この異世界転生者に祝福を! (白城)
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第0話 「この素晴らしい?仲間に紹介を」

 皆さんこんにちは白城です!

 次回が遅れそうなのでキャラクター紹介を書いて見ました! 面白くかけているか分かりませんが……。

 


【オリジナル主人公】 島原白奈(シロナ)

あるでき事が原因で異世界に転生した日本人。

16歳で銀髪の紅眼。身長は155センチ。体重…キロ。肌は家で引き込もっていたのもあり透き通るような白色。そして、幼さが残った整った顔立(自覚なし)。この容姿から最初から日本人だと分かる人は少ない。緊急時などパニックになることやや多い。仲間思いで、風魔法が得意。

 

職業  魔剣士(エレメント)【オリジナル職業】

アークウィザードと剣士を混ぜたような職業。様々な強力魔法を使いながらも剣士としても戦う事もできる汎用性が高いスキル。

使えるスキル

《初級魔法》《中級魔法》《上級魔法》《自己付属魔法》《全属性魔法》《片手剣》のちのち増えていく予定……。

 

「えっ? 自己紹介? えっと、島原白奈、日本人です。好きなものはゲームやアニメ。嫌いなものは……()いていえば虫かな? やったー異世界だ! と思って張り切って転生したのに思っていたのとは違いました! はあ、仲間は問題ばかりおこすし……ええと、この素晴らしい世界に祝福を!」

 

 

【原作の主人公】 佐藤和真(カズマ)

原作通りの見ため。

職業 冒険者

シロナの容姿を初めて気味が悪いなど思わなかった日本人。

シロナがいるお陰で大分苦労は減ってはいる(お金の問題など)が原作同様苦労人。

サキュバスの夢ではパーティーで唯一まともな(当の本人は自覚がないが)美少女、シロナを使うことが多い。

 

 「自己紹介? そうだな……パーティーでは最弱職ながらリーダーをやらせていただいているカズマです。全くアクアはすぐに借金やら問題起こすし、めぐみんは爆裂爆裂うるさいし、ダクネスは……攻撃が当たらないただのドMだな。問題起こさないまともなシロナを見習えよ。はあ、俺のパーティーの正統派ヒロインはシロナしかいない! そして、俺の望んでた異世界じゃない!」

 

 

 

アクア

原作通り元日本担当の水の女神。

職業 アークプリースト

 

 「さあ、次は私の番ね! あ、さっき自己紹介してたの私の下部だから カズマ「誰が下部だ!」…………わ、私はアクア、アクシズ教が崇める御神体にして水の女神その人よ! さあ、皆もアクシズ教に入って私を崇めな………ね、ねえ、カズマ何持ってるの? そ、それ私が大事にとっておいたお酒に見えるんだけど……ねえカズマさん! さっき下部呼ばわりしたのは謝るからそれを外に投げようとしないで! ねえカズマ様っ!」

 

 

 

ダクネス

原作通り防御専門の女騎士でドM。

職業 クルセイダー

優秀な火力要員の白奈がいるお陰で使えるキャラになりそう…。

 

 「む、次は私か……私はダクネス。パーティーではタンクをやっている者だ。まあ、攻撃が不器用すぎて当たらないだけなのだが……。ああ、それにしてもめぐみんの爆裂魔法は受けてみたいが、シロナの強力な魔法も捨てがたい! ……ハアハア……いったいあれを受けたらどんな感じなのか………想像しただけで武者震いが! シロナ「撃たないからね!……ねえ、残念そうな顔をしないで!」し、してない!」

 

 

 

めぐみん

原作通り紅魔族で爆裂狂。

職業 アークウィザード

 

 「次は私の番ですか! ……ふっ! 我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者! 我が必殺の爆裂魔法は全魔法の中でも最高の威力をほこり、他の魔法など話にならない程の威力!「「「「………」」」」………お、おい! 私の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

 




 言い忘れていましたが時間的にはカズマがアクアを道連れに転生した直後という設定です!


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番外編
番外編 『この素晴らしいチョーカーに祝福を!』


 こんにちは白城です!

 ovaの話ですが書いてみました。アニメと被らないようにする為に亀更新なると思いますが、少しずつ更新していきます!

 カズマ視点だけですが、しっかり白奈視点も次からはいれるので、今回はすみません!


 俺達は現在、ウィズの家に向かっている途中だ。ウィズと知り合ってからはたまにウィズの店に遊びに行くのだ。だが………。

 

 「おい、アクア。お前は黙っていろよ」

 

 「うん、アクアは本当に問題は起こさないでね。それだけで良いんだから」

 

 俺達が念を押すようにアクアに言うと……。

 

 「わ、分かってるわよ! 二人とも毎回ウィズの店に行くときに、私にそれ言うの止めてよね! 私がいつも問題起こしているみたいじゃない!」

 みたいって言うか、実際そうなんだが……。そろそろ学習しても良いんじゃないか。ほら、シロナがジト目で見てるだろ。

 

 カランカランカラン。

 

 「ようっ! ウィズ、遊びに来たぞ」

 「ウィズー、いつもお疲れ」

 

 「あ、カズマさんにシロナさん! それに皆さんも、いらっしゃいませ」

 

 「うむ、じゃまをするぞ」

 

 「何でアンデットの店なんかに……」

 

 隣でアクアが愚痴を言っているが毎回の事に比べたら小さい事だ。

 

 「ん?……………あ」

 

 棚の裏に誰かが隠れている。めぐみんと同じ紅い瞳。ここからめぐみんと同じ種族なのが分かるだろう。

 

 まあ、隠れてきれてないんだが。見つけてほしんだろうか?

 

 「…………」

 

 「あ~~、フン!」

 

 「今見たよね! 何で無視するの!?」

 

 「あ~、これはこれは、我が自称ライバル、ゆんゆんではないですか」

 

 「自称って言わないで! ちゃんとライバルだから!」

 

 「あれっ? ゆんゆん? この店に来てたんだ」

 

 シロナは今気付いたようで声をかけた。

 彼女はゆんゆん。紅魔族の一人で、最近知り合った少女だ。めぐみんを見るたびに勝負を仕掛けてくるんだが………。

 

 「う、うん。偶然、たまたま、本当にたまたまいただけだから! ………それはそうと、さあ、めぐみん! 勝負よ! 今度こそ決着をつけてやるんだから!」

 

 「決着もなにも殆どが私の勝ちじゃないですか?」

 

 そう、全部の勝負で負けており、そのたびに何か巻き上げられている。そろそろ止めた方が自分の為にも良いと思うんだが。

 

 「うっ! それを言わないで! 今度こそ勝ってやるんだから! ………あっ! すみません。お店の迷惑にならないように外でやりますので」

 

 「いえいえ、気にしないでください。そう言えば、ゆんゆんさんが、この店に来はじめたのってカズマさんのパーティーがたまに遊びに来るって聞いてからですし……」

 

 「はあああああああ! きょ、今日はこれください! このカッコいいチョーカー!」

 

 ゆんゆんがウィズの声を遮る様に声をあげる。

 

 ………まさか、めぐみんに偶然会えるまで毎日ここに通いつめていたのか。

 

 ああ、隣のシロナも俺と同じような顔をしている。

 シロナはゆんゆんにゆっくり近づき、肩にポンっと手を置き。

 

 「……ええと、ゆんゆん? 遠慮しないで、いつでも普通に私達の屋敷に遊びに来れていいんだよ? 歓迎するからさ」

 

 「えっ? いいの? だってその…………何も持っていかないと、「社交辞令って知っている?」見たいな感じで迷惑そうにしないですか?」

 

 「いやいや、しないから! 大丈夫だから!」

 

 「相変わらずめんどくさい子ですね! 来たいなら来れば良いじゃないですか! それで、勝負するんですか!? しないんですか!? どっち何ですか!」

 

 めぐみんがゆんゆんの襟をつかみ、ブンブンふっている。

 

 「止めて、めぐみん! 待って! ………ふう、こんなに沢山の人と話せる機会なんて今まで無かったから勝負をするのは皆としばらく会話をしてからで…………っ」

 

 「何ですか、その曖昧な答えは! これだからボッチは!」

 

 「めぐみん、やめてあげて! ゆんゆんが苦しそうだから!」

 

 「ね~、私お茶欲しいんですけど。ついでにお菓子も欲しいんですけど~」

 

 「は、はい。アクア様! ただ今お持ちしますね!」

 「ちょ、ちょっとカズマも止めるの手伝って!」

 「だ、大丈夫か、二人とも!?」

 「ちょっと~、日がくれちゃうんですけど~」

 「すみません、アクア様!」

 

 相変わらず、騒がしいな。

 まともなシロナは止めるのに必死だし、はあ、せっかく転生して異世界に来たんだ。俺の夢の1つくらい叶って欲しいもんだ。 

 ん? これは………。

 

 「ええと、何々。『当店で珍しく売れている、願いが叶うチョーカーです。』珍しくって書くのはどうかと思うが……。お値段は強気の十万エリス……か」

 

 「ちょっと~、このお茶ぬるいんですけど~。これだから体温の低いアンデットは」

 「すみません! みすません! アクア様!」

 「すまない、この獣に群がられるポーションとは………」

 

 

 お前は毎回毎回お茶をいれる時、お湯に浄化するだろうがと突っこみたい。まだ普通にお茶が出てくるウィズの方が良いと思う。

 何も悪くないのにアクアに謝るウィズ。うん、可哀相だ。

 あのドMなダクネスはまた(・・)、変な商品に興味を示したらんだろう。

 

 「カズマ。珍しく良い商品でも見つけたの?」

 

 そんな事を考えているとシロナが騒ぎの中から戻って来た。

 

 「シロナ、あいつらはいいのか?」

 

 「はあ、もう私一人で押さえるのは無理。……それで、その商品は?」

 

 「願いが叶うチョーカーって言うんだけど」

 

 「願いが叶う? 装備すると幸運度が上がるアイテムなのかな?」

 

 「シロナもそう思うか?」

 

 「うん。カズマ、試しに一回つけてみてよ。試着くらいなら良いと思うし」

 

 ウィズの事だ。試着くらいなら大丈夫だろう。怒られたとしても謝れば良いだけの話だ。

 

 「ああ、わかった」

 

 カチンッ

 

 「か、カズマさんっ!?」

 

 「「んっ?」」

 

 ウィズから慌てた様な声が店に響いた。

 

 「そ、そそそ、それ着けちゃたんですか!?」

 

 「ああ、願いが叶うチョーカーなんだけどお試しで着けちゃ駄目だったのか?」

 

 「もし、そうならごめんなさい!」

 

 「い、いえそう言う訳ではなく。そ、それは願いが叶うまで外れない上に、日をおうごとに徐々に閉まっていく、魔道具でして……!」

 

 「呪いのアイテムかよ!」

 「そ、そんな!? 嘘でしょ!?」

 「それは本当なのかっ!」

 

 約一名は何やら興奮しているが無視だ。

 

 「ち、違います! 女性に人気のアイテムなんです。死ぬ気になれば絶対に絶対に痩せられるって言う……」

 

 自力で叶えんのかよ。……バカにしてんのか!?

 

 「で、カズマはいったい何をお願いしたの?」

 

 アクアがそんな事を聞いてくる。

 

 「それが……特に願った訳じゃないんだよ」

 

 「まずいですよ、カズマさん! このままだとゆっくりチョーカーが閉まって4日後に……」

 

 「俺はこんなふざけたダイエットアイテムで死ぬっていうのか!?」

 

 「………本当にごめんねカズマ。完全に私のせいだね。私がそれをカズマに付けて見てよなんて軽々しく言ったせいで……」

 

 「いいえ、シロナさんのせいじゃないです。元はと言えば、そのチョーカーを落とした私せいでカズマさんが……」

 

 「いえ、ゆんゆんにつかみかかった私のせいでもありますよ」

 

 「いや、ウィズが私達に気を取られていなければ………すまない、カズマ」

 

 「いえ、一番悪いのは私です! こんな危険な商品を店に並べていたのが悪いんですから………」

 

 ………あれっ? なんか、俺が確実に死ぬ流れになってないか?

 

 「カズマさん!」

 

 「おお?」

 

 「なんとしてでも私がチョーカーを外して見せますから、安心してください」

 

 「私が原因なんだから精一杯協力するよ!」

 「私も協力します!」

 「紅魔族随一の知力をもってしてなんとしてでも外してみせます!」

 「私も尽力しよう!」

 

 ………おい、約一名は足りないぞ。

 

 「おい、アクア」

 

 「な、なによ。今回私は関係ないでしょ! ………でも一応言っておくわ、ごめんね! 死んだら、リザレクション掛けてあげるから」

 

 …………。

 

 「今度死んだら、もう生き返らないでやろっかな~」

 

 「は!? 何言ってるよ、私と魔王討伐する件はどうなるのよ!?」

 

 アクアが焦りながら言ってくる。知ったことか。魔王討伐なんて無理に決まってる。

 

 「あと、俺が死んだら。膨らんだ借金。全部、お前のもんだから。そこら辺分かってるよな?」

 

 「ああああああああ! わ、分かったわよ! 協力すればいいんでしょ!? こうなったらカズマのチョーカーが外れるまで皆で何でもしてやろうじゃないの!」

 

 「ふっ………今、何でもって言ったな?」

 

 「えっ?」

 

 この言葉の意味に気づいたのはシロナだけだった………。

 

 




 


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第一章 ~これが望んでいた異世界転生?~
プロローグ


 なかなか進まない・・
 皆さんはじめまして白城です
小説かくのって難しいですね
一日一つ投稿している人って凄い!

初投稿だけど頑張って書いていきます!

早くカズマパーティーにオリ主を入れさせたいです!


 「はじめまして、島原白奈(しまはらしろな)さん。ようこそ、死後の世界へ。あなたは先ほど不幸にも亡くなられました。短い人生でしたが、あなたの人生は終わったのです」

 

 真っ白な部屋の中、私は不意にそんな事を告げられた。

 

 突然の事で頭が回らない。

 部屋の中には小さな事務机と椅子があり、私に人生の終わりを告げてきた相手は、目の前の椅子に座っていた。

 

 もし、この世界に天使や女神がいるのならきっと目の前の相手のことをいうのだろう。

 金色の髪に背中から羽が生えている。その上、女の私からみてもとても綺麗な顔立ち。

 

 実年齢は分からないけど、年は私より若いのかな?

 

 その相手は私の事を悲しそうな表情でじっと見ていた。

 

 この人はいったい誰だろう? 

 なぜここにいるのか。

 私はここに来る前のことを思い出す……。

 

 

 

 

 

 

 私はいじめをうけていた。

 理由は簡単、自分の容姿が周りとは大きく違っていたからだった。親とは似ても似つかない銀色の髪の毛。そして鮮やかな赤色の瞳。それでいて幼さが残った整った顔立ち。この容姿から学校で男子からは異質な目でみられ、女子からは妬みの目などでみられていた。

 そして、いじめをうけてから一週間後には全く学校には行かなくなった。

 親には何故学校に行きたくないのかを話すと何も言わず納得してくれた。

 それからはずっと自分の部屋に引きこもりゲームをしたり、アニメを見る毎日だった。自分の欲しいゲームなどは注文し、家に届いたら部屋から出て物を受けとり、部屋に戻る。

 そんな毎日を過ごしていた。

 そんなある日、自分の注文していたゲームが届いた音だと思い、いつも通りに部屋を出て玄関の扉を開けた。

 しかし、立っていたのは配達員ではなく、自分のクラスメイトだった。

 この女性はクラスの中で最も自分を嫌っていた人物だったので良く覚えている。

 

 なんで、ここにいるの……?

 

 私が呆然と立ち尽くす中、その人が動いたかと思うと自分の普通の胸に鋭い痛みがはしった。

 

 

 

 

 

 そして今に至る。

 

 ………そっか、私 死んじゃったんだ。

 

 「少し落ち着かれましたか? 私は現在日本を担当している女神フレイです」

 

 その女神は三本の指を立て、説明を始める。

 

 「あなたには三つの選択肢があります。

 一つは天国にいってのんびり暮らすか

 二つ目は魂をリセットして記憶を全部なくした状態でもう一度赤ん坊からやり直すか」

 

 じゃあ、一つ目かな。

 

 そんな事を考えていると、私の考えを読むかの様に。

 

 「実は天国というのはあなたたちが思っているような場所ではないのです。アニメもなければゲームもないような退屈な場所なのです」

 

 えっ!? 嘘でしょ! アニメないの!?

 

 私が酷く落ち込んでいると、目の前のフレイはクスリと笑い。

 

 「そして、最後に三つ目は異世界に転生してもう一度人生をやり直すことです。あなた、ゲームとか好きですよね?」

 

 まあ、確かにゲームは好きだしゲームの世界みたいに魔法とか使って冒険とか出来たら、興味があるというかもの凄く楽しみになってくる。

 

 ………あれっ?

 

 「すみません、そっちの世界の言葉って大丈夫なんですか?」

 

 「はい。大丈夫です。転生したら自動で覚えますし、勿論、文字だって読めます。さらに、すぐに死なないように特典なんか選べるんですよ」

 

 「じゃあ、転生でお願いします!」

 

 「分かりました。ではこの中から一つだけ、特典をお選びください」

 

 その言葉を言い指を鳴らすと、物凄い厚みの本が空中からでてきた。

 受け取ってみると。

 

 なにこれ‼?おもっ!!

 

 そのカタログを床に置き、ペラペラめくってみると、そのなかにはどれもチート級のものばかりだった。

 そのなかで、一つ気になる物を見つけた。

 

 「……すみません。この魔剣士(エレメント)ってなんですか?」

 

 「それは全属性の強力な魔法を使いながらも、剣士としてもある程度戦うことができる職業が使えるようになるものです」

 

 「じゃあ、これでお願いします!」

 

 「分かりました。では魔法陣の中央からでないようにしてください」

 

 「島原白奈さん。あなたをこれから、勇者候補の一人として異世界に送ります。魔王を倒した時には神々の方から贈り物がありますので頑張ってください」

 

 ……贈り物?

 

 そんな疑問が表情が私の顔を表れていたのか、女神様は穏やかに微笑んだ。

 

 「世界を救った偉業に見合った贈り物。たとえどんな願いでも一つだけ叶えて差し上げましょう」

 

 おおっ!

 

「さあ、勇者よ! 数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒す事を願いっています。さあ、旅立ちなさい!」

 

 私はその言葉を最後に明るい光に包まれた…!

 

 




 早く自分の書きたい所まで書きたいです

 感想などくれると嬉しいです!
 不定期更新ですがなるべく早く投稿出来るように頑張りたいです!


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第一話 『このアクセルの町に祝福を』

 皆さんこんにちは白城です!

 やっと本編かけるよ~

 これからも誤字が多く、読みにくいと思いますが少しずつ直しながらこれからも頑張って書いていきます!
 
 


 石造りの街の中、自分の目の前を馬車が通り過ぎていった。

 

 「わぁぁ、本当に異世界だ!これからこの世界で魔法使ったり、冒険とかするのかな?」

 

 私は目を輝かさせながら町を見ていた。

 

 んっ?

 

 ふと服のポケットに違和感を感じ手を入れると僅かな金貨がはいっていた。

 

 この世界のお金かな?えぇと三千エリスか…、初期金額だから量は少ないけどありがたいなあ。

 

 周りを良く見てみると自分が皆から見られているのに気が付いた。右手で自分の長い髪の先をいじりながら。

 

 やっぱりこの髪の毛じゃこの世界でも目立つのかな?あまり目立だたないように冒険者になる前にフードでも買わないとね。

 

 そう心に決めた。

 場所がわからないので、取り敢えず冒険者になる場所とフードの売っている場所を近くにいたおばさんに尋ねた。

 何故おばさんに聞くのかというと男性に聞くのはちょっと怖いし、若い女性は近くにいなかったからだ。

 

 「あのー、すみません。聞きたいことがあるんですがいいですか? 冒険者になる場所とフードを売っているお店を探しているんですが…」

 

 「冒険者になる場所? それならギルドかしら? でもこの町のギルドを知らないなんて、そういえば前にも変な服を着ている人にも同じこと聞かれたわね…。あんたも他所からきた人かしら?」

 

 多分それは自分と同じ転生者だろう。

 

 「はい。ここからちょっと離れた所から来たもので、たった今着いたんですよ」

 

 「まぁそうなの。ようこそアクセルへ。それはそうとギルドね。ギルドならここの道を真っ直ぐ進んで右にまがれば看板が見えるはずよ。フードの売っているお店ならすぐそこの角を曲がると直ぐに見えるわ」

 

 「なるほど。ギルドは真っ直ぐ進んで右で、フードはすぐそこの角をまがれば直ぐに見えるんですね。ありがとうございます!」

 

 何故こんなにも手際が良いのかと言うと学校に行かず家で引きこもりゲームをしていたおかげである。

 私は言われた通りの道を進んで行った。

 

 

 フードを買いギルドに向かっている途中で私は街並みや人を眺めていた。

 

 あれは獣人でしょ! そしてあの耳からあれがエルフか!本当にゲームの世界みたいだなあ。

 

 そんなことを考ながらギルドに向かった。

 

 

 

 

   冒険者ギルド

 

 ここはゲームで言うと冒険者で依頼を受けたりする場所である。

 かなり大きな建物で、中には食べ物の匂いが漂っていた。

 

 「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥カウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞー!」

 

 長めの黄色の髪の毛のウェイトレスのお姉さんが愛想よく出迎えてくれた。

 そんな初めて入って来た人用のあいさつみたいなもの聞きながら、やっぱり初めてくる人は珍しいのか妙に受ける視線を避けるように私は迷わず奥の方に向かった。

 ちょうど一ヶ所だけ運良く空いていたので私はそこのカウンター向かった。

 

 「はい、今日はどうされましたか?」

 

 「すみません、冒険者になりたいんですけど…」

 

 「分かりました、それでは冒険者になるには登録手数料が千エリス掛かりますが大丈夫ですか?」

 

 登録手数料? あ!

 

 私はポケットから残っているお金の半分を渡す。フードが千エリスで登録料も千エリスなので、これで残りが千エリスになる。

 

 「はい、これでお願いします」

 

 「では冒険者になりたいと仰るのですからある程度分かっていると思いますが、冒険者とは何か改めて説明させて頂きます」

 

 冒険者とは町の周辺のモンスターなどを討伐するもので、何でも屋みたいなものだと説明された。

 スキルポイントやレベル、経験値のことなんかも教えてもらった。

 

 「では登録するにあたってこれに、身長や年齢、身体的特徴を書いてください」

 

 私は受け取った書類に名前などを書いていく。容姿の特徴などを書くのは前の世界のことがあり気が引けたが冒険者になるためだと自分に言い聞かせた。

 

 えぇと、身長は155センチ、銀髪に赤い瞳。年は16歳で……。あれっ?

 

 「すみません、これに名前と体重は書かなくていいんですか?」

 

 「はい。登録をすると自動で分かりますので大丈夫ですよ。えぇと、島原白奈さんですね。それでは次にこのカードに触れてください。それで、あなたのステータスなどがわかりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでください」

 

 私は言われた通りにカードに触れると。

 

 「はっ、はああああ!? 力が平均値にくらべて少し低いですが知力と魔力のステータスが平均値を大幅に越えてますよ!? 魔力に関しては紅魔族並じゃないですか!? それに初めてみる魔剣士と言う職業がありますよ!」

 

 私の触ったカードを見たお姉さんが、大声を上げていた。

 それに合わせて施設内がざわめく。

 私は紅魔族というのは分からなかったが。

 

 あまり大声で言うのは恥ずかしいし目立つからやめて欲しいなあ…。

 魔力とかは特典で魔剣士を貰ったからそのおまけなのかな? それにしても剣士としても出来る職業なんだから力が少しでも上がってると思ったんだけど。まぁそこはしょうがないか……。

 

 ここで私は迷わず。

 

 「じゃあ、魔剣士でお願いします。」

 

 「分かりました。魔剣士ですね。名前から察するに魔法剣士の上級職だと思われます。冒険者ギルドへようこそ! ギルド、スタッフ一同あなたの今度の活躍に期待しています!」

 

 そう言ってカウンターのお姉さんはにこやかな笑みをうかべた。

 

 むやみに期待されても困るだけどなぁ~。

 

 私はそう思いフードの中で苦笑いを浮かべた……。

 

 

 

 

 冒険者登録が終わって翌日。私はパーティー募集の張り紙を見ていた。何故上級職なのに一人で行かないのかと言うと、一人では想定外の出来事に対処出来ないかもしれないからだ。

 

 うーん、何か良いところないかな…?

 

 パーティーメンバー募集の張り紙には、

 

 【パーティーメンバー募集中。パーティーの人数は現在四名。前衛職二人。プリーストと一人がアーチャーが一人。募集職は魔法使いです】

 

 【魔法使い職募集。パーティーメンバーは現在四名。使える魔法は中級魔法まで使えること】

 

 などの普通の募集などから、

 

 【パーティーメンバー募集中。クルセイダーと盗賊の二人組。――――募集内容は前衛職一名、後衛職二名。良識あるまともな人を求めています】

 

 と上から線を引いて何かを消した様な後がある募集など、様々合った。

 消した後には辛うじて鬼畜など書いてあることが読める。一体何が書いてあったのか気になる。

 

 このパーティーなら、いいかもしれないね。

 私の職業は前衛も後衛も出きるから、もしかしたらパーティーに入れるかも知れない。

 

 そう考えた所で後ろから声を掛けられた。

 

 「ねぇねぇ、あなたパーティーを捜しているの?」

 

 私はそう言われ振り替えると水色の髪の毛を綺麗な女性が立っていた。

 

 「えっ、はい。そうですけど…」

 

 「あなた、女神の勘だけど上級職でしょ? 職業は?」

 

 「えっと、魔剣士ですけど……女神?」

 

 「そう、私はアクア! アクシズ教が崇める水の女神アクアよ! あなたの職業から見るに、日本からの転生者でしょ! 私、元日本担当の女神だからわかるのよ!」

 

 そう言えばここに来る前の女神様が"現在"日本を担当している女神って行ってたっけ?

 何で女神がいるのか不思議だけど。

 

 「じゃあ、着いてきて。今私のパーティー上級職募集してるのよ」

 

 何か、自然に行く流れになってるな~。まぁ面白そうだからいっか。

 

 そう思いなからアクアの後を着いていった。

 

 

 

 

    カズマside

 

 「…………来ないわね……」

 

 そう目の前の女神が寂しそうに呟いた。

 

 はい、カズマです。

 

 

 今、目の前にいるこいつは元日本を担当する女神アクアで俺にむかつくことばっか言ってくるので仕返しのつもりで異世界に持っていける゙者゙として連れてきてやった。

 日本から転生した俺はこの駄女神といろいろありながらもなんとか冒険者になり土木工事の仕事で金を稼ぎ装備を最低限揃えてクエストにいった。

 討伐対象はカエルで、カウンターのお姉さんから大きいとは聞いていたが精々一メートルだろとか思って行ったらそれが間違い。その三倍の三メートル位あった。

 そしてアクアが調子にのったせいで頭からパクりと食われ、俺がアクア飲み込もうして動かないカエルを倒したわけだ。これを二回繰り返し、粘液まみれで泣きじゃくるアクアを連れ、その日の討伐を終えた。

 

 そしてこの女神が「アレね。二人じゃ無理だわ。仲間を募集しましょう!」とか言って募集したわけだが……。

 

 翌日、冒険者ギルドにて今に至る。

 

 そう、求人の張り紙出してからすでに゙半日以上゙も待ち続けている。

 俺たち以外にもパーティー募集をしている冒険者がいないわけではないのだが、その人達は次々と面接をし、談笑をしたあとどこかに連れだっていった。

 

 因みに俺は誰も来ない理由は分かっている。

 

 「なぁ、ハードル下げようぜ。お前は上級職かも知れんが俺は最弱職なんだ。 魔王討伐が目標だから仕方ないっちゃ仕方ないんだが、流石に上級職のみ募集ってのは難しいだろ」

 

 そう、上級職の募集が理由だ。アクアは今就いているアークプリーストもその中の一つだ。俺は最弱職だが……。

 

 アクアは魔王を討伐すると天界に帰れるのでできるだけ強力な人材を集めたいのだろう。

 

 「うう…だってだって………」

 

 「本当にこのままじゃ本当に一人もこないぞ?」

 

 「うっ……分かったわよ! なら私が直々に話かければ一人や二人簡単に入ってくれるわよ! 私はアクアよ、女神なのよ! この私が言えば「お願ですから連れていってください」っていう人が山ほどいるに決まってるわ! 待ってなさいよカズマ! 直ぐに連れてくるから!」

 

 そう言って自信満々に張り紙の方に走っていった。

 

 正直凄く…不安だ……。

 

 

 

 

 「カズマ。連れてきたわよ」

 

 「…はっはじめまして。シロナと言います」

 

 しばらくするとなんと、本当に直ぐに連れてきた!

 身長は俺より低く百五十センチ位。

 フードを被って顔は分からないが声から判断するに女性!

 

 流石は女神。たまには役立つな!

 

 俺の中でのアクアの評価が結構上がった。

 

 「こちらこそはじめまして。俺はカズマ。こいつがアクアだ。取り敢えず立っておくのも何だからこっちに座ってしばらく話そうぜ。それと、パーティーメンバーになるかもしれないんだからフード外して話そうぜ」

 

 シロナはしばらく悩んでいたようだが、やがて、

 

 「……分かりました。でも気味が悪いとか言わないでくださいね…?」

 

 俺はそれに頷くとゆっくりフードを外した。

 そして中から出てきたのはなんと、百人に聞けば百人は美少女と言う銀髪紅眼の美少女!

 本当にアクア、グッチョブ!!

 しかもアクアと違って残念タイプしゃない! この世界に来て初めて俺の幸運が使われた気がする! この子、絶対パーティーにいれたい!

 

 アクアが隣でニヤニヤしていたが無視しよう。

 

 最初はシロナがあまり話さなかったがちょっと話すと慣れてきたのか自然と話せるようになり、口調が変わっていた。多分こっちが素なのだろう。

 

 「あの~、気になったことがあるんだけどなんで上級職だけ募集なの? カズマは最弱職ですし、流石に肩身が狭くなると思うんだけど……。これじゃ、なかなか来ないんじゃないの?」

 

 「そうだぞアクア。今回はたまたまいただけで、やっぱり上級職だけは難しいからちょっと俺が書き直して……」

 

 俺がそう言って立ち上がろうとした時だった。

 

 

 「上級職の冒険者募集の張り紙を見てきたのですが、ここで合ってるでしょうか?」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 




 やっとカズマとオリ主を合わせられた!

 白奈はアクアが本物の女神だと気が付きました!

 因みに白奈の魔力は初期では一属性の最高魔法を一回うってぎりぎり走れる位の魔力が残る量です

 次回はあの二人です。

 面白く書けるか分かりませんがが精一杯書いていきます!


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第二話 『この残念な紅魔族に祝福を』

 皆さんこんにちは白城です。

 遅れてすみませんでした!
 本当は昨日に出そうと思ってたんです!

 今回からあの人が出ます!
 もう一人まで書けなかった……。

 結構長くなりました!
初めてだよ5000文字って!


    白奈side

 

 「上級職の冒険者募集の張り紙を見てきたのですが、ここで合ってるでしょうか?」

 

 私達が声が聞こえて方を向くと、そこにはまるで人形の様に整った顔をした少女が立っていた。

 

 この世界では子供が働いているのも別に珍しくないみたいだけど…。

 

 どこからどう見ても12~13歳位にしか見えなかった。

片目を眼帯で隠し小柄で細身な少女が、突然バサッとマントを翻し。

 

 「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」

 

 「えっと……めぐみんってあだ名?」

 「本名です」

 

 「「「……」」」

 

 「おい、私の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

 

 なんだろうこの子…?

 

 私達が反応に困っているとアクアが

 

 「………その赤い瞳、あなたもしかして紅魔族?」

 

 「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手めぐみん!我が必殺の爆裂は山をも崩し、岩をも砕く……!

……と言うわけで、優秀な魔法使いはいりませんか?……そして、図々しいお願いなのですが何か食べ物をくれませんか?もう三日も何も食べてないのです」

 

 それとお腹辺りからキューっと可愛い音が鳴った。

 

 ……ここはカズマに任せよう。

 

 「………まぁ、飯を奢る位は構わないけどさ。その眼帯はどうたんだ?怪我なら、アクア治してもらったらどうだ?こいつ回復魔法だけは得意だから」

 

 「だけっ!?」

 

 「………フッ、これは我が強大なる魔力を抑えるマジックアイテム!これが外される時があれは……。その時は、この世に大いなる災厄が降りかかることになるだろう!」

 

 封印みたいなものなのかな?

 

 「まぁ、嘘ですが。単に、オシャレで着けてるだけのただの眼帯で……、あっあっ、ごめんない。止めてください引っ張らないでください!ヤッヤメ、ヤメロォォーー!」

 

 カズマも同じことを考えてたみたいでその少女の眼帯を引っ張りはじめた。

 

 ……この子、中二病なのかな?

 

 めぐみんの眼帯を引っ張っているカズマと私に、アクアが言った。

 

 「………ええと。二人に説明するとね、彼女達紅魔族は、生まれつき高い魔力と知力を持っていて、大抵は魔法使いのエキスパートになる素質をもっているわ。そして、紅魔族はそれぞれが変な名前をもっているの」

 

 「んっ?二人?」

 

 カズマが疑問を持ったようだ。

 

 「カズマに説明してなかったっけ?シロナは日本人よ」

 

 「えっ!?」

 

 カズマは驚いたような顔をした。

 

 それもそうか、日本人で銀髪の赤い瞳なんて滅多にいないからね。

 

 「……うん。そうだよ。私の本名は島原白奈。日本人だよ」

 

 眼帯を解放され、気を取り直しためぐみんは

 

 「変な名前とは失礼な。やっぱり私がら言わせれば、街の人達の方が変な名前をしていると思うのです」

 

 それを聞いてカズマが。

 

 「……ちなみに、両親の名前を聞いてもいいか?」

 

 「母はゆいゆい!父親はひょいざぶろー!」

 

 「「「………」」」

 

 思わず私とカズマとアクアは沈黙する。

 

 「………取り敢えず、この子の種族には良い魔法使いが多いんだよね?カズマとアクア、仲間にするの?」

 

 「おい、私の両親の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

 

 「いいんじゃないの?冒険者カードは偽装出来ないし、強力な攻撃魔法を操る魔法使い、アークウィザードで間違いないわ。それに、カードにも高い魔力値が記されているもの。これは期待出来ると思うわ。あと、もし彼女が爆裂魔法を使えるならそれはとても凄いことよ!なにせ、爆裂魔法は修得がとても困難と言われいる爆発系の、最上級クラスの魔法だもの」

 

 「おい。この子や彼女ではなく名前で呼んで欲しい」

 

 「まあ、何か頼むといいよ。シロナもな。俺はカズマ。こいつはアクアだ。よろしく、アークウィザード」

 

 めぐみんは何か謂いたそうな顔をしながら、無言でメニューを受け取った。

 

 めぐみん最後まで名前で呼んでもらえなくて不満なのかな?カズマも何か私の呼び方シロナなってるし。まあ、ご飯奢ってくれるし、いっか。

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 「何でこうなるのーー!!?」

 

 草原にシロナの声が響きわたった。

 今、俺から少し離れた所でシロナが必死にめぐみんを背負いながら、ジャイアントトードに追いかけられている。

 

 うん、シロナ。その気持ちは良くわかるぞ。

 

 ああ、ジャイアントトードっていうのは、この前言っていた大きなカエルのことだ。因みにこのカエルの肉は唐揚げにするとちょっと硬いが意外にイケるといることがわかった。

 さて、何故シロナが追いかけられているのかは少し時間を遡る……。

 

 

 

   十数分前

 

 俺たちはご飯を食べた後めぐみんとシロナを連れジャイアントトードにリベンジに来ていた。

 

 「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります。準備が整うまでカエルの足止めをお願いします」

 

 「私は剣も使える職業なんだけど、まだ剣がないから今使える私の一番威力の高い魔法使うよ。ごめん、私からもお願い」

 

 平原の、遠く離れた場所にはカエルが二匹のカエルの姿。そのカエルはこちらに気付いて向かってきていた。

 だか、その逆方向からは一匹の別のカエルがこちらに向かっていた。

 

 「二人は遠くのカエルを標的にしてくれ。近いほうは……。アクアとなんとかなるだろ。行くぞアクア。今度こそはリベンジだ。お前、一応は元女神なんだろ?たまには元女神の見せてみろよ!」

 

  「元って何!?ちゃんと現在進行形で女神よ私は!?アークプリーストは仮の姿よ!それに、仲間募集で私がシロナ連れて来た時、活躍したじゃない!」

 

 涙目になりながら怒ってくる自称女神を、シロナは反応しなかったが、めぐみんは。

 

 「女神?」

 

 「を、自称している可哀想な子だよ。たまにこう言うこと口走るけど、そっとしておいてやって欲しい」

 

 俺の言葉に、めぐみんは同情の目でみている。

 涙目になったアクアが、ヤケクソ気味に一番近いカエルへ駆け出した。

 

 「何よ打撃が効き辛いカエルだけど、今度こそはっ!」

 

 そう叫んでカエルに突っ込んで頭からカエルの体内に侵入した学習能力のないアクアが、一匹のカエルの足止めに成功した。

 

 「なるほど。流石は女神。身を挺しての時間稼ぎか」

 

 さて、アクアが時間稼ぎをしている間にカエルを倒さなきゃな。

 

 ……そんなことを考え走り出すと二人の周囲の空気がビリビリと震えだした。

 シロナの方は体の周りを火花が纏っているように見える。

 

 「いきます!これが、人類が行える中でも最も威力のある攻撃手段!これこそ、究極の攻撃魔法!」

 

 「私もいきます。これが今、私使える一番威力の高い攻撃魔法です!」

 

 めぐみんの杖の先が膨大な光を凝縮した様な、近く眩し光。

 シロナは纏っているように見えた火花が集まりだし輝いた。

 

 「エクスプロージョン!」

 「ファイアーストーム!」

 

 平原に一筋の閃光が走り抜ける。

 二人の放たれた。光の先にいたカエルに吸い込まれる様に突き刺さると……!

 

 その瞬間、周りの空気を震わせる轟音と、大地を焼き尽くす熱量と共に、魔法の効果が現れた。

 カエルが片方は爆裂四散し、もう片方は圧倒的な炎の光に飲み込まれた。凄まじい爆風と熱風に吹き飛ばされそうにさりながらも、俺は足を踏ん張り顔を庇う。

 爆裂が晴れると、そのには二十メートル以上のクレーターと十メートル先まで焼き尽くされた平原があり、その魔法の威力を物語っていた。

 

 「ヤバイ、魔力使い過ぎた……」

 

 シロナはそんなことを言っているが俺は

 

 「……すげー、これが魔法か……」

 

 と俺が二人の魔法に感動しているとその近くで、爆音で目覚めたカエルが地面からあらわれた。

 

 シロナは魔力が残り少なくあれでは無理だろうが、めぐみんの爆裂魔法で消し飛ばせは良いだろう。

 

 「二人とも!一旦離れて、距離をとってからめぐみんはもう一度攻撃を………」

 

 俺はそう言いかけて、シロナの近くのめぐみんを見るとめぐみんがバタっと倒れた。

 

 「「えっ?」」

 

 シロナも俺と同時に気の抜けた声をあげた。

 

 「ふっ……。我が奥義の爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つとれません。」

 

 「………えっ?嘘でしょ!?ちょっと待って!カエルがこっち向かってきてるんだけど!私もう魔法使えないんだけど!」

 

 シロナはそう言って急いでめぐみんを背負い、カエルの真逆方向に走り始めた……。

 

 

 

  そして今に至る。

 

 結局、シロナとめぐみんは、アクアが身を挺して動きを止めたカエルに俺が止めを刺している間に追い付かれ頭から食われた。それのカエルを急いで倒し。

 何とか、ジャイアントトードの討伐に成功した。

 

 

 

 

 

    白奈side

 

 「ううっ…。生臭いよう…。生臭いよう……」

 

 粘液まみれになった私とアクアがカズマのあとを付いていく。めぐみんは魔力がなく動けないので一番動けるカズマが背負っている。

 

 「カエルの中って、臭いけど良い感じに暖かいんですね………」

 

 そんな知識知りたくもなかったよ。

 

 「今後、シロナは威力の高い魔法はレベルがあがってからだな。あと、めぐみんは爆裂魔法は緊急の時以外は禁止な。他の魔法で頑張ってくれよ」

 

 「ごめん。今度からしっかり考えて魔法を使うね」

 

 本当にごめん。めぐみんに負けじと無駄に張り切ったせいで……。

 

 カズマの言葉に、おぶさっためぐみんが、肩を掴む手に力をこめた。

 

 「…………使えません」

 

 「……はっ?」

 「……えっ?」

 

 「めぐみん。私の聞き違いだと思いたいんだけど、何が使えないの?」

 

 めぐみんがカズマの肩を更に強く掴み

 

 「………私は爆裂魔法しか使えないんです。他の魔法は、一切使えません」

 

 「………マジ?」

 

 「………マジです」

 

 「「「……」」」

 

 めぐみんの言葉に今まで泣いていたアクアが

 

 「爆裂魔法以外使えないってとういう事?爆裂魔法を習得できる程、スキルポイントが貯まっているなら、他の魔法を習得してないわけがないでしょう?」

 

 それを聞いてカズマが不思議そうな顔をしている。

 アクアがその顔を見てカズマに説明している。 

 そう。スキルポイントは職業に就いた時に貰える、スキルを習得するために必要なポイントで、優秀な者ほど初期ポイントは多いらしい。因みに私は初期ポイントは多くて百ポイント位あった。これは特典のお陰だね。

 

 爆裂魔法とは複合属性といって、火や風系列の魔法の深い知識が必要らしい。更に習得するときに大量のスキルポイントを使うので、他の魔法は簡単に習得できる。

 

 「私は爆裂系魔法が好きなんじゃありません。爆裂魔法が好きなのです!確かに、他の魔法をとっておけは冒険は楽でしょう!…でも、ダメなのです。私は爆裂魔法しか愛せない!だって、私は爆裂魔法を使うためだけに、アークウィザードになったのですから!」

 

 「素晴らしい、素晴らしいわ!非効率ながらもロマンを求める姿に私は感動したわ!」

 

 ……カズマ。この魔法使いはダメだと思うよ…。

 

 カズマも同じ考えだったようで

 

 「そっか!多分茨の道だろうけど頑張れよ。それじゃあギルドに着いたら今回の報酬は山分けにしよう。また機会があればどこかで……」

 

 カズマの言葉はそこで止まった。

 

 「我が望みは爆裂魔法を放つ事。今なら食費と雑費だけです。これは、もう長期契約を交わすしか……ちょっと待ってください!必死に手を離そうとしないで下さい!もうどこのパーティーも拾ってくれないのです!

お願いします!私を捨てようとしないでください!」

 

 周りを見て見ると、捨てないでなど、大声で叫んだためか、通行人達にこちらを見られひそひそと話をしている。

 更に、粘液まみれの私達がいるせいか余計めだっている。

 

 これって……、不味い?

 

 通行人達の会話が聞こえてくる。

 「やだ、あの男。女の子を捨てようとしている…!」

 「見て!その近くには粘液まみれの女の子達を連れているわよ!」

 「二人ともヌルヌルよ。どんなプレイをしたのよ。あの変態!」

 

 これ、カエルの粘液でカズマ悪くないんだけどなぁ………。

 

 それを聞きめぐみんが口元をにやり歪め

 

 「どんなプレイでも大丈夫ですから!先程のカエルを使ったプレイだって越えてみせ」

 

 「よーし、わかった!めぐみん、これからもよろしくな!」

 

 あれっ?

 

 「あの、私もこのパーティー入っても良いですか?このパーティー居心地がいいので入りたいんですが」

 

 「んっ?めぐみんは兎も角、シロナは最初から入れる気だったよ?」

 

 「えっ?ありがとうございます!では、これからもお願いしますね」

 

 私はこの世界に来てパーティーに入れた。

 

 「……取り合えず、皆。その粘液を何とかしてくれ、周りからの目が痛いから!」

 

 カズマはその日から女の子を粘液まみれにして遊ぶ変態疑惑がかけられた。

 




 なるべく二日か三日のペースでしばらく投稿していけるように頑張ります!

 次回はあのクルセイダーです!

 面白く書けるように頑張ります!


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第三話 『この変態クルセイダーとスティールに祝福を』

 こんにちは白城です。

 本っ当にすみません!遅れました!

 あいかわらず話が進むスピードが遅いですよ。

 すらすら書ける人って羨ましいです。


   カズマside

 

 俺は冒険者ギルドの受付でクエストの報告を終えて報酬を貰う。俺以外の三人はそのままだと生臭いうえ、俺の変態疑惑がどんどん広がる可能性があるため、大衆浴場に追いやった。

 仕留めたカエルの内一匹は爆裂魔法で消滅したため、クエストの報告はどうなるかと心配したが、大丈夫らしい。

 俺は低レベルの冒険者ほどレベルが上がりやすいらしいので、カエルを五匹狩って一気にレベルは5になった。

 これでステータスは少しは上がっただろう。

 

 「しっかし、本当にモンスターを倒すだけで、強くなるんだなぁ……。本当にゲームの世界みたいだ」

 

 

 俺のカードにはスキルポイントが4と表示されている。

 

 これを使えは俺もスキルを覚えられ、魔法も使えれる様になるわけか。

 

 「ではジャイアントトード3匹の買い取りとクエストの報酬を会わせて、十一万五千エリスになります。ご確認くださいね」

 

 ジャイアントトードの買い取りが一匹五千円。

 そして、クエストの報酬が十万円。

 なので、カエル六匹の取引と報酬を合わせて、十三万円。四人で山分けすると、三万五百円。

 

 ………割にあわねー。

 

 まあ、でも俺のパーティーにはチート持ちのシロナがいてくれるし、もっと上手くできれば、簡単にクエストを達成できるだろう。

 他のクエストは……うん、無理。

 やっぱりこの世界で生きていくのは甘くない。

 

 「カズマー、どうしたんですか? 他の二人なら馬小屋に行ったよ」

 

 そんなことを考えていると、扉の方からシロナが出てきた。

 お風呂上がりなのであいかわらず日本人とは思えない腰まで届く長い銀髪は少し濡れていて、顔はうっすらと赤くなっている。格好はいってなかったが昨日と同じで白いコートみたいなものを着ていた。

 

 ………可愛い。あの、駄目神とは違うな。本当に俺のパーティーに入ってくれて本当にありがとう……(涙)。

 

 シロナはそんなことを俺が考えているとも知らず不思議そうな顔をしていたが、しばらくすると、歩いてきて俺の目の前の席に腰を掛けた。

 それから、俺は少し緊張しながらシロナに同じ日本人ということで、この異世界の話とアクアについて話合っていた。

 

 

 「……すまない、ちょっといいだろうか?」

 

 俺とシロナが異世界の過酷さとアクアの使えなさにぐったりしていると、背後から声をかけられた。俺達はぐったりした目のまま声が聞こえてきた方を向いた。

 

 「はい、なんでしょうか?」

 「なんでしょ…う……か……!?」

 

 女騎士

 

 それが彼女を表すのに最適な言葉だろう。

 それもとびきり美人の!

 俺の身長が165センチなので、それより高いとなると、170センチぐらいだろうか。

 金髪碧眼のクールな顔立。

 俺は年上の美人相手というと事で緊張し、上擦った声になってしまった。

 いけないいけない。長い引き篭り生活の弊害だ。

 

 「うむ………。この募集の貼り紙を見てきたのだが、もう人の募集はしていないのだろうか?」

 

 その女騎士が見せてきたのは一枚の紙。

 

 そう言えば、めぐみんをパーティーに入れてから剥がしてなかったな。

 

 「パーティーの募集はしていますけど、あまりオススメはしませんよ?」

 

 「ぜひ私を!ぜひ私をパーティーに!」

 

 「「えっ?」」

 

 俺の変わりにやんわり断ろうとしたシロナの手を、突然、女騎士がガッと掴んだ。

 

 「い、いやいや、ちょっと待って!色々問題があるパーティーなんです。仲間二人はポンコツだし、俺は最弱職で、さっきだって俺以外の三人が粘液まみれに……」

 

 「粘液まみれ!やはり先ほどの粘液まみれの三人はあなたの仲間だったのか!一体何があったらあんな目に……!わ、私もあんな風に……!」

 

 「「えっ!?」」

 

 待て。今このお姉さんなんつった?

 シロナも凄く驚いた表情をしているし、聞き違いではないと思うが。

 

 「い、いや違う。あなたを含めた三人の少女、それがあんな目に遇うだなんて騎士として見過ごせない!

私はダクネス。クルセイダーというナイトの上級職だ。募集の条件に当てはまると思うのだが!」

 

 何だろう、この女騎士、目がやばい。クールなお姉さんだと思っていたのに、もったいない。

 そして、俺の危機感知センサーが反応している!シロナを見て見ると、どうやら同じらしい。

 

 「え、ええーと、さっきこの方が言ったように、オススメはしませんよ!仲間の一人は役に立たなそうだし、もう一人は一日一発しか魔法が撃てないそうです!」

 

 「そうですよ、さらに俺は最弱職です。シロナは役にたちますが、それでもポンコツパーティーなんで、方の所をオススメしま……っ!?」

 

 俺達二人が必死に止めるが。

 

 「なら尚更都合が良い!実は言い辛かったのだが、私は力と耐久力には自信があるのだが、その………あまりに不器用で攻撃が全くあたらないのだ……」

 

 やはり俺とシロナのセンサーは正しかったらしい。

 シロナがダクネスの話をを聞いて疑問を持ったらしく

 

 「ええっと、両手剣のスキルをとれば良いのではないでしょうか?あれならすぐに剣が当たるようになりますし……」

 

 「それではつまらんだろうが!」

 

 「えっ!?」

 

 「私が必死に攻撃しても相手には当たらず、私が攻撃を一方的にくらうのが気持ちいいのではないか!」

 

 俺達は二人で同じことを思っただろう。

 

 ………ああ、わかった。この人も、性能だけじゃなく中身までダメな系だ。

 

 

 

 

 

 

    白奈side

 

 「なあ、スキルの習得ってどうやるんだ?」

 

 翌日。隣の席に座っている、カズマがそんなことを聴いてくる。 ついでに反対の隣に座っているのはめぐみんだ。

 

 「スキルの習得?それならカードに出ている、スキル習得可能なスキルってところで……そう言えば、カズマは初期職業の冒険者でしたね。それなら、ギルドの人が誰かにスキルを教えてもらえば習得可能になるって言っていた気がするよ?」

 

 そう、私は魔剣士の上級職だけど、あとから初期職業の冒険者のスキルが気になって、一人でギルドに来て聴いてみたのだ。

 

 「教えてもらう?」

 

 私の説明では足りなかったらしく

 

 「ええっと、確か目で見て、そのスキルの使用方法を教えてもらうと習得可能スキルの所に項目がでるから、スキルポイントを使ってそれを選べば習得可能っていっていた、気がする……」

 

 って、なんでめぐみんとかアクアに聞かないで私に聞くの?

