寝ってこと一応伝えに来たわよ〜」

中村「一応って...」

イリーナ「どうせ夜通しお喋りするんでしょう?」

倉橋「先生だけお酒呑んでずる〜い」

イリーナ「あったりまえでしょ?大人なんだから」

矢田「そ…そうだ!ビッチ先生のオトナの話聞かせてよ!」

倉橋「普段の授業よりタメになりそう!」

イリーナ「なんですって!?」

矢田「まぁまぁいいからいいから!」

矢田がイリーナを部屋へ入れた。

 

女子全員「「「え〜!!」」」

中村「ビッチ先生まだ二十歳!?」

片岡「経験豊富だからもっと大人だと思った。

岡野「ね〜毒蛾みたいなキャラだし」

イリーナ「そう、濃い人生が作る毒蛾のような色気...だれだ!?いま毒蛾っつたの!」

矢田「ツッコミが遅いよ」

イリーナ「いい?女の賞味期限は短いの。あんた達は私と違って危険が少ない国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい。

岡野「ビッチ先生が真面目な事言ってる〜」

中村「なんか生意気〜」

イリーナ「舐めんな!ガキども!」

イリーナが怒ると突然矢田が

矢田「じゃあさ!ビッチ先生が今まで落として来た男の話聞かせてよ!」

倉橋「あ!興味ある!」

イリーナ「いいわよ子供には刺激が強いから覚悟なさい♪」

そう言いながら語りだし辺りを見回すと『奴』がいた。

イリーナ「おいそこ!!されげなく紛れ込むな!!女の園に!」

殺せんせー「え〜いいじゃないですか〜私もその色恋話聞きたいです」

中村「そういう先生はどうなのよ〜」

倉橋「そうだよ人のばっかずる〜い」

茅野「先生も恋バナとかない訳?」

不破「そうだよ!巨乳好きだし片思いくらいあるでしょう?」

皆から詰め寄られた殺せんせーは汗を流すとすぐさまマッハで逃げた。

 

ーーーーーー

皆が殺せんせーの暗殺へ取り掛かっている時、神威は1人、旅館の屋根に座りながら欠けた三日月を眺めていた。

「…」

 

神威の中にあの日の出来事が映像のように流れる。

 

?「ソイツを殴り続けて怒りや憎しみの感情を増幅させろ」

そう言われた瞬間 少年の前に立っていた男性が少年の顔を殴った。鼻からは血が流れ落ちる。

 

そして、殴るだけでは終わらない。

渡されたハンマーで少年の頭を殴りつけ、無理やり拘束した瞬間に爪を剥がす。

 

?「ぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!」

少年が叫び声を上げる中 その姿をカメラ越しで見ている男がいた。

 

?「いいぞ。手を休めるな。死なない程度に殴り続けろ…!」

?「やめて!! ?さん!!」

?「邪魔をするな!!」

一人の女性が拷問を止めようとしたが男はその女性を平手打ちした。

?「じきに今日の拷問は終わる。今度からあいつもお前が監視しろ」

?「...」

 

その後女性は拷問された少年の監視役にされた。

 

「…大丈夫だよ。私が絶対出してあげるから…」

女性の言葉に少年は何も返さなかった。ただ何も喋らず下を向いていた。

 

 

ドギャァァァーーーン!!

 

突然の大爆音

少年の前には監視をしていた女性が生き絶え倒れていた。

「?さん...」

 

 

その時神威は目を覚ました。

 

「……俺に…こんな事やってる暇はあんのかよ…」

そう言いながら神威は夜 ずっと屋根の上へと寝転びながら星を見ていた。

 

 

 



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転校生の時間

修学旅行は終わり雰囲気はまたいつも通りへ戻ろうとしていた。

ある日の朝

 

渚は杉野と一緒に登校していた。

渚「修学旅行楽しかったね〜」

杉野「あ〜…今日からまた通常か〜…」

渚「通常…ねぇ…」

二人が話していると

 

磯貝「よう!」

渚「おはよう磯貝君」

後ろから磯貝が話しかけてきた。

磯貝「お前らさ烏間先生からの一斉メール見たか?」

杉野「あぁ転校生がくるんだって」

磯貝は二人にメールを見せた。

渚「ついに来たね転校生暗殺者……………て言うかこういうの前にもあったような…………

磯貝「転校生めいもくってことはビッチ先生と違って俺らとタメなのか?」磯貝が疑問に思っていると

 

岡島「そこよ…!」

 

いきなり真ん前から岡島が出てきた。

 

杉野「いきなりでんな!」

岡島「俺も気になってさ顔写真とかないですか?って返信したのよ〜そしたらこれが返ってきた」

岡島が見せると写っていたのは青髪の女子だった。

杉野「お!女子か!」

渚「待ち受けになってる…」

磯貝「普通に可愛いな」

岡島「だろ!!すげー可愛いだろ!はぁ〜仲良くなれるかなぁー!」

杉野「浮かれすぎだろ…」

渚「というより、また神威君みたいに男ってことになるんじゃ…

岡島「いや!!こんなに可愛いんだ!!きっと可憐な少女だよ!!!!ラ〜ララララ〜!!!!」

 

そう言いながら磯貝達は転校生へ会うため教室へ向かった。

杉野「さぁ〜て来てるかな転校生」

杉野がドアを開けるとそこには…

 

黒い置物があった。

 

杉野「なんだこれ…」

杉野が不思議に思っていると

 

?「おはようございます転校生の自立思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」

 

いきなり画面から挨拶されすぐに消えた。

 

渚.杉野.岡島(そう来たか...)

 

 

 

烏間「み…皆…転校生を紹介する…ノルウェーから来た自立思考固定砲台さんだ…」

さすがの烏間も何もいえなかった。

茅野(烏間先生も大変だなぁ〜)

菅谷(俺…あの人だったらツッコミきれずおかしくなりそう…」

二人がそれぞれ考えていた。

 

殺せんせー「プー!!クスクス…」

烏間「お前が笑うな…!同じ色物だろうが…!」

烏間「言っておくが彼女はれっきとした生徒として登録されている。彼女は常にお前に銃口を向けるがお前は生徒に手は出せない」

殺せんせー「なるほど〜契約を逆手にとって機械で生徒をほどこしたんですか…良いでしょう!自立思考固定砲台さん貴女をE組に歓迎します!」

自立思考固定砲台「よろしくお願いします殺せんせー」

ちなみに神威はずっと寝ていました。

 

一時間目

 

茅野「ね。渚」

渚「?」

茅野「固定砲台って言うけどどうやって攻撃するんだろう…」

渚「う〜ん多分だけど…」

渚が言おうとした時

 

ガシャ ガシャガシャガシャ

 

ガチャン

自立思考固定砲台から何丁もの銃が展開された。

 

渚「やっぱり!」

杉野「かっけー!!」

 

ズドドドドドドド!!!!!

 

展開した銃から何発もの銃弾がうたれた。

 

全員「「「「うわぁ!!!」」」」

 

クラス全員が頭を伏せその上を何発もの銃弾が横切り殺せんせーに向かっていった。

 

殺せんせー「機関銃二丁ショットガン四丁濃密な弾幕ですがここのクラスは当たり前にやっていますよ授業中の発泡は禁止です」

そう言い目の前まできた弾を

殺せんせー「ニュッ」

チョークではじいた。

自立思考固定砲台「気をつけます。続けて攻撃準備を始めます。」

固定砲台は殺せんせーの注意を無視し攻撃を再開した。

殺せんせー「さっきと全く同じ弾幕…所詮は機械ですね」

そう言いまたチョークではじこうとしたとき

 

ブシュッ

 

殺せんせーの左指が破壊された。

ブラインドつまりはじいた瞬間死角を発生させその隠し球で破壊したのだ。

そして固定砲台が殺せんせーを殺せる確率を計算し卒業までに殺せる確率は90%以上という結果を出した。

 

ズドドドドドドド!!!!!

 

その後も発泡は続きその日一日は発泡ばかりで授業にならなかったそうだ。

 

ちなみに神威はずっと寝ていたました。

 

次の日

また発泡しようとした固定砲台が銃を展開しようとした時

ガイィィィン…ガイィィィン…

 

ガムテープで縛られていたため展開ができなかった。

自立思考固定砲台「殺せんせーこれでは銃を展開出来ません拘束を解いて下さい」

殺せんせー「そう言われましても」

自立思考固定砲台「この拘束は貴方の仕業ですか?明らかに私に対する加害でありそれは契約によって…寺坂「違ぇよ」 ん?」

寺坂「俺だよ…どうみても邪魔だろーがせめて常識ぐらい身につけてから殺しに来いや」

菅谷「ま、機械に常識は分かんないよ」

原「授業終わったらちゃんと解いてあげるから…」

 

そん感じで二日目は一発も発泡出来なかったようだ。

 

ちなみに神威は皆が帰り始めた頃起きたそうだ。

 

その夜

 

 

神威「う…あぁぁ…

 

森の奥の人気のない古屋の中で神威が一人うなされていた。

 

神威(何だ…これは!!)

 

殺せ!!! 死ね死ね死ね死ね!! 破滅しろ!!!

 

壊れろ!!! 破壊しろ!!! 壊せ!!!!

 

神威(や…やめろ…

 

ぶっ殺せ!!!!!

 

神威「!」

 

神威「やめろって…言ったんだろーがぁー!!!!!」

 

ドガァーーン!!!

神威は左右から聞こえる呪詛のような言葉を怒りに任せ断ち切った。

しかし怒った時の動作で今まで住処としていた古屋は半分くずれてしまった。

神威「はぁ…はぁ…はぁ…クソまた新しいとこ探さんと…」

そう言い神威はまた目を閉じ意識を沈めた。

 

次の朝

神威は教室前の廊下でちょうど速水という女子と会った。

 

神威「よう」

速水「おはよう」

二人が挨拶していると

 

渚・杉野「「えええ!!!!???」」

 

教室の中から二人の叫び声が聞こえた。

 

神威「何だ?」

速水「さぁ?」

 

ガラガラガラ

二人が入るとそこには…昨日より若干体積のふえた自立思考固定砲台があった。

 

自立思考固定砲台「あ!おはようございます!神威さん!速水さん!」

 

そして明るい表情を出し二人に挨拶してきた。

 

神威「へぇ〜」

速水「…」

 

あまりの変わりように神威は少し驚き速水は何も言えなかった。

 

 




遅くなってすいません…


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転校生の時間その2

殺せんせーに改造され一晩でグレートアップした自立思考固定砲台を見て皆は驚いていた。

 

岡島「一晩で偉くキュートになっちゃって」

三村「あれ…一応固定砲台だよな…」

あまりの変わり様に岡島は興奮し三村は訳が分からないようだ。

すると

寺坂「何騙されんだよテメェらどうせあのタコがつくったプログラム機械は機械どうせまた空気読まず射撃すんだろポンコツ」

そう言い寺坂は言い捨てた。

 

自立思考固定砲台「仰る気持ち分かります…寺坂さん…昨日までの私はそうでした…ポンコツ…そう言われても…返す言葉がありません…」

寺坂の言葉を受け入れたのか泣きだしてしまった。

片岡「あ〜あ泣いちゃった」

原「寺坂君が2次元の女の子泣かした〜」

寺坂「何か誤解される言い方やめろ!!」

寺坂が二人から集中砲火されていた。

 

竹林「素敵じゃないか2次元…Dを一つ失う事で女は始まる…」

いままで一言もしゃべっていない竹林とわいうメガネ生徒が初セリフでとんでもない事を言った。

 

自立思考固定砲台「でも皆さんご安心を!殺せんせーに改良されて協調性の大切さを学びました!私のことが好きになっていただけるよう単独での暗殺を控えることにしました!」

殺せんせー「そう言う訳です。ちなみに先生は彼女にたくさんの改良を施しましたが彼女の殺意には一切手をつけていません。先生を殺すには心強い味方となるでしょう…」

そう言い殺せんせーは笑みを浮かべた。

 

その後

自立思考固定砲台は天然なのか協調性を高めるためにカンニングという方法を行った。

そして、現在は休み時間となり自立思考固定砲台は彫刻や将棋などでクラスから人気を集めていた。

すると

神威「ふわぁ〜」

いままでずっと寝ていた神威が起きた。

自立思考固定砲台「神威さん!おはようございます!」

神威「あぁ…(何か変わってねぇか…?)」

岡野「アンタ この頃寝てばっかじゃないの…?」

神威「気の所為だ。顔を洗って来る」

岡野の言葉を軽く受け流した神威は教室を出て行った。

 

片岡「あとさ。この娘の呼び方決めない?自立思考固定砲台…ていうのはちょっと…」

矢田「だよね〜」

原「名前から一文字とって」

不破「自…律…そうだ!律は?」

千葉「安直だな」

不破「え〜可愛いよ」

自立思考固定砲台「律…」

前原「お前はそれでいい?」

律「はい!嬉しいです!では『律』とお呼び下さい!!」

自立思考固定砲台は『律』という名前が気に入ったのかすごく表情を明るくさせ頷いた。

 

渚「上手くやっていけそうだね」

カルマ「どうだろう寺坂の言う通り殺せんせーのプログラムで動いてるんでしょ?機械自体に意思がある訳じゃないあいつがこのあとどうするか全部作った持ち主が決める事だよ」

 

カルマの言った事に渚は理解できなかった。

 

その夜

ザッ…ザッ…

E組校舎に何人かの白衣を着た者が侵入し、教室が怪しく光った。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

昨夜が明けて翌日。律は最初の形である無表情の姿に戻っていた。

 

「今後は改良行為も危害と見なす様だ。君らもだ。彼女を縛って拘束し故障した場合は賠償を請求するそうだ」

そう言われた皆は曇った表情をしてしまう。烏間も皆の気持ちも分からなくはないが、抗議した場合は律を撤去され、暗殺する確率も低くなるため、無闇に抗議する事ができなかった。

「持ち主の意向だ。従うしかないだろう」

「う〜ん…持ち主とはこれまた厄介な…。親よりも生徒の意思を尊重して欲しいものですね…」

 

それからHRが終わり1時間目が始まる。

 

すると、機械の両側から展開する音が聞こえてきた。

 

また始まるのだ。あの弾丸の嵐が。

 

バン!

 

「(来た…!)」

殺せんせーは音に反応し避ける用意を。生徒の皆は頭を伏せる用意をした。

 

 

 

だが、一向に弾丸は打ってはこなかった。

 

「!?」

見ると律の両側には機関銃ではなく、咲き誇る『花』が添えられていた。

 

「花を作る…約束をしていました」

その言葉に矢田は目を開く。

 

「殺せんせーは、私に多くの改造を施しましたが、マスターはそれを不要と判断し、殆どを撤去・初期化しました。ですが、皆さんとの協調性が第一と考え、消去される前に重要データをメモリーの隅へ隠しました」

その言葉に殺せんせーは歓声をあげた。

 

「素晴らしい!律さん貴方は!」

「はい!私の意思でマスターに逆らいました!」

殺せんせーに反応するかのように律の表情は満面の笑顔に変わった。

 

「殺せんせー…こういうのは『反抗』っていうのですよね…?律はいけない子でしょうか…?」

「とんでもない!年相応の態度!大いに結構!」

そう言い殺せんせーは大きな花丸を顔に映し出した。

律は安心したのかまた笑顔に戻った。

 

晴れてまた、彼女はE組の心強い仲間となった。

 

 




遅くなってすいませんでした…
ですがお気に入りが増えてとても嬉しいです!!お気に入りに登録してくれた方ありがとうございます!!


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家の時間 一時間目

今回は他のアニメのキャラを少し混ぜます。


律がクラスに馴染めた数日後

 

現在神威は六時間目が終わったので帰る準備をしていた。すると

矢田「ねぇ〜神威くんこの後神威くんの家に行っていい?」

矢田が突然話しかけてきた。

神威「…別にいいが」

矢田「やったー!」

神威「来るのはお前だけか?」

矢田「あと誰か誘っていいの?」

神威「一人くらいなら…いいぞ」

矢田「オッケー!」

そう言い矢田は誰かを誘いに行った。

 

残った神威は

神威「はぁ〜(なんで俺は普通にオッケーしたんだ… まぁちょっと見させてすぐ帰らせればいいか…)

そう考えながら神威は教室を出た。

 

その頃矢田は

 

矢田「凛香〜この後空いてる?」

凛花「特に予定はないけどどうしたの?」

矢田「この後神威くんの家に行くんだけど凛花もどう?」

凛花「いいけど…」

速水という女子を誘っていた。

 

 

下駄箱にて

 

神威「速水を誘ったのか とりあえず行くぞ」

 

そう言い神威は麓とは反対方向の一本道へ進みだした。

 

矢田「神威くんってどこで生活してるの?」

神威「この先にある古屋で暮らしてる」

速水「そうなんだ…」

 

そして、歩くこと10分

 

三人が歩いていると神威が立ち止まり

「この先に進むと広場に出る…その先に古屋があるから先に行ってて待ってろ…俺は何か木の実でもとってくる」

 

そう言い神威は林の奥へと消えて行った。

 

矢田「とりあえず行こ」

速水「うん」

そう言い二人は先に進んだ

 

そして進み続け林を抜けると広い野原へ出た。

矢田「うわ〜すご〜い!」

速水「綺麗…旧校舎の上にこんな広い広場があるなんて…」

E組校舎よりも広いその広大な野原に矢田と速水は驚きを隠せなかった。

 

速水「あれ?古屋じゃなくて校舎がある…」

矢田「場所間違えたのかな…」

二人が神威の言ったたものとは別の建物を見て疑問に思っていると

 

 

「ねぇお姉ちゃん達」

ふと後ろから声をかけられ振り向くと幼い少年少女達がいた。

矢田「あれ?ここって君達の校舎?」

「うんそうだよ。僕達いまから先生の頼みごとで料理に使う薬草を取りに行くんだけど僕達だけじゃ時間がかかるからお姉ちゃん達手伝ってくれない?」

矢田「ゴメンねお姉ちゃん達ちょっと友達に待ってるよう言われたから…」

「その人も多分ここに来るとおもうからさ」

「いこいこー」 「早く早く〜」

 

矢田が訳を言っても子供達は聞かず手を引かれたり背中を押されたりして二人は渋々行くこととなった。

 

 

その頃神威は

神威「?いつもあるはずの木ノ実がねぇ…しかも静かすぎる…誰か先客でもきたのか?」

いつもとは違う雰囲気に不思議に思っていた。

 

 

 

現在矢田達は校舎の近くで薬草を取っていた。

「このやくそうにはね 肉を柔らかくする効果があるんだよ」

矢田「へぇ〜そうなんだ〜」

「あとこの草はね肉の臭みを消す効果があるんだよ」

速水「なるほど」

 

子供達に連れられた矢田と速水は楽しそうに薬草を集めていた。

 

 

そして二人が気付いた頃には夕方となっていた。

矢田「そうだそろそろ帰らないと」

「まってお姉ちゃん達を先生に合わせたいんだ」

速水「でも私達も友達に合わないといけないから…」

「その人も多分いると思うからさ」

 

そう言い矢田と速水は子供達と共に先程の校舎にもどった。

 

 

 

その頃神威は

 

グシャ バキ メキッ

 

ギャァァァァアー!!!!

 

異形な集団と遭遇し真っ二つにしたり引きちぎったりしていた。

 

神威「何だ?こいつら頭に角がはえてやがる」

 

ゴシャッ

 

そして最後の一人を片付け終えると

神威(この数だとまだ仲間がいるな…とりあえずいったん戻るか…)

そう言い神威はその場をあとにし校舎へ戻った。

 

 

場所は変わり今矢田達は校舎の中を歩いていた。

 

矢田「君達の先生ってどんな人?」

「すごく優しい人だよ」

矢田「そうなんだ」

「着いたよ」

そう言い子供達は教室の入り口を開くと

 

 

「お帰り」

 

 

大柄な男がいた。

「先生ただいま」

「お帰り。そちらのお嬢さん達か君達の手伝いをしてくれたのは」

「はい」

「すまないねお嬢さん達。おい君は野菜を刻みなさい」

「はい」

「君は湯を沸かしなさい」

「はい」

「あとの者は肉の準備をしなさい…」

 

そう言い生先生は矢田と速水に目を向けた。その瞬間二人は生徒に腕を掴まれた。

 

矢田「え…なんで」

 

「へへへへへへ」

そして無造作に首を振り顔が変わっていた他の生徒も同じことをしていた。

 

そして生徒と先生の姿を見て矢田と速水は驚愕した。

 

頭には二本の角

大きく裂けた口

鋭い歯

 

『鬼』だ

 

矢田「ま…まさか肉…って」

速水「私達って…こと…」

鬼「さぁ正しい刻み方を教えてあげよう…!」

そう言い包丁を矢田達に向けた

矢田は咄嗟に掴まれた手を振り払った。

矢田「逃げるよ凛香!」

速水「うん!」

そう言い矢田は速水の手を取り教室から出た。

「捕まえなさい!」

「おおー」

先生の一言で子供達があとを追いかけた。

 

 

一方その頃神威は

 

ペタ ペタ ペタ ペタ

 

校舎 へ着き中へ入っていた。

 

神威(何だ?やけに静かだな)

そう思っていると

 

「へへへへへへへへへ」

 

後ろから気味の悪い笑い声が聞こえ神威が振り向くとそこには

頭から角が生えている小鬼が二、三人いた。

神威「何だ?お前ら、まさかとは思うがここら辺の木ノ実を全部とったのはお前らか?」

「へへへへへへへへへそうだよ。料理する為にとったのさ」

「人間を久しぶりに食べれるからね」

「二人も捕まえれたのは運がよかったよ」

神威の問いに鬼の子達は頭を無造作に振りながらこたえた。

 

神威「二人の人間…誰のことだ…?」

「へへへへへへへへへポニーテールとつり目の女の子だったな〜」

「君も美味しそうだね〜」

「へへへへへへへへへつまみ食い…いただきまぁーーーす!!」

 

そう言い子供達が一斉に神威に襲いかかろうとした時

 

神威「黙れ」

 

スパンッ!!!!!

 

一人の子供の首が一瞬で飛んだ。

 

神威「喰う人間が悪かったな」

 

そして神威は残りの子供に目を向け

 

スパンッ!!!!

 

同じように首をはねた

 

 

神威「…………………あと十人はいるか…」

 

ペタ ペタ ペタ ペタ …

 

そう言い神威は廊下を歩いて進んだ。

 

 

 

一方その頃矢田と速水はトイレを見つけ、一番奥の個室に隠れた。

 

矢田「ひとまずここに隠れてよう…」

速水「うん…」

 

ガラガラガラガラ

 

 

 

 

コツ コツ コツ コツ

 

速水「きた…!」

 

 

「赤い紙がいいか青い紙がいいか」

矢田「え…?」

 

「赤い紙がいいか青い紙がいいか」

速水「どういう…」

鬼がそう言うと同時にトイレの戸がミシミシと音をたてた。

 

速水(まずい…このままじゃ私と矢田は…

 

 

 

 

 

『喰われる』

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ 嫌だ 嫌だ 食べられたくない … 助けて…

 

「赤い紙がいいか青い紙がいいか!!」

 

ミシミシミシミシミシミシ

 

ドアは今にでも壊されそうだった。

 

 

“助けて…”

 

 

 

 

 

「赤い紙がいいか青k 」 ドォンッ!!!!!「ぶべらぁー!!!!」

 

 

 

速水.矢田「「え…?」」

 

 

突然の出来事に速水と矢田は理解が出来なかった。

何故ならいきなり壁が壊れ何者かが鬼にドロップキックをかましたのだから

 

 

神威「赤い紙…」

 

 

その出来事の張本人は神威だった。

 

 

速水「か…神威…」ドサッ

安心したのか速水は気絶してしまった。

 

神威「よう…お前ら大丈夫か?」

矢田「う…うん…」

神威「お前は大丈夫として速水は… ったく勘弁しろし」

「ガハッ…貴様…!」

神威「まだ生きてたのか 桃花、速水を連れて校舎から出ろ」

矢田「…うん!わかった!」

 

そう言い矢田は速水をおぶって壊れた壁から外に出た。

 

「捕まえなさいー!!!捕まえた者は沢山食べてよろしい!!」

そう言い鬼は大声で言った。

 

 

 

..............................

 

 

 

「あれ…生徒達は…」

神威「生徒が来ないのか?最後はひとりぼっちかわいそうな奴だな」

 

「な…に…?」

 

 

グチャァア!!!!

そう言い神威は鬼の両足を無理やり引きちぎった。

 

鬼「あああああああ!!!!」

 

あまりの痛さに鬼は絶叫した。

 

 

神威「俺はいま自分の縄張りを荒らされたから少しイラっと来てる」

 

グシャ!!!

 

 

そう言いながら神威は鬼の体の切断した部分を踏みつけた。

 

 

鬼「ギャァァァァア!!!!!」

 

 

まだ痛みが残っているところを踏みつけられ鬼はさっきよりも酷い苦痛の声をあげた。

 

神威「だからお前は死刑確定だ」

 

 

 

神威「せめて最後は生徒と一緒に殺してやるよ」

 

そう言い神威は袋を開き下に向けどんどん落とすように出した。

 

 

ボト ボトボトボトボトボトボトボトボトボト…

 

 

袋から出てきたのは

 

 

 

 

 

 

“生徒の生首”だった

 

 

 

 

 

 

 

鬼「あ………ああ……なんてことを…」

 

そう言い鬼が生徒の生首を手に取った時

 

ペチャ

 

何かが付着していた。

 

 

鬼「な……なんだこれは………」

鬼が疑問に思っていると

 

神威「油だよ」

 

鬼が声がした方向を見ると手に火をつけたマッチを持ち立っている神威がいた。

 

鬼「な……何を……」

神威「何をって 『焼くんだよ』 ここ結構気に入ってたのにお前らのお陰で随分と汚れたからな。もう住む気が失せた」

 

 

そう言い神威はマッチを倒れている鬼にゆっくりと投げた。

 

 

『じゃあな』

 

そう言った瞬間

 

 

 

 

 

ドガァァァァァァァァンッ!!!!!!!

 

 

 

大爆発が起きた。

 

 

 

矢田「!」

 

外に出ていた矢田は離れた場所からその光景を見ていた。

矢田「な…何が起こったの…?」

 

 

 

ヒュンッ

 

 

燃えている校舎から一つの影が飛び出してきた。

 

 

矢田「神威くん!」

 

そのまま神威は矢田の元へ歩いて

神威「桃花…速水は?」

矢田「うん…いまは眠ってる」

神威「分かった…とりあえず帰るぞ速水は俺がおぶってく」

そう言いうと神威は速水を背負った。

 

矢田「分かった」

 

そう言い神威達はその場を後にした。

 

 

その後火は一時間後に消えたそうだ。

 

 

 

帰り道

 

桃花「はぁ〜怖かった〜…」

神威「すまん今回は予想外だった…」

神威達は夕方の街を歩いていた。

 

すると

 

速水「ん……あれ……?」

 

矢田「凛香!」

速水「あ……れ?矢田……?」

今まで気絶していた速水が目を覚ました。

 

速水「私って…そうだ!私と矢田は確か鬼に!」

状況が整理できなく速水は混乱していたが

矢田「そのことなら神威くんが助けてくれたから大丈夫だよ」

矢田が速水を落ち着かせた。

 

速水「そうだったんだ…ありがとう…神威…あとさそろそろ下ろして私の家ここだから…」

神威「ん」

そう言い神威は速水を下ろした

 

そして

 

速水「ありがとうまた明日」

 

神威「あぁ」

矢田「バイバイ」

神威は速水と別れた。

 

 

 

その後神威は矢田を家まで送っていくこととなった。

 

帰り道

 

神威「はぁ〜」

 

矢田「どうしたの?」

 

神威「いや今まで住んでた家は燃やしちまってどう生活すればいいか考えてたんだ…」

 

矢田「だったらしばらく私の家に住まない?」

 

神威「え…」

突然の発言に神威は少し驚いた。

 

矢田「とりあえず今日は両親いないからさ…事情は後で言えばいいし…」

神威「な…何でそうな 「ダメ…?」……分かったよ…」

矢田「やったー!」

 

神威が矢田の家に居候することに決まった瞬間矢田は大喜びした。

 




今回は怪談レストランの鬼を出してみました。

次回は神威が矢田と一晩すごす話です!


