もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース! (jokered)
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不穏な始まり

パラドックスは私たちが関心を持つ物事の多くを動かしています。パラドックスと矛盾はまったく違います。矛盾はそこで止まってしまいますが、パラドックスは前進し続けます。なぜなら、私たちが片方の側の真実を知るたびに、別の側の真実に背後から捕まえられるからです。
by スチュアート・ブランド(雑誌『ホール・アース・カタログ(全地球カタログ)』創刊者)


絶対に変えてはいけない過去がある。
変えてしまいたい過去だってある…
「…?」
順番待ちをしてた時に、そんな言葉が頭をよぎった。
「…」
ここは、あの世。
俺はブロリーと相打ちになり、死んでしまったのだ。
それにしても、不憫極まりない。
今頃みんなはSDBHの世界で、楽しんでるんだろうな。
そんな事を考えていたら、すぐに自分の番が回ってきた。
「ヴィクトリー、〇歳…」
「…」
閻魔のおっちゃんと、何気ない会話を混ぜながら審判する。
行先は、天国だそうだ。
やったぜ。
「それじゃあ、行け。」
「サンキュー!」
これから、天国でも強い奴と戦うつもりである。
どんな奴が居るのか楽しみで、俺ワクワクすっぞ!
その時だった。
「お待ち下さい…」
不意に柔らかな光が閻魔の間に差し込み、それが降臨する。
「私は女神イリアス。この世界とは別の世界から来た神です。」
「な…」
「神さま…?」
降臨してきたのは、神様だった。
話を聞くと、世界が魔王の暴虐に晒されてピンチなんだとよ。
その為にイリアス様はわざわざ世界を渡り、俺に協力を求めてきた。
聞いてみれば、強い奴が沢山いるらしい…
それなら面白そうだ。
閻魔のおっちゃんも快く頷き、俺を別の世界に飛ばす事を許可してくれた。
更に閻魔のおっちゃんとイリアス様が力を合わせて、俺を生き返らせてくれた。
その過程で、レベル1に戻ってしまった訳だが…
しかし俺も伊達にドラゴンボールヒーローズの世界で生きてきた訳じゃない。
レベル99からレベル1になるなんて、慣れたものだ。
「ヴィクトリー。」
声を掛けてきたのは、占いオババだった。
「オババ。」
「話は聞いたが…何やら凄く嫌な予感がするぞ。」
「俺なら大丈夫さ…きっと、今よりもっと強くなるから…!」
「ならば、これを持っていくがいい。」
オババが渡したのは、カプセルケースだった。
「?何だこりゃ?」
「もしもの時のアイテムじゃ。色々と入ってるから、困った時に使うのじゃぞ。」
「ああ、サンキュー!」
オババからカプセルケースを貰い、ヴィクトリーはそれを腰にかける。
「準備は出来ましたか?」
「ああ、オッケーだ!」
ヴィクトリーはイリアスの所に走り、手を取る。
「それでは、行きますよ…近寄ってください。」
「近寄るだけでいいのか?」
そう言いながらイリアスの正面につく。
「…はっ!」
「…っ!?」
二人は光に包まれ、そしてそのまま姿を消してしまった。
異世界に渡った二人を後に、あの世はいつも通りに動いた…

「…あれ?」
いつの間にか、イリアス様がいねぇ。
それに、辺りが真っ暗だ。
「おーい、イリアス様ー!?イリアス様ー!」
暗闇の中で叫ぶが、イリアスは応えなかった。
「…!?」
いや、暗闇じゃねぇ!
辺りは真っ黒だけど、自分の手がくっきりと見える!
「ど、どうなってんだ…?あ、いや…そんな事よりもイリアス様ー!」
俺はきょろきょろと探し回り、イリアスを探す。
しかし、うんともすんとも応えてくれなかった。
「っかしいな〜…うーん…」
大体、ここは何処なんだ?
まさか、なぞのばしょと言う奴なのか…!?
「やべぇな、もしそうだとしたら出られねぇぞ…!」
俺は飛び、ひたすらに目の前を進む…
…飛び?
「…」
足元を見る。
床なんて無い。
「は…!?」
レベル1になっちまったから、舞空術が使えなくなったんじゃねぇのか…?
「…」
そう思っている時だった。
遠くに、何かいる…
「…何だ、ありゃ?」
金髪で、肌が青白くて、赤い布を纏ったような…
そいつはゆっくりと振り向き…こっちを見た。
「!!!」
次の瞬間、辺りの空間がノイズに変わった。
テレビの砂嵐を連想してくれると、それで正解だ。
「な…な…!?」
「…」
そいつは高速移動で目の前に来た!
「っ!!?」
不味い、どう考えても普通じゃねぇ!
「な、なんだてめぇは!!」
ヴィクトリーは構え、女と向く。
「第二種断界接触…世界間の接触は禁止とする…消去する。」
何だか知らねぇが、俺を殺す気らしい。
今のレベルじゃあ、負けるのは目に見えてる。
「ちっ!」
ヴィクトリーは逃げるが、目の前にまた女が現れた!
「っ!?」
「消去する…」
女は強大な力を解き放ち、周囲の空間を侵食した。
「ぐっ…でゃあっ!!」
ヴィクトリーは怯まずに突進し、こめかみに蹴りを入れた!
「…」
「な、なに…!?」
全く効いてないみたいだ。
「消去、開始…」
女は笑い、手にエネルギーを溜めてヴィクトリーの腹に添えた。
「!!!」
「…」
女のエネルギーが爆発し、ヴィクトリーはぶっ飛んだ!
「うわぁああああああーーーっ!!!!」
勢いよくぶっ飛び、女の姿がすぐに見えなくなった。
俺は大ダメージのあまり、失神してしまった…

「…」
目を覚ました。
全身が痛む。
目眩がする。
いい感覚と言ったら、この暖かいベッドぐらいか。
「うっ…ぐ…がはぁあっ…!!」
俺は手を口で押さえながら、大量に吐血した。
指の間から溢れる血が滴り、ベッドを汚してしまった。
「あっ…だ、大丈夫かい!?」
「っ!?」
不意に話しかけてきたのは、俺と同い歳ぐらいの少年だった。
「待ってて!今、何か持ってくるから!」
「…」
少年は俺を見るなり、どたばたと走って行った。
周囲を見回してみる…
机に椅子…クローゼット…
最低限のものが置いてあり、部屋もギリギリ不自由が無いぐらいの広さだ。
どうやら、宿屋に運ばれたみてぇだ。
「お、おまたせ!」
少年が部屋に入ってきて、桶と水の入ったビンを持ってきた。
俺は桶に血を吐き、咳をする。
咳をする度に体が軋み、ズキズキと痛みが走った。
「うぐっ…!」
「あ、えっと…これ飲んで!」
「あぁ…?」
渡されたのは、水の入ったビンだった。
とりあえず、水ぐらいは飲んどけって事か?
俺は受け取り、水を飲む…
すると、体のダメージがみるみる内に消えてった。
「どうだ…?」
「…何だこりゃ?」
「イリアスヴィルの泉の水さ。どうだい?」
「すげぇな、ダメージがみるみる内に消えちまった…」
「それは良かった…」
少年はほっとしたように息をつき、椅子に座った。
「君はこの村の外れで、傷だらけになって倒れてたんだよ。それを僕の幼なじみが発見して、ここに運んだんだけど…意外と早く目が覚めたんだね…」
「…」
…何だかんだで、ここはイリアス様の言う異世界なのか?
「なぁ、ここは何処なんだ?」
「ん?ここはイリアスヴィル。イリアス様の〜」
少年の長ったらしい話を聞き流しながら、考える。
イリアスヴィル…聞いたこともねぇな。
名前的にもイリアス様と何か関係があんのか…?
「君は何処から来たんだ?」
「どこから来たんだって言われても…俺は、イリアス様に連れてこられたからなぁ…」
「イリアス様…!?」
食いついてきてくれた。
それが引き金になり、俺は少年と話し合った。
この世界の事、俺の世界の事…
なぜ俺が連れてこられたのか、そして何故俺があんな目にあったのか…
「…そうか、そんな事が…」
少年の名前はルカ。
この村の住人の一人で、勇者見習いらしい。
俺の事は、異世界から来た素人武闘家って説明しといた。
「それにしても、勇者か…当然、旅に出るんだろ?」
「うん…いつか、父さんに追いつくんだ!」
ルカの父ちゃんも勇者で、今現在は行方不明らしいが…
それでもルカの父ちゃんはルカにとっての憧れみてぇだ。
父の背を追う勇者…なんか、かっこいいな。
「あのさ、よかったら俺もその旅に連れてってくんねぇか?」
「え…?」
「俺、この世界で強い奴と戦ってもっともっと強くなりてぇんだ!いいだろ?」
「えぇ…」
少年は困惑していた。
この男、単なる戦闘狂なのか…?
「あ、えっと…イリアス様にもルカという男について行った方がいいって言われたんだ!な、頼むよ!」
「イリアス様…それならしょうがないか…」
一人旅は心細いと思ったのか、ルカも了承してくれた。
「おっしゃあ!サンキュールカぁ!これからも宜しくな!」
「ああ…宜しく、ヴィクトリー!」
勇者見習いと素人武闘家は握手した。
「…でも、旅に出るのは三日後だよ。」
「三日後?」
「ああ…」
三日後に勇者になる儀式を行うらしい。
俺としてはそんな儀式せずにとっとと旅に出たい気分なんだが…
まぁ、そこら辺はルカに従っていこう。
異世界から来た俺が偉そうに口を挟むモンでも無さそうだしな。
「ルカ〜!」
女の声が聞こえた。
「例の男の子、無事なの〜!?」
「ああ!元気になったみたいだよ〜!」
入ってきたのは、短髪の僧侶っぽい女の子だった。
いや、女の子っつっても身長は俺やルカより高そうだ。
「えっと…おっす!俺ヴィクトリー!あんたは?」
「あんたって呼ぶな!」
女の子は棍を出して俺の頭をぶっ叩いた!
「っでぇっ!?」
「あはは…この子はソニア。僕の幼なじみだよ。」
「そして、この村の神殿僧侶よ。あんたを見つけたのも、私なんだからね。」
「あ、あぁ…ありがとう。」
…こいつは誰だ?
俺の中で、モヤモヤとした違和感が湧いてきた。
違和感の正体は分からない。
ただ、腹の中で違和感がぐるぐるしている。
何もおかしい所なんてないはずなのに…っかしいな…
「まぁ、無事で何よりね。ここの事はルカから聞いた?」
「あ、ああ…」
「なら、暫くゆっくりしていきなさいよ。三日後にはルカも旅立つんだし。」
「あ〜…ソニア。一応ヴィクトリーも僕の旅について行く事になってるから。」
「そうなの…?ふーん…」
ソニアは俺の顔をまじまじと見てくる。
「…」
「まぁ、無事で良かったわ。分からないことがあったらルカや私に言ってね。」
「あ、ああ…サンキュー!」
意外と親切にしてくれた。
それでも、胸の違和感は消えねぇ…
とにかく、三日間はここでルカの宿屋の手伝いをする事になった。
三日後、俺達は旅立つ。
どんなつえぇ奴が居るんだろうな…俺、わくわくしてきたぞ!

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人騒がせなスライム達

三日後…
目が覚める。
「…ふぁあ…」
前の世界と変わらない朝だ。
正直、異世界に渡ったという実感が無い…
あのソニアという奴を除いては。
そう思いながら、自分のカプセルケースを覗くと…
「…げっ!」
なんと、俺の衣服が入ったカプセルがぶっ壊れてる。
無事なのは、カードケースぐらいか。
「ど、どうしよう…」
ここで、ふとある事を思い出した。
オババのくれたカプセルケースだ。
「…こっちは無事か!」
中身は、二個のカプセルだ。
その内の一個を投げてみる。
衣服だ。
黒い半袖のアンダーシャツとズボンに、赤い胴着に、水色の帯に、靴…
更に…
「何だこりゃあ…」
頑丈な紐と、剣と、仙豆の入った袋があった。
剣は、トランクスさんが使ってたものと同じみたいだ…
「…」
とりあえず、一式を装備してみる。
「ヴィクトリー、何だその派手な格好は…」
ルカが俺を見るなり、そう言った。
「し、知らねぇよ…俺だって困惑してんだ。」
紐をたすきのようにして結び、剣と仙豆の袋を付ける。
「でも、かっこいいじゃないか。似合ってるよ。」
「そうかな。」
着てて悪い感じもしなかった。
そう言えば、悟空:ゼノと同じ格好なのかこれは。
「そう言えば、今日は旅立ちの日って奴なのか。」
「うん。だからこことも暫くはお別れさ。」
何気ない会話を交わしながら、ルカは色々と片付けを始める。
俺もそれを手伝いながら、話していた…
「…実は、ここ三十年イリアス様は降臨していないんだ。」
「え…!?」
何だと…!?
じゃあ、俺をこの世界に連れてきたイリアス様はいったい…!?
「でも、今日はイリアス様の夢を見たんだ。なんて言ってたかは分からないけれど…なかなか幸先のいい夢だったと思うよ。」
「…それを踏まえて、おめぇは俺の話を信じたんか…?」
「うん、だって…」
ルカがそこまで言いかけた時だった。
「大変だよー!木こりのハンスさんが、さらわれたよー!」
外から、そんな声が響いてきた。
「えっ!?」
「なにっ!?」
ルカは急いで外に出て、二人もそれに続く。
「大変だよ、二人とも!ハンスさんが、悪いスライム娘に捕まったらしいんだ。裏山に連れて行かれたとか…」
「だったら、僕が助けに行くよ!」
「よっしゃあ!俺もルカに便乗するぞ!」
「馬鹿を言ってるんじゃないよ。ここは、神殿の兵隊さん達に任せておくんだ。それに、あんたは病み上がりだろう?」
「…」
「…」
周りの様子を見る。
兵隊らしき人もここの住民も、パニック状態に陥っていた。
使えねぇ兵隊だな。
「ヴィクトリー、付いてこい!」
「おうっ!」
ルカとヴィクトリーは村を出て、走った。
「裏山はここからすぐ北だよ。」
「ああ、とっとと助けに行かねぇとな!」
そう言いながら、二人は裏山へと向かった…

「…はぇ〜…」
イリアスヴィルの裏山…
イリアスヴィルでも見かけたスライム型の女の子が、たくさんいる。
「…ここって、こいつらの巣になってんのか?」
「そうだよ。中にはイリアスヴィルに移住したり遊びに来たりするスライムも居るけど…そういう奴ばかりでも無いんだ。」
「ははぁ…中には悪い奴も居るって事か…」
現にその悪い奴が、問題を起こして今に至る訳なんだが…
「わーい!人間だー!」
「人間の男の子だー!」
急に、二体のスライムが道を塞いできた。
スライム娘Aが現れた!
スライム娘Bが現れた!
「わっ…な、何だよ…」
「僕達は今、急いでるんだ…」
「そんな事より、私とあそぼーよー!」
「おちんちん、スライムでぐちゅぐちゅにしてあげるー!」
「………」
どういう事だ。
なぜおちんちんをスライムでぐちゅぐちゅにされなきゃならねぇんだ。
「こいつらも敵か…!」
「じゃあ、とっとと決めてやる…」
ルカは剣を抜き、ヴィクトリーは拳を構える。
「…ヴィクトリー、剣は使わないのか?」
「どっちかと言うと俺は素手の方が得手なんだ。」
「やる気だぁ〜」
「でも、あたしには勝てないもんね〜!」
スライム娘Aはルカに攻撃を放ち、スライム娘Bがヴィクトリーに粘液を放ってくる。
「ふんっ!」
ルカはスライム娘の攻撃をかわし、背中を切った。
「きゃっ!」
「はぁあっ!」
ヴィクトリーは粘液を弾き飛ばし、スライム娘Bの顔面に両足蹴りした!
「きゃああっ!」
スライム娘Bはぶっ飛び、そのまんま気絶してしまった…
「ふんっ!」
「っ!?」
ルカもスライム娘Aの腹に剣の柄を叩きつけ、気絶させた。
二人はスライム娘達を倒した!
「意外とよえぇんだな。」
「ここら辺のモンスターなら、ちょっと鍛えれば倒せるよ。」
そう会話しながら、二人は先に進む。
「…ん、なんだこりゃ?」
ヴィクトリーの目に、赤い石が留まった。
ヴィクトリーはそれを拾い、コイントスのようにしてからキャッチする。
「…」
握ると、レンチンしたかのように熱い。
何か不思議な力を持ってんのか…?
「おーい、ヴィクトリー?」
「あ、あぁ…悪ぃ悪ぃ!」
ヴィクトリーはすぐにルカの所に戻り、一緒になって裏山を進む。
裏山の中盤に差し掛かった時だった。
いきなり、轟音が響いてきた!
「なっ…!?」
「な、何だ…!?」
俺達のすぐ隣に居たスライム娘も、びっくりしているようだ。
「あっちから、何か落ちてきたみたいだよ…?」
「…」
「…」
もしかしたら、俺と同じく異世界に迷い込んだ奴とか…?
「行こう、ヴィクトリー。」
「ああ、何だか面白そうだ。」
二人は音のした方に進み、あっという間にそこに着いた。
「この辺りだな…」
「おい、ルカ!」
ヴィクトリーの指差す先…
そこには、例のヤムチャと同じポーズで倒れている天使が居た。
何処となく、イリアス様に似てるような…
「イリアス様…?」
「でも何か小さいぞ…大丈夫ですか?」
「う…うう…ここは…いったい、何が…」
空から落ちてきたであろう天使は、ゆっくりと体を起こした。
「…私は、創世の女神イリアス。この世界を作った神、絶対にして唯一の存在。」
「まさか、本当にイリアス様…!?」
「でも、チビだぞ。」
俺の言葉に、イリアス様?は眉を吊り上げた。
「ち、チビ…!?全能なる神に対し、なんと不遜な物言いを…!神の雷に打たれ、己こそ矮小な存在である事を思い知るのです…!」
イリアス様?はそう言ってヴィクトリーを指差す。
「づっ…!?」
ヴィクトリーの手が、微かにビリッとした。
「てめぇ、何しやがる!!」
「わーっ!落ち着いてヴィクトリー!!相手は子供だぞ!!」
イリアス様?をぶん殴ろうとする俺を、ルカは止める。
「…あれっ?なぜ消し炭にならないのです?」
「こんな静電気程度で消し炭になってたまるか!」
「ぐぬぬ…今度こそ、消し炭となりなさい!炭化した肉体を、村に燃料として振る舞いましょう!」
イリアス様?はそう言ってまた静電気を起こした!
「っでーな!!」
「…なぜ、これほどまでに出力が弱いのです?いったい、私の身に何が…」
イリアス様?は少し考えたあと、魔力を溜める。
「鏡よ鏡。この世で最も尊い私の、現在の姿を映しなさい。」
イリアス様?の前に魔力の鏡が現れた!
イリアス様?は、自らの姿を覗き込む…
「…ちっちゃい!どういうことなのです、これは!?まさか…六祖大縛呪!?うぅっ…記憶さえ断片的とは…いったい何者が、この私にこんな…黒のアリス?プロメスティン?それとも邪神の計略?…ああ、思い当たる節が多すぎます!」
「…」
「…」
イリアス様?は何やら焦ってる…
さぁ、どうしたもんか…
「こうしてはいられません、ともかく天界に戻らないと…ルカ、ヴィクトリー、貴方達との話は後です!」
イリアス様?はそう言い残し、びゅーんと走っていった。
「…行っちゃった。」
「な、何で俺達の名前を…」
もしかして、マジでイリアス様だったりして…
………
「ヴィクトリー、先を急ごう。」
「あ、そう言えばハンスさんが捕まってんだったな。」
二人は進み、そして頂上…
「うさうさー!たべちゃうぞ〜!」
「わーい、たべちゃうぞー!」
「わ〜い、しぼっちゃうぞー!」
「た、助けてくれー!」
二匹のスライム娘と一匹のバニースライムが、ハンスさんを襲っていた。
「なぁにやってんだあいつら…」
「とにかく、助けないと!」
二人は三匹のスライムの前に立ちはだかった。
「おいコラ!やめとけ!」
「ハンスさんを離せ!」
「へぇ、この村人を守りに来たの…?このヒトよりも、キミ達の方がおいしそうだね。うさうさー!キミ達もたべちゃうぞー!」
「わーい、たべちゃうぞー!」
「わーい、しぼっちゃうぞー!」
「くっ、戦うしかないか…!」
「らしいぜ…」
二人は構え、三匹のスライムに向いた。
スライム娘達とバニースライムも構え、二人に向く。
「いくぞー!」
「おー!」
スライム娘達がルカとヴィクトリーに掴みかかった!
「ちっ!」
「くっ!」
ルカは剣を抜き、スライム娘を叩き切った!
「きゃっ!」
「うさうさー!」
「っ!」
バニースライムがルカにタックルし、ぶっ飛ばした!
「っ!」
「ルカっ!ちぃっ!」
ヴィクトリーはスライム娘の脇腹を蹴り、ルカに向かう。
「させないぞー!」
「させないぞー!」
しかしスライム娘が道を阻み、攻めてくる。
「うっさー!」
その上空からバニースライムが跳んできて、ヴィクトリーに頭突きした!
「ちっ!」
ヴィクトリーは距離をとってから、頭を抑える。
「い、いって〜…!」
「くそぅ…!」
流石に三対二では不利だな…
…しかし、相手は所詮スライム…
スライムと言えば熱に弱いはずだ…
「よし…!」
俺は懐に手を突っ込み、赤い石を取り出した。
「!そ、それは…!」
「くらえっ!」
その赤い石を、スライム達に向かってぶん投げた!
「!」
次の瞬間、石が光り…
スライム三体の体が、発火した!
「うさーっ!?」
「きゃーっ!」
「あついーっ!」
スライム娘は脱兎のように逃げ、泉に走っていってしまった…
「ち、ちょっ…!?」
「はぁあっ!!」
狼狽えるバニースライムの体を、ルカの抜き胴が一閃した!
「うさぁ〜…や、やられた〜…」
バニースライムは倒れ、降参した。
「や、やった!」
「ありがとう、二人とも!まさか、お前達に助けて貰えるなんてな。それじゃあ、俺は先に村に戻ってるよ。ありがとうな!」
ハンスさんは安心した様子で、山を降りる。
無事で何よりだ。
「…ふぅ、良かった良かった。」
「俺達も、村に戻ろうぜ。おい、また悪さするようだったら今度はコテンパンにやっつけてやるぞ!」
「むぎゅう…もう、悪さしないよう…」
こうして二人の戦士は、いたずら好きのモンスターを倒したのだった…

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プチ聖魔大戦

ハンスさんがスライム娘達によって裏山に攫われた。
ルカとヴィクトリーの二人は裏山に行き、無事にスライム娘達を倒したのだった。
そして、帰路につく。
「…」
それにしても、あんなモンスター三匹で村があんなにパニックになるのも珍しいんじゃねぇか?
兵隊さん三人で事足りる気がすんだけどな…
「ヴィクトリー。」
「うん?」
ルカはヴィクトリーを呼び止め、指を差す。
指の先…そこには、ちっちゃな妖魔がきょろきょろと辺りを見ながら這っていた。
這っていたというのは、その妖魔がラミア型のモンスターなのだ。
「ここら辺じゃ見かけないモンスターだけど…何してるんだろう。」
「聞いてみりゃ分かるだろ。」
俺達は妖魔に近づく。
妖魔は俺達の顔を見るなり、寄ってきた。
「むっ…そこの少年達。この辺りで、ウサギ型の魔物を見なかったか?」
「ウサギ型の魔物…?」
「山頂に、それらしき奴は居たけど…」
俺の言葉に妖魔は頷き、山頂を見る…
「…山頂か、礼を言うぞ。奴め…よくも余をこんな姿に…」
妖魔はそのまんま俺達の横を走り、山頂に駆けて行った…
「…何だったんだろう。今日は、ちっちゃな天使やら妖魔によく会うなぁ。」
「…」
いや…あいつの探してるウサギ型のモンスターってのは、さっきのバニースライムとは違う気がするな…
ルカの顔を見てみる…ルカも、俺と同じ表情をしていた。
「ルカ、どう思う?」
「行ってみるしか無いな…」
二人は再び山頂を目指して、歩き出す。
そして、山頂…
「やめてー!たすけてー!」
案の定、バニースライムが妖魔にボコボコと殴られていた。
「よくも、余をこんな姿に!!今すぐ戻せ、ドアホめ!!」
「何を言ってるのか分からないよー!きっとウサギ違いだよー!」
「むぅ…確かに、あの時のウサギと違う気がするな。あのウサギめ、いったい何処に隠れたのだ!ええい、絶対に逃がさんぞ!」
妖魔はそう言って攻撃の手を止め、また這い去っていった…
「…いったい、何なんだ?」
「だ、大丈夫か?」
「むぎゅう…」
「…とにかく、村に戻ろうか。洗礼の儀式も、もうすぐだしね。」
「ああ、急ごうぜ。」
俺達は少し急いで、イリアスヴィルに走った…

「…洗礼の時間、あともうちょいじゃねぇか?」
「これなら遅刻はしないよ。」
無事にイリアスヴィルから帰り、走りながら神殿に向かう二人。
そして、神殿の入り口に入ろうとした時に…
ソニアが現れた。
「わっ、ソニア!」
「ちょっとルカ、何してるのよ!もう洗礼の時間で、大神官様が待ってるのよ!」
ソニアは僧侶の正装で、ルカを待っていたのだ。
「それは分かったけど…その格好はどうしたの?」
「あんたの儀式のために、正装してるんでしょうが!!あたしが神殿僧侶だって、忘れてるわけじゃないよね…!?」
「も、もちろん覚えてるよ!」
「だったら、さっさと急ぐの!いったいどれだけ待たせる気なのよ!!それじゃあ、私は先に行ってるから!これ以上遅刻したら、私が洗礼受けて冒険に行くわよ!」
ソニアはそう言い、神殿に戻っていった。
「…大変な幼馴染みを持ったな…」
「うん…」
とにかく、これ以上遅刻したらぶっ殺されちまいそうだ。
とっとと行こう。

イリアス神殿…
「す、すみません…遅刻しました!」
ルカは走って、大神官の所に行く。
「…」
俺は歩きながら神殿を見回していた。
なかなか立派な神殿で、イリアス様の像が立ち並んでいる。
「裏山に乗り込み、村人を救ったと聞く。多少の遅刻ならば、イリアス様もお許しになるだろう。」
どうやら儀式はこのまんま執り行われるらしい。
「それでは、洗礼の儀式を始めるとしよう。…ソニア、聖水を。」
「…はい。」
ソニアは聖水を手に取り、大神官に渡す。
「…どうぞ、大神官様。」
「…うむ。それではルカ、この聖水をお主の額に…」
「…」
俺は柱に寄りかかりながら、ルカの儀式を見ている。
どうやら勇者になる儀式は終わりみてぇだ。
「かつては、この後にイリアス様が降臨されたのだが…」
大神官がそう言いかけた時だった。
「ルカ…勇者ルカ…そしてヴィクトリー…聞こえますか…?」
「…!?」
「えっ!?」
「まさか、このお声は…!」
そう…
イリアス様が、降臨してきた。
三十年も降臨してなかったイリアス様が、今になって降臨してきたのだ。
「おお、まさか…このような事が…」
「嘘でしょ…本物のイリアス様!?それに、あんたの名前も…!」
ソニアは俺の方を見る。
「…」
俺はルカの横につき、イリアスを見上げる。
「ルカ、ヴィクトリー…世界に危機が迫っています。この世が、闇に覆われようとしているのです。それを防ぐ事が出来るのは、あなた達だけです。あなた達こそが、この世界の最後の希望なのです…今の私には、洗礼を与える力さえ残されていません。こうして、語りかけるだけで精一杯なのです…洗礼も祝福もなくとも、あなた達は真の勇者…そう、祝福無き勇者達なのです…祝福なき勇者達、ルカとヴィクトリーよ…世界を…救い…なさい……」
イリアスのヴィジョンはそこまで言って、消えてしまった…
「………」
「………」
「………」
「イリアス様、私は信じておりましたぞ…決して、御身は滅びてなどおらぬ事を…」
大神官は二人の方に向き、息を吐く。
「…ルカよ、そしてヴィクトリーよ…お主達は大いなる天命を背負っておるようだ。この世界を救う、祝福なき勇者達よ…」
「僕達が…世界を…!?」
「…」
「しかし、この事は皆には伏せておいた方が良かろう。イリアス様のお言葉にあった、世界を覆う闇…それを聞けば、民衆は深い不安に陥るであろう。」
「…」
まぁ、その通りか。
俺はいいとして、ルカにも変なプレッシャーがかかっちまいそうだ。
「という訳でソニアよ、この事は他言無用ぞ。」
「分かりました、大神官様。」
「二人も、旅先で口にするのは慎むように。はやる気持ちは分かるが、状況は尋常ではないようだ。」
「は、はい…」
「ああ、分かってる。」
「ソニアよ、この一件は他言無用ぞ。」
「はい…なんで私にだけ二度言うんです?」
俺は噴き出しそうになったが、なんとか耐えた。
「それでは行くがいい、祝福なき勇者達よ!イリアス様のお言葉に従い、力を尽くすのだ!」
大神官はやかましい声で、俺達にそう言い放った。
おめぇ、さっき他言無用っつってたじゃねぇか…
「それじゃあルカ、私は村に戻るからね。」
ソニアはそう言い、走る。
その時に、魔導師の帽子が落ちた。
「あっ、ソニア…帽子が落ちたよ!」
「…」
「神殿では走るでない…」
忙しねぇ奴…
そう思っていたら…血相を変えたソニアが引き返してきた!
「た、大変よ〜!!」
「そ、ソニア…少しは落ち着いて…」
「そんな事言ってる場合じゃないわよ!あんたの家が、大変なんだから!なんか妖魔っ子と天使っ子が、ファイトしてるのよ!くんづほぐれつで暴れ回って、騒動になってるみたい!」
「な、何…!?」
「妖魔っ子と天使っ子…?まさか、裏山で会った…」
まぁ、九割九部そいつだろうな…
「ルカ、行ってみねぇと分かんねぇぞ。」
「ああ、とにかく行ってみるよ!」
二人は走り、ルカの家に向かった…
「…神殿では走るでない…全く…」

「ええい消えろ、この性悪女神め!」
「あなたこそ消え失せなさい、不浄なる魔王よ!」
ルカの家…宿屋から、そんな声が聞こえてきた。
「いったい何事!?」
「なんだなんだ!?」
ルカとヴィクトリーは扉を開け放ち、宿屋に入る。
そこでは、裏山で会ったちっちゃな妖魔と天使がぼこぼこと殴りあっていた。
「イリアスめ、いったい何を企んでいる!?あのウサギも、貴様の回し者ではないだろうな!」
「何を言ってるのです、心当たりなどありません!私の有様こそ、あなたの奸計なのではないのですか!?」
「やめろよ!こんなみっともねぇ!」
「そんなに暴れたら、椅子が壊れるじゃないか…」
二人は天使っ子と妖魔っ子を止めようとしたが、睨み返されてしまう。
「ええい、椅子ぐらい何なのだ!我等が本気で争えば、村の一つや二つ簡単に吹き飛ぶぞ!」
「ふん、どう足掻こうが私に敵うはずもありません!私は神なのですよ…!」
「お互いこうなってしまえば、力の差などない!せめてきさまは、ここで叩き潰してやる!」
「望むところです、魔王!ここであなたを滅ぼし、忌まわしき血統を断ちましょう!」
天使っ子と妖魔っ子は、またぼこぼこと殴り合い始めた…
「ああもう、とにかくやめて!」
「いったい、どうしたんだおめぇらは!」
二体は止まり、二人の方に向く。
「私は女神イリアス。人々に仇を為す魔王を、生かしてはおけません。」
「余はアリスフィーズ16世。いたずらに人を惑わすイリアスを、放置してはおけん。」
天使っ子の方がイリアス、妖魔っ子の方がアリスフィーズと言うらしい。
「なるほど、女神と魔王か。それは仲が悪くても仕方ねぇな…」
「って、そんな訳ないだろ!聖魔大戦ごっこなら、外でやってよ!」
「くっ、このザマでは余の威厳も実力も伝わらんか。ただの青二才にさえ、素性を疑われるとは…」
「ああ、なんと口惜しいのでしょう。私こそが創世の女神である事、信じてもらえないとは…」
ルカはため息を吐き、呆れながらアリスフィーズとイリアスを見る。
「それで、なんでプチ聖魔大戦が僕の家で行われてるの?旅に出る身とはいえ、家を荒らされると困るんだけど…」
「諸事情で、とある魔物を探していてな。しかし、この貧弱な身一つでは心許ない…」
「人には窺い知れない事情で、行くべき所がありまして。しかし、この弱々しい体では危険も多く…」
「そういう訳で、貴様らを旅の供にしようというのだ。ちょうど今日、旅立つ少年がいるという話を聞いてな。」
「…退きなさい、魔王。ルカとヴィクトリーには、ずっと前から私が目をつけていたのですよ。」
「何で俺らの名前知ってんだよ…」
「それはいいとして…信じるわけじゃないけど、魔王と女神なんだろ?配下なんてらいくらでも居るんじゃないの?」
アリスフィーズとイリアスは顎に指を添え、頭を傾げた。
先に発言したのは、アリスフィーズの方だった。
「現在の状況に、不明な点が多い…四天王さえ、その消息は知れんのだ。誰が敵で誰が味方かも不明瞭である現在、下手な動きは危険。ここは、隠密に事を進める必要があるのだ…」
アリスフィーズの言葉が終わり、続いてイリアスが口を開く。
「私の声が、なぜか天使達に届かないのです。一体、どういう事なのでしょうか…黒のアリスやらプロメスティンに、今の私の状況が知られてしまったら…あの連中の喜ぶ顔が、まさしく目に浮かぶようです。間違いなく、私の命はないでしょう…」
「…」
「…」
ヴィクトリーとルカは顔を見合わせてから、彼女らを見た。
「とにかく、ルカの旅に同行してぇって訳だな。」
「勘違いするな、余が貴様らを供にするのだ。」
「何を勘違いしているのですヴィクトリー、あなた達が私に尽くすのです。」
「…」
「…」
さぁ、どうするルカ?
し、知らないよ…
「しかし、この女神を連れて行ってはならん。こいつの独善さは、いつか人間をも滅ぼしかねんぞ。」
「いいえ、魔王こそ同行させてはなりません。何を企んでいるのか、分かったものではありませんよ…」
アリスフィーズとイリアスはまた睨み合う。
「このゲス女神め!余は貴様が大嫌いだ!」
「私だって大嫌いです!」
「ああもう、またケンカする…」
「やめろっての!魔王と女神がみっともねぇな!」
彼女らはまたルカの方を向いた。
「さぁルカよ、余の供となるがいい。こんな性悪女神、荷担するとロクな事にならんぞ。」
「ルカよ、私と共に行くのです。断じて、魔王などに手を貸してはなりません…」
「………」
「………」
どうやら、どっちかを選ばねぇといけないらしい。
ルカは…
「…じゃあ、自称魔王の君と行くよ。」
アリスフィーズの方を向いた。
「ふむ、貴様は見た目に反して聡明なようだ。余の供になる事を認めてやろう。」
「お、おのれ…!覚えておきなさいー!」
イリアスは涙を浮かべながら、走って宿から出ていってしまった…
「くくく、負け犬め…」
アリスフィーズはイリアスを嘲笑してから、ルカの方に向く。
「改めて、余はアリスフィーズ16世だ。特別にアリスと呼ぶ事を許可しよう。」
「それはともかく、アリスは本当に魔王なの?そういう遊びじゃなくて…?」
「信じられんのも無理はない。この弱々しい肉体では、信じるのも難しかろう…余のこの有様は、なんらかの魔術によるものだ。退行魔術か何かで、こんな姿にされたのだ…」
「あぁ、例のウサギ型のモンスターにか…」
「ああ…」
話を聞いてみると、つい数日前にそいつはひょっこりと現れたらしい。
そしてアリスをこんな姿にして、イリアス大陸まで吹っ飛ばしたとか…
「なるほど…それで、そのウサギを探してるってわけか。」
ウサギがなにかしたのか知らねぇが、部下達も音信不通になってしまったらしい。
そのウサギは、白っぽかったとか…
…白い兎…アリス…
「…ッ!!」
俺は頭を抱え、跪いた。
急に、頭痛が俺の頭を撃ち抜いたのだ。
「ヴィクトリーっ!?」
「お、おい…大丈夫なのかそいつは…」
「…」
…こりゃあ、何かありそうだ…
そんなこんなで仲間になったアリス。
アリスが探すウサギとは、果たして…

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綿密な準備

話が盛れなかったので短めです。


プチ聖魔大戦を収め、アリスを仲間に加えたルカ達。
ルカの方は後で村長さんに挨拶しに行くとか。
俺はしばらく村をウロウロすることにした。
「…」
ソニアといい、胸の違和感が消えねぇ。
さっきの白いウサギとアリスという組み合わせにも、何処か既視感のようなものが頭痛と共に襲ってきたのだ。
この世界、何かありそうだ…そして、面白そうだ。
そんな事を考えていたら…
「ヴィクトリーさんですね?」
一人の男が声をかけてきた。
紺色の髪をして、眼鏡をかけて、黒と赤の衣装に身を包んだ青年だ。
「…誰だおめぇは。」
「名乗る者の程ではありませんが…私はネロ。通りすがりの旅人です。」
通りすがり…?
いや、明らかにそんな雰囲気じゃねぇな…
「何の用だ。」
「いえいえ、ちょうどあなた達が旅立つ所だと聞きまして…少々、お顔を合わせておこうかな、と思ったまで。」
「………」
「…所で、その格好は?」
ネロは俺の服を見て、疑問を抱いてるみたいだ。
俺も自分の格好を見るが、何もおかしい所なんてない。
「何かおかしい所でもあるか?」
「いいえ、あなたは山吹色の胴着と青いアンダーシャツを身につけていた筈なんですが…」
「え…」
こいつ、何で…
「ッ!!」
頭痛だ。
あの頭痛が、俺の頭を掴んで揺さぶっている。
「だ、大丈夫ですか…!?」
「うぐ…だ、大丈夫だよ…」
頭痛は秒で収まり、顔色も戻っていくのが感じられた。
もう大丈夫だろう。
「…いつもの服を入れてたカプセルがぶっ壊れちまってよ。生憎、今はこれしかねぇんだ。」
「それは災難でしたね…」
「それで、おめぇも旅をするのか?」
「はい。でも、その前にルカさんにも挨拶をする予定なので…」
「ルカなら村長さんの家だ。頑張れよ。」
「はい!ヴィクトリーさんも、頑張って下さい!」
ネロと別れ、また村をほっつき歩く。
あの男、明らかに怪しいが…俺が言える立場でも無さそうだ。
そんな事を考えながら歩いていると…
「うわーん!」
「…?」
スライム娘の泣き声が聞こえてきた。
「だれかー!」
東の方にある、洞窟っぽい所からだ…!
「…ちっ!」
俺は急いでそこに走り、洞窟に乗り込む。
中は狭いが、毒の沼が広がっている…
「わーん!」
毒の沼の中に、唯一マトモな地面が顔を出している。
そこでスライム娘は立って、助けを呼んでいた。
そして、それを見て歯噛みする兵士…
「うぅ…どうしよう…」
「何があったんだ?」
俺は兵士に声をかけた。
「見ての通りさ…助けに行きたいのはヤマヤマなんだけど…俺のへっぽこな体力では、あそこまでたどり着けないんだ。」
「なんだおめぇ兵士の癖になっさけねぇな…」
「ああ、かわいそうだなぁ…正義感溢れたガッツのある若者が、助けてくれないものか…」
兵士はそう言って、俺の方をチラチラと見る。
「くそっ!」
俺は上半身の服を脱ぎ捨て、毒の沼に飛び込んだ。
肌がピリピリする程度だ。なら行ける!
あっという間に毒沼を泳ぎ切り、スライム娘に手を伸ばす。
「大丈夫か!?」
「ぐすん…」
スライム娘は安心したようで、俺の手をとる。
「俺の体に掴まってろ!」
「うん…」
そしてスライム娘をおぶり、毒沼から助け出した。
「ふぅ〜…」
「や、やるじゃない…」
兵士はそう言って、薬草を持ってきてくれた。
「ああ、サンキュ…」
「わーい、ありがとー!」
スライム娘はヴィクトリーに抱きついて、ぷにぷにと体を揺らした。
「へへへ…」
「あ、もう終わってたか…」
「そのようだな…」
ルカ達が、俺の所に来た。
「いいトコあるじゃない!」
ソニアも居る。
「おめぇら…」
聞いてみれば、これは本来はソニアの仕事だとか。
まぁ、こいつは助かったんだし良いんじゃないかな。
「ねぇねぇ、キミ達について行っていい?あたし、外の世界を冒険してみたいなー!」
スライム娘はそう言って、ルカと俺を見た。
「連れて行ってもいいんじゃねぇか?旅はメンバーが多い方がいいし…」
「スライムというのが頼りないが…」
「そう言うなって。スライムだって、必死に努力すりゃあ魔王を超える事があるかもよ?」
「貴様、余に喧嘩を売ってるのか!?」
「あはは…」
ルカは二人を横目に、スライム娘と握手をする。
「わーい!私はライム、よろしくね!」
「うん、よろしく!」
こうして、スライム娘のライムが仲間に加わった。
「しかし、何とも頼りないパーティだな。余がこんな姿である以上、仕方ないが…」
「もう、ぐだぐた言わないの。さあ、行きましょう!」
ソニアがブツブツ言うアリスを撫でる。
「よし、じゃあ行くぞみんな!」
「ああ!」
「ふふん…」
「そうね!」
「おー!」
ルカは四人を連れ、村を出た…

「まぁ待て、二人共。貴様に過ぎたるモノをくれてやろう。」
村を出た途端、アリスがルカに向かってそう言った。
「過ぎたるモノって…いったい、何をくれるの?」
「見た所貴様は、敵を傷つけるのを恐れるタチだ。そういう者は、往々にして自身の力を振るえん。そこで、この剣を…」
「…!」
俺が妙な気を感じた次の瞬間、時間が止まった!
「…」
ルカ達の近くに現れたのは、ネロだった。
「堕剣エンジェルハイロウは、あまりに危険すぎます…申し訳ありませんが、しばし預からせてもらいますよ。失礼…」
ネロはアリスの道具袋から堕剣エンジェルハイロウを取り上げ、消えてしまった。
そして、時間は動き出す…
「この剣を…あれっ、どこに行った?妙だな、確かに持ってきた筈…」
アリスは道具袋をゴソゴソしている…
「…」
さっきの妙な気、おそらく村で会ったネロって奴だな…
あいつ、一体何を…
「…なくした。」
アリスはルカに渡す剣を無くしてしまったらしい。
「まあまあ、そういう事もあるさ。別にいいよ、僕は…」
「一度やると言ったものを撤回するなど、余の沽券に関わる!同等の価値のあるものをやらねば、余は納得せんぞ!」
「趣旨が変わってんぞ…」
「敵を傷付けて、力が振るえないって話じゃあ…」
「気にするな、全力で叩きのめしてやれ!どうせ魔物というのは頑丈なのだ、そうそう死にはせん!」
そう言いながら、アリスは道具袋をゴソゴソしている…
「そんな大雑把な…」
「無茶苦茶だなぁ…」
「戦意を失った相手を攻撃したりしなければ、大丈夫だ。魔物も命は惜しい、死ぬまで抵抗したりはせん…」
アリスはそこまで言いかけ、目を瞬かせた。
「…おっ、これならどうだ。この品の価値は、堕剣エンジェルハイロウに劣らんぞ。」
そう言って取り出したのは…
「ポケット魔王城〜!」
ボタンの付いた、城のミニチュアだった…
「何だこりゃ?」
「お城の…模型…?」
「ただのミニチュアではないぞ。ほれ、ここのところをポチッと押してみろ。」
ルカは半信半疑で、ポケット魔王城のボタンを押す。
すると、俺達の体がポケット魔王城に吸い込まれた!
「っ!?」
「わわわ、吸い込まれる…!」
そして光に包まれてから、着地した。
「こ、ここは…!?」
「ひょっとして、さっきのミニチュアのお城の中?」
ソニア達も居るようだ。
「らしいな…」
俺は目の前の城を見上げる。
なかなか立派で、綺麗な城だ。
「ふふっ、数千人が収容できる広さはあるぞ。この城を、拠点として使うがいい。」
ソニアもルカと並んで、城を見上げていた。
「すごい…あんたが魔王だって話、信じちゃいそうになっちゃった。」
「だから、余は魔王だというに。さあ、中に入るぞ。」
アリスの言われるままに、一行は城に入る。
内部も立派なもので、すごい広さだった。
「うわぁ、ひろ〜い!」
「はぇ〜…すっげぇおっきいな…」
ソニアと俺の感想が被った。
「戦闘を重ねれば、魔物が仲間になる事もあろう。しかし、たくさんの仲間をゾロゾロ連れ歩く事は出来ん。」
「一度に連れ歩けるのは、八人が限度だろうね。」
「溢れた仲間達を、ここで待機させるってわけか…」
「その通りだ。」
その他にもヴィジョンで出来たメイドさんや、まだ使われていない屋台などがたくさんある。
元のところに出たい場合は、正門を潜ればいいらしい。
案外使い勝手はいいが、ダンジョンでは使えねぇらしい。
「…まぁ、そんな所だな。せいぜい有効活用するがいい。」
「ありがとう、アリス。このお城がいっぱいになるくらい、仲間を集めたいね。」
「そしたら、武道大会みたいなのもやろうぜ!」
「それは流石にやらないとは思うけど…」
ルカは俺に苦笑いした。
「くくっ、せいぜい頑張るのだぞ…」
ポケット魔王城の使い方が分かったので、とりあえず外に出る。
正門から出て、元の所に戻った。
「…ふぅ、ちゃんと戻れたみたいだな。それじゃあ、いよいよ冒険の始まりだ!」
「ああ…わくわくすっぞ!」
冒険に出ようとしたが…
「ねぇルカ、ちゃんと村の人達に挨拶はした?あたしが言うのもなんだけど、ちゃんとした方がいいよ。」
ソニアがそう言って、ルカを止めた。
「うん、そうだね。」
「しょうがねぇなぁ…」
「あたし、毒沼にいた兵隊さんに会いたいな。いっぱい心配してもらったから、ちゃんと挨拶したいの。」
一行は再びイリアスヴィルに戻り、挨拶のついでに準備を進める。
本格的な旅立ちは、まだ遠そうだ…

挨拶をしてたら、道具屋の商人と兵士さんの勧誘があった。
商人の方は『タラスの丘』という所で、相棒の商人が倒れてしまったらしい。それを助けに行ってほしいとの事だ。
兵士の方は『試しの洞窟』とやらで、ルカ達の転職という奴に必要な『勇気の証』を取りに行くらしい。
「おっしゃルカ、商人の方は俺とライムに任せてくれ。」
「じゃあ、僕はアリスとソニアと一緒に『試しの洞窟』に行くよ。」
そういう訳で、俺達は解散してそれぞれの目的地に向かった…
「よーし、がんばるぞ〜!」
「ああ、行こうぜ!」
ライムはお手製のおさかなブーメランとやらを持ち、俺に付いて行く。
俺も走り、『タラスの丘』とやらを目指す。
さてさて、どうなります事やら…

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タラスの丘

綿密な準備を進める、勇者一行達。
ルカ達は転職するために、そして俺達はある商人を救いにタラスの丘にやってきた…
「…ここか。」
「そうだよ〜」
俺の隣にライムが並び、そう言った。
ここはタラスの丘。
何の変哲もないただの丘だが、インプやマンドラゴラといったモンスターが住み着いているらしい。
特にマンドラゴラというモンスターは植物型のモンスターで、引っこ抜こうとすると絶叫する。
その絶叫を聞いた奴は、全身が麻痺して動けなくなってしまうのだ。
…気を付けて進もう。
そう思いながら、俺達はタラスの丘を進み始めた…
「わふー…」
「んぁ?」
声がする方を見ると、そこには犬耳と尻尾を付けた少女が立っていた。
「…!」
少女は俺の顔を見るなり、急に飛びかかってきた!
「っ!」
「あぶないっ!」
ライムのおさかなブーメランが、少女をぶっ飛ばす。
「魔物か…!」
「あいつは犬娘!気をつけて!」
ライムはブーメランを取ってから、構える。
ヴィクトリーも拳を作り、構えた。
「ぐるる…」
犬娘は起き上がり、再び襲いかかってきた!
「だりゃあーっ!」
ヴィクトリーは飛びかかってきた犬娘を蹴り飛ばした!
しかしもう一匹犬娘がやってきて、ヴィクトリーに襲いかかる…
「やぁっ!」
しかしライムのおさかなブーメランが犬娘の顔面にヒットした!
「サンキュー!いや、それより…」
「うん…」
ヴィクトリーとライムは背中を合わせ、構える。
犬娘が一匹ずつ、襲いかかってきたのだ…
「その人を渡しなさい、スライム…」
「私達が、なめなめするんだもん…」
「嫌だよ〜!」
「俺は犬の玩具じゃねぇからな!」
ヴィクトリーの格闘技が犬娘Aに猛攻する!
「っ…!?」
「やぁあっ!!」
そして、渾身の正拳突きを犬娘Aの腹に放った!
「っ!」
犬娘Aはぶっ飛び、岩盤に叩きつけられる。
「きゃうぅん…」
会心の一撃が炸裂し、犬娘Aは気絶してしまった…
「よし…!」
まずは犬娘Aを倒した。
俺はライムの方を見る。
「それそれ〜!」
ライムは器用にブーメランを操りながら戦っているようだ。
「くぅ…!スライムのくせに…!」
「スライムだって、必死に努力すれば強くなれるよ…こんな風にね!」
スライム娘はおさかなブーメランを手に取り、バカッと犬娘Bの脳天に叩きつけた!
「ふぎゃあっ!…くぅん…」
その一撃で、犬娘Bも気絶してしまった…
「わーい!倒したぞー!」
「おう、次に進むぜ。」
戦士達は進み、先を目指す。
「つっても、何処で倒れてるか分かんねぇよな…ライム、おめぇ分かるか?」
「ううん、私も分かんない…」
そうなると、自力で探す他ない。
気の察知でも使えたら楽なんだけど、そんなに甘くは無いらしいな。
序盤だし、まぁ多少はな?
…何が多少なのかは知らんけど。
「…む。」
次に俺達の前に立ちはだかったのは…小悪魔だった。
幼女型だが、胸がやたら発達した小悪魔…
「うぅ…迷っちゃった…ここどこー!?レミちゃーん!ルミちゃーん!」
…どうやら、立ちはだかるでも、邪魔をする訳でも無かったらしい。
ただ迷子になってここまで来ちまったのか…
「君は…インプのラミちゃん!?」
ライムが、小悪魔に向かった。
「ぇ…!?ライムちゃん…!?」
「知り合いなんか?」
「うん。よく遊ぶんだけど…こんな所で何してるの?」
「その…レミちゃんとルミちゃんで冒険ごっこしてたら、迷っちゃって…ふぇーん!」
「…」
何か、これだけ聞いたら可哀想な奴なんだけどな…
「だったら、俺と一緒に来ねぇか?」
「え、ほんと!?」
インプは目を輝かせながら、ヴィクトリーに向いた。
「ああ、正直このメンツだけじゃ不安もあるんだ。三人居れば何とやらって言うだろ?」
「えへへ…キミについていったら、イイ事ありそう!あたしも仲間になるよ!」
「ああ、ついでにルミちゃんとレミちゃんとやらも見つけてやる!」
「わーい!」
インプのラミを保護して、ヴィクトリーは歩を進めた…
と、その時だった。
「あら、若い男がこんな所に…」
「しかも、ちょっと可愛いじゃない…」
「わふぅ…」
マンドラゴラ娘が二体と、犬娘が襲いかかってきた!
「上等ぉ…!」
「よーし、やるぞー!」
「あたしだって、戦えるもん!」
三人は構え、戦闘を開始した。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーの蹴りが、マンドラゴラ娘Aの顔面を蹴り飛ばした!
「っ!」
「隙ありっ…!」
その背後から襲いかかる、マンドラゴラ娘B…
「させないっ!」
しかしライムのブーメランでぶっ飛ばされる。
「はぁあっ!」
「わふー!」
ラミと犬娘は攻防している…
「だりゃああっ!」
ヴィクトリーの渾身の肘打ちが、マンドラゴラ娘Aにヒットした!
「ぐぅうっ…!?」
「はぁあああっ!!」
ぶっ飛ぶマンドラゴラ娘Aに、ヴィクトリーは連続エネルギー弾を放った!
「あ、あぅ…もうダメ…」
マンドラゴラ娘Aは気絶してしまった…
「はぁ…はぁ…!」
やべぇ、今の連続エネルギー弾でパワーを使い果たしちまった…!
「くっ…!」
もう一方のマンドラゴラ娘がライムをぶっ飛ばして、ヴィクトリーに接近する…
「きゃ…!?」
「い や ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !!!」
マンドラゴラ娘は呪いの篭った叫び声を上げた!
次の瞬間、ラミとヴィクトリーの体が麻痺してしまった!
「うぅっ…!?」
「わんっ!」
ラミは犬娘にぶっ飛ばされ、ヴィクトリーの所に向かう。
「くっ…」
動けるのは…ライムだけか!
「くっ!」
ライムは巧みなブーメラン捌きでマンドラゴラ娘達に攻撃するが…
「よっと!」
「わぉんっ!」
避けられてしまい、犬娘に蹴っ飛ばされてしまった。
「くぅうっ!」
「ぅぐ…!!」
ようやく、体が言う事を聞いてくれる。
「はぁっ!」
「わおーん!」
「く、くそ…!」
しかし、二対一では流石に分が悪い。
いつもの癖でぶっ飛ばした後のエネルギー弾連射で、気を使い果たしちまった。
こうなったら…!
ヴィクトリーは剣を抜き、二体を止めた!
「なにっ…!?」
「っ!?」
「はぁあっ!」
そして、剣を薙ぎ払って二体をぶっ飛ばした!
「ぐぁあっ…!」
「け、剣技…!?」
「…」
剣をヒュンヒュンと振ってから、構える。
「あたしも戦えるよ…!」
「あたしだって!」
ライムとラミが並び、構える。
「はぁああっ!」
「やぁーっ!」
「はぁーっ!」
そして三人は突っ込み、二体に猛攻した!
「はーっ!!」
ラミは指先に魔力を集め、犬娘にサンダーを放った!
「やぁーっ!!」
ライムはブーメランで、直接マンドラゴラをぶん殴った!
「あぐっ…!?」
「くぅん…」
犬娘の方は気絶してしまった…
「そ、そんな…」
「ふんっ!」
ヴィクトリーがマンドラゴラ娘の腹に、渾身の飛び蹴りをした!
「っぐぁあ…っ!」
マンドラゴラ娘も気絶してしまった…
魔物の群れを倒した!
「ふぅ…」
俺は息を吐いて、剣を納める。
「ヴィクトリーって凄いんだね。格闘も強くて、剣技まで使えるなんて…」
ライムもブーメランをしまいながら、そう言う。
「剣技の方は少し齧っただけさ。それにしても…」
ヴィクトリーはラミの方を向く。
「おめぇ、なかなかつえぇじゃねぇか!さっきの魔法みてぇな奴、すげぇ威力だったぞ!」
「えへへ、黒魔法は勉強したんだ。これで大体の敵なら倒せるもんね!」
一行は臨戦態勢を解いて、先に進んだ。
そして…遠くに、倒れている商人を見た。
「…あれか。」
俺は走って、その商人を揺する。
「おい、大丈夫か?」
「ううう…マンドラゴラの叫びを聞いて…」
商人がそう言った時、横から一体のマンドラゴラが現れた。
「その人間、あたしを引っこ抜いちゃったのよ。それで叫び声を聞いて、ダウンしちゃったってわけ。仕方ないから、他の魔物に襲われないよう見張ってるの。私、けっこう面倒見がいいと思わない?」
「なるほど…サンキューな。」
ヴィクトリーはそう言いながら、商人を揺すった。
「ま、満月草を…」
「満月草…」
確か、この依頼を受ける時に貰っていた気がするな…
「これか。」
俺は袋から満月草を取り出した。
「…それで、どうやって使うんだ?」
「え、知らないの…?あたしに任せて!」
「あたしも手伝うよ!」
俺はとりあえず、ライムとラミに満月草を渡す。
そして、二人は満月草を使った。
…この世界では、薬草の扱い方は常識なのか。
「おお、体が…!」
満月草は麻痺に有効らしく、商人の全身の麻痺がたちまち解けていったようだ。
「ありがとうございました!この通り、すっかり良くなりました!」
「ああ、おめぇの知り合いみてぇな奴に頼まれてよ。魔物に襲われてたらどうしようか考えてたけど、これで安心みてぇだな。」
「…なるほど、救助に来て下さったのですか。では村の道具屋に、お礼の品を受け取りに来て下さい。それでは、お先に!」
商人はそう言って、スタコラサッサと走って行った…
これで依頼完了だ。
「よっしゃ、俺達もイリアスヴィルに戻るぜ。」
「うん!」
「ルミちゃんやレミちゃん、大丈夫かなぁ…」
俺達も依頼を終えたと言うことで、イリアスヴィルに戻った…

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準備完了!そうさ今こそアドベンチャー!

イリアスヴィルに帰ってきたヴィクトリー一行。
道具屋で、商人と話をする事になった。
「いやぁ、助かりました。あなたは、私の命の恩人です。」
「ラミやライムにもお礼してやれよ。俺だけじゃ薬草の使い方分かんなくてどうなってたか…」
「さて、お礼の品ですが…どれがよろしいでしょうか?」
隣に居た商人仲間が、三つのアイテムを出してきた。
銅の剣と、500Gと、営業許可書みたいなもの…
「いや、お礼なんていいよ…カネならあるし、剣もあるし、商人って感じでもねぇし…」
俺はそう言うが、商人は笑い…
「そうですか…では、全部差し上げましょう。」
「ええっ!?いいんかぁ!?」
「ええ、遠慮せずに。」
俺はそう言いながら、銅の剣と500Gと営業許可書を貰った。
…というより、その手に握らされた。
この営業許可書は商人ギルドに加盟した証で、これさえあれば商人に転職出来るらしい。
「この恩は、決して忘れません。もし商売に関する悩みがあれば、ご相談ください。」
「さ、サンキュー!」
こうして依頼も完了したので、外に出た…
「よし、次はラミのお友達探しだな。」
「さがすぞー!」
ラミはくんくんと鼻を鳴らし、笑う。
「どうやら、この村に二人共いるみたいだよ。淫魔の気を感じるもん!」
「…」
…それって、おめぇだけ置いてかれてそいつらがとっととこの村に帰ったんじゃ…
そんな事を思いながら、歩いていると…
「くたー」
「?」
畑の方から、そんな声が聞こえた。
畑に向かい、その声の主の前に立った。
白髪の、ぐったりした幼女だ。
「くたー」
「…おめぇ、そんな所で何してんだ?」
「………」
話していたら、農婦のおばさんがやってくる。
「最近、畑に居座ってるんだよ。村の外に捨てても、すぐ戻ってくるんだ…」
「…もしゃもしゃ。」
幼女は、畑のいちごを食べてる…
「ああもう、またイチゴを勝手に食べて!あんたルカのお友達かい?なんとかしておくれよ。」
「そう言われても、俺には…」
ヴィクトリーも畑のいちごを食べていた。
「って、あんたも食うなっ!!」
農婦のおばさんの飛び蹴りが、俺のボディにクリーンヒットした!
「うわぁあああああっ!!」
俺はぶっ飛び、壁に叩きつけられた。
「わーっ!ヴィクトリーっ!」
ライムは俺の所に駆けつけ、薬草を使う…
ラミはというと…
「ルミちゃ〜ん!」
白髪の幼女に、話しかけていた。
どうやら、例のお友達だったらしい。
「こんなところにいたんだね。さぁ、このヒトと一緒に冒険しようよ!」
「…うん。」
インプのルミも仲間に加わった!
「ありがとう、助かったよ。お礼にこれでも持っていきな。」
「わ〜い!」
ラミは、にんじんとレタスを受け取る。
にんじんとレタス…神精樹の誕生か?
「さぁ、あと一人いるんだよ!付いてきて!」
「分かんのか?」
「うん!」
いつの間にかラミが先頭に立って、俺達がついて行く形をとっていた。
「…このパーティのリーダーって、ヴィクトリーじゃないの?」
「そんなもん決めてねぇからな…ははは…」
ライムとそんな会話を交わしながら、ラミについていく。
次に向かったのは、東の地下倉庫だった。
牢屋のような部屋になっていて、カギが必要そうだ。
「おどおど…」
いた。
何故か、鍵のかかった倉庫の中に。
紫色の髪をした、インプだ。
「レミちゃ〜ん!」
「…!!」
「こんなところに居たんだね。さあ、この人と一緒に冒険しようよ!」
「…こくん。」
インプのレミも仲間に加わろうとしたが…
「うーん、これじゃあレミちゃんが外に出られない…」
「おどおど…」
「カギは無いよね…どうしたら…」
「レミとやら、そっから離れろ。」
「…?」
レミはヴィクトリーの言う通り、部屋の左隅に離れる。
「たぁっ!!」
ヴィクトリーは牢を蹴り破った!
ガシャアンッと牢が壁に叩きつけられ、倒れた…
「びくぅっ!!」
大きな音が鳴ったせいで、レミはびくびくしてしまった…
「あ、悪ぃ悪ぃ…」
「大丈夫だよ!おいで!」
「…」
ラミの声で、レミは俺の後ろについた。
「これで全員か?」
「うん!あたし達が揃えば、百人力だよ!」
「くたー」
「おどおど…」
ラミとルミとレミは並び、決めポーズらしきものをとった!
「…」
「…」
そうは見えねぇけどな…
でも、居ないよりはマシだよ。
次の瞬間だった。
「っ!!」
頭痛…と共に、様々なビジョンが浮かんだ。
ほくそ笑む羽を生やした女…気味の悪い魔法陣…十分の一は消し飛んだ山…
「うっぐぅう…!?」
「ヴィクトリーっ!?」
「だ、大丈夫!?」
「……」
「おどおど……」
インプと、ルミとレミ…
こいつらの姿が引き金になったようだ。
「だ、大丈夫さ……いてて……」
頭痛は例の如く秒で収まり、大丈夫な状態になってくれた。
「……」
ライムは心配そうに、俺の背中を撫でてくれる。
「……」
この世界に入ってから、何故だか知らんけどこの手の頭痛が頻繁に起きるなぁ……
くっそ……それにしても、あのビジョンはなんだ?
「ヴィクトリー?」
「ぉん?」
声の方を向くと、ルカが居た。
「すごい音がすると思ったら、やっぱりお前だったのか……」
「そ、倉庫の扉が……」
ソニア達も居る。
どうやらルカも、無事に兵士になれたらしい。
「それにしても、お前の方も随分と賑やかになってきたな…」
「『お前の方も』…?」
「うん、僕も仲間が増えたんだよ。」
ルカはそう言いながら、メンバーを呼ぶ。
ナメクジ娘と、裏山で会ったバニースライムだ…
「私はメルク……よろしくね。」
「私はバニースライムのうさだ!うさうさー!」
「はぇ〜……」
どうやらルカの方も、道中で魔物をスカウトしていたらしい。
なるほど、何だかこの冒険のやり方が分かってきた気がするぞ。
「それよりヴィクトリー、倉庫のものを取りに来たのか?」
「いや、色々ワケはあるんだけどよ……そんなものを取りに来たワケじゃねぇってだけ言っておく。」
俺はそう言いながら、レミの頭をぽんぽんして撫でた。
「まぁ何でもいいけど、カギなら僕が持ってるよ。」
「てめぇ、もうちょい早く来いよ……」
「ご、ごめん……」
ルカの話によると、村長さんに倉庫のカギを渡されたらしい。
この倉庫にあるものは好きに使っていいとの事だ。
なぜ今になってここに来たのかと言うと、本格的な準備に入るからだと言う。
「マジかよ……」
「早速、使えそうなものを取るぞ。早くしろ、ルカ。」
何故かアリスがルカに命令する。
「はいはい…」
ルカは生返事をしながら、倉庫の扉を開けていった。
ハードジョブリスト、雷石、退魔の指輪、120G、霊薬などが手に入った。
「よし、僕の宿で一回休憩しよう。」
「おう、行こうぜ。」
一行は地下倉庫から出て、ルカの宿に行く。
「薬草は買い足したか?」
「はーい!」
薬草はライムが沢山買ってくれたようだ。
「水はあるか?」
「バッチリよ。」
メルクが、水筒を全員分配給する。
「食料はあるか?」
「アリス、まだ食べちゃダメだよ。」
「食うかッ!」
食料は、ルカが管理してくれるようだ。
「野宿は?」
「テントがあるわ。」
ソニアが、テントを持っているようだ。
「テント立ては私達に任せてね!」
「くたー」
「おどおど…」
人員も、足りている…
心もとないが…居ないよりはマシだ。
「よしみんな、準備はいいか!?」
「おぉっ!!」
「バッチリよ!」
「余も元気満タンだ!」
遂に、本格的な旅立ちが始まる。
綿密な準備を終えて、一行は旅立つのだ。
この世界の為にも、そしてイリアス様の声に応える為にも…
俺達は、この旅を成功させなきゃなんねぇ!
「よし、行くぞっ!!」
「おぉーっ!!」
満を持して、一行は遂に旅立った。
果たして、何が一行を待ち受けているのか…
そして、この旅の果てにあるものとは…!?
思い思いの事を胸に、一行はイリアスヴィルを発ったのだった…



もんぱら中章のPVが来るらしいっすよ。
みんな見とけよ見とけよ〜!


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野営

遂に、本格的な旅立ちをした一行達。
しかし、準備に時間を食いすぎたのか夕暮れはあっという間に訪れた。
「そろそろ日が暮れてきたな……」
俺の声で、ルカは空を見上げる。
「そうだね…野営の準備をしなきゃ。」
「それじゃあ、テント建てるね。ルカは、料理の方をお願い。」
「ソニア、手伝うぜ。」
俺とソニアは、早速テントの準備をした。
「それでは、余はメシを食う係をしよう。くくく、夕食が楽しみだな……」
アリスはそう言いながら、腕を組んで木に寄りかかった。
「手伝う気はないんだね……」

「ご馳走さま〜!」
テントを張り、ルカが作った夕食を食ってからようやく俺はリラックスした。
「流石は宿屋の息子、実に美味い夕食だった。貴様を共に選んだ余の選択、正しかったようだな……」
「て、照れるなぁ……」
ルカは頭を掻きながら、アリスに笑った。
「……」
就寝するにはまだ早い。
俺はとりあえず、ルカとアリスが話しているのを聞いてみた。
明日は、イリアスベルクとやらに向かうらしい。
大きい街だから、情報も集まるかも知れない。
何より、アリスをあんな姿にした白いウサギの消息も気になる所だ。
「ともかく、四天王からも連絡が無いのは妙だな。グランべリアあたり、馳せ参じてもおかしくはあるまい。」
「グランべリアって、あの魔剣士グランべリアだよね…」
「……」
後で聞いてみると、この世界では知らねぇ奴は居ないほどのすげぇ剣士らしい。
アリスがホントに魔王ならば、そいつすら部下になるのか……
「まさか連中も、子供に戻されたわけではあるまい……あのウサギは、アリスを導くための魔術と言っていたからな……『アリス』とは、すなわち魔王の異名だが……それを導くとは、どういう事だ?アリスを導く白ウサギ……そう言えば、そんな伝承をたまもから聞いた気も……」
「不思議の国のアリス。」
俺は、無意識にそう呟いていた。
「……ほう?」
「なんだ、それ……?」
「アリスって少女が、白ウサギを追いかけて不思議の世界に迷い込んじまう昔話さ。俺の世界の童話だ。」
「貴様の世界の……?どういう事だ?」
「あ、アリスにはまだ説明してなかったな……」
俺は、いままでここに至る経緯を説明した……
「前の世界で悪魔と相打ちになって死んで、イリアスにここに連れてこられただと!?」
「ああ……どうやら、俺の有り余る好奇心が異界入りってのをしちまったみてぇなんだ。」
「にわかには信じられんな……」
「じゃあこいつを見れば嫌でも信じるさ。」
俺はそう言いながらホイポイカプセルを投げる。
すると、カプセルが冷蔵庫になった!
「なん……だと……!?」
「えっ……!?」
「何だこれ……!?」
アリスもソニアもルカも、食い気味になって冷蔵庫を見る。
俺は冷蔵庫を開け、コーラを取り出した。
「ルカの村の感じとかを見てると、ここはまだそんなに技術が発達してねぇ時代みてぇなんだけど…俺の世界は違うんだ。」
コーラを飲みながら、俺はそう言う。
「その黒い液体……美味しいのか……?」
「うめぇぞ。飲んでみるか?」
俺はアリスにコーラを渡す。
「……ごくり。」
アリスは息を飲みながら、コーラを口にした……
「……うまい……」
「へへへ、話を戻すぜ。」
俺は咳をついて、アリスからコーラを返してもらった。
「不思議の国のアリス……今のおめぇと似たような状況だとは思わねぇか?」
「……白ウサギを追いかけて、不思議の世界に……か。」
アリスは考え込んでから…顔を上げた。
「まぁ、後々分かってくると思うが……その童話の事は参考にさせて貰うぞ。」
「そう言えば、あの天使はどうなの?」
ルカが、いきなりそんな事を言ってきた。
「あの天使……?」
「ほら、裏山で倒れてた……」
「ああ……」
あのヤムチャみてぇなポーズとってたあいつか。
「非常に笑える事に、あれは間違いなくイリアス本人だ。神殿に降臨したヴィジョンと、その姿はそっくりだっただろう?」
アリスはそう言いながら、ほくそ笑んでいた……
「まさか、本当に……イリアス様が、あんなお姿に……」
「でも、どうしてだ?これも例のウサギの仕業か?」
「いや……あれはおそらく、()()()()()。あの呪縛の影響で、ああなってしまったのだろうな。」
「六祖大縛呪……っ!!」
その言葉を聞いた瞬間、また頭痛が走った。
小さくなったアリス、謎の研究所、赤髪の白衣の女…
それらのヴィジョンが、一気に頭に流れ込んできたのだ。
「ヴィクトリー……また頭痛か?」
「ああ……いや、前の世界に居た時は、こんなんじゃなかったんだけどな……偏頭痛持ちなんかな、俺……」
ヴィクトリーは頭をブンブンと振りながら、アリスに向く。
「とにかく、その六祖大縛呪ってのがイリアス様をあんな姿にしちまったんだな……」
「ああ……イリアスが封印されたのは、おそらく30年前だな。」
「大異変の日か……」
「大異変?」
聞いてみると、その日は天変地異が多発しまくったらしい。
そして、各地に大きな穴が空いたとか……
それも、30年前にイリアスが封じられたからか……?
「30年が経ち、あのような姿でようやく脱出できた……しかし力も記憶も欠損し、あのザマという訳だ。問題は、いったい誰がイリアスを封じたかという事だ。まさか、邪神様が復活されたわけでもなし……」
「邪神……?」
「それって、聖魔大戦の……?」
「邪神様が復活されたなら、高らかに宣言がなされるはず。魔王たる余が、全く知らないという事などありえん。分からん、いったい何がどうなっているのだ……?」
俺は考えてから……拳を握った。
「結局、そのウサギとやらに聞くのが一番早い気がするぜ。」
「そうだよ。」
ルカも、俺の意見に便乗してきた。
「そのウサギ、アリスを導くとか言ったんだろ?それなら、またコンタクトしてくる可能性も高いよ。」
「確かにそうだが……大人しく、導かれてやるのも腹が立つな。」
アリスはそう言ってから、二人に向かった。
「それより、貴様らはいいのか?貴様らの旅の目的は、ルカの父親を探す事なのだろう?」
「もちろん、それが第一の目的だけどね。旅の途中で困ってる人や魔物は、ぜひ助けたいんだ。それに……父さんの旅の目的も、どこかで繋がってる。ただの予感だけど、そんな気がするんだ。」
「俺は強くなりてぇし、戦いてぇ。それがありゃいい。」
「戦闘狂か貴様は……」
「いや……もちろん困ってる人も助けてぇし、悪い奴が居たらぶっ飛ばしてやりてぇんだ!」
それに……この世界に着いてからの頭痛の正体が知りてぇ。
突発的に来る、数秒の頭痛……それと共に浮かぶ、謎のヴィジョン……
いったい、これらは何を意味してんだ……?
「ならば、しばらくは付き合ってもらうぞ。道すがら、ルカの父の情報も集まるかもしれんな。」
「ああ、宜しくね!」
ルカの父親探し、アリスのウサギ探し、そして俺の謎探し……
この三つは、確実に繋がる気がした……
「ねぇ、ルカ……」
「ん、ソニア?」
ソニアが、ルカに話しかけてきた。
俺はその話に聞き耳を立ててみる。
ソニアは幼い頃に、裏山でスライムに囲われて困っていた事があった。
それを、誰よりも早く助けに来たのがルカだった。
ちなみになんで裏山に入ったかと言うと、ルカのあとをついて行ったら勝手に迷っちまったらしい……
「でもね…こうして二人で夜空を見てると、あの時の事を思い出しちゃった。」
ソニアはそう呟き、夜空を見上げた……
「……二人!?」
「あたしもいるよ〜!」
「俺もいるぜ……」
こんな感じで、話は終わった。
「まだ寝るには早いな……剣の素振りでもするか。」
ルカの方は修行に入るらしい。
「貴様の剣は、なかなかへっぽこだな。いったい、誰に教わったのだ?」
「誰にも教わってない我流だよ。ラザロおじさんも、剣を教えてくれなかったし……」
「私は、おじさんから棍術を教わったんだけどね。」
連中が話してる隙に、俺は自分の修行に入る。
「……」
まずは、あの時のステータスや技を取り戻す必要がありそうだ。
「……はぁっ!!」
ドシュウッと、オーラが吹き出た!
「っ!?」
「きゃっ!?」
「なにっ……!?」
「……なんだと?」
来て一日目までは、こんな事出来なかった。
基礎的な体力は三日で取り戻したとはいえ、こうまで気の扱いを取り戻す事は難しい筈だ。
よくよく考えたら、タラスの丘でやったあのエネルギー弾連射もおかしいんだ。
なんでこうまで、気を扱える……?
「ヴィクトリー……お前、魔法使いでもあるのか……?」
「魔法使い……?」
俺はルカの話を思い出す。
大異変の日から大気中の聖素や魔素が濃くなって、一般人でも魔法が使えるようになったとか……
……どうやら、その影響らしいな……
「丁度いい……ヴィクトリー、余の魔法も教わってみないか?」
「いや、俺は自分で引き出しがあるからいいよ……」
「そうか……残念だ。」
アリスとルカは、剣技の修行に入った。
そして、俺も自分の修行に入った……
「よし、かめはめ波から初めてみっか!」
かめはめ波……
ドラゴンボールを知っているならば、聞いたことぐらいはあるだろう。
全身のエネルギーを一点に集中させ、それを撃ち放つ技だ。
俺は構え、エネルギーを掌に集中させた。
「か……め……は……め……波っ!」
そして、手を突き出す。
すると、ライターの火ほどのエネルギーがボッと吹き出た。
「これじゃあダメだ……」
当然、こんなんじゃ実戦に使えない。
「よーし……続けてみっか!」
俺の修行は、遅くまで続いた…

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白兎、参上!

朝……
野営を終え、旅を続ける一行達。
「なんでポケット魔王城があんのに、野営なんてするんだ?」
「知らん。」
俺のツッコミを、アリスが一蹴する。
「所でルカ、修行はうまくいったんか?」
「うん。剣技を一つだけ覚える事が出来たよ。お前は?」
「俺はうまくいかなかったなぁ……へへへ。」
まぁ、だいぶ感覚は取り戻してきたからよしとしよう。
これなら、比較的遠慮なくやれるはずだ。
そんな事を話していると、目の前に街が見えてきた。
「あれか。」
「そうだよ。」
イリアスベルク……
この大陸で、一番大きい街だそうだ。
サザーランドにあまあまだんごという名物があるみてぇだ。
何より、人が沢山来る所でもある。
ルカの父親の事や、アリスの言うウサギの情報が入ればいいが……
一行は、イリアスベルクに入った……

「待て、二人共。」
入った瞬間、アリスが俺たちを呼び止めた。
「……妙な気配がするぞ。この気配は、まさか……」
アリスが、そこまで言った時だった。
「ばばーん!」
不意に、謎の女が現れた!
白いシルクハットを被った、青髪にウサギの耳を生やしていて、白いマントを羽織った…妖魔…?
「グランべリアじゃなくて、びっくりした?残念、ボクでしたー!」
「な、なんだてめぇはっ!?」
「き、貴様……あの時のウサギではないか……!」
「えっ!?それってまさか、目的のウサギ……?」
「うそ……こんな、いきなり?」
ルカとソニアが、鳩が豆鉄砲くらったような顔をする。
一方、アリスは怒りに目を染めていた……
「情報を集める気で居たのに、真っ先に本人が現れるとは……おのれ、ふざけたウサギめ!」
「まあまあ、そう熱くならないでよー。ボクは魔王サマを導く役割なんだからさぁ。」
そう言いながら、けたけた笑う白の兎……
そいつにルカが、前に出てきた。
「アリスを、元に戻せ!」
「イヤだよー。その可愛いカッコで、追いかけてくるのがいいんだもん。」
「ふざけるな!余がどれだけ苦労したのか、分かっているのか!」
「それがいいんじゃない。これからも、もっともっと苦労してもらおっかなー?」
「………」
気を感じねぇ。
あの白いウサギから、気を微塵も感じねぇんだ。
この現象、心当たりがある……確か……
「ビルス様?」
白の兎はそう言って、俺に笑った。
「なんっ……!?」
「あははー、ボクにだって心を読むことが出来るんだよ。そのビルス様とやら、とってもこわーい破壊神みたいだねー。ん?ボクが何者かって?んー…白兎って呼べばいいんじゃないかな。」
「っ……っ……!!」
心が、ことごとく読まれてる……!?
っくそ……!!
「ええい、何をわけの分からないことをベラベラと!とっとと余を元に戻せ!!」
「これは、魔王に与えられた試練……この試練を乗り越えてこそ、魔王は根源に至るのだ……」
「なんだと……?」
白兎は、にぱっと笑った。
「……ウソぴょん、それっぽいコト言ってみただけ。」
「おのれ、どこまでもコケにしおって……!」
「とにかく、まだまだ元に戻す気はないよ。何なら、腕尽くでやってみる?」
……こんな所で戦っても、意味ねぇ事ぐらい明白だ。
そもそも、今の俺達が腕尽くでどうにかなる相手でも無さそうだ……
「おお、君は意外と賢いんだねぇ。」
「…おめぇの目的はなんだ?」
白兎が俺の方を向いたんで、質問してみた。
「それ、さっき言ったじゃない。ボクの役割は、魔王サマを導くコトだよ。」
「なぜ余が導かれなければならん?そもそも、貴様は何者なのだ……!?」
「アリスと白兎の話、聞いてないのぉ?玉藻ちゃんったら、何を教えてんだか……ちなみに、ボクは六祖じゃないからね。」
「六祖……というと、あの伝説の?それに貴様、たまもと面識があるのか?」
アリスがそう言うと、白兎は呆れたように頭を抱えた。
「あ〜あ〜あ〜、まだそのレベル?しかもボク、片っ端からボロ出しちゃってる?……まぁいいや、これ以上はヒ・ミ・ツ。」
「……」
俺が、『なぜグランべリアの話を?』と聞こうとした時だった。
()()()()()()()()()()()()()…」
白兎がそう言った、次の瞬間だった。
「っ!!」
「……ッ!?」
「どうしたの、二人共!大丈夫……?」
ソニアが、俺達を心配してくれた。
それはともかく、例の頭痛がまた俺の頭を撃ち抜いた。
そして、浮かんだヴィジョンは……
ぶっ飛ばされる自称勇者、逃げる腰抜け、火の力を使う竜人の剣士……
どうやら、ルカにも同じものが見えているらしい。
「……ありゃ?ルカ君にも微妙にリンクしちゃった?それにしても二人共、生身なのに器用な事するね〜。やっぱり、特別製は違うね〜。」
「どういう事なんだ?」
「あの幻は、いったい何なんだよ……」
「キミ達に見えたヴィジョンは、幻であって幻じゃない。確かな現実であって、キミ達にとっては現実じゃない……でもこれから先、その全てが胡乱になっていくのさ。何もかもが入り交じった、混沌の世界が訪れる……ヴィクトリー君には、『ゼノバース』と説明した方が分かりやすいかな?」
「ッッ!!」
ゼノバース……だと……!?
ゼノバース……
未来も過去も歪み、物語が崩壊していく……
そんな事が、今から起きようとしているのか……!?
「ええい、もっと分かるように説明しろ!」
「ボクはアリスを導くだけ……説明する役割じゃないよう。」
「ぐぬぬ…ならば、腕尽くで聞き出すまでだ!覚悟しろ、いんちきウサギめ!ボコボコに叩きのめして、泣かしてやる!」
アリスはレイピアを出して、構えた。
「少し乱暴だけど、しょうがないなぁ……」
ルカも剣を抜いて、構える。
「あんた悪者っぽいから、遠慮なくやっちゃっていいよね。知ってること、全部吐かせてやるから…!」
ソニアまで、棍棒を抜いて振り回してから構えた。
「ま、待てみんな!!やるだけ無駄だ!!待てったら……!!」
俺の静止も聞かず、みんな戦闘態勢に入った。
「それじゃあ、このウサギが相手をしよう……えっと、F10357X942Y772からコピーして…貼り付けっ!」
白兎がそう言うと、みんなが消えてしまった!
「え……!?ルカ!?アリス!?ソニア!?み、みんなーっ!!」
「むふふ……今頃、君の仲間はボクの代わりと戦ってる頃さ……それにしても……」
白兎は、俺の顔をまじまじと見る。
「君は、正史には居なかった存在であり……もう一つの正史には存在していた。なのに、その正史は異変一つ起きてなかった……」
「え……!?」
「あの正史は分岐して、キミが死んでからルカ君が平和を築いた世界と、キミが生存してルカ君達と力を合わせてイリアスを倒し、キミはエデンという熾天使とくっついて平和になった世界がある……明らかにパラドックスの筈だよ。」
……何を言ってんのか、サッパリだ。
「……なのに、その世界にはタルタロスなんて発生しなかった……何でだろうねぇ?」
「タルタロス……?」
「キミの存在は、本来ならば第三種断界接触なんだけど……なのに、カオス化は進行していない。それに、この物語にも目立つ異常は発生していない……何故かって……?それはキミがルカ君とはひと味違うタイプの、『特別製』だからだよ……」
「……」
「まぁ、要するに…」
白兎は気さくに、俺の肩に顎を乗せて笑った。
「彼らの為に頑張ってあげてよ。この世界は、キミ無しじゃダメみたいだからさ。」
そう言い、俺の頬をぷにぷにとつっついた。
「……」
逆らえねぇ。
ウザイのに、こいつにだけは手出しするなと本能が騒いでいるのだ。
「ウザイとは心外だなぁ。ああ、あと……」
「まだあんのかよ……」
「キミが死んだ未来……どうも、全てが終わった後にキミの死体が消えたそうなんだ。何でだろうねぇ……?」
「知るかよ……自分の死体なんて、想像したくもねぇやい。」
「まぁ、警戒はしておいてね。何かあると、ヤバいからさ……さて、そろそろかな。」
白兎がそう言うと、いきなりみんなが現れた!
「わっ……!?」
「むきゅう……いきなり変な連中にボコボコにされたよう……」
白兎の横には、ボコボコになったバニースライムが居る。
「あははっ、ウサギ違いだったね〜♪もう、元の世界に戻っていいよ。」
「むぎゅう……」
バニースライムは、消えていった……
「貴様、いったい何をした……!?今のはなんだ……!?」
「今の、あたしだったよ!どうしてらあたしが二人もいるのぉ!?」
ソニアの後ろに、うさが居た。
「今のもまた、現実であって現実ではない……少なくとも、ここではね。」
白兎はそう言って笑い、背中を向けた。
「それじゃあ、そろそろ本当にボクは行くよ。アリスちゃん、頑張って追いかけて来てね〜。」
「待て、まだ話は……」
「はっきり言って、ボクに追いつけない程度だったら……終わってるよ。キミも、この世界も。」
白兎はドスの効いた声で、アリスを止めた。
その後、普通に笑顔を見せる。
「それじゃあね〜♪」
そして、消え去った……
「くっ、逃がしたか……!」
「あやしいウサギだったね。いったい、何を企んでいるのか……」
「ほんと、予想以上に食えない感じ……よく分からないけど、あれが黒幕じゃないの?」
「……」
違うと思う。
あいつは黒幕なんかじゃねぇと思う……多分。
「まだ追いつけるかもしれん。町を捜索するぞ。住民に話を聞き、情報を集めるのも忘れるな。あと、老舗の宿『サザーランド』では『あまあまだんご』が美味いらしいぞ……」
アリスはそう言いながら、よだれを垂らしていた。
「そんな場合じゃないだろ……」
「そんな場合でもねぇだろ……」
俺とルカのツッコミが、見事に被った……
「……ん?」
ルカが、地面にある目をつけた。
「なんだ?」
「これ……」
拾って見せてきたのは、鍵だった。
白兎が落としたのか……?
「何をしている、二人共?何か落ちてきたのか……?」
「いや、鍵が落ちてたんだよ。」
「ほら、これ。どこの鍵なんだろう……」
ルカはそう言いながら、アリスに鍵を見せた。
「鍵だと?何も持ってないではないか……」
「えっ!?そんな、まさか……この鍵が見えていない……!?」
「なんだと……!?」
どうやら、俺達にしか目視できねぇ鍵を見つけてしまったらしい。
なんで、白兎がこんなモノを……?
とにかく、今はアイツを追いかける為にも情報を集めねぇといけねぇ。
果たして、どうなるのか…

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■突!魔■■賊団■

イリアスベルクにて……
白兎がいきなり現れて、そして俺に色々言って消えていった。
あいつは、いったい……
それはともかく、情報収集してる最中に面白い事件が起こった。
「情報屋が、魔物盗賊団に攫われた?」
「ああ……」
凄く急展開だし、ここまでの経緯を凄く省いてしまった。
それはともかく、魔物盗賊団……
イリナ山地にアジトを構える、小規模な魔物盗賊団だとか。
しかしその中にはドラゴンや、ヴァンパイアも居るらしい。
「そりゃあおっかねぇ。とっとと退治して、この町を守んねぇとな。」
「うん、行こう。」
一行はイリアスベルクで装備を整え、イリナ山地に向かったのだった…

「……ここか。」
イリナ山地、北……
そこには、アジトには丁度良さそうな洞窟があった。
「おかしいわね……」
「ああ……」
ソニアが不意にそう呟き、アリスが頷いた。
「何がおかしいんだ?」
「いや、相手は盗賊団なんでしょ?だったら、周辺に部下とか居てもいい筈……」
「なのに、部下らしき敵は見当たらん……」
「小規模っつってたしなぁ……」
「何人かで徒党を組んでるだけかもね。」
そんな会話をしながら、一行は盗賊団のアジトに乗り込んだ!
「何だ、オマエ!ここはボク達のアジトだぞ!」
まず最初に迎えたのは、ハンマーを持ったゴブリン娘だった。
「おめぇが盗賊団か!?」
「いかにも!ボクは盗賊団四天王の一人、ゴブリン!」
「四天王って……この子、盗賊団の幹部?こんなんだけど、実はとっても強いの?」
ソニアの声に、ゴブリンはふふんと笑う。
「ほら、見てみろ。ボク達に逆らうと、お前達もああなるんだぞ!」
ゴブリンが指した先……
そこには、墓が並んでいた。
「ウソでしょ……お墓!?この子、見た目以上に凶悪なの!?」
「びくびく……」
レミが、ラミに抱きついてビクビクしている……
同じ魔物がこうなるってことは、どうやらマジのようだな……
「分かったら、早く金目のものを出しちゃえ〜!」
「断る、僕達は勇者なんだ!お前達をこらしめ、情報屋を返してもらう!」
ルカ達は構え、臨戦態勢に入った。
「あら、ゴブリン娘一人じゃ無理そうね……」
「我らも参戦するぞ……」
「うがー!」
ゴブリン娘の背後から、プチラミアとヴァンパイアガールとドラゴンパピーが出てきた。
「……」
「……」
全員、ちっちゃいぞ。
まさか、盗賊団はこいつで全員とか言わねぇよな……?
「ボクは土のゴブ!」
ゴブリンが、ハンマーを構えた。
「私は水のプチ!」
プチラミアが、魔力を解放して構えた。
「我は風のヴァニラ!」
ヴァンパイアガールも、魔力を解放して構える。
「火のパピなのだ!」
ドラゴンパピーはそう言って咆哮してから、地に踏ん張る。
「全員合わせて、盗賊団四天王!!」
四体はちゃきーんとポーズを決め、気を解放した!
「……」
「……いくぞっ!!」
戦うのは、俺とルカとソニアとアリスだ。
控えにはラミ、レミ、ルミ、うさが居る。
まぁ、いけるだろ!
「はぁあっ!!」
俺はゴブに、ルカはプチに、ソニアはヴァニラに、アリスはパピに向かった!
「だだだっ!」
ヴィクトリーはエネルギー弾を放った!
しかしゴブは跳び避け、ハンマーを振り下ろしてくる!
「ふんぬっ!!」
ヴィクトリーはそれを受け止める。
しかしあまりの威力に、跪いてしまった。
「ぐ……!!」
ヴィクトリーはその状態のまんま、ゴブに足払いした!
「うわっ!?」
「どっせい!!」
そしてハンマーを押し返し、ゴブの土出っ腹に後蹴りしてぶっ飛ばした!
「うぐっ……!?」
「だぁあっ!!」
更にエネルギー弾を連射してダメ押しした!
「ぐえぇーっ!」
この勢いなら、力押しできる…
ルカの方は……
「はぁあっ!!」
剣技で、プチに猛攻していた。
「くっ……!!」
プチは蛇体をしならせ、そこら辺を薙ぎ払った!
ルカは倒れるようにそれを避ける。
そして、プチの懐に踏み込んだ。
「っ……!!」
「魔剣・首刈りっ!!」
そのプチの喉元を突き上げ、体を打ち上げた!
「ぐえぇっ……!!」
「はぁあっ!」
更に後ろ回し蹴りで、プチを蹴り飛ばす!
「よし……!」
ルカの方も、順調みたいだ。
「はぁーっ!!」
「ふははは!」
ソニアは棍を振り回しながら、無数のコウモリの叩き落としていた。
そして全て叩き落としてから、ヴァニラの方を見た。
「そこだっ!!」
ヴァニラはそのソニアに、エネルギー波を放った!
「くっ!」
ソニアは棍をバットのように持ち、エネルギー波を弾き返した!
「なにっ!?」
ヴァニラは飛んで、それを避けるが……
「はぁあーっ!!」
ソニアも跳び上がり、ヴァニラの体を一突きしてぶっ飛ばした!
「ぐぉおっ!」
「ふふんだ!舐めないでよね!」
ソニアの方も、大丈夫そうだ。
「はぁあっ!!」
「うがーっ!!」
アリスとパピが、拳でぼかぼかと殴り合っている。
僅かに、アリスが力負けしているようだ……
「くらえーっ!」
「くっ!」
パピは火炎の玉を吐いた!
アリスはそれを避けて、レイピアを抜く。
「むっ!?」
「チャージ……はぁっ!!」
そして、力を込めた突きを放った!
「うわっ……!!」
パピはそれに直撃し、ぶっ飛ぶ……
「はぁああーっ!!」
アリスそのパピにレイピアで猛攻し、蛇体でぶっ飛ばした!
「ぐぁーっ!」
よし、いける…!!
「つ、強い……!」
「や、やるわね……!」
「我らが、ここまで圧倒されるとは……!」
「ぐぐぐ……負けないぞーっ!うがーっ!!」
パピがそう咆哮した時だった。
四体の眼が紅く光り、嫌な気が波動した!
「っ!!?」
「な、何だっ……!?」
「ま、まさか……この子達、戦闘力を隠して……」
「いや、有り得ん!こんな程度の奴に、これ程の戦闘力など……!!」
何が、どうなってる……!?何で、いきなり……
「うがぁあああっ!!」
パピは拳を壁に叩きつけた!
すると壁が粉砕し、洞窟全体を揺るがしながら、床や天井にも亀裂が発生した!
「な……なんてパワーだ……!!」
「みんなーっ!!殺す気でかかれー!!じゃねぇとやられるぞ!!」
戦士達は構え、盗賊団に向かう。
「何だか、力が湧いてくる……!!」
「うふふ、勝てるわ……!!」
「我らの実力、思い知るがいい……!!」
「うがぁあ……!!」
四体は気を全開放し、襲いかかってきた!
「くるぞっ!!」
「あはっ!!」
ゴブが、ヴィクトリーにハンマーを振り下ろしてきた!
「っ!」
ヴィクトリーはバク転し、避ける。
ハンマーが叩きつけられた大地が、粉砕した!
「な、なんて力だ……くらったらただじゃ済まされねぇぞ……!!」
「あははっ!!」
ゴブはハンマーを軽々と操りながら、ヴィクトリーに猛攻した!
「くっ!」
何とかその猛攻に対応するが、一撃が重すぎて受けきれそうにない。
「く、くそ……!!」
「ほらぁっ!!」
ゴブのハンマーが、ヴィクトリーの脇腹を打ち抜いた!
「ぐはぁあっ……!!」
ヴィクトリーはぶっ飛んで壁に叩きつけられ、吐血する。
「あはっ!」
ゴブは跳び上がり、ハンマーを振り上げる。
まずい、やられる……!!
次の瞬間、ルミが乱入してきて、ゴブを蹴り飛ばした!
「うわぁっ!?な、何するんだよぅ……!」
「……」
ルミは着地し、ぐったりした体制から腕をヒュバババッと動かしてから、構えた。
「お、おめぇ……武道家肌なのか……?」
「……こくん。」
ヴィクトリーはルミと並び、構える。
「いくぞっ!」
「……」
「むむむ……二対一かぁ……」
ゴブはそう言いながら立ち上がり、ハンマーを振り回してから構えた。
「さぁ、来い!二人相手でも、やっつけてやる!」
ヴィクトリーとルミは突進し、猛攻した!
「でゃだだだだ!!」
「はーっ」
「ふふん……!」
ゴブは高速移動で二人の背後に回り、足払いした!
「あぅっ」
「っ!」
ルミはすっ転んでしまうが、ヴィクトリーは跳び後ろ回し蹴りしてゴブを蹴り飛ばした!
「っ!?」
「あちょー」
ルミが起き上がり、ゴブに突進して、パンチを連打した!
「うぐっ……!」
「やっ。」
猛攻の最中、ルミはゴブの足を踵で踏んだ。
「っ!?」
「よし……!」
ヴィクトリーが、ゴブの真上にエネルギー弾を放つ。
すると天井が崩れて落石となり、ゴブの脳天に直撃した!
「ぎゃあっ!?」
ゴブは脳天を押さえ、悶絶する。
「えいやー」
ルミはそのゴブに後ろ回し蹴りして、ぶっ飛ばした!
「ぐはぁあっ!」
「はぁあ……!!」
ヴィクトリーは気を解放して、ゴブの前に躍り出た!
「ま、待っ……!」
「かめはめ波ーーーっ!!」
そして、かめはめ波を撃ち放った!
かめはめ波はゴブに命中し、爆発した!
「あ、あうぅ……ちょっと、休憩……」
ゴブはボロボロになって、倒れた……
それと同時に眼の紅い光が消え、嫌な気も消散した……
よし、後のみんなは……
「ぐぅうう……!!?」
ルカは、プチに締めあげられていた。
「うふふ……ラミアの締め付けはどう?」
プチはそう言いながら、蛇体に力を込める。
すると、ルカの体が音を立てて軋み始めた。
「うぐぁあああ……!!」
「終わったわね……」
プチが拳を握り、ルカの顔面にパンチしようとした時だった。
「ファイア!!」
ラミが飛び出してきて、プチに炎の玉を放った!
「きゃっ!?」
「っ!!」
プチにダメージが入った事で、力が緩む。
ルカはその隙にもがき、脱出した。
「はぁっ……はぁっ……!」
「大丈夫っ!?」
ラミは急いで、ルカに薬草を使った。
するとルカの傷が癒え、ダメージが消え失せた。
「あ、ありがとう……!」
「反撃開始だよっ!」
「二対一だとしても、勝てるかしらねぇ!?」
ルカは剣技で、プチに突進した!
「はぁああっ!」
「うふふ……!」
プチは隙を見て、尻尾でルカの手を打ち上げた!
「わっ……!?」
「はぁあっ!」
プチは暗黒の魔力を凝縮し、それで爆発波を放った!
「っ!?」
見切れない攻撃ではないので、あっさりと避けれた。
しかし、当たれば一撃で再起不能になっていただろう……
「くっ!」
プチは突っ込んで来るが、ラミが躍り出た。
「っ!?」
「怒れる炎、力を示せ〜!」
そう詠唱してから、炎の玉をプチの顔面に放った!
「ぐぅあっ!?」
プチは怯み、顔を押さえる。
「ルカっ!!」
ヴィクトリーが、ルカに剣を投げた!
「あぁっ!」
ルカはそれを受け取り、懐に踏み込む。
「しまっ……!」
「魔剣・首刈りっ!!」
そして、思いっきり喉元を突き上げてぶっ飛ばした!
「きゃああぁっ!!」
プチは壁に叩きつけられ、ガクッと倒れた。
「こ、こんなぁ……きゅう……」
そして眼の紅い光も消え、嫌な気も霧散していった……
これで、ルカも大丈夫そうだ。
さて、ソニアとアリスは……