 カズマがそんな私の考えが分かったようで

 

 「だって、めぐみんだと、爆裂魔法とかで面倒になりそうだし、アクアはその……」

 

 「……ああ、なるほどなんとなくわかったよ」

 

 「話戻すけどじゃあ、俺がシロナに教えてもらえば魔法を使えるってことか」

 

 「うん、多分私の特典の強力な魔法までは無理だと思うけど、それ意外なら大丈夫だと思うよ」

 

 「じゃシロナ。後で簡単な魔法でも教えて……」

 

 「そうですよカズマ!つまりカズマも爆裂魔法を使えるのです!」

 

 「きゃっ!」

 「うおっ!」

 

 めぐみんが私の話の最後を聞いていたのか隣から飛び出てきた。

 

 「習得に必要なポイントはバカみたいにありますが、それを差し引いても爆裂魔法を覚える価値があります!冒険者はアークウィサード以外で爆裂魔法を覚えることができるのです。さあ、私と爆裂道を歩もうじゃないか!」

 

 いやっ、爆裂道って何!?

 

 「ちょ、落ち、落ち着けロリッ子!つーか、スキルポイントってのが今4ポイントしかないんだか、これで習得できるものなのか?」

 

 「ロ、ロリッ子……!? …ふっ……この我がロリッ子……」

 

 「……なあ、シロナ。爆裂魔法ってどれくらいで習得できるんだ?」

 

 なんか、めぐみんが落ち込んでるんだけど………。

 

 「ええと、冒険者は習得に普通より多くポイントが使うから、爆裂魔法だと私の魔法に使ったスキルポイントを考えると50以上使うと思うよ。だから、爆裂魔法を覚えるなら何年もスキルポイント貯めていかないと覚えれないと思う」

 

 「待てるかそんなもん。そんなもんより、他の魔法を覚えるわ!」

 

 ああ、カズマの言葉でさらにめぐみんが落ち込んでるんだけど……。

 

 「なあ、アクア。お前なら便利なスキルたくさんもってるんじゃないか?何かお手軽なスキルを教えてくれよ。習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じの」

 

 アクアがカズマの質問にしばらく考え

 

 「……しょうがないわねー。一回しか見せないから良く見てなさいよ。まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちないように載せる。そして、この種を指で弾いてコップに一発で入れるのよ。すると………」

 

 ああ、この流れ、宴会芸スキルだ……。

 

 カズマも同じことを思ったのか

 

 「誰か宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神!」

 

 「なんでよーー!?せめて最後まで見てよー!?」

 

 カズマの言葉にショックを受けたらしいアクアも、めぐみんに続いてしょぼんとし始める。

 

 「キミ面白いね! キミがダクネスが入りたがっているパーティーの人? 有能なスキルが欲しいなら盗賊スキルなんてどうかな?」

 

 突然の笑い声が横から聞こえてきた。

 そちらを見るとそこには二人の女性がいた。

 一人は昨日声をかけてきた鎧の女性。もう一人は身軽な格好をした女性。

 

 「ええと、盗賊スキル? どんなものがあるでしょう?」

 

 「盗賊スキルは罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。キミは初期職業の冒険者なんだろ? なら、盗賊スキルは覚えるのにスキルポイントは少ないしお得なスキルだよ。どうだい? 今なら、クリムゾンビア一杯で教えてあげるよ」

 

 安っ! 何それ、凄い便利なスキルじゃん! ダンジョン探索とかに凄く役立ちそうだね!

 

 「よし、お願いします! すみませーん、この人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」

 

 

 

 

 

 

 カズマが盗賊スキルを覚えるためにギルドを出た後。

 

 

 今カズマは盗賊スキルを教えて貰っているだろう。

 めぐみんのフォローは無理だけど、アクアなら

 

 「ねえ、めぐみんはともかく、アクアなら宴会芸スキル以外にも良いスキルあるんじゃないの?アークプリーストなら支援魔法とか回復魔法とかできるんでしょ?それを教えてあげれば………」

 

 「駄目よ!それだと私の存在意義がなくなるじゃない! それを奪われてたまるもんですか!」

 

 ええー、何それめんどくさい。

 

 「ちょっと待ってください!めぐみんは兎も角ってなんですか! 我が奥義の爆裂魔法はとても素晴らしいスキルですよ! なにせ、全ての敵に絶大なダメージを与えれることができるのから!」

 

 めぐみんが胸を張って言っているが。

 

 それで魔力がなくなって動けないなら、意味ないじゃん!!

 はあ。カズマ、早く来てくれないかな……。

 

 

 

 

 

 

 数分後カズマが帰ってきた。

 

 

 「おかえりカズマ………って、何でその人泣いてるの?」

 

 「いや、これは……」

 

 カズマが答えずらそうにすると、近くにいたダクネスが、

 

 「なに、クリスは、カズマにぱんつをを剥がされた上にあり金むしられて落ち込んでいるだけだ」

 

 えっ?

 

 「ちょっとあんた口ばしってんだ! 確かに間違ってないけど、ほんと待てって!」

 

 えっ!? 間違ってないの!?

 

 「うん、そうだね!公の場でぱんつを脱がされたからって、いつまでもめそめそしてもしょうがないね! じゃあ私は下着を人質にされて有り金むしりとられたから、ちょっと稼ぎの良いダンジョンにいってくるよ!」

 

 「ちょっと待ってくれ! アクアとめぐみん以外の周り女性冒険者の目まで冷たい物になってるから! シロナ、頼む何か言ってやってくれ、お願いします!」

 

 う~ん、でもカズマは最初に問題起こした私をパーティーに入れてくれたし、やっぱり良い人だと思う。よし! 

 

 「……ねえ、カズマ。その使ったスキルってどんなものなの?」

 

 「ええと、窃盗スキルって言って、相手から何でもランダムで何か奪い取るってスキルだ」

 

 「じゃあ、ええと、ぱんつ以外も奪えるんだよね? じゃあ、アクア、何が宴会芸のものたくさん持ってない?あるなら、それちょっと貸して欲しいんだけど」

 

 「……えっ?シロナまさかカズマを味方するつもりなの?」

 

 「うん、カズマは良い人だと思うしね」

 

 私がそう言うとアクアが驚き、しぶしぶ宴会芸のもの大量に渡してくる。

 ……って、多くない!?でもこれなら!

 

 「じゃあ、カズマ。私に窃盗スキル使ってみて。これで宴会芸のものとかがとれたらぱんつ以外にも取れるってことになるでしょ」

 

 「そういうことか!わかった。じゃあ、いくぜ、『スティール』!」

 

 ……あれっ、何か下半身に違和感があるんだけど………。

 私はそれが何かわかった瞬間、顔を真っ赤に染め

 

 「……ごめんカズマ。もう弁護出来ない……」

 

 「すみませんでした」

 

 そう、カズマの右手には私のぱんつが握られていた。

 

 それによってカズマを見る目が更に冷たくなり、女性冒険者だけでなく、周りの女性達の視線までが冷たい物になった。

 




 次こそは三日までには投稿したい!

 これからも面白く書けるように頑張っていきたいです。

 次回はキャベツの話だった気がします。


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第四話 『この異世界のキャベツ達に祝福を』

 こんにちは白城です。

 前回一日遅れたので今回早く投稿です。そのかわり少し短いです。

 仲間にチート持ちの使えるシロナがいるのでどう問題を起こすかで悩んでいます!

 カズマの他に白奈もこの作品では毎回苦労しそうですね。


   白奈side

 

 私はカズマから急いでぱんつを回収し、トイレにかけこんだ。

 そして、私は穿き直し。

 

 何でカズマはあういうのは運がいいの!!?顔あわせずらいじゃん!

 

 そんなことを考え、頭を抱えてうずくまっていると

 

 『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 大音量のアナウンスが響いた。

 

 何、こんなときに!?

 

 私は考えることをやめることでギルドに戻った。

 

 

 

 

 私が戻ってくると、ある程度はカズマへの冷たい視線が治まっていた。

 

 「お、おう。シロナおかえり」

 

 カズマが気まずそうにする。

 

 「う、うん。ただいま。……ええと、取り合えずあの話は置いておいて………それで緊急クエストって何?強力なモンスターが街に襲ってきたの?」

 

 私は不安になりながら聞くと、

 ダクネスが嬉しそな表情をしながら

 

 「……ん、キャベツの収穫だろう。そろそろ収穫の時期だからな」

 

 ………へっ? キャベツ?

 

 「ねえ、そのキャベツってモンスターか何か?」

 

 ちらっと、見てみるとカズマも同じような私と同じような表情をしていた。

 そして、めぐみんとダクネスは可哀相な人を見るかのような目でみつめてきた。

 

 「あー……日本人のカズマとシロナは知らないでしょうけど、この世界のキャベツは……飛ぶわ!」

 

 アクアの話によると、味が濃縮してきた収穫の時期に近づくと、簡単に食われてたまるかとばかりに、街や草原を疾走し、大陸や海をこえ、最後には誰にも目のとどかない場所でひっそりと息を引き取るといわれている。それなら、私達が一玉でも多く捕まえ美味しく食べようって事らしい。

 

 ………はあ、早く終わらせよう。何で異世界にきて、キャベツと戦わないといけないの?

 

 「カズマにシロナ、はやくいきましょう!これでは出遅れてしまいます!」

 

 めぐみんに言われ急いで街の門に行くと冒険者達が懸命にキャベツをおいかけていた……。

 

 

 

 

 

 無事キャベツ狩りを終え、周りがお祭り気分になっている中、

 

 「「「納得いかない!」」」

 

 納得していない人達がいた。

 そう、私とカズマとアクアである。

 

 「何故、キャベツの野菜いためがこんなに美味いんだ。納得いかねえ」

 

 うん、何でこんなにもキャベツが美味しいんだろう……それよりも………。

 

 「何でキャベツを食べるだけてレベルが上がるの?楽なのはいいけど何か納得いかない」

 

 「何よ、二人はいいじゃない!私なんかキャベツをたくさん取ったのに、ほとんどがレタスってどういうことよ!」

 

 そう。アクアの取ったキャベツは実はほとんどがキャベツではなくレタスで、レタスの換金率は低く、キャベツを取ったときに比べて3割程度になる。

 

 「……しかし、やるわねダクネス!あなたの鉄壁の守りには流石のキャベツ達も攻めあぐねていたわ」 

 

 「いや、私などただ硬いだけの女だ。私は不器用で動きが速くも無い。たがら、剣を振るっても全く当たらず、壁になるしか取り柄がないのだ。……その点、めぐみんは凄まじかったぞ」

 

 「ふっ、我が爆裂魔法の前においては何者も抗うなど叶わず。………それよりも、カズマとシロナの活躍の方が凄かったです。カズマは魔力を使い果たした私を素早く回収して背負い、帰ってくれました」

 

 「……ん、私がキャベツやモンスターに囲まれ、袋叩きにされている時もカズマは颯爽と現れ、キャベツ達を収穫していってくれた。助かった、礼を言う」

 

 「確かにカズマは盗賊スキルを上手く活用してキャベツ達を強襲する、その姿はまるて暗殺者のようです。シロナは強力な風魔法でキャベツ達を空中から地面に落とし、その衝撃で気絶させて収穫していましたね。そして、自分にくるキャベツは全て風魔法で受け流していました」

 

 「カズマにシロナ……私の名において、カズマには【華麗なるキャベツ泥棒】、シロナには【風の使い手】の称号を授けてあげるわ」

 

 風の使い手!何それ格好いい。でも……。

 

 「いらんわ!ああもう、どうしてこうなった!」

 

 そう、私とカズマには困ったことがあった。

 

 「では……。私はダクネス。職業はクルセイダーだ。一応両手剣を持ってはいるが攻撃力は期待しないでくれ。何せ、不器用すぎて攻撃がちっともあたらん。だか壁は得意だ。ガンガン壁にしてくれて構わん。これからよろしくたのむ」

 

 仲間が一人増えました。

 

 「……カズマ。ウチのパーティーもなかなかの顔触れになってきたんじゃない?アークプリーストの私にアークウィザードめぐみん。そして、魔剣士のシロナにクルセイダーのダクネス。五人中四人も上級職業のパーティーよ。カズマ、あなたものすごくついてるわよ?」

 

 私以外の上級職業は一日一発きりのアークウィザードに攻撃が当たらないクルセイダーだけど………。そして……。

 

 「カズマ、後方支援なら任せなさい!このアークプリーストの私が最弱職業のあんたに支援魔法でもかけれは少しつかえるでしょ!」

 

 その活躍を違う行動でマイナスにするこの(駄)女神のアークプリースト。

 

 「んん……っ。あのキャベツの攻撃は凄かったな……。カズマ!このパーティーには壁役が私だけの様だから、いつも壁役にしてくれて構わん!なんなら、危険な状況では真っ先に捨て駒としたくれ!んん……っ、想像しただけで武者震いが……っ!」

 

 カズマ、これやっぱり……昨日も思ったけどタダのドMだよ。

 

 「それではカズマ。これから間違いなく足を引っ張る事になるだろうが、その時ば遠慮せず罵ってくれ。これからよろしくたのむ」

 

 隣でカズマが涙目でこちらを見てきた。

 

 ……カズマ、出来る限りのフォローはするけど全部は無理かも…………私、入るパーティー間違えたかな……。

 

 そんなことを思っていた。

 

 

 

 

    カズマside

 

 冒険者レベルが7になった。

 

 キャベツ狩りでレベルが2上がったことになる。シロナも言っていたが何故キャベツを食べただけでレベルが上がるのだろう。このことにいちいちツッコミをいれていればきりがないので考えるのをやめよう。

 キャベツが一玉一万エリスの報酬は、新鮮なキャベツを食べると経験値が貰えるからだそうだ。

 レベルが上昇してスキルポイントが増えたが現在のスキルポイントは3ポイント。

 俺は仲間のシロナに《片手剣》スキルと《初級魔法》スキル教えて貰った。パーティー的には覚えても意味がないが自分でも使ってみたい!

 その時にシロナの職業のことも詳しく聞いてみた。強力な魔法と剣も使えるなんて羨ましい。俺も本当はこんな職業を使えるようになってたはずなのに……。

 スキルの説明だが片手剣スキルは片手剣の扱いが上達、初級魔法スキルは火、水、土、風の各種の簡単な魔法が使えるようになるスキルらしい。

 魔法使いの皆は殺傷力のない初級はとらず中級魔法をとるようだが、シロナは初級から上級の強力な魔法までとっていたので助かった。

 中級魔法は、俺がとるには10ポイント使うので魔法の攻撃はやはりシロナを任せた方がいいだろう。

 スキルも覚えて、冒険者らしくなってきたが、装備を何とかしたい。何せ今の俺の格好はジャージにショートソード一本のみ。

 と、いう訳で。

 

 「……で、シロナは分かるけど何で私まで買い物に付き合わされるのよ」

 

 俺は、シロナと文句をつけるアクアを連れ、武器ショップにきていた。本当にバカかこいつは。

 

 「いや、お前も一応装備調えておけよ、俺とお前も似たようなもんだろ?お前ひらひらした羽衣だけじゃないか」

 

 俺とアクアもこの世界に来たままの格好だ。

 

 「あんたバカなの?」

 

 お前には言われたくない。ほら見ろ、隣のシロナだってシド目でみてるだろ。

 

 「あんた忘れてるみたいだけと、私は女神よ?二人に言ってなかったけどこの羽衣だって神具に決まってるじゃない。これは全ての状態異常を受け付けず、強力な耐久力と様々な魔法が掛かった一品よ?これ以上の装備なんてこの世界に存在しないわ」

 

 そんな凄い神具を馬のエサと干しているこいつはやっぱりバカなのか?

 

 「それは良いことを聞いた。ないと思うが生活に困ったら、その神具売ろうぜ。おっ、この革製の胸当ていい感じだな」

 

 「……ね、ねえ、冗談でしょ? この羽衣は私が女神である証拠みたいな物だからね? ねえ、売らないわよね? シロナもその手があったかみたいな顔しないでよ! ね? ね? う、売らないわよ?」

 

 「「………」」

 

 「ね、ねえ!なんか喋ってよ!もっと心配になるじゃない! 本当に売らないからね!」

 

 アクアのそんな叫び声を聞きながら装備を調えた。




 次の投稿は少し遅れるかもです。

 次回は多分リッチーのあの人がてできます。

 これからも精一杯書いていきます!
 


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第五話 『この使えない(駄)女神様に祝福を』

 こんにちは白城です。

 すみません、リッチーまで書けませんでした!

 カズマ視点の方が多くなりました。途切れる所が見つからなくて。
 


    カズマside

 

 「………おお、見違えたではないか」

 

 「カズマがちゃんとした冒険者にみえるのです」

 

 なら、今まで俺は冒険者ではなく何に見えていたのか聞きたい。

 俺の今の格好はこちらの世界の服の上から革製の胸当てと金属製のこて、同じように金属製のすねあてを装備している。シロナの格好は地面まで届きそうな白いコートでその中に金属製の胸当てを装備して、腰には長めの片手剣だ。

 「今のままだとファンタジー感ぶち壊しだ」などのアクアから苦情を受けたので、他にもこちらの世界の服を数着買っておいた。

 魔法系のスキルを使用する際には、片手をあけておいた方がいいと言われた。シロナがいるが魔法を覚えてみたので、俺も魔法剣士みたいなスタイルでいこうと思う。

 クリスとのスティールで貰ったお金は大分減ったが、シロナが持っているお金を半分くれると言ってくれたのでシロナとのもあわせると、一ヶ月は食べる分は残している。

 そして装備を調え、魔法やスキルを覚えると、クエストに行きたくなるもので、その事を皆に伝えるとダクネスが頷いた。

 

 「じゃあ、ジャイアントトードが繁殖期に入っていて街の近場で多く出没しているのでそれを………」

 

 「「カエルはやめよう!」」

 

 ダクネスが言っている途中でアクアとめぐみんが拒絶した。何も言わないが、良く見るとシロナも少し顔が青くなっている。

 

 そういうことか……。

 

 だかあの事を知らないダクネスは不思議なようで。

 

 「んっ? 何故だ? カエルは刃物が通り易いし、攻撃も舌を使った補食しかしてこない。倒したカエルも食用で売れるから稼ぎもいい。金属を装備してなければ食われたりするらしいが、今のカズマとシロナは装備しているので狙われないと思うぞ。アクアとめぐみんはしっかり私が盾になろう!」

 

 今の説明を聞いてホッとしたシロナが。

 

 「……えっとね。この私を含めた三人はカエルに食べられた事があるから、私はそこまでひどくないけど、アクアとめぐみんは特にトラウマになっているだよ。頭からパックリいって、粘液まみれになったから。だから、この二人のために今日は違うクエストに……」

 

 「……粘液まみれ!頭からパックリ……」

 

 「おい。お前今ちょっと興奮してないだろうな」

 

 「してない」

 

 ダクネスは赤い顔でもじもじ答えるが、俺は凄く不安になった。シロナもやはり不安そうにダクネスを見ていた。

 

 こいつ、目を離したら一人でカエルを食われにいかないだろうな。

 

 「じゃあ、カエルは除くとして、このパーティーで初めてのクエストだ。楽に倒せるのがいいな」

 

 俺の意見にアクアを除く三人が掲示板に手頃なクエストを探しに行った。

 だか、アクアは俺を小バカにしたように。

 

 「これだから内向的なヒキニートは……。そりゃあ、カズマだけ最弱職だから慎重になるのもわかるけど、私達のパーティーは私を含めた上級職ばかり集まったのよ? それに、特典を持っているシロナだっているのよ? なら、もっと高い難易度のクエストに行ってガンガンお金を稼いで、どんどんレベルを上げて、早く魔王を討伐するの! という訳だから、一番難しいクエストにいきましょう!」

 

 ………やはりバカだ。

 

 「はあ………お前あまり言いたくないけど……。まだほとんど訳に立ってないよな?」

 

 「!?」

 

 アクアが俺の言葉にビクリと反応する。

 だか、それに構わず。

 

 「本来なら俺は、シロナみたいな強力な職業や装備、能力を貰って、ここでの生活は困らないはずだったんだ。今はシロナのお陰で大分楽になっている。だが、俺は無償で神様から特典を貰える身で、能力ではなくお前を選んだ訳だが、お前がその能力や装備並みに役立っているのかと問いたい。どうなんだ? 最初は自信満々だった割に、ほとんど役に立たない元なんとかさん?」

 

 「うっ……。も、元じゃなく、一応今も女神です……」

 

 アクアがシュンとなりながら答えるが、それに声を張り上げ。

 

 「女神!? 女神ってあれだろ!? 勇者が一人前になるまで時間稼ぎをするやつだろ!! 今回キャベツ狩りでお前がやった事は何だ!?最終的にはキャベツをたくさん捕まえてたみたいだが、キャベツに翻弄されて泣いてただけだろ? それで女神!? そんなんで女神を名乗っていいのか!? この宴会芸しか取り柄のない穀潰しがぁ!」

 

 「わ、わああああーっ!」

 

 テーブルに突っ伏して泣き出したアクアを見ながら、小バカにされた事に対する逆襲が完了し、満足する。

 

 「……カズマ、あまりアクアを苛めてはいけませんよ?」

 

 そう言ってシロナが戻ってきた。

 

 「あれっ? シロナ、クエストはどうしたんだ?」

 

 「私が行ってもモンスターの事とか分からないから二人に任せてきた」

 

 そう言って掲示板にいる二人に視線を向けた。

 

 そう言って少しシロナと会話するとアクアがキッと顔を上げ。

 

 「わ、私だってこの世界にきてから、シロナを連れてきたり、回復魔法とか、一応役に立っているわ! なによ、このままちんたらやってたら、いつ魔王討伐できるかわかってんの!? 何かいい考えがあるなら言ってみなさいよ!」

 

 涙目の上目遣いで、お金を睨んでくるアクア。

 

 「ふっ……プロゲーマーとして修行を重ねてきたこの俺に、何の策もないと思っていたのか?」

 

 「プロゲーマーだったの?」

 「プロ!?」

 

 「………言ってみただけだ。気にしないでくれ。俺は他の日本人みたいなチート能力なんてない。たが日本で培った知識がある。そこで俺でも簡単に作れる、この世界にない日本の物を売り出せばどうかって思ってな。俺はステータスは低いが幸運が高い。だから、無理をして冒険者稼業をやるだけでなく、商売やったり他の手段を考えておこうと思う。金さえあればキャベツみたいに、経験値稼ぎだって楽にできるだろ?」

 

 「なるほどね」

 

 シロナがアクアの隣で俺の案に感心している。

 

 本当にこの姿をアクアに見習わせたい。

 俺のパーティーにはチート持ちのシロナがいるし、魔王討伐は一応少しは視野に入れてはいるが、正直無理だと思ってきている。

 

 「と、いう訳でお前も何が手軽に稼げる商売でも考えろ! あと、お前の最後の取り柄の回復魔法をとっとと教えろよ!」

 

 「嫌よ!嫌嫌っ!回復魔法だけはいやよぉ! 私の存在意義をうばないでよ! 私がいるんだから良いじゃない! シロナも何か言ってやってよ!」

 

 そう言ってシロナに言うが、シロナは苦笑いを浮かべながら。

 

 「えっと、でも私はカズマの言うことも分かる……」

 

 「わああああーっ!」

 

 シロナにも庇って貰えず再びテーブルに突っ伏し泣き始めた。

 

 と、そんな俺たちの元にめぐみんとダクネスが帰ってきた。

 

 「………何をやっているんですか?………カズマは結構えげつない口撃力がありますし、遠慮なく本音をぶちまけると大概の女性は泣きますよ? シロナも何かフォローしてあげてください」

 

 「うむ。ストレスが貯まっているなら……アクア代わりに私に遠慮なく罵ってくれ。……クルセイダーたるもの、誰かの身代わりになるのなら本望だ!」

 

 アクアが周りから目立っているのを自覚したのか、こちらをチラッチラッと見てくるのがイラッとくる。

 

 「こいつのことは気にしなくていい」

 

 俺はチラッとダクネスを見た。

 キャベツ狩りで鎧が傷み、今は修理に出しているらしい。鎧を着けていない格好は騎士ではなく剣士に見える。

 ダクネスはめぐみんが隣にいるからか、はっきり言うとエロい体付きが目立っていた。

 これだけ美人で身体もいいとなると、性格も多少目を瞑っても………。

 

 「………ん? 今、私のことを『エロい身体しやがってこのメス豚が!』っと思ったか?」

 

 「思ってねえ」

 

 アクア、めぐみん、そして一つ置いて最後にシロナを見る。

 シロナは不思議そうな顔をしていた。

 

 ………やはり顔がいくら良くても、性格が大事だ。

 

 「おい、今私の方を見て思ったことを聞こうじゃないか!」

 

 「意味はないさ。ただ、俺がロリコンじゃなくて良かったと思っているだけだ」

 

 「ほう、紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。さあ、表にいこうじゃないか!」

 

 めぐみんが俺の服の袖を引っ張り、外に行こうとする。

 

 「ええと、どうせクエストに行くならアクアのレベルが上がるのにしない?」

 

 シロナがそんな事を言ってきた。

 

 「有るのか? そんな都合の良いクエスト」

 

 「分からないけど……多分有ると思う」

 

 シロナがそう言ってダクネスの方を見る。

 

 「ん? プリーストのレベル上げならアンデット族だな。やつらは、神の力が全て逆に動く。だから回復魔法を受けると身体が崩れるのだ」

 

 ああ、何かゲームで聞いた事ある。

 でも、この駄女神のレベルを上げても……。

 

 そこで俺はシロナの狙いがわかった。

 

 そうか! レベルが上がると様々なステータスが上がる。つまり、このテーブルで泣き真似をしているアクアのレベルが上がるとこいつに足りない知力が上がって戦力アップだ! シロナ、ナイス!

 

 「なるぼど、悪くないな」

 

 「あっでも、問題があってダクネスの鎧が今ないことなんだけど……」

 

 シロナが不安そうにダクネスの方に見ると。

 

 「うむ、その事なら問題ない。鎧なしでもアダマンタイトより硬い自信がある。それに鎧無しの方が攻撃を食らった時気持ち良いしな」

 

 ………。

 

 「おい、今気持ち良いって言ったか」

 

 「………言ってない」

 

 「いや、いったよね?」

 

 シロナも言うが。

 

 「言ってない。……それより、後はアクアにその気があるかたが……」

 

 俺は静かにしているアクアに手を伸ばして、肩を叩こうとして………気が付いた。

 

 「…………すかー……」

 

 泣き疲れ眠っていた。

 

 子供かこいつは!

 

 シロナは微笑んでいた。

 

 

 

 

    白奈side

 

 「ちょっとカズマ、その肉は私が目をつけていたのよ! ほら、こっちの野菜が焼けているんだからこっちを食べなさいよ!」

 

 「俺、キャベツ狩りからどうも野菜が嫌いなんだよ、焼いている最中に跳び跳ねたりしないか心配になるから」

 

 うん、分かるよ。何で新鮮な野菜をフォークで刺そうとすると野菜が避けるのかな?

 

 私達は今、街から外れた丘の上にいる。

 私達が受けたクエストは共同墓地に湧くアンデットモンスターの討伐。

 言い忘れていたけど、この世界の埋葬方法はそのまま土に埋めるだけの土葬らしい。

 そして、私達はその墓場の近くで夜を待つべくキャンプ中だ。鉄板を敷き、バーベキューをしながら夜を待つ。

 凄くのんびりしているけど、今回引き受けたクエストはゾンビメーカーというモンスターの討伐。

 ゾンビメーカーとはゾンビを操る悪霊の一種で、自分は質の良い死体に乗り移り、手下の代わりに数体のゾンビを操るそうだ。

 これならアクアのレベルも上がるし、鎧の無いダクネスもあまり危険がないと思う。本人は残念がりそうだけど……。

 私はあまり多く食べる方ではないので、すぐにお腹がいっぱいになりさっきからコーヒーを飲んでいる。

 コーヒーはマグカップにコーヒーの粉を入れて初級魔法の『クリエイト・ウォーター』で水を入れ、『ティンダー』という火の魔法で温める。

 この方法はカズマから教えて貰った。この方法は思いつかなかったよ。これを教えて貰った時は凄く感心した。カズマもお腹がいっぱいになったのか、私と同じようにコーヒーを飲んでいる。

 そんなカズマを見てめぐみんが複雑そうに自分のコップを差し出した。

 

 「すみません、私にもお水ください。って言うかカズマは私より魔法を使いこなしてますね。初級魔法はほとんど誰も使わないものなんですが、カズマとシロナの使っている所を見てると何か便利そうです」

 

 カズマはそう言われめぐみんのコップにクリエイト・ウォーターで水をいれた。

 

 「いや、元々こういう風に使うものじゃないのか? 初級魔法って」

 

 カズマは当たり前の顔をして言うが、私だったらそんな風に使う何て思いつかないよ。

 

 「あ、そうそう。『クリエイト・アース』! これって何に使う魔法なんだ?」

 

 「あっ、それ私も気になった。これって何に使うの?」

 

 風魔法とかは直ぐにわかったけど、この土魔法だけが分からなかった。

 

 私とカズマはそう言ってサラサラした土をめぐみんに見せた。

 

 「………えっと、その魔法で作った土は、畑などに使うと良い作物が育つそうです。……それだけです」

 

 めぐみんの説明を聞き、アクアが吹き出し。

 

 「何、カズマさん。畑でも作るんですか! 初級魔法で土も作れて、水も出せる。天職じゃないですか! プークスクス!」

 

 私はふと思いついた案をカズマに言った。

 

 「……カズマ、風」

 

 そう言われるとカズマは土の載った手の平をアクアに向け。

 

 「ああ、『ウインドブレス』!」

 

 「ぎゃー!目、目があああっ!」

 

 突風で飛ばされた土がアクアの顔に直撃し、目に砂埃が入り、女神が地面で転がり回っている。

 

 「なるほど、こうやって初級魔法は使うんだね!」

 「なるほど、こうやって使う魔法か!」

 

 「違います! 違いますよ!、普通はこんな使い方はしません! ていうか、何で二人は初級魔法をこんなに器用に使いこなしているんですか!」

 

 アクアは目から土が取れるまでしばらく転がり回っていた。




 次回こそはリッチーのあの人が出ます。

 シロナは風魔法に関してはかなり使いこなしますね。

 これからも頑張って書いていきます!

 8/19 少し訂正しました。


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第六話 『この心優しきリッチーに祝福を』

 こんにちは白城です。

 誤報告ありがとうございました!

 五話の内容少し変えました。すみません!
 少し原作と違う所があったので!

 今回はリッチーのあの人がでてきます!


    白奈side

 

 「………冷えてきたわね。ねえ、カズマ。今回引き受けたクエストって、ゾンビメーカーの討伐なのよね? 私、なんだかそんな小物より大物が出そうな予感がするんですけど……」

 

 完全に夜になり、時刻は深夜に回った頃。

 アクアが目に入った砂ぼこりが取れ、そんな事をポツリと呟いた。

 

 ………やめて、そんな事言わないで。

 

 「………おい、そんな事言うなよ。本当にそうなったらどうするんだ。今日はゾンビメーカーの討伐。そして、とっとと帰って寝る。イレギュラーが起きたら迷わず帰る。いいか?」

 

 カズマの言葉に私を含めた皆が頷く。

 

 私はまだレベルが高くなくて強くないし、本当に無事に終わってほしい。

 

 そろそろ時間だ。

 

 そんな事を考えながら、敵感知スキルを持つカズマを先頭に歩いていった。

 

 アクアの言った事が本当にならなければ良いだけど……。

 

 「んっ? 敵感知に引っ掛かるな。数は一、二……三、四体?」

 

 ……あれっ?

 

 「ねえ、カズマ。ゾンビメーカーの取り巻きってゾンビが二、三体って言ってなかった?」

 

 「あ、ああ。その筈だ。まあ、このくらいは誤差の範囲だろ」

 

 そんな会話をしていると墓場の中央で青白い光りが走る。その隣には黒いロープを着た人影。

 

 あれって……魔方陣?

 

 「……ねえ、ゾンビメーカーって魔法使うんだっけ?」

 

 「……いえ、使えません………あれはゾンビメーカーではない……気が…するのですが…」

 

 私の問いにめぐみんが自信なさげに答える。

 もう一度見ると、黒いロープの人影の周りを、ユラユラと動く人影が数体見えた。

 

 「突っ込むか? ゾンビメーカーじゃなくてもこの時間に墓場にいるんだから、アンデットだろう。こっちにはアクアがいるんだから大丈夫だろ」

 

 カズマの言葉に私も納得する。

 

 アクアは回復魔法だけは凄いってカズマが言っていたし大丈夫なはず!

 

 私の隣にいるダグラスはさっきから胸に剣を抱えたままソワソワしている。

 

 少しは落ち着いて!

 

 「あーーーーーっ!!」

 

 突然叫んだアクアが、何を思ったのか立ちあがり、ロープの人影に向かって走り出す。

 

 「えっ、ちょっと待って!」

 「ちょっ、おい待て!」

 

 私とカズマの静止の言葉も聞かず、飛び出して行ったアクアは、ロープの人影に近付くと、ビシッと人影に差し。

 

 「リッチーがノコノコとこんな所に出てくるなんてる届きな、成敗してやるっ!」

 

 ……えっ? リッチー?

 

 「ねえカズマ。リッチーって……」

 

 私の不安な声にカズマが。

 

 「あ、ああ。シロナが考えてるのであってると思うぞ……」

 

 リッチーとはアンデットモンスターで、その中の最高峰にあたる。

 魔法を極めた大魔法使いが魔道の奥義により人の身体を捨てたアンデットの王。

 他の多くのアンデットとは違い、自ら自然の節理をねじ曲げ、神の敵対者になった存在で、ラスボスみたいなモンスター………だった気がするんだけど……。

 

 「や、やめやめ、やめて! 誰なの! 何故いきなり現れて私の魔方陣を壊そうとするの! やめ、止めてください!」

 

 「黙りなさいこの、アンデット! どうせこの怪しげな魔方陣で何か企んでたんでしょ! こんな物! こんな物!!」

 

 そのリッチーが目の前で、魔方陣を壊そうとするアクアの腰に、泣きながらしがみついて、くい止めていた。

 

 リッチー……なのかな?

 

 その二人の周りにいる取り巻きのアンデット達は、そんな二人を止めもせずボーッと眺めていた。

 

 ……えっと、どうしよう。

 

 取り合えずゾンビメーカーではないと思う。

 

 「やめて! 止めてください! この魔方陣は、未だに成仏できないでいる迷える魂達を、天に還しているだけなんです! ほ、ほら、たくさんの魂達が魔方陣から空に登って行っているでしょう!?」

 

 そのリッチーのいう通り、白い人魂の様な物が魔方陣に入ると天に吸い込まれていく。

 

 「リッチーの癖に生意気よ! 善行はこの私がしておくからあんたはひっこんでなさい! 見てなさい、この墓場ごとまとめて浄化してあげるわ!」

 

 「え、ええっ!?ま、待ってっ!?」

 

 アクアの言葉にリッチーが怯える。

 

 えっ、それだと……。

 

 たが、アクアはリッチーに構わず、手を広げ。

 

 「『ターンアンデット』!」

 

 アクアを中心に墓場全体が光りに包まれた。

 アクアから湧き出すように溢れた光は、リッチーの取り巻きのゾンビに触れるやいなや、凄い速さで掻き消える様にその姿が消滅していく。

 リッチーの魔方陣の上にいた人魂もアクアの光を浴び、消えていった。

 それは勿論、リッチーにも及び……。

 

 「きゃー! お願い! 止めてください! 私の身体が消えるっ!? 成仏しちゃう!!」

 

 流石にやばいっ!

 

 私が急いでアクアに向かう。

 

 「おい、やめてやれ」

 

 私が止める前にカズマがアクアの後頭部を剣の柄で小突いて止めた。

 

 ふうぅ……危なかった……。

 

 「痛、痛いじゃないの! あんたいきなり何してくれてんのよ!」

 

 後頭部を殴られ集中が途切れたのか、白い光を出すのをやめ、カズマに涙目で食ってかかる。

 後ろを見るとめぐみんとダクネスもやって来た。

 

 「そ、その大丈夫? ええと、リッチー…でいいのかな?」

 

 良く見ると、足元は既に半透明になっている。

 

 本当にあと少し遅かったら危なかったかも……。

 

 「だ、大丈夫です……。危ない所を助けて頂き、ありがとうございましたぁ……! えっと、言っていた通り私はリッチーです。リッチーのウィズといいます」

 

 そう言って被っていたフードを上げると、出てきたのは二十歳くらいの人間にしか見えない、茶色い髪の毛の整った顔をした女性だった。

 

 リッチーってアンデットなんだから、骸骨みたいなの想像してたんだけど……。

 チラッとカズマを見るがどうやら私と同じらしい。

 

 「えっと、……ウィズでいいんだよな? あんた、こんな所で何してしてたんだ? 魂を天に還すとか言ってたけど、それってリッチーのあんたがやる事じゃないんじゃないか?」

 

 カズマがそう言って質問するが、アクアがいきり立ち。

 

 「ちょっと二人とも! こんなのと話なんかしてたらアンデットが移るわよ! ちょっとそいつに、ターンアンデットでもかけさせなさいよ!」

 

 アクアがウィズに魔法をかけようとする。

 ウィズが私の背後に隠れ、怯えた様な困った様な顔をしながら。

 

 「え、えっと、その………私は見ての通りリッチー、ノーライフキングなんてやってます。アンデットの王なんて呼ばれているくらいなんですから、私は迷える魂の声が聞こえるんです。ここの墓地の魂の多くはお金が問題とかで葬式がロクにできずに、毎晩この墓場を彷徨っています。だから、一応リッチーの私は、定期的にここに来て、天に帰りたがっている魂達を送ってあげているんです」

 

 ……優しくて、良い人だ。

 

 「えっと、凄く良いことだと思うんだけど……アクアじゃないけど、それって街のプリーストに任せれば良いんじゃないの?」

 

 カズマも私の言葉に頷く。

 私達、二人の疑問にウィズがアクアをチラチラ見ながら。

 

 「そ、その……街のプリーストさん達は、拝金主義……いえ、お金がない人は後回しと言いますか……その……」

 

 ……ああ、なるほどね。アークプリーストのアクアがいるから言いにくいのか。

 

 「つまり、この街のプリーストは金儲けが優先のやつが多いから、それでこんな金がない連中が埋葬されているこの墓地なんて、誰もこないって事か?」

 

 「えっ……そ、そうです……」

 

 私達の視線がアクアに集中すると、本人はばつが悪そうにそっと目を逸らす。

 

 「それならしょがないね」 

 「それならまあしょうがない」

 

 「でも、ゾンビ達はどうにかならないか? 俺達がここ来たのって、ゾンビメーカーを討伐してくれっていうクエストを受けたからなんだ」

 

 カズマの言葉に、ウィズが困った表情を浮かべて。

 

 「あ、そうでしたか。……その、私がここに来ると形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めてしまうんです。誰かがこれをやってくれれば、私がここに来る理由をなくなるんですが………どうしましょうか?」

 

 「それはええと………アクアお願いできる?」

 

 「嫌よ! 私の睡眠時間が減るじゃない!」

 

 ええっ! めんどくさい。

 

 「そこをなんとか!」

 

 「嫌ったら嫌よ!」

 

 はあぁ。カズマ、お願い。っと視線をカズマに向ける。カズマもわかった様で。

 

 「おい、アクア。お前、女神なんだよな? 女神ってのはアンデットや迷える魂達を浄化するのが仕事なんじゃないのか? そんなんで本当に女神なのか?」

 

 「うっ………わ、分かったわよ! やれば良いんでしょ! やれば!」

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 「納得いかないわ!」

 

 墓場からの帰り道、アクアはまだ怒っている。

 

 「いやっ、そんなこと言っても、あんな優しい人討伐する気にならないよ」

 

 「そうだよな、あんな良い人俺も討伐したくない」

 

 俺達は、あのリッチーを見逃すことにした。

 これからはアクアが定期的にあの墓場の浄化をする事で折り合いがついた。

 そこはいくらこの駄女神でもアンデットや迷える魂の浄化は自分の仕事だと理解しているらしい。

 睡眠時間が減るだの駄々をこねていたが。

 シロナはもとよりめぐみんとダクネスも、ウィズが人を襲った事がないと知り、見逃すことは同意してくれた。

 

 「でも、リッチーのウィズが街で普通に生活してるとか、この街の警備は大丈夫なのか」

 

 俺はウィズに渡された一枚の紙を見ながら呟いた。

 ウィズは俺達の住んでいる街でマジックアイテムの店を営んでいるらしい。

 「リッチーってダンジョンの奥深くにいるイメージがあったんですけど」とシロナと言ったら「生活が不便なダンジョンに住む理由がありませんよ」と言われた。

 いや、それは元は人間なんだから分かるけど。

 分かるんだが、俺の持っている異世界のイメージがどんどん崩れていく。

 

 これは、俺が望んでた異世界じゃない!

 

 「でも、何事もなく終わってよかったです。いくらアクアがいたとしても、相手はリッチー。戦闘になっていたら私とカズマは間違いなく死んでいましたよ」

 

 何気なく言うめぐみんの言葉にぎょっとする。シロナも不安そうに。

 

 「ね、ねえ。リッチーってそんなに危険なモンスターなの?」

 

 「ヤバイなんてもんじゃないです。リッチーは強力な魔法防御、そして魔法の掛かった武器以外の攻撃の無効化。さらには相手に触れるだけで様々な状態異常をひきおこし、その相手の魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスターです。むしろ、何でアクアのターンアンデットが効いたのか不思議なくらいです」

 

 軽く失禁しかけた。シロナも顔が青くなっている。

 そうだよな、アンデットの王なんて呼ばれてるからな。

 リッチーのスキルを教えて貰うと言ってくれたので喜んで名刺をもらったのだか……行くときはアクアを連れていこう。

 

 「カズマその名刺、私に渡しなさい! あの女より先に家に行って周りに神聖な結界を張って、家に入れなくしてやるから」

 

 やっぱり連れて行かない方がいいかも………。

 

 俺がそんなことを考えていると、シロナがポツリと。

 

 「………ねえ、言わないか悩んでたんだけど、ゾンビメーカーの討伐のクエストってどうなるの?」

 

 「「「「あっ」」」」

 

 ゾンビメーカー討伐。

 クエスト失敗。

 




 アクアが浄化するのを納得するまで会話を書いてみました。下手だったらごめんなさい!

 シロナはまだレベルが高くないので強力な魔法を打ったらほとんど魔力がなくなります。それでも人を一人抱えて走れる分は残りますが……。

 次回はキャベツの報酬です!

 面白く書けるように精一杯頑張ります!


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第七話 『この素晴らしい報酬に祝福を』

 皆さん、こんにちは白城です!

 今回は冒険はしないです(いつもですが……)。

 面白く書けたか心配です。
 
 アドバイスや感想があったらお願いします!
 


    白奈side

 

 「なあ、シロナ。なんかこの街の近くにある丘にある城に魔王軍の幹部がいるらしいけど、この話知ってるか?」

 

 「えっ、何それ? 知らないよ?」

 

 私が一人で冒険者カードを見て自分のスキルを確認してるとカズマが私に質問してきた。

 カズマがギルドで知らない男性冒険者の話を聞いていたけどそんなことを聞いていたのか。

 

 「て言うかカズマ。他のパーティーメンバーのアクアとかにも言わなくていいの?」

 

 「あぁ~、平気だろ。なんか言ったら面倒になる気がするし……」

 

 あはは、カズマはこのパーティーで苦労しそうだなあ……。

 

 「まあ、話を戻すが、この街の近くにある廃城近づかない方が良いな。魔王軍の幹部っていうほどなんだからヤバイモンスターなんだろ。ドラゴンとかな。俺達が相手にしたら死ぬことになる事間違いないな。だからしばらく、その廃城の近くでのクエストは受けないようにするよ」

 

 確かにゲームとかだと情報収集は大事だね。

 

 「うん、わかった。情報収集ありがとうね、カズマ」

 

 「お、おう」

 

 私はカズマにお礼を言って、カズマと一緒に自分達のパーティーのテーブルに向かった……。

 

 

 

 

 「……どうしたの? 何でそんな目で私達を見てるの?」

 

 私達がテーブルに近づくと私達以外のパーティーメンバー、アクアとめぐみんとダクネスが、テーブルの上に置いてあるコップに入った野菜スティックをポリポリかじりながら、私達を見ていた。

 

 あれ、私なんかしたかな?

 

 そんな事を考えていると出てきたのは予想とは違うものだった。

 

 「別に~? 二人が違うパーティーに行かないか心配なんてしてないし」

 

 アクアが不安そうな目で私達をチラチラ見てくる。

 

 ………?

 

 隣にいるカズマも不思議そうな顔をしながら。

 

 「……何言ってんだ? 情報収集は冒険の基本だろうが」

 

 カズマはそう言ってテーブルに座り、野菜ステッィクに手を伸ばす。私も同じ様にカズマの反対に座り野菜スティックに手を伸ばした。

 

 ヒョイッ。

 

 やはり野菜スティックが私達の手から逃れるように動く。

 

 はあ、やっぱりめんどくさい。

 

 「何やってんのよ二人とも」

 

 アクアがテーブルをバンと叩き、一瞬動かなくなった野菜スティックを一本つまんで口に運ぶ。

 

 「……むう、楽しそうでしたね。カズマは他のパーティーのメンバーと随分親しげでしたね?」

 

 めぐみんは拳を握りテーブルをドンッと叩き、一瞬動かなくなった野菜スティックをつまみ、口に運んだ。

 

 「何だこの新感覚は? 二人が他所で会話をしている姿を見ると、胸がもやもやするが、その反面新たな快感が……。は! もしや、これが噂の寝取られ……」

 

 ……何言ってるの!?

 

 変な事を言っているこの変態が、指でピンッとコップを弾き、野菜スティックを指で摘まんだ。

 

 「どうしたんだお前ら、こういう場所での情報収集は基本だろうが?」

 

 そう言いながらカズマはテーブルをパンッと叩き、野菜スティックを掴み……。

 

 ヒョイッ。

 

 「…………うおおりやあああああ!」

 

 「カズマ落ち着いて! 気持ちは分かるけど落ち着いて!」

 「や、やめてええ! 私の野菜スティックに何すんの! た、食べ物を粗末にしちゃいけないって習わなかったの!?」

 

 カズマは野菜スティックの掴み損ねた手で、野菜スティックの入ったコップを壁に叩きつけようと腕を振りかぶるが、私が急いでカズマを止める。

 

 「野菜ごときに舐められてたまるか! ていうか今更だが、何で野菜が逃げるんだよ! ちゃんと仕留めたやつを出せよ!」

 

 うん、その気持ちは凄く分かるよ。

 

 「あんた、何言ってんの。魚も野菜も新鮮の方が美味しいでじょ? 活き作りって知らないの?」

 

 私が知ってる活き作りじゃない!

 あっそうだ!

 

 「『ウインドブレス』!」

 

 私は野菜スティックを空中(・・)に浮かせ手に取る。

 

 よし! これなら野菜ステッィクが逃げない!

 

 「カズマ、はいこれ」

 

 私は先程手に取った野菜スティックを数本カズマに渡す。

 

 「ありがとう、そういう使い方があるのか。まあ、野菜のことはこれで良いとして。……お前らに聞きたい事がある。俺はレベルが上がったらどんなスキルを覚えようかと思ってな。ハッキリ言うとバランスが悪いこのパーティーを今シロナが支えている感じだ。これはシロナの負担が大きすぎる。だから自由の利く俺がそれを軽減する感じでいきたいんだが……。確認するが、お前らスキルってどんな感じなんだ?」

 

 そう言ってカズマが尋ねる。確かに今、皆のフォローは私だけでは正直言って辛い。その事に考慮してだろう。

 

 「私は魔法剣士の上級職って言われてるくらいだから《初級魔法》から《上級魔法》まで魔法と、この職業だけの魔法、それと《片手剣》だね」

 

 「うん、シロナは普通に優秀だな。で、問題はその(ほか)なんだか……」

 

 そう言ってカズマはダクネスの方を向く。

 

 「ん? 私は《物理耐性》と《魔法耐性》、そして各種の《状態異常耐性》で占めているな。後はデコイという囮になるスキルくらいだ」

 

 やっぱり肝心のスキルがない……。

 

 「……やっぱりシロナも前に言ってたけど、《両手剣》スキルとか覚えて、剣の命中率を上げる気は無いのか?」

 

 「無い。だが私は体力と筋力ある。攻撃が簡単あたり無傷で倒してしまう。それでは駄目だ。かといって、わざと攻撃を外して攻撃を受けるというとも違うのだ。なんというか、前も言った事があると思うが、私が必死で剣を振るうが全く当たらず、力およばず圧倒されるというのが気持ちいい…」

 

 「もうお前は黙ってろ!」

 

 「んんっ! 自分で言っておいてなんという仕打ち…」

 

 私の隣でハアハア言ってるダクネスはもうめんどくさいので放置する。

 

 そしてカズマは次にめぐみんの方に見る。

 

 「私は勿論、爆裂系スキルです。《爆裂魔法》に《爆裂魔法威力上昇》、そして《高速詠唱》などです。最高の爆裂魔法を放つためのスキル振りです」

 

 ……もともとオーバーキルみたいな爆裂魔法の威力を上げて意味あるのかな?