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家の時間 二時間目

矢田の提案によって神威は矢田の家にお世話になることとなった。

 

「ここだよ。上がって」

「あぁ…」

矢田に言われると神威は家に上がろうとしたが中断し水桶をを頼んだ。神威は常に裸足であったために足は泥だらけである。

「分かった。ちょっとまってて」

数分後 渡された洗面器に水をいれ 神威は脚を洗った。すると瞬く間に綺麗だった水が泥水へと変貌した。

「……」

神威はその水を近くの溝に捨てると脚を拭き家に上がった。

「こっちこっち〜!」

矢田の声がする方に神威は移動した。着いた場所はキッチンであり、エプロンをつけた矢田が冷蔵庫を開け中を調べていた。

 

「あ!そこ座って」

矢田に言われた通り神威は近くの椅子に座った。

 

「すぐに作るからまってて!」

「あ…あぁ…」

神威の前で矢田はせっせと食事の用意を進めた。

そんな中神威は周りの景色を見渡した。

 

「……変わらんな……」

 

 

 

 

20分後

 

 

「ジャーンッ!私 の得意料理のオムライス!」

満面の笑顔で出来上がった料理を神威に見せた。その瞬間 神威の口から微量のよだれがでた。

「(お…俺が好きだったやつ……)」

「どうしたの?」

「ッ!」

矢田は不思議に思い質問した。すると我に帰ったのか神威はすぐさまよだれを拭いた。

「す…すまん…(や…ヤバイ…気づかれちまうとこだった…)」

 

神威の意外な一面に矢田は笑みを浮かべた。

「やっぱり神威君は可愛いね。オムライスでよだれなんか垂らしちゃって♪」

「う…/////」

神威は赤面になりながらもオムライスを口に運んだ。すると神威の目から微量の涙が流れた。

 

「(懐かしい味……た…)」

 

ーーーーーー

ーーーー

 

オムライスを食べ終え時計を見るともう8時を過ぎていた。

「あ、お風呂 沸かしてあるから入っていいよ」

「分かった…」

神威は立ち上がるとキッチンを出た。

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

神威は風呂場でいつも着用している黒い衣を脱ぎ捨てた。そしていつもつけてある眼帯も外した。だが、胸にあるサラシだけは取らなかった。

 

「姉に見られてるし…ここでは隠す必要はないな…」

そう言うと神威は渡されたタオルを巻くと風呂場へ入った。

 

神威は自分の肌を磨きながら自分の皮膚を見ていた。

(……鬼の件の為か肌が少し薄くなってるな…目のひびも少しずつ無くなってきてる…やはり実験の通り殺せば殺すほど人間に戻るみたいだ…)

 

そう思いながら神威は身体を洗った。

 

その時、神威の手が止まった。

 

(どうして俺は…あの時…)

思い出したのだ。あの日の事を

 

回想

神威side

 

 

俺と姉は同じ中学に通っていた。

 

俺と姉は普通の成績で問題もなかった。だが俺は病弱で一ヶ月に4回は休んでいた。

 

 

そんなある日、テスト当日の朝

 

 

「ゴホッ!!ゴホッ!!……ゴホッ!!」

 

俺は突然の熱や咳にみまわれた

 

 

「桃矢…大丈夫?」

 

「それは…こっちのセリフだよ…姉ちゃん……今日テストでしょ……欠席したら……E組に落とされちゃう……だからもう行きなよ…!」

 

「たった一人の弟をほっとくわけにいかないでしょ!!!今日は一日私が看病してあげるからジッとしてて!」

 

 

「!!」

 

 

その後俺の姉はテストをすっぽかしたという事となりE組に落ちた。同じクラスの奴からも多くの批判を受けたようだった…

 

 

side out

 

神威は歯を噛み締めた。

 

(あの時を思い出すだけで虫唾がはしる…とりあえず……タコとアイツを殺したら俺はここを去る。そして、二度とここには戻らない……)

その時

 

 

ガラガラガラガラ

「神威く〜ん私も入るね〜」

 

 

ふろのドアが開きタオルを巻いた矢田が入ってきた。その瞬間 頭を洗っていた手が止まった。

 

「な…なんで入ってきた…!?」

「え?一緒に入りたいから♪」

「…!?」

そう言い矢田はゆっくりと神威に近づいた。

神威は逃げようとしたがこの至近距離では逃げようにも逃げられなかった。

 

「ほら、背中 洗ってあげるよ」

「…わかったよ……」

神威は諦め矢田に背中を頼んだ。

 

 

 

 

ゴシ ゴシ ゴシ ゴシ

 

 

 

「どう?神威くん」

 

「悪くない…」

「そっか。サラシ取らないの?」

「取らん。ほっとけ」

「ハイハイ」

矢田は笑いながら神威の背中をシャワーで流した。

「私も頼んでいい?」

「……分かった…少しだけなら……」

神威は渋々頷くと同じように矢田の背中を洗いシャワーで流した。

流し終わると神威はそろそろ出ようと出口に向かった。すると

 

「お風呂にはいりましょうね〜♪」

「…!?」

突然目の前の視線が上がったと思いきや 矢田に抱き上げられていた。女子にしては高い身長に対し、神威は140なので楽々と持ち上げられた。腕も動かせず、足もバタバタさせる事しかできなかった。

「は…離せ…」

「だめ♪」

矢田は神威を赤ん坊の様に抱き上げると湯船に浸かった。

 

「ふぅ〜…」

「…」

湯船に浸かっても腕は解けることはなかった。神威も神威でそろそろ限界が来ていたようだった。

 

「う……あ…あが…る…」

 

そう言い神威は矢田の腕から抜けようとすると

 

「ふふ♪」

ギュ

神威「!!!!」

矢田はさらに抱きしめる力を強くした。

「もうちょっと一緒に入ってようよ〜♪」

フニュ

すると神威の背中に矢田の豊満な胸が押し付けられた。

 

神威「もう…無理…ッ!!」

すると神威は無理やり手を解くと矢田の腕から逃れ風呂から走り出ていった。

 

「も〜!」

 

その後

 

 

 

 

 

 

「……俺の服は…」

 

「あ、神威くんの服洗っちゃったから私のパジャマ貸してあげるよ」

「……」

神威は服が一着しかない為 仕方なく矢田のパジャマを借りる事となった。

「向こう向いてろ…」

「はいはい」

 

 

 

「いいぞ」

 

「は〜い。……お〜!似合ってるじゃん!」

「…」

着用したパジャマは神威にしては少し大きめであり、手はギリギリ出るか出ないかである。

そして時計を見るともう11:30を過ぎていた。

「じゃ、そろそろ寝よっか」

「じゃぁ俺はそこのソファーで寝る」

そう言い神威は近くにあるソファーへ向かおうとするが、またまた矢田に抱き上げられた。

 

「ふふ♪一緒に寝よ♪」

「うぐ……」

疲れが溜まっている為か反抗する体力も残っていなく そのまま部屋へと連れられた。

 

 

〜矢田の部屋

 

「電気消すよ」

 

「あぁ」

 

 

カチッ

 

 

神威は矢田に抱きつかれる形で寝ていた。

 

(う……抱きつきすぎだ……だけど…離れる力もない………………睡魔が…睡魔…………………が……………………」

「スー…スー…スー…」

矢田は神威が目を閉じた後 目を開け 神威の寝顔を楽しんでいた。

「寝顔も可愛いな。こういうとこも弟そっくりだね…♪」

 

矢田が神威の寝顔を眺めていると

 

「え…?」

 

 

神威の顔が一瞬 別の何かに見えたのだ。

 

 

「なんだろ…一瞬神威くんが桃矢に………まさかね」

 

 

 

そして矢田は神威を見て

 

「おやすみ」

 

 

自分も意識を沈めた。

 

 




編集しました。

そしてお気に入り20越えありがとうございます!!


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LRの時間

ある日の五時間目

 

 

英語の時間でイリーナが黒板に文を書いていた。

 

『Oh…sexy guy it's a mircle what really?』

「日常会話なんて実は単純。周りにいるでしょ?『まじ!?』とかで会話を成立させようとする奴。その『マジ』に当たるのが『Really』 木村、言ってみて」

 

 

「り…りありー…」

 

 

「はいダメ。LとRがめちゃくちゃよ。LとRの発音は日本人とは相性が悪いの、私としては通じはするけど違和感あるわ。」

 

「は…はい」

 

「相性が悪いものは逃げずに克服する。これから先、発音は常にチェックしていくから、………LとRを間違えたら……公開ディープキスの刑よ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後となり、イリーナは廊下で凄く何かに焦っているようだった。

 

 

 

「く……こんなところで……足止め食ってる訳にはいかない……一体どうすればあのモンスターを……」

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

「「ぐをぅ!!!!」

 

 

 

突如イリーナは背後からかけられたワイヤーに首をつられてしまい、縛り上げられた。

 

 

 

 

(ワ…ワイヤートラップ……一体……)

 

 

 

 

 

その時、イリーナの近くに謎の男が現れた。

 

 

「(驚いたよイリーナ、子供相手に楽しく授業…まるでコメディアンのショーを見ているようだ…)」

 

「(せ……センセイ…!)」

 

 

そこへ烏間先が駆けつけ仲裁 へと入った。

 

 

「(おい、何をやっている。女に仕掛ける罠じゃないだろう)」

 

「(心配ない。罠の防ぎ方ぐらい教えてある)」

 

 

 

そう言うと男はワイヤーを切断しイリーナを解放した。

 

 

「(何者だ。せめて英語だと助かるのだが)」

 

 

そう言われた男は突然と言語を変えた。

 

 

 

「これは失礼…日本語で大丈夫だ…。イリーナイェラヴィッチを斡旋した者と言えばお分かりかな」

 

 

 

 

そう言われた烏間は思い出したように目を開いた。

 

 

 

殺し屋ロヴロ

 

 

現在は引退しているが現役時代では殺し屋の中ではトップクラスの実力を持つ男だったのだ。

 

 

「例の殺せんせーとやらは」

 

「上海まで杏仁豆腐を食いに行った。30分前に出て行ったからもうじき戻るだろう」

 

「なるほど…聞いてた通りの怪物のようだ」

 

 

そう言いロヴロはイリーナへと目を向けた。

 

 

「来てよかった。今日限りで撤収しろ。お前では殺せん」

 

 

 

そう言われたイリーナは立ち上がり言い返した。

 

 

 

「必ずやれます!!先生!!私は!!」

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

ロヴロは素早い動きでイリーナの後ろへ回り首筋へ親指を突き立てた。

 

 

 

 

「相性の良し悪しは誰にでもある。こここそがお前にとってLとRじゃないかね?

 

 

 

 

ロヴロがそう言い切ったとき。

 

 

 

 

 

「半分正しく半分は間違ってますね〜」

 

 

 

 

話の内容の張本人が現れた…

 

 

 

「何しに来た。ウルトラクイズ」

 

 

「ひどいですね〜。いい加減殺せんせーと呼んでください。あとロヴロさん。確かに彼女は暗殺者にして恐るるに足りません『くそ』です。」

 

 

「誰が糞だ!!!」

 

 

殺せんせーの言葉にイリーナはキレるが話を続けた。

 

 

 

「ですが、彼女こそこの教室に適任です。殺し比べてみれば分かりますよ。どちらが優れた暗殺者か。二人の勝負です。」

 

 

そう言い殺せんせーは対せんせー用ナイフを取り出しそれぞれに一本ずつ渡した。

 

 

 

 

「ルールは簡単。烏間先生を先に殺した方が勝ちです。」

 

 

 

「おい!何で俺が犠牲になる!」

 

 

「私じゃだ〜れも殺せないでしょ♪

 

 

「期間は明日一日」

 

 

「なるほど」

 

 

ろは納得したのかその場を去り、烏間も呆れてこの場を去った。

 

 

 

「見てなさい!アンタも烏間も絶対殺してやるんだから!!」

イリーナも覚悟を決めたのかムカムカとしながら乱暴な足取りで去っていった。

 

 

 

 

 

こうして、イリーナvsロヴロの烏間模擬暗殺が始まったのた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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LRの時間 二時間目

次の日

 

 

 

「……と言うことだ。すまんが今日一日中…君らに迷惑をかけるかももしれんが…よろしく頼む…」

 

 

 

「苦労が絶えないな……烏間先生……」

 

 

 

烏間は事情を皆に話していた。その大変さに茅野は同情した。その直後…

 

 

 

 

「烏間〜!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

奴が来た…

 

 

 

 

 

 

 

校舎の方面よりイリーナが走って向かって来た。何かを持って…

 

 

 

「お疲れ様〜!!!喉乾いたでしょ?ハイッ!冷たい飲み物!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

イリーナの見え見えな策に皆は呆れて、その場は静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

「さっ!!グっと!いって!!グっと!!美味しいわよ!!!!」

 

 

 

それとは御構い無しにイリーナは烏間に飲み物を進めた。この瞬間から皆はもう一つのことに気づいただろう…

 

 

 

 

 

(((((((絶対なんか入ってる…!!!!ー)))))))

 

 

 

 

その光景を見ていた神威と矢田は

 

 

 

「あははは…ビッチ先生…単純だね…」

 

「……バカとしか言いようがねぇ…」

 

 

皆と同じ反応を見せていた。そして、烏間もイリーナの企みを見破りそそくさと職員室へと戻ってしまった。

 

 

 

昼休み

 

 

 

 

神威はカルマや渚たちと昼飯を食べていた。すると、カルマは窓の外へ目を向け

 

 

「お、見てみ渚くん、神威」

 

 

「え?」「?」

 

 

 

二人が見ると木陰で食事をしている烏間にイリーナが堂々と近づいていき何かを話していた。

話が終わったのか、イリーナは烏間とは反対の木陰に来ると

 

 

 

 

 

 

ダッ!!!!!!

 

 

 

 

 

突然走りだした!

 

 

 

 

 

そして!

 

 

ギィイイイイイー!!!!!

 

 

 

走りだした瞬間烏間の足元がワイヤーに引かれ、そのまま体制を崩した。そして、

 

 

 

ザッ!!!

 

 

 

 

イリーナが馬乗りし、体制を立て直せなくしナイフを烏間の心臓めがけて振り下ろした。

 

だが

 

ガシッ!!!!

 

 

 

当たる寸前に烏間が取り、防がれてしまった。

 

 

 

 

 

「く…!!(しまった…!!力勝負では…打つ手がない…!!)」

 

 

 

 

だが、二人の押し合いはそう長くも続かなかった。

 

 

 

 

「……………はぁ……もういい……」

 

 

 

ペタ

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

烏間は手を離しナイフをつかせた。

 

 

 

 

「諦めの悪い奴に今日一日付き合ってられるか…」

 

 

 

 

 

それを見た生徒たちは喜びの声を上げた。

 

 

「!!!当たった!!!!」

 

 

 

「ビッチ先生残留決定だー!!!」

 

 

「やったぁー!!!」

 

 

 

イリーナの残留決定をクラスの皆は盛大に喜んでいた。

 

 

 

 

そして、ロヴロはイリーナへと近づいていった。

 

 

 

「先生!」

 

 

 

「……できの悪い弟子だ……先生でもやっていた方がまだマシだ…必ず殺れよ…イリーナ…!」

 

 

「!!はい!!!」

 

 

そう言いうとロヴロは去っていった。

 

 

 

「やったわぁー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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梅雨の時間

あれから数日、椚ヶ丘は雨季となり、雨が多く降っていた。

 

 

 

 

その道を矢田と神威は2人並んで歩いていた。

 

 

「〜♪」

 

「……」

 

 

何故か矢田は凄くご機嫌で隣の神威は少々不機嫌であった。

 

その理由は……

 

「おい……何で手繋いでんだ……」

 

「えー?だめ?」

 

「………恥ずかしい………しかも……なんでこんな寄り添ってんだ……」

 

「だってこうしないと神威君がはいらないじゃん」

 

「いいから離れろ…」

 

「風邪引いちゃうからだめ♪」

 

「……」

 

そう言い合いながら歩いていると前の道路で何人かが固まっていた。よく見ると同じ椚ヶ丘の制服を羽織っていた学生達だ。

その内の幾人かはE組であった。

 

 

 

 

「……ん?あれは……渚か…?」

「カエデちゃんや杉野君もいる…どうしたんだろ?」

「………状況を見る限り何かあったのか?」

「とりあえず行こ!」

2人は小走りでその場へと向かった。

 

 

 

 

 

渚side

 

 

 

僕らは今、壮絶な場を目にしていた…

 

 

 

 

 

あれは…数分前の事だ…

 

 

 

「なぁ〜茅野〜そのケーキに乗ってるイチゴくれよ〜」

「ダメ!楽しみは一番最後に残しとくの!」

 

「あははは…」

 

僕らはいつも通り下校していた。雨の降る道を歩いていると

 

 

「あ、あれって」

 

「前原じゃん!」

 

前の道を本校舎の女子生徒と相合傘をして歩いている前原くんを見つけた

 

 

 

「一緒にいるのは…確かC組の土屋果穂…」

 

「ははっ。相変わらずお盛んだな、まったく」

 

僕らがそう話していると…

 

 

 

「ほうほう『前原君、駅前で相合傘』っと」

 

 

 

……………………………何故奴が…………

 

 

 

「相変わらず生徒のゴシップに目がねーな … 殺せんせー」

 

「ヌルフフフフ…これも先生の務めですから。三学期までに生徒全員の恋話をノンフィクション小説で出す予定ですから。ちなみに第1章は『杉野君、神崎さんへの届かぬ思い』です!」

 

(キィィィィィィ!!!!出版される前に殺さねば…!!!!)

 

【殺せんせーの弱点13 下世話】

 

 

「なら、前原君のは長くなりそうだね」

 

「モテるからしょっちゅう一緒にいる女変わるしな」

 

 

スポーツ万能の行動的なイケメン。普通の学校なら成績上位でもっと人気だっただろうな。タラシは残念だけど……

 

 

僕らは2人の背中を見ながらそう思っていると

 

 

 

 

「あれ?果穂じゃん。何してんだ?」

 

「瀬尾君!!」

 

突然2人の横から生徒会員の瀬尾智也が現れ彼女は前原君を押しのけて彼の元に向かった。

 

 

「生徒会でおそくなるんじゃ…」

 

「いや、意外と早く終わってよ、ん?確かソイツ…」

 

「…!!ち…ちがうの!!そーゆー事じゃなくて!!」

 

 

僕らは近くにあった木に隠れ2人の会話の様子を伺っていた。ただ、彼女の言い分からは前原君と付き合っているのを必死に否定している気持ちがあった。でも僕らはそのまま続けた。

 

 

 

「今日タマタマ傘忘れてさ!!向こうから差してきて!」

「今朝持ってたじゃん」

「いや…!!学校に忘れてさ!!」

 

その言いように前原君は気づいたのかその子に詰め寄った。

 

「はー…そういうことね。最近あんま電話に出んのもチャリ通から電車通学に変えたのも で、新カレが忙しいから俺もキープしとこうと?」

 

 

「果穂!お前!!」

 

「ち…!!違うって!!そんなんじゃ…….」

 

 

 

その瞬間、彼女は一瞬とてつもなく恐ろしい表情を見せ、前原君に向き合った。

 

 

「あのね、自分が悪いってこと分かってるの?努力不足でE組に落とされた前原君!」

 

 

 

!!!!!!

 

 

 

「それにE組生徒は椚ヶ丘高校進めないし遅かれ早かれ私達接点無くなるじゃん」

 

「は…?」

 

「E組落ちてショックかな?と思ってさ、気遣ってハッキリ別れれば言わなかったけど言わずとも気づいて欲しかったけど、E組の頭じゃ分かんないかw」

 

 

「…!!お前な…!!自分のこと棚に上げて…

 

その言葉に前原君はイラっときたのか彼女に詰め寄ろうとした時

 

 

 

ドカ!!!!!!

 

 

前原君は瀬尾君から強烈な蹴りを浴びた!!!

 

 

 

「わっかんないかな〜?同じ高校に行かないってことは俺たちはお前に何したって後腐れ無いんだぜ!!」

 

 

 

そう言うと連れの2人も前原君を蹴りつけた

 

 

「おら!!果穂にお礼言えよ!!同じ傘に入れてもらったんだからよ!!」

 

 

 

「!!いけない!!早く止めないと!!」

 

 

 

 

その光景に僕らは見ていられなく止めるためにその場へと走り出そうとした時

 

 

「やめなさい」

 

 

突然タクシーが通りかかり、その中から理事長先生が現れた…

 

 

その後、理事長先生は前原君にハンカチを渡し、その場を去った。だけど、何故か前原君を 攻めているようだった。

 

その様子を見ていると

 

 

 

「おい」

 

 

後ろから声をかけられた。振り向くと矢田さんと神威君がいた。

 

 

「矢田さん!それに神威君!………何でそっちも相合傘…」

 

「気にするな…それより、今のは何だ?」

 

「実は…」

 

 

僕らは2人にさっきまでのことを話した。

 

「そんな…いくら何でも……!!」

 

「………」

 

話を聞いた途端、矢田さんは驚きを隠せなず神威君は黙り込んでしまった。

 

「とりあえず、アイツを助けねえと!」

 

 

そう言い僕らは前原君の元へと向かった。

 

 

「前原!!大丈夫か?!」

 

「お…お前ら…」

 

 

「ん?はぁ〜…ヤダヤダ…またE組かよ」

 

「俺たちってE組に呪われてんのかね〜」

 

 

「そんなの無視無視、早く行きましょ」

 

 

そう言うと瀬尾君達は帰ろうとし、彼女は前原君の方へ視線を向けると

 

 

「嫉妬して突っかかってくるなんて…そこまで心の汚ない人だとは思はなかった。二度と視線合わせないでよね」

 

 

「「「あははは!!!」」」

 

 

そう言いすてると彼女達は高笑いしながら帰っていった。

 

「前原!大丈夫か!?」

 

「あぁ…上手いよな…あの理事長…事を荒立てずとか言って差別も無くさず、絶妙に生徒を支配してる…」

 

 

「そんなことよりあの女…!!!マジで最悪なビッチじゃねぇーか!」

 

 

「いや…ビッチならうちのクラスにもいるんだけどな…」

 

「んー。ビッチ先生は職業のビッチだけどさっきの彼女 はそんな高尚なビッチじゃない」

 

 

「いや。別にいいんだよ。ビッチでも」

「え!?いいの!?」

 

「好きな奴なんて変わるもんだし、振りたけりゃあ振ればいい。俺もそうしてる。」

 

「中三でどんだけ達観してるのよ…」

 

前原君の理屈に岡野さんは呆れながらもタオルを渡した。

 

すると

 

神威君が瀬尾君達が歩いて行った方向へと歩いていこうとした、

 

 

「ん?おい神威、どこいこうとしてんだ?」

 

そう杉野は神威君に聞いた。次の瞬間、神威君はとんでもない一言を言い出したのだ。

 

「殺す」

 

 

 

「「「「「!!!!!!!!!!!」」」」

 

 

「いやいやいやいやいや!!!!やりすぎ!!やりすぎ!!いくらなんでも!!」

 

「そうだよ!落ち着いて!」

 

 

「……いまの女…流石にムカつく……いっそ殺してしまったほうが…」

 

「いやそこまでやる必要ないって!俺もこの通り無事だからさ!!な!?」

 

「………………………」

 

 

「そうです!!神威くん!!殺すなんてとんでもない」

 

僕らが振り向くとそこには

 

 

 

ぷくぅうううう〜〜〜!!!!!!!!!!

 

 

顔をパンパンに膨らませている殺せんせーがいた

 

 

「殺せんせー!!!膨らんでる!!膨らんでる!!!」

 

 

 

「神威くん、確かに君の気持ちは分かります。でも、そんな解決方法はよろしくありません。」

 

「じゃあどうしろと?」

 

「仕返しです。ですが殺さない程度にです。」

 

「?」

 

「要するに、理不尽な屈辱には屈辱で返すのです。君達にはそれなりの力がある。気づかれず、証拠を残さないよう標的を仕留める。それが暗殺者です。」

 

 

 

そして、殺せんせーはゲスな笑みを浮かべた。

 

 

「屈辱には屈辱を…彼女達をとびっきり恥ずかしい目に遭わせましょう…!!!」

 

 

 

 

 

こうして、僕らは大規模な仕返し作戦を行うこととなった。

 



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仕返しの時間

前原の件より翌日の土曜日、渚たちは仕返しをするべく、計画を着々と進めていた。

 

 

そして、その場所となるところは、とある喫茶店であった。

ターゲットとなる瀬尾と土屋はその喫茶店でコーヒーを飲んでいた。

 

「〜かし、雨の中のオープンカフェもいいもんだな。ここだけ濡れてないっていう優越感。昨日の『アレ』とは大違いだな。ははは!!」

「キャハッハッハ!!ひっどーい!キャハッハッハ!!」

2人が昨日の出来事で大笑いしていると、2人の老人が現れた。

「あの〜…そこ通ってもいいですかいの〜……?奥の席に座りたいんじゃが」

「ほんの少しだけ足を引っ込めて…」

すると瀬尾は老人の頼みを受け入れ、舌打ちをしながらも道をあけた。

「ど…どうも」

とぼとぼ…

「なんだあれ?老いぼれがこんな店来んじゃねぇ〜よ!」

「アハハ!ダ〜メ〜聞こえちゃ〜う!」

 

そんな2人を向かいのマンションから多数の黒影が見ていた。

 

〜マンション

 

「すげ〜な…あれが渚と茅野か〜…」

「あ〜俺がちょいといじりゃああんな物よ」

「う〜ん。菅谷読んで正解だな」

その正体は、E組の皆であった。そして、なんとあの2人の老人の正体はマスクを被った渚と茅野なのだ。

 

「しっかし向かいの民家はよく俺たち上げてくれたな〜」

「あぁ家主を矢田と倉橋が押さえてるからな」

「あ〜ビッチ先生の交渉技術な!」

 

するとどこからともなく殺せんせーが姿を現した。

「ヌルフフフフ……首尾は上々のようですね〜…では作戦開始と行きましょうか…奥田さん、頼んでおいた薬は?」

「は…はい!作ってきました!!」

殺せんせーに言われると奥田は懐かBB弾程の大きさのカプセルをだした。

「では、2人とも、お願いしますね」

そう言うと速水と千葉が弾を詰め、狙いを定めた。

 

 

〜喫茶店

 

「爺さんや〜この辺りにトイレはあったかしらね〜……確か100m近くのコンビニにはあったけども〜」

「おいおいここで借りればらいいじゃろうが」

「そうでしたそうでした。ちょっくら行ってきますね ヨイショ」

そう言うと茅野はトイレへと向かった。

「やだ〜ボケかけ〜。絶対あーはなりたくないね〜」

「ハハハッ!」

茅野にきこえないよう2人は悪口をこぼした。その時

 

「おっと…!」

 

ガシャ!

 

渚がサラダの入った器を落とした。それと同時に瀬尾と土屋は珈琲から目を背けた。

 

 

「よし!いまだ!」

 

ピュン! ピュン!

 

 

2人が珈琲こら目を背けた瞬間にマンションからE組の狙撃手である千葉と速水が2人の珈琲目掛けて薬玉を発射した。

 

チャポン!

 

結果は見事に命中し、無事に2人には気づかれることはなかった。

 

 

当の2人は我慢の限界らしく、老人になりすました渚に怒鳴り散らしていた。

 

「いい加減にしてよ!さっきっから!」

「ガチャガチャうるせーんだよ!ボケ老人!」

 

「ふぅ……すいませんな……連れがトイレから戻ったらすぐに出て行くので……」

渚は落とした器を拾うと店内へと入っていった。

 

「ったく 今日は客層悪りぃ〜な」

 

そう言うと2人はコーヒーを手にし、口に運んだ。

 

その瞬間

 

 

ぎゅるるるるるるるるるるるるるるる〜………

 

2人の内部から何かが当たった音がした。

 

「わ…私…お腹痛くなってきった…」

「お……俺も……お前ここの珈琲大丈夫か?」

「バカ言わないでよ!私の行きつけなのに!」

「そ…それよりトイレだ!!」

 

2人はトイレに駆け込むも…

 

ガチャガチャガチャ

 

「おい!開ねーぞ!!あ!さっきのババア!!!!」

 

茅野が入っている為入ることは出来なかった。

 

「おい店長!!!ここら辺にトイレは!!」

「あ…いや…内のはあそこ一つだけでして……」

 

 

 

“100m近くのコンビニにはあったけども〜”

その時2人は老婆の言葉を思い出した途端走り出した。

 

「なに一緒に来てんのよ!あんた男なんだからそこらでしなさいよ!」

「できるか!!!」

 

そしてその行先には………

 

 

「お!来た来た!」

 

民家の塀の木の上にE組第2班が待ち構えていた。

 

「アイツらプライドないからな。そこらの民家でトイレ借りる発想はねーんだな」

「それじゃそのプライドをサクッと殺りますか」

 

バサッ!!!!!!

 

そして切れた枝は2人に向かって落下し、ピンポイントで2人の頭頂部へと当たった。そして、2人はびしょ濡れになりながらもトイレへと向かって走り去っていった。

 

 

「ま、少しはスッキリしましたかねぇ」

 

「あれ?そう言えば神威君は?」

 

「神威くんはですねぇ〜……ヌルフフフフ…………」

 

 

 

 

〜コンビニ

 

 

「やっと着いたぜ!!ようやく用を足せる!!」

そう言うと一足先に来た瀬尾が開けるためにドアノブに手をかけたが………

 

ガチャ ガチャガチャ………

 

 

「え!?おい!?あかねぇぞ!!どうなってんだ!!おい!!誰だ!入ってんの!!開けてくれーー!!!!!!!」

 

ガダガダガダガダ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何で俺がこんな役を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、僕らの仕返しが烏間先生にバレて…仕返し組はキツくお灸を据えられた……

 

 

 

 

 



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転校生の時間 二時間目

ある雨の日の朝

E組校舎は木造で少し古いため雨漏りしていた。

 

僕らはいつも通りにSHRを行なっていた……が

 

 

「はぁい。でばみなざんぜきにづいて………」

 

 

(((((何か大きいぞ………殺せんせー………))))!