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■戦■■して決着■

イリアスベルクを脅かす、魔物盗賊団四天王と激突する戦士達。
優勢かと思った矢先、突如盗賊団達が凶悪化した。
その唐突なパワーアップに、戦士達は押されてしまう。
だがヴィクトリーとルカは、仲間の助けのお陰でゴブとプチを倒す事が出来た。
さて、ソニアは……
「くぅうっ!」
やはり、苦戦しているようだ。
無数に襲いかかるコウモリとヴァニラの魔法攻撃のコンビネーションに、押されている。
「どうした!?その程度か!」
「ちっ……!」
ソニアは猛攻から抜け出し、回復魔法で自分を治癒する。
そして、棍を振り回してから構え直した。
「はぁっ!」
更に気を解放し、突進した!
「ほう?」
「はぁあっ!」
見事な棍術で、ヴァニラに猛攻する。
「ふははははっ!」
しかしヴァニラはそれに対応し切り、ソニアに足払いした!
「なっ!?」
「くらえぇっ!」
そして、後蹴りしてぶっ飛ばした!
「きゃあぁっ!」
ソニアはぶっ飛び、壁に叩きつけられる。
「うっ……ぐ……!」
強い……強すぎる……!
ラザロおじさんから教わった棍術が、全く通用しない……!!
「ふん……終わりか……?ならば、トドメを刺してやろう!」
ヴァニラは手に魔力を溜めて、ソニアに突進した!
しかし……
「……」
レミが来て、足を突き出す。
「のわっ!?」
ヴァニラはそれに思いっきり引っかかり、すっ転んだ!
「レミちゃん……!?」
「何をするっ!?我を愚弄する気か!!」
「びくびく……」
レミはびくびくしながら、ヴァニラに体当たりした!
「ぐぅっ!小賢しい!」
ヴァニラは腕を振ってぶっ飛ばそうとする。
「びくぅっ!!」
しかしレミは頭を押さえてしゃがんで避けた!
「っ!?」
「…っ!!」
レミはその状態から伸脚して、ヴァニラの顎に頭突きした!
「ぐぅっ!?」
「びくびく……」
レミは頭を撫でながら、ヴァニラを見る。
ヴァニラは顎に攻撃がヒットした事で脳震盪が起きて、よろめいているようだ……
「……ここだっ!!」
ソニアは棍を構え、ヴァニラに猛攻した!
「うぐぉおっ!?」
「はぁああっ!!」
疾風怒涛の棍術でヴァニラの全身に棍を叩きつけ、体を一突きしてぶっ飛ばす!
「〜っ!!」
「終わりよっ!」
ソニアは走り、棍をバットのように持つ。
「ま、待てっ……!!」
「えーいっ!!」
そして力任せに、ヴァニラの脳天に棍を叩きつけた!
「ぎゃあんっ!!!」
ヴァニラは頭に星を回らせながら、失神してしまった……
それと同時に、凶悪化が解けた。
「あちゃ〜……やりすぎちゃったかも……」
「おどおど……」
レミが心配して、ヴァニラに回復魔法をかけた。
ソニアも、何とかなったようだ……
「はぁっ……はぁっ……!!」
「うがーっ!」
アリスがズタボロになりながら、パピに向かっている……
「くっ!」
アリスはレイピアを構え、攻撃する。
しかしパピはレイピアの刃を掴み、アリスのこめかみに蹴りを入れた!
「ぐぁあっ!」
「がぁあっ!!」
そして体にパンチを連打した!
「ごぶぅっ……!!」
「ふんっ!!」
更に口を膨らませてから、火球を吐き放った!
火球はアリスに直撃し、爆発した!
「ぐぅうっ!!」
アリスはぶっ飛び、跪いてしまう。
……跪く足はない、というツッコミは無視させて貰うが……
「く、くそ……こんな体で無ければ……こんな奴……!!」
「がおーっ!!」
パピは飛び上がり、アリスにかかと落としを放った!
「ちっ!」
アリスは跳び避ける。
パピのかかと落としが、大地を砕いた!
「な、なんという……!!」
「そこかぁっ!」
パピはまた火球を吐いた!
「ちっ!」
アリスはそれを弾き飛ばした!
「やぁあっ!」
「!!」
パピは既に眼前に迫っていた。
「くそっ!」
そのまんま、インファイトの攻防を繰り広げる。
しかしパワーで押されて、どんどんと劣勢になってしまった……
「こ、このまんまじゃ……!」
「うがぁあ……!!」
「うさぁっ!!」
不意に、うさがパピの背後から足払いを放った!
「っ!?」
パピはすっ転び、倒れる。
「大丈夫!?」
「た、助かった……」
うさの薬草で、アリスは回復する。
「一緒に戦うぞ!うさうさぁっ!」
「わ、分かってる……!」
「うがぁあっ!!」
パピは起き上がってから、暗黒の魔力の爆発波を放った!
「うわっ!?」
「くそっ!」
うさとアリスはそれを避け、隠れる。
「ど、どういう事だ……!?なぜあんなのが、暗黒の魔力など操っているのだ……!?」
「わ、分かんないよ……ただ、私の憶測だけど……あれは、何者かに操られてるんだ。」
「なに……?」
周辺に、怪しい存在は居なかった筈だ。
それに、ここのモンスターだってこんな事が出来るような連中ではない。
じゃあ、いったい誰が……?
「見つけたぞ!」
パピが、うさの前に躍り出てくる。
「くっ!」
「くそっ!!」
「すぅっ…!」
パピは息を吸ってから、火の息を吐いた!
「任せてっ!」
うさはそう言ってから、廻し受けで炎を霧散させた。
「うがっ!?」
「あちち……!」
うさは手をぶんぶんしながら、驚くパピに足払いする。
それは綺麗に決まり、パピはすっ転んだ。
「ぐっ……」
パピはすぐに起き上がろうとするが……
「チャージ……はぁっ!!」
アリスの力を込めたレイピアの一撃が、一閃した!
「ぐぁあっ!!?」
「はぁあっ!」
うさはパピの所に高速移動し、体に正拳突きを連打した!
「うがぁあっ……!!」
「やぁあっ!!」
更に胸に蹴りを連打してから、思いっきりぶん殴った!
「ぐっ!」
しかしパピはその拳を掴み、うさを地面に叩きつけた!
「くそっ!」
アリスはパピに切りかかるが……
「邪魔なのだーっ!!」
なんとパピはアリスにタックルしてから体を掴み、バックドロップを決めた!
「ぐぁあっ……!!」
「うさぁ…っ!!」
うさが起き上がり、パピに攻め込もうとするが……
「っ!!」
パピは火球を吐いて、うさを爆破した!
「きゃああっ!」
「そこだぁっ!!」
アリスは蛇体で、パピの足元を薙ぎ払った!
「うわぁっ!?」
「はぁあっ!クロスアンブル!!」
そして、強烈な突きを二発も放った!
「うがぁっ……!?」
パピはその突きをもらって、よろける。
「うさぁっ!」
その隙に、うさは飛び上がって天井を蹴った。
すると天井が砕け、パピの脳天に落石した!
「うがぁあっ……!!」
パピは脳天を押さえ、悶絶する。
そこに、拳を合わせたうさとアリスが突っ込む!
「これで終わりだっ!!」
アリスとうさは渾身のストレートを放って、パピをぶっ飛ばした!
「ッッ!!」
パピはぶっ飛び、地面に倒れた……
「うがが……」
そして、戦意を失ってしまった……
それと同時に、凶悪化が解けた。
なんとか、凶悪化した魔物盗賊団を倒したようだ……

盗賊団四人は並び、レミやソニアに治療してもらう事になった。
「はぁ……はぁ……」
「うぐっ……身体中が……いたい……」
「うぐぐ……わ、我は……何を……!?」
「うがぁ……」
どうやら、凶悪化した時のことを覚えていないらしい。
「……何がどうなっている?」
この四人の急激なパワーアップと、残忍性の向上……
まさか……
「……心当たりならある。」
ヴィクトリーがそう言うと、一同はそこに視線が殺到した。
「なにっ!?」
トワとミラ、そしてドミグラ……
そいつらは、ドラゴンボールの歴史を改変しようとした悪い奴らだった。
どう改変するのかというのが、さっきの凶悪化という方法だ。
その歴史の人物を凶悪化させ、パワーアップさせて、本来の歴史とは外れた結末を迎えさせる……
以上の事を、俺は簡潔に説明した。
「凶悪化だと……!?」
「ああ……だけど、なんでそんな事を……?」
「それは分かんねぇよ……俺みたいに異世界から来て、何かやってる奴が居ねぇとも言い切れねぇしよ……」
「だが……周辺に、怪しい者は居なかった筈だ……いったい、誰がこんな事を……」
「……」
敵の唐突な凶悪化……
果たして、これを引き起こした奴と会えるのか……
「それより、魔物盗賊団がこんなちっちゃい子達だったなんてねぇ……」
「そう言えばそうだった。さぁ、情報屋アミラを解放するんだ!」
「アミラ?そんなの、知らないのだ……」
「え?おめぇらがとっ捕まえたんじゃねぇのか?」
「そんな事、してないのだ……」
「いったい、どういう事なの……?」
ソニアが、頭を抱える。
「とにかく、町を脅かす魔物盗賊団は倒したんだ。とりあえず……」
「ぐすっ……」
「ぐすん……」
「ひぐっ……えぐえぐ……」
とりあえず、盗賊団達はこれで全員のようだ。
「さて、どうしたものか……」
「余は知らん、貴様らに任せる。売るなり殺すなり犯すなり食うなり、好きにしろ。」
アリスの言葉で、盗賊団達はびくびくする。
「そんなのやだぞ……うわーん!」
「……ひぐっ……うぇぇぇん!」
「うぇーん、うぇーん……」
「わーん、わーん……」
「あーあー、泣かしちゃった……」
「ふむ、流石洗礼なき勇者サマはやる事が立派だな。こんないたいけな少女達を泣かせて英雄気取りとは。」
アリスはそう言って、俺とルカを見た。
「泣かしたのはおめぇだろ!」
「えっと、ともかく……とりあえず、イリアスベルクの人達に謝りに行こう。いっぱい迷惑を掛けたんだから……分かったね?」
「あやまるぞ……ぐすっ。」
「私も、一緒に誤ってあげるから……それじゃあ、町に戻りましょうか。」
こうして一行は、少女四人を連れて町に戻ったのだった……

「失敗したか?」
「いいや、この作戦に失敗も成功もありません……」
謎の二人組が、町に向かう一行を遠くから見ていた。
「まぁ、私個人としては成功した……と言った所か。」
「どういう事だ……?」
「分からんのか……?ドミグラよ。」
謎の二人組の、一人……ドミグラ。
暗黒魔界の創造主であり、魔神の一人である。
言わずもがな、盗賊団を凶悪化させた張本人だ。
「奴は戦えば戦うほどに強くなる……奴が強くなれば強くなるほど、私の愉しみも増えるのだ。」
「それも、貴様のサイヤ人の本能がそうさせている……と言った所か。」
「ああ……」
男は、ヴィクトリーをその目に見据えた。
「ヴィクトリーよ……この冒険で、サイヤ人のその力を全て解放してみせろ……その時が、貴様の息の根が止まる時だ……!!」
「……それで、続けるつもりか?」
「ああ……お前は戻っていろ(・・・・・)。」
男はそう言い、カードケースを取り出して開ける。
「ふん……」
ドミグラは笑い、その体が闇に包まれる。
そしてカードとなり、その男のカードケースに戻って行った……
「くふふふ……」
男はカードケースを懐にしまってから、歩き出した……
「勝手な行動を、お許しください……これも全ては、アリスフィーズ様に尽くす為……そして、あなたに尽くす為なのです……」
男はそう言って、歩き続けた……

そんなこんなで、盗賊団を倒した戦士達。
しかし、アミラという情報屋の姿は無かった……
「……」
ルカやソニアが、盗賊団のみんなと一緒に謝ってる間に俺はそこら辺でお茶を飲んでた。
考え事をしているのだ。
盗賊団の不意な凶悪化……そして、あの凄まじい力……
……もしかしたら、ドミグラがこの世界に居るのかも知れない。
だとしたら、大変な事になる。
旅を急ぐ必要があるけど……今の俺が急いだ所で、何もなんねぇ。
ここは、ルカ達のペースに合わせてやるしかねぇみてぇだ。
遠回りな気がするが、それが一番いい気がしてきた。
「おい、ヴィクトリー!」
「?」
ルカがこっちに来て、俺を呼ぶ。
何やら、嬉しそうな感じだが……
「おかみさんの好意で、高級宿の『サザーランド』で泊まる事になったよ。お前も来い!」
「ふぇえっ!?ちょっ、あのっ、カネ置いとくぞー!」
俺達は今夜、サザーランドとやらで泊まる事になった。
まぁ、高級宿というぐらいだから居心地はいいんだろうな。
それに、ベッドで寝るのも久しぶりの気がする。
今日は色々な事がありすぎて疲れた。
戦士達はサザーランドで、一晩を過ごしたのだった……

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飛んでスラム街

翌日……
色々あってヴァニラとゴブが仲間になって、うさとレミがポケット魔王城に吸い込まれた。
「はしょるなーっ!!」
アリスは、ナレーションに突っ込む。
しかしそのアリスの背中を、ヴィクトリーは撫でた。
「しょうがねぇだろ、ここまでおんなじ展開なんだからよぉ……」
「むぅう……」
そんな二人を、ルカは変な目で見ていた……
「……あいつら、何の話をしてるんだ?」
そう思いながら、歩いていると……
目の前に、上半身がヘビで下半身が人間の女性のモンスターが現れた!
これは、残念なラミアだ。
「かぁっ、気持ち悪ぃ……やだおめぇ……」
「あら、あなたが勇者ルカなのね……」
「……お前は?」
「私がアミラ……情報屋よ……」
「君がアミラか……でも、盗賊団に攫われていたっていうのは?」
「ええ……あの時は……」
どうやら酔っ払ってゴミ箱で寝てたら、例の盗賊団に捕まって、途中で捨てられて……って感じらしい。
「じゃあ、誘拐されてた訳じゃねぇのか……」
「そうよ……何処かで噂がねじ曲がったみたい。」
「そうなのか……」
アミラは咳をつき、二人に向かい直した。
「ともかく、私に用があったみたいね。何の情報をお望みかしら……?」
「実は、怪しいウサギを探してるんだけど……」
「怪しいウサギねぇ……極上の情報があるわ。おそらく、あなた達が求めている情報のはずよ。」
「おっ、流石情報屋だ!話が早くて助かるぜ!」
「その情報、ぜひ教えて貰えるかな。」
「……情報量、1500Gよ。」
「お金、とるの!?」
「そうか、おめぇも情報()だったな……」
商売だから、当然っちゃ当然だ。
「だけんど、1500Gって高くねぇか……?」
「そうだよ。そこをなんとかして欲しいんだけど……」
「何とかしてあげたいのは、山々なのだけれど。代金の伴わない情報のやり取りは、ギルドに禁止されてるの。組合勤めの辛いところね、昔はよかったわ……とは言え、方法もなくはないのよ。」
「なくはない……?あるって事か?」
「ええ、あなた達も情報ギルドに加入すればいいわ。同業者の間なら、問題なく情報交換できるわ。」
「それの方が大変そうなんだけど……」
「ルカ、どうやら悪い誘いでもねぇらしいぞ。情報というのは、上手く回収出来れば強みを発揮する。これから先、様々な情報が俺達の中に飛び込んで来るだろう。だったら、わざわざカネを払うよりタダで手に入れた方が楽になるだろうよ……」
「なるほど……」
「いいじゃない!」
ソニアが、いきなり飛び出してきた。
「やってみようよ、ルカ!」
「ええ……」
その後、アミラから説明を受けた。
情報ギルドに入るには、推薦と実績が必要だとか。
推薦の方はアミラにしてもらうとして、実績が少し厄介なものなのだ。
「でも、これさえこなせれば一発よ。危険だけれど。」
「おめぇ、仕事を俺達に投げてぇだけじゃねぇのか……」
「ムホッ!鋭いわね……情報屋に必要な資質、備えていると見たわ。」
アミラは説明を続ける……
最近、フェニックスの尾というアイテムの密売が横行しているらしい。
これは、読んで字のごとくフェニックス娘というモンスターの尾だという。
希少なものなのに、流通量がおかしいらしい。
調査した所、出所はイリナ山地のスラム街。
ドン・ダリアという女が糸を引いてるらしい。
そいつは裏世界に君臨するマフィアだとか……
問題は、仕入れ先が何処かだ。
フェニックス娘そのものを密売しているとしか思えない……
それだけの量を、裏取り引きしているようだ。
ここで、アリスが口を開いた。
「妙だな、フェニックス娘とは神鳥に属する魔物。人間などに大人しく密売されるなど考えられん。」
「だから不可解なのよ……」
「それを、俺達に調べて来いって話だな。分かった、ドン・ダリアっちゅう奴は何処に?」
「イリナ山地の洞窟を抜けた先よ。あなた達が盗賊を退治したのは、イリナ北の洞窟。そこから南にも洞窟があって、イリナ盆地に抜けられるのよ。」
「おっしゃルカ!面白そうだ、行ってみようぜ!」
「うん。もし本当にフェニックス娘が密売されていたら、黙っていられないからね……行くぞ!」
一行は、動き出す。
目指すはイリナのスラム街。果たして……

イリナ北の洞窟……
「ここを抜ければ、問題のスラムに着くという話だったな。フェニックス娘の密売……本当だとしたら、放置は出来んぞ。」
アリスはそう言って、拳を握った。
そして、新たに仲間になったヴァニラとゴブ……
「まさか、密売事件を調査する事になるとは……見習い商人の血がたぎるのだぞ!」
「それにはまず、この洞窟を抜けないとね。よ〜し、がんばるぞ〜!」
こいつらが居れば、心強いぜ……

襲いかかってくる狼娘や、ネズミ娘を倒しながら進む道中……
面白い光景が、目の前で展開していた。
「そんなに私について行きたいのですか?それでは、特別に使ってやりましょう……」
あのちっちゃいイリアスが、スライム娘相手にえっへんと胸を張っていた……
「……イリアス様?」
「な、なぁにやってんだおめぇ……」
「……はっ!?な、何を見ているのです!?」
「おやおや……魔物嫌いのイリアス様ではないか。いよいよ窮も極まり、魔物を供にでもするのか?」
アリスは嫌な笑いを浮かべながら、イリアスにそう言った。
イリアスは睨み返し、歯軋りする。
「地を這う者達などに、神の意図など分からぬものです。この私の遠大な計画など、あなたには理解できないでしょう。ところで……」
イリアスは俺とルカの方を見て、手招きする。
「ルカ、ヴィクトリー、少しひそひそ話が。ひそひそしますので、腰を屈めて下さい。」
「何だよ……」
俺とルカは、言われるがままにイリアスに耳を傾け、腰を屈める。
「二人とも、あの娘を信用してはなりませんよ。ルカの幼馴染み、ソニアという娘の事です。」
「……!」
「……えっ?ソニアを?」
「私は創世の女神、この世全ての人間を知っています。記憶に欠損が出ている今も、老若男女全て把握済みです。もちろん、異世界から来た人間も……そんな私ですが、あのソニアという娘は知りません。それはつまり、歴史に存在するはずの無い人間という事。ソニアという少女は、この世界に存在しないのです。」
「……」
存在しない少女……?
俺の胸のもやもやが、再燃してきた。
何だろう、この違和感は……
もしイリアス様の言うことが本当なら、何で俺だけがこんなに違和感を感じてるんだ……?
「でも、僕はソニアの事を幼い頃から知ってるし……」
「ソニアの様子を見る限り、騙している素振りはありません。おそらく、自分でも自覚できていないのでしょうか……ともかく、心を許してはなりませんよ。これは、あなた達への忠告です。」
イリアスはそう言ってから、息を吸い、微笑んだ。
「それでは行きなさい、勇者ルカ、武闘家ヴィクトリー。決して、魔王に踊らされてはなりませんよ。」
そう言ってから、イリアスはさっさと進んでしまった。
「まってー!」
スライム娘もそれを追いかけるように、走って行った……
「あの子がイリアス様だなんて……やっぱり、ちょっと信じられないなぁ。」
ソニアはそう言いながら、苦笑いする。
その横で、アリスがクスクスと笑っていた。
「愉快なぐらい力を失っているが、紛れもなくイリアスだ。いったい、誰が奴に六祖大縛呪を掛けたのか……」
「……」
そんな事はどうだっていい。
今気になるのは、ソニアだ……
果たして、この胸の違和感が取れることはあるのか……?
「ヴィクトリーっ?」
「あ、ああ!すまねぇ!」
そんな事考えてる暇も無さそうだ。
今は、目の前の問題を片付けないとな!

イリナ北の洞窟を抜け、イリナ盆地……
そこにある、名も無きスラム街に一行は到着した。
「この薄汚いところが、目的のスラム街よね。さぁ、スパイ大作戦を始めましょー!」
ソニアはでかい声で、嬉しそうにそう言う。
「なんでそんなノリノリなの……?」
ルカはジト目でそれを見ていた。
「美少女スパイの私としては、まず情報から攻めないと。そういうわけで、酒場に行ってみるわよ!」
「……」
「……おめぇの幼馴染み、こういうの好きなんか?」
「うん……僕以上にね。」
アリスはソニアの後ろで、腕を組みながら息を吐く。
「ちまちま探りを入れるなど、性に合わん。そのドン・ダリアとやらの元に乗り込んだ方が早いぞ。」
「そう言うなよアリス。これからがかかってんだから、慎重に行かねぇとな。」
「ああ、情報集めから入らないとね。情報が集まる所と言えば……」
ソニアの言う通り、酒場……
一行は酒場に入る。
「……」
「ハァハァ……ドン……」
「……」
「……」
変なのが一匹紛れてるが、それ以外は商人やシーフや怪しい男が酒を飲んでいた。
「……おい、あんた達。」
怪しい男が、俺達に目をつけて手招きする。
「ん……?」
「あんた達、旅人だろ?フェニックスの尾、いっぱいあった方がいいよなぁ……?」
「……」
「まぁ、はい……」
「それじゃあ、面白い取引の話をしてやるよ。武器屋の近くのテントで、フェニックスの尾が激安だ。」
「!」
早速、お目当ての情報っぽいぞ!
「詳しく聞かせてくれねぇか?」
「ああ……だが、誰にでも売るって訳じゃねぇんだ。この取引には合言葉ってのが必要なんだよ。その合言葉だが……今ここで20G払うなら、教えてやる。さぁ、どうするね?」
「げーっ、金とんのか!?おめぇ、情報屋って奴か……」
「でも、アミラよりは良心的だね。」
ルカはそう言って、20Gを差し出した。
「毎度あり……」
怪しい男はそれを受け取り、懐にしまう。
「それじゃあ、教えてやろう。合言葉は『おっぱいもませろ』だ。」
俺とルカは、素っ頓狂な言葉にずっこけそうになる。
「てめぇ、嘘言ってんじゃねぇだろうな!」
俺は怪しい男の胸ぐらを掴み、揺すぶった。
「いやいや、本当だって……!まったく、ドンも冗談が過ぎるぜ……」
とりあえず、これしかアテが無さそうだ。
俺達は酒場を出て、例の武器屋の近くのテントに入った。
「……ん?」
居たのは、ガラの悪そうな女だった。
「オレのテントに、何の用だ?」
「わっ、怖そうな人……」
ソニアは、ルカの背後でそう呟いた。
「ほら、とっとと要件を言えよ。オレだって、暇なわけじゃないんだよ。」
「あの……えっと……」
「おっぱいもませろ。」
ルカが迷うから、俺はきっぱりとそう言った。
「ちょっ、ヴィクトリーっ!?」
「しょうがねぇだろ、これしか情報がねぇんだから!」
「なるほど……お客ってわけか。」
ガラの悪そうな女は立ち上がり、ヴィクトリーの目の前に来る。
「ほぉら、好きなだけ揉みなよ。」
そう言い、大きな胸を揺らしながら突き出した。
「ぇ……?」
「どうした?この胸、揉みたいんだろ……?」
ヴィクトリーは胸を見てから……ぶんぶんと頭を振る。
「そうじゃねぇんだ。」
「はははっ、少しからかっただけだよ。」
女は笑い、元の所にどしんと座る。
「さて、オレがドン・ダリアだ。フェニックスの尾でいいんだな?」
「まさか、ドン・ダリア自身が売ってるの……?供もつけず、こんな汚いテントで……?」
ソニアの言葉に、ドン・ダリアは頷く。
「しばらくは、単身でこのシノギをやって行きたくてな。手下率いるのは、もう飽きたんだよ。」
ドン・ダリアはそう言って、フェニックスの尾を取り出した。
しかも、三枚も。
「オレの身の上話なんぞ、どうでもいい。ほら、フェニックスの尾三個……セットで、60Gだぜ。」
「……じゃあ……」
ルカは60G支払い、それを買った。
「ははっ、毎度あり。これからも頼むぜ。」
そう言った瞬間、ドン・ダリアの目が鋭くなった。
「……と思ったが、取引は今回だけだ。お前ら、どうにもうさん臭いな……商人ギルドの回し者か、官憲か……なんだか分からんが、失せな。」
俺達は、ドン・ダリアの言われるがままにテントから追い出されてしまった……
「美少女スパイ大作戦、見事に失敗……」
ソニアはそ呟きながら、がっくりと肩を落としていた……
「おのれ、必ず尻尾を掴んでくれる。改めて情報を集めるぞ。怪しい場所も、入念にチェックする必要があるな。不審な建物など、探してみた方がいいだろう……」
アリスの言う通り、怪しい場所を探してみる……
どうやら、ドン・ダリアは街の隅にある空き家に出入りしてるとかどうとか……
とりあえず、そこに向かう。
「……鍵がかかってるよ。」
「やっぱりな……」
俺とルカはその扉を開けようとするが、どうやら鍵がかかってるようだ……
「おい、そこで何やってんだ?」
「いっ!?」
俺達が振り向くと、ドン・ダリアが居た。
「どきな。」
「は、はい……」
「……」
ドン・ダリアは鍵を使い、空き家に入った。
「この建物、やっぱり怪しい……」
「そう言えば、酒場にスリの請負人が居たような……」
「そんなん必要ねぇ、どいてろ。」
「え……!?」
俺は扉に思いっきり蹴りを放った!
扉は吹っ飛び、建物内の床に倒れる。
「っ!?」
「なにっ!?」
その先の光景……ドン・ダリアが、小さなフェニックス娘の尾を抜いている最中だった。
「……やっぱりな。」
「そこまでだ、その子を解放してもらおう!」
「てめぇら、テントで会った……!」
「誰なの、この人達……!?」
ドン・ダリアとフェニックス娘は、俺達に向いた。
「おいミニ、そいつらは悪い奴だ。」
「分かったぞ、ドン!こいつらはあたしを捕まえて、密売する気なんだな!?」
「ああ、そうだ……やっちまいな、ミニ!」
「よし、あたしがやっつけてやるぞ〜!」
フェニックス娘のミニは気を解放し、ルカに突っ込んだ!
「違う、君は騙されているんだ……!くっ、聞く気は無いか……!」
「見事なまでに飼い慣らされおって……!仕方ない、ドアホな鳥はしつけてやらねばな。ルカよ、怪我をしない程度に叩きのめすぞ!」
ルカやアリスは構え、フェニックス娘と激突した!
「よっしゃ、俺も……!!」
俺も、ミニに攻撃しようとした時だった。
ドン・ダリアが高速移動で俺の横に飛んできて、横っ腹に蹴りを放った!
「っ!!?」
その蹴りに直撃してしまい、壁に叩きつけられた。
「ぐっ……!?」
「ふふふ……」
ドン・ダリアは不敵に笑い……そして、目が紅く光って嫌なオーラを波動させた!
「な、なんだと……!?」
まさか、凶悪化か!?
「お前の相手はこのオレだ……ふっふっふっふ……」
「ヴィクトリーっ!くそっ!」
ルカが駆け寄ろうとしたが、ミニに邪魔されてしまう。
「ちょっと油断しただけだ!そっちはフェニックスの方を!」
そして俺は立ち上がり、ドン・ダリアに向いた……
突如、凶悪化したドン・ダリア。
果たして、どうなる……?

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ドン・ダリア、凶悪化!

アミラからの依頼で、フェニックスの尾の密売を調べにスラム街にやってきた戦士達。
そこでは、ドン・ダリアという女が小さいフェニックス娘を籠絡していた。
飼い慣らされたフェニックス娘は、戦士達を敵と信じて激突する。
ヴィクトリーはそこに参戦しようとするが、突如ドン・ダリアが凶悪化。
単身で、ドン・ダリアと向かい合うのだった……
「何がどうなってやがる……!?」
「力が……漲ってきやがる……!!」
ドン・ダリアは突進して、ヴィクトリーに殴りかかった!
ヴィクトリーはガードし、足払いをかける。
しかしドン・ダリアはヴィクトリーの顔面に両足蹴りを放った!
「っ!?」
ヴィクトリーは直撃し、仰け反る。
「ふんっ!」
ドン・ダリアは着地し、片足立ちで構える。
「ふははははっ!」
そしてもう片足で、猛攻してきた!
「くっ!」
その猛攻に対応し、頭突きをするヴィクトリー。
「いっ!?」
それは直撃し、ドン・ダリアはよろける。
「でやぁっ!!」
ヴィクトリーは踏み込んで、ドン・ダリアの顔面に蹴りを入れた!
「ぐぶっ!?」
「やぁあっ!!」
更に両手で拳を固め、胸をぶん殴った!
「ぐぅうっ!!」
ドン・ダリアの靴が擦れながら、後退する。
「……はははっ!」
ドン・ダリアはその鼻から流れる血を舐めとってから、自分の胸を揉みしだいた。
「いいねぇ、嬉しいねぇ……!!」
「き、効いてねぇ……!」
「じゃあ、こっちから行こうかな……!」
ドン・ダリアはそう言ってから、銃を取り出した。
「……銃だと……!?」
この世界の技術、そんなに発達してたか!?
「へへへ……!」
ドン・ダリアは踏み込み、ヴィクトリーに銃を突きつける。
「くっ!」
ヴィクトリーは銃を掴んで、銃口から逃れる。
「ほぉらっ!」
しかしドン・ダリアが脇腹に蹴りを入れた!
「ぐぁあっ!?」
銃口が、顔の真正面に来る……
「ハッ!」
「くらいなっ!」
ドン・ダリアは引き金を引き、銃撃した!
「ッッ!!」
ヴィクトリーは仰け反ってから、顔を上げる。
「……なにっ!?」
「くっ……!!」
歯で、銃弾を止めていたのだ。
「ブッ!!」
ヴィクトリーは勢いよくそれを吐き出し、ドン・ダリアは避ける。
銃弾が、ドン・ダリアの背後の壁を貫通した。
「おぉう……」
「だぁっ!」
ヴィクトリーはそのドン・ダリアの股間を蹴り上げた!
「っ!?」
「あだだだだだっ!!どりゃあっ!!」
更に腹にパンチを連打してから、蹴り飛ばした!
「うぉおおおっ!!」
そして、エネルギー弾を連射した!
ドドドドドッと、爆発が連続する!
「ドン〜っ!!」
フェニックス娘が、そう言いながら向かおうとする。
しかし、ソニアが棍を振りながら立ちはだかった!
「あなたの相手は私達よ!」
「むむ……!!悪い奴、やっつけるぞ……!!」
ミニがそう言いながら、気を解放する。
すると次の瞬間、そのミニも凶悪化した!
「なっ……!?」
「なんだとっ!?」
「フェニックスまで……!!」
「あはははっ!!」
ここで、ドン・ダリアがヴィクトリーに突進してきた!
しかも、エネルギー弾に被弾しながら。
「うわっ!?」
「はぁあっ!!」
ドン・ダリアはヴィクトリーの腹に蹴りをかまし、顔面に銃弾を三発ぶち込んだ!
「いってぇっ!!」
「なにっ……!?」
ただ命中した所が僅かに出血してるだけで、大ダメージにはならなかったようだ。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーはドン・ダリアの腹に前蹴りしてぶっ飛ばした!
「ドンを傷つけるな〜!」
「っ!!」
凶悪化したミニが炎を纏いながら体当たりしてきた!
「ぐっは……!?」
「うりゃーっ!」
更に猛禽類の足で、蹴りの猛攻を繰り出した!
「く、くそっ……っ!!」
ヴィクトリーは気合い砲で、ミニをぶっ飛ばした!
「きゃっ……!?」
「なぁによそ見してんだ……!!」
ドン・ダリアは拳を振り上げながら、ヴィクトリーに迫った!
「くっ!」
「させるかっ!!」
しかし、ルカの剣がドン・ダリアの拳を受け止めた!
「にっ!?」
更にルカは、ドン・ダリアの懐に入る。
「魔剣・首刈り!!」
そして思いっきり喉元を突き上げ、ぶっ飛ばした!
「ぐっはぁあ……!!」
ドン・ダリアはぶっ飛び、壁に叩きつけられた。
ヴィクトリーとルカは背中を合わせ、構える。
「ヴィクトリー、平気か!?」
「ああ……そっちは!?」
「まだ平気だ!引き続き、ドン・ダリアを頼む!」
ルカがそう言うと、アリスとソニアがルカの横についた。
そして、気を解放した!
まだまだ大丈夫みてぇだ……
「ぐがぁあっ!!」
ドン・ダリアが突っ込んできて、ヴィクトリーに猛攻してきた!
「はぁあっ!」
拳が、超スピードでぶつかり合う。
「おい、いいコトしてやるよ。」
「えっ?」
ドン・ダリアはヴィクトリーの腹を蹴り、壁に叩きつけた!
「ぐはぁっ!」
「そぉれっ!」
そして、胸で顔面を圧迫した!
「〜っ!!」
豊満な双丘で顔を挟まれ、押し付けられ、むにゅむにゅと動かされる。
まずい、窒息する。
「ほぉら、これがイイんだろぉ?ほらほらぁ…」
更に股間に手を伸ばされ、ズボンの上から上下された!
思わず反応してしまい、ビクビクしてしまう。
「くっ……!!」
この距離なら……やれるか……!?
ヴィクトリーはドン・ダリアの腹を指し、ワンインチパンチを叩き込んだ!
「っぶ……!!?」
ドン・ダリアの体が離れる。
「ハァッ、ハァッ……!」
拘束から、解放された。
すかさず気を解放して、踏み込む。
「だぁあっ!!どりゃあっ!!」
ドン・ダリアの顎に膝蹴りを叩き込み、更に後ろ蹴りして蹴り飛ばした!
「ぐぅうあっ!!」
「かめはめ波っ!!」
そしてかめはめ波を撃ち放った!
「っはぁっ!!」
かめはめ波は弾き飛ばされ、今度はドン・ダリアが銃撃してきた!
「ふんっ!」
ヴィクトリーは腕を高速で動かしてから、掌を開く。
そこから、銃弾がジャラジャラと音を立てて落ちていった。
「なにっ!?」
「はぁっ!!」
更に開いた掌から気合砲を放ち、ドン・ダリアをぶっ飛ばした!
「っぐぅう……!?」
ドン・ダリアは何とか踏ん張って着地してから、高速移動でヴィクトリーの背後に回った!
「っ!?」
「がぁあっ!!」
全力のぶん殴りを、なんとかガードする。
しかし、それだけで全身にビリビリと衝撃が伝わった。
「く……!!」
「そぉらっ!!」
もう一発の全力ぶん殴りを、跳び避けて構える。
「ほらぁっ!」
そこに、ドン・ダリアの飛び蹴りが飛んできた!
「ふんっ!」
ヴィクトリーはその足を掴み、グルグルとぶん回した!
「っ!?」
「どっせーいっ!!」
そして勢いよく壁に投げつけた!
ドン・ダリアを叩きつけられた壁は粉砕し、ドン・ダリアは外に出てしまう。
「ウワァッ!?」
「ドンっ!?」
「いや……様子が変だ!」
「ケンカかっ!?」
一瞬にして、野次馬が集まる。
「ははは……!!」
ドン・ダリアは立ち上がり、銃撃した!
ヴィクトリーはそれを片手で掴みながら突っ込み、ドン・ダリアの顔面に銃弾を投げつけた!
「っ!!」
「だぁあっ!!せぇいっ!!」
更に綺麗な正拳突きを腹に叩き込んでから、顎を蹴り上げた!
「うぐぁあっ……!!」
「一気に決めてやるっ!!」
ヴィクトリーはそう言ってから構え、ドン・ダリアの体に渾身の打撃を連打した!
「ぐぅううっ!!」
「これで終わりだっ!!」
拳を握り、そこに全ての力を駆動させ……
ドン・ダリアの鳩尾を、綺麗に打ち抜いた!
「ぐっはぁああーっ!!」
ドン・ダリアはぶっ飛び、民家の壁に叩きつけられた!
「ぐっ……はぁっ……!!」
嫌な気が霧散し、凶悪化が解ける。
「い、いてて……い、いったい何がどうなってる……!?」
「はぁっ……はぁっ……!!」
なんとか、ドン・ダリアの凶悪化を解くことに成功した。
「やられちゃったぞー!!」
凶悪化の解けたミニが、ボロボロのまんまドンの所に飛んでくる。
どうやら、あっちも上手くいったらしい。
「ちっ……これまでか……あばよっ!!」
ドン・ダリアはボロボロの体に鞭打って、逃走した。
「ドン、待って!あたしを置いていくのか……!?ドン……」
ミニは、悲しそうな目でドン・ダリアの背中を見るだけだった……
「……ふぅっ。」
俺はそこらに座り込んで、リラックスする。
後のことは、ルカ達に任せりゃいいか……

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追跡の準備

ドン・ダリア達を倒し、フェニックスの尾の密売をとっちめた一行たちは、アミラの所に向かった。
「話はすでに聞いたわ。フェニックスの尾の不正密売ルートを壊滅させたようね。それに……」
俺達のメンバーの中には、あのフェニックス娘のミニが居た。
何故か、俺の頭に乗ってる。
「もふもふしてていいぞー!」
「成り行きで、仲間になっちまった。」
「でも、これで密売人には目を付けられなくなったと思うよ。」
ルカが、面白そうな顔で俺を見てそう言った。
「あなた達は情報屋の世界に鮮烈なデビューを果たしたわ。おめでとう、これを受け取って。」
アミラは舌を伸ばし、俺達に『情報屋の掟』と書かれた髪を差し出した。
「どっから出してんだよ……」
「それがあれば、情報屋になったも同然よ。さて……ウサギの情報をお望みだったわね。教えてあげるわ。」
アミラのウサギの情報……
それは、ポルノフという所に向かうウサギの目撃情報だった。
ポルノフとは、イリアスヴィルから更に南東に行った町だ。
「そこに、例のウサギが居るんだな。」
「ええ、確かな情報よ。事情は知らないけど、見つかる事を祈ってるわ。」
アリスはルカ達の前に出て、パァンッと手を合わせた。
「よし、次の行き先が決まったな!あのウサギを追って、ポルノフに行くぞ!」
「ああ!」
「……」
いつの間にか、アリスが先頭になってる……
……確かに、俺もあのウサギからは聞きてぇ事が山ほどある。
たまに来る頭痛の正体や、ソニアに対する違和感の正体……
教えてくれるといいんだが、どうやら今は追いかける他無いようだ……
こうして戦士達は、ポルノフの村に向かった……

ポルノフの村……
そこは、たくさんのパンツ一丁の青年が暮らしていた。
「って、何でやねん!」
「へ、変態だー!」
コ〇コ〇コミックのギャグ漫画の中に来た気分だ……
それはともかく、この村に例のウサギが居るという。
「え、えーと……」
ルカは辺りを見回し……服を着ている、伯爵風の人に目をつけた。
「あの、こんにちは。」
「おや、旅人がこんな村に……」
伯爵風の男は頭を下げ、挨拶する。
「私はローリー伯爵です。何か用ですか?」
「あのさ、ここら辺にウサギの魔物って居なかったか?」
「ウサギの魔物ですか……?彼女ならば、宿屋に居るはずですよ。しかし私は、年齢的に全くもって興味がございません。あなた達のお連れしている少女など、最高なのですがね…」
ローリー伯爵はそう言いながら、アリスを見ている……
「かぁっ、気持ち悪ぃ……やだおめぇ……」
「こいつ……ロリコンか!」
「ああイタズラしたい……でも剣を持ってる人が怖いので、視姦のみにとどめておきます。」
そう言って、舐めるようにアリスを見るローリー伯爵……
こいつ、伯爵じゃなくて紳士じゃねぇか。
「ねぇ、ルカ……こんな町、さっさと用を済ませて早く出ようよ……」
ソニアは疲れたようで、がっくりとしたような顔でそう言った。
しかしアリスは拳を握り、宿屋の方を見る。
「ともかく、宿屋に居るのは確かなようだ。さあ、こしゃくなウサギを追い詰めるぞ!」
アリスが先頭になり、宿屋に乗り込む。
「ここかっ!?」
そして、部屋に飛び込んだ!
そこに居たのは……
「あら、あなた達……私に何か用?」
ピンク色の髪をして露出度の高い服を着た、ただのウサギ娘だった。
「なんと、別のウサギではないか!あの時のウサギは全く違うぞ!」
「あらあら、どうやらウサギ違いのようね。あなた達の探しているのは、どんなウサギかしら……?」
こんなウサギ娘が知ってるとは思えないが……
ルカと俺は顔を合わせ、特徴を考えてみた。
「えっと……白毛に青髪で……」
「マントを羽織ってて、時計を持ってた。」
「あと……なんだか、せわしない感じかな。」
「そのウサギの話なら、聞いたことがあるわ。」
ウサギ娘の口から出てきたのは、予想外の言葉だった。
「知ってんのか!?」
「ええ。仲間にしては変わっていると思って、覚えていたの。大陸南のタルタロス付近で、よく出没するそうよ。調査班の人達が、よくうろついているのを見たとか……」
「タルタロス……?」
……そんなもの、俺は知らねぇ。
そう言えば、あの白兎もそんな事言ってたような……
「あれだよね……30年前の大異変で各地に出現した、謎の大穴……」
「うむ、タルタロスか……謎の多い場所だが、いかにもありそうな話ではあるな。」
「よし、行ってみよう!場所は、大陸南のタルタロスだったね。」
「イリアスヴィルから、ずっと南の地点よ。ここから東にもタルタロスがあるけど、間違わないようにね。」
「しかし、アミラの情報はガセだったではないか……文句を言ってやらねば、気が澄まんぞ。」
「まあまあ、有益な新情報を得られた事だし……まあ、間違ってた事ぐらいは伝えに行ってもいいかな?」
「イリアスベルクに行く機会あったら、文句でも叩きつけてやろうぜ。」
何はどうあれ、結果的には前身する事となった。
一行は宿を出て、迷惑にならない所で輪を囲む。
「それじゃあ、南のタルタロスに行ってみようか。今度こそ、ウサギが見つかればいいんだけど……」
「まあ待て。この町近くの鉱山で、鉄の塊が採れるという話を聞いた。入手すれば、鉄製の装備を作ってもらえるはずだ。タルタロスに行く前に、強い装備を揃えておきたいな。なにせタルタロスは、謎に満ちた場所なのだから……まぁ、どうするかはルカの判断に任せるが。」
「イリアスベルクの鍛冶屋にいるあのドラゴンも仲間にしねぇか?つえぇ奴になる気がするぞ。」
俺の言葉に、ヴァニラとゴブが反応する。
「パピも仲間になるの!?」
「そう言えば、パピは鉄の塊が欲しいとか言っていたな……それさえあれば、仲間に出来るかもしれん!」
これで、盗賊団が三人揃う事になる。
後は、諸事情でサザーランドを離れられねぇプチだけか。
「あと、修行もしねぇとな〜。万全のレベルで挑まねぇと、すぐおっ死んじまうぞ。」
「それなら、ポルノフ鉱山に出てくるモンスターを相手にすればいいかも。よーし、頑張っちゃうぞ〜!」
ソニアは棍棒を握り、気合を入れた。
「よし、決まりだね……」
この先の方針としては……
まずポルノフ鉱山に向かい、鉄塊を採取。
そしてイリアスベルクに向かい、パピを仲間に勧誘しておく。ついでにアミラをぶん殴る。
装備を整え、いざタルタロスに……って感じになる。
「よっしゃ、行こうぜルカ!面白そうな事になってきたぞ!」
「ああ、行こう!」
ルカを先頭に、一行は動いた……

ポルノフ鉱山……
明かりもない、暗い山だ。
「むっ、やけに暗い洞窟だな……これでは視界が制限されてしまうぞ。べ、別に怖くはないぞ……」
「わ、我もこわくないぞ!」
アリスの横で、ヴァニラが震えていた。
「ヴァンパイアなのに、暗闇を怖がってどうするのさ……」
呆れたように、ゴブがヴァニラに苦笑いした……
そんな事を話しながら進んでいると……
「出たぞっ!」
「こんな視界なのにか……!」
羊娘とウサギ娘が、周囲を取り囲んでいた。
「囲まれていたか……!」
「くっ!」
俺とルカとソニアとアリスは背中を合わせ、構えた。
そして気を解放し、敵の群れに突っ込んだ!
ヴィクトリーは羊娘の腕を掴み、敵の群れにぶん投げる。
「きゃあっ!」
「くっ!?」
「かめはめ波ーっ!!」
そこにかめはめ波を打ち込み、一網打尽にした!
「やぁあっ!」
ルカは持ち前の剣技で、敵を次々になぎ倒していく。
「くっ!」
ウサギ娘の群れが、ルカに矢を放った!
「はぁあっ!」
ソニアがルカの前に入り、棍で矢を払い落とす。
そしてウサギ娘達に突っ込み、高速の突きで次々に敵を打ち抜いた!
「はぁあっ!!」
アリスは高速の尖剣術で、ハチのように敵をどつき回す。
更に尻尾で周囲を薙ぎ払って、辺りをぶっ飛ばした!
「な、なんなのよこの人間達……!!」
「ひぃい……!!」
圧倒的なパワーでモンスター達を薙ぎ払う一行に、モンスター達は怖じ気付く。
そして、どんどん逃げていってしまった……
「……ふぅ。」
「こんなもんかな……」
戦士達の周囲に倒れているのは、叩きのめされて気を失っているモンスター達。
しかも、誰の命をも奪っていない。
「よし、進むぞ。もう襲ってこない筈だよ。」
「いや、暗闇から奇襲してくるかも知れねぇ。気を付けねぇと。」
戦士達は、奥に進む。

奇襲を何度か受けながら、再奥……
「おお、これだな!?」
ヴァンパイアゆえに暗闇でも目が利くのか、ヴァニラが真っ先に発見した。
そこにあったのは、大きくて非常に良質な鉄だった。
「かなりの大きさだな……どれだけ装備を造ってもらっても、なくなる事はあるまい。さあ、ポルノフの鍛冶屋に行くぞ。これで、鉄製の装備を造って貰えるはずだ。」
「それに、パピの所にも持って行ってあげないとね。」
「わ〜い、久しぶりにパピと遊べるね!」
「それで、誰が持つんだ?これ。」
俺はその鉄塊と、みんなの顔を交互に見る。
「……」
みんなは、視線を逸らした。
「お、俺かよ……」
「仕方ないだろ……このパーティだとお前が一番力持ちなんだから……」
「そんな理由かよ……」
グチグチ言っていても、進まない。
俺は大人しく、その鉄塊を抱えた……

その後、一旦はポルノフで装備を整えてからイリアスベルクに渡った。
イリアスベルクの鍛冶屋……
「パピ、いいものを持ってきたのだ!」
「じゃじゃ〜ん、鉄の塊だよ!」
ヴァニラとゴブに催促されるまま、俺は鉄塊をパピの前に下ろした。
パピより先に、親方がそれに目をつけた。
「おお、それは最高品質のポルノフ鉄じゃないか!」
「うが!これで良鉄の打ち方を伝授してもらえるのだ!」
「はぁ……はぁ……つ、疲れた……だけど、いい修行になったな……ははは……」
俺はへばりながら、邪魔にならない所に座り込んだ。
そんな俺に、親方が水を持ってくる。
「ありがとう、少し借りるよ。これだけあれば、ほとんど減ることもないさ。」
「借りるなんて言わずに、全部持ってってくれよ……」
親方は笑ってから、パピに向く。
そして、鍛冶道具を持った。
「それじゃあパピ、俺のやり方を見ておけ。しっかり頭と体で覚えるんだぞ……」
今から、パピに鉄の打ち方を教えるらしい。
「……こうか、親方!?」
「まだまだ甘い、こうだ!」
「うががー!」
そして、数分後……
「……親方、こうだな!?」
「そうだパピ、上出来だぞ!……勇者君、パピの打った剣は君が受け取ってくれ。」
親方は、ルカに剣を差し出した。
よく打ち込まれた、アイアンソード……
切れ味も抜群で、いい感じだ。
「これで良鉄が打てるようになったのだ!約束通り、修行の旅に出てもいいか!?」
「おう、行ってこい!ちょくちょく帰ってこいよ!」
「それじゃあ……」
パピはルカの方を向き、頭を下げる。
「よろしくなのだ!」
「ああ、よろしく!」
「いいかパピ、無理はするなよ!」
「お世話になったのだ、親方!立派な鍛冶屋になって、戻ってくるのだ!」
パピは親方にも頭を下げ、俺達のパーティに参加した。
これで、準備は整った。
向かうは、南のタルタロスだ。
謎に包まれた大穴に待ち受けるものとは……

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タルタロス

アミラから貰った情報を元に、ポルノフへ行った戦士達。
しかし、そこに居たのは見当違いのウサギだった。
しかし、そのウサギから思いもよらぬ情報を聞いた。
なんと大陸南のタルタロスに、白兎が行き来しているとか。
戦士達は装備を整え、綿密な準備をして……
そして……
「……」
タルタロスに、やってきた。
30年前の大異変で起こったという、謎の大穴……
今でも調査班がここら辺にテントを張りながら調査を進めているが、詳しいことは分かっていないらしい。
果たして、その中にあるものとは……?
「わわわ、急がないと遅刻だよー!」
見覚えのある、白い兎のモンスターがタルタロスに飛び込んだ!
「今のは……間違いない、あのウサギだ!大穴に飛び降りたぞ!」
「ああ、見てたぜ……!」
「追いかけよう!」
ルカ達は白兎を追いかけに、調査班が下ろしたと思われる綱はしごを降りた……
「……めんどくせぇ。」
俺は伸脚運動してから、大穴に飛び込んだ!
「えぇ……」
ルカ達の引いたような視線を背に受け、俺は闇の向こうへと落ちていく……

闇が晴れ、視界が良くなる。
単に、目が慣れただけなのかもしれない。
「……」
着地して、辺りを見回す。
「ここが、タルタロス……」
ルカ達も、到着したようだ。
「この壁や床、何で出来てるの?鉄じゃないよね……」
ソニアが壁や床を見ながら、震えている……
「なんだか、とってもイヤな感じ……ねぇ、行くのやめない?」
「色々と気になるが、先に進むぞ。あのウサギは、この中のどこかにいるはずだ。」
アリスはそう言って、先に進む。
「よっしゃ、行こうぜルカ。面白そうだ……」
「あ、ああ……うん。」
俺とルカもアリスについていく。
「ちょっと、こわいけど……あたしはドラゴン、負けないのだ!」
その後ろで、控えのメンバーもついてきた。
「……」
見た感じ、謎の物質で出来た研究所……っぽい。
所々には俺の世界でも見たことないような、高度な機械が設置されている。
しかし、起動させるのは無理そうだ。
「……来たかっ!!」
ここで、モンスターの強襲だ。
「第一種断界接触だって!消去しちゃうぞ〜!」
「いっ!?」
「なんだ、こいつ……!?」
可愛い顔をした、海老のようなモンスター。
いや、その力は顔に似合わず凄そうだ。
「しゃあっ!!」
ヴィクトリーは踏み込んで、そいつに殴り掛かる。
しかしそいつは消えて、ヴィクトリーの腕に乗った。
「あたしはシュリー!よろしくね!」
どう考えても、普通のモンスターじゃない!
「こんなモンスター、余は知らん……!!」
「くっ……!」
俺は腕を振り、シュリーを振り払いにかかる。
しかしシュリーは跳んで、ヴィクトリーの顔面に体当たりした!
「ぐぁあっ!」
鼻血を噴き出しながら、床に倒れるヴィクトリー。
その顔に、迫る足が見えた。
「っ!!」
咄嗟に避けて、起き上がる。
そこには頭部にモノアイのついた、女性形のロボットのようなものが居た……
「第一種断界接触……消去する。」
「くっ!」
こいつも、ヤバそうだ!
ソニアとアリスはシュリーを、俺とルカはこのロボットと向く。
「……おめぇ、名前は?」
「私はジェイド……そう呼ばれていた。」
「そう呼ばれていた……?」
「どういう事だ……?」
俺もルカも、構えながらジェイドの全身を観察する。
「素体となった者の記憶が……たまに、私の脳内に蘇って……違う、私に脳など存在しない……素体の記憶が混入し、自律思考が不安定に……とにかく、私はそう呼ばれていた。」
ジェイドは踏み込んで、ルカとヴィクトリーにダブルラリアットを放った!
「ぐぅっ!?」
「っ!?」
「ふんっ。」
更に二人の顔面を掴み、ヴィクトリーは地面へ、ルカは壁にぶん投げる。
「レーザーアイ。」
ジェイドはルカの方に向き、モノアイからレーザーを放った!
「まずいっ!!」
ルカは咄嗟に避ける。
レーザーで撫でられた壁が、綺麗に焼け切った。
「外したか……」
「なめんなっ!!」
ヴィクトリーはジェイドの足を払い飛ばした!
「っ」
そして転がって起き上がり、ジェイドの顔面にパンチした!
ジェイドの顔が潰れ、仰け反る……
そこで、ジェイドの動きはストップした。
「……?」
ゆっくりと起き上がり、潰れた顔面を撫でる。
「……第第一■■■ムム水■■凸銀レ■レレミ■■■レミ■ナ■■■消■■■」
「な、なんだぁっ!?」
「くるぞっ!」
ジェイドは高速移動して、ヴィクトリーの顔面を打ち抜いた!
「ぐはぁっ!!」
「シ■■ッ!!」
更にルカに後ろ蹴りしにかかる。
「ふんっ!!」
しかしルカはジェイドの足を剣で受け止め、切り返した。
「ガッ……」
「はぁあっ!魔剣・首刈りっ!!」
そしてジェイドの懐に潜ってから、喉元を剣で突き上げた!
「ッ!!」
思いっきり打ち上げられて、宙を舞うジェイド。
「かめはめ波ーっ!!」
ヴィクトリーはそのジェイドに、かめはめ波を放った!
「!!!」
それはジェイドに直撃し、大爆発を巻き起こした!
「くっ……!」
「………」
ジェイドは機能停止し、倒れた……
「……やった。」
「こっちも終わったわ。」
「気味の悪い奴め……」
ソニアとアリスは、シュリーをボコボコにしてきたそうだ。
一体(いってぇ)、何者なんだこいつ……」
俺はそう言いながら、ジェイドに触れようとする。
するとそのモノアイが光り、両手で俺の首を締めてきた!
「っぐぅっ!!?」
「ヴィクトリーっ!」
「生きてたかっ!!」
「待ってて、今……」
ソニア達が俺を助けようとしたが、次の瞬間にはジェイドはまた機能停止した……
どうやら最後の力を振り絞って、侵入者を排除しようとしたらしい……
「……!!」
そしてジェイドの体が一気に錆び付いて、崩れた。
「な、なに……!?」
「ま、まさか……死んだんじゃ……!!」
「そうは思えねぇな……」
錆を払いながら、俺は立ち上がる。
「よし、警戒しながら行くぞ……」
「ああ。気をつけねぇと、一瞬でやられちまうかも知れねぇからな……」
ルカを先頭に、タルタロスを進む。
俺は、ルカの後ろにつきながら気を張り巡らせた……
こいつらと同じ気が、このタルタロスに散在しているのが分かった。
……どうなってんだ?
確かにこれまで戦ったスライム娘やその他のモンスターはだいたいの見た目は同じでも、顔や気に微妙な違いがあった。
しかし、こいつらは違う。それぞれが、完全に同じ気を持ってるんだ。
違いなんて、どこにも無い。完全に同じなんだから。
言い知れぬ気味悪さと、ぼんやりとした恐怖が俺の心に根付いた……
そうしながらも、時々襲来する謎のモンスターをなぎ払いながら進んでいく。
「これ、なんだろう……?」
ルカが、銃を持ってそう言った。
ドン・ダリアが持っていた武器と、同じもののようだ……
「そいつは銃だ。引き金で、弾丸を撃ち出す武器なんだけどよ……この世界には、流通してねぇのか?」
「う〜ん……」
そんな事を話していると……
「てってけてー。」
聞き覚えのある声が、聞こえてきた。
「おい二人共、聞こえたか!?」
「ああ!」
「白兎か……!」
声のする方に、走る。
「下に降りたか……追うぞっ!」
一行はアリスを先頭にして、白兎を追った。
しかし……
「行き止まりか……」
謎の扉が、俺達の行く手を阻んだ。
「ウサギは、こっちに行った筈だよね。この扉を通っていったのかな……?」
「重そうな扉……」
ソニアが出てきて、扉に手をつける。
「えい!……むむ、ぐ〜っ!」
そして気合いを込めて思いっきり押してみるも、開く気配は無さそうだ。
「うが、私も手伝うぞ!」
ついでにパピがソニアと並んで扉を押すが、ビクともしなかった。
「……ダメね、どれだけ頑張っても開かないみたい。鍵穴も無いし、どうやって開けるの?」
ソニアは諦めて、アリスの隣についた。
「なんなのだ、この扉……?魔術による封印ではない、結界とも違う……!これは、空間隔絶の術式か?なぜ地下に、こんなものがあるのだ…!?」
アリスはそう言いながら、開かずの扉を睨むだけだった。
手出しできない以上、どうしようもないのかもな……
「ルカ、やるだけやってみようぜ。」
「強く押せば、開くかもね……」
「馬鹿を言うな。時空が隔絶されている以上、余が元の姿でも……」
アリスの話を背に受けながら、俺とルカは並んで扉に触れる。
すると、勝手に扉が開いた!
「うわっ!?」
「……あれ?触っただけで、押してないのに……」
「そんな馬鹿な……貴様ら、どうやって開けたのだ?」
「分かんねぇ……ただ言うと、コンマ一でルカが先に扉に触れてた。」
「じゃあ、僕が開けたのかな……?でも、何で開いたんだろう……」
とにかく、開かずの扉は開いた。
その先は、闇が広がっている。
「……まぁいい、奥に進むぞ。気をつけろ、何があるか分からんぞ。」
「よし、行こう。ウサギはきっと、この奥にいるはずだ……!」
「……」
扉を抜けた先……
そこは、紫色の何かと黒い何かに侵食された街だった。
「なんなんだ、ここ……!?」
「き、気味が悪ぃな……!」
「町だと……?しかし、この異様な様子はいったい……空間そのものが変質しているのか?いったいここは、何なのだ……?」
「ねぇルカ、引き返そうよ。なんかここ、気味が悪いよ……」
「でも、とりあえず住民と会話してみよう……」
とりあえず、ここには青年と町娘がいる。
「おっす!」
俺はとりあえず、青年に話しかけてみた。
「こんにちは、ここはレミナの町だよ。」
青年の言葉に、アリスは反応した。
「レミナだと!?いったいどういう事だ!?」
「でも、レミナは30年前に滅びたんじゃ……」
「……」
俺は青年の肩を掴み、揺らす。
「詳しく、聞かせてくれねぇか?いったい、ここは……」
「こんにちは、ここはレミナの町だよ。こんにちは、ここはレミナの町だよ。こんにちは、ここはレミナの町だよ。こんにちは、ここはレミナの町だよ。こんにちは、ここはレミナの町だよ。」
青年は光のない目で、繰り返すだけだった。
「ちょっと、何なのこの人……壊れちゃった?」
「こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こんにちは、こん■■は、ここはレ■ナの町だよ。こ■■■■■ここ■■■■の町■よ。■■■■■■こ■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「うるせぇーっ!!!」
俺は青年の顔面をぶん殴り、壁に叩きつけた!
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
青年は虚ろな笑顔を浮かべたまんま、口を動かし続けていた。
「なんだ、こいつは……何かの病気か?いったい、どうなっている?」
壊れた青年はほっといて、今度は町娘に声をかけた。
「お、おっす!」
「レミナへようこそここは良い町でしょうええそう町の名物はここからも見える研究塔の屋根ニアカラカト積モルマナノ燐光ガ朝モヤヲ■タエル光景幻想的■■レス∑テテテ■ヲルトカPエル■■■Kバル■■■■■■■■レミ■沌■レミ■■混沌ノ■■テル■■コソ汝テル■。■■■」
「やめろくそったれ!!」
俺はその町娘をぶん殴った!
「容赦ないなお前……」
「どうなってんだ……」
「第一種断界接触……コレヨリ排除スル……」
町娘はそう言ってから起き上がり、気を解放した!
「っ!?」
町娘の肉体が変質し、下半身が虫のような器官になる。
「私はシェスタ……あなた達を排除する……」
「くるぞっ!!」
シェスタは突っ込み、ルカに頭突きした!
「ぐぁっ!?」
「ちっ!!」
ヴィクトリーは距離をとってから、シェスタにかめはめ波を放った!
「ふんっ。」
しかしシェスタはそれをアリスの方へと弾き飛ばした!
「ちぃっ!!」
アリスはそのかめはめ波を、後方に弾き飛ばした!
かめはめ波は、壊れた青年に直撃した!
「うわぁああっ!?」
「だ、大丈夫かっ!?」
控えのメンバーが青年に寄る。
「■■■■■■■■■■■」
凄まじい火傷を負ったみたいだが、大丈夫そうだ。
「……」
シェスタはヴィクトリーに手を向け、エネルギー弾を連射してきた!
「ちっ!」
ヴィクトリーはエネルギー弾を弾き飛ばしてから、接近する。
「だりゃあっ!」
そして、顔面にパンチした!
「っ……!」
「はぁあっ!!」
よろけるシェスタの足を、ソニアが棍で払った!
「なっ……!?」
シェスタの体は半回転する……
「はぁあっ!!」
そこにアリスがレイピアを構え、渾身の突きで一閃した!
「ぐぁあっ……!!」
「よし……!」
ルカが跳び上がり、シェスタに兜割りした!
「っ!!」
シェスタの体は真っ二つになる。
「そんな……神様……」
シェスタは倒れ、塵となって消えた……
「なんだったの、今の……」
戦闘を終えて、ソニアが一番に口を開く。
「未知のマナの侵食現象で変異したようだが……こんなもの、余も見たことがないぞ……」
「分からない事だらけだな……ウサギは、こんな所で何をしているんだ?」
「………」
果たして、ここは何処なのか。
白兎はこんな所で、何をしているのか……
そしてこの先にあるものとは……
戦士達はそれを整理するために、とりあえず民家に入った……
「……きゅ?」

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ふしぎないきものと異世界と

タルタロスに降り立った、戦士達。
そこには謎のモンスターや、超過技術の武器があった。
そして、奥の開かずの扉の向こう……
そこは、崩壊し、侵食された空間が広がっていた。
戦士達は今までの事を整理しようと、一番近くの民家に入る……
「……」
奥の方から、ゴソゴソと物音が聞こえる。
「奥に何かいるみたい……」
「らしいな……」
どうやら、この空間は休ませてもくれねぇらしい。
「しょうがないな、見に行こう……」
「ああ……」
俺とルカを先頭に、物音のする方へ近づく。
そこには……
「むしゃむしゃ……」
タコのような触手の髪、やたら発達した胸……
変な生き物が、りんごを食っていた。
「……」
「……なにこいつ。」
あの青年みてぇに、壊れちゃいねぇみてぇだ。
でも、何でこんな奴がこんな所に……?
「きゅー!」
その変な生き物は俺達に向き、襲いかかってきた!
「ちょっと、私達は敵じゃないわよ…!」
「襲ってくるぞ、気を抜くな!」
変な生き物は気を解放し、ルカの顔面に頭突きをしてきた!
「ぐぁっ!」
「ルカっ!」
「きゅーっ!」
走り寄るソニアの足元を、触手で薙ぎ払う。
ソニアはすっ転んでしまった!
「あいたぁっ!」
「……」
「くっ……!」
突撃に行こうとするアリスを、ヴィクトリーが静止する。
「ヴィクトリー……?どういう事だ?」
「……あいつ、俺達には敵意を向けちゃいねぇ。」
「なに……?」
「指名は、ルカとソニアらしい……何故だか知らねぇけど、そんな気がする。」
「だ、だが……我々も、戦わねば!」
「いや、手出しは無用だ!」
ルカが対応しながら、アリスに向いた。
「なにっ!?」
「私達ならこんなの、カンタンよ!」
ソニアが棍を構え、変な生き物に突撃した!
そういう訳で、ルカとソニア対変な生き物とのバトルが始まった……
「きゅーっ!」
変な生き物は体当たりと触手攻撃で、猛攻してくる。
「はぁあっ!」
「やーっ!」
ルカとソニアは、それぞれの剣技と棍技で猛攻した。
猛攻のぶつかり合いは、互角だった。
「しゃっ!」
「はぁっ!」
二人の攻撃がクロスする。
しかし変な生き物は跳び避け、ルカの剣に乗った。
「なにっ!?」
「やぁあっ!」
ソニアが、変な生き物に一撃を放つ。
しかし、それは触手に止められた。
「な……!?」
「きゅきゅっ!」
変な生き物は触手を束ねて拳のようにして、二人の顔面を打ち抜いた!
「きゃあっ!」
「ぐっ……!」
ソニアはぶっ飛ぶが、ルカは踏ん張る。
そして変な生き物の懐に踏み込んだ。
「きゅ……っ!?」
「魔剣・首刈り!!」
そして、喉元を突き上げた!
「きゅ……!!」
「はぁあっ!!」
ソニアは棍をバットのように持ち、変な生き物の脳天をぶっ叩いた!
「ぎゅっ!」
「だぁあっ!!」
ルカはその変な生き物の顔面に、両足蹴りした!
「きゅーっ!!」
変な生き物はぶっ飛び、壁に叩きつけられる。
「や、やりすぎちゃった……?」
「はぁ……はぁ……」
「二人とも、気ぃ抜くんじゃねぇ!そいつの気は有り余ってるぞ!」
ヴィクトリーの声で、ハッとする。
次の瞬間、変な生き物は猛スピードでルカの腹に頭突きしてきた!
「がっはぁ……!!?」
ルカはぶっ飛び、壁に叩きつけられる。
「ルカっ!」
「きゅ!!」
ルカの所に向かおうとするソニアに、変な生き物が強襲する。
「くっ!!」
その変な生き物とぶつかるが、圧倒されてしまう。
「ぐっぬぬぬ……!!でやぁっ!!」
ソニアは渾身の力を込めて、変な生き物の足元を薙ぎ払った!
「きゅっ!?」
変な生き物はその足払いに直撃し、体が半回転する。
「たっはーっ!!」
ルカはその変な生き物の腹に、矢のような跳び蹴りを炸裂させた!
「きゅ……!!」
変な生き物はぶっ飛びながら体勢を整えて壁を蹴り、また猛スピードの頭突きを繰り出した!
「ふふん……!」
ソニアはまた棍をバットのように持つ。
「えーいっ!!」
そして、変な生き物をぶっ飛ばした!
「きゅーーーっ!!?」
変な生き物はぶっ飛び、天井に頭が埋まってしまった!
「ほ、ホームラン……」
「見事だな……」
「きゅー……」
変な生き物は元気を無くした……
「ふぅ……」
「……ちょっとやりすぎちゃったかな?」
とりあえずヴィクトリーが変な生き物の触手を掴んで、天井から引っこ抜いて、そこら辺に置いた。
「………」
「大人しくなったみたいね。驚いて襲ってきただけで、悪い子じゃないんじゃない?」
ソニアは変な生き物の頭を撫でながら、回復魔法をかけてあげる。
「きゅー!」
「ごめんね、もう邪魔しないから……それじゃあ、私達行くね。」
「きゅ……」
ガックリしたような表情で、変な生き物は縮こまった……
「……なぁ!」
俺はとりあえず、そいつに話しかけてみることにした。
「おめぇつえぇんだな〜!どうだ?良かったら一緒に冒険してくんねぇか?」
俺の言葉に、ソニア以外の一行がずっこけそうになった。
「お前、誰に対してもアクティブなんだな……」
「そんな事よりヴィクトリー……!そんな得体の知れん奴をスカウトするな!」
「え〜、だって……」
「きゅー!きゅー!」
変な生き物は、嬉しそうに鳴き声を上げていた。
「む……どうやら、好反応みたいだな……懐かれてしまったか?」
「きゅー!きゅー!」
「一緒に来たいの?それじゃあ、連れて行ってあげようか?」
ソニアは変な生き物を撫でながら、ルカの方に向いた。
「ねぇルカ、この子を仲間にしてもいいよね?」
「うん。なかなか強かったし、頼りになりそうだからね。」
ルカも、快諾してくれたようだ。
「きゅー!きゅー!」
「それじゃあ、名前はヌルコね。なんだか、ヌルヌルしてるから……」
「貴様のネーミングセンスは壊滅的だ。」
「きゅっきゅっきゅー!」
こうして、変な生き物であるヌルコも仲間となった。
「でも……この子、いったい何者なんだろう?」
「そういうのは、仲間にする前に考える事だと思うよ……」
「でも、いいじゃねぇか。なかなかつえぇみてぇだし。」
それにしても、情報を整理したいのにここじゃあ落ち着けねぇみてぇだ。
どうやら、まだまだ進むしかねぇみてぇだな……
「……」
一行は民家から出て、進む。
「……おいルカ、見ろよ。」
「ん……?」
二人の目線の先……壁に、赤文字で殴り書きされたものがあった。
『みんなアポトーシスになる』と。
「アポトーシス……?」
「あの奇妙な魔物どもの名前か……?」
「……らしいね。」
どうやら、ここの不気味な魔物はアポトーシスというらしい。
しかし、この壁の殴り書き……
アポトーシスに()()とはどういう事なのか。
もしかして、ほっとくと人類全員があの町娘みてぇに変異するんじゃねぇだろうな……
「ヴィクトリー、こっち。」
今度は、ルカが俺を呼んできた。
その目の前……紫色の何かに、穴が開いている。
例によって、穴の向こうは闇一色だ。
「奥に行けるみたいだね。」
「ああ……行くしかねぇか。」
戦士達はその穴の中に入り、抜ける。
そこは、まるで冥府への道のような一本道があった……
「ちょっと……何なのよ、ここ……」
「いったい、どうなっている……?ここは異空間なのか……?」
「ここ、何だか見覚えがある気がする……似たような場所に、来たことあるような……」
「俺にはそんな感覚はねぇな……行こうぜ。」
とりあえず、進んでみる。
なかなか長い道で、オマケに道の外は星空のような闇に包まれてる。
落ちたら、どうなるのか……試そうとは思わねぇけど。
そんなことを思ってたら、神殿のような場所に着いた。
その中心部には、魔法陣が展開している。
そして、進む道ももう無さそうだ。
「行き止まり?この魔法陣は、何なんだろう……」
「これはおそらく、転移の魔法陣だろうな。」
そう言ったのは、アリスだった。
「踏めば、どこかに飛ばされるのだと思うが……」
「ねぇ、もう引き返そうよぉ……」
ソニアは弱々しい声でそう言いながら、ルカとヴィクトリーの肩を叩く。
「なぁに言ってんだ。こっからが面白いんだろうが。」
「行こう。このまま引き返すなんてできないよ。」
「きゅー!」
戦士達は覚悟を決め、魔法陣に足を踏み入れた!
次の瞬間、戦士達は光に包まれた……

イリアス大陸南の大穴……
いつの間にか、戦士達はそこで立っていた。
しかし、様子がおかしい。
「あれ、外……?また元のところに戻ってきちゃったのか?」
「でも、なんだか変な感じじゃない?調査団もいないし、テントも無いし……」
「確かに、妙だ……周囲が妙に荒廃しているし、雰囲気が違う……」
「……」
消えた調査団、荒廃した土地……
どうしたもんか……
そう思っていた時だった。
「ばばーん!」
いきなり、白兎が目の前に現れた!
「こんな所まで追いかけてきたの?君達も、がんばるねー。」
「何を白々しい……意図的に、ここまで誘導したのだろう?」
「正直、ここまで来るかどうか五分五分だったんだけどね。やっぱりあの扉、開けちゃったかぁ……」
「ルカが開けてくれたんだよ。どういう訳だか知らねぇけどな。」
アリスはヴィクトリーの言葉を聞き、思い出したようにはっとする。
「そうだ……なぜルカは、あの扉を開けることができた?あれは、常人には破れないレベルの結界なのだぞ?」
「常人には破れない?そんなレベルじゃないよぉ。あの扉を生身で超えるのは、神様だってムリ。」
「それがなぜルカに出来たのだ!こいつが神以上とでも言うのか!答えろ!」
「もちろん、ルカ君が神の力を持ってるわけじゃないよ。これは、性質の問題かな?ルカ君は出生のゴニョゴニョでアレコレだからね。次元の扉なんか、簡単に超えていけるんだよ。偶発的に扉の向こうに飛ばされるケースはまれにあるけど……自分の意志で行けるなんてのは、前代未聞だよね。」
「ええい、分かるように説明しろ!このセリフ何度目だ!」
「ボクは導き手であって、説明役じゃないんだ。分からないことは、自分で確かめなよ……それじゃあ、バイバイ!」
白兎はそう言って手を振り、消えてしまった。
「待て……!ぐっ、また逃げられたか……」
「これじゃあ、キリがないよ。追っても追っても逃げられるんじゃ……」
「つっても、追うしかねぇんだろ?行こうぜ。」
「単に戻ってきたようにも見えるが、どうにも違和感がある。この場所は、知っているようで知らない気がするのだ……」
「おっと言い忘れっ!」
白兎が、また現れた!
「わぁっ!?びっくりさせんな!!」
「あはは、ごめんごめん〜。外はとっても怖い連中がうろついてるから、注意してね。あいつらはお高くとまってるから、土が嫌いなんだ。歩くなら荒れ地とか、土のある場所がオススメだよ。それじゃあね〜!」
そう言って、また消えてしまった。
「ぐっ、どこまでも馬鹿にしおって……まぁいい、行くぞ。」
アリスの言われるがままに、まずはタルタロスから離れた。
そして、道中……
「……!!」
凄まじい気が、そこら辺に散在している。
今白兎の言い伝えを破ったら、確実に死ぬ
「気を抜くなよ、二人とも。この周囲は、危険な気配に満ちているぞ……」
土の上を歩きながら、進んでいく……
「……」
この散在するやべぇ気は何なんだ……!?
どう考えても、普通じゃねぇぞ……!!
いったい、ここで何が起こった……!?
「……っ……」
果たして、ここは何なのか……
戦士達は、いったい何処に辿り着いたのか……
俺達は今、ルカを先頭にして進んでいる。
土の道だけを歩き、靴を汚しながら。
「……所でルカ、何処に向かってんだ?」
ふと、そんな事を聞いてみた。
ルカはこっちに向いて、真剣な顔をして……
「決まってるだろ……イリアスヴィルだ。」
そう言った。
そうか。ここら辺の地形はイリアスヴィル周辺と同じ……
だったら、ある筈だ。
この地にも、イリアスヴィルが……
「……」
とてつもなく嫌な予感がする……
そんな心境を心の奥にしまい込み、俺達は進んだ……

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崩壊したイリアスヴィル

気が張り詰めるイリアス大陸に渡ってしまった、一行。
一行は靴を土で汚しながら、イリアスヴィルに向かったのだった……

イリアスヴィル……
「な、なんだこれ……!?」
「こりゃあ……!!」
滅びていた。
イリアスヴィルが、跡形もなく。
「そんな……イリアスヴィルが滅びてる!?」
「み、みんなはどうなったんだ!?いったい、誰がこんな事を……!」
ソニアとルカは、怒りより焦りの感情を顕にしている。
しかしアリスとヴィクトリーは、至って冷静だった。
「落ち着け、奇妙な点が多すぎる。大穴に入って出た短期間にらここまでの事が起きたと思うか?それに、村が滅びてからかなりの期間が経っているようだ。」
「ああ……ここは、()()()()()()()()()()()()()()()なんかじゃねぇ。」
「それって、どういう……」
「とにかく、調べてみようよ!」
ソニアはルカを引っ張り、イリアスヴィルを見て回る。
ヴィクトリーとアリスは歩きながら、周囲を見回った。
「それにしても、こりゃあひでぇな……何があったんだ……」
「さぁな……只事ではない何かが起こったみたいだが……」
そこら辺に散在する人骨、腐った何かや泥が混じった水溜り、破壊された民家……
「僕の家が……なんで、こんな……」
ルカの家も、ボロボロに破壊されていた。
「うっ……」
ソニアが覗き込んでいる井戸……その中には、無数の人骨が投げ込まれているようだ。
「こんなの、ひどいよ……」
「……」
ヴィクトリーは、怒りを目に浮かべ始めた。
「く、くそ……何処の誰だか知らねぇけど、罪のねぇ人達を……こんな……こんな……!!」
「……」
アリスは三人に手招きして、壁を指す。
そこには、殴り書きでこう書かれていた。
『死者の数が多すぎて、埋葬が追いつかない。この村はもう、終わりかもしれない。』
「これは……伝染病じゃないよね。村に何かが襲ってきたの?」
「襲われた……一体(いってぇ)、誰にだ……?」
一行は辺りを周りながら、神殿側にも行ってみる。
そこでも、陰惨な光景が繰り広げられていた。
「……」
ヴィクトリーとルカは人骨の山に目を付けて、それを見上げた。
「……」
「人骨が、積み重なってる……いったい、何人分……?」
ソニアとアリスは神殿に向かおうとしたが、神殿の入り口には瓦礫が重なっており、通れそうに無さそうだ。
「これじゃあ、通れんな……」
「神殿が……」
がっくりしながら、東の方に向かってみる。
そこには、大量の墓が立てられていた。
「なんなんだ、このお墓の数……」
「これじゃ、村人ほぼ全員……」
「くそ……!!」
「……」
一行は、そのお墓を見回る。
「……!!」
ソニアが、一つのお墓に目を付けた。
「ど、どうしたの……?」
「こ、これ……」
ソニアの指す墓……
そこには、「ソニア」と記されていた。
「ウソでしょ、私……!?なんで、私のお墓があるの!?」
「どうなってるんだ、いったい……」
ヴィクトリーはその墓の隣を見る。
すると、『やっぱりか』という顔をしてから、ため息を吐いた。
「ルカ、その隣の墓を見てみろ……」
「え……?」
ヴィクトリーの言われるがままに、隣の墓を見る。
そこには、「ルカ」と記されていた……
「そんな、まさか……!どうして、僕の墓が……!」
墓に供えるように、日記帳が置いてあった……
「これは……僕のつけていた日記……」
ルカは日記帳を手に取り、ぽんぽんとホコリを払う。
そして、ペラペラと捲り始めた。
「どうだ、ルカ?」
「今の所、僕のつけていた日記帳と同じ……えっ?」
ルカが、素っ頓狂な声を上げる。
それにつられて、皆がルカの日記帳を覗き込んだ。
「なんで、日記に続きがあるんだ?旅立ちの後、日記をつけていないはずなのに……」
「とにかく、読んでみろ。」
「うん……」
ルカは日記帳を読み始めた……
内容としては……ヨハネス歴1455年の5月20日に、イリアスベルクでグランべリアに返り討ちにされて、意気消沈してこの村に戻ってきた、とのことだ。
「僕がイリアスベルクで、グランべリアに……?冒険に挫折して、村に戻った……?なんなんだ、この日記……確かに僕の筆跡だけど、こんな内容僕は知らない……!!最後は……最後の記録はどうなってるんだ!?」
最後の日記……
それは、ヨハネス歴1456年の8月8日に付けられていた。
「そんな……今より一年も先じゃない……!」
ソニアはルカの日記帳を覗き込みながら、唾を飲んだ。
「……」
内容としては……天使の軍団がこの村に襲いかかってきて大量の人が犠牲になったので、次の襲来には自分も戦う、とのことだ。
……その最後の三行のみ、明らかにルカの筆跡ではない者に変わっている。
非常に達筆で、年配の者と思われる。
『ルカは最期まで勇敢に戦った。
その人生が閉じる瞬間、彼は勇者である事を示したのだ。
真の勇者、ここに眠る。』
そう、記されていた……
「天使の襲来……?それで、僕は……いったい、どういう事なんだ……」
「……これではっきりしたな。ここはおそらく、我々の知っているイリアスヴィルではない。」
アリスは腕を組んで墓に寄りかかり、そう言った。
「イリアスヴィルじゃないって……どう見ても、イリアスヴィルじゃないか!」
ルカはそう言って、アリスに迫った。
しかしアリスは冷静な顔で、周囲を見回す。
「お前の知っているイリアスヴィルとは違う、と言ったのだ。ここはおそらく、別のイリアスヴィルだろう。そして時間経過も、どうやら異なるようだな。ここが滅びたのは1456年、そこから更に年月が経っている。」
アリスはそう言って、皆の方に向いた。
「ここは、我々がいたのとは異なる時空だ。タルタロスを通じて、全く別の時空に来てしまったのだ。」
「別の時空って……本当に、そんなのがあるの?」
「ある。」
アリスが口を開くより、ヴィクトリーが先に答えた。
「なに……!?」
「世界ってのは、一本の線なんだ。だけど、何かが直接過去に干渉してきたり、その本来の世界とは違う出来事が起こった場合に、世界線は分岐しちまう。ここは、その分岐した世界線の一つなんだろ……」
「分岐した……世界!?」
ルカが、食いついてくれた。
「ああ……けっこう厄介なんだ、これが。世界ってのは簡単に分岐しちまうからな。例えば、一本の苗木だ。」
一本の苗木……
例えば、とある土に苗木の芽が出てたとしよう。
それはやがて木になり、木はまた種を落とし、それがまた苗木になり、芽が出て……
それの繰り返しで森が出来て、動物が住み始めて、人が住み始める。
人の技術はやがて発展し、そこに都市が出来る……
「でも、その苗木の芽が折れちまったらどうなる?」
「そうか……苗木は育たなくなり、森も出来ないし、動物もいなくなる……」
「苗木一本で、世界って変わっちゃうのね……」
「ああ。でも、こんな程度ならいつかは収束して元の歴史に戻る。やべぇのは、大々的に歴史がねじ曲がっちまう事なんだ。」
「大々的に……!?」
「ああ……ルカ、もういっぺんその日記帳を読み直してみろ。1445年の5月20日だったっけ?」
「う、うん……」
その日は、僕達がグランべリアに怖気付いて村に帰ってしまった日だ。
「でも、俺達はグランべリアに会わなかっただろ?既に歴史がねじ曲がってやがるんだ。」
「そ、そうか……!」
「なんと、本当に別の時空とはな……」
「……本来なら、それを食い止めるのはタイムパトロールって言う奴らなんだけど…どうやら、この世界には居ねぇみてぇだ。」
「食い止める……?放っておくと、どうなる?」
アリスの問いに、ヴィクトリーは少し黙り……
顔を上げた。
「分岐した世界はこんがらがり、何もかもがめちゃくちゃになって、宇宙そのものが消える事になる。」
「!!!」
「宇宙がっ……!!?」
「な、なんだと……!!?」
一行に、衝撃が走った。
宇宙が消える。
そんなどうしようも無いことを、いきなり言われたのだ。
「そ、そんな……」
「そんなの……どうしたら……」
「この世界にタイムマシンもねぇし……未来を変えちまうしか、方法はねぇ。」
「未来を……?」
「ああ。世界線ってのはいつか収束するんだ。だから、無理矢理にでも正史に沿うように書き換えちまうんだ。……ホントは、タイムマシンで過去に行って直接変えちまうのが一番いいんだけどな……」
「なるほど……」
ルカは辺りを見回して、考える。
「タルタロスの奥は、別の時空に通じてたって事か?そんな簡単に別の時空に来てしまったなんて……」
「自分の意志で行き来するのは、神でも不可能……貴様以外は。あの白兎は、そう言っていた筈だ。もっとも、当の白兎まで来ていた時点で胡散臭いが。ここでこれ以上、話をややこしくされても仕方ない。」
アリスはそう言って、腕組みした。
「タルタロスは、別の世界線……つまり、別の時空に通じていた……そっちは少し未来で、ここ(イリアスヴィル)は滅びていた……もうムリ、あたしの頭では理解出来ません。」
「余とて、信じ難い話ではあるが……目の前の現実は、受け入れねばな。」
ソニアとアリスは頭を抱えながら、ため息を吐いた。
一行は輪になって、座り込んだ。
「さて、これからどうするかだ。もう少しこの世界を調べるか、いったん戻るか……」
「もう戻ろうよ。ここにいると、気が滅入っちゃうよ……」
「そうだな、これ以上は収穫もなかろう。この村が滅びた姿を見続けるのは、貴様達には酷だしな。」
「それで、どうやって帰るんだ?またあの禍々しい所に行くんか?」
「それはちょっと……」
ソニアは苦笑いしながら、首を横に振る。
まぁ確かに、ソニアでなくても出来ればあそこには行きたくない。
「ハーピーの羽で戻るにしても、異世界で使えるのか?とりあえず……ていっ。」
アリスは、ハーピーの羽を使った!
しかし、何も起きなかった……
「ダメじゃねぇか。」
「ぐぬぬ……いや、ルカよ。貴様がハーピーの羽を使ってみろ。」
「僕が使っても、同じだと思うけど……えいっ。」
ルカはハーピーの羽を使った!
すると、元のイリアスヴィルの前に戻ってきた。
崩壊していない、あのイリアスヴィルだ。
「戻った!?」
「やはりな……貴様はどうやら、別世界を行き来する能力があるようだ。白兎が言うには、神さえ不可能な事らしい……全く、貴様は訳の分からん奴だな。」
「ひゃ〜……やっぱルカって特別なんかなぁ……」
「なんで、僕がそんな……」
「考えた所で、我々の知る情報では分かるまい。とりあえず、ポケット魔王城に戻るぞ。」
「ちょっと落ち着いて、作戦会議でもしないとね。もう私、頭の中ごっちゃごちゃだし……」
「ああ、俺もここらで落ち着きてぇと思った所だ……」
アリスは、ポケット魔王城を出した。
「では行くぞ。少し休んだ後、作戦会議だ。」
そして一行は、ポケット魔王城に吸い込まれていった……

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作戦会議

ポケット魔王城……
アリスの招集で、メインメンバーが集められた。
ルカ、ヴィクトリー、アリス、ソニア、そして何故かヌルコ。
「それでは、作戦会議を始めるとしよう。」
「あらためて、これからどうするかを決めないとね。変なモノを見過ぎて、頭がゴチャゴチャだよ……」
「そうよね、なんだか夢でも見てたような気分。まさか、異世界に行っちゃうなんて……」
「それ以前にも、ツッコミどころは満載だぜ。さぁどうするよ?」
「きゅ〜!きゅ〜!」
「なんで、ヌルコまでいるのだ……?まあいい。」
アリスはコホンと咳をついて、改めて皆を見た。
「貴様らにとっては、降って湧いた話かもしれんな。発端は、ウサギによって余がこの姿に変えられた事だった……それ自体は、あくまで余の個人的事情……その解決に、貴様らの手を借りているに過ぎなかったのだ。」
「でも、一気にそうじゃなくなったわね。自分の墓を見せられたんだから……」
「俺も、こんな事情を知っちまったからな。今更退けねぇ。」
「こうして、貴様達も当事者となった。いや、この一件の当事者は世界全ての者なのかもしれん。こういう時、問題の切り分けが重要だとたまもは言っていた。状況を理解していれば、今後なすべき事も見えてくるだろう。」
「ああ……そんじゃあ、まずはあの白兎についてだな。」
ヴィクトリーが、誰よりも早くそう発言した。
「あの白兎か……アイツは突然に魔王城に現れ、余をこの姿に変えた。奴の目的は、現在に至るまで不明だ。奴自身は、魔王を導く事が使命と言っている。そして実際、その指名を忠実に行使している節もある……」
「ウサギを追いかけて、異世界に行っちゃったんだもんね。やっぱり、わざとあそこに私達を導いたのかな。」
「奴は余に、何かを見せたいようだ。それは、この世界に迫る危機と関連があるように思える。」
「宇宙が消えるって奴か?」
「……そういう事に、なるだろうな。」
「でも、あのウサギって一体何者なんだろ。」
ソニアは顎杖をついて、そう発言した。
「魔王さえ翻弄するって事は、魔王以上の存在……?」
「多分、それどころじゃねぇと思う。」
アリスが応えるより先に、またヴィクトリーが応えた。
「どういう事だ……?」
「どんな矮小な存在だろうと、生き物には『気』ってものが放たれている。コントロールで極限まで小さくしたり、消えてるようにカムフラージュしたり出来るが……あの白兎からは、それが感じられなかった。」
「なに……!?」
「おかしい、余は確かに奴の気を……」
「『気』と『気配』は別物……って言っておく。」
そう言ってから、ヴィクトリーは続ける。
「俺はこの感覚に、覚えがある。神の気だ。」
「神の気……!?」
「馬鹿な、あんな奴が神クラスだと……!?」
「いや、神なんてクラスじゃねぇと思う……もっとやべぇ奴だと見ている。あいつの底がどの程度なのかはこっちも神の次元に至らねぇと分かんねぇけど……とにかく俺は、あいつはそれほどまでの実力者なんじゃねぇか、と睨んでる……あ、そうだ。」
ここで、ヴィクトリーが思い出したかのようにアリスの方に向いた。
「伝承の事について、何か思い出せたか?」
「伝承……『アリスを導く白兎』の事か?残念だが、全く……」
「う〜ん、それが分かりゃあちっとは苦労しねぇんだが……」
「奴は、導くだけの存在……それゆえ、異世界さえも行き来出来る……これからも、ウサギを追う事は目的の一つとなるだろう。奴の術中にハマるのは癪だが、仕方あるまい……」
白兎については、こんな感じにまとまった。
「じゃあ、タルタロスの事も考えないとね。」
ルカの発言で、今度はタルタロスについて話し合う事になった。
「そもそも、タルタロスって一体(いってぇ)何なんだ?俺の世界にも、あんなもんは無かったぞ。」
「タルタロスとは、30年前の大異変で出現した時空の裂け目。その正体は、謎に包まれていた……」
「ああ、そう言えば何かそんな事言ってたな……今んところ、大異変で発生した謎の大穴って見方しか出来ねぇのか。」
「うむ。しかし今回、タルタロスを抜ける事に成功した。なんとそこは、我々の知る世界に酷似した異世界……ヴィクトリーの言葉を借りるとなると、今の我々の世界線とは別の世界線だった……」
「つまりタルタロスは、異世界へのトンネルだったんだね。でも、どうしてそんなものが……」
「何度も言うが、タルタロスが出現したのは30年前の大異変。異世界のトンネルが出来たことで、大異変が発生したのか……」
「または、その逆かってんだな……今んところ、それが分かんねぇからどうしようもねぇんだけどさ。ヌルコ、おめぇなら分かるんじゃねぇのか?」
「きゅー…」
「なぜヌルコに聞く……」
ヴィクトリーは顎杖をついて、頭を搔く。
「それに、あん中はアリスでさえ知らねぇようなやべぇ魔物ばっかだった。」
「なんだか、どれも不気味な魔物だったよね……」
「魔素と聖素が、不規則に入り交じっていた……余は、そんな印象を受けたな。更に我々は、人間らしき魔物が変異するのも見た。あそこにいた魔物は、全て人間だった可能性がある……」
「きゅ〜!きゅ〜!」
何故かヌルコが、反応したようだ。
「ヌルコちゃんも……そうなのかな?」
「分からん……どこか違うような気もするがな。」
アリスはコホン、と咳をついてから続ける。
「変異した魔物は、我々を敵として認識しているようだった。外敵として、排除するのが使命だったようだな。しかし奴等は仲間同士で社会を営んでる様子はない。その生態も、全くもって分からん……」
「何より分からないのは、中にあったあの町だよ。なんだかおかしな事になってたし、それにレミナって……」
「あそこには、マトモな人間も居なかったしな。唯一マトモそうなのも、ぶっ壊れちまったし。」
ルカとヴィクトリーは首を傾げてから、互いを見た。
「30年前の大異変で、消滅したはずの都市……その一部が、タルタロスの中に存在していた。しかも、空間自体に侵食されているかの異様さ……住民ともども、取り込まれてしまったとでも言うのか?」
「分からない事だらけだよね……」
「しょうがねぇさ、まだまだ情報がこれっぽっちもねぇんだから。」
「タルタロスに関して、もっと調べねばなるまい。あそこだけではなく、他のタルタロスもな……」
「……」
ヴィクトリーは頭を掻いてから、顔を上げる。
「そのタルタロスの先……そこは、別の世界線だったな。」
「そこでは、村が滅ぼされていた……そして、私達も死んでた……異世界とはいえ、すっごくヤな気分……」
「我々の世界と似ているが、異なる点も多い。10年以上は未来だし、ルカは冒険に挫折したようだ……」
「これから先、あの世界みたいになる事はないよね?まさかあの世界が、私達の世界の未来だったり……」
「なんとも言えんが……現在の時点でも、違いは出ているぞ。ヴィクトリーの指摘した通りだ。」
「ああ……そもそも俺達は、グランべリアに会ってすらいねぇ。」
「内容があっちとこっちで違うよね……」
「非常に似てはいるが、やはり別の世界なのだ。もしかしたら、ありえた未来なのかもしれんが……」
ここで、ソニアが挙手した。
「気になったんだけど……タルタロスは世界に7カ所あるよね。それ全部、あの異世界に繋がってるのかな……?」
「そうかもしれんし……あるいは、他にも異世界があるのかもしれん。」
「まさか、あれ以外にも異世界があるって言うのか!?タルタロスの数だけ、他に6つも……!?」
「……世界線の分岐が、アレだけとは限らねぇ。そこら辺は、確かめてみるしかねぇみてぇだ。」
「他のタルタロスの探索かぁ……でも、行けないような所にもあったんじゃない?」
「今すぐ、全てのタルタロスを探索するなどというのは無理だ。だが、冒険の目的の一つとして考慮するべきだろうな。」
「そんな事より、なんであのイリアスヴィルは滅んだんだ?」
ヴィクトリーは、不意にそう言った。
「あの日記を見る限り天使の仕業みてぇだけど、そんなことをする意味が分からねぇ。」
「やっぱり、イリアス様のお考えよね?」
「天使どもが独断で行った事だとは思えんな。間違いなく、イリアスの指示あっての事だろう。」
「でもよ、あんな事をしてもイリアスにメリットはねぇ気がするぞ。」
「うーん、こちらで小さくなっているイリアスと関連があるのか?」
「もう、さっぱり分からないや……」
ルカはそう言って、机にガクッと倒れた。
「異世界そのものの存在と、あの異世界の惨状は切り離して考えた方が良いのかもしれん。」
「あの世界は、分岐した世界線の一つ……今は、そういう事でいいと思う。」
「うむ。余もヴィクトリーと同じ意見だ……」
「イリアス様が、イリアスヴィルを滅ぼした未来があった……そういう異世界に、トンネルが繋がっちゃったって事?」
「イリアスなら、やりかねん……」
「結局、何も分かんなさそうだ。あの世界を調べんのは危険だし、俺も嫌だ。」
「……」
ルカが起き上がり、皆を見る。
「向こうの人達も、こっちの事を知らないんじゃないかな。あっちはあっちで、唯一の世界だと思ってるのかも。」
「その可能性は、極めて高いな。タルタロス内の扉を超えん限り、他の異世界には行けんのだ。」
「そりゃあ、普段こっちに住んでいる人達が自分達以外の世界があるなんて、マジで思ってる奴なんか少数派だろうしよ。」
「いや……あっちのルカなら、こっちの世界に来られるのか?どちらにしろ、あちらは故人だから確かめようもあるまい……そして……」
アリスは、俺の方に向いた。
「あの世界の貴様は、何をしている?」
「ぇ……?」
「ああ、そう言えばヴィクトリーも異世界の出身だったね……妙に、事情に詳しいし……」
「つってもな……あそこは、俺のいた世界なんかじゃねぇし、妙に事情に詳しいのは俺の世界の冒険がちょっと特殊だって事もあってだな……そもそも、あの世界に俺は渡ったのか?」
「……」
皆の視線を受けながら、ヴィクトリーは続けた。
「だって…俺はそもそも、こことは何次元も違う『ドラゴンボールヒーローズ』の世界から来たんだぜ?元々この世界の住人だった訳でもねぇんだ。」
「……じゃあ何か?貴様はそのドラゴンボールヒーローズの世界から、ここの数ある異世界の中から、この世界に降り立ったと言いたいのか?」
「降り立たせたのはイリアス様だけどよ……そうしねぇと、説明がつかねぇだろ……」
「むむむ……貴様については、まだ情報が少なすぎるな……」
「例の日記にも、ヴィクトリーの事は書いてなかったしね……」
「俺の事は、このコトの視野から外してもいいだろ。そんな事より今はルカの方が関係大アリだと思う。」
ヴィクトリーの言葉で、注目がルカに集まった。
「そうか……ルカは、異世界を開く能力がある……それは間違いないようだな。あの扉は、通常の手段で開くものではない。神さえ不可能と、あのウサギも言っていた。」
「そう言った当のウサギも、ぴょこぴょこ超えてたけどね……」
「奴は、魔王を導くという伝承を持つウサギ……そうした能力があっても、まだ納得できる。しかし、全く理解できんのは貴様だ。人間の身で、なぜ異世界の扉を開けられるのだ?」
「僕に聞かれても、なんとなくしか……」
「なんか、そういう血統なんじゃないの?お父さんは英雄だし、お母さんは美人だし……」
「英雄と美人の子というだけで、そんな力が身につくか。神でさえも不可能とまで言われているのだぞ……たまもがいれば、調べてもらえるのだがな。ええい、奴はどこで何をしているのだ?」
アリスは頭を掻きながらそう言った後、ルカに向いた。
「唯一の手段は、貴様の父親に聞いてみる事だ。貴様の話を聞く限り、色々と知っていたようにも思える。やはり、貴様の父に会ってみる必要があるだろうな。それが貴様自身の、本来の冒険目的なのだろう?」
「うん……」
「アリス、おめぇの部下はどうしてんだ?」
「おっと、そうだったな……それにしても、四天王は何をしているのだ……たまもなど、余の状況を嗅ぎ付けてもいい頃だぞ。」
「魔王様が行方不明って、一大事のはずだよね。もしかして、配下に慕われていないとか……」
「な、何を言うか!余は全ての魔物に好かれているのだぞ!……などというのは、少し言い過ぎかもしれん。だが、余に対する四天王の忠誠は本物のはずだ。余が魔王である事を、大っぴらに喧伝はしておらん。下克上を狙う輩が押し寄せてきては、危険だからな。しかし、完全に素性を隠している訳でもない……現にこれまで、何度か余は魔王であることを口にした。四天王の中で最も悪賢いたまもの情報網ならば……とうの昔に、余の元に辿り着いてもおかしくないのだ。ウサギに何かされたのか……?しかし、そう簡単に不覚を取るというのも考えがたいが……ともかく、魔王の立場での増援は期待できそうにないな。四天王の連中も、どこぞで足止めを食らっているかもしれん。」
アリスはそこまで話してから、また皆に向いた。
「さて、これからだが……情報の整理によって、なすべき事はおのずと見えたな。まずはウサギの捜索。奴にはまだまだ聞き出さねばならんが、行方は不明だ。次に、ルカの父親の捜索。彼は事態の鍵を握っていると、余は睨んでいる。しかし両者とも、足取りは取れんのが現状だ。行く先々で、聞き込みを続けるより他にあるまい。」
「そうだね、地道に情報を集めるしかないか。」
「結局、当初の目的通りになっちまったけどな。」
「だが、新たに明確な目的が出来た。各地に存在する、タルタロスの探索だ。まずは、イリアス大陸に存在するもう一つのタルタロス……大陸東のタルタロスを目的にするべきだと思うが。」
「それって、ロストルム村の近くにあるのよね。あそこ、東の山脈で隔絶されてたんじゃなかったっけ?」
「山脈を抜ける洞窟がある……が、かなり険しい道となる。今の我々の戦力では、厳しいかもしれんな。あくまで目安だが、黄金製の装備くらいは欲しいところだ。そのくらいの準備はしてから、山脈越えに向かうべきだろう。」
「あの、金って鉄より柔らかかった気が……」
「黄金製の装備か……大陸北部のミダス村に、金を鋳造する技術があるんだっけ。」
ヴィクトリーのツッコミが拾われないまま、どんどんと話が進む。
とりあえずハーピーの集落から北上して、ミダス村に到着するらしい。
そのハーピーの集落だが、どうもハーピーが集団失踪したらしいのだ。
修行ついでに、問題も解決出来るといいが……
「つまり、今後の予定をまとめると……」
「まずはイリアスベルクから東に向かい、ハーピーの集落。すぐ隣にハピネス村もあるので、事件について調べるぞ。カタがついたら、北上してミダス村。ここで、黄金製の武具を作ってもらえるはずだ。そうすれば、戦闘経験も武装も充分のはずだ。大陸東の山脈越えに挑み、僻地のタルタロスに乗り込むぞ。」
アリスが、そうまとめてくれた。
とりあえず、こういう事になった。
実際の進路はルカ次第だけど、こいつがこの事件を見逃す訳が無い。
「とりあえず、当面の目標は東のタルタロス……それでは、行くとしよう!」
アリスが皆をまとめて、立ち上がった。
「ああ、行こうぜルカ!俺、わくわくしてきたぞ!」
「ああ、行こう!」
準備を終えた戦士達は、ポケット魔王城から発つ。
次の目的は、ハーピーの集落だ。
ハーピーの集団失踪とは、いったい……
そして、何が戦士達を待ち構えているのか……

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ハーピー救出作戦

作戦会議を終え、ポケット魔王城から発った戦士達。
戦士達は、イリアスベルクの東にあるハピネス村に向かった。
「ひゃ〜……ハーピーの村なんだよな?」
「ああ……」
しかし、ここにハーピーは居なかった。
居るのは人間と妖精と犬娘ぐらいだ。
戦士達は解散し、詳しい情報をかき集めてから集合し、情報を交換した……
「……ふむ、例のハーピーの集団失踪事件で話題は持ちきりみたいだな。」
アリスがそう言って、息を吐く。
「後で念のためにハーピーの集落にも行ってみようよ。何か分かるかもしれないし。」
ルカはみんなにそう言って、準備を整えている。
ヴィクトリーとソニアは並んで、頷いた。
「ああ……それと関係あるかどうかは分かんねぇけど、ここから離れたところにある謎の塔も気になるから行ってみようぜ。面白そうだ。」
「お、面白そうて……ルカの言う通り、まずハーピーの集落に行って見るのが一番かもね。」
「きゅー」
ヌルコは、ヴィクトリーが買ってあげたりんごをもしゃもしゃと齧っていた。
「おっしゃあ、そうと決まれば行ってみようぜ!」
「ああ……」
ルカ達は、ハーピーの集落へと向かった……

ハーピーの集落……
「噂に聞いた通り、誰もいないね。全く気配もしないや……」
「ああ、気も感じねぇ……それにしても……」
ここは、巨大な樹木がそのまんまハーピーの巣になっているのだ。
神精樹よりかは小さいが、それでもでかい。
「念のため、隅々まで調べてみるぞ。なんらかの手掛かりがあるかもしれんからな……」
「ああ……」
とりあえず戦士達は固まり、集落の調査を始めた……

宿屋……
「……」
部屋に、争った形跡は無さそうだ。
しかし、一枚の貼り紙が目に付いた。
『当宿は、しばらく休業します。』
「……貼り紙を貼るだけの余裕はあったみてぇだな。」
「だな……突発的に消えた訳でも無さそうだ。」
ヴィクトリーとルカがそう言葉を交わすと、アリスが入ってきた。
「ああ……『しばらく休業』ということは、戻る意志もあるようだが……何ヶ月も戻らない、というのも想定外だったと伺えるな。」
「……何が起きたんだ……?まさか、伝説の超サイヤ人が攻めてきたって事は有り得ねぇだろうし……」
だいいち、そんな事があったらここに気が残っている筈だし、ここも村も……下手すればこの星が跡形もなく破壊し尽くされてる筈。
戦士達は、調査を続けた……

とある民家……
そこにも、争った形跡はない。
「おい、見ろよこれ。」
ヴィクトリーはそう言いながら、メモ用紙を取った。
そこには汚い字で、『すぐ戻ります、心配しないで下さい。』と記されていた。
「ふむ……」
「しかし、何ヶ月も戻っていない……何か、想定外の事態でもあったのか?」
ルカとヴィクトリーとアリスが首を傾げる。
それを横目にソニアは、部屋を見回していた。
「……突然消えるにしても、こんなに部屋を綺麗に整理してから消えるのかな……」
言われてみれば、そうだ。
ここの民家の全ては綺麗に整頓されており、争った形跡はない。
さっきの宿屋の貼り紙といい、やはり消えるまでには余裕があった……?

