比企谷八幡 in 黒子のバスケ (アカツキ8)
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設定・諸注意

この作品は他の執筆中の息抜きの作品です。

 

何か思いついちゃったんで書いてみました。

 

それでは、この話の設定です。

 

 

・比企谷八幡

 

元帝光中学校バスケットボール部

実力はキセキの世代と同等クラス

ポジションはセンター以外のどこでもできる

家の事情で全中連覇する前に転校、そして再び家の事情で東京に戻る。

転校先は....本編で書きます。

 

実力は赤司と黒子と青峰を合わせて、少し弱体化した感じ。

赤司の能力限定版、先読みが出来る。使い続けると体力の消耗が激しくなる。ゾーンに仲間を入れるような超絶ナイスパスは出来ない。

 

黒子の様に常に影を薄めるわけではなく、同じようなパスが出せるだけ。つまり黄瀬と同じレベルの真似。

 

青峰みたいには出来ないが、フォームレスシュートが得意。出来るようになった理由は、『もっと楽にシュート打てたら良いのに』と、試しにやったら思いの外出来た。

 

独自の戦いかたは、ディフェンスでシュートの姿勢、もしくはコースをずらして確実にシュートを外させる。それを繰り返して相手のリズムを狂わせて、その試合中のシュート確率を格段に落とす。手法を変えた灰崎みたいな感じですね。キセキ相手にもこの戦いかたが通用するが、その場合、確実に止めれるわけではない。しかし、連続で止めることが出来たら、他のプレイヤーと同じようにリズムを崩せる。

 

他のキセキの世代の様に、化け物じみた突出した才能はないが、これらの戦いかたと、高い身体能力によって実力は十分化け物。

 

 

・比企谷小町

 

比企谷八幡の妹であり、兄を慕っている。

再び東京に戻って昔の友人に会えるので、転校することには反対していない。

兄にたまにバスケを教えてもらっているので、同年代では敵無しレベルに上手い。

地味にブラコンが入っている。

 

 

・一色いろは

 

八幡達と同じく、親が東京に転勤するために、八幡の転校先に入学。

バスケ部のマネージャーになる。

入った動機は、その部活のキセキの世代と呼ばれている人に近づくため。原作の葉山目当て的な?恋愛感情はない。

が、本格的な部活の練習を見て、本気でマネージャーをしようと決意する。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

俺ガイルの登場人物はこの三人です。他はもう出すことはないです。多分。

 

最初に書きましたが、これは他の執筆中の作品の息抜きで書くものです。なので、内容はそれほど凝ってないですし、投稿もまちまちになると思います。

また、文字数は少ないです。せいぜい3000から5000程度だと思います。

作者はバスケ経験者なので、ルールとかに関しては問題ないです。しかし、そこまで入れ込んでいたわけではないので、もしかしたら知らない事があるかもです。

 

 

では、次から本編を投稿します。



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第1話 転校と来訪

どうも、アカツキ8です。
これから本編投稿します。



「転校ねぇ....」

 

一言呟いた声が夜の公園に響く。

 

事の始まりは今日の朝だ。

 

 

 

 

「あぁーー....マジ布団から出たくない」

 

今現在、エリートボッチこと比企谷八幡はミノムシの生態模倣をしながら、ぬくぬくと暖を取っていた。

いや、これは仕方がない。今は2月下旬、まだ朝は寒いのである。

 

誰でも一度は経験しているだろう。あの布団から出た後の尋常じゃない寒さを。

 

そういうわけで、俺は布団にくるまっているのである。ちなみに今日は土曜日、学校も休みだ。

昔は土曜日の午前中は学校があったらしいな。この時代に生まれてよかった。

 

なんて下らないことを布団のなかで考えていると、急に部屋の扉が開いた。

 

顔だけ布団から出して誰が来たのかを確認する。すると、いとしのマイシスター小町が居た。

 

「お兄ちゃん!早く起きて!」

 

「えぇー....まだ7時じゃねぇか」

 

そう言って再び布団に潜ると、小町が『うりゃ!』と言ってダイブしてきた。

 

「急に乗るな!重いだろうが!」

 

「なっ!?女の子に重いなんて言葉使っちゃダメだよ!小町的にすごいポイント低いよ!」

 

「いいからどいてくれ....ちゃんと起きるから」

 

全く、妹や彼女にダイブして起こしてもらうのをアニメでよく目にするが、実際に食らってみるととんでもなく痛い。そんなシチュはこっちから願い下げだ。

 

考えてもみろ。例え小町が軽かったとしてもだ。もうすぐ高校生になろうとしている女の子が腹の上にダイブしてきて痛くないわけがない。

実際痛かったし、一気に眠気が覚めたわ。

 

.....目覚まし時計としては、高性能だな。

絶対にそんな目覚まし要らないけど。

 

そんなこんなで、少々不機嫌な小町をなだめながらリビングに向かった。

 

 

 

「そう言えば、何でこんな朝早くに起こしに来たんだ?今日は土曜日で学校もないのに」

 

「お父さんとお母さんが話が有るらしいよ?何か、小町にも関係あることだから二人揃ったら話すって言われた」

 

「そうか」

 

そう返事をして、俺と小町は階段を降りる。

 

それにしても一体なんだ?皆目見当がつかない。

おれたち兄妹に関係することってことは、家に関する何かだろう。

 

まさか.....親父がリストラされた?

 

俺達にバイトでもしろと言うのか!?俺はまだ働きたくないぞ!!むしろ、働かずに俺は専業主夫に.....っとふざけてる場合じゃない。いや、真面目にその道も考えてるんだが、今それは後回しだ。

 

とにかく話を聞いてみないと....

 

もしかしたら取り越し苦労かもしれないしな。

 

 

そして、リビングに入ると親父と母さんが、神妙な面持ちで座っていた。

 

「来たわね。とりあえず座りなさい」

 

「う、うん」

 

いつもと違う親の様子に俺達は困惑する。母さんの言う通りに椅子に座って、俺は机に置いてあった水を飲んだ。

 

「で、話って何なんだ?」

 

「八幡、小町、今から言うことは冗談でも何でもない。落ち着いて聞いてくれ」

 

「....分かった」

 

俺と小町は同時に頷く。

ここまで前置きするとは....余程の事が有ったのか。

俺も働くことを考えないといけなさそうだな。覚悟を決めて、俺は親父がしゃべるのを待つ。

 

すると、親父が1度息をついて言った。

 

 

「実はな....来月から東京に住むことになった」

 

 

 

「「....は?」」

 

 

予想の斜め上をゆく爆弾が投下された。

 

 

 

 

「いや....え?....ど、どういうことだよ!?」

 

思考がフリーズしかけたが、椅子から立ち上がって俺は親父に向かって怒鳴る。

 

「それがな―――

 

 

そして、親父は俺達家族が東京に移り住むことになるまでの経緯を説明し始めた。

 

 

―――――と、言うわけで東京に住むことになった。なにか疑問はあるか?」

 

「いや、ちゃんと理解はできたが....」

 

 

ここで、先程の親父の話を要約しよう。

 

まず第一に、親父はリストラされた訳ではない。むしろ逆である。新しく東京に支店が出来るから、そこのトップ、つまり責任者として行って欲しいとのことだ。

一介の会社員だった親父にとっては大出世である。

なぜそんなことになったかと言うと、親父の仕事ぶりを上の人間がたまたま見たらしく、その有能さと手際の良さを買われて指名されたらしい。

 

そして、第二だ。

親父だけ東京に行くという選択肢もあったのだが、それは嫌らしい。

理由?そんなの簡単だ。

 

要は、親父は小町から離れたくないのである。

 

ついでに言うと、親父の会社が住む場所を斡旋してくれたらしく、もう東京に住むことは決定事項らしい。

 

 

ゆえに、俺達兄妹に拒否権は無かったのだ。

 

 

そこから話は進み、俺は東京にある高校に、小町はそのすぐ近くにある中学校に転校することになった。

 

 

 

 

 

そして、場面は変わって夜の公園。

そこで俺はバスケをしている。

 

この公園は家から近く、バスケットコートが1面あるため、よく俺はこの公園を利用している。

ちなみに、俺はバスケ部に所属しているわけではない。

 

入学式の朝に、車に轢かれかけた犬を庇って、全治半年という大ケガを負ってしまったのだ。医者に『丸一年はバスケはやめた方がいいね。出来なくもないけど、まだ高校で最後の一年って訳ではないでしょ?』と言われたので大人しく従った。

 

しかし、軽いシュートやドリブルは許可されたので、退院してギプスが取れてからは、たまに、このバスケットコートでボールをいじっている。二ヶ月ほど前、安静にしていた甲斐があってか、予定よりも早くバスケを全力でやって良いという許可が出てからは毎日ここに通っている。

 

え?友達と遊んだりしないのかって?

 

.....俺は孤高を貫くボッチ、特定の友人は作らん。

 

すみません。正直に言うと、俺が学校に来たときには既にグループが形成されていて、コミュ障の俺はその輪に入れなかっただけです。はい。

 

まぁ、結果として転校しても俺にデメリットなんて無くなったから良いんだけどね。むしろ歓迎すべき事だ。東京に行けば、本の町の神保町や、聖地秋葉原、その他諸々の場所へのアクセスが非常に楽になるからな。

 

 

「さてと、久しぶりに全力で体動かすか」

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

あれから一時間の間、ドリブルしてダンクしたり、スリーポイントやフック、その他諸々のことをしたんだが...