 

いつもより殺せんせーの頭が何倍にも膨らんでる……

 

「殺せんせー33%程巨大化した頭についてご説明を」

 

「あ〜水分を吸ってふやげまちた。なにぶん湿度が高いぼので」

 

「「「「「「生米みてーだな!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

ポタッ

 

 

 

「さて、烏間先生から聞いていると思いますが今日は三人目の転校生が来るようですね」

 

「あ〜まぁぶっちゃけ殺し屋だろうけどな」

そうだ。今日は三人目の転校生が来る日なのだ。神威君といい律といいこのクラスは変わった転校生が多い…まぁ暗殺教室だし…

 

「いずれにせよ皆さんに新しい仲間が増えるのは嬉しい事です」

 

「そー言えば律は何か聞いてなかったの?もう1人の転校生の事」

「はい少しだけ、最初は彼と私が同時投入される予定でした。彼が肉薄攻撃、私が遠距離射撃、連携して殺せんせーを暗殺する計画でしたが二つの理由でキャンセルされました」

 

「? 何で?」

 

「1つは彼の調整に時間が生じてしまったこと、もう一つは……私が彼より暗殺者として………『圧倒的に劣っているから』

 

 

!!!!!!

 

律よりも凄い暗殺者……僕らは凄く気になったがそれと同時に少しだけの恐怖感を抱いた。殺せんせーも動揺している

一体………どんな怪物生徒が来るんだろう………

 

 

その時

 

 

ガタッ!!!

 

 

教室の扉が突然開かれた。そこには白装束を着た謎の男性がいた。

その男性はゆっくり入って来ると…………

 

 

ポワンッ!

 

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

手から鳩を出した!

 

 

「ははははごめんごめん。驚かせてしまったようだ。転校生は私ではないよ。私は保護者さ。まぁ白いし『シロ』とでも呼んでくれ」

 

 

その男性は凄く気軽で挨拶をした。けど……

「いきなり白装束で手品やられたら…」

「うん…流石にビビるよ。殺せんせーでもなきゃ誰だってね」

そう言って殺せんせーの方へ向くと

 

あれ?いない

 

え?…………………

 

僕が天井の隅を見るとそこには液状化した殺せんせーがいた…かなりビビってる…

「ビビってんじゃねーよ!殺せんせー!奥の手の液状化まで使いやがって!!」

 

「いや!だって律さんがおっかない話をするので!」

 

 

【殺せんせーの弱点15 噂に踊らされる】

 

 

 

「初めましてシロさん。それで肝心な転校生の方は?」

 

「あ〜私が直で紹介しようと思ってね」

 

そう言うとそのシロという男性は教室へと入ってきた。

格好からして掴み所のない人だ。

 

 

その人は何故か僕と茅野の方と後ろの神威君の方を見ていた。

「どうしました?」

 

「いや、いい子達ですな。これならあの子も馴染めそうだ。紹介しよう」

 

するとその人は教室の後ろ側に目を向けた。

 

 

「おーいイトナ!!入っておいで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

その人が呼びかけた瞬間後ろの壁が壊れその穴を通り外から誰かが入ってきた…!

 

 

 

(((((いや!ドアから入れよ!!!)))))

 

多分皆そう思ったろう………

 

 

三人称視点

 

 

その壁を破った少年は席に座った。

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげてください。それと、私も少し過保護なので少々見守らせてもらいます」

 

「はぁ……」

 

その時、カルマは何かに気づきイトナに質問した。

 

「ねぇイトナ君、君今外から手ぶらで入ってきたじゃん。外はどしゃ降りなのに何で一滴も濡れてないの?」

 

その時イトナの腕はゆっくり動きカルマの頭に手を置いた。

 

「お前は多分このクラスで二番目に強い。だが安心しろ。お前は俺より弱いから殺さない。俺が殺したいのは俺より強い奴だけ」

「…!!」

そう言うとイトナは神威と殺せんせーを見た。

 

「この教室では隣のお前と殺せんせー………お前ら2人だ」

「……」

「強いとはケンカの事ですか?イトナ君、君では私と同じ次元に立てませんよヌルフフフフフ♪」

 

「立てるさ。だって俺ら 『血を分けた兄弟なんだから』

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「兄弟ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!?????」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

するとイトナは殺せんせーと同じようにようかんを取り出しかじると神威の方へと目を向けた。

 

「兄であるあんたをやる前に一番後ろのあいつをを殺す。」

 

「え!?」

「……ん?」

矢田は驚いていたが本人は普通であった。

 

「時は放課後、この教室で勝負だ」

「あ……あぁ…」

 

そう言うとイトナは出て行った。

 

 

 

 

その直後神威は矢田に詰め寄られた。

「ちょっと神威君!何であんなの引き受けちゃうの!?」

「別に…少し面白そうだったから…」

「だからって!敗けたら殺されちゃうんだよ!!しかもあの土砂降りの中濡れてなくて入ってきたんだから絶対何かあるよ!」

そう言うと矢田はもっと詰め寄り顔を近づけた。それでも神威は動じなかった。

 

「そうだよ?神威〜。あのイトナとか言う奴、絶対何か隠し持ってる。もしかしたら殺せんせーに匹敵する奴かもよ?」

「別にあってもどうでもいい…」

カルマの言葉に神威は興味なさそうに返すと

「話は終わりだ…俺は飯を食ってくる…」

とだけ言い神威は土砂降りの中外へと飛び出していった。

 

「………(今の神威君の目……何か別の物を指してた気が…………)

 

矢田は1人そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後クラスは殺せんせーの兄弟説で大騒ぎとなったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 



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神威vsイトナ

放課後、僕らは真ん中を囲うように机を移動させリングを作った。そしてその中で神威君とイトナ君は向き合い戦闘の合図を待っていた。

 

「では神威くん、リングの外へ出たら負け、というルールでいいかな?」

 

 

「あぁ」

 

そう言うとシロという人は手を上げ合図を出した。

 

「では……始め!」

 

 

 

 

 

ヒュンッ!

 

「ん?」

 

スッ…!

 

 

突然神威君は右へ避けた。そして僕らはとてつもないものを見てしまった。

それは殺せんせーと同じ…

 

 

_____『触手』だ。

 

 

 

イトナ君の頭部から何本も生えていて…残像を残す程 しなっていた。

 

「どこでそれを………」

 

その言葉は殺せんせーの方から聞こえてきた。

 

「どこで手に入れたぁ!!!!その触手を!!!!」

見ると殺せんせーの肌がドス黒く染まっていた。歯も剥き出しになっていて…寺坂くん達に激怒した時とは比べものにならない程まで…。

 

殺せんせーのこんな表情を見るのは初めてだ。

 

 

 

「君に言う義理はないねぇ。だが納得したろ?この子と君は兄弟だ。にしても、怖い顔するねぇ。何か嫌な事でも?」

 

「…………どうやら貴方にも書きたい事が山程あるようですね……」

 

「だから言う義理はないと言っただろ?イトナ、殺れ」

 

 

そしてその触手は一斉に神威君に襲いかかった!

 

 

「ん?」

 

 

ヒュンッヒュンッヒュンッ…!

 

風を切りながら触手はマッハで神威くんに迫っていった。

 

「…!!」

僕らの目に映ったのは異様な光景だった。

 

「な!全て避けただと?」

それはたった一瞬の出来事だったけれど、僕らの目にはちゃんと捉えられていた。マッハ20の触手を神威君はいとも容易く避けたのだ。

 

 

全て避けきると神威君はイトナ君を挑発するかのように手招きをした。

「どうした?来いよ?」

 

「殺す!」

 

 

その挑発にイトナ君は乗り、触手を更に神威君に向けて放った。

 

 

ーーーーーーーー

 

放たれた触手を神威は横に身体をズラす形で避ける。

 

続いてくる触手も同じように避ける。第三者から見れば、イトナの触手は殺せんせーとほぼ同等。全てが残像を生み出す程である。それに対して、神威の回避はそれを凌駕していた。

 

「フッ!」

一斉に向かってくる触手に向けて、神威は構えると、自身の寸前の前に来た触手に手を当てると叩くように振り払った。

 

「なに…!?」

 

動揺するイトナ。だが、その動揺が神威の行動を許してしまった。

 

「行くぞ」

 

地面を踏み込むと、一瞬でイトナの目前に移動する。ようやくその姿を捉える事ができたが、時は既に遅い。

 

「ガハァ…!」

イトナの腹に神威のブローが叩き込まれる。いや、それだけでは終わらない。怯むイトナに休む間を与える事なく、神威はその身体に向けて次々と蹴りを放つ。

 

「ぐぅぅ!?」

 

放たれる連続蹴りにイトナの身体から次々と血が滲み出る。

 

「触手だけに頼ってるお前が勝てる訳ないだろ」

 

蹴りを終えると、イトナは満身創痍の状態と成り果てていた。服は所々に破れ、体力も殆どが削ぎ落とされていた。

 

「遊びは終わりだ」

 

そして、神威はその状態のイトナへと最後の追い討ちとして頭を掴むと窓に向けて放り投げた。

 

 

 

ガシャアァァァンンンン!!!!!!!!!!!

 

イトナの身体はカーテンを間に挟みながら窓ガラスに直撃し、外へと放り出された。

 

 

 

「お前の足はリングの外……ルールに従えばお前の敗けだ。俺より弱いって事だ」

 

 

「な…!!」

 

『弱い』という言葉にイトナ君の目付きが変わった!

 

 

「消えろ」

その吐き捨てられた言葉にイトナの怒りが頂点に達した。

 

 

 

「ヴゥゥおおおおおおおァァアァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

目は血走り、頭に生える四本の触手は殺せんせーと同じく黒く変色し、動きも荒々しさを増していった。

 

 

 

「俺は強くなった!!!!触手を得て誰よりも強くなったんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

雄叫びを上げながらイトナは怒りの矛先を神威に向け、その場から飛び上がると漆黒の触手を神威に向けて放った。

 

 

 

 

sideout

 

 

 

俺は堀部とやらを吹っ飛ばしたあと教室へ戻ろうとした。

 

 

「ヴゥゥおおおおおおおァァアァァァ!!!!!!!!!!!!」

 

 

後ろでなにやら呻いているがどうでもいい。呻いて強くなれるなら苦労はねぇ。

 

 

 

 

 

 

グシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だ?

 

 

 

これ?

 

 

 

 

 

俺の腹部からなにら変な物が飛び出して来た。よく見ると触手だった。

 

 

 

何だ?何でこんなんが…………あれ?………………意識が……………だんだん……………

 

 

 

 

「神威君!!!!!」

 

 

 

 

 

姉の叫び声を最後に……俺の意識は…途絶えた……………

 

sideout

 

 

 

 

 

 

イトナの触手が神威の腹に向けて放たれた時、殺せんせーはすぐさま救出しようと前に出る。

だが、その瞬間

 

「にゅ!?」

横からシロの袖に仕込んでいた光が自分を照らした。

殺せんせーは身体が硬直し、動けなくなってしまう。

 

「おっと、手が滑ってしまった」

「!?」

光が無くなったが、時は既に遅かった。

 

目の前には 触手で胴体を貫かれて倒れている神威の姿があった。

 

「神威君!!!!!」

 

矢田が叫びだし、すぐさま駆け寄ると神威を抱いて起こした。腹部からは大量の血が流れておりこのままでは命に関わる危険な状態であった。

 

「神威君!大丈夫ですか!」

すぐさま殺せんせーもその場に移動した。神威の安否を確認するも神威の目は閉じており呼吸もしていなかった。

 

 

「邪魔をするなァァァァッ!!!!」

 

イトナがその場に攻撃を仕掛けるもすぐさま殺せんせーが2人とも安全なリング外へと運んだ。

 

 

 

その瞬間にイトナの身体は突然床に落ちる。

 

「すいませんねぇ殺せんせー、この子はまだ早かったようだ。しばらく休学させてもらうよ」

原因はシロが放った麻酔針だった。シロはイトナを担ぎその場を去ろうとしたが殺せんせーは肌を黒くしながら止めた。

「待ちなさい!教師としてその子は放ってはおけません!卒業まで私が面倒を見ます!それに……先程の光!あれは何の真似ですか!!」

殺せんせーは明らかにシロが自分が神威を助けようとした行為を妨害したとしか思えず声を上げていた。けれども、シロは反省の色を見せようとはしなかった。

 

「それは申し訳ない。手が滑ってしまってね。この子はすぐに復帰させますよ。ま、止めたければ止めればいいさ」

そう言うとシロは去ろうとした。

 

 

 

ブシャァ!

 

 

殺せんせーが止めようとしたものの触れた瞬間に殺せんせーの触手が破壊された。

 

 

 

「対せんせー用繊維。君は私に触れることはできない」

 

 

そう言うと今度こそシロは去っていった。

 

 

 

 

 

「にゅ〜……」

 

 

「殺せんせー……」

 

 

「とりあえず私は神威君を病院へ連れて来ます!皆さんは早めに下校を」

 

そう言い殺せんせーは神威を持ち上げると矢田を来た。

 

「殺せんせー!私も一緒に行きます!」

 

「…………分かりました。」

 

 

そう言うと殺せんせーは2人を持ち上げ病院へと飛んでいった。

 

 

 

「にしても、驚いたわ。あのイトナって子、触手を出すなんて…」

 

 

「いや、あの触手攻撃を全部躱す神威にも驚いたよ」

 

「うん……でも何で殺せんせーはあの時あんなに怒ったんだろ…?」

 

「あぁ…ますます気になるよ…殺せんせーの秘密……それに神威も…」

 

 

「うん…」

 

 

クラス中ご疑問を持ち始めたが今はそれを聞けるような状況では無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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暗闇の記憶

何だ………これ………前にも見たような…………

 

 

 

 

 

 

 

「矢田桃矢……それが君の名前?」

 

「あぁ……」

 

「いい名前だね。大丈夫、私が絶対にここから出してあげるから」

 

「…………………」

 

 

 

 

 

何だ………何で…………あの人が……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い!小太郎さん!もうやめて!」

 

「うるさい!あいつは俺の実験のモルモットだ!邪魔をするな!」

 

 

バチンッ!!!

 

 

 

 

! あの男……!

 

 

その男の顔がはっきりうつった。

 

 

 

 

 

 

柳沢ァァァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!………………夢か…………………………」

 

 

俺は夢から覚め、状況を確認するため辺りを見回した。見回した限り病院だ。

 

 

「今のは……………………まさか…………彼奴が近くに……………………」

 

俺はさっきまで見ていた夢の中で出てきたあの男を思い出した。彼奴が…………あの人を…………

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

突然、俺の横からタコが出てきた。

 

「何だお前か…………………俺は………一体……何でこんなところに?」

 

「あの時君はイトナ君の触手で腹部を貫かれてしまったのです。申し訳ございません………先生の不注意です……」

 

タコが謝っているようだったがどうでも良かった。俺は腹を見るとそこには包帯が巻かれていた。

 

そしてベットの横を見ると、姉が眠りながら俺の右手を両手で握っていた。

 

「矢田………」

 

「はい。矢田さんは、治療が終わった後、ずっと貴方を見ていてくれたんです」

 

「そうか…………」

 

「では、私はこの辺で、食べ物を置いておいたので。お大事に」

 

俺は頷くとタコは病室を出て行った。

 

 

 

 

部屋に残ったのは俺と姉だけだ。

 

「ぅぅん……………ん?」

 

 

 

突然、姉が目を覚ました………

 

 

「神威君…!」

 

「!?」

 

目覚めたと同時に俺は姉に泣きながら抱きつかれた。

 

 

「グスッ…良かった…!目が覚めて…!!心配したんだから…!!」

 

「ふぎ………ぎ…………」

 

く…苦しい………首が………

 

「グスッ…………本当に………よかった……」

 

「おい………大袈裟な……」

 

「何が大袈裟よ!!危うく出血多量で死んじゃうところだったんだから!!」

 

そう言うと姉は更に力を入れてきた……………絞まる…………

 

 

「いや…………分かったから…………離れて…………」

 

 

………………………

 

 

言っても離れねぇ…

 

 

 

ギュゥゥゥゥ!!!!

 

 

「!?」

 

「しばらく………このままでいさせて……」

 

 

…苦しい…

 

 

 

 

その後30分以上抱きつかれて流石に首が絞まりそうだった…………

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん…」

 

 

あれから矢田は落ち着きを取り戻すと神威は矢田を椅子に座らせた。

 

「………おい………そこにいる奴ら…出てこい」

 

 

「あははは〜……バレちゃったか♪」

 

するとドア付近から寺坂組以外のE組の皆が現れた。

 

 

「いやいやお二人さん実にいい雰囲気でしたよ?」

 

そう言うとカルマは矢田が神威に抱きついている写真を見せた。

 

「…ッチ………」

 

「ちょ////カルマ君!!!」

 

 

 

 

 

「それより、神威大丈夫か?腹の傷」

そう磯貝が聞くと神威は腹に手を当てた。

 

 

「………あぁ。別に支障はねぇ…」

 

 

「支障がなくてもしばらくは安静にしてなさいよ。それで傷が開いたら元も子もないんだから」

 

「そうか…」

 

 

 

「おお?速水が神威を心配してるなんて珍しいな!!」

 

「うっさいわね岡島!」

 

「おやおや?凛香も神威に惚れちゃったの〜?」

 

「違うって言ってんでしょうが!!!私は唯 神威が来ないと殺せんせーを殺せる確率が下がると思っただけだから!!!」

 

「お〜!生ツンデレはいいものだね〜」

「やめて!」

 

 

 

ガタンッ!!

 

 

「皆さま!ここは病院ですのでもう少しお静かにッ!!」

 

 

 

「「「す…すいません…」」」

 

 

 

看護婦さんに注意された後、E組の皆は帰って行き、部屋の中はまた矢田と神威だけになった。

 

 

「もう〜…皆ったら…」

 

「…」

 

すると矢田は荷物をまとめると

 

 

「じゃあ明日の朝また来るから、安静にしててよ」

 

「ん…」

 

そう言い病室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

(こういう時も…あったな………)

 

あの時と同じように…俺は一年の頃は何週間か入院してたっけな………

 

 

「ゴホッゴホッゴホッ!!」

 

 

症状が和らぎ治った時は出てそのあとすぐにぶり返す…入っては出て入っては出ての繰り返し……

マスクだの点滴だの、入院するたびにやっていた。

 

あの時………どうして俺は……………

 

 

 

 

 



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退院

「ではお大事に」

 

翌日神威は医師から退院を許可され受付で退院手続をしていると

 

 

「おはよう」

 

後ろから聞き慣れた声が聞こえた。振り返るとポニーテールが魅力的な少女 矢田桃花が微笑みながら立っていた。

 

「あぁ……矢田か……服変えたのか?」

 

「うん。今日から衣替えだから。一緒に学校行こ♪」

その笑顔に神威はいつもと変わらぬ事に安心する。

 

「……あぁ。もう少し待ってろ」

 

渋々承諾すると矢田は微笑みながら入り口へと戻っていった。

 

その後 、手続きを終えると神威は入り口で待っていた矢田と合流し旧校舎へと歩いて行った。

 

 

サッサッサッサッ…

 

皆が必ず通る山道にて2人が歩いていると

 

 

「おはよう」

 

 

後ろから第三者に声を掛けられた。2人が振り向くとそこにはセミロングの髪を後ろで二つに分けているツリ目の少女 速水凛香がたっていた。

 

「あっ!凛香!」

 

「よう…」

 

お互いに挨拶を交わすと

 

「神威、退院したんだってね」

 

「あぁ。たった一日だけだったけどな」

 

「でもよかった。アンタがいないとつまんないからこれからは気をつけなさいよ」

 

そう言うと速水は神威の頭を撫でた。神威は何故か抵抗しなずに目を閉じていた。

 

「え?凛香何してるの!?」

 

「撫でてるの」

 

「ちょっとなんで!?」

 

「なんか………和むし…可愛い………」

 

「うぅ〜………なら私も!」

 

すると矢田も神威を撫で始めた。2人の手の感覚が次々に頭から感じ、それと同時に神威の長くボサボサな髪が次々と掻けわけられていった。

 

 

「………」

 

それはすぐには終わらなかった。

 

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ…

(やっぱり可愛い………)

 

速水は頬を染めながら内心そう思っていると神威も頬を少し染めた。そろそろ限界のようだ。

「もういいだろ…行くぞ…」

 

「あ!待ってよ〜!」

 

神威は進むと2人も後を追いかけるように旧校舎へと向かって行った。

 

 

ただ2人は神威に何らかの疑問を抱いていた。

 

 

"なんで神威(君)は笑わない(の)?”

 

 

 

神威がE組に来てから少なくとも4ヶ月は経過している。それなのに神威は誰の前でも一度も笑顔を見せていなかった。皆で修学旅行に行った時も、律が改心した時も、イリーナが教師を続けらる様になった時も、神威は笑顔を見せなかった。

2人はそれが疑問に思って仕方がなかったのだ。そしてもう一つ、速水はともかく、矢田はとてつもなく疑問に思う点を持っていた。

 

それは

 

 

 

"あの目は何?”

 

 

修学旅行の時、不良に捕らわれた自分を助けた拍子にとれた眼帯、その下にあった人間ではない目玉。そしてヒビが入ったような目元、最初はメイクかと思ったがあれはメイクでは到底できるものではなかった。

 

そんなことを思いながらも2人は神威の後を追った。

 

 

 

 

 

 



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球技大会前の時間

3人が教室に入るといつも通り朝のSHRが始まった。それから段々と時が過ぎ、気がつけばもう放課後だった。

すると神威は烏間に呼び出され教員室へ行くと椚ヶ丘中学の制服を渡された。

「神威君。君の制服だ。いつまでもその格好だと支障が出るだろう。理事長からもE組とはいえ風紀は乱さないで欲しいとのことだ」

「……わかった」

神威は受け取ると教員室を後にした。

ーーーーーーー

下校時

 

神威はいつも矢田と一緒に下校しているがこの時は珍しく速水も一緒だった。

 

「あ〜!暑くなってきたね」

 

入道雲が漂う空に向かって矢田が欠伸をした。季節も移り変わりもう夏であった。

 

「うん。どっか遊びに行かない?」

 

それに連られ速水も欠伸をし提案した。

 

「あ!行こ行こ!今だとどこがいい?」

「………」

「やっぱプールじゃない?」

(…ギクッ!?)

プールという単語に神威はギクリと反応した。

 

「どうしたの?」

「い……いや別に…」

 

すると

 

スタッ

 

いきなり神威が立ち止まった。いきなりの行動に2人は不思議に思うとふと前を見た。そこには渚とカルマ そしてクラス随一の野球少年『杉野友人が立っていた。見ると彼らの目の前には本校舎の野球部が立っておりなにやら揉めているようだった。

 

「またあいつらか?」

 

神威は渚達の場所へと向かうと

 

「なにやってんだ?」

 

「あ、神威くん」

 

見ると野球部のキャプテンらしき男が杉野に何かを言っているようだ。

 

「今度の野球で思い知らせてやるよ。お前たち落ちこぼれと俺たち選ばれたエリートとの違いをな」

 

「テストで俺より点が低かったバカが何言ってんだ?」

キャプテンの言葉に神威はふつうに言い返した。

 

「あ?誰かと思えば転校生か。誰がバカだって?」

 

「お前だお前。見下しの対象よりも点が低いお前が何言ってんだって言ってんだ。そんな事も自覚できんのか?だとしたら想像以上に頭イカれt…

 

ガシャッ!!

 

神威が最後まで言い切ろうとした時、野球部のキャプテンは神威の顔をつぶすように掴んだ。

 

「たしかに今回は驚いた。だがそれが続けばだ」

キャプテンの顔は穏やかなものの額からは青筋が隆起し怒りの表情も混じっていた。普通の人ならばこんな表情を間近でされたら尻餅をついてしまうが神威は何一つ表情は変えていなかった。

 

「それは威嚇のつもりなのか?なら返してやる」

そう言うと神威はフェンス網からはみ出た指を掴むと

 

 

ギュ…

 

 

「!」

 

その瞬間、野球部のキャプテンは手を素早く離した。その顔は微量の汗を垂れ流しており、何かに怯えた表情だった。

 

「楽しみだな。球技大会」

 

それだけ言うと神威は渚達の横を通り過ぎていった。

 

「あ!待ってよ〜!」

 

それに続いて後の二人も帰って行った。

 

「あ…あいつ進藤になに…したんだ……?」

杉野は突然の出来事に何が何だか分からなかった。

 

「さぁ〜?俺でも分かんない。あいつはただ握っただけ、それだけで野球部のエースはあのザマ…おそらくあの一瞬でとんでもない握力を叩き込んだんだろうね…………」

 

「マジかよ…進藤に握力で勝つ奴なんてそうそういないぞ…ますます気になるな。アイツのこと」

「うん…ひょっとしたら…殺せんせーよりもヤバイのかも…」

 

渚と杉野とカルマは神威の力に疑問を抱いたのだった。

 

 

 

 

 

 



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球技大会の時間

「ふむふむ。クラス対抗の球技大会ですか。健康心身で競い合うとは大いに結構。しかし……トーナメント表にE組が載ってないのは……」

渡された用紙を見て殺せんせーは疑問に思った。それはクラス対抗球技大会が近日にあるからだ。A〜からDは入っているものの………

 

「E組はエントリーされねぇんだよ。1組余るってステキな理由でさ」

岡島が困惑する殺せんせーに説明した。

「その代わり、試合後のエキシビション、要するに見せ物に参加させられるんだ。男子は野球、女子はバスケ、の選抜メンバーと戦らさせるんだ。一般生徒の為の行事だから部の連中は本戦に出られない。だからここで皆に力を示す場所を設けたって訳」

 

「だから負けたクラスもE組が蹴散らされる様子を見てスッキリに終われるしE組に落ちたらこんな恥かきますよって警告にもなると」

 

「成る程…いつものやつですか…」

 

「そ」

磯貝と片岡のダブルクラス員の説明に殺せんせーは若干の汗をかいた。

 

すると

 

 

ガタンっ

 

「俺ら晒しもんとかマジ勘弁だわ」

 

クラスの荒くれ者である寺坂とそのつるみである吉田と村松が不満な表情で席を立つと

 

「じゃあな」

 

「おいっ!寺坂!」

それだけ言い捨て入り口の戸を開けて出て行った。

 

「野球ときたら頼りになるのは杉野だけど何か勝つ秘策とかねーの?」

前原が杉野に尋ねると杉野は少し歪んだ表情をした。

 

「無理だよ…うちの野球部物凄く強ぇんだ…。特に今の首相の進藤は豪速球で他の高校からも注目されてる。勉強もスポーツもできるとか不公平だよな…」

落ち込んだ表情をすると杉野は手に持っている野球ボールを握りしめた。

 

「だけど勝ちたいんだ殺せんせー。好きな野球で負けたくない…!こいつらと組んで勝ち…「ワックワックワックワック♪」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「えぇと…殺せんせーも野球がしたいのはよく分かったよ…」

見ると殺せんせーはウキウキであり野球の格好までしていた。

 

「ヌルフフフフフ!先生も一度スポ根ものの熱血教師をやりたかったんです!殴ったりはしないのでちゃぶ台返しで代用を♪」

 

「「「「「「「用意良すぎだろ!!!」」」」」」」

 

そして終わった後、寺坂組を抜いたE組の皆は各自下校の準備をしていた。カバンも何もない神威はいつも置き勉である。

そしていつも通り置き勉をして矢田と帰ろうとすると

 

「神威!」

「ん?」

突然杉野に呼び止められ神威は振り向いた。

 

「何だ?」

「お前ってさ、野球したことあるか?」

「…大まかな投げ方と打ち方なら…」

突然の質問に神威は顔色を変えずに答えた。

 

「ならさ!ちょっとこの後………

 

「?」

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

 

ボンッ!ボンボンっ!

 

いよいよ球技大会当日となり、E組の面々は緊張構えをしていた。他の組が次々とやり終えるとようやく自分達の番であるエキシビションの時間だ。

 

『では!お待たせしました!E組vs野球部エキシビションマッチを行います!』

 

すると皆は球場に入った。

 

「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが上に立てる…それが文武両道だ杉野。お前は両方とも持たなかった選ばれざる者。それは他の奴らも同じだ。そいつら共々二度と表舞台を歩けない試合にしてやるよ」

そう言いすてると進藤は自分のベンチへと歩いて行った。

 

「あれ?そう言えば殺せんせーは?」

 

「あ…あそこ」

皆が渚の差した方向を見ると散らばっている野球ボールに擬態している殺せんせーがいた。

 

「ワンっ!とぅっ!すりぃっ! わんっ!とぅっ!すりぃっ!」

「な…何を表してんだ?」

「えっと…殺す気で勝てってさ」

殺せんせーは国家機密な為、人前には出ることが出来ず顔色で指示を出すようだ。

「確かに俺らにはもっとデカイ目標がいるんだ!奴ら程度に勝てなきゃ殺さないな」

「よっしゃー!殺ってやるか!!」

 

「「「「「「おうっ!!!!」」」」」

磯貝の掛け声と共に神威以外のE組の皆は掛け声を上げた。

 

 

 

 

 

先行はE組であり、一番バッターは木村だ。

 

「プレイ!」

 

「んっ…!!!」

 

開始の合図とともにピッチャーの進藤は本気ではないものの自慢の速球を投げた。

 

結果はストライク。だが木村は驚いただけであり、それ以外はこれといった反応はなかった。

 

「おぉ〜…すげ!?やっぱエースは違うな〜。よし!もう一本!」

 

『お〜っとバッター気合い充分だw」

アナウンスが木村を小馬鹿にすると、

 

 

カキーン

 

 

今度は打ち返し一塁へと進んだ。しかも扱いが難しいバントだ。野球部が駆けつけると

 

『せ…セーフ!?』

なんとラインギリギリのセーフであり、野球部が呆気に囚われていると木村はスタスタと進みすぐに一塁へと着いた。

「木村君はE組で二番手の瞬足。一度気を引かせれば一塁などあっという間でしょう♪あむ」

ねるねるね〜るねを作りながら殺せんせーは解説した。

 

『二番 E組 潮田君』

次は渚であり、これまたラインギリギリのバントだ。

 

「な…!!」

「バカな…!素人ならまだしも進藤クラスの速球を狙った場所に跳ね返すのは至難の業だぞ…!?」

二回も自慢の球を打たれた進藤はともかく監督も驚きを隠せなかった。

 

それもそのはず、彼らは時速などでは勝負にならないマッハで練習をしたのだから、進藤と同じホームで飛びっきり遅く投げた殺せんせーの球を見た後は進藤の球など止まって見えるだろう。

 

カキーン!!