 

 「……どう考えても、シロナみたいに中級魔法スキルとかを覚える気は・・・」

 

 「無いです」

 

 はあ、やっぱり駄目か…。

 

 「えっと、私は……」

 

 「お前はいい」

 

 「ええっ!? そんな!?」

 

 自分のスキルを言おうとしたアクアをカズマが黙らせる。

 

 まあ、予想はつくけど支援魔法や回復魔法は覚えてると思うけど、多分宴会芸スキルの方が多いでしょ。

 

 「はああ、私入るパーティー間違えたかなぁ。移籍をした方が…」

 「何でこうも、まとまりが無いんだ、このパーティーは……。本当に移籍した方が…」

 

 「「「!?」」」

 

 私達の小さな声に、三人がビクッとした。

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 緊急クエストのキャベツ狩りから数日が経過した。

 あの時収穫したキャベツが売り出され、冒険者にはその報酬が支払われたわけだか……。

 

 「カズマ、見てくれ。キャベツ狩りの報酬が思ったより良かったから、修理に出していた鎧に少し強化してみた。……どう思う」

 

 報酬を受け取ろうとする冒険者でギルド内は混雑しており、ダクネスが強化された鎧を見せてきた。

 

 俺はそんなもんより両手剣スキルを取れっ!と言いたい所だが……。

 

 「な~んか、成金のボンボンが着けてる鎧みたい」

 

 「私だって素直に誉められたい時とだってあるのたが、ハア…ハア……カズマはどんな時でも容赦ないな」

 

 ダクネスは最初は珍しくへこんだ顔で言っていたが、後半から少し顔を赤くしながら言ってくる。

 

 はあ、この変態は…。

 

 「そんな事より、お前を越えそうなそこの変態をどうにかしろよ」

 

 「ハア…ハア……この魔力溢れるマナタイト製のこの色艶……。ハア……ハアァ………ッ!」

 

 めぐみんが俺の目の前で新調した杖に頬擦りをしていた。

 マタナイトという希少金属は、杖に混ぜると魔法の威力が上がるらしい。

 キャベツ狩りの高額な報酬で杖を強化し、朝からずっとこの調子だ。

 今でもオーバーキル気味な爆裂魔法を強化した意味があるのか? とか、それよりも便利な魔法を習得するべきなんじゃないのか? など言いたい事は様々あるが今のめぐみんに関わりたくないので放っておく。

 

 「それで、シロナは報酬を何に使ったんだ?」

 

 俺は唯一まともなシロナに聞いた。

 

 「ええと、私は使う物が思いつかなかったから、まだ使ってないよ」

 

 流石はまともなシロナだ。良く考えている。

 俺もすでに換金が終わりホクホクだ。

 

 「何でよおおおおお!?」

 

 ギルドにアクアの声が響き渡る。

 

 あぁ……嫌だなあ………。

 

 ギルドのカウンターでは、アクアが揉めていた。

 なにやらギルド職員にいちゃもんをつけている。

 

 「何で五万ぽっちなのよ!? いくら捕まえたとおもってんの!?」

 

 ……あいつ、自分が捕まえたのがほとんどレタスなの忘れてないよな?

 

 「そ、それが。非常に言いにくいのですが……」

 

 「何よ!」

 

 「アクアさんの捕まえたのはほとんどレタスでして……」

 

 「………何でレタスが混じってるのよー!」

 

 「いや、私に言われても……っ」

 

 はあ、あのやり取りを聞くにやはり忘れていたらしい。

 アクアがこれ以外無理だと判断したのかこちらに笑顔で近づいてきた。シロナはそれにあわせて俺から離れて行く。

 

 ……嫌だなあ。

 

 「カーズーマさーん! 今回の報酬おいくら万円?」

 

 「百万ちょい」

 

 「「「ひゃっ!」」」

 

 アクアとめぐみんとダクネスが絶句する。

 そう、俺は突発的に出たクエストで小金持ちになりました。俺の収穫したキャベツはたくさん経験値が入った物が多かったようだ。これも幸運度の差というものだろうか。

 

 「え、ええと。カズマ様ー! あなたってその……そこはかとなく良い感じよね!」

 

 「誉める所が無いなら無理するな。言っておくが、この金は使い道を決めてるから、分けんぞ」

 

 俺はアクアの言いそうな事を先に言っておく。

 その言葉にアクアの笑顔が凍りつき。

 

 「………カズマさあああん! 私、このクエストの方が相当な額になるって踏んで、もってるお金全部使っちゃったんですけど! ていうか、大金が入ると見込んでギルドに十万近いツケまであるんですけど!」

 

 涙目になって縋り付くこの自称女神を引き剥がす。

 

 何でこいつは後先考えないのだろう。

 

 すでに周りの仲間がアクアをみる目が可哀相な子を見る目になっている。シロナが会話に入ってこないあたり巻き込まれたくないのだろう。正しい判断だ。

 

 「うるさい、この駄女神! そもそも今回の報酬を個人にしたのお前だろ! と言うか、この金でいい加減馬小屋生活を脱出するんだよ!」

 

 普通、冒険者は家を持たない。

 冒険者は仕事などで、あちこち飛び回るとこが多いからだ。

 俺は一応魔王討伐はシロナがいるので少しは視野に入れてはいるが、ほとんど無理だと思っている。

 なんせ俺は最弱職の冒険者だ。

 紅魔族や他の連中に比べればステータスだって断然劣る。幸運値が高いただの一般人のようなもんだ。

 だから、ここはこの金に使って宿屋か、小さな物件でも手に入ればと思ったのだ。

 

 アクアの顔がさらに泣きそうな顔になりすがり付く。

 

 「お願い。お金貸して、ツケ払う分だけでいいからぁ! そりゃカズマだって男の子だし、たまに夜中隣でごそごそしてる知ってるから、プライベートな空間が欲しいのはわかるけど…っ!」

 

 「ようし分かった! 五万でも十万でも安いもんだ! 分かったから黙ろうか!」

 

 シロナだけ不思議そうな顔していたので、そっち方面の知識がなくて助かった…! 流石にシロナにも引いた目で見られるのはへこむ。

 

 「ありがとうカズマ! やっぱり仲間は良いものね!」

 

 そう言ってアクアは笑顔でお金を持ってカウンターの方に走って行った。

 シロナがアクアが離れていったのを確認した後、こっそり俺の方に来て。

 

 「ええと、カズマはいこれ。私、結構報酬貰ったけど使い道決まって無かったし、いつものお礼ってことで」

 

 そう言って五十万程入った袋を渡してくる。

 

 ああ、美少女で優しいなんて、そんな子がこの世にいたんだな! もはやシロナが天使、いや女神だ……。

 

 これによって、カズマは馬小屋生活を脱出した。

 

 




 原作とは違い馬小屋生活を脱出しました!

 まだあまり強くありませんがチート持ちのシロナがいますので。
 因みシロナはカズマより少し多い百二十万くらい稼ぎました。カズマは幸運度で、シロナは量で、みたいな感じですね。シロナの幸運値は人並みなので。

 次回も冒険がないかもしれないです。

 少し更新が遅れるかもしれないですが、頑張ってかいていきます!


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第八話 『この素晴らしい爆裂魔法に祝福を』

 皆さんこんにちは白城です!

 遅れてすみません!
 これからもなるべく原作沿いでいきます!

 この作品ではカズマの仲間に優秀なシロナがいるのでどうすれば原作沿いになるかいつも考えています!

 今回はタイトル通り爆裂魔法のあの話です!


    白奈side

 

 「カズマ、カズマ! 「はい、カズマです」 早速討伐クエストにいきましょう! それも、沢山の雑魚モンスターが出るやつです! 新しく杖を新調した事によって強化された爆裂魔法の威力を試すのです!」

 

 めぐみんが突然そんな事を言い出した。

 

 ……まあ、装備が新しくなって試したい気持ちは分かるよ。

 

 「まあ俺もゾンビメーカーのクエストで、覚えたスキルを試す機会がなかったからな。安全なクエストでも行くか」

 

 「そうだね、強力なモンスターの討伐だとまた試せなそうだもんね」

 

 「いや、何を言ってる! ここは強力なモンスターを狙うべきだ。一撃が重く気持ちいい、そんなモンスターを………想像しただけで武者震いがっ!」

 

 一体何を想像したの!? いや、いい! 聞きたくない!

 

 「いいえ、ここはお金になるクエストにいきましょう! ツケを払ってお金がないから今日のご飯代もないの!」

 

 ……はあ、何故こんなにもまとまりがないんだろう?

 

 カズマも私と同じ様な顔をしていた。

 

 「まあ、決めるのは掲示板のクエストを見てからにしようぜ」

 

 カズマの意見に、全員頷き掲示板に移動する。

 

 「………あれっ? 依頼が殆ど無いじゃないか」

 

 ……本当だ。

 

 いつもは隙間が無いくらい大量に貼られている依頼の紙が今は数枚しか貼られていなかった。

 

 「カズマ! これだ、これにしよう! ブラックファングと呼ばれる巨体熊の討ば………」

 

 「却下! 何だよこれ! 高難易度のクエストしか残ってないぞ!」

 

 残されているクエストのどれもが、今の私達がやるとかなり危険なものばかり。

 

 確かに何でだろう。………そう言えばカズマが何か言っていたような……あっ!

 

 「ねえ、カズマ。カズマが言ってた魔王軍の幹部が原因じゃない?」

 

 私達の声を聞き、私達のもとにギルドの職員がやって来た。

 

 「………はい、シロナさん言う通りです。申し訳ありませんが、実はつい先日、魔王の幹部らしき者が、街の近くの小城に住み着きまして………。その魔王の幹部の影響か、周辺の弱いモンスターが隠れてしまい、仕事が激減しているんです。来月には騎士団が派遣されるそうなので、それまではここに残っている高難易度のクエストしか……」

 

 凄く申し訳なさそうなギルドの職員の言葉に、現在文無しのアクアが悲鳴を上げた。

 

 「なんでよおおおおおっ!」

 

 流石にこれには私もアクアに同情した………。

 

 

 

 

    カズマside

 

 「何でこのタイミングで引っ越してくるのよ! 魔王の幹部だかなんだか知らないけどアンデットなら見てなさいよ! 私が絶対浄化してあげるから!」

 

 俺としてはそんな危険なモンスターに絶対関わりたくないのだが……。

 

 俺の目の前でアクアが涙目で愚痴りながらバイトの紙をみていた。

 他の冒険者も俺達と同じようで、いつもより多くの人がやってられるかと言わんばかりに酒などを飲んだくれている。

 魔王軍の幹部はいったい何故この駆けだし冒険者が集まる街の近くに何故引っ越してきたのかと疑問はある。

 この街にいる冒険者などの実力など俺達とそれほど変わらない。シロナなら少しの時間稼ぎくらいできるかもしれないが、まだレベルが低い今、俺達より少し強いくらいだ。

 魔王軍の幹部なんてゲームのラストの方で出てくるものだ。そんな相手にカエルで苦戦した俺達が戦っても負けるどころか、全滅するのが目に見えている。

 

 

 

 

 

 「つまり、国の首都から強い冒険者がくる来月までは、楽な仕事は受けられないってこと?」

 

 「そう言う事になりますね。…………と、なるとしばらくは二人のどちらかが私の日課に付き合って貰う事になりそうですが………」

 

 シロナがめぐみんに確認のため質問している。

 俺は今、シロナとめぐみんと共に街の外に出ていた。

 本当は俺とめぐみんだけで行こうとしたのだか、シロナが「暇だからついて行きたい」と言い、断る理由もないため、三人で街の外に出る事になった。

 街の外は魔王の幹部の影響で弱いモンスターがいない。

 俺達は、クエストが請けられず、爆裂魔法が撃てないで悶々としているめぐみんに付き合い散歩をしていた。

 こいつは、一日一爆裂を日課にしているらしい。

 

 まあ、異世界転生したのに色々あり街の周辺を知らなかったため、散歩できるのは嬉しい………。

 だが、もしかして俺達のどちらかは毎日この日課に付き合わされるのだろうか?

 

 めぐみんに「面倒くさい、一人でいけ!」と言って突き放したのだが、「なら、いったい誰が動けなくなった私をおぶって帰るのですか? 撃ったら動けなくなるんですよ?」と開き直られた。

 

 「な、なあ、もうこの辺でいいだろ。適当に撃って帰ろうぜ」

 

 「確かに少し離れた所に来たね。撃つならこの辺でいいんじゃないの?」

 

 街から少し離れた所で、俺とシロナはめぐみんに撃つようにうながす。

 だが、めぐみんは首を振り。

 

 「駄目なのです! もっと街から離れた所に行かないとまた、守衛さんに叱られます!」

 

 んっ? ちょっとまて。

 

 「おい、今俺の聞き間違いじゃなきゃ"また"って言ったか?」

 

 「……まさかだと思うけど、爆裂魔法の音がうるさいとか迷惑とかで叱られた事があるの?」

 

 俺とシロナの言葉にめぐみんがコクリと頷く。

 

 はああ、全くしょうがない。丸腰で少し不安だか、モンスターが出てきても一応武装してきてるシロナもいるし大丈夫だろう。シロナも俺と同じような顔してるな………。

 

 たまには遠出してみる事にした。

 

 

 

 「あれは…………何でしょうか? 廃城?」

 

 遠く離れた丘の上にぽつんと佇む古い城。

 

 「薄気味悪いなあ………。お化けでも住んでそうな………」

 

 俺の呟きに、

 

 「あれにしましょう! あの城なら盛大に破壊しても誰も住んでないでしょうし、大丈夫でしょう!」

 

 そう言って爆裂魔法の準備をするめぐみん。

 

 「…………あれって………いや、気のせいか」

 

 シロナだけが廃城を見て不安そうな顔していたが、めぐみんはそれに気づかず爆裂魔法の詠唱が風に乗った……。

 

 

 「『エクスプロージョン』!」

 

 「おお! やっぱり威力は凄いな。だけど……」

 

 バタッ

 

 魔力切れで倒れる事がなければな………。

 

 「どうですか? 我が必殺の爆裂魔法は?」

 

 「そうだな………。あまり分からないが良い方だと思うよ」

 

 「そうですか、ならよかった……ですっ!」

 

 倒れながら感謝するめぐみん。それを見守るシロナ。そんなのんびりした空気の中。

 

 ……カサカサッ

 

 俺達の結構後ろで草が擦れる音がした。

 

 「……ねえ、めぐみん。あれって何?」

 

 シロナが不安そうにめぐみんに聞いている。

 

 「はい? どれの事ですか? この辺のモンスターはいない筈ですが………ええと………ああ、あれは一撃ぐ……ま………です……ね」

 

 ああっ、もうめぐみんの反応で分かった! あれはヤバイやつだ。

 

 「シロナ! あいつがまだ気づいてないうちに倒す事できるか!?」

 

 「わ、わかった! 出来ると思う! ええと、森が近くにあって火属性魔法はつかえないから……『セイクリット・ウインドブレス』!」

 

 その瞬間木々を倒し尽くす暴風が一撃熊と呼ばれる敵に向かった………。

 

 「………で、めぐみん。今回はシロナのお蔭で大丈夫だったがあれは何だったんだ?」

 

 「……あれは、一撃熊と呼ばれる強力なモンスターです。本来この近くにはいない筈なのですが………」

 

 「はあ、やっぱりヤバイモンスターだったのか……」

 

 「うう、やっぱり全力の魔法はまだ撃つんじゃないかも……」

 

 シロナは魔力の殆どを使ったのかふらふらしている。

 

 「ねえ、流石に毎回これは辛いんだけど……良くめぐみんはこうなっても爆裂魔法使おうと思うね」

 

 「私は爆裂魔法が……好きなのです! あと、今回が特別なだけですよ、シロナ………こんな事滅多にないと思いますから大丈夫です………多分」

 

 最後の一言で不安になった。本当にそうであって欲しい。これはシロナも思っている事だろう。

 

 

 

 

 …………こうして、俺とめぐみん、シロナの新しい日課は始まった。

 文無しのアクアは毎日アルバイトに励んでいる。

 ダクネスは、実家で筋トレをしてくると言っていた。

 

 俺は筋トレよりも両手剣の命中率を上げろと言いたい。

 

 シロナは保険のため俺達に付いて来て貰っている。

 そして、特にやる事がないめぐみんは、廃城の近くに毎日通い、爆裂魔法を撃ち続けた。

 それは、寒い氷雨(ひさめ)の降る夕方。

 「『エクスプロージョン』!」

 それは、暖かい食後の昼下がり。

 「『…………ロージョン』!」

 それは、朝日がさす早朝の散歩のついでに!

 「『………………ジョン』!」

 どんな日でもめぐみんは、毎日毎日廃城に向かい爆裂魔法を撃ち続けた……。

 そんなめぐみんの傍で爆裂魔法を見続けていた俺はその日の爆裂魔法の出来が……分かるようになっていた……。

 

 

 

 「「………」」

 

 「『エクスプロージョン』!」

 

 「おっ、今日のはいい感じだな。爆裂魔法の衝撃が骨身にズンと震動するかの如く響き、それでいて肌を撫でるかのように空気の震動が遅れてやってくる。ナイス、爆裂!」

 

 「ナイス爆裂!」

 

 「…………ねえ、毎回思ってるんだけど、カズマとめぐみんのそれってなんなの? そして、カズマは爆裂ソムリエでも目指しているの?」

 

 「いやいや、爆裂魔法は面白そうだから将来スキルポイントに余裕ができたら覚えてみようかなと、考えてるだけだよ」

 

 「ふふ、カズマも爆裂魔法の良さがわかって来ましたね。いい心掛けです」

 

 そんな事言い合いながら笑い合う。

 今日の爆裂毎日は何点だとか、ここは悪かったが、ここは良かったなど語りながら。

 

 「ん~? やっぱりあの城………うん、気のせいだよねっ!」

 

 

 

 

 

    白奈side

 

 私達は日課の爆裂散歩を続けて、約一週間が立った、ある日の朝。

 

 『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、街の正門に集まってくださいっっ!』

 

 街中にお馴染みの大音量のアナウンスが響きわたる。

 そのアナウンスを聞いて、私達もしっかりと武装し、街の正門に向かった……。

 

 ああ、嫌な予感がする……。

 

 そんな事を私は考えながら………。

 

 

 

 街の正門には冒険者が集まる中、そこにいた私達は、凄まじい威圧感を放つ目の前にいるモンスターを前に、呆然と立ち尽くした。

 

 「あ、あれはっ!?」

 

 カズマも分かったようだ。そこにいたモンスターは………っ!

 

 

 デュラハン。

 

 それはゲームの中では人に死の宣告をし、絶望を与える首なし騎士だった。

 アンデットになり、生前より強力な肉体と特殊能力を手に入れた最上位のアンデットモンスター。

 

 正門前に黒色の首なし馬の上に乗っている、漆黒の鎧を着た首なし騎士は、左脇に自分の首を抱え、街中の冒険者が見ている中、フルフェイスの兜で覆われた自分の首を前に出した。

 

 「お、俺はつい先日、この街の近くの城に引っ越して来た、魔王軍幹部の者だが……」

 

 そして、デュラハンの首がプルプルと震えだし………!

 

 「おおお俺の城に、毎日毎日毎日毎日っ!! お、俺の城に爆裂魔法を欠かさず撃ち込んでく、あああ頭のおかしい大馬鹿は誰だああああ!!!」

 

 魔王軍の幹部はそれはもう誰が見てもわかる程、お怒りだった………。

 

 

 




 次回はデュラハンとめぐみんの会話などだと思います。

 これからも頑張って書いていきます!


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第九話 『この魔王軍幹部に祝福を』

 こんにちは白城です!

 思ったより早く書き終われました!

 今回は……題名通りです。


    白奈side

 

 「おおお俺の城に、毎日毎日毎日毎日っ!! お、俺の城に爆裂魔法を欠かさず撃ち込んでく、あああ頭のおかしい大馬鹿は誰だああああ!!!」

 

 ………どうやら私の嫌な予感が当たってしまったようだ。

 

 ずっと何かに耐え続けていたが、とうとう我慢できなくなり、切れてしまったと言うようなデュラハンの叫びに、私達の周りの冒険者がざわつきはじめた。

 私達の呼ばれたのは、目の前にいる怒り狂っているデュラハンが原因のようだ。

 

 ……まあ、私達が原因でもあると思うけど。

 

 「爆裂魔法?」

 「爆裂魔法って言ったら……」

 「爆裂魔法を使えるやつって言ったら……」

 

 自然と私の隣に立っているめぐみんに視線が集まりだした。

 

 「はっ!?………」

 

 周囲の視線が集まっためぐみんは、フイッと私の方を向く。それに合わせてカズマ達や周りの皆も同じ釣られ、私の方に視線を……。

 

 「………って、何で私の方を皆見るの!? 爆裂魔法なんて覚える訳がないし、覚えてないよ!?」

 

 突然仲間に濡れ衣をなすりつけられたのと、視線が自分に集まる事に慣れてない私は当然慌てる。

 

 ………あっ! 

 

 カズマとめぐみんも気づいたようだ。めぐみんにいたっては冷や汗を垂らしている。

 やがてめぐみんはため息を()き前に出た。

 それに伴って、冒険者達がデュラハンへの道を開けてくれる。

 街の正門の前にある岩の上に佇むデュラハン。

 そのデュラハンから十メートル程離れた場所にめぐみんが立ち、向かい合う。

 私達もめぐみんの後につき従う。

 アンデットのデュラハンを見ると襲いかかると思っていたアクアも、これ程までに怒り狂ったデュラハンは珍しいのか、興味津々で事の成り行きを見守っていた。

 

 「おおお前が! 毎日毎日毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んで行く大馬鹿者か! 俺が魔王軍幹部だと知って喧嘩を売っているなら、堂々と攻めてくればいい

! その気がないなら街で怯えていればいいだろう! ねえ、何でこんな陰湿な嫌がらせをするの!? もしかして魔王軍幹部ってだけで嫌がらせするのか!? この街には低レベルの冒険者しかいない事は知っているぞ! 雑魚しかいないと街だと思って我慢しておれば、調子に乗って毎日毎日毎日ポンポンポンポンポンポン撃ち込みにきおって………! 頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」

 

 私達の毎日の爆裂魔法がよほど応えたのか、デュラハンの首が激しい怒りでプルプルと震えている。

 流石のめぐみんも若干怯むも、やがて私達にやったように肩のマントひるがえし……!

 

 「我が名はめぐみん! アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者………っ!」

 

 「………めぐみんって何だ。バカにしてんのか!?」

 

 「ちっ、違わい!」

 

 名乗りを受けたデュラハンに突っ込まれるが、すぐにめぐみんは気を取り直すと。

 

 「我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い、めぐみん! あなたの城に爆裂魔法を放ち続けていたのは魔王軍幹部の貴方だけをおびき出すための作戦だったのです……! こうしてまんまと引っ掛かりこの街に一人で来たのが運の尽きです!」

 

 デュラハンに杖を突きつけるめぐみんを後ろで私達は見守りながら、カズマが私達にボソボソと呟いた。

 

 「……なあ、いつの間に作戦になったんだ? 俺はただ毎日爆裂魔法を撃たないと死ぬとか言っているから、仕方なくあの場所まで連れていっただけなんだが……」

 

 「………うん、本当にいつ作戦になったんたろう? めぐみん、あの城デュラハンの城だって気づいてなかったし………」

 

 「……うむ、しかもさらっとこの街随一とか言っているな」

 

 「しーっ! そこは皆黙ってあげて! 今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろには大勢の冒険者達が集まっているから強気なのよ! 今良いところなんだから見守りましょう!」

 

 私達の囁きが聞こえたのか、片手て杖を突きつけたポーズのまま、めぐみんの顔が少し赤くなる。デュラハンには見られたくないのか、被っていた帽子をさらに深く被った。

 デュラハンは何故か、勝手に納得したようだ。

 

 「……ほう、紅魔の者か。ならそのいかれた名前に納得がいく」

 

 「お、おい! 私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

 そうヒートアップするめぐみんだが、流石は魔王軍の幹部、デュラハンはどこ吹く風。そして、やはり冒険者の大群をみても全くどうじてない。

 

 「……フン、まあいいだろう。俺はわざわざお前ら雑魚にちょっかいをかけに来た訳ではない。しばらくはあの城に滞在する事になるだろうが、お前はもうこれからは爆裂魔法を使うな。いいな?」

 

 「無理です。紅魔族は一日に一回は爆裂魔法を撃たないと死にます」

 

 「お、おい! 聞いた事ないぞそんな事! 適当な嘘をつくなよ!」

 

 ………何だろうこの状況。相手は魔王軍の幹部なんだよね?

 

 アクアはなにやら目をキラキラさせながら、事の成り行きを見ている。

 

 「どうあっても爆裂魔法を撃つのを止める気はないと? そう言う事だな? 俺はアンデットになり、魔に身を落とした者ではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが………どうしても止めないと言うのであれば、こちらにも考えがあるぞ?」

 

 危険な雰囲気を感じさせるデュラハンに、めぐみんが、少し後ずさった。

 

 「うっ………め、迷惑だと感じているのは私達の方です! 貴方が城に居座っているせいで、こっちはろくな仕事も出来ないですよ! ……ふっ、ならこっちにも考えがあるんですよ! 先生、お願いします!」

 

 ……先生?

 

 「しょうがないわねー!」

 

 「「はっ!?」」

 

 「魔王の幹部だかなんだか知らないけど、この私が入る時に来るとは運の尽きね! あんたのせいでまともなクエストもうけられないのよ! さあ、浄化される覚悟はいいかしら!」

 

 

 

 私とカズマが驚きの声を上げる中、先生と呼ばれ出ていったアクアは満更でもないような顔をしてデュラハンの前に出た。

 

 ……めぐみん、あれだけデュラハンに言いたい放題言った後に、完全にアクアに丸投げしたね。

 

 「ほう、これこれは。アークプリーストか?」

 

 そう言いながらデュラハンが自分の首を前にだした。あれが相手に良く見るやり方なんだろう。

 

 「だが、俺はこれでも魔王軍の幹部の一人。こんな駆けだしの雑魚しかいない街に入る低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいない。そうだな……ここは一つ紅魔の者を苦しめてやるかっ!」

 

 「私の力で浄化してあげるわ!」

 

 「間に合わんよ。汝に死の宣告を」

 

 ……あ、あれは!?

 

 「めぐみんっ、あぶない!」

 「お前は一週間後に死ぬだろう!」

 

 デュラハンが呪いを掛けるのと、私がめぐみんを掴み自分の身を盾にしたのは同時だった。

 その瞬間、気持ち悪くも、苦しくもない不思議な感覚が私を襲った。

 

 「うっ!」

 「なっ!? シロナ!! くそっ!、やられた、死の宣告か!」

 

 私の身体には呪いが掛けられたはずなんだけと、そんな感じは全くしなかった。

 

 「シロナ、大丈夫か!?」

 

 「う、うん。特になんともないよ」

 

 だけどデュラハンは確かに一週間後に死ぬと言った。

 

 ダクネスは後ろで、

 

 「騎士の私が盾になるはずだったのに! くそ! 間に合わなかった! ………………羨ましい」

 

 ……今、間違いなく羨ましいって言ったよね? 最初騎士っぽいと思って感動した気持ちを返してほしい。

 

 「その呪いはいまはなんともない。だが、紅魔の娘よ。このままでは必ずその女剣士は死ぬ。仲間同士の結束が固いお前達にはこちら方が応えそうだな。ククッ、お前の大切な仲間は、そのまま死の恐怖に怯え、そして、苦しむ事になるのだ……。そう、貴様のせいでな! これから一週間、仲間の怯える姿の見て、自分の行いを悔いるがいい。クハハハハッ、素直に俺の言う事を聞いていればよかったのだ!」

 

 デュラハンの言葉でめぐみんが青ざめる中、ダクネスが急に叫んだ。

 

 「………ま、待て! それをシロナだけでなく、私にも掛ける事は出来ないか!? そうすれば燃えるシチュエーションになる事間違いなしだ!」

 

 「「えっ?」」

 「はっ?」

 

 ダクネスが言った事が理解できなかったデュラハンが素で返した。

 

 ……私もダクネスが何を言っているのか理解できないし、したくもない。

 

 カズマの顔も同じ顔をしていた。

 

 「呪いにかけられ、解いてほしくば黙って言う事を聞けと命令される! そして、命令を無視した私にきついお仕置きを……っ! ああ、どうしようカズマ! 「はいはい、カズマです」やっぱり何度考えて見ても絶好燃えるシチュエーション間違いなしだ! やはり私にも呪いをーっ!」

 

 「ええっ!?」

 

 呪いを掛けて欲しそうに興奮しながらデュラハンの方に向かうダクネスを私とカズマで取り押さえる。

 

 「ちょ、ちょっと待ってダクネス! おかしいから! それと、冒険者達が見てるから!」

 「止めろ、行くな! デュラハンの人が困っているだろ!」

 「や、止めろ! 放せーっ! 止めるなーっ!」

 

 「と、とにかく! これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのを止める事だ! そこのいる女剣士の呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい! そうして、無事に最上階にたどり着く事がてきたなら、その呪いを解いてやろう! で、では俺は城に行くとしよう。俺のところまでたどり着く事ができると良いなっ!」

 

 「ま、待ってくれ! 私にも呪いをーっ!」

 

  ダクネスはカズマと私で抑えて、デュラハンはホッとしながら首のない馬に乗り、逃げる様にそのまま城へと去って行った………。

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 突然の展開に、集められた冒険者達は呆然として立ち尽くしていた。

 それは俺も同じ事だ。

 ダクネスは結局呪いを掛けて貰えずへこんでいる。

 俺の隣のめぐみんは青い顔で震え、杖を力強く握り直す。

 そして、一人で外に出て行こうとする。

 

 「お、おい。何処に行く気だ」

 

 「今回は事は私の責任です。ちょっと城まで行って、あのデュラハンに爆裂魔法でも撃ってこようと思います。そして、シロナの掛かった呪いを解かせてきます」

 

 めぐみんが一人で城に行った所でデュラハンにたどり着く前に雑魚モンスターに爆裂魔法を撃って終わりだろう。

 ……と言うか。

 

 「俺も行くに決まってんだろ。良く考えろ。お前が一人じゃ雑魚相手に爆裂魔法を使ってそこで終わっちゃうだろ。そもそも、毎回一緒に行きながら、幹部の城だって気づけなかった俺にも責任があるからな」

 

 「ま、待って私も………」

 

 「いや、シロナは待っていてくれ。ここは俺達に任せてくれよ。シロナには迷惑かけでばっかだからな」

 

 俺の言葉にしばらく悩んでいためぐみんは、やがて諦めたように肩を落とした。

 

 「………分かりました。じゃあ、二人で行きますか。でも、相手は多分アンデットナイトです。そうなると武器は効きにくいですね。ですが、シロナはカズマの言う通り待っていてください」

 

 そう言って、めぐみんはうっすらと笑みを浮かべた。

 アンデットナイトと言うからには、鎧に来たアンデット達なのだろう。

 だが、俺はそれならと考えがあった。

 

 「なら、俺の敵感知スキルで城内のモンスターの場所を把握しながら、潜伏スキルで隠れつつ、デュラハンの所に行こう。もしくは、毎回城に通って爆裂魔法で地道に敵を減らしていく。魔法が使えるシロナを連れて行けないのは厳しいが、呪いを掛けられた仲間を働かせるのも嫌だしな。………この方法なら、シロナがいなくても一週間の期限があるんだ、いけるだろう。この作戦で行ってもいいな」

 

 俺の提案にシロナは不安そうな顔だったが、めぐみんは少しは希望が持てたのか微かに明るい表情になった。

 

 「シロナ。呪いは俺達だけでなんとかしてやるからな! だからシロナは、安心して待っ……」

 「『セイクリッド・ブレイクスベル』!」

 

 俺がシロナを元気付ける中、それを遮る形でアクアが唱えた魔法を受けてシロナの体が淡く光る。

 

 「「えっ?」」

 

 さっきから地面に残念そうに座っているダクネスとは対照的にアクアは嬉々として言ってきた。

 

 「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ! どうどう? 私、たまにはプリーストっぽいでしょ?」

 

 「あ、あれっ?」

 

 シロナは自分の体に確認するようペタペタと自分の体を触る。

 

 …………勝手に俺達だけで盛り上がっていた、俺とめぐみんのやる気を返せ。

 

 

  【デュラハンの撃退】

  クエスト達成!




 次回は宿やのオリジナル回にしたいと考えています。

 おもしろく出来るか分かりませんが頑張って書いてみます。


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『この優秀な仲間に説明を!』

 原作にはないオリジナルを書いてみました。

 本当は八話の途中にいれようと思っていた話ですが、文字数の問題で入れれませんでした。
 今回の視点はカズマだけです。
 短いですが頑張って書いてみました。

 つまらなかったら、すみません!

 


 シロナのお蔭様で馬小屋生活を脱出し、現在、不動産に紹介された目的の小さな物件に向かっていた………。

 

 「おい、アクア。ちゃんとシロナには感謝しろよ。馬小屋から出られたの、シロナのお蔭なんだからな」

 

 「………カ、カズマは私をなんだと思っているの!? ちゃんと感謝してるもん! カズマに言われなくたって後でお礼するつもりだったし!」

 

 俺の言葉に聞き慌てたようにアクアが反応する。

 

 ………おい、何ださっきの間は。本当だろうな?

 

 「いいよ別に。仲間に馬小屋生活で悩まされるのも何か嫌だし。それにもともと使い道を決めてなかったお金だしね。………あ、目的地が見えてきたよ!」

 

 ……なんて優しいんだ。何度も言うが本当に俺のパーティーに入ってくれてありがとう…………っ!

 

 

 

 

 

 「部屋はどうします? 二部屋しかないですし」

 

 目的の物件に到着し、部屋に入り荷物をおろす。

 

 まあ、当たり前の質問だよな………。

 

 「そうだな………じゃあ、一つが居間でもう一つは寝室にしようか。ベットは………最初から有るみたいだし助かったな」

 

 「…………カズマそれは助かるんだけど、寝るのはいいとして、寝る位置や着替えとかはどうすれば…………」

 

 シロナがそんな事を顔を赤くし、不安そうに聞いてくる。

 

 「ん? 着替えの時はもちろん俺は違う部屋に行くよ? 皆もそれでいいか?」

 

 俺以外の三人が頷く。たがアクアはニヤニヤしながら。

 

 「カズマさんったら実は聞かれなかったら着替えの時もこの部屋にいるつもりだったんでしょ? 私の素晴らしい身体を見たかったんでしょ? プークスクス」

 

 ………どうしよう。こいつだけ、外で寝かせてやろうか。

 

 「誰がお前の身体なんか興味あるか! 馬小屋生活で寝泊まりしてた時も頑張って興味を持とうとしたが無理だったっていう結果があるんだよっ!」

 

 「なんでよーーーっ! ねえ、お願い! お願いもう少し頑張って! 少しくらい私に興味持ってよカズマさん!」

 

 アクアは俺の言葉を聞くや否や俺の胸ぐらを掴み振り回す。

 

 ちょ、痛い痛い!

 

 「ちょっとア、アクア! カズマが苦しそうだから離してあげて! 大丈夫、カズマはああわ言ったけど少しは興味持ったはずたがら!」

 

 「全く、今のはカズマが悪いですよ? いくらアクアがあれだからって言い過ぎです」

 

 「うむ、そんなにアクアを罵倒したいなら変わりに私にやってくれても構わん」

 

 ………シロナもさりげなく少しって言ったな。ダクネスはもう無視だ。

 

 「………いてて、悪かったよ。じゃ時間も結構遅いし急いで荷物の整理をするか」

 

 アクアがさっきのめぐみんの言葉が気になったようで……。

 

 「………ねえ、あれって何なの? ………ちょ、ちょっと何で皆、可哀相な目で私を見るの!?」

 

 

 

 

 深夜過ぎ。

 俺達は荷物の整理を終え、鎧などは脱ぎ自分のベットにくつろいでいた。

 

 「………ふう、ほとんどの荷物の整理は終わったね」

 

 「…………はい、時間も遅いのでさっさと……寝たい……です」

 

 シロナの言葉にすでにめぐみんが半分寝むりかけながら言っている。アクアは自分のさっさと終わらせ、既に寝ている。

 

 ………やっぱり子供だからしようがないな。いや、いつも俺が遅いだけか。

 

 「むっ? 何か今馬鹿にされた気が……」

 

 「そんじゃ寝るか! 皆お休み!」

 

 「あっカズマ、後で二人で話たい事があるから寝ないでね!」

 

 「……?」

 

 

 

 

 俺とシロナ以外が寝た時刻。

 

 「で、シロナ。話たい事って何なんだ」

 

 お互い自分のベットに座り、向かい合う。

 

 二人で話たい事とはなんだろうか? 

 

 「ええと、その………カズマが異世界に来る直前の話と特典でなにを貰ったのか聞きたいんだけど……。ほ、ほら! 同じ日本人同士で話す時がなかったし」

 

 ……………ああ、そんな事か。

 

 「そう言う事なら、良いよ」

 

 そして俺は異世界にきた死因、そして俺の特典(アクア)の話をした………。

 

 

 「………な、なるほど! 女神のアクアが何でいるのか不思議だったんだけど、そう言う事だったんだね。そして、魔王を討伐すれば帰れるからあんなに魔王を討伐したがっていたと」

 

 ……流石シロナ。俺の死因をあの駄女神の様に笑わずにいてくれた。シロナの優しさが心にしみる……っ。

 

 「………ま、まあ、そう言う事だよ。全く、あいつが使えないせいでどれだけ苦労した事か……。こ、こっち話したんだから、シロナも話してくれよ」

 

 「う~ん、私の話は聞いて面白いものじゃないと思うよ?」

 

 

 

 

 「…………なるほど、そう言う事だったのか。確かにあまり面白く聞くものじゃないな。でも、何で最初に髪の毛とかを隠していたのかも分かった。確かに日本人でその髪の毛と目は目立つからな」

 

 「うん、私はこれが原因で苛められてたからね、その事もあってだよ。……………そう言えば、カズマは日本人なんだよね? この見た目見てもをなんとも思わないの? 気味が悪いとか思わないの?」

 

 と不安そうに俺に聞くが

 

 「は? なんで? 確かに最初は驚いたけど、気味が悪いって事はないだろ」

 

 「えっ? あ、ありがとう………」

 

 おそらくだか日本人に今まで言われた事がないのだろう。顔を赤くしながら感謝してくる。

 

 「え、ええと。時間も遅いしそろそろ私は寝るよ! じゃ、じゃあ、おやすみ!」

 

 「お、おう」

 

 照れた顔を隠すためなのか強引に話を終わり、自分のベットに入っていった……。

 

 

 

 

 

 そして、シロナも眠り全員が寝た時刻。

 

 俺は現在の仲間の四人の事を考えていた。今までは次から次へと厄介事があり落ち着いて考えられなかったのだ。

 

 まず、アクアだ。あいつは一応女神なんだが活躍した事がほとんどない。

 ダクネスは身体は言いんだが………あの性癖だ。

 めぐみんは年中爆裂爆裂言ってる爆裂狂のロリッ子だ。

 

 「………すう………すう……………」

 

 そして、シロナは初めて仲間になってくれた俺と同じ日本人て話やすいし、普通に優秀で優しく、この物件だってシロナのお蔭だ。………はあ、俺もそんな便利な職業を選べて最初生活に困る事なかったんだかな……。

 

 

 「………ふむ、全くもって眠れんのだが……」

 

 俺は隣から聞こえてくる寝息でドキドキし、頭が冴え、眠れずにいた。

 

 アクアやめぐみん、ダクネスは大丈夫だ。

 ………たが、シロナはどうだ! さっきは話に集中して大丈夫だったが、見た目も良く性格も良い! よく考えるとそんな美少女が隣で寝てるんだぞ! 童貞の俺がドキドキしないわけがない。アクアが女神? あれは女神じゃなくて駄女神だ! 

 

 言い忘れていたが、アクアが窓際が良いだの只をこねてそこから順にアクア、ダクネス、めぐみん、シロナ、俺と言う順になっている。

 シロナは最初は寝所が俺の隣になると分かった瞬間不安そうな顔をしていたが、あの会話をした後、何やら信頼の目を向けて、眠っていった。

 

 やはり仲間に信頼されるのは良いな。………だか、それとこれとは別だ!

 

 「…………俺、無事に眠れるんだろな?」

 

 

 結局俺が眠る事ができたのは朝の四時近く。

 次の日、俺は目の下にクマができ、めぐみんやダクネス、シロナに心配された。あの駄女神(アクア)は笑っていたが…………。

 

 あのやろうっ! 本当に外て寝かせれば良かった!




 八話でカズマが眠そうにしてないですが、そこは気にしないでください、お願いします!

 


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第十話 『この汚れた湖に女神を』

 こんにちは白城です!

 少しずつ慣れて来ました。
 でも、もっと読みやすくできる様に頑張っていきます!

 あとお気に入り100件越えました。
 ありがとうございます!

 記念日すべき第十話です!


    カズマside

 

 デュラハンの襲撃から何事もなく一週間が過ぎたある日。

 

 「クエストに行きましょう! きつくても良いからクエストを請けましょう!」

 

 

 「「えーー……」」

 

 アクアの突然の言葉に俺とめぐみんが同時に不満の声を漏らす。

 俺達は別に金に困っている訳ではない。アクアを除いてだが……。

 魔王軍幹部の影響で高難易度クエストしかない今、わざわざクエストを請けようと思う人は少ないだろう。

 

 「ねえ、お願いよー! バイトでコロッケが売れ残ると店長が怒るの! ねえ、お願いっ! 私、今回は全力で頑張るからーっ!」

 

 アクアはそう言って俺に泣きつく。

 

 ………惨めだ。この自称女神。

 

 「…はあ、しょうがねえな。じゃあなんか、良さげなクエストでも見つけてこいよ。悪くなかったら付いていってやるから」

 

 「わかったわ!」

 

 俺の言葉に、アクアが嬉々として掲示板に駆け出す。

 

 「……さてっと、シロナ。クエスト、シロナも見てきてくれないか? アクアに任せておくと、とんでもないクエスト持ってきそうだから」

 

 「えっ? わ、分かった!」

 

 そう言ってシロナも掲示板に急いで向かった。

 

 「…………カズマ、考えましたね。確かに私もアクアに任せておくのは、危険だと思っていました」

 

 「ああ、短い付き合いだが、なんだか、私もそう思っていた所だ。まあ、シロナに任せて置けば問題ないだろう」

 

 そう言って俺を含む皆がシロナが向かった掲示板の方に視線を向けた……。

 

 

 

 

    白奈side

 

 私はカズマに言われた通り、アクアの向かった掲示板に向かった。

 

 ……とんでもなく難しいの選ばなきゃいいけど。

 

 そんなに期待を込めながら。

 

 クエストの張り出されている掲示板に着くと、何やらアクアが難しく顔で請け負うクエストを吟味していた。

 

 ……おおっ! アクア、こんな顔も出来たんだ……。

 

 私はアクアの邪魔をしないように後ろをこっそり立つ。

 アクアは背後に立っている私に気づかず、真剣な顔もでクエストを睨んでいた。

 やがて、一枚のクエストの紙を掲示板から剥がし、手に取った。

 

 「……よし!」

 

 「いや、待って! 全然良しじゃないから! 何受けようとしてるの!?」

 

 私は依頼書を持っているアクア急いで押さえる。

 何故ならアクアの選んだクエストは………。 

 『ーーーマンティコアとグリフォンの討伐ーーーマンティコアとグリフォンが縄張り争いしている場所があります。このままだと、大変危険なので、二匹まとめて討伐をお願いします。報酬五十万エリス』

 

 ………あっ、危なかった! カズマの言う通りだったよ。危うくとんでもないクエストを受けさせられる所だった…! 

 

 「な、何よシロナ!」

 

 「いや、何よじゃないから! 本当に何受けようとしてるの!?」

 

 「マンティコアとグリフォンの討伐だけど?」

 

 アクアはこの危険なモンスターをどう倒すのか考えているのだろうか? いや、絶対そこまで考えてない!

 

 「アクアはどうやってこのモンスターを倒すつもりなの?」

 

 「ええと、それは………っ! 一体ずつシロナとめぐみんが魔法を食らわせれば一撃じゃないの!」

 

 ほら、やっぱり考えてなかったよ! それに……。

 

 「めぐみんの爆裂魔法なら確かに一撃で倒せると思うけど、私の今のレベルの魔法だと多分一撃じゃ倒せないと思うよ?」

 

 「え? そ、それならしょうがないわねー……あっ! これよこれ! これならどう!?」

 

 ……はあ、カズマが苦労する理由が良く分かるよ。………ええと何々?

 

 言われて、アクアが指差す依頼書を見る。

 

 『ーー湖の浄化ーー街の水源の一つの、湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲリーターが住み着き始めましたので、水の浄化をお願いします。湖の浄化をすればモンスターは勝手にいなくなるので、モンスターの討伐はしなくても良い。報酬は三十万エリス 注意……浄化魔法を習得しているプリーストのみ』

 

 「………湖の浄化なんてどうやってやるの? アクアって浄化魔法使えたんだっけ?」

 

 私の疑問にアクアが自信満満に笑う。

 

 「シロナ。私、何を司る女神だと思う? 名前や外見のイメージで言って見てよ!」

 

 ………アクアのイメージか……。

 

 まず一番最初に頭に浮かんだのが、宴会芸して楽しんでいるアクアの姿。

 

 「ええと………え、宴会の神様?」

 

 「違うわよ! 確かに宴会芸は好きだけど、この美しい水色の髪と瞳を見なさいよ! 水よ! み・ず! 水の女神よ!?」

 

 な、なるほど!

 

 「ご、こめんねアクア! ええと、じゃあ、取り合えずそれを持ってカズマの所に行ってみよ?」 

 

 そう言って私はアクアに誤り、アクアと一緒にカズマ達がいるテーブルに向かった。

 

 

 

 

    カズマside 

 

 しばらく待っているとシロナとアクアが戻ってきた。

 

 「おーいアクアー、良いはあったかー?」

 

 シロナも戻ってきたと言う事は大丈夫そうなクエストでも見つかったんだろう。やっぱりシロナに任せて正解だった。

 まあ、見たいた限り予想通りアクアがやばいクエストを最初選んでいた見たいたけど。

 

 「カズマ見なさいよ!」

 

 そう言ってアクアはクエストの依頼書を見せてくる。

 

 「ええと、何々? ………湖の浄化? お前湖の浄化なんて出来るのか?」

 

 「カズマなら私が何を司る女神か分かるでしょ!?」

 

 「宴会芸の神様だろ?」

 

 「ちっがうわよ!? 何でカズマもシロナと同じ事言うのよ! 水! 水の女神よ!」

 

 水の浄化だけで三十万か、確かに美味しいな。

 討伐しなくてもいいって所が良い。シロナが許可した理由が分かる。

 

 「じゃあ、それ請けろよ。て言うか、浄化だけなら一人でもいいんじゃないか? それなら独り占めできるだろ?」

 

 「あの、カズマ。その、多分アクアは……」

 

 シロナがアクアの方をチラチラ見ながら言ってくる。

 

 ………?

 

 「え、ええーと、その………、多分、湖を浄化してる間モンスターが邪魔してくるから、守って欲しいんですけど……」

 

 ……そう言う事か。

 しかし、ブルータルアリゲリーターって、名前から察するにワニ系のモンスターだろ?

 凄く危険そうなんだが……。

 

 「アクア、因みに浄化ってどのくらいで終わるんだ? 三十分くらい?」

 

 「………半日くらい?」

 

 「えっ‼?」

 「長えよ!」

 

 シロナもここまで長いとは予想外だったようだ。それはそうだろう。いくら長くても三十分くらいと考えるだろう。

 名前からして危険なモンスター相手に半日も防衛なんてしてられるか!

 

 俺は張り紙を元に戻そうと……。

 

 「ああっ!? お願い、お願いよおおっ! もう他にはろくなクエストが無いの! お願い協力してよカズマさーん!」

 

 掲示板に張り紙を戻そうとする俺に、すがり付いて泣きつくアクア。

 

 「そもそも、湖の浄化ってどうやってやるんだ!?」

 

 「……へ? 水の浄化なら、私が水に触れて浄化魔法でもかけ続ければ出来るし、私くらいの女神になると触れているだけで浄化できるけど……」

 

 ふむ、なるほど。水を触れてないといけないのか。

 

 「なあ、アクア。多分、安全に浄化できる方々があるんだが、お前、やってみるか?」

 

 

 

 

 街からすがり付く離れた所にある大きな湖。

 

 「………ね、ねえ、本当にやるの?」

 

 隣から聞こえてくる不安気なアクアの声。

 

 「俺の考えた隙のない作戦のどこが不安なんだ?」

 

 「大丈夫だよ、アクア。本当に何かあったら助けにすぐ行くから」

 

 「うん、それはいいんだけどね………私、今から売られて行く稀少モンスターの気分なんですけど……」

 

 作戦はこうだ。

 オリに入れたアクアを湖まで運び、そのまま湖に投入する。そして安全な檻の中から湖の浄化をする。

 アクアは浄化魔法を使わなくてもアクア自身が湖に浸かっているだけで浄化効果があるそうなので、流石は腐っても女神だ。

 アクアの入ったオリは俺とダクネスの二人がかりで湖に運んだ。

 因みにこのオリは鋼鉄製でギルドに常備されている物を借りてきた物だ。モンスターの捕獲依頼などで使われる物らしい。

 湖端っこに、アクアをちょっと浸かる程度にオリを置いとくのだ。別に使えない女神を湖を放置する訳ではない。

 これなら依頼書にあったブルータルアリゲリータとかと言うモンスターに襲われてもアクアには攻撃がととかず安全に湖の浄化ができると言う考えだ。

 檻には万一の事を考え、頑丈な鎖を付けておいた。

 緊急時には、借りてきた馬に、鎖で檻を引っ張らせ逃げる予定だ。

 後は湖の浄化まで俺達は離れた場所で見守るだけだ。

 

 「私、だしを取られている紅茶のティーバッグの気分なんですけど……」

 

 そんな事をアクアはぽつりと呟いた……。

 

 

 

 

    白奈side

 

 カズマの作戦で浄化を始めてから、二時間が経過した。

 依頼書にあったモンスターが襲ってくる気配はまだない。

 だけど………。

 

 「鉄格子が三百十二本、鉄格子が三百十三本、鉄格子が…………」

 

 「………カズマ、なんか、後ろ姿が可哀相なんだけど……」

 

 「そうは言ってもな~、……おーいアクア! 浄化はどんなもんだ? 湖に浸かりっぱなしは冷えるだろー。トイレ、行きたくなったら言えよ。檻からだしてやるからー!」

 

 「浄化の方は順調よ~。あと、トイレはいいわよー。アークプリーストはトイレなんて行かないし!」

 

 「ほらな」

 

 「う、うん。そうだね」

 

 「大丈夫そうですね。因みに紅魔族もトイレなんて行きませんよ」

 

 「お前らは昔のアイドルか!」

 

 ……なら、食べたり飲んだりしている物は、いったいどこに消えているんだろう。ブラックホール?