 

「マジかよ....たった一時間軽く運動しただけで、こんなに疲れるのかよ」

 

俺はコートの横にあるベンチに腰を下ろした。

 

ヤバい.....。全然体が動かねぇ。やっぱり半年以上も運動してないとキツいな。しかもストップシュートが全然入らない。いや、10本打って7本だから中々に確率は良いんだが、試合の時にはディフェンスのプレッシャーも有るから、そう上手くはいかない。

 

「くそ、現役の時の体が欲しい...」

 

あの頃だったら、ディフェンスが居てもほぼ100%入ってたのに...。

タオルを頭に被せてベンチに寝転がっていると、眠気が襲ってきた。

まずいな、こんな汗をかいた体で外で寝たら風邪を引いてしまう。

 

「帰るか....」

 

そう思って荷物をまとめて立ち上がると、何か長身の赤髪の人がコートに入ってきた。

 

え?マジでデカくね?何センチあるんだよこいつ...。

 

呆然としてその男を見ていると、俺の方を見て話しかけてきた。

 

「なぁ、お前が腐り目か?」

 

「....は?」

 

何だこいつ、いきなり人の顔をディスって来やがった。

俺があからさまに怪訝そうな顔をすると、慌ててその男が弁明する。

 

「あぁ、悪い。別に悪口を言ったわけじゃないんだ。ある人に、この公園には腐った目をした凄腕のバスケプレイヤーが居るって聞いてな。で、その人がこの辺りのバスケットやってる人だったら腐り目って言えば大体通じるって言うからよ。もしかして違ったか?」

 

「いや、そう呼ばれてるかは知らんが、多分それ俺の事だわ」

 

毎日このコートには来てるけど、俺以外に腐った目のやつは見たことがない。

てか、俺ってそんな通り名が付けられるほど有名になってたのかよ。

しかも腐り目って....出来ればその名前は止めて欲しかった。

 

俺が内心ナイーブになっていると、目の前の男がバスケットボールを取り出して言った。

 

「そうか、あんたが腐り目か」

 

そう言って、男はニヤッと笑う。

ん?何かめんどくさそうな予感が....。

 

 

 

「俺とバスケで勝負しようぜ」

 

 

 

はぁ、帰ろうとした矢先にこれかよ。




どうでしたかね?面白いと思ってくれたら幸いです。

最後の人物は、まぁわかると思います。あいつです。
やたら飛ぶ馬鹿です。

いやぁ、にしても東京はすごいですよね。何回か行ったことあるんですけど、いつ見ても地元との差に愕然とします。
あと、本編にもでてきた神保町。ここ、マジで本好きなら一度は行ってみた方が良いと思う。品揃えからして、まず違う。絶対に地元の本屋じゃ売ってない。古書の町かと思ってたら、最新のラノベ達もたくさん売っていて、ここは天国か!?と内心で思いましたね。そして、本屋の数が約180....ヤバい。

話が脱線しましたが、また近い内に続きは投稿したいですね。

では、また次の話で。


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第2話 勝負の行方

どうも、アカツキ8です。
いきなりですが、ご報告させて頂きます。

お気に入り90件達成しました!!

あれ、おかしいな?
まだ本編は1話しか投稿してないのに(困惑)
この作品も出来る限り、早めに投稿しようと思います。

登録してくれた方、有難うございます!!

では、続きをどうぞ。


《火神side》

 

 

 

 

「今日の練習試合、何か楽だったな」

 

「仕方ないですよ。この時期は他の学校のほとんどが新チームです。僕たちぐらいだと思いますよ?誰一人として主力が引退していないのは」

 

「....確かにそうだな」

 

 

今日は千葉にある高校と練習試合があった。何故わざわざ千葉にまで試合に来たかと言うと、監督である相田リコの友人がマネージャーをやっていて、頼まれてしまったらしい。

そして、試合が終わってから腹が減ったので、黒子と一緒に近くにあったマジバに食事に来た。因みに、先輩達は今日の試合の内容で監督に怒られている。俺と黒子は前半しか出てないから免れたんだが、監督が『あと一時間は掛かるから、どこかで時間潰してなさい』と言ったのでマジバに来たというわけだ。

 

先輩達.....生きてるかな.....

 

ハンバーガーを食いながら先輩達の身を案じていると、黒子が話しかけてきた。

 

「そう言えば火神君は聞きましたか?この近くの公園に凄腕のバスケプレイヤーが居るらしいですよ」

 

「凄腕のバスケプレイヤー?」

 

俺はハンバーガーを丸飲みしてから尋ねる。

あ、今のは勿体なかったか。今日は交通費が高いから余りたくさんは買ってないんだよな。

 

 

「はい。今日の練習試合の相手がしゃべっているのを聞きました。何でも“腐り目”ってこの辺では呼ばれてるらしいです。しかも、その人は全力でやっていないのに誰も勝てていないとか。あと、シュートが滅茶苦茶らしいです」

 

「盗み聞きは良くないぞ」

 

「するつもりは無かったです」

 

「あぁ....悪い」

 

 

そうか....また気づかれなかったんだな.....。

 

 

そんなことよりも、凄腕のバスケプレイヤーか....。

今日の練習試合の相手は決して弱かったわけではないし、そのチームの人間が凄腕と言ったプレイヤーだ。かなり強いのだろう。しかも全力じゃないときた。

 

.....よし。

 

「黒子、その公園どこか分かるか?」

 

「え?もしかして行くんですか?」

 

「あぁ、今日の試合、俺は途中で交代させられて不完全燃焼だからな。それに気になるじゃねぇか。通り名が付けられるほどのプレイヤーなんて、そうそう居るもんじゃないしな。ちゃんと帰りまでには駅に行くって監督に伝えといてくれ」

 

俺が席をたちながら言うと、少し考え込んでから言った。

 

「そうですか。.....じゃあ僕は監督の所に戻ってます」

 

「おう」

 

返事をして俺は店を出た。すると、誰かからのメールが来た。携帯を取り出して内容を確認する。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

件名:言い忘れてました

 

さっき言った凄腕のバスケプレイヤーなんですが、腐り目と言えば、この周辺のバスケットやってる人は大体通じるらしいですよ。あと、店の人が話してたんですが今日も公園に居たそうです。

 

 

PS.勝負に熱中し過ぎて帰りの時間を忘れない様にして下さい。

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「..........」

 

 

 

黒子って将来スパイとか向いてるんじゃねぇか?

この情報収集能力の高さに俺は思わずそう思った。

 

 

 

 

 

 

その後、少し道に迷ったが、無事にバスケットコートのある公園に辿り着くことが出来た。すると、目の腐った男が荷物を持って歩いているのが目に入る。

 

あいつが腐り目か?.....見た感じ強そうには見えないけどな.....けどなんだ?纏っている雰囲気が何となくあいつらに似ているような....。

 

 

「はっ....まさかな」

 

 

流石にあいつらほど強くはないだろう。もしそうだとしたら、インターハイやウインターカップとかで見かけているはずだ。あそこに居なかったということは、キセキの世代クラスではないと云うことだろう。

 

「ま、強いことに変わりはないだろうけどな」

 

あいつの手に持っているボール、かなり磨耗している。

相当使い込んでいるのだろう。

 

 

そして、俺は目の腐った男に話しかけた。

 

 

「なぁ、お前が腐り目か?」

 

「....は?」

 

 

 

あ、やべ。流石に初対面でこの挨拶はねぇよな。もしかしたら、腐り目は別の人かもしれないし。

 

「あぁ、悪い。別に悪口を言ったわけじゃないんだ。ある人に、この公園には腐った目をした凄腕のバスケプレイヤーが居るって聞いてな。で、その人がこの辺のバスケットやってる人だったら腐り目って言えば大体通じるって言うからよ。もしかして違ったか?」

 

 

俺がそう言うと、目の前の男はより一層目を腐らせながら黙りこむ。

まぁ......腐り目って通り名が嫌なのは分かるけど.....。

 

 

「いや、そう呼ばれてるかは知らんが、多分それ俺の事だわ」

 

それを聞いた俺は、気分が高揚するのを感じた。

 

 

『強いやつと戦える』

 

 

そう考えると、嫌でもテンションが上がってしまう。

 

「そうか。お前が腐り目か」

 

俺は笑みをこぼしながらケースに入れていたバスケットボールを取り出して言った。

 

「俺とバスケで勝負しようぜ」

 

 

 

《火神sideout》

 

 

 

《比企谷side》

 

 

「断る。俺は今から帰るところだ」

 

 

そう言って俺はそのまま帰ろうとする。

が、目の前の男の服に施された刺繍を見て足を止めた。

 

そこには、SEIRINと書いてあった。

 

せいりん、せいりんって......まさか、あの誠凛か!?

 

うちの学校のバスケ部の連中が、『1、2年だけで、ウインターカップ優勝した!!』って騒いでたが......。

 

 

まさか......

 

 

「なぁ、お前、去年のウインターカップで優勝した誠凛高校の選手か?」

 

「おう」

 

ビンゴだ...

 

「もしかしてスタメンか?」

 

「おう」

 

「.....マジで?」

 

「マジだ」

 

 

.....マジかよ。そんなやつが俺に勝負を挑んできてくれるとは.....良い機会だ。全国で優勝したチームのスタメンがどれ程のレベルか確かめてやる。今年度から俺も参戦するしな。

 

 

「よし。せっかく東京から来てくれたんだ。一回と言わずにもっとやろうぜ?」

 

俺は荷物を肩から下ろして言った。

 

 

 

さぁ、今の俺でどこまで付いていけるか....