 

『打ったー!E組……とうとう満塁!?調子でも悪いのでしょうか進藤君!?』

 

呆気に囚われ進藤は打席を見ると

 

「す…杉野!」

因縁の相手でもある杉野が立っていた。

 

進藤は心を整理し先程のバントを見て対策である速球を投げた。だがその瞬間に杉野はバットの持ち方を変えた…!

 

 

カキーン!!!!

 

『ビ……打撃ぃぃーーー!!!?????深々と外野に抜けるー!!」

打撃うちをしホームランを取った。

 

そのまま塁に立っていた木村達は一斉に動き出し走者一掃のフリーベースを決めた。

 

「よっしゃぁあー!!!!!!」

 

杉野や他の皆も歓声を上げていた。

 

 

 

「な……何だこれは…このままでは……」

野球部のベンチで監督である先生が困惑していると

 

 

「顔色が悪いですね寺井先生。体調が優れないのですか?」

 

「!!り………理事長…!」

 

そこにはこの学校の理事長である浅野学峯が立っていた。

 

 

 

 



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球技大会の時間 2時間目

『タイム!』

 

その合図と共にその場は沈黙に包まれた。その瞬間に野球部の者達はベンチへと走って行った。

その様子をE組の皆はただ見ることしかできなかった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーー

 

「惜しかったね〜」

 

「入れるチャンスがいくつかあったからリベンジリベンジ!」

 

男子達が野球をやっていると体育館の方からバスケで試合をしていた女子達が出てきた。会話からすると負けてしまったようだ。

 

「ごめんね…私が足引っ張っちゃって…女子バスケ部のブルンブルン震える胸を見たら怒りと殺意で目の前が真っ暗になって…」

「茅野っちのその巨乳に対する憎悪はなんなの!?」

「あははは…」

 

 

「……さて、男子はどうなってるかな?」

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

 

突然と現れた理事長、その後、数分のタイムが掛かった。

 

「いきなりラスボス登場かよ……」

 

すると

『い…今入った情報によりますと……野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で……部員もそれが心配で野球どころではなかったのこと…なので急遽理事長が指揮を取られるそうです!!』

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」

 

その知らせと共に会場から大歓声が上がった。今までのはまぐれじゃない。ただの遊びだと

 

すると理事長の話が終わったようで野球部の面々が戻り守備についた。

 

だが

 

『こ…これはなんだー!?守備を全員内野に集めてきた!!こんな極端な前進守備は見たことがない!!」

 

打席からほぼ目の前という距離で守備についていたというのだ。

 

「ま…マジかよ!?バントしかないって見抜かれてるぞ!?ってもルール違反だろ!?あんな至近距離なんて!!」

 

「いや、違反ではない。ルール上…フェアゾーンはどこを守っても自由……審判が判断すれば別だけど向こうはもうあっち側みたいだよ」

 

竹林の言葉の通り、審判はまったく注意をする気配を見せず、ただただ薄ら笑いを浮かべていた。

 

「…………くだらん」

神威は小さく呟くとベンチに座った。

 

その後は相手の流れとなった。打席に回った前原は前進守備に意識がいきすぎボールが来た途端に真上に上げてしまいワンアウトとなってしまった。

 

次は岡島だ。

 

(ちっくしょ〜…こんな内野…バントじゃ抜けねぇよ…!どうすんだ!殺監督!)

 

「ワン!トゥ!……………スリ………」

(打つ手なしかよ!!)

その後、岡島もアウトとなり磯貝も続いてアウトとなった。スリーアウトチェンジとなり相手の番が回って来た。

 

一方向こうも向こうで理事長が進藤を洗脳させるように指示を出した。

「その調子だ進藤君、投げる時は4シームのストレートだけでいい。

 

 

『君の球を外野に運べる生徒は杉野君以外いない』

 

「はい!」

その言葉に進藤は獣の如く気高い声で答えた。

自分にとって最も注意すべき相手は杉野だということを

 

 

 

試合は再開された。投手は杉野であり、

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!

 

「のわっ!?」

 

 

流石の野球部だ。杉野が投げた球は美しい弧を描きピッチャーを翻弄させた。クラブで鍛え上げた賜物だ。

 

そして一回裏は杉野の変化球のおかげで一点も取らせることなくスリーアウトとさせることができた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

「プハッ!カルマ君」

 

「ん?…足元に出んなよ殺監督…踏んでほしい?」

 

「ヌルフフフフフフフ♪次は君がバッターです。ここで相手を挑発してみましょう!」

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーー

 

 

二回裏

 

『七番バッター赤羽君』

 

次はカルマの番だ。だが、彼は動こうとはしなかった。

 

 

「どうした?早く打席に立t「ねぇ〜。これずるくない?理事長せんせ〜?こんだけ邪魔な位置で立たれちゃさ〜。お前らも可笑しいと思わないの?あ〜!そうか〜!お前ら『バカ』だから守備位置とか理解してないのか〜!」

 

 

「「「「ブチ…」」」」

 

カルマのいきなりの反論に加えての挑発、それに本校舎の生徒は全員でブーイングを出した。

 

「小さい事でガタガタ言うな!!E組!!!」

 

「たかがエキシビションで文句つけてんじゃねぇよ!!!」

 

「口で言うんならバットで結果出してみろ!!!」

 

それはもう悪口の嵐であった。カルマは楽しむかのように殺せんせーの方を向いた。

「ダメみたいよ?監督」

 

「いいのです。正直に反論する事が大切なのです」

そう言うと体色で赤丸を表した。

 

 

 

その後、挑発を仕掛けるもカルマはなすすべなくスリーアウトとなった。

 

 

『8番バッター神威君』

 

「やっと出番か…」

その放送と共に今までベンチに座っていた神威は立ち上がった。

 

そしてバットを手に取り打席へと一歩ずつ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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球技大会の時間 3時間目

 

 

『8番 バッター 神威君』

 

「ようやくか…」

自分の番が回ってきたことを聞くと、近くに立ててあるバットを持ち打席へと歩いて行った。

 

『さぁ〜てお次は〜?おっと〜!誰かと思えば転校してきた貧乏少年だ〜!!!!』

 

神威を見た瞬間に放送部は相当の悪口を吐いた。

 

 

「はははっ!マジかよ!?あんなちっこいのが打つのか!?」 「あんな背丈で打てんのかよ〜!!!!」 「お子様は帰って寝てろよ〜!!」

 

「そうだそうだ〜!!」

 

放送部につられ、周りの生徒も一斉に神威を貶し始めた。

 

その姿を渚達はただ見守ることしか出来なかった。

 

 

「何よこれ、集会の時も思ったけど陰湿ね…」

イリーナは気分を害していた。そこから見ていた女子やベンチの渚達も同じ気持ちだろう。

 

(けど…何で神威君…あんな平然としてられるんだろ…)

 

神威の辺りの貶しに目も貸さない姿勢に矢田は不思議に思っていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

『では!2回表 三本目!これでストライクを決めれば野球部の勝利は間違いなしだ!!』

 

神威は姿勢を正し、バットを構えた。周りから見てみれば渚達とはあまり変わらない素人のような構えだ。

 

投手はもちろん進藤である。

すると進藤は神威を睨んだ。いつぞやの事を根に持っているようだ。だが、それより他に、進藤の目からは常人とは思えない程の凶暴な感情が吹き上がっていた。

 

(あいつ…常人とは思えん程に感情が高ぶってる…いや、洗脳されてると言った方がいいか。他の奴らには良い方法だが、俺にとっちゃ………

 

 

「ゔぁぁああ!!!!!!!!!!!」

 

神威が思考していると進藤は御構い無しに打ってきた。

 

 

バンッ!

 

「ストライク!」

 

そのボールは神威の横を瞬時に通過し、キャッチャーのグローブに入った。

 

(ドーピング……いや、それ以下か?……今の球…見る限り本気じゃねぇな…)

 

神威の考察は的を射ていた。

 

そして続け様に二球目も投げられる。

 

バンッ!

 

 

『おおーーーーーっと!!!??ストライク2本目だ〜!!!バッター、バットを振るわない!どうしたバッター?余りの速さにビビったか〜?』

 

実況は神威をまた貶し始めた。それに連られ、辺りの本校舎の生徒達も神威を貶し始めた。

 

「あははは!ダッセ〜!!」 「やっぱエンドはエンドだよな〜!!」 「そんなに怖いんだったら帰れ帰れ〜!!」

 

周りからの多くの雑言、誰も注意しない。注意するや否やあざ笑うかの如くの目を向けてくる者もいた。普通の人ならば怒りが溢れ発狂しかねない。そんな状況下であっても神威の静かさは消えなかった。

 

 

烏間やイリーナ、殺せんせーももちろん、E組の皆も神威の静かさに理解出来なかった。

 

すると、神威の口が開いた。

 

「おい。野球部キャプテン、俺が打ちたいのはこんな球じゃねぇ、

 

 

 

 

 

 

『本気の豪速球』投げてこいよ

 

 

 

 

 

突然の一言、その一言で会場は一瞬で沈黙に包まれた。本校舎の生徒、教師、野球部の面々、E組の皆が目を大きく開けながら驚愕していた。

 

すると、我に返ったのか一人の本校舎の生徒が

 

「調子こいてんじゃねぇぞ!!!E組!!!!」

 

それに連られ、周りの生徒も神威に向かって罵声を浴びせた。

 

「そうだそうだ!!!」 「二回連続のストライクの奴がなにカッコつけよーとしてんだよ!!!!」 「でかい口叩きやがって!!!」

 

「殺すぞ!!」 「野球部!!殺っちまぇ!!!!」

 

その状況下の中でも神威はブレずに普通に立っていた。

 

すると、進藤は侮辱されたのかと思い顔から青筋を大量に浮かべた。

 

「だったら見せてやるよ……」

 

その言葉と同時に進藤はゆっくりとフォームを描いた。

 

「俺の本気を…!」

 

そして

 

 

ビュンッ!!!!

 

 

必殺の豪速球が放たれた。さっきよりも断然速い…。

 

(これで、お前はクラスで大恥をかいて表を歩けなくなる……ザマァ見やがれ…!)

 

進藤は内心そう思い、絶対に打たれない自信があった。何故ならば、自分の力、そして、理事長のあの言葉

 

 

 

"君の球を外野に運べるのは杉野君以外いない”

 

 

 

アイツには俺の球は打てない。彼はそう思っていた。

 

 

 

 

 

だが、次の瞬間

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

「何…!?」

軽い呼吸とともに、神威の構えが一気に変化した。バッドを短く持ち、ただでさえ小さいストライクゾーンに突っ込んでくる豪速球に向けて構えた。

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

カキィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

そのボールが 遥か上空まで飛ばされた。

 

 

 

 

「…な…!!」

 

進藤が驚き、呆然としていると実況者が震えながら答えた。

 

 

『ち…………ちょ…………超場外ホームラン……!?』

 

 

 

その実況と共に、辺りは再び沈黙に包まれた。

 

 

渚達も声が出せず、口を開けてただ驚くだけであった。

 

「じょ……場外ホームラン…!」

 

すると、横にいる杉野さえも驚いていた。

 

「ま…マジかよ……俺でさえ出来るか出来ないか五分五分の進藤の本気のボールをあんな簡単に…!」

 

「…ほんとアイツには驚かされるよ…」

あのカルマでさえも冷や汗を流していた。

 

そして、ホームランを打った本人は一塁 二塁と進み帰ってくると、辺りの目も気にしなず、近くのベンチへと腰を下ろした。

 

「何ぼーっとつったんてんだ?次の奴早く行った方がいいんじゃねぇか?」

 

そう言うと皆は我に返り、次のバッターが打席へと向かって行った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

一方、野球部のベンチでは理事長が険しい表情を浮かべていた。

 

(まさか…私の予想を覆すなど………少し見ないうちに随分と穢れた姿で舞い戻ってきたね…君は…)

 

 

その目線の先には先程ホームランを打った神威が映っていた。

 

 

 

 

 



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球技大会の時間 4時間目

神威が場外ホームランを打ったことにより、周りは沈黙に包まれていた。次のバッターである管谷もどうしたらいいか分からなくなった。

 

 

その後、管谷はアウトとなり野球部の番が回ってきた。するとここで

 

「タイム!!」

 

相手チームが2回目のタイムを出した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーーーー

 

 

現在野球陣営では理事長が厳しい表情を浮かべ、周りにいる野球部は希望を失ったかのような目をしていた。

 

理由は簡単だ。自分たちのエースがホームランを打たれた。唯一の希望が崩れたのだ。

 

すると理事長は口を開いた。

「先程のホームラン……私の読みが甘かった為に起きたこと……すまなかったね」

「え…いや…」

突然の謝罪に進藤は一瞬 驚いた。

 

「ここからは終盤戦……気を抜かないようにね…話は以上だ。あと、進藤君は私のところへ」

「え…?はい…」

それだけ言うと野球部は位置についた。だが理事長は進藤を呼び戻した。

 

ーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーー

 

ーーー

 

野球部がタイムを取り集合している一方でE組陣営は神威を中心に喜びの嵐が吹いていた。

 

「すげーぞ!神威!」

 

「お前のお陰で4点だぜ!!」

 

「これでラストは耐えるだけだ!!」

先程のホームランで皆は一瞬 動揺したがその後すぐに気持ちを入れ替え勝利を確信したのだ。

 

だが、カルマは喜ぼうとはしなかった。その表情は何かを警戒しているようだった。

「次で最終局面だけど…耐えるのは少し厳しいと思うよ?」

 

カルマがそう言うと皆は野球部のベンチへ顔を向けた。見ると理事長が進藤に更に協力な洗脳を掛けていた。

 

「さっきのホームランを見てさすがの理事長もヤバイと思ったんだろうね。念密に進藤を洗脳してる」

 

「マジかよ!?こりゃヤバくねぇか!?」

前原が驚いていると

 

「大丈夫だ!相手が洗脳であれどうであれ!俺たちはただ勝つ。それだけだ!!」

 

 

ドンッ!!!!!!!

 

((((((な…何かカッコいい…))))))

 

 

突然放たれた杉野のセリフに渚やほかの皆は一瞬 動揺した。

 

 

ズズズ…

(神崎が近くにいるからかっこつけたかっただけだろ)

矢田から貰ったお茶をすすりながら神威は杉野の心情を分析した。

 

「どうだろ…勝てるかな…?」

 

「分からん。だが確率は高い……と言った方がいいか?さっきの俺のホームランでアイツの精神をだいぶ崩したからな。相当の傷を負わせてやった。多分途中で洗脳についていけずダウンだろ」

進藤を見て矢田は恐る恐る神威に聞いた。神威は表情を変えずに答えた。

 

「でも……」

「どうせあと6回耐えればいいだけだ。奴らも十分焦ってるだろうさ」

「そうだね」

 

 

 

すると近くにいたカルマが神威を肘でグイグイと押してきた。

カルマ(さすが神威〜状況整理が上手いね〜♪)

神威(さりげなく心で話しかけてくんな)

 

そして相手のタイムが終わると皆は自分の位置へとついた。

 

 

だが、タイム後の進藤は先ほどよりも強烈で何本もホームランを打たれE組の皆は彼らに三点という得点を許してしまった。そして進藤も調子を取り戻したのかさっきよりも上回るほどの速球を投げた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

最終局面、現在4:3でE組がリードしているがこのままでは追いつかれてしまう。皆の焦りが命取りとなり最終局面に限って一気にスリーアウトを取られてしまった。

 

 

3回裏

 

E組は守備につき相手の出方を伺っていた。

 

「橋本君、手本を見せてあげなさい」

「はい!」

 

『プレイ!』

 

合図と同時に杉野が相手にボールを投げた。対する相手は"バント”だ!

 

「なっ…!」

 

『おっとぉー!!!バントだぁー!!今度はE組が地獄を見る番だ!!』

渚達もバントを掛けてくるのは予想外であった。完全にストレート対策しかないと見切られていた。

 

その為か拾うのに苦労をし一塁への侵入を許してしまったのだ。

 

『E組よっ!バントとはこうやるのだ!!』

すると後からバントが続き、遂にはノーアウト満塁となってしまった。

 

『あっという間にノーアウト満塁ー!!一回表E組と全く同じ!!そして最後に迎えるバッターは…我が校のスーパースター進藤君だぁー!!!』

 

遂に相手は進藤をぶつけてきたのだ。見るからに常人ではないほどの雰囲気が漂っていた。

 

すると

 

「ぷはっ!カルマ君、さっきの挑発を活かす時が来ましたよ」

「……成る程ね。お〜い、監督から指令〜」

 

ーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

『つ…次で3回目…ですが…この前進守備は!?』

実況や周りの皆も驚いた。何故なら、バッターの目の前で守備に当たっているからである。

 

「明らかにバッターの集中を乱す位置に立ってるけど、さっきそっちがやった時、審判は注意しなかった」

そう言うとカルマは理事長の方へ首を向けた。

「文句ないよね?理事長」

 

だが、そんな案も理事長にとっては小賢しいものだった。

「ご自由に、選ばれた生徒は守備位置だけで心は乱さない」

 

「なら遠慮なく」

そう言ったと同時にカルマと磯貝は更に接近した。ほぼ零距離だ…!

 

『ち…近い!!ほぼゼロに近い距離!!振れば確実にバットが当たる距離です!!』

 

あまりにも近いのか進藤は目を点にして唖然としていた。

 

「気にせず打てよスーパースター?ピッチャーのボールは邪魔しないから♪」

 

「構わずバットを振りなさい進藤君。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組の方だ」

二人にそう言われるも洗脳されてるとはいえ『あたったらどうしよ…」という感情に襲われ混乱していた。

 

(い…言われなくても…!)

 

 

スッ…

そう言いバットを振ると、二人は少し下がっただけで横振りを避けた。

 

「な…!?」

 

「ダメだよそんなスイングじゃ〜次はさ〜…殺す気で振らないと…♪」

 

周りから見れば普通の挑発だが進藤にとってはナイフを向けられ脅されるような光景であった…!

この時点で進藤は理事長の洗脳に体がついていけず、杉野が投げたボールが別のものへと見えるようになった。

 

「ひぃ…!」

 

カンッ!

 

打ったものの斜めすぎた為か余り強くは飛ばなかった。

 

「渚君!」

 

その直後にすぐカルマが渚に渡し、三塁へ投げ最後に一塁へと投げた。

 

『ト…トリプルプレー!?な…なんと!E組が野球部に勝ってしまったぁ〜!!!!!』

 

打者ランナーアウト、トリプルプレーとなり見事E組の勝利となった…!

 

「やったー!!!」

 

「男子やる〜!!」

女子達やイリーナは歓声をあげ抱き合いながら喜ぶものもいた。。すると胸糞悪くなったのか本校舎の生徒達は舌打ちをしながら帰っていった。

 

すると杉野は打席で座り込んだ進藤に近寄った。

 

「悪かったなこんな試合になっちまって…でも、やっぱお前、野球選手として俺より全然強ぇ。これで勝ったとは思ってねぇから」

 

「だったら…何でここまでして勝ちに来た…?」

 

「ん〜……渚は俺の変化球練習に付き合ってくれたし、カルマや磯貝の反射神経に神威の場外ホームラン。要するに自慢したかったんだ。俺らの仲間!」

 

すると進藤は「フッ」と笑うと手を差し出し杉野と手を交わした。

 

「次やる時は高校だ…!」

 

「あぁ!」

 

歪んだ感情が消え、今ここで友情として誕生したのだった。

 

 

 

 



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我が家との別れ

 

球技大会で男子が野球部に勝ち、勝利を得た。皆は肩を抱き合い喜び歓声を上げていた。

 

だが神威一人だけは喜びの声、ましてや表情も浮かべなかった。

 

すると

「神威くん!ホームランかっこよかったよ!」

 

矢田が駆け寄り神威に抱きついた。いつもなら赤面するも今回はしなかった。表情も変えずただ無言のままの神威を矢田は不思議に思い理由を尋ねた。

 

「どうしたの?」

「……何でもない。それより、話がある」

 

そう言われた矢田は神威と共に静かな場所へと向かった。

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

「ここなら誰もいないか…」

 

神威は誰もいない事を確認すると矢田に向き合った。

 

「今日限りでお前の家を出てく」

 

突然の告白に矢田は「え!?」と驚いた。

 

「ど…どうしたの急に!?私がなにか悪いこと…」

 

「してない。ただ新しい家を見つけたからだ」

 

そう言われると矢田は「ホッ」とした。

 

「よかったね。新しい家が見つかって、でも私的にはもう少し一緒に居たかったな〜 お父さんとお母さんにも紹介してないし…」

 

「………その辺はスマンと思ってる。ただ…これ以上世話になる訳にはいかないからな」

 

そう言い神威は矢田に謝るも矢田は笑顔で「分かった」と返した。

 

「あ!この後皆で打ち上げするんだけど神威君も行かない?」

すると神威は「悪いが欠席と伝えてくれ…」とだけ言うと矢田に背を向けた。

 

「じゃあな」

そう言うと山の入り口へと歩いて行った。

 

「うん!」

矢田も笑顔で答えると手を振って見送った。そして、神威の姿が見えなくなると矢田は皆の方へと戻っていった。

 

戻ると皆は帰る支度をしていた。

 

「あれれ?桃花ちゃん〜?神威と二人っきりでなにしてたのかな〜?」

「な…!何もしてないよ!」

 

「ホントかな〜?」

「ホントだってば!!」

戻ると矢田は中村やカルマから茶化され頬を赤く染めた。他の男子や女子達は笑いながら見ていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

「なんで……あんなに笑顔なんだ…?」

あの後神威は木に座り木の実を齧りながらE組の様子を見ていた。視界には皆からからかわれるも笑顔を浮かべている矢田の姿が映っていた。

 

(分からん……何故…俺が原因でE組に落ちたというのに…何故恨んでないんだ…?……理解できん…)

 

そう自問しながら見ていた神威は立ち上がると

 

(必ず……この落とし前はつけてやるからな……姉 …いや…義姉…!)

 

そう言い下校する矢田を見るとその場から飛び降り山の中へと消えていった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

「え?」

 

下校の途中 一瞬 何かの気配を感じ矢田は旧校舎の方へと振り向いた。

 

「どうしたの?桃花ちゃん」

親友である倉橋から聞かれると矢田は「なんでもない」と言い下校を再開した。

 

(なんだろ…今の感じ…前にもあったような…)

そう思うも気のせい だろうと思い矢田は足を進め家へと向かった。

 

 

 



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悪夢の再来 そして新たなる住居

 

 

 

 

あれから数時間

 

 

義姉と別れた俺は今夜の寝床を探すため山中を散策していた。

ザ…ザ……ザ…

 

何もない。古屋らしきものは見つからず、ただ木 、木、木ばかりだった。

 

「ここら辺で野宿か…」

俺は寝床を探すのを諦め、木をへし折り、次々に並べた。そしてその並べた木を一本一本 一つの場所に円柱を描くように立てた。

 

「まぁこんなもんか…次は飯……か」

俺は少し腹が減り、木の実を探しにそこから離れた。

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

それから何時間経ったか分からないが木の実を見つけた頃には辺りは暗闇に包まれていた。

「なんだ…もう夜か…」

空を見上げると葉の間から見える三日月が俺を照らしていた。

「……そろそろ戻るか……」

俺は木の実を見つけたから目的達成ということで自作の住居に戻った。

 

ーーーーーーー

 

住処に戻り木の実を食べ終えた俺は横になった。季節は夏で地面に落ちた葉が布団の代わりをしてくれている。

その葉のフカフカな心地に俺は誘われ、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

 

 

 

“殺せ!!!!”

 

 

「…!!!!」

突然脳内に響いた声に俺は目を覚ました。体は冷汗でびっしょりと濡れていた。

 

「またか……ってここは……?」

見回すと俺が寝ている場所は見知らぬベットの上であった。

 

………?

なんか……重い……

 

見ると俺の右半身に掛かっている布団が膨らんでいた。

(なんだ……これ……?)

恐る恐る俺はその布団をめくってみた……

 

 

 

「すぅ〜…すぅ〜…すぅ〜…

 

 

 

 

 

 

 

 

!!?

 

 

 

 

そこにいたのは俺よりも遥かに身長が高く……軍服を着た女だった。

 

 

 

 

「おや、目が覚めたかの?」

「!」

突然後ろから声を掛けられた。見るとそこには ぐるぐる眼鏡をかけ長い長髪を後ろでまとめた いかにもファンキーな老人が立っていた。

「誰だお前…?ここはどこだ…?」

俺はその女をどけて上半身を起き上がらせた。

「ホッホッホ。ここは椚ヶ丘の街中にある施設じゃよ施設」

「施設…?

俺は周りを見た。意外と広く、窓から光が差し込んできていた。

(椚ヶ丘にこんな施設なんてあったのか…?)じゃ…じゃぁコイツは…?」

俺は一番気になっていた事を聞いた。するとその老人はホホホと笑いながら答えた。

「そ奴はお主と同じ仲間じゃよ」

「仲間……?」

 

すると、

 

「ん…?朝…?」

その女も目を覚ました。

 

「あれ〜?君 目 〜覚めたの?あ!おはよう 博士!」

「ホホホ。おはよう赫夜」

「(博士…?赫夜……?)」」

 

赫夜と呼ばれた女は俺を見ると『博士?』というやつに挨拶し、ベットから起きて隣に座ってきた。よく見ると……コイツも俺と同じ肌が褐色色だった。それに加えまさかの目も片方濁っていた。

 

「では、話すとするかの。お主、名はなんという?」

「…………神威…」

名を聞かれた俺は今の名を名乗った。するとその老人は首を縦に振った。

「ほほほ。そうか…お主 神威というのか」

すると老人はいきなり俺の肩に手を置いてきた。

 

「お主、今日からここに住まんか?」

「は?」

突然の一言に俺は驚いた。

「実はな、お主らをその姿になってしまったのは全てわしの責任なんじゃ…」

「お前が…?どういうことだ…?

「いまから話そう…」

そう言うと老人は肩から手を離すとまた座り込んだ。

「これは10年も前のことじゃ。わしの家は代々陰陽師での。平安の時代の書物がわんさかあるんじゃ。ある日、平安時代の書物をわしが漁っていると、一本の巻物が出てきたのじゃ。そこに記されていたのはなんと、『芦屋 道満』が書き記した式神の生成術じゃった。それを見た途端わしは興味が湧き内容を見た。じゃがその内容は余りにも残酷な方法じゃった。『負の感情』を増幅させることだったのじゃ」

 

「負の感情…?」

「分かりやすく言うと人間が時に生み出す『怒り』や悲しみ』そして『恨み』というマイナスの感情じゃ。それを取り込めば取り込むほど……人を殺せば殺す程、万物を制圧できる力、明晰な頭脳が得られるのじゃ」

「………」

俺は黙っていると老人は話を続けた。

「じゃがその代償として身体の成長が止まり…毎晩 怨念の声に苦しめられるのじゃ。わしはあまりにも危険と判断し、それを大切な保管庫に入れ長屋に封印したのじゃ。じゃが…ある日その書物がある男によって盗まれたのじゃ」

 

「……まさか…」

「そう……『柳沢 誇太郎』じゃ」

「……グゥ……」

柳沢という名を聞いた瞬間神威は顔をしかめつかせた。

 

「奴はその書物を解読し実験方法を編み出したのじゃ。それから9年後…ある一人の少女が行方不明なった。知っておるじゃろ?」

 

神威は老人が聞いてきたその事件に聞き覚えがあった。

「あぁ…確か中学生の女が拉致されたんだっけ…?まさか…」

「そう。その失踪した少女こそがこの赫夜じゃ」

そう言うと神威は赫夜へと目を向けた。赫夜も悲しそうな表情を浮かべていた。

「あの時は地獄だった……何日も渡って死なない程度にいたぶられた。指なんて何本も折られたり千切られたりしたわ」

「東京の街外れの茂みで倒れていたところをわしが保護したのじゃ。それから1年後、また新たなる犠牲者が出たのじゃ…」

「………それがこの俺か……」

「そうじゃ。お主らに辛い思いをさせてしまったのはわしの所為じゃ。すまなかった…」

そう言うと老人は神威に向かって手をつき頭を下げた。

その土下座に神威は表情を変えなかった。

 

「別にいい…それよりも、アンタはどうしてこの施設を?」

「うむ…実験の犠牲となった子供達を引き取るためじゃ。その子達はわしの所為で社会から落ちてしまった。ならばわしはわしが出来る事でその子達を無事に社会に戻したいと思ってね……どうする?ここに住むか?」

老人の質問に神威こと矢田桃矢は迷いなくすぐに答えた。

 

「頼む」

するとその老人はニッコリと笑みを浮かべた。

「よろしくの。わしの名は風上 善吉 じゃ」

「あぁ…」

そう言うと善吉は立ち上がり「もう少し休んでいるといい」と言い部屋を後にした。

 

バタン

 

善吉が出てていくと部屋には神威と赫夜だけが残った。すると赫夜は神威に手を差し出した。

 

「私は赫夜よ。よろしくね」

「俺は神威だ」

手を差し出された神威は自分も手を差し出し、互いに手を交わした。

 

「というか アンタは学校に通ってんの?」

「あぁ…『椚ヶ丘中学校』にな…」

「へぇ〜!私と同じところじゃん!」

まさかの同じ中学のことに神威は驚いた。

「お前もか?」

「そうそう!私いま3年B組なの。神威は?」

「俺は……E組…」

「え!?あのE組!?どうして?」

「……そのことは話せん……」

うっかりと機密事項を話してしまうところで神威は拒否した。

「え〜いいじゃん聞かせてよ〜」

「めんど…」

赫夜がしつこいと思ったのか神威はベットに戻った。すると赫夜もモゾモゾと入ってきた。

 

「なぜ入ってくる…」

「え〜。だって元々私のベットだし〜♪」

「…なに?」

 

バッ!

