咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら (神奈木直人)
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第1話 邂逅

咲-Saki-の中で一番マホが好きなのでマホの作品を書く事にしました。
『ここからは夢乃マホの独壇場っすよ!』


夏の全国高校生麻雀大会、通称インターハイの団体決勝戦。その試合での快挙は国民を魅了した。清澄高校、それが初出場にして、大会二連覇だった白糸台高校の連勝記録を止めた高校の名である。その快挙に魅了された人の中で特別な心持ちをしていた少女がいた。その少女の名前は夢乃マホ、高遠原中学校の二年生だ。高遠原中学校というのは清澄高校一年生の原村和と片岡優希の二人が通っていた中学校で、その二人はマホの尊敬する先輩だった。その憧れの先輩が優勝した事である気持ちが抑えられずにいた。

「マホも和先輩や片岡先輩みたいになりたいです。いや、それより、先輩達とまた団体戦で一緒に戦いたいです!」

マホのこの気持ちはどんどん大きく膨らんでいった。

 

それから1年後、清澄高校麻雀部のメンバーは、いつも通り麻雀をしていた。すると、一人の部員が話し始めた。

「今年はどれくらい部員集まると思う?」

彼女は昨年のインターハイで大将を勤めた清澄高校二年宮永咲だ。

「インターハイで優勝したからきっと20人くらい来るかもしれないじぇ!」

咲の下家に座っているテンションが高めなこの少女は、去年先鋒を勤めた片岡優希だ。

「逆に活躍し過ぎたせいでウチらを怖がって来んかも知れんのぉ。」

咲の対面に座っていた広島弁の少女は、団体戦次峰で清澄高校麻雀部の新部長にして唯一の3年である染谷まこだ。

「大丈夫です。たとえ誰も来なかったとしても、ムロさんがいます。ムロさんが入れば5人になるので団体戦は出れます。」

咲の上家に座っているのは、団体戦副将で全国中学生麻雀大会、通称インターミドルで優勝した原村和だ。

「ムロちゃんと言えばムロちゃんと一緒にいたマホちゃん、凄かったよね。」

「ありゃぁ育てりゃもの凄い打ち手になるかもしれんのぉ。」

「マホちゃんがですか?確かにたまに大きい和了り方はあるかもしれませんがそんなに凄いでしょうか?」

「マホちゃんは永遠の初心者だからな、いつもハラハラだったじぇ。」

「すみません、ここって麻雀部の部室ですよね?」

部室に入ってきたのは先ほどまで話していたムロこと室橋裕子だ。

「噂をすれば影ですね。ムロさん。」

「和先輩!それに優希先輩!お久しぶりです。」

「ムロちゃんインターハイぶりだじぇ。」

再会を懐かしんでいると、もう一人生徒が入ってきた。

「来ちゃいました~。」

やって来たのは、ムロマホコンビのマホこと夢乃マホだった。

「えっ!?マホちゃん?どうしてここにいるんだじぇ!?」

「マホちゃんは今年中3のはずじゃないですか。」

優希と和が驚いているのもそのはず、今部室のドアの前に立っているのは現在中学3年のはずのマホが清澄高校の制服を着ているからである。すると、ムロが少し呆れたような顔でマホの現状を話し出した。

「マホは本当は高遠原中学3年のはずだったんですが、去年のインターハイを見て先輩方に感動して、先輩方と一緒に団体戦を戦いたいって思ったらしいんです。そして、その気持ちがどんどん大きくなって『二年も待ってられない!』なんて言い出しまして、死ぬ気で勉強して飛び級で高校に入ったらしいです。」

「凄い・・・」

「なっ!?」

「マホちゃん、私達が中学生だった時成績良くなかったような気がするじょ。それなのに飛び級なんて・・・」

「大した精神力じゃのぉ。」

全員が驚きを隠せない様子だった。

「そういう事ですので、これからよろしくです~。」

かくして夢乃マホは清澄高校麻雀部に入部した。




第1話書いてみて『1年後にしたから他の高校の3年のメンバーもいないじゃん!』ということに今更ながら気付きました。嶺上でツモれる気がしてカンしたらツモならずで完全に役無しになってしまった時くらいの絶望感。続編はどんどん書きたいのですが以上の理由で遅れるかもです。


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第2話 再戦

和がムロをなんて呼んでるのかが分からないので、とりあえずムロさんって呼ばせてるんですが、もし和の呼び方知ってる方いらっしゃったら教えて頂けたら嬉しいです。


新制清澄高校麻雀部が始動した。マホは入部した途端、咲と和の方に向かっていった。

「宮永先輩!和先輩!マホと勝負して下さい!去年の合宿で宮永先輩や和先輩に沢山やられたので再戦したかったのです。」

「いいですよ、マホがどれだけ成長したか楽しみです。」

(マホちゃん・・・いや、大丈夫!今の私ならやれる。)

「いいよ、マホちゃん。やろう!」

「ありがとうございます!和先輩、宮永先輩。」

「3人は決まりましたが、もう一人はどうしましょうか。」

「なら私が入るじぇ!」

「よし、4人揃ったね。じゃあ始めようか。」

「はい!」

「はい。」

「負けないじょ!」

 

席決めではマホが東、優希が南、和が西、咲が北になった。

「今回は東風1回じゃ。そして、25000点の30000点返し、まぁ普段通りじゃの。」

対局が始まろうとした時、扉が開いた。

「ちわーっす、遅れました。」

部室に入ってきたのは麻雀部唯一の男子部員の須賀京太郎だ。

「あれ?今卓に座っているのってお客さんですか?」

「新入部員じゃ。去年の合宿にも来とったじゃろ。」

「俺、合宿参加してないんですけど・・・」

「おー、そうじゃったのぉ。すまんすまん。」

「しっかりして下さい。」

「そんな事より、今から面白いもんが見れるぞ。」

「なんすか?面白いもんって。」

「まぁ見ててみ。」

 

~東一局~親:夢乃マホ

夢乃マホ 25000

片岡優希 25000

原村和 25000

宮永咲 25000

(優希ちゃんじゃなくてマホちゃんが起家なんて・・・)

(私が起家じゃないなんて、あり得ないじょ・・・)

(今回は先輩方には負けませんよ)

「リーチ!」

(3巡目に親リーチ!?)

「そ、そういうの、うちのお株なんですけど。」

(まさか・・・)

「ツモっ!リーチ一発ツモタンピンドラ1、6000オールです!」

「親っ跳!?」

「なっ、今の和了り方、まるで優希みたいな和了りでしたよ、先輩。」

「やっぱりこいつ、やりよるわ。」

(この流れはヤバいじぇ・・・)

(また優希の真似ですか。真似ばかりでは強くなれない事を教えてあげましょう。)

「連荘、一本場です。」

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 43000

片岡優希 19000

原村和 19000

宮永咲 19000

「リーチだじぇ!」

(今度は優希ちゃん!?)

(嫌な予感がしますね。)

(片岡先輩のリーチ、怖いです。でも、私も引きません!これが通れば・・・)

「ロン!リーチ一発純チャン三色一盃口の一本場で16300だじぇ!」

「はい。親番、終わっちゃいました・・・」

「リーチ相手にあんな無筋ど真ん中を打ったからですよ。まったく、マホちゃんは変わりませんね。」

「はい・・・」

(優希ちゃんの和了も高いけど、何だかマホちゃんの手が物凄く高い気がしたよ・・・)

~東二局~ 親:片岡優希

片岡優希 35300

夢乃マホ 26700

原村和 19000

宮永咲 19000

「私の親番だじぇ!いっくじょー!」

(この局こそ、取ります!)

「それ、ポンです!」

(自風の北をポン。北家・・・まさか!?)

(あっ、東が余っちゃったじぇ・・・そんな、いくら人真似が得意だからってあの巫女さんの和了りが出来る訳無いじょ。ここは責めるじぇ!)

「リーチ!」

「それもポンです!」

(マジですか!?)

(東と北をポン!?やっぱりこれって・・・)

(何か見覚えのある気がしますね・・・)

~11巡目~

「ツモっ!小四喜!8000・16000です!」

「なっ!?」

「そんなっ!?」

「嘘でしょ・・・」

「うわぁぁぁぁ、や、役満!?」

「こりゃあまたえらいのを和了りよった。」

(マホちゃん、凄い成長してる。このまんまじゃ、負けちゃうよ・・・)

~東三局~ 親:原村和

夢乃マホ 58700

片岡優希 19300

原村和 11000

宮永咲 11000

(マホちゃん、ヤバいじぇ。2位の私と40000点近い差をつけてトップだなんて・・・)

(このままじゃプラマイゼロもできないよ・・・)

(このまま独走してトップのまま逃げ切ります!)

(このまま逃げ切りなんて、させませんよ。)

「リーチ。」

(今度はのどちゃん、やばいじぇ・・・)

(和先輩、負けませんよ。)

「ロン。メンタンピン一盃口ドラ2で18000です。」

~東三局一本場~ 親:原村和

夢乃マホ 40700

原村和 29000

片岡優希 19300

宮永咲 11000

「ロン。メンタンピンの一本場で6100です。」

(2連続マホちゃんから直撃してる・・・凄い。)

~東三局二本場~ 親:原村和

原村和 35100

夢乃マホ 34600

片岡優希 19300

宮永咲 11000

「ツモ。リーチツモタンピンの二本場で4200オールです。」

(のどちゃん、乗ってきてるじぇ。)

(やっぱり和ちゃんは凄い。)

(流石です、和先輩。)

~東三局三本場~ 親:原村和

原村和 47700

夢乃マホ 30400

片岡優希 15100

宮永咲 6800

(このまま連荘で終わらせます!)

「カン!」

「咲さん!?」

「ツモっ!嶺上開花断么清一対々三暗刻、24000の三本場は24900です。」

「うわわっ、宮永先輩、流石です。」

「咲ちゃんやっぱり凄いじぇ。」

(ふっ、咲さんも本気を出して来ましたね。負けませんよ!)

~東四局~ 親:宮永咲

宮永咲 31700

夢乃マホ 30400

原村和 22800

片岡優希 15100

「ツモっ!リーチツモ平和、700・1300です。やったぁ!勝ちました~!」

「こ、これで終わりだね。」

~点数結果~

夢乃マホ 33100

宮永咲 30400

原村和 22100

片岡優希14400

「・・・・・・・・・」

「のどちゃん?」

(咲はまたプラマイゼロにしよったのか・・・)

「・・・もう一度やりましょう。次は私も本気を出します。」

(和ちゃん怒ってる・・・やっぱり悪いことしちゃったな。よし、私も次は本気でやるぞ!)




点数表示を修正しました。


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第3話 再々戦

「今回は短期決戦の東風じゃなくて半荘にしましょう。」

「分かった。」

「了解です。」

「東風でも負けちゃったのに半荘で勝てる気がしないじょ。」

優希が不安げな顔をしていると、和が優希の肩を軽く叩いた。

「そんな事ないですよ。ほら、場決めしましょう。」

「分かったじょ。」

2回目の場決め結果は

片岡優希 東

夢乃マホ 南

宮永咲 西

原村和 北

になった。

(今回は起家になれたじょ。今回こそ勝つじぇ!)

(マホちゃん、今度は南家なんだ・・・)

「じゃあ、始めましょうか。」

~東一局~ 親:片岡優希

片岡優希 25000

夢乃マホ 25000

宮永咲 25000

原村和 25000

(配牌一向聴、幸先がいいじぇ!)

(マホちゃんも怖いけど、東場の優希ちゃんも怖い。)

~二巡目~

「リーチ!」

(優希ちゃん、やっぱり速い。)

(とりあえず現物を・・・)

二人が降りている中で一人だけが向かっていく者がいた。

「通らば~、追っかけリーチします!」

(えっ!?二巡目に追っかけリーチ?)

(はいぃぃぃ!?)

(インターハイ2回戦の時の姉帯さんみたいな感じだよ・・・)

優希が次の牌をツモる。しかし・・・

(来い!・・・うぅ、一発ならずだじぇ。って事はまさか!?)

「ロン!リーチ一発平和ドラ1で8000です。」

(やっぱり、姉帯さんみたいな和了・・・)

「はい・・・」

(起家だったし待ちも配牌も悪くなかったじぇ。それなのに和了られたじょ・・・)

(さっきから一発が多いですね。まったく、凄い偶然です。)

~東二局~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 34000

宮永咲 25000

原村和 25000

片岡優希 16000

「マホの親番です!」

(マホちゃんの親番、注意しなきゃ。)

(連荘なんてさせませんよ!)

~13巡目~

「みっつづつ、みっつづつ・・・」

マホが3つの牌を1まとまりにしながら初心者のように打ち始めた。

(今度は鶴賀の妹尾さん!?)

(これを和了られたらツモ上がりでも16000点持ってかれる、私が0点になっちゃうじぇ。)

(牌を3つと2つに分けるなんて、ふざけてるんでしょうか。絶対に和了らせませんよ。)

~16巡目~

「ロン!12000です。」

マホが出したドラを和がすかさず狙い撃ちした。

「ひぃっ!跳ね満直撃されちゃいました・・・」

「ふざけた打ち方をするのが悪いんです。」

「うぅ、でも、こうやった方が有効牌が来る気がしたのです。」

「そんなオカルトあり得ません。」

「はいぃ・・・」

(和はああ言っとるけど、多分和が和了せんかったらこやつが四暗刻和了ってたんじゃろうな・・・)

(和ちゃん凄い!親番のマホちゃんに向かっていくなんて。私なんて降りちゃったよ。)

~東三局~ 親:宮永咲

原村和 37000

宮永咲 25000

夢乃マホ 22000

片岡優希 16000

(私の親番、大事にしないと!)

~7巡目~

「カン!」

マホが捨てた5ピンを咲が大明槓した。

(大明槓!?)

(咲さん。)

(まさか、宮永先輩!?)

咲が嶺上牌を取るとそのまま手牌の横に叩きつけた。

「ツモ!嶺上開花、タンヤオ三色同刻三暗刻、18000です!」

「あぁぁぁ、二連続で和了られちゃいましたぁ。」

(咲さん・・・)

(皆凄いじぇ、私なんて1回も和了れてないじょ。)

~東三局一本場~ 親:宮永咲

宮永咲 43000

原村和 37000

片岡優希 16000

夢乃マホ 4000

(マホだけ大量失点です。この局は絶対に取ります!)

~8巡目~

(来ました!これで・・・)

(なっ!?四暗刻単騎待ち!?8巡目にこんなん作れるなんて、どんな強運持っとるんじゃ!)

(これで、一気に逆転です!)

マホが捨てた牌を見た刹那、マホの下家から声が発せられた。

「カン!」

(宮永先輩!?)

(まさか!?)

咲は引いた嶺上牌では和了らなかった。

(ごめんねマホちゃん。)

「もう一個、カン!」

(マジですか!?)

(県代表の決勝みたいです。)

「カン!」

(三連続カン!?)

(ヤバすぎだじぇ。)

3つ目の嶺上牌を引く。嶺上の花が咲き乱れる。

「ツモっ!嶺上開花、ダブ東、混一、混老、対々、三暗刻、三槓子。48300です!」

「か、数え役満!?」

「マホ、清一じゃなくてドラも乗ってない数え役満初めて見ました・・・やっぱり宮永先輩はめっちゃくちゃです!」

「め、めっちゃくちゃ?」

「しかも、4000点しかなかったマホに数え役満なんて。」

「ごめんね、でも、和ちゃんに本気で戦いましょうって言われたから。」

「咲さん・・・」

「それに、マホちゃんには驚かされっぱなしだったから、私も良いところ見せたくって。」

「はぁ、それが本音か・・・」

「あはは・・・」

「あははじゃないじょ!咲ちゃんがマホちゃんを飛ばしちゃったせいで私だけ焼き鳥で終わっちゃったじょ。」

すると京太郎がニヤニヤしながら優希に近寄った。

「どっち道焼き鳥だったんじゃないのか?」

「何をぅ!?」

「まぁ、マホは四暗単騎テンバイじゃったけぇのぉ。」

「マジですか!?」

「は、はいぃ。」

「凄すぎだじぇ。もう2度とこんな卓に入りたくないじょ・・・」

「まぁまぁ、とりあえずもう時間も時間ですし、片付けて帰りましょう。」

「分かったじょ。」

~点数結果~

咲 91300

和 37000

優希 16000

マホ -44300

牌を片付けて、今日は解散となった。マホの再戦は、咲の圧勝で幕を閉じた。




いやー、自分で書いといてなんですが咲さん強いですね~。4000点しかないのに48300点のオーバーキル。私だったら麻雀辞めてますね・・・。
捕捉:最後のマホの四暗単騎は池田華菜の能力です。
点数が間違っていたため修正しました。


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第4話 氷華

今回は風越女子高校の新メンバーのお話です。


1年前、全国中学生麻雀大会インターミドル大会の個人戦決勝戦にて、凄まじい闘牌を見せた者がいた。その選手の名前は冬室氷華(ふゆむろひょうか)。彼女は、インターミドルの決勝にも関わらず、対戦相手3人の同時飛ばしをして優勝した。その圧倒的な力と終始無表情だった事から、彼女は冷血女王と呼ばれるようになっていた。

 

インターミドルが終了して、氷華は帰宅した。

「ただいま」

「おー!おかえり~。見てたよ~、優勝おめでと~。」

出迎えたのは3歳上の氷華の姉だった。

「冷やかしは辞めて、姉さん。」

「いやいや、冷やかしじゃなくて本心だよ~!なんたって私が行けなかった全国に行って、しかもそれで優勝してきちゃうんだもの。自慢の妹だよ!」

「あれくらい、大した事無い。高校になればもっと面白い人がいるはず。」

「ふーん、あ!そう言えば氷華は高校どうするの~?」

(高校?そう言えばまだ決めてなかったな・・・)

「姉さん、この近辺で麻雀の強豪校ってどこ?」

「強豪校~?う~ん、風越女子かな?」

「ふーん、なら高校はそこにする。」

「えっ!?ずいぶんとあっさり決めちゃうのね。」

「別にどこに行きたいとか思ってなかったし、正直麻雀が強くて家から近ければどこでもいいし。」

「まったく、氷華は本当に冷めてるね。だから冷血女王とか言われちゃうんだよ。」

「冷めてるのと冷血女王とか呼ばれてるのは関係無いでしょ。」

「いやいや~、関係ありありだよ~。氷華が無表情で無慈悲に3人飛ばしなんてするから呼ばれるようになったんじゃない。」

「はいはい、それより今日はもう疲れたから寝たいんだけど。」

「あー、悪いね~、じゃあおやすみ!氷華。」

「帰ったばかりだからまだ寝ないよ。」

「あはは、そーだね。お風呂沸いてるから先に入っちゃって。」

「うん。」

(風越女子か・・・強い人がいるといいな。)

 

 

そして1年後の4月、風越女子麻雀部部室にて。

「入部希望の冬室氷華です。よろしくお願いします。」

その名前を聞くと、部員達が全員彼女の方を振り向いた。

「冬室氷華!?去年のインターミドルチャンピオンの?」

「あー、はい、そうです。」

「マジで?」

「すげー!」

「大物が入ってくれたよ。」

「これで今年は全国に行けそうですね。」

肯定すると、様々な感想が氷華の耳に入ってきた。しかしその中で、1つの発言が気になった。

(今年は?じゃあもしかして去年までは行けてない?)

「あの、すみません。この高校って去年は全国大会に行って無いんですか?」

「あー、まあね。去年は清澄高校ってところに負けたんだよ。あと、2年前は龍門渕高校に負けた。その前まではうちが全国に行ってたんだけどね。」

(・・・は?全国常連なのかと思って入ったのに2年も行けてないの?はぁ、姉さんの言うことをもろに受けた私が悪いか・・・)

「つまり、風越女子麻雀部は大した事無いって事ですか。はぁ、やっぱり清澄に行けば良かったな。」

「大した事無いかどうか、自分で確かめてみろよ。池田、吉留、文堂、相手してやれ。」

大した事無いという発言を聞いて、顧問が腹を立てたのか、そんな提案を出してきた。

「はい!」

「わかりました。」

「了解です。」

(この人達が風越のトップ?そんなに強そうには見えないけど・・・)

「25000点持ちの半荘1回な。」

(25000点か・・・少ないな。)

「じゃあ早く始めようぜ。」

「はい。」

そして、試合が始まった。

 

 

~南三局~

「ツモ。」

(なっ!?)

(嘘でしょ。)

(そんな!?)

「これで飛び終了ですね。」

(マジで飛び終了させやがったこいつ。)

「やっぱり大した事無いですね。私程度にやられるなんて。」

氷華が試合中ほとんど見てなかった四人の点数を見ると意外な事に気が付いた。

~試合結果~

氷華:113600

池田:1300

吉留:-6400

文堂:-8500

(3人飛ばし出来ていない?一人だけ点数が残ってる。誰?名前は・・・池田華菜。)

「すみません、池田先輩はどなたですか?」

「むっ、池田は私だけど。」

(あぁ、対面にいた人か。)

「池田先輩はキャプテンですか?」

「そうだけどどうして分かったんだ?」

(やっぱりこの人がキャプテンか・・・)

「成る程、この高校にもましな人はいるみたいですね。」

「華菜ちゃんの質問を無視すんなー!」

「あぁ、すみません。キャプテンだと思った理由は、池田先輩だけハコになってなかったからです。」

「あー、そういう事か。」

「はい。それより、先生。」

「な、なんだよ。」

氷華に畏怖の念を覚えていたため、顧問は少し怯んでしまっていた。

「インターハイに出るためにはどうすれば良いのですか?」

「なんだ、そんな事か。インターハイには校内ランキング上位に入れば行ける。」

「じゃあ、今ランキング上位に勝ったんで1位じゃダメですか?」

「はぁ?良いわけ無いだろ。何試合か重ねて総合的に評価された物が我が校のランキングだ。それに、半荘1回だけだったら池田達に勝った奴は結構いるぞ?それなのにランキング上位に食い込める訳無いだろ。」

「そうですか。なら、私が風越の部員全員に勝ったら認めて貰えますか?」

氷華から感じられる強大なオーラが部員全員を恐怖させる。『この人を敵に回してはいけない』という動物の本能のような物が部員達の頭に張り付かれているような感覚に襲われる。

「私、あの人と同じ卓を囲みたくないよ・・・」

「絶対嫌だよあんな異次元の打ち手。」

部員達が氷華に怖じ気づいていたところ、顧問が氷華に尋ねた。

「どうしてそこまで上位に入りたいんだ?」

「インターハイの個人戦と団体戦の両方に出たいからです。」

氷華は淡々と答える。

「インターハイ?団体戦はともかく個人戦なら別に上位じゃなくても出れるぞ?」

「個人戦だけじゃダメなんです。団体戦にも出ないとダメなんです。」

「何でそんなにインターハイに拘るんだ?まぁ、インターハイに拘るのは良いことだけどさ。」

「去年のインターミドル個人戦の県代表で私はたった一人だけに負けてるんですよ。まぁ、卓を囲んだ3人とも私をマークしてたせいで3対1みたいになってたってのもありますけど、それでも稼ぎ負けたんです。それが悔しくて、それで彼女を倒したいんですよ。」

無表情で淡々と話している彼女の悔しいと思っているという発言を聞いて部員が少し驚いていた。

「それなら個人戦だけでもいいんじゃないのか?」

池田が氷華に尋ねた。

「ダメなんです。彼女には個人戦だけじゃなくて団体戦でも倒したいんです。というより、彼女を全国に行かせたくないと言った方が正しいですね。」

「その相手は誰なんだよ。」

「夢乃マホ。当時高遠原中学2年の子です。」

「2年?3年じゃなくて?」

「はい。2年です。」

「何で2年なのに今年のインターハイに出る必要があるんだ?」

「噂に聞いたんです。夢乃マホが飛び級して高校に入ったって。」

「飛び級!?そんなまさか。」

「まぁ、あり得ないかもしれません。でも、もし来ないとしても、今年活躍して差を見せ付けるのも良いかと思いまして。」

「成る程、ま、これから上位に入れるように頑張れよ。」

「はい。」

(夢乃マホ、次に同じ卓になったら叩き潰す。)




次回は鶴賀の新メンバーの紹介をする予定です。投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。


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第5話 新勢力

今回は鶴賀学園の新入部員の紹介回です。


鶴賀学園麻雀部に二人の新入部員が入った。その二人の名前は一ノ瀬一葉(いちのせかずは)と汐見真紀(しおみまき)だ。

「よろしくお願いいたします。」

「よろしくです!」

一葉と真紀が挨拶をした。

「うむ、よろしく。」

「よろしくっす~。」

「よ、よろしくお願いします。」

挨拶を返したのは鶴賀学園麻雀部の津山睦月と東横桃子と妹尾佳織だ。

「これで5人揃ったっすね。今年は団体戦出れないんじゃないかってヒヤヒヤしたっすよ。」

「うむ、じゃあ、早速打とうか。私と一ノ瀬さんと汐見さん、あともう一人必要だがどっちか入らないか?」

「じゃあ私入るっすー!」

「じゃあやりましょー先輩方!」

「お手柔らかにお願いいたします。」

「うむ、じゃあ試合開始だ。」

 

~南四局~ 親:津山睦月

一ノ瀬一葉 38300

東横桃子 24000

汐見真紀 19000

津山睦月 18700

「一ノ瀬さん凄いっすね。」

「圧倒的だな。」

「そんな事ありません。私なんぞには勿体ないお言葉です。」

「いや、一葉さんとっても凄いですよ。そんな謙遜なさらず。」

「一葉はおしとやかな性格なのに麻雀だと高い手をドカドカ和了るタイプなんですよね。小学校の頃からウチら一緒でしたけどウチも最初そのギャップにしてやられました。」

「ギャップ萌えってやつっすね。」

「それです!」

「な、何ですかそれは、やめて下さい!」

一葉の顔が真っ赤に染まった。

「あ!照れた~、一葉可愛い~。」

「んもぅ、真紀ぃ!やめて下さいよぉ!」

「あはは、わりぃわりぃ。」

「そろそろ再開していいだろうか?」

3人で話していると睦月は困り顔でそう言った。

「あ、ごめんなさい。」

「申し訳ございません!」

「うむ、じゃあサイコロ振るね。」

(オーラスで親番。私は今のところ焼き鳥状態。ここが踏ん張り所だな。)

~9巡目~

「リーチです。」

(一ノ瀬さんのリーチ、高い手がくる。いつもなら降りるけど、ここは攻める!)

「り、リーチ!」

(通った!これを和了れれば勝てる!)

(一葉のリーチ怖いな、降りとくか。)

(一発ならずですか。)

(来いっ!)

「ツモっ!リーチ一発ツモ混一中ドラ1。8000オール!」

「うわっ、部長さん、最後の最後で親倍って。」

「流石部長ですね。最後にまくられてしまいました。」

「流石っすね。」

「うむ、じゃあ片付けようか。」

「はい。」

~試合結果~

睦月睦月 43700

一ノ瀬一葉 29300

東横桃子 16000

汐見真紀 11000

 

 

一葉と真紀は先に帰る事にした

「じゃあ、私達は帰りますね。」

「本日はとても楽しかったです。これからもよろしくお願いいたします。」

「うむ、また明日。」

「また明日っす~。」

二人が帰ると、残った3人で話し始めた。

「一ノ瀬さん強かったっすね。」

「うむ、今年の団体戦の大将は彼女になりそうだな。」

「あのぉ、私、後ろで皆さんを見ていたけど、汐見さんも凄いと思うよ?」

「あの人が?確かに守りは固かったが。」

「焼き鳥だったじゃないっすか。」

「でも、あの人、私にはわざわざ手を崩して和了らないようにしていたように見えたんだけど・・・」

「手加減してたって事っすか?」

「分からない、守りに徹してたからかも。私、守りはまだ全然分からないから。」

「成る程、まぁ、そこら辺はこれから打ってけば分かるっすよ。」

「うむ、彼女達の活躍を期待しよう。」

 

その頃、一葉と真紀は帰路を歩いていた。

「ところで真紀?」

「ん?どしたー?」

「どうして先程の対局で手加減したのですか?」

「あ、やっぱりバレてた?」

「当然です。何年一緒だと思ってるのですか。」

「いやー、だってさー、私が本気出したら一葉以外が飛んじゃうでしょ?」

「まぁ、確かにそうかもしれませんが、手加減はよくありませんよ。」

「まぁ、今回は親善試合みたいなものじゃない?だから今回は多目に見てよ。次からは本気出すからさ。」

「はぁ、分かりました。」

「大丈夫、ウチと一葉がいればインターハイなんてちょちょいのちょいだよ。」

「油断してはいけませんよ。去年の長野の県代表の決勝を真紀も見たでしょう?」

「まあね、確かに天江衣さんと宮永咲さんは凄いけど、ウチもあの人達とやりあえる位は強いと思ってるよ。」

「そうですね。私も全力を尽くしますから、全国、行きましょうね。」

「おう!」




次からは清澄高校の話を書く予定です。本作のオリジナルキャラの3人の活躍をご期待下さい。


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第6話 脅威

清澄高校麻雀部部室では、咲、優希、マホ、ムロの4人で麻雀をしようとしていた。すると、突然思い出したかのようにまこが立ち上がった。

「インターハイ県予選の登録、まだしとらんかったわ!」

「えぇ、してなかったんですか?」

「早くしないといけませんよ。」

「うーん、ほうじゃのぉー、じゃあ和!」

「はい、何ですか?」

「次期部長として一緒に行くか。」

「えっ!?私が次期部長なんですか?」

「どう考えてもほうじゃろ。咲はどんくさいし、優希は何するか分からんし京太郎はまず無理じゃからのぉ。」

「俺の理由だけテキトーなんですがそれは・・・」

「まぁ、とりあえず時間無いけぇ。」

「わ、分かりました。」

まこと和が急いで支度をして部室を出ていった。

「じゃ、じゃあ、はじめよっか。」

「はい!マホ、今度こそ勝ちますよ!」

~場決め結局~

東:片岡優希

南:室橋裕子

西:夢乃マホ

北:宮永咲

 

~東一局~ 親:片岡優希

片岡優希 25000

室橋弘子 25000

夢乃マホ 25000

宮永咲 25000

「ダブルリーチ!幸先がいいじぇ!」

「うわっ、 優希先輩、流石。」

(・・・)

(優希ちゃん凄い。)

(来いっ!はぁ、一発ならずだじょ。)

(流石にダブリー一発は無いか・・・)

マホがツモった牌を確認すると、4つの牌を倒した。

「カン。」

「えっ?」

(マホ、まさか・・・)

「ツモ。嶺上開花ツモ、清一三暗刻ドラ1。6000・12000です。」

「はぁ?2巡目に清一の嶺上開花で三倍満!?そんなの咲ちゃんでも見たことないじぇ。」

「出来ました~。」

(マホちゃん・・・!いや、これくらいじゃ挫けないよ!)

~東二局~ 親:室橋裕子

夢乃マホ 50000

室橋裕子 19000

宮永咲 19000

片岡優希 12000

(このままだとまた私が負けちゃうじょ。お!来たじぇ!)

「リーチだじぇ!」

(またダブリー!?)

(片岡先輩、やっぱり東場だと速い。)

(来いっ!)

「ツモだじぇ!ダブリー一発ツモ平和純チャン三色一盃口で6000・12000だじぇ!!」

(ダブリーで純チャン三色!?すごっ・・・)

(ギリギリマホがリードしてますね。片岡先輩は本当にヒヤヒヤします。)

~東三局~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 44000

片岡優希 36000

宮永咲 13000

室橋裕子 7000

(この親、大事にしたいです!あっ・・・)

「つ、ツモ。天和。16000オールです。」

「はぃぃぃぃ?天和!?」

「嘘でしょ・・・」

「貴様ぁ!積み込みしたな!」

「してないですよ!って言うか出来ないですよ。自分でもびっくりしてます。」

「こ、これで終わりだね。」

「私の連続和了で終わらせる野望がおじゃんだじぇ・・・」

~試合結果~

夢乃マホ 92000

片岡優希20000

宮永咲 -3000

室橋裕子 -9000

 

「また勝てなかったじょ・・・」

「まさか天和されるとはね。」

「むぅ~、最近全然勝ててないから楽しく無いじょぉ!今日は結構乗ってたのにぃ。」

「マホちゃん、去年の合宿の時からの成長が凄いね。インターミドルはどんな感じだったの?」

「あぁ、インターミドルは、惨敗でした。」

落ち込むマホにムロがフォローを入れる。

「でもマホはあの人に勝ったから凄いじゃん。」

「そうですけど、それも偶然でしょうし。」

「あの人?って誰?」

「あの人というのは冬室氷華さん、去年のインターミドルの全国優勝者です。」

「その人は凄いの?」

マホは思い出したくない出来事を思い出すような顔をして氷華について話し始めた。

「とんでもないです。あの人は敵に回してはいけない人です。マホは去年、他家の方とほとんど3対1の協力対戦のような打ち方をしてやっとマホだけが冬室さんを上回ったのです。」

「でも、清澄にも全中覇者ののどちゃんがいるじぇ!」

「そうですね。でも、片岡先輩がもし冬室さんと戦う事になったら気を付けてください。」

「ん?どうしてだじょ?」

「冬室さんは東場を速攻で流して南場で高い手を和了るタイプなんです。だから東場に強い片岡先輩には不利なんじゃないかと思いまして。」

「成る程、そういうことか!それについては安心していいじぇ!東場でその人よりも速く和了ればいいんだじぇ。そうすれば流せないし南場で高い手を和了られてもそこまでマイナスにはならないじょ。」

「・・・そうですね。」

マホが不安げな顔をしていると部室のドアが開かれた。

「そんなに不安なら、合宿でもっと強ぉなりゃええじゃろ!」

「ただいま帰りました。」

まこと和が県予選の登録を終えて戻って来た。

「のどちゃんおかえり~。」

「和ちゃん、県予選の登録お疲れ様。」

「おい!わしの事無視すんな!」

「染谷先輩、竹井元部長の真似したつもりですか?」

「全然似合ってなかったじぇ。」

「似合ってないからって無視すんな!」

「はい、すいませんでした。」

「ほいじゃ、日程について説明するけぇ。」

「はい。」

合宿の日程についての説明をされた。今年も、清澄高校麻雀部の合宿が始まる。




次は合宿の予定です。清澄高校の成長をご期待下さい。


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第7話 合宿

清澄高校麻雀部の合宿が始まった。合宿は三泊四日で行われる。バスに乗って合宿場に着いた。そこにはある人がお出迎えをしてくれていた。それは去年、清澄高校麻雀部の部長を勤めていた竹井久元部長だった。

「皆、久し振り~。」

「部長!一年振りだじぇ!」

「部長、こんにちは。」

「竹井先輩、お久しぶりです。」

「おい!今の部長はわしじゃ!」

「そうよ、二人とも和を見習いなさい。」

「ほうじゃ、和はちゃんとわしの事部長って呼んどるよ。」

「そりゃあ、世代交代して新体制になったのに未だに部長って呼んでるなんて、なんか変じゃないですか。」

「ほうじゃほうじゃ。和の言う通りじゃ。」

「でも、なんか私的に部長は竹井先輩のイメージなんですよね。」

「それは少しだけ分かりますが、このまま部長って呼んでるといつまでも先輩に頼りっきりで自立が出来ないような気がするんです。」

和の発言に一同が驚きの表情を見せる。

「どうして皆さん驚いているんですか?」

「いや、そこまで考えとるとは思わんかったわ。」

「そうね、私もまこが今の部長なんだからまこを部長って呼ぶべきだとしか思ってなかったわ。」

「のどちゃんは生真面目すぎるんだじぇ。」

「はいはい、そんなことで話し合っても意味無いから早く合宿場の中に入っちゃいましょう。」

「分かりました。」

「はい。」

「合宿開始だじぇ!」

合宿場に入り、清澄高校麻雀部の合宿が始まった。

 

「合宿開始する前に、まずは温泉じゃー!」

久がまこの発言を聞いて思わず苦笑いした。

「咲ちゃん、今の染谷ブチョーの発言聞いたか?」

「うん、完璧に部長のパクりだったよね。これまでは部長に似せてるなって感じるくらいだったけど今回のはもろパクりだったね。」

「やっぱり咲ちゃんも同じ事考えてたか。」

「おいそこ!丸聞こえじゃ!あと、ブチョーじゃのぉて部長じゃ!」

長引きそうになった為、久が仲裁に入った。

「ほらほら、一応後輩なんだからまこの事いじめないであげて。」

「一応ってあんた・・・」

「はーい、分かったじぇ。」

「ごめんなさい、染谷部長。」

「まぁ、分かればいいんじゃ。ほれ、温泉じゃ。」

「はい。」

麻雀部員達は温泉に入った。温泉には露天風呂もあった為、咲達はそっちに入る事にした。

「今年、勝てるのかな。」

咲が和に話しかけた。

「どうしてですか?」

「だって、去年の県予選決勝、衣ちゃん・・・じゃなくて、衣さんが途中で風越の池田先輩を飛ばしてたら、私達はその時点で敗北だった。その衣さんとまた戦わなきゃいけないし、しかも私達は去年勝ってるから集中的に狙われるかもしれない。更に言うと去年も戦った人達がたくさん出てくるから私達の手の内も知られてる訳だから心配で仕方ないんだよ。」

「ははっ、心配事が多いのぉ。」

隣で聞いていたまこが会話に入った。

「心配な事を言っていたらきりがありません。だったらもっと安心出来ることを考えましょう。例えば、そうですね・・・さっきの私達の手の内が知られてるっていう心配ですが、手の内を知っているのは相手だけでは無いです。」

「あ、そうだね。」

「はい、私達も皆さんの打ち方は知ってます。ならその心配は要りません。それに、今年はマホちゃんがいます。マホちゃんの打ち方は誰にも知られてないはずなのでそこは有利になると思います。」

「成る程、確かに。」

「はい!マホ、頑張ります!」

「あ、でも、マホちゃんの打ち方を知られない為には決勝まで隠さなきゃいけないよね。どうしよう・・・」

「ふっふっふっ。話は聞かせて貰ったじぇ!それなら安心だじょ。私が先鋒戦で飛ばしちゃえばいいんだじぇ!」

「そんな事出来るの?」

「去年全国の先鋒相手にあそこまで戦えたなら大丈夫だじぇ。」

優希が調子に乗っていると、一人が口を挟んだ。

「全然大丈夫じゃないわよ。」

口を挟んだのは久だった。

「全然大丈夫じゃないわよ、確かに優希は去年、全国の先鋒と戦っていいところまで戦えてた。でもそれじゃあ全っ然駄目よ。」

「どうしてだじょ。」

「忘れたの?団体戦は合計100000点。それを半荘一回で削るのに今の優希じゃ無理ね。」

「な、なら、どうすればいいんだじょ。」

「その言葉を待ってたのよ!」

久が突然立ち上がった。他の人は驚いて久の方を呆然と見ていた。

「ほえ?」

「そう、今なら優希は飛び終了出来ない。ならどうするか、もう分かるわよね?私達は今どこにいると思ってるの?」

「あ!合宿でもっと強く。」

「そうよ。優希、貴方は2回戦の先鋒戦で誰かを飛ばすくらいの火力がつくように特訓よ。」

「えっ?1回戦じゃなくて2回戦なんですか?」

「えぇ、だって私達は去年全国優勝してるのよ?それなのにシードじゃないわけ無いじゃない。」

「あぁ、確かにそうですね。」

「じゃ、早速上がって特訓よ。」

「特打ちだじぇ。」

全員が露天風呂から上がり、部屋へ戻った。すると、早めに着替えを済まして帰って来ていた久が待ち構えていた。

「という訳で、とりあえず最初は優希と須賀君、ムロちゃん、和の4人で打ってちょうだい。そして、残った私、咲、マホちゃん、まこの4人で打つ。そして、私と和と優希、あとたまにまこをローテーションして打ってちょうだい。」

今の久の発言に、咲が動揺を見せる。

「え、私はローテーションしないんですか?」

「えぇそうよ。咲とマホちゃんは必ず一緒の卓について貰うわ。」

「えぇぇぇ!?そんなぁ・・・」

「咲はマホちゃんと打ってメンタル面を強化して欲しいと思ってるの。咲は相手が少しでも変な行動を取ると怯んじゃって本来の貴方の実力が出せなくなる。だから変な打ち方ばっかりするマホちゃんと一緒に打ってたらその怯みも無くなるんじゃないかって思ってね。」

「そうですか・・・」

「あれ、なんかマホ、今酷い事言われた気がするです。」

「あの、部ちょ、じゃなくて竹井先輩、どうして俺とムロもローテーション無しなんですか?」

「貴方達は結構打てるようにはなってきてるけどまだ自分の打ち方を確立してないのよ。だから咲やマホちゃんと一緒に打ってたら、変な癖が付いちゃうんじゃないかと思ってね。」

「成る程。」

「はい、じゃあ皆卓について、特訓開始よ!」

「はい!」

8人は4日間の合宿を乗りきった。合宿を終えて県予選まで最終調整ををして、遂に県予選当日になった。マホが待ちに待ったインターハイが始まる。




次回から遂に県予選が始まります。インターハイでの勝負はこれまでよりも丁寧に場を運びたいので投稿が遅くなるかと思います。ご了承下さい。


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第8話 開幕

清澄高校のメンバーは県予選会場に着いた。

「帰って来たじぇ。私達の伝説が始まったこの地に。今年も優勝するじょぉ!」

「頑張りましょうね。」

「あの、宮永先輩が見当たらないのですが・・・」

「えっ!?」

「また迷子ですかぁ?どうしましょう。」

「あ、じゃあマホに任せて下さい!マホが必ず宮永先輩を見つけてきます。」

マホは自信満々な顔でこちらを見ていた。

「ほいじゃあよろしくのぉ。」

「はい!」

(よし、マホ、頑張ります!えっと、来た道はこっちでしたよね。よし、こっちに行ってみましょう。)

マホが数分捜索しているとお目当ての人が見つかった。

「宮永先輩!」

「あ、マホちゃん、良かった、また迷子になるところだったよ。」

「・・・もう迷子ですよ。」

「あはは、じゃ、じゃあ皆のところに行こうか。」

「そうですね・・・ってあれ?ここ、どこだっけ?」

「・・・えっ?マホちゃんもしかして・・・」

「完全に迷っちゃいました。」

「えぇぇぇ!?どうするの?」

二人があたふたしてると後ろの方から声をかけられた。

「あの、間違っていたら申し訳ないのですが、もしかして道に迷われたのですか?」

咲が振り返ると、そこには見覚えのある制服を着た女の子が立っていた。

(この制服は確か・・・鶴賀学園?じゃあこの人は鶴賀の人なのかな。去年の合宿の時に5人しかいなかったから新入生なのかな?)

「実は迷っちゃって、あはは・・・」

「どちらに向かっているんですか?」

「会場の入口の方に向かいたいんだけど。」

「あ、でしたら私もそっちに行くつもりだったので良かったらご一緒しませんか?」

「あ、ありがとうございます。あの、良かったらお名前を。」

「私は、鶴賀学園高校1年の一ノ瀬一葉と申します。団体戦か個人戦で戦う事になったらよろしくお願いいたします。」

(あーあ、私、この会場に来るの2年目なのに1年生に送ってもらってるよ。情けないな・・・)

「うん。よろしくね、一葉ちゃん。あ、ちなみに私は咲って言うの。宮永咲、そしてこっちが夢乃マホちゃん。」

宮永咲という名前を聞いた瞬間、一葉の目の色が変わった。

「えっ?宮永さんなんですか?あの、去年の清澄高校の大将のあの宮永さんですか?」

「うん、そうだけど。」

「あ、変な事をお聞きしてしまいすみません。少し私が思っていた宮永さんのイメージと違っていたので。」

「えぇ、私ってどんなイメージだったの?」

「えっと、本人の前でこんな事言うのは失礼と存じますが、笑顔で相手をまくって勝っていたので、正直性格がお悪い方なのかなと思っていました。」

「あぁ、確かに、そう言われてもおかしくなかったかもしれないね・・・」

「あ、気分を害してしまいましたよね。申し訳ありません!」

「いや、いいよ・・・」

「本当に申し訳ありません!」

「大丈夫だよ、落ち込んでないから。」

「・・・お優しいのですね。」

「そうかな?私は、迷ってた顔も知らない私達を助けてくれた一葉ちゃんの方が優しいと思うけどな。」

「そ、そんな事ありません。困っている方を助けるのは当然の事です。」

「やっぱり優しいね。」

「そ、そんな事無いですよぉ。やめて下さい、宮永さん。」

(本当の事を言っただけなのにな・・・)

「ところで、どうして一葉ちゃんはあんな所にいたの?」

「あぁ、私は、真紀・・・友達が迷っちゃったらしくて探してたのですが、見つかったらしく戻ってこいと連絡が入ったところに丁度宮永さん達がいらした、と言った感じです。」

「ふーん、そうだったんだ。」

「はい。あっ、着きました。あちらに清澄高校の方々がいらっしゃいますよ。」

「本当だ!ありがとう一葉ちゃん!」

「ありがとうございましたです。」

「こちらこそ、宮永さんとお話が出来て嬉しかったです。では私も戻ります。お気を付けて。」

「本当にありがとうね、一葉ちゃん!」

「は、はい。」

(宮永さん・・・優しかったな。)

「おー!一葉~、こっちこっち!」

「あ!真紀ぃ!どこに行ってたんですか!探したんですよ!」

「いやー、柄にもなく緊張しちゃったから外の空気を吸いに行ったら喉乾いてさ、そんでもって飲み物買ったら今度はトイレに行きたくなってさ。それでトイレに行ってた。」

「自由人ですか!どれだけうろうろとしてるんですか、もぉ。」

「ま、まあまあ、そこまで言わなくても。」

佳織が一葉をなだめる。しかし一葉の怒りはそこでは収まらなかった。

「いいえ、駄目です!妹尾先輩。真紀にはちゃんと言ってあげないとまた同じような事をしてしまいます。」

「言いたい事は分かるけど怒るのは後にして、今からオーダー発表するから。」

「あ、部長、も、申し訳ありません。オーダーお願いいたします。」

「うむ、まず先鋒は私、次鋒は佳織、中堅は一ノ瀬さん、副将はモモ、」

「ちょっと待って下さいっす。」

睦月がオーダーを言っていると、モモが口を挟んだ。

「む?どうしたんだ?」

「えっと、勝手な事言うっすけど、私、清澄のおっぱいさんと相性が悪いみたいで、副将じゃないところがいいっす。」

「うむ、なら、一ノ瀬さんと変更にしよう。モモが中堅で一ノ瀬さんが副将、そして汐見さんが大将。このオーダーでいいだろうか?」

「はい。」

「オッケーっす。」

「大将、任されました!」

「うむ、ではまずは1回戦、頑張ろう。」

「「「「はいっ。」」」」

 

一葉に会場入口まで送ってもらっていた咲とマホが他の部員達と合流した。

「咲さん!2年目なのに迷子にならないで下さい。」

「あはは、ごめんごめん。」

「しっかりして下さい、1回戦が始まっちゃいますよ。」

「そうだね。あ、そういえば和ちゃんは1回戦の試合、風越女子を見に行くんだっけ?」

「はい。優希とムロさんと3人で風越を見てきます。」

「うん、じゃあまた後で。」

「はい。」

咲は、マホとまこの3人で、鶴賀学園を見ることにした。1回戦は、鶴賀が他校を圧倒的にリードして中堅にして1校を飛ばして見事に一位抜けを果たした。

「鶴賀の人、やっぱり去年よりも強くなってる。」

「そりゃあそうじゃろ。まぁ、でもここまで仕上がっとるとはのぉ。」

「そうですね。」

「さっ、戻るかの。」

「はい。」

「はいです。」

会場を歩いていると、他の学校の途中経過が映っていた。すると、風越女子の試合も終わっていた。

(凄い、風越女子も終わるの早いな。)

「おー!咲ちゃん達いたじぇ。」

咲達は優希達と合流し、昼食を取ることにした。

「優希ちゃん、風越はどうだった?」

「先鋒の冬室とか言う人が凄かったじょ。南場に入ってから高い手を5回も和了って2位を完全に引き離してたじぇ。そのあとの人は安い手で流して池田が最後にだめ押しの倍満ツモで勝ってたじょ。」

「そうだったんだ。こっちは津山さんと妹尾さんがどんどん他校を削って一番点が低かった高校を東横さんが3連続で狙い打ちして飛び終了だったよ。」

「飛び終了とか凄いじぇ。」

「東横さん、今年は中堅なんですね。」

「そうみたいだね。マホちゃん、あの人は強いけど頑張ってね。」

「はい。マホ、頑張ります!」

昼食を食べ終えるとほぼ同時にアナウンスが鳴った。

『長野県予選の二回戦を開始いたします。各校先鋒の選手は、対局室に移動して下さい。』

「ついに始まるじぇ。2年目のインターハイ!」

「頑張って、優希ちゃん!」

「頑張って下さい。」

「任せとけ!タコスも持ったし準備万端だじょ!」

優希が対局室に移動する。すると、もう既に対局者は揃っていた。場決め牌を引くと、東の文字が見えた。

(よし、今回も起家だじょ。幸先がいいじぇ。)

『A卓二回戦、開始です。』

『さあ、二回戦はシード校の清澄高校、片岡優希が起家で始まりました。解説の藤田プロ、よろしくお願いします。』

『よろしく。』

~3巡目~

「リーチだじぇ!」

『東一局、開幕3巡目に親リーチです。』

『やはり彼女、東場は速いな。』

『そうですね。片岡選手は東場での聴牌速度が速いですね。』

「一発ツモ!リーチ一発ツモ純チャン三色で8000オールだじぇ!」

「ロン!メンタンピン三色ドラ1で18300だじぇ!」

「ツモ!6200オールだじぇ!」

「ロン!12900だじょ!」

「ロン!25200だじぇ!」

~観戦室~

「うわぁ、優希ちゃん凄い・・・」

「こりゃ、本当に一人で終わらせるかも知れんのぉ。」

~東一局7本場~

「ツモ。8700オールだじぇ。」

『・・・な、何という事でしょう。片岡選手が東一局で連荘して、なんと今宮女子が飛んだ為、先鋒戦東一局にして、清澄高校の決勝戦進出が決まりました!』

「うわわっ、片岡先輩、凄すぎです。」

「まさか本当に東一局で終わらせるとはのぉ。」

「優希・・・」

「優希ちゃん凄い。」

優希の成績に驚いていると、後ろから元気な声がした。

「主役が帰ったじぇ。」

「優希ちゃん!」

「片岡先輩!凄かったです。」

「決勝もこのままぶっちぎりで行くじぇ!」

「頑張ろうね。」

「ちょっ、先輩方!見て下さい、龍門渕高校が!」

「どうしたの?ムロちゃん。」

「えっと、龍門渕高校も先鋒戦で他校を飛ばして終わってます。」

「ノッポか、今年は負けないじょ。」

「今の優希ちゃんの調子なら、大丈夫だよ。頑張ってね。」

「任せとけ!ぶっちぎりで染谷ブチョーに回すじょ。」

「おう、期待しとるよ。とりあえず今日はゆっくり休んで明日に備えろよ。」

「はい。じゃあ宿泊施設に移動しましょうか。」

「あ、そう言えば去年活躍したから近くに泊まれるんだったね。」

「先輩が頑張ってくれたお陰ですね。」

「咲さんが頑張ってくれましたからね。」

「そんな事無いよ。部長や皆が頑張ってくれたお陰だよ。」

「ほれほれ、疲れたけぇ早ぅ旅館行くぞ。」

「疲れたじぇ。早く行くじょ!」

「あ、待ってよ優希ちゃん。」

(明日は決勝。明日、必ず勝ってまた全国に行く!)




次からは遂に県予選の決勝です。投稿遅れて申し訳ありません。


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第9話 先鋒前半戦

県予選決勝は前半と後半の2話に分けて全10話で終わらせる予定です。実況と解説とアナウンスの声は『』にしています。


遂に決勝戦の当日になった。二回戦を突破した咲達は県予選の会場近くの旅館に泊まっていた。

「ほれ、起きろー。朝じゃ。」

まこが部員達を起こす。部員達は眠そうではあったが、決勝戦当日という事もあり、しっかりと目を覚ましていた。身支度を済ませて、隣の部屋に泊まっていた京太郎と合流して、出発の時間になった。

「ほいじゃあ、出発じゃ。」

「頑張ろうね、和ちゃん。」

「はい。今年も絶対優勝しましょう。」

「それじゃあ、行くじぇ!」

「はい!」

旅館を出発して、会場に着いた。会場に入ると、中にいた人達の注目が集まった。

「昨年の優勝校の清澄高校だ!」

「今年も優勝してインターハイ二連覇なるか?」

会場がざわめき始めた。雑誌の記者の人に取材され、控え室に移動しようとしていると、そこにある人がいた。

「皆、今日は絶対勝たなきゃいけない日よ。頑張って。」

そこにいたのは久だった。

「部長!」

「あら、部長じゃないでしょ?」

「竹井先輩、見に来てくれたんですね。」

「えぇ、昨日はサークルの活動があって行けなかったけど、今日は来れたわ。」

「そうだったんですか。」

「今日来るのは私だけじゃ無いわよ。去年の3年生達もやって来るわ。」

「ワハハ、清澄じゃないか。」

「久もいるな。」

「あら、噂をすれば影ね。蒲原さん、ゆみ。」

「久しいな、今年の清澄は久が抜けたが、大丈夫なのか?」

「ふふっ、それは見てのお楽しみよ。逆に、鶴賀の方はどうなの?二人が抜けて部員3人しかいないんじゃない?」

「大丈夫、優秀な二人が入ってくれたからな。」

優秀な二人と言う言葉を聞いて、咲が思い出したようにゆみに尋ねた。

「あ、それってもしかして一葉ちゃんですか?」

「ん?一ノ瀬を知っているのか?」

「はい。昨日道に迷ってたら、一葉ちゃんが道を案内してくれたんです。」

「えっ!?マホちゃんが連れてきたんじゃ無いんですか?」

「えっと、宮永先輩を見つけたのはいいんですけど、そこがどこだか分からなくなってしまって。」

「はぁ、マホちゃんに任せた私がバカでした。」

「咲はまた迷子になってたの?まったく、2年目なんだからしっかりしてちょうだい。」

「はい。」

「もう少し話したいところじゃけど時間じゃけぇもう行くわ。」

「そっか。じゃ、頑張れ。」

「絶対全国に行くじぇ!」

咲達が控え室に向かうと、久が呼んでいたもう一人の人物がやって来た。

「あら、美穂子来たわね。」

「上埜さ・・・じゃなくて久、それに二人とも。久しぶりです。」

「私とは昨日会ったじゃない。」

「そ、そうですね。」

「昨日?どうして昨日会ったんだ?」

「言ってなかったっけ?私と美穂子は一緒の大学なのよ。」

「ワハハ、そうだったのか。」

「えぇ、昨日はサークルの活動があって、久と私はその活動に行ってたんです。」

「なるほどなー。」

「それより美穂子、今年の風越に凄い子が入ったって聞いたんだけど。」

「そうなの、冬室氷華さんって言うんだけど。」

「冬室?私の通ってる大学にも冬室がいたような気がするな。」

ゆみがそう言うと、後ろから声がした。

「そりゃあそうよ、だって私の妹だもの。」

「冬室じゃないか。」

「よっ、加治木。」

「あっ、貴女は、冬室焦華さん。」

「え、美穂子、この人知ってるの?」

「えぇ、冬室さんは、私が高校1年の時に完敗した相手です。」

「へぇー、覚えてたんだ。福路美穂子さん。」

「はい。でも、あんなに強かったのにどうして2年から公式大会に出なくなったのですか?」

「いやー、実は2年も一応出てたんだよ。」

「そうなんですか?」

「まぁね、父親の仕事の都合で2年前まで東京に住んでてね、そこで西東京代表の個人戦であの宮永照に散々やられたわけよ。そのせいでこれまであった自信が無くなって全然勝てなくなったから部を辞めちゃったんだよ。」

「そんな事があったんですか。」

「盛り上がってるところ悪いんだけど、そろそろ席取らないと埋まっちゃうわよ?」

「うわっ、急ぎましょう。」

美穂子達が急いで席の確保をする。まだ席が余っていた為、全員座ることが出来た。

その頃、清澄高校は決勝戦の準備をしていた。

「これが俺の特性タコスだぁー!」

「おぉ!去年のよりも美味しそうだじょ。成長したな京太郎!」

「うん、これ凄く美味しいよ、京ちゃん。」

「そうだろうな、料理本買って研究したからな。」

「もはやただの主夫じゃな・・・」

「美味しかったじょ。後半戦の分のタコスの買い出しもよろしくな!」

「おう、任せろ!」

「あの、須賀先輩、マホも中堅戦の時に食べたいのでもう1つ買ってきて欲しいです。」

「1つ?2つじゃなくて?」

「はい。」

「今日の団体戦は前半と後半があるんたぞ?」

「はい、1つでお願いします。」

「そっか、わかった。じゃあ行ってくる。」

(後輩にまでパシられてる京ちゃんって・・・)

『まもなく、県予選決勝の先鋒戦を開始します。出場選手の方は対局室に移動して下さい。』

「おっと、私も呼ばれたじぇ。それじゃ、私も行ってくるじょ!」

「頑張れよー。」

「頑張って下さいです。」

「任せとけ!」

優希が対局室に向かう。そして対局室に入ると、去年の先鋒戦でも戦った龍門渕高校の井上純がいた。

「久しぶりだな、ノッポ!」

「タコスチビじゃねぇか、今年も焼き鳥にならないようにせいぜい頑張れよ。」

「なにおぅ!」

「あれ、今日はタコス持ってきてないのか?」

「お前にまた食べられるから先に食べてきたじぇ。」

「もう食わねぇよ。」

二人が喋っていると、氷華が到着していた。

「よろしくお願いします。」

「おう。」

「よろしくな!」

(清澄高校の片岡優希、昨日の東一局での連続和了は厄介。とりあえず最初は片岡優希を警戒していればいいか。そして、龍門渕高校の井上純、この人も昨日一人で終わらせていた。牌譜を見た感じだと鳴いてずらす事で相手の手を鈍らせるといった感じだった。ん?ならば最初はこの人の手助けをして片岡優希を和了らせないようにしていればいいかな。)

もう一人が対局室に入ってきた。

「よ、よろしく。」

(この人は確か、鶴賀学園の津山睦月。昨日の試合はいたって普通。去年もあまり和了れていなかったし、そこまで注意しなくてもいいかな。)

四人が揃い、場決めをする。場決めの結果は、優希が東、純が南、氷華が西、睦月が北となった。場決めが終わり、各々の席に着き、対局が開始された。

~東一局~ 親:片岡優希

『さぁ、遂に決勝戦が始まりました。この先鋒戦は、昨日の予選で、次鋒戦に回さずに終わらせた今年のシード校の清澄高校片岡選手と龍門渕高校井上選手。そして昨年のインターミドル覇者の冬室選手という好カードが揃っております。解説の藤田プロは、この試合をどのように見ますか?』

『今年の先鋒戦、風越以外は去年と同じ面子だ。風越の冬室がどれくらいの者か、お手並み拝見と言った感じだな。』

~3巡目~

「親リーチ、いっくじぇ!」

『清澄高校片岡選手、3巡目に親リーチです。』

(やっぱりタコス女、早ぇ。しかも鳴いてずらすこともできねぇ。)

(とりあえず最初は何もせずに様子見で・・・)

優希が次の牌を引く。優希の口がつり上がった。

「来たじぇ!ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラ1で6000オールだじぇ!」

『清澄高校、いきなりの6000オールツモ。これは幸先の良いスタートを切る事が出来たのではないでしょうか。』

(クソっ、ずらせなかった。)

~東一局一本場~ 親:片岡優希

清澄 118000

風越 94000

龍門渕 94000

鶴賀 94000

~4巡目~

(龍門渕が1副露。さっきのポンで清澄の勢いが衰えたように感じる・・・今がチャンス。)

「ポン。」

優希が出した8ピンを氷華がポンした。

(来たか、風越の冬室。食いタンで流す気だな?ならばこっちも動くじぇ。)

「ポンだじぇ!」

氷華が出した東を優希がポンした。

(ダブ東!?くそっ、風越の、何考えてやがる!)

「チー。」

『冬室選手、2副露で食いタン聴牌です。』

(2副露、そろそろヤバいか。)

「ポン。」

氷華が捨てた1ピンを純がポンする。

「ツモ。断么のみ。500・800の一本付けです。」

純が牌を捨てた直後、氷華が和了った。

(くっ、流されたじぇ。でもまだ東場は続いてる、まだまだこれからだじぇ!)

~東二局~ 親:井上純

清澄 117100

風越 96100

龍門渕 93400

鶴賀 93400

~6巡目~

「ツモのみ。500・800です。」

『風越の冬室氷華、また安手だな。』

『冬室選手は、昨日の対局では東場を安手で流して南場では高い打点を出していました。今回も東場を流すつもりなのでしょうか。』

(早ぇ、鳴いてないのにこんなに早く和了れるのかよ。まぁでも、安手ばっかりで助かったぜ。これくらいの差なら、楽勝で埋められる。)

~東三局~ 親:冬室氷華

清澄 116600

風越 97900

鶴賀 92900

龍門渕 92600

(こいつの親番はなんとしても和了らせない。)

~3巡目~

「ポン。」

~4巡目~

「チー。」

(ノッポが2副露、危険だじぇ。)

(・・・)

「ロン。8000だ!」

放銃したのは氷華だった。

(まさかこいつから直撃をとれるとは思ってなかったな。よし、調子出てきた。)

~東四局~ 親:津山睦月

清澄 116600

龍門渕 100600

鶴賀 92900

風越 89900

(ヤバいじぇ!最初に和了ったっきり、全く和了れてないじょ。でもまだ16000点差がある。なんとかなるか?)

~6巡目~

「ツモのみ。500・800です。」

(なっ、またそんな安手を・・・)

(東場が終わっちゃったじぇ・・・)

~南一局~ 親:片岡優希

清澄 116100

龍門渕 100100

鶴賀 92100

風越 91700

(東場が終わってタコス女の手が落ちてきている。ここらでこいつから直撃を取っときたいな。・・・と思ったら清一の一向聴じゃねぇか。ここは鳴かずに進めるか。)

~5巡目~

「ロン。清一色、12000だ!」

(じぇ!12000の直撃で2位に転落・・・南場で手が悪くなってるのにこれは辛いじょ。)

(よし、タコスから直撃を取れた。これで俺がトップだ。)

~南二局~ 親:井上純

龍門渕 112100

清澄 104100

鶴賀 92100

風越 91700

(このまま親で連荘してやる。)

「ポン。」

「チー。」

(よし、これで7700取れる。この局も貰った。)

「ツモ。面前混一色自模。2000・4000です。」

和了ったのは純ではなく氷華だった。

(また和了られたじぇ・・・)

(くそっ、親被りで4000マイナスか。こいつ、やっぱり南場は高い打点を出してきやがる。まぁ、満貫程度で俺のトップは揺るがないけどな。)

~南三局~ 親:冬室氷華

龍門渕 108100

清澄 102100

風越 99700

鶴賀 90100

「チー。」

「ポン。」

(張った。3900だけどタコス女に直撃出来れば一人浮き状態になれる。)

(うぅ、配牌も悪いし有効牌も全然来ないじぇ・・・)

「ロンだ!3900。」

(じぇ、またノッポに取られちゃったじょ・・・今年も、今年もこいつにやられるのか。)

(よっし、タコス女から直撃が取れた。このまま俺が独走してやるよ。)

~南四局~ 親:津山睦月

龍門渕 112000

風越 99700

清澄 98200

鶴賀 90100

(このまま俺が独走する!)

~3巡目~

「ツモ。面前混一色自模一気通貫で3000・6000です。」

(3巡目に混一の一通ツモ!?ヤバすぎだじぇ。)

(くそっ、最後に捲られた。しかもまた染め手、染めるのが得意なのか?後半戦はそういうところも見ながらやるか。)

『前半戦終了。一人浮きしていた龍門渕高校を風越女子が跳満和了で逆転。一気に1位に浮上しました。』

~先鋒前半戦結果~

風越 111700

龍門渕 109000

清澄 95200

鶴賀 84100

前半戦を終えて、氷華は一旦控え室に戻った。

「おい冬室!なんださっきの試合は!後半戦もあんな腑抜けた打ち方するつもりかよ!」

「安心して下さいコーチ。さっきの試合はいわば様子見です。次の半荘で一気に差を広げて来ます。」

「ほう、じゃあ150000以上にして次鋒戦に回せ。それが出来なかったらこの部を辞めろ。」

「こ、コーチ!それは流石に言い過ぎです!」

「いや、大丈夫です、池田先輩。」

「でも150000なんて流石に・・・」

「大丈夫ですから。」

「うん、私も氷華を信じるし!」

「ありがとうございます。ではコーチ、後半戦楽しみにしていて下さい。」

氷華が移動しようとすると、池田が引き留めた。

「本当に大丈夫だよね?」

「大丈夫です。冷血女王と言われた私の真の実力を見せてあげますよ。」



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第10話 先鋒後半戦

観戦室で、久、美穂子、ゆみ、蒲原、焦華の5人が決勝戦を観戦していた。

「冬室さん、美穂子が言う程凄くないんじゃない?」

「いや、あれはあいつの実力の1割も出してないんじゃないか?」

「焦華さん、1割って、流石にそれは言い過ぎじゃない?」

「いや、冬室さんの本気は本当に強いわ。私がこの間風越に行った時に冬室さんと半荘3回したけれど、その内2回飛ばされてしまったもの。」

「えっ!?美穂子が飛ばされたの?そんなまさか。」

「本当よ、それにもう1回だって、飛びはしなかったけれど5000ちょっとしか残らなかったもの。」

「へぇ、そんなに強いんだ。後半戦楽しみね。」

 

5分間の休憩を終えて、後半戦が始まった。場決めの結果は前半戦と同じになった。

(前半戦と同じになったな。まぁ、珍しくはないか。)

『先鋒後半戦、開始です!』

~東一局~ 親:片岡優希

風越 111700

龍門渕 109000

清澄 95200

鶴賀 84100

~3巡目~

(聴牌・・・でもここはリーチをかけずに行くじょ。確実に和了っておきたいからな。)

『清澄高校の片岡選手、高めで跳満の手をダマテンです。』

(やっぱり東場はタコスチビの手が伸びてる。)

「チー。」

純が優希の出した牌をチーした。

(清澄の片岡優希の連荘だけは避けたい。龍門渕の井上純の捨て牌、ここなら鳴けるかな。)

「ポン。」

『風越女子冬室選手の今の捨て牌、どうして向聴を下げてまであんな牌を切ったんでしょうか。』

『もしかしたら、龍門渕の井上に鳴かせて清澄に和了らせないようにしたのかもな。』

『ということは、冬室選手は降りということでしょうか?』

『ま、そんな感じになるのかな。』

(風越の無表情女から鳴くのは抵抗があったけど、連荘されるわけにもいかねぇからな。)

(はぁ、流石に和了り牌がポンポン来てはくれないじぇ・・・)

純は優希が捨てた牌を見るやいなや手配を公開した。

「ロンだ!3900。」

(うぅ、この親番に何も出来なかったのは大きいじょ・・・)

~清澄高校控え室~

「優希ちゃんの親番が・・・」

「片岡先輩、大丈夫でしょうか。」

「こりゃあ、相当厳しい戦いになるかもしれんのぉ。」

(優希・・・!)

~東二局~ 親:井上純

龍門渕 112900

風越 111700

清澄 91300

鶴賀 84100

(逆転された。まぁ、元々2700点差だから当然と言われれば当然だが。とりあえず三校を平らにしておくか。)

「ポン。」

(風越が動き出した、俺も負けてられねぇ。)

「ポン。」

(2副露か、怖いな。)

『風越女子冬室選手、鳴きの清一聴牌です。』

『それはどうかな。』

「ポン。」

『あれ、清一聴牌を崩しましたよ。』

『でもこれでもう1枚入れば清一対々になるな。』

(えっ?3副露?こいつ、東場では安手じゃないのか?このままじゃ対々がついちゃうんじゃねぇか?)

「ポン。」

(風越の人、裸単騎だじょ。)

(対々確定じゃねぇか、しかも全部索子・・・どういうつもりだ?東場でも高火力を出すのか?なら索子は切れねぇ。じゃあこれだな。)

「ろ、ロン。タンヤオ三色ドラ2で8000です。」

和了ったのは氷華ではなく鶴賀の睦月だった。

(はっ?鶴賀に和了られた?ってことはもしかしてこの無表情女、鶴賀に和了らせる為に鳴いてたのか?自分は和了らずに俺を落とす為に鶴賀を利用したのか?あー、なんか去年もこんな事あったな。風越はそういう奴しかいねぇのか?)

(これで私がトップ。さぁ、ここからよ夢乃マホ。私は貴方なんかより優れているという事を証明してみせる。)

~東三局~ 親:冬室氷華

風越 111700

龍門渕 104900

鶴賀 92100

清澄 91300

~4巡目~

「ツモのみ。800オール。」

(くそっ、早い。)

~東三局一本場~ 親:冬室氷華

「ツモ。タンヤオのみ。900オール。」

~東三局二本場~ 親:冬室氷華

「ツモのみ。1000オール。」

『何という事でしょう。風越女子冬室選手、安手ではありますが3連続和了です。』

『さっきの対局では親番で和了していなかった。ということは今回、奴の本気が見れるかもしれないな。』

(なんだこれ!こいつ、和了るのは安手ばっかりだけど、6巡目までに確実に和了してやがる。付け入る隙がねぇ。)

(この安手和了りって、もしかして流す為じゃないのか?咲ちゃんみたいな和了り方されたら嫌だじょ・・・)

~東三局三本場~ 親:冬室氷華

風越 119800

龍門渕 102200

鶴賀 89400

清澄 88600

(くそっ、ジリジリと差を広げられてる。このままこいつに持っていかれる訳にはいかねぇ。)

~清澄高校控え室~

「風越の人、どんどん点差を広げてるよ・・・」

「さっきの、どうしてタンヤオと平和を捨ててツモのみで和了ったのか、私には理解できません。」

「もしかしたら、この安手には何か意味があるのかもしれんのぉ。」

「そんなの、あり得ませんよ。」

「ほうじゃといいんじゃけど。」

「優希ちゃん、頑張って!」

~対局室~

「ポン。」

(9ピンをポン?タンヤオもツモも出来ないぞ、としたら、チャンタか役牌バックか?じゃあ幺九牌を出さないようにすれば抑えられるかな。)

「カン。」

(加槓!?おい、まさか・・・)

「嶺上開花。1100オール。」

(マジかよ・・・)

(り、嶺上開花!?嘘っ、この人、ヤバすぎだじぇ・・・)

~清澄高校控え室~

「うわっ、嶺上開花・・・あの人、凄過ぎだよ。」

「そんな・・・」

「あの風越の先鋒は一体何者なんじゃ。」

「咲を意識してるんじゃねぇの?」

「もし咲さんを意識してたとしても嶺上開花なんて普通は出来ませんよ。」

(違う、多分冬室さんが意識しているのは私じゃなくてマホちゃんだ。マホちゃんの模倣を意識しているような気がする。)

(中学の時は東場を即流して南場で連荘してたはず、マホに負けたから戦い方を変えたのか?)

~東三局四本場~ 親:冬室氷華

風越 123100

龍門渕 101100

鶴賀 88300

清澄 87500

~6巡目~

「ポン。」

(また鳴いてきた。今度は何をしてくる気だ。)

~11巡目~

「チー。」

(2副露、食いタンかな?)

~13巡目~

「ポン。」

(また鳴かれた。そろそろヤバいな。)

~16巡目~

「ポン。」

(は?また裸単騎?何する気だよ。しかも今の9ピンポンでタンヤオが消えたぞ?しかももう流局しちまう、いや待て、まだ和了れる役があった。でもそんなまさか・・・)

「海底撈月。1200オール。」

(マジで海底で和了りやがった・・・何なんだこいつ。)

~龍門渕高校控え室~

「は、海底ですって!?」

龍門渕高校麻雀部の部長である龍門渕透華が驚きの声を上げる。それもそのはず、海底は龍門渕高校の大将、天江衣の得意技だからだ。

「もしかしてあの風越の人、人の打ち方を真似る事が出来るのかな?」

「そんなオカルトあり得ませんわっ!偶然!偶然に決まってますわ!」

「まあもし本当に衣みたいな打ち方を真似出来るのなら、そんな相手とは当たりたくないよね。」

「人の真似をしたとしても、海底で和了れる訳ありませんわ。」

「じゃあやっぱり偶然なのかな。」

「当然!あの手でわざわざ鳴いていくなんて、ただの初心者ですわ!」

(これまでの対局を見る限り、僕には初心者に見えないけどな、あの人。)

~風越女子控え室~

「冬室さん、どうしてタンヤオとかで和了らずに偶然役で和了っているのかな?」

「あれは・・・多分パフォーマンスだと思う。」

「えっ!?パフォーマンス?」

「うん、氷華は無表情だけど負けず嫌いなところがあってさ、去年の清澄の宮永咲と龍門渕の天江衣の牌譜を見て、劣等感を抱いたんだと思うんだ。」

「だからってそんな・・・」

「ま、和了れたからオッケーオッケー。」

「うん、そうだね。」

~東三局五本場~ 親:冬室氷華

風越 126700

龍門渕 99900

鶴賀 87100

清澄 86300

(なんだこの感じは、なんでこいつは東場でこんなに連荘してるんだ?しかもずっと安手ばかり、ここら辺で止めねぇとヤバい気がする。)

「ポン。」

「チー。」

(よし、張った。この際誰でも良い。こいつの連荘を止められれば何でもいい。だから誰か出してくれ!)

氷華が牌を引いて、ツモ切りする。

「ロンだ!2500。」

(まさか風越から取れるとは思ってなかった。まぁこれでやっと連荘が終わった。)

~東四局~ 親:津山睦月

風越 124200

龍門渕 102400

鶴賀 87100

清澄 86300

~2巡目~

「ツモのみ。500・800です。」

(2巡目にツモだと、リーチかけときゃ、ダブリー一発ツモで2000・3900の手だろうが。どうしてこいつは安手ばっかり和了るんだよ。)

『冬室選手はどうしてリーチをかけないのでしょうか。』

『私に聞くなよ、そんなの分からんよ。』

『えっ?』

『私には分からない。が、奴にとっては意味のある行動なのかもな。』

『そんなまさか。』

『ま、この半荘が終われば分かるだろうな。』

『そうですね。さて、東四局が終わり、南場に突入します。』

(風越の人にやられたまま、東場が、東場が終わっちゃったじょ・・・)

(さぁ、楽しい楽しい南場を始めましょうか。)

~南一局~ 親:片岡優希

風越 126000

龍門渕 101900

鶴賀 86300

清澄 85800

~6巡目~

(うぅ、やっぱり南場は手配が悪いじぇ・・・)

(くそっ、全然鳴けないし3向聴から全然進まねぇ。)

「ポン。」

(無表情女に鳴かせちまった。ダメだ、鳴けねぇ。)

(全然有効牌が来ないじょぉ!)

「ツモ。鳴きの清一色で2000・4000です。」

(おいおい、1副露で鳴き清一とか、鳴かなかったら跳満、リーチかけときゃ倍満じゃねぇかよ。なんでわざわざ鳴いていくんだ。もうこいつの全てが分からねぇ。)

~南二局~ 親:井上純

風越 134000

龍門渕 99900

鶴賀 84300

清澄 81800

~13巡目~

(じぇ、何これ。南場に入って手が遅れるのは良くある事だけど、3向聴からピクリとも動かないじょ。)

(何だこれ、また3向聴から動かねぇ。去年まではこんな事無かったよな。って事はやっぱりこの無表情女か・・・)

~観戦室~

「始まったか~、氷華の凍結が。」

「えっ?凍結?」

「ほら、氷華以外の3人の手牌、全員3向聴から固まったように動かなくなってるだろ。あれが氷華の凍結。去年の天江衣の1向聴地獄みたいな物だよ。」

「3向聴!?じゃあ冬室の妹は天江衣よりも強いじゃないか?」

「そっか、加治木は去年、天江衣と戦ったんだったね。まぁでも、天江衣と違って南場だけだけどね、凍結するのは。」

「南場だけでも十分過ぎるじゃないか。」

「ま、氷華は凍結だけじゃ終わらないけどね~。」

「えっ?凍結だけじゃないのか?」

「それは見てのお楽しみ~。」

 

~対局室~

氷華が牌を引く。その牌は、手牌の横に倒して置かれた。

「ツモ。断么清一色ツモ。4000・8000です。」

(倍満!?この人、前半戦とはまるで別人だじょ。)

(くそっ、こっちは全然手が進まないのにどんどん和了ってきやがる。しかもまた染め手。でもこの無表情女、全然出和了りしねぇから染めてようが染めてまいが関係ねぇよな・・・)

~南三局~ 親:冬室氷華

風越 150000

龍門渕 91900

鶴賀 80300

清澄 77800

~風越女子控え室~

「うわっ、冬室さん、丁度150000点だ。これって狙ったのかな?」

「氷華の事だからやりかねないかもな。ホント、氷華が味方で良かったよ。あんなのがもし清澄か龍門渕にでも入ってたら絶対勝てなかったって・・・」

(あいつ、また腑抜けた打ち方しやがって、後でみっちり言ってやる!)

~対局室~

「リーチ。」

『冬室選手、親番でダブルリーチだ!これは他の三校には大きなプレッシャーになるのではないでしょうか。』

(はぇっ!?ダブリー!?さっきまでリーチなんてかけて無かったのに、この感じはヤバいじょ・・・)

(鳴けないし配牌も悪い、このままじゃ、全部この女に持っていかれる!)

「ツモ。ダブリー一発ツモ。4000オール。」

(自風の東の単騎を一発で引くのかよ。こいつ、本当に何者なんだよ。)

(この人、咲ちゃんよりヤバいかもしれないじょ・・・)

~南三局一本場~ 親:冬室氷華

風越 162000

龍門渕 87900

鶴賀 76300

清澄 73800

「リーチ。」

(は?またダブリー?嘘だろ?)

(もしかしたら、これからもっとヤバいのが来るかもしれないじょ。)

(くそっ、やっぱり鳴けねぇ!また無表情女に和了られちまう。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ一気通貫。6100オール。」

『な、なんと、二連続ダブリー一発ツモ!とんでもない事が起きてしまった!』

『な、何だこれ・・・』

(はぁ?何だよこれ、一巡目から一通聴牌って、おかしいだろ。)

~南三局二本場~ 親:冬室氷華

風越 180300

龍門渕 81800

鶴賀 70200

清澄 67700

「リーチ。」

(またっ・・・)

(おっ!鳴ける!)

「ポン!」

(よし、ずらせた!これで連続和了が終わる。)

(残念、ずらしたつもりなんだろうけど、私のこれは呪いみたいな物だからそんな事されても私の和了は揺るがない。)

「ツモ。ダブリーツモ清一色。8200オール。」

(ずらしても和了るのかよ!そんなの、もう打つ手無しじゃねぇか。はっ!もしかしてこの連続和了って、東場とリンクしてるのか!?思い出せ、奴は前半戦で、東二局と東四局に和了っていた。そして南場で和了ったのも南二局と南四局だ!そして今回、俺のこの仮説が正しいなら、この後更に2回和了られる!くそっ、やっとこいつの本当の力に気付けたっつーのにもう意味がねぇじゃねぇかよ!)

~観戦室~

「おいおい冬室、何なんだあの連続和了は。」

「あれこそ氷華の真骨頂、チャージだ。」

「チャージ?えっ、何それ。」

「東場での安手和了り、あれは南場での高打点をチャージしていたんだよ。ほら、前半戦で二局と四局で和了してたじゃん?その時も南場では満貫と跳満を和了してたでしょ?それが後半戦は東場に親番で5連続和了、そんでもって今、満貫、跳満、倍満と来てるから~?」

「まさか、次に三倍満と役満を和了するの!?」

「ま、見てれば分かるよ~。」

~南三局三本場~ 親:冬室氷華

風越 204900

龍門渕 73600

鶴賀 62000

清澄 59500

「リーチ。」

『冬室選手、またもやダブルリーチだ!』

『おいおい、この状況は何だ?完全に冬室氷華が卓を支配しているみたいじゃないか。』

(くそっ、やっぱり鳴けねぇ!)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ清一。12300オール。」

(おいおい、嘘だろ?本当に三倍満和了りやがったぞ。)

(もう、辞めたいじょ・・・)

~南三局四本場~ 親:冬室氷華

風越 241800

龍門渕 61300

鶴賀 49700

清澄 47200

「リーチ。」

(鳴ける、でもどうする、鳴いても構わず和了って来るよな。でもそう簡単に13翻なんて作れねぇよな。一発を消せば少しでも点が少なくなるはず、ここは鳴いていく!)

「ポン。」

(井上純の考えている事が手に取るように分かる、確かに一発を消せば13翻は厳しいかもしれない。けれどこれだと翻数なんて関係無い。)

「ツモ。四暗刻。16400オール。」

(なっ、数え役満じゃねぇのかよ!やられたっ・・・)

~観戦室~

「本当に三倍満と役満を和了したわね・・・優希がトラウマにならなきゃいいけど。」

「やっぱり冬室さんは恐ろしいわね。」

「あと1年遅れて生まれてたらあんなのと戦わなきゃいけなかったのかー、ワハハ、それは嫌だな。」

「確かにあれは強すぎる。異常だ。」

(あーあ、氷華ボロ勝ちかー、闇堕ちも見たかったんだけどな~。ま、個人戦に期待だね。)

~南三局五本場~ 親:冬室氷華

風越 291000

龍門渕 44900

鶴賀 33300

清澄 30800

(うわっ、何も出来てないままこんなに点数減ってる・・・この後妹尾さんが出てくれるけれど、それでもこの点差は厳しいはず。ここが頑張り所だな。私なりに精一杯。)

~8巡目~

(5連続和了が終わったからダブリーはしてこなくなったけど、やっぱり3向聴から全然進まねぇ。このままじゃ、清澄か鶴賀が飛んで終わっちまう。それだけは防がねぇと。)

「り、リーチ!」

(鶴賀!?聴牌したのか?)

(私の凍結が効いてない?どういう事だ?)

(私はこれまで皆の足を引っ張ってきた。今も引っ張ってるだろうな。でも、このまま何もせずに終わらせる訳にはいかない!私は、あの憧れの加治木先輩が認めてくれた、鶴賀の部長なのだから!)

「ツモ!リーチ一発ツモ面前混一ダブ南で4500・8500!」

『鶴賀学園津山選手、ここにきて倍満ツモだ!これまで連荘していた冬室選手の親番を何とか抑えた。更に今の和了により、鶴賀学園は一気に2位に浮上しました。』

(私の凍結を破って更に和了られた!?鶴賀の津山睦月、この人の打ち方は至って普通だったはず、なのに今のこの人から感じるのは普通のオーラじゃない。南三局にこの和了り、姉さんみたいな感じなのかな?まぁでも、倍満で済んで良かった。誰も飛ばせなかったのは残念だけど。)

~観戦室~

「睦月!やるじゃないか!」

「ワハハ、やるなー。」

「まさか氷華の凍結を破って来るとはね。」

~鶴賀学園控え室~

「ムッちゃん先輩がやってくれたっす!」

「おぉ!睦月先輩すげー。」

「睦月ちゃん流石。」

「私は信じてました。部長なら大丈夫だと。」

「そんな事言って、一葉だってさっきまで終わったって顔してたじゃねーかよ。」

「そんな事はありません。私はずっと部長を信じてました。」

「いやいや、酷い顔してたっすよ?」

「東横先輩まで・・・」

「ま、まあまあ、睦月ちゃんを応援しようよ。」

「そうですね、まだ終わってないですからね。」

~南四局~ 親:津山睦月

風越 282500

鶴賀 50800

龍門渕 40400

清澄 26300

(オーラス・・・私の親番。そしてこの配牌。この親で、稼ぐ!)

(鶴賀の手、また高そうな感じがする・・・まぁ、もうそんな事関係無いけどね。この南四局は、チャージが発動するから。更にこの配牌。津山睦月が天和じゃなかった時点で私の勝ちは確定。そう、大地から授かりし和了り。)

「ツモ。地和。8000・16000。」

『な、なんと、風越女子冬室選手。オーラスでだめ押しの地和だ!』

(はぁ?地和だぁ?)

(そんな・・・あり得ないじょ・・・)

(親被りで16000マイナス・・・さっき取った点の殆どが持ってかれた。)

『先鋒戦終了です。風越女子が圧倒的かつ一方的に先鋒戦を制しました。このまま風越女子が勝ってしまうのか。』

「お疲れ様でした。」

「お、お疲れ。」

「うむ、お疲れ。」

「疲れたじょ・・・」

四人が対局室から退出する。先鋒戦が終了した。

~先鋒戦結果~

風越 314500

鶴賀 34800

龍門渕 32400

清澄 18300

 




冬室氷華の能力がよく分からなかったと思うのでまとめます。
・東場で6巡目以内に安手を和了する。
・『チャージ』東場で安手を和了した時、南場も同じ局の時に満貫以上を和了る。東場で2回以上和了すると、南場で和了する点数が、満貫→跳満→倍満のように上昇する。
・『凍結』南場になると、3向聴から手牌が進まなくなる。
・『闇堕ち』???


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第11話 次鋒前半戦

南場の化け物が大暴れした直後からです。


優希が対局を終わらせて、控え室に戻ってきた。

「ただいま帰ったじぇ・・・」

「優希・・・」

「優希ちゃん・・・」

「先輩・・・」

かける言葉が見当たらず、気まずくなってしまった。すると、まこが優希の方へ向かい、優希の頭を撫でた。

「お疲れ、あんな相手に半荘2回もよぉ耐えたわ。十分偉かったぞ。」

その言葉で、これまで抑えていた優希の感情が露になった。

「うぐっ、うぇぇぇぇぇぇん、皆の、皆の大事な点数が、殆ど持ってかれちゃったじょぉ、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいぃ!うわぁぁぁぁぁぁん。」

普段の優希は同い年や後輩がいる前ではあまり泣かない子だった。そんな彼女が皆の前で大号泣している。そんな優希の不憫さに咲達は目を伏せる事しか出来なかった。

「大丈夫じゃ、まだ終わった訳じゃない。敵を取れるかは分からんが、少しでも多く取り返して来るわ!」

「えぐっ、ひっく、うん、頑張って、部長。」

「おう、任せとけ!」

まこが控え室を出て、対局室に向かっていった。すると、京太郎が優希に近付いた。

「優希、タコス食うか?」

「いや、いらないじょ。」

「いいから食えって。こういう時はやけ食いでもしないとズルズルと引きずっちまうからな。嫌な事をとっとと忘れるってのは、意外と大切な事だぞ?だから食えよ。」

「・・・でもそれ、マホちゃんのだじぇ。」

「そんなの、また買ってくればいい話だ。どうせ俺、やる事無くて暇だしな。」

「・・・じゃあ、お言葉に甘えるじぇ。」

優希がタコスを口にする。タコスの味が口いっぱいに広がっていく。その味を感じると同時に、今日の対局が頭の中で反芻した。

「私・・・わざわざ京太郎にタコスを買ってきて貰ったのに、それなのに、1度も和了れなかったじょ。」

「何言ってんだ?お前。」

「えっ?」

「俺はお前が点をとって欲しいって理由でタコスを買ってきてる訳じゃないぞ?まぁ、点はとって欲しいし清澄が勝って欲しいとは思ってるけどな。」

「じゃあ、どうして・・・?」

「俺さ、実は何度かこの部活を辞めようかなって思ってたんだよ。和とか部長とか咲にやられて全然勝てなくて。でも、結局俺は辞めてない。それは、実は優希、お前のお陰なんだよ。」

「えっ?私のお陰?」

「そう、俺は全然勝ててなかった。でもそれはお前もだった。それでもお前はずっと前だけを見続けていた。そしてそれが功を成し、お前は去年の全国でも活躍したんだ。そんなお前の頑張ってる姿を見てたら、辞めるなんて馬鹿な考えはいつの間にか消えていたんだよ。そんなお前の頑張ってる姿を見ていたいし、その手助けもしたいと思ってる。だから俺はお前にタコスを買ってきてるんだよ。だから、ちょっと調子が悪かったからってそんなに自分を責めるなよ。お前はこれまでも、今だって、頑張って来たんだから。」

「京太郎・・・ありがとう。」

優希が涙を拭った。

「よし、くよくよするのはおしまいだじぇ!今は部長を応援するじょ!」

「そうだな、今は部長の応援だ。」

(京ちゃん凄い、あんなに落ち込んでた優希ちゃんを元気にしちゃうなんて・・・)

(私、何も励ませませんでした・・・須賀君のお陰ですね。)

~龍門渕高校控え室~

「純!どういう事ですの!?あんなに差を広げられて!」

「はぁ、勝てなかった事を責めるより、飛ばなかった事を褒めて欲しいくらいだよ。風越のあいつ、もしかしたら衣よりもヤバいかもしれないぞ。」

「なっ、そんなの、あり得ませんわ!衣よりも強い人が何人もいてたまりませんわ!」

「透華も対局してみれば分かるっつーの。それとも透華の目はあの対局を見てもあいつのヤバさが分からないほど節穴なのか?」

「何ですって!?純!少し頭を冷やしてきなさい!」

「ちっ、分かったよ。」

「純君!」

一が純を止めようとしたが、純は眉一つ動かさず、そのまま控え室から退出した。純は控え室から出ると、壁に寄りかかって手で顔を押さえた。

(くそっ、透華が悪い訳じゃねぇ、悪いのは全部俺だ。あの無表情女に手も足も出なかった、俺だ・・・)

 

「ちょっと透華、流石に言い過ぎじゃないの?」

「そんな事は分かってますわよ。」

「えっ?」

「分かっていますわ、風越の先鋒があり得ない打ち手である事も、純が言いたい事も。でもだからこそ、一人で少し考える時間が必要だったんですわ。」

「そうだったんだ・・・やっぱり透華は優しいね。」

「なっ、そ、そんな事より、ほら、智紀の対局を見ますわよ!」

「ふふっ、そうだね。」

~鶴賀学園控え室~

「お疲れ様っす~。」

「うむ、とても疲れた。」

「いやー、あの冬室って人に勝てなかったのはしゃーないですよ。ウチでも勝てないかもしんないですもん。」

「あんなに恐い相手がいるにも関わらず2位終了、とっても素敵でした部長。」

「うむ、ありがとう。」

「つ、次は私だ。」

「妹尾先輩なら楽勝ですって、そんなに緊張なさらず。」

「そうっすよ、佳織ん先輩なら大丈夫っすよ!」

「うむ、期待している。」

「頑張って下さい!」

「うぅ、そんなにハードル上げないで~。」

「まぁ、とりあえず頑張って。」

「うん、頑張るよ。」

~風越女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「おい!冬室!」

控え室に入った刹那、久保コーチの荒々しい声が聞こえてきた。

「何でしょうか?」

「お前さっきの東場はなんだ?偶然和了れたからいいものの、こんな打ち方してんだったらなぁ」

「過程なんて関係ありませんよ、大事なのは結果だけです。」

「はぁ?」

「これまでの私の対局で悪い結果に終わった事はあったでしょうか?」

「それは、たまたま」

「私は風越に入ってから合計50回近く対局しました。その対局で1度も2位以下を取った事がない。それがたまたまだと?」

「それは、相手がチョロかったからだろ。」

「私が対局してきた人の中には久保コーチ、貴方も含まれてますよ?それに、去年の長野県1位の福路先輩も入ってますから、少なくとも去年の長野県の人全員はチョロいって事になりますよ?まぁ、実際チョロかったですが。」

「くっ、」

氷華に完全に言いくるめられてしまい、久保コーチは何も言い返せなくなった。

「おい冬室!福路先輩の悪口は私が許さないぞ!撤回しろ!」

「じゃあ福路先輩と対局した時の牌譜でも見せましょうか?半荘3回の内の2回も私に飛ばされたあの牌譜を。」

「!?・・・止めて、あの牌譜だけは、もう見たくないから。私が悪かった、ごめん。」

「冬室さん!流石に言い過ぎだよ!」

「私に文句を言いたいなら私に一度でも勝ってからにして下さい。」

(氷華、どうしちゃったんだよ。いつもならここまで酷くはなかっただろ・・・)

~対局室~

(優希、大丈夫かのぉ。まぁ、京太郎か和辺りが何とかしてくれるじゃろ。まずはこの点数じゃ。優希の前では言えんかったけど相当酷い点差じゃの・・・後の3人で何とか出来る点差じゃないわな。ほいじゃ、出来る限りの力を出しますか。)

『さぁ、出場校の4名が出揃いました。』

『去年と同じ面子だな。』

『そうですね、今年はどのような戦いを見せてくれるのか楽しみです。』

席決めでは風越が東、鶴賀が南、清澄が西、龍門渕が北になった。風越の吉留が賽を回した。

『次鋒戦、開始です!』

~東一局~ 親:吉留未春

風越 314500

鶴賀 34800

龍門渕 32400

清澄 18300

(とりあえず、当面の狙いは清澄高校かな。18300だから、跳満直撃だとギリギリ飛ばせない。とりあえず倍満を狙いつつ出来安手でもいいから連荘する。この千載一遇のチャンスを必ず物にする!)

~9巡目~

(よし、平和純チャン三色一盃口だからリーチかければ倍満、直撃を取れれば即終了。ここは責める!)

「リーチ!」

「ロンです。」

(妹尾さん!?)

「四暗刻。」

(・・・えっ?四暗刻?)

「妹尾さん、四暗刻はツモ和了りじゃないと三暗刻対々と言ってですね、」

「・・・吉留さん、よぉ見てみ。」

佳織が公開した手牌は暗刻が4つとたった今、吉留が捨てた牌だった。

(えっ、これってまさか!?)

「四暗刻の単騎待ち。」

「32000です。」

(妹尾さん、ビギナーズラックじゃのぉてただ単に豪運持ちじゃったのか・・・)

(私が、役満に、振り込んだ?しかも単騎に?そんなっ・・・)

『鶴賀学園妹尾選手、風越に四暗刻単騎を直撃です。』

『鶴賀の妹尾佳織・・・今年も運がいいな。』

~東二局~ 親:妹尾佳織

風越 282500

鶴賀 66800

龍門渕 32400

清澄 18300

~6巡目~

「ポン!」

(妹尾さんが發をポン。これはもしかしたら緑一色か大三元?それとも字一色?字牌と索子は出さない方がいいかな。もう1鳴きあれば・・・)

「ポンです!」

(2索をポン、確定だ、これは緑一色だ。とりあえず索子は出さないようにしておこう。)

~9巡目~

(聴牌。でもこの8索を捨てれば緑一色に振り込むかも。妹尾さんは今、親だから直撃をくらえば48000のマイナス。とりあえずまだ焦る時じゃないし、2ピンの対子落としで一旦回る・・・)

「それ、ロンです!」

(えっ、2ピンでロン?緑一色じゃないの?でもそれならそんなに高くは無いはずだよね。)

「大三元。48000です。」

(はぁ!?2ピン単騎の大三元!?何で2索をポンしたの?あぁ、そっか、私に緑一色だと思わせて2ピンを捨てさせる為か。そんな・・・)

「2索ポンして2ピンで狙い撃ちとか・・・妹尾さん、あんた随分と上達したね。」

「あ、はい、ありがとうございます。」

~風越女子控え室~

「役満を2回連続で振り込んで80000マイナスですか。」

「未春ん、大丈夫かな。」

「でもまだ点差はありますよ。」

「そうだな。未春ん負けるなー!」

(鶴賀の妹尾佳織、緑一色と見せかけて2ピンを誘う戦法自体はいいけれど、2ピンを風越が持っている保証なんて無いのにそんなリスキーな事を当然のようにやってのけたのか。しかも2連続単騎を直撃。ただの豪運でそこまでの奇跡を起こせるのか?それとも・・・)

~鶴賀学園控え室~

「うわっ、妹尾先輩、早速やってますね。」

「妹尾先輩の役満直撃は本当に辛いですよね。」

「しかも、高確率でトップから直撃するっすよね。」

「あ、そういえばそれについては妹尾さんが言ってたな。配牌やツモ牌を見たときに、どの牌がいらないのか、どの牌を取っておくべきなのか、更にはお友達、つまり同じ牌が何処にあるのかまで、そういった牌の気持ちみたいなのを、手牌から教えて貰ってるって。」

「えっ、ってことはあれですか?牌を見ただけで何処に同じ牌があるのか分かるって事ですか?」

「うむ、まぁ、教えてくれるのは自分の手牌の子達だけって言ってたな。」

「ヤバすぎないっすか?それ。」

「そんなの、あり得ないですよ。」

「そう思って実験してみたんだよ。私と妹尾さんの二人で卓を囲んで妹尾さんが持っている牌が何処にあるのかを当てて貰ったんだ。そしたら、見えてないはずなのに全て当てたんだよ。」

「それじゃ、鶴賀の圧勝になるじゃないですか。」

「でも、残念ながら使用限度みたいなのがあるらしくて、半荘一回で2、3回しか分からないらしい。」

「それでも十分凄すぎっすよ・・・」

「うむ、でも今回は2連続で使ったからもう使いきったかな。」

「でも、風越との点差が半分くらいになったっすよ。」

「よし!この調子ですよ!妹尾先輩!」

~対局室~

(はぁ、ここからは麻雀牌さんの助言無しだろうなぁ。まぁでも、十分稼げたし、いいよね。)

~東二局一本場~ 親:妹尾佳織

風越 234500

鶴賀 114800

龍門渕 32400

清澄 18300

(これは、チャンスなのかピンチなのかどっちかのぉ、風越の点差が縮まったのはええけど鶴賀が一気に放しよった。ここは多少リスクを負ってでも和了らんといけんのぉ。)

「リーチ。」

(染谷さんのリーチ、高そうな気がする。とりあえず安牌で。)

(うーん、いらないよね。)

「ロン。リーチ一発清一色で16300じゃ。」

「うぅ、はい。」

「攻めの方は成長しよったけど守りはまだまだじゃね。」

「ははっ、はい。」

(麻雀牌さんの助言がなくなった途端に和了られちゃった。どうしよう、この後大丈夫かな?)

(清澄に和了られた!これじゃあ、清澄を飛ばして終了させる事が出来ない。)

(とりあえずこれで首の皮1枚繋がったかのぉ。でもまだまだ足りんわ。)

~東三局~ 親:染谷まこ

風越 234500

鶴賀 98500

清澄 34600

龍門渕 32400

~6巡目~

(面前混一ダブ東の聴牌か、リーチ一発ツモなら倍満じゃが、そんな都合ええもんじゃないけぇの。ここはダマじゃ!)

~7巡目~

(やっぱり来んかったか、まぁ、分かっとったけどな。)

~10巡目~

「ツモ。面前混一ツモダブ東で6000オールじゃ!」

『清澄高校の染谷選手、親跳ね和了です。』

(なっ、また清澄に和了られた。こうなったら仕方ない。ここからは飛ばそうとはせずに自分らしい打ち方で行く。)

~東三局一本場~ 親:染谷まこ

風越 228500

鶴賀 92500

清澄 52600

龍門渕 26400

~7巡目~

(よし、聴牌。メンタンピンだけだけどツモれば満貫。これなら行ける。)

(降りとくか・・・)

「ツモ。メンタンピン一発ツモで2100・4100です!」

(くっ、親被り・・・まぁ、満貫だったからよしとするか。)

~東四局~ 親:沢村智紀

風越 236800

鶴賀 90400

清澄 48500

龍門渕 24300

~8巡目~

(よし、聴牌出来た。さっきので調子が出てきたかも。)

「リーチ。」

「ロン。7700。」

和了したのは親の沢村智紀だった。

(うわっ、また取られた・・・このままじゃ冬室さんに悪いよ。)

(この面子は去年と全く同じ。もうこの3人のデータは分析完了してる。ここからは私のターン。)

~東四局一本場~ 親:沢村智紀

風越 229100

鶴賀 90400

清澄 48500

龍門渕 32000

「ロン。5800の一本場は6100。」

(また私を狙い撃ち。3人とも完全に風越を落としにきてる・・・辛いな。)

~東四局二本場~ 親:沢村智紀

風越 223000

鶴賀 90400

清澄 48500

龍門渕 38100

(このまま私が連荘する。)

(このまま龍門渕に持ってかれる訳にゃいかんわ。)

「チー。」

(清澄が鳴いてきた。龍門渕も怖いし、もうここは降りるしかないか。)

~8巡目~

「ツモ。鳴き清一色で2200・4200じゃ。」

(連荘を止めて、尚且つその和了り。やはり清澄の人、難敵。)

~南一局~ 親:吉留未春

風越 220800

鶴賀 88200

清澄 57100

龍門渕 33900

~12巡目~

「リーチ。」

吉留がリーチをかけた。

(懲りない人だな・・・)

「ロン。8000。」

(くっ、また振り込んだ。どうしてこんなに直撃ばっかり、もう嫌だ・・・)

(完全に龍門渕のペースじゃな。)

~南二局~ 親:妹尾佳織

風越 211800

鶴賀 88200

清澄 57100

龍門渕 42900

(あぁ、もう、何をすればいいのか、分かんないよ。)

「ツモ。3000・6000。」

(今度はツモ和了り・・・)

(龍門渕に逆転された。これは相当キッツいのぉ。)

~南三局~ 親:染谷まこ

風越 208800

鶴賀 82200

龍門渕 54900

清澄 54100

(風越はそこそこ削れたから、もう一つの障害を取り除く。)

「リーチ。」

(ここは親じゃけど流石に降りじゃな。)

「ロン。16000。」

振り込んだのは鶴賀の佳織だった。

(完全に龍門渕のペースじゃな。)

~龍門渕高校控え室前~

控え室の前で、透華と言い争いになり、部屋に入るに入れない状況になっていた純が、違うモニターで智紀達の対局を見ていた。

(2位に浮上した。すげーな。)

「あれ、純じゃないか。」

純の横から声が聞こえてきた。純はその声に聞き覚えがあったから直ぐに誰だかわかった。

「衣!今まで何処にいたんだよ。」

「去年よりも早く来てるんだから別にいいじゃないか。それに、つまらない対局を見て久遠の時を過ごすより、家で睡眠をとっていた方が何億倍もましだ。」

「あー、うん、俺が悪かったよ。」

「そういえば、今先鋒戦が終わったのか?」

「いや、もうそろそろ次鋒戦の前半が終わるとこだよ。」

「どうして控え室に入らないんだ?」

「え、えっと、それはだなぁ・・・」

純が衣にこれまでの経緯を話した。話し終えると、衣が少し考えているような表情をして、徐に純を控え室の中にねじ込んだ。

「ちょっ、衣、何すんだよ!」

「あ、純君に衣。お帰り。」

「戻ってくるのが遅いですわよ。」

「・・・怒ってないのか?」

「あの程度の事で怒る程、私は短気ではありませんわ。そんな事より智紀が大活躍ですのよ!」

(透華、まさか俺に一人で考える時間をくれたのか・・・透華、ありがとうな。)

~南四局~ 親:沢村智紀

風越 208800

龍門渕 70900

鶴賀 66200

清澄 54100

(この親番で引き離す。)

(この親は絶対に和了させない!)

「ポン。」

「チー。」

(龍門渕の、高そうな手張っとるな・・・しゃーないか。)

「ロンです。3900。」

まこが捨てた牌で吉留が和了した。

(清澄が差し込み?最下位なのに、なんてリスクの高いことを。)

「はい。」

(はぁ、最下位だからやっぱり差し込みなんかするべきじゃなかったかいのぉ。まぁ、後半戦で頑張るしかないな。)

~次鋒前半戦結果~

風越 212700

龍門渕 70900

鶴賀 66200

清澄 50200



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第12話 次鋒後半戦

(風越は相当削れたけど、龍門渕を止められず、結局ラスなのは変わらずか・・・後半戦は頑張らんとな。)

(前半戦だけで100000点以上取られちゃった・・・このままじゃ、冬室さんが稼いだ点数が無くなっちゃう!)

~場決め結果~

東:風越

南:鶴賀

西:龍門渕

北:清澄

『さぁ、対局室に面子が出揃いました。次鋒後半戦、開始です!』

~東一局~ 親:吉留未春

風越 212700

龍門渕 70900

鶴賀 66200

清澄 50200

(まだ風越との点差は14万ちょっとある。あと何回か直撃すれば10万点差くらいにはなる。でも鶴賀の妹尾佳織、そして東横桃子。この二人は危ない。じゃあとりあえず鶴賀を落とす。)

佳織が捨てた牌を見ると、すかさず手牌を公開した。

「ロン。5200。」

(なっ、1巡前にわしが切っとったのに、直撃狙いか?)

(また直撃、なんでこんなに直撃ばっかりとれるの?)

(龍門渕の人にどんどん追い抜かれちゃうよ。どうしよう。)

~東二局~ 親:妹尾佳織

風越 212700

龍門渕 76100

鶴賀 61000

清澄 50200

(とりあえず2位にはなれた。なら鶴賀と清澄を引き離す!)

~9巡目~

「ツモ。タンヤオ三色ドラ2。2000・4000。」

(またっ、しかも今度はツモ和了りかい。さっきまではこっちに直撃されとらんかったから良かったけど、このままにはしとけんわ。)

『龍門渕の沢村選手、調子が良いですね。』

『完全に龍門渕のペースになってるな。このペースを崩さないと、次の親でやられるかもな。』

~東三局~ 親:沢村智紀

風越 210700

龍門渕 84100

鶴賀 57000

清澄 48200

~6巡目~

(似たようなシーンを見た事がある。また龍門渕に良い手がきてる気がする。)

まこが眼鏡を外した。

「チー。」

(えっ、さっき赤5を切ってたのに、喰い戻した?)

(清澄、不可解な鳴き。まさかずらされた?)

「ポン。」

(2副露、これは流石に降りる。)

~10巡目~

「ツモ。發混一で1000・2000。」

(ドラ残してれば約2倍の点数になったのに、どうしてそんな点数を下げるなんて事したの?)

『藤田プロ、今のはどういう事なんでしょうか?』

『龍門渕に流れを持ってかれているから鳴いてそれをずらした、と言った感じかな。』

『確かに、清澄の染谷選手が鳴いてから、龍門渕に有効牌が行ってませんでしたね。』

『それは偶然か、はたまた必然か。どちらにしても、これで龍門渕のペースは脱したな。』

~東四局~ 親:染谷まこ

風越 209700

龍門渕 82100

鶴賀 56000

清澄 52200

(このまま親で連荘出来りゃええんじゃけど、そう簡単にはいかせてくれなそうじゃ。)

(このままやられっぱなしじゃ終われない!ここは攻める!)

「リーチ。」

(風越のリーチ、この手牌じゃ鳴くことも出来んわ。)

(さっきの清澄の和了で私の流れが完全に消えてしまった。)

(来てっ!あっ、来た!)

「ツモ。リーチ一発ツモタンヤオで2000・3900です。」

(和了られた。しかも親被りじゃ。)

(風越にリードを許してしまった・・・)

~南一局~ 親:吉留未春

風越 217600

龍門渕 80100

鶴賀 54000

清澄 48300

~9巡目~

(このまま攻める!)

「リーチ!」

(またかい、調子付いとるな。)

(追撃される・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一で6000オール!」

(くっ、連荘させてしもうたわ。しかも高い。リードがまた広げられたわ。)

(まだ大丈夫、役満直撃じゃなきゃ飛ばない。ここは頑張って耐える。)

~南一局一本場~ 親:吉留未春

風越 235600

龍門渕 74100

鶴賀 48000

清澄 42300

(このまま風越のペースにする訳にゃいかんのう。じゃったら・・・)

「ポン。」

(清澄、ずらされた?折角一向聴だったのに。)

~7巡目~

「ポン。」

(またっ、これじゃあ、さっきの龍門渕みたいにやられちゃう。)

~9巡目~

「ツモ。混一対々、2100・4100じゃ。」

(速い・・・)

(一向聴だったのに全然追い付けなかった、というより有効牌が全然来なかった。やっぱりこの人手強い。)

(これで風越の親を流せた。でもまだまだここからじゃ!)

~南二局~ 親:妹尾佳織

風越 231500

龍門渕 72000

清澄 50600

鶴賀 45700

(鶴賀から逆転は出来たけど、役満でもされたら怖いのう。ここで安心はしとられんか。)

~6巡目~

(聴牌したわ。したのはええけどこの手、ダマで確実に和了っとくか?いや、ここは攻めの姿勢じゃ!)

「リーチ!」

(今度はリーチ?このまま和了らせる訳にはいかない!)

「ポン。」

(風越の、ずらしたか。じゃけど、そがぁなんされてもわしは和了る!)

~8巡目~

「ツモ。リーチツモ面前混一中ドラ1で3000・6000じゃ!」

(またやられたっ!どうしよう、残り二局しかない。しかも親番もない。だけど、少しでも稼がないと!)

~清澄高校控え室~

「よしっ!その調子です部長!」

「部長!凄いじぇ!」

「この調子で行けば、龍門渕にも逆転出来そうですね。」

「部長、頑張って下さい!」

~南三局~ 親:沢村智紀

風越 228500

龍門渕 69000

清澄 62600

鶴賀 39900

~観戦室~

「鶴賀の妹尾さん、最初は良かったけどもう厳しいんじゃない?」

「いや、むしろここからだと思うぞ。」

「えっ?」

「まぁ、見てみれば分かるさ。」

~対局室~

(ここまでは麻雀牌さんの力無しで耐えられました。ここからは一気に決めます!)

(妹尾さん、なんじゃこの威圧感は。)

(これは、衣に似た怖さ、危険!)

智紀とまこが佳織の異変に気付いた。

~6巡目~

(よし、これで・・・)

(鶴賀の妹尾さん、嫌な予感がする。)

(訳分からん捨て牌しよってからに!)

「ツモです。」

(なっ、それは・・・)

「字一色。8000・16000です。」

(副露無しの字一色!?じゃあこれ、四暗刻もついてダブル役満だ。)

(なんじゃこりゃあ、あんた、字牌も何枚か捨てとったじゃろ。それなのに字一色和了りよるんか!?)

(ラス転落。妹尾佳織、やはり異常・・・)

(このまま攻めます!)

『鶴賀学園の妹尾佳織、役満ツモで一気に2位浮上です。』

『妹尾佳織、3度の和了全てが役満だな。』

『これは凄い偶然ですよね。』

『そうだな。』

(打ち方を見てると、役満和了への道筋を誰かに教えて貰ってるみたいな節がある、それはなんだ?)

~南四局~ 親:染谷まこ

風越 220500

鶴賀 71900

清澄 54600

龍門渕 53000

~11巡目~

「リーチします!」

(リーチじゃと?ほいじゃったら・・・)

「ポン。」

(やっぱり、リーチ掛けたらポンしてくれました。お陰で筒子が来てくれそうです。)

「ツモです。九蓮宝燈。8000・16000です。」

(はぁ?純正九蓮宝燈じゃと!?)

(そんなっ・・・)

(これは規格外・・・)

『じ、次鋒戦終了!なんと、鶴賀学園の妹尾佳織がラスト二局で2連続役満和了!とんでもない事が起きてしまった!』

~次鋒戦結果~

風越 212500

鶴賀 103900

龍門渕 45000

清澄 38600

~観戦室~

「何、今の・・・」

「配牌で5枚しか筒子を持ってなかったのに、筒子の九蓮宝燈だなんて・・・」

「ワハハ、佳織凄いなー。」

(今の、南場の氷華なら防ぐ事も出来たのかな・・・)

~鶴賀学園控え室~

「うっわー、妹尾先輩凄いですね。」

「もうダメかと思ってたっすけど、まさかでしたっすね。」

「うむ、麻雀牌の力というのはあそこまでのものだったとはな。」

「この調子なら、風越女子高校に逆転出来そうですね。」

「任せて下さいっす!ステルスモードの私が連続で直撃して風越を落としてくるっすよ!」

「うむ、期待してる。」

「東横先輩頑張って下さいね!」

「任せるっすマッキー!必ず勝ってくるっすよ!」

~清澄高校控え室~

「ただいま、いやー、やっぱり敵は取れんかったわ。」

「そんな事ありません。結果的には、2万点のプラス収支じゃないですか、十分ですよ。」

「そうです!後はマホにお任せ下さいです!」

「マホちゃん、頑張ってね。」

「はい!」

「その前に、マホ。ほれ、頼まれてたタコスだ。」

「あ!ありがとうございます!須賀先輩。」

「おう、頑張れよ!」

「では、いってきます!」

~風越女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「お帰りなさい、-96000先輩。」

(くっ、そんな言い方しなくても!でも本当の事だから何も言い返せない。)

「吉留!お前ふざけてんのか?」

(コーチ、やっぱり怒ってる。)

「コーチ!止めてください!未春んは、吉留は頑張りました!何度か直撃を喰らっても最後まで戦ってました!だから彼女を攻めないで下さい!」

「華菜ちゃん・・・」

「ちっ、文堂!吉留が取られた分、きっちり取り返してこいよ!」

(次は夢乃マホが出るからそれは無理だと思う。まぁ、私には関係無いから別にいいか。)

「は、はい!でも、冬室さんに勝ったっていう夢乃マホっていう人が出てくるんですよね?」

「大丈夫です。喩え相手が夢乃マホだからって20万を削れるほど強くは無いはずです。安心して負けて来て下さい。」

「負けて来てって、私は勝ちにいくよ?」

「勝ちにいっても負けにいってもどうせ負けるので関係無いです。これまで貴女方と対局してみて、夢乃マホに勝てない事は明白です。いくら頑張っても勝つ事はあり得ません。なので-96000なんていう面白い結果だけは残さないようにして負けて来て下さい。」

「さ、流石に言い過ぎだよ、冬室さん。」

未春が氷華に対して口を挟んだ。それを聞いた氷華は表情1つ変えずに未春を見た。

「-96000先輩に意見する権利なんてありませんよ?」

氷華の発言は、怒りに任せた暴言ではなく、冷静に言い放っている為、未春の心がその言葉によって強く抉られた。

「ちょっと氷華!それ以上未春んに酷い事言うな!未春んは頑張ってただろ!氷華もちゃんと見てただろ!」

「全ては結果です。途中でどれだけ頑張ってようと、-96000の事実は変わりません。少しは悔い改めて下さい、-96000先輩。」

「・・・華菜ちゃん、全部、全部私が悪いんだよ。ごめんなさい、冬室さん。私が悪かったです。」

「まぁ、団体戦は片時も勝てる気がしてなかったので別に怒って無いですけど。」

そして止めの一撃と言わんばかりにこの一言である。元から勝てる気はしていなかったという氷華の発言は、未春の心中に直接響いた。

「・・・っ!」

そして、我慢の限界に達した未春は黙って控え室を出た。すると直後、氷華の頬に痛みが走った。

「痛いです、池田先輩。」

「確かに未春んの結果は酷かったかもしれない、氷華の言ってる事は間違ってはいないよ。でもあそこまで言う必要無いだろ!氷華、どうしちゃったんだよ!これまではそんなに酷い事言ってなかっただろ?」

「貴女に私の何が分かるんですか?たった数ヶ月同じ部活にいただけで私の事を知った気になってるからそういう意味不明な事を言うんですよ。これが普段の私です。団体戦でモチベーションを下げない為にあえて口を開いてなかっただけです。」

「そうだったのか、氷華の事を知らないのに知ったかぶりして悪かったよ。でも、だったら尚更、どうして負けてショックな今それを言ったんだよ。」

「私の勝手じゃないですか。はぁ、うだうだ話すの疲れました。中堅戦でも見ましょう。」

「うーん、分かった。中堅戦見るし。」

言いたい事が山ほどあったが、今は中堅戦を見る方が先決だという判断で、池田は氷華に従った。

今、中堅戦の選手が出揃い、中堅戦が開始されようとしていた。




去年と同じメンバーだったからか、対局の内容が少し薄くなってしまいました。次からはそのような事が無いように頑張ります。


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第13話 中堅前半戦

遂に本作の主人公(?)の出場です。


夢乃マホ、文堂星夏、国広一、東横桃子の四人が卓に着いた。

~場決め結果~

夢乃マホ:東

文堂星夏:南

東横桃子:西

国広一:北

マホが、京太郎に買ってきて貰ったタコスを食べた。

(よし、タコスぢからフルチャージです!)

(タコス・・・清澄ではタコスが流行っているのか?)

『四人が対局室に出揃いました。中堅戦、開始です!』

「よろしくっす~。」

「よろしく。」

「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしますです。」

(この人が夢乃マホさん?何と言うか、小動物みたいだな。本当にこの人があの冬室さんを上回ったの?)

~東一局~ 親:夢乃マホ

風越 212500

鶴賀 103900

龍門渕 45000

清澄 38600

「親リーチ、いっきまーす!」

(はっ?ダブリー!?嘘でしょ。)

マホが2巡目の牌を引いた。

「ツモ!ダブリー一発ツモタンピン三色で8000オールです!」

(うわっ、一発ツモ!?冬室さんの言ってた通りだ。この人凄い。)

(速い、そういえば、清澄の片岡さんもこんな感じの和了り方だったな。もしかしてタコスを食べると調子が良くなるのか?いや、でも去年の決勝で純君が食べてたけど、特に変わった様子も無かったからな。まぁ、偶然かな。)

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

風越 204500

鶴賀 95900

清澄 62600

龍門渕 37000

(この親番、大事にしたいです。ここは、絶対安全圏です!)

マホが捨てる牌を持ち、クルクルと回しながら河にその牌を捨てた。

「リーチ!」

(2連続ダブリー!?そんなっ・・・)

(あのリーチの仕方、去年の白糸台高校の大将の人と似てるっすね。これはちょっとヤバげっすね。)

~9巡目~

「カン。」

(この巡目でカンって、これじゃあ本当に大星淡さんみたいじゃないか。)

(まさか・・・)

~10巡目~

「ツモ!」

マホが裏ドラをめくる。するとカン裏が4枚乗った。

「ダブリーツモ清一ドラ4。16100オールです!」

(はぁ?ダブリーに清一で数え役満!?しかも大星さんみたいな和了り方。この人もしかして、コピー能力でも持ってるのか!?)

(そんなっ、コピーだなんて、あり得ないでしょ。)

『今の局、清澄以外の配牌がどれも悪かったな。』

『そうですね。清澄以外は和了れる気配がありませんでした。』

(まるで去年の白糸台高校大将の大星淡みたいな和了だな。清澄の夢乃マホ、中学の牌譜で冬室氷華をただ一人撃ち破った試合のやつは見た。まぁ、倒したと言っても冬室は中学まで点数上昇とかダブリーなんてしてなかったがな。ダブリーどころかリーチを掛けた試合すら見たこと無かったな。でもその冬室を破った夢乃マホは去年の清澄の5人と似たような打ち方はしていたが、大星淡のような打ち方はしていなかったはず。ということはこちらも強くなってるという事か?)

~清澄高校控え室~

「マホちゃん、まるで淡ちゃんみたいだよ、でも、これまであんな打ち方してなかったような・・・」

「実はじゃな、合宿の時から、あいつには特別課題を出しとったんじゃ。」

「特別課題?マホちゃん可哀想だじぇ。」

「いや、そんな大したもんは出しとらんよ。ただ、強豪校の対局の映像と牌譜を渡して、一打一打牌譜を確認しながら映像を見るように言ったんじゃ。そうしたらこの通り、マホの人真似のレパートリーが増えたって訳じゃ。」

「そんなの、効果があるとは思えません。」

「まあまあ、あんたの言いたい事は分かる。じゃけど、その課題をこなしてから奴の成績はどんどん上がっとるんじゃ。それのお陰かどうかは知らんけどのぉ。」

「ぐ、偶然です。しかも、人真似と言っても、ダブルリーチなんて真似出来ませんよ。偶然に決まってます。」

「まぁ何にせよ、マホには期待じゃな。」

~東一局二本場~ 親:夢乃マホ

風越 188400

清澄 110900

鶴賀 79800

龍門渕 20900

(あまりやり過ぎると龍門渕が飛んじゃったり後々使えなくなったりするかもなのでここは温存します。)

(あれ、清澄の人のヤバい感じが消えた?というか弱くなった?もし本当にコピー能力があるとしたら強くない人をコピーしてるのか?いや、もしかしたらコピーする相手は決められないのか?いや、温存してる可能性もあるな。でもどっち道、使われてないなら今しかない!)

~6巡目~

「リーチ!」

(今度は龍門渕!?ちょっ、この面子相手じゃ、吉留先輩よりも酷い結果になりそう・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンヤオドラドラ。3200・6200。」

(跳満・・・親被りだから少し痛手です。やっぱり親番は攻めた方がいいのかな?でも次は北家なので大丈夫です!)

~東二局~ 親:文堂星夏

風越 185200

清澄 104700

鶴賀 76600

龍門渕 33500

(また清澄が怖い感じになってる。強い能力でも入ったのかな?)

「ポン。」

(北をポン・・・自風ではあるけど、ん?北家で北をポン!?そんなまさか・・・)

「それもポンです。」

(東もポンした!間違いない。これは、去年の全国の2回戦で原村さんが戦っていた永水女子の薄墨さんの能力だ。このままいくとまた役満を和了られちゃう!)

~9巡目~

「ツモ。小四喜!8000・16000です!」

(本当に小四喜で和了られた・・・)

(この人、小動物なんかじゃない!正真正銘の化け物だ!)

~東三局~ 親:東横桃子

風越 169200

清澄 136700

鶴賀 68600

龍門渕 25500

(今回はそんなに怖くは無いな。なら、配牌もいいし、攻める!)

(龍門渕の人に良い手の気配がします。この流れは絶っておきたいです。)

「ポン。」

~龍門渕高校控え室~

「何ですの?今の不可解な鳴きは。」

「今度は純だ~!」

「なっ、まさか、また人の真似をしたんですの?」

「あぁ、確かに俺だったらあの局面でポンしてたな。清澄の三人目、去年の部長が辞めたから穴かと思ってたけど、更にヤバい奴が入ってきたな。」

~対局室~

(さっきポンしたのに次の巡目で切ってる。どうしてこんな打ち方を・・・はっ!?この打ち方、まるで純君みたいじゃないか!って事は、ボクの和了りを阻止されたって事なのかな?)

「ロン。5200。」

放銃したのは風越の文堂星夏だった。

(うわっ、清澄に振り込んじゃった。しかも、開始時は18万位点差があったのにもう2万点差くらいしか無い。どうすればいいの?冬室さん。というか、この人含めて三人がかりでやっとこの人だけ冬室さんを上回ったって、冬室さんどんだけ強いの。)

(本当に阻止された・・・って、さっきから本当にってばっかり思ってるな。もうこれは受け入れるしかないよね。まぁでも、色んな人の真似が出来たとしても、衣みたいに本当にヤバいのはまだ来てない。だからやっぱりこの清澄の人は満月の時の衣に比べたらもうちょっと善戦出来そうだ。)

(ふぅ、上手く決まりました。今の感じ、和了されてたら倍満くらいだったかもしれません。)

~東四局~ 親:国広一

風越 164000

清澄 141900

鶴賀 68600

龍門渕 25500

(この親番は絶対に決める!清澄に何をされたとしても絶対に決めて見せる!)

~8巡目~

「リーチ!」

「ポン。」

(清澄!?一発を消された?でも、それでもボクは和了ってみせる!)

~10巡目~

「ツモ!リーチツモ清一。8000オール!」

(うわっ、親倍、交わせなかったです・・・)

~東四局一本場~ 親:国広一

風越 156000

清澄 133900

鶴賀 60600

龍門渕 49500

(このまま連荘する!)

(仕方ないですが、これを使っちゃいましょう。)

~9巡目~

(なんだこれ、全然索子が来ない。清澄だけが索子を切ってる。これはもしかして、絶一門!?)

(あ、龍門渕の人、気付いたみたいですね、でももう遅いですよ。)

「ツモ。面前清一ツモ一盃口で、4100・8100です。」

(くっ、やっぱり索子が清澄に集まってたのか。って、さっきも同じような事言ってたな。ボクって学習しないな。)

~南一局~ 親:夢乃マホ

風越 151900

清澄 150200

鶴賀 56500

龍門渕 41400

(清澄の親番、絶対に和了らせない!)

「リーチ。」

(はっ?ダブリー!?また?)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ清一。12000オール。」

(清澄に捲られた!あぁ、冬室さんに酷い事言われちゃう。しかもこれ、冬室さんみたいな和了。もうこの人嫌だ・・・)

(清澄の人、凄いっすね。でも今回はラッキーっすね。こんなに特徴的な人がいると、私もそろそろ消えられそうっす。)

~風越女子控え室~

(・・・・・・・・・夢乃マホ、個人戦では絶対に潰してやる!)

(まさか氷華までコピー出来るとは・・・)

(このままじゃ、星夏ちゃんが可哀想。)

~清澄高校控え室~

「おぉ!マホがやりおった!」

「マホちゃん凄い。」

「やったじぇ!うちが大逆転トップだじょ!」

「マホのやつ、やるな。」

「このままぶっちぎりでいっちゃえー!」

「マホちゃん、ここからですよ!」

~南一局一本場~ 親:夢乃マホ

清澄 186200

風越 139900

鶴賀 44500

龍門渕 29400

~6巡目~

(聴牌、清澄は特に変な事をしてない。なら今がチャンス!)

「通らば、リーチ!」

「いいんすか?それ。」

(えっ、この声、まさか!?)

「ロン。メンタンピンで3900の一本場で4200っす。」

(えっ、リーチ!?いつの間に?あっ、そういえば、去年、深堀先輩が、鶴賀の東横桃子は消えるとか言ってた気がする。そういうことだったのか。)

(もう遅いっすよ!清澄の人も、これまでのようにはいかないっすよ!)

~南二局~ 親:文堂星夏

清澄 186200

風越 135700

鶴賀 48700

龍門渕 29400

(宮永先輩が言っていたステルスみたいなやつですか。そっちがそのつもりなら・・・)

「リーチ!」

『なっ、なんと、清澄の夢乃マホ、3面張を捨てて2ピン単騎リーチだ!これはどういう事でしょう?』

『多分、次の巡目で風越の手牌から2ピンが余るだろうな。』

(聴牌した。2ピンを切れば安目でも12000。ここは通させてもらう!)

「リーチ!」

「ロン!12000です。」

(なんで!しかも3面張を捨てて単騎なんて・・・)

(私のステルスを警戒した?それとも去年の清澄の部長みたいな打ち方をした?もしかしたら両方かも知れないっすね。)

(去年の清澄の部長は地獄単騎だったはず、だけど今回は3枚全部残ってた。って事はもしかしたらあの人じゃないのかな?)

~観戦室~

「今のって、久の真似をしたのかな?」

「いや、違うわね。あれは多分、白糸台の弘世菫さんじゃないかしら?悪待ちというより、的を絞ってた感じがしたわ。」

「そういえば、あの人も、待ちを悪くしてましたね。」

「しかも、マホちゃんが3面張から単騎に切り替えた巡目で2ピンが余ったなんて、何かしてるとしか思えないでしょ。」

「そうか?そうとも限らないとは思うが。」

「まぁ、普通なら何もしてないとは思うけど、あの子の前だとそんな考えではいられないわよ。」

久達が話していると焦華が何かを思い出したような反応を示した。

「あっ、そういえばあの人どっかで見たことあると思ったら、氷華倒した人じゃん!」

「えっ!?冬室さんを!?嘘っ・・・」

「本当よ、南場になって高火力を連発してた冬室さんをマホちゃんが他家と協力して上手く抑えて勝ったのよ。」

「あの冬室さんが負けるなんて。」

「でも、あのコピーが全て必然だったとしたら、冬室さんよりも凄いのは納得よね。」

「・・・そうかも、しれないですね。」

~南三局~ 親:東横桃子

清澄 198200

風越 123700

鶴賀 48700

龍門渕 29400

(うわっ、あの人ってこんな事まで見えてたんですか!?ちょっとこれ、ズルすぎませんか?まぁでも、それを使えちゃうマホもズルいのかもですね。)

「あっ、それポンです。」

(清澄が發をポン?次は何をするつもりだ?)

「それもポンです!」

(2索をポン!?これってもしかして、妹尾さん!?)

(あっ・・・聴牌した。しかも、吉留先輩と全く同じだ。8索を切れば聴牌、でも吉留先輩は安心な方をと思って大三元に放銃した。なら、私はリーチをする!)

「リーチ!」

「ロン!緑一色。32000です。」

(なっ、さっきと同じパターンかと思ってたのに、今度は緑一色だなんて・・・)

(さっきと同じように打って、逆に降りづらい精神状態にしたのか・・・清澄の三人目、この子は一体何者なんだ?)

~南四局~ 親:国広一

清澄 230200

風越 91700

鶴賀 48700

龍門渕 29400

『なんと、先程の一撃で、清澄高校が完全に一人浮き状態。これは他の三校にとっては厳しいのではないでしょうか。』

『今の途中経過を見ると、先鋒での結果が嘘みたいだな。』

『確かにそうですね。』

~9巡目~

(清澄、何もしてこない?なら、この親番で連荘する!)

「リーチ!」

(龍門渕のリーチ、高い手が来る。)

(・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラドラ。6000オール!」

『龍門渕高校国広一、二連続和了をしていた清澄を止めた!』

(よし、このままいくぞ!)

~南四局一本場~ 親:国広一

清澄 224200

風越 85700

龍門渕 47400

鶴賀 42700

~3巡目~

「リーチ!」

リーチを掛けたのは、一ではなく、マホだった。

(清澄!?3巡目とか、早すぎるだろ。)

(こんなんじゃ何を出せばいいのか分からないよ・・・)

「それです、ロン!メンタンピン一発、7700の一本場で8000です!」

文堂が一発で放銃した。

(一発掴まされてた!)