 

 

 

 

 

 

「はぁ...はぁ...くそっ....やっぱり強ぇな」

 

「はぁ...はぁ...何言ってんだよ。俺のシュートを何本も止めてるくせに。...正直言って予想外だぜ」

 

それはこっちのセリフだわ、この野郎。

 

正直言って、ここまで強いとは思っていなかった。こいつ、間違いなくあいつらと同等の強さだ。

こんなやつがまだ他にも居たとはな.....。

しかも何なんだよ、こいつの異常なジャンプ力は?おまけに回数を重ねるごとに少しずつ高さが増してきやがる。マジでやりづらい。普通だったらブロック出来ないような位置からでも平然と止めてきやがる。十本やって二本しか決めれないとはな.....まぁ、体が昔みたいに動いてくれないってのもあるけど。

 

 

.....仕方ない。あのシュートを使うか。こいつのジャンプ力だと止められるかもしれんが、流石に初見で止められることはないだろう。

 

俺は一度息を整えて言った。

 

「そう言えば、お前の名前って何だっけ?俺は比企谷八幡だ」

 

「火神大我だ」

 

「そうか....おい火神。今から俺が打つシュートを止めれたらマックスコーヒーを奢ってやるよ」

 

「マックスコーヒーが何かは知らねぇけど、来るならこい!!絶対に止めてやる!!」

 

 

火神は俺を止めるために腰を低くして俺を待ち構える。

そして、俺はドリブルして加速すると同時に言った。

 

「マックスコーヒーはな.....千葉のソウルドリンクだ!!」

 

「知らねぇよ!!」

 

火神は叫びながらドリブルする俺にピッタリと付いてくる。

さぁ、やるか。

 

俺はジャンプする直前に、強い力で一度ドリブルをする。そして、ボールの勢いを殺さずにスリーポイントラインの手前で全力で飛ぶ。

 

「ここで飛ぶのかよ!?」

 

火神も俺が飛んだ直後にジャンプして俺のシュートを止めようとする。

 

すると、俺のシュートの姿勢を見て火神が呟く。

 

「は?お前まさか.....」

 

「そのまさかだよ」

 

そう言うと同時に俺はシュートを放つ。

 

 

 

ザシュンッ

 

 

 

俺の放ったボールは少々高い軌道で、そのままゴールに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかあそこでフックを打ってくるとは思わなかったぜ」

 

「そんな事、予知されたらたまったもんじゃないわ」

 

「予知しても止めれるか怪しいだろ....」

 

「.....そこは否定しない」

 

 

さっき俺が打ったのはフックシュートだ。自分の体を盾にして、さらに相手から遠い方の手で打つシュートだ。このシュートの性質上、相手が自分よりもでかかったとしても、ブロックされることは少ない。というか、手が届かないからブロック出来ないと言うほうが正しい。因みに、俺は更にブロックされる確率を減らすために強くドリブルをついて、その勢いをシュートに乗せて放つために、普通のフックよりもリリースが早いうえに軌道が高くなっている。

 

フックシュートを打つことは特に珍しいことではない。

 

3ポイントラインより後ろで打たなければ。

 

このシュートを狙って打つ人はそう居ないだろう。何かの漫画で見たことある人も居るかもしれないけどな。

 

 

「なぁ、比企谷。さっきのってまぐれか?」

 

「いや、ほぼ100%入るぞ?約一年の間、打ち続けたからな」

 

「.....マジかよ」

 

俺の言葉を聞いた火神は信じられないと言った顔をする。

ま、それが普通の反応だよな。普通のスリーでも100%入るやつは殆どいない。.....一人だけ心当たりがあるが。

 

 

「で、どうする?まだ続けるか?」

 

「当たり前だ!次は絶対に止める!」

 

「そう来なくちゃな」

 

 

そして、俺達は再び勝負を始めた。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「これが大丈夫に見えるのかよ.....」

 

 

あれから、もう何回やったかも分からないほど火神と勝負を繰り返した。途中から俺の体が限界に近づいていくと、

 

火神に決められる。

俺がフックを決める。

火神に決められる。

俺がフックを決める。

 

この流れを延々と繰り返した。そして、ついに俺の体力が尽きてしまい、ベンチで絶賛ぶっ倒れ中である。

 

 

「あぁー.....流石に無茶し過ぎた」

 

 

正直に言って、途中で足を吊らなかっただけラッキーである。

 

 

「まぁ、暫く休もうぜ。俺もちょっと疲れたし」

 

そう言って火神は俺の横のベンチに腰を下ろす。火神のそれほど疲れてない様子を見て俺は思わず呟いた。

 

 

「良いよなぁ、現役は。体力が有ってよ....」

 

「え?比企谷ってもう引退したのか?って事は3年?」

 

「違ぇよ。俺は今年から2年生だ。怪我で丸々一年休んでたんだよ。まぁ、シュートとかドリブルの練習はしてたけどな。パスも妹相手にしてたし」

 

「なるほど。だから体力とかはないくせに、あんなにもシュートとかドリブルが出来てたのか」

 

「そういうこと」

 

 

 

 

 

その後、暫くの間火神と話していると、何かすごい人数が俺達のいる場所にやって来た。

 

 

え?何か全員同じ服着てる......って火神と同じ服じゃねぇか。てことは、この人達は誠凛の人か。

 

どこぞのヤンキーとかじゃないと分かって安心していると、集団の先頭に居た女子が火神の姿を確認すると駆け出した。

 

もしかして、火神の彼女とかか?

 

 

「リア充が....爆発しやがれ」

 

「は?何急に....って監督?....あっ、しまった!!」

 

すると、火神は慌ててベンチから立ち上がって女子と反対方向に駆け出そうとする。

 

しかし、走り出そうとした瞬間に、『こんのバカガミがぁぁーーー!!』と叫びながら女子が火神の背中にドロップキックを.....ってドロップキック!?

 

なんて乱暴な!!

 

 

蹴られた火神は『ぐあっ!!』って叫んで、俺の目の前まで吹っ飛んできた。

 

 

えーっと.....とりあえず。

 

 

「大丈夫か?」

 

「これが大丈夫に見えるのかよ.....」

 

 

奇しくも先程と同じやり取りであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり、これぐらいの長さの方がちょうど良いんですかね?

......3Pのフックって珍しいよね?

書いてて不安になってきた....。少なくとも作者は見たことないんですけど。というか、絶対に出来る気がしない(笑)
火神の口調とか、試合の描写とかが上手く書けてるかが不安でしょうがない.....。

次から、緑間と高尾が出てきます。

読んで下さってありがとうございました!!
では、また次の話で。


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第3話 やはり黒子は影が薄い

どうも、アカツキ8です。
ちょっと間が空きましたが、前回の続きです。
実は『これでもうすぐ終わりだ!』って所で間違って消してしまって、しばらく意気消沈してました。
なので、ちょっと予定が狂ってしまい、高尾は今回は出ないです。

では、続きです。どうぞ。


蹴り飛ばされた火神を起こすべく、ベンチから立ち上がって手を差し伸べようとすると、先程火神を蹴り飛ばした女子が火神の首を締めあげはじめた。

 

「ちょっ!!監督、ギブギブ!!比企谷!!そこで見てないで助けてくれ!!」

 

「そんな事言われてもな.....」

 

 

見知らぬ俺が声をかけた所で止めるとは思えないんだが....。

 

どうしようかと悩んでいると、火神の首を締め上げながら、誠凛の監督らしい女子が話しかけてきた。

 

 

「ねぇ、あんたが腐り目って人?」

 

「え?はぁ....まぁ、そうですけど」

 

 

俺は火神の方をチラチラと見ながら質問に答えた。

 

せめて解放してあげろよ.....無言でバンバン地面を叩いてるじゃねぇか.....。

 

すると、俺の体をじろじろと見ながら女子がぶつぶつと呟く。

 

 

「なるほどねぇ。まさか、まだこんな化物がいるなんて.....完全にノーマークだったわ。でもどういうこと?こんな選手が千葉に居るなんて聞いたことないわよ....。大会でも見かけなかったし、何故かは分からないけど、足回りの筋肉が腕と比べて少ないわね。もしかして怪我?...だとしたら、去年の大会で見かけなかったのにも納得がいくけど....」

 

「マジかよこの人.....」

 

俺は思わず感嘆の息を漏らす。

 

少し体を見ただけで、そこまで分かっちゃうのかよ。流石に全国で優勝したチームの監督なだけはある。ある意味この人も化物だな。

 

俺が感心していると、誠凛の監督さんが急に何かを思いついたかの様に俺に言ってきた。

 

 

「ねぇ、ちょっとシャツをぬ「監督、それは駄目だ」.....何よ日向君、邪魔しないで」

 

 

 

急に眼鏡の男が話に乱入してきたな。日向って言うのか。一応覚えておこう。

 

 

「ダァホ。こんな寒い夜に、外でシャツ何て脱がしたら風邪ひくわ」

 

「そうだぜ監督。流石に外でシャツを脱が.....ん?シャツ(・・・)をクシャッ(・・・)と丸める...キタコレ!!」

 

「伊月黙れ」

 

日向という人が一喝するが、怒られた人は気にもせずに手帳に何かを一心不乱に書き記している。

 

な、何なんだこの人達は!?

誠凛の監督がシャツを脱がそうとしていたことにも驚いたが、伊月っていう人が寒いダジャレを恥ずかしげもなく披露した事にも驚いたわ!!

 

......逃げるか。こんな変人達とは関わりたくない。

 

俺がステルスヒッキー(ただの忍び足)を発動して、さりげなくこの場から去ろうとすると、近くから声が聞こえてきた。

 

「比企谷君」

 

「誰だ?今名前呼んだの?」

 

誠凛の人は火神以外で俺の名前を知っている人は居ないと思うんだが....。

 

俺は声の聞こえてきた方向に顔を向ける。しかし、そこには誰も居らず、ただコートを照らすための街灯が有るだけだった。

 

「気のせいか.....」

 

『やれやれ....』と俺はこめかみに手を当てながら、頭を横に振る。

どうやら、体だけではなく頭まで疲れてしまっているらしい。まさか幻聴まで聞こえるとはな....。

帰りにマックスコーヒーでも買ってくか。糖分補給には丁度良い。

 

再びこの場から去るために、ステルスヒッキー(ただの忍び足)を俺は発動する。

 

すると、また声が聞こえてきた。見渡してみるも、近くには誰も居ない。

 

思わず俺は疑問を口にする。

 

「さっきから一体誰が......」

 

俺がキョロキョロと回りを見渡していると、さっきまで誰も居なかったはずの場所に男が出現して話しかけてきた。

 

 

「僕ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおぉぉぉ!?」

 

 

 

 

嘘だろ!?どこからでてきたんだよ!?さっきまでそこには誰も.....