 

ガシッ!

咄嗟に神威は起きようとした途端 赫夜に後ろから手を回され抱きつかれ阻止された。

 

「〜♪」

「お……おい…離れろ…」

「い〜や〜よ〜♪一目 見たとき気に入っちゃったんだもん!君のこと♪」

「うぅ………(義姉といたときと全く変わらねぇ……)

「この抱き心地最高〜♪」

ムニュゥ

すると赫夜は矢田よりも豊満な胸を押し付けてきた。

 

(うぅ……義姉以上にやばい………………寝る……)

神威はこの状況から逃れるため いち早く睡眠へと移った。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

善吉は部屋の扉の隙間からその状況を見ていた。

すると善吉はニコリと笑みを浮かべると その部屋から離れ、一階へと降り、自室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 




はい!今回でオリヒロ?みたいなのを登場させました!


赫夜
元の名前:不明

容姿
双星の陰陽師の赫夜

15歳
誕生日不明

身長
165

体重
?kg

中学1年の頃に『柳沢 誇太郎』のとある実験の被験体となった。その後、自力でその施設から脱走し、東京の町外れで倒れていたところを『風上 善吉』に拾われる。神威を一目 見た瞬間に気に入り、色々と仕掛けて来る。


風上 善吉

65歳

容姿
双星の陰陽師 の音海 善吉

身長171

眼鏡をかけ 長髪を後ろで束ねた老人で代々陰陽師を務めている。しかしそれは裏であり、表は製薬会社の社長で現在は退職している。道満法師が記した『式神生成』の書物に興味を抱き、その書物を読むがあまりにも残酷な方法と判断し、その書物を長屋に封印する。だが、ある日その書物を何者かによって奪われる。自分の不注意で神威や赫夜を実験体としてしまったため、二人のことをとても気に掛けている。










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訓練の時間

暗殺訓練 中間報告

 

「視線をきらすな!!次に標的がどう動くか予測しろ!!」

校庭ではいつも通りの日課である暗殺訓練を行っていた。

烏間の中では幾人かの可能性を持つ生徒が出始めていたのだ。

 

磯貝&前原ペア

男子の中でも大きな身体能力を持つこの二人は仲も良く、コンビネーションなどが強力で二人掛かりで烏間にナイフを当てられる確率が増えてきたのだ。

 

岡野&片岡ペア

岡野は元体操部でその軽業師の様な身のこなしと柔軟な動きで意表を突いた攻撃ができる。一方片岡は岡野よりは劣るものの男子並みの体格と運動神経をもち、近接戦では非常に優秀な動きを見せていた。

 

赤羽 業

一見のらりくらりとしているがその目には強い悪戯心が宿っており、決定的な一撃を食らわせ赤っ恥をかかそうと考えている。

 

更に、中には烏間でさえ訓練相手にならない強大な身体能力かつ戦闘能力を持つものがいた。

 

神威

クラス1の小柄だが、人間離れした驚異的な身体能力の持ち主で、クラス1の俊足の木村 正義よりも俊敏で元体操部の岡野 ひなたをも上回る柔軟かつ瞬発力を兼ね備えている。

 

だが、

 

「フンッ」

パシッ

(何故か寺坂グループと同じく…あまり積極的ではない。彼が加われば絶対かつ強力な戦力になるのだが……)

烏間は神威が投げたナイフをキャッチしながら悩んでいた。

 

だが烏間からにしてみれば皆の暗殺能力は格段に向上していた。

 

 

 

中には…

 

シャァァァァァァ…!!!

「!!」

バシッ!

「ふげ!?」

「す…すまん!やりすぎた…」

 

意外な才能を見せるものも。

「あははは大丈夫です…」

 

潮田 渚

男子で二番目に小柄ゆえにすばしこい。特筆すべき身体能力はそれ以外ない温和な生徒だ。

 

(だが……いまの得体の知れない気配は……)

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「では今日の授業は終了」

 

『ありがとうございました』

 

「烏間先生〜!帰り皆でお茶してこーよ!!」

「…あぁ。誘いは嬉しいが、この後は防衛省の連絡待ちでな」

倉橋の誘いを烏間は断ると職員室へと戻っていった。

 

「私生活でも隙がねぇ〜な…」

「うん。それに烏間先生…私たちと一定の距離を保ってるみたいだし」

「厳しいけど優くて私達のこと大切にしてくれてるけど…それってただ任務に過ぎないのかなぁ…」

烏間の後ろ姿を見ながら三村、矢田、倉橋が呟いた。

その言葉を殺せんせーは否定した。

「確かに烏間先生は私を仕留めるために送り込まれた工作員ですが、彼にも素晴らしい教師の血が流れていますよ」

殺せんせーは烏間のほうを見ながらそう言った。

その時、

バタン!

教員室の入り口が勢い良く開けられた。そこにいたのはとても大きな包みや袋を担いだやや太めの体型の男性だった。その男性は烏間と少し話すとこちらへ歩いてきた。

 

「やっ!俺の名前は鷹岡 明!今日から烏間の補佐としてここに働くことになったんだ。よろしくな!」

その男性はにっこりと笑顔を見せながら陽気に挨拶をしてきた。それと同時に持っていた荷物を全部下ろした。

 

「うそ!?これって『ラ・ヘルメス』のエクレアじゃん!しかもこっちは『モンチチ』のロールケーキ!」

「いいんですか?こんな高いの…」

「あぁいいさいいさ!俺の財布を食うつもりでたくさん食べろ!!俺はお前らと早く仲良くなりたいんだ。それだったら皆で囲んで飯を食うのが一番だろ?」

そう言われると皆は鷹岡という男性が持ってきたスイーツを食べ始めた。

だが、不思議にその場にカルマの姿はなかった。

 

「お前も食うか?」

「?」

すると鷹岡はどれにも手をつけない神威にスイーツを差し出した。だが神威はそれを断った。

「………いらん」

「そうか?」

そういうと鷹岡はそのスイーツを自分の口へと運んだ。

鷹岡は皆と意気投合したのかその場で談笑しあった。その中には殺せんせーもスイーツに釣られて混ざっていた。だがその雰囲気の中、神威は誰にも気付かれずにその場を去った。

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

「へぇ〜。随分と虫のいい話ね」

「あぁ」

あの後、施設に戻った神威は善吉が作った夕食と風呂を済ませ、今は今日来た担任である『鷹岡 明』のことについて赫夜に話していた。

 

「ソイツには気をつけた方がいいかもね」

「……どういう意味だ?」

ベットに座り髪をか沸かしながら答える赫夜に神威は質問した。

 

「だいたいそういう人っていうのは裏の顔があるものよ。表では優しいと見せかけて裏では物凄い独裁主義者だったりとかね」

「そうなのか?」

「まぁ私は会ったことないから知らないけど」

「………」

神威が黙り込むと赫夜は電気を消した。

「ま、私だったらそんな表だけの先生なんてまっぴらゴメンね」

そういうと赫夜はベットに潜り込んだ。

「……(取り敢えず……警戒しておくべきか…それにカルマの奴もあいつを見た瞬間に帰っちまったからな…)」

神威はベットの横に敷いた布団に横になり考えると目を閉じて睡眠に入った。

 

因みに神威が眠った瞬間に赫夜がこっそり自分のベットに運んで一緒に寝かしたのは別の話である。

 

 



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親愛の時間

次の日の昼過ぎ、今回の体育は鷹岡が持つこととなり、皆は鷹岡の前に集まっていた。

 

「今日から練習メニューが少しキツくなるからな!終わったらまた美味いモン食わしてやるからよ!」

「そんなこと言ってどうせ自分がたべたいんでしょ〜?」

「まぁな!お陰でこんな腹だ♪」

中村の言葉に鷹岡は腹を見せながら答えると皆は一斉に笑った。

 

その光景を神威は旧校舎の屋根に座りながら見ていた。

 

「(……やはりアイツ…何か企んでるな…)」

神威は鷹岡を睨むとそこから降り、教員室へと入っていった。

 

ーーーーーーー

ーーーー

神威が教員室へと入ると、そこには烏間がいた。見ると烏間は一枚の写真を見つめていた。

烏間は神威に気づくとその写真を置いた。

 

「君か…訓練は受けないのか?」

その問いを神威は無視し、置かれた写真へと目を通した。その写真には、鷹岡の他に四人の男性が満面な笑顔で写っていた。

 

「……これは?」

「…奴が教官を務めていた時の教え子達だ。今では優秀な軍人になったと聞いている。俺もアイツと同じ家族のように接した方が良かったのかもしれんな」

烏間は神威の問いに一拍置いて答えると教員室を出て行った。

 

 

「フン………ん?このもう一枚の写真はなんだ?」

俺はその写真の下に置かれていたもう一枚の写真を見た。

 

「…!」

神威は目を大きく開いた。そこには、先程と変わらず満面な笑みを浮かべる鷹岡と背中に大量の痣が浮かんでいる四人の訓練生が写っていたからだ。

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

 

神威が教員室へ入った直後に、鷹岡はプリントを取り出し、皆に配った。

 

「さて、今日から訓練内容が結構変わり、E組の時間内容が変更になった!」

 

皆は配られたプリントを見た。

 

その瞬間

 

 

「え…?」

「嘘…だろ…?」

皆は絶句した。

 

そこには、通常の6時間+4時間つまり、10時間目までのカリキュラムが組まれていたからだ。

 

「このくらいは当然さ。理事長にも話して承諾してもらった。“地球の危機ならしょうがない”と言ってたぜ。このカリキュラムについてくればお前らの能力は飛躍的に上がる!さてまずは腕立て300「ちょ…ちょっと待ってくれよ!」

 

鷹岡の説明に、前原が抗議した。

 

「ん?どうした?」

「いや!いくらなんでも無理だぜこんなの!!勉強の時間が少なすぎて成績が落っちまうよ!それに遊ぶ時間もねぇしできるわけねーよ!こんな…ガハッ!!」

 

前原が最後まで言おうとした時、前原の鳩尾に鷹岡の膝が潜り込んだ。

 

「『できない』じゃない『やる』んだよ。言っただろう?俺達は家族で俺は父親だ。世の中に父親の言う事を聞かない奴がどこにいる?」

その瞬間、鷹岡の表情が一変した。その顔は異常と呼ぶに相応しいほど狂気に満ちていた。

 

「もちろん抜けたい奴は抜けてもいいぞ?その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。けどよ〜?俺はそう言う事はしたくないんだ。お前達は大事な家族だからな〜?」

鷹岡はそう言いながら皆の後ろをゆっくりと徘徊した。一歩一歩 その音が響くたびに皆の顔は恐怖に染まっていた。

 

「家族みんなで地球を救おうぜ!」

鷹岡は近くにいた三村と神崎の肩へ手を回した。二人の顔は恐怖に包まれた。

 

「な?お前は父ちゃんについて来てくれるよな?」

「……」

鷹岡は神崎に目を向けながら聞いた。すると神崎は震える足で立ち上がると答えた。

 

「わ…私は嫌です。烏間先生の授業を希望します!」

神崎は怯えながらも笑顔で答えた。

 

そう言った直後、鷹岡の手が神崎の頬へ向かって放たれた。

 

「…!神崎さん!」

瞬間、近くにいた矢田が神崎を庇った。

 

 

パァーンッ!!

 

結果、放たれたその手は矢田の頬へと直撃した。

 

「桃花ちゃん!!」

「矢田さん!」

吹っ飛ばされた矢田は地面へ身体を打ち付けた。

 

「お友達を庇ったのか?随分と泣かせてくれるなぁ」

 

ガシッ!

そう言いながら鷹岡は矢田へと近づくと首を掴み上げた。

「ぐ…がぁ…」

「でもいけないな〜?父ちゃんの教育を邪魔する奴は…!」

鷹岡は拳を矢田に向かって放った。皆は助けようとしたがもう間に合わなかった。

 

「(助けて……)」

矢田は一滴の涙を流した。

 

 

 

(神威……君…!)

 

 

 

 

 

 

その時、

 

鷹岡の腹に何かが抉りこまれた。

 

「ガハァ!」

 

瞬間に鷹岡の体は宙を舞い、50メートルもの距離を飛ばされた。鷹岡の手から離された矢田はその場に尻餅をつき、自分の目の前にいる影を見た。

 

「か……神威……くん……?」

矢田は一瞬閉じた目を開いた。そこには、輝く金色の目で鷹岡を睨む神威が立っていた。

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

パァーンッ!

 

俺が写真を見た直後、グラウンドから何かを叩いた音が聞こえた。俺は窓を開けた。

 

「ッ!」

俺は目を大きく見開いた。そこには、神崎に覆い被さりながら吹っ飛んでいる義姉の姿が映った。

 

 

その瞬間、俺の頭の中に何かが流れ込んできた。いや、流れ込んだものじゃない。元々あった『記憶』だった。

 

1人の小学生にしては大柄な少年が笑いながら小柄な少年を突き飛ばした。

 

『うぅ…』

『あぁ?お前 女の癖に俺たちに逆らうのか?』

『僕は男だ!!それに僕はただ注意しただけだ!!正しい事をして何が悪いんだ!』

『ッ!いい子ぶってんじゃねぇよ!!女がよぉぉ!!』

 

『私の弟をいじめるなぁ!!!』

すると、1人のポニーテールの少女が新聞を丸めたチャンバラ棒でその少年の頭を叩き、追い払った。

 

その少女はゆっくりと振り向くと倒れている少年に手を差し出した。

『大丈夫。心配しないで…

 

 

 

 

 

 

 

 

______桃矢はお姉ちゃんが守ってあげるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン…

 

 

その瞬間 一つの大きな心臓の鼓動と共に神威の心は殺意に満ち溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺す

 

 

 

 

 

 

 



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穢れた本能

「か…神威…くん…?」

「……」

突然現れた神威は、後ろで自分の名前を言う矢田に目を向けず鋭い眼光で鷹岡を睨みつけていた。

 

「グフ……なんだ?お前も父ちゃんに逆らうのか?」

拳を抉り込まれた鷹岡は腹を押さえながらゆっくりと立ち上がると神威を睨んだ。

対してその問いに神威は答える様子はなかった。

 

「おいおい。父ちゃんが聞いてるんだぞ?答えないのか?それともおっかなくて答えられないのか?」

鷹岡の言葉に神威は答えなかった。いや、鼻っから答えるつもりなどなかった。それに対し鷹岡はさらに挑発をしかけた。

 

「おいおい酷い目だな。まるで感情がないようだ。ま、そりゃしょうがないか。『人体実験』を受けてたんだしなぁ…?」

「…ッ!」

鷹岡の放ったその言葉の中にある1つの単語に今まで黙っていた神威がまるで虚をつかれたかの様に目を開いた。聞こえたのか周りの皆も同じ反応をみせていた。

 

「な……なぜお前がそれを…!!」

神威は言葉を震わせながら鷹岡に問う。すると鷹岡はニヤッと笑った。

 

「俺はお前らの父親なんだぜ?息子達の情報を仕入れておくのは常識だろ?理事長から見せてもらった生徒一人一人の情報にちゃ〜んと目を通したさ。たくさんの書類に目を通してる時 1つだけ妙な物があったな〜。顔は少し似ているが名前が全く違う生徒が。その名前が「黙れ…!」

瞬間 神威の足が振り上げられ鷹岡に向かって放たれた。だが焦りによって神威の足がぶれその蹴りは鷹岡にかわされた。

 

「放心状態となったか。本当にやべぇな〜 バケモノはよ〜!!」

 

蹴りを躱した鷹岡はさらに目を血走らせ挑発した。その瞬間 神威の目が太陽に照らされ一瞬光ると同時に全身からドス黒い殺気を湧き上がらせた。

「ッ殺す…!」

『バケモノ』その言葉に神威の心は乱れ本気で鷹岡を葬ろうとした。その時、教員室のドアが乱暴に開かれそこから少量の怒りを混ぜた表情をした烏間が走って来た。

 

「やめろ鷹岡!!」

そう叫びながら烏間は駆け寄ると神威と鷹岡の間に入った。

 

「これ以上 生徒に手荒な真似をするな!大丈夫か 前原くん 矢田さん」

「俺は平気っす…いっ…」

「わ…私も大丈夫です…」

前原と矢田は自分の安否を伝えた。だが神威は突然 間に入った烏間に対し怒りを見せた。

 

「邪魔をするな烏間…!邪魔するならお前から先に消すぞッ…!」

今までに聞いたこともない程 の怒声に烏間や周りの皆は冷汗を流した。すると、烏間はゆっくりと神威に近づき神威の耳に何かを口にした。

それと同時に 今まで殺意に溢れていた神威が一瞬にして静まり返った。

 

「こんな事で止めてしまってすまないが…」

「……いや…いい…」

神威はそう呟くと尻餅をついた矢田の元へ歩いて行った。

烏間は神威の落ち着きに安堵の息を下ろす。あと一歩遅ければ神威は確実に鷹岡を殺していただろう。

最悪な事態は回避できたが、烏間は鷹岡を睨んだ。

 

「鷹岡、これはどういう事だ?」

その問いに鷹岡は笑顔で答えた。

「何って教育さ。それにちゃんと手加減してるんだしいいだろ?なんせ俺はコイツらの父親なんだからよ〜」

その時 鷹岡の肩を何かが掴んだ。

 

「いや……貴方の子供ではありません…私の生徒です…!」

そこには怒りの形相を浮かべた殺せんせーが立っていた。

「ちょっと目を離していた隙に…何をやっている…?」

顔は赤く染め上がりそれに伴い触手も炎の様に染まっており、顔にはいくつもの青筋が浮かび上がっていた。

それに対し鷹岡は表情を変えずに肩に置かれた触手を振り払った。

 

「何か文句でもあるのか?モンスター。授業は政府からの命令で殆ど俺が受け持っている。そして、今のもアイツらに対してちゃんと教育になっている。それとも何か?多少 教育論が違うだけでお前に危害を加えてない俺を攻撃するのか?」

「ニュゥ…」

鷹岡の言葉に殺せんせーは反論出来なかった。成す術もなくなった殺せんせーはその場を離れた。

 

「ようし!まずはスクワット300回だ!」

鷹岡は手を鳴らし皆にやるように指示した。それに反抗する者はいなかった。皆は渋々頷き やることとなった。

神威は矢田を立たせると鷹岡を睨んだ。

(アイツ……誰から知ったんだ…?俺の素性は理事長と烏間しか知らねぇ筈…)

そう考えるも神威は矢田を背負い保健室へ連れていった。

 

ーーーーー

ーーー

保健室に着いた神威は矢田を降ろすとすぐベッドに寝かせた。

「さっきのところ…まだ痛むか…?」

「うん…でも少し引いてきたよ」

矢田の状態を確認すると神威はそのまま保健室から出ようとした。すると不意に手を掴まれた。

「お願い…一緒にいて…」

「…」

矢田の頼みに神威は何も言わずに近くにあるイスへ背を向ける形で座った。

 

「ねぇ…さっきの話なんだけど……あれって…どう言う事なの…?」

「…」

矢田は神威に聞いた。先程の鷹岡の言動を耳にしていたのは皆だけでなく 矢田にも聞こえていたのである。

すると神威は何も喋らずイスから立ち上がると矢田に近づいた。

 

 

「え…?」

神威は矢田の背中を軽く叩いた。

 

トン

その音と共に矢田の目は閉じ 意識を手放した。神威は前のめりに倒れた矢田を受け止めると静かにベットに寝かせた。

そして神威は保健室の扉を開くと静かに出て行った。

 

 

保健室を出た神威は入り口のドアに背中を預けた。

 

「くぅ…」

頭を抑えながら座り込み、口を噛み締めながら自身の感情を抑え込む。

「(なんだ…この締め付けられる感覚は…)

神威は数分 その場でうずくまると立ち上がりグラウンドへと戻った。

 

ーーーーー

ーーー

 

神威が保健室から出た時は 既に皆は限界に近づいていた。息切れしたものは鷹岡に容赦なく胸ぐらを掴まれ怒鳴られていた。

「烏間先生…」

その時 一人の生徒が涙を流ししゃがみ込んだ。

 

倉橋だ。

 

 

だが、鷹岡はその言葉を聞き逃さなかった。

 

「おい、烏間は俺たちの家族じゃないだろ?お仕置きが必要だな〜?父ちゃんの言う事を聞かない奴はッ!!」

鷹岡は自分の教育へ逆らう行為をした倉橋に向かい拳を振り下ろした。

 

だが その拳は誰かによって防がれてしまった。

烏間だ。

 

「それ以上生徒に手を出すな…暴れたければ俺が相手をしてやる…!」

その目は怒りに満ちていた。烏間はどんどん握力を強めた。流石の鷹岡も予想外なのか冷や汗を流していた。

だが鷹岡はすぐに持ち直し鳥間の手を振り払った。

 

「言っただろ?これは暴力じゃない。教育なんだよ。暴力でお前とやりあう気はない。やり合うなら教師としてだ…!。お前の生徒の中から一人選べ ソイツと俺が戦い生徒が勝ったらお前をここの適任と認めて出て行ってやろう。だがもし負ければ俺に服従だ」

そう言うと鷹岡はトランクから一本の対先生用ナイフを取り出した。

 

「だが使うのはこれじゃない。コッチさ…!」

そう言うと同時に鷹岡はケースからもう一本のナイフを取り出し対先生用ナイフを刺した。結果は見事に貫通。つまり 本物だ。

 

「やる相手が人間ならこうでなくちゃな♪さ、一人選べ」

「よせ!彼らは人を殺す訓練など一度もないぞ!」

「安心しろ。寸止めでも当たった事にしてやるよ。ま、できればだがな♪」

そう言うと鷹岡は烏間の足元へナイフを投げた。

 

(……俺はどうすればいい…奴と同じように容赦ない教育がここには必要なのか…ここに来てから迷いばかりだ……)

そのナイフを烏間はゆっくりと拾い上げると自分の後ろにいる生徒達へ目を向けた。

烏間は内心迷いを見せていたのだ。

 

 

『選ぶか選ばないのか』

 

ここで断れば鷹岡の教育がまた再開し更に生徒達は潰れる 。最悪の場合 彼らのトラウマとなり一生まとわりつく恐怖となってしまう。だが前者を選択した場合 その生徒一人だけ危険を伴わせてしまう。

 

烏間は自分の中で葛藤しながら考えた。前者か後者か。

 

数分悩んだ末に烏間は覚悟を決め選んだ。前者を。

 

そして烏間は自分の中で1番 暗殺のスキルが高い生徒へとナイフを差し出した。

「出来るか?渚君」

自分を選ばれた渚は動揺する。

周りの皆も同じだ。皆は 最初にナイフを当てた人物である『磯貝』を選択すると思っていた。

だが、当てたと言ってもその時は前原をペアを組んでおり、彼の実力はクラスで1番気の合う前原と一緒にいてこそ真価を発揮する。だが、今回はペアは認められない。そのうえ前原は先程 鷹岡の膝蹴りを鳩尾にモロに食らっており フルに活動できるとは思えない。

 

故に烏間は渚を選んだ。

だが烏間にはもう一つ理由があった。

それは昨日の鷹岡が来る前の訓練の時である。一度 皆の実力を確かめるため生徒は単独 またはツーマンセルを組み烏間と模擬戦を行った。その中で烏間は渚と対峙した時 何かを感じたからである。

 

それは気付いた時にはすでに喉笛に届いていた。防御しなければ食いつかれる。

 

まるで首筋に突然巨大な毒ヘビが牙を剥きながら現れたかのような感覚だったのである。

それを発動させた渚の能力を見極め 烏間は渚を選んだのであった。

 

「俺は地球の未来を掛けた暗殺を依頼した側として君たちとプロ同士だと思っている。プロとして君達に払うべき報酬は普通の中学生活だと思っている。もちろん強要はしない。その時はその報酬を続けるよう俺が鷹岡に掛け合おう」

烏間は渚や他の皆を見ながらそう言った。

 

その目は渚達が今まで見たこともないような程に真剣な目であった。

すると 渚の手がゆっくり動き 烏間の手にあるナイフを受け取った。

 

「やります」

 

 

「よりによってそんなチビを選ぶとは腐ったもんだな〜烏間」

意外な人物を選んだことにより烏間の心情を知らない鷹岡は鼻で笑う。

対して渚は落ち着きながらナイフを手に待ち構えた。

 

その景色を神威は旧校舎の木陰から見ていた。

その目にはナイフを手に取る渚が写し出されていた。

 

 



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渚の暗殺術

神威side

 

義姉を気絶させた俺は保健室を出て木陰から潮田 渚 を見ていた。理由は鷹岡が烏間の選んだ生徒と一騎打ちをする事となり磯貝でなく、渚を選んだからだ。

たしかに奴は未知なるものを隠し持っている。集会の時だってそうだ。本校舎の馬鹿どもを殺気で威圧したからな。

「(さて、アイツはどうでるんだ…?)」

 

ーーーーーー

ーーー

渚side

「やります」

僕は烏間先生からナイフを受け取ると身体を温めるため軽く準備運動をした。対する鷹岡先生も上着を脱ぎ捨てた。やっぱり烏間先生と同じ軍人だから凄くガタイが良い。腕なんかも僕より倍は太いからついつい圧倒されてしまう。

すると烏間先生の手が肩に置かれ烏間先生は小さい声で僕に伝えてきた。

 

「いいか。これは奴にとってはただのゲームだ。だから最初は君にワザと攻撃を当てさせる筈だ。そこを突け」

僕は頷き烏間先生のアドバイスを頭に入れた。

 

「よし来い!」

向こうもやるき満々だ。向こうが軍人なら殺す気で行かなくちゃ。でも殺せば僕は殺人犯。やらなければ重傷を負わされ他のみんなにも苦しい訓練が降りかかる。

 

そう思っていると一つの考えにたどり着いた。

 

殺さなくてもいい。

 

 

僕はゆっくりと歩き出した。いつものように。通学路を歩くようにゆっくりと鷹岡先生に向かって歩いて行った。

 

のんびりのんびり…と。ゆっくり。

 

トン

 

すると僕の頭と構えていた鷹岡先生の腕がぶつかった。そして僕は 瞬時に殺気を出しナイフを振るった。

ここで初めて鷹岡先生は僕の殺気に気が付いた。気がつくのが遅いとは言え流石は軍人だ。僕の振るったナイフはアッサリと避けられる。だけど最初から僕はそう思っていた。だから逃げられないように服を掴み体制を崩す。正面からだとまた防がれるからゆっくりと背後に回って首筋にナイフを向ける。

 

「捕まえた」

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

 

「へぇ。アイツ…殺意をコントロールしてやがるな」

一部始終を見ていた神威は無表情でありながらも渚に感服していた。

 

しばらくその姿を見た神威はそのまま山の奥へと消えていった。

 

ーーーーー

ーーー

 

僕は鷹岡先生に勝つことができた。クラスの皆は大喜びし、何故か前原くんからはビンタを……。

 

「でもサンキュー!さっきのはスッキリしたぜ!」

「ははは…」

その時 先程倒れた鷹岡先生が 目を血走らせ歯をむき出しにしながら憤怒の表紙を浮かべ此方をみていた。

 

「ガキのくせにいい気になりやがって…まぐれがそんなに嬉しいか…?もう一回だ…!もう一回勝負しろッ!!」

 

「確かに次は僕が負けます。ですが僕らの担任は殺せんせーで教官は烏間先生です。父親を押し付ける鷹岡先生よりプロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。僕らを強くしようとしてくれた事には感謝します。ですがすいません。出て行ってください」

激しく怒る鷹岡先生に対して僕は言いたい事を述べた。

だけど気に入らないのか鷹岡先生は目を血走らせ襲いかかってきた。

その時 鷹岡先生の体が宙を舞ったと同時にその場に崩れた。見ると目の前には烏間先生が立っていた。

 

「身内が迷惑をかけてすまなかった。後の事は任せろ。今まで通り君らの教官が出来るよう上に掛け合おう。いざとなれば銃で脅してでも許可は取るさ」

その言葉に皆は喜んだ。僕も凄く嬉しかった。

 

「く…させるかよそんな事…俺が先に掛け合って…「交渉の必要はいりません」

鷹岡先生が歯を食いしばりながら言った直後 旧校舎の方から声が聞こえ 皆が目を向けるとそこにはいつもと変わらぬ雰囲気を漂わせている理事長がいた。

 

「り…理事長…」

「新任教師の腕前に興味がありまして全て拝見させていただきました」

そう言うと理事長は倒れている鷹岡先生に向けて腰を下ろすと懐から一枚の紙を取り出した。

 

「鷹岡先生、貴方の授業はつまらなかった。教育に『恐怖』は必要です。が、暴力でしか恐怖を与えられない教師は三流以下だ。神威君に殴られた時点で貴方はもう『教育』を失っております」

そう言いながらまるで無数のムカデが入り込むかのように『解雇通知』を鷹岡先生の口にねじ込んだ。

 

「ここの教師の任命権はあなた方防衛省にはない。全て私の支配下である事をお忘れなく」

そう言うと理事長は去り、鷹岡先生も解雇通知を飲み込むと叫びながら荷物を持ち出て行った。

 

鷹岡 先生はクビとなり教官は今まで通り烏間先生。その決定に皆は歓喜の声を上げた。

 

だが、僕らには一つ気になる事があった。鷹岡先生が神威君に向けて言った言葉

 

『人体実験』

 

その言葉が全く意味が分からなかった。

皆が見回すも神威君の姿はどこにもなく呼んでも返事は返ってこなかった。

 

 

 

 



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入り混じる過去

神威君に助けられ保健室に連れられベッドに寝かせてもらうと先程の鷹岡が言っていた事を神威君に聞いた。

すると神威君に背中を押され、それと同時に意識がなくなり目の前が暗闇になった。

 

あれから数分間 私はずっと暗闇の中を彷徨っていた。すると、徐々に目の前が明るくなり暗闇が薄れていった。

 

「(え……?なに…これ…?)」

突然 自分の目の前にある映像が映し出されていた。それは一つの部屋だった。何も無い一つの空間。その空間の中に一人の子供がいた。

 

身長からしてまだ幼い。何故こんな小さい子がこんな所に…?