 

 「わ、私もくるせいだーだからトイレは……うう……」

 

 「ダクネスまで、二人に対抗しないで」

 

 「ああ、トイレ行かないって言う二人には、今度、日帰りで終わらないクエスト受けて、本当にトイレ行かないのか確かめてやる」

 

 「や、止めてください! 紅魔族はトイレなんて行きませんよ! でも、謝るので止めてください」

 

 「おお、流石私のみこんだ男だ」

 

 ………それにしても。

 

 「ワニ、来ませんね。このまま何事もなく終わればいいんですけど」

 

 「や、止めて。そんなフラグの様な事を言わないで! ずっと我慢してたのに!」

 

 それをきっかけにするように、湖から地球のワニと比べてもそんなに変わらない大きさのワニが出てきた。

 

 「ね、ねえ! カズマ! なんか来た! なんかいっぱい来た!」

 

 だが、ここは異世界。

 この世界のワニは集団で行動するらしい。

 

 

 

    カズマside

 

 ーーー浄化を始めてさらに二時間経過ーーー

 

 「『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』!」

 

 アクアは自身に備わっている浄化能力はだけでなく、浄化魔法までも一心不乱に使っている。

 隣にいるシロナはさっきから不安そうにアクアを見ていた。

 それもその筈。

 アクアが入っている檻をワニが囲み、ガシガシとかじっている。

 

 「アクアー。ギブアップならそう言えよー。そしたら、檻を鎖ごと引っ張って逃げるからー!」

 

 「嫌よ! ここで諦めたら報酬がもらえないじゃない! 『ピュリフィケーション』! ひいいいいっ!! 今オリから鳴っちゃいけない音が鳴った!!」

 

 「アクア本当に大丈夫かな……?」

 

 「楽しそうだな…………もう辛抱たまらん! 私も行ってくる!」

 

 「「えっ?」」

 

 ダクネスが嬉々として、アクアの方に向かっていった。

 

 「ちょ、ちょっと待てダクネス! 行くな! お前まで行くな!」

 「お願いダクネス! 君まで行かないで!」

 

 俺とシロナが必死に押さえる。

 やっぱりこいつの力は物凄い!

 

 「前も思ってたけど、ダクネス力強すぎ! どんな筋肉してるの!?」

 

 「っ!!?」

 

 シロナは悪意なき言葉なんだろう。ダクネスの力が一気に弱くなった……。

 

 

 

 ーーー浄化を始めてさらに四時間が経過ーーー

 

 湖の浄化は無事に終わった。

 と、言うか一時間程前からアクアの浄化魔法は聞こえてこなくなった。

 

 「おーい、アクア。大丈夫か?」

 「アクア。本当に大丈夫?」

 

 俺達は檻に近づき、檻の中のアクアの様子を窺った。

 

 「……ぐす……ひっく……」

 

 「はあ」

 

 泣くくらいならリタイアすれば良いのに……。

 

 「ほら、浄化が終わったんなら、街に戻るぞ。……皆と話あったんだが、俺達は報酬いらないからさ。報酬三十万全部、お前の物だ」

 

 「そ、そうだよアクア! 全部アクアの物だよ!」

 

 「そうです。全部、アクアの物です!」

 

 体育座りになったアクアの肩がピクリと動く。

 ……だが、アクアが檻からでる気配はない。

 

 「おーい、アクアー」

 

 「…………」

 

 「アクア? もう外にはブルータルアリゲータはもういなから、もう大丈夫だよ」

 

 シロナが優しく声を掛ける。

 

 「……連れてって」

 

 ………?

 

 「え?」

 

 「……檻の外は恐いから、このまま街に連れてって」

 

 ……どうやら、今回のクエストでアクアにまた、トラウマを植え付けてしまった様だ。

 

 【湖の浄化】

 クエスト達成!




 次回はミツルギ? 

 どうしようシロナいるし……。

 現在、原作の2巻のサキュバスのお風呂編を書くかどうか悩んでいます!


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第十一話 『この魔剣使いに成敗を』

 こんにちは白城です。

 すみません、投稿遅くなりました!

 これからもリアルの事情で遅くなることあると思いますが、頑張って書いていきます!

 今回もカズマ視点が多いです。原作の主人公なので書きやすいんです。すみません、言い訳でした。



    カズマside

 

 「ドナドナドーナードーナー………」

 

 「「「「…………」」」」

 

 「お、おいアクア。もう街の中に入ったんだからその歌は止めてくれ。ボロボロのオリに、膝を抱えた女を運んでいる時点で皆の注目を集めてるんだよ。て言うか、いい加減出てこいよ!」

 

 「ねえ、アクアお願いだから檻の中から出てきて。皆の視線が集まって凄く居心地悪いから……」

 

 「嫌。この檻の中こそが私の聖域よ。外の世界は恐いからしばらく出ないわ」

 

 すっかり引きこもってしまっているアクアを湖から街まで馬で引っ張ってきた、俺達は無事? にクエストを終えて街の皆に何やら温かい視線を集めつつギルドに向かっていた。

 あれから頑なに檻の中から出ようとしないアクアがいるので移動速度は遅い。

 でも、今回のクエストはアクアにトラウマができたが、それ以外は被害らしい被害は出ていないので良い方だと思う。

 今回は珍しく何の問題もなくクエストが終わったなあ………。

 

 

 

 

 

 そんな事を考えてしまったからだろうか。

 

 「女神様っ! 女神様じゃないですかっ! 何をしているのですか、こんな所で!」

 

 突然叫んできて、檻に入っているアクアに駆け寄り、鉄格子を掴む男。

 そいつはあろう事か、ブルータルアリゲリーターの破壊できなかったオリの鉄格子を、いとも容易くグニャリと曲げる。

 

 「えっ!」

 「まじですか!」

 「何!」

 

 俺の仲間が驚き唖然としている中、その見知らぬ男は中のアクアに手を差しのべた。

 

 「………おい、私の仲間に軽々しく触れるな。貴様、何者だ?」

 

 手を差しのべている男なにダクネスが詰め寄った。

 モンスターの中に飛び込もうとしていた時とは違い、今のダクネスは誰が見ても立派な騎士の姿だ。

 

 ……いつもこんな感じだと良いんだけどなあ……。

 

 男はダクネスを一瞥すると、溜息を吐き首を振る。

 いかにも、厄介事に巻き込まれたく無かったが仕方がないと言う感じで。

 

 ……いや、先にやって来たのあなたですからね?

 

 ダクネスもその男の態度に明らかにイラッとした顔をした。

 シロナが男とのこの状況を早く抜け出したいのでアクアにそっと耳打をする。

 

 「……ねえ、あの人アクアの知り合いなんでしょ? 女神とか言ってるし。お願いだからあの男くらい何とかしてよ!」

 

 「………?」

 

 ………?

 

 「……あ、ああっ! そうよ女神! 女神よ私は!」

 

 こいつ! 本当に自分が女神って事忘れてたんじゃないだろうな。ほらっ! シロナだって疑いの眼差しをむけてるだろ!

 

 もぞもぞと檻の中から出てきたアクアは、その男に向き合い。

 

 「さあ、女神の私にして欲しい事は何かしら!………………って、あんた誰?」

 

 知り合いじゃないのかよ!

 いやっ、間違いなく知り合いだ。男が驚き表情(かお)で見てるからな!

 多分アクアが忘れているだけだろう。

 

 「僕です! あなたに、魔剣を頂いた御剣 響夜(みつるぎきょうや)ですよ!」

 

 「…………?」

 

 アクアかなお首を傾げている中、シロナが俺の方にこっそり寄って来てあの男に聴こえないように小声ではなす。

 

 「………ねえ、名前はあれだけど、多分私達と同じ転生者じゃないかな?」

 

 「ああ、アニメの主人公みたいな名前とイケメンでイラッとするが、俺より先に送られた転生者で間違いないと俺も思う。美少女も連れているし、正直ぶん殴ってやりたい」

 

 「うん、その気持ちは良く分かるけど……まだ、檻を破壊しただけだから、それは止めてね?」

 

 おっとミツルギさん。シロナさんから本音を漏れさせていますよ。

 

 「ああっ! いたわね、そんな人も! ごめんね、だつて結構沢山の人を送ったし、忘れたってしょうがないわよね!」

 

 必死のミツルギの説明で、今、ようやく思い出したアクア。

 若干表情(かお)を引きつらせながらも、ミツルギはアクアに笑いかけた。

 

 ふむ、やっぱりイケメンだ。イラッとする。

 

 「ええと、お久しぶりですアクア様。あなたに選れた勇者として、日々頑張っています。……ところでアクアは何故オリの中に?」

 

 ミツルギはチラチラと俺の方を見ながら言ってくる。

 

 ……アクア。お前まさか、毎回転生者達に選ばれた勇者とか、あなたにしかできない事とか、適当な事言ってこの世界に送りこんでいたのか? おい、視線をそらすな。

 

 今まで、忘れていた事からどれだけいい加減に送ってきた事がわかるだろう。

 隣のシロナがアクアを呆れた目で見ている。アクアは必至にシロナから視線に合わせないようにしている。

 

 と、言うか。ミツルギには俺がアクアを檻の中に入れた様に見えているのか?

 ……いや、普通はそう見えるか。

 シロナはパッと見たら日本人に見えない。

 そうなると俺になるな。

 どうせミツルギに「本人が檻の中から出たがらなかったんです」と言っても信じてくれないだろう。

 まあ、俺だってそんな女神がいる事を、この目でみても信じられなかったのだ。

 

 俺は、自分と一緒にアクアがこの世界にきた経緯と、この状況になるまでので事をミツルギに説明した……。

 

 

 

 

 「はあ!? 女神様をこの世界に引き込んで!? 今回のクエストでは檻に閉じ込めて湖に浸けた!? 君は一体何を考えているのですか!?」

 

 俺はミツルギに胸ぐらを捕まれていた。

 それをアクアが慌てて止める。

 

 「ちょっ、ちょっと!? 私は別に毎日結構楽しい生活を送っているし、ここに連れてこられたことはもう気にしてないんだけどね? そ、それに魔王を倒せば帰れる訳たし! 今回のクエストだって、怖かったけど結果的に誰も怪我もしないですんだんだし。し、しかも、今回のクエスト報酬の三十万全部くれるって言ってくれてるの!」

 

 そのアクアこ言葉に哀れみの眼差してアクアを見る。

 

 「……アクア様、どうこの男に丸め込まれたのかは知りませんが、あなたは女神ですよ!? それでそんな目にあったのに、たったの三十万? ……突然ですが今はどこに寝泊まりしているんです?」

 

 こいつ、初対面のくせに言いたい放題だな。アクアの事をろくに知らないくせに。お前なんかアクアを事を知ったらどうなる事か……。

 

 ミツルギの言葉に、アクアがおずおずと答えた。

 

 「え、えっと、皆と一緒に小さな家で寝泊まりしてるんですけど……」

 

 「そうか、馬小屋などじゃなくて安心したよ」

 

 「でも、ちょっと前までは馬小屋に………」

 

 アクアめ余計な事に言いやがった! なにも言わなければすんだ物を!

 

 ミツルギがさらに力を込める。

 

 「おい、いい加減その手を放せ。さっきから礼儀知らずにも程があるだろ」

 「黒より黒く…………」

 

 バガな事を口走る時以外は落ち着いて静かなダクネスが、珍しく怒ってる。

 後ろにいるめぐめんは杖を構え、爆裂魔法の詠唱を………って、おい、それは止めろ! 俺が死ぬ! おっ! シロナが止めてくれた。助かった~。

 

 ミツルギは俺はから手を放すと、興味深そうにダクネスとめぐめんを観察する。ミツルギが見た瞬間、シロナが極力関わりたくないのかサッとダクネスの後ろに隠れる。

 

 「……クルセイダーにアークウィザードか? パーティーメンバーには恵まれているんだね。君はこんな優秀そうな人達を連れているのにアクア様にこんな生活をさせて恥ずかしいとは思わないのか?」

 

 こいつの話だけを聞いていると、自分がスゴく恵まれている環境にいる様に思えてくる。だが……。

 

 お前から隠れたシロナが優秀なのは認めるよ? だけど他の奴等が優秀? そんな、片鱗、一度も、見た事が、無いんだが!!

 

 「君達、今まで沢山苦労したようだね。だが安心してくれ。これからは僕達と共に来ると良い。必要な武器や防具を変え揃えて上げよう。と言うか貴方達が来るとパーティー的にも凄くバランスが良いじゃないか。攻撃役の僕と僕の仲間も戦士に、タンク役のクルセイダーの貴方。そして僕の仲間の盗賊と、後方で戦うアークウィザードのその子にアクア様。どうだい? 凄く完璧なパーティー見えないかい?」

 

 ミツルギの言葉に隠れているシロナが不機嫌の顔になる。

 

 おっと、俺とシロナが入ってませんよ。

 いや、シロナは入ってなくて当然か。この男はシロナにまだ気付いていないんだからな。

 

 ………ん? 持て、良く考えろ。これを要求を飲んだら俺のパーティの問題児が居なくなり、俺はちっとも構わない。むしろ、俺の仲間の三人の待遇も悪くないし、アクアもミツルギについていった方が魔王討伐の可能性が高くて良いじゃないか。

 このイライラするミツルギだが、悪くない考えだ。もう一度言うが待遇も悪くないし、俺の仲間もアクアもこころが動いたかなと背後で会話している話に聞き耳をたてると………。

 

 「ねえ、ちょっとヤバイんですけど。まじで引くくらいヤバイんですけど。ナルシストも入ってる系で本気で怖いんですけど」

 

 「どうしよう。責めるより受ける方が良い私はだが、あの男は無性に殴りたいだが」

 

 「撃って良いですか? 撃って良いですか?」

 

 「駄目だってば、その気持ちは痛いほど分かるけど、カズマが間違いなく死んじゃうから!」

 

 おっと、素晴らしいくらいに大不評ですよ。

 

 と、考えていると、アクアが俺の服の裾を引っ張る。

 

 「ねえ、カズマ。私から魔剣あげといておいてなんだけど、あの人には関わらない方が良いと思うわ」

 

 確かに、イチイチ腹が立つ男だが、ここはアクアの言う通り立ち去るべきだ。

 

 「ええと、俺らのパーティは満場一致で貴方のパーティにはいきたくないようです。では、これで……」

 

 俺はそう言うと、馬を引いてオリを引っ張り、ギルドに向かおうとした。

 

 「待て!」

 

 「はあ………どいてくれます?」

 

 俺の前に立ち塞がるミツルギに、俺はさらにイライラしながら告げる。

 

 「悪いが、アクア様をこんな境遇には置いてはいけない」

 

 どうしよう。この人。人の話を聞かないタイプだ。この後の展開は目に見える。

 

 この後の展開を予想できたであろうシロナがさすが痺れを切らして俺の前に出る。チラッとシロナの顔を見るにシロナもかなりイライラしているようだ。

 

 「カズマここは任せて。………つまり、貴方は何が言いたいの?」

 

 「君は………。いや、そんな事よりも勝負をしないか?アクア様を賭けて。僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら何でも一つ、言う事を聞こうじゃないか」

 

 「じゃあ、その勝負、カズマの代わりに私が受けるよ。勝った場合の言う事はカズマが決めて」

 

 「君は見た感じ戦士って所かな? 僕の職業はソードマスター。剣の勝負で僕に勝てるとでも思っているのかい?」

 

 「良いから早く剣を構えて」

 

 シロナの発言ミツルギは戸惑いながらも腰にある魔剣を構える。

 

 シロナ、どうやって勝つつもりなんだろう。

 

 「……じゃあ、準備は言いかい? 僕がスタートといったら開始だ。三、二、一、スタート!」

 

 「『セイクリッド・ウインドブレス』!」

 

 「「「……えっ」」」

 

 その間の抜けた声は誰のものか。

 おそらく俺とシロナ以外の全員だったかもしれない。

 

 シロナの突然の風魔法にミツルギは成す術もなく飛ばされ、運悪く頭を壁に壁に激突させた。

 

 

 

 

    シロナside

 

 「ふう、スッキリした!」

 

 「この……卑怯者! 卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!」

 

 「そうよこの卑怯者! 正々堂々勝負しなさいよ!」

 

 ………?

 

 ミツルギの仲間の、二人の少女の罵倒。

 

 私はそれを疑問を持ちながら聞いていた。

 

 卑怯、何で?私は一言も剣の勝負(・・・・)を受けるとは言っていなし、そもそも、最弱職のカズマ相手に勝負を仕掛けようとしたんだよね? だったたらそっちの方をが卑怯だと思うけど……。まあ、勝負は終わったから後は

 

 「カズマ後はお願い」

 

 「ああ、じゃあ勝負は俺らの勝ちって事で、"何でも"だよな? なら魔剣貰っていきますね」

 

 その言葉に取巻きの一人がいきり立つ。

 

 「なっ!? 待ちなさいよ! その魔剣はキョウヤにしか使えないんだから!」

 

 自信たっぷりで言ってくる少女の言葉に、カズマがアクアの方を向いた。

 

 「えっ? マジで? この魔剣、俺には使えないのか? せっかくこの魔剣でシロナの負担減らせるとおもったんだけど」

 

 「残念だけど、その魔剣は痛い人専用よ。カズマが使ったって普通の剣よ」

 

 「カズマの気持ちはうれしいよ。その魔剣だけど、せっかくなんだから貰っておけば? 貴方達は勝負で魔法無しと言わなかった貴方が悪いんだから恨みっこ無しって言っておいて」

 

 「それもそうだな。じゃあアクア、ギルドに報告に行くぞ」

 

 「なっ!? 待ちなさいよ! 私達はこんな結果認めない!」

 

 ……どうしよう。このままだと引き下がらなさそうだなあ

 

 そんな事を考えているとカズマが急に立ち止まり、二人の少女達に手をワキワキさせて見せた。

 

 「………真の男女平等主義者な俺は女性相手でもドロップキックをくらわせれる男。……手加減してもらえると思うなよ。公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ」

 

 「っ!!」

 

 カズマの手を見た少女は身の危険を感じとったのか数歩下がる。

 

 「さあ、どうする? ふははははは!」

 

 「いやああああああ!!」

 

 二人の少女は耐えきれず建物の隙間へと逃げていった……。 

 

 ……カズマが本気じゃない………のかな? 結果的に助かった。けどっ!

 

 「「「「うわあー………」」」」

 

 「………ええと………頼む……シロナまで引かないでくれ。俺、本気でへこむから」

 

 「…………無理!」

 

 私達は借りていたオリをギルドに引きずって、ようやくギルドに帰ってきた。




 次回はデュラハン戦まで書けるかな

 これからも読みやすく出来るように頑張って書いていきます!

 あと、片方の視点だけ多くならないように気をつけて書いていきます。


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第十二話 『この女神に収集を』

 皆さんこんにちは白城です!

 誤字報告ありがとうございます。すごく助かります!

 今回は短くなりました。デュラハン戦まで書くとかなり長くなりそうだったので


    白奈side

 

 「何でよおおおおお!」

 

 冒険者にアクアの声が響き渡る。

 

 「アクアの声ですね。一体何があったのでしょうか」

 

 「……はあ」

 

 隣に座っているめぐみんがそんな呑気な事を言っている。

 

 …………嫌だなあ。アクアは必ず何か問題を起こさないといけない病気なの? それとも水じゃなくて問題児の神様なの? ………はあ、早くカズマ帰って来てくれないかなあ……。

 

 声のする方向を見るとアクアが職員に掴みかかっていた。

 カズマは馬を返すついでに戦利品である魔剣を手にある所に寄ってから来ると言っていた。

 

 「帰ってきたぞー。クエスト完了の報告は……………はあ」

 「だから何で私が弁償しなきゃいけないのよ! このオリを壊したのはミツルギって人が勝手に壊したんだってば!」

 

 カズマがギルドの入り口から入って来ると、何が起きたのか瞬時に理解したらしい。関わりたくないのか真っ直ぐ私達のテーブルにやって来る。

 

 ……なるほどね。そう言えばあの人、勝手にオリを曲げて、アクアを助けようとしたんだよね。

 

 それをアクアが、請求を受けているらしい。

 しばらく粘ってきたが、やがて諦め報酬を貰ってアクアは私達がいるテーブルにトボトボとやって来る。

 

 「…………今回の報酬、壊したオリを代金を引いて、十万エリスだって……。あのオリ、特別な金属で作られているから二十万エリスもするんだってさ……。うう……私が壊したんじゃないのに……」

 

 しょんぼりしているアクアに、凄く同情する。

 ミツルギのせいで、アクアは完全にませぞえだ。

 

 ……アクア、可哀相。

 

 「あの男、今度会ったら絶対ゴットブローを食らわせてやるんだからっ!」

 

 アクアが、席について涙目でメニューをギリギリと握りしめていた。

 

 ………私としては、もう関わりたくないんだけどね。

 

 ……と、アクアが未だ悔しげに喚く中に。

 

 

 「探したそ! 佐藤和真!」

 

 …サトウ……カズマ?

 

 ギルドの入り口に、今話題のミツルギさんが、取巻き二人を連れて立っていた。

 

 そう言えばカズマの本名って聞いた事ないなあ。サトウカズマって、カズマの本名なのかな?

 

 カズマの顔を見る限りそうらしい。

 カズマのフルネームを呼んだミツルギは、私達のいるテーブルにツカツカと歩み寄って、バンとテーブルを叩いた。

 

 「君の事はある盗賊の少女に教えて貰ったよ。ぱんつ脱がせ魔だってね! その他にも、女の子を粘液まみれにするのが趣味だとか、噂になっているそうじゃないか。鬼畜のカズマだってね!」

 

 「おい、待てっ! その情報を広めたのが誰なのか詳しく!」

 

 カズマが慌てて叫ぶ。カズマの慌てかたを見るに知らない所でどんどん噂が広まっているらしい。

 

 盗賊の少女? あの人かな? それに鬼畜のカズマか。う~ん、ぱんつ取られた時もすぐに謝ってくれたし鬼畜では無いと思うだけど。

 

 カズマの慌てる顔を前にアクアがゆらりと席から立ち上がる。

 

 「……アクア様。僕は必ず魔剣を取り戻し、魔王を倒すと誓います。ですから、この僕と、同じパーティーに「ゴットブロー!!」ぐえふっ!?」

 

 「「ああっ!? キョウヤ!」」

 

 アクアに突然殴られ、ミツルギが吹っ飛んだ。

 床に転がるミツルギに、慌てて仲間の少女達が駆け寄る。

 なぜ殴られたのか分からないといった表情をしているミツルギに、アクアは詰め寄りその胸ぐらを掴み上げると。

 

 「ちょっとあんたオリの壊した代金払いなさいよ! 三十万よ! 三十万!」

 

 「えっ? あ、はい」

 

 ……あれっ? さっき二十万エリスって言ってなかったっけ?

 

 カズマの表情見るに間違いではないようだ。

 ミツルギは殴られ、尻もちをついた体勢で、アクアに気圧されながら素直に三十万を渡す。

 アクアはミツルギからお金を貰い、嬉しそうに再びメニューを取った。

 

 「すみませーん! 冷えたシュワシュワ一つー!」

 

 私は嬉しそうに再びメニューを取るアクアをチラチラみながら、ミツルギに気になる事を聞いた。

 

 「………所で、ミツルギさん。何で私には何も言わないの? ………怒ってイライラしていたとはいえ、結構ひどい事したと思ったんだけど……」

 

 ミツルギもアクアを気にしながら悔しそうに言う。

 

 「…あんな負けかたでも、勝負の詳細まで決めなかったのは僕の責任だからね。あれは僕の負けさ。……そして、佐藤和真。何でも言う事を聞くと言った手前、こんな事を頼むのは虫がいいと言うのも理解している。だが頼む! 魔剣を返してくれないか? あれは君達が持っていても役には立たない物だ。………どうだろう? 良い剣が欲しいなら、店で一番良い剣を買ってあげてもいいから。……だからどうか返してくれないか?」

 

 ………許してくれるのは嬉しい。けど、随分虫のいい話だ。……そもそも、アクアが魔剣くらい今のところ役に立っているのか怪しい所だけど。

 

 「勝手に私を賭けの対象にしておいて、負けたら何? 良い剣を買ってあげるから魔剣を返してって、虫が良いとは思わないの? それとも、私の価値は一番高い剣と同じって言いたいの? この無礼者! 無礼者! 仮にも女神を賭けの対象にするって何考えてるんですか? 顔も見たくないので、早くあっちに行って。あっちに行って!」

 

 メニューを片手にシッシと手を振るアクアにミツルギの顔が青ざめた。

 

 ……まあ、確かに勝手に話を進められた挙げ句にこれではアクアが怒るのも無理はないかな。

 

 「ままま、待ってくださいアクア様! 僕は別にあなたを安く見ていた訳では無………んっ? なにかな、お嬢ちゃん?」

 

 慌てるミツルギの袖をめぐみんがクイクイと引く。ミツルギの注意を引くのに成功しためぐみんは、そのまま俺を指差した。

 

 「まず、この男が既に魔剣を持っていない件について」

 

 「っ!?」

 

 言われてようやくミツルギは気づいたらしい。

 そう言えば私も気になっていた。

 

 「サ、サトウカズマ! 魔剣は!? ぼ、僕の魔剣は何処へ行った!?」

 

 顔中に脂汗を浮かべてカズマにすがりつく。

 

 「カズマ。結局魔剣どうしたの?」

 

 カズマは一言。

 

 「んっ? 売った」

 

 「ちっくしょおおおおおお!」

 

 「「ああ、キョウヤ!」」

 

 ミツルギは泣きながら、その仲間達はミツルギを追いかける様にギルドを飛び出した。

 

 

 

     カズマside

 

 「一体何だったんだあいつは。……ところで。先程からアクアが女神だとか呼ばれていたが一体何の話だ? そう言えばクエスト前にも女神だとか言っていたしな」

 

 ミツルギ達がギルドを飛び出した後。

 先程の騒ぎで冒険者達の好奇の視線を浴びながら、そんな事をダクネスが言ってきた。

 

 ……まあ、あれほど女神女神言っていればこうなるのも当たり前か。いや、この際だ。めぐみんとダクネスに言っても言いか?

 

 俺がアクアに視線をやると、分かったとばかりにアクアがこくりと頷く。

 そして、アクアは俺が見る事の少ない真剣な表情で、めぐみんとダクネスに向き直る。

 

 「あなた達には言っておくわ。……私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水の女神。そう、私が水の女神その人なのよ!」

 

 「「って言う、夢を見たのか」」

 

 「ちっがうわよ! 何で二人ともハモってんのよ!」

 

 ……まあ、こうなるよな。シロナが例外だっただけなんだ。

 

 

 その時だった。

 

 『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっ!』

 

 もはやお馴染みのアナウンスが街に響き渡った。

 

 「またかよ………?」

 

 「最近多いよね。なんか多すぎて緊急って感じ無くなってきたかも。今度は一体何があったんだろう?」

 

 シロナの言う通り本当に多いだよ。なあ、行かなきゃ駄目なのか? いや駄目だろうなあ。ああ、でもミツルギとあんな騒ぎがあった後だし面倒臭いなああ……。

 

 と、俺とシロナが気怠げにアナウンスを聞いていると。

 

 『特に冒険者サトウカズマさんのパーティーは、大至急でお願いしますっ!』

 

 「「……えっ?」」

 

 今何て言った?

 

 

 

 

 

 俺達は急いで正門に駆けつけた。

 軽装の俺を筆頭に、アクアやめぐみん、シロナも門の 前に着くが、重装備のダクネスだけが到着が遅れていた。

 

 「おお、予想通り。またあいつか」

 

 「そんな呑気な事言ってていいのかな?」

 

 俺達が街の正門前に着くと既に多数の冒険者が集まっている。

 そして駆けだし冒険者達が遠巻きに見ている中、街の正門前の前と同じ所に奴はいた。

 

 そう、魔王軍の幹部のデュラハンだ。

 

 俺達より先についていた冒険者達の顔色が悪いのが気に掛かっていたが、デュラハンの後ろを見て納得した。

 先日とは違い、今日は背後に多くのモンスターをつれていた。

 

 ボロボロになり、朽ちた鎧を装備した騎士達。

 鎧や兜の隙間から見える体は、しばらくご飯が食べられ無くなりそうなものだ。

 その騎士達は、一目でアンデットだと分かった。

 

 成る程。ボスがアンデットなら、取巻きもアンデットって事か。こう言う所はゲームで有りそうな。

 

 

 デュラハンは俺とめぐみんを見つけると、開口一番に叫び声を上げた。

 

 「なぜ城に来ないのだ! この、人でなしどもがああああああっ!!」

 

 「えっ?」

 




 次回はデュラハン戦です! 他の作品とかぶらないような感じにしたいです!


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第十三話 『この魔法使いに爆裂を』

 こんにちは白城です! 

 今回は……あっ、魔法使いに爆裂を撃つんじゃありませんよ? すみません題名が思い付かなかったんです。

 相変わらず進むのが遅いです。

 


    白奈side

 

 「なぜ城に来ないのだ! この、人でなしどもがああああああっ!!」

 

 「えっ?」

 

 目の前にいるカズマがそんな素っ頓狂な声をあげた。

 

 「ええっと………。逆に何で行かないといけないんだよ? あと人でなし? 人でなしって何の事だ。 もう爆裂魔法を撃ち込んでもいないのに……」

 

 カズマの言った事がもっともな意見だ。デュラハンに怒られてから私とカズマはあれから一度もあの城にはいっていない。

 だが、カズマの言葉に怒ったデュラハンが思わず左手に抱えていた物を叩きつけ……ようとして、それが自分の頭である事に気づき、慌てて空中にあった頭を脇に抱え直すと。

 

 「撃ち込んでもいない? 撃ち込んでもいないだと!? そこの頭のおかしい紅魔の娘があれからも毎日毎日欠かさず撃ち込んでもおるわ!」

 

 「「えっ!?」」

 

 …………。

 

 デュラハンの言葉を聞いてカズマがすぐ隣りにいためぐみんを見る。

 するとめぐみんが、ふいっと目を剃らした。

 

 「お前かあああああっ!!」

 

 「ひたたたたた、ち、違うのです。聞いてください! ……今までならその辺の荒野に爆裂魔法を撃つだけで満足してたんですが……その……城への爆裂魔法の魅力を覚えて以来、大きくて固いモノじゃないと我慢できない体に…………!」

 

 「もじもじしながら言うな!」

 

 そこで私は気づいた。

 

 「ちょっと待ってカズマ。めぐみんは爆裂魔法を撃った後は動けない。つまり、一緒に行った共犯者が……」

 

 私の言葉を聞いてアクアがふいっと目を剃らす。私とカズマはそれを見逃さない。

 

 「お前かあああああああああああ!」

 

 「いたたたたたーっ! だ、だって、あのデュラハンのせいでろくなクエストしか請けられないから腹いせがしたかったのよ!」

 

 そんな事知らないよ! それで私達を巻き込まないで欲しい!

 

 逃げようとするアクアの頬を引っ張っていると、デュラハンが言葉を続けた。

 

 「この俺が真に頭にきているのは爆裂魔法の件だけでは無い。貴様らには仲間を助けようとする気は無いのか!? 俺はモンスターになる前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせて見れば、仲間を身を挺して庇ったあの女剣士、あの騎士の鏡の様なあいつを見捨てるなと俺から見れば考えられん!」

 

 騎士の鏡なんて照れちゃうな。あっ! そう言う事か。

 

 デュラハンの言葉に私は納得した。カズマも仲間の皆も気付いたようだ。

 

 今、私の位置はデュラハンから見るとカズマにちょうど被り見えていない。私の身長じたいが低いからすっぽりと隠れるのだ。……あれっ? 自分で言っとおいてなんか涙が……。

 

 「おい、シロナ。一回前に出ろ……。」

 

 カズマに言われようやくデュラハンから見える位置に来るとデュラハンと目が合った。

 

 「う、うん。………こ、こんちにはデュラハンさん…」

 

 私が申し訳なさそうに片手を上げて挨拶をすると………。

 

 「……………えっ? あ、あれーーーーーーーーーっ!?」

 

 それを見たデュラハンが素っ頓狂な声を上げた。

 

 「えっ? 何で? 生きてる? どうして?」

 

 デュラハンから疑問文が続けられた。おそらく私からは兜のせいで表情は見えないがその言葉にあった表情をしているんだろう。

 

 「え、なになに? もしかしてあれからずっと私達を待ち続けたたの? 帰った後にあっさり呪いを解かれちゃったとも知・ら・ず・に? プークスクス! うけるんですけど! ちょーうけるんですけど!!」

 

 「ちょっとアクア。あまり挑発は……」

 

 私が一応そう言うが、アクアは心底楽しそうに腹を抱えて笑っている。

 相変わらず表情は見えないが、プルプルと肩を震わせている様子から、おそらく激怒しているんだろう。

 しかし、デュラハンには悪いけど、アクアのお陰で呪いを解いてしまったからには、わざわざ罠が張り巡らせていると分かりきっている城に行く必用がない。

 

 「……おい、貴様。俺がその気になれば、この街にいる全員を皆殺しにする事だってできるのだぞ! その辺ちゃんと分かっているのか!」

 

 アクアの挑発に流石に限界がきたのか、デュラハンが不穏な空気を滲ませる。

 

 「黙りないアンデット! 前は取り逃がしちゃったけど、今回は逃がさないわ! 消えて無くなりなさい『ターンアンデット』!」

 

 アクアが突き出した手のひらから、白い光が放たれる。

 だが、流石は魔王軍幹部だ。アクアが魔法を放つのを見ても、まるでそんな物を食らっても平気だと言わんばかりに、それを避けようとしない。

 

 「残念だったな。この俺や俺様率いるアンデットナイト達は、魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗があるのだ。貴様らのような駆けだし冒険者の魔法などきかぎやああああああー!!」

 

 魔法を受けたデュラハンは、体のあちこちから黒い煙を立ち上らせ、身を震わせてふらつきながらも、持ち堪えた。

 それを見てアクアが叫ぶ。

 

 「ちょ、ちょっと変よカズマ! 効いてないわ!」

 

 ……いや、ぎやーって言ってたし、結構効いていたと思うんだけど。

 

 「く、クククク……。せ、説明は最後まで聞くものだ。聞け愚か者、我が名はベルディア。さっきも言ったが魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして自身の力により、そこら辺のプリーストのターンアンデットなど効かぬわ!……効かぬ……はずなのだが……。なあ、お前本当に駆け出しか? 駆け出しの集まる場所(ところ)なのだろうこの街は?」

 

 そう言いながら、デュラハンはアクアを見ている自身の首を傾けた。

 あれがデュラハンの首を傾げる仕草なのだろうか。

 

 「ま、まあいい。わざわざ俺が相手をしてやるまでもない。……アンデットナイト! この俺をコケにした連中に地獄を見せてやれ!」

 

 「あっ! きっとあいつ、アクアの攻撃が意外と効いてビビったんだぜ!」

 

 「ちちち、違うわ! 最初からボスが戦ってどうする! 魔王軍幹部ともあろうものがそんなヘタレの訳ないだろう! まずは雑魚を倒してから……」

 

 「『セイクリット・ターンアンデット』!」

 

 「あっ? ひやあああああああ!…………め、目があ、目があああああ」

 

 何か言いかけていたベルディアがアクアの魔法をかけられ悲鳴を上げた。

 ベルディアの足下には白い魔方陣が浮かび上がり、天に向かって突き上げる様な光が立ち上がっていた。

 後のやつは……あのジブリのムス〇見たいな事を言ってる。

 ベルディアはさっき同じく鎧のあちこちから黒い煙を吐き出して、体についた火でも消すかのように、地面をゴロゴロ転げ回っている。

 

 「ど、とうしようカズマ! やっぱりあいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」

 

 ………いやいや、ひやーって言っていたし、もの凄く効いてると思うだけど。

 

 「もういい! おい、お前ら……!」

 

 ベルディアは、まだあちこちから黒い煙を吐き出しながら、ゆっくりと自分の首を持ち上げ……。

 

 「街の連中を。……皆殺しにせよ!」

 

 

 アンデットナイト。

 

 それは、ゾンビの上位互換モンスターだったはずだ。

 ボロボロとはいえ、鎧をしっかり装備したそのモンスターは私達、駆け出し冒険者にとって十分な脅威になるだろう。

 

 「おわーっ! プリースト、プリーストを呼べー!」

 「きゃあー、誰か教会に行って、聖水ありったけ持ってきてえええ!」

 

 回りのあちこちから、そんな切羽詰まった声が響く中、アンデットが街中に浸入して………! …あれっ?

 

 「「「ん?」」」

 「クハハハハ、さあ、お前達の絶望の叫びを俺に……んっ?」

 

 皆から思わず疑問の声が漏れた。

 

 「えっ? わ、わああああーっ! 何で私ばっかり狙われるの!? 私、女神なのに! 日頃の行いも良いはずなのに!」

 

 ……アクアの女神に関してはともかく、日頃の行いは良いのかな? 

 と言うか、迷えるアンデット達は本能的に女神に救いを求めるのだろうか。

 

 その時、カズマが何かを思い付いたのか。

 

 「おい、めぐみん、あのアンデットナイト達に爆裂魔法を撃ち込めないか!?」

 

 成る程! その手があった!

 

 「ええっ! ああもまとまりがないと、撃ち漏らしてしまいますが……!」

 

 まとまりがない……。はっ! それなら!

 

 「めぐみん! まとまれば良いんだよね!?」

 

 「えっ? ええあれより四割ほど小さくなれば……」

 

 「良い考えがあるのか、シロナ!」

 

 「うん、ここは私に任せて! 『ウインドカーテン』!」

 

 アンデットナイトの回りに風の幕が作られる。

 今のは中級魔法で本来はこのような使い方ではないんだが、私が大量に魔力を注ぎこんでいるお陰でどんどんアンデットナイトの大群が縮まっていく。

 

 「おお、スゲー!」

 「めぐみん! これなら出きる!?」

 

 私の言葉にめぐみんが杖を構え、私とは違う紅い瞳を輝かせた。

 

 「ええ、出来ます、出来ますとも! 感謝、深く感謝しますよシロナ! ……我が名はめぐみん! 紅魔族随一の天才にして爆裂魔法を操るもの! 食らうが良い! 『エクスプロージョン』ーーーーーッッ!」

 

 めぐみんの必殺の一撃、爆裂魔法が私のまとめたアンデットナイトの群れに炸裂した! 

 街の正門の目の前に大きなクレーターを作り上げた爆裂魔法は、アンデットナイトを一体残さず消し飛ばした。

 誰もがその爆裂魔法の威力にシンと静まり返る中。

 

 「クックックッ……。我が必殺の爆裂魔法を目の当たりにして誰も声も上げれない様ですね……。はああ……気持ち良かったです……」

 

 そんなめぐみんの声が隣から聞こえて来た。

 

 「うう……シロナ酷いよお……凄く引き込まれそうになったんですけどお………」

 

 一番アンデットナイトの近くにいたアクアは泣きながら私達の方に歩いて来た。

 

 「うっ、ごめんアクア。でも大丈夫だったでしょ? しっかり調節したし」

 

 加減はしたけど、どうやらアクアもかなり辛かったらしい。

 

 「うおおおおおお! やるじゃねーか、あの頭のおかしいの!」

 「ああ、名前と頭がおかしいだけでやるときやるじゃねえか!」

 「あの紅魔族の二人がやったぞ!」

 

 「………取り敢えずめぐみんはここに倒れてたら踏まれるだろうから運ぶぞ」

 

 「はい、お願い致します。………それと、すみませんがあの人達の顔、覚えておいてくれませんか」

 

 「もう魔力は使い果たしてるんだろうが。今日は………」

 

 そう言ってカズマはめぐみんを私達の足下から運んで行った。それにしても……。

 

 ……取り敢えずあの頭のおかしい種族と一緒にしないで欲しいな。

 

 

 

 

    カズマside

 

 「もう魔力は使い果たしてるんだろうが。今日は大仕事したんだから、休んでな。……お疲れさん」

 

 めぐみんを俺がおんぶして運んでいる途中で。

 俺の言葉にめぐみんが安心した様につがみついてくる。

 

 ………あれっ、しがみついてるんだよな? 胸はってくっつけてるんだよな? だけど感じて当然の感触がな………ああ、ロリッ子だししょうがないか。

 

 「紅魔族はとても知力が高いのです。……カズマの考えてる事、当てて見ましょうか」

 

 「………ふっ、めぐみんみたいな美少女にしがみつかれて幸せだなーっと思っているだけだよ?」

 

 「ほうほう、それはどうもありがとう。お返しとしてもっとしがみついてあげましょう」

 

 俺の嘘半分の言葉に、めぐみんがだんだんしがみつく力を強くしていく。

 

 「……お、おい。止めろ! 苦しい! 冒険者達の足元において来るぞ!」

 

 街の入り口では、ベルディアが、そんな俺達とシロナを交互に見ていた。

 正確には、俺の背中のめぐみんとシロナを。

 やがて、ベルディアは肩を震え始めた。

 

 自分の僕であるアンデットナイト達が全滅されられ、怒っているんだろうか。

 ………いや、あれは。

 

  

 「クハハハハ! 面白い! 面白いぞ! まさか駆け出し冒険者の街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかった! よし、それでは約束通り!」

 

 ……おい、マジか。ちょっと待て!

 

 「この俺自ら、相手をしてやろう!」

 

 

 街の入り口にいたベルディアがら大剣を構えて、冒険者達、シロナの方に駆け出した!

 




 すみません、ベルディア戦を最途中まで書いているとと7000文字までいってしまって

 あっ、これ長すぎる!

 と思ったので半分にしました。

 次回でしっかりベルディア戦は終わりたいと思います!


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第十四話 『この首なし騎士に浄化魔法を』

 こんにちは白城です!

 UAが10000を越えました! ありがとうございます!

 今回は題名から分かる通りやっとデュラハン戦が終わります!

 そしてシロナの特典の本領はっきします! 今までは魔法しか使っていませんでしたので。
 


    白奈side

 

 「この俺自ら、相手をしてやろう!」

 

 ベルディアが大剣を構えてこちらへと駆け出した。

 

 やばいやばいやばい、どうしよう!

 

 少しの時間稼ぎならできるかもしれない。

 だけど時間稼ぎしかできない。私の攻撃じゃ全くダメージを食らわせられない。

 私は予想できた状況に少し混乱する。

 その間にもベルディアは私達のもとに走ってくる。

 

 「………はっ! シロナー! 少し時間稼ぎできるか!?」

 

 ……えっ?

 

 「わ、分かった! やってみる!」

 

 「……ほう? 続けてお前が相手をするのか? 力を使った所悪いが遠慮なくいかせてもらう!」

 

 ベルディアは片手に持っている自分の首を空高く放り投げようとする。

 

 あ、あの動作はまさかっ! やらせない!

 

 「『エンハンス・ウインド』!」

 

 「何っ!?」

 

 突然自分の目の前までやってきた私にベルディアは驚く。

 今の魔法は《自己付属魔法》。

 自己付属魔法は、火、水、光 土、風など、各属性があるスキルだ。本当は二属性以上を組み合わせて使えるのだが残念ながらそのような器用さは私にはない。風の付属魔法は自らの回りに風を纏わせ自分の速度上昇や鎧になる本当に攻守一体の便利な魔法だ。詠唱も短く、とても使いやすい。

 だが、この理不尽な世界だ。勿論欠点(デメリット)は存在する。

 まず一つ目は消費する魔力が凄く多いことだ。今は加減しているが私の魔力で全力を出すと1分くらいしか持たない。

 二つ目は例えば初級魔法なら習得するだけで全部の属性を使えるようになるが、この魔法は一属性ずつ習得していかないといけない。これが意外と辛い。習得するのにかかるスキルポイントはバカみたいに多いし、習得する事じたい大変なのだ。

 自分の首を空に投げるのを封じられたベルディアは握っていた大剣を直ぐに握り直し斬りかかってくる。

 私はそれを出力を風を強くし、相手の剣の速度を少し落とし、そして皆よりは良い筈の動体視力と反応速度でぎりぎり回避する。

 いつも思う。

 

 いつも引き込もってゲームをしていたお陰かな?

 

 「何っ!? 小賢しい!」

 

 ベルディアは自分の剣が避けられたのが余程意外だったのかまた驚く。

 私は回避した直後魔法で早くなった剣を振るうが回避される。そしてまたベルディアが攻撃を回避する。

 だが、流石に何度もこれは辛い。

 

 カズマは一体何の策があるんだろう。

 

 

 

 

    カズマside

 

 「おお、スゲー!」

 

 俺の目線の先にはシロナとベルディアの攻防が繰り広げられていた。

 時間稼ぎ出きるとは思っていたけど本当に出きるとは。チート持ちってやっぱスゲーな。いつもの事だが、シロナが仲間に入ってくれた事に感謝だ。

 

 だけどさっきあんな魔法使った直後だ。魔力が直ぐに切れると思う。

 そろそろあいつが来る頃だと思うんだが……。

 

 「カズマ、悪い遅れた。いろいろと手間取ってしまってな」

 

 「おお! やっときたかダクネス。今すぐシロナとデュラハンの間にいってシロナの盾になってくれ! 硬いだけのお前なら結構時間稼ぎくらいできるだろ!」

 

 「んんっ! 来て直ぐに盾になれとはなんと言う仕打ち! カズマはやっぱり違うな!」

 

 うん、こいつは平常運転で落ち着くな。

 

 「違うわ! そう言う意味で言ったんじゃねえよ! このド変態!! このままじゃシロナが危ないから盾になってくれっていったんだよ!」

 

 「何っ、シロナが!? 今すぐ行ってくる!」

 

 そう言うとダクネスはシロナの方に駆け出していった。

 あとこの場で切り札になりそうなアクアはシロナの戦いを見守っている。

 お前も何かしろよと言いたい。

 

 「……ほう? 貴様も俺の相手をするのか?」

 

 シロナを庇う形でベルディアの前に立ち塞がったダクネスにまた、面白そうに手の上の首を突き出した。

 自らの大剣を正眼に構え、シロナを庇うダクネスの姿はさっきの変態発言したとは思えない、立派なクルセイダー姿だ。

 ベルディアはアクアやめぐみん、シロナの力を目の当たりにし、恐らくダクネスにも何かあると警戒しているのだろう。

 良く見るとシロナの風がもう少なく無くなっていた事から本当にぎりぎりたった事が分かる。

 

 「シロナ、交代だ。……聖騎士として……守る事を生業とする者として相手をしよう」

 

 「あ、ありがとうダクネス」

 

 そう言うとダクネスは大剣を正眼に構え直し、ベルディアに向かって駆け出した。

 

 「ほう、相手な聖騎士とは是非も無し。さあ、全力でかかってこい!」

 

 ベルディアはそれを迎え撃つ。

 ダクネスが両手で握る大剣を見て、受け止めるのが嫌だったのか、ベルディアは身を低く落とし、回避の構えを見せている。

 

 いや、ちょっと待て! 誰も攻撃しろなんて言ってないぞ! 俺はただ盾になって足止めをしてくれと言う意味でお願いだけで、そもそもお前が剣を振ってもっ!

 

 だが、ダクネスは俺がそんな事を考えて事とは知らずに、ベルディアに体ごと叩きつけるように大剣を……!

 ……距離を見誤ったのかベルディアの目の前に大剣を叩き付けた。

 

 「………は?」

 

 ベルディアから気の抜けたを上げた。

 

 ……ああ、だからいったじゃん! て言うか動かない敵にすら当てられないなんてどんだけ不器用なんだよ。

あれうちの仲間何ですけど!

 

 だがダクネスは当たらないのはいつもの事だと言うように、一歩前に進み剣を横に降った。

 ベルディアはそれを更に身を低くし、ひょいとかわした。

 

 「なんたる期待外れだ。もういい。……では次の相手………は?」

 

 ベルディアは確実に倒したと言うか自信があったのだろう。

 だが今ベルディアの前には鎧が派手に引っ掻いただけ終わったダクネスが立ち塞がった。

 

 「何なんだ貴様らは? さっきの三人と言いお前といい………」

 

 何かブウブツ言い出したベルディアの隙に、作戦を実行する。

 

 「ナイス足止めだ、ダクネス! 『クリエイト・ウォーター』!」

 

 俺の叫び声とともにバケツをひっくり返した様な勢いで、大量の水が三人にぶち撒けられる。

 ダスネスとシロナは盛代に水を被り、ベルディアは俺の予想通り、思考するのをやめ大慌てでぶち撒けられる水を回避した。

 

 やっぱりアンデットは水が弱点か! 確認が取れたところで……!

 

 そんな事を考えていると水を被ったダクネスはほんのりと顔を火照らせて呟いた。

 

 「……カズマ、こう言うのは嫌いじゃないが、時と場合を考えて欲しい……」

 

 「カズマ、私にもかかってるんだけど。……もしかしてそう言う趣味?」

 

 「ち、違う! そう言うのじゃない! ダクネスはもうしばらく足止めしていてくれ! シロナは俺達の所まで下がってくれ!」

 

 「任せろ! 壁になるのは大得意だ!」

 「わ、分かった!」

 

 そう言うとダクネスは襲いかかろうとするベルディアに正眼に構えていた幅広い大剣を盾にするかの様に剣の腹を前にだした。

 

 よしっ! あとは……。

 

 「おい、アクア! お前は何ボケーと突っ立ってんだよ! あいつは水が弱点なんだ! お前もしかして水の女神なのに水一つも出せないのかよ! やっぱりお前は口だけのなんちゃって女神だったのか!?」

 

 「!? あんた私はただ皆を女神らしく見守って上げてただけなんです! そしてなんちゃってなんかじゃなく、正真正銘水の女神です! 洪水クラスだってだせますから! 謝って! この偉大な女神様をバカにした事をちゃんと謝って!」

 

 「後でいくらでも謝ってやるから、とっととやれよこの駄女神が!」

 

 「わあああーっ! 今、駄女神って言った! 見てない女神の本気を見せてやるから!」

 

 早くやれよダクネスが今以上にボロボロに前に。

 俺の言葉に、アクアが一歩前に出た。

 そのアクアの周囲にはなにやら霧の様なものが漂い………。

 ………て、えっ?

 

 「くそ! 何で俺の攻撃がここまで通らな……?」

 

 ダクネスに魔王軍幹部の常人離れした斬撃をあたえていたベルディアが動きを止めた。

 流石は魔王軍幹部。アクアがこらからやろうとする事に、不穏な気配を感じたのだろう。

 

 「この世に在る我が眷属よ。水の女神アクアが命ず……」

 

 「こ、これは!?」

 

 ……嫌な予感がする。

 回りの空気がビリビリと震えるこの感じ。

 めぐみんが爆裂魔法を撃つときと似ている。

 つまり、それくらいのやばい魔法が使われようとしているわけで……!

 

 その不穏な空気はベルディアも感じていただろう。

 ベルディアは、迷う事も無く潔くアクアから逃げようと……。

 

 「行かせないぞ! ベルディア!」

 

 ………した所でダクネスがその前に立ち塞がった!

 

 やがてアクアは手のひらをベルディアに向けると。

 

 「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

 水を生み出す魔法を唱えた。

 

 ……んっ? 待て、アクアは言ったな「洪水クラスだって出す事ができる」と。さらにこうも言った。「女神の本気を見せてやる」と。つまり……っ!