 

思わず俺は後ろに後ずさる。

 

ん?このやり取りって、昔何度もやったような....。

 

一年前の事を思い出して、目の前の男の風貌に合致する人間を探す。水色の髪の毛に、小柄な体躯.....。

いや、体の特徴なんかよりも、この影の薄さの人間で、俺の名前を知っている奴なんて一人しか居ない。

 

 

「まさか......黒子か?」

 

「はい。お久しぶりです、比企谷君。1年ぶりですね」

 

 

目の前に居たのは、かつての同級生であり、元チームメイトの男。

 

 

黒子テツヤだった。

 

 

 

 

「黒子.....誠凛に入ってたのか....」

 

「はい。....比企谷君、少し二人で話しませんか?少し聞きたいことが有ります。すみませんが監督、皆さんを連れて先に帰ってくれませんか?今日は僕一人で帰ります」

 

「え、うん。わかったわ」

 

誠凛の監督の返事を聞くと、俺と黒子は、ここから離れるべく歩きだした。

すると、誠凛の監督が慌てて黒子に声をかけた。

 

 

「ちょ....ちょっと待って黒子君!!もしかして、その人と知り合いなの?」

 

「はい。彼は途中で転校しましたが、僕と同じ元帝光バスケ部、僕の元チームメイトです。では比企谷君、行きましょうか」

 

「あぁ」

 

 

俺と黒子が公園から出ると、遅ればせながら

 

『はぁぁぁぁぁ!?』

 

と、恐らくあの公園に居た人全員の叫び声が聞こえてきた。

 

反応するまでに随分と時間があったな。そんなに驚くことか?.....いや、そりゃ驚くか....。

 

そして、俺と黒子は夜の街へと消えた。(変な意味ではない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、黒子が『サイゼリアで話しませんか?』と言ってきたが、俺が『俺の家で話さないか?親は今日出掛けて帰ってこねぇし、妹も友達の家に遊びに行ってるからな』と言った。

 

本来ならサイゼリア一択なのだ。黒子も俺がサイゼリア好きなのを覚えてて提案したんだろうが、ここからだと10分も歩くことになる。俺の家はここから歩いて3分ほどだから、俺は自宅を提案した。今なら部屋も引っ越し準備の影響で綺麗に片付いてるしな。

 

 

そして、俺の部屋に到着した。

 

「黒子、飲み物何にする?ちなみに俺のオススメはマックスコーヒーだ」

 

「マックスコーヒー....ですか。じゃあ、それでお願いします」

 

「分かった」

 

俺はマックスコーヒーをマグカップに注いで机に置く。そして、俺は黒子の向かい側になるように座った。

 

「で、聞きたいことって何なんだ?まぁ、大体の察しはつくが....」

 

黒子がマックスコーヒーを一口飲んで目を見開く。が、何も言うことなく俺に尋ねてきた。

 

 

「単刀直入に聞きます。どうして、去年のインターハイ、更にウインターカップに出場しなかったんですか?君の実力なら県予選ぐらい余裕で突破出来ると思うんですけど.....。赤司君も不思議に思っていましたよ?『何故、比企谷のような強者がこの場に居ない?』と」

 

 

やっぱりそれか....。

俺は思わずため息をつく。

もう何度も色んな人に説明したんだけどな....。

ていうか赤司!お前が強者って言うと嫌みにしか聞こえねぇよ!

 

 

 

「実はな、高校の入学式の時に犬を庇って交通事故に遭ったんだよ。そのときに負った怪我で、一年の間医者にバスケ禁止されちまったんだよ。もう全力でやってるけどな」

 

「....そうだったんですか。やっぱり比企谷君は優しいですね。犬を庇って自らを犠牲にするなんて」

 

「俺は優しくなんかねぇよ、世の中が厳し過ぎるんだ」

 

「その台詞も懐かしいですね」

 

 

 

そう言って黒子は笑う。

しかし、本当に懐かしいな。こうやって黒子と話すのは。あの頃、俺と黒子以外は全員どこか常識外れな一面が有って、必然的に俺達二人は意気投合した。

よく他のキセキの世代の連中の愚痴を言い合ったものだ。

 

青峰のグラビア雑誌の部室持ち込みを二人で阻止したり、紫原のお菓子の過剰購入を阻止したり、緑間のラッキーアイテムの買い出しに付き合わされたり、赤司の素の常識外れな発言のフォローをしたり、黄瀬のファンへの対応をしたりしたっけ?

 

あの時は黄瀬に『比企谷っちヘルプ!!ちょっとこの人数は俺だけじゃ捌ききれないッス!!』とか言って俺に伊達メガネを渡してきたんだよな。その後はまるで地獄.....あれ?思い出しただけで頭が痛く....。

 

「比企谷君、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、悪い。ちょっと昔の事を思い出してた。それよりも悪かったな。あんな状態のチームを放っぽって転校しちまって」

 

「家の事情じゃ仕方ないですよ。それに、彼らとはもう和解しましたから」

 

そう言って黒子は一枚の写真を取り出した。

そこには、黒子を中心に桃井を含めた他のキセキの世代が写っていた。全員が楽しげな顔をしていることから、和解したというのは本当の事だと分かる。

 

「この写真を撮るときに、比企谷君も呼ぼうという話になったんですが、君とは高校進学と同時に音信不通でしたから.....。どうして誰とも連絡がつかなかったんですか?」

 

「あぁ、事故の時に携帯が木っ端微塵になってな。バックアップとか一切取ってなかったからデータを復元できなかったんだよ」

 

「なるほど.....だから誰も君とは連絡がつかなかったんですね。比企谷君、連絡先交換しませんか?次はいつ会えるか分からないですし」

 

「別にいいぞ。ほら」

 

そう言って俺は黒子に携帯を投げ渡す。

すると、黒子が苦笑いしながら言った。

 

「相変わらず躊躇いなく人に携帯を渡すんですね。連絡先の少なさも相変わらずです」

 

「うるせぇよ....」

 

 

 

 

あれから、俺と黒子は昔話に花を咲かせた。途中で小町が帰って来て、黒子がいることに驚いたが、その後は三人で話していた。ちなみに小町が家に帰って来たとき、やっぱり黒子は気づかれなかった。

 

ふと時計を見ると、もうすぐ夜の9時を回りかけていた。

どうやら、一時間も話していたらしい。これ以上遅くなると、黒子も家族に心配をかけるから、と帰ることになった。

 

そして、今は小町と一緒に玄関で黒子を見送るところだ。

 

 

 

「それでは、比企谷君また今度会えたら会いましょう。小町さんもまた今度」

 

「うん。テツヤさんもまた今度.....って、もしかして兄から何も聞いてないんですか?」

 

「....?何のことですか?」

 

「お兄ちゃん?」

 

「すまん、すっかり忘れてた」

 

俺がそう言うと、小町はまるでゴミでも見るかののような視線を向けた。

 

「はぁ....これだからゴミィちゃんは....」

 

うん、ゴミって言っちゃったねこの子。もうちょっとオブラートに包んでくれると八幡的にはポイント高いんだけどな。

........俺のポイントなんて何に使うんだよ。

 

俺が密かに心に傷を負っていると、小町が何の事を話しているか分からずに首を傾げている黒子に説明し始めた。

 

「テツヤさん、実は私達、来月から東京に引っ越すんですよ。だから、会おうと思えば、またすぐに会えると思います」

 

「え?そうなんですか?」

 

そう言って黒子は俺の方に顔を向ける。

俺は頷いて、小町の言っていることは本当だと示す。

 

「そうですか.....それじゃあ、またすぐに会えますね。比企谷君は、どの高校に通うんですか?もしかして誠凛ですか?」

 

「残念ながら、俺が通うのは誠凛高校じゃねぇよ。俺が通うのは秀徳高校だ」

 

「え?」

 

「聞こえなかったのか?秀徳高校だよ」

 

「......え?」

 

「だから、秀徳高校だって」

 

「.........」

 

「おい、どうした?鳩が豆鉄砲食らったような顔してるが.....」

 

 

一体どうしたんだ急に?石像みたいに動かなくなっちまったが....。

小町に助けを求めるが、小町も首を振って逆に俺に助けを求めてきた。

とりあえず、俺は黒子に声をかけて返事を求めようとした。

 

 

 

「おい、黒子いい加減に「これは緊急事態です。すぐに監督に知らせないと......。比企谷君、小町さん、これで僕は失礼します」ちょっ!?黒子!?」

 

「ちょっとテツヤさん!?急にどうしたの!?」

 

俺と小町が慌てて呼び止めるが、黒子はダッシュで駅の方面に向かってしまった。

 

.....あいつ、駅まで体力持つのか?

 

 

俺が呆然として黒子が去った玄関で立ち尽くしていると、小町が俺に聞いてきた。

 

「テツヤさん行っちゃったよ?どうすんの、お兄ちゃん。追いかける?」

 

「追いかけるって言ってもな....」

 

俺は頭をポリポリと掻きながら思案を巡らせる。

 

追いかけたら直ぐに追い付くだろうが、あいつの影の薄さじゃ見つけられるか分かんねぇしな....。

むしろ、そのまま追い抜かして先に駅に着いた挙げ句に、知らぬ間に黒子が電車に乗り込んでるまである。

 

.....仕方ない。

 

 

 

 

 

「諦めるか」

 

 

 

 

 

「ちょっとお兄ちゃん!?それで良いの!?」

 

俺があっけらかんとして言うと、小町が叫ぶ。

 

「仕方ないだろ。駅みたいに人がたくさんいる場所から黒子を見つけるとか無理ゲーだろ。それに、今から追いかけても絶対気づかずにそのまま駅に行っちゃうだろうしな」

 

「それは.....そうだけど....」

 

俺と小町は、その後もしばらくその場で立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、秀徳高校のサイトは.....と、あったよお兄ちゃん。ほら」

 

「ん、どれどれ.....」

 

俺は小町が開いた秀徳高校の公式サイトを覗きこむ。

 

結局、俺と小町は黒子を追いかけることを諦め、黒子がフリーズした原因である秀徳高校について調べることにした。

 

パソコンの画面を眺めながら小町は首を傾げる。

 

「んー.....小町は見た感じ普通の高校だと思うけどなぁ。.....ちょっと校舎がボロいけど」

 

「それなりの伝統校らしいからな。.....しかし、黒子がああなった原因が分からん....」

 

すると、急に小町が画面の部活動の項目を指差して言った。

 

「あ、すごいよお兄ちゃん!!ここの男子バスケ部、ウインターカップで第三位だよ!!」

 

「え、マジで?うおっ!?本当じゃねぇか.....。小町、バスケ部のサイト開けるか?」

 

「うん」

 

 

小町がバスケ部のサイトを開く。

そして.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達、兄妹の絶叫が比企谷家に響き渡った。

 

 

 

 

画面に映っているのは、秀徳高校のユニフォームを着た選手がシュートを打っている写真。

 

その選手は、かつての俺の同級生であり、それなりに仲の良かった人間。

そして、ラッキーアイテムと称して様々なアイテムを購入している元帝光中の同級生の中でも随一の変わり者。

 

 

キセキの世代の1人

 

緑間真太郎だった。

 

 

 

 

 

 

 




緑間が出たの写真だけじゃねぇか!!と思った人、

一応出たんで見逃して下さい(懇願)

次回は間違いなく高尾も出てきます。そうしないと話が進まないですし。

とりあえず、読んでくださってありがとうございました!!