(私のステルスはもう発動してたのに、全然和了出来なかったっす。)

『ち、中堅前半戦終了。なんと、清澄の夢乃マホが凄まじい闘牌を見せ、完全に清澄の一人浮き状態!このまま清澄のペースで持ってかれてしまうのか!それとも他校が巻き返すのか!』

~中堅前半戦結果~

清澄 232200

風越 77700

龍門渕 47400

鶴賀 42700

前半戦が終わり、休憩時間になった直後、対局室のドアが開かれた。そこには氷華が立っていた。氷華は対局室の方へ向かっていった。

(うわっ、冬室さん、凄く怒ってる。なんて言われるのかな・・・)

「1年ぶりですね、夢乃マホ。」

(あっ、そうか、用があるのは夢乃マホさんか・・・そういえば、私には全く期待してないって言ってたしね。)

「お久しぶりです。冬室先輩。」

挨拶を交わすと、そのまま何も話さずに睨み合う。そこにいた3人は、この緊張状態のせいか、誰も身動きを取らず、ただ二人を見ている事しか出来なかった。

「夢乃マホ、個人戦では叩き潰す。」

「マホ、負けません!」

「まぁ、楽しみにしときます。」

氷華は、そう言って対局室から離れた。

休憩時間が終わり、後半戦が始まろうとしていた。




清澄と龍門渕の点数表記が間違っていたので修正しました。


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第14話 中堅後半戦

休憩時間が終わった。四人で場決めをする。

~場決め結果~

東横桃子:東

文堂星夏:南

夢乃マホ:西

国広一:北

四人が決まった席に着き、中堅後半戦が始まった。

~東一局~ 親:東横桃子

清澄 232200

風越 77700

龍門渕 47400

鶴賀 42700

(佳織ん先輩が2位で渡してくれたのに、今は最下位。佳織ん先輩が取ってくれた点数を取り返すっす!)

(清澄の夢乃さん、今度は何をしてくるんだろう。)

文堂が牌を捨てると、モモの口元が緩んだ。

「ロン。リーチ一発で3900っす!」

(えっ、リーチ!?いつの間に?うわっ、清澄を気にしてたらこっちからやられた、しかも連荘させちゃった。もうこれ以上点を失う訳にはいかないのに・・・)

(先制出来たっす。次は清澄のコピーさんから取りたいっすね。)

~東一局一本場~ 親:東横桃子

清澄 232200

風越 73800

龍門渕 47400

鶴賀 46600

~6巡目~

(よし、聴牌っす。これで清澄に直撃出来れば完璧っす。)

「リーチ。」

マホが牌を引くが、そのままツモ切りした。

(来たっす!)

「ロン!リーチ一発ドラ1で7700の一本場で8000っす!」

~風越女子控え室~

(あっ、鶴賀の人、終わったな・・・大将戦まで見たかったけど、まぁ、夢乃マホだけでも見れたしいいか。)

「ん?氷華、どうかしたのか?」

「いや、別に大した事はありませんよ。ただ、鶴賀の人が可哀想だなって思っただけです。」

「えっ?連荘してるのに可哀想なのか?」

「そうですね。」

(やっぱり氷華の考えてる事はよく分かんないな。)

~鶴賀学園控え室~

「やった!東横先輩が清澄に直撃かましましたよ!」

「うむ、やっとモモの本質が出てきたな。」

「これで龍門渕を捲って3位に浮上だね。」

「それにしても、夢乃マホさん、あんなに強いお方だとは思いませんでした。」

「ん?えっ、一葉、あの清澄のサイドテールの子にあったことあんの?」

「はい、と言っても、今日真紀を探していた時にですが。」

「あー、あん時か。」

「はい、真紀を探していたら清澄の宮永先輩と夢乃さんが道に迷っていらっしゃったので、会場入り口までご案内しただけなんですけど。」

「えっ!?一葉、宮永咲にもあったの!?」

「ちょっと真紀!ちゃんと先輩を付けて下さい!まぁ、宮永先輩に会ったのは事実でしたが。」

「どうだった?ド畜生だった?」

「まったく、真紀は口が悪いですよ?それに、宮永先輩はとてもお優しいお方でしたよ。」

「へぇー、あんな麻雀するのに根は優しいんだ。」

「とっても優しかったですよ、真紀とは違って。」

「へー、あっそ、こんな事話してないで試合見なきゃ。」

「あ、そうですね。すみません。」

(真紀が拗ねてる。あぁ、真紀可愛いな・・・いや、今は東横先輩を応援しなきゃいけないんでした!)

~清澄高校控え室~

「マホちゃん、振り込んだよ。」

「マホちゃん、このままやられてはいけませんよ!」

「頑張れマホちゃん!」

「ま、この点差じゃったら大丈夫そうじゃけどな。」

「いや、油断は出来ませんよ部長。マホは良い意味でも悪い意味でも何をするか分かりませんから。」

「まぁ、ほうじゃね。」

「頑張れマホ!」

~東一局二本場~ 親:東横桃子

清澄 224200

風越 73800

鶴賀 54600

龍門渕 47400

~7巡目~

「リーチ。」

(清澄のリーチ!今度は何をしてくるんだろう。もうベタオリするしかないな・・・)

(清澄のコピーさん、リーチをかけてきたっすね。なら、こっちも攻めるっすよ!)

~9巡目~

(よし、聴牌したっす。この牌は清澄には危ないっすけど関係無いっす。これで追撃するっすよ!)

「リーチ。」

「ロン!メンタンピン三色ドラ1で、12600。」

(えっ!?どうして?もうステルスは出てるはず、それに、さっきこの人にも直撃をしたのに・・・あっ、まさか、今度は清澄のおっぱいさんをコピーしたんすか!?そういうことっすか・・・)

(鶴賀の東横さんが振り込んだ?透華とともきーが、この人からは直撃出来ないって言ってたのに。どうして・・・)

~鶴賀学園控え室~

「あれ、どうして東横先輩が振り込みなんて?」

「うむ、どうしてだろう。」

「あれじゃない?清澄の原村さんの真似をしたんじゃないかな?」

「そういうことか。東横先輩に直撃できるなんて、やっぱり清澄は手強いですね。」

「頑張って下さい!」

~東二局~ 親:文堂星夏

清澄 236800

風越 73800

龍門渕 47400

鶴賀 42000

~12巡目~

(よしっ、聴牌出来たっす。次こそ和了るっすよ。)

「リーチっす。」

「ロンです。メンタンピン一発ドラドラで12000です。」

(なっ、振り込んだ!?っていうか、リーチ!?いつの間に・・・)

「何で驚いてるんですか?自分が一番良く知ってる光景じゃないですか。」

「えっ!?」

(まさか、私のステルスまでもコピーされた!?しかも、私のステルスを打ち破って直撃なんて・・・)

(清澄の三人目、恐ろしいな。相手と同じ打ち方をしてるのに本人よりも勝るなんて・・・)

~東三局~ 親:夢乃マホ

清澄 248800

風越 73800

龍門渕 47400

鶴賀 30000

~8巡目~

(そういえばこの人、2回以上同じ打ち方をしてないっすね。って事は、もう私がリーチしても気付かないんじゃ?なら、リーチするっす!)

「リーチっす。」

(あっ、聴牌しました。ここで聴牌したって事はやっぱりそういう事ですよね。)

「通らば~追っかけリーチします。」

(はっ?リーチなんて誰も・・・あっ、良く見たら、鶴賀の東横さんがリーチを掛けてる!)

(どうしてリーチを掛けてるって分かったんすか?いや、もしかしたらこのしゃべり方的に、去年のインターハイ2回戦に出てた姉帯さんっすか!?だとしたら次に私が引く牌って・・・)

「ロン。リーチ一発タンヤオドラ1で12000です~。」

(また・・・これ以上やられたら、飛んじゃうっす。それだけは、それだけは絶対にあってはならないっすよ!)

(清澄の人、完全に鶴賀をロックオンしてる。このままじゃ、飛び終了でうちが敗退になっちゃう!)

~東三局一本場~ 親:夢乃マホ

清澄 261800

風越 73800

龍門渕 47400

鶴賀 17000

(清澄のコピーさん、次は何してくるっすか。)

「それ、ポンです。」

(なっ、当然のように私から副露してきた!今度はどうして・・・さっきから清澄のコピーさんにじっと見られてるっすね。ん?そういえば、去年の2回戦でもこんな人いたっすよね。確か、薄墨さんの小四喜を塞いでた気が・・・って事はもしかして、それを今私に使ってるって事っすか!?だとしたら完全に私を潰しにかかってるじゃないっすか。)

(聴牌した。2面聴だけど片方はさっき清澄が副露してるせいで1枚しか残ってない。でも、ここで直撃を与えて少しでも有利になって透華に回さなくちゃ。)

「リーチ!」

(来ましたね、龍門渕のリーチ。)

マホが牌を引くと、4枚の牌を公開した。

「カン。」

(なっ、暗カン!ボクの和了り牌だけど加カンじゃないから槍槓出来ない。しかも残り1枚。夢乃マホにいってくれ!)

残り1枚は、残念ながらマホではなくモモのところにいった。

「あっ・・・」

(それ、ボクの和了り牌だ。でも、どうして鶴賀が出すんだよ・・・)

「どうしたんですか?ロンじゃないなら、腰扱いになってチョンボになっちゃいますよ?」

(くっ、この人、最初からこれを狙っていたのか・・・!)

「・・・ロン。メンタンピンドラ1。11600の一本場で11900。」

(また・・・どうして、どうしてこんな事に・・・私が何をしたっていうんすか。)

~鶴賀学園控え室~

「ちょっと、東横先輩、ヤバくないですか?」

「う、うむ、モモなら放銃する事は無いと安心してたのに、これは予想外。」

「夢乃さん、控えめな方だと思っていましたけど、あんなに恐ろしい方だったとは。」

「性格悪ぃよなー。東横先輩本人にステルス使って直撃したり、わざわざポンとかカンして他の人の和了り牌減らしてロンを促したり、それでとっさに出ちゃった声にチョンボになるって脅したりさ。」

「あの場合のチョンボは、多分和了り放棄ですから殆ど問題は無いはずですよね。」

「確かに、冷静さが失われていて混乱状態だった龍門渕の人に和了を促してたのか。本当に性格悪いな!やっぱり宮永咲も本当は性格悪いんじゃね?」

「どうなんでしょう、夢乃さんを見ているとその可能性も否定しきれないですね・・・」

「だろ!やっぱりあんな麻雀する人が性格良い訳が無い。って、そんな事よりも先輩の方が大切だよ!」

「あっ、そうでした。頑張って下さい!東横先輩。」

~東四局~ 親:国広一

清澄 261800

風越 73800

龍門渕 59300

鶴賀 5100

~4巡目~

「ポンっす。」

~7巡目~

「チーっす。」

(鶴賀、分かりやすい筒子の染め手だな。差し込めって事か?でも生憎、そっちに点数を分けてやれるほどボクには点数は無いよ。でも、この聴牌、筒子の3面張だから、鶴賀からは多分出ないだろう。ここはリーチを掛けておきたい。)

「リーチ!」

(鶴賀が飛んじゃいそうだから差し込みしてもいいよね。)

「ロン。」

「ロンっす。」

モモと一の声が重なった。二人が同時にロンを宣言した場合、回ってくる順番が早い方が和了したことになる頭ハネが適用される。この場合は、文堂から近い方は、一だった。

「・・・3900です。」

(くっ、ボクがリーチなんてしてなければこんな事にはならなかった。)

「うわぁ、鶴賀の人可哀想です・・・」

(なっ、可哀想って、あんたが言うのかよ!)

(清澄の人、酷過ぎるっす・・・)

~東四局一本場~ 親:国広一

清澄 261800

風越 69900

龍門渕 63200

鶴賀 5100

「チーっす。」

「ポンっす。」

「ポンっす。」

(今度も分かりやすい索子の染め手だな、なら、今回は敢えてリーチを掛けてリー棒をあげよう。丁度索子は持ってないから頭ハネになることも無いだろう。)

「リーチ。」

(またっすか!?もう止めて下さいっす・・・)

(どうしてまたリーチなんか、もうここはベタオリで・・・)

「ツモです!」

(なっ、清澄!?)

(止めて!!)

「平和ツモで500・800です。」

(えっ、清一を崩して安手和了り!?どうして?もしかして、衣みたいな事をされてるのか?ギリギリまで絞り尽くしてから潰しに来るのか?)

~清澄高校控え室~

「なっ!?どうして清一を崩したんですかぁー!」

「まぁまぁ、もしかしたらマホちゃんなりに考えがあったのかも知れないし。」

「あのマホちゃんに限ってそんな事あり得ません!」

(うわぁ、和ちゃん、今マホちゃんの事全否定したよ・・・)

「確かに、あのまま清一にしとったら、うちの優勝が決まっとったね。」

「王者の余裕って奴か!」

「もし本当にそうだとしたら、ここに来たときに説教します。」

「でも次はのどちゃんの番だじぇ?」

「そうでした・・・なら、今日の決勝戦が終わったら説教します。」

「ま、説教するんは好きにしてええけど、今はまだ対局中じゃ。」

「あっ、すみません!」

~南一局~ 親:東横桃子

清澄 264600

風越 69400

龍門渕 61400

鶴賀 4600

~4巡目~

「ポンっす。」

~7巡目~

「カンっす。」

(加カン?鶴賀がもうやけくそになってるじゃないか!ヤバイな、何とかしないと。)

~8巡目~

(聴牌しました。ドラの7索を切れば清一の3面張ですけど、このドラには意味がある気がします。)

「リーチ!」

(なっ、清澄のリーチ!?)

(どうする?でも清澄の捨て牌、筒子の染め手に見えるな、ならドラだけど河に2つ出てる事だし、これを切れば大丈夫なはず。)

「それ、ロンです!」

(えぇっ!?清一を捨ててドラ単騎!?しかも地獄単騎!?)

マホが裏ドラをめくると、裏ドラとカンドラの両方が7索に乗った。

「リーチ一発ドラ6で16000です!」

(そんな、ボクが倍満に振り込んだ!?清澄、やっぱりさっきの単騎待ちは去年の中堅じゃなかったか。)

(私がカンなんてしなければ跳満で済んだのに、すいませんっす。)

~清澄高校控え室~

「マホちゃん、また清一を崩したね。」

「マホちゃん・・・これは再教育が必要ですね。」

(うわぁ、和ちゃん、凄い起こってるよ。)

「まぁまぁ、今回は結果的に上手くいったんだし、良しとしようよ、ね?」

「いいえ、ダメです!絶対に許しません!」

(のどちゃん、マジギレだじょ。)

(おぉ、怖っ。)

~観戦室~

「ほらほら、あの子私の打ち方したわよ。」

「本当ですね。あの打ち方、久そっくりですね。」

「あの状況で7索を残すなんて世界中何処を探しても久とあの清澄の中堅しかいないだろうな。」

「ワハハ、そう言えば久も中堅だったな、清澄の中堅は意味不明な打ち方しかしないのか?」

「あら、意味不明な打ち方に負けた人は誰だったかしら?」

「むっ、相変わらずの性格だな。」

「人の性格なんてそう簡単に変わらないわよ。」

(人の性格はそう簡単に変わらない・・・か。)

~南二局~ 親:文堂星夏

清澄 280600

風越 69400

龍門渕 45400

鶴賀 4600

~7巡目~

(嶺上でツモれる気がします!)

「カン。」

(えっ、カン!?まさか・・・)

「ツモ!嶺上開花!2000・4000。」

(コピーさん、もう止めて下さいっす・・・)

(いつか来るとは思ってたけど遂に出してきたか、嶺上開花!)

(鶴賀がもう2600しかない!ヤバいよ!)

~南三局~ 親:夢乃マホ

清澄 288600

風越 65400

龍門渕 43400

鶴賀 2600

(このままやられっぱなしのまま終わるわけにはいかないっす!この配牌、行けるっす!)

(鶴賀の人、嫌な予感がします。まぁ、2600しか無いのであまり怖くないですけどね。)

(聴牌、さっき清一を崩した事、後悔させてやるっす!)

(うーん、字牌が多いです。とりあえずこれで・・・)

「ロン。国士無双。32000っす!」

(うわぁ、13面待ちだ。びっくりです!)

(これで鶴賀が飛ぶ心配は無くなった。なら、次は遠慮なく行く!)

~南四局~ 親:国広一

清澄 256600

風越 65400

龍門渕 43400

鶴賀 34600

~16巡目~

(何だこれ、全然聴牌出来ない・・・ちょっ、これってまさか!?)

「リーチ!」

(ラスト1巡でツモ切りリーチ!?それじゃあまるで、まるで衣じゃないか!)

(嘘っ、そんな・・・)

「ツモ!海底撈月!リーチ一発ツモ清一二盃口。8000・16000!」

(本当に海底で和了られた・・・しかもまた数え役満だなんて・・・)

(この人、火力が馬鹿みたいに強すぎるよ。こんな相手、勝てる訳が無いって!)

(さっき取った点数を取り返された。この人、ヤバすぎっすよ。副将のままにしておけば良かったっす・・・かずかずなら何とかなったかもっすよね。)

『ちゅ、中堅戦終了!清澄高校の夢乃マホが、他校を完全に引き離し、堂々の1位終了です!』

『夢乃マホには驚かされっぱなしだったな。最下位だったのに圧倒的な差を見せて見事1位浮上。しかも他校を全員-終了させてる。ヤバすぎるな。』

『次は副将戦が開始されます。このまま清澄が二連続優勝を果たしてしまうのか!』

~中堅後半戦結果~

清澄 288600

風越 57400

龍門渕 27400

鶴賀 26600

~龍門渕高校控え室~

「なっ!?まさか、衣まで真似出来るというんですの!?」

「しかも、入相すら来てないのに全員のツモが滞んでいた。もし、衣が奴と昼に打ったら、衣は、勝てないかもしれない・・・」

「そんな事はありませんわ。衣なら、きっと負けないですわ。」

「透華・・・うん、そうだな。衣が弱気ではいけないな!」

「そうですわ。とりあえず、私が副将戦で原村和をめっためたにしてきてやりますわ!」

「頑張れ~透華~。」

「お任せなさい!」

~鶴賀学園控え室~

「何とか、首の皮1枚繋がったって感じですね・・・」

「うむ、冬室氷華、夢乃マホ、そして大将戦では宮永咲と天江衣。相当ピンチだな。」

「大丈夫です!私にお任せ下さい。必ず東横先輩の敵を取って参ります!」

「一ノ瀬、頼もしいな。」

「後は一葉とウチにお任せ下さい!」

「うむ、期待してる。」

「二人とも頑張ってね。」

「「はい!」」

~風越女子控え室~

「約15万のマイナスですか。まぁ、今回は夢乃マホが相手だと言うのもありますが、それにしても酷いですね。」

「うーん、まぁ、相手が相手だったし。」

「まぁ、酷いのは文堂先輩だけじゃなくて夢乃マホもですけどね。」

「ん?どういう事だ?」

夢乃マホの収支ですよ。中堅戦開始時の点数は38600。そして、中堅戦終了後は288600ですよ?」

「うわぁ、改めて聞くとめちゃくちゃだな。」

「確かにめちゃくちゃですし私よりも多く点を稼いでますけど、それよりもこの288600という点数ですよ。」

「うん?それがどうかしたのか?」

「まだ気付かないんですか?夢乃マホは前後半で丁度25万点のプラスなんですよ。」

「なっ!?本当だ・・・」

「清一を崩したり、不可解な行動をしているにも関わらず私よりも点を稼いでいる。それが、どうしてもやるせないです。」

「なら、個人戦であいつをボコボコにすればいいんだ!氷華なら出来る。」

「何を今更、個人戦では夢乃マホを完膚なきまでに潰してあげますよ。」

「うん、頑張れ。」

「はい。でも、今応援する人は私では無いはずですよ。」

「あっ、そうだし、深堀、頑張れ!」

「あぁ。」

「相手には龍門渕の部長と元インターミドルチャンピオンがいます。去年のような結果にならないように頑張って下さい。」

「あぁ、じゃあ、行ってくる。」

~清澄高校控え室~

「そろそろマホちゃんが帰ってくるね。」

咲がそう言うと、控え室のドアが開かれた。

「ただいまです。」

「マホちゃん!何ですか、あの変な打ち方は!」

「ごめんなさい、でもちょっとマホの話を聞いて欲しいです。」

「何ですか?」

「ちょっと、次に副将として出てくる鶴賀の人なんですけど・・・・・・」

「はぁ?そんなオカルトあり得ません!私はそんなの信じませんよ。バカな事言わないで下さい。」

「でも、頭の片隅にでも入れといて下さい。」

「そんなことをしたら私がいつものように打てなくなるかもしれないじゃないですか。却下です。」

「そんなぁ、まぁでも、頑張って下さいです。」

「はい。それと、マホちゃんは今日の決勝が終わったらお説教があるから覚悟しといて下さいね。」

「えぇっ!?マホ、頑張ったじゃないですかぁ!」

「あんなのは偶然です。今度打つときに負けない為なんですよ?」

「はぁい。」

和が皆がいる方に目を向けた。

「では、行ってきます。」

「和ちゃん、頑張ってね。」

「のどちゃん頑張れ~!」

「頑張って下さい!」

「頑張れ和!」

「はい。」

和が控え室を出て対局室に向かった。

「そう言えばマホちゃん、さっき和ちゃんに一葉ちゃんの事言ってなかった?」

「はい。一葉さんの特徴というか、打ち筋というか、そう言ったものを教えました。」

「でもどうしてそんなの分かるの?もしかして一葉ちゃんと知り合いだったとか?」

「いえ、今日初めて会いましたよ。」

「えっ、じゃあどうして?」

「見たんですよ。対局では使わないと思って、あの宮永照さんの照魔境のようなもので。」

「えっ、あの時お姉ちゃんのコピーしてたの!?」

「えぇぇぇぇ!?宮永先輩って、宮永照さんの妹さんだったんですか!?」

あぁ、言ってなかったっけ?私は照お姉ちゃんの妹だよ。」

「そうだったんですか。道理で強い訳です。」

「いや、今日のマホちゃんの方が凄かったよ。」

「いや、そんな事無いです。あっ、和先輩の試合が始まっちゃいます。応援しましょう!」

「うん!」

対局室では四人が揃い、副将戦が始まろうとしていた。




マホの性格がどんどん悪くなってる気がしますが、多分対局中だけだと思います。ドSマホ、アリですね!


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第15話 副将前半戦

遂に本作オリジナルキャラの一ノ瀬一葉の登場です。


副将戦に四人が集まり、場決めが行われた。

~場決め結果~

深堀純代:東

龍門渕透華:南

原村和:西

一ノ瀬一葉:北

「宜しくお願いします。」

「お願いしますわ。」

「宜しく。」

「宜しくお願いいたします。」

~東一局~ 親:深堀純代

清澄 288600

風越 57400

龍門渕 27400

鶴賀 26600

(とりあえず、この27400点とかいうおかしい点数を元に戻さないといけませんわね。でもラッキーですわね。その点数なら、原村和に直撃狙いをしても観客に何とも思われない。いくらでも原村和をめっためたに出来ますわ!)

(東横先輩が最後に頑張って下さいましたけれど、結局最下位になってしまいましたか。このままこの点差で終わらせるわけにはいきません!真紀にのびのびと麻雀をしてもらう為に、鶴賀が負けない為に、そして何よりも、真紀が見てくれている試合です。負けるなんて選択肢はありません!)

~8巡目~

「ツモ。タンピンツモ赤1で、1300・2600です。」

『清澄高校の原村和が先制を決めました。』

『今年もスタンドプレーに走ってるな。』

『そうですね。この点差なら、下手に攻めない方が良いとは思いますが。』

『まぁ、それが原村和という人間なんだろう。』

(速い・・・やっぱり原村和は潰し甲斐がありまくりですわ。)

(このまま点差を広げさせる訳にはいきません!)

~東二局~ 親:龍門渕透華

清澄 293800

風越 54800

龍門渕 26100

鶴賀 25300

~11巡目~

(この親番は大事に扱いたいですわね。ならば、ちょっとだけ無理しますわ!)

「リーチですわ!」

(リーチですか。ならこっちです。)

(あんまり高い感じはしませんけど振り込む訳にはいきませんので降ります。)

「いらっしゃいまし!ツモ!メンタンピン一発ツモで4000オール頂きますわ!」

『龍門渕高校の龍門渕透華、満貫手を一発ツモです。』

(親満4000オール。辛いですね・・・)

~東二局一本場~ 親:龍門渕透華

清澄 289800

風越 50800

龍門渕 38100

鶴賀 21300

(折角マホちゃんがこんなに稼いでくれたので、この点数を失う訳にはいきませんね。)

「ツモ。タンヤオツモドラ1で1100・2100です。」

(くっ、やっぱりこの点差だと、原村和には追い付けないですわね・・・)

(このままでは原村先輩にやられてしまいます。ならば、もうやっちゃってもいいですよね、真紀。あれを・・・)

~東三局~ 親:原村和

清澄 293100

風越 49700

龍門渕 37000

鶴賀 20200

~4巡目~

「ポンです。」

(風越の副将、胸に原村和より少し小さい位の無駄な脂肪を持ってますわね。そんな事より、彼女は去年の鶴賀にはいませんでしたわね。鶴賀の1、2回戦は中堅で他校を飛ばしていましたから未知数ですわ。)

和が捨てた牌に一葉が反応した。

「ロンです。三色同刻三暗刻対々和で、12000点お願いいたします。」

「はい。」

(1ピン1索1萬の三色同刻、しかもさっき副露したのは6ピン。面前の状態で三色同刻が出来てたっていうんですの?それはただの偶然ですの?)

~東四局~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 281100

風越 49700

龍門渕 37000

鶴賀 32200

~5巡目~

「ツモです。純全帯么九、三色同刻、三暗刻、自摸で8000オールお願いいたします。」

(また1の三色同刻ですの!?しかも5巡目!?)

(そう言えば、さっきマホちゃんが、『鶴賀の一ノ瀬一葉さんはチャンタを作る事が多いです!』とか言ってましたね。)

~清澄高校控え室~

「本当だ。マホちゃんの言ってた通り、配牌で1の三色同刻が出来てる。」

「一局や二局じゃったらまだましじゃけど、これまでの5回全ての配牌で三色同刻が完成しとるなんてな・・・」

「和先輩には、一応チャンタを作る事が多いと言ったのですが、聞いて貰えませんでした。」

「これは、和のデジタル打ちが仇となるかもしれんの。」

~鶴賀学園控え室~

「始まったか、一葉のバカツキが。」

「相変わらず1を持ってるっすね。」

「うむ、これで2位浮上。」

「このまま行って欲しいね。」

(このまま行ってくれよ、一葉。)

~観戦室~

「うわぁ、これまで全ての局で1を3つずつ持ってるわよ、彼女。」

「あぁ、それが一ノ瀬の怖い所だな。」

(1が集まる・・・あっ、あの子、小6の頃に個人戦で私が凹ませた相手だ!懐かしい~。って事は、あの子のお友達ちゃんもいるって事かな?もしあの子が鶴賀にいるなら、清澄の二連覇は少しキツいかもね~。)

~東四局一本場~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 273100

鶴賀 56200

風越 41700

龍門渕 29000

~3巡目~

「ポンです。」

(9ピンポン?もし、先ほどみたいに1が3つずつ揃ってるんでしたら、これって、まさか、清老頭ですの!?)

和が9索を出した。

「ロンです!清老頭。48300点お願いいたします。」

(本当に清老頭!?しかも4巡目ですの!?)

(速いのに打点も高い。まるで優希みたいですね。)

~鶴賀学園控え室~

「うわぁ、4巡目に清老頭とか、清澄の原村和も可哀想だな。」

「4巡目なんて、凄すぎっすね。」

「いや、でも一葉にとってはそんなに珍しい事じゃ無いですよ?」

「えっ?」

「だって、1の暗刻が3つある時点で3向聴確定、更にその他の5つの牌で147、258、369のような横にも縦にも重ならない数牌か字牌が1枚ずつじゃないと3向聴にはならない。だからあいつは、3分の2位の確率で2向聴なんですよ。」

真紀の言葉に一同が絶句した。

「えっ?ど、どうしたんですか?あぁ、やっぱり一葉凄いですよね。」

「いや、私達が驚いているのは多分それじゃない。」

「えっ?」

「マッキーって頭良いんすね。」

「汐見さん凄い。」

「あぁ、成る程、それで驚いていたんですか。心外ですね、これでもウチ、試験では学年2位なんですよ?」

「えぇっ!?マジっすか!?」

「いや、そんなに驚かなくても・・・」

「そうっすね、ごめんっす。」

「いえ、そこまで気にしてないし自分でも頭悪そうに見えるのは気付いてるんで大丈夫ですよ。」

「そうっすか。」

「まぁでも、ウチよりも頭の良い一葉が、どんな打ち回しをするか、期待ですよね。」

~東四局二本場~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 225800

鶴賀 104500

風越 41700

龍門渕 28000

(これで清澄高校との点差は12万ほど、もう一度清老頭を直撃したとしても捲る事は出来ない。なら、少しだけでも点差を無くします。)

(鶴賀の人、目立ちすぎですわ!このままでは、私が何も出来なかったみたいになってしまいますわ!それだけはさせませんわ!)

~8巡目~

(聴牌しましたわ。リーチを掛ければメンタンピン三色一盃口にはなるけれど、どうしようかしら。原村和と鶴賀の、この二人だけに目立たせる訳にはいきませんわ!)

「リーチですわ!」

「ポンです。」

(なっ、9萬をポン!?もしかしてまた清老頭ですの!?)

(もし、マホちゃんの言ってた事が本当なのだとしたら、また清老頭を和了られるかもしれません。ここは9索を出さないでおきましょう。)

(あら、原村和の捨て牌、私の和了り牌ですわ。)

「ロンですわ!メンタンピン三色一盃口で12600頂きますわ!」

(なっ、私がリーチに一発目で振り込みなんて・・・やっぱりマホちゃんの言う事は無視してれば良かったんでしょうか。)

~鶴賀学園控え室~

「うわー、惜しいな。あそこでまた9索を出してれば清老頭だったのに。」

「攻めても降りても和了られるなんて、可哀想だね。」

「うむ、逆に龍門渕から降りてたら、また清老頭を振り込んでただろうな。」

~清澄高校控え室~

「危なかったじぇ。あのまま9索を出してたら、また清老頭に振り込んでたじょ。」

「今年の鶴賀は高火力が多いのぉ。」

「マホが和先輩にアドバイスしたからでしょうか?」

「うん、そうかもしれないね。いつもの和ちゃんなら、多分清老頭に振り込んでたと思うし。」

「鶴賀の副将、恐ろしいじょ。」

~南一局~ 親:深堀純代

清澄 213200

鶴賀 104500

風越 41700

龍門渕 40600

~5巡目~

(12000を1回出した程度ではあまり目立ちませんわ、ならば・・・)

「リーチですわ!」

(またですか。龍門渕高校の副将、やっぱり手強いですね。)

(私、どうしても4位という状態にいるのが許せませんの、だからこれは和了させて頂きますわ!)

「いらっしゃいまし!ツモ!リーチ一発ツモタンピン一盃口で3000・6000頂きますわ!」

(やっぱり龍門渕透華さんは凄いですね。ですが、真紀ほどではありませんね。次の親番で連荘さえされなければ行けるかもしれません。)

~南二局~ 親:龍門渕透華

清澄 210200

鶴賀 101500

龍門渕 52600

風越 35700

~3巡目~

「リーチです。」

(鶴賀!?3巡目とか、早過ぎですわ!)

(何を切れば良いのでしょうか。安全牌は無いですし、またマホちゃんの言う事を聞いて他の人に振り込む訳にもいきませんし、ここは責めます。)

「ロンです。リーチ一発純全帯么九三色同刻三暗刻で16000点お願いいたします。」

(なっ、原村和がまた一発で振り込みですって!?やっぱり、流石の原村和も動揺してるんですわね。でも動揺すればするほど点数は減りますわよ?まぁ、こっちにとっては好都合ですけれど。)

~南三局~ 親:原村和

清澄 194200

鶴賀 117500

龍門渕 52600

風越 35700

(追撃します!)

「ポンです!」

(くっ、鶴賀、多分もう聴牌ですわね。しかも今回のドラは1ピン。しかも南をポンしているから、三色同刻と三暗刻にホンロートイトイ南ドラ3で三倍満くらいあるかもしれませんわね。流石にそんなに高い手は和了らせませんわ。)

~7巡目~

「ツモ。タンヤオツモドラ1で2000オールです。」

(はぁ、鶴賀じゃなくて良かったですわ・・・)

(三倍満、和了れませんでした・・・単騎待ちですから和了り牌が来にくいのは仕方の無い事ですし分かってはいましたが、流石にこれはガッカリですね。)

~南三局一本場~ 親:原村和

清澄 200200

鶴賀 115500

龍門渕 50600

風越 33700

(このままやられっぱなしだと、完全に冬室のワンマンチームと呼ばれてしまうな。池田に少しでも多く点数を残しておかないといけないし、ここは責めるか。)

「リーチです。」

(風越が動き出しましたわね。配牌が悪いですし、ここは降りですわ。)

「ツモ。メンタンピン一発ツモで2100・4100です。」

(満貫ですか。10万点は残したいですね。)

(このままだと風越捲られてしまいますわね。ですが、次は鶴賀の親番、警戒しなくてはいけないのはこっちですわね。)

~南四局~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 196100

鶴賀 113400

龍門渕 48500

風越 42000

(親番、大事に扱いたいですね。あら、これは、行けるかもしれません。)

~5巡目~

「ポンです。」

(なっ、鶴賀が9ピンをポン!?このままでは、また清老頭が来てしまいますわ!それだけは防がなくては!)

「ロン。タンピン三色一盃口ドラ1で12000です。」

(えっ、風越?あっ、成る程。鶴賀が9の単騎だから振り込み易いという訳ですわね。)

(これで前半戦は終わりですね。)

『副将前半戦終了。原村和がまさかの大量失点。他の三校との点差を縮められてしまった。後半戦では巻き返す事は出来るのでしょうか。』

~副将前半戦結果~

清澄 196100

鶴賀 101400

風越 54000

龍門渕 48500

~風越女子控え室~

「へぇ、このままマイナスで終わるかと思ったら、少しのマイナスはありますけど巻き返しましたね。」

「深堀先輩凄いです・・・」

「まったく、深堀先輩を見習って欲しいですね。マイナス9万超えなんて、普通あり得ませんよ。」

「はい、気を付けます・・・」

「ま、まあまあ、この後深堀とあたしで何とかするし。文堂とみはるんは相手が悪かったから何も悪くないし。」

「そうですか。」

「ありがとう、華菜ちゃん。」

「ありがとうございます。池田先輩。」

「あぁ、反省する点は全国までに直せばいいんだ、今は前を見なきゃいけないんだ。だから氷華、モチベ下がる事言うなよ。」

「分かってますよ。」

「よし、ここからはうちら風越のターンだし!」

~清澄高校控え室~

「和ちゃんがこんなに点を取られちゃうなんて・・・」

「鶴賀の副将に心を揺さぶられとったんじゃろ。今の半荘で、和は発熱を起こしとらんかった。デジタルの化身になりきれとらんかった。これはちょっとばっかし厳しいかもしれんのぉ。」

「のどちゃん、大丈夫かな?」

「大丈夫です。和先輩なら、後半戦で巻き返してくれます。」

「和、頑張れ!」

「ごめん、ちょっと和ちゃんの所に行ってくる。」

「あ、おい咲!」

「大丈夫じゃ。いかせてやり。咲も和が心配なんじゃ。それに、咲を見たら和の調子が良くなるかもしれんしの。」

「えっ、どう言う事っすか?」

「いや、こっちの話じゃ。」

「そうすか・・・」

 

咲が控え室を出て、走って対局室に向かい、対局室に入った。

「和ちゃん!」

「咲さん!?どうしたんですか?連絡でもあるんですか?」

「いや、そういうのじゃない。和ちゃんにアドバイスみたいなのをしようと思って。」

「何でしょうか?」

「さっきの和ちゃん、特に一葉ちゃんから清老頭を放銃した辺りからいつものプレイングが出来てなかった。だから、どんなに点を取られてもいつもの和ちゃんなら何とかなるよ!頑張って!」

「は、はい。ありがとうございます。後半戦こそは頑張ります。」

「うん。頑張って!」

咲が和と喋っていると、休憩時間が終わる為、対局室から出るように促された。咲はもう少し話したい事はあったが、仕方無く対局室から出た。

(頑張ってね、和ちゃん。)

間もなく副将後半戦が始まる。



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第16話 副将後半戦

4人が揃い、場決めを行った。

~場決め結果~

原村和:東

一ノ瀬一葉:南

龍門渕透華:西

深堀純代:北

『さぁ、対局者が出揃いました。副将後半戦、開始です!』

~東一局~ 親:原村和

清澄 196100

鶴賀 101400

風越 54000

龍門渕 48500

(先程は点を取られ過ぎてしまいました。咲さんのアドバイス通り、何をされても自分を貫きます!)

~7巡目~

「リーチ。」

「チーです。」

(鶴賀の、今度はポンではなくチーですのね。一発消しの為?いや、またこの女に1が集まっているのでしたら、三色同刻三暗刻で満貫。十分な手ですわ。一副露で聴牌なんて、正直ズルいですわよね。何とか出来ないのかしら・・・)

「ツモ。メンタンピンツモ赤1で4000オールです。」

(なっ、鶴賀の事を気にしてたら和了られてしまいましたわ。原村和、この女の親番は早く流したいですわね。)

(追い付けませんでした。やっぱり原村先輩は手を作るのがお速いのですね。)

~東一局一本場~ 親:原村和

清澄 208100

鶴賀 97400

風越 50000

龍門渕 44500

(原村先輩よりも速く和了るには副露するしか無いですね。)

「チーです。」

(よしっ、これで聴牌です。)

「ロン。タンヤオ三色、7700の一本場で8000です。」

(原村先輩、速過ぎます。このままでは、原村先輩のペースにされてしまいます。)

~東一局二本場~ 親:原村和

清澄 216100

鶴賀 89400

風越 50000

龍門渕 44500

~7巡目~

「リーチ。」

(やっぱり速いです・・・)

(原村和、さっきから目立ちすぎですわ!)

「ツモ。リーチ一発ツモで2600は2800オールです。」

(この連荘、止められないのでしょうか。)

~清澄高校控え室~

「うわっ、和ちゃん凄い。三連続和了だよ。」

「遂に和の本領が発揮されてきたな。」

「のどちゃんこの調子だじぇ!」

~風越女子控え室~

「うわぁ、原村和凄いな。」

「あれだけの点差があるのにスタンドプレーに走ってるね。」

(流石は一昨年のインターミドルチャンピオンですね。どれだけ打てばあんなに効率的に打てるようになるんだろうな・・・)

~東一局三本場~ 親:原村和

清澄 224500

鶴賀 86600

風越 47200

龍門渕 41700

~5巡目~

(東二局が遠い・・・これ以上原村先輩に連荘させる訳にはいきません!)

「ポンです。」

(なっ、原村和が乗っているのに鶴賀もですの!?)

~8巡目~

(聴牌しました。さっきの半荘で取られた分を取り返す為にも、ここは責めます!)

「リーチ。」

「ロンです。三色同刻三暗刻対々和で12900点お願いいたします。」

「はい。」

(また三色同刻ですか、凄い偶然ですね。)

(やっと連荘が止められました。やはりインターミドルチャンピオンは侮れませんね。)

(やっと原村和の親が終わりましたわね。先程までは聴牌すら儘ならなかったですが、ここからは私が怒濤の追い上げを見して差し上げますわ!)

~東二局~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 211600

鶴賀 99500

風越 47200

龍門渕 41700

~8巡目~

(良い感じの1向聴ですわ!)

「ポンです。」

(なっ、9索をポンですって!?また清老頭ですの!?)

(よしっ、これでまた清老頭を和了出来れば最高の形で真紀にバトンタッチ出来ます。これは和了っておきたいです。)

「ロン。タンピンドラ1で5200です。」

(うわっ、また和了られてしまいました。ポンの余剰牌を狙われてしまいました。もぉ、原村先輩速すぎですよぉ!)

~東三局~ 親:龍門渕透華

清澄 216800

鶴賀 94300

風越 47200

龍門渕 41700

(この親番で何とかしなくてはいけませんわね。それにしても原村和、認めたくないですけどやっぱり速いですわね。)

「チーです。」

(そうでしたわ、こっちも速いですわね。ですけど、今度はチーですわね。これではトイトイが付かないですわね。点数を下げてでも和了ろうとしているのかしら?まぁ、点数を下げると言っても8000、振り込みたくは無いですわね。)

~6巡目~

「ツモです。三色同刻三暗刻。2000・4000お願いいたします。」

(また三色同刻と三暗刻ですか。物凄い偶然ですね。)

(・・・・・・・・・)

(あれっ、何でしょうか?龍門渕高校の方が、最高状態の真紀みたいな感じで怖い感じです・・・)

~龍門渕高校控え室~

「あっ、透華!」

「ん?どうしたんだ?」

「透華、遂に冷えたか。これで2位くらいには行きそうだな。」

「あぁ、冷たい透華ってやつか。」

「うん、あの透華は確かに強いけど、なんか、透華じゃないみたいでボクは嫌いだな・・・」

~観戦室~

「あらっ、龍門渕さん、冷えたわね。」

「えっ、あぁ、去年の合宿のあれですか。」

「そうそう。あの時の龍門渕さんは凄かったわね、今回はどうかしら。」

~東四局~ 親:深堀純代

清澄 214800

鶴賀 102300

風越 45200

龍門渕 41700

~9巡目~

(対子があるのに全然副露出来ないですね。何でしょうか、この感じは・・・あらっ、もう1枚も対子になりましたね、ですが、龍門渕高校が少し怖いのでリーチは掛けないでおきましょう。)

(聴牌しました。ここは少しでも稼いで咲さんに回したいですね。)

「リーチ。」

「ロン。3900。」

(龍門渕高校!?やっぱりさっきの悪寒は龍門渕高校だったんですね。これは後が大変そうですね・・・)

~清澄高校控え室~

「うわっ、りゅーもんさん、合宿の時みたいになってるよ。」

「あの状態の龍門渕透華はあの天江衣と咲と藤田プロを圧倒しとったもんな。」

「あのりゅーもんさんには勝てる気がしなかったよ。」

「じゃあ、こっから龍門渕透華が一気に責めてくる言う事か?」

「そうかもしれませんね。」

「ちょっとこわこわだじぇ。」

~南一局~ 親:原村和

清澄 210900

鶴賀 102300

風越 45200

龍門渕 41600

~7巡目~

「ツモ。1300・2600。」

(また龍門渕高校ですか次の親番で連荘出来れば良いのですが。)

(最後の親番が終わってしまいました。)

~鶴賀学園控え室~

「うわぁ、龍門渕の人、何か怖いな。」

「去年の合宿の時みたいっすね。」

「去年の合宿?どういう事ですか?」

「去年の県予選が終わった後にこの決勝戦に残った4校の合同合宿をしたんだよ。」

「うむ、それで、龍門渕さんはその合宿の時にあんな感じになって、天江衣さんと宮永さん相手に三連続トップで終わらせたんだよ。」

「へぇ、凄いですね。」

「うむ、その龍門渕さんが何をするか、不安だな。」

~南二局~ 親:一ノ瀬一葉

清澄 208300

鶴賀 101000

龍門渕 46800

風越 43900

~8巡目~

(この親番は確実に和了ります!)

「ポンです!」

(よしっ、これで聴牌です。これで跳満を和了出来れば完璧です。)

(また聴牌しました、でもここは黙聴で行きます。)

(あっ、原村先輩の出した牌、私の和了牌だ!)

「ロンです!」

「ロン。頭ハネ、8000。」

『なんと、本日2度目の頭ハネだ!』

『頭ハネ自体はそこまで珍しくは無いが、今日だけでもう二回と考えると、異常だな。』

(まるで狙ったかのような頭ハネ・・・そんな事出来る訳無いんだろうけどな。)

~南三局~ 親:龍門渕透華

清澄 200300

鶴賀 101000

龍門渕 54800

風越 43900

(龍門渕高校、あまり高くは無いですけど三連続和了。その龍門渕高校の親番、連荘だけは防がなくては。)

~5巡目~

「リーチ。」

(リーチを掛けてきましたか。これは少し危険な香りがします。)

「ツモ。4000オール。」

(親満ツモ!?やっぱり連荘は防げませんでしたか・・・)

「一本場。」

~鶴賀学園控え室~

「成る程、天江衣は聴牌出来なくて、龍門渕透華は副露出来ないのか。」

「副露出来ない?っすか?」

「はい、龍門渕透華があの状態になってから一葉が1度も副露出来てなかった。まぁ、それならよくある事かもしんないですけど、3人とも速く和了ろうとして鳴こうとしてるのに全く副露出来てない。こりゃ、多分龍門渕透華の仕業ですね。」

(汐見さん、天江さんと龍門渕さんの事普通に呼び捨てで呼んでる・・・)

「そんな事が、かずかずにとったら、副露出来ないのはちょっと辛いんじゃないっすか?」

「まぁ、一葉なら副露無しでもやれそうな気はしますけど、龍門渕透華と原村和は一葉が聴牌する前に和了ってきますからね。これは一葉にとっては少し厳しいかもしれませんね。」

「じゃあ、守りに徹するのはどうっすか?」

「いや、一葉は守りが本当に苦手なんですよ。多分妹尾先輩以上に。」

「えっ、私以上に!?」

「はい。1が3枚ずつあるって事は、一葉の捨てる牌は残りの5枚のどれかになってしまうんですよ。」

「1を切れば安心じゃないの?」

「一見安心かと思いますが、数牌なのでシュンツとして待たれてたら放銃してしまいますからね。だから一葉は打点は高いですけど実は防御が薄いんですよね。」

「これまでは上手く隠せてたっすけど、この状況はちょっとヤバいかもしれないっすね。」

「そうですね。」

~南三局一本場~ 親:龍門渕透華

清澄 196300

鶴賀 97000

龍門渕 66800

風越 39900

~7巡目~

「リーチ。」

(またですか!?)

(嫌な予感がしますね・・・)

「ツモ。4100オール。」

『龍門渕高校の龍門渕透華の連荘が止まらない!』

『龍門渕、これで五連続和了だな。』

『これはかなり凄いですね。』

『そうだな。』

(なっ、また一発ツモ!?凄すぎです。この連荘も、止められないのでしょうか・・・?)

(龍門渕さんの親、これ以上の連荘はさせません。)

~南三局二本場~ 親:龍門渕透華

清澄 192200

鶴賀 92900

龍門渕 79100

風越 35800

(このまま龍門渕高校の勢いにやられるわけにはいきません。ですが、先程から、何故か副露が出来ませんね。どうしてでしょうか・・・)

(また龍門渕さんが嫌な感じになってますね。聴牌しましたけど、ここは黙聴でいきましょうか。)

~9巡目~

「ツモ。2200・4200です。」

(原村先輩が和了った?原村先輩が和了ったという事は、やっと龍門渕高校の親番が終わりました。はぁ、でも安心してはいられませんね。このままだとマイナス終了してしまいます。最後は少し無理をさせて頂きます!)

~南四局~ 親:深堀純代

清澄 200800

鶴賀 90700

龍門渕 74900

風越 33600

~7巡目~

相変わらず副露は出来ませんけれど、聴牌出来ました。ここは責めます!)

「リーチです!」

「ロン。8000。」

(なっ、龍門渕高校!?もう聴牌していたのですか・・・)

(これで終わりですね。)

『副将戦終了!後半戦は龍門渕高校の龍門渕透華の活躍が光りましたね。」

『そうだな。しかも、きっちり2位を捲って終わらせてるな。』

『あっ、本当ですね。』

(龍門渕透華、やはりあの状態だと強いな。)

~副将後半戦結果~

清澄 200800

龍門渕 82900

鶴賀 82700

風越 33600

~鶴賀学園控え室~

「龍門渕の人、きっちりウチらを捲って終わらせましたね。」

「うむ、狙ったかのようだったな。」

「まぁ、終わった事をとやかく言っても結果は変わりませんからね、ウチが次頑張れば良いだけの話ですよ。」

「マッキー頑張ってっす!」

「頑張ってね。」

「お任せ下さい!」

真紀が大将戦の準備をしていると、控え室の扉が開いた。ガッカリした表情の一葉が帰って来た。

「只今帰りました・・・」

「お帰り一葉、お疲れ様。」

「ごめんなさい、真紀。後半戦、2万点以上盗られてしまいました。」

「何言ってんだよ、前後半合わせれば、一番稼いでるのは一葉だろ?あの相手にトップでバトンを渡せるんだから誇れよ。」

「真紀・・・ありがとうございます。」

(やっぱり真紀は優しいですね。)

「おう、後は任せろ!」

「はい!頑張って下さい!」

「じゃあ、行ってきますわ。」

~清澄高校控え室~

「和ちゃん、後半戦はプラス終了だね!」

「龍門渕の部長が去年の合宿の時みたいになっとったのにプラスとは凄いのぉ。」

「流石のどちゃんだじぇ!」

「和先輩流石です!」

「次は私だね。」

「咲ちゃんもこの調子で行けば大丈夫だじぇ!」

「点差はあるけぇのびのびと打ってきんさい。」

「はい。分かりました。」

「宮永先輩、頑張って下さいです!」

「うん。」

~龍門渕高校控え室~

控え室に透華が戻ってきた。

「あっ、透華お帰り。大丈夫?」

透華は控え室に着くなりその場で倒れた。

「透華!?大丈夫?透華!」

「気絶してる。」

「大丈夫かよ!おい!透華!」

「透華なら問題無い。少し寝てればまた元の透華に戻るであろう。だが、寝ても覚めてもこの点差は変わらぬ。衣はとりあえず大将戦に行くことにするぞ。」

「あ、うん、頑張ってね、衣。」

「うん、任せて!」

(今年は全力で潰しに行くからな、咲!)

~風越女子控え室~

「何とか飛ばされなかったですね。」

「うーん、深堀は頑張ってくれたけど、この点差はやっぱりヤバいな。」

「そうですね。かなり、というより完全に絶望的ですよね。」

「だよなぁ、更に相手は天江衣と宮永咲だろ?今年も0点とかにされちゃうのかな・・・」

「池田先輩、先輩は今日まで頑張って来たんですから自信を持ってください。」

「うん、まぁ、とにかく楽しんでくるし!」

「はい。」

(よぉーし、華菜ちゃん、頑張るぞ!)




副将戦が終わり、次の大将戦でやっと団体戦決勝が終わります。それなのにまだ全国大会で出てくるキャラを決めてない・・・何人かは考えたのですが、咲-Saki-の全国大会に出てくる高校は3年生が多過ぎてキャラを考えても全然間に合わないです・・・もし「こんなキャラ(又は能力)どうですか?」みたいな意見があればコメントお願いいたします。


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第17話 大将前半戦

咲が対局室に向かっていると、反対側から和が戻って来た。

「咲さん!」

「和ちゃんお疲れ。」

「はい。咲さんも頑張って下さい!」

「うん、行ってくる!」

和と別れ、対局室に向かった。対局室の扉を開けると、そこには既に風越のキャプテンである池田華菜が座っていた。

「宮永咲、今年は負けないからな!」

「はい、よろしくお願いします。」

華菜と話していると、もう一人が対局室に入ってきた。

「池田、咲、久しいな。」

「衣ちゃん!」

「ちゃんではなく!」

「あぁ、ごめん。」

「天江衣、今年は去年のようにはいかないからな!」

「ほう、では今年は去年のように容赦しなくても良いという事だな?」

「逆に華菜ちゃんが容赦する番だし!」

「ふっ、まぁ、楽しみにはしておこう。」

話していると最後の一人が入ってきた。

「はじめまして、お手柔らかにお願いします。」

「よろしく。」

「よろしく~。」

「じゃ、早速席決めしますか!」

~席決め結果~

汐見真紀:東

池田華菜:南

宮永咲:西

天江衣:北

『場決めが終わり、四人が所定の位置に座りました。大将前半戦、開始です!」

~東一局~ 親:汐見真紀

清澄 200800

龍門渕 82900

鶴賀 82700

風越 33600

(ま、最初は攻めずに様子見かな~。)

(トップとの差は17万弱、普通に考えたら勝つのは絶望的。でも、私はこれまでひたすら氷華と戦ってきた。勿論氷華には一回も勝てなかったけど、1度だけ、氷華のいる卓でプラス終了することが出来たんだ!たったの600点だったけどあの氷華から取れた点数なんだ、誇って良いはず。あの時みたいに打てば、この魔物二人とも、少しは善戦できるはず!今回の華菜ちゃんはこれまでと違うって事を見せ付けてやるし!)

「リーチだし!」

(風越の池田華菜、去年は天江衣の標的にされて散々な結果だったけど、この人も火力が高いから油断出来ないよなぁ。)

「ツモ!リーチ一発ツモドラ3で3000・6000!」

(跳満か・・・でも親被りだからちょっと痛いな。)

~東二局~ 親:池田華菜

清澄 197800

龍門渕 79900

鶴賀 76700

風越 45600

(この親番でせめて2位までは浮上してやる!)

~4巡目~

「リーチだし!」

(4巡目かぁ、速ぇ。しかも速いのに打点高いんだよなぁ。やっぱり名門風越のキャプテンなだけあるよな。)

「ツモ!リーチ一発ツモ純チャンドラ2で8000オール!」

(わぉ!親倍とか、凄いね~。でも、ウチがラスって言うのがちょっと頂けないかな~?)

(凄い、風越の池田さん、二連続和了だよ。)

(ふっ、束の間の喜びを与えられて天狗になっているようだが、その時も終わりだ。今年の衣は手加減なんてしない。池田だけでなく、咲と鶴賀の一年にも終焉を見せてやろう!)

ゾゾッ

(ん、何だ?今、天江衣から妙なプレッシャーが感じられた。って事は、来るって事か!天江衣!)

~東二局一本場~ 親:池田華菜

清澄 189800

龍門渕 71900

風越 69600

鶴賀 68700

~14巡目~

(全然聴牌出来ない・・・今年も天江衣の支配が始まってしまうのか。)

(何だよこれ、全然聴牌出来ねぇ、どうすれば良いんだこれ。)

(衣ちゃん、今年もやっぱり聴牌出来ないよ・・・)

~16巡目~

「リーチ!」

(ラスト一巡でのツモ切りリーチ、これってやっぱりあれが来るって事だよな・・・)

(鳴けないし・・・)

「ツモ!海底撈月、3100・6100。」

(やっぱり海底撈月で和了って来るのか。流石は天江衣だな。)

~東三局~ 親:宮永咲

清澄 186700

龍門渕 84200

鶴賀 65600

風越 63500

~2巡目~

「ポン。」

(5ピン、しかも赤ドラ二枚、どれを出せば良いんだ、これなら通るかな?)

「ロン。12000!」

(なっ、二巡目だぞ?速すぎる!)

(速っ、マジかよ、でも天江衣のお陰で風越との点差が広がった。よし、そろそろ攻撃モードで行くとしますか!)

~東四局~ 親:天江衣

清澄 186700

龍門渕 96200

鶴賀 65600

風越 51500

「わーい衣の親番だ~。」

(あざといな・・・)

(天江衣の親番、絶対に連荘させない!)

(さてと、この配牌、ならこうだな!)

(鶴賀の大将、いきなりドラの9萬切り?清一でも狙ってるのか?)

~2巡目~

(なっ、またドラ!?しかもツモった牌じゃなくて手牌から捨てた。って事は、ドラの対子落とし?)

(鶴賀の大将、何をする気だ?)

~3巡目~

「リーチ!」

(はっ?ドラの暗刻落としでリーチ!?って事は、ドラ捨ててなければダブリー出来てたって事か?何でダブリーしなかったんだよ。)

(鶴賀の人、ちょっと怖い感じだよ。)

(まさか・・・)

「ほい来た一発ツモ!メンタンピン一発ツモ三色赤4枚で6000・12000!」

(なっ、三倍満!?)

(ドラを暗刻落としして三倍満ツモ!?運否天賦?それともそれがこいつの実力とでも言うのか?)

(皆さん驚いてるね。ま、それもそうだろうな。変な打ち方をしたら点数が上昇したり速く和了れたりする。それがウチのやり方!そして、一葉だけが理解してくれた打ち方だ・・・)

 

 

3年前、ウチが中学に入って間もない頃、幼稚園からの付き合いである一葉と二人で麻雀部に入部した。ウチと一葉は小学生の時から麻雀を始め、小学3年の時には大会にも参加した。その大会でウチと一葉は県予選決勝まで登り詰めたものの、決勝では完膚無きまでにやられてしまった。小学生だったウチはその試合を思い出してしまう為、麻雀こそ辞めなかったものの大会には参加しなくなった。しかし一葉と他の友達とする麻雀は楽しく、そのお陰で中学からは麻雀の大会に出ようと決心した。そんなこんなでウチが入った中学の麻雀部は、結構な強豪校らしく部員も多かった。部員が多い為、大会に出られる人数も限られてくる。この中学では、団体戦の5人と団体戦で出場する5人を含めた8人がエントリー出来た。その選出方法は基本的には部員全員と総当たりで対局して、その中で一番成績の良かった上位8人を選ぶ。だが、顧問やコーチが話し合い、『こいつは駄目だ』と判断されたメンバーが外される場合もあった。それがウチである。ウチは、総当たりで1位になったのにメンバーから外された為、一葉と二人で顧問の所へ抗議しに行った。

「先生!どうしてウチがメンバー入りしてないんですか?ウチは総当たり戦で1位だったのに。」

「なんだ、汐見か。何故メンバー入りしてないかだって?はぁ、お前さ、全然なってないんだよ。変な打ち方ばっかりして、今回1位だったのはまぐれだ。調子に乗るな。」

(はぁ?何言ってんだこいつ。)

「いやいや、まぐれって、部員何人いると思ってるんですか?部員全員に勝ったのがまぐれだって言うんですか?」

「あぁそうだよ。たまたま運が良かっただけでここのメンバーになれると思うのがまずもって大間違いなんだよ。」

「先生!それはあまりにも真紀が可哀想です!」

(一葉・・・)

「ん?あぁ、一ノ瀬か。メンバー入りおめでとう。」

「茶化さないで下さい!真紀は部員全員を相手に全てトップで終わらせているのですよ?それが偶然だと仰るのですか?もしそうだとしたらどれだけの確率か分かってらっしゃるのですか?」

「成る程な・・・なぁ一ノ瀬、良い事を教えてやろう。確率というものは必ずしも回数を重ねなければならないとは限らないのだよ。まぁ要するに、仮に1万分の1の確率があったとしても、一番最初にその確率を引き当てる可能性だってあるんだよ。逆に1万回やっても引き当てられない可能性だってある。汐見は偶然その1万分の1の確率を掴み取ったに過ぎないんだ。先生の言っている事分かるかな?」

「成る程、分かりました。」

「そうか、一ノ瀬は物分かりがいいな。流石成績上位者だな。」

「なら、私が1を集めるのもその低い確率を掴み取ったに過ぎないかもしれないのでメンバーから外して下さい。」

「は?あ、いや、一ノ瀬は打ち方もしっかりしてるし速い上に火力も高い。一ノ瀬は是非メンバー入りして貰いたいんだ。」

「でも、速いのも火力が高いのも何万何億分の1の確率を掴んだだけかも知れませんよ?」

「はぁ?もしそれが確率だったとしたらそんなもの一発で掴める訳無いだろ!あっ・・・」

「今はっきり言いましたね、『そんなもの一発で掴める訳無い』と。」

「くっ・・・」

「真紀への発言の取り消しと真紀のメンバー入りの許可をお願いいたします。」

「いや、でも汐見のメンバー落ちはもう確定してるから厳しいんだよ。」

「・・・そうですか、なら私もメンバー入りを辞退します。」

「えっ!?どうして?」

「真紀がいない公式大会なんて、出る価値を感じ得ないので。」

「いやいや、一ノ瀬のメンバー入りも決まってるんだって!」

「なら、私この部活を辞めます。」

「はぁ!?」

「この部活を辞めれば自動的にメンバーから外れますよね?」

「確かにそうだが・・・」

「これまでありがとうございました。退部します。」

「ちょっ、一ノ瀬!」

「行きましょう真紀。」

「あぁ、うん。」

ウチらは教員室から逃げるように出た。

「ちょっと一葉、別に一葉まで辞めなくても良かっただろ。」

「真紀の事を分かって貰えない方の下にはつきたくありませんから。」

「だからって大会まで辞退しなくても良かっただろ。」

「先程も言いましたけど、私は真紀が出ていない大会には出たくありませんから。」

「そ、その気持ちは嬉しいけどさ、一葉は先生も言ってた通り強いから勿体無いよ。」

「それなら真紀の方が勿体無いですね。あんなに強いのにあんな不当な評価をされて。」

「それは、そうかもしれないけど・・・」

「なら、高校から始めましょう。そして、中学の先生に、真紀を選ばなかった事を一生後悔させてあげましょう。」

「一葉ってたまに怖い事言うよな・・・」

「あっ、ごめんなさい。・・・嫌いになりましたか?」

「何で謝るんだよ。それに、そんな事で嫌いになるならとっくに縁切れてるよ。」

その言葉を聞いた途端、一葉の顔が明るくなった。

「良かったぁ、真紀に嫌われたら私どうしようかと思いました。」

(どうしようと思ったんだよ・・・)

「まぁ、取り敢えず高校で全員蹴散らしてあいつらを見返してやれば良いって事だろ?」

「蹴散らすって・・・真紀も結構怖い事言うじゃないですか。」

「・・・嫌いになりましたか?」

「それ、私の真似ですか?」

「ははっ、似てた?」

「全然似てませんよ!」

「怒んなって。」

「もぉ!」

 

 

(そして、今日まで頑張って来たんだ。あいつらを見返す為、そして、一葉の為に、この試合は勝たなきゃいけないんだ!絶対に勝って全国に行く!)

『なんと、鶴賀の汐見真紀、ダブリーをせずに三倍満ツモ!』

『成る程な。』

『えっ、どうしたんですか?』

『ダブリーを掛けてればダブリーツモドラ7で倍満。だが敢えてドラを暗刻落としする事によって一発とタンヤオと平和と三色が付いて三倍満。まぁ、三色が出来てくれる事と一発ツモが出来る事の二つが同時に起きなければこの三倍満は無かったな。』

『凄い偶然が重なった結果こうなったって事ですかね?』

『まぁ、そんな感じじゃないか。』

『成る程、さぁ、東場が終わり、南場に突入します。』

~南一局~ 親:汐見真紀

清澄 180700

鶴賀 89600

龍門渕 84200

風越 45400

「リーチ!」

(なっ、今度はダブリー!?魔物は二人だと思ってたのに・・・なんてな、分かってたよ。鶴賀の副将であんなにヤバいのを出してきてるんだから天江衣と宮永咲のいる大将戦はもっとヤバい奴が来ると思ってたよ。でも、敵が3人とも魔物だったとしても、華菜ちゃんは諦めない!勝つ可能性が低いなら、最後まで勝ちを模索し続けるだけだ!)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色で8000オール!」

(また鶴賀!?しかも親倍・・・こいつ、マジでヤバいし。)

「続けて一本場!」

~南一局一本場~ 親:汐見真紀

清澄 172700

鶴賀 113600

龍門渕 76200

風越 37500

(あー、来ちゃったか~。ま、来ちゃうよな~、いいけど。)

「ツモ!天和、16100オール!」

(はぁぁぁぁ???天和!?)

(こいつ・・・)

(この人、お姉ちゃんみたいだよ・・・)

「更に続けて二本場ぁ!」

~南一局二本場~ 親:汐見真紀

鶴賀 161900

清澄 156600

龍門渕 60100

風越 21400

「リーチぃ!」

(またダブリー!?こいつ、親番だとダブリー出来るとかそんな感じなのか?)

(こんなの、何を出せば良いのか分からないよ、これかな?)

「ロン。ダブルリーチ一発タンピンドラ3で24600。」

(ぅわわっまた一発、しかも親倍に振り込んじゃったよ・・・)

(鶴賀の勢いが止まらない。このままだと私がやられちゃう!)

~南一局三本場~ 親:汐見真紀

鶴賀 186500

清澄 132000

龍門渕 60100

風越 21400

「リーチ!」

(またダブリー・・・)

「ポン。」

(ん?天江衣のポン、もしかしてずらされたか?)

「ポン。」

(またウチの手番を飛ばされた。まさか・・・)

「ロン。16900。」

(くそっ、掴まされてた。やっぱり天江衣速ぇ、一葉よりも速いな。)

(全然手が追い付かないよ・・・)

~鶴賀学園控え室~

「真紀の親番が終わってしまいました。」

「うむ、でも流石汐見だな。倍満の直撃喰らったのに、まだトップを維持している。」

「このままマッキーが勝って欲しいっすね。」

「汐見さん頑張って!」

~南二局~ 親:池田華菜

鶴賀 168600

清澄 132000

龍門渕 78000

風越 21400

~6巡目~

「ロン。タンピン三色ドラ4、16000!」

(また天江衣に直撃された・・・流石だな。)

(このままじゃ、衣ちゃんにも追い付かれちゃうよ。)

~龍門渕高校控え室~

「衣、調子が出て来ましたわね。」

「あっ、透華、起きてたんだ。」

「えぇ、大会の日にも関わらず倒れてしまい、申し訳ございませんわ。」

「いやいや、透華のお陰であんなに稼げたんだから負い目を感じる必要は無いよ。」

「そうでしたか。なら良いんですけど。」

~南三局~ 親:宮永咲

鶴賀 152600

清澄 132000

龍門渕 94000

風越 21400

~15巡目~

(また聴牌出来ない。って事は天江衣は次のツモでリーチしてくんのかな・・・)

「リーチ!」

(やっぱりリーチしてきたか・・・)

(全然鳴けないし・・・)

(また海底で和了られる!)

「ツモ!海底撈月。4000・8000!」

(また海底かよ、さっきから天江衣ばっかり和了って詰まんねぇな。ウチにも和了らせろよ!)

(また天江衣にやられちゃうのかな・・・)

~南四局~ 親:天江衣

鶴賀 148600

清澄 124000

龍門渕 110000

風越 17400

(このまま連荘させるわけにはいかないっしょ!)

(このままだと衣ちゃんにも捲られちゃう・・・)

~8巡目~

(タンピンドラ1の1向聴か・・・でもこのまま進んだらどうせ和了れないんだろうな。なら、私の打ち方と天江衣の支配だとどっちが上か確かめてみようじゃないか!)

~清澄高校控え室~

「なっ、鶴賀の人、平和とドラを捨てましたよ!」

「同じ牌が1枚重なったからドラを落としたのか、見た感じ、横より縦に手を伸ばすタイプじゃと思ってたんじゃが。」

「あっ、でも汐見さんがドラを切ってからどんどん手が横に延びてますよ!」

「本当じゃ、もう1枚入れば三暗刻じゃな。」

「そんな、偶然ですよ!」

~対局室~

「リーチ!」

(なっ、衣の支配を撃ち破っただと!?鶴賀の、汐見とか言ったか?こいつ、一体何者だ?)

「ツモ。リーチ一発ツモタンヤオ三暗刻。3000・6000!」

(やられた、しかも親被り。咲との点差が広げられてしまった。)

(1度も和了れなかったよ・・・)

「宮永咲さん、天江衣さん、もうちょっと本気出して下さいよ。でないと、ウチがこのままトップ終了してしまいますよ?」

(なっ、こいつ~!)

(この子怖いよぉ、誰か助けて・・・)

『大将前半戦終了。なんと、清澄の宮永咲がまさかの焼き鳥状態。逆に鶴賀の汐見真紀には目を見張るものがありました。』

『後半でどうなるかが期待だな。』

『そうですね。では5分間の休憩を挟んで大将後半戦を開始します。』

~大将前半戦結果~

鶴賀 160600

清澄 121000

龍門渕 104000

風越 14400




次でとうとう長かった県予選団体戦の決勝が終わります(予定)。真紀の回想シーンが思った以上に長くなってしまった為、最後辺りが少し雑になってしまいました。


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第18話 大将後半戦

遂に最終決戦です!


真紀が対局室から出て、控え室に戻った。

「たっだいま~。」

「たっだいま~じゃありませんよ!なんであんな挑発的な事を言ってしまうのですか!」

「あー、ウチってさ、調子に乗れる時に乗っておきたいタイプだからさ。」

「意味が分かりません!調子に乗るのと挑発的な態度を取るのは全く違います!三味線扱いされなくて良かったって位ですよ。」

「いやいや、対局終わった後に言ったから大丈夫だって。」

「そういう問題では無いですよぉ!」

「大丈夫だって、この調子で行けばいけるって。」

「でも、清澄の宮永先輩にはくれぐれも気を付けて下さいね。」

「うん、あの人、後半戦が怖いからな。前半戦で何もしなかったのが逆に怖いな。」

「対局中は調子に乗らないで下さいね。」

「心外だな、ウチはいつも麻雀には真摯に取り組んでるよ。」

「そうでしたね、頑張って下さい。」

「任せろ!」

「マッキー頑張れ~。」

「汐見さん頑張って!」

「はい!任されました!」

 

 

同時刻、華菜が控え室に戻ろうと歩いていると、吉留未春が座っていた。

「あっ、未春ん・・・」

「華菜ちゃん、お疲れ様。」

「未春ん、あの、大丈夫?」

「うん、随分と楽になったよ。そろそろ控え室に戻らないとコーチや皆に迷惑かかっちゃうから戻ろっか。」

「うん、あたしも一緒に行くし。」

「ありがとう、心強いよ。」

華菜と未春が控え室に戻り、控え室に入った。

「あっ、池田先輩に、吉留先輩じゃないですか。」

「ただいま戻りました。」

「ただいま・・・って、何見てるんだ?氷華。」

「これですか?個人戦で戦うかもしれない強い選手の牌譜を見てました。」

「へー、誰のを見てたんだ?」

「夢乃マホと宮永咲さんと天江衣さん、そして鶴賀の方々ですかね。」

「あー、確かに今年の鶴賀は結構強いからなー。」

「はい。でも、あの汐見真紀と宮永咲さんと天江衣さんのいる卓であの収支だった池田先輩も大したものだと思いますよ。」

「なっ、何だよ、急に持ち上げてきて。」

「モチベーションが上がると思ったので。」

「あー、そゆことね。じゃあ、あたしはそろそろ行くし。」

「頑張ってね、華菜ちゃん!」

「おう!」

 

 

その頃、和が咲の所へ行き、飲み物を渡していた。

「咲さん、調子は大丈夫ですか?」

「うん、調子は悪くないと思うんだけど、衣ちゃんと鶴賀の人が強くて全然叶わないよ・・・」

「確かにあのお二方は強いですけど、咲さんはあの二人よりも強いと私は思っています。」

「和ちゃん・・・ありがとう。私、頑張るよ!」

「はい!頑張って下さい!」

「そろそろ時間だから行くね。」

「はい。今年も全国優勝しましょうね。」

「うん!」

和と別れてから対局室に向かった。そこには既に全員揃っていた為、場決めを行った。

~場決め結果~

天江衣:東

池田華菜:南

宮永咲:西

汐見真紀:北

『4人の選手が出揃いました。大将後半戦、開始です!』

~東一局~ 親:天江衣

鶴賀 160600

清澄 121000

龍門渕 104000

風越 14400

(取り敢えず1位を死守しないとだよなぁ。でも防御モードでいってツモられたら意味無いしなー。わかんねぇや!テキトーにやろっと。)

~5巡目~

「ロン、ダブ東三色ドラ2。18000!」

(くっ、天江衣に直撃された。防御モードにしてれば振り込まなくて済んだのに!)

(よし、これで咲を捲って鶴賀との点差も削った。このまま連荘して衣が勝つ!)

『龍門渕高校の天江選手、速度重視のプレイングですね。』

『去年みたく海底まで待ってたら、鶴賀が先に和了するだろうからな。』

『確かに、鶴賀学園の汐見は相当な速さを持ってますからね。』

『そうだな。』

(衣、海底で和了出来ない事で不利になるとはあまり思ってないが、確実に和了率は落ちてるな。)

~東一局一本場~ 親:天江衣

鶴賀 142600

龍門渕 122000

清澄 121000

風越 14400

~6巡目~

(このまま天江衣に暴れられると困るな。それに宮永咲も怖い。なら、風越を飛ばして終わらせちゃうか!)

「リーチ!」

(ほらほら池田華菜、ウチの和了り牌出して楽になっちゃえよ~。)

(よしっ、四暗刻の一向聴。これでいける!)

(うわっ、本当に出したよこいつ。)

「ロン!リーチ一発タンピン三色で12300!」

(なっ、残り点数が・・・鶴賀があたしを飛ばして終わらせようとしてる!?ヤバい、ヤバいヤバい!3人に10万以上の差があるし、超ヤバい!やっぱり魔物3人に勝てる訳なんて、素より無かったのかな・・・福路先輩、あたし、どうすれば良いんでしょうか・・・?)

~観戦室~

「華菜・・・大丈夫かしら?」

「龍門渕の天江さんは分かるけど、鶴賀の汐見さん、あの子ヤバいわね。」

「あぁ、正直汐見は、私がこの前部室に行った時も殆ど勝てなかったからな。」

「ワハハ、あいつは色んな戦い方で戦うからな。対策が難しいと思うな。」

(やっぱり、小学校の時よりも格段に強くなってるね~。もう一回あの子と戦いたいな~。)

~東二局~ 親:池田華菜

鶴賀 154900

龍門渕 122000

清澄 121000

風越 2100

~5巡目~

(これで終わりだ!)

「リーチ!」

(くそっ、こっちも聴牌出来たのに鶴賀のリーチが怖いからリーチ掛けられない。どうしよう・・・)

(一発ならずか・・・)

(うわっ!それ、あたしの当たり牌だし!でも役が無いから和了れないし!)

「ポン。」

(清澄!?残り1枚、宮永、去年みたいにまたカンしてくれ!)

(宮永咲、まさかあんた・・・)

「カン!」

(あっ・・・)

「ろ、ロン!チャンカンドラ8、24000!」

「はい。」

『チャンカンだー。今年もこの決勝卓でチャンカンが飛び出した!』

(おいおい、あんた3位だろ?確かにウチに飛ばされたらその時点で敗北確定だけど、親倍を差し込みするほど余裕は無いはずだろ?それとも、もしかして差し込みしても1位抜け出来るくらいのヤバいのを隠し持ってたりすんのか?)

~清澄高校控え室~

「宮永先輩がチャンカンされちゃいましたよ!」

「今のって、わざとなんかいのぉ。」

「いや、もしそんな事が出来たとしても、あの点差を考えたら風越を気にしてなんていれないじゃないですか。」

「うーん、宮永先輩はたまに何を考えてるのか分からなくなりますからね。もしかしたら何か意図があるのかもしれないですね。」

「ま、咲ちゃんなら最後に大逆転とかしてくれそうだじぇ。」

「確かに、咲ならなんかしてくれそうじゃな。」

「頑張って下さい!咲さん。」

~東二局一本場~ 親:池田華菜

鶴賀 153900

龍門渕 122000

清澄 97000

風越 27100

~6巡目~

「ツモ。500・800です。」

(宮永咲、遂に動くのか!?)

(宮永、去年みたいな安手和了り、これってもしかして氷華みたいに後に大きい和了りをストックしてたりするのか?)

~風越女子控え室~

「宮永咲さんの安手和了り。去年の県予選決勝でもしてましたね。」

「うん、あれって冬室さんの和了り方と何となく似てるよね。」

「まぁ、確かに似てますが、私はチャージしてる感じですけど、あの人は何て言うか、調整をしているように感じるんですよね。」

「調整?」

「乱数調整とか言うじゃないですか。安手を和了って、最後に逆転出来るように調整してるように見受けられるんですよね。」

「そうかな?私はよく分からないな。」

「まぁ、私の思い違いかもしれませんが。」

「とにかく華菜ちゃんには頑張って欲しいよね。」

「そうですね。」

~東三局~ 親:宮永咲

鶴賀 153400

龍門渕 121500

清澄 98800

風越 26300

(咲、今年は何をしてくる気だ?)

(宮永咲の親番、気を付けないと一気にやられる。ここはスピードモードで行くか!)

「ポン。」

(鶴賀、副露する事は少なかったはずだが・・・)

「ツモ!タンヤオ三暗刻対々で2000・4000!」

(はやっ、まだ3巡目だぞ?鶴賀と天江衣の勢いが止まらない。あたしはさっきから聴牌もままならないのに・・・)

(鶴賀の人、速いし打点も高いからどんどん点差を広げられちゃう。)

~東四局~ 親:汐見真紀

鶴賀 161400

龍門渕 119500

清澄 94800

風越 24300

(鶴賀の親番、という事は来るのか、ダブリーが・・・)

「・・・」

(えっ、ダブリーしてこない?)

(どういうつもりだ?)

(ははっ、皆さんダブリーしない事に驚いてるね。確かにこの配牌ならリーチを掛けられるけど、点差もそこそこあるからスピードモードで行きたいんだよ。)

(リーチをしてこないのならば、こちらも攻めるか。)

~3巡目~

「リーチ!」

(天江衣が3巡目にリーチ?鶴賀を警戒してるのか?)

(海底コースだから最後までリーチ掛けないと思ってたけど、ウチの事気にしてくれてるのかな?嬉しいね~。)

「ツモ。メンタンピン一発ツモ三色ドラ2。4000・8000!」

(うっわー、倍満とか、魅せてくるね~。流石天江衣だな。けど、スピードモードのウチでも追い付けないのか・・・ちょっとショックだな。)

~南一局~ 親:天江衣

鶴賀 153400

龍門渕 135500

清澄 90800

風越 20300

(ヤバい、もう南場だって言うのに1位との点差が13万以上もある。次の親番で連荘し続けないともう勝てない。ここで和了っておかないと!)

~6巡目~

(うぅっ、ツモった・・・リーチ掛けてれば跳満だったけど、ダマだったから満貫だ。まぁ、次の親番で和了り続ければいいか。)

「ツモ。2000・4000。」

(おっ、悪あがきかな?)

(衣の最後の親番が・・・)

(このままだと鶴賀か龍門渕が1位で終わっちゃうよ。もう、あれを使っちゃうしか無いのかな・・・あれ、やっちゃうと皆が私の事を恐れて近寄らなくなっちゃうからあんまりしたくないんだよね。まぁ、仕方無いよね。)

ゾゾゾッ

(なっ、なんだ、今の・・・宮永咲か?もしかしてここから逆転出来る何かを隠し持ってたりすんのか?)

(咲、何をしてくる?)

~南二局~ 親:池田華菜

鶴賀 151400

龍門渕 131500

清澄 88800

風越 28300

~3巡目~

「カン。」

(嶺上開花か!?・・・ってあれ?嶺上開花じゃないのか。おっ、ドラとカンドラがどっちも7ピンだ。これ切れば結構高い手を和了れそうだな。よしっ、いけっ!)

「カン。」

(うわっ、ドラカン!?しかもドラ8!?)

「ツモ。嶺上開花、清一ドラ8。32000。」

(うわっ、清一ドラ8で数え役満とか、チートかよ。)

~南三局~ 親:宮永咲

龍門渕 131500

清澄 120800

鶴賀 119400

風越 28300

~2巡目~

「リーチ。」

(くそっ、スピードモードなのに間に合わねぇ!)

「カン。」

(ドラカン!?うわっ、しかもカンドラもカンした2索に乗った。このままツモられたら親の三倍満じゃねぇか。)

「ツモ。」

(くそっ、三倍満か・・・)

咲が裏ドラをめくると、両方とも表ドラと同じ牌が出てきた。

(おいおい、これってもしかして・・・)

「リーヅモ嶺上開花、ドラ16。16000オール。」

(はぁぁぁぁぁぁ?????ドラ16!?ふざけてんのか!?)

(咲、これがお前の真の実力なのか・・・?)

(もう、ダメだ・・・)

~南三局一本場~ 親:宮永咲

清澄 168800

龍門渕 115500

鶴賀 103400

風越 12300

(2連続役満で1位とか、チート過ぎでしょ、妹尾先輩かっての!これ以上の連荘はさせない!絶対に!)

~7巡目~

(よしっ、国士無双聴牌。これを宮永に直撃させればまだチャンスはあるし!それに1ピンは生牌だから宮永がアンカンしてくれるかもしれないし、ここは確実に和了る!)

(うわっ、風越の捨てたやつ、ウチの和了り牌だ。でもこれ和了していいのか?一応跳満だから飛ばないけど・・・まぁ、でも次の局でどうせ終わるし、宮永咲に連荘されて負けるよりここで和了っといた方がいいよな!)

「ごめんなさい、それロンです。タンピン三色ドラ2で12300です。」

(なっ・・・終わった。また、またこの点数だよ。県予選決勝はこの数字を見なきゃいけないって決まりでもあんのか・・・?)

~風越女子控え室~

「華菜ちゃん、0点ぴったりだね・・・」

「風越の敗退が確定しましたね。」

「でも、華菜ちゃんならまだ諦めないかもしれないよね。」

「いや、100%あり得ないですね。仮に次の汐見真紀の親番で汐見真紀と池田先輩が流局し続けたとしましょう。龍門渕が115500ですから最高で77回流局可能です。しかし、もし77回流局して鶴賀に役満を直撃したとしても、鶴賀が176500で風越が170600になって、5900点足りないです。今の12300が無かったら可能性は0では無かったですね。まぁ、この面子だと流局なんて一回すらさせて貰えないでしょうけどね。」

~南四局~ 親:汐見真紀

清澄 168800

鶴賀 115700

龍門渕 115500

風越 0

(流石に天和は来てくれないか、いいけど。よしっ、風越以外に直撃して1位になるぞ!)

(・・・)

ゾクゾクゾクゾク

(なっ、なんだ今の悪寒は!?あっ・・・ダブリーし損ねた。)

咲が1巡目の牌を引いた。そして4枚の牌を倒した。

「カン。」

(またドラカン!?しかもまたカンドラも乗った。)

(嘘だろ・・・)

「リーチ。」

(おいおい、これ、もしかして・・・)

(咲から強大な気配はするが、何を出せば良いのか皆目検討も付かぬ。・・・これか?)

「ロン。」

(なっ・・・)

咲が裏ドラをめくるとまたもや表ドラと同じ牌が表れた。

「リーチ一発、ドラ16。32000。」

(なっ!?)

(うわっ・・・)

(嘘だろ!?)

『たっ、大将戦決着!清澄高校が一気に逆転して優勝を手にしました!』

『宮永咲、まさかあんな物まで持っていたとはな・・・』

(宮永咲、お前は手牌だけでなく、ドラ表示牌まで4枚集めるのか・・・?)

~団体戦決勝結果~

清澄 200800

鶴賀 115700

龍門渕 84500

風越 0

咲が立ち上がって真紀の方を向いた。

「汐見さん。」

(なんだ?自慢でもしてくる気か?)

「真紀で良いですよ。」

「じゃあ真紀ちゃん、私、ちゃんと本気、出したよ!」

咲が笑顔でそう言った。

(あー、あの言葉か・・・もしウチがあんな事言ってなかったら勝ってたのか?いや、無いか。)

「ははっ、ウチの完敗です。ありがとうございました。」

「私も前半戦の時は真紀ちゃんに勝てる気がしなかったよ。」

「慰めのつもりですか?大丈夫ですよ。」

「いや、本心だよ。お姉ちゃんみたいで、怖かった。」

(お姉ちゃん?この人が怯えるほどの人・・・宮永・・・はっ!?宮永照!?)

「あの、もしかして宮永さんのお姉さんって、宮永照さんですか?」

「うん、そうだよ。」

(マジか、道理でこんなに強い訳だよ。まさかあの宮永照の妹だったとは・・・)

「ははっ、やっぱりウチの完敗です。」

突然衣が立ち上がった。

「個人戦、個人戦では負けない!咲!個人戦ではお前を倒す!」

「うん!私も負けないよ。」

「ついでに鶴賀の汐見真紀!お前も倒す!」

「ははっ、ついでにですか。ま、ウチも負けませんよ!」

四人で話していると、清澄の部員達が対局室に入ってきた。

「咲さん!」

「咲ちゃんやったじぇ!」

「宮永先輩凄すぎです!」

「ありがとう皆。」

「途中まで危なっかしかったけど、まさかあんなんを用意しとるとはな。」

「あはは、ご心配をお掛けしてすみません。」

「それより、表彰式とかあるから準備しないといけないんじゃ?」

「おぉ、ほうじゃったな。ほれ、移動するぞ。」

「はい!」

咲達は表彰式で、優勝トロフィーの授与をされた。こうして、団体県予選決勝は清澄高校の優勝で幕を閉じた。




汐見真紀の能力まとめ
・『攻撃モード』・・・ドラなどを捨てる事で、それまでの手よりも更に高い手を作る事が出来る。
・『スピードモード』・・・ドラを捨てる事で、速く和了る事が出来る。
・『防御モード』・・・わざと向聴を下げたりして、絶対に和了出来ないが絶対に振り込まない。
・親番での配牌で聴牌(稀に天和を和了する)

汐見真紀はざっくり言うと「なんかよく分かんないけど強い」キャラです。


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第19話 対策

団体戦が終わったところから、個人戦が行われるまでの話です。


真紀は控え室に戻った。

「ごめんなさい、負けちゃいました。ははっ、カッコ悪いですよね。あんなに自信満々だったのに。」

「いえ、そんな事はありませんよ。誰も責められません。あんな方々相手に2位終了、しかも収支だけで見れば前後半合わせてプラス33000点の大トップです。自信を持って下さい。」

「・・・プラス33000だろうと勝てなきゃ意味無いんだよ!くそっ、悔しい!マジで悔しいっ!個人戦では絶対負けねぇ!宮永咲も天江衣も冬室氷華も夢乃マホも全部倒す!」

「そうですね。その為には頑張らなきゃいけませんね。」

「だな!明日から三日間全力で攻略して泣き面見るまで叩き潰してやる!」

(汐見さん怖い・・・)

(マッキー怖いっすね・・・)

「ま、まぁ、今日は帰ろうか。」

「はい。」

~龍門渕高校控え室~

「ごめん、皆、衣が至らなかったばかりに今年も全国にいけなくなってしまった・・・」

「仕方ありませんわ。全ては清澄のあの女があんなヤバいものを隠し持ってたせいですわ。」

「あんなのやられたら勝てなくても誰も責められないよ。」

「いや、咲があの対局で何もしてなかったとしても、鶴賀にやられてたかもしれない。」

「それは今決める事ではありませんわ。」

「えっ?」

「それは個人戦でお決めなさい。個人戦、今年は出るんでしょう?」

「うん、今年は合間見えたい相手が多いからな。」

「なら、また鶴賀の大将に当たったら絶対に勝ちなさい。」

「うん、衣、頑張る!」

「その意気ですわ!」

~風越女子控え室~

「ただいま・・・」

「華菜ちゃん、お疲れ様・・・」

「池田先輩・・・」

「四人で仲良く314500点を吐き出しましたね。」

(冬室さん、その言い方は流石に酷いよ・・・華菜ちゃん頑張ってたのに。)

「ごめん、いくら相手が悪かったとはいえ、キャプテンの癖にあんな点数で終わらせてしまって、本当にごめんなさい!」

「華菜ちゃん、いいんだよ。」

「池田先輩、そんな、頭を上げてください!」

「冬室さんも何か言ってあげてよ。」

「そうですね、あの3人が相手ならさっさと飛んで終わるだろうなと思っていましたけど、最後まで飛ばずに終わるとは思っていませんでした。お疲れ様です。」

「うん、そう言ってもらえると助かる・・・」

「とりあえず終わった事を言っても結果は変わりません。過去に囚われずに今度の個人戦の為にまた頑張りましょう。」

「・・・うん、頑張る。」

「話し合いは終わったか?」

控え室の扉を開けて久保コーチが入ってきた。

「久保コーチ!?」

「私からは何もないよ。言いたい事は全部冬室に言われちまったからな。」

「あっ、そうですか。」

「ほら、荷物まとめて帰るぞ。」

「はい!」

4校は団体戦を終えて各々の家に帰った。

 

 

そして次の日、鶴賀学園麻雀部では、5人が集まって会議をしていた。

「と、言うわけで、個人戦の為にウチが注意しなければならない相手とその攻略方法をこれから提示していきたいと思います!」

「と言うわけって、どういうわけっすか・・・」

「私達、何も話を聞かされずに突然汐見さんに呼ばれたんだけど・・・」

「申し訳ありません!先輩方の大切なお時間を割いてしまって。」

一葉がへこへこと頭を下げて謝罪した。

「いや、まぁ、個人戦のための会議っぽいっすから別にいいんすけどね。」

「じゃ、始めていきましょうか!」

「はぁ、なんで私が謝って当の本人がこんなに堂々としていられるんですか・・・」

「申し訳ないとは思ってますけど、ウチも徹夜して情報収集したりしたので聞いてもらいたくてウズウズしてたんですよ。」

「それはそれは、お疲れ様。」

「うむ、私達は問題ない。話を始めていいよ。」

「ありがとうございます!まずは清澄高校の宮永咲さんについてですが、彼女は正直言って分かりません!」

「・・・へっ?」

「えっ、どういうこと?」

「昨日対局して牌譜を確認して色々弱点とか探してみたんですけど、手加減をしているようにしか見えなくて、確実な弱点を見つける事が出来ませんでした。」

「えっ、何か無いんですか?」

「鳴いてカン材をずらすって方法があったんですけど、昨日の最後に関しては最初から4枚揃ってたんで弱点と言えるのか分かんなくて。まぁ、基本的にあの人に関しては、生牌を切らない事と出来るだけ鳴いて手を完成させないようにする、くらいですかね・・・」

「開始早々分からないという言葉が出てくるとは思いませんでしたよ。」

「まぁ、でも次からは期待していいよ。」

「本当ですか?」

「本当だって、次は天江衣さんです。」

「あの人に対処法なんてあるっすか?」

「まー、あの人も難しいんですよねー。」

「やっぱり期待出来ないじゃないですか・・・」

「まあまあ、聞けって。臆測ですけど、あの人はセオリー通りに打ったら多分海底を和了られます。少し回り道して違う手を作ろうとすれば和了れるかもって感じです。」

「セオリー無視して打ったら普通は和了れませんよ。真紀だから和了れたんじゃないんですか?」

「いや、去年の団体戦で加治木先輩が和了してるんだよ。」

「流石加治木先輩っすよね。」

「まぁ、セオリーを無視しなくても宮永咲みたいに『カンすれば有効牌が入ってくる』みたいな能力があるなら別ですけど。妹尾先輩の牌の力なら何とかなると思いますよ。」

「うむ、問題は私とモモという事か・・・」

「いや、もしかしたらですけど部長も最後の方だけなら突破出来るかもしれないですよ?」

「えっ?私が?」

「はい。先鋒戦であの風越の人が他3人の手を鈍らせてたのに南三局五本場で和了ってたじゃないですか。」

「あぁ、なんか、最近よく感じるんだけど後半になった時に追い込まれてると何故か配牌やツモが良いんだよね。」

「起死回生の一手って感じでしたっすね。」

「あー、なんか、この前もそれで一葉を捲って1位になった対局がありましたね。」

「はい、あの時の部長さんはとてもお強かったです。」

「ま、ウチはこの前部長に倍満和了されても変わらず1位でしたけど!」

「まったく、真紀は・・・」

「ははは、汐見に勝てるんなら天江衣さんにも勝てるよ。」

「そうですね、ウチには勝てないですよね。」

「真紀!調子に乗りすぎです!」

「おっと、すいません部長。」

「いや、間違えた事は言ってないから気にしてないよ。」

「ムッキー先輩、先輩はそれでいいんすか・・・?」

「まぁ、汐見の言ってる事に間違いは無いからな。」

「そうですよね~。まぁ、それはそうと次です。今回一番注意しなければならない夢乃マホと冬室氷華です。」

「確かにあの人はヤバいな・・・」

「もう二度と対局したくないっすね・・・」

「あの二人は昨日の団体戦において、+214500と+250000という桁違いな結果を残しています。ウチや妹尾先輩の総獲得点数でもこの数字にはならないですからね。正直異常ですね。」

「改めて聞くと、凄まじい点数だね・・・」

「それじゃあ、もしかしてこの二人も特に対処法は無いんですか?」

「ふふーん、あるんだなーこれが。」

「まぁ、誇らしげに言ってますけどこれで無かったら本気で怒ってましたけどね。ところでどんな対処法なんですか?」

「夢乃マホが大星淡の能力を使った時にどんな風にリーチを掛けてましたか?」

「大星さんみたいに牌をくるくる回して・・・あっ、成る程。そういう事でしたか。」

「そう、夢乃マホはコピーをするときにその人がやる癖みたいなものもやってしまうのです。つまり、誰を使っているかはそれで判断します。その後はその能力に対応するだけです。」

「成る程、じゃあその各々の打ち方の対策はどうすれば良いんですか?」

「それは自分達で考えてよ。一つ一つ説明出来ないし、誰のコピーを出来るのかもよく分からないしね。」

「そんな無責任な・・・」

「でも一つだけ言える事があります。」

「なんですか?」

「夢乃マホは多分対局する相手と同じ打ち方をしてくると思います。東横先輩相手にステルス使ったみたいに。」

「そうかもしれませんが、もし私の打ち方を真似したとしても1の牌は私の方にくるんじゃないですか?」

「残念だけど多分それは無いと思う。」

「えっ?」

「何故なら、夢乃マホがステルスを使った時、東横先輩もステルスをしていたのにも関わらず放銃した。これはつまり、コピーした人の支配力を上回っているって事なんだよ。という事は、もし一葉と対局して夢乃マホが一葉の打ち方をコピーをしたら、一葉には1の牌が来たとしても1枚しか来ない。」

「そんな・・・」

「ま、そこをどうするかは自分で考えてよ。じゃあ次、ラストは冬室氷華です。」

「この人に対策なんてあるのか?」

「ふっ、実はこの人、個人戦においては穴が多いんですよ!」

「えっ!?」

「まずはあの人の特徴から押さえていきましょうか。まずは東場、彼女は安手、一翻でしか和了りません。しかし東場で和了した局に南場でも和了する。そしてその点数は満貫からどんどん上がって最終的には役満を連発してくるでしょう。しかも南場は冬室氷華以外の3人のツモが異常なくらい悪い為和了し辛い。更に東場で和了した局と同じ南場の局ではダブリー一発で和了してくる。ざっとこんな感じですね。」

「うむ、改めて聞くと凄まじいな・・・」

「全く勝てる気がしないっす。」

「しかーし!ウチはこの人の弱点を見つけてしまったのです!」

「本当ですか!?」

「あぁ、冬室氷華の弱点、それはズバリ、3つあります!」

「えぇ!?3つも!?」

「はい、その3つとは、東場で安手しか和了しない事とツモ和了りしかしない事、そして、南場でダブリーする時に、最初は満貫を和了る、この3つです。」

「・・・それの何処が弱点なんすか?」

「説明しましょう。まず東場で冬室氷華ではなく他の相手を4000未満になるまで削ります。そして南場での冬室氷華の親番。東場で安手をいくら和了ったとしても、他家が4000未満だったら親満ツモでトビ終了。その時に冬室氷華との点差が16000以上なら冬室氷華は自動的に2位終了してしまうのです!」

「な、成る程、南場での和了りを防げないなら和了ったら負けという状況を作ればいいのか。」

「汐見さん、凄い・・・」

「流石マッキーっすね。考え方がエグいっす・・・」

「いやー、そんなに褒められても困りますよ~」

「あんまり褒めてないですよ・・・」

「ま、そこは置いといて、この方法なら冬室氷華に一矢報いる事が出来ます!これにてウチの個人戦対策は終了です!」

「唐突に終わるっすね。」

「まぁ、ちょっとは為になったね。」

「うむ、じゃあ練習の続きをしようか!」

「「「「はい!」」」」

 

 

~風越女子高校麻雀部~

「ツモ。12300オールです。」

(なっ!)

(また・・・)

(こんなの勝てないよ・・・)

「はぁ、また3人トビ終了ですか。こんな始末では個人戦入賞出来ませんよ。」

「んな事言ったって相手が氷華じゃ相手にならないって!」

氷華と華菜が話し合っていると、部室の扉が開かれた。

「皆、お久しぶりね。元気してた?」

入ってきたのは去年の風越女子キャプテンの福路美穂子だ。

「キャプテン、じゃなくて福路先輩!」

「久しぶり華菜、今日は特別ゲストを連れてきたのよ。」

「特別ゲスト?」

(誰だろう、強い人だといいな・・・)

「焦華さん、入って良いわよ。」

(うん?焦華さん?)

「皆さん初めまして、冬室氷華の姉の焦華です。よろしく~。」

(特別ゲストって姉さんの事か・・・)

「姉さん・・・何で来たの?」

「いやー、氷華が普段どんな人と対局してるのか気になってさ、福路さんにお願いしたら了承貰えたから来ちゃった。」

「はぁ、まぁ、個人戦も近いから姉さんとは戦いたく無いんだけど。」

「まぁ、私と対局したら氷華が闇堕ちしちゃうもんね~。」

「・・・」

「ん?闇堕ち?何だそれ。」

「そんな事はどうでもいいですから池田先輩達は姉さんとでも対局して下さい。」

「う、うん、分かったし。」

「じゃあ、福路さんと池田さんと吉留さんの3人と対局したい。」

「いいですよ。」

「お手柔らかにお願いします。」

「華菜ちゃんが勝つし!」

~対局結果~

冬室焦華 79600

福路美穂子 14200

池田華菜 5400

吉留未春 800

「わーい、私の勝ち~。」

「・・・全然勝てなかったし。」

(最初は私がリードしていたのに南場で一気に追い上げたわね。やっぱりこの姉妹、南場に強いわ。)

(やっぱり誰も姉さんには勝てないか。福路先輩ならもしかしたらとか思いましたけど、やっぱり大学でまた麻雀をし始めてから更に強くなってますね。)

「私、もっと皆と打ちたい!誰かやろうよ!」

焦華がそう言って立ち上がると部員全員が目を逸らした。

「あの冬室さんのお姉さんなんか、勝てる訳無いよ・・・」

「福路先輩があんなに負けてるのにあたし達じゃ絶対に無理だって。」

部員達がひそひそと話し出した。

「はぁ、そんな消極的だからあんな結果に終わってしまうんですよ。」

(冬室さん、文句言いたいけど何も言い返せない・・・)

(ははっ、氷華も結構酷い事言うね~。)

「もう一度、もう一度対局して下さい!焦華さん!」

(おっ、大将の池田さん、流石、あの3人相手に最後まで諦めなかっただけあって根性あるじゃん。そういう子は是非とも潰してあげたいね。あの子達みたいに!)

~鶴賀学園麻雀部部室~

ゾクッ

「な、何だ今の・・・!?」

「真紀も感じましたか。」

「一葉もか、なんか、悪寒がしたな。まるであの時みたいな・・・」

「やっぱり風越の冬室さんって、あの人の妹さんなんじゃ?」

「そうかもな、なら、絶対に負けられないな!よしっ、続きやるぞ!」

「はい!」

 

 

~清澄高校麻雀部部室~

「そういえば個人戦、今年は強そうな人がいっぱいいるよね。」

「はい、特にあの人ですよね。」

「冬室先輩・・・」

「あれはヤバかったじぇ・・・」

「あんなんとは対局しとぉ無いのぉ。」

「マホ、今の冬室先輩には勝てる気がしないです・・・」

「ま、まぁ、マホは冬室さんよりも点稼いでるし、多分大丈夫だって。」

「そうでしょうか・・・」

「とりあえず今は練習あるのみだよ。」

「自分に自信を持とうよマホ!」

「はい!マホ、もっと強くなるです!」

「その意気ですよ。」

「私も次にあいつに会った時は負けないじょ!」

「ですが、注意すべきは冬室さんだけでは無いと思いますよ。」

「そうだね、衣ちゃんと真紀ちゃん、それに一葉ちゃんも。」

「あと、妹尾さんもじゃな。」

「今年の鶴賀学園、凄く強かったですよね。」

「龍門渕も相当じゃったけどのぉ。」

「うぅ、個人戦、怖いです・・・」

「そんな事言ってたら勝てる試合も勝てなくなっちゃいますよ?」

「わっ、和先輩が精神論なんて・・・」

「わ、私だって無感情では無いです!精神論を言って何か悪いんですか?」

「あっ、ごめんなさいです。そういうつもりでは無かったのです。」

「まぁ、いいです。ほら、続きやりますよ。」

「はい!」

それから3日後、個人戦に出る全員が予選会場に集まった。個人戦の1日目が始まろうとしていた。

 




『闇堕ち』という言葉をネットで調べたところ、善人が悪に手を染めると言った感じの意味だったのですが、氷華の闇堕ちは別に悪事をするようになるわけではありません。個人戦で氷華は『闇堕ち』するのか、誰が個人戦を勝ち抜きするのか、どうぞご期待下さい。


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第20話 個人戦①

個人戦の1日目が始まった。1日目は東風戦で、2日目は東南戦だ。

「1日目って、東風戦なんですか・・・」

1日目が東風戦という事実を知った風越女子の冬室氷華が頭を抱えていた。

「うん、氷華には厳しい戦いになるかもね。」

「何ですかこれ、私を入賞させないためのルールですか?それとも3日前に片岡優希さんが酷い成績だったからですか?」

「冬室さん落ち着いて、1日目が東風戦なのは去年もだったからそんな理由じゃないよ。」

(姉さんが『今年は氷華の闇堕ちが見れそうだね~』とか言ってたのはこれが理由だったのか・・・)

「はぁ、まぁ、頑張りますよ。とりあえず最低限予選は通過しないとですよね。」

「まぁ、大変かもだけどお互い頑張ろうな、氷華。」

「はい、頑張ります。」

(冬室さんのあんな弱々しい表情初めて見た。なんだか新鮮だな・・・)

(去年のインターミドルチャンピオンである私が団体戦のみならず個人戦にも出場出来ないなんて、絶対にあり得ない。今日は絶対に負けられない!)

 

 

その頃、清澄高校は会場に着いてミーティングを行っていた。

「今日は東風戦だから私の独壇場だじぇ!」

「落ち着きんしゃい。あんたは確かに東風戦には強いが、強い相手じゃったら勝てるかわからんのじゃからちゃんと話には参加せい。」

「むぅ、分かったじぇ。」

「あ、でももう話すこと無いわ。それにもうそろそろ始まるわ。」

「よしっ、じゃあとりあえずタコスを食べるじぇ!」

「マホもタコス食べます!」

「お?マホも食べるのか?なら早食い対決だじぇ!」

「はい!」

「ちょっと二人とも、喉に詰まらせても知りませんよ。」

「これくらいなら大丈夫だじょ。」

「はぁ、もう好きにして下さい・・・」

「でも、もう始まっちゃうよ?急がないと。」

『これより、県予選個人戦を開始します。出場者の方々は、対局室に移動して下さい。』

「ん!?のどちゃんが邪魔するから時間になっちゃったじぇ。」

「はぁ?私のせいですか?」

「まあまあ、時間だし移動しよう?和ちゃん。」

「そうですね、優希なんて気にせず行っちゃいましょう。」

「じゃあ、優希ちゃん、マホちゃん、部長。また後で。」

「おう、頑張りんさい。」

「はい!」

「よしっ、食べ終わったじぇ。」

「マホも食べました。」

「なんと、お主やるな!今回の早食い対決は引き分けだじょ。」

「はい、って、早く移動しないとですよ!」

「わっ、そうだったじぇ!えっと、こっちだじょ。」

「はい、急ぎましょう。」

優希とマホが移動すると、既に全員揃っていた。

「ごめんなさいです。遅れてしまいました!」

「は、はあ。」

(この人が3日前の団体戦での最多得点プレイヤー?あんまり強くなさそうだな。サクッと倒しちゃうか。)

『対局室に選手が出揃いました。個人戦1日目、開始です!』

 

 

「ロン!18900です!」

(こ、こいつ、全然弱くない、というか、強すぎる!)

「お疲れ様です~。」

(これが全国レベルなのか・・・)

~1回戦~

「ツモだじぇ!8000オール!」

~3回戦~

「ロン!12000!」

~6回戦~

「ツモ!6000オールだじぇ!」

『清澄高校片岡優希、やはり東風戦は強いですね。』

『あぁ、東風戦のみの大会だったら相当良い順位だろうな。』

『現在6回戦まで行われていますが、全てトップで終わらせているのは彼女と汐見選手ですね。』

『おい、まだいるだろ?冬室氷華が。』

『あぁ、本当ですね。でも、そのわりには一回以上負けている人よりも点が低いですね。』

『そりゃあ、南場がホームグラウンドの奴にとって東風戦なんて苦行でしか無いだろうからな。』

『確かに、しかし、苦手な東風戦で全てトップなのは凄い事ですね。』

『そうだな。』

(インターミドル覇者のプライドか、それとも負けると何かが起こるか。どちらにせよ連続トップは凄いな。)

 

 

(東風戦なんてルールが無ければこんなに酷い成績にはならない筈なのに・・・)

「あ、冬室さん。」

「吉留先輩ですか、どうしました?」

「いやー、さっき南浦さんにやられちゃってさ。」

(南浦数絵、牌譜で見た。確か私みたいに南場が強いタイプだったはず。)

「南場が強い人に東風戦で負けたんですか?」

「あはは、まぁ、負けたって言っても東場までは一応勝ってたんだけどね。」

「はぁ?東風戦で東場まではって、どういう事ですか?」

「あれ、知らない?東風戦も南入させられるって。」

「えっ!?それってどうやってするんですか!?」

「え、えっと、東四局が終わった時に4人全員が30000点以下だったら南入するの、っていうか冬室さんなら知ってると思った。」

「いや、東風戦なんて苦行はこれまでしたことが無かったので。それにしても、とても有益な情報ありがとうございます。このままあんな成績で終わるわけにはいかなかったので助かりました。」

「あぁ、うん、頑張ってね。」

(これで行ける!)

~8回戦~

「ツモ。300・500。さぁ、南入しましょうか。」

(な、南入!?まさか・・・)

~南一局~

「ツモ。2000・4000。」

~南二局~

「ツモ。3000・6000。」

~南三局~

「ツモ。8000オール。」

「ツモ。12100オール。これで終わりですね。お疲れ様でした。」

(うわっ、この人は東風戦なら勝てるって言ってたけど、東風戦でも構わず南入させてあんなに和了られた・・・)

『冬室氷華、やっと気付いたみたいだな。』

『えっ?どういう事ですか?』

『いや、これまでは安手を連続で和了していたから南入しなかったけど今回は連荘せずに、しかも振り込んでさえいる。南入させる為にな。』

『という事は、冬室選手はわざと南入させたという事でしょうか?』

『まぁ、十中八九そうだろうな。』

『そうですか、まぁ、何にせよ今の対局で冬室選手は13位から一気に5位に浮上しました。これで冬室選手は予選通過です。』

 

 

(何とか1日目を終えられた。疲れた・・・)

「お?冬室氷華じゃないか!」

「はい?あぁ、清澄の片岡優希さん。」

「南場が得意だから1日目で敗退すると思ったじぇ。」

「私は去年のインターミドルチャンピオンですから東風戦だからといって負けられませんよ。」

「ふっ、まぁ、今日私に当たらなくて良かったな。東風戦だったら私の圧勝だったじぇ。」

「そうですね。でもそれ、普通の半荘だったら勝てないって言ってるようなものですよね。」

「なにをぅ!もし明日お前と当たっても絶対に勝ってやるじぇ!」

「そうですか、期待してます。」

 

 

「カン、ツモ。嶺上開花。2000・4000です。」

『清澄高校宮永咲、予選通過です。』

「ツモ。1300・2600。」

『清澄高校原村和も予選通過です。

そこからどんどん予選通過者が出てる中、全勝記録を作ろうとしている二人が同じ卓になった。

「ふぅ、次で最後か、折角これまでパーフェクトで来たから最後も勝利で終わりたいよな。」

「次で最後だじぇ、絶対に負けられないじょ!」

「うわっ、清澄の東場ブーストの人じゃん、ハズレ引いたわ・・・」

「お?お前は、鶴賀の大将だな!ふっ、残念だったな、東風戦じゃなかったらそっちに勝機はあったかもしれないけど、こっちは東場の神だじぇ。負ける気がしないじょ。」

「奇遇ですね、ウチも東場の神様に勝てるような気がしてますよ!」

「ふっ、そんな挑発したから咲ちゃんに負けちゃったんだじぇ。」

「なっ、あれはどっち道ウチが負けてたんで関係ないです!っていうか、早くやりますよ。」

「そうだな。やるか。」

場決めをする、優希は東、真紀は西になった。

~東一局~ 親:片岡優希

片岡優希 25000

モブA 25000

汐見真紀 25000

モブB 25000

「親リーチいっくじぇ!」

(3巡目か、速いな。流石東場の神様だな。ならこっちも神様退治をしないとな!)

「ポン。」

(こいつ、鳴いてきたらすぐに和了ってくる。ちょっと怖いじぇ・・・)

「ツモ!タンヤオ鳴き三色ドラ3で2000・4000!」

「くっ、親被りだじぇ・・・」

~東二局~ 親:モブA

汐見真紀 34000

モブA 23000

モブB 23000

片岡優希 20000

(くそっ、もう親番はない、それにこいつは親番だと配牌で聴牌しているからな。)

「リーチ!」

(くっ、速すぎるじょ・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピン三色で3000・6000!」

(また何も出来ないまま和了られたじぇ・・・)

(さぁて、親番だ!)

~東三局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 46000

モブB 20000

片岡優希 17000

モブA 17000

「リーチ!」

(くっ、ダブルリーチ!だけどこっちも配牌一向聴だじぇ。攻めたいところだな・・・おっ!来たじぇ!)

「追っかけリーチだじぇ!」

「うわっ、そっちもダブリーですか。」

(来いっ!うわっ、これ、片岡優希に当たりそう・・・)

「それだぁ!ロン!純チャンドラ2で16000だじぇ!」

「うっわー、ダブリーで純チャンとか、流石ですね。」

「ふっ、東場の神だからな!」

~東四局~ 親:モブB

片岡優希 33000

汐見真紀 30000

モブB 20000

モブA 17000

(お!ドラが2つもある。これは中々良い手になりそうだな。)

(うわっ、いきなりドラ切り。こいつ、ドラ切りするとどんどん有効牌を引いてたから怖いじょ。)

~4巡目~

「リーチ!」

(速いじぇ、こっちはまだ一向聴だっていうのに・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1で4000・8000!これでウチがパーフェクトですね!」

「くそっ、勝てなかったじょ・・・」

~試合結果~

汐見真紀 46000

片岡優希 29000

モブA 13000

モブB 12000

 

~個人戦1日目上位10名~

1位 汐見真紀

2位 片岡優希

3位 天江衣

4位 宮永咲

5位冬室氷華

6位 津山睦月

7位 一ノ瀬一葉

8位 原村和

9位 夢乃マホ

10位 妹尾佳織

 

 

「あっ、優希ちゃん戻ってきたよ。」

「くそっ、咲ちゃんに負けた汐見真紀に勝てなかったじぇ・・・」

「お疲れ様です。2位になっちゃいましたけどよく頑張りましたね。」

「むぅ、今年は1日目トップのインタビューで何を言おうか考えてたのに無駄になっちゃったじぇ!」

「なんで終わってすらいないのにそんな事考えてたんですか・・・」

「おっ、ほらほら、お前がやるはずだったインタビューが始まるぞ。」

「くそぅ、汐見真紀め、明日当たったら絶対にぶっ潰すじぇ!」

 

 

『本日全戦全勝、そして去年までの記録を大きく塗り替えた汐見真紀選手。本日の出来はどうでしたか?』

「まぁ、今日当たった相手にそれほどの強敵はいませんでしたからね。当然の結果でしょう。」

『では明日の決勝の心意気をお聞かせください。』

「そうですね、ウチは東風戦だけでなく半荘戦も得意なので明日も多分1位でしょうね。」

『そ、そうですか。では明日に向けて皆さんに一言どうぞ。』

「そうですね、個人名を出して悪いですけど宮永咲さん。貴女には絶対に負けません!」

(私、皆さんにって言った筈なんだけど・・・)

『あ、ありがとうございましたー。これでインタビューを終わります。』

 

 

「くっそぉ!あいつにバカにされたじょ。明日当たったらぼこぼこにするじぇ!」

「なんか私、宣戦布告されたんだけど・・・」

「ははっ、こりゃあ明日はあれそうじゃの・・・」

~風越女子高校~

「うわー、汐見真紀、調子乗ってるな~。な、氷華。」

「そうですね。」

(汐見真紀は牌譜で見た感じだと、ドラ切りするとどんどん有効牌を引く感じの人だったな、あとタンヤオを作る事がやけに多い。まぁ、それは一ノ瀬一葉の影響かな。まぁ、それは良いとして、問題は津山睦月。まさか6位に入ってくるとは思わなかったな。やはりただ者ではないな。まぁ、私の凍結が効かなかった時点でただ者ではないんだけど。去年、あの大阪の人にも効いていたのに・・・)

 

 

「へぇぇぶしっ!」

「ん?どうしたん望?」

「いや、多分誰かに噂されとるわ。人気者は辛いな。」

「はぁ?んな訳あるか!何アホな事抜かしとんねん。くしゃみなんて風邪か胡椒被ったときかのどっちかやろ。」

「胡椒被った事なんて無いわ!それに、園城寺先輩みたいに病弱でも無いわ。」

「あーあ、今の園城寺先輩にゆうたら多分キレるで?」

「あー、それはマジで勘弁!」

「じゃあ清水谷先輩にゆうたろか?」

「もっと勘弁やわ!そんなんされたら生きて帰れるかも分からへん!」

「じゃあ貸し1な。」

「はぁ?なんでや!」

「別にええんやで?清水谷先輩にゆうても。」

「あぁ、それだけは許してぇな!っていうか、私達、船久保先輩達待たせてるやん!急いで戻らんと!」

「お前が変な事言い出すからや。」

「あんたが移動中にトイレ行きたいとかゆうたからやん!」

「『じゃあ私も。』とか言って付いてきたのは望やん!」

「あんたがさっさと済ませてくれとったらこんなに急ぐ必要もあらへんかったわ!これでこっちも貸し1やからさっきの解消やな!」

「は?意味分からんし、ウチがちょっと遅れたんと貸しは全く別物やん。」

「んなもんこの際どうでもええわ、はよう戻るで!」

 




最後に出てきた新キャラはその内出します。次は普通に個人戦の2日目をやります。


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第21話 個人戦②

個人戦2日目になった。清澄高校が試合会場でミーティングを行っていた。

「今日は東南戦だね。」

「おう、今日は昨日みたいには行かないかもしれないじぇ。でも、ナメられたまま負けるわけにはいかないじょ!」

「私も宣戦布告されたからには全力でやらないとだよね。」

「マホも今日は負けません!」

「よしっ、そろそろ出発じゃ!」

「「「「「はい!」」」」」

『個人戦2日目を開始致します。出場選手の皆さんは、所定の卓に移動して下さい。』

「よし、移動しようか。」

「はい。」

 

 

『各校の選手が出揃いました。個人戦2日目、開始です。』

(2日目、今日は東南戦だから昨日みたいな酷い成績にはならないはず。しかし、1回戦の相手の南浦数絵、牌譜で見た。私と同じで南場に強いタイプ。なら、私とこの人ならどちらが格上かをたっぷりと教えないといけませんね。)

「冬室氷華さん、ですね。」

「はい、そうですが。」

「今日は貴女と戦う事を心待ちにしていましたが、まさか初戦で当たるとは思いませんでした。」

「そうですね。私と貴女、どちらが南場に強いか決めましょうか。」

「ふっ、そうですね。では、始めましょうか。」

 

 

~南一局~ 親:南浦数絵

冬室氷華 31700

沢村智紀 23300

文堂星夏 22600

南浦数絵 22400

(まさか東場を1位で終えられるとは思わなかったな。じゃ、少し世界の違いでも教えてあげますか。)

~8巡目~

(これは、南場に入って手が良くなってるはずなのに3向聴から手が進まない。全然聴牌出来ない・・・)

「ツモ。純チャン三色ツモ、3000・6000。」

(冬室氷華!?やはり去年のインターミドルチャンピオン、強い。)

(冬室さん、東三局の親番で四連続和了してるから次の局で何とかしないと負けちゃう・・・)

~南二局~ 親:沢村智紀

冬室氷華 43700

沢村智紀 20300

文堂星夏 19600

南浦数絵 16400

~5巡目~

「ポン。」

(冬室さんが鳴いてきた、ヤバい・・・)

(全く聴牌出来ない、私が南場で和了出来ないなんて・・・)

「ツモ。鳴き清一で2000・4000。」

(うわっ、終わった、次からダブリー一発されちゃうよ・・・)

~南三局~ 親:冬室氷華

冬室氷華 51700

文堂星夏 17600

沢村智紀 16300

南浦数絵 14400

「リーチ。」

(やっぱり東場で和了した局ではダブリーをしてくる、こんなの対策の仕様がない・・・)

(やられる・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ。4000オール。」

(本当にダブリー一発を和了った。これが全国レベルの力か・・・)

~南三局一本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 62700

文堂星夏 13600

沢村智紀 12300

南浦数絵 10400

「リーチ。」

(また、こんなの、どうすればいいの・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンピン。6100オール。」

(やっぱり点数が上がってる。もし次に8200オールを和了されたら3人とも飛んじゃう。どうにか防げないの?これ・・・)

~南三局二本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 81000

文堂星夏 7500

沢村智紀 6200

南浦数絵 4300

「リーチ。」

(また・・・)

(これで終わりです。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ清一、8200オール。」

(終わった・・・)

(この私が南場で1度も和了れないなんて・・・)

(3人飛び終了、異常・・・)

「お疲れ様でした。」

~試合結果~

冬室氷華 105600

文堂星夏 -700

沢村智紀 -2000

南浦数絵 -3900

 

 

「はぁ、やっぱり冬室さんには勝てないね。」

「そうですね。それより、文堂先輩はもう少しリーチを慎重にした方がいいと思います。火力はそこまで悪くは無いのですがそれ以上に振り込んでいるので意味が無くなっているんですよ。もう少し慎重な打ち方が出来ればもっと安定した点数になりますよ。」

「ありがとう。私のことちゃんと見てくれてたんだね。」

「来年は団体戦でも負けたくないだけです。」

「そっか、でも嬉しいよ。」

「そうですか、じゃあ私の次の対局は逆なのでこれで。」

「あぁ、うん。頑張ってね。」

「はい。」

(さて、次はG卓ですか。誰がいるんでしょうか・・・)

「冬室氷華さん、ですよね。よろしくお願いいたします。」

「一ノ瀬一葉さん、副将戦、圧巻でした。とても素晴らしかったです。」

「あっ、そんな、ふ、冬室氷華さんの方がとても素晴らしかったですよ。」

「いや、鶴賀学園は夢乃マホに目を付けられてあんなに点が減っていたのにあそこまで巻き返したのは一ノ瀬一葉さんの力ですよ。」

「そんな、褒めても手加減とかしませんよ。」

「むしろ本気で来て欲しいですね。本気の貴女を倒したいので。」

「そうですか、では全力で当たらせて頂きます。」

「はい。」

(うっわー、冬室氷華さんにかずかずまでいるんすか・・・これは相当凹みそうっすね。)

~場決め結果~

深堀純代:東

一ノ瀬一葉:南

冬室氷華:西

東横桃子:北

「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いいたします。」

「よろしくっす~。」

「よろしくお願いします。」

~東一局 親:深堀純代

深堀純代 25000

一ノ瀬一葉 25000

冬室氷華 25000

東横桃子 25000

(とりあえず和了っておきましょうか。)

「ツモのみ。300・500。」

(冬室氷華さんに和了られました。これで南一局では満貫を和了されてしまいます。)

(早速チャージしてるっすね、とりあえずステルスモードになったらかずかずは多分無理っすからこの風越のおっきい人に直撃をしてチャージブレイクさせないようにするっすよ!)

(真紀が教えてくれたようにやれば、この人を倒せる。真紀がわざわざ教えてくれたのですから勝たなくてはなりません。それに、冬室という名字、絶対に負けられません!)

~東二局~ 親:一ノ瀬一葉

冬室氷華 26100

一ノ瀬一葉 24700

東横桃子 24700

深堀純代 24500

~3巡目~

「ポンです!」

(一ノ瀬一葉、聴牌しましたか。それなら・・・)

「チー。」

(これでこちらも3面張の聴牌。単騎と3面張だったらどちらが来やすいんでしょうね。)

(冬室氷華さんが攻めてきてる。でもここは攻める!)

「ツモです!三色同刻三暗刻対々和ドラ2で8000オールお願いいたします!」

(ドラ単騎を引き入れたのか・・・3面張が単騎に負けますか。まぁ、よくある事ではありますが。しかし東場でこの失点は痛いですね。)

(かずかず、頑張ってるっすね。私も負けないっすよ!)

「一本場です!」

~東二局一本場~ 親:一ノ瀬一葉

一ノ瀬一葉 48700

冬室氷華 18100

東横桃子 16700

深堀純代 16500

~6巡目~

「ツモのみ。400・600。」

(やっぱり、6巡目までに和了してきますね。厳しい戦いになりそうです。)

~東三局~ 親:冬室氷華

一ノ瀬一葉 48100

冬室氷華 19500

東横桃子 16300

深堀純代 16100

~5巡目~

「ツモ。500オール。」

~東三局一本場~

「ツモ。600オール。」

~東三局二本場~

「ツモ。700オール。」

~東三局三本場~

「ツモ。800オール。」

~東三局四本場~

「ツモ。900オール。」

~東三局五本場~

「ツモ。1000オール。」

(この人、何連荘する気ですかぁ!この大会のルールだと八連荘しても役満にはならないんですよ!こんなに連荘してたら日が暮れちゃいます。)

(この人、凄すぎっすよ・・・)

(冬室、親番で六連続で和了った。トンパツの和了りも含めればこれで満貫、跳満、倍満、三倍満、そして役満3回をチャージしたことになるな。点数的に三倍満以上の和了は必要とは思えないが、どうしてこんなに連荘しているんだ?)

~東三局六本場~ 親:冬室氷華

一ノ瀬一葉 43600

冬室氷華 33000

東横桃子 11800

深堀純代 11600

(そろそろこの人の連荘を止めなければなりませんね。)

「ポン。」

(また冬室さんに鳴かれた!?まだ連荘する気なんですか?)

「ポン。」

(また私の手番が飛ばされてしまいました・・・)

「ポン。」

(ちょっと、これってまさか、私にツモらせない為に鳴いているんでしょうか?もしこの前の団体戦みたいな事が起こるのだとしたら・・・)

(聴牌した。冬室は三副露だけどロン和了はしない。それに他二人も聴牌してるようには感じないな。ここはリーチを掛けておくか。)

「リーチ。」

(やっぱり風越の深堀さんがリーチを掛けてきました。しかもこれ、余剰牌の5、8ピン。当たりそう・・・)

「ロン。リーチ一発タンヤオ平和ドラ2。12000の六本場で13800です。」

(跳満!?やっぱり2つとも当たり牌だった・・・)

(もうそろそろステルスが発動してるはずっすけど全然和了れないっす・・・)

(和了れたのはいいが、何だか冬室に利用されたような気がしてならないな・・・)

(これでトップです。でも念には念を・・・)

~東四局~ 親:東横桃子

冬室氷華 33000

一ノ瀬一葉 29800

深堀純代 25400

東横桃子 11800

~5巡目~

「ツモ。300・500。」

(なっ、また和了られてしまいました。しかも南入してしまいます・・・)

(冬室はトンパツで和了してた。という事は南一局は・・・)

~南一局~ 親:深堀純代

冬室氷華 34100

一ノ瀬一葉 29500

深堀純代 25100

東横桃子 11300

「リーチ。」

(ダブルリーチ!?そうでした、東一局で冬室さんは和了してましたね。)

(また、やられちゃうっす・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ。2000・4000。」

(始まった、冬室のダブリーが・・・)

(こんなの、防ぎようが無いですよぉ・・・)

~南二局~ 親:一ノ瀬一葉

冬室氷華 42100

一ノ瀬一葉 27500

深堀純代 21100

東横桃子 9300

(やっぱりこの局は冬室さんが和了してなかったからダブルリーチはしてこない。ならここで攻めなければ!)

「チーです。」

(なっ、南場になって3向聴から手が進まないようになっているはず。それなのに、どうして・・・あぁ、三色同刻。3向聴ではなく既に1向聴だったという事ですか。じゃあこの人とは南場でも殆ど凍結が効かないという事でしょうか。まぁ、そこはどうでもいいとして今のチー、789ピン。という事は鳴き純チャンと三暗刻対々で跳満といったところでしょうか。だったら9を切らなければいいから、これで。)

「ロンです!三色同刻三暗刻で12000お願いいたします。」

(なっ、私が放銃!?この人、かなりの強者ですね。)

(よしっ、このまま親で連荘出来ればまだ勝てます!)

「・・・もしかして、勝てるとか思ってませんか?一ノ瀬一葉さん。」

「えっ、あ、はい。頑張っています。」

「そうですか、それはそれは、とってもおめでたい方なんですね。」

「ど、どういう事でしょうか?」

「直ぐに分かりますよ。」

~南二局一本場~ 親:一ノ瀬一葉

一ノ瀬一葉 39500

冬室氷華 30100

深堀純代 21100

東横桃子 9300

(直ぐに分かるって、どういう事なんでしょうか。私がこの親で連荘すれば冬室さんのチャージも起きな・・・あれ、そういえば、東二局の一本場って、あっ、冬室さんが和了してました。という事はつまり・・・)

(お気づきになられたようですね。では答え合わせしましょうか。)

「リーチ。」

(やっぱり、どうして気が付かなかったんですか!私のばかぁ!これじゃあ、どっち道勝ち目が無いじゃないですかぁ!)

「ツモ。ダブリー一発ツモ混一。3100・6100。」

(あぁ、やられてしまいました・・・)

~南三局~ 親:冬室氷華

冬室氷華 42400

一ノ瀬一葉 33400

深堀純代 18000

東横桃子 6200

「リーチ。」

(もう、おしまいです・・・)

(これで、終わりです。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ清一。8000オール。」

(終わった・・・)

「お疲れ様でした。」

「お、お疲れ様でした・・・」

「お疲れっした・・・」

「お疲れ・・・」

~試合結果~

冬室氷華 66400

一ノ瀬一葉 25400

深堀純代 10000

東横桃子 -1800

「途中はヒヤヒヤしましたけど、終わってみれば私の圧勝でしたね、一ノ瀬一葉さん。」

「・・・そうですね。」

(この感じ、対局してみて確信しました。この人は、やっぱり冬室焦華さんの妹です。あの頃と同じ・・・)

 

 

~6年前~

『試合終了です!全国小学校麻雀大会の長野県代表は、圧倒的大差で勝利した6年生の冬室焦華さんです!』

~試合結果~

冬室焦華 106700

一ノ瀬一葉 1300

早乙女友理奈 200

汐見真紀 -8200

「・・・勝てなかった。」

「全然、手も足も出ませんでした・・・」

「これは規格外・・・」

「お疲れ様~ってあれ?皆お通夜状態だね~。まぁ、小3の子3人相手に大人気が無かったかもしれないけど~、君達結構強かったから良いかな~って思って。悪気は無かったんだよ~。」

「いえ、私が勝てなかったのが悪いんです。冬室さんは悪くないです。」

「おぉ!8200のマイナスでラスだったのに、結構根が強いんだね~。」

焦華の発言を聞いて、一葉が立ち上がった。

「あのっ!いくら強かったからとは言え、真紀に酷い事言っていい理由にはならない筈です!」

「はぁ?何?口答えすんの?だったら私に勝ってからにしてよ。あっ!でも、25000点の勝負で10万点差も付けられた相手に勝てる訳無いか~。」

(くっ!この人、酷すぎます!どうして神様はこんな人にこんな力をお与えになったんでしょうか・・・)

(もう、麻雀辞めようかな・・・)

 

~翌日~

早乙女友理奈(さおとめゆりな)が真紀と一葉を、普段麻雀をしていた場所に呼び出した。

「用って何だよ友理奈。」

「私達、麻雀は続けた方がいいと思う!だからもっと麻雀をしよう!そして、あわよくばあの人に勝とう!」

「・・・無理だよ。友理奈も見たでしょ。あの人、どう戦っても勝てる気がしなかっただろ。」

「それに、昨日の今日で麻雀はちょっと・・・」

「そっか・・・じゃあ明日から始めよう!」

「はぁ?お前、話聞いてた?」

「聞いてたよ、確かに冬室さんは強かった。あんなの勝てっこ無いって事も分かってる。でも、でも駄目だよ!このまま、あの人にやられたからって理由でこんなに楽しいゲームを辞めるのは、勿体無いよ!絶対に辞めちゃいけない、ここで辞めちゃったら本物の敗者になっちゃうんだよ?真紀はそれでもいいの!?」

「友理奈・・・」

「はぁ、分かったよ、そこまで言われたらしゃーねぇ。ウチも負けたまま終わるなんて専らごめんだ!やってやる!」

「一葉も続けてくれる?」

「私は、真紀がやると言ったのですから、勿論続けます。」

「そうこなくっちゃな!よしっ、じゃあ早速麻雀しようか!」

「えっ、明日にするんじゃ無かったんですか!?」

「二人がやる気になってくれたんだ。それに、ここまで来て麻雀しないで帰るなんて勿体無いだろ?」

「それ、もし私達が続けないって言って帰ろうとした時にも言うつもりでしたよね。」

「は、ははっ、ソンナコトナイヨ。」

「はぁ、まぁ良いですけど。真紀はこのまま麻雀やりますか?」

「もちろん!やるに決まってるっしょ!」

「そうですか、真紀がやるなら私もやります。」

「じゃあ、始めようか!」

「はい!」

「おう!」

 

 

 

「かずかず、大丈夫っすか・・・」

(・・・あぁ、思い出に耽ってしまいましたか。)

「大丈夫です。東横先輩こそ、マイナスで終局してしまいましたけど大丈夫ですか?」

「心配無いっすよ。むっきー先輩があんなにやられてたのを見て、こうなるとは思ってたっすから。」

「そうですか・・・」

「・・・結局、マッキーの助言はあんまり役に立たなかったっすね。」

「ご期待に添えなかったですね。」

「仕方ないっすよ。あんな相手、勝てる方がおかしいっす。」

「そう、ですね・・・」

(そういえば、あの時の真紀もそんな事言ってましたね。それで友理奈に諭されて・・・そういえば、友理奈とは中学の頃に転校で九州の方に行ってしまってから会ってませんね。元気にしているのでしょうか・・・)

「と、とりあえず、切り替えて次の対局に行くっすよ。」

「あっ、そうでした!行きましょう!」

 

 

その頃、真紀は一葉の試合結果を見ていた。

(一葉、冬室氷華に勝てなかったのか。ま、仕方無いか。ウチが後で敵討ちしないとな!でもその前に、その冬室氷華を倒したっていう、このサイドテールっ子を倒さねぇとな!)