一番大きい民家……
おそらくは、村長の家であろう。
ここにも、荒らされた形跡はない。
……奥の方に、誰かいる!
「オッス!」
「おや、あなた方は……」
そいつはメガネを上げ、こちらに向いた。
そう、ネロとかいう青年が座っていたのだ。
「きゅー!」
「貴様、ここで何をしている……?もしやハーピー達の失踪も、貴様の仕業か!?」
アリスの言葉に、ネロは首を横に振った。
「いえいえ、それは誤解です。私は事件の事を耳にし、調べにやってきたのですよ。」
「ホントかな……それで、何か分かったの?」
「ええ、だいたいの事情は掴めました。ここは女王の家、記録を示した日誌が隠してあったのですよ。それによると……失踪より一ヶ月ほど前から、集落に奇病が流行り始めたようです。理性を失い淫乱化、男を見ると襲ってしまう病気……アルケQ5淫熱という鳥類のみの伝染病だったようですね。」
「……」
ヴィクトリーの世界にも、存在しない病気だ。
「伝染病だと……?魔物に感染する伝染病は、すべて撲滅されたはずだが……」
「ええ、アルケQ5淫熱は千年も前に撲滅された太古の病気です。それが、突然に猛威を振るい始めたのですよ。理性を失い、凶暴化するハーピー達……女王は子細に文献を調べ、絶滅したはずの奇病を知りました。」
「それで、ほっとくとどうなるんだ?死んじまうのか?」
「いえ、この病気は死に至るようなものではありません。しかし、ホルモン分泌に作用し、繁殖本能を過剰促進させるようです。治療法は、人間男性との接触を断っての療養のみ。そういうわけで、ハーピー達は自身を隔離したのでしょうね。隔離場所は、ここからまっすぐ北にあるハーピーの塔。そこに閉じこもり、今も療養しているのでしょう。」
「きゅ……」
長すぎる話に、ヌルコは寝てしまっているようだ。
「しかしなぜ、そんな奇病が現代に復活したのだ?太古に撲滅された伝染病なのだろう?」
アリスは腕を組みながらそう言って、首を傾げた。
「ウィルスキャリアが居たのでしょうね。太古のウィルスを、その体に持った者が……」
「……要するに、太古の魔物がここら辺をウロついてるって事か。」
「その通りです……というより、それしかありません。」
「……まさか、そんな……」
太古の魔物が、ここら辺をウロついている……
その情報にうろたえる戦士達。
「太古の魔物か〜……どんな奴なんだろうな……」
その中で一人、ヴィクトリーだけがわくわくした表情でそう言った。
「……そんな事より、今はハーピー達の事です。現在もまだ、ハーピーの塔に閉じこもっていますが……」
「ああ、そうだったな。特効薬とかねぇんか?」
「薬か、2代魔王様が植えた世界樹ならば……あの霊樹になる実ならば、万病を癒せるはず。しかし、あそこはクィーンアルラウネの管轄。今の我等の実力では、とても行くことはできんぞ。」
「そりゃ困ったな……」
二人が顔を見合わせて、息を吐いた時だった。
「……こんな事もあろうかと!実は私は、世界樹の実を持ち歩いていたのです。」
ネロはそう言って、それらしき果実を差し出した。
「これを、ハーピー達に飲ませてあげてください。これだけの分量があれば、全員に行き渡る筈です。」
「ほんとか!サンキュー!」
「いや、待て!本当にこれ、世界樹の実か……?騙して毒を渡したのではないだろうな……?」
「信用がないのですね……私は、そんなに胡散臭いのでしょうか?」
「はい、とても胡散臭いです。」
ルカが、即答した。
「確かに怪しいとは思うけど、俺はおめぇの事は悪いやつだとは思ってねぇぞ。こんな事をしても、おめぇに得なんてねぇからな。」
ヴィクトリーはそう言って、ネロに握手を求めた。
「……やはりあなたは、噂通りの戦士だ。会えてよかった……」
ネロはそう言って、ヴィクトリーと握手した。
「ともかく、ハーピー達の保護はあなた方におまかせします。さっき言った通り、ハーピーの塔はここより遥か北。おそらく、理性を失っているでしょう。くれぐれも、気を付けて下さいね。」
「ああ、おめぇはどうすんだ?」
「私は私で、なすべき用があります。互いに最善を尽くすとしましょう……」
ネロはそう言って手を離し、元の所に戻る。
そして湯呑みを片手に、女王の日誌を読み始めた……
「……って、湯呑み!?」
「もちろん、私のマイカップです。他人の家のものを無断で使ったりはしませんよ……」
そういう訳で、この世界樹の実をハーピー達に使う事になった。
戦士達はハーピーの集落から出て、北のハーピーの塔へと向かった……

モンスター達を叩き伏せながら進み、北のハーピーの塔……
「ここか……」
ヴィクトリーはそう言いながら、塔を見上げる。
確かに、塔の中で嫌な気が散在しているようだ。
「ルカ、どうだ?」
「入口が、中から閉じられてるみたいだね……」
まぁ、当然と言えば当然か。
そうじゃなきゃ、隔離医療じゃねぇ。
「ここを開けてくれ!薬を持ってきたんだ!」
「俺達は敵じゃねぇ!おめぇらを助けに来たぞ!」
ルカとヴィクトリーは並び、扉の前でそう言い放つ。
すると少しの沈黙の後、扉が中から開けられた。
「……行こうぜ。」
「うん……」
一行は一応気を引き締めて、ハーピーの塔に入った……

「……」
迎えてくれたのは、ハーピーだった。
ただし息遣いは荒く、目もトロンとしている。
「だ、大丈夫か?」
「薬を持ってきたよ。これを飲めば、病気も治るはず……」
ハーピーはルカがそう言いかけた時に、クスクスと笑った。
「薬なんて、どうでもいいから……ねぇ、あたしとエッチしようよぉ……」
「あ、ダメっぽいぜ……」
「くっ、既に理性を失っているのか!仕方ない、とりあえず大人しくさせないと……!」
戦士達は構え、ハーピーに向いた。
「うふふ……」
「あら、男の子が二人もぉ……」
ハーピー達はぞろぞろと出てきて、戦士達を睨む。
どうやら、ヴィクトリーとルカの気配につられたらしい……
「こ、こんなに居るの……!?」
「やるしかないか……!」
「きゅきゅー!」
ソニアは棍を構え、アリスはレイピアを構え、ヌルコは触手で銃を構える。
「おっしゃあ、やってみっかぁ!」
「ああ!」
ルカとヴィクトリーが、ハーピーの集団に切り込んだ!
「うふふ、大人しく犯され……」
「だっはーっ!!」
ヴィクトリーは竜巻旋風脚みたいなキックを放って、ハーピー達をぶっ飛ばす。
「うぐっ……!?」
「あはぁっ!」
目を情欲に染めたハーピーが、そのヴィクトリーに突っ込んでくる。
「はぁっ!」
しかしルカが、剣でそれを止めた。
「もう、邪魔しないでよぉ!」
「正気に、戻りなさーいっ!!」
ハーピーの背後から、ソニアは脳天を棍でぶっ叩く。
「邪魔よ……!」
別のハーピーが、ソニアに突進してくる。
「きゅーっ!!」
そのハーピーを、ヌルコが触手で叩き下ろした!
「きゃっ……!?」
「でやーっ!!」
間髪入れずに、ソニアがそのハーピーの顔面を棍で打ち抜く。
「くっ!」
アリスは魔法とレイピア術を駆使して、ハーピーと戦っている。
しかし、一人では分が悪そうだ……
「ルカ、アリスの方に行けっ!」
「分かった!」
ルカはヴィクトリーから離れ、アリスの援護に向かう。
ヴィクトリーは、ハーピー達に囲まれていた……
「あはっ、一人になっちゃったねぇ?」
「この人数相手じゃ、抵抗できないわよぉ?」
「そうかな……」
ヴィクトリーは腕をクロスして、気合砲を放った!
「っ!!?」
ドンッという衝撃が、ハーピー達を吹き飛ばす!
ヴィクトリーは姿を消し、疾走した!
「……」
「きゃあっ!?」
「あぐっ!」
「ぎっ!?」
次の瞬間、ハーピー達が次々に失神していく。
そして、ヴィクトリーを取り巻いていたハーピー達は全員気絶してしまった……
「ふう、落ち着いたか……」
「みたいだね……」
アリスとルカの方も、なんとか終わらせたらしい。
「もしかして、ハーピー族みんな倒しちゃってたり……」
「きゅ。」
ソニアとヌルコも、無事に終わったみたいだ。
「あ、あうぅ……つ、強い……」
意識のあるハーピーが、そう言いながらヨロヨロと立ち上がる。
「わ、わりぃわりぃ……」
「ごめん……ほら、これを飲んで。」
ルカは、ハーピーに世界樹の実をほんの少し齧らせた。
すると、たちまちハーピーの顔色が元に戻り……
「ううん……あ、あれ……?いやらしい気分が、無くなっちゃった!」
「よし、効いたみたいだな!」
「きゅ!」
「ありがとう、薬を持ってきてくれたのね。すこしわけてよ、みんなに飲ませるから……でも……女王様も発症しちゃったの。塔の最上階にいるみたいだけど、誰も近寄れないのよ。」
「……」
ヴィクトリーは、天井を見上げる。
……確かに、感じる。
大きな気が、乱れているのが感じられる。
「それじゃあ、僕達に任せてくれ。」
「女王に、薬を持っていきゃいいんだろ?そんなん、朝飯前だぜ。」
「気を付けてね、みんな病気のせいでエロエロだから。表面的な態度は普通だけどら心はエロでドロドロなの。それじゃあ、私はまずここら辺で伸びてるみんなに薬を配ってくるね!女王様は、頼んだから!」
ハーピー娘はそう言って、気絶しているハーピーに薬を与えに飛び回った。
「それじゃあ、僕達も薬を渡しに行こう。」
「あのハーピーの言う通り、それらしき気が最上階にあるぜ。」
「やれやれ、世話が焼ける……が、魔王として見過ごすことは出来んな。」
「きゅきゅ!」
戦士達はそう話し合いながら、ハーピーの塔を進んだ……

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■■■■■■■女王と■激戦

ハーピーの集団失踪事件を調べに向かった戦士達。
ネロの情報により、ハーピー達はアルケQ5淫熱という病気にかかっていて、隔離療養のために北の塔にこもっている事が判明した。
そのネロからアルケQ5淫熱を治せるという世界樹の実を受け取り、北の塔にやってきた。
そこは、淫熱によって凶暴化したハーピーの巣窟だった……
「ふん、だぁっ!!」
「やぁあっ!」
奇襲してくるハーピー達を、戦士達は次々に叩き伏せながら進む。
中にはハーピーだけではなく、スズメ娘も居た。
「ヴィクトリー、女王の気は?」
「もうすぐそこだぜ。」
そう言いながら進んでいると、それらしい部屋に辿り着いた。
その部屋の中心……クィーンハーピーが、息を荒くしていた。
「おめぇがクィーンハーピーか!」
「大丈夫ですか!?」
ヴィクトリーとルカが、クィーンハーピーに寄ろうとする。
クィーンハーピーはそれを確認し、こっちに羽根を向けた。
「まさか、人間がここに……私に、近寄ってはなりません……」
「薬を持ってきたんです!これを食べれば、治りますよ!」
ルカはそう言って、世界樹の実を取り出す。
しかし、クィーンハーピーは首を横に振った。
「それは、世界樹の実……しかしそれだけの量では、私の病を癒すには足りません……」
「ちょっと、話が違うじゃない……!全員に行き渡る量じゃなかったの……?」
ソニアがそう言うと、クィーンハーピーはそっちに向いた。
「魔力が高い者ほど、多くの薬を必要とするのです。その量では、女王を癒すには到底足りません……」
「ああ、なるほどな……」
そういう訳で、クィーンハーピーには治療を施せないらしい。
「早く去るのです、人間……私が理性を保っていられる時間も、限界が……」
クィーンハーピーが、そう言いかけた時だった。
不意にその体ががくりと脱力し、静止した。
「クィーンハーピー!」
「大丈夫か!?」
ルカとヴィクトリーは、一応距離を取りながらクィーンハーピーを見る。
「………」
クィーンハーピーはゆっくりと顔を上げ……笑った。
「いいえ……ここに残りなさい、人間。その精、私が搾り尽くして差し上げましょう。」
「くっ、情欲が理性を上回ったか!応戦せねば、こちらの身が危ないぞ!」
「きゅきゅきゅーっ!」
アリスとヌルコは、臨戦態勢になる。
しかし、ヴィクトリーとルカはそれを静止した。
「な……?」
「きゅ……?」
「クィーンハーピーの指名は、僕達だ……」
「だったら、俺達でやってやる……ちょっと下がってろ。」
ヴィクトリーとルカは並んで、クィーンハーピーに向かって構えた。
「今の私の前に現れた、己の不運を嘆くのですね。女王に抱かれ、無限の快楽に悶え狂いなさい……」
クィーンハーピーは、首をゴキゴキ鳴らしながらそう言って二人に寄る。
「来るぞ……!」
「ああ……!」
二人の背後に、アリス達は控えた。
「ソニアよ、分かっているな……?」
「うん……大きな力を持ったやつを相手に大勢で戦うと、一人一人の戦いが阻害されて不利になる可能性が高い……だからこういう戦いは、2、3人でやった方がいい……ヴィクトリーの提案だったよね。」
「きゅ……」
ソニアとヌルコも、大人しく控えていた。
「はぁあーーーっ!!」
クィーンハーピーは突っ込んできて、二人に蹴りを放った!
「ぐっ!!」
「ふんっ!!」
ヴィクトリーは腕をクロスして防御し、ルカは剣でガードする。
「はぁあっ!!」
クィーンハーピーは左足を軸足にして、ヴィクトリーの腹を蹴り据えようとした……
「!!」
痛みがやって来たのは腹ではなく、頭。
こんな時に、あの頭痛が来たのだ。
見えたのは、あのハーピーの集落、ハーピーの姉妹……
そして、目の前のクィーンハーピー。
そのクィーンハーピーの攻撃と、今のクィーンハーピーの攻撃がシンクロして……
「はぁっ!!」
見事に、蹴り足挟み殺しでガードした!
「きゃっ……!?」
「だぁっ!!」
そしてクィーンハーピーの顔面をぶん殴り、ぶっ飛ばした!
「だぁあっ!!」
更にルカがそこに回り込んで、クィーンハーピーを切り伏せた!
「うぐっ……!?」
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーが、クィーンハーピーの顔面を蹴ろうとした時だった。
クィーンハーピーは高速移動で消え、ヴィクトリーの背後に現れる。
「なっ!?」
「はぁあっ!」
そして、ヴィクトリーの背中を蹴り飛ばした!
「うわっ!?」
ぶっ飛ぶヴィクトリーを、なんとか受け止めるルカ。
「さ、サンキュ……!」
「気を抜くな……!」
ヴィクトリーとルカは、クィーンハーピーに向かい直す。
既にクィーンハーピーは、ヴィクトリーの顔面に頭突きしようとしていた。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーはそれを両手で受け止めて、クィーンハーピーを蹴り上げた!
「っ!!?」
「よっ!」
ルカはヴィクトリーを踏み台にして跳び上がり、クィーンハーピーに兜割りした!
「ぐぁあっ……!!」
「だっはーーーっ!!」
ヴィクトリーはそのクィーンハーピーに、飛び蹴りする。
「あはっ……!」
クィーンハーピーは、突風とカマイタチを巻き起こした!
「うわっ!?」
飛び蹴りの威力が殺され、おまけにカマイタチにも切られる。
「くっ!」
ルカはカマイタチの斬撃を全てガードし、剣をぶん投げた!
「っ!」
クィーンハーピーは、飛び上がってそれを避ける。
「そこだぁっ!」
ヴィクトリーは拳を握り、龍翔拳を放つ。
しかしクィーンハーピーはそれを避けて、サマーソルトキックでヴィクトリーを蹴り上げた!
「ぐぁあっ!?」
「あはっ!」
更に高速移動して、消える。
次の瞬間、ヴィクトリーに何度も攻撃が連打された!
「うぐっ……!!」
「はぁあっ!」
いきなり現れ、ヴィクトリーの腹に膝蹴りが叩き込まれる。
そして、ヴィクトリーを叩き落とした!
「うわぁあっ!」
「ヴィクトリーっ!」
「何処を見ているのです?」
ルカの背後に、クィーンハーピーが現れる。
「くっ!」
振り向こうとした瞬間には、既に蹴りが入っていた。
「ぐはっ……!」
ルカはぶっ飛んで、跪く。
すると、手元に剣の柄が当たった。
「……よし!」
ルカは剣を取って、構え直す。
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーも立ち上がり、構え直す。
その間に挟まれている、クィーンハーピー……
不意に、その目が凶悪な気に染まった。
「……おい……!?」
「まさか……!!」
「はぁあっ……!!」
クィーンハーピーの目が紅く光り、嫌な気が波動した!
「力が……力が、漲って来ますわ……!!」
「ちっ……!!」
「クィーンハーピーまで……!!」
突如、クィーンハーピーが凶悪化してしまった。
こうなったら、殺す気でやるしかない……!!
「だりゃああーーーっ!!」
ヴィクトリーは気を全開放し、クィーンハーピーに殴り掛かる。
しかしクィーンハーピーは避けて、ヴィクトリーの腹を蹴り上げる。
そして、ヴィクトリーをルカの方に蹴り飛ばした!
「うわぁあっ!」
「くっ!」
ルカはヴィクトリーの足を掴み、クィーンハーピーに投げ返す。
「ふんっ!」
ヴィクトリーは、クィーンハーピーに頭突きした!
「ぐっ!?」
「だだだだだだっ!!」
次に拳を連打して、渾身の足刀を放つ。
「ぐぅっ!!」
「くらえぇっ!」
そして、後蹴りでクィーンハーピーをぶっ飛ばした!
「あぐっ……!?」
クィーンハーピーはぶっ飛ぶが、体制を整えて壁に足を付ける。
そして、猛スピードで二人にダブルラリアットした!
「ぐはぁあっ……!!」
「がっ……!?」
「うふふ……二人共、美味しそうですね……どちらから搾りましょうか……」
クィーンハーピーの舌が、二人の頬に這う。
「ぐっ……!!」
「ふんっ!」
ヴィクトリーが、クィーンハーピーに頭突きする。
「ぐっ!?」
「ででででいっ!!」
ルカの蹴りがクィーンハーピーの胸に連打され……
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーの気合い砲が、クィーンハーピーをぶっ飛ばした!
「きゃあっ!」
クィーンハーピーはぶっ飛ぶが、空中に留まった。
「うふふ……ベイクドサイクロンッ!!」
そして猛回転して、暗黒のエネルギーを込めた竜巻を巻き起こした!
「な、なんだっ!!?」
「避けるぞっ!!」
二人は、それを避ける。
暗黒の竜巻は壁に当たってから、周囲に突風と斬撃を拡散させた!
「くっ!」
「ちくしょっ!」
ヴィクトリーもルカも剣を抜き、斬撃を剣でいなしていく。
クィーンハーピーはその隙に、二人の背後に現れた!
「しゃあっ!」
「しまっ……」
二人は、羽根の一撃でぶっ飛ばされる。
「くっ!」
しかしヴィクトリーは剣を納めながら持ちこたえ、クィーンハーピーに猛攻した!
「だぁあああああっ!!」
「あはははははっ!もっと楽しませなさい!」
猛烈な打ち合いが展開され、辺りに血が舞う。
「うぉおおっ!!」
そこにルカも入ってきて、クィーンハーピーに猛攻した!
「だりゃりゃりゃりゃ……!!」
「うぉおおおおおおお……!!」
「うふっ!」
クィーンハーピーは高速移動で消えて、二人の背中に肘を落とそうとする……
「そっちか!!」
しかしヴィクトリーの足払いが決まり、クィーンハーピーはすっ転んだ!
「なっ!?」
「だぁあっ!!」
その顔面に、ルカが飛び蹴りする。
「うぐぁあっ!」
クィーンハーピーはぶっ飛んで、壁に叩きつけられた!
「よ、よし……いけるぞ……!!」
「じゃあ、やってみっかぁ!」
「うふふ……」
クィーンハーピーは不敵に笑い、二人を見る。
そして、羽根を揺らめかせた。
「さぁ、来なさい……惨めに果ててもいいのならば……」
思わぬ絶好の好機。
ここしかない!
「か……め……は……め……!!」
「……!!」
クィーンハーピーは何かを感じ取ったのか、すぐさまヴィクトリーに突っ込んだ!
「だぁあっ!!」
「っ!!?」
しかし、ルカの両足蹴りがクィーンハーピーの胸に炸裂する。
クィーンハーピーはそのまんま、壁に叩きつけられた。
「波ーーーっ!!」
「!!!しまっ……!!」
クィーンハーピーに、かめはめ波が直撃した!
爆発が巻き起こり、爆煙が晴れる……
「はぁ……はぁ……ここまでですか……くっ!」
クィーンハーピーの嫌な気が霧散し、凶悪化が解けた。
どうやら、これでクィーンハーピーを倒したことになったようだ……
「はぁ……はぁ……!」
ヴィクトリーは、辺りを見回す。
「ちっ……」
周囲に、怪しい気配は無い。
なぜ、クィーンハーピーは凶悪化した……?
アリスはそんなヴィクトリーを横目に、クィーンハーピーの前に立った。
「頭は冷えたか、クィーンハーピー?一時的にだが、情欲も薄らいでいるはずだ。」
「ええ……今は、なんとか理性を保っております。しかし、それも長くは続かないでしょう……同胞たちは大丈夫なのでしょうか。あなた達が薬を配ってくれたようですが……」
「薬はだいたい行き渡ったみたい。他のハーピー達なら、大丈夫だよ。」
ソニアの言葉で、クィーンハーピーはほっとした顔を見せた。
「そうですか、良かった……ならば、私をここに置いて集落に戻るのです。」
「そんな、女王様だけ置いてけぼりだなんて……」
「しょうがねぇさ……病気のまんま外に出たら、何が起きるか分かんねぇ。」
ヴィクトリーは、冷静にそう言いながらクィーンハーピーに向いた。
「ハーピー達は任せてくれ……おめぇの分の世界樹の実は、いつか持ってくる。」
「助かります……その時は、私もここから出ることが出来るでしょう。もちろん、ハーピーの女王としてお礼致します。」
クィーンハーピーは頭を抱えながら、部屋の中心に座った。
「さぁ、それでは行ってください。同胞達には、既に思念で指示を出してあります。」
「世界樹の実を持って、また来ます。」
「きゅ!」
「ああ……行こうぜ、ルカ。」
「待っていて下さい、クィーンハーピー……絶対に、助けますから。」
こうして戦士達は、女王を残してハーピーの塔から出た……

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新たな騒動

ハーピーの塔に乗り込み、淫熱を収めようと奮闘する戦士達。
それは順調にはいったものの、クィーンハーピーだけはそうもいかなかった。
戦士達はいつかクィーンハーピーの熱も治せるような世界樹の実を持って、ここに来る事を決意した。
そしてハーピー達と、ハーピーの集落に帰ってきたのだった……
「仲間達を助けてくれて、ありがとうね!みんな、ほとんどは集落に戻ってきたよ!」
「みてぇだな。よかったよかった。」
「でも、まだ塔に残ってる仲間達はいるの。淫熱が治りきってなくて、エロエロな気分の子とか……あと、元々エロエロで、淫熱に掛かってるフリしてる子も塔に残ってるみたいね……」
「えぇ……」
「でも、じきにみんな戻ってくるはずよ。それに、きっと女王様も……」
「世界樹の実が見つかったら、持ってきてあげる。あんなところで一人っきりなんて、寂しいもんね。」
ソニアがそう言うと、アリスが頭を抱えた。
「しかし、世界樹ははるか西の孤島にある……外海に船を出す必要がある以上、手の出る場所ではないぞ。」
「じゃあ、取りに行くのはだいぶ遅れちまうな……それでもいいか?」
「無理は言わないし、急ぎもしないから。私達が交代で、女王様の元に行ってお世話するよ。本当にありがとうね!」
ハーピーは、深々と頭を下げた。
そして顔を上げて、頭を抱える。
「でも、なんであんな病気が流行ったんだろ……?女王様が言うには、太古の伝染病らしいけど……」
「何か心当たりは無いか?見慣れない者が、集落を訪れたとか……」
ハーピーはアリスの言葉を聞いて、ハッとした顔になった。
「あっ……うん、そう言えば!ちょうど感染が始まる前、女王様のところに来客があったの。とっても強そうな淫魔が三体……どれも、異様な雰囲気だったわ……」
「そんな強そうな奴が……?」
「淫魔の訪問者だと……?その時の事を、詳しく聞かせてもらおうか。」
「あれは数ヶ月前……」
モリガンとアスタロトとリリスという淫魔が、タルタロスの周辺の事について聞いてきたとの事だ。
変なモンスターはいないか、行方不明者はいないのか、異変は起きていないか……
しかし、特にはそんな事は起こってはいない。
起こったとしても、クィーンハーピーの耳に飛び込んでくるはずだ。
なんでも、『一人殺っただけであれほどの余波が〜』という不穏な言葉まで飛んでいたとか。
そいつの素性は、なんと伝説の……
「通りすがりだったみたいね。」
「伝説の通りすがり!?」
ソニアはでかく、素っ頓狂な声でそう漏らした。
「ドアホか、貴様は。なにか言おうとした所を、押し止めたのだろう。」
「リリス、アスタロト、モリガン……聞いたこともねぇけど、何だかヤバそうな奴らだな……」
ヴィクトリーがそう言うと、アリスは口を開いた。
「大層な名前を並べたものだが、本名か?」
「知ってるの、アリス?」
ルカはアリスに向き、アリスは頷く。
「太古に存在した、伝説の淫魔三姉妹だ。それにあやかり、同じ名をつける親は多いが……まさか、三姉妹にそのまま伝説の名をつけるとはな。どれだけふてぶてしい親なのだ、全く……」
「いいや、俺は多分本物だと思うな。」
ヴィクトリーは両の拳を握って、そう言った。
「へへへ、伝説の淫魔の三姉妹か……どんだけつえぇんだろうな……ルカもわくわくしてこねぇか!?」
「い、いや……僕はそこまで戦闘民族じゃないよ……」
ルカが苦笑いする横で、ソニアも微笑んでいた。
「……ヴィクトリーって、変な所で子供っぽいのね。」
「あははは、未熟者だからさ。」
「……とにかく、そういう訳なの。」
ハーピーの言葉で、話は元に戻された。
「その三人の素性も目的も、全く分からなかったみたいだよ。それから、数日後じゃなかったかな……最初の患者が出たの。時系列的には、ぴったりだよね。」
「じゃあ、その三人が伝染病をばらまいたのか……」
ルカがそう言ってから、ソニアはぽんと手を叩いた。
「あくまで想像だけど……この件に関して、3人に悪意はなかったんじゃないかな。そういうウイルスが存在してた場所から来たんなら……本人達も、自覚なくウイルスの運び屋になる事もあるわよ。過去に猛威を振るった、伝染力の高いウイルス……かつ、接触した相手に免疫は全くなし。そういう悪い条件が重なって、大感染が広がったんじゃない?3人の事が分からない以上、ただの推測だけどね……」
「意外に詳しいんだね、ソニア……どこかで勉強したの?」
「あたし、神殿僧侶だって言ってるでしょ!衛生学の基礎ぐらい学ぶわよ!」
「そ、そんなに怒んなくていいだろ……」
ルカを怒る、ソニア……をなだめるヴィクトリー。
それを横目に、アリスが考え込んでいた。
「伝説の三淫魔と同名に過ぎないのか……それともまさか、本当に太古の昔から……まぁ、考えていても仕方ないな。その三淫魔の事は、頭の片隅にとどめておくとしよう。」
「そうだな……僕達は、旅を続けよう!」
「ああ、今はまだ情報が少ねぇからな。次に進もうぜ!」
「きゅきゅっ!」
謎を残したまんま、一行は旅を続ける。
モリガン、アスタロト、リリス……
果たしてこの三姉妹は、いったい何者だろうか。
そんな事は頭の片隅に置いて、一行はハーピーの集落から発ったのだった。
「あ、そうだ。ポケット魔王城にも宿屋が欲しいな。」
ルカは思い出したようにそう言って、止まった。
「じゃあ、イリアスベルクのプチラミアでも誘えばいいんじゃねぇか?」
ハーピーの騒動は、収まったのだ。
だから、今ならプチラミアも比較的暇なはず……
「よし、行こう!」
「ああ!」
一行は先に進む前に、イリアスベルクに逆走した。
最後の盗賊団員、プチをスカウトするために……

「……何故だ。」
「どうした?」
男とドミグラの二人組が気を消しながら、ルカ達を見て会話を交わしていた。
「何故あの時の一撃を見切れたのだ。」
「あの時の一撃……?」
「クィーンハーピーの、左足を軸足にしたあの蹴りだ……この体だから分かるが、あれは今の奴では見切れんはずだ……」
男は拳を握り、握力を込める。
「奴もサイヤ人だ……サイヤ人の無限の可能性が、マグレでも引き起こしたのだろう。」
「……」
男は、黙った。
そして三秒ぐらいしてから、笑った。
「そうだと、思いたいな……ふふふ……ところで、奴の次の場所は……?」
「ミダス村という所らしい……なんでも、黄金製の武器を造りにいくとか。」
「……黄金って、鉄より柔らかいんじゃなかったか?」
「知らん……」
男とドミグラは、頭を抱えた。
「……ミダス村……この体の記憶には無い場所……何処だ……?」
「……続けようか。」
ドミグラはそう言ってカードに戻り、男のカードホルダーに収まった。
「……いったい、何が起きている……?私は、こんな物語は知らない……」
男はそう言いながら、歩いていった……

「……よし!これでポケット魔王城が本格的に稼働するようになったぜ!」
プチを仲間にした事で、宿屋が出来たのだ。
矮小ではあるが、拠点が出来た。
あとついでに、アミラも仲間にする事が出来た。
というより、半ば強引に仲間に加わった。
そしてアミラのリクエストで、ポルノフ村の残念なハーピー、ピーハーも仲間にする事になった。
こいつ、やたら攻撃を避けるものだからヴィクトリーの修行相手としてもってこいなのだ。
そんなこんなで準備を整えた事で、戦士達は進む……

ミダス村……
「……」
「……」
ヴィクトリーとルカは、苦笑いをしながら村を見渡した。
なんと、ミダス村の所々にナメクジ娘が大量発生しているのだ。
「な、何ここ……」
「何だか、ジメジメするぞ……」
「きゅ……」
ソニア達も、引き気味にそう言う。
「な、何はともあれ、まずは情報収集だ。黄金装備の事とか、このナメクジの大量発生がどういう事なのか、聞かないとね……」
「ああ……ひぇえ、ジメジメしててなんかやだぞ……ソニア、カネ持ってねぇか?上着買いてぇんだけど……」
「我慢しなさいよ。私だってこんな格好で、ジメジメした感触に襲われてるんだから……」
「きゅきゅ……」
「人間というのは、不便だな……始めるぞ。」
戦士達は情報を集めに、解散した……

この村は、黄金の鋳造と牛の牧畜と、フローラとかいう伝説のメイドが居るらしい。
この世界の賞という賞を受賞した、凄まじいメイドらしい。
今ではもう、70の婆さんになっているらしいが……
そして何より、このナメクジ娘の大量発生。
いつもこの時期になると、ナメクジ娘が大量発生するらしい。
しかし、今年は特に酷いとの話だ。
話によれば、西のナメクジタワーという所がナメクジ娘の巣窟になっており、そこからナメクジ娘がやってくるとの事だ。
冒険者がそこに行くも、毎回のごとく返り討ちになるのだ。
「それじゃあ、そこに潜んでいる奴は相当につえぇってことか……」
ヴィクトリーは気合を入れ直しながら、そう言った。
「あ〜もう、全身ネバネバで嫌になるわねぇ!」
「うん……村の人も困ってるみたいだし、何とかしないとね。」
「黄金製の武器の事も忘れるなよ。」
取り敢えずは、このナメクジ騒動をどうにかせねば。
そう言いながら向かった先はナメクジタワーではなく、フローラという伝説のメイドの住む家だった。
なんでも伝説のメイドの名は伊達じゃなく、腕っぷしまで凄いらしい。
前回のこの騒動を収めたのは、この人なのだ。
家の前に、若いメイドがいた。
「オッス!おめぇがフローラかぁ?」
「違います。」
メイドは半ギレ気味に、ヴィクトリーにそう返した。
「ヴィクトリー、フローラさんは70歳よ。こんな若い子が70なわけ無いでしょ。」
「如何にも。私はフローラ様の弟子メイドである、ケイトと申します。そしてここが私の師匠、伝説のメイドであるフローラ様のお家です。失礼のないようにして下さいね。」
ケイトはそう言いながら、頭を下げる。
そして、ヴィクトリーの方に向いた。
「ところで、あなたもバトルファッカーとお見受けしました。私の家で、勝負しませんか……?」
「バトルふぁっかー……?何だか知らねぇけど、勝負を売られてんなら買うぞ。」
ヴィクトリーはそう言いながらケイトに向き、ニヤッと笑った。
体の中で気が練り上がっていく……
そのヴィクトリーの肩を、ルカが叩いた。
「ヴィクトリー、村の救出が先だ。」
「あ、そっかぁ……そんじゃあ、戦うのはまた後でな!」
「そうですか、残念です。惨めな屈辱を与えて差し上げたのに……」
ケイトは嫌な笑いを浮かべながら、ヴィクトリーの背中を見た……

「オッス!おめぇがフローラさんか!?」
家に入るなり、ヴィクトリーは家の婆さんにそう言った。
僕達は、思わずずっこけてしまった。
外に居るケイトも、こけそうになったようだ。
「ヴィクトリー!さっき失礼のないようにって……」
「いえいえ、良いのですよ。若い内はアクティブなのが一番ですから……」
婆さんはそう言いながら、微笑んでいた。
そして、戦士達に茶を淹れる。
「こんにちは、旅の方。その少年の言う通り、私がフローラです。長い間、給仕を務めて参りました。伝説のメイド、という評判を聞いていらっしゃったのかしら。こんな年寄りで、がっかりされたでしょう……?」
「いや、そうでもねぇさ……」
ヴィクトリーはそう言って、ふと玄関を見る。
その玄関のドアが、いきなり開かれた。
入ってきたのはケイト……ではなく、ナメクジ娘だ。
「じめじめ……」
「あら、ノックもなしに……レディにあるまじき振る舞いですよ、お嬢さん?」
「ごめんなさい……」
ナメクジ娘はフローラの眼光に当てられ、玄関から出ていった。
「まったく、困ったものですね。人は襲わないものの、村の者達も迷惑しております。大発生の源は、西にあるナメクジタワーでしょうね。新しいボスでも現れたのでしょうか……」
「新しいボスって……前にも、ボスが居たんですか?」
ソニアがそう聞くと、フローラは頷き、笑った。
「50年ほど前、同じようなナメクジ大発生があったのですよ。あの時は……お恥ずかしくも、私がボスを倒しまして。」
「えっ、フローラさんがやっつけたんですか!?」
「あの頃の私は20代、現役の最前線。害虫の駆除もまた、メイドの務めでしたので……」
「や、やっぱりただの婆さんじゃなかった……」
「いいえ、今はただのお婆さんですよ。私では、もうどうにもならないでしょうね……」
フローラは、遠い目でそう言った。
なるほど、この人のこの村への思い入れも半端じゃないらしい。
そして、この村の人達も困っているようだ……
「分かりました、僕達がナメクジの親玉を退治します!」
「ああ!ナメクジの親玉がどんなつえぇ奴でも、必ずぶっ飛ばしてやる!」
「おや、あなた達が行ってくださるのですか……?心強いですね……それでは用心のため、これを差し上げましょう。」
フローラは、ヌルヌルチェックという防具を差し出した。
これさえ装備すれば、ヌルヌルになる事がほとんど無くなるという。
「ヌルヌルになると快楽ダメージが増大しますし、何より普段の戦い方が出来なくなる……どうかお気を付けくださいね。」
「ああ……ありがとう!」
こうして、ナメクジタワーに向かう事になった戦士達。
ナメクジの親玉とは、いったい……?

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ナメクジタワーの激戦

ミダス村……
ナメクジ娘の大発生に、困る村人達が居た。
困っている人達を見過ごせない戦士達は、フローラという伝説のメイドの話を聞いてから、ナメクジタワーに行った……

「ここがナメクジタワーか……」
「ひえぇ、じめじめする……」
塔の内部は湿気に満ちていて、草が生い茂っていた。
そして何だか、心無しかヌメヌメする。
「はえぇところ親玉をぶちのめしに行こうぜ。あんまりここには居たくねぇ。」
「うん……だけど、そうも言ってられないかもよ?」
ルカがそう言うと、早速モンスター達が現れた。
「さ、早速かよ!」
「ふん、関係ない……どつき回してくれるわ!」
「よーし、行くわよ!」
モンスターの中から、一筋の攻撃が飛び出してきた!
「くっ!」
ヴィクトリーはそれを受け止め、そいつの顔を見る。
「あら、私の攻撃を見切るなんて。」
そう言いながらヴィクトリーに笑顔を向けたのは、ナメクジ娘だ。
しかも、ただのナメクジ娘ではない。
黒いドレスに身を包んだ、ナメクジ娘の上位種だ。
「おめぇはっ!?」
「ハイスラッグ娘……と呼ばれています。あなた、いい顔をしていますね。私に溶かされてください。」
「嫌だね!!」
ヴィクトリーはそう言いながら剣を抜き、ハイスラッグ娘を切りつける。
「っ!」
「でやぁあっ!!」
そして前蹴りをして、その体をぶっ飛ばした!
「でゃあっ!!」
ヴィクトリーは助走をつけながら走り、跳躍して剣を振り上げる。
「あはっ!」
ハイスラッグ娘はそこに手を向け、ヴィクトリーに勢いよく粘液を叩きつけた!
「っ!!」
直撃するが、すぐさま剣を納める。
そして、バク転しようと手を床につけた時だった。
「うわぁあっ!?」
ヌルンッと滑り、ヴィクトリーはすっ転んでしまった。
「こ、この……!」
「ヴィクトリーっ!」
ルカ達も、ハイスラッグ娘と戦っているようだ。
しかし戦闘力の高さとヌルヌルのせいで、自分のペースに持ち込めずに苦戦している。
「ほら、隙だらけよ。」
ハイスラッグ娘はそう言いながら、ナメクジの体でヴィクトリーを打った!
「わぁあああーーーっ!!?」
ヌルヌルで体が滑り、壁に勢いよく叩きつける。
「く、くっそ……!」
ここでようやく立ち上がり、ハイスラッグ娘に向く。
「あはっ!!」
ハイスラッグ娘は跳躍し、グルグルと回転しながらヴィクトリーにナメクジの体を叩きつけた!
「ふんっ!!」
ヴィクトリーはそれを腰を落として腕をクロスして、ガードする。
「なにっ!?」
「でりゃああっ!!」
そして思いっきり蹴り上げて、天井に叩きつけた!
「がふっ……!!?」
「くらえぇっ!!」
ヴィクトリーは両手に気を溜めて、ハイスラッグ娘にフルパワーのエネルギー弾を連射した!
「きゃああああっ!!?」
爆発が連続し、ハイスラッグ娘はボロボロになりながら落ちてきた……
「く、くやしい……この私が……」
そう言いながら、べちょっと倒れた。
「がぁあっ!!」
ルカは剣技でハイスラッグ娘をぶっ飛ばし、壁に叩きつける。
「きゃっ……」
「はぁあっ!!」
そして、腹にキックを埋めた!
「がはっ……!!?」
そのハイスラッグ娘も、戦闘不能に陥ったようだ。
「ふんっ!!」
アリスは、ハイスラッグ娘に一閃する。
そしてレイピアを振って粘液を飛ばしてから、納めた。
「……っ!!?」
次の瞬間、そのハイスラッグ娘は白眼を剥いて倒れた。
「やぁあっ!!通電撃!!」
ソニアは、雷の魔力を込めた棍でハイスラッグ娘達を叩き潰した!
あの技、道中でオーク娘が使ってきた技だ。
まさか、見ただけでモノにしたのか……?
「きゅ〜!」
ヌルコはというと、ガン=カタ張りの銃技と触手でハイスラッグ娘達を次々に倒していた。
「スキありっ!」
ヴィクトリーの背後から、不意にハイスラッグ娘が攻撃を仕掛けてきた!
「ふんっ!」
しかしヴィクトリーは見ずに、そのハイスラッグ娘の顔面に裏拳をしてぶっ飛ばした。
「きゃあっ……!!」
壁に叩きつけられる、ハイスラッグ娘……
「ヒールっ!!」
不意に、そんな声が聞こえた。
そう思っていたら、さっきぶっ飛ばしたハイスラッグ娘がヴィクトリーの前に高速移動してきた!
「なにっ!?」
ヴィクトリーはそのハイスラッグ娘を、後ろ廻し蹴りで蹴り飛ばす。
「神の加護、ここにあり……!」
見ると、シスターの格好をしたナメクジが傷ついたハイスラッグ娘にヒールを唱えていた。
「くっ!」
「キリがないぞ……!」
ソニアとアリスは、そろそろ疲れが見えてきているようだ。
ここら辺でこの襲撃を押し返さねば、まずい。
「うぉおおおっ!!」
「はぁああっ!!」
ルカは疾風怒涛の剣技で、次々にハイスラッグ娘を切り伏せた!
ヴィクトリーはエネルギー弾を連射して、ハイスラッグ娘達を掃射する。
そして二人は、背中を合わせた。
「ルカ、ちょっとこれ借りるぞ。」
ヴィクトリーがそう言いながら、ルカの道具袋に手を突っ込む。
取り出したのは、塩の入った瓶だった。
「え、ちょ、それ調理用……」
「うっせぇ!また買い足せばいいだろ!」
ヴィクトリーは瓶の蓋を開け、その手に塩を盛る。
そして、土俵入りする力士のように投げ撒いた!
「きゃああっ!?」
「し、塩っ!?」
「嫌ぁあ……」
効果は抜群で、ハイスラッグ娘達はたちまち逃げ出してしまった。
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーはナメクジシスターに目をつけ、突進する。
「ちょ、待っ……!!」
ヴィクトリーの塩が刷り込まれた拳が、ナメクジシスターの顔面を打ち抜いた!
「〜〜〜ッッ!!」
ナメクジシスターは壁に叩きつけられ、そのまんま頭に星を回して気絶してしまった……
「よっしゃーっ!」
「ふぅ、何とか乗り切ったか……」
「もう身体中ヌルヌル……お風呂に入りたい……」
「面倒な奴だったな……」
「きゅ!」
臨戦態勢を解いて、口々にそう言う。
「よし、先に行こう。早く村の人達の悩みの種を除かないと。」
「ああ、れっつごー!」
ルカとヴィクトリーを先頭に、戦士達はナメクジタワーを進んだのだった……

ナメクジタワーの最上階……
強襲してくるハイスラッグ娘やナメクジシスターを叩き伏せながら、戦士達は進んでいた。
「……この階から、すげぇ気を感じる。」
「じゃあ、ここに親玉が居るのか……」
ヴィクトリーとルカは先頭でそんな会話をしながら、その気のする方へ向かう。
そして、奴は居た……
「ずいぶん、子種の出が悪くなってきたわねぇ……もう枯れちゃったのかしら……?」
「ふぁぁ……あぁぁぁ……」
青年の体に、三体のナメクジモンスターが淫らに絡み付いている……
「やいナメクジ共!!おめぇらがここのボスか!?」
「その男の人を離せ!」
ナメクジモンスター達は、ゆっくりと二人の方に向いた。
「あら、こんなところまで人間が……もしかして、私達と繁殖したいの?」
「ふふふっ……良い種を持っているのが分かるわ。元気な子がたっぷり産まれそう……」
「それじゃあ、さっそく交尾しましょう。私達が、天国を見せてあげるわ……」
三体はそう言いながら、青年を解放した。
「敵は三体ね……」
「余がやろう。貴様は青年の方を。」
「はいはい……」
「きゅ。」
ソニアとヌルコは高速移動してから青年を抱え、安全な場所へと運んだ。
「アリス、戦ってくれんのか。」
「こういう奴には、魔王である余が直々に罰を与えねば……」
「ああ、心強いよ。」
ヴィクトリーとアリスとルカは一斉に剣を抜き、構えた。
「私達はスラグスターズ……」
「そう呼ばれているわ。」
「うふふ、かかってきなさい……」
スラグスターの三体は、気を解放した!
「にひひ、ナメクジの代表ってだけはあるな……!!」
「いくぞっ!!」
「ふん……!!」
ルカはスラグスターAに、ヴィクトリーはスラグスターBに、アリスはスラグスターCとぶつかり合った!
「でやぁあっ!!」
「うふふっ!」
ヴィクトリーの剣技が高速で放たれるが、スラグスターBはそれを避け続ける。
そしてヴィクトリーの足元に、粘液を放った!
「だっ!」
しかしヴィクトリーは跳んで避け、スラグスターBの顎を蹴り上げた!
「ぐっ!?」
「だりゃあっ!!」
そのまんま竜巻旋風脚のような蹴りを放って、スラグスターBを蹴り飛ばした!
「くっ!あ、あなた……剣よりも拳の方が……」
「正解!!」
ヴィクトリーは剣を納め、スラグスターBの顔をぶん殴った!
しかしスラグスターBは、瞬時に頬から粘液を分泌。
「っ!!」
ヴィクトリーのぶん殴りを、ヌメヌメの粘液で受け流したのだ。
「だっ!!」
そしてナメクジの腹部で、ヴィクトリーの腹を打ち上げた!
「がはっ……!!」
「やぁあっ!!」
更に飛び上がり、ヴィクトリーを叩き落とした!
「はぁあっ!!」
そのまんま手を向け、ヴィクトリーに粘液を放つ。
ヴィクトリーは直撃して、ヌルヌルになってしまった!
「くっ!!」
体制を整え、着地する。
が、粘液で足元が滑ってすっ転んでしまった!
「い、いってぇ〜!!」
「あはっ!」
スラグスターBは、ヴィクトリーに拳を振り下ろしてくる。
「うわっ!?」
しかしヴィクトリーは転がって、それを避ける。
そして立ち上がり、スラグスターBに突っ込もうとした。
しかし、またすっ転んでしまった!
「くそっ!」
「あはっ!身動きが出来ないわねぇ!」
スラグスターBは、容赦なくヴィクトリーに攻撃を仕掛ける。
「ちっ、しょうがねぇな……はぁあっ!!」
ヴィクトリーは足に気を纏い、そのまんまブレイクダンスを始める。
超高速の、ウィンドミルだ。
「な……!!?」
「でやぁあっ!!」
そのまんまスラグスターに迫り、巧みな足技で滅多打ちにした!
「ぐっ!?ぎっ!?おぐっ!?あがっ!こ、このっ!きゃっ!あうっ!」
「オラオラオラオラオラオラっ!!」
脇腹、顔面、胸、喉、腕、肩などに足技を叩き込んでから、両足をスラグスターBの顔面に向ける。
「あ、あぅ……?」
「波っ!!」
そして足からかめはめ波を放って、スラグスターBの顔面に直撃させた!
「きゃあああっ!!」
「よっ!」
ダンスが加速し、ヴィクトリーの足の粘液がスプリンクラーのように飛び散る。
そして、何とか立ち上がった。
「す、すっご……」
スラグスターAとスラグスターB、ヴィクトリーのダンスに見蕩れてしまった。
「隙ありーーっ!!」
「っ!!?」
ルカはスラグスターAに魔剣・首刈りをして、体を打ち上げた!
「あぐっ!?」
「うぉおっ!!」
更にスラグスターAの顔面に、後ろ蹴りした!
「あぐぅうっ!!」
「だぁあっ!!」
更に地面を蹴って、スラグスターAの顔面に両足蹴りを叩き込んだ!
「く、くぅうっ……!!」
「そ、そんな……私達が……!!」
「ふんっ!!」
アリスのクロスアンブルが、スラグスターCに炸裂した!
その二発は見事に会心の一撃で、スラグスターCをぶっ飛ばしてしまう。
「きゃあっ!」
「わ、私達が……かなわないなんて……」
スラグスターズ達は、戦闘不能になったようだ……
「まさか、私達が負けるなんて……」
「これ以上、悪いことはさせないぞ!」
「分かったら、とっとと繁殖をやめろ!」
「い、嫌だぁ……」
青年はソニアとヌルコに押さえられながら、スラグスターズの所に向かおうとしていた。
「ちょっ……大人しくしてなさいっての!」
「きゅ!きゅ!」
「もっと、もっと交尾したいよぉ……」
「………」
「そう言う事なんだけど……どうするの?」
一番ボコボコにされたであろう、スラグスターBがそう尋ねる。
「じゃあ、せめて子供産むのはやめてくれよ。もう充分だろ?」
「ナメクジ娘が近くの村に押し寄せてきて、大変なんだ。」
スラグスターズ達は、息を吐いた。
「分かったわ、仕方ないわね……どっちにしろ、そろそろ群れを維持できる数の限界だったし。」
「私達が負けたんだから、言うことは聞かないとね……これからは子作りじゃなく、楽しみのために交尾するわ。」
「繁殖数も充分だし、しばらく子供は増やさないわ。これでいいのよね……?」
「ああ、うん……」
「じゃあ、そういう事で宜しくな。」
「なんともしまらないけど……これで解決よね?」
まぁ、これでナメクジ娘が増える事はないだろう。
向こうも比較的穏便に済ませてくれたし、これでいいと思う。
「それじゃあ、また縁があったら会いましょう。」
「交尾したくなったら、いらっしゃい。私達が、好きなだけ相手してあげるから……」
「ナメクジの交尾の虜にしてあげるわ……ふふふっ。」
ヴィクトリーは笑顔に戻って、スラグスターズ達に向く。
「交尾はしねぇ。だけど、良かったらまた手合わせ頼みてぇ。いいか?」
「ええ、何時でも受けて立つわ……」
「わ、私は勘弁……」
「うふふ……私は考えておくわ。」
とにかく、こうしてナメクジの件は解決したと思う。
青年は再びスラグスターズ達に絡まれ、交尾を始めてしまった。
戦士達はそれに背を向け、村へと帰っていった……

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予想外の強襲

ナメクジのボスを倒して、繁殖を防いだ戦士達。
村にはまだナメクジが居るが、フローラさんの話によると来年には平和になるらしい。
そして、なぜかメイド許可証を貰った。

ナメクジ騒動は解決した所で、一行が向かったのはミダス廃鉱だった。
整備された跡があり、金はあらかた掘り尽くされているという。
余程奥に入らない限りは、金を取ることは出来ないそうだ。
「ここにも魔物は居るのか……」
「でけぇ気は感じねぇ。とっとと終わらせようぜ。」
ルカとヴィクトリーは先頭に立ちながら、そんな会話をして進む。
道中にはジャックオーランタン、メーダ娘、ローパー娘と、薄暗い所に出るモンスターが強襲してきた。
しかしあの戦慄とも言えるナメクジタワーの、ハイスラッグ娘地獄を乗り切った戦士達にとっては、屁でもなかった……

「……」
進みながら、ヴィクトリーは思っていた。
あの頭痛や、既視感にも似た感覚……
そして敵の凶悪化や、白兎の『ゼノバース』発言……
更には、自分の知らない異世界まで……
間違いない、この世界で何かが起ころうとしている。
確証もクソもないが、絶望的とも言える何かが迫っているのは間違いなさそうだ。
いったい、何が起きようとしているんだ……?
「ねぇルカ、手分けして調べてみようよ。」
「分かった。じゃあソニアはあっちを頼む。僕はこっちを調べるから。」
「……」
更に、このソニアという女の子……
こいつを見る度に、胸の中の未知感にも似たものが湧き上がってくるのだ。
そして、頭の中に言葉が出てくる。
『あんな奴、知らない。』と。
「……」
「きゅー?」
ヌルコが、ヴィクトリーの手に触手を絡ませて揺すった。
「……ん?」
「きゅ、きゅ。」
どうやら、俺はぼーっとしていたらしい。
心配になって、揺すってくれたのだろう。
「ああ、サンキュ。後で一緒にりんご食べような。」
「きゅ。」
「みんなーっ!」
ルカの声だ。
戦士達はルカの声がする方へ向かう。
すると、そこには大量の金があった。
「やった!金を見つけたぞ!」
「よし、これをミダスの鍛冶屋に持っていくぞ。金製の装備を造ってもらわないとな。」
そう言うアリスの横で、ソニアは目を輝かせていた。
「これだけ大きな金塊、売ればかなりのお金になるんじゃない?」
「洗錬されていないから、そうもいくまい。素材として用いた方が得だろうな。」
「なんだ、残念……」
アリスの言葉で、ソニアはガックリと肩を落とした……
「おめぇ、欲望が丸見えだぞ……それで、誰が持つんだこれ?」
ヴィクトリーは、そう言いながら皆を見る。
皆は、半笑いで目を逸らしていた……
「……」
結局、また俺かよ……
そんな言葉が出そうになった、次の瞬間だった。
急に、凄い揺れが響いた!
「なんだっ……!!?」
「外からだ……!!」
「いくぞっ!!」
ルカ達は走り出し、ヴィクトリーも金塊を持って走る。
そして入口付近……
「貴様らが、勇者一行とかいう奴らか……」
「御機嫌よう、勇者一行達……」
そこに居たのは、禍々しい気を放っている男と女だった。
赤を基調にした服装の、白髪で、薄い青肌の男女。
男の方は武闘家風で、女の方は杖を持った魔女風だ。
そして、その周囲……
惨たらしく叩きのめされた、魔物達が転がっていた。
「……!!」
アリスはそれを見て、歯軋りをする。
「き、きさま……!!」
「あらぁ、挑んできたのはこいつらよ。私達はただ目的を果たしに来ただけ……」
「おめぇら……こんな世界にまで、何しに来た!!答えろ、トワ、ミラ!!」
「知ってるのか!?」
ヴィクトリーに、視線が殺到する。
「……男の方はミラ、女の方はトワだ。」
ヴィクトリーがルカ達にそう言っているその前で、トワがクスクスと笑った。
「私達は、ただ目的を果たすだけよ……あの方の命令でね。」
「あの方……!?誰だっ!!ダーブラか!?ドミグラか!?」
「いいえ、あなたの知らない人からよ……」
ここで、ミラがトワの前に出てきた。
「御託はいい。さっさと始めろ。」
「ええ……」
トワの杖が黒く光る。
すると、ジャックオーランタンとローパー娘とメーダ娘の体から禍々しい気が溢れ出た!
「あぅう……!?」
「何、この力……」
「うふ、うふふ……!!」
三体の目が紅く光り、額に『X』にも似たマークが宿り、凶悪化した!
そして、ヴィクトリーに目を付ける。
「くっ……!!」
ヴィクトリーは三体に向いて、構えた。
「行くよ……!」
「搾り殺す……」
「惨めに果てさせてあげるわ……」
「はぁあっ!!」
そして、三体とぶつかり合った!
「ヴィクトリーっ!!」
「私達も加勢するわっ!」
「ふん……!」
「きゅ〜!」
ルカ達が、ヴィクトリーに駆け寄ろうとする。
しかしその前に、ミラが高速移動してきた!
「邪魔立てはさせんぞ……」
「どけぇえっ!!」
ルカは、ミラに剣を振り下ろした!
しかしミラは、それを腕で受け止める。
「なにっ!?腕で……!!?」
「ミラは私が造った人造人間よ……そんななまくらで、ミラにダメージが通るとでも?」
「はぁあっ!!」
ミラは、ルカの顔面をぶん殴った!
「ぐぅうっ!!」
「人造人間……なら、これはどう!?」
ソニアは雷を纏った棍で、ミラに殴り掛かる。
しかしミラはそれをガードして、ソニアの顔面に気弾を放った!
「ぶっ!?」
「はっ!!」
ミラの足が消えたと思った次の瞬間、ソニアの腹がその足に打ち抜かれた!
「がはっ……!!」
「消えろ……!!」
更にミラは両手に気を溜めて、ソニアにエネルギー弾を連射する。
しかしエネルギー弾は、次々に撃ち落とされた。
「ん?」
「きゅ……!!」
ヌルコが、銃でエネルギー弾を撃ち落としたのだ。
そして、ミラに触手を伸ばす。
「ふんっ!」
しかし、その触手は受け止められてしまった。
「きゅ!?」
「はぁあっ!!」
更にグルグルとヌルコがぶん回され、アリスの方へとぶん投げた!
「ぬぅっ!」
アリスはそれを避けて、ヌルコは壁に叩きつけられる……
と思いきや、体制を整えてから、壁を触手でぶっ叩き、アリスと共にミラに突進した!
「はぁあああっ!!」
「きゅきゅきゅきゅきゅ!!」
迫り来る苛烈な銃技と尖剣技と触手の猛攻を、ミラは顔色一つ変えずに避け続ける。
「……今の貴様らが、俺に勝てる確率を教えてやろう。」
「な、なに……!?」
次の瞬間、ミラは二人の背後に高速移動して、その背中に肘を落とした!
「がはぁっ!?」
「ぎゅっ……っ!!」
不可能(ゼロ)だ!!」
「や、やってみなきゃ分からないっ!!」
ここでルカが奮い立ち、ミラに突進した!
「無駄だっ!!」
強力無比な、異次元の人造人間。
四人がかりですら、かすり傷一つ与えられない状況だ。
「ルカーっ!」
ヴィクトリーがルカ達に駆け寄ろうとするも、その前にジャックオーランタンが立ちはだかる。
「ふんっ!」
そして、ヴィクトリーの腹筋を拳で打ち抜いた!
「がはぁあっ……っ!!」
そのジャックオーランタンの腕を掴んで、グルグルとぶん回す。
「でやぁあーーっ!!」
そして、ミラの方へとぶん投げた!
「ふん。」
しかしミラは、それをすんなりと避ける。
ジャックオーランタンは壁に叩きつけられて、その壁も粉砕した。
「あぅう……」
ぐったりして、凶悪化も解けた。
これで、ジャックオーランタンは倒せた。
「スキあり……」
ローパー娘が、強靭な触手でヴィクトリーを捉えた!
「しまっ……!!?」
「うふふ……」
「あぎゃあああああっ……!!!」
「ふん……」
ミラは再びルカ達に向いて、突進してきた。
「くっ!」
「はぁあっ!!」
ミラの怒涛の猛攻に、たじろぐルカ。
「ちぃっ!!」
隙を見て、足払いをかける。
しかしミラは跳び避け、ルカの顔面に両足蹴りした!
「っ!!」
「はぁああっ!!」
ぶっ飛ぶルカと入れ替わるように、ソニアが走ってくる。
そして跳び上がり、棍で兜割りした!
「ふんっ!」
しかしミラは腕をクロスして、それをガードする。
「な、なに……!?」
「その程度では、この俺にダメージを与えるのは不可能だ!」
そう言いながら、ソニアの顎を蹴り上げた!
「あがっ……!!」
「消えろっ!!」
暗黒の魔力を手に纏い、ソニアの腹に添える。
爆発が巻き起こって、ソニアをぶっ飛ばした!
「きゃああっ……!!」
大ダメージを受けたソニアは倒れ伏して、戦闘不能になってしまう。
「きゅーっ!!」
ヌルコは、マキナのオートボウガンを取り出す。
そして、ミラに向けて連射した!
「……」
ミラはそこに手を向け、ヒュバババッと動かす。
そして、ゆっくりと手を開いた。
そこから、ボロボロになった矢が落ちる。
「きゅっ!?」
「そんなものが通用すると思ったか……?」
ミラはそう言いながら高速移動で消え、ヌルコの腹に拳を埋めた!
「ぎゅっ……!!?」
「く、くそ……!!」
アリスがレイピアを構えながら、ミラに突っ込む。
「ふんっ!!」
しかしミラはそのレイピアを掴んで、へし折ってしまった!
「なっ……!!?」
呆気に取られるアリスの髪と、ダメージに悶絶するヌルコの髪を掴んで、顔面同士を激突させる。
「ぎゅううっ……!!?」
「あがぁあっ……!!?」
ヌルコとアリスは鼻血を噴き出し、顔を押さえる。
「ふんっ!!」
ミラはその二人を、思いっきりぶん投げた!
「ぐはぁあっ!!」
「きゅっ!!」
「はぁあっ!!」
そして飛び蹴りで、二人の腹を打ち抜いた!
「がはぁっ……!!」
「きゅう……」
二人も、戦闘不能に陥ってしまった。
「く、くそ……!!アリスとヌルコまで……!!」
ヴィクトリーは、メーダ娘とローパー娘の触手攻撃に対応しながらミラ達を見ていた。
「うふふ、手も足も出ないようねぇ……」
トワはそう言いながらクスクス笑い、ルカとヴィクトリーの戦いを見るだけだった。
「さぁ、残るは貴様だ……ここで呆気なくやられようものなら、仲間もろとも消してやる。」
「やるしかない……かぁあっ!!!」
ルカは、気を全開放した!
「来い!!」
そして、ミラとぶつかり合う。
「はぁあああっ!」
「うぉおおっ!!」
拳と剣技がぶつかり合って、凄まじい攻防が繰り広げられた。
疾風のように攻撃が飛び交い、尚も加速する。
しかし、それだけではない。
ルカに、変化が起きたのだ。
「はぁっ!!」
「っ!?」
ルカの剣技が、ミラの頬にカスった。
思わず動揺してしまい、硬直してしまうミラ。
「はぁあっ!!」
ルカはそのミラの腹に、渾身の前蹴りを叩き込んだ!
「っ!!」
「ミラに攻撃がクリーンヒットした!?」
トワも驚いて、そう漏らす。
そう、ルカの動きがミラの動きに追いついてきたのだ。
ミラは靴を擦らせながら後退し、腹を押さえながらルカを睨む。
「貴様っ……!!」
「魔剣・首刈りっ!!」
ミラの喉元が剣に突き上げられ、その体も打ち上げられた!
「ぐっ……!!」
しかしミラは浮かんで、回転してからルカに踵落としする。
「くぅうっ!!」
ルカは腕をクロスしながら、何とかガードした。
「ふんっ!!」
しかしミラは、もう一方の足でルカを蹴り飛ばした!
「ぐっ!?」
「ふんっ!」
ミラはルカに追いついて、顔面に拳を振り下ろす。
しかしルカはその腕を抱え込んで、ミラを地面に叩き伏せた!
「ぐぁあっ……!!?」
「よ、よし……!」
ミラから距離をとって、構え直す。
「ぐっ……!!」
額に青筋を浮かべながら、立ち上がろうとするミラ。
追い打ちをかけるように、ミラに何かが激突した!
「ぐはぁあっ!こ、こいつらは……!!」
戦闘不能になったメーダ娘とローパー娘がぶっ飛んで、ミラに激突したのだ。
「くっ!」
「次はおめぇだ……」
ルカの横に、ヴィクトリーがそう言いながら立つ。
胴着はボロボロでダメージもあるが、充分に戦えるらしい。
構える二人の前で、トワがミラの近くに高速移動してきた。
「退くわよ、ミラ……これ以上は、意味が無いわ。」
「……」
ミラはトワの言葉を聞いて、残念そうに頷く。
そして、エネルギー波をルカ達に向かって放った!
「なにっ!?」
「波ぁっ!!」
ヴィクトリーのかめはめ波で相殺して、辺りに爆煙が舞う。
ルカは剣で霧払いをするが、既にミラとトワは消えていた……
「……くそっ!逃がしたか!」
「はぁっ……はぁっ……」
二人は座り込んで、息を切らす。
「くそったれ……なんであいつらが……」
「……誰なのだ、あの二人は。」
そう声をかけたのは、ヌルコと肩を組んだアリスだった。
「あいつらは、俺の世界の敵だ……暗黒魔界って所から来た、女研究者と人造人間なんだが……何で、この世界に……!!」
「いてて……でも、ルカのお陰で何とか追い返せたみたいね。」
ソニアも服のホコリを払いながら、立ち上がる。
「いや、奴はまたやって来ると思う……たぶん。」
「だったら、その時も返り討ちにするまでだよ。」
「……この旅で考慮すべき事が、一つ増えてしまったな……」
とにかく、予想外の強襲を押し返せた。
恐ろしく強い敵ではあったが、無事に追い返すことが出来たのだ。
「よし、ミダス村に戻ろう。」
「ああ……いつまでもこんな所で話すわけにもいかねぇしな。」
「ああ……余のレイピアが折られてしまったからな……」
「黄金製の武器、どんなのになるのかな〜!」
「きゅ〜。」
ヴィクトリーは金塊を持って、戦士達と共にミダス村へと向かう。
ようやく、黄金製の装備が手に入るのだ。
金の装備を手に入れた後は、東のタルタロスに向かう。
果たして、そこでは何が待ち受けているのか……

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東のタルタロスへ……

予想外の強襲を乗り越え、黄金を持ってミダス村へと無事に帰還した戦士達。
そこで黄金製の武器を手に入れて、遂に山脈越えをしようとしていた。
「この山脈洞窟を越えると、ロストルム地方だよね。東のタルタロスがある、無人の地域って話だけど……」
「どんな地方だ?」
ヴィクトリーの言葉を聞いて、アリスが真っ先に口を開いた。
「……誰もいない、無人の地方だ。ロストルム村もあったが、大異変から10年ほど後に滅びたという。小さな村ゆえ、生き残りも居なかったと言う事だが……」
「……滅びた原因も、タルタロスに関係あるのかな?」
「その可能性は高いだろうな。何者かの襲撃を受けたと言う事だが……まぁ、それも含めて調べてみるぞ。タルタロスには、大異変の手がかりがあるはずだ。」
「おーし、じゃあいっちょやってみっかぁ!」
「きゅっ!」
戦士達は気合を入れて、山脈洞窟の中に入っていった……

あのミラとの激戦で相当のレベルアップを果たした戦士達にとって、山脈のモンスターなど雑魚同然だった。
しかも、今は黄金製の装備を手にしているのだ。
ただ、そこそこ長い洞窟とだけあり、越えるには時間を要した。
「よ、ようやく洞窟を抜けれたか……疲れた……」
抜けるなり、アリスはぐったりした様子でそう言った。
「とりあえず、野宿以外で休めるところを探そうよ。滅びたロストルム村でも、休む場所くらいはあるんじゃない?」
「そうだね……よし、ロストルム村に行ってみよう。」
「俺もちょっと気になってた所だ。よーし、れっつごー!」
「きゅー!」
戦士達は、ロストルム村へと歩を進めた……

ロストルム村……
「ひどい……完全に滅ぼされてる……」
ソニアの言う通り、そして噂通り、ロストルム村は完全に滅びていた。
枯れ果てた草木が風に揺られ、廃墟が立ち並んでいる。
「いったい何者が、ここまで村を破壊したのだ……?ただの盗賊や、ならず者の仕業ではないのは確かだな。」
「とにかく、体を休める場所を探そうよ。少し休憩してから、南のタルタロスに乗り込もう。」
「きゅーっ!」
「……」
ヴィクトリーはというと、廃墟の一つに目を付けていた。
「……どうしたんだ、ヴィクトリー?」
ルカはヴィクトリーの様子に気付き、そう投げかけた。
ヴィクトリーは、その廃墟に目をつけたまんま応える……
「そこから、覚えのある気がする……しかも二つ。」
「なに……!?」
「本当か!?」
「ああ……ここの生き残りじゃねぇのは確かだ。行ってみようぜ、面白そうだ。」
そう言うと、ヴィクトリーはその廃墟に向かっていった。
皆もヴィクトリーに付いていく形をとる。
「……」
ヴィクトリーは、廃墟の玄関を開ける。
そこには、見覚えのある羽根を生やした少女と、スライム娘の二人がいた。
「ふぅ、ようやくここで一休みできますね……あたたかいベッドでねむりたいです……」
イリアスと、そのお供スライム娘だ。
「むっ、イリアスではないか……もしかして、貴様もタルタロスに向かっているのか?」
「あなた達こそ、タルタロスが何か分かっているのですか?」
「分かってるよ、別の世界線……いわゆる、並行世界へのトンネルだろ?」
ヴィクトリーは真っ先にそう答え、椅子に座った。
「ええ……私達の世界とは異なる可能性の存在する世界。何らかのパラドックスによって、発生したと考えられます。」
「……ぱらどっくす?」
ルカは素っ頓狂な顔でそう言いながら、首を傾げた。
「時空そのものに生じた、ボタンの掛け違いのようなものです。」
「話しただろ?一本の苗木の話。あれが一番分かりやすい例だ。それでイリアス様、原因は分かるんか?」
「いいえ、まだ調査中です……また、タルタロスでは人間が変異するのを見たでしょう。あれは、アポトーシス化現象と呼ばれるもの。」
「アポトーシス……!」
ヴィクトリーは、タルタロスの中にあった赤字を思い出した。
『みんな、アポトーシスになる』……
「歪んだ時空間による、聖素と魔素の不規則な生体侵食変異……それが、アポトーシス化の正体なのです。」
「……ちなみに、こいつの正体は分かるか?」
ヴィクトリーは、ヌルコを抱っこして持ち上げたら、
「きゅきゅー!」
「分かりません。」
イリアスは即答した。
「だってよ、ヌルコ。」
「きゅーっ。」
「いったい、なんでそんな事が起きたの……?」
「それは、調査中です。」
ソニアの問いにも、イリアスは即答した。
「……」
「つまり、まだ何にも分かってねぇって事か……」
とにかく、イリアスの方も頑張っているらしい。
今はそういう事にして置こう。
「じゃあイリアス様、何か分かったら頼むぜ。俺達も頑張るからさ。」
「こんな奴、アテにならんがな……」
「何ですって……!?今のは聞き捨てなりませんよ、魔王!」
「ふん、アテにならんからアテにならんと言っているだけだ!文句あるか!」
「あーもう、やめろよ!ほら、かいさーんっ!」
アリスとイリアスの喧嘩を、ルカが収める。
「べーっ!」
「いーっ!」
この家から出ていくまで、アリスとイリアスは睨み合っていた……
何はともあれ、この村の宿屋で少しばかり休憩する事になった。
みんな山越えで、疲れている。
「イリアス様は、あんなスライム娘一人だけでどうやって山越えしたんだろうな?」
「さぁ……?」

少し休憩してから、戦士達はロストルム村を南下。
タルタロスへとやってきた。
そこは南のタルタロスとは違い、学者達も居ない。
「誰もいない……なんだか、不気味な雰囲気……」
「調査隊はここまで来られないという話だったな。非戦闘員の学者達まで連れて、山脈越えは無理だろう。」
「おっしゃあ、いっちょやってみっかぁ!」
ヴィクトリーは真っ先にタルタロスへと走り、大穴へと飛び込んだ!
「ちょっ!?ヴィクトリーっ!?」
「せっかちな奴め……余達も続くぞ!」
何故かヴィクトリーを先頭に、戦士達は大穴へと降りていった……

「……」
タルタロスの中は、南のタルタロスと同じく超過技術でできた研究所風の所だった。
戦士達は敵の強襲に備えながら、調査する。
「……おい見ろよヌルコ、おめぇこれ使えんじゃねぇのか?」
ヴィクトリーが運んできたのは、大砲型のマキナだった。
「きゅ。」
ヌルコはそれを持って、ちゃきーんと構えた。
「あはは、似合ってるぞ!」
「きゅー!」
「呑気な奴らめ……」
「ねぇ……」
ソニアが目の前に指を差しながら、他のメンバーに呼びかける。
ソニアの眼前……
そこには、森が展開されていた。
「なんで、大穴の中に森があるの……?」
「時空のねじれ……周囲の空間を巻き込み、取り込んでいるのか?」
「きゅ……」
とりあえず、森の中も探索してみる。
そこには、一対一の決闘のために作られたような銃もあった。
調査を更に進めると、洞窟のような場所で奈落のサークレットがあったり、スティンガーミサイルがあったりした。
「オーバーテクノロジーなのか時代遅れなのか分かんねぇな……」
「私達にとっては、充分にオーバーテクノロジーだけど……」
「これは……ヴィクトリー、何だと思う?」
ルカが取り出したのは、オーシャンアンカーだった。
「ああ〜……多分、電動の(もり)だな。魚とか獲る時に使うんだ。すげぇ、綿密に防水加工されてる……」
「きゅ〜。」
とりあえずオーシャンアンカーも、ヌルコに渡した。
マキナの扱いは、こいつが一番慣れてるだろう。
そうやって進んでいると、遂に敵が現れた。
「伏せろルカっ!!」
「っ!!?」
ヴィクトリーの言われた通りに、体を伏せるルカ。
そこに、エネルギー波が飛んできた!
「外したか……まぁいい……」
「美味しそう……おなかもすいた……」
「あははっ!こんな所に来る人が居るなんてねぇ!」
現れたのは、三体のアポトーシスだった。
エネルギー波は、最後の奴が撃ったらしい。
「何だおめぇらは!」
「私はライオット……そう呼ばれている。」
「私はイーター……」
「ルクスルよ!よろしく!」
ライオットは戦士タイプの、竜人に似た魔物だ。
イーターは触手と口が一つになったような奴で、中心には幼女の胴部がある。
ルクスルは、機械に上半身の胴部と腹部がついたような姿をしていた。
そして、三体は声を揃えた。
「第一次断界接触……消去する。」
そう言って、戦士達に襲いかかってきた!
「またそれか……」
「くるぞっ!!構えろっ!!」
戦士達は構え、迎えうつ体制を整えた。
イーターはルカとソニアに目をつけ、ルクスルはアリスとヌルコに目をつける。
「がぁあっ!!」
「っ!!」
ライオットが、ヴィクトリーと激突した!
「貴様も生粋の戦士タイプか。私の好みだ!」
「サンキュー!」
拳が疾風のように飛び交い、ドカドカと打ち合う。
「はぁあっ!!」
ライオットは尻尾で、ヴィクトリーを薙ぎ払いにかかる。
「ふんっ!」
しかしそれを受け止め、ライオットをグルグルとぶん回した。
「ちっ!」
ライオットはすかさずヴィクトリーの顔面を蹴る。
「うぐっ!?」
「はぁあっ!!」
そのまんま顔面に蹴りを連打して、渾身の力を込めてヴィクトリーを蹴り飛ばした!
「くそっ!!」
ヴィクトリーはぶっ飛ぶが、体制を整えながらバク転し、ライオットを見る。
「はぁあっ!!」
既にライオットは、眼前に迫っていた。
「くっ!?」
獣人の素早さと、竜人のパワーを併せ持っているようだ。
速く重い一撃が、連打される。
「負けるかぁああっ!!」
しかし、ヴィクトリーも負けじとライオットのこめかみに足刀した!
「つっ……!!?」
「あだだだだだっ!どぉらぁあっ!!」
胸に蹴りを連打してから、渾身の正拳突きを叩き込む。
「ぐっ!!」
ライオットは踏ん張り、ヴィクトリーに一撃を放った!
しかしヴィクトリーはその一撃を避け、懐に踏み込む。
「なっ……!?」
「かめはめ波ーーーっ!!」
そして、かめはめ波を放った!
至近距離で、全エネルギーがライオットに叩き込まれた!
「ぐぉおおおっ!!?」
ライオットは壁に叩きつけられ、爆発する。
「ぐっ、もう無理か……!!」
そして戦闘不能になり、消散した……
「……よし!」
ヴィクトリーは、ルカやアリスの援護に回ろうとする。
「こっちも終わったぞ。」
「僕も大丈夫だ。」
しかし、丁度戦闘は終わった所だった。
致命傷を負ったメンバーも居なさそうだ。
「よし、進もうか。」
「ああ……」
戦士達は臨戦態勢を解き、再び奥へと進む。
そして……
「……さて、問題の扉だな。」
「ああ……」
あの、開かずの扉が戦士達の道を塞いだのだった。
「やはり、ここにも扉が……南のタルタロスにあったものと同じようだな。」
「きゅーっ、きゅーっ!」
「ねぇ、開けるのやめとこうよ……なんだか嫌な感じだよ。」
「何のため、ここまで来たんだよ……」
ルカが、扉に触れようとする。
「待った、ルカ。」
しかし、アリスがルカを静止した。
「な、何だよアリス……」
「試しに、ヴィクトリーにこの扉を開けさせてみないか?」
「ええっ!?俺かよ!」
そう言えば前の扉の時は、ルカが触るのがコンマ一ミリ早かったんだったか。
「いいけどさ、多分無駄だと思うぜ……」
ヴィクトリーはそう言いながら、扉に手をつける。
当然、何も起きない。
「ふんっ……!!」
しかし、力を込めると扉の反応が変わった。
ゴゴゴッ、と動きかけているのだ。
「……なにっ!?」
「ふんっぎぎぎぎ……!!」
更にヴィクトリーは力を込め、扉を開けようとする。
「そ、そんな……私たちがやっても、ピクリとも動かなかったのに……」
「ど、どうなっている……!!?」
「きゅー……」
「ぐぐぐぐぐぎぎがぁああああ……!!!」
しかしどれだけ力を込めても、ミミズ一匹が通れるか通れないかぐらいの隙間しか開かなかった。
ここであえなく、ヴィクトリーが折れた。
「ハァッ……ハァッ……や、やっぱ無理だよ……ルカ、何とか出来るか?」
「分かった、よっと。」
ルカが手を触れると、扉が開いた。
「そうだよ、最初からこうすりゃいいのに。」
「触れるだけで、簡単に開いたか…やはり、貴様は扉が開けるのだな。」
「私達じゃピクリとも動かなかった扉を、僅かに動かした……ルカに至っては、触れるだけで全開……」
ここで、ヴィクトリーは拳をパンッと叩いた。
「よっしゃあ!気合い込めて、行ってみようぜ!」
「ああ、行くぞ!」
戦士達は、扉を潜った……

扉の先には、やはり侵食された町があった。
「やっぱり、この気持ち悪い町……ねぇねぇ、さっさと抜けようよ。」
「きゅ……」
怯えた様子のソニアを横目に、アリスとヴィクトリーは周囲を見渡していた。
「どこかの町が、時空異変に取り込まれたのだろうな。」
「やっぱし、レミナか……?」
ヴィクトリーが、そう言った時だった。
不意にヴィクトリーは、キッと民家を見た。
「?どうしたんだ、ヴィクトリー?」
ヴィクトリーは唾を飲み、汗を垂らす。
「……あそこから、気を感じる。」

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下級天使と異世界と

イリアス大陸東のタルタロス……
そこでもやはり、超過技術が展開されていた。
更には、南のタルタロスとは違う種類のアポトーシスモンスターが居た。
そいつらを薙ぎ払い、そして次元の扉を越え……
やはりその先も、侵食された街だった。
そんな時、ヴィクトリーは何かに気づいたようだ。
「?どうしたんだ、ヴィクトリー?」
「……あそこから、気を感じる。」
「なにっ!?」
「いや、多分こいつは壊れちゃいねぇ……いったい、何者が……!!」
ヴィクトリーの視線と、同じ方向を向く戦士達。
その民家の扉が開かれ、出てきたのは……
「……」
赤髪を結んだ、眼鏡をした少女だった。
「!!」
次の瞬間、ヴィクトリーに頭痛が走った!
「っ……!!」
見えたヴィジョン……
嫌な笑いを向ける赤髪の研究者……
その体に藻を纏ったり、下半身が肉樹になったり……
そんな映像が、ヴィクトリーの頭に刷り込まれたのだ。
「ぐ……!!」
思わず、跪いてしまう。
「ちょ、ヴィクトリーっ!?」
ルカが、でかい声を上げる。
「……!」
少女はそれに気付き、逃げるように民家へと入ってしまった。
「おい、何者だ!」
アリスが大声を出してそいつを呼ぶが、反応は無かった。
「ぐ……!!」
頭を押さえ、ブンブンと振る。
「大丈夫か?また例の頭痛か?」
「ああ……もう平気だ。」
ヴィクトリーはそう言って、民家に歩み寄る。
とりあえず今は、ヴィクトリーが先頭になった。
「……お邪魔しま〜す。」
そう言いながら、民家に入るヴィクトリー。
そこには、さっきの赤髪の少女が居た。
「ひゃっ!あなた達はいったい……!?」
「貴様こそ何者だ!そこで何をしている!?」
アリスが前に出てきて、少女に言い放った。
「わ、私はプロメスティン……司書をやっている、下位の天使です。」
「天使だと……?」
「……」
感じてみると、プロメスティンからは聖なる気が感じられた。
どうやら、天使で間違いないらしい。
「どうやら、そうみてぇだな……こんな所で何やってんだ?」
「説明の前に、一つお尋ねしたいのですが……今は何年でしょう?」
「えと、エイジ2017……って、これは俺の世界の暦だった。えと……」
「ヨハネス暦1455年のはずだけど……この場所だと、何年か分からないわね。」
ヴィクトリーの代わりに、ソニアが答えた。
「いえ、あなた達がどの時代から来たか聞きたかったのです。しかし、ヨハネス暦1455年なんていう未来とは……」
「1455年が未来……という事は、貴様は過去の住人か?いったいなぜ、このような異空間にいるのだ?」
そう言うアリスに、プロメスティンは向いた。
しかし、プロメスティンが返した言葉は意外なものだった。
「あなた、どこか沙蛇に似ていますね……もしかして、あの大妖魔の血縁なのですか?」
「ええい、余の質問が先だ!答えんと、この辺の薬を全部飲み干すぞ!」
「どう考えても危ねぇ薬だと思うぞ……」
「そ、それはやめて下さい!私は、実験中にこの空間に飛ばされたんです……」
「実験?イリアスの命令で、天使どもが実験をしていたというのか?」
「いえ、私の独学による実験です。聖素と魔素の結合反応を試していたら、こんな所に……」
「イリアスの命令もなく魔導実験とは……貴様、とんだ不良天使だな。」
ルカは周囲を見ながら、息を吐いた。
「もしかして、大異変の原因って……君がやった実験のせいじゃないの?」
「いえ、それはありません。私のやった実験は、大規模なものではありませんでした。偶発的に、小規模な時空ゲートを開いてしまっただけ……それも、実験事故のような不本意な結果なんです。」
「時空ゲートを、独学で……?おめぇ、ブルマ以上の天才なんじゃねぇか?」
「私はそんなもの履きませんし、意味が分かりません。」
「そうじゃねぇ!俺の知ってる人に、ブルマって奴が居るんだ!」
「そ、それは失礼……」
プロメスティンはゴホンと咳をついて、続ける。
「ここに飛ばされてから、実験や観測を重ねたのですが……複数の時空をまたぐ、大規模な時空断裂が存在していました。私がここに飛ばされたのも、それに触れてしまったせいです。現在、そのような時空断裂が出来た原因を調べています……」
「ここに飛ばされてから、しばらく実験してたって……何日ぐらい前に、ここに来たの?」
プロメスティンは、そう質問してきたソニアの方に向く。
「何日というか……200年ほど前でしょうか。」
「えぇっ!?」
「それで……あなた達は、どんな実験でここへ?よろしければ、実験状況など教えて頂きたいのですが。」
「実験などしておらん。ここにいるエセ勇者と脳みそ筋肉は、時空を行き来出来るのだ。」
「え、エセ勇者て……」
「脳みそ筋肉……」
とりあえずプロメスティンに、自分達の事を説明した……
「そんな……人間が、平行世界を渡る事ができるなんて……人間が特殊な能力を持ち得る時、前頭葉に変化が見られます。御二方、少し脳を解剖してもいいですか?」
「僕、死ぬよね。」
「丁重にお断りする。」
「それでは、クローンを作らせて下さい。このビーカーに、精液を採取したいのですが……」
「ええい、付き合っていられるか!さっさと失せろ、このマッドサイエンティスト天使め……!」
プロメスティンの話を遮り、アリスがそう言い放った。
プロメスティンも、頬を膨らませる。
「そちらからやって来ておいて……」
「いいじゃねぇかよアリス、それに……見た所、おめぇすげぇ頭いいんだな……」
ヴィクトリーは、屋内を見回す。
怪しげな薬、書き殴られた資料、よく分からない物体……たくさんの研究の跡があった。
「これ、全部おめぇ一人で?」
「だから、そうと言ってるじゃないですか。」
「……」
ヴィクトリーは笑顔を向け、プロメスティンに手を差し伸べた。
「俺達の仲間になってくれねぇか?」
「!!」
ヴィクトリーに、視線が殺到する。
「ヴィクトリーっ!?また得体の知れん奴をスカウトして……!!」
「ヌルコはまだいいけど、この子は完全なマッドサイエンティストよ!どうなるか分からないわよ!」
「きゅーっ!きゅーっ!」
「まぁまぁ、いいじゃねぇかよ!こいつの頭脳、ここに居たまんまだともったいねぇだろ。いずれ俺達の役に立つかも知れねぇし……何より、こんな所でひとりぼっちなんて、かわいそうじゃねぇかよ。」
「……ひとりぼっちなのは、気にしてませんけどね。」
プロメスティンは資料をまとめ、抱える。
そして、こっちに向いた。
「それに、私も丁度同じ事を思っていたところです。ご一緒させて頂いてよろしいですか?」
「な?いいだろルカ?」
ヴィクトリーはプロメスティンと並んで、何故かルカの方に向いた。
「ぼ、僕かよ……ご一緒って、仲間になるって事?」
「ええ、ぜひあなた達を観察……いえ、あなた達の力になりたいです。」
「……ルカとヴィクトリーを、モルモットにするつもりじゃないよね?」
ソニアの質問に、プロメスティンは笑顔を向けた。
「大丈夫です。前頭葉の一部を切除しても、ただちに影響はありません。」
「やっぱり解剖する気だこの子!」
「大丈夫、そうなる前にぶっ飛ばす!」
ヴィクトリーは拳を握りながら、そう言い放った。
「こっちはこっちで野蛮!」
「まぁ、ヴィクトリーの言う通り……その頭脳が仲間になるんなら、心強いよね……じゃあ、よろしくね!」
ルカも快諾し、プロメスティンと握手した。
「それでは、よろしくお願い致します。至らない身ではありますが、精一杯頑張りますので。」
こうして、プロメスティンが仲間になった。
「二人とも、油断してたら解剖されるわよ。この子、清純そうに見えて真っ黒だから……」
「あはは、気を付けておくよ……」
「よっしゃあ、先に進もうぜ!」
ヴィクトリー達は民家を出て、不気味な町を進む。
「それにしても、どうなってんだここは?いったい、何があったってんだ?」
ヴィクトリーが聞くも、プロメスティンは首を横に振った。
「分かりません……ただ、ただ事ではない何かが起こったとしか……」
「あの不気味なモンスターについては、何か分かるか?」
「アポトーシスの事ですね。」
プロメスティンはそう言いながら、資料を取り出した。
「私の考察ですが……あの存在は、この空間そのものの免疫機構と考えられます。空間に取り込まれた生物や無機物がらその素材になってるようです。また、アポトーシスには全くの同一個体が存在します。ルクスルと呼称される種は、全員が同じ人間の記憶を受け継いでいます。アポトーシスは複製され、人格さえコピーされているようですね。」
「なるほど……通りで、同じ気しか感じなかったみてぇだ……」
「気……?何なんですか、それ?」
「ああ、僕達も気になっていた所だ。」
「魔力の類であることは確かだが、『気』とは何なのだ。魔力や気配とどう違う?」
ヴィクトリーは咳をついてから、頭を抱えた。
「説明が難しいな……どんな小さな存在にもある、体の中のエネルギーみてぇなものだ。極まればコントロールだって出来る。おめぇらの世界で言う魔力って言うのはわかりやすいかな。気配ってのは何となく感じるだけのもので、気ってのが確実に感じるものだ。例外はあるけど……」
「それで、その気とやらでアポトーシスを察知するとどんな感じがするのですか?」
「えーと……学校とか、みんなで一緒にいる空間がある所に行ったことあるか?」
「イリアス神殿の教会だね。」
「私も、ルカとよく行ってるわよ。」
「魔王城だな。」
「きゅ。」
「学校では無いですけれど、司書の仕事場ならば。」
「じゃあ、そこで自分以外の奴がみーんな同じ顔なのをイメージしてくれ。上司も、隣の人も、前の人も、皆だ。どうだ?」
皆の顔が、だんだんと引きつる。
「確かに……」
「気持ち悪いかも……」
「きつねがいっぴき、きつねがにひき……」
「き、きゅぅ……」
苦い表情で、口々にそう言う。
「……分かりやすい例えを、ありがとうございます。」
プロメスティンだけが、センチメンタルな表情でそう応えた。
……プロメスティンにとって司書の仕事場は、元々愉快な所でも無いらしい。
「それと同じ感覚を、俺はここでも味わってんだ……それでプロメスティン、なんでアポトーシスはみんな同じなんだ?」
「分かりません……空間侵食そのものの作用だと思われますが、根拠がありません。時間と設備さえあれば、解明も可能だと思いますが……」
「そっか……」
とりあえず、アポトーシスの事はこんな感じらしい。
そうこう話していると、やはり紫色の何かの穴の前に立っていた。
「やっぱここか……」
「みんな、行こう。」
ルカが先頭になって、穴をくぐる。
やはりその先は、あの星空の一本道だった。
「ここは……南のタルタロスと同じだな。おそらくここが、世界と世界の境界なのだろう。」
「本当に、あの町から出られましたね。仲間も連れて、隔絶された時空を行き来できるなんて……」
「きゅ……」
戦士達は進み、そして奥にまで辿り着いた。
そこには、やはり転移用の魔法陣がある。
「前回は、同じ魔法陣で異世界に飛ばされた。さて、今回はどうだ……?以前と同じ、滅びた未来か……それとも、また別の平行世界なのか……」
「ドキドキしますね……この先に、どんな世界が広がっているのか……!」
「ああ、もしかしたらすげぇ奴が居るかも知れねぇからな……俺もわくわくしてるぞ!」
「きゅーっ!」
「よし、行ってみよう!」
ルカ達は、魔法陣を踏む。
そして、光に包まれた……