そして、お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます!!

可能な限り、早めに投稿します。また2、3日は空くかも....。

では、また次の話で。


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第4話 懐かしの...

どうも、アカツキ8です。
また間が空いてしまいましたが、前回の続きです。

今回は、ごちゃごちゃして読みづらい人もいるかもです。あと、八幡が八幡らしく無いかもです。というか、クロス物でキャラ保つのって難しい...。
作者の技術力不足で申し訳ない.....。

ではどうぞ。


「はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

俺と小町が絶叫した瞬間、カマクラ(家で飼っている白猫)が飛び上がる。

しかし、緑間の写真を見た俺達はそんな事気にもならないほど動揺していた。

 

 

「ちょっとお兄ちゃん!?これどういうこと!?どうして真太郎さんが秀徳高校に居るの!?」

 

「いや、お兄ちゃんも分からんわ!!.....ちょっと現実逃避してくる」

 

「いやいや、何言ってんの!?とにかくお兄ちゃんはテツヤさんに電話して!!小町はもうちょっとネットで調べてみるから!!」

 

「分かったよ...」

 

そして、俺は黒子に電話をかける。しかし、誰かと通話中なのか、まだ外を走っているのか分からないが何度かけても留守電になってしまう。

 

「駄目だな。何度かけても留守電に繋がる」

 

「お兄ちゃん.....やっぱり間違いないよ....絶対これ真太郎さんだよ」

 

小町のパソコンの画面を見ると、秀徳高校の選手名簿が表示されていた。

そして、その中には......

 

 

“No6 緑間真太郎”

 

 

 

 

「嘘だろ.....またあの変人と共に学校生活を送らなきゃいけないのか?」

 

俺は膝をガックシと折って、その場にくずおれた。

すると、小町が俺の肩をポンポンと叩きながら一言。

 

「まぁ、お兄ちゃんも変人だから大丈夫じゃない?」

 

「小町.....それフォローになってない....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と小町が夜に絶叫して近所のおばさんに怒られた日から、もう一ヶ月が過ぎた。今日は東京に俺達の荷物が送られて来る日だ。

無事に転校の手続きを済ませ、引っ越し前日に開かれたクラスのお別れ会で『転校先でも頑張れ(よ)!!』と、ほぼ同じ文がクラスの人数分書かれた色紙を受け取り、家に帰って速攻でゴミ箱に捨てて小町に怒られて、数秒後に泣いて謝られるなんて事も有ったが、俺は無事に引っ越し先の部屋までたどり着くことが出来た。

 

 

そして、今は運ばれてきた荷物をダンボールを開いて取り出している真っ最中である。

 

 

「いやー、まさか東京に来てお兄ちゃんと二人暮らしする事になるとは思わなかったなー」

 

「そうだな」

 

俺はダンボールから自分のラノベやら小説やらを取り出して本棚に並べながら相槌を打つ。

そう。この一ヶ月の間で、俺と小町は二人暮らしをする事が決定したのだ。

 

理由は、俺の家で飼っていた猫のカマクラだ。

 

実は、俺達家族が引っ越す予定だったマンションがペット禁止だったのだ。それを知った俺の親はカマクラを親戚に預けようとしたんだが、小町が『カー君が来ないなら小町は千葉に残る!!』とか言いだしてしまい、小町と離れるのが嫌な親父が、急遽ペット可のマンションの部屋を契約したのだ。

そして、いくらなんでもまだ中学生の小町だけで一人暮らしさせるわけにもいかないので、俺と小町が一緒に住むことになった。

 

親父が『俺が小町と一緒に住むぞ!!』と言って『それは嫌だ』と小町に真顔で言われて泣き顔になってたのは傑作だったな。

そのあと親父に『八幡、ここの家賃の半分はお前がバイトして出せ』と言われて今度は俺が泣き顔になったが。

 

まぁ、小町との二人暮らしの為なら頑張れそうだ。

 

 

 

しかし、俺はまだ専業主夫の道は諦めない!!

 

 

 

 

「いきなり何言ってんの、お兄ちゃん.....」

 

「.....何でもない。ほら、今日中に荷物の片付け終わらせるぞ」

 

ぐっ、と握った拳を解いて俺は作業に戻る。

どうやら俺の魂の叫びが口に出ていたらしい。次から気を付けよう。うっかり小町以外に聞かれでもしたら引かれる所の騒ぎではないからな。

 

「それよりもお兄ちゃん。部活はどうするの?」

 

「バスケに決まってるだろ。緑間に会うのは気が進まんが....」

 

小説を本棚に押し込みながら、俺は『はぁ....』と息をつく。

 

別にあいつと話すのは嫌いじゃない、むしろ結構気が合ったりもする。あいつもキセキの世代の中じゃ数少ない常識人だからな。

 

しかしだ。あのラッキーアイテムだけはどうにかしてほしい。稀に手にはめている人形とか不気味でしょうがないんだよ。

 

あれだよ?中学入学時点で身長170cm越えの、メガネでクールでイケメンな奴がカエルの人形を手で動かしながら挨拶してくるんだよ?

初めて会った時にそれをやられた時は思わず口をポカーンと開けてフリーズしてしまった。

そういや向こうも俺の目を見て驚いてたな。

 

ネットで調べたが、今じゃ身長が197cmらしい。更に不気味さが増していることだろう。いやまぁ、毎日あの人形を手にはめているわけじゃないから良いんだけどさ.....。

他のラッキーアイテム達も大概だけどな。

 

 

 

「はぁ.....」

 

「大丈夫?さっきから溜め息ついてばっかだよ?」

 

「大丈夫だ。それよりも、明日バッシュ買いに行くけど小町も来るか?」

 

「あれ?前まで履いてたやつは?」

 

「サイズが合わなくなったからな。まぁ、一年も経てば履けなくなるだろ」

 

「そっか。小町も一緒に行くよ。新しく出たモデルも見てみたいし、都合も良いしね」

 

どうやら、小町もバッシュを買うつもりだったらしい。顔に笑みが浮かんでいるから、相当楽しみなのだろう。

 

「よし。小町と明日出掛けるために片付け頑張りますかね」

 

「そうじゃなくても頑張ってよ....」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌朝。

慣れないベットの上で寝転がっていると、愛しの小町からのモーニングコールが.....

 

「ダーーイブ!!」

 

「甘いな小町」

 

俺が寝返りを打って小町をかわすと、身軽な小町はベットの上で一度跳ねて壁に頭をぶつけた。

あたった瞬間に凄い音がしたが大丈夫だろうか?

 

「痛い.....」

 

「自業自得だ。毎回飛び込んでくるな」

 

「うぅー....」

 

呻きながら小町は泣きべそでこちらをじーっと見つめてくる。

 

 

くっ....そんな目で上目遣いをしても.....

 

 

 

~数秒後~

 

 

「ふふーん♪」

 

「やれやれ....この妹は....」

 

 

はい。負けました。

俺が頭を撫でてやると、小町はまるで猫のように目を細める。

やはり、俺は小町には極端に甘いようだ。小町が可愛すぎるのがいけないんだけど。

 

「悪かったな。避けたりして」

 

「本当だよ!!次からはちゃんと受け止めてよ!」

 

「分かったよ。ちゃんと受け止めてやる」

 

その後数分間の間、俺は小町の頭を撫で続けた。ちなみに、俺は避けた罰として小町に何か奢るはめになってしまった。

 

 

 

.....これ、計算してやってるわけじゃないよな?

 

 

 

小町が満足してから、俺達は朝御飯を食べてバッシュを売っている店に向かった。来る途中、見慣れない高い建物や店に気をとられて、予定よりも一時間遅れで店についた。

 

 

 

「へぇー、結構色んな種類があるね。流石東京」

 

「だな。まぁ、ちゃんとした店なら何処でもそうだが....」

 

俺が棚に置いてあるバッシュをとると小町もこちらを見る。

 

「....お兄ちゃん、またそのモデルなの?」

 

「別にいいだろ?この「やっぱりそのモデルを買うんですね」黒子!?いつの間に....」

 

いつの間にか真横に居た黒子に俺は思わずバッシュを取りこぼしそうになる。

すると、一瞬遅れて小町が黒子の存在に気づく。

 

「テツヤさん!?いつの間に....」

 

「流石兄妹ですね。全く同じリアクションです」

 

 

 

『この状況じゃ、そりゃそうなる(よ)』

 

 

 

 

俺と小町が同時に言うと、俺達の間に静寂が訪れる。

しかし、黒子がその静寂を破った。

 

 

「.....つっこんだ方が良いですか?」

 

「いや、いい。黒子もバッシュ買いに来たのか?」

 

「いえ、見に来ただけです。ちなみに火神君も一緒ですよ」

 

「.....どこにもいないんだが?」

 

「あそこですよ」

 

黒子はそう言って店の出口の方向を指さす。

そこには、火神と色黒の男が言い争い、その後ろを巨...スタイルの良い女の人が付いてくるのが見える。

 

何か、火神以外の二人も凄い見覚えがあるんですけど.....。

 

「なぁ黒子、火神以外の二人って.....」

 

「はい、青峰君と桃井さんです」

 

「やっぱりか....」

 

その瞬間、俺は凄いその場に座り込みたい衝動に刈られた。

 

いや、青峰のやつ柄悪くなりすぎだろ.....。昔のピュア峰は何処に行った。俺が最後に会った時はもうちょいマシだったぞ。あっ、あんまり変わってないわ。

桃井は具体的に何処とは言わんが、また一段と大きくなって....。

 

「けしからん」

 

「お兄ちゃん....どこ見て言ってるの?」

 

「やめろ小町、俺をそんな変質者を見る目で見るな。俺は悪くない。乳トン先生が悪い」

 