そう思っていると突然 部屋の入り口が開かれ 一人の男の人が入ってきた。

 

その男は入ってくるやいなやその男の子をいきなり殴った。

 

私は目を瞑ろうとしたが瞑れなかった。

その男の人は何発も男の子を殴り 時には鳩尾に膝をいれ、また時には壁に顔を叩きつけていた。

その男が出て行くとまた男の子一人になった。

 

その男の子は涙を流していた。すると、先程まで聞こえなかった声が突然聞こえてくるようになった。

 

「痛い……痛いよう……」

その子の顔からは血が一滴ずつたれていた。私は駆け寄ろうとしたが全く前に進む事が出来なかった。

それでもその男の子の声は聞こえてくる。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……お姉ちゃん……」

その子は何度も「お姉ちゃん ごめんなさい」と言う言葉を繰り返していた。見ているたびに私の心が深く縛り付けられる感覚に襲われた。

 

その瞬間 目の前の景色が真っ暗になった。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「___花ちゃん……桃花ちゃん!」

「ッ!」

名前を呼ばれ私は目を覚ました。目の前には親友である陽菜乃ちゃんと横には神崎さんがいた。

 

「よかった〜!!」

陽菜乃ちゃんに抱きつかれながらも何があったのか聞いた。

話によると鷹岡は渚君と勝負して負けた。そして今まで通り烏間先生が担任が受け持つ事となったらしい。

陽菜乃ちゃんは「よかったよ〜!」と大喜びしていた。私も嬉しい。

 

「矢田さん、さっきはごめんなさい…叩かれた場所 大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ神崎さん。気にしなくていいから」

そう言うと神崎さんは笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。

「でも…どうしてさっきは私を庇ってくれたの…?」

「あぁ……」

その問いに私は切羽詰まりながらも答えた。

「私には弟がいたんだ」

「弟…?」

「そう。名前は『桃矢』 私と年が変わらないけど私が先に産まれて弟は後から産まれたらしいの。桃矢は小学校の頃 イジメられててさ、泣いて帰って来た時がよくあったの。それで次の日私は桃矢がいじめっ子に殴られそうになった時に守るために前に出て代わりに殴られちゃったんだよ。まぁそのシーンが通りかかった先生に見られて次の日からその子 大人しくなったけどね。

神崎さんが叩かれそうになった時 昔の事を思い出して勝手に体が動いちゃったんだ」

「そうだったんだ…で…弟さんは…?」

その言葉に私と陽菜乃ちゃんは俯いてしまった。酷だけど私は話した。

 

「それが…私がE組行きになった2年の終わりの頃の朝に突然行方不明になっちゃったんだ…原因が何なのか分からない」

私は一筋の涙を流した。あの時の悲しみは凄まじかった。三日三晩泣き 眠れない夜が幾日も続いた。

 

「ごめんね。暗い話しちゃって…そうだ!神威君は!?」

私は話をそらせ、自分を気絶させた張本人である神威君の姿を探した。

「それが探してもいないの。帰っちゃったのかな…」

「そっか…まぁいっか明日また会えるしね!」

そう言い私はベッドから跳ね起きた。

 

「あ!そうだ桃花ちゃん!烏間先生が皆にスイーツ奢ってくれるらしいよ!」

「ほんと!?行こ行こ!」

「待ってよ〜!!」

私達は笑い合いながら皆の元へと戻っていった。桃矢、早く帰って来て。お姉ちゃんはいつでも待ってるから。

 

 

 



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プールの時間

神威は渚と鷹岡の一騎打ちを見た後ゆっくりと山を降り施設へと戻った。

「おや?今日は早いのう」

「あぁ。E組は日課が違うからな」

因みに赫夜はまだ本校で授業中だ。神威は部屋へ入ると上着を脱ぎ捨て上裸となり、サラシを取った。

 

「……」

目の前にある鏡の前に写ったのは大量の切り傷や焼け肌そしてもう一つは胸の真ん中にある刻印だった。その刻印は縦に5列横に4列の直線が交わったものだった。神威はそれをゆっくりと手でなぞる。この刻印は自分の元の姿『桃矢』から今の自分『神威』へと変化した原因だった。

 

「バケモノ……か…。そうかもしれんな…」

神威は鷹岡に言われた言葉を思い出し同意しようとしていた。

その時

ガチャ

 

「ただいま〜っと。って…!?」

突然部屋へと入ってきた赫夜に神威は少し驚くとすぐさま胸にサラシを巻く。赫夜も目をパチクリさせていた。

 

「ちょっと今の何!?」

「見るな…!」

神威は見ようと迫る赫夜を目で威嚇した。赫夜は一瞬止まるもすぐに動き出し神威に迫るとサラシを取った。

その瞬間 赫夜は絶句した。

「こ…この傷…」

「…」

隠された背中には無数の切り傷や火傷 がついていた。

 

「見るな…見られたくないんだ…この傷は…」

「ごめん…」

赫夜はすぐさまサラシを巻いた。巻く中 赫夜は初めて神威の悲しみを浮かべた表情を見た。

「もしかして…アイツに…」

「あの時のことは話したくねぇ。少し外に出てくる」

そう言い神威は部屋から出て行った。後に残った赫夜は悲しみを浮かべた瞳で神威を見つめていた。

そして数時間が経った夜中に神威は帰ってきた。

 

 

次の日

季節は夏 木製の旧校舎は猛暑に見舞われており蝉が元気に鳴く中 生徒の皆は屍と化していた。

 

「あっち〜……」

「夏真っ盛り……全く授業に集中できねえ〜…」

杉野と前原がそう垂れ流しながら机に顔を沈めていた。

 

「でももうすぐプール開きだよね〜!待ち遠しいな〜」

「確かにそうだけどプールは本校舎にしか無いんだぜ…炎天下の山道を歩きながら本校舎に行きそして帰る。人呼んで『E組 死のプール行軍』特に疲れた帰り道は干からびてカラスの餌になりかねねぇよ…」

倉橋は顔を浮かばせキラキラとした表情を浮かべたが木村の言葉にまたもや机に顔を突っ伏してしまう。

一方で神威は汗が流れている顔をどこからか取り出したうちわであおぎ暑さを凌いでいた。

 

「殺せんせ〜本校舎まで送ってってくれよ〜…」

菅谷のねだりに殺せんせーは猫型ロボットのように「しょうがないな〜」と言うと皆に着替えて裏山の沢に来るよう言い渡した。

 

ーーーーーーー

 

僕らは水着の上にジャージを着る形で着替えると本校舎とは反対側の山道を進んでいた。

 

『プールは本校舎にあるんですよね?場所が違うようですが』

水着姿の律の質問に僕は頷く。あまりの暑さに皆の顔から笑顔が消えていた。いや、暑さもあるがもう一つは前の件だ。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

時は鷹岡先生が去った直後に遡る。烏間先生が皆にスイーツをご馳走してくれた時だった。

 

「烏間先生…突然ですが 鷹岡が神威に言っていた『人体実験』とはどういうことなんでしょうか?」

スイーツを食べ終えた磯貝くんが唐突に質問した。烏間先生は一瞬動揺するもすぐに正常となりお茶を飲み干すと真剣な目を浮かべた。

僕らも気になっていた。その言葉…そしてその言葉で神威君は初めて僕らの前で怒った。普段は絶対に感情を見せない神威君。その神威君があれ程怒るなんて…彼の過去に一体何があったのか…。

僕らは気になって仕方がなかった。

すると烏間先生は口を開いた。

 

「悪いがそれは話せない」

その言葉に磯貝君はなぜか聞いた。

「その口止めこそが彼への依頼条件だからだ。万が一話してしまえば彼は俺を殺し旧校舎…いや、椚ヶ丘中学校から去ってしまうだろう……」

その言葉に皆は息を飲んだ。話した者を殺す。それ程までに神威君は自分の過去を知られたくないのか…。

皆はこれ以上 の詮索はやめようと思いそれ以上は聞かなかった。

その後 烏間先生は報告書の作成の為に席を立った。立つ際に『久々に楽しい時を過ごせた。感謝する』と、満面とはいかないが僕らの前で初めて笑ってくれた。

 

ーーーーー

ーーー

 

だけども僕らはやはり気になって仕方がなかった。後ろを向くといつもと変わらぬ無表情 昨日の怒った時の顔が嘘のように消え去っていた。

 

「さぁて…着きましたよ」

殺せんせーの言葉に皆は前を向いた。見るとそこには昨日までただの沢だった場所が本校舎よりも広いプールへと変貌していたからだ…!

 

「水を溜めるのに1日、旧校舎から数分!あとは1秒あれば飛び込めます!」

それと同時に皆は体操着を脱ぎ捨て飛び込んでいった。

 

これだからウチの先生は殺しづらい!

 

ーーーーーーー

 

皆が気持ちよさそうに遊ぶ中 神威は近くにある岩に座りながら涼んでいた。

 

すると

「神威君!一緒にバレーしよ〜!」

矢田が手を振りながら神威を誘った。その誘いを神威は手で振る形で断るとそのまま立ち上がろうとした。その時、うっかり脚を滑らせてしまい神威の体は岩肌に打たれながらプールへと沈んでいった。

 

水の中に入った瞬間 神威は無言かつ無表情で子供のように手足をばたつかせた。水面からやっと顔を出すもまたもや沈んでしまう。すると何かが神威の体を抱き上げ水面に顔を出したお陰で神威はようやく息を吸うことが出来た。

 

「大丈夫?」

「プハッ…ッ!?」

その声と共に神威の背中にやわらかいものが押しつけられた。神威を抱き上げたのは矢田であった。

実は神威の落ちた場所の近くには矢田がいたので距離的に矢田が真っ先に救出したのである。

だが、そんなのは神威にとってはどうでもいいことだ。神威は急いで離れようと手足をまたバタつかせた。

 

「ちょ…!?また溺れるよ!?」

自分の胸で神威を追い詰めているとは知らない矢田はさっきの事もあるためなのか神威を離そうとはしなかった。

 

「いいから離せ…」

「だめ!」

そう言うと矢田は腕の力を更に強くした。それと同時に神威の背中には矢田の胸が一層強く押し付けられた。

すると、

 

ピピー!!!

「こら木村君!プールサイドを走ったりしちゃいけません!怪我でもしたらどうするんですか!」

「あ…すいません」

「原さんに中村さんも潜水遊びは程々に!長いと溺れているか心配です!」

「え〜!?」

 

「岡島君のキャメラも没収!」

「そんな殺生な!?」

「狭間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!」

「?」

「矢田さんに神威君もイチャイチャしないで!ここはナイトプールじゃないんですよ!」

「別にイチャついてないよ!?」

「殺すぞタコ…」

 

ピーピピピピピピッピー!

((((う…うるせぇ…))))

「いるよね…自分の作った空間のなかで王様気取りのやつ……」

「あぁ…ありがたみがまったく感じれねぇっての…」

そう言い中村と三村はリズムを取りながらうるさく笛を吹く殺せんせーを見た。

「ヌルフフフ!環境や間取りを地道に設計したプール…皆様には整然と遊んでもらわなくてわ…」

 

殺せんせーの特徴『プールマナーに厳しい』

「固いこと言わないでよ殺せんせー。水かけちゃえ!」

「キャン!」

倉橋から水をかけられた殺せんせーは女のような悲鳴をあげた。その声に皆はゾッと引いた。

 

「「「「え……なに…いまの声……?」」」」

 

皆がその悲鳴に引く中、カルマは妖しい笑みを浮かべながらゆっくりと殺せんせーの座るデッキに近づくとユラユラ揺らした。

 

「ぎゃぁ!?カルマ君!揺らさないで!落ちる!落ちる!」

その様子を皆は凝視していた。

 

「ま……まさか殺せんせー……泳げないんじゃ…」

「い…いや〜…泳げないとかじゃないし〜…鼻から泳ぐつもりないし〜……」

中村が恐る恐る聞くと殺せんせーは笛を吹きながら誤魔化した。でもまぁ先程のあの声や慌て様からしてもう手遅れであるが。

 

殺せんせーの弱点『泳げない』

 

「手にビート板持ってるからてっきり泳ぐ気満々かと…」

「これはビート板じゃありませんよ三村君!麩菓子です!」

「おやつかよ!」

 

「あははは…殺せんせーも泳ぎ苦手なんだ…」

「……」

 

ーーーーー

ーーー

 

数日後、皆がプールへ行こうと山道を歩いている時 一足先に見に行った岡島が大声で叫んでいた。

 

「おい皆!プールが大変な事になってるぞ!?」

その声に皆は駆け足でその場へ向かった。見ると前まで透き通る程の輝きを見せていた水の中に缶やプラスチック類のゴミが捨てられており缶の中に微かに残っていた飲み物が漏れ出しプールの水を濁そうと少しずつ侵食していた。

 

「ひどい…」

「一体誰がこんなことを…」

「ビッチ先生がセクシーな水着をお披露目できなくて目を点にしちまってる!」

「それはどうでもいい…」

皆が犯人を探していると渚は後ろでニヤニヤしている寺坂 吉田 村松を見た。

 

「あ〜あ。こりゃ大変だ」

「ま、いいんじゃね?別にプールの授業ってなくてもいいし♪」

他人事のように話す3人に皆はすぐ犯人だという事を悟った。渚は視線を向け続けていると寺坂が気づき渚を睨む。

「んだ渚?まさか俺たちが犯人だと疑ってんのか?」

「い…いやそういう訳じゃ…」

「だったら何で俺たちを見てんだよ?くだらねぇことしてんじゃねぇぞ」

「…」

寺坂の鋭い目線や体格に渚は何も言えなくなってしまう。すると

 

「寺坂君の言う通りです。犯人探しなんてくだらない事はやめましょう」

そう言い突然現れた殺せんせーの手にはバケツ等が握られており殺せんせーは表情を変える事なく触手をプールへ伸ばした。

 

 

数秒後

 

「はい元通り!いつも通りに遊んでください!」

『イヤッホー!!!』

殺せんせーの自慢のマッハによってプールに散らかっているゴミかつ浸食されている汚染水が全て取り除かれ元の鮮明な景色へと戻った。

皆は一斉に水着になると飛び込み遊び始めた。

 

そんな中 その光景を目にした寺坂 吉田 村松は目を点にしていた。

「どんなに汚れても先生が手入れして綺麗にしますので安心して君達も泳いでください♪(笑)」

と、顔を緑のシマシマ模様に変化させた殺せんせーが3人へドヤ顔で言う。すると3人は立腹し悔しがりながらこの場を去った。

 

「ぬるふふふ。おや?君は泳がなくていいのですか?」

殺せんせーは隣に体操服を着たままの神威に目を向ける。

「…別にいい。そんな気分じゃない…教室に戻らせてもらう」

それだけ言うと神威はその場を去った。

 

「にゅう…神威君も寺坂君と同じく…少々乗りが悪いですね〜…」

ーーーーーーーー

 

プールから離れた神威は1人で気を休めようと思い森の奥へと進んでいた。葉の間から日光が指す道を歩いていた。

 

「…」

その時 近くの木々が揺れそこから黒い影が飛び出してきた。

 

「ん…?」

それは体長が5メートルをも超える超巨大なクマだった。その熊は神威を見つけると牙を剥き出しにして襲い掛かってきた。

 

「グゥォォォオ」

「…」

突進してきた熊に神威はゆっくりと蹴りを横から放った。まるで包丁を入れるかの様に

そして、その蹴りは熊の顔へと直撃し頭蓋骨を砕き絶命させた。

 

「…」

神威は倒れた熊の腹へ手を伸ばすとそこへ手を突き刺した。内臓の感触が手に伝わり不快な感じを伝わせてきた。普通の人ならば耐えきれない感触を物ともせずに、神威は熊の腹の中を弄った。

 

「…」

そして熊の血がこびり付いた肉を剥ぎ取ると口を開け中へと運んだ。

 

決して美味ではない味とそれに付着している生臭い匂いそして噛みちぎらない程弾力がある歯応え。 それらが咀嚼する度に口の中を駆け巡った。

 

ゴクン

噛み砕いた肉を飲み込むと神威はさらにまた熊の肉へとかぶりついた。

 

数分後

 

「ペッ」

小骨を吹き捨てながら歩く神威の後ろには皮や肉がほぼ裂かれた内臓と骨だけが残っていた。

 

「気分が晴れねぇ…早く見つけて殺さねぇと…」

口の周りに付着した血を舐め取りながら神威は拳を握りしめた。

 

 

“お前を分かってやれる奴なんて1人もいないんだよ。紛い物め”

 

「ッ…!ヴゥァァァアアア!!!!!!!!」

 

その瞬間 神威は腹の底から叫びながら近くの巨木へと脚を振り回した。その脚は木に減り込むと同時に鈍器で殴ったかのように歪みそこからゆっくりと倒れた。

 

「はぁ…はぁ…」

倒れ伏す巨木を前に神威は汗を流しながら息を切らしていた。

 

その時

 

「おやおや、教室に戻ったかと思ってましたが…随分と悩んでいらっしゃいますねぇ…」

「…」

その声に神威は振り返る

 

「…お前か…」

そこにはいつも変わらぬ表情を浮かべた殺せんせーが立っていた。

 

 

 

 



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消えているモノ

「…お前か…」

殺せんせーは神威の血まみれの顔 そして制服を見た。

 

「どうしたんですかその血は!?まさか怪我!?急いで保健室に!」

「…」

無理矢理連れて行こうと絡んでくる触手を神威は払った。

 

「…そこで熊を殺しただけだ」

「!?」

神威の言葉に殺せんせーは辺りを見回すと近くに熊の死骸が広がっており悲鳴をあげた。

 

「ヒィィイ!これ神威くんがやったんですか!?」

「騒ぐな。というか何故 来た?」

「にゅ?」

神威が殺せんせーへ現れた理由を尋ねた。すると殺せんせーは先程の雰囲気から一変した。まるで何かを疑うように。

 

「突然ですが…神威くんは…何かを隠していませんか…?」

「なぜ そう思う?」

唐突な質問に神威は聞き返す。

 

「以前よりも神威くんは皆と距離を置いています。その上 先程の叫び声、何かに対して恨みを抱いているようでした」

 

その言葉に木の葉が数枚 枝から離れ二人の間に舞い落ちた。神威は一瞬驚くもすぐに平常を取り戻す。

「へぇ。やっぱり殺し屋となると感情の読み取り方が違うな」

「……?」

 

殺せんせーは首を傾げる。

「何を言っているんですか神威君?私は元は人工的に作り出された生物ですよ。そんな元が人間みたいな言い方よしてください」

「……」

神威は少しの間殺せんせーの顔を見つめると「そうか」と言いこの場から去ろうとした。

 

「ちょっと待ってください!戻って皆と遊びましょうよ!?苦手なら先生がヌルヌルと教えますから!」

そう言い殺せんせーは神威を連れて行こうと触手を絡ませてきた。が、神威はそれを振り払った。

 

「俺に構うな。お前は“あの人”が残していったアイツらと接してればいいんだよ」

「……あの人……!?」

殺せんせーが神威へ今の事を問おうとした瞬間 神威は空高く跳躍すると木々の生い茂る林へと消えていった。

 

神威がいなくなると殺せんせーの雰囲気が変化した。それは、自分の忌まわしき過去の事を思い出しているようだった。

「…やはり君も…『あぐり』のことを…」

 

そう思いながらも殺せんせーは皆の元へと戻っていった。

ーーーーーーーー

 

次の日

 

 

神威は休み時間になると校舎を出て一人また、山の中へと来ていた。

 

「……」

いつもは聞こえるはずの鳥達の声が聞こえなかった。

 

「(やけに静かだな…)」

そう不思議に思いながらもしばらく気晴らしに散歩をすると校舎へと戻った。

 

「いつつ…」

「ん?」

すると近くの木陰に誰かが木に背中を預けていた。よく見るといつも寺坂と絡んでいる村松という生徒だった。

 

「こんなところで何してるんだ?」

「いつつ…なんだ神威か…」

神威は未だに寺坂グループと話した事があまり無かった為 こうして彼らと話すのは初めてだった。

村松は尻を抑えながらよろよろと立ち上がると事の始まりを話した。

 

「この前の模試の結果が良くてな。寺坂に見せたらいきなりキレて突き飛ばされたんだよ」

「へぇ。分からんな。なぜそんな事で怒るんだ?」

「俺も分からねぇよ。今まで一緒にいたけどよ…正直、もうついてけねぇよ」

そう言うと村松は神威の横を通り過ぎトボトボと校舎へと戻っていった。

 

「(まぁ俺にとってはどうでもいい事だがな)」

そう思いながら神威も教室へと戻った。

 

ーーーーーーー

 

教室へと戻ってみると 緊迫した雰囲気に包まれていた。

辺りには白い煙が広がっており 皆は咳をしていたり 中には目から涙を出しているものもいた。

「何だこれは」

「俺が聞きてぇよ。戻ってきてみればこのざまだ」

隣にいる村松もその光景に唖然としていた。すると中にいたドレッドヘアーの吉田という寺坂の取り巻きの一人が事の発端を話した。

なんでも 殺せんせーが買ったバイクで皆が盛り上がっている中 突然 寺坂が教室のドアを開け その雰囲気が気に入らなかったらしく、殺せんせーのバイクを乱暴に蹴り倒したのだ。そして周りの皆がブーイングし寺坂を攻めると怒った寺坂はスギ花粉のようなスプレー缶を床へと叩きつけて出ていったのだ。

 

「それでか…」

「…たく…アイツ何が嫌なんだよ…」

吉田も村松と同じく 寺坂に呆れていた。

皆々 寺坂がクラスに一向に馴染まない事や素行の事で色々と悩んでいた。

彼はなぜあそこまで皆から距離を置くのだろう。

 

ーーーーーー

 

施設へと戻った神威は部屋へと戻った。

「あら?お帰り。今日はいつもより遅かったのね」

部屋に入ると寝間着に着替えた赫夜が机に座っていた。恐らく勉強中だったのだろう。

 

「…あぁ」

何気なくいつもの素ぶりで返すと、その場に座り込んだ。

 

「赫夜…」

「ん?」

神威は静かに赫夜を呼ぶ。それに対して筆記の手を止めるとこちらを振り向いた。

 

「俺は…何に見える……?」

「…?」

その言葉に赫夜は首を傾げる。

赫夜は今発せられた言葉の意味が分からず質問をした。

「どういう意味?」

「何か変なんだ…前の鷹岡の件以来 何も感じなくなった…。何もかもがどうでもよくなったように」

 

机から降りると赫夜は神威の顔を両手で挟むと顔を近づける。前の神威だったら即 赤面しているが、今の神威は違う。全くの反応が無かった。

 

「…」

赫夜はしばらく神威の顔を見つめた。対する神威も赫夜の顔を見つめる。しばらくすると、赫夜はため息をつきながら手を離した。

「私にはよく分からないわ。もしかして慣れちゃったんじゃないの? はぁ…つまんない」

そう言い再び机へと向かった。神威は自分の顔を両手で触った。

「……」

 

ーーーーー

 

翌日の昼休み

 

「ひっく…ひっくひっく…」

殺せんせーが目から涙を流し泣いていた。

 

「どうしたのよ。さっきから涙流して」

女子達と同じ机で食事をしていたイリーナは不審に思い訪ねた。

 

「いえ…鼻なので涙じゃなくて鼻水です…目はこっち」

「まぎらわしッ!」

「どうも最近ひどいんですよね〜鼻水が」

未だベトベトと流れ出る鼻水を拭きながら殺せんせーは何故かと思っていた。すると、教室のドアが開かれ、寺坂が遅刻ながらも投稿してきた。

 

「お〜!!寺坂くん!今日は来ないかと心配でした!ね!皆さんもそうでしょ!?」

「う…うん…」

殺せんせーはすぐさま瞬間移動で寺坂の前に来ると肩を抱きながら鼻水を垂らし回した。結果として寺坂にほとんどこびりついており皆は引いていた。

寺坂は何も喋らずに殺せんせーの粘液を拭き取ると口を開いた。

 

「おいタコ、そろそろ本気でぶっ殺してやるよ。放課後プールに来い。弱点なんだってな?水が」

「にゅ…」

寺坂のまさかな発言に殺せんせーは驚く。そして寺坂は周りの皆へも横暴ともいうべき言い方で誘う。

 

「テメェらも手伝えや。俺が考えた策でコイツをぶっ殺してやるからよ〜!」

今まで暗殺に一切 参加しなかった寺坂のふざけた誘い方に前原は苛立ちながら立ち上がり反論した。

「寺坂、お前 今まで皆の暗殺に協力してこなかったよな?いきなりそんな奴に誘われても皆 はいやりますって乗る訳ねぇだろ」

前原のごもっともな発言に寺坂は鼻で笑う。

「来たくなきゃ来んでもいいぜ〜?そうなったら100億は全部俺のモンだな!」

捨て台詞を吐きながら寺坂は教室を出て行った。

 

「…あんな言い方だけど…どうする皆?」

片岡が皆に尋ねるも、今まで協力してこなかった者になど、する筈が無いだろう。

「私行かな〜い」

「同じく」

倉橋と岡野は当たり前のように反対した。

 

すると…

 

「…?足に違和感が…」

菅谷達と弁当を食べていた木村は足元から変な感触を感じた。それは皆も同じ…正体は…

 

 

「みんな行きましょうよ〜」

殺せんせーの鼻から滝のように漏れ出している大量の粘液だ。

 

「うわ!?粘液に固められて逃げられねぇ!?」

「せっかく寺坂君が誘ってくれたんですから〜皆と暗殺してその後 気持ちよくなかなオブブ…」

『まずアンタが気持ち悪いわッ!!』

 

ーーーーーー

 

「寺坂君!」

「あ?」

プールへと足を進める寺坂を一人の生徒が呼び止めた。渚だ。

 

「本気でやるつもりなの?」

「当たり前じゃねぇか」

「だったら具体的な作戦を皆に…」

寺坂は渚の胸ぐらを掴んだ。

 

「うるせぇよ!弱くて群れる奴ばっかが!本気で殺すビジョンも無い癖によッ!」

そう言い放ち渚を突き飛ばす。

 

「俺はお前らと違う!楽して殺すビジョンを持ってるんだよ!」

寺坂はポケットに手を突っ込むとそのままプールの方へと歩いて行ってしまった。

その様子を渚は止めず、ただ見ている事しかできずにいた。

 

 

 

 



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イトナ再び

放課後

 

殺せんせーの涙ながらの誘いに皆は仕方なく寺坂の暗殺に付き合う事となった。

 

「そうだ!そんな感じで散らばっとけ!」

水着に着替えた皆は寺坂の指示通りプールにそれぞれ散らばった。だが、やはり不満に思う者もいるだろう。

 

「愚問だね。何で僕達が君の暗殺に付き合わなければならないのか」

「うるせぇよ竹林。さっさと入れ!」

「!?」

抵抗しプールへと入らない竹林を寺坂は後ろから蹴りを入れプールに突き飛ばした。

 

「すっかり暴君だぜ寺坂の奴…」

「あぁ…あれじゃ一年の時と同じだな…」

木村と三村は寺坂の横暴な態度を一年の頃と重ね合わせた。

 

すると、辺りを見回しながらターゲットである殺せんせーが現れた。

 

「なるほど。先生を水に突き落として皆さんに刺させるという訳ですか。いい案ですが、君はどうやって先生を水に突き落とす気ですか?その銃だけでは先生を動かす事すらできませんよ」

そう言い殺せんせーは寺坂を見た。寺坂の手には一丁の拳銃。皆がいつも使っているモノだ。だが、これだけではマッハ20の生物を水には突き落とさないだろう。

だが、寺坂は迷う様子を見せず、ゆっくりと銃口を殺せんせーの顔へ向けた。

 

「覚悟はいいな?モンスター」

「えぇ準備万端ですよ。鼻水も止まりましたし」

「ずっとテメェが嫌いだったよ…消えて欲しくてしょうがなかった…!」

「えぇ知ってます。この暗殺の後二人きりでゆっくり話し合いましょう♡」

寺坂から吐き出された言葉に殺せんせーは完全に馬鹿にしているようで緑のシマシマ模様で返答する。

それに寺坂は青筋を立てながら引き金を引いた。

 

「(来いッ!イトナ!)」

 

 

カチッ

 

 

その瞬間

 

プールの堤防が破壊された。

破壊された事により、そこから一気にプールの水が生徒達を攫うように流れ始めた。

 

「!?」

「ッ!皆さん!」

殺せんせーはすぐさま飛び上がり触手で生徒達を巻き上げた。

 

「この先には険しい岩場が!落下すれば死んでしまう!」

触手で次々と生徒達を巻きつけると近くの岩場に引き上げた。だが、水に入れるにつれ、少しずつ触手が水を吸収してしまい、使い物にならなくなってきていた。

 

ーーーーーー

 

「…!なんだ今の爆発音…!」

暗殺へと参加しなず、遠くから見ていたカルマは突然の爆発音に驚きすぐさま現場へと向かうため山を下っていた。

 

「おい、今の音はなんだ?」

「分からない…けどなんかヤバイ感じがするな…!」

下山の途中に合流した神威もカルマの横を走っていた。

 

そして、葉っぱを掻き分けるとプールへと到着した。

 

「…!な…何だよこれ……」

「…!」

カルマは空になったプールを見て目を丸くしていた。神威はその光景を見るや否やすぐさま走っていった。

横にはその光景を見て同じように目を丸くし立ち尽くしている寺坂の姿があった。

 

「お…俺は何も悪くねぇ…話が違うじゃねぇか…イトナを呼び出して…闘わせるって…」

その言葉からカルマは寺坂の作戦自体がシロの仕業だと見抜いた。

 

「そうか…自分で立てたんじゃなくて、最初から操られてたって訳ね…」

カルマがいると分かった瞬間 寺坂はすぐさまカルマの胸ぐらを掴み自分の無実を訴えた。

 

「言っとくが俺の所為じゃねぇぞ!?こんな計画やらす方が悪いんだ!皆流されていっちまったけ…ガハァ!」

寺坂の弁明にカルマは呆れると拳を握りしめ 殴り飛ばした。

 

「流されたのは皆じゃなくて自分じゃん。人の所為にする暇があったら何するべきか考えろよ?ターゲットがマッハ20でよかったね。じゃなきゃお前は大量殺人の実行犯になってたよ」

そう言うとカルマは寺坂を置き去りにし、神威が走っていった方へと向かった。

一方で寺坂は、殴られた頬を触りながら自分が何をしたのかをようやく理解し歯を噛み締めた。

 

ーーーーーー

 

苦しい

 

突然水が流れ 飲み込まれてから何も見えなくなった。辺り一面真っ暗。けれど、息苦しさだけが残り続けていた。

 

私はここで死ぬのか?このまま…

 

嫌だ…そんなのは絶対嫌だ…!まだ生きたい…!神威君ともっと一緒にいたい!桃矢にだって会いたい!だから目を覚ませ!目を覚ますんだ!私!