「……来たきたあっ!」
光が晴れ、大地の感覚を踏みしめる。
目の前には、緑の自然が広がっていた。
「ここは……?」
「前と同じく、タルタロスの前だと思うけど……」
ルカとソニアの横で、アリスが腕を組む。
「少し光景が違うな……こっちの方が、自然が残っているのか?」
「前とは違って、周囲に危険な気は感じねぇ。行こうぜ。」
「こういうのって、ドキドキしますよね。あっ!」
プロメスティンは走り、自然を見渡す。
「植物とか虫とか、サンプルを採っていいでしょうか!?」
「あははは、手短に終わらせろよー!」
この世界には、平和の気配が溢れている。
思わず、気が抜けてしまうほどだ。
「じゃあ、まずはロストルム村に行ってみようか。ヴィクトリー、気はどんな感じだ?」
「……」
ヴィクトリーは額に指をつけ、目を閉じる。
すぐに、にぱっと笑ってルカの方へ向いた。
「居るぜ!住人がたくさん!この世界のロストルム村は、滅びてねぇぞ!」
「お、おぉっ!じゃあ、行こう!」
早足になる、ルカ達。
果たして、この世界にあるものとは……

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マルケルスの伝言

イリアス大陸東のタルタロス……
その先にあった平行世界は、平和に包まれていた。
その、ロストルム村……
「ほら、やっぱりみんな居るぜ!」
ヴィクトリーが指す通り、そこにはのどかな村の風景が広がっていた。
「ほんとだ……」
「すると、20年以上は前になるのか……?」
「おや、マルケルスさん。」
不意に、青年がルカに話しかけてきた。
「この村に三度も立ち寄るなんて、よほどお気に入りみたいだね。」
「えっ!?」
「でも、来る度に雰囲気が変わるね。今回は背丈が違うような……」
「ち、違うよ……マルケルスは、僕の父さんなんだ!」
「えっ?何を言ってるんだ……?ひょっとして、マルケルスさんとは別人?でもあの人、君くらいの子供がいる年齢じゃないはずだよ。まぁ確かに、外見は生き写しだけどね。」
「あの。」
プロメスティンが間に入り、青年の前に立つ。
「今年のヨハネス暦を伺ってもよろしいですか?」
「変な事を聞くんだな……今年はヨハネス暦、1430年だよ。」
「なるほど、25年前か……ルカの父が冒険していた時期と重なるな。」
今度は、ヴィクトリーが出てきた。
「マルケルスって奴は、いつこの村に来たんだ?」
「最初は一ヶ月前だよ。三人の仲間を連れて、新米だが有望な勇者って感じだったな。二回目は、それより一週間後だ。その時は何故か一人だったよ。雰囲気もかなり違ったし……」
「一週間後に、一人で再来した……?雰囲気が違ったって、どんな感じだったんですか?」
「歴戦の勇者の風格かな……しかも、なんだか鬼気迫る感じだったよ。たった一週間で、人があれほど変わる事はあるのかね?何があったかは、俺は知らないよ。」
「仲間連れで村に訪れた新米の勇者……それが一週間後に一人で再訪、様子も違ってた……」
「どう考えてもおかしいな……村長さん辺りに聞いてみようぜ。」
「うん……行こう。」
「村長さんならあそこの家だ。」
青年が、親切に教えてくれた。
「サンキュー!」
お礼を言って、村長の家に向かう。
そして、玄関を叩いた。
「おっす!村長いるか?」
「はいはい〜。」
玄関を開けたのは、いかにもザ・村長という感じのお爺さんだった。
村長はヴィクトリーに会釈した後、ルカを見る。
「おや、マルケルスさん?またずいぶんと雰囲気が変わって……」
「いえ、僕は別人です……」
「えっ……?それにしては、ずいぶんと似ておるのう……」
村長は、ルカ達を家に上げる。
お婆さんが、茶を出してくれた。
「それで、そのマルケルスって奴の事を聞きたいんだけど……なんか分かるか?」
茶を飲みながら、ヴィクトリーが村長に聞いた。
「ふむ……彼については、村人達の方が詳しかろう。一度目に訪れた時は、儂も会ってはいなかったからな。会ったのは二度目。彼が我が家に訪ねてきた時の事は、よく覚えておるよ。話したのは、タルタロスと最近の異変の事じゃったな。群発する地震や農作物の異常について、興味深く聞いておった。」
「やっぱりタルタロスの調査を……」
「そして、マルケルスはこうも言っておったよ。『数年以内に、この村に大きな異変が起きるかもしれない。そうなる前に、逃げた方がいい』とな。」
ここで、アリスの眉がピクッと動いた。
「数年後に、大きな異変……?まさか、この村を滅ぼす事になる災厄の事か……?」
「でも、この時代のマルケルスさんがなぜそれを知ってるの?この村が滅びる事を、予言できたなんて……」
「……まるで、見てきたかのような予言だよな。」
「村が滅ぶ……?物騒な事は言わんで下され……ただでさえ、最近の異変に村人達は怯えているものでな。あと、マルケルスか?手紙を預かったよ。この村に知人が訪れた時には、渡してほしいとな……」
「この村に訪れるかもしれない知人……?」
「いったい、誰の事だ?」
村長は手紙を出し、宛名を見る。
「ルカ、という少年じゃ。」
「えっ……!?」
「なんだと……!?」
「馬鹿な、それはおかしい……!この時代、まだルカは産まれてもいないはずだぞ……いったいなぜ、マルケルスはそれを知っていた?産まれてもいないルカに、手紙を残したのだ……?」
流石のアリスも、困惑している。
そして、ヴィクトリーも困惑していた。
「同名の別人……なワケがねぇよな……いったい、どうなってんだ……!?」
「村長さん、僕がルカです!その手紙を見せてくれませんか!?」
「なんと、お主がルカじゃったか。それでは、彼との約束通り手紙を渡そう……」
村長はルカに、マルケルスからの手紙を差し出した。
ルカはそれを受け取り、手紙を開封する。
冒頭から、『我が息子、ルカへ』と書かれていた。
「我が息子、ルカ……!?この時代のマルケルスは、まだ僕の父さんじゃないのに……!」
「……」
ルカは、手紙を読み進める。
「この手紙……間違いなく、僕の父さんのものだ!」
「この時代のマルケルスじゃなく、お前の父……?我々の時代のマルケルスが、ここに来ていたという事か!?」
「やっぱりな……一週間で人が変わったってのも頷けるぜ。そもそも別人なんだからよ……」
手紙の内容……
力になれない両親からの謝罪と、『迷いの森を抜けた先にある隠れ里エンリカに居る、ミカエラを頼れ』という趣の指示と、世界の闇を払うと宣言された手紙だった。
「父さん……」
「この手紙を書いたのは、我々の世界のマルケルス……すると彼も、時空の扉を行き来する事が出来るのか。なぜ人間が、そのような能力を……そして彼は、何をしようとしているのだ?ともかく、この手紙を残したのは一ヶ月前……足跡を辿る事は難しかろう。」
「この世界には、いないかもしれない……僕達の世界に戻ったのか、また別の世界に行ったのか……」
「まぁいいや、それよりもミカエラって奴だ。」
ヴィクトリーはそう言ってお茶を飲み干し、ルカとソニアの方に向いた。
「おめぇら、ミカエラって奴とは面識ねぇんか?」
「ううん、私は無いわ……」
「僕も初めて聞く名だよ。父さんの古い知り合いかな?」
「これで、次の行き先は決まったな。ミカエラとやらは、隠れ里エンリカにいるという。エンリカがあるのは、迷いの森を抜けた先……迷いの森は、イリアスヴィルの西に広がっていたな。」
「それじゃあ、隠れ里エンリカとやらに行こう!」
ルカは立ち上がり、拳を握った。
「迷いの森に出る強い魔物も、今の僕達なら戦えるはずだ!」
「小さい頃から、あの森に入らないように言われてたけど……まさか旅に出てから、探険する羽目になるなんてね。」
「へへへ、強い魔物が出るのか……ワクワクしてきたぞ!」
戦士達は村長にお礼を言ってから、外に出る。
「そんじゃあルカ、頼むぜ。」
「ああ。」
ルカはハーピーの羽を使い、元の世界のイリアスヴィルへと飛んだ……

元の世界に戻り、イリアスヴィル……
の、西の迷いの森。
「この森って、出口が何カ所もあるんだよね。たぶん、エンリカに繋がってるのは一つだけじゃないかな……」
「それにしても、ダークエルフの気配が多いな……なぜ、こんな所にダークエルフが生息しているのだ?」
「ダークエルフですか……数匹捕まえて、標本にしたいですね。」
「さらっと物騒な事言うんじゃねぇよ……」
戦士達は、迷いの森を進む。
危険とは聞かされていたが、大してそうじゃなさそうだ。
敵意のないエルフが散歩してたり……
「ルカ、あれ何だ?」
ヴィクトリーは、羽の生えた小人みたいな魔物を指していた。
「あれはフェアリーだよ。ヴィクトリーの世界には、こんなのは居ないのか?」
「あんなのは居ねぇな。人外ならいくらでも居るんだけどよ。」
「なるほど、ではあれもサンプルとして……」
「ダメだっての。」
ヴィクトリーがプロメスティンをしばき、進む。
当然のように、道中は敵意のないモンスターだけではない。
「おい、来たぜ。」
「ああ……!」
草陰から、ダークエルフが二体も強襲してきた!
「二体か。」
「じゃあ僕達だけで充分だね。」
ヴィクトリーとルカは剣を抜き、ダークエルフの一撃を止めた。
「へぇ……!」
「ふふ……!」
二人はダークエルフの剣を受け止めながら、鍔迫り合いをする。
「いきなり死角から切りかかってくるとはな……!」
「はぁあっ!!」
ルカはダークエルフAの手を切り返し、蹴り飛ばした!
「がふっ!?」
「はぁあっ!!」
そして突っ込んで、猛攻する。
「うぐぐぐっ……!!」
どうやら、あっちは好調のようだ。
「俺もっ!」
ヴィクトリーは、ダークエルフBの足を踏む。
「っ!!?」
「でやぁあっ!!」
そして剣の柄をダークエルフBの腹に叩きつけた!
「うぐっ……!!?」
「だりゃあぁあっ!!」
更に剣をバットのように持ち、ダークエルフBをぶっ飛ばした!
「そ、そんな……!」
ダークエルフBは木に叩きつけられ、気絶した。
「なにっ!?に、人間がダークエルフを倒すなんて……!」
「スキあり……!!」
ルカは狼狽えるダークエルフAの懐に潜り込んで、魔剣・首刈りを決めた!
「ぐぇえっ……!!?」
ダークエルフAはぶっ飛んで、そのまま地面に倒れた……
「よし……!」
ここまでたどり着くまで、かなりのレベルアップを果たした。
迷いの森のモンスターなんて、怖くは無さそうだ。
「あはは〜!」
「人間の男の子だ〜!」
「いたずらしちゃえ〜!」
フェアリーの群れが襲ってきた!
あれはさすがに、時間がかかりそうだ……
「任せてください。」
プロメスティンが、前に出てきた。
「何だお前は〜!」
「邪魔するなら、いたずらしちゃ」
不意に、プロメスティンの気が膨れ上がった!
「水素分子開裂……燃焼を巻き起こしなさい!」
プロメスティンはそう言って、フェアリー達に手を向けた。
するとフェアリー達の体が燃焼反応を起こし、発火した!
「うわ〜」
フェアリーの群れはお尻に火をつけて、逃げ去っていく。
なんと、プロメスティンが以外にも戦闘員として役に立ったようだ。
「ひゃ〜!すげぇじゃねぇかプロメスティン!フェアリー達の群れをあんな一瞬で!どうやったんだ?」
「この程度なら、造作もありませんよ。」
プロメスティンは笑顔で、そう答えた。
迷いの森を進む戦士達に、モンスターの強襲は続く。
「きゅきゅきゅー!」
「はぁあっ!!」
ヌルコとプロメスティンが、ボウガンと化学反応技でフェアリーを蹴散らす。
「だぁあっ!!」
「うぉおおっ!!」
「はぁあっ!!」
ソニアとルカとアリスは、剣士ダークエルフを叩きのめしていた。
「うふふっ……」
「おめぇ、ダークエルフの魔術師タイプか……」
ヴィクトリーは、ドレスを着た魔法ダークエルフと向かい合っていた。
「宜しくね、武闘家さん……」
ダークエルフはそう言ってスカートをたくし上げ、そこから触手を伸ばしてきた!
ヴィクトリーは剣を持ち、それを扇風機のように高速回転させて触手を切り刻む。
「へぇ……!」
次にダークエルフは、エネルギー波を放った!
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーはかめはめ波で相殺して、飛び上がった!
「な、飛んっ……!!?」
「だりゃああっ!!」
そしてダークエルフの脳天に、かかと落としを叩き込んだ!
「がっ……!!?」
ダークエルフはその一撃で膝をつき、倒れてしまった……
どうやら魔法タイプだけあって、物理的なものには弱いらしい。
そんなこんなで、迷いの森を猛進する。
「……あっちから、たくさんの気が感じる……変な気も、魔物の気も……」
気の察知が出来るヴィクトリーを先頭にしたお陰で、迷うことなく迷いの森を抜けることが出来た。
エンリカとやらは、すぐそこにあるようだ。
ようやく、マルケルスの言う「ミカエラを頼れ」の意味がこの上で分かるのだ。
さてさて、どうなる事やら……

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動く世界情勢

戦士達はタルタロスの中にある、滅びてないロストルムに行った。
そこでルカの父、マルケルスから伝言を貰った。
その伝言通りに、戦士達はイリアスヴィルの西にある迷いの森を越える。
そして、エンリカにたどり着いたのだった……
「ここが、隠れ里エンリカか……」
「不思議な雰囲気だな……それに、普通じゃねぇ存在がいくつもいるみてぇだ。」
「ダークエルフは森の中にもいたが……この気配は、まさか天使までいるのか!?」
そう言うアリスの横で、ヴィクトリーは目を閉じて気を張り巡らせる。
そして、ゆっくり開いた。
「間違いねぇな。天使や堕天使もいるみてぇだ。」
「隠れ里とは、よく言ったものだ……」
「さぁ、ミカエラさんを探さないと。」
「……」
ヴィクトリーは、ポケットに手を突っ込んで先に歩き出す。
「ちょっ、ヴィクトリー……?」
「……南の民家に、そこそこな気を感じる。多分そいつがミカエラって奴じゃねぇのか?」
「……」
そんな事まで、分かるのか……
戦士達はそう思いながら、ヴィクトリーについていく。
「……ここか。」
そう言って立ち止まったのは、里長の屋敷ってほどのものではなく、他の民家と同じく質素な家だった。
「……何の用ですか?」
ヴィクトリーの横から、ダークエルフが話しかけてきた。
「なぁ、ミカエラの屋敷ってここでいいんか?」
「いかにも。ここはミカエラ様の屋敷……ですが、今はミカエラ様にお会いする事は出来ないでしょう。」
「?何でだ?」
「……」
ダークエルフは焦燥感と悲哀に近い感情を宿した目をして、視線を伏せる。
「……何だか知らねぇけど、邪魔するぜ。俺達はここの人に用があるんだ。」
「それでは、どうぞ。」
ダークエルフは、民家のドアを開ける。
そして、戦士達を家に上げた。
「おや、隠れ里エンリカにようこそ。」
そこに居たのは、そこそこできそうなエルフだった。
「どうか、里の平和を乱さないようにお願いします。」
「いや、そういうつもりはねぇんだけどさ……」
「そうだよ、僕達はミカエラって人に会いに来たんだ。」
ルカがそう言うと、エルフは血相を変えてルカを見た。
「ミカエラ様に、会いに……!?まさか、あなたはルカという名では……ああ、どうか違うと言ってください……」
「え……」
「いや、こいつは間違いなくルカだ。おめぇの思ってる通りのな……」
戸惑うルカの代わりに、ヴィクトリーがそう答えた。
エルフはそれを聞いて、目に涙を浮かべる。
「ああ、なんということでしょう……ミカエラ様……」
ぐしぐしと涙を拭きながら、エルフはそんなことを呟く。
「いったい、どういう事情なのだ?このルカが、何かやらかしたのか?」
「失礼、順を追ってお話しましょう……これはミカエラ様の遺言でもあるのです。」
「ゆ、遺言……?じゃあ、ミカエラって人はもう……」
ソニアがそう言うと、エルフは頷いた。
「話は、半月前に通ります……」
そして語り始めた……
要約すると、どうしても倒さなきゃならない奴が居るので里を抜けると言って出ていったのだ。
ついでに、もしもルカという少年が来たら自分は命を落としているとも言っていた。
「なんだと……?」
「ルカがここに来た場合、すでにミカエラは死んでいる……?いったい、どういう事なのだ?」
「そして、ミカエラ様は里を出ました……それから半月もの間、まるで音沙汰もなく……そして今日、ルカという少年がここに……ああ、そんな……」
なんとも予言めいた、不吉な言葉。
ミカエラが死んでいるというのは、本当なのか……
「しかし……事が事なだけに、素直に受け入れられません。私は、ミカエラ様の生存を信じます。また、ミカエラ様はこうもおっしゃいました。ルカという少年は自分の血縁なので、力を貸すようにと……」
「血縁……?」
「ルカが、ミカエラさんの親戚って言いてぇのか?」
ルカは心当たりの欠片も無かったようだが、なぜかルカの父ちゃんはそれを知っていた……
「そういうわけで、我々としても援助を惜しみません。どうぞ、これをお受け取り下さい。」
渡されたのは、そこそこ強力な防備具だった。
「ああ、サンキュー!」
「村で店を営んでいる者達にも、あなたに協力するよう言っておきましょう。彼女達にも生活がある以上、代金に便宜をはかる事は出来ませんが……」
「いえいえ、ありがとうございます!」
さて、問題はここからだ。
ミカエラに会えなかった以上、旅を続けるしかないのだが……
「イリアス大陸にあるタルタロスは、二つとも制覇した。残るタルタロスに行くには、北の大陸に向かわねばならん。」
「じゃあ、海越えをする必要があるのか……どうすんだ?」
「イリアスポートに行くのよ。」
「イリアスポート?」
この大陸の北には、セントラ大陸という大陸がある。
そこへ渡るには、イリアスポートという港で船に乗る必要があるそうだ。
なんでも、そこから北への定期船が出ているらしい。
「なるほど……」
「セントラ大陸に渡るのですか……存分にお気をつけ下さい。あの地では、大いなる争いが起きようとしておりますので。」
「四大国が戦争しているんですよね。イリアス神殿でも、そのお話は聞きました。」
ソニアの言葉に、エルフは首を振る。
「いいえ、その事ではありません。人間はご存知ないでしょうが、魔物の勢力も激動しているのです。」
「なんだと……?詳しい話を聞かせてもらおうか。」
アリスが、食いついてきた。
「現在、世界には三人の魔王が存在しているのです。これにより、魔物の勢力図は大きく塗り替えられる事となりました。」
「なんと!余が弱体化してる隙に、魔王の座を狙うドアホざ二人も!?」
「……いいえ、二人ではなく三人です。アリスフィーズ16世は、数に入っておりません。」
「なんだと!?余は退位扱いか!?」
「俺からも、詳しく聞かせてくれ。」
「はい……」
エルフの説明が始まった……
世界で激動する魔王三人……
まず一人が、アリスフィーズ15世……アリスの母ちゃんだ。
いきなりの情報には、アリスも驚いているようだった。
アリスによると、アリスの母ちゃんはもう死んでいるらしい。
だとしたら、偽物……?
しかし、魔王軍には15世からの古参も多い。
そんなやつまで、騙せるものだろうか。
そんなわけで、アリスの部下はみーんなアリスの母ちゃんに取られちまったそうだ。
次に、黒のアリスという奴だ。
アリスの話によると、黒のアリスというのはアリスフィーズ8世の異名だという。
そしてこの世界の伝説では、伝説の勇者ハインリヒに滅ぼされたとされているようだ。
その実力は、歴代魔王の中でも最高クラスだと噂されているほどだ。
黒のアリスとやらは、人に敵対する魔物を仲間に引き入れている。
その結果、攻撃的な凶悪妖魔が多く傘下にいるとか。
アリスフィーズ15世とはまだ戦ってねぇらしいけど、激突は時間の問題だ。
伝説の魔王と本人かどうかは分からねぇが、ただの詐欺師でも無さそうだ。
三人目は、なんとアリスフィーズ17世だそうだ。
もう完全に、アリスは死んだもの扱いだ。
アリスフィーズ17世とやらは、単独で行動しているらしい。
しかしその戦闘力は凄まじいものだった。
貴婦人の村って所で、領主のカサンドラをぶっ倒しちまったらしい。
それにより、17世は大いに名を上げた。
その直後にプランセクト村って所で、妖魔を全て撃退。
昆虫族と植物族を叩きのめして、その領域を定めたとか。
ちなみにその村にいる魔物は、二百匹を超えているらしい。
クィーンビーやプリエステスという女王級、その他の戦士達を単身で倒しちまったようだ。
次に、セントラ大陸北の小さな村……
ここは蜘蛛之皇女という奴が率いる、アラクネという蜘蛛モンスター達に占領されていた。
しかしそのアラクネ達も、17世によって壊滅。
村を追い出され、孤独の地という洞窟に追いやられちまったようだ。
ちなみにアラクネは、戦闘狂の猛者ばかりの種族のようだ。
全員を相手するのは、元のアリスでも苦戦すると言っていた。
それからも17世はあちこちで、強豪モンスターを倒していったようだ。
不思議な事に、17世は誰も殺しちゃいないらしい。
悪いやつではないんだろうな。
それから後、魔剣士グランべリアが討伐に向かった。
しかし、五時間もの激闘の果てにも決着はつかなかったようだ。
……一番恐ろしいのが、この一連の出来事がたった一日で行われたという事だ。
カサンドラ討伐から、グランべリアとの一騎打ちまで……
しかもグランべリアと引き分けた時に、「まだ、真の力を見せるわけにはいかない」と言ったそうだ。
単体の戦闘力ならば、恐らくは三人の中で一番最強だろう。
「相争う三人の魔王……15世、8世、17世……余の事は完全に忘れられた気がする……」
アリスは、そう言ってため息を吐いた。
「……」
俺はというと、震えていた。
恐怖と戦慄に……そして、歓喜と武者震いで。
「へ、へへへ……世界を揺るがす、三人の魔王か……はははは、ははははっ……!」
「……ヴィクトリー?」
「わくわくしてきた……俺、こんなわくわく初めてだぞ……!」
笑っていた。
強いやつと戦える喜びに……そして、強くなれる喜びに。
今はまだ無理かもしれない。
しかし、修行を積んで強くなってから、三人ともと戦ってみたい。
そんな欲求が、ヴィクトリーの心から飽和していたのだ。
「……ヴィクトリー。」
「あ、はいっ!?」
エルフの呼びかけに、ハッとした。
「あなたの耳にも入れたい事があります……皆さんも、聞いてください。」
エルフの話は、まだ続くらしい。
「どうした?まだ何か居るのか?」
「はい、先程ヴィクトリーを見て思い出したのですが……ある男の噂が魔物達の間では話題になっているのです。」
「男だって……?」
「なんで男なんかが、魔物達の話題になっているのだ?」
ルカとアリス、更にはソニアやその他まで首を傾げていた。
「だいたい、なんで俺を見て思い出したんだよ……」
「……その男が、『黒のヴィクトリー』と名乗ったからです。」
「!!!」
「なんっ……!!?」
「ヴィクっ……!!?」
黒のヴィクトリー。
当然、視線はヴィクトリーに殺到する。
「ヴィクトリー、心当たりは……」
「し、知らねぇ!俺は何も知らねぇぞ!」
ヴィクトリーはみんなにぶんぶんと首を振り、エルフに向いた。
「詳しく聞かせてくれ!」
「はい……彼が噂になったのはつい数週間前……ある魔物が羽も使わずに空を飛ぶ男を目撃しました。それから噂が広がったのです。」
何も使わずに空を飛ぶ男……舞空術か何かか?
「しばらくして、興味を持った鳥系モンスターが彼に接触。名を尋ねると、名乗った名前が『黒のヴィクトリー』だったのです。」
「……どんな格好だ?」
「その名の通り、黒い胴着に身を包んだ男です。そしてその左耳には、イヤリングが光っていたそうです。」
イヤリング……黒い胴着……
「……そのイヤリング、緑色だったか?」
「いいえ、かわいいウサギのイヤリングみたいでしたが……」
「あ、そう……なんでそいつは各地を飛び回っていたんだ?」
「はい……鳥系モンスターにそう聞かれた際に、黒のヴィクトリーはこう答えたそうです。『アリスフィーズ陛下と、あの方に尽くすために有志を探している。』……と。」
「アリスフィーズ陛下……?」
「アリス、心当たりは?」
ソニアとルカは、アリスに向く。
しかしアリスは、首を横に振った。
「いや、分からん……しかし、魔王の名はアリスフィーズで統一されている。もしかしたら、例の三人の中の一人の差金かもな……余はそれより、『あの方』という言葉が気になるのだが……」
「鳥系モンスターによると、『あなた達の知らないお方』と答えたみたいですね……」
エルフはそう言ってから、説明を続けた。
「例の17世騒動の翌日……彼は動き始めました。あの17世が倒した妖魔達の所を回っていたようです。」
「男なのに、あんな凶悪妖魔達の巣窟に……?搾り殺されてしまうぞ……」
「……黒のヴィクトリーはプランセクト村()()比較的大人しかったようです……」
「プランセクト村では……?いったい、黒のヴィクトリーとやらは何をしていたのだ?」
「女王級の妖魔相手に、軽い手合わせを願ったようですね。」
「はぇ〜……まんま、俺みてぇな奴だな……」
「噂の中心になっているのは、その異様な戦闘風景です。戦闘が始まると、序盤はやられっぱなし……しかし戦闘中盤になってから徐々に戦闘力が飛躍、決着はいつも一方的に相手を叩きのめしていました。」
「確かに異様だな……いや、手加減でもしているのか……?」
「いいえ、魔物達によると黒のヴィクトリーは終始必死で戦っていたようです……戦闘力を高めながら。」
「戦いの中で強くなるのか……?」
「まるでサイヤ人だな……」
いや……もしかしたら、本当にサイヤ人なのかもしれない。
しかし、顔も分からない以上は真偽は不明だ。
「……問題は、黒のヴィクトリーが凶悪妖魔から命を狙われた時です。その凶悪な妖魔を、殺す一歩手前まで追い込む程の重症を負わせているのです。」
「な、なんと……人間の男の筈だろう!?それなのに、アラクネ族や昆虫族を殺す一歩手前まで……!?」
「昆虫族や植物族の負傷者は居ないようです。何せ、あそこのモンスターは比較的大人しいので自分から喧嘩をかける者など滅多に居ないでしょう……黒のヴィクトリーは、歯向かう者にしか容赦しなかったようなので……」
「そうか……」
結局、黒のヴィクトリーの目的が分からずじまいだ。
でも俺の予想だと、黒のヴィクトリーは強くなるために世界を回っている……
そんな感じがしていた。
「そういうわけで、セントラ大陸ではお気をつけ下さい。三人の魔王の間での大きな騒乱と、黒のヴィクトリーと名乗る謎の戦士が徘徊しているので……」
「現魔王として、今の状況を看過はできんな。セントラ大陸て、もう一つ用事が出来たようだ。」
「俺もセントラ大陸に用事が出来たみてぇだな……」
「なんだか、目的ばっかり増えていくね。まだ何も解決してないのに……」
ソニアがそう言ってため息を吐くと、アリスはキッとした目になる。
そして、ルカの方を見た。
「だが、実際は全てが一本の糸に繋がっている気がするのだ。大異変、タルタロス、貴様の父、三人の魔王、謎の戦士……全てな。だから、ここで歩みを止めるわけにはいかん。大陸横断船に乗り、セントラ大陸に乗り込むぞ!」
「ああ!わくわくしてきたぞ!」
そういうわけで、次の目的地はイリアスポートだ。
イリアスベルクから北上し、すぐそこにあるという。
「こうなったら、乗りかかった船よ!あたしも、ガンガン行っちゃうから!」
「それじゃあ、イリアスポート目指して出発だ!」
戦士達は目標を固め、立ち上がった。
「私も、ご武運をお祈りしております。もしミカエラ様の事で何か分かれば、どうかお伝えください。」
エルフもそう言って、戦士達に頭を下げる。
戦士達は頷いて、ミカエラの家を出た。
新たな問題、動き続ける世界……
戦士達に降りかかる、数々の目的。
この旅の果てにあるものとは……?
そして、黒のヴィクトリーの正体とは……?
戦士達は疑問を胸に押し込み、前を見る。
次の目的地は、イリアスポートだ。

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問題発生、洞窟へ

セントラ大陸の情勢が明らかになり、次の目的地も定まった戦士達。
イリアスベルクから北上し、野営していた。
「……」
ルカたちは、もう自分の修行をしているみたいだ。
一方、パチパチと燃える魔物避けの起こし火の前で、ヴィクトリーはあぐらをかきながら目を瞑っていた。
「……」
なんで、ポケット魔王城があるのにわざわざ野営してんだろう……
そんな事を思いながら。
「……」
アリスとルカの会話によると、アリスの母ちゃんはどうも死んだんじゃなくて失踪したらしい。
いきなり深夜に魔王城を抜け、最後に目撃されたのは魔王城の大陸のタルタロス……
そこで姿を消し、今になってアリスと入れ替わったという事だ。
多分こいつは偽物なんかじゃねぇ。アリスフィーズ15世本人と見て間違いなさそうだ。
17世とグランべリアの激突……も、15世の指示だろう。
そんな事は比較的俺にとってはどうでも良くて……問題は、『黒のヴィクトリー』の事だ。
いったい、何者なんだ。
ただ同名なだけなのか、それとも俺の名をパクった誰かなのか。
でも、俺はまだこの世界に来てから間もない。
そこまで有名にもなってねぇ筈だ。
なのに、もう俺の偽物(かも知れない奴)が現れるとはな。
本物が大して活躍してねぇのに、偽物が出てくんじゃねぇよ……
それに、敵の凶悪化現象やトワとミラ……
間違いなく、こいつらが関わっているだろう。
なんなら、多分ドミグラも関わってると思う。
俺の世界の敵達が、まさかこんな世界にまで現れるとは……
この世界はこの世界で、強敵ばかりだし……
「……よし!」
ヴィクトリーは立ち上がり、首を鳴らす。
そして、一人で修行に明け暮れたのだった……

夜が明け、戦士達はまた北上する。
そして、イリアスポートに到着したのだった。
「ここがイリアス大陸最大の港町、イリアスポート!……の割には、ずいぶん寂れてない?店も少ないし、行き交う人にも活気がないし……」
ソニアはそんな事を言いながら、町を見回した。
「なんかあったんかな……?」
戦士達は一旦解散し、情報収集にかかった……

今現在、このイリアスポートには悩みの種がある。
それは、ここの船を沈めるほど凄まじい嵐の事だ。
しかもそれは、決まって船が出る時に限って発生するという。
目撃者によると、強力なサキュバスが嵐を巻き起こしている所を見たと言う。
アリスはそれを聞いて、『アルマエルマ』という淫魔の名前を出してきた。
魔王軍四天王の一人で、風を操るクィーンサキュバスだ。
四天王の一人って事は、グランべリアと同格だろう。
そんな訳でセントラ大陸との貿易も出来ないので、こんなザマだという訳だ。
「……完全に行き詰まったな……」
ヴィクトリーがそう言って、首を傾げた時だった。
「……方法はありますよ。」
「むっ、貴様は……!」
「おや、奇遇ですね……」
ネロだった。
「おめぇ、相変わらず怪しいな……それで、今度はなんだ?」
「この町から西の方角に、洞窟があります。そこは、大海賊セレーネが数々の財宝を隠した場所なのです。その財宝の中に、『海神の鈴』というものがあります。どれだけ海が荒れても船が沈まない魔法具なのだとか。」
「じゃあ、それがあれば……」
ルカがそう言いかけて、ネロは頷いた。
「ええ、セントラ大陸に船で渡れるでしょう。……そういう事で、私は急いでいますので。」
「あっ、ちょっと待って……」
さっさと去ろうとするネロを、ソニアが呼び止めた。
「何でしょうか?」
「ハピネス村で、世界樹の実をくれて感謝します。あれ、とっても高価なものだったんですよね……?」
「いえ、大して重要なものでもありません。人間とハーピーの信頼関係に比べれば……それでは、失礼します。」
ネロはソニアに頭を下げ、去っていった……
「海神の鈴か、確かに有益な情報ではあったが……奴の目的は、一体何なのだ?」
「理由は分からないけど、僕達を助けてくれるのは確かだよ。海神の鈴は、西の洞窟にあるって言ってたよね……」
「行ってみるしかねぇみてぇだな……」
ヴィクトリーはそう言いながら、帯を締める。
「意図の読めん奴の言いなりになるのはシャクだが……他に手立てがない以上、仕方あるまい。」
「それじゃあ、秘宝の洞窟に行こう!」
また激しい戦いになりそうなので、準備を整える必要がありそうだ……
「船が止まっているなんて……いったい、どうすればいいのでしょう。」
聞き覚えのある声が、不意に耳に飛び込んできた。
「……?」
見ると、そこに居たのはイリアス様だった。
それとスライム娘に、新たに犬娘まで仲間にしている。
「な、何を見ているのです!?」
イリアス様はこっちに気付き、びっくりした表情を向けた。
「冒険って楽しいね〜!」
「わんわん……犬かきじゃ無理だよね……」
スライム娘と犬娘も、なんだかたのしそうだ。
「ひゃ〜……緊張感のねぇパーティ……」
「ヴィクトリー、行くよ。」
ルカはヴィクトリーを引っ張り、戦士達は町の外へ出る。
目的地は、西にある秘宝の洞窟だ。

そして、秘宝の洞窟。
薄暗く、魔物の気配も多そうだ。
「ここが、秘宝の洞窟か……この中に、海神の鈴があるんだよね?」
「他にもいいアイテムがあるといいな。」
いつも通り、ルカとヴィクトリーが先頭に立つ。
アリスはその背後で、鼻を鳴らしていた。
「む……やけに狐の匂いがするな。」
「狐の匂いって……」
「どんな匂いだ?」
「あぶらあげの匂い……」
「……」
アリスの表情が一変し、真剣な目になる。
「ともかく、たまもまで我々を妨害しようというのか……?おのれきつねめ、何を企んでいる……」
「たまもって……?」
「誰だそりゃあ?」
「魔王軍四天王ほ一人、九尾の狐だ。今の戦力で対峙したくはないが……行くしかないな。」
戦士達は、洞窟を進んだ。
「……お。」
ヴィクトリーが早速、何かに目をつけたようだ。
目線の先にあるのは、宝箱。
「おお、早速宝箱があるね。」
「やはり秘宝の洞窟とだけあって、ころころと転がっているものだな。」
「でも、大丈夫ですかね……?」
そう言って出てきたのは、プロメスティンだった。
「もしかしたら、ミミック娘かも知れません。開けるならば、ちゃんと警戒してから」
「ヴィクトリー、開けちゃって!」
「おっしゃー!」
プロメスティンの注意喚起を無視して、宝箱を開け放つヴィクトリー。
すると宝箱が口を開けて、ヴィクトリーに襲いかかってきた!
「!!!」
刹那、ヴィクトリーの頭に頭痛が走り、ヴィジョンが浮かぶ。
舞台は、ここと同じだ。
ここと同じ所で、宝箱を開け放ち、それが襲いかかってくる。
そんな映像がスローで、なおかつ瞬速で再生され、目の前の光景と一体化して……
「……おらぁあっ!!」
襲いかかってきた宝箱を、蹴り飛ばした!
「!!?」
宝箱から、黒い服を着た女の上半身が出てくる。
「な、なんだこいつ……!?」
「な、何よあなた……!?」
ミミック娘もヴィクトリーも、動揺していた。
「ほら、言わんこっちゃない……でも、どうやらカウンターが決まったようですね。」
「だが、今の奴の反応速度はなんだ……!?率先したミミック娘が、初撃をカウンターされるなど……!!」
ルカは何かに気付き、剣を抜いた。
そして、周囲を見回す。
「みんな……どうやら、ここの魔物が戦いの匂いに引き付けられたみたいだよ。」
ルカ達は、いつの間にかモンスターに囲まれていた!
「よーし、やっちゃうぞ~!」
「へ、平気ですかね……」
「うふふ……」
銀狐二尾、かむろ二尾、クモ娘といったモンスター達だ。
「やるしかないようですね。」
「ああ……!」
「ふん、余のレイピアでどつき回してくれるわ!」
「きゅきゅー!」
「いっくわよ~!」
戦士達はは気を解放し、魔物の群れと激突した!
ヴィクトリーはというと……
「ぐっ……!!」
「な、なんて怪力なの……!この私と張り合うなんて……!」
ミミック娘と、つかみ合っていた、
「ふんぎぎぎ……!!」
「ぐぅううっ!!」
ミミック娘はヴィクトリーに頭突きした!
「うわぁあっ!」
ぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられるヴィクトリー。
「ばぁあっ!!」
ミミック娘は超スピードで飛びついてきて、ヴィクトリーに喰らいかかった!
「わぁあっ!?」
ヴィクトリーは、跳び避けて天井に掴まる。
ミミック娘が食らいついた壁が、その牙によって粉砕された!
「ひ、ひえぇ……!!なんちゅうやつだ……!!」
そう言いながらミミック娘から離れた位置に着地し、向かい直す。
「命を刈り取る死神の鎌よ……その魂を冥府に誘え……」
ミミック娘は何かを詠唱しながら、ヴィクトリーに手を向けた。
「デス……」
そして、死の魔力をヴィクトリーに放った!
「っ!!」
死の魔力は、ヴィクトリーに直撃する。
しかし、直後に霧散して、消えてしまった……
「な、なに……!?直撃のはず……!」
「……何だか、めちゃくちゃヤバい魔法を食らったみてぇだけど、どうにかなったみてぇだな……」
「く、くっ!!死ねっ!死ねっ!!」
ミミック娘はそう言いながら、ヴィクトリーにデスを連発した!
しかし、ヴィクトリーにはまるで効果がないようだ……
「無駄だ……その技は俺には通用しねぇみてぇだし……何より、俺はもう死ぬ事を恐れねぇ。」
「なっ……!?まるで、一度死んだかのような物言い……」
「ああ。」
ヴィクトリーの正拳突きが、ミミック娘の腹に埋まった!
「がはっ……!!?」
「事情は……話すと長くなるから却下だ!!」
そして、揺らぐミミック娘の顎にアッパーカットした!
「あがぁあっ!?」
「はぁあっ!!」
両手にエネルギーを溜め、ミミック娘にエネルギー弾を連射する。
爆発が連続し、辺りが爆煙に包まれた……
「……」
「……」
ミミック娘は、宝箱に閉じこもっていた。
「ちっ……!」
「ばぁあっ!!」
再び超スピードで、食らいついてくるミミック娘。
「でりゃあっ!!」
しかしヴィクトリーはハイキックで、ミミック娘の顎を打ち上げた!
「がっ……!?」
「でりゃああっ!!」
そして、跳び後ろ廻し蹴りでミミック娘を蹴り飛ばした!
「きゃあっ!」
ミミック娘は何とか体勢を整え、着地する。
そして宝箱に閉じこもろうとしたが、寸前にヴィクトリーが箱を掴み、止めた。
「え……!?」
「これで終わるかてめぇ……!!」
ヴィクトリーは、ミミック娘の宝箱を無理矢理開け放った!
「なっ……!!?」
「だぁあっ!!」
そして頭突きで、ミミック娘の顔面を打つ。
「かっ……!!」
「波ぁあっ!!」
よろめいたミミック娘に、かめはめ波を放った!
「っ!!!」
かめはめ波は直撃し、ミミック娘を爆破する。
「あぅう……そ、そんな……」
ミミック娘は倒れ、気絶した……
「よっしゃー!」
ヴィクトリーは勝ち名乗り、拳を掲げる。
「な、なんて奴らなの……!」
「に、逃げるよかむろっ!」
「わわ、先輩~!待ってください~!」
モンスター達の群れも、戦士達の猛攻に耐えかねて、後退していった。
「ふぅ……」
「私達、確実に強くなっていますね。」
「これからもガンガン強くなるわよ!」
「きゅ!」
戦士達は、臨戦態勢を解く。
「無事だったか?」
「お前こそ。」
ルカとヴィクトリーがまた先頭になり、秘宝の洞窟を進むのだった。
時々奇襲してくるモンスター達を撃退しながら、洞窟を探索する。
秘宝の洞窟という名前だけあり、宝箱が多い所だ。
「……」
探索しながら、ヴィクトリーは何かに気づく。
「ヴィクトリー、どうしたんだ?」
「奥の方から、すげぇ気を感じる……おっそろしくつえぇ何かがいるみてぇだぞ……」
ヴィクトリーの顔は、真剣だった。
強敵を目の前にすると、笑顔を浮かべていた筈のヴィクトリーが、真剣な顔でそう言っているのだ。
「な、なんだって……!?」
「今の俺達じゃ確実に勝てねぇレベルの、すげぇ奴がいるみてぇだぜ……どうする?」
「う、うーん……で、でも……海神の鈴を取りに行かない限りは、旅を続ける事は出来ない。」
ルカはそう言ってから、唾を飲む。
「行くしかないんだ。行こう。」
そう言って手袋をきゅっと引っ張り、進んだ。
「その答えを待ってたぜ。」
ヴィクトリーも指をボキボキ鳴らしながら、ルカと一緒に進む。
戦士達は覚悟を決めて、奥へと踏み込んだのだった……

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17世、乱入

セントラ大陸に渡るために、ナタリアポートにやって来た戦士達。
しかし、謎の大嵐が船を邪魔するという妙な問題が発生していた。
そこで戦士達は、海神の鈴を求めて秘宝の洞窟へと向かった。
「やはり、洞窟内はきつねに占拠されているな。しかもこの、強大な妖気……たまも本人も来ているか……」
「撤退を前提に考えた方が良さそうですね。狐の体毛サンプルは、もう十分集まりましたし。」
プロメスティンは狐の尻尾の毛をしまって、眼鏡を上げた。
「さっきから、やっつけた狐の尻尾の毛むしってたけど……あれ、狐イジメじゃなかったんだね。」
「妖狐の尻尾の毛なんて、何に使うんだ……?」
そんな会話をしながら洞窟を進み、再奥……
宝物庫らしき扉の前に、いかにもそれらしい妖狐がいた。
上半身は女だが、下半身が狐で、尻尾は七本ある。
「……おっす。」
ヴィクトリーはまず、その妖狐に頭を下げた。
「俺はヴィクトリー、おめぇは?」
「私はたまもの腹心、七尾と申します。ここから先は宝物庫、ゆえに通すことはできません。引き返すなら良し、それでも進むというのなら……」
「その先は、言わんでいい。」
アリスが七尾の言葉を遮り、そう言って前に出た。
「我等の邪魔をするなら、痛い目に合うぞ。」
七尾はそのアリスを見て、目をぱちくりさせていた。
「まさか、魔王様……?いや、これは何かのまやかし……?」
しかし、すぐにその目を鋭くする。
「いかに魔王様に似ていようと、容赦はしませんよ。たまも様の命により、ここは通しません!」
そして、気を解放した!
凄まじい気の爆発で、ルカ達の顔にビシビシと小石が当たる。
「なんて強そうな魔物なんだ……でも、ここで逃げたりはしない!」
「ったりめぇだ……いくぞっ!!」
戦士達も気を解放し、七尾と対峙した。
「だぁああーっ!!」
まずヴィクトリーが七尾に突進し、顔面に殴り掛かる。
しかし七尾はその拳を受け止め、ヴィクトリーを地面に叩き伏せた!
「ぐぁあっ!」
「せいっ!!」
そして、ルカ達の方へ蹴り飛ばす。
「くっ!」
ぶっ飛ぶヴィクトリーをルカが受け止め、アリスやソニアが七尾に突っかかった。
「はぁああっ!!」
「うぉおおっ!!」
「ふん……!!」
七尾は七本の尻尾で二人の猛攻をさばき、高速移動で消える。
「なにっ!?」
「は、速……!!」
次の瞬間、七尾は二人の背後に現れ、その背中に肘を落とした!
「がはっ……!!」
「ぐぁあっ……!!」
「ふんっ!!」
二人の頭を掴み、おもむろに壁へと投げ飛ばす。
そして、ルカ達の方へ向こうとした。
「はぁあっ……!!」
次の瞬間、七尾の体が発火した!
プロメスティンの魔力が、燃焼反応を起こしたのだ。
「ぐっ!」
炎を振り払い、プロメスティンの方へ向く七尾。
しかしそこに居たのは、プロメスティンだけでは無かった。
「きゅ……!!」
ヌルコが、デュエルカノンを七尾に向けていた。
「な……マキナ……!!」
「きゅーっ!!」
デュエルカノンが、七尾に撃ち放たれた!
凄まじい爆発と、爆煙が舞う。
「……ちぃいっ!!」
しかし、爆煙の中から七尾が飛び出した!
どうやら、大したダメージにはならなかったようだ。
「なっ!?」
「きゅっ!?」
七尾はプロメスティンとヌルコにダブルラリアットして、壁に叩きつけた!
「うぐぅっ……!!」
「きゅうぅ……!!」
「今度こそ……!!」
七尾は、ルカの方に振り向く。
「僕の新技……血裂雷鳴突き!!」
ルカは雷鳴のように踏み込み、鋭い突きを繰り出した!
その突きが命中した瞬間、七尾の体に電撃が炸裂する。
「ぐっ……!!」
「波ーっ!!」
追い打ちに、ヴィクトリーがかめはめ波を放った!
「たぁあっ!!」
しかし七尾はそれを弾き飛ばしてから、ルカとヴィクトリーを尻尾でぶっ飛ばした!
「ぐぁあっ!!」
「うわぁあっ!!」
「はぁあ……!!」
七尾は走り、七つの尾を揺らめかせる。
そして尻尾を乱舞させ、二人を連打した!
「ぎゃああああ!!」
「ぐぁああああ!!」
連打するだけ連打したら、七尾はサッと攻撃の手を止めた。
「ぐ……くそったれ……!!」
「なんて強さだ……」
ヴィクトリーとルカは、ボロボロのまんま立ち上がった。
「しかし、ここで退くわけには……」
アリスもそう言いながら、立ち上がろうとする。
ヴィクトリーは息を切らしながら、七尾を見る……
「……っ!?」
その目が急に妙な目に変わってから、キッと背後を見た。
「な、なんだ……?ヴィクトリー……っ!?」
ルカも、ヴィクトリーにつられて視線を背後に向ける。
そこに居たのは……
「……いつまで、そんな奴に手間取ってるの?」
青い髪をした、謎の魔物少女だった。
「……!!」
七尾はそいつを見て、驚愕の表情を浮かべた。
「その風貌、まさか……!あなたが例の、アリスフィーズ17世!?」
「なに!?」
アリスの視線も、謎の少女に向いた。
「貴様がアリスフィーズ17世だと!?いったい、ここに何を……」
「そっちこそ、何やってるのよぉ。七尾は、あんた達が倒すはずでしょ……?なんか、どう見ても返り討ちコースじゃない。聞いてた話と違うんだけど。」
「な、何言ってんだおめぇ……」
「おのれ、訳の分からない事を……!アリスフィーズ17世、その命はもらいます!」
七尾はアリスフィーズ17世に向いて、気を全開放した!
「うわっ……!?」
「な、なんて気だ……!!」
アリスフィーズ17世はその七尾を見て、クスッと笑う。
そして、その手に剣を持った。
「だから……あたしが片付けちゃうね!」
アリスフィーズ17世の気が、爆発した!
七尾より遥かに馬鹿でかい気が爆発し、周囲が熱気と突風が波動する。
「な……な……!!」
「紅蓮の炎を、この刃に託して……乱刃・気炎万丈!!」
アリスフィーズ17世は剣に紅蓮の炎を纏って、姿を消した。
「な……はやい……!?」
「みんな離れろーーーっ!!!」
ヴィクトリーの指示で、その場の全員がハッとする。
次の瞬間、周囲と七尾に無数の紅蓮の斬撃が走った!
「くっ!!」
斬撃は上手いこと仲間達を避けている。
しかし七尾は紅蓮の斬撃に切り刻まれ、大ダメージを負った。
「ぐっ、なんという力……!!あぁぁぁっ……!!」
七尾は戦意を失い、倒れ伏した……
「うぅ……聞きしに勝る力……」
「な、なんちゅう奴だ……!!俺達じゃかなわなかった七尾を、あんな一瞬で……!!」
「す、すごい……なんて強さなんだ……」
「今の技は、グランべリアの……!?いったい、どういう事だ……?」
七尾含め、その場の戦士達がアリスフィーズ17世に注目していた。
17世は、宝物庫の扉に目を向けた。
「これで、七尾は倒したわよ。ほぉら……そろそろ出てくる時間よね?」
そう言うと、宝物庫の扉が開いた。
そこから出てきたのは、九尾の妖狐だった。
「……」
アリスはそいつを睨み、目を鋭くする。
「たまも……貴様、何のつもりだ?」
「……すまんのう、お主達。ウチがさきさき進んでしまったばっかりに、そんな姿にされてしまったか。」
「そんな姿とは……余のこの姿か?いったいどういう意味だ?」
「無駄よ無駄。」
たまもに話しかけるアリスに、17世はそう言う。
「そいつはここの誰とも会話してないから。単に再生されているだけの虚像なのよ。」
「少しばかり、ウチの魔力を分け与えてやろう。……七尾……お主の魔力を満たすには、少しばかり時間が掛かる。悪いが、後にさせてもらうぞ。」
全く別方向を見ながら、たまもは七尾に言う。
「何をおっしゃいます、たまも様?私は、封印など受けてはおりませんが……」
「ふむ、お主達が勇者一行……勇者ルカと武闘家ヴィクトリーか……七尾を倒すとは結構な腕前じゃのう。」
「え?僕達が倒したわけじゃ……」
「いや、無駄みてぇだ……こいつ、本当に誰とも会話してねぇ。」
ヴィクトリーは、そう言いながら頭を押さえる。
「ヴィクトリー、また頭痛か……?」
「……?」
17世は、不思議な目でヴィクトリーを見た。
「……」
ヴィクトリーはと言うと、キリキリと痛む頭を押さえていた。
突発的にヴィジョンと共にやって来るあの頭痛とは違う、じわじわとした痛みが頭の中で回っているのだ。
「おそらく、このたまもはここじゃねぇ何処かのたまもだ……何を言ってるか俺にも分かんねぇけど、そんな感じがするんだ……」
「そう、正解。このたまもは、別の並行世界のコピー。その並行世界での行動を忠実になぞっているに過ぎないの。こんな事が出来るのは……」
17世がそう言いかけた途端、たまもはぴょんと跳ぶ。
そして、パッと違う姿になった。
「ばばーん!」
白兎だった。
「あれー、バレちゃった?同じシチュからコピったから、途中までは上手くいったのに。」
「まさか……ウサギだと!?」
「おめぇ、本当に何が目的だ……?」
「馬鹿な、それでは……私をここに連れてきたたまも様は、偽物!?」
どうやら、七尾も騙されていたようだ。
「偽物じゃないわよ。一応は。妖気の質もその力も、この世界のたまもと全く変わりない。あれは並行世界のたまも。それをこの世界にコピーしたのよ。」
「……」
なぜだか知らないが、ジャネンバが悟空のかめはめ波を悟空のかめはめ波で押し返すシーンを思い出した。
あれはコピーのかめはめ波の方が強かったが、原理的には同じものなのか……?
「七尾を連れ、海神の鈴がルカ達の手に渡るのを防ぐ……酷似した状況からのコピーだから、上手くはいってたわね。つまりは別世界の行動を再現してるだけの虚像だったわけ。白兎は、それをコピーする力を持ってるのよ。」
「まんまジャネンバじゃねぇか……」
「そうか、君もアリスなんだよね。」
次の瞬間、白兎のドスが効いた声が響いた。
「アリスがいっぱい増えちゃって、困ったもんだよ……」
「いったい、なぜたまもの虚像を作り出した!?貴様は、何を企んでおるのだ!」
「歴史を、本来あるべき形に少しでも近付けないとね。誰かさん達が、すぐメチャクチャにしちゃうんだから……」
「歴史……だと?」
白兎はアリスの方を見て、にぱっと笑った。
「……言ったよね?ボクは導く役目なんだよ。アリスを正しい歴史へと……ね。」
次に、ギロリと17世の方を向いた。
「ふん……」
「だから君はこの世界にいらないよ、17番目のアリス。この場で消去しちゃおうかな?」
「調整役のあんたが、自分で手を下す気?白兎は、あくまで導く役じゃなかったの……?」
「キミが消えても、パラドックスは起き得ない。そういうわけでぇ……時間よ、止まれ!」
次の瞬間には、白兎が消えていた。
「ウサギが……消えた?」
「いったい、何が……」
ソニアも七尾も、目をぱちくりさせている。
17世は、頭を抱えていた。
「うわぁ、恥ずかしいセリフ……ひくわ~。」
「……」
どうやら、17世には何が起きたか理解出来たらしい。
そして、こちらに向いた。
「……あっ、こっちの話ね。」
「……君は、いったい……」
「ねぇ、ルカ……」
17世はルカの所に来て、上目遣いになった。
「あたしと、デートしよっ!」
「……はぁ?」
「はぁ!?」
「はぁ~!?」
アリスとソニアも、素っ頓狂な声を上げて17世を見る。
まぁ、そりゃあそうだ。
いきなり忍者みたいに現れて、凄まじい実力を見せつけた上に、これだ。
困惑するのも無理はない。
「ちょ、ちょっと待ってよ!君は、アリスフィーズ17世だよね……?」
「アリスフィーズ17世なんて、堅苦しい名前はイヤ!本名のネリスって呼んでよ~!」
「おい、ネリスとやら……!」
アリスがそう言いながら出てくるが、ネリスはアリスを睨んだ。
「あんたは、呼ぶな!あんたにルカは渡さないから!」
「な、なんだと……!?」
その視線は呆気にとられるアリスから、困惑しているルカに向いた。
「ねぇルカ、どこに遊びに行きたい?ルカのために、この世界のスポット色々調べたんだよ。サバサのオアシスでデートとか、素敵だよね。その後、グランドールで演劇でも見る?ルカなら、グランドノアのコロシアムの方が好きかな?魔導学園も、見学自由なんだって。それとも……いきなりえっちしちゃう?ルカがしたいなら……あたしはいいよ。」
「ええい、なんなのだ貴様……」
いきり立つアリスを静止して、ヴィクトリーが出る。
「おめぇ、いったい何者なんだ……なんで魔王の17世なんか名乗ってる?」
「あっ、年増好きのヴィクトリーだぁ!ねぇねぇ、たまには若い子はどう?ルカとあたしとヴィクトリーで3P、しちゃう?」
これには流石のヴィクトリーも、苦笑いを見せた。
「俺まで誘惑すんなよ……別に俺、ロリコンでもねぇし……」
「ヴィクトリーの質問に答えんか馬鹿者!!」
アリスがそう声を上げると、ネリスはため息を吐いた。
「なんだか、外野がうるさいなぁ……デートは、またの機会にしようか。それじゃあね、ルカ!次こそ、絶対にデートするんだよ!」
ネリスはそう言って額に指を置き、姿を消した。
嵐のように現れた謎の戦士は、嵐のように消えていったのだった……

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海神の鈴

秘宝の洞窟にて、戦士達は七尾と戦う。
その凄まじいパワーに圧倒される戦士達……
しかし、そこにアリスフィーズ17世が乱入した。
七尾の圧倒的な戦闘力を、更に圧倒的な戦闘力で覆した。
そして色々言うだけ言って、消えていった。
「なんなのだ、あいつは……あれが、アリスフィーズ17世?」
アリスは、困惑が抜けないようだった。
「なんだか、凄く親しげだったけど……知り合いって事はないよね……」
ソニアはそう言いながら、ルカを睨みつけた。
「初対面だよ!」
「その割には、すごく懐いていたみたいだけど……」
「ひゃ~……」
ソニアの目の光は消えて、その瞳にはルカをギラギラと映している。
その横で、ヴィクトリー達は腕を組んでいた。
「しかし、あの実力は並外れたものだった……いったい何者なのだ……」
「まさか、本当に17世だったりしてな……それに……」
「ウサギの事か……確かに、それも気になる。奴は、歴史の歪みを修整していたということか……?」
「ともかく、宝物庫は目の前なんだ。目的のアイテムを手に入れようよ。」
「そうだな、ここで時間を潰していても始まらん。さっさと目的を済ませるとしよう。」
そう言いながら、ルカとアリスは宝物庫へと入っていった。
「並行世界……パラドックス……そして、歴史の修正……これらの破片を繋ぎ合わせれば……」
「……きゅ?」
ヌルコは、ブツブツと呟くプロメスティンの顔を覗き込むように見る。
「……失礼、少し考え事をしていただけですよ。」
プロメスティンはそう言いながら笑い、ヌルコの頭を撫でる。
そして、ヌルコと一緒に宝物庫に入った。
「そう言えば、おめぇはどうするんだ?」
ヴィクトリーが、七尾に声をかける。
「ここで修行を積みます。この私が本物のたまも様を見抜けなかったのは、私が未熟であったという事です。このまま、たまも様には会わす顔がありません……」
「そっか……じゃあさ、今度俺がもっと強くなったら、また手合わせしてくんねぇか?」
七尾は、意外そうな目でヴィクトリーを見た。
「……人間族から、そのような発言が出るとは思いませんでした……いいでしょう。何時でも待っていますよ。」
「ああ!今度はぜってぇ負けねぇからな!」
ヴィクトリーは笑って、七尾に親指を立てる。
七尾も微笑んで、ヴィクトリーの背中に手を振った。

「すげぇ……」
宝物庫には、宝がたくさんあった。
主に水の力を持った武器や防具があり、どれも強力そうだ。
そして、その中には……
「……これか!」
古臭いが、不思議な力を感じる鈴があった。
ヴィクトリーはそれを取って、じっと見る。
「これが、目的の品だな。この道具があれば、嵐でも船は沈まんはずだ。」
「ああ……」
そして、その鈴をルカに投げた。
「……って、管理は僕かよ!」
ルカはそう言いながら、道具袋に海神の鈴をしまった。
そして、一応使えそうなものだけを回収した。
「こんなものか?」
「ああ、出ようぜ。」
ヴィクトリーとルカは、来た道をそのまんま引き返そうとする。
「待て二人共。」
アリスは二人に声をかけた。
「ここに穴抜けのハシゴがある。これで戻るぞ。」
そう言って、ハシゴを伝って脱出していった。
「ああ、そうするか……」
「親切な世界だな……」
二人やその他の戦士達もハシゴを伝い、脱出した……

戦士達は、再びナタリアポートに到着した。
「僕、イリアス大陸から出るのは初めてなんだよね。」
不意に、ルカはそんな事を言った。
「そうなんか?」
「うん。お母さんと遠出する時は、いつもイリアスベルク止まりだったからね。」
「私もセントラ大陸なんて初めてよ。」
入ってきたのは、ソニアだった。
その横に、アリスとプロメスティンも居る。
「って事は、ここに居る皆が大陸越えは初めてという事か……」
「私はそもそも、下界に居ること自体があんまり無かったので……船からの景色、そして新大陸への興味が止まりません。」
「きゅ!」
ヌルコも、わくわくしているようだ。
「セントラ大陸は、ここの魔物より強力な魔物が居る……準備は出来てるか?」
「ああ、もちろんだ!」
「ここら辺の魔物よりつえぇ魔物か……俺も、わくわくしてきたぞ……!」
そんな話をしながら歩いていたら、港が見えてきた。
「……そうか、セントラ大陸に行く前にこれがあったか……」
「ああ……だけど、今の俺達なら大丈夫だと思う。」
嵐を巻き起こす、謎の淫魔……
アリス曰く、アルマエルマという奴の仕業らしい。
そのアルマエルマも、四天王と同格だというから困ったものだ。
大きな期待と多少の不安を胸に、戦士達は船乗りに声をかけた。
「おっす!」
「あ~……旅人さんか。街で聞いてるだろうけど、セントラ大陸行きの船は出てないぜ。」
「あの……」
ルカは海神の鈴を出して、船乗りに見せた。
「海神の鈴っていう道具を持ってるんだけど……」
「海神の鈴?そりゃ、幻の貴重アイテムだぜ?こんなボロくさい鈴が……」
そこで、船乗りは何かを感じ取ったようだ。
海神の鈴からの、不思議なエネルギー……
船乗りは、唾を飲み込んだ。
「間違いねぇ、こりゃ本物だ……よっしゃ、これで船が出せるぜ!」
「よっしゃ!それで、船代は?」
「そんなもんいらねぇよ!貨物がしこたまあるから、船が出せるだけでも万々歳だぜ!」
どうやら、タダで載せてくれるらしい。
「よっしゃー!」
「じゃあ、今すぐにお願いします!」
「よし来た、それじゃあ乗ってくれ!さっそく出航だぜ!」
船乗りはびゅーんと走り、水を得た魚のように出航の準備をする。
「いよいよ、イリアス大陸を後にする時が来たか!さぁ、新たな大陸に旅立つぞ!」
アリスの言葉と共に、戦士達は船へと乗り込んだ。

船の甲板は広く、気兼ねなく修行できそうなスペースがある。
今はまだ嵐の気配は無く、派手に動いても安全そうだ。
「ヴィクトリー、ちょっと軽く手合わせ頼めるか?」
ルカは修行しようとした所、ヴィクトリーにそう呼びかけた。
「ああ、いいぜ。」
ヴィクトリーも修行しようとしていたのか、伸脚運動しながら答える。
この機会に、男二人は向かい合った。
実戦訓練も兼ねて、今からバトルをするのだ。
「よーし、宜しくな!」
「ああ……!」
ヴィクトリーとルカは構え、向かい合う。
「……おい、ソニア。」
「え……?」
「ふむ……」
「きゅ?」
アリス達はルカとヴィクトリーの尋常ではない雰囲気を見て、邪魔にならない所に行く。
これで、二人っきりになった。
「……だっ!!」
先に仕掛けたのは、ヴィクトリーだった。
ルカの所に飛び込んでから、パンチを放つ。
「っ!」
ルカはそれを剣で受け止め、ヴィクトリーの顔に蹴りを放った。
しかしヴィクトリーはそれを避けて、バク転する。
そして両者は甲板を蹴って、攻防した。
「だりゃああああっ!!」
「はぁあああああっ!!」
しばらくの攻防の後、バチィッと二人の一撃がクロスする。
二人は離れて、グルグルと回転してから着地し、互いを見た。
「……」
「……」
ルカとヴィクトリーは頬の傷から血を垂らし、笑う。
(おでれ)ぇたな……まさか、ここまで互角なんてよ……」
「ああ……僕もだ!」
二人はまた激突し、凄まじい攻防を繰り広げた。
「あだだだだだだだっ!!」
「はぁああああああっ!!」
拳と剣が疾風のように飛び交い、互いに叩きつけられる。
「だりゃああっ!!」
ヴィクトリーの頭突きが、ルカにクリーンヒットした!
「ぐっ!」
ルカは額から血を流しながらも、何とか踏ん張る。
「だぁあっ!!」
そしてルカの蹴りがヴィクトリーの腹を打ち抜き、思いっきり蹴り飛ばした!
「ちっ!」
ヴィクトリーはぶっ飛びながら、かめはめ波を放つ。
しかしルカはそれを剣で弾き飛ばした。
弾き飛ばしたかめはめ波は海面に激突し、爆発した!
しかし船は、海神の鈴のお陰で揺れない。
「くらえっ!!」
ルカは、剣をヴィクトリーにぶん投げた!
「くっ!」
ヴィクトリーはその剣を白刃取りで止める。
「はぁあっ!!」
ルカはヴィクトリーの脳天に踵落としした!
「ぐっ!」
「返せ!」
更に足払いしてヴィクトリーを転ばせ、剣を取る。
「ふんっ!!」
しかしヴィクトリーは手で甲板に踏ん張り、ルカの腹に両足蹴りした!
「おぐぅうっ……!!」
ルカはぶっ飛んでから、着地する。
ヴィクトリーは体制を整えてから気を全開放し、ルカに突進した。
「だぁあっ!」
ヴィクトリーのパンチが、ルカの顔面を打つ。
「ぐ……!」
ルカは揺らぐが、ヴィクトリーを睨みながら剣を寝かせる。
「雷鳴突き!!」
そして、血裂雷鳴突きで一閃した!
「ぐぅえぇっ……!!」
ヴィクトリーの体に電撃が炸裂し、膝をつく。
しかしすぐに立ち上がり、笑った。
「やぁあっ!」
ルカはダメ押しに、ヴィクトリーに後ろ廻し蹴りを放つ。
しかしヴィクトリーはそれを腕でガードし、ルカの顔面をぶん殴った!
「ぐはっ……!」
「だだだだだだだっ!!」
そして体にパンチを連打した!
「ぐっ!!」
ルカは持ちこたえ、ヴィクトリーに頭突きした!
「あぐっ……!!」
「うぉおおっ!!」
揺らぐヴィクトリーの顔面に、両足蹴りを叩き込んだ!
「ぐぅうっ……!」
「はぁあっ!!」
ルカは拳を握って、ヴィクトリーに突進する。
ヴィクトリーも拳を握って、ルカに駆け寄った。
「だりゃああーーーっ!!」
「てやぁああーーーっ!!」
二人の拳が交差し、クロスカウンターが決まった!
「っぐぅううっ……!!」
「っぎぃいいっ……!!」
二人は拳を引き、離れる。
「……もういいだろ。」
アリスが入ってきた。
「アリス、何を……」
「そこら辺にしておくんだな。例の嵐を呼ぶ淫魔とやらも控えているのだ。そろそろ休憩しておけ。」
「……」
そうか、そう言えばそれもあったな……
「分かった……実戦訓練は、ここまでにしておくよ。」
「ああ……今ので、自分の実力がどんなもんか分かったぜ。」
二人は互いを見て、笑った。
「それじゃあ、後は自分で修行しようか。」
「ああ……」
そして、自分の修行に取り掛かった……
「まったく、まだ運動するつもりか……たまには、落ち着けばいいものを。」
「でも、強敵が次から次に出てくるんだ。もっともっと、強くならないと……」
「まぁ、あまり焦るな。ひとつ、面白い技でも教えてやろう……」
「お願いします!」
どうやら、ルカはアリスと一緒に新技の修行に取り掛かるようだ。
俺も、負けちゃいられない……

「高く跳んで……てやっ!」
「そう、落下エネルギーを加えた一撃を叩き込む……それが、天魔頭蓋斬なのだ。」
ルカは、天魔頭蓋斬という技を覚えたらしい。
「……」
俺はまだ、修行の途中だ。
何しろ、全身のエネルギーを器用に使う必要があるから、難しい……
そう思っていると……
「……」
急に、強風と豪雨がやってきた。
「これが、例の嵐というやつか?」
「でも、船がぜんぜん揺れてない……」
「ああ……」
ヴィクトリーの視線の先……
船の舳先にぶら下げた海神の鈴が、淡い光を放っている。
不思議な魔力で、船を守っているようだ……
「やった!さすが、キャプテン・セレーネの秘宝だ!」
「ふむ、人間の残した秘宝にしては大したものよ。しかし……」
「……!!」
ヴィクトリーは、キッと上空を見上げる。
「えっ……!?」
一筋の風と共に、何か近付いてくる……
嵐が止み、そいつは戦士達の目の前に着地した。
水色の髪をした、強力な気を放っている淫魔だ。
「だ……誰だ!?」
「アルマエルマ……ではない!」
「おめぇは……!?」
「あたしはモリガン……アルマエルマとかいうのより、ずっと強いサキュバスさ。」
モリガンと名乗ったサキュバスはそう言って、首をゴキゴキ鳴らす。
「ふん、馬鹿を言うな……奴はクィーンサキュバス、淫魔の頂点なのだぞ。」
「たかだか当代の女王ごとき、何だっていうのさ?そんなもの、あたしの足元にも及ばないよ。」
「お前は、いったい……!」
「油断するなよ、二人共……アルマエルマ以上というのは眉唾だが、かなりの強者だぞ!」
「分かってるって……すげぇ気をびんびん感じてるぜ……」
ヴィクトリー達は構え、モリガンに向いた。
「あたし相手に、やるっていうの?殺っちゃうのは、色々まずいんだけどさぁ……」
モリガンはそう笑いながら、掌を向けた。
「そういうわけで、かる~く相手してやるよ。両手両足、お前らにいっさい触れないハンデだ!」
その手に、魔力を纏ってから構える。
「両手両足を?随分と気前がいいんだな……」
ヴィクトリーはそう言って、気を全開放した!
「……ほお?」
「そんじゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜぇっ!!」
突如として強襲したのはアルマエルマではなく、モリガンという謎の淫魔だった。
果たして、その実力やいかに……?

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最悪の修羅場

突如として強襲した、謎の淫魔モリガン。
なんと、両手両足を使わずに戦士達を倒すと豪語した。
「おめぇの目的が何だか知らねぇけど、やるんなら全力でやらせてもらうぜ。」
「はははっ、かかって来いよ異世界戦士!てめぇも、一瞬で果てさせてやるからさ!」
「……」
当然の如く、ヴィクトリーが異世界から来たことを知っている……?
どうやらこの淫魔、只者でも無さそうだ……
「だっ!!」
ヴィクトリーはまず、気合い砲でモリガンの足元を吹っ飛ばした!
「おっと!」
モリガンは飛び上がり、ヴィクトリーに手を向ける。
「おかえしだっ!!」
そして、ドンッという音と共にヴィクトリーに衝撃が叩き込まれた!
「うぐぁああっ!!?」
「なにっ!?」
気合い砲ではない。
ヴィクトリーの体だけを、謎の力でぶっ飛ばしたのだ。
「貴様、何を……!!」
「食らってみりゃ分かるさ!」
そう言ってモリガンは、アリスに手を向けた。
すると、アリスの体も謎の力でぶっ飛ばされた!
「ぐふっ……!?」
「アリスっ!?」
ルカはぶっ飛ぶアリスを見てから、モリガンに目を向ける。
そして剣を構え、突進した。
「てやぁあああっ!!」
「へぇ?」
ルカの猛攻を、軽々と避け続けるモリガン。
「あ、当たらない……!?」
「あはっ!」
モリガンはその場で、指をクンッと上げる。
すると、凄まじい突風と鎌鼬が発生した!
「うわぁあああっ!」
ルカはぶっ飛び、船の外に投げ出されてしまう。
「あぶねぇっ!!」
ヴィクトリーがルカの足を掴んで、何とか船に引き込んだ。
「あ、ありがとう……!」
「あははっ!」
モリガンは手にエネルギーを纏って、二人に突っ込んだ!
「やぁあっ!!」
「!!」
しかし、その目の前に棍が突き刺さり、モリガンは静止してしまう。
当然、ソニアの棍だ。
「今よ、プロメスティン!」
「はい……!」
プロメスティンは魔力を手に溜め、モリガンに向ける。
すると、モリガンの体が発火した!
「あっつっ!!?」
「きゅー!」
燃焼反応に怯んだモリガンに、ヌルコのデュエルカノンが向けられる。
「!!」
そのデュエルカノンは、モリガンを爆撃した!
「ちっ……!」
モリガンは爆煙を払いながら出てきて、ゲホゲホと咳き込む。
「なんだい、マキナってのは埃を巻き起こすだけの機械かぁ!?」
「きゅ……!!」
「でりゃああっ!!」
モリガンに、ヴィクトリーの延髄切りが決まった!
「っ!!?」
「だぁあっ!!」
更に顔面をぶん殴ってぶっ飛ばし、エネルギー弾を連射する。
「くそっ!」
モリガンはそれらに両手を向け、エネルギー弾を静止させた。
「な、なに……!?」
「ほぉら、返してやんよ!」
モリガンがそう言って指を鳴らすと、エネルギー弾はヴィクトリーに殺到した!
「くそっ!!」
ヴィクトリーはそれらを弾き飛ばし、モリガンを見る。
すると、モリガンは既にヴィクトリーに手を向けていた。
「な……!!」
「死ね!!」
次の瞬間、ヴィクトリーの全身に凄まじい衝撃と快感が駆け巡った!
「ぐぁあああああっ!!?」
ヴィクトリーはぶっ飛んで、壁に叩きつけられてからビクンビクンと痙攣する。
「何だと?この技をくらって、干物にならないだと……!?」
「はぁっ……はぁっ……!!」
「何を余所見をしている!」
「お前の相手は、僕達だ!」
「やぁあっ!!」
アリス、ルカ、ソニアの三人が、モリガンに猛攻した!
「ちぃっ!!」
モリガンは三人の猛攻を避け続けながら、気を溜める。
「でやぁっ!!」
「!!」
ルカの剣技が、モリガンの頬にカスッた。
「えぇえいっ!!」
動揺するモリガンに、ソニアの乱打棍が叩き込まれた!
「ぐはっ……!!」
「はぁあっ!!」
モリガンの胸を、アリスのレイピアが一閃してぶっ飛ばした!
「ぐぅううっ!!」
しかしモリガンは持ちこたえ、三人に手を向けた。
「消えろっ!!」
次の瞬間、三人は謎の力でぶっ飛ばされた!
「きゅーっ!!」
「はぁあっ!!」
三人と入れ替わるように、ヌルコとプロメスティンが飛び込んでくる。
「へぇ、じゃあこいつなんかどうだ!?」
モリガンは、エネルギーをプロメスティンに放った!
「なっ!?」
そのエネルギーはプロメスティンの胸に入り込む。
「弾けろぉっ!!」
モリガンの手が、グッと握られる。
次の瞬間、プロメスティンの身体中に凄まじい快感が走った!
「くっぁあああっ!!?」
プロメスティンは絶頂してしまい、股を押さえながらへなへなと膝をつく。
「消えろぉっ!!」
モリガンはプロメスティンに手を向け、ぶっ飛ばす。
「あ、あうぅ……」
「きゅ……!!」
ヌルコはモリガンに触手を巻き付け、拘束した。
「なにっ!?」
「モリガンーーーっ!!」
ヴィクトリーがようやく持ち直し、モリガンを呼ぶ。
「!!」
「波ーーーっ!!」
ヴィクトリーは、渾身のかめはめ波を放った!
「ちぃいいっ!!ばぁあっ!!」
モリガンはギリギリで抜け出し、かめはめ波を避ける。
「この……!!」
そして、ヴィクトリーとヌルコに手を向けて、ぶっ飛ばした!
「きゅうっ!?」
「うわぁあっ!!」
ヌルコは甲板に叩きつけられ、ヴィクトリーは海に投げ出されてしまった。
「ヴィクトリーっ!!」
「こ、この……!!」
ソニアは棍を構え、モリガンに突撃する。
「はぁあっ!!」
「ほら、お前もイカせてやる!」
モリガンは、ソニアに指を向けた。
すると、ソニアの動きの一切が封じられた!
「な……動けない……!!」
「ほらほらほらほらほらほらぁ!!」
モリガンはその場で手をヒュバババッと動かす。
すると、ソニアの全身に快感が連打された!
「ち、ちょっ……!!や、やめっ……!!」
「イッちまいなぁ!」
モリガンはそう言って、バッと手を突き出す。
次の瞬間、ソニアの股を中心に快感が爆発した!
「ひゃあああーーーっ!?」
体の許容範囲を超えた快楽に、ソニアはなす術もなく絶頂してしまった……
「そ、ソニアまで……!!」
「次はお前らの番だ……!!」
モリガンは、アリスとルカに目を向ける。
しかし、ルカの姿が無い。
「なに……!?」
不意に、海面から何か飛び出してきた!
「そっちか!」
モリガンは、そこに手を向ける。
しかしそれはルカではなく、ただのエネルギー弾だった。
「ちがうっ!?」
動揺していたスキに、別の所から何か飛び出してきた!
「そっちか!」
しかしそれも、ただのエネルギー弾だ。
「おちょくりやがって……!!」
モリガンがそう言ってると、正面からそれは飛び出してきた!
「捉えたぞっ!!」
確かに見えた、人型……
それはルカではなく、ヴィクトリーだった。
「え……!?」
「くらぇええっ!!」
不意にヴィクトリーの気が爆発して、赤いオーラにその身を包む。
すると、ヴィクトリーの戦闘力が跳ね上がった!
「な、なんだと……!!?」
「波ーーーっ!!」
そのまんま、渾身のかめはめ波を撃ち放った!
「は、速っ……!!」
反応が遅れ、モリガンはそのかめはめ波に直撃した!
「っぐぅうっ!!」
しかし爆煙を払い、ヴィクトリーを見る。
「モリガンーーーっ!!」
「!!」
声のする方へ、視線が殺到する。
そこには、ルカが剣を振りかぶっていた。
「天魔頭蓋斬っ!!」
そして渾身の天魔頭蓋斬で、モリガンを叩き落とした!
「ぐぁあっ!!」
「くらえ……!!」
叩き落とした先に高速移動したのは、アリスだった。
そして、モリガンをVの字に斬った!
「がはっ……!!」
「だっはーーーっ!!」
ヴィクトリーはそのモリガンの腹に両足蹴りを叩き込んで、船の外にぶっ飛ばした!
モリガンは海面に叩きつけられ、海へと潜ってしまう。
「はぁっ……はぁっ……!!」
ヴィクトリーが、船に着地する。
「ヴィクトリー、貴様……飛行能力を?」
「舞空術ってんだ……」
「二人共、まだ終わってないみたいだぞ……!」
ルカの呼びかけで、海を見る。
見ると、モリガンが海から出てきた。
「なかなかやるもんだね……」
モリガンはそう言って、甲板に着地する。
そして、首をゴキゴキ鳴らした。
「……流石に、遊びが過ぎたか。そろそろ本気出して、干物にしてやるよ……」
そして腕をクロスし、気を解放した!
「っ!!?」
辺りが揺れ、凄まじいエナジーが波動する。
「だって、あんた達が悪いんだよ!見逃すつもりだったのに、食い下がってくるからさぁ!」
「お、おめぇ……まだ実力隠してたんか……!!」
「まさか、今まで全然本気じゃなかったのか!?」
「馬鹿な、なんという力だ!本当に四天王以上だというのか、こいつ……!」
「ほ~ら、とってもキモチいい干物タイムだ!誰から天国を味わいたい……!?」
「……!!」
ヴィクトリー、この状況で上空をキッと見る。
「おお、おお、あたしの前で余所見するなんて、いい度胸だなぁ異世界戦士!まずはお前から……」
モリガンは、ヴィクトリーに手をかける寸前に止まる。
「……まさか、あたしより先に気付いたってのか……?」
「あ、ああ……おっそろしい気が近付いてくる……!!」
その場にいる全員が、視線を上空に向ける。
「何か降ってくるぞ……あれは、旗!?」
天を覆うように、頭上で大きな旗が広がっていく……
イリアスが描かれた、神々しい旗だ。
「下手くそなイリアスの絵!?いったい、なんだ……!?」
「見つけたぞ、汚らわしい淫魔……!!」
謎の女が降臨してきた。
軍服のような格好をした、見るからに武闘派の天使だ。
そいつは、こちらに手を向けた。
「ほぉら!チリになりなァ!」
「熾天使シオン!?あいつ正気かよ、この世界で仕掛けてくるなんて……!」
「吹っ飛べェェェ!!」
突然に飛来した天使は、掌から光弾を放った!
「みんなふせろーーーっ!!!」
ヴィクトリーの指示で、みんなハッとする。
しかし、モリガンはシオンに気を取られているようだ。
凄まじい速さで、光弾がモリガンに迫っていた。
「バカ、避けろっ!!」
ヴィクトリーはモリガンを蹴り飛ばし、光弾は船に直撃した!
「わぁっ!ふ、船が……!」
「異世界戦士、てめぇっ!……いや、キ〇ガイ天使!オマエ、何やってるのか分かってるのかよ!?一人殺っただけでも、どれだけ時流が乱れたか……手出しは間接的に、ってのが大原則だろうが!」
「淫魔風情が熾天使様に説教かァ!?生滅すべき貴様らに、交渉の余地なんぞないんだよォ!」
天使は更に光弾を放った!
船がボロボロになり、所々がパチパチと燃え始める。
「ナメやがって、クソ天使……!決めた、オマエを真っ先に血祭りに上げてやるよ!」
モリガンは、周囲に凄まじい暴風を呼び寄せた!
「うわぁっ!」
「このままでは、船がもたん!二人共、海に飛び込むぞ!」
アリスは未だに痙攣してるソニアとプロメスティンを抱えて、ルカとヴィクトリーに言った。
「で、でも……この嵐の中じゃ……!」
「ルカ。」
ヴィクトリーはルカにヌルコを渡してから、海へと蹴り飛ばした!
「ちょ、えぇえーーーっ!!?」
ルカはドボンと海に落ちて、アリスも飛び込む準備をする。
「よ、よし!余に続けヴィクトリー!」
「いや、俺には舞空術がある!先に行ってくれ!」
「わ、分かった……死ぬなよ!」
アリスも海に飛び込み、ヴィクトリーはモリガンとシオンの方をチラチラ見る。
「よ、よしっ!!」
ヴィクトリーは気を解放して、飛んだ。
「逃がすかぁあっ!!」
しかしシオンがヴィクトリーの目の前に高速移動してきて、左腕を振りかぶる。
「貴様だけは死ね、部外者!!」
そして、渾身の拳をヴィクトリーの顔面に叩き込んだ!
「うわぁああああーーーっ!!!」
なす術なく、ヴィクトリーは海へと叩き込まれてしまう。
「ちょっ、マジかあのキチ天使っ……!!」
「はぁああっ!!」
シオンは気を解放し、ヴィクトリーに巨大なエネルギー波を放った!
それがヴィクトリーに直撃する寸前に、天から黒いエネルギー波が伸びて、シオンの巨大なエネルギー波を弾き飛ばした!
「……なんだっ!?」
「そこかっ……!?」
雨雲から、黒い竜巻が巻き起こる。
それは凄まじい突風と共に、消散する。
そしてそこに居たのは、黒い胴着に身を包んだ男だった。
しかし……
「……異世界戦士!?」
「部外者がもう一人……!?」
「ふっふっふ……」
その顔は、ヴィクトリーと同じ顔だった。
そっくりとか、瓜二つとか、そんなレベルではない。
完全に、ヴィクトリーと同じ顔なのだ。
「その男に死なれては、私が困るのでね……邪魔させて貰いましたよ、存在しない熾天使さん……」
「誰だ貴様は……!!」
「あの異世界戦士の、兄弟か何かか?」
「兄弟……まぁ、そんな所ですね……」
ヴィクトリーに似た男は、グッと拳を握ってから、ゴキゴキと首を鳴らす。
そして手を広げるようにして、構えた。
「私は、黒のヴィクトリー……主に尽くすために、究極の力を求める者だ。」
「へぇえ……!」
「まぁいいや、異世界戦士はこれ以上いらないよ!ここであのキチ天使諸共オマエを破壊してやる!」
モリガンはそう言って気を解放し、シオンと黒のヴィクトリーに向いた。
「懺悔は聞かんぞ、有象無象ども……!」
シオンも気を解放して、臨戦態勢をとる。
「仕方ありません、彼が安全な所に流れるまでやり合いましょうか……ふふふっ。」
黒のヴィクトリーも気を解放した!
三人は、そのまんまぶつかり合う。
次の瞬間、辺りに凄まじい暴風雨と神々しい閃光と漆黒の闇が波動した……

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辿り着いてナタリアポート

「うーん……ここは?」
ベッドから、むくりと体を起こすルカ。
ヴィクトリーに蹴り飛ばされて、船から落ちた所までは覚えている。
ここは、一体どこなのだろうか。
「あら、お目覚めですか?」
ルカにそう声をかけたのは、マーメイドだった。
「お怪我は、全て私達が治しておきました。体の調子が良いようならば、こちらへどうぞ。すでに、お仲間さん達は目を覚ましていますよ。」
そう言って、居間の方へ戻った。
「助かったのか……いや、助けてもらったのかな。」
そう言って、ふと隣を見てみる。
「………」
そこには、ソニアが凄まじい形相で寝ていた。
「そ、ソニア……?し、死んでる……?」
「きゅ~……」
ヌルコも心配して、ソニアを見ているようだ。
「ひどい顔をしていますが、命に別状はありませんよ。水をずいぶん飲んだようなので、私達で癒しておきました。目を開けたまま気絶する人なんて、初めて見ました……」
「……」
ルカは、居間の方へと行く。
そこにはマーメイドが二人、そしてアリスとプロメスティンが居た。
しかし、ヴィクトリーの姿は無い。
「……ヴィクトリーは?」
ルカは、アリスに聞いてみる。
「我々とは流れて来なかったらしい……全く、何処かで飛び回っているのか……?」
「え……?ま、マーメイドさんっ!僕達の他に、赤い胴着を来た僕と同い年ぐらいの男、見ませんでしたか!?」
「い、いや……見てないわ。それがどうしたの……?」
「……」
ものすごく嫌な予感がする。
思わず、この家を飛び出そうとした時だった。
いきなり玄関が、開け放たれた。
「……」
「え……!?」
開け放ったのは、仮面を付けた謎の男だった。
独特の髪型、ミラの戦闘服にも似た格好、そして何より額のXにも似たマーク……
その片手には、誰かを引きずっている。
「な……何だお前はぁあっ!!」
「くっ!!」
「だ、誰ですか……!?」
マーメイド含む、その場にいる全員が臨戦態勢を取った。
しかし仮面の男は動じないまま、ルカ達を見回した。
「……剣を下ろしな糞ガキ共。どうせ俺にはかないっこねぇんだ。」
「やってみるか?」
アリスが出てきて、仮面の男にレイピアを突きつける。
「その格好……恐らくはヴィクトリーの言っていた、ミラやトワとやらの差金だろう。いったい、何をしに来た?」
「なぁに、ただの届けものだ。」
仮面の男がそう言って、床に誰かを投げ出す。
それは、なんとヴィクトリーだった。
「ヴィクトリーっ!」
しかし凄まじく衰弱して、死にかけている。
「お前っ……よくもヴィクトリーをっ!!」
「やったのは俺じゃねぇ……そんな事より、とっとと助けてやれよ。ほら、その袋の中。」
仮面の男は、ヴィクトリーの持っているずた袋を指す。
「その中に、マメが入ってる筈だ。食わせてやれ。」
「お前の言う事なんか、誰が……!」
「残念だが、俺にも時間というものがある……あばよ。」
仮面の男はそう言って、消えてしまった。
「待て……!!」
「いや、今は奴よりヴィクトリーが先決だ!」
飛び出そうとするルカを、アリスは押さえた。
それを横目に、プロメスティンはヴィクトリーの持っていた袋を持つ。
「ほう?」
その袋を開き、中のものを取り出す。
それは、ソラマメのような豆だった。
「確かに、見た目は普通のマメですね……」
プロメスティンはそう言いながら、まずヴィクトリーの喉を触る。
そして顎を触ってから、考えた。
「なるほど、呼吸は止まっている……意識も無い……ふむ。」
そして、豆を口にした。
「プロメスティン、何を……?」
「ん、まぁ見てて下さい。」
プロメスティンがそう言うと、なんとヴィクトリーの唇にキスした!
「~っ!!?」
「えぇ……!?」
「きゃ……!!?」
「べ、べろちゅーっ!?」
ルカもアリスもマーメイドも、動揺しているみたいだ。
「ん……ぷぁっ。」
「……?」
ヴィクトリーの傷が全回復した。
「な……!?あれだけ瀕死の傷を、あんな豆一粒で……!?」
「どうなっている、あの豆!?」
「豆……?」
「あなたが持っていたコレですよ。」
プロメスティンが取り出したのは、さっきヴィクトリーに口移しした豆だった。
「そうか、仙豆があったか……助かったぜ、仙豆食わなきゃおっ死んでた所だったぞ~!」
「センズというのですか……サンプルとして、一粒頂いてもいいでしょうか?」
「だめだ!貴重なんだぞ!」
「がっくり……」
プロメスティンは、しょぼんとしてしまった。
「ヴィクトリー、何があったというのだ……そしてあの仮面の男は、いったい誰なのだ。」
「仮面の男……?」
「お前をここまで運んできた、変な髪型した男だ。心当たり無いのか?」
「あ、ああ……」
ヴィクトリーはアリス達に、シオンに殺されかけた事を伝えた……
「ふむ……それで、あんな瀕死の状態だったのか。」
「ああ……俺をここまで運んできたのは、おそらくは仮面のサイヤ人だ。」
「仮面のサイヤ人……?貴様と同じ、サイヤ人だというのか?」
「まぁな……正体は、多分おめぇらに伝えても分からねぇと思う。一応、トワやミラの仲間だ。」
「そんな奴が、なぜ貴様を助けに……?」
「それは分からねぇ……暗黒魔界の考える事なんて、一度も分かったことがねぇんだから。」
「それにしても、まさかシオン様が現れるとは……」
プロメスティンはそう言いながら、ヴィクトリーを見る。
「三人の熾天使の一人、肉弾戦に長けた方ですよ。いかにも、あなたが好きそうなタイプですね。」
「そ、そっか……」
ヴィクトリーは、苦笑いする。
ああいうのは、俺はちょっと苦手だ……
「ルカ、おめぇらはどうなったんだ?」
「海に突き落とされた僕も、飛び込んだアリス達も人魚に助けられたよ。」
「ここはナタリアポート、往復船が目指していた港町。色々と難があったが、辿り着く事は出来たな。」
「ははは、運がいいんだか悪いんだか……」
とりあえずは、あの船の船長達も俺達も無事らしい。
「あのモリガンって奴は、何なんだ?」
「さぁな……成り行きを確認する余裕はなかった。あの連中は、敵対関係にあるのか……?」
「モリガン、別世界からやって来たような事を言ってたよね。」
「ああ……あいつも、俺達やルカの父ちゃんみてぇに異世界を行き来する事が出来るんか?」
「そんな能力持ちが、ゴロゴロしていてたまるものか。例の扉を開ける以外に、何かの方法があるに違いない。プロメスティンとて、実験ミスでタルタロスに飛んだのだ。知識のある者が、何かの方法を確立させたのか……?ともあれ、我々の行く手を阻む者は叩きのめすのみだ。妖魔だろうが天使だろうが暗黒魔界の戦士だろうが、関係ない。」
「ああ……!」
ここで、ソニアの気に動きがあった。
「う~ん、ここ、どこ……?」
あの酷い顔から一変して、頭を押さえながらそう言う。
ようやく、起き上がったようだ。
……というより、あの一連の出来事があったというのによく起きなかったな……
「やれやれ、やっと目を覚ましたか。それでは、出発だ!」
「ああ!」
一悶着あったが、上手く乗り越えた。
そして、この新大陸で冒険する事となる。
この先でもっともっと強いヤツと戦えると思うと、わくわくが止まらなかった。
「これからの道のりだが……まずは、サン・イリアだな。大都市にて、ルカの父や白兎の情報を集めるとしよう。」
「サン・イリア……?」
「っと、こことは全く違う異世界から来たヴィクトリーには分からなかったか……この世界最大の聖堂国家だ。あまり行きたいところではないが、避けては通れまい。」
「へぇ~……そりゃ凄そうだ。」
「あの……」
戦士達が話し合っていると、マーメイドが話しかけてきた。
「実は、お頼みしたい事があるのですが。現在、このナタリアポートで大きな事件が起きているのです。」
「むっ……命を助けてもらった以上、無下には断れんな。」
「詳しく聞きましょう。」
ルカは、さっそく食いついた。
その隣に、ヴィクトリーもつく。
「あなた方の腕を見込んで、頼みたい事があります。少々長い話になりますが、お付き合い願えるでしょうか。」
戦士達が頷くと、マーメイドも咳をついて話す体制になった。
「現在、この町に漁師や人魚の失踪事件が続発しているのです。それが最初に始まったのが、今から数ヶ月前の事でした。」
「失踪事件……穏やかじゃ無さそうだね。」
「へへへ、面白そうだな……もっと詳しく聞かせてくれ。」
「はい……メイアという人魚が、用事で海底神殿に向かったのですが……その途中で失踪し、現在に至るまで行方は知れていません。」
「海底神殿……?」
二人は、アリスに向く。
「世界の南半分の海を統治する、南海の女王のいる神殿だ。その名の通り、ナタリアポート近海の海底に存在する。」
「はぇ~……」
「その行方を探しに、数名もの人魚が海底神殿に向かいましたが……」
「どれもダメだったんか……」
「はい……20人近くもの人魚が行方不明になってしまいました。」
「にっ……!?」
「更に同じ時期、漁に出た船が帰ってこなくなる事故も多発……行方不明になった漁師の方は、50人を超えてしまいました。」
「ご、50人もか!?」
「確かに、たまたま事故が続いたとは思えんな……海で何かが起きている事は確かなようだ。」
アリスはそう言って、腕を組む。
「海底神殿にいる、南海の女王とも連絡不能……さらに神殿に向かった者がのきなみ失踪とは、尋常ではない。」
「話が見えてきたぜ……要するに、俺達が海底神殿に向かってこの事件の犯人をぶっ飛ばしてくりゃいいんだろ?」
ヴィクトリーはそう言って笑い、ルカの方を見る。
ルカも笑って、頷いた。
「分かりました。何が起きているのか、様子を見てきましょう!」
「確かに、放置しておく事は出来んな……南海の女王と会い、対策を練る必要があるだろう。しかし、奴がこのような状況を黙認するとも思えん……もしや南海の女王の身に、何かあったのか?」
「変な奴が居たら、ぶっ飛ばしてやる!」
意気込む戦士達だが、ルカはすぐに首を傾げた。
「でも、海底神殿って海の中じゃないのかな。深海まで潜れない僕達は、どうやって行けばいいのか……」
「それは大丈夫です。このアイテムで、海底神殿の入口にまで導かれますから。」
マーメイドがそう言って戦士達に差し出したのは、不思議な宝玉だった。
ルカはそれを受け取り、まじまじと見る。
「この宝玉を、ナタリア海岸の波打ち際で掲げて下さい。」
「ああ……」
ナタリア海岸は、ここからすぐ西にあるという。
「分かりました、行ってみます!」
「よっしゃあ、わくわくすっぞ!」
「それでは、何卒お気をつけ下さい。あなた達の勇気に、心より感謝致します。」
人魚は、戦士達に頭を下げた、
「よし、行くぞ!」
「ああ!」
遂に、このサントラ大陸で新たな旅路が開かれた。
この先には、どんな敵が待ち受けているのか。
そしてセントラ大陸で噂になっている、『黒のヴィクトリー』とは……
不安と期待を胸に、戦士達は進む。
まずは、海底神殿からだ……