しかし、自然と桃井の胸に目がいってしまう。

これが万乳引力か.....。

 

「何言ってんの?ニュートン先生?重力?......まぁいいや。ちなみに真太郎さんと涼太さんも来るよ」

 

「え....」

 

俺が固まっていると、火神と青峰が俺の前まできた。

 

「よぉ比企谷。久しぶりだな」

 

「...久しぶりだな青峰。出来れば俺は会いたくなかったよ....」

 

俺は青峰の方を見て、げんなりとした。

再開した喜びよりも面倒臭さが上回る。

いや、だってこいつバスケットボール持ってるんだもん。しかも、凄い動きやすそうな格好してるし。

 

次に、こいつが何を言うかなんて目に見えてる。

 

 

 

「比企谷、久しぶりに1on1しようぜ」

 

「断る。何で休日にまでお前とバスケしなきゃならないんだ。せっかくの小町とのショッピングを邪魔するんじゃねぇよ。それに、この靴でバスケなんて出来るか」

 

俺は自分の靴を指さして言った。

今、俺が履いているのは千葉に住んでいた時から愛用しているスニーカーだ。

長い間使っていたせいで裏地はすり減ってしまい、これでバスケなんてしたら、滑ってプレイどころの話ではなくなってしまう。

 

「ちっ。んだよ、つまんねぇな。じゃあ火神でいいわ」

 

「じゃあって何だよ!俺はついでか!!」

 

「何当たり前の事聞いてんだ?その通りじゃねぇか」

 

「っ!?....上等だ、ぶったおす!!」

 

「ゾーンに入ってないお前なんて相手じゃねぇよ」

 

「何だと!?」

 

「試してみるか?もし俺が負けたら、今日一日お前の言うこと何でも聞いてやるよ。ま、あり得ねぇけどな」

 

「こいつ、絶対倒す!!」

 

「火神君、青峰君。ちゃんと戻って来てくださいよ」

 

そして、火神と青峰は近くのストリートに1on1をしに走って行った。

それを眺めて一息つくと、次は桃井が話しかけてきた。

 

「比企りん久しぶり~。元気にしてた?」

 

「あぁ元気だよ。超元気。久しぶりだな桃井。で、買うバッシュも決めたし俺もう帰りたいんだけど....」

 

俺が凄く帰りたい雰囲気を全面に押し出して言うと、小町が俺の背中を叩く。

何でそんなにバンバン叩くの?一回で良くね?

 

 

「何言ってんのお兄ちゃん!これからが今日のメインディッシュだよ!」

 

「メインディッシュ?何か食うの?」

 

「実はですね....今日は小町達の家で、再び東京に舞い戻ったお兄ちゃんの歓迎会なのです!!」

 

「小町ちゃん?スルーした挙げ句に、とんでもない爆弾を落とすのは止めようね?お兄ちゃん心労で死んじゃうよ?」

 

「ちなみに、真太郎さんだけにはテツヤさんを通じて転校することを伝えてあります!!小町的にポイント高い!!」

 

「その気遣いは有り難いんだが、連続でスルーするのはやめてくれ。普通に傷つくから」

 

俺が小町の方を見てそう言うと、急に周りに黄色い歓声が上がった。

 

あぁ....これ絶対あいつだよ....。

 

そして、少し遠くに女子を侍らせながら、その男はやって来た。

 

「久しぶりッスね、比企谷っち。相変わら「帰れ」何でッスか!?というか一年ぶりに会ったのに一言目がそれ!?」

 

「黙れ駄犬。大人しく野に帰れ」

 

「相変わらず辛辣ッスね、比企谷っちは。あれ?緑間っちはまだ来てないんすか?」

 

「ミドりんは高尾さんともう一人マネージャーを連れてくるから途中で合流するって」

 

「じゃあ....って火神っちと青峰っちも居ないじゃないッスか」

 

「あの二人ならストリートに1on1しに行ったぞ」

 

 

俺がそう言うと黄瀬は肩を落として呆れかえる。

まぁ、さっきのやり取りを見てた俺達はもっと呆れたが。

火神とか簡単に挑発に乗ってたし。初対面の時も思ったが、あいつも筋金入りの馬鹿の様だ。黄瀬と青峰も馬鹿だけど。

 

 

 

「何やってんすか....今日、比企谷っちの歓迎会っすよね...」

 

「とりあえず、大ちゃん達を迎えに行かない?」

 

「そっすね.....いやー、久しぶりの小町ちゃんの手料理楽しみッス!」

 

「待て黄瀬。小町の手料理だと?お前に食わせるわけ無いだろうが」

 

「酷っ!?俺飯抜きッスか!?そのシスコンっぷりも久しぶりに見たっすけど、やっぱり控えた方が良いっすよ!!」

 

「まぁまぁ涼太さん。あんまり長話してると時間なくなっちゃいますから。お兄ちゃんもほどほどにしてよ。大事にされてるのは嬉しいけど、少しキモいから」

 

「ぐはっ...」

 

俺がショックを受けていると、小町は黄瀬と桃井を連れて店の外に出てしまった。

仕方なく俺は一人でレジに向かってバッシュと、ついでに新しいバスケットボールを買って店を出て小町達を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「あれ?.......置いていかれました.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒がしい......」

 

「いやぁ....これは流石に小町も予想外かなぁ...」

 

 

俺と小町は横に並んで同時に溜め息をついた。東京に来てから俺の溜め息率が以上に高い気がするんだが、気のせいだろうか?

否、絶対に気のせいではない。

原因は、目の前で騒ぎまくって周りの注目を集めてるこいつらのせいだ。

 

緑間と合流してからは余計に酷くなった。

何でこいつは訳の分からないアイテムをたくさん持ってるんだよ。

リアカーを高尾とかいうやつに漕がせながらやって来た時は目が点になったわ。

何か『顔合わせは早い方が良いのだよ』とか言って無理やり連れてきたらしいが....ちなみに、マネージャーは午後から合流するらしい。

 

 

 

「おい黄瀬。次お前がこれ漕げ。火神は後ろから押す係な」

 

青峰は、緑間が高尾に漕がせてたリアカーに乗りながら、黄瀬と火神に命令する。

すると、黄瀬と火神がそれに反駁するかのように声をあげた。

 

「何言ってるんすか!?青峰っち一回も漕いでないッスよね!?」

 

「黄瀬!!俺だって好きでこいつの言うこときいてるんじゃねぇんだよ!!お前も少しは手伝え!!」

 

「はぁ!?それは火神っちが1on1で青峰っちに負けたからじゃないッスか!!勝ち目ないのにそんな賭けするからそんな事になるんすよ!!」

 

「俺に勝ち目がないだと!?上等だ黄瀬!!次はお前と自由を賭けて勝負してやる!!」

 

「望むところッスよ!!」

 

何故か、原因である青峰をそっちのけにして黄瀬と火神が睨み合って火花を散らす。青峰は『我関せず』といった様子で欠伸をしている。

 

「バスケで賭けなんてしたら駄目ですよ。というか自由を賭けてってな「テツくーーん!!」

 

桃井に抱きつかれた黒子は、その勢いのまま俺の視界からフェードアウトしていった。

....前から気になってたんだが、黒子って性欲ないのか?あの桃井の胸を押し当てられても、いつも平然としているが....。

 

「お前らさっきから騒がしいのだよ。それと、そのリアカーは俺の私物だ。許可なく乗り回すな」

 

「そんなことより真ちゃん。俺は、うちに転校してくる奴の方が気になるんだけど....あの目ヤバくね?」

 

「あの目はデフォルトなのだよ」

 

「うっそマジで!?すっげぇ!!」

 

「何でそこで感心するんですかね.....普通引くだろ」

 

俺は思わず口を挟んでしまった。

初めて見たぞ。初対面で俺の目を見てテンション上げるやつは。

俺が高尾に突っ込むと、隣で小町が震えた声で呟く。

 

「お兄ちゃんまで.....カオスだよ.....これもう収拾がつかないよ.....」

 

「安心しろ小町。お兄ちゃんはいつで「おい比企谷。こっち来いよ。これすげえ楽だぞ」え?マジで?」

 

すまない小町。とても魅力的な誘いが来た。

歩かずに家まで行けるとか最高じゃねぇか。

 

「ちょっ、比企谷っちも乗るんすか!?緑間っち、これ二人も乗って大丈夫なの!?」

 

「問題ない。そのリアカーの最大積載量は500kgなのだよ。少し前に改良した」

 

「真ちゃん、それ俺初耳なんだけど!?じゃあ俺も....うおっ!!何この安定感!!比企谷ァ、俺と喋ろうぜぇ!!」

 

「うぜぇ....つうか馴れ馴れしい。少し離れろ」

 

 

俺は高尾の肩を押しながら緑間に助けを求める。しかし、緑間は首を横に振った。

 

「すまない比企谷。俺にはどうしようもないのだよ」

 

「いや、どうにかしろよ。お前の相棒じゃないの?」

 

「まぁまぁ、これから同じチームでやってくんだからさ。ところで比企谷、その目って本物?」

 

「緑間もそう言ってただろ。この目は本物だ」

 

「マジかよすっげぇ!!....写真撮っていい?」

 

「いや、何でだよ」

 

 

はぁ.....マジで疲れる。

何だよ、このコミュ力の塊みたいなやつは。前の学校の『っべー』を連呼してたウェイウェイ系の男子よりも相手しづらい。

しかも、地味に俺の精神的ライフを削ってくるし。

 

俺が高尾の携帯のレンズをふさいで、写真を撮られるのを防いでいると、リアカーを漕いでいる黄瀬が信号が赤になった瞬間にこっちに顔を向けた。

 

「そうだ!!比企「断る」はやっ!?俺まだ何も言ってないッスよね!?」

 

「いや、今の話の流れに黄瀬が絡むと嫌な予感しかしねぇから」

 

「何でッスか!ただ、また一緒にモデルの写真撮ろうって言おうとしただけなのに!!」

 

「それが嫌なことなんだよ。俺は目立ちたくない」

 

「ここにいる時点で手遅れなのだよ」

 

「確かにそれはそうだが.....。そんなことより黄瀬、もうちょっとスピード上がんないの?」

 