「1度でいいから対局したいと思っていたよ、夢乃マホ!」

「マホも鶴賀の大将さんと戦いたいと思っていました。よろしくお願いしますです!」

「お互い全力を出して真剣勝負、しましょうね。」

「はい!」

個人戦2日目の3回戦、夢乃マホと汐見真紀との対局が今、始まる。




個人戦の話は幾つかの対局を用意していたのですが、⑤くらいまでには終わらせたいので少しカットするかもしれないです。


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第22話 個人戦③

真紀が対局室に入ると、そこには夢乃マホと妹尾佳織、そして染谷まこがいた。

「妹尾先輩もいたんですか。」

「うん、何とか頑張ってるよ。」

「そして貴方は、清澄の、ええっと、弱い人ですね!」

「わしは部長の染谷まこじゃ!」

「おぉ、ここ長野なのに広島弁だ・・・」

「あんた、その挑発的な態度を何とかした方がええと思うわ。」

「そうですね、私に勝てたら考えます。」

「そういう態度じゃから痛い目見るっちゅうのに・・・まぁ、ええわ。挑発されたからには勝つしかないのぉ。」

「やれるもんならですよ。」

「ふん、言っとれ。」

「じゃ、早速始めましょうか。」

~場決め結果~

夢乃マホ:東

妹尾佳織:南

汐見真紀:西

染谷まこ:北

~東一局~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 25000

妹尾佳織 25000

汐見真紀 25000

染谷まこ 25000

~3巡目~

「リーチです!」

(トンパツで3巡目に親リーチ、片岡優希か。なら・・・)

「ポン。」

(一発を消されちゃいました。でも、連荘はしておきたいので安目でも和了ります!)

「ツモ!リーチツモタンピンドラ1。4000オールです!」

(うぅ、早速清澄の中堅の人に和了られちゃったよ・・・)

(ずらしてなかったら三色と一発ついて倍満だったのかな?まぁ、この一撃は仕方無いとしても、次からは注意しないとな。)

「一本場です!」

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 37000

妹尾佳織 21000

汐見真紀 21000

染谷まこ 21000

「リーチ!」

(ダブリー?親番でダブリーか。南塲じゃないし、今度はウチのコピーをしてきたのかな~。いいじゃん。自分に打ち勝てるか、やってみようじゃない!)

(このダブリーを和了られたら辛いのぉ。しかし鳴けんしな・・・)

(またやられちゃう・・・)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色で8100オールです!」

(やられた・・・)

(2連続和了お見事ですね~。でも、そんなに点を取っちゃったら黙っていませんよ?妹尾先輩が。)

~東一局二本場~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 61300

妹尾佳織 12900

汐見真紀 12900

染谷まこ 12900

(麻雀牌さん、力を貸して!)

ゾゾッ

(やっぱり使ってきましたね。妹尾先輩・・・)

(鶴賀の妹尾佳織さんから嫌な感じがしました。ここは温存しましょう。)

~7巡目~

佳織がドラを出した。

(あっ、あのドラをポンすればダブ東ドラ3と赤ドラ1枚で跳満確定です!)

「ポン!」

(これで・・・)

「それ、ロンです。」

(えっ・・・)

「四暗刻単騎、32600です。」

(なっ、やっぱりこの人、凄すぎです・・・)

(流石妹尾先輩、痺れる~。)

(妹尾さん、役満を和了しよる時に単騎が多いんは気のせいか・・・?)

~東二局~ 親:妹尾佳織

妹尾佳織 45500

夢乃マホ 28700

汐見真紀 12900

染谷まこ 12900

(そろそろ黙って見ているの詰まんなくなってきたな~。そろそろやるか!)

~3巡目~

「リーチ!」

(汐見真紀さん、ドラを対子落としでリーチしました。ちょっと怖いです・・・)

(鳴けたら鳴きたいんじゃが鳴けんのぉ・・・)

(汐見さんにやられちゃう・・・)

「ほい来た一発ツモ!リーチ一発ツモタンヤオ清一赤1枚で6000・12000!」

(うわっ、流石汐見さん、凄いな。捲られちゃったよ。)

(これは本当に厳しい戦いじゃの・・・)

(このままじゃ勝てないです・・・)

~東三局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 36900

妹尾佳織 33500

夢乃マホ 22700

染谷まこ 6900

(さっきはよくもウチの真似をしてくれたな、コピーよりも本家の方が強いって事を教えてやるよ!)

「リーチ!」

(やっぱり親番でダブリーしてきました。)

(終わったな・・・)

(このままじゃやられちゃいます。)

「ツモ。ダブルリーチ一発ツモタンピン。6000オール。」

(あっ、残った・・・)

(まだ部長が900残ってます、これならまだ行けるかもです!)

(首の皮1枚って感じかいのぉ。じゃけどこれ、もう勝てんじゃろ・・・)

~東三局一本場~ 親:汐見真紀

汐見真紀 54900

妹尾佳織 27500

夢乃マホ 16700

染谷まこ 900

(よしっ、配牌で聴牌。これでいける・・・あっ、きちゃった。)

「ツモ。天和。16100オール。」

(なっ、天和。この人、凄すぎです・・・)

(生で天和見たの、生まれて初めてじゃ・・・)

(また汐見さんに勝てなかった・・・)

「お疲れです!」

~試合結果~

汐見真紀 103200

妹尾佳織 11400

夢乃マホ 600

染谷まこ -15200

 

 

「いやー、お疲れ様です。」

「-15200とか、最悪じゃ・・・」

「やっぱり弱い人じゃないですか。」

「うぐっ、負けたから何も言えんわ・・・」

「まぁ、しゃーないっすよ。天和とか出ちゃいましたし。」

「あのタイミングで天和とか、流石に酷すぎじゃ。」

「いやー、出ちゃったもんは仕方無いじゃないですか。」

「はぁ、とりあえずお疲れ、わしは次の対局に行くわ。」

「ウチも次行きますか。」

(マホ、全力を出しましたけど、勝てませんでした。宮永先輩が大差で勝利した相手だったのに、マホはその人に大差で負けてしまいました・・・やっぱり宮永先輩は凄いです。大会の1日目で迷子になって、一ノ瀬一葉さんの実力を見ようと照魔鏡を使った時に、隣にいた宮永先輩も見てしまいましたけど、あれは強いとかそういう次元じゃなかったです。絶対に勝てないという概念を植え付けられてるような気がしました。マホも、宮永先輩を越えられるくらい強くならなきゃいけません!マホ、頑張ります!)

 

 

真紀が次の対局をする卓に入った。

(さてと、次はここか。おっ、あの人は・・・)

「三日ぶりだな、汐見真紀!」

「天江衣さんじゃないですか。」

「今日はこの間の決着を着けようと思っていた。お前と衣のどちらが強いのかを!」

「ウチも思ってましたよ。宮永咲さんに全部持っていかれたせいでウチが圧勝していたのが台無しになりましたからね。」

「御託はいい。始めようか!」

「了解です。」

「うわっ、やべー奴が二人もいやがる。」

「う、うむ、勝てる気がしない・・・」

ー場決め結果~

汐見真紀:東

天江衣:南

井上純:西

津山睦月:北

~東一局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 25000

天江衣 25000

井上純 25000

津山睦月 25000

「リーチ。」

(やっぱり、早速リーチを掛けてきやがったか。)

「ポン。」

(衣も動き始めてるし、オリ・・・って、そんな感じでやってたら一回も和了れずに終わっちまう!ここは攻める!)

「こっちもポンだ。」

(純に聴牌気配、だがこっちも聴牌だ。どうしたものか・・・)

(ここで和了って流れを作ってみせる!)

「ツモだ。700・1300。」

(くそっ、親で一回も和了れないとか、ふざけんなよ。)

~東二局~ 親:天江衣

井上純 28700

天江衣 24300

津山睦月 24300

汐見真紀 22700

(リー棒も持ってかれて2300マイナスか。そこまで危険ゾーンではないけど、今は天江衣の親番だしな・・・)

「チー。」

(とりあえずドラ2枚あるし、喰いタンで流すか。)

「ポン。」

(よしっ、聴牌。ここは上手く流したい。おっ、来た。)

「ツモ。タンヤオドラ2で1000・2000。」

(くっ!親を流された。やっぱりこいつ、難敵!)

~東三局~ 親:井上純

井上純 27700

汐見真紀 26700

津山睦月 23300

天江衣 22300

~2巡目~

「ポン。」

(天江衣、そろそろ来そうだな・・・)

(衣の手が伸びてる。くそっ、鳴けねぇ。しかも安牌も無いわ。やばいかもな・・・)

「ロン。12000!」

(衣、やっぱり聴牌してたか・・・)

(やっぱり来たか、天江衣。)

~東四局~ 親:津山睦月

天江衣 34300

汐見真紀 26700

津山睦月 23300

井上純 15700

~6巡目~

「ツモ。3000・6000!」

(速いって、こんなん追い付かないわ・・・)

(衣のやつ、完全に流れを掴みやがった。)

~南一局~ 親:汐見真紀

天江衣 46300

汐見真紀 23700

津山睦月 17300

井上純 12700

(このままやられてなんかいられないでしょ!)

「リーチ。」

(こいつ、やっぱりダブリーしてくる。)

(今回は防げなかったか・・・)

「一発ツモぉ!メンタンピン三色ドラ2で8000オール!」

(くそっ、やられた。)

(このまま調子に乗っていられると思うなよ、汐見真紀!)

「一本場!」

~南一局一本場~ 親:汐見真紀

汐見真紀 47700

天江衣 38300

津山睦月 9300

井上純 4700

「リーチ。」

「ポン。」

(天江衣、また邪魔する気かよ。・・・くっ、来なかったか。)

~4巡目~

「ツモ。3100・6100。」

(ここに来て跳満とかマジっすか。厳し過ぎだろ。)

(また衣に和了られた。このままじゃ、俺が飛んじまう・・・)

~南二局~ 親:天江衣

天江衣 50600

汐見真紀 40600

津山睦月 6200

井上純 1600

(とりあえずこの点数はまずいな。とりあえず和了らねぇと。)

~6巡目~

(衣も鶴賀の大将も何もやってこない、ならここは攻めるぜ。)

「リーチ。」

(うわっ、1600しかないのにリーチとか、初心者丸出しかよ。ま、一応一発消しとくか。)

「チー。」

(純、やられたか・・・)

「ツモ。リーチツモタンピンで1300・2600。」

(うっわー、リーチ掛けといて5200かよ。もっと高いのかと思ったのに。これじゃあ天江衣とあんまり差縮まないじゃん。)

~南三局~ 親:井上純

天江衣 48000

汐見真紀 39300

井上純 6800

津山睦月 4900

(そろそろ和了っとかないとヤバいよな。このままじゃ、負けちゃう。)

~7巡目~

(よし、これを和了れればまだ戦える。鶴賀の部長として、焼き鳥で終わる訳には行かない。)

「リーチ。」

(出た、部長の起死回生の一手。これ、結構高い手作ってるんだよな。)

(鶴賀の先鋒からただならぬ気配、危険!)

「ツモ。リーチ一発ツモドラ2で2000・4000です。」

(くっ、親被りで4000マイナス。ってかこれ、もうほぼ勝ち目ないじゃねぇか。)

~南四局~ 親:津山睦月

天江衣 46000

汐見真紀 37300

津山睦月 12900

井上純 2800

「リーチ。」

(はぁ?親ダブリーとか、ウチのお株盗らないで下さいよ。一発消してやる。)

「チー。」

(またしても鶴賀の先鋒に強大な気配、危険!)

(これで・・・)

「ツモ。ダブリーツモタンヤオ清一で8000オールです。」

(うわっ、親倍!?しかも捲られた!?うわっ、ウチが3位とか、あり得ないって!)

(またも他の奴に和了されて終わってしまった・・・だが今回は衣の勝ちだ!)

(くそっ、俺が飛び終了とか、カッコ悪ぃ・・・)

~試合結果~

天江衣 38000

津山睦月 36900

汐見真紀 29300

井上純 -5200

「ふふっ、今回は衣が勝ったぞ。これで決着は着いた。お前と衣では、衣の方が強い!」

「ちょっと待って下さい。この前の団体戦では得点収支も終了点数でもウチが上回ってます。せめて引き分けが妥当でしょう?」

「ふん、負け惜しみか。だがこの勝負で決着を着けようと言ったではないか。」

「でも部長が和了したせいで衣さんがトップって、この前のウチと同じじゃないですか。これでは決着が着いたとは言えませんよね。」

「うぬぬ、まぁ、いいだろう。ではこの勝負でお前と衣は一対一だ。次に相見える時こそ決着を着けようか。」

「了解です。」

「ではその時を楽しみにしてるぞ。」

「ウチも楽しみにしてます。」

衣が対局室から出て、真紀と睦月も移動を始めた。

「はぁ、何で2位確定で親倍和了っちゃうんですか部長。お陰で負けちゃったじゃないですか。」

「うむ、でも汐見さんがあそこで一発消しをしてなかったら三倍満で逆転だったんだけど。」

「えっ、でも次の牌が当たり牌だなんて分からないじゃないですか。」

「いや、天江衣さんと汐見さんが言い合ってる時にちらっと見たんだよ。そしたら当たり牌だった。」

「ほぇー、部長の起死回生の一手は凄いですね。ぴったり逆転だったって事ですか。って、逆転じゃないって分かってたなら何で和了ったんですか。」

「うむ、それは、たとえ2位だと分かってても、和了らなかったら他の人が和了ってもっと酷い成績になってたと思うし、それに、汐見さんに勝ちたかったから・・・」

「あ、もしかしてこの前『ウチには勝てないですよね。』って言った事気にしてました?」

「まぁ、ちょっとだけね。」

「あはは、すいません。やっぱり一葉に言われた通り、あんまり挑発的になると痛い目見ますね。直すよう善処します。」

「うむ、そうだな。じゃあ、私はこっちだから。」

「あ、分かりました。では、頑張って下さい!」

「うむ、じゃあ。」

 

 

その頃、冬室氷華は、次に対局する相手を確認して、密かに胸を踊らせていた。

(遂にこの時が来た。夢乃マホ、貴女にリベンジを果たす時が!)

氷華が対局室に向かうと、そこには既にマホの姿があった。

「もう居たんですか。早めに来たつもりだったんですが。」

「冬室先輩、また戦える時が来るって思ってました。」

「待ち遠しかったです。一年も待ちましたからね。貴女にリベンジする時が来る事を!」

「マホ、負けません!」

「残念ですが今日は去年のようにはいきませんよ。」

「マホも去年よりも強くなってます。絶対に勝ちます!」

「はぁ、もう、こんな事話しても意味ないですね、早く始めましょう。」

「はい。」

(マホ、絶対に勝ちます!)

マホと氷華の対局が始まろうとしていた。




コメントで言われた為、打点を出来るだけ低くしようと思ったのですが、キャラの性格とか能力とか自分の方針等で結局いつも通り高い打点になってしまいました。これからも多分高い打点の試合になってしまうかもしれませんが、そこは暖かい目で見て下さると助かります。


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第23話 個人戦④

氷華とマホが話している頃、和は次に対局する龍門渕透華にばったり会った。

「あら、原村和ではありませんの。」

「あっ、龍門渕さん。」

「原村和、今日こそ貴女を倒して差し上げますわ!」

「はぁ、そうですか。でも今日こそって、この前の団体戦で龍門渕さんは私に勝ってるはずですよね?」

「あれは勝った事には入りませんわ!ノーカンですわ!」

「そ、そうですか、なら今日決めましょうか。私と龍門渕さんのどちらが強いのか。」

「ふん、受けて立ちますわ!・・・と、言いたいところですけど、今回はそうも言ってられなさそうですわね。」

「どうしてですか?」

「対局する相手ですわ、貴女のところの中堅と風越の先鋒。団体戦の最多得点を記録した二人ですわ。」

「まぁ、そうですけれど、マホちゃんはちょっと調子が良かっただけで、そんなに心配はいらないと思いますけど・・・」

「あら、そうなんですの?」

「多分そうだと思います。これまでのマホちゃんはあんなに稼いだ事ありませんでしたから。」

「ですが彼女、現在4位ですわよ?」

「ぐ、偶然です!あのマホちゃんがそんなにできる訳ありません。」

「・・・そろそろ彼女を認めたらどうなんですの?」

「貴女には関係ありませんよ・・・」

「そうですわね。あら、話してたらもう到着しましたわね。」

「そうですね。」

「では、ここからは敵同士、真剣勝負ですわよ!」

「受けて立ちます。」

「あっ!和先輩じゃないですか!」

和が対局室に入ると、マホが和に気付いて近付いた。

「マホちゃん、随分と頑張っているみたいですね。」

「はい!和先輩や宮永先輩に追い付くためにマホ、もっと頑張ります!」

「良い心掛けです。ではマホちゃんの成長ぶりを見せてください。」

「はい!」

(龍門渕高校の龍門渕透華、この前の団体戦の後半での連続和了は危険。でもそれに比べて、2年前のインターミドル覇者はデジタル打ちは素晴らしいものの、そこまで突出したものは持ち合わせていない。私にとっては扱いやすいタイプだな。この勝負、勝てる!)

「じゃあ、始めましょうか。」

~場決め結果~

原村和:東

夢乃マホ:南

冬室氷華:西

龍門渕透華:北

~東一局~ 親:原村和

原村和 25000

夢乃マホ 25000

冬室氷華 25000

龍門渕透華 25000

(とりあえず夢乃マホがどう攻めてくるか分からないからチャージしておいた方がよさそうですね。)

「ツモのみ。300・500です。」

(あぁ、早速冬室先輩にやられちゃいました。)

(これで南一局は多分満貫を和了されてしまいますわね。)

~東二局~ 親:夢乃マホ

冬室氷華 26100

夢乃マホ 24700

龍門渕透華 24700

原村和 24500

~5巡目~

「ツモのみ。300・500です。」

(また、やっぱり冬室さん、速いです・・・)

(満貫と跳満、これはちょっと後半が厳しそうですわね。)

~東三局~ 親:冬室氷華

冬室氷華 27200

龍門渕透華 24400

原村和 24200

夢乃マホ 24200

(何か、配牌が悪いような気が・・・まさか!?)

マホが捨てる牌を持ち、クルクルと回しながら河にその牌を捨てた。

「リーチ!」

(今のリーチのし方、そしてこの配牌、間違いない。今のは大星淡さんの打ち方。ここで大星淡さんを選んで配牌5向聴にしてきたという事は、私に親で連荘させないためか。普通なら東場で点差を作って南場で私が和了したら負ける状況を作る人が殆どなのに、正攻法で私に立ち向かっている。流石は夢乃マホですね。)

~12巡目~

「カン。」

(駄目でしたか、ここまでですね・・・)

~13巡目~

「ツモ。ダブリーツモタンヤオドラ4で4000・8000です!」

(一巡で引いた!?やっぱり夢乃マホは私のライバルに相応しいですね。)

(マホちゃん、やっぱり調子が良い時の爆発力は優希みたいですね。確かにマホちゃんの成長ぶりは認めても良いかもしれませんね。)

~東四局~ 親:龍門渕透華

夢乃マホ 40200

龍門渕透華 20400

原村和 20200

冬室氷華 19200

(夢乃マホとの点差は2万点強、なら念のために平らにしましょうか。)

「ポン。」

(マホのツモ番を飛ばされてしまいました。冬室先輩、まさか・・・)

「ポン。」

(また・・・)

(冬室氷華が鳴いてくれているお陰で聴牌出来ましたわ。ここは目立つという意味でも、リーチをかけますわ!)

「リーチですわ!」

(やっぱり、冬室先輩が鳴いた事で龍門渕さんを聴牌させたって事ですよね。ここは振り込みたく無いです。でも、安牌が無いです・・・)

「ロンですわ!リーチ一発タンヤオドラ1一盃口。8000ですわ!」

「うぅっ、はい・・・」

(これで夢乃マホとの点差は縮まった。そして南入。これなら勝てる!)

~南一局~ 親:原村和

夢乃マホ 32200

龍門渕透華 28400

原村和 20200

冬室氷華 19200

(これまでの対局のように行くとしたらこの南一局で冬室先輩は多分・・・)

「リーチ。」

(やっぱり、ダブリーしてきましたか。という事はこの局、多分冬室先輩が満貫を和了りますね。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ平和、2000・4000です。」

(このダブリー一発ツモ、何とかなりませんの?)

(この人、東場では全くリーチを掛けないのに南場になると積極的にリーチを掛けてきますね。優希みたいなタイプなんでしょうか?)

(あれ?これって、もしかしたらもしかするかもしれません!)

~南二局~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 30200

冬室氷華 27200

龍門渕透華 26400

原村和 16200

「リーチ!」

(なっ、成る程、考えましたわね、夢乃マホさん。冬室氷華の模倣をすれば冬室氷華の和了りを阻止出来るという事ですのね。)

(くっ、やられた。確かにその手がありましたね。これでは私のチャージを阻止するだけでなく満貫以上を和了されてしまう。また点差が・・・)

「ツモ!ダブリー一発ツモドラ1。4000オールです!」

(夢乃マホ、このままではまたあの状態になっちゃう。それだけは防がないと!)

~南二局一本場~ 親:夢乃マホ

夢乃マホ 42200

冬室氷華 23200

龍門渕透華 22400

原村和 12200

(夢乃マホ、絶対に貴女には和了らせない!)

「ポン。」

(また冬室先輩が鳴いてきました。でもこの親番は、もっと稼ぎたいです!)

「ポン。」

(また鳴いてきました。このままではまたやられてしまいます。ならこの局はオリです。今回は龍門渕さんの安牌もあります。これは通るはずです!)

「ロン。タンピン三色ドラドラ。12300です。」

(えっ、和先輩!?はっ、やられました。和先輩もツモ番は増えています。だから和先輩が聴牌しててもおかしくなかったです。マホ、 龍門渕さんにしか目が行っていなかったです、反省です・・・)

(さぁ夢乃マホ、勝負はここからですよ?)

~南三局~ 親:冬室氷華

夢乃マホ 29900

原村和 24500

冬室氷華 23200

龍門渕透華 22400

~6巡目~

(私は、チャージが無くても和了れる!)

「ツモ。面前混一ツモ。4000オール。」

(6巡目に4000オール、速すぎですわ!)

(この仕上がりの速さ、流石冬室先輩です。でも、マホは今日、他の人の支援無しでも貴女に勝てるという事を証明してみせます!)

「一本場。」

~南三局一本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 35200

夢乃マホ 25900

原村和 20500

龍門渕透華 18400

~8巡目~

(ここで連荘して、夢乃マホに完全勝利してみせる!)

(冬室先輩、マホは、こんなところで負ける訳には行かないんです!)

「ツモ。七対子ツモドラ1。1700・3300です!」

(くっ、夢乃マホ、貴女はいつも私の邪魔をする!)

~南四局~ 親:龍門渕透華

夢乃マホ 32600

冬室氷華 31900

原村和 18800

龍門渕透華 16700

「冬室先輩、この点差を見て気付きましたか?この局、マホか冬室先輩はどんな安手でも和了ったらその人が勝ちます。ここで決めましょう。マホと冬室先輩、どちらが強いのかを!」

「望むところです。ですが、後で『リーチをかけてれば~』なんて、言わないで下さいよ?」

「当然です。マホはこの南四局で決着を着けようと決めていましたから、そんな言い訳は言いません。」

「そうですか、では始めましょうか。運命の南四局を!」

「はい!」

 

 

~3巡目~

(この局は模倣はしません。この局は、麻雀教室の先生や高遠原中学の先輩方、そして、清澄高校の先輩方から教わった事の全てを総動員したマホの実力で、貴女を越えてみせます!)

「リーチ!!!」

「夢乃マホ、貴女がリーチしたお陰で、私が一位になってしまいましたよ?」

「問題無いです。和了れば一位だという事に変わりはありませんから。」

「そうですか、では私も、リーチ!」

(冬室先輩も聴牌していたんですか。ですが、冬室先輩は出上がりはしません。その点から考えると、マホは出上がり出きるので有利です。この勝負、マホが勝ちます!)

(流石に一発は来てくれないか。)

~6巡目~

(これじゃない!)

(違う・・・)

~10巡目~

(マホ、負ける訳には行かないんです、この勝負で、証明してみせるんです、マホは、一人でも冬室先輩に勝てるということを、だから、この局は絶対に和了ります!)

(私は去年夢乃マホに負けてからどれだけ努力をした?負けて、屈辱を味わい、辛い思いをしても、夢乃マホを倒すという一心でここまでやってきた!この一年の全ての努力がこの局に懸かっている!この手を完成させずに終わらせる訳には行かない!)

(絶対に和了ります!)

(絶対に負けられない!)

(来て下さい!)

(来いっ!)

~14巡目~

「ツモ。」

一人がツモを宣言した。その人は・・・冬室氷華だった。

「リーチツモ清一。4000・8000。これで、私の勝ちです!」

「マホ、負けちゃいました・・・やっぱり、冬室先輩にはマホ一人では勝てないんですね・・・」

「そんな事は無いですよ、夢乃マホ。」

「えっ?」

「私に、少しだけ運が傾いていただけです。貴女は既に、私と同等かそれ以上のレベルにいます。これからも私のライバルとして、戦って下さい。」

「は、はい!やった!マホ、冬室先輩に認められました~。」

(・・・・・・・・・可愛い。)

「で、では、私は次の対局に行きます。」

「あ、冬室先輩、ありがとうございました!」

「あの、団体戦の頃から思ってましたが、同じ学年になったのですから先輩は止めて下さい。」

「そうですか、じゃあ、ひょ、氷華さん。」

(か、可愛い・・・)

「ま、まぁ、その呼び方で良いでしょう。」

「はい!氷華さん、えへへ~氷華さん。」

「も、もう、行きます。」

氷華は逃げるように対局室を後にした。

「和先輩、マホ、氷華さんの事怒らせちゃったんでしょうか・・・?」

「分かりません。」

「いえ、多分怒ってはいないと思いますわ。」

「そうなんですか?」

「えぇ、推測ですけど、あれは照れ隠しですわ。」

「そうなんですか!?」

「まぁ、あくまで推測ですわ。」

「そうですか、でも、怒ってないなら良かったです。」

 

 

(何なんだ、あの生き物は、可愛過ぎる!そう言えば、夢乃マホには名前で呼ばせているのに私はそのまま夢乃マホと呼んでも良いのだろうか?変えた方が・・・例えば、マホちゃん、とか、い、いやいや、私がちゃん付けなんかで呼んでしまったらドン引きされてしまうだけだ。これまで通り夢乃マホで良いですね。はぁ、一旦心を落ち着けましょう。とりあえず、次の対局室に行きましょうか。次の対局相手は・・・汐見真紀。あの鶴賀の大将ですか。ですが、夢乃マホをたおしたからでしょうか?全くもって負ける気がしませんね。では、鶴賀最強の相手と相見えるとしましょうか。)

 

 

 

 

~小ネタ(NG集)~

 

その①

「では始めましょうか。運命の南四局を!」

「はい!」

(完全に私と龍門渕さんをのけ者にしてますね。私だって、跳満以上をツモれれば一位なんですが・・・)

(私も親で連荘すればまだ勝ち目はありますのに・・・)

(つまりこの二人は私達が和了する事は無いと思っているという事でしょうか?)

(私達の事はアウトオブ眼中ですのね。)

イラッ

(この二人には絶対に和了らせません!)

(絶対に連荘してやりますわ!)

(あれっ、なんか、和先輩と龍門渕さんが突然怖い感じに、どうしてでしょうか・・・?)

 

 

その②

(この局は模倣はしません。この局は、麻雀教室の先生や高遠原中学の先輩方、そして、清澄高校の先輩方から教わった事の全てを総動員したマホの実力で、貴女を越えてみせます!)

「そういえば、マホには必殺技があるんですよ、知っていましたか?冬室先輩。」

「なっ、必殺技をこれまで隠し持っていた!?」

「ふふっ、それを遂に発動してしまいましょう。行きます!けじらみリーチですっっ!!」

(・・・えっ?)

「ロン。純チャン三色一盃口ドラ2で16000です。」

「「あっ・・・」」

(咲さん、私、勝ちましたよ!また咲さんと全国へ!)




小ネタ集のその①は元々入れるつもりだったのですが、本編が予想以上に熱い戦いになったので小ネタ集として使いました。これからも面白いネタがあれば小ネタを入れていきたいと思います。
そして、少し投稿遅れてすみませんでした。


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第24話 個人戦⑤

観戦室に、冬室焦華の姿があった。

(あーあ、夢乃マホちゃんでも勝てなかったか~。氷華、かなり強くなってるね~。でも次の氷華の対局相手、真紀ちゃんだね。私はあの子に勝ったけど氷華はどうだろうね~。面白い事になりそうだな~。)

 

 

氷華が対局室に入ると真紀が牌を触っていた。

(麻雀牌を嬉しそうに触ってる。本当に麻雀が好きなんですね・・・)

「おっ、冬室氷華さんじゃないですか。さっきの試合、見事でしたね。」

「見ていたのですか。」

「ウチ、さっきの試合は跳満和了って親倍直撃で終わって暇だったんですよ。そんな中あの痺れる試合を見てたら、貴方と戦いたいって気持ちが込み上げてきたんですけど、まさか直後に戦えるとは思いませんでしたよ。」

「私も、夢乃マホを倒した貴女と戦いたいと思っていました。」

「早速始めましょうか!」

「はい。」

~場決め結果~

池田華菜:東

吉留未春:南

冬室氷華:西

汐見真紀:北

 

~東一局~ 親:池田華菜

池田華菜 25000

吉留未春 25000

冬室氷華 25000

汐見真紀 25000

(最初はチャージをしておきたい。この配牌ならいける。)

「ポン。」

(汐見真紀が鳴いてきた!?私が先に和了る!)

「チー。」

(どうしてもトンパツは和了りたいのかな?でも~)

「ロン。タンヤオ三色同刻ドラ3で12000。」

(くっ、速い。しかも、ドラを捨てなくてもこの速さを出せるのか・・・)

~東二局~ 親:吉留未春

汐見真紀 37000

池田華菜 25000

吉留未春 25000

冬室氷華 13000

~4巡目~

「ツモのみ。300・500。」

(くそっ、速くて追い付けない。やっぱり焦華さんの妹なだけはあるな。)

(これで氷華は南二局に満貫和了確定か。やっぱりズルいよなーこれ。)

~東三局~ 親:冬室氷華

汐見真紀 36700

池田華菜 24700

吉留未春 24500

冬室氷華 14100

~3巡目~

「リーチ!」

(汐見真紀、速い。でもそろそろ私も和了れそう。ここは私が勝つ。)

(残念だね、冬室氷華。ウチはこういう時に良い牌を引いてくれるんだよ!)

「ほい来た一発ツモ!メンタンピン一発ツモ三色で3000・6000!」

(跳満・・・東場でここまで和了られると少々辛いな。)

~東四局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 48700

池田華菜 21700

吉留未春 21500

冬室氷華 8100

「リーチ!」

(これはヤバい。本当にヤバい。どうすれば・・・)

(氷華がここまで削られるなんて初めて見た。流石汐見真紀。)

「またまた一発ツモ!ダブリー一発ツモタンピン三色で8000オール!」

(残り、100点・・・)

(こいつ、東場で氷華を飛ばして終わらせる気だ。ヤバいな・・・)

~観戦室~

(うっわー、真紀ちゃん凄いな~。氷華が100しか残ってないとか、見た事無いわ。流石私が見込んだ相手なだけあるね~。)

~東四局一本場~ 親:汐見真紀

汐見真紀 72700

池田華菜 13700

吉留未春 13500

冬室氷華 100

~6巡目~

「ツモ。400・600。」

「へぇ~、ここまで点差があるのにまだ安手和了するんだ。」

「そんなの、私の勝手です。」

「ま、そだねー。」

(これで、南入です。)

~観戦室~

(さぁ、ここから氷華がどう出るかだよね~。南場の氷華と真紀ちゃん、どっちが強いんだろ。ふふっ、この試合見てるの楽しい~!)

~南一局 親:池田華菜

汐見真紀 72100

池田華菜 13300

吉留未春 13100

冬室氷華 1500

~6巡目~

「リーチ。」

(汐見真紀!?やっぱり南入しても聴牌してくるか。だけどこれを和了られたら私は負ける。まだ負ける訳には行かない!)

「ツモ。面前混一ツモで2000・4000です。」

(うわっ、冬室氷華に先に和了られた。まぁ、ここで負けるって事は無いとは思ってたよ。)

~南二局~ 親:吉留未春

汐見真紀 69100

吉留未春 11100

冬室氷華 10500

池田華菜 9300

「リーチ。」

(ダブリー、鳴けるけど、鳴いたところでどうせ点数変わらないし、どうぞ、思う存分やっちゃって下さい。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ平和。2000・4000。」

(これで二位浮上ですね。ですが、この点差をひっくり返す事は、私に出来るのでしょうか?)

~南三局~ 親:冬室氷華

汐見真紀 67100

冬室氷華 18500

池田華菜 7300

吉留未春 7100

(とりあえず少しでも汐見真紀との点差を戻したい。ですが、倍満を和了したら私の敗退確定。三倍満以上はチャージ無しだと殆ど出した事が無い。更にここで跳満を和了したとしても、次局は汐見真紀の親番。ダブリーをしてくるはず。くっ、駄目だ、自分が勝てるパターンが全然思い浮かばない。でも、とりあえず跳満を和了出来れば勝つ可能性は一番高い。ここは確実に跳満を和了する!)

~7巡目~

「ツモ、清一。6000オール。」

(とりあえず跳満を和了出来たけれど、まだ汐見真紀との点差はある。ここは慎重にいく!)

~南三局一本場~ 親:冬室氷華

汐見真紀 61100

冬室氷華 36500

池田華菜 1300

吉留未春 1100

(この点差、跳満を和了しても逆転出来ない!?倍満を和了するしかない。でも、この配牌ならいける!)

「ポン。」

(なっ、汐見真紀が鳴いてきた!?このままだと先輩方が飛ばされて負ける!でもまだ一向聴。間に合え!)

真紀の口がつり上がった。

「ツモ。南ドラ2で1100・2100。」

(なっ、汐見真紀、三色を付けていれば勝っていたのに、手加減された!?この私が!?)

(さぁ、終わりにしようか冬室氷華。次はウチの親番だよ?)

~南四局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 65400

冬室氷華 34400

池田華菜 200

吉留未春 0

(くそっ、なんで汐見真紀には凍結が効いていないんだ。凍れ!凍れ凍れ凍れ凍れ凍れ凍れ凍れ凍れぇ!)

「リーチ!」

(どうして、どうして、凍結が効かないんですか・・・)

(さぁ、冬室氷華さん。これで終わりですよ。)

(とりあえず、汐見真紀はタンヤオが多い。この9ピンは大丈夫なはずです・・・)

「ふっ、それ、ロンです。」

「なっ、どうして!?」

「ダブルリーチ一発平和純チャン三色一盃口ドラ1。36000です。」

(はぁ?汐見真紀が、純チャン!?どうして?この人はタンヤオが殆どのはず。それなのに純チャンなんて・・・)

「冬室氷華さん、まさか貴方が一発で振り込んでくれるとは思っていませんでしたよ。しかも、飛び終了ですね。冬室さん、ウチの勝ちです!」

(負けた、負けた、まけ・・・)

(やっぱりこの人は焦華さんに比べたら、まだまだ穴があるな。やっぱり妹か・・・)

~試合結果~

汐見真紀 101400

池田華菜 200

吉留未春 0

冬室氷華 -1200

~観戦室~

(氷華が、負けた!?という事は、遂に氷華の闇堕ち来ちゃう?やった、久しぶりに闇堕ち氷華が見れるね!)

~対局室~

「ふふふふふふっ」

(うん?冬室氷華が、笑ってる?なんだこいつ、負けたのに笑ってる。これくらいのレベルの人は負けた事が無いから負けると嬉しかったりでもするのか?どっちにしろ怖いな。)

「あはははははっ、ありがとうございます汐見真紀さん。本当の私を目覚めさせてくれて。」

(こいつ、何言ってんだ・・・?本当の私?なんだそれ。)

「では、私は次の対局に行きます。」

終始無表情だったはずの氷華が妖しい笑みを浮かべながら対局室を後にした。

「あれが、闇堕ちなのかな・・・」

「えっ?闇堕ち?なんですかそれ。」

「なんか、氷華の姉が風越にやって来た時に言ってたんだよ。『私と戦ったら氷華は闇堕ちしちゃうもんね~』って。」

「池田さん、焦華さんに会ったんですか!?」

「えっ、まぁ、そうだけど、どうして汐見が氷華の姉について知ってるんだ?」

「ウチ、小学生の時に焦華さんと戦った事があるんですよ。まぁ、大差で負けたんですけどね。」

「そうなんだ。じゃあ、今の対局、この前にまして貪欲に点取りに行ってたのはそれが理由なのか?」

「ははっ、いつも通りにやってたつもりだったんですけどね。こういう感情って、やっぱり表に出ちゃうんですね。」

「まぁ、良いんじゃないの?あの氷華に勝ったんだし。」

「そうですね。じゃあ、ウチもそろそろ次の対局に行きます。」

「私も移動するし。」

 

 

(冬室氷華、やっぱり物足りない。焦華さんと戦いたい!焦華さんを倒したい!)

「久しぶりだね~真紀ちゃん。5年ぶりかな?」

「し、焦華さん・・・」

「おっ、やっぱり覚えてくれてたんだ。」

「忘れる訳ありませんよ。ウチは、あ、貴方のせいで小4から中3まで麻雀の公式大会に出てなかったんですから。」

「へぇ~、それは悪い事をしたね~。でも真紀ちゃん、すっごく強くなってるね~。私びっくりしちゃったよ~。」

「そ、そんな事無いです。焦華さんに比べたら。」

「いやいや~、あの氷華をマイナスで終わらせるなんて大したもんだよ~。」

「そ、そうですか、ありがとうございます。」

「どうしたの?いつもの自信が感じられないよ~?」

(くっ、この人、分かりきってる事を・・・)

「あの、次の対局があるので、失礼します。」

「もう少し話したかったけどそれなら仕方ないね~。じゃあ、頑張ってね~。」

「はい。では・・・」

 

 

(焦華さんに見られているのか・・・ちょっと緊張するな。)

(なんだか、鶴賀の大将が震えてますわね。それに、さっきからなんだかパッとしませんわね。あらっ・・・)

「ロンですわ。16000頂きますわ。」

(なっ、ウチが放銃だなんて・・・)

(なんだか分かりませんが、調子が悪いようですわね。それでしたら好都合ですわ。貴女を倒して3位入賞を果たしますわ!)

 

 

「お前は確か、冬室氷華とか言ったか。お前に勝って衣は全国へ行く。」

「あはっ、龍門渕高校の天江衣さんじゃないですか。宜しくお願いします。」

(純はこいつの事を無表情女と言っていた筈なのに表情豊かではないか。どういう事だ?)

~場決め結果~

冬室氷華:東

天江衣:南

一ノ瀬一葉:西

南浦数絵:北

~東一局~ 親:冬室氷華

冬室氷華 25000

天江衣 25000

一ノ瀬一葉 25000

南浦数絵 25000

(さぁ、始めましょうか!)

「リーチ!」

(なっ、冬室氷華さんは東場ではリーチなんて掛けないはず、それなのにダブルリーチ!?どういう事でしょうか。)

(こいつ、やはり聞いていたのとは違う。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ。4000オール!」

(これは、南場みたいな和了り方。どうして・・・)

~東一局一本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 37000

天江衣 21000

一ノ瀬一葉 21000

南浦数絵 21000

「リーチ!」

(また・・・なら、せめて鳴きます。)

「チー!」

(ふふっ、そんな事したって意味無いのに・・・)

「ツモ。ダブリーツモ混一。6100オール!」

(点数が上がってる、これじゃあ本当に南場と一緒じゃないですか・・・)

~東一局二本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 55300

天江衣 14900

一ノ瀬一葉 14900

南浦数絵 14900

「リーチ!」

(このままだと、何も出来ないまま、終わっちゃう・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモ清一。8200オール!」

(何だこれは!こいつは南場に強いと聞いていたはず。なのに今のこいつは、南場ではなく東場で南場の力を発揮しているではないか!)

(どうして真紀が言っていた『チャージブレイク』が東場で出来ているのでしょうか・・・)

~東一局三本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 79900

天江衣 6700

一ノ瀬一葉 6700

南浦数絵 6700

「リーチ。」

(また、もう止めて下さいよぉ・・・)

(このままでは、衣が、成す術無く負けてしまう、だが本当に成す術が無い・・・)

(これで終わりですよ。)

「あはははははっ、ツモ!ダブリー一発ツモ清一三暗刻で12300オール!これで終わりです!あはっ!」

(本当に、何も出来なかった・・・)

(衣が、何も出来なかった・・・そんな、こんな事、一度も無かったのに・・・)

「天江衣さん、なーんにも出来なかったですね?ふふふっ、私、天江衣さんならもう少し粘ってくれると思ったんですけど、私程度に勝てないなんて、入賞すら出来ないんじゃないんですか?あはっ、あはははははっ。」

「・・・次に戦う時は絶対に衣が勝つ!絶対だ!」

「そうですかー、期待してまーす。あははっ。」

「くっ・・・!」

「はぁ、面白かった。じゃあ、私は次の対局に向かいますね。さようなら。」

 

 

~個人戦途中経過~

1位 冬室氷華

2位 汐見真紀

3位 夢乃マホ

4位 宮永咲

5位 天江衣

6位 一ノ瀬一葉

7位 原村和

8位 津山睦月

9位 妹尾佳織

10位 南浦数絵

 

 

(さて、次の試合が最後ですね。さぁて、次の犠牲者は誰かなー。あはっ、楽しみー。)

(あっ、あの人、冬室氷華さん。確か、真紀ちゃんと戦ってから豹変したって言ってた。うぅっ、おトイレ行きたくなってきた・・・)

(あれは、宮永咲さんじゃないですか!あははっ、これは面白くなりそうですね。)

「宮永咲さん、ですよね?」

「そ、そうです。冬室さん。」

「今日は楽しく麻雀しましょうね。あはっ。」

「う、うん。よろしくね。」

(なんだか、団体戦の時とは全然違う。個人戦では使わないようにと思ってたけど、使うしかないのかな・・・)

「じゃあ、早速始めましょうか!」

~場決め結果~

冬室氷華:東

宮永咲:南

染谷まこ:西

井上純:北

~東一局~ 親:冬室氷華

冬室氷華 25000

宮永咲 25000

染谷まこ 25000

井上純 25000

「リーチ!」

(うわっ、やっぱり、いきなりリーチしてきたよ・・・)

(こいつ、表情がおかしいと思ったら表情だけじゃねぇ!トンパツでいきなりダブリーって、冗談だろ・・・)

(こがぁなん防げんわ・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモ。4000オール!」

(また東を一発で引きやがった。なんでこいつ、東場でこんな和了りしてんだよ・・・)

「さぁ、まずは一本場!」

~東一局一本場~ 親:冬室氷華

冬室氷華 37000

宮永咲 21000

染谷まこ 21000

井上純 21000

「リーチ!」

(冬室さんごめんなさい、使っちゃいますね・・・)

「カン。」

(なっ、宮永咲が暗カン!?もしかして、いや、そんなまさか・・・)

「ツモ。嶺上開花ツモドラ8。4100・8100です!」

(あっ・・・・・・・・・終わった。)

~観戦室~

(あっ、宮永咲ちゃんが氷華の闇堕ちを止めた!?まさか、私以外で止められる人がいるなんて。でも、これで氷華は凍っちゃうね。終わりだよ氷華。)

~対局室~

(あっ、あぁぁぁぁ、凍る、私が、凍っちゃう、嫌だ!凍りたくない!まだ負けられないのに!)

(冬室さん、どうしたんだろう・・・)

(情緒不安定じゃのぉ、病院行った方がええんじゃないか・・・?)

~観戦室~

(氷華は闇堕ち中に連続和了を止められると、これまで自分に来てた幸運が対局相手に行って、自分は凍結状態になって、更に不要牌や対局相手の和了り牌ばっかりツモるようになっちゃうんだよね~。久しぶりに見れるよ。氷華が何も出来ずに怯えて麻雀を打つ姿が。まぁ、氷華が勝ったまま家でじっくり氷華を虐めたかったけど、まぁ、いっか~。公式大会で無惨に負ける氷華が見れるからね~。今日来る前に個人戦の録画しといて正解だったね~。さぁ、存分に怯えなよ氷華!)

~東二局~ 親:宮永咲

宮永咲 37300

冬室氷華 28900

染谷まこ 16900

井上純 16900

(あぁ、配牌が悪い。このままじゃ、終わる・・・)

~3巡目~

(冬室さんには悪いけど、このまま終わらせちゃおう。)

「カン。」

(咲がまたカンしよった・・・)

(こいつ、ヤバイな・・・)

「ツモ。嶺上開花ツモ、タンヤオ三暗刻ドラ8。16000オールです!」

(こりゃあ、勝てんわ・・・)

(やっぱりこいつ、簡単に数え役満を和了ってきやがる。ヤバすぎるだろ!)

~東二局一本場~ 親:宮永咲

宮永咲 85300

冬室氷華 12900

染谷まこ 900

井上純 900

「カン。」

(また一巡目にカン!?なんなんだよこいつは!?)

(嘘じゃろ・・・)

「ツモ。嶺上開花ツモドラ8。8100オールです!」

(こんなん、敵わんわ・・・)

「ありがとうございました。」

「咲、あんた、強すぎじゃ・・・」

「あはは、負けられない対局だったので。」

「まぁ、これで多分入賞はしたじゃろ。おめでとう。」

「はい、ありがとうございます。」

「宮永咲さん、私の、完敗です・・・」

「いや、今のはたまたま運が良かっただけだよ冬室さん。」

「そんな事ありません。それに、私は負けたので、さん付けは止めて下さい。」

「そ、そう、じゃあ、氷華ちゃん。」

「!?わ、分かりました。宮永先輩がそう呼びたいのならそれで大丈夫です。」

「うん!」

 

そして、個人戦2日目が終わり、最終結果が公開された。

~個人戦2日目結果~

1位 冬室氷華

2位 宮永咲

3位 汐見真紀

4位 夢乃マホ

5位 天江衣

6位 一ノ瀬一葉

 

 

表彰が執り行われた。

「あの、私、宮永先輩にも汐見さんにも負けたのに、1位で良いのでしょうか・・・」

「結果で見りゃ、氷華が一番なんだから氷華が1位なのは当たり前だろ。」

「そうだよ。おめでとう、氷華ちゃん。」

「そうですか、ありがとうございます。」

こうして個人戦2日目は幕を閉じた。




⑤で無理矢理終わらせようとしたせいで最後が適当になってしまいました。次話でもう少しだけ書きます。


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第25話 合宿

余談ですが、今更ながら咲-Saki-Vita Plusを買ってマホを育成して、この作品での清澄のオーダーで団体戦とかしてみたんですけど、マホがめちゃくちゃ強くて驚きました!私の書いてるマホとまでは行かないものの、団体戦の点数はこの作品と同じくらい稼げました。(鬼門が決まった時は凄くテンション上がります。)皆さんももし良かったら1年後清澄オーダーで団体戦を試してみて下さい。


表彰式が終わり、汐見真紀は鶴賀学園のメンバーと合流した。

「お疲れ様です、真紀。3位入賞おめでとうございます!」

「うん、ありがとう。でも、後半から全然和了れなくて、ギリギリの入賞だったんだよね。それに、一葉が最後の対局で夢乃マホに清老頭を直撃してくれたお陰で入賞出来たしね。ウチだけだったら入賞出来てなかった。やっぱりウチ、実力無いのかな・・・」

「そんな事ありませんよ。真紀はとっても頑張ってましたし、調子が悪く無かったら私が何もしなくても入賞出来ていたでしょうし。というより、どうして途中から調子が悪くなったのですか?」

「実はさ、焦華さんに会ったんだよ。」

「そうだったんですか。それじゃあ駄目ですね。」

「えっ?」

「真紀は実力が無いという事ですよ。」

「えっ、どうしたの突然、そんな掌返しして・・・」

「真紀の目標は何ですか?」

「えっ、宮永咲を倒す?」

「それよりも大事な事があるでしょう!」

(一葉、どうしたんだ・・・?)

「えっ、中学の先生達を一生後悔させる事?」

「それよりも大事な事です!」

(えぇ、なんか今日の一葉めんどくさい。どうしちゃったんだよ・・・)

「えっ、じゃあ、焦華さんを倒す事?」

「そうですよ!焦華さんを倒すのが私達の目標のはずなのにも関わらず、焦華さんに会っただけで緊張して他の方々に負けるなんて、それじゃあ焦華さんには一生勝てませんよ!」

「そうだった、ウチ、こんなんじゃ焦華さんに勝てない。」

「そうです。真紀は十分強いんですから自信をお持ちになって下さい。私は、自信満々でいきいきとしている真紀が好きなんですから!」

(あれ?わ、私、今、何という事を言ってしまったのでしょうか!?あわわ、私、真紀の事、す、すすす、好きだなんて。うわぁ!どうしましょう、真紀の顔が見れません!でも、ちょっとだけ・・・うわぁ、耳まで真っ赤にしてる!可愛い!って、そういう問題じゃなくて!)

「あ、あの。」

「ど、どうしたんだよ。」

「い、今言った『好き』は、友達として、ですから。」

「えっ?何言ってんの?そんなの分かってるよ。」

「えっ?あっ、あぁ、そうですよね。はい・・・」

(・・・まったく、突然好きだなんて言われたらびっくりするに決まってるだろ!)

「はぁ、マッキーとかずかずはいつまで二人の世界にいるるんすかね。」

「うむ、まぁ、仲が良いのは良い事だ。」

(去年の桃子さんと加治木先輩もこんな感じだったような気が・・・)

「ちょっ、先輩方!ウチら、そんなんじゃないですから!」

「そ、そうですよ、付き合いが長くて馬が合うところはありますけど、そんな関係ではありませんから。」

「まっ、本人達がそう言ってるなら良いっすけどね。」

「うむ、じゃあ、私達も帰ろうか。」

「うん。」

「はいっす。」

 

 

「マホ、汐見さんに届きませんでした・・・」

「し、仕方無いよ。皆とっても強かったし。」

「でも、宮永先輩は2位通過でしたよね。」

「あぁ、うん、そだね。」

「マホ、悔しいんです。汐見さんを越えられなかったですし、宮永先輩に全然敵わなかったですし、氷華さんに至っては、もう、住む世界が違うって感じでした。マホ、勘違いしていました。敵う訳が無いのに同じレベルにいるって。だから、悔しいんです。壁みたいなもので阻まれてるみたいで、とっても悔しいです・・・」

「マホちゃん・・・」

「大丈夫です。マホちゃんにはまだ来年も再来年もあります。リベンジしましょう。私も、来年は必ず個人戦で勝ちます。」

「和ちゃん・・・」

「和先輩、こんなマホでも、出来るでしょうか。マホなんかが・・・」

「大丈夫だじょ。マホちゃんは十分に強いじぇ。もっと自信を持て!」

「はい、ありがとうございます、片岡先輩!」

すると、まこが何かを思い出したような顔をした。

「ほうじゃほうじゃ、そういえば今年も合同合宿をしようと思っとるんじゃけど、どうする?」

「合同合宿?って、何ですか?」

「団体戦の決勝で戦った4校の合同合宿をするんだよ。うちと龍門渕高校と風越女子と鶴賀学園の4校で。」

「全国大会に備えて、強い相手と戦うんじゃ。」

「成る程、という事は、また氷華さん達と戦えるんですか?」

「うん、そうだよ。個人戦に出る人同士は戦えないけどね。」

「行きたいです!マホ、氷華さん達とまた戦いたいです!」

「ほいじゃ、決まりじゃの。」

「合宿楽しみだじぇ!」

「うん、そうだね!」

 

 

そして1週間後、4校合同合宿が開催された。

「よしっ、去年は一番遅い到着じゃったけど、今回は一番じゃ。」

「そうですね。」

「そんなのどうでもいいような気がするじぇ。」

「ま、まぁまぁ。」

「あら、貴方達、早いわね。」

清澄のメンバーが話していると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「あんた、また来たんか。」

「竹井先輩!また合宿に来てくれたんですね。」

「おっ、風越のお姉さんと鶴賀の3年二人もいるじょ。」

「あれ、でも、もう一人いるよ。ぶちょ、じゃなくて、竹井先輩、あの方は誰なんですか?」

「あー、あの人はね、今年の風越女子の先鋒を勤めていた冬室氷華さんのお姉さんなのよ。」

「初めまして~、冬室氷華の姉の焦華です~。」

(なんか、氷華ちゃんと対照的な感じがするよ・・・)

「全然似てないじぇ。」

「ははは、よく言われるよ~。」

「はぁ、成る程、池田先輩が言ってたビッグゲストって、姉さんの事だったんですね・・・」

「それだけじゃないぞ、去年3年だった四人も駆けつけてくれてるんだ!」

「本当ですね、それは楽しみですね。」

「あっ、風越の人達も来ましたね。」

「氷華、さっきぶり~。」

「姉さん、今日は予定があるからって珍しく早起きして出掛けたと思ったら、こんな事だったんだ。」

「ちょっと氷華の事びっくりさせたくてね~。」

「びっくりというよりはがっかりという気持ちの方が大きい。」

「酷っ、流石にそれは酷いよ~。」

冬室姉妹が話している時、元高三の四人も話をしていた。

「なぁゆみちん、あの人って本当に強いのか?なんだかへらへらしててあんまり強そうに見えないんだけど。」

「蒲原の口からへらへらしてるという言葉が出てくるとは思わなかったな。まぁ、そこは置いといて、冬室の実力は確かだよ。あいつは本物だ。」

「そうですね。あの人はとってもお強いです。風越のメンバーはもう身に染みて分かってると思うけど。」

「皆、驚くだろうな。奴との圧倒的な差に。」

「そうですね。」

 

 

「今日から三日間の合同合宿のご参加、ありがとうございます。この合宿を糧にして、全国でも活躍できるよう頑張りますのでご協力お願いいたします。」

「あの、なんで部長じゃなくて和ちゃんが合宿開始の挨拶をしてるんですか?」

「和は次の新部長じゃけぇのぉ。予行練習みたいなもんじゃ。」

「それって、部長がやりたくないだけなんじゃ・・・」

「やっぱりぶちょーだじぇ。」

「そんな事無いわ。わしはちゃんと後輩の事を思って!」

「言い訳が見苦しいじぇ。」

「染谷先輩、ちゃんと部長の職務は果たしましょうよ。」

「咲まで・・・じゃけどわしだって普段はちゃんと部長として皆をまとめとるじゃろ!」

「えっ・・・咲ちゃん、染谷ぶちょーが皆をまとめてた事ってあったか?」

「うーん、無いかも。」

「うおぉぉい!」

「ちょっと部長、仕事を私に押し付けたのですからせめて静かにして下さい。」

「・・・はい、すみません。」

「まぁ、話は粗方終わりましたけどね。」

「じゃあ私、早速麻雀やりたいな~。」

「姉さん、これは姉さんの為の合宿じゃないんだから。」

「分かってるよ。でも、氷華が戦った先鋒の3人と戦って見たくなったんだよ~。」

「お三方、姉さんと対局して貰ってもよろしいですか?」

「いいじぇ。」

「うむ、問題無い。」

「とりあえず打ちてぇ。」

「はぁ、大丈夫だそうですよ。」

「やった~、やるやる~。」

(3人とも、可哀想に。あの3人じゃ絶対に姉さんには勝てない。せめて夢乃マホと宮永さん、汐見さん辺りじゃないと、相手にすらならないでしょうね。)

「あっ、そうだ!折角だから、10万点持ちでやりたいな~。氷華と同じ状況で戦いたい!」

「まぁ、別にいいけど。」

「うむ、私は構わないです。」

「大丈夫だじぇ。」

「ふふっ、ありがとうございます。じゃあ、始めましょうか。」

 

~場決め結果~

片岡優希:東

井上純:南

津山睦月:西

冬室焦華:北

 

~東一局~ 親:片岡優希

片岡優希 100000

井上純 100000

津山睦月 100000

冬室焦華 100000

~7巡目~

「ツモ。300・500だよ~。」

(やられた。この人も安手、って事は、南一局では満貫を和了られるかもしれねぇな。)

~東二局~ 親:井上純

冬室焦華 101100

井上純 99700

津山睦月 99700

片岡優希 99500

~5巡目~

「リーチだよ~。」

(なっ、リーチ!?安手じゃないのか?まぁ、姉妹で全く同じ打ち方ってのは無いとは思ってたけど、まさかリーチしてくるとは。何を出せば良いんだ。これか?)

「ロン。リーチ一発。2600だよ~。」

(出和了りもしてくるのか!しかも2翻和了り。どういう事だ・・・?)

(なんか、嫌な感じがするじぇ・・・)

~東三局~ 親:津山睦月

冬室焦華 103700

津山睦月 99700

片岡優希 99500

井上純 97100

~4巡目~

「ロン。門前混一で6400だよ~。」

津山睦月が振り込んだ。

(ちょっと待てよ!これ、どんどん打点が、)

(上がっていってる!?)

(咲ちゃんのお姉さんみたいだじょ・・・)

~東四局~ 親:冬室焦華

冬室焦華 110100

片岡優希 99500

井上純 97100

津山睦月 93300

~5巡目~

「ツモ。門前混一ツモ。4000オールだよ~。」

(こいつ、やべぇ!)

(誰かが止めなくては!)

(どんどん打点が高くなっちゃうじょぉ!)

~東四局一本場~ 親:冬室焦華

冬室焦華 122100

片岡優希 95500

井上純 93100

津山睦月 89300

~3巡目~

(こいつに連荘だけはさせねぇ!)

「ポンだ!」

(ノッポが連荘を止めようとしてくれている。ならこっちも手伝うじぇ。)

「ポンだじぇ。」

(私の手番が飛ばされたね~。早くも共同戦線を張ってるね~。)

「ロンだ。1300。」

「はい。」

(よしっ、これで連続和了も止められて打点も下がるはず。いけるじょ!)

(これで安心、この3人はそう思っているんだろうな。ウチもそれにしてやられたよ。この人は、連荘する事で打点が上がる訳じゃない。)

~南一局~ 親:片岡優希

冬室焦華 122100

片岡優希 95500

井上純 94400

津山睦月 88000

~4巡目~

「リーチだよ~。」

(はっ?リーチ?)

(連続和了を止めたからリーチしてこないはずなのに・・・)

(この感じはヤバいじょ・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。3000・6000だよ~。」

(なっ!?)

(打点が!?)

(減ってないじょ!?)

(ふふっ、皆驚いてるね~。誰も連続和了が止まったら打点が下がるなんて言ってないのにね~。)

~南二局~ 親:井上純

冬室焦華 134100

井上純 91400

片岡優希 89500

津山睦月 85000

~5巡目~

「ツモ。タンヤオ清一ツモ。4000・8000だよ~。」

(また打点が上がっている。でもこれ、防げねぇんじゃ意味ねぇじゃねぇか。どうすれば良いんだよ・・・)

(このままじゃヤバいじょ・・・)

(流石は冬室さんの姉だな。全く隙がないのに打点も高い。このままだと、全部持っていかれる。)

~南三局~ 親:津山睦月

冬室焦華 150100

片岡優希 85500

井上純 83400

津山睦月 81000

「リーチだよ~。」

(なっ、この人もダブリーとかしてきやがんのかよ!)

(あーあ、焦華さんの思う通りの展開になってるねー。まぁ、この3人ならしゃーないか。)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ清一。6000・12000だよ~。」

(焦華さん、やっぱり独り舞台になっていますね。真紀がマイナスで負けてしまうような相手ですから当然と言われれば当然かもしれませんが。)

~南四局~ 親:冬室焦華

冬室焦華 174100

片岡優希 79500

井上純 77400

津山睦月 69000

(さあて、次は役満だね~、しかも親の役満だから48000だよ~。ふふっ、楽しみ~。)

 

 

(うわっ、部長の手牌やばっ。これなら焦華さんに一発かませるか?いやでも、この点差じゃ無理か。)

(うわわっ、鶴賀の先鋒の人、配牌が凄すぎるよ、それに・・・)

「リーチだよ~。」

(焦華さんも負けてないか、これは部長と氷華さんのどっちが早いか、見物だな。)

「ポン。」

(せめてずらして遅らせてやる。)

(これを和了れれば・・・)

(残念だね~、津山睦月ちゃん、ツキは私の方に向いていたようだよ。)

「ツモ。リーチ一発ツモ対々で16000オールだよ~。」

「・・・は?」

「はぁ、姉さん、今の、公式戦だったらチョンボだよ。」

「いや~、一回やってみたかったんだよね~。リーチツモ対々って言って四暗刻和了するの。」

「はぁ、これだから姉さんは・・・」

~試合結果~

冬室焦華 222100

片岡優希 63500

井上純 61400

津山睦月 53000

「ねえねえ、そんな事よりさ、津山睦月ちゃんの手牌見せてよ!」

「えっ、う、む、はい。」

焦華が睦月の手牌を公開した。その手牌には、東3枚、南3枚、西3枚、北3枚、そして白が1枚だった。

「うっわー、四暗刻単騎に字一色に大四喜とか、やっばいね~。」

「マジかよ・・・」

「そっちもやばすぎだじぇ・・・」

「それで、誰かが東南西北のどれかを出したとして、それをカンすると~、ほら、白が顔を出しちゃいます~。」

「うわっ、凄すぎだろ・・・」

「ヤバすぎだじぇ・・・」

(えつ、どうしてあの人、何も見てないのに嶺上牌が白だって分かったんだろう。もしかして、私みたいに牌が見えてたりするのかな・・・?)

「あっ、あの、どうして、嶺上牌が白だって分かったんですか?」

「・・・知りたい?」

「は、はい。」

「宮永咲ちゃんさ、対局中に津山睦月ちゃんの手牌を見て驚いていたのは良いんだけど、何故か嶺上牌をチラチラ見てたよね?」

「あっ・・・」

「嶺上開花を連発する宮永咲ちゃんが嶺上牌を見ていたから。これで納得できた?」

「あっ、はい。そうですか。」

(なんだ、別に牌が見えてたりはしないんだ。まぁ、それが普通だけどね。)

咲がそう考えていると、焦華が咲の耳元に近付いて囁いた。

「ごめんね、私は咲ちゃんみたいに牌が見えてたりはしないんだ。」

「わっ!?あっ、はい。そ、そうですか。はぁ、びっくりしました。」

「突然ごめんね~。」

「いえ、大丈夫です。」

「冬室、お前、少しは手加減をしてやれよ。」

「えっ?どうして?だってこの3人は去年もいたから、もし私が長野の麻雀部にいたらこの子達、戦ってたかもしれないよ?」

「そうだけど・・・」

「じゃあ加治木は去年この子達に手加減とかした?」

「そりゃあ、そんな事はしてないが・・・」

「なら大丈夫だよね。私が手加減しなくても。」

「・・・まぁ、そうだな。」

「だよね~。」

(正論を言って自分の意見を無理やり通させようとする感じ、やっぱり焦華さんは変わってないな。)

「まぁまぁ、ゆみもそこら辺にして、これは高校の合宿よ、私達は深入りしちゃいけないわ。」

「そうだな。皆、すまない。」

「いや、加治木先輩は何も悪くないっすよ!」

「モモ、ありがとう。」

「ほいじゃ、そろそろ特打ちじゃ!」

「待ちわびたぞ!衣も焦華と麻雀する~!」

「いいよ~。」

「わーい!」

 

 

3日間の合宿が終わり、鶴賀学園の5人は帰る準備をしていた。

「あれ、真紀がいません!」

「えっ、マッキーさっきまでいたっすよね。」

「うん、いたと思うけど・・・」

「じゃあ、私が探してくる。」

「よろしくっすむっきー先輩。」

「じゃあ、私は荷物整理してるね。」

「じゃあ私達もやるっす。」

「うん。」

「あぁ、真紀、何処に行ってしまったのでしょうか、心配です!どうしましょう東横先輩!真紀が、真紀がぁ!」

「かずかず落ち着くっす、あっ、そうっす!マッキーの可愛い所を教えて下さいっす。」

「真紀の、可愛い所ですか?」

「そうっす、他の事を考えれば気持ちが紛れるっすよ。」

「確かにそうですね。」

「じゃあ、マッキーの可愛い所を教えて下さいっす。」

「そうですね、真紀が恥ずかしい事を言ったりした時に赤くなったりするんですけど、真紀の場合は耳まで真っ赤になって俯くんですよ!それで、とっても可愛らしい声で『は、恥ずい・・・』とか言うんですよ!しかもそれだけじゃなくてですね、その時に真紀の事をからかうと真っ赤な耳がピクッと動くんですよ!それが何とも言えないくらい可愛くて!しかもその後に真紀は大抵『も~、止めろよ一葉~。』って言ってくるんですよ!その声がもうこれまでとは比べ物にならないくらい可愛くてですね、あっ、でもそれだけじゃないんです!あとですね、真紀が中学2年の時のお話なんですけど・・・」

(長い長い長い長い長い長い長いっすよ!このまま聞いてたら日が暮れちゃうっす。何とかしなくては・・・」

「ねぇ桃子さん、これってどうすればいいの?」

(ナイスタイミングっす!かおりん先輩!)

「あぁ、それなら私がやるっす、じゃあちょっと、こっちお願いするっす。」

「えっ、あぁ、うん。分かった。」

「・・・なんですけど、そこが凄く可愛かったんですよ!ってあれ?東横先輩はどちらへ?」

「あっ、えっと、私の方で分からない事があったから変わって貰ったの。」

「あぁ、そうだったんですか。」

(ふぅ、かおりん先輩のお陰でかずかずの暴走を止めることが出来たっすね・・・)

「皆、汐見さん見つけたよ。」

「いやー、すいません。」

「真紀ぃ!何処にいたんですか!心配したんですよ!」

「悪い悪い。」

「じ、じゃあ、荷物もまとめたっすから帰りましょう!急いで!」

「う、うむ、そうだな。」

(モモ、どうかしたのかな?)

「じゃあ、汐見さんも一ノ瀬さんも、お話は車の中でも出来るから。ね?」

「あっ、はい。すみません、急いで乗ります。」

(まぁ、帰りは智美ちゃんが運転するから話どころじゃないかもしれないけどね・・・)

 

 

「鶴賀の人達、なんだかドタバタしてたけど大丈夫かな?」

「きっと大丈夫じゃろ。さっ、わしらも帰るぞ。」

「はい。」

こうして、ドタバタしながら合宿は幕を閉じた。




次回からは第20話の最後に出ていた新キャラのお話になります。どうぞご期待下さい。


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第26話《千里山編①》藤崎心音

舞台は大阪に変わり、時間も4月に戻り、千里山女子高校の話です。


インターミドル個人戦の決勝、その舞台で冬室氷華と対局した二人がいた。その二人の名前は、上野望(うえののぞみ)と藤崎心音(ふじさきここね)だ。この二人はどちらも大阪在住で、高校は千里山女子高等学校に入学した。

「いやー、遂にやって来たな、千里山女子。」

「何ゆうとるんや、入学説明会の時も入試の時もオープンキャンパスの時にも来たやろ。」

「望の方こそ何ゆうとるんや、入学前にここに入ったんは『やって来た』とはちょっとちゃうやろ。」

「何がちゃうねん。」

「じゃあ望はその学校の校門を通ったらそこに入った事になるんか?」

「そりゃあなるやろ。」

「それやったら赤門潜って『東大受かったー!』って言っとる子どもと同じやん。」

「はぁ?どこが一緒やねん。」

「校門通ったらそこに入った事になるゆうてたやん。」

「あぁ、私がゆうてた『入る』はその場所に入るだけで入学とはちゃうわ。って、ウチらは何の話をしとるんや・・・」

「とりあえず、今日は入学式と部活説明会で終わりやな。どの部活見に行く?」

「いやいや、麻雀部以外無いやろ?ウチら、何の推薦で来たと思っとるんや。」

「冗談や冗談。間に受けすぎやろ。」

「いや、心音の言う事、どこまでが本気か分からんねん。」

「ウチは全部分かっとるけどなー。」

「そらそうやろ。って、そんな事どうでもええねん。はよ行かんと入学式から遅刻になるで!」

「望と話してるといつも脱線するな。」

「大体が心音のせいやろ。まるで私が悪いみたいにするんやめい。ほな急ぐで。」

「おー。」

 

 

「そういえば、部活説明会は今日やったけど、仮入部とかは明日からやなかったか?」

「えぇ、ここまで来て帰るんかいな。」

「んー、それもそうやな。ダメ元で行ってみて、ダメやー言われたら帰る。これでええやろ?」

「よっしゃ!ほな部室にレッツゴーや!」

「おー。」

部室に到着し、部室のドアを開いた。

「麻雀部の推薦で来た上野望です。」

「藤崎心音です。」

二人が千里山女子高校麻雀部の部室に入ると、そこには卒業しているはずの園城寺怜、江口セーラ、清水谷竜華の姿があった。

「なんや、今日はまだ仮入部出来んって舟Qがゆうとったから来たのに、二人も来とるやん。」

「あれ、今日は部活説明会だけで仮入部は無い筈ですよ?」

「じゃあなんで二人も来とるんや。」

「あの、すいません、私は止めたんですけどどうしても心音が行くってゆうてたもんですから止められず・・・」

「なっ、望がダメ元で行ってみるかとかゆうたんやん!何で人に罪擦り付けてんねん!」

「まぁまぁ、別にええよ、二人くらいなら新入生がいても。なぁ竜華?」

「怜がええなら構わんよ。」

「俺も問題ないわ。」

「ありがとうございます!」

「ええよええよ。」

「あの、間違いやったら悪いんですけど、もしかして園城寺怜さんですか?」

「まぁ、そうやけど。」

「私、園城寺さんの大ファンなんですよ!握手して下さい。」

「竜華、有名人は辛いな。」

「ははっ、ちゃんとファンサービスせんとな~。」

「せやな。」

怜が手を前に出して望の手を優しく握った。

「うわぁ、嬉しいです!去年のインターハイ注目選手と握手できるやなんて。」

「良かったなー望。」

「うん!」

「それより、貴方は江口セーラさんですよね?」

「お?俺の事も知っとるんか。」

「はい、去年の阿知賀女子の新子憧さんとの名勝負は素晴らしかったです。しかも収支は毎回トップ、尊敬します。」

「そこまで言われると嬉しいわ。」

「なぁなぁ、ウチはウチは?」

「えっ、えっと、確か・・・」

「酷っ、ウチの事知らんの!?去年頑張ったのに~!」

「・・・清水谷竜華さんですよね?」

「えっ、」

「知ってますよ、去年のインターハイでは、2回戦ではトップ、準決勝でも、あの3人相手にプラス収支で終わらせてる、素晴らしい方やとウチは思います。」

「あんた、名前なんて言うんやっけ?」

「心音です、藤崎心音。」

「心音ちゃん、ウチはあんたの事大好きや~!」

「うわっ、ちょっ、突然抱き付かんといて下さいよ。」

「竜華、知ってる人がいただけで浮かれすぎや・・・」

「だってこの子、細かいところまで知っとったよ。嬉しいわ~。」

「ははっ、まぁ、そうですね。」

「そうや!お礼と言ったらなんやけど、ウチらと勝負してみいひん?」

「私達がですか?」

「うん!怜とウチ、そしてあんたら2人合わせて4人で!推薦で来たゆう事はそこそこ出来るんやろ?」

「そこそこ、ですか。ウチら、これでも去年のインターミドル2位と3位なんですよ。そこそこくらいやと思とったら足元すくわれるかもしれへんですよ?」

「へぇ~、ようゆうわ。ウチも言われっぱなしは嫌やな。ここは一つ、レベルの差を教えてやらんとな。」

「怜、無理したらあかんで。」

「分かっとるよ。竜華は心配し過ぎや。」

「怜が無茶するからやん!」

「分かっとる分かっとる。ほなやりましょか。」

「はい。」

「はい!」

「じゃあ、場所決めしよかー。」

 

~場決め結果~

藤崎心音:東

上野望:南

園城寺怜:西

清水谷竜華:北

 

~東一局~ 親:藤崎心音

藤崎心音 25000

上野望 25000

園城寺怜 25000

清水谷竜華 25000

(まずは様子見やな~。望は最初は殆ど怖ないから、園城寺先輩と清水谷先輩がどんな動きするんか見とくか。)

~2巡目~

「ポン。」

(いきなり鳴いてきた。上野望、やったっけ?風牌やないのにそんなに直ぐ鳴くんか・・・)

~4巡目~

「チー。」

(また鳴いた。この子、安うても早う和了るタイプなんやろか?)

~8巡目~

「チー。」

(3副露、あっ、次巡に竜華がタンヤオのみの1000点に振り込みか。まぁ、しゃあないな。協力プレイやないし、残念やけど、1000点くらい竜華なら楽勝やろ・・・)

「ロン、タンヤオのみ、1000点です。」

「おぉ、中々早いね。」

「ありがとうございます。」

(初っぱなから望が和了って来たか、ならウチも動き始めるとするかな!)

(今の和了り、わざわざ鳴かんでも和了れたんとちゃうか?なんでそこまで点を低くして早く和了るんや?親でも無いはずやのに・・・)

~東二局~ 親:上野望

上野望 26000

藤崎心音 25000

園城寺怜 25000

清水谷竜華 24000

~5巡目~

(よし、張ったで、これを和了出来れば心音に善戦出来るはずや。)

「リーチ。」

「ロン。2000。」

「うわっ、心音も張ってたんか。」

「おうよ。」

(二人とも安い手やな、本当にこの二人がインターミドルの2位と3位なんか?これやったら入りたての泉の方が強いわ。)

(早いには早いけど、あと一歩足らんって感じやな。まぁ、一局二局で分かるようなもんでもないか。)

(うーん、折角園城寺先輩もいることやし、ちょいと面白い事でもしよか。)

~東三局~ 親:園城寺怜

藤崎心音 27000

園城寺怜 25000

上野望 24000

清水谷竜華 24000

~6巡目~

(あれ、今、対面がウチの読んだ未来と違う動きをした気が・・・)

「ロン。タンピンドラ1で、3900。」

(染めたり一盃口を付けたり、もっと高く出来るやんか。そこまでして早和了りしたいんか?)

「振り込んだウチが言うのもなんやけど、もうちょっと高くなったんやない?その手。」

「まぁ、そうですけど、早く和了りたいタイプなんですよ。」

「そうか~。」

(もう一枚入るんを待ったら五面張やったから、そっちの方がどちらかというと早く和了れたんやないか?この子、せっかちなんかな?)

~東四局~ 親:清水谷竜華

藤崎心音 30900

園城寺怜 25000

上野望 24000

清水谷竜華 20100

(安手とは言え、早いんは事実や。そろそろ高い手を和了っておくべきやな。)

~10巡目~

(よし、これでリーチすれば次の2萬で跳満ツモや。いける!)

「リーチ。」

(怜がツモ切りリーチ、これは一発やな・・・)

心音がニヤリと笑った。

「ポン。」

(えっ!?一巡先を読んだはずやのに、その時は、ポンなんてしとらんかったのに。どうして・・・)

(なんか、怜の表情が変やな。まさか、心音ちゃんが予想外の動きをしたんか?でも、リーチする時は未来視するはずや。予想外の動きなんて、出来るんか?)

(あーあ、心音、動き始めたか。)

怜が次の牌をツモるが、それは怜の和了り牌では無かった。

(これは、まさか・・・)

「ツモ。北混一。1300・2600。」

(これ、さっきまでは安手やと思とったけど、これは、去年の宮永照と同じやないか。どんどん打点が上がっとるわ。しかも、次はこの子の親。この親は早く流さんといけんな。)

~南一局~ 親:藤崎心音

藤崎心音 37100

上野望 22700

園城寺怜 22700

清水谷竜華 17500

~9巡目~

「リーチ。」

(今回は鳴けへんようやな。これで連続和了を止められるわ・・・ってあれ、さっき見た未来と違う牌を切ってる、まさか!?)

「ロン。7700。」

(なっ、わざわざ待ちを半分以下に減らしてウチの安牌を待ちにして上家に直撃。まるで狙ったかのような和了り、この子、一体何なんや?)

「一本場。」

~南一局一本場~

藤崎心音 44800

園城寺怜 22700

清水谷竜華 17500

上野望 15000

~7巡目~

(また持ってかれる・・・)

「ツモ。4100オール!」

(怜、防げんかったんか・・・)

(あーあ、こりゃあ、心音の独り舞台やな・・・)

「二本場。」

~南一局二本場~ 親:藤崎心音

藤崎心音 57100

園城寺怜 18600

清水谷竜華 13400

上野望 10900

~8巡目~

(よし、次こそやれる。このリーチで対面がポンをしてくるはずやから、その後に来るウチの牌でこの連続和了を止めてみせる!)

「リーチ。」

「・・・」

(!?なんでポンしないんや!?)

(また怜が動揺しとる・・・)

心音が妖しい笑みを浮かべた。そして、徐に左手で卓の角を掴みながら次のツモ牌を掴んだ。その牌は手牌の隣に置き、手牌を公開した。

「ツモ。6200オール。」

(今の、まんま宮永照やないか!?何者なんや、この子は・・・)

「はぁ、心音、何やっとるんや。」

「いやぁ、一回この和了り方してみたかったんや。」

「はぁ、まぁ、私はええけど、先輩もいるんやから少しは考えや。」

「へいへい。」

~南一局三本場~ 親:藤崎心音

藤崎心音 75700

園城寺怜 12400

清水谷竜華 7200

上野望 4700

~5巡目~

(次に望が6ピン出すからそれを和了ればウチの勝ちやな。)

「ロン。3900の三本場で4800。」

「うっわ、キッチリやな。」

「まぁ、ウチの実力やな~。」

(なんやこの子、ウチが何も出来ひんかった・・・)

~試合結果~

藤崎心音 80500

園城寺怜 12400

清水谷竜華 7200

上野望 -100

「さて、種明かしでもしますか。」

「せやな、心音、流石にやり過ぎやったしな。」

「へ?何の事や?」

「まさか、イカサマでもしとったんか?」

「そんな事はしませんよ。ただ、ウチの能力というか、先天性の力というか・・・」

「なんやはっきりせんな、言いたい事があるんやったらはっきりしいや。」

「はい、あの、笑われるかもしれないですけど、ウチ、人の心が読めるんです。園城寺先輩が一巡先を読めるように。」

「なっ、ほんまに!?」

「マジで?」

「はい、だからウチは宮永照さんのように連続和了とかは出来ません。・・・あの、園城寺先輩は納得して下さると思たんですけど。」

「あっ、確かに、ウチが見た未来と違う動きしとったわ。」

「そうです。実は園城寺先輩が見とった一巡先はウチにも見えてました。更に言うと四人全員の手牌も分かってました。」

「マジかいな・・・」

「これがマジなんですよ、怖い事に・・・」

「で、でも、いくら心が読めたとして、3人全員の手牌を覚えるなんて、情報量が多すぎるんとちゃう?」

「そうなんですよ。中2の時まではそれが全然で、それで集中も出来んくて、全く活躍出来とらんかったんですよ。だけど中3になってそれをマスターしたんです。」

「そうやったんか。大変やったんやな。」

「はい、でもマスターしてからは負けなしだったんです。去年の決勝を除いては・・・」

「インターミドルの決勝か?」

「あぁ、それなら知ってますわ。」

怜の後ろに立っていた舟久保浩子が反応した。

「冬室氷華やろ?」

「はい、そうです。」

「あぁ、紹介が遅れとったな、千里山女子麻雀部部長の舟久保浩子です。宜しく。」

「部長さんでしたか。」

「宜しくです。」

「まぁ、それはさておき、冬室氷華は化け物ですよ・・・」

「舟Q、その冬室氷華ってのはそんなにヤバいんか?」

「正直言ってとんでもない化け物ですね。東場は安手で即流して、南場で爆発させるタイプですね。」

「へぇー、去年の清澄高校の先鋒みたいやな。」

「まぁ、タイプとしては似てはいますね。」

「それがヤバいんか?」

「そうですね、冬室氷華は南場での爆発が片岡優希には比べ物になりませんね。冬室は南場になると満貫から倍満までを和了しまくります。」

「なんやそれ、満貫から倍満までって事はそれ以下とかそれ以上は出んのか?」

「そうですね、去年のインターミドルだけのデータだと、満貫より下は全く出してなかったですね。ですが、三倍満は3回、役満は1回出してます。」

「とんだ高火力プレイヤーやな。」

「そうですね。しかも冬室は長野県出身なんですよ・・・」

「えっ、マジで?」

「はい、もし冬室が清澄になんて入りでもしたら、冬室氷華、原村和、宮永咲が同じチームになってしまいますね。」

「うわっ、それは地獄やな・・・」

「まぁ、清澄高校は去年の優勝校ですし、冬室じゃなくてもヤバいのが入るかもしれへんですけどね。」

「結局優勝候補なのは変わらんって事か。」

「そうですね。」

「でも、逆に今年の白糸台高校は宮永照さんと弘世菫さんがおらへんからもしかしたらそこまでじゃないかもしれへんですよ。まぁ、大星淡は健在ですけど。」

「せやなー、じゃあ今回はウチらにもチャンスはあるかもしれへんな。」

「はい、うちにも絶対的エースがいますからね。」

「あぁ、そういえば、まだ来とらんな。」

「そうですね、もしかしたらまた先生に怒られとるんとちゃいます?」

「かもしれへんな。」

怜と舟Qが話していると部室の扉が開かれた。

「あれ、もしかしてあたしの話しとるんですか?」

「はぁ、やっと来たか渚。今まで何しとったんや?」

「いやー、授業中に麻雀の戦略本を読んどったら没収されたんでそれの回収と謝罪に行っとったわ。」

「はぁ、部活熱心なんはええけど、授業はちゃんと受けんと、また補習かかるで?」

「ちゃんと補習にならんくらいにはやっとるわ!・・・って、見かけん二人がおるな。誰や?」

「あぁ、言い忘れとったわ、去年のインターミドル2位と3位の上野望と藤崎心音や。」

「ほう、3年の二階堂渚(にかいどうなぎさ)や、宜しくな。」

「宜しくお願いします。」

「よ、宜しくです。」

「さあて、早速打ちたいんやけど、折角やしそこの二人とやりたいわ。園城寺先輩、清水谷先輩、あたしが入ってもええですか?」

「ええよ、じゃあウチ、ちょっと疲れたから休むわ。」

「ありがとうございます。さぁ新人二人、やろうか!」

「お願いします!」

「はい。」

(なんやこの人、絶対に勝てるって感じの自信が感じられるわ。なんか、冬室氷華と似たような何かを感じる・・・)

(さぁ、始めようか!)

 

 

~小ネタ~

「なぁなぁ、ウチはウチは?」

「えっ、えっと、確か・・・」

(この人、誰だっけ、確か、団体戦に出てたはずなんやけどな・・・)

「酷っ、ウチの事知らんの!?去年頑張ったのに~!」

(ウチ、団体戦でも二回戦じゃトップで、準決勝でもあの3人相手にプラスで終わらせたのに、知られてないんか、ショックやわ・・・)

(成る程、そういえばいたわ。千里山の大将やった人やな。でも、名前がまだ思い出せんわ。他の人の心も読んでみるか。)

(清水谷先輩だけ知られてないなんて可哀想やな・・・)

(竜華だけ知られてないんか。)

(名前は清水谷竜華さんか・・・)

「・・・清水谷竜華さんですよね?」

「えっ、」

「知ってますよ、去年のインターハイでは、2回戦ではトップ、準決勝でも、あの3人相手にプラス収支で終わらせてる、素晴らしい方やとウチは思います。」

(何とか間に合ったわ・・・)

「あんた、名前なんて言うんやっけ?」

「心音です、藤崎心音。」

「心音ちゃん、ウチはあんたの事大好きや~!」

(ははっ、ウチ、何も知らんかったのにこの人に好かれてしまったわ・・・)

(心音、また人の心読んだんか・・・)




千里山編を始めたのは良いのですが、大阪府予選は原作での描写が全く無くて、キャラ等も荒川憩以外全く出てないため、飛ばすと思います。そこをご了承下さい。


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第27話《千里山編②》 二階堂渚

「さぁ、始めようか!」

(この人、一体何なんや?特に凄い能力があるわけでも無いっちゅうのに、この威圧感は・・・)

~場決め結果~

二階堂渚:東

清水谷竜華:南

上野望:西

藤崎心音:北

~東一局~ 親:二階堂渚

二階堂渚 25000

清水谷竜華 25000

上野望 25000

藤崎心音 25000

(今日あたしがここに入った時、さっきの対局の結果が見えたけど、この藤崎心音とか言うの、あの園城寺先輩にあれだけの差を付けて勝っとる。園城寺先輩よりもはるかに強いんか、園城寺先輩にとって不利な能力みたいなもんを持っとるかのどっちかやな。まぁ、前者はまず無いか。でも、いくら不利な相手やとしても園城寺先輩があそこまで負けるっちゅう事は、こいつもそれなりには強いっちゅう事か。)

(ふっ、全部筒抜けなんやけどなぁ・・・別にウチをどう思ってくれてもええですけどね。でもまぁ、ウチは園城寺先輩が居なくても強いっちゅう事を見せたりますよ!)

~7巡目~

「ロン、三色ドラ1で5200です。」

(ほう、36ピン待ちを捨てて北単騎か、張ってたんは気付いてたんやけどな、まさかあたしが単騎に振り込むとはな。よし、気ぃ引き締めてこ!)

(心音ちゃん、今のはやっぱり渚を狙ったんやろな・・・)

(そうですよ清水谷先輩、二階堂先輩からは、何か嫌な予感がしますからね・・・)

~東二局~ 親:清水谷竜華

藤崎心音 30200

清水谷竜華 25000

上野望 25000

二階堂渚 19800

(あたしはラスが嫌いなんや、ここは和了らせてもらうで!)

(二階堂先輩がタンピン三色一盃口聴牌か。ってか、三色一盃口とか、珍しいな。しかし、低目の1索は抑えとるけど、高目の4索は望が持っとる。しかもよりによって余剰牌やしな。望は危険牌とか気にせずに自分の和了りを目指すタイプやからこりゃあ振り込むやろな。はぁ、しゃあないな・・・)

「ポン。」

(とりあえず望のツモ番を飛ばせば和了られんで済むやろ。今局は確実に流すで!)

(この上家、また何か企んどるな・・・)

(次に清水谷先輩に有効牌が入ったら4萬を出してくるはずや。それやったら鳴ける!)

(よしっ、張ったで。)

「ポン。」

(よし、何とか望に回さず聴牌出来たわ。これを和了って流す。)

(成る程、上家は他家の手牌が何故か分かるんかな?こいつの動きからして、対面があたしの和了り牌持っとるんかな。でも残念な事に、あんたが鳴いてくれたお陰で山にある4索があたしの所に来てくれたで。)

「ツモ。3000・6000。」

(手の内がバレた上に和了られた!?これは結構ヤバいな・・・)

(心音がおる卓で心音以外の人が跳満和了るん見たの冬室氷華以来やな。やっぱり千里山のエース、強いな。)

~東三局~ 親:上野望

二階堂渚 31800

藤崎心音 27200

上野望 22000

清水谷竜華 17000

~7巡目~

(また望が二階堂先輩に和了られそうになっとるわ。でもウチのこの手牌じゃ鳴く事も出来ひん。まぁ、安目やから勘弁してや。)

「ロン、タンピンドラ2。7700や。」

「はい。」

(はぁ、高目三色来るんを待っといた方が良かったか?やっすい手で和了ってしもたわ。)

(7700が安手!?思考がイカれとるわ!まったく、これやから高火力プレイヤーは嫌やねん。)

~東四局~ 親:藤崎心音

二階堂渚 39500

藤崎心音 27200

清水谷竜華 19000

上野望 14300

(このままやられるがままなのは癪やな。それにウチは、冬室氷華にリベンジする時まで誰にも負けんって決めたんや!こんな所で負けてられへん!)

(心音、目が本気に、ふっ、冬室との対局以来やない?その本気の表情。)

(ふっ、そうやな。それくらい二階堂先輩が難敵って事や。やったる!)

~8巡目~

(よし、張ったで。)

「リーチ!」

「チー。」

(二階堂先輩が鳴いてきた。一発消し?でもちゃんと聴牌しとる。けど、ここはウチが和了ったる!)

「ツモ!リーチツモ平和一盃口。2600オール!」

(おぉ、なかなかやるやん。やっぱり、こいつはつまらんくないな。)

(千里山のエース様にお褒め頂くとは、光栄ですわ。)

~東四局一本場~ 親:藤崎心音

二階堂渚 36900

藤崎心音 35000

清水谷竜華 16400

上野望 11700

~11巡目~

「リーチ。」

(二階堂先輩が14索待ちでリーチか。ならこの7ピンを処理しておくか。)

「それや、ロン!」

(えっ、14索やないの!?あっ、そうか。23444の形は14の二面ともとれるけど双ポン待ちにもとれるんや!なんでそれに気付けへんかったんやウチは!)

(心音が放銃!?どういう事や?心音が放銃なんて、何年ぶりやろか・・・)

「12300。ちょっと集中力切れてんとちゃうの?相手の手牌分かっとるのに放銃とか、そんな恥ずい事無いで?」

「そう、ですね・・・」

(この人、なんで心音が相手の手牌を分かっとるのを知っとるんや!?)

(やっぱり渚は凄いわ、相手の弱点を瞬時に見極めてそこを突いてくる。1年前から急激に成長したな。)

(1年前?そういやこの人、去年は団体戦メンバー入りしとらんかったな。何かあったんやろか?って、そんな事より今は試合に集中や!)

~南一局~ 親:二階堂渚

二階堂渚 49200

藤崎心音 22700

清水谷竜華 16400

上野望 11700

(二階堂先輩の親番、気ぃ付けとかんとやられるわ。)

(おっ、染められそうやな。染めてくか。)

(二階堂先輩は筒子の染め手か。筒子だけに筒抜けですよ?とりあえず索子と萬子のタンヤオ辺りで良いかな?)

「チー。」

(よしっ、一向聴や。これなら行けるわ!)

~6巡目~

「ロンです。タンヤオ三色ドラ2、8000です。」

「わぉ、結構高い染め手が出来とったのに。」

「それだから鳴いて早和了りしたんやないですか。」

「そうか。せやけど、8000程度じゃあたしとの点差は埋まらんで?」

「大丈夫です。次も和了りますから。」

「そうか。」

(心音と二階堂先輩がお互いを分かり合ってるようなこの感じは何なんや・・・)

~南二局~ 親:清水谷竜華

二階堂渚 41200

藤崎心音 30700

清水谷竜華 16400

上野望 11700

(望の7索をチーして二階堂先輩の2ピンをポンすれば聴牌やな。この局も行かせて貰いますよ!)

~3巡目~

「チー。」

(よしっ、一向聴や。二階堂先輩がだしてくれればいけるで!)

(心音が来とる?ならこっちも攻める!)

「ポンです。」

(望の奴、鳴いたって無理やで。どうせウチが和了るからな!)

~9巡目~

「チーです。」

(望、聴牌したんか。それに、二階堂先輩が当たり牌持っとるわ。これは二階堂先輩が振り込むな・・・)

「ロンです。タンヤオのみ。1000点です。」

(しかし、この1年生二人はインターミドルで2位と3位やって言っとったけど、こっちはパッとせえへんな。そんなに凄いんか?って、こいつさっきまで切羽詰まった顔しとったのに、なんでこんなに余裕そうな顔しとるんや?和了れたからか?それとも・・・)

~南三局~ 親:上野望

二階堂渚 40200

藤崎心音 30700

清水谷竜華 16400

上野望 12700

~5巡目~

「リーチです。」

「っ、チー!」

(なんやこいつ、さっきまで鳴いてばっかやったのに、リーチしてきよった。これは何かありそうやな・・・)

「ツモです。リーチツモタンヤオ平和三色ドラ1。6000オールです。」

(なっ、親跳!?やっぱりこいつもそれなりにやるようやな。)

(望に連荘させるのはかなりまずい!次にこいつを防げんと本気でヤバイで!)

~南三局一本場~ 親:上野望

二階堂渚 34200

上野望30700

藤崎心音 24700

清水谷竜華 10400

~4巡目~

「リーチです。」

「ロンや、8300。」

(なっ、二階堂先輩!?もう聴牌しとったんですか!?)

(悪いけど、あたしは1対1の勝負が好きやねん。勝負中に横槍入れられるんは耐えられんのや!)

(二階堂先輩すげー、望のカウントダウンを鳴かずに止めるやなんて。しかもカウントダウン4を。)

~南四局~ 親:藤崎心音

二階堂渚 42500

藤崎心音 24700

上野望 22400

清水谷竜華 10400

(ウチの親番、二階堂先輩に9600以上を直撃するか跳満以上を和了るかしかない。でも、ウチにそれが出来るやろか・・・)

(はぁ、連荘が終わったわ。もう私の勝ち目は無いからオリやわ。心音、せめてあんたは二階堂先輩に勝ちや!)

(んなもん分かっとるわ、こんな所で負けてられへんのや!無理してでも勝ってみせるわ!)

~7巡目~

「カン!」

(2ピンをカン?何する気や心音。カンドラか?)

(いや、カンドラは大丈夫、これで二階堂先輩から高目一通を和了れればリーチ一通で9600、ウチの勝ちや!それに9萬は二階堂先輩持っとらんし、タンヤオ三色作っとるつもりなんやろうけど、まだまだ遅いわ。この勝負、もろたで!)

「リーチ!」

(この巡目でリーチ?カンドラが乗ってへんから直撃狙いやろな。なら・・・)

(おっ、9萬が二階堂先輩に入った!よっしゃっ!ってあれ?三色を捨ててオリた?まぁ、しゃーないか。9萬は余剰牌やしいけるやろ。)

~13巡目~

(この人、どんどん萬子を取り入れて清一を聴牌しやがった。でも9萬は3枚、9萬が入ればツモ切りするやろ。でも、それやったらリーチしないんは変やな・・・まさか!?)

「カンや。」

(9萬をカン!?暗カンやからチャンカンも出来ひん。これが狙いやったのか・・・)

(心音、なんか『終わった・・・』って感じの顔しとるわ。こりゃあ、あらかたさっきの9萬が当たり牌なんやろなー。ドンマイやな。)

(そのドンマイだけやったら良かったけど、二階堂先輩の当たり牌掴まされた・・・)

「ロンや!清一ドラドラ、16000や!よっしゃっ!あたしの勝ちや~!」

(終わった・・・)

「ウチの・・・完敗です。」

「いやいや、あんためっちゃ強かったで。あたしにあそこまで本気出させたんは久しぶりや。楽しかったで。」

「そうですか、ありがとうございました。」

~試合結果~

二階堂渚 58500

上野望 22400

清水谷竜華 10400

藤崎心音 8700

 

 

「いやー、まさかあの状態から清一に持っていかれるとは思わんかったです。」

「そうやな、あたしもあそこまで乗ってくれるとは思わんかったわ。」

「それより、あの状態でどうして9萬を残したんです?」

「あー、あれか。あたしな、後半になると何となくやけど相手の待ちが分かるねん。」

「そうなんですか。」

(それやからウチの当たり牌を抑えとったんか・・・)

二人が会話をしていると後ろから声を掛けられた。

「それより、私的には渚が楽しいってゆうた事に驚いとるわ。」

「舟Qか、別に珍しい事でも無いやん。」

「いやいや、あんた今年に入ってから強くなり過ぎて他の人が弱すぎて『詰まらん詰まらん』って言っとるし、去年だって先輩方が強くて詰まらんって言っとったし、あんたが楽しいって言ったのなんか殆ど聞いた事あらへんかもしれんわ。」

「確かに、言われてみればそうかもしれんわ。」

「あの、さっきから引っ掛かっとったんですけど、1年前に二階堂先輩って何かあったんですか?」

「あー、まぁ、1年前のあたしは相当調子に乗っとったんや。今みたいに強い訳でも無いのに。」

「今は強いって自分で言うんか・・・まぁええけど、去年のインターハイ前のメンバー発表で渚は選ばれんかったんや。副将希望やったんやけど、渚の代わりに私が入ったんや。」

「あー、そういやそうやったな。」

「園城寺先輩、起きとったんですか。」

「うん、そういえば、あの時の渚は『舟Qを入れたのは身内贔屓やろ!』って監督にめっちゃキレとったな。」

「そうですね、去年のあたしは自信過剰で自惚れが過ぎましたね。」

「それは今も変わっとらんやん。」

「まぁ、そうですけど実力は確かなものにしましたよ?」

「ま、そやけどな。」

「えっと、その後は何があって今の二階堂先輩になっとるんですか?」

「その後、渚はインターハイで舟Qの戦略を目の当たりにしたんや。相手の隙を突いてくる麻雀を。」

「それで、あたしに実力が無い事に気付き、猛練習して今に至るって訳や。」

「成る程、それでこんなに強いんですね。」

「そうやな、じゃああたしの話をしたから今度はあんたの話や。」

渚が望の方に指を指した。

「えっ、私、ですか?」

「そや。あんた、なんかあるやろ?さっきの連荘、あれはどういう能力なんや?」

「そうですね、簡単に言うとカウントダウンですね。」

「・・・は?」

「ひぃ!」

(二階堂先輩、怖い・・・)

「あー、ウチが説明します。望はですね、最初の配牌は絶対に6向聴なんですよ。」

「はっ?マジ?」

「はい、それで、その6向聴の手を和了ると次の配牌は5向聴になるんです。更にそこからは有効牌しか引かなくなります。でも、連続和了してる途中で他の人が和了ったりするとまた6向聴に逆戻りするんですよ。当然有効牌も人並みに戻ります。」

「要するに、1度和了ると誰かが止めん限り有効牌しか引かなくなり尚且つ和了れば配牌がだんだん良くなるっちゅう訳か。」

「そうですね。」

「ん?ちょっと待て、という事は、六連続和了したらどうなるんや・・・?」

「その後は天和を和了し続けます。まぁ、25000やとその前に飛んだりして天和を和了する事はあんまり無いですけどね。」

「マジかいな・・・チート過ぎやん。」

「そうですね、でも、さっきみたいに途中で止められたり相手が即効やったりしたら焼き鳥で終わる事もありますけど、一回和了ると3人飛ばしとかしたりもするんですよ。だから望は結構ピンキリなんですよね。」

「成る程、って事は、一回和了れればええんやな?」

「そういう事になりますね。」

「分かったわ。望ってゆうたか?」

「はいっ!何でしょう。」

「今からインターハイまでにあたしが早和了りの特訓をしたるわ。それで望はその早和了りでカウントダウンを使うんや。カウントダウンが出来れば、少なくともマイナスにはならへんやろ。」

「確かに、園城寺先輩みたいにリーチ一発ツモも出来ますしね。早和了りが上手くいかない事を考えて、先鋒辺りがええんとちゃうか?」

「よし、ならあたしが望を最強の先鋒にしたるわ!今日から特訓や!」

「は、はい!頑張ります!」

「それと、もう一人のあんたの名前は?」

「藤崎心音です。」

「じゃあ心音、あんたもまだ少し穴があるからそこを埋めるで。」

「はい、分かりました!」

「よし、あんたら二人をインターハイまでに最強にするわ!」

 

 

「渚、なんか楽しそうやな。」

「そうやな、でも、千里山で二人も1年生なんて、ええんかいな?」

「大丈夫ですよ清水谷先輩。あの二人よりも強いのはうちの高校にはいませんから。」

「そうか。」

「はい。」

「なら、ウチらは帰るわ。」

「わざわざ来て貰ってありがとうございます。」

「いや、楽しかったからええよ。」

「そやね、じゃあ、また来るわ。」

「はい。」

「・・・」

「あれ、江口先輩はまだ残っとるんですか?」

「・・・俺、今日なんもしてねぇぇぇぇ!!!!!」

「五月蝿いんで帰って下さいよ。」

「うっさいわ舟Q!まぁええわ。次来た時は渚も心音も望も全員倒したるわ!」

「はいはーい、さようならー。」

「あぁ、もう、押すなや!」

 

 

「はぁ、じゃあ、私達も帰るか。」

「はい、今日は本当にありがとうございました!」

「ありがとうございました。」

「あぁ、明日からは本格的に活動やからな。」

「はい、頑張ります。」

「よし、じゃあ解散や。」

3年に続き、片付けをした後に他のメンバーも帰った。




上野望は、天和出来る能力を作りたくて、それには難しい条件が必要だろうと思い、今の能力に落ち着きました。結局和了れれば作中最強なんじゃないかとも思えてしまうようなキャラになってしまいました。やっぱり天和出来る能力の時点でもうチートですね。


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第28話《千里山編③》会議

心音と望が入部して、インターハイの北大阪予選が近付いていた。千里山女子のメンバーは集まって会議を行っていた。

「では、インターハイのメンバーを決めたいと思います。まずは先鋒、これは望で宜しいでしょうか?」

「異議なしです。」

「望も大分強なったからな、先鋒でも十分戦える筈や。」

「は、はい、頑張ります!」

「えっと、残りの四人は、渚、私、泉、心音にするつもりなんですけど、順番をどうすればええやろか。」

「あの、ちょっとええですか?」

「うん?どうしたんや?望。」

「えっと、私がもし和了れんかった時の為に、次鋒か中堅を二階堂先輩にするんはどうでしょうか?」

「ほほう、成る程な、ならあたしは中堅やな。そして、泉は去年と同様に次鋒でどうや?」

「舟久保先輩がええなら私はそれでええです。」

「まぁ、ええよ。じゃあ、望と泉と渚で点数を稼いで私と心音でその点数を押さえるか引き離す。じゃあ心音はなにかと便利やから大将の化け物達を抑える係やな。」

「なにかと便利って、ウチは物ですか・・・」

「舟Qの言うとおりやな、心音はまず振り込まへんからな。そう考えると大将なんは必然みたいなもんやな。」

「いやー、でも二階堂先輩が多分三校を突き放すからウチいなくても行けそうですけどね。」

「何言っとるんや、あたしかて調子が悪い時があるかもしれへんし、それに望と泉の負債を回収せなあかんのやろ?抑えは必要やん。」

「ウチらはマイナス前提ですか・・・」

「泉はともかく望は厳しいやろな。セオリー的にも先鋒に強いんを置くからな。」

「確かにそうですね。私、先鋒なんかでええんやろか・・・」

「そんな自信の無い望に悪いニュースを一つ教えたるわ。」

「は?なんや心音。」

「多分やけど府大会の決勝で去年個人戦3位だった荒川憩さんが出てくるで~。」

「・・・マジで?」

「知らんかったんか?マジやで。荒川憩率いる三箇牧は北大阪の壁って言われとるんや。」

「多分それ言っとるの、千里山の人達だけですよ、二階堂先輩・・・」

「でも、三箇牧にとっては千里山が北大阪の壁やって思われとるやろうから渚の言っとる事も強ち間違っとらんと思うで?」

「ほら泉、舟Qもこう言っとるやん!」

「でも、三箇牧を北大阪の壁やって言っとるのは千里山だけですよ。」

「北大阪の壁って言葉を使っとるんは三箇牧もやんか!」

「三箇牧も北大阪の壁って言い方しとるとは限らんやないですか!って、ウチらは何の話をしとるんですか・・・」

「そうやな、舟Qごめん、話戻してええで。」

「あぁ、もうええか。えっと、三箇牧の荒川憩が大暴れするんはほぼ確定やから望には悪いけど先鋒は捨てます。」

「私、捨てゴマ・・・」

「いや、三箇牧以外では期待しとるから大丈夫やで?」

「フォローありがとうございます・・・」

「実際、あたしが望を最強の先鋒になるように育てたんやから三箇牧以外の試合はプラス終了してもらわんと困るで?」

「育てたって、二階堂先輩と心音と江口先輩の3人で私を滅多打ちにするだけや無いですか。その3人相手に10万点持ちの一荘戦を1日3回とか、スパルタにも程がありますよ!」

「それくらいせんと、全国の先鋒相手にならんやろ。」

「いや、一荘戦やる事に関しては別にええんですけど、3人とも私に集中放火しとったやないですか!特に心音!」

「あぁ、それ、あたしの指示やで?」

「えっ?二階堂先輩の指示?どういう事ですか?」

「この一荘戦は望だけやなく心音も特訓しとったっちゅうわけや。具体的に言うと、心音は大将やから必ずと言ってええほど点が低いチームが出てくる。そこを確実に落とす特訓をさせとったんや。それやから望を一方的に狙っとったんや。望の特訓にもなって一石二鳥やしな!」

「そんなぁ!」

「まぁまぁ、先輩達もウチらの事を思ってやってくれてる事やん。」

「そんなん分かっとるわ!というか、心音は結構楽そうでええな。私なんて地獄やで。」

「いや、多分ウチは望よりも酷くて理不尽な特訓をやってるで・・・」

「はぁ?なんやそれ、対局中は心音は私を狙うだけで楽やん!」

「対局中はな・・・」

「どういう事や?」

「最近、二階堂先輩と居残っとる日があったやろ?」

「おぉ、そういやあったな。でも、それとこれとで何が関係しとるんや?」

「実はな、ウチ以外の誰かが跳満以上を和了ったら居残りで罰ゲームさせられとったんや・・・」

「罰ゲーム?なんやそれ、モノマネとかか?」

「そんなんは可愛い方やで、一番キツかったんは二階堂先輩の『おもろい事言え』って罰ゲームや。二階堂先輩、どんな事しても詰まらんとしか言わへんし、先輩の心の中読んで一番面白いのやっても『全然出来とらん』とか言われて、結局それだけで30分くらいさせられたんや・・・」

「それは、御愁傷様やな・・・」

「そやかて、ほんまに詰まらんかったんやからしゃーないやろ。」

「だったらおもろい事言えなんて言わんといて下さいよ。」

「んな事言われても、一日中詰まらんかったからしゃーないやろ。高い手和了ろうとするとお前が流してくるせいで全然おもろなかったし。」

「先輩の指示やないですか!」

「そういえば、先輩達が和了って裏ドラ見る時に、妙に心音が焦ってたんはそれでか。」

「なぁ、そろそろ話を戻してええか?」

舟Qが呆れた顔で心音達を見ていた。

「あぁ!すいません、続きをお願いします。」

「まぁ、続きと言ってもほぼほぼ終わりですけど。とりあえず今は三箇牧を倒して予選突破する事が大切です。荒川憩は厳しいですが、何とか渚までには逆転しておきたいですね。」

「まぁ、確かにあたしが逆転出来ひんかったらちょっと厳しいやろな。」

「そうやな、じゃあ、これでミーティングは終わりです。」

「お疲れさん。」

「お疲れ様です。」

「さて、じゃあ練習再開や!」

「「「はい!」」」

 

 

 

北大阪大会が行われ、その大会で千里山女子は見事全国出場の権利を得た。それから数日後、全国大会の為のミーティングを行っていた。

「いやぁしかし、決勝で荒川憩が184700点で次鋒に回した時は流石に焦ったわ。」

「それに、望にばっかり直撃してましたよね。」

「そやそや、先鋒で飛ばされるんやないかって思たで。」

「そんなにひやひやしてんのに中堅戦では逆転しとるって、どんだけですか・・・」

「そりゃあ、三箇牧は荒川憩以降はそこまででもないっちゅう事やろ?あの泉が+47300やで?」

「二階堂先輩、『あの泉』とか言わんといてくれませんか?私、これでも頑張っとるんですよ・・・」

「確かに泉は頑張っとるな。ま、あたしは泉の2倍以上取っとるけどなー。」

「ほんっとうに二階堂先輩って性格悪いですよね。」

「事実を言っとるだけやん。それに、悔しいならあたしみたいに強うなりゃええだけや。」

「ほらほら渚、そこら辺にしとき。さて、都道府県予選が終わり、今年のインターハイのメンバーの情報も集めましたんで、今回注意する所を話していきたいと思います。まず、昨日の抽選の結果は正直最悪です。」

「一回戦は問題あらへんけど、二回戦から清澄と永水やからな。」

「ええ、酷い所を引いてしまい、ほんまにすんません。」

「まあまあ、いずれは当たるところやないですか。しゃーないですよ。」

「そうですね、じゃあまず、今年気を付けなあかんチームから、まずは清澄高校、永水女子高校、臨海女子高校、姫松高校、有珠山高校、白糸台高校、阿知賀女子高校。こんな所でしょうか。」

「とりあえず、あたしらのブロックには清澄と永水、臨海がおるな。」

「はい、その中でも一番気を付けなあかんとこは、やっぱり清澄高校ですね。」

「やっぱり宮永咲か?」

「はい、彼女は清澄でも最も注意しなくてはならない存在です。でももう一人います。それは、中堅の夢乃マホです。」

「中堅?中堅やったら二階堂先輩やから安心やないですか。」

「案外、そうも言ってられんかもしれへん。夢乃マホは、団体戦の決勝にして、+25万点で中堅を終わらせてます。」

「+25万!?マジですか?」

「でも、珍しいな、舟Qならもっと正確な数字言うはずやのに25万って。」

「いや、夢乃マホは、ぴったり25万点のプラスなんですよ。」

「なっ!?」

「マジで?」

「因みに冬室氷華も清澄ではあらへんけど決勝に先鋒として出ていて、+214500で終わらせてます。」

「うわっ、流石冬室やな・・・」

「でも、清澄の中堅は冬室よりも稼いでますね。」

「それくらい夢乃マホが危険やって事ですよ。」

「因みにそいつは、どんな打ち方なんや?」

「夢乃マホは、簡単に言うと、コピーですね。」

「コピー?人と似たような打ち方するっちゅう事か?」

「せやな、でも、ただ人の真似をする訳や無い。手牌もその真似した奴と同じかそれ以上になっとる。」

「手牌?どういう事や?」

「例えば、大星淡はダブリーしてカンしてダブリードラ4の跳満で和了するけど、夢乃マホはダブリーツモ清一ドラ4の役満を和了しとります。」

「マジかいな。」

「でも、その夢乃マホよりも宮永咲さんの方がヤバいんですか?」

「そうや、宮永咲は、最後の南二局と南三局と南四局で3回役満を和了しとる。しかも、南二局は嶺上開花清一ドラ8の14飜、南三局はリーチツモ嶺上開花ドラ16の19飜、南四局はリーチ一発ドラ16の18飜と、飜数を大分オーバーしての役満や。」

「・・・マジかいな。」

「でも、それだけや無いんや。」

「まだ何かあるんですか!?」

「大将戦の開始時の点数は?」

「200800ですね。」

「開始時の点数が既にヤバいな・・・」

「じゃあ、大将戦終了時の点数は?」

「あっ!200800です・・・」

「はぁ!?マジかいな!」

「これは故意にやったかどうかは分からんけど、奴は去年の長野の個人戦で連続でプラマイゼロをしとる。もしかしたら、あの天江衣が宮永咲に弄ばれてた可能性があるって事や。」

「清澄、ヤバいな・・・」

「ウチ、点数守れるやろか・・・」

「こりゃあ、二位抜け狙いになるかもしれへんですね・・・」

「・・・まぁ、清澄ばっかり警戒して、二位にもなれんかったら意味無いからな。二回戦は永水を倒す事やな。」

「今年の永水はどうなんや?確か、去年のメンバーは3人減っとるよな?」

「永水は六女仙が二人メンバー入りしています。六女仙じゃない奴は、先鋒をしています。」

「先鋒?先鋒は神代やないんか?」

「今年、神代は大将をやっとる。私までに永水との点差を広げて、心音が神代の高い手を阻止出来れば勝機は十分や。」

「なら、神代に回さずに副将までに永水を潰せばええやん。」

「因みにやけど、永水の先鋒は、鹿児島大会で常に+50000以上で次鋒に回しとる。六女仙やないからって甘く見てると、やられるかもしれへんで。」

「永水の先鋒は何者なんや?」

「早乙女友理奈と言って、鹿児島のインターミドルの個人戦で、三年連続二位だった人です。」

「二位?一位やなくて?」

「ええ、二位と言っても、実力は折り紙つき。侮っとったらやられるで。」

「成る程。」

「望、気を付けや。」

「はい!」

 

 

~長野県四校合同合宿~

 

 

「冬室焦華さん、凄かったじぇ・・・」

「ねぇ真紀ちゃん、氷華ちゃんのお姉さん凄かったけど、あの人って何者なの?」

咲が焦華と対局した事のある真紀に尋ねた。

「焦華さんは、だんだん火力が上がっていくんですよ。東一局では1飜、東二局では2飜、東三局では3飜、東四局では満貫、南一局では跳満、南二局では倍満、南三局では三倍満、南四局では役満を和了るんです。」

「なんか、凄いね。」

「おぉ、真紀ちゃん良く覚えてるね。私の燃焼の事。」

(燃焼・・・焦華さんは燃焼で氷華さんは凍結。姉が火で妹は氷なのね。対局したらどっちが強いのかしら・・・)

「忘れるわけありませんよ、あの時の事は。」

「あ!そういえばさ~、あの頃真紀ちゃん達と一緒に対局したお友達の早乙女友理奈ちゃん。あの子、永水女子の先鋒やってるらしいよ~。」

「えっ!?」

「それ、本当ですか!?」

「そうだけど・・・」

真紀と一葉は、焦華が少し引く程驚いていた。

「一葉、友理奈の携帯番号持ってる?」

「確か、電話帳に登録されていたはずです。電話しましょうか。」

「友理奈と話すの、実に4年ぶりだな。」

「そうですね。」

prrrrr

『もしもし?』

「もしもし、友理奈?」

『・・・もしかして、一葉?』

「はい!お久しぶりです。」

『おぉ!久しぶり!元気してた?』

「はい!」

『一葉が元気って事は真紀も元気なんだな。』

「そ、そうですけど、どういう意味ですかそれ!」

『ははは、何でもないよ。』

「あ、それより友理奈、あの永水女子の先鋒になったらしいじゃないですか。凄いですね!」

『あぁ、お陰様で、そっちは麻雀まだやってるの?』

「はい、残念ながら清澄というところに負けてしまいましたけど、真紀は個人戦で全国へ行きますよ。」

『真紀と一葉がいても勝てなかったんだ、流石昨年の優勝校だな。』

「はい、残念ですけど、清澄の方々はとてもお強かったです。」

『一葉は相変わらず丁寧口調だな。まぁ、それはいいとして、私も個人戦に出るよ。真紀とまた戦う為に頑張るって伝えといて。』

「はい、分かりました。」

『じゃあ私、ちょっと部活中だったから、じゃね。』

「はい。」

一葉が通話終了のボタンを押した。

「友理奈、なんて?」

「永水女子の先鋒、そして個人戦でも全国出場したらしいです。個人戦で真紀と戦う為に頑張るって言ってました。」

「そうか、じゃあウチも頑張らないとな!」

「はい!頑張りましょう!」

 

 

一葉と真紀が話している時、焦華が咲に話し掛けた。

「宮永咲ちゃん、ちょっといいかな?」

「えっ、はい、何でしょうか?」

「間違ってたら悪いんだけど、咲ちゃん、お姉さんとかいる?」

「はい・・・います。」

「それって、宮永照?」

「そう、ですね。」

「ふふっ、凄い因果関係だね。私が宮永照に負けて、氷華が咲ちゃんに負けるなんて。じゃあ私と咲ちゃんが戦ったらどっちが強いんだろうね?」

「あっ、えっと、じゃあ、よろしくお願いします。」

「そうだね~、じゃあ一葉ちゃんと夢乃マホちゃんとでやろうか。」

「分かりました。」

「よろしくお願いいたします焦華さん。」

「本当は真紀ちゃんと氷華としたいんだけどね~。」

「ウチも焦華さんとまた戦いたいですね。」

「うん、また後でね~。」

そして、咲、焦華、一葉、マホの対局が行われ、1日が終わった。

 




千里山編なのに本編の話をしてしまいました・・・書き忘れてた訳では無い、はずです・・・
咲と焦華の対局はどちらを勝たせたらいいのか分からなかったので、対局の描写と結果は書きません。
焦華の能力を書きましたが、氷華と焦華はどちらが強いのでしょうか・・・?(設定では焦華の方が強いですが)どっちが強いか意見がありましたらコメントお願いします。


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第29話《千里山編④》 開幕

全国高校生麻雀大会(インターハイ)の全国大会が遂に始まります!


インターハイの開会式が行われ、千里山女子の一回戦が始まろうとしていた。

「さて望、準備しいや。」

「はい。」

「頑張れ~。」

「まぁ、初戦やから力抜いてな。」

「はい、頑張ります!」

(そういえば、望のメンバー入りが決まった時に結構な人数の人達が心の中で反対しとったな。一年生やし望の能力的に他の先輩方とかに負けとったから反対されんのも納得かもしれん。でも、反対してた先輩方に見せつけてやれ!上野望の本当の実力を!)

 

 

(はぁ、全国の舞台、緊張するわ・・・今から地方大会を勝ち抜いてきた強豪のエース達と対局するんやな。インターミドルでも全国には行ったのに緊張感が全然ちゃうわ。この緊張感に飲まれんようにせんとな。)

望が席に着くと、対戦校の館山商業、苅安賀高校、萌間高校の先鋒が対局室に入ってきた。

「よろしくお願いします。」

「よろしくです。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく。」

(千里山女子、今年は先鋒と大将を一年生に任せている。あの園城寺怜と江口セーラの穴はやはり大きいのかもしれないわね。これは、まさかの千里山女子が一回戦で敗退って事もあるかもしれないわね。)

~場決め結果~

館山商業:東

千里山女子:南

苅安賀高校:西

萌間高校:北

 

~東一局~ 親:館山商業

館山 100000

千里山 100000

苅安賀 100000

萌間 100000

『さぁ、戦いの火蓋が落とされました。実況は私、針生えり、解説は三尋木咏プロでお送り致します。三尋木プロ、よろしくお願いします。』

『よろしくねぇ。』

『今回の試合で注目されるのはやはり千里山女子でしょうか?』

『う~ん、まだわかんね~。』

(相変わらずこの人は・・・!)

『えっと、千里山女子は先鋒と大将に一年生を置くという千里山にとってはとても珍しい布陣となっておりますがそこについては?』

『まぁ、一年生って言っても、インターミドルでは結構活躍してたらしいし、そこら辺の三年を使うよりはいいんじゃないかねぇ?』

『まぁ、そうかもしれないですね。』

(この人、ちゃんと選手の事調べてるのになんでこんなに適当なんだろう・・・)

『さぁ、起家は館山商業で試合スタートです。』

 

 

(次が親番やからできるだけこの局で和了っときたいんやけど、面子的にも配牌的にも無理そうやな。まぁ、配牌は和了るまで良くならへんけどな。でも、折角二階堂先輩にあそこまで特訓してもろたんや、一回戦をマイナスで終わらせる訳にはいかへん!やったる!)

「それ、ロン。3900。」

望が捨てた牌で、苅安賀高校が和了した。

『三尋木プロ、今の局、千里山の上野望選手の振り込みについて私には些か初歩的なミスだと思ったのですが、どう思われますか?』

『うーん、確かに初歩的なミスだねぇ。普通あの巡目には切らないとは思うけどねぇ、知らんけど。』

(ま、あの子ならあそこで攻めたくなる気持ちも分かるけどねぇ。)

~千里山女子控え室~

「望の奴、2向聴まで行くと危険牌とか関係無く和了りに向かうから直ぐあんな単純な放銃してまうんでしょうね。」

「まぁ、特訓でもそこは注意したんやけど、あいつは和了する事に意味があるから攻めないと一回も和了れんくなるって言っとったな。」

「確かに、望の性格とあの能力を考えれば妥当かもしれませんね。」

「あぁ、そうやな。」

「振り込み過ぎんとええけど。」

~東二局~ 親:千里山女子

苅安賀 103900

館山 100000

萌間 100000

千里山 96100

(おいおい、今の放銃、初心者かっての。こんなんが本当に千里山の先鋒とか、どうかしてるだろ。やっぱり今年の千里山は弱くなっちまったのかな?)

「チーです。」

(チー?捨て牌的に染め手ではなさそうだし、喰いタン狙いか?もう、初心者丸出しだな。)

「ポンです。」

(そろそろ聴牌したかな?でも、君が鳴いてくれたお陰でこっちも聴牌してるんだよね。)

「ツモ!2000・3900!」

(苅安賀、速い・・・)

(このままやと私が何も出来んまま終わってまう。)

~東三局~ 親:苅安賀高校

苅安賀 111800

館山 98000

萌間 98000

千里山 92200

『三尋木プロ、先程から感じていたのですが、千里山女子高校の上野選手の配牌が悪い気がするのですが。』

『へぇ~、アナウンサーはインターミドル個人戦3位の上野望を知らないのか~。』

『個人戦3位!?そうだったのですか・・・』

『彼女は最初手牌が最悪だけど、一回和了ると手が良くなるらしいよ~知らんけど。』

『でも、先程から6向聴ばかりですが、和了する事ができるのでしょうか?』

『まぁ、和了率的には1割くらいだけど・・・ほら!あれ見てみ?スッゴく安いけどテンパってるぜ?』

『そうですけど、あれだと安過ぎませんか?』

『一回和了る事に意味があるのさ。』

『そう、ですか・・・』

(この人の言っている意味が分からない、和了れば配牌が良くなるなんて、そんな事起こるはずがない。)

 

 

「ロン、1000点です。」

「1000点って、和了らない方が点数貰えたんじゃない?」

「これでええんですよ。」

「そう。」

(こりゃあ、千里山も終わったな。)

~東四局~ 親:萌間高校

苅安賀 110800

館山 98000

萌間 98000

千里山 93200

~5巡目~

「リーチ。」

『なんと、千里山女子上野選手が五向聴の手を不要牌を引かず、5巡目でリーチです!』

(やっぱり有効牌しか引かなくなるみたいだねぇ。インターミドルの個人戦でも決勝の南場以外は有効牌しか来てなかったからねぇ。これは一方的になっちゃうかもねぇ。)

「ツモです!リーチ一発ツモドラドラ。2000・4000です!」

(なっ、こいつ!?)

~千里山女子控え室~

「望、やっと和了れたみたいやな。」

「そうですね。」

「このまま行けば、あたしら何もせんでもええ事になるかもな!」

「そうかもしれないですね。」

~南一局~ 親:館山商業

苅安賀 108800

千里山 101200

館山 96000

萌間 94000

~4巡目~

(よし、南場やけど有効牌はちゃんと来てくれとる。このまま攻めるで!)

「リーチです!」

(今度は4巡目にリーチ!?やっぱり千里山女子の先鋒、流石にあの安手和了りだけでは無いとは思ってたけど、これは厳しいかもしれないわね・・・)

「ツモです!リーチ一発ツモ混一。3000・6000です!」

『三連続和了です!しかも、また不要牌を引かずに5巡目に和了です。』

『ここ防げなかったのはちょっとヤバイかもねぇ。』

『えっ?どういう事ですか?』

『何でもないよ~。』

~千里山女子控え室~

「三尋木プロ、良く分かってらっしゃる。流石やな。」

「どうゆうこと?舟久保先輩は分かるんですか?」

「逆に泉は分からんのか。望は有効牌しか引かないのに次は三向聴スタート。もうそろそろ望を止めるんは厳しいんとちゃうか?」

「あぁ、確かに。」

「ウチ、三向聴の時に一回だけ止める事が出来たんですけど、他の人が2巡目に聴牌して、その和了り牌をウチが差し込んで止めれたんです。だから、偶然が重ならんともう望のカウントダウンは防げませんよ。」

「そうやったんか、そんなに危険な奴やったんやな。望って・・・」

~南二局~ 親:千里山女子

千里山 113200

苅安賀 105800

萌間 91000

館山 90000

~3巡目~

「リーチです。」

(おいおい、もしかして、これ、カウントダウンみたいにどんどん速く和了れるようになるのか!?)

「ツモです。リーチ一発ツモ清一。8000オールです。」

(これ、相当ヤバい・・・)

「一本場です。」

~南二局一本場~ 親:千里山女子

千里山 137200

苅安賀 97800

萌間 83000

館山 82000

~2巡目~

「リーチです。」

(もう、これやだ・・・)

(こんなん防ぎようがないわ!)

(また、やられる・・・)

「ツモです。リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1で8100オールです。」

『五連続和了です!!!最初は微妙な滑り出しだった千里山女子が一気に他校を引き離しました!』

『あの子凄いねぇ。』

(中学の時の牌譜を見た時は、そこまでじゃないって思ってたけど、ありゃあ誰かに仕込まれたねぇ。格段に強くなってるよ。)

「二本場です。」

~南二局二本場~ 親:千里山女子

千里山 161500

苅安賀 89700

萌間 74900

館山 73900

「チェック・・・リーチです。」

(チェック?何?何かが見えたりしたのかな?)

(別に見せ牌をしてる訳でもないのにチェック・・・?)

~千里山女子控え室~

「チェックってなんや?」

「えっと、チェスは分かりますか?」

「まぁ、ルールくらいは・・・」

「チェスで次の一手でキングを取れる時に『チェック』って言うんですよ。将棋で言うところの王手ですね。」

「チェスの王手はチェックメイトやないの?」

「チェックメイトは相手に打つ手が無い時に発される言葉で、将棋で例えると詰みの状態の事ですね。」

「成る程、それはええけど、何でチェスなん?」

「あいつ、チェスの小学生大会で優勝しとるんですよ。それでああいう発声をしちゃうんかもしれないですね。」

「なんでチェス辞めて麻雀始めたんや?」

「チェスは同じ状況から始まるけど麻雀はいつも違う状況で始まるからワクワクするんだそうです。」

「はぁ、天才の考える事はよう分からんな。」

「そうですね。」

~対局室~

「チェックメイト・・・ツモです。ダブリー一発ツモタンヤオ清一、12200オールです。」

「はぁ?チェックメイトだぁ?まだ終わってないだろ!いくら点差があるからってまだ負けてないわ!」

「そうですね。失礼しました。」

(残念やけど、もうチェックメイトなんだよなぁ・・・)

~南二局三本場~ 親:千里山女子

千里山 198100

苅安賀 77500

萌間 62700

館山 61700

望はサイコロを回して、牌を取っていったが、一巡目の牌を取らずに理牌をしていた。

「あの、理牌なら一打目を切ってからにしてくれませんか?」

「あぁ、そうしたい気持ちもやまやまなんですけど、和了る時は理牌した方がええんじゃないかと思いまして。」

(こいつ、何言ってんだ・・・?)

望が理牌をして一巡目の牌を取って、そのまま手牌の横に置いた。

「ツモです。天和、16300オールです。」

(なっ!?)

(はっ!?)

(嘘でしょ!?)

『な、なんと、千里山女子の上野選手が、まさかの天和を炸裂!凄まじい戦いになってきました!』

『いやぁ、これは相当ヤバいのが現れちゃったねぇ。』

『そうですね。』

 

 

その後は、望が四連続で天和を和了り、萌間高校と館山商業の2校が飛び、終了した。

 

~試合結果~

千里山 395500

苅安賀 11700

萌間 -3100

館山 -4100

 

 

望が控え室に戻り、千里山女子のメンバーがホテルに帰ろうとしていた。

「あっ、ウチ、忘れ物したっぽいです。ちょっと戻って取ってきてもええですか?」

「何してんの?はぁ、じゃあ泉、付き添いよろしゅう。」

「あっ、分かりました。」

心音と泉が控え室に戻った。忘れ物は直ぐに見付かり、速く合流する為に急いで戻っていたが、心音の足が止まった。

「あれ、心音?どうしたんや?はよせんと舟久保先輩に怒られんで?」

「は、はい。」

心音の隣をすれ違って行ったのは、セーラー服を着ている5人組だった。その集団は、前年度インターハイ優勝校の清澄高校だった。心音は足が止まったというよりも、足が竦んで動かなくなってしまったのだ、すれ違っただけでも全身に伝わってきた威圧感、畏怖感に。

(何や今の、あれが前年度インターハイ優勝校の清澄なんか。こりゃあ、ちょっとヤバイかもしれへんな・・・)

 

 

~小ネタ集~

『もしも心音がすれ違った人の心を読んだら』

その①

心音と泉が、二人でインターハイ会場を歩いていると、長野県鶴賀学園の汐見真紀と一ノ瀬一葉が歩いていた。

(おっ、あれは清澄を相手に区間一位を取った鶴賀学園の二人やな。あの二人は普段どんな事考えとるんやろ、ちょっと見てみよ。さて、どっちから見ようかな・・・というか、何やあの胸は。一ノ瀬とか言ったっけ?おっきすぎやろ!少しでええからウチに分けてや!まぁ、無理やろな。はぁ、胸無い方から見るか。)

(今日も一葉は可愛いなぁ。)

(おぉ、まさか、この同志の人は隣におる敵に恋をしとるんか。ほえー、じゃあ、その一葉ちゃんはどないな事考えとるんやろうな・・・)

(真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い)

(うわっ、怖っ!愛が重すぎるわ!というか両思いなんか!もう勝手にしいや!)

(なんか、心音が情緒不安定やわ。やっぱり後輩って難しいわ・・・)

 

 

その②

またまた二人で歩いていると、奈良県阿知賀女子の松実姉妹が歩いていた。

(おっ、あれは去年決勝まで行って、先輩方が準決勝で負けた阿知賀の先鋒と次鋒やん。ってか、今、夏やのにマフラー!?一人我慢大会でもしとるんか!?どんな事考えとるんや?)

(この会場クーラー効いててちょっと寒いな・・・)

(はぁ!?嘘やろ?ウチなんかこの会場ですら暑くてしゃあないのに、マフラーに厚着までしてちょっと寒いって、なんかの病気持ちなんかな・・・大変なんやな。じゃあもう一方はどうやろ。)

(お姉ちゃん、今日も良いお餅だな。)

(お餅?あぁ、胸の事か。というか、姉の方の厚着に気を取られて気付かんかったけど、この二人めっちゃデカいやん!なんであの二人はあんなに大きいのにウチにはこんなに貧相なんや!理不尽やろ!くそ~、睨み付けてやる~!あっ、妹の方に見られてもうた!ヤバっ、どないしよう、変な奴やって思われたやろか?ちょっと見てみるか・・・)

(あの人はお餅無かったな。)

「・・・コロス!」

「えっ?ちょっ、どうしたんや心音!」

「コロス!ゼッタイコロス!」

「ちょっ、何しとるんや心音!しっかりしろ!」

「離してください泉先輩!あの人を殺してウチも死ぬんやぁ~!」

「もう何言っとるんか全然分からんわ!落ち着け!」

(やっぱり後輩は訳分からんわ!)