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海底神殿

色々あったが、ナタリアポートには辿り着いた戦士達。
戦士達を助けたマーメイドから、依頼が言い渡された。
それは、不可解な連続失踪事件の解決だ。
命の恩人からの依頼、無下には出来ない。
戦士達は原因を調査しに、海底神殿へと向かうのだった……
ナタリアの砂浜……
「ここだな。」
アリスは、砂浜をぽんぽんと叩く。
どうやらそこには不思議な気が集まっているらしく、心無しか光って見えた。
「ああ……」
いつの間にかヴィクトリーが、導きの玉を持っている。
「ここで、導きの玉を掲げるんだっけ。」
ルカはそう言って、ヴィクトリーの方を見る。
「よーし、それっ!」
応えるように、ヴィクトリーが導きの玉を掲げた。
すると、導きの玉が眩い光を放った!
「うわっ!?」
「なんだ……!?」
ルカ達は、光に包まれた……

光が晴れると、そこは海中の神殿だった。
導きの玉の加護があるのか、戦士達は息が出来る。
「こ、ここは……!?」
「うむ、海底神殿に間違いないな。注意しろ、神殿内にも魔物がウヨウヨしているぞ……」
「ああ……」
ヴィクトリーは、気を張り詰めて見る。
確かに神殿内には、魔物が散在している。
しかし、その気の配置は異様なものだった。
敵となる魔物に混じって、何故か普通の気を感じる……
そして、最深部……
そこには純粋な気が沢山あり、その中心に悪意に満ちた気を放ってる奴が居た。
間違いない、こいつが一連の事件の犯人だろう……
しかし……
「これは……子供の気か?」
悪意に満ちた気の周囲の気が、純粋すぎる。
明らかに、異様そのものだ。
「なにっ……!?」
「子供まで囚われてるの……!?」
「らしいぜ……とっとと行かねぇと。」
「南海の女王は、この神殿の再奥だよね……それじゃあ、先に進もう!」
「ここに入った人魚がみんな失踪してるんだから……危険は明白、気合い入れて行かないとね!」
こうして、戦士達は先へ進んだ……

「ふんっ、たぁあっ!!」
案の定、海底のモンスターが襲いかかってくる。
イソギンチャク娘や、アンコウ娘といったモンスターだ。
「よっ、だりゃああっ!!」
ヴィクトリーが最後の一匹を、渾身の力で叩き伏せた!
「が、がはっ……!!」
凄まじい力をくらったイソギンチャク娘は、倒れ伏した……
「よーし、終わったか!」
胴着の帯を締め直し、ヴィクトリーは進む。
ルカは、その横についた。
「……お前、前より強くなってないか……?」
「ん、まぁな……」
モリガン戦から、大した修行をしていないのにも関わらず戦闘力が跳ね上がっている。
ルカはそれが気になり、ヴィクトリーに聞いてみた。
「お前、何でそんな短期間で……?」
「そうだなぁ……まず、俺は宇宙人なんだ。」
「は……?」
宇宙人……
そう言われると、クラゲみたいでいかにもな感じの、アナログタイプな宇宙人を思い浮かべる
「ああ、宇宙人の名前……サイヤ人って言うんだけど、おめぇらとはちょっと体の構造が違うんだよ。」
「……」
ヴィクトリーは、一見するとただの人間だ。
しかし、その力は尋常ではない。
「サイヤ人ってのは戦闘民族で、戦うために生まれた種族なんだ。その特徴は、戦えば戦うほどに強くなる……のは、おめぇらと変わりねぇか。」
「じゃあ、何で……?」
「へへへ……サイヤ人ってのは死にかけてから復活すると、すげぇパワーアップをするんだ!あの時シオンって奴に殺されかけただろ?マジで死ぬ寸前から助けてもらったんだ、自分でもびっくりするほどのパワーアップをしてるんだぜ!」
「なるほど……」
「道理で、激しい戦いを積めば積むほど強くなっていく訳ね……」
ソニアを始めに、他のメンバーも会話に入ってくる。
「ふん、不思議な奴だと思ったらそういう事か……ますます不思議な奴め……」
「きゅ~」
プロメスティンはヴィクトリーの背後に高速移動し、耳元に来る。
「なるほど、それは興味深いですね……では、精液と細胞のサンプルを……」
「嫌だね。」
「むぅ……」
ヴィクトリーの即答に、プロメスティンは頬を膨らませた。
そうこう話していると、妙な気を感じた。
「……そこか。」
ヴィクトリーが向かった先……
なんと、牢に人魚達が閉じ込められていた。
「みんな、マーメイド達が捕まってるぜ!」
「待ってて、何とかこじ開けるから!」
「無駄だな。」
アリスは、ソニアを静止してそう言った。
「魔力によって鍵が閉ざされている。ここに閉じ込めた者でなければ、開けられんだろう……」
「そ、そんな……!」
「おーい!平気かー!」
ヴィクトリーは、人魚達に声をかけてみる。
人魚達はようやくこっちに気付き、こちらを見た。
「あなた達は、いったい……もしかして、助けに来て下さったのですか!?」
「そうだよ、町の人魚達に頼まれて……」
「おめぇら、何があった?」
「南海の女王が……いや、私達にも何がどうなっているのか……」
「悪いが、ここでのんびり話をしている余裕はないぞ。周囲には、敵がウロウロしているのだ。」
アリスの言葉に、ヴィクトリーとルカと人魚が頷く。
「そういう訳だ、ちょっと待っててくんねぇか?」
「必ず助け出しますから!」
「気を付けてください……私達をここに閉じ込めた者は、理性を失っています!」
「理性を……?まさか……!!」
「くそっ……!!またトワとミラか!?」
気にはなるが、鉄格子越しに話し合っている余裕はない。
早く黒幕を倒して、人魚達を救出しなければ!
「……ヴィクトリー、一つ気がかりな事が。」
進みながら、アリスはヴィクトリーに声をかけた。
「ここ最近の、敵の凶悪化……あれは、本当にトワとミラの仕業か?」
「どういう事だよ?」
「気付かなかったか?最初にトワとミラに会った時、貴様と戦ったモンスターの凶悪化……目が紅く光り、禍々しい気が迸り、その額には『X』にも似た文字が浮かんでいた。」
「……あっ!」
ヴィクトリーは、そこまで言って理解した。
クィーンハーピーやドン・ダリアの時……
大まかな特徴は同じだが、その額には『X』のマークは無い。
「……そうか、確実にアイツも関わってんのか……」
「アイツ……?」
「ドミグラだ。」
ドミグラ……
トワの他に、凶悪化魔法を使えるのはあいつだけだ。
「何者なのだ、そのドミグラとやらは?」
「俺の時代から7500万年前……暗黒魔界って所を創世した魔神だ。」
「魔神だと……!?なぜそんな存在が、この世界に……!?」
「あいつは戦闘力もすげぇけど、何より恐ろしいのはその魔力だ……時空を自由に行き来できるし、話した通りに凶悪化魔法を使う事ができる。その魔法で、俺の世界の破壊神をも操ろうとした事だってある。」
「破壊神を……!?」
「……結局失敗したけどな。」
「はい、質問!」
ソニアが挙手する。
「その破壊神って、どこまで強いの?本気を出したら、セントラ大陸が丸ごと吹っ飛んじゃうぐらい?」
「いや、その気になったらデコピンでこの星を破壊できるぐらい強い筈だ。」
「えぇ~っ!!?」
ソニアのリアクションもオーバーな気がするが……
とにかく、そんな奴を手篭めにしようとする奴だからヤバイ奴だって事は伝わったらしい。
「破壊神も破壊神で、それが仕事なんだぜ。大変だよな。」
まぁ、破壊神についての説明は後々するとして……
「全く……黒のヴィクトリーといい、余の事といい、貴様がこの世界に来てからロクな出来事が起こらんな……」
「な、なんかすまねぇ……」
「いや、ヴィクトリーは悪くないと思うよ。」
ルカはそう言って、ヴィクトリーの肩を叩く。
「ルカ……」
「お前も僕達の旅に付き合ってくれてるんだ……黒のヴィクトリーの事もドミグラの事もトワやミラの事も、そして僕達の目的も一つに収束する筈だ。必ず、最後まで付き合うよ。」
「ああ……俺も、もう戻れねぇ所まで来ちまったんだ……やる所までやってやるぜ!」
ヴィクトリーとルカはグッと手を握り、笑顔を交わした。
「これが男同士の友情というやつか……」
「私も仲間に入れなさいよ~!」
「ふむ……友情ですか……分かりませんね……」
「きゅ。」
そんなこんなで話していると、また人魚の気を感じた。
ふと見ると、やはり牢にマーメイドが囚われていた。
「ここにも、マーメイド達が!」
「この牢、さっきのと同じやつか……」
「元凶を倒さねばな……」
「助けに来て下さったのですね!?」
マーメイドの一人が、こっちに食いついてきた。
「大変です、メイアが……!」
「メイア……!?」
「メイアって、最初にさらわれた人魚ですよね?彼女が、危険な目に合っているんですか……!?」
ルカの問に、マーメイドはぶんぶんと首を横に振った。
「いいえ、違います!メイアが、私達や漁師を捕まえて……!」
「ええっ!?」
「なんだとっ!?」
メイアは、最初の被害者だった筈。
なのに、本当は彼女が黒幕だった……!?
「どういう事かは分からんが……ともかく、ここでのんびりしている余裕はないぞ!」
「分かってらぁ……!」
「少し待ってて下さい、必ず助け出しますから!」
戦士達は、先を急ぐ。
「ヴィクトリー、あとどれぐらいだ!?」
「すぐそこだ!」
迫り来る敵を一蹴しながら、先を急ぐ。
「ここから先は……」
「邪魔だぁあっ!!」
「だりゃああっ!!」
男達の雄叫びと共に、吹き飛ぶ海底の魔物娘達。
「……もう、全部ルカ達でいいのではないか……?」
「私たちの出番が……」
「楽でいいじゃないですか。」
「きゅ~」
ルカとヴィクトリーを先頭に、なんとかついていくアリス達……
そして遂に戦士達は、女王の間に殴り込んだ!
「……なんだこりゃあっ!?」
女王の間に居たのは、たくさんの幼い少年だった……
その少年の中心に、白髪の人魚がにこにこしながら、玉座に座っていた。
「ようこそ、海底神殿へ。私は南海の女王、メイアです……」
「馬鹿を言うな。」
アリスが前に出てきて、メイアにレイピアを向けた。
「南海の女王はクラーケンだ。貴様はいったい、何を企んでいるのだ?」
「えっ、私が女王ではない……?いえいえ、あなた達の勘違いでしょう。私こそが南海の女王であるメイアなんですから。」
「この少年は、いったい何なんだ?」
「それと、さらった漁師達をどこにやった!」
ルカとヴィクトリーの問に、メイアは鼻の下を伸ばしてにっこりと笑う。
「あなたのいう漁師達こそ、この少年。少々、若返ってもらいました……」
「超ヤバイ!このヒト病んでる!」
「病んでるんじゃなくてこじらせてんだろ……」
「とにかく、彼等や人魚達を解放するんだ!」
メイアは、引き続き微笑みながら答える。
「それはできません……だって私は、南海の女王なんですから。」
「おめぇ、言ってる事めちゃくちゃだぞ……」
「どこかおかしい、この人魚は正気ではないぞ。」
「そりゃ、この危ない逆ハーレム見れば分かるから……」
「私の邪魔をするなら、容赦はしませんよ……だって私は、南海の女王なんですから。」
メイアは立ち上がり、気を解放した!
「避難しなさい、子供達よ……そして集まりなさい、魔物達!この者を叩きのめすのです!」
メイアの指示で少年達は避難し、入れ替わりにクラゲ娘やイソギンチャク娘やアンコウ娘といったモンスターが押し寄せてきた!
「私達はこいつらをやる!ルカとヴィクトリーはメイアさんを!」
「まったく、やるしかないか……」
「数では圧倒的に不利……私達もモンスターの方をやりますか。」
「きゅ。」
ソニア達は迫り来るモンスター達に向いてから、気を解放した!
一方で、ヴィクトリーとルカはメイアに向かっていた。
「よーし……こうなったら思いっきりぶっ飛ばして、目を覚まさせてやろうぜ……」
「仕方ないか……いくぞ!」
二人は気を解放し、構えた。
「ふふふ、南海の女王の力を見せて差し上げましょう……!」
メイアも構え、二人に向く。
今の所、凶悪化している様子は無さそうだ。
しかし、誰がメイアをこうさせたのか……
そして、今のメイアの実力やいかに……?

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南の海の代表?

ナタリアの連続失踪事件を解決しに、海底神殿へと渡った戦士達。
そこに居たのは、明らかに様子がおかしいメイアという人魚だった。
目を覚まさせるために、戦士達はメイアと向き合った……
「よーし、そんじゃあいきなりっ!!」
ヴィクトリーの気が爆発し、その身に赤いオーラを纏わせた!
「!!」
「なっ……!?」
「界王拳!!」
界王拳……
全身の気をコントロールし、増大させる技。
強力な技だが、そのぶんしっぺ返しが大きい。
しかし、節度を守れば問題なく使えるのだ。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーが先陣を切って、メイアに突進した!
二人は激突し、激しい攻防を繰り広げた。
「僕もっ!!」
ルカも剣を構え、メイアに猛攻する。
二人の凄まじい猛攻に、メイアは対応する。
「ふふふ、中々の腕ですね……!」
「なにっ!?」
次の瞬間、メイアの姿は消え、二人の一撃がすっぽ抜ける。
「ぐっ!?」
「こっちです。」
メイアはヴィクトリーの背後に高速移動し、圧縮した水をヴィクトリーに叩き込んだ!
「うわぁあっ!」
水撃が直撃し、ぶっ飛ぶヴィクトリー。
「はぁあっ……!!」
そのヴィクトリーを、追いかけようとするメイア。
その尾びれを、ルカが掴んだ。
「っ!?」
「だっ!」
そして、メイアを思いっきり地面に叩きつける。
「あぐっ……!!」
メイアの体はバウンドし、僅かに浮く。
「だぁっ!!」
ルカの後ろ廻し蹴りが、メイアをぶっ飛ばした!
「ぐ……!!」
「だりゃああっ!!」
ヴィクトリーはぶっ飛ばした先に高速移動し、メイアの顎を蹴り上げる。
「……ぐっ!!」
メイアは、尾びれをサマーソルトキックのようにして、ヴィクトリーを打ち上げた!
「ぐぁあっ!?」
「はぁあっ!!」
打ち上げたヴィクトリーに迫り、その腹に拳を連打する。
「ぐっ!」
ヴィクトリーは拳を止め、力任せにメイアを振り上げた!
「わぁっ……!?」
「だりゃああっ!!」
そして、地面に思いっきり投げ落とした!
「ぐっ!」
メイアは立ち上がり、ヴィクトリーを見る。
「こっちだ!!」
ルカの血裂雷鳴突きが、メイアに迫る。
しかし、メイアはそれを受け止めた。
「なっ!?」
「はっ!」
そして、ルカの顔面に水撃を放った!
「!!!」
ルカはぶっ飛んで、壁に叩きつけられる。
「ちっ!」
ヴィクトリーの界王拳の気が、増大する。
次の瞬間、ヴィクトリーは姿を消した。
「……そこっ!」
メイアはヴィクトリーの腕を掴み、地面に叩き伏せた!
「ぐぁああっ……っ!?」
「ふんっ!!」
追い討ちに腹に一撃してから、ルカの方を見る。
「たぁあっ!!」
「ぐっ!」
ルカの一撃を、水の力を込めた手刀で受け止める。
「はぁあっ!!」
「ぐぐぐ……!!」
そのまんま鍔迫り合いになり、押し合う……
「だっ!!」
ルカの蹴りが、メイアの腹に炸裂した!
「うぐっ!?」
「だっ!!」
更にメイアの頭に頭突きして、よろめかせる。
「くらえっ!!」
よろめいたメイアに、魔剣・首刈りを放った!
「ぐえぇっ……!!」
メイアは打ち上げられ、宙を舞う。
「そこだぁあっ!!」
ヴィクトリーが現れ、メイアをスレッジハンマーで叩き落とした!
「きゃあぁっ!!」
「このまんま攻めるぞ!」
「おうっ!!」
二人は、メイアに猛攻する。
「でゃだだだだだだっ!!」
「うぉおおおおおおっ!!」
「ふふ……!!」
メイアのパワーが、じわじわと上昇する。
「だりゃああっ!!」
「はぁあああっ!!」
二人は、渾身の一撃を放った!
しかしメイアはそれを受け止め、笑う。
「はぁっ!!」
そして二人の足元を尾びれでなぎ払い、すっ転ばせる。
「ぐっ!」
「このっ!」
ルカが先に持ち直し、メイアに突進する。
「はぁあああっ!!」
「ふっ!」
ルカの一撃を避け、手を向けるメイア。
「そこっ!」
ルカの剣が、メイアの手を切り上げた!
「!!」
水撃は天井に飛び、ヒビが入る。
「たぁっ!!」
ルカは剣の柄でメイアの頬を打つ。
「っ!」
「もらいっ!」
そして、思いっきり突きを放った!
「はっ!」
その突きは避けられ、空ぶったルカは隙だらけになってしまう……
「だりゃああっ!!」
「!!」
ヴィクトリーが飛び上がり、回転しながらメイアに踵落としした!
「きゃああっ……!!」
メイアは地面に埋まり、動けなくなる。
「はっ!」
ヴィクトリーは天井に気弾を撃ち、落石を巻き起こした!
メイアに、岩雪崩が降り注いだ。
「はぁっ……はぁっ……!!」
肩で息をするヴィクトリーの横に、ルカが来る。
「ヴィクトリー、やり過ぎの気がするんだけど……」
「……」
ヴィクトリーは、目を鋭くさせたまんま、落石で積み上がった石を見る。
「構えとけ、ルカ……」
「え……?」
「こっからが、本番だ……!」
ヴィクトリーがそう言った途端、メイアを埋めていた石が吹っ飛んだ!
「っ!?」
「くそっ!」
二人の体に、石や岩がビシビシと当たる。
爆心地には、メイアが立っていた。
「……」
ゆっくりと髪をかき、さらりと指を抜く。
そして、二人をゆっくりと睨んだ……
「……あはっ!」
その目が紅く光り、禍々しい魔力が宿った!
「やっぱり……!!」
「くっ!!」
「うふふ、ふふふっ……!!」
メイアはいきなり手を向け、暗黒のエネルギー波を放った!
「なっ!?」
「くそっ!!」
ヴィクトリーのかめはめ波で、暗黒のエネルギー波は相殺される。
「あはっ!」
メイアは既に二人の背後に回り込んでおり、エネルギー波を連射してきた!
「くそっ!完全に僕達を殺す気か!」
「やるっきゃねぇ!」
エネルギー波を弾き飛ばしながら、メイアに接近する二人。
唐突に、メイアの姿が消えた。
「なにっ!?」
「しゃあっ!!」
ルカの懐に入り込み、尾びれでぶっ飛ばした!
「ぐぁっ!?」
「くっ!」
ヴィクトリーが突っ込み、メイアに殴りかかる。
しかしメイアはそれを避け、ヴィクトリーに足払いする。
「うわっ!?」
「はぁあっ!!」
そのまんま体を回し、ヴィクトリーの腹に肘打ちを叩き込んだ!
「おぅううっ……!?」
「だだだだだだぁっ!!」
更に水撃を連射して、ヴィクトリーをぶっ飛ばした!
「ぐはっ……!!」
「死になさい……!!」
そのまんまヴィクトリーにエネルギー波が連打され、爆発する。
「く……!!」
立ち上がる、ルカの後方……
ソニア達と戦っていたモンスターの中から三体が、ルカの所へと飛んだ。
「なっ……!?」
「追うなソニア!今はこいつらを叩きのめすぞ!」
「ええ、目の前の敵も残りは多くない……畳み掛けますよ。」
「きゅ!」
ソニア達は引き続き、モンスターの群れを押し止める。
「くっ……!」
ルカの目の前に立った三体……
クラゲ娘、イソギンチャク娘、アンコウ娘……
「ふふふ……」
「すぐに片付けてやるわ……」
「……」
その目が紅く光り、禍々しい魔力を纏った!
「くそっ……こいつらもか!!」
ルカは剣を構え、三体に向く。
「あははっ!!」
「それじゃあ、死んでっ!」
「……」
三体も気を解放し、ルカと激突した!
その戦いはルカが僅かに勝っているとはいえ……あっちも身動きが出来そうに無さそうだ。
って事は……
「ふふ……」
メイアは、ヴィクトリーに歩み寄る。
「そういう事かよ……」
ヴィクトリーは壁にめり込んだ自分の体を抜き、立った。
ボロボロになった胴着を破り、アンダーシャツ姿になる。
「しょうがねぇ……いっちょやってみっか……!!」
ヴィクトリーは拳を握り込み、全身のエネルギーを高める。
そして、目を見開いた!
「かぁああああっ!!!」
界王拳を使い、凄まじい気が溢れ出る。
今出せる限りの全力の界王拳を、その身に宿したのだ。
「へぇ……」
メイアの目が紅く輝き、暗黒のオーラが強くなっていく。
あっちも、本気らしい……
「だぁあっ!!」
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーとメイアは激しく猛攻し、一撃をぶつけ合ってから離れる。
「波っ!!」
「ふんっ!」
ヴィクトリーの片手かめはめ波を弾き飛ばし、メイアはエネルギー波を放つ。
「おぉっ!!」
ヴィクトリーはそれを避け、メイアに蹴りを放った!
メイアは腕でガードし、ヴィクトリーに掌を見せる。
そして、水撃を放った!
「くっ!」
しかしヴィクトリーは見切り、それを避ける。
「なにっ!?」
超至近距離で放った筈の水撃が、サイヤ人の反射神経で見切られた……
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーの拳が、メイアの顔面を打ち抜いた!
「っ!!」
「あだだだだだぁ!!」
更に腹にパンチを連打して、ダメージを刻む。
「でりゃあっ!!」
そして顎を蹴り上げ、メイアの体を打ち上げた!
「ぐっ!」
メイアはグルグル回ってから空中に留まり、ヴィクトリーに手を向ける。
「ウォーターパッツァ!!」
凄まじいエネルギーが込められた水撃が、ヴィクトリーに放たれる。
「ちっ!」
ヴィクトリーはそれにかめはめ波を撃った。
かめはめ波が当たった瞬間、水撃が弾けてヴィクトリーに降り注いだ!
「へっ!そんなの……」
ヴィクトリーは腕をクロスし、ガードするが……
「あっちゃああああっ!!?」
なんと、メイアの放った水撃は超高温の熱湯だった。
たまらずヴィクトリーは抜け出し、メイアを探す。
「こっちよ!」
「なっ……!?」
メイアは拳に魔力を纏いながら、突っ込んできた!
「くっ!!」
ヴィクトリーも全力で拳を握り、メイアに駆け寄る。
「だりゃああっ!!」
「はぁあああっ!!」
拳がぶつかり合って、凄まじい衝撃が轟いた!
「だりゃりゃりゃりゃっ!!」
「はぁああああっ!!」
そのまんま、殴り合いの攻防に発展する。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーの拳が、メイアの頬を打ち抜く。
「ぐっ!!」
メイアの拳が、ヴィクトリーの頬に叩きつけられた。
「でぇやぁあっ!!」
ヴィクトリーの蹴りが、メイアの脇腹に炸裂する。
「はぁあっ!!」
メイアの尾びれが、ヴィクトリーの顔面を打った!
「うぐっ……!!」
「ふっ!!」
更にその拳が、ヴィクトリーの腹に叩きつけられた!
「おぐぅうっ!?」
「はぁあっ!!」
そして、思いっきり水撃でぶっ飛ばした!
「ぐぁあっ!!」
ヴィクトリーはぶっ飛ぶが、体制を整える。
そして壁を蹴って、メイアに飛び蹴りした!
「!!」
それは直撃し、凄い勢いでメイアはぶっ飛ぶ。
「ぐぐ……!!」
「はぁっ……はぁっ……!!」
これ以上は、体が持ちそうに無い。
「一気に終わらせるっ!!」
ヴィクトリーは歯を食いしばり、気を解放した!
「なっ……!!?」
次の瞬間には既にメイアの懐に入り込んでいた。
「だだだだだだだだぁあああっ!!」
そして、パンチを連打した!
凄まじいパンチがメイアの体に無数に叩きつけられ、尚も加速する。
「~~~っ!!!」
「これがっサイヤ人のっ……!!力だぁあああっ!!」
ヴィクトリーは戦闘民族の誇りをその拳に込めて、メイアの胸に正拳突きした!
凄まじい気がヴィクトリーから溢れ出し、エネルギーが衝撃を巻き起こした!
「ああ……こ、こんな……っ!!」
メイアの目の光が消え、禍々しい気も霧散する。
どうやら、これで戦闘不能になったようだ。
「はぁああっ!!」
ルカは三体のモンスターを撫で切り、ぶっ飛ばした!
「そ、そんな……!!」
「ち、力が溢れていたのに……!!」
「……」
その三体も凶悪化が解けて、戦闘不能になった……
「よし、後は……」
「終わってるわよ。」
ソニアを先頭に、他のメンバーが出てきた。
相当数の魔物と戦っていたみたいで、みんなボロボロだ。
「ふぅ……」
ヴィクトリーは界王拳を解いて、メイアに向かう。
他のメンバーも臨戦態勢を解いて、ヴィクトリーと同じ方向を向いた。
「うぅっ……私はいったい……ここで、何を……?」
とりあえずはついた、決着。
しかし、まだ謎は解決出来ていない。
何故メイアは、理性を失っていたのか……
そして、この凶悪化の正体は……?

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失踪事件、解決

今回短めですし、読み飛ばしても構いません


海底神殿にて、理性を失ったメイアを倒した戦士達。
「うぅっ……私はいったい……」
メイアの方も、正気に戻ったようだ。
「ここで、何を……?」
「やれやれ、ようやく正気に戻ったか。いったい何があったのだ……?」
メイアは頭を抱えながら考え込む……
「記憶が、だんだんはっきりしてきました……あれは数ヶ月前、婚姻届を出しに海底神殿を訪れて……」
メイアは、その日に起きた事を語った……
婚姻届を出そうと、南海の女王の所に向かったメイア……
しかしそこに居たのは南海の女王ではなく、謎のサキュバスだった。
その特徴は、ハーピーの村に来た三姉妹の一人と同じようだ。
南海の女王は、そのサキュバスにスルメにされてしまったらしい。
サキュバスはメイアに洗脳魔眼を使い、メイアをあんな風にしてしまった……
「それから、私は欲望の赴くがままに……ああ、なんて事をしてしまったのでしょう……」
「欲望の赴くままにやりすぎだぜおめぇ。」
そういう事ヴィクトリーの横で、アリス達が息を吐く。
「洗脳術によって、自身を南海の女王だと思い込まされ……さらに、倫理感も麻痺してしまったようだな。」
「結局、気を失ってたって事じゃないか。これじゃ、メイアさんも被害者だよ。」
「いえ……」
ルカのフォローにも関わらず、メイアはどこかセンチメンタルな顔をしていた。
「今さら、自分を擁護などできはしません。すぐに皆を解放し、地上へ戻しましょう。」
「ここにも、例のサキュバス三姉妹が……連中はいったい何を……」
「……」
とにかくメイアさんは正気を戻したとはいえ……
やはり凶悪化の犯人が出てこなかった。
人魚や漁師達は解放され、地上に戻される……
「……」
「浮かない顔してるね。」
ルカが、ヴィクトリーの横に来た。
「ああ……」
「やっぱり、ミラやトワの事か?」
「ああ……あいつらは、俺と同じ世界から来たんだ……だから、俺がどうにかしなきゃいけねぇってのに……」
「あまり、自分の事を自分一人で背負わない事だな。」
アリスが来て、ヴィクトリーにそう言った。
「そうだよ、僕達仲間じゃないか。」
「私達だって、ルカやアリスの為にみんなで協力してるじゃない。だから、みんなで頑張ろう?ちゃんと協力するから!」
「きゅ!」
ソニアやヌルコまで、励ましてくれた……
「ああ、ありがとう……」
「それに、いずれ我々の問題は一つに収束する……だから、あまり焦るな。」
「ああ……!」
みんなの励ましで、ヴィクトリーも元気を取り戻したみたいだ。
戦士達は、ナタリアポートに戻った……

ナタリアの砂浜の遥か上空……
「素晴らしい。」
黒のヴィクトリーは、そこに浮かんでいた。
「素晴らしい仲間を得たな、ヴィクトリーよ……見知らぬ小娘やプロメスティンまで仲間になってるのは予想外だが……何とか、やりくり出来ているようだ。」
「それで、上手く行きそうなのか?」
その横には、案の定ドミグラが居る。
「奴は既に私の存在に感づいている……気の察知も鋭くなっているから、こちらを特定されるのも時間の問題だろう。」
「焦る事はありません。いざとなったらあなたには時空間移動が出来るでしょう……?」
「確かにそうだが……」
「それに、奴はまだ私の存在には気付いていない……まだまだ遊べますよ。」
黒のヴィクトリーは、そう言いながらクスクス笑う。
「……っ!」
急に、その胸を押さえて苦痛に悶えた。
「……平気か?」
「っくっくっく……油断すると、すぐこれです……」
モリガンとシオンに付けられた傷は、決して浅いものではない。
なのに、黒のヴィクトリーは自分の体を駆け巡るダメージに歓喜を覚えていた。
「ふっ、ふっふふふ……この痛み……今の私には特に必要なものだ……っくっくっく……」
「……」
ドミグラはカードに戻り、黒のヴィクトリーのカードホルダーに入る。
黒のヴィクトリーは気を消しながら、戦士達を追った……

戦士達は、ナタリアポートへと戻った。
まずは、依頼主の家だ。
「ああ、皆を助けて下さったのですね……メイアから、すでに報告は聞いております。そのような強力な妖魔が存在するとは……なんとも恐ろしいですが、一応はこれで解決ですよね。」
「だけど、最終的にはあいつらもぶっ飛ばさねぇとな。」
ヴィクトリーはグッと拳を握って、そう言った。
「もちろん、今回の件でメイアに責任は全くありません。彼女も、被害者なのですから……」
「あの少年ハーレムに関しても?」
「……」
聞いたソニアも苦笑いし、マーメイドも複雑な表情で目を逸らしている……
「ともかく、マーメイド一同感謝の限りです。お礼の品をお受け取り下さい。」
そう言いながら出してきたのは、役立ちそうなアイテムばかりだった。
エリクサー、魔封じの杖、メロメロの香水……
「仙豆要らねぇんじゃねぇかな……」
「メイアにも会ってあげて下さいね。彼女は責任を感じ、家に閉じこもってしまいました……」
「いくら洗脳されてたって言っても、ショックだろうね。町の人達にも顔を合わせづらいだろうし……」
「変態だしな……」
ルカとヴィクトリーは、息を吐いて互いを見る。
二人共、やれやれだぜという顔をしている。
「本当に、ありがとうございました。我々一同、あなた方のご武運をお祈りしております。」
人魚は頭を下げて、戦士達に礼を言った……

次は、メイアの家だ。
「メイア、元気だしてよー!」
少年が、しょんぼりしているメイアを励ましていた。
「もしかして、メイアさんのお子さん?」
まずソニアが、少年を見てそんな事を言った。
「確か新婚って聞いたけど、こんなに大きい子が……」
「ボク、25歳だよー!メイアの夫だよー!」
「ああ、うん……察した……」
ソニアは、苦笑いした……
「あなた達には、随分とご迷惑をおかけしました。洗脳を解いて下さり、感謝致します。」
メイアは、戦士達に頭を下げる。
「ついでに、凶悪化もな……」
「南海の女王が衰弱し切っている事は、皆には伏せてあります。どうか、女王様の身柄をお預かり下さい……」
そう言ってメイアが出したのは、スルメだった。
「おいしそう……」
アリスがさっそく、涎を垂らしていた。
「……これ、あの話に出てきたスルメだよな。」
「ダメだよ、元に戻してあげなくちゃ!」
一応ルカが受け取り、ペラペラとスルメを持つ。
「……水に漬けても、戻らないよね?」
「特殊な儀式を行い、魔力を与えねばなるまい。今の我々には、その力は無いだろうな……」
「フェニックスの尾でもダメそうだな……仙豆も、こんなんじゃ食えねぇだろうし……」
「じゃあ、大切に保管しておくか。うっかり食べかねないし……」
ルカはスルメを、道具入れの中にしまい込んだ……
「今回の一件、やはり私にも大きな責任があります。私が欲望に飲まれたから、あれほどの大事となったのです。それに……元凶となったあの淫魔。彼女を放置し、私のような者を増やすわけにもいきません。あなた方は、何か因縁があると見ました。」
「……」
今の所、ハーピーの村に病気撒いたり船に強襲してきたりしか被害はないが……
その内、もっと大きな被害が出る筈だ。
「この私も、仲間に加えて貰えませんか?」
「俺はどっちでもいいけど……ルカ、どうすんだ?」
「僕は構わないよ……みんなもいいよね?」
他のメンバーも頷いた。
「ありがとうございます!回復なら、私にお任せ下さいね!」
しかし、少年が泣きそうな顔でメイアを見ていた。
「メイア、行っちゃうの……?やだよー!」
「旦那様……私は責任を取らなければなりません。それに、必ず旦那様の元に戻ってきますよ。」
メイアは一旦、少年の目線にまでしゃがんて、その肩を叩く。
「旦那様はれっきとした成人。私が戻るまで、立派にやっていけるはずですから。」
「うん、分かった……メイアが帰ってくるまで、がんばるから!」
少年とメイアはぎゅっと抱き合ってから、キスした。
「ああっ……」
「な、なんと大胆な……」
ソニアとアリスはそう言いながらも、ガン見している。
「……あいつは前線に出さねぇ方が良さそうだな。」
「そうだね……ポケット魔王城で、傷ついた仲間の医療を担当してもらうよ。」
男二人は、話し合っている。
「……」
「zzz……」
プロメスティンとヌルコは、眠たそうだ……
というより、ヌルコは既に寝ている。
メイアは、少年としっかり抱き合ってから、戦士達に向いた。
「……それでは、今後お世話になりますね。さあ、行きましょう!」
メイアも、新たに仲間に加わった。
これで、ナタリアポートでの事件は解決した。
やはりサキュバス三姉妹の目的も、凶悪化の目的も分からないまんまだが、一応これで何も起きずに済む筈だ。
「よーし……次は、どこに行くんだ?」
「大聖堂サン・イリアだよ。そこで白兎と父さんの情報集めをしないとね。」
既に、新たな旅路は決まっているようだ。
戦士達は、サン・イリアへと向かった……

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サン・イリアでの調査

ナタリアポートで、人魚の連続失踪事件を解決した戦士達。
次に向かったのは、サン・イリアだった。
「うわぁ、すごい……ここがサン・イリアか……」
「ひゃ~……」
サン・イリア大聖堂を中心に、城下町が広がっている国だ。
なんと言っても、城がとにかくでかい。
「荘厳よね……私、一度ここに礼拝に来たかったのよ。」
「そう言えばソニア、僧侶だったね……」
「そう言やおめぇ、僧侶だったな。」
「ちょっと、何で被るのよ!!私を棍棒か何かと勘違いしてない!?地元じゃ清楚でおしとやかな神殿僧侶なんだからね!」
「そのぐらいにしておけ、ドアホめ……」
ギャーギャー言うソニアを、アリスが押さえた。
「さぁ、ここで情報を集めるぞ。聞くべき情報は、白兎と貴様の父親……サン・イリア王にも、会わねばならんな。」
「法王様は、冒険者には快く謁見してくれるっていう話だよね。その分待ち時間はちょっと長いみたいだけど……」
「じゃあ城下町で聞き込みをした後、法王様に謁見よね。さぁ、行きましょー!」
「きゅきゅ~!」
戦士達は解散し、まずは情報集めにかかった……

この旅に繋がりそうな情報は、特に無かった。
しかし、北のお化け屋敷やフェアリーが出る不思議な森……更に、ミスリルが取れるというアモス山という所と、なんか嫌な感じの村が二つぐらいあるのは分かった。
ミスリルを取るのには許可が居るらしいが、装備を強くしたいので是非とも行ってみたい所だ。
「結局、城下町では大した情報は無かったな。仕方ない、サン・イリア王の情報網に期待するか……」
「そうか、ルカの父ちゃんも昔は名の知れた勇者だったっけ……王様なら、何か知ってるかもな……」
戦士達は話しながら、大聖堂へと入った。
「法王猊下との謁見をご希望でしょうか。」
早速、衛兵が声を掛けてきた。
「洗礼を受けているなら、出身地と洗礼年月日をお願いします。」
ルカは衛兵に応え、出身地と洗礼年月日を言う……
「……めんどくせぇな、ここ。」
「シッ!」
ヴィクトリー、軽い気持ちで呟いたらソニアに怒られてしまった。
「はいはい、ちゃんとリストに載っていますね……あれ、これは……特別謁見許可!?」
衛兵はそう言いながら目をぱちくりさせ、ルカ達を見る。
「えっと、こちらにどうぞ。猊下は、最優先であなた達にお会いになるそうです。」
「ああ、そっか……」
ソニアは、思い出したように呟く。
「心当たりあるんか?」
「覚えてないの?洗礼でイリアス様が降臨された話、上の人は知ってるのよ。VIP待遇とか、ちょっとキモチいい……」
「……」
そう言えば、そんな事もあったな……
「衛兵、ヴィクトリーって奴は載ってねぇか?」
「あ、はい!載ってます!しかもルカ殿の隣で、これもルカ殿と同じく特別謁見許可があります!」
「……」
俺、洗礼儀式受けてねぇんだけどな……
「じゃあ、そいつは俺だ。」
「な、なんと!」
そんなこんなで、戦士達はサン・イリア王の所に案内された……

「私がペテロ14世、このサン・イリアを統治している。」
年寄りではあるが、その顔は寛大さを感じさせ、なおかつ王としての風格もある。
「お主達の洗礼の際、イリアス様が降臨された話も聞いている。」
「法王様へのご拝謁、誠に光栄の限りです。じきじきのお目通り、なによりの喜びと……」
ソニア、いつの間にか正装でそんな事を話している。
そんな事より、俺は目の前のサン・イリア王に変な違和感を感じていた。
まぁ、ジジイだからしょうがないっちゃしょうがないんだけど……
気を、全く感じないのだ。
特に神の領域に至ってる訳でも無さそうなのに、気だけが零だ。
いったい、どうなってる……?もしかしたら、このサン・イリア王も使い手なのか……?
「へりくだった挨拶は後にして、さっそく要件だ。」
アリスがソニアの挨拶を遮り、サン・イリア王の前に来た。
「王よ、白兎という魔物に関して情報はないか?」
「白兎……残念ながら、聞いたことはないな。後に文献をあたってみるが、おそらく何もなかろう。」
「まぁ、それもそうか……魔王にさえ秘中の秘、人間に伝承が残っているはずもない。」
「じゃあ、ルカの父ちゃんのマルケルスって奴は知ってっか?」
ヴィクトリーの質問に、サン・イリア王が頷く。
「勇者マルケルスか……彼については、色々と調査がなされた。数年前の、私に対する暗殺事件があったからな。」
「そうか、法王様の暗殺未遂事件で……」
「なんだそりゃ?」
法王暗殺事件……
俺が来るちょっと前に、この爺さんの命を狙って爆弾を使った奴がいるらしい。
その時に疑われたのが、ルカとソニアを育てたラザロって男だ。
イリアスヴィルに居た時にすれ違った事がある。
腕がちょっと曲がった、無気力だがニヒルな感じのおっさんだった。
……と、こんな感じでソニアが説明してくれた。
「はぇ~……」
「ラザロおじさんが疑われたから、その周囲の人物の調査も……もちろん、ラザロおじさんは無実だけど。本当、誤解されやすい人だから……」
「ラザロは、君達の育ての親も同然だったな。」
サン・イリア王はルカとソニアを見て、そう言った。
「なんとも数奇な縁だが、今はあまり関係あるまい……その際の調査で得られた情報なのだが、おそらく君達の知らない事実はないはずだ。彼は品行方正で、その旅において多くの人を助けている。まったく怪しいところはない、勇者の鑑という事だ。しかし数年前に単独で旅に出て、その後の足取りは不明……そういう事になっている。」
「確かに、どれも周知の情報だな。二回目の旅に出るまでは、不審な点はないということか。」
「……」
()()()()()()()()()()()……?
なんか気になる言い回しだなぁ……
「しかし最近において、何ヶ所かで目撃証言があるのだ。イリアス大陸東、そしてサバサのタルタロス……その近辺において、彼の姿が目撃されている。」
「やっぱりタルタロスか……」
「またタルタロスかよ……」
「やはり、異世界を行き来していたのでしょうか。それはいったい、何のために……」
プロメスティンはそう言って、顎に指を当てて考えてみる……
「それ以外に、ひとつ気になる目撃談があるのだ。このサン・イリア城の地下図書館で、彼を見た者がいる。」
「えっ、ここで!?それはいつの事ですか……?」
「一年ほど前の事だ。しかも彼は、地下図書館に一冊の本を寄贈していった。『四精霊信仰とその源流』という古書だが……その意図も、全く定かではないのだ。」
「精霊信仰の本を置いていっただと……?それは、ずいぶん奇妙な話だな。」
「きゅー!きゅきゅきゅー!」
「うるせぇぞヌルコ。その本、今もあるんか?」
「きゅ……」
サン・イリア王は頷き、ヴィクトリーにウィンッと首を向けた。
……今、変な音したような……
「今も図書館の最奥に保管されているはず。親族のお主に譲るのは、全く問題ないが……」
そこまで言って、その顔がどんよりとした顔になった。
「頭の痛いことに、地下図書館は魔物に占拠されている。事実上のダンジョンと化し、立ち入りも難しい状況なのだ。」
「なんでだよ……」
「それも、近年の異変の影響だろうな。イリアス信仰の膝元でさえそんな事態とは、無様な話だ。」
「それじゃあ、僕達が取りに行きます!」
「なぁに、本を取りに行くだけさ!簡単だ!」
ルカとヴィクトリーは、気合いを入れるようにそう言った。
「うむ、気を付けるがいい。何かいい情報が得られるよう、祈っているよ。」
「よし、さっそく行くぞ!何かルカあてのメッセージがあるかもしれん!」
「あの、ちょっと待ってよ。」
急ぐアリスを、ソニアが止めた。
「私達の要件は済んだけど、法王様もなにかお話があるんじゃ……」
「うむ、少し頼みたい事があるのだが……まずは、お主達の要件を済ませるがいい。例の本を手に入れた後、あらためて来て欲しい。その際に、私からの要件について話そう。」
「分かりました。それでは、また来ますね。」
「きゅきゅー!」
「よぉし、とっとと取って、法王様の頼みも聞いてやろうぜ!」
この城の地下図書館……
そこに、マルケルスが一冊の本を残していったのだという。
それを手に入れ、マルケルスの真意を探る。
戦士達は、この城の地下図書館に向かった……

地下図書館、第一層……
「ひゃあああ~~……」
「す、すごい……」
見渡す限りの、本。
ここでは、この世界の人間が残した本が全てあるという。
もちろん、今俺達が見ている所にある本が全てではない。
もう一階下があり、目的の本はそこにあるのだ。
「地下図書館の深層にはこっから入れるみてぇだな……魔物の気が、ウヨウヨしてっぞ……」
「そうだね……気を引き締めて行こう。」
ヴィクトリーとルカが先頭になり、深層に乗り込んだ……

第二層……
「意外と整備されてるみてぇだな。」
「ああ……」
そこはとても、魔物が出る雰囲気ではなかった。
ちゃんと掃除もされていて、本もキチンと並べてある。
目録順はめちゃくちゃだが、それでも外面だけは綺麗だ。
「なぁ、ルカって本とか読むんか?」
「いや、あんまり読まないかな……ほら、僕は宿屋経営してたから、読む時間も取れなくて。」
「そうなのか?」
「本とかは、ソニアが読んでるよ。ほら、恋愛小説とか……」
「わ、私だって女の子なんだからそのぐらい読むわよ……」
ソニアは顔を赤くして、ルカをチラチラ見ながらそう言う。
「本か……あの性悪きつねに、死ぬ程読まされた思い出しかないな。」
アリスはそう言いながら、本棚を見ていた。
「どんなんだ?」
「主に帝王学の勉強用のテキストだ。他にも歴史の本や、様々な魔物の伝承が語られた文献なども読んでる。」
「そっか……アリスは魔王だから、王様の事も魔物の事も勉強しなきゃいけなかったんだな……」
「その通りだ。大変だったぞ、全く……きつねめ……」
「……」
こいつ、どんだけきつねが嫌いなんだ……
「……」
プロメスティンは、凄まじい早さで本のページをめくっている……
「お、おい……読めんのか?」
「言ったでしょう?司書をやっていると。この程度なら、簡単に読めます。」
そう言いながら本を閉じて、元の所に戻した。
「そっか、プロメスティンはそういう仕事をしてたんだな。」
「ええ、この図書館なんて目ではないぐらいの文書を読み、綴ってきましたよ。」
「どんな事を書いてたんだ?」
「別に……イリアスの下らない教えを、わかりやすいように簡略化したものです。」
「あ、ああ……」
本を漁りながら、戦士達は進む。
「きゅ~」
ヌルコも、道中で本を開いた。
「おめぇ、読めんのか?」
「きゅ~……」
「どうやら、読めないらしいね。」
「じゃあ何で本なんか開いてんだ……」
「もう、ヌルコったら……ほら、私が読んであげる。」
ソニアはルカとヴィクトリーのツッコミを横目に、ヌルコの隣に来て、ページをめくった……
次の瞬間、その本から魔物が現れた!
「うわぁっ!?」
「きゅうぅっ!?」
「ちっ……!!」
気付いたら、周囲も魔物で囲まれている。
紙に、女の上半身がくっついたような魔物だ。
「仕方ないわね、やるわよ!」
「きゅ!」
ソニアとヌルコは武器を構え、魔物の群れに突撃した!
ルカ達も臨戦態勢をとり、魔物の群れに切り込んだようだ。
「……どうやら、おめぇの指名は俺みてぇだな。」
「うふふ……」
目の前のモンスター……
本から根暗っぽい女の子の上半身が生えていて、その背後には巨大な手がある。
その本の隅には、257と書かれている……
「じゃあ、257ページか。」
「うふふ、よろしくお願いしますね。」
ヴィクトリーは界王拳を使い、257ページとぶつかり合う。
「だりゃりゃりゃっ!!」
「はぁあっ!」
257ページは、ヴィクトリーの顔にエネルギー弾を放った。
ヴィクトリーはそれを避け、257ページの顎を膝で蹴り上げる。
「っ!?」
「だりゃああっ!」
そして頬をぶん殴った!
「ぐ……!」
257ページは腰を落とし、背後の腕を構えさせる。
「うぉおっ!!」
ヴィクトリーは突っ込んで、拳を固める。
「はぁあっ!!」
「だりゃあっ!!」
二人の正拳突きが、ぶつかり合った!
力と力がぶつかり合い、衝撃が響く。
ぶっ飛ばされたのは、ヴィクトリーだった。
「っ……!!」
「貰いました……!!」
257ページはヴィクトリーに迫り、大きな手でその体を掴みかかった!
「……?」
しかし、ヴィクトリーは居なかった。
「ば、ばかな……!?一体どこへ……!?」
257ページが狼狽えていた、次の瞬間だった。
「がはっ……!?」
いきなり257ページは白目を剥いて、昏倒してしまった……
「……ふぅ。」
ヴィクトリーは、掴まれる寸前で超スピードで回避し、その背中に一撃を放っていたのだった……
「でゃああっ!!」
「はぁああっ!!」
ルカとソニアが、最後のモンスターをぶっ飛ばしたようだ。
「ふぅ……」
これで、魔物の群れは押し返す事が出来た。
戦士達は引き続き警戒しながら、図書館を進むのだった……

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地■■書■■て

サン・イリアの地下図書館を進む戦士達……
「……」
ヴィクトリーは、何かに気付いたようだ。
「どうした?ヴィクトリー?」
「でけぇ気を感じる……」
「なに?ということは、ここに上位の魔物が……?」
ヴィクトリーを先頭に、戦士達は進む。
「……そこかっ!」
ヴィクトリーが扉を開け放つと、そこにはそこそこ大きい妖魔がいた。
無数の触手と、眼鏡をかけた女の上半身……
その女は戦士達を見るなり、臨戦態勢をとった。
「あなた達の目的は分かっています……『四精霊信仰とその源流』を探しているのでしょう?」
「ば、バレてやがる……!」
「……なぜ、それを知っている?」
アリスは、レイピアを抜いてその女を睨みつける。
「魔王様のご命令において、その本は渡せません。どうしてもと言うなら、私を倒して奪っていくのですね……」
「魔王の命令だと……!?余は、そんな……いや、母上の事か!いったいなぜ、貴様等がその本を守る!?マルケルスが残していった本に、何があるというのだ!」
「僕達が読むと、何か不都合な事でもあるのか……?」
女は、眼鏡越しに戦士達を睨んだ。
「魔王様の意図は存じません……が、命令である以上は全うするまで!」
次に、馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「もちろん、ここで逃げても構いませんよ。私の使命は本の守護、あなた達を倒せとは言われていません。」
「ふざけるな、貴様を倒して本を手にしてやる!ルカ、分かっているな!」
「父さんの残した本を置いて、退き下がるわけにはいかない……よし!」
戦士達は、女に突撃する……
かと思いきや、円になった。
「じゃーんけん、ぽん!」
「っ!?」
始めたのは、ジャンケンだった。
「な……!?何をしているのですか、ふざけているのですか!?」
女のツッコミが空気を切りながらも、戦士達はあいこが続く。
「あいこでしょっ!」
勝ったのは、アリスとプロメスティンだった。
「では、私とアリスがあの妖魔を……」
「ああ……ヤバくなったら、行ってやる。」
「ふん、その前に終わらせてくれるわ。」
そういうわけで、プロメスティンとアリスが女に向いた。
「私のページ数は65537ページ……本の妖魔の中でも、それなりにできる自信がありますよ……」
「変な名前ですね。」
「油断するなプロメスティン……」
二人は構え、気を解放した!
「はぁあっ!!」
アリスが切り込んで、65537ページに突きで猛攻する。
「ふんっ!」
しかしそれらをすべて避け、65537ページはアリスのレイピアを白刃取りした。
「今だプロメスティン!」
「はいっ!」
プロメスティンは、指を鳴らす。
次の瞬間、65537ページの肩が発火した!
「ぐぁあっ!?」
「くらえぇっ!!」
アリスも手に魔力を溜め、65537ページの顔面に火の玉を放つ。
「!!」
それは直撃し、見事に顔面を爆破した!
「ぐっ!」
65537ページは持ちこたえ、二人にエネルギー波を放つ。
「しゃあっ!!」
「よっと。」
アリスは弾き飛ばし、プロメスティンは避けて、接近した。
「もう一回……!」
「させるかっ!」
65537ページはプロメスティンを触手で拘束し、捉える。
「なっ……!?」
「はぁっ!!」
そしてエネルギー波を当てて、爆破した!
「ぐ……!!」
「どこを見ている!?」
「!!」
アリスは、65537ページの背中に火の玉を放った!
それは直撃し、65537ページに大ダメージを刻む。
「うっぉおおっ……!!」
「……」
ヴィクトリーは、何かに気付いたようだ。
「ヴィクトリー……」
ルカも同じく、それに気付いた。
「ああ……あいつ、見た目通り火が弱点みてぇだな……」
「だな……火を異様に怖がっている……」
この戦いに、プロメスティンとアリスを採用したのは正解だったようだ。
あの二人には、火の技がある。
プロメスティンの魔導化学が引き起こす燃焼反応に、アリスの黒魔法のファイア技……
「いいぞ、アリス!」
いける……!
ルカは、完全にそう思い込んでいた。
「……」
ヴィクトリーは、そうじゃなかった。
嫌な予感が、よぎったのだ。
「こっちも使わせてもらいますよ……!!」
65537ページは、魔導書をめくる。
そしてそれをすべて黙読した後、アリスに向かって手を突き出した!
「っ!!?」
アリスの体が氷漬けになり、床に落ちた。
「砕けろっ!!」
氷漬けになったアリスに、触手が振り下ろされる……
「っはぁあっ!!」
それが直撃する寸前に、アリスは氷を吹っ飛ばした!
「なっ!?」
「踊れ、サーブル……はぁあっ!!」
華麗な蛇体さばきで、連続突きを繰り出しながら65537ページの背後へと抜ける……
「っ!!」
その触手が、突きと斬撃でボロボロになった!
「なっ!?」
「スキあり……!!」
プロメスティンは、その触手に向かって指を鳴らす。
次の瞬間、触手が発火して、65537ページの体から焼け千切れた!
「きゃあああっ……!!?」
「どりゃあっ!!」
アリスが65537ページの頭に、肘を落とす。
「ちゃあっ!!」
更に顎を蛇体で打ち上げて、その顔面に尻尾の一撃を放った!
「おぐぅううっ!!」
65537ページは壁に叩きつけられ、崩れる。
「このまんま一気に攻めるぞ!」
そう言いながらアリスはレイピアで、65537ページに猛攻した!
「ま、待ってください!何か変ですっ!!このレベルのモンスターがこんな簡単に……!!」
「……」
65537ページはアリスの猛攻に対して無抵抗のまんま、ゆっくりと顔を上げる。
「……なにっ!?」
「はぁあっ!!」
その目が紅く光り、体に禍々しいオーラがまとわりつく。
「!!」
次の瞬間、アリスは思いっきりぶっ飛ばされた!
その体が壁を突き破り、別の部屋へと投げ出される。
「ぐ、ぐはっ……っ!?」
「こ、これは……!確か、海底神殿でメイアさんやその他がなっていた……!!」
「ベイクドスフィアッ!!」
65537ページは、暗黒の爆発波を放ってプロメスティンをぶっ飛ばした!
「きゃあああっ!?」
「み、みんな離れろーーーっ!!」
凄まじい爆発波が辺りを暗黒で包み、消し飛ばした。
「くっ……ほ、本が……!!」
「いや、目的のモンがある所だけ上手い具合に避けてる……」
「当然です……私はこの本を守るためにここに居るのですから……!!」
そう言う65537ページは、既にヴィクトリーの背後に回っていた。
「なにっ!?」
「しゃあっ!!」
ヴィクトリーに、一撃放つ。
「くそっ!!」
ヴィクトリーはギリギリで界王拳を使い、一撃を止めた。
「ヴィクトリー、私も加勢する……!!」
「きゅ……!!」
「ソニア、ヌルコと一緒にアリスとプロメスティンを頼む!!」
ヴィクトリーが65537ページと押し合いながら、ソニアにそう言った。
「で、でも……!!」
「はやくしてやれ!アリスもプロメスティンもひでぇダメージを負ってる!」
「わ、分かった!ほら、行くよ!」
「きゅ!」
ソニアとヌルコは、アリスとプロメスティンの治療に向かった。
「ぐ……ま、待ってくれるなんて、親切じゃねぇか……!」
「ええ……もう待ちませんけどね。」
65537ページは別の触手を揺らし、ヴィクトリーに打ちかかる。
「たぁっ!」
「!!」
しかし、ルカがその触手を真っ二つにした。
「だぁあーっ!!」
揺らぐ65537ページの顔面を、思いっきりぶん殴った!
「ぐっ……!!」
持ちこたえ、床に踏ん張って目の前を見る……
そこには、ルカとヴィクトリーが並んでいた。
「僕に声をかけないなんて、酷いじゃないか。」
「わりぃ……でも、おめぇならそうすると思った。」
そう言いながら二人はハイタッチしてから、背中を合わせて構えた。
「結局、こうなるんだな……」
「だけど……こういうのは本来、勇者である僕達の使命だよ。」
「へっ……!」
「小話は終わりですか……?私も、全力を出させてもらいますよ……」
65537ページは気を全開放し、二人にエネルギー波を放った!
「くそっ!」
「波っ!!」
ルカはそれを避け、ヴィクトリーはかめはめ波で相殺する。
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーの目の前に、65537ページの触手が伸びる。
「だっ!!」
ヴィクトリーはそれを蹴り上げ、気円斬を放った!
「っ!」
触手は切り落とされ、気円斬は顔に向かってくる。
「ちっ!」
65537ページの目が光り、気円斬が消し飛んだ。
「やぁあっ!!」
ルカは天井から身を乗り出し、天魔頭蓋斬を放った!
「ちっ!」
それは見事に白刃取りされるが、ルカは笑った。
「狙い通りだ!」
「え……!?」
そのまんま、65537ページの顔面を蹴りつけた!
「っ!!」
「だぁああっ!!」
ヴィクトリーも床を蹴り、65537ページの腹に両足蹴りする。
「ぐぅうっ!」
「いくぞぉおっ!!」
そして、65537ページにエネルギー波を連射した!
それは直撃し続け、爆発が連続する。
「ちっ!」
65537ページは爆煙を払いながら、ヴィクトリーに手を向ける。
そして、エネルギー波を放った!
「ちっ!」
ヴィクトリーはそれを避け、接近する。
「はぁああああっ!!」
「ふんっ……!!」
凄まじい攻防が繰り広げられ、辺りも揺らぐ。
「でりゃああっ!!」
ヴィクトリーのパンチが、その頬に命中する。
「ちっ!」
65537ページは、ヴィクトリーを触手でぶっ飛ばした!
「あぐっ……今だルカっ!!」
「なにっ!?」
「はぁあ……っ!!」
ルカは、65537ページの懐に潜り込んでいた。
そして、魔剣・首刈りでその巨体を打ち上げた!
「ぐっぇっ……!?」
「だりゃああっ!!」
ヴィクトリーは拳に気を溜め、打ち上がった65537ページの顔面に拳を打ち下ろした!
「ぐぁあっ!」
「そこだっ!!」
ルカはその65537ページの顎に、後蹴りする。
「っぐ……!!」
「だりゃああっ!!」
追い打ちに、ヴィクトリーがその顔面にスレッジハンマーした!
「!!」
65537ページは頭から血を流しながら、二人に向く。
「ふーっ、ふーっ!」
眼鏡のレンズが砕け散っており、それをぶん投げる。
そして、二人に猛攻してきた!
「くるぞっ!」
「分かってる!」
二人は65537ページの猛攻に対応しながら、隙を伺う。
「この……!!」
触手が、ヴィクトリーの所に来る。
「界王拳2倍!!」
ヴィクトリーは界王拳を2倍に引き上げてから、その触手を掴む。
「だりゃあああっ!!」
そして、凄まじい力で65537ページの体を、床に叩き伏せた!
「ぐはぁあっ……!!」
「ふんっ!」
そして体を蹴り上げ、宙に浮かす。
「雷鳴突きぃっ!!」
ルカの血裂雷鳴突きで、思いっきりぶっ飛ばした!
「ぐはぁあっ……!!」
「一気に決めてやる……!!」
ヴィクトリーはそう言い、手を合わせ、エネルギーを溜める。
「かめはめ波ーーーっ!!」
「!!!」
2倍界王拳のかめはめ波が、65537ページに直撃し、大爆発した!
「この私が、こんな屈辱を……」
65537ページは、戦闘不能になった……
それと同時に、凶悪化も解けた。
「くっ、無念……まさか、これほどの力とは……」
そう言い、倒れ付す。
ヴィクトリーはその体を踏みつけ、床にしながら本棚から一冊の本を取った。
「……これか。」
そして、ルカに投げる。
ルカはそれをキャッチし、題名を確認する。
それは、確かに『四精霊信仰とその源流』だった。
「ふぅ、意識失ったみてぇだな……」
「これで、もはや妨害もできまい。」
「これが、父さんの置いていった本……いったい、この本に何が……」
ルカは早速椅子と机を引っ張って、本を開く。
すると、いきなり最初のページに直筆で何か書かれていた。
「これ、父さんの字だ……!」
「なにっ!?」
書かれていた文字……
『ルカよ、四精霊と契約を結べ。歴史を正しく辿る事で、時流の乱れを抑えられる。』との事だ。
「四精霊と契約……?歴史を正しく……あっ。」
ルカ、一本の苗木の話を思い出す。
「……ヴィクトリー……」
「ああ、そういう事だ……」
「何か分かるのですか?しかし、『時流の乱れを抑えられる』とは……?」
「四精霊とは、このセントラ大陸の四箇所に存在する精霊。彼女達と契約すれば、強大な力を得られるというが……」
「この世界の正しい歴史とやらで、ルカが四精霊の力を得て何かしたんだろ。」
ヴィクトリーがそう言いながら、65537ページの頭を椅子にした。
「何をしたのかは具体的には分からねぇ……ただ、その時流の乱れってのは世界線の分岐で間違いなさそうだ。」
「なるほど……それを収束させるために、ルカに四精霊の力を……」
アリスはそう言って、手を叩いた。
「四精霊との契約、余は賛成しよう。力を得られるというだけでも、悪い話ではないはずだ。」
「そうだね……僕は、四精霊と契約するよ。それが多分、世界の異変を何とかする手段の一つなんだ。それに、更なる力も必要だよ。これから先、ますます強い敵と戦うことになるんだから。」
「ああ……わくわくしてくるなぁ。」
四精霊の住処などは、この本に記してある。
ここから最もちかいのは、シルフのいる精霊の森だ。
「あれ……?この本、まだ何か挟まってるよ?」
ソニアはそう言いながら、それを取り出す。
それは、『召喚師の盟約書』だった。
「召喚師になるためのアイテムだな。もっとも、魔力が極まっていなければなれはせんが。」
「父さん、こんなものまで用意してくれたんだ……」
「でも、これでまた目的が増えちゃったわよね。」
「ああ……白兎にタルタロスにルカの父ちゃんに、そして黒のヴィクトリーとミラとトワとドミグラに……そんでもって、この四精霊か。」
「各地を巡り、順々にこなすしかあるまい。その旅路で、白兎とマルケルスの情報を集めるとしよう。ここから近いのは、シルフのいる精霊の森だな。契約すれば、風の力が手に入るはずだ。だが、今の実力では……」
「分かってるよ。」
ヴィクトリーはアリスの言葉を遮り、笑った。
「だったら、もっと強くなってから行けばいいさ。カンタンだろ?」
「あ、ああ……」
ソニアが、いきなり思い出したような顔をした。
「そう言えば、法王様も何かお話があるみたいじゃない。こっちの用は済んだし、伺ってみようよ。」
「うん、そうだね。」
「よっしゃ、法王様の頼みとやらも聞いてみっか!」
本を手に入れ、この地下図書館にもう用はない。
法王様の話を聞きに、戦士達は図書館を後にした……

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聖山アモス

地下図書館で、目的を果たした戦士達。
向かったのは、サン・イリア王の所だった。
「道を見出した顔をしているな……例の本、とても役に立ったようだ。さて、以前にも言っていた通り……君達に、ぜひ頼みたい事があるのだが。」
「おっしゃ!何でも来い!」
ヴィクトリーがそう言って、ソニアに無言でしばかれる。
その目の前で、騎士団長がサン・イリア王の横に来た。
「猊下、差し出がましいようですが……彼等を供にするのは、危険です!」
次に騎士団長は、こちらを向いて頭を下げた。
「お気を悪くされたなら、謝罪します。しかしこれは、非常に危険な任務なのです。本来なら、小隊規模で行われるべき護衛任務。それを、10人にも満たない数で行うなど……」
そして、またサン・イリア王の方を向いた。
「猊下にも彼等にも、あまりにも危険過ぎます!どうか、お考え直しを……」
「……では騎士団長よ、意見を聞こう。」
サン・イリア王は、騎士団長の方を向いた。
その目には、僅かながら威圧的なものがある。
「君なら、例の任務にどの程度の力量が必要だと考える?」
「あくまで目安ですが……ミスリル製の装備品を扱えるレベルでなければ、話になりません。」
「ふむ……」
サン・イリア王は頷き、戦士達に向いた。
「ルカよ、そういう事だ。騎士団長は、ミスリルの品が扱えるレベルが前提だという。すまないが、任務の詳細な内容は話せないのだ……受けてもらえると君達が確約するまではな。」
「随分と勿体ぶるじゃねぇか……何か、やましい事でもあんのか?」
「こら、失礼でしょ!」
ヴィクトリーは、またソニアにしばかれてしまった……
「決断は、君に任せよう。準備と覚悟が出来たら、再度私に声をかけてもらいたい。なお、ミスリルの装備品に関しては、騎士団長に聞くといい。あれは鍛冶屋の特注品、素材を持ち込まねばならんものでな。」
「分かりました、少し考えさせて……」
ルカはサン・イリア王に頭を下げる……
「なぁ騎士団長さん!ミスリル取りに行きてぇから、許可が出せる所教えてくんねぇか?」
もう早速、ヴィクトリーが騎士団長に声をかけていた。
「ぐ……なんと遠慮なしな……」
「おめぇだって、俺達が話してる所に横槍入れてきたじゃねぇかよ。」
「それは、お詫びします……しかし、極めて危険な任務なのです。あなた方の命を守るためにも、なにとぞご理解下さい。」
「命を落とすかも知れねぇぐれぇ危険な任務か……ますますわくわくしてきたぜ……」
騎士団長は、ヴィクトリーを変な目で見た。
「……命が惜しくないのか?」
「そりゃ命は惜しいさ。だけど、それ以上に俺は戦うのが好きなんだ。まずは死なねぇようにしねぇとな。だからミスリルを取る許可が欲しいんだけど……」
「……」
騎士団長は、ヴィクトリーの目を見る。
その目は、言葉通りの色を放ちながら光っていた。
ただの狂人かと思えば、少年的な純情がそこにあるのだ。
「ミスリルが、アモス山って所にあるのは分かってんだ。だから、許可だけ……」
「いや、許可は私の方で手続きをしておこう。」
「本当か!?サンキュー!」
ヴィクトリーはそう言って、戦士達の所に駆けた。
「よっしゃあ!みんな、アモス山に行こうぜ!」
「あ、ああ……」
「凄まじくアクティブだな貴様は……」
「すみません、私の連れがこんな無礼な奴で……」
ソニアがそう言いながら、騎士団長に頭を下げる。
「あ、ああ……」
そういう訳で戦士達は、アモス山へと向かった……

サン・イリアを少し東に行って、北上した先……
そこには、凄く高い山がそびえていた。
「この山に、ミスリル鉱石があるのだったな。さぁ、さっさと登るぞ!」
アリスはそう言って、踏み込んだ。
しかし、立ち止まって山頂付近を見詰めた。
「……?山頂の方から、大きな力を感じるな……」
アリスの言われた通り、山頂辺りの気を探ってみる……
確かに、大きな気がそこにあった。
「ああ……すげぇ気だ……」
「この嫌な感じ、もしかして天使か……?だとすると、かなり高位の天使だぞ……」
「ええ……若輩天使の私でさえ感じ取れます。羽根がビリビリしていますよ……」
「山頂に、高位の天使が……?」
「おい、面白そうだぜ。ミスリルを取ったあと、行ってみようぜ。」
「うん、そうだね。」
戦士達は、早速山を登り始めた。
「……」
ホントは舞空術使って、山頂まで飛べばいいんだけど……ここは、皆のペースに合わせるとしよう。
「それにしても本当に高いわねこの山……」
ソニアは、山頂に目を向ける。
山頂は、まだまだ先のようだ。
「この地域で、一番天国に近い山って呼ばれているそうだよ。」
「だから、聖山アモスか……」
ヴィクトリーとルカを先頭に、戦士達は進む。
当然のように、魔物は強襲してきた。
岩陰から、ヴィクトリーに向かって舌が伸びてくる。
「!!」
舌はヴィクトリーの腕に巻き付き、思いっきり引っ張った!
「うわぁあああっ!?」
「ヴィクトリーっ!?」
「あはっ!」
ヴィクトリーが見たその顔……
それは、アリクイ娘の笑顔だった。
「くっ!!」
山から投げ出される寸前に、地面に踏ん張る。
そして高速移動でアリクイ娘に迫って、腹に一撃した!
「あぐぅっ……!?」
「だりゃぁあっ!!」
そしてアリクイ娘をタコ殴りにして、アッパーする。
舌は解け、ヴィクトリーは開放された。
「ぐ……やるっ!」
ルカ達……
「はぁあっ!!」
ルカとソニアは、二体のラミアを相手にしていた。
「ぐ……!!」
「す、すばしっこいわね……!!」
シスターラミアと、ラミアだ。
その二体の猛攻を、持ち前のスピードで対応する。
「はぁあっ!!」
そして、ラミアの方を蹴り飛ばした!
「!!」
ラミアは岩壁に叩きつけられ、倒れる。
ルカはシスターラミアに目をつけ、攻撃を放つ……
「ヒールっ!」
「なにっ!?」
「はぁあっ!」
さっき蹴り飛ばしたラミアが復活し、ルカをぶっ飛ばした!
「ぐ……!!」
「はぁあっ!!」
追い打ちをかけようとしたラミアの背中が、いきなり発火した!
「っぎゃああっ!?」
「っ!そこだっ!!」
怯んだラミアに、魔剣・首刈りをしてぶっ飛ばした!
「はぁあっ!!」
そこに飛び込んできたのは、プロメスティン。
踵落としで、ラミアを地面に叩き下ろした!
「ぐはっ……!!」
今度こそ、ラミアの方を倒した。
「きゃあああ……!!」
「回復はさせんぞ……!!」
シスターラミアを、アリスがきつく巻き上げていた。
「はぁあっ!!」
そしてコマのように回し、尻尾で打ち付けた!
「あーれー!」
シスターラミアは猛回転しながら壁にぶつかり、そのまんま気を失ってしまった……
「ここまでです、野蛮な冒険者達!ここから先は、このシスキュバスが通しません!」
シスターの格好をした、サキュバスがルカの前に立つ。
しかし……
「……うしろ。」
「……え?」
シスキュバスが後ろを振り向いた瞬間、ヌルコの触手がその体を拘束した!
「っきゃああっ!?な、何をするの……!?ま、まさか……このまんま、私に乱暴する気なのですね!?エロ同人みたいに!」
「黙りなさーいっ!!」
ソニアの棍が、シスキュバスの脳天にクリーンヒットした!
「はらほろひれはれ……」
シスキュバスは頭に星を回してしまう。
ヌルコは、とりあえず拘束を解いた。
「わたし、わるいサキュバスじゃないですよ。」
意味不明なことを言いながら、ふらふらとよろめく。
「だりゃぁあっ!!」
「ぎゃあっ!!」
アリクイ娘がぶっ飛んできて、シスキュバスに激突した!
「かめはめ波ーーーっ!!」
ヴィクトリーはかめはめ波を放って、二体に直撃させた!
かめはめ波は、大爆発を起こした!
「ふぅ、魔物の群れもこれで押し返せたかな……」
ルカはそう言って、臨戦態勢を解く。
「……何か俺、最後に二体ぐらい倒した気がすんだけど……」
「気のせいではないか?」
ヴィクトリーやアリス達も臨戦態勢を解いて、また進んだ……
「それにしても、聖職者モンスターが多いな……これも、ここが聖山だからか?」
「みたいだね……」
ヴィクトリーとルカは会話しながら、周囲を見る。
悪意の無さそうなシスキュバスやシスターラミアが、苦笑いしながら会釈していった。
先の派手な戦いが、よほどこたえたらしい……
そうこうしながら進んでいると……
「これだな……」
巨大なミスリル鉱石が、そこにあった。
「これをサン・イリアの鍛冶屋に持っていけばいいんだね。」
「だな……もう、誰が持つ議論はしねぇぞ。」
ヴィクトリーが、ミスリル鉱石の一部を抱える。
「さて……」
「ああ……」
戦士達は下山せず、山を登り進める。
「はぁ……はぁ……」
見覚えのある姿が、そこに居た。
「ここを登れば、ようやく山頂ですよ……」
「イリアス様。」
ヴィクトリーが声をかけて、イリアスが向く。
「あなた達も気付いたようですが……山頂から、異様な力を感じます。そこで、あなた達に先を譲りましょう。何か良い事が起きるかもしれませんよ……」
「ふん……我々を先に行かせて、安全確認をさせる気だろう。貴様のずる賢い魂胆など、お見通しだ。」
アリスが出てきて、イリアスに言った。
「否定はしません……が、気になりませんか?」
「確かに……山頂に、何があるんだろう……」
「ああ……イリアス様、これ預かってくれ。」
「ん?」
ヴィクトリーは、イリアスにミスリル鉱石を渡した。
「って、おもっ!?」
「行くか……」
「ああ……」
ヴィクトリーとルカを先頭に、戦士達は山頂へと進んだ……

急に、辺りが暗くなった。
「なんだ……!?急に暗くなるなんて……!」
「強力な魔力が、気候や天候にさえ影響を与えているのだ……いったい、山頂に何がいるというのだ?」
ルカとアリスの横で、プロメスティンが震えていた。
「これ、熾天使級じゃないんですか……?地上に降臨するクラスじゃないですよ……!」
「……!」
ヴィクトリー、何かを察知する。
「どうしたヴィクトリー!?」
「あっちに、死にかけの気がある!」
そう言って、走り出した。
「ちょっ……一人で行くなって!」
ルカ達も、ヴィクトリーを追って走る。
「はぁ……はぁ……」
「ヴィクトリー……これは……!?」
ルカとヴィクトリーが並び、それを見る……
「う……ううっ……」
天使が倒れている……瀕死の重傷を負っているようだが……
「そ、そんな……この人は……!!」
「……ぐっ!」
二人に、頭痛と幻覚が走る。
見えたのは、イリアスに似たような大人の女……
そして、時空を突き破った白翼……
「ミカエラさん!?」
「ミカエラさんっ!」
「ミカエラだと!?それはルカの伯母の……いったい、何があった!生命力が今にも消えそうだぞ!?」
「ルカ、なのですか……」
ミカエラは、ルカの顔を見た。
「まさか、最期の時に会おうとは……」
「最高位の天使と見たが……いったい誰が、これほどの事を……」
「油断してはいけません……奴は、まだここに……」
「……っ!!」
ヴィクトリーは、上空に目を向けた。
それに釣られ、ルカ達もヴィクトリーと同じ所を向く。
そこには、異形の天使が浮遊していた。
辛気臭い表情をした、体の組織の半分近くが機械で出来たような天使だ。
周囲に立ち込めた強大な魔力は、この天使のものに違いない。
「お、お前はいったい……!!」
「我は、熾天使グノーシス……罪人に天罰を下すのが、我が使命……」
「熾天使……って事は、シオンと同格か……」
「ミカエラさんをこんなにしたのは、お前か!!」
ルカはそう言って、グノーシスに剣を向けた。
グノーシスは、無表情のまんまルカに向いた。
「半分は私だが……もう半分は、彼女がこの地上で暮らした日々。汚れた大地で、自ら力を断っての長い暮らし……その日々が、強大であったはずの力を大幅に弱めたのだ。全盛期の力であれば、私に勝ち目などなかったろう……なんとも惨めで、哀れなものだ。」
「なるほど……地上暮らしで弱った天使を倒して得意顔か!」
アリスがそう言った横で、ヴィクトリーが舞空術で飛ぶ。
そして、グノーシスと同じ目線に来た。
「……俺は、ミカエラさんにはこれっぽっちの義理はねぇ。だけど、おめぇはぶっ壊さねぇと気がすまねぇ……!!」
「待て、少し試算する……」
グノーシスの頭から、カチャカチャと音がする。
「現在のルカおよび魔王の断界乖離(かいり)26%……平均に比べて大きいものの、決定的段階には至らない。全員を処刑した場合、第三種断界接触に該当……カオス化の進行率125%、侵食範囲67%増……また一人はマルケルスの血統。この世界において、かの男の周辺が最も時空偏差が大きい……」
「マルケルス……!?」
「お前、父さんを知っているのか……!?」
グノーシスは、ゆっくりとルカの方へ向いた。
「……リスクが多すぎる。お前達は処刑できない。まだお前達は、歴史に沿って動いているのだから。」
「なんだと、どういう事だ!?」
そう言い放つアリスに、グノーシスの目線は向く。
「神の導きに従い、慎ましく生きるがいい。歴史の流れから逸れた時、我々が裁きに現れよう……」
グノーシスは、次にヴィクトリーの顔を見た。
「なるほど、貴様が正史のエデンの……そして、この世界の……いや、言うまい。」
「何言ってやがる!!」
ヴィクトリーは界王拳を使い、グノーシスに殴りかかった!
しかし、魔法の防御壁がヴィクトリーの拳を止めた。
「焦るな……シオンは反対したが、私は貴様を生かすべきだと考えている……こんな下らないことで、力を使うんじゃない……」
「何を……!!」
ヴィクトリーがもう一撃放とうとした時、グノーシスは煙のようにふっと消えてしまった。
それと同時に、周囲に張り詰めていた魔力も消え失せてしまう。
「わっ!?」
ヴィクトリーの一撃がすっぽ抜け、からぶる。
「くそっ……逃がしたか!」
仕方なくヴィクトリーは、皆の所に降りた。
「あいつは!訳の分からない事を並べて、結局逃げるとは……!」
「奴は去りましたか……」
ミカエラが、ボロボロの体をルカに向けた。
「よかった……今のあなた達では、勝ち目など……」
「ミカエラさん、しっかり……!ソニア、回復をお願い!」
「既に回復魔法を使ってるんだけど……全然効かなくて……」
「ヴィクトリー、ミカエラさんに仙豆を!」
「だ、ダメだ……食道が焼かれてる……ひでぇ事を……!!」
「何をしようと無駄です……既にこの体は、生命力の殆どを失っていますから……」
「そ、そんな……何もできないなんて……!!」
「く……くそったれ……!!」
絶望するソニア、悔しがるヴィクトリー……
そんな二人を横目に、ミカエラはルカと話し続ける。
「ひとつ、心残りがあります……ルカ、あなたに何もしてやれなかったこと……」
「……」
「せめて、残された最期の力で……あなたに、勇者としての力を……」
ミカエラは手を差し伸べ、ルカの手に重ねた。
その瞬間、暖かな力がルカの体に流れ込んでくる……
「……!!」
ルカの潜在能力が、グンと引き上げられた!
「こ、これは……この力は……!!」
「……」
ナメック星の最長老が、似たような事をやっていたのを思い出す。
今のルカは眠った力を呼び覚まされ、勇者としてのきっかけを得たのだ。
「まさか、これは洗礼か……?女神イリアスにしか使えないはずの、聖素循環の力……!」
「み、ミカエラさん……!」
「ぐふっ……」
ミカエラは、ヴィクトリーに目を向けた。
「先の洗礼……使う力はもう残されていません……ごめんなさい……あなたに、真実を伝えられずに……あなたを巻き込んでしまった事を、詫びる事も出来ず……」
ミカエラはそこまで言って、大量に吐血した!
「も、もういい!喋んじゃねぇ!マジで死んじまうぞ!」
「ミカエラさん……!」
「私に出来ることは、ここまでです……ルカ、ヴィクトリー……どうか、世界を…………」
ミカエラの気が、完全に消えた。
その体は、光の粒子となって消えていく……
「ミカエラさん……」
「……」
「……」
目の前で、ミカエラが死んだ……
二人にその悲しみと無力感が、胸に広がっていく。
「……ルカ。」
「……ああ。」
だが、この胸にあるのは悲しみだけじゃない。
「二人共、大丈夫?ここでしばらく休んでいく……?」
「きゅ……きゅきゅ……」
ソニアとヌルコも、二人の背中を見て心配していた。
「……俺は平気さ。だけど……」
「いや、僕も大丈夫だよ。ミカエラさんから、大切なものを受け取ったから。」
「……」
ルカは、ずっと勇者に憧れていたようだった。
無邪気に、ただ童心のままに勇者になりたいと願っていた。
しかし、今となってはその勇者の力の重みが違う。
ミカエラさんが、命を捨ててまで託してくれた力なのだ。
「……報いねぇとな。ミカエラさんの為にも。」
力だけではない。
世界を守る、その意志が受け継がれているのだ。
「ミカエラさん、安らかに眠って下さい。僕達は、その想いに恥じない勇者になります!」
受け継がれた力と、そして想い。
ルカには、またひとつ倒れられない理由が出来たのだった。
「また一つ強くなったな、ルカ……貴様は、人の想いを抱えて強くなるのかもしれん。」
「辛い時は私に頼ってよね、ルカ。いくらでも力になるから……」
「ああ……ありがとう、みんな……」
「……」
ヴィクトリーは、ミカエラの倒れた所を見ていた。
「あなたが誰かは存じませんが……その想い、無駄にするわけにはいきません。だから……あなたの想いを、少しだけ俺に分けてください。」
そして、拳をグッと握った。
「……」
静かに祈ってから、ルカ達の方へ向いた。
「しかし、なぜ同じ天使のはずのグノーシスがミカエラを……」
アリスはそう言いながら、今度はルカとヴィクトリーに向く。
「それに、二人共……貴様らはミカエラと面識が無かったはず。なぜ、一目で分かったのだ?」
「……知ってる感じがしたんだ。一瞬、目の前に色々な光景が浮かんで……」
「俺も、あの頭痛と一緒に色々なもんが見えたんだ……多分、ルカのと同じだ。」
「なにか、精神的な繋がりがあったのか……それとも、平行世界を行き来する力が絡んで……」
色々言うアリス……
ルカは、ヴィクトリーに向いた。
ヴィクトリーも頷き、笑顔を返す。
「とにかく、行こう!まだまだやる事が山積みなんだからね!」
ミカエラから受け継いだ想い。
それは、この世界を救うこと。
僕達はその信念と、そのための力を託された。
悲しみも胸に、前に歩き出さないといけない。
冒険は、まだまだ続く。
戦士達は、その一歩を踏み出した……

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護衛任務

アモス山でミスリルを手に入れた戦士達は、サン・イリアへと戻った。
そして鍛冶屋でミスリルの装備を手にして、サンイリア王のもとへ向かった……
「どうやら、心は決まったようだな。私の頼み……とある護衛任務を受けてくれるかな?」
「はい、頑張ります!」
ルカが意気揚々と答えると、応じるようにサン・イリア王も微笑んだ。
「おお、ありがたい!それでは、細かい話を始めよう……」
サン・イリア王はそう言って、咳をついた。
「近いうちに、とある儀式を行う必要がある。古代神殿跡の再奥にて、イリアス様に祈りを捧げる儀式だ。もちろん、祈りを捧げるのは私なのだが……その古代神殿跡は、魔物が出没し非常に危険なのだ。」
「なるほど……それで、護衛任務ですか。」
「知っての通り、現在の戦争で我が軍は遠征軍を出している。それゆえ、精鋭の騎士も全て出払っているのだ。この儀式は秘するべきものゆえ、護衛は選ばねばならん。祝福なき勇者達ならば、信頼に足るだろう。」
「期待されてんだな……へへへ、簡単じゃねぇか。法王様に傷一つ付けることなく神殿のモンスターを叩きのめしゃいいんだろ。簡単じゃねぇか。」
ヴィクトリーは早速気合を入れてるようで、拳をパンッと叩く。
「古代神殿の内部では、強い魔物が出現する。往復の道のり、よろしく頼むぞ……」
「分かりました、お任せ下さい!それで、儀式はいつになるんですか?」
「今すぐ、古代神殿のあるラダイト村に行ってもらいたい。私も準備を終え、すぐに向かうとしよう……ラダイト村に着いたら、現地の神父に話し掛けてくれ。合流の手筈は、こちらで整えておこうぞ。」
「もしかして、内部でも極秘なんですか……?」
ソニアがそう言うと、サン・イリア王はそこに目を向けた。
「いえいえ、詮索したつもりではないですけれど……」
「色々と、デリケートな儀式なのだよ。場所がラダイト村というのもあり、万全を期したいのだ。」
「……」
ヴィクトリーは、腕を組んだ。
デリケートな儀式……か。
「それでは、先に行きたまえ。くれぐれも、任務に関して他言は慎むようにな……」
「分かりました……では、お先に。」
ルカはそう言って、サン・イリア王に頭を下げた。
なんだか、どう考えても奇妙な任務だ……
とはいえ、疑念を挟むような立場でもない。
目的地は、ここから北東にあるラダイト村。
そこの神父に会い、現地で再び法王と合流しなければ。
戦士達は、まずはラダイト村へと向かった……

ラダイト村……
嫌な感じがする、質素な村だ。
ここはイリアスの教えを、ただ純粋に信じている者の村である。
そして、機械類……もといマキナを否定する、反マキナ派というものが発達している。
何より寂しいのは、ここの村は完全に自給自足で暮らしているため、すげぇ質素な事だ。
「……自給自足、ねぇ。」
「自給自足でやっていた時代、人間の寿命は今の半分ほど。医療技術の差よりも、栄養状態の偏りが大きいんです。」
ヴィクトリーの言葉に、プロメスティンがそう返す。
「遠方と取り引きが行われ、様々な食事を口に出来るようになると、各集落で見られた栄養の偏りは根本的に改善されました。それを逆行させれば、平均寿命がまた縮んでしまうでしょう。文明の退行とは、そういうものですよ。」
「新しいものを受け入れなきゃ、強くなれねぇ……むしろ、退化していく一方なのによ。」
そんな会話をしていたら、村中の男からすごい顔で睨まれた。
「……何も言わねぇんか?プロメスティン。いつもなら嫌な事言って、相手を黙らせてんのに。」
「論破というのは、される側にもある程度の知識が必要です。ここの方達は、その水準に達していません。」
「そ、そっか……あはは……」
「ヴィクトリー、ここだ。」
ルカはそう言って、ヴィクトリーを民家へ連れていく。
その民家……
神父が、戦士達を待っていたようだ。
「猊下の護衛とは、あなた達の事ですね。お話は既に聞いております……法王猊下もじきにいらっしゃいます。我等も合流地点に向かいましょう。」
「よっしゃあ、行こうぜ。」
ヴィクトリーは、先に行こうとする。
「いえ……」
しかし神父はそう言って、戦士達を止めた。
「私達がここを出ては、村人に怪しまれます。あなた方はら先に西外れに行ってもらえますでしょうか。」
「あの……そこまでして秘密にしておきたい儀式なんですか?古代遺跡で祈りを捧げるって、別に大した事じゃ……」
「これは、教会の最高機密。」
ソニアの言葉を遮り、神父はそう言って準備を進めていた。
「じきにあなた達も、目にする事になるでしょう……」
「宗教には秘蹟がつきものですが……少し異なる感じがしますね。」
プロメスティンは、そう呟いた。
「……そういう訳で、村の西外れにお願いします。くれぐれも、村人には悟られぬよう……」
「はい、分かりました……」
なんとも不可解だが……
言われた通りにするしかない。
戦士達は民家を出て、西外れへと向かった……

言われた通り、さっきの神父が待っていた。
「おめぇ、どうやって先回りしたんだ……?」
「軽い転移魔法です。」
ヴィクトリーの質問に答えてから、神父は周囲を見る。
「尾行もいないようですね。それでは……」
そう言い、先頭に立った。
「この森の奥に、古代神殿跡のある洞窟があります。さぁ、行きましょう。」
「きゅー!」
先を歩きながら、神父はヌルコに目を付けた。
「おや、この生き物は……」
「ヌルコってんだ。やけに元気だな……」
「きゅ、きゅー!」
「不思議な生き物ですね……」
そして、案内される事数分……
それらしき洞窟の、入口が見えてきた。
その横に、サン・イリアの衛兵が立っている。
「法王猊下が中でお待ちです。どうか、護衛をよろしくお願い致します。この洞窟の奥に、古代神殿跡があります。洞窟内ではまだ魔物が出ませんので、ご安心を……」
そう言って、戦士達を洞窟へと通した。

「どうぞ、お通り下さい。無事に終わらん事を願っております。」
「ああ、サンキュー!」
戦士達は、神父を先頭に洞窟を進んだ。
「少々、ここのお話でもしておきましょう。これより立ち入る、古代神殿跡についてです。」
「……」
俺は、神父の話に聞き入った……
教会派と反マキナ派が分裂する前……
まだラダイト村が出来る前に、話は遡る。
たまたまこの洞窟に踏み込んだ奴が、偶然にもここを発見。
それを伝えられたサン・イリアの連中は、凄まじいものを目にしたらしい。
それ以来、サン・イリアはこの一件に箝口令(かんこうれい)を敷いた。
表向きは『古代神殿跡』として、信仰の場と喧伝したのだ。
つまる所、『古代神殿跡』は建前でそう呼んでいるだけで、本当はそんなものじゃないのだ。
この後に教会派と反マキナ派が分裂し、反マキナ派はこの地に村を作った。
あの取ってつけたようにボッロボロで寂しくて質素なラダイト村の事だ。
古代神殿がある地として、信仰回帰の意味合いがあったらしいが……
あいつは、この遺跡の正体を知らないようだ。
そうでなければ、絶対にこの地に村など築かねぇ。
神父は、そう言っていた。
「つまり……どういう事なんだ?」
「その遺跡って、いったい……」
「……後は、実際に目にして下さい。いかなる言葉よりも、実物が全てを語ります。」
神父はそう言って、言葉を濁した。
「……百聞は一見に如かずって奴か。」
戦士達は、進む。
そして、サン・イリア王の姿が見えてきた。
「猊下、一行をお連れしました。」
「うむ、大義だった。お主は教会に戻るがいい。」
「はっ……猊下、くれぐれもお気をつけを。」
神父はサン・イリア王に頭を下げ、戦士達に向いた。
「皆さんも、猊下の御身をよろしくお願い致します。」
戦士達にそう言って、神父は村に戻っていった……
「それでは、ここから先は私が同行しよう。よろしく頼むぞ……」
サン・イリア王はそう言うと、今度は戦士達の後ろに入った。
「分かっているだろうが、私は全く戦えん。そういう訳で、遺跡最奥までの護衛は頼んだぞ。」
「はい、私にお任せ下さい!」
ソニアが元気よく出てきて、サン・イリア王の前でアピールする。
「猊下を害する者は、この棍棒でボコボコですよ!」
「あはは、見ろルカ!いつに増してソニアが頼もしいや!」
「あはは……」
ソニアのお陰で、リラックスする戦士達だが……
「その言葉が本当なら……育ての親のラザロを、真っ先に叩きのめす羽目になるな。」
法王は、いつもの冷静を崩さずにそう言った。
「えっ!?」
「これは失礼、ちょっとした冗談だよ……」
「猊下のブラックジョークなんて、心臓に悪いですよ!」
「ラザロには、爆弾で派手に吹き飛ばされたからな……私も聖人ではないから、そう簡単に恨みは忘れられんよ。」
「聖人じゃないって……法王猊下、世界でいちばん聖人デスヨネー!?」
「君の反応はいちいち面白いな。」
「ああ、法王猊下にノリツッコミなんて……私、地獄行きになっちゃうかな……」
「いやいや、少しからかっただけだよ……」
ここでサン・イリア王はソニアに微笑んでから、遺跡の入口へと向いた。
「さあ、それでは行くとしようか。」
「はい……!」
「へへへ、面白そうじゃねぇか……!」
戦士達は気合を入れて、遺跡へと踏み込んだ……

「なんだ、ここ……!?」
「いってぇ、何の冗談だ……!?」
「これの、どこが古代神殿だ!」
ルカとヴィクトリーとアリスが、声を上げる。
目の前の光景……
この世界では考えられないほどの、オーバーテクノロジーがそこに広がっていた。
「表沙汰に出来なかった理由は、こういう事か……」
「これ、最新の研究設備じゃないですか……私の知っている技術より、数百年は先行しています……!」
プロメスティンもそう言って、眼鏡を上げながら辺りを見回す。
「きゅきゅー!」
「しかしなぜ、こんな設備が地下に?滅びてから、かなりの時間が経っているようだが……」
「発見以来、ここが最高機密とされたのも頷けよう。こんなものが、大々的に公開できるはずもない。教会はここから、様々なマキナや技術を持ち出し……そして、独自に研究を行い、今も解析を続けているのだ。」
「それで、何が分かったのだ……?」
「この研究所が何なのか、誰が作ったのか……その類の記録は全く無く、謎に包まれている。技術に関するマニュアルは、それなりに残っていたのだが……ここの技術者達は、自己顕示欲が皆無だったらしいな。」
サン・イリア王はそう言ってから咳をつき、奥を見た。
「話もそこそこにして、先に進むとしよう。ここで研究されていた「もの」達には気をつけたまえ。」
先に進もうとすると、プロメスティンが挙手した。
「あ……先に行ってください。私はちょっと調べて回りますので……」
「今は、私達と一緒に行くわよ。敵が出るみたいだし、一人じゃ危ないでしょ?」
「では、細かな調査は後に……うふふっ、ワクワクしてきました……!」
「……」
進みながら、ヴィクトリーは辺りを見回す。
「……皮肉だと思わねぇか?」
「ほう?」
意外にも、サン・イリア王が反応した。
「反マキナ派……機械類を嫌ってる連中の総本山に、こんなものがあるんだ……この事を連中が知ったら、どうなるんかな。」
「そのための衛兵だ……ここの洞窟の入口に、衛兵が居ただろう?」
「でも、住民みんなでタコ殴りにしちまえば流石のあの兵士の一人や二人ぐらい……」
「君は面白い発想をするな……そのような事があれば、出せる限りの我が軍が向かってこの村の住民を鎮圧させる。当然、あの村に国の兵士達と戦う力は無い。彼らはサン・イリアとの全面戦争は避けたいと思っているのだよ。」
「そっか、反マキナ派は少数派閥……流石の連中にも、国家と戦う力はねぇのか。」
「その代わり、口は達者だがな……彼等はあの衛兵や私達の事を、信仰を忘れて権力にしがみつく俗人と呼んでいた。」
「へっ、俗人はどっちだか分かんねぇな……俺はあの村大嫌いだ。」
「そう言うなヴィクトリーよ。あのようなものでも、命は命なのだ。守ってやらねばならん存在だ。」
「……優しいんだな、法王様って。」
そんな会話をしながら、戦士達は研究所を進む。
この先に、何があるのか……?
そして、この研究所の正体は……?