「無茶言わないでほしいッス!!何人乗ってると思ってんすか!!火神っちが押してくれなかったら進んですらいないっすよ!!」

 

 

その後も黄瀬がギャーギャー喚いたり、高尾のうざい絡みになんとか対応しつつ、俺の家まであと半分の地点まで来た。

すると、青峰が読んでいた雑誌に飽きてしまい、火神を挑発して遊び始めた。

 

 

 

「テツヤさん助けて....これじゃあ家につくまで何分かかるか分かんないよ.....」

 

「すいません小町さん。比企谷君が入った時点で、もう赤司君以外に誰も彼らを止めることは出来ません。それに、僕は桃井さんの相手で手一杯です。このまま彼らの気が済むまで待つしかありません」

 

「はぁ.....何時になったら家に着くのかなぁ....」

 

 

打つ手が無くなった小町は、このキャラの濃い人達を集めたことを後悔し始めたのであった。

 




どうでしたかね?今回は登場人物が多くて大変でした.....。

あと、ご報告です。

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第5話 部活へ

どうも、サブタイが超手抜きのアカツキ8です。
投稿に間が空いた割には今回も余り話が進みません。
次回から今までより少し早くします。

それと、今回は中々のキャラ崩壊があるので読む前にご注意を。
一応、警告のタグを追加しときました。

では続きです。どうぞ


「やっと着いた.....」

 

俺はリアカーから降りて感慨深げに自分の住むマンションを見上げた。

ようやく高尾から逃れられたか....。まさかの伏兵だな。キセキの世代以上にめんどくせぇ....。

 

家に帰って来ただけなのに、まるでエベレストでも登頂したかの様な達成感だ。

いや、登ったこと無いけどさ。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫だ。....ただ、早く飯食って寝たい...」

 

「それ働き詰めのサラリーマンが言う台詞だよ....しかも、まだ昼だし」

 

俺と小町が疲れてその場で立ち尽くしていると、騒がしい連中がマンションの階段を上がりながら俺達に声をかける。

 

 

「比企谷ぁ~!早く家入ろうぜぇ~!」

 

「やかましい.....いい加減口を閉じろ」

 

「高尾、少し自重するのだよ。近所に迷惑だ」

 

「細かいこと気にすんなって。早く部屋の鍵開けてくれよ!」

 

「......もういい」

 

「本当にすまないのだよ。俺には、あれは止められん」

 

緑間は凄い申し訳なさそうな顔で俺に謝ってくる。

 

......今まで緑間が俺に謝ることなんてあっただろうか?

 

ある意味、高尾はキセキの世代以上に厄介かもしれない。俺の精神がズタボロにされる.....。冗談抜きで心労で倒れるかもしれない....。

本当に油断した.....まさか秀徳に緑間よりも関わりたく無いと思う人間が居たとは.....。

 

「謝らなくて良い。お前は悪くない。あのコミュ力の化物が悪い」

 

「言い方はあれだが、それには同意するのだよ」

 

緑間は眼鏡をクイッと押し上げながらため息をついた。

.....緑間も苦労してるんだな。

 

 

 

「まさか.....」

 

「まさかですね......」

 

「どうしたのテツ君?かがみんも」

 

「いえ、何でもありません」

 

「比企谷、グラビア雑誌とかあるか?」

 

「ねぇよ」

 

「お兄ちゃん、とりあえず部屋に入ろうよ。ご飯作る時間無くなっちゃうから」

 

「確かにそうだな」

 

そして、俺達は部屋の鍵を開けて部屋に入った。

 

 

もう一度言おう。

 

 

俺は鍵を開けて部屋に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は黒子達を連れて、部屋に入った。

その時点で不審な点に気がついた。

 

鍵がかかっていたのにも関わらず、俺と小町でもない他人の靴が二足並んでいる。

 

「小町.....少しここで待っててくれ」

 

「お兄ちゃん。その靴は征――――――」

 

小町が何か後ろから俺に話しかけてきたが、俺はそれを無視してリビングへと繋がるドアを開けた。

 

そして........

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね比企谷。一年ぶりかい?」

 

「あー、比企ちんだぁ~。ねぇねぇ、このマックスコーヒーって奴、今度俺の家に送ってくんない?これ凄い甘いけど、俺好みの味だから」

 

目の前には読んでいた本をパタンと閉じてこちらを向く赤司と、片手にマックスコーヒーをつかんだ紫原が見えた。

 

 

「ごめんねお兄ちゃん...流石にあの状況じゃ言い出せなかったっていうか....あれ?お兄ちゃん?」

 

 

 

 

.......すまない小町。お兄ちゃん、先に逝ってくるよ。

 

 

 

 

「ちょっ!!比企谷っちが倒れた!!誰か救急車!!」

 

「黄瀬くん任せて下さい。腹に一発ぶちこめば絶対に起きます」

 

「やめろ黒子!!本当に救急車呼ばないといけなくなる!!」

 

「落ち着くんだ黒子。こういう時は......」

 

 

 

 

 

 

「比企谷、早く起きろ。さもなくば、お前の個人情報がネットに垂れ流されることになる」

 

 

 

「あ、起きたっす」

 

「脅し文句が恐ろしいのだよ....」

 

「赤司....それは洒落にならないんですけど...てかどうやって入った?」

 

俺が体を起こしながらそう言うと、赤司は針金を取り出し当然の事の様に言った。

 

「何を言っているんだ比企谷?鍵ぐらい針金一本あれば開けれるだろう」

 

「.........そうかもね」

 

「待て比企谷!!そこで納得するのはおかしいのだよ!!そもそも赤司!!どう考えても不法侵入なのだよ!!」

 

「何を言っているんだ真太郎。俺はちゃんと比企谷の妹に俺達も行くと伝えた。そして、遠くから来て疲れてるだろうから、先に部屋に入ってても良いと言われたが、鍵を預かってなかったので針金を使って開けただけだ。何か問題でも?」

 

「だからそれが不法侵入だと.....いや、入って良いと言われたなら良いのか?」

 

そう言って緑間は首をウンウンと捻る。

それを見て俺は自分の部屋へと歩を進めた。

 

いや、緑間が陥落した時点で詰みだろ。

他の連中とか赤司に上手い具合に言いくるめられて終わりだし。

唯一の希望は黒子だが.....

 

「桃井さん.....苦しいです....」

 

.....あれでは身動きが取れないだろう。

ゆえに選択肢は一つだ。

 

「小町、あとよろしく」

 

 

小町にそう言い残して、俺は自分の部屋のドアノブに手をかけると、突然両肩に手が乗っかってきた。

 

後ろを振り向くと、右に小町と、左に赤司が見えた。

赤司は笑顔を浮かべ、小町は目に涙を浮かべて両者とも俺に無言の圧力をかけてきた。

 

「.....天使と悪魔か.....」

 

結局、俺は踵を返してリビングに向かった。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、これどうするの?」

 

「はぁ.....こいつらマジで何しに来たんだ?」

 

 

俺と小町は部屋で爆睡してる連中を見て呆れ返った。

 

ソファの上では火神が、黄瀬は青峰の枕になりながらも爆睡している。

黄瀬と火神はリアカーを動かすために頑張って疲れたのは分かるが、青峰は寝過ぎだ。

 

「....何かこいつらの顔に落書きしてぇな」

 

特に黄瀬。何か寝顔が腹立つ。

 

「やっちゃう?」

 

「高尾が責任取るならな」

 

「それは遠慮するわ」

 

俺と高尾は先程からこんな感じでぐだくだと会話している。

 

赤司と緑間は何処から持って来たが知らんが将棋盤を持ち出して一局打ち始めたし、紫原には俺が千葉で箱買いしといたマックスコーヒーを半分飲まれるし......。

 

「まぁ、こいつらがまともに俺の歓迎会やるなんて思って無かったけどな.....」

 

というかマジで何処から将棋盤が出てきたんだよ。まさか、わざわざ持ってきたのか?

 

俺が悟ったように言うと、丁度駒を盤に置いた赤司がこちらを向いた。

 

「それは心外だな。比企谷のために京都土産を買ってきてやったというのに」

 

「マジで?」

 

俺は京都土産と聞いて少しだけ期待した。

この際、八つ橋とか定番のものでも構わないから普通の物が欲しい。決して高望みはしない。裏切られた時が恐いからな。

 

そして、赤司は『王手』と言って立ち上がり、自前の鞄の中を漁り始めた。

緑間は将棋盤を見つめて微動だにしないな。活路を見いだそうとしているのだろうか?どうせ詰みだと思うが。

 

「あぁ、これだ」

 

そう言って赤司は鞄の中から少し大きめの箱を取り出して、俺の前に置いた。

 

「......なんだこれ?」

 

食べ物じゃあ無さそうだが....。というかこれって.....。

俺が口に出すのを憚っていると、赤司が箱を開封しながら言った。

 

 

「これはな.....湯豆腐セットだ」

 

「だろうな」

 

うん。分かってたよ俺。帝光の連中でまともな土産を買ってきたのって黒子くらいだったからな。

赤司の京都土産って時点で何となく察したわ。

こいつ湯豆腐大好きだからな。

 

「で、それを今から作れと」

 

「流石だな比企谷。俺と同じで先を見通すのが上手い」

 

「はいはい、作ってくるよ。もういいよ。俺は社畜だ」

 

「比企谷が壊れたのだよ.....」

 

「真ちゃん、今日は一色来ない方が良いんじゃね?」

 

「そうだな....。俺がメールしとくのだよ」

 

 

それから、俺が湯豆腐を作り、赤司が舌鼓を打っていると、さっきまで寝ていた連中が目を覚ました。

そして、そこからは夜までの時間潰しとして、ゲーム大会が行われた。

結果は言うまでもなく赤司の全勝。

 

無謀にも俺達は赤司を負かすべく、何度も挑戦していたため、予定よりも無駄に時間を過ごしてしまった。結局は、八時頃に行われたマ○オカート大会で、黒子がミスディレクションによって赤司を奈落に落とすことに成功したのを見て俺達は満足した。

最終的には赤司が勝ったが。

ほぼ一位で独走してたのに、1レースでスターが5回も出るとか可笑しいだろ。対戦で一周差つけられるとか初めてだ。

 