 

 

その③

またもや二人で歩いていると、今度は清澄高校の原村和と宮永咲の二人がこちらに向かってきた。

(おぉ!清澄の副将と大将やないか!こりゃあ、大物と会えたわ。って、またおっぱいかい!原村和、デカ過ぎやろ!さっきの人らよりデカいやん!少しと言わず半分寄越せ!まったく、じゃあやっぱり宮永咲さんから見ますか。)

(今年も全国優勝しようね!和ちゃん。)

(ほう、なんか、思ってたより優しそうな性格やな。もっとエグい事考えてそうやと思ったんやけど、そんな事は無いか。じゃあこのおっぱいさんはどうやろ?)

(咲さんの(自主規制)を(自主規制)して(自主規制)しながら(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)したいですね!)

(・・・もう、対局以外であんまり人の心見るの辞めよう。うん、そうしよう。)

(なんや、今度はなんか、悟りでも開いたような顔しとるわ。今度、望に心音との接し方を教えて貰わんとな・・・)




とりあえず今回で千里山編は終了です。次からは再び清澄視点からの話を進めていきたいと思います。最後に、全国の和ファンの皆様、大変申し訳ありませんでした!


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第30話 二回戦先鋒前半戦

前回の話を見ていて思ったんですが、四連続天和とかしちゃったら麻雀卓を点検したり身体検査とか行われたりでそのまま続行とな出来ないような気が・・・まぁ、そんな事はどうでも良いとして、ここから清澄高校視点の話に戻ります。


清澄高校麻雀部がインターハイに向けて東京に来ていた。

「東京に帰って来たじぇ!」

「マホ、東京初めてなのでワクワクです!」

「まったく、はしゃぎ過ぎじゃ。田舎者って思われるじゃろ。」

「広島弁の部長に言われたくないじぇ。」

「なっ、これは癖なんじゃからどうしようも無いじゃろ!」

「なんて意味の分からない会話をしてるんですか・・・早く行きますよ。」

(なんか、染谷先輩よりも和ちゃんの方が部長に思えてきてしまう・・・)

清澄高校は第1シードの為1回戦は無く、2回戦からの登場となる。今日は東京のホテルで2回戦で戦う相手校の試合を観戦していた。その中で、とある1校の対局結果に、メンバー全員が度肝を抜かれていた。

「千里山の先鋒の人、四連続で天和したよ・・・」

「そんなっ、あり得ません・・・」

「じゃけど、千里山だけじゃ無いわ。この永水の先鋒もプラス8万強で終わらせとるわ。地方大会の牌譜でもプラス5万以上は確実に出しとるし。」

「優希ちゃん、明日大丈夫?」

「うぅ、が、頑張ってみるじぇ・・・」

 

 

インターハイ2回戦当日になった。清澄のメンバーが会場に着くと、地方大会決勝で対局した3校のメンバーと出会した。

「やっと来ましたわね。」

「咲~!はらむらののか~!期待してるぞ!」

「うん、頑張ってくるよ。」

「ありがとうございます。」

「夢乃マホも、頑張って下さい。」

「はい!氷華さん!マホ、頑張ります!」

「片岡先輩、友理奈と千里山の先鋒、大変かもしれませんけれど頑張って下さい。」

「うん、頑張るじょ・・・」

「いやぁ、東場の神様なら楽勝ですよね?」

「なっ、そうだじぇ!私が負ける訳ないじょ!ちゃんと見てろよ!」

(真紀ちゃん、優希ちゃんの緊張を解してくれようとしたのかな?)

咲が真紀の所に近付き、優希には聞こえないような声で真紀に話し掛けた。

「真紀ちゃん、優希ちゃんを元気付けてくれてありがとう。」

「ふっ、礼には及びませんよ。それより、宮永先輩もインターハイでは県決勝みたいに調整とかしないで本気でやって下さいよ?」

「あっ、分かってたんだ。」

「当たり前ですよ。それ混みで完敗だって思ったんですから。」

「ごめんね、途中まではそんな事するつもり無かったんだよ?」

「ふーん、そうですか。」

「あっ、信じてないでしょ?」

「信じてますよ。ただ、宮永先輩は性格が悪い人だなーって思ってますけど。もしかして、池田先輩の点数を0にしたのも調整ですか?」

「あれは真紀ちゃんが12300直撃しただけで私は関係無いよ!」

「どうだか。」

「流石に、他人まで0に調整は出来ないよ。」

「本当ですか~?」

「本当だって。」

(何なんでしょうかあの人は、咲さんとあんなに楽しそうに話して。)

(真紀、どうして宮永先輩とそんなにいきいきした顔で話しているのですか・・・?)

「咲さん、そろそろ移動しますよ。」

「真紀、早くしないと席が埋まっちゃいますよ。」

「あ、ごめん和ちゃん、じゃあね真紀ちゃん。」

「はい、頑張って下さいね。」

「ありがとう、じゃあね。」

真紀達と別れてから、清澄高校が控え室に入った。優希が京太郎作のタコスを食べた。

「よしっ、タコスぢから充電完了だじぇ!」

「頑張ってきんさい。」

「頑張って。」

「頑張って下さいです。」

「集中ですよ。」

「任せろ!」

~千里山女子控え室~

「今回は1回戦みたいには行かへんからな。」

「まぁ、マイナスになる事はほぼ確定でしょうね。」

「飛ばないようにな~。」

「あんまり負債出されるとあたしが大変やからあんまり振り込むなよ。」

「いや、私にはエール無いんかい!!」

「おー、がんばれー。」

「がんばー。」

「棒読みですやん・・・」

「はよ行かんと遅れるでー。」

「はいはい、分かりましたよ。じゃあ行ってきます。」

~永水女子控え室~

「あの、やっぱり六女仙でもない私が先鋒でいいんでしょうか?」

「何を今更、永水の中でも得点率2位なんだから自信持ちなよ。」

「明星ちゃん、ありがとう。」

「友理奈のお陰で永水がもっと強くなった。だから友理奈は必要。」

「春先輩、そんな事はありませんよ。」

「友理奈ちゃんが居てくれるお陰で私は安心して大将をしていられるんです。自信を持って。」

「姫様まで、ありがとうございます。ご期待に添えるように頑張ります!」

「まぁ、姫様を除いたら友理奈が一番強いからね~。大丈夫でしょ。」

「たまに明星ちゃんに負けちゃうけどね。」

「そんな、友理奈ちゃんにはいつも負けっぱないしだよ。」

「そんな事無いって。っと、そろそろ行ってきます。」

「頑張ってね。」

「はい!」

 

 

『さぁ、2回戦の先鋒戦が始まろうとしています。実況は私、佐藤裕子。そして解説は戒能良子プロで行います。戒能プロ、よろしくお願いします。』

『よろしくです。』

『では早速、対局する選手を紹介します。まずは去年の団体戦で見事優勝を収めた第1シードの清澄高校先鋒、片岡優希選手。そして、去年はベスト8だった千里山女子高校先鋒、上野望選手。先日の1回戦ではこの上野選手が他校を飛ばして2回戦進出を決めました。今回も彼女の連続和了を見られるのでしょうか。次に、去年は残念ながら2回戦で敗退してしまった名門永水女子高校先鋒、早乙女友理奈選手。今年はエースの神代小蒔選手を大将に置き、新一年生である早乙女選手が先鋒を務めます。最後に劔谷高校先鋒、椿野美桜(つばきのみお)選手。劔谷高校は去年、千里山女子高校に惜敗しており、その時の先鋒だった椿野美幸選手の妹の美桜選手が先鋒を務めます。去年の雪辱を晴らす事は出来るのでしょうか。さぁ、選手が出揃いました。全国高校生麻雀大会団体戦A卓2回戦、開始です!』

 

 

(千里山の上野望、部長が言ってた奴だじぇ。連続和了カウントダウン。あれをやられたら確実に終わっちゃうじぇ。それだけはさせないじょ!そして、永水女子高校の早乙女友理奈、汐見真紀が小学生の時の友達だったって言ってたじぇ。こっちも手強そうだじょ。)

(うわー、この卓はこの前みたいには行かなそうやな。まぁ、少しでも稼いで泉先輩にバトンタッチせなあかんな。)

(この3人を相手にするなんて、勝てる気がまるでしないわもー。)

(そういえば、真紀が清澄の先鋒に私の対局の特徴についてアドバイスしたって言ってたな。まったく、何してくれてんだよ真紀。ただでさえ優勝候補である学校にアドバイスとか・・・ま、アドバイスだけでやられるような私じゃないけどね。それじゃあ、この場で証明しようじゃないか、私の方が圧倒的に強いという事を!)

~場決め結果~

片岡優希:東

椿野美桜:南

早乙女友理奈:西

上野望:北

 

 

~東一局~ 親:片岡優希

清澄 100000

劔谷 100000

永水 100000

千里山 100000

(さぁ、始めるじぇ!)

~3巡目~

「リーチ!」

(はやっ!最初は六向聴スタートなんやからそういう速攻とかマジ勘弁して欲しいわ・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ純チャンドラ2で8000オールだじぇ!」

『清澄高校片岡選手、トンパツでいきなりの8000オールツモです!』

『清澄高校の片岡選手は東場で稼いで逃げ切るタイプですからね。この親番で稼いでおきたいでしょうね。』

『成る程、さて、東一局は片岡選手の連荘です。』

「一本場だじぇ!」

~東一局一本場~ 親:片岡優希

清澄 124000

劔谷 92000

永水 92000

千里山 92000

「このまま連荘で終わらせてやるじぇ!」

(その台詞、この後そっくりそのまま私が言ったるわ!)

~4巡目~

「ポン。」

(永水が鳴いてきた、そういえば去年の永水は神代小蒔を先鋒にしとったのに今年は一年が先鋒やな。去年の有珠山みたいに中堅までの負債を副将と大将が巻き返すみたいな感じなんかろか?まぁ、そうやとしたらどうせ二階堂先輩が飛ばしてくれるやろ。)

(さっき巫女さんが鳴いてくれたお陰でまた聴牌出来たじぇ。追撃するじょ!)

「リーチ!」

「ロン。タンヤオドラ2、3900の一本場で4200です。」

(くっ、この巫女さん、もう聴牌してたのか。気付かなかったじぇ・・・)

(そういえば、船久保先輩が永水の先鋒は速攻やって言っとったな。はぁ、私完全に不利やん・・・)

~東二局~ 親:椿野美桜

清澄 119800

永水 96200

劔谷 92000

千里山 92000

~3巡目~

(清澄高校の片岡優希さん、さっきの私の和了で親が流れてから手が落ちてるような気がする。ここは更に攻める。)

「ポン。」

(また永水、ならこっちも鳴いて早和了りや!)

「ポンです。」

(千里山の上野望さんが動き始めた!?もう少し伸びそうな手だったけど仕方ないか・・・)

「ツモ。發混一。1000・2000です。」

(また永水かいな!折角3向聴やったのに!)

(この巫女さん、全然隙を見せてくれないじょ・・・このままだと得意な東場が終わっちゃうじぇ。)

~東三局~ 親:早乙女友理奈

清澄 118800

永水 100200

千里山 91000

劔谷 90000

~2巡目~

「ポン。」

(だから速すぎやろ!どんだけポンポンするんや。)

(この人がいると東場で和了れないじょ・・・)

「ツモ。タンヤオ三暗刻対々で4000オールです。」

(3連続和了、しかも連荘とか・・・)

(この人速すぎだじょ・・・)

~観戦室~

「やっと友理奈の調子が出てきましたね。」

「友理奈はスロースターターなところがあるからな。でも、友理奈が調子良い時はウチでも止めるのに苦労するから、あの面子じゃちょっと厳しい試合展開になっちゃうかもな。」

「そうかもしれませんね。」

~対局室~

「一本場です。」

~東三局一本場~ 親:早乙女友理奈

清澄 114800

永水 112200

千里山 87000

劔谷 86000

~4巡目~

「ポン。」

(また永水が来とる、それなら私も。)

「ポンです!」

(上野望さんがまた来てる、でもこの親番はもう少し稼ぎたい。)

「ポン。」

(くっ、永水が2副露。こっちはまだ2向聴やし攻められんわ・・・)

~7巡目~

「ツモ。混一対々で4100オールです。」

(また和了られた、こんなん速くて追い付けへんわ。)

(捲られたじょ・・・)

(やだこれもー。)

「続けて二本場です。」

~東三局二本場~ 親:早乙女友理奈

永水 124500

清澄 110700

千里山 82900

劔谷 81900

~9巡目~

(とりあえず1位にはなれた。でも後々の事を考えるともう少し稼ぎたいな。しかし、上野望さんが3副露で少し自信みたいなのが感じられるからここは降りる。)

(これが来てくれれば・・・)

「ツモです。タンヤオのみ。500・700です。」

(上野望さんに和了されてしまった。ここからか・・・)

(カウントダウンが始まっちゃうじぇ・・・)

(これ、ヤバイかも・・・)

(まずはカウントダウン5!)

~千里山女子控え室~

「よしっ、カウントダウン入ったで!」

「このままうちらが勝つ事は流石に無いと思うけど、点差は縮められるやろ。」

「やったれよ望!」

~東四局~ 親:上野望

永水 123800

清澄 110200

千里山 84600

劔谷 81400

~5巡目~

「リーチです!」

(来た、5巡目リーチ。ずらしても和了るのかな?)

「ポン。」

(永水の、私に手助けしてくれとるんか?私はずらしても関係無く和了るで!)

「ツモです!リーチツモ純チャン三色で6000オールです!」

(ずらしても和了られるのか、あんまり鳴かない方がいいのかな?)

(さぁ、次はカウントダウン4や!)

~東四局一本場~ 親:上野望

永水 117800

千里山 102600

清澄 104200

劔谷 75400

(よし、配牌はちゃんと良くなってるし有効牌も来てくれてる。いける!)

(さっきは上野望さんのツモ番が増えると思って鳴かなかったけどそれだとこちらが聴牌出来ないな、だとしたら・・・)

「ポン。」

(なんやこいつ、そんな事しとったら私が和了るで?)

「ポン。」

(また鳴いた・・・はっ、こいつもしかして!?)

~4巡目~

「り、リーチ。」

「ロン。タンヤオ三色同刻で4200です。」

(こいつ、私のカウントダウンが怖くないんか?それとも鳴いた方が聴牌出来るからわざわざ鳴いてきたんか?)

~永水女子控え室~

「なんと・・・」

「カウントダウンより自分の速攻が勝つ方を信じて、しかもそれで和了って来ましたね。」

「流石は友理奈ちゃんですね!」

「このまま引き離して欲しいですね。」

~南一局~ 親:片岡優希

永水 122000

清澄 104200

千里山 98400

劔谷 75400

~7巡目~

(千里山が2副露。そしてこの手、対々を目指してたのに七対子聴牌まで行ってしまった。ドラ2だからリーチかけてツモれば跳満か、なら・・・)

「リーチです。」

(リーチ?こいつは対子や暗刻を集める事が多いから七対子か?なら・・・)

「チー。」

(まぁ、一発消しは重要やな。これで一向聴やし。)

(千里山が3副露、でもこっちも後戻り出来ない。ここは和了させて貰う!)

「ツモ。リーヅモ七対子ドラ2で3000・6000です。」

(くそっ、またこいつに和了られたわ。誰かこいつを止めてぇな・・・)

~南二局~ 親:椿野美桜

永水 134000

清澄 98200

千里山 95400

劔谷 72400

~3巡目~

「ポン。」

(また・・・)

(このままだとまた一方的な試合だじぇ・・・)

「ツモ。タンヤオ三暗刻対々で2000・4000です。」

(親被り・・・)

(おいおい、誰もこいつを止められんのか・・・)

~南三局~ 親:早乙女友理奈

永水 142000

清澄 96200

千里山 93400

劔谷 68400

~5巡目~

「ポン。」

(くそっ、まだ稼ぎ足りんいうんか!この親番だけはさっさと流さんといけんのに全然聴牌出来へんわ。このままやとまたやられてまう・・・)

(聴牌したじぇ。でも今回はとりあえず安めでも和了らないと意味ないじょ。ここはダマだじぇ。)

「ポン。」

(また鳴かれた!?)

(和了らせる訳には、いかないじょ!)

「ロン!タンピン三色ドラ2、12000だじぇ!」

(清澄、張ってたんか。でもナイスや!こいつに連荘させるのは危険やからな。)

(和了られた。まぁ、そう簡単に和了らせてくれないのは分かってたけど、まさか直撃を受けるとは・・・)

(よし、この調子でいくじょ!)

~南四局~ 親:上野望

永水 130000

清澄 108200

千里山 93400

劔谷 68400

(清澄高校の片岡優希さん、牌譜で見る限りでは東場で稼いで南場で守るタイプだったはず。でも今のこの人は完全に攻撃モード。なら、少しでも速く和了しなければ!)

「ポン。」

(また鳴いてきたじぇ。ならこっちもだじぇ!)

「チー!」

(これで・・・)

「ロン。対々ドラ3で8000です。」

(じぇ、また巫女さんに和了られたじぇ。調子が出てきてたのに・・・)

(前半だけでこの結果かいな。後半辛いわ・・・)

『前半戦終了です。永水は早乙女選手が2位に3万点以上の差を作り1位。2位の昨年優勝校の清澄は、なんとかプラスで終わらせました。3位の千里山は若干マイナスで前半戦終了。4位の劒谷は厳しい滑り出しとなりました。』

~試合結果~

永水 138000

清澄 100200

千里山 93400

劔谷 68400

(3人マイナスにする事は出来なかったか。清澄の片岡さん、東場だけだと思って油断してたらやられた。やっぱり、侮るなかれですね。)

(この永水と清澄相手にプラス終了とかきつすぎるで。こんなん無理やわ・・・)

(一応プラスにはなったけど、去年戦った巫女さんもいるから、ここで少しでも点を奪い返さないとだじぇ。)

(トップとの点差が6万以上、やだこれもー!)

『10分間の休憩の後、後半戦を開始します。』




点数表記が間違っていたので直しました。


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第31話 二回戦先鋒後半戦

10分間の休憩が終わり、後半戦が始まった。

~場決め結果~

早乙女友理奈:東

片岡優希:南

椿野美桜:西

上野望:北

~東一局~ 親:早乙女友理奈

永水 138000

清澄 100200

千里山 93400

劔谷 68400

『さぁ、後半戦が始まりました。戒能プロ、やはり永水の早乙女選手は強いですね。』

『そうですね。彼女は私が思っていたよりも10倍近く強いですね。』

(最初に彼女を見た時は、何があるわけでもなく微妙なんだろうなって思っていたけれど、彼女、努力で補うタイプみたいですね。でも、これだけの点差があるなら、あの人があれを仕掛けるかもしれませんね・・・)

『そうですか。では、後半戦開始です。』

~対局室~

(この親番、少しでも多く点を稼いでおかないとな。)

「ポン。」

(よしっ、これで聴牌。とりあえず連荘する。)

(また永水が鳴いてきたわ。しかも、対々は何待ちなのか分かりづらいから降りづらいねん。とりあえず対々なんやから暗刻落としなら振り込む事はあらへんやろ。)

「ロン。タンヤオ三暗刻対々赤1。18000です。」

(なっ、単騎待ちかいな!そんなん分からんわ!)

『早乙女選手が親跳和了です。』

『やはり彼女、一度鳴いてから和了までの速度が異様に速いですね。それに、前半に比べて点が大きくなっていますね。』

『それが早乙女選手の強みなのでしょうか?』

『そうですね。東二局が遠くなるかもしれないですね。』

『確かに、ここからどのような試合展開に持っていくのでしょうか、期待です。』

~観戦室~

「ねえねえ、友理奈ちゃんって私みたいに点数上昇するっけ?」

「いや、友理奈は昔からスロースターターなんですよ。それだから後半になると、どんどん高い手が入ってきますよ。」

「へぇ、私と似たような感じかな?」

「でも、友理奈の場合は、打点が全然上がらない時もあればめちゃくちゃなくらい和了する事もありますから焦華さんに比べたらちょっと不安定ですね。」

「そうなんだ~。」

~対局室~

「一本場です。」

~東一局一本場~ 親:早乙女友理奈

永水 156000

清澄 100200

千里山 75400

劒谷 68400

~4巡目~

「ポン。」

(またポンポンし始めた。もう止めてえな・・・)

(東場なのにまた何も出来ないかもしれない。いやいや、そんなの、あり得ないじょ!)

(片岡優希さんに違和感が・・・でも、この形なら和了れるはず。ほら、来てくれました。)

「ツモ。混一三暗刻対々。6100オール。」

(くっ、またやられた!)

(この人、全然太刀打ち出来ないじぇ・・・)

『早乙女選手の勢いが止まりません!どんどん点差を引き離しています。2位との差はなんと8万点差にまで広げています!』

『これは・・・エクセレントですね。』

~対局室~

「二本場です。」

~東一局二本場~ 親:早乙女友理奈

永水 174300

清澄 94100

千里山 69300

劒谷 62300

~3巡目~

(きたじぇ!)

「リーチ!」

「ポン。」

(片岡優希さんのリーチは怖い。でも、今回は一発を消すのが精一杯かな。まぁ、しょうがないか。)

「ツモだじぇ!リーチツモタンピン三色ドラ2で4200・8200だじぇ!」

(やっと連荘が終わったわ・・・)

(この調子で行く。今度は私が連荘する番だじぇ!)

~東二局~ 親:片岡優希

永水 166100

清澄 110700

千里山 65100

劒谷 58100

(よしっ、配牌一向聴だじぇ。この局は私が和了るじょ!)

(うわっ、配牌で聴牌してる!もしかしたら地和・・・は無いか。でも、これなら少しでも稼げる!)

「リーチ!」

(今まで何もしとらんかった劒谷がダブリーやって?これは、永水が振り込んでくれたら楽なんやけどな。)

(オリたいけれど、流石に一巡目はキツいな。安牌も無いし、なら攻めるか。)

「あっ、それ、ロンです。ダブリー一発タンピンドラ1で12000です!」

(おー、マジで直撃したわ。でもこれで私が4位に転落か・・・気張っていこ!)

(ダブリーとか、誰かさんを彷彿とさせるなぁ。まさか一発で振り込むとは・・・集中しなきゃだな。)

~東三局~ 親:椿野美桜

永水 154100

清澄 110700

劒谷 70100

千里山 65100

(流石に二連続で良い配牌は来ないか・・・)

(二連続ダブルリーチは流石に無いか。でも念には念を。)

「ポン。」

(くそっ、また鳴かれた・・・)

(手牌が悪くなってきたじょ、もうタコスぢからが切れたのか?このままじゃ負けちゃうじょ!)

~7巡目~

「ツモ。混一三暗刻対々。3000・6000です。」

(取られた点数を直ぐに取り返した。流石やな。)

(差がどんどん広がっていくじょ・・・)

~東四局~ 親:上野望

永水 166100

清澄 107700

劒谷 64100

千里山 62100

(親番は残り2回しかあらへん、しかもこの点数、二階堂先輩に絶対怒られてまう・・・なんとかせなあかんな!)

「チーです。」

(上野望さん、やっぱり親番に和了しておきたいんですね。そう簡単にはさせませんけどね。)

「ポン。」

(うっ、やっぱり永水に邪魔される。分かっとったけどこれ、辛いわ・・・でも!)

「ポンです。」

(まだ諦めてないようですね。ですが、もう一回鳴いたらどうでしょうか?)

「ポン。」

(なっ、させてたまるか!)

「チーです!」

(二人とも鳴いてばっかだじょ・・・)

(来いっ!)

「ツモです。500オール!」

(まさか、また和了られてしまうとは、やはり千里山の先鋒を務めているだけは有りますね。)

「一本場です!」

~東四局一本場~ 親:上野望

永水 165600

清澄 107200

劒谷 63600

千里山 63600

~5巡目~

(よしっ、25ピン待ちの高目一盃口。これならいける!)

「リーチです。」

(やはり5巡目にリーチをしてきた。これを防がなければ、しかし鳴けない・・・)

(この2ピン、通るかな?でも、私もこれで聴牌だし、オリてもどうせ和了られるなら攻めるじぇ!)

「追っかけリーチだじぇ!」

「・・・」

(ん?眉が一瞬動いた?もしかして、和了り牌なのに見逃した?)

「ツモです。リーチ一発ツモタンピン一盃口。6100オールです。」

(やはり安目を見逃していたか、さっきので和了っていればリーチ一発タンピンで清澄が5200の放銃で済んだのに、高目を引くなんて・・・点数も3倍以上になってる。この人、やっぱり凄いな。)

「さぁ、二本場です!」

(これ、ヤバいかも・・・)

(順調にカウントダウンが進んでる。これじゃあうちが準決勝に進めないじょ・・・)

~東四局二本場~ 親:上野望

永水 159500

清澄 100100

千里山 82900

劒谷 57500

(よく考えてみれば、このまま上野望を止めずに連続和了させてたら永水は2位抜けする。準決勝に進める。ここで連続和了を止めたら清澄が残る結果になるかもしれない。それならこのまま終わらせても、良いのかな・・・)

(おっ、永水の人、もしかして気付いちゃったんかな?このまま私が連荘すれば2位抜けが約束され、清澄を敗退させる事が出来る。これに乗ってくれたら私達の勝利は格段に近い物となる!さぁ、乗ってくれや永水!)

(私はどうすれば・・・でも、それでも私は!)

「ポン!」

(なっ、こんだけ好条件やのに、なんで断るんや!?)

(自分勝手かもしれないけど、私は全試合プラス50000以上で終わらせたい。それに、この試合は一葉と真紀が見てる。もしかしたら焦華さんだって見てるかもしれない。そんな試合でこんな無様な勝ち方をしても、軽蔑されるか私に実力が無いと思われるだけだ。そんなの嫌だし、私がここで阻止した事でもし永水が負けたとしても、私は後悔はしない!だから!)

「ロン!対々。2600です!」

(私は、私を貫く!)

~千里山女子控え室~

「あーあ、永水は乗らんかったか。」

「えっ?どうかしたんか?」

「えっ、泉先輩、今の見てて分からんかったんですか?」

「なんかおかしい事あった?」

「気付いてへんのかいな・・・今の局、永水が阻止せずに望が和了り続けてたら永水は2位抜け出来たんや。それなのにあいつはそれを拒否した。なんで阻止したんかは分からんけどな、まぁ、十中八九プライドやろうけど。」

「成る程・・・」

~清澄高校控え室~

「ほっ、危なかったね・・・」

「えっ?何がですか?」

「確かにのぉ、わしじゃったらあのままやらせとったな。」

「友理奈さんが部長みたいな性格じゃなくて良かったですね。」

「皆さん、さっきから何を言ってるんですか???」

「何でも無いわ。」

「・・・そうですか。」

~南一局~ 親:早乙女友理奈

永水 162100

清澄 100100

千里山 80300

劒谷 57500

(危なかったじぇ、あのままやられてたら敗退だったじょ。でも、この点数のままで部長に渡す訳にはいかないじょ。)

「ポン。」

(なっ、でも、鳴いてくれたお陰でこっちも聴牌出来たじぇ!)

「リーチだじぇ!」

「ポンです。」

(一発が消えちゃったじょ、でも一発が無くてもいけるじぇ。)

(清澄、またもや南場で攻めてきた。また振り込むかも・・・)

「それだぁ!ロン!リーチ平和純チャン三色ドラ1で16000だじぇ!」

(くっ、やっぱり直撃された・・・手痛い失点だな。)

~観戦室~

「友理奈は対々を作る事が多いから安牌が少ないんだよな。」

「確かに、友理奈は同じ牌を2枚3枚持っている事が多いですからね。」

「そう言う意味で考えたら~、友理奈ちゃんって一葉ちゃんの劣化番って感じがするよね~。」

「違いますよ焦華さん、というか、むしろ逆かもしれません。」

「えっ?だって、一葉ちゃんは三色同刻と三暗刻が確定してるから友理奈ちゃんよりも稼げるじゃない。」

「私は一回鳴いたら単騎待ちになってしまうんですよ。だから和了まで辿り着けない事が多いのです。友理奈は和了のスピードも和了率も、多分総得点数も私よりも上だと思います。それに、友理奈と対局すると、いつも負けてしまいますしね。」

「へぇ、そうだったんだ。でも私、失礼だけど友理奈ちゃんと初めて対局した時に『この子はパッとしないな。』って思ったんだよね。真紀ちゃんや一葉ちゃんみたいに突出した物を持ってなかったから。ただ鳴いて対々を目指すプレイヤーはざらにいるしね。だから真紀ちゃんを狙い撃ちしてたんだよ。」

「やっぱりあの四連続直撃は故意でしたか・・・」

「うん、ごめんね~。自信満々な真紀ちゃんを見てたら色々と折りたくなっちゃって~。」

「貴方って人は本当に・・・」

「でもでも~、友理奈ちゃんに突出した物が無いのは事実だよね?」

「確かにそうかもしれません。特に小学生の時は。ですが、友理奈は努力家なんです。能力的な物に恵まれなかったのに、ウチらに勝つ為に色んな特訓をしていたんです。それが今の友理奈を作っているんですよ。」

「ふ~ん、そうなんだ。」

~南二局~ 親:片岡優希

永水 146100

清澄 116100

千里山 80300

劒谷 57500

(もう南二局なのに、こんな点数じゃ終われない。それに、またおっきな和了りが来るかもしれない。嫌だわもー!)

(よしっ、さっきの和了りで牌も乗ってきたじぇ。このまま押せ押せで行くじょ!)

「ポン。」

(あぁ、また永水にやられちゃう。でも、この配牌なら、行けるかも!行っちゃおうか!)

「リーチ!」

(劒谷のリーチ、さっきも大きい和了りがあったから注意しないとだな。なら、一発を消しておこう。)

「ポン。」

(これで一発が消えた。これなら少しは低くなったかな?)

「それです!ロン!」

(なっ、また放銃。こんなに放銃されるのは久しぶりだ。やっぱり手強い相手なんだな。)

「リーチ平和清一一通一盃口で、24000です!」

(さ、三倍満!?)

(この人、凄いじょ。)

(なんやこいつ、これまでほぼ何もしとらんかったのに。)

~劒谷高校控え室~

「おぉ、美桜ちゃんがやってくれましたよ!」

「美桜ちゃんはたまに大きい当たりが出ますからね。」

「あれ、直撃されると痛いですよね。」

「でもこれで、千里山に逆転でー!」

「このままこの点数をキープしてくれれば良いんだけど。」

「大丈夫ですよ。あれくらいの点数なら、私が逆転させられますよ。」

「でも、あの三校相手だよ?」

「それに関しても大丈夫です。次鋒は三校とも私に比べたら全然強くないですから。私が2位まで上がって、中堅で耐えて、森垣先輩がまた稼げばせめて2位抜けは出来ると思いますよ。」

「次鋒戦頑張ってね梓!期待してるよ!」

「任せて下さい。」

~南三局~ 親:椿野美桜

永水 122100

清澄 116100

劒谷 81500

千里山 80300

(これは、予想以上に手強いですね。でも、私もやられっぱなしで終わる訳には行かないんですよ!)

「ポン。」

(鳴いてきたじょ。)

(この親番は簡単には流させない!)

~清澄高校控え室~

(わっ、あれ・・・)

「咲さん?どうしたんですか?」

「あっ、いや、何でも無いよ。」

「?そうですか。」

~対局室~

(たった今ポンした3ピンが重なった。少しでも稼ぎたいしカンしちゃうか。)

「カン。」

(ドラが増えてくれると助かるんだけど・・・あっ、引けた。)

「ツモ。嶺上開花タンヤオ清一対々ドラドラ。6000・12000です!」

(うわっ、また取り返してきたわこいつ。ほんまに凄いわ、早乙女友理奈。)

(この人、凄いじょ・・・)

(親被りで半分取られてしまいました。)

(次もこのまま行く!)

~南四局~ 親:上野望

永水 146100

清澄 110100

千里山 74300

劒谷 69500

(やっぱり、永水の人、強い。でも、私も負けてない!いくら梓ちゃんだってこの点差は厳しいはず、私が頑張らなくちゃ!)

「チーです。」

(千里山、先には和了らせない!)

「ポン。」

「っ、ポンです!」

「ぽ、ポンだじぇ!」

「チーです!」

(なにこれもー、皆鳴いてばっかりで全然手番が来ない・・・)

~8巡目~

「ツモです!中のみ、500オールです!」

(また千里山の人に和了られたじょ・・・)

(止められなかった、プラス5万には出来なかったか・・・)

「一本場です!」

(あっ、そうか、上野望さんはチェックメイトを狙っているから和了り止めしないのか!ならまだいける!)

~南四局一本場~ 親:上野望

永水 145600

清澄 109600

千里山 75800

劒谷 69000

(ここからでもまだ間に合う、ここで終わらせる!)

(本当に、有り難いですね。上野望さんには感謝してもしきれないですよ。だからせめて、最後は華やかに終わらせて上げます。連荘しなければ良かったと後悔する事になるでしょうが。)

「ツモ。四暗刻。8100・16100。」

(なっ!?)

(うわっ!?)

(嘘やろ・・・)

『永水女子高校の早乙女選手が役満炸裂です!』

『これはお見事ですね。上野選手が連荘しようとしているあの状況で、鳴かずに手を作り上げるとは、ワンダフルですね。』

「ありがとうございました。」

「ありがとうございます・・・」

「お疲れ様だじぇ・・・」

「お疲れっしたぁ・・・」

 

 

~対局結果~

永水 177900

清澄 101500

劒谷 60900

千里山 59700




2回戦の先鋒戦を書きましたが、友理奈の打ち方は自分と似ていて、書いてて結構楽しかったです。まぁ、私は友理奈みたいに良い配牌にはなってくれませんが・・・
それはさておき、次は次鋒戦です。ご期待ください。


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第32話 二回戦次鋒前半戦

先鋒戦が終わり、対局した四人が各々の控え室に戻っていた。

~清澄高校控え室~

「ただいま帰ったじぇ。」

「お帰りなさい。」

「あの三人相手に2位は凄いです。流石片岡先輩です!」

「ほうじゃな、大したもんじゃ。」

「凄いよ優希ちゃん!」

「でも、永水の人に大差を付けられちゃったじぇ・・・」

「あの人は真紀ちゃん達と同等位のレベルだって言ってたから仕方無いと思うよ。しかも鹿児島で個人戦2位だったらしいし。」

「咲ちゃんだって汐見真紀と同じ位のレベルだし個人戦も2位だじょ、もしかして自慢か!」

「そんな事無いよ!」

「そうですよ優希、咲さんは自慢するような人ではありませんよ。」

「そうです!能ある鷹は爪を隠すんですよ!宮永先輩は能ある鷹です!」

「そんな事無いよ。言い過ぎだよマホちゃん。」

「言い過ぎじゃないです。宮永先輩はとっても凄いです!」

「そうかな?」

「そんな事より、部長の試合が始まりますよ?」

「おぉ、インターハイなのを忘れかけてたじぇ。」

「はぁ、もう、しっかりして下さい。」

~千里山女子控え室~

「ただいま帰りました・・・」

「まったく、4万点以上取られて、更にラスとか、何しとんねん。」

「ほんまにすんません、永水と清澄が予想以上に手強くて。」

「確かに永水の早乙女友理奈は強かったわ。でも、次はその言い訳、通用せんからな。」

「はい、準決勝では永水が来ても清澄が来ても勝ってみせます!」

「よっしゃ、その意気や!」

「じゃあ、とりあえず二階堂先輩に苦労させない為に私が稼いできますよ。」

「おー泉、頼んだぞ。」

「頑張ってきます。」

「すみません泉先輩、頼みます。」

「頑張って下さい。」

「頑張ってなー。」

「はい!」

~永水女子控え室~

「ただいまです。」

「おぉ!お帰り~友理奈。しっかし、友理奈には驚きだよ。清澄と千里山が相手だって言うのに8万点近く取っちゃうんだからさ~。」

「本当に友理奈ちゃんが永水に居てくれて良かったって改めて感じるよ。」

「二人ともありがとう、湧ちゃんも頑張って。」

「できるだけ友理奈の点を守るよ。」

「頑張れ。」

「頑張って。」

「じゃあ、行ってきます!」

~劒谷高校控え室~

「あんなに取られちゃって、申し訳ありません。」

「気にしないで、相手が相手だったし。」

「大丈夫、後は私と森垣先輩で追い付くから。」

「私に任せるでー!」

「梓ちゃん、森垣先輩、ありがとうございます。頑張って下さい。」

「じゃあ、そろそろ時間なんで行ってきます。」

「うん、期待してるよ。」

「お任せ下さい。」

 

 

『さぁ、次鋒戦の対局選手を紹介します。まずは先ほどの先鋒戦を圧倒的な差で終わらせた永水女子高校の早乙女友理奈選手からバトンを受けとるのは永水女子高校一年の十曽湧選手。そして、2位の清澄は、部長の染谷まこ選手にバトンタッチです。3位の劒谷の次鋒は1年の小鳥遊梓(たかなしあずさ)選手。そして北大阪代表、名門千里山はまさかの4位で先鋒戦を終わらせてしまいました。次鋒の二条泉選手、この窮地を脱する事が出来るのでしょうか。面子が揃いました。』

 

 

~場決め結果~

染谷まこ:東

二条泉:南

十曽湧:西

小鳥遊梓:北

『対局選手が所定の位置に着きました。清澄高校の染谷選手が起家で、次鋒戦開始です!』

 

 

~東一局~ 親:染谷まこ

永水 177900

清澄 101500

劒谷 60900

千里山 59700

(起家になったのはええんじゃけど、千里山はそこそこやりよるし、他の二人は未知数じゃし、どうすればええんじゃろうな。)

(千里山がラスとか、色々とマズいな。私がやったらなあかんな!)

~7巡目~

「リーチ。」

(とりあえず稼ぐで!)

(千里山のリーチ、安牌はそこそこあるけぇ、オリきる。)

(こりゃあやられちゃうかな~。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンヤオ、2000・3900。」

『千里山女子二条選手、先制ツモ。これで点数が劒谷を上回り3位に浮上です。』

『なかなかの和了りですね。タンヤオのみだった手をリーチ一発ツモで満貫近くまで持っていきましたからね。』

『そうですね。東一局は千里山女子の和了となりました。』

~東二局~ 親:二条泉

永水 175900

清澄 97600

千里山 67600

劒谷 58900

(このまま連荘したる!)

(千里山をこのままにしとったらやられるな。)

(もう少し様子見してもいいかな?)

~8巡目~

「ツモ!6000オール!」

(くっ、また和了られた。)

(これ、友理奈が稼いだ点が無くなっちゃうかもしれないね~。)

(成る程、やっぱり大した事無いな。よしっ、次から始めようっと。)

~東二局一本場~ 親:二条泉

永水 169900

清澄 91600

千里山 85600

劒谷 52900

(千里山が怖い、もうそろそろ抜かれるわ。それは防がんといけんのぉ。折角優希がプラスで終わらせてくれたんじゃから出来るだけ多く残さんといけんのぉ。)

「チー。」

(劒谷の1年、こんな点差があるのになんでこんなに余裕綽々な顔しとるんや?もしかして、何かあるんか?)

「あ、それっす。ロン。1000は1300点です。」

(やっす!なんやそれ。これだけの点差やのにそんな安手とか、諦めとるんか?)

~東三局~ 親:十曽湧

永水 169900

清澄 91600

千里山 84300

劒谷 54200

~5巡目~

「ツモっす、300・500。」

(また安手?速いけどこの点差ならもっと攻めるべきじゃろ。)

(どういうつもりなんや?)

(これ、なーんかヤバい気がするわ~。)

~東四局~ 親:小鳥遊梓

永水 169400

清澄 91300

千里山 84000

劒谷 55300

(さぁて、やっと親番だよ、ほんじゃま、始めますか!)

~7巡目~

「リーチっす。」

(こいつ、これまでリーチなんかしとらんかったやん、なんでや・・・)

(こりゃあ防げんかもしれんな・・・)

(どれを出せば良いのか分かんないよ~!)

「それっす、ロン。リーチ一発タンヤオ平和。12000っす。」

(親番になって急に高い手を和了り始めよった!?こいつ、鶴賀の大将と似たような感じなんじゃろうか?)

(なんか、1年前の二階堂先輩に似てるな。)

~千里山女子控え室~

「あの劒谷の1年、1年前のあたしそっくりやな。」

「せやな、子の時は安手で流して親番で稼ぐ。去年の渚を鏡に写しとるみたいやな。」

「あの頃のあたしも子で和了る意味なんて無いって思とったな。」

「もしあの1年が去年の渚位強いんやったら、ヤバいかもしれませんね。」

~東四局一本場~ 親:小鳥遊梓

永水 157400

清澄 91300

千里山 84000

劒谷 67300

~5巡目~

「リーチっす。」

(やっぱり親番だと強いんか、去年の二階堂先輩に似とるけど、私、去年の二階堂先輩にも勝った事無かったしな。勝てる気がしないわ・・・)

(またやられるかな~・・・)

「ツモっす、リーチ一発ツモ混一で6100オールっす。」

(くっ、またやられた。しかも捲られた・・・)

『劒谷高校小鳥遊選手が親跳ツモ。これで一気に2位に浮上しました。』

『彼女、親番になってから攻めますね。』

『確かに、小鳥遊選手は子の時は安手を和了していましたからね。』

『子の時に安手を和了るというのが裏目に出なければいいですけどね。』

『そうですね。』

~東四局二本場~ 親:小鳥遊梓

永水 151300

劒谷 85600

清澄 85200

千里山 77900

(これ以上やられる訳にはいかへんな。)

「チー。」

(清澄の人、そういえば守りが硬い人やったな、どうにかこの連荘止めてくれへんかな。)

「リーチっす。」

(またリーチ、もう勘弁してぇな!)

(また一発で来てくれないかな~。)

「チー。」

(おっ、一発消されちった。まぁ点数変わらないから良いんだけどね。)

(清澄はタンヤオか三色を狙っとるはずやな。なら、1枚ドラも見えとるし5ピンは切らん方がええか。)

(清澄、止めてくれないかな~。)

(くそっ、一発はならずか、まぁしゃーないか。)

「ツモ。タンヤオ鳴き三色赤2枚で2200・4200じゃ。」

(なっ、私が狙ってた赤5ピンを喰いとられた!?やっぱり優勝候補の学校の部長なだけあってただ者じゃないみたいですね。)

~清澄高校控え室~

「おぉ!部長がやったじぇ!」

「あの状態から満貫を和了るなんてね。」

「部長さんカッコいいです!」

「このまま頑張って欲しいですね。」

「そうですね。」

~南一局~ 親:染谷まこ

永水 149100

清澄 94800

劒谷 80400

千里山 75700

~3巡目~

「チーっす。」

(やっぱり親番じゃない時は安手で流そうとするんじゃな。)

「ポンっす。」

(また鳴かれた。これはまた流されるかもしれへんな。)

「ツモっす、300・500。」

(やっぱり速くて追い付けんわ。)

(これは、友理奈に怒られちゃうかもだね~。)

~南二局~ 親:二条泉

永水 148800

清澄 94300

劒谷 81500

千里山 75400

~8巡目~

「ツモっす、400・700。」

『劒谷高校の小鳥遊選手、先程から安手ばかりですね。』

『彼女にとって子番はどうでもいいのでしょうね、親番で稼いで子では軽く流す。それが彼女のプレースタイルのようですね。』

『成る程。』

~南三局~ 親:十曽湧

永水 148400

清澄 93900

劒谷 83000

千里山 74700

~9巡目~

「ロンっす。1000。」

(振り込んだけど、そんなに高くないから怖くないわ。やっぱり親番にしか興味無いんかいの?)

(次は劒谷の親番、気ぃ引き締めてこ。)

~南四局~ 親:小鳥遊梓

永水 148400

清澄 92900

劒谷 84000

千里山 74700

「リーチっす。」

(ダブリー!?)

(マジかー・・・)

(あらら~。)

「ツモっす、ダブリー一発ツモタンピン三色で8000オール。」

(高いわ!2巡目で8000オールとか、ありえんじゃろ!)

(これ、連荘されるんかな・・・)

「んー、後半戦もあるし和了り止めでいいっす。」

(助かった・・・)

(この調子を維持されとったらヤバかったわ・・・)

(とりあえず前半は耐えられましたね~、後半辛いな~・・・)

~試合結果~

永水 140400

劒谷 108000

清澄 84900

千里山 66700

『次鋒前半戦終了、1位は永水で変わらず、劒谷の小鳥遊選手が活躍して劒谷高校は2位に浮上。3位の清澄高校は点数を多く取られてしまい、3位。4位は変わらず千里山ですが、二条泉選手は若干のプラスで前半戦を折り返します。』

(とりあえず原点までは戻せたっすね、次の半荘でどれくらい清澄と千里山を削れるかで勝負が左右しそうっすね。私が頑張らなくちゃっすね!)

 




諸事情により更新が1日遅れてしまいました。大変申し訳ありませんでした。


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第33話 二回戦次鋒後半戦

前半戦が終わり、後半戦がスタートした。

~場決め結果~

小鳥遊梓:東

十曽湧:南

染谷まこ:西

二条泉:北

『さぁ、次鋒後半戦開始です!』

~東一局~ 親:小鳥遊梓

永水 140400

劒谷 108000

清澄 84900

千里山 66700

(やった、いきなり親番だ。連荘して永水捲っちゃおう!)

(いや~、劒谷が予想以上に強いせいであれを使いたくなっちゃったよ。使うとめっちゃ疲れるし、春さんに怒られちゃうから嫌なんだけどなぁ、しゃあないか。やっちゃおう!友理奈ごめん、ちょっと借りるよ。『憑依!』)

~永水女子控え室~

「あっ、友理奈ちゃんが寝ちゃいました。という事は、湧ちゃんが憑依を使っちゃったという事でしょうか?」

「あれは強いけど戻すのが面倒。巴がいないせいで私一人でやらなきゃいけないから、やるなって言ってたのに。」

「ま、まぁまぁ、このまま負ける訳にもいかないじゃないですか。」

「なら、せめて今日の対局が終わってからにさせて。対局前にあれは流石に無理。」

「それは勿論です。友理奈ちゃんが眠り続ける事以外は支障が無いですからね。まぁ、友理奈ちゃんからしたら、次鋒後半戦が始まったと思ったら副将戦が始まっているって状態になるかもしれませんが。」

(とりあえず、使うからには友理奈並に取って貰う。)

~対局室~

「ポン。」

(永水の人、さっきまで何もしとらんかったけど、動き始めたな。何かするつもりなんか?)

「リーチっす!」

「ポン。」

(一発消された。これじゃあ点数下がっちゃうよ!)

「ロン。タンヤオ対々。3900。」

(なっ、私に手順が回る前に和了られた。私が親番で1度も和了れないなんて・・・永水の人、何をしたの?)

(この人にも何かありそうやな。)

(うっわぁ、友理奈は本当にやり易いな~!こんなにスラスラ和了出来て良いな~。私も素の実力がこれくらいならな~。)

『むむっ、これは・・・』

『戒能プロ、どうされましたか?』

『・・・憑いてますね。』

『えっ?何がですか?』

(今年の永水の次鋒、まさかこんな者を隠し持っていたとは・・・)

~東二局~ 親:十曽湧

永水 144300

劒谷 108000

清澄 84900

千里山 62800

(永水の人が何をしたのかは分からないけど、邪魔されたから邪魔し返してやるっす!)

「チーっす。」

(安手で流してやるっす。)

「ポン。」

(させないっすよ。)

「ロンっす。中のみ、1300っす。」

(ん~、そんなに上手くいかないか~、友理奈は和了らないと配牌とかツモとか良くならないしね~。でも次の親番くらいには爆発出来るんじゃないかな?)

~東三局~ 親:染谷まこ

永水 143000

劒谷 109300

清澄 84900

千里山 62800

~3巡目~

「ポン。」

(また鳴いてきよった。)

(あっ、今清澄部長が出したの、当たり牌だ。友理奈だったら和了ってただろうな~。だけど私だったら・・・)

「ツモ。タンヤオ三暗刻対々ドラドラ。3000・6000です。」

(7700を直撃するより12000をツモりたい。)

~観戦室~

「なんだか、永水の十曽湧さんが友理奈みたいな打ち方をしていますよ。もしかして友理奈に打ち方を教わったのでしょうか?」

「いや、あれは、友理奈の力だけを吸いとってるような感じだな。友理奈だったら7700を和了ってたから、意識は本人の物だろうな。だから、夢乃マホと似たような感じなんじゃないか?一人限定でコピー可能って感じなんじゃないかな。」

「成る程、だとしたら永水は友理奈を二回出したような状況になるかもしれませんね。」

「いや、友理奈は和了率重視の打ち方だけど、あの人は火力の方を重視してるから穴がある。多分劒谷辺りがそこを突いてくると思うよ。」

「そうですか。」

~千里山女子控え室~

「これはあれですね。」

「あぁ、永水の次鋒の奴が先鋒と同じ事しとるな。」

「あぁ、これ、真似とかじゃなくて、先鋒の魂的なやつを一時的に借りてますね。」

「えっ、心音、そんな事も分かるんか!?」

「いや、さっき永水の次鋒の人が『憑依!』って言ってたんで。」

「あんた、テレビ越しでも心読めるんかいな。」

「まぁ、目を見れば分かりますからね。」

「凄すぎやな、あんた、政治家とかの記者会見のニュースとかどんな気持ちで見とるんや?」

「あぁ、この人嘘付いとるな~とか、本当の事言っとるのに誰にも信じられんくて可哀想やな~とかですかね?」

「・・・あんた、警察になる事オススメするで。」

「警察やなくても、心読めるんやったら引く手あまたやろうな。」

「そうですね・・・ってか、泉先輩見ましょうよ!」

「おー、そうやったわ。」

「まぁ、泉の負ける様見るより心音の話する方がおもろそうやけどな。」

「まぁまぁ、そう言わずに。」

~東四局~ 親:二条泉

永水 155000

劒谷 106300

清澄 78900

千里山 59800

(私の親番、絶対に稼いだる!)

~6巡目~

(よし、張ったで。)

「リーチ。」

「ポン。」

(永水、ポンポンしすぎや!どんだけすりゃ気がすむねん。)

「チーっす。」

(こっちも鳴いてきたわ。でも、お陰で来てくれたわ!)

「ツモ。リーチツモ純チャン三色一盃口で8000オール!」

(止められんかった、今ので捲られたわ・・・)

(このまま連荘したる!)

「一本場!」

~千里山女子控え室~

「あっ、ほら、泉先輩和了りましたよ!」

「ほー、泉が親倍なんて、珍しい事もあるもんやな。」

「いつも良くて跳満でしたからね。」

「先輩方、もう少し喜んであげましょうよ・・・」

~東四局一本場~ 親:二条泉

永水 147000

劒谷 98300

千里山 83800

清澄 70900

~2巡目~

「ポン。」

~4巡目~

「チーっす。」

(なんか、永水と劒谷が速攻しとるわ・・・)

「ロン。混一対々で8300です。」

(ぬわっ、私が直撃受けるとは・・・)

(劒谷との差が縮まった。これはチャンスや!せめて2位で次鋒戦を終わらせるで。)

~南一局~ 親:小鳥遊梓

永水 155300

劒谷 90000

千里山 83800

清澄 70900

(この親番で稼がなきゃ、このままだと私がマイナスで終わっちゃうっす。それだけは嫌っす。)

「ポン。」

(永水の人、また鳴いてきた。でもここで和了らないといけないから、この人には和了らせないっす!)

~6巡目~

「リーチっす!」

「ポン。」

(一発消された。でも一発が無くても点数は変わらない。しかも高目がきてくれれば・・・うわっ、安目引いちゃった。まぁ、しゃあないっすね。)

「ツモ。リーチツモ三暗刻小三元。8000オールっす。」

(これ、白引いとったら大三元じゃったんか・・・)

(もし白やったら2倍の16000オールやったんか。危なっ!)

(ポンしといて正解だったね~。)

「一本場です。」

~南一局一本場~ 親:小鳥遊梓

永水 147300

劒谷 114000

千里山 75800

清澄 62900

~2巡目~

「ポン。」

(また鳴いてきたっすね。)

「ロン。混一対々ドラ3、12300。」

(なっ、速すぎやろ!まだ3巡目やろ!)

(親、流された・・・)

~南二局~ 親:十曽湧

永水 159600

劒谷 114000

千里山 63500

清澄 62900

(この局は絶対に和了らせないっすよ。流すっす!)

「ポンっす。」

(ツモ番飛ばされたね~。)

「これで聴牌っす。これでいけるっす!)

「チー。」

(清澄が鳴いてきた!?これ、まさか・・・)

「ロン。タンヤオのみ、1000点じゃ。」

(また私の和了りを止めましたっすね。)

(清澄に捲られた・・・)

(こっからじゃ、この調子でいく。)

~南三局~ 親:染谷まこ

永水 159600

劒谷 113000

清澄 63900

千里山 63500

(このままやられる訳にはいかないよね~。)

~8巡目~

「リーチじゃ!」

(今回清澄の部長さんが鳴かなかったお陰で私もこれ作れちゃったよ。ごめんね部長さん、私の方が、いや、友理奈の方が運がいいみたい。)

「ツモ。四暗刻。8000・16000です。」

(なっ!?)

(これは・・・)

(よりによって役満の親被り・・・)

『永水女子高校の十曽選手役満ツモ!これで縮まっていた点差を一蹴しました!』

『いやはや、これはエクセレントですね。』

~永水女子控え室~

「湧ちゃんが役満を決めましたよ!」

「やっと決めた・・・」

「これで友理奈ちゃんの点数、いや、それ以上の点数になりましたね!」

「まぁ、友理奈ならこれくらい・・・」

「素直に誉めてあげましょうよ春さん!」

「ま、まぁまぁね。」

「ふふっ、これで永水の準決勝進出はほぼ決まったも同然ですね!」

「うん、今回の姫様はかなり強い神様が入ってるから、負ける事はないと思う。」

「これで優勝も見えてきましたね。頑張って湧ちゃん!」

~南四局~ 親:二条泉

永水 192600

劒谷 105000

千里山 55500

清澄 46900

(わしだけで点数が半分以上削られよった・・・最悪じゃ。)

(あっ、これ、このままだと私がマイナス収支で終わっちゃうっす!それは絶対にあり得ないっすよ。)

(このままだと、二階堂先輩にめちゃくちゃ怒られる。ここは何としても連荘しなければ!)

(これ、直撃さえされなければ友理奈の点数守れるからガンオリでいいよね。)

~7巡目~

「リーチっす!!」

(あら、親番以外は安手なのにリーチしてきたね~。)

(劒谷、親番じゃなくても稼げるんか・・・?)

(この跳満の手、子だから12000だけど親番だったら18000になる。子だとそれが勿体無くて子で高い手を和了らないようにしていた。というか、今でも勿体無いからこんな事したくない。けど、私がマイナス収支で終わる方があり得ない!だから!)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一中で3000・6000っす!」

(和了らない訳にはいかないんすよ!)

(うわっ、やられたわ・・・)

(ここに来て跳満ツモ、しかも親被りて・・・)

「お疲れ様っした!」

「お疲れ様です~。」

「お疲れさん・・・」

「お疲れ様です・・・」

 

 

~次鋒戦結果~

永水 189600

劒谷 117000

千里山 49500

清澄 43900

 

 

~永水女子控え室~

「ただいま~。」

「湧ちゃんお疲れ!いやぁ、友理奈ちゃんを使ったとはいえすごかったよ!」

「ありがとう。いや~私もここまでできるとは思っても見なかっt」「湧、こっちに来て。」

湧が喋っていると、かなり怒っている表情の春が湧に話し掛けた。

「ハイ、イマイキマス・・・」

「疲れるから友理奈を元に戻すのは私の対局が終わってからにするから。」

(あっ、それだけか~、良かった。まぁ、点数も稼いだもんね!)

「分かりました。」

「それと、今日は大将戦が終わるまでここに正座。」

「・・・ハイ。」

~劒谷高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「お疲れ様でー!」

「さっきの跳満格好良かったよ!流石梓ちゃんだね!」

「いやぁ、それほどでもないっすよ。」

「次は私だね。じゃあ、この勢いを止めないように頑張るよ。」

「頑張って下さい。」

「うん、行ってくる。」

~清澄高校控え室~

「ごめん、わしが駄目なばかりに、あんなに点数取られて・・・」

「い、いやいや、そんな事ないですよ!頭を上げて下さい。」

「部長、調子が悪い時は誰にでもあります。私だって県代表の時に酷い失点をしてしまいましたし、気に病まないで下さい。」

「そうです!マホが部長の敵をとってきますから!」

「おぉ、マホ、今回も県の時みたいに暴れてくれ。」

「任せて下さい!マホ、頑張ります!」

「マホちゃん頑張ってね!」

「全力だじぇ!」

「頑張って下さい。」

「はい、行ってきますです!」

~千里山女子控え室~

「た、ただいまです・・・」

「い~ず~み~!!!!」

「ひぃ!」

(やっぱり二階堂先輩めっちゃキレてる!殺されるっ!・・・ってあれ?)

「お前と望を色々とするんは今日の二回戦が終わってからや。」

(はぁ、命拾いした・・・)

「じゃあ、ちょっくら無双してくるわ。」

「が、頑張って下さい。」

「あっ、因みに、今日もしも負けるなんて事になったら、面白い事が起こるかもな。」

(面白い事って、面白いのはあんただけでしょ!!)

(これ、大将戦でウチが負けたらウチも殺されるやん・・・)

「じゃあ、行ってくるわ。」

 

中堅戦が始まろうとしていた。




憑依という言葉は既に霊になった者や狐などにとり憑かれる事を言うため、湧の能力とは近くとも遠からずと言った感じですね。ですが私の貧相なボキャブラリーには憑依という言葉しかヒットしなかった為にこの名前にしました。はい、どうでもいい話しちゃいました。
次は千里山のエース二階堂渚と主人公の夢乃マホの直接対決です。ご期待下さい。


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第34話 二回戦中堅前半戦

夢乃マホと千里山のエース二階堂渚の直接対決です。


『さぁ、次鋒戦が終わり、折り返し地点である中堅戦が始まろうとしています。それでは各高校の中堅の選手を紹介致します。まずは現在トップの永水女子からは去年も出場した滝見春選手が登場します。そして、2位劒谷からも去年出場した依藤澄子選手。次鋒戦での勢いそのままに行く事が出来るのでしょうか。そして3位の千里山女子からはエースの二階堂渚選手が登場します。そして4位になってしまった昨年度優勝校の清澄高校からは夢乃マホ選手が登場します。』

 

 

マホが対局室に入ると、そこには渚の姿があった。

(あの人、部長さんが言っていた千里山のエースさんですね。強そうです・・・)

「おっ、あんたもしかして、清澄の夢乃マホか?」

「えっ、なんでマホの事知ってるんですか!?」

「そら、優勝候補の対戦相手くらい知っとるやろ。」

「確かにそうですね。」

「しかもあんた、あたしと同じで団体決勝で最多得点だったらしいやん。ますます楽しみやわ。」

「そうですか、マホ、頑張って貴女を倒します!」

「ほう、言ってくれるやないの。ま、あたしも負ける気なんてさらさら無いけどな。せめてあたしを楽しませてくれや。」

「はい。」

マホと渚が話していると劒谷高校の依藤澄子と永水女子の滝見春が対局室に入ってきた。

(なんだか、一触即発って感じの雰囲気、怖い・・・)

(せめて、友理奈が稼いだ点数を守って明星に渡さなきゃ。)

『さぁ、対局室に選手が出揃いました。中堅戦、開始です!』

 

 

~場決め結果~

夢乃マホ:東

二階堂渚:南

依藤澄子:西

滝見春:北

 

~東一局~ 親:夢乃マホ

永水 189600

劒谷 117000

千里山 49500

清澄 43900

(まずはタコスぢからです!)

~2巡目~

「リーチ!」

(2巡目にリーチ!?)

(速いな、今のは清澄先鋒やんな。鳴けたら点数も下がるかもしれへんけど鳴けへん、しゃーないか。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラ1で6000オールです!」

(6000オールか。ちょっと痛いな、でもまだもう少しだけこいつを見ておきたい気もするな。)

「一本場です!」

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

永水 183600

劒谷 111000

清澄 61900

千里山 43500

「リーチ!」

(ダブリー!?)

(へー、ダブリーか。でも、大星淡を使たんなら回転しながらリーチかけてたはずやし、大星とはちゃうんかな。としたら、親番やし長野県3位の鶴賀学園大将やな。)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色で8100オールです!」

『清澄高校の夢乃選手、親跳に続き親倍和了です!』

『これは、凄いですね・・・』

(去年の獅子原爽とも違うしさっきの憑依とも違う。一体彼女は何者・・・?)

~千里山女子控え室~

「やっぱり清澄の夢乃マホ、強いですね。」

「やっぱり、冬室氷華を倒しただけはあんな。」

「えっ!?冬室氷華を倒した!?」

「なんや、知らんかったのか。地区大会で唯一冬室を倒した2年生って有名になっとったやん。」

「あぁ、その情報なら知ってます。でもそれは2年生ですやん、今年のインターハイに出てる訳無いやないですか。」

「それがな、飛び級したとかで今は清澄の高1らしいで。まぁ、それやからあそこにいるんやろうけど。」

「ホンマですか!?」

「冗談なんか言わへんわ。」

「そうなんですか、道理で二階堂先輩が連荘を止められない訳ですね。」

「ま、渚は止めようと思たら止められるやろうけどな。多分やけど次の局で渚、和了するで。」

「そうですか。」

~東一局二本場~ 親:夢乃マホ

永水 175500

劒谷 102900

清澄 86200

千里山 35400

(もう少し稼ぎたいですけど、絶対安全圏を使うのは勿体無い気がします。だったらここは、さっきの劒谷の小鳥遊さんで行きます!)

~5巡目~

「リーチ!」

(ここでリーチ、さっきの劒谷かな?だとしたらそこまで怖くないな。あたしも聴牌したし、行っとくか。)

「リーチ。」

(千里山のエースさんのリーチ、怖いです。でもマホも退きません!)

(残念やったな清澄、神様はあたしに味方してくれたようやで。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンヤオドラ2で3200・6200や!」

(和了られてしまいました。でも、次は小四喜が出来ます。大丈夫です!)

~東二局~ 親:二階堂渚

永水 172300

劒谷 99700

清澄 80000

千里山 48000

~3巡目~

「ポン。」

(よしっ、東をポン出来ました。後は北をポン出来れば完璧です。)

(小四喜をしようとしとるんやな。でも残念やったな。北はあたしの手元に2枚ある。そして・・・)

「リーチ!」

(先にあたしが和了る!)

(千里山のエースさんがまたリーチしてきました。どうしましょう、とりあえず安牌を処理しましょう。)

(清澄が降りた。これで役満手を1つ潰した!しかも一発で来てくれた。)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一で6000オールや!」

(そんな、小四喜を止められただけじゃなくて、親跳を和了られてしまうなんて・・・)

~千里山女子控え室~

「流石渚やな、夢乃マホの小四喜を止めたわ。」

「ここで清澄を止められたのは大きいですね。」

「しかもちゃんと連荘してますからね。」

「やっぱり二階堂先輩ってカッコいいですよね。」

「ま、エースやしもっと仕事してもらわな困るけどな。」

「部長、辛口ですね・・・」

「いや、渚ならそれくらいやってくれるはずや。たとえ夢乃マホが相手だとしても、渚は負けへん。」

~対局室~

「さぁて、一本場や!」

~東二局一本場~ 親:二階堂渚

永水 166300

劒谷 93700

清澄 74000

千里山 66000

~3巡目~

「リーチや!」

(またリーチですか・・・)

(千里山の二階堂さんの勢いを止められないよ・・・)

(安牌が無い。これかな。)

「それや、ロン。リーチ一発タンピン三色で18300。」

(親に振り込んでしまった。これ、ちょっとヤバそう。)

『千里山女子の二階堂選手が3連続で跳満ツモ!』

『彼女は高い打点を安定して取れる所が強みですね。』

『確かに、地方大会からの成績でも常にプラス収支でしたね。』

『流石は北大阪1位、ですね。』

『そうですね。』

(まぁ、1位と言っても、荒川憩にほんの少しだけ収支が勝っていただけで、直接当たった事は無かったですね。荒川憩と彼女なら、どちらが強いんでしょうか?でもまぁ、それは個人戦で分かるでしょうね。)

~対局室~、

「二本場や!」

~東二局二本場~ 親:二階堂渚

永水 148000

劒谷 93700

千里山 84300

清澄 74000

(これ以上やられる訳にはいきません。だから・・・)

「ポン。」

(清澄が鳴いてきた。んー、これは恐らく永水の先鋒やろな。真似されてばっかで可哀想やな。)

「ツモ!清一三暗刻対々で4200・8200です!」

(4巡目に清一で倍満ツモ!?捲られた!それに、よく見たら劒谷も捲っとるやないか。どうしても他を落としたいんやな。)

~東三局~ 親:依藤澄子

永水 143800

清澄 90600

劒谷 89500

千里山 76100

(さっきは小四喜を阻止されてしまったので、今回は決めます!)

「ポン。」

(清澄が9ピンをポン、また何か高い手張ってそうやわ。とりあえず9は出さんでおこう。)

(流石に1副露はまだ大丈夫なはず。)

「それです!ロン。清老頭。32000です!」

(やっぱり清老頭か。しかし、1位も捲ったな。こいつ、なかなかやるやないか。夢乃マホやったっけか?気に入ったで!)

(これは、流石に・・・)

『清澄高校夢乃選手、永水女子滝見選手に清老頭直撃!トップに躍り出ました!』

『この清澄の夢乃選手、予想以上に強いですね。』

(これくらいなら、そこら辺のプロ相手なら余裕で勝ってしまいそうですね。)

『さぁ、東三局が終わり東四局が始まります。』

~清澄高校控え室~

「うわっ、やっぱりマホちゃん凄いね。一気にトップになっちゃったよ。」

「そりゃあのどちゃんと私が育てたからな!」

「流石じゃのぉ。」

「マホちゃん、この調子で頑張って下さいね!」

~対局室~

(このまま引き離します!)

~東四局~ 親:滝見春

清澄 122600

永水 111800

劒谷 89500

千里山 76100

(ここで役満手を使ってしまうのは勿体無いですね。それに、また妨害しかねないです。ここは少し様子見です。)

~5巡目~

「リーチ。」

(やっぱり千里山の人が攻めてきましたね。温存しておいて正解でした。)

(今度は千里山!?これ、絶対ラスになるよ・・・)

(またやられる・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ清一で4000・8000や!」

(倍満・・・ちょっと痛いです。)

(このままでは千里山にも抜かれてしまう。守らなきゃ。)

~南一局~ 親:夢乃マホ

清澄 118600

永水 103800

千里山 92100

劒谷 85500

(夢乃マホの親番、連荘させずに流して、次のあたしの親番で夢乃マホを捲る!よしっ、やったるで。)

~4巡目~

「ポン。」

(よし、行ける!)

「リーチです!」

(夢乃マホが来とる!?でも、この局はあたしが和了る!)

~8巡目~

「ツモ!混一三暗刻対々で3000・6000や!」

(危なかったわ。でも、追い付いたで!)

(やられました、親被りの6000とリーチ棒で7000点もマイナスです・・・)

~南二局~ 親:二階堂渚

清澄 111600

千里山 105100

永水 100800

劒谷 82500

(マホの親、流されてしまいました・・・なら、流し返します!絶対安全圏です!)

「リーチ!」

(大星淡のダブリーを使ってきたか。あたしに連荘させない気なんやな。)

(清澄の中堅の人、凄すぎる。こんなの勝てないよ・・・)

(配牌が悪い・・・)

(これ、予想以上にキッツいわ・・・)

~11巡目~

「カン。」

(カンされた、これはヤバいで・・・)

(やられちゃう・・・)

~13巡目~

「ツモ!ダブリーツモタンヤオドラ4。4000・8000です!」

(さっき跳満で親流したら倍満で返されたな・・・)

(千里山と清澄が凄すぎる。半荘二回だからもう1回半荘しないといけないなんて、もうこの二人嫌だ・・・)

~南三局~ 親:依藤澄子

清澄 127600

千里山 97100

永水 96800

劒谷 78500

(このままやったら清澄に負ける。それだけは防がんと!)

(千里山を引き離します!)

~6巡目~

(よし、張ったで。)

「リーチ。」

「っ、ポン!」

(一発消しの鳴きか・・・でも、)

「それや、ロン。リーチタンピンドラ3で12000や。」

(ポンしたら直撃されてしまいました、やっぱりフィッシャーさんじゃなくてもっと強い能力を使えば良かったのでしょうか・・・)

~南四局~ 親:滝見春

清澄 115600

千里山 109100

永水 96800

劒谷 78500

(なんか、牌が乗ってきとるな。どんどん有効牌が来るわ。もう聴牌したわ。)

「リーチ!」

(速い、まだ3巡目なのに・・・)

(千里山の人がどんどん和了るせいでマホが負けてしまいます。でもこの手牌じゃ勝てないです・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一、3000・6000!」

(そんな、この人、高い手を何度も和了り過ぎです・・・)

(これは、後半辛いわ・・・)

 

~中堅前半戦結果~

千里山 121100

清澄 112600

永水 90800

劒谷 75500

 

『中堅前半戦終了!清澄高校の夢乃選手、そして千里山女子高校の二階堂選手が圧巻の攻めを見せました。現在のトップは最後に怒濤の追い上げを見せた千里山女子、そしてそれを追いかけるのは清澄高校。そして圧倒的な差を吐き出してしまった永水女子は順位を3位に落としています。』

『まぁ、清澄と千里山が強すぎましたからね、仕方ない気もしますね。』

『そうですね。』

(春がまさかあそこまで失点するとは・・・)

『そして、中堅戦開始時2位だった劒谷高校は4位に落ちてしまいました。後半戦で巻き返す事は出来るのか、はたまた清澄と千里山がリードを広げてしまうのか、10分間の休憩の後、後半戦を開始します!』

 

 

「お前、夢乃マホやったよな?」

「は、はい、夢乃マホです。」

「あんた、なかなか良かったで。まぁ、1年に負ける訳にはいかへんから勝たせてもろたけどな。」

「マホ、悔しいです。後半戦では、絶対マホが勝ちます!貴女を越えて見せます!」

「ははっ、やっぱりお前おもろいわ。気に入ったで。あたしは二階堂渚、渚って呼んでかまへん。」

「はい、分かりました、渚さん。」

「じゃあ、後半戦楽しみにしとるよ、マホ。」

「はい!」

(今日まで団体戦は雑魚相手に点稼ぐ作業やと思っとったけど、これは、面白い事になりそうやで。)

(マホ、絶対に渚さんを越えて見せます!さっきは後半戦の為に残しておいた能力も有りましたが、後半戦ではそれを全て渚さんにぶつけます!負けませんよ!)

マホは、気持ちを強く持ち、後半戦に臨もうとしていた。まもなく後半戦が始まる。




そういえば、咲-Saki-阿知賀編が実写化ドラマ化、映画化するそうです。正直びっくりです。憧とか穏乃の服装とか、どうするんでしょうか・・・そして、照や淡や穏乃の対局時の演出も楽しみです。この作品も阿知賀編は書くつもりなのですが、それは本編で準決勝を終えた頃にやろうと思います。どうかお付き合い宜しくお願い致します。


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第35話 二回戦中堅後半戦

『休憩が終わりました。中堅後半戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

二階堂渚:東

夢乃マホ:南

滝見春:西

依藤澄子:北

 

~東一局~ 親:二階堂渚

千里山 121100

清澄 112600

永水 90800

劒谷 75500

(今度はあたしが起家か。そしてマホが下家か。鳴かれたら厄介やな。)

(渚さんが起家ですか、連荘だけは避けたいです。でも早い内に点数を稼いでおきたいです。ならここは、絶一門です!)

~7巡目~

(ここまで手牌にも河にも索子が見えてへん。これはやっぱり、マホの仕業やんな。)

(この感じ、これは霞さんと同じ、やっぱりこの人凄い。)

「リーチ!」

(また・・・)

(やっと索子がお目見えしたか、しかし、このリーチは危ないな。マホの事やから倍満は避けられんやろうな。)

「ツモ!リーチ一発ツモ一通清一で6000・12000です!」

『清澄高校夢乃マホ選手、トンパツでいきなりの三倍満ツモ!』

『今の局、夢乃選手以外の選手に索子が行ってなかったですね。』

『そうですね。』

~対局室~

(くそっ、やられた!)

(これ、もう勝てないよ・・・)

(霞さんでも三倍満を和了する事は滅多にないのに、やっぱりこの人、ただコピーするだけじゃなくてその能力の強さが上がってる?)

~東二局~ 親:夢乃マホ

清澄 136600

千里山 109100

永水 84800

劒谷 69500

(この親番、大事にしたいです。ここは、宮永先輩のあれを使ってしまいます!)

(ん、なんや今の、一瞬だけマホが怖なった。このプレッシャーはなんや?)

~2巡目~

「リーチ。」

(2巡目、速いな。手牌が追い付かんし鳴けへんからこれは見逃したるわ。)

「カン。」

(ドラの5ピンカン!赤二枚やからドラ6やん。しかも、カンドラも5ピン!?なんなんやこいつ・・・)

「ツモ!」

(嶺上開花、ってことはまさか・・・)

マホが裏ドラをめくった。裏ドラはどちらもカンした5ピンだった。

「リーチツモ嶺上開花、ドラ18。16000オールです!」

(これが、マホの本気か。3巡目に役満とか、しかも21翻て・・・)

『清澄高校夢乃選手、今度は親の役満ツモで他校を一蹴しました!』

『これは、ワンサイドゲーム、ですね・・・』

~千里山女子控え室~

「宮永さんの能力を使いましたね。」

「あれはほぼ確実に役満を和了られますから正直あれは直撃をしないようにすれば大丈夫。でもこれはラッキーやな、もう確実に役満を和了できるのが残ってへんから流れは渚に来るで。」

「そうだと、いいんですけどね・・・」

~対局室~

(このまま連荘します!)

「一本場です!」

~東二局一本場~ 親:夢乃マホ

清澄 184600

千里山 93100

永水 68800

劒谷 53500

(あっという間に9万点も点差ついとるわ。やっぱりマホは強いな。せやけど、ここからは好き勝手させへんで。北大阪最強の強さを見せたるわ!)

~7巡目~

「リーチ!」

(渚さんがリーチを掛けてきました。ここはできるだけ連荘したいのに・・・)

(悪いな、これ以上点差を広げさせる訳にはいかへんから和了らせてもらうわ。)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一ドラドラ。4100・8100!」

(結構高いです、これは、またやられてしまうかもしれないですね・・・)

~千里山女子控え室~

「流石渚やな、ここから一気に攻めればいけるで!」

「二階堂先輩なら、きっと・・・」

「頑張って下さい、先輩!」

(二階堂先輩、頑張って下さい・・・)

~対局室~

(この調子でマホをトップから引きずり落とす!)

~東三局~ 親:滝見春

清澄 176500

千里山 109400

永水 64700

劒谷 49400

(また渚さんに流れを持っていかれてる気がします。この流れは絶っておきましょう。)

「ポン。」

(マホが鳴いた。何かしとるんか?)

(ここは、和了らせません!)

~6巡目~

「ツモ。300・500。」

(やっす!何やそれ、何でそんな安い手で和了ったんや。)

(なんだか、予想してたよりも流れが渚さんに来てなかったです。これは不発ですね・・・でも次からは決めます!)

『清澄高校夢乃選手、今のはこれまでと比べてかなり安い和了ですが、どうしたのでしょうか?』

『まぁ、二階堂選手に流れを持っていかれない為に安い手を和了ったのでしょうね。』

『そうですか、さて、東三局が終わりトンラスです。』

~東四局~ 親:依藤澄子

清澄 177600

千里山 109100

永水 64200

劒谷 49100

(このままの点差で南入するんは流石にまずいで、ここは少し無理してでも和了させてもらうわ!)

~8巡目~

(よし、これならいける!)

(渚さんから何か嫌な予感がしますけど、ここで引くわけにはいきません!)

「リーチです!」

「それや、ロン。」

(これが和了り牌でしたか・・・でもリーチしてなかったですし、安いですよね。)

「まさかこれに振り込んでくれるとはな、十三么九。」

(えっ、しーさんやおちゅー?なにそれ?)

(シーサンヤオチューって確か、国士無双の昔の言い方だったはず、ということは・・・)

「32000や。」

(これは、やられてしまいましたね・・・)

『千里山女子二階堂選手、国士無双を夢乃選手に直撃して、一気に差を縮めました!そして南入です。』

~千里山女子控え室~

「なんで二階堂先輩って国士無双の事をシーサンヤオチューって言うんですか?」

「あいつ、麻雀の本読むのがめっちゃ好きなんやけど、そこで国士無双はシーサンヤオチューとも言うって言うのを見てからそう呼ぶようになったなったんや。」

「へぇ、そんな過去があったんすね・・・」

~南一局~ 親:二階堂渚

清澄 145600

千里山 141100

永水 64200

劒谷 49100

(一気に追い付かれてしまいました・・・ここは、少しでも渚さんを引き離す為にあれを使ってしまいましょう!)

「左手を、使っても良いですか?」

「はい。」

「どうぞ。」

「駄目や。」

「えっ、どうしてですか?」

「なんでわざわざ左手使うんや?イカサマでもしとるんちゃうか?」

「そんな事しません!」

「じゃあ、なんで左手使うんや?」

「そ、それは・・・」

「ま、ええわ、大会規定ではどっちでもええし。」

(それに、本気のマホを潰す方が楽しいしな!)

~8巡目~

「ツモ。純チャン三色ツモ平和一盃口。4000・8000。」

(またマホにやられた、こいつ、やっぱり強いわ。)

(なんとか先に和了れました。でも、気を抜いたら直ぐに追い付かれちゃいます。ここは慎重に攻めます!)

~南二局~ 親:夢乃マホ

清澄 161600

千里山 133100

永水 60200

劒谷 45100

(この親番は大切にしたいです。ここは、妹尾さんの、麻雀牌さんの力を使います!)

(なんや今の感じ、なんかやばそうやな。)

~9巡目~

(よし、四暗刻単騎を聴牌しました。しかもこの待ちと同じ牌は渚さんが持ってますし、余剰牌です。これならいけます!)

(なーんか、これが危ない気がするわ。昔から後半になるとこの勘当たるねんな。ならここはこっち落とすか。)

(あれ、交わされました!?どうしてでしょう・・・)

~13巡目~

「それや、ロン。タンピン三色ドラドラ。12000や。」

(交わされただけじゃなくて和了られちゃいました。なら次は、あれを使います・・・)

~南三局~ 親:滝見春

清澄 149600

千里山 145100

永水 60200

劒谷 45100

~1巡目~

「ポン。」

(なんや、マホ、何する気なんや・・・?)

(清澄が怖い、でもまだ1巡目だから大丈夫なはず。)

「昏鐘鳴の音が聞こえるか?」

(今、何ゆうたんや?)

「ロン。16000。」

(5ピンの赤二枚に白ドラ3の対々で倍満、1巡目やぞ?やばすぎやろ・・・)

(ラスになっちゃった・・・これは湧に怒る権利無いな・・・)

~南四局~ 親:依藤澄子

清澄 165600

千里山 145100

劒谷 45100

永水 44200

(最後、どうしましょう、宮永先輩も使ってしまいましたし・・・いや、もしかしたら、もう一回宮永先輩の力を使えるかもしれません!試しにやってみます。『憑依!』

~清澄高校控え室~

「あれ、咲さん寝ちゃいましたよ。」

「疲れとるんか?少し横にさせたらどうじゃ?」

「おーい咲ちゃーん!ここで寝ちゃったら風邪引いちゃうじぇ?」

優希が咲を揺すったが全く起きない。優希が手を放すと咲がそのまま倒れた。

「うおぅっと、どうした咲ちゃん!?まるで生きてないみたいだじぇ!」

「優希!咲さんを勝手に殺さないでください。ちゃんと生きているでしょう。」

「でも、倒れても揺すっても全く起きないじょ・・・?」

「多分疲れてるんですよ、少し横にさせてあげましょう。」

「そうだな!」

~千里山女子控え室~

「うわっ、清澄の夢乃マホ、セコいな!」

「えっ、なんかしたんか?」

「いやぁ、一回宮永さんの力を使ったのにさっきの憑依を使ってまた宮永さんの力を使たんですよ。」

「という事はもしかして、夢乃マホは同じ能力を1日に2回使えるって訳か!?」

「そういう事になりますね。」

「やばすぎやろ・・・」

「こりゃあ渚、ヤバいかもしれへんな・・・」

~対局室~

「カン・・・リーチ。」

(おいおい、さっき宮永咲は使ったはずやないか!それやのになんでドラ8になっとるんや!)

(これ、もしかしたら湧の力を使った!?)

(この人、もう嫌だ・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモドラ16。8000・16000です!」

(こいつ、本当に何者なんや・・・こんなん、勝てへんやん・・・)

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました。」

「お疲れさん。」

「ありがとうございました・・・」

 

~中堅後半戦結果~

清澄 197600

千里山 137100

永水 36200

劒谷 29100

 

「くそっ、完敗やな。マホ、次は絶対に勝ってみせるからな!」

「次もマホが勝ちます!」

「させないで!」

「マホも負けません!」

渚はマホと話した後、控え室に戻った。

「ただいま帰ったで。」

「二階堂先輩、お疲れ様です。」

「くそっ、悔しい!あたしがあんだけ大差で負けるなんて!絶対に次は勝つ!だから心音、負けたら承知せえへんからな!」

「はい、本心からのお言葉、しかと受けとりました。ウチと部長で勝って見せます!」

「頼んだで、このまま負けっぱなしは、嫌やからな・・・」

~清澄高校控え室~

「ただいま帰りました!」

「マホちゃん帰って来たじぇ!」

「お帰りなさい、頑張りましたね。」

すると、眠っていた咲が目を覚ました。

「あれ、私、いつの間に寝ちゃってた・・・」

「おっ、咲ちゃんお目覚めだじょ!」

「優希ちゃん、私、いつの間に寝ちゃってたの?」

「オーラスになって突然寝ちゃってたじょ。」

「大丈夫ですか?仮眠室にでも行きましょうか?」

「いや、眠くはないから大丈夫。」

(もしかして、私が寝ちゃってたのってマホちゃんのせいなのかな?)

マホが、申し訳なさそうに咲の方に近付き、咲にだけ聞こえるような声で話し掛けた。

「宮永先輩、すみません。まさか眠ってしまうとは思わず、永水の人の能力を使って宮永先輩の能力をもう一回使ってしまいました。」

「あぁ、そうだったんだ。私だったら大丈夫だよ、次からも使っていいよ。」

「そうですか、ありがとうございます!」

咲とマホが話していると、和が口を開いた。

「それじゃあ、私はそろそろ行きますね。」

「あっ、頑張ってね和ちゃん!」

「頑張って下さいです、和先輩!」

「のどちゃん頑張れ!」

「はい、行ってきます。」

中堅戦が終わり、副将戦が始まる。




これで中堅戦終了です。今更ながら、マホって能力を見せれば見せるほど更に強くなるから、いくらでも強くなれるのが凄いところですよね。今回とか、『模倣してる人を模倣する事で同じ能力を2回使えるなんておかしいだろ!』って思うかもしれないですけど、許して下さい。


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第36話 二回戦副将前半戦

永水女子の控え室で、湧が憑依させた友理奈を春が戻していた。

「あれ、私寝ちゃってた・・・もしかして、湧がまた憑依使ったんですか?」

「うん、そうだよ。」

「って、点凄い減ってる・・・湧、私を使ったならちゃんと稼いでよ。」

「私はちゃんと稼いだよ~!」

「じゃあなんでこんなに点減ってるのさ。」

「・・・それは、全部私のせい。湧は悪くない。」

「えっ、春先輩、どういう事ですか?」

「湧は14万くらいになった点を19万くらいまで戻した。」

「えっ・・・」

「千里山の二階堂渚さんと清澄の夢乃マホさんがとても強くて、春さんと劒谷の方は中堅戦の半荘2回で一度も和了れなかったんです。」

「そんな、春先輩が15万点以上取られたって事なんですか?」

「うん・・・」

「そうだったんですか・・・」

「湧、もう正座しなくていい。痛かったよね、ごめん。」

「いや、そんな事無いですよ。」

「代わりに、私が正座する・・・」

「いやいやいや!春先輩は何も悪くないですって!あんな化け物二人相手なら仕方ないですよ!」

「・・・うん、ありがとう。」

「後は私と姫様にお任せください!」

「頑張ってね、明星ちゃん。」

「頑張って~。」

「はい、行ってきます。」

~劒谷高校控え室~

「あそこまで点をとられてしまうとは、ごめんなさい・・・」

「そんな、部長は悪くないですよ。」

「あんな二人を相手に飛ばされなかっただけで凄いですよ。」

「そうかな?」

「そうですよ。それに、この後は友香ちゃんが頑張ってくれるはずです。」

「後は私に任せるでー!」

「ありがとう、頑張ってね。」

「森垣先輩頑張って下さいっす。」

「任せるでー!」

 

 

『さて、嵐のような中堅戦は終わり、副将戦が開始されます。まずは堂々トップの清澄高校からは元インターミドルチャンピオンの原村和選手が出ます。この点差を引き伸ばす事ができるのでしょうか。続いて2位の千里山女子高校からは部長の舟久保浩子選手。そして3位の永水女子からは去年、永水女子3年だった石戸霞選手の従姉妹の石戸明星選手が出場します。そして残念ながらラスになってしまった劒谷高校からはエースの森垣友香選手が出ます。』

 

~場決め結果~

原村和:東

舟久保浩子:南

石戸明星:西

森垣友香:北

 

『対局選手が出揃いました、副将前半戦開始です!』

 

~東一局~ 親:原村和

清澄 197600

千里山 137100

永水 36200

劒谷 29100

(劒谷高校が29100点、少し無理をしたら飛ばす事もできるかもしれませんね。それに、大将戦では去年の個人戦で負けてしまった神代さんがいらっしゃいますからね。少しでも咲さんの負担を減らす為にも頑張ります!)

(とりあえず、劒谷の森垣はかなり強い。劒谷を飛ばすのは厳しいやろな。それに、永水の石戸明星。何が凄いんかはあんまり分からんかったけどこれまで常に好成績。こっちもなんだか怖いわ。)

(春さんが取られた点を取り返します。さぁ、始めましょうか!)

~9巡目~

(何故でしょうか、いつもならもっと有効牌が入ってきてくれるのに、配牌から一度も有効牌が来ませんね。まぁ、こういう事もありますよね。)

「ロンです。タンヤオ清一三暗刻対々で24000です。」

(・・・はっ!?三倍満!?)

「はい。」

(って、動揺無しかいな!肝が据わっとるな・・・それより、乗っけから三倍満とか、魅せてくれるやないか。でも、やっぱり分からんな。データで見ると、石戸明星がいる対局はかなり高火力が出やすいんやけど、それが何なのかが分からん・・・)

(三倍満・・・やっぱり強いですね。)

『永水女子高校の石戸選手、いきなり三倍満直撃です!』

『彼女、やはり高火力ですね、』

『はい。』

(あれは・・・なかなか強い物を憑けてますね。)

~東二局~ 親:舟久保浩子

清澄 173600

千里山 137100

永水 60200

劒谷 29100

~8巡目~

(なんだか、今日は全く有効牌が来てくれませんね、どうしたんでしょうか・・・?)

(原村和、なんや調子悪そうやな。)

「ツモ。混一ツモ一通。3000・6000です。」

(くっ、また永水に和了られた!)

(原村和さんへの『膠着』が上手く働いているようですね。ですが、このままでは劒谷高校が飛んでしまいます。ここは、劒谷の森垣友香さんに『補強』を使いますか。)

~永水女子控え室~

「明星ちゃん、早速膠着を使ってるね。」

「あれは一人だけだけど有効牌を全く来なくさせるからね。本当にチート能力だよね~。」

「私もあれにはいつも手こずるよ。」

「友理奈でもやっぱり手こずるのか~。しかも、膠着だけならまだしも補強も使ってくるからね~。」

「あれ、誰か一人に有効牌が来なくさせると、他の誰か一人の手を強くさせるんだったよね。基本的には自分に使ってるんだろうけど、次は多分劒谷に使うんじゃないかな?」

「劒谷の人、元々高火力だから補強有りだとどれだけ高くなっちゃうのか楽しみだね~。」

~東三局~ 親:石戸明星

清澄 170600

千里山 131100

永水 72200

劒谷 26100

「リーチでー!」

『劒谷高校森垣選手、ダブルリーチ!』

『彼女がいる卓だとほぼ確実に高火力な試合になりますからね、今回も荒れそうですね。』

(ダブリー!?)

(そんな・・・)

「ツモ。6000・12000でー!」

『森垣選手、ダブルリーチ一発ツモ平和純チャン三色一盃口の三倍満炸裂!』

(嘘やろ・・・)

(また三倍満・・・)

(元々高火力の人だとこんな事になってしまうのですね。それにしても、親番に使うべきではありませんでしたね。親被りで12000のマイナス、結構痛いですね・・・)

~清澄高校控え室~

「あぁ、のどちゃん大丈夫かな・・・」

「大丈夫だよ、きっと和ちゃんならやってくれるよ。」

「ほうじゃな。」

(マホが頑張りすぎると、和先輩が集中的に狙われてしまいます。でもマホが手を抜くという訳にもいかないですし・・・あっ、そうだ!今度の中堅戦では、あれを試してみます!)

~東四局~ 親:森垣友香

清澄 164600

千里山 125100

永水 60200

劒谷 50100

~7巡目~

(やっぱりなんかおかしいわ。全員の配牌が良くなってる訳やないんか?まぁ、そうやったとしたら原村和が和了ってるはずやし、というか、原村和ならこのくらいの巡目で和了しとると思うんやけど、やっぱり調子が悪いんか?それとも、永水の影響か。とりあえず聴牌したし、行っとこか。)

「リーチ。」

(千里山の方、聴牌したんですか・・・)

(嫌な予感がしますね。)

「ロン。リーチ一発七対子ドラドラ、12000。」

振り込んだのは明星だった。

(これは、千里山の方に膠着をした方が良さそうですね。)

~南一局~ 親:原村和

清澄 164600

千里山 137100

劒谷 50100

永水 48200

~6巡目~

(これ、全く有効牌が来いひんな。どないしとるんや?)

(やっと牌が乗ってきました。取られた分を取り返します!)

「リーチ。」

(千里山の人に膠着をしたら清澄が来てしまいました・・・)

(これはまさか、永水の石戸明星は誰か一人に有効牌を来なくさせる能力なんか?だとしたらこれまでずっと原村は止められとったっちゅうわけか。可哀想やな。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピン三色ドラドラ、8000オールです。」

(親倍、結構高いな・・・)

(清澄の方を解除した途端に和了されてしまいましたか・・・これは、厳しい戦いになるかもしれませんね。)

~清澄高校控え室~

「やった、和ちゃんが倍満を和了ったよ!」

「流石のどちゃんだじぇ!」

「なかなかじゃのー。」

「それにしても、さっきまで和ちゃんのツモ、全く有効牌が来てなかったよね。」

「確かに、いつもの和じゃったら最初から和了っとったわ。」

「それなら、多分永水の副将さんの仕業だと思います。」

「えっ、マホちゃん、何か分かるの?」

「はい、実は開会式の時に照魔境を使って強そうな能力の人を記憶していたんですよ。それで、石戸明星さんは誰か一人を強くして、誰か一人に有効牌を全く来なくします。」

「ほんま!?」

「それは、大変だね・・・」

「そんなの、勝てっこないじぇ・・・」

「まぁでも、さっきみたいに和ちゃんが抑えられない局も多分あるだろうし、大丈夫だよ。きっと。」

「そうじゃな。」

「俺達は応援あるのみだな。」

「そうだね。」

「このまま頑張って下さい、和先輩!」

「頑張れ和!」

~対局室~

「一本場です。」

~南一局一本場~ 親:原村和

清澄 188600

千里山 129100

劒谷 42100

永水 40200

(これ以上清澄との点差を広げる訳にはいきません。ここはまた原村さんに膠着させます。)

(多分、また原村を止めたんやろな。なら・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(なっ、原村さんを止めたら千里山が来てしまいました。これは、まるでもぐら叩きですね。)

「ロン、8300。」

(しかも、満貫を直撃されてしまいました・・・やっぱり私には霞お姉ちゃんのようには出来ないのでしょうか・・・)

~南二局~ 親:舟久保浩子

清澄 188600

千里山 137400

劒谷 42100

永水 31900

(千里山の人の親、連荘させないためにもここは、千里山の人を膠着させます。そして、補強は私に。このまま終わらせるわけにはいきません。霞お姉ちゃんが越えられなかった2回戦という壁を越えるために!)

~7巡目~

「リーチです!」

(なんや、永水の、凄い気合い入っとるな。高い手でも入ったんか?じゃあここはオリ・・・)

(このまま最下位で姫様にバトンタッチするわけにはいけません。だからここは、和了ってみせます!)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン清一。6000・12000です!」

『永水女子の石戸選手、2度目の三倍満が出ました!』

『あれを一発で引くとは、彼女、かなり持ってますね。』

~永水女子控え室~

「やった!明星ちゃんが決めてくれた!」

「明星ならやってくれると思ってたよ~。」

「これでまた3位浮上。」

3人が喜んでいると、永水女子の大将こと神代小蒔が目を覚ました。

「あら、もう明星ちゃんの出番だったのですね。」

「姫様、お目覚めですか。」

「はい、良く眠れました。しかし、結構な点差ですね。」

この言葉を聞いて、春が悲しそうな顔をしたため、友理奈が「春先輩は悪くないですよ。」と宥めた。

「今回は、姫様に頑張って貰うしかありませんね~。」

「分かりました。全力以上でやらせて頂きます!」

「今回姫様はかなり強い神様が付いてるから、せめて二位には入れると思う。」

「なら少しは安心出来ますね。」

「取り敢えず、明星ちゃんがどれだけ取り返してくれるかですね。」

「では、明星ちゃんを応援しましょう!」

「「はい。」」

「うん。」

~南三局~ 親:石戸明星

清澄 182600

千里山 125400

永水 55900

劒谷 36100

「リーチです!」

『永水女子石戸選手、ダブルリーチです!』

『前局から強運が続いてますね。』

(ダブリー!?これは、きっついわ・・・)

(これは、何を出せば良いのやら・・・)

(この永水の人、なんか怖いでー・・・)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモ混一混老七対子ドラドラで12000オールです!」

『な、なんと、永水女子石戸選手、3度目の三倍満を和了しました!』

『まさかここまでとは・・・エキサイティングですね。』

「一本場です!」

~南三局一本場~ 親:石戸明星

清澄 170600

千里山 113400

永水 91900

劒谷 24100

(このまま、千里山を捲って二位に浮上します!)

~11巡目~

(よしっ、千里山には有効牌はいってない筈ですし、これなら逆転出来ます!)

「リーチです!」

「ロン。混一一通ドラ3で16300です。」

(千里山を止めたら、また清澄に和了られてしまうとは・・・)

(今回は清澄に助けられたな。あのままやったらまた永水に和了されとったやろからな。)

(このまま、マホちゃんが稼いでくれた点を取り返してみせます!)

~南四局~ 親:森垣友香

清澄 186900

千里山 113400

永水 75600

劒谷 24100

(もう、点数が無いでー!)

(誰かを補強する余裕は無いですけど、ここは劒谷に補強しなければいけませんね。)

(この局、多分永水は劒谷に強化をしてくるはずや。ならここは、どうせ有効牌もこうへんし、ガンオリで耐える・・・)

~6巡目~

「リーチ。」

(えっ、劒谷やなくて、清澄?)

(あれ、確かに私は劒谷の方に補強をしたはずですけど、どうして清澄の方がリーチをしているのでしょうか?)

「追っかけリーチでー!」

(劒谷もリーチをしてきましたか。ですが、ここは負けません。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピン三色で3000・6000です。」

『副将前半戦終了!清澄高校の原村和が最後に意地を見せ、点数を持ち返しました。』

『まさかの大逆転でしたね。』

『そして、永水女子は千里山女子との点差を縮めました。劒谷高校の森垣は点差を広げられてしまい、厳しい点数となってしまいました。』

『この点差を巻き返すのは流石に厳しいでしょうね。』

『そうですね。では、休憩の後に副将後半戦を行います。』

 

~副将前半戦結果~

清澄 199900

千里山 110400

永水 72600

劒谷 17100




この前、阿知賀編は準決勝が終わったらと書いたのですが、2回戦の後にやっちゃってもいいんじゃないかと思いまして、出来るなら阿知賀編を早くやって欲しいか本編の続きを早く見たいかコメントして貰えたらと思います。それによってどちらにするか決めさせて頂きます。


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第37話 二回戦副将後半戦

10分間の休憩が終わり、副将後半戦が始まろうとしていた。

 

~場決め結果~

舟久保浩子:東

森垣友香:南

原村和:西

石戸明星:北

 

『対局室に選手が出揃いました。副将後半戦開始です!』

 

~東一局~ 親:舟久保浩子

清澄 199900

千里山 110400

永水 72600

劒谷 17100

(また劒谷高校が飛んでしまいそうですね。なら、もう一度補強しましょうか。)

~3巡目~

「リーチでー!」

(3巡目にリーチ、これは永水が何かしたな。親番やからやめて欲しいんやけど・・・)

(これで劒谷がツモ和了をして下さったら千里山との点差を縮められます。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1で4000・8000でー!」

(いきなり親被りかいな!まぁ、まだ点差はあるから巻き返しも可能。まだ大丈夫や。)

~東二局~ 親:森垣友香

清澄 195900

千里山 102400

永水 68600

劒谷 33100

「リーチでー!」

(ダブリー、親番でダブリーは流石に厳しいな・・・)

(やっぱり、元々強い人に補強すると大変な事になってしまいますね。まぁでも、千里山に直撃をしてもらえれば逆転出来るかもしれません・・・)

「ロン。24000でー!」

(なっ、私が直撃されてしまいました!補強してもらってる事は劒谷の方には分からないですから私に直撃しても何も咎められませんけど、なんだかどうしても恩を仇で返されたような気分になってしまいますね・・・)

~劒谷高校控え室~

「やっと友香ちゃんらしい和了りだね。」

「調子が出てきましたね。」

「このまま2位くらいまで行けたら良いのですけど。」

~東二局一本場~ 親:森垣友香

清澄 195900

千里山 102400

劒谷 57100

永水 44600

(なんだかまた有効牌が来てくれませんね。今日は調子が悪いのでしょうか・・・?)

(もう劒谷の方には補強しません!知らないから仕方がないにしろ、私の好意を蔑ろにされたので、許されざるです!どんなに減っても助けてあげませんよ~。)

~7巡目~

「リーチでー!」

(えっ、補強はもうしてない筈なのに・・・という事は、実力という事ですか。ですが、私も負けていません!ここは攻めます!)

(全然有効牌が来ない上にかなり攻められてますね。しかも安牌が全く無い。じゃあ、取り敢えずスジを切りましょうか。)

「ロン!リーチ一発七対子ドラドラで18300でー!」

(なっ、スジ引っかけ!?これは、やられてしまいましたね。)

(ただ高い手を和了するだけやなくてスジ引っかけとか、そういうのも出来るんか。凄いな。)

~清澄高校控え室~

「劒谷の人凄い、三連続和了だよ。」

「しかも一つ一つの和了りが高いのぉ。」

「のどちゃん、大丈夫かな?」

「大丈夫です。和先輩なら、大丈夫です!」

~東二局二本場~ 親:森垣友香

清澄 177900

千里山 102400

劒谷 75100

永水 44600

(これ以上劒谷の方に連荘させないために、次は劒谷に膠着を使います。)

(取り敢えず、早うこいつの親番を終わらせんといかんな。なら、少しだけ無理するか。)

「チー。」

(千里山の方、安和了りをするつもりでしょうか?ならお手伝いします。)

~8巡目~

(なんや、チーしてからどんどんええ感じになっとるわ。これ、いけるんちゃうか?)

(うぅ、有効牌が来ないでー・・・)

~10巡目~

「ツモ。タンヤオ三色ドラ4。3200・6200。」

(ドラが4つも・・・安手だと思っていたらまさかでしたね。)

~千里山女子控え室~

「あれ、やっぱり石戸明星の仕業か?」

「はい、舟久保先輩がチーしてから石戸明星が補強しましたね。」

「しかし、あの補強っての凄いな。タンヤオのみの500・700の手が跳満まで育つとは・・・」

「ほんまにエグい能力やな・・・」

~東三局~ 親:原村和

清澄 174700

千里山 115000

劒谷 68900

永水 41400

(親、流された。けど、梓と違って親じゃなくても稼げるでー!)

~8巡目~

(あれ、全然有効牌が来ない・・・)

「ツモ。タンヤオ清一ツモ。4000・8000です。」

(永水、今度は自分で和了ってきたか・・・)

(親番に何も出来なかった上に親被りで8000マイナス、これは結構辛いですね・・・)

~東四局~ 親:石戸明星

清澄 166700

千里山 111000

劒谷 64900

永水 57400

~5巡目~

「ツモ、混一三暗刻で6000オールです。」

(連荘させてもうた・・・)

(染め手が多いですね。そういえば、去年の2回戦で咲さんが対局した従姉妹の方も染め手が得意でしたね。染め手は点数は高くなるかもしれませんがバレやすいですし振り込みやすいので私は得策とはあまり思いませんが、それでも強い人は強いですから侮れませんね。)

~東四局一本場~ 親:石戸明星

清澄 160700

千里山 105000

永水 75400

劒谷 58900

(この連荘は早う終わらせんと危ないな。でも鳴いたらまた有効牌が来なくなる可能性もあり得る訳やからな。どうすればええんやろ・・・)

「ポン。」

(なんや、清澄も早和了りしようとしとるんか。ん?もしかしてこれ、私と原村が早和了りしようとしたら二人とも抑えられんのとちゃうか?なら・・・)

「ポン。」

(二人で早和了りしたるわ!さぁ、どう出る永水!)

(これは困りましたね。取り敢えず清澄を止めましょうか・・・)

~8巡目~

「リーチでー!」

(なっ、清澄と千里山を警戒してたらこっちもですか・・・)

(ナイスや劒谷!これで永水に直撃とかすれば完璧やな。よくよく考えれば永水はこの後に神代小蒔がくるんやから飛ばす勢いで潰してもええんとちゃうか?)

(どれを切っていいのか分かりません。取り敢えず劒谷に膠着はしましたけど、他者が出したら普通に和了出来てしまうためリーチ後に使ってもあんまり意味無いんですよね・・・)

「ロンでー!リーチ一発七対子ドラドラ。12300でー!」

(くっ、やられてしまいました、よりによって劒谷ですか・・・)

(よしっ、理想通りに進んだわ。このまま永水を潰したるで。)

~南一局~ 親:舟久保浩子

清澄 160700

千里山 105000

劒谷 71200

永水 63100

(こうなったら劒谷を膠着させます。劒谷は高い手ばかりで怖いですから。)

~11巡目~

(やっと聴牌出来ました。これまで取られた分も取り返します!)

「リーチ。」

(劒谷を止めたら今度は清澄ですか!?やっぱりこれ、もぐら叩きみたいになってしまいますね・・・)

(劒谷を止めてるから手は悪くないんやけどここは清澄に任せるか。ツモられたら親被りやから止めて欲しいけど。)

(あぁ、どうすれば良いんでしょうか、えっと、これで・・・)

「ロン。リーチ一発タンピン三色、12000。」

(あぁ、また直撃されてしまいました・・・)

(永水、調子悪そうやな。まぁ、何処を抑えるか考えながら安牌も考えんといけんからやろうけどな。これなら自爆してくれそうやな。親被りも無かったし、ええ感じやん。)

~南二局~ 親:森垣友香

清澄 172700

千里山 105000

劒谷 71200

永水 51100

(取り敢えず次は劒谷に連荘させないために劒谷を膠着させましょう。でも清澄と千里山も怖いですからね、もうどうすれば良いのでしょうか・・・?)

(永水は多分劒谷を止めとるはず、ならこっちも攻めるで!)

~10巡目~

「リーチ。」

(今度は千里山ですか・・・もう、私は何をすれば良いんですか・・・)

(嫌な予感がしますね・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。3000・6000。」

(また和了られてしまいました・・・しかも跳満なんて・・・)

(森垣の親番も潰せたし跳満も和了したし、さっきから理想的やな。これは行けるかもしれへんな。)

~永水女子控え室~

「これは、明星ちゃんの弱い所が浮き彫りにされてしまっていますね。」

「このままだとちょっと厳しいですね。」

「ここは、私が頑張ります!」

「姫様!?起きてたんですか!」

「はい、大将戦は任せてください。」

「姫様が本気出したらトップになりそうだよね~。」

「そうなれるように頑張ります。」

「頑張って下さい!」

「はい。」

「まだ明星の試合中・・・」

「あっ、そうでした。ちゃんと見守りましょう。」

~南三局~ 親:原村和

清澄 169700

千里山 117000

劒谷 65200

永水 48100

(今回は清澄の親番ですから清澄を止めます。)

(この親番で出来るだけプラスで咲さんに回したいですね。でも、今日は何故か調子が悪いせいであんまり和了れないですね・・・)

(今回は原村を止めとるやろうから攻めるか。)

~6巡目~

「リーチでー!」

「ロン。8000。」

『千里山女子舟久保選手、劒谷高校にダマの満貫を和了しました。』

~南四局~ 親:石戸明星

清澄 169700

千里山 125000

劒谷 57200

永水 48100

(もうオーラス、この親番で連荘するしか無いですね・・・)

「リーチでー!」

(ダブリー、永水が強くしたとも思えんし、実力か。)

(ダブリー!?そんな、これはヤバいですね・・・)

(ここは完全にオリですね。)

「ツモ!4000・8000でー!」

(倍満、やられたわ・・・)

(倍満の親被りですか、これは、厳しいです・・・)

『副将戦終了!清澄高校と千里山女子のトップ2つは変わらず、劒谷高校が検討して3位に浮上。名門永水女子はラスで大将戦に回します。』

 

~副将後半戦結果~

清澄 165700

千里山 121000

劒谷 73200

永水 40100




阿知賀編についてですが、2回戦の後にする事にしました。次は遂に大将戦です。副将戦が少し微妙な出来て になってしまいましたが、大将戦ではそうならないように善処します。


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第38話 二回戦大将戦

副将戦が終わり、大将戦が始まろうとしていた。

『まもなく大将戦が開始されます。大将戦の対局メンバーを紹介します。まず、トップを走る昨年度王者の清澄高校からは、昨年度の個人戦で2位だった宮永咲選手が出場します。そして、現在2位の千里山女子からは昨年度インターミドル2位の藤崎心音選手が出ます。そして、現在3位の劒谷高校からは、安福莉子選手が出ます。最後に、現在最下位になってしまった永水女子からはエースの神代小蒔選手が出場します。』

『かなり濃い試合になりそうですね。』

『そうですね。』

 

~場決め結果~

安福莉子:東

藤崎心音:南

宮永咲:西

神代小蒔:北

 

『対局室にメンバーが出揃いました。大将前半戦、開始です!』

 

~東一局~ 親:安福莉子

清澄 165700

千里山 121000

劒谷 73200

永水 40100

(取り敢えず、清澄を捲って1位に浮上するか。)

「チー。」

(千里山の人、いきなり真ん中をチーした。染め手かドラがあるのかな?)

~5巡目~

「ロン。タンヤオドラドラ。3900。」

(染め手じゃなかったんだ。でも、その手で鳴くんだ・・・)

~東二局~ 親:藤崎心音

清澄 161800

千里山 124900

劒谷 73200

永水 40100

~5巡目~

「リーチ。」

「ポン。」

(これで、次に来るカン材でカンして和了る!)

「それ、ロン。メンタンドラ1。7700。」

(ぅわっ、また振り込んじゃった。そういえば、なんだかロンの発声が少し速い気がする。気のせいかな・・・?)

(2連続振り込みありがとうございます。宮永咲さん。)

「一本場。」

~東二局一本場~ 親:藤崎心音

清澄 154100

千里山 132600

劒谷 73200

永水 40100

(おっ、これは、なかなかええ手になりそうやな。)

(これ以上やられちゃったら千里山の人に抜かれちゃうよ・・・)

~7巡目~

(おっ、これは・・・ちょっと清澄を怯ませる為にも行っとくか!)

「カン!」

(えっ・・・)

「嶺上開花ツモ清一。8100オール。」

(嶺上開花!?しかも、牌を取って直ぐにツモ宣言してた。この人、一体何者・・・?)

(これは、ちょっとは効いてくれとるかな?)

「二本場!」

~東二局二本場~ 親:藤崎心音

千里山 156900

清澄 146000

劒谷 65100

永水 32000

~2巡目~

ゾゾゾゾッ

(な、なんや今の!?)

「カン。」

(まさか、宮永咲!?)

「ツモ。嶺上開花ツモタンヤオドラ8。6200・12200です。」

(なんやこの人、怯むどころか強なっとるやん!2巡目やのに三倍満とか、流石にチート過ぎやろ・・・)

~東三局~ 親:宮永咲

清澄 170600

千里山 144700

劒谷 58900

永水 25800

(なんや、さっきまで永水の姫様の心も読めとったのに、急に靄がかかったみたいに見えんくなったわ。何も考えずに打ったらこうなるんやけど、相手が相手やしなぁ、染められそうやけどどないしよ・・・まぁ、染めてみるか。)

~8巡目~

(なんや、特に何も起きんまま清一聴牌したで。さて、どれ切ろうかな。清澄と劒谷は大丈夫やけど永水は見えんしな・・・ってあれ?見えるようになっとる。というかこれ、純正九蓮宝燈!?って事はこれは、どれを切っても九蓮宝燈に振り込むっちゅう事か!?そんなん、無理やん・・・)

「ロン。32000。」

(これが、本物の実力か・・・)

(この3人が強すぎて、私トビ終了しちゃうかも・・・)

~東四局~ 親:神代小蒔

清澄 170600

千里山 112700

劒谷 58900

永水 57800

(清澄との点差が離れてしもたな。それに、永水も怖い。おっ、でもこの配牌なら、国士無双か混老対々とかで高いの狙えそうやな。このままでは終われへんからな!)

~7巡目~

(よしっ、国士無双聴牌。これでいける・・・あっ、ちょっと待て、国士無双?まさか・・・うわっ!?永水が国士無双の13面待ちで聴牌しとる・・・なんで最初で気付けんかったんやウチのバカ!また振り込んでまうやん・・・)

「ロン。48000。」

(これは、辛いわ・・・)

~東四局一本場~ 親:神代小蒔

清澄 170600

永水 105800

千里山 64700

劒谷 58900

~5巡目~

(うわっ、また清一になりそうな手やな。なら、また永水が九蓮宝燈になるんやろうから1と9は先に落としとくか。)

~8巡目~

(よしっ、これなら振り込む事は無い。)

「リーチ!」

(千里山の人、今回はリーチ出来たんだ・・・)

(今度は千里山!?なら、せめて一発消しを・・・)

「チー。」

(一発消しか、関係無いね。永水のお陰で萬子がやって来てくれるから。よしっ、来いっ!・・・これじゃあ和了れない、また九蓮宝燈に振り込むんか・・・なんちゃって!)

「カン!」

(えっ、また!?)

(!?まさか・・・)

「リーヅモ嶺上開花タンヤオ清一三暗刻。6100・12100!」

(まさか、破られてしまうとは・・・)

「何度も同じ手には引っ掛かりませんよ姫様ぁ!」

(これは、予想外ですね・・・)

(千里山の人、やっぱり強い。どうしよう、追い付かれちゃうよ・・・)

(宮永咲って、意外と小心者なんやな。その割にはあんなエグいもん和了ってくるけどな。)

~南一局~ 親:安福莉子

清澄 164500

永水 93700

千里山 89000

劒谷 52800

~7巡目~

(よしっ、このまま攻める!)

「ポン!」

(今度は何をしてくるんだろう・・・)

~9巡目~

「カン!」

(えっ、もしかしてまた・・・)

「ツモ。嶺上開花タンヤオ三暗刻対々で3000・6000!」

(また嶺上開花。この人、なんでそんなに嶺上開花を和了れるの・・・?)

(いや、それはこっちの台詞や!2巡目に三倍満の嶺上開花和了ってる人が何言っとんねん!)

~南二局~ 親:藤崎心音

清澄 161500

千里山 101000

永水 90700

劒谷 46800

(よし、この親番は大事にするで!)

(・・・)

(!?)

~8巡目~

「リーチ・・・」

(千里山がまた攻めてきてる!親番だから怖い・・・)

~9巡目~

「ツモ、6000オール・・・」

(なんか、ここへ来て6000オール!?うぅ、きついよ・・・)

~千里山女子控え室~

「なんか心音の奴、突然元気無くなっとりませんか?」

「せやな、どうしたんやろ?」

「普段の心音なら、あの親番で6000オール和了れてめっちゃ喜んどるはずやのに。」

(もしかしたら心音、誰かの心の声を聞いてああなったんか?心音があんなになるって、一体どんな事が聞こえたんや?)

~南二局一本場~ 親:藤崎心音

清澄 155500

千里山 119000

永水 84700

劒谷 40800

(あっ、なんだか良い感じに染められそう。これ、三倍満くらい取れるかも。よしっ、頑張ってみよう!)

(永水がまた九蓮宝燈和了るんか。まぁ、ギリギリウチの点数には届かへんけど。)

~8巡目~

「ロン。32300。」

(あぁぁぁ!!!!やってしまいました!)

(可哀想に・・・)

~南三局~ 親:宮永咲

清澄 155500

千里山 119000

永水 117000

劒谷 8500

「カン。」

(清澄の人が1巡目からカン!?これ、まさか・・・)

「ツモ。嶺上開花ツモ清一ドラ8。16000オールです。」

(あっ、これ、トビ終了してしまいました・・・)

「お疲れ様でした。」

「お疲れ様です・・・」

「お疲れ様です。」

「お、お疲れ様でした・・・」

 

~2回戦結果~

清澄 203500 準決勝進出

千里山 103000 準決勝進出

永水 101000

劒谷 -7500

 

大将戦が終わり、心音が控え室に戻った。

「ただいま帰りました・・・」

「お疲れさん、どないしたんや?そんなにがっかりして。2位抜けなんがそんなに嫌なんか?」

「いや、そういう訳では無いんですけど・・・」

「宮永咲さんがなんか考えとったんか?」

「えっ、望、よく分かったな。」

「まぁ、なんとなくやけどな。」

「宮永咲がどうかしたんか?」

「実は、『生かされた』んですよ、千里山が。宮永咲の手によって。」

「は?どういう事や?」

「南二局の始まりの時に聞こえちゃったんですよ。宮永咲が『これで相性が悪い永水じゃなくて千里山が2位抜けさせられる。』って考えてたのが・・・」

「はぁ?どういう事やそれ?」

「実は、南一局に宮永咲が出した牌をポンしとらんかったら永水が倍満和了ってたんですよ。」

「そうやったんか!?」

「そういえばそうやったな。」

「しかも、面子が出来とる牌を切っとった。成る程、こりゃあ、心音が宮永咲に踊らされてたっちゅう訳か。」

「そういう事です。その後の南二局は、宮永咲が鳴いたり劒谷に鳴かせたりしてウチに有効牌が来るようにしとった。」

「確かに、すらすらと和了っとったな。」

「しかも、次の局で姫様が役満でトビ終了させようとしても大丈夫な点数でしたしね。」

「そんな・・・」

「こんなの、もうウチ、宮永咲に勝てる気がしません・・・」

「大丈夫や、心音ならいけるはずや。」

「次があたしも夢乃マホをボコボコにしたるさかい、心音も宮永咲を倒せ!」

「はい、善処します・・・」

「取り敢えず、宿泊施設戻ってミーティングするで。」

「はい。」

~永水女子控え室~

「まさか、あれだけ強い神様が憑いてる姫様がやられてしまうとは・・・」

「清澄の宮永咲さん、流石ですね・・・」

(流石、そりゃあ真紀も負ける訳ですね・・・)

「ごめんなさい、私が力及ばずで・・・」

「姫様は悪くないですよ!私達があんな状態で姫様にバトンタッチしてしまったばっかりに。」

「いえ、これは私が悪いです。ごめんなさい。」

「お気になさらず!」

「でも・・・」

「あ、ほら、お蕎麦来ましたよ!」

「そうですね。食べましょうか。」

「はい!」

~清澄高校控え室~

「やったじぇ咲ちゃん!やっぱり咲ちゃんは凄いじょ!飛ばして終わらせるなんて。」

「やっぱり宮永先輩凄過ぎです!」

「そうかな?」

「はいはい、取り敢えず今日は帰ってミーティングじゃ。」

「はい。」

「そうですね。」

清澄高校のメンバーが宿泊施設に戻っている途中で、咲がマホにだけ聞こえるように話し掛けた。

「ねぇマホちゃん、開会式で色々見たって言ってたけど、今回強い人って誰かな?」

「そうですね、まずは臨海女子の先鋒と大将ですね。」

「大将ってもしかしてネリーちゃん?」

「いえ、違う人です。その人は今回副将をしています。」

「そうなんだ、じゃあ、他は?」

「他は、白糸台の先鋒ですね。凄く禍々しかったですね。」

「やっぱり、お姉ちゃんが抜けても白糸台は強いんだね。」

「でも、宮永照さんが抜けた穴は大きいと思いますよ?」

「そうだね。もう他には無い?」

「そうですね、阿知賀女子の中堅の人ですかね。」

「その人も憧ちゃんではないの?」

「そうですね。」

「そっか、頑張らないとだね!」

「はい!」

 

その頃、白糸台高校では2回戦を見ていた。

「あーあ、千里山が通過しちゃったか~。永水の先鋒の子と戦ってみたかったんだけどなぁ。」

「そればっかりは仕方ないだろう。」

「でもさー、雑魚ばっかりで詰まんないよ!もっと面白い人と戦いたい!」

「あぁ、もう五月蝿いわね!ちょっとは静かに見てらんないの?」

「あ、大星先輩いたんですか。」

「なっ!お前、いつか絶対倒す!」

「いつかって、いつになるんでしょうね?これまで1回も私に勝った事無いのに。」

「それは偶然あんなに良い牌が乗ってるだけでしょ!」

「そんな言い訳通用しませんよ。弱いのを認めたらどうですか?大星よわい先輩?」

「あたしは大星淡だ!先輩の名前を間違えるな!」

「二人とも五月蝿い。」

「ほら、よわい先輩が五月蝿いから先輩が怒っちゃったじゃないですか。」

「なっ!だからあたしは淡だって!あ!わ!い!」

「五月蝿い!」

「「・・・すみません。」」

「はぁ、全く、それで、他はどうなんだ?」」

「そうですね、臨海の先鋒と大将は厄介ですね。まぁ、臨海が決勝にくるのはほぼ確定ですけどね。」

「まぁ、確かに今回の臨海は強いな。」

「はい、臨海の先鋒と戦うのは楽しみです!」

「そうか。」

「はい!」

 




次からは阿知賀編やります。遅れてごめんなさい。


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第39話《阿知賀編①》 新入部員

この話から遂に阿知賀編です!キャラ崩壊を起こさないように頑張ります。
時は戻って4月から始まります。


「ここが、阿知賀女子麻雀部、あたしが最強のチームに育て上げる場所か・・・」

その少女は、部室前で深呼吸をすると目の前にある扉を強く開いた。

「入部希望の天理白(てんりしろ)です。よろしくお願いします。」

一礼してから白が顔を上げると、そこには去年快進撃を繰り広げた阿知賀女子高校の松実玄、鷺森灼、新子憧、高鴨穏乃の四人がいた。

「おおおぉぉぉぉ!!!!!新入部員だ!」

「これで今年も大会に出れそうだね。」

「よろしく、白だっけ?」

「はい、天理白です。」

(なんか、親近感沸く名前だな~。)

「よろしくね、白ちゃん。」

「よろしく。」

「はい、よろしくお願いします。」

4人が新入部員を歓迎していると、顧問の赤土晴絵が部室に入ってきた。

「なんだなんだ、騒々しいな。なんか良い事でもあったのか・・・って、新入部員が入ってきたのか!名前はなんて言うの?」

「はい、天理白と言います。よろしくお願いします。」

「えっ、天理白!?」

「えっ、赤土さん知ってるんですか?」

「知ってるも何も、天理白は去年のインターミドル4位の選手だよ?」

「えっ、マジで!?」

「大物が入ってきたね!」

「・・・その結果は、あたしにとっては不名誉ですね。」

「えっ、どうして?全国で4位なんて易々と取れる物じゃ無いじゃん。」

「もし3位2位1位がめちゃくちゃ強いなら別に文句は無いんですけど、2位と3位はそこまで強く無かったんですよ。最初ちょっと負けてて、ここから逆転してやろうって時に1位が大暴れしたせいで4位になってしまったんです。それが悔しいんです。1位の冬室氷華さえいなければあたしは、2位になれた筈なんです・・・」

「そうだったんだ・・・」

「それは、残念だね。」

「でも、それが勝負事の常だと私は思うな。たとえ2位になれる実力があったとしても勝てない時だってある。だからこそ、次に戦う時に燃える。そういう物なんじゃないか?」

「そうですね・・・」

「さぁ、真面目な話はこれでおしまい!ここは麻雀部なんだ、うちのメンバーと麻雀でもしてみなよ。」

「はい、分かりました。お手柔らかにお願いします。」

「じゃあ私やるー!」

「あたしもあたしも~!」

「じゃあ、私も。」

穏乃と憧と灼が麻雀卓に座った。白も余った所に座った。

「じゃあ、始めようか!」

「よろしくお願いします。」

 

~場決め結果~

高鴨穏乃:東

新子憧:南

鷺森灼:西

天理白:北

 

~東一局~ 親:高鴨穏乃

高鴨穏乃 25000

新子憧 25000

鷺森灼 25000

天理白 25000

(北家か・・・)

(なんだかんだ言ってインターミドル上位の人間なんだよね、そういえば決勝でこんな子いたわ。1位の冬室氷華が凄過ぎて覚えてなかったけど。)

「チー。」

(白が早速鳴いてきた、じゃあこっちで・・・)

「ポン。」

(安手で早和了りしようとしてる?ならこっちも速攻しようか!)

「ポン!」

(よっしゃ聴牌。これで追い付いた。)

「ロン。タンヤオドラ1で2000点です。」

(あっちゃ~、振り込んじった~。)

(早い、けどそこまで高くない。)

(早和了りで流して親番で稼ぐつもりなのかな?)

~東二局~ 親:新子憧

天理白 27000

高鴨穏乃 25000

鷺森灼 25000

新子憧 23000

~8巡目~

「ツモ。平和三色で1300・2600です。」

(やっぱり早いな。宮永照さんみたいに点数が増えるってのは流石に無いだろうけど、なんだか嫌な予感がする。気を付けなきゃ!)

(もっと高くなりそうな手なのに、少し勿体無いような気もするな。)

~東三局~ 親:鷺森灼

天理白 32200

高鴨穏乃 23700

鷺森灼 23700

新子憧 20400

~5巡目~

(このままだと、あたしが負けちゃう。ここは攻める!)

「リーチ!」

(憧のリーチ、何が通る・・・?んん、分かんない!取り敢えずスジで。)

「ロン!リーチ一発七対子ドラドラ、12000!」

「なっ、スジ引っ掛けだったか。気付かなかった。」

「なんとなく、シズなら振ってくれると思ってた。」

「なっ、なんだよそれ~!」

(仲良しごっこはここまでですよ。次はあたしの親番ですからね。)

~東四局~ 親:天理白

新子憧 32400

天理白 32200

鷺森灼 23700

高鴨穏乃 11700

(やっと親番になれた。これで、いける!)

「リーチ!」

(ダブリー!?)

(そんな・・・)

(全国4位だから早和了りだけじゃないとは思ってたけど、親番でダブリーって・・・)

~5巡目~

(これ、当たりそう。抑えとこ・・・)

(やっと来てくれた。)

「ツモ。ダブリーダブ東ツモドラ3。8000オールです。」

(なっ・・・)

(ここへ来て親倍!?しかも、東はドラな上にダブ東だから、あれだけで5飜にもなるんだ。)

(私、あと3700しか無い!これ、きっついな・・・)

~東四局一本場~ 親:天理白

天理白 56200

新子憧 24400

鷺森灼 15700

高鴨穏乃 3700

「リーチ。」

(またダブリー!?)

(しかも、また東がドラだ!これ、偶然じゃないよね。)

(おっ、今回は一発で来てくれた。良い子だね~。)

「ツモ!ダブリーダブ東一発ツモドラ3で8100オールです!」

(またダブ東ドラ3で親倍!?しかもシズが飛んで終わっちゃった!)

(この子、強い・・・)

(まさかこの3人が全く太刀打ち出来ないとは、予想以上だね。こりゃあ本当に2位取れてたかもだね。)

 

~対局結果~

天理白 80500

新子憧 16300

鷺森灼 7600

高鴨穏乃 -4400

 

 

「白ちゃん、凄く強いね・・・」

「そりゃそうさ、もし高校でドラフト会議みたいなのがあったら1位指名されてもおかしくない実力だからね。」

「晴絵、その例え、あんまり良く分かんない・・・」

「そうですね、去年のインターミドルを見ていたなら、全員が冬室氷華を1位指名する筈ですし。」

「問題そこなの!?」

「まぁでも、強いのは確かだっただろう。」

「そういえば、白は親番だとダブリー出来るとかそういう感じなの?」

「いえ、親番では無いです。」

「えっ、違うんだ。」

「もしかしたらだけど、連風の時?」

「はい、そうです。」

「えっ、どういう事?」

「連風、つまりダブ東ダブ南の時にダブリーが出来て、その連風牌3枚が付いてきて更にその連風牌がドラになる。そんなとこかな?」

「そうですね、だから、南場では1度しかチャンスが無いので東場で稼ぎます。」

「ふーん、なんか、限定的な能力なんだね。」

「だからこそ強いって人もいるじゃん。ほら、去年の永水で副将だった薄墨初美みたいにさ。」

「確かに、あの人、北家の時の手牌がとんでもなかったよね。」

「でも、薄墨は連荘出来ないけど、白は東場に限るけど出来る。そう考えたら白の方が薄墨よりも強いんじゃない?」

「でもそれは、机上の空論でしかありません。あたしと薄墨さんでどちらが勝るのか、それは直接対局する他はありませんよ。」

「そうだね。」

「という訳で、高鴨先輩、鷺森先輩、新子先輩の3人よりあたしが強い事は証明出来ましたね。」

「えっ?まぁ、そうだね。」

「確かにあたし達より白の方が強いだろうけど、それがどうかしたの?」

「あたし、自分よりも弱い人には遠慮しないタイプなんですよ。だから先輩方の事、これから少し軽く見てしまうかもしれませんが、宜しくお願いします。」

(なんだか、急に人が変わったよ・・・)

(また面倒臭いタイプの人が来た。)

「いいよ、軽く見ても・・・」

「ちょっ、シズ!?何言っちゃってんの?」

「でもその代わり、私達と一緒に、全国で戦って欲しい!宮永さんや大星さんを倒して、今年こそ、全国優勝したい!」

「シズ・・・」

「穏乃ちゃん・・・」

「先輩の熱意は犇々と伝わりました。了解です。あたしが全力を持って先輩方の援助を致します!」

「よっし!決まり!これから、全国に向けて頑張ろう!」

「はい。」

白を入れた新生阿知賀女子麻雀部がここから始まる。




県予選では初瀬と憧の勝負を書きたいんですが、他に書く事が難しいと思うのでカットします。そして咲-Saki-阿知賀編の実写ドラマが約1ヶ月で始まりますね。色々な意味で楽しみです。


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第40話《阿知賀編②》長野①

もう40話まで書いてたんですね。書き始めたのが昨日のよう・・・
ここまでこんな駄作を見て下さった皆さん、ありがとうございます!そして、これからも宜しくお願い致します!