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展開される超過技術

サン・イリア王の護衛任務を受け、連れられる戦士達。
戦士達の目の前に広がったのは、超過技術の光景だった。
あのタルタロスの内部と同じような、よくわからない機械が作動している。
ついでに……
「……空調(エアコン)が効いてる……どうやら、研究所もまだ作動してるみてぇだな……」
「ああ……」
ルカとヴィクトリーがそんな話をしながら、進む。
「……これも、マキナみてぇだな……」
ヴィクトリーが持っていたのは、マシンバルカンだった。
「きゅ、きゅ。」
「ああ、分かった分かった。」
ヴィクトリーは、ヌルコにマシンバルカンを持たせる。
ヌルコは受け取って、ちゃきーんと構えた。
「きゅーっ!」
「あはは、かっこいいぞー!」
「二人は相変わらずだな……」
そうこうしながらも、進んでいく。
しかし、これは護衛任務である。
「にひひ、来たか!」
「来るぞっ!」
ヴィクトリーとルカは剣を抜き、その他のメンバーも武器を構える。
「あはっ!人間じゃねぇか!」
「排除する。」
虫系の気味悪いモンスターと、天使の輪っかを頭に浮かべた機械系のキメラモンスターだ。
しかも、それが群れで襲ってきている。
「おめぇら、名前は!?」
「私はXX-7……そう呼ばれていた。」
「アタシはリトルバグって呼ばれてた!よろしくぅ!」
魔物の群れは、戦士達に猛攻してくる。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーは高速移動でXX-7の背後に回り込み、心臓を剣で刺し貫いた!
「!!!」
「だっ!!」
更にXX-7を蹴って、リトルバグに猛攻する。
「だだだだだだっ!!」
「くっ!」
「だぁっ!!」
リトルバグの腹にパンチして、浮かせる。
「どりゃあっ!!」
次に頬をぶん殴って、よろめかせた。
「でゃああっ!!」
そして、思いっきり蹴り飛ばした!
「よしっ!」
不意に、ヴィクトリーの後頭部に弾丸が命中した!
「いでっ!?」
「ヴィクトリーっ!」
ルカが敵に応戦しながら、ヴィクトリーに向く。
「スキありぃっ!!」
リトルバグが、ルカに攻撃する。
「ちっ!」
ギリギリで攻撃を頬にカスらせ、リトルバグを切り返した!
「ぎゃっ!?」
「平気かヴィクトリー!?」
「いでで……!!」
ヴィクトリーは、弾丸が飛んできた方へ向く。
さっきの心臓を刺し貫いたハズのXX-7が、ヴィクトリーに銃口を向けていた。
「あいつ、なんでまだ生きて……!!」
「機械だから、生半可な事じゃ死なねぇんだ!」
「心臓貫くのどこが生半可なのよー!」
ソニアのツッコミもそこそこに、戦いは続く。
「はぁ……!」
「ほらほらほらほらほらっ!!」
XX-7とリトルバグが、ヴィクトリーに猛攻する。
「ちっ!」
ヴィクトリーは、リトルバグの顔面に殴りかかった!
「はっ!」
リトルバグはそれを避け、ヴィクトリーの腕に乗る。
「へへへ……」
「なにっ!?」
「ほらほらっ!!」
そして、ヴィクトリーの腕を粘糸を吐きながら這い回った。
ヴィクトリーの腕は、粘糸でぐるぐる巻きにされてしまう。
「へっ!こうなりゃ簡単には動けないだろぉ!?」
「くそ……!!」
「射撃、開始……!」
XX-7が、ヴィクトリーに銃弾を連射した!
「いででででで!」
例の如く、当たった所が少し出血しているだけで、致命傷にはならない。
しかし、痛いものは痛いのだ。
逃げようとすると、リトルバグが腕を手繰り寄せて動きを制限してくる……
「……まてよ?」
銃弾を受けながら、ヴィクトリーは閃いた。
そして、界王拳を使った!
「わっ!?」
リトルバグが引っ張られ、ヴィクトリーの前に来る。
「よしっ!」
「うわっ、ちょっ……!!」
そのまんま、リトルバグは銃弾の雨に晒された!
「ぎゃああああっ!!」
「うぉおおっ!!」
そのリトルバグを盾にしながら、XX-7に突進。
「なっ……!?」
「だりゃああっ!!」
そしてリトルバグを退かして、XX-7をぶん殴った!
「がはぁっ……!!」
「これでもくらえ!」
ヴィクトリーは懐から、何かを取り出して投げる……
それは、雷石だった。
「な……!!」
雷石が光り、雷が発生する。
そのXX-7を貫いてる剣が避雷針となり、そこに電撃が炸裂した!
「ぎゃああああっ!!」
「よし……!!」
雷が収まったのを確認し、背後に高速移動する。
そして剣を引き抜いて、腕の粘糸を切断した。
「よ、よし……!」
とりあえず、リトルバグとXX-7は倒せた。
「はぁあっ!!」
ルカの方も倒せたみたいで、ヴィクトリーの隣に来た。
「ルカ!」
「気をつけろ!すごい奴が近づいてくる!」
二人に襲いかかってきたのは、黒い甲殻をしたマシン型のカニ娘みたいなモンスターだった。
「きたぞっ!」
「ああ!」
ハサミの一撃を、ヴィクトリーとルカは剣で受け止めた。
「ほう……?」
「お、おめぇ……何もんだ……!!」
「私はキャンサーロイドと呼ばれていた……お前達を排除する。」
二人から離れ、ハサミを開く。
そこには、銃口がついていた。
「目標確認……」
キャンサーロイドは、ヴィクトリーとルカに銃弾を連射した!
「ちっ!」
ヴィクトリーは剣を扇風機のように回して、銃弾を弾く。
ルカは銃弾を切り弾きながら突進して、キャンサーロイドの懐に潜った。
「魔剣・首刈りっ!!」
魔剣・首刈りで、キャンサーロイドは打ち上げられる。
「っぐ……!?」
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーは剣をしまい、エネルギー弾を連射した!
キャンサーロイドはそれに直撃しながら体制を整え、ルカをハサミでぶっ飛ばす。
「ぐっ!」
「目標確認……集中射撃開始……」
「たぁっ!!」
ルカに銃弾が放たれる寸前に、キャンサーロイドのハサミが棍棒で打ち上げられる。
言わずもがな、ソニアが来たのだ。
「なっ……!」
「ずさーっと薙ぎ払う……!グランドスライド!!」
ソニアはキャンサーロイドの足元を薙ぎ払い、キャンサーロイドをすっ転ばせた!
「わっ……!」
「ヴィクトリーっ!」
「ああっ!」
ルカとヴィクトリーはキャンサーロイドの懐に高速移動し、一緒にキャンサーロイドを蹴り飛ばした!
「ぐはっ……!!」
「だぁっ!」
「てぇいっ!」
更に二人の斬撃が、キャンサーロイドにクロスする。
「うぉりゃあーっ!!」
「はぁあっ!!」
そしてルカは天魔頭蓋斬で、ヴィクトリーは気を剣に纏った兜割りで、キャンサーロイドを叩き切った!
「くっ……もうもたんか……!」
キャンサーロイドは床に叩きつけられ、機能停止した……
「……っふぅ。」
「よし、これで一旦は魔物の群れを押し返せたぞ……!」
二人は剣をしまって、息を吐く。
他のメンバーも魔物を押し返せたようだ。
「ソニア、ナイスアシストだったぞ。」
「私だって、やる時はやるんだから。」
この調子なら、任務も簡単そうだ。
絶好調の戦士達は、奥へと進んだ……

「ここを知っているのは、教会上層部のごく限られた人間のみ。それと専門の知識を持ち、かつ信頼できる人物だけ……」
サン・イリア王は、ふとそんなことを口にした。
「それを、なぜ我等に開示したのだ?教会のお偉方にとって、我々など馬の骨だろうに……」
アリスがそう言い返し、サン・イリア王も答える。
「もちろんお主達も、たまたま選ばれたわけではない。反マキナ派でないのは(さや)かで、女神の加護もある……何よりの理由は、タルタロスに出入りしている事だ。あの奇怪な場所で、色々な情報や遺物を手に入れているとか……」
「そんな事まで知ってんのか……」
「まさか、タルタロスの更に奥の事まで……」
ソニアの言葉に、サン・イリア王は首を振る。
「手の内を明かすが……タルタロスの奥で何をしているかまでは、掴めなかった。こちらも色々と秘密を明かした事だし、ぜひそちらの事情も教えてもらいたいところだが……今は、先に進むとしよう。」
戦士達はサン・イリア王に頷き、先に進む……
「見てください、これ!ここまで小型の集積回路なんて、初めて見ました!」
プロメスティンは、何だかよく分かんない機械を持ってはしゃいでる……
「そっちは、マイペースよね……」
「……」
そんな調子で、戦士達は先に進んだ……

大きめの階段を登った先……
「ここが最終フロアだよ。最奥までは、もうすぐだ。」
「でも、最奥で何をされるつもりなんですか?まさか、本気でお祈りをされるわけじゃないですよね……?」
ソニアが聞き、サン・イリア王は頷いた。
「うむ、秘密の儀式というのも外部を欺く口実。本当は、もっと重要な用事があってな……先程、あえてラザロの話を出したが……実は、あの暗殺未遂事件が関わっているのだよ。」
「ラザロおじさんが……?」
「あの爆発だが、表向きは軽傷で済んだという事になっている。しかし実際は、瀕死の重傷を負ってしまってな……従来の医術では、もはや絶望的だった……そこで瀕死の私は、この設備に運び込まれたのだ。」
「そうか、ここで最先端の治療を……それが出来るまでに、技術の解析は進んでいたのだな。」
アリスの言葉に、サン・イリア王はまた頷く。
どうやら俺達、よほど察しがいいらしい。
「うむ、そういう訳だ。こうして私は、なんとか命を取り留めたのだが……特殊な治療を受けたおかげで、面倒な身になってな。年に一度、定期的に特殊な処置を受けねばならん。」
「その処置を受けるために、ここまで……そんな事情じゃ、大々的には言えませんよね。でも、犯人はラザロおじさんじゃないですよ……あれは、濡れ衣だったんですから。」
「私が犯人を許せんのは、爆弾などを使用した事だ。大勢を巻き込む危険性があるのに、そんな手段を取るなど……だいたい時限式を使うなど、なんと愚かな……少しのスケジュールのズレで、失敗する可能性があるのだぞ。遠隔式なり感圧式なり、色々あったろうに。なぜ時限式などという芸の欠片もない爆弾を……椅子に感圧センサーを仕込めば、最小限の爆発で済むはず。にも関わらず、大雑把かつ幼稚な技術で……」
「ほ、法王猊下……!?」
「い、嫌に爆弾に詳しいんだな……」
ちょっと引き気味のソニアとヴィクトリーを見て、サン・イリア王は咳をつく。
「……失礼、先に進むとしよう。」
「……」
プロメスティンは変な機械により、それを調べる……
「タッチスクリーンですよ、これ!しかも静脈パターンを読み取ってます!」
「そっちは楽しそうよね……」
ヴィクトリーは、剣身が黒い剣を持ってる……
「む?新しい剣か?」
「きゅ。」
アリスとヌルコが、それを見る……
「……」
親指の辺りにスイッチがあるので、押してみた。
すると、剣にスパークが纏われた!
「マキナか……」
「ああ……高周波による振動熱で物体を溶断する、高周波ブレードだな。これもヌルコの武器だ。」
そう言って高周波を切り、ヌルコに渡した。
「きゅー!」
装備が増えて、何だか嬉しそうだ。
そして、最奥部……
「うむ、ここが研究所の最奥だ。ここの機材は、半分以上が生きているのだよ……」
周囲に並んでいるのは、高度な技術で作られた機械。
そして、正面の大型カプセルには液体が満たされていた。
「……ヴィクトリー、この中、何かいるぞ……」
「どれどれ……」
二人でカプセルを覗き込んでみると、その中には……
メカメカしいような、女型のアンドロイドが目を瞑りながら浮かんでいた。
「女の子……!?」
「いや、アンドロイドだ……!!」
「眠り姫……と我々は呼んでいるよ。今の教会の技術では、起動する事さえできない。」
「そんな、これ……完全な機械生命体ですよ。見た限り、生体はおそらく用いられてません……」
プロメスティンも、眠り姫を見て驚いているようだ。
「この研究所を作った者達は、どれほどの技術を……そして、その者達はどこに行ってしまったのでしょう……」
「きゅきゅ!きゅー!」
「まぁ今のところ、用があるのは眠り姫ではなく、ここの最新鋭の設備なのだがね……そういうわけで、用事を済ませようか。さぁ、メンテナンスを始めよう……」
サン・イリア王はそう言って、機械の前に立つ。
そして、パネルをパタパタと打った……
「システム起動、接続開始……すまないが、終わるまで少し待っていてもらうよ。」
「あの、特殊な医療処置なんですよね……?お一人で出来るんですか……?」
「ここのシステムは直感的に操作できる。優れたインターフェイスを使っているのだ。私にもそれなりの心得があるから、心配はいらんよ。スキャン実行中……10%、20%……」
「私も見学してよろしいですか?これX線じゃないですよね……磁気共鳴でもないし……」
プロメスティンは一人で、何かを色々と見ている……
「爆弾によって、瀕死のダメージを受けたのだろう?いかに最先端の医学でも、そこまで治るものなのか?」
アリスはふと、そんな事をサン・イリア王に聞いてみた。
「80%、90%……スキャン終了。あの爆発で私は、肉体の半分以上を失ったのだよ……」
「半分以上って、そんな……!」
ルカは、驚いた拍子に機械の操作パネルに手を乗せた。
すると、静電気のような衝撃が流れ込んできた!
「わっ!?」
同時に、少女の入っていたカプセルが鳴動する。
思い動作音を放ち、重低音が周囲を揺るがし……
眠り姫が、眠りから覚めた。
「むっ……?」
「えっ……?」
「は……?」
今まで、カプセルの中で微動だにしなかった彼女……
その目が、ぱっちりと見開いたのだ。
「馬鹿な……!研究チームが何をしても、起動は不可能だったのに……!」
これには、サン・イリア王も驚いた様子だ。
「ルカ!貴様いったい、何をやった!?」
「お、落ち着けアリス!ルカはそこのパネルにちょっと触っただけだ!」
「う、うん!僕、何もしてない!何もしてないよ!」
「それ、何かやった人の典型的セリフですよ……」
カプセルがゆっくりと開き……
機械の少女は、二本の足で立ち上がった。
「システム再起動……現在年、ヨハネス歴1543年……現在座標、不明……機体名、ブリュンヒルデ……状況不明……」
このアンドロイドは、名前はブリュンヒルデというらしい。
突如として目覚めた眠り姫……
これは、味方なのか、敵なのか……?
「……ヒルデ、どうして目覚めたの?ヒルデが目覚めるときは、世界が終わるとき……」

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VSブリュンヒルデ

サン・イリア王の護衛任務をこなしながら、怪しげな施設を進む戦士達……
その施設の最奥にあったのは、最先端の機械と……眠り姫と呼ばれる少女のロボットだった。
その眠り姫は、ルカが何かしたせいで目覚めてしまった。
「……ヒルデ、どうして目覚めたの?ヒルデが目覚めるときは、世界が終わるとき……」
ブリュンヒルデは、戦士達に視線を向けた。
「お前達が、世界を滅ぼすの……?ヒルデ、世界を守る……」
「やっぱり、完全自律型……!」
「しゃ、しゃべってる……!?どうしよう……私、機械すっごく苦手なんだけど……」
「お、落ち着いて……」
ルカはソニアとプロメスティンをどかし、ブリュンヒルデの前に出た。
「えっと、君は……」
「ルカ!!そいつから、はなれろっ!!」
「えっ!?」
ヴィクトリーの声で、ルカは後ずさる。
「戦闘モード、オン……世界を滅ぼす者は、ヒルデの敵……」
ブリュンヒルデはそう言って、気を解放した!
その気は、聖なる力と邪悪な力が混ざったような気だ。
「馬鹿な……!?これは、闇の力に聖なる力……?こいつ、聖と闇の力を両方同時に……!」
「注意して下さい、こちらにターゲティングしました!破壊しないように破壊しないと……!」
アリスとプロメスティンがそう言っていると、辺りから敵が寄ってきた。
どうやらブリュンヒルデの気にあてられて、寄ってきたらしい。
「む……こんな時に……!」
「ルカ、ヴィクトリーっ!そっちは頼んだ!」
「私達はヴィクトリーとルカ、そして法王猊下を守るっ!」
「きゅっ!」
プロメスティン、アリス、ソニア、ヌルコはモンスター達に向き、武器を構えた。
「状況が切迫しているようだな、私も加勢しよう……!」
サン・イリア王が出てきて、そう言う。
「えっ!?でも、法王猊下は戦えないんじゃ……!?」
ソニアがサン・イリア王に向く……
サン・イリア王は服のボタンを外し、機械の身体を露出する。
そして帽子の中からバイザーが出てきて、顔にセットされた!
「問題ない、既にメンテナンスは完了した……これより戦闘モードに移行する!」
「おおぉっ!!?」
「さ、サン・イリア王っ!!?」
「えーっ!?」
「ターゲット設定完了、戦闘行動開始……」
ブリュンヒルデの気が充実し、安定する。
その体の節々から、禍々しいエネルギーが漏れていた。
「サン・イリア王様!いくらあんたが戦闘員だって、簡単な相手じゃねぇぞ!」
ヴィクトリーは剣を抜いて、界王拳を使う。
「ええ、僕達が切り込みます!サン・イリア王は補助へ!」
ルカも剣を抜き、勇者のパワーを解放した!
「安心したまえ、若き勇者達よ……計算によると、我々と奴はほぼ五分五分の力だ。」
「えっ!?」
「ビームデスサイズ……!!」
ブリュンヒルデはビームの鎌を持って構え、突進してくる。
そして、三人に無数の斬撃を放った!
「くそっ!」
「剣を持ってこなかったら即死だぜ!」
「ぐ……!!」
ブリュンヒルデの斬撃の嵐は、三人がかりでようやく受け止めることができた。
「だりゃあっ!!」
ヴィクトリーがビームデスサイズと鍔迫り合いし、押し合う。
「でやぁあっ!!」
「ぐっ!」
ルカの血裂雷鳴突きが炸裂し、ブリュンヒルデは揺らぐ。
「はっ!!」
サン・イリア王がブリュンヒルデの顔面に手を向け、火炎放射した!
「っ!!」
顔面に火炎放射され、顔を押さえながらよろめくブリュンヒルデ。
「スキありっ!!」
ヴィクトリーは、その腕を切り落とした!
「よしっ!」
「……ヴィクトリー、お前エグい攻撃するな……」
「いや……」
「……」
ブリュンヒルデの腕の切断面から、コードが伸びる。
それは切り落とされた腕に伸びて、コードが再接続された。
そして、腕が元通りにくっついた。
ちゃんと指も動くらしい。
「そ、そんな……!!」
「どうなっている……?形状記憶合金か……?」
「とにかく、ハンパな攻撃は通じねぇってのが分かったな……」
ブリュンヒルデは、キャノン砲を取り出してヴィクトリーに向けた。
「なっ!?それはっ!?」
「デュエルカノン、発射だよ……」
次の瞬間、凄まじい弾速のデュエルカノンが、ヴィクトリーに爆撃された!
「うわぁあああっ!!」
「ヴィクトリーっ!!」
「スキあり……」
ブリュンヒルデはルカの懐に潜り込み、その身体を蹴り飛ばした!
「ぐはっ……!!」
「お前も滅ぼすよ。」
次にビームデスサイズを持ち、サン・イリア王に猛攻する。
「ふんっ!!」
サン・イリア王は腕でビームの刃を受け止め、ブリュンヒルデの脇腹にエネルギー弾を叩き込む。
「ぐ……!!はぁっ!!」
確かに効いたが、反撃されてサン・イリア王はぶっ飛ぶ。
「ふ……!」
すぐに起き上がって、拳を向ける……
「死ね。」
ブリュンヒルデは、そのサン・イリア王にまんまと正面から突っ込んだ。
「ロケットパンチ!!」
サン・イリア王の腕がロケットとなって射出され、ブリュンヒルデの顔面を打ち抜いた!
「ぐはっ!?」
ブリュンヒルデはぶっ飛び、サン・イリア王も追いかける。
ついでに飛んだ腕を掴んで、戻した。
「はぁあっ!!」
「だぁあっ!!」
サン・イリア王とルカの両足蹴りが、ブリュンヒルデの顔面に叩きつけられた!
「ぐはっ……!!」
「でりゃああっ!!」
更に背後からヴィクトリーが、ブリュンヒルデを蹴り上げる。
「っ……!」
ブリュンヒルデは体勢を整え、天井に足をついて張り付いた。
そして、今度はマシンバルカンをこちらに向けた。
「くるぞっ!」
「分かってる!」
「……」
銃弾が、戦士達に雨のように降り注ぐ!
「アンドロイドバリヤーっ!」
サン・イリア王は手を広げ、バリヤーを展開する。
すると、バリヤーが銃弾を防いだ。
「おおっ!」
「いや……!!」
「ていっ……」
ブリュンヒルデはビームデスサイズを構え、こちらに切りかかってきた!
斬撃がバリヤーを切り破り、そのまんま三人に嵐の如く襲いかかる。
「ぐ……!!」
「やぁっ……」
ブリュンヒルデの鎌が、ヴィクトリーの剣をその後方へと弾き飛ばしてしまった!
「うわっ!?」
「っ!!?」
「まずいっ……!!」
鎌の一撃が、ヴィクトリーに迫る……
「くそっ!!」
それを白刃取りし、受け止めるヴィクトリー。
しかし、掌が鎌のエネルギーの熱によって焼けてしまう。
「〜~〜っ!!!」
ジュウジュウと、肉の焼ける音を鳴らすヴィクトリーの手……
「くそっ!」
ルカは鎌を切り上げ、ブリュンヒルデの腹に回し蹴りした!
「ぐ……」
「ふん……」
サン・イリア王の肘から、ジェットブースターが展開した。
それは起動し、ブリュンヒルデに一気に接近する。
「ジェットパンチっ!!」
そしてブリュンヒルデの顔面に、凄まじい速さの拳の一撃を叩き込んだ!
「っ……!!」
「でやぁあっ!!」
ヴィクトリーは背後から、ブリュンヒルデの背中に剣を突き刺した!
「ぐはっ……!?」
突き刺した剣が、胸へと貫通する。
「な、なにこれ……ヒルデの胸から、刃が……いや……」
ブリュンヒルデは、振り向きざまにヴィクトリーに切りかかる。
「くっ!」
剣を抜き、一撃をガードし、納剣する。
そして離れて、ルカ達に並んだ。
「……」
ブリュンヒルデの傷は、たちまち再生してしまった。
「……不死身かおめぇは……!!」
「ヒルデ、頭部さえ破壊されなきゃ何度でも再生可能……」
「じゃあ、頭を破壊すりゃいいのか……!」
「ヴィクトリー、殺さないようにな!ただでさえお前は遠慮ないんだから!」
ルカに釘を刺され、ヴィクトリーは構え直した。
「じゃあ、頭冷やすまでぶっ飛ばしてやるまでだ!」
そして、界王拳を引き上げる。
「敵戦闘力上昇……1.5倍から、2倍……」
「いくぞぉっ!!」
「はぁあっ!!」
ルカとヴィクトリーは、ブリュンヒルデに猛攻する。
「あだだだだだっ!!」
「はぁああああっ!!」
「……」
猛攻に対応するブリュンヒルデ。
その気が、一気に膨れ上がった!
「なんだっ!?」
「混沌こそ根源、そして世界は混沌に還る……ネクローシス。」
その身体中から、混沌の瘴気を溢れさせた!
「はなれろっ!」
「分かってる!」
瘴気に触れた所が徐々に蝕まれ、消滅していった。
なるほど、当たったらヤバそうだ。
その瘴気が、二人に迫る。
「ルカ、気合い込めろぉっ!!」
「おうっ!!」
二人は、気合砲で瘴気をかき消した!
「では、私も……」
サン・イリア王がブリュンヒルデに駆け寄り、タックルする。
「うっ……!?」
「ふんっ!!」
そのまんまブリュンヒルデの身体を持ち上げて、思いっきり壁に叩きつけた!
「っがは……!!?」
「だっはーっ!!」
ヴィクトリーが、ブリュンヒルデの腹に蹴りを放って、ダメ押しする。
「ぐ……!」
ブリュンヒルデはヴィクトリーの足を掴む。
「だりゃあっ!!」
しかしヴィクトリーは、ブリュンヒルデの顔面を蹴り抜く。
「だだだっ!!だぁっ!!でやぁあっ!!」
顔に蹴りを連打して、踵で頬を打ち抜き、顎を思いっきり蹴り上げる。
「意地でも、離さない……!」
顔を蹴られ続けながら、ブリュンヒルデはヴィクトリーにマシンバルカンを向け、連射した!
「いでででででっ!!?」
銃弾が連打され、ダメージが刻まれる。
「終わりだよ……」
ヴィクトリーを手繰り寄せて、ビームデスサイズを起動するブリュンヒルデ。
「ちっ!」
「はぁあっ!」
次の瞬間、ヴィクトリーは切り刻まれた!
切り裂かれ、バラバラになったものが辺りに舞う……
「な、なんてことを……!!」
「そんなっ……!!?ヴィクトリーっ!!」
「なに?」
背後から、ヴィクトリーが声をかけた。
ルカもサン・イリア王も、ずっこけそうになる。
「……!!」
ブリュンヒルデが切り刻んだのはヴィクトリーではなく、そこら辺のショートした機械だった。
「ど、どうやったんだ……!?」
「うつせみの術だ……使うのは初めてだけどよ……」
「なんと、忍術まで使えるとは……私達も、負けていられんな。」
サン・イリア王はそう言って、エネルギーを全開放する。
「ふんっ!!」
そしてブリュンヒルデの眼前に高速移動して、思いっきりぶん殴った!
「ぶっ……」
ブリュンヒルデは踏ん張り、サン・イリア王をビームデスサイズで切り裂きにかかる。
「はぁあっ!!」
しかしルカの、超スピードの魔剣・首刈りが、ブリュンヒルデの身体を打ち上げた!
「ぐぇっ……」
「だりゃああっ!!」
ヴィクトリーがその顔面をぶん殴り、ブリュンヒルデを壁に叩きつけた!
「ぐはっ……!!」
「……」
サン・イリア王は両手を脇に挟み、スポッと外した。
そして、手の無い腕を向ける。
「セイントフラッシュ!!!」
その腕から凄まじいエネルギー波を放って、ブリュンヒルデに直撃させた!
「ぐはぁあっ……!!」
黒焦げになったブリュンヒルデが、爆煙の中から出てくる。
ダメージは深く、あともう一息だ。
「決めるぞ、ヴィクトリー!!」
「おうっ!!」
ルカは気を剣に集中させ、刃に炎を纏った。
ヴィクトリーも拳に気を溜めて、力を込める。
そして二人は、ブリュンヒルデに駆けた。
「!!」
「烈火天翔閃っ!!」
「究極龍翔拳っ!!」
ブリュンヒルデに、炎の斬撃と気の拳がクロスされた!
「ぐはぁあっ……!!」
胸をクロスされ、ブリュンヒルデは遂に膝をついた。
その気が消散し、肩で息をする。
「身体が……動かない……」
どうやら、これで戦闘不能になったようだ。
「ふぅ、そっちも終わったみたいね。」
「そうとう手こずったらしいな……」
「きゅ。」
ソニアとアリスとヌルコが、ルカ達の所に来る。
プロメスティンは、機械に夢中のようだ。
ダメージを負って動けなくなったブリュンヒルデは、悲しそうな顔をする。
「ヒルデ、負けちゃった……ごめんなさいマスター、世界が滅んじゃう……」
「ちょっと待ってくれよ……僕達は、世界を滅ぼしたりなんてしないよ。」
「ああ……むしろ俺達は、世界を守るために戦ってんだ。」
ブリュンヒルデは、ルカとヴィクトリーの顔を交互に見る。
「そうなの?なら、ヒルデとおんなじ……ヒルデ、世界を救うために作られた……」
「作られた……?」
「誰にだ?」
「マスターだよ。」
ヒルデは即答し、戦士達も困惑する。
「えっと、マスターって誰?」
「マスターはマスターだよ。」
ソニアが聞いてみるも、それしか返ってこなかった。
「……こいつ、ドアホかもしれんな。聞いても無駄のような気がしてきたぞ。」
アリスは、相変わらず辛辣だ。
「起動したばかりだからか……そもそも、この程度の学習情報しかなかったのか……」
プロメスティンが、ようやく戻ってきた。
「マスターいない、どうしよう……マスターの命令がないと、どうしていいか分からない……応答して、マスター……ヒルデ、どうしたらいいの?マスター?マスター?マスター?」
ブリュンヒルデは悲しそうな顔で、繰り返す。
しかし、当然といえば当然だが、返事は無さそうだ。
「なんだか、可哀想じゃない?」
「ああ……マスターとやらも居なくなって、こんな所でひとりぼっちか……」
「これから行く当てがないなら……とりあえず、僕達と一緒に来ないかい?」
ルカはそう言って、ブリュンヒルデに手を差し出した。
「一緒に……?マスターの許可がないと……でもマスターがいない……ヒルデの自由意志に委任……」
ブリュンヒルデはそう言いながら、考え込む。
そしてしばらくしてから、ルカの手をとった。
「了解、一緒に行く……お前達が世界を救うなら、ヒルデの目的も同じだから……」
「おお、心強いぞ!よろしくな!」
ヴィクトリーも、握手を求めてみる。
「名称、ルカ……臨時マスターに仮登録……これからよろしく、マスター……」
ブリュンヒルデはヴィクトリーを無視して、ルカに頭を下げた。
「……」
「それでは、早速メインメモリーを取り出して……」
プロメスティンは、早速何処からかドライバーを取り出した。
「さっそく何するつもりなの!ドライバー没収!」
ソニアはプロメスティンからドライバーを奪い、懐にしまった。
「ああ、私の愛用品が……」
奇妙なロボットを、仲間にしてしまった戦士達。
このロボットの正体は……?
そして、ブリュンヒルデの言う『マスター』とは……?
何はともあれ、目覚めた眠り姫を倒した戦士達だった……

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新たな任務へ

目覚めた眠り姫を倒し、仲間にした戦士達。
「まったく、驚いたな。まさか機械が自律意志で動くとは……」
「その……法王猊下のお身体にも驚かされたのですが……」
ソニアの言う通り、サン・イリア王がサイボーグ化していた事も判明していた。
「そうか……身体の半分以上が吹っ飛んだから、機械で代用してんのか……」
「その通り……教会の最新技術、ひいてはこの施設に残されたテクノロジー。それが、私の命を繋いだのだよ。」
「なるほど……機密になるわけですね……」
サン・イリア王はボタンを締めて、機会の体を隠す。
顔にかかってるバイザーも、帽子に隠れた。
「とにかく、ここでの身体のメンテナンスは無事に済んだ。それでは地上に戻るとしようか。」
「よっしゃあ、任務完了だな!」
「じゃあ、帰りの護衛もしないとね。」
「いや、一応戦えるのだが……」
戦士達は引き続き、サン・イリア王を囲って、帰路につく。
「私は、ここでもう少し調査を……」
「ほら、帰るわよ……」
「きゅ!」
ソニアはプロメスティンを引きずり、戦士達に続く。
衝撃の事実を知り、謎に満ちた新たな仲間を迎え……
こうして戦士達は、研究所から出たのだった。

戻って、サン・イリア城……
戦士達は、タルタロスの事と自分達の事情を説明した……
「……ふむ、お主達の事情は分かった。平行世界か、この世はそこまで不可思議なものだったとは……」
知っている事の全てを法王に伝えた。
疑うことなく、深刻に受け止めてくれたようだ。
「この世界のため、我々も傍観するわけにはいくまい。サン・イリア、総力をあげてお主達の力となろう。そういうわけで……」
サン・イリア王は腰を上げて、立ち上がる。
「私もお主達に同行するとしよう。」
「えっ……!?まさか、法王猊下が直々に……!?」
ソニアがそう言うと、サン・イリア王は戦闘モードを起動した。
「不服かね?まだまだ、生身の者には負けんよ。」
「ああ、事実めちゃくちゃ強かったしな……」
「それでは、よろしくお願いしよう……」
なんと、サン・イリア王も仲間に加わった。
「……いいんですか?法王様が、サン・イリア城を空けしまっても……」
「ああ、問題ない。こんな事もあろうかと……騎士団長、例のものを。」
サン・イリア王がそう言い、指を鳴らす。
「はっ!ご指示通り、用意してあります。」
騎士団長はそう言って、サン・イリア王を設置した。
「あれ……!?な、なんだありゃ……!?」
「私の影武者ロボットだ……よく出来ているだろう?」
「起動シマシタ……影武者モード、オン……」
影武者ロボットは起動して、その目に光を宿す。
「旅人よ、よくぞ参られた。さぁ、道を示すとしよう……」
「既に実働試験も済んでいます。1メートル以内に近づかない限り、見破られる事もありません。」
騎士団長は元の所に戻った。
「……」
「す、すげぇ……」
絶句する、ソニアとヴィクトリー。
それを横目に、サン・イリア王はルカに向いた。
「また、この城内に最先端技術の研究設備がある。渡したい物もあるので、顔を出してもらいたい。」
「……」
ルカは頷き、サン・イリア王と握手をする。
「世界を救う旅……この機械の体も滾るというもの。さあ、天命を果たしに行くとしよう。」
「よっしゃあ、行こうぜ!」
戦士達はサン・イリア王を迎え、出陣しようとする。
「猊下、ご出陣の前に一つ報告が。」
騎士団長がそう呼び止め、戦士達は止まった。
「例の屋敷ですが、討伐隊第2陣からの報告も途絶えました……」
「なんと、精鋭を派遣したというのに……やはりあそこには、尋常ではないものが潜んでいるか。」
「あの、何かあったんですか……?」
ただ事では無さそうな雰囲気を感じて、ソニアが聞いてみる。
「この城の北に、無人の屋敷があるのだが……そこで、ゾンビやゴーストの目撃談が寄せられた。そこで二度に渡って討伐隊を送ったが、失敗……どうやら、かなり危険な魔物が潜んでいるらしい。」
「おいルカ、面白そうな事になってるぞ。どうする?」
「面白そうかどうかは知らないけど、見過ごせないな……行くしかない……僕達が行ってみましょう!」
ゾンビやゴーストがここに渡って、一般市民を襲っても困る。
しかも、その中には尋常ではない強敵が潜んでいると来た。
もう、行くしかない。
「それはありがたい、ぜひお願いしよう。仲間である以上、もちろん私も力を貸すが。」
さっき言った通り、問題の屋敷は北にあるらしい。
屋敷に潜む、謎の魔物……
精霊の森に行く前に、倒しておきたいところだ。

その前に、サン・イリア王からの勧めで地下の研究施設を見せてもらった。
「はぇ〜……随分と近代的だな……」
「す、すごい……!」
「あなた達が、勇者一行ですね?」
所長が、ルカ達に向かって挨拶をした。
「オッス!」
「こ、ここはいったい……」
ルカは、見慣れない技術の光景をきょろきょろと見回す。
ここは研究所風で、よく分からない機械が起動している。
何より、研究されているものもよく分からない機械だ。
「ここでは、あの遺跡から運び出されたオーパーツ……それにタルタロスから発掘されたマキナを日々研究しているのですよ。あなた達を、全面的にサポートしろと言われております。我々の研究成果、ぜひお受け取り下さい。」
そう言って渡された武器……
それもマキナで、これまたよく分からない機械だった。
「アンデッド討伐隊の制式装備にしたいところですが……まだまだ、大量生産には時間がかかりそうですね。」
「あの……」
プロメスティンが所長の前に来て、眼鏡を上げる。
「少しばかり、得られた記録を拝見できませんか?」
「構いませんが、一般の方が見ても理解できるものでは……」
所長がそう言って、プロメスティンにデータを渡す。
プロメスティンはそれを食い気味に、なおかつ凄まじいスピードで目を通した。
「すごい……量子コンピューターまで実用化してる……こんなの、私じゃ基礎理論だけで精一杯だったのに……」
「なんと、分かるのですか……あなたはいったい何者なんです?」
一通りデータに目を通してから、ルカ達の方へと向き直すプロメスティン。
「あの、私を研究所跡の最奥に連れて行ってもらえませんか?あらためて、調べてみたいのですが……」
「ああ、うん……余裕があったらね。」
「プロメスティンなら、何か分かるかも知れねぇな……お化け退治をした後辺りで行ってみっか!」
何はともあれ、プロメスティンの調査で何か分かるかもしれない。
機会があれば、あの研究所跡に行ってみるのもいいだろう。

そういうわけで、戦士達は早速北のお化け屋敷に向かう事にした。
「それにしても、お化け屋敷か……サン・イリア王様は、何か情報とか知らねぇんか?」
何気なく、ヴィクトリーはサン・イリア王に尋ねてみた。
「あそこは、かつては処刑場だったとも、富豪の屋敷だったとも、邪な魔導師の研究所だとも言われている……」
「まだ、厳密に何かは分かってないんだね……」
ルカの言う通り、これでは実態が掴めそうにない。
「討伐隊が一人でも引き返してくれれば何か掴めたのだろうが、帰ってきた兵士はおらん……やはり、只者ではない何かがあそこに潜んでいるのだろう。」
「にひひ、すんげぇつえぇ奴が居るかも知れねぇんだな……わくわくしてくるぜ!」
「ふ、ふん……さっさと済ませて、とっとと精霊と契約しに行くぞ。」
ヴィクトリーの後ろ……
何故かアリスが、震えていた。
「……こわいの?」
ソニアが心配そうに聞くと、アリスは青筋を立てる。
「怖いわけがあるか!!このドアホめ!!余は魔王だぞ!!」
「そ、そんな強く言わなくても……」
「きゅ……」
何だか知らないが、ソニアは怒られてしまった。
「……」
ヴィクトリー、何かを感じ取ったようだ。
「どうした、ヴィクトリー?」
「わ、わりぃなルカ……ちょっと、城の方で野暮用があっから先に行っててくれねぇか?」
「忘れ物か何かか?しょうがないなぁ……」
「ああ、わりぃわりぃ。」
ヴィクトリーは、飛び去った。
サン・イリア王はそのヴィクトリーが飛んで行った方へと向く……
「……あの方角、ラダイト村の方だぞ。」
「えぇっ!?」

「はっ……はっ……はっ……!」
少年が、走りながらラダイト村へと向かっている。
それもその筈、魔物に追われていたのだ。
「くっ……うわぁっ!」
石に躓き、転んでしまった!
振り返ると、そこにはラミアとセントールとスイカ娘が迫っていた……
「もう逃がさないわよ、坊や……」
「お姉さん達が、たっぷり搾ってあげる……」
「あはは……!」
「ひ、ひいぃっ!」
もう助からない……
全てを諦め、なすがままになろうとした……
その時だった。
「っ!!?」
セントールがぶっ飛んで、岩に叩きつけられた!
「ぐはぁっ……!?」
「え……!?」
少年の目の前……
ヴィクトリーが、背を見せながら立っていた。
ヴィクトリーが、ギリギリでセントールを蹴り飛ばしたのだった。
「あ、あの時村に来てた、武道家の人……!?」
「逃げな!こいつらは俺が相手してやる!」
ヴィクトリーはそう言って、界王拳を使う。
「な、生意気ね……!」
「まさか、三対一で勝てるとでも……?」
「あなたの方が美味しそうね……ふふふ……」
「よーし、久々に思いっきりやれそうだぜ!」
そのまんま、ヴィクトリーは三体の魔物と激突した!
少年はというと……
「……すごい……!」
ヴィクトリーの戦う姿に、心を奪われていた。
「だだだだっ!!どりゃあっ!!せぇいっ!!」
三体の魔物を相手にしようが、ヴィクトリーの表情は笑顔だった。
この戦いを、楽しんでいるのだ。
「くっ!!」
「な、なんて強さなの……!!」
「一気に決めてやるぜ!!」
ヴィクトリーはそう言ってスイカ娘の腹に、一撃する。
「ぐはぁっ……!!?」
背中が盛り上がり、痛恨の一撃が叩き込まれたのだった。
「す、スイカ……!!」
セントールがそこまで言いかけた時、既にヴィクトリーは懐に潜り込んでいた。
「ぇ……!!?」
「龍翔拳!!」
そして、渾身のアッパーカットでセントールをぶっ飛ばした!
「そ、そんな……!!」
セントールもスイカ娘も行動不能になり、ヴィクトリーはラミアに目を向ける。
「くっ……!!覚えておきなさい!」
ラミアは、呆気なく逃げ出した。
「……ふぅ。」
界王拳を解き、少年の方に向く。
「逃げてろっつっただろ。なんでボサッと……」
「すごい!!」
「っ!!」
いきなりでかい声を出されたから、すごくびっくりした。
「すごい、すごいやお兄ちゃん……!魔物相手に、素手で!それに、すごい魔法も使ってたよね!?」
「あ、ああ……そうかな……」
狼狽えるヴィクトリー、目を輝かせる少年……
とりあえず、この少年をラダイト村まで送る事になった。
「……おめぇ、あんな所で何してたんだ?」
「……」
それを聞かれると、少年は一気にしおらしくなってしまった。
「……あの村が、嫌いなんか?」
「……」
こくりと頷く、少年。
まぁ、どうせそんな事だろうとは思っていた。
「……じゃあ、ゆっくり進もうか。」
「うん……」
あのラダイト村だ。こんな奴の一人や二人ぐらい出ても違和感はない。
「僕……あの村はもう嫌なんだ。だから、こっそりと抜け出そうとしたんだ。そしたら、あの魔物達が襲いかかってきて……」
「それを、俺が助けたってわけか……それで、何処に向かおうとしてたんだ?」
「サン・イリアだよ。あそこなら、自由だよね……?僕達を縛るものなんて、何も無いんだよね……?」
「ラダイト村よりゃマシだ。」
少年は黙り……そして顔を上げ、ヴィクトリーに向いた。
「僕……強くなりたい!」
「……」
「お兄ちゃんみたいに強くなって、あの村から逃げ出したいんだ!」
「ちょ、ちょ……なら、わざわざ強くなる必要なんてねぇんじゃねぇか?このまんま、俺がサン・イリアに……」
「自分で行けるようにならないと、意味無いだろ!!」
少年の強い言葉に、思わずヴィクトリーは硬直してしまった。
「ぅ……ごめんなさい……」
少年は、またしおらしくなってしまう。
しかしヴィクトリーは、少年に心を打たれていた。
馬鹿だ俺は。
こんな、俺より真っ直ぐな奴が、安易な道を進む訳がねぇ。
「……『出来る』。」
「え……?」
「一瞬でもそう思えば、それは不可能じゃなくなる。ちゃんと頭使って努力すれば、なるようになる……」
「……」
「努力だけじゃ絶対に超えられない壁だってあるかも知れねぇ。だけど、必死で努力すればそれなりになる筈だ。」
「……」
「……強くなりてぇか?」
「……!」
少年は、力強く頷いた。
「……そうか!だったら、一つ教えてやるよ!拳構えろっ!」
「は、はいっ!」
ヴィクトリーは、少年に正拳突きを伝授した……

少年の拳が、正拳になった。
バシッと、衝撃が伝わってくる。
「はぁ……はぁ……!」
「……そいつを毎日100本やって、疲れなくなったら……とりあえず、ここら辺に居るようなモンスターならやっつけられる!」
「ありがとう、お兄ちゃん……僕、強くなるよ!強くなって、妹もお母さんも自由にしてみせる!」
「ああ……自由になれるといいな。」
「……本当は、お兄ちゃんにもっともっと教わりたい事があるけど……これは、僕の戦いだよ。だから、お兄ちゃんはお兄ちゃんの戦いを頑張って!」
「ああ……!」
そう言いながら歩いていると、ラダイト村が見えた。
「……ここまで来れば、平気だろ。」
「うん……ありがとう、お兄ちゃん!」
少年は元気よく、走ろうとする。
「……なぁ!」
ヴィクトリーは少年を呼び止めた。
少年もそれに応じ、振り向く。
「いつか、おめぇがこの先もっともっと強くなったら……俺と、戦おうぜ!」
「……!」
「待ってるぜ!俺も、今以上に腕を上げて……いつまでも、待ってやる!だから、こんなくだらねぇ村の嫌がらせなんかで折れるんじゃねぇぞ〜!」
「……うん!」
少年とヴィクトリーは親指を上げて笑顔を交わし、別れた。
ゴミ溜めみたいな村の中に、唯一輝く光……
ヴィクトリーは、その光に希望を見たのだった。
「……ヴィクトリー。」
ルカが、ヴィクトリーに声をかけた。
いや……厳密にはルカ()だった。
「うわぁっ!?居たんか!?」
「居たっていうか……見てたっていうか……」
「あの子、強くなれるといいわね!」
「うむ……」
「それでは、私達は私達の戦いを頑張るとしようか。あの少年の期待を、裏切らない為にな……」
サン・イリア王の言葉で、戦士達は気合を入れ直す。
改めて、向かうは北のお化け屋敷。
果たして、そこでは何が待ち受けているのか……?

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北のお化け屋敷

戦士達が向かったのは、北のお化け屋敷だった。
入ってみると、中はカビ臭くて薄暗い……
「ここが、噂のお化け屋敷……確かに、不気味な雰囲気よね。」
「こ、こんな所に用事はあるまい。」
アリスは入るなり、出ようとしてしまう。
「待てよアリス!ここまで来たんだから、最後まで……」
「我々にはやるべき事があるのだぞ!」
「もしかして……暗くて怖いの?」
ソニアがそう言いながら、アリスに嫌な笑顔を向けた。
アリスもカチンと来たらしく、目つきが変わった。
「こ、怖いわけがあるか!いいだろう!さあ、どんどん行くぞ!」
「とりあえず、屋敷の中を調べてみようか……」
「そうだな、何が原因で兵士達が帰ってこなくなったのかを調べないとな……」
ルカとサン・イリア王が先頭に出て、進んだ。
「……」
ヴィクトリーは鼻を鳴らし、周囲を見る。
「……肉の腐ったイヤな匂いがする……ゾンビが出るってのは、ホントみてぇだな。」
そう言いながら、先頭について行った。
「ふむ……一応、ゴーストやゾンビのサンプルを取っておきましょうか。」
「ヒルデ、いつでも戦闘可能……」
プロメスティンと、ブリュンヒルデもヴィクトリーの後ろについた。
「何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな何も出てくるな……」
「ああ、もう!ほら、私がついてあげるから!」
「きゅ〜……」
一番後ろでは、ソニアとヌルコがアリスを挟んでプロメスティン達について行ってる。
ちょっと進むと、人影が見えた。
「オッス!」
ヴィクトリーが出てきて、そいつに元気よく挨拶した。
「ちょ、お前……」
「ふむ、普通のゴーストのようだな。」
アリスはそう言いながら、けろっとしていた。
「アリス?幽霊は苦手なんじゃなかったの?」
「馬鹿者!あれはゴーストといって~……」
アリスが色んなことを言っている間に、ゴーストは戦士達に微笑みかける。
「ふふふ、こっちよ……」
そう言い、扉をすり抜けて消えた。
「あっ、ここにも扉があったんだ……」
「い、行かない方が……でも、おいしそうな匂いがする……ちょっとだけ、覗いてみないか……?」
「……」
戦士達は、扉へと入った。
そこは、ボロボロではあるが、かろうじて台所というのは分かった。
ゴースト達が、黙々と料理を作っている……
その向かいのテーブルには、おいしそうなケーキがあった。
「おいしそうなケーキがある……一口だけ、食べてみようか。」
アリスは小声でそう言いながら、ゴースト達とケーキに目線をチラチラさせる。
「ちょ、ちょっと……!こんな得体の知れないケーキ、食べるつもりなの!?」
「ガマンできない……ちょっとだけ……」
アリスはソニアの注意を無視しながら、ケーキをつまみ食いした……
次の瞬間、ゴースト達が急にこちらに振り返った。
「つまみ食いをするのは……」
「だ 〜 れ 〜 だ 〜 ! ! ! ! !」
「余ではない!」
「どう考えてもおめぇだ!!」
ゴースト達は、襲いかかってきた!
「マシンバルカン、掃射だよ。」
「セイントフラッシュ。」
ヒルデのマシンバルカンと、サン・イリア王のセイントフラッシュが、ゴースト達をぶっ飛ばした!
「また、死んでしまうの……?」
「こ、こんな一瞬で……!」
新たに加わった、メカメカしい仲間達のおかげで、一瞬にして終わってしまった。
「す、すげぇ……」
「これが、マキナの威力……」
「きゅ……」
ヴィクトリーもルカもヌルコも、目をぱちくりしてる。
「言っただろう?生身の人間には負けんと。」
「ヒルデも、負けない……敵、倒す……」
どうやら、とんでもない二人を仲間にしてしまったらしい。
「負けてらんねぇな……」
「ああ……」
「ふん!全然大したことなかったわ!」
今になって、アリスがそう言った。
「おめぇ何もしてねぇだろ。」
「あ……ケーキが……」
ケーキは、何故か腐りきっていた。
流石に、食べる気はしなかった……
台所を出て、向かいの扉……
の前にも、誰か居た。
「あいつは?」
「奴は、呪いの人形娘だな。人形に魔素が宿り、それが魔物化したモンスターだ。」
アリスは、顔色一つ変えずに説明する……
ほんとに、こいつの怖いお化けってどういう基準なんだ……
「おにいちゃん、あそぼう……?」
そう言って、扉へと入った。
「ここにも扉があるみたいだね。」
「行こうぜルカ、何だか面白そうだ。」
「こ、こんなところに用事はあるまい。我々にはやるべき事があるのだぞ!」
戦士達はアリスを無視して、部屋に入る。
「おにいちゃん、あそぼう……?」
呪いの人形娘の両隣……
小さい箱と、大きい箱があった。
「あ、あそんではならん!すぐにここから出るのだ!」
「おおきなたからばこと、ちいさなたからばこ……どっちをあける……?」
「う〜ん……」
ヴィクトリーとルカは、頭を捻って考える。
「俺の世界の昔話に、こんなんあったなぁ……そん時は、ちいさな箱を選んだ奴がいい感じになったらしいけど。」
「何だか、随分ざっぱだな……よし、それで行こうか。」
ルカは、ちいさなたからばこを開けた。
中には、小さなメダルがあった。
「まぁ、この宝箱ならこんなもんだよね……」
「よくばりなひとは、おおきいはこ……いいひとは、ちいさなはこをあけるんだよ……おにいちゃん、いいひとなんだ……またこんど、あそぼうね……」
呪いの人形娘はそう言って、姿を消した……
「満足したみたいね……」
ソニアが、ルカ達の隣に来る。
「きっと、あいつもこの屋敷で一人ぼっちで、寂しかったのかもな……」
「うん……」
「所でヴィクトリー、お前の昔話では、大きい箱を選んだ方はどうなったんだ?」
「ああ、えーっと……」
ヴィクトリー達は、大きな箱に目を向ける。
アリスが、その箱を開けようとしているのだ。
「お宝だけは、貰っておくぞっ!えいっ!」
アリスが箱を開け放った、次の瞬間……
箱はミミック娘で、アリスに食らいついた!
「うわーっ!!」
「……あんな感じになってた……」
「ああ、うん……」
「全く……」
プロメスティンが出てきて、燃焼反応でミミック娘を燃やした!
同時に、アリスも解放されたようだ。
「ひ、ひどい……!」
ミミック娘は、倒れた……
「そんなところに隠れているミミック娘サイドにも、問題あると思いますけどね……」
プロメスティンはそう言いながら、アリスに回復魔法をかけてあげた……

とにかく、屋敷自体は賑やかだった。
倉庫ではゾンビがマイ〇ルジャ〇ソンのス〇ラーを踊ってたりしていた。
そして、食堂で異変が起きた。
入ると、そこではゴーストやゾンビが食事会みたいなのを開いていた。
その瞬間、そいつらはこちらに目を向けた。
「み 〜 た 〜 な 〜 ! ?」
ただでさえ薄暗かった屋敷が、灯りが消えて真っ暗になった。
「わぁっ!なんなの!?」
「あ、灯りが……!ルカ、早く灯りをつけろ!」
「ちょ、ちょっと待って……!」
突然の事にあわてふためく、戦士達。
ルカは、灯りを探しているようだ。
「ちょっとルカ!どこ触ってるのよ!」
ソニアが、満更でもなさそうな声でそう叫ぶ。
「おいルカ、どこへ連れていく気だ……?腕を引っ張るな、おい……!」
アリスも、何だか騒いでいる。
「ぼ、僕……何もしてないよ!?」
「くそっ!ここは太陽拳しかねぇ!!」
ヴィクトリーが、暗闇の中でポーズを取る。
「太陽……」
太陽拳を放つ、まさにその瞬間……
部屋に、灯りがついた。
「わーっ!」
「ちょっと、なんなの!?」
戦士達は、既にモンスター達の攻撃を受けていた。
「くそっ!不意打ちかよっ!!」
「やるぞ、ヴィクトリー!」
ルカとヴィクトリーが剣を抜き、モンスター達に切り込む。
「ふむ、行かせてもらいましょうか。」
「きゅ!」
プロメスティンとヌルコも気を解放して、敵に突っ込んだ。
「では、我々は援護射撃をしよう……」
「援護射撃モード……ルカ達を、援護するよ。」
サン・イリア王とヒルデは、マキナで戦士達に援護する。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーが、ゾンビ娘達を切り伏せる。
「あぅ……」
「ぉおあ……」
しかし、ゾンビ娘達は起き上がり、ヴィクトリーに向いた。
「ちっ……!」
「くそっ!ゾンビだから、生命力が半端ない……!」
ルカ達が相手にしていたゾンビ娘も、切り伏せられては起き上がり、また向かってくる。
「しょうがねぇな……!元は死人だ!遠慮なくやっちまうぞ!」
そう言いながらヴィクトリーは剣を寝かせ、ゾンビ娘の胸に突き刺した!
「あぅうっ……あはぁ……!!」
「なんだと……!?」
ゾンビ娘は剣をその身に突き刺されたまんま、ヴィクトリーをぶっ飛ばした!
「うわぁあっ!!」
思いっきりぶっ飛ばされて、ヴィクトリーは壁に叩きつけられる。
「ヴィクトリーっ!!」
ルカが、ヴィクトリーの方に向いてしまう。
ゾンビ娘は、その隙にルカに爪を振り下ろす……
「きゅ!!」
しかし、そのゾンビ娘はクロスボウガンによって、蜂の巣にされた。
ヌルコが、助けてくれたのだ。
「はっ!」
プロメスティンが出てきて、通電反応を巻き起こす。
ヴィクトリーの剣が避雷針となり、ゾンビ娘に炸裂した!
「よし!」
ヴィクトリーは剣を取り、プロメスティンと背中を合わせる。
「どれ、魔王は……?」
「わわわわわ!クルナー!」
アリスはテーブルの上で、ゴースト娘とゾンビ娘のキャッチボールにされていた。
「な、なにやってんだあいつ……」
「助けるしか無さそうですね……」
ヴィクトリーとプロメスティンは、アリスの救援に向かう。
「ソニアっ!」
「きゅうっ!」
「ナニコレェ!?いやぁぁぁぁ!!」
ソニアは、何だかんだで棍棒で応戦している。
「かめはめ波ーっ!!」
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーのかめはめ波と、プロメスティンのエネルギー波が、ゴースト娘とゾンビ娘を吹っ飛ばす。
その背後から、呪いの人形娘が近寄ってくる……
「ふん。」
サン・イリア王が、呪いの人形娘の頭を撃ち抜いた。
それを見たヒルデが、触発されたようにマシンバルカンを起動した。
「マシンバルカン、掃射……」
「ちょ、ヒルデっ!?みんなふせろーっ!!」
「なんだっ!?」
ヒルデのマシンバルカンが、そこら辺のモンスターを掃射した!
「あぁあぅっ!?」
「ぎゃっ……!!」
「そ、そんな……!」
次々にモンスターが倒れ、遂にモンスターの群れを全滅させた。
「め、めちゃくちゃしやがるぜ……」
「でも、何とか倒せたな……ヒルデ、ありがとう。」
「褒められた……えへへ。」
「何なのよ、もう……」
「_人人 人人 人人 人人 人人 人人 人人_
> ぜんぜんこわくなかった! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄」
「アリス、文字数使うからやめてくんねぇか。」
ヴィクトリーは、お化け屋敷の敵の猛攻に混乱し、意味不明な事を口にした。
「……みんな大丈夫そうだね。それじゃ、行こうか。」
ともかく、敵の奇襲を押し返す事が出来たのだ。
戦士達は、先に進んだ……

屋敷のもっと奥……
「……この先から、でけぇ気を感じる……」
ヴィクトリーはそう言って、先頭に出た。
「本当か?誰かいるのか……?」
「ふむ、例の邪な魔導師か……?」
ルカもサン・イリア王も身構えて、進む。
「ここみてぇだな……」
廊下の一番奥……
扉を指して、ヴィクトリーが言った。
「この奥からだ。油断すんなよ……」
「ああ……!」
ルカ達は、その扉を開け放った!
「な、なんじゃ貴様らは!?」
それを見た、大きな気の持ち主……
黒い服装の、少女だった。
そいつは戦士達を見るなり、走って逃げてしまった。
「あっ!待てっ!」
「追うぞっ!!」
少女が逃げた後を、走って追跡する。
しかし、逃げた先はベッドルーム。
なのに、少女の姿が無かった。
「くそっ!逃げられたか!?」
「気も感じねぇ……どこ行きやがった……!?」
ルカとヴィクトリーが、その辺りをきょろきょろする。
その後ろで、ソニアが壁に目をつけた。
「これ……」
貼り紙があって、その内容に目を通す……
『たみぎがたわのかたべにたわかくたしつたうろ。かくたしでやにたは、たからたばこがあたるた。たぬきのクロムちゃん』
「こういう暗号、小さい頃に作ったなぁ……」
「しかも原文に「た」が含まれているから、全ての「た」を抜くと意味が通らん……これを書いた奴は、ドアホだな。」
「……任務了解。右側の壁を捜索するよ。」
「いや、その必要もねぇぞ。」
既にヴィクトリーが、隠し通路を見つけていた。
そして、その中へと入っていった。
戦士達も、ヴィクトリーに続く。

そして、隠し部屋……
そこは人骨や棺桶が散乱した、気味の悪い部屋だった。
そして、そこには例の少女が仁王立ちしていた。
「ええい、もう逃げ場は無いぞ!貴様が、この下らんお化け屋敷の主だな!?」
アリスが出てきて、少女にそう言い放った。
「くくく、逃げ惑うつもりなどないわ……我が禁断の術、見せてくれる!」
少女は気を解放し、手をバッと広げた。
「さぁ、我が僕よ!長き眠りより蘇れ!」
少女の魔力が、棺桶に宿る。
すると、ゾンビが棺桶を開いて、少女の横についた。
「こいつ、ネクロマンサーか!気をつけろ、そこらの小物とは違うぞ!」
戦士達は武器を抜き、構える。
そして、気を解放した!
「よぉし、いっちょやってみっかぁ!」
現れた黒幕、ネクロマンサーの少女。
果たして、その実力は……?
「さあ、ゾンビどもよ!ここからつまみ出せ!」

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邪な■■師■クロ■

サン・イリア王の依頼で、北のお化け屋敷にやってきた戦士達。
進んでいくと、ネクロマンサーの少女が現れた。
少女は気を解放し、戦士達にゾンビを向ける。
「さあ、ゾンビどもよ!ここからつまみ出せ!」
「くるぞっ!!」
「ああっ!」
ヴィクトリーとルカを始めに、戦士達は気を解放する。
そして、敵を迎え撃つ体制をとった。
しかし……
「わっ?な、なんじゃ……?」
ゾンビ二体は、少女を持ち上げて、部屋からつまみ出してしまった。
「……」
「帰りたくなってきたぞ……」
これには、アリスも呆れていた。
ゾンビ達はというと、棺桶に戻ってしまった。
「……」
ヴィクトリーは、そこら辺にあった紙片を拾ってみる。
『ゾンビに命令する際は、主語・述語・目的語をしっかりと。』
「あ、あはは……」
まぁ、あの言い方だと、そうなっても仕方ない。
そんな事より、奴を探さねば。
「ヴィクトリー、あいつの気は?」
「ああ、今のが相当キたのか、気を隠すのを忘れてら……こっちだ。」
戦士達は部屋を出て、少女の捜索にあたった……

割と近くの、廊下の隅に居た。
「も、もう逃げられないぞ!」
ルカが、そう言いながら武器を抜く体制をとる。
「に、逃げているわけではないわ!それに、ここは儂の屋敷……あらゆるトラップは、儂の意のままに動くのじゃ!まんまとその位置に誘導されおって!さあ、落とし穴に落ちるがいい!」
「ぐっ、しまった……!」
「は、はなれ……」
戦士達より速く、少女が指を鳴らす。
落とし穴は、確かに作動した。
「うわ〜!」
……少女の、足元に。
「えぇ……」
「……」
「ここの真下は……一階のメインホールだな。この屋敷に入った、入口のところだ。」
アリスは冷静に、落とし穴を見ながらそう言う。
「そんじゃあ、先に行ってるぜ。」
ヴィクトリーはそう言い、落とし穴に落ちた。
「ちょっ!?迂闊に落ちたら危ないって!」
「我々も続くぞ。あいつなら多分平気だ。」
戦士達も、メインホールへと向かった……

「ふっ!」
床に着地し、辺りを見る。
アリスの読み通り、一階のメインホールだ。
「……」
あった筈の本棚が消え失せており、先への通路がある。
その奥に、確かに少女の気を感じた。
「よーし、この奥か……!」
ヴィクトリーは、一足早く進む。
「おーい、一人で行くなー!」
ルカ達も、今ここについたようで、駆け足でこちらに向かってくる。
そして、ヴィクトリーに続いた……

先に進むと、そこは地下だった。
「た、助けてくれー!」
声がした。
「な、なんだ……?」
ヴィクトリーは、鉄格子の前で止まる。
戦士達もヴィクトリーに追いついて、同じ方向を向いた。
鉄格子の中に居たのは、サン・イリアの兵士達だった。
それも、強者揃いの面子だが……
「もしかして……行方不明になった討伐隊の人達!?」
ソニアがそう言うと、兵士達は頷いた。
「そ、そうです!ゾンビやゴーストにやられて、ここに監禁されて……戦死者や怪我人はいないけど……お婿さんに行けないような事をされて……ううっ。」
「待っていろ、皆の者。」
サン・イリア王が出てきて、兵士達を見る。
「げ、猊下!ま、まさかあなた様が直々に助けに来るとは、夢にも思いませんでした……!」
「ここの魔導師を倒したら、助ける。だから、あと少しだけ、待っていてくれ。」
「は、はいっ!お待ちしております!」
とりあえず、行方不明になった人達を見つける事は出来た。
そして、地下室の最奥……
「今度こそ、追い詰めたわよ!」
ソニアが、少女に迫る。
「なんなのだ、お前達は。なぜ、儂の研究所で暴れておるのじゃ。」
「おめぇこそ、何モンだ?」
「それに……研究所って、どういう事なんだ?」
少女はそれを聞いて、ふふんと笑う。
「儂の名はクロム、偉大なるネクロマンサーじゃ。この場所は、かつては処刑場……その後は、墓場として使われた場所なのじゃ。死体がゴロゴロしておるから、儂の研究には最適でのう……」
「研究って、いったい何を……?」
「儂はネクロマンサーなのじゃから、アンデッドの研究に決まっておる!」
「アンデッド……なんと忌わしい研究を……」
サン・イリア王はそう言って、首を鳴らす。
「特に、この屋敷で病死したフレデリカは良い素材でのう。それを材料に、究極のゾンビを作るのが儂の野望じゃ!」
「……」
「処刑場、墓場、病死した少女、悪い魔導師……聞いた噂は、全て本当だったか。」
「ここにうろついてるゾンビも、おめぇの作品か!?」
「ゴーストは勝手に湧いてきたものじゃが……確かに、ゾンビは全て儂の作品じゃぞ。」
「死者の冒涜など、感心せんな……そのような振る舞い、見過ごすわけにはいかん。」
アリスは武器を抜き、構えた。
「ふん、まだまだ儂は研究せねばならん事があるのじゃ。貴様のような邪魔者も、儂の実験体にしてくれるわ!」
クロムはそう言って、指を鳴らす。
「出てこいフレデリカ!儂とお前の強さを思い知らせてやるのじゃ!」
次の瞬間、巨大な体躯をした女のゾンビが、高速移動で現れた。
「なっ……!?」
「私は、クロムの僕……クロムの敵には、容赦しない……」
「ぐっ……!!」
ルカとヴィクトリーは剣を抜き、気を解放した!
「人間の死体は、オモチャじゃないんだ!死者の安らかな眠りを乱し、苦しませるなんて許さない!」
「ああ、おめぇら二人共ぶっ飛ばしてやる!」
二人の後ろ……
プロメスティンも、臨戦態勢をとる。
「えっ、何が悪いんです……?とにかく、流れ的に戦うんですね?」
「ターゲット確認、戦闘行動開始……」
「お前ら、その数で儂達にかかるつもりか……ならばっ!」
クロムは指を鳴らし、魔力を波動させる。
すると、魔力にあてられたゴーストやゾンビやらが、こちらに向かってきた。
「やってしまえ、モンスター共!そいつらを、コテンパンにするのじゃ!」
「くそっ!」
「ヴィクトリーとアリスはフレデリカを!クロムには僕とソニアが向かう!モンスター達は、ヒルデとサン・イリア王に任せた!プロメスティンとヌルコは、僕達の援護に回ってくれ!」
ルカが、バババッと支持を出す。
戦士達は頷き、それぞれの相手と相見えた。
「了解、ヒルデ達、こっちをやっつける……」
「ああ……!」
二人はモンスターの群れに突っ込み、大暴れする。
その前で、ルカとソニアはクロムと。
そして、ヴィクトリーとアリスはフレデリカに向かった。
「よーし、いっちょやってみっか……!」
「油断するなヴィクトリー、奴は貴様と同じく武闘派だぞ……!」
「見た所、様々な人間の細胞や筋肉を移植して、骨延長まで行っていますね。相当にタフですよ。気を付けてください。」
プロメスティンがそう言い終わった頃には、ヴィクトリーは既にフレデリカと打ち合っていた。
「だだだだだだだだっ!!」
「ふん……」
ヴィクトリーの猛攻に対応しながら、フレデリカは拳を握る。
そして、渾身の一撃をヴィクトリーの顔面に放った!
「そこだぁっ!!」
ヴィクトリーはその拳を、蹴り足挟み殺しで止める。
「今だっ!!」
「ああっ!」
アリスはヴィクトリーの背後から跳び上がり、フレデリカの顔面に火の玉を放った!
それは直撃し、爆発する。
「……」
「だっはーっ!!」
ヴィクトリーはダメ押しに、その腹に後ろ蹴りして、フレデリカを蹴り飛ばした!
フレデリカは壁に叩きつけられ、倒れる……
「……どうだ?」
「へへ……」
「……」
フレデリカは何事も無かったかのように起き、立ち上がった。
そして、首をゴキゴキと鳴らしながら、二人を見た。
「ノーダメージだと……!?」
「ま、全く効いてねぇみてぇだな……」
「今度は、こっちから……」
フレデリカはクラウチングスタートの体制をとって、消えた。
「なっ!?」
「は、速……」
一閃のように、二人にダブルラリアットが決まり、壁に叩きつけられた!
「ぐはぁあっ……!!?」
「ぐっ……!!」
アリスは大ダメージを受けたが、ヴィクトリーは寸前に界王拳を使って、ダメージを軽減した。
「ふんっ!!」
しかし、フレデリカの拳がヴィクトリーの腹に埋まる。
「っ!?」
「粉砕しろ……!!」
そして、顔面に正拳突きが入った!
「ぐっはぁあ……!?」
鼻血が噴き出し、ヴィクトリーの頭が朦朧としてくる……
が、すぐに目覚め、フレデリカに両足蹴りをした!
「!」
直撃し、後退するフレデリカ。
「くそったれぇえっ!!」
石床を蹴り、フレデリカの顔面に一撃する。
「あだだだだだっ!!どりゃあっ!!」
腹にパンチを連打して、顎をアッパーで打ち上げた。
「……」
しかし、フレデリカは顔色一つ変えずにヴィクトリーを睨み、その顔面を打ち下ろした!
「うぐぁあああっ!!?」
ヴィクトリーは倒れ、床に伏せてしまう。
界王拳を使ってるのに、全く効いちゃいねぇ……!!
「ふ、二人共っ!」
プロメスティンは慌てて、魔力を練る。
そして、まずはアリスを治療した。
「うぐぐ……プロメスティン、余ではなく奴に回復を専念してくれ!」
「す、すみません……しかし、ヴィクトリーがあんな状況ですから……」
ヴィクトリーは、フレデリカに抱きつかれ、締めあげられていた。
「うわぁあああああっ!!!んぎゃあぁああああっ!!!」
ヴィクトリーは、その体をメキメキと軋ませながら、絶叫している。
「……いい抱き心地……」
フレデリカはそう言うと、更にヴィクトリーを締め上げた。
「ぎゃあぁあああぁあああっ!!!」
「くそっ!!離せっ!!」
アリスは跳び、フレデリカの顔面に尻尾を叩き込む。
「っ!」
「はっ!」
更にプロメスティンが、フレデリカに手を向ける。
すると、その背中が発火した!
「っ!!」
フレデリカはヴィクトリーを解放ひ、背中をパンパンと叩く。
「ヴィクトリー!」
「今治します!」
プロメスティンは、白魔法でヴィクトリーを治癒した。
「はぁっ……はぁっ……サンキュー!」
ヴィクトリーは立ち上がり、気を解放する。
すると、さっきより大きい気が、ヴィクトリーから噴き出した!
「なっ!?」
「よし、読み通りだ!」
プロメスティンはアリスの言葉を聞いて、ハッとする。
「……そういう事でしたか。私としたことが、すっかりその事を忘れていましたね……」
「ああ……!」
ヴィクトリーは、さっきとは見違える程のパワーで、フレデリカと渡り合っていた。
「だだだだ……!!」
「……」
しかし、打っても打ってもフレデリカが倒れる気配が無い。
不審に思い、ヴィクトリーはアリス達の所まで下がった。
「どうした?なぜ攻めん?」
「……めぇったな……あいつ、痛みを感じちゃいねぇ。」
「なんだとっ!?」
アリスも、フレデリカに向く。
フレデリカは、二人に猛攻してきた!
「ぐっ!」
「はぁあっ!」
アリスはレイピアで、ヴィクトリーは拳で、フレデリカの猛攻に対応する。
「でぁあっ!!」
一瞬の隙を見て、アリスはフレデリカを、Vの字に切った!
「っ……」
フレデリカは揺らぎ、静止する……
「だっ!!」
ヴィクトリーは、そのフレデリカの顔面に蹴りを入れる。
「……」
フレデリカは仰け反るが、頭を振ってヴィクトリーに頭突きした。
「いっ……!!」
あまりの威力に、ヴィクトリーはダウン寸前になる。
しかし床に踏ん張って、何とか耐えた。
「ふんっ!」
アリスはレイピアを構え、フレデリカに突きの一閃を放つ。
「小賢しい……」
レイピアが突き刺さったまんま、フレデリカはアリスを回し蹴りで蹴り飛ばした!
「ぬわっ……!!」
「……」
フレデリカはすぐさまレイピアを引き抜き、アリスにぶん投げる。
「くっ……!!」
「あぶねぇっ!」
ヴィクトリーが気弾で、レイピアの軌道をずらす。
レイピアは、アリスの横の壁に突き刺さった。
「く、くそ……!!不死身のバケモノめ!!」
レイピアを取りながら、アリスはそう言って立ち上がる。
「……」
ヴィクトリーは、フレデリカの様子を見ている……
「ぬわ〜っ!」
誰かぶっ飛んできて、柱に叩きつけられた。
クロムだ。
「はぁっ……はぁっ……ど、どうだ!!」
「ようやくここまで追い込んだわよ!とっとと観念しなさい!」
ソニアとルカが、クロムに武器を向ける。
「……」
クロムは、嗤っていた。
「な、何がおかしい……?」
「まさか、その程度で儂を追い詰めたとでも思っていたのか……?」
そう言い、ルカとソニアの武器を掴む。
「な……!!?」
「はぁあっ!!」
そして禍々しい衝撃波を放って、二人をぶっ飛ばした!
「きゃあっ!?」
「な、なんだ……!!?」
「ふっふっふっふ……」
クロムは、二人につかつかと歩み寄る。
その目は紅く光り、体には禍々しいオーラがまとわりついていた……
「く、くそ……!!」
「また凶悪化……!!」
ルカとソニアは息を整えてから、クロムに向く。
「くそっ……!!」
ヴィクトリーは、あらためてフレデリカに向く。
「ふふ……クロムのためにも、あなた達を捻り潰してやるわ……」
フレデリカも、凶悪化していた。
「な、なんという事だ……!!」
「こ、こんなタイミングで凶悪化なんて……!」
「ああ……こっからが本番みてぇだな……」
戦士達は構え直し、フレデリカに向く。
案の定、凶悪化したクロムとフレデリカ。
戦士達は、打ち勝つ事が出来るのか……?

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不■■の怪■…!■

クロム達と戦闘をする戦士達。
戦闘中に、クロム達は凶悪化したのだった。
一方、サン・イリア王達にも異変が迫っていた。
「ふん……」
「全員、やっつけた……後は、クロム達だけ……」
迫り来るゾンビを押し返したサン・イリア王達は、クロム達に向く。
「……待って、高エネルギー反応を検知。何か接近してくる……」
「なにっ……!?」
そいつらは、時空に穴を開けて、二人の前に現れた。
「ふん……所詮は死体を改造しただけの魔物か……」
「大した事は無かったようだな……」
ミラと仮面のサイヤ人が、ヒルデとサン・イリア王の前に現れた。
「な、何者だ……!?」
「第ニ種断界接触に相当……消去する。」
「な……ミラっ!!?」
「それに断界接触って、アポトーシス達が言ってた……!!」
アリスとプロメスティンが、ミラ達の所へ向かおうとする。
「逃がさない……!」
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーは、フレデリカを押し止めた。
「なに……!?」
「どっせいっ!!」
そして突き飛ばして、胸に正拳突きを叩き込んだ!
「ぐ……!」
「くっ!!」
隣にクロムが飛んできて、フレデリカと並ぶ。
「はぁ……はぁ……つ、強いなぁ……!」
ルカが剣を構え直しながら、ヴィクトリーの横についた。
「ルカ……大丈夫か?それに、ソニアとヌルコは?」
「僕なら大丈夫だ……ソニア達は、ミラ達の所に向かった。」
「……」
ミラ達の所へ目を向けてみる……
「貴様ら……いったい、何が目的だ!?クロム達に何をしている!?」
アリスが、ミラにレイピアを向けていた。
「今回の凶悪化は、トワのものじゃない……」
「俺達は、この世界の戦士の邪魔をしに来ただけだ……あそこの、ルカとかいう奴を除いてな。」
仮面のサイヤ人が、親指でルカを指す。
「何故、私達の邪魔を……?私達がクロムを倒すと、不都合な事でもあるのか?」
サン・イリア王が、仮面のサイヤ人達にマキナを向ける。
いつもの冷静な声ではなく、ドスの効いた威圧的な声だった。
しかし、仮面のサイヤ人は動じずに答える。
「倒すと不都合……ではない。お前達がクロム達と戦うと、不都合なのだ。」
「何を訳の分からない事を……!質問したところで、答える気は無いようだな!」
「もう私達はあの時の私達じゃないんだから……!あんた達を倒して、無理矢理にでも聞き出す!」
「やはり、あの仮面の男は敵でしたか……」
「きゅー!」
アリス、ソニア、プロメスティン、ヌルコ、ヒルデ、サン・イリア王……
その全員が、仮面のサイヤ人とミラに向かい合った。
「ふん……」
「いくぞ、バー……いや……」
「俺は……バーダックじゃない……!!」
ミラと仮面のサイヤ人は、気を開放した!
「さて、行くぞ!」
「ああ……」
異次元の人造人間、ミラ……
操られし心を持つ、仮面のサイヤ人……
暗黒魔界の戦士達は、この世界の戦士達と激突した!
「……どうやら、あっちはあっちで盛り上がってるみてぇだな……」
「でも、僕達の相手はこっちだよ……」
ルカ達の目の前……
凶悪化した、クロムとフレデリカが対峙していた。
「ふん……こうなれば、ニ対ニで好都合じゃ。相手してくれよう。」
「クロム……この子達、強い。」
「……」
どうやら、二人は暗黒魔界の戦士達にはノータッチのようだ。
「よし、やるぜ……!」
「ああ……!」
ルカとヴィクトリーは構え、気を解放した!
「はぁあっ!!」
「ふ……」
クロムが突っ込んできて、その後方からフレデリカが跳んでくる。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーが、クロムの一撃を受け止める。
しかし、フレデリカがヴィクトリーに踵落としを放った!
「だっ!!」
ルカは、フレデリカを蹴り飛ばす。
「っ!?」
「でやぁあっ!!」
そして、剣に炎を纏わせながらフレデリカの胸を切りつけた!
「ぐ……」
やはり、フレデリカもゾンビ。
火の攻撃には、弱いようだ。
「だだだだ……!!」
「ほれほれ、どうした!?」
クロムはヴィクトリーの猛攻を凌ぎ、腹に膝蹴りをする。
「おうぅっ!?」
「その程度では、儂を倒せんぞ!?」
更にヴィクトリーの顔面をぶん殴って、ぶっ飛ばす。
「見せてみろっ!!」
そして両手にエネルギーを溜めて、ヴィクトリーに撃ち放った!
「くっ!」
ヴィクトリーはそれを跳びよけ、グルグルと回ってから、浮いた。
「じゃあ、見せてやるよぉおっ!!」
その気が、激しく上昇する。
ヴィクトリーの身体中から、赤い気が噴き出す。
それは大きく膨れ上がり、辺りに熱を漂わせた。
「かぁあああああっ!!界王拳……3倍だぁあああーーーっ!!!」
ヴィクトリーの気が台風のように吹きすさび、辺りにエネルギーが波動した!
「ぬぅっ……!?」
「いくぞぉっ!!」
ヴィクトリーはそう言って、姿を消す。
既にヴィクトリーは、クロムの懐に潜り込んでいた。
「は、速っ……!!?」
「だりゃああっ!!」
そして、クロムの顎を拳でカチ上げた!
「っ!!」
クロムはすかさず、ヴィクトリーに頭突きをする。
しかし、既にヴィクトリーは残像で、クロムの背後に回っていた。
「なにっ!?」
「だりゃあああっ!!」
そして、思いっきり後ろ廻し蹴りでぶっ飛ばした!
「のわーっ!?」
「よっしゃー!」
「クロム……!」
フレデリカは、思わずクロムの方に向いてしまう。
「そこだっ!!」
ルカは、魔剣・首刈りでフレデリカを打ち上げた!
「あぐっ……!!ふんっ!!」
フレデリカはすぐさま持ち直し、ルカに踵落としを放った!
「だぁあっ!!」
フレデリカとルカの間に、ヴィクトリーが高速移動。
フレデリカの踵落としから、ルカを守った!
「なっ……!?」
「ふっ!」
ルカは跳んで、ヴィクトリーの肩を踏み台にして更に跳躍する。
「天魔頭蓋斬ーっ!!」
そして、渾身の兜割りでフレデリカを床に叩き落とした!
「っぐぁ……!!」
「そこまでじゃ……!!」
クロムが高速移動してきて、ヴィクトリーの腹に手を添える。
「や、やべ……!!」
クロムのエネルギーが、ヴィクトリーの腹で爆発した!
「うわぁあっ!!」
ヴィクトリーは思いっきりぶっ飛びながらも、体勢を整える。
「逃げ場はないぞ!」
クロムが指パッチンすると、ヴィクトリーを囲むように異次元の穴が開く。
そこから、ゾンビ娘の拳が無数に飛んできた!
「くっ!!」
ヴィクトリーは、防戦一方になってしまう。
「ヴィクトリーっ!!」
ルカは、駆け寄ろうとするが、フレデリカが立ちはだかる。
「くっ!」
ルカは、そのフレデリカと攻防する。
しかし、体格差やパワーの違いが重なって、ルカは押されてしまった。
「ぐぐ……ぐ……!!」
「ふふん、トドメじゃ……!」
背後から、クロムが迫る……
「……っここだぁっ!!」
ルカがとった行動……
剣を振るでもなく、拳を振るでもなく、倒れるようにしゃがみこんだ。
「っ!!!?」
フレデリカの一撃がルカを逃し、クロムの頬に直撃してしまった。
「し、しまっ……!!?」
「だぁあっ!!」
ルカはその場で一回転するように足払いしてから、フレデリカを蹴り飛ばした!
「だりゃあっ!!」
クロムが殴られた事で、異次元魔法も消え、自由になったヴィクトリー。
片手に気を溜めて、クロムに迫る。
「くっ!なめるなぁあっ!!」
クロムは暗黒の魔力を拳に、ヴィクトリーに殴りかかった!
しかしそれはいなされて、ヴィクトリーはクロムの背中に手をつける。
「はっ!!」
そして、クロムの背中をエネルギーで爆破した!
「ぐぁああっ!!」
「クロム……っ!」
ぶっ飛んだクロムの横に、フレデリカがつく。
「よしっ!」
「一気に決めてやるっ!!」
ヴィクトリーは、かめはめ波の構えをとる。
「か〜……め〜……は〜……め〜……!!」
「クロム、私達も……!!」
「おう……!」
フレデリカはクロムの背に手をつけ、自分のエネルギーを送り込む。
クロムはそのエネルギーを片手に溜めて、気を全開放した!
「消し飛べぇえっ!!」
そして、その手から渾身のエネルギー波を放った!
「波ーーーっ!!」
ヴィクトリーも、かめはめ波を放った!
二人の技がぶつかり合い、押し合う。
「ぐぐぐぐ……!!」
「はぁあああっ!!」
クロムの気が更に大きくなり、ヴィクトリーのかめはめ波を押す。
「ぐ……ぐぐぐ……!!」
「……雷鳴突きぃっ!!」
ルカが突然、クロム達を血裂雷鳴突きで一閃した。
「っ!!?」
突然の攻撃に不意をつかれ、揺らいでしまうクロム……
「今だぁあっ!!!波ぁああああーーーっ!!!」
その時、ヴィクトリーはフルパワーでクロムのエネルギー波を押した!
それは、瞬く間にクロムのエネルギーを消し……
「し、しまっ……!!」
「そんな……!!!」
二人に直撃し、大爆発を巻き起こした!
「うわぁああ〜っ!!!」
「体が、動かない……」
クロムとフレデリカはぶっ飛んで、倒れ込む。
そして、凶悪化が解けた。
「よっしゃー!」
「や、やった……!」
戦士達は、気を納めようとする。
しかし、まだ後方ではミラと仮面のサイヤ人達が戦っていた。
「だぁあっ!!」
ソニアの乱打棍が、ミラに炸裂する。
それに対し、ミラはたじろぎながらソニアの猛攻に対応していた。
「何だ、きさま……!?キリの測定値が、マイナスになっているだと……!?どういう事だ……!!?」
「何を訳の分からない事言ってんのよ!くらいなさいっ!!」
ソニアがそう言うと、案の定棍をバットのように持つ。
そして、ミラの脳天に振り下ろした!
「くっ!」
ミラは跳び避けて、バク転してから着地する。
ソニアの棍は、石床を派手に打ち砕いた!
「ハァッ……ハァッ……わけの分からん小娘が……!!いっそ、ここで……」
「おっと、ミラよ……もう、任務は完了してるぜ。」
戦おうとするミラを、仮面のサイヤ人が静止する。
「俺達の目的は、あくまで邪魔する事だ……分かってるな?」
「……仕方あるまい、退くか……!」
「逃がすと思ったか?」
「ここで散れ……!」
サン・イリア王とヒルデのマキナ技が、二人に迫る。
「馬鹿めが……ダークリベリオントリガー!」
仮面のサイヤ人は片手でエネルギー波を放ち、マキナ技を打ち消す。
ダークリベリオントリガーは、ヒルデとサン・イリア王に迫った!
「くっ!?」
「っ!」
二人はそれをギリギリで回避して、また二人の方へ向く。
しかし、仮面のサイヤ人とミラは既に居なかった……
「目標、逃走した模様……センサーにも反応なし。」
「逃がしたか……」
「くそっ、また逃げられたか……!」
どうやら、あっちも終わったらしい。
今度こそ、戦士達は気を納めた。
「ぬぐぐ……儂とフレデリカが、負けてしまうとは……!」
クロムはそう言って、起き上がる。
既に、戦意は喪失しているようだ。
それに、今まで自分達が凶悪化していた自覚も無さそうだ。
「おい、クロムとやら……!貴様ら、ミラ達が見えていなかったのか!?」
アリスは、クロムに質問してみる。
しかし、クロムは不思議な表情を浮かべた。
「ミラ……?なんじゃそれは……そんな奴、儂は知らん……」
「凶悪化してる時は、奴らの存在を認知出来なくなるのか……!?」
「凶悪化じゃと……?ならば、あの時にいきなり吹き上がってきた力は……」
クロムは自分の手を見る。
数秒してから、目線を落とした。
「そんな事より、儂はアルテイスト家の復権を果たさねばならんというのに……儂が、一族の復興を……」
「アルテイスト家だと……?貴様、あのアルテイスト家の者なのか……?」
「知ってんのか、アリス?」
「貴様、高位の妖魔なのか……?」
「今はこんな姿だが、余はアリスフィーズ16世だ。」
アリスは、クロムに魔王である事を説明した。
ついでに、ゾンビやゴーストなんか作った所でアルテイスト家の復権には繋がらない事も伝えた。
「えっ……!?」
「確かに、魔王がこんな怖がりなんじゃ……ゾンビ芸で魔王直属の出し物係なんて、無理よね。」
「こ、怖がりではない!」
ソニアの言葉に、食いつくアリス。
その前で、クロムはわたわたと頭を抱えていた。
「そ、そんな……ならば、究極のゾンビを造るという野望は……」
「ちょうどいい話の流れだし……もう、ゾンビ作りなんてやめようよ。」
「ゾンビ芸は駄目、降霊術も論外……なら三大魔芸の一つ、からくり人形はどうじゃ?」
「うむ、それなら余も怖くない……い、いや……ゾンビも怖くないから!」
「からくり人形かぁ、それなら死体使わずに済むからな!」
そういうわけで、クロムはこれ以上の死体漁りはしないようだ。
ゾンビ研究も、これで締めにするとも言っていた。
フレデリカに関しては、心血を注いだクロムのパートナーだ。
フレデリカも、クロムに世話になった模様でこれからも尽くしたいと言っていた。
これからは、死体パーツ以外でフレデリカを改良するとか……
とりあえず、これで事件は解決した。
ゾンビ研究も幕を下ろし、この屋敷の黒い噂も消えるだろう。
これで、戦士達に出来ることは終わった。
不死身の怪物も邪な魔導師も心を入れ替え、新たな研究に励むのだった……

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精霊の森

この地方でやれる事を終えて、戦士達は目的を思い出す。
サン・イリアの地下図書館にあった、精霊の本……
マルケルスの伝言を、果たしに行こうとしていた。
「そんじゃあ、サン・イリア王様……」
「ああ、私はポケット魔王城で待機だったな。」
サン・イリア王は、これにてポケット魔王城に篭ってもらう事にした。
確かにその戦闘力は強力なのだが、一国の王である手前、無闇に危険に晒すわけにはいかない。
それに、機械の技術開発やカウンセリングの方があの人の得手だと感じての判断だ。
当人もアッサリと承諾して、ポケット魔王城で待機してもらう事となった。
そして、向かうは精霊の森。
「次はどんな敵が待ってんだろうな……」
「精霊の森は、エルフやフェアリーの溜まり場だ。両者とも危害を加えん限りは無害だが、フェアリーのイタズラには気をつけておくといい。」
アリスのアドバイスに、戦士達は首を縦に振る。
「よし、シルフと契約しに行こう!」
「ああ!レッツゴー!」
戦士達は、精霊の森へと向かった……

そして、精霊の森……
「ここが、シルフのいる精霊の森か……」
「とりあえず、フェアリーのイタズラに気を付けりゃいいんだろ?」
ヴィクトリーはそう言い、アリスの方へ向く。
しかし、アリスは微妙な顔をしていた。
「それなのだが……今の荒んだ世の中、魔物達も敏感になっている。テリトリーに踏み込んだ余所者がどうなるか……」
「そっか……どうやら、カンタンな話でも無さそうだな……」
「でも、行かなくちゃ。シルフと契約して、風の力を手に入れるんだ!」
マルケルスの伝言によれば、歴史を正しく導くために。
そして、ルカがルカ自身の意志で力を欲しているから……
「さあ行こう!シルフはきっと、森の奥だ!」
「おう!」
二人を先頭に、一行は精霊の森を進んだ……

当然、モンスターは襲いかかってきた。
「あはは〜!」
「男の子だ〜!」
ツインズフェアリーや、ただのフェアリーが、戦士達を囲む。
「へへへ……」
「やるぞっ!」
ヴィクトリーとルカは、背中を合わせて構える。
そして、気を解放した!
「よし、余達も出るぞっ!」
「させないっ!!」
飛び出そうとしたアリス達の前に、エルフ達が立ちはだかる。
そのまんま、アリス達とぶつかり合った!
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーは、フェアリー達に拳を振るった。
しかし、それはことごとく避けられてしまう。
「くっ!当たんねぇ!」
「こっちもだ……!」
どうやら、ただの攻撃程度では軽々と避けられてしまうらしい。
当然、フェアリー達も避けてばかりじゃない。
「えいっ!」
なんと、体にエネルギーを纏って体当たりしてきた!
「っ!!」
ヴィクトリーは、腕でガードする。
防御には成功したものの、腕が痺れてしまった。
「いぢぢぢぢ……!」
腕を押さえながらよろめいていると、木の枝を踏み折ってしまった。
次の瞬間、背後から丸太が飛んできた!
「ぎゃああああっ!!」
直撃し、ぶっ飛ぶヴィクトリー。
フェアリー達は、それを見て笑っていた。
「やった〜!大成功〜!」
「あははは〜!」
「う、ウソぉ……」
ルカは、ヴィクトリーを見ながらフェアリー達と攻防する。
冗談じゃない。あんなイタズラをモロに受けたら、死んでしまう。
「……よっと!」
ヴィクトリーは立ち上がり、腰を鳴らす。
「お〜いてぇ!今のは気を付けねぇとな〜……」
「ヴィクトリー、大丈夫か!?」
ルカはフェアリー達を払い、ヴィクトリーに寄る。
「ヘーキだよ。俺はちょっと頑丈なんだ……」
そう言い、周囲を見回す。
二人の周囲には、例のトラップが張り巡らされていた!
「し、しまった……!!」
「ちっ……!!」
「いまだーっ!」
フェアリー達が、合図をする。
すると、別のフェアリーがトラップを発動させた!
丸太が、戦士達の八方から迫ってくる。
「つかまれっ!」
「えっ!?」
ヴィクトリーはルカの手を取り、飛び上がった!
「えっ!?」
「と、飛んだっ!?」
「人間なのにっ!?」
ヴィクトリーがルカを背負って飛び上がった事で、トラップを回避した。
「じ、じゃあ……まさか、あの人、黒のヴィクトリー……!?」
「なんだとっ!?」
ヴィクトリーは、その声がした方に向いた。
「おめぇ、黒のヴィクトリーを知ってんのか!?」
「噂だけ聞いてるだけだよ……」
「でも、服装がくろくないね……って事は……」
「にせものだ〜!」
「……」
偽物の偽物呼ばわりとは、これいかに。
「やっちゃえ〜!」
フェアリー達は、ヴィクトリーに殺到してきた!
「ヴィクトリーっ!」
フェアリーのトラップを避けながら、ヴィクトリーに歩み寄ろうとするルカ。
しかし、その目の前に影が切り込んできた!
「なっ!?」
そいつの一撃を受け止め、構え直す。
さっきまでソニア達と戦っていた、剣士エルフだ。
「くっ……!!」
「流石に数が多いな……!」
「敵多勢につき、こちらも人数を固めての戦闘を推奨する……」
「なるほど、これが妖精の羽根ですか……こちらもサンプルとして……」
ソニア達は、フェアリーやブラウニーズに襲われていた。
しかし数が多いだけで、さほど苦戦はしていないようだ。
「……あの乱戦の中を、潜ってきたのか。」
「何だか知らないけど、この森をこれ以上荒らされるわけにはいかないのよ……」
「これ以上荒らされる……?待って、どういう……」
「問答無用!」
剣士エルフは、有無も言わさずに切りかかってくる。
「くっ!」
ルカはその一撃を剣で受け、剣士エルフと剣技のぶつかり合いを始めた。
「……くっ!」
ヴィクトリーは、妖精達の猛攻に対応していた。
「だりゃああっ!!だだだだだだっ!!でりゃああっ!!」
「うわ〜」
「いや〜」
「やられた〜」
殴り飛ばされるフェアリー、蹴り落とされるフェアリー、投げ飛ばされるフェアリー……
ヴィクトリーを襲っていたフェアリーの群れは、たちまちのうちに押し返されていた。
「よっしゃああっ!!」
界王拳を使い、気を爆発させるヴィクトリー。
そのまんま体を大きく広げ、全方位に気合砲を放った!
「うわ〜」
「やだ〜」
「きゃ〜」
フェアリー達は気合に吹っ飛ばされ、戦闘不能になったようだ……
「よ〜し、あとはルカと戦ってるあいつだな!」
ヴィクトリーは剣士エルフに目をつけ、笑う。
「なっ……!?」
剣士エルフはそれを察し、ヴィクトリーの方を見た。
しかし、ルカはそのスキを見逃さなかった。
「魔剣・首刈りっ!!」
エルフの喉元が突き上げられ、思いっきり打ち上げられた!
「ぐえぇっ……!!」
「だぁあーっ!!」
打ち上げられた剣士エルフを、ヴィクトリーが思いっきり蹴り飛ばした!
剣士エルフはぶっ飛び、岩盤に叩きつけられる。
「ぐはぁあっ……!!」
そして、ガクッと倒れた……
「そりゃああっ!!」
ソニアは棍を振り回し、妖精達を次々にたたき落とす。
「しゃああっ!!」
「ビームデスサイス、起動だよ……」
アリスやヒルデも敵陣をなぎ倒し、モンスターの群れを押し返したようだ。
「……ふぅ。」
「これで一段落みてぇだな……」
戦士達は臨戦態勢を解いて、集合する。
そして息を吐いて、進む事にした。
「……それにしても、さっきのエルフが言ってた事、気にならないか?」
ルカは、ヴィクトリーに向いてそう言った。
「……」
そう言えば、さっき戦ってるついでにルカとあのエルフの会話をチラッと聞いていた。
『この森をこれ以上荒らされるわけにはいかない』……みたいな事を言っていた気がする。
「……ああ、確かに気になるな……既に、ここに何か居るのか……?」
「もしかしたら、またトワ達が……」
先頭を歩きながら、ヴィクトリーとルカはそんな会話をする。
「……おい!」
「ひゃっ!?」
ヴィクトリーは、いきなり通りすがりのフェアリーに声をかけた。
「な、なに……?」
「最近、ここら辺で何か起きてんのか?」
「あ……う、うん……」
フェアリーは、重い顔をして頷いた。
やはり、何かあるらしい。
「……教えてくれ。何があったんだ?」
「う、うん……最近、この森にとっても怖いバケモノが出るの。襲っては来ないんだけど、なんだかとっても怖いよ……」
やはり、何か穏便な雰囲気じゃ無さそうだ。
「怖いバケモノ……?悪い奴なら、放っておけないな……」
「だけど話を聞く限り、直接破壊行動をしてる訳じゃなさそうだ。外見が怖いからって、危険だとは限んねぇな……」
「もし見つけたら、話しかけてみるよ。悪い奴だったら、退治してあげるから。」
ルカはそう言って、フェアリーに笑顔を向けた。
「ありがとう、これあげる!」
フェアリーはそう言って、ルカに魔力の種を渡した。
「気をつけてね、とっても怖いバケモノなんだから……」
フェアリーとは別れを告げ、先へと進む戦士達。
「わっ、敵……!?」
不意に、エルフがこっちに向いて構えた。
「い、いやっ!僕達は敵じゃありませんっ!」
「……なんだ、そうだったのね。」
どうやら、物わかりの良さそうなエルフと当たったらしい。
それでも、何だか真剣な顔になっているのは変わらなかった。
「なぁ、どうしたんだ?」
ヴィクトリーが聞いてみると、エルフは頷いて口を開いた。
「最近、不気味な怪物が森の中をうろついているの。襲いかかってくるわけじゃないけど、みんな怖がって……」
「でも、襲ってこないんでしょう?見た目が不気味なだけで、無害な相手なんじゃ?」
「まぁ、そうなんだけど……でも、あの外見は明らかに異常よ。」
「まぁ、見つけたらあんまり変な事しねぇようには言ってみるぜ。襲ってこねぇんなら、何とかなるだろ。」
「うん、聞いた限りでは破壊行動はしていないみたいだし、話せば分かってくれるよ。」
そう言う二人の前で、いまだに真剣な顔になったままのエルフ……
「そうは思わないんだけど……まぁいいわ、これを持っていきなさい。」
エルフは、ルカにエルフの霊薬を渡した。
「ありがとうございます。」
「……最近、例のバケモノのせいでフェアリー達のトラップも過激になっているのよ。チンピラみたいな奴を撃退してくれるのは助かるけど、流石に命に関わるものが多すぎるわ……」
「あぁ〜……」
なるほど、だからあんなにトラップが仕掛けられていたのか。
とにかく、そういう事なので森は緊張しているらしい。
「それにしても、そんなおっそろしい見た目してる魔物ってのも珍しそうだな……」
「うん……アリス、心当たりはあるかい?」
「無いな。それに、ここの魔物は共食いなんかするような奴はいないし、そんな恐ろしい見た目のモンスターもいない筈だ……もしかしたら、暗黒魔界とやらの差金かもな……」
「いや、暗黒魔界でもそんな恐ろしそうな奴はいなかったぜ……だいいち、こんな所に来る理由もねぇ筈だ。」
「じゃあ、いったい何がいるんだ……?」
ヴィクトリーとルカとアリスは、首を傾げる……
「……んもう、今はシルフとの契約が優先でしょっ!そんな事悩んでいるより、先にレッツゴー!」
言ったのは、ソニアだった。
ソニアの言う通り、こんな所で立ち止まって悩んでいても何も始まらない。
「ああ……行こう!」
「おう!シルフって奴の気も、すぐそこだ!」
戦士達は進み、シルフの所へと急いだ……