 

 「シロナ! この水何とか出来るか!」

 

 唯一の頼み綱(希望)であるシロナに聞くが。

 

 「いや、この量はどう考えても無理! 『エンハンス・ウインド』! カズマ、めぐみん! 捕まって! 大丈夫、少しならまだ魔力残ってるから!」

 

 目標としたベルディアを始め、周囲にいたダスネスや冒険者。そして魔法を唱えた本人であるアクアまでもが……。

 

 「ぎゃー! 溺れ……!」

 「うわあああああ!」

 

 突如出現した水に、俺達以外の全ての人が押し流された。

 その膨大な量の水は街の正門前に盛大な飛沫あげ街の中心へと流れて行った。

 

 

    白奈side

 

 やがて水がひいたその後には、地面にぐったりと倒れ込む冒険者達と。

 

 「……………ねえ、カズマ。捕まって言ったのは私だよ。うん、そこは理解できるんだよ。けど……何で手じゃなく腰に(・・)捕まってるの?」

 

 「………いや、シロナは捕まってと言っただけで何処にとは言って無かった。つまり俺は悪くない。そう悪くない」

 

 「そ、そうなのかな?」

 

 「違います! 違いますよシロナ! 騙されないでください!」

 

 はっ! 危うく騙される所だった。カズマ後で覚えておいてね!

 

 「何を考えてているだ貴様は。……馬鹿なのか? 大馬鹿者なこか貴様は!?」

 

 同じくぐったりとしているベルディアが、ヨロヨロとしながら立ち上がった。

 ベルディアの言葉に激しく同意したい。だが……。

 

 カズマは一体何を何を考えているんだろう。

 

 「今がチャンスよ、カズマ! この私の凄い活躍のお陰であいつが弱っている絶好の機会に何とかしなさい! ほら早くいって!」

 

 相変わらずアクアはしょうがない。

 どうせ後でカズマに泣かされるのだろう。

 

 「ベルディア、お前武器を奪ってやるよ! これでも食らえぇ!」

 

 そうか! 武器さえ取れば相手は丸腰、勝負をつける事が出きる!

 

 「いくら弱体化したとは言え、駆け出し冒険者のスティールごときで俺の武器は盗らせはせぬわ! まとめて始末してやる!」

 

 カズマと対峙したベルディアは、カズマに向けて叫びがら、再度自らの首を高く投げ、両手で大剣を構えて精一杯の威厳を放つ。

 流石は魔王軍幹部だ。さっきは混乱して大丈夫だったが自分が対峙しているのでも無いのに足が震えそうになる。

 今、あの時のをもう一度やれと言われても無理だ。

 カズマはそんな魔王軍幹部に……!

 

 「『スティール』ッッッ!!」

 

 おそらく全魔力を込めたスティールを炸裂された!

 たが……。

 

 「「「ああ…………」」」

 

 そんな声が周囲の冒険者達から上がった。勿論私からも。

 ベルディアはまだ武器を握りしめている。つまり……

 

 ……失敗…した……?

 

 そのまま、私達に向ける凄まじい斬撃を……。

 

 放つ事は無く、そのまま突っ立っていた。

 

 ………あれっ?

 

 その場の全員が今何が起こったのか分からず、シンと静まり返っていると。

 

 「あ、あの……首……返して貰えませんかね……?」

 

 それは困った様な、恐る恐ると言った様な感じのベルディアの小さい声が微かに聞こえてきた。

 

 ……………。

 

 「おい、お前らサッカーしよーぜ! サッカーって言うのはなああ! 手を使わずに足だけでボールを遣う遊びだよおおお!!」

 

 「えっ?」

 

 カズマは冒険者達の前に、ベルディアの頭を蹴り込んだ!

 

 「ぐわああああ! ちょ、おい、待て、止めっ!」

 

 蹴られて転がるベルディア頭は、今まで何もできなかった冒険者達の格好のオモチャにされた。

 

 「何だ足だけかよ」

 「おい、でもこれ面白ぞ!」

 「おーい、こっちにもパースパース!」

 「おい、止めっ!? いだだだだ、止めえっ!?」

 

 頭を蹴られるベルディアの体の方は片手に剣を持ったまま、前が見えずうろたえている。

 一度だけデュラハンの頭を取ったらどうなるか考えた事はあるけど予想通りだったみたいだ。

 

 「おいダクネス。お前結局ベルディアに一太刀も食らわせてないだろ?」

 

 カズマはずぶ濡れで近寄ってくるダクネスにそう言うと。

 

 「いや、私は良い。人思いにいかせてやってくれ」

 

 ……まあ、確かにベルディアのあの声を聞くと流石に可哀相だね。

 

 「そうか、おし、アクア!」

 

 「任されたわ!」

 

 「やれ!」

 

 水によって弱体化し、今頭を蹴られて痛がっているベルディアへ、アクアか何処からか飛んできた杖を掴み、構えた。

 

 「『セイクリッド・ターンアンデット』ー!」

 

 「ちょ、待っ…! ぎゃあああああ!」

 

 アクアの魔法を受けたベルディアの悲鳴は、冒険者達の足元から聞こえてきた。

 流石に今度のターンアンデットは効いたみたいだ。

 ベルディアの身体が白い光に包まれて消えていく。

 

 「おおりやあああああ! あれっ?」

 

 ベルディアの首が突然消えたのか、サッカーを楽しんでいた冒険者達がどよめいていた。

 こうして魔王軍の幹部は倒された。

 

 




 風魔法を使ってベルディアとシロナが戦う所書きたかったんですよ!

 次回で1章は終わりだと思います。


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エピローグ 『この幹部討伐後に借金を』

 こんにちは白城です。 

 投稿が遅くなってしまいすみません!


    カズマside

 

 「ねえ、カズマ。昨日の事なんだけど、私の言いたい事わかるよね?」

 

 ベルディア討伐の翌日の事。

 俺はシロナと二人でギルドに歩いている途中にそんな事を言われた。

 

 「……勿論それくらい分かってるよ。セクハラの件だろ? 本当に悪かったって、だからお願いだから許してくれよ」

 

 前日の事とは俺がシロナにした行動だろう。

 シロナに俺の言葉に目を見開き凄く驚いた表情をした。どうしたのだろう。

 

 「んっ? どうしたんだ? そんな驚いた顔して」

 

 「……い、いや。カズマの事だからとぼけるとか誤魔化すとかすると思っていたから。そんなに素直に謝れられるとその……反応に……」

 

 ああ、そんな事か。

 

 「いや、アクアとかならしたかもしれないが、シロナ見たいな女の子には普通に誠実だぞ俺は」

 

 「アクアとかならしたんだ。まあ、うん。しっかり言わなかった私も悪かったんだしお互い様って事でもう忘れるよ。……………それでカズマ。気になっていたんだけど……魔王討伐……するの?」

 

 シロナがそんな事をきいてきた。俺はその質問に。

 

 「…………逆に聞くが……すると思うか?」

 

 「うん、思わないね」

 

 そう、俺達転生者に課せられたのは魔王軍だ。

 たがそうなると、つまり今回戦ったようなベルディアみたいな強敵を、これからも相手にしていかなくてはならない。

 魔王討伐を成し遂げ、願い事を一つ叶えてもらうか。

 それとも討伐を諦めて、この世界に安らぎの空間を探すか。

 勿論答えは決まってる。

 最弱職に就いている俺だか、今回みたいに、あんなに都合良く倒せる訳がない。チート持ちだったシロナでさえ本当に少しの時間稼ぎしかできなかったのだ。幹部でさえ無理なのに、その先の魔王討伐なんて無理だ。

 

 「……これからはのんびり暮らしていきたい」

 

 「気が合うなシロナ。俺も同感だ」

 

 「ねえ、カズマ。前も言ってたけど日本の知恵を生かして商売しようよ。そうすればカズマって幸運高いんでしょ? ならきっと成功するよ」

 

 「ああ、たまに刺激を求めて簡単なクエストいくとかな」

 

 「うん、そんな感じで……」

 

 そんな、今後の事を言い合いながら俺達は冒険者ギルドの入り口に手をかけた。

 

 

 

    白奈side

 

 ドアを開けると酒の匂いが鼻をついた。それに続いて人の熱気がギルド入り口から外へと流れて出している。

 どうやら魔王軍幹部を打ち取った記念に昼間から宴会を開いているらしい。

 

 「あっ! ようやく来たわねカズマにシロナ、遅かったじゃないの! もう皆出来上がってるわよ!」

 

 ギルドに足を踏み入れた私達に、アクアが上機嫌で笑いかけてきた。

 

 「ほらカズマにシロナ、早く報酬貰ってきなさいよ! もう、ギルドにいる皆は貰ってるわよ! 勿論私も! 報酬のお金は使っちゃったけどね!」

 

 何が嬉しいのか分からないけど、報酬の入った袋を見せつけて、たはー!、と頭をぽりぽりとかきながら、アクアがカズマの肩に腕をかける。

 

 ………ああ、本当に出来上がってる。

 

 カズマは顔が引きっている。

 

 「毎回思うだけど。この世界の飲酒って何歳からとかあるのかな?」

 

 「止めろシロナ。この世界の事に一々突っ込んでいたらきりがないぞ」

 

 見れば、ギルド内の冒険者達も、殆どがフラフラしていて歩くのも大変そうになっている。

 酔っ払い達は放っておき、私達はカウンターに向かった。

 そこには既に、ダクネスとめぐみんの姿があった。

 

 「きたか二人とも。ほら、お前達も報酬を受け取ってこい」

 

 「ちょっと聞いて下さい、二人とも! ダクネスが私にはまだお酒が早いと、ケチな事を……」

 

 「お、おい待て、ケチとは何だ! そう言う事ではなく……」

 

 二人がワイワイやっているので、私達は受付のお姉さんの前に立つ。

 ………なぜか、見慣れたお姉さんが、カズマを見て微妙な顔をした。

 

 「ああ、ええとその………サトウカズマさん、ですね? お待ちしておりました」

 

 私は受付のお姉さんの態度に違和感を覚える。どうやらカズマも同じらしい。

 

 ……? アクアなら分かるけどカズマが何かしたのかな? いや、カズマの反応からして心当たりがないみたいだけど…。

 

 「あの……まずはそちらの三人の報酬です」

 

 お姉さんは、そう言って小さな袋を私のダクネス、めぐみんに手渡した。

 

 「あ、ありがとうございます。……あのカズマの分は?」

 

 「………あの……ですね。実は、カズマさんのパーティーには特別報酬がてでいます」

 

 「えっ!?」

 

 ……!?

 

 「え、なんで俺達だけが?」

 

 本当に分からない。何か活躍したかな?

 

 「おいおい、なに言ってんだMVP! お前らがいなきゃ、デュラハンなんて倒せなかったんだからな!」

 

 「そうだそ! 全部お前達のお陰だ!」

 「ありがとう! カズマ!」

 

 この世界に来てから苦労続きだったので、その言葉に涙が出そうになる。同じく苦労人のカズマも涙目になっていた。

 カズマが私達、四人の代表として特別報酬を受けとる事に。

 受付のお姉さんがコホンと咳払いをして、そして……

 

 「えー、カズマさんのパーティーには、魔王軍幹部のベルディア討伐の報酬として、ここに三億エリスを与えます!」

 

 「「「「「さっ!?」」」」」

 

 三億っ!?

 

 私達は、思わず絶句した。

 それを聞いた冒険者達もさっきの騒ぎが嘘のように、シンと静まり返る。

 そして……。

 

 「おいおいなんだよ、三億って! 奢れよカズマー!」

 「うひょー、カズマ様奢ってー!」

 

 それを聞いたカズマはそれに反応して……!

 

 「……ちょっと集合」

 

 カズマの言葉に私達は回りに聞こえないように顔を近づける

 

 「お前らに一つ言っておく事がある。これはシロナと言い合った事なんだが……こんな大金が手に入ったんだ。俺は今後、冒険の回数を減らしてのんびり暮らしていくからな!」

 

 カズマの言葉に皆が賛成……っ!

 

 「おい待てっ! 強敵と戦えなくなるのはとても困るぞ!「困りません!」」

 

 「私も困りますよ! 私はカズマに付いていき、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!「得ません!」」

 

 「ちょっとカズマはともかくシロナまでヒキニートになるつもりなの!?「ニートじゃないから! 学生だから!」「なりませんっ!」」

 

 するはずも無かった。

 騒ぐ三人の言葉を掻き消して、どんどん盛り上がっていくギルド内。

 そんな中に、申し訳なさそうな表情を浮かべる受付のお姉さんが、カズマに一枚の紙を手渡した。

 

 この世界の小切手かな?

 

 「い゙っ!?」

 

 ……ああ、カズマの反応からしてどうやら良い事では無さそうだ。

 

 カズマは涙目でゆっくりとその紙を私に見せるようにした。

 そこにはゼロが沢山並んでいた。

 酔っ払ったアクアが上機嫌でカズマの紙を見た。

 

 「ええと、ですね。今回カズマさん一行の……その、アクアさんの召喚した大量の水により、町の入り口付近の家々が一部流され、さらに正門が損壊し、そして洪水被害がてでおりまして……。……まあ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、全額弁証とは言わないから、一部だけでも払ってくれと……」

 

 ………これで……一部。なら全額ならどんな金額か………いや、想像しないほうが良いかな。

 

 受付のお姉さんはそう告げると、そそくさと奥に引っ込んで行く。

 

 そのカズマの手にある紙を見てまずめぐみんが逃げたした。

 続いて、逃げようとするアクアの襟首を素早くカズマが掴み、前に立ちふさがるように私が立つ。

 

 「おい待て」

 「……ちょっと待ってアクア、どこに行くつもりなの?」

 

 「ええと、その…………そ、そうよ! お酒飲み過ぎちゃって酔ったから、外の空気でも吸おうかなーて」

 

 「顔から見るにもう酔いは覚めてし、足取りもしっかりしてるよな」

 

 私達の雰囲気で請求額を察した冒険者達が、そっと目を剃らした。

 そして請求を見ていたダクネスが、カズマの肩にポンと手を置き……。

 

 「報酬三億エリス。……そして請求額が三億四千万エリスか。カズマ。明日は、金になる強敵相手のクエストに行こう」

 

 ダクネスはそんな事を言いながら、心底嬉しそうに良い笑顔で笑った。

 

 「計算すると………借金……四千万エリス……か」

 

 たが、それとは逆に私はどんどん借金の金額に青ざめていく。

 

 ………何で嬉しそうにしているんだろう。いや、強敵と戦いたいからか。この理不尽な世界で暮らす? この問題児三人と一緒に?

 

 私は上を見上げると、そっと本物の女神にお願いした。

 

 この望まぬ理不尽な世界から脱出できますようにっ!

 

 




 実は投稿が遅くなっているのはリアルが忙しいからと、裏でSAOを書いているからもあります。

 今回で一章は終わりです!

 取り合えず言っておきます! 
 ここまで読んでくれてありがとうございます!


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第二章 ~終焉の予感は何度でも!?~
第十五話 『この使えない女神に問題を』


 こんにちは白城です!

 一章が終ったのでしばらく休憩していました!

 今回はまあ、雪のあれです。

 そして、今回から第二章開始です!



    白奈side

 

 季節は秋になり、あと少しで冬になりそうな時期。

 

 「金が欲しいっ!」

 

 カズマは、私の隣で血を吐くように、鬼気迫るかのように切実に呻いた。

 冒険者ギルドと呼ばれる施設内の酒場にて。

 カズマは、両手で頭を抱えながらテーブルに顔を伏せた。

 

 カズマの気持ちは良く分かるよ。今、私達の抱えている問題を解決するには大金が必要だからね。

 

 「はあ? そんなの誰だって欲しいに決まってるじゃないの? もちろん私だって欲しいわよ。カズマってば何当たり前の事言ってるの? バカなの? アホなの?」

 

 ……はあ、アクアはやっぱりバカなの? と言うか、アクアだけにはカズマは言われたくないと思う。

 

 「さて、アクア様に問題です。私達が今抱えている問題とは一体なんでしょうか?」

 

 私の問題にアクアは胸を張って自信満々に答えた。

 

 「そんなのこの高貴な女神である私を贅沢させていない事でしょ!」

 

 「…………違います」

 

 「おい、アクア。お前は本当に俺がどうして金が欲しがっているのかが分からないのか?」

 

 「元引き篭もりの頭の中なんて、清く正しくも麗しい女神の私に分かるわけないでしょ?」

 

 「……………借金」

 

 「うっ!!」

 

 私がホツリの呟いた一言にアクアの肩がびくりと震えて目を剃らす。

 

 「そう、借金だよ!! お前が作った借金のせいで、毎回、請けたクエストの報酬の大半が、借金返済のために天引きされていくんだぞ!? そろそろ冬だ! 今は布団の中ならまだ大丈夫だが、このまま本格的な冬にでもなってみろ! いずれ凍え死ぬわ!」

 

 「アクア、分かった? もう魔王討伐どころの話じゃないんだよ? 生命の危機なんだよ? ……ちょ、ちよっとアクア! 耳を塞いで現実逃避しても状況は変わらないからね!?」

 

 耳を塞いでそっぽを向くアクアに、カズマはテーブルを叩きながら食ってかかった。

 この世界には冒険者がいる。

 たが、冒険者達は冬が来ると宿に篭りのんびり暮らす。

 なぜなら、冬は弱いモンスターのほとんどが冬眠してしまい、活動している手強いモンスターしかいないからだ。

 素人より少し強い冒険者にとって、冬のモンスター討伐は自殺行為と言える。

 ここは駆け出し冒険者の集う街、アクセル。

 特典を持っている私だってレベルが低い今、他の冒険者より少し強い程度だ。

 と、そんな事を考えているとアクアがばんとテーブルを叩き、身を乗り出して反論してきた。

 

 「だ、だってだってしょうがないじゃないの! ベルディアの時の私の超凄い活躍が無かったら、この街は滅ぼされていたのかも知れないのよ!? それが分かったら、もっと私を称えてよ! 敬ってよ! もっと誉めて誉めて、甘やかしてよ!」

 

 うわああ。

 

 「この構ってちゃんが! ああ、良いぜ。認めてやる! お前の活躍で何とかなったって認めてやるよ! それなら、あの時の手柄も報酬も借金も全部お前一人のものな! ………借金返済、一人で頑張って返してこい!」

 

 「わ、わああああ待って! ごめんなさい、調子に乗ったのは謝るから見捨てないで!」

 

 アクアを見捨てていこうと席を立つカズマに、アクアが泣いて縋る中。

 

 ………アクアは一応女神………なんだよね? 何だろう。女神の威厳っていうかオーラがやっぱり全く感じない。どうしよう、本当に女神だよね?

 

 そんな事を考えている私とカズマ達に声がかかった。

 

 「全く、朝から何を騒いでいるのだ」

 

 「何か、良い仕事(クエスト)はありましたか?」

 

 今声をかけてきたのは、私達の仲間の、ドMなダクネスと爆裂狂と中二病のアークウィザードのめぐみんだ。二人ともこの状況に慣れたのかもう何も言わなくなっている。

 

 「いや、まだクエストは探して無いよ。この状況じゃあな」

 

 そう言いながら私達はギルド内を見渡した。

 そこでは、まだ朝というのにもかかわらず、多くの冒険者達が思い思いに飲んだくれていた。

 

 「まあ、仕方が無いよね。ベルディアの時の報酬は戦いに参加した冒険者達に支払われたから」

 

 「はい、懐が潤ったらわざわざ危険な冬のモンスター狩りに行く理由がありません。勿論私は大歓迎ですが」

 

 「私もだ、敵は強ければ強い方が良い」

 

 ……何を言っているのか分からないし、理解できないけど、突っ込むのを我満しておこう。

 

 と言うわけで私達は、ギルドの掲示板の方に向かった。

 

 「どれどれ。………報酬は良いのに、本気でロクなクエストが残って無いな……」

 

 「ねえ、カズマ! 「はい、カズマです」これなんかいいんじゃないかしら!? 一撃熊の討伐!」

 

 ええと、何々。

 

 「『正体不明の爆発音により、複数の一撃熊が冬眠から覚め、畑に出没しています。とても危険なので何とかして欲しい。討伐なら一匹二百万エリス、追い払うだけなら五十万エリス』……か」

 

 「「…………」」

 

 「……………」

 

 私とカズマはめぐみんに目を向けた。めぐみんはそれに合わせて目を剃らす。

 

 「おい、こっちを向け。ベルディア討伐からダクネスを無理矢理誘って毎日どこかに行っていたのは、こんな事してたのか?」

 

 「うっ! し、仕方が無いじゃないですか! あれ以来爆裂魔法を撃たないと死んでしますのですよ! カズマも私に死ねといっているのですか!」

 

 「開き直らないで!」

 「開き直るじゃねえ! このバカがあ! 何問題起こしてくれてんだ! 一撃熊ってあれだろ!? めぐみんの爆発魔法についていって出てきたやつだろ!? もう、あんな危険なモンスターに関わりたくない」

 

 私達が起こしたら問題なので私達で解決したいが、あんなのが複数襲ってきたら、私達のパーティーじゃ即全滅だろう。他の強い冒険者達に任せておいた方が良い。私達以外の転生者とかに。

 

 「カズマカズマ! 「はいはい、カズマだよ」これなんかどうだろうか! 白狼の群れの討伐。報酬百万エリス。獣達に襲われる自分を想像しただけで………んんっ!」

 

 「……却下」

 

 大型犬よりも大きくて速くのが一度に大量に襲ってきたら、私達じゃ即全滅、いや、即死だろう。

 カズマの判断は正しい。

 

 あれっ?

 

 「ねえ、カズマ。これ何か分かる?」

 

 「んっ? 何々? 機動要塞デストロイヤー接近につき、進路予測の為に偵察募集? なんだよこれ。なあ、デストロイヤーってなんなんだよ」

 

 「デストロイヤーとはデストロイヤーだ」

 

 「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する子供達に妙に人気があるヤツです」

 

 「なるほど、分からん」

 

 「めぐみんは違うの?」

 

 「私は大人なので」

 

 「そ、そうなんだ」

 

 ……やっぱりどうみても子供にしか見えない。

 

 カズマはダクネスとめぐみんの説明を聞き流し、更にクエストの募集を見る。

 

 「なあ、この雪精討伐って何だ? 名前からしてそんなに強そうに聞こえないんだけど。一匹討伐するごとに十万エリスだってよ」

 

 「十万エリス?」

 

 報酬が凄く高いが、カズマが言う通り名前からしてそんなに強そうに感じられない。

 

 「雪精はとても弱いモンスターです。雪深い雪原に多くいると言われ、一匹倒すごとに春が半日早くくると言われていますが……」

 

 「何々、そのクエスト請けるの? だったら私準備してくるわね! 「お、おい。ちょっと待て」」

 

 張り紙を剥がしたカズマの制止の声を聞かず、アクアがちょっと待っててと言い残してどこかに向かった。

 ダクネスがホツリと呟いた。

 

 「雪精か……」

 

 「んっ?」

 

 日頃から何かと強いモンスターと戦いたかる、ドMなダクネスがなんで嬉しそうにするんだろう。

 この疑問はカズマも感じたらしい。

 日本人の私達二人はダクネスの様子に違和感を覚えながらも、雪精討伐に出発した。

 

 

 

    カズマside

 

 街から離れた所にある平原地帯。

 そこは街にはまだ雪は降っていないのにもかかわらず、そこだけがあたり一面雪で覆われ、真っ白に輝いていた。

 そして、これがきっと雪精なのだろう。

 そこらかしこに白くふわふわした、手の平くらいの大きさの丸い塊が漂っていた。

 

 「何で見るからに危険そうじゃないモンスターの報酬が十万エリスもするんだろう」

 

 隣にいるシロナが聞こえるか聞こえないかの声でポツリと呟いた。

 その疑問は俺も考えていた。

 おそらく、こいつが一匹倒すごとに春が半日早くくるとか言っていたから、春が待ち遠しい金持ちの連中が高額の報酬をかけているのかも知れない。

 クエストは弱いが積極的に人を襲うような好戦的なモンスターの方が、強くても温厚なモンスターよりも報酬が大きくなる。

 だが、雪精の報酬の高さも気になるが、俺はそれよりも気になる事があった。

 

 「………お前、その格好はどうにかならんのか。冬場セミとりに行くバカな子供みたいだぞ」

 

 俺は捕虫網といくつかの小瓶を抱えた、アクアの格好にそういった。

 そんな俺にアクアははあー? といったバカを見るような表情て俺に見る。

 

 この野郎。

 

 「これで雪精を捕まえて、この小瓶の中に入れておけば、いつでもキンキンのレモネイドが飲めるっていう考えよ! どうどう、頭いいでしょう!」

 

 オチが読めそうだな。まあ、本人がやる気なので勝手にやらせておこう。

 ……で。

 

 「ダクネス、鎧はどうしたの?」

 

 「修理中だ」

 

 シロナがダクネスに質問したそれは俺も気になっていた。

 ダクネスの格好は鎧も着けずに私服姿で、大剣だけを携えていた。

 

 「……こないだの魔王軍幹部の時に短時間で鎧、ボロボロにされていたからなあ……。でも、何があるか分からないしそんな格好で大丈夫なのか?」

 

 「問題無い、大丈夫だ。ちょっと寒いがそれもまた……」

 

 ダクネスが真っ白な防寒具を着ているシロナとは逆に防寒具も着ずに黒のタイツスカートとシャツのみという寒そうな格好でハアハア言っている。

 

 ……どうやら頭の温かい変態は体温も高いらしい。いらない知識が増えたな。

 

 俺達は気を取り直して雪精討伐を開始した。

 

 

 

 

 

 「おらっ! くそっ、チョロチョロと!」

 

 近づかなければただゆっくり漂っているくせに、攻撃すると素早い動きで逃げる雪精。

 雪精が小さいのも関係して、攻撃を当てるのがなかなか困難だ。

 まあ、一匹十万なんて高額な報酬をつけられているんだ。これくらいは当たり前か?

 俺はやっとの事で三匹目の雪精を倒し、ホッと息を吐いた。

 

 「カズマ、見て見て! 四匹目とったー! 大漁よ大漁!」

 

 嬉々としたアクアの声にそちらを向くと、アクアは捕虫網で捕まえた雪精を小瓶の中に入れ、こちらに自慢気に見せてきた。

 

 ………もし、俺が討伐数が少なかったら、あいつの雪精を討伐してやろう。

 

 「よし、これで十匹目かな」

 

 シロナは俺達と少し離れたところで魔法を使って凄い速さでどんどん雪精を倒している。あの魔法を自分も覚えれないかとシロナにきいたが、爆裂魔法まではスキルポイントを使わないがそれでも俺が習得するのは難しいとの事。

 

 「カズマ、めんどくさいです。爆裂魔法で辺り一面ぶっ飛ばしてもいいですか?」

 

 ダクネスと二人で追いかけ回し、ようやく一匹仕留めためぐみんが、荒い息を吐きながら言ってきた。

 依頼にあった白狼とか一撃熊とかが襲ってくることも考えたが、敵感知スキルで常時注意して、逃げるのが無理でも潜伏スキルを使えば何とかなるか。

 んっ? まてよ……。

 

 「おし、ならちょっと待ってろ。おーい、シロナ!」

 

 少し遠くにいるシロナに大声で呼び掛けると、直ぐにこちらに走って来た。

 

 「何、どうしたの?」

 

 「ベルディア戦の時見たいに雪精を集められないか?」

 

 「うん、出きると思うよ。ちょっと待ってて、『ウインドカーテン』!」

 

 ベルディア戦の時の様に雪精達をどんどん風でまとめていく。

 

 ………あの魔法便利だな。レベルが上がった時、使えるように後でシロナに教えて貰おう。

 

 シロナの言葉にめぐみん頷き、遅めに詠唱を唱え……!

 

 「ありがとうございます、シロナ! いきます、『エクスプロージョン』!」

 

 日に一度しか見れない、使えない、めぐみんの爆発魔法が雪原に放たれる。

 冷たく乾いた空気を振動させ、轟音と共に、白い雪原のど真ん中にやや赤くなった地面を剥き出させたクレーターを作り上げた。

 

 「おーい、大丈夫か?」

 「めぐみん、大丈夫?」

 

 魔力を使いはたしためぐみんが、雪の中にうつ伏せに倒れたまま、自分の冒険者カードを自慢気に見せてきた。

 

 「二十七匹、やりましたよ。レベルはシロナのお陰で三つも上がりましたっ!」

 

 「おお、やるなあ。シロナもナイス!」

 

 シロナはやっぱり普通に優秀だ。めぐみんも雪の中に埋もれた状態じゃなければ、格好良かったのにな。

 これで、俺が三匹、めぐみんが二十八匹。シロナは十匹。現在撃ち取った総数は四十一匹だ。

 アクアの捕まえた分と取り上げるとなると、合計四十五匹で、四百五十万エリス。

 四人で割って、一人辺り九十万エリスか。

 

 なんだよ、雪精討伐美味し過ぎるだろ!……なんでこんなに美味しいクエスト誰もやらないんだ?

 

 そんな俺の疑問に答えるかの様に、俺達の前にそれは突然表れた。

 

 




 また、一話で収まりませんでした。
 すみません、本当にすみません! 
 毎回進む速度が遅くてすみません!

 次回で雪精偏は終わりです。………多分。


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第十六話 『この凍える季節にニ度目の死を』

 皆さんこんにちは白城です。

 約一週間ぶりの投稿です。本当にすみません!

 下書きしていたものが消えたり、このすばの最新刊を読んでいたりしたら、遅くなってしまいました!
 はい、言い訳ですね、本当に申し訳ありません!

 今回は雪精霊の後編です!


    カズマside

 

 「出たな!!」

 

 ダクネスがそいつを見て、大剣を構えて俺しそうにほくそ笑んだ。

 突然涌き出る様に出現したそれは、出現が速すぎて、敵感知スキルで逃げることが出来なかった。隠れようにも辺り一面は雪原で隠れる事のできる物が無いにも気づいた。

 

 「………………」

 

 「えっ、めぐみん?」

 

 ……こ、こいつ。死んだフリを。

 

 先程まで勝ち誇っていためぐみんは、うつ伏せのまま、動かなくなっている。

 

 「……カズマ、シロナ。なぜ冬になると、冒険者達がクエストを受けなくなるのか教えてあげるわ」

 

 アクアがその場に正座し、そして、それから僅かにも目を離さずに。

 俺達の視線を集めるそいつは、ズシャリと一歩、前にでた。

 

 「あなた達も日本に住んでいたんだし、天気予報やニュースで名前ぐらいは聞いた事あるでしょう?」

 

 全身を白く染め上げた重厚の鎧姿のそれは、今にも切りかかりそうなくらいの殺気を浴びせ続けていた。

 日本人である俺はそれを見て、アクアが言う前に何なのかを把握した。

 おそらく隣にいるシロナも気づいているだろう。

 

 「雪精達の主にして、冬の風物詩とも言われている……」

 

 日本式の白い鎧兜に、同じく真っ白で、素晴らしくキメ細やかな陣羽織。

 そして、白い素面をつけた鎧武者が、白い刀を身につけ立っていた。

 ……そして、アクアが珍しく真面目な顔で呟いた。

 

 「そう、冬将軍の到来よ!」

 

 「バカかあ! この世界の連中は、人も食い物もモンスターも、皆揃って大バカだ!!」

 

 「カズマ、その気持ちは凄く分かるけどこれ本当にどうするの!?」

 

 

    白奈side

 

 

 冬将軍

 

 その白一色で染め上げられたようなその鎧は、戦国時代の華やかさを僅かにも損なわれていなかった。

 白い冷気を発する刀は、わざわざ近くに寄って見なくても、恐るべき切れ味を秘めていることが一目で分かる。

 その私達の視線を集めている冬将軍は強烈な存在感と殺気を放ちながら、八双の構えを取った。

 そして日の下に白刃を煌めかせ、一番近くにいたダクネスに斬りかかった!

 

 「くっ!?」

 

 ダクネスが、それを大剣で受けようとするが……。

 キンッと澄んだ音を立て、あのベルディアの猛攻にも耐えた大剣があっさりと真ん中で叩き折られた。

 

 「ああっ!? 私の剣がっ……!?」

 

 この瞬間、私は悟った。

 

 ……ああ、無理。勝てないよ。ベルディアの攻撃に耐えた剣があっさりと折られるなんて絶対に勝てない。

 

 「精霊は出会った人の無意識に思い描く思念を受け、その姿に実体化するの。でも冬に出歩いてクエストをやる人なんて日本から来たチート持ちの連中くらいだから……」

 

 アクアが雪精を詰めた小瓶を抱き抱えたまま、冬将軍について教えてくれた。

 

 ……あれっ?

 

 「ね、ねえ、アクア。つまりあれは日本から来た人が冬と言えば冬将軍みたいな乗りで生まれたの?」

 

 「はっ!? なんだよそれ、なんて迷惑な話だ! 冬将軍なんてどう戦えばいいんだよ!?」

 

 一見人形の鎧武者だけど、それが精霊が実体化した物なんて言うのなら、私が剣で斬りつけたとしてと殆ど効果が無いだろう。

 魔法でやる事も考えたが、さっき魔力を使ったので一撃で倒せる気がしない。仮に全魔力でやったとしても同じ気がする。

 頼み綱のめぐみんも、もう魔法が使えない。

 先程から全く動かないめぐみんは、死んだフリでもしているのだろうか。

 

 「……おい、アクア。シロナに支援魔法使って逃げることは出来ないのか?」

 

 「嫌よ。そんな事したら私が狙われて死んじゃうじゃない!」

 

 アクアはそう言うと、手にしていた小瓶の蓋を開け、きっかく捕まえた雪精達を開放しだした。

 

 「カズマにシロナ、よく聞きなさい! 冬将軍は寛大よ! きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

 

 冬将軍は逃がされた雪精達を見て、動きが止まっている。

 そして、アクアは迷い無く、白い雪が積もる雪原に、そのままひれ伏した。

 

 「ははぁぁぁぁぁ。DOGEZAよ! DOGEZAをするの! ほら、皆も武器捨てて早くして! 謝って! カズマもシロナも早く、謝って!!」

 

 「「なっ!?」」

 

 ………元なんとか様のプライドはどこにいってしまったのだろうか。もしかして、カズマに連れて来られたときプライドを落としてきてしまったの?

 

 そのアクアのそれは、とてもとても見事な土下座を観光した。

 隣にいたカズマも口を開けて驚いている。

 何の迷いも無く土下座するアクアと、完璧な演技で死んだフリを続けているめぐみんには、いっそ清清しさを感じられ凄いと思った。

 冬将軍と言えば、確かに土下座したアクアには目もくれなくなる。

 その分、私とカズマ、ダクネスにその視線が向けられた。

 その視線を受け、私達も慌てて土下座を………!

 

 

 ……私の目の前ではダクネスが、未だに突っ立っていた。

 

 「ダクネスも早く頭を下げて!」

 「おい、なにやってんだ、早くお前も頭を下げろ!」

 

 ダクネスは、切り落とされた大剣を構えて勇敢に冬将軍に睨めつけていた。だが、それは蛮勇だと思った。

 

 「誰も見ていないとは言え、私だって騎士だ! 聖騎士のプライドがある! その私が、怖いからといってモンスターに頭を下げる訳には……!」

 

 何やら面倒臭い事を言い出したダクネスの頭を私は左手で掴み、無理やり下げされた。

 

 「何言ってるの!? いつもはモンスターの群れに突っこみたがっているダクネスが、どうしてこんな時だけそんなプライドを見せるの!」

 

 「や、やめろお! 下げたくもない頭を無理矢理下げてされられ、地に頭をつけてる。なんてご褒美だ! ハアハア………、雪が冷たい……!」

 

 ………こんな時でもダクネスはぶれないね。

 

 頬を赤くしながら形だけの抵抗を見せる変態の頭を下げた。

 そのままチラリと冬将軍の様子を見ると、その刀はもう収められていた。

 私はホッとしてそのまま頭を下げ続け……

 アクアが私に、鋭く叫んだ。

 そして、カズマは私の方に急いで走ってくる。

 

 「シロナ、武器武器! その手に持っている剣を早く捨てて!!」

 

 冷たい雪原に上に頭を付けながら、私はまだ 右手に剣を握ったままだった事を思い出した。

 私は慌てて剣を投げ捨てた。

 慌てたためか、自然と雪から頭が上り……。

 

 「シロナ、危ない!」

 

 カズマが私の頭を下げさせたのと冬将軍が鞘から刀を走らせたのは同時だった。

 そしてすくに聞こえるチンと聞こえる小さな音。

 その瞬間、私の頬にピタピタピタッと何かがかかる。

 

 

 ………これは何?

 

 指で拭ったそれは………赤い液体だった。

 

 それが私の身体中に降りかかってくる。

 それを何なのか分からずに隣にいたカズマに視線を向けた。

 そして私は空中(・・)から落ちてきた不思議そうな顔するカズマと視線が交差した。

 それは雪の上へとズシリと落ちる。

 

 「………えっ……カ………ズマ……?」

 

 それと同時に理解した。さっき指で拭ったそれはカズマの血だった。

 そして………。

 

 「……ね、ねえ………カ……カズマ……?」

 

 私はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 「………っ………! …………ロナ……!」

 

 ーー遠くから、声が聞こえる。

 

 「シロナ、起きてくださいっ! シロナ!」

 

 私にすがって泣くめぐみんの声。

 

 ………あれっ?

 

 なんだろう、左手が温かい。

 目を開け、そちらに視線を向けるとめぐみんが私の左手を握っていた。

 さらに視線をおくのほうへと向けると、カズマとアクア、ダクネスがいた。

 

 「お、やっと起きたかシロナ。心配したぞ」

 

 私を心配そうに見つめるカズマと少し羨まそうに見るダクネス。そう言えば私の身体には血で髪から服まで真っ赤になっている。

 

 ………あれっ? カズマ?

 

 「えっ、カズマ? 本物? ここ天国とかじゃないよね?」

 

 「ああ、ここは理不尽な異世界だよ」

 

 カズマが笑いながら言っている。

 それを見ると私の視界はどんどん涙で歪んでいき……。

 

 「………カズマっ!!」

 

 「なっ!?」

 

 私は勢いでカズマに抱きついた。普段ならこんな行動を絶対とらないが、とったのはまだ夢かもしれない。そんな思いがあったのかも知れない。

 

 「………なあ、カズマ。私が右手を掴んでたときそんなに動揺しなかったじゃないか」

 

 ダクネスが自分の事を指しながら呟いた。

 

 「お前がもう少し普通の性格だったらそうだったかもな」

 

 「それは私が普通の性格じゃないと言いたいのか!?」

 

 「うん、そう言ってるんだよ」

 

 「んんっ!」

 

 ダクネスが何やら顔を赤くしているがいつもの事だ。無視をしよう。

 そんかやり取りに私はホッと息を吐いた。

 

 「なんでカズマがいるの? 私をせいで死んだはずじゃ」

 

 「ああ、その事なんだがこっちの世界担当の女神様のエリスって言うんだけど。まあ、いろいろあったけどそれをアクアが脅し…………いや、説得して俺が特別に生き返れさせて貰ったのさ」

 

 ……今、脅してって言ったよね? 

 

 でも、目を凝らして見てもカズマには傷跡が残っていない。やはり、アクアの魔法゙ば凄い。

 

 「ちょっとシロナってば聞いてよ! このクソニートってばこの私がせっかく生き返らせて上げたのに直ぐに女神チェンジなんていったのよ!?」

 

 「へえー」

 

 「何でそんな反応するのよ!?」

 

 ………それはアクアの日頃の行いが原因だと思う。そろそろアクアは自分の行動を見直した方が良いと思うよ。

 

 「色々言いたいことがあるけど、まず……カズマ、ありがとう! そして良かったあ」

 

 そう言って私はカズマから離れた。離れる時にカズマの顔が残念そうに見えたのは気のせいだろう。

 この世界の冬は食料に乏しい過酷な環境の中、それでもなお生存競争を行き続けるモンスターのみが、活動が許される。

 私達の様な駆け出しに、お手軽にこなせるクエストなど無いと言う事だ。

 

 ………今日はこのまま、街に帰ろう。

 

 

 

    カズマside

 

 街に帰って来た俺達は、そのまま報酬を貰うためギルドに向かう。

 

 「しかし、小一時間で四十一匹。四百十万か……。稼ぎは本当に稼ぎがいいが、死んだのが割に合わないな。あの冬将軍ってのは特別指定モンスターとか言っていたな」

 

 「そう言えばアクアそんな事言っていたよね。あれってどれだけの賞金がかけられてるの? ダクネスの剣が一撃で折られてたし、あれにはどれだけ頑張っても勝てる気が全くしないよ。正直、ベルディアより確実に強かったよ?」

 

 「冬将軍はなにもしてこないモンスターですからね。それでも賞金は二億エリスはかかっていたはずですよ。魔王軍幹部のベルディアは明確な人類の敵だったので、その危険度から賞金が高かったのです。冬将軍は本来あまり攻撃的でもなにモンスターなのにそれだけの報酬がかけられています。つまり、それだけ冬将軍が強いって事なのですよ」

 

 めぐみんの説明に、俺と思わず黙り込む。

 

 ……二億……か。

 

 それだけあれば、借金を返して家を買っても、しばらくは遊んで暮らせてしまう。

 

 「……めぐみん、シロナ。あいつに魔法……」

 

 「爆裂魔法では倒せませんよ。あれは精霊ですから。精霊は本来、実態を持たない魔力の固まりのような存在です。つまり精霊達の王みたいな存在なので、それりゃあ魔法防御力も凄いのです。確かに爆裂魔法とシロナの強力な魔法なら少しはダメージを与えることはできますが、一撃では難しいでしょうね。……というか、あんな怖いのに撃ちたくありません」

 

 「私もめぐみんと同じ。そして、あんなモンスターもう関わりたく無いよ」

 

 ダメか。ガクリと落ち込む俺を見て、アクアが得意気に、にんまりと笑みを浮かべた。

 

 「ふふん、カズマ。なんか落ち込んでいるみたいだけど、私はただ土下座してた訳じゃないわ。逃がしたと思って一匹残しておいたの! 流石の冬将軍も私の迫真の演技は見抜けなかったようね!」

 

 言いながら、アクアが服の中から取り出したのは小さな瓶。

 その中には雪精がはいっていた。

 

 「おお、でかしたアクア! よし、それを貸せ、討伐してやる」

 

 珍しく機転の利いたアクアを誉めながら、俺は瓶を取り上げようとした。

 

 「なっ!? ダメよ、この子は持ち帰って家の冷蔵庫にするの! いやよ、この子はいやあああ! もう名前だってつけてあるのに殺されるもんですか! やめて、やめてー!!」

 

 「なっ、予想外の抵抗を」

 

 くそ、倒せば十万という、高額な報酬を貰えるのだか……。

 今日はアクアに生き返らせてもらった事だ。報酬も沢山あるし見逃してやるか。

 

 

 

 

 ギルドで精算を済ませ、借金から天引きされた報酬をそれぞれ分配する。

 今日の稼ぎは凄く良かった事なので、しばらくは宿で体を休める事に。

 生き返ったばかりなので、あまり無理はしたくない。

 見た目は清楚な美少女。そして、やはり中身だ。

 俺が死んだ時にあの女神様はあんなにも哀しそうな表情を浮かべ悲しみ、特例で生き返れるとなったら、内緒ですよと言いながらも、優しく微笑んでくれたのだ。

 そんな女神様なのだから、あの駄女神に「チェンジ」と言っても別にいいだろう。

 この世界に来て、ヒロインが一人増えた気がする!

 そんな、エリスの顔を思い出しているだけで、あっという間に、俺達の宿の前に到着した。

 

 「ふふっ、この子は大事に育てて、夏になったら氷を一杯作って貰うのよ! そして、この子と一緒にかき氷の屋台を出すの! ………ねえ、めぐみん、この子って何食べるか知らない?」

 

 「雪精ってそもそも何が食べるの、精霊なんでしょ?」

 

 「すみません、雪精の食べ物なんてちょっと分からないです」

 

 「フワスワしていて、柔らかそうで、むしろこいつに砂糖をかけて口に入れたら美味しそうだな………」

 

 「なっ!? 食べされないわよ!」

 

 「…………私は今日は疲れたから寝るよ~。おやすみ皆~」

 

 俺の後ろでは三人が、そんな会話をしている。

 宿のドアに手をかけながら、俺はまだ起きている三人を振り返った。

 かなり疲れたのかもうベットに入って眠っているシロナと、もう一度、エリス様の顔を姿を思い出し。

 そして、改めて三人の顔をじっと見る。

 

 「「「………?」」」

 

 そんな俺の行動に、キョトンとした表情を浮かべ、三人は俺を見返し黙り込む。

 

 「………ハァ」

 

 「「「あっ!!」」」

 

 俺の吐いた深い溜息を見て、ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した三人の声を聞きながら、俺は宿のドアを開けた。




 エリス様が出てくると思った人はすみません。
 文字数の問題でそれを書くと8000文字近くまでになってしまい、長いと思ったのでこうなりました!

 やはり死ぬのはカズマさんかなと思ったのでこの様な展開にもなりました!

 次回はバーディー交換だと思います!(おそらくこれも二つに分かれる事に………)


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第十七話 『この冒険後に休息を』

 こんにちは白城です!

 すみません。パーティー交換を書いていますが、投稿が遅くなりそうなので、原作には無いパーティー交換の前の出来事を書いてみました。

 いつもの半分くらいで短いです! 面白く無かったらすみません!

 あとお気に入り200越えました! ありがとうございます! これからも頑張って書いていきます!


    白奈side

 

 冬将軍の出来事から次の日の事。

 

 「さあさあ、皆さん見ていって、新鮮なバナナですよー! 普段なら一房三百エリスの所、今なら一房ニ百エリスです。どうですか! 買いませんか!」

 

 アクセルの朝、街中に声が響き渡る。

 私は今、路上の八百屋の前でバナナ売りを手伝っていた。

 さて、何故こうなったかは少し時間を遡る。

 

 

 

 

 数十分前。

 

 「ん…………?」

 

 私は珍しく朝早くに起きた。回りを見ると全員が寝ていた。まだ起きるには早い時間だ。回りが寝ていても不思議じゃない。

 昨日の事を思い出す。

 私は勢いでカズマに抱きついてしまった。今思い出すと自分でも凄い事をやってしまった事が分かった。それを気付いたらどんどん顔が赤くなり恥ずかしくなっていく。

 今は冬で、時間は朝だ。

 この熱くなった体を冷やすには良いし、今までのんびりと街を見れる時間が無かったので丁度良いと思ったのだ。

 

 「おい、そこの姉ちゃん!」

 

 「はい、どうかしましたか?」

 

 そして、宿を出てしばらく歩くと八百屋の店主らしき人に声をかけられた。

 

 「すまねえが、この売れ残ったバナナ売るの少しだけやってくれねえか? しっかりバイト代は多めに出すからよ」

 

 「ええと、すみません。私、接客業とか無理ですし……」

 

 そう言ってやんわりと断ろうとするが店主は顔を横に降り。

 

 「いや、店の前に立って、この川から捕ってきたバナナを売るために呼び掛けるだけでいいんだよ。お願いできるか?」

 

 「ああ、それなら良いで………あれっ? ちょっと待って今川から捕れたって言った?」

 

 

 

 

 

 

 そして、借金の返済を少しでも楽にするために良いかと思いちょっとしたバイトを始めて今に至る。

 

 何やら私が呼び掛け始めたら、興味を持ってくれたのか数分で人が大勢集まってきて、朝だと言うのに客の数が凄い事になっている。

 

 「おい、姉ちゃんこっちにニ房くれ!」

 「何!? ならこっちには三房くれ!」

 「私にも同じ数お願いね!」

 

 前の客に負けじとそれよりも多い数を買っていく。お掛けで凄い勢いで売れていく。

 

 「ありがとうございます! はい、これどうぞっ! ええと、そっちの方は4房でしたね? お買い上げありがとうございます!」

 

 そう言って私は客に笑いかける。何だろう、集まっているのが男性客が多いのは気のせいだろうか。

 

 いや、私の見た目は良い方ではないし、これはきっと気のせいだよね。

 

 しばらく続けていると店主さんが笑いながら話しかけてきた。

 

 「いやー、姉ちゃん本当、助かるよ! これなら今日の分、全部売り切れそうだ! これなら前の赤字から黒字になるよ! 姉ちゃん頼んで良かった!」

 

 「いえ、私はただ皆に呼び掛けているだけなので偶然ですよ偶然」

 

 「全くあの二人とは大違いだな。……………実はな、結構前に水色の髪の少女と茶髪のの少年にバイトお願いしたら。なんと水色の髪の少女に商品のバナナ全部消されてよ。大赤字だったんだ。いやー本当に助かるよ」

 

 「へえー、なるほど。そんな事が………あれっ?」

 

 私の気になる単語が出た気がする。

 

 …………水色の髪の少女と、茶髪の少年?

 

 「あの、すみません。その二人ついて聞いても良いですか?」

 

 「んっ、興味あるのか? なんか二人とも訳わからん事言っててよ、少年の方は川から捕れた事に怒っててよ、水色の少女の方は自分の事を女神とか何かとか言っててよ。全く訳わからん」

 

 私の質問に店主は意外そうな顔をし、懐かしむように説明してくれた。

 

 …………。

 

 そう言って溜息を吐く店主さん。

 たが、私はその人物に心当たりがあった。と言うか、だいたい誰なのか分かった。

 私は冷や汗をかく。そんな私を店主は心配そうに。

 

 「んっ、どうした?」

 

 「………本当にすみません。もう少し働いてもいいですか? 代金は通常で良いですから」

 

 「?」

 

 店主は不思議そうな顔をしていた。

 

 ………本当にすみません。店主さん、私の仲間が。

 

 

 

 

 

 

 そして更にバナナのバイトを終わって数分後。

 

 「すみません。これなんですか?」

 

 私の目の前には縄で縛られたある食べ物が置かれていた。

 

 「は? 姉ちゃん冗談やめてくれよ。どんな生き方をしてきたんだよ。さくらんぼって知らねえのか?」

 

 私は道沿いにある店で売られているある商品が気になり店主に質問していた。

 

 「いえ、知っています。知っていますよ、さくらんぼって果物ですよね? あのピンク色の。夏に良く捕れる」

 

 「そうそう、そのさくらんぼだ。果物。ピンク色で甘くて美味しいやつだ。この季節では捕れないヤツだな」

 

 「はい、分かります。それは分かっているんです。ですが………すみません。この十センチ以上(・・・・・・)くらいあるの大きい物なにか聞いてもう一度良いですか?」

 

 店主は一言。

 

 「さくらんぼだよ」

 

 ………………どうしよう、このさくらんぼを空に向けて投げ捨てたい。

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 いつも通り昼に起き、隣を見ると、シロナがもういない事に気が付いた。何処かに出掛けているんだろう。

 アクアじゃあるまいし、問題を起こす事はないだろう。ひと安心ひと安心。

 ダクネスとめぐみんの姿も無いが爆裂魔法の日課に行っているんだろう。二人にはしっかりと場所を選べと言っておいたので大丈夫だと…………思う。

 そんな事を考えているとドアが開いた。入ってきたのは、何だか凄く疲れた表情をしたシロナだった。

 

 「…………ど、どうしたんだ、シロナ? そんな疲れた顔して」

 

 「カズマ突然なんだけど聴いて良い?」

 

 何だこのタイミングで。

 

 「んっ、何だ?」

 

 「確認なんだけどサンマって何処で捕れる?」

 

 ………なるほど、その質問か。

 

 「…………日本なら海」

 

 「うん、そうだよね。海だよね海、うんうん」

 

 シロナは自分に言い聞かせる様に何度も言い、そして………。

 

 「じゃあ、異世界(ここ)は?」

 

 シロナの質問に俺は一言。

 

 「畑」

 

 「やっぱりおかしいと思う」

 

 「それを言うな。俺も同じ事を思った」

 

 それは俺がここに来てバイトをしてシロナと同じ事を思った。

 

 「あっ、そうだ。もうひとつ聞きたい事があるんだけど………バナナを売るアルバイトってアクアとやった事ってある?」

 

 「ある。それについては俺達はクビになったんだ。………アクアのせいで」

 

 シロナはやはりと言った様な顔をして。

 

 「…………やっぱりアクアなんだね」

 

 チラッと二人で窓際を見る。そこには盛大ないびきをして寝ているアクアの姿があった。腹をかき、よだれをたらして寝ていて、そこに女神らしさなんてものは全くもってなく、おっさんかと言いたくなる。

 この姿で寝ておいて美しくも麗しいとか良く言えるな。

 毎回、自分の事を女神女神言うからそれ頷ける行動をして欲しい物だ。

 

 ………こいつ、本当に女神なのか?