白が入った新生阿知賀女子麻雀部は、県予選で負けないように特訓をしていた。顧問の赤土晴絵が特訓していた5人に問い掛けた。

「そういえば、皆は今年、個人戦には出ないの?」

「うーん、やっぱり個人戦はなんかね~。」

「そうだね。」

「出なくて良いよ~。」

「あたしは出ます。」

「ん?白は個人戦出るの?」

「はい、中学で勝てなかった相手と戦いたいですし、強い相手と直接勝負したいですからね。」

「成る程、おっけ。エントリーしとく。そういえば、団体戦の順番はどうする?」

「あの、あたし、大将やりたいです!」

「あ、ごめん、大将は宮永さんや大星さんと戦うって約束してるんだよね・・・」

「そうですか、約束なら仕方ないですね。なら、副将が良いです!」

「あっ、ごめん、あたしも和と戦おうって約束してて・・・」

「むぅ、じゃあ、中堅でいいです。」

「中堅は灼さんが・・・」

「うぅ・・・」

白が泣きそうになっているのを見かねた灼が溜め息を一つついた。

「いいよ、別に私は中堅に拘りはないから。」

その言葉を聞くと、あからさまに白の表情が明るくなった。

「鷺森先輩!ありがとうございます!」

白が灼の手を持ってブンブンと振った。

「ちょっ、そんなに喜ぶ事じゃ、というか痛い。」

「あ、ごめんなさい。」

「じゃあ、玄が先鋒、灼が次鋒、白が中堅、憧が副将、シズが大将でいいかな?」

「問題無いです。」

「大丈夫です!」

「じゃあ、私は大会の登録をしてくるから。」

「了解です。」

「いってらっしゃい~。」

晴絵が大会の登録をして、部員は練習を再開した。

 

 

そこから2ヶ月が経ち、県予選が行われた。県予選で白はダブリーを使わず、地力だけで戦った。2回戦で晩成に勝ち、決勝も勝って全国行きが確定した。個人戦でも白はダブリーを使わなかったが、奈良県1位で終わらせた。

「いやぁ、まさか白があれ使わずに奈良1位取っちゃうとはね~。」

「まぁ、地力だけでも強いですからね、あたしは。」

「あはは、良く言うよ。」

「でも、どうして使わなかったの?侮ってたとか?」

「まぁ、多少は侮ってたかもしれませんけど真意はそれではありませんよ。」

「真意?」

「はい、団体戦であたしがマークされない為です。あたしの能力は相手に分かられていると対策されかねないので。まぁ、対策されたところで和了れますけど。」

「そっか、強豪校とかに情報を与えないようにしてくれたって事か!やるね!」

「これくらい当然です。というか、あたしが松実先輩の立場だったら初戦でドラ捨ててインターハイで復活させてますよ。」

「それは流石に・・・」

「それに、ダブリー使ってないのにあたしが松実先輩の次に収支が良いってどういう事ですか!お三方が手を抜いてらっしゃるなら別に構わないですけど、本気でやってこの結果だったなら、流石に呆れますよ?」

「・・・返す言葉もありません。」

「うぅ、ごめんなさい・・・」

「まったくだよ。こんなんじゃ、全国優勝なんて夢のまた夢だよ。」

「赤土さん・・・」

「晴絵・・・」

「という訳で、今年も遠征をやるよ!」

「えっ、遠征?」

「あぁ、白は知らないよね。」

「今回の地区予選で1位の所とは戦えないけど2位の所とは戦えるから、全国の2位の高校と戦うんだよ。」

「へぇ、なかなか面白そうですね。」

「じゃあ、取り敢えずまた長野に申し込んでみる?」

「はい!」

「長野?どうして長野なんですか?」

「去年色々とお世話になってね。」

「長野の今年の2位は・・・鶴賀学園!?」

「えっ、天江さん負けたの!?」

「うん、大将戦終了時の結果が、清澄 200800、鶴賀 115700 、龍門渕 84500、風越 0・・・」

「0点ピッタリ!?」

「池田さん、凄く強かったのに。」

「それより、清澄が20万越えというのも異常です。清澄、一体どれだけ強いのでしょうか。」

「もしかしたら、白の天敵の冬室氷華が清澄に入ってるのかもよ?」

「確かに、その可能性はありますね。天敵では無いですけど。」

「じゃあ、去年色々とお世話になった縁もあるし、この3校に声掛けてみるね。」

「はい。」

「宜しく!」

「お願いします。」

 

 

そこから一週間が経った。合同練習をお願いした三校はどれも了承してくれた。龍門渕高校の提案で、4校が一斉に会する事になった。阿知賀女子が龍門渕高校に着いた時には、龍門渕高校と風越女子がいた。そこには勿論、冬室氷華の姿もあった。

「冬室氷華・・・風越にいらっしゃったのですね。お久しぶりです。」

「貴方は個人戦4位の、確か、天理白さんでしたね。」

「それにしても驚きですね。まさか貴女ともあろう方が団体戦を黒星で終わらせてしまうとは。」

「まぁ、それは他のメンバーが壊滅的に弱かったせいですね。」

(うっ、事実だから何も言えない・・・)

(まったく、冬室氷華は相変わらずこういう事言いますね、だから冷血女王とか言われるんですよ。)

「まぁでもそれは、弱いチームを選んでしまった貴女自身の責任なのでは?しかも0点で終了って、2万くらいしか稼げなかったんじゃないんですか?」

「いや、私は214500稼ぎましたよ?」

「・・・は?」

「21万以上稼ぎましたよ?」

「・・・本気で言ってるんですか?」

「はい、他の4人が314500点を相手校にばらまいたせいで負けたんですよ。」

「そ、そんな、ご冗談を・・・」

「白、その人が言ってる事、正しいよ。」

憧が話に割って入ってきた。

「本当に弱いチームに入ったんですね・・・」

「ちょっと白!本人達いる前でそんな事言っちゃ駄目!」

「でも、約32万を4人で0にしたって事は、平均マイナス8万くらいって事ですよ!?」

「でも、長野には強い人はいっぱいいるんだよ。先鋒は冬室氷華さん、次鋒は妹尾佳織さん、中堅は夢乃マホさん、副将は龍門渕透華さん、大将は宮永咲さんみたいな感じでさ。」

「えっ、ちょっと待って下さい。夢乃マホって、あの夢乃マホですか?」

「そうですね。私を倒した人です。」

「でもあの人は今中3じゃないですか。」

「飛び級したんですよ。確か貴方も中堅でしたよね?残念ですが、貴方では夢乃マホには勝てないでしょうね。」

「はぁ?お言葉ですけど、あたし、上野望より藤崎心音よりも強いですからね?貴女がいなければ確実にあの二人には勝っていましたよ。」

「そうですか、では今日それを見させて下さい。直接対局は出来ないですけれど。」

「了解です。」

氷華と白が邂逅し、鶴賀学園麻雀部のメンバーが到着して、4校合同練習が始まった。

 

 

「折角4つのチームが集まったのですから、半荘一回ずつの団体戦をしてみませんこと?」

透華が立ち上がり、提案した。

「楽しそうですね、しかもそれなら個人戦出場選手が重なる事も無いですからね。」

(げっ、じゃあまた無表情女と戦わなきゃならねぇじゃねぇか・・・)

「決まりですわね。では、先鋒戦から始めますわよ。」

(はぁ、めんどくせぇ・・・)

雀卓に氷華、玄、純、睦月の4人が付いた。

「松実先輩松実先輩。」

白が玄だけに聞こえるように話し掛ける。

「どうしたの白ちゃん。」

「冬室氷華にはくれぐれも注意して下さいね。まぁ、公式戦じゃないのでそこまで気を張る必要はありませんけど。」

「分かったよ。頑張ってみる!」

(まぁ、注意しようがしまいが、頑張ろうがなかろうが、冬室氷華には勝てないでしょうけど・・・)

~場決め結果~

井上純:東

津山睦月:南

冬室氷華:西

松実玄:北

 

~東一局~ 親:井上純

龍門渕 100000

鶴賀 100000

風越 100000

阿知賀 100000

(取り敢えず一回和了っておきましょうか。)

~5巡目~

「ツモのみ。300・500。」

(速い・・・)

(また始まっちまったか、これ・・・)

~東二局~ 親:津山睦月

風越 101100

鶴賀 99700

阿知賀 99700

龍門渕 99500

(今回はこの無表情女の好きにはさせねぇ!)

「ポン。」

(残念ながらそれは地雷ですよ?)

「ろ、ロン。3900です。」

(鶴賀の奴、張ってたのか・・・)

~東三局~ 親:冬室氷華

鶴賀 103600

風越 101100

阿知賀 99700

龍門渕 95600

~6巡目~

「ツモ。500オールです。」

(こいつ、また始まった・・・)

(あれ、冬室氷華は東場の親はあまり和了してなかったはず。どうして和了してるんでしょう?)

~東三局一本場~ 親:冬室氷華

鶴賀 103100

風越 102600

阿知賀 99200

龍門渕 95100

~5巡目~

「ツモ。600オールです。」

(この人、タンヤオと平和と一盃口を捨ててツモのみで和了った。本当にこんな人が白を倒したのか・・・?)

(この人が南場に強いのは知っているけれど、何で親で和了する必要があるのでしょうか?もしかしたら、何か理由でもあるのでしょうか・・・)

~東三局二本番~ 親:冬室氷華

風越 104400

鶴賀 102500

阿知賀 98600

龍門渕 94500

~4巡目~

「ツモ。700オールです。」

(また・・・)

(何も出来ないまま、ただただ本場だけが積まれていく・・・)

~東三局三本場~ 親:冬室氷華

風越 106500

鶴賀 101800

阿知賀 97900

龍門渕 93800

~3巡目~

「ツモ。800オールです。」

(また和了した・・・というか、今気付きましたけど、だんだん和了するのが速くなってますね。もしかしてこれ、去年3位だった大阪の人と同じ事が出来るようになったのですかね?だとしたらもう、敵う人が居なくなってしまうでしょうけど。)

~東三局四本場~ 親:冬室氷華

風越 108900

鶴賀 101000

阿知賀 97100

龍門渕 93000

(これ以上やったら何処かがトビ終了してしまいますね。止めてあげましょうか。)

(あれ、なんだかこの人の怖い感じが無くなった気がする。なら、私も攻めるよ!)

~8巡目~

「ツモ。ドラ7。4400・8400です!」

(ドラ7ツモで倍満!?やっぱりこいつ、ズルいよな。)

(ほう、なかなかやりますね。でも残念ながら貴方が勝つのはもう不可能ですよ。)

~東四局~ 親:松実玄

阿知賀 114300

風越 100500

鶴賀 96600

龍門渕 88600

~5巡目~

「ツモ。300・500。」

(また安手・・・やっぱりこれには意味があるのでしょうか・・・?まぁ、南場になれば分かる事でしょうね。)

~南一局~ 親:井上純

阿知賀 113800

風越 101600

鶴賀 96300

龍門渕 88300

「リーチ。」

(なっ、ダブリー!?)

(始まっちまったか・・・)

(冬室氷華、貴女は中学の頃はダブリーは愚か、リーチすら見た事無かったのに。もしかして、さっき和了した局はダブリー出来るようになるのですか!?)

「ツモ。ダブリー一発ツモ平和。2000・4000です。」

(やっぱり南場では火力が高いですね。でも次の局は冬室氷華が和了してないですからダブリーは出来ない筈ですね。)

~南二局~ 親:津山睦月

阿知賀 111800

風越 109600

鶴賀 94300

龍門渕 84300

~7巡目~

「ツモ。タンヤオ清一ツモ。4000・8000です。」

(間に合わなかったですか。でも、仕方ないですね。)

(捲られちゃった。しかも、なんだか急に強くなった。それに配牌も悪い。次は冬室さんの親番だ、気を付けなきゃ・・・)

~南三局~ 親:冬室氷華

風越 125600

阿知賀 107800

鶴賀 86300

龍門渕 80300

「リーチ。」

(またダブリー!?)

(やっぱり、東場で和了した局に南場でダブリー出来るんですね・・・)

(これ、防げないの?こんなのズル過ぎじゃん!)

(これが、冬室氷華、昨年のインターミドル覇者の力か・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモ混一。6000オールです。」

(凄い、この人が、白が言ってた最強の人・・・)

(こんなの、勝てないよ・・・)

(また、連荘が始まった・・・)

~南三局一本場~ 親:冬室氷華

風越 143600

阿知賀 101800

鶴賀 80300

龍門渕 74300

「リーチ。」

(またダブリー!?)

(もう、完全に冬室氷華の独り舞台になってますね。)

(また、一発で和了っちゃうのかな・・・?)

「チー。」

(おっ、ずらした。これなら一発は消えるはず。それに和了する事も出来ないはずですね。)

「ツモ。ダブリーツモ清一。8100オールです。」

(なっ!?)

(ずらしても和了するんですか!?しかもこれ、だんだん打点が上がってますね。冬室氷華は東場で4連荘してました。じゃあ次は三倍満と役満を和了するんでしょうか?)

(もし本当に三倍満と役満和了っちゃうなら、2位の玄が65000くらいになっちゃう。そういえばこの人、東四局でも和了ってた。もしかしてもう一回役満を和了るの!?だとしたら玄は親だから5万切っちゃうよ!この人、ヤバ過ぎでしょ!)

~南三局二本場~ 親:冬室氷華

風越 167900

阿知賀 93700

鶴賀 72200

龍門渕 66200

「リーチ。」

(また、もう、止めて・・・)

(玄が可哀想になってきた・・・)

(玄さん・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ清一。12200オールです。」

(三倍満!?こんなの、勝てる訳が無いよ・・・)

(やっぱり、三倍満を和了してきましたか・・・)

(次は役満が来る。玄、気を付けて!)

~南三局三本場~ 親:冬室氷華

風越 204500

阿知賀 81500

鶴賀 60000

龍門渕 54000

「リーチ。」

(リーチ掛けてくるって事は多分翻数が足りないって事だよね。なら・・・)

「ポン!」

(これなら一発が消えるし役満も難しいはず!)

(あーあ、ドラ女が県予選の時の俺みたいな事考えてるな。結果は変わらないってのに・・・)

「ツモ。国士無双。16300オールです。」

(国士無双!?本当に役満和了った・・・)

(国士無双なのに何でこの人はリーチを掛けたんでしょう・・・?)

~南三局四本場~ 親:冬室氷華

風越 253400

阿知賀 65200

鶴賀 43700

龍門渕 37700

(さぁ、ここからだな。この局は無表情女が和了ってない。そして多分、鶴賀が動く・・・)

(津山睦月さんの起死回生の一手、直撃と親被りは出来るだけ避けたいですね。なら、鳴きやすい手を作りましょうか。)

~8巡目~

「リーチ!」

(やっぱり来ましたね。一発だけは避けたいですね。なら・・・)

「ポン。」

(津山睦月さんの一発目の牌を阿知賀の人に持たせたらどうなるでしょうか。)

(うぅ、ドラは切れないしどうしよう・・・でも園城寺さんじゃあるまいし一発じゃないよね。)

「ロン!リーチ清一一通ドラ2。25200です!」

「は、はい!」

(三倍満!?南場に入って聴牌すらまったく出来なかったのに、この人はこんなに凄いものを和了ってきた。去年とはまるで別人・・・)

(やっぱり、一発ツモだったら役満でしたか・・・)

(阿知賀のドラ女も可哀想だな。あれ、絶対あの無表情女が仕組んだ直撃だっただろ。性格悪ぃよな。)

~南四局~ 親:松実玄

風越 253400

鶴賀 68900

阿知賀 40000

龍門渕 37700

(そういえばこの局、冬室氷華が和了していました!という事はもしかして、また役満を和了してしまうんでしょうか・・・?)

「リーチ。」

(やっぱりダブリー!このダブリー一発ツモ、防げないのかな・・・?)

(こりゃあ、やられたな・・・)

(これで、終わりです。)

「ツモ。四暗刻。8000・16000です。これで先鋒終了ですね。」

「はい・・・」

「だぁー、また負けたぁ!」

「お疲れ様です。」

 

~先鋒結果~

風越 285400

鶴賀 60900

龍門渕 29700

阿知賀 24000

 

「これが、インターミドル最強か・・・」

「この点差ひっくり返すとか、人間に出来るの・・・?」

「清澄は風越が314500で清澄が18300の状況から逆転しましたよ?」

「・・・マジで?」

「清澄、凄すぎでしょ。」

「そういえば冬室氷華、何故貴女は国士無双や四暗刻でリーチを掛けたのですか?点数は変わらないではないですか。」

「私はたった今ご覧頂いたように東場で和了した局に南場でダブリーが出来ます。でも、逆にダブリーを掛けないと一発は愚か、和了り牌が来てくれない可能性があるんです。要するに私は、東場で和了した局に南場でダブリー出来るだけではなく、リーチをすると次に掴んだ牌が和了り牌になってる力も兼ね備えているんですよ。」

「成る程、そういう事でしたか。」

「では、先鋒戦も終わりましたし、次鋒戦を始めましょうか。」

「はい!」

「よろしくお願いします。」



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第41話《阿知賀編③》長野②

阿知賀女子麻雀部顧問の赤土晴絵が先鋒の牌譜を見ていた。

(やっぱり、冬室氷華はとんでもなかったな。この実力なら直ぐにでもプロになれそうな実力だけど、これからどうなるのか期待だな。)

そう考えていると、灼が次鋒戦を始めようとしていた。

「あっ、灼!ちょっと待って。」

「えっ?ハルちゃんどうしたの?」

「次鋒戦、鶴賀の妹尾さんには注意してね。」

「えっ、妹尾さん?・・・分かった。頑張ってみる。」

「よしっ、行ってこい!」

「うん。」

~場決め結果~

妹尾佳織:東

吉留未春:南

鷺森灼:西

沢村智紀:北

 

~東一局~ 親:妹尾佳織

風越 285400

鶴賀 60900

龍門渕 29700

阿知賀 24000

(ハルちゃんに妹尾さんを注意しろって言われたけど、何を注意すれば・・・去年打った時は一度だけ役満を和了ってたけど、それを注意するの?出るかどうかも分からない役満を?でも、ハルちゃんの言う事は絶対!)

(取り敢えず親番だし、一回使っちゃおう。)

ゾクッ

(!?これが、妹尾佳織の・・・灼、頑張れ!)

~8巡目~

(鶴賀の妹尾さん、絶対私を狙ってるだろうな。まぁでも、いきなり役満は無いはず。それにまだ8巡目だしね。行っちゃおうか!)

「リーチ。」

「それ、ロンです。」

(うっ、まさか・・・)

「国士無双、48000です。」

(いきなり国士無双!?)

(ハルちゃんが注意しろって言ってたのはこれだったんだ・・・)

「一本場です。」

~東一局一本場~ 親:妹尾佳織

風越 237400

鶴賀 108900

龍門渕 29700

阿知賀 24000

~9巡目~

(さっきの妹尾さんの一撃、私にやられたらうちが飛んで終わっちゃう。それだけは防がなきゃ!)

「リーチ!」

(鷺森さんがリーチを掛けてきた。ならここはオリで・・・)

(一発消ししておこうかな。)

「チー。」

(一発消された、それでも、私は和了る!)

「ツモ!リーチツモ平和一通。2100・4100!」

(筒子多めの手牌、データ通り。)

(私だったら染めちゃいそうな手だな。)

(もしかして、私の役満を警戒してる・・・?)

~東二局~ 親:吉留未春

風越 235300

鶴賀 104800

阿知賀 32300

龍門渕 27600

~7巡目~

「リーチ!」

(また阿知賀!?この人、凄い・・・)

(またやられる・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ清一。4000・8000!」

(今回は染めてきた。)

(親被りで8000マイナスか、これ、ヤバいかもな・・・)

(これで、親の役満を喰らっても耐えられる。これならまだ戦える。)

(やっぱり、私の役満を警戒してる?)

~東三局~ 親:鷺森灼

風越 227300

鶴賀 100800

阿知賀 48300

龍門渕 23600

(このまま連荘する!)

~9巡目~

(なんだか調子いい感じ、これなら行ける!)

「リーチ!」

(また・・・)

「ロン。7700。」

「えっ・・・」

灼が捨てた牌で和了したのは、龍門渕高校の沢村智紀だった。

(この人、聴牌気配を感じなかった。やっぱり強敵・・・)

~東四局~ 親:沢村智紀

風越 227300

鶴賀 100800

阿知賀 40600

龍門渕 31300

~11巡目~

(やっと聴牌、まだ鶴賀との点差は6万、ここは攻める!)

「リーチ!」

(また阿知賀のリーチ、速くて追い付けない・・・)

(取り敢えずオリで・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一。3000・6000!」

「おぉ、やるなー鶴賀の次鋒。」

「ちょっ、真紀!先輩なんですからもう少し言葉遣いを気を付けて下さい。」

「別に、問題無い。」

「一葉が堅すぎるんだよ。」

「私が悪いんですか~!?」

「一葉、試合中だからちょっと静かに。」

(誰のせいだと思ってるんですか!)

「・・・分かりました。」

~南一局~ 親:妹尾佳織

風越 224300

鶴賀 97800

阿知賀 52600

龍門渕 25300

(親番だし、もう一回使っちゃおう!)

(なっ!?妹尾さんの配牌、凄すぎる!)

(去年は偶然って感じだったけど、今は意図的にやってない?これ・・・)

~6巡目~

(いい感じの聴牌、このまま稼ぐ!)

「リーチ!」

「ロンです。大三元。48000です。」

「・・・は?」

佳織の役満は、風越ではなく、灼に直撃した。

(私じゃなくて阿知賀を狙い撃ち!?どういう事なの?)

(これは予想外・・・)

(しかもこれ、直前に58ピン待ちから2萬の単騎待ちに変えてる。もしかして、意図的に私を狙い撃ちした・・・?)

(妹尾先輩がそんな酷い事するか?)

(妹尾先輩はこんな弱い者いじめみたいな事する人だとは思えません。これは、何か裏がありそうですね。)

~南一局一本場~ 親:妹尾佳織

風越 224300

鶴賀 145800

龍門渕 25300

阿知賀 4600

(この点数は流石にヤバい。取り戻さないと!)

~9巡目~

(聴牌した、けど、ここでリーチ掛けたら3600点になる。3900直撃で負けちゃう。なら、ダマで・・・)

~13巡目~

「ツモ。平和一通、1400・2700。」

(和了られた・・・)

(よしっ、取り敢えず和了れた!このまま頑張れ!)

(部長さん、踏ん張って下さい!)

~南二局~ 親:吉留未春

風越 222900

鶴賀 143100

龍門渕 23900

阿知賀 10100

~10巡目~

(やっと聴牌出来た。かなり削られたから、稼がないと。)

「リーチ。」

「ロン!3900。」

吉留未春が出した牌を灼が和了った。

(灼さんがまた和了った!)

(灼、頼れる部長って感じだな。)

(まだまだ、諦める訳にはいかない!次の親番で連荘する!)

~南三局~ 親:鷺森灼

風越 219000

鶴賀 143100

龍門渕 23900

阿知賀 14000

~7巡目~

(よしっ、牌も乗ってきた。これを和了って連荘する!)

「リーチ!」

「ロンです。清一。12000です。」

(妹尾さん!?)

(また妹尾さん!?この人、役満だけじゃないんだ・・・)

(これは、あたしの妹尾先輩強化レッスンが功を成したのかもしれないな。)

(また、またやられた・・・今度は、残り2000・・・)

(これは、厳しすぎやしないか・・・)

~南四局~ 親:沢村智紀

風越 219000

鶴賀 155100

龍門渕 23900

阿知賀 2000

(こんなの、もう嫌・・・頑張って稼いでも、全部妹尾さんに持っていかれる・・・もう、どうすれば・・・)

~8巡目~

(ツモった。だけど、これだとそんなに高くないし、いくら白が強いとはいえ、流石にこの点数は厳しいかも。でも、ここで和了らなきゃ飛ばされるかもしれない。なら・・・)

「・・・ツモ。1000・2000です。」

「これで、終わりですね。」

「お疲れ様、でした・・・」

 

~次鋒戦結果~

風越 218000

鶴賀 154100

龍門渕 21900

阿知賀 6000

 

 

次鋒戦が終わり、佳織が灼に近付いた。

「あの、鷺森さん、その、ごめんなさい。」

「そんな、謝罪するんだったら何であんな事したんですか!」

(灼さん・・・)

「灼、妹尾さんがわざとやったとは限らないんだから、そこで怒るのはお門違いだよ。」

「ハルちゃん・・・でも!この人は」

「灼!あんたが妹尾さんの和了りを止められなかったのが悪いんでしょ?妹尾さんは何の罪もない。たとえ灼の事を一方的に狙っていたとしても、それはあんたが止めればこんな事にはならなかった。それを怒るのは、子供のやる事だよ。」

「・・・はい。すいませんでした、妹尾さん。」

「いえ、こちらこそ、すみません。」

「因みに、うちを飛ばそうとしたのは、鶴賀の作戦だったんですか?」

「え、いえ、そんな作戦は無いです。」

「風越を上回ってるならまだしも、下回ってるのにそんな事しないでしょ。」

「じゃあ、どうして灼に直撃してたの?」

「ええっと、それは・・・」

「あぁ、ごめんね、怒ってる訳じゃないよ。ただ聞いてみたかっただけだから。」

「ええっと・・・」

「私が妹尾さんに示唆しました。」

晴絵の後ろからそんな声が聞こえてきた。振り向くとその声の主は少し手を挙げていた。

「冬室さん?」

「えっ、どういう事?」

 

 

~先鋒戦開始前~

「妹尾さん、ちょっと良いですか?」

「わっ、冬室さん?どうしたんですか?」

「ちょっと、お手洗いの場所が分からないので教えて頂けませんか?」

「えっ、それなら龍門渕さんに聞いた方が良いんじゃ・・・」

「あの人達は・・・今、団体戦の準備をしているので。ごめんなさい、急いでいて速く行きたいのでお願いします。」

「わ、分かりました。行きましょう!」

氷華と佳織が少し歩くと、突然氷華が止まった。佳織がそれに気付いて足を止める。

「どうしたんですか?冬室さん。お手洗いはあっちですよ?」

「それはもう良いです。実は、妹尾さんに折り入って話があったんです。」

「えっ、じゃあ、お手洗いに行きたいっていうのは?」

「今は全然大丈夫です。」

「そうだったんだ、だから龍門渕さん達じゃなくて私に・・・」

「はい。」

「分かりました。お話とは何ですか?」

「次鋒戦で、妹尾さんは阿知賀女子をトビ終了しない程度に潰して欲しいんです。」

「えっ!?どうしてですか?」

「これは阿知賀女子の為の合同練習です。厳しくした方が阿知賀女子の為になるでしょう。」

「でも私、そんな酷い事できるかな・・・?」

「そうですか。ですが、阿知賀を潰して欲しい理由はそれだけではありません。阿知賀女子の中堅の天理白、彼女は去年私が優勝したインターミドルで4位だった人です。私と比べた幾らか劣りますけど、かなり強いとは思います。白さんを自由にさせない為にも、次鋒戦で削っておくのが得策だと私は思いますけどね。」

「そ、そうですか。えっと、それなら、頑張ってみます。」

「ありがとうございます。では戻りましょうか。」

「そうですね。あっ、帰り道は分かりますか?分からないならまた案内を・・・」

「大丈夫です。さっきのは妹尾さんを呼び出す口実でしかないので。」

「そうですか。なら良かった。」

「じゃあ、戻りましょう。」

「はい。」

 

 

~現在~

氷華が佳織に指示をしていた事を公表した。

「そんな・・・何で、そんな事・・・」

(そういえば、試合始まる前に冬室氷華がこそこそしてたな。まったく、姉妹揃って性格悪ぃな。)

「なんで、なんでそんな酷い指示出したんですか!」

(灼ちゃん、泣いてる・・・)

(部長さん・・・)

「灼、止めなさい。」

「だって!」

「灼、同じ事を言わせないで。冬室さんは、確かに普通だったらしちゃいけない指示をしていたかもしれない。けど、それは止められなかった灼が悪いんだ。冬室さんが直接悪い訳じゃない。」

「そう、だけど・・・」

「そうですよ。それに、これは阿知賀女子の為なんですよ?貴女方が成長する為に不利にして簡単には勝てないようにしたんです。」

「そんな、部長さんが泣く程不利にする事のどこが成長に繋がるんですか!」

(白・・・)

(白ちゃん・・・)

「止められなかったのも、泣いているのも全て自分のせいでしょう。私に責められても困ります。」

「失望しました。冬室氷華、貴女だけは絶対に許さない!」

「別に、許されようが許されまいがどうでも良いです。そういえば、貴方は開始前に私に強さを見せつけると言ってましたよね?では見せて下さい。この点差をひっくり返す事が出来るなら、実力を認めましょう。」

「分かりましたよ。貴女の口車に乗ってやりますよ!」

「それは楽しみです。」

「部長さん、あたしに任せて下さい。絶対にこの敵は取ってきますから!」

「白・・・ありがとう。」

「あたしに任せて下さい!」

「うん、期待してる。」

泣いていた灼から少し笑みがこぼれる。

「やっぱり、泣いているよりも笑っている方が可愛いですよ、部長さん。」

「えっ、ちょっ、何言って・・・」

(へぇ~、まさか白・・・)

「じゃ、行ってきます。」

「白、頑張って!」

「任せて下さい。絶対に勝ちます。」

白が席に着いた。

(冬室氷華、貴女はきっとあたし達を潰そうとした事を後悔する。今度はあたしが風越をぶっ潰す番!やってやる!)

中堅戦が、始まる。




書いてる時は特に何も感じなかったのですが、誤字脱字チェックしてたら『これ、まるでライ○ーゲームじゃん!』って思ってしまいました。
そして、申し訳ありませんが、来週は諸事情の為お休みさせて頂きます。


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第42話《阿知賀編④》 長野③

1週間空けてしまいました、すみません。代わりと言ってはなんですがこの話の外伝ストーリーを書きました。『久-Hisa-大学編』というタイトルで久や美穂子達の大学でのお話を書いた物なので、そちらの方もどうか宜しくお願いします!


白が中堅戦を始める少し前、晴絵が白を呼び止めた。

「白、お前はこの対局で何をするつもりなんだ?」

「決まってますよ。風越を飛ばす、ただそれだけです。」

「はぁ?無理に決まってる。20万以上の点数があるじゃないか。」

「余裕ですよ。親跳を12回くらい直撃すれば飛ぶじゃないですか。」

「少し落ち着いて。気持ちは多少分かるけど、だからと言って感情的になると必ず穴が出てくる。この中堅戦ではその穴を狙ってくる人がいる。それじゃあ白が負ける。」

「あたしは負けません!あたしは絶対に勝ちます!」

「その慢心のせいで、インターミドルも4位だったんじゃないか?」

「・・・今、何と言いましたか?」

「お前が傲っているせいで冬室氷華だけでなく藤崎心音にも負けたんじゃないかと言ったんだよ。」

「前に言ったじゃないですか、冬室氷華がいなければ藤崎心音には勝てたと。」

「前に聞いた時はそうかもしれないと思っていたよ。でも今お前と接してきて気付いたんだ。白、お前が今みたいに傲慢だったら、藤崎心音には勝てない。」

「貴女に何が分かるんですか!」

「分かるよ、これまで色んな選手を見てきたからね。」

「色んな選手を見てきたからって、あたしが藤崎心音に勝てないとは限らないじゃないですか!」

「分かるんだよ、お前は、去年の大星淡によく似ているから。」

「大星淡?白糸台のですか?」

「あぁ、そうだよ。彼女は自尊心が強かった。今の白のように。そしてその自尊心が故に去年の準決勝でシズに負けたんだよ。でもそこから反省したのか、決勝での彼女にシズは届かなかった。大星淡も宮永咲には負けてしまったけど、うちのチームと臨海女子を上回って準優勝になった。大星淡は負けた事で自分の実力を思い知って更に強くなったんだ。だけど今の白はどうだ?インターミドルを4位という不甲斐ない結果で終わらせておいて、それを全て冬室氷華のせいにして改善しようともせず、なお今も自分は強いと信じて疑わない。まったく、思い上がりも甚だしいよ。」

「もう結構です!貴女はもっと話が通じる人かと思っていましたが違いました。なら証明して見せますよ。あたしは大星淡さんとは違って強いって事を!」

「ふっ、まぁ、これは練習だから、白の好きなように打って貰って構わない。けど、今のやり方じゃ、遠からず必ず後悔する日が来る。」

「そんなの、来ませんよ。あたしは常に強くなっているので。」

「じゃあもういいよ、取り敢えず時間が無くなりそうだから中堅戦に行ってきな。」

「言われなくても行きますよ。」

(絶対に勝つ。そして謝罪させてやる!白を誤解してた、白は他とは違うって言わせてやる!)

白は殺気を剥き出しにしながら麻雀卓に座った。

 

~場決め結果~

文堂星夏:東

国広一:南

天理白:西

東横桃子:北

 

~東一局~ 親:文堂星夏

風越 218000

鶴賀 154100

龍門渕 21900

阿知賀 6000

(全部潰す!でもその前に風越を潰す!)

(な、なんだか阿知賀の人にめちゃくちゃ睨まれてるんだけど、大丈夫かな?でも、夢乃マホさんと対局した時みたいな事にはならないよね・・・)

~7巡目~

「ロン。8000。」

(うっ、早速阿知賀の人が私を狙い撃ってきた。これ、ちょっとヤバいかもな・・・)

(阿知賀は完全に風越狙い撃ちだろうけど、ボクも稼がないと直ぐに飛ばされかねない。どうにかして和了っておきたいね。)

~東二局~ 親:国広一

風越 210000

鶴賀 154100

龍門渕 21900

阿知賀 14000

~7巡目~

「ツモ。1300・2600。」

(速い・・・)

(そういえばこの人、県予選ではドラゴンさんの次に稼いでたっすね。やっぱり強いっすね。)

~東三局~ 親:天理白

風越 208700

鶴賀 152800

龍門渕 19300

阿知賀 19200

(さてと、やっちゃおうか!)

(!?今の感じ、衣みたいな感じがした・・・もしかしてこれからもっと凄いのが来るの?)

「リーチ。」

(ダブリー!?親番でダブリーなんて、マッキーみたいっすね。)

(こんなの、何を出せば良いか分からない・・・これかな。)

「ロン。ダブリーダブ東ドラ3、一発ついて24000。」

(うわっ、親倍!?)

(これが、今年の阿知賀のダークホースっすね。)

(なんだか、白糸台の大星淡さんにちょっと似てるな・・・)

(さて、この調子で風越を飛ばす!)

~東三局一本場~ 親:天理白

風越 184700

鶴賀 152800

阿知賀 43200

龍門渕 19300

「リーチ。」

(またダブリー!?)

(しかもこれ、ドラがまた東だ。これ、もしかしたらまたダブ東ドラ3で和了られちゃうかも・・・)

~5巡目~

「ロン。ダブリーダブ東ドラ3。18300。」

(また風越を狙い撃ち、この人、風越を落とす気でいる。)

(またダブリーダブ東ドラ3で和了ってきたっすね。)

(これ、ヤバいかも・・・)

~東三局二本場~ 親:天理白

風越 166400

鶴賀 152800

阿知賀 61500

龍門渕 19300

「リーチ。」

(うっ、またダブリー。阿知賀の中堅の人がこんな強いなんて・・・)

(一発消ししとこうか。)

「ポン。」

(一発消しですか、そんなものあたしには関係無いですね。あたしの狙いはただ1つですから!)

「ロン。ダブリーダブ東ドラ3。18600。」

(3連続で私に直撃された!どうすればこの連荘を止められるの・・・?)

(そろそろ仕掛けていかないとヤバいな・・・)

(阿知賀のダークホースさんのお陰でトップになれたっすね。それに、多分もうステルス状態になってるはず。この勝負、貰ったっすよ!)

~東三局三本場~ 親:天理白

鶴賀 152800

風越 147800

阿知賀 80100

龍門渕 19300

「リーチ。」

(このままだとまた風越がやられる。そしてもしトップまで行ってしまったらボクが狙われるかもしれない。ここは阻止しないと!)

「チー!」

(また一発消しでしょうか?意味が無いのに・・・)

「ポン!」

(また鳴いてきた、もしかしてあたしを止めようとしている?)

~7巡目~

「ツモ!タンヤオ三色赤2つで2300・4200!」

(止められた!?まだ稼ぎ足りないのに・・・)

(やっと止まった・・・)

(ここからっすよ。)

~東四局~ 親:東横桃子

鶴賀 150500

風越 145500

阿知賀 75900

龍門渕 28100

(やっぱり、親番が終わったらダブリーはしなくなるんだな。ならこっちも攻める!)

~8巡目~

「リーチ!」

(速い・・・)

(止められてしまった、これ、ヤバい・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色。3000・6000!」

(っ!先に和了られた!これは、ヤバいな・・・)

~南一局~ 親:文堂星夏

鶴賀 144500

風越 142500

阿知賀 72900

龍門渕 40100

~10巡目~

「リーチ!」

(また龍門渕、調子が良いですね・・・)

(これ、またやられちゃう・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ純チャン三色。4000・8000!」

(また一発ツモ!?)

(ステルスになってるのに何も出来ずに局が進んで行ってしまうっすね。)

~南二局~ 親:国広一

鶴賀 140500

風越 134500

阿知賀 68900

龍門渕 56100

(この親番は易々と流させる訳にはいかない!少なくとも阿知賀は捲る。そして、出来るだけ稼いで透華にバトンタッチする。)

~9巡目~

「リーチ!」

(またですか!?)

(凄い、全然押さえられない・・・)

(この局も貰った!)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラ1。6000オール!」

(また和了られた、それに捲られた!?)

(龍門渕が止まらない。)

(4連続和了、凄いっすね。そういえば県予選の時は清澄のコピーさんがいたから霞んでましたけど、やっぱりこの人の実力は本物っすね。)

~南二局一本場~ 親:国広一

鶴賀 134500

風越 128500

龍門渕 74100

阿知賀 62900

~5巡目~

(よし、聴牌した。これなら龍門渕を捲り返す事も出来る。)

「リーチ。」

「いいんすかそれ。ドラっすよ?」

「えっ・・・?」

「ロン。リーチ一発タンヤオドラ3。12300っす。」

(リーチ!?いつの間に!?)

「あの、リーチの発声、してなかったですよね?」

「したっすよ。皆さん、してましたよね?」

「ちゃんとしてましたよ。」

「白、悪いけどちゃんと『リーチっす。』って言ってたよ。」

「そう、ですか・・・はい。」

(これがステルスですか。先輩方が言っていた時は頭が湧いているのかと思いましたけど、まさか本当に見えなくなって聞こえなくなるなんて・・・でも、次は親番、ダブリーは使えないけどここは連荘しなきゃ。)

~南三局~ 親:天理白

鶴賀 146800

風越 128500

龍門渕 74100

阿知賀 50600

(阿知賀の親番、ダブリーしてくるかな?・・・あれ?してこない。なんで?)

(やっぱり、連風の時にダブリーしてくるんすね。)

(阿知賀が来ないならこっちも攻めるよ!)

~6巡目~

「リーチ!」

(また龍門渕!?まだ負ける訳にはいかないんです!私も追いかけます!)

「リーチ!」

(阿知賀もリーチを掛けて来た!?もう降りるしか・・・)

(ここで阿知賀に和了られるわけにはいかない!)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一。3000・6000!」

(うぅ、先に和了られてしまいました・・・)

(龍門渕の国広さん、やっぱり強いっすね。)

~南四局~ 親:東横桃子

鶴賀 143800

風越 125500

龍門渕 86100

阿知賀 44600

「リーチ。」

(ダブリー!?親番にダブリーするんじゃないの!?)

(やっぱり連風の時っすね。これはやられちゃうっすかね・・・)

「ツモ。ダブリーダブ南一発ツモドラ3で4000・8000です。」

「これで終わりっすね。」

「お疲れ様です。」

「お疲れ様でした。」

(あたしが最下位で新子先輩にバトンタッチする事になってしまうとは・・・)

「お疲れ様、でした・・・」

 

~中堅戦結果~

鶴賀 135800

風越 121500

龍門渕 82100

阿知賀 60600

 

(勝てなかった、まったく敵わなかった・・・)

「これで分かっただろ白、今のお前では夢乃マホが圧勝したこの3人に勝てないんだ。自分が弱い事を自覚した方がいい。」

「そう、ですね。でも、じゃあどうすれば強くなれますか!?」

「そうだね、まず今の対局について言えば、東場の親番の時に風越ばかり直撃していただろう?あれを直撃じゃなくてツモるのを待っていれば少なくとも龍門渕には上回っていたはずだ。まぁ、その前の局も風越を狙っていなければもう少し稼いでいたかもしれない。感情的になると周りが見えなくなるのは悪い癖だから治した方が良い。」

「そうですね。次からは気を付けます。」

「そして、どんな相手だとしても油断大敵だ。それに、自分は強いと思い上がらない事。まぁ、細かい事は適宜行っていくよ。」

「分かりました。赤土先生の言う事に従います。そうすれば強くなれるんですよね?」

「今よりは確実に強くなると思う。まぁ、優勝出来るかどうかはあんたら次第だけどね。」

「・・・分かりました。あたし、これから麻雀に対して真摯に取り組みます!そして、必ずやこのチームを先輩方と5人で優勝校にしてみせます!なので、ご指導宜しくお願い致します!」

「任せな!」

晴絵が白の指導を終わらせると、憧が立ち上がった。

「ふぅ、次はあたしか。」

「ごめんなさい新子先輩、最下位でバトンを渡してしまって・・・」

「良いよ、こういうのは助け合う物なんだから、その代わり、あたしが今度調子が悪かった時にはちゃんと稼いでよね。」

「新子先輩・・・ありがとうございます!」

「うん!じゃ、行ってくるね。」

「頑張って下さい。」

中堅戦が終わり、副将戦が始まる。



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第43話《阿知賀編⑤》 長野④

憧が卓に入った。それに続いて一ノ瀬一葉、龍門渕透華、深堀純代が席に座った。

 

~場決め結果~

龍門渕透華:東

深堀純代:南

一ノ瀬一葉:西

新子憧:北

 

~東一局~ 親:龍門渕透華

鶴賀 135800

風越 121500

龍門渕 82100

阿知賀 60600

(取り敢えず、このまま最下位なんてあり得ない。とにかく和了らなきゃ!)

~7巡目~

「ツモ!タンピンツモドラ、1300・2600。」

(東横先輩が言っていた通りですね。何となくですが原村さんに似た雰囲気を感じます。でもまだ点差もありますし、少し様子見をしますか。)

(このままどんどん稼ぐ!)

~東二局~ 深堀純代

鶴賀 134500

風越 120200

龍門渕 79500

阿知賀 65800

~7巡目~

(こんなんじゃまだまだ足りない!)

「ポン!」

~11巡目~

「ツモ!タンヤオ三色ドラ1、1000・2000!」

(阿知賀の新子さん、速いですわね。)

(成る程、細かく稼いでいくタイプなんですね、ならそろそろ倒しにいきますか。)

~東三局~ 親:一ノ瀬一葉

鶴賀 133500

風越 118200

龍門渕 78500

阿知賀 69800

~9巡目~

(よしっ、聴牌出来た。)

「リーチ!」

「ポンです。」

(鶴賀が動き出しましたわ!まずいですわね・・・)

(鶴賀の人に一発消された。それでも、あたしは和了る!)

「ツモ!リーチツモ七対子。1600・3200。」

(先に和了られてしまいましたか。まぁ、仕方ないですね、次は決めます。)

~東四局~ 親:新子憧

鶴賀 130300

風越 116600

龍門渕 76900

阿知賀 76200

(親番、ここで連荘して、出来るだけ高い点でシズに繋げたい。頑張らなきゃ!)

(さっき親番を流されたので流し返します。)

「ポンです。」

(鶴賀が9ピンを鳴きましたわ!?これはヤバいですわね。)

~9巡目~

「ツモです。清老頭。8000・16000です。」

(えっ、清老頭!?)

(やっぱり、やられてしまいましたわね・・・)

(点差が更に広がってしまった・・・)

~南一局~ 親:龍門渕透華

鶴賀 162300

風越 108600

龍門渕 68900

阿知賀 60200

(さっき稼いだ点全部持っていかれた・・・1鳴きで清老頭とか、運良すぎでしょ!)

~8巡目~

(このまま点差を広げます!)

「ポンです。」

(鶴賀が聴牌いたしましたわね、ですが、それは私も同じ。私も行かせて頂きますわ!)

「リーチ!」

(龍門渕さんがリーチを掛けてきました、これはちょっとピンチですね。)

(親リーとか、点稼ぎたいのにこれじゃあ降りるっきゃ無いじゃん!)

「いらっしゃいまし!ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色一盃口。8000オール頂きますわ!」

(親倍!?ここに来て何そんな高い手和了ってくれちゃってんのよ!これじゃああたしが一人沈みじゃない!どうしよう、白にあんな事言ったのに口だけになっちゃう。)

~南一局一本場~ 親:龍門渕透華

鶴賀 154300

風越 100600

龍門渕 92900

阿知賀 52200

(この状況は流石にまずい。この状態でさえまずいのに、次は池田さんに天江さんまで出てくる。それに鶴賀だって清老頭を和了るような人を副将に置いてるって事は大将もどうせ強いんでしょ。今のままじゃ流石のシズでもキツいよな・・・なら、)

「リーチ!」

(やるしかないでしょ!)

(8巡目にリーチ、かなり速いですわね。)

(止めたいですけど鳴けませんね、これはやられてしまうかもしれませんね・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンヤオ三暗刻。3100・6100!」

(阿知賀の新子憧、やりますわね!)

~南二局~ 親:深堀純代

鶴賀 151200

風越 97500

龍門渕 86800

阿知賀 64500

~5巡目~

「ポン。」

(阿知賀の方、調子が良さそうですね。)

~9巡目~

「ツモ!混一三暗刻対々、3000・6000。」

(また跳満ツモですか、調子が良いみたいですね。)

(このままでは捲られてしまいますわ!それはまずいですわね。)

~南三局~ 親:一ノ瀬一葉

鶴賀 148200

風越 91500

龍門渕 83800

阿知賀 76500

(親番、ここは和了らせて頂きます。)

~3巡目~

「ポンです。」

(鶴賀の人、トップなのにまだ稼ぎ足りないって言うの!?これ以上稼がれるとこっちが困るんですけど!)

「それ、ロンです。三色同刻三暗刻対々。18000です。」

(あっちゃ~、直撃されちゃった。っていうかこれ、また1が3枚ずつ揃ってる!?そういえば、今日は1がほとんど手牌に来てなかった・・・これってもしかして、この人がずっと1を占有してるって事!?ヤバすぎでしょ!)

「一本場です。」

(この人の親番は早く終わらせなきゃ!)

~南三局一本場~ 親:一ノ瀬一葉

鶴賀 166200

風越 91500

龍門渕 83800

阿知賀 58500

(稼いでも稼いでも鶴賀に取られちゃう。これ、もしかしてまた冬室氷華が口出ししてるの?止めて欲しいな・・・)

~7巡目~

(取り敢えず聴牌したし、行っとこうか。)

「リーチ。」

(阿知賀の新子さん、心がお強いですね。何度潰してもまた和了ろうとするとは。では私も、全力で止めなければいけませんね。阿知賀の方々のためにも!)

「チーです。」

(あぁ、また一発消された!でも、和了る!)

「ツモ!リーチツモタンピン三色一盃口。3100・6100。」

(和了られてしまいましたか、でも、今回は一発消しをしたお陰で倍満にならずにすみましたね。)

~南四局~ 親:新子憧

鶴賀 160100

風越 88400

龍門渕 80700

阿知賀 70800

(オーラスで親番、連荘して、出来るだけ多く稼いでシズに渡さなきゃ!)

~8巡目~

(あら、これが来てしまいましたか、では、少し面白い事をしてみましょうか。)

「カンです。」

(えっ、暗カン?)

(というかこれ、4索!?1じゃない!?)

(もし今回も1が3枚ずつあるとすれば、四暗刻の単騎待ちに・・・)

(でも、それだったらどうしてカンをしたんですの?カンなんてしてしまったら四暗刻を聴牌している事がバレてしまいますでしょうに。)

(もしかしてこれ、あたしに連荘させないで降りにさせる為の威嚇?だとしたら、あたしはどうすれば良いの・・・んもう分かんない!)

~13巡目~

(残念、タイムアップです。)

「ツモです。四暗刻。8000・16000です。」

(くっ、やっぱり四暗刻だった・・・)

「これで終わりですね。お疲れ様でした。」

「お疲れ様です・・・」

 

~副将戦結果~

鶴賀 192100

風越 80400

龍門渕 72700

阿知賀 54800

 

 

「いやー、しかし、 やっぱり一葉は麻雀になると人が変わるよな。」

「べ、別に、これは麻雀に対して真摯に取り組んでいるだけで性格が変わっている訳では無いです!」

「ふーん、どうだか。」

「あの、ちょっといい?」

真紀と一葉が話していると、憧が一葉に話しかけた。

「はい、なんでしょうか?」

「えっと、さっきの対局なんだけど、もしかしてあなたも冬室氷華に何か言われたのかなーなんて思って。」

「あぁ、いえ、冬室さんは私には何も言われてないですよ。先程の対局で新子さんばかり狙っていたのは私が自発的にした事です。」

「えっ、まさか一葉、Sに目覚めたのか!?」

「そういうのではありません!茶化さないで下さい!」

「じゃあ、どうしてあんな事・・・」

「それは、冬室さんが次鋒戦で言っていた事に共感したからです。」

「え、どういう事・・・?」

「これは阿知賀女子高校の為の合同練習だから阿知賀を不利にする、というところです。阿知賀の皆さんは今、私と妹尾先輩、そして冬室さんの事を酷い人だと思っていると思います。ですが、集中的に狙われるというのは、去年の団体戦でベスト4だったという理由で、今年の団体戦でもされると思います。その為にも、あえて私は阿知賀女子を狙い撃ちしていました。これで分かって頂けたでしょうか?」

「成る程、確かにそうだね・・・」

「それに、いくら狙い撃ちされていたとはいえこの点数は如何なものでしょう。県予選の時に清澄高校は、半荘2回ずつとはいえ、副将戦の時点で20万以上ありました。それなのにも関わらず今の阿知賀女子の点数は5万ちょっとしかありません。これがどういう事を意味するのか、分かりますよね?今のままの阿知賀女子では、絶対に清澄高校には勝てないですよ。」

「そう、だね・・・」

「気を悪くさせてすみません、ですがこれが現実です。勘違いしないで欲しいのですが私は、阿知賀女子の皆さんが嫌いだからこんな事を言っているのではなく、頑張って欲しいから言っているんです。それだけは分かって下さい。」

「うん、ありがと・・・」

「あら、私が言おうとしてた事、全部言われちゃったみたいね。」

「晴絵・・・」

「憧、あんたはかなり頑張ってたしかなり和了ってた。そこは素直に凄いと思うよ。でも、それが必ず勝利に繋がるとは限らない。今、あんたは10局中6回も和了ったにも関わらずマイナスで終わらせている。それくらいここの人達は強いって事だ。そして、この人達を倒した清澄高校は更に強い。そんな清澄を倒さないと優勝出来ない。だから、あんたらはもっと強くならなきゃいけない。だから今日の合同練習ではひたすら打ってもらうからね。」

「うん、和に勝つ為にも、何回でもやる!」

「その意気だよ。」

 

 

憧達が話を終えて対局していた場所に戻ると、大将の4人が準備をしていた。

「あぁシズ、ちょっといい?」

「赤土さん?何ですか?」

「鶴賀の汐見真紀には気を付けて。」

「汐見さん?天江さんじゃないんですか?」

「天江衣にも勿論注意は必要だけど、それ以上に汐見真紀は厄介だ。なんたって彼女は、個人戦で冬室氷華を飛ばして勝っている。」

「えぇ!?あの冬室さんを飛ばして勝ったんですか!?」

「あぁ、それに、天江衣の事も団体戦で3万以上の差を付けて勝っている。まぁ、これは宮永咲の影響がかなり大きいけどね。まぁでも、個人戦では天江衣が勝ったけど、その差は小さかった。だから汐見真紀は、天江衣と同レベルかそれ以上の実力を持っている。個人戦の結果も天江衣は5位だったけど汐見真紀は3位で全国行きを決めている。だから、天江衣と汐見真紀には要注意するように!」

「分かりました!行ってきます!」

(この試合は多分シズが飛ぶか飛ばないかくらいで負けると思う。けど、ここで負けてもいい。本番で勝てれば!みんな、ここでもっと強くなって本番で優勝しよう!)

穏乃が卓に座って目を閉じて一息付いた。そして、一気に閉じていた目を見開いた。

「よろしくお願いします!」

大将戦が、始まる!




次で団体戦が終了し、合同練習も終え、その次からインターハイが始まります。団体戦はこの後どうなってしまうのか、ご期待下さい。


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第44話《阿知賀編⑥》 長野⑤

この話で遂に長野との合同練習が終わり、次からインターハイ編に入ります。


穏乃が席に付くと、池田華菜、天江衣、 汐見真紀の3人も座った。

「汐見真紀!今日は負けないからな!」

「ウチも負けるつもりはありませんよ。しかし、点差がかなりありますし、収支の勝負でしょうね。」

「そこに関しては問題ない、収支も点数もどちらも衣が勝つ。」

「随分と自信がお有りで。」

「ふっ、衣は負けないからな!」

「そうですか、じゃあ早速始めましょうか。」

 

~場決め結果~

池田華菜:東

天江衣:南

高鴨穏乃:西

汐見真紀:北

 

~東一局~ 親:池田華菜

鶴賀 192100

風越 80400

龍門渕 72700

阿知賀 54800

(この対局で敗北を期しても何も変容しない。収支で負けなければ汐見真紀にも勝利した事になる。だが、それは衣にとって真の勝利とは言えない!この10万点差を覆してこそ勝ちと言える!だから!)

「ツモ。4000・8000!」

(衣は、和了り続ける!)

(タンピン三色に赤ドラ3枚の倍満。やっぱり天江さんはゾクゾクしますね。ウチの好敵手として!)

~東二局~ 親:天江衣

鶴賀 188100

龍門渕 88700

風越 72400

阿知賀 50800

(ところがどっこい、ここで連荘させる程ウチは甘くないですよ。)

「ポン。」

(汐見真紀、スピードモードで衣の親を流すつもりか!?ならば衣も最速で和了する!)

(残念ですけど、ウチのスピードモードはそう簡単には追い付けないですよ。)

「ツモ、混一三暗刻対々。3000・6000です。」

(くっ、これが汐見真紀、やはりこいつは、衣の好敵手に相応しい。)

(天江衣と汐見真紀、やっぱりこの二人が同時に暴れ回るのか・・・)

~東三局~ 親:高鴨穏乃

鶴賀 200100

龍門渕 82700

風越 69400

阿知賀 47800

~3巡目~

「リーチ。」

(天江さん、普通に打って普通にリーチしてきた。ここは追い付きそうにないな。防御モードにしておくか・・・)

(汐見真紀、そう簡単に衣を出し抜けると思うな!)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラ1。3000・6000!」

(くっ、一発で来るのかよ!天江さん、団体戦の時よりも強くなってる。)

~東四局~ 親:汐見真紀

鶴賀 197100

龍門渕 94700

風越 66400

阿知賀 41800

「リーチ。」

(そうだった。汐見真紀は親番だとダブリーをしてくるんだったな。)

(なんだこれ!私と池田さんが全く何も出来てない。池田さんが、天江さんと汐見さん、この二人に加えて宮永さんの3人を相手にしてたなんて・・・)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色、8000オール。」

(こんなの、勝てる訳無い・・・)

(やっぱり天江衣と汐見真紀、強過ぎだし!)

~東四局一本場~ 親:汐見真紀

鶴賀 221100

龍門渕 86700

風越 58400

阿知賀 33800

「リーチ。」

「ポン。」

(天江さん、邪魔するつもりでしょうか。でも、一発が消えるだけですよ。あっ、風越の人が出してくれたよ。)

「ロン。ダブルリーチタンピンドラドラ。18300。」

(あっ、やられた!今ポンしてきたから天江衣を警戒しちゃったせいで汐見真紀に振り込んじゃったし・・・)

~東四局二本場~ 親:汐見真紀

鶴賀 239400

龍門渕 86700

風越 40100

阿知賀 33800

(あれ、ダブルリーチ出来ない。これが阿知賀の大将、高鴨穏乃の力か・・・)

(ダブリーをしてこない?もしかして、高鴨穏乃が支配を始めたのか・・・?)

~3巡目~

(やっと聴牌出来た。)

「リーチ!」

「ロン。七対子ドラドラ。6400の二本場で7000です。」

(高鴨穏乃さんに直撃された!?それに、風越を捲ってる。)

(高鴨穏乃、こいつやはり難敵!)

~南一局~ 親:池田華菜

鶴賀 232400

龍門渕 86700

阿知賀 40800

風越 40100

(汐見真紀の親番を終わらせる事は出来たけど、親番じゃなくても強いからなぁこいつ。それに天江衣もいるし。この対局での親番は、嫌だな・・・)

(もう後は風越が飛ぶか阿知賀が飛ぶかのどっちかって感じだなー、個人的には、さっき直撃してきた悪い子にお仕置きをしたいんだけど。)

~3巡目~

「ロン。12000。」

(やっぱり、天江さんに直撃された。3巡目とか・・・はぁ、そう上手く行かないのは分かってたけど、12000はちょっとキツいな・・・)

~南二局~ 親:天江衣

鶴賀 220400

龍門渕 98700

阿知賀 40800

風越 40100

~7巡目~

(やっと聴牌出来た。高鴨穏乃が滞ませているのか?)

「リーチ。」

(天江衣がリーチしてきた!親番だから怖い・・・)

(・・・)

「ツモ!6000オール。」

(あれ、汐見真紀が何も出来ずに天江衣が和了った。まぁ、何も出来ない時もあるか・・・)

~南二局一本場~ 親:天江衣

鶴賀 214400

龍門渕 116700

阿知賀 34800

風越 34100

~3巡目~

「ポン。」

(天江衣が鳴いてきた。今度は何をする気だ?)

(天江さん、速い。このままじゃ、うちらが何も出来ずに負ける!)

「ツモ。三暗刻混老対々。6100オール。」

(混老頭!?ほんの数巡で出来る手牌じゃないだろ!天江衣、こいつ本当に人間か・・・?)

(また天江さんに連荘させちゃった!どうしよう!)

(それにしても、汐見真紀が何も仕掛けないな。何を企んでいる・・・?)

(さて、次だな。)

~南二局二本場~ 親:天江衣

鶴賀 208300

龍門渕 135000

阿知賀 28700

風越 28000

~2巡目~

「リーチ。」

(汐見真紀、遂に動いたな!何をするつもりだ?)

(とりあえず一発を消さないと!)

「ポン!」

(これでずらすことも出来たはず!)

「ロン。リーチタンヤオ七対子。6400の二本場で7000。」

(6400の二本場って、先程高鴨穏乃が汐見真紀に直撃したのと同じ点数。成る程、直撃されたのが悔しくて同じ打点を喰らわせたのか。)

~南三局~ 親:高鴨穏乃

鶴賀 215300

龍門渕 135000

風越 28000

阿知賀 21700

~5巡目~

「リーチ。」

(汐見真紀、ここで和了られたら、次は奴の親番。またダブリーされる!)

(ここを止めなきゃ汐見真紀の一人勝ちになる!)

(残念、ウチのスピードには敵いませんよ。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンヤオ清一。4000・8000です。」

(あと一翻あったら三倍満だったのか!危ない!)

このまま調子の良い汐見真紀の親番とか、地獄・・・)

(汐見真紀、いやしかし高鴨穏乃なら奴のダブリーを押さえられるかも・・・)

~南四局~ 親:汐見真紀

鶴賀 231300

龍門渕 131000

風越 24000

阿知賀 13700

(あら、まーたダブルリーチ出来ないじゃん!ま、しゃーないか。じゃあこっちで・・・)

(汐見真紀がダブリー出来なかった。しかし、こいつが今捨てたのはダブドラの5ピン!ドラを捨てると強くなるこいつがダブドラを捨てたら、一体どうなるんだ・・・?)

(ダブリーを止められた!それにいきなりダブドラ切ってくるって事は、ダブリー出来なかった事に動揺しているはず。ここは攻める!)

~6巡目~

「ツモ!タンヤオ一通清一で8000オール。」

(やられた・・・)

「いやぁ、天江さんと汐見さん、強いですね。全然敵いませんでしたよ。でも勉強になりました、ありがとうございました!」

「何言ってるんですか?まだ終わってませんよ?」

「へっ?だって南四局で汐見さんが親番で、それでいて鶴賀が1位ですよね?」

「公式戦だったらここで終局するけど、今は練習なんですよ。ウチは、連荘出来るなら誰かが飛ぶまでとことんやりたいタイプなんですよ。」

「ふっ、それでこそ汐見真紀だ!さぁ、続きをやろう!」

「はい、一本場です!」

~南四局一本場~ 親:汐見真紀

鶴賀 255300

龍門渕 123000

風越 16000

阿知賀 5700

(おっ、今回はダブルリーチ出来そう!って、これ・・・)

「えっと、ツモ。天和。16100オールです。」

「あっ・・・終わった。」

「風越と阿知賀の同時飛ばし・・・」

「あ、あはは、終わっちゃいましたね。お疲れ様です・・・」

「ありがとうございました・・・」

「ありがとうございました。」

 

~試合結果~

鶴賀 303600

龍門渕 106900

風越 -100

阿知賀 -10400

 

「むぅ、この結果は不服だ!」

「まぁまぁ、倍満和了った時でも既に天江さんに勝ってたんですからどっち道天江さんの負けじゃないですか。これでウチの方が強いって事が決定ですね!」

「いや、認めない!衣は認めないぞ!」

「いやいや、大体ウチが防御モードにならなきゃ連荘も出来ない人がウチより強い訳無いじゃないですか。」

「おのれ、汐見真紀!次こそ絶対に勝つからな!」

「まぁ、多分次も勝ちますけど、楽しみにしてますよ。」

「次は絶対に衣が勝つ!」

「無理ですよ、ウチは今年のインターハイ個人戦で1位になりますから。」

「はっ!咲と冬室氷華に負けて3位だった癖に。」

「それを5位だった貴女には言われたくないですね!それに、冬室氷華には勝ちましたから!」

「でも咲には勝ててないだろう?」

「そうですけど、なんで貴女がドヤ顔決めてんですか!」

「二人とも、その辺にしてくれないかな、練習時間が減るから・・・」

「あっ、阿知賀の顧問の先生、すいません。」

「申し訳ありません!うちの真紀が五月蝿くして阿知賀の方々に迷惑をお掛けしてしまい!」

「いや、別にそこまで謝らなくても良いんだ・・・」

(この子、一ノ瀬一葉さんよね?さっき憧に注意喚起してた時とは違って随分と腰が低いのね。まぁ、それだけ麻雀が好きなんだろうね。)

「じゃあ、個人戦の選手と重ならないようにして、自由に対局して良いよ。」

「「「「「はい!」」」」」

この後阿知賀女子の5人は、合同合宿を終えて、奈良に帰った。

 

 

そして、彼女達は、去年達成出来なかった目標を達成させるために、また東京にやって来た。

「う~ん、やって来たぁぁぁ!!!!東京ぉぉ!!!」

「ちょっとシズ、静かにしてよ。」

「全く、高鴨先輩、遊びに来たんじゃ無いんですからね。」

「分かってるって!和や他の人達と遊ぶ事でしょ!」

「全っ然違いますよ!5人で全国優勝するためでしょう!」

「へへっ、分かってるって。」

「本当ですかぁ?」

「本当だって、これまでだってちゃんと練習してきたじゃん!」

「そんな心持ちじゃ全然駄目ですよ!良いですか?大将戦が終わったらそれまでの過程は関係無く終わった時の点数で決まってしまうんですよ!これは即ち、もし私達4人がプラスでも高鴨先輩がやらかして逆転されたら負けなんですからね!全ては高鴨先輩に掛かってるんですからね!お友達との約束だから譲りましたけど、そこら辺、肝に命じていて下さい!」

「分かった分かったって。」

「あの、盛り上がってるところ悪いけど、私今から抽選行ってくるから。」

「あっ、部長さん、気を付けて行ってきて下さい。」

「なんか、白って灼さんにだけ甘い気がするよなぁ。」

「そりゃあシズ、あれよ~あれ!」

「そんな事ありませんよ。それに新子先輩、あれって何ですか。」

「ふふん、そんなの決まってるじゃない。」

「ニヤニヤしてて気持ち悪いですよ。」

「あぁ!先輩に向かって気持ち悪いとか言った!」

「まぁまぁ、皆落ち着いて。」

「はぁ、皆落ち着いて、そろそろ移動するよ。」

「はぁい。」

「新子先輩、あれって何の事か、後で詳しく聞きますからね。」

「あーはいはい、分かった分かった。」

「じゃあ、移動するよ。」

阿知賀女子のメンバーが移動をしていた。するとそこに、見た事がある白のセーラーワンピースに青のリボンを着けた5人が前から歩いてきた。忘れる訳がない。去年準決勝と決勝であれだけ苦しめられた相手の制服を忘れる訳がない。

(あれってもしかして、白糸台高校!?)

白糸台高校の5人の真ん中には少し小柄の女の子が阿知賀の方を向いて口角を吊り上げた。




次回は阿知賀女子と白糸台高校の邂逅、そして二回戦を行います。二回戦なんですが、都合上ダイジェストみたいな形にして、1話にまとめる事になると思います。ご了承下さい。


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《番外編》夢乃マホ生誕祭!

ハッピーバースデーマホ!今日は我らがマホちゃんの誕生日です(テンションおかしい)マホちゃんの誕生日なので番外編としてマホの誕生日ストーリーを作りました。


今日、12月20日は夢乃マホの誕生日だ。そのため清澄高校麻雀部では、数日前からマホのサプライズパーティーを企画していた。丁度誕生日の前日は、用事があると言ってマホは先に帰っていた。

「ほいじゃあ、明日のマホ誕生日サプライズパーティーは何をすれば良いか、意見がある人はおるか?」

「タコスパーティー!」

「却下じゃ。」

「駄目です。」

「なんで!?」

「それ、あんたがタコスを食いたいだけじゃろ。」

「そんな事ないじょ。マホちゃんだって試合前とかよくタコス食べてるじょ?」

(あれは優希ちゃんのタコス力を使う為だからだと思うけど・・・)

「それは多分、試合前に軽食を取りたいからです。まぁ、タコスが好きというのもあるかもしれませんが。そもそもタコスにしてしまうと優希が全て食べてしまうでしょう?」

「それに、マホちゃん優しいから、タコスだったら優希ちゃんに譲っちゃうと思うな。」

「そ、そんな事、無いじょ・・・」

「あと一押しで落ちそうな感じじゃな・・・」

「じゃあせめて、パーティーの一品としてタコスを置いて欲しいじょ!」

「まぁ、それくらいならええじゃろ。」

「タコス置いてるスペースが優希の餌置き場と化しそうだな。」

「何を!お前には食わせてあげないからな!」

「タコスはお前の物じゃねぇ。」

「もう既に優希の餌置き場になりつつあるの・・・」

「まったく、優希は自分の事だけじゃなくてちゃんと色んな事を考えて下さい。」

「でも、一人だけ年下だから馴染ませる為にサプライズをしようって言ったのは優希ちゃんだよ?」

「確かにそうですね。」

「まぁ、パーティーに託つけてタコス食べたいだけかもしれんけどの。」

「そんな事無いじょ!」

「まぁ、80%くらいはタコスや食べ物の為だとは思いますけど、確かに優希はちゃんと他の人の事も見ていますね。そこは認めます。」

「そんな事どうでもいいじょ!とにかく時間も無いし準備するじぇ!」

「そうですね。そうしましょうか。」

4人がパーティーの準備をした。

 

 

そして、サプライズパーティーの当日になった。折角パーティーなのだから大勢の方が良いという事になり、前もって風越と鶴賀、龍門渕の面々も呼んでおいた。鶴賀、風越、龍門渕の3校の面々が集まり、準備も整った。そろそろ買い出しを頼んでおいたマホが部室に戻ってくる頃だ。

「ただいま帰りました~。」

「「「「マホちゃん、お誕生日おめでとう!」」」」

パンパンとクラッカーの音が鳴り響いた。

「わぁ~!?嬉しいです!皆さんありがとうございます!!」

「マホ、誕生日おめでとう。これプレゼント。」

最初にプレゼントを渡したのはこの中で一番付き合いの長いムロだった。

「ムロさんありがとうございます!開けても良いですか?」

「どうぞ。」

マホが袋を開けると、そこにはMと書かれたストラップが入っていた。

「M?どういう事ですか?」

「マホとお揃いのストラップを買うのはどうかなって思って、私達ムロマホコンビって言われてるから頭文字を取ってMがいいんじゃないかなって思ったんだ。」

「成る程!ありがとうございます!大切にします!」

「じゃあ次はわしからじゃ。」

まこがマホに近付いて小さな袋を手渡した。

「開けても良いですか?」

「どうぞ。」

マホが袋を開けるとハンカチが入っていた。

「後輩に物を贈るのが初めてじゃったけえ何を渡せば分からんかったから無難なのにしたつもりじゃけど、色やら柄やらが酷すぎる・・・」

「そんな事無いですよ!これ、とっても可愛いです!大事に使わせてもらいます!」

「ほうか、それなら良かったわ。」

「はい。ありがとうございます!」

「では、次は私達からですね。」

「私とのどちゃんは一緒に選んだんだじぇ!」

「わぁ!お二人のプレゼントはどんなものなんでしょう。開けても良いですか?」

「いいじぇ!」

「はい。」

マホが箱を開けると、ハート型でピンク色のヘアピンだった。

「うわぁ!とっても可愛いです!ありがとうございます!早速付けてみます!」

マホがヘアピンを付ける。

「ど、どうでしょうか?」

「とっても可愛いですよ。」

「似合ってるじぇ!」

「本当ですか!?嬉しいです!」

「じゃあ、次は私だね。」

「宮永先輩まで!?こんなにプレゼントを貰っても良いのでしょうか・・・」

「皆がマホちゃんに贈りたいから贈るんだよ。ええっとそれで私のプレゼントなんだけど、何をあげたら良いのか全く分からなかったからマホちゃんが好きそうな本を買ったんだよね。ごめんね、本とか読まないよね・・・」

「とんでもないです!嬉しいです!宮永先輩が選んでくれた本なら絶対面白いです!今日帰ったら早速読んでみます!」

「うん、良かったら感想聞かせてね。」

「はい!」

様々な人からプレゼントを貰っている中、意外な人間がマホにプレゼントを用意していた。

「夢乃マホ、これ、プレゼントです。」

「えっ!?氷華さん!?もしかして氷華さんもマホにプレゼント下さるんですか!?」

「まぁ一応用意しました。」

「うわぁ!氷華さんからもプレゼントを貰えるなんて、嬉しいです!感無量です!」

「そうですか。」

「あのあの!開けても良いですか・・・?」

「どうぞ。」

「わぁい!」

マホが開けると、中には赤いチョーカーが入っていた。

「えっ、首輪・・・」

「えっ、いや、それはチョーカーと言って!」

「マホ、氷華さんのペットになるんですか?わん?」

(なんだこの生き物は!可愛過ぎる!どうしてこんなにも可愛いんだろう。)

「それは、チョーカーと言って、首輪じゃなくて普通にファッションアイテムです。夢乃マホに似合うと思って買った物ですので別にペットになんてならなくても良いですし、語尾に無理してわんとか付けなくても大丈夫です。」

「あっ、そうだったんですか、マホ、早とちりしてしまったです。折角氷華さんが考えてくれたプレゼントなのに酷い言い方しちゃってごめんなさいです!」

「別に、気にしてないので大丈夫です。」

「許してくれるんですか?やっぱり氷華さんは優しいです!」

「そんな事は、無いです。」

「あの、これ、着けても良いですか?」

「どうぞどうぞ。」

カチャカチャとマホがチョーカーを付ける。

「ど、どうでしょうか?」

「似合っていますよ。とっても、可愛いです。」

「えっ!?本当ですか!?まさか氷華さんに、か、可愛いだなんて言って貰えるとは!ありがとうございます!」

マホは嬉しさのあまり氷華に抱き付いた。

「わっ!ちょっ、何を!」

「えへへ、氷華さん大好きです・・・!」

すりすりと頬を氷華の体に擦りながら抱き付いてきたマホから柑橘系の甘い香りが漂い、慎ましくも柔らかいその感触に、氷華の理性が吹き飛びそうになる。

「マホちゃん、その辺にしてあげなさい。冬室さんが苦しそうよ。」

「あっ、そうだったんですか、ごめんなさいです!」

久がマホに注意をしてくれたお陰で氷華が正気に戻った。

「別に苦しくなんか無かったですよ?どちらかと言うと・・・」

「えっ、氷華さん、今なんて言ったんですか?」

「な、何でもないです。気にしないで下さい。」

「そうですか、取り敢えず、この、チョーカー?ですか?ありがとうございます!」

「どう、いたしまして・・・」

「あっ、宮永先輩見て下さい!これ、氷華さんがプレゼントしてくれたんです!」

「へぇ、チョーカーだね。凄く似合ってて可愛いよ。」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

(宮永さんには抱き付かないんですね・・・って、何ちょっと嬉しくなってるんですか私は!夢乃マホが誰に抱き付いたところで私には関係無いじゃないですか!)

「えっ、氷華がプレゼントしたの!?」

(池田先輩・・・よりによってこの人にバレてしまうとは。まぁ別に、そこまで隠してる訳じゃないですけど、この人に見つかるのはかなり危ない・・・)

「へぇ、氷華でもこんなプレゼントするのか~。」

「何ですか氷華でもって、私だって、好きな人にプレゼントくらいあげます。」

(!?氷華さん、今マホの事、好きって・・・)

「えっ、氷華、今好きとか言わなかった?」

「あっ、違います!今のは言葉の綾です!」

「そんな事はどうでもいいじょ!もうお腹ペコペコだじぇ!」

「「・・・はい。」」

プレゼントを一通り渡し終え、優希の鶴の一声で本格的にパーティーが始まった。

「じゃあ主役のマホちゃん、本日のサプライズパーティーの感想をどうぞ。」

「本当にびっくりしましたし、本当に嬉しかったです!マホの家は、マホの誕生日をクリスマスと一緒にして祝うので、こうして祝っていただけるのは本当に嬉しいです!今日は本当にありがとうございます!」

会場にいる全員が拍手する。

「じゃあ、抱負を聞かせて貰えるかしら。」

「抱負ですか・・・えっと、やっぱり麻雀がもっと強くなりたいですね。具体的に言うと、宮永先輩や氷華さんや他の方々全員に偶然じゃなくて、いつ対局しても勝てるくらい強くなりたいです!」

「はぁ、そりゃあ大層な目標じゃのぉ・・・」

「マホちゃん、私もマホちゃんに負けないようにもっと頑張るよ!」

「私も、夢乃マホのライバルとして、そう簡単に負ける訳にはいきません。」

「はい!頑張ります!」

「よし、じゃあ食べましょうか。」

「やっとだじぇ!食べまくるじょ!」

「食べ過ぎて吐いても知りませんよ・・・」

「大丈夫だじぇのどちゃん!自分の体は自分が一番分かってるじょ!」

「そう言って何回か吐きそうになった事があるから言ってるんじゃないですか・・・」

「吐きそうにはなっても吐いてはいないから別に問題無いじょ!」

「はぁ、もう好きにしてください・・・」

優希はパーティーに用意されていた料理をバクバクと食べ始めた。因みにこの料理は龍門渕家の執事であるハギヨシが作った。料理はかなりあったが、人数が多く、優希や池田華菜達が掃除機のように平らげていた為、みるみる減っていき、早い段階で無くなってしまった。パーティーが終わり、マホを除いた清澄高校麻雀部員と久が片付けをしていた。

「あの、マホも手伝います!」

「大丈夫です、私達で出来ますから。」

「でも・・・」

「主役に仕事をさせる訳にはいかないじぇ!」

「片岡先輩、ありがとうございます。先輩方もありがとうございます!」

「どういたしまして、こっちは大丈夫だから後は好きに過ごして良いわよ。」

「分かりました。」

マホは少し早足で歩き出した。その先には、氷華の姿があった。

「あの、氷華さん!」

「どうしたんですか?」

「あの、今日のプレゼント、本当にありがとうございます!それで、氷華さんにお返しをしたいんですけど、氷華さんのお誕生日っていつですか?」

「2月6日ですけど、お返しを貰う為にプレゼントしたのでは無いので大丈夫ですよ?」

「いや、マホがお返ししたいんです。何か欲しい物はありますか?」

「そうですか・・・じゃあ、夢乃マホが1日私のペットになるっていうのはどうですか?」

「えっ、やっぱりあれって首輪だったんですか!?」

「ふっ、やっぱり夢乃マホは面白いですね、冗談ですよ。私はそんな事を要求するような人ではありませんよ。」

「・・・氷華さんだったら、ペットになっても、良いですよ?」

マホに上目遣いでこんな健気な発言をされ、氷華はまたもや理性が吹き飛びそうになる。しかし、あと一歩のところで思い止まった。氷華はその代わりにその場でマホに抱き付いた。

「これ以上、私の心を乱さないで下さい・・・」

「氷華さん・・・」

「先程のお返しです。あと、ちょっとプレゼントを貰っただけで優しいと思い込んで何でも言う事を聞いてしまうのは良くないですよ?」

「それは分かってますよ。マホは氷華さんを信用しているからこうしてるんです。氷華さんならマホに酷い事はしないはずですから。」

「なんでそんな事が分かるんですか。」

「それは、氷華さんの対局を見ていれば分かります。氷華さんはツモ和了りしかしないじゃないですか。それって一人だけを酷い点数にしたくないっていう気持ちの表れなんじゃないかって思っていたのです。それはもしかしたら違う理由があるのかもしれないですけど、それでもやっぱり優しいと思います。だって、これまで氷華さんに接してきて、嫌だった事が無かったですもん。氷華さんは温かいです。今だってとても温かいです。」

「夢乃マホ・・・」

「だから、お願いがあります。」

「何ですか?」

「マホって・・・夢乃マホじゃなくて、マホって呼んで下さい。」

「!?じ、じゃあ、私の事も氷華と呼び捨てで呼んでくれたら私もそうします。」

「分かりました、氷華!」

「敬語も禁止。同学年なんだから。」

「・・・うん、これからもよろしく、氷華。」

「よろしく、マホ・・・」

氷華はマホにしていた抱擁をといた。

「じゃあ、私はこれで・・・」

「う、うん、じゃあね。今日はありがとう。」

「うん、じゃあね。」

「はい。」

氷華は名残惜しそうに回れ右をして帰っていった。マホも帰る準備は整えていた為、そのまま帰った。帰宅したあと、マホは咲から貰った本を切りの良い所まで読んで自分のベッドに着いた。そこには、氷華から貰ったチョーカーと、チョーカーが入っていた袋が置いてあった。マホは、その袋を抱き締めるように顔に近付けた。

(あっ、これ、氷華のにおいがする・・・)

氷華のにおいを嗅いで、先程の氷華との抱擁を思い出していた。

(今日は本当に幸せな1日でした。普段は祝ってもらえない日なのに皆さんに沢山祝って貰えましたし、氷華に可愛いって言って貰えましたし、好きとも言われましたし、抱き締められちゃいました。マホ、今日という1日を絶対に忘れません。マホは幸せ者です・・・)

そんな事を考えて、マホは眠りについた。マホの幸せな1日が終わった。




マホちゃんが可愛過ぎて氷華と共に理性が吹き飛びそうになってしまいました・・・この話のタグにR指定しなければならなくなる所でした。
前回のあとがきで『次回からインターハイ』と書きましたが、ご覧の通りこの話の次からになります。ご了承下さい。


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第45話《阿知賀編⑦》 二回戦

メリークリスマス!皆さんはどんなクリスマスを過ごしていますか?私はこれを書くのが忙しくて遊ぶ暇なんて無かったです。決して遊ぶ相手がいない訳ではありません。忙しかっただけです。
訂正なんですが、第44話で灼が抽選に行く描写を書いたのですが、阿知賀女子はシードなので必要ありませんでした。今から直すとなると色々と面倒なので、しれっと灼がいますが気にしないで下さい。


「すみません、阿知賀女子の皆様ですよね?」

妖しい笑みを浮かべている少女が阿知賀女子の5人に向かって話し掛けてきた。

「あっ、えっと・・・」

「はい。そうですが、それがどうかされましたか?」

穏乃と憧と玄と灼が怖じ気付いている中、白が問いに答えた。

「申し遅れました。私は、白糸台高校先鋒の西園寺麻衣(さいおんじまい)と申します。以後お見知りおきを。」

「そうですか、では西園寺さん、あたしは貴女に名前を聞いたのではなく、何故あたし達に話し掛けたのかを聞いているんですが。」

「そうでしたね、すみません。私が貴女方に話し掛けた理由は宣戦布告です。」

「なっ!?」

「阿知賀女子の皆さんとは遠かれ近かれいずれは当たる事になるでしょう。ですが、今年の白糸台高校は去年のように負ける事はあり得ません。私を筆頭にした最強のメンバーがここにいますから。」

「最強ですか、あたしは、この先輩方とならその最強にも勝てると思います。」

「それは楽しみです。でも、今年私達と当たってしまったら、次鋒戦で終わる事になると思います。」

「は?何を言っているんですか?次鋒戦で終わる訳無いじゃないですか。持ち点は10万なんですよ?」

「私にとって10万点なんて、少な過ぎますよ。まぁ、ここで言い合っても何にもなりませんね。取り敢えず、私達は今年のインターハイを私と次鋒で部長の東条小夜(とうじょうさよ)先輩だけで終わらせてみますよ。」

「そんな事させませんよ。」

「あぁ、でも、大星先輩が拗ねちゃいますから2回戦くらいまでは手加減しますか。まさか2回戦で負けるなんて事はないと思いますからね。」

「当たり前よ!あんた、私をなんだと思ってるわけ!?」

「え、弱い先輩だと思っていますけど。」

「はぁ?私は世間ではテルーの後継者って言われてんの!私は最強なの!」

「でも先輩、私に何回も負けてるじゃないですか。」

「それは調子が悪かっただけだって前も言ったでしょ!」

「はぁ、言い訳が見苦しいですよ、大星よわい先輩。」

「私はあ!わ!い!それに弱くない!お前、いつか100回倒してやるからな!」

「あの、盛り上がってるところ悪いんですけど、そろそろ移動しなきゃいけないんですが・・・」

「ほら、阿知賀の顧問の方もそう言っているし、私達も移動するぞ。」

「分かりました。」

「あんた、東条先輩の言う事は聞くよね。」

「だって、部長は大星先輩と違って強いですもん。」

「はぁ?私の方が100倍強いし!」

「ほらほら、とっとと移動するぞ。」

「あぁ、もう、ちょっ、引っ張らないで!伸びる!」

「そういう訳なんで、団体戦ではよろしくお願いします。では失礼します。」

白糸台高校は嵐のように去っていった。

「・・・そういう訳って、どういう訳だよ。」

「まぁでも、あの大星さんの事をあれだけ言えるって事は、相当な打ち手って事だよね。」

「あの人、先鋒って言ってたよね、また強い人と戦わなきゃいけないの・・・」

「でも玄は冬室氷華や汐見真紀や一ノ瀬一葉や天江衣さんにめちゃくちゃ飛ばされたじゃん。あれに比べればそこまで酷くはならないでしょ。」

「あの人達は多分人間じゃないよ。汐見さんと一ノ瀬さんと天江さんの3人と対局した時は10万点もあったのに気付いたら飛んでたもん。」

「玄先輩、この世の終わりみたいな顔してましたもんね。走馬灯とか見えたりしましたか?」

「走馬灯は見えなかったけど悪魔のような3人はずっと見えてたよ・・・」

「ははっ、それは、御愁傷様です・・・」

「取り敢えず今日はホテルに戻って去年同様、2回戦で当たるだろうチームの地区大会の映像を見るから。」

「分かりました。じゃあ、行きますか。」

阿知賀女子のメンバーはホテルに戻り、2回戦で当たるだろうチームの地区大会の映像を見た。それから1回戦が終わり、2回戦の当日になった。

「しっかし、去年ベスト8まで行った有珠山高校は流石の強さだね~。」

「特に副将の真屋由暉子さんが左手を使った時は誰にも止められて無かったね。」

「でも、その他の人達は、普通に強くはあるけどあんまりって感じだよね。」

「あの人だけではありませんよ。」

「えっ、白、どういう事?」

「有珠山は先鋒と大将、この二人はまだ何か隠してる気がするんですよね。」

「それって、本内成香さんと岩館揺杏さん?」

「そうです。なんだかあの二人、嫌な予感がするんです。だから、松実先輩は一応注意して先鋒戦に臨んでください。」

「うん、そうするよ。」

「あたしのこの胸騒ぎが杞憂なら良いのですが・・・」

「まぁ、取り敢えず行ってくるよ。」

「頑張って下さい。」

「頑張って下さい!玄さん!」

「うん!」

玄が対局室に移動して、2回戦が始まった。

 

~場決め結果~

本内成香:東

越谷女子:南

鹿老渡高校:西

松実玄:北

 

~南一局~ 親:本内成香

阿知賀 147200

鹿老渡 102400

有珠山 81400

越谷 79000

(もう後半の南一局だけど、本内さんは高い和了りを1、2回止められたくらいで、特に何もしてこない。調子が悪いのかな?それとも白ちゃんの心配が本当に杞憂だったのかな。)

~7巡目~

「ツモ。タンピン三色一盃口。3000・6000です。」

(越谷女子の人、高い手を和了られた。でも、点差はあるから大丈夫だよね。)

(ドラゴンさん、怖いです。それにこのままじゃ負けちゃいます。あれをしちゃうと、自分が自分じゃなくなるみたいで怖いですけど、このまま終わる訳には行かないです!)

成香は頭を揺らして分け目を変えた。元々隠していた右目が見えて左目が隠れた。

(さぁ、続きを始めましょうか!)

~有珠山高校控え室~

「揺杏先輩、成香先輩が分け目を変えましたよ。」

「おぉ!遂にあれを使っちゃうのか。」

「あれってなんですか?それに、どうして分け目を変えたんですか?」

「そうだな、元々の成香を天使だとしよう。しかしそれは右目が隠れた時の話だ。右目が開かれて左目が封じられた時、奴は堕ち、堕天使となるのだ!」

「カッコいい!」

「あぁ、こういう話になると普段はツッコミ役の由暉子先輩もそっちに行っちゃうんでした・・・」

「それで、堕天使になった本内先輩はどうなっちゃうんですか!?」

「ふふん、それは見てのお楽しみ。」

「そうですか・・・残念です。」

「まあまあ、見てれば分かるよ。」

~南二局~ 親:越谷女子

阿知賀 144200

鹿老渡 99400

越谷 91000

有珠山 75400

~6巡目~

「リーチ。」

(本内さんがリーチしてきた!それになんだか雰囲気が変わった気がする。分け目が変わった・・・?)

(何をしてくる・・・?)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一一通。4000・8000です。」

(うわっ、筒子と東と西。手牌が真っ黒、お姉ちゃんみたい・・・)

(いきなり倍満!?これが昨年ベスト8の力・・・)

~有珠山高校控え室~

「本内先輩の配牌、凄かったですね・・・」

「成香は分け目を変えて堕天すると、手牌が筒子と東南西北で真っ黒になる。」

「という事は、筒子の混一が出来るって事ですね。」

「それだけじゃない。今回は筒子が多めだったけど、東南西北が多めだったらどうなるかな~?」

「はっ!まさか、四喜和!?」

「そう、堕天した成香は四喜和を和了って来る。それに、あの状態の成香は、爽でも止めるのは難しいらしい。」

「爽先輩でもですか!?」

「あぁ、それだけ成香が異様な存在だと言う事だよ。」

~南三局~ 親:鹿老渡高校

阿知賀 140200

鹿老渡 95400

有珠山 91400

越谷 83000

~8巡目~

「ツモ。小四喜。8000・16000です。」

(なっ!?小四喜!?それにまた手牌が真っ黒。やっぱりお姉ちゃんみたいな感じなんだ。でもお姉ちゃんとはレベルも火力も何もかも全然違う。これが白ちゃんが心配してた事なんだね・・・)

~南四局~ 親:松実玄

阿知賀 132200

有珠山 123400

鹿老渡 79400

越谷 75000

~5巡目~

「ツモ。小四喜。8000・16000です。」

(2連続で役満ツモ!?しかもまた小四喜!?)

(これ、ヤバすぎ・・・)

「お疲れ様です。」

「ありがとう、ございました・・・」

「お疲れ様です・・・」

「ありがとうございました。」

~先鋒戦結果~

有珠山 155400

阿知賀 116200

鹿老渡 71400

越谷 67000

 

 

その後は有珠山と阿知賀が他の2校を引き離し、中堅戦が始まった。

 

~東三局三本場~ 親:天理白

阿知賀 199400

有珠山 152300

鹿老渡 31200

越谷 17100

「リーチ。」

(またダブリー!?)

(これが当たったら、飛んじゃう・・・)

~4巡目~

「ロン。ダブリーダブ東ドラ3。18900です。」

(あっ、飛んじゃった・・・)

「お疲れ様でした。」

「ありがとうございました。」

「ありがとう、ございました・・・」

「ありがとうございました。」

(本内先輩が稼いでくれたお陰で残れましたけど、この人とまた対局しなきゃいけないのか、キッツいなぁ・・・)

 

~2回戦結果~

阿知賀 218300 準決勝進出

有珠山 152300 準決勝進出

鹿老渡 31200

越谷 -1800

 

白が対局を終えて控え室に戻った。

「ただいま帰りました。」

「白、お疲れ~まさか飛ばして終わらせちゃうなんてね。あたしとシズの出番が無かったけど、準決勝なら戦えるだろうから問題無しだね。」

「うん!準決勝も頑張ろう!」

「「「「おー!」」」」

6人はホテルに戻り、ミーティングを行った。

「今日に関してはかなり良い対局だった。でも、次は多分、そう上手くは行かないだろう。」

「次の相手は白糸台に姫松だからね。正直、2位に入るのもギリギリになりそうだよね・・・」

その2校も厄介だが、有珠山もかなり強敵だ。まず先鋒、玄は最後の三局、何も出来ずに負けただろう?」

「はい、凄かったです・・・」

「多分あれは隠していた物だ。もう隠す必要が無くなったって事は・・・」

「次は最初からあれをしてくるのでしょうか!?」

「可能性としてはあり得る。それに、今回は中堅で終えられたから良いものの、副将から彼女らは格段に強くなる。そう考えるとうちに余裕なんて皆無に等しいだろうね。」

「そう、ですね。」

「頑張らなきゃいけませんね!」

「うん、あんたらにはかなり期待してるんだ、期待を裏切らないでくれよ。」

「頑張ります!」

 

 

その頃、姫松高校もミーティングをしていた。

「まずは2回戦突破です。ですが、悪い言い方をすればそれは、終局した時に白糸台の他の2校より上回っていただけに過ぎません。次の準決勝で勝ち上がるには今日勝ち上がった阿知賀と有珠山、そして白糸台、この内の2校以上を上回らなければなりません。その中でも一番の障害は、白糸台先鋒の西園寺麻衣でしょうね。」

「せやろな。今年も先鋒やったら死んどったわ。」

「上重先輩が死ぬんやったら私は死ぬの確定やないですか・・・」

「まぁ、相手が相手やからな。捨てゴマって訳や無いけど先鋒で稼ぐんはほぼほぼ無理やろな。」

「そんなぁ・・・」

「まぁ、一応先鋒の説明をしとくか。まずはこの前も対局した西園寺麻衣。彼女の特徴は地区大会とこの間の対局ではっきり分かりました。」

「マジかいな!?」

「はい。彼女は、絶対に点数が減りません。」

「点数が減らない?どういう事?」

「振り込まないだけならうちのチームにもおります。けど、どうやってんのかは分かりませんけど、西園寺麻衣は、相手にツモ和了りをさせません。ツモ和了りしそうになると、彼女が鳴いたりして阻止したり、その前に自分が和了したり、ズラして他の相手に直撃させたりして、自分の点数が減らないんです。つまり彼女は、総得点数がそのまま自分の収支になるって事です。」

「マジかいな・・・」

「それは、かなり厄介やな・・・」

(でも、なんか変やな。白糸台のチーム虎姫は火力重視だったはず。相手の和了りを掻い潜って和了るようなんがチーム虎姫に入れるんやろか・・・?)

「準決勝の先鋒は西園寺麻衣だけでは無いです。阿知賀の松実玄、彼女は言わずもがなですが、ドラを抱えます。これは、彼女の火力が上がるだけでなく、他の相手の火力が少し鈍るというアドバンテージがあります。でも、そんなアドバンテージ関係無く高い手を和了してくるんが有珠山の本内成香。この人は普段、右目を隠しとるんですけど、それを解放すると、手牌が黒く染まります。これは筒子の混一だけでなく、四喜和等が可能になります。」

「な、なんや、次の先鋒戦、地獄やないか・・・」

「私、飛ばないように頑張ります・・・」

「まぁ、先鋒戦で飛ばんかったら私と漫と絹恵で何とかするから安心しいや。」

「ありがとうございます部長。」

「でもまぁ、やっぱり行きたいよな。去年行けなかった決勝。」

「その為には勝たなきゃいかんな。」

「あぁ、絶対に勝つ!」

 

 

同時刻、白糸台高校は阿知賀の対局結果を見ていた。

「へー、勝ち上がったのは阿知賀と有珠山か。」

「まぁ、予想通りと言った感じだな。」

「ふふっ、有珠山の先鋒の方、早く戦ってみたいですね。これは準決勝も少しばかりは楽しめそうですね。」

「そうか、麻衣が楽しそうで何よりだな。」

「それに、決勝では臨海の人も来ますからね。ワクワクです。」

麻衣が嬉しそうに微笑んだ。そして、ホテルの窓から空を見上げた。

「絶対、優勝して見せるからね、お姉ちゃん。」

 




2回戦は越谷女子と鹿老渡高校のキャラは名前を考えたくなかったので親の表示のところも高校名にしました。
世間ではクリスマス一色ですね。番外編でクリスマスストーリーでも書こうかな?って思ったんですが、私はクリスマスなんて滅べば良いと思っているので書きませんでした。代わりと言ってはなんですが、元旦にはもしかしたら書くかも・・・


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《番外編》 謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。マホ視点の初詣の話を書きました。それではどうぞ!


新年明けましておめでとうございます!夢乃マホです!今日は先輩方と初詣に行くお約束をしていたので早起きしてお母さんに振袖の着付けをして貰いました!振袖、久しぶりに着ましたけど、意外と動きにくいです。ちっちゃい頃はもっと楽に動けていたはずなんですけど、どうしてでしょうか?あっ、あれは浴衣でした!うっかりしちゃいました!そんな事より、先輩方と初詣楽しみです!そろそろ約束していた時間になりそうなので出掛けます!

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気を付けるのよ。」

「はーい。」

お母さんに見送られながらマホは家を出て、先輩方と待ち合わせしている場所に移動しました。待ち合わせ場所に着くと、そこには宮永先輩と和先輩のお二人が既にいました。

「あっ、マホちゃん!明けましておめでとう!今年もよろしくね。」

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

「宮永先輩!和先輩!明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

「あらあら、3人とも早いわね~。」

「早起きじゃのぉ。」

「竹井先輩!それに部長!明けましておめでとうございます!」

「おめでとー。うぅ、寒いわね。」

「マホは朝から元気じゃのぉ。それに、3人とも、振袖まで着こんで、本格的じゃな。」

「それはお二人が初詣に消極的なだけじゃないでしょうか?」

「だって、こんな朝早くから着物を着るのって大変じゃない。めんどくさいし。」

「どうせちょっと拝んでおみくじ引いたりしてちょっと話して帰るくらいなんじゃから別にええと思っての。」

「そういうのを消極的と言うんですよ・・・」

「まぁまぁ和先輩、今年も始まって直ぐなんですから怒らないで下さい。」

「別に怒ってる訳ではありませんよ。ただ、私達が異常みたいな言われ方をしたので異議を申し立てただけです。」

「そうですか・・・あっ!片岡先輩とムロさんと須賀先輩が来ましたよ!」

「明けましておめでとうだじぇ!」

「おめでとうございます。」

「すいません、遅れました。」

3人がやって来ました。ムロさんと片岡先輩はちゃんと振袖を着ています。

「ムロさん、片岡先輩、とってもお似合いです!」

「ありがとう。マホも似合ってるよ。」

「ありがとうございます!」

「竹井先輩、5:3で先輩方の負けですね。」

あ、その話まだ続いてたんですね、というか和先輩めちゃくちゃドヤ顔ですね・・・そんなに少数派にされるのが嫌なんでしょうか?

「そうね、はいはい、私が悪かったわよ。」

「も、もう、そんな事どうでも良いじゃないですか!早く初詣行きましょうよ!」

「そうだね。行こっか。」

そこからは待ち合わせ場所から神社に移動しました。

「そういえば、皆さんはどんな初夢を見ましたか?」

「全世界にあるタコスを食べ尽くす夢だったじぇ!」

「またタコスですか・・・」

「優希ちゃんは本当にタコス好きだね。」

「私はタコスが無いと生きていけないからな!」

「夢にまで見るんか・・・」

「お前、本当にタコス好きの呪われた血族なんじゃね?」

「その可能性は捨てきれないじぇ。」

「そんなオカルトあり得ません。」

和先輩は相変わらずのオカルト否定ですね。オカルトを否定してるのに初詣に来るって、何か変な気もしますけど、和先輩に言ったら怒られそうなので言わないでおきます。

「じ、じゃあ、和先輩はどんな初夢を見たんですか?」

「私ですか!?えっと、それは、咲さんと・・・」

「えっ、和ちゃんの初夢に私が出てたの?嬉しいな。ねぇ、どんな夢だったの?」

「えっ!?えっと、それは、その、ごめんなさい、恥ずかしいので言えません!」

「そうなんだ。ちょっと残念だけど仕方無いよね・・・」

和先輩、どうしてあたふたしているんでしょうか?うぅ、気になります!あっ!そうです!藤崎心音さんの能力を使って和先輩の心の中を覗けばいいんです!早速やってみましょう!

(咲さんとベッドの上で○○○とか○○○とか○○○○○とかする夢を見たなんて、言える訳無いじゃないですか!)

あぁ、これは、何も聞かなかった事にします。まさか和先輩がこんな方だったとは・・・忘れたいですけど、これは、忘れられそうにないです・・・

「ええっと、その、み、宮永先輩は、どんな初夢をご覧になられたんですか?」

「マホちゃんどうしたの?なんだか色々と変だけど大丈夫?」

「大丈夫、です、宮永先輩の初夢、聞かせて下さい。」

「私は、皆と大人になっても仲良くしている夢を見たよ。」

あぁ、こういうのです!こういう初夢を求めてたんですよ!やっぱり宮永先輩は凄いです!全てにおいて尊敬出来る先輩です!

「宮永先輩は本当に凄いです。本っ当に素晴らしい先輩だと思います!」

「ありがとう・・・でもどうしたの?今日のマホちゃん、何だか変だよ?お正月で気を張っていたなら休んだ方が良いと思うよ?」

「宮永先輩・・・ありがとうございます!でも大丈夫です!元気だけが取り柄なので!」

「そう、なら良かった。」

「はい!」

宮永先輩、本当に優しいです!ちょっと好きになっちゃいそうです・・・和先輩があんな夢を見るのも3%くらいは分かる気がします。

「じゃあ、マホちゃんはどんな初夢を見たの?」

「えっ、マホの初夢ですか?」

「うん、気になるな。」

「えっと、マホは、その、氷華と二人で遊びに行ったりした夢です。」

「えっ、マホちゃん、いつから氷華ちゃんの事呼び捨てで呼ぶようになったの?」

「マホの誕生日パーティーをして下さった時に仲良くなったんです・・・」

「マホちゃん、顔が赤くなっちゃって、なんだか、ただならぬ感じがするわね。」

「ほほぅ、何があったんじゃ?ん?」

「えぇ、別に何も無いですよぉ!」

「そんな事言って~、何かあったんでしょ~!」

「そんなにおかしな事は無かったですよ。えっと、確か、首輪?みたいな物を貰って、それを付けてから抱き締められたくらいですよ。」

「えっ、ちょっと待って、想像の遥か上を行ってたんだけど、そんな事してたの!?」

「これは、予想外じゃのぉ・・・」

「えっ?変でしょうか?まぁ、ちょっと激しく抱かれたような気がしますけど。」

「マホちゃん、あの、なんと言えばいいか・・・」

「その、お幸せにの・・・」

(マホちゃんが言ってる『抱かれた』と先輩方が言ってる『抱かれた』の意味が違うような気がするけど、別に言わなくても良いかな?二人とも、分かってていじってそうだし。もう、竹井先輩、この前ので懲りなかったんですか?)

「???よく分かりませんけどそうします。そういえば、和先輩と片岡先輩とムロさんと、須賀先輩までいないんですけど、何処に行ったんですか?」

「あぁ、あの4人なら、途中で優希ちゃんが京ちゃんとムロちゃんを連れて先に行こうとしたから和ちゃんが一緒に付いて、4人で先に行っちゃったよ。」

「そうだったんですか!?じゃあ、マホ達も行きましょう!」

「そ、そうね・・・」

「そ、そうじゃな・・・」

(まさか、マホちゃんがそんな、氷華さんとSMプレイをしていたとは・・・)

(マホがそこまで大人じゃったとは思わんかったわ・・・)

 

 

マホ達はその後片岡先輩達と合流して、神社にお賽銭をしに行きました。

「そういえば、どうしてお賽銭って、お金をお賽銭箱に入れるんですかね?」

「きっとお金で解決するためだじぇ!」

「あんたの悩みは今入れようとしている10円ぽっちで解決出来る悩みなんか?」

「確かに言われてみればそうだじぇ。」

「じゃあマホ、100円にします!」

「あっ、辞めた方が良いと思うよ。私、3年くらい前、お賽銭で100円入れたのに一年間ずっと悪い事が続いたもん。」

「そうなんですか・・・」

「お金で解決する為じゃないわよ。」

「えっ、竹井先輩、知ってるんですか?」

「えぇ、お賽銭っていうのは、自分に付いた穢れをお金に移して、それを清めて貰う為にやってるのよ。お金には穢れを吸い付ける力があると思われているから。」

「はぁ、またテレビの雑学番組ですか?」

「それだけじゃないのよ?小銭と言っても穴の空いたお金はその力が強いらしく、ご縁がある5円玉とご縁が重なる50円玉といった縁起の良い小銭に穴を空けるようにしているらしいのよ。」

「そうだったんですね!マホ、これまでずっと気になってたんです。なんで5円玉と50円玉だけ穴が空いているんだろうなって。」

「まぁ、諸説あるけどね。ほら、お賽銭しましょう。」

「はい!マホ、折角なので50円玉にします!」

「じゃあ私も50円玉にしようかな。」

「宮永先輩なら、50円玉じゃなくても運良いじゃないですか。というか、宮永先輩なら神様よりも強い気がするです!」

「もう、変な事言わないでよ。それだったらマホちゃんの方が凄いよ。」

「そんな事無いですよ!宮永先輩より凄い人なんていませんよ!」

「そんな、マホちゃんの方が凄いって!」

「ちょっと二人とも、後ろに並んでる方々がいらっしゃるから早くそこをどけてあげなさい。」

「わっ!すみませんでした!」

「ごめんなさい!」

宮永先輩とマホがそこを離れて、おみくじを引く事になりました。

「そうだ!おみくじを皆で一斉に開くっていうのはどうだじぇ?」

「良いわね。そうしましょうか。」

「それじゃあ引きましょうか。」

おみくじを引いて出てきた紙を開かずに、皆さんが引き終わるのを待ち、円陣になりました。

「じゃあ開けるわよ!せーのっ!あっ!大吉だわ!やった!」

「私も大吉だじぇ!」

「わしは吉か。まあまあじゃな。」

「俺は小吉でした。」

「私は末吉でした。」

「和先輩もですか?私も末吉でした。」

「そういえば、末吉と吉ってどちらが上なんでしたっけ?」

「ほれ、出番じゃよ。」

「はいはい、一般的には『大吉、吉、中吉、末吉、小吉、凶、大凶』の順番と言われているけれど、場所によっては全然違かったりするから、これ!って強く言う事は出来ないわね。」

「へぇ、吉ってかなり高いんですね。中吉の方が上だと思ってました。」

「そうね。それより、咲とマホちゃんは、なんだかテンション低くなってるけど悪かったのかしら?」

「はい、私は凶でした・・・」

「凶ならまだ良いじゃないですか!マホは大凶ですよ!」

「まあまあ、凶と大凶は入ってる数が少ないって聞いた事あるし、ある意味運が良いじゃない。ね?」

「そんなの、何の慰めにもならないですよ。」

「まぁ、あんたらは普段めちゃくちゃ運がええんじゃからそれくらいが丁度ええじゃろ。」

「そんなぁ!」

「酷いです。こんな運勢だったら麻雀でも勝てる気がしないです・・・」

「お?じゃあ今から私の家来る?皆で新年初麻雀でもしましょうよ!」

「どうせ負けちゃいますよ?」

「それだからやるんじゃない!」

「あんた、この状態でマホに勝って嬉しいんか?」

「そりゃあ嬉しいでしょ、運勢が悪いと言えど、今のマホちゃんに勝てるなら!」

「そうか、あんたがそれで良いなら別に何も言わんわ・・・」

「それじゃあ早速行きましょう!」

「竹井先輩、完敗する気がするじぇ。」

「そうじゃの・・・」

竹井先輩のお家にお邪魔して、麻雀をする事になりました。

「それじゃあ、私と咲とマホちゃん、残り一人は誰にする?」

「その3人相手の対局とか、絶対入りたくないじぇ・・・」

「そうじゃの・・・」

「それなら、私が入ります。」

「和先輩!」

「分かった、和が入るのね。じゃあ、始めましょうか。」

「はい!」

 

 

~試合結果~

宮永咲 45300

夢乃マホ 41000

竹井久 8200

原村和 5500

「なんでよ!私の運勢は最高でマホちゃんと咲の運勢は最悪だったはずなのに全然勝てないじゃない!」

「まぁ、おみくじ1つで麻雀のレベルが変わる訳では無いですし。」

「あぁ、やっぱり宮永先輩の方が運が良いから負けてしまいました!マホはやっぱり大凶だったから負けちゃいました!」

「やっぱりマホちゃんは強いね。負けそうだったよ。」

「マホちゃん、それって私達に対しての嫌みかしら?」

「えっ、いえ!そんな事は無いです!」

「はぁ、別にどっちでも良いけど、あんた達強すぎよ!あんなの勝てる訳無いじゃない。咲はカンしただけで倍満とか和了るしマホちゃんもダブリーばっかりして!意味分かんないわよ!」

「でも、竹井先輩も悪待ちすると凄いじゃないですか。」

「それを真似出来るあんたの方が凄いわよ。」

なんだか、竹井先輩が不貞腐れちゃってます・・・

「そんな事無いですよ。」

「謙遜しないで、あんた達が凄くないなんて言ったら私達はどうなっちゃうのよ・・・」

「それは、ごめんなさい。でも、竹井先輩は凄いですよ!」

「そうです。去年だって清澄がピンチだった時に巻き返してくれたりしたじゃないですか。」

「そんな事言ったら、咲なんて毎回プラスじゃない。マホちゃんだって地区大会で最多得点だったし。」

「そうですけど・・・」

「いや、良いの。貴女達は強いわ。でも、そんな貴女達を越えてみせるわ!今年の抱負が決まったわね。」

「じゃあマホは宮永先輩よりも強くなります!」

「じゃあ私は、お二人よりも強くなります。」

「今年の抱負、決まったわね。」

「はい!」

その後は、皆さんと色々な事を話して解散になりました。おみくじの運勢は最悪でしたけど、とっても有意義な初詣になりました!おみくじが悪かったのに、今年は何故か良い年になりそうな気がします。




前回の番外編では、氷華とマホのイチャイチャストーリーを書いたので今回は清澄メンバーが仲良く初詣を過ごすストーリーにしました。因みにお賽銭の時の100円の下りは実体験です。


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第46話《阿知賀編⑧》 先鋒前半戦

遂に白糸台高校先鋒の西園寺麻衣が登場します。


遂に準決勝当日になった。阿知賀女子のメンバーは、ホテルから会場の控え室へと移動して、準決勝の準備をしていた。

「玄、これまでやって来た練習を思い出しながら打つんだよ。」

「はい。」

「頑張って下さい!玄さん!」

「頑張って下さい。」

「頑張れ。」

「頑張れ玄!」

「うん、行ってくるよ!」

~有珠山高校控え室~

「成香、今回は最初から堕天するんだろ?」

「堕天って・・・まぁ、しますけど。」

「本内先輩が堕ちる瞬間が見れるんですね!」

「由暉子先輩、目がキラキラしてますね・・・」

成香が頭を揺らして分け目を変えた。左目はくりくりした愛らしい眼をしていたが、右目は、幾度となく修羅場を越えてきたかのような、目が合ったらやられてしまいそうなそんな目付きをしている。

「では、行ってきます。」

これまでのようなふわふわした口調とは打って変わって、冷酷で淡々と喋る姿に、他のメンバーが震え上がる。

「これ、チカセンに見せたらどんな反応するんだろ?」

「本内先輩カッコいいです!」

「頑張って下さい。」

「はい。」

成香は颯爽と控え室を後にした。

~姫松高校控え室~

「ええか、あんたの仕事は飛ばん事や。飛ばなかったら私らにもチャンスはある。頑張ってこい!」

「分かりました!行ってきます!」

「頑張ってや!」

「頑張れ!」

「はい!」

~白糸台高校控え室~

「さてと、それじゃ、楽しんで来ます。」

「麻衣が負ける事は無いだろうけど、一応相手は弱くは無いんだ。油断はするなよ。」

「はーい。じゃ、行ってきまーす。」

 

 

『さぁ、先鋒の選手が次々に対局室に移動しています。実況は私、福与恒子と!』

『解説の小鍛治健夜です。これって普通は恒子ちゃんが言うんじゃないの?』

『という訳で早速先鋒戦の選手を紹介していきます!』

『無視!?酷いよ!』

『まぁまぁ落ち着いて。まずは姫松高校2年、小早川綾(こばやかわあや)選手。2回戦では白糸台の西園寺麻衣選手にかなりやられてしまいましたが、準決勝ではどのように打ち回して行くのでしょうか。』

『彼女は和了がかなり速いんですけどね。昨日の対局ではあまり持ち味を出せていない感じでしたね。』

『まぁ確かに、白糸台高校に食らいつこうと高い手を和了ろうとしてましたからね。』

『ですが、今回は白糸台だけではありませんからね。』

『そう、この準決勝は白糸台だけではない!昨年ベスト8まで行った有珠山高校の先鋒、本内成香選手!』

『彼女は2回戦の途中から、何かが憑依したかのように強くなりましたからね。』

『たった三局で最下位から一気にトップまで登り詰めましたからね。』

『あの三局は手牌が筒子と字牌で出来ていましたね。字牌と言っても東南西北でしたけど。』

『天使のような顔して悪魔みたいな和了りでしたよね。』

『別にそこまでは行ってないよ!』

『さて、お次は阿知賀女子の松実玄選手。』

『あぁ!また無視した!』

『松実玄選手についてはどうお考えで?』

『そうですね、彼女はドラが来る事で自分の火力が上がる事と、他の相手の火力を少し抑える事が出来るところは強みですけど、やっぱり振り込みやすかったり手が読まれやすかったりマイナス面も多いですね。本人はかなり使いこなせていますが、他の人が彼女のような状況になったら全然使いこなせないでしょうね。』

『じゃあ小鍛治プロは使いこなせますか?』

『えっ、私は、自分のスタイルがあるから、あんまり分からないですね・・・』

『はい、じゃあ次は白糸台先鋒の西園寺麻衣選手です!』

『またぁ!もぉ!無視しないでよ!』

(ふふっ、やっぱりすこやんは面白いなぁ・・・)

『はいはい、西園寺麻衣選手についてはどう思いますか?』

『彼女は、そうですね、まだ何とも・・・』

『えっ?どうしてですか?』

『あの人は、なんとなくですが、まだ何かを隠してる気がするんです。白糸台の、それも攻撃重視のチーム虎姫の先鋒なのにあのプレイスタイルなのは少し違和感を覚えます。』

『成る程、もし手加減をしているとしたら、それが今日解かれるという事ですね?』

『多分、今日はかなり強い面子が揃っているので、本気で来ると思います。』

『それでは対局室に面子が揃っているので、準決勝先鋒戦、開始です!』

 

~場決め結果~

松実玄:東

西園寺麻衣:南

本内成香:西

小早川綾:北

 

~東一局~ 親:松実玄

阿知賀 100000

白糸台 100000

有珠山 100000

姫松 100000

(まずは資金集めからしないとね。)

~7巡目~

「リーチ。」

(西園寺さん、速い!)

(今回はこいつの好きにはさせへんで!)

「チー。」

(あら、一発消されましたか。でも点数変わらないんで関係ないですね。)

「ツモ。メンタンピン三色。3000・6000です。」

『白糸台高校西園寺選手が先制の跳満ツモです!』

『流れるように和了しましたね。』

『次は西園寺選手の親番です。2回戦では東場の親番で3連荘していました。彼女を止める事はできるのか!』

~清澄高校宿泊部屋~

清澄高校のメンバーは、優希と和とムロが会場に行き、マホと咲とまこはホテルのテレビで試合を観戦していた。

「宮永先輩!試合始まりましたよ!」

「分かった、今行く。試合の動きは何かあった?」

「はい!白糸台の先鋒の方が跳満ツモしました。」

「始まったばっかりなのに速いね。」

「流石は白糸台の先鋒じゃな。」

~東二局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 112000

有珠山 97000

姫松 97000

阿知賀 94000

~5巡目~

「リーチ。」

(速い・・・)

(またかいな!)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。6000オール。」

『またもや跳満ツモ!そして連荘です!西園寺選手を止められるのか!』

『ここからですね。』

~東二局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 130000

有珠山 91000

姫松 91000

阿知賀 88000

(取り敢えず資金集めはこれくらいにして、そろそろ始めますか。)

~8巡目~

(もう3万点も稼がれた。赤土さんが、西園寺さんは点数が減らないって言ってた。一応聴牌したけど、なんとか直撃出来ないかな?ってあれ?それ、私の和了り牌・・・)

「ろ、ロンです!タンヤオドラ5。12300です!」

「はい。」

(えっ!?西園寺麻衣が放銃!?2回戦ではそんな事しとらんかった。もしかしたら調子が悪いんか?なら、私も攻める!)

『なんと!西園寺選手がまさかの直撃を受けてしまいました!』

『そう、ですね。どうしてでしょうか?』

(2回戦の西園寺さんなら簡単に避けれていたはず。という事はわざと?でも、放銃する事が加点に繋がるとも思えないし、どうしてだろう?)

~東三局~ 親:本内成香

白糸台 117000

阿知賀 100300

有珠山 91000

姫松 91000

~3巡目~

「チー。」

~5巡目~

「ポン。」

(よし、これで聴牌や!こいつが調子悪いんやったらこのままどんどん潰したる!おっ!来た!)

「ロン!タンヤオ三色同刻。3900や。」

『西園寺選手、2連続で放銃です!』

『これはもしかしたら白糸台高校がピンチになるかもしれないですね。』

~清澄高校宿泊部屋~

「あれ、西園寺さん、この間見た時は一回も点減らしてなかったのに、今回は減らしてる。どうしてだろう?」

「それはその内分かりますよ。」

「え、マホ、知っとるんか?」

「知ってますよ。開会式で照魔鏡を使って全員見たので。」

「恐ろしい子じゃな・・・」

「それでマホちゃん、その内分かるってどういう事なの?」

「それは、その時が来たら言います。」

「えぇ、気になるよ・・・」

「見てからのお楽しみです!」

~東四局~ 親:小早川綾

白糸台 113800

阿知賀 100300

姫松 94900

有珠山 91000

「リーチ。」

(なっ、有珠山がダブリーしてきた!?)

(この人、凄い・・・)

(良いね良いね、有珠山の先鋒最高だよ!)

「ツモ。ダブリー一発ツモ混一三暗刻東南。6000・12000です。」

(三倍満!?やばすぎやろ!?)

(速い上に打点も高い。この人、凄すぎるよ・・・)

『有珠山高校の本内選手が三倍満ツモで最下位から一気にトップに浮上しました!』

『これは2回戦の時と似ていますね。』

『そうですね。』

~対局室~

(良いよ良いよ、こういうのを求めてたんですよ。ちょっとだけ想定外な事が起きたけど、まぁなんとかなるでしょう。さて、見てるだけなのも飽きましたし、そろそろ回収の作業でもしましょうか。)

~南一局~ 親:松実玄

有珠山 115000

白糸台 107800

阿知賀 94300

姫松 82900

~5巡目~

「ロン。三暗刻対々。8000です。」

(白糸台、もう聴牌しとったんか!?それに、直撃されてしもた・・・)

『白糸台がトップを取り返しました!』

『これは、かなり良い戦いになってますね。』

~清澄高校宿泊部屋~

「西園寺さん、動き始めましたね。」

「えっ、今のが?どういう事?」

「えっと、簡単に言うと、西園寺さんは一回自分が振り込んで、その後に振り込んだ点数の2倍の点数を直撃するんです。」

「えっ!凄い・・・でも、2倍にしたら丁度で返せない場合もあるよね?」

「はい、その場合は繰り上げるんです。丁度今のがそのパターンですね。小早川さんは西園寺さんに3900の直撃をしました。これを2倍にすると7800です。でも、直撃で7800を和了する事は出来ません。そこで、一番近くの打点のところまで繰り上げるんです。例えば今の場合だと7800の上にあって一番近くにあるのは8000なので8000の直撃になるんです。」

「へぇ、えっと、これって、相手にツモ和了りされて点数が減った時はどうなるの?」

「その場合は自分が減った点数の2倍を直撃します。この対局で言うと、さっきの本内さんの三倍満ですね。あれは西園寺さんには6000の負担だったのでお返しは12000になります。つまり、西園寺さんが親じゃない時にツモ和了りをすればプラスにする事も可能なんです。」

「成る程、あっ、そうだ、5200の直撃があった場合は2倍にすると10400だから、親の110符2翻の10600になるの?」

「えっ、そこは厳しいから流石に11600とかになるんじゃないでしょうか?」

「110符2翻くらいなら出来るんじゃない?」

「それが出来るのは宮永先輩くらいです・・・」

「そうなのかな?」

「はい、そうです。」

~南二局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 115800

有珠山 115000

阿知賀 94300

姫松 74900

~7巡目~

「ロン。混一中。12000。」

(今度は私に直撃、黒い牌が来るはずだったのに来なかった。そしてこの直撃。何かありそう・・・)

(白糸台の人、やっぱり強い。このままじゃ勝てないよ・・・)

『西園寺選手、有珠山との点差を広げた!』

『引き離しにかかってますね。』

『そしてまたまた連荘だ!このまま西園寺選手が独走してしまうのか!』

~南二局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 127800

有珠山 103000

阿知賀 94300

姫松 74900

(また親で連荘させてしもた。ここはなんとしても和了るで!)

~4巡目~

「ポン。」

『姫松高校小早川選手、対々の聴牌です。』

『この状態でツモ和了出来れば三暗刻が付きますね。』

~8巡目~

(やっと来てくれたわ。)

「ツモ。2100・4100。」

~清澄高校宿泊部屋~

「あぁ、小早川さん、やってしまいましたね。」

「えっ、どうして?」

「西園寺さんとの対局で最も注意しなければいけない事は本場です。」

「本場?」

「今の局、一本場だったから西園寺さんの出費は4100です。これを2倍にすると8200になります。」

「あっ、そっか!じゃあこれのお返しは9600?」

「いや、親番はもう無いので、回収する点数は12000です。」

「えっ、じゃあ一本場あるか無いかだけでツモ和了りでも多く取られちゃうって事?」

「そうです。それに、東二局一本場の時、松実玄さんは12300を直撃していました。」

「2倍にすると24600、親番が無いから・・・32000!?」

「そうです。つまり、西園寺さんに12300の放銃をするという事は、19700の直撃を受けるというのと同義なんですよ。」

「凄いね。」

「西園寺さんは普通に打っても強いですから、先に和了らないとどんどん高い手を和了られてしまいます。でも、和了ると取った点数を回収される。それに、西園寺さんは相手の和了り牌を掴んでいる事が多いのです。なので、他家から和了るのも難しいです。」

「そんな、そんなの、勝てないよ・・・」

「これが、今年の白糸台先鋒の強さです。」

~白糸台高校控え室~

「後は麻衣が12000と32000を和了って終局か。今回も大丈夫そうだな。」

「本当に、相手が可哀想になってくる程強いよね、あいつ・・・」

「はぁ、認めたくないけどさ、やっぱり強いよ、あいつは。」

「珍しいね、淡ちゃんが他の人の実力を認めるなんて。」

「だって、あいつの事を弱いって言ったらあいつに負けてる私も弱くなっちゃうじゃん!」

「あっ、いつもの淡ちゃんだった・・・」

~南三局~ 親:本内成香

白糸台 123700

有珠山 100900

阿知賀 92200

姫松 83200

~4巡目~

「ロン。清一。12000です。」

(4巡目!?速すぎやろ!?)

~阿知賀女子控え室~

「あっ、成る程、そういう事ですか!」

「もしかして白も気付いた?」

「赤土先生も2倍になっている事気付いたんですね。」

「あぁ、まあね。」

「えっ、どうしたの二人とも?2倍?」

「えっと、それはだなぁ・・・」

晴絵と白が3人に説明をする。話を進めると、3人がどんどん驚きと絶望が入り交じったような顔色に変わっていった。

「えっ、それじゃあ、この後玄さんは役満直撃されちゃうって事ですか!?」

「まぁ、そうなるだろうね。」

「ヤバすぎでしょそれ!高利貸しすぎ!」

「現実でやったら、即警察・・・」

「ははっ、確かにね。」

「笑っていられるような状況じゃないですけどね。」

「そうだね。」

~南四局~ 親:小早川綾

白糸台 135700

有珠山 100900

阿知賀 92200

姫松 71200

~5巡目~

「ロン。国士無双。32000です。」

(えっ・・・役満・・・)

(本物やな・・・)

『ぜ、前半戦、終了ぉぉぉ!!!!なんと!西園寺選手が松実選手に役満を直撃して終わらせました。』

『これは、後半戦辛そうですね・・・』

『10分間の休憩の後、先鋒後半戦を開始します!』

 

~先鋒前半戦結果~

白糸台 167700

有珠山 100900

姫松 71200

阿知賀 60200




西園寺麻衣、やっぱり強いですね。某銀行の看板を見た時に思い付いたキャラにしては強すぎたので白糸台の先鋒にしました。そして、外伝含めて3話同時投稿は流石に疲れました・・・


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第47話《阿知賀編⑨》 先鋒後半戦

玄が対局室から控え室に戻った。晴絵が玄に麻衣の件について話した。玄は、直接対局していた為か、あまり驚く事無く話を聞いていた。

「では、西園寺さんに直撃する事と、西園寺さんが親番の時に和了するのは良くないと言う事ですね?」

「あぁ、そうなる。まぁ、玄が親の時にもあんまりツモ和了りしてほしくないけどね。」

「えっ、どうしてですか?」

「例えば玄が6000オールを和了ったとしよう。するとその時点では玄が18000のプラス、西園寺は6000のマイナスになる。そして西園寺が回収をする。西園寺は6000減らされたから回収するのは12000だ。玄が12000取られたら、玄の収支は6000、西園寺の収支も6000となり、西園寺と点差を付ける事が出来ないんだよ。西園寺と点差を付ける為には、西園寺以外から直撃するか、西園寺が子の時にツモ和了りするしかない。」

「成る程、そうしてしまうと、他の方々の点数を減らして、私と西園寺さんだけが少し浮く、という事になりますね。」

「一見西園寺さんを出し抜いたように見せて、実は何も起きてない状況になるんですね。」

「そういう事、玄は今の点数だから直撃と西園寺の親番を注意してくれれば良いけど、決勝で対局する時はそこに注意して欲しい。」

「分かりました!」

「とりあえず今は、これ以上削られないようにするように。」

「はい!では、行ってきます!」

~白糸台高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「お疲れ、何だか元気がなさそうだな。どうかしたのか?」

「いやぁ、稼げたんですけど、有珠山だけプラスで終わらせてしまって、ちょっと悔しいです。」

「そうか、まぁ、まだ後半戦もあるんだし、そこで倒せば良いじゃないか。」

「そうですね。絶対マイナスで終わらせてみせます!そして、圧倒的な差で次鋒戦に回します。」

「うん、楽しみにしている。」

「じゃあ、行ってきます。」

 

 

『さぁて、休憩も終わり、対局選手も対局室に戻ってきました!先鋒後半戦、開始です!』

 

 

~場決め結果~

西園寺麻衣:東

小早川綾:南

松実玄:西

本内成香:北

 

~東一局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 167700

有珠山 100900

姫松 71200

阿知賀 60200

(起家になれましたね。ならここは点数を稼ぎにいきますか。本場が付けば回収額が上がりますしね。)

~7巡目~

「これ、振り込んじゃいそうだな、でも、行っちゃえ!えい!」

(うぅ、それ、私の和了り牌、だけどこの人から直接和了る事は出来ないよ・・・)

~9巡目~

「リーチ。」

(まだ稼ぎ足りんのかこいつは!)

『西園寺選手リーチです!』

『かなりの点差がありますから防御に回っても良いと思いますが、稼げるだけ稼ぎたいタイプなんでしょうね。』

『成る程、太りやすいタイプですね!』

『そんな事言ってないよ!それに、西園寺選手はちゃんと痩せてるよ!』

『自分が太ってるからって高校生を僻まないで。』

『僻んでないし!それに太ってもないから!』

『分かった分かった。』

『もう、ちゃんとしてよ。』

『はいはい。』

~11巡目~

「ツモ。リーチツモ清一。8000オール。」

『西園寺選手、大量の点差がありながら更に点差を広げた!』

(2回も和了り牌を出された。なんで西園寺さんが出すの・・・)

(阿知賀の人、素直に和了っちゃえばよかったのに。)

「一本場です。」

~東一局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 191700

有珠山 92900

姫松 63200

阿知賀 52200

(さてと、一本場になったし、ここは直撃かツモ和了りをされるのを待つ事にしよう。)

~5巡目~

「ロン。混一一通東。12300です。」

成香が和了した。しかし、それを振り込んだのは、姫松の小早川綾だった。

『おおっと!?有珠山高校の本内選手、西園寺選手ではなく姫松の小早川選手に直撃をしました!どうして姫松なんだぁ?』

『白糸台だと後で取られてしまうからでしょう。』

『えっ、それだから取られる前に取るんじゃ無いの?』

『あぁ、まぁ、色々とあるんだよ・・・』

『えぇ、何その含みのある言い方、気になるじゃん!』

『まぁ、そこは気にしないで。』

『そうですか、じゃあ無視します。』

『無視はしないで!』

~対局室~

(えっ!?嘘でしょ!どうして姫松が有珠山の和了り牌持ってんの!?和了り牌は私の所に来るはずなのに・・・)

(有珠山の本内さん凄い。西園寺さんの親番、しかも一本場を上手く交わして和了った!やっぱりこの人凄い・・・)

~東二局~ 親:小早川綾

白糸台 191700

有珠山 105200

阿知賀 52200

姫松 50900

(有珠山のせいで親番が終わっちゃった上に投資も出来なかった!くそ~!絶対有珠山ボコボコにしてやる~!)

~7巡目~

(これ、有珠山に当たるだろうな。よしっ、これで和了られたら多分かなり高い回収ができる。いけっ!あれ?和了らない。どうして・・・?)

「ツモ。混一一通。3000・6000です。」

(はぁ!?私の出した牌で和了らないでツモ和了りした!?やっぱりこの人、私の能力に気付いてるな・・・)

『またまた有珠山が跳満を和了った!』

『またもや筒子の混一と一通ですね。』

『確かに、本内選手の筒子率はかなり高いですね。』

~東三局~ 親:松実玄

白糸台 188700

有珠山 117200

阿知賀 49200

姫松 44900

(さっきの和了り、親被りじゃないから3000の負担。2倍にして6000だから直撃するのは6400。もう今すぐ回収しちゃおうかな?いや、ここはまだ回収しないで他と点差を広げてやる!)

~5巡目~

「リーチ。」

「ポン。」

(有珠山、一発消しとかするんだ。一発付いたら倍満になったけど、まぁ、和了れれば良いか。)

「ツモ。メンピンツモ純チャン一盃口。3000・6000です。」

(これ、もしかして有珠山が鳴いとらんかったら倍満になっとったんかな?)

(また点差を広げられちゃった。もう、こんなの無理だよ・・・)

『負けじと西園寺選手も跳満和了です!』

『これはかなり面白い試合になってますね。』

~東四局~ 親:本内成香

白糸台 200700

有珠山 114200

阿知賀 43200

姫松 41900

~3巡目~

「リーチです。」

(有珠山がリーチ!?3巡目とか、速すぎでしょ・・・)

(親がリーチとか、しかもこの人、火力高いしな。それに白糸台もまた何か仕掛けるかもしれんし、こんなん勝てんやん・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。6000オールです。」

(くそっ、また有珠山に和了られた!まぁ、親のツモ和了りだから点差減らないからまだましだけど。それでもやっぱり、有珠山の方が1枚上手だな・・・)

『本内選手!4巡目にして親跳和了です!速い!速すぎる!』

『今の和了りでかなり開いていた白糸台との点差を縮めましたね。』

~清澄高校宿泊部屋~

「有珠山の本内成香さん、凄いですね。」

「うん、あれだけの点差がある上にロン和了りしても倍返しされるっていう状況で追い付こうとしているよ。」

「もしトビ終了が無かったなら、本内成香さんが上回りそうですよね。」

「確かにそうだね。本内さんが西園寺さんにやられ過ぎる前に気付いてたならもっと良い戦いが出来てただろうね。」

「どっちにしろ、二人とも凄いですね。」

「うん。」

~東四局一本場~ 親:本内成香

白糸台 194700

有珠山 132200

阿知賀 37200

姫松 35900

(ここで6400を和了れば一本場だから6700になる。じゃあここで回収しようか。)

~6巡目~

「リーチ。」

(白糸台がリーチしてきた。これはもしかしたら私の回収かな・・・やっぱり、黒くない牌が来た。これ出さなきゃ更に怖い事になりそうだし、出しとこう。)

「ロン。リーチ一発七対子。6700です。」

「はい。」

(流れるように西園寺さんが和了った、という事は、今のは多分3000消費した時のお返しかな?)

(よしっ、このまま6000オールのも回収しよう。そして私が親で連荘して有珠山もマイナスで終わらせる!)

~南一局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 201400

有珠山 125500

阿知賀 37200

姫松 35900

~6巡目~

「リーチ。」

『おおっ!またもや西園寺選手のリーチだ!』

『この手も多分、本内選手が一発で出すと思います。』

「ロン。メンタンピン一発で12000です。」

『えっ!?すこやんなんで分かったの!?アラフォーの勘?』

『いや、勘ではないよ・・・って!私はアラフォーじゃないから!アラサーだから!・・・言わせないでよ!』

『さぁ、鉄板ネタも出た所で、西園寺選手の連荘です!』

『鉄板ネタじゃないし!っていうかネタじゃないから!』

『はいはい、落ち着いてね~。』

『えっ、なんで私が悪いみたいになってるの!?』

~南一局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 213400

有珠山 113500

阿知賀 37200

姫松 35900

(よしっ、このまま連荘するのもいいけど、13500くらいのプラスなら有珠山に直撃させて回収するって形でも行けそう。じゃあ有珠山の和了り牌を出してくか。)

~7巡目~

「ロンです。」

(来たっ!これで点差が更に増える!)

「平和のみ。1000は1300です。」

(はぁ!?なんでそんな安手和了るの!?これじゃあ2倍にしても2600。丁度回収出来ちゃうじゃない。点差は増えるけど、それは無くない?)