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風の精霊、シルフ

ご無沙汰しております。


精霊の森に辿り着いた戦士達。
迫り来るフェアリーや、トラップを避けながら戦士達は遂に最奥へと足を踏み込んだのだった。
「……おい。」
「うん……」
最奥部には、小さな精霊が瞑想していた。
ただの精霊ではない。
尋常ではない気を、その小さな体に秘めているのが感じられた。
「……オッス!」
ヴィクトリーが、挨拶に出た。
精霊はそれに応じて、目を開ける。
「あれれ……?人間が、ここに何の用……?」
「……」
どうやら、そこまで野蛮な奴では無かったようだ。
ヴィクトリーはルカに向き、ルカは頷く。
ルカはこほんと咳をしてから、精霊に向いた。
「えっと……君が四精霊の一人、シルフかい?」
「そうだよ、あたしがシルフだよ。あたしに何の用?」
「君の力を借りるため、ここに来たんだけど……」
「なんで、あたしの力が欲しいの?その理由、聞かせてくれるよね……?」
「……」
ルカは少しだけ考え……顔を上げた。
「ここに来るまでに、色々な人から色々なものを託されたんだ。中には、僕に力を託して死んだ人もいる……その想いを無駄にしないためにも、力が必要なんだよ。だから、君の力を貸してほしいんだ。」
「ああ……俺達にはその想いに報いる義務がある……この通りだ。ルカに、力を貸してやってくれ!」
ヴィクトリーもそう言って、シルフに頭を下げた。
「そうなんだ……あたしの力、悪いことには使わないみたいだね。でも……精霊の力は、弱い人間には貸せないの。……っていうより、弱い人間には力を使いこなせないの。だから……」
シルフは瞑想を解いて、ふわふわと浮かぶ。
「ここで、キミと勝負だよ!あたしの力を使いこなせるかどうか、確かめてあげる!」
「ああ……!」
ルカは剣を抜き、構える。
「仮にも、余が認めた人間だぞ……試験まがいの戦いなど無用、とっとと終わらせてくれる!」
「あたしも、ガンガンいくよー!」
「待てよみんな。」
ヴィクトリーが、戦闘態勢に入る皆を抑えた。
「?」
「どうしたヴィクトリー?」
ソニアやアリスは体勢を解き、ヴィクトリーに向いた。
「これは、ルカがシルフの力を借りるための試練だ……俺達が手を出す必要はねぇ。そうだろ?」
「……」
ルカは頷いてから、シルフに向く。
ヴィクトリー達は下がり、安全な所まで移動する。
そして、ルカの戦いを見る事にした。
「えへへ、ちゃんと正々堂々と試練を受けるんだね!あたし、キミの事気に入っちゃった!」
「ああ……はぁあああっ!!」
ルカは気を解放して、辺りに旋風を巻き起こした!
「っ!!」
「いきなり本気みたいね……!!」
「ああ……」
気に当てられた皆は、ぶっ飛びそうになる所を踏ん張る。
ヴィクトリーだけが、冷静に腕を組んで見ていた。
「……いくぞっ!!」
「うんっ!」
ルカは剣を抜き、その場で思いっきり振り下ろした!
とてつもない衝撃波が、シルフに迫る。
「あはっ!」
シルフは高速移動でそれを避け、ルカの背中に入った。
「なっ!?」
「えーいっ!」
体当たりでルカの背中を打ち抜き、ぶっ飛ばす。
「くっ!」
ルカは体勢を整えながらシルフに向き、手を向ける。
その手から、気合砲が放たれた。
「やぁあっ!」
シルフも手から真空波を巻き起こし、気合砲を相殺した!
エネルギーが爆発して、爆煙が立ち込める。
「はぁあっ!」
ルカは爆煙を切り払いながら突進して、シルフに剣の一撃を叩き込んだ!
「きゃっ……!?」
シルフはぶっ飛び、ルカはその背後に回り込む。
「だぁあっ!!」
そして、ハイキックでシルフを蹴り上げた!
「ぐっ……!」
「ふっ!」
ルカは跳んで、忍者のように木を登る。
そしてシルフの上空まで来て、思いっきり剣を振り上げる。
「天魔頭蓋斬!!」
渾身の天魔頭蓋斬がシルフに命中して、思いっきり地面へと叩きつけた!
地上に衝撃が響き、木々がざわめく。
「や、やった!」
「いやっ!」
喜ぶソニアを、ヴィクトリーの言葉が抑える。
ルカは、剣に力を込めていた。
「ぐぐぐ……!!ぐぐぐぐ……!!」
「むぅうう……!!」
なんと、シルフはルカの剣を白刃取りで受け止めていた。
ルカはというと、二の腕の筋肉のラインが分かるほどに力を込めてシルフを叩き切ろうとしていた。
「えーいっ!」
シルフは鍔迫り合いから脱出して、ルカの顔の横に来る。
そして、風魔法を顔面にブチ当てた!
「!!」
「はっ!」
ぶっ飛ぶルカに手を向けて、クンッと指を上げる。
すると、ルカを中心に竜巻が巻き起こった!
「うわぁあああっ!」
竜巻による暴風が、ルカの身体に無数の斬撃を走らせた。
「うぅううぐぅううっ……!!」
ルカは歯を食いしばり、目をキッと鋭くする。
「ばぁあああーっ!!」
そして思いっきり力を解放して、竜巻を吹っ飛ばした!
「えぇっ!?」
「うぉおおっ!!」
シルフに突進して、一撃を放つ。
「くっ!」
シルフはそれを受け止め、ルカの顔に手を向ける。
そして、風魔法を放った。
しかしルカは顔面に風魔法をくらいながら、シルフにもう一撃した。
「うっ!?」
シルフは風の魔力を纏った手で受け止め、ルカを見る。
「うぉあぁあっ!!」
ルカは、シルフに猛スピードで猛攻した。
「この……!!」
シルフもルカの猛攻に対応し、攻撃を仕掛ける。
二人の猛攻は、超スピードの攻防に変化した。
「はぁああっ!あだだだだだっ!だだだだぁっ!!」
「やぁああっ!だだだだだだだ……!!」
精霊の森を縦横無尽に駆け回りながら、攻防を続ける二人。
その内に一撃がぶつかり、バチっと離れた。
「くっ!」
ルカは剣を地面に刺し、ガリガリと地を削りながら退(さが)る。
シルフはそんなルカの目の前に飛来して、全身にエネルギーを纏った。
「やーっ!!」
「!!」
シルフの石頭で顔面に頭突きをくらい、ルカは鼻血を出してよろめく。
「やややっ!!」
シルフの小さな拳が、ルカの顔面に重い一撃を何度も叩き込む。
「てーいっ!」
そのまんま回し蹴りで、ルカの顎を蹴り飛ばした!
「っ……!!」
顎を蹴られ、意識が飛びそうになる。
それが戻った頃には、既に地面にゴロゴロと倒れていた。
「く……!!」
ルカは体勢を整えて手を構え、そして突き出す。
すると、シルフに気合砲が叩き込まれた!
「きゃっ!?」
「ふっ!!」
高速移動で接近して、シルフの懐に入り込む。
「魔剣・首刈り……!!」
そして、その喉元をドズッと突き上げた!
シルフは思いっきり突き飛ばされ、木に叩きつけられる。
「ぐぇえ……」
「やぁああっ!!」
ルカは容赦なく、シルフに兜割りした!
寸前で、シルフは消えた。
「なにっ!?」
目標を逃れたルカの剣は、木を抉っただけだった。
剣を構え、辺りを見回すルカ。
「ど、どこだっ!?」
きょろきょろと、周辺を見回すルカ……の、服の背中にシルフはしがみついていた。
「あはっ!」
シルフは地面に飛び降りて、ルカのふくらはぎに飛び蹴りした!
「うわぁあっ!?」
ルカはスっ転んで、地面に倒れてしまう。
「よーし、いっちゃうぞ〜!」
シルフは飛び上がり、なんとルカのズボンの中に入った。
「な……!?」
「やぁあーっ!!」
「ひぃいいっ!?」
シルフがズボンの中で柔らかな風を巻き起こしながら、ルカのモノを刺激する。
風が肌を撫で、シルフの小さな肢体がモノを優しく扱いているのだ。
「うぅっ……くそっ!」
ルカは反応してしまうが、すぐにズボンの中に手を突っ込む。
「っ!?」
「だぁあっ!」
そのまんまぶん投げて、そこに剣もぶん投げる。
「っ!!」
シルフは高速移動で消え、ルカの背後に回る。
「そっちか!」
「!!?」
ルカの裏拳が、シルフを打ち抜いた!
「くぅうっ!」
シルフはまた高速移動で消え、ルカの死角から迫る。
「そこぉっ!」
「わぁあっ!?」
ルカは、シルフを蹴り飛ばした!
「いててて……や、やるねぇキミ!こんな短時間で、あたしの動きを見切っちゃうなんて!」
シルフはそう言って構え直し、止まる。
「よーし、あたしも本気を出しちゃうぞーっ!」
「僕も、行くぞっ!!」
ルカは気を全開放して、凄まじい旋風を巻き起こす。
そしてシルフに向き、キッと目を鋭くする。
「ふ、フルボッコの予感……」
シルフはルカの眼光に当てられ、思わず緊張してしまう。
しかしすぐに緊張を解いて、ルカに向かった。
シルフとルカは、正面からぶつかり合った!
疾風怒濤の攻防が繰り広げられ、どんどん加速する。
「だだだだだ……!!」
「ややややややややっ!!」
シルフの加速が一歩上回り、ルカに一撃した!
「ぐぅうっ!!」
靴を地面に擦らせながら、下がるルカ。
その足に力を込めて、剣を寝かせる構えに入る。
「血裂雷鳴突きっ!!」
シルフに、突きの一閃が決まった!
突きが炸裂した所から、スパークが散る。
「ぐっは……!」
「うぉおおおっ!!」
そのまんま、シルフに猛攻した!
一撃一撃に全力を込め、どんどんラッシュする。
「ぅぐぅうっ……!!」
「だぁあーーーっ!!」
跳んで、シルフの顔面に両足蹴りを叩き込んだ!
シルフは木々をなぎ倒しながらぶっ飛んで、岩盤に叩きつけられる。
「がっは……!!」
「これで、トドメだぁあっ!!」
ルカは飛び上がり、シルフに踵落としを放つ。
それは、見事に直撃した!
「どう見てもフルボッコです。本当にありがとうございました。」
シルフはそう言って、戦闘不能になった……
「やった!ルカの勝ちだ!」
「や、やった……!これで、僕の勝利だ!」
「いったたたた……それじゃあ、合格だよね!」
シルフは立ち上がり、ぽんぽんと服の汚れを払った。
あれだけの猛攻を受けても、元気な様子だ。
「約束通り、あたしが力を貸してあげる!まずは召喚契約だね……やー!」
シルフはルカに手を向け、発光する。
その光がルカに集まり、風の力がその身に宿された。
「え……!?なんだ、これ……?」
全身に、不思議な感覚が広がっていく。
自分の体が、周囲の風と混じってしまったかのような一体感。
ヴィクトリーはそれを見ながら、唾を飲んだ。
「ルカから、すっげぇ気を感じる……これが風の力か……」
「ルカに召喚の心得がなくても大丈夫な、専属契約!あたしの姿をイメージしながら気を解放すれば、あたしを呼び出せるからね。それに、あたしも他の四精霊の事とか気になるし、一緒についていくよ。よろしくねっ!」
シルフはそう言って、ルカの体に入り込んだ。
「わっ……!」
「うむ、これで目的は済ませたな。」
アリスはようやく出てきて、頷く。
「それでは、森を出て……」
「ああ、次の目的地は……」
その時、一同に悪寒が走った。
凄まじく禍々しい気が現れて、こちらに向かっているのだ。
「なんだっ!?」
「なんだろう、これ……背中のあたりが、ぞわぞわするんだけど……」
「なんだ、この異常な魔力は……!聖なる力に近いが、天使にしては禍々しすぎるぞ……!」
「みんなーっ!!武器を抜けーっ!!くるぞーっ!!」
ヴィクトリーの指示で、メンバー達は臨戦態勢をとった。
その正面から、気の主が姿を現した!
天使が溶け込んだような禍々しい鎧、放たれる聖なる力と禍々しい気……
鎧の狂戦士が、戦士達の前に現れたのだった。
「天使……天使ィ……」
「な、なんだこいつ……!!」
「なんだ、この化け物は……!!」
ルカやアリスも知らない化け物……
当然、ヴィクトリーが知る道理も無かった。
しかし、心当たりならある。
「おめぇが、この森を脅かしてる正体不明のバケモンらしいな……」
しかし、襲ってはこないとの噂ではあるが……
「天使……天使……天使ィィイイイ!!!」
鎧の狂戦士の咆哮が響き、辺りに突風を巻き起こした!
「っ!!」
「な……な……!!?」
「なんて気だ……!!」
「天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使!!天使天使天使天使天使天使天使天使ィィイイイーーーっ!!!」
鎧の狂戦士はルカに目をつけ、気を解放した!
凄まじい気が波動して、辺りの草が吹き飛んだ。
「ちょっと……話が違うよ!思いっきり襲ってくるじゃないか!」
「動揺している場合か、応戦するぞ!」
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を三倍にして、構える。
その他の戦士達も、気を解放して構えた。
「天使、滅せよ……」
鎧の狂戦士の目には、ルカの姿が映っていた。
憎しみにも似たオーラを爆発させながら、剣を構える。
「天使天使天使ィイ……!!滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅……!!」
突如現れた、謎の鎧の狂戦士。
戦士達は、それに立ち向かう体勢をとった。
果たして……!?

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狂戦士……!!

シルフの力を得た、ルカ。
ルカは戦士達と一緒に旅を続けようとするが、突如として鎧の狂戦士が襲ってくるのだった……
「天使天使天使天使天使天使ィイイイ!!!天使ィイイイイーーーッッッ!!!」
「くるぞっ!!」
「分かってる!」
「はぁあっ!!」
戦士達は力を解放して、鎧の狂戦士に向かった。
「だりゃああーっ!!」
ヴィクトリーが殴りかかる。
しかし鎧の狂戦士はひょいと避けて、剣を構えた。
「おォォォおぉオ……!!天使ヲをぉォ……!!」
向いたのはヴィクトリーではなく、ルカだった。
ルカに剣を向け、そこから闇のエネルギー波が放たれた!
「なんだとっ!?」
「僕にっ!?」
ルカは寸前で跳び避けて、鎧の狂戦士を見る。
「天使ィイイイ!!」
既に鎧の狂戦士はルカの上空で、剣を振りかぶっていた。
「くそっ!?」
「させないっ!!」
鎧の狂戦士の兜割りを、ソニアが受け止める。
「うぐぅううっ!!?」
「ォォオオオ……!!天使天使天使……!!!」
「きゅーっ!!」
「破壊するよ……」
ヌルコとヒルデはデュエルカノンを起動して、鎧の狂戦士の背中を爆撃した!
爆煙が舞い、もくもくと立ち込める……
「よけろ二人とも!!よけろーっ!!」
ヴィクトリーが、すかさずそう言った。
次の瞬間だった。
「天使天使天使天使ィイイイーーーッ!!!天使ィイイイイイイーーーッッッ!!!」
鎧の狂戦士は、大規模な爆発波を放った!
聖なる破壊のエネルギーがドーム状に広がり、大爆発する。
「まずいっ!」
「くそっ!!」
「ソニアッ!!ヒルデ、ヌルコーっ!!」
爆発が晴れると、三人は倒れていた。
「うぐぐ……な、なんて強さなの……!!」
「きゅ……」
「ダメージ、100%……ヒルデ、もう動けない……」
「ォオオオオオーーーっ!!!!」
鎧の狂戦士は大きく咆哮して、ルカに目をつけた。
「くっそぉおっ!!」
ヴィクトリーが界王拳を三倍にして、鎧の狂戦士の懐に入った。
「だりゃああっ!!」
そして、思いっきり顔面をぶん殴る。
「……」
鎧の狂戦士は、ピクリとも動かずにいた。
「だぁあああーーーっ!!!」
ヴィクトリーは、鎧の狂戦士の全身に攻撃を連打した!
その鎧に、渾身の蹴りや拳が無数に叩きつけられる……
「オォオオッ!!」
しかし、攻撃の雨の中から鎧の狂戦士の手が飛び出し、ヴィクトリーの顔面を掴んだ!
「なっ!!?」
「天使ィイイイーーーっ!!!」
ヴィクトリーは、思いっきりぶん投げられた!
「!!!」
ルカに、ヴィクトリーが叩きつけられる。
「ぐはぁあっ……!!」
「がはぁあ……!!」
「くっ!!」
入れ替わるように、アリスが鎧の狂戦士に走った。
「はぁあっ!!」
強烈な三連突きが、鎧の狂戦士に叩き込まれる。
「オォオオオオオ……!!」
しかし鎧の狂戦士は気にも留めず、ルカに向かう。
「くそっ!!止まれっ!!少しは余を見んか!!」
アリスは鎧の狂戦士をレイピアで切りつけたり、魔法を顔面に叩きつけたりするが、鎧の狂戦士は止まらずに居た。
「こんのっ……!!」
「滅!!!」
次の瞬間、アリスは鎧の狂戦士の気合いにぶっ飛ばされた!
「ッッッ!!!?」
「ぐはぁあっ!!」
アリスはヴィクトリーと激突して、倒れてしまう。
「ォオオオオオッ!!天使ィイイイッッッ!!!!」
「ま、まずい……!!」
鎧の狂戦士は剣にエネルギーを纏い、それを思いっきり振り下ろした!
凄まじいエネルギーが三人に叩きつけられ、大爆発が巻き起こった!
「ぎゃぁああああっ!!!」
「ぐぁあああああっ!!?」
「うわぁああああっ!!!」
三人は倒れて、戦闘不能になってしまった……
「うぅっ……なんて強さだ……」
「ち、ちくしょう……勝てねぇ……!!」
「天使をヲヲ……滅すゥゥ……」
倒れ伏すルカめがけて、鎧の狂戦士は剣を振り下ろした!
「っ!!」
ルカは、もうダメだと目を瞑り、覚悟を決めた……
次の瞬間だった。
鎧の狂戦士はぶっ飛んで、木に叩きつけられた!
「ッッグォオ……ッッ!!?」
「……っ!!?」
ルカやヴィクトリーは、そこに注目する。
目の前に立っていたのは、ヴィクトリー……の顔をした、黒い胴着の男だった。
その左耳には、かわいいうさぎのピアスが着いている。
「……危ない危ない……こんな所で殺されていたら、私の計画はパァだ……」
「ヴィク……トリー……!!?」
「いや、違う……俺なんかじゃねぇ……!!あいつは……」
あの特徴……聞き覚えがある。
確か……
「……出てこい。ネロ、アリスフィーズ17世。こいつらに死なれたら困るのは、そちらもだろう?」
ヴィクトリーに似た男がそう言うと、ネロとネリスが現れた。
「……バレてたのね……いや、そんな事より、ルカ!大丈夫!?」
「……」
ネリスは、直ぐにルカ達に向かった。
ネロと男が、向かい合う。
「彼らのダメージは大きい……ネリス、彼らを安全な場所へ。」
「兄貴、そっちは任せて大丈夫?」
「問題ない……」
ネロがそう言うと、ネリスはルカ達を背負う。
「じゃあ、ルカとおまけ達はまかせて!」
額に指を当て、消えた。
「……出番を逃したなぁ、ネロよ。奴の相手はこの私がする事にした……」
「一応、見学だけさせてもらいます。その名を騙る、不届き者の実力を見るために……黒のヴィクトリー。」
「実力か……ハッハッハッハッハ!」
黒のヴィクトリーは笑い、鎧の狂戦士の方へ向いた。
「ォオオオオオーーーっ!!!!」
鎧の狂戦士は起き上がり、黒のヴィクトリーに向く。
「殺ス……!!!」
先程の一撃がこたえたようで、完全に黒のヴィクトリーを敵として認めたようだ。
「さぁて、私もこの体の実力を引き出せるように、頑張るとしますか……」
黒のヴィクトリーは構えて、気を解放した!
その気は、どす黒くて闇のような気。
ヴィクトリーのような気とは違い、悪の力が滲んだ気だった……
「滅ッッッ!!!」
鎧の狂戦士は剣にエネルギーを纏い、黒のヴィクトリーに振り下ろした!
黒のヴィクトリーは、それを受け止る。
「はっ!!」
鎧の狂戦士の腹に、正拳突きを叩き込んだ!
「!!!」
その鎧が大きく凹み、その体は靴を擦らせたまんま、大きく後退した。
「ググゥ……ゴフッ……グォオオッ……!!」
鎧の狂戦士は口らしき所から血にも似た黒い液体を吐いて、構えた。
しかし、既に黒のヴィクトリーは鎧の狂戦士に迫っていた。
「はぁあっ!!」
「ォオオオッ!!!滅っ!!滅っ!!滅滅滅滅滅滅ッッッ!!!」
そのまんま、超スピードで激しく攻防する二人。
ドカドカと攻撃が飛び交い、衝撃が連続する。
「そこだ……!!」
黒のヴィクトリーは一瞬の隙を見切って、腹にパンチした!
「グゥオオオッ!!?」
ダメージに悶える鎧の狂戦士を、無言で蹴り飛ばす。
そして、手を向けた。
「ふははははは……!!」
エネルギー波を連射して、鎧の狂戦士を何度も爆撃する。
その爆炎の中から、一筋の影が飛び出してきた。
「オオォオオッ!!!」
なんと鎧の狂戦士は黒のヴィクトリーの攻撃に耐えて、黒のヴィクトリーに接近。
「!」
「滅ッッッ!!!」
その剣にエネルギーを込めて、黒のヴィクトリーに振り下ろした!
黒のヴィクトリーは、それを腕でガードした。
あまりの威力に、全身がビリビリする。
「ぐ……!!」
「ォオオッ!!」
鎧の狂戦士は、黒のヴィクトリーの顎を蹴り上げた!
「滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅ッッッ!!!!」
間髪入れずに、黒のヴィクトリーに猛烈な連続攻撃を繰り出した!
凄まじい速度の猛攻に、黒のヴィクトリーは全て直撃を許してしまう。
切るだけ切った後、鎧の狂戦士は腕にエネルギーを込める。
「滅せよォオオオオオッッッ!!!!」
そのエネルギーを、黒のヴィクトリーに零距離射撃した!
天使も人も滅ぼす凄まじいエネルギー波が天を突き破り、この星から抜けた……
「……!!」
「……やりますねぇ……」
黒のヴィクトリーは、ボロボロになった服装のまんま浮かんでいた。
浅くもないが深くもないダメージが、その身に刻まれている。
「いい……いい痛みだ……この痛みこそ、私の進化への推進力……ふっふっふっふ……!!」
黒のヴィクトリーは笑いながら、地に降り立つ。
「……はぁあっ!!」
黒のヴィクトリーは、気を解放した!
「……っ!!?」
様子を見ていたネロが、異変に気付いた。
しかし鎧の狂戦士は、黒のヴィクトリーを前に咆哮するだけだった。
「ォオオオオオオオオオーーーッ!!!滅ボす……!!殺すっ!!殺す殺す殺ス殺す殺ス殺ス!!!!」
そう言いながら、黒のヴィクトリーへと切りかかる。
しかし黒のヴィクトリーは鎧の狂戦士の一撃をひょいと避け、すれ違い際に攻撃を連打した!
「グォオオオッ!!?」
「っくくく……はぁあっ!!」
更に、思いっきり後ろ回し蹴りを放った!
直撃はしなかったが、後ろ回し蹴りによって衝撃波が発生して、鎧の狂戦士にぶつかった!
「ォォオオオッ!!!!」
鎧の狂戦士は木々をなぎ倒しながらぶっ飛んで、壁に激突した。
その鎧の全身に亀裂が入っており、亀裂からドス黒いエネルギーが漏れていた。
「オォおオォおオォおおオおぉオオ……!!!」
「……」
黒のヴィクトリーは、ニヤリと笑いながら鎧の狂戦士に歩み寄った。
「……有り得ない……あんな、パワーアップ……!!」
ネロは、異変の正体に気付いていた。
黒のヴィクトリーは、本物のサイヤ人だ。
戦いながらも進化して、ダメージさえも強さに変えてしまう戦闘民族だ。
ならば、この短期間でパワーが段違いになっているのも頷ける。
そう、黒のヴィクトリーは戦いながら強くなっていたのだった。
「くっくっくっくっく……」
黒のヴィクトリーは不敵に笑いながら、右手で手刀を作り、腕を伸ばす。
気を腕に集中させ、振った。
すると、黒のヴィクトリーの手に黒い気の刃が宿った。
「くっくっく……喜ぶがいい、鎧の狂戦士よ!貴様は我が進化の礎と成ることが出来た!こうして私は、また新たな力を手にしたのだ!」
「ぉ……オ……!!!オオォオオッオオオオオーーーッッッッ!!!!」
鎧の狂戦士は大きく咆哮して、黒のヴィクトリーに剣で猛攻した!
黒のヴィクトリーは笑い、気の刃で対抗する。
「滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅ーーーッッッ!!!!」
「ふははははははは!ふはははははははははははは!!」
刃と刃がぶつかり合って、火花が散る。
刃でのぶつかり合いは加速を続けて、二人は消えた。
次の瞬間この精霊の森の全域に、無数の斬撃が駆け巡った!
「オオォオオーーーッッッ!!!!」
「はぁあああーーーっ!!!」
渾身の一閃が、交差した!
二人は着地して、静止する……
「ッッッ!!!」
黒のヴィクトリーの胸に、横一文字の斬撃が入った!
血が噴き出して、跪いてしまう。
そんな手痛いダメージを受けながらも、黒のヴィクトリーはドス黒い笑顔を浮かべていた。
「オォおオオぉおォおおオッ!!!?」
鎧の狂戦士に、肩から腰にかけて深い斬撃が駆け巡った!
あまりのダメージに足がガクガク震えて、剣を落としそうになる。
「か……め……は……め……!!!」
黒のヴィクトリーは手を合わせて、エネルギーを溜めた。
「ォオオオ……!!!オォオオオーーーッ!!!」
鎧の狂戦士は剣を握って、黒のヴィクトリーに斬りかかった。
「波ーーーっ!!!!」
しかし、黒のヴィクトリーのかめはめ波が鎧の狂戦士に直撃した!
「ーーーーッッッ!!!?」
「そのまま、消えるがいい……はぁああっ!!」
かめはめ波が更に大きくなり、鎧の狂戦士を飲み込んだ!
「ォ……ぉ……!」
鎧の狂戦士は、跡形も無く消え去った……
「っはっはっはっは……!!」
黒のヴィクトリーは倒れ込み、笑っていた。
それを見ていたネロは、まずは鎧の狂戦士が居たところに目を向けた。
「滅びてはいまい……魂が隔絶されている限り、聖骸の暴走は何度でも……」
そう言ってから、今度は黒のヴィクトリーに目を向けた。
「……さて、私はどうするべきでしょうか?」
「さぁな……ただ、こんな所で睨み合っていても始まらん……」
黒のヴィクトリーは胸を押さえながら、立ち上がる。
「私は、一足先に帰らせてもらう……既に、目的は達成したのでね……」
そう言いながら、ネロに背後を見せる黒のヴィクトリー。
しかし、その肩をネロが掴んだ。
「いいえ、貴方の素性を知らない限り私は貴方をみすみす逃すわけにはいきません。さぁ、何を企んでいるか教えてくれますか?」
「……」
黒のヴィクトリーは、ニヤリと笑った。
「……っ!!?」
ネロの背後から、暗黒のエネルギーを纏った無数の杖が飛んできた!
ネロは身を翻してそれを避け、黒のヴィクトリーの方へ向いた。
「ふははは……!」
「……」
黒のヴィクトリーの横に、ドミグラが居た。
「なっ!?」
ドミグラは既に次元の穴を開けており、笑った。
それと共に、黒のヴィクトリーもニヤリと笑う。
「それでは、御機嫌よう。また会うその時まで……」
「ま、待てっ!!」
ネロはそう言うが、黒のヴィクトリーとドミグラは次元の穴に消えてしまった……
「……ふむ、逃がしましたか……」
ネロはそう言いながら、一人で精霊の森に佇んだ……

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サバサへの準備

絶対に変えてはいけない未来がある。
変えてしまいたい過去だってある。
そして、変えるべき歴史だってある。
それを成すべく、キミ達の世界の時の神はタイムパトロールというものを作った。
歴史とは、一つの糸である。
些細な事で分岐してしまい、やがて絡み合ってしまうのだ。
絡み合って胡乱となった歴史はやがて破綻し、その始まりから順に崩壊する事となる……
……と、ここまでは『ゼノバース』の世界で起こった事。
しかし、ここはキミの世界とは違う。
タイムパトロールも居なければ、時の界王神も居ない。
特別な力を使う破壊神も居ないし、破壊神に従事する天使なんてものも居ない。もし居たら、イリアス激おこモンだよ。
とにかく、ここは『ドラゴンボール』の世界なんかじゃないんだ。
だけど、ボク達はキミを必要としている。キミが思っている以上に。
そもそも、こんな事になったのも向こうのキミの安易な選択が原因だ。
しっかりと、拭ってもらわなきゃね。
歴史改変問題の専門家、ゼノ戦士達……
それらをカードとして従える力を持った、キミに。
まぁ要するに……ゼノバースよろしくこの世界の戦士と共に戦って、この世界を救っちゃおうってコトだよ。
うん、黙ってるって事は了承したって事でいいのかな。
うん、そういう事にしておこう。それじゃあね。
……あっ、あとキミが来た事による歴史の歪みは一切無いからね。むしろ、こっちで来てくれて釣り合いがとれたなーって感じだから、遠慮なく暴れていいからね。
じゃあ……協力ありがとう。
ボクはいつでもキミ達を見ている。

……

「……」
ヴィクトリー、目を覚ます。
ここは、ポケット魔王城のベッドルームのようだ。
「ようやく起きたね。」
ルカが、声をかけてくれた。
目が覚めるまで、傍に居てくれたようだ。
「変な夢を見ていたみてぇだ……」
「夢か……僕も……いや、アレは……」
どうやら、ルカも変な夢を見ていたようだ。
そして、ルカから聖なる力を僅かに感じた。
「ルカ、おめぇ……」
「ああ、うん……僕の母さんは天使だったんだ……だから、僕も……」
「そうか……不思議な力は残ってんのか……」
ヴィクトリーは起き上がり、所持品を確認する。
無くしたものはないし、全て揃っているようだ……
「はぁあっ!!」
「うわっ!?」
ヴィクトリーが気を解放すると、凄まじい気がその身から放出された!
「……パワーアップを遂げたのは、おめぇだけじゃねぇみてぇだ……」
「らしいね……」
死にかけの状態から復活した事により、超パワーアップしたようだ。
今なら、3倍以上の界王拳も使えるだろう。
「それにしても……いったい、何がどうなってるんだ……?」
「ああ……俺達は精霊の森で鎧の狂戦士にぶっ殺されそうになった……だけど、あの黒い俺に助けられた……まではいい。」
「うん……何で、無事にここに居るんだろうね。それに、傷も全快してるみたいだし……」
そうこう話していると、扉が開かれた。
来たのは、アリスだった。
「アリス。」
「……気が付いたか。どうやら我々は、あの自称17世に救われたようだぞ。ネロもいたようだが、余も気を失ってしまってな。あんな連中に助けられるとは、なんたる不覚……」
「そうなのか……あの人達には、助けられてばかりだね。」
「だけど、一番に気になる奴が居るぜ……」
「ああ……あの黒い貴様か……奴が、例の『黒のヴィクトリー』とやらで間違い無さそうだ。」
ネロとアリスフィーズ17世……そして、黒のヴィクトリー。
三人とも何を考えているか分からないが、俺たちを助けてくれた。
「それに、あの鎧の狂戦士はいったい……」
「何だったんだろうね、普通じゃなかったよ……」
「俺達の世界にも、あんなんは居なかったぜ……」
三人は、頭を傾げる……
しばらくして、ルカが頭を振って二人に向いた。
「でも、一応目的は果たせたんだ。シルフとも、ちゃんと契約できたしね。」
「わ〜い!いっしょだよ~!」
ルカの中に、変な気を感じる……
これが、精霊と契約を結ぶということか。
「とにかく、ここでやれる事は終わったと思うぜ。次は何処に行きゃいい?」
「そうだな……ここから南西にあるサバサ地方が順当だと思うぞ。あそこには四精霊の一人であるノームがいる。確か、サファル砂漠に棲んでいるのだったか……」
「わ~い!ノームちゃんと遊べるよ~!」
四精霊が居るとなると、そこに行くのは欠かせないだろう。
「それに……サバサ地域の北には、タルタロスがある。ここも捜索せねばなるまい。」
「熱砂の地、サバサか……暑さ対策も、万全にしないとね。」
「よっしゃあ!早速向かおうぜ!」
ヴィクトリーは、パンっと拳を叩いて気合を入れる。
どうやら、既にやる気まんまんのようだ。
「サバサ地方への旅路は、なかなか大変だぞ……西へと進み、荒野や山脈地帯を抜けなければな。サン・イリア西に見える道に沿って、西進すれば……荒野の手前で、モンテカルロという町が見える筈だ。」
「じゃあ、一旦そこで落ち着くべきだね。」
「そうしたら、サバサ地方に向かうのか……次は、どんな強敵が待ってんだろうな……わくわくすっぞ!」
次の目的地は、西の砂漠地帯サバサだ。
ノームと契約を結び、そしてタルタロスを探索する。
もしかしたらタルタロスに、ルカの父ちゃんも居るかも知れない。
何より、白兎は絶対に関わってくるだろう。
熱砂の地では、どんな冒険が待っているのだろうか。
そして、どんな強敵が戦士達を襲うのか……
戦士達は、冒険を続けた……

モンテカルロには、直ぐに着いた。
魔物も、ヴィクトリーのバックドロップでだいたい何とかなった。
「ここがモンテカルロか……」
「ああ……」
「それでは、情報を集めるとしよう。この周辺に関しても知りたいしな。」
今回、メンバーを一新した。
メインに出ているのはルカ、アリス、ソニア、そしてヴィクトリー。
控えはプロメスティンとヌルコとブリュンヒルデだ。
控えの方はポケット魔王城に籠ってもらい、必要時に出てくる方式をとった。
ついでにプロメスティンが開発した通信機で、ポケット魔王城に居ながらも外の様子を聞くことも可能だとか。
まぁ、多分三人とも三人の事をやってるだろうから殆ど聞いてないとは思うが……
「こういう町には、情報屋が居るはずだよね。まず、そこからあたるのが常道かな?」
「正直、あまり長くは居たくない町だよね……特別な用事は無いし、話を聞いたらさっさと発とうよ。」
ソニアは、不安顔でそう漏らした。
「よーし、みんなで解散すっか。そうした方が、都合がいいぜ。」
「ああ、後で落ち合おう。」
戦士達は解散して、町を捜索した……

ヴィクトリーは、不穏な気を感じてそこに向かった。
「ありゃあ……」
サキュバスが、青年に迫っていた。
「ふふっ、おいしそうな獲物ね。その精、じっくり吸ってあげるわ……」
黒髪で、前髪ぱっつんのサキュバス……
「……ぐっ!?」
ヴィクトリーに頭痛が走り、ヴィジョンが流れ込む。
自分を踏むアイツ、かめはめ波を弾き飛ばすアイツ……
アイツは、確か……
「エヴァ……!!」
頭痛が収まり、あのサキュバスを見る。
エヴァという名前が、頭に浮かんだ。
「安心しなさい、命までは奪わないわ……ふふふっ、天国を味わわせてあげる……」
「うわー、誰かたすけてくれー」
青年は、棒読みと歓喜が混ざったような声でそう言った。
幸せそうだから、まぁいいや……
そう思いながら、その場を後にしようとした時だった。
「……!」
ここに、強い気が近づいてくる……!
そう感じて、踏みとどまった。
「ふふっ、こんなところに助けが来ると思う?さあ、観念して私に犯されなさい……」
ここでヴィクトリーは、キッとそこら辺の民家の屋根を見た。
「はぁっ!」
そこには、珍妙な格好の女性が立っていた。
赤を基調にした格好の、ヒーロー風の女だ。
「あ、あんたは……!?」
エヴァはそれに気付き、そいつの方に注目した。
「正義の味方(ヒーロー)、ジャスティスカイザー!!とぉっ!」
ジャスティスカイザーと名乗る女は跳んで、サキュバスの前に立つ。
「あんた、いったい何なの!?どうして私の邪魔ばっかりするのよ!」
「弱者を脅かす悪党を、私の(ハート)が許しはしない!受けなさい、正義の鉄拳(ジャスティス・ナックル)……!!」
ジャスティスカイザーは拳に気を纏い、エヴァに攻撃した!
エヴァはそれを受け止めてから、離れる。
「ああもう、お腹減ってるのに面倒くさい……いいわよ、別の男を狙うから!」
エヴァは呆れた顔で、逃走した。
「くっ……また逃がしてしまったか……!」
ジャスティスカイザーはそう言いながら、青年に向く。
「もう大丈夫、(エビル)は去ったわ。怪我は無いかしら……?」
「ああ、うん……」
青年は、困惑のままに生返事をして頷いた。
ジャスティスカイザーはニコッと笑ってから、ヴィクトリーの方へと向いた。
「それに、そこのあなた!」
「……気づいてやがったか。」
「その瞳に、正義の(スピリッツ)を見たわ。あなたを見込んで頼みがあるのだけれど……」
「頼み?」
「ここじゃなんだから、私の家(マイハウス)で話を聞いて。」
そう言って、ジャスティスカイザーは視線を西に向けた。
その先には、ポツンと一軒家が建っている。
「私の視線の先……ほら、分かる?そこが私の家(マイハウス)だから……それでは、さらば……とうっ!」
そう言って、ジャスティスカイザーは飛び去った……
「……家、すぐそこなのに飛び去んのかよ……」
ヴィクトリーはそう言いながら、頭を搔く。
頼みがあるとなると、黙って無視するわけにはいかない。
とりあえず、彼女の家に向かった……

「よく来てくれたわね……私はジャスティスカイザー、正義の味方(ヒーロー)よ。」
「ああ、俺はヴィクトリー。頼みを聞きに、やってきたぜ。」
「その通り、話が早い!」
ヴィクトリーは、ジャスティスカイザーの依頼を聞いた……
先程の淫魔……エヴァを倒してきてほしいという趣の依頼だった。
どうやら、あいつはカルロスの丘に逃げてしまい、それ以上は追えないとか。
「何でだ?」
「このスーツ、長いこと着てると汗で蒸れて……短い戦いならいいけど、持久戦には向いていないのよ。」
「脱ぎゃいいんじゃねぇの?」
……そういう訳で、カルロスの丘には行けないらしい。
というより、長時間の戦闘は出来ないらしい。
「よーし、やる事はだいたい分かったぜ。」
カルロスの丘は、ここより南東にある。
このモンテカルロからも比較的近く、今すぐに殴り込みを掛けても良さそうだ……
その前に、ルカ達にこの事を伝えなければ。
こんな時に便利なのが、サン・イリア法王様が開発した通信マキナだ。
携帯型で、これがあれば離れた場所に居るやつとも通話できる。
ヴィクトリーは早速、ルカと通信を繋いだ。
「オッス、ルカか?」
「ああ、ヴィクトリーか。何か情報が?」
「ああ、この付近で修行しようと思ってんだけどさ。おめぇ今何処に居る?」
「ああ……今は、イリアスヴィルのラザロおじさんの家に居るよ。」
「いぃ!?なんで、また……」
「モンテカルロの町はエルカ商会っていうグループが仕切ってるんだ。その総本山に入るために、ラザロおじさんの紹介状が必要になって……」
「へぇ……」
あのおじさん、こんなヤバそうな連中とつるんでんのか……?
「で、今ソニアがラザロおじさんの家片付けてる最中……しばらく遅れるよ……」
ルカの背後から、ソニアがギャーギャー喚いてる声がする。
こりゃ、早く終わりそうに無さそうだ……
「ああ、そうか……そんじゃあな。頑張れよ。」
「う、うん……」
通信終了して、ヴィクトリーは伸びをした。
「準備は出来たか!?次世代のヒーロー!」
「ああ、行ってくる!」
ヴィクトリーは、そう言ってジャスティスカイザーの家を出た。
この町からも出て、向かうは南東。
カルロスの丘に籠城する、謎の淫魔エヴァ。
果たして、彼女は……?

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カルロスの丘の激闘

モンテカルロの町で、それぞれの行動を取ることになった戦士達。
ルカ達はイリアスヴィルに、ヴィクトリーはカルロスの丘へと向かっていた。
ここには町を脅かす、エヴァという淫魔も居るのだ。
ジャスティスカイザーの依頼もあり、修行も兼ねて、エヴァを倒しに行く事となっていた。
「……いい奴だといいんだけどな。」
そう言いながら、ヴィクトリーは広野を進んだ……

カルロスの丘……
「ここが、カルロスの丘か……」
まぁ、なんてことの無いただの丘である。
「モンスターの気に混じって、ちょっとでけぇ気があるな……そこか?」
そう言いながら丘を進み、ヴィクトリーはエヴァを探す。
当然、魔物達は大人しい奴ばかりではなかった……
「……む!?」
「えへへ……男の子だぁ……」
「いい体してる〜!」
立ちはだかったのは、サボレスという魔物だった。
上半身は普通の女の子なのだが、下半身が口や目を持った四つ足の化け物で、その口から出ている舌は7本近くある。
「まぁた、気持ち悪ぃバケモンが出てきたな……」
「ちょっと!化け物って何よ!」
「む〜!怒ったわ!この口で食べちゃうわよ!」
ヴィクトリーは構え、サボレスに向かって走った。
「だぁあっ!!」
「!」
サボレスの一体を、拳でぶっ飛ばした。
「だりゃーっ!!」
「!!」
続くもう一体には、回し蹴りを叩き込む。
しかし、それは受け止められてしまった。
「へぇっ!」
「やっ!」
足を突っぱねられるが、ヴィクトリーは難なくバランスを整える。
「あはっ!」
「そこっ!」
そうしている間にサボレスが、正面と上空から強襲してきた。
「へっ!」
ヴィクトリーは額に指を当てて、消えた。
「!?」
「え……!!?」
瞬間移動。
相手の気を捉えて、瞬時に移動する技である。
応用によって、相手の攻撃を避ける事も可能になる……
「こっちだ!」
ヴィクトリーは、かめはめ波の構えをしながら現れ、サボレス達を見据えた。
「!!」
「は、速……!!?」
「波ーーーっ!!」
サボレス二体にかめはめ波を放って、直撃させた!
「ちょっと、ひどいじゃない……」
黒焦げになったサボレス達はそう言いながら戦闘不能になり、倒れた……
「よしっ……!!」
ヴィクトリーは構え直し、周囲を見る。
「……そこかっ!」
唐突に、背後に気弾を放った。
「ふんっ!」
背後から迫ってきたモンスターが、その気弾を弾いてヴィクトリーの前に立った。
右腕がやけに発達した、ゴーレムっぽい魔物だった。
たしか、バンダースナッチ娘とか言ったか。
「ひゃあ、すっげぇ奴が出てきたな……どうやって動いてんだ?」
「私の動力源は、人間の精……幸い、この地に踏み入る旅人も少なくはない……」
「俺は動力源になるつもりはねぇぜ!」
ヴィクトリーは気を解放して、バンダースナッチ娘に攻撃した!
「ふんっ!」
拳が巨大な腕で止められ、蹴りが迫る。
「っ!」
ヴィクトリーは、それを見切って避けた。
「しゃっ!!」
しかし、バンダースナッチ娘の巨大な手が、ヴィクトリーの脇腹に手刀した!
「ぐっはぁあ……!!?」
ヴィクトリーは血を吐いて、脇腹を押さえる。
なるほど、パワーは尋常じゃねぇようだ。
だけんど、力比べなら負けねぇ!
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を使って、バンダースナッチ娘に猛攻した!
「な、なに……!?スピードが、倍に……!!」
「だりゃあーっ!!」
バンダースナッチ娘を蹴り飛ばし、飛ぶ。
「ぐっ……!!?」
「だりゃあーっ!!」
スレッジハンマーで叩き落として、そこに連続エネルギー弾を叩き込んだ!
全て直撃して、バンダースナッチ娘に爆発が連続する。
「くっ、無念……」
ボロボロになったバンダースナッチ娘はガクッと倒れ、戦闘不能になった……
「あはっ!凄い人間が居ますよ!」
「おいしそ〜!」
不意に、背後から声がした。
「……」
ヴィクトリーは振り向き、声の方に顔を向ける。
上半身は人間、下半身が大きな蜘蛛の、タランチュラ娘が二体居た。
「かぁっ……気持ち悪ぃ……やだおめぇ……!!」
「うふふ、頭から食べちゃいますよ〜!」
「精を搾っちゃいますよ〜!」
タランチュラ娘は、二人同時に襲いかかってきた!
「くっ!」
流石にこのレベルの相手と二対一では、普通の界王拳だと分が悪い。
「ちっ、界王拳3倍だーっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を3倍に引き上げて、タランチュラ娘の猛攻を切り返した!
「なっ!?」
「そんな……!!」
「はぁあっ!!」
そのまんま、一体の顔面に渾身の裏拳を叩き込む。
「がっは……!!?」
「くらぇえっ!!波ーーーっ!!!」
そして、かめはめ波でぶっ飛ばした!
「きゃあーーーっ!!!」
かめはめ波によって、タランチュラ娘は遥か上空へと吹き飛ばされてしまった……
「……」
「ひっ……!い、いやーっ!」
残った一体は、かめはめ波の威力に怖気付いて逃げてしまった……
「……ふぅっ。」
ヴィクトリーは息を吐いて、界王拳を解く。
その背後で、物音がした。
「うーん……何よ、ふて寝してる時に騒がしいのは……」
「……!」
例の、エヴァという淫魔が起きてきた。
エヴァもヴィクトリーも、互いを見て驚く。
「げっ、さっきの!こんな所まで来るなんて……!」
「……」
まさか、こんな段階で会うとは……
「おめぇ……」
エヴァの背後……
テントか立っており、焚き火の跡があった。
どうやら、この荒野で野宿してるらしい。
「……ずいぶん、みずぼらしい暮らししてんだなぁ……」
「う、うるさいっ!」
「生活が苦しいのは同情してやるけどさ、町の人を襲っちゃいかんぜ?」
「ふん、私は獲物を好きな時に好きなように吸うのよ……あんただって、干物になるまで搾ってやるんだから!」
エヴァはそう言って構え、気を解放した!
「問答無用か……」
ヴィクトリーも構え、気を解放して界王拳を使った!
「いくぜ……!!」
「ふんっ!!」
エヴァはつっかかり、ヴィクトリーにパンチを連射する。
しかしヴィクトリーはガードし、避け続けた。
「やぁあっ!!」
「よっ!」
エヴァは膝蹴りを放つが、ヴィクトリーはその膝を両手で受け止める。
そのまんま足を掴んで、ぶん回した。
「きゃ……!!?」
「うぉりゃあーっ!!」
そして、ぶん投げた。
「ちっ!」
エヴァは、体勢を整えて壁に足をつく。
その壁を思いっきり蹴り、ヴィクトリーに突進した!
「やぁああああっ!!」
「くっ!」
エヴァの猛攻に、ヴィクトリーは押され気味に対応する。
「だりゃーっ!!」
そして隙を見て、回し蹴りを放った!
しかしエヴァは高速移動で消え、ヴィクトリーの背後に現れる。
「なにっ!?」
「はっ!」
肘打ちで、ヴィクトリーをぶっ飛ばした!
「ぐはぁあっ……!!」
「てぇえいっ!!」
その場でエネルギー弾を放ち、ヴィクトリーに当てる。
「はぁあああああっ!!」
エネルギー弾を連射して、ヴィクトリーに何度も爆撃した!
「いででで……!!」
ヴィクトリーはボロボロになりながらも立ち上がり、エヴァに向かう。
「はぁあっ!!」
地面を蹴り、跳び廻し蹴りを放った!
「っ!」
エヴァは腕でガードし、ヴィクトリーの股間に拳を叩き込んだ!
「はぅああぁっ!!?」
「せぇえいっ!!」
揺らいだヴィクトリーを、エヴァは後ろ廻し蹴りで蹴り飛ばした。
ヴィクトリーは転がりながら地面に伏せ、倒れた。
「あ、あはは……安心なさい。そんな強くはやってないわよ……」
エヴァはそう言いながら、ヴィクトリーに歩み寄る……
「間違えて潰したりなんかしたら、私のご馳走が無くなっちゃうからね……じゃあ、吸っちゃおうか……」
そう言い、ヴィクトリーに手をかけようとした時だった。
ヴィクトリーは起き上がり、エヴァに足払いした。
「っ!?」
見事に決まり、エヴァはすっ転んだ。
「おらぁあっ!!」
「!!」
ヴィクトリーは、倒れたエヴァに膝蹴りを落とした!
「がはっ……!!」
「よっ!」
エヴァに攻撃が当たったのを確認し、距離をとって構え直す。
「ぐっ……!!た、確かに直撃したはずなのに……!!」
「へへへ……武術の一環でよ、腹筋の操作でキンタマを体内に隠すって技があんだよ。」
ヴィクトリーは拳を握り込み、目を鋭くする。
「よぉし……こっからは、俺も本気でいくぞ……!!はぁあああっ!!」
そして力を込め、界王拳を引き上げた!
「な……!!?」
「界王拳、5倍っ!!いくぜっ!!」
ヴィクトリーはエヴァに突進して、拳を放った!
「くっ!」
エヴァはギリギリで避けて、ヴィクトリーの背後についた。
「はぁああああっ!!」
そして両手にエネルギーを溜めて、ヴィクトリーに向かってエネルギー波を連射した!
「ふっ……!」
ヴィクトリーは剣を抜きながら振り向き、迫り来るエネルギー波を次々に切り弾いた!
「な……!!?」
「どりゃーっ!!」
弾き終わり、エヴァに剣を投げる。
エヴァは、それを飛び避けた。
「あ、あいつっ!私を殺す気なのっ!?」
「いや、避けんのは分かってた!」
いつの間にかヴィクトリーはエヴァの背後に回っており、思いっきり蹴りを放った!
「きゃあっ!!」
「いくぜっ!」
舞空術で飛び、エヴァに攻撃を連打する。
「ぉおおおっ!!!」
重い一撃が、エヴァの腹に炸裂した!
「がっ……!!」
「どりゃあーっ!!」
そのまんま、スレッジハンマーでたたき落とした!
エヴァは地面に叩きつけられ、血を吐く。
「一気に決めてやるっ!!か……め……は……め……!!」
ヴィクトリーは手を合わせ、フルパワーでエネルギーを込める。
ここでエヴァが立ち上がって、ヴィクトリーを見た。
「ち……くらい……なさいぃっ!!」
そして、渾身のエネルギー波を放った!
ヴィクトリーはそのエネルギー波が当たる寸前に、瞬間移動で消えてしまった。
「!!?」
「ふっ……!!」
ヴィクトリーは、エヴァの背後に現れた。
エヴァもそれを感じて、振り返る……
「波ああぁーーーッッッ!!!」
次の瞬間、エヴァにかめはめ波が零距離砲撃された!
「な、なんで私が……私ばっかり、こんなぁああーーーっ!!!」
見事に直撃し、大爆発が巻き起こる。
「はぁ……はぁ……」
「むきゅう……」
エヴァは黒焦げになって、倒れ伏した……
「……ふぅっ!」
ヴィクトリーは界王拳を解いて、息を吐く。
見事に、エヴァを倒してみせたのだった……
「うぐぐ……負けちゃうなんて……」
「ひゃ〜……おめぇ、けっこうつえぇんだな……まっとうに生きてれば、こんな思いしなくても済むのによ。」
「今更、何よ……こんな状態で、どうしろっていうのよ!?」
エヴァは起き上がり、声を上げる。
「各地を流れに流れ、追われに追われ……やっと良さげな町を見つけたと思ったら、また追われるの……?」
「……そっか、辛かったんだな……」
「あ、あんたなんかに何が分かるのよ……同情なんて要らないわ!こうなったら、責任は取ってもらうわよ!」
そう言うとエヴァはヴィクトリーに襲いかかってきた……
「な……!!?」
「ふんっ!」
……と思ったら、背中に抱きついてきた。
「……え?」
「早く歩きなさいよ、私は疲れてるのよ!ふかふかのベッドも用意してもらうし、ご飯もたらふく食べさせて貰うからね!」
「えぇ……」
……強引に、素早く、断る暇もなく、仲間になったようだ。
「そ、そうは言ってもよ……ルカ達が、なんて言うか……」
「じゃあ、あんたにこうやってくっついて生活してやるわ!」
「そんな、ケッコンするみてぇな言い方はやめてくれよ!」
「結こ……バカッ!!百年早いわよ!!」
エヴァは、ヴィクトリーの頭をガツンと殴る。
「いっでぇ!」
……どうやら、まだまだ元気な様子だ。
「……でも、おめぇの実力は確かなようだ……この辛い生活を生き延びる為に、そうとうな力を蓄えていたんだな……」
「ええ。これからは沢山食べて、そのぶんはちゃぁんと働くからね。」
「ああ、頼んだぜ……」
こうしてヴィクトリーは、エヴァを退治……というより、保護したのだった。
益々強くなりつつある、モンスター。
それに伴い、ヴィクトリーもまたこうして強くなり続けていた。
さて、どうなる事やら……

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魔導懸糸を求めて……

ヴィクトリーはエヴァを仲間にして、モンテカルロでルカ達に再会した。
「おめぇら、何で俺抜きで向こうに行っちまったんだ……」
「あはは、ごめんごめん……」
とにかく、有益な情報も得られたようだ。
「それより、ヴィクトリー……」
「あ、ああ……」
ルカは、ヴィクトリーがおぶっているエヴァに目をつけた。
「……そいつは?」
「いやぁ、実は色々あってよ……」
「何よ、やましい事なんて無いでしょ。」
とりあえず、エヴァにはポケット魔王城で待機してもらう事にした。
何か、役に立つ日が来るかもしれない……
戦士達はモンテカルロでやれる事を終えて、次の目的地を目指したのだった……

モンテカルロから南西に下った所……
ルビアナという、集団失踪事件が起きたという村があった。
そこには争った形跡もないが、ハーピーの集落のような失踪事件とは違って、身の回りのものをちゃんと整理してから消えたような感じだった……
更には、何故か落ちている天使の羽に、民家で見つけた「私達は、神の世界へと旅立ちます」というメモ書き……
「いったい、何があったんだろうね……」
「キャトルミューティレーションでも起きたんじゃねぇか?」
「キャト……なにそれ?」
「ああ、この世界には無ぇ言葉なのかな……キャトルミューティレーションってのは……」
ヴィクトリーが、ルカにキャトルミューティレーションの説明をしている時だった。
アリスとソニアが、こっちに来た。
「ルカ、この村の宿屋だった所もそのまんまで、調査団も使っているらしい。そこで休むぞ。」
「もー、あたしもくたくた……」
「ああ。一回そこで休もうか。」
「俺も、最近横になってねぇからな……」
戦士達は、宿屋へと向かった……

宿屋で、ルカとヴィクトリーとソニアとアリスが並んで寝ながら話し合っていた……
「こうして話してっと、修学旅行みてぇだな。」
「あんたは何時でも、修学旅行気分でしょ……」
にひひと笑うヴィクトリーに、ソニアが呆れ気味に言った。
そして、アリスが本題を切り出す。
「皆、ここより東に行ったところに求道者の洞窟なるものがあり、そこを越えると人形遣いの塔があるようだぞ。」
「求道者の洞窟?」
「人形遣いの塔?」
ヴィクトリーとルカは、同時に首を傾げる。
「ああ……クロムの事は、覚えているな?」
「クロム……?ああ、今はからくり人形師として修行しているって話だけど……」
「それなのだが、どうもからくり人形師になるには魔導懸糸なるものが必要らしいのだが、それを無くしてしまったらしい……」
アリスがそう言いながら、紙を出す。
どうやら、伝書バトでわざわざルカ達に助けを求めてきたらしい。
紙には、『へるぷ!求道者の洞窟を越えた先にある塔で、魔導懸糸を持ってきて欲しいのじゃ!』と書かれていた。
「あらら……わざわざ俺達の所にまで……」
「自分で取りに行けばいいのにね……」
「あのクロムの事だ。放っておいたらまた霊術に手を出しかねん……我々の修行ついでに、行ってやろうか。」
「うん、そうしよう。ついでに、クロムもこのメンバーにスカウト出来るといいな。」
「ああ。あいつも、実力はホンモノだからな……」
戦士達が次に向かうのは、人形遣いの塔となった……

翌日、求道者の洞窟……
「ここが、求道者の洞窟か……」
戦士達が到着するなり、アリスがそう言った。
「ここを抜ければ、人形遣いの塔がある高原に行けるのだな。」
「魔導懸糸、あればいいんだけどね……」
「気ぃ付けろみんな。どうやら、この辺のモンスターも相当つえぇみてぇだぜ……」
戦士達は、話しながら洞窟を進んだ……
すると、案の定モンスターの群れが襲いかかってきた!
「おいルカ、なんだあのバケモンは!?」
「ムカデ娘だよ!」
「そう、正解よ……」
ムカデ娘……
ムカデの体と腕に、女の上半身が生えたような、化け物だった。
「だぁあっ!!」
ヴィクトリーは、そのムカデ娘に拳を放つ。
しかし、ムカデ娘の外骨格が拳を止めた!
「な、なに……!?」
「私の外骨格は、硬いわよ……」
「ちっ!」
ヴィクトリーは、ムカデ娘に拳と蹴りを連打する。
しかし、高い防御力がヴィクトリーの攻撃を無効化しているようだった……
「ち……!!」
「近寄らないで、向こうに行って……」
ムカデ娘は腕を振りかぶり、ヴィクトリーを薙ぎ払う。
それをガードして、その腕を抱え込む。
「つぁあっ!!」
そして、思いっきり背負い投げした!
「っ……」
ムカデ娘は立ち上がり、すぐにヴィクトリーに向く。
「……いくぜっ!!」
ヴィクトリーは一瞬だけ界王拳を使って、ムカデ娘の腹に一撃した!
「ッッッ!!?」
それは、見事にムカデ娘の腹筋を貫いていた。
その背中が盛り上がって、ムカデ娘は目を見開いて舌を出していた。
「ふっ!」
ズボッと腹筋から拳を抜いて、ヴィクトリーは一息つく。
ムカデ娘は白眼を剥いて、倒れた……
「ヴィクトリー、新手がくるぞっ!」
ルカ達もムカデ娘を切り伏せて、新手と戦っているようだった。
「ああ……!」
ヴィクトリーはそいつの方に向いて、剣を抜く。
そして、斧の一撃を止めた!
「……」
「へぇ!よく分かったな……」
ミノタウロス娘が、ヴィクトリーに斧を振り下ろしていたのだ。
「言っておくが、俺は斧でぶった切られて悦ぶマゾじゃねぇぞ。」
「何の話だ……いくぞっ!」
斧と剣がぶつかり合い、火花を散らす。
そして、鍔迫り合いになった。
「やるなー!」
「おめぇこそ……!!」
「じゃあ、こっちも本気でいくぞっ!!」
ミノタウロス娘の斧から、炎が発生した!
「あちぃっ!?」
ヴィクトリーは離れ、剣を構える。
「轟炎斬!!」
炎を伴った斧の一撃が、ヴィクトリーに迫る!
「くそっ!界王拳5倍!!」
界王拳を使って、何とか受け止めてみせた。
「だりゃああっ!!」
そのまんま、斧を思いっきり切り上げる。
「わっ!?」
斧はミノタウロス娘の手からすっぽ抜け、ヴィクトリーの後方の地面へと突き刺さった。
「……」
ヴィクトリーは、丸腰になったミノタウロス娘に剣を向けた。
「ひっ……お、覚えとけよーっ!」
ミノタウロス娘はあかんべーしてから、逃げていった……
「……ふぅっ!」
「こっちも、終わったよ。」
ルカ達の方も、魔物の撃退に成功したようだ。
戦士達は武器をしまって臨戦態勢を解いて、一息ついた。
「いい運動になったわね。」
「よし、進むぞ。」
アリスが先頭に立ち、先へと進んだ……

求道者の洞窟の出口前……
左の道には奥へと進む道があるが、今は直進してまっすぐ人形遣いの塔へと向かって居た。
そして、出口に差し掛かろうとしたその時だった……
「……!!」
ヴィクトリーが真っ先に戦闘態勢に入り、背後に向いた。
既にムカデ娘とミノタウロス娘が同時に迫っており、ヴィクトリーに一撃する。
その一撃を、剣で受け止めた。
「ぐっ!?」
「ヴィクトリーっ!?いや……!!」
「こいつら、凶悪化してるわよ……!!」
「凶悪化だと……!?まさか……!!」
ソニアとアリスが武器を抜いて、構えた。
「はぁあぁあ……叩ききっちゃうぞーっ!!」
「殺してあげる……!!」
二体はドス黒いオーラを纏っており、目を赤く光らせていた。
その額には、Xにも似たマークがある。
「ちっ……やるかっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を使って、二体とぶつかり合った!
「ちっ、一人じゃ不利だろう!余もやるぞっ!」
アリスもヴィクトリーと並んで、凶悪化した魔物と激突する。
残ったルカとソニアの眼前には、暗黒のオーラが漏れ出てる次元の穴が空いていた。
「こ、これは……!?」
「な、なんなのよ……!!こんなの、知らない……!!」
「……まさか、この俺が出る事になるとはな……」
そう言いながら出てきたのは、仮面のサイヤ人だった。
「な……仮面のサイヤ人!!何をしに来た!?」
「また暗黒魔界の連中ね!?」
「ああ、この先なんだがな……正直、行くのはオススメしねぇ……引き返すんなら、今の内だぜ。」
仮面のサイヤ人がしたのは、脅迫でも邪魔でもなく、忠告だった。
ルカは、眉を動かしながら仮面のサイヤ人を見る。
「何だ?この先の人形遣いの塔に、見られたくないものでもあるのか!?」
「そういう訳でもねぇんだがな……どうしてもって言うなら……」
仮面のサイヤ人は腕組みを解き、構えた。
「貴様らに特に恨みはねぇが……ここで倒れて貰うぜ……」
「やるしかないか……!」
「うん……!」
ルカとソニアは武器を構えて、気を解放した。
「……はぁああっ!!」
仮面のサイヤ人も気を解放した!
仮面にヒビが入り、少し欠けた。
「いくぜ……!!」
「うぉおおっ!!」
「やーっ!!」
ルカとソニアは、仮面のサイヤ人に猛攻した!
しかし仮面のサイヤ人は次々にそれを避けて、ルカを蹴り飛ばす。
「ぐはぁあっ!」
「でぇえいっ!!」
ソニアが、背後から棍を振り下ろしてくる。
「ふん……」
その一撃を受け止め、片手にエネルギーを溜める。
そして、振り向きざまにソニアの腹にエネルギー波を放った!
「っ!!」
ソニアはギリギリで避けて、仮面のサイヤ人のこめかみに蹴りを叩き込んだ!
「ぐ……!!」
「やぁあっ!!」
ルカが飛び出してきて、仮面のサイヤ人の背中を蹴り飛ばした!
仮面のサイヤ人はぶっ飛んで、壁に叩きつけられてしまう。
「……ふ。」
仮面のサイヤ人は立ち上がり、仮面を押さえる。
そこから力が溢れだし、仮面のサイヤ人の力となった!
「これが……仮面の力……っはっはっはっは……!!」
「な、なんだ……!?」
ルカがそう声を上げた瞬間……
仮面のサイヤ人は既にソニアの眼前に来ており、思いっきりぶん殴った!
「ッッ!!?」
「ソニアっ!!くそっ!!」
ルカは剣を寝かせ、気を集中させる。
「はぁあっ!!雷鳴突き!!」
そして、稲妻をまとった突きの一閃を放った!
しかしそれは外れ、仮面のサイヤ人は背後に回り込む。
「なっ……!?」
「とろいんだよ……!!」
そのまんま、ハイキックでルカを蹴り飛ばした!
「ぐぁあ……!!?」
「やぁあああっ!!」
ぶっ飛んだルカと入れ替わるように、ソニアが来た。
そして棍を振り回し、乱打した!
「無駄だ……!」
仮面のサイヤ人はその一撃一撃を、確実にガードする。
そして、ソニアの腹にパンチした!
「ぐっは……!!?」
「ふん!」
よろめくソニアを、頭突きする。
「くっ!」
ソニアは持ちこたえ、棍を持って仮面のサイヤ人に向かった。
「無駄だ……」
仮面のサイヤ人は構え、防御態勢を取る。
「でりゃーっ!」
ソニアは、仮面のサイヤ人の足を薙ぎ払った!
「!」
見事に転ばせることに成功し、仮面のサイヤ人はしりもちをつく。
「ち……!」
「だっはーっ!!」
起き上がった瞬間、ルカの両足蹴りが顔面に炸裂し、ぶっ飛んだ!
「!!!」
仮面のサイヤ人はぶっ飛んで、ゴロゴロ転がってから地面に伏せる。
「ぐ……貴様……!!」
仮面を押さえながら、立ち上がった。
その仮面の力が、また仮面のサイヤ人をパワーアップさせた!
「はぁあっ!!」
ルカとソニアは、仮面のサイヤ人に向かう。
そして、攻撃を連打した!
「あだだだだだ……!!」
「てやぁあああっ!!」
「ぐっ!?」
パワーアップしたとはいえ、勝負が長引いてしまった。
動きがだんだん読まれてしまい、次第にガードが追いつかなくなってしまう。
「図に乗る……なぁああっ!!」
仮面のサイヤ人は気を爆発させ、二人を吹き飛ばした!
「うわっ!?」
「きゃあっ!」
ルカは持ちこたえるが、ソニアが吹っ飛んでしまう。
「くっ!!」
そのルカの背中に、ヴィクトリーがついた。
その目の前には、凶悪化したモンスターが迫っている。
「ヴィクトリー……!」
「ルカ、平気か!?」
「いや……」
ルカの眼前……
仮面のサイヤ人は後方に一回転してから、片手に暗黒のエネルギーを溜めていた。
「はぁああ……!!」
「かなり、まずい……!!」
「しょうがねぇな……!ルカ、気を一点に溜めてそれを撃ち出すことは出来るか!?」
「ああ、やってみる!」
ヴィクトリーとルカは両手を合わせ、そこに気を溜めた。
「か〜……め〜……は〜……め〜……!!」
「終わりよ……」
「やぁああっ!!轟炎斬!!」
「ダークリベリオントリガーっ!!」
二人に、一斉に技が迫る。
その時、二人は目を見開いて気を爆発させた!
「波ーーーッッッ!!!」
「!!!」
ヴィクトリーのかめはめ波は凶悪化したモンスターを吹き飛ばし、ルカのかめはめ波はダークリベリオントリガーを打ち消した!
「むきゅう……」
「やられたー……」
二体の凶悪化が解けて、倒れる。
仮面のサイヤ人は、腕を組んでルカを見た。
「……チッ、ここに来て面倒な技覚えやがって……」
「……まだやるか?」
ルカは剣を向けて、仮面のサイヤ人に迫った。
仮面のサイヤ人は、やれやれという素振りをした。
「……ふん……どうやら、邪魔すんのは無駄みてぇだな……帰るぜ。」
「待て……お前達の目的を教えて貰おうか。」
アリスが、仮面のサイヤ人にレイピアを向けていた。
「さぁな……俺は、命令されただけだ。」
「命令されただと……誰にだ!?」
「貴様らの知らない人間……とでも言っておこうか。」
仮面のサイヤ人はそう言い残して、次元の穴を空ける。
「待てっ!!答えになっておらんぞっ!おいっ!!」
アリスが怒鳴りながら、仮面のサイヤ人に迫る。
しかし仮面のサイヤ人は次元の穴に消えて、その穴もすぐに消えてしまった……
「……逃げられたか……」
「……」
突如として襲ってきた、仮面のサイヤ人。
その態度は、人形遣いの塔に何かあるような素振りを見せていた。
はたして、人形遣いの塔には何があるのか。
そして、仮面のサイヤ人達の目的とは……

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人形遣いの塔

クロムの依頼で、魔導懸糸を求めて求道者の洞窟を進んだ一行。
その求道者の洞窟で、戦士達は仮面のサイヤ人に会う。
その仮面のサイヤ人を追い払い、求道者の洞窟を越えて、戦士達は人形遣いの塔へと到着した……
「ひゃ〜、ずいぶん展開はえぇんだな。話盛れなかったんか?」
ヴィクトリーは緊張で、訳の分からないことを言った。
「よし、行こうか。」
「ああ……」
ルカとヴィクトリーが先頭に立ち、人形遣いの塔へと入った……
仮面のサイヤ人の言う事も、気になる。
余裕があったら、ガサ入れしてしまえ……
そんな気持ちで、二人は塔へと入った。
「おじゃましまーす。」
「おや……?」
見ると、何だか奇妙な格好をした少女が居た。
よく分からない箱を背負って、顔も隠した格好だ。
とにかく、これでガサ入れ作戦は不可能となった。
「おじゃまします……えっと、君は……?」
「私は、人形遣いの影紬……この塔の長を務めております。」
「……」
影紬と聞いた瞬間、アリスの眉が動いた。
しかし、二人はそんな事を気にせずに影紬に向かう。
「俺はヴィクトリーで、こっちがルカだ。よろしくな!」
「いきなりで失礼ですけど、魔導懸糸を譲ってくれませんか?」
「……それは出来ません。」
即答だった。
「ええっ、何でだ!?」
「あれはからくり人形の師が、弟子に譲る品なのです。その道を志してもいない者が、そう軽々しく譲られるようなものではないのですよ……」
「そ、そうなんですか……?いきなり勝手な事を言って、すみませんでした。」
「いえ……知らぬ事ならば仕方ないでしょう。」
ヴィクトリーとルカは、影紬に頭を下げる。
そして目を見合わせて、小声で喋った。
「おい、どうすんだよ。このまんまだと、クロムの夢が……」
「うーん、困ったなぁ……」
「どうしても欲しいのでしたら、手段はありますよ。」
影紬が唐突にそんな事を言い、二人は頭を上げる。
「え……?」
「おそらく貴方達は、求道者の洞窟を通ってここまで来たはず。その洞窟は、魔芸を志す者が特訓した場所でもあるのです。そこの最下層には、魔導懸糸が保管されてあったはず……どうしても必要ならば、取りに行くと良いでしょう。」
「情報ありがとうございます!」
「サンキューな!じゃあ……」
ここでアリスが、二人の手を引っ張った。
「……二人とも、情報を得たのならさっさと帰るぞ。ほら、来い……」
「お、おい……」
「引っ張るなよアリス……まだ、お礼をちゃんと……」
「いえいえ、構いませんよ。誰であっても、時間とは大切なものですから……」
そのまま、二人は塔の外へと引っ張り出されてしまった……

「何だよアリス、まだお礼もまともに言ってなかったじゃないか。」
「あれじゃ、めちゃくちゃ失礼だろうが……」
「……影紬は、妖魔の間でも有名な人形遣いだ。外法の者でもある、決して関わるな。」
「あいつ、妖魔だったんか……」
「しかも、外法の者……危ない奴ってこと?」
アリスは咳をして、指を立てる。
「影紬とは、正確には一族の長に与えられる雅号。さっきの奴は、四代目影紬にあたる。からくり人形術のみに限定すればだが……影紬一派の腕前は、三魔芸を極めたアルテイスト家よりも上。影紬には手を出すな……それは、魔王として母上から告げられた事でもあるのだ。奴は極めて危険だが、求道に没頭している最中は無害。それゆえ、断じて手を出すでないぞ。」
「そんなに危ない奴だったのか……」
「ひえぇ……」
だけど、そんな事を言われたらそれはそれでワクワクする。
いつか、そのからくり人形術の腕前に挑んでみたいものだ。
ともかく、情報に嘘はないだろう。
「くっそ〜!それにしても、中に何があんのか気になるな〜!でも、あの影紬って奴がいる限り、探索は出来ねぇんだろ?」
「ああ……求道とは孤独なものだ。誰にも踏み込ませぬ、崇高な領域……それを土足で踏みにじろうものなら、どうなるか……」
「想像したくもねぇな……でも……」
……この塔に、何かあるのは確かだ。
とっくに気付いてんだよ。ここのどこかに、すげぇ気を感じるのは……
だが、今のままでは無謀すぎる。
もっと修行を重ねてから、来る事にはなりそうだ……
「よし、それじゃ求道者の洞窟に潜ろう。その最下層に、魔導懸糸があるって話だね。」
「ああ、行くぜっ!!」
こうして戦士達は、再び求道者の洞窟に戻ったのだった……

人形遣い塔……の、どこか……
「影紬……祝福なき勇者達はどうでしたか?」
「さて……海の物やら、山の物やら。私にはなんとも判断しかねます。」
影紬と、誰かが話していた。
「あら、なんとも気のないお返事……」
「私への評価も、似たようなものでしょう。あなたにとっては、この私とて海の物やら山の物やら……」
影紬は玉座に腰をつけ、座る。
「……そうでしょう、アリスフィーズ8世陛下?」
なんと、影紬の話し相手はアリスフィーズ8世だった。
アリスフィーズ8世……またの名を、黒のアリス。
世界を揺るがしている、魔王の一柱だ。
「私は、あなたを高くひょうかしていますわよ……最後の人形使い、4代目影紬。」
「陛下は、500年前に初代影紬を見出されたお方。そして現代、人形遣いの技は完成し、終わりを迎えました。4代目影紬の私が編み出した、究極にして最後の人形術……必ず陛下のお力となりましょう。」
「頼りにしておりますわ、二度も夢破れた身ですから。負け続けてここまで来た身、それも覇道の一興……聖魔融合を果たす秘薬『白の兎』、更にはヴィクトリーさんを吸収した事によるサイヤ人の力……その力でさえ、祝福なき勇者達には勝てなかった……」
「あの少年達が、それほどのものとは……正直、とても思えませんけれど。」
黒のアリスはクスクス笑い、目を光らせた。
「今度のパーティは、少数精鋭という趣向でいきましょう。聖魔大戦の時代に君臨した、神話クラスの魔物達を率いて……」
そう言いながら、指を鳴らす。
すると、その場に強大な気を持った魔物達が現れた!
「この世界、壊してやればいいのだな……」
「任せなよ、思いっきり暴れてやるさ!」
「脆弱な現世の魔物など、相手にもならないわ……」
「ウニャー!あたしの力を見せてやるニャー!」
「全て、黄泉に還すとしよう……」
「くくっ……派手な宴になりそうだのう。」
あまりにも強力で、どす黒い気。
それを受けながらも、影紬は笑っていた。
「ふふっ、なんとも頼もしき神話のお歴々……では、私が作り上げた作品もご覧にいれましょう。」
影紬が指を鳴らすと、異形体に改造された歴代の魔王達が現れた。
「お、お姉様……ご、ご機嫌……うるわしゅう……」
「ふふふっ、アルテイスト家の者に劣らぬゾンビ術ですわね。これぞまさに、ゾンビ術と人形術の究極融合……」
そう言いながら、黒のアリスは最初に目に付いた魔王の前に立ち、その頬を撫でた。
「あれだけ私に刃向かった妹も、こうなれば大人しいもの……今なら仲良く、人形遊びでも出来そうですわね。」
「うふふっ……あははっ……」
中には、ピエロのような格好をして、胴体がくっついて腕も六本もあり、頭が二個あるものもいた。
「11世と12世は、死体の欠落箇所が多かったもので……2体を融合させる事で、制作に成功したのです。」
「うふふっ、素敵な姿。あなたのそういうセンス、大好きですわ……」
黒のアリスの背後……
和服にも似た格好をした、魔王がいた。
「控……えよ……我は、魔王……アリスフィーズなるぞ……」
「まぁ、お婆様ではありませんか。随分と、ご達者なようで……」
「死体はヤマタイの聖廟に安置されておりましたので……損傷も少なく、早急に仕上げることが出来ました。」
影紬は息を吐いて、黒のアリスの方へ向いた。
「他の魔王人形は、少しばかりお待ちを。死体はすでに揃えてありますが、損傷も多いもので……そして、ぜひともあなたに見せたい作品が。」
「まぁ、まだあるのですか……?」
「はい……」
影紬は、指を鳴らす。
そこに男が、瞬間移動で現れた。
「……お呼びですか?影紬様にアリスフィーズ様……」
「男……いやっ、まさか……!!」
黒のアリスは驚いたような顔から、どんどんと笑顔になる。
「ええ……これが、私の秘作……ヴィクトリーというサイヤ人の、ゾンビです。作品名は……黒のヴィクトリー。」
そう、黒のヴィクトリーが黒のアリス達の前に現れたのだった。
「まぁ……まぁ、まぁ……!どこで、こんなものを……!」
「ここより、遥か遠くから……とだけ言っておきましょう。かつては脅威だったこの力も、今は陛下のものとなっております。」
影紬がそう言うと、黒のヴィクトリーは自分の胸に手を置いて、黒のアリスに跪いた。
「かつては貴女様に不肖を働いたこの体、今はあなたの刃となりましょう……」
「ええ、頼りにしておりますわ……!とっても……!」
黒のアリスは、目を光らせながら黒のヴィクトリー達を一望した。
「これだけの戦力があれば、さぞ楽しいお茶会が開けますわ。たっぷりと楽しみましょう、うふふっ。」
「それでは、陛下に三度目の栄光を……世界の全てを、その手に掴むために……」
「全ての世界を、この手に掴むために……うふふふふっ……」
人形遣いの塔に、黒のアリスの笑いが響く。
征服の野望を秘めた笑いが、この人形遣いの塔を包んだのだった……

戦士達は、求道者の洞窟で魔導懸糸を見つけた。
「あったぞ!からくり人形の糸だ!これをクロムに持って行ってあげればいいんだね。」
「ああ。みんな掴まってくれ。」
ヴィクトリーは手を出して、みんなに差し出す。
「え、ああ……」
「?どうするつもりだ?」
「まぁ、掴まれって言うなら掴まるけども……」
ルカとアリスとソニアは、困惑気味にヴィクトリーの手を掴む。
「よし、クロムの気は……」
ヴィクトリーは額に指を当てて、クロムの気を探る。
「……ここかっ!」
そして、みんなと瞬間移動した!
「うわっ!?」
「なっ!?」
「きゃあっ!?」
「のわっ!?」
ヴィクトリーが瞬間移動した先は、クロムの所だった。
クロムは相変わらず、北の屋敷で何かしている様子だ。
「き、貴様らっ!突然現れるでないっ!びっくりするじゃろうが!」
「へへへ……」
「な、何があったんだ……」
「瞬間移動か……この脳みそ筋肉め、そんな高度な魔術を使えるとは……」
「へぇ〜……瞬間移動……」
戦士達とクロムは、あらためて対面する。
「よう、クロム。」
「ふむ、突然やって来るところを見ると……あの伝書鳩、読んでくれたのだな。」
「ほら、頼まれたものだよ。」
ルカは、クロムに魔導懸糸を渡した。
「おお、これは魔導懸糸ではないか!ふむ、よくやった!」
クロムは嬉しそうに、魔導懸糸を受け取って荷物をまとめる。
「……?何してるんだ、クロム?」
「決まっておる、仲間になるのじゃ!お前らの所なら、いいからくり人形が作れそうだからのう!」
「私も、クロムと共に……」
「ほんとか!?そりゃあ心強いぜ!」
魔導懸糸を取りに行ったら、強力な仲間が二人も加わった。
フレデリカのパワーに、クロムの技術。
心強い仲間をメンバーに加えた事によって、戦力がグッと上がった。
次に戦士達が向かう先は、砂漠の国家サバサ。
熱砂の地で、戦士達に待ち受けるものとは……

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熱砂の地

クロムとフレデリカを仲間にした戦士達が向かったのは、サバサの地だった。
そこは、一面の砂漠大陸。
猛暑が漂う、熱砂の地であった……
「あ、あづい……」
ソニアが、死にそうな顔でそう言う。
「ソニア、おめぇ見た事もねぇような顔してんぞ……」
「だっで、この服、凄く蒸れて……とっても暑いのよ……」
ソニアの肢体が汗で濡れ、艶が増していた。
「……」
ルカは、それを鼻血を垂らしながら見ていた。
「ルカ、おめぇソニア見て鼻血出てっぞ。」
「えっ!?うわっ!?」
「ち、ちょっと、ルカ〜……」
そう言うソニアは、どこかニヤついていた。
その横で、アリスがため息をつく。
「はぁ……この暑さにでもやられたのだろうよ、このドアホが。」
「うぅ……」
「うむぅ、それにしても暑いな……どこかにオアシスでもあれば、野営出来るのだが……」
魔物であるアリスも、ぱたぱたと手を扇ぎながら汗を垂らす。
「なんだみんな情ねぇなぁ。」
ヴィクトリーは、平気な顔でルカ達を見た。
「お前は何で平気なんだよ……」
「あ、あのねぇ……私達はサイヤ人じゃなくて、れっきとした地球人なのよ……野生児のあんたと、一緒にされたくないわ……」
「……余達のような魔物は、地球人という枠組みに入るのか?」
そんな会話をしながら、砂漠を進む一行。
その前に、モンスターの群れがやって来た!
「よっしゃあ、来た来たぁっ!!」
「こんな所にも、モンスターは居るんだな……」
「こ、こんな超暑いって時に……」
「やるぞっ!」
モンスターの一体が、ヴィクトリーに襲いかかってくる。
サソリ娘だ。
「はぁっ!」
「界王拳5倍!!」
サソリ娘の一撃を受け止め、蹴り返す。
「っ!」
その蹴りを間一髪避けて、サソリ娘はヴィクトリーの前についた。
「サソリのモンスターか……砂漠らしいモンスターだな……!」
「ふふ……イキのいい子ね……」
ヴィクトリーは高速移動で、サソリ娘の眼前に来た。
「はっ!」
サソリ娘は動じず、尻尾を振り下ろす。
……が、ヴィクトリーはそれを避けた。
「な……!?」
「おらおらおらっ!やぁあっ!」
サソリ娘に拳を連打し、脳天に肘打ちを落とす。
「っ……!!」
「だりゃーっ!!」
そして、思いっきり蹴り飛ばした!
「ぐはっ……!!ま、まさか、私が……!!」
その蹴りで、サソリ娘は戦闘不能になった……
しかし、魔物はまだ襲ってくる。
「次は……何だおめぇ?」
ヴィクトリーが目を向けたのは、サボテンに女の上半身が生えた植物娘だった。
「私は、サボテン娘って呼ばれていますわ……」
「そうか!」
一気に踏み込み、容赦なく拳を放つヴィクトリー。
「っ!!?」
しかし、その拳が止まった。
「うふふ、短気は損気、ですわよ……?」
サボテン娘は、ヴィクトリーの拳に手を向けている。
下のサボテンは針を伸ばして、その拳を串刺しにしていた。
「ぐっ……!!」
拳から血が滴り、砂漠を湿らせる。
そんな様子を、サボテン娘は笑いながら見ていた。
「私、人間の痛がる姿が好き……このトゲの体で、抱いてあげたいですわ……」
「ああ、ただじゃすまなさそう……だっ!!」
ヴィクトリーは拳を引いて、剣で針を切り落とした。
「あらあら……でも、まぁ。」
サボテン娘は、針を射出してきた!
「くっ!?」
ヴィクトリーは剣で針を弾いて、突進する。
「だぁあっ!!」
眼前まで迫り、剣を振り下ろす。
「うふ……」
サボテン娘は針を伸ばし、ヴィクトリーに迫らせる……
しかし、針がヴィクトリーを貫く寸前に、ヴィクトリーは消えた。
「えっ!?」
「かめはめっ!!」
「!!」
サボテン娘が振り向いた瞬間……
「波ーっ!!」
渾身のかめはめ波がサボテン娘に叩きつけられ、大爆発した!
「あーれー!」
サボテン娘は、空高くに消えた……
「わぁ、すごい……!」
不意に、ヴィクトリーの背後から声がした。
「またか……!」
ヴィクトリーは声の方へ振り向き、構える。
ダチョウ娘が、立っていた。
「えーいっ!」
振り向いた瞬間に、蹴りを放ってくる。
ヴィクトリーはガードして、ダチョウ娘を見た。
「ぐっ……!!」
「やっ!てややややっ!」
ダチョウ娘は健脚で、蹴りを連打する。
「ぐっ!」
ヴィクトリーはガードしながら踏ん張り、拳を薙ぎ払った!
しかしダチョウ娘は攻撃が当たる寸前に、消えた。
「こっちですよ〜!」
背後に現れ、回し蹴りを放つ。
ヴィクトリーはその回し蹴りを跳び避けて、ダチョウ娘の背後に来た。
「な……!?」
「だーっ!!」
そして、思いっきりハイキックして蹴り飛ばした!
「ーっ!!」
「さぁこいっ!」
ダチョウ娘は着地して、超スピードでヴィクトリーに走り寄って、猛攻した!
ヴィクトリーも猛攻に対抗し、凌いでいく。
「はぁああっ!」
「だりゃーっ!!」
同時に、胸への足刀が決まった!
「がっはぁ……!!」
「っ……!!」
二人はぶっ飛ぶが、着地する。
「っがはっ!」
ヴィクトリーは吐血して、ダチョウ娘を見る……
「……」
ダチョウ娘は白眼を剥いて、倒れた。
「……ありゃ?」
このレベルのモンスターがあんな足刀程度で、倒れるなんて……どうなってんだ?
「でぁあああっ!!」
背後で、ルカの雄叫びが響いた。
振り向き、戦いを見る……
「くらえぇっ!!」
ルカはエネルギー弾を放ちながら、剣技で敵を翻弄していた。
「そ、そんな……っ!!」
相手は、ランプの魔人風の女だった。
下半身が、ワニの口みたいになっている。
そんな奴がルカの猛攻に耐えかねて、防御態勢が崩れていた。
そして……
「これで終わりだっ!!かめはめ波ーっ!!」
ルカはかめはめ波を放ち、ランプの魔女に直撃させた!
大爆発が起きて、ランプの魔女はぶっ飛ばされた。
「そ、そんな……」
ランプの魔女は、ガクッと倒れた……
「……ふぅっ!」
「何とか押し返せたわねっ!」
「うむ、いい運動になった。」
他のメンバーも、魔物の群れを追い払ったらしい。
戦士達は武器をしまって、臨戦態勢を解いた……
「……ルカ、もう気の力を使いこなしてんのか……」
「ああ……ヴィクトリーの見よう見まねだけど……」
「凄いじゃない、ちょっと私にも教えなさいよ〜!」
「ふむ、魔法も使える脳みそ筋肉だったか……」
戦士達は、砂漠を進んだ……

時間が立ち、夕暮れ……
「日が暮れたか……近くのオアシスで野営だね。」
「あつ〜い!ヘトヘトだよ〜!」
「今日の夕食は何なのだ!?」
「……」
「ははは、少しは手伝うぜ、ルカ……」
戦士達は野営の準備に取り掛かかった……

「ごちそうさま~!」
「っひゃ〜っ!食った食った〜!」
夕飯が終わり、一同は腹を満たす。
ルカの料理はやはり絶品で、みんな満足しているようだ。
「つくづく、貴様の料理は素晴らしい。たまもはクビにして、貴様を採用しよう。」
「やだなぁ、そんな……えへっ、えへへへっ……」
「キモっ!」
「気持ち(わり)っ!」
夕飯が終わったとはいえ、就寝には少し早い。
テントで寝る前に、みんなと話すか……
「……貴様が精霊の力を得るのが、正しい歴史……それをなぞる事により、世界の歪みが正される……」
「正しい歴史の、精霊の力を得た僕か……今の僕と、どこか違ったりするのかな?」
「元々がルカな以上、根本的なモノは同じだろうな。ただ、育った環境にもよるんじゃねぇか?」
ルカとアリスが、何だか面白そうな話をしていたから参加してみた。
「む、ヴィクトリー。」
「そう言えば、お前は平行世界関連にすごい詳しかったっけ……正しい歴史って何なんだ?今の歴史は、正しくない歴史なのか?」
「ん〜、むつかしいんだな、これが。」
ヴィクトリーは頭を掻き、悩んだ。
「この世界の平行世界のシステムが分かんねぇ以上、何とも言えねぇな。俺の世界と同じシステムかと思ったら、どうやらそうでもねぇみてぇだし……編纂(へんさん)事象と剪定(せんてい)事象システムなのか、世界線が一本あるシステムなのか……」
「へ、へんさん?せんてい?」
「まだ分かんねぇ以上は、何とも言えねぇって。ただ、この世界がただの世界じゃねぇ事ぐらいは俺も分かってるよ。すっげぇ連中が蠢いてるんだからよ。」
「ああ……リリス三姉妹に、謎の熾天使ども……しかもこの二者は、互いに敵対しているようだ。この連中の目的も、不明のまま……」
「そして、3人の魔王まで……」
「魔王軍を指揮している母上は、何を考えているのか……そして、復活した黒のアリスも謎に包まれている……」
「あのネリスって奴もネロと繋がってたみてぇだな。目的は謎だけどな。……それに、本物が大して活躍してねぇのに偽物まで出てくる始末だしよ。」
「黒のヴィクトリーか……あいつも、謎に包まれたままだな……僕達を助けてくれたって事は確かだけど、どう妥協して見ても味方では無さそうだしなぁ……」
「それに、暗黒魔界とか言ったか。あいつらは何なのだ。目的がさっぱり分からんぞ……」
「ああ、俺がこの世界に来たことで変な扉開いちまったのか……それとも、なんか別の奴が居るのか……」
三人は頭を抱え、ため息をついた。
「どいつもこいつも、何がしたいのやらさっぱりだ。いや……単に余が蚊帳の外に置かれているだけか。母上は、いたずらに世を乱しているわけではない……やむを得ない事情がある……そう信じたいところだが。」
「父さんも、相変わらず行方不明だしね。足跡は見つかるけど、謎が深まるばかり……」
「一番置き去りにされてんのは俺だぜ……元々、部外者だったんだから。」
「やはり、全ての謎はタルタロスと……そして、30年前の異変にあるはずだ。サバサのタルタロスで、何が待っているのか……共に確かめるぞ、二人とも!」
「ああ!」
「おう!」
やはり、鍵はタルタロスにあるはず。
全てを解き明かすまで、旅を続けるのみだ……
「よし、就寝前に特訓だ!」
アリスとルカは、修行するらしい。
「よぉし、俺も負けてらんねぇな……!」
これから先も、激戦が待っているだろう。
修行しなければ、ついていけねぇ。
ヴィクトリーも、修行に入ったのだった……

「……はぁあああっ!!」
ヴィクトリーが修行している、背後……
「……」
ソニアが、ヴィクトリーを見ていた。
「…三………触………、………る……」
光の無い目で、陰からヴィクトリーを見ている。
その手には、短剣が握られていた。
「……」
気を消して、ヴィクトリーに迫る。
「だぁあっ!!おりゃあああっ!!」
ヴィクトリーは天にエネルギーボールを放ち、拳を握る。
エネルギーボールは破裂して、無数のエネルギー弾としてヴィクトリーに降り注いだ!
「あだだだだだ……!!」
そのエネルギー弾を次々に弾き飛ばす。
弾き飛ばされたエネルギー弾が、ソニアに飛んできた!
「……」
ソニアは顔色一つ変えずに、それを弾き飛ばした。
「へ!?」
修行を中断し、ソニアの方を向き直す。
気弾の急激な軌道変更に気づいたのだ。
「……ソニア?」
「……へっ!?えっ!?あっ、ヴィクトリー!?」
ソニアはヴィクトリーに向き直し、あたふたする。
「うわぁ、何だおめぇいきなり大声上げて!どうした?」
「あ、あー、えーと、ほらっ!修行っ!昼、一緒に修行するって……」
「あ、あぁ……そっか。普通に頼めばいいのに……よっしゃあ!一緒に修行すっかぁ!」
「よーしっ!じゃあ、まずはかめはめ波ってやつの放ち方を……」
「おめぇ、いきなりかめはめ波に挑戦すんのか……」
アリスとルカ。
ヴィクトリーとソニア。
それぞれのペアは、これから来るであろう激戦に備え、夜の(とばり)の下で修行したのだった……