 

 こんな事を思うのは仕方が無いだろう。

 窓際に置いてある小瓶の雪精がなにやら透明になってきている気がするが放っておいていいだろう。

 

 「さて、俺は二度寝をするが、シロナはどうする?」

 

 「寝るよ。なんか昨日から連続で疲れた」

 

 そんな事を言い合った瞬間、ドアがバタンと開き。

 

 「カズマ、アクアー、起きていますか! そろそろ起きてください、もう昼ですよ。お、シロナもいましたか、なら丁度良いです!」

 

 ……あ、丁度良い?

 

 「ああ、そうだな。借金もまだあるし、今度こそ強烈な一撃を食らわせてくるモンスターの討伐に行こう!」

 

 俺達は一言。

 

 「断る。俺は寝る。それじゃあおやすみ」

 「嫌だ。私は寝るよ。おやすみ」

 

 「「なっ!?」」

 

 なぜ昨日死んだばかりなのに、またクエストに行かなくてはならないのか。

 さらに、昨日は大金がはいり、借金もかなり減らせたのだ。一日二日休んでも誰も文句は言わないはずだ。

 と言うか、この傷が癒えるまで休みたい。

 俺は二人の騒ぐ声を聞きながら、もう一度眠りについた。




 次回はしっかりパーティー交換にしますよ!


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第十八話 『この素晴らしい仲間と交換を』

 こんにちは白城です!

 お久し振り………なのかな? 
 また、約一週間ぶりの投稿です。

 今回は題名通りです!


    カズマside

 

 俺が冬将軍に殺された数日後の事。

 

 「おい、もう一度言ってみろ」

 

 俺は怒りを何とか抑えながら、静まり返るギルド何でその男に問い返した。

 先日、二度目の死を迎えた俺は、数日の休養を捕って心と体のケアを図り。

 本日、まだ激しい運動を禁止されている俺は、簡単な荷物持ちのクエストか他に良い仕事でも無いかと、ギルドの掲示板を探していたんだが………。

 

 「あ? 何度だって言ってやるよ。荷物持ちの仕事だと? お前、その上級職が揃ったパーティーにいながら、もう少しマシな仕事に挑戦できないのよ? 大方お前がパーティーの足を引っ張ってるんだろ? なあ、最弱職さんよ?」

 

 そう言って、同じテーブルにいたほかの仲間と笑い合う戦士風の男。

 我慢。ここは我慢だ。

 俺は大人の対応ができる男だ。普段のアクアの冷やかしに比べたら、こんな酔っぱらいの挑発など取るに足らないものだ。 

 まあ、この男の言うことも一理ある。

 確かに、確かに俺の仲間は上級職だけで、シロナを除く三名は癖のある連中はがりだ。

 もっと上手い立ち回りが出来れば、安定していい稼ぎも出来るかも知れない。

 それに、確かに俺は、冒険者と言う最弱職に就いている。

 今の俺には、言い返す事など何も無かった。

 たが、無言でいる事を、この男は俺が萎縮して何も言えないでいると受け取ったらしい。

 

 「おいおい、何か言い返せよ最弱職。ったく、いい女を四人も引き連れて、ハーレム気取りかよ。しかも、全員上級職ときてやがる。さぞかし毎日、このお姉ちゃん達相手に良い思いしてんだろうなぁ?」

 

 それを受けギルド内に爆笑が巻き起こる。

 しかし、以前の俺達の活躍を知る者には、その言葉に顔を顰め、注意する奴もいた。

 

 「カズマ、気にする事ないよ。カズマの苦労は私が一番よく知ってるから」

 

 「ああ、ありがとうなシロナ」

 

 シロナが、男や回りに聞こえないくらいの声で俺に言ってくる。

 シロナは俺が誰よりもこのパーティーで苦労し頑張ってくれている事が分かってくれているんだろう。

 俺はこんな人達がいてくれるだけで我慢できる。耐えられる。

 そんな、我慢を続ける俺に、めぐみんやダクネス、アクアが止めに入った。

 

 「カズマ、相手にしてはいけません。私なら、何を言われても気にしませんよ」

 

 「そうだカズマ。そんな酔っぱらいの言う事など捨て置けばいい」

 

 「そうよ。あの男、私達を引き連れてるカズマに妬いてんのよ。私は全く気にしないから、ほっときなさいな」

 

 そうだ。目の前の男は漫画なんかでよくいる、典型的な三下だ。

 歯を食い縛り何とか耐えようとしたが、男の最後の一言だけには耐えられなかった。

 

 「上級職におんぶにだっこで楽しみやがって。苦労知らずで羨ましいぜ! おい、俺と代わってくれよ兄ちゃんよ?」

 

 「大喜びで代わってやるよおおおおおおおおおっ!!」

 

 俺は大声で絶叫していた。

 冒険者ギルドの中が静まり返る。

 

 「………えっ?」

 

 俺に絡んでいた戦士風の男が、ジョッキ片手にマヌケな声を出す。

 

 「聞こえなかったのか!? 代わってやるよって言ったんだ! おいお前、さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばかり抜かしやがって! ああ、そうだ、確かに俺は最弱職だ! そして、シロナだけはいい女だな! それは認める。………だがなあ、お前! その後なんつった!」

 

 「え………ちょっとカズマ?」

 「カ……カズマ?」

 

 突然キレた俺に、驚くシロナとおろおろしながら声をかけるアクア。

 そして、いきなり激怒した俺に若干引きながらも男が早口で言ってきた。

 

 「そ、その後? そ、そのいい女四人もつれてハーレム気取りかって……」

 

 俺は思いきりテーブルを拳を叩きつけた。

 その音にギルド内の皆がビクリとする。

 

 「いい女! ハーレム!! ハーレムってか‼? おいお前ハーレムの意味知ってて言ってんのか! いい女が一人いるだけでそれがハーレムって言うのか!? おいお前、その顔にくっついているのは目玉じゃなくて目玉焼きかビー玉なんかなのか? 俺のパーティーのどこがハーレムなんだよ、なあ! 残念な事に俺の濁った目ん玉じゃどれだけ探してもいい女なんて一人しかみつからなねえよ! お前いいビー玉つけてんな、俺の濁った目玉と取り替えてくれよ!!」

 

 「………えっ?」

 「「「あ、あれっ?」」」

 

 俺の言葉に四人が、それぞれ自分の事を指差しながら小さい声で呟いた。

 

 「なあおい、教えてくれよ! いい女? どこだよ! どこにいるってんだよコラッ! てめーこの俺が羨ましいって言ったな! ああ? 言ったなおいっ!」

 

 男の胸ぐらを掴みいきり立つ俺に、背後からおすおずと声がかけられる。

 

 「あ………あのう……」

 

 恐る恐ると言うように右手を挙げて、壊れた信号機の三人を代表するかの様なアクアのか細い声。

 だが、俺はそれを無視してなお続ける。

 

 「しかも、その後なんつった? 上級職におんぶにだっこで楽しみやがって!? 苦労知らずだあああああ!?」

 

 「そ、その、ごめん……。俺もよってた勢いで言い過ぎた……。で、でもあれだ! 隣の芝生は青く見えるっていくがな、お前さんは確かに恵まれている境遇なんだよ! 代わってくれるって言ったな? なら、一日。一日だけ代わってくれよ冒険者さんよ? おい、お前らもいいか!?」

 

 「ちょっと待て、シロナだけは一緒に連れて行くぞ」

 

 「………え? ちょっと待って、カズマそれじゃあっ!?」

 

 「シロナ。ちょっとこっち来い」

 

 俺はシロナを自分を方に来いと手招きをする。

 そして、俺達以外に聞こえないように顔を近づける。

 

 「カズマ、聞きたいんだけど、その………わ、私がいい女? それと代わるって本気?」

 

 そんな動揺しているシロナに俺は。

 

 「それは今は気にするな。「えっ? う、うん」 あと交換の件はマジだ。これにはしっかり考えがあるんだ。なあ、シロナ。あのパーティーから俺達が外れた状態でクエストに行ったらどうなると思う?」

 

 と、軽い口調で問いかけた。

 

 「えっ? それはもちろん大惨事になるんじゃ……」

 

 「ああ、そうだな。だが、俺達人間には学習能力と言うものがある。そして、俺達が外れた状態で大惨事になったらあいつらはどう思うか……」

 

 「………ちょっと詳しく聞かせて」

 

 俺の話に興味を持ったのかシロナが。

 

 「つまり、あいつらに俺達の苦労を分からせて、スキルの事とかを直して貰うんだよ。そうすれば俺達のパーティーは一気に戦力アップだろ?」

 

 「な、なるほど」

 

 と、真剣な顔で納得する。

 だが、利点はそれだけではない。

 

 「それと、シロナもあいつには結構イライラしてただろ?」

 

 「う、うん」

 

 シロナがコクりと頷く。

 

 「これはあの男に仕返しする事もできるかもしれない」

 

 「確かにそうだね。と言うか、カズマ……それが本当の目的じゃない?」

 

 「まあ、そうだな。さて、話を戻すがシロナも付いてきてくれないか?」

 

 シロナはしばらく悩む様な仕草をするがやがて……。

 

 「うん、良いよ」

 

 「よし、悪いんだけど俺の仲間のシロナも連れていっていいか?」

 

 「お、俺は別にいいけどよ……。今日のクエストはゴブリン狩りで、上級職が連いてくるなら大歓迎だ」

 

 「あたしもいいよ? でも、ダスト。あんた居心地が良いからもうこっちのパーティーに帰ってこないとか言い出さないでよ?」

 

 「俺も構わんぞ。ひょっ子一人と上級職の二人なら大丈夫だろ。と言うか、差引きプラスになる。その代わり良い土産話を期待してるぞ?」

 

 絡んできた男と同じテーブルにいた、そいつの仲間達は口々と言った。

 

 「ねえカズマ。その、勝手に話が進んでるけど私達の意見は通らないの?」

 

 「通らない。おい、俺の名はカズマ。今日一日って話だが、どうぞよろしく!」

 

 「私も今日はよろしくお願いします!」

 

 「「「う、うん………」」」

 

 絡んできた男の三人は戸惑い気味に返事をした。

 

 

 

    白奈side

 

 剣の盾を携えた重そうな装甲鎧を既婚だ男が、カズマを値踏みする様に眺めまわしながら言った。

 

 「俺の名前はテイラー。片手剣が得物の《クルセイダー》だ。このパーティーのリーダーみたいなもんさ。成り行きとはいえ、今日一日は俺達のパーティーメンバーになったんだ。リーダーの言うことはちゃんと聞いてもらうぞ。そして、あんたは上級職なんだよな? あっちではリーダーだったかもしれないが、ここではあんたも言うことを聞いてもらうけど、それでも良いか?」

 

 なるほど。この人がリーダーか。特殊な性癖も無さそうだし、便りにさせて貰おう。

 

 「勿論良いよ。と言うか、あっちではカズマがリーダーだったからそんなに変わるものじゃないしね」

 

 その言葉にテイラーが驚いた表情を浮かべた。

 

 「何? あの上級職ばかりのパーティーで、上級職のあんたじゃなく冒険者がリーダーやってたって言うのか?」

 

 「うん、そうだよね。カズマ」

 

 「そーだよ」

 

 当たり前の様に頷くカズマに、その私達のパーティーの事を知らない三人が絶句した。

 続いて、青いマントを羽織り、まだどこか幼さを残したおんなの子。

 

 「あたしはリーン。みての通りの《ウィザード》よ。魔法は中級魔法まで使えるわ。まあ、よろしくね、コブリンぐらい楽勝よ。上級職のあなたがいるから大丈夫だと思うけど、あたしが守ってあげるわ、駆け出し君!」

 

 その子が、俺を年下の後輩みたいに扱いながらにこりと笑った。

 

 なるほど。普通の魔法使いなら心強いね。突然、爆裂魔法をどこかに撃ちたいとか言い出す魔法使いが可笑しいんだ。

 これで、カズマも安全だね。

 

 「俺はキース。《アーチャー》だ。狙撃には自信がある。ま、よろしく頼むぜ?」

 

 言いながら笑いかける、弓を背負った軽薄そうな男。

 

 「ええと、私はシロナ。シロナって呼んでくれて良いよ。クラスは………《魔剣士》。一応上級職だけど、レベルが高くないから余り期待しないでね。今日はよろしくお願いします」

 

 「じゃあ、改めてよろしく。俺はカズマ。クラスは冒険者。………えっと、俺も得意な事とか言った方が良い?」

 

 カズマの言葉に三人が吹き出した。

 「いや、別にいい。と言うか、荷物持ちの仕事を探していたんだろう? カズマは俺達の荷物持ちでもやってくれ。心配するな、ちゃんとクエストの報酬は五等分きてやるよ」

 

 「あの、カズマはっ……!?」

 

 私はこの言葉に何か言おうとしたが、カズマが私の唇に人差し指をあて。

 

 「シロナ、おまえは何も言わなくて良いんだ。俺は死んでからまだ日が浅い。それに、俺はそんな事どうでも良いだ。ここは遠慮なく甘えることにする」

 

 「そ、そう? カズマが良いならそれで良いけど……」

 

 ーーと、その時。クエストが張り出されている掲示板の方から聞き慣れた声がした。

 

 「ええー、ゴブリン討伐ー? 何で町の近くにそんなのが湧いてるの? もうちょっとこう、ドカンと稼げる大物にしない? 一日とはいえ他所でレンタルされるカズマとシロナに、私達が日頃どれだけ有り難い存在なのか見せつけないといけないの。特にカズマには!」

 

 カズマに絡んだあの男に、アクアが難癖つけているらしい。

 

 アクアはどうやってゴブリンを討伐するつもりなのだろうか。やめさせてあげたい所だけど、これは私達がこれから楽になる為に必要な事なんだよね。ここは我満我満。

 

 「い、いや、あんたらが実力があるのは分かるが、俺の実力が追い付かねえよ。アークプリーストにアークウィザードにクルセイダー。これだけ揃ってればどんな相手でも楽勝だろうけどよ、まあ、今回は無難なところでで頼むよ。………ところであんた、武器も鎧も持っていないが、まさかその格好で行く気なのか?」

 

 「大丈夫だ。硬さには自信があるし、武器を持っていてもどうせ当たらん」

 

 「あ、当たらん…………? ん、ま、まあいいか……」

 

 ダクネスとそんなやり取りをしているあいつは、今回゙ばと言うことは、次も組むつもりなのかな?

 まあ、いいかな。

 

 カズマをチラッと見るが、心配する素振りをまったくしない。流石カズマだ。

 そんな向こうの事をちょっと気にしながら、テイラーが立ち上がった。

 

 「本来、冬のこの時期は仕事をしないんだがな。ゴブリン討伐なんて、美味しい転がってきた。と言う訳で、今日は山道に住み着いたゴブリンの討伐だ。今から出れば深夜には帰れるだろう。それじゃ新入り、早速行こうか」




 なんか今回はカズマ視点がおおかった気がします。頑張ってバランス良く書きたいです。

 次回はどんな冒険にするか必死に考え中です。


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第十九話 『この素晴らしい仲間達と冒険を』

 こんにちは白城です!

 今回は……題名通りですね。
 今回はまともなパーティーでの冒険なのであまり面白くないかも知れません……。

 十日ぶりですね、遅くなり本当にすみません!
 
 


    白奈side

 

 「しっかし、なんでこんな所に住みつくのかなゴブリンは。まあ、お陰てゴブリン討伐なんて滅多に無い、美味しい仕事が出てきたわけだけとさ!」

 

 私達は山の向かう途中の草原を、のんびりと歩いていた。

 

 ゴブリン。

 

 それは、私の世界はおろか、この異世界でも知らない者はいないメジャーモンスター。

 たけど、ゴブリンはゲームで出てくる雑魚モンスターではなく、民間人には意外と危険視されているらしい。

 個々の力はそれほどでも無いが、基本的に群れで行動し、武器を使う。

 野生の亜人種らしく、動きは早く、小柄で凶暴で、人や家畜を襲うらしい。

 ゴブリンがどのくらいの強さかは知らないが一匹で二万エリスだ。リーンが美味しい仕事と言っていたので恐らく弱いのだろう。

 カズマは何も文句も言わずに私以外の三人の荷物を背負って私の隣を歩いている。

 テイラーが私にもカズマに荷物を渡せばどうかと提案してきたが大丈夫と言って断っておいた。

 

 「ゴブリンって何でこんなところに引っ越したんだろう。絶対自然豊かな所の方が良いと思うんだけどな」

 

 私が独りでにそう呟く。

 今私達がいる場所は目的地の山だ。

 山と言っても日本の様な自然豊かな森などではなく、山の殆どが茶色い岩肌を占めた禿山だ。

 もっと引っ越すには良いところがあるだろう。

 

 まあ、この異世界だから突っ込んでもきりがないか。

 

 そして、こんなに緊張感がなく安心感できるのはきっとまともなパーティーだからだろう。

 いつものメンバーだと問題無くクエストが進むと不安を覚える所だけど今日はそんな事はなかった。

 テイラーが足を止め、地図を広げる。

 

 「ゴブリンが目撃されたのはこの山道を天辺まで登り、やがてちょっと下った所らしい。山道の脇にゴブリンが住みやすそうな洞窟があるのかも知れない。ここからは気を引き締めてくれ」

 

 そんなテイラーの指示に、私はクエスト中にも関わらず軽い感動を覚えた。

 敵地の真ん中に突っ込みたいとか、散歩のついでに爆裂魔法を撃ちたいとか、早く帰ってお酒を飲みたいとか、そんな会話はない。

 もし、ここに(誰とは言わないけど)あの人がいるなら「そんな事しなくても私達がいるんだから大丈夫よ!」とか言って面倒臭い展開になるのかも知らないけどこのメンバーにはそんな問題児はいない。

 全員が視線を合わせ、無言でコクりと頷く。

 山道は完全な一本道で、険しい岩肌の山の間を、細い道が這う様に延びていた。

 五、六人程が横に歩ける程度の広さの道だが、道の片方には壁の様な岩肌が立ちはだかり、反対側は逆に崖になっている。

 そのまま無言で山道を登っていると、カズマが何かに気づいたようだ。

 

 「ん? 何か山道をこっちに向かって来てるぞ。敵感知にひっかかった。でも、一匹だけだな」

 

 あれっ?

 

 「一匹? 複数じゃなくて?」

 

 「ああ」

 

 そんな当たり前(いつも)様にカズマと会話していると私達以外の三人が驚いた様に振り向く。

 

 「………カズマ、お前敵感知なんてスキル持ってるのか? それにしても一匹だと? それはゴブリンじゃないな。こんな所に一匹で行動する強いモンスターなどいないはずはだが……。山道は一本道だ。そこの茂みに隠れた所で、すぐみつかっちまうだろう。迎え撃つか?」

 

 テイラーが、盾を構えて言ってくるが……。

 

 「いや、茂みに隠れても多分見つからないぞ。潜伏スキル持ってるから。このスキルは、スキル使用者に触れてるパーティーメンバーにも効果がある。せっかく都合よく茂みがあるんだし、取り合えず隠れとくか?」

 

 カズマの言葉に、三人は更に驚きながらも茂みに隠れた。

 流石場数を踏んだ冒険者パーティーだ。

 相手が何物か分からない、そんな場合には、戦いを避け、様子を見るのは基本だろう。

 用心深いのは決して恥ずかしい事ではないと思う。

 私は光の屈折魔法で潜伏スキルの効果を更に上げる事も考えついたがある考えが浮かび開いていた口を閉じる。

 これがいつもの仲間達なら、こんな風に素直に隠れたのかなと、茂みに隠れてながら考えていると……。

 

 

 それは来た。

 

 一言で言えば、猫化の猛獣。

 虎やライオンをも越える大きさのそれは、全身が黒い体毛で覆われ、サーベルタイガーみたいな大きな二本の牙を生やしていた。

 その見た目だけで強いモンスターだと何となく分かる。

 そのモンスターは私達がさっきまでいた山道の地面を、クンクンと神経質に嗅いでいる。

 リーンがその姿を見て、慌てて自分の口を押さえた。

 恐怖で悲鳴でも上げそうになったのかも知れない。

 よく見ると潜伏スキルを発動中のカズマに触れる三人の手に、緊張のためか力が入っている。

 この三人がこれだけ緊張すると言う事は、かなり危険なモンスターなのかも知れない。

 そのモンスターはしばらく辺りを嗅ぐと、やがて私達が登ってきた、街へと向かう道へと消えていった。

 

 「……ぷはーっ! ここここ、怖かったあっ! 初心者殺し! 初心者殺しだよっ!」

 

 リーンが涙目で言っていることから、かなり危険なモンスターだったらしい。

 

 「心臓止まるかと思った! た、助かった……。あれだ、ゴブリンがこんな街に近い山道に引っ越してきたのは、初心者殺しに追われたからだぜ」

 

 「あ、ああ。厄介だな。よりにもよって帰り道の方へと向かって行ったぞ。これじゃ街に帰る事もできないな」

 

 キースやテイラーが、口々に言ってくる。

 

 「……ねえ、さっきのモンスターってそんなに危ないの?」

 

 カズマも私と同じ様な顔をしている。

 私の言葉に三人が、なぜ知らないんだと、信じられない物を見るかの様な目で見つめてきた。

 

 そんな目で見られても………。

 

 「初心者殺し。あいつは、ゴブリンやコボルトといった、駆け出し冒険者にとって美味しいといわれる、比較的弱いモンスターの側をうろうろして、弱い冒険者を狩るんだよ。つまり、ゴブリンをエサに冒険者を釣るんだ。しかも、ゴブリンが定住しない様にゴブリンの群れを定期的に追いやり、狩り場を変える。狡猾で危険なモンスターだ」

 

 「えっ? なにそれ怖っ」

 「なにそれ怖い」

 

 モンスターですらそんな知恵を持つなんて。

 あの初心者殺しのそう言う頭を使う所をアクアは見習って欲しい。

 

 「取り合えず、ゴブリン討伐を済ませるか? 初心者殺しは、普段は冒険者を誘き寄せるエサとなる、ゴブリン達を外側から守るモンスターだ。ゴブリンを討伐して山道の茂みに隠れていれば、俺達が倒したゴブリンの血の臭いを嗅ぎ付けて、さっきみたいに俺達を通り過ぎてそっちに向かうかも知れない。近づいてくればカズマの敵感知で分かるだろうし、もし、気付かなくても上級職のシロナもついて来ているんだし、大丈夫だろう。帰ってくるかも分からない初心者殺しを待って、いつまでもここで隠れている訳にもいかないだろうから、まずは目的地へと向かうとしよう」

 

 テイラーの提案に俺達は茂みから出る。

 ………と、リーンがカズマの背負っていた荷物の一部を手に取ると、

 

 「もし初心者殺しに会ったら皆で逃げる時、カズマも身軽な方が良いからね。あたしも持つよ。そ、その代わり、潜伏と敵感知スキル、頼りにしてるよ?」

 

 リーンは自分の荷物を背負いながら、おどおどと言った。

 その言葉にテイラーとキースも慌てた様にカズマの背中から荷物を取る。

 

 「「べ、別に、俺達はカズマを頼りきっている訳じゃないからな? ほ、ほらシロナだって頼っているだろ?」」

 

 私はツンデレの様な言葉を聞いてその考え通りの展開を少し笑いながら見ていた。

 

 

    カズマside

 

 三人が自分の荷物を取ってから初心者殺しが引き返してくる気配も無く、俺達がてくてくと山道を登っていると、テイラーの持つ地図通り、山道が下りになる地点にでた。

 来る途中でアクアの悲鳴らしきものが聞こえたきがするが気のせいだろう。

 ゴブリンが目撃されたのはこの辺りらしい。

 テイラーがこちらを振り返った。

 

 「カズマ、どうだ? 敵感知には反応あるか?」

 

 あります、ありますとも。それもたくさん。

 

 「この山道を下っていった先の角を曲がると、一杯いるな。俺達が登ってきた方の道からは、初心者殺しが近付いてくる気配は今の所無いよ」

 

 しかし、凄く気配が多い。十やそこらじゃない数がいる。多すぎてちょっと数えられない。

 

 「いっぱいいるってのならゴブリンだな。ゴブリンは群れるもんさ」

 

 言ってくるキースに、

 

 「いや、俺達はゴブリンと戦った事無いから知らないけど、こんなに多いもんなのか? 探知できているだけでも、ちょっと数え切れない数だぞ」

 

 若干不安に思いながらも俺は尋ねた。

 そんな様子にシロナとリーンも少し不安になったのか、

 

 「えっ? そんなにたくさんいるの? 十匹くらいじゃなくて?」

 「そ、そんなにいるの? カズマがこう言っているんだし、ちょっと何匹いるのかこっそり様子を伺って、もし勝てそうなら………」

 

 リーンがそこまで良いかけたその時だった。

 

 「大丈夫大丈夫! カズマにばっかり活躍させてちゃたまんねえ! おっし、行くぜ!」

 

 叫ぶと同時にゴブリンがいるであろう下り角から飛び出すキース。

 それに続いてテイラーも角から飛び出し、そして二人同時に叫んだ。

 

 「「ちょっ! 多っ!!」」

 

 叫ぶ二人に続き、俺とシロナ、リーンも角を曲がる。

 そこには、四十やそこらはくだらないゴブリンの群れがいた。

 

 「おお! これがあの有名なゴブリンか!!」

 

 なるほど小鬼だ!

 小学生低学年の子供くらいの身長しかないが、その殆どが武器を持ち、まっすぐこちらを向いていた。

 これはちよっとした脅威だ。

 俺がそんな軽い感動をしていると

 

 「カズマ、感動をしている場合なの!?」

 

 と慌てた様に叫ぶシロナと、

 

 「言ったじゃん! だから言ったじゃん! あたし、こっそり数を数えた方がいいっていったじゃん!!」

 

 ゴブリンの群れを見て引きつった顔で泣き声を上げるリーン。

 するとアーチャーのキースを後ろに庇う形で、山道の角の部分にテイラーが前に出た。

 

 「ゴブリンなんて普通は多くても十匹ぐらいだろ!

ちくしょう、このまま逃げたって初心者殺しと出くわして、挟み撃ちになる可能性が高い! やるぞ!」

 

 テイラーが叫び、リーンとキースが悲壮感を漂わせた顔で攻撃準備を始め、シロナは何かに気づいたのかすぐさま魔法の詠唱を始めた。

 それを見て、ゴブリン達が奇声を上げてこちらに向かって山道をかけ上がってきた!

 ここは山道で、片方は崖になっている。

 

 「ギギャッ! キー、キーッ!」

 

 そして、俺達は今、坂の上に陣取っている。

 

 「『ウインドカーテン』!」

 

 「おお、助かったっ! ナイス、シロナ!」

 

 早い魔法にお礼を言うキース。

 どうやら弓を構えているゴブリンがいたのだろう。

 シロナが魔法を使うと同時に、俺達五人の回りに渦巻く風が吹き出し、放たれたであろう矢は風によって剃らされて行く。いつも使っている便利な魔法だがこれが本来の使い方なんだろう。

 俺は支援魔法に感動しながら大声で叫んでいた。

 

 「この地形では、この手が効くだろ! 『クリエイト・ウォーター』ッッ!」

 

 俺は初級魔法を唱え、大量の魔力を注いで広範囲に水を生成した。

 テイラーが立ち塞がる前の坂道にぶちまける様に。

 

 「カズマ!? 一体何やって………」

 

 背後から、リーンの疑問の声を聞きながら、

 

 「『フリーズ』ッ!」

 

 俺は、初級魔法を全力で!

 

 「なるほど、こんな使い方があったんだ!」

 「「「おおっ!!」」」

 

 俺以外の四人が驚き、叫び、ゴブリン達の足元が一面氷で覆われた。

 初級魔法の組み合わせだが、ゴブリン達は簡単に氷に足を取られ、あちこちで盛大にすっ転んでいる。

 モタモタと登ってきた、氷の上でプルプルと踏ん張っている不安定な体勢のゴブリンを、しっかりと乾いた地面を踏みしめながらテイラーは危うげなく切り捨てた。

 この状況なら傷を負わされる事もないだろう!

 俺は剣を引き抜くと、テイラーの横に立ち並び……!

 

 「テイラー、この足場の悪い中、それでも上って来るゴブリンは二人でしばこうぜ! 上って来ないゴブリンは、遠距離攻撃ができる後ろの三人に任せた!」

 

 パーティーメンバー達との連係に軽い感動を覚えながら、俺は嬉々として呼び掛ける。

 

 「でっ、でかしたカズマー! おいお前ら、やっちまえ! この状況ならどれだけ数がいたって関係ないぞ、ゴブリンなんてやっちまえ!」

 

 「うひゃひゃひゃ、なんだこれ、楽勝じゃねーか! 蜂の巣にしてやんよ!」

 

 「いくよ! さっき直ぐに支援魔法できなかった分、強力な魔法、ど真ん中に撃ち込むよーっ!」

 

 「私も一番強力な魔法を撃ち込むよ!」

 

 なぜがやたらと高いテンションで、俺達はゴブリンの群れに襲いかかった!




 う~ん、やっぱり一話にまとめられなかったです。すみません。

 今回はあの三人がいなかったぶんやはり、面白さが少ないと思います。

 次回は冒険の後半です!
 


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第二十話 『この元のパーティーリーダーに報復を』

 こんにちは白城です!

 今回でパーティー交換は終了です!

 あと……UAが20000を越えました! ありがとうございます! これからも頑張って書いていきます!


    カズマside

 

 ゴブリンの群れが討伐された帰り道。

 

 「………くっくっ、あ、あんな魔法の使い方聞いた事ねえよ! 何で初級魔法が活躍してんだよ!」

 

 「ほんとだよー! あたし、学校じゃあ初級魔法なんて覚えるだけ無駄だって教わったのに! ふふっ、ふふふっ、そ、それが何あれ!」

 

 「うひゃひゃひゃ、や、やべえ、こんな楽なゴブリン狩りなんて初めてだぜ!」

 

 俺達は山道を街に向かってゆっくりと帰りながら、先程の戦闘を振り返っていた。

 口々に先程の戦闘の話題で盛り上がる、いまだにテンションが下がらない三人に。

 

 「おい、戦闘が終わったんだから荷物よこせよ。最弱職の冒険者は荷物持ちが基本なんだろ?」

 

 口元をにやけさせた俺の軽い皮肉に。

 

 「ちょっ、悪かった、いや本当に悪かったよカズマ、謝るよ! これからは冒険者だからってバカにしねえ!」

 

 「ご、ごめんねカズマ!」

 

 「おいカズマ、荷物よこせ! MVPなんだから、お前の荷物も持ってやるよ!」

 

 突然慌てた三人に、シロナは少し笑いながら、

 

 「……カズマ、それ冗談でしょ」

 

 その言葉で冗談だと気付いた三人も笑い出す。

 それにつられて俺達も笑い。

 

 ああ、いいなあ。冒険者やってる!

 

 「ったく何でシロナがカズマの荷物を持たなかったのか、そして何で上級職ばかりのパーティーでリーダーなんてやってるのかが、良く分かったよ」

 

 テイラーは、そんな事を言いながら俺達に笑いかけた。

 俺、いや、自分達はなぜあのパーティーで問題児の子守りをしなければいけないのかが未だに分からないのだが、テイラーには良く分かったらしい。

 今度、是非教えて貰おう。

 俺達は山を降り、街へと広がる草原地帯に足を踏み入れる。

 

 ……………あ。

 

 そして、思い出した。

 もっと注意を払わなければいけない存在がいた事に。

 

 「あれ? 何かが、凄い勢いでこっちに向かってきてないか?」

 

 流石はアーチャー、視力が飛び抜けて良いのだろう。

 それに最初に気付いたのはキースだった。

 続いて俺も、敵感知によりそいつに気付いた。

 そしてシロナも。

 夕暮れの草原地帯のど真ん中にいる俺達に向け、駆けてくる一匹の黒い獣に。

 

 「「初心者殺し!」」

 

 俺達二人の叫びを合図に、一斉に街に向かって駆け出した!

 

 

 

 

 「はあっ………、はあっ…………! くそっ! 最後の最後でこれかよ!」

 

 キースが粗い息で毒づく。

 

 「はあっ、はあっ………やばいよー、追い付かれちゃうよー!」

 

 それに答えるように、涙目のリーンが息を切らせて呟いた。

 やはり魔法使いのシロナとリーンは体力が少ないんだろう。シロナもかなり息を切らせている。

 初心者殺しは、俺達のすぐ後ろまで迫ってきていた。

 街まではまだ距離がある。このままでは逃げ切れないだろう。

 ここは俺の元のパーティーで一番頼りになるシロナ頼りだ。

 

 「はあっ………シロナ……! あのモンスターの足止め出来ないか!?」

 

 「はあっ、はあっ、はあっ……え…あ、足止め? ちょっと待って……」

 

 するとシロナは二秒程考え、そして走りながら初心者殺しの方に右手の手の平を向け、息切れしらながらその魔法を唱えた。

 

 「ボ、『ボトムレス・スワンプ』!」

 

 それと同時に、初心者殺しと俺達の間に大きな沼が現れた。

 突然現れたその沼に初心者殺しは反応できずそこにはまり込み、足を取られて沈んでいく。

 更にシロナは魔法を唱える。

 

 「『ウインドブレス』!」

 

 すると顔に沼の泥水がかけられ、目に入ったのか初心者殺しは暴れるのを止めた。

 だが、そのまま足を取られらがらもこちらに威嚇した。

 

 「ちょっ!? えっ? ええっ!?」

 

 俺達の会話を聞いていなく、未だに理解できていないテイラー達に。

 

 「こ、これで少しは、時間を稼げるはず……!」

 

 俺は叫んだ。

 

 「おい、今の内だ! ずらかれえええっ!!」

 

 

 

    シロナside

 

 街まではまだ少しある。

 だが、もう初心者殺しの気配は感じられない。

 狡猾なモンスターだと言っていたので、恐らく街の近くにまでは追ってこないのかもしれない。

 

 「ま、撒いたか?」

 

 テイラーが、粗い息を吐きながら呟いた。

 

 「はあっ……。はあっ……。ま、撒いたみたい?」

 

 リーンが足を止め、何度も後ろを振り返りながら言う。

 

 「………ふっ……。ふふっ……。ふへへへっ……」

 

 キースが押さえられないといった様な、込み上げてくる感じの笑い声を上げる。

 どうしたんだろう。まさか、恐怖でおかしくなってしまったのだろうか?

 

 だが、キースの笑いにつられた様に。

 

 「くっ……くっ、くっくっくっ……!」

 

 「あはっ……。あははははっ……。あははははははっ!」

 

 強敵から逃げ切れた事に、いつの間にか私を含め、その場の皆は笑っていた。

 

 「ねえ、さっきのあれ何! 最初のは上級魔法だけど最後に何やったのさ! あははははっ!」

 

 リーンが笑いながら言ってくる。

 

 「初級魔法、初級魔法だよ! 流石に連戦で魔力残りが少なかったから初級魔法使ったんだよ!」

 

 「今度はシロナかよ! うひゃひゃひゃひゃ! は、腹いてえっ!」

 

 「この二人凄いよー! カズマの機転もそうだけど、シロナも凄いよー! この二人一体どんな知力してんのさ! ちょっと二人とも、一回冒険者ガード見せてよ!」

 

 私達は言われるがままに、リーンにカードを差し出した。

 

 「うわっ、高っ!? 何この知力と魔力!? カズマは…………あ、あれっ? 知力は普通だね。他のステータスも……って、高っ!? この人幸運、超高いっ!!」

 

 リーンの言葉に二人もどれどれとカードを覗く。

 この時、リーンは私に気遣ってか私のカードはスルリと隠し、ガズマのカードだけを見せた。

 

 「うおっ、なんじゃこりゃ!」

 

 「お、おい、今回こんなに都合良くクエストが上手くいったのは、カズマの幸運のお陰じゃねえか? お前ら、拝んどけ拝んどけ! ご利益があるかもしれねけーぞ!」

 

 いや、幸運は関係あるのかな?

 運が良いのなら、あの三人が集まってこないと思うけど……。

 

 だが、テイラーの言葉に、三人がカズマに手を合わせて拝みだした。

 カズマは慌てた様に。

 

 「や、止めろよお前ら、拝むなよ……。そんな事よりもコーヒーでもどうだ? 綺麗な水も出せるし、火だって使えるぞ?」

 

 カズマは三人に笑いかけながら、マグカップを取り出した。

 

 

 

 冒険者ギルドの前についた頃には、時刻はもう夜半を回っていた。

 討伐の報酬を受けとる以外にも初心者殺しが出たことを報告しないといけないらしい。

 だが、テイラーが「ゴブリンの群れは全部倒したから、初心者殺しは新しいゴブリンの群れを探して人里を離れるだろうな」と言っていた。

 

 「つ、着いたあああああっ! 今日は、なんか大冒険した気分!」

 

 まあ、確かになんかいつもより、冒険した気分だね。

 

 カズマはリーンの言葉を聞きながら、私達は笑いながらドアを開け………。

 

 「…………ぐすっ……ぐすっ……」

 

 そして、現実から目を剃らすかの様にドアをそっと閉めた。

 

 あれっ? なんか聞こえた様な………。

 

 「………カズマ、もう一回開けてみようよ。私も一緒に開けるから」

 

 今度は私とカズマでドアの取手を掴み、頷き、ゆっくりともう一度ドアを開け……。

 

 「ぐすっ……。ふぐっ……。ひっ、ひぐう……っ。あっ……、ガ、カジュマああああっ……ジロ゙ナああああっ……」

 

 泣きじゃくっているアクアを見て、私達はもう一度そっとドアを閉めた。

 

 「おいっ!「うおっ!」「きゃっ!」 気持ちは心底よーーく分かるが、ドアを二度も閉めないでくれよっ!」

 

 閉められたドアを開け、半泣きでカズマと食ってかかってきたのは今朝にガズマに絡んでいたあの男だった。

 

 確か……名前はダストだったかな?

 

 アクア達の今日の新しいリーダーだ。

 それは酷い惨状だった。

 ダストは背中にめぐみんを背負い、アクアは、白目をむいて気絶したダクネスを背負って泣いていた。

 良く見てみると、アクアの頭に大きな歯形を残し、涎か何か知らないが、湿っぽかった。

 

 「………えっとなに………これ」

 「………えっとなにこれ。いや、大体わかる。何があったのかは大体わかるから聞きたくない!」

 

 「聞いてくれよ! 聞いてくれよっ!! 俺が悪かったから頼むから二人とも聞いてくださいっ! いや、街を出て、まず各自がどんなスキルを使えるのかきいてみたんだ。で、この子が爆裂魔法使えるって言うから、すげーって誉めたんだよ」

 

 それは間違いだよ。そうやって誉めると多分……。

 

 「そしたらよ! 我が力を見せてやろうとか言い出して、全魔力を込めた爆裂魔法とやらを、何もない草原に意味をなく打っ放しやがってよ!」

 

 ほら、やっぱりそうなった!

 

 半泣きで訴えてくるダストの言葉を、ガズマは耳を塞いで聞こえないふりをした。

 

 「おい、聞いてくれって! そしたら、初心者殺しだよっ! 爆音の轟音を聞き付けたのか初心者殺しがきたんだよ! だけど、肝心の魔法使いはぶっ倒れてるわ、逃げようって言ってんのにクルセイダーは鎧も着てない癖に突っ込んでいくわ、それで挙げ句の果てにこのアークプリーストは回復魔法早くかけてくれっていったのに………」

 

 ……………。

 

 「おい皆! 初心者殺しの報告はこいつがしてくれたみたいだし、まずはのんびり飯でも食おうぜ。新しいパーティー結成に乾杯しようぜ!」

 

 「「「おおおおおおおっ!!」」」

 

 ガズマの言葉に、テイラーとキース、リーンの三人が喜びの声を上げてくれた。

 

 「いや、待ってくれ! 待ってください! 謝るから! 土下座でも何でもするから、俺を元のパーティーに戻して返してくれぇっ!!」

 

 本気で泣くダストに、ガズマは同情した様な顔をしダストの肩に手を乗せると。

 

 「これから新しいパーティーで頑張ってくれ」

 

 「俺が悪かったからっ!! 今朝の事は謝るから許してくださいっ!!!」




 次回は………キールのダンジョンかウィズの店だと思います。

 これからも読みやすく、面白く書けるように頑張っていきます!!


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第二十一話 『この素晴らしいスキルの習得を』

 皆さんこんにちは白城です!

 かなり遅くなってしまいすみません。なかなか書くのが進まなくて………すみません言い訳ですね。

 今回は題名から分かる通りです!



    カズマside

 

 冬将軍に首ちょんぱされてから約一週間。

 俺はアクアとシロナを引き連れ、ある共にある所に向かっていた。

 ダクネスは「良いクエストが出たら直ぐに確保出来るようにここにいてくれ」と言っておきギルドに待機して貰っている。

 めくみんは朝から何処かに出掛けていった。

 一撃熊の一件からも、たまにいなくなる時があるが何をしているのだろう。

 もう聞くのも怖いので放置している。

 

 俺達のパーティーの役割りはこの様になっている。

 まず、回復役のアクアに、盾役のダクネス、攻撃役のめぐみんとシロナ。

 アクアはプリーストとしては凄く優秀なのだろうが、盾役のダクネスが固すぎて出番がない。

 めくみんは最大瞬間火力においては他のウィザードに追随を許さないが、一発きりだ。

 そして、それを支えるシロナ。

 だが、この役割りだと、シロナの負担が大きすぎる。

 となると、スキルを自由にとれる俺がシロナを補助するなどの役割りをした方が良いだろう。

 

 そんな訳で、先日のパーティー交換でレベルが上がった俺は、とある店の前にやって来ていた。

 

 「おし、着いたぞ。いいかアクア。絶対暴れるなよ。喧嘩するなよ。魔法使うなよ。これを守れいいな?」

 

 「そうだよ、アクア。この三つは絶対に守るようにね。あ、芸人みたいなフリとかじゃないからね」

 

 そこには小さな、マジックアイテムを扱っている魔道具店。

 それを見ながら、アクアが俺とシロナの言葉に小さく首を傾げた。

 

 「ちょっと何で私にそんな事を言うの? 二人は私の事を何だと思ってるの? 私、チンピラや無法者じゃないのよ? 女神よ? 神様なのよ!?」 

 

 俺は後ろで文句をたれるアクアの声を聞き流しながら、俺は店のドアを開け中にも入った。

 ドアについている小さな鐘が、カランカランと涼しげな音をたて、俺達の入店を店主に告げた。

 

 「いらっしゃ………、ああっ!?」

 

 「ちょっと聞いてるの!? 女神の話なんだからありがたく聞きなさいよ……ん? あああっ!? 出たわねこのクソアンデット! あんた、こんな所で店なんか出してたの!? リッチーの癖に生意気よ! こんな店、神の名の下に燃やしていだっ!?」

 

 店に入るなり、いきなり俺達の注意を忘れて暴れだしたアクアの 頭をシロナは、手で叩いた。

 

 「ちょっとシロナ何するの!?」

 

 「いや、何するのじゃないから! 数秒前の事忘れたの!? 暴れないでって言ったよね!?」

 

 シロナを連れてきて正解だった。

 シロナがアクアを押さえている内に俺は怯える店主に挨拶した。

 

 「ようウィズ、久しぶり。約束通り来たぞ」

 

 

 

 

 「…………ふん。お茶も出ないのかしら、この店は」

 

 「あっ、すみませんすいませんっ!! 今すぐに持ってきますっ!」

 

 「いや、持ってこなくていい! 客にお茶を出す魔道具店なんて何処にあるんだよ」

 

 「アクアの言葉は気にしなくていいから!」

 

 陰湿なイビりをするアクアの言う事を素直に聞こうとするウィズを止める。

 魔道具店なんて初めて来た俺は、店内を見渡して手頃な物を手に取った。

 それは小さなポーションの瓶。

 シロナも俺から少し離れた所でポーションを手に取った。

 

 「あっ、それは強い衝撃を与えると爆発するので気を付けてくださいね」

 

 「げっ、マジか」

 

 俺は慌てて瓶を戻す。

 シロナも俺から少し離れたポーションを手に取ると……、

 

 「あっ、それは魔力を込めると爆発するので……」

 

 「えっ、危ない危ない」

 

 シロナは魔力を込めないように気を付けながら瓶を戻した。

 俺は視線を戻しさっきのポーションの隣の瓶を手に取り。

 

 「これは?」

 

 「水に触れると爆発します」

 

 「………こ、これは?」

 

 「温めると爆発を………」

 

 「…………偶々のポーションが爆発系のポーションだっただけだよ……多分」

 

 俺はシロナの言葉を聞き深呼吸をし、突っ込むのを我慢する。

 シロナは更に店内を見渡して気になった物を手に取った。

 それはさっきまでのポーションとは違い、深い赤色のポーション。

 

 「あっ、それは最近入荷した物なんです! なんと飲むと一定時間、力が爆発的に上がるんです!」

 

 「なにそれ凄い!」

 

 おお、いいなそれ! お金が溜まったら買おう。

 

 「ただ、効果が切れると一年間は全身に力が入らなくなるので注意してくださいね」

 

 「「…………」」

 

 「このお店には使え無いものしか置いてないの!?」

 「この店には使えるポーションがねえーのかよ!」

 

 「ちちち、違いますよ! 偶々とった商品がその様な物だっただけですよ!」

 

 おっと、そうじゃない。

 俺は別に魔法の道具が欲しくて来た訳じゃない。

 勝手に自分でお茶を淹れてすすっているアクアを置いておき、俺は本題に入った。

 

 「ウィズ。以前言っていたろ? 何かリッチーのスキルを教えてくれるって。スキルポイントに余裕が出来たからさ。何か教えてくれないか?」 

 

 「ぶっ!」

 

 「きゃあああああっ!?」

 

 俺の言葉にアクアがお茶を吹き出し、それがウィズにモロにかかった。

 

 「ちょっとなに考えてんのよカズマっ! リッチーのスキルですって!? いいカズマ? リッチーって言うのはね、薄暗くてジメジメした所が大好きな、言ってみればなめくじの親戚みたいな連中なの」

 

 「ひ、酷いっ!」

 

 アクアのあんまりの決めつけにウィズが涙ぐむ。

 

 「いや、親戚でも、従兄弟でもいいんだけどさ。リッチーのスキルなんて普通は覚えられないだろ? そんなスキルが覚えられたら結構な戦力になって良いんじゃないかと思ってな? お前だって、今より楽にクエストこなしたりしたいだろ?」

 

 「むん………。女神としては、私の従者がリッチーのスキルなんて覚える事を見逃す訳にもいかない所何ですけど」

 

 「誰が従者だ。誰が!」

 

 カズマの言葉に、アクアはぶつぶつ言いながら渋々引き下がる。

 そのアクアの呟きを聞き、ウィズが不安そうな顔で恐る恐ると言ったように聞いてきた。

 

 「その、………『女神としては』と言ったような気がするんですが………? ひょっとして、本物の女神だったりするんですが?」

 

 ヤバイ。

 

 シロナもどうするの? と言ったような顔で見てきた。

 流石にリッチーともなれば、アクアが本物の女神だと分かるのか。

 俺はアクアが本当に女神かどうか未だに疑問をもっているが。

 俺達が言うまいが悩んでいるとアクアが迷うことなく言い放った

 

 「まあね、私はアクア。そう、アクシズ教団で崇められている女神、アクアよ。控えなさいリッチー!」

 

 「ヒイッ!?」

 

 アクアのその言葉に聞き、ウィズがこれ以上に無いぐらいに怯えた顔でシロナの後ろに回り込んだ。

 

 「えっ? そんなに怯えなくていいと思うよ?」

 「おいウィズ、なにもそんなに怯えなくても……」

 

 宥める俺達に、だがウィズは、

 

 「い、いえその……。アクシズ教団の人は頭の可笑しい人が多く、関り合いにならない方がいいと言うのが世間の常識なので、アクシズ教団の元締めの女神様と聞いて………」

 

 なるほど御神体()がこれなら信者()もそうなのか。

 

 アクアはその言葉に徐々に涙目になり

 

 「何ですってぇっ!!? このっ! このっこんなものっ、この!!」

 

 「ごごごご、ごめんなさいっ!」

 

 ……は、話が進まねえ。

 

 

    白奈side

 

 カズマが暴れ狂うアクアを引き剥がし、「店の商品でも見てこい!」と言い、追い払うと、アクアは予想とは違い素直に店内を物色し始めた。

 

 ……やっぱりアクアの事はカズマに任せた方が良いね。

 

 アクアは私の視線には気付かずその辺のポーションを手に取り、中の臭いを嗅いだりとウロウロしていた。

 アクアをチラチラの見て、気にしながら、気を取り直したウィズは

 

 「あ、そう言えばカズマさん達があのベルディアさんを倒されたそうで。あの方は魔王軍の中でも剣の腕に関しては相当なものだったはずですが、凄いですねぇ」

 

 そう言って私達に穏やかな笑みを浮かべた。

 

 ………あれっ?

 

 カズマも同じ疑問に持ったようで首を傾げている。

 

 「ベルディアさん? なんだかベルディアを知っていた見たいないい方だけど、同じアンデット仲間だからとかで繋がりでもあったの?」

 

 私、いや私達の疑問に、ウィズはまるで世間話をするかの様にニコニコしながら

 

 「ああ、そう言えば言っていませんでしたね。私、これでも魔王軍の幹部の一人ですから」

 

 そんなに事を……。

 

 「「……………」」

 

 「確保ーっ!!」

 

 商品棚の間でウロウロしていたアクアが、ウィズ向かって襲い掛かった!