~清澄高校宿泊部屋~

「今の、どうして本内さんは直撃したの?」

「それは、阿知賀と姫松の点数がかなり無くなっているからじゃないでしょうか?飛ばさせない為に。」

「でも、このまま飛ばせば2位抜け出来るよね?」

「多分、本内さんは勝ちしか見ていないんだと思います。2位抜けするなんて考えは全く無いから今みたいに安手の直撃で局を回そうとしているんだと思います。」

「成る程ね。」

~南二局~ 親:小早川綾

白糸台 212100

有珠山 114800

阿知賀 37200

姫松 35900

(2600の回収とか、全然やる気になれない~!まぁ、でもやらなきゃだよね。このまま有珠山に流れを持ってかれる訳にも行かないし。)

「リーチ。」

(これは1300の回収をしている?という事は、これを切れば一発で振り込む。それにしても、これを出さなかったらどんな風になるんだろう。怖すぎて試さないけど。)

「ロン。リーチ一発で2600です。」

「はい。」

『なんと、本内選手に引き続き西園寺選手まであまり高くない手を和了りました!』

『そうですね。』

~南三局~ 親:松実玄

白糸台 214700

有珠山 112200

阿知賀 37200

姫松 35900

(この局は回収したいからじっくりと他家が和了るのを待つ。直撃出来れば良いんだけど、流石にこの状況で和了ってくれる人はいなさそうだからまぁ、気にしてないけど。)

~6巡目~

「ツモ。混一ダブ南ツモ。3000・6000です。」

(また跳満!しかもまた有珠山!もう、いい加減にしてよ!)

~南四局~ 親:本内成香

白糸台 211700

有珠山 124200

姫松 32900

阿知賀 31200

(もう!また6400じゃないですか!っていうかこれ、ダブリー出来る。という事はダブリー七対子かな?とりあえずリーチしようか。)

「リーチ。」

「ポン。」

(有珠山に鳴かれた。あっ、でも出してくれた。)

「ロン。ダブリー七対子。6400。」

「はい。」

(あぁ・・・)

(これって・・・)

『先鋒後半戦、終了ぉぉぉ!!!!白糸台高校が圧倒的な点差で次鋒に回しました!』

「お疲れ様でした。」

「ありがとう、ございました・・・」

「ありがとうございました。」

「お疲れさんです・・・」

 

~先鋒後半戦結果~

白糸台 218100

有珠山 117800

姫松 32900

阿知賀 31200

 

先鋒後半戦が終わり、4人が控え室に戻ろうとすると、麻衣が成香を呼び止めた。

「ちょっと良いですか?」

「はい、何でしょうか?」

(西園寺さん、怖いです・・・)

成香の分け目は普段の方に戻っていて、対局時のような殺伐とした表情ではなく、いつもの可愛らしい表情をしていた。

「あの、本内さんは個人戦って出ますか?」

「えっと、出ます。有珠山は1位2位3位を独占したので。」

「そうでしたか。では、決勝で対局する時は貴女をマイナスにして勝ちます!もし今日有珠山が決勝に残れなかった場合も、個人戦で勝ちます!」

「えっと、その、私も頑張ります!」

「宜しくお願いします。」

「はい。」

~清澄高校宿泊部屋~

「いやぁ、西園寺さん凄かったね・・・」

「圧巻でした!」

「こりゃあ、優希じゃあちいと厳しいかもしれんの・・・」

「そうですね。まぁでも、出来る限りの事は片岡先輩に伝えます。」

「よろしく頼むわ。」

「マホちゃん、後で私の対局相手の事も教えて。」

「分かりました。でも、今は次鋒戦を見ましょう。」

「そうだね。」

「次鋒戦、この点差、どう埋めるんじゃろうな・・・」

「なんだか、何処かが飛んじゃいそうですよね。」

「あっ、そろそろ始まりそうだよ。」

「楽しみです!」




自分で書いておいて何ですが西園寺麻衣、強すぎますね・・・この点差どう埋めるんだよ(後悔)まぁ、そこは追々やっていきます。次は次鋒戦です。白糸台部長が登場します。ご期待下さい。


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第48話《阿知賀編⑩》 次鋒前半戦

実写版咲阿知賀編の宮永照役の人、まさか咲さんと同じ人とは思いませんでした。『女優とかあんまり分からないから誰が照役になっても驚かないだろうな』とか思ってましたがまんまと驚かされました。


白糸台先鋒の西園寺麻衣が対局室から控え室に戻った。

「ただいま帰りました。」

「お疲れ様、有珠山の本内さんはどうだった?」

「・・・悔しい。」

「えっ?なんて言ったんだ?」

「悔しい悔しい悔しいぃぃぃ!!!!なんで私が本気出したのにマイナスに出来ないの!?なんであんなに和了れんの!?なんでなんでなんで!?」

「ま、まぁ、落ち着け。麻衣は十分プラスじゃないか。」

「でも有珠山をマイナスに出来ませんでした。」

「あんた、トビ終了が無かったら有珠山に捲られてたんじゃない?」

「はぁ?よわい先輩何言ってるんですか?どう考えても私の方が強いに決まってるじゃないですか。」

「だぁかぁらぁ!私は淡だって言ってんでしょ!それに、トビが無かったら負けてただろうって、自分でも思ったでしょ?じゃなきゃ悔しいなんて思わないだろうし。」

「それは・・・そうですけど。」

(よわい先輩の癖に私の事見透かしたような事言われてしまうとは、屈辱です!)

「まぁまぁ、麻衣はトビ終了というルールがある事も含めて強いんだから別に良いじゃないか。それに、最近は殆どがトビ無しだしな。トビ終了が無ければ~なんてのはただの負け犬の言い訳だ。」

「はぁ?私負け犬じゃないし!」

「淡に言ったんじゃないよ。もし同じ事を本内さんが言っているならという話だよ。」

「なんだ、そういう事ね。」

「だから、麻衣は本内さんに負ける事は無いし、麻衣の方が本内さんよりも強いよ。」

「やっぱり、私の事を分かって下さるのは部長だけですね。次鋒戦、頑張って下さい。」

「あぁ、じゃあそろそろ時間だし行ってくる。」

「頑張って。」

「ガンバー。」

「あぁ。」

東条小夜が控え室から出た。

(私は、麻衣に選ばれた最強の次鋒。麻衣の為に、白糸台の優勝の為に、私が頑張る!)

~阿知賀女子控え室~

「ただいま帰りました・・・」

「お帰り玄、よく耐えたね。」

「赤土さん・・・私、何も出来ませんでした・・・」

「それは仕方ない。西園寺麻衣のあれは初見だったら勝てる訳が無いからね。誰も飛ばなかった事が凄いってくらいだよ。」

「そうですよ。初見だったらあたしでも勝てなかったと思いますし、前半戦終わる時くらいまで気付けなかったですし。」

「私は最初の回収で大体察したけどね。それに、私なら二回戦で1度も点が減ってなかった相手が簡単に直撃受けてたならロン和了りはまずしないだろうね。まぁ、玄は最初の直撃で違和感を感じてからは和了らなかったって感じだったけど。」

「何となく嫌な予感がしたので。」

「ナイス判断だね。そのお陰でうちが飛ばずに済んだよ。ありがとう玄、お疲れ様。」

「はい、ありがとうございます。」

「次は私だ・・・」

「灼、白糸台次鋒はまだ本性を現していない。だから様子を見つつ行けそうだったら一気に行くように。」

「うん、分かった!」

「頑張って下さい部長さん!」

「うん、出来るだけ多く点稼いで白に渡すから。」

「はい、期待しています!」

「頑張れ~。」

「頑張って下さい!」

「頑張って!」

「うん、行ってくる。」

~有珠山高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「お帰り~、プラス収支、マジでありがたいわ。流石は堕天使成香だな!」

「その堕天使って言い方止めてくれませんか?揺杏先輩。」

「そんな!カッコいいじゃないですか!止めちゃうなんて勿体無いです!」

「私はカッコいいよりも可愛い方が良いです・・・」

「それより成香さ、対局終わった時に西園寺麻衣となにか話してなかったか?」

「あっ、それ気になってました。」

「それは、えっと、西園寺さんに決勝では私をマイナスにして勝つ、決勝に残れなかったら個人戦で勝つと言ってました。」

「成る程、プラス収支が不満だったのか。」

「まぁ、今回は偶然上手く行きましたけど、次に戦う時は勝てる気がしないです。」

「まっ、今はその心配より次鋒だよな。」

「緊張します・・・本内先輩の点数減らしちゃうと思いますけどお許し下さい。」

「そんなにネガティブになるなよ。それに、お前がダメだったとしても中堅からは層が厚いから大丈夫だ。心配しないでのびのびと打ってこい!」

「はい、行ってきます!」

~姫松高校控え室~

「点数削られ過ぎてごめんなさいぃぃぃ!!!!」

「びっくりした!なんやいきなり!」

「いや、ホンマに申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・」

「そう思うんやったらいきなり入ってきて大声出すなや・・・」

「申し訳無いです!」

「分かったから、その土下座やめい。そして顔上げ。」

「はい、ホンマにすんません。」

「もう終わった事やし相手も相手やからな。しゃーないわ。」

「まぁしかし、こんだけ削られたんやから唯には気張って貰わんといかんな。」

「そんなプレッシャーになるような事言わんといて下さいよ!ただでさえ胃が痛なってるんですから・・・」

「ホンマごめんな、唯。」

「気にせんといて下さい小早川先輩。私が頑張ればええだけですから。」

「頑張ってな。」

「はい。」

 

 

『さぁ、次鋒の選手が次々に登場してきます!では選手紹介をします。現在トップを走っている白糸台高校3年の東条小夜選手。』

『彼女は西園寺選手と同じで、まだ何かを隠している気がします。もしかしたら次鋒で阿知賀女子か姫松高校が飛んで終わってしまう可能性も拭えません。』

『相変わらず辛口評価ですね。じゃあ次に2位を走る有珠山高校1年の藤宮愛佳(ふじみやあいか)選手。』

『有珠山高校は先鋒が稼いで次鋒で失速して中堅からまた稼ぐという感じなのでこの次鋒戦ではかなり削られてしまうかもしれません。』

『そうですか、じゃあ次は3位の姫松高校1年の豊崎唯(とよさきゆい)選手。』

『彼女も今のところあまり活躍出来ていませんので少し厳しいかもしれません。』

『そしてそして、最下位になってしまった去年4位の阿知賀女子は部長の3年鷺森灼選手。』

『彼女は打ち回しが上手いので安定的な打牌が期待されます。・・・というかこういう説明ってそっちがするんじゃないの?』

『次鋒戦を始めます!』

『えぇ!?また無視なの!?』

 

~場決め結果~

鷺森灼:東

藤宮愛佳:南

豊崎唯:西

東条小夜:北

 

~東一局~ 親:鷺森灼

白糸台 218100

有珠山 117800

姫松 32900

阿知賀 31200

(取り敢えず最下位から逃れないと。)

~7巡目~

「リーチ。」

(速い・・・)

(これはやられるかもしれへんな・・・)

『鷺森選手が親リーです!』

~9巡目~

「ツモ。リーチツモ平和一通ドラ1。6000オールです。」

『鷺森選手親跳ツモです!』

『これは幸先が良いですね。』

~東一局一本場~ 親:鷺森灼

白糸台 212100

有珠山 111800

阿知賀 49200

姫松 26900

(このまま連荘する。)

~8巡目~

「リーチ。」

「それや。ロン。タンピン三色で8000。」

「はい。」

『姫松高校の豊崎唯選手が阿知賀女子の連荘を止めました!』

『あの手を黙聴で和了るとは・・・』

~東二局~ 親:藤宮愛佳

白糸台 212100

有珠山 111800

阿知賀 41200

姫松 34900

~6巡目~

「リーチや。」

(もう仕上げられた。速い・・・)

(親番なのに何も出来ない・・・)

「ロン。リーチ一発ドラ1。5200です。」

振り込んだのは白糸台の小夜だった。

『なんと、白糸台の東条小夜選手、直撃を受けてしまいました。』

『ここからですね。』

~東三局~ 親:豊崎唯

白糸台 207900

有珠山 111800

阿知賀 41200

姫松 40100

~3巡目~

「リーチ。」

『おおっと!ここでトップ白糸台の東条小夜選手が動いた!』

『かなり早い段階での聴牌ですね。』

「ロン。リーチ一発ドラ1。5200です。」

(うわっ、同じ形で直撃されてしもたわ・・・)

(この人もしかして西園寺さんと同じような感じ?でも私がツモ和了りした時はこんな事してこなかった。という事は多分ツモ和了りは大丈夫なのかな?直撃のみで同じ形を和了られた人に和了れるってところかな?)

~東四局~ 親:東条小夜

白糸台 212100

有珠山 111800

阿知賀 41200

姫松 34900

~4巡目~

「リーチ。」

「ポン。」

(一発を消された!?これじゃあ和了れない・・・)

~7巡目~

「ロン。一通混一白。8000です。」

有珠山の藤宮愛佳が振り込んだ。

(やられた、まさか止められてしまうとは・・・)

『阿知賀女子の鷺森選手、東条選手のリーチをかわして見事満貫和了です。』

『やっぱり彼女は打ち回しが上手いですね。』

~白糸台高校控え室~

「あぁ、部長の連続攻撃が一回で止められちゃうとは。」

「それにしても、直撃されたら同じ役で連続で直撃するって、ちょっと麻衣と似てるよね。」

「少しだけ似てるかもしれませんけど、お互いに良い点と悪い点がありますから全然違いますよ。というか、一発で振り込んだら和了率が下がるからダメって言った筈なのに・・・」

~南一局~ 親:鷺森灼

白糸台 212100

有珠山 103800

阿知賀 49200

姫松 34900

~7巡目~

「リーチです。」

(有珠山がリーチ。また点差広げられてまうかもしれへん・・・)

~9巡目~

「ロンです。メンタンピン三色で8000です。」

「はい。」

(白糸台が振り込んだ。さっきは一発があったから防げたものの、今回はそれがない。これはちょっとキツいかも・・・)

『有珠山高校藤宮選手が白糸台高校の東条選手に直撃しました。』

『白糸台高校に直撃したい気持ちは分かりますが、今のはツモるのを待って和了った方が点数も高くなりますからそうした方が良かったとは思います。』

『まぁ、確かにそうですね。』

~南二局~ 親:藤宮愛佳

白糸台 204100

有珠山 111800

阿知賀 49200

姫松 34900

~2巡目~

「リーチ。」

(速い・・・)

(やっぱり白糸台のメンバーなだけあってレベルが違うわ・・・)

『白糸台の東条選手、2巡目にしてリーチです!』

『聴牌速度がかなり速いですね。』

~5巡目~

「ロン。リーチタンピン三色。8000です。」

(やっぱり、手牌が全く同じな訳では無いから少し分かりづらいかもしれないけど、同じ役で和了ってる。それに、聴牌速度がめちゃくちゃ速い。)

~南三局~ 親:豊崎唯

白糸台 212100

有珠山 103800

阿知賀 49200

姫松 34900

~3巡目~

「リーチ。」

(またそんな速い巡目で・・・)

(この人、速すぎやろ・・・)

(これ、きっついわ・・・)

『またまた東条選手がリーチだー!このまま東条選手に持っていかれてしまうのか!』

『東条選手、またタンピン三色の聴牌ですね。』

『そういえばさっきも、それに有珠山が直撃したのもタンピン三色でしたね。』

『まぁ、偶然かもしれませんが。』

~5巡目~

「ロン。リーチタンピン三色。8000です。」

(また直撃された!しかも、さっきから私が和了ったのと同じ役で和了られてる。これってもしかして偶然じゃない?)

~南四局~ 親:東条小夜

白糸台 220100

有珠山 95800

阿知賀 49200

姫松 34900

~4巡目~

「リーチ。」

(そういえば、親番だったら同じ点数の和了りになる?それとも同じ役で和了るから1.5倍になる?)

『まーたまた東条選手がリーチだぁー!』

『これは、凄いですね・・・』

~6巡目~

「ロン。リーチタンピン三色。12000です。」

(成る程、親番になると点数上がるんだ。これ、後半辛そう・・・)

(また、同じ役で和了られた・・・)

『次鋒前半戦、終了ぉぉぉ!!!!白糸台の東条小夜選手が最後に三連続和了で2位有珠山との点差を更に広げました。』

『三連続和了、見事でしたね。』

『そうですね。それでは10分間の休憩の後、次鋒後半戦を開始致します!』

 

~次鋒前半戦結果~

白糸台 232100

有珠山 83800

阿知賀 49200

姫松 34900




また実写咲の話になるんですが、阿知賀女子のインターハイメンバーを見た時に『灼さんが次鋒で憧が副将じゃなかったっけ?』と本気で思っていました。もう病気ですね・・・


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第49話《阿知賀編⑪》 次鋒後半戦

咲実写の映画が始まりましたね。私はまだ見ていないのですが、そのうち見たいですね。家の近くに咲が上映されている映画館が無かったので遠出して見てきたいと思います。


清澄高校の宿泊施設で、咲とマホとまこが次鋒前半戦を見ていた。

「白糸台の東条小夜さん、凄いね。三連続和了したよ。しかも全部満貫で。」

「いや、別にそれ自体は凄くないですよ?」

「えっ、どういう事?」

「えっと、東条小夜さんは自分が満貫に振り込んでから三連続で有珠山に満貫を直撃しているんですよ。」

「という事はもしかして、振り込んだら同じ役で仕返しできるって事?」

「そうですね。」

「なんだか、さっきの西園寺麻衣の劣化版みたいじゃな。」

「いや、ただ劣化版と切り捨てる訳にはいきません。それぞれにメリットがありますから。じゃあ比較してみましょう!まず、西園寺さんはツモ和了りで点数が減った時も回収が出来ますが、東条さんは出来ません。それに、西園寺さんは点が減ったらいつでも回収出来ますが、東条さんはすぐに回収しなくてはいけません。他にも色々とありますけど、まぁ、簡単に言うと西園寺さんの方が圧倒的に使い勝手が良い能力なんですよ。」

「やっぱり西園寺さんの劣化版なんじゃないんか?」

「ですが、東条さんは一回の直撃だけで何度でも直撃する事が出来ます。対局する相手が弱ければ飛ぶまで直撃し続けられるのでは無いでしょうか?」

「えっ、そんなに凄いの!?」

「はい、だから一概に西園寺さんの方が強いとは言い切れないと思うんです。まぁ、全体的に見て強いのはやっぱり西園寺さんだとは思いますけど、東条さんのは一回直撃するだけで全てを奪われてしまうかもしれない、そんな危険な可能性も孕んでいるという訳なのです。」

「常に出ている炎と爆弾だったらどっちが使いやすいかって感じだね。」

「おぉ!流石宮永先輩!その例え、とっても分かりやすいです!」

「そう?ありがとう。」

「それにしても、そんな危ない相手に決勝まで行ったら当たるんじゃな・・・」

「部長はこの人に直撃さえしなければ大丈夫です。」

「そう簡単に言うとるけど、わしはあんたら二人とは違うんじゃからな。過度な期待はせんでくれよ。」

「いやいや、部長はとっても経験豊富で凄いですよ!」

「経験豊富でも全然活躍出来とらんじゃろ。」

「そんな事無いですよ。それにマホ、部長の模倣は上手く出来ないですし。」

「えっ、そうなんか?」

「はい。使おうとしても、染め手になるくらいなんです。」

「でもどうして?」

「部長のは能力じゃなくて経験でやっている事だからなんじゃないでしょうか。」

「まぁでも、経験があってもどうしようもない世界じゃけどな、この世界は。」

「そんな事ありませんよ!例えば西園寺さんなんかがそうです。あの人はとっても強いですけど、もし素の実力が無かったら今の対局で有珠山の本内さんにめちゃくちゃにやられてたと思います。西園寺さんは、豊富な経験と知識と戦略と知恵と能力が相まって強さになってるんだと思います。」

「確かに、能力だけ使えても上手く使いこなせなかったら意味無いもんね。」

「はい、だから部長は凄いですよ。自信を持って下さい。」

「そうか。」

「あっ、続き始まりそうだよ。」

「本当ですね、楽しみです!」

 

 

その頃、東条小夜は白糸台の控え室に戻ろうとしていた。すると、前方から麻衣の姿が見えた。

「部長お疲れ様です。」

「麻衣じゃないか。どうしたんだ?」

「飲み物を持ってきました。」

「おぉ、ありがとう。」

「それで、準決勝の3人はどうでした?」

「阿知賀の部長以外は大した事無かったな。」

「阿知賀は大した事あるんですか?」

「あぁ、あの人は最初から私を警戒して、私の特徴を理解した途端にツモ和了りをしたからな。」

「そういえば収支も部長は+14000でしたけど阿知賀は+18000でしたしね。」

「そうだ。数字でも実力でも、彼女の方が1枚上手だったという事だな。」

「そうですか、でもまぁ、あのまま連荘してたら部長の方が強かったんじゃないんですか?」

「いや、連荘しなかったんじゃない。出来なかったんだ。あのまま続けたら阿知賀にやられる気がしたんだ。私のこの勘はいつも当たってしまう。だから阿知賀の部長の方がやっぱり1枚上手だ。」

「まぁでも、後半戦もありますし、たった4000点差くらい部長なら楽勝で逆転出来ますよね!」

「そうするつもりだが、なんだか、嫌な予感がするんだ・・・」

「また嫌な予感ですか?部長なら大丈夫ですって!心配せずに頑張って下さい。」

「うん、ありがとう。飲み物もありがとう。」

「どういたしまして。」

「じゃあ、行ってくる。」

「頑張って下さい。」

 

 

『さぁ、休憩も終わり、選手達が対局室に集まりました。次鋒後半戦開始です!』

 

~場決め結果~

藤宮愛佳:東

豊崎唯:南

鷺森灼:西

東条小夜:北

 

~東一局~ 親:藤宮愛佳

白糸台 232100

有珠山 83800

阿知賀 49200

姫松 34900

(親番になれたけど、白糸台が強すぎる。揺杏先輩には白糸台に直撃するなって言われたけど、こんなに点差があるのにどうして直撃しちゃいけないんだろう?あっ、聴牌した。)

「リーチ。」

(いきなり親リー、これ以上点数を減らす訳にはいかない。)

(親リーか、直撃されたら点数が1.5倍になるからこの後2回直撃しないと元を取れないな。)

『有珠山高校の藤宮愛佳選手が親リーだ!』

『これを白糸台に直撃するか否かでかなり変わってくると思います。』

~5巡目~

「ロン!リーチ平和純チャン三色ドラ1で24000です!」

『白糸台に親倍直撃だぁー!これは流石の白糸台も厳しいのではないか!』

『ここから白糸台がどう動くのか、白糸台をどう止められるかに注目ですね。』

~有珠山高校控え室~

「あのバカ!白糸台に直撃すんなって言っといたのに!」

「どうして白糸台に直撃したらダメなんですか?」

「ユキ、さっきの対局見てなかったのか?あいつがタンピン三色で白糸台に直撃してから3連続で白糸台からタンピン三色を直撃されてるんだよ!つまり東条小夜は直撃されたら直撃されたのと同じ役で仕返しされるんだよ!」

「凄いですね。」

「しかもよりによって倍満って、サクッと飛ばされちまうじゃねぇか。」

「でも、前半戦の最初らへんで止めてませんでした?」

「あぁ、あれは一発が付いてたからだよ。あの手は一発が付く事で完成する。だから一発消しをされた時点で和了れない事は確定していたんだよ。だから止められたんだ。」

「成る程、そういう事でしたか。」

「だからこのまま東条小夜にやられるかもしれないんだよ。」

「誰かに止めてもらいたいですね。」

~東一局一本場~ 親:藤宮愛佳

白糸台 208100

有珠山 107800

阿知賀 49200

姫松 34900

~3巡目~

「リーチ。」

(やっぱり、仕返しをする時、聴牌するの速すぎ・・・)

(これ、また有珠山がやられるんやろな。今回は一発が付いとらんから鳴いても意味無いもんな。)

~5巡目~

「ロン。リーチ平和純チャン三色ドラ1で16300。」

(ドラもちゃんと作る事出来るんだ。凄いな。)

(こりゃあ有珠山がヤバイかもしれんな・・・)

~東二局~ 親:豊崎唯

白糸台 224400

有珠山 91500

阿知賀 49200

姫松 34900

~4巡目~

(私は、弘世先輩に直撃のいろはを教わって、麻衣に才能を開花させて貰った。麻衣のお陰で今は弘世先輩よりも私の方が強いと声を高くして言える。何故なら、弘世先輩はアーチェリーだけど、私はマシンガン。何度でも直撃し続けられるから!)

「リーチ。」

(速い、けど!)

「ポン!」

(阿知賀に鳴かれた、けど今回は一発が無いから多分大丈夫なはず。)

「ポン!」

(また阿知賀が鳴いた!?)

(もしかしてこいつ、有珠山にあまり回さない事で和了ろうとしとるんか?)

~6巡目~

「ツモ!混一対々。2000・4000です!」

(阿知賀に止められてしまった!?)

~有珠山高校控え室~

「やった、阿知賀の人が止めてくれましたよ!」

「よしっ!阿知賀の人あざっす!これで希望は繋がったな!」

「はい、ひやひやしました。」

「愛佳は戻ってきたら説教だな!」

「あまり酷い事はしない方が・・・」

「でも、私の言う事聞かなかったし!あと、暴力とかはしないから安心しなって。」

「そうですか、なら良かったです。」

「私をなんだと思ってるんだよ・・・」

「日頃の行いのせいですよ。」

「ユキは相変わらず厳しいな。」

「それより続きを見ましょう。」

「はいはい。」

~東三局~ 親:鷺森灼

白糸台 222400

有珠山 89500

阿知賀 57200

姫松 30900

(白糸台を止められた、それに親番。この親番は大切にしなくちゃ。)

~6巡目~

「リーチ。」

(ツモも良い、このまま連荘して、せめて2位には浮上する!)

(阿知賀にリーチを掛けられた。なら・・・)

「チー。」

(こちらも一発を消して連荘を止める!)

~8巡目~

「ポン。」

(ツモ番を飛ばされた。これは・・・でも、それでも私は負けない!)

~10巡目~

「ツモ!リーチツモ平和一通。4000オール!」

(やられた!)

(阿知賀、やっぱ凄いわ。流石去年のベスト4やな・・・)

『阿知賀女子の鷺森選手、連荘です!』

『彼女、去年と比べてかなりパワーアップしていますね。』

『このまま2位に浮上するか!?』

~東三局一本場~ 親:鷺森灼

白糸台 218400

有珠山 85500

阿知賀 69200

姫松 26900

(このままだとうちが飛んで終わってまうやないか!それだけは防がんと!部長に何とか繋げんと!)

「ポン!」

(また鳴かれた。でも、この手もそろそろ完成しそう。)

~7巡目~

「リーチ。」

「それや!ロン。混一対々。8300。」

(やられた。でも、姫松が飛んで終わる可能性が減ったって考えたらそこまで悪い結果ではなかったかな。)

『姫松高校豊崎選手が阿知賀の連荘を止めた!』

『今の阿知賀の手、一発だったら倍満でしたからね。』

『阿知賀としてはかなり悔しいかと思います。』

~東四局~ 親:東条小夜

白糸台 218400

有珠山 85500

阿知賀 60900

姫松 35200

(この親番は何とか和了りたいな。直撃は今は使えないから私の実力でやるしかないな。)

(ここは白糸台を親被りさせたい。だからここは攻める!)

~7巡目~

「ツモ!混一一通。3000・6000。」

(また阿知賀に和了られてしまった・・・)

(これ、阿知賀に追い越されちゃうかも・・・)

(阿知賀、強すぎやろ!)

『阿知賀女子の鷺森選手強い!強すぎる!』

『見事に親被りで白糸台との点差を縮めていますね。』

『それに有珠山との点差はもう1万弱だー!』

『これは面白い事になりそうですね。』

~南一局~ 親:藤宮愛佳

白糸台 212400

有珠山 82500

阿知賀 72900

姫松 32200

(そろそろ姫松が危ない。姫松に和了って貰いたいけど、ここで先手を打たないと白糸台に先を越されそう。なら、姫松を上手くサポートしなくては。)

「ポン!」

(有珠山が白を鳴いた。役牌のみ?でもあの元気の良さはもっと良い手が入ってる気がする。もしかして大三元?)

「チー!」

(姫松も威勢良くチーした。チーで手が高いのなんて、清一?なら、姫松を和了らせる為に危ない橋に渡ってみる。)

~3巡目~

「ポン!」

(發も鳴かれた。やっぱり大三元かな。)

「チー!」

(姫松も鳴いた。索子の染め手かな?それにこれなら一通も付きそう。)

灼はツモってきた中をツモ切りした。

「ポン!!!」

(なっ、大三元が完成した!?これ、振り込んだらうちが飛んでまうやん!阿知賀、何しとんねん!でもここまで来たらこっちも和了りたい。)

(阿知賀、どういうつもりだ・・・?)

『だ、大三元だぁぁ!!!鷺森選手、どうしてしまったんだ?』

『まだ3向聴なのにあそこで中を出してしまうなんて、本当にどうしてしまったんでしょうか?』

『これが決まってしまえば一気に有珠山が優位に立ちます。それに、これを姫松が喰らってしまったらトビ終了になってしまいます!どうなってしまうのか!』

~阿知賀女子控え室~

「ちょっ、灼さん何しちゃってんの!?」

「このままじゃ、大三元和了られちゃうよ!」

「ヤバいよ!うちが負けちゃうよ!」

「いや、まだ分かりません。もしかしたら部長さんは、姫松に和了らせる為にあんな事をしているのでは無いでしょうか?」

「どういう事?」

「部長さんが何もしなければ白糸台に和了られてしまう。だから白糸台のツモ番を飛ばす必要がある。だから有珠山の大三元を利用して姫松のツモ番を増やして姫松が和了る事に賭けたのでは無いでしょうか。」

「そんな、決まらなかった時の代償がデカ過ぎるよ!」

「でも、なってしまった事なので、姫松を信じるしかないです。幸い、姫松も今のツモで聴牌しましたし。」

「うん。姫松頑張れ!」

「姫松~頑張れ~!」

~9巡目~

「ツモ!」

和了したのは・・・姫松だった。

「清一一通で3000・6000です!」

(なっ!?大三元が!私の大三元がぁぁぁ!!!!)

(ふぅ、何とか上手く行った。)

(何だ今のは!姫松を和了らせる為に大三元を餌にしていたのか!?そんなリスキーな事をこの人は平然としたのか!?やっぱり、何もかもが上手だ。この人は私よりも断然強い!)

『なんと、大三元を止めたぁぁ!!!』

『もしかしたら鷺森選手は姫松が和了る事に賭けていたのかもしれませんね。』

『何にせよ素晴らしい一局でした!』

~南二局~ 親:豊崎唯

白糸台 209400

有珠山 76500

阿知賀 69900

姫松 44200

(これで姫松が飛ぶ心配は無くなった。ここは攻める!)

~6巡目~

「リーチ。」

(阿知賀がリーチしてきた!)

(これはやられてしまう・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ一通。2000・4000。」

(また阿知賀に和了られてしまった。この対局、完全に阿知賀が支配しているじゃないか!)

(この阿知賀の人、凄すぎやろ!異常やわ・・・)

『鷺森選手が有珠山を上回って2位に浮上した!』

『完全に鷺森選手の思い通りに動いてますね。』

『そして次は鷺森選手の親番です!』

~南三局~ 親:鷺森灼

白糸台 207400

阿知賀 77900

有珠山 74500

姫松 40200

~7巡目~

(何とか有珠山を捲る事ができた。それにこの手牌、リーチして一発でツモったら高い。でも、ここでリーチすれば誰かに振り込んでしまうかも・・・いや、ここは勝負する!)

「リーチ!」

(阿知賀がリーチ!?筒子を出さなければ大丈夫そうだけど、これは・・・)

(こっちも聴牌した、これが通ればいける!)

「追っかけリーチです!」

「・・・」

『おおっと!?鷺森選手、今の有珠山の和了り牌をスルーだ!』

『あくまで一発ツモを狙っているのでしょう。』

~対局室~

(来いっ!)

「ツモっ!リーチ一発ツモ清一一通。12000オール!」

(なっ!?有珠山の和了り牌をスルーして親の三倍満ツモ!?)

(この人、もうめちゃくちゃ過ぎるよ・・・)

~南三局一本場~ 親:鷺森灼

白糸台 195400

阿知賀 113900

有珠山 62500

姫松 28200

(私の嫌な予感はこれだったのか・・・でも、この連荘を止めなくては!私が直撃だけではない事を見せる!)

~7巡目~

「ツモ。タンピン三色。2100・4100。」

(先に和了られた・・・)

(白糸台と阿知賀が異様過ぎる!)

『東条選手が鷺森選手の連荘を止めました!』

『鷺森選手、かなり調子が良かったですからここで止められたのは凄いと思います。』

『それに、次は東条選手の親番です!』

『点差としてはまだまだ余裕がありますが少し稼いでいた方が良さそうですね。』

『そんな東条選手が親番のオーラスです!』

~南四局~ 親:東条小夜

白糸台 203700

阿知賀 109800

有珠山 60400

姫松 26100

(このまま連荘する。)

(これは・・・行けそう。)

~7巡目~

(よし、聴牌した。これを和了って連荘しよう!)

「リーチ!」

「それは通りません、ロン。」

(阿知賀!?嘘だろ!?)

「清一一通で16000です。」

(これ、オーラスだから仕返しが出来ない・・・)

(これって・・・)

『次鋒後半戦、終了ぉぉぉぉ!!!!!阿知賀女子の鷺森選手が圧巻の攻めを見せて見事2位に浮上!更に白糸台との点差もかなり狭めました。』

「お疲れ様でした。」

「お疲れ様。」

「ありがとうございました。」

「お疲れ様です・・・」

 

~次鋒後半戦結果~

白糸台 187700

阿知賀 125800

有珠山 60400

姫松 26100

 

 

次鋒後半戦が終わり、姫松高校の豊崎唯が控え室に戻った。

「ただいま帰りました・・・」

「おう、おつかれ。」

「・・・怒らんのですか?」

「いや、あれには勝てんわ。しゃーない。飛ばなかっただけ良かったわ。」

「次は部長ですね。」

「あぁ、あいつと戦うまで負ける訳にはいかんからな。」

「あぁ、あの双子の姉のですか?」

「そや、あいつと直接対決するまでは負けてられん!」

「そうか、点差ヤバいけど頑張ってな。」

「ほんまにすんません!」

「ええって、まぁでも、次の中堅戦は気張らなあかんな。」

「頑張って下さい!」

「頑張ってや!」

「あぁ!ほんじゃ、二階堂有紗(にかいどうありさ)行って参ります!」



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第50話《阿知賀編⑫》 中堅前半戦

咲実写の映画見てきました。演出がかなり格好良かったです。遠出して雪のせいで遅延したり寒い中20分くらい待たされたりしましたけど無事に生還出来て良かったです。


灼が次鋒戦を終えて、控え室に戻ってきた。

「ただいま。」

「お疲れ様、灼ちゃん!」

「灼さん凄いですね!白糸台との点差を6万近くまでしてくださるとは!」

「流石部長さんです!」

「まぁ、少しでも白が戦いやすくなるようにしたくて、それに、これまで白にばっかり頼ってたから。」

「部長さん、ありがとうございます!」

「白も頑張って。」

「はい、任せて下さい。白糸台を喰ってきますよ。」

「白、頑張れ!」

「今の白ならいけるはずだ。頑張ってきな。」

「はい、先生。では、行ってきます!」

「頑張って!」

「白ちゃん頑張れ!」

「はい!」

~白糸台高校控え室~

「すまん麻衣、私が不甲斐ないばっかりに。」

「いや、あれは仕方ないですよ。まさか阿知賀の部長があんなに強いとは思いませんでしたし。」

「しかし、かなり点差を縮めてしまったし、次の阿知賀はかなり強いんだろ?」

「まぁ、連風の時だけですけど。それに、連荘したら渋谷先輩のハーベストタイムの餌食になるだけでしょうし。」

「そういえば次は渋谷の出番だな。」

「うん。」

「頑張って下さい、渋谷先輩。」

「頑張れ!」

「頑張れたかみー!」

「行ってきます。」

~有珠山高校控え室~

「本内先輩が稼いでくれたのにマイナスになってしまって申し訳ありません。」

「いや、しゃーないでしょ、あれは。」

「かなり強かったですしね。」

「はい、すみませんでした。」

「それはそれとして、なんで私が白糸台に振り込むなって言ったのに振り込んだのか、説明して?」

「ひっ!えっと、それは、高い手だったから和了りたくて・・・」

「あんとき阿知賀が流してくれなかったらうちらが飛んで終わってたかもしれないんだぞ!」

「ひぃ!すみませんでした!」

「まったく、次は気を付けろよ!」

「はいぃ・・・」

「まぁ、去年の私よりも悪くないから許す!」

「何ですかその変な理由は・・・」

「というか次は花音の番だな。」

「頑張れ~。」

「頑張って下さい。」

「はい、行ってきます。」

 

 

『さて、中堅戦の選手が次々と対局室に向かっています。まずは現在依然としてトップを走る白糸台高校からは渋谷尭深選手!』

『彼女はオーラスの配牌が凄いですから注意が必要ですね。』

『確かに、いっつも字牌ばっかりですよね。』

『そうですね。』

『さて、続いては最下位から2位に浮上した去年ベスト4の阿知賀女子は1年生の天理白選手!』

『彼女は連風の時にダブルリーチをする事が特徴ですね。』

『あのダブリーはかなり辛いですよね。』

『まぁ、東場は親番で連風になりますが南場は親番ではないので、東場を流す事が出来ればそこまで怖い相手では無いと思います。』

『相変わらずの辛口コメントありがとう!』

『べ、別に事実を言っただけで辛口じゃないよ。』

『いやいや、今のは普通に辛口だったよ?まぁ、それはそれとして、続いて3位に転落してしまった有珠山高校からはこちらも1年生の檜山花音(ひやまかのん)選手!』

『今年の有珠山の中堅はかなり安定していますね。二回戦でも天理選手が稼いでいたのに先鋒とほぼ同じ点くらいまで戻しましたからね。』

『準決勝でも安定した打ち方が出来るのか!さて、続いてラスになってしまった姫松高校からは、千里山女子の二階堂渚選手の妹の二階堂有紗選手です!』

『この人はかなり手強いですね。千里山の二階堂渚選手もそうですが、二階堂有紗選手は高火力を安定して出せるのが強みですね。』

『二階堂選手はこの圧倒的な点差を打開する事が出来るのでしょうか!それでは選手達が対局室に出揃いましたので、中堅前半戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

渋谷尭深:東

檜山花音:南

天理白:西

二階堂有紗:北

 

~東一局~ 親:渋谷尭深

白糸台 187700

阿知賀 125800

有珠山 60400

姫松 26100

(さてと、この点差はかなりまずいで。阿知賀の親番の前に稼いどかんとやられる。)

~7巡目~

(よし、聴牌した。とりあえず今は攻めるで!)

「リーチ。」

(姫松の二階堂有紗さん、冬室氷華が認めた夢乃マホと対等に戦ってた二階堂渚さんの双子の妹なだけあって聴牌速度が速いですね。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピンドラ1。3000・6000。」

(それに打点も高い。これは連風以外で和了るのはかなり厳しいかもしれませんね。)

~東二局~ 親:檜山花音

白糸台 181700

阿知賀 122800

有珠山 57400

姫松 38100

(とりあえず親の三倍満までやったらくらえる点にはなったけど、まだまだ足りん!)

~8巡目~

「リーチ。」

(また姫松がリーチしてきました。それに安牌もないです・・・とりあえず9ピンなら当たらないでしょう。)

「それや、ロン。メンピン一発純チャン三色で16000!」

(うわっ、一発で振り込んじゃった!しかも結構高いし・・・まぁでも次からダブリー出来るし良しとしますか。)

『二階堂選手が二連続和了です!』

『二階堂選手はやはり高い手を安定的に和了れますね。』

『このまま有珠山を捲ってしまうのか!』

『しかし、次は阿知賀の親番ですね。』

『確かに、あのダブリー地獄がまた起きてしまうのか!?』

~東三局~ 親:天理白

白糸台 181700

阿知賀 106800

有珠山 57400

姫松 54100

「リーチ。」

『阿知賀女子天理選手ダブルリーチだ!しかしこれはどういう事でしょう!二面に取らず、白単騎リーチです!』

『二面に取るより安牌と思われやすい字牌を和了り牌にする事で他家への放銃を狙っているのでしょう。』

『でもそれってかなりリスキーですよね?確率的に考えても二面に取った方が良くないですか?』

『そうですね、でも彼女はそちらの方が出ると思ったのでしょう。』

~対局室~

「ロン。ダブリーダブ東一発ドラ3。24000です。」

渋谷尭深が一発で放銃した。

(これ、もしかして白糸台の第一打を字牌じゃなくする為にやっとるんか!?)

(渋谷尭深さん、このまま字牌を出したらオーラスでは役満を和了れるかもしれませんが、それ以上に点数が無くなっちゃいますよ?)

『なんと白糸台の渋谷選手が一発で放銃してしまったぁ!』

~白糸台高校控え室~

「これ、渋谷先輩かなりヤバいですね。」

「役満を諦めるとなると今の直撃された分の点数を取り戻すのが厳しくなるが、このまま字牌を捨て続けたらそれ以上に取られてしまう可能性もあるのか・・・」

「でも、そう何度も字牌単騎が当たるの?それに字牌で聴牌するとも限らないし。たかみーは普通にハーベストしちゃえばいいんじゃないの?」

「そんな事言ってるから弱いんですよ。」

「はぁ?あんたまた私の事弱いって言ったな!」

「また字牌が来るかもしれない状況で尚続けようとするなんて、弱い者がやる事です。可能性があるならばそれは避けるべきです。そんな事も分からないからよわい先輩のままなんですよ。」

「よわい先輩って言ってんのはあんただけでしょ!」

「そうですね。でも、今の考え方では一生私に勝てないですよ?」

「そこら辺にしておけ、麻衣。淡は一応先輩なんだから。」

「だってこの人も先輩に酷い態度取ってるじゃないですか。だから同じように接してるだけですよ。」

「だからって、麻衣が淡に酷い態度を取って良い理由にはならないだろ?」

「そうですね、以後気を付けます。」

「うん、よろしい。さて、続きを見よう。」

「はい。」

「ホントにあんたって部長の言う事は聞くよね・・・」

「淡先輩と違って強くて優しいですからね。」

「あたしの方が強いし。」

「もうそういうの良いですから見ましょう。」

~東三局一本場~ 親:天理白

白糸台 157700

阿知賀 130800

有珠山 57400

姫松 54100

「リーチ。」

『おおっと!阿知賀が今度は中の単騎リーチだ!』

『これは、渋谷選手を完全に潰しに来てますね。』

「ロン。ダブリーダブ東一発ドラ3で24300です。」

「・・・はい。」

(また字牌単騎リーチ!?こいつ、完全に渋谷を潰そうとしとるやん。)

『阿知賀女子が遂に白糸台をトップから引きずり落としたぁぁ!!!』

『まさか二連続で単騎リーチが一発で直撃されるとは・・・』

『これはもしかしたら去年と同じように準決勝は阿知賀が制してしまうのか!』

~阿知賀女子控え室~

「やっぱり白は凄いねー。渋谷尭深の事をああやって抑えるなんて。」

「オーラスの役満を諦めて出来るだけ稼ごうとするなんて、白らしいな。」

「でも、渋谷さんがラス親だったら出来ない。」

「そうだね。それに決勝では十中八九夢乃マホが出てくるからね。白糸台とうちが勝ち上がったとして渋谷尭深がラス親になったら、白は活躍出来ないかもね。」

「夢乃マホはインターハイを見てどんどん強くなってるからね。他の人より成長速度が桁違いなのが怖いよ。」

「いまでもあんなに強いのに更に強くなるって、もう勝てる人いなくなっちゃうじゃん。」

「まぁ、もし白が全然稼げなかったら、灼と憧に何とかしてもらうしかないな。」

「そういうプレッシャーやめてよ晴絵・・・」

「ま、とりあえず今は決勝の事より準決勝だけどな。」

「白ちゃん、このまま稼いで欲しいね。」

「頑張れ!白!」

~東三局二本場~ 親:天理白

阿知賀 155100

白糸台 133400

有珠山 57400

姫松 54100

「リーチ。」

(はぁ、またダブリーか。これ、どうにかならんのか・・・?)

(また字牌出したら振り込んじゃうかな・・・)

『またもや天理選手がダブリーだぁ!しかし今回は147ピンの三面張だ!』

『しかしこれは、渋谷選手が、また字牌で来ると思って数牌を出してしまう可能性がありますね。』

「ロン。ダブリーダブ東一発ドラ3。24600です。」

『言ってるそばから渋谷選手が放銃してしまったぁ!』

『これは、かなり厳しいですね。』

『天理選手の連荘を誰も止められない!』

~東三局三本場~ 親:天理白

阿知賀 179700

白糸台 108800

有珠山 57400

姫松 54100

「リーチ。」

『しかしダブリーは終わらない!強い!強すぎる!これがインターミドル4位の実力だぁ!』

『東四局が遠いですね。』

『このまま天理選手が無双してしまうのか!』

~3巡目~

「ポン。」

(二階堂さんに鳴かれた。でもそろそろ来てくれるでしょ。)

~6巡目~

「ツモ。混一三暗刻対々。3300・6300。」

『二階堂選手が天理選手の連荘を止めたぁぁ!!!』

『この連荘を止められた事はかなり大きいですね。』

『さて、長かった東三局が終わり、東四局です!』

~東四局~ 親:二階堂有紗

阿知賀 173400

白糸台 105500

姫松 67000

有珠山 54100

(やっと東三局を止められた。それに最下位も脱する事が出来た。せやけどこの状況はまだまだヤバい。ここはもっと攻めてくで!)

~6巡目~

「リーチや!」

(二階堂さんのリーチ、高そうで嫌だな・・・これなら通るかな?)

「それや、ロン。リーチ一発タンピン三色ドラドラ。24000。」

「はい・・・」

『二階堂選手が阿知賀に親倍直撃だぁ!』

『二階堂選手、やっぱり強いですね。』

『そして連荘です!』

~東四局一本場~ 親:二階堂有紗

阿知賀 148400

白糸台 105500

姫松 92000

有珠山 54100

(オーラスで役満親被りがほぼ確定しとるし、ここはまだまだ稼ぐで!)

(やべー、めっちゃ強いなぁ。でも、そろそろ私も動けそうかな?)

~5巡目~

「リーチ。」

「ポン。」

(なんや、今まで何もしとらんかった有珠山が突然鳴いてきた。一発消しか?点数変わらんから別にどうでもええけど。)

~8巡目~

「ツモ。清一一通。3100・6100。」

(くそっ、有珠山に先越された!)

~有珠山高校控え室~

「やっと花音が動き始めたか。」

「この調子なら、少しはプラスにもなってくれるかもしれませんね。」

「頑張ってくれよ~花音!」

~南一局~ 親:渋谷尭深

阿知賀 145300

白糸台 102400

姫松 84900

有珠山 67400

~8巡目~

「ツモ。清一一通。4000・8000。」

(また有珠山!?)

(それに、また清一と一通で和了ってる。)

(というかこれ、有珠山に捲られとるやん!また最下位転落や。)

『有珠山高校の檜山選手が二連続和了です!』

『しかも、二連続で清一一通ですね。』

『これは有珠山のペースになってしまったか!?』

『でも、次は天理選手が連風ですね。』

『あっ、そっか。ダブリーされちゃうのか!』

『流れに乗ってる檜山選手とダブルリーチをする天理選手、どちらが勝つのでしょうか。』

『運命の南二局です!』

~南二局~ 親:檜山花音

阿知賀 141300

白糸台 94400

有珠山 83400

姫松 80900

「リーチ。」

(やっぱり、流れとか関係なくダブリーしてくるんですね・・・)

(さて、この局でこいつの和了りと有珠山の連荘は防がんとな。)

(あーあ、二階堂さんが頑張って流そうとする姿見たかったのに一発で来ちゃったよ。)

「ツモ。ダブリーダブ南一発ツモドラ3。4000・8000です。」

『天理選手、やはり連風時は強すぎる!』

『これで縮まりかけていた点差をまた引き離しましたね。』

~南三局~ 親:天理白

阿知賀 157300

白糸台 90400

姫松 76900

有珠山 75400

(この次に役満親被りが来るだろうから、ここで稼がんと有珠山に捲られて終わってまう。それは防がんとな。)

~7巡目~

(よし、聴牌出来た。行くで!)

「リーチ。」

(うぅ、二階堂さんのリーチ、何回も振ってるから怖いよ。これかな?)

「ロン。リーチ一発清一。16000や。」

「うぅ、はい・・・」

(なんであたしが出した牌が和了り牌になってんの!?おかしいでしょ!まぁ、私が全部悪いんだけどね。でも毎回安牌無いのはおかしいよね!)

~南四局~ 親:二階堂有紗

阿知賀 141300

姫松 92900

白糸台 90400

有珠山 75400

(渋谷さんの第一打は白三枚發三枚中三枚と1ピンの10牌。もう今の配牌で大三元が完成してるって考えたら、気が滅入っちゃうよね。まぁ、阻止する事はほぼ無理だろうし、今回はスルーしようか。)

~7巡目~

「ツモ。大三元。8000・16000です。」

(まぁ、せやろな。)

(ふぅ、とりあえず1位は死守できた。)

(そこそこ追い上げられたから、後は後半戦次第だな。)

『中堅前半戦終了ぉぉぉ!!!!白糸台高校の渋谷選手、かなり点数を減らしてしまいましたけど、最後の役満で少し持ち返し、なんとか2位で留まりました。』

『後半戦がどうなるかに期待ですね。』

『では10分間の休憩の後、中堅後半戦を開始致します!』

 

~中堅前半戦結果~

阿知賀 133300

白糸台 122400

姫松 76900

有珠山 67400




有珠山の檜山花音については次回詳しく書きます。


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第51話《阿知賀編⑬》 中堅後半戦

十分間の休憩が終わり、選手達が対局室に集まっていた。

 

~場決め結果~

渋谷尭深:東

二階堂有紗:南

天理白:西

檜山花音:北

 

『さぁ、選手達が対局室に戻ってきて場決めもしました。中堅後半戦開始です!』

~東一局~ 親:渋谷尭深

阿知賀 133300

白糸台 122400

姫松 76900

有珠山 67400

(とりあえず阿知賀の親番までは何も怖いもんは無いな。攻めとくか。)

~8巡目~

「リーチ。」

(速い。これは高いのを狙ってたらこの人の速さには追い付けそうに無いな。なら速度重視の打ち方にするか。)

「ポン。」

(よし、これで聴牌。後は追い付く!)

~10巡目~

「ツモ。リーチツモタンピン三色。3000・6000。」

(うわっ、やられた。追い付くと思ったんだけどな。)

(うーん、やっぱり連風じゃないと全然和了れないな。)

『最初に和了したのは二階堂選手です。やはり彼女、安定しています。』

『前半戦では圧倒的に稼いでいましたからね。』

~清澄高校宿泊施設~

「二階堂有紗さん、凄いね。」

「そうですね。でも、個人的には渚さんの方が強いと思います。」

「渚さんの方がお姉さんだっけ?」

「そうですね。渚さんなら阿知賀の三連続和了を止められてたでしょうし、渋谷さんのハーベストタイムも10枚なら止められてたと思います。」

「そんなに凄いの?」

「はい。マホが役満を和了ろうとした時に流されたり、高い手を和了ろうとした時も逆に高い手を和了られてしまったりしましたから。」

「そういえばそうだったよね。マホちゃんを止められるのは凄いね。」

「そんな、マホなんかより宮永先輩の方が凄いですよ!」

「私はたまに大きめな和了りを出来るだけで全然凄くないよ。マホちゃんは臨機応変に対応しているから私よりも凄いよ。」

「もう二人の褒め合いは聞き飽きたわ。わしからしたら二人とも人間とは思えんほど凄いわ。」

「そうですか。」

「そうじゃ、それに、まだ試合の途中なんじゃから静かにしてくれんか・・・」

「あっ、そうでした!ごめんなさい・・・」

「すみませんでした!」

(はぁ、やっぱりわしも和達と一緒に会場まで行けば良かったんかのぉ。あの時は優希に振り回される気がして一緒に行かんかったけど、この二人の異次元の会話を聞いとる方が辛いわ・・・)

~東二局~ 親:二階堂有紗

阿知賀 130300

白糸台 116400

姫松 88900

有珠山 64400

(この親番は連荘しときたいな。次は天理白の東場の親番やからな。)

(今回は姫松には和了らせない。私が先に和了ってみせる。)

「ポン。」

(1巡目からいきなり中鳴かれた。もしかしてこれ・・・)

「ロン。混一中一通。8000です。」

(やっぱり、渋谷が1巡目に振り込んだ。)

(速い。それにまた一通。これはまさか・・・)

~清澄高校宿泊施設~

「あの有珠山の人、毎回配牌で一通が出来てるよね。」

「そうですね。今回は二階堂さんが中を出して、渋谷さんが1巡目に字牌を出すっていう特徴が相まって和了れましたね。」

「1鳴きで聴牌出来るなんて、一葉ちゃんみたいだね。」

「いや、有珠山の方は一ノ瀬さんの劣化番ですね。」

「さっきは劣化番って決めつけるのは良くないみたいに言ってたのに今回はキッパリと劣化番って言ったね。」

「はい、一ノ瀬さんより勝る点が見当たらないですから。」

「そうかな?」

「はい。まず1鳴きで聴牌出来る所は同じですけど、一ノ瀬さんの場合は鳴いても三色同刻と三暗刻の4飜が確定していますけど、有珠山の方の場合は鳴き一通で1飜しか無いですからね。それに、鳴かなくても一ノ瀬さんは4飜、有珠山の方は2飜ですから。」

「うーん、でも、清一とか付けられたら強いんじゃない?」

「そんな事言ったら一ノ瀬さんは清老頭や四暗刻が可能です。」

「確かに言われてみたらそうだね。それにしてもマホちゃんはやっぱり凄いね。人の性質を完全に理解してて。」

「ありがとうございます。まぁ、と言っても、それが出来るのは宮永先輩のお姉さんの能力のお陰ですけどね。」

「そうだね。」

~東三局~ 親:天理白

阿知賀 130300

白糸台 108400

姫松 88900

有珠山 72400

「リーチ。」

(このダブリー、なんとかならへんのかほんまに面倒やわ・・・)

(鳴いて速く和了るっていう手もあるけど、それだと安いな。ここはどうにか和了りたいからな。)

~7巡目~

(なんか分かんないけど阿知賀がまだ和了ってない上に聴牌も出来た。ここは確実に和了りたい!あっ!来た!)

「ツモ。混一一通ツモ。3000・6000です。」

(くそっ、やられた!)

(まさか東場の親番で連荘出来ないなんて・・・これは、あれを使うしか無さそうですね。)

~東四局~ 親:檜山花音

阿知賀 123300

白糸台 105400

姫松 85900

有珠山 85400

(さっきはこいつに親流されたからな。流し返したるわ。)

「ポン。」

(姫松の人、流し返すつもりですね。させませんよ!)

「ポン。」

(また鳴かれた。これはちょっと危険・・・あっ!)

「それポンです。」

(よし、一通ドラ1だけだけどこれで聴牌・・・)

(聴牌したみたいやな、けど・・・)

~5巡目~

「ツモ。混一対々。2000・4000。」

(なっ、先に和了られてしまった・・・)

(連風じゃないとこの人に和了られる。やっぱり強い。)

~南一局~ 親:渋谷尭深

阿知賀 121300

白糸台 103400

姫松 93900

有珠山 81400

(おっ、なかなか良い配牌だ。これなら姫松にも勝てるかもしれない。よし、頑張るぞ!)

(有珠山に高い手の予感。危ないな・・・)

~8巡目~

(よし、聴牌した。次は連風だからダブリー出来るけど、出来るだけ稼ぎたいからここはリーチを掛ける!)

「リーチ。」

「ロン。清一一通。16000です。」

(有珠山!?しかも倍満!?やられた・・・)

『檜山選手が天理選手に倍満和了です!そしてこの和了りで檜山選手は3位に浮上です!』

『先鋒戦での大差が嘘だったかのように点数が平らになってますね。』

『このまま有珠山のペースになってしまうのか!』

『ですが、次は天理選手の連風ですから、どうなるかはまだ分かりません。』

『あっ、そっか!またあのダブルリーチが来てしまうのか!』

~有珠山高校控え室~

「よし、姫松を捲って3位浮上!」

「それに、1位との点差もかなり縮まりました。素敵です!」

「このまま行けば、もしかしたらうちが1位で終わらせる事も出来るかもしれませんね!」

「やっぱり毎回一通が配牌で揃ってるって、かなりのアドバンテージですよね。」

「そうだよな。よし、花音!このまま白糸台も捲っちゃえ!」

「素敵に頑張って下さい!」

「頑張って下さい、花音さん!」

~南二局~ 親:二階堂有紗

阿知賀 105300

白糸台 103400

有珠山 97400

姫松 93900

「リーチ。」

(はぁ、このダブリーなんとかならないのかな?)

(最下位になったし、この親番で連荘しておきたいけど、渋谷尭深の事考えたらしない方が得策やな。ここはこいつに和了らせたるわ。)

『天理選手ダブルリーチだぁ!』

『これを和了れればまた点差を広げられますね。』

~4巡目~

(はぁ、東場の時にこれ来いよ・・・ま、いいけど。)

「ツモ。ダブリーダブ南ツモドラ3。4000・8000。」

『倍満ツモだ!点差を縮められたらまた引き離す。これが天理白の実力だぁ!』

『姫松は親被りな上にもう親番は無いですから少し厳しいですね。』

~南三局~ 親:天理白

阿知賀 121300

白糸台 99400

有珠山 93400

姫松 85900

(このままオーラスになって渋谷尭深が役満ツモしたとしたら有珠山は親被りになるからギリギリ3位で終える事が出来る。だからこれ以上点差を広げられる訳には行かへん!絶対稼いだる!)

~8巡目~

(よし、聴牌。)

「リーチ!」

(姫松の人がリーチした。これ和了られちゃったらまたラスになっちゃうね。けど、私も聴牌してるんだよね。だからこっちが先に和了っちゃうよ。)

~13巡目~

(姫松の人ごめんね、こっちが先に来ちゃったみたい。)

「ツモ。平和一通。1300・2600。」

(くそっ、有珠山に和了られた!)

『なんと有珠山が姫松を引き離した!』

『今の二階堂選手の手、ツモっていたら倍満でしたからね。これはとても悔しいでしょうね。』

『そして、白糸台がなんと3位になってしまった!しかし、次はオーラスです!渋谷選手の配牌に期待だー!』

『そうですね。』

(まぁ、今回は最短の7局しか無かったですから、配牌で来るのが確定しているのは7牌だけですけどね。)

~南四局~ 親:檜山花音

阿知賀 118700

有珠山 99600

白糸台 98100

姫松 83600

(ハーベストタイム!)

(さてさて、今回の白糸台の手牌は、白3枚發2枚中2枚やな。大三元狙おうとしとるようやけど、發2枚と中2枚は私が持っとる。それに、ラッキーな事に七対子になりそうな手。これならいけるかもしれへん!)

(よし、やっちゃおうか、あれを!)

(ん?なんや、今、渋谷尭深よりも阿知賀のこいつの方が嫌な感じがしたわ・・・連風はもう終わったはずやんな?何するつもりなんや?)

~阿知賀女子控え室~

「よし、白、一発かましちゃえ!」

「えっ、どうしたの?晴絵。」

「うわっ、白の手牌やばっ!」

「えっ、どれどれ?うわっ、暗刻が3つに対子が1つ。これ、四暗刻狙えるかも!」

「そう、それが白の渋谷尭深対策だ!」

「えっ、どういう事?」

「白は昔からダブルという言葉が好きだったらしく、それで中学の時からダブルリーチダブ東ダブ南が出来たらしいんだ。」

「何それ凄い・・・」

「でも、それと今の配牌とにどんな関係があるの?」

「それはだな、ダブルという言葉、麻雀で他の単語でも聞いた事があるんじゃないか?」

「あっ、そっか!ダブル役満!」

「そう!私が白の牌譜をチェックしてたら、連風じゃないオーラスの時に、手牌と捨て牌を照らし合わせて見ると、ほぼ毎回ダブル役満が出来ていたんだよ。」

「そうなんだ、凄いね。」

「ダブル役満と言っても、これまでのデータでは、一般的にダブル役満と言われている国士無双13面待ち、九蓮宝燈9面待ち、四暗刻単騎待ち、大四喜の4種類しか出来ていなかった。」

「つまり、大三元と字一色みたいな組み合わせは無いって事?」

「今の所そうなった事は無いな。それに、場所によっては大三元や小四喜を門前で和了ったらダブル役満にする所もあるらしいけど、そういうのもまだ出来た事は無い。」

「でも、ダブル役満が出来るなんて凄い!」

「ま、ダブル役満って言っても、この大会のルールはダブルだろうが6倍役満だろうが役満と変わらないからね。仕方ないけどさ。」

「あっ、対子が重なって四暗刻単騎が聴牌した!」

「よし、いけ!白!」

~対局室~

(よし、四暗刻単騎聴牌。これを和了れたら三校を一気に引き離し、プラスで終わらせる事も出来る。でも四暗刻単騎なのがちょっと辛い。ハズレを引いてしまったな。国士無双13面待ちとか九蓮宝燈9面待ちだったら待ちがめちゃくちゃ広いけど、四暗刻単騎の場合はかなり待ちが少ないからな。和了るまでに時間が掛かっちゃうんだよね。まぁでも、気長に待とうか。)

『なんと、オーラスは渋谷選手が爆発するかと思ったが、渋谷選手が欲している發と中は二階堂選手が押さえているせいで聴牌出来ない!それだけでなく、まさかの天理選手が四暗刻の単騎待ちを完成させている!』

『渋谷選手が字牌を抱え込んでいるので、圧縮が効いているのでしょうか?』

(四暗刻単騎、ダブル役満ダブルリーチ、ダブ東ダブ南・・・あっ!成る程、そういう事でしたか。これは、赤土さんのチーム、更に強くなってますね。)

~9巡目~

「ツモ。」

(えっ、そっち?)

(やっぱり阿知賀がツモったか・・・)

「四暗刻単騎。8000・16000です。」

(ヤバいとは思っとったけど、本当に役満やったか・・・)

(結局役満なのかよ!渋谷尭深が天理白に変わっただけじゃん!)

(私のハーベストタイムが・・・)

~白糸台高校控え室~

「たかみーが和了れないなんて!」

「しかも、阿知賀の人が役満を和了るとはね。」

「まぁ、今のは二階堂有紗さんが發と中を押さえていた事で渋谷先輩が和了れなかった事と、天理さんがオーラスで強くなる能力が相まってこんな結果になりましたけど、決勝ではどうなるでしょうね。まぁでも、その前に夢乃マホさんが来るでしょうけど。」

「そうだな。あの人は多分、渋谷じゃ勝てないだろうな・・・」

 

 

『中堅後半戦、終了ぉぉぉぉ!!!!!なんとなんと、オーラスで天理選手が役満を炸裂させて更に点差を広げ、プラス収支で終わらせました!』

『東場で連荘が出来なかったのでマイナスになるかと思いましたけど、ここへ来て役満を和了るとは思いませんでした。』

『そして白糸台高校は役満こそ和了れなかったものの、2位にキープしました。有珠山高校は役満親被りを喰らいましたが未だ3位、姫松高校はかなり稼いでましたが、4位になってしまいました。では、休憩の後に、副将前半戦を開始致します!』

 

~中堅後半戦結局~

阿知賀 150700

白糸台 90100

有珠山 83600

姫松 75600




次からは副将戦です。副将と大将は咲-Saki-の原作キャラだけの対局になりますね。クオリティを落とさないように努めます。


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第52話《阿知賀編⑭》 副将前半戦

遂に副将戦まで来ました。そろそろ清澄が出てきますね。(そろそろと言っても少なくともこの話入れて4話後ですが)そろそろ阿知賀編も折り返し地点です!


中堅戦が終わり、白が控え室に戻ってきた。

「ただいま帰りました。」

「お帰り、後半ではなんとかダブル役満決められたわね。」

「はい、なんとか出来ました。」

「しかしあんな凄いのを隠し持ってたとはね。白が強いのは連風の時だけだと思ってた。」

「この前の長野との合同練習の時まではその認識で間違ってなかったですけど、あの特訓で赤土先生がダブル役満の事を見抜いてくれたんです。」

「いやー本当に、晴絵様様だね~。」

「本当にそうですね。」

「って、こんな事言ってる場合じゃなかった!次あたしじゃん!」

「新子先輩、このまま三校を引き離しちゃって下さい!」

「まっかせなさい!ほんじゃ、行ってくるね~。」

「頑張れ憧!」

「頑張ってね憧ちゃん。」

~白糸台高校控え室~

「ごめんなさい、2位になってしまって・・・」

「大丈夫だよたかみー!私が100回和了って逆転するから!」

「淡先輩だけだと少し心配なので亦野先輩も稼いで下さいね。」

「まぁ、善処するよ・・・」

「ちょっと!心配なんてなんもないし!絶対負けないし!」

「そういうの負けフラグって言うんですよ?実際に去年の準決勝で負けてるじゃないですか。」

「あれは偶然カン裏が乗らなかっただけだから!」

「その偶然がまた起きなければ良いですね。」

「あの、それじゃあ行ってくるね。」

「あぁ、トップにまでなれとは言わないが、せめて2位をキープしつつプラスで終わらせてくれ。」

「分かった。」

「亦野先輩も去年の団体戦みたいにマイナス5万とか止めて下さいね。今回それやられたら最早決勝すらいけなくなるかもなんで。」

「大丈夫だ・・・と思いたい。まぁ、とりあえず行ってくる。」

~有珠山高校控え室~

「ただいまです。」

「おー、お帰り。3位キープマジで助かるわ。」

「後半では姫松の方よりも稼いでましたよね。素敵です。」

「ですけど、阿知賀には敵わなかったです。」

「あれはしゃーないよ。」

「それに収支で言えば1000点差くらいじゃないですか。十分素敵ですよ!」

「そんな、本内先輩の方が凄いですよ、白糸台先鋒相手にプラスでしたから。」

「私はなんだか、自分の力じゃないような感じだから凄くないですよ。」

「そんな事は無いと思いますけどね。」

「おっ、そんな事言ってる間に、ユキが着替え終わったみたいだぞ。」

「はい、着替え終わりました。」

「うわぁ、フリフリです!」

「うん。似合ってる。」

「ありがとうございます。では、行ってきます。」

~姫松高校控え室~

「ただいま。」

「お帰り~。」

「お疲れさん。」

「いやぁ、後半全然やったわ。ごめんな絹、またラスに転落してしもて・・・」

「気にせんでええよ、そういう時もあるから。」

「それに、今回取れんかった分は決勝で取って貰うから大丈夫や。」

「せやな、おおきに。」

「それじゃあ、私は行ってくるわ。」

「おう、頑張ってな。」

「うん。」

 

 

『さてさて、準決勝も大詰めです!副将戦のメンバー紹介行っちゃおう!まずはトップの阿知賀女子からは去年中堅だった2年の新子憧選手。』

『彼女は去年、千里山女子の江口セーラ選手と競り合ってましたからね。今年も安定して稼いでいますから阿知賀女子の稼ぎ頭と言えるでしょうね。』

『成る程、それは期待ですね。では続いて2位の白糸台からは3年の亦野誠子選手。』

『彼女は鳴きの速攻を得意としています。ですが、鳴いてる事と筋や字牌に頼る癖があるせいで読まれやすいので、和了る点よりも取られる点の方が多くなってしまいますね。』

『かなり辛口コメントですね・・・』

『そ、そんな事ないよ・・・』

『そう、じゃあ次、3位の有珠山高校の2年生、真屋由暉子選手です。』

『彼女は半荘一回に一度左手を使うと高い和了りが出来る傾向がありますね。』

『なんで左手使うと和了れるんでしょうね?』

『ジンクス的な物なんじゃないでしょうか。』

『そうですか・・・じゃあ最後は姫松高校3年の愛宕絹恵選手です。』

『彼女は筒子が多めの手が多いですね。阿知賀女子の鷺森選手と似たような感じですね。』

『成る程、鷺森選手が今年も副将だったら面白い事になってたかもしれないですね。』

『そうですね。』

『さて、4人が対局室に集まりました。副将戦開始です!』

 

~場決め結果~

愛宕絹恵:東

新子憧:南

真屋由暉子:西

亦野誠子:北

 

~東一局~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 150700

白糸台 90100

有珠山 83600

姫松 75600

(トップと6万点の差があるな。淡ならこの差を埋める事も出来るかもしれないが、阿知賀の大将が怖いから私も稼がないとな。)

「ポン。」

(白糸台の亦野誠子、やっぱ鳴いてきた。スピードで、負けられない!)

「ポン!」

(お二人とも、手が速い・・・)

(まだ1副露だから大丈夫やろ。)

「ポン。」

(ドラポン!?ドラ3の4飜確定。これを和了らせる訳にはいかない!)

「チー!」

(これで聴牌。)

「ポン。」

(3副露された!?この人が3副露すると直ぐに和了られるって晴絵が言ってた。誰か、あたしの和了り牌出して!)

「ツモ。タンヤオ対々ドラ3。3000・6000。」

(1巡でツモられるなんて・・・しかも跳満、辛いな。)

~東二局~ 親:新子憧

阿知賀 147700

白糸台 102100

有珠山 80600

姫松 69600

(親番、とにかく安い手でも良いから連荘しなくちゃ。)

「ポン。」

(うっ、また亦野誠子に鳴かせちゃった。ならタンヤオで和了る。)

「ポン。」

(5索、しかも赤が1つある。最初に鳴いた白もあわせて2飜確定。もう1回鳴かれたら和了られる。)

「ポン。」

(って思った矢先に鳴かれちゃったぁ!?とりあえずあたしも和了りを目指さなきゃ。)

「ポン!」

(よし、これで聴牌。)

「ロン。白混一赤1。7700。」

(うわぁ、振り込んじゃった。というかこの人速すぎ・・・去年の準決勝でかなり凹んでたから楽勝かと思ったけど、これ、辛いなぁ・・・)

~白糸台高校控え室~

「亦野、調子が良さそうだな。」

「まぁ、亦野先輩はここからが問題ですからね。いくら和了っても、それより多く振り込んじゃいますから・・・」

「まぁ、大丈夫でしょ?最悪私が全部倒すし。」

「そうですか、まぁ、頑張って下さい。」

~東三局~ 親:真屋由暉子

阿知賀 140000

白糸台 109800

有珠山 80600

姫松 69600

~3巡目~

「ポン。」

(これ以上好きにさせる訳にいかない!)

「ポン!」

(これで一向聴。)

「ポン。」

(また・・・)

(亦野誠子が鳴いてくれるお陰で上家のウチとしてはツモが増えるから嬉しいわ。聴牌したし、攻めてみる!)

「リーチ。」

(えっ、もうリーチ?そっか、亦野誠子が鳴いてるからツモが増えてるのか。なら・・・)

「チー!」

(これで聴牌。そろそろ和了らせてよね!)

「ポン。」

(亦野誠子が3副露、ヤバい!)

(鳴いてくれておおきに。お陰で来てくれたわ。)

「ツモ。リーチツモ清一。4000・8000。」

(倍満ツモ!?それに、やっぱ筒子多めの手。というか、もう東場も終わりそうなのにまだ何も出来てないじゃん!何が何でも和了って、流れを掴まなきゃ!)

~東四局~ 親:亦野誠子

阿知賀 136000

白糸台 105800

姫松 85600

有珠山 72600

(この親番で阿知賀との点差を縮めれば淡も楽になるはず。ここは攻めていこう。)

「ポン。」

(また鳴かれた。でもこっちだって負けてない!)

「ポン!」

(阿知賀には和了られる訳にはいかない。)

「ポン。」

(2副露、でも負けない。)

「チー!」

(よし、今度こそ和了る!)

「ポン。」

(3副露・・・あっ!)

「ロン!タンヤオ三色ドラ3。8000!」

「はい。」

(ポンの余剰牌を狙われた。それに、またリードを許してしまった。)

(この調子で稼ぐ!)

~南一局~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 144000

白糸台 97800

姫松 85600

有珠山 72600

~6巡目~

(あっ、鳴く機会が無いまま聴牌した。調子良さげだし、行ってみようか!)

「リーチ!」

(阿知賀がリーチ。ウチが親の時は変な事せんで欲しいんやけど。まぁ、言っても仕方ないか。とりあえず、振り込まんようにしとこ。)

(とりあえず一発消しも兼ねて鳴いとこうか。)

「ポン。」

(小細工ポンありがとね。)

「ツモ。リーチツモタンピン三色。3000・6000。」

(うっわぁ、親被り・・・)

(結構高いな・・・)

(よし、調子良い!このままどんどん稼ぐ!)

~南二局~ 親:新子憧

阿知賀 156000

白糸台 94800

姫松 79600

有珠山 69600

(この調子のまま阿知賀に連荘させたら淡でも挽回出来ないくらいの点差になる。それだけは防がないと。)

「ポン。」

(これじゃあまだ2向聴。)

「ポン。」

(2副露、とりあえずもう1副露したら和了れるはず。)

「リーチ!」

(阿知賀がリーチを掛けてきた!?速い・・・でも!)

「ポン。」

(ヒット!)

(亦野誠子が3副露した。それに安牌無いわ・・・これがもし当たったとしても、阿知賀の親が流れるって事で良しとするか・・・)

「ロン。対々。2600。」

(まぁ、せやろな・・・)

(折角調子良かったのに流されちゃった!)

(ふぅ、なんとか上手く流せた。)

~南三局~ 親:真屋由暉子

阿知賀 155000

白糸台 98400

姫松 77000

有珠山 69600

~5巡目~

「左手を使ってもよろしいでしょうか?」

(うわっ、遂に来た!有珠山の左手!)

「はい。」

「どうぞ。」

「はい・・・」

(なんでこの人達冷静にしていられるの?倍満とか来るかもしれないんだよ!?とりあえずこの局は速攻で流す!)

「ポン!」

(これで二向聴。)

「ポン。」

(白糸台も速攻で流そうとしてる?なら、こっちも負けてられない!)

「ポン!」

(これで一向聴。よし、この調子ならいける!)

「リーチ。」

(有珠山がリーチ掛けちゃった!そっか、あたしが鳴いたら上家の有珠山はツモ増えるじゃん!しかもこんな時に限って白糸台もあたしも鳴けないし・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ平和純チャン三色一盃口ドラドラ。12000オールです!」

(嘘でしょ、親の三倍満ツモとか・・・)

『有珠山高校真屋選手が親の三倍満を和了しました!やっぱり左手を使うと強い!』

『これで有珠山は一気に2位に浮上ですね。』

『2位をキープしていた白糸台が遂に3位まで落ちてしまいました!今年のインターハイは波乱万丈だぁ!』

『これは、面白くなってきましたね。』

~有珠山高校控え室~

「マジかよ!ユキが親の三倍満和了りやがった!」

「とっても素敵です!」

「流石由暉子先輩ですね。」

~南三局一本場~ 親:真屋由暉子

阿知賀 143000

有珠山 105600

白糸台 86400

姫松 65000

(真屋さん、去年も中々おかしかったけど、今年はおかしすぎるやろ!三倍満で一気に2位とか、お姉ちゃんでも出来んわ!)

(淡を楽にするどころか負荷が重くなるばかりじゃないか。どうすれば・・・)

(とりあえず和了ってこの親番を流さなきゃ!)

「ポン!」

(有珠山も怖いけど、とりあえず和了らなきゃ駄目だ。少なくとも10万までは戻さなくては・・・)

「ポン。」

(白糸台も鳴いてきた。けど、そんなのは関係ない!)

「チー!」

(あたしはこの手を和了るだけ!)

「ポン。」

(阿知賀も白糸台も鳴いてばっかやな。せわしないわ・・・)

「リーチ。」

(有珠山がまたリーチ!?)

「ポン。」

(しかも白糸台が3副露。これは和了れそうに無いな・・・)

由暉子が牌を引くが、それは和了り牌ではなかった。

「ロン。混一対々ダブ南。12300。」

「はい。」

(2回目は流石に和了れませんでしたか・・・)

~南四局~ 親:亦野誠子

阿知賀 143000

白糸台 99700

有珠山 92300

姫松 65000

(最後の局、ウチだけ一人沈みやん。恥ずかしいな。少しでも点稼がんとな・・・)

「ポン。」

(また白糸台が鳴いとる。でも、対子が5つ。それにドラも2つある。これなら行けるかもしれへん。)

「ポン。」

(2回目のポン。でも、お陰で聴牌したわ。それに、良い感じに筋引っかけにもなっとるし、行けるやろ。)

「リーチ。」

(姫松がリーチを掛けた。有珠山と白糸台じゃないからまぁいっか。)

(攻めを残しつつ、降りたい。これかな・・・?)

「ロン。リーチ一発七対子ドラドラ。12000です。」

(なっ、筋引っかけ!?というか、去年も同じようなミスをしたな。その時に菫先輩に筋に頼りすぎるなって言われたな。何も成長出来てないな、私・・・)

『副将前半戦終了!最後は姫松が少し巻き返しました。白糸台は一旦2位になったものの、また3位に転落してしまいました。』

『後半戦でどうなるか、そして大将戦でその点差がどう左右してくるかが楽しみです。』

『では10分間の休憩の後、副将後半戦です!』

 

~副将前半戦結果~

阿知賀 143000

有珠山 92300

白糸台 87700

姫松 77000




ふと思ったんですが、清澄サイドに戻って、臨海の描写をする時にネリーを出す時は、例えば
~東一局~ 親:ネリー・ヴィルサラーゼ
ってしなきゃいけないのでしょうか?これだと流石に長いですよね・・・何か良い意見あれば感想でお願いします。


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《番外編》 バレンタイン

今日はバレンタインですね。元々渡す予定も貰う予定も無い私には365分の1に過ぎない日ですが・・・


2月14日の朝6時、マホが目を覚ました。マホは起き上がると、その状況に違和感を感じた。

(あれ?ここ、うちじゃないです。でも、何故か見覚えがありますね。デジャブでしょうか?あっ、思い出しました!ここ、宮永先輩のお家です!麻雀部の皆さんと遊びに来た時に見たんでした。でも、どうしてマホが宮永先輩の家のベッドで寝ていたんでしょうか?昨日は普通に自分の部屋で寝ていたはずなんですけど・・・マホ、宮永先輩の家に泊まってたんでしょうか?うーん、そんな事はない気がするのですが・・・取り敢えずリビングに行けば宮永先輩がいるはずです!行ってみます。)

マホが2階からリビングに行くと、そこには咲の父親がいた。

「おはよう咲、今日は少し遅いんじゃないか?」

(・・・えっ?宮永先輩のお父さんがマホに向かって『咲』って呼んでますけど、これってもしかして・・・)

マホが何も喋らず、足早に洗面所へと向かう。そして鏡を見てみると、そこにはマホが尊敬している咲の体が写っていた。

(えっ!?は?ちょっ、どういう事でしょうか?マホが、マホが宮永先輩になってます!えっ、ちょっと待って下さい、これってもしかして、巷で話題の『入れ替わってる~!』ってやつでしょうか!?だとしたらマホは今宮永先輩になっているのでしょうか?じゃあ、確認の為にもマホの家に電話してみましょう。)

マホが受話器に向かう。そしてマホの家の電話番号に電話を掛けた。

「はい、もしもし?」

(あっ、お母さんだ。)

「もしもし、お母・・・じゃなくて、夢乃さんのお宅でしょうか?」

「はい、そうですけど・・・」

「あの、マホ・・・ちゃんに代わって頂けませんか?」

「あの、どちら様でしょうか?」

「あっ、マ、わ、私は、宮永咲です。」

「あぁ!マホの先輩の宮永さんね?あの子いつも宮永さんの話するのよ。宮永先輩は凄いんです~って。」

「そ、そうなんですか。」

(知ってるよ、いつもお母さんに話しているから・・・)

「じゃあ、マホに代わりますね。」

「あ、はい。お願いします。」

マホの母がマホに電話を渡した。

「あの、もしもし・・・」

「あっ、宮永先輩ですか?」

「えっ、あっ、そうだけど・・・もしかしてマホちゃん?」

「そうです!マホ達、入れ替わってるみたいなんです!」

「そうみたいだね。こんな本の中のお話みたいな事起きるんだね。」

「本当にそうですね。それじゃあ、学校もありますし、マホが宮永先輩の所に向かうので宮永先輩はマホの家で待っていて下さい。」

「分かった。あっ、ちょっと待って、冷蔵庫に私が作ったチョコが入ってるんだけどそれ持ってきてくれない?ほら、バレンタインだから部の皆に配ろうと思ってて。」

「宮永先輩手作りなんですか!?凄いです!あっ、マホも手作りじゃないですけど冷蔵庫に入れてあるのでお願いします。」

「ありがとう、分かった。じゃあ、また後で。」

「はい、失礼します。」

マホが電話を切った。そして冷蔵庫に向かい、冷やしていたチョコを取り出した。咲が作った手作りチョコはピンクの小さい袋に赤いリボンがしてあった。

(宮永先輩の手作りチョコ、入れ物もとっても可愛いです!よし、じゃあ宮永先輩の所に行きましょう!)

マホは、咲がいるマホの家に向かった。そして、マホがマホの家に着き、インターホンを鳴らして咲を呼んだ。するとマホの体の咲が姿を現した。しかし、マホがいつもしているサイドテールを咲はしていなかった。

「あっ、宮永先輩、サイドテールして下さい!でないと、皆さんがマホの事分からなくなっちゃいます。」

「あぁ、ごめん、サイドテールなんてした事無かったから。でも、サイドテールをしなかったからってマホちゃんが認識されないって事はないと思うよ?」

「そんな事は無いです!マホ、小学生くらいの頃に気まぐれに髪型をストレートにして学校に行ったんですけど、何かある度に『マホどこ~?』って言われてたんです!だから皆さんはマホの事をサイドテールで認識しているんです!」

「えっと、それは、おふざけで言ってたんじゃないかな?目の前にいるのにマホちゃんがどこにいるか探してたって事でしょ?」

「そうです。マホが『ここにいるよ~!』って言うと気付いてくれて、その後は普通に接してくれるんですけど。」

「それは多分マホちゃんがストレートにしたのが面白くていじってただけだよ。」

「そうだったんですか!?」

「うん。多分そうだと思う。まぁでも、とりあえずサイドテールにしてくるよ。」

「あっ、宮永先輩!あの、チョーカーとヘアピンもして欲しいです。」

「あぁ、和ちゃんと優希ちゃんがくれたヘアピンと氷華ちゃんがくれたチョーカーだよね?」

「はい、そうです。」

「分かった。今準備してくるね。」

「はい。」

咲が準備をしてマホの所へ行き、二人は学校に向かった。

「さっき準備する時に思ったんだけど、マホちゃん凄くチョーカー大事にしてるよね?」

「えっ!?どうして分かったんですか?」

「なんかチョーカーだけが1つの棚に置いてあったから、マホちゃんが大事にしてるんだなぁって思って。」

「あぁ、それでですか・・・」

「マホちゃん、氷華ちゃんの事本当に好きなんだね。」

「はい、氷華大好きです!えへへ~。」

「じゃあ1つだけ特別そうだったチョコも氷華ちゃんにあげるの?」

「あっ、そうです・・・あの、それは、他の人には内緒にお願いします!」

「分かった。それに私も、和ちゃんのとマホちゃんのはちょっと特別だから・・・」

「えっ、マホのも特別なんですか!?」

「うん。マホちゃんは夏の大会でかなりお世話になったからね。」

「いやいや!マホの方が宮永先輩にお世話になりっぱなしでしたよ!それなのにマホは宮永先輩のも他の人と同じような物を選んでしまいました・・・」

「いや、全然気にしてないよ。私がマホちゃんに特別なのを渡したかっただけでマホちゃんが特別にしなきゃいけない訳じゃないしね。」

「うぅ、でも、なんだか申し訳ないです・・・」

「うーん、じゃあ、マホちゃんが作った私のチョコ、マホちゃんが食べさせてくれない?」

「えっ!?いや、あの、その・・・分かりました。」

「ありがとう、それなら特別になるよね。」

「は、はいぃ・・・」

(宮永先輩はたまに大胆なのでドキドキします・・・)

「じゃあ、今日はお昼一緒に食べよ?」

「分かりました。」

マホが咲と昼食の約束をした刹那、聞き覚えのある声がした。

「マホちゃんに咲ちゃん!おはようだじぇ!」

「あっ!優希せ、ちゃん。おはよう。」

「ゆ、優希先輩おはようございます!」

「じょ?二人ともなんだか元気無さそうだけど大丈夫か?」

「だ、大丈夫だよ。」

「はい、平気です。」

「そっか、それにしても、二人が一緒に登校なんて珍しいじぇ。確か二人の家はそんなに近くじゃなかったような気がするじょ。」

「えっと、それは・・・」

「マホちゃ、宮永先輩がマホの家に遊びに来てたんですよ。」

「そうだったのか!?それはしらなかったじぇ。」

「あ、あはは・・・」

「は、はは・・・」

(これは、大変な1日になりそうだよ・・・)

(これは、大変な1日になりそうです・・・)

 

 

学校に着いて3人は各々の教室に向かい、授業を受けた。午前中の授業が終わり、昼休みになった。咲とマホが2人で中庭に行き、昼食を食べた。

「そういえば、私は大丈夫だったけど、マホちゃんは私の授業着いていけなかったんじゃない?大丈夫だった?」

「はい、今のところはマホが飛び級の為に勉強した時にやった内容だったので。」

「えっ、凄い!マホちゃん高二の内容がもう分かるの?」

「まぁ、はい、そうですね。」

「凄いな、数学とか、私でも着いていけなくなりそうになるのに、マホちゃんは分かるんだね。」

「まぁ、宮永先輩達と麻雀したくて、いっぱい勉強しましたから。」

「本当に凄いなマホちゃん。本当に偉いよ。」

「ありがとうございます。」

咲とマホが喋りながら昼食を食べ終えた。

「それじゃあ、チョコ食べよっか。」

「はい。」

咲とマホがバッグを交換して、各々が用意していたチョコを取り出した。

「はいマホちゃん、ハッピーバレンタイン。」

「ありがとうございます!じゃあこっちも、ハッピーバレンタインです!」

「ありがとう。それじゃあ、私のチョコ食べてみて?」

「はい!いただきます!・・・うわぁ!とっても甘くて美味しいです!ありがとうございます!」

「そう?ありがとう。それじゃあ約束通り、マホちゃんのチョコ、食べさせて?」

「は、はい・・・えと、あーん。」

「あーん・・・うん。とっても甘い。」

「み、宮永先輩!これ、恥ずかしいです・・・!」

「そ、そうだね、今のは私もちょっと恥ずかしかったよ。やっぱり私が自分で食べるね。」

「あっ、いや、でも、それだとやっぱりマホが特別じゃないチョコを渡した事になっちゃいます!やっぱり続けます!」

「そ、そう?別に、マホちゃんが良いなら良いんだけど・・・」

「そ、それじゃあ行きます!あーん。」

「あーん・・・ふふっ、マホちゃんが恥ずかしがってる顔、凄く可愛い。」

「えっ!?そんな!あの、宮永先輩の方が、その、か、可愛い、です・・・」

「えっ!?私が可愛い?そんな、それは今マホちゃんの体になってるからじゃない?」

「宮永先輩は今日だけじゃなくていつも可愛いです!後輩なのに可愛いなんて失礼かもしれませんけど・・・」

「えっ、私なんて、全然可愛くなんか・・・」

「宮永先輩は凄く可愛いです!自信を持って下さい!」

「そ、そうかな?」

「はい!」

「えっと、ありがとう。マホちゃんも可愛いよ。」

「ありがとうございます・・・」

咲とマホは胸焼けがするくらい甘ったるい昼休みを過ごした。

 

 

放課後になり、部活が始まった。しかし、その日の対局では全ての和了りが咲とマホによるものだった。

「うぅ、全く和了れないじぇ!二人とも今日は容赦無さすぎだじょ!」

「私が、一回も和了れないなんて・・・」

「今日のマホちゃんと咲ちゃんはなんだか変だじぇ!」

「そ、そんな事無いですよ。」

「もう今日は多分何回打っても駄目だじぇ・・・」

「それじゃあ、時間も時間ですし、帰りますか。」

「あっ、和ちゃん!それに優希ちゃんも、これ、バレンタインチョコ。」

「おぉ!咲ちゃん、これってもしかして手作りか?」

「うん、そうだよ。」

「凄いじょ咲ちゃん!」

「流石咲さんですね。これ、お返しでは無いですけど私も咲さんにバレンタインチョコです。」

「ありがとう和ちゃん!とっても美味しそう。」

「食べても良いですよ?」

「あっ、和ちゃんのは家でじっくり食べたいんだよ。」

「咲さん・・・なら私も、これは食べずに家でじっくりいただきます。」

「あの、わた、マホもチョコあります!どうぞ!」

「マホちゃんもくれるのか!ありがとうだじぇ!」

「ありがとうございます。」

チョコ交換が終わり、帰りも二人で一緒に帰っていた。

「そういえば、今日の部活の対局でどうして宮永先輩は積極的に和了ってたんですか?もしかしてマホを意識してたんですか?」

「いや、マホちゃんのコピー能力が楽しくなっちゃって・・・ごめんね。」

「いや、マホも同じです。何回でも嶺上開花出来るので楽しくなっちゃいました!」

「他の皆、凄まじい顔してたよね・・・」

「悪い事しちゃいましたね・・・」

「それにしても、マホちゃん私の真似、途中からかなり完璧にやってたよね。凄かったよ。」

「まぁ、マホは模倣は得意中の得意なので!」

「あはは、そうだね。」

「あの、宮永先輩、そういえば氷華のチョコなんですけど、申し訳ないんですけど風越まで一緒に行くので渡しに行ってもらっても良いでしょうか?」

「ごめん、それは出来ないかも・・・」

「そう、ですよね。宮永先輩は忙しいですよね・・・ごめんなさい。」

「いや、そうじゃないの。今この体はマホちゃんだけど、私には氷華ちゃんにどう渡していいのか分からない。それに、マホちゃんの特別なチョコなんだし、心も体もマホちゃんに戻った時に渡すべきだと思うな。喩えバレンタインを過ぎたとしても。」

「宮永先輩・・・そうですね!そうします!じゃあ今日は宮永先輩が持っていて下さい!もし明日治ってたらマホ本人が氷華に渡しに行きます!」

「うん。じゃあこれはちゃんと保管しておくね。」

「お願いします!」

2人はその後、各々の家に帰り、次の日に目が覚めると2人は元に戻っていた。マホはその日のうちに氷華にチョコを渡しに行った。

こうして、マホと咲の不思議で甘~いバレンタインが終わった。




これまでこの作品を書いてて、いつか咲マホの話を書きたいと思っていました。これまでの話で色濃く滲み出てたとは思いますけど、咲とマホの絡みがめちゃくちゃ好きなんですよ!なので今回は完全に私の自己満足になってしまいました・・・
世の中に咲マホ推しが一人でも多く増えればと思っています。


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第53話《阿知賀編⑮》 副将後半戦

最近何かと忙しく、本編の方は問題ないですけど外伝の方が全く手付かずになってしまいます・・・待って下さっている方、申し訳ありません。出来るだけ早く投稿しなきゃとは思ってます、はい。


副将前半戦が終わり、憧は控え室に戻らずに対局室に留まっていた。

(はぁ、まさかこの面子でマイナス終了する事になるとはね・・・ってか、有珠山、一回しか和了ってないのにプラス収支とか、あり得ないでしょ・・・)

「あの、新子さんは控え室に戻らないんですか?」

「あぁ、あたしは指示がある時は来てくれるだろうから大丈夫。」

「私もです。」

「・・・あ、ごめん、気まずかった?」

「あっ、いえ、そんな事は無いです。その、新子さんは何度も和了ってて凄いなと思いまして。」

「いやいや、結果的に真屋さんの方がプラスじゃない。あたしはむしろマイナスだったし。」

「私は、少し大きな和了りを一度しただけで、全然凄くないですよ。」

(少し・・・この人は親の三倍満が少しなのね・・・やっぱり住む世界が違うって感じね。)

「しっかしさ、一回和了っただけでプラスって、なんだかズルいよね。」

「そ、そうですね、なんか、ごめんなさい・・・」

「いやいや、謝る事では無いよ。」

「でも、偶然高い和了りが出来るよりも何回も和了ってた新子さんの方がカッコいいです。」

「そう?ありがとう。」

「はい。あの、お互い、後半戦も頑張りましょう!」

「うん!次は負けないから!」

「有珠山と阿知賀で決勝に行けたら嬉しいですね。」

「まぁ、そうだね。」

(有珠山と阿知賀で、流石に厳しいだろうね。白糸台が準決勝で敗退とか考えられないし、どちらかは間違いなく敗退しちゃうよね・・・)

~阿知賀女子控え室~

「憧、なんだか有珠山の人と仲良さそうにしてる。」

「憧は誰とでも仲良くなれるよなー。」

「初対面のはずでしょうに、凄いですね。」

~対局室~

『さて、対局室に選手が戻ってきました。副将後半戦、開始です!』

 

~場決め結果~

愛宕絹恵:東

新子憧:南

亦野誠子:西

真屋由暉子:北

 

~東一局~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 143000

有珠山 92300

白糸台 87700

姫松 77000

(親番、ラスやから連荘しときたい。)

「ポン。」

(また始まった、白糸台のポン。)

「ポン。」

(もう2副露、ヤバイかも・・・)

「ポン。」

(ヒット!)

(いきなり3副露された!これ、またやられちゃうのかな・・・)

「ツモ。中対々ドラ3。3000・6000。」

(捲られてしまいましたか。)

(うわぁ、いきなり跳満親被りはきついわ・・・)

『後半戦最初の和了りは白糸台高校の亦野選手です!』

『今年は去年と比べて和了率が上がって振込率が減ってますね。』

『やはり白糸台のナンバー5は伊達じゃない!』

~東二局~ 親:新子憧

阿知賀 140000

白糸台 99700

有珠山 89300

姫松 71000

(親だから連荘しなきゃ、このまま負けっぱなしじゃいられない!)

「ポン!」

(よし、このまま行く!)

「ポン。」

(またポンされた、でも負けないから!)

~7巡目~

「ツモ!混一三暗刻対々。6000オール!」

(決められてしまった・・・追い付けなかったか。)

『阿知賀女子新子選手、親跳ツモ!詰められていた点差を一気に引き離した!』

『これでかなり優位に立ちましたね。2位の白糸台に子の役満を直撃されても1位は揺らぎません。』

『この点差を逆転する事は出来るのか!?』

~東二局一本場~ 親:新子憧

阿知賀 158000

白糸台 93700

有珠山 83300

姫松 65000

~3巡目~

「ポン。」

~7巡目~

「ポン!」

(また二人が鳴いとる。このままやったら何も出来んまま終わってまう。こんな時お姉ちゃんやったらどないしとるやろ?)

「ツモです。1100・2100です。」

(えっ、有珠山が和了った!?しかも有珠山にしては安手・・・あっ、そうや、安手や。『相手と点差があっても焦らず安手でも和了る。そうすれば流れもこっちに着いてくるで!』ってお姉ちゃん言っとったわ!ほんならこっからは攻めてくで!)

~東三局~ 親:亦野誠子

阿知賀 155900

白糸台 92600

有珠山 87600

姫松 63900

(とにかく流れを掴まなくちゃ!)

「チー。」

(姫松も鳴き始めた、こっちも負けてらんない!)

「チー!」

(もっと速度を上げる!)

「ポン。」

(また姫松が鳴いた。)

「ポン。」

(今度は白糸台!?)

「ロン。混一ドラ1。3900です。」

(やられた・・・)

『鳴き合戦を制したのは姫松高校の愛宕選手です!』

『白糸台高校は今の放銃で有珠山高校との点差が1100点になってしまいましたね。これはまた3位になってしまう可能性もありますね。』

~東四局~ 親:真屋由暉子

阿知賀 155900

白糸台 88700

有珠山 87600

姫松 67800

~7巡目~

(阿知賀も白糸台も2副露やけど、私だって調子出てきてる。行ける!)

「リーチ。」

「ポン。」

(白糸台が3副露、でも流れはこっちに来とるはずや!)

「ツモ。メンタンピンツモ。1300・2600。」

(また姫松に和了られた!)

(折角3副露出来てるのに和了れない・・・)

『姫松高校の愛宕選手、2連続和了です!』

『調子が出てきましたね。』

『しかも次は親番です!そして南入です!』

~南一局~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 154600

白糸台 87400

有珠山 85000

姫松 73000

~6巡目~

(なんだか調子良さげやな、親やし行っとこか。)

「リーチ。」

(また姫松、しかも親リーだし。連荘とか止めて欲しいな・・・)

(鳴けない・・・)

(これ、ホンマに流れがこっちに来とるわ!)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。6000オール。」

(これ、ヤバいかもなぁ・・・)

『愛宕選手、3連続和了ぁぁ!!!そして連荘です!』

『しかも有珠山と白糸台を捲って一気に2位に浮上しましたね。』

『愛宕選手の猛追を止める事は出来るのか!?』

~姫松高校控え室~

「よっしゃ!2位浮上や!流石絹やな!」

「このまま阿知賀も捲ってくれたら楽なんやけどな。」

「漫なら多分爆発するから大丈夫やろ。」

「そんな事言ったって、自分でコントロール出来るもんでも無いからなぁ、出来るか出来んか分からんわ・・・」

「まぁ、漫先輩が爆発してくれたら姫松が1位になる可能性がかなり出てきますよね?」

「でも、白糸台の大星淡と阿知賀の高鴨穏乃は怖いからなんとも言えんわ。」

「そんな弱気やったら勝てるもんも勝てんで?」

「まぁ、ちゃんと全力でやるけどな。」

「なら大丈夫やろ。まずは絹がどうなるかやな!」

「せやな。」

~南一局一本場~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 148600

姫松 91000

白糸台 81400

有珠山 79000

~7巡目~

(まだまだ攻めてくで!)

「リーチ。」

(また姫松がリーチ!?誰か止めらんないの?これ・・・)

「ポン。」

(一発消しされた。でもそれ、和了り牌やで?)

「ロン。リーチタンヤオ三色。11600の一本場で11900。」

(姫松を早く止めなきゃ!)

(最下位転落・・・)

『4連続、和了ぁぁぁ!!!!誰も止める事が出来ない!』

『白糸台高校は今の放銃で最下位に転落してしまいましたね。』

~白糸台高校控え室~

「亦野、危ないな。」

「あの人、去年よりも火力は上がってるんだけど振込率は下がってないから微妙ですよね。」

「何点取られたって逆転するから大丈夫だよ。このスーパーアルティメットあわいち」

「あーはいはい、凄いですねー。ちょーかっこいー。」

「ちょっと!せめて最後まで言わせなさいよ!」

「そういうの言わない方がいいですよ?負けた時スーパーアルティメット恥ずかしいですし。」

「やっぱりあんた嫌い!絶対断トツで勝ってやるからなぁ!」

「その気持ちで対局にも臨んでくださいねー。」

「楽勝だし!100回勝つし!」

「はいはい、頑張って下さい。」

~南一局二本場~ 親:愛宕絹恵

阿知賀 148600

姫松 102900

有珠山 79000

白糸台 69500

(おっ、これはもしかしたら、行けるかもしれない・・・)

(よし、まだまだ調子は悪くなってへん。どんどん攻めてくで!)

~8巡目~

(阿知賀が2副露やけど白糸台が1副露もしとらん。ちょっと怖い気もするけど、ひよってたらやられる。ここは攻める!)

「リーチ。」

(また姫松がリーチ!?ヤバいよ、誰かあたしの和了り牌出してよ!)

(姫松が怖い。でもこれがくれば・・・あっ!)

「ツモ。四暗刻。8200・16200。」

(・・・は?)

(嘘でしょ・・・)

『な、なんと亦野選手、役満ツモだぁぁ!!!』

『これは驚きですね。まさかあれを和了れるとは・・・』

『これで勢いに乗っていた姫松は親被りで16200の出費です。』

『出費って・・・まぁいいけど。これで白糸台はまた2位に浮上ですね。』

『順位が目まぐるしく動いています!これは何処が1位になってもおかしくなくなってきた!』

『ここからですね。』

~白糸台高校控え室~

「おぉ!亦野先輩が役満和了ったよ!凄いね。」

「そうですね。『もう私の仕事は終わった』って感じの顔してるのがちょっと腹立ちますね。」

「まぁまぁ、別に良いじゃないか。これでうちが阿知賀をトップから引きずり落とす事が出来るんだから。」

「そうですね。スーパーアルティメット淡先輩が勝てばの話ですけど・・・」

「絶対勝つから!あと、あんたにスーパーアルティメットって言われるとめちゃくちゃ頭にくるから止めて!」

「そうですね、スーパーアルティメットごめんなさい。」

「麻衣ぃ、あんたマジで許さないから・・・!」

「おぉこわ。」

~南二局~ 親:新子憧

阿知賀 140400

白糸台 102100

姫松 86700

有珠山 70800

(最後の親番、ここで連荘して、出来るだけ高い点でシズにバトンタッチしたい。頑張らないと!)

「ポン!」

(まず一回和了る。)

(また阿知賀が攻めてきている。ここはこっちも攻めないとな・・・)

「ポン。」

(今回は白糸台に邪魔させる訳には行かない。)

「ポン!」

(こっちだって負けられない!)

「ポン。」

(これで2副露、次でヒットする。)

「ロン。2600。」

(えっ、また姫松!?)

(さっきの役満で完全に流れを絶ち切ったと思ったのに・・・)

(役満親被りしたなら、また16000稼げばええだけや、まだまだ稼ぐで!)

~南三局~ 親:亦野誠子

阿知賀 140400

白糸台 99500

姫松 89300

有珠山 70800

~6巡目~

(点差がどんどん広げられてる。私だけが負けてる。なら・・・)

「左手を使っても良いですか?」

「はい。」

「っ!?はい。」

(また左手使ってきた・・・)

「はい。」

~9巡目~

「リーチ。」

(やっぱり有珠山がリーチしてきた。せめて一発消ししなきゃ。)

「チー!」

(一発、消されましたか。まぁ、点は変わらないですが。)

「ツモ。リーチツモタンピン三色ドラドラ。4000・8000です。」

(うわぁ、一発消した意味無いじゃん・・・)

(やっぱり真屋由暉子が左手を使うと強いな。それに親被り、もしかして私が親のタイミングを狙って左手を使ったのか?)

『今の和了りで有珠山はまた3位に浮上。そして白糸台との点差もかなり削りました。』

『順位移動が激しい試合ですね。』

『そして遂に副将戦も最後の局になります!次はオーラスです!』

~南四局~ 親:真屋由暉子

阿知賀 136400

白糸台 91500

有珠山 86800

姫松 85300

~6巡目~

(このまま連荘して揺杏先輩に少しでも多く残さないと!)

「リーチです。」

(また有珠山、もう左手は使っとらん筈やろ?なら、私も行く。)

「ほんなら、追っかけリーチや。」

(姫松と有珠山がリーチ!?これ、危ないかも。一発消しとこ・・・)

「ポン!」

「ロン。メンタンドラ1。5200。」

(うわっ、一発消ししようと思ったら振り込んじゃった!)

(しかもこれ、白糸台と同点です・・・)

『副将戦終了ぉぉぉぉ!!!!!なんと、白糸台と姫松が同点で終わらせました!』

『この場合は起家の姫松高校が2位になりますね。』

『しかし、同点で終了するなんてかなり珍しいですよね。』

『そうですね。狙ってやったとは思えませんが偶然だとしたら凄いですね。』

『本当にそうですね。さて、10分後に大将戦を開始致します!この結果で全てが決まります!』

 

~副将後半戦結果~

阿知賀 131200

姫松 91500

白糸台 91500

有珠山 85800

 

 

同時刻、永水女子高校のメンバーが宿泊施設で準決勝の様子を見ていた。

「それじゃあ、個人戦まで日があるから、一旦鹿児島に帰りましょうか。」

「あの、ちょっと行きたい所があるんですけど・・・」

「どうしたの友理奈?観光なら個人戦の後でも出来るよ?」

「いや、今じゃなきゃダメなの。」

「何処に行くの?」

「準決勝の会場です。」

「何?忘れ物?」

「いや、準決勝が終わったら会いたい人がいるんです。阿知賀女子で中堅をしている天理白に!」

「あぁ、あの人にですか。」

「成る程、だけど友理奈だけ行かせると待ち合わせとかも大変そうですね、東京ですから。」

「それなら準決勝の会場に皆さんで行きましょうか。」

「良いんですか?」

「大丈夫ですよ。飛行機の時間が間に合うのであれば。」

「大丈夫、問題ない。」

「なら行きましょうか!」

「ありがとうございます、私のわがままに付き合って貰っちゃって。」

「良いのよ、友理奈は天理白に会いたいだろうからね。」

「まぁ、そうだね。」

「それじゃあ、レッツゴー!」

永水女子が準決勝の会場に向かった。そこでは準決勝の大将戦が行われようとしていた。



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第54話《阿知賀編⑯》 大将前半戦

マホ達が準決勝を観戦していた。

「マホちゃん、この準決勝は何処の学校が残りそうだと思う?」

「そうですね、難しい所ですね。姫松の上重さんと有珠山の岩舘さんは高火力なのでいつでも逆転出来そうですよね。白糸台の大星さんもマホがいつも使ってますけどやっぱり使い勝手が良いですから強いですよね。阿知賀の高鴨さんは白糸台に勝っていますし、点差もありますから勝てる可能性は十分にあります。なので何処が勝つかは正直難しいですね。」

「やっぱりマホちゃんも私と同じ事考えてたんだね。それより、有珠山の岩舘さんって高火力なんだ。どんな感じなのかな?」

「それは見てのお楽しみです。」

「えぇ、またそれ?マホちゃんの意地悪~。」

「あっ、いや、そんなつもりじゃ・・・えっと、じゃあ教えます。」

「ホント?ありがとう。」

「はい、岩舘さんは去年宮永先輩が対局した獅子原爽さんと同じでカムイや雲の力を使った能力です。」

「えっ、あの人と同じなの?」

「はい、そうですね。」

「えっ、でも去年はあんなの使ってなかったよ?」

「多分ですが、去年まではまだその力を持っていなかったけど、今年になってから手に入れたのでは無いでしょうか?」

「そうなんだ、獅子原さんと同じ能力か・・・それは凄い対局になりそうだね・・・」

「そうですね。」

 

 

同時刻、臨海女子高校のメンバーが準決勝を観戦していた。

「ねーユカリ?」

「ん?どうしたんだネリー。」

「この4校だったら何処が来て欲しい?」

「そうだな、白糸台以外なら何処が来てくれても良い。白糸台と清澄以外は臨海の敵では無いよ。」

「ふーん、そっか。」

「まぁ、清澄と白糸台が決勝に来たとしても、私とネリー、そしてあいつの3人なら2校とも攻略出来るだろう。」

「まぁ、確かにあいつは強いよね。ネリーも安心して後を任せられるよ。」

「あれ?二人とも、もしかして私の話してたの?」

「おっ、来てたのか。あぁ、そうだよ。」

「まぁ、話は全部聞いてたんだけどね。大丈夫だよ。今年の臨海はどこにも負けないよ。」

「そうだな、今年のインターハイを制するのは私達臨海女子だ!」

 

 

準決勝の会場では、大将戦が始まろうとしていた。

『さて、10分間の休憩が終わり、各校の大将が対局室に移動し始めました。それじゃあ選手紹介いっちゃおうか!』

『うん、こっち見なくてもいいから続けて。』

『じゃあまずはトップを走る阿知賀女子からは高鴨穩乃選手!』

『高鴨選手は去年大星選手に勝っていますからね。点差もありますから今年も決勝に進出出来るかもしれませんね。』

『これは期待大ですね。では次に2位の姫松高校からは上重漫選手。』

『上重選手はたまに高い手が入る時があるので、それが来たら決勝進出もあると思います。』

『そうですか、では次です。3位になってしまった白糸台高校からは大星淡選手が登場します。』

『大星選手は火力も申し分無いですし、相手を軒並み悪い配牌にしてしまいますからね。いつでもトップにはなれるのでは無いでしょうか。』

『そして最後に有珠山高校から、岩舘揺杏選手。』

『彼女は今の所目立った活躍がありませんから分からないです。もしかしたら何かを隠している可能性もありますけど、今の所は何も言えません。』

『成る程、ではこの大将戦でどうなるかって感じですね。さて、対局室に選手が揃いました。準決勝、大将戦、その前半戦を開始します!』

 

~場決め結果~

高鴨穩乃:東

上重漫:南

岩舘揺杏:西

大星淡:北

 

~東一局~ 親:高鴨穩乃

阿知賀 131200

姫松 91500

白糸台 91500

有珠山 85800

(白糸台が3位とか、あり得ないでしょ!)

「リーチ。」

(まずは挨拶がわりに一発いっちゃおうか!)

『大星選手、ダブルリーチ!今年もこのダブルリーチに苦しめられてしまうのでしょうか!』

『去年はこのダブルリーチを5回止めていましたけど、今年は何回止められるかで勝敗が決まってくるのでは無いでしょうか。』

~11巡目~

「カン。」

(早速決めてくるんかいな・・・)

(この後跳満以上を和了られちゃう・・・)

「ツモ。ダブリードラ4。3000・6000。」

(やっぱりカン裏が4枚乗っとる・・・)

(これは厳しいかもなー。)

(このままどんどんいっちゃおう!)

~東二局~ 親:上重漫

阿知賀 125200

白糸台 103500

姫松 88500

有珠山 82800

「リーチ。」

(またダブリー!?やっぱりこいつ、化け物やな・・・)

(大星さん、今年も手強い。けどこっちも負けられない!)

~8巡目~

(よし、これで聴牌。大星さんはリーチ掛けてるからこっちも掛ける!)

「リーチ!」

(高鴨穩乃、またこいつが邪魔するのか・・・でも次でカン出来るし、大丈夫・・・ってあれ?カン出来ない、これ、もしかしてまたなの・・・)

「ロン。リーチ一発タンピン三色。12000です。」

(嘘でしょ・・・)

『阿知賀女子高鴨選手、いきなり大星選手の和了りを阻止しました!』

『流石ですね。これは今年も大星選手は高鴨選手に苦しめられそうですね。』

『阿知賀女子が詰められていた点差を引き離しました。今回も準決勝は阿知賀女子が制してしまうのか、それとも白糸台が王者の実力を発揮するのか。はたまた他の2校が逆転大勝利するのか!』

『白糸台は一応、元王者だよ。今の王者は清澄高校だから。』

『あっ、そうでした。すいません。』

『まったく、そういうの気にしてるだろうからちゃんと気を付けてよね。』

『はい、気を付けます。』

~東三局~ 親:岩舘揺杏

阿知賀 137200

白糸台 91500

姫松 88500

有珠山 82800

(一回破られたからってまた破れるとは限らない。まだまだ行けるでしょ!)

「リーチ。」

(うわぁ、親番だってのにダブリーとかマジで勘弁して欲しいんだけどな。)

(もうどんだけダブリーすんねん!こんなん嫌やわ。それに配牌も最悪やし・・・)

~10巡目~

「カン。」

(ほら、今回は上手くいった。このまま和了る!)

(これはヤバいな・・・安牌が無い。親被り以前に直撃されるかもな。)

「ロン。ダブリードラ4。12000。」

(やっぱりか・・・)

~東四局~ 親:大星淡

阿知賀 137200

白糸台 103500

姫松 88500

有珠山 70800

(大星淡の親番は連荘させる訳にはいかないな。それじゃあ使っちゃうか。ホヤウ!)

(あれ、ダブリー出来ない・・・まさかまた高鴨穩乃が!?いや、でも高鴨穩乃はなんか霧みたいなのがかかる感じなんだけど今回はそれがない・・・姫松はそんな事出来ないだろうし、もしかして有珠山?)

(あれ、ダブリーしてこないの?あぁ、ホヤウのお陰で私が悪い配牌じゃないからその影響が大星淡にも出てるって感じかな?ははっドンマイ。ならこっちも攻めてくか。アッコロ!)

~9巡目~

「リーチ。」

(やっぱり有珠山、こいつが何か仕掛けてたんだな!)

(さてと、これは不要牌が萬子になってるだろうから出そうだね。と思ったら阿知賀が出してくれたよ!)

「ロン!リーチ一発混一一通中ドラ2裏3。32000!」

(うわっ、数え役満!?)

(この感じ、なんか見覚えあると思ったら、もしかしてこいつ去年の獅子原爽と同じ能力なんじゃない?まぁ、そうだとしても余裕だけどね。)

(いやぁ、パコロカムイも使おうかと思ったんだけどまさか阿知賀が一発で出してくれるとは思わなかったな。ラッキー!)

『な、なんと、有珠山の岩舘選手が役満を和了って3位に浮上!そしてトップを独走していた阿知賀女子をほぼ原点まで引きずり下ろしました!』

『これは、去年の獅子原爽選手と似たような和了りですね。』

『確かに、これは有珠山もトップを狙えるのでは無いでしょうか?』

『ええ、今みたいな和了が出来れば可能性はありますね。』

~南一局~ 親:高鴨穩乃

阿知賀 105200

白糸台 103500

有珠山 102800

姫松 88500

(まだホヤウが付いてくれてるお陰で大星淡はダブリー出来ないだろうな。それにしても、爽といつも一緒にいたから私にもカムイが助けてくれるようになったとか、マジウケる。いや、笑えない。)

(あっ、なんか良さげな配牌・・・これ、もしかして導火線付いたんちゃうか?)

~姫松高校控え室~

「おっ!漫がええ感じの配牌になっとる!」

「爆発しましたね。」

「何故か分からんけど大星淡がダブリーしてへん間に攻めろ!」

~7巡目~

「ツモ。平和純チャン三色一盃口。4000・8000です。」

(えっ、有珠山じゃなくて姫松・・・?)

(うわっ、危なっ、雲無駄にするところだった。爽もこんな感じに戦ってたのかな?これ、意外と使いどころがムズいよな。)

『なんと、今の上重選手の和了で姫松が一気にトップに浮上!そして親被りの阿知賀女子は一気に最下位に落ちてしまいました!』

『これは、凄い対局ですね・・・』

『目まぐるしい点数移動を制する高校は一体何処なんだ!?』

~南二局~ 親:上重漫

姫松 104500

白糸台 99500

有珠山 98800

阿知賀 97200

(点数がほぼ横並びになった。それに多分、ホヤウがいてくれるのもこの局が最後になるかもしれない。ここは攻めるか。じゃあ白いの!)

(なんでまたダブリー出来ないの!おかしい!こんなのおかしいよ!)

~5巡目~

「リーチ。」

(姫松が5巡目にリーチ!?絶対安全圏も効いてないし。どうなってんのよ!)

「じゃあこっちもリーチで。」

(はぁ?有珠山もリーチ!?なら・・・)

「ポン!」

(鳴いてでもこいつらの和了りを阻止してやる!)

(ごめんね大星淡さん、来ちゃったよ。)

「ツモ。リーチツモ清一。4000・8000!」

『有珠山高校の岩舘選手、今度は索子の清一です!』

『去年の獅子原選手もこのような和了をしていましたね。』

『今度は有珠山がトップに浮上!去年ベスト4だった阿知賀と白糸台が3位と4位になってしまいました!』

『ですが、まだ点差はそこまで大きくありませんから分かりませんよ。』

『これは目が離せない展開になってきた!そして次の局は有珠山の親番だ!』

『この親番をどう切り抜けるかが重要ですね。』

~南三局~ 親:岩舘揺杏

有珠山 115800

姫松 95500

白糸台 95500

阿知賀 93200

(ホヤウが帰ってしまった。まぁかなり良いところまで持ってきたから雲は温存しておこう。いまは大星淡に和了らせとくか。)

(おっ!ダブリー出来んじゃん!)

「リーチ!」

(大星さんがダブルリーチしてきた。)

(これ、もしかして有珠山がよう分からんけど大星淡を止めとったんかな?だとしたらまた大星淡が和了ってくるって事なんか!?)

~12巡目~

「カン。」

(有珠山のよく分かんない奴が終わった今、このスーパーアルティメット淡ちゃんを止められる者は誰一人存在しない!)

「ツモ。ダブリーツモドラ4。3000・6000。」

(うわぁ、親被りかぁ、ちょっとキツいな。でもまだトップだから大丈夫だろ。)

『今度は大星選手のダブリードラ4が炸裂したぁ!さぁ、面白くなってきました!』

『そして次は大星選手の親番ですね。』

『おぉ、これはまた何か波乱が起きそうですね!』

~南四局~ 親:大星淡

有珠山 109800

白糸台 107500

姫松 92500

阿知賀 90200

(あれ、またダブリー出来ない!?いや、でも今回は去年と同じ感覚、やっぱり今年も来るか、高鴨穩乃!)

(おっ、大星淡がダブルリーチしてこない。これはこっちも攻めていこうか。でも勿体無いからまだカムイと雲は使わないでいこう。)

(爆発はしてくれてるはず。せやけど大星淡の配牌5向聴と高鴨穩乃の能力消し的な奴のせいで全く和了れる気がせんわ・・・)

(やっと聴牌・・・)

「リーチ。」

(大星淡がリーチしてきた。でも安牌はあるからこれを切っていけば行けるでしょ。これは通るはず。)

「ロンです。8000。」

(えっ、白糸台じゃなくて阿知賀・・・?)

(高鴨穩乃、また邪魔してきた!やっぱりこいつムカつく!)

『た、大将前半戦終了!今の阿知賀の和了りで有珠山が2位に転落してしまった為、トップは白糸台高校!次いで2位が有珠山高校、そして3位は阿知賀女子、4位は姫松高校という結果になりました。』

『どの高校もトップを狙える実力を持っていて、何処がトップになってもおかしくない対局ですね。目が離せません。』

『興奮覚めやまぬ中ですが、10分間の休憩の後に遂に最終決戦、大将後半戦が始まります!』

 

~大将前半戦結果~

白糸台 106500

有珠山 101800

阿知賀 99200

姫松 92500




次が準決勝の最終決戦です。決勝に進出するのはどの高校になるのか・・・


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第55話《阿知賀編⑰》 大将後半戦

休憩が終わり、対局室に選手が集まってきた。

『さぁ、これが準決勝の最終決戦!この半荘一回で決勝進出か、それとも敗退か、そのどちらかが決まってしまいます!生きるか死ぬか、その決戦が今始まります!準決勝大将後半戦を開始します!』

 

~場決め結果~

上重漫:東

大星淡:南

高鴨穩乃:西

岩舘揺杏:北

 

~東一局~ 親:上重漫

白糸台 106500

有珠山 101800

阿知賀 99200

姫松 92500

(ラスやし親やし頑張りたいけど、大星淡のせいで配牌が悪い。それにダブリーもしてくるんやろな。有珠山も怖いし、縮こまっとく事しか出来ひんわ・・・)

「リーチ。」

(やっぱダブリーしてくるんやな。こっちは最悪の手やのにおかしいやろ・・・)

(あれを使うにはまだ早いかな~。まぁ、様子を見つつって感じかな。)

~12巡目~

「カン。」

(うわ、カンまでされてしもた。この後に和了られたら跳満以上が来る。)

(ま、今回はやられるだろうな~、阿知賀も何もしてなさそうだし。)

「ツモ。ダブリーツモドラ4。3000・6000。」

『大将後半戦最初の和了りは白糸台高校の大星選手です!』

『2位との差を広げましたね。この調子で行ければ決勝進出も大丈夫かと思います。』

『それに比べて現在4位の姫松高校は親被りで更に点差が広がってしまい、厳しい状況ですね。』

『確かに姫松高校は何か大きい和了が無ければ厳しいかも知れませんね。』

『そうですね、さぁ、次は大星選手の親番だぁ!このまま独走状態になってしまうのか!?』

~東二局~ 親:大星淡

白糸台 118500

有珠山 98800

阿知賀 96200

姫松 86500

「リーチ。」

(またダブリーかよ。まぁ、ホヤウがいないから阿知賀の人しか止められないしな。これキツいな・・・)

(やっぱり手が重くて全然和了れる気がせえへんわ・・・)

~13巡目~

「カン。」

(まーたカンしてきやがった。今回はもう止められないからスルーするけど、これ以上連荘されると困るから次は仕掛けるか。)

「ツモ。ダブリーツモドラ4。6000オール。」

(覚悟しとけよ大星淡!)

~東二局一本場~ 親:大星淡

白糸台 136500

有珠山 92800

阿知賀 90200

姫松 80500

(さてと、いっちゃおうか!白いの!これで索子がにょきにょき来てくれる。)

「リーチ。」

(雲使ってもダブリーは出来るのか。やっぱホヤウじゃないと止められないのかな?いいけど。)

~9巡目~

(やばっ!何これめっちゃ索子来るんだけど!やっぱり雲とカムイ強すぎっしょ!じゃあ削りたい大星淡にパコロカムイ使っちゃうか。丁度リーチ掛けてくれてるし。パコロカムイ!)

「リーチ。」

(リーチしたって無駄だよ。私が和了るんだから。よし、これでカン・・・出来ない!?どうして・・・?今回は高鴨穩乃のあの感じは無かったはず。だとしたら有珠山!?まさか・・・)

「ロン。リーチ一発一通清一赤1。24300。」

(こいつ・・・!100回倒す!)

~東三局~ 親:高鴨穩乃

有珠山 117100

白糸台 112200

阿知賀 90200

姫松 80500

(岩舘揺杏、これ以上好き勝手させない!この最強ウルトラ淡ちゃんが負ける訳無いんだから!)

「リーチ。」

(ダブリーもちゃんと出来てるし、いける!)

(今ここで雲かカムイを使う事も出来なくは無いけどこれ以上使ったら決勝進出しても決勝でボロ負けするだけだからな。まぁ、決勝進出する方が大事って考えた爽は温存してなかったけどね。でも私は優勝しか見ていないからさ、温存して決勝に行って尚且つ決勝も勝つ!)

~11巡目~

「カン。」

(よし、岩舘揺杏は何もしてなさそうだしいける!)

(カンされてしもただけやなくて安牌も無いわ・・・)

「ロン。ダブリードラ4。12000。」

(最悪や・・・)

~東四局~ 親:岩舘揺杏

白糸台 124200

有珠山 117100

阿知賀 90200

姫松 68500

(あれ、ダブリー出来ない!?しかも今回のこの嫌な感じは、高鴨穩乃!注意しなくちゃ!)

(あれ、ダブリーしてこない。もしかしてまた有珠山が何かしたんか?それとも阿知賀が動いたんかな?)

(ダブリーしてこないっつう事は阿知賀が来てるって事だよな~。まぁ、そこそこ点差もあるから大丈夫っしょ。油断はしねぇけど。)

~4巡目~

「ツモ。清一ドラ1。4000・8000です。」

(うわっ、倍満とかマジかよ・・・)

(しかも4巡目!?やっぱり私の絶対安全圏が効いてない!)

(阿知賀、今年も白糸台を上回るつもりなんやろうか・・・?)

~南一局~ 親:上重漫

白糸台 120200

有珠山 109100

阿知賀 106200

姫松 64500

(うっ、またダブリー出来ない・・・高鴨穩乃、ホントに面倒臭い!実力無いくせに!)

(今回も大星淡はダブリーしてこないのか。なら阿知賀に注意しなくちゃな。)

~5巡目~

(やっと聴牌出来た。)

「リーチ。」

(うわっ、リーチしてくんのかよ。なら安牌出してくか・・・)

「ロン。タンヤオ三暗刻ドラドラ。8000です。」

(えっ、阿知賀!?大星淡ばっかり気にしてたら阿知賀からやられた・・・)

(また高鴨穩乃!?でもヤバい一撃が来るかもしれない有珠山が落ちてくれるのは助かる。かと言って高鴨穩乃も危険だけどね・・・)

~南二局~ 親:大星淡

白糸台 119200

阿知賀 115200

有珠山 101100

姫松 64500

(お、今回はダブリー出来るじゃん!)

(大星淡の親番、ここで連荘されるのは流石に厄介だな。ならあれを使っちゃうか。ごめんね?大星淡。私は爽とは違って優しくないんだよね。だから使っちゃうよ。パウチカムイ!)

「ひゃぅ!んんっ!」

(えっ、大星さん、どうしたんだろう・・・?)

(ちょっと、何よこれ!?なんか・・・あぁ!変な気分に・・・んんっ!なる・・・ダブリー出来なかった。というか・・・いやぁ・・・力入んない・・・)

(うわっ、大星淡ってあんな声出るんだ。可愛い顔してる上にあんな可愛い声も出るなんて・・・お姉さんちょっと興奮しちゃったよ!)

(これ、絶対岩舘揺杏の仕業でしょ・・・ってこいつ!めっちゃこっち見てニヤニヤしてる!100回じゃ許せない!1000回倒す!絶対1000回倒す!んぁあっ!何なのこれ!)

(あれ、なんだか良さげやな・・・これ、いけるかもしれへんな。よう分からんけど大星淡も調子悪そうやし頑張ってみよ!)

「ポン!」

(えっ、姫松?大差で負けてんだからおとなしくしてなさいよ!んっ!もういやぁ!)

(ヤバい!大星淡が悶えながら打ってんのが可愛くて可笑しくて集中出来ない。私までパウチカムイの影響受けてんじゃん!マジウケる。いや、これはマジで笑えない。)

「ツモ!混老三色同刻三暗刻対々ドラ3。6000・12000!」

(はぁ・・・はぁ・・・やっと、終わった・・・)

(うわっ、めっちゃ高い手和了られちゃった。でも大星淡が可愛かったからいいか。いやー、動画撮ってたら高く売れただろうな。インターハイで活躍している大星淡選手が悶えながら麻雀を打つ。絶対売れる!超勿体無い事したな。今度ユキにやってみようかな?やった後に殺されそうだけど。)

~南三局~ 親:高鴨穩乃

阿知賀 109200

白糸台 107200

有珠山 95100

姫松 88500

(はぁ・・・凄い疲労感・・・それより、阿知賀に逆転されてるし!今年も阿知賀に負けるとかマジであり得ないから!)

「リーチ。」

(絶対勝つ!)

(またダブリーしてくるのか。というか、パウチカムイ使った直後なのによくやるなぁ。負けず嫌いなのかな?)

(あっ、一発で来た。和了っちゃおうか。)

「ツモ。ダブリー一発ツモ。2000・4000。」

(わぉ!まさかのダブリー一発ツモ!しかし、これはヤバいかもな。このままだとうちが3位になる。)

(次で和了れんかったら負けてまう・・・)

~南四局~ 親:岩舘揺杏

白糸台 115200

阿知賀 105200

有珠山 93100

姫松 86500

(またダブリー出来ない。でもこれは最後の局だから高鴨穩乃に警戒して最速で和了る!)

~3巡目~

「チー。」

(えっ、大星淡が鳴いてきた!?こいつ、負けない為にカン裏っていう自分の武器を捨ててまで速さで勝とうとしてる。マジでヤバいな・・・)

~5巡目~

(阿知賀が私の和了り牌を出した!でもこれだと中ドラ2の3900だから阿知賀が残る。でも有珠山もまだ何か残してそうだし、第一またあれをされるのも嫌だし、更に言ったらここで和了らなくて高鴨穩乃に逆転されたら嫌だし、和了る。)

「ロン。3900。」

(うわっ、追い付けなかったか。)

(くそっ、やられた・・・)

(負けた・・・)

『大将戦終了ぉぉぉ!!!!決勝に進出するのは白糸台高校と阿知賀女子学園です!』

『大星選手、今年は何とかトップを維持しましたね。』

『残念ながら有珠山高校と姫松高校は敗退になってしまいましたがどの高校も素晴らしい闘牌でした!』

 

~準決勝結果~

白糸台 119100 決勝進出

阿知賀 101300 決勝進出

有珠山 93100

姫松 86500

 

 

(はぁ、勝てなかったか・・・いけると思ったんだけどな。じゃあ、控え室戻るか。)

「ちょっと待て!岩舘揺杏!」

(あっ、ヤバい奴だこれ・・・)

「どうしたの?」

「あんた、南二局で何したの!」

「あー、あれか。気持ち良かった?」

「はぁぁぁぁ???あんなの気持ちいい訳無いでしょ!」

「いやー、でもめっちゃ気持ち良さそうに喘いでたじゃん。」

「はぁぁぁぁ???どこが!あんなの全っ然気持ち良く無い!」

「いやーでもめっちゃ可愛かったよ?」

「うっさいわ!今それ言われてもこれっぽっちも嬉しくないわ!」

「はいはい、すいませんねー。」

「あんた、個人戦でもあんな事したら1000回、いや、10000回倒すから!」

「おぉこわ。じゃあ私は帰るんで、決勝進出おめでとう。」

「あっ!ちょっと!まだ話は終わってない!って、逃げ足速っ!んもぅ!覚えてなさいよ!岩舘揺杏!」

 

 

穩乃が控え室に戻り、阿知賀女子はホテルへと戻ろうとしていた。

「高鴨先輩、本当に危うかったですよ。もうちょっとで有珠山に抜かされてましたからね?というか優勝するには白糸台に勝たないと駄目なんですからね?分かってます?」

「分かってるって。今は決勝に進出出来る事を素直に喜ばせてよ。」

「いや、でも決勝には白糸台だけじゃなくて清澄か臨海か千里山か新道寺が来るんですよ?どこも強豪です。そんなんで大丈夫なんですか?」

「あーもう分かった分かったから!」

「もう、大将なんですからちゃんとしてくださいよ。」

「はいはい。」

白達が話していると、前方にいる5人の女子が白の事を見ていた。

「天理白!」

「あら、早乙女友理奈に六女仙に姫様まで。どうされたんですか?」

「えっ、この人達永水の人達だよね?どうして白の事知ってるの?」

「あれ、先輩方に言ってませんでしたっけ?あたし、中学までは鹿児島にいたんですよ?」

「えええぇぇぇぇ!!!!!???初耳なんだけど!?」

「あれ、誰も知らなかったの?」

「ハルちゃん、知ってたの?」

「まぁ、白はインターミドルで活躍してたし、強化の為に色々とデータ取ったりしてたし。」

「言われてみればそうだわ!あたし、そういえば白がインターミドル4位って言った時にどこか疑問に思ってたの、そういえばインターミドルの決勝見た時に『4人とも阿知賀には来ないだろうな~』とか思ってたわ。」

「まぁ、それはそうとして、どうして阿知賀に来たの?」

「そりゃあ、強豪校に入りたかったからですよ。」

「えっ、それなら天理白も永水に来れば良かったじゃん!」

「いや、永水には絶対に入りたくない。」

「えっ、どうして?」

「どうして?そんなの、決まってるじゃん。六女仙と姫様が嫌いだからだよ。」

「はぁ?どうして姫様達が嫌いなんだよ。」

「あたし、実は六女仙になり損ねた者なの。まぁ、はぐれ六女仙って感じ。」

「えっ・・・」

「そうなの!?」

「はい、あたしは六女仙になり損ねたので六女仙と姫様が嫌いでした。だから六女仙が通っている永水女子には行きたくなかったし永水女子には全国大会にも行って欲しく無かった。」

「それだからインターミドルで天理白と対局した時に私ばっかり狙ってたのか。」

「そう。だから三年間私が鹿児島1位で2位が早乙女友理奈、貴女だった。今年も永水は倒すつもりだったんだけど残念ながら永水は負けちゃったみたいだから団体で直接潰す事は出来ないけど、個人戦では永水の誰に当たろうと全員倒しますから。覚悟しといて下さい。では、私達は決勝を控えているのでこれで失礼します。行きましょう皆さん。」

「あ、ああ。」

「うん、そうだね。」

「永水の皆さんすみませんでした。」

「いえ、お気になさらず。」

「じゃあ皆、帰るわよ。」

「はい。」

(永水女子、本当は先輩達と一緒に倒したかったけど、無理になっちゃったから、個人戦で立ちはだかった時は姫様だろうと早乙女友理奈だろうと倒すから!)