 

「!ガバァ…!」

目を覚ませば私は水中にいた。何とか水面へと顔を出すためその場で手足を動かした。

 

その時だった。

 

ドボンッ!

 

何かが水中に飛び込み私の身体を抱き抱えそのまま 一気に上へと連れていった。

 

バシャァ

 

「ぷはぁ!」

水面から出た途端に私は酸素を吸い呼吸を整えた。次回は少しずつ鮮明になり瞬きしているうちに私を助けてくれた人は近くの岩場に着地し横にさせてくれた。

 

「……と…桃矢…?」

視界が安定しないのか私の目の前には髪の長い男の子の顔があった。それはまるで自分の…弟のようなシルエットだった。

 

「…息はあるか…」

「!」

その声に私は正気を取り戻した。気がつけば辺りには誰もいなかった。

 

ドンッ!

 

「!?」

何かがぶつかり合う音が聞こえ、私は立ち上がりそこへ向かった。

ーーーーーーーー

 

「にゅぅ…」

崖の下では、今 まさに、殺せんせーが殺されそうになっていた。

 

相手は前回 神威に敗北したイトナ、そしてシロだった。イトナは前回と比べ、触手の数が少なくなっているものの、瞬間速度が倍となっていた。そのため、いつもよりも力が出せない殺せんせーは防戦一方を強いられるしか無かったのだ。

 

「ハハハ。少しずつボロがで始めてるね。防げるにしても残りあと数分ってところかな?」

「にゅう…」

シロの分析に殺せんせーは見抜かれたように焦る。本来なら、水を吸っただけではここまでは弱体化はしない。多少は劣るもののイトナよりは上な筈だ。けれども、殺せんせーが力を出せないのは水だけではない、水に含まれている薬の成分だ。この成分は触手の動きを鈍らせる特殊な効果を持っており、殺せんせーは生徒を救出するために何度も触手を水へと入れたので数本はもう使い物にならないのだ。

 

「……ん?」

その時だった。上空から何かが殺せんせーとイトナの間に飛来した。

 

バシャァァンッ!!

 

巨大な水飛沫が吹き上がり、イトナと殺せんせーの二人は水を大量に浴びてしまった。

 

「やれやれ…厄介なのが現れたな」

シロの言葉にイトナは目を血走らせる。前回 自分を敗退に追い込んだ人物が現れたのだ。

 

「か…神威くん…」

水飛沫が晴れ、殺せんせーの前には首に筋を浮き上がらせている神威の姿があった。

 

「やぁ神威くん 久しぶりだね。それにしてもどうしたんだい?そんな顔して」

「…」

殺せんせーは後ろにいるため確認はできないが、今の神威は少し怒りを見せているだろう。それもそうだ。自分の“家族”を危険な目に遭わせたのだから。

だが、その怒りの表情にイトナは屈することは無かった。シロは首を傾げると不審な質問をする。

 

「なぜ殺せんせーを助けるんだい?ここで彼が死ねば地球が救われるんだよ?」

ごもっともだ。ここで殺せんせーが死ねば地球は救われる。だが、神威にとってそんな事はどうでもよかった。

 

「コイツにはやってもらう事がまだある。それにその気になればいつでもぶっ殺せるんだよ」

「へぇ。随分と自信に溢れてるじゃないか。イトナ、相手をしてあげなさい」

「…」

シロに指示されたイトナは触手を振り回した。

「兄さんをやる前に……お前を殺す…!」

「やってみろ。今度は確実に息の根を止めてやるよ」

その時だった。またもや乱入者が現れた。

 

「イトナッ!シロッ!」

「?」

寺坂である。

 

「よくも俺を騙しやがったな!」

「ん?それはすまなかったよ。なぁに、友達をちょっと巻き込んだだけじゃないか。それに、浮いてた君にもチャンスだっただろ?」

その言葉に寺坂は更に怒る。

 

「うるせぇ!テメェは絶対許さねぇ!イトナ!俺とタイマン張れや!」

そう言われたイトナは自信に向けられる闘争心に反応し 寺坂の方へと触手を構える。

 

「おい寺坂、いきなりしゃしゃり出てきて何してんだ?」

神威は突然乱入した寺坂を威嚇する。だが、寺坂は臆さずに返した。

 

「今回の事は騙されていたとはいえ俺が実行犯だ。だから俺がケジメを付けなきゃなんねぇんだよ!」

「……」

寺坂は既に前とは違う。責任を感じ自分で何とかしなくてはと考えた結果なのだろう。神威は納得すると手を引いた。

「やめなさい寺坂くん!君では敵わない!」

「黙ってろフクレダコッ!」

 

 

 

 

 

 

そういい寺坂は羽織っていた制服を前に持ち、構えた。対するイトナも触手を振り回す。

 

_____いくぞ?」

 

「!?」

イトナの頭が振られた瞬間 マッハの触手が寺坂を襲った。脇腹に見事に入ったが、寺坂は意識を失わず、食らいつくように耐えていた。

 

「よく耐えたね。イトナ もう一発 あげなさい」

すると、

「へっくし!」

「え?」

イトナの様子が急変した。何度もくしゃみを出し始め、触手からは粘液が放出されてきていた。

それだけではない。

「それっ!」

「よいしょ!」

「てい!」

崖からはE組の面々が次々に飛び降りはじめ、イトナへ向かって水を浴びせ始めた。するとイトナの触手は水を吸収し始め、肥大化していった。

 

「あれれ?随分と水 吸っちゃったね。アンタらのハンデが少なくなった」

「!?」

E組の皆がいる中、岩場に座りながらこちらを見ているカルマがいた。恐らく、彼がこの策を思いついたのだろう。シロもバツが悪いのか唸る。

 

「んで?どうする?俺らも賞金持ってかれるのは嫌だし、みんなアンタの作戦で死にかけたし…寺坂もボコられた…これ以上やるなら、俺らも本気で水遊びさせてもらうよ?」

そう言うと皆は水を構えた。これ以上 水を吸えばイトナの触手は使い物にならないだろう。

 

「……引き上げるとしよう。(この子達をここで皆殺しにすれば…“反物質臓”と“負の細胞”がどうなるか分からない…)」

シロはイトナを呼ぶと、イトナは跳躍し、二人は森の中へと消えていった。

 

 

「ふぅ…何とか追っ払ったぜ…」

「もう来るなっての」

 

騒動が収まった事により、皆は口々に愚痴を漏らした。流石に皆もストレスになっただろう。

一方で寺坂は原に詰め寄られていた。

「そう言えば寺坂くん 散々言ってくれたよね?私の事 ヘビーだとか?」

「い…!?いやぁ…あれは敵がいて…」

「問答無用!」

 

「ほんと無神経だよね〜そんなんだから人の手の平でころがされるんだよ〜♪」

「うるせぇカルマ!いつも高いところから見下ろしやがって!」

 

バシャン!

好き勝手言うカルマを寺坂は水場へと引きずり下ろす。

「ちょ!?何すんの!上司に向かって!」

「誰がだ!触手直に食らわせる上司がどこにいんだよ!この際にテメェに普段の恨み キッチリ晴らしてやる!」

そう言い寺坂はカルマの顔へ次々と水をかけ、辺りにいる皆も混ざった。

 

見ると 寺坂の顔はいつもの険しい顔ではなく 何かを楽しんでいるかの表情であり、少しだけだが、皆に馴染んできている様だった。

皆の水遊びを眺めている矢田は不意に崖の上を見た。

 

「…?」

そこには背中を見せて去って行く神威の姿が一瞬だけ見えた。

 

 



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迫り来る期末の時間

「ほぅ。あの殺せんせーの他にも もう一人 触手を扱う奴がいたとはな」

神威はテーブルに座りながら夕食を作っている善吉へ今日の事を話した。

 

「そのシロとかいう保護者は少し怪しいやもしれぬな。お主も気をつけるのじゃよ?」

「……あぁ…」

夕食を済ませると神威は夜更かしをする事なくすぐに睡眠にはいった。

 

ーーーーーー

 

翌日

 

椚ヶ丘中学校の日当たりが悪く薄暗い理事長室では、現在 理事長の前に二人の男女がいた。

 

「この私が生徒の妨げになるような行いをする人に見えますか?」

「い〜え。でもこの堅物がどうしても信用できないと言っていますのよ」

窓を見ながら話す理事長の後ろの黒い影にはイリーナと烏間がいた。烏間は中間のような不正がないかどうかあらかじめ本校舎へ赴き確認を取りに来たのだ。

 

「学力を決めるのは生徒次第です。私は水を刺すような真似はしませんよ」

「……」

その言葉は真実か、それとも虚偽なのか。烏間は納得できないような表情をしながら理事長室を出て行った。

 

「失礼しました」

 

ガチャ

 

 

誰もいなくなった理事長室にて、浅野学峯はゆれる窓のカーテンを見ずに言葉を発した。

 

「さて、覗き見は感心しないよ?神威くん」

その言葉が室内に響いた瞬間 カーテンの下から黒い影が現れた。

 

 

「相変わらず 知能だけでなく 五感も鋭いな。浅野学峯」

「教師に対してその口ぶりは良くないよ?『矢田 桃矢』君」

『矢田 桃矢』それは神威に成る以前の姿の名前だった。理事長は知っていたのだ。神威の正体を。その名を聞いた神威は首の筋を湧き出たせる。

 

「その名前では呼ぶなと言っただろ…?」

その殺気は理事長室全体を震わせ、近くにあった花瓶は何の前触れもなく割れた。

 

「それは悪い事をしたね。謝罪しよう」

理事長の言葉に神威の雰囲気が大人しさを取り戻すと辺りの響は止んだ。

 

「さて、何故 ここに来たのかな?期末テストも近いというのに。あぁ、『お姉さん』の事かい?」

「…そうだ」

理事長は読心術で神威のここへ来た目的を読み取った。正解であり、神威は頷く。

 

「『矢田 桃花』を今すぐ 本校舎に復帰させろ。要件はそれだけだ」

「ほう?随分と率直な要求だね」

神威からの要求は言うなれば『けじめ』だ。自分が原因で落ちたならば、自分の力で本校舎へ復帰してもらわなければならない。それが神威の目的だった。

理事長は立ち上がり窓の外の景色を見ながら数秒間黙り込んだ。

 

「それはできない要求だね」

 

ピキ

「……なんだと…?」

理事長からの拒否の返事に神威は目を血走らせる。

 

「入学時に教えた筈だよ。『本校舎へ復帰するには定期考査で実力を示し、かつ、元のクラスの担任の了承を得る事ができれば復帰を許可する』と。忘れてはいないだろうね?」

理事長から向けられた鋭い目線。誰もがこの目線を向けられれば逆らう事は出来ず、すぐさま引いてしまう。だが、神威は臆する事なく、殺意を混ぜた血眼を向けた。

 

「そうだな。だが…あの時は俺の落ち度だ。違う日の放課後にやる事だってできただろ」

「それは本人が体調不良の場合のみだよ。彼女は万全の状態。故にそのルールは適応されない」

「…納得がいかねぇ。それになんだ?全校集会の時の姉に絡んでた奴。見てただろ?」

神威は怒りを表に出し始めると、全校集会の時に見た光景を思い出す。

「いくらE組相手とはいえ、あんな真似は許される筈がねぇ。なのになんで処罰されてねぇんだ?E組だから心身ともに汚されてもいいってのか?」

怒りの声に理事長は顎に手を当てると返した。

 

「うむ。その点は君の意見は間違ってはいない。E組といえど、生徒だ。強姦は許されない。だが…差別は終わらないよ」

 

そう言うと理事長は神威の目の前へ歩いてくるとまるで今にも殺しそうな程の鋭い目を上から向けてきた。

 

「彼らはそれを積む事によって成長するんだよ…。『弱者を踏みつけ強くなる強者』へとね…?その制度でこの中学を出たものは『付属高校』『難関 私立 公立高校』そして、合格率が格段に低いとされる『高等専門学校』へ進学しているんだよ。君にはこれが理解できるかな?」

「……」

神威は黙り込んだ。何も言い返せない。これ以上言い返すとこちらとしては不利だ。理事長は流石にもう言い返せまいと思いまた ソファへと座る。

 

神威は怒り狂った血眼を向けると歩き出し、理事長室の窓を開けると手を掛ける。

 

「ただし、強姦の件については注意しておこう。そして、お姉さんをどうしても復帰させたいなら、今回の期末考査で示してみせなさい。テストで結果を残せば許可も自然と降りるシステムになっているからね」

 

後ろから囁かれた理事長の言葉に神威は何も返す事はなく、その場から飛び降り姿を消した。

 

ーーーーーーーーー

 

神威は風のように誰にも直視できない速さで山道を駆け上がる。

 

『期末考査で示してみなさい』

 

その言葉に神威は顔から筋を隆起させると速度を上げた。

 

そして、旧校舎へと着くと神威は早い足取りで教室へ向かうと乱暴に開けた。そして そのまま 中へと入ると下校の準備をしている矢田の元へ歩いた。

 

「おい、この後 本校舎の図書館に行くぞ」

「ふぇ!?」

今にも帰ろうと準備をしていた矢田は突然の神威の誘いに腑抜けた声で驚いた。

 

「で…でも今から陽奈乃ちゃんの家で…」

「んなもんどうでもいい。来い」

「ちょ…え!?」

神威は訳も聞かずにカバンを手に持つ矢田の手を引くと無理矢理に連れて行った。いつもとは全く行わない行動に皆は呆然としていた。

 

「どうしたんだアイツ?」

「なんかいつもより様子が変だな」

 

ーーーーーーー

 

僕らは期末テストの勉強のため、本校舎の図書館に来ていた。旧校舎と違い冷房が効いていてとても快適だ。普段は使用できないが、前々から磯貝くんが予約してくれていたらしく、同伴させてもらっていたのだ。

 

「ここはどういう風に覚えればいい?」

「あぁ。ここはこうやって___という風に」

僕は社会が心配なので磯貝君にアドバイスしてもらいながら暗記していった。凄い分かりやすい…。奥田さんも茅野や神崎さんに化学と物理について説明していた。

 

この調子なら期末こそ50位以内に入れるかもしれない。そう期待を寄せ僕らは勉強を進めていった。

 

その時だった。

「おんや〜?E組の方々じゃないか〜」

 

横から集会の時に聞いた事がある声がしてきた。見ると学園でも各教科トップを取っている『五英傑』がいた。中村さんはバツが悪そうな顔をしている…。

 

「ここはキミらにはもったいないんじゃないか?」

「どけよ雑魚ども。そこは俺らの席だ」

 

そう言い席を奪おうとしてきた。迷惑にも程がある…前の一件といい…五英傑なら何でもしていいと思っているのか…?

そう思いながら僕らは譲らなかった。

「ここは俺たちが前々から予約してあった席だぞ!」

「そうそう。久々にクーラーの効いた図書館なんて快適〜♪」

 

「忘れたのか?この学校じゃ E組はA組には逆らえないんだぞ〜?」

そう言いメガネを掛けながら ワカメのような髪型の骨顔の人が言ってくる。すると、今まで黙っていた奥田さんが立ち上がった。

 

「さ…逆らいます!私たち今度の期末テストで各教科で一位を狙ってます!そうなったらもう大きな顔はさせませんから!」

「な…なんだと!?口答えしやがって!おまけに眼鏡なんか掛けやがって芋臭い!なぁ荒木?キシャシャシャシャシャ!」

「あ……うん…」

そうなると君達も芋臭いコトになるよ!?荒木君も戸惑ってるし!

 

「全てがそうではないよ。ごらん?どんなに酷い場所でも必ず咲き誇る美しい花がある」

突然後ろからそう声が聞こえ振り向いてみると 独特な髪型をした五英傑の1人が神崎さんに絡んでいた。髪に無断で触れ顔を近づけている。あんな接待の仕方…絶対中学生じゃやらないぞ…!?ていうか神崎さん男運ないなぁ…。

そう言っている合間にもその人はまるで詩を読み上げるように言葉巧みに神崎さんを誘惑していった。

 

「じゃあ、こういうのはどうかな?E組とA組で、どちらが5教科で多く最高点を取れるか。勝った方は負けた方に何でも一つ命令できる……というのは」

 

『…』

僕らはその提案に言葉が詰まる。

 

「何だ?所詮ザコは口だけか?俺たちなら……『命』掛けても構わんけどなぁ…?」

 

……フフ

 

何だか、一瞬笑みが出てしまった。僕らは殺意を纏いながらペンを持っている手をゆっくりと動かした。

 

 

「うるせぇんだよ。さっきから」

『!?』

 

突然聞こえた声に皆は手を止める。その声の重圧に僕らは恐れ、一瞬で湧き上がった殺意を引っ込めてしまった。

 

その声は後ろの壁際にある席から聞こえた。

 

「バカみてぇに騒ぎやがって。静かにっていう張り出しも読めねぇのかよ」

そこにいたのは、神威君だった。

 

一緒に同伴しているのは矢田さんだ。2人はここで勉強していたのか…。

そんな憶測をしていると、神威君は顔に筋を立てながら歩いてきた。

 

「テメェ…E組が俺達に説教を説くとはいい度胸だな?」

そう言いながら僕に絡んでいた瀬尾君が神威君の制服の胸ぐらを掴んだ。 小柄な神威君の身体が大柄な瀬尾君の巨大な手によって身体が浮くほどまで掴み上げられた。

 

「んな事知るか。社会的モラルも身についてないガキが」

「…ッ!!」

その言葉はE組から発せられた為、A組である瀬尾君のプライドを刺激した。

完全に頭にきた瀬尾君は神威君に向かって拳を握りしめ今にも殴りそうな雰囲気だった。

 

「やるのか?なら…『容赦しねぇぞ』…!!」

「…!」

 

その言葉と共に僕達の背筋が凍る程の寒気が襲ってきた。今の言葉は本当だ。瀬尾君が神威君に手を出せば…間違いなく瀬尾君はただじゃ済まされない。それに、この事が公になれば理事長は神威君だけを徹底的に処罰するだろう。

 

「ぐぅ……」

瀬尾君は汗を流しながら神威君から手を離した。一方で神威君は顔に筋を浮き上がらせていた。本気で殴るつもりだ。

 

それだけは絶対にダメだ。僕はすぐさま止めに入ろうとした時、矢田さんが立ち上がり神威君の手を握った。

 

 

「神威君…!他の図書館いこ!?ここだと皆 いるからさ…!」

「……お…」

そう言いながら矢田は神威の手を掴むと図書館から出て行った。

 

後に残ったのは気まずい空気だった。

 

ーーーーー

 

何故だろう。プールの件から、急に神威君が積極的に勉強を教えてくれるようになった。

苦手な理数系の科目が少しずつ理解できてきて私は嬉しいけど…何か違和感を感じた。

 

いつもとは違う…まるで何かを漁っているかのような感じだった。

 

「うにゅ?どうかしましたか?矢田さん」

「え?いや!何でもないよ殺せんせー!」

今日はテスト前の学習だ。殺せんせーは1人に数人ついて教えていた。私は数学や化学を中心に教えてもらっていた。

殺せんせーに心配されたが、私は誤魔化した。

 

「そうですか。ふむふむ。苦手な理数科目も心配いらなくなってきましたね。ここからは少し高度な解き方に入っていきましょう」

「うん」

妙な感じだった。神威君は何であそこまで私に気をかけてくれるんだろう。

 

 

そんな事を思いながらも私は期末テストに向けて勉強を進めた。

 

 

そして、遂にその日が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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期末テスト

遂にこの日が来た。

 

「渚〜?どうよ。英語の方は」

「ん〜まぁ…ボチボチってとこかな…」

「しゃきっとしな!アンタなら英語は十分上位狙えるんだから!」

中村さんはそう言いながら自信のない返事をした僕を叱咤してくれる。中村さんや皆のような自信は僕にはそれ程ない。

 

「おやおや〜?E組じゃないですか〜?」

「A組と対決するらしいな〜?ま、せいぜい恥を晒す事をいの…ぶばぁぁ!?」

 

D組の人達の野次に中村さんは臆する事なくサラッと鉛筆を鼻に突き刺した。

 

「さてさて、誰か来てるかな?」

D組の教室を通り過ぎるとE組の教室が見え、誰かいるかな?と思い中を見る。

 

『………え?』

中村さんと声が重なる。映ってきたのは…髪型が律に似てる人だった。

 

 

『誰……あれ…?』

「一般のテストに人工知能を使う事は流石にタブーでな。替え玉で解決した。理事長にも哀れみの目を向けられしまってな…。今の俺の心情…君らに分かるか…?」

『頭が上がりません!!』

あ…気付いたら烏間先生がとてつもなく疲れた顔で立ってた。この人も大変だなぁ…。

 

「律からの伝言と合わせて、俺からも言わせてもらう。頑張れよ」

その軽い笑みと力強い声のエールが僕らを勇気づけてくれた。だから僕と中村さんは元気よく返事をする。

「はい!」「うん!」

 

それからしばらくすると、皆は次々と到着して席へと着いていった。

 

 

 

中間の時とは違う。ここには殺せんせーはいないけれど、僕らは前を向いてテストを受けれる。

 

このテストで示すんだ。自分達で磨いた……“第二の刃”をッ!!!

 

 

ーーーーーーーー

 

 

渚達の前には異形なモノと化した『問題』が立ちはだかっていた。

舞台は教室という名のコロシアム。そこにはE組の皆を始め、AからD組の皆がその問題達と闘いを繰り広げていた。

そして、渚達も次々と参戦し、問題の討伐に取り掛かる

皆が所属するのは『中高一貫校』中学3年生の時点で高校の範囲を学ぶ進学校であるため、問題はかなりの難易度であった。特に傾向が強いのは数学や理科といった理数。理数が苦手な生徒は苦戦するだろう。

 

 

最初の時間は英語だった。

 

迫りくるは記述式の英文。そこではA組の瀬尾が魔法杖を持ち、モンスターと化した問題の目へ杖を立て回答を記入した。だが、三角という文字が現れる。

 

「何でだよ!?満点解答の見本だぞ!?」

戸惑っている瀬尾の上空を中村が飛び、瀬尾が苦戦している問題へ向けて杖を立てる。

 

「よっ!」

その瞬間 その問題は大きく立派な華丸となった。

「な…!?満点……だと!?」

「お堅いねぇ〜!力抜こうぜ?優等生〜」

余裕の表情を浮かべる中村に瀬尾は汗を垂らす。なぜ、A組である上にロサンゼルスに長期間に渡り滞在してコミニュケーションを身につけた自分がこんな奴に負けるのか。それが不思議で仕方が無かった。

いや、考えている暇はない。他の問題へ手を回さねば。 そう思い瀬尾はすぐさま場を離れる。

 

 

次は理科だ。

 

「キシャシャシャシャシャッ!!どうだ!?この化学式なら満点のはずだ!」

不気味な笑みと歯軋りを兼ね合わせた笑い声を上げながら構築させた化学式を当てはめる。だが、問題は倒れず、武器を振り回し小山を薙ぎ払った。

 

「ふぎゃぁ!?なぜだ…!?理論上こうなるはず…!」

すると 近くで地響きが聞こえ、見るともう一体の問題の肩に腰を掛けている奥田がいた。

 

「それでね?」

「ワカル〜♪」

見ると問題と対話していた。

 

「暗記だけではダメなんです。話しかければ話しかける程…この問題凄く喜ぶんです!」

「キャハッ♪」

そう言うと問題は装甲を脱ぎ捨て屈強な肉体を曝け出すと女走りという何とも気持ち悪い足取りで去っていった。その不気味な様子に小山は若干引いていた。

 

次は社会だ。

社会は暗記項目が化学の次に多いため、暗記が苦手な何人かの生徒は次々と倒れていった。五英傑の一人である荒木もその一人だ。普通の中学生よりも社会的知識が備わっている荒木でも予想外な箇所が出されていた。

 

「嘘だろ!?…アフリカ開発会議の回数なんて…!?」

けれども、その問題を切り崩す者がいた。A組でもB組でもない。E組のクラス委員 磯貝だ。

 

「ふぅ…危なかった。一応覚えておいてよかった」

「磯貝!?何故お前が!」

「たまたまだよ。アフリカの均衡に興味を持って調べてたら現地に連れて行かれてさ」

磯貝は試験期間中に一度 殺せんせーに拉致られ興味を持った現地に連れて行かれたのである。

その後 磯貝は次々と問題を倒していった。

 

 

次は国語だ。

 

ここでは神崎が活躍しており、長い黒髪をたなびかせ、まるで詩人であるかのように薙刀を持ちながら古文を一句一句を読み上げていった。

 

「春過ぎて…菜月にけらし白妙の…衣ほすてふ…天の香具山…!」

すると薙刀から一句一句読まれた文が現れ、問題に吸い込まれていき、その瞬間に花が開花する音と共に華丸が現れた。

 

だが、五英傑の国語である柳原もただ立っているだけではない。同じく神崎と同じように次々と華丸を獲得していった。

 

ーーーーー

 

「みんな 目の色変えちゃって〜。勝つっていうのはそういう事じゃないんだよね〜」

一人の少年。彼もまたE組である。皆が懸命に問題を解く中、彼は余裕の表情を浮かべていた。

皆と同じように武器である鉛筆を手に取るとコロシアムへと入っていった。

 

「満点でサラッと勝って完全勝利だ」

彼の横には全国一位の秀才が並び立っていた。

「コイツを生贄に…皆に教えてやるよ」

 

だが、この余裕によって、後に彼は大きな失敗を犯してしまうのだ。

 

ーーーーーーー

〜♪

最後に行われた家庭科のテストの終了のチャイムが鳴る。

 

2日 掛けて行われた期末テスト。

 

長きに渡る闘いに皆は疲労を感じてはいたが、手応えはあったようだ。

果たして、結果はどうなったのだろうか。

 

 

 

 

 

 







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結果発表と新たな仲間

テストから数日。全校生徒の採点が終わり、各教科の結果が封筒に包まれ殺せんせーの元へ渡った。

 

「さて皆さん。いよいよ結果発表です。今回のテストで皆さんがどれほど自身の刃を磨いたのか見せてもらいます」

その言葉に皆は息を飲む。第一科目は英語だ。

 