 

 「ま、待ってーっ! アクア様、お願いします、話を聞いてくださいー!」

 

 取り押さえられたウィズがアクアにのし掛かられたまま悲鳴を上げる。

 アクアは良い仕事をしたとばかりに額の汗を拭い

 

 「やったわねカズマにシロナ! これで借金なんてチャラよチャラ! それどころかお釣りがくるわ!」

 

 嬉々としてそんな事を言ってきた。

 

 アクアには情けとかはないのかな?

 

 カズマは取り押さえられているウィズの前へと屈み込み、

 

 「おいアクア、せめて事情は聞いてやれよ。………えっと魔王軍の幹部だと、流石に冒険者の手前、見逃すわけにも……」

 

 そんなカズマの言葉に、ウィズが泣きそうになりながら必死に弁解した。

 

 「違うんです! 魔王城を守る結界の維持のために、頼まれたんです! 勿論今まで人に危害を加えた事もありませんし、私を倒した所で、そもそも報酬もかかっていませんから!」

 

 ウィズの言葉に私達三人が顔を見合わせた。

 

 「………んー、よくわかんないけど、念のため退治しておくわ」

 

 「待ってくださいアクア様ーっ!!」

 

 アクアに取り押さえらながら喚くウィズ。

 

 私は何やら手を光り輝かせるアクアに、ちょっと待ってと言い

 

 「ええと、つまりゲーム何かで良くある、全ての幹部を倒すと魔王への道が開かれるとかそう言う事? そして、ウィズはその結界の維持だけを請け負っているって事?」

 

 「げーむとやらは知りませんか、そう言うことです! 魔王さんに頼まれたんです、人里でお店を経営しながらのんびり暮らすのは止めないから、結界の維持だけでも頼めないかって!」

 

 「つまりあんたがいる限り人類は魔王城に攻め込めないって事ね。カズマ退治しておきましょう」

 

 「待って! 待ってください! せめてもう少しだけ生かしておいてください……! 私にはまだやるべき事があるんです……」

 

 取り押さえられたまま泣き出すウィズに、流石のアクアも微妙な表情を浮かべた。

 

 ええと、ここはカズマに任せるよ。

 

 私のアクアはカズマの方に視線を移し、カズマが決めてと言った目を向ける。

 カズマは少し困った様な顔をするが

 

 「ええっと、良いんじゃないか? どのみち今ウィズを倒した所で、その結界とやらがどうにかなるわけでもないし、魔王城にいけた所で今の俺達じゃ……首ちょんぱされるのがおちだ」

 

 まあ、確かに今の私達が魔王や幹部と倒せるわけもないし、そんな危険な事に私はあまり関わりたくない。

 カズマの言葉にウィズがぱあっと表情を明るくされた。

 

 「ありがとうございます!」

 

 「でも良いのか? 幹部の連中は一応ウィズの知りあいとかなんだろ? ベルディアを倒した俺達に恨みとかは……?」

 

 カズマの疑問にウィズは少しだけ悩み。

 

 「ベルディアさんとは、特に仲が良かったとか、そんな事も無かったですからね……。私が歩いていると良く足元に自分の首を転がしてきて、スカートの中を覗こうとする人でした」

 

 「「「………………」」」

 

 「それに私は今でも、心だけは人間のつもりですしね」

 

 そう言って、ちょっとだけ寂しげに笑った。

 

 

 

    カズマside

 

 「それでは、一通り私のスキルをお見せしますから好きな物を覚えていってください。以前私を見逃してくれた事へのせめてものおんが……え……し……」

 

 ウィズが言い、何かに気付いたのか、俺達三人を見てオロオロしだした。

 

 「ん? どうした?」

 

 問いかける俺に、ウィズは申し訳なさそうに

 

 「あの、私のスキルは相手がいないと使えないものばかりでして、つまりその……。誰かにスキルを試さないといけなくて……」

 

 なるほど、そう言う事か。

 

「おいシロナ、悪いけど頼めないか?」

 

 「別にいいよ? でもなんのスキル使うの? 状態異常のスキルとかだったら少し遠慮したいところなんだけど………」

 

 快く引き受けてくれたシロナ。これがアクアならこんなにも快く引き受けてくれただろうかと考える。

 

 「そうですね。……ドレインタッチなんてどうでしょう? 自分の体力や魔力を相手から吸いとったり、逆に分け与えたり出来るんです」

 

 なるほど、吸いとるだけでなく、分け与えたり出きるのいうのがおいしいな。

 このスキルなら使い方によっては上手く仲間をサポートできるかも知れない。

 

 「ああっ、も、勿論ほんのちょぴっとしか吸いとりませんので!」

 

 慌てた様に早口で言うウィズに、シロナが大丈夫信頼してるからと安心させた。

 

 「で、では失礼します」

 

 そう言ってウィズはシロナの手を握り、ドレインを行った。

 ウィズのスキルを見た後、俺の冒険者カードには《ドレインタッチ》と書かれたスキル名があった。

 俺はそれを迷わずスキルポイントを消費して、スキルを習得した。

 

 「…………あ、あの、アクア様? シロナさんにスキルを使うのでアクア様は触れてなくていいんですよ? と言うか何だかアクア様が触れているところがピリピリするし、このままだと手が離せないので手を離して欲しいんですが………」

 

 「アクア、どうしたの?」

 

 シロナが疑問の声を上げる。

 

 「…………」

 

 ウィズのその言葉に良く見れば、アクアがウィズとシロナの手を包み込んでいた。

 アクアはシロナの疑問の声には答えず、ニッコリと笑うと………。

 

 「ア、アクア様? あの、なんだかどんどん痛くなってきたんですが……、アクア消えちゃう消えちゃう、私消えちゃいます!」

 

 「お前はなにやってんだ!「痛いっ!」」

 

 ウィズとシロナの手を握り、ウィズに嫌がらせしているアクアの頭をダガーの柄で軽く殴る。

 

 「うう、酷いです………」

 

 ウィズが何だか薄くなっているのは気のせいだろうか。

 

 「……カズマ、さっきのスキルで私の体力と魔力を分け与えてあげて」

 

 「ああ」

 

 その時だった。

 

 「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

 言いながら、店の鈴を鳴らしにながら入ってきたのは、中年の男だった。




 やはりアクア様はウィズに嫌がらせをしたかったようです


 


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第二十二話 『この冬を越せない私達に愛の手を』

 皆さんこんにちは白城です!

 読者の皆さんが怒ってないか、ビクビクしなかがらの更新です。

 今回は遅くなってしまったので、少し、いえ、結構多めの6000文字です!


    白奈side

 

 「…………ええと、この屋敷であってるよね?」

 

 「ああ、あってるぞ」

 

 私の確認の言葉にカズマが答える。

 私達の目の前には一軒の立派な屋敷があった。

 

 「悪くないわね! ええ、悪くないわ! この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」

 

 アクアが巨大な鞄を手に興奮したように叫び、同じくめぐめんも、気のせいか顔が紅潮していた。

 この屋敷に住む。

 別にアクアが勘違いしているとかじゃない。

 この屋敷が大きいためか、その分たくさんの悪霊が集まったらしく、ここは現在、幽霊屋敷としての評判が定着してしまったらしい。

 つまり今回、この依頼をこなすことが出来れば、わざわざ冬を乗り越えるための資金を集めなくても良い。

 突然でたこの話に私はカズマの運の良さに心の中で感謝した。

 

 「しかし、除霊の報酬としてこの屋敷にすんでいいとは随分と太っ腹な大屋さんがいたものだな」

 

 「ウィズはこの町では高名な魔法使いで通っているらしくてなこの手の案件が良く持ち込まれるんだそうだ」

 

 その正体は魔王軍の幹部だけどね。

 

 因みにこの屋敷に霊が集まりだしたのは一年前などではなくつい最近らしい。このつい最近(・・・・)と言うところが少し気になったけど、気のせいだと思い無視しておいた。

 

 「ですが除霊なんか本当にできるのですが?」

 

 「確かに大屋さんが祓っても祓っても直ぐにまた霊が来るっていってたよね?」

 

 私とめぐめんがアクアに向かって問いかける。

 

 「任せなさいよ! なんせこの私は女神にしてアークプリーストよ! ………むん!」

 

 「「「「おおっ!」」」」

 

 アクアが屋敷に両手をかざすとアクアの手が白く光った。その姿はとても頼りになる女神の様で………。

 

 「見える、見えるわ! この屋敷には貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供、その貴族の隠れ子が幽閉されてたようね! 元々体の弱かった貴族の男は病死、隠し子の母親のメイドも行方知れず。この屋敷に一人残された少女はやがて若くして父親と同じ病気にかかり、両親の顔も知らず………」

 

 「「「「……………」」」」

 

 ペラペラと、テレビに出てくるインチキ霊能力者の様な事を言い出したアクアを、胡散臭い詐欺師をみる視線で眺め、そしてまだ口走っているアクアを無視して私達は屋敷の中へと歩みを進めた。

 

 「………ねえ、なんであんな細かい設定とか分かるのか凄く突っ込みたいんだけど………、これって本当に大丈夫なの? なんか凄く不安なんだけど……本当に大丈夫だよね?」

 

 「「「…………」」」

 

 お願い誰かなにか言って………。

 

 三人も私と同じ気持ちなのか、私の質問には誰も答えてはくれなかった。

 

 

 

 

 時刻は夕方。

 

 「ふぅ、終わったな」

 

 「掃除や部屋割り、荷物運びも終わったし、後はゆっくり部屋で休みたいよ」

 

 「でも流石にちょっと埃っぽいなー………あ」

 

 そう言ってカズマは換気をするために窓を開けるとそこには!

 

 「名前はアンナ=フィランテ=エステロイド。好きなものはめんぐるみや人形、そして冒険者達の冒険話っ! でも安心して、この子は悪い子しゃないわ。おっと、でも子供ながらにちょっと大人ぶった事が好きな様ね。甘いお酒をこっそり飲んでいたみた」

 

 「…………」

 

 未だに霊の話しているアクアの声が小さく聞こえた。

 

 ……………。

 

 それにみたカズマは何も見ていないと言う様に、そっと窓を閉じる。

 

 「それじゃ皆、後は自由行動って事で。悪霊がでたら直ぐに報告すること。解散!」

 

 

 

 深夜過ぎ。

 私たちは皆鎧や武器などは装備を外し、屋敷でくつろいでいた。

 因みに私の部屋は前回同様カズマの隣ではなくアクアの部屋の隣になっている。

 

 まあ、女神のアクアがこの屋敷に住むんだから、恐らく悪霊などはかってに出ていくのかも。

 

 と少しの期待と

 

 アクアの体質から悪霊が集まってくるのかな?

 

 と少しの不安を抱いていた。

 たが、アクアは女神にして、優秀なアークプリーストだ。リッチーの件から自分の家が悪霊に好き勝手にやられるのを放置する訳がない。

 と言う考えから私は思ったより自分のベットの上でのんびりくつろいでいた。

 

 「わあああああああっ、わあああああーっ!!」

 

 アクアの声を聞くまでは。

 

 

 

 

 「どうしたっ!? おい、アクア何があった!」

 「どうしたの!? アクア、大丈夫!?」

 

 凄い勢いで駆けつけてきたカズマと隣の部屋にいた私はアクアの部屋にたどり着くとドアを勢い良く開けた。

 そこには………!

 

 「うぅ………、ううっ………、か、カヂュマああ、ジロナああああっ!」

 

 部屋の中央で、大事そうに空の酒瓶を抱えたまま、泣いているアクアの姿があった。

 

 「………おい」

 「………はあ」

 

 「ち、違うの! この空になったお酒は私がのんだわけじゃないの! これは、大事に取っておいた凄くたかいお酒なのよ。お風呂から上がったらゆっくりちびちび飲もうと楽しみにしていたのに! それが私が部屋に帰ってきたら、見ての通り空だったのよおおおおおっ!」

 

 そのあまりの泣きように私は一応尋ねてみる。

 

 「因みにいくらしたの?」

 

 「……………三十万」

 

 この借金があるときに何でそんな高い買い物をしているのかと言いたいことはあるが、流石にこれは可愛そうだ。

 

 「…………そうか、じゃあお休み。また明日な」

 

 「カズマ! これは悪霊よ! ちょっと私、屋敷の中を探索して目につく霊をしばき回してくるわ!」

 

 「……なんだ、一体何の騒ぎだ?」

 

 「もう時間も遅いのですから勘弁してください。何事ですか?」

 

 先程のアクアの叫び声を聞いてきたであろう、ダクネスとめぐみんの二人がやって来た。

 

 「いや、アクアが取っておいた高いお酒を悪霊に飲まれて騒いでいてな。除霊するとか言っているんだよ。悪霊について色々ツッコミたいんだが、俺はもうめんどくさいので寝る。後はお前たちにまかせたよ」

 

 「ちょっとカズマ何言っているの!? バカなの!? 自分の家が悪霊によ………………」

 

 カズマはアクアの言葉を無視して、そのまま部屋に帰っていった。

 

 ……はあ、はやくこの悪霊を何とかしよう。

 

 何が悲しくて異世界で悪霊と格闘しなければならないの?

 

 

 

 

 この作業に続けて何分たっただろう。

 

 「『ターンアンデット』! 『ターンアンデット』『ターンアンデット』『ターンアンデット』『花鳥風月』!『ターンアンデット』っ!」

 

 アクアは屋敷中に走り回り一心不乱に浄化魔法を唱え、悪霊達を浄化していた。悪霊達は凄い勢いで天に上って行く。

 

 さっきからたまに唱える宴会芸スキルは何の意味があるのだろう。

 

 「さあ、早くこいっ! さあっ!」

 

 ダクネスは最初は悪霊の取り付いた人形達に追われていたが、逆に人形に荒い息を吐きながら近付き、今では人形達がダクネスから逃げると言う光景が目の前でおこなわれていた。

 私は人形が逃げないようにとダクネスから逃げる人形を風魔法で捉えていた。

 

 早く終わらせて寝たいよ。

 

 そんな事を考えながら私は人形達をおった。

 

 

 

    カズマside

 

 「カズマ、いますか? 離れないでくださいよ?」

 

 「いるよ。ちゃんといるし、もし人形が出てきても置いてったりしないから早くしてくれ」

 

 はい、カズマです。

 

 俺は夜中にトイレで起き、めぐめんもトイレで起きた様だが、屋敷の中は人形達で溢れており、人形達に追われた。

 色々あったが、今は先に用を済ませた俺は、めぐめんが出てくるのをドアの前で待っていた。

 俺がどこかへ行くのが怖いのか、先程からしきりを話しかけてくる。

 

 「………あの、カズマ。流石にちょっと恥ずかしいので、大きめの声で歌でも歌ってくれません?」

 

 「何が悲しくてこんな夜中にトイレの前で歌わなきゃならないんだよ!」

 

 めぐめんにツッコミつつも、実は待っている俺も微妙に気恥ずかしいので、仕方なく歌を歌い出した。

 歌と言っても日本の歌しか知らないので、適当にアカペラで。

 

 「………ふぅ、もういいですよカズマ。聞いた事も無い、随分変わった歌ですね? 前から思っていたんですが、カズマとシロナって同じ国出身なんですよね? 何処の国のひとなんですか?」

 

 「夜中にトイレの前で歌う風習がある、日本って言う素敵な国だよ。ほら、行くぞ。とっととアクア達を探して合流しようぜ」

 

 適当な事を言う俺の後を、無言でペタペタとついてくるめぐめん。

 兎に角今の状況では、俺とめぐめんは悪霊に対して何の抵抗も出来ない。

 一刻も早くアクア達と合流したい。

 

 と、その時だった。

 俺とめぐめんがトイレの手洗い場から廊下に出ようとすると………。

 

 カタ――カタ――カタ――カタ

 

 人形が出てくる時に鳴る、嫌な音が聞こえ、俺はトイレの手洗い場のドアの前で身を屈めた。

 隣ではめぐめんが、俺の裾をギュッと掴み、震えながら身を寄せてくる。

 

 怖い、人形マジで怖い!

 

 あんな人形に殺される事は流石に無いだろうが、夜中に西洋人形に追いかけられると言うのは尋常ではない恐怖だった。

 小さく震えていためぐめんが、俺の裾から手を離し、両手を前に掲げて小さく何かを………!

 

 「こらっ、お前は何を唱えてる! この屋敷を吹き飛ばす気かっ!」

 

 恐怖のあまり、爆裂魔法の詠唱を始めためぐみんの口を急いで塞ぎ、そのまま暴れないように体を押さえる。

 ……いつの間にか、あの嫌な音がドアの前で止んでいた。

 震えながら俺の手を掴み、こちらを見上げてくるめぐめん。

 

 クソ、やるしかないか!

 

 「めぐめん、ドアを開けたらお前は走れ! 俺は覚えたてのドレインタッチで、人形から魔力の一つでも吸いとってやる! 人形の攻撃を食らっても死ぬことは無いだろ!」

 

 俺が叫ぶと、めぐめんは口が塞がれた状態でコクりと頷いた。

 

 「おらあ! かかってこいやあああああ! 後でウチの狂犬女神けしかけてやんぞのこらああああっ!「いたっ!」」

 

 叫びながらドアを勢い良く開けると、ごっ! と何かにドアにぶち当たる。

 

 ん? 何が声が聞こえたような。

 

 俺とめぐめんは顔を見合せ、ドアの外へと身を出すと………!

 

 「ちょっ、シロナ!?」

 「シロナ! お、おいシロナ、大丈夫か!?」

 

 「う、うぅぅ」

 

 そこにはドアの前で顔を押さえてうずくまるシロナと、傍に力を失い転がる人形、………そして、シロナに声を掛けるアクアとダクネスの二人の姿があった。

 

 

 

 

 「ふう、これでよし、と。結構いたわけねー。結局朝までかかっちゃったじゃないの」

 

 アクアが、人形に憑いた悪霊を浄化して、明るくなってきた窓の外をみて呟いた。

 流石は対アンデットのエキスパートだ。この大きな屋敷の悪霊を、一晩で退治してしまった。

 

 「ふむ、冒険者ギルドに一応報告した方がいいだろうクエストを請けた訳ではないが、本来なら冒険者ギルドがなんとかするべき案件だ。臨時報酬が貰えるかもしれない」

 

 「確かにね。この悪霊の数はどう考えても異常だよ。それに、私はこの街になんで急に悪霊が増えたのか知りたいよ」

 

 ダクネスとシロナの言葉に俺達は頷いた。

 ダクネスとめぐみんには、浄化によって散らかった屋敷内の後始末を頼み、俺とシロナとアクアはギルドへ報告に行く事に。

 その道中。俺達三人は、屋敷の悪霊の話をしていた。

 

 「ところで、アクアが言ってたあの貴族の隠し子って私達には危害を加えないって話しゃなかってけ?」

 

 「ああ、そう言えばそんな事言ってたな。悪い霊じゃないって話じゃなかったのか?」

 

 アクアが俺達のその言葉にポンと手を打ち。

 

 「ああっ! そんな子もいたわね! 安心して、今回の件はあの子は関係ないわ! でも、高級酒を飲んだのはあの子だと思うの! ねえ、二人とも、飲まれちゃったお酒、除霊の必要経費ってこ………」

 

 俺は何か言っているアクアを無視して、ギルドのドアに手を掛けた。

 

 「おはようごさいます。ちょっと早いんですが、報告したいことがあるんでいいですかね?」

 

 朝早くだと言うのに、受付にはお姉さんがいた。

 

 「はいはい、なんでしょうか?」

 

 俺達が不動産屋から受けた依頼や屋敷からの出来事を説明すると、受付のお姉さんはアクアの冒険者カードを見て、なるほどと頷いた。

 

 「確かにあの案件では、街に悪霊が蔓延っていると言う事で、様々な所から相談を受けています。と言うことで、僅かですが臨時報酬が出てますよ」

 

 その言葉に、俺とアクアはガッツポーズを取った。

 その間にシロナは受付のお姉さんに質問する。

 

 「それにしても何でこんなにも悪霊が急に悪霊が集まったんですか?」

 

 「ああ、その事なんですが……街の近くに共同墓地があるじゃないですか?」

 

 その言葉に俺達は顔を見合せ、ボソボソと呟いた。

 

 「共同墓地? 共同墓地って……」

 

 「ウィズと初めてあった場所だよな」

 

 「誰かのイタズラ何かで、あそこに巨大な結界を張ったようなんですよ。それで、行く場を無くした霊が、あの空き家に住み着いたみたいで………」

 

 それを聞いたアクアがビクンと震え、青い顔になった。

 

 「「…………すみません、ちょっと失礼します」」

 

 「?」

 

 俺達はお姉さんに断って、アクアをギルドの隅につれて行く。

 

 「おい、心当たりがあるな? 言え」

 

 カズマがそう言うと

 

 「……はい。以前ウィズの代わりに墓地の除霊を引き受けたじゃないですか。でも、しょちゅう墓地まで行くのってめんどくさいじゃないですか。それで、いっそ、墓場に霊のすみ場を無くしてやれば、その内適当に散っていなくなるかなって思ってやり……ま……した」

 

 「「………はあ」」

 

 観念した様に、素直に敬語に白状するアクア。

 

 「……つまり、アクアが手抜きをしたから、墓場にいられなくなった霊が街に迷いこんだって事でいいんだよね?」

 

 「………はい」

 

 ……なんというマッチポンプ。これはどう考えても完全にダメだろ。

 

 「ギルドからの臨時報酬は受け取らない。いいな?」

 

 「………………はい」

 

 申し訳無さそうな表情で、素直にコクりと頷くアクア。

 

 

 

    白奈side

 

 私達はこの屋敷に住む条件として、二つの事を頼まれた。

 その条件と言うのが少し、変わった物で冒険が終わったら、夕食の時でもいいので、仲間と一緒にその冒険話に花を咲かせて欲しいと言う事。

 そしてもう一つの条件は……。

 

 「お墓の掃除、か……」

 

 私は外で墓の掃除しながら、ウィズと話しているカズマをベランダから見ながら、独りでに呟いた。

 後から確認したが、お墓にはかすれていて良く読めないが『アンナ=フィランテ=エステロイド』と言う名前が読み取れた。これはアクアが言っていた、あの貴族の隠し子だろう。

 

 やっぱりアクアはアークプリーストの腕は凄いね。

 

 と関心しながら私は外から屋敷の中へと視線を移すと、アクアがベランダいた私と外にいるカズマに向かって声を掛けた。

 

 「カズマー! もうご飯できてるから、早く来てー! シロナもそんな所にいないで椅子に座ってー! 早く来ないと、せっかくのお昼がさめちゃうんですけたど!」

 

 「分かったよ。今行くー!」

 

 カズマはアクアに叫び返した。

 

 まあ、これで安定した生活ができるね。

 

 「アクアー。暖炉の薪がもう無いんだがー」

 

 「ああ、じゃあそこにあるカズマのジャージでもくべて置いてー」

 

 「えっ………?」

 

 「止めろー! 頼むシロナー! アクア達を止めてくれー! 俺の大事な日本の思い出を燃やそうとすんなーーー!!」

 

 カズマは墓の掃除を終えたらしく、私達のいる屋敷に向かって駆け出した。




 あと少しで長い休みに入るので更新スピードが少しだけ早くなると思います。

 今回の様にかなり遅くなる時もありますが、失踪だけはしないのでこれからも精一杯かいていきます!


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第二十三話 『この素晴らしい店に祝福を』

 こんにちは白城です!

 夏休みなので少し早く投稿できるかな? と思っていたら、夏休みであって、夏休みじゃありませんでした。

 そして、夜遅くに書いたので、誤字脱字があると思います。

 ………早くお盆休みに入りたい。


    白奈side

 

 屋敷を手に入れた。

 一番の問題となっていた、冬越しと言う問題が解決された。

 早速、パーティーメンバーの五人でここに移り住む事になった訳だけど……。

 

 「ねえ、ダクネス。その妙に薄い気がするのは私の気のせいなの? その……もうちょっと厚い服を着た方が良いと思うんだけど……」

 

 私はダクネスに気になった事を質問していた。

 

 「ああ、これか? 勿論わざとだ。あのカズマからのエロい視線を毎日向けられると言うのが………」

 

 やっぱりダクネスの言っているのか理解できない。したくもない。

 

 「シロナシロナ。シロナの番ですよ?」

 

 「あ、そうだった。ごめん。うーん」

 

 「まさかの自分から聞いておいての放置だと!? これはあの放置プレイの一貫なのだろうか!?」

 

 隣で頬を赤らめ、ハアハア言っているダクネスを面倒臭いので放置し、視線を元に戻す。

 私は現在、目の前の盤面を見ながら、頭を悩ませていた。

 最初はめぐめんとダクネスが遊んでいたが、ゲームとあれば私がやらないわけがなく。

 今、広間の中央でめぐめんと元の世界のチェスの様な将棋の様なボードゲームを興じていた。

 

 「じゃあ、ここに冒険者を移動」

 

 「うぅっ、そうきましたか。このマスにオーク兵をテレポート」

 

 現在の状況はめぐめんが僅かに劣勢。

 魔法の概念があるこの世界は、地球とは違い、チェスの様な遊びのルールも若干違う。

 めぐめんとの戦歴は4戦中0勝0敗4引き分けだ。

 別に私とめぐめんが上手く引き分けにしている訳じゃない。

 

 「なら、このマスに冒険者をテレポートで王手!」

 

 「テレポート」

 

 「あっ!!」

 

 そう、この様なルールがあり、なかなか勝敗がつかないのだ。

 因みにカズマは、この王様が盤外へとテレポートさせられた時点でもう、やらないと心に決めたらしい。

 王様が盤外へとテレポートさせられ、少しイラッとするがそれを我慢し駒を動かす。

 

 「………ねえ、やっぱり王様を盤外へとテレポートするのはズルいの思うよ」

 

 「……それを言うなら本当にシロナは初心者なんですか? 動きが初心者に見えないんですが……」

 

 「………それはまあ、私の元いた国では似た様なものがあったからね」

 

 

 

 ―――十分後。

 

 「ええと、ならここにクルセイダーを移動」

 

 「ここに王様をテレポートです」

 

 「ひっかかったね。ここに冒険者を移動。そして、詰みだね。やったー私の勝ち……」

 

 「…………デストロイヤーエスクプロージョン!」

 

 「あああああああーっ!」

 

 めぐめんがこのままでは負けると判断したのか前回同様に、エスクプロージョンと叫びながら、ゲーム盤をひっくり返した。

 

 「………やっぱり、王様を盤外へとテレポートするのは良いとしても、エスクプロージョンは禁止にするべきだよ……」

 

 そう言って私は絨毯に落ちた駒を集め始める。その時、カズマの声が聞こえた。

 カズマは厄介な借金を早く返したいそうで、ギルドから貰ってきた内職を、一番暖かい場所の暖炉の前でやっている。

 

 「おい、アクア。その酒はどうしたんだ? もし、また借金なんかして買ったんだとしたら、直ぐにそれを売り飛ばしてくるからな?」

 

 「ちょっとカズマってば私の事をなんだと思っているの? これはシロナから貰ったお金で買ったのよ」

 

 「……お前はシロナにもうちょっと感謝した方が良い思うぞ」

 

 確かに悪霊の件はアクアのせいとは言え、お酒はアクアのせいではないので、少しのお金はやったけど直ぐにお酒に使うとは思わなかったなあ。

 

 カズマはアクアの言葉を聞くとため息を吐いた。

 

 「そんな事よりもそこの席をこの高貴な女神であるアクア様に譲りなさいよ。これを見なさいな、レベル欄を! 私のレベルは21。パーティーの中で一番高レベルなの。レベル20にも満たないひよっこの分際で、おこがましいわよ! ほら、それが分かったら格上の私に暖炉の前を譲りなさいよ!」

 

 確かに考えてみれば、魔王軍の幹部のベルディアの討伐に加えて、先日の悪霊の浄化。

 私はアクアの成長を喜ぶと同時に、大きくレベルを離された事で、悲しくなり……。

 

 「…………ん? あれ? なあ、アクア。お前、レベルは上がってるんだけども。ステータスが、最初見た時から一切延びていないんだが、それはなぜ?」

 

 「バカねカズマ。私を誰だと思っているの? ステータスなんて最初から全部カンストしてるに決まってるじゃない。初期ポイントも、宴会芸スキルとアークプリーストの全魔法を習得できる程の量を最初から保有。そこらの一般の冒険者と一緒にすることが間違ってるわ」

 

 私はその言葉を聞き、広い集めていたボードゲームの駒を落した。

 カズマも表情が絶望に変わっていたと思う。

 

 ………ステータスが最初からカンスト。……つまり、アクアの知力はこれ以上上がらないと言うと事で………。

 

 そんなカズマを見てか、ここからじゃ顔を良く見えないが、恐らく勝ち誇った様な笑みを浮かべているだろう。

 だが………。

 

 カズマはムクリと暖炉の前のソファーから立ちあがり、アクアに譲った。

 

 「あら? なによ、随分素直じゃないの。………ねえ、カズマ。何で泣いているの? そんなに私にレベルを抜かれたことがショックだったの? ……ね、ねえ、何で私の肩をぽんぽん叩いて優しくするの? なんでそんな、可哀想な人を見る目で私を見るの? ちょっとカズマ!」

 

 カズマはそのまま外出した。そのカズマの背中は悲しみに溢れていた。

 

 「もう、なんなのよー!」

 

 ……今度知力の上がるポーションとかを探してみよう。

 

 そう決心し、私は駒を広い集め自室へと向かった。

 

 

 

    カズマside

 

 アクアの悲しい現実で、仕事をする気分では無くなった為、現在、俺は気分転換に街に繰り出していた。

 街の中には雪が積もり、寒さの為か人もあまり出歩いていない。

 この世界の住民達の常識は、冬は引き篭るもの。

 凶暴なモンスターしか活動していないこんな時季に、クエストに出掛けているのは日本から来たチート連中ぐらいのものだ。シロナはレベルが低いので例外だが。

 そして、こんな寒い中、街中をふらついているのは俺の様な暇人か……もしくは俺の目の前で不審な動きを見せている、俺の知りあいぐらいだろう。

 俺は道を行ったり来たりし、コソコソしながら、路地裏に佇む一軒の店の様子をうかがっている、二人の知人に声を掛けた。

 

 「キース、ダスト。お前らこんな所で何やってんの?」

 

 「「うおっ!?」」

 

 背後から声を掛けられ、キースとダストが跳び跳ねた。

 今日の二人の格好は、冒険者には似つかわしくないラフな格好だ。

 

 「な、何だよカズマか、驚かすなよ」

 

 キースが俺をみて安心した様に言ってくる。

 

 「よう。あれか? 今日はあの四人は一緒じゃないのか?」

 

 ダストが俺の回りをチラチラ見ていた。

 

 まあ、連中にエライ目に遭わされてるし、警戒するのは分かるが、なぜシロナにいれた四人なんだろう。

 

 「いや、今日は俺一人だから安心してくれ。そんなにあいつらが苦手になったのか? 俺は家にいるのも飽きたから、散歩しているんだよ。もう一回聞くけどお前らこんな所で何してんの?」

 

 俺の言葉に安心したのか、ダストがホッと息を吐きながら。

 

 「いや、まあ………俺達はその、なあ? まああの姉ちゃん達がいないなら別にいいんだ。と言うか、女連れじゃないなら別に気にする事ねえよ」

 

 ………?

 なんだそりゃ、女いると不味い事でしてるのか?

 

 俺のそんな感情が表れていたんだろう。キースがにやけた表情で言ってきた。

 

 「まあ、日頃綺麗どころに囲まれているカズマには縁の無い事だよ。俺とダストは寂しく「おい待て」」

 

 キースが何か言いかけ、それをダストが遮った。

 そして、ダストは俺に同情の視線を向けながら。

 

 「キース……。こいつはそんなんじゃないんだ。一見ハーレムに見えるが、そんなんじゃ無いんだ。………こいつは、俺達の仲間だ。苦労してるんだよ色々と……」

 

 そんな事を、しみじみと言ってきた。

 

 ああ、そうか……。こいつはあの時、相当苦労したんだろうなあ……。

 よし、借金持ちの身ではあるが、今日はダストに奢ってやろう。

 

 「なあ、それで二人はこんな所で一体何やってんだ? この奥に何かあるのか?」

 

 三度目の俺の質問に、二人は顔を見合わせ、頷くと……。

 回りに聞こえない様に顔を近づけ、真剣な顔をした。

 

 「カズマ。俺は、お前なら信用できる。今から言う事は、この街の男の冒険者達の共通の秘密であり、絶対に漏らしちゃいけない話だ。カズマの仲間の女達に、絶対に漏らさないって誓えるか?」

 

 その重々しい雰囲気に、俺は若干押されながら頷いた。

 それをみたキースも頷き。

 

 「カズマ。この街には、サキュバス達がこっそり経営している、良い夢を見させてくれるお店があるのを知ってるか?」

 

 「詳しく」

 

 俺はダストに即答していた。

 

 

 

 

 ほんのりと赤い顔のダストが、ジョッキを置いて教えてくれる。

 

 「この街にはサキュバスが住んでいる。って言うのも連中は人間の持つムラムラした欲望の感情、つまり男の精気を吸って生きる悪魔だ。となると当然、彼女達には人間の男が必要な訳だ。」

 

 ふむふむ、なるほど。

 

 「で、だ。この街の男性冒険者とこの街に住むサキュバス達とは、共存共栄の関係を気付いている。……ほら、俺達冒険者は馬小屋暮らしが多いだろ? すると、その………色々と溜まってくるじゃないか。でも、回りには他の冒険者が寝てる訳だし、ムラムラして来たってどうすることも出来ないだろ?」

 

 「そ、そうですね……」

 

 や、やましい事なんて何一つ無いが。そう、やましい事なんて何も無い。

 

 俺の頬に一筋の汗が流れた。

 

 「かといって、その辺の寝てる女冒険者にイタズラでもしてみろ。そんなもん即座に他の女冒険者に気付かれて袋叩きにされるか、もしくはイタズラしようとした相手が隠していたダガーで、逆にアレを切り落とされるかもしれない」

 

 そう言って、ダストが青い顔でブルリと身震いした。

 キースがそれを見て、

 

 「…………お前、まだリーンにちょっかい掛けた時に出来たトラウマ、治ってなかったのか」

 

 「う、うるせえ! ……で、そこで出てくるのがサキュバス達だ。彼女達は俺達が寝ている間に凄い夢を見させてくれる訳だ。勿論彼女達は俺達が冒険に支障を来さない様に加減してくれる。精気を吸いすぎて冒険者がヤバイ事になった例は無い。……どうだ、誰も困らない話だろ?」

 

 ダストのその言葉に、俺はコクコクと頷いた。

 

 素晴らしい。素晴らしすぎる!

 サキュバス達もむやみに人を襲う事もなくなり、モンモンとする男性冒険者達も常に賢者タイムでいられれば、争いなんて起こらない!

 

 そんな軽い感動を覚えていた俺の様子を見て、キースが言った。

 

 「実はその店の事を教えて貰ったのって俺達も最近なんだ。それで、今日初めて、俺達もそこに行こうってなってな。そこでカズマにでくわしたって訳だ。で、どうだ? なんなら一緒に……」

 

 「行きます」

 

 

 

 

 

 ギルドの酒場を出た俺達は、若干の緊張を感じながらその店の前まで戻ってきていた。

 

 きっと俺一人では、こういった店には入れなかっただろう。

 だが、エロ本大勢で買うなら怖くないと言った、あの謎の心理だ。

 

 大通りからちょっと外れた路地裏の小さな店。

 そこは一見、何の変鉄も無いただの飲食店にみえるのだが……。

 

 「いっらっしゃいませー! こちらへどうぞ。お連れ様はあちらで」

 

 多くの男が、女性の体はこうあるべきだと言った様な、そんな魅惑の体をした女性。

 そんな体の、とてつもなく綺麗なお姉さんに出迎えをうけながら店に入ると、中には男性客しかいなかった。

 店内には、同じく魅惑の体をしたお姉さん達がウロウロしており、正直にそれだけでも何だが胸が切ない気持ちになってくる。

 客達はそれぞれのテーブルで、一心不乱に何かの紙にカリカリと書いている。

 俺を空いているテーブルに案内してくれたお姉さんは、メニューを手に笑みを浮かべ。

 

 「お客様は、こちらのお店は初めてですか?」

 

 その言葉に俺は無言でコクりと頷く。

 お姉さんは微笑を湛え

 

 「……では、ここがどういったお店は、私達が何者かもご存知でしょうか?」

 

 俺は再び無言で頷いた。

 それに満足したかの様に、お姉さんがテーブルにメニューを置く。

 

 「こ注文はこのアンケート用紙に希望の夢の内容をお書き下さい。勿論、何も注文しなくても結構です」

 

 俺はそのアンケート用紙を受け取った。

 アンケート用紙に目を落とすと……。

 

 あれ?

 

 「あの、この夢の中での自分の状態、性別と外見ってのがありますけど……これは?」

 

 「状態とは、夢の中での英雄とか王様とかですね。性別や外見は、たまに、自分が女性になってみたいと言うお客様もいらっしゃいますので。年端もいかない少年になって、強気な女冒険者に押し倒されたいと言うお客様もいらっしゃいました」

 

 「そ、そうなんですか……」

 

 大丈夫なのだろうか、この町の男達は。

 しかし、そんな事まで細かく設定できるのか。

 なるほど夢だもんな。

 ……ん?

 

 「あの、相手の設定ってどんな所まで設定できるんですか?」

 

 「性格や口癖、外見、あなたへの好感度まで、何でも誰でもです。実在しない相手だろうが、何でもです」

 

 「マジですか!」

 

 「マジです」

 

 思わず素で聞いてしまった俺に、お姉さんは即答してきた。

 

 「つまり、有名なあの子や、身近なあの子、二次元嫁まで可能って事ですか!?」

 

 「はい。二次元嫁と言うのは分かりませんが」

 

 「……あの、それって肖像権とか色んなものは大丈夫なんでなんですか……?」

 

 「大丈夫です。だって夢ですから」

 

 「ですよね! 相手の年齢制限も無いって事ですかかね? いや別にそう言ったのを指名する気はないんですがね、一応」

 

 「ありません、お好みでどのぞ」

 

 「大丈夫なんですか? そ、その、条例とか色々……」

 

 「ありません、だって夢ですもの」

 

 「ですよねー!」

 

 そう、夢なら何も問題ない。

 何て事だ。最強じゃないかサキュバスの淫夢サービス!

 

 俺は無言でアンケートを店内の他の客と同じ様に書き続けた。

 

 「では、三時間コースの御希望ですので、お会計、五千エリスをお願いします。あ、あとは今晩は飲みすぎない様に注意して下さいね。熟睡されると夢が見せられませんので」

 

 「おっす、了解です!」

 

 指定した時刻までまだ時間があるが、今日は早く帰って準備して、早めに寝よう。

 

 俺は何処かに寄り道する事も無く、そのまま急いで帰宅した。

 

 



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第二十四話 『この素晴らしいレベル上げに祝福を』

 こんにちは白城です!

 その………お久しぶりです。
 
 投稿する前に久しぶりに小説の情報見てみたら、何とお気に入りの数が300を越えていました!
 更にUAも30000越え!
 ありがとうございます! ありがとうございます!

 9月中に投稿しようとしたんですが、予想以上に遅くなってしまいました!


    白奈side

 

 「い、痛い痛い! 何でこんなに顔を目掛けて叩いてくるの!?」

 

 アクアの悲しい現実を知ってから自室へと戻り、少しでも心の傷を癒すために少しばかりの仮眠をとってから、私も早く借金を何とかしたい。

 

 「まさか、顔が弱点だって分かってるの!?」

 

 そう考えた私は、屋敷を出て、収穫が遅れていると言うネギの収穫を手伝っていた。

 手伝っていると言ってもしっかりと報酬はあるし、その報酬も少し多く渡してくれるらしい。

 ネギがバナナやさくらんぼの様に見た目や採れる場所が変では無い事には安心したが…………。

 ネギの根本を掴み、鎌を当てようとすると。

 

 「痛っ!」

 

 ビスッと、ネギに顔面を叩かれた。

 思わず反撃したくなるが、野菜相手に喧嘩するなんて大人げない事を私はしないし、これは商品なので傷をつける訳にもいかない。

 

 「………はあ」

 

 私は溜め息を吐き、この気持ちも抑え、ネギを土の中から掘り上げた。

 どうやらこの世界の野菜は知恵が回るらしい。

 畑の野菜達はただで収穫させられるものかと最後の最後まで収穫をする人に向かって抵抗するのだ。

 アクアにもこの頭を使うところを見習って欲しい。

 と言うか、野菜にも負ける知力と言うのは大丈夫なのだろうか。

 農家の人達はどうなのかと視線を向けた。

 

 やはりと言うべきか農家の人達は私の倍以上の早さで収穫をしている。

 顔を狙ってくるネギの先端の方を掴み、叩かれない様にしながら、ネギの収穫をしていた。

 

 ………なるほど。確かにそうすれば叩かれないね。

 

 私はそれを手本とし、収穫を再開した。

 

 「お、なんだ初日の割にいい動きだな。その調子でどんどん収穫していってくれ」

 

 「…………はい」

 

 数時間もの間、野菜相手に格闘した私は、借金返済の為の畑の収穫を終了した。

 

 ………何だか、この世界の食べ物に慣れつつある自分にこわいよ。

 

 私はしばらく農家の仕事はしないと決心した。

 

 

 

 

 

 レベルが15になった。

 元々のレベル12だったので、畑仕事だけでなんとレベルが三も上がった事になる。

 前のキャベツ狩りでもそうだったけど、なんで収穫をしただけでレベルが上がるんだろう。

 

 「うぅ、全身が痛い。まあ、でも……」

 

 不幸中の幸いか泥のついた方で叩かれた回数は少なかったので、顔が泥だらけにならずにすんだ。

 どうやら、今年の野菜は活きが良く、獲得経験値が多かったらしい。

 借金返済が少しだけ楽になり、さらにレベルも上がり一石二鳥なのだが……。

 

 「何で野菜の収穫でレベルが上がるの? 苦労したからレベルが上がるのは嬉しいけどなんか納得いかない。……はあ、早く家に帰りたい」

 

 そう、キャベツ狩りでも言った様な台詞を言いながら屋敷に帰った。

 

 

 

 

 「今帰ったよ~」

 

 「おっ、やっと帰ってきたわね、シロナ。お帰りなさい! ちょっとシロナも見なさいよ! 今日の晩御飯はカニよ! カニ!!」

 

 屋敷に帰ると、アクアが満面の笑みで出迎えてくれた。

 先に出掛けたカズマはもう帰っていた。

 どうやら、この世界でもカニは高級品らしい。

 日本にすんでいた頃はカニなんて数える程しか食べれなかったけど、まさか異世界で食べられるとは思わなかった。

 

 「って、シロナなんか泥だらけだわね。取り敢えず、これで顔を拭きなさいな」

 

 そんな珍しく気のきいた事を言って、クリエイトウォーターで濡らしたタオルを渡してきた。

 

 あれっ? 今アクアタオル何処からだしたの? いや、気にしない事にしよう。

 

 「ありがとうアクア。 …………ねえ、これどうしたの?」

 

 ありがたく受けとり、顔を拭いた後、そんな当たり前の事を尋ねる。

 するとアクアが、その酒瓶に頬ずりながら心底幸せそうに言ってきた。

 

 「さっきダクネスの実家の人から、これからそちらでダクネスがお世話になるのならって、それと引っ越し祝いに、超上物の霜降り赤ガニが送られてきたのよ! しかも、すんごい高級酒までついて!!」

 

 高級酒までついてくるならアクアの機嫌が良いのも納得した。

 

 「あわわ……、まさか冒険者家業をやりながら、霜降り赤ガニにお目にかかれる日が来ようとは………、今日ほどこのパーティーに加入して良かったと思える日はないです」

 

 「そんなにこのカニって高級なのか?」

 

 カズマが席に座りながら霜降り赤ガニに拝みだしためぐみんに、気になった事を尋ねた。

 それは私も気になっていた。

 するとめぐみんが、何を言ってんだと言わんばかりのオーバーアクション気味に、拳を振り上げ力説した。

 

 「当たり前です! もしこのカニを食べる変わりに今日は爆裂魔法を我慢しろと言われたら、大喜びでがまんします! そして、大喜びした気分のまま食べた後で、爆裂魔法をぶっ放します! それくらい高級なのですよっ!」

 

 「おお、そりゃ凄いな! …………あれ? お前最後何て言った?」

 

 うん、間違いなく爆裂魔法を撃つって言ったね。

 

 カズマとめぐみんがそんな事を言っている間にも、ダクネスが広間の食卓テーブルに、調理積みのカニを運んで、並べていく。

 アクアが嬉々として人数分のグラスを持ってきた。

 全員で食卓に着き、早速霜降り赤ガニをパキッと割ったカニの脚から取りだした。

 白とピンクの身を酢につけて、そのまま頬張る。

 

 「っ!?」

 

 お、美味しいっ!

 

 その余りの美味しさに驚いた。

 ふんわりと甘く、それで濃縮されたカニの独特の旨味が口に広がる。

 

 こんなに美味しいのは日本にいた頃、食べたことが無い!

 

 見ればカズマもその美味しさに驚いていたが、直ぐに他の皆と同じ様に黙々と無言でカニを食べていた。

 

 凄い、これは美味しい!

 

 「カズマにシロナ、どっちでも良いからちょっとここに火をちょうだい。私がこれから、この高級酒の美味しい飲み方を教えてあげるわ!」

 

 言いながら、早々に甲羅についたカニ味噌を食べ終わっていたアクアが、小さな手鍋の中に炭を入れ、その上に金網を置いた。

 見たところ、簡単な七輪の様な物だ。

 

 「か、カズマお願い」

 

 「分かった。ほれ、『ティンダー』」

 

 私は両手がカニで塞がっていたので、カズマは言われるがままに炭に火をつけると、金網の上に少しだけ残ったカニ味噌を置く。

 そのまま甲羅の中に、高級酒だと言っていた、日本酒の様な透明の酒を注いでいった。

 アクアは上機嫌に、軽く焦げ目のつく程度に甲羅に炙って、

 

 「そろそろねー」

 

 そう言って熱くなった酒とカニ味噌の混ざったそれを一口すすり………。

 

 「ほぅ………っ」

 

 実に美味しそうに息を吐いた。

 行動がおじいさん臭い気がするけど、それでも、それを見ていた全員がゴクリと喉を鳴らし、皆と共にそれを実行しようとした私の手が一旦止まる。

 

 ………日本では未成年の私が飲んでもいいのかな?

 カニの美味しさに忘れていたけど、私は日本では未成年。未成年からお酒を飲むと成長に悪影響があると聞くけど………。

 

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 周りを見るとカズマも高級酒を飲まず、何やら渋い顔をしていた。

 

 どうしたんだろう? カズマも未成年の事を気にしているのかな? 

 いや、でもカズマの事だから、そんな事を気にする様な事はないと思う。

 

 「!? これはいけるな、確かに美味い!」

 

 うぅっ、どうしよう。

 

 ダクネスが凄く美味そうな声をあげる。

 

 その声に私は更にどうしようかと葛藤する。

 カズマも凄く何かと葛藤する様に目をきつく閉じていた。

 この世界ではお酒については年齢よる制限なんてないが自己責任と言う、暗黙のルールがある。

 おそらく、あれを飲んだらもう止まらないで飲み続けてしまうかもしれない。

 

 「ダクネス、ワタシにもそれをください! 良いじゃないですか今日くらいは!」

 

 「だ、ダメだ、子供の内から酒を飲むとパーになると聞くぞ」

 

 「シロナシロナ。シロナは私がお酒を飲んでも良いですよね!?」

 

 「……え!? ええと………ほ、ほらっ! 確かお酒って小さい頃から飲むと体の成長に悪影響があるって聞くしね……」

 

 「おい、私の体を見て言うのは止めてもらおうか! 大丈夫ですよ、今日くらいはー!」

 

 「じゃんじゃん飲むわよー! 気分も良くなってきたし、初披露の宴会芸を見せてあげるわ! 指芸で起動要塞デストロイヤー!」

 

 「「おおっ!」」

 

 デストロイヤーをしっている私とカズマ以外の二人が驚きの声をあげる。

 

 「こ、この姿、形、動き、正にデストロイヤーです!」

 

 「あの動きを再現するとは!」

 

 だからデストロイヤーって何!

 

 「アクアアクア、もう一度、もう一度デストロイヤーを!」

 

 「ダメよ。宴会芸は乞われて見せるものではないわ。魂が命じる時自ら披露してしまうものなの」

 

 これだけ好評ならもう、アクアは宴会芸で稼いだ方が楽に生きているの気がするんだけど………。

 

 そんなやり取りをよそに、お酒をまだ飲んでいない私達を見たダクネスが首を傾げ。

 

 「………ん? どうした二人とも。もしかして、家から贈られてきた物が口に合わなかったか?」

 

 そんな事を言って、普段見られない、ちょっと心配そうな表情を浮かべた。

 

 ダクネス。違うの。

 

 「ええと、なんか心配させちゃってごめんね。私はまだお酒って飲んだことがないからちょっとね………そうだ、じゃあ明日、飲んでみるからっ! 今日はカニだけを食べるよ、うん!」

 

 「いや、カニは凄く美味しい。ただ、今日は昼間にキース達と飲んできたんだ。それに、まだ酒の味なんて分からないし、今日はもう飲めそうにないんだ。……明日! 明日貰うよ!」

 

 「………そうか」

 

 私達の言葉にそんな安心した様にホッと息を吐き、屈託なく笑うダクネス。

 そんな純粋そうな表情に私も安心した。

 だが、カズマはそれとは逆に苦しそうな表情を浮かべる。

 

 どうしたんだろう?