淡ちゃんの喋り方がところどころおかしい気がしますけど気にしないで下さい・・・
対局でパウチカムイを使いたかったので使いました。
次回から視点を清澄に戻して準決勝を開始します。


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第56話 先鋒前半戦

話は清澄サイドに戻ります。久々に千里山女子のメンバーが出てきますが、『千里山のメンバーってどんなのだか忘れた』という方は千里山編をご覧になってくだされば、おさらい?が出来ると思います。


阿知賀女子らの準決勝が終わり、清澄高校らの準決勝が始まろうとしていた。各校が各々の控え室に行き、準決勝の対策をしていた。

「よし、タコスぢからフルチャージだじぇ!」

「片岡先輩、昨日言った事、気をつけて下さいね。」

「分かってるじぇ。臨海の先鋒に気をつけてばいいんだろ?任せるじぇ!東場で引き離せばいいんだじょ!」

「優希ちゃん頑張ってね!」

「頑張って下さい優希!」

「任せろ!じゃあ、行ってくるじぇ!」

~千里山高校控え室~

「今回の先鋒戦で一番厄介な臨海の先鋒、四季縁(しきゆかり)やな。」

「でもあいつ、たまにめちゃくちゃ配牌悪い時あるやん?あれはなんなん?」

「そこら辺なんかも含めて四季縁のデータを集めました。」

「おぉ!流石舟Qやな。で、どんな感じなん?」

「簡単に言うと、東一局と南一局は春、東二局と南二局は夏、東三局と南三局は秋、東四局と南四局は冬、と言った感じですかね。」

「名前のまんまやな。」

「そうです、四季折々の手が出来ますね。まさに四季縁ですね。」

「悪い、全っ然訳が分からんわ。春夏秋冬が何なのかも分からん。」

「まぁまぁ、それを今から言うから。春は芽吹きの季節、索子の清一の手が出来ます。そして夏は高温の季節、倍満以上の高火力の手が出来ます。続いて秋は紅葉の季節、中と萬子の混一の手が出来ます。最後に冬は冬眠の季節、絶対に和了れない代わりに絶対に振り込まない。こういった感じです。」

「なんか夏だけ極端に適当な気がするんやけど・・・」

「いや、せやけど本当にこんな感じやからそんな事言われても困るわ。」

「まぁ、せやな。」

「せやから望にはラス親になった時に頑張って貰いたいんや。」

「どうしてですか?」

「四季縁は正直めっちゃ強い。だから春と夏と秋は望の能力的に分が悪い。だから四季縁が絶対に和了らない東四局と南四局で頑張るんや。そしたらもしかしたらトップで決勝進出するかもしれんしな。」

「確かに、頑張ります!」

「おー、気張りや~。」

「はい!行ってきます!」

~臨海女子控え室~

「ユカリ頑張れ~!」

「あぁ、では行くとするか。」

「それにしても、千里山の先鋒の人、もし縁さんが冬の時に親番だったら危ないんじゃないですか?」

「いや、大丈夫だよ、それまでにはかなり点差があるだろうから2位で決勝には行ける。」

「え、もしかして縁さん、千里山の先鋒の人を自由に和了らせちゃうんですか!?」

「私はそれでも構わないと思っている。清澄高校を決勝に進ませずに済むのなら。」

「あぁ、夢乃マホさんですか。」

「そうだ。清澄高校は中堅まで回ってしまったら勝てない可能性が高い。だから準決勝で千里山に負けるとしても、清澄を落とせるなら、私はその結果を受け入れるつもりだよ。」

「まぁ、縁さんがそう言うなら私達はそれに従います。」

「確かに清澄より千里山が来た方が圧倒的に優勝出来そうだもんね。」

「そういう事だ、じゃあ私は先鋒戦に行ってくるよ。」

「頑張って下さい!」

「頑張れ~!」

「あぁ。」

 

 

『本日は準決勝のBブロックの試合をお届けします。実況は私、針生えり、そしてもはや解説になっていなくてただいるだけのマスコットと化している三尋木プロです。』

『はっはっはっ!面白い事言うね~!』

『いやいや、貴女、プロなのにここまで言われて何も思わないんですか?』

『えー、だって実際そうだし、今回もそんな感じにするつもりだし。』

『ちゃんと解説して下さい!』

『はいはい、分かったから、選手紹介行っちゃって。』

『なんで私が悪いみたいな感じにしてるんですか!まぁ、選手紹介にいきますか。まずは前年度優勝校の清澄高校、先鋒の片岡優希選手です。彼女についてはどう思いますか?』

『わっかんねぃぃいいいてててててて!痛い!分かったから耳つねるの止めて!』

『ちゃんと解説して下さいって言ったじゃないですか!』

『分かったから・・・』

『じゃあもう一度聞きます、片岡選手についてはどう思いますか?』

『わっかんねぇ!あぁ!耳つねろうとしないで!分かったから!』

『今の、わざとですよね・・・?これ以上ふざけたら、分かってますね・・・?』

『ひぃぃぃ!分かったから!もう分かんねぇとか言わないから!だから耳つねろうとしないで!』

『じゃあ三度目の正直ですよ、清澄高校の片岡選手はどうですか?』

『東場、めっちゃ強い、南場、失速する。東場の点、守れるか、重要。』

『なんでカタコトになってるんですか・・・別にわかんねぇとかさえ言わなければ怒りませんよ。じゃあ次、臨海女子高校の先鋒、四季縁選手。彼女についてはどう思いますか?』

『そーだねぇ、東四局と南四局に和了れないって所を除けばかなり良いんじゃないかな。』

『え、そうなんですか?』

『うん、あれ?知らなかった?』

『分からなかったですね。というか、そういうのちゃんと把握してるならちゃんと解説もして下さいよ・・・』

『はいはい。』

『まったくもう、じゃあ次です。千里山女子高校の先鋒、上野望選手です。』

『この子はもう言わずもがななんじゃないかねぇ、あのカウントダウンみたいなやつやられたら誰も勝てないよねぇ。』

『確かに、どうしてああなるのかは分からないですけど凄いですよね。あれは防ぎようが無いですよね。』

『まぁ、せめて4向聴くらいには止めないとやられちゃうよねぇ。』

『そうですね、じゃあ最後に新道寺女子高校の先鋒、花田煌選手はどう思いますか?』

『うーん、守るのは得意だと思うんだけどねぇ・・・』

『そうですか、では選手が対局室に集まりましたので、先鋒戦を開始致します。』

 

 

優希が対局室に着いた。そこには望がいた。

「あ、清澄の片岡さん、今回もよろしくです。」

「おう、よろしくな!」

「おや、片岡さんじゃないですか!」

「あっ、花田先輩!お久しぶりだじぇ!」

「まさか片岡さんとまた対局する事が出来るなんて、しかもこんな大舞台で。すばらです!」

「私も驚きだじぇ!」

「今回は片岡さんと言えど手加減はしませんよ!」

「私も先輩だからって遠慮はしないじぇ!全力で花田先輩を倒すじぇ!」

「お互いに頑張りましょうね。私も負けませんよ~!」

煌と優希が話していると、縁が対局室に現れた。

(あれが、マホちゃんと咲ちゃんが言ってた四季縁だじぇ・・・)

「おや、四季さん、今日こそは負けませんよ!」

「そうですか、それは楽しみにしています。そして上野望さん、今日はよろしくお願いします。」

「よろしくです。」

「じゃあ早速始めましょうか。」

 

~場決め結果~

片岡優希:東

上野望:南

花田煌:西

四季縁:北

 

 

~東一局~ 親:片岡優希

清澄 100000

千里山 100000

新道寺 100000

臨海 100000

(ラス親になってしまいましたか・・・これでは最高で6回しか和了出来ない。ならばその6回を確実に・・・)

~5巡目~

(やっと聴牌出来たじぇ。まずは一撃かますじぇ!)

「親リーチ、行っくじぇ!」

「ロン。清一一通。16000です。」

(ふぇ!?いきなり倍満!?そういえばマホちゃんが東一局と南一局は索子に注意して下さいって言ってたじぇ。でもまだ5巡目なのにこんなのが出来てるなんて、誰も思わないじょ・・・)

『準決勝最初の和了りはやはり臨海女子の四季選手です!』

『早い上に手も高い。申し分ないねぇ。』

~東二局~ 親:上野望

臨海 116000

千里山 100000

新道寺 100000

清澄 84000

~3巡目~

「ポン。」

(臨海が中を鳴いた。マホちゃんが言ってた。二局の時は倍満以上がくる。特に字牌を鳴いた時は役満に注意だって・・・じゃあこれは大三元が来るかもしれないって事か!?怖すぎだじぇ、ならこの白は切れないじぇ、ならこっちで。)

「ロン。小三元混一対々。16000です。」

(また~!?しかも、あのまま白を出してたら本当に大三元だったじぇ!というか、安目を見逃して大三元を目指すとか、やって欲しかったじぇ・・・)

『清澄高校片岡選手、2連続で臨海に倍満を直撃されてしまいました。』

『うわー、臨海強いねぇ!もはや清澄が可哀想だねぇ。』

『この後はどうなってしまうのでしょう!?』

~東三局~ 親:花田煌

臨海 132000

千里山 100000

新道寺 100000

清澄 68000

(これは、あからさまに片岡さんを狙い撃ちしていますね。このまま行くと片岡さんが飛ばされてしまうかもしれませんね。)

(清澄、いくら夢乃マホがヤバいからってちょっと可哀想やな。まぁ、私は6向聴やから何も助ける事出来んけどな・・・)

(このままだと、ヤバいじぇ・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(もう出来上がったんか!?一発でツモられたりしたら面倒やな。ずらすか・・・)

「チー。」

(あら、鳴かれてしまいましたか。でも良いです。打点は下がってしまいますけど、和了出来れば十分なので。)

「ツモ。リーチツモ中混一ドラ1。3000・6000です。」

(一発ツモだったらまた倍満だったのか・・・こわこわだじぇ・・・)

(この人、本当にヤバいな・・・)

「これは、また四季さんにやられてしまいそうですね。)

『三連想倍満は流石にありませんでしたね。』

『まぁ、それでも跳満は和了られちゃってるけどねぇ。』

『そうですね。でも次の局は確か四季選手は和了らないんですよね?』

『まぁ、和了らないけど、その局は放銃もしないんだよねぇ。和了らない代わりに放銃しないって感じかいね。』

『そうですか、これくらい安定して和了れるなら放銃しないっていうのはかなり戦い易いですね。』

『そうだねぇ。』

(なんだ、この人、やっぱりちゃんと解説出来てる!脅す前からこうして欲しかったけど、このままの調子で言ってくれればとても有意義な時間になりそう。)

~東四局~ 親:四季縁

臨海 144000

千里山 97000

新道寺 94000

清澄 65000

(この局は四季縁が何もしないって舟久保先輩が言っとった。ここで和了ってカウントダウンやれば行ける!)

(この局で和了らないと、部長やマホちゃんに負担が掛かっちゃうじぇ・・・でもまだ東場だじょ。まだまだ行けるじぇ!)

~6巡目~

「リーチだじぇ!」

(やっぱり、四季さんが来なくなると、東場ですし片岡さんが来ますよね。これは一発で和了られちゃうかな~。)

(まだ3向聴やからそういうリーチとか止めて欲しいんやけど・・・)

「ツモだじぇ!リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1。4000・8000だじぇ!」

(やはり和了られましたか・・・片岡さん、すばらです!)

『一人沈み状態だった片岡選手が倍満ツモで持ち返しました!』

『おぉ、やるねぇ。やっぱり東場は和了っとかないと南場で和了れないからねぇ。』

『そうですね。』

~南一局~ 親:片岡優希

臨海 136000

千里山 93000

新道寺 90000

清澄 81000

(さて、冬が終わってまた春が来た。また冬が来るまで点を蓄えなければな。)

~7巡目~

「ツモ。一盃口清一。4000・8000です。」

(もはや当たり前のように倍満和了ってくるんやな・・・)

(この人、どうにか止められないんですかね・・・)

(このままじゃ、本当にヤバいじぇ・・・)

~観戦室~

観戦室ではマホの噂を聞き付けて、マホの対局を見ようと様々な人がこの準決勝を見に来ていた。

「ねぇ爽、あの臨海の人、まるで爽みたいよね。」

「あぁ、確かにあれは私の雲とかカムイの力に似てるな。特に索子の清一とか中と萬子の混一とか。まぁ、私のアッコロは自分の手牌だけじゃなくて裏ドラも相手の不要牌も萬子になるから圧倒的に私の方が強いけどな!」

「あぁそう、勝手に言ってなさい・・・」

~南二局~ 親:上野望

臨海 152000

千里山 89000

新道寺 86000

清澄 73000

「リーチ。」

(はっ!?ダブリー!?)

(ヤバすぎやろ・・・)

(こんなの、当たったら事故だってーの!)

「ロン。ダブリー一発純チャン三色。16000です。」

「すばら!?」

(もはや付け入る隙がない・・・これが今年の臨海のエースの実力なんか・・・)

(花田先輩、最下位になっちゃったじぇ・・・)

~南三局~ 親:花田煌

臨海 168000

千里山 89000

清澄 73000

新道寺 70000

(次は確か、萬子と中の混一。萬子を出さなければ放銃する事はまずないはず。)

(流石に2連続ダブリーはしてこないか・・・)

~6巡目~

「ツモ。混一中ドラ1。3000・6000です。」

(だから当たり前のようにそんな高い手を和了るな!なんなんやこの化け物は・・・)

(どんどん引き離されていくじぇ・・・)

~南四局~ 親:四季縁

臨海 180000

千里山 86000

清澄 70000

新道寺 64000

(さて、ここは踏ん張り時ですね。四季さんは和了らないですし片岡さんは南場なので失速しています。それに千里山の方はもう親番が無いからでしょうか?全く和了る気がしないですね。これは大チャンスですよ!ゆっくりとすばらな手を作ります!)

~11巡目~

「リーチ!」

(花田先輩がリーチしたじぇ。)

(うわぁ、変な捨て牌やわ、何出して良いか分からんわ。とりあえずスジで・・・)

「ロン!リーチ一発三色同刻三暗刻対々。16000です!」

(ツモなら役満でしたけど、流局しそうでしたし、仕方ないですね。でも何にせよ、見事2位浮上です!すばら!)

『先鋒前半戦終了!最後に新道寺の花田選手が倍満を和了り、一気に2位に浮上しました。』

『今回の先鋒戦は凄いねぇ、半荘一回で6回も倍満が出るなんて。』

『本当にそうですね。これは後半戦も期待ですね!』

 

~先鋒前半戦結果~

臨海 180000

新道寺 80000

清澄 70000

千里山 70000



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第57話 先鋒後半戦

活動報告でも行ったのですが、ツイッターを始めました。@maho_kannagiです。フォローお願いします!


前半戦が終わり、後半戦が始まろうとしていた。

『さぁ、先鋒後半戦開始です!』

 

~場決め結果~

花田煌:東

片岡優希:南

四季縁:西

上野望:北

 

~東一局~ 親:花田煌

臨海 180000

新道寺 80000

清澄 70000

千里山 70000

(おっ、ラス親になれた!これで臨海が何も出来ない時にカウントダウンかませば少なくとも2抜けは出来そうやな。よしっ、きばるで!)

(こうなったか・・・まぁ、どんな事が起きようと私は私を貫く。)

~5巡目~

「リーチ。」

(早っ・・・)

(また倍満以上を和了られる・・・)

(これはヤバいかもしれませんね・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ清一一通。6000・12000です。」

(すばら!?)

(三倍満!?こいつ、とどまる事を知らんのか?2位と10万点差があるっちゅうのにまだ稼ぎ足りん言うんか!?)

(ヤバ過ぎだじぇ・・・)

『臨海の四季選手、いきなり三倍満和了です!』

『この人、やっぱり凄いねぇ。』

~東二局~親:片岡優希

臨海 204000

新道寺 68000

清澄 64000

千里山 64000

(臨海が倍満以上を和了ってくる二局での親番はキツいじょ・・・)

~7巡目~

(あれ?臨海が何もしてこないじょ、どうしたんだ?あっ、この捨て牌、もしかして・・・!)

(これは、危ないですね・・・)

「ツモ。国士無双。8000・16000です。」

(やっぱり国士無双だったじぇ!役満親被りとか、キツすぎだじょ・・・)

(7巡目で国士無双とは・・・すばらです・・・)

(こんなん無理やん・・・)

『四季選手、まさかの役満和了です!』

『二回戦でも役満和了ってたからまさかとは思ってたけどこんな簡単に役満和了っちゃうんだねぇ。』

『そうですね、しかも次は四季選手の親番です!』

『うわぁ、まるで地獄だねぇ。』

~東三局~ 親:四季縁

臨海 236000

新道寺 60000

千里山 56000

清澄 48000

(これは、四季さんに連荘されたら、片岡さんが飛んでしまって終わってしまいますね。ここは、誰も飛ばさせない事で定評がある私の腕の見せ所ですね!)

「ポン!」

(新道寺に鳴かれた・・・これは、連荘を止められるかもしれないな。)

(花田先輩が連荘を止めようとしてる、なら私も頑張るじぇ!)

「チーだじぇ!」

(清澄も来ている。しかし点差も十分あるし鳴いてるなら高くも無いはず。攻めるか。)

「リーチ。」

「ロンだじぇ!タンヤオ三色ドラ4。12000だじぇ!」

(ドラ2枚に赤2枚でドラ4!?やはり昨年の優勝校のメンバーは侮れないな。)

(まさか跳満直撃とは!片岡さん、すばらです!)

(このままどんどん行くじぇ!)

『な、なんと、清澄高校片岡選手が四季選手に連荘させる事なく流しました!』

『これは素直に凄いねぇ。ここを止められたのはかなりデカいんじゃないかな~?』

~東四局~ 親:上野望

臨海 224000

新道寺 60000

清澄 60000

千里山 56000

(この局は臨海が和了ってこない。それにこの配牌ならいけるじぇ!)

(片岡さん、調子良さげですね。)

(この親番は清澄が乗ってきてるから和了れんやろな・・・次の親番で決めるで!)

~5巡目~

「リーチだじぇ!」

(やはり清澄が来るか・・・)

(これは一発で和了られそうですね~。)

(私じゃ東場の清澄は止められんし、何も出来んわ。)

「ツモだじぇ!メンタンピン一発ツモ三色ドラ1、4000・8000だじぇ!」

(うわぁ、倍満親被りとか・・・清澄の片岡って、ここぞって時に決めてくるよな。)

(二連続和了すばらです!片岡さん!私も負けていられませんね!)

(清澄・・・これ以上好き勝手はさせられないな。)

~南一局~ 親:花田煌

臨海 220000

清澄 76000

新道寺 56000

千里山 48000

(ここからまた倍満ばっかり和了られるじょ・・・東場も終わったし、キツいじぇ・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(こいつ、まだ稼ぐんか!三人同時飛ばしでもするつもりなんかな?)

(また和了られちゃうじぇ・・・)

「ポン!」

(花田先輩が一発消ししてくれたじぇ!でも、ツモなら倍満は避けられないじぇ・・・)

「ツモ。リーチツモ清一。4000・8000。」

(点数は変えられませんでしたか・・・でも、何も出来ずに和了られるよりかは幾分マシです!ここはポジティブに考えていきましょう!)

~南二局~ 親:片岡優希

臨海 236000

清澄 72000

新道寺 48000

千里山 44000

(この局を凌がないと危険だじぇ。こいつ、平気で役満和了ってくるからな。)

(よしっ、ここからは私が止めますよ!)

「ポン!」

(花田先輩が止めようとしてる。でもこっちは何も出来そうにないじぇ・・・)

「ポン!」

(新道寺のせいでツモ番が来ない・・・)

「ポン!」

(また・・・)

(これはもしかして・・・掴まされたのか?)

「ロン!タンヤオ対々ドラ3。12000です!」

(まさか二回も直撃を受けるとは・・・やはり師匠、辻垣内先輩とは違って私は弱いな・・・)

~南三局~ 親:四季縁

臨海 224000

清澄 72000

新道寺 60000

千里山 44000

(臨海の親、この親番を何とかしなくてはいけませんね。)

~3巡目~

「ポン!」

(また新道寺・・・予想以上に鬱陶しいな、なら、こうしたらどうする?)

「リーチ。」

(そう来ましたか・・・ですが!)

「ポン!」

(私は止めませんよ!)

(まさかリーチを掛けても止めないとは・・・その根性は素晴らしいな。その根性があるから絶対に飛ばないのかもな。)

「リーチだじぇ!」

(えっ、清澄がリーチ・・・?そうか、新道寺が鳴いていたから清澄のツモ番が増えていたのか・・・しかしこのツモ牌、清澄に当たりそうだな・・・)

「ロンだじぇ!リーチ一発混一で8000だじぇ!」

(ここまで清澄が厄介だとは思わなかったな・・・)

~南四局~ 親:上野望

臨海 215000

清澄 81000

新道寺 60000

千里山 44000

(この局は和了出来ない・・・こうなったら千里山を支援する。)

~5巡目~

「ポン。」

(臨海が鳴かせてくれた。これで2向聴!このまま攻めるで!)

~7巡目~

「チー。」

(また臨海が鳴かせてくれた。)

~8巡目~

「ポン。」

(よしっ、これで聴牌!まさか臨海が三回も鳴かせてくれるとはな・・・これはいけるで!)

~清澄高校控え室~

「これ、四季縁さんが千里山を援護してマホ達を敗退させようとしてます!」

「えっ、どういう事?」

「マホちゃん、何を訳の分からない事を言っているんですか。」

「四季縁さんが四局の時は和了り牌だけじゃなくて副露牌も止めてたんですよ!もしかしたらこれを出したら鳴かれるとかが分かっていると思うんです。そんな四季縁さんが三回も鳴かせたんですよ?」

「そっか、カウントダウンで終わらせようとしてるのかも・・・」

「これは、厳しいかもしれんな・・・」

~対局室~

「ろ、ロン!タンヤオのみ、1500です!」

(まさかとは思っていましたけど、援護の為とは言え四季さんが放銃するとは・・・)

(こいつ、本気でうちを飛ばそうとしてるじぇ・・・)

(よしっ、カウントダウン5!)

~南四局一本場~ 親:上野望

臨海 213500

清澄 81000

新道寺 60000

千里山 45500

~5巡目~

「リーチ。」

(やっぱり5巡目でリーチしてきましたね・・・)

(これはヤバいじぇ・・・)

(さっきカウントダウンが成功したんは臨海がわざと鳴かせてくれたからやって事は私が一番分かっとる。けど、この千載一遇のチャンス、物にせんでどうするっちゅう話や!思う存分和了らせて貰うで!)

「ツモ。リーチ一発ツモ清一一通。12100オール!」

(三倍満!?すばら・・・)

(やっぱりこいつ、最初のカウントダウンは火力が高いじょ・・・)

(いける!いけるで!カウントダウン4!)

『三尋木プロ、本当にカウントダウンが始まっちゃいましたよ!』

『これは、次に止められなきゃヤバいかもねぇ。』

~南四局二本場~ 親:上野望

臨海 201400

千里山 81800

清澄 68900

新道寺 47900

(このままではやられてしまいますね。ここは、高遠原中学の底力を見せつけるしかありませんね!)

「ポン!」

(ツモ番が飛ばされた・・・でも、大丈夫やろ、今の私ならいける!)

~5巡目~

「リーチ。」

(くっ、こいつ、止められないのか・・・)

「ポン!」一発を消す事しか出来ないですね・・・)

(千里山の和了り牌を出してあげましょうか。そうすればもう彼女を止められないでしょうから。・・・ってあれ?何故和了らない!?)

(あっ、今一瞬眉が動いてたじぇ。今の、和了り牌なのか?もしかしてまた見逃したのか!?)

(でも和了らないのでしたら私が頂きます!)

「ポン!」

(えっ、まさか・・・)

(花田先輩、ありがとうだじぇ、お陰で来てくれたじぇ!)

「ツモだじぇ!タンピンツモ三色ドラ1で3200・6200だじぇ!」

(嘘・・・今の臨海のを和了っとったら・・・嘘やろ・・・)

(片岡さん、すばらです!片岡さんならやってくれると思っていました!)

(まさか、止められるとは・・・清澄と新道寺、侮れないな・・・)

『先鋒戦、終了!清澄高校の片岡選手が上野選手の連荘を止めて終わらせました!』

『いやぁ、今のは凄かったねぇ。』

『そうですね、新道寺の花田選手との連携が上手く機能していましたね。』

『それにしても、ツモ和了りに拘って和了らないのはやっぱり良くないね。』

『そうですね・・・さて、先鋒戦が終わり、この後は次鋒戦を行います!』

 

~先鋒戦結果~

臨海 198200

清澄 82500

千里山 74600

新道寺 44700



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第58話 次鋒前半戦

諸事情により昨日投稿出来ませんでした。申し訳ありません。来週からはちゃんと月曜日に投稿します。


先鋒戦が終わり、各校の選手が控え室に戻った。

「ただいま帰ったじぇ・・・」

「お帰りなさい優希。」

「お帰り、優希ちゃん。」

「片岡先輩お疲れ様です!」

「お疲れさん。」

「はぁ、二回戦の時見たいにプラスで終わらせられなかったじぇ・・・」

「いやいや、四季さんはとっても強いですからマイナスになるのも仕方ないですよ。逆に失点を2万以下に抑えられた事は凄いと思います!」

「確かにあの臨海の方は強かったですね。あの速さであれほどの打点の高さを出せるのは本当に凄いと思います。流石は臨海の先鋒ですね。」

「確かにあれは強敵だったじぇ・・・でも決勝に行ったら白糸台の先鋒にも当たっちゃうじぇ。もし臨海が決勝に来ちゃったらちょっとヤバいかもしれないじょ・・・」

「その時はその時ですよ、まずはこの準決勝に集中しなければいけません。」

「和先輩の言うとおりです!まずは準決勝を頑張りましょう!」

「うん、そうだじぇ!部長、頑張れ!」

「おう、任せとけ。」

~臨海女子控え室~

「ただいま。」

「お帰りユカリ~。今日も圧倒的だったね。」

「いや、そうでもないさ。私は清澄を飛ばすつもりでこの準決勝に臨んでいたのに、飛ばすどころか2万点すら削れなかった。皆すまない、清澄が決勝進出するかもしれない・・・」

「いや、まだ分からないよ。ネリー達が清澄を落としてあげるよ。」

「それは心強いな。では期待しているよネリー。あっ、でもその前に次はハオだったな。頑張ってくれ。」

「善処します。」

「頑張って~。」

「頑張って下さい。」

「はい、では行ってきます。」

~千里山女子控え室~

「た、ただいま帰りました・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「あの、無視するんやめてくれませんか!?確かに私が悪かったですけど!」

「次泉やで。」

「・・・あ、はい。じゃあ行ってきます。」

「おー、頑張れ~。」

「あの、ですから無視しないでくれませんか!?」

「舟Q、今回の中堅戦の相手ってどんな感じやったっけ?」

「あぁ、中堅は確か・・・」

「すんませんでした!私が全部悪かったです!だから無視しないで下さい!」

「はぁ、決勝で見逃ししたらしばくからな!」

「はい、すいませんでした・・・」

「なんで見逃しなんてしたん?」

「いや、あの時はポンされると思わなくて・・・」

「新道寺がポンって言った瞬間ロンって言えば良かったやないか。」

「いや、なんか、一回鳴かれたとしても和了れるから大丈夫やろって思ってしまって・・・」

「はぁ・・・決勝ではすんなよ!」

「はい、反省してます・・・」

「ほな、泉に頑張ってもらうしかないな。ちゃんと応援せな。」

「はい・・・」

~新道寺女子控え室~

「ただいまです。いや~、今回も悲惨でした。」

「お疲れ様です花田先輩。」

「後は私達に任せちょって下さい!」

「あぁ、花田、後は私達がなんとかする。だから安心し。」

「うん、皆さん頑張ってください!」

「はい。」

 

 

『さぁ、休憩が終わり次鋒戦が始まります。まずは現在圧倒的な大差でトップを走る臨海女子から2年の郝慧宇選手が登場します!三尋木プロ、彼女についてはどう思いますか?』

『うーん、安定して和了れるんだけどねぇ、やっぱり中国麻雀だと強いんだろうけど、日本のルールだから点数が稼げないのがもったいないよねぇ。』

『成る程、では続いて2位の清澄高校の部長で3年の染谷まこ選手はどう思いますか?』

『そうだねぇ、あんまり振り込まないし勝負手の染め手が出来たらガンガン和了るし、結構強いんじゃないかな~。』

『そうですか、流石は前年度優勝校のメンバーと言ったところでしょうか?』

『いや~、清澄は夢乃マホとか宮永咲が異常だから目立ってないけど、全員実力は確かだと思うよ。』

『そうなんですね、では続いて3位の千里山女子から出場する2年の二条泉選手についてはどうでしょうか?』

『ん~、何が悪いって訳じゃないけど取り上げるような物も無いね~、弱くは無いけど強くないって感じかいね。』

『成る程、そうですか・・・では最下位になってしまった新道寺の2年で安河内美子選手の妹の安河内優子(やすこうちゆうこ)選手についてはどう思われますか?』

『そうだねぇ、姉みたいに準決勝から安手ばっかり和了るようになるってのはあるかもしれないねぇ。』

『確かに、そこは期待ですね。さて、選手が対局室に出揃いました。次鋒前半戦開始です!』

 

~場決め結果~

染谷まこ:東

安河内優子:南

二条泉:西

郝慧宇:北

 

 

~東一局~ 親:染谷まこ

臨海 198200

清澄 82500

千里山 74600

新道寺 44700

(いきなり親番か・・・嬉しいような辛いような、複雑な気持ちじゃな。)

~8巡目~

「リーチです。」

(新道寺がリーチを掛けた。なら一発消しとくか。)

「チー。」

(千里山が一発消しをした。でも似たようなシーンを見た事がある。これは・・・)

「ツモです。リーチツモタンピン三色、3000・6000です。」

(うわっ、いきなり跳満親被りか、キツいわ・・・)

(去年相手にした安河内さんは確か安手を連打してたはず、今回偶然高くなったんか高いのを和了るタイプなんかこれから見極めんとあかんな。)

『次鋒戦最初の和了りは新道寺女子安河内選手です。』

『うーん、こっからだねぇ。』

~東二局~ 親:安河内優子

臨海 195200

清澄 76500

千里山 71600

新道寺 56700

~7巡目~

(新道寺の親、点差的にそこまで心配せんでもええかもしれんけど油断は禁物やな。ここは最善手で攻める!)

「リーチ!」

「フー・・・」

(!?臨海の郝慧宇がフーって言った時は確か和了られる・・・)

「ロン。3900。」

(また変な和了り方じゃな。中国麻雀はよう分からんからわしには変な和了りをしたようにしか見えんわ・・・)

(中国麻雀と同じように打ってそれでいて強いってやっぱり強いな・・・流石は臨海のメンバーやな。)

『臨海のハオ選手の今の和了り、私には些か勿体ないように見えたんですけど・・・』

『まぁ、あいつにはあいつなりのやり方ってもんがあるからねぇ、あいつには中国麻雀が染み付いてるのさ。』

『はぁ、でもせめてリーチくらいはして良かったんじゃないですか?』

『それじゃあダメなんだよねぇ・・・』

『どういう意味ですか?』

『んー、何でもねーよ。』

『はあ、そうですか・・・』

~東三局~ 親:二条泉

臨海 199100

清澄 76500

千里山 67700

新道寺 56700

(臨海が調子を出してきたな。このままやられたらここで和了られるだけじゃなくて連荘される。それは防がんとな・・・)

「フー・・・」

(はぁ?もう和了るんか!?まだ5巡目やぞ!?)

「ツモ。1300・2600。」

(また意味分からん感じに点数下げとる・・・でもこのままだと連荘で更に持ってかれるわ・・・)

(どうにかせんとな・・・)

~東四局~ 親:郝慧宇

臨海 204300

清澄 75200

千里山 65100

新道寺 55400

(この臨海の親番は連荘させんようにせんとあかんな。でもどうすれば・・・)

~3巡目~

「ポン。」

(清澄は鳴いて速攻で和了る気なんかな・・・)

~5巡目~

「ポン。」

(また清澄が鳴いた・・・清澄も中堅が厄介やからな。和了らせる訳にはいかんわ。行っとこか・・・)

「リーチ!」

(よし、これで清澄に追い付いたで!)

「ポン。」

(清澄が3副露・・・何をする気なんや・・・)

(似たシーンを見た事がある・・・)

「ロン!メンタンピン三色ドラ1。12000。」

(それが当たるだろうって事は十分分かっとった。けど、臨海の親番を終わらせるか点数が減るかじゃったら減る方を選ぶ。マホに『0点でも良いので中堅に繋げて下さい!』って言われたからの。今回はプライドを捨ててでもマホの言う事に従うわ・・・)

『清澄高校染谷選手がまさかの放銃です!』

『んー、今のはどちらかというと差し込みって感じだけどねぇ・・・臨海の親番を終わらせるためにね。』

『ですけど、いくら臨海の親を流したいからと言って、普通は跳満なんか振り込みませんよ。』

『んー、じゃあ誰かに指示されたりしてるんじゃないの~?』

『そうなんですかね・・・?さて、東場が終わり南入です。』

~南一局~ 親:染谷まこ

臨海 204300

千里山 77100

清澄 63200

新道寺 55400

~7巡目~

(よし、調子良いわ、また攻める!)

「リーチ!」

「ロンです。タンピン三色、7700です。」

(え、新道寺!?しかもまたそこそこ高めの和了りを・・・)

(親被りじゃなかっただけよしとするか・・・)

(他が早くて何も出来ないですね・・・)

『今の安河内選手の和了りで臨海以外の三校がほぼ平らになりましたね。』

『うん、結構良い対局してるねぇ。』

~南二局~ 親:安河内優子

臨海 204300

千里山 69400

清澄 63200

新道寺 63100

(新道寺の親は連荘させたらめんどくさそうやな・・・速攻で和了ったる!)

「ポン。」

(よし、ええ感じや・・・)

~7巡目~

(よし、聴牌した。これなら行けるで!)

「フー・・・」

(なっ!?今度は臨海かいな!)

「ツモ。300・500です。」

(うわっ、またそんな勿体ない安手で・・・)

(臨海が和了ってくる上に新道寺も早くに和了っとる。これは厳しいかもしれんの・・・)

~南三局~ 親:二条泉

臨海 205400

千里山 69100

清澄 62900

新道寺 62600

~6巡目~

「リーチです。」

(新道寺がリーチしてきた。早すぎやろ・・・ヤバイわ・・・)

(これはやられたな・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモドラドラ。2000・4000です。」

(満貫か、辛いわ・・・)

(親被り・・・)

『今の和了りで新道寺女子が最下位から一気に2位に浮上しました。』

『新道寺はやっぱり強いね~。欲しいところで欲しい和了をしてくれる。』

『そうですね。さて、オーラスです!この次鋒前半戦はどうなるのでしょうか。』

~南四局~ 親:郝慧宇

臨海 203400

新道寺 70600

千里山 65100

清澄 60900

(最下位転落・・・それにまだ今日の対局で一度も和了っとらんわ。なら、ちょっと無理してでも攻める!)

~7巡目~

(臨海はリーチを掛けないから聴牌しとるんか分からんし新道寺もあまりリーチ掛けちょらんかったからどうなっとるんかは分からんからいつもならここは降りじゃった。けど、今回は攻める!)

「リーチじゃ!」

(うわっ、清澄があんなところ切るなんて・・・というかどっちにも当たっとらんのか。それにしても、舟久保先輩が清澄の次鋒がリーチを掛けたら注意って言われとったな・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一。3000・6000じゃ!これで2位浮上じゃ、お疲れさん!」

「お疲れ様でした。」

「お疲れ様です。」

「お疲れ様でした・・・」

『次鋒前半戦、終了!最後は清澄が跳満和了で2位に浮上して終わらせました。流石は前年度優勝校ですね。』

『確かにそうだねぇ、リーチの時に二人に当たるかもしれないあの牌を切れるってのはかなり強い証だと思うね~。あれがなかったら何処かに和了られてただろうしねぇ。』

『清澄高校は強いですね・・・さて、10分間の休憩の後に次鋒後半戦を開始致します。』

 

~次鋒前半戦結果~

臨海 197400

清澄 72900

新道寺 67600

千里山 57900



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第59話 次鋒後半戦

前半戦が終わり、休憩の後、選手達が対局室に戻ってきた。

『対局室に選手達が戻ってきました。次鋒後半戦を開始致されます。』

 

~場決め結果~

二条泉:東

染谷まこ:南

郝慧宇:西

安河内優子:北

 

~東一局~ 親:二条泉

臨海 197400

清澄 72900

新道寺 67600

千里山 57900

(親番か・・・最下位やし、連荘したいけど、相手が悪いから厳しそうやな・・・)

~6巡目~

(聴牌か・・・千里山が攻めて来とるからちょっと危険な気がするけど、ここは手を進めとくか。)

「フー・・・」

(なっ、臨海!?)

「ロン。2600。」

(やられたわ・・・)

(やっぱり臨海にやられてまうよな・・・)

『次鋒後半戦最初の和了りは臨海のハオ選手となりました。』

『やっぱ安定してるね~、流石だわ。』

『そうですね、確かにハオ選手は非常に安定していますね。このままだと臨海が更に点差を広げてしまいそうですよね。』

『うーん、まぁ、まだどうなるかは分か・・・えっと、その・・・』

『はぁ、分かんないって言っても良いですよ・・・でも、程々にしてくださいね?』

『ホント?耳つねらない?』

『言い過ぎなければつねりませんから。』

『やった!じゃあまだどうなるか分かんねぇ。』

『そうですか。ではまだこれからって事ですね?』

『まぁ、そうだねぇ。』

~東二局~ 親:染谷まこ

臨海 200000

清澄 70300

新道寺 67600

千里山 57900

(さっきは臨海の事ようみとらんかったわ。さっき失点したし、親番じゃから和了りたいの・・・)

(おっ、この配牌、いい感じやな。いけるかもしれんわ!)

~8巡目~

(やっと聴牌じゃな。親番じゃしリーチ掛けるか。)

「リーチじゃ。」

「ロン!一通清一。16000です!」

(はぁ?千里山!?)

『なんと、清澄の染谷選手が千里山に倍満放銃です!』

『うわぁ、これは痛いね~。』

『しかし三尋木プロ、今の放銃、本来の染谷選手なら十分回避出来たのではないですか?』

『うーん、臨海の変な待ちに惑わされたのと、さっき直撃されたから親番に和了って連荘しようと気が逸ったって感じかね~。』

『成る程、今の直撃で千里山は一気に2位に浮上しました。逆に清澄高校は2位から一気にラス転落です!』

『いや~、コロコロ順位が変わって楽しいね~!』

『楽しいですか・・・?私はハラハラしますけどね。』

『うん、でも臨海は圧倒的だよねぇ、全然びくともしないし、それどころか先鋒戦よりもプラスだからねぇ。これは中堅戦でどうなるかって感じだねぇ。』

『やっぱり夢乃マホ選手ですか?』

『まぁ、あの子も異常だけど千里山と新道寺も中堅は強いからねぇ。臨海も確かに強いんだけど他の三人に埋もれちゃってあんまし和了れないかもねぇ。』

『そうですか、中堅戦は期待ですね!』

『まぁ、今は次鋒戦だけどね~。』

『あ、そうですね、すみません・・・』

~東三局~ 親:郝慧宇

臨海 200000

千里山 73900

新道寺 67600

清澄 54300

(臨海の親番、連荘されるんは怖いな・・・気を付けんとやられるな・・・最下位じゃからこれ以上やられるわけにはいかんわ。)

~7巡目~

「リーチです。」

(うわぁ、ここで新道寺が曲げてくるんか・・・しんどいわ。それに、また変な捨て牌で何待ちなんか検討つかんわ・・・)

「ロンです。リーチ一発三暗刻対々。12000です。」

(なっ、ツモってたら四暗刻じゃったんか!?いや、でもツモじゃったら失点も8000で済んどったし臨海との点差も縮まっとったな・・・ダメじゃ、全然見れんわ・・・)

『また清澄が直撃を受けましたね。』

『これは、中堅まで回らない可能性も出てきたねぇ。』

『いや、でもまだ4万点もあるじゃないですか。』

『いや、4万なんて親の役満直撃されたら一撃だよ?』

『そうですけど、調子が悪いとは言え流石に親の役満を直撃されるほどでは無いんじゃないですか?』

『うーん、まぁ、確かにそうだね~。でも、ここからずっと誰かに和了られてたら、ヤバいかもしんないね~。』

『そうですか・・・』

~清澄高校控え室~

「部長が三連続で振り込むなんて・・・」

「やっぱり、あの臨海の人と新道寺の待ちが読めない人のせいで苦戦してるのかな・・・」

「部長さん、大丈夫でしょうか・・・」

「まぁ、0点でもマホちゃんに繋げれば、またマホちゃんが爆発してくれるじぇ。」

「はい、頑張ります!」

「マホちゃん頑張ってね。」

「はい!」

「って、部長の対局はまだ終わってねぇよ!」

「あ、そうだった・・・」

「しっかりしろよ咲・・・」

「ごめん京ちゃん。」

~東四局~ 親:安河内優子

臨海 200000

新道寺 79600

千里山 73900

清澄 42300

(新道寺の安河内さん、打点が高いのに去年の安河内さんと同じくらい和了っとるからな・・・連荘とかされたらしんどいわ・・・)

~8巡目~

「リーチです。」

(親リー!?)

「フー・・・」

(と思ったら臨海が和了宣言・・・)

「ロン。7700。」

(うわ、結構高い・・・)

(やっぱりレベルが違うわ・・・)

(こんなん勝てんって・・・)

『臨海のハオ選手が新道寺の安河内選手に7700の直撃です!』

『臨海との点差がまた広がっちゃったね~。』

『これは中堅戦だけでは厳しいんじゃないでしょうか?』

『うーん、まぁ、清澄には宮永咲がいるけど・・・他の2校は辛いかもねぇ。』

『そうですか・・・』

『それに、臨海は副将と大将も強いからね~。これは清澄もちょっと厳しいかも知れんね。』

『そうですよね。さて、東場が終わり、次鋒戦最後の南場へと突入します!』

~南一局~ 親:二条泉

臨海 207700

千里山 73900

新道寺 71900

清澄 42300

(親番か・・・さっきの親番は何も出来ずに終わったから今回こそは何とかしたいな。)

~7巡目~

(よし、これで聴牌、これなら行けるわ!)

「リーチ。」

「フー・・・」

(うわ、嘘やろ・・・)

「ロン。3900。」

(また臨海が和了るんか・・・こいつ、強すぎやろ・・・)

(やっぱりレベルが格上じゃな・・・)

~南二局~ 親:染谷まこ

臨海 211600

新道寺 71900

千里山 70000

清澄 42300

(最後の親番じゃな・・・ここで和了れんかったらもうきついわ。いくらマホが強くても今の臨海は辛いじゃろうからな・・・)

~8巡目~

(聴牌したわ、ここは攻めの姿勢じゃ!)

「リーチじゃ!」

(よし、通った。この調子で行けば和了れる!)

「ツモです。タンピン三色ツモドラ1。3000・6000です。」

(親被り・・・それにリー棒まで、というかまた新道寺か!何度和了ったら気が済むんじゃ!)

(新道寺に点差つけられた・・・これ、キッツいわ・・・)

~南三局~ 親:郝慧宇

臨海 208600

新道寺 83900

千里山 67000

清澄 55300

(これはヤバい、この点数は流石にヤバいわ。ここはなんとしてでも和了らなければ・・・)

「ポンじゃ!」

(おっ、清澄がオタ風を鳴いてきた。これは混一かな?)

「チー!」

(また鳴いてきた・・・チャンタの線もないしこれは混一やな。ならこれやったら振り込まんやろ。)

「ロンじゃ。三色ドラ1で2000じゃ!」

(うわ、マジか、でもまぁ、2000くらいだったら全然問題無いやろ。)

~南四局~ 親:安河内優子

臨海 208600

新道寺 83900

千里山 65000

清澄 57300

(さっきの和了りで多分流れはこっちに来とるじゃろ。ここは安くても和了りに行く!)

(清澄、調子良さそうやな。ここは臨海と新道寺に任してガン降りで行くか・・・)

~7巡目~

(やっぱり調子が良いわ!一発でツモなら跳満じゃからこれを一発で和了ってマホに少しでも楽させるわ。)

「リーチ!」

(やっぱり来た、清澄のリーチ・・・)

「フー・・・」

(は?嘘じゃろ・・・?)

(もう聴牌してたんか臨海!?)

「ロン。1300。」

(こりゃ、敵わんわ・・・)

『次鋒戦、終了ぉぉぉ!!!!最後は清澄が和了ってしまうかと思いましたけど臨海がそれを上手く止めました。しかし三尋木プロ、これはちょっと清澄高校は辛いのでは無いでしょうか?』

『いや、清澄よりも新道寺と千里山がキツいと思うよ、知らんけど。』

『え、どうしてですか?』

『夢乃マホの高火力の和了りはツモ和了りが多いから今の臨海と清澄の点差を夢乃マホが埋めようとしたら新道寺と千里山が飛んじゃうって事も起こり得るかもしれないからね~、新道寺と千里山はもうちょい稼ぐべきだったね。』

『そ、そうですか・・・でも新道寺は8万、千里山も6万はありますよ?』

『うーん、まぁ、まだ分かんねぇけどね~。』

『はぁ、そうですか、ではお昼休憩の後、あの夢乃マホ選手が出場する中堅戦を開始します!』

 

~次鋒戦結果~

臨海 209900

新道寺 83900

千里山 65000

清澄 56000




次は遂に本作主人公のマホが登場します!久しぶりにマホの対局を書くのでちょっと楽しみです。


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第60話 中堅前半戦

遅れてすいません・・・次はちゃんと0時に投稿します。
本作主人公のマホが登場します!


次鋒戦が終わり、選手達が控え室に戻ってきた。

「ただいま、いやぁ、すまんのぉ・・・全然駄目じゃったわ・・・」

「大丈夫ですよ部長さん!マホが頑張って点を取り返して来ます!」

「おぉ、マホがそれを言うと妙に安心するわ。」

「そうですか?ありがとうございます!」

「流石は今年のMVPの有力候補だね。」

「えっ!?宮永先輩、それマホの事ですか!?」

「そうだよ、確か白糸台の西園寺さんと1位2位を争うレベルだって誰かが言ってたよ。」

「確か小鍛冶プロじゃなかったでしょうか?」

「あー、そうだね。」

「それに、マホちゃんは咲さんの右腕とか、咲さんの後継者だとか言われてますよね。」

「私、マホちゃんを弟子とかにした覚えはないんだけど・・・」

「宮永先輩の右腕・・・カッコいいです!光栄です!嬉しいです!」

「私なんかよりマホちゃんの方が活躍してるし、私の方がマホちゃんの右腕のような気がするよ・・・」

「そんな事ありません!マホなんかより宮永先輩の方が数千倍凄いです!マホなんて宮永先輩に比べたらダメダメです!」

「数千倍って・・・マホちゃんって凄く私の事過大評価してくれるよね・・・私の事何だと思ってる?」

「宮永先輩は神様です!いや、神様をも上回る存在だと思います!」

「やっぱり過大評価されてるよ・・・私、神様でもないし神様以上の存在でもないからね?」

「でもでも、宮永先輩は去年あの神代小蒔さんに3万点差を付けて圧勝してたじゃないですか!」

「いや、あれはたまたまだよ・・・」

「そんな事無いですって!宮永先輩は自分の強さを分かってないです!謙虚な所もカッコいいですけど、もっと自信を持ってください!」

「そう?マホちゃんにそう言われると嬉しい。」

「ほれ、そろそろ行く時間じゃろ。」

「あっ、そうでした。では、行ってきます!」

「頑張ってね!」

「頑張れ~!」

「頑張って下さい。」

「はい!」

~臨海女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「お疲れ様、やるじゃないかハオ!これなら流石の夢乃マホでも結構手こずるんじゃないか?」

「確かに、今の状態ならなんとか行けそうですね。」

「えぇー、じゃあネリーが考えてた1位奪還作戦が無くなっちゃうじゃん!」

「まあまあ、1位の方が少しは気が楽だろ。」

「気が楽になってもお金は貰えないよ!」

「でも、決勝に行けない方がお金を貰えないだろ?それなら出来るだけ多く持っていた方が良いだろ。」

「むぅ、確かにそうだけどさ・・・」

「とりあえず今は明華に少しでも多く残して貰えるようにしないとな。」

「頑張んなくてもネリーがいるから大丈夫だよ!」

「おいネリー!まぁいい、とりあえず行ってらっしゃい。」

「はい、行ってきます。」

~新道寺女子控え室~

「ただいま。」

「お帰りなさい!すばらでした!」

「ありがとうございます花田先輩。後はミカちゃんに任せます。」

「はい、では、私は行きます。」

「頑張って下さい加藤さん!夢乃さんは私達と同じ高遠原中学出身ですから、加藤さんも高遠原中学の実力を見せてください!」

「はい、マホちゃんは去年までは後輩でしたからね。負けられませんよ。」

「その心意気、すばらです!」

「ありがとうございます。では、行ってきます。」

~千里山女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「おーお帰り~。マイナス1万くらいやったな。」

「いや、あの面子じゃあれが限界ですよ!」

「まぁ、泉やったらあれが限界やろな。」

「最善手で打ったつもりなんですけどね。」

「まぁ、あの牌符やったら+10000くらいは行けましたよ。」

「もう望、そんな事言わんといて!ってか、計算早いな!」

「まぁ、相手の配牌見て直ぐに判断して打ち回してるからやと思います。」

「凄いな、どんな頭しとんねん。」

「まぁ、天才ですからね!」

「はぁ?あんた試験めっちゃ悪いやん。」

「はぁ?この前の現代文の試験は望に勝ったやん!」

「それ以外全部50点以上差あるけどな!」

「うっさいわバカ!」

「えっ、でも心音は人の心読めるんやろ?分からんとことか無いやん。」

「いや、試験中は見ないようにしてるんですよ。カンニングは良くないんで・・・」

「へぇー、そういうとこは真面目なんやな。」

「バカ正直なだけですよ。」

「バカは余計やろ!」

「でも、私は心音のそういうとこ、好きやで。」

「は、はぁ?な、何バカな事ゆうとんねん。ばかぁ・・・」

「あーはいはい、仲良しなんはよう分かったから。ほな中堅戦行ってくるわ。」

「あ、行ってらっしゃい!」

「おう!」

「望のバカ・・・何意味分からん事言っとんねん・・・」

「耳まで真っ赤やで?」

「はぁ?うっさいわ!」

「ふふっ、今なら心音が思っとる事分かるわ。」

「アホな事言うなよ・・・アホ・・・」

(((もう、付き合っちゃえよ!)))

 

 

『さぁ、折り返し地点である中堅戦が始まります。選手紹介を致します。まずはトップを走る臨海女子の雀明華選手。彼女についてはどうお考えですか?』

『次鋒ん時も言ったけど、実力は確かなんだけど他が強いから微妙かな~。』

『そうですか。では次に2位の新道寺女子から1年の加藤ミカ選手です。彼女はあの夢乃マホ選手が中学の時の先輩らしいですよ。』

『へぇ~、確か新道寺の先鋒と清澄の先鋒と副将も同じでしょ?凄いね~、優秀な中学だねぇ~。』

『確かに、これは期待出来そうですね!では次に3位の千里山女子の二階堂渚選手です。妹の有紗選手がいる姫松高校は準決勝で敗退してしまいましたが、千里山女子はどうなるのでしょうか。』

『なんかこういう事言うの駄目かもしんないけどさ~、頑張って欲しいけど姉妹対決も見てみたいよね~。』

『まぁ、確かに私も少しはそう思いますね・・・千里山女子が負けて欲しい訳では勿論無いですけど。』

『うん、そうだね~。流石に負けて欲しいとまでは私も思ってないね~。』

『当然ですけどね。さて、続いて清澄高校中堅、今や全国で注目を浴びているMVPの有力候補である夢乃マホ選手です!』

『いや~、もうあいつの事は言わずもがなでしょ。うちらトッププロでも良い勝負出来そうだしね~。その目で奴の恐ろしさを確かめなって感じかな。』

『まぁ、そうですね。夢乃選手がどんな活躍をするのか楽しみです!では選手が対局室に集まりましたので、運命の中堅戦を開始致します!』

 

 

「ミカ先輩!お久しぶりです!」

「マホちゃん、久しぶり。それにしても凄い活躍だよね。」

「いえいえ、それもこれもミカさんや和先輩や皆さんの教えのお陰ですよ!」

「それは無いと思うけど・・・とりあえず今日はよろしくね。」

「はい!お互い頑張りましょう!」

 

~場決め結果~

夢乃マホ:東

二階堂渚:南

加藤ミカ:西

雀明華:北

 

~東一局~ 親:夢乃マホ

臨海 209900

新道寺 83900

千里山 65000

清澄 56000

(いきなりマホの親番か・・・何してくるんやろな。最下位やからデカい和了りしてくるかもしれんし気を付けなあかんな。)

~5巡目~

「カン。」

(暗カン!?もしかしていきなり宮永咲か!?ってあれ、嶺上開花や無いんか。ドラも乗っとらんし、どういう事や・・・)

~6巡目~

(よし、ええ感じや!)

「カン。」

(大明カン!?これで嶺上開花されたら責任払いになる!?ヤバい・・・って、また和了らんのかいな!まぁ、でもマホの事やからまたカンするかもしれへんな。生牌は出さんとこうか・・・)

~8巡目~

(これで、聴牌ですね。)

(あ、臨海が生牌出した・・・)

「カン!」

(やっぱりカンしやがった!もしかしたらこれ、四樌子まであるかもしれん・・・)

「もう一個カン!」

(うわ、やっぱりか・・・これを阻止せんと!)

マホは嶺上牌をそのままツモ切りすると、残った1つの牌の上を人差し指で押さえた。

「ボッチじゃないよ~。」

(はぁ?嘘やろ・・・これ、宮守の姉帯なんか!?)

(という事は次の巡目に、四樌子を和了られる・・・)

(これは、防がないといけませんね・・・)

(誰かカン出来んのか!なんとか流せんのか!あぁ、もうマホの手番や・・・)

「お友達が来ました!ツモ!四樌子。16000オールです!」

(嘘やろ・・・)

(やっぱりマホちゃん、とんでもなく強くなってる・・・)

『うわぁ~、いきなり四樌子とか、見せてくれるね~!』

『まさか、あの手を四樌子まで持っていくとは・・・』

『こりゃあ直ぐにトップまで行っちゃうんじゃないかな~。』

『いや、ですが清澄と臨海は未だに9万程の差がありますよ?』

『いやいや、9万とかあいつにしたら直ぐにひっくり返せると思うけどねぇ。』

『そうですかね・・・』

~観戦室~

観戦室には、去年の宮守高校のインターハイメンバー5人がマホの試合を見に来ていた。

「トヨネ!」

「豊音、四樌子和了った事ってある?」

「ある訳無いよ~!対々が2、3回あるくらいだよ。」

「友引って役満出せる能力だったんだね・・・」

「本当にあの子何者なの・・・」

「絶対戦いたくない!」

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

臨海 193900

清澄 104000

新道寺 67900

千里山 49000

(このまま連荘させとったら飛ばされる。ここは何としても流す!)

「チー。」

(新道寺が鳴いた、なら私も鳴いてく!)

「ポン!」

(よし、これでいける。)

「ロン。タンヤオ三色ドラ3。8300です。」

(えっ・・・新道寺?)

(ミカさん、流石です!早速マホの親を流されました・・・)

~東二局~ 親:二階堂渚

臨海 193900

清澄 104000

新道寺 76200

千里山 40700

(新道寺、確かこいつ、マホと同じ中学やったな。こいつもヤバそうやな・・・それにしてもこの局、いままでやったら薄墨が来るんやろうけど、もしかしたら臨海先鋒の夏の和了をしてくるかもしれん・・・分からんわ。もう既にしんどいわ・・・)

~7巡目~

(やっぱり薄墨さんでは和了れなさそうですね・・・それに多分そろそろミカさんが和了りそうです・・・)

「ツモ。純チャン三色ツモ。3000・6000です。」

(はぁ?また新道寺か!まぁでも、マホの役満レベルの和了を阻止出来たと思ったら6000とか安いわ。こっから挽回するで!)

~東三局~ 親:加藤ミカ

臨海 190900

清澄 101000

新道寺 88200

千里山 34700

(ここでミカさんに和了らせる訳にはいきません。マホがなんとかしなくては・・・とりあえずミカさんを見てミカさんを封じましょう。)

~8巡目~

(あれ、全然聴牌出来ない・・・これ、マホちゃんに凄い見られてるし、封じられてるのかな?じゃあこの局は諦めるしかないね。)

(なんや、新道寺もマホも何もして来んな。なら攻める!)

「リーチ。」

(渚さんのリーチ、鳴けないですしこれは渚さんに和了られちゃいますね・・・)

(まぁ、最下位ですから和了られても大丈夫だよね。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色。4000・8000!」

(うわっ、結構大きい和了り、しかも親被りだし・・・)

(流石は渚さんですね・・・)

『3人とも3人らしい和了りをしていますね。』

『臨海が可哀想だね~、普通に強いのに相手が悪すぎるね~。』

『確かに、この3人が同卓だったとしたら三尋木プロも厳しいですか?』

『んー、やった事無いから分かんねぇけど、夢乃マホ一人いるだけでめっちゃ苦戦しそうだね。』

『確かに、あの人とは絶対に対局したくないですよね・・・』

『もしプロになったら同卓NGとかに出来ないかね。』

『出来る訳無いじゃないですか。それにトッププロなのにその発言は如何な物でしょう・・・』

『まぁね~。』

~東四局~ 親:雀明華

臨海 186900

清澄 97000

新道寺 80200

千里山 50700

~8巡目~

(なんか調子良さげやな!このまま行ったる!)

「リーチ!」

(またリーチ、凄い・・・)

(これは、渚さんがどんどん追い付いてきちゃいますね・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンヤオ三暗刻ドラ3。4000・8000!」

(やっぱり調子の良い時の渚さんは強いですね・・・マホも攻めます!)

『おぉ、やっぱり二階堂渚は安定して高いの和了るね~。』

『調子が出てきましたね。』

『まぁ、次は奴の親番だし、和了れないかもしれないけどねぇ。』

~南一局~ 親:夢乃マホ

臨海 178900

清澄 93000

新道寺 76200

千里山 66700

(あれ、自風の牌が三枚来てくれるはずなのに1枚しか無いです。というかこれ、国士無双が出来そうですね。これを夢乃さんに直撃出来たら点差がぐっと広がりますね!)

~8巡目~

(これで、国士無双聴牌です。ではまだ1枚も出てない西で待ちます!)

「ロン。国士無双。48000です。」

(・・・えっ?)

(マホ、もう臨海を捲ったわ・・・やっぱりこいつ異次元やな・・・)

(あっ、今の、もしかしたら永水の神代さんの和了りかな?だとしたら明華さんの手牌も国士無双だったって事なのかな・・・)

『な、なんと、夢乃選手がトップに躍り出ました!』

『いやぁ、思ってたよりも早く王座奪還したね~。』

『このまま点差を広げられてしまうのでしょうか!』

~南一局一本場~ 親:夢乃マホ

清澄 141000

臨海 130900

新道寺 76200

千里山 66700

(これが夢乃さんの実力・・・あっという間に捲られてしまいました。実力も圧倒的過ぎます・・・こんな人に勝てる人なんているんでしょうか・・・)

(マホちゃんの親番は絶対に流さないと!)

「ポン!」

(ミカさん、鳴いてきましたか。でも来るって分かってました。今回は温存してます。)

「ツモ。混一三暗刻対々。3100・6100。」

(ミカさん、強いです!これはマホも辛くなってくるかもですね。)

~南二局~ 親:二階堂渚

清澄 136900

臨海 127800

新道寺 88500

千里山 63600

~7巡目~

(ここで三連続和了して差を付けましょう。)

「リーチ!」

「ロン。七対子ドラドラ。6400です。」

(うわっ、ミカさん、もう聴牌してたんですね・・・)

(新道寺が強い、マホが押さえられとる。でも、最下位から抜け出せん・・・)

~南三局~ 親:加藤ミカ

清澄 130500

臨海 127800

新道寺 94900

千里山 63600

(ミカさんの親番、和了らせません!)

(新道寺の親番は流さんとな・・・)

「リーチ!」

(うわっ、マホ、ダブルリーチしやがった!多分これは大星淡やろな。言われてみれば配牌も悪いわ。)

(これは・・・マホちゃん、私に和了らせないようにしてるね。マホちゃんに警戒して貰えるなんて光栄だよ。)

~10巡目~

「カン。」

(これで終わりです。)

(カンをされたら安牌を切らなきゃいけない・・・けと安牌が残ってないです。これならどうでしょうか・・・)

「ロン。ダブリー三暗刻裏4。16000です。」

(また夢乃さんですか・・・やっぱりこの人、頭3つくらい抜きん出てますね・・・)

(マホちゃん、やっぱり強い・・・勝てる気がしないよ。)

~南四局~ 親:雀明華

清澄 146500

臨海 111800

新道寺 94900

千里山 63600

「リーチ!」

(マホちゃん、またダブリーした・・・今度は何?)

(マホはダブ南やし、多分天理白のやつやろ。なら一発消しするか。)

「ポン。」

(これならどうや!)

(渚さん、ポンありがとうございます。お陰で来てくれました!)

「ツモ!ダブリーダブ南ツモ混一ドラ3。6000・12000!」

(マジか・・・こんなん、無理やわ・・・)

『中堅前半戦、終了!夢乃マホ選手が圧倒的な差を付けてトップ、2位は臨海、3位は新道寺、4位は千里山となりました。』

『いやぁ、前半だけで+10万とかマジですか!?』

『本当に凄いですよね・・・さて、休憩の後に中堅後半戦を行います!』

 

~中堅前半戦結果~

清澄 170500

臨海 99800

新道寺 88900

千里山 57600



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第61話 中堅後半戦

書いてる途中で気付いたんですけど、点数の合計がめちゃくちゃになってるんですけど、面倒なのでこのまま行かせて貰います・・・


休憩が終わり、後半戦が始まろうとしていた。

 

~場決め結果~

雀明華:東

二階堂渚:南

夢乃マホ:西

加藤ミカ:北

 

~東一局~ 親:雀明華

清澄 170500

臨海 99800

新道寺 88900

千里山 57600

(この配牌、結構良さげですね!あっ、そういえばあれを試そうと思っていたんでした!出来るか分かんないですけど、やってみましょう!リザベーションセブン!)

~清澄高校控え室~

「んんっ!」

「え、どうしたの!?和ちゃん!」

「いや、なんだか・・・変な感じです・・・んぁっ!」

「おぉ、のどちゃん、試合中でもないのに発情モードだじぇ!」

「発情なんか・・・してません!というか、試合中も発情してないですから!」

(これ、もしかしてマホちゃんが新道寺のコンボをしたのかな・・・?)

~7巡目~

(もしかしたらこれを和了られたら原村が役満和了るかもしれへんって事か!?こいつ、副将戦にまで影響させる気なんか・・・絶対に止めんと!)

(これを止めないと、副将でも凄いの和了られちゃう・・・)

(来ました!)

「ツモ!タンヤオ清一ツモ。4000・8000です!」

(リザベーションクリア!)

(うわっ、やっぱり倍満和了った・・・)

(という事は、副将で和先輩が役満を和了る、という事でしょうね・・・)

(ネリーちゃんに申し訳ない事しちゃったな・・・)

『うわぁ、これは、可哀想だね~。』

『え、何がですか?』

『ん~、んや、何でも無いわ。』

『はぁ、そうですか・・・』

~千里山女子控え室~

「あぁ、新道寺コンボが決まっちゃいましたね。」

「やっぱり今の新道寺コンボやったんか・・・」

「という事は副将戦で原村が役満出和了るって事なんか?」

「まぁ、そうなりますね。」

「はぁ、渚の奴、何でそんな大事な所で和了れんねん!というか、夢乃マホもなんで副将戦にまで首突っ込むねん!やめて欲しいわ・・・」

「ドンマイです・・・」

「辛いわ・・・」

~東二局~ 親:二階堂渚

清澄 186500

臨海 91800

新道寺 84900

千里山 53600

(次は何を使いましょうか・・・あっ、そうです!そういえば今は二局でしたね。あれを使っちゃいましょう!)

(マホ、今度は何をしてくるんやろ・・・)

(マホちゃん、多分二局だから臨海の先鋒の夏の和了りが来るのかな・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(マホちゃんがリーチした!?)

(今度は何するんや!?)

(また、やられてしまうのでしょうか・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ清一一通。6000・12000です!」

(三倍満、やっぱり臨海先鋒の和了り・・・)

(これ、縁さんの和了りですよね・・・)

(親被り、辛いわ・・・)

『夢乃選手が二連続和了です!』

『本当にこいつは、いとも簡単に倍満とか三倍満とか和了るよね~、本当に羨ましいわ。』

『三尋木プロも結構簡単に高い手作ってませんか?』

『いやいや、めっちゃ辛いから。全然簡単じゃないから。』

『それなら夢乃選手も辛いのでは無いですか?』

『いやいや、それとこれは別バラだよ!』

『はぁ、もはや何を言ってるか分かりません・・・』

~東三局~ 親:夢乃マホ

清澄 210500

臨海 85800

新道寺 78900

千里山 41600

(マホちゃんの親番、絶対に和了らせちゃいけない!)

(夢乃さんの親番は何としてでも止めなければ・・・)

「リーチ。」

(ダブリー!?)

(親でダブリーって事は、清澄が決勝の時に当たっとったとこの大将やろうな・・・)

(ここにきてダブルリーチですか・・・これは厳しいですね。)

(マホちゃんをこのまま野放しにしてられない!私が止めなきゃ!)

「ポン!」

(マホちゃんにはツモらせない!)

「ポン!」

(またミカさんに鳴かれました!これはちょっと厳しいかもですね・・・)

(これで、勝負だよ、マホちゃん!)

(うわ、これは、厳しいですね・・・)

「ロン。中混一対々ドラ3。16000!」

(やっぱりミカさんは凄いです・・・でもマホも負けませんよ!)

~東四局~ 親:加藤ミカ

清澄 194500

新道寺 94900

臨海 85800

千里山 41600

(北家、さっき薄墨さんを使ってしまったので出来ないですね・・・いや、小四喜は出来ないですけど惑わす事は出来そうですね。やってみましょう!風神の力で!)

~5巡目~

「ポン。」

(マホが東を鳴いてきた・・・まさか、前半でマホは薄墨の能力を使っとらんかったんか!?)

(だとしたらこれは気を付けなくては・・・)

「カン。」

「北をカン!?やっぱりこれ、薄墨やな。やられる・・・)

~9巡目~

(完全に薄墨さんの和了りを警戒していますね。でもそのお陰で来てくれました。)

「ツモ!混一三暗刻対々東北。4000・8000!」

(小四喜やないんか・・・ちょっとだけ安心したわ・・・)

(でも、また高い手を和了られた・・・マホちゃん、強すぎるよ・・・)

~南一局~ 親:雀明華

清澄 210500

新道寺 86900

臨海 81800

千里山 37600

(この点差はヤバすぎるな・・・副将の原村の役満に、宮永咲もいる。2位抜け狙いだとしても臨海副将のネリーはめっちゃ強い。ここでせめて2位に入っとかんとヤバいな・・・ちょっと無理するか。)

~7巡目~

「リーチ!」

(渚さん、リーチしましたか。渚さんに和了らせちゃうと怖いんですけど、今回は仕方ないですかね。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色ドラドラ。4000・8000。」

(やはり和了られてしまいましたか・・・)

(二階堂さんは一回和了ると調子がどんどん良くなるんだったよね。次はその二階堂さんの親番だから気を付けないと・・・)

~南二局~ 親:二階堂渚

清澄 206500

新道寺 82900

臨海 73800

千里山 53600

「リーチ!」

(ダブリー!?)

(渚さんがダブリー、これはどうなってしまうのでしょうか・・・)

(このまま和了られちゃうのかな・・・)

「ツモ!ダブリー一回ツモドラ2。6100オール!」

(連荘ですか・・・やられてしまいましたね・・・)

(マホちゃんでも止められなかったんだ・・・なら私が止めなきゃ!)

~南二局一本場~ 親:二階堂渚

清澄 200400

新道寺 76800

千里山 71900

臨海 67700

(最初は1位だったのに、もう最下位・・・こんな事って・・・)

~5巡目~

(調子良いわ!このまま攻めるで!)

「リーチ!」

「ロン、1000点です。」

(うわ、新道寺、邪魔すんなや!)

(流石ミカさんです。まだ5巡目なのに調子の良い渚さんを止めるとは。)

~南三局~ 親:夢乃マホ

清澄 200400

新道寺 77800

千里山 70900

臨海 67700

(マホちゃんには連荘させないよ!)

(なんだかミカさんが怖いです・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(ミカさんがリーチしてきました。ですけど、マホもこれで聴牌です。ここで決められればかなり点差も広がります!)

「カン!」

(なっ、マホがカンしたつて事は嶺上開花か!?)

(これで嶺上開花・・・出来ないです!?どうしてでしょうか・・・)

「ロン。リーチタンヤオ清一。16000。」

(ミカさんが強いです、マホが2回も倍満に振り込むなんて・・・)

(マホちゃんの事はよく分かってるからね。よし、これでなんとかなりそう。)

~南四局~ 親:加藤ミカ

清澄 184400

新道寺 93800

千里山 70900

臨海 67700

(ミカさんがここまで強いとは思いませんでした。でも、マホもやられっぱなしは嫌です。ここは決めます!宮永先輩、ちょっとだけお休み下さい。憑依!)

「カン!」

(今度こそ決めます!)

「ツモ!嶺上開花ドラ8。4000・8000です!」

(今回は防げなかった・・・)

(うわ、また倍満かい・・・)

(結局一度も和了れませんでした・・・)

『中堅戦終了!夢乃選手が圧倒的な実力差を見せつけました。加藤選手や二階堂選手も頑張っていたのですが夢乃選手を止められませんでした。』

『ここまでやられるとはね~、やっぱり怖いわあいつ。』

『そうですね、では、興奮覚め止まぬ中、続いて副将戦が始まります!』

 

~中堅戦結果~

清澄 200400

新道寺 85800

千里山 66900

臨海 63700



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第62話 副将前半戦

また遅れちゃいました、すみません・・・


中堅戦が終わり選手達が控え室に戻ってきた。

「ただいま帰りました~!」

「お帰りマホちゃん!今日も大活躍だったね!」

「ありがとうございます!頑張りました!」

「やっぱりマホは安定しとるの~。」

「そんな事無いですよ!たまたまです。」

「マホちゃんは凄いですよ。私達が中学だった時に比べたら格段に強くなってますよ。」

「和先輩にそこまで言って貰えるとは!マホ、生きてて良かったです!」

「大袈裟だじぇ・・・」

「まぁ、マホちゃんにとってはそれくらい嬉しいんじゃないの?」

「はい!和先輩ありがとうございます!あっ、そういえば次は和先輩ですね。頑張って下さいです!」

「ありがとうございます。行ってきます。」

「和ちゃん頑張ってね!」

「はい!」

和が控え室を出ると、咲がマホに話しかけた。

「マホちゃん、もしかしてなんだけど、後半戦の東一局で新道寺のコンボした?」

「そうです!宮永先輩流石です!」

「いや、その・・・和ちゃんがね?その・・・東一局の時に苦しそうにしてたんだよ・・・」

「えっ!?そうだったんですか!?」

「いや、あれは苦しそうと言うより・・・」

「気持ち良さそうにしてたじぇ!」

「え、気持ち良さそうに、ですか?」

「いや、そんな事は無いと思うけど・・・」

「コンボは上手く出来たみたいですけど、これは使わない方が良いですかね・・・?」

「それはダメだじぇ!」

「えっ、どうしてでしょうか・・・?」

「マホがあれをやってくれたら副将でもマホみたいな和了りが出るからの、是非使って欲しいんじゃ。」

「優希と部長、あんたらただ和の反応を面白がってるだけでしょ・・・咲も何か言ってやれよ。」

「いや、私は、チームの為になるなら仕方ないかなって思うかな・・・和ちゃんも本当に嫌そうでは無かったし・・・」

(それに、和ちゃん可愛かったし・・・)

「そうですか。ならこれからも使います!」

「おう!マホちゃん頑張れ!」

「いやいや、今は和の応援じゃろ。」

「そうだったじぇ。」

~臨海女子控え室~

「ただいま帰りました・・・」

「お疲れ様、というか、御愁傷様と言った感じだな・・・」

「いやー、夢乃マホスゴいね!1位は嫌だーとか言ってたのにまさか最下位になるとは思わなかったよ!」

「確かに奴はレベルが2つか3つ上を行っている。西園寺麻衣や宮永咲のように。」

「というか、清澄は夢乃マホと宮永咲がいるなんてなんかセコいよね。」

「まぁ、それは仕方のない事だ。他校からすればうちだってセコいと思われているかも知れないだろうしな。」

「ふーん、まぁいいや。とりあえずここでネリーが大逆転していっぱいお金貰うよ!」

「そうだな、好きなだけ暴れてこい。」

「言われなくても!」

~千里山女子控え室~

「舟Qすまん!!!!」

「びっくりするわ・・・いや、許さへんで?」

「悪かったって!点数キープしたんやし許してくれや。」

「エースなんやからそれくらいは当然や。というか、稼ぐくらい当たり前にこなすんがエースってもんやろ。エースとしても夢乃マホ対策としてもダメダメやん。」

「だから悪かったって・・・というか、夢乃マホと加藤ミカがアホみたいに強かってん、あんなん勝てんわ・・・」

「はぁ、とりあえず役満喰らっても大丈夫なくらいに点数キープするよう努めるけど、次にまたやられたら許さんで!」

「そらもう、絶対に止めて見せるわ。」

「絶対やで。ほな、行ってきますわ。はぁ、誰かさんのせいで憂鬱やわ・・・」

「いや、根に持っとるやん!」

「そらそうやろ・・・まぁ、行ってくるわ。」

「おう、頑張れ!」

「・・・後でなんか奢りやで。」

「おー分かった分かった。はよ行きや。」

「一万は下らんで?」

「はっ!?何言っとんねん!」

「ほな行ってきますわ。」

「待てや!・・・おいおい、そんなお金持ってへんわ・・・」

~新道寺女子控え室~

「ただいま帰りました。なんとかプラスで終えられました・・・」

「すばらです!あの夢乃さんに対してプラスで終えられるなんて、とってもすばらですよ!」

「やっぱり、私達が知ってるマホちゃんじゃなかったです・・・あぁ、性格は変わってなかったですけど。実力は同じ人間とは思えないくらい強かったです・・・」

「まぁ、確かに夢乃さんは成長速度が速そうな人でしたもんね。あそこまで急成長するとは思いもよりませんでしたけど。」

「本当にそうですね・・・」

「まぁでも、後は私に任せて下さい。」

「友清さん、頑張って下さい。」

「先輩、頑張って下さい。」

「ありがとうミカちゃん、じゃあ行ってきます。」

 

 

『さぁ、嵐のような中堅戦が終わり、副将戦が始まろうとしています。まずは夢乃マホ選手の活躍で現在圧倒的な差をつけてトップを走る清澄高校からは2年前のインターミドル覇者の原村和選手が出場します。』

『いやー、夢乃マホがめっちゃ稼いだ後に安定して強い原村を置くなんて、相手が可哀想になるような編成だねぇ。清澄は本気で他校を潰そうとしてるね~。』

『潰す云々は別として、何処の高校も全力で勝とうとしているじゃないですか。』

『まぁ、そりゃそうだね~。』

『まったく、貴女って人は・・・さて、続いて2位の新道寺女子は去年補欠メンバーだった友清朱里選手が出場します。』

『このまま2位をキープ出来るか否かが新道寺は大事になってくると思うね~、知らんけど。』

『なるほど、新道寺は去年のようにコンボが出来ないですからかなり辛そうですよね・・・』

『んー、まぁ、後半戦でコンボ自体は見れるけどね~・・・』

『え、今なんて言ったんですか?』

『ん?なんでもねーよ。』

『・・・そうですか。では続いて3位の千里山女子は舟久保浩子選手です。彼女についてはどう思いますか?』

『んー、まぁ、原村と似てるかな~。デジタルで頭を使って戦うって感じとか、知らんけど。』

『そうですか。では最後に臨海女子のネリーヴィルサラーゼ選手。彼女はどうでしょう?』

『今回の副将戦は奴が鍵を握っているね~。あいつがどれだけ稼げるかで清澄が勝つか臨海が勝つかそれとも他の2校が勝つかが決まってくるだろうね。』

『そうですか。それは注目ですね。では選手が出揃いましたので、副将前半戦開始です!』

 

 

~場決め結果~

原村和:東

ネリー:南

友清朱里:西

舟久保浩子:北

 

~東一局~ 親:原村和

清澄 200400

新道寺 85800

千里山 66900

臨海 63700

(いきなり清澄が親番か。なら、親被りか直撃で点差を詰めるで。)

(悪いけど、今回は夢乃マホがこうしてくれるって思ってたから最初から爆発出来るように調整してたんだよね~。じゃあ、やろうか。)

~7巡目~

「リーチ。」

(ヴィルサラーゼがいきなりリーチ。これはまさか、いきなり波が来とるんか?)

~9巡目~

「エルティ、ツモ。リーチツモ平和清一一通。6000・12000。」

(いきなり三倍満!?)

(やっぱり、最初から波が来とったんか・・・)

(なかなかやりますね。でも、私も負けていませんよ!)

『ネリー選手、いきなり三倍満ツモです!そして原村選手は親被りで12000の出費となりました。』

『やっぱいきなり来たね・・・』

~東二局~ 親:ネリー

清澄 188400

臨海 87700

新道寺 79800

千里山 60900

(まだ行くよ。)

(私も負けていませんよ!)

~6巡目~

(これで、先程の失点を取り戻します!)

「リーチ。」

「オリ、ロン。タンヤオ清一三暗刻対々。36000。」

(まさか、今のが和了り牌だったとは・・・)

(原村、苦戦しとるようやな。)

(このままネリーが大逆転してお金いっぱい貰うよ!)

『原村選手まさかの放銃です。』

『今のは上手かったね。カンせずに筋引っかけで和了るとはねぇ・・・』

~東二局一本場~ 親:ネリー

清澄 152400

臨海 123700

新道寺 79800

千里山 60900

(もうあれだけあった点差が無くなりかけてますね・・・またマホちゃんの活躍を台無しにしそうですね・・・)

(運はネリーに味方してくれているよ!)

~8巡目~

「カン。」

(ヴィルサラーゼがカンするなんて珍しいな。)

「サミ、ツモ。嶺上開花清一一通ドラ1。12100オール。」

(また、やられたわ・・・しかも嶺上開花とか・・・)

(トップを取られてしまいました・・・)

『な、なんと、ネリー選手、清澄高校を逆転!トップに浮上です!』

『いきなりトップに行くなんて凄いね~。』

『ネリー選手は三連続で三倍満を和了る事が多々ありますよね。』

『自分が和了れる局とかそういうのが分かってるのかもね。』

『そんか、非現実的な・・・』

~東二局二本場~ 親:ネリー

臨海 160000

清澄 140300

新道寺 67700

千里山 48800

(なんだか県予選の決勝を思い出しますね。そういえば咲さんがあの時言ってましたね。私は私を貫けと。なら、貫きます!私の麻雀を!)

~9巡目~

「ロン。タンピン三色ドラドラ、12600です。」

(新道寺が振り込んだか・・・でもこれでヴィルサラーゼの親番が終わった。ここからやな。)

(まだ大丈夫、役満喰らってもその後にもう一回流れが来てくれるから。)

~東三局~ 親:友清朱里

臨海 160000

清澄 152900

新道寺 55100

千里山 48800

(このままの点数は流石にまずいな。稼がんとな。とりあえず原村を潰す。)

~7巡目~

(調子が出てきましたね。)

「リーチ。」

「ロン。混一一通ドラ1、12000。」

(な、まさか、また放銃してしまうとは・・・)

『清澄高校原村選手、またもや放銃してしまいました。』

『イレギュラーな相手がいると難しいだろうね~デジタルは。』

『確かにそうですね。これからどうなってしまうのでしょうか!』

~東四局~ 親:舟久保浩子

臨海 160000

清澄 140900

千里山 60800

新道寺 55100

(最下位になった・・・このまんまじゃ部長でも勝てん。私が和了らんと・・・)

~7巡目~

「リーチ。」

(うわ、原村さんのリーチ、怖い。オリで・・・)

~13巡目~

「ツモ。リーチツモタンピン。1300・2600。」

(原村、夢乃マホのあれが無くても十分過ぎるくらい強いやん・・・この実力なのに後半戦の東一局で役満来るんやろ?地獄やな・・・)

『原村選手、調子を取り戻しつつありますね。』

『元々調子は悪く無かったよ?運が悪かっただけで、あれがあいつの実力だよ。』

『そうだったんですか、すいません。』

『知らんけど。』

『その"知らんけど"って、もしかして私が謝ったから言ったんですか?』

『え、いや、そんなんじゃないけど。』

『そうですか・・・ふふっ、素直じゃないですね。三尋木プロ。フォローありがとうございます。』

『は?別に、そんなんじゃないし・・・というか、今はこんな話しちゃダメだし・・・』

『ふふっ、そうですね。』

~南一局~ 親:原村和

臨海 158700

清澄 146100

千里山 58200

新道寺 53800

(このままの状況で原村に役満なんか和了られたら絶対に決勝に行けへん。ここで稼がんと。)

~8巡目~

(タンピン三色の聴牌。リーチしてツモれば跳満やな。まぁ、原村の親番やから削っておきたいし、行っとこか。)

「リーチ。」

(千里山の方がリーチしてきましたか。なら私も・・・)

「リーチ。」

(追っかけリーチ・・・けど、夢乃マホじゃあるまいし、一発で振り込む事はあらへんやろ。あっ、一発でツモったわ。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピン三色・・・裏乗って4000・8000。」

(ついてるわ!一発と裏ドラで跳満が倍満になった。これは良い兆しが見えとるわ!)

(やられてしまいましたか・・・)

~南二局~ 親:ネリー

臨海 154700

清澄 137100

千里山 75200

新道寺 49800

~3巡目~

「ポン。」

(千里山の方が中を鳴きましたね。役牌バックか染め手、チャンタですかね?まだ分かりませんね。)

「チー。」

(真ん中を鳴いてきましたね。という事はチャンタでは無いですね。なら、今鳴いた索子じゃない牌を落として行きましょう。)

「それや、ロン。」

(また、振り込んでしまいました・・・ですけど、それなら役牌バックの筈ですから、そこまで高くないはずです。)

「中ドラ3。8000。」

(まさか、ドラ3だったとは・・・これは、手痛いですね・・・)

~南三局~ 親:友清朱里

臨海 154700

清澄 129100

千里山 83200

新道寺 49800

(そこそこ追い付いたわ。でも、役満があるから安心してられへん。もっと貪欲に稼がんと・・・)

~11巡目~

(来たで!)

「ツモ、タンピン。700・1300。」

(また和了られ手しまいましたか・・・)

~南四局~ 親:舟久保浩子

臨海 154000

清澄 128400

千里山 85900

新道寺 48500

(もうオーラスなのに何も出来てない・・・このままだと焼き鳥になる、それだけは避けんと行けんね。)

~8巡目~

(聴牌しました。ここは、攻めます!)

「リーチ!」

(新道寺の友清朱里、何もしてこんと思たら最後に動いたか。)

(一発で来ました。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピンドラ1で3000・6000です!」

(やっと和了れた!)

(一発で和了られたか・・・)

(なんとか1位をキープ出来た。)

(とりあえず、前半戦は終了ですね。)

『副将前半戦終了!最後は新道寺女子の友清朱里選手が和了りました。臨海女子が圧巻の攻めを見せ、一気にトップに浮上しました!清澄も負けじと和了り2位をキープ。千里山は2位との点差を積めました。これから10分の休憩の後、後半戦を開始します。』

 

~副将前半戦結果~

臨海 151000

清澄 125400

千里山 79900

新道寺 60500



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第63話 副将後半戦

今日はちゃんと間に合いました。これからはちゃんと間に合わせるようにします。


前半戦が終了し、後半戦が始まろうとしていた。

(東一局で役満が来るから、原村が起家になる事だけは避けたいな。もし起家になんてなられてしもたら48000も持ってかれる。そんなんされたら勝てへんやろからな。)

(48000でもネリーは問題無いけどね。それに、後ろにあいつがいるからもう不安とか皆無だよ。)

 

~場決め結果~

原村和:東

ネリー:南

舟久保浩子:西

友清朱里:北

(うわっ、親番になりよった・・・これ、夢乃マホの副作用かそれとも偶然か・・・どっちにしろ辛いわ・・・)

 

~東一局~ 親:原村和

臨海 151000

清澄 125400

千里山 79900

新道寺 60500

(これは・・・凄いですね。)

「リーチ。」

(ダブルリーチ!?やっぱり夢乃マホのコンボやからそれくらいはくるやろと思っとったけど、いざこの状況になってみると辛いな・・・)

「ポン。」

(新道寺が一発消しをした。)

(無駄だよ、この流れはどう頑張ろうと崩せない。)

「ツモ。ダブリーツモタンピン清一二盃口。16000オールです。」

(こんな偶然の和了り、本当にあるんですね・・・)

(これが夢乃マホの力か・・・)

(凄いなあの子、直接戦ってみたいね。)

『うっわ~、いきなりダブリーで役満とかマジっすか~!』

『原村選手がここまで強運を持っていたとは・・・』

『やっぱり夢乃マホは凄いねぇ。』

『何言ってるんですか?今対局してるのは原村選手ですよ?』

『え?あぁ、そうだねぇ。ごめんごめん。』

『もう、しっかりして下さいよ。』

『はいはい。』

~東一局一本場~ 親:原村和

清澄 199000

臨海 109400

千里山 63900

新道寺 44500

(このままだと新道寺が飛ばされるかもしれん。原村和も危ないけど何となく臨海がまだ何かを残してるような気がするわ。とりあえず稼がんと。)

~7巡目~

「リーチ。」

(原村和がリーチ!?でも・・・)

「ポン。」

(これでこっちも聴牌や、連荘なんてさせへんで。)

~10巡目~

「ツモ。タンヤオ三色ドラ3。2100・4100。」

(先に和了られてしまいましたか。リーチ棒含めて5100点マイナスですか。)

(このままどんどん稼がせて貰いますで。)

~東二局~ 親:ネリー

清澄 193900

臨海 107300

千里山 73200

新道寺 42400

(三年やからか流れが来とるんか知らんけど、めっちゃええ感じですわ。これならいける!)

~5巡目~

「リーチ。」

(また千里山の方ですか。)

(流れは千里山に来てるね。)

(また、やられる・・・!)

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン三色。4000・8000。」

『千里山の舟久保選手が倍満ツモです!』

『へぇ~、なかなかやるじゃん。』

『次は舟久保選手の親番です。どうなってしまうのでしょうか!』

~東三局~ 親:舟久保浩子

清澄 189900

臨海 99300

千里山 89200

新道寺 38400

(これは・・・行けそうです!)

~7巡目~

「リーチ。」

(原村和がリーチした。お、こっちも聴牌した。原村和の安牌でもあるし、行っとこか。)

「追っかけリーチさせて貰います。」

(これは先に和了らないといけませんね。)

「わわっ、ツモです!国士無双。8000・16000です!」

(新道寺の方、役満を和了るとは・・・)

(はぁ?何邪魔してくれとんねん!しかも私が親の時に!折角臨海に届きそうやったのに・・・)

『ま、まさか役満を和了ってしまうとは・・・』

『いや~、あの子持ってるね~!』

『東三局までしかしてないのにもう役満が二回も出てしまいましたね。これは凄いですね・・・』

『そうだねぇ。役満バンバン出ると詰まんないような楽しいような、微妙な感じだねぇ。』

『そうですね・・・』

~東四局~ 親:友清朱里

清澄 180900

臨海 91300

新道寺 72400

千里山 72200

(僅差やけど捲られた・・・こっちも親被り決めたるわ!)

~7巡目~

「リーチ。」

(原村和、また和了ろうとしとるんか・・・でも、こっちも3巡前くらいから聴牌してるで。後は三色が付くのを待つだけ・・・来たわ。)

「リーチ。」

(また千里山ですか・・・これ、当たりそうですね。)

「ロン。リーチ一発タンピン三色ドラ2。16000。」

(これは、最初に役満を和了ったのにマイナスになってしまうかもしれませんね・・・)

(ありがとう千里山。千里山のお陰で清澄も殺れる!)

~南一局~ 親:原村和

清澄 164900

臨海 91300

千里山 88400

新道寺 72200

(また臨海が射程圏内に入った。このまま2位になるで!)

~8巡目~

(やっと、届いたで。)

「ツモ。タンピン三色。1300・2600。」

(また千里山ですか・・・)

(全然和了れない・・・)

(捲られちゃったね。まぁ、直ぐに捲り返すけど!)

『遂に千里山が臨海を捲り、2位に浮上しました!』

『へぇ、まさかあの差を埋められるとはねぇ。』

~南二局~ 親:ネリー

清澄 162300

千里山 93600

臨海 90000

新道寺 70900

(最初の役満から一度も和了れてませんね・・・聴牌までは出来るんですけどね・・・)

(ヴィルサラーゼが余裕綽々な顔をしとるんが怖いな。まだ何かを隠しとるんか・・・?なら、こんな点差じゃ、安心出来ひんな。)

~5巡目~

「ポン。」

(よし、これで聴牌や。また和了るで。)

~7巡目~

「リーチ。」

(原村和がまたリーチを掛けてきた。さっきから全然和了れとらんけど、やっぱり原村和のリーチは怖いわ。まぁ、こっちも引く気はあらへんけど。ほら、来たで!)

「ツモ。混一三暗刻対々。3000・6000。」

(やっぱり、聴牌までは出来るんですけどね・・・いつもならもっと和了れるはずなのに・・・)

『原村和、ちょっと不調っぽいねぇ。』

『さっきは運がどうのこうのって言ってましたけど、やっぱり不調なんですか?』

『まあね。普段のあいつならこれまでで3回かそれ以上は和了ってるだろうからねぇ。』

『確かに、役満を和了ってから全然和了れてませんね。運を使い果たしてしまったのでは無いでしょうか?』

『そりゃあ無いわ~、だって何回も聴牌出来てるもん。相手が奴の苦手なタイプか、それとも意図して奴を止めてる奴がいるか・・・まぁ、今回の場合はその両方のせいだろうねぇ。』

『そう、ですか・・・私には良く分かりませんが・・・』

~南三局~ 親:舟久保浩子

清澄 159300

千里山 105600

臨海 84000

新道寺 67900

(やっと、我慢の期間が終わった・・・さぁ、始めようか!)

~8巡目~

「ツモ。平和清一二盃口。6000・12000。」

(ヴィルサラーゼがまた三倍満を和了った!?前半戦の三連続で終わりやなかったんか・・・)

(また、三倍満・・・)

『ネリー選手、またもや三倍満を和了りました!』

『やっぱ強いね~。』

『ここでこの一撃はかなり厳しいのではないでしょうか?』

『千里山は折角2位になったのにまた3位に戻っちゃったからねぇ~。』

『そうですよね。やはりネリー選手の強い所であり恐い所が出てきたって感じですかね?』

『そんな感じだねぇ。』

~南四局~ 親:友清朱里

清澄 153300

臨海 108000

千里山 93600

新道寺 61900

(もしかしたらもう一回行けちゃうかも!やろうか。)

~7巡目~

「リーチ。」

(ヴィルサラーゼがリーチを掛けてきた!もしかしてまた三倍満が来るんか!?)

(なんだか苦しそうな手のような気がしますね。ここは攻めで大丈夫でしょう。)

「リーチ。」

(原村和もリーチを掛けた!もうこれはオリやな。どっちに和了られても困るけど、振り込むよりかはましやからな。)

(うわ、多分原村和の和了り牌掴まされたよ・・・残念、ここで終わりだね。この続きは決勝でって感じだね!)

「ロン。メンタンピン三色ドラ1。12000です。」

(やられた・・・)

(これでしゅーりょー!)

「ありがとうございました。」

「ありがとうございます。」

「ありがとう、ございました・・・」

『副将戦終了!最後は清澄高校の原村選手がネリー選手に12000の跳満を直撃させて終わりました!』

『いやー、残るは大将戦だねぇ。』

『そうですね。次の半荘二回で決勝へ進出する2校が決まってしまいます。』

『大将戦もめちゃくちゃに波乱が起きる事を期待してるよ。』

『私は点数とか順位がバタバタ動く試合はあんまり好きでは無いですけど・・・』

『いやいやー、見てるこっちとしてはバタバタしてる方が楽しくね?』

『そうですかね?』

『そうだよそうだよ。』

『はあ、そうですか。では、休憩の後、運命の大将前半戦を開始致します!』

 

~副将後半戦結果~

清澄 166300

臨海 95000

千里山 93600

新道寺 61900



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第64話 大将前半戦

遂に大将戦です。臨海大将が登場します!


副将戦が終わり、選手達が控え室に戻っていた。

「ただいま帰りました。」

「あ、和ちゃんお疲れ様。」

「和先輩、後半戦の最初の役満凄かったです!」

「ありがとうございます。それにしても、あんな偶然、本当にあるんですね。」

「あれは和先輩の実力ですよ~!」

(マホ、あんたの引き金じゃろうに・・・)

「そうなんでしょうか?まぁ、良い結果になったので深く考えない事にします。」

「そ、そういえば次は宮永先輩の出番ですね!」

(あ、話題変えよった・・・)

「え?あぁ、そうだね。」

「頑張って下さいです!」

「う、うん。頑張るよ!」

「頑張って下さい、咲さん。」

「ありがとう和ちゃん!」

「宮永先輩なら点差もありますし楽勝ですよ~!あ、でもでも、さっきも言いましたけど臨海の大将さんには気を付けて下さいです!」

「分かったよ。ありがとうマホちゃん。じゃあ、行ってきます。」

~千里山女子控え室~

「帰ったで。なんとかプラスで終わらせて来たわ。誰かさんが稼がんかったから。」

「まだ言っとるんか!過去の事はもうええやろ!」

「まぁ、せやな。心音、臨海の大将はチェックしときや。」

「分かってます。任せて下さい。」

「それにしても、臨海の、向麻美って奴、日本人なんか?今年の臨海は日本人2人なんか?」

「それ、ムカイマミやなくてシアンマーメイって読むらしいで。れっきとした外国人や。まぁでも、今の国籍は日本らしいけどな。」

「へー、そうなんか。で、そいつは強いんか?」

「まだ分からんな。ヴィルサラーゼが副将になるくらいやからかなり強いんやろうけど、今のところ目立った動きはしとらんな。」

「まぁ、これまでの臨海はネリーさんが暴れてましたからね。」

「せやな、まぁでも心音なら何考えとるか分かるやろ。多分2位抜けは出来るやろ。」

「そうですね。頑張って来ます!」

~臨海女子控え室~

「ただいま~、まさか最後に直撃されるとは思わなかったよ!」

「お疲れ様。まぁ、あれは仕方ないだろう。とりあえず今はシアンに頑張ってもらう他無いだろう。」

「大将譲ってあげたんだから絶対勝ってよね!」

「お任せあれデース!」

「・・・シアンって中国人だよね?」

「そうデスよ!中国生まれデース!でもフランス育ちデース!」

「で、国籍は?」

「今はジャパンデース!」

「はは、色々と込み入ってるよね・・・シアンって。」

「そうデスか?」

「確かにな。でも、どこ住みだろうがどこ国籍だろうが対局中は関係ない。皆驚くだろうな。シアンの圧倒的強さに!」

「ネリーもシアンのあれにはいつもやられちゃうよ!あれズルいよね!」

「確かに、あれは強いな。私もたまに防げない時があるな。まぁ、そういう事だから、見せつけてこいシアン!お前の実力を!」

「任せるデース!」

 

『さぁ、副将戦が終わり、遂に大将戦になってしまいました。この半荘二回で決勝進出する2校が決まってしまいます!では選手紹介をしていきます。まずはトップの清澄高校2年、去年のインターハイ個人2位の宮永咲選手!三尋木プロ、彼女についてはどう思いますか?』

『そうだねぇ、奴は夢乃マホと違ってバンバン和了るタイプじゃないからねぇ。そこまででもないって思われがちだけど、奴が夢乃マホみたいなタイプだったらMVPになるのはほぼ100%奴だと思うよ。』

『そんなに凄いんですね・・・』

『まぁねぇ、個人2位は伊達じゃないよ。』

『そうですか。では続いて臨海女子1年の向麻美選手。彼女についてはどう思いますか?』

『んー、まだよく分かんねぇかな。あのネリーヴィルサラーゼを副将にしちまう程の実力はあるんだろうねぇ。それに、あいつは去年のU15世界大会で優勝してるらしいしねぇ。』

『そうなんですよね。そういえば彼女と対局した人にインタビューしたんですけど、その全員が生きてる気がしなかったって言ってました。しかも全国大会でベスト8になった方々がですよ?』

『へぇ~、それは期待出来そうだねぇ!』

『シアン選手が決勝の鍵になりそうですね。では続いて千里山女子、こちらも1年の藤崎心音選手。彼女についてはどう思いますか?』

『んー、そうだねぇ。とりあえず波乱を起こしてくれそうだとは思ってるよ。』

『な、成る程、こちらも大将戦の鍵になりそうですね。では最後に新道寺女子3年の鶴田姫子選手。彼女についてはどう思いますか?』

『まぁ、皆思う事は同じだろうねぇ。コンボが無いから去年より脅威では無いって。確かにそうかもしんないけど、だからと言って油断してたらやられるだろうねぇ。あいつは素の実力も確かだからねぇ。』

『そうですか。ありがとうございます。では、対局室に選手達が集まってきましたので、大将前半戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

宮永咲:東

藤崎心音:南

鶴田姫子:西

向麻美:北

 

~東一局~ 親:宮永咲

清澄 166300

臨海 95000

千里山 93600

新道寺 61900

(2回戦で気付いた事がある。宮永咲は基本的に干渉する立場を取る。でも、自分の立場が脅かされた時に和了りに来る。せやからそれまでは宮永咲を気にせず自由に和了れる!対策はその後で良い。それに今回に関しては、2位終了でも構わない。なら敵は臨海だけや。まだよく分かっとらんけど、確実に攻略してここで終わりにしたるわ!)

~8巡目~

「ツモ!タンヤオ七対子ドラドラ。3000・6000!」

(新道寺!?そうか、コンボが無いとはいえ、実力は確かやもんな。敵は臨海一人やないって事か。)

(新道寺、コンボが無いのに和了れるんデスね。これは少し楽しめそうデース!)

~東二局~ 親:藤崎心音

清澄 160300

臨海 92000

千里山 90600

新道寺 73900

(親番やし、ここで稼がんと臨海が何してくるか分からんからな。)

~7巡目~

(おっ、来たわ。これで終わりや!)

「カン!」

(!?千里山の人がカンした・・・という事はまさか・・・)

「ツモ。嶺上開花ダブ東・・・あら、カンドラが北やなかったら4000オールやったのに、運が良いみたいですわ。ドラ4!8000オール!」

(やっぱりまた嶺上開花!?千里山の人、やっぱり凄いよ・・・)

(へぇ、夢乃マホさんみたいに真似出来る訳では無いだろうけど、凄いデスねこの人!)

『嶺上開花は宮永選手が和了ると思っていましたが、まさか藤崎選手が和了るとは・・・』

『え、2回戦でも嶺上開花和了ってたよ?あいつ。』

『いや、あれは偶然かと思いまして・・・』

『まぁ、あいつは同じ卓に宮永がいないと嶺上開花出来ないと思うけどねぇ。』

『え、なんて言ったんですか?』

『んや、なんでもねーよ。』

『そうですか・・・』

~東二局一本場~ 親:藤崎心音

清澄 152300

千里山 114600

臨海 84000

新道寺 65900

(調子良さげやな。それに今回も、宮永咲を利用して和了れそうやな・・・)

~7巡目~

「リーチ。」

「ポン。」

(よし、清澄がポンした。これで次の巡目に宮永咲がカンしたら終わりや!)

「カン。」

「ロン。リーチ槍槓タンピン三色で18300。」

(槍槓!?また、また千里山の人に邪魔された・・・やっぱりこの人恐いよ・・・)

(へぇ~、人の心が読めるってやっぱり凄いんデスね~!)

『藤崎選手、今度は宮永選手に槍槓を決めました!』

『もう清澄をほぼ捲っちゃったねぇ。大将戦は2位決定戦だと思ってたけど、もしかしたら清澄が落ちる事もあり得るかも・・・いや、まだ分かんねぇかな。』

『でも、あの宮永選手が何もしないとは思えませんけどね。』

『だよね~。』

~東二局二本場~ 親:藤崎心音

清澄 136000

千里山 132900

臨海 84000

新道寺 65900

(よし、もう少しで清澄を捲れる!このまま攻めるで!)

~8巡目~

「リーチデース!」

(臨海が動き出した!タンピン三色ドラ1か、一発でツモるかドラが乗ってツモれば倍満の手か。普通の奴ならここで降りるやろうけどウチは待ちが5,8索やって分かっとるからこの赤5ピンだって当然のように捨てられるんやで!)

「ロンデース!リーチ一発タンピン三色ドラ2。16600デース!」

(えっ!?5,8索待ちやなくて5,8ピン待ち!?なんでや!?)

(ビックリしてますね。今の局、私は筒子を索子、索子を筒子だと思ってたんデスよ。人間が考えてる事が全て正しい訳じゃ無いんデース!)

(くそ、まんまとやられたわ・・・成る程、この対応力がこいつの武器なんやな。でももう騙されへん!流石に種類を違う物に考えられるとはいえ数字を違う物には考えられんはずや。少し出来たとしても何処かでボロが出るはずや。それならまだやれる!)

~東三局~ 親:鶴田姫子

清澄 136000

千里山 116300

臨海 100600

新道寺 65900

~9巡目~

(今度は七対子ドラ単騎か。)

「リーチデース。」

(今回は流石に振り込まへんはずや。このドラは流局するまで押さえる!これなら臨海が和了れる訳が・・・・・・)

「ロンデース!リーチ一発七対子ドラドラ。12000デース!」

(はっ!?今、何が起きたんや!?急に眠くなって、起きたらこいつに振り込んどった・・・一体どうなっとるんや・・・)

『藤崎選手が2連続で放銃です!しかし、藤崎選手はあまり振り込まない選手なはずなのにどうしたのでしょうか。』

『いやぁ、これは、臨海もヤバいのを大将に持ってきたねぇ。』

『え、どういう事なんですか?』

『この勝負、面白くなりそうだよ。』

『そ、そうですか・・・』

~東四局~ 親:向麻美

清澄 136000

臨海 112600

千里山 104300

新道寺 65900

(これは、ヤバいわ・・・こいつ、ただ者やない!このままやと負けは避けられん。とにかく稼がんと!)

~8巡目~

「カン!・・・ツモ!嶺上開花清一。4000・8000!」 (よし、なんとか臨海を連荘させずに行けた。このまま耐える!)

『また千里山が嶺上開花を和了りました!』

『これは意地と意地とのぶつかり合いになりそうだねぇ。』

~南一局~ 親:宮永咲

清澄 132000

千里山 120300

臨海 104600

新道寺 61900

(親番で和了れなかったデスからここは和了らせてもらいます!)

~7巡目~

「リーチデース!」

(くそ、間に合わなかったわ!また・・・・・・)

「ロンデース!リーチ一発七対子ドラドラ。12000デース!」

(また意識が飛んだ。こいつ、マジでヤバいわ!永水の姫様とは違うヤバさがあるわ。でも、こいつのがヤバいわ・・・)

~南二局~ 親:藤崎心音

清澄 132000

臨海 116600

千里山 108300

新道寺 61900

~6巡目~

(聴牌した。臨海は七対子1向聴か。そういえばさっきから七対子ばっかやな。ま、関係ないけど。それより、リーチ掛けたらどうなるんやろうな。まさかチョンボになるとは考えられんけど。まぁ、物は試しや!)

「リーチ。」

「ポンデース。」

(ポン?リーチっていう必殺技がありながらポン、というか、七対子1向聴を崩して対々2向聴にするって、普通に効率悪いやろ。血迷ったんか?流石に一発は無いか。しかも臨海が鳴ける牌やん。)

「ポンデース。」

(これであいつも1向聴か。はぁ!?また臨海が鳴ける牌が来た!?もしかして、これもなんか・・・)

「ポンデース!」

(嘘やろ・・・)

「ロンデース!タンヤオ対々ドラ3。12000デース!」

(こいつ、リーチしなきゃ意識飛ばさせて強制的に和了る癖にリーチしても鳴いて対々にして直撃するんか・・・せやから七対子が多いんか。というか、それやったら逃げ場が無いやん!なんやこいつ、強すぎやろ・・・)

『千里山の藤崎選手、これは運が無かったですね・・・』

『いやぁ、これは、運だけでは片付けられないでしょ。臨海の、こんなのも隠してたのか・・・これは強いね。』

『さっきから何を言っているのかよく分かりませんけど、あれが必然だったって事なんですか?』

『いやぁ、どうだろうねぇ。』

『もう、さっきから何なんですか・・・』

~南三局~ 親:鶴田姫子

清澄 132000

臨海 128600

千里山 96300

新道寺 61900

~7巡目~

(聴牌した。しかも今回は臨海が鳴けへん牌や。これなら行けるはずや!)

「リーチ。」

(よし、通ったわ。)

「リーチデース!」

(臨海もリーチしてきた!もしかしてチョンボになるんか!?って、流石にそれは無いか。ならなんでリーチなんて・・・まさか清澄!?)

「ロンデース!リーチ一発タンヤオ七対子ドラ1。12000デース!」

(清澄まで捲りやがった・・・こいつ、支配しようとしとる、この対局を。でも、そんな事したら・・・)

(臨海に捲られちゃった・・・今回は何もしないつもりだったけど、やっちゃおう。)

(やっぱり、次、清澄が来る・・・!)

~南四局~ 親:向麻美

臨海 140600

清澄 120000

千里山 96300

新道寺 61900

~2巡目~

「カン。」

(え、2巡目にカン!?)

(清澄、やっぱりヤバすぎやわ。ドラカンしてカンドラもモロ乗りや・・・)

「ツモ!嶺上開花ツモ清一ドラ8。8000・16000です!」

(こんなん無理やわ・・・)

(これが、宮永咲さん・・・凄いデス!凄過ぎデース!さっきまで千里山の人がやってた紛い物とは全然違います!これが、本物の実力デスか・・・カッコいいデス!)

「ありがとうございました。」

「お疲れ様です。」

「お疲れ様デース!」

「お疲れ様です。」

(でも、後半戦では、勝つデース!)

 

~大将前半戦結果~

清澄 152000

臨海 124600

千里山 88300

新道寺 53900



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第65話 大将後半戦

準決勝最後の対局です!


休憩が終わり、大将後半戦が始まろうとしていた。

「宮永さん!宮永咲さん!」

「え?はい、なんですか?」

「さっきのオーラスの数え役満、カッコ良かったデース!」

「あぁ、ありがとうございます。でもシアンさんも凄かったですよ。」

「そうデスか?宮永さんにそう言って貰えると嬉しいデース!ありがとうございます!」

そう言うと、シアンが咲に抱きついた。

「え、ちょ、何?」

「私、宮永さんのファンになっちゃいました!宮永さん大好きデース!」

「ありがとう、う、嬉しいけど、苦しい!」

(シアンさんの胸が大きいせいで顔が埋まっちゃったよ!)

「ごめんなさいデース!日本ではハグの風習は無いんでしたよね。」

「え、確か中国もフランスもハグの風習は無かった気が・・・」

「おぉ!よく知ってますね~宮永さん!流石デス!」

「じゃあなんでハグしたの!?」

「宮永さんにハグしたかっただけデース!」

「えぇ・・・」

「さ、さぁ、後半戦を始めるデース!」

「あ、はぐらかした・・・」

「えぇ・・・」

 

~場決め結果~

鶴田姫子:東

向麻美:南

宮永咲:西

藤崎心音:北

 

~東一局~ 親:鶴田姫子

清澄 152000

臨海 124600

千里山 88300

新道寺 53900

「宮永さんは大好きデスけど勝負は容赦しないデスよ?」

「それは勿論、こちらこそだよ。」

「それでこそ宮永さんデース!」

(よし、シアンさんに負けないように頑張らなきゃ!)

~8巡目~

「リーチデース!」

(臨海がリーチした!?また直撃されるんか!いや、臨海の和了り牌は清澄も持っとる。という事はまさか・・・)

「ロンデース!リーチ一発七対子ドラドラ。12000デース!」

(やっぱり、清澄を狙い打ちした!)

(この眠くなる感じ、シアンさんのせいなんだよね。マホちゃんも言ってたし。でもこれ、どうやったら防げるんだろう・・・)

『また宮永選手が一発で振り込みましたね。』

『今のところ臨海がリーチしたら全部一発で和了ってるねぇ。』

『2回戦まではこんな和了りしてませんでしたよね?』

『まぁ、奥の手を温存させるはどの学校もしてるけどねぇ。』

『確かにそうですね・・・しかし、これは宮永選手も勝つのは厳しいかもしれませんね。』

『まぁ、まだなんとも言えないかなぁ。この世界は何が起こるか分からないからねぇ。』

~東二局~ 親:向麻美

清澄 140000

臨海 136600

千里山 88300

新道寺 53900

(臨海の親番、ここで連荘されたらヤバいな。なら即効やな!)

「ポン!」

(このまま行くで!)

~9巡目~

(来た!)

「カン!」

(まさか、また嶺上開花デスか!?)

「ツモ!嶺上開花のみ。300・500。」

(はぁ、ただのゴミ手でしたか。ビックリしたデース。)

(でも、あんたの親番を流せたんだからこの和了には価値があるわ。いつまでもあんたの好きにはさせんで!)

~東三局~ 親:宮永咲

清澄 139700

臨海 136100

千里山 89400

新道寺 53600

(さっきまで臨海ばっか気にしとったけど、清澄の親番も危ないな。ここも出来るだけ最善手を選ぶで!)

~7巡目~

(よし、これなら行けるわ!)

「リーチ!」

「ポンデース!」

(分かっとったで。でも、今回はちゃんと対策済みやで。あんたの副露牌はウチの和了り牌なんやで!)

「ツモ!リーチツモタンピン三色。3000・6000!」

(まさか、破られるとは・・・まぁ、それくらいじゃないとここまで来れないデスよね。)

~東四局~ 親:藤崎心音

清澄 133700

臨海 133100

千里山 101400

新道寺 50600

(2回も藤崎さんに邪魔されたデース。ここはアレを!・・・いや、これは四季さんにまだダメって言われてたデス。ならやっぱりリーチするデス!)

~7巡目~

「リーチデース!」

(またリーチした、これ、どうすれば・・・・・・)

「ロンデース!リーチ一発清一七対子ドラドラ。24000デース!」

(うわわっ!三倍満・・・どうしよう、このままだとシアンさんに勝てないよ・・・)

『臨海のシアン選手が三倍満を直撃しました!これで清澄を捲って更に点差もかなり付けました!』

『あいつ面白いねぇ、あの宮永咲をここまで苦しめたのは数える位しかいないんじゃね~?』

『そうですね、シアン選手はもしかしたら決勝で波乱を起こしてくれるかもしれませんね!』

『いやいや、まだ臨海が決勝行くとは決まってないだろ~。』

『あ、そうでした。申し訳ありません。』

~南一局~ 親:鶴田姫子

臨海 157700

清澄 109100

千里山 101400

新道寺 50600

(もう南一局、なのに全然勝てる位置やないわ。見た目は逆転出来そうな点差やけど、清澄がそう易々と2位を譲ってくれるとも思えんからな・・・)

(ここで和了って1位を確実の物にするデース!)

~4巡目~

「ツモのみ。300・500です。」

(え、清澄?)

(何故宮永さんがそんな安手を・・・しかもこんな点差があるのに・・・謎デス。)

『み、宮永選手、ここで何故点数を下げて安い手を和了ったのでしょうか・・・』

『ふふ、始まるだろうねぇ、宮永咲のイリュージョンショーが。』

『え、イリュージョンショー???』

『まぁ、見てれば分かるよ。知らんけど。』

『はあ、そうですか・・・』

~南二局~ 親:向麻美

臨海 157400

清澄 110200

千里山 101100

新道寺 50100

(お、ドラが2つある。役が無いけど、ドラ来たら鳴いてくで!)

~5巡目~

(あ、清澄がドラ出した!)

「ポン!」

(もう1枚ドラがあればって思ったけど、嶺上牌の2枚目だからカンは出来なさそうやな。)

「カン!」

(宮永咲がカンした!?ヤバい!・・・ってあれ?和了らんのかいな。どうしたんや?と思ったら暗子が重なったわ。しかも今のカンドラもさっきポンした牌やわ。これって、やっぱり臨海が決勝に来て欲しくないからやんな。全部宮永咲の掌の中やったんかな・・・でも、決勝に行けるなら構わんわ!決勝でこいつを上回れば良いだけの話や!)

「カン!」

ドラ表示牌はまたしても同じだった。

「もいっこカンや!」

(ドラ12!?もしこれでツモ和了なんてされたら・・・)

「ツモ!嶺上開花ドラ12。8000・16000!」

(やっぱり、これが乱数調整ってやつデスか・・・)

『千里山女子の藤崎選手が役満を和了りました!そして昨年度優勝校の清澄高校がまさかの3位になってしまいました!』

『ふぅん、これは、宮永はどうするつもりなんだろうねぇ。』

~南三局~ 親:宮永咲

臨海 141400

千里山 133100

清澄 102200

新道寺 42100

「リーチです。」

(はぁ?ダブリー!?)

(宮永さん、最後の親番で本気を出して来ましたか。これは流石に追い付けないデスね。)

「カン!・・・ツモ。ダブリーツモ嶺上開花ドラ16。16000オールです。」

(うわ、嘘やろ・・・宮永咲、やっぱりおかしすぎやろ・・・)

(これは・・・流石は宮永さんデース!カッコいいデース!)

『うわ~!流石だねぇ!やっぱり見せてくれるねぇ!宮永咲は。』

『これが、世界レベルの力ですか・・・』

『本当に、清澄は強いねぇ~。』

~南三局一本場~ 親:宮永咲

清澄 150200

臨海 125400

千里山 117100

新道寺 26100

(お、配牌がええ感じや。もしかしたらこれも宮永咲のお陰なんかもしれへんな。)

(もうアレを・・・でも四季さんの言う事は絶対デス!守り抜くデース!)

~6巡目~

「リーチ。」

(あれ、清澄がリーチ?なんでや・・・まぁそんなん関係あらへんわ。次に新道寺がウチの和了り牌を出すからそれを直撃したら2位浮上で見事決勝進出やな!)

「ロン。純チャン三色一盃口。12300です!」

(よし、これで見事2位浮上や!)

(これは、決勝に行けないかもしれないデスね・・・)

~南四局~ 親:藤崎心音

清澄 149200

千里山 129400

臨海 125400

新道寺 13800

(親番、ここで和了って、宮永咲の手助け無しでも勝てたって証明するわ!)

~8巡目~

(聴牌したわ。けど、臨海がまた七対子を聴牌しとるわ。待ちは5索か。このままリーチしたら和了られるな。でも、本当に5索か分からんな・・・)

(赤ドラ来てくれたら良いデスね~。5ピン、じゃなくて5索の。)

(おっ!?今、ボロが出たんや無いか!?待ちは5ピンやろ!しかも5索の赤はもう出とる。絶対そうや!これなら行けるで!)

「リーチや!」

「ふふふふふふふ、期待通りデース!」

「え・・・」

「ロンデース!タンピン清一二盃口。24000デース!」

(はぁ!?こいつ、バラバラの七対子やったはずやろ!?なんでこんな事になっとるんや・・・)

「藤崎さん、こんな単純な罠に引っ掛かるなんて、凄い正直者なんデスね。いや、バカなんデスかね?もしくは両方デスか?」

(くそっ!何も言い返せへん!)

「・・・ウチの、完敗や・・・」

「ありがとうございましたデース!」

『準決勝終了ぉぉぉ!!!!!なんと、最後の最後で臨海が清澄を僅かながら捲って臨海がトップで終わらせました!』

『まさか清澄が2位抜けになるとはねぇ・・・こりゃあ決勝が楽しみだねぇ。』

 

~準決勝結果~

臨海 149400 決勝進出

清澄 149200 決勝進出

千里山 105400

新道寺 13800

 

 

「宮永さん、決勝こそは本気出して下さいね?私も決勝では手加減しないデスから。」

(え、臨海、手加減しとったんか!?)

「・・・やっぱり、最後にリーチをしなかったのは手加減だったんだね。」

(あっ!言われてみればそうや!あいつがリーチしとったらリーチ一発がついて役満、しかも強制的に和了らせられるから確実にそっちの方が良かったはずやわ。という事は、本当に手加減されとったって事か・・・)

「そうデース!流石宮永さんデース!でも、宮永さんにはがっかりデース。今の私に負けるようじゃ、決勝も私に勝てないデスよ?」

「そう、かもしれないね・・・」

「まぁでも、決勝では本気の対局をしましょうね?」

「うん、今日は負けちゃったけど、決勝では負けないよ!」

「私も負ける気がしないデース!頑張りましょうデース!」

「うん。」

 

 

咲が対局室を出て控え室に戻った。

「ただいま・・・」

「宮永先輩・・・」

「咲さん・・・」

「咲ちゃん・・・」

「咲・・・」

「皆さん、すいませんでした。私が不甲斐ないばかりに・・・」

「頭を上げて下さい宮永先輩!宮永先輩は悪くないですよ!」

「南三局一本場で欲張ってリーチなんてしなければ・・・いや、してなかったら役満和了られてたよね・・・やっぱり、全部私が悪いよ。」

「宮永先輩・・・」

「咲さん、調子が悪い事なんて誰にでもあります!咲さんは強いんですから自信を持って下さい!そんな気持ちのままだと、勝てる試合も勝てなくなってしまいますよ!」

「うん、そうだね・・・ありがとう和ちゃん。決勝では私、絶対シアンさんを倒すよ。」

「その意気です!」

「うん、皆のお陰で少しだけ元気が出たよ。決勝では絶対に負けないように頑張らなきゃ!」

「なら、マホが手伝います!」

「私もご一緒します。」

「私もやるじぇ!」

「ありがとう、皆・・・」

こうして咲は決勝で負けない為の練習が始まり、準決勝が終わった。




次回は準決勝終了から5位決定戦開始までになると思います。
最初の方で言及した風習はちょっと調べただけなので間違っていたとしてもスルーして頂くと嬉しいです。


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第66話 宣戦布告

準決勝が終わり、各校の大将が控え室に戻っていた。

「ただいまデース!」

「おぉ、シアンお帰り、凄かったじゃないか!あの宮永咲を捲って1位で準決勝を終えるなんて。」

「自分でもびっくりデース!」

「もう!ネリーよりも活躍しないでよ!」

「ごめんなさいデース。」

「それで、宮永咲は強かったか?」

「そうデスね。今回はそこまででは無かったデスけど、多分あれはかなり手加減してるデス。だから、どちらかというと今回は千里山の藤崎心音さんが手強かったデース。」

「そうだったのか?私には操り人形を扱ってるように見えたのだが・・・」

「いえ、あの人は本当に手強かったデース!これまで私が仕掛けた呪いが不発に終わる事は皆無に等しかったデス。なのにあの人は破ってきたデス。これは純粋に凄いと思ったデス。」

「確かにお前が和了る筈だったのに和了れなかった時があったな。」

「はい、こんな事、これまでは殆ど無かったデスからね・・・また対局したいデース!」

「今年中に何かしらでまた対局出来るんじゃないか?」

「そうデスね。楽しみデース!」

~千里山女子控え室~

「すんません、勝てませんでした・・・」

「お疲れさん。まぁ、何があったんか分からんけどあれはしゃーないやろ。」

「でも、なんであんなに振り込んどったんですかね?しかも毎回一発で。」

「あれは・・・なんと言えば良いんですかね・・・」

「気付いたら和了り牌を出してたって感じやろ?」

「え、どうして分かったんですか!?」

「そりゃ、振り込む筈がない心音が何回も振り込んで、しかも振り込んだ後にめちゃくちゃ驚いとったら分かるやろ。」

「あぁ、表情に出てましたか。」

「めっちゃびっくりしとったで、あんた。」

「そう、ですか・・・」

「心音、大丈夫?」

「大丈夫や望・・・すんません、ちょっと、喉乾いたんで飲み物買ってきます・・・」

足早に心音が外に出た。

「心音!・・・行っちゃった。」

「心音、むっちゃ悔しそうやったな・・・」

「そうでしたね、立ち直ってくれればええですけど。」

~清澄高校控え室~

「それじゃあ皆さん、帰りましょう。」

「そうじゃな。」

「それじゃあ行こっか。」

「あっ、片付けしてなかったです!先に行ってて下さい!すぐに追い付きますから!」

「分かった。マホちゃん、気をつけて来てね。」

「分かりました!」

マホが片付けを終えて他のメンバーを追いかけていると、そこには心音の姿があった。

「あっ、千里山の藤崎心音さん。」

「え?あぁ、清澄の夢乃マホやん。ワーホンモノダー。」

「凄い棒読みですね・・・」

「おぉ!ナイスツッコミ!」

「藤崎さん、凄い悔しそうですね。」

「よく分かったな。いや、もしかしてウチの能力を使っとるんか?」

「あっ、バレましたか。それにしてもこれ凄いんですね。藤崎さんが上野望さんが好きだって事とかもちゃんと分かるんですね。」

「せやな、あんたが宮永咲と冬室氷華の事が好きって事が分かるようにな。あと、心音でええで。」

「分かってて藤崎さんって言ってました。心音さん、いつか対局する機会があればよろしくお願いします。」

「個人戦で対局するかもしれんしな。」

「いや、マホは個人戦に出ないです。」

「嘘やろ?」

「本当ですよ。」

「宮永咲と冬室氷華と、他にもう一人マホよりも強い奴がおるっちゅう事か?」

「そうですね。あ、でも、マホの模倣は1日に一回しか使えないですし、最初の頃はあまりレパートリーが無かったのでそれが原因って可能性もありますけど。」

「そらそうやろ。今のマホに勝てる奴が何人もおってたまるか。」

「そんな、マホなんかそんなに強くないですよ。」

「あのなマホ、謙遜はたまに人を傷付けるんやで?」

「そうですね、気をつけてはいるんですけどね・・・」

「まぁええわ。とりあえず対局する機会があったらその時は楽しみにしとくわ。」

「マホも楽しみです!それではお気をつけて!」

「おー。ほなな~。」

(心音さん、結構良い人でした!ってあれ?あれって白糸台の西園寺麻衣さんと東条小夜さんです!何を喋っているんでしょうか・・・?)

「清澄と臨海が残ったな。」

「まぁ、期待通りですね~。」

「で、今年の臨海と清澄はどうなんだ?」

「臨海はかなり仕上がってますね。一番の問題は大将のシアンさんですね。多分ですけど大星先輩、めっちゃ不利な相手だと思いますよ。」

「そうだな、やはり夢乃マホもいるし次鋒までで終わらせるべきなのか・・・」

「まぁ、確かに夢乃マホは凄いですね。でも、最悪次鋒で終わらなくても大丈夫ですよ。清澄は夢乃マホと宮永咲以外は全然強くないですから。と言うか、宮永咲も強いのか微妙な感じですよね。」

(えっ!?マホと宮永先輩以外は全然強くない!?しかも宮永先輩も強くないだなんて・・・)

「西園寺さん、今の言葉、聞き捨てならないんですが・・・」

「おぉ、夢乃マホさんじゃないですか。」

「先輩方は決して弱くないです!それに、宮永先輩が弱い訳無いです!訂正してください!」

「いやいや、貴女と宮永咲さんはともかく他の人は明らかに弱いでしょ。気にならないんですか?弱い人達が仲間で嫌だな~とか。私は部長以外の三人に思っていますよ?」

「おい麻衣!その辺にしておけ!」

「マホが尊敬する先輩方は弱くなんか無いです!」

「そっか、貴女も弱いからあんな人達も強く見えるのかもしれないですね。」

「・・・今、なんて言いましたか?」

「言葉通りですよ。臨海に負けるような清澄は全員弱いって言ってるんですよ。」

「そうですか・・・では、勝負しましょう。西園寺さんとマホのどっちが強いかを直接勝負しましょう!」

(よっしゃ、上手く釣れた。個人戦に出ないから夢乃マホとは何かしら口実作って対局しようと思ってたらこんなに上手く事が運ぶとは。)

「では、大会出場校同士の対局はダメですから決勝戦が終わった時にでも対局しましょう。」

「分かりました。一緒に対局する他の二人はそちらが見繕って下さい。誰でも良いです。」

「本当に誰でも良いんですか?」

「はい、都合が会う日があったらマホが向かいますからそちらに対局する人を連れてきておいて下さい。」

「分かりました。では、楽しみにしてますよ。」

「はい。」

「あ、ちょっと待って下さい!折角なんで何かを賭けましょうよ。」

「良いですよ。」

「そうですね・・・じゃあ、夢乃マホさんが負けたら来年から1年生として白糸台に入学して下さい。」

「マホ、もう一年ですよ?」

「手続き的な事は私がなんとかしますので。私の父は白糸台高校の理事長をしているので父に頼めばどうとでもなりますよ。」

「そうなんですか・・・じゃあ、西園寺さんの賭けはそれで良いですね?」

「あれ、動揺とかしないんですね。」

「大丈夫です、マホは絶対に負けないので。」

「へぇ~、随分と自信がおありのようで。それで、夢乃マホさんの頼みは何なんですか?」

「それは、勝った時に言うです。」

「そうですか、まぁでも、私の賭けと釣り合う位の頼みにして下さいね。」

「分かってます。」

では、また後日連絡します。」

「はい。」

(この勝負、絶対に負けないです!あっ!そういえば先輩方を待たしているんでした!早く帰らないと!)

 

 

「おい麻衣、あんな事言って良かったのか?」

「完璧ですよ。これで本気の夢乃マホと対局が出来ます。それにあの人、誰でも良いって言ってましたよね?これは、絶対に勝てないような方々を呼ぶしか無いですね・・・」

「麻衣は本当に性格が悪いな。」

「そりゃあそうもなりますよ。私と同じ位の選手と対局できて、更にその人が白糸台に来るかもしれないんですよ?」

「まぁ、確かにそうだが・・・」

「いやぁ、もはや決勝戦がどうでも良いくらいになってきちゃいましたね。速く夢乃マホと対局したいですね!」

「おい、麻衣お前、姉に優勝する姿を見せてあげるんじゃなかったのか?」

「・・・分かってますよ。決勝戦は絶対に勝ちますよ!そして、夢乃マホにも勝ってみますよ。」

「それを忘れてないなら問題は無い。全力でやりたように夢乃マホと対局すればいい。」

「言われなくてもそのつもりですよ。」

(この勝負、絶対に勝って見せる!)




なんか、マジギレのマホってよく分からなかったです。キャラ崩壊してますよね・・・ごめんなさい。


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第67話 先鋒戦

五位決定戦開幕です!