その後、『黒子が頑張ればいけるんじゃね?』と、マ○オカートだけをやっていたが、やはり赤司が勝った。

 

俺達が『やはり無理だったか....』と肩を落とすなか、赤司が立ち上がって俺達を見下ろしながら言った。

 

「全てに勝つ僕は、全て正しい」

 

『 (このドヤ顔、めっちゃ腹立つ!!) 』

 

「とまぁ冗談はさておき、俺はこれで失礼するよ。飛行機に乗り遅れてしまうからね」

 

「あ、俺もー。比企ちんじゃあね~」

 

「あぁ、二度と来ないことを推奨する。それと紫原、一応後でマックスコーヒー郵送しとく」

 

「相変わらず捻デレだねぇ比企ちんは。出来れば他の駄菓子もよろしく~」

 

「じゃあ俺も帰るわ。比企谷、試合楽しみにしてるぜ」

 

「あっ、待ってよ大ちゃん!」

 

「火神君、僕達も帰りましょう。あまり長居するのも悪いですし」

 

「あぁ」

 

「気を付けて帰れよ。特に黒子、車に轢かれるなよ」

 

「大丈夫です。懐中電灯と反射ベルトがあるので。それに火....皆さんも居ますし。それでは比企谷君。次は試合で会いましょう」

 

「比企谷っち、モデルの写真の件考えといてくれると有難いッス!!」

 

「だからそれ「比企谷っちのバイトよりも金払い良いッスよ!!」......考えとく」

 

俺の返事を聞くと、黄瀬はガッツポーズを取る。

 

そんなに俺と一緒にやりたかったんですかね。そう思うと悪い気はしないが....。

 

「これで俺の負担が減るッス!!」

 

「........どうせそんな事だろうと思ったよ」

 

「比企谷、明日の午前中に部活が有るから10時くらいに来い。お前に拒否権は無いのだよ。既に監督に話は通してある」

 

「何勝手な事してくれちゃってんの?第一、俺はまだ登校すら「じゃあな比企谷!!楽しみにしてるぜ!!」.....はぁ.....」

 

 

そして、騒がしかった連中は帰って行った。

 

 

 

 

 

~翌日~

《秀徳高校体育館前》

 

今日の朝、まだ部活に行きたくない俺が布団にくるまっていたら、例のごとく小町にダイブで無理やり起こされてしまった。

そして結局、俺は秀徳高校の体育館前まで来た。

既に練習は始まっているらしく、中から声が聞こえてくる。

 

まぁ、10時に来いって言ってたから、まだ9時になったばかりだし遅刻ではないんだけどさ。

しかし、恐らく新入生だろうバスケ部員がさっきから校舎の回りを走っていて視線が痛い。

 

 

「小町、今からでも家に帰っちゃ駄目か?」

 

「何言ってんのお兄ちゃん!!ここまで来たのに、今さら帰るとか駄目に決まってるじゃん!!」

 

「ですよね....」

 

「まぁ、今日小町は昔の友人と会う約束が有るから帰るんだけどね」

 

「え、一緒に居てくれないの?」

 

「なに迷子の子供みたいなこと言ってんのさ。それじゃ、小町はもう行くから」

 

「あぁ.....じゃあな小町」

 

「うん!!一応お兄ちゃんの幸運を祈っとくよ!!あ、今の小町的にポイント高い!!」

 

「最後のがなければな....まぁ、ありがとな」

 

「うん!!」

 

そして、小町が去った後10時ぴったしまで粘る事にして、俺は体育館前のスロープの手すりに座る。

 

今日は良い感じに風が吹いてて気持ちいいな....。

 

うっかり眠ってしまわない様に気をつけていると、外を走っていたバスケ部員が数人俺の所に走ってきた。

 

不審者とでも間違われたか.....。この目じゃ仕方ないな、認めたくはないが。

 

「やれやれ....」

 

俺が手すりから降りて着地すると同時に、こっちに走ってきたバスケ部員が急に騒ぎ出した。

 

「ほら!!やっぱり比企谷先輩じゃねぇか!!」

 

「本当だ!あの腐った目、間違いない!!」

 

 

何だ?比企谷先輩?.....まさか元帝光中の人間か?

というか、目で判断するの止めてくれない?傷つくから。

 

そして、俺の前に綺麗に並んでそいつらは言った。

 

『お久しぶりです!!比企谷先輩!!』

 

「すまん、誰だっけ?」

 

俺が聞くと、ガクッと肩を落とす。

そして、ぶつぶつと呟き始めた。

 

 

「やっぱり覚えられてねぇか....」

「しょうがねぇよ。俺ら二軍だったし....」

「というか俺話したことないしな」

 

『そりゃ覚えられてねぇよ』

 

最後の奴が何で俺の所に来たのか甚だ疑問だが、とりあえず慰めることにした。

 

「本当に悪いな。でも、殆どの後輩覚えてないから心配すんな。ほぼ会うことも無かったしな」

 

俺がそう言うと、安堵なのか良く分からない表情をする。

すると、後ろから大人の男の人の声が聞こえてきた。

 

「それはそれで問題だな」

 

俺が後ろを振り向くと同時に新入生が叫ぶ。

 

『かっ、監督!!』

 

「一年生、早くランニングに戻りなさい」

 

『はい!!』

 

新入生がランニングに戻ったのを確認すると、監督らしい人が俺に話しかけてきた。

 

「君が比企谷八幡かね。」

 

「はい。緑間に呼ばれて来たんですけど、大丈夫ですか?」

 

「安心しなさい。ちゃんと緑間から話は聞いている。私が監督の中谷仁亮だ」

 

俺はそれを聞いて安心した。

 

よかったー。これで何でここにいるんですか?とか言われたら緑間の眼鏡を割らなきゃいけないところだったわ。

 

 

「君が怪我で暫く休んでいたのは知っている。練習の最後にミニゲームをやるから、それまで君には別メニューをこなしてもらう。それと.....一色、こっちに来なさい」

 

監督に呼ばれた女子は返事をして此方に向かって走ってきた。そして、すぐ近くまで来ると監督に話しかけた。

 

「どうしたんですか監督?私まだ仕事があるんですけど.....」

 

「一色、この男が今日からうちの部に入った比企谷八幡だ。お前には今日から1ヶ月の間比企谷の見張りをしてもらう。これが比企谷用のメニューだ」

 

監督から一枚の紙を受け取った一色とかいう女子は紙を見た瞬間顔をひきつらせる。

 

え?なにその反応。スッゴい不安なんだけど。俺、一応部活やるの一年ぶりなんですけど。

 

「監督、これマジですか?死にますよこの人」

 

「心配はいらない。死ぬことはないだろう。それと、今回は見逃すが、目上の人に対する言葉使いには気を付けなさい」

 

そう言って監督は体育館の中に戻っていき、俺と一色の二人だけになってしまった。

いきなり女子と二人きりなんてハードル高すぎじゃないですかね。まぁ、そういう類いの状況じゃないけど。

 

俺が話しかけるべきか戸惑っていると、一色と呼ばれていた女子が俺に話しかけてきた。

 

 

「えーっと、とりあえず自己紹介ですね。私の名前は一色いろはです。まだ仮入部ですけど、ここのマネージャーです。まぁ、今のところマネージャーは私一人なんですが....。

とりあえず、これから1ヶ月よろしくです!!」

 

そう言って一色は俺に向かって敬礼をしてくる。

それを見た俺は、不覚にも一瞬ドキッとしてしまった。

こいつは....何と言うか....

 

「あざとい」

 

「なっ!?」

 

「とりあえず、早くやるぞ。サボってると、あの監督に怒られそうだし」

 

「.....そうですね。私も怒られるのは嫌ですし」

 

しぶしぶと云った様子で一色も俺に同意する。

そして、俺は一色から紙を受け取り、その内容を見て思わず絶句した。

 

何だこれ?走るのは分かるが、何故筋トレが合間に入っているんだ?しかも、腕立て伏せと腹筋と背筋がそれぞれ100回ときた。

それだけなら普通に納得できなくもないが、呼びに来るまでエンドレスとか......。

 

 

 

「なぁ一色、サボっちゃ駄目か?」

 

「駄目です。万が一死んだら骨だけは拾ってあげます」

 

「そんな気遣い要らないんだけど.....」

 

仕方なく、俺はメニューに書いてある通りにランニングを始めた。

 

 

 

 

 

「なぁ、やっぱりサボ「駄目です」.......」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約1時間が過ぎ、そろそろ呼びに来るかと思った所で、予想通りお呼びがかかった。

 

「比企谷、早く体育館に入るのだよ」

 

「緑間か。お前が呼びに来るとはな」

 

「そんなことより早くするのだよ。体が冷える」

 

「その冷える外で俺は走らされてたんだが....」

 

 

俺がバッシュを持って緑間についていくと、先程まで俺と同じく外を走っていた一年生に愛想を振り撒いていた一色が俺の方を見て驚愕の表情を浮かべた。

 

「え!?何でわざわざ緑間先輩が呼びに来てるんですか!?」

 

「比企谷と俺は知り合いなのだよ。悪いが細かい質問は後にしてくれ。今はそんな時間ないのだよ。行くぞ比企谷」

 

「あ、ちょっ.....」

 

「悪いな一色。緑間の言う通り後にしてくれ。時間がないんだ」

 

「何で先輩が言うんですか....」

 

 

一色はまだ不満そうにしていたが、大人しく俺の後をついてきた。

 

そういえば、これから1ヶ月ずっとこいつと一緒なのか。.....面倒だな。可能な限り、こいつとの会話は避けよう。会って一時間なのに、もう俺のことを先輩呼びしてくるし.....。

何か、高尾のせいで異常に秀徳の人間に対して警戒心が高まってる気がする。まぁ、元々俺は他人に対して警戒心が強いけどな。高尾が馴れ馴れし過ぎるだけだ。

 

.....とりあえず後で高尾を一発殴ろう。

 

そう決意して、俺は体育館に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うん。やっぱり話がそれほど進まない(笑)
次回から試合とかの話になると思います。

あと、ご報告です。

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ありがとうございます!!

では、また次の話で。


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