 

 「ならせめて沢山食べてくれ。日頃の礼だ」

 

 「うん」

 

 その言葉を最後に私はカニをもう一度食べ始めた。

 だが、カズマはダクネスの顔、そして私達を顔を見る。

 

 「「「「?」」」」

 

 そして、何やら凄い勢いでカニをたらふく食べると、立ち上がり。

 

 「……それじゃあ、ちょっと早いけど俺はもう寝るとするよ。お前ら、お休み!」

 

 そんな凄く良い笑顔でそう言って自分の部屋のある、二階へと上がっていった。

 

 

 

 

 「………カズマ、本当にどうしたんだろ?」

 

 私のそんな疑問の言葉にめぐめんがカニを食べながら答える。

 

 「まあ、確かにカズマがこんなにも早く寝るのは珍しいですね」

 

 「二人ともそんな事気にしてないで、今日あの男はこのお酒を飲まないって言っていることだし、さあ、じゃんじゃん飲むわよー!」

 

 こんな時、何も気にしないアクアの性格が羨ましい。

 

 取り敢えず、気にしてても変わらないね。

 それにしても、私とカズマの分のお酒までアクアに飲まれそうだなあ………。

 

 そう思った私は自分とカズマの分の二つの酒瓶をアクアからとられないような位置に置くと、カニを食べるのを再開した。

 

 

 

    カズマside

 

 酒を飲んで熟睡されると夢が見られない。

 それを酒を飲む直前に気付いた俺は、鋼の心を持って周りの声に惑わされる事なく、酒を飲む事を我慢し、自分の部屋で引きこもった。

 

 そうだ。あの酒は明日に飲めば良いんだ。

 あのアクアが全部飲んでしまうか心配だったが、あそこにはシロナがいるんだ。大丈夫だろう。

 

 部屋に閉じ籠って鍵を掛け、窓の鍵は外しておく。

 別に開けておいてなんて言われてないが、万が一に備えてだ。

 普通かもしれないが、わざわざ来て頂くのにこれ以上お手数を掛けては申し訳無い。

 この部屋には時計が無いので正確な時間は分からないが、指定した時刻までは迫ってきている。

 

 ああ、どうしよう、ヤバイ。ドキドキしてきた。

 期待と緊張で興奮して眠れない!

 

 

 

 

 俺は一体どれくらいのそうしていただろうか。

 大分長い時間ベットの中にいた気がする。

 俺はベットから這い出ると、緊張で汗を掻いた事が気になった。

 

 …………。

 夢を見せてもらうだけなのだから気にする必要はないと思うが………。

 

 これもエチケットと言うやつだ。

 皆が寝静まる中、俺は風呂場へと向かった。

 

 

 ここは元々が貴族の別荘だと言うだけはあり、風呂場には特殊な魔道具が備え付けられている。

 それは簡単に言えば、電力ではなく、魔力で動く湯沸し器みたいなものだ。

 それほど大量の魔力を使わないため、一般人でも使用が可能な魔道具だ。

 使用すると魔力の消費の為か、一瞬気だるさに包まれるのだが、それぐらいはしょうがない。

 俺は風呂場に備え付けられたランタンに魔法で灯りを灯すと、風呂場の外に使用中の札を掛けた。

 さらに、服を脱ぎ、しっかり誰が入っているか分かるようにしておく。

 そう。漫画とかで良くある展開にならない様に、細心の注意を払っておく。

 そう言った展開は、お店でお願いした夢の中だけで十分だ。

 

 まあ、そんな事になったら俺は逆セクハラとして、女より先に悲鳴を上げて痴女扱いしてやる。

 

 「……そんな展開は漫画の中だけだろうけどなあ」

 

 脱衣場のランタンから放たれる灯りに照らされながら、俺は湯の中でのんびりと手足を伸ばす。

 そのまま、何となく息を深く吐き、眠くなって目を閉じた。

 

 

 

 俺は一体どれぐらいの間そうしていただろうか。

 脱衣場外から、カラン、と何かが落ちる音で目を開けた。

 浴場に掛けていた札が落ちたのだろうか。

 

 しっかり掛けておいたはずなのだが………?

 まあいい、こんな夜中に誰かが入ってくるとは思えない。

 脱衣場には俺の服だって入っているんだ。

 そこで気付いた。

 

 ランタンの火が消えている?

 ………まあ、いいか。灯りが消えた所で千里眼と言うスキルで暗視が可能な俺は困らない。

 浴場の窓から指す月明かりだけでも、十分明るい。

 そう、呑気に構えていると……。

 

 

 ――脱衣場のドアの開ける音がした。

 




 全話で謝っている気がしますが、こんなに遅くなり取り敢えず申し訳ありません!

 次回の話はもう三分の一程書き終えているので今回以上に間があく事はない………と思いたい。

 このまま書くと一話の文字数が9000を越えそうだったのでこれでは長い!と思い、ベルディア戦の様に分ける事にしました!


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第二十五話 『この優しきサキュバスに祝福を』

 こんにちは白城です!

 まず、ここでまとめて、誤字報告ありがとうございます、助かります! 

 いや、いつも無いように気を付けてはいるんです! 
 すみません、言い訳でした。

 今回は風呂回です。かなり悩みました。


    白奈side

 

 カズマが二階に上がってから数十分後。

 

 「あははははっ! ちょっとシロナー、それ私に渡しなさいよー! あの男の分なんて必要ないわ!」

 

 完全に酔っているアクアを見ながら私はため息を吐いた。

 結局めぐみんはアクアにも交渉した様だが、決裂だったようでお酒を飲まず、今では少し落ち込みながら最後のカニを食べていた。

 

 …………それで最後かな?

 

 「………じゃあ、後は私が片付けておくよ。ダクネスはそのお酒をアクアに取られないように死守してて。めぐみんはそれを食べ終わったら、お皿を台所まで運ぶようにね」

 

 立ちあがりながら、そんな事を言うとダクネスが

 

 「いや、食器洗いは私がしておく。元々これはお前達のお礼のものだからな」

 

 ………えっ?

 

 「………ダクネスって皿洗いできるの? 終わった後、全部食器が割れてるなんて笑えないよ?」

 

 「シロナは私の事を何だと思っているんだ! 食器洗いくらいできる」

 

 少し落ち込みながらも喜んでいる様に見えるダクネスは台所に向かい、止まった。

 そして、こちらの方に振り向くと、

 

 「シロナは先に風呂にでも入って来ると良い。その様子じゃ今日は畑仕事でもしていたんだろう。酒の事は心配するな。風呂に入って疲れをとって来ると良い」

 

 そう言って頬笑んだ。

 私はしばらく悩むと、

 

 「うーん、じゃあめぐみんも手伝って上げてー。ダクネスだけじゃやっぱり心配だし。それじゃあお願いね」

 

 ダクネスがこう言ってくれている事だし、お言葉に甘える事にしよう。

 

 私は未だに何が面白いのか分からないが、笑っているアクアの声を聞きながら、風呂場に向かった………。

 

 

 

 カズマside

 

 脱衣場のドアの開ける音に、呑気に構えていた俺は驚き、慌てふためく。

 

 おいおい、このタイミングはおかしいだろ!

 いや、誰が入ってきたかは知らんが、手に灯りを持っているみたいだ。

 と言うか、これなら、脱衣場の籠の中身で俺が入っていることに気が付くだろう。

 

 不意に、誰が持つランプの灯りが消えた。

 

 「へっ? 何で突然!? 『ティンダー』! 何ですぐ消えるの!?」

 

 ガラス越しに聞こえてきたのは、焦った様なシロナの声。

 

 「………うーん、まあ、見えない程じゃあないし、これでいいかな」

 

 そんな事を言いながら、シロナはガラスの向こうで服を………。

 

 っておいおいおい!

 

 俺は慌てて声を上げようとして気が付いた。

 明らかに誰かに仕組まれたかの様なこの状況。

 まず普通に考えてあり得ない展開だろう。

 

 んっ? まて。

 この展開に陥る前に俺はふと眠気を感じて目を閉じていた。

 つまり、この状況は………!

 

 「うん、大丈夫そうだね。普通に見える………し」

 

 片手にタオルを持ちながら、何かを言い掛け浴場に入ってきたシロナは………

 

 「「………………」」

 

 月明かりが照らす暗い中、堂々と湯船に浸かる俺と目があった。

 勿論お互い真っ裸である。

 月明かりにほのかに照らされ、輝く銀髪と透き通る様な白い肌が鮮やかに映えた。

 

 ふむ、前々からスタイルが言いとは思っていたが、想像以上のプロポーションだ。

 

 あの一応女神のアクア程では無いとしても、出過ぎず足らな過ぎずなその体は………。

 もしかしたらサキュバスのサービスにより、俺好みの修正が入っているのかも知れない。

 未だに呆然と立ち尽くすシロナに、俺は湯船の中から

 

 「……よう」

 

 と気さくに片手を上げた。

 そんな俺を見て、口をポカンと開けたまま、シロナが慌てて持っていたタオルで前に隠すと一歩後ずさる。

 

 「え………な……へ……っ! カズマっ、ごめん入ってるとは知らずに私は先にきゃっ!」

 

 「………? どうしたシロナ、早くこっちに来いよ。よし、まずは背中に流してくれ」

 

 「っ!!!???」

 

 湯船から上がって、木でできた丸椅子に座り背を向ける俺の行動は予想外だったのか、シロナは顔を赤くし、目を反らした。

 

 何だろう。凄く良い反応をするな。

 美人でスタイルの良いお姉さんって描いただけなのにシロナが出てくるなんてサキュバスは分かっているな。

 しかし、次も同じとは限らないな。次はもっと細かく指定しよう。

 

 「か、かかかカズマ!? 何言ってるの!?「おかしいかい?」 こう言うことは普通はそ、その、こ、恋人とかがする事じゃないの!? って言うか、その、どうしてそんなに落ち着いているの!?」

 

 凄い、なんだこのリアリティは!

 

 「おっと、感動している場合じゃないな。焦らしプレイだなんて設定してないぞ。……あ、いや、アンケートには、美人でスタイルの良い、恥ずかしがる系の世間知らずのお姉さんとも書いたな。なら、これで良いのか」

 

 「えっ!?」

 

 俺の独り言にシロナがいよいよパニックになった様な表情を浮かべた。

 

 なるほど。ここは俺がリードする展開なのか。

 

 「シロナが世間知らず設定なのはしょうがないが、早く背中をお願いします」

 

 「!? た、確かに私は世間に疎いとは思うけどそこまで酷くないと思ってたんだけど!?」

 

 シロナがパニックになりながらも、恐る恐る俺の背中に近づいてくる。

 

 「これくらい常識だろ。では、早くお願いします。なんかもう色々溜まりません!」

 

 「ひぃっ、どうしたの!? 今のカズマはなんかおかしいよ!」

 

 「おい、さっきから騒がしいぞ! 何時だと思っているんだ。常識知らずにも程があるからな」

 

 「この状況の(もと)で、そんな事をいわれてもっ!? え、なに、これって私がおかしいの!?」

 

 「何言ってるんだ。これくらい常識だろ!」

 

 「え、そう……なの? わ、分かったから! だけど絶対に後ろは見ないでね!」

 

 「よし、それではお願いします」

 

 頬を赤らめ、シロナがゆっくりと背中に回った。

 その手にはさっきまで前を隠していたタオルを持ち、椅子に腰掛ける俺の背後で、床にペタんと座り込む。

 やがて、シロナは俺の言う事に流されるままに、器用に背中を洗い始めた。

 

 「そう、これは常識常識…………」

 

 後ろでは自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟いている。

 

 「ふう………。なんか良いな。こっち来てからはろくな事が無かったけどやっと幸運度が働いている気がする。と言うかシロナは器用だな。これなら風呂場の時はシロナを多めに使うか」

 

 「本当にカズマは何を言っているの!? よしっ、こ、これで背中は洗い終わったよ。わ、私は先に上がっていいよね………」

 

 俺の裸から必死に目を剃らしながらも、上がろうとするシロナに、俺はその手をがっしりと掴んだ。

 捕まれたシロナは「カズマ!?」と慌てた声をあげる。

 

 「何を言っているんだ! いくら常識知らずでもこの後の展開が分からないのか? 次は前の方も……」

 

 「いや、でも、流石にそれは………!」

 

 「早くー、早くー」

 

 そうは言いながらもシロナはゆっくりと近づき、緊張で奮える手を前の方に伸ばそうとした、その時だった。

 

 

 「この曲者ー! 出会え出会え! 皆、この屋敷に曲者よーっ!!」

 

 

 それは屋敷に響くアクアの声。

 

 「あ、アクア?」

 

 「あ"? 良いところで邪魔が入るなんて、そんなお預け設定はつけてないぞ! あいつ夢の中ですら邪魔するのか、文句言ってやる!」

 

 俺はシロナから持っていたタオルを奪い、素早く腰に巻いて飛び出した。

 タオル一丁で声のあった広間にでると、そこには、昼間見たお姉さん風のサキュバスよりも幼げな小柄なサキュバスがアクアの手によって取り押さえられていた。

 それにめぐみんとダクネスがパジャマ姿のまま、威圧している。

 

 「カズマ、見て見て。私の結界に引っ掛かって身動きの取れなくなった曲者が…………って、こっちにも曲者がいたー!」

 

 「誰が曲者だ! ………あれっ?」

 

 サキュバスの子?

 

 タオル一丁の俺を曲者扱いするアクアにツッコむ。

 

 おかしい。いや、幾らなんでもおかしい。登場人物が多すぎる。

 と言うか、夢の中にサキュバスがでて来るなんておかしい。

 

 「このサキュバス、屋敷に張った結界に引っ掛かって動けなくなってたの! サキュバスは男を襲うから、きっとカズマを狙いにやって来たのね! でも安心してちょうだい。今、サクッと悪魔払いしてあげるわ!」

 

 アクアの声にサキュバスが、小さくヒッと声を上げた。

 

 あれっ。

 何これおかしい。本当におかしい。

 と言うか、つまりさっき風呂場で出くわしたシロナは………!

 いや、今はそれよりも目の前のサキュバスだ!

 

 俺の知らない間に結界だとか、余計な事をすることには定評のあるアクアが、サキュバスに向けてビシッと人差し指を突きつけた。

 

 「観念するのね! 今とびきり強力な対悪魔用の…………」

 

 俺は無言でサキュバスの前に立つと、その手を取り、玄関に連れていく。

 サキュバスの小さな戸惑う様な声が聞こえた。

 

 「ちょ、ちょっとカズマ! その子は悪魔なの。カズマの精気を狙いに襲いにきた悪魔なのよ!?」

 

 「カズマ正気ですか!?」

 

 「おい、カズマしっかりしろ! それはモンスターだぞ」

 

 三人が鋭く叫ぶ。

 サキュバスが俺にだけ聞こえる小さな声で。

 

 「お客さんすみません! こんな状況になってしまったのは、侵入できなかった未熟な私が悪いんです。お客さんに恥をかかせる訳にはいきません、私は退治されますから、お客さんは何も知らないフリをしてください!」

 

 俺はそんな事を言ってくるサキュバスを、背中に庇う様にして、アクア達に向き直った。

 そして、アクア達に向かって拳を構え、そのままファイティングポーズを取る。

 

 「お、お客さん!?」

 

 サキュバスの小さな悲鳴じみた声。

 

 「……カズマどういうつもり? 仮にも女神な私としては、そこの悪魔を見逃す訳には行かないわよ? カズマ、袋叩きにされたくなかったら、さっさとそこを退きなさいよ!」

 

 アクアが眉根を寄せて、チンピラみたいな事を言ってきた。

 

 「み、皆落ち着いて! 今のカズマはきっとサキュバスに操られているんだよ! さっきからカズマが夢とか設定とか変な事を言っていたから間違いないと思う! だからあんまり酷い事はしないであげて! サキュバス、良くもあんな事を…………っ!」

 

 濡れた髪をそのままに、急いできたのかシャツとスカートを身につけ、裸足で飛び出してきたシロナが、アクア達に向かって叫んできた。

 目に涙を浮かべながら俺の身を労るその言葉に、凄く良心が痛み全力で謝りたくなる。

 たが、退くわけにはいかない。

 

 「カズマ、一体何をトチ狂ったんですか? いくら可愛くてもそれは悪魔。モンスターですよ? しっかりしてください」

 

 「カズマ正気に戻れ。それはモンスターで倒すべき敵だ」

 

 めぐみんとダクネスの呆れた様に、そして、冷たい目線で突き放す様な声で言った。

 その視線が心にくるが、それでも引き下がらない。

 

 「……行け」

 

 「で、ですが……」

 

 後ろ手に、サキュバスに早く行けと声をかける。

 それを聴いたサキュバスの戸惑う様な声が聞こえる。

 それを見たアクアが一歩前に出て、腰を落と身構えた。

 

 「どうやら、カズマとはここで決着をつけないといけないようね……! カズマをけちょんけちょんにした後、そこのサキュバスに引導を渡してあげるわ!」

 

 そして、深呼吸をし、

 

 「………いくぜ」

 

 叫ぶと同時に三人が、俺に向かって飛び掛かってきた。

 絶対に守るべきものがある。

 それは、自分を信じて秘密を話してくれた、友人達の信頼。

 それは、寂しい男達の欲望を満たしてくれる、俺の背中に隠れる優しき悪魔。

 俺は拳を強く握り締め。

 

 「かかってこいやー!!」

 

 屋敷の中に響く声で、熱く、熱く、叫んでいた。

 

 

 

    白奈side

 

 「……………」

 

 次の日の朝。

 私はカズマの背中をジッと見つめていた。

 視線に受けているカズマは庭の隅に屈み込み、黙々と墓掃除をしていた。

 私に見られているせいか、少し作業がしにくそうだ。

 

 「なあ、いい加減口()いてくれよ。て言うか、あんな状況で雰囲気に流されるシロナだって悪いと思うんだが」

 

 「うっ……………」

 

 それを言われると耳が痛いよ。

 

 あの後、三人相手に一人でしばかれたカズマによって、サキュバスは逃げられた。

 そして、三人にはあの時、カズマはサキュバスに操られていたのでしょうがないと説得した。

 私は確認の為、恥ずかしい気持ちを我慢しカズマに尋ねる。

 

 「……………昨日の事は、記憶が無いんだよね? カズマはサキュバス操られていたせいで、本当に記憶が無いんだよね?」

 

 念を押すように、二回言う。

 

 「ああ、残念ながら覚えてないよ。良い夢を見ていたとしか覚えていない」

 

 「そ、そう? 良かったあ。まあ、事故みたいなものだし、私も悪いところがあるしね。うん、私を忘れようかな」

 

 「と言うかシロナはもうちょっと常識を勉強しろよ。大体、今回は俺はちっとも悪くないぞ。ランタンに火だって灯しておいたし、入浴中の札もかけてたし。まったく一体どこのどいつがいたずらしたのやら」

 

 「うん、あの時はランタンの灯りが灯ってなかったし、札も掛かって無かったからね。ごめんね。疑ったりして。私はてっきりカズマだから『このままサキュバスのせいにすれば都合が良いし、乗っかっておくか!』みたいな事考えてると思って………」

 

 カズマの肩がビクリと震えた様な気がした。

 

 「………ち、違うよ?」

 

 「あれ? そう言えば、カズマって風呂場からなんか可笑しかったよね。サキュバスって遠距離の見えない相手でも魅了できるのかな? あれ?」

 

 つまり、あの時のカズマは魅了されてなかったって事で、と言うことは記憶は……………!

 

 そこまで考えたその時だった。

 その思考を途切れさせるかの様に、街中にアナウンスが轟いた。

 

 『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報! 機動要塞デストロイヤーが、現在この街に接近中です!』

 

 「「え、デストロイヤー?」」




 最後の視点はシロナにしてみました!
 やっぱり今回はカズマ視点が多かった様な気がします。
 次回からやっとデストロイヤー戦です! 長かったです。

 …………さて、どうしよう。優秀な魔法使いいるし………。


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第二十六話 『この理不尽な要塞の説明を』

 皆さんこんにちは白城です!

 一ヶ月ぶりです!

 ……何か、お気に入りが凄く増えていました。私は夢でも見ているんでしょうか。
 
 今回はシロナ視点が多いです。デストロイヤー戦まで書けませんでした。作戦会議が主ですね。


    白奈side

 

 風呂での一件は取り敢えず後で考えるとして、急いで屋敷に戻ると、そこは既に阿鼻叫喚と化していた。

 

 「二人とも早く! 逃げるの! 遠くに逃げるの!」

 

 色んな物をひっくり返し、ワタワタしながらアクアが言った。

 大きな荷台に多くの物を入れるその様子はまるで疎開でもするかの様な勢いだ。

 逆に、そのワタワタしているアクアの隣では、既に荷造りを終えためぐみんが、小さな鞄を一つだけ横に置き、達観した様子でお茶を飲んでいる。

 

 「起動要塞デストロイヤー。………あれと戦うなんて無謀も良いところですよ」

 

 いつもの様に装備を整えてからギルドに向かおうとしていた私は、その二人を見て唖然としていた。

 チラッとカズマを見るとどうやら同じらしい。

 

 「ねえ、いい加減デストロイヤーって何なの?」

 

 その言葉に屋敷の二階から降りてきたダクネスが、見たこともない重武装に身を包み、説明してくれる。

 

 流石ダクネス。

 聖騎士と言うだけあって、街の住人を放って、逃げると言う選択肢はないみたいだね。

 

 「起動要塞デストロイヤー。それが通った後にはアクシズ教徒以外、草も残らないと言われてる、最悪の大物賞金首だ」

 

 「ねえ、何で私の可愛い信者達がそんな風に言われているの!?」

 

 アクアが何か叫んでいるけど、ダクネスの説明ではあまりピンとこない。

 

 いや、呼び出しの慌てようから、相当ヤバイ物と言うのは分かるけど………。

 と言うか前から少しでていた、起動要塞と言うのは何だろう。

 

 「なあ、それってめぐみんの爆裂魔法でとうにかならないのか?」

 

 隣にいたカズマがした質問に対しめぐみんは。

 

 「無理ですね。デストロイヤーには強力な魔力結界が張られています。爆裂魔法の一発くらい、防いでしまうでしょう」

 

 そんな……。

 何かと問題扱いされる爆裂魔法だけど、威力はこの街一番のはず。そんな、めぐみんの爆裂魔法でも破壊できないデストロイヤーって……。

 

 「ねえ、ウチの信者はいい子達よ! めぐみんも聞いてよ、巷で悪い噂が流れているのは、きっと心無いエリス教徒の仕業なのよ! 皆エリスの事を美化しているけど、あの子、結構やんちゃで、悪魔を相手になると私以上に容赦がないし、それに、結構自由奔放だし! アクシズ教を! どうか、アクシズ教をお願いします!」

 

 「アクア、日頃神の名を自称しているだけでは飽きたらず、エリス様の悪口まで言うなんてバチが当たりますよ」

 

 「自称じゃないわよ! 信じてよー!」

 

 流石に可哀想なので、後でフォローしてあげよう。

 

 アクアがめぐみんに泣きつくなか、カズマは回りを見わたし、皆がいること確認した。

 

 「皆、ギルドに行くぞ!」

 

 「どうして!?」

 

 その言葉にアクアが疑問の声を上げる。

 

 「お前らは、長く過ごしたこの屋敷とこの街に、愛着は無いのか! ほら、ギルドに行くぞ!」

 

 この言葉に流石に私は。

 

 「あの、カズマ。まだ一日しか住んでないよ? って言うか、何でそんなに燃えてるの? なんか、目の奥がキラキラしているように見えるし……本当にどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 「おおっ! やっぱり来たかカズマ! お前なら来ると信じていたぜ!」

 

 完全武装でギルドに入ると、そこにはダクネスと同じく重装備のダストの姿。

 その隣には、キースとテイラーとリーンの姿も。

 私は改めてギルド内を見渡した。

 そこには様々な冒険者達が、それぞれが考えられる限りの重装備で馳せ参じていた。

 きっと、彼らもこの街が好きなんだろう。

 

 何か、男性比率が多い気がするけど、気のせいだよね。

 

 ………と、ある程度の冒険者達が集まった所で。

 

 「お集まりの皆さん! 本日は緊急の呼び出しに応じて下さり大変ありがとうごさいます! 只今より、対起動要塞デストロイヤー討伐の緊急クエストを行います。このクエストはレベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。皆さんがこのこの街の最後の砦です。どうかよろしくお願いします!」

 

 ギルド内が騒がしくざわめく中、ギルド職員が声を張り上げた。

 そして、職員達が酒場になっている部分のテーブルを中央に寄せ集め、即席の会議室見たいな空間を作り出す。

 

 はあ、なんか空気が尋常じゃ無いよ。

 まあ、それほどまでにデストロイヤーヤバイって事だね。

 

 「それではお集まりの皆さん、只今より緊急の参戦会議を行います。どうか、各自席に着いてください」

 

 私達は職員の指示に従い、他の冒険者に習って席に着いた。

 しかし、どのくらいの冒険者がいるんだろう。

 広いギルド内とはいえ、ここにいる人の数は百ぐらいではきかないだろう。

 デーブルに着くと、他の冒険者の顔が良く見える。

 暇なのか、カズマの隣でアクアはコップの水で遊んでいる。

 

 「それでは、まず、現在の状況を説明させて頂きます。…………えっと、まず、起動要塞デストロイヤーの説明が必要な方はいますか?」

 

 その職員の言葉に、カズマと私の二人を含む数名の冒険者が手を挙げた。

 それを見て、職員が一つ頷き。

 

 「起動要塞デストロイヤーは、対魔王軍の兵器として、魔道技術大国ノイズで造られた、大型ゴーレムの事です。外観はクモの様な形状をしております。大きさは、小さな城くらいの大きさを誇っており、魔法金属がふんだんに使われ、それにより軽めの重量で、八本の脚で、馬を越える速度が出せます」

 

 デストロイヤーが余程有名なのか、殆どの冒険者が知っているとばかりに頷いている。

 

 「そしてその体には、魔術技術の粋により、常時強力な結界が張られています。これにより、魔法攻撃は意味をなしません」

 

 それを聞いている冒険者の表情が、少しずつ暗くなっていく。

 多分、自分達がいかに無謀な戦いをしようとしているのか分かってきたのだろう。

 

 「魔法がきかない為、物理攻撃しか無い訳ですが、接近すると引き潰されます。なので、弓や投石などの遠距離攻撃になりますが………。魔法金属製の体、そして起動要塞の速度により、この二つの攻撃は難しいと思われます。空からのモンスターの攻撃に備える為、自立型のゴーレムが、飛来する物体は備え付けの小型バリスタ等で撃ち落とします。なおかつ、戦闘用のゴーレムが胴体部分の上に配備されています」

 

 ……………。

 

 「現在、起動要塞デストロイヤーは、北西方面からこの街に向かって接近中です。残りあと一時間です。………では、ご意見をどうぞ!」

 

 あれほどざわついていたギルド内は、今はシンと静まり返っていた。

 

 結界で魔法が効かない。接近したらしたで踏まれる。空からの攻撃も撃ち落とされる。

 しかも、それが迅速に行われる。

 うーん。だけど、それだけ隙がないと言っても必ず、何処かに弱点があると思う。だって、作った国が何かを問題が起きた時の保険として対抗策とかを考えるはずだよね……。

 

 私の頭の中で一つの可能性が生まれる。

 それを尋ねるため、手を挙げた。

 

 「………すみません、デストロイヤーを造った国なら、それに匹敵する何かを造るなりできなかったんだすか? 造ることは出来なくても、何か弱点くらいは知っていたりとか………」

 

 「デストロイヤーの暴走で、真っ先に滅ぼされました」

 

 …………うん、無理ゲー。

 そんな強敵が駆け出しの街に来ては駄目な気がする。

 

 職員が静かに言った。

 

 「………他にありませんか?」

 

 これなら、アクアとめぐみんが逃げようとしていたのが分かる。

 

 「くそ、こんな時、ミツルギさんがいてくれたら………」

 

 「何処に行ったんだろう………」

 

 うっ。

 

 冒険者達が残念そうに呟く。

 恐らく、今カズマが売った魔剣を何とかしようと違う街に行っているのだろう。

 その原因をつくった私達二人は気まずく目を逸らす。

 難航する会議に飽きたのか、私達のテーブルの傍に座っていたテイラーが。

 

 「なあカズマ。お前さんなら機転が利くだろう。何か良い考えが無いか?」

 

 突然そんな事をカズマにきいた。

 

 確かにカズマなら、何かいい考えが思い浮かぶかも知れない。

 

 その質問にカズマが困り顔になりながらも少し考え。

 すると、何かを思い付いたのか、隣でコップの水で、テーブルに絵を描いて暇を潰しているアクアに振り返えり。

 

 「なあアクア。ウィズの話じゃ、魔王城に張られている魔力結界すら、魔王軍幹部の二、三人が維持したものでも、お前の力なら破れるとか言ってなかったか? なら、デストロイヤーの結界も破れるんじゃ………、ってなんだこりゃー!?」

 

 カズマがそこまで言って、アクアの水だけで描いた絵に驚いた声を上げた。

 私もカズマごしに覗いてみる。

 

 「うわっ、凄っ!」

 

 思わず、声が出る。

 そこに描いていたのは、間違いなく芸術作品。

 それは、美しい天使が花を手に戯れているその絵を……!

 

 「ああ、そんな事言ってたわね。うーん、でもやってみないと分からないわよ?」

 

 アクアは、言いながらその水で描いていた絵に、躊躇わずコップの水をかけた。

 

 「ああっ! もったいねえ、何で消すんだ!」

 

 「な、何よ急に。描き終わったから、また新しいのを描こうと………」

 

 そんな事を言い合っていたカズマ達に、職員が大声を上げた。

 

 「破れるですか!? デストロイヤーの結界を!?」

 

 その言葉に、カズマ達は冒険者達の衆目に晒される。

 カズマはその視線を受け、急いで手を振った。

 

 「いやもしかしたらって事で!」

 

 慌てて言ったその言葉にカズマの言葉にギルド内がざわめく。

 そして、

 

 「やれるだけやって貰えませんか? あとは火力がだせる魔法があれば………」

 

 職員は再び悩みだし、また静ま返ろうとしたその時。

 あの冒険者が、ポツリと言った。

 

 

 「火力持ちならいるじゃないか。頭のおかしいのが」

 

 その言葉に再びざわめくギルド内。

 

 「おお、そうか頭のおかしいのが!」

 「いたな、おかしい子が………!」

 

 冒険者達の視線は自然と私の隣にいためぐみんに視線が集まり……。

 

 「おい待て! それが私の事を言っているのならその略し方は止めてもらおう。さもなくば、いかに私の頭がおかしいか、今ここで証明することになる」

 

 めぐみんが声を上げると、冒険者達が一斉に目を逸らした。

 魔王軍幹部、ベルディアがめぐみんを、頭のおかしい紅魔の娘と読んでから、冒険者達の間ではそれが定着したらしい。

 

 「この街ではめぐみんの爆裂魔法が最大火力だ。いけるか?」

 

 ダクネスが真剣な声色でめぐみんに尋ねる。

 

 「うう………我が爆裂魔法でも、流石に一撃では仕留めきれないと思われ………」

 

 そうぼそぼそと告げる。

 ならせめて、あと一人。

 そんな空気になり、カズマが私に視線を向け、尋ねてきた。

 

 「なあシロナ、確かシロナってめぐみんの爆裂魔法には届かなくてもかなりの威力の魔法出せなかったか?」

 

 その言葉で私には期待の込めた目が集められる。

 私はそれに少し慌てるが。

 

 「え、ええと………うーん。ごめん。まず、機動力無くす事を考えて片脚四本ずつに撃つにしても私の魔法一撃じゃ多分無理かな。めぐめんのさっきの言葉を考えると良くて片方の脚を半壊って感じだと思う。私の今の使える魔法って破壊系じゃないし」

 

 ごめんカズマ。もっと強力な魔法を覚えたほうがいいかも。

 

 心の中でカズマと皆に謝る。

 あと一人、強力な魔法の使い手がいてくれれば………。

 

 

 ―――再びギルド内の空気がそんな雰囲気になった時、突然入り口のドアが開けられた。

 

 

 「すみません、遅くなりました………! ウィズ魔道具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私もお手伝いに……」

 

 ギルドに入ってきたのは、いつもの黒のロープを着たウィズだった。

 そのウィズを見た冒険者達は……!

 

 「店主さんだ!」

 「貧乏店主さんが来てくれた!」

 「勝てる! これで勝てる!」

 

 と、途端に熱烈な歓声を上げた。

 

 私はウィズがリッチーだと知っているけど、この冒険者達の勝てると言った騒ぎはなんだろう?

 

 その事は隣にいたカズマも気になったらしく、

 

 「なあ、なんでウィズはこんなに有名なんだ。って言うか可哀相だから貧乏店主はやめてやれよ。儲かってないのか、あの店は?」

 

 近くのテイラーに尋ねた。

 

 「知らないのか? 彼女は、昔凄腕アークウィザードとして名を馳せていたんだ。だが、やがて引退ししばらく姿を表せなくなったかと思うと、突然この街に現れて店をだしたんだ。店が流行らなかったのは、駆け出しの多いこの街には、高価なアジックアイテムを必要とする冒険者がいない事が原因だな。だから、皆、美人店主さんを見に商品は買わないが、店をこっそり覗きにいってるんだよ。そう、商品は買わないだけで」

 

 いや、少しくらい買ってあげようよ。

 

 「ど、どうも、店主です」

 

 そう言って、ウィズはペコペコ歓声を上げる冒険者に頭を下げている。

 

 「店をお願いします。またお店が赤字になりそうなんです………!」

 

 ………うん。今度、何か商品を買いに行こう。

 

 それはカズマも同じ気持ちだったのか目に涙があるように見える。

 

 「ウィズ魔道具店の店主さん、どうもお久しぶりです! ギルド職員一同、歓迎いたします! さあ、こちらにどうぞ!」

 

 職員の促されるまま、ウィズは周りに頭をペコペコと下げながら、中央のテーブルの席に座らされた。

 ウィズが席に着くと、期待の込めた目で進行役の職員を見る。

 

 「では、店主さんにお越し頂いた所で、改めて作戦を! ええと、先程のシロナさんの言っていた事を作戦に入れますと、まず、アークプリーストのアクアさんがデストロイヤーの結界を解除。そして、めぐみんさんと店主さんで足を攻撃。万が一脚を破壊し尽くせなかった事を考え、前衛職の冒険者全員はハンマー等を装備し、デストロイヤー通過予定地点を囲むように待機。そこで魔法で破壊し損なった脚を攻撃し破壊。そして、万が一を考え、デストロイヤーの内部には突入できるように、ロープ付きの矢を配備し、アーチャーの方はこれを装備。身軽な装備しの人達は、要塞への突入準備を整えておいて下さい!」

 

 進行役のギルド職員が、作戦をまとめ、全員に指示をだした。

 職員がウィズに視線を向けるが、問題ないと言うようにコクリと頷く。

 

 流石リッチーのウィズだね。問題なく脚を破壊できるんだ。

 

 そして、ギルド内に響くように、ギルド職員が声を張り上げた。

 

 「それでは、皆さん緊急クエスト開始です!」

 

 …………なんだろう。今回の作戦、私要らない気がする。

 

 

 

    カズマside

 

 街の前には冒険者達だけでなく、街の住人達も集まって、休むことなく、即席のバリケードが組み上げられていた。

 デストロイヤーを迎え撃つ予定の場所は街の正門の前に広がる平原だ。

 そこには、罠を配置できる職人達が、無駄だと分かっていながらも即席の罠を仕掛けている。

 

 「なあ、ダクネス。お前の固さは知っているが、ここはお前のどうしようもない趣味は置いておいて、ここは俺と一緒に道の端っこに引っ込んでいよう。な?」

 

 俺は、街の正門の前のバリケード、更にその前にジッと立ちはだかるダクネスに説得していた。

 ダクネスは、ここから動かないと言って聞かないのだ。

 新品の大剣を地面に突き刺し、柄に両手を乗せ、まだ姿も見えないデストロイヤーの方を見ながら動かない。

 ダクネスは、じっと黙っていたが、やがて口を開いた。

 

 「私の普段の行いのせいでそう思うのも仕方が無いが、私が自分の欲望にそこまで忠実な女だと思うか?」

 

 「思うよ。当たり前じゃん」

 

 「なあ!?」

 

 一瞬静かになった、ダクネスがちょっと、頬を赤らめて、一つ咳ばらいをすると、そのまま静かに続けた。

 

 「私はこの街を住人を守らなければならない。住人達は気にしないだろうが、少なくとも私はそう思っている」

 

 俺はその言い方に疑問を覚える。

 

 「何か、理由があるのか?」

 

 その言葉にダクネスはしばらく静かになるが。

 

 「すまない。その理由はいずれお前に話すかも知れないが、今はまだ言えない。だが、私は騎士だ。住民を守る事は私の義務であり誇りだ。だから、……無茶だと言われても、ここからは何があっても一歩も引かん」

 

 「……はあ。お前ってたまにどうしようもなくワガママで、頑固になるところがあるよな」

 

 俺が呆れた様に言うと、ダクネスが少しだけ困った様な、不安そうな顔で。

 

 「ワガママで頑固な仲間は嫌いか?」

 

 「どこかのアークプリーストのワガママは聞いてるとイラッとして引っ張ったきたくなるけど。……まあ、今のお前見たいな奴のワガママは嫌いじゃないよ」

 

 俺が適当に言ったその言葉に。

 

 「………そうか」

 

 少しだけ、安心した様にダクネスが呟いた。




 思った以上に長くなりました。

 デストロイヤー戦では、本当にシロナの出番が少なそうですね。

 来年までにもう一話は更新したい……………っ!


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第二十七話 『この歩く天災に爆裂を!』

 お気に入りが500を越えていました。
 本当にありがとうございます!

 完結まで書けるように頑張っていきます!

 今回は久しぶりの5000文字です。

 あまり話が進まない……。


    白奈side

 

 私は城壁の塔の上から、遠くに辛うじて見えるダクネスとカズマをボーっと見ていた。

 こうしてボーッとカズマを見ていると、昨日のお風呂の一件が思い出されそうになり、顔が熱くなりそうになるのを頭を降って思考を振り払う。

 

 今は、デストロイヤーに集中!

 

 視線を下に向けると、ゴーレムを作るため、人が慌ただしく動いていた。

 現在、カズマは彼処から動かないダクネスを説得すると言っている。

 

 今回の作戦の私の役割は全体の支援と内部に入った時のゴーレムとの戦闘。めぐみんやアクアみたいに何かに特化している訳じゃないからね。

 

 ふと自分の冒険者カードを取り出し見る。

 そこに表情されているスキルポイント欄を見ると、現在のスキルポイントは23ポイント。

 最初に使って以降、使ってないのでレベルアップで増えた事で、これだけ貯まっていたんだろう。

 

 これだけあるなら、今回使える何かのスキルを習得できるはず!

 

 こう言う時こそ、貯まったスキルポイントを使う時だ。

 そう考え習得可能なスキル欄を確認する。

 そこには《自己付属魔法(火)》《両手剣》《接近格闘スキル》などの色々なものが表示されていた。

 

 このスキルはスキルポイントが足りないし、これは今回使えない………………あっ。

 

 目を走らせていくと一つのスキルで目が止まった。

 

 「空間転移魔法……か」

 

 そこには、《空間転移魔法》と書かれたスキル名がある。

 空間転移魔法は文字通り指定した場所にテレポートできる魔法だ。

 勿論指定した場所なので、一度は行ったことがある場所じゃないと、テレポートできない。

 一応ランダムテレポートと呼ばれるのがあるが使用する機会は少ないだろう。

 これなら、今回て言うか結構使える可能性があるかもしれない。

 恐らくあそこから動かないダクネスもデストロイヤーによって本当に危なくなったらこの魔法でアクセルの門付近に強制緊急待避させる事が出きる。

 消費魔力が多いので、あまり何回もは無理だが、私の魔力量を考えると三回くらいはできるだろう。

 更に、デストロイヤー内部にはゴーレムがいるらしい。となると、剣の耐久値も上げた方がいいだろう。

 そう考え、残りのスキルポイントを全て消費して《空間転移魔法》と《物理防御》を習得した。

 

 「おーい、シロナー! 悪い、説得は失敗した。あの頭の固い変態を守る為にも絶対に成功させるぞ。そっちは大丈夫か?」

 

 見ると、カズマがこっちに向かって歩いてきていた。

 どうやら、かなりの時間冒険者カードを見て悩んでいたらしい。

 カズマの言葉でもう一つの自分の役割を思い出す。

 

 「ダクネスなら今テレポート習得したから大丈夫だよ。めぐめんは………この通りです。………ごめん」

 

 「だ、だだ、大丈夫です……! わ、私なら大丈夫……! ぜ、絶対にやれる……!」

 

 視点を右の方に向けるとめぐみんが緊張気味にぶつぶつと言いながら下を向いていた。

 

 これは私の役割なんだから何とかしないと!

 

 「ねえ、めぐみん。何度も言うけどめぐみんなら大丈夫だから。い、いっかい落ち着いて、いざとなったらダクネスは強制的にテレポートさせるからね」

 

 私はめぐみんの隣に屈み混むと、緊張気味のめぐみんに安心される様に出来るだけ優しくそう告げた。

 

 「そ、そそ、そうですか………! だ、だだだ、大丈び……! わ、私は強い……! わ、我が爆裂魔法で消し飛ばしてくれるわあああああ……!」

 

 「ちょっ、待って早いから! 本当に落ち着いて!」

 

 それよりも……。

 

 「ねえ、あんた頭から煙上がってるけど大丈夫なの? なんなのそれ?」

 

 「大丈夫ですよアクア様……。これはその、このよく晴れた天気の中、長時間お日様の日を浴びているので……」

 

 正面から見て、左側の城壁の塔の迎撃地点では、アクアとウィズが屈み混み、何かを話している。

 下ではアーチャーの人達が先がブック状になっているロープのついた矢を弓につがえ、何時でも動きを止めたデストロイヤーに乗り込める様に、ロープを張れる準備を終えていた。

 そして、その他の私達を除く冒険者がゴーレムに効果が高そうな、ハンマーなどの打撃武器を持って集まっていた。

 

 『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます! 街の住人の皆さんは、直ちに街の外に、遠くに離れていて下さい! それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』

 

 

 

 機動要塞デストロイヤー。

 

 それはどこかの私と同じように特典を貰った日本人が、冬将軍の様に、適当に名前をつけたらしい。

 適当に名前をつけないでほしいと言いたい所だけど、その姿を見たら殆どの人は納得できると思う。

 遠く離れた丘の向こう。

 そこから最初にその頭が見えきた。

 まだ遠くだと言うのに、感じる軽い振動。

 ほんの僅かなものだけど、確かに大地が震えている。

 

 「で、でかい……」

 

 思わずそんな事を私は呟いた。

 爆裂魔法の威力は、めぐみんとの長い付き合いで知っている。

 だけど、これは………。

 

 「おい、これ無理じゃねえか? いけるのか?」

 

 そんな私の心で思った事をカズマが隣で言った。

 

 「『クリエイト・アースゴーレム』!」

 

 クリエイターの皆さんが、地面の土でゴーレムを作り出す。

 この街は駆け出し冒険者ばかりの街だ。

 恐らく、より強いゴーレムを作るために、ゴーレムの活動時間を削ったため、このギリギリのタイミングで生み出したんだろう。

 

 「ちょっとウィズ! 大丈夫なんでしょうね! これ本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

 私とカズマ、めぐみんが待機している場所で、アクアが隣に佇むウィズに何度も確認していた。

 

 「大丈夫です、任せてくださいアクア様。これでも最高位のアンデットなのですから」

 

 「本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

 「……もし失敗したら、皆で仲良く土に還りましょう」

 

 「うぇっ!? 冗談じゃ無いわよ! 冗談じゃ無いわよ!! ちょっと二人ともー、そっちは大丈夫なんでしょうねー!」

 

 会話はよく聞こえないが、アクアがこちらに確認してくる。

 

 「大丈夫、我は紅魔族随一……!」

 

 大丈夫かな………?

 

 私は隣でガチガチに緊張しているめぐみんに。

 

 「ねえ、めぐみん。大丈夫だから、失敗しても街を捨てて皆で逃げればいいだけだよ。だからそんなに緊張しなくても大丈夫だから」

 

 「そうだぞ。ちょっと落ち着け。失敗しても誰も責めないさ」

 

 今回、やる事がほとんどない私と指示役のカズマは、そう気軽に言った。

 

 「だだだ、だだ、だい、大丈夫です!」

 

 めぐみんが、噛みまくりながら言ってくる。

 だけど、めぐみんの気持ちは分かる。めぐみんだけでなく、ここにいる多くの冒険者はまだ駆け出しばかりなのだ。

 

 「くるぞー!」

 

 テイラーの声が草原に響いた。

 

 

 

    カズマside

 

 アクアが魔法を放つタイミングや指示は、何故か俺に一任されている。

 ギルドの職員の人に指示を出す為の拡声器の様なものまで預けられた。

 俺が、今回の作戦の主要人物である、アクアやめぐみんのパーティーリーダーだから、と言うことはらしい。

 いつの間にか、デストロイヤーがすぐそばまで接近していた。

 ヤドカリの様に砦みたいな建造物を載せ、それ以外にも甲板の部分の所々にバリスタを搭載した、クモの様な外見の巨大ゴーレム、機動要塞デストロイヤー。

 そのふざけた名前とは裏腹に小さな城にも匹敵する巨大な機動要塞は、仕掛けられた数々の罠を物ともせずに、地面を踏み砕く轟音を響かせながら、

 

 『アクア、今だ!』

 

 俺達の街を蹂躙すべく、迎撃地点へて突っ込んできた!

 

 「『セイクリッド・スペルブレイク』っ!」

 

 アクアがベルディアの時のように何処からか飛んできた杖を手に取ると、俺の合図で魔法を放った。

 アクアの周囲に複雑な魔方陣が5つ浮かび上がったかと思うと、その杖の先端をデストロイヤーに向けて、魔法を撃ち出した。

 撃ち出された魔法がデストロイヤーに触れると同時に、一瞬デストロイヤーの巨体に薄い膜の様な物が張られて抵抗したが、それがガラスでも割られる様に弾け散る。

 多分弾け飛んだあの膜が、魔力結界とかいう物なのだろう。

 なら、これで魔法が届くはず。

 俺は拡声器に向かって大声で!

 

 『今だ! ウィズ、頼む! そちら側の脚を吹っ飛ばしてくれ!』

 

 ウィズに指示を出し終えると、続いて、緊張で震えているめぐみんに。

 

 「おい、お前の爆裂魔法へと愛は本物なのか?」

 

 その言葉で俺が何を言おうとしているのか、めぐみんの隣にいたシロナは察したのか。

 

 「そうだよ、いつも爆裂魔法爆裂魔法言っている、めぐみんがウィズに負けたらみっともないよ! めぐみんの爆裂魔法はアレも壊せないほどの魔法なの!?」

 

 「な、なにおうっ!? 我が名をコケにするよりも、一番私に言ってはいけない事を口にしましたね! 良いでしょう! 見せてあげますよ、本当の爆裂魔法を!!」

 

 怒りで緊張を吹き飛ばし、パッと顔を上げためぐみんが、朗々力強く詠唱を………!

 

 「「黒より黒く、闇より暗き漆黒に」」

 

 俺達の待機する目の前をデストロイヤーが轟音と共に通り過ぎようとする中。

 

 「「我が深紅の混淆(こんこう)を望みたもう」」

 

 かつては、凄腕アークウィザードの名をほしいままにした、現在は経営難に苦しむ小さな魔道具店のリッチーと。

 

 「「覚醒のとき来たれり。無謬(むびゅう)の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」」

 

 そして今、頭のおかしい爆裂娘の名をほしいままにしている、たった一つの魔法に全てを捧げた、紅魔族随一のアークウィザード。

 その二人の最強の攻撃魔法(爆裂魔法)が、デストロイヤーへと放たれる。

 

 「「『エクスプロージョン』っっ!!」」

 

 同時に放たれた二人の魔法は、機動要塞の脚を一つ残らず粉砕した!

 

 突然脚を失ったデストロイヤーが、とんでもない地響き、轟音と共に、平原のど真ん中に底部をぶつけ、そのまま地を滑る。

 最前線で立ち塞がるダクネスの目と鼻の先で動きを止めた。

 爆砕された巨大な脚の破片が冒険者の頭上に降り注ぐ。

 だが、ウィズの方は殆ど破片は降ってこない。

 

 「ぐぬぬ………流石はリッチー。私を遥かに上回るレベル……」

 

 めぐみんがうつ伏せに倒れたまま無念そうにそう呟いた。

 

 「カズマ、めぐみんに魔力お願い」

 

 「ああ」

 

 その小さな体にシロナの魔力を動けるぶんだけ分けてあげると、杖を支えに、めぐみんはフラフラしながら魔力を使い果たした後の真っ青な顔で。

 

 「く、悔しいです……。次こそは……!」

 

 「いやいや、めぐみんは良くやったよ。相手はリッチーで、魔道を極めたアンデットだよ。勝てないのが当たり前だよ。レベルが上がったら絶対にめぐみんが勝つから。今は休んでね」

 

 シロナが木陰に寝かせようとすると、

 

 「もう一度………! もう一度チャンスが欲しいです! 私の爆裂魔法こそ一番だと………」

 

 「ちょっ、ちょっと上着を掴まないで! 流石に私の魔力じゃ爆裂魔法に使用する魔力に足りないから! 分かったから、さっきは調子が悪かっただけだよね! だから、今は安全な所で休んでてね」

 

 めぐみんを木陰に引っ張ってそのまま横に座らせると、他の冒険者が未だ降り注ぐ破片から頭を頭を守る中、アクアとウィズが俺の元にやって来た。

 そして、少し遅れてシロナも。

 ダクネスは、降り注ぐ破片を気にもせず、目を閉じることもなく、一歩もその場から動かないでいる。

 俺が改めてデストロイヤーの巨体を眺めると、脚を失った巨大要塞は沈黙を保っていた。

 降り注ぐ破片が大体収まり、落ち着いて状況を把握出きるようになってきた冒険者から。

 

 「やったか!?」

 

 「俺、これが終わったら結婚するんだ……!」

 

 ちょっ、皆ここでフラグになるような発言は!?

 

 こう言う時はフラグになるような発言は慎み、ここまま油断せずに………!

 

 「やったわ! さあさあ、帰ってお酒でも飲みましょうか! 今回の報酬はお幾らかしらね!!」

 

 「このバカー! なんでお前はそうお約束が好きなんだ!」

 

 「あ、アクア、お願いだからそれ以上言わないでここでそんな発言をしたら………!」

 

 「えっ?」

 

 迂闊な事を口にしたアクアを俺達二人は必死に止めた。

 ………だが、それは既に遅かったらしい。

 

 「……? なんでしょうか、この音は……?」

 

 アクアと共に近寄ってきたウィズが、不安そうにデストロイヤーの巨体を見る。

 何かの警告音に聞こえる様なその音は、明らかにデストロイヤーから聞こえてくる。

 それに気づいた冒険者達が不安げにその巨体を見上げる中。

 それは唐突に。

 

 『被害甚大につき、自爆機能を作動します。搭乗員は直ちに避難してください。搭乗員は直ちに避難してください。この機体は……』

 

 デストロイヤーの内部から流れ出したその機械的な音質は、何度も繰り返される。

 

 「ほら見た事か!」

 

 「ええー!? 待って! これ、私のせいじゃ無いからっ!!」

 

 




 今年中に、二章は終われませんでした。

 第二章は恐らくエピローグ含めて三、四話で終わりだと思います。

 こんな時間の投稿で申し訳ないです。


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