千里山女子の藤崎心音がマホと別れ、控え室に戻った。

「すんません、遅くなってしまって。今戻りました。」

「あっ!お帰り心音!」

「もう待ちくたびれたわ。速く帰るで。」

「すんませんでした。」

「心音、もう片付けとかは私がしておいたで。」

「おぉ、ありがとう望。」

「じゃあ、帰りましょう!」

「やっと帰れるわ。」

「ホンマすんませんでした。」

「そういえば心音、飲み物買って来るんやなかったんか?」

「あ、あー、喉乾きすぎてその場で飲み干してしもたんや!」

「ふふっ、そうか。それにしても、なんか嬉しそうやな。なんか良い事でもあったんか?」

「実はな、有名人にあったんやで。」

「えっ!?誰?もしかしてプロの人とか!?」

「まぁ、将来はなっとるんやないか?」

「マジか!サインとかもろたんか?」

「サインは貰っとらんけど、ラインはもろたで。」

「えぇ!?誰!?誰や!」

「秘密や~。」

「えぇ!いけず~!」

「分かった分かったから!後でマホに聞いとくから!」

「えぇっ!?夢乃マホのラインもろたんか!?」

「あっ、言ってしもた・・・」

「マジで!?ホンマに夢乃マホからもろたんか!?」

「ホンマかいな、あたし二回も対局したのにマホから貰っとらんで?」

「分かりましたよ、二階堂先輩もライン交換してもらうようお願いしときますよ。」

「よろしくな!」

「はいはい。」

「それはええとして、それよりも明日の五位決定戦の方が大事やろ。」

「あっ、そういえば五決あるんでしたね。」

「新道寺と姫松と有珠山の三校とですよね。」

「せやな、どこもかなり手強いけど、やっぱり問題は有珠山やろな。」

「先鋒と副将と大将が強いですからね・・・」

「まぁ、先鋒の稼ぎは渚達中堅の三人が削ってくれるとして、副将と大将が強いんは辛いな。渚には頑張って貰わんとな。」

「任せとけ!準決勝で稼げんかった分以上に稼いだるわ!」

「期待しとるで。後は心音がどれだけ大将を止められるかやな。」

「まぁ、色々と試行錯誤してみますよ。」

「それと、渚は有紗と加藤ミカより多く稼がんと辛いな。」

「有紗には負けんと思うけど、加藤ミカって奴がどれくらい強いんかまだ分からんな。マホの和了りを止めとったからかなり手強いとは思うけど。」

「まぁ、頑張ってや!」

「無責任やな・・・まぁ、出来る限りの事はしてくるわ!」

「ほな、明日も早いから今日はゆっくり休んで明日に備えるで。」

「「「「はい!」」」」

 

 

五位決定戦当日になり、出場校の選手達が控え室に向かった。

~千里山女子控え室~

「望、今回はほぼ確実にカウントダウンが決まる事は無いやろから無理はせんでええ。けど、少しでも多く和了るか他家の和了りを阻止出来るように頑張れ。それが無理ならガンオリでもええわ。振り込みまくるよりはましやからな。」

「分かりました。では、行ってきます!」

「頑張れ望!」

「はい!」

~新道寺女子控え室~

「花田先輩、頑張って下さい!」

「ありがとうございます。」

「花田、無理ばせんとってええ。自分が出来る程度で頑張れ!」

「うん、すばらに頑張って来ます!」

~姫松高校控え室~

「綾、有珠山と千里山は危ないから危険やって思たら安くても和了ってけ。」

「分かりました。」

「辛いかもしれんけど、準決勝ほどやないやろから多少気楽に行って大丈夫やと思うわ。」

「はい、ありがとうございます。では、行ってきます!」

「頑張れ~!」

~有珠山高校控え室~

「では、そろそろ行って参ります。」

「堕天使モードにならないんですか?」

「いや、なりますよ。ユキちゃん、目が凄いキラキラしててちょっと怖いです・・・」

「堕天しちゃえば怖く無くなるよ?」

「そうしたら今度は第2の自分が怖いです・・・」

「第2の自分!カッコいい!」

「やっぱり私はカッコいいよりも可愛いになりたいです・・・」

「可愛いにはもうなってるから安心して堕天していいよ。」

「えぇ、そんなぁ・・・」

成香が髪の分け目を変えた。

「おぉ!やっぱり何回見てもカッコいいです!」

「じゃあ、頑張って!」

「分かりました。」

 

 

『さぁ、五位決定戦が間もなく始まります!実況は私、針生えり、解説は三尋木咏プロです。では、本日の五位決定戦先鋒の選手を紹介致します。まずは有珠山高校の本内成香選手です。彼女は二回戦からかなり好成績を出しています。彼女についてはどう思われますか?』

『そうだねぇ、筒子が来やすいっぽいからそこ注意すれば良いんじゃね?知らんけど。』

『そうですか、では続いて姫松高校の小早川綾選手はどうでしょうか?』

『そうだねぇ、鳴いて早和了りする事が多いから、上手くはまれば有珠山の和了りも止められるかもしんないね~。』

『成る程、それは期待ですね。では、千里山女子の上野望選手はいかがでしょうか?』

『そうだねぇ、あの連続和了さえ起きなければ基本的には問題無いんじゃね。』

『そうですね、それでは最後に新道寺女子の花田煌選手です。花田選手はいかがでしょうか?』

『うーん、結構手強いんじゃねぇかな。知らんけど。』

『な、成る程・・・では選手達が対局室に出揃いましたので、先鋒戦開始です!』

 

 

~場決め結果~

上野望:東

小早川綾:南

本内成香:西

花田煌:北

 

~東一局~ 親:上野望

千里山 100000

姫松 100000

有珠山 100000

新道寺 100000

(とりあえず、まずは先手を打たなくては。本内さんは確実に強いのを和了ってくるはずやから得意の速攻で対抗する!)

「ポン。」

(姫松の先鋒、速攻やからかなり不利やな・・・)

「ツモ。タンヤオ三色ドラ1。1000・2000。」

(早速和了られたわ・・・)

(やっぱり和了までが速いですね。私も負けていられません。)

『五位決定戦最初の和了りは小早川選手になりました。』

『まぁ、あいつの速攻は他の奴に比べてもやっぱり速いからねぇ、最初に和了るのは予想通りって感じかな~。』

~東二局~ 親:小早川綾

姫松 104000

有珠山 99000

新道寺 99000

千里山 98000

(よし、親番やからここで連荘して少しでも稼がんと。)

「ポン。」

(これで1向聴・・・)

「ロン。混一一通東。12000。」

(うわぁ・・・早速有珠山に和了られたわ・・・これ、キッツいかもな。)

~東三局~ 親:本内成香

有珠山 111000

新道寺 99000

千里山 98000

姫松 92000

(有珠山の親番、ここで連荘されたら厳しい。速攻で防ぐ!)

「チー。」

(また速攻ですか・・・なら、これでどうですか?)

「リーチ。」

(なっ!?有珠山がリーチしてきた!これはヤバいわ。一向聴やったけどオリで・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一ダブ東。8000オール。」

(うわっ!8000オール・・・これが本物の実力なんか・・・)

(姫松が速攻やから全然和了れないのに、有珠山の和了りも注意しながらとか、私、この対局で一回も和了れんのとちゃうかな・・・?)

(これが堕天モードですか・・・すばらです!去年とはレベルが違いますね。とりあえず今は、この親を流さないと行けませんね!)

~東三局一本場~ 親:本内成香

有珠山 135000

新道寺 91000

千里山 90000

姫松 84000

(有珠山にこれ以上連荘させる訳にはいきませんね。)

「ポン!」

(新道寺の人が鳴いた。私も負けていられません!)

「ポン。」

(これで聴牌です!)

「それポン!」

(また新道寺が鳴いた。)

(また手番を飛ばされました・・・)

(来たっ!)

「ツモ!タンヤオ対々ドラドラ。2100・4100。」

(よし、これで有珠山の親を流せた上に二位浮上。この調子で行くで!)

~東四局~ 親:花田煌

有珠山 130900

姫松 92300

新道寺 88900

千里山 87900

(よし、配牌もええ感じや。今回も速攻で和了る!)

「ポン。」

(また速攻をしてくるのですか・・・すばらです!)

(まだ大丈夫なはずです。)

「それ、ロン。タンヤオ対々。3900です!」

(まさか、直撃を受けるとは・・・)

(有珠山の方に直撃してしまうなんて、すばらです!凄いですね。姫松の方。)

(姫松が結構強いな。私も負けてられんわ!)

~南一局~ 親:上野望

有珠山 137000

姫松 96200

新道寺 88900

千里山 87900

(このまま頑張ってプラスまで持っていくで!)

(このまま好き勝手やられる訳にはいにませんね。)

「ポン。」

(えっ、有珠山が鳴いた!?鳴かなくても十分速いし強いのに、なんでそんな事・・・)

「ロン。混一対々。8000。」

(うわ、また有珠山に直撃された。しかも今の鳴き、私の速攻に勝つ為にやったんですかね。だとしたら流石の私も追い付けんわ・・・)

(また姫松の順位が下。いっぱい和了っているのになんや可哀想やな。)

~南二局~ 親:小早川綾

有珠山 145000

新道寺 88900

姫松 88200

千里山 87900

(もう親番が終わってしもた・・・もうこっからはオリで・・・いや、部長に言われてた通り、行ける局は行く。まだ諦めんで!)

~8巡目~

(なんや、よう分からんけど誰も和了らずに2副露して聴牌出来たわ。これはこっちに風が吹いとるんや無いんか?これは行けるで!)

~10巡目~

「ツモ。タンヤオのみ。300・500です。」

(千里山が和了った・・・)

(カウントダウンが始まる・・・)

(これは、すばらですね・・・)

(よし、カウントダウン5!)

~千里山女子控え室~

「おっ!望がカウントダウンしましたよ!」

「せやな、けど、もう親番は無いからな。こっから和了れたとしても2回までですよね・・・」

「まぁ、大きいの和了れればいいですけどね。」

「せやな。」

~南三局~ 親:本内成香

有珠山 144700

千里山 89000

新道寺 88600

姫松 87700

(これは、来たで!これで一発逆転や!)

~4巡目~

(4巡目まで打って次のツモで千里山が和了って来ますね。でも何故リーチを掛けないんでしょうか・・・?倍満の手だからリーチを掛けても意味がないとか、でしょうか?いや、この捨て牌は、まさか!?)

「ツモ。国士無双。8000・16000です!」

(嘘やろ・・・)

(これは、すばら!)

~南四局~ 親:花田煌

有珠山 128700

千里山 121000

新道寺 80600

姫松 79700

(また和了って有珠山を逆転して泉先輩にバトンタッチするで!)

「リーチ。」

(はぁ?有珠山がダブルリーチ!?)

(すばらっ!?)

(これは、やられてしまいますね・・・)

「ツモ。ダブリー一発ツモ混一。3000・6000。」

(最後の最後になんてもんしてくるんや・・・)

『先鋒戦終了です!上野選手の役満で有珠山との点差が詰まり、逆転されるかと思いましたけど有珠山が引き離しましたね。』

『いやぁ、最後にダブリーとか持ってるね~。』

『本当にそうですね・・・さて、今回の五位決定戦は半荘一回の為、次は次鋒戦となります。』

 

~先鋒戦結果~

有珠山 140700

千里山 118000

姫松 76700

新道寺 74600



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第68話 次鋒戦

先鋒戦を終えた選手達が控え室に戻ってきた。

「ただいまです。」

「おー、お帰り望。最後の方の役満良かったで!」

「ありがとうございます。」

「次は泉やな。」

「せめて10万以上は残してや~。」

「なんでマイナスになる前提で話してるんですか・・・」

「そら、泉やしな・・・」

「確かに・・・」

「確かにって!酷すぎですよ!」

「まぁまぁ、とりあえず頑張ってくれればええから。」

「分かりましたよ、行ってきます。」

「頑張って下さい泉先輩!」

「望ありがとう!あんただけが私の味方や!」

「はよいけや。」

「酷っ!無慈悲過ぎですよ!」

「いいから行けって。」

「分かりましたよ、行きますよ。」

~有珠山高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「お疲れ~、今日も良かったよ堕天使モード!」

「凄かったです!それにカッコ良かったです!」

「うーん、やっぱり私はカッコいいより可愛いがいいです・・・」

「だから既にこの上なく可愛いって。心配すんな!」

「何ですかそれ・・・」

「はぁ、そんな事より本内先輩の次に行く私の方が辛いですよ・・・」

「そういえば次は愛佳だったな。」

「藤宮さん、頑張って下さい。」

「はい、頑張って来ます!」

~姫松高校控え室~

「ただいまです。」

「ご苦労様、結構頑張ってたけど、あれは千里山と有珠山が異様やったわ。仕方あらへんわ。」

「あれは多分お姉ちゃんでも無理やったと思うし仕方あらへんよ。」

「でも、やっぱり悔しいですね。あれやったらもうちょっと頑張れましたよね・・・」

「それはまたこの先頑張ればええやろ。今はせめてこの五位決定戦で勝つ事が大事や。」

「確かにそうですね。」

「唯ちゃんには頑張って貰わんとね。」

「はい、頑張ります!」

~新道寺女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「花田、お帰り。」

「お疲れ様でした。」

「いやぁ、千里山の上野さんと有珠山の本内さんが強かったです。全然敵わなかったですよ。すばらでした。」

「大丈夫です、花田先輩ばやられた分、私がやり返しますよ!」

「安河内さん、お願いします。」

「任せて下さい!」

 

 

『さぁ、五位決定戦の次鋒戦が始まろうとしています。選手達が控え室から対局室に移動しています。対局する選手達の紹介を致します。まずは現在トップの有珠山高校の藤宮愛佳選手です。本内選手が稼いだ点数を維持する事は出来るのでしょうか!続いて二位の千里山女子の二条泉選手です。彼女は安定した打ち筋ですが、今回はこの点数を維持出来るのでしょうか。それともトップに躍り出るのでしょうか!さて、続いて3位の姫松高校の豊崎唯選手です。豊崎選手は準決勝ではあまり活躍出来ませんでしたが、今回はどのような活躍を見せてくれるのでしょうか!では最後に4位の新道寺女子の安河内優子選手です。彼女はかなり高密度の和了りが武器です。今回の次鋒戦のキーパーソンになってくるのではないでしょうか。それでは選手が出揃いましたので、次鋒戦を開始致します!』

『お疲れ~。』

『三尋木プロも何か言って下さいよ!』

『いやぁ、一人で突っ走ってたじゃん。』

『どうせ変な事言うと思ったからですよ。』

『そんな事ねーし、昨日ちゃんと言う事考えてきてたし。』

『本当ですかぁ?じゃあ二条泉選手についてどう思われますか?』

『あー、そうだねぇ、まぁ、頑張ってるんじゃない?』

『案の定何にも考えてないじゃないですか!もう良いですよ、次鋒戦始まります!』

 

~場決め結果~

藤宮愛佳:東

二条泉:南

安河内優子:西

豊崎唯:北

 

 

~東一局~ 親:藤宮愛佳

有珠山 140700

千里山 118000

姫松 76700

新道寺 74600

(いきなりこの点差はキツいですね・・・小早川先輩があんなに頑張って和了ろうとしてたのに、こんな点差になるって、やっぱり千里山と有珠山、強いですね。)

(まずは有珠山を捲らんとな。)

~7巡目~

「リーチ。」

(千里山がリーチ!?また点差が広げられる。ヤバい・・・)

(流石に一発はあらへんか・・・)

「ロンです。タンピン三色で7700です。」

(うわっ、いきなり新道寺に7700も・・・しかもリーチ棒含めて8700やん。やらかしたわ・・・でも次の親番で和了れば問題無しや。)

~東二局~ 親:二条泉

有珠山 140700

千里山 109300

新道寺 83300

姫松 76700

(いきなりラスになってしもた・・・しかも新道寺がなんか嫌な感じや。これ、二階堂先輩に頑張って貰うしか・・・いや、今回の中堅戦は二階堂先輩のお姉さんもいるからいくら二階堂先輩とは言え稼げんかもしれへん。私が稼がんと!)

「ポン!」

(少しでも稼ぐで!)

「リーチです。」

(また新道寺が仕掛けた!?思い通りにはさせない!)

「ポン!」

(これで一発消しや。これで点数が下がったやろ。)

「ツモです。リーチツモタンピン三色。3000・6000です。」

(うわっ、点数下がっとらんやん!というか打点が高いわ。これはヤバいわ・・・)

『新道寺の安河内選手が2連続和了です!』

『やっぱりキーパーソンなだけあるねぇ。』

『このまま新道寺が千里山を捲ってしまうのでしょうか!』

~東三局~ 親:安河内優子

有珠山 137700

千里山 103300

新道寺 95300

姫松 73700

(新道寺に追い付かれそうやわ。ここは和了っとかんと。)

(これは、行けるかもしれへんわ!)

~8巡目~

「リーチです。」

(新道寺がリーチした。けど、こっちもリーチ出来そうやわ。)

「リーチ!」

(追っかけリーチ、うわ、これ当たりそう・・・)

「それや、ロン!リーチ一発純チャン三色一盃口ドラ3。24000や!」

(さ、三倍満!?)

(そういえばこいつ、準決勝でもデカめの和了り一発しとったわ。こいつの一撃には注意やな。)

『姫松高校の豊崎選手が三倍満を和了りました!この直撃で一気に新道寺と立場が逆転しました!』

『いやぁ、高めの手を和了るとは思ってたけどまさか三倍満和了っちゃうとはねぇ~。』

『まさかでしたね・・・』

~東四局~ 親:豊崎唯

有珠山 137700

千里山 103300

姫松 98700

新道寺 70300

(よし、千里山を捉えた。このまま稼ぐで!)

(姫松が調子良さげで怖いわ・・・)

~7巡目~

「リーチ!」

「ロンです。純チャン一盃口。8000です。」

(くっ、そう簡単に和了らせてはくれんか・・・)

(やっぱり新道寺が1枚上手みたいやな。)

『新道寺の安河内選手が仕返しと言わんばかりの直撃です!』

『これは面白い事になってきたねぇ。』

『さぁ、これで東場が終わり南場に突入します!』

~南一局~ 親:藤宮愛佳

有珠山 137700

千里山 103300

姫松 90700

新道寺 78300

(親番、今のところ何も出来てない。この調子だと本内先輩の点数も吐き出しちゃうかもしれない・・・もっと頑張らないと!)

(新道寺が怖い、とりあえず安くても良いから和了っとかんと。)

~8巡目~

(よし、聴牌や、有珠山捲る為にもリーチするわ。)

「リーチ!」

(うわ、千里山がリーチしてきた。捲られちゃうかも・・・)

「リーチです。」

(嘘、新道寺までリーチしてきた!また新道寺に和了られちゃうかも・・・)

(新道寺、もう聴牌しとったんか・・・)

「ツモです。リーチ一発ツモ混一、3000・6000です。」

(やっぱり間に合わんかったか・・・新道寺、やっぱり強いわ・・・)

(また本内先輩が稼いだ点数が減っちゃった・・・どうしよう。)

『またまた新道寺が2連続和了です!』

『これでまた3位浮上だね。』

『安河内選手はかなり安定していますね。』

『打点も低くないし、結構手強いんじゃね?』

『成る程、このまま新道寺が稼いでしまうのでしょうか!』

~南二局~ 親:二条泉

有珠山 131700

千里山 99300

新道寺 91300

姫松 87700

(よし、この親番で一発逆転を狙う!そんで、二階堂先輩に最高の形でバトンタッチすれば完璧や!)

(これは、無理してでも和了りに行った方が良いかもです!点数を取り返す為にも!)

~9巡目~

(やった、聴牌出来た。これが和了られればかなり大きい!)

「リーチ!」

(有珠山がリーチか、これまでなんもしとらんかったんやから静かにしといてくれよ・・・)

「リーチです。」

(新道寺が追っかけリーチ!?いや、でも私も負けません!これを必ずしも和了ってみせます!)

~11巡目~

「ツモ!リーチツモ清一。4000・8000です!」

(まさか有珠山に和了られちゃうとは・・・)

(ちょっと迫っとったのに、また点差広げられた・・・)

『有珠山高校が縮まっていた点差をまた広げました!』

『これは三校にとっては厳しいかもねぇ。次の親番であいつがどう動くかだねぇ。』

『確かに、次は安河内選手の親番ですね。これは期待出来そうですね。』

~南三局~ 親:安河内優子

有珠山 148700

千里山 91300

新道寺 86300

姫松 83700

(何だかんだまだ一度も和了れとらんわ!ここらで和了っとかんと舟久保先輩とか二階堂先輩に殺されてまう!頑張って和了らんと!)

~8巡目~

(やっぱり聴牌までは行けるんだよなぁ・・・まぁ、そんな事言っとったら和了れるもんも和了れんくなりそうや。)

「リーチ!」

「ポンです。」

(え、新道寺が鳴いてきた。これ、速攻で私の和了り阻止しようとしとるっちゅう事なんか・・・?あっ、残念やったな新道寺。来たで!)

「ツモ!リーチツモタンピン三色。3000・6000。」

(これでなんとか焼き鳥だけは回避出来たわ。)

(まさか和了られてしまうとは・・・しかも親被りで最下位・・・)

(親被りのお陰で3位浮上出来たけど、千里山との差が広がったな。厳しいな・・・)

~南四局~ 親:豊崎唯

有珠山 145700

千里山 103300

姫松 80700

新道寺 80300

(もうオーラス、ギリギリ3位だけど新道寺に和了られたらラス終了しちゃう。他の人がツモ和了りしても親被りで最下位になってまう・・・私が和了るしかないんやな・・・)

~5巡目~

「リーチです。」

(うわ、新道寺、速過ぎやわ!まだなんも手が出来とらんわ!また和了られる・・・)

「ポン。」

(千里山が鳴いた。)

(また千里山に和了られてしまうのでしょうか・・・)

~8巡目~

「それ、ロン!混一対々で8000。」

(また千里山に直撃された!?しかも、あれだけ和了ったのに最下位・・・)

(千里山が強い、全然敵わなかった・・・)

(よし、あんましマイナスにならへんかった!これでなんも咎められんやろ。)

「お疲れ様です!」

「ありがとうございます。」

「ありがとうございました。」

「ありがとうございました・・・」

『次鋒戦終了です!まさか新道寺女子が最後に最下位で終わってしまいました。順位は先鋒戦終了時と同じになってしまいました。』

『次の中堅戦は色々起きそうで面白そうだねぇ~。』

『中堅戦では二階堂渚選手と二階堂有紗選手と加藤ミカ選手が出ますからね。どのような対局になるのか期待ですね!では、10分間の休憩の後、中堅戦に移ります。』

 

~次鋒戦結果~

有珠山 145700

千里山 112300

姫松 80700

新道寺 71300




次は五位決定戦で一番書きたいと思っていた二階堂姉妹の対局になります。ミカさんと二階堂姉妹がどのような対局をするのか・・・


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第69話 中堅戦

すいません、風邪で書けませんでした。次の話はいつも通りに出せるよう善処します。


次鋒戦を戦った選手達が控え室に戻っていた。

「ただいまです。」

「お疲れ様です泉先輩。途中までヤバいかって思いましたけど最後にましな点数まで戻しましたね。」

「まぁ、やっぱりマイナスやったけどな。」

「いやぁ、そんな事言わんといて下さいよ!あれでもかなり頑張ったんですからね。」

「まぁでも、確かに泉にしては良くやってたな。」

「せやな。じゃあ、とりあえずあたしが有珠山を捲って来るわ。」

「なんや渚、随分楽しそうな顔しとるやん。」

「そりゃあ、久々に有紗と直接対決出来るからな!」

「そら楽しみやろうけど、有紗だけやなくて加藤ミカにも気を付けや。」

「分かっとるって、昨日の対局で嫌という程分かったわ。あいつは夢乃マホがおらんかったら永遠に連荘しそうや・・・」

「それを止めつつ有珠山を捲るんが今日のあんたの仕事やで。」

「かなりキッツい仕事やな。まぁでも、それくらいせんと勝てんもんな。やったるわ!」

「頑張って下さい渚先輩!」

「おう!任せろ!心音が楽にトップ取れるようにしたるわ。」

「ありがとうございます!」

「ほな、行ってくるわ!」

~有珠山高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「おかえり~!いやぁ、まさかあそこまで点数をキープしてくれるとは思わなかったよ!いやマジで!」

「ありがとうございます。」

「まぁでも、その点数が中堅戦で全部持ってかれるかもしれないけどね。」

「加藤ミカと二階堂姉妹、私、あの3人に勝てる気がしません・・・」

「大丈夫だって!お前がダメでも次にユキと私が残ってんだから!」

「そうですね。私達が頑張りますからそんなに気負わずに。」

「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。」

「おう、頑張れ!」

~新道寺女子控え室~

「ただいまです。」

「おかえりなさい!今の対局、とってもすばらでしたよ!」

「ありがとうございます。でも、全然稼げませんでした・・・」

「大丈夫ですよ!次はミカさんですから!」

「はい、花田先輩。任せて下さい。」

「ミカちゃんだったら大丈夫だよね。」

「でも、二階堂姉妹は厳しい。」

「そうですね。あの二人は要注意ですね。」

「では、すばらに頑張って来て下さい!」

「はい、行ってきます!」

~姫松高校控え室~

「今帰りました。すいません、全然ダメでした・・・」

「大丈夫や、次は私の番やから。」

「二階堂先輩、私の分まで頑張って来て下さい!」

「任せな!加藤ミカとか言うやつも渚もどっちも潰すで!」

「頑張って下さい!」

「おう、ほな、行ってくるわ!」

 

 

『さぁ、五位決定戦も折り返しです。中堅戦の選手達の紹介を致します。まずは依然トップを走る有珠山高校の

檜山花音選手!彼女についてはどう思われますか?』

『そうだねぇ、奴は一通を作る事が多いからそれが他の3人に通用するかだよねぇ。』

『そうですか、では、現在2位の千里山女子の二階堂渚選手はどうでしょう?』

『二階堂姉妹には特徴があってさ、姉の二階堂渚はかなり高火力が出るんだよ。だからハマった時は誰も止めらんない。けど、少し粗っぽい所があるんだよねぇ。まぁ、そこが強いって思う人もいるかもしれないけど。んで、妹の有紗の方は正確さと対応力があるんだよ。十分な火力は出すのにあんまし振り込まないんだよねぇ。』

『成る程、三尋木プロ的にはどちらが強いとお思いですか?』

『ん~、何とも言えねぇけど、連荘とか出来れば姉の方がめちゃくちゃ強いけど、今回に関しては加藤ミカがいるからどっちかっつーと対応力のある妹の方に軍配が上がるかもしんないねぇ。』

『そうですか。では最後に新道寺女子高校の加藤ミカ選手についてはどうですか?』

『あれはかなり強いよ。準決勝で夢乃マホの和了るはずだった所を何回も止めてたし、それに火力も十分出し。んー、言うなれば二階堂姉妹を足したような感じかいね。』

『それはかなり強いですね。』

『奴を止めるのはかなり辛いだろうねぇ。まぁ、二階堂姉妹が・・・いや、二階堂姉妹と檜山花音がどう動くかで新道寺がどうなるかが決まってくるだろうねぇ。』

『そうですか、では、選手達が対局室に集まったので、中堅戦を開始致します!』

 

 

~場決め結果~

二階堂有紗:東

檜山花音:南

加藤ミカ:西

二階堂渚:北

 

~東一局~ 親:二階堂有紗

有珠山 145700

千里山 112300

姫松 80700

新道寺 71300

(さて、いきなり親番やな。とりあえず渚に追い付く為に連荘するか!)

~6巡目~

「リーチ!」

(有紗、もう聴牌したんか!?速いな。あたしも負けてられんわ!)

「ツモ。純チャン三色。3000・6000です。」

(うわ、こいつ、早速和了ってきよった。)

(これが加藤ミカか。もう既にヤバそうな感じがしとるわ。気を付けんとな!)

『早速加藤選手が和了ってきました。』

『まずは姫松を捲ったね。』

『ここから加藤選手の大逆転が始まってしまうのか、それとも二階堂姉妹がそれを食い止めるのか!期待が高まります!』

~東二局~ 親:檜山花音

有珠山 142700

千里山 109300

新道寺 84300

姫松 73700

(新道寺に注意しつつ和了らなあかんな。)

「ポン。」

(今度は鳴いてきたか。こいつ、何仕出かすか分かったもんじゃないからな。要警戒やな。)

~3巡目~

「ツモ。混一三暗刻対々小三元。4000・8000です。」

(くそ、倍満!ってか、中ツモられてたら役満やったんか。危ないわ。)

(3巡目で倍満、しかも役満一歩手前を和了れるような相手か・・・これはちょっと認識を改めなあかんな。)

『加藤選手、今度は倍満を和了りました!しかし今の、大三元を待った方が良かったのでは無いでしょうか?』

『んや、今のはあれで良かったのさ。じゃないと二階堂のどっちかが和了ってただろうからねぇ。』

『そうかもしれないですね。』

『それに次はあいつの親番だしねぇ。速く親番に持ってきたいって気持ちが逸ったってのもあるかもねぇ。』

『確かに、それもそうかもしれませんね。』

~東三局~ 親:加藤ミカ

有珠山 134700

千里山 105300

新道寺 100300

姫松 69700

(うわ、私ん所だけめっちゃマイナスやん。これはヤバいわ。それに、この加藤ミカの親番ははよ流さんと・・・)

~7巡目~

(このままだと新道寺に追い付かれちゃう。折角聴牌出来たんだからこの手は和了りたい!)

「リーチ!」

「ロン。一通清一。24000です。」

(え、嘘・・・親倍って・・・)

(新道寺が有珠山を捲った。速すぎやろ・・・)

(そろそろこいつの動きを止めへんと更にやられてまう・・・)

~東三局一本場~ 親:加藤ミカ

新道寺 124300

有珠山 110700

千里山 105300

姫松 69700

(このまま新道寺にやられたら本当に危ない。せめてこの親番だけは速く流さんとホンマにヤバい・・・)

~5巡目~

「リーチ。」

(新道寺がリーチ!?というか5巡目とか、速すぎやろ!)

(こんなん防げんやろ・・・)

(またやられちゃう・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン三色。8100オールです。」

(また和了られた!?)

(こいつ、どうやれば止められるんや・・・)

(準決勝はマホが和了っとったから連荘はしとらんかったけど、この状況はホンマにヤバいわ!どうやったらこいつを止められるんや・・・)

『加藤選手、また連荘です!』

『やっぱ夢乃マホがいないと誰も止めらんないんだねぇ。』

『これは新道寺以外の三校がかなり厳しくなってきましたね。』

『この後どうなっちゃうんだろうねぇ。』

~東三局二本場~ 親:加藤ミカ

新道寺 148600

有珠山 102600

千里山 97200

姫松 61600

(これ以上こいつの好き勝手にさせる訳にはいかんな。ここは協力して止めるしかないやろうな。)

(一人でこいつを止めるのはキツいかもしれんけど、有紗と協力すれば多分こいつだって止められるはずや。やるしかない!)

「ポン。」

(あたしが鳴いて有紗に多くツモらせて加藤ミカにツモらせんようにしとけばいけるはずやろ。)

(協力し出した、これはそろそろ和了れないかな・・・)

「ポン。」

(ありがとう渚、渚のお陰で行けそうや!)

「リーチ!」

(まだ2向聴、これは防げないでしょうね。)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン一盃口で3200・6200や!」

(良くやったで有紗、これで悪夢のような時間が終わった。この調子であたしも行くで!)

(なんとか親番を流す事は出来たけど、もう一回加藤ミカの親番があるって考えると辛いわ・・・)

~東四局~ 親:二階堂渚

新道寺 142400

有珠山 99400

千里山 94000

姫松 74200

(親が流されたけど、まだ点差があるから大丈夫だよね。うーん、でもこの手、和了には遠いな・・・ちょっと無理してみよう。)

「ポン。」

(新道寺が鳴いてきた。今度は何するつもりなんや・・・)

~7巡目~

(よし、聴牌出来た。いい調子やわ。攻めるで!)

「リーチ!」

「ロン。タンヤオ対々。3900です。」

(なんや、3900か。ツモやったら2倍以上の点数やのに、安くても和了るんやな・・・)

(やっぱりツモるまで待った方が良かったかな?でも、リーチ掛けてたし調子良さげだったからいいよね。)

~南一局~ 親:二階堂有紗

新道寺 146300

有珠山 99400

千里山 94000

姫松 70300

(おっ、なんやええ感じの配牌やな。これなら新道寺に一発かませる!)

(千里山の二階堂さんに火が付いたような気がする。この手で無理したら流石に直撃されちゃうかな。ここはオリで・・・)

~8巡目~

「ツモ!タンピン二盃口ドラドラ。4000・8000!」

(うわ、渚が和了った!あたしも負けてられんわ!)

『二階堂渚選手、倍満ツモです!』

『これで2位浮上だねぇ。』

『そうですね。しかし妹の二階堂有紗選手は親被りでかなり厳しそうです。』

『ま、こっからだよねぇ~。』

~南二局~ 親:檜山花音

新道寺 142300

千里山 110000

有珠山 95400

姫松 62300

(渚に和了られた。あたしも、あたしも和了る!あっ、これなら、渚が得意なあれが出来そうやな!)

(今度は二階堂有紗さんが危ない。何をしてくるんだろう・・・)

~9巡目~

(有紗の捨て牌、もしかして!?)

「ツモ。十三么九。8000・16000!」

(まさか国士無双だったとは・・・)

(有紗お前、十三么九はあたしの専売特許だっての!勝手にやんなし!)

『な、なんと、二階堂有紗選手が国士無双を和了りました!』

『いやー、もしかしたらって思ってたけどまさか本当に和了るとはね~。』

『これで姫松高校は3位に浮上です。』

~南三局~ 親:加藤ミカ

新道寺 134300

千里山 102000

姫松 94300

有珠山 79400

(よし、ええ感じに調子出てきとるわ!)

(この調子であたしら二階堂姉妹は強いって事を世間に知らしめんと!)

「リーチ。」

(えっ、ダブリー!?)

(くそ、いきなりリーチかい!何が当たっとんのか分からんな。心音やったらこういうの簡単に避けるんやろうな。やっぱりあいつ凄いわ。)

(そう簡単に何度も和了られる訳にはいかないんだよ。)

「ロン。ダブリー一発タンピン一盃口。12000です。」

(やっぱりか・・・)

~南三局一本場~ 親:加藤ミカ

新道寺 146300

姫松 94300

千里山 90000

有珠山 79400

(加藤ミカ、やっぱり強い。けど、マホ程じゃない!マホと二回も対局したあたしなら、こいつだって止められる!)

~7巡目~

「リーチ。」

(新道寺がリーチ、でも、まだ諦めない!これが通ればあたしの勝ちだ!)

「追っかけリーチ!」

「・・・」

(よし、当たり牌やない!これやったらいけるで!)

(まさか違う牌を出してくるとは思わなかったな。しかもこれ、千里山に当たりそう・・・)

「ロン。リーチ一発清一。16000!」

(さっきとった分より多くとられてる。まぁ、流石の実力ですね。まぁ、私も負けませんけど。)

~南四局~ 親:二階堂渚

新道寺 130300

千里山 106000

姫松 94300

有珠山 79400

(最後にこんな配牌になるなんて、私も運があるね。こんなの、和了って下さいって感じの手だよ。)

(加藤ミカが怖い感じやな・・・ヤバいわ!)

(ここへ来て全然和了れそうにないわ・・・)

~6巡目~

「ポン。」

(加藤ミカが白をポンした。そういえばこいつ、小三元とかやってたからもしかしたら大三元とかあるんか!?だとしたら直ぐにでも止めんと!)

(二階堂渚さん、もう無駄ですよ。来ましたから。)

「ツモ。大三元。8000・16000です。」

(うわ、本当に和了られた・・・)

(まさか最後にこんなの和了られるなんて・・・)

(全く何も出来なかった・・・)

「お疲れ様です。」

「お疲れさん。」

「いやー、全然ダメやったわ。」

「お疲れ様、です・・・」

『ち、中堅戦終了です!新道寺の加藤ミカ選手が最後に大三元を和了って点差を広げて終わらせました!』

『最後まで見せてくれたね~。』

『さて、興奮覚めやまぬ中ですが、続いて休憩の後、副将戦を開始致します!』

 

~中堅戦結果~

新道寺 162300

千里山 90000

姫松 86300

有珠山 71400



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第70話 副将戦

すいません、ちょっと遅れました。


中堅戦を終わらせた選手達が対局室から控え室に移動した。

~千里山女子控え室~

「ただいま。」

「あ、お疲れ様です。」

「いやー、全然やったわ。加藤ミカが強過ぎたわ。」

「確かにあれはしゃーないわ。あれに勝てるくらいやったら個人戦上位レベルやろ。」

「いやいや、あたしは個人戦上位入れるレベルやろ。あれが異常なだけや。」

「でもなぁ、今回は化け物揃いやで?上位に入るのも辛いんやないか?」

「んー、それは・・・」

「まぁ、そんな事より今は副将戦やけどな。」

「お前の出番やん。」

「せや、有珠山の真屋由暉子が辛いわ・・・」

「頑張れ部長。」

「はぁ、あんたがもっと稼いどったらこんな事にはならんかったのに・・・」

「はいはい、悪かったって。でもしゃーないやろ。」

「せやな、あんたは個人戦上位レベルやないからな。」

「うっさいわ!はよ行け!」

「はいはい、じゃ、行ってきます。」

「頑張って下さい部長!」

~新道寺女子控え室~

「ただいまです。」

「加藤さん!すばらでした!」

「ありがとうございます。」

「これでうちが5位になる可能性も高くなりましたね。」

「この点数を私が維持して部長に繋げればきっと行けますね!」

「そうかもしれませんね。すばらに頑張って下さい!」

「はい、行ってきます。」

~有珠山高校控え室~

「今帰りました・・・すいません、全く和了れませんでした・・・」

「いやいや、想定内想定内!後はユキと私が何とかするって!しかも私は決勝の為に温存してたから負ける気がしないから安心しろよ!」

「ありがとうございます。由暉子先輩、後はお願いします!」

「任せて下さい。新道寺に逆転するくらいの気持ちで頑張ります!」

~姫松高校控え室~

「ただいま・・・あいつ強すぎやろ・・・」

「まぁ、あれはお姉ちゃんでも勝てないと思うで。」

「でもあの人ならなんか抜け道見つけて和了りそうやけどな。」

「確かに、お姉ちゃんってたまに相手の和了り牌が見えてるんやないかってくらい相手の和了り牌抑えるよね。」

「あの人にはあたしらとは違う何かが見えてるんやないか?」

「それは言えてるかも。」

「って、喋っとったけど次絹やん。」

「そうやったわ!はよ行かんと!」

「頑張ってや絹!」

「頑張って下さい!」

「任せて!」

 

 

『さぁ、五位決定戦ももう副将戦です。対局する選手達を紹介します。まずはトップまで登り詰めた新道寺女子の友清朱里選手!三尋木プロ、彼女についてはどのようにお考えでしょうか?』

『そうだねぇ、これまでは加藤ミカが稼いでそれを維持するのが上手いから、今回に関してもそれが生きてくるんじゃないかねぇ。結構他の奴らも強いけどどれだけ維持出来るかって感じかね。』

『成る程、では2位の千里山女子の舟久保浩子選手はどうでしょうか?』

『相手が隙を見せたらそこを逃さず狙えるから相手を気にせず和了ろうとしてる人にとっては天敵なんじゃねぇの?』

『でも、このレベルまで来て相手を気にしない選手なんているんですか?』

『それもそうだねぇ。』

『はぁ、じゃあ3位の姫松高校の愛宕絹枝選手はいかがでしょうか?』

『あれは筒子が集まりがちだからそこを上手く狙われるかもしれないしそこが高い手を作るかもしれないからどう転ぶかで変わってくるんじゃないかね。』

『成る程、では最後に有珠山高校の真屋由暉子選手はいかがでしょうか?』

『去年もだけど、有珠山はここからが強いからねぇ。まぁ、今年は先鋒もめちゃくちゃ強かったけど。まぁ、何かしらの波乱を起こしてくれるんじゃないかって感じかね。』

『ありがとうございます。では、対局室に選手達が集まりましたので、試合開始になります。』

 

~場決め結果~

愛宕絹枝:東

舟久保浩子:南

友清朱里:西

真屋由暉子:北

 

 

~東一局~ 親:愛宕絹枝

新道寺 162300

千里山 90000

姫松 86300

有珠山 71400

(ラス親、ですか・・・)

(よし、起家になれた。ここで連荘してまずは千里山を捲らんと。)

(絹に連荘されたら捲られるな。ここは軽く流すか・・・)

~7巡目~

「ツモ。300・500。」

(うわ、ゴミ手で流された!?やっぱり浩子ちゃん強いわ・・・ウチも負けへんで!)

(和了れませんでしたか。そこそこ良い手だったのですが・・・)

~東二局~ 親:舟久保浩子

新道寺 162000

千里山 91100

姫松 85800

有珠山 71100

(親番か、あんまり嬉しくないな。和了れたら強いけどツモされたら約2倍やしな・・・まぁ、とりあえず適当にやるか・・・)

~6巡目~

「リーチです。」

(有珠山、早速か・・・)

(でもまだ左手は使ってないからそう簡単には和了れないはず。)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピンドラ1で3000・6000です!」

(はぁ、これだから親番嫌やったんや・・・)

(捲られた・・・何とか追い付かんと!)

(まだ大丈夫。この得点は何とか維持しないと。そして、部長に回す!)

『今の有珠山高校の真屋選手の和了によって新道寺以外の三校がほぼ横並びになりましたね。』

『有珠山が動き出したねぇ。』

『そうですね。この後有珠山が更に稼いでしまうのか、それとも他の2校が頑張るのか、はたまた新道寺女子がこのまま点数を維持してしまうのか!』

~東三局~ 親:友清朱里

新道寺 159000

千里山 85100

有珠山 83100

姫松 82800

(今の親被りがかなり痛いわ。有珠山に逆転されん為にも速く和了らんと・・・)

「ポン。」

(これは多分、千里山の人が私を離そうとしていますね。今回は先に和了られそうですね。)

~7巡目~

「ツモ。タンヤオ三色ドラ3。2000・4000。」

(やっぱり、間に合いませんでしたか・・・でも次は和了つて見せます!)

(和了れたけど、次は有珠山の親番やからな。多分左手使ってくるんやろな・・・)

~東四局~ 親:真屋由暉子

新道寺 155000

千里山 93100

有珠山 81100

姫松 80800

(有珠山の親番、多分左手使ってくるやろ。ほんなら、される前に和了ればええやん。速和了りするで。)

~4巡目~

「左手を使っても良いですか?」

(っ!?やっぱり来たか!)

「はい。」

「どうぞ。」

「大丈夫です。」

「ありがとうございます。」

(さて、こっからやで!)

~7巡目~

「リーチです!」

(これは、多分また一発で和了られる!)

(でも、鳴けない・・・)

(っ、やられたか・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン三色。8000オールです!」

(これは、キッツいわ・・・)

『有珠山高校の真屋選手が親倍を和了りました!それにしても、左手に切り替えてから綺麗に和了りの形に持っていきましたね。』

『ジンクス的な奴なんじゃね?左手使うと有効牌が来やすくなる的な。』

『それなら、ずっと左手で打てば良いんじゃないんですか?』

『いやいや、ここぞって時だからこそそのジンクスが生きるんだよ。』

『な、成る程・・・』

~東四局一本場~ 親:真屋由暉子

新道寺 147000

有珠山 105100

千里山 85100

姫松 72800

(もしかしたらまた左手使われちゃうんかな?)

(2連続では使ってこないはず。連続で使ってもあんまり和了れとらんかった。ここは親を流すで。)

~8巡目~

「リーチです。」

(はぁ?なんで有珠山がリーチ出来んねん!左手使っとらんやろ!あっ、そういえばこいつ、普通に強いやん・・・でも左手補正は無いからそんな簡単には和了れんはずや。ここはズラすか。)

「ポン。」

(ツモならずですか・・・)

「ロン。混一平和一通で12300です!」

(やられてしまいましたか・・・まぁ、仕方ないですね。)

(おぉ、絹が有珠山に直撃した。やるやん絹!)

(浩子ちゃんの小細工のお陰で上手く行ったわ。これでとりあえず一回目の親番は終了やな。後はこのまま点数稼いで、良い順位で漫ちゃんに回したい。頑張らんと!)

~南一局~ 親:愛宕絹枝

新道寺 147000

有珠山 92800

千里山 85100

姫松 85100

(うわ、絹と同点やん。ここは連荘させるんも面倒やし速く和了って流すか。)

(きっと浩子ちゃんは速く和了ろうとしてくるはず。ならこっちも速和了りを目指す!)

「ポン。」

「こっちもポン!」

(二人とも速い。)

~9巡目~

「ツモ。三暗刻対々。2000・4000です。」

(先に和了られた。でも有珠山じゃないからまだいいかな。)

(また千里山に和了られましたね。)

~南二局~ 親:舟久保浩子

新道寺 145000

千里山 93100

有珠山 90800

姫松 83100

(さっきから和了られてばかりなので、そろそろ和了っておきたいですね。)

(なんや、有珠山から嫌な感じがするわ・・・)

~6巡目~

「ツモです。平和清一。4000・8000です。」

うわ、また高いの和了られた・・・)

(やっぱり左手使っとらんくても強いやんか!)

~南三局~ 親:友清朱里

新道寺 141000

有珠山 106800

千里山 85100

姫松 79100

(また良さそうな手ですね。また和了れそうです。)

(そんな易々と和了らせへんで!)

~7巡目~

「リーチです。」

(また有珠山かい!)

(有珠山を何とか止められへんかな・・・)

(またやられる・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン。3000・6000です。」

(うわぁ、これはキッツいわ・・・)

(しかもこの後こいつの親番やんな・・・)

~南四局~ 親:真屋由暉子

新道寺 135000

有珠山 118800

千里山 82100

姫松 76100

(また有珠山の親番や・・・ここは一度も和了らせずに流すで。)

「ポン。」

(浩子ちゃんが流そうとしてる。じゃあ浩子ちゃんが鳴けそうなのを出そう。)

「チー。」

(よし、これで聴牌や。)

~5巡目~

「ツモ!300・500。」

(よし、今回は連荘させへんかったで!)

(ナイスや浩子ちゃん!)

 

~副将戦結果~

新道寺 134700

有珠山 118300

千里山 83200

姫松 75800



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第71話 大将戦

また間に合いませんでした・・・すいません。


千里山女子控え室で、大将の藤崎心音が考え事をしていた。

(3位かー、新道寺との点差が5万くらいで有珠山との点差が3万5千くらいやな。まぁ、新道寺は他の2校に比べたら大丈夫そうやな。問題は有珠山やな。あのカムイの力があるのに3万5千の差は厳しいな。有珠山が何のカムイ使うのか読んで上手い感じに和了らせへんようにすればまだ勝つ可能性はあるな。はぁ、結構キッツいな・・・本来やったら二階堂先輩がかなり稼いでくれるはずやのに、今回の中堅、ヤバい奴らばっかりやったから維持するのでやっとやったって所もあるやろな・・・二階堂先輩が副将とかにした方が良かったんか?いや、そんな事したら中堅が酷い事になっとったやろうな。やっぱりウチらのチームではこれが限界やったんかな・・・)

「ただいま。」

(あ、部長帰って来た。)

「お疲れ様です部長。」

「舟Qお疲れ。」

「いやぁ、やっぱり有珠山は強かったわ。」

「有珠山半端ないって!」

「あいつ半端ないって!あいつ左手使っとらんのにめっちゃ和了ってくるもん!そんなん出来ひんやん普通。そんなん出来る?言うといてや出来るんやったら!」

「またまたまたまた左手やし!右手にさせとけば良かった!」

((決まった!))

「なんか打ち合わせしてました!?」

「舟久保先輩と二階堂先輩、何してんですか・・・」

「そらもうあれやろ、おおさ」

「先輩!それ以上はちょっと言わん方が・・・」

「え、何でや?」

「いや、何となく・・・」

「???まぁええわ。それより心音、3位になったけど、いけそうか?」

「有珠山は大将が強いですからね・・・」

「有珠山半端ないって!」

「もうそれはいいですよ!」

「あいつ半端ないって!」

「だからそれはもういいですから!って、それより有珠山ですよ!」

「心音、有珠山には勝てそうなんか?」

「うーん、どうやろうな。上手く有珠山の和了りをズラしたり速攻で和了ったり出来たらまだ可能性はあるかもしれへんけど、めっちゃ高火力なのに速いから絶対勝てるっていう自信はないな。それに、姫松も強いからな・・・」

「姫松半端な」

「だからもういいですって!何回やるんですか!」

「まぁ、心音なら大丈夫やろ。」

「おぉ、急に冷静にならんといて下さい。びっくりするやないですか。」

「え、やって欲しかったんか?」

「いや、そういう訳やないですけど、時間も無いですし。」

「せやな、時間無いしな、頑張ってこい。」

「はい。全力で!」

~有珠山高校控え室~

「ただいま帰りました。」

「おー、お疲れ~。相変わらずの強さだったな~ユキは!」

「とても素敵でした!」

「ありがとうございます。揺杏先輩も最後、頑張ってください。」

「任せろ~。今回は惜しみ無く使えるから余裕っしょ。」

「油断は禁物ですよ。」

「わかってるって。私を誰だと思ってるんだよ。」

「・・・テキトーに生きてる先輩、ですかね?」

「うわ、手厳しい事言うなー、間違ってないから良いけど。」

「速く行ったらどうですか?時間ないですよ?」

「酷い事言ってくれるね!流石の私も傷つきそうだよ。間違ってないから行くけど!」

「頑張ってください。」

「間違ってないから頑張るよ!」

「忙しい人ですね・・・」

~姫松高校控え室~

「ただいま、有珠山の真屋さん、めっちゃ強かったわ。」

「有珠山半端ないって!」

「・・・え?」

「どないしたん?有紗。」

「え、あんたらあれ知らんのか?」

「いや、知っとるけど・・・」

「いやいや、なんであたしがスベったみたいになっとるんや!」

「あ、なんかごめんな、上手く返事出来んくて。」

「いや、謝る必要とか無いから。逆に傷付くから・・・」

「あー、うん、つ、次は漫ちゃんだね!」

「あ、うん、せやな。」

「頑張ってな!」

「頑張る!」

~新道寺女子控え室~

「ただいまです。何とか1位守れたとです。」

「すばらです!このまま1位を走り続ければ5位になれますね!」

「ばってん、有珠山と姫松、千里山も強い。うち達が勝つんは難しかかもしれん。」

「大丈夫だよ!姫子なら!」

「花田、ありがとう。それじゃあ、行ってくる。」

「頑張ってください!」

「部長、頑張ってください!」

「あぁ。」

 

 

『さぁ、五位決定戦も大詰め、遂に大将戦が始まろうとしています。それでは各校の大将を紹介します。まずは中堅戦からトップを走る新道寺女子の部長、鶴田姫子選手です。彼女についてはどう思われますか?』

『んー、そうだねぇ、今ある点差を上手く抑えられたら勝てるかもねぇ。』

『そうですか、では、続いて現在2位の有珠山高校の岩舘揺杏選手です。彼女についてはどう思っていますか?』

『強いんだろうけど、準決勝の時にちょっと微妙だったからねぇ。まぁあれは温存するためだったけどねぇ。』

『温存・・・?よく分かりませんけど、それで決勝に行けないんだったら本末転倒じゃないですか?』

『はははっ、確かにねぇ!アナウンサーもかなり手厳しい事言うね~。』

『あ、いや、別に岩舘選手の事を悪く言った訳では無いですから!』

『まぁ、皆分かってるから大丈夫だと思うよ。』

『なら良いんですが・・・コホン、では、気を取り直しまして、続いて現在3位の千里山女子の事を藤崎心音選手です。彼女に関してはどのようにお考えでしょう?』

『あいつはねぇ、ちょっと不安定だからなんとも言えないかなぁ。まぁでも、一つだけ言える事と言われれば、2回戦や準決勝とは違ってあいつの邪魔をする奴が居なくなったからもしかしたら凄い事が起こるかもって所かな。』

『そうなんですか。では藤崎選手がこの大将戦のキーパーソンになるという事でしょうか?』

『まぁ、そんな感じだねぇ。』

『成る程、では最後に姫松高校の上重漫選手です。彼女の事はどのように考えていますか?』

『そうだねぇ、めちゃくちゃ良い時もあれば悪い時もあるんだよねぇ。まぁ、今回は良い感じになりそうだね。』

『という事は姫松の大逆転勝利もあり得るという事でしょうか?』

『そもそも麻雀は何が起こるか分かんないから何処だって勝つ可能性あるからねぇ。』

『そうかもしれませんけど、勝てる確率は上がりそうじゃないですか?』

『まぁ、確かにそうだねぇ。』

『それでは、対局室に選手達が出揃いましたので、運命の大将戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

上重漫:東

岩舘揺杏:南

鶴田姫子:西

藤崎心音:北

 

~東一局~ 親:上重漫

新道寺 134700

有珠山 118300

千里山 83200

姫松 75800

(始まった。やっぱりこの点差を巻き返すんはキツいな。とりあえず色々根回ししつつやってみるか。)

(うーん、まだカムイとかは使わなくて良いかな。とりあえずは様子見って感じで。)

「ポン。」

(いきなり千里山が鳴いてきた。こいつ、確か人の心が読めるとかって噂されてたな。って事は、今私がラーメン食べたいって事も分かってるのか!?)

(いや、ラーメンて・・・対局に集中してくださいよ。こっちまでラーメン食べたくなってきたやないですか!)

~5巡目~

「チー。」

(よし、これで次に新道寺が5ピンを出せばオッケー。お、来た来た。)

「ロン。タンヤオ三色ドラ2。7700。」

「・・・はい。」

(いきなり直撃・・・千里山の1年大将。侮れんわ!)

(すらすらと和了ってったなー。やっぱ心読んでるのか。だとしたらカムイ使ってもバレるからやべーじゃん!超ウケる。いや、笑えない。)

(そうですよ。貴女のカムイと雲の力を全て無駄にして見せますよ。)

~東二局~ 親:岩舘揺杏

新道寺 127000

有珠山 118300

千里山 90900

姫松 75800

(よし、今の手を形に出来たんはかなり幸先がええわ。この調子で有珠山と新道寺を捲るで!)

~4巡目~

「ポン。」

(また千里山が鳴いた。)

(千里山、舟Qとかが大将やと思っとったのにまさか1年を大将にするなんてって思ってたけど、やっぱり大将にするだけあって強いわ。これは、速く導火線付けんと勝てへんな。)

~7巡目~

(おっと、有珠山が出すの待ってたらツモっちゃったわ。)

「ツモ。タンヤオ三暗刻対々ドラ3。4000・8000。」

(うわ、倍満とか、やべー。こいつ強いな。次は雲使うか。)

(倍満か・・・どんどんうちが離されてく・・・)

~東三局~ 親:鶴田姫子

新道寺 123000

有珠山 110300

千里山 106900

姫松 71800

(よし、それじゃあ、雲使っちゃうか。赤いの!)

(うわ、確か赤い雲は字牌が来なくなる奴やったな。自分以外の全員にやっとったから岩舘さん以外に字牌が来ないって事か。ほんなら、岩舘さんに字牌ばっか行って役満和了られるかもしれへんやん!?マジか、今回はあんまし良い手やないから辛いわ・・・とりあえず和了らんと。)

「チー。」

(千里山がまた鳴いた。でも、今回はちょっと苦しそうな顔だね。これは、行けるんじゃない?)

(くそ、まだ4巡目なのに字一色2向聴とかふざけとんのか!くそ、どないしたらええねん・・・)

「ポン!」

(よし、これで聴牌や。でも、この待ちだと有珠山を止められん。ウチの和了り牌ツモってくれへんかな?)

(良いの来い!って、これはいらねーわ。)

「ロン!タンヤオ三色ドラ1。3900。」

(うっわー、捲られたし。っつーか雲無駄にしたし!)

(千里山が三連続和了!?このままじゃ、うちらも抜かされる!)

(あっ、なんか、火、付いたわ。)

(やっと親やってのにここで来るんか姫松!)

~東四局~ 親:藤崎心音

新道寺 123000

千里山 110800

有珠山 106400

姫松 71800

(やっぱり、この手牌なら行けそうやな!)

(うわ、姫松の手牌ヤバいわ。それに比べてウチの手牌は最悪やわ。ウチは人の心読めても配牌とかは普通やからな。今回は無理そうやな・・・)

~5巡目~

「ツモ。純チャン三色。3000・6000。」

(5巡目とか、速すぎやろ・・・)

(やっぱり火が付いてたのか。これは、結構厳しいな。)

~南一局~ 親:上重漫

新道寺 120000

千里山 104800

有珠山 103400

姫松 83800

(よし、また良い感じ。)

(くそ、姫松の勢いが強すぎて全然止められへんわ・・・)

(姫松の勢いが無くなってからカムイ使った方が成功しそうだな。ここはまだ使わないでおくか。)

(有珠山は今回何も使わないのか。じゃあ敵は姫松だけやな。)

~6巡目~

「リーチ。」

(うわ、速いわ!こんなん無理やろ・・・)

(一発消し出来るな。一発ツモで三倍満とかこられたらヤバいよな。姫松親だし。一発消ししておくか。)

「ポン。」

(あ、有珠山の人、やっちゃったな・・・)

(よし、これで少しはマシになったでしょ。)

「ロン。リーチ純チャン三色平和一盃口。24000です。」

(は?うわ、マジかよ。親倍とか、笑えねぇ・・・)

(姫松に捲られた・・・)

『姫松高校、今の和了りで一気に2位に浮上しました!これでトップがかなり近付きました!』

『しかも今ので2位だった有珠山が一気にラスだねぇ。いやぁ、良い感じになってきたねぇ。』

~南一局一本場~ 親:上重漫

新道寺 120000

姫松 107800

千里山 104800

有珠山 79400

(一気にラスになったわ。でも、こいつの勢いが止まんねーからカムイ使っても失敗しそうなんだよな。本当にこれ使い所ムズいわ。)

「ポン。」

(千里山が鳴いた。こいつ、姫松の連荘阻止しようと必死になってる。なら、今回ばっかりは手伝うわ。これ以上姫松に連荘されても困るし。)

「ロン。混一対々。7700の一本場で8000です。」

「はい。」

(有珠山がわざとウチに振り込んだ。これは、ヤバそうやな・・・)

~南二局~ 親:岩舘揺杏

新道寺 120000

千里山 112800

姫松 107800

有珠山 71400

(うわ、自風の東と場風の南が対子な上に西と北が1つづつある。これは、フリカムイを使ってくださいって言ってるようなもんじゃん!フリカムイ!)

(これは、有珠山がヤバい!)

~6巡目~

(マジでオタ風どんどん来るわ。小四和聴牌した。東か南が来れば48000点で一気に1位になれる!)

(ヤバいヤバい!ウチだけやなくて他の誰も東と南持ってへん。これ、ツモられる可能性が高いやん・・・)

~8巡目~

(来た!)

「ツモ!小四和!16000オール!」

(やられた・・・)

(はぁ?マジかいな!)

『な、なんと、有珠山高校の岩舘選手がまさかの小四和を和了り、ラスから一気にトップに浮上しました!何という事でしょう!』

『すげー!これだから麻雀は辞められないね!』

『さて、ここからどうなってしまうのでしょうか!』

~南二局一本場~ 親:岩舘揺杏

有珠山 119400

新道寺 104000

千里山 96800

姫松 91800

(これは、ホンマにヤバいわ。ここに来て役満とかあり得へんやろ・・・)

(とりあえずここは何としてでも連荘を止めんと!)

「ポン。」

(また千里山か。でもまだやれる!)

~7巡目~

(よし、良い感じに聴牌した。これで連荘して勝利を確実にする!)

「リーチ。」

(残念、それはウチの和了り牌や。)

「ロン。タンヤオ清一。12300!」

(うわ、こいつ、やっぱり私の邪魔してくるな!というか普通に上手いな!流石名門校の大将だな!)

~南三局~ 親:鶴田姫子

千里山 108800

有珠山 107400

新道寺 104000

姫松 91800

(千里山が強いな。このままだとやられちゃうな。ここは強引にでも和了りに行くか。)

(ここで和了らんと負ける。配牌は悪くなってないから頑張って和了る!)

~6巡目~

(よし、来た!)

「ツモ。純チャン三色。3000・6000。」

(うわ、姫松にも和了られた!?ヤバい。このままだと負ける。)

~南四局~ 親:藤崎心音

千里山 105800

有珠山 104400

姫松 103800

新道寺 98000

(これ、全員が1位狙える位置にいるな。)

(ここを和了ってトップに立つ!)

(カムイも雲も無くなっちゃったけどここで和了らなきゃ何処で和了るって話だよ!)

(最後に和了る!)

~8巡目~

「ツモ。」

最後に和了ったのは・・・心音だった。

「タンヤオのみ。1000オール!」

(うわっ、負けた!)

(マジか・・・千里山、やっぱり強かったな・・・)

(よっしゃ!1位や!)

『大将戦終了です!最後に和了した千里山女子が1位にで終了しました!』

 

~五位決定戦結果~

千里山 108800

有珠山 103400

姫松 102800

新道寺 97000



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第72話 決勝戦

先週は申し訳ありませんでした。決勝の構成とかその後についてを考えたり色々と忙しかったりとあって出せませんでした。本当にすいませんでした。
遂に決勝です!


五位決定戦が終わった。決勝戦を控えた4校の選手達は、控え室に入り五位決定戦を見ていた。

~臨海女子控え室~

「あれ、千里山が勝ったんだ。ネリーは有珠山か姫松が勝つと思ってた!」

「私も有珠山が勝つと思ってました。」

「いや、この勝負は千里山が有利だったよ。特に大将戦はな。」

「私も千里山が勝つと思ってたデース!というか、藤崎心音さんが勝つと思ってたデース!」

「やはりシアンも思っていたか。」

「まぁ、あの人と対局すれば分かるデスよ。あの人は強いデスよ。」

「あぁ、藤崎心音は永水大将やシアンみたいに、自分以外にも影響をもたらすタイプは苦手だが、今回はその影響が殆ど無かったからな。」

「そうデスね。縁さんの言うとおりデース!」

「成る程、確かにそうかもしれませんね。」

「だから副将戦が終了した時に点差が酷すぎ無かったから千里山が勝ちだなとその時既に思っていたよ。」

「流石ユカリだね!」

「流石です。」

「ありがとう、しかし今はそれよりも、もうすぐ始まる決勝戦に集中しなければだな。」

「そういえば縁さんはそろそろ出番ですね。」

「あぁ、西園寺麻衣との対局、楽しみだ。」

「そういえばさっき皆さんが集まってよろしくお願いしますって挨拶した時に、西園寺さんと夢乃マホさんが凄く睨み合っていたんですが・・・あれは何だってんでしょう?直接対局する訳ではないのに。」

「あぁ、私も同じ事を思っていた。しかし西園寺麻衣の方はどちらかというと楽しげにしていたように見えたが・・・」

「あー、あの二人デスね。私知ってるデス!」

「ん?シアン、何を知っているんだ?」

「実は私見ちゃったんデス!あの二人はデスね、この決勝が終わったら対局するんデスよ!」

「・・・それは、個人戦で対局、という事か?」

「いや、夢乃マホさんは個人戦に出てないんデスよ。」

「そうなのか!?知らなかった。」

「つまり、宮永咲さんと冬室氷華さんの他にもう一人、強い人がいるって事デース!」

「そうだったのか、それは楽しみだな。」

「はい!えっと、話を戻しますと、西園寺さんと夢乃マホさんが言い争いをしていたデス。残念ながら会話の内容はよく聞こえなかったデスけど。それで、決着を麻雀でつけようって話になって、それぞれが勝った時の条件を出したんデスよ。」

「賭けをするって事か?」

「そういう事デス。それで、西園寺さんが出した条件がなんと、夢乃マホさんが清澄高校を辞めて白糸台高校に入学する事だったんデスよ!」

「そんな事出来るのか!?」

「西園寺さんの親御さんが白糸台高校の理事長らしくて、情報操作すれば一発だって言ってたデース!」

「職権濫用じゃないか!?犯罪だぞ!?」

「怖いデスねー、西園寺さん。」

「そうか、今から親御さんに犯罪をさせようとしている輩と対局するのか・・・」

「まぁ、対局中に悪い事をする人では無いでしょうから大丈夫だと思いますよ?」

「いやいや、問題はそこじゃないだろう・・・」

「心配無いデスよ縁さん!私の見立てだと、十中八九夢乃マホさんが勝ちますから。」

「そうなのか?個人的にはどちらが勝ってもおかしくないように見えたが。」

「これまでの夢乃マホさんだったら良い勝負が出来たかもしれませんけど、今日見た夢乃マホさんは全然違いました。あれはきっと勝てないデス。西園寺さんの他に誰が相手をするのかによりますけど。」

「そうなのか。じゃあそろそろ時間だから行くとするよ。」

「頑張ってユカリ~!」

「頑張って下さいデース!」

「頑張って下さい!」

「ああ。行ってくる。」

~清澄高校控え室~

「強そうな人がいっぱいいたじぇ!」

「そうですね。」

「でも、マホちゃんがいれば大丈夫だよね?」

「・・・」

「ま、マホちゃん?どうしたの?」

「えっ!?あ、はい!頑張ります!」

「マホちゃん、いつになく強気だじぇ!」

「えっ、マホ、変な事言っちゃいました?」

「マホちゃん、どうしたの?ボーっとしてたけど・・・」

「いや、何でも無いですよ?今日も頑張ります!」

「そういやマホ、さっきずっと白糸台の先鋒見とったな。なんかあったんか?」

「えっ!?いや!何も無いです!」

「そうか?ならええんじゃけど。」

「マホちゃんが中堅戦で調子悪くならなければ良いけど・・・」

「あ、それは大丈夫です。絶対に負けないんで。」

「おおう、本当に強気だじぇ。」

「凄い自信だね。」

「だって、負ける要素が無いですから。」

「ど、どうしたのマホちゃん?なんか、いつにも増して強気だけど。」

「この決勝戦は、負けられないんです・・・!」

「確かに、この決勝戦は負けられないもんね!私も頑張るよ!」

「はい、頑張りましょう!」

「じゃあ、そろそろ行ってくるじぇ!」

「頑張って下さい優希!」

「任せろ!」

~白糸台高校控え室~

「いやー、決勝戦楽しみだな~!」

「そうなのか?良かったじゃないか。」

「はい、やっぱり臨海の四季縁さんは楽しみですよ!速く対局したいです!」

「どうせあんたが負けるでしょ。」

「そういう淡先輩も宮永咲さんとか臨海の大将さんとかに負けそうですよね。」

「はぁ?絶っっっ対に負けないし!速く行けし!」

「はいはい、行ってきますよ~。」

「あっ、麻衣!頑張れ!」

「ありがとうございます部長。行ってきます!」

~阿知賀女子控え室~

「うわぁぁぁぁぁ!決勝戦だぁぁぁぁぁ!」

「ちょっ、シズうるさい!」

「玄さん!頑張って下さい!」

「ありがとう穏乃ちゃん。じゃあ行ってくるよ!」

「頑張って下さい先輩。」

「うぉぉぉぉぉ!!!!」

「シズ、ちょっと黙って・・・」

 

 

『さぁ!遂に!運命の決勝戦が始まってしまいます!実況は私、福与恒子です!』

『・・・あっ、解説の小鍛冶健夜です。』

『ちょっと~、ノリ悪いよ~!』

『ごめん・・・じゃあ、選手紹介しよっか。』

『任せて!じゃあまずは白糸台高校から!白糸台高校の先鋒、宮永照選手が引退して衰退していくかと思われましたがこの選手が入ったお陰でまた絶対王者の風格を取り戻しつつあります!今年は白糸台高校が王座を奪還するのか!?西園寺麻衣選手!』

『西園寺選手がどれだけ稼げるかで白糸台高校が優位に立てるかどうかが決まってきますね。』

『おぉ、やはり辛口ですね。まぁでも確かに、清澄高校の夢乃マホ選手などなど怖い選手はいっぱいいますからね。』

『そうですね。』

『では続いて、清澄高校です。清澄高校は今年も後が怖い!ですが、この選手の東場は他の選手にも負けず劣らず強いです!清澄先鋒の片岡優希選手!』

『彼女がこの決勝戦で稼ぐ事はかなり難しいかもしれませんが、一発が怖い選手ではありますね。』

『やっぱり辛口だぁ!さて、続いて臨海女子です。臨海女子も先鋒と副将が引退してしまい、かなり戦力が落ちてしまったかと思われましたが、まさかこんな隠し玉を用意していたとは!臨海女子先鋒の四季縁選手!』

『彼女は西園寺選手をどのように攻略していくかでどれだけ稼げるかが左右すると思います。』

『今回の先鋒戦はそこが見所ですね!では最後に阿知賀女子!去年突如現れて決勝戦まで勝ち残ったダークホースです!今年も波乱を起こしてくれるのか!?阿知賀女子先鋒、松実玄選手!』

『彼女も稼ぐ事はかなり難しいかもしれませんが彼女にも爆発力がありますから何が起こるか分かりません。』

『成る程、では遂に!決勝戦の先鋒前半戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

片岡優希:東

西園寺麻衣:南

松実玄:西

四季縁:北

 

~東一局~ 親:片岡優希

清澄 100000

白糸台 100000

阿知賀 100000

臨海 100000

(さて、始まった。まずは最初にサクッと和了っと来ますか。)

(ここは和了らなくてはな。)

~5巡目~

(索子が余ったじぇ。でも、まだ大丈夫なはずだじぇ!)

「親、リーチだじぇ!」

(リーチ、速いな!流石清澄の東場の鬼。)

「ロン。清一一通。16000。」

(くそ、やられたじぇ・・・)

(うわっ、この人、もう聴牌してたのか!?ヤバいなこれ、回収じゃなきゃ和了れない可能性があるな・・・)

『最初に和了ったのは臨海女子の四季選手です。』

『四季選手はかなりポテンシャルが高いですからここでかなりリードを広げられそうですね。』

~東二局~ 親:西園寺麻衣

臨海 116000

白糸台 100000

阿知賀 100000

清澄 84000

(早速和了られてしまったじぇ・・・しかも次は倍満以上が来るから怖いじょ・・・)

~2巡目~

「ポン。」

(2ピンをポン?何をするつもりだ?)

(よし、これで1向聴だじぇ!)

「ロン。タンヤオ清一対々。16000。」

(うわ、また倍満直撃だじぇ・・・)

(臨海、完全に清澄を潰そうとしてる。これは危ないな。歯止めをつけなければ。)

『2連続で片岡選手に倍満を直撃しました!』

『これは、かなり上手い戦い方をしていますね。』

『これは白糸台、厳しいかもしれないね!』

『いや、まだ分かりません。ここからいくらでもなんとかなりますよ。どの高校も。』

『確かにそうですね。』

~東三局~ 親:松実玄

臨海 132000

白糸台 100000

阿知賀 100000

清澄 68000

~6巡目~

(このままだとヤバいな。この点差で1個も回収が出来ないなんて・・・)

「ツモ。混一一通ツモ。3000・6000。」

(これ、やっばいなぁ・・・)

『三連続和了ぁぁぁ!!!!誰も臨海の勢いを止められない!』

『ここからですね。』

~東四局~ 親:四季縁

臨海 144000

白糸台 97000

阿知賀 94000

清澄 65000

(この局は絶対に臨海が和了らないから安心して和了れるわ。)

「リーチだじぇ!」

(うわっ、清澄・・・まだ3巡目なのに、速い・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ純チャン三色。4000・8000だじぇ!」

(くそ、まさかこの人に和了られてしまうとは・・・回収を使ってないとは言え、和了りを目指した私から和了るとは・・・それくらいのレベルって事だよね。)

(白糸台と東場の片岡さんなら、片岡さんに軍配が上がるのか。)

~南一局~ 親:片岡優希

臨海 136000

白糸台 93000

阿知賀 93000

清澄 83000

(ここはとりあえず最初に喰らった3000の回収からするか。)

~4巡目~

「ロン。6400。」

(やはり、とられた分の二倍を盗られるのか・・・結構厄介だな。)

~南二局~ 親:西園寺麻衣

臨海 129600

白糸台 99400

阿知賀 93000

清澄 83000

~4巡目~

「ポン。」

(だから速いって!って、今回は字牌だ。これはヤバい・・・)

(まだ大丈夫だよね・・・)

「ロン。大三元。32000。」

(阿知賀に役満を直撃した!?)

(うわぁぁぁぁ!やっちゃったぁ!)

(これが、今年の臨海最強か・・・)

『いきなり決勝卓で役満が炸裂だぁぁぁぁ!!!!!』

『決勝でもちゃんとこの火力を出せるのは流石ですね。』

『誰も四季選手を止める事が出来ないのか!?』

~南三局~ 親:松実玄

臨海 161600

白糸台 99400

清澄 83000

阿知賀 61000

(今回は清澄の回収と行きますか。)

(今回は清澄にお返しをするだろうから和了れないだろうな。)

~5巡目~

「ロン。タンピン三色一盃口。8000。」

(やっぱりさっき和了ったのに対してお返しが来たじぇ・・・)

(やっぱりこれ、強すぎる。西園寺さんも臨海の四季さんも強すぎる・・・私なんかじゃ絶対に勝てないよぉ・・・)

~南四局~ 親:四季縁

臨海 161600

白糸台 107400

清澄 75000

阿知賀 61000

(オーラス、この局は東場でもないし臨海も何もしてこないはず。今回こそ和了れる。)

(今回は西園寺麻衣が和了るだろうな・・・)

(どうしよう、これで和了れなかったら一度も和了れてない事になる・・・どうしよう・・・)

~8巡目~

「ツモ。タンヤオ清一で4000・8000!これで前半戦は終了ですね!」

「ふぅ、お疲れ様。」

「お疲れ様だじぇ・・・」

「お疲れ様でした!」

『先鋒前半戦終了!1位は臨海女子で白糸台高校が2位です!さぁ、東京のエース対決はどちらが制すのでしょうか!それとも他2校が巻き返しを図るのか!後半戦に続きます!』

 

~先鋒前半戦結果~

臨海 153600

白糸台 123400

清澄 71000

阿知賀 57000



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第73話 決勝先鋒後半戦

すいません、毎回毎回遅れてしまい・・・最近何かと忙しく、あまり時間が取れず、またこんな事になってしまいました。


先鋒前半戦が終わり、休憩時間となったが、各校の先鋒選手は誰も移動せずに座ったままだった。

(いやぁ、私がこんな差を付けられて前半戦を折り返すとは思わなかったよ。流石は臨海のエースだね。)

「いやぁ、こんなに負けるとは思いもよりませんでしたよ。凄いですね。四季縁さん。」

「それはどうも。それにしても余裕そうな顔をしていますね。西園寺麻衣さん。」

「そうですか?そんな事無いと思いますけど。」

「まぁ、そうでしょうね。今回の決勝戦で勝つのはほぼ確実に私達臨海女子ですから。」

「・・・へぇ、随分と自信がお有りのようで。寝言は寝て言って貰えますか?」

「ふふ、やっと本音がお目見えしたな。それに、寝言なんかじゃないよ。この決勝戦は清澄にも白糸台にも、勿論阿知賀にも負ける気がしない。」

「へぇ、そりゃあ楽しみですね。」

「で、でも、清澄にはマホちゃんも咲ちゃんもいるじょ!あの二人はそう簡単には勝てないじぇ!」

「確かに、夢乃マホは怖いな。だが、宮永咲は本当に強いのか?」

「当然だじぇ!咲ちゃんならきっと決勝の為に何か凄いのを残してそうだじぇ!」

「そうか、でもそれをしているのは清澄だけではない。うちのシアンも準決勝以上のとてつもない物を残しているよ。」

「知ってるじょ。マホちゃんが言ってたじぇ。」

「何?どういう事だ?」

「あー、もしかして開会式になんか違和感があったのってあいつが原因だったんですね。」

(あいつ・・・やはりシアンの言っていた通り夢乃マホと西園寺麻衣は何か争いがあったみたいだな。)

「言われてみれば確かに開会式で違和感があったな。もしかして夢乃マホはその時に出場選手全員を見透かしていたという事か?」

「そういう事だじぇ。」

「成る程、本当に面白い事をしますね、夢乃マホは。それにしても四季縁さん、浅はかな発言は控えて貰いたいですね。我々白糸台もベストメンバーですよ。臨海ごとき余裕で倒せるくらいに。」

「ほう、エースである西園寺麻衣がこのような結果に終わっているのにか?」

「ふふふ、貴女は何も分かってないですね。ここからですよ。私の恐ろしさを身をもって体験させてあげますよ!」

「そうか、それは楽しみだな。」

「余裕でいられるのも今の内ですよ。」

「そうか、それにしても、こんな話をしたところで机上の空論に過ぎないな。」

「対局は机上で行われますけどね。」

「中々上手い事を言うじゃないか。」

「ありがとうございます。」

「ふふ、さて、では机上の対局を始めようか。」

「そうですね。楽しい対局にしましょうね。」

 

 

『さぁ、休憩が終わり先鋒後半戦が始まります!小鍛冶プロ、前半戦の批評をお願いします!』

『批評ですか・・・そうですね、始まる前は白糸台が優勢かと思いましたけど、臨海が予想以上に強かったですね。それに、四季選手が和了れない東四局では西園寺選手ではなく片岡選手が和了ってましたからね。清澄高校も東場ならチャンスはあるかもしれませんね。しかし、阿知賀女子は今の所は目立った活躍は無いですね。決勝戦では全然和了れない人はどんどん凹んでいってどんどん離されてしまいますからね。阿知賀女子は厳しい立ち上がりですね。』

『批評のはずがいつの間にか批判になってしまった小鍛冶プロでした~。』

『えぇ!?何その言い方!別に批判なんかしてないのに!』

『はいはい、天然なのは分かったから。』

『天然でもない!』

『はいはい、じゃあ後半戦開始します!』

『もぉ~!』

 

~場決め結果~

片岡優希:東

松実玄:南

四季縁:西

西園寺麻衣:北

 

~東一局~ 親:片岡優希

臨海 153600

白糸台 123400

清澄 71000

阿知賀 57000

(まずは和了るか。)

~4巡目~

「ツモ。タンヤオ清一ツモ。4000・8000。」

(うわぁ、いきなり倍満和了ってきたか。まぁでも、一応8000は和了れるけどね。)

(やっぱり、こいつ強いじぇ・・・東場でも全然勝てる気がしないじょ・・・)

『最初に和了ったのはやはり四季選手でした!』

『やはり実力では彼女が一番上を行っていますね。しかし、この後に西園寺選手がどう動くかですね。特に西園寺選手の親番は。』

『小鍛冶プロが意味深な発言をしています!果たしてその真意は何なのか!』

『私の事は実況しなくていいよ!』

~東二局~ 親:松実玄

臨海 169600

白糸台 119400

清澄 63000

阿知賀 53000

(完全に臨海と白糸台に差を付けられてるじぇ。このままやられる訳にはいかないじょ。)

~5巡目~

「リーチだじぇ!」

(清澄が先制した。それに比べてまだ臨海は何も仕掛けてない・・・いや、この捨て牌、そして役満が出る二局、これはまさか・・・!)

(清澄は浅はかだな。失点が8000から9000になるだけだというのにそんな無駄なリーチをするなんて・・・)

「ツモ。国士無双。8000・16000。」

(うわぁ、やっぱり国士無双張ってたのか・・・本当に強いなこの人。でも、これはちょっとチャンスかもしれないね。)

(そんな、5巡目で国士無双なんて、あり得ないじょ・・・)

(これが、全国最強レベル・・・)

~東三局~ 親:四季縁

臨海 202600

白糸台 111400

清澄 54000

阿知賀 37000

『あっ・・・』

『ん?どしたん?なんかあった?』

『いや、松実選手に少し変化があったので・・・』

『変化?特に何も感じられませんでしたけど?』

『いや、えっと、この局で松実選手が何かを起こしそうな気がします。』

『おぉ?これは小鍛冶プロの未来予知能力が発動したのか~!?』

『そんな事出来ないよ!』

『この予想が外れたらプロを辞めるそうです!』

『そんな事一言も言ってないよ!それに辞めないよ!』

『今日はツッコミが冴え渡ってますね~。』

『私解説だよね!?』

『さて、試合に戻りましょう!』

『えぇぇ!?』

~4巡目~

「カンです。」

(え、阿知賀・・・しかも、ドラカン!?しかもカンドラも同じ牌だじぇ!?)

(眠っていたドラゴンを起こしてしまったか・・・?)

(逆鱗に触れちゃったのかな?)

「リーチです!」

(こういうのって、ノリに乗ってるとどんな強い相手も凌駕したりするからね、この局は諦めた方が良いかもね。)

(これ、ヤバいじぇ・・・)

(来た・・・)

「ツモです!リーチ一発ツモドラ10。8000・16000です!」

(うわ、裏捲らなくてもドラ10で役満とかヤバすぎでしょ・・・)

(こういう輩は風船に似ている。空気が入ると爆発力があるが、それが無くなってしまえばただの弱々しい残骸になる。だからこの局での役満は阻止しないという選択は案外吉だったのかもしれないな。爆発力を引き摺られる方が厳しいからな。)

『まさか役満を和了るとは思いもよりませんでした!』

『そうですね。私もびっくりです。』

『やっぱり小鍛冶プロは予想が当たってドヤ顔を浮かべています!』

『そんな事無いってば!』

~東四局~ 親:西園寺麻衣

臨海 186600

白糸台 103400

阿知賀 69000

清澄 46000

(この局はきっと和了れるはずだじぇ!最下位になったからここで和了るじょ!)

~2巡目~

「リーチだじぇ!」

(2巡目とか速いね~。ツモ和了りして欲しいな。ここで清澄がツモ和了りをしてくれたら私が1位になる事が確定するから。)

(白糸台に連荘されずに清澄が和了ってくれるのは助かるな。ここで清澄が和了れば先鋒戦はこちらが勝つだろうな。)

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン三色で4000・8000だじぇ!」

((よし、これで勝てる!))

『さぁ、東場が終わりました。』

『ここからが西園寺選手の力の見せ所ですね。期待です。』

~南一局~ 親:片岡優希

臨海 182600

白糸台 95400

阿知賀 65000

清澄 62000

(さて、私の回収カードは4枚ある。まずは臨海の4000の回収から行きますか。)

~5巡目~

「ロン。チャンタ三色。8000。」

(まずは私から攻めてくるか。まぁ、点差を埋めたいだろうから当然か。)

(始まった、西園寺さんの得点回収。私は役満和了って8000点取ったから16000点取られちゃう・・・)

~南二局~ 親:松実玄

臨海 174600

白糸台 103400

阿知賀 65000

清澄 62000

(次はどうしようかな。清澄と阿知賀・・・先に清澄かな。)

~5巡目~

(やっぱり南場になると全然だめだじぇ。)

「ロン。一通清一で16000。」

(もう、最悪だじょ・・・)

『またまた西園寺選手が直撃だぁ!前半戦や先ほどの東場では四季選手に押されていましたが、今は西園寺選手が完全に支配しています!』

『これはもしかしたら臨海を逆転する可能性も見えてきましたね。』

~南三局~ 親:四季縁

臨海 174600

白糸台 119400

阿知賀 65000

清澄 46000

(さて、お次は阿知賀だね。)

(西園寺麻衣、もしかして私が四局だと振り込まないのを知らないのか?ただ和了れない局だと思っているのか?だとしたら此処で阿知賀に直撃をしたらオーラスは私が西園寺麻衣の和了り牌を止めている間に阿知賀か清澄が和了れば勝てる。阿知賀に直撃してくれ!)

~6巡目~

「ロン。タンピン清一。16000。」

(西園寺麻衣が阿知賀に直撃した!?これで私の勝ちはほぼ確実の物になった!しかし西園寺麻衣は致命的なミスをしてしまったな。相手のデータ不足もそうだが、西園寺麻衣の性格が出てしまったな。西園寺麻衣は大きい回収は最後に残す傾向にある。私の事を最後に攻撃して見事逆転勝利という完璧な勝ち方を追い求めるあまり凡ミスをしてしまったな。西園寺麻衣、私の勝ちだよ!)

(ふふふ、本当に勝つのは、四季縁さんじゃなくて私ですよ?)

~南四局~ 親:西園寺麻衣

臨海 174600

白糸台 135400

阿知賀 49000

清澄 46000

(さてと、メインディッシュと行きましょうか!)

(いやはや、西園寺麻衣には残念だな。これまでだからな。まぁ、よく頑張ったとは思うがやはり私達の方が強いという事が証明されてしまったな。)

~4巡目~

「リーチ。」

(流石に聴牌は速いな。まぁ、和了れないがな。)

(マホちゃんが四局の臨海は絶対に振り込まないって言ってたじぇ。それなのに最後に残しておくなんて、間違えたのか?でも、余裕そうな顔してるじぇ。何だか怖いじょ・・・)

~8巡目~

(そろそろ阿知賀か清澄が和了る頃だろうな。残念だな西園寺麻衣。この勝負、私の勝ちだ!)

(やっと来てくれたよ。まったく、遅いよ来るのが。)

「ツモ。リーチツモ混一一通。6000オール。」

(なっ!?ツモ和了だと!?という事は回収はされていないからまた跳満の手が出来るという事か?いや待て、西園寺麻衣はもしかして最初からこれが狙いだったのではないか?私が振り込まないのを知っていてツモ和了りを待っていたのか?ならば、私が振り込まない限りこの連荘は終わらない。そうしたら清澄が飛んで私達が負ける。ならば、私が振り込むしかない。なんだこれは、まるで、ドラマとかでたまに見る、借金取りがお金を貰うまで家を荒らしたりするような物ではないか!西園寺麻衣、異常過ぎる・・・)

(ようやく自分の過ちに気付いたみたいですね。四季縁さん。でももう遅いですよ。)

~南四局一本場~ 親:西園寺麻衣

臨海 168600

白糸台 153400

阿知賀 43000

清澄 40000

(やっと自分が負ける事に気付いたみたいですね。では、一思いにやってしまいましょう!)

(このまま私が塞き止め続けたらまたツモ和了されてしまう。ならば仕方ない。プライドを捨てよう。)

「ロン。純チャン三色一盃口。18300。」

(これで西園寺麻衣の回収は全部無くなった、これで終わりか。)

「最後に逆転されるとは思わなかったよ。お疲れ様だ。」

「何を寝ぼけた事言っているんですか?まだ連荘は終わらせませんよ?」

「・・・えっ?」

「当然じゃないですか。清澄も臨海も弱体化しているのに連荘を終わらせちゃうなんて勿体なさすぎるじゃないですか。さぁ、続きを始めましょう?」

(こいつ、本当に清澄を飛ばすまで続けるつもりだ・・・)

~南四局二本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 171700

臨海 150300

阿知賀 43000

清澄 40000

(オーラスで1位なのに連荘するこの感じ、去年の宮永さんみたいだよ・・・)

(このままだと、まずいじょ・・・)

~7巡目~

「リーチ。」

(西園寺さんがリーチした!)

(うぅ、ダメだじょ!全然聴牌出来ないじぇ!)

(この状態の私じゃ、何もする事が出来ない・・・)

「ツモ。リーチツモ清一。8200オール!」

(これが、西園寺麻衣・・・強すぎる。少しでも勝てると思ってしまった自分が恥ずかしいくらい完敗だな。しかし、まだ何か私に出来る事は無いのか!?)

~南四局三本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 196300

臨海 142100

阿知賀 34800

清澄 31800

(ん、なんだこの感じ・・・そういえばさっきも似たような感覚があったような・・・そうだ、阿知賀!阿知賀がまたドラゴンを起こしたのかもしれない!ならばこちらも協力しよう。)

(これはちょっとばっかし厳しいかもね。まぁ、そこそこ稼げたし、無理に和了らなくてもいいか。絶対に振り込まないモードになろうっと。)

~8巡目~

(阿知賀に聴牌気配、さて、私は勿論出さないし臨海も出さないだろうから、出すとしたら清澄かな?まぁ、清澄が出したら点数危ないけど。)

(ここで一番優勝出来る可能性を広げられる打ち回しは、これしか無いだろう。)

「あっ!それ、ロンです!タンヤオドラ7、16900です!」

(え、臨海が振り込んだ!?まさかこの人、後の方々に託したのか?だとしたら、清澄が振り込む前に自分が振り込めばまだ勝てるかもとか思ったのかな。しかし、中堅まで回してしまったら夢乃マホが待っているというのが分かっているのか?この人は。)

「まさか、最後に貴女が振り込むとは思わなかったです。」

「私も、二回も四局で振り込むとは思わなかったよ。でも、一回捨てたプライドは、案外簡単に捨てられるらしい。」

「成る程、貴女は、私には及びませんがやっぱり強いですね。」

「そうだな。」

「じゃあ改めまして、お疲れ様です。」

「あぁ、お疲れ様だ。」

 

~先鋒後半戦結果~

白糸台 196300

臨海 125200

阿知賀 51700

清澄 31800



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第74話 決勝次鋒前半戦

3週間も空けてしまい大変申し訳ありません。これからは今まで通り投稿させて頂きます。よろしくお願いいたします。


先鋒戦を終えて、各々の選手が控え室に戻って来た。

~清澄高校控え室~

「ただいま帰ったじぇ・・・」

「あ、片岡先輩お帰りなさいです!」

「お帰り、優希ちゃん。」

「ごめんだじぇ、全然和了れなかったじょ・・・」

「いやいや、あれは仕方ないですよ。西園寺さんと四季さんが相手だったにも関わらず3万点も残ったんですから十分です。あの二人が全力を出していたんですからかなり実力がある人でも飛んでいたかもしれません。片岡先輩はちゃんと繋いでくれましたから、後は任せて下さい!」

「マホちゃん、そうだじぇ。マホちゃんや皆がいるから心強いじぇ!」

「でも、その前にわしがこの3万点を守らにゃいかんけどな。」

「部長なら大丈夫ですよ。これまでの試合でもちゃんと点数を守って来たじゃないですか。部長はとっても安定してるから大丈夫です!」

「これまで安定していたと言っても、今回は決勝戦じゃ。強豪揃いで勝てる気がせんわ・・・」

「部長は別に勝たなくても大丈夫です。飛ばなければマホが何とかしますから。」

「マホちゃん、やっぱり今日なんだか強気だよね。何かあったの?」

「えっ、いや、何も無いですよ!ただ、今回の相手だったら勝てそうだなって思っただけです。」

「でも、これまでの相手よりも、今回の相手の方が強い気がするけど。」

「そんな事無いですよ。渚さんはとっても強かったですし、県予選の時はマホがまだ弱かったですから。それに、今回はマホと相性が良い方々なので今回は勝てると思っているんですよ。」

「相性?どんな?」

「マホの対局を見ていれば分かりますよ。でもその前に部長さんです。頑張って下さいです!」

「おぉ、ありがとさん。」

「部長、頑張って下さい。」

「はいはい、じゃあ、飛ばない程度に頑張って来るわ。」

~阿知賀女子控え室~

「ただいま・・・」

「玄さん!最後の和了り、カッコ良かったです!」

「でも、結局いっぱい点数取られちゃった・・・」

「気にしないで玄、私が全部取り返して来るから。」

「灼ちゃん。ありがとう!」

「それに、白も私もいるから大丈夫よ。」

「えっ?私は!?」

「シズは・・・ねぇ?」

「そうですね。高鴨先輩はめちゃくちゃ調子が良い時は凄く強いですけど、調子が悪い時は弱いですからね。」

「きっぱり弱いって言われた・・・」

「まぁでも、シズはここぞって時に強くなるから期待はしてるけどね。」

「流石憧、分かってる!」

「はいはい、それより、今は部長の応援でしょ。」

「そうだった!灼さん!頑張って下さい!」

「頑張ってね、灼ちゃん!」

「頑張って下さい部長!」

「ありがとう皆、それじゃあ、行ってくる。」

「灼、いつも通りにやれば勝てるよ。」

「ありがとう晴ちゃん、行ってくるね。」

「頑張れ!」

「うん。」

~臨海女子控え室~

「ただいま帰った。」

「お帰りなさいデース。やっぱり西園寺さんには勝てなかったデスね。」

「あぁ、やはり奴は強かったよ。惨敗だ。」

「でもあれって、冬の時にあいつが親じゃなかったらユカリが勝ってたじゃん。」

「いや、そんな事は言い訳にならないよ。どんな状況でも勝てるようでなくては本当に勝ったとは言えない。それに、前半は私が有利で後半は西園寺麻衣が有利だった。それで、同じ点数か西園寺麻衣よりも多く取っていたなら西園寺麻衣よりも強いとまではいかないものの勝ちではあったかもしれない。しかし結果は西園寺麻衣の圧勝だ。私は西園寺麻衣には勝てないんだよ。」

「まぁ、過ぎたるは及ばざるが如しデスよ!」

「シアン、それは『過ぎた事は気にするな』と言った意味で使っているのだろうが、それは誤用だ。本当は何事もやり過ぎは良くないという意味だ。『過ぎたる』は過ぎ去るではなく、やり過ぎると言った方の過ぎるだ。」

「良かった、いつものユカリさんデス!」

「お前、それを確かめる為にわざと・・・」

「いや、誤用だった事は知らなかったデース。」

「そうか・・・まぁ、なんだ、とりあえず2位という位置は取れた。後は次鋒で臨海に追い付けば今回もトップで終わらせられるだろう。だから、ハオは出来るだけ白糸台から点数を奪って欲しい。だが、直撃はしないように。」

「わかっています。では、私は行きます。」

「頑張れ~!」

「頑張って下さいデース!」

~白糸台高校控え室~

「いやぁ~、圧勝でしたよ。」

「お帰り麻衣、流石だったよ。」

「ありがとうございます部長。」

「はぁ?何が圧勝よ。前半めっちゃ負けて、後半でめっちゃ有利になったから偶然勝てた癖に!」

「おい淡、麻衣に限ってそんな事無いだろう。」

「いや、悔しいですけど大星先輩の言うとおりですよ。」

「えっ、そうなのか?」

「はい。四季さんが和了れない時に親にならなかったら、私はほぼ確実に負けていました。だから、私はあの人より弱いです。でも、現状私は勝ったんです!あの人との実力の差なんて個人戦で直接当たる時までに埋めれば良いんです。とりあえず今、この対局では私は勝ったんですよ。」

「そんなの、本当に勝ったなんて言えないじゃない。」

「そうですか、やっぱり分からないでしょうね、大星先輩には、次鋒以降全員がマイナスになるかもしれない中で先鋒をさせられる気持ちが。」

「はぁ?どういう事よ!」

「言葉の通りですよ。部長から大星先輩まで四人ともマイナスになる可能性が高い試合で私は四季縁に勝てたんですよ!」

「なんで私らがマイナスになるって決めつけてんの!」

「貴女方が弱いからですよ!冗談抜きで。」

「はぁ?」

「だが、私達は白糸台のベストメンバーのはずだ。」

「それが弱いって言ってるんですよ。他の出場校の選手と比べて。」

「いや、しかし、白糸台は他の所よりも強いはずだ。」

「去年、準決勝で阿知賀に負けて、決勝で清澄に負けて、今年に至っては宮永先輩が居なくなってメンバー全員が誰かに出し抜かれてマイナスという結果を1度以上残しています。そんなチームが強いなんて果たして言えるでしょうか?」

「それは・・・」

「そんな中、私だけは出し抜かれてもプラスで終わらせてきたんですよ。運を見方につけて。でも他の皆さんは、出し抜かれたらそのままズルズルと負けていくだけじゃないですか。そんなチームの先頭を努める人間の気持ちにもなってみて下さいよ。」

「麻衣、私は麻衣の期待に応えられなかったのか・・・?」

「部長は、最初の方は私との連携で上手く勝っていました。けど、準決勝で阿知賀の部長に看破されてしまいました。次の対局でも、彼女は出てきますよ。部長の能力の限界が明らかになった今、部長の存在理由は最早直撃をさせない抑止力だけですよ。もう誰も部長に直撃しません。部長が直撃する能力を封じられたら、うちの3軍チームにも勝てないレベルですよ。だから、せめて最小限の失点で抑えてきて下さい。それが、私の期待に応える方法ですよ。」

「・・・分かったよ。頑張って来る。」

「おい、お前強いからって流石に言い過ぎだろ!お前は1年生だろ!」

「辞めろ亦野、麻衣が言っている事は全て正しい。2年の時の私は、麻衣がさっき言った3軍にすら入れなかった。でも4月から1ヶ月、麻衣に言われた事をしてきただけでここまで連れてきてくれたんだ。麻衣の言った事が全て正しいって事は私が一番知っている。だから、麻衣の言葉は、私の意思だ。だから私は、私の意思に従う!」

「お前、変わったな・・・」

「麻衣が変えてくれたんだ。」

「前のお前の方が良かったよ。」

「以前の私のままなら、今この舞台にはいない。」

「そうか・・・なら、好きにしろ。」

「あぁ。好きにさせてもらうよ。」

 

 

『さて、次鋒戦が始まろうとしています。選手紹介をします。まずは現在トップの白糸台高校、三年生で部長を勤めている東条小夜選手です。』

『彼女は直撃をすると痛い仕打ちが返ってきます。西園寺選手と少し似ていますね。』

『東条選手は西園寺選手に練習を教わって1ヶ月で急成長してメンバー入りが決まったらしいですよ。』

『え、三年の東条選手が西園寺選手に教わっていたの?』

『そういう事でしょ。』

『しかも、1ヶ月でって、私でも出来ないかも・・・』

『まぁ、元々素質はあったかもしれないから、すこやんより凄いって事は多分無いと思うよ。』

『そうかな、でも、そうだとしても1ヶ月であそこまで育てたのは流石に驚愕です。西園寺選手はただ強いだけじゃないようですね。』

『そういう事ですね!』

『でも、納得がいきました。東条選手は弱点がそこそこあると思っていましたけど、付け焼き刃だったからなんですね。』

『そういう事だね。ほんじゃあ次、2位の臨海女子2年の郝慧宇選手です。』

『彼女は中国麻雀だったらこの中で一番強いかもしれませんが、日本の麻雀だと少し厳しいかも知れませんね。しかし、打点を和了率で補っているので、かなり手強い相手なのは確かでしょう。』

『中国麻雀のルールちょっとだけ調べてみたんだけど、めっちゃ複雑で良く分かんなかった。』

『確かに、日本の麻雀は結構簡略化されている感じですからね。』

『世界2位の小鍛冶プロは中国麻雀だったら何位くらいですかね?』

『えぇ!そんなの分かんないよ!それに、変な持ち上げ方辞めて!』

『はいでは次~。』

『なんでまた無視するの!?』

『続いて3位の阿知賀女子部長の鷺森灼選手です。』

『・・・』

『ちょっとすこやん、これ仕事だよ?』

『もぉ、分かったよ、やるよ。彼女は安定していますし、阿知賀女子の得点元の一人でもあります。ですが、東条選手やハオ選手は少しイレギュラーですから意外と厳しい対局になるかも知れませんね。』

『成る程、では最下位の清澄高校部長の染谷まこ選手です。』

『彼女も鷺森選手と同じで安定はしていますが、二人に翻弄されそうですね。ですが、清澄高校は後に夢乃マホ選手や原村和選手、宮永咲選手が残っています。染谷選手が飛ばされなければ、つまり0点だとしても飛びさえしなければ勝てる可能性はまだあります。染谷選手は30000点を取られるような選手では無いので清澄が負けるかどうかはまだ分かりませんね。』

『でも、10万近くある点差を取り返せるの?』

『夢乃選手ならそれくらいやりそうですね。』

『ふ~ん、まぁ良いや、選手が揃ったんで対局開始です!』

 

~場決め結果~

染谷まこ:東

郝慧宇:南

東条小夜:西

鷺森灼:北

 

~東一局~ 親:染谷まこ

白糸台 196300

臨海 125200

阿知賀 51700

清澄 31800

(始まったか、とりあえず麻衣の為にもこの点を死守する。そしてあわよくばこの点を増やす!)

(この点差を何とかせんとな。)

(まず和了る!)

~7巡目~

「ツモ。平和一通。1300・2600。」

(やっぱりこの阿知賀の部長が先に和了ってくるわ。去年も和や臨海副将の奴とかと良い勝負しとったからかなり強いとは思っとったけど、この巡目でこの和了りをするか・・・)

(流石は阿知賀部長だ。だが、今回は貴女の好きにはさせない。)

~東二局~ 親:郝慧宇

白糸台 195000

臨海 123600

阿知賀 56900

清澄 29200

(30000点を切った。ここは少し強引にも和了りにいかんとな。)

「ポンじゃ。」

(清澄の部長が鳴いた。この人が鳴いた時は他の人の手を遅くする時か、強引に自分の手を和了る時。私が和了ったから?いや、そんなに神経質って訳でもなさそうだしそれはない。という事は多分、3万点を切った焦り。なら、こっちも。)

「チー。」

(阿知賀も鳴いてきた。)

(はぁ、安手和了るって分かってるだろうに、止めるんかい・・・しんどいな。)

~6巡目~

「ロン。一通のみ、1000点。」

「はい。」

(阿知賀が臨海に直撃、しかも2巡前に私が出した牌。阿知賀は3巡前から手が変わってないから私を見逃した。たった1000点だろうが私には直撃しないって事か。やはり強い。)

(先に和了られた。こがぁなん追い付けんわ・・・)

~東三局~ 親:東条小夜

白糸台 195000

臨海 122600

阿知賀 57900

清澄 29200

(これが阿知賀部長ですか。大した事ないですね。)

~6巡目~

(これで聴牌。)

「リーチ。」

「フー・・・ロン。」

(やられた!)

「7700。」

(これまで取った点数、全部持っていかれた。)

(やはり臨海も強い。この対局で私は、麻衣の期待に応えられるのだろうか・・・)

~東四局~ 親:鷺森灼

白糸台 195000

臨海 130300

阿知賀 50200

清澄 29200

(これくらいならまだ和了れそうですね。)

(この人、強い!)

~7巡目~

「フー・・・ツモ。2000・4000。」

(また和了った!)

(今度はツモ和了り。)

(親被り・・・)

~南一局~ 親:染谷まこ

白糸台 193000

臨海 138300

阿知賀 46200

清澄 27200

(そろそろ止めないとヤバい。)

(さっきからズラそうとしても全然鳴けんわ。どうすればええんじゃ・・・)

(やはり麻衣が言ってた通りだ。全員強者だ。どの高校も簡単には敗れないな。くっ、私も麻衣みたいに素でも強ければこんな事には・・・)

~8巡目~

(やっと臨海を止められた・・・)

「ツモ。七対子赤1で1600・3200です。」

(阿知賀が和了った。)

(また阿知賀、臨海と阿知賀が強い。この後この二人の親番が残っていると考えると辛いな。)

(また親被りじゃ・・・)

~南二局~ 親:郝慧宇

白糸台 191400

臨海 136700

阿知賀 52600

清澄 24000

(このまま点数が下がり続けてたらいくらマホでも厳しいじゃろうな。勝負手になりそうだし、ちょっと本気出すわ!)

(清澄が眼鏡を外した!?確か、この人は勝負手が入った時に眼鏡を外すはず。ならば清澄を警戒するべきか。)

(清澄が危ない!)

~8巡目~

「リーチじゃ!」

(やっぱりリーチしてきた。)

(この人がリーチを掛けた時の成功率はかなり高い。しかし、一発を消す事も出来ない。やられたか・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ一通混一。4000・8000じゃ!」

(倍満!?)

(親被りですか。なら、縁さんに言われてたもしもの時の策を取りましょうか。)

(やはり清澄は夢乃マホと宮永咲が突出しているだけで個々が強い。私も負けていられない!)

~南三局~ 親:東条小夜

白糸台 187400

臨海 128700

阿知賀 48600

清澄 40000

(ここまで一回も和了れていない。このままでは終われない!)

(さっきの勢いでもう一度和了る!)

~7巡目~

(よし、聴牌した!これで焼き鳥を回避できる!)

「リーチ。」

「フー・・・ロン。3900。」

(えっ、私に直撃した?仕返しされるのは分かっているはず。どうして・・・)

(はっ!まさかこの人、私の次の親番で流す為にわざと!)

(この機転のきかせかた、まるで元部長みたいじゃの・・・)

~南四局~ 親:鷺森灼

白糸台 183500

臨海 132600

阿知賀 48600

清澄 40000

(今気付いた、成る程、阿知賀に連荘させないために私に直撃したのか。臨海の思い通りに動くのは癪だが、ここで阿知賀に連荘されるわけにもいかない。しかも今の失点を取り返すと言う意味でも和了らなくては。臨海の餌だと分かっていても釣られなくてはならないのか・・・)

~4巡目~

「ロン。3900。」

(臨海、強い・・・)

「ありがとうございました。」

「お疲れ様だ。」

「ありがとうございます。」

「お疲れさん。」

 

~次鋒前半戦結果~

白糸台 187400

臨海 128700

阿知賀 48600

清澄 40000



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第75話決勝次鋒後半戦

3週間も空けてしまい大変申し訳ありませんでした。次は来週に投稿出来るよう善処します。


前半戦が終わり、後半戦が始まろうとしていた。

~白糸台高校控え室~

「いやはや、臨海のハオさん、あんな形で部長を利用してくるとは。」

「流石は臨海って感じね。」

「多分あれは、四季縁さんの指示だと思います。普段のあの人なら、部長にも直撃していたでしょう。私もそれを狙っていたのですが、四季縁さんに言われたんでしょうね、部長に直撃しない事と最後の親を流す為に部長を利用する事を。」

「成る程、あいつの差し金だったって訳ね。」

「多分そうだと思います。やっぱりあの人は強いですよ。」

「あんたが負けるくらいだもんね。」

「最終的には勝ちましたけどね。」

「はいはい、そうだねー。」

「なんで大星先輩なんかにあしらわれなきゃならないんですか。」

「なんかってどういう事よ!」

「そのままの意味ですよ。」

「ホントにムカつく!なんなの!」

「はいはい、試合に集中しましょうね~。」

「あしらうのは私の役なのに!」

「はいはい。」

「またぁ!ホントにムカつく!」

~清澄高校控え室~

「なんだかんだで部長が一番稼ぎましたね。」

「流石だね。やっぱり部長は上手いね。」

「まぁ、先ほどの和了りは運を味方にしたという感じがしますけどね。」

「確かにそうだけど、それも込みで部長は強いんだよ。」

「そうですか。」

「このまま頑張って欲しいじぇ。」

「そうですね。」

「この調子なら大丈夫です。後はマホが何とか出来ます。」

「マホちゃんがそう言ってくれると安心だね。」

「マホも、和先輩や宮永先輩がいるから安心して打てるんです!マホはお二人のお陰で頑張れるんです!ありがとうございます!」

「こちらこそ助かってるよ。ありがとう。」

「はい!」

~阿知賀女子控え室~

「部長、調子良さそうだったのに、あんな風に流されるなんて・・・」

「灼ちゃん、頑張ってたのに・・・」

「あの臨海の人、強いね。」

「このままだと、清澄に追い付かれてしまうかもしれません。それに、臨海も更に差を広げられてしまいます。」

「ちょっと厳しい戦いになるかもしれないね。」

「頑張ってください!灼さん!」

「そうだね、今は応援するしかないよ。」

「頑張って下さい部長!」

 

 

『次鋒前半戦が終わりましたが、前半戦の感想をお願いします。』

『そうですね、阿知賀と臨海の和了率は高いですね。ですが、清澄は一撃で半荘で一位になりましたから清澄の一撃は怖いですね。しかも、清澄は調子が良ければ一撃では済まないかもしれないですから注意が必要ですね。』

『成る程、白糸台はどうでしょうか?』

『そうですね・・・先ほどのように直撃を親を流す為に使われる可能性はありそうですね。直撃で稼ぐ事は難しいでしょう。白糸台は直撃をされない抑止力にしかならないかも知れませんね。』

『おぉ、これまでのディスの中でも一番酷いかも知れない・・・まるで駒としか思っていないような発言、ありがとうございます。』

『いや、そんな事を思っていた訳じゃないよ!』

『はいはい、言い訳は署で聞くから。』

『なんで犯罪者みたいになってるの!?』

『この言葉、ちょっと言ってみたかったんだよね~。』

『こんな所で言わないでよ!というか、こんな所じゃなくても言わないでよ!』

『そんじゃあ後半戦始まるよ!』

『なんでいつもいつも無視するの!?』

『すこやんの反応が面白いから。』

『私は凄く不愉快だよ!』

『あ、ほら、本当に始まっちゃうよ。』

『本当だ。というか私達、ただの視聴者になってるよね?ちゃんと実況と解説しなきゃだよね?』

『え、すこやん実況と解説両方してくれんの?』

『どんな解釈すればそんな考えに至るのかな!?』

『まぁ、仕事だからちゃんとやるけど。』

『さっきまでちゃんとしてなかったよね!?』

『はいはい、もうツッコミは聞き飽きたよ。』

『えぇ!?私が悪いの!?』

『あ、始まるから。』

『もう!』

 

~場決め結果~

鷺森灼:東

東条小夜:南

郝慧宇:西

染谷まこ:北

 

~東一局~ 親:鷺森灼

白糸台 187400

臨海 128700

阿知賀 48600

清澄 40000

(いきなり阿知賀の親番、ここは上手く凌がなくては・・・)

(ここで和了って、勢いに乗る!)

~6巡目~

「フー・・・ツモ。700・1300。」

(先に和了られた!やっぱり速い。)

(やっぱり、阿知賀を潰そうとしとるの。いや、もしかしたらわしも狙われとるんかの・・・)

~東二局~ 親:東条小夜

白糸台 186700

臨海 131400

阿知賀 47300

清澄 39300

(親番、しかし臨海に簡単に和了られてしまいそうだ。ここは安手でも速く和了るべきか。)

~3巡目~

「ポン。」

(これで2向聴。やはり、素の私は全然ダメだな・・・)

~5巡目~

「フー・・・ツモ。1300・2600。」

(また臨海に和了られた・・・親被り、しかも次は臨海の親番。何とかして止めなくては・・・)

~東三局~ 親:郝慧宇

白糸台 184100

臨海 136600

阿知賀 46000

清澄 38000

(さっきみたいに白糸台を利用出来たら良かったんじゃけど、それならさっきの局で直撃せねばならんかった。じゃけど、しようと思ったら先に和了られた。こりゃあ、阿知賀と協力せんと負けるわ。)

(清澄と協力すれば、この親番は切り抜けられるかもしれぬ。)

~4巡目~

「ポン。」

(これで1向聴、清澄が協力してくれてる・・・?)

(次にこれを出したら聴牌するじゃろうな。こっちは手も悪いし、そっちが和了ってくれ。)

~5巡目~

「チー。」

(やっぱり、清澄が私の欲しい牌をくれる。この局は、私が和了って見せる。)

~8巡目~

「ツモ。一通のみ、300・500。」

(清澄と阿知賀に止められましたか・・・まぁ、そう簡単に連荘させてくれるような相手ではないって事ですね。)

(ふぅ~、なんとか連荘は防げたわ。後は点数をキープしてマホに繋ぐ。)

(清澄、やっぱり強い。ただ点数を取れるだけじゃなくてアシストや点数をキープする能力、そういった能力が優れている。流石は去年の優勝校のメンバー。)

~東四局~ 親:染谷まこ

白糸台 183800

臨海 136100

阿知賀 47100

清澄 37700

(親番じゃけど、この状況じゃとあまり嬉しゅうないの。この対局やったら親番が無い方がええような気がするわ。)

~7巡目~

「フー・・・ツモ。2000・4000。」

(やっぱり、臨海が強すぎるわ・・・)

(なんでここまで和了れるんだ。このままだと、こちらが逆転されてしまう!)

~南一局~ 親:鷺森灼

白糸台 181800

臨海 144100

阿知賀 45100

清澄 33700

(ここへ来てかなり良い配牌。ここは攻めるしかない!)

~4巡目~

「リーチ!」

(先制された、私も追い付かなくては・・・)

(こりゃあ、良い手でも入ったんかいのぉ・・・)

(何もする事が出来ない、鳴くことすら・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一一通。8000オール!」

~南一局一本場~ 親:鷺森灼

白糸台 173800

臨海 136100

阿知賀 69100

清澄 25700

(ここへ来て阿知賀の調子が上がってきとる。このままじゃと、マホに回せん可能性も出てきよる。ここでわしが和了らんとな・・・)

(今回も調子が良い。この局も和了ってみせる!)

(・・・)

~7巡目~

「フー・・・ツモ。400・600。」

(臨海に和了られた。でも、これまでに比べて安い。どうして・・・臨海じゃったらもっと高い手で和了れたはず。)

(先に和了られた!また倍満を和了れたのに!)

(流石にこれ以上の連荘はさせません。)

~南二局~ 親:東条小夜

白糸台 173400

臨海 137500

阿知賀 68500

清澄 25300

(この後に臨海の親番があるから、さっきみたいに白糸台を利用すればなんとかなるじゃろう。今回の手は悪う無いしな。)

~8巡目~

「ロンじゃ!タンピンドラ1で5200。」

(清澄に直撃された。これは、やはり臨海の親番を流す為なんだろうな。私は利用されるだけの存在なのか・・・麻衣も私の事を抑制する力でしかないと言っていた。私は・・・道具でしか無いのか・・・?)

(清澄、それだと少し甘いですよ・・・)

~南三局~ 親:郝慧宇

白糸台 168200

臨海 137500

阿知賀 68500

清澄 30500

(清澄、このままだと、南三局だけじゃなくて南四局も直撃を受けちゃう。白糸台との点差が広がる上に、点数も少なくなる。もしかしてミス・・・?いや、でも、この人がこんな事に気付かない訳がない。ならどうして・・・?)

~4巡目~

「ロン。タンピンドラ1で5200だ。」

「はい。」

(先程の私は最後の局の前に直撃をしたから点の移動無しで終わらせられましたけど、清澄にはもう一回直撃されるはず。この絶望的な点数の中で点数を減らしたいと思う人はいないでしょうし、ミスをしてしまったのでしょう。この人はもう少し出来る人だと思っていましたけど、残念です。)

~南四局~ 親:染谷まこ

白糸台 173400

臨海 137500

阿知賀 68500

清澄 25300

~5巡目~

(これで、少しは点数を稼ぐ事が出来た。清澄がミスをしてくれたお陰で減らずに済んだ。これでトップを維持して終わりだ!)

「ロン。タンピンドラ1で5200だ!」

「はい。」

「これで、終わりですね。」

「お疲れさん。」

「ありがとうございました。」

 

~次鋒後半戦結局~

白糸台 178600

臨海 137500

阿知賀 68500

清澄 20100

 

 

対局が終わり、控え室に戻ろうとしていた、まこの事をハオが呼び止めた。

「最後のミスは致命的ですよ。ただでさえ点差があるのに。こんな感じだと、また私達が勝ちますよ。」

「いや、さっきのはミスじゃない。点数が減る事も分かった上でやった事じゃ。」

「はい?清澄はこれ以上減らしたら・・・」

「白糸台のあの直撃はそう簡単には邪魔出来ん。じゃから、あんたの親番を流す事と、失点を5200に抑える為にやったんじゃ。」

「確かに、あれが無かったら大量失点もあり得たかも知れませんけど、点差が広がる方が大変だと思いますけど。」

「いや、わしの次には最強の後輩がスタンバイしとる。」

「夢乃マホさんですか。」

「そう、そいつに、わしが次鋒戦に向かう時にこう言われたんじゃ。『飛ばなければ大丈夫です。後はマホが勝ちますよ。』って感じの言葉を。」

「そうだったんですか・・・やはり貴女は上手い対局の仕方をしますね。それにしても、夢乃マホさんはとてつもない自信ですね。今回の決勝中堅戦の相手は、かなり強いと思いますけど。」

「いや、マホに同じ事を言うたら、負ける要素が無いって言われたわ。」

「それは・・・怖いですね。ですが、夢乃マホさん一人であの点差に追い付くのは厳しいと思います。」

「わしもそうかもしれないとは思っとる。けど、マホならやってくれるって信じとるからな。」

「そうですか。上手く行くと良いですね。」

「そうじゃな。」



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第76話 決勝中堅前半戦

忙しくて3ヶ月ほど放置してしまい、本当に申し訳ありませんでした!これからは毎週投稿出来るよう頑張ります。


まこが清澄高校控え室に戻ってきた。

「ただいま。」

「お帰りなさい部長。」

「お帰りなさいです部長さん!」

「プラスにする事は出来んかったわ。」

「いやいや、十分です!特に最後の判断は素晴らしかったです!」

「やっぱり、マホならそう言うと思ったわ。」

「はい、あの状況でしたら、あの判断が最適だったと思います。」

「でも、最悪の状況を考えて直撃を受けたのは分かりますけど、親番だった訳ですし、少しは自分も和了ろうとして良かったんじゃないですか?」

「確かに和の言いたい事も分かる。けど、オーラスの配牌は特段良い物じゃなかった。それなら、最悪の事態を避けるって判断なら、マホも納得してくれるじゃろうって思ったんじゃ。」

「そうですか。まぁ、全く意味の無いやり方では無いですから良かったんじゃないでしょうか。」

「和がそう言ってくれるとちゃんと正しい事をしたって感じがするな。」

「なんですかそれ・・・」

「とりあえず、マホが点数を取り返してきますよ!」

「そうだね、頑張ってマホちゃん!」

「はい!ありがとうございます!」

~臨海女子控え室~

「ただいまです。」

「お帰り、なかなかの活躍だったじゃないか。流石ハオだな。」

「いや、点数だけ見たら私はかなり出来た方だと思います。けど、阿知賀部長に点数で負けて、清澄に戦略で負けました。私は、二人に負けたんです。」

「阿知賀はともかく、清澄はハオの真似しただけじゃん。戦略も糞も無いでしょ。」

「いや、それを言うなら私も縁さんに聞いた事をしただけです。清澄と何ら変わりません。」

「でも、清澄は結構マイナスになってるじゃん。」

「いや、夢乃マホさんへ確実に回す為にわざと白糸台に直撃をしたんです。それを私は、私の親番を流すだけだと思い、無視しました。あそこで清澄を止めていれば、清澄を倒せたかもしれないのに・・・」

「まぁしかし、白糸台との点差を縮めて清澄の点を減らしてくれたんだ。十分だ。」

「縁さんにそう言っていただけると嬉しいです。」

「しかし、問題は次だな。」

「夢乃マホさんですか・・・」

「あぁ、そうだ。私と西園寺麻衣が同卓なら良い勝負は出来ていたかもしれないが、この面子だと厳しいだろうな・・・」

「そういえば、清澄の部長の方から聞いたんですが、夢乃マホさんが『負ける要素が無い』って言ってたそうですよ。」

「そんな自信、良く出てくるね。中堅の奴ら全員バカにしてんのかな?」

「いや、そういう訳でもない。夢乃マホの言うとおりだ。私でも同じ状況だったら同じ事を思うだろうな。何故なら、白糸台の渋谷はオーラス、阿知賀の天理は連風の時を気を付ければ良い。それ以外は普通だからな。そして明華は準決勝で敵ではないと認識されたのだろう。だから気を付けるべきはオーラスと天理の連風だけ。いや、違う言い方をすれば、その他の全ての局で和了れると思っているだろう。」

「夢乃マホさんにとって私はどうでも良いって事ですか・・・」

「まぁ確かにあいつなら思ってそうだね。それだけの実力を持ってるんだもん。」

「夢乃マホが強いし勝てないのも仕方ないと思う。けど、出来るだけ点を減らさずにネリーに回して欲しいんだ。ネリーまで行ければこちらも勝機がある!」

「当たり前じゃん、ネリーは絶対勝つよ!それこそ、負ける要素が無いよ!」

「そう言ってくれると安心する。しかし、とりあえず今は夢乃マホから出来るだけ取られない事を目標にやって来てくれ。」

「はい、頑張ります。」

~阿知賀女子控え室~

「ただいま。」

「お帰りなさい部長!収支トップ、流石です!後はあたしに任せて下さい!」

「白、ありがとう。白なら清澄の中堅とも良い勝負が出来そう。頑張ってね。」

「はい!では、行ってきます!」

「頑張れ~!!」

「頑張ってね。」

「勝って私に繋げてよね!」

「はい、ありがとうございます。行ってきます!」

~白糸台高校控え室~

「ただいま・・・」

「部長、お疲れ様です。見事に利用されましたね。しかも二回も。」

「全くその通りだ。やっぱり私は、利用されるだけの存在なのか・・・」

「いや、そんな事はありません。十分出来ていました。利用されていたとは言え、トップを維持しましたし、臨海を止める事も出来ました。部長のお陰です。」

「でも、私は何も出来ていない・・・」

「むしろそれで良かったんですよ。」

「えっ?どういう事だ?」

「すいません、私、部長に謝らなくてはならない事があります。部長の対局前に思ってもない酷い事を言ってしまってすいませんでした。実はあれ、部長がちゃんと仕返しをしてもらう為に言ってたんです。」

「仕返しをしてもらう為に?どういう事?」

「準決勝が終わった時の部長はなんだか自分を失っているように感じました。もしかしたら決勝戦であの和了りをしないで酷い負け方をするかもしれないと思って、あえて酷い事を言って仕返しをして貰ったんです。だから、部長は十分な仕事をしました。ありがとうございました。」

「そうだったのか。じゃあ、私は麻衣に必要とされているのか?」

「もちろんです!そうじゃなかったら私の次を頼んだりしませんよ。」

(そうだ、麻衣は入部して直ぐに部内一位だった淡を負かした事で、部内でチームを作る時に取り合いになっていたのに一番最初に私を選んだ。その時はまだ三流で誰からも注目されていなかった私を選んでくれた。しかも麻衣の次である次鋒を・・・)

「そうか、私は、麻衣に必要とされていたのか・・・」

「そうです、部長に代わりなんていません。私は部長となら決勝でも戦えると思って選んだんですから!」

「麻衣・・・」

(私は、幸せ者だな・・・)

~臨海女子控え室~

「ただいま帰りました。」

「清澄にしてやられたな。」

「はい、ミスだと思って放置してしまいました。」

「でもあれだけ点差があるなら大丈夫なのではないのですか?」

「いや、奴はかなり脅威!」

「そうデース。夢乃マホさんなら余裕で一位に返り咲きデスよ!」

「確かにそうかもな。しかし、準決勝ではそれも込みで勝ったわけだ。中堅で出来る限り失点を抑えて、副将戦と大将戦で巻き返せば、我々にも勝機がある。」

「そうデース!しかも今回はアレを使っても良いんデスよね!」

「あぁ、存分に使ってもらって構わない。」

「なら大丈夫だと思うデース!まぁ、慢心はしませんが。」

 

 

『さぁ!決勝戦ももう折り返し地点!中堅戦が始まります!』

『注目する選手はやはり夢乃マホ選手ですね。彼女がどれだけ巻き返すのか、そして他の選手がどのようにそれを食い止めるか。といったところが重要になってくると思います。』

『成る程、では中堅前半戦を開始致します!』

 

~場決め結果~

夢乃マホ:東

雀明華:南

渋谷尭深:西

天理白:北

 

~東一局~ 親:夢乃マホ

白糸台 178600

臨海 137500

阿知賀 68500

清澄 20100

(いきなり夢乃マホの親番、一回くらい和了られても問題無いかな?いや、夢乃マホに連荘されたら渋谷さんが地和を和了るようになる。それだけは阻止しないと。でも、私のとこも点数少ないからダブ東の親番で連荘したい。どうしよう・・・)

「リーチ。」

(2巡目なのにもうリーチ!?流石夢乃マホ・・・)

(まぁ、最初は和了られちゃいますよね・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ三色ドラ3。8000オールです!」

(いきなり親倍!?やっぱりこの人は異次元。どうすれば攻略できるんだろう・・・)

「一本場です!」

~東一局一本場~ 親:夢乃マホ

白糸台 170600

臨海 129500

阿知賀 60500

清澄 44100

「リーチ!」

(ダブルリーチ!?)

(やはりこの人を止めるのは難しいですね・・・)

(このまま連荘してくれれば、最後に和了れる。)

「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色。8100オールです!」

(また親倍!?しかも捲られた!?)

(早速見せてきましたね。本物の実力を・・・)

~東一局二本場~ 親:夢乃マホ

白糸台 162500

臨海 121400

清澄 68400

阿知賀 52400

(白糸台から点数を取っておきたいですね。じゃあ、狙い打ちします!)

(夢乃マホが白糸台をじっと見てる?これは、もしかして・・・)

~6巡目~

「ロン!タンピン三色。11600の二本場で12200です。」

(やっぱり白糸台に直撃した!この人、レベルが違いすぎる!しかも、まだ連荘してるし!)

(そろそろ止めないと危ないですね。)

~東一局三本場~ 親:夢乃マホ

白糸台 150300

臨海 121400

清澄 80600

阿知賀 52400

(そろそろ止めないと!と言ってもどうすれば・・・そうだ、風神に鳴いて貰って流せれば。)

「あ、ポンです。」

(臨海の人も止めようとしてる。ここは何とか風神に和了ってもらおう。)

~6巡目~

「ツモ。東のみ。400・700の三本場で700・1000です。」

(やっと親番が流せた。でも今の局、夢乃マホが和了しようとしていなかった気がする。連荘しなくても勝てるから?それともやっぱり白糸台を気にしてかな。何にせよこの親番を流せたのは大きい。)

~東二局~ 親:雀明華

白糸台 149600

臨海 123800

清澄 79600

阿知賀 51700

(この局は夢乃マホが北だから、四喜和をやるかもしれない。気を付けないと。・・・って思ったらいきなり北を出した。って事はもしかして違う能力?ならこの北は出して大丈夫だよね。)

「ポン。」

(はぁ!?自分が捨てたのを鳴いてきた!?そうか、3枚持ってても鳴かなきゃ能力発動しないから捨てたんだ。でも、これで皆四喜和を和了るって警戒してる。東は鳴けないはず!)

「カン。」

(えっ!?東をカン!?という事は東も北も最初から3枚づつ持っていたって事?でもこれ、先に東を捨ててたら出来なかった。どんだけ豪運なの!?)

(最初に風牌が全然無かったので大体察していましたけど、これは流石に・・・)

~7巡目~

「ツモ!小四喜!8000・16000です!」

(やっちゃった・・・これが夢乃マホの本気・・・全然勝てる気がしない。)

(もう捲られそうです・・・)

~東三局~ 親:渋谷尭深

白糸台 141600

臨海 107800

清澄 101600

阿知賀 43700

(まだ東三局なのにもう10万まで戻してる。やっぱり正真正銘の化け物だこの人・・・)

(この局で臨海は捲れますね。)

「ポン。」

(鳴いてきた。今度は何をするつもり?)

「ポン。」

(また鳴いた。)

(この鳴いていく感じ、白糸台副将に似てる。)

「ポン。」

(ヒット!)

(三回鳴かれた。って事は・・・)

「ツモ。対々ドラ3。2000・4000です。」

(捲られた・・・)

(・・・耐えた!次は私のターン!)

~東四局~ 親:天理白

白糸台 137600

清澄 109600

臨海 105800

阿知賀 41700

「リーチ!」

(よし、配牌もドラも大丈夫。これなら和了れる!)

~4巡目~

「ツモ!ダブリーダブ東ツモドラ3。8000オール!」

(今度は阿知賀!?)

(・・・)

(よし、この調子でどんどん稼ぐ!最後の役満も、16000一回くらうだけだから気にせずにここで出来るだけ稼ぐ!)

~東四局一本場~ 親:天理白

白糸台 129600

清澄 101600

臨海 97800

阿知賀 65700

「リーチ!」

(やった。またダブリー出来た!夢乃マホもこれを防ぐ事は出来ないのかも!)

~5巡目~

(来た!)

「ツモ!ダブリーダブ東ツモドラ3。8100オール!」

(また阿知賀!?阿知賀にも捲られてしまいました。それにしても清澄はなんで止めないのでしょう。白糸台の方が最後に和了るかもしれないのに・・・)

(・・・そろそろですね。)

~東四局二本場~ 親:天理白

白糸台 121500

清澄 93500

阿知賀 90000

臨海 89700

(よし、今回も良い感じ。これで親倍和了れればトップになれる!今ならやれる!)

「ポン。」

(夢乃マホが鳴いた!?何をするつもり?)

「ポン。」

(また私の牌を鳴かれた。って事はこれ、臨海の大将の和了り方。ヤバい・・・)

「ポン。」

(この赤5ピンで和了られる・・・)

「ロン。タンヤオ対々ドラ3。12600です。」

(終わった・・・夢乃マホ、ヤバいなぁ・・・)

~南一局~ 親:夢乃マホ

白糸台 121500

清澄 106100

臨海 89700

阿知賀 77400

(そしてまた夢乃マホの親番、こんなの勝てる訳無い・・・)

「ポン。」

(夢乃マホがいきなり鳴いた。今度は何をするつもり?)

~7巡目~

「ツモ。三色同刻三暗刻対々。6000オールです!」

(手牌に1の三色同刻!?ヤバ過ぎ・・・)

(トップ取られた・・・)

~南一局一本場~ 親:夢乃マホ

清澄 124100

白糸台 115500

臨海 83700

阿知賀 71400

(夢乃マホ、今度は何をしてくるの・・・)

「カン。」

(えっ・・・)

「ツモ!嶺上開花ツモ清一ドラ8。16100オールです!」

(えぇぇぇぇぇぇ!!!??そんなのありですか!?)

(宮永さんの和了り方、何も出来ずに役満を和了られてしまうとは・・・)

(でも、これで地和が出来る!)

~南一局二本場~ 親:夢乃マホ

清澄 172400

白糸台 99400

臨海 67600

阿知賀 55300

(あれ、夢乃マホからヤバい感じが無くなった。この局は和了るつもり無いのかな?なら、私が和了る!)

(夢乃さんは何もしないようですね。なら、私が和了ります!)

「ポン。」

(臨海が鳴いた。臨海の人も夢乃マホが何もしない事に気付いて攻めてきてる。負けられない!)

~9巡目~

「ツモ!混一混老対々ダブ南。4200・8200です!」

(やっぱり風神は伊達じゃないですね、間に合わなかった。)

~南二局~ 親:雀明華

清澄 164200

白糸台 95200

臨海 84200

阿知賀 51100

(臨海の風神さんに流れが来ているような気がします。ならここは流れを変えます。)

「ポン。」

(夢乃マホが鳴いた。何をしてくるの・・・)

~3巡目~

「チー。」

(夢乃マホの手、あんまり強そうには思えない。何をしているの?)

~6巡目~

(これは、全然有効牌が来てくれません。夢乃さんのせいなのでしょうか・・・)

「ロン。タンヤオのみ、1000です。」

(やっぱり、夢乃さんに止められてたんですね・・・)

~南三局~ 親:渋谷尭深

清澄 165200

白糸台 95200

臨海 83200

阿知賀 51100

「リーチ!」

(この局はダブ南だからダブリーが出来る!それに、多分夢乃マホも邪魔してこないはず!)

(今回は阿知賀に和了られそうですね。)

「ツモ!ダブリーダブ南ツモドラ3。4000・8000!」

(よし、これで少しはましになった。と言ってもこの後地和で白糸台に持っていかれちゃうんだけどね・・・)

~南四局~ 親:天理白

清澄 161200

白糸台 87200

臨海 79200

阿知賀 67100

(オーラス、これまで蒔いてきた種が実る時!ハーベストタイム!)

(ハーベストタイム!)

「ツモ!地和!8000・16000です!」

和了したのは尭深ではなくマホだった。

(えっ!?なんで夢乃マホが地和和了ってるの!?)

(えっ?どうして・・・)

(何がどうなっているんでしょうか・・・)

(しかも夢乃マホの手牌、大四喜だし・・・ん?そういえば夢乃マホの最初の捨て牌、東南西北ばかりだった!という事は、夢乃マホが小四喜を和了った時も、あたしから北を鳴くためだけじゃなくて、ここで和了るためでもあったって言うこと!?そんな、何手先まで読んでるの・・・こんなの、勝てる訳無い・・・)

「ありがとうございました!」

(私が、ハーベストタイム出来ないなんて・・・しかも、私のハーベストタイムをコピーされるなんて・・・)

(夢乃さん、どこまで強くなるのでしょうか・・・)

 

~中堅前半戦結果~

清澄 193200

白糸台 79200

臨海 71200

阿知賀 51100



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