「では…結果発表といきましょう…。英語のE組一位は……『中村 莉緒』!同じく学年でも一位で100点です!!」

『ぉおおお!!!!』

皆の視線が一気に中村に集まる。中村は当然という表情を浮かべていた。

「へへん!触手一本忘れないでよ?殺せんせー♪」

「えぇもちろん!」

因みに五英傑の英語担当である瀬尾は浅野に次いで3位である。

 

「渚君も英文の組み立て方は上出来ですが、少々なスペルミスが目立ちますね〜」

「あ…ここか…」

自身のテストで三角を付けられている箇所を見つけた渚。点数は91点。学年で6位だ。

 

次の科目は国語だ。

 

「国語のE組1位は……『神崎 有希子』!が、学年一位は…浅野学秀!」

「あぁ…残念だなぁ…」

神崎は落ち込むはものの、殺せんせーは顔に丸を表しフォローする。

「神崎さんの大逆進です。十分ですよ!」

因みに点数は96点。学年で3位である。国語担当の榊原は4位のようだ。

触手破壊は失敗したものの、皆は神崎に歓声をあげた。

 

 

次は社会だ。

 

「E組の…第一位は…『磯貝 悠真』!そして…素晴らしい!学年一位も同じく『磯貝 悠真』!」

「ぅおっしゃぁぁ!!!!」

磯貝は歓声と共に立ち上がる。

点数は97点。浅野は95点で2位のようだ。

 

「マニアックな問題が多く、浅野君も苦戦していたでしょう。よくぞここまで取りました!」

そして触手破壊が2本決まりとなった。

 

「おぉ!これで2勝1敗!」

不破は窓にE組とA組の勝敗状況を『正』で表していた。

 

 

次で決まるだろう。E組が勝てば勝利は確定。だが、A組が勝てば引き分けとなる可能性が高い。

どうなるか。

 

「さて、お次の『理科』。E組一位は……『奥田 愛美』!そして……素晴らしい!!!学年一位も『奥田愛美』!!」

「!」

 

その瞬間、皆は一斉に大歓声を上げた。奥田が一位を取ったことでE組の勝利は確定した。因みに五英傑の理科担当は学年で4位のようだ。

 

「すげぇぞ!奥田!」

「触手1本 お前のモンだ!!」

皆に拍手される中、奥田は顔を赤くしながら席に戻った。

これで数学がいくら高かろうとE組の勝利は決まった。

皆は次々に取引に掛けていたモノの話へと持ち込んだ。

 

その中で渚は神威の方を向いた。

 

「!」

その瞬間 渚は戦慄する。

 

そこには唇を血が滲み出るほど噛み締めている神威の姿があった。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「くぅ…!」

皆が教室で盛り上がる中 カルマは外の木の影で数学の答案をぐしゃぐしゃに握りしめていた。

85点

カルマの総合は13位。他人から見れば上位な筈だが、彼にとっては13位など敗北に他ならない

要因はただ、『舐めていた』

テスト中に見せたその余裕が命取りとなったのだ。

 

「流石にA組は強い。トップ6を独占。うちのトップ3は片岡さんと竹林君、そして神威君の3人だけ。当然です。A組も負けず劣らず勉強していた。テストの難易度も上がっていた筈です」

木の裏から殺せんせーの声が聞こえてくる。まるで自分の敗因を語るかのように。

「何が言いたいの?」

「『余裕で勝つ俺 カッコイイ〜!』そう思っていたでしょ〜?恥ずかしいですね〜♪」

「!?」

その瞬間 カルマの顔は真っ赤に染まる。完全に図星のようだ。

 

 

「先生の触手を破壊できるのは3人。が、君は暗殺にも賭けにも、何の戦力にもならなかった」

そう言うと殺せんせーは顔を緑のシマシマ模様に変化させカルマの頭を触手でつつく。

「やるべき時にやるべき事をやらない者はこの教室から存在感を失っていく。刃を磨く事を怠った君は暗殺者ではない。錆びた刃を自慢げに掲げているただのガキです」

「くぅ!」

もう限界なのかカルマはその頬をついてくる触手を振り払うと校舎へと戻っていった。

 

すると、偶然現場を見ていた烏間は疑問に思う。

「いいのか?あそこまで言って」

殺せんせーの表情には何の心配も映されていなかった。

 

「心配はいりません。彼は多くの才能に恵まれています。今まで余裕で勝負してきた者でも、一度の失敗を知る事で大きく前進するでしょう」

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

 

旧校舎よりも更に山奥の深い森にある巨木の下で神威は一人 苛立っていた。

 

「ちくしょぅ……!」

その原因は矢田の点数だ。彼女の合計はE組では上位だったとはいえ、学年では50位に行き届かなかった。

それが腹立たしくて仕方がなかった。

神威の点数は5教科合計478 学年10位。

 

「何でだ……何でだ…!!あそこまで教えたんだぞ…!!」

彼の目的は彼女を本校舎へ復帰させる事だった。けれども、それが叶わなかった。それが彼を苛立たせる原因だった。

 

「くそがッ!!」

 

バァァン!!!

 

怒りが溜まりに溜まって漏れ出した。神威は怒声をあげると足を巨大な木に目掛けて振り回した。

 

幹が音を立てながら地面に倒れると神威は悔しさのあまり唇を噛み締める。

 

「だが…まだチャンスはある…そこで必ず…!」

 

彼はまた決意を固めたのかその場から去り、旧校舎へと戻った。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「さて、皆さん。これにて3人に触手を破壊する権利が与えられました。破壊したい方はどうぞ前へ」

そう言い触手3本を前に出す。顔はしましま模様だ。3本破壊されたところで何の問題がないと、内心 舐めているのだ。

けれども、それに異議を申し出るモノがいた。

「待てよタコ。5教科満点は3人だけじゃねぇぞ」

寺坂、吉田、村松、狭間の4人組だ。

 

「え?3人ですよ?『国語』『英語』『社会』『理科』『数学』」

「は?『数学』抜かせ。5教科っつったら…『国語』『英語』『社会』『理科』そして『家庭科』だろ?」

 

目の前に家庭科満点の四人の答案が差し出された。

 

「か……家庭科ぁぁぁぁぁ!!!????」

その答案を見た瞬間 殺せんせーの顔が絶望に染まる。

 

「だ〜れもどの教科なんて言ってねぇ〜よな?」

「くっくっくっ…クラス全員でやればよかったかも…♪」

 

「ちょちょちょ!!家庭科なんてついででしょ!?何故に!?」

殺せんせーの反論にまたもや異議をなすモノがいた。

「なんて…って、失礼じゃね?5教科最強の家庭科に」

そう。カルマだ。お得意の挑発に皆が乗ってくる。

 

「そうだぜ殺せんせー!」

「5教科最難関の家庭科100点が4人だぜ!」

「合計 触手7本〜♪」

 

「な…なななな7本!!???ひぃぇええええ!!!!」

圧倒的な絶望の境地に叩きつけられた殺せんせーは悲鳴をあげる。

 

そんなムードの中 磯貝が手を上げる。

 

「それと殺せんせー。皆と話し合って決めたんですが、今回の暗殺にA組との賭けの戦利品も使わせてもらいます」

磯貝の言葉に殺せんせーは首を傾げる。

 

「ホワッツ……?」

ーーーーーーーー

 

「く…」

A組の教室では浅野が拳を握り締めていた。

成績底辺のE組なぞ、自分の敵では無かった。負ける事が許されない今回の賭け。けれども負けてしまった。

 

「やぁやぁ〜。随分な有様だね浅野くん〜」

「…!」

その自分へ声を掛けてくる者がいた。制服を纏っている一般生徒だが、肌の色が褐色色であり、眼帯をつけており、他の生徒とは一味違う風貌を表している少女だった。

 

「君は…B組の『赫夜』といったか…。何の様だ?」

赫夜と呼ばれた少女は他の生徒が寄り付かない程の険悪な浅野に平然と近づく。

 

「いや別に?ただ単にE組なんかに負けない〜とかイキッてた5英傑を見に来ただけ〜かな?」

『ッ…!』

その言葉にA組の皆や五英傑は頭にキたのか恨みの目を向けた。その中でも特にプライドを傷つけられた瀬尾は怒りの声を上げながら赫夜へ近づいてきた。

 

「テメェには関係ねぇだろ。B組が口出ししてきてんじゃねぇ!これは俺らとE組の問題なんだよ!」

「あ〜怖い怖い。学校自慢のA組様がこんなに血の気が多いとはねぇ〜」

その言葉はさらにA組を苛立たせた。

 

「じゃ、私 戻るねぇ〜」

そう言い彼女は皆から向けられた目線をものともせずに鼻歌を口ずさみながら出て行った。まるで人を喰ったような性格にA組は嫌悪感を抱いた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

本校舎では、1学期の終業式が行われようとしており、A組の五英傑はそれぞれが委員長の役職に就いており、準備のため、E組と同じくらい早く行く必要がある。

重苦しい雰囲気の中 A組を待ち構えているのは自分達が見下していたE組の皆だ、

「おうおうやっと来たな。生徒会長様よ〜」

出迎えたのは家庭科で大成功を収めた寺坂グループ達だ。

 

「…何の用かな…。式の準備で忙しいんだ。君達に構っている暇はない」

そのまま通り過ぎようとした浅野の肩に寺坂の手が置かれる。

 

「おいおい。何か忘れてねぇか?」

体育館に入ると先に揃っていたE組の皆も五英傑へ目を向けた。

 

「浅野、賭けの事だが、前に要求したアレでいいよな?」

「……」

武が悪そうな顔をする浅野に寺坂達は更に畳み掛ける。

 

「何ならよ?5教科の中に『家庭科』も加えてやってもいいんだぜ〜?それでも勝つけどよ〜」

寺坂グループ4人の勝ち誇る笑みに皆は若干頬を引きつらせるものの、心強いと感じていた。

 

彼ら自身も今回は殺せんせーに一泡吹かせたいの思いで相当勉強したのだろう。家庭科は一般科目と違い、教師の気分で出題される。故に本校舎の授業を受けていないE組は圧倒的に不利だ。故に殺せんせーも家庭科は最小限の事しか教えなかった。この事から彼らは皆以上に研究していた事が感じ取れるだろう。

 

 

 

 

因みに、今回の集会にはカルマも参加していた。

 

「珍しいな。お前が参加するなんて」

「だってさ、今 ふけたら逃げてるみたいで何か嫌だし」

予想外のカルマの反応に磯貝は不思議に思う。

 

「え…えぇ…2学期も…E組のようにならないように…」

校長の言葉が詰まりに詰まっている。それもそうだ。E組は特進クラスであるA組とトップ争いをしたのだから。

BからDの生徒達は悔しそうな目でE組を睨む。特にD組はほぼ全員がE組に負けているのでプライドがズタズタだろう。

 

皆が胸を張って集会に参加できている。近くにいる烏間もその姿勢に微笑んでいた。

 

ーーーーーーーーー

 

「えぇ〜 この度E組に新しい仲間が加入する事になりました。では自己紹介を」

「はぁ〜い。元B組の『赫夜』で〜す。趣味はショッピング、好きなものは甘いもの。得意科目は理系で〜す。皆 よろしくね」

 

 

『『『…は!?』』』

集会終了の直後の教室で、いきなり 赫夜の自己紹介が執り行われていた。新しい仲間に殺せんせーもウキウキの笑顔だった。

一方で、天然である倉橋を除いた皆はそのテンションの高さかつ、いきなりすぎる新しい仲間にポカンとしていた。また、茅野は妬ましい視線を彼女の身体に向けている。

 

「うぅ…また巨乳……」

 

 

「赫夜って…確か中間も期末も全国模試も浅野に続いて2位の奴じゃ…」

目が前髪で隠れている生徒『千葉 龍太郎』の漏らした言葉に皆はすぐさま驚きの表情を浮かべる。

 

「えぇ!?」

「マジかよ!?」

 

皆は次々と驚きの声を出す。その情報で渚も思い出したのだ。全国模試でも浅野に引けを取らない程の実力者である。そんな成績の優秀な彼女がなぜE組に来たのか。

 

「実はA組にテストのあと ドヤ顔しながら行ってさぁ。それが何か『侮辱された』とか何かで問題にされてちゃったんだよねぇ」

赫夜はざっくりと説明するが、結局はカルマと同じ素行不良である。

 

そんな中で後ろの席にいる三村は赫夜の身体と顔を見て、ある事を質問する。

 

「質問なんだけど、君 神威と同じ肌で眼帯もつけてるみたいだけど、姉弟か何かなのか?」

「ん〜?」

その質問に赫夜は頭に手を当てると手を横にふる。

 

「いんや。全然違うよ。ただ偶然さ」

三村の質問に皆は少しだがざわめきだす。眼帯のことで皆も思い出したのだ。神威が一部の皆には一切 眼帯の下を見せていない事を。

 

そんな中で修学旅行の一班と四班の生徒達はうつむく。

 

「はいはい皆さんお静かに。では、質問はまたの機会に。赫夜さんは神威君の隣に座ってください」

 

殺せんせーの指示通りに赫夜は神威の隣の空席に座る。隣にいる神威はとてつもなく不機嫌な様子であった。

 

「よろしくね。神威ちゃん♡」

「うるせぇ」

 

 

「さてさて、新しい仲間も加わわり、一層賑やかになったところで、夏休みのしおりを配ります」

 

『しおり』その言葉に赫夜以外の皆はぎょっとする。

 

「しおりって?」

「いや…聞かない方がいい」

意味を知らない赫夜は前にいる菅谷にどう言う意味か尋ねると菅谷は何かを思い出したように汗を垂らす

 

デデン

 

教壇に置かれたのは厚さ80センチはあるしおり。修学旅行の時とは比べものにならない量だった。

 

「出たよ…恒例過剰しおり…」

 

「アコーディオンみてぇだな…」

皆は次々とその『しおり?』を受け取るとパラパラとめくる。

 

「これでもまだまだ足りないくらいですよ」

そう言い最後の生徒に配り終える。

 

「夏の誘惑は所々にありますからねぇ。さて、夏休みに入る訳ですが、皆さんには一つの『メインイベント』がありますねぇ」

「あ〜。賭けで奪ったこれのことでしょ?」

そう言う中村の手には一つのパンフレット。

渚と茅野はそれを見開かせると顔を輝かせた。

 

「夏休み!椚ヶ丘中学校特別夏季講習!!沖縄リゾート二泊三日!!」

 

皆は一斉に歓声を上げた。

 

 

 

 

「はい静かに。皆さんの要望は…」

すると、クラス委員である磯貝は頷く。

 

「はい。触手破壊はこの合宿時に使わせていただきます」

「なるほど。四方を先生の苦手な水がある場所で触手7本を……正直に認めましょう…君達は侮れない生徒になった。あ、言い忘れていましたが、今回の合宿に赫夜さんの参加も受理されました。これを機に皆さんも赫夜さんとの仲を深めてください」

 

そう言うと皆は赫夜へ目を向ける。

 

「因みに暗殺の事は烏間先生から全部聞いたよ。私も出来る限りサポートするからねぇ〜」

その頼もしい発言に皆は安心と信頼を寄せる。すると、横にいるカルマは興味本位で得意な武器を聞く。

 

「そういえばさぁ、君 どんな武器とか使うの?」

「ん?」

すると赫夜はニコッと笑うと既に支給されているのか、懐からナイフを取り出す。

 

「君たちと同じだよ。私の場合はナイフかな?このクラスに入ったからには必ず殺すよ『殺せんせー』♡」

そう言い赫夜はナイフをペンのように回すとウインクをしながら殺せんせーへ突きつける。

 

「ヌルフフフ。君もよきアサシンに育ちそうですね!ではでは…新たな仲間が加わったところで!椚ヶ丘中学校3年E組1学期!これにて修了!!!」

 

その掛け声と共に中学校生活最後の1学期が終わった。

 

いよいよはじまる中学最後の夏休み。

 

 

 

 

 

 

 

 



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神威の苦悩

帰りのホームルームが終了し、皆が帰路に着く中、神威はいつもと異なり、早歩きと言っていい程のペースで歩いていた。

急いでいるという雰囲気ではない。何かを焦っているかのようだった。

 

「なぁ…?テスト返しの時もそうだけど…何か神威の奴 変じゃねぇ?」

「あぁ…」

後ろでその様子を見ていた前原はおかしいと思っていたのか、隣にいる磯貝に耳打ちする。磯貝も頷く。

 

「何か妙だよな。もしかしてテストの事かと思ってたけど…アイツ確か10位だろ?一位が取れなくて悔しかったんじゃねぇのか?」

「う〜ん。そうかもなぁ」

2人の疑問は晴れる事なく、謎に包まれていく。

 

ーーーーーーー

 

皆から離れて、神威は速走りで帰路へと着いていた。短時間で終わったのか、空はまだ青く、夏の蝉の鳴き声が鳴り響いており、神威の肌を暑い日差しが差していた。

 

「どうしたの?教室から出るなり早々と行っちゃってさ」

「…」

すると、神威の両肩に手が置かれる。振り向くと、赫夜の顔が近くにあった。

 

「お姉さんとは帰らないのかな?」

「…!!」

赫夜の言葉を聞いた瞬間 神威の額に筋が湧き立つ。

 

「黙れ…!!」

その言葉と同時に神威は振り返り様に腕を振り回し、赫夜の首を切り落とそうとした。腕を振り回すと、その風圧で後ろに立つ木が揺れ、次々と葉が吹き飛ばされていく。

 

「…ぐぅ!?」

その瞬間 神威はその場に膝を着いた。いや、着かざるを得ない状態にされた。

 

自身の後ろには赫夜が立っており、右腕を捻られていたのだ。

神威が怒りの目を向けるのに、対し、赫夜は鋭い目を神威に向ける。

 

「力で私に敵うと思わないで」

「…ッ…」

神威は必死に力を加える。が、まるで鉄に手を埋め込まれているかの様にまったく振り解く事は出来なかった。力の差を理解した神威はその場で抵抗を止める。

 

「アンタが怒る理由はこうでしょ?“お姉さんを本校舎に復帰させる為の条件である50位以内が成せれなかった”。けど、そんな事必要だと思う?」

 

「…どういう事だ…?」

 

「アンタがやろうとしてるのはただの“自己満足”に過ぎないのよ。今日E組に来てずっとアンタのお姉さん見てたけど、結構楽しくやってるじゃない。仮に復帰したとしても本校舎の人達と馴染めると思ってんの?馴染めなかったら地獄じゃない」

 

「……」

赫夜の言葉で神威はいつも見ていた矢田の顔を思い出す。本校舎に所属していた時よりも満面な笑顔や、勉学の向上。全てこのE組で成長できていたのだ。

 

「だったら…俺はどう償えばいいんだ…?」

自身の疑問を赫夜へとぶつける。赫夜は表情を変えずに答えた。

 

「簡単よ。今すぐに“家族”に戻ればいいの。たとえ血が繋がってなくても…あの娘にとってアンタはたった1人の弟なのよ?」

「……戻るだと…?」

 

戻れるのか…?こんな穢れた姿になった俺が…?あんな事を…しでかした俺が…?

 

いや…戻れる筈ない…!!

 

「戻れる訳…ねぇだろ…」

歯を軋めながら答える。

 

「はぁ…これ以上 事実を隠せば、一番苦しくなるのは貴方のお姉さんなのよ?」

「分かってる……だが…俺はもう…家族には戻れねぇんだよ…」

 

再び己の過去を思い出した神威は歯を噛み締める。

赫夜は溜息をつくと神威の手を引く。

 

「早く帰るわよ。いつまでも突っ立ってちゃ先に進めないわ」

 

ーーーーーーー

 

1学期の終業式が終わってから、神威君と会うことは無かった。彼といると何故か不思議な感覚に見舞われた。まるで不安が全て安心と自身に変わるかのように私のマイナスな気持ちがプラスへと変わっていた。

 

A組との賭けで取った合宿まで残り数日。私は荷物を揃えるためにせっせと支度をし始めた。

 

「えぇと…3日間の着替えと…水着と…一応酔い止め…」

支度をしていると、不意に手が止まった。

 

「…」

いつも飾ってある2人の写真。1人は私、もう1人は黒髪で少し長い髪を持った男の子。

まだ見つからない…。いつになったら…桃矢は戻ってきてくれるんだろう…。

私は再び支度する手を動かす。旅行前だというのに、嬉しい気分では無くなってしまった。

もしも…桃矢もいたら…連れて行ってあげられたのに…。

 

ーーーーーーー

 

家へと帰還した神威は赫夜に部屋まで抱き抱えられ、ベッドに仰向けに放り出されていた。

「…何のつもりだ…?」

 

「そんなに苦悩してるんなら…忘れればいいわ」

 

仰向けに横たわる神威の上には赫夜が覆いかぶさる様に跨る。そして、赫夜は顔を神威の顔へ近づける。

 

「私が全部…忘れさせてあげる」

「…!」

神威は抵抗するために四肢を動かそうとするが、両手両足ともに赫夜の四肢に押さえつけられていた。その上、力量も赫夜の方が上な為に動くことは叶わなかった。

 

「私と…しよ。そうすれば嫌な思い出も全部…忘れられる筈よ」

 

赫夜は、少しばかりか息が荒い。本気のようだった。そして、神威の顔へゆっくりとその妖艶な唇を近づけていった。神威も抵抗は無駄だと悟ったのか、手足をバタつかせる事をやめた。

 

そして、唇と唇が重なり合う甘い接吻を神威は抵抗をしないまま、受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______訳ではない。

 

「ふん!」

 

ゴチン!

 

「あう!?」

 

鈍い音が響き渡る。神威は唇が接触する前に咄嗟に頭を前へと突き動かし、自身の額を赫夜へぶつけた。流石の頭突きを予想していなかったのか、赫夜はその場でのけぞり、後ろに倒れた。

 

「何故俺がそんな事を。お前が心配する程じゃねぇ」

神威は押さえつけられていた腕をコキコキと鳴らしながら回すと痛さで転げ回る赫夜へそう吐き捨てる。

 

「…じゃあどうすんのよ。卒業までその複雑な感情を抱いたままでいる訳?」

 

「…あぁ…」

赫夜の言葉に神威は言葉を詰まらせ、曖昧な返事をする。今の神威には言い返せる程の答えはない。

 

「はぁ…もういいわ。話は変わるけど…明日 買い物に付き合ってもらうわ」

 

「…は?」

 

 

 

 

 



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合宿目前の時間

翌日、神威と赫夜は椚ヶ丘から電車で何十分かの距離にある東京23区の一つである新宿へと来ていた。

 

「よ〜しついたついた」

 

今の赫夜の服装はぶかぶかなTシャツ、そして下は水色の少し長いスカートといったラフな格好をしていた。一方で後ろにいる神威に関してはなぜか椚ヶ丘の学生服である。なぜかというと、神威の服装は前まで来ていたボロボロの服と制服の2種類しかないためである。

 

「ほら、さっさと行くわよ。アンタの服がメインなんだから」

 

「別に服なんて…着れれば何でもいい…ぐえ…!?」

 

「文句言わない!」

 

ふてくされる神威を強引に引っ張りながら赫夜は服屋へと向かった。

 

ーーーーーーー

 

「ふむふむ…これはどうかな〜…?」

 

あるフロアのメンズエリアに着いた赫夜は手当たり次第に服をかき集めると神威に服を手渡して試着させる。身長がとてつもなく小さいため、何着か小学生用が混じっているのは言うまでもないだろう。

 

「う〜ん…南の島だからな〜。もうちょっと涼しくてその場にあった奴を…」

 

そう言い着せ替え人形のように服を着替えさせられる神威。彼にとってはどれもこれも不要な物だ。

 

「…」

 

そんな中、面倒になったのか、神威は山積みにされた服から2着の服を引っ張り出し赫夜へと押し付ける。

 

「これでいい」

「え?」

 

引っ張り出したのは黒くぶかぶかなtシャツと、黒くダボダボなジーパンといった簡易的な組み合わせであった。

 

「随分とシンプルね。着てみて」

赫夜は神威を試着室へ連れて行く。試着室へ入ると、カーテンを閉め、制服を脱いだ。そして、選んだ服を着ると、試着室のカーテンを開く。

 

「お〜。いいわね。まぁ身長が残念だけど」

 

「黙れ…」

 

身長について言われた事に腹を立てながらも神威は自身の服を決めたのであった。

 

 

すると、

 

「う〜ん」

赫夜は神威を目を細めながら見つめる。

 

「何か物足りないわね〜…あ!」

 

赫夜は何かを思いついたのか、ポケットからヘアゴムを取り出した。

 

「ちょ〜とイメチェンしてみようか!」

「!?」

神威を近くの椅子に強引に座らせると、腰まで伸びた長い髪に手を掛け、後ろに流れていた髪を一纏めにした。

ポニーテールにした姿はもはや完全に女子と見間違えてしまう程であり、あまりにもの出来栄えに赫夜自身ですらも興奮して頬擦りをし始めた。

 

「きゃ〜!!可愛い〜!!」

 

「鬱陶しい…」

 

それから服を買った二人は店から出る。神威は一銭も持っていないために赫夜に買ってもらう形となった。

 

「お金は心配しないで〜。博士から服代貰ってるから」

そう言い赫夜は財布の中身から1万円札を2枚見せる。今日誘われたのは善吉から頼まれたからだろう。

 

「言ってたよ〜?服が2着しかないのは勿体ないってさ」

 

「…余計な事を…」

 

「さ、次は私の買い物よ」

それから赫夜に手を引かれながら神威は別の階層へと向かっていった。

 

ーーーーーーー

 

「…」

待っているのが少しだが気まずい。その理由は簡単だ。今いる場所は水着専門のエリアであるからだ。しかもレディースであり、周りには女性が多く、自身の場違い感が溢れ出てしまう。

 

 

すると、カーテンがゆっくり開き、レディースの水着を着用した赫夜が現れた。

 

「じゃじゃーん!どう?」

 

彼女が着ている水着は黒で統一されていた。別に水着の形はそれ程ユニークなものではない。一般的な物だ。けれども、中学生にしては発育が矢田以上に進んでいる赫夜の身体によって、大人の色気という妖艶な雰囲気が醸し出された。

 

だが、それを見ても神威は興味を示さず淡々と答えた。

 

「どうだろうな…」

 

「も〜つまんないな〜」

 

赫夜はその態度に対して不満になるも、この水着を買うことに決めた。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーー

 

それから店を後にした2人は少し洒落ているカフェへと来ていた。赫夜は陽気にコーヒーとパフェを頼む。

 

しばらくして頼んでいた品が到着すると赫夜はスプーンで生クリーム部分を口に運ぶ。

 

「んん。美味しい!久しぶりのカフェは最高〜」

 

「…」

年相応の可愛らしい反応を見せる赫夜。対して神威は人間であった頃、よく飲んでいたココアを静かにすすっていた。

 

「…(おかしい…)」

そんな中、神威は目を目の前の赫夜へ向ける。

 

「(なぜコイツはここまで俺に引っ付いてくる…?なぜ、俺に構う…?)」

 

神威は赫夜がこれほどまで自身に擦り寄ってくる姿勢に疑問に思っていた。なぜ自分に?他にいる、彼女の性格ならば自身以外の人間と関係を築き上げるなど簡単なことだろう、なのに何故自身を…?

 

それが不思議で仕方が無かった。故に神威は聞いた。

 

「お前…なんで俺にそこまで構うんだ…?」

 

「…ん?」

 

パフェを頬張りながら赫夜はまるで聞こえていなかったかの様にこちらへと目を向けた。

 

「だから、何で俺にそこまで構う?」

 

「…」

神威が尋ねると、赫夜はパフェを頬張る手を止め、先程とは表情を一変させた。

 

「…」

その表情は、先程の楽しむ雰囲気が全く感じられず、何か辛い過去を思い出しているかの様なものであった。

 

「私も最初…実験室を脱走してから君と同じ途方に暮れてたの。何日も山の中で自暴自棄になって…こんな人からかけ離れた姿にされた事を酷く憎んだわ。博士に拾われた後も…何度も何度も…死にたいと思い続けてた。でも、そんな時に君の話を聞いて会えた時から、少しだけ楽になったの。言い方は悪いけど____

 

 

そう言い赫夜は満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

____嬉しかったんだ!私と同じ人に会えたのが!」

 

その笑みはいつもの自身を揶揄うようなものではなく本当に純粋な笑顔であった。

 

「…そうなのか…」

その気持ちは神威も共感できるモノだった。赫夜にとっても神威にとっても互いは世界でたった1人の自身と同じ気持ちを共有できる貴重な存在だ。

 

「(…コイツも…俺と同じなんだな…)」

 

目の前の彼女の境遇を自身と重ねている中、神威の頬に何かが垂れた。

 

「…なんだ…これは…?」

神威は頬を手で拭う。それは何か分からない透明な液体だった。水のようにサラサラとしており、少し温もりがあった。

 

「どうしたの?」

「いや…何でもない」

神威は誤魔化すようにその液体が付いた手をティシュで拭き取る。

 

一方でパフェを食べ尽くした赫夜は立ち上がると、神威に差し出す。

 

「行こっか」

 

「…あぁ」

神威は静かにその手を取り、赫夜と共に帰路へと着いた。

 

「(たまには…悪くはないか…)」

夕日が輝く道を、彼女に手を引かれていく中、神威は心の中でそう呟いたのであった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

そして 時が進み、いよいよリゾート地へと出発する日がやってきた。

 

 

 

 



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