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サバサ女王、乱心。

野営を終え、サバサを進む戦士達。
一行は、モンスターを跳ね除けながらサバサ城へ着いたのだった。
「やった!サバサ城に着いたぞ!」
「砂漠の城下町だ、ひっろ〜い!」
「ひゃ〜、こんな砂漠の地にこんな所が……」
サバサ城下町は広く、そこそこ賑わいを見せている町だった。
聞けば、軍事力に関してはこの世界で一番だとか。
「それでは、さっそく情報収集だな。ノームと北のタルタロスについて……むっ?」
アリスが言葉を止め、戦士達も周囲を見る。
「そこの旅人、止まれっ!」
いつの間にか、衛兵二人がルカ達を囲んでいた。
「なんだなんだ。」
「お前達、怪しいな……きっと、グランゴルドのスパイだろう!」
「だが……特別に見逃してやってもいいぞ。俺たちだって、決して鬼じゃないからな。」
「そこで、100Gで勘弁してやろう。」
「一国の正規兵が、白昼堂々と賄賂を要求!?」
「なんて国だ!」
ソニアとヴィクトリーが言う横で、アリスは腕を組む。
「妙だな……サバサ軍の練度は非常に高いと聞く。こんなチンピラ同然の奴等がら、門を固めているなど……」
「何を言ってんだ、俺たちはサラ女王の近衛兵だぜ!」
「俺達に逆らうと、お前らなんて牢屋行きだ!」
「どうするの、ルカ……?」
「……ヴィクトリー。」
ルカはヴィクトリーを見て、頷いた。
「……」
ヴィクトリーもルカを見て、頷く。
「おらぁああっ!!」
「だぁあああっ!!」
ルカは衛兵の一人の顔面を蹴り、ヴィクトリーはもう一人をぶん殴った!
「うわ〜!」
衛兵はぶっ飛んで、町の外へ消えてしまった……
「弱っ!イリアスヴィルの兵士より弱いんじゃない!?」
「心身共に、なんと頼りない兵士なのだ……あれが本当に、軍国最強と言われたサバサの兵か?」
そう話していると、壁の陰から申し訳なさそうに青年が出てきた。
「……あいつらは、サラ女王の近衛兵……つまり、ごく最近取り立てられたごろつき達さ。前サバサ王が亡くなり、新女王が後を継いで……それから、この国はダメになってしまった。サラ女王は政治を投げ出し、遊び三昧。ろくでもない連中ばかりを取り立てて、衛兵さえあのザマ。(いさ)めようとした忠臣は、みんな牢屋行きか国外追放。本当に、ひどい国になっちまったよ……」
「なんてこった……」
「おっと……こんな話、衛兵にでも聞かれりゃ大変だぜ。あんた達も、気をつけなよ……」
青年はそう言ってから、口笛を吹きながら元の場所に戻った。
「なんてひどい話なんだ……その新女王、なんとかしないと!」
「ああ、一刻も早くぶっ飛ばさねぇとな!」
走り出そうとする二人の襟袖を、アリスが掴んだ。
「無計画に行動するな、ドアホ共め……いきなり殴り込んで、どうするつもりなのだ。こういう時こそ、しっかり住民の話を聞くのだ。女王を問い質すにしても、事前に情報は集めておけ。」
「ノームやタルタロスの件は、しばらく後回しよね……まずはしっかり話を聞き込んで、それから女王に会いましょうよ。」
「そっか、ちょっと早計だったな……」
「じゃあ、行こうか。」
戦士達は解散して、情報収集にかかった……

情報は、たくさん手に入った。
サバサ女王の情報を集めて回ってるアサシンのサラーンという女が、北にある恵みのオアシスに居る。
女王は、前は暴君ではなかった。
西のピラミッドには、スフィンクスという魔物がいる。
グランドールという所がサキュバスに乗っ取られてヤバい。
そのグランドールの北には、サファル遺跡があり、そこにノームがいる。
またまた西には、魔女狩りの村とかいう不穏な村がある。
……など、色んな情報が次々に出てきた。
「よーし、次はサバサ王宮に乗り込んでみようか。」
「さっそく行くんか?」
ヴィクトリーは拳をバシッと叩き、笑う。
「いきなりぶっ飛ばしに行くわけじゃないよ……」
「何にせよ、まずは説得が大事だ。とにかく、行ってみるといい。」
戦士達はそう言いながら、王宮へ入った。
「オッス!」
「……あ、どうぞ。」
「あと30分で交代か……だり〜……」
ヴィクトリーの元気な挨拶に大しても、兵士達は怠そうな態度をとっていた。
「や、やる気無さすぎだろ……」
「行くぞ、ヴィクトリー。」
気だるそうな雰囲気の王宮を進み、ついに王の間の前……
「ここに女王が居るんだな……ヴィクトリー、気は?」
「……ああ、確かに感じるぜ。だけど、妙な気だな……」
「妙な気……?」
「ああ、人間の気にしちゃ大きい……女王様ってのは、戦士なんか?」
ヴィクトリーは、試しに兵士に聞いてみた。
「ん、ああ……心得はあるらしいし、体力もそこそこあるみてぇだぜ……その体力の前に、何人の男が倒れたか……」
「……」
「ははは……」
ルカ達は、階段を上がろうとする。
「おい、この先は女王の間だぜ。ぞろぞろと仲間を連れて行くなよな……」
衛兵が、戦士達に声をかけた。
「こんな時だけ変にしっかりしてんだから……どうすりゃいい?」
「そうだな……一人だけの方がいいけど最大二名様までだな。」
「色々と、楽しませて貰えるぜ……特に、若い少年二人ならな……」
「二名様か……じゃあ。」
ルカはヴィクトリーの腕を掴んで、アリス達に向いた。
「僕達が行ってくる。待っててくれるか?」
「ちょっ、まぁいいけどさ……」
二人の前で、アリスとソニアは頷いて、下がった。
そしてルカとヴィクトリーは二人、女王の間へと向かった……

「オッス!」
「あら……」
サバサの女王、サラ……
金髪ショートの、若い女の人だった。
「珍しいわね、二人組なんて……」
王女とは思えぬ表情で、二人を見ていた。
舐め回すように、じっくりとした視線が二人にかかる。
「……」
「おめぇの評判聞いて、ここにやってきたんだ……」
ヴィクトリーは恐れず、サラ女王に言う。
ルカの背後に隠れながら。
「おい、ヴィクトリー。」
「ええ、分かってるわ……」
サラは、ニヤリと笑う。
「それじゃあ、ズボンを下ろしなさい。あなたのおちんちん、私に見せるのよ……」
「……えぇっ!?」
「なんだとっ!?」
「だって……ズボンを下ろさないと、しゃぶれないじゃない。さあ、早くおちんちんを出しなさいよ。」
「俺達は、そんな事をしにきたわけじゃねぇ!」
「待ってよ!落ち着いて、話をしようよ!」
「あなた達、変な人……おしゃぶりじゃなくて、おしゃべりの方が好きなの……?」
「誰がうめぇ事言えつった。」
ヴィクトリーのツッコミを前に、サラはため息をつく。
そしてつまらなさそうな目で、二人を見る。
「……もういいわ、出て行きなさい。」
「ちょっと待ってよ、聞きたい事が……」
「下に降りたら、衛兵に言っておきなさい。今度は、素直におちんちん出す男を連れて来いって……」
「普通、女王の前でおちんちん出す男なんていねぇーよ!何考えてんだ!淫乱!痴女!ドスケベ!足軽女!」
「それを言うなら尻軽女だよ……」
キレるヴィクトリーを連れながら、ルカは王の間から出ていく。
そして、仲間と合流した。
「予想以上にひどい感じだったね。」
「ああ、こっちの話なんて聞いてくれねぇんだ。」
「やはり、女王本人にあたっても無駄か。酒場あたりで聞き込みを続け、情報を集めねばな……」
「そう言えば、恵みのオアシスに女王の事を探ってる人が居るとか言ってなかったっけ?」
ソニアがそう言い、皆頷く。
「なぁルカ、いっぺんそいつの所に行ってみるか?」
「うん……行く価値はありそうだし、今はそれしかアテがない……行ってみよう。」
「それじゃあヴィクトリー、頼んだぞ。」
アリスはそう言い、ヴィクトリーに手を出す。
「ふぇ?何をだ?」
「いや、貴様の瞬間移動とやらで、その恵みのオアシスに行けないのか?」
「そうよ。瞬間移動があればあんな暑い砂漠通る必要無いもんね。それじゃあ……」
ここでヴィクトリーは、申し訳無さそうな顔で首を横に振った。
「いや、実はそんな便利な技じゃねぇんだ。」
「なにっ!?」
「あの瞬間移動ってのは、場所じゃなくて人を思い浮かべるんだ。そんでもって、そいつの気を感じ取る……だから、知った奴がいねぇ場所とかは行けねぇんだ。」
「不便だか便利だか分からん技を覚えるな!」
すっごい理不尽な理由で、アリスに怒られてしまった……
「そ、それじゃあ、また砂漠越えしないといけないの……!?」
「うむ……余も、暑いのは苦手ではあるが、我慢せねばならんか……」
「僕は平気だよ。世界の平和がかかってるから、砂漠の暑さ程度に負けるわけにはいかないしね。」
「うーん、筋金入りのドアホめ……」
戦士達は、話しながらこの町を出ていく。
そして、恵みのオアシスへと向かった……

道中、モンスターにも襲われたが、難なく押し返した。
特に苦戦の様子もなく、恵みのオアシスへたどり着いた。
「ここが、恵みのオアシスか……ヴィクトリー、気は感じるかい?」
「ああ、人間の気が一人だ。ほら。」
ヴィクトリーが指した先……
黒い格好に身を包んだアサシン風の女が、木に寄りかかって目を瞑っていた。
さっそく、話しかけてみる事にした。
「オッス!」
ヴィクトリーが声をかけた瞬間、彼女はぱっちりと目を開けた。
「お前達、私を探しているようだな……私がサラーン、サバサ直属アサシン団の首長だ。」
「サラーンって、女の人だったんか……」
「私の性別は関係あるまい……お前達が知りたいのは、サラ女王に関してだろう?」
「ああ、話が早くて助かるぜ……」
「結論から言おう……サラ女王は妖魔の血が目覚め、正気を失っている。」
「なに……!?」
いや、そう考えた方が普通だった。
あの時感じた気は、それだったのか。
「サバサ王家には、妖魔の血が混じっているとか。それが、現女王の代で覚醒したのか……」
アリスはそう言ってから、頭を傾げた。
「だが……人格が変わるほどの自然覚醒が起きるものなのか?しかも女王即位と同じタイミングとは、なんとも不自然だな。」
「その通り……この一件には、黒幕がいるようだ。女王を覚醒させた者がいる……もちろん人間ではあるまい。そうすると、王位の継承自体にも疑問が生じる。果たして、前王の死は本当に事故であったのか……」
「全部、陰謀だったって事……?前王を亡き者にして、サラ女王を覚醒させて……」
「私が集めた情報によれば、そうなる。黒幕は女の妖魔という事以外、全くの不明だがな……」
「じゃあ、まずはあの女王をぶっ飛ばしてでも正気に戻して、黒幕の正体を吐かせねぇとな。」
「少し手荒な気がするが、それが一番いい。」
「尻尾を全く見せん黒幕よりも、サラ女王を何とかする方が現実的だな。」
「それで、あいつを元に戻すにはどうしたらいいんだ?ただぶっ飛ばしても何もならねぇだろ?」
「一応だが、アテはある。妖魔の血が目覚めたのなら、その始祖自身に聞くという事だ。」
「その始祖……?」
ヴィクトリーが考える横で、アリスは思いついたようだ。
「……スフィンクスか!確かに、奴こそが妖魔の血の大元だな。」
「スフィンクス……?」
「あの、ピラミッドに居るっていう……?」
「1000年前、サバサ1世の妻となった妖魔だ。こいつの血が覚醒し、こんな事件が起きたとも言えるな。」
「……うむ、事情に詳しいようで説明が省ける。このスフィンクスは今も生存し、ピラミッドにいるのだ。彼女の力ならば、陛下を元に戻す事も出来るかもしれん。そう考えた私は、単身でピラミッドに潜入したが……流石に敵が強く、途中で撤退せざるを得なかった。現在、再潜入に向けて準備を整えているところなのだ。」
「いや、僕達が行くよ。」
ルカは、サラーンを見てようやく口を開いた。
「お前達が、行ってくれるのか……?ではピラミッドは任せ、私は黒幕を調査しよう。」
「はいっ!僕達は、なんとかスフィンクスに会ってサラ女王を元に戻す方法を聞いてみます!」
「ピラミッドは、確か西の方だったっけ……わくわくすんなぁ。」
次に向かう先は、西のピラミッド。
そこでは、間違いなく強敵が待ち構えているはずだ。
「よし、サバサの国の為にも!」
「ああ、いっちょやってみっかぁ!」
「うんっ!私も頑張っちゃうわよ〜!」
「ふん……ピラミッドなど、余達にかかれば楽勝だ!」
こうして戦士達は、ピラミッドに向かったのだった……

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ピラミッド

サラ女王を元に戻すために、スフィンクスに会いに行こうという話になった。
そうしてやってきた、ピラミッド……
「……でけぇな。」
「うん……」
それはかなり大きいピラミッドで、探索するのも一苦労しそうなほどだった。
中にも、魔物の気がうじゃうじゃいる。
「行くしかないわね……」
「ああ、スフィンクスと会って話を聞かない限りはどうしようもあるまい……」
このピラミッドの最奥に居るであろうスフィンクス……
なんとかそいつに会って、サラ女王をどうにかする方法を聞き出してみよう。
ダメなら、もう無理矢理、頭をひたすら鈍器でぶん殴ればいい。
「ヴィクトリー、今不穏な事思わなかった……?」
「い、いや……」
何故かソニアが、引き気味にヴィクトリーを見ていた。
ヴィクトリーも苦笑いしながら、へへへと笑う。
その前で……ルカは深呼吸してから、ゆっくり息を吐いた。
「よし、いくぞ皆!」
「応っ!!」
こうして戦士達は、ピラミッドへ乗り込んだ……

「中は広いな……」
「外装相応だな。」
広いピラミッドを、道なりに進んでいく。
「ヴィクトリー。」
「ああ、魔物がうじゃうじゃいる上に奥には馬鹿みてぇにでけぇ気がある……」
「その気が、スフィンクスの気だろうな。」
そんな会話をしながら、探索ついでに進んでいく。
やはり、魔物の強襲に遭った。
「やっぱりただじゃ通らせてくんねぇか。」
「やるぞ、ヴィクトリー!」
戦士達は武器を抜いて、気を解放した!
「シャッ!」
コブラ娘が、ヴィクトリーに向かって来る。
その尻尾の一撃を受け止めて、離れた。
「……ひゃ〜……」
どう見てもそんな器官コブラにねぇだろって感じの肉器と、女体がひしめき合う異形。
そんなコブラ娘に、ヴィクトリーは顔を引きつらせた。
「絞め殺されたい?丸呑みになりたい?それとも、毒牙の餌食になりたい……?」
「どれも却下で頼むぜ!」
ヴィクトリーは踏み込んで、コブラ娘の顔面に蹴りを放つ。
しかしコブラ娘は避けて、ヴィクトリーの足に噛み付いた!
「いっ!?」
「っぷぁ……!」
足を尻尾で打ち、ヴィクトリーは倒れる。
「ち……!」
そして転がって、立ち上がった。
「よしっ!」
地面を踏み込もうとした、その時だった。
何故か足に力が入らず、中途半端な勢いでヴィクトリーは地面に倒れた。
「な……!!?」
「うふふ、早計だったみたいねぇ……私の顔を傷つけようとするなんて……」
コブラ娘はそう言いながらヴィクトリーに寄り、尻尾をしゅるしゅると首に巻き付ける。
そして、持ち上げた。
「ぐ……!!」
「あはっ!」
ヴィクトリーの首筋に牙を立てる、その時だった。
「はぁっ!」
「っ!!」
ルカがシルフの力を借りた状態で、コブラ娘を蹴り飛ばした!
ヴィクトリーの拘束も解け、跪きながらも着地する。
「サンキュー、ルカ!」
「ヴィクトリー、足は平気か!?」
「平気じゃねぇさ……多分な……!」
動かない足を動かそうとして、立ち上がろうとするヴィクトリー。
「くそっ!これを使えっ!」
アリスが魔物と応戦している途中、毒消し草をヴィクトリーに投げた。
ヴィクトリーはそれをキャッチして、思いっきり握る。
そして、絞り出した液体を傷口に塗った。
「サンキュー、アリス……!」
少し、足が楽になった……
「く……!」
コブラ娘は獲物をとられた怒りで、ルカに襲いかかった!
「やぁあっ!」
ルカは応戦して、コブラ娘と攻防する。
「いくぞ……!!」
シルフの力でスピードが増している様子で、圧倒的なスピードでコブラ娘に猛攻した。
「……」
どうやら、ルカは平気そうだ。
「……さて、フラれちまったこいつの相手をしなけりゃならんのか……」
「……」
跪くヴィクトリーの前に、ミイラ娘が立つ。
どうやら、ルカと戦っている途中だったようだ。
「なるほど、我の相手はお前となったわけだ……」
「……」
腕が切れ落ちた、ミイラの女モンスター……
包帯を舞わせ、ヴィクトリーに歩み寄っていた。
「はぁあっ!!かめはめ波ーっ!!」
ヴィクトリーは、かめはめ波を放った!
「ふっ!」
ミイラ娘は飛び避けて、ヴィクトリーに包帯を放つ。
「ちっ!」
ヴィクトリーは瞬間移動で避けて、ミイラ娘の背後に現れた。
「な……!?」
「だぁーっ!!」
そして、動く方の足で廻し蹴りした!
「ぐ……!」
ミイラ娘は包帯をピンと伸ばして、それでガードする。
「よっ!!」
ヴィクトリーは剣を抜いて、包帯を切った。
「く……!」
「ふっ!」
二人は着地して、互いを見た。
ヴィクトリーの方は、まだ足が痺れるようだ。
「ふ……!」
ミイラ娘は包帯を無数に広げ、ヴィクトリーに向かわせた!
「はぁあああっ!!だだだだだーっ!!」
迫り来る無数の包帯を、連続エネルギー弾で押し止める。
「ヴィクトリーっ!」
後ろから声をかけたのは、ソニアだった。
どうやら、相手にしていた奴を何とか倒したらしい。
「はぁああっ!」
ソニアは棍をしまって、走り出す。
そしてヴィクトリーの背中を踏み台にして跳躍し、一気にミイラ娘に迫った!
「な……!!?」
「くらいなさいっ!かめはめ波ーっ!!」
そして、覚えたばかりのかめはめ波をミイラ娘に放った!
「!!」
それは見事にミイラ娘に直撃し、爆発した!
爆煙が舞い、もくもくと煙る……
「ふぅ……」
ソニアは着地して、一息つく。
そしてヴィクトリーの方に向かい直した。
「ヴィクトリー、見たっ!?私も、かめはめ波を……」
「ソニアーっ!!油断すんじゃねぇっ!!奴の気はまだ残ってる!!」
「ぇ……!?」
「まだだっ……!!」
爆煙からミイラ娘が飛び出して、ソニアを縛った!
「や〜んっ!」
上手い具合に縛られたせいで、胸とむちむちした体が強調された。
「そ、そにあ……」
ルカは、それに目を奪われている。
「くっ!当たらないっ!?」
いや、目だけ奪われていて、ちゃんと応戦していた。
「余の出番だな……」
アリスはヒュンヒュンとレイピアを振り回し、ビリヤードの体制みたいなポーズをとった。
「アリス、やれんのか……!?」
「……っ!!!」
目を見開いて、気を全開放する。
次の瞬間には、ミイラ娘の背後に居た。
「……」
「!!!」
ミイラ娘は体を一閃されて、倒れた……
「す、すげぇ……み、見えなかった……」
「まぁ、いわゆる疾風突きという奴だな……」
ミイラ娘娘は、倒す事が出来た。
一方ルカ……
「よし、これで決める……!!」
魔力を剣に宿し、発火させる。
「な……魔法剣!?」
「吹きすさべ、紅蓮の刃!」
その紅蓮を宿した剣は、天井にも届くような炎の刃となる。
その剣を、思いっきり振りかぶる。
「紅蓮廻天斬!!」
そして、思いっきり回転斬りを繰り出した!
とてつもない炎の刃が、コブラ娘を叩き切った!
「この私が、不覚をとるなんて……!!」
コブラ娘は倒れ、魔物の群れを追い返す事が出来た。
「……いや。」
「ああ……」
ヴィクトリーとルカが、道の奥を見ながら目を鋭くする。
「まだ敵がいるのか……?」
「どんとこいっ!」
アリスとソニアは、ルカの横につく。
「ルカ、気付いたか……?」
「ああ、この風の感じ……四体か。」
ルカがそう言うと、目の前に四体の褐色ラミアが現れた!
「やっぱりな……」
「ネフェルラミアス……ピラミッドに生息する、ラミアだったね。」
「その通り……」
一番戦闘力の大きい、巨乳ストレートのラミアが言った。
おそらく、こいつが長女だろう。
「ここから先へ、弱き者を通すわけにはいかない……」
「通りたくば、我らを倒すがいいっ!」
ネフェルラミアスは構え、戦士達に向く。
「おい、ルカ。おめぇどいつとやる?」
「僕は、長女を相手する。ヴィクトリーは次女を頼む。」
「なら、私達はあの二人を相手にするわ。」
「あの程度のラミア、余の足元にも及ばん。いくぞっ!!」
アリスの掛け声で、戦士達はぶつかり合った!
「あだだだだだっ!」
ヴィクトリーは次女に猛攻し、パンチを連打する。
「はぁあああっ!」
ルカは長女に、剣でラッシュする。
「ふふ……」
「元気のいい男の子……」
姉妹は二人の猛攻に対応しながら、超スピードで攻防する。
「だりゃぁあっ!!」
ヴィクトリーが気を解放して、次女に踏み込む。
そして、正拳突きを放った!
しかし、次女の姿は消えて、正拳突きはすり抜ける。
「なっ!?」
「はっ!」
背後から次女の蛇体の一撃が飛び、ヴィクトリーはぶっ飛ばされた!
「ぐっ!」
ヴィクトリーが向き直した瞬間、その背後に次女が現れる。
「なにっ!?」
「そりゃあっ!」
圧倒的なスピードに、ヴィクトリーは揺らいでいた。
戦いを見ていたルカも、唖然とする。
「そんな、ヴィクトリーがスピードで圧倒されてる……!」
「当たり前よ、あの子のスピードはピラミッド一だもの……」
ルカと攻防していた長女がそう言いながら、蛇体でルカを薙ぎ払う。
「くっ!」
ルカは、その一撃を剣で凌いだ。
そして、長女に向かう。
「はっ!ネフェルバズーカ!!」
長女はルカに手を向け、凄まじい威力のエネルギーを放った!
「はぁあああっ!!」
ルカはそれを、剣で弾き飛ばした!
弾かれたネフェルバズーカは、あらぬ方向へ飛んだ。
「なにっ!?」
「だぁあっ!!」
ルカの蹴りが、長女の腹に炸裂した!
それは見事なクリーンヒットで、腹から入った足が腹筋を突き破り、背中を盛り上げていた。
「っがっはぁあ……!!」
「よし……!」
ルカは、何とか戦況を優位に持っていく事が出来ているようだ。
「ぐぐぐ……!!」
ヴィクトリーは、圧倒的なスピードに翻弄され続けている。
「っしょうがねぇな……!!界王拳、5倍だぁあーっ!!」
痺れを切らしたヴィクトリー、5倍界王拳を使って、気を全開放した!
「きゃ……!?」
「追いついたぞっ!!」
見事にスピードで次女に追いつき、殴り飛ばした!
「うぐっ!」
「おりゃぁあああっ!!」
間髪入れずに、目の前に来て猛攻した!
「くっ!」
次女は飛んで、猛スピードでヴィクトリーの背後につく。
しかし、ヴィクトリーはそっちを見ずに裏拳し、次女をぶっ飛ばした!
「あぐっ……!?」
「スピードさえ追いつけば、こっちのモンだ!一気に決めるぜ!」
ヴィクトリーはそう言って消え、次女に攻撃を何発も連打した。
「うぐぐぐぐぐっ!こ、このっ!」
次女の蛇体が、ヴィクトリーを薙ぎ払う。
しかしヴィクトリーは避けて、次女の背中に飛び蹴りした!
「ぐぁあああっ!」
「ふっ!」
ぶっ飛ぶ次女に追いついて、その背中に肘打ちを落とした!
「!!!」
次女は、勢いよく落ちていく。
そして、地面に墜落する寸前に、ヴィクトリーが受け止めた。
「ぁ……が……」
次女は、気絶した……
「そ、そんな……!?あの子が、スピード負けしたなんて……!!」
「何処を見ている……!」
ルカは、長女の顎をアッパーする。
「っ!」
脳震盪が起きて、長女は揺らぐ。
ルカはそれを前にして、気を全開放した!
「くらえ……!!」
そして、長女の体に無数の斬撃を叩き込んだ!
「っっがはっ……!!」
「死剣・乱れ星……」
ルカがそう言って剣を納めると、長女も倒れた。
「そ、そんな……お姉さん達が……!」
「ひえぇ〜っ!」
その他の姉妹は、逃げてしまった。
「よしっ!やったね!」
「姉の方を倒したおかげで、姉妹は総崩れのようだな。そのおかげで、余の相手は逃げてしまった訳だが。」
「っふぅ!」
「よっしゃー!」
戦士達は勝ち名乗りをあげ、一息つく。
今度こそ魔物の群れを追い払った。
これで、先に進めるだろう。
「さぁて、スフィンクスっつーのはどんな魔物なんかなぁ……楽しみだな……」
「戦いに行くわけじゃないよ……」
戦いを終えた戦士達は、先へと進んだのだった……

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女王暴走阻止作戦

サバサの国の女王、サラの暴走を止めるべく動いた戦士達。
暗殺者サラーンの情報により、ピラミッドを進むこととなった。
戦士達は先へ進み、魔物の群れを押し返しながら、ついに最奥へと辿り着いたのだった……
「……あいつが、スフィンクスか。」
居たのは、下半身に大きな獣の口をこしらえた女性だった。
その背中からは蛇が数匹伸びており、翼まで生えていた。
そんな奴が、瞑想しながら鎮座していた……
「オッス!」
「……む。」
ヴィクトリーの呼びかけに、スフィンクスは目を開ける。
「人の子よ、よくぞここまで辿り着いた……妾こそ、ここの主であるスフィンクスよ。」
「わぁ、大きくて強そう……さすが、1000年前から生きてる太古の妖魔よね……」
「ああ……戦闘態勢でもねぇのに、とてつもねぇ気をビリビリ感じるぜ……」
ソニアとヴィクトリーが話していると、スフィンクスも咳をつく。
「ここまで遊びに来たわけではあるまい。さて、妾に何の用だ……?」
「実は、頼み事があってここまで来たんだけど……」
スフィンクスは、そう言ったルカを睨んだ。
「……聞けん。人の子の頼みなど、妾が聞く謂われもない。」
「と、取り付く暇もねぇ……」
即答に苦笑いするヴィクトリーの横に、アリスが出てきた。
「サバサ王家の娘に秘められた妖魔の血が覚醒し……そのせいで、国内が混乱をきたしている。それでもなお、貴様に聞く謂われがないと言えるのか?」
サバサ王家と聞き、スフィンクスは目の色を変えた。
「なんと、サバサ王家の者が……?その話、詳しく申してみせよ……」
戦士達は、スフィンクスに詳しい事情を説明した……
「なるほど……我が血、今になって発現したか。しかも、何者かが裏で糸を引いて……」
「サラ女王を人間に戻すには、どうすればいいんですか?」
「……そのような手段は、ない。妖魔の魔力は、いったん目覚めれば眠らす事は難しい。強引に遮断する禁術も、ないではないが……その娘の心身に、深刻な悪影響を及ぼそう。そうなれば、今以上に事態は悪くなる。都合よく人間に戻すなど、出来る話ではないのだ……」
「やはりか……」
「じゃあ、どうすりゃいいんだ?あのまんまだと、サバサの国は女王のせいで腐っちまうぞ。」
「もう、どうしようもないってこと……?」
「いや……手はある。」
スフィンクスの言葉に、一同は顔を向ける。
「ほんとか!?」
「ああ、むしろ完全に妖魔化させてしまえばいい。」
「えっ……それのどこが解決なんですか?」
「その娘の状態は、不完全な覚醒によるものだ。理性の喪失や意識の混濁、過度の発情や高揚……それらは、妖魔の力が中途半端に目覚めている時の症状。むしろ、暴走状態と言ってよかろう。しかし、妖魔の力を制御できるようになれば……人間の時の理性、記憶や意志を全て取り戻せる。妖魔として生きる事になるが、現在の暴走状態よりはマシよ。人に化ける事も出来るし、女王として生きるのも容易かろう。」
「それは逆転の発想……ちゃんと覚醒すれば、理性が戻ってくるんだ。」
「まぁ、普通は考えつかねぇな……それで、どうすんだ?妖魔にする魔力でも当てりゃいいのか?」
「いや、妖魔の血を完全に目覚めさせるには……これが、最も効果的であろう。」
スフィンクスはそう言って短剣を取り出し、自身の腕を傷つけた!
垂れた血を、小さなビンに受け止める。
「おめぇっ……」
「この血を、その娘に飲ませるがいい。そうすれば、自身を制御出来るほどの覚醒を果たすであろう。」
そう言ってビンを閉めて、ルカに渡した。
「ありがとうございます!」
「しかし、どうやってサラに飲ませるか……」
「やっぱり、無理矢理グイッと?」
「うむ……方法は、それしか無さそうだな……」
ルカはスフィンクスの血を道具袋に入れ、皆を見た。
「ともかく、サラ女王の所に行こう。なんとか飲んでもらわないとね。」
「ああ、衛兵もポンコツばっかだからな……女王に会うのは簡単だ。」
飲ませる方法は……まぁ、何とかするしかないか。
「よし、みんな掴まれ!」
「おうっ!」
ヴィクトリーは、瞬間移動で消えた……

サバサ王宮……
戦士達は王宮に戻って、サラ女王の所へ向かって行った。
「この先は女王の間だぜ。ぞろぞろ仲間を連れていくなよな……」
「わりぃけど、そういう訳にもいかねぇんだ。」
「押し通らせてもらう!」
「女王様を正気に戻すためなんだから!ここは少々、無茶するわよ!」
戦士達は臨戦態勢を取り、衛兵に向かう。
衛兵はそれを見て、怠そうにため息をついた。
「……おいおい、マジかよ。なんで俺の勤務時間に、こんな厄介事が……」
「余計な怪我なんかしたくねぇよ。分かった、とっとと通っちまえ……」
ヴィクトリーとアリスは、衛兵の態度に唖然とした。
「ちょ、こいつらマジでやる気ねぇな……!」
「なんという規律の緩み具合……いや、こいつらは元々チンピラ同然の連中だったな。」
「よし、行こう!」
ここは通らせてくれるから、通るだけだ……

戦士達は女王の間への階段を上がり、その扉を開け放つ。
そして、サラ女王の前に出た。
「あら……ずいぶん物々しい雰囲気よね。私を、乱暴に犯したいの……?」
「最初の一言から淫語なんて!これ、本当に理性を失ってるみたいね……」
ソニアがそう言い、絶句する。
「ルカ、例の奴を。」
「ああ……」
ルカは道具袋からスフィンクスの血を出して、サラに差し出す。
「この血を飲んでくれないかな……そうすれば、君は正気に戻れるんだ。」
ルカの頼みを前に、サラは冷徹な眼光を向ける。
「私が飲みたいのは、男のザーメンだけなの……変な血なんて、口にしたくもないわ……」
「徹底した淫乱ぶりだな……こうなりゃ、無理矢理押さえつけて飲ましてやる!」
ヴィクトリーがそう言って、指をボキボキと鳴らす。
「あははっ……私を乱暴にやろうって言うの……?ならぁ……」
サラは立ち上がり、気を解放した!
その肉体が、みるみると変貌を始める……
「はぁあっ!!」
ドレスが弾け飛び、髪の色が変色し、翼と角と尻尾が生える。
体には刺青が刻まれて、そこから魔力が迸る。
「な……!!?」
「う……!?」
「こっちも、無理矢理でもいいわよねぇ……みんな、たっぷり天国を見せてあげるわ……」
「ちょっと、魔物の姿になっちゃった!どうするのよ、ルカ!」
「こうなれば、仕方ない!倒してから、スフィンクスの血を飲ませよう!」
「うふふ……」
サラは高速移動で二人の背後について、股間を摩り揉んだ。
「そんなに私に飲ませたいの……?私、あなた達の精液がゴクゴク飲みたいわぁ……」
「なっ!?」
「は、はえぇ……!?」
「うふふ、今夜はあなた達に決定……」
どうやら、指名はヴィクトリーとルカのようだ。
ヴィクトリーはアリス達に目を向け、アリス達も頷いて下がった。
「だぁあっ!!」
そして、サラに裏拳した!
「あらぁ、怖いわぁ……」
「なにっ!?」
拳が掴まれており、ミシミシと力が込められる。
「はぁあっ!!」
サラはそのまんま、乱暴にヴィクトリーの腹を蹴り据えた!
「ぐぁあっ!!」
「くっ!」
ルカは剣を抜いて、サラに切りかかる。
しかし、サラは腕で剣をガードして、手に魔力を込める。
「はぁあっ!!」
「そこっ!」
サラの一撃を疾風の動きで躱して、廻し蹴りを放つ。
「ふっ!」
サラは腕でガードし、ルカに拳を放つ。
「ずぁあっ!!」
ルカは拳を剣で切り飛ばし、サラの顔面を蹴り据えた!
「っぐあ……!!」
蹴り飛ばされた先に居たのはヴィクトリーで、サラの背中を抱きかかえる。
「えっ!?」
「おらぁあっ!!」
そのまんま界王拳を使いながらバックドロップして、サラの脳天を床に叩きつけた!
「っぐ……!!」
サラは立ち上がり、ヴィクトリーの前に飛んでくる。
「こいっ!!」
「はぁああああっ!!」
無数の蹴りを繰り出して、ヴィクトリーに猛攻する。
「ぐっ!やるじゃねぇか!」
なんとかそれらを凌ぎながら、防戦に徹するヴィクトリー。
「はぁあっ!」
そこにルカが飛び込んできた、ヴィクトリーとサラの攻防に参加した。
「はぁああああっ!」
「だだだだだだっ!」
「うふふふっ!あははははっ!」
サラの足技は速く、重い一撃を何度も連打していた。
さすがの戦士達も、二人がかりで互角なほどだ。
「だぁあっ!」
ヴィクトリーは拳に気を纏って殴りかかり、サラはそれを避けてヴィクトリーにハイキックする。
「ぐぁあっ!」
「ふっ!」
ついでにルカを蹴り飛ばし、ヴィクトリーに目を向ける。
「はぁあっ!」
「うわっ!?」
サラの気合で、ヴィクトリーの上半身の道着が弾けた。
「あれあれぇ?せっかくだから全裸にしようと思ったのにぃ……ガードが固いんだから……」
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーはサラに気合砲を放った!
「っ!」
ドンッという衝撃が叩きつけられ、サラはぶっ飛ぶ。
その背後に、ルカが高速移動してきた。
「だああっ!!」
そのサラを、思いっきり蹴りあげる。
「ぐはっ!」
「おらぁあっ!!」
ヴィクトリーが上空に来て、スレッジハンマーでサラをたたき落とす。
「ーっ!」
サラは床に叩きつけられ、吐血した。
ヴィクトリーとルカは並んで、気を全開放した!
「か〜め〜は〜め〜……!!」
「!!!」
「波ーーーっ!!!」
二人のかめはめ波がサラに直撃し、大爆発した!
「あう……ぅ……もう、力が出ないわ……」
サラは戦闘不能に陥り、その気もだんだん萎んでいく。
「よし、今だ!」
ヴィクトリーはサラの鼻をつまみ、口を開けさせる。
ルカはその口に、スフィンクスの血を流し込んだ。
「んぐ……!?」
「オラッ!のみ込めっ!」
ヴィクトリーは無理矢理サラの口を抑え、スフィンクスの血を飲み込ませた。
「なに、これ……力が、だんだん……あ、あぁぁぁ……!」
サラの気が収まり、変身が解けた。
魔物の特徴が消え失せ、髪も元の色に戻った。
「あれ……私は……」
元に戻ったサラは、今までの事を思い返す……
「……ちょっと、ウソでしょ……!?私、今までとんでもない事を……!」
「えっと……」
戦いが終わったのを確認したソニアは、おそるおそる声をかける。
「はじめましてサラ女王様……理性は戻りましたか?」
「ええ、うん……理性も記憶も、しっかりしているわ。今まで何をやっちゃったかも……全部……」
「ああ、それは……お気持ち、お察しします……」
「でも、落ち込んでは居られないわね。貴方達にも、多大な迷惑を……」
ここで、近衛兵が王の間に入ってきた。
「女王様〜、お楽しみのところ悪いですけど、急報ですぜ。なんだか、ラダイト村がえらい事になってるとか……」
「なに……!?」
「ラダイト村が……?報告を、早く!」
「えっ、は、はいっ!」
衛兵はビシッと背筋を伸ばして、息を吸う。
「サキュバス三体がラダイト村を襲撃!大変やべぇ……いえ、切迫した状況のようです!」
「なんだとっ!?」
「何をいちいち反応しているのだ、ヴィクトリーよ……」
サラ女王があれこれ指示や準備をしてる横で、ヴィクトリーは切羽詰まった表情をした。
「だって、あの村には……!!」
あの村には、俺が助けた少年がいるはずだ。
あの村から脱出しようと、強くあろうとする、希望が……
「サン・イリアとの対妖魔防衛協定にのっとり、サバサより救援軍を派遣します!」
どうやら、すでにサラは殴り込みの準備が出来たらしい。
あれこれと指示をしながら、今度は戦士達に向く。
「旅の方!あなた達の力を見込んで……」
「うっせぇ!」
ヴィクトリーはサラに一喝してから、額に指を当てる。
「くそっ!こうしちゃいられねぇっ!!」
「!!待てっ、ヴィクトリーっ!!待てったら!!」
「あのドアホっ!状況をややこしくして……!」
ヴィクトリーはルカ達の静止を振り切り、ラダイト村へと瞬間移動した……

突如として、ラダイト村に襲撃した謎のサキュバス。
果たして、ラダイト村は無事なのか。
そして、サキュバス達の正体とは……

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強襲!リリス三姉妹!

30分前、ラダイト村……
一筋のつむじ風と共に、三体の淫魔が現れた。
リリス三姉妹だ。
「なんだ……!?」
「さ、サキュバスだ……」
村の男達は震えながら、彼女達に注目する。
「汚らわしい魔物め、何をしに来た!我々は、神の加護を受けているのだぞ!」
「……ハッ。」
それを聞いて、モリガンは笑った。
「知ってるか?お前達には、歴史の加護もないんだよ……正当な歴史には、タルタロスなんてない……だからマキナも見つかってないし、反マキナ派なんてない……つまりこんな村、歴史に存在しないんだよ!だから、消滅させちまっても全然構わないのさァ!」
モリガンの前に、衛兵二人が出てくる。
「おのれ、淫魔どもめ……!」
「魔物の好きにはさせんぞ……!」
その二人を前に、モリガンは笑った。
そして気を解放し、両手にエナジーを込め……
「ほぉら、一秒で一生分の快楽を味わいな!」
……そして、惨劇は始まった。
「くっ……に、逃げなきゃ……!」
一人の少年が、逃げ出そうと走り出す。
しかし、その前にモリガンとは別の淫魔が立ちはだかった。
「ぅ……!」
「あら、坊や……何処に行こうとしたのかしら?」
赤髪のリリス三姉妹の次女、アスタロト。
そいつが、少年の行く道を塞いだのだった。
「ぅ……うあああーーーっ!!」
少年は気を解放して、拳に気を纏う。
そして、アスタロトの胸を抉るように龍翔拳を放った!
「!!!」
アスタロトは吐血して、よろめく。
「……」
油断していたとは言え、たかが少年の拳にダメージを刻まれた……!?
「絶対、生き延びるんだ……!!お兄ちゃんと、約束したんだから……!!」
「……へぇ。」
アスタロトは口の血を拭い、青筋を立て……
少年に、襲いかかった……

ヴィクトリーが、ラダイト村に瞬間移動してきた。
着いた時には既に、大半の人間の干物が散乱していた。
「……!!」
「ぁ……ぁぅ……」
あの少年はボロボロになっており、アスタロトに首を掴まれて持ち上げられていた。
「そいつを離せぇええっ!!!」
ヴィクトリーは怒りのままに気を解放し、アスタロトに飛び蹴りを放つ。
「おっと。」
しかし、アスタロトは軽々と避けてヴィクトリーに向いた。
「お……お兄……ちゃん……」
「くそっ……!!」
「へぇ、まさかオマエがあいつの言うお兄ちゃんだったとはなぁ!」
背後から、モリガンが声をかけてきた。
「おめぇはモリガンっ!って事は……」
ヴィクトリーは、モリガン、アスタロト、リリスの順で視線を配った。
「どうやら、おめぇ達がリリス三姉妹みてぇだな……」
「あははっ!来るのが遅かったみたいだなぁ異世界戦士!こんな村、あたし達にかかれば数分で干物さ。」
「それにしても、貴方一人で来るとは……」
リリス三姉妹の長女、リリス……
別の少年の上で腰を振りながら、ヴィクトリーを見た。
「どうやら、そんなにあの坊やの事を気にかけていたのですね……」
「だけど、残念だなぁ!ここは、正当な歴史には無い村だ!だからあんな奴、ここで搾られても搾られなくても一緒なんだよ!」
「てめぇら〜〜〜……!!!」
ヴィクトリーは気を溜めて、リリス三姉妹に向く。
グゴゴゴゴと大地が揺れ、小石が浮かび上がる。
「あははっ!怒ってる怒ってる!いいぜ姉貴!とっととヤッちまいなよぉ!コイツの相手は私がしてやるからさぁ!」
「いえ、その男の相手は私がするわ……だから……」
アスタロトは、少年をモリガンの方へ蹴り飛ばした。
「ぐぁあっ!」
「!!」
「貴方は、その子の相手でもしておきなさい。今度はサキュバスらしく、ちゃんと楽しませるのよ……」
「はいはい、分かりましたよ!それじゃあ、お姉さんと楽しいことしよっかぁ!」
モリガンは少年の股間に手を突っ込み、じわじわとエナジードレインした……
「ふわぁ……ぁ……」
「あいつっ!!」
モリガンに向かおうとするヴィクトリーの前を、アスタロトが立ちはだかる。
「あなた達も、随分と歴史の理から外れたわ。ここで始末しても、カオス化は起きないでしょう……」
「邪魔すんじゃ……ねぇえええっ!!!」
ヴィクトリーは界王拳を全開にして、アスタロトの顔面をぶん殴った!
「っ!!!」
ギリギリでガードし、なんとか踏ん張る。
「はぁあああああっ!!」
「うふふふっ!」
限界を超えた界王拳の猛スピードの猛攻が、アスタロトに迫る。
しかし、アスタロトはその全てに対応していた。
「はぁああああっ!!」
ヴィクトリーは両手で拳を作り、アスタロトにパンチを連打した!
しかし、アスタロトは全て避けて高速移動で背後に回り、ヴィクトリーの背中を蹴り飛ばした!
「うっわぁあああっ!!」
「はぁあっ!」
ヴィクトリーがぶっ飛んだ方向に回り込み、思いっきり蹴り上げる。
そして蹴り上げた先に現れ、スレッジハンマーでヴィクトリーを打ち落とした!
巨大なクレーターが発生して、大地を抉る。
「だぁあああーーーっ!!!」
ヴィクトリーは界王拳の気をめちゃくちゃに解放し、アスタロトに向かって猛攻した!
「だりゃああああっ!!」
「ふふふっ……」
ドカドカと拳や足がぶつかり合い、衝撃が連続する。
「だーっ!!」
ヴィクトリーが、渾身の蹴りを放つ。
しかし、その足がアスタロトによって掴まれ、思いっきり地面へとぶん投げられた!
「ぐっはぁあ……!!」
「ふんっ!!」
また足を掴まれ、ヴィクトリーは民家の壁に叩きつけられる。
「ぐぁあっ!!」
「はぁああっ!!」
そのまんま、ヴィクトリーをめちゃくちゃに振り回す。
しかし、ヴィクトリーも黙ってはいなかった。
「はぁあああっ!!」
振り回されてるまんま界王拳の倍率を引き上げ、アスタロトの顔面を蹴った!
「ぐ……!」
ヴィクトリーは一回転して、かめはめ波の構えをとる。
「!!」
アスタロトは腕をクロスして、ヴィクトリーに向かう。
しかし、ヴィクトリーは瞬間移動でアスタロトの背後に来た。
「波ーーーっ!!!」
そして、全力のかめはめ波を放った!
「こっちよ。」
しかし、アスタロトは既に背後に回り込んでいた。
「なにっ!?」
ヴィクトリーは思いっきり蹴り飛ばされ、尻尾で足を絡め取られる。
「うっ!?」
「ガラ空きね。」
そのまんまたぐり寄せられ、顔面に拳が入った!
「おぅうっ……!!」
鼻血が噴き出し、ヴィクトリーは悶絶する。
「はぁああああっ!!」
アスタロトは腹にパンチを連打して、そのまんま正拳突きでヴィクトリーをぶっ飛ばした!
「うわぁああああっ!」
「あはっ!」
「くっ!」
アスタロトはヴィクトリーに詰め寄り、そのまんま猛スピードで猛攻した!
「あだだだだだだだだだっ!!」
「あはははははははっ!」
ヴィクトリーは、圧倒的に不利だった。
腹を蹴られ、頬を殴られ、顔面を蹴られ、こめかみに肘打ちをくらい……
それでいながら、ヴィクトリーの与えたダメージは未だにゼロだった。
あの蹴りも、たいして効いてはいない。
しかし、何とかめげずに猛攻しているのだ。
「遅いわね……止まって見えるわ。」
「なにっ!?」
「うふふっ!」
アスタロトは、ヴィクトリーを思いっきり蹴り飛ばした!
「ぐぅうっ!!うぉおおおおっ!!あだだだだだーーーっ!!!」
ヴィクトリーは界王拳の倍率を更に引き上げ、アスタロトに気弾を連射した!
アスタロトはそれに被弾しながらも、ヴィクトリーに迫る。
「そこっ!」
そしてヴィクトリーの顔面を掴んで、思いっきり地面に叩きつけた!
「っぐぁあああああっ!!」
「消えなさい……!!」
その状態で手に魔力を集中させ、大爆発させた!
爆発を直に受けたヴィクトリーは、地中奥深くまでぶっ飛んでしまう。
「うぉあぁあああああっ!!」
ヴィクトリーはまた界王拳の倍率を引き上げ、一瞬で地上に戻ってきた!
そして、アスタロトの顔面にパンチする。
「はっ!」
しかしアスタロトはパンチをガードし、ヴィクトリーを蹴り飛ばした!
そして、蹴り飛ばした先に飛んでヴィクトリーに猛攻した!
「でゃだだだだだだだ!!だだだだだだだだだっ!!だぁだだだだだだだっ!!!」
村中を縦横無尽に飛び回りながら、激しい攻防が展開される。
「だだだだだだだっ!!!」
「ふんっ!」
アスタロトはヴィクトリーの猛攻を掻い潜り、腹にパンチした!
「っ!!!」
「せぇいっ!!」
そして頬をぶん殴り、ヴィクトリーをぶっ飛ばした!
ヴィクトリーは民家の壁に叩きつけられ、吐血した。
「ごはぁああ……!!!」
そして、ついに四つん這いになって、肩で息をする。
「ふん……」
アスタロトはその後頭部に足を乗せて、思いっきり踏みつけた!
「ーーーっ!!!」
「終わりね……!!」
ヴィクトリーに手を向け、魔力を溜める。
しかし、どこからともなく剣が飛んできた!
「っ!」
アスタロトはそれを弾き、剣が飛んできた方へ向かう。
「ま、間に合ったか……!」
ルカが、到着したようだ。
弾かれた剣をキャッチし、ヴィクトリーに向かう。
「こんなタイミングで来るなんて……!」
ルカ達の中には、サラの姿もあった。
少年にエナジードレインしている、モリガンに目をつけたようだ。
「あなた達……!!なんて事を……!!その子を離しなさい!!」
「おやおや、なんと勇ましい女王陛下……淫魔暮らしは、楽しかっただろ?」
「あのまま、夢うつつの快楽を楽しんでおけば……国民全員、あなたが吸い殺してしまうという計画だったのに……」
ニヤニヤと笑うモリガンに続き、リリスがサラに微笑む。
サラは淫魔の笑みを受けながら、歯ぎしりした。
「それが計画ですって……!?いったい、なんでそんな事を!」
「正当な歴史でも、そういう可能性はあったのさ。それをなぞってやれば、カオス化の影響は少なく済む……」
「……余計な事を喋りすぎよ、モリガン。」
ヴィクトリーを踏みつけながら、アスタロトは言う。
「は〜い……黙ってますよ〜!ところで姉貴、こいつ、もうとっとと搾り殺していいかなぁ?」
ヴィクトリーが、怒りに目を染める。
「やめっ……ろぉおおっ!!!」
「ええ、いいわよ。サイヤ人は怒りで上質な精になるとは聞いたけど、どうやら無駄だったみたいね……」
怒りに震えるヴィクトリーを、アスタロトの足が踏みつける。
「ヴィクトリー、どうしたんだ!?そんな奴、界王拳を全開にして……」
そう言いかけたルカの肩を、アリスがそっと掴む。
「無理だ……今ヴィクトリーが使ってるのが、その全開の界王拳……10倍界王拳なんだからな。」
「!!!」
既にヴィクトリーの体と気力は限界を越え、いつ破綻してもおかしくない程に暴走している。
今まで、5倍程度の界王拳で抑えていたが、それをいきなり10倍に引き上げたのだ。
無理も、無かった……
「ぐっぐぐぐ……!!」
「じゃあ、私達が助ける!!」
「おぉっ!!」
ソニアとルカは武器を構え、モリガンに向かう。
「おおっとぉ!」
モリガンは手を薙ぎ払って、ソニア達の足元を吹っ飛ばした!
「っぐぁあっ!」
「くっ!!」
凄い威力のエネルギーに、二人は思わず立ち止まってしまった。
そしてモリガンは、嬉しそうに口角を引き攣らせた。
「あははっ!それじゃあ、サヨナラだ!」
「やめろぉおおおおーーーっ!!!」
モリガンは手のエナジーを解放して、少年の精を吸い尽くした!
「……」
少年は物言わぬ干からびた死体になり、倒れた……
「ーーーーー」
ヴィクトリーは絶句して、言葉を失った。
目の光が消え、顔を落とす。
「ぐっ……!!」
「なんて事を……!!」
「それじゃあ、私もここらでおいとましとくか!」
「それでは私も、ここまでにしておきましょう……そういう訳で坊や、これで昇天してもらいますね。」
「はうぅ……リリスさまぁ……吸って、もっと吸ってぇ……」
そう言っている最中にも、その少年もリリスにエナジーが吸われる。
そして、その少年も干からびた死体になった……
「それではアスタロト、この場は任せましたよ。私達を阻む者全員、天国に送ってあげなさいね……」
「そんじゃあな!頼むぜ姉貴!」
モリガンとリリスは、飛び去る。
この場に残されたのは、戦士達だけだった……
「……さて、それでは始めましょうか。怖くないわ、最高の快楽を味わわせてあげるから……ねっ!」
アスタロトは、ヴィクトリーをルカの方に蹴り飛ばす。
「ヴィクトリーっ!」
「ぐ……!!」
「この淫魔、恐ろしく強いわね……!」
「……」
このヴィクトリーの様子からして、妹とは一味違うらしい。
全力で行かねば……!!
「……」
戦おうとしたら、不意にヴィクトリーは立ち上がり、ブツブツと何か言う。
「……ヴィクトリー?」
「立てるのか!?」
ルカ達は心配し、ヴィクトリーの顔をのぞき込む。
「……るさねぇ……ゆるさねぇ……!!よくも、よくも……!!」
「……!!」
ヴィクトリーの気が、みるみる内に上昇していく。
その瞳に光が戻り、アスタロトを見据える。
「へぇ……まだパワーアップする気力があるなんてね……」
アスタロトはそう言い、ニヤリと笑う。
その笑いがヴィクトリーの瞳に映った瞬間、ヴィクトリーの中の何かが切れた。
「ーーーッッッ!!!!」
そして、激しい怒りが爆発して気の嵐を巻き起こした!
「!!!」
閃光が迸り、凄まじい気が波動する。
とてつもない気が溢れ出し、未だに上昇していく。
「……な……!!」
「ヴィクトリーっ!!?」
「……」
ヴィクトリーは金髪になっており、その戦闘力も大幅に上がっていた。
「な……き、金色……に……!!」
瞳は碧くなり、その目でアスタロトを見据えた……
「……おめぇだけは、許せねぇ!!」

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覚醒!怒りの猛反撃!

ラダイト村に、リリス三姉妹が強襲してきた。
ヴィクトリーが真っ先に向かい、アスタロトと全力で戦うものの、その圧倒的な実力になす術なく倒されてしまう。
そして……あろうことかリリス三姉妹は、ヴィクトリーがかつて助けた少年を、目の前で殺して見せた。
その怒りがヴィクトリーの中で臨界点を超え、爆発し……
「……おめぇだけは、許せねぇ!!」
金色に変身し、アスタロトにそう言うのであった。
「ヴィクトリー……!?」
「ど、どうなっているの……!?まさか、彼も妖魔の血を……!?」
ソニアやサラも驚き、ヴィクトリーに注目していた。
「い、いや……僕達も、あんなヴィクトリー初めて見た……」
「貴様の中で、何が起きたと言うのだ……!?」
「みんな……」
ヴィクトリーは仲間の方へ向き、目を鋭くする。
「力、貸してくれ!アイツを倒すには、俺一人じゃ無理だ!」
「え、ええ!もちろんよっ!」
「分かっているわ……!共に戦いましょう、金色の戦士!」
「あの淫魔を、みすみす逃すわけにはいかんっ!」
「僕達で、力を合わせるぞ……!!」
戦士達はアスタロトに向き直し、気を解放した!
「どういう事なの……!?」
「俺は怒ったぞ!!アスタロトーーーッッッ!!!」
ヴィクトリーがそうシャウトし、消える。
次の瞬間、アスタロトの腹に正拳突きが入った!
「ッッッごぷっ……!!?」
アスタロトは吐血し、ぶっ飛ぶ。
ヴィクトリーはぶっ飛んだ先に高速移動して、思いっきり蹴り飛ばした!
「ーーーっ!!!」
「ルカぁっ!!」
「ああ!!」
ぶっ飛んだ先には、ルカが剣に炎を纏って構えていた。
「烈火天翔閃!!」
そして、紅蓮の刃で切り上げの一閃をした!
「ぐ……!!」
見事に剣技も入り、今度はアリスが出てくる。
「はぁあああっ!!」
アスタロトに連続で突きを放つが、次々に避けられてしまう。
その背後に、ヴィクトリーが現れた。
「!」
「おりゃああっ!!」
こめかみに後ろ回し蹴りをして、アスタロトを揺るがした!
「がっ……!!」
「刺し穿ち……突き穿つ!!」
アリスはレイピアを立てて、強烈な二連突きを放った!
「づっ……!!」
「かめはめ波ーーーっ!!」
間髪入れず、ヴィクトリーがかめはめ波を放ってくる。
しかしアスタロトは避けて、ヴィクトリーの背後に来た。
「はい、そこぉっ!!」
「っ!!?」
ソニアが既に構えており、棍でアスタロトの足元を薙ぎ払った!
「だーーーっ!!!」
ヴィクトリーは怒りに任せた蹴りで、アスタロトを思いっきり蹴り飛ばす。
「やぁあああっ!!」
サラが高速移動で蹴り飛ばした先に現れ、すれ違い際に何発も斬撃を叩き込んだ!
「がはぁあああっ!」
アスタロトはゴロゴロと転がり、倒れる。
そして、ヴィクトリーの方を見た。
「うっぐ……な、何なのよ……!!何で、こうも私のペースを崩せる……!?あなた、一体何者なの……!?」
「俺は……」
間違いない、この感覚……
この気の上がりよう、この視点……
「穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた戦士……スーパーサイヤ人、ヴィクトリーだっ!!」
「スーパー……サイヤ人……!?」
アスタロトは衝撃を受けた顔になりながらも、ふふふと笑ってみせる。
「……なるほど、怒りによって目覚めた……上質な精に変貌したわね……それじゃあ、私も本気を出す必要があるかしら……」
アスタロトはヴィクトリーに手を向け、エネルギー波を放つ。
ヴィクトリーはそれを弾き飛ばし、構える。
「あはっ!」
次の瞬間、アスタロトの両足蹴りがヴィクトリーに炸裂していた!
「ヴィクトリーっ!!」
「……」
ヴィクトリーはアスタロトの両足を掴んで、思いっきりぶん回した!
「っ!!」
「だーっ!!」
そして、壁に向かってぶん投げる。
その壁は粉砕し、アスタロトは瓦礫に埋もれた。
「はぁあっ!!」
瓦礫を吹っ飛ばして、ヴィクトリーの目の前まで迫る。
「あだだだだだだだっ!!でゃだだだだだだだ……!!!」
「く……!!」
激しい攻防を繰り広げてから、アスタロトの蹴りがヴィクトリーに放たれる。
しかしヴィクトリーは腕でガードし、アスタロトの顔面をパンチで打ち下ろした!
「っがはぁあっ!」
二度目のダウンに、アスタロトは狼狽える。
「っ……っ……!!」
「ヴィクトリー、めちゃくちゃ強いわね……」
「激しい怒りに、凄まじい戦闘力……相手も本気を出した事で、僕達の取り付く暇が完全になくなっちゃった……」
「リリス三姉妹の一人と、一対一でこんなにやり合うなんて……」
ソニア達が口々に言う横で、アリスが腕を組む。
「今は様子を見て、ヤバいと思ったら向かうぞ。何せ、我々はあんなヴィクトリーを知らんからな……」
アリスの言葉に、ルカ達は頷いた。
「……」
「……こいよ。」
ヴィクトリーがアスタロトを挑発し、アスタロトは腕に気を纏う。
「はぁあああーーっ!!!」
そして、ヴィクトリーの顔面をぶん殴った!
「ふんっ!!はぁあっ!!」
更に腹にパンチして、顔面をぶん殴る。
しかし、ヴィクトリーは顔面へのパンチを防いで消えた。
「なっ!?」
次の瞬間、ヴィクトリーは背後からアスタロトを蹴り上げた!
「っがはぁあっ!」
「でりゃあーっ!!」
高速移動で回り込み、顔面をぶん殴る。
そして、エネルギー弾を連射した!
「だだだだだだだ……!!」
「ふふっ!」
アスタロトは背後に高速移動して、手刀を振りかぶる。
しかしヴィクトリーは裏拳で、アスタロトをぶっ飛ばした!
「っ!!?」
更に高速移動で消え、腹に正拳突きした!
「おぅううっ……!!」
「だぁあっ!!」
アスタロトに迫り、一撃を放つ。
しかしその一撃はすり抜け、アスタロトはヴィクトリーの背後に現れる。
そして、スレッジハンマーしてヴィクトリーを叩き落とした!
「ぐぅうっ!!」
ヴィクトリーは着地し、目の前を見る。
既にアスタロトは迫っており、ヴィクトリーの首を掴んだ。
「っぐ!!?」
「はぁあああっ!!」
そして思いっきり地面に叩きつけ、そのまんま引きずり回した。
「ッッッ……!!」
大地を抉りながら引きずられ、掴まれた所からもエナジードレインされる。
まずいっ!
「だぁあっ!!」
「うッ!!?」
アスタロトは巴投げされて、思いっきり壁に叩きつけられた!
「ぐはぁあっ!」
「だぁあああっ!!」
そこにヴィクトリーが殴りかかり、拳を握る。
アスタロトも拳を握り、ヴィクトリーと一撃をぶつけた!
それだけで衝撃が轟き、嵐のような旋風が巻き起こる。
「ぐ……!!」
「あだだだだだだだだ!!!」
ヴィクトリーはそのまんま、激しく猛攻した!
「ぐ……ぐ……ぐ……!!!」
猛攻がどんどん加速し、とてつもないスピードになる。
アスタロトの背後の壁に、ドンッとクレーターが発生して、だんだん大きくなっていく。
「しゃあっ!」
「おせぇっ!」
アスタロトの蹴りの一撃を避けて、ヴィクトリーは拳を放つ。
しかしアスタロトもそれを避け、ヴィクトリーの背後から踵落としした。
ヴィクトリーはそれを避け、消える。
アスタロトも消えて、攻防が超スピードに発展した。
「み、見えるか、ルカ……!!?」
「い、いや……全く……!!」
「どうなってるのよ……!!」
あまりにも速すぎる攻防で、不気味に戦闘音と衝撃だけが連続する。
「うぉりゃあああーーーっ!!!」
「はぁあああーーーっ!!!」
二人は上空に現れ、一撃をぶつけ合う。
すると、その衝撃で雲が吹っ飛んだ!
「どぁだだだだだだーーーっ!!!」
「ぁああああーーーっ!!!」
激しい攻防が上空で繰り広げられ、二人はノーガードで殴り合う。
「だぁあっ!」
ヴィクトリーが顔面を打ち、アスタロトが胸を蹴り、ヴィクトリーが裏拳で殴り、アスタロトが殴り返し……
「ふっ!!」
「!!」
アスタロトが一歩早く攻撃し、ヴィクトリーは揺らぐ。
速く重い一撃がヴィクトリーに叩きつけられ、腹に拳が埋まる。
「ふふ……」
悶絶するヴィクトリーの前で、アスタロトは優位を確信した笑みを見せる。
しかしヴィクトリーの闘志は、まだ消えなかった。
「くそったれぇえーーーっ!!!」
「!!!」
アスタロトは、スレッジハンマーで打ち落とされた!
勢いよく墜落し、大地が粉砕する。
「っがはぁ……!!」
「うぉああああーーーっ!!!」
ヴィクトリーはそこに猛スピードで向かい、アスタロトに猛攻した!
「あだだだだっ!!でゃあだだだだだ!!だだだだだだだ……!!!」
「うっぐ……ぐ……!!」
「だりゃあああぁーーーっ!!!」
アスタロトを蹴り飛ばし、着地する。
「っぐぅううっ!!」
「はぁああああああーーーっ!!!」
そして、気を全開放して手を合わせてエネルギーを溜める。
「くらぇええええっ!!」
そして、渾身のかめはめ波を放った!
「ぐぅうっ!!」
アスタロトはかめはめ波を受け止め、押し返そうとする。
「うぉああああああああああーーーッッッ!!!」
ヴィクトリーはそのかめはめ波の中に入り込み、アスタロトに突撃した!
「!!!しまっ……!!!」
「これで……終わりだぁあああーーーっ!!!」
拳を突き出し、アスタロトに殴り掛かる。
それと同時に、凄まじい大爆発を巻き起こした!
「うっ!?」
「っ!!?」
爆煙が巻き起こり、衝撃が轟く。
「ど、どうなった……!?」
「……!!」
爆煙が晴れ、衝撃も収まる。
そして、二人の姿も覗けた。
「……っ……ぐ……!!」
「うふ、ふふふ……」
アスタロトは、ヴィクトリーの拳を受け止めていた。
ヴィクトリーは金髪から黒髪に戻り、凄まじい気も消え失せていった……
「い、一時的なものだったのか……!」
「まずい……!!」
アスタロトの気が溢れ出し、エネルギーが迸る。
「……サイヤ人、確かに興味深い種族ね……だけど……」
次の瞬間、アスタロトはエネルギーを放ち、ヴィクトリーに放った!
「うわぁあああああーーーっ!!!」
「それが、あなたの限界ね……!!」
アスタロトは目を見開き、エネルギーを波動させる。
次の瞬間、ヴィクトリーに放ったエネルギーが大爆発した!
その爆発をモロにくらい、ヴィクトリーは宙に投げ出される。
「ヴィクトリーっ!!」
ルカが向かい、地面に墜落する寸前のヴィクトリーを受け止める。
「がっは……!!」
ヴィクトリーは瀕死で、既に虫の息だった。
ルカはヴィクトリーを置き、アスタロトを睨みつけた。
「アスタロト……!!」
「ヴィクトリーは倒れちゃったけど……私達なら、戦える!」
戦士達は武器を抜き、アスタロトに向いて構えた。
「……ぐっ!」
アスタロトも、ヴィクトリーとの戦闘でダメージを受けている。
このまま押せば、勝てるはずだ……!!
「……」
アスタロトは、戦士達から受けた傷をなぞる。
そして、笑った。
「……今ここで戦ったら、流石の私も負けちゃうかもね……その堅固な意志と信念、やはりあなた達こそが……」
「ぐっ……!!」
その台詞とは裏腹に、まだまだ平気な顔をしている。
きっと、あのヴィクトリーとの戦いも本気ではやっていないだろう。
「……もうやめましょう。ここで殺し合うなんて、愚かしいわ。」
「……えっ!?いきなり、何を……!」
追い詰められ、折れてきた……のではないだろう。
相手の方が遥かに格上で、圧倒的な力を持っているのだ。
「どういう事……!?あなた達の目的は、いったい何なの!?」
サラが問い詰めると、アスタロトはそちらに向いた。
「私達は、世界を救いたいのよ……あなた達と、ほとんど変わらない動機じゃないかしら?」
「小さな村を滅ぼし、大国を混乱させ……世界のいったい何を救うというのだ!?」
アリスはレイピアを向け、キッとアスタロトを睨む。
「アリスフィーズ16世……あなたにはきっと分からない。だからあなたの母親は、あなたを計画から外したのよ。」
「なに……!?貴様、母上を知って……いや、余を計画から外したとはどういう事だ!」
「……」
アスタロトは、ヴィクトリーに目を向ける。
そして、ニコッと笑った。
「今回の戦いで、私は確信したわ。いつか、あなた達とも手を組めるんじゃないかって……」
「こんな光景を見せられて、僕達が本気で手を組むとでも……?」
「あなた達が、私の見込み通りだとしたら……じきに悟るわ、世界のために何を為すべきなのかを。」
アスタロトはそう言って、戦士達に背を向ける。
「それじゃあ、また会いましょう。あなた達も、アリス様のために働く日を願っているわ……」
そう言って、アスタロトはその場から消え去った……
「アリス様、だと……!?それはもしかして、初代様の……」
「……」
サラが出てきて、村を一望する。
もう人の気配はなく、全滅してしまったらしい。
「なんてことなの……村を守れなかったなんて……」
「数十分で、村を壊滅できるほどの連中なんだ。サラのせいじゃないし、誰もどうにも出来なかったよ……」
ルカがそう言い、アリスが出てきた。
そして、サラの横に来る。
「女王サラよ……サバサを陥れた一連の事件、あの三姉妹の仕業だったのだな?」
「ええ、そう……」
サラは頷いて、頭を傾げる。
「詳しいことは、全くわからないけど。私の血を覚醒させたのは、あの三人だったって事は確かよ。」
「やっぱり、そうだったか……世界中を掻き乱すような真似をして、何が狙いなんだ……?」
ルカはヴィクトリーを抱え、揺する。
「おい、平気か?」
「……すまねぇ、俺がよえぇばっかりに……」
ヴィクトリーは、歯ぎしりしながら怒りで声を震わせていた。
「そんな事ないわよ……」
「ヴィクトリー……」
ヴィクトリーの震えた声に、皆も落ち込む。
そんなムードを切るように、アリスが咳をついた。
「考えるのは後だ……ヴィクトリーの事もある、いったん城に戻るとしよう……」
「そうだね……」
これ以上、ここにいても怒りと無力感に苛まれるだけ。
戦士達は、サラ女王を連れてサバサに戻ったのだった……

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ラダイト村に、リリス三姉妹が強襲してきた。
ヴィクトリーが真っ先に向かい、リリス三姉妹の次女であるアスタロトに向かう。
しかし、その実力の差は歴然だった。
そうしていく内に、かつて自分と約束を交わした少年を目の前で殺された。
その怒りで、ヴィクトリーはスーパーサイヤ人へと変貌した。
そして、アスタロトを追い詰めたかに思ったが、一歩及ばずに負けたのだった……

サラ女王は、核心を曇らせつつもおおよその事実を国民に伝えた。
謎の妖魔に理性を奪われ、あのような振る舞いをしてしまったこと……
そして、女王位からの退位を宣言。
議会民主制度の導入を提唱したのだった……

「本当に良かったんですか?」
「女王位退位なんて、思い切った事すんだなぁ。」
ヴィクトリーは、仙豆を食って全回復していた。
「ええ……あそこまでの乱行を重ねた以上、元首として居座り続ける事は出来ないわ。」
「今回の発表でも、同情的な声の方が大きかったでしょう。だったら、無理に辞めないでも……」
そういうソニアに、サラは首を振った。
為政者(いせいしゃ)は常に推定有罪よ。サキュバスに操られていたなんて、言い訳にならないわ。それに元々、サバサには議会が存在しているの。これを機に、議会の権限を強化しても大きな混乱は無いわ。」
「しっかりしてんだなぁ。」
「確かに……女王の乱行時代、国民の政治意識は逆に高まった。民主制に移行するには、意外に好機かもしれんな。」
「それに、私にはやるべき事が出来たの。このまま形ばかりの女王を続けるよりも、大切な事が……」
「それは、もしかして……」
ソニアが察する前で、サラは一瞬で服を着替えた!
剣を携えた、戦士の格好だ。
「もちろん、世界を救う旅よ!あなた達に同行させてもらうわ!」
「それは無茶ですよ!いくらなんでも、高貴な方をそんな……!」
「いや、既にサン・イリア法王様いるし……いいんじゃねぇか?」
「今の私、もう女王でも何でもないから。それに歳もほとんど同じだし、タメ口でいいわよ。そういう訳で、私もついて行くからね。よろしく、みんな!」
こうして、サラが仲間に加わってしまった。
しかし、実力は確かなので心強いっちゃ心強い。
「反対って訳じゃないし、心強いけど……でも、本当にいいのかなぁ……まぁ、いいか!よろしく、サラさん!」
「サラでいいわよ。よろしく、ソニア。」
ソニアとサラは、がっちりと握手した。
それを見ながら、ヴィクトリーとルカは何かを感じ取ったようだ。
「ヴィクトリー。」
「ああ……おいサラ、誰か来るぜ。」
ヴィクトリーがそう言いながら、視線を横に向ける。
その視線の先から、近衛兵が走ってきた。
「女王陛下、至急ご報告です!」
「私は、もう女王じゃないんだけど……」
「サバサの元首である事には違いません。それより、マギステア村より急報です!」
サラはそれを聞いて、顔色を変えた。
「マギステア……魔女狩りの村ね!?」
「マギステア村にて、大規模なテロ発生!領主軍と反乱軍に分かれ、内戦状態になっているとの事!」
「内戦状態……?いったい、なんでそんな……」
「おいサラ、どういう事だ。話が掴めねぇぞ。」
「マギステア村は、魔導を修めた領主が支配している村。その旧弊的な体質は、前々から問題になっていたんだけど……その村に、自由と解放を求める反乱軍が結成されたの。それ以来、体制派との小競り合いが激化してたんだけど……ついに、蜂起に至ったようね。魔導が絡む争いだけに、かなり凄惨なものになるはずよ……」
「現地の駐屯兵は、領主軍と反乱軍の両方に歯が立たない模様。いずれも強力な魔導師であり、多くの魔物も加担しており……」
「報告、ご苦労。下がっていいわよ。」
「次の目的地が決まったな、ルカ。」
「うん、こんな事見逃す訳にはいかない……僕達も向かって、何とかやめさせないと。」
拳をパンッと叩いて笑うヴィクトリーと、真剣な顔で言うルカ。
そんな二人に、サラが向いた。
「いきなり軍が行くと、余計に混乱が大きくなる恐れがある……ここは、まず私が出向く必要があるわね。」
「僕達も手助けするよ!」
「ああ……こんな馬鹿な事、一刻も早くやめさせねぇとな。」
「やむを得んな。魔物も加担している以上、余も黙認はできん。ノームとタルタロスはまた後回しになるが……難所に挑む前に、修行を積むのも悪くは無い。」
アリスも提案し、一同は頷く。
「協力ありがとう、感謝するわ。マギステア村への道のりだけど、かなり遠くなるわよ。位置的にはサバサ城の真西なんだけど……西部の山脈を、大きく迂回する必要があるわ。」
そこから、詳しい道のりを説明された。
ここから北へまっすぐに向かい、川にかけられた橋を渡る。
すると、その北西にグランドールなる街が見える。
川で隔てられているから、かなり回り込む必要があるとか。
「そこからの道のりは、グランドールで聞いた方が良いわ。いっぺんに言っても、覚えられないでしょ?」
「うん、そうだね。いったんグランドールまで行こう!」
とりあえず、旅路は前述したようになるだろう。
また長い旅路になりそうだが、気を引き締めて行く事にした……

道中……
当然のように、魔物達は戦士達に襲いかかる。
「界王拳!!どりゃあああーっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を使って、サボテン娘をぶっ飛ばした!
「っぐはぁあっ……!!」
サボテン娘はぶっ飛んで、倒れてしまう。
「……ふうっ!」
ヴィクトリーは界王拳を解いて、リラックスした。
どうやら、こいつで最後の魔物らしい。
「……ヴィクトリー。」
ルカが剣をしまいながら、ヴィクトリーを呼び止める。
「おう、終わったぜ。」
復活する度に強くなる……
サイヤ人の特性は、案の定ヴィクトリーをレベルアップさせていた。
しかし……
「もう、あの金髪の状態にはなれないのか?」
そう、ヴィクトリーは未だに界王拳を使って戦っているのだ。
あれ以来、スーパーサイヤ人にはなれていない。
「みてぇだな……どうやら、まだスーパーサイヤ人に体が慣れてねぇから、パッて変身すんのは無理みてぇだ。」
「なるほど……穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた戦士……か。」
「ああ……」
アリスの言葉に、ヴィクトリーは複雑そうな顔をする。
何か思い悩んだような、憂いと迷いが混ざった顔だ。
そんなヴィクトリーを見て、ソニアが声をかけた。
「そう……ヴィクトリー、ショックだったわよね……あんな約束までしたのに……」
「……この世界にはドラゴンボールもねぇんだ。悔しいけど、死んじまったモンはしょうがねぇよ……」
「ドラゴンボール……?サイヤ人……?あなた達、さっきから何の話をしているの?」
「ドラゴンボールというものも、余達には初耳だぞ。」
「あ、ああ……」
ヴィクトリーは、サラに自分の事とドラゴンボールの事を説明した……
「い、異世界の宇宙人……!?それに、7つ揃えたら願いを叶えてくれる龍の玉……!?」
「条件が厳しいなぁ……世界中に散らばってる玉を、7つも……」
「でも、それってすごくロマンのある話よね~……世界中を旅しながら、捜し物!そうさ今こそ、アドベンチャーって感じね!どんな願いでも、かぁ……えへへへ……」
ソニアは、ニヤつきながらルカを見る。
ルカは、嫌そうな顔でソニアに向いた。
「ど、どうしたのソニア……そんな気持ち悪い顔して……」
「キーッ!!」
ソニアは豹変し、ルカにゲンコツを落とした。
「いだっ!?」
そんな夫婦漫才を横目に、アリスがため息を吐いた。
「この世界には無いから、願った所で意味はあるまい……そしてヴィクトリー、貴様があの変身が出来ない理由……迷っているからではないのか?」
「あ……バレちまったか?」
アリスによって話が戻り、ヴィクトリーはまた表情をあの表情に戻す。
「迷ってる……?どういう事なんだ、ヴィクトリー?」
「ああ……実はあいつら(リリス三姉妹)……ただラダイト村を壊滅させたわけじゃねぇって感じがするんだ。」
「そうだろうね……」
ルカは、アスタロトが去っていく際の意味深な言葉を思い出す。
「それでよ……よく考えたら、マジでただ壊滅させるだけだったら、俺達を生かす意味がねぇんだ。」
「む、それは確かにそうだな……」
「それに、連中がその気になったらこの星はすぐに破壊し尽くせる筈だ。だけど、そんな事しねぇでぽっと現れて暴れては消えるってのを繰り返すだけ……何より引っかかんのは、モリガンの『正当な歴史』って単語だ。」
「正当な歴史……やはり、白兎やマルケルスの言う正史という奴なのだろうか。」
「ああ……奴ら、ひょっとしたら絡まった世界線を解いてこの世界を編纂してぇだけなんじゃねぇかなって……」
「ちょっと待ちなさい、それだと私の洗脳騒動はどうなるの!?」
ヴィクトリーの言葉に、サラが声を上げる。
しかし、ヴィクトリーは冷静であった。
「モリガンの奴も言ってただろ?『正当な歴史でもそういう可能性はあった』って……あいつら、この世界をなるべく正史に近づけて、世界の歪みを直すために、頑張ってるだけかも知れねぇぞ……ルカの父ちゃんと同じくな。」
「……!」
ルカはそれを聞いて、絶句する。
親父が、あのリリス三姉妹と……?
「まぁ、もしかしたら手組んでるのかも知れねぇし、単に目的が一緒なのか、言葉の意味合いが違うのか……リリス三姉妹がこの世界の歪みを直した後はどうするかは知らねぇけんど……」
世界を救おうとしているのか、虐殺を楽しんでいるのか……
しかし、あの希望に満ちた少年を殺されたのは確かだ。
「……複雑だけど、俺はちゃんとルカに協力するぜ。」
「あ、うん……無理するなよ?」
ヴィクトリーは、ルカに向けて親指をグッと上げた。
ルカも応じるように、親指を上げる。
「とにかく、だ。」
アリスは二人の肩を掴んで、入ってきた。
「ヴィクトリーよ……貴様は今、精神が不安定だ。あの変身をするには、もっと大きな怒りが必要だろう。しかし、それが貴様に耐えられるのか……」
「平気だってアリス。俺が怒ることなんて、そうそうねぇからさ。」
「……」
ヴィクトリーは平気な顔で、背伸びをした。
「よっしゃ、行こうぜみんな!まずはグランドールだろ?」
「ああ、行こう!」
ヴィクトリーとルカを先頭に、戦士達は旅路を進む。
まず向かう先は、グランドール。
しかし……そのグランドールで、不穏な雰囲気が流れていた……

「キラッ☆」

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大劇場の黒き旋律

目的地をマギステア村にして、砂漠を進む戦士達。
その休憩ポイントとして、グランドールという街に着いた。
「グランドールに到着したね……」
「ああ……」
ヴィクトリーは、早速不穏な気を感じていた。
何やら変な気が、このグランドールを包んでいるのだ。
「ここからマギステア村までは、まだ少々遠いわ。とにかく、急がないと……」
気の察知が無いサラはそんな事には気付かずに、前に出る。
すると、兵士の一人がサラに向いた。
「サラ様、お待ちしておりました。マギステア村までの旅路は、私にお尋ねください。しかし激突はいったん収まり、反乱軍は近くの塔にこもった様子。体勢は万全にされるのが良いでしょう。」
兵士は一通り、真剣な顔でそう言った……
かと思えば、いきなり笑顔になってポーズを決めた。
「サキちゃん、キラッ☆」
「ナチュラルにおかしなこと言った!?」
ソニアが突っ込むと、兵士は慌てて真剣な顔に戻る。
「失礼……この町の大劇場を占拠したサキュバスに、誘惑の術を掛けられてしまったのです。」
「この街を包む変な気は、それか……」
「大事には至りませんでしたが……しゃっくりのように、たまに妙な言葉が出てきて……キラッ☆」
「城に戻って休んだ方がいいんじゃない……?」
「いえいえ、時に変な事を口走る以外に問題はありません。任務を続けさせて頂きます、サキちゃんハァハァ。」
サラに心配かけさせないようにと、兵士は真剣な顔を保つ。
しかし、どうにも様子が変だ。
「そう言えば……大劇場を占拠したサキュバスが居ると、聞いた気がするな。こんな被害を広げているのならば、退治した方がいいのではないか?」
「今すぐマギステア村に行きたいところだけど……そのサキュバスも、退治しなきゃいけないわね。」
「やめてあげて!サキちゃんは悪くないの!!」
「ホァッ!?」
アリスとサラが話してると、兵士がいきなり大声を上げ、ソニアがそれにビビるというカオスな状況。
放っておくと、ロクな事にはならなさそうだ。
「本人の自覚はないが、かなり誘惑されているようだな。早急に対処せねば、被害が広がるかもしれんぞ……」
「大劇場に居るんだよね……よし、行こう!」
マギステア村まで、急いでいる身ではあるが……
この一件も、放置は出来ない。
相手はサキュバス一人のようだし、時間は掛からないだろう。
大劇場に行って、退治しよう……
そう思っていた時だった。
「っ!!」
ヴィクトリーが目をキッとして、上空を睨んだ。
「なんだ……!?」
ルカも不穏な風を感じて、ヴィクトリーの目線の先を見る。
そこには、なんと……
「……」
黒のヴィクトリーが、浮かびながらグランドールを見ていた。
「なんなのよ……あっ!」
「奴は……!!」
「な、なに、あれ……人が、浮かんで……」
ソニア達も気付いたようで、黒のヴィクトリーの方を見る。
どうやら、ヴィクトリー達以外には黒のヴィクトリーの存在に気付いていないようだ……
「……」
黒のヴィクトリーは、ゆっくりとルカ達に向き……
ニヤリと、笑った。
「……」
そして、顎でグランドールの大劇場を指した。
「……」
ルカ達は、あえて黙っていた。
ここで変な声を上げて、グランドールの人達をパニックに陥らせる訳にはいかない。
「……行けって事なのか?」
「みてぇだな……」
「なんなのよ、あいつ……」
「あの、さっきから何を……?」
兵士が横に来て、ヴィクトリーの達の視線を追う。
しかし、既に黒のヴィクトリーの姿は無かった。
「何もありませんよ……?サキちゃんキラッ☆」
「消えやがった……」
上手いタイミングで、瞬間移動でもしたのだろう。
奴の気も感じない……気を消して隠れてるのか、それともただおちょくりに来たのか……
「……行こう!」
ルカは大劇場を目指して、歩き出す。
皆も頷いて、大劇場へと向かった……
「……街はサキチャンとやらの話題でいっぺぇみてぇだな。」
「そうだね……」
といっても、ほとんど洗脳に近い感じの誘惑ではある。
どの男を見ても「サキちゃん、キラッ☆」。
大劇場前の踊り子までもが「サキちゃん、キラッ☆」と言っている。
「おいおい……」
「……」
さっきまでの不安が嘘になるような、そんな雰囲気だった。
いっそ、ほっといても害はないんじゃないか……
そう思いながら、一行はついに大劇場へと入っていった……

大劇場……
大衆の前で、踊っているサキュバスが居る。
「あいつか。」
「あいつだな。」
おそらく、アレが例のサキちゃんと見て間違いないらしい。
「抱きしめてあげる♪指を絡めて心のスミまで♪抱きしめてあげる♪唇重ねて問答無用よ♪連れて行ってあげる♪空の彼方♪連れて行ってあげる♪夢の深淵♪」
ノリノリな音楽と共に踊り、観客が歓声を上げながら応援する。
既にフロアは、大熱狂していた……
「……」
こうなってしまうと、ドンッと壇上に上がって物申すのもやりづらい。
とりあえず、支配人の話を聞かねば……
「オッス!」
ヴィクトリーはそれらしき人に、声をかける。
「ああ、旅の人か……」
バーカウンターで、酒をヤケ飲みしてる老人だった。
「おめぇ、ここの支配人か?」
「ああ……いかにも私は、伝統ある大劇場の支配人。しかし今は、ヤケ飲みするだけの毎日です……衛兵もみんな洗脳され、引き上げてしまう有様。スケジュールはメチャクチャで、怒りの声が殺到しています。」
「そりゃあひでぇや……」
「じゃあ、早くこんな事やめさせないと……!」
ルカとヴィクトリーは、壇上のサキを見る。
そして、キッと睨んだ。
「旅の方、どうかサキちゃんを無理矢理にでも……!あっ……ステージの上で流血は勘弁して下さいね。」
「あ、ああ……」
戦士達はステージに向き直し、サキに接近しようとする……
次の瞬間だった。
黒のヴィクトリーが、サキの目の前に瞬間移動してきた!
「ふぇっ!?」
サキは驚いて、踊りを止めてしまう。
「なんだっ!?」
「いきなり現れたぞっ!?」
「おい、邪魔だ!サキちゃんが見えねーだろ!」
「聞いてんのか!」
観衆は、いきなり現れた黒のヴィクトリーに驚いた後……
すぐにブーイングの嵐を起こした。
「あいつっ!!」
「おちょくりに来たわけじゃなかったんか……!!」
戦士達も驚き、止まってしまう。
「……ちょっと、何なの?おさわりは、お断りだよっ……!」
「……ヴィクトリー!!」
黒のヴィクトリーは、サキを無視してヴィクトリーに向いた。
「!!!」
観客の皆が、ヴィクトリーに注目した。
「な、なんだ……!?」
「顔が同じっ!?」
「双子かっ!?」
ヴィクトリーは唾を飲み、黒のヴィクトリーに向く。
「聞いたぞ、ラダイト村での活躍をな……早すぎる覚醒に、私も驚きを隠しきれん……」
「何の用だ黒い俺!俺達は今からそいつを退治しようとしてたんだ!邪魔すんじゃねぇ!」
「あなた達がそうする必要がありません……このサキュバスは、私に任せてマギステア村の問題を解決しに行ってください……」
「おめぇ、味方なんか、敵なんか!?どっちなんだ!!」
「……」
黒のヴィクトリーは、ニヤリと笑う。
「私はただ、あなた達に強くなってもらいたいだけです……」
「どういう事だ……!」
「あなたのスーパーサイヤ人は、まだ完全に目覚めてはいない……しかし、マギステア村に行けばその怒りは確かなものになる。善は急げ、ですよ……?」
黒のヴィクトリーはそう言って笑うと、サキが黒のヴィクトリーの横についてきた。
「ちょっと、サキの事を無視しないでよ~!それで、このステージを邪魔しないで!」
「邪魔……?邪魔をしているのは、あなたの方ではありませんか。」
「邪魔じゃないよね?みんな、サキを応援してくれてるよねー♪」
サキが観客に言うと、観客は盛り上がった。
「ウォォォォー!!」
「サキちゃーん!」
「ほら、みんな応援して」
次の瞬間、黒のヴィクトリーの蹴りがサキの横腹に叩きつけられた!
「!!!」
見えなかった。
なんてことの無い、ただの無造作な蹴りの筈なのに。
「がはっ……!!?」
サキは横腹を押さえ、うずくまる。
「サキちゃんになんて事するんだ!!」
「許さないぞ!!」
それを見ていた男達が、次々にステージに上がる。
「おい、やめろっ!!おめぇらがかなう相手じゃねぇっ!!」
ヴィクトリーの静止も聞かず、男達は黒のヴィクトリーに向かう。
観客の戦士が、剣で黒のヴィクトリーに斬りかかった。
「ふん……」
黒のヴィクトリーは素手で剣を受け止め、奪う。
「あっ!?」
そのまんま、その男を袈裟斬りした!
「っがはぁあっ!?」
「ひ……!!?」
「うわぁああああっ!!」
ステージが血に塗れ、男達も観客達も逃げ惑う。
フロア内は、たちまちパニックに包まれた……
「ああ、大劇場に血が……」
「おい……!!」
「はっ!」
黒のヴィクトリーは斬った男を、ヴィクトリーの方に蹴り飛ばす。
「うぐ……ぁああ……」
「死にはしないはずです……ちゃんと治療すれば、の話ですが……」
「ぐ……!!」
「やめさせないと!!」
「おおっ!」
「こんな事、見逃す訳にはいかないっ!」
「行くわよ……!!」
ヴィクトリー以外の戦士達は、武器を抜いて黒のヴィクトリーに向かう。
しかし次の瞬間、黒のヴィクトリーは戦士達に気合砲を放った!
「っ!!?」
「ギャラクティカドーナツ……!!」
ヴィクトリー以外の戦士達が壁に叩きつけられ、気の輪っかがみんなを拘束した!
「うっぐ……!!」
「ゆ、油断したか……!!」
「動けない……!!」
「な、何よこれ……!!」
唯一自由に動けるのは、ヴィクトリーのみだが……
「ぐ……ぐぐ……!!」
今、奴に向かっても無駄な事は、わかり切っている。
どうしようもないのだ。
「ぐ……ファンを傷つけるなんて……許さない……!!」
サキは血を吐きながら立ち上がり、黒のヴィクトリーを睨む。
黒のヴィクトリーはサキに向いて、構えた。
「許さないというならば、どうするのです?私を倒しますか?」
「ええ!サキの怒りはあなたを貫く!」
サキは戦闘態勢を取り、黒のヴィクトリーにエネルギー波を放った!
「ふっ!」
黒のヴィクトリーは、エネルギー波を剣で弾き飛ばす。
そして、その剣をサキに向かってぶん投げた!
「っ!?」
サキはそれを避け、剣は後ろの壁にスコンッと突き刺さる。
「はぁあっ!」
黒のヴィクトリーは既にサキに迫り、手刀を繰り出した!
「っ!」
手刀からは、黒いエネルギーの刃があり、サキの頬に掠る。
「はぁああっ!」
黒のヴィクトリーは、容赦なくサキを切り裂いた!
「きゃあああっ!?」
サキは全身を切り裂かれ、流血しながら仰け反る。
その胸ぐらがグッと掴まれ、黒のヴィクトリーに寄せられた。
「ぁ……あ……!!」
「ふっ……」
黒のヴィクトリーは、もう一方の手をサキに向ける。
その手から無数のビームが発射され、サキの全身を爆破した!
「あがぁあああ……!!」
「終わりだ……!!」
黒のヴィクトリーはサキを蹴り飛ばし、壁に叩きつける。
そして手に、とてつもないエネルギーを込めて……
「ブラックパワーボール!!」
どす黒いエネルギーを込めたエネルギーボールが、サキに叩きつけられる。
すると、大劇場の半分が消し飛ぶほどの大爆発が巻き起こった!
「ぐ……!!」
「だ、大劇場が……!!」
「さ、サキちゃん……!!」
衝撃に吹き飛ばされそうになりながらも、ヴィクトリー達は何とか耐える。
しかし……
「……」
サキは黒焦げのまま倒れ込んでおり、息をしていなかった……
「……ふぅ、少し派手にやり過ぎたか……」
「黒のヴィクトリーっ!!!」
しびれを切らしたヴィクトリーは剣を構えて、黒のヴィクトリーに斬りかかった!
しかし黒のヴィクトリーはそれを避けて、ヴィクトリーの背後に回る。
「本来の世界に、こんな場所は無い……よって、貴様がこんな所に往生しても意味が無いのだ……」
「……!!」
「さっさと、サキとやらに仙豆を食わせて先に向かうんだな……」
「なにを……!!」
ヴィクトリーは、怒りのままに廻し蹴りを放つ。
しかし、既に黒のヴィクトリーは消えていた……
「っ!」
それと同時に、ルカ達を拘束していたギャラクティカドーナツも消えた。
「大丈夫ですか!」
「今、回復魔法を!」
ソニア達は、剣で斬られた戦士を治療する。
「おい、食え!」
「ぅ……」
ヴィクトリーは、サキに仙豆を食べさせる。
すると、二人は全回復して立ち上がった。
「はぁ……はぁ……」
「……」
騒ぎが収まったのを確認した観客が、ぞろぞろと集まってくる。
サキは、そっちに向いた。
「ごめんね、ファンのみんな……サキが弱いせいで、みんなを危険に巻き込んじゃった……」
歌声からは想像できないほど、弱々しい声でサキは言う。
その表情に、観客もどんよりとした雰囲気になる。
「サキの夢は、トップアイドルになる事……今のサキがそれを目指すには、弱すぎる……だから……!!」
サキは明るい表情になり、顔を上げてマイクを持った。
「世界中を旅して、強くなろうと思う!!強くなって、またこんな事があったらファンの皆を護れるようになりたい!!だから……」
サキは、ルカの方へ向いた。
「サキの事、仲間にしてくれない?」
「……もちろんだ!!」
ルカの声で、観客は盛り上がった。
「ウォオーッ!!」
「サキちゃーん!!」
「ありがとう!ありがとうみんな!いつか、強いアイドルになって、ここで歌う時まで……またね!!」
サキはファンの皆にそう言い、ルカの隣についた。
「何とか、上手く丸まったみてぇだな……」
「うん、大劇場はほとんど消し飛んじゃったけど……サキが占拠することはなくなったね。」
「宜しくねっ!キラッ☆」
戦士達は、大劇場から出ていく。
サキはその背に、ファン達の歓声を浴びながら……
「……」
ヴィクトリーは、不穏な表情をしながら。
本格的に動き出した、黒のヴィクトリー。
やけにヴィクトリー達の行動を急かしてくるが、果たしてその目的は何なのか。
「よし、行こうか!」
一行が向かうは、マギステア村。
黒のヴィクトリーの言葉もあり、不穏な空気なのは確かだ。
果たして……

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マギステア村:リリィの言い分

グランドールから北上したり西に行ったりまた南下したりして、数分……
ついに、戦士達はマギステア村に着いた。
「やっとマギステア村に着いたわね……」
一番に口を開いたのは、サラだった。
サバサを統べていたという手前、責任感も出るのだろう。
「とりあえず、領主のリリィに……」
そう言いかけた時に、早速第一村人が目の前に歩いてきた。
女の、魔導師のようだ。
「ん、オッス!」
「サバサ本国から、サラ様自らおいでとは……」
ヴィクトリーの挨拶をシカトして、魔導師はサラの前に来る。
「しかし中央の方々は、我々を誤解されているようです。」
「誤解……?」
「我々が旧弊的で、人民を抑圧している……そして、村ぐるみでいかがわしい魔導を研究している……それこそ、我々への偏見にすぎません。中央の人間は、我々を閉鎖的で旧弊的な存在と見ているのでしょう?我々を偏見の目で見ているからこそ、そうした悪意ある解釈が生まれる……違いますか?」
「なんかいきなり喧嘩腰だな……」
「偏見かどうかは、しょせん水掛け論だわ。ゆえに本国は、信仰や思想、因習の領域は問題にしない。こちらは、法に基づいて厳正に対処するのみ。問題点は、市民の弾圧や武力衝突があった点よ。」
サラが、胸を張ってそう言う。
すると、魔導師は不敵な笑みを浮かべた。
「ならば、厳正な調査が必要でしょう。あなた達の目で、この村を見回ってください。そして領民の声を、偏見なく聞いてください。そうすれば、リリィ様は間違っていないと理解される筈です。」
「……それでは、村内を視察するわ。それからリリィに面会するけど、それでいいわね。」
「こちらも全面的に協力致します。どうか、公正なるご判断を……」
魔導師の方はそう言って、壁に寄りかかった。
「やれやれ、面倒そうな話になりそうだな……悪党を叩きのめして解決、という訳にはいかんようだ。」
「今の魔導師の話は、どこまで信用できるか分からないけど……旧弊的領主と反対派の対立っていう、単純な構図じゃないわ。彼女の支持層は、予想以上に厚い……そうなると、領主を排除しただけじゃ問題は解決しないかも。」
サラとアリスはそう言い、腕を組んで考える。
その横で、ソニアが顎を撫でながらも考えていた。
「また新たな後継者が出て、問題の繰り返しになっちゃう……根元からどうにかしなきゃいけないって事ね。」
「こういう問題は、結局は住民の心から生じたもの。特定の個人より、彼女らが共有する根の部分を探らねば。しかし、心の問題ゆえ……解決には時間を要する。中央政府側も、忍耐と根気をもって臨まねばなるまい。」
「……」
アリスの言葉に、サラが向いた。
「やけに為政者寄りの考え方をするのね……帝王学か何か、学んでるの?」
「当然だ、余は魔王だぞ。どこぞの毛玉に心得ぐらい叩き込まれたわ。」
ともかく、まずは色々な人に話を聞いてみよう……
歩きながら、ヴィクトリーとルカが会話する。
「なぁルカ、こういう問題って俺達みてぇなパッと出の冒険者が首を突っ込む問題じゃねぇと思うんだが……」
「サラに協力するって約束したんだから、最後まで協力しないと……それに、僕だってこんな問題放っておけないよ。」
「おや、旅の方ですか……」
会話する二人に、村人が挨拶してきた。
「っ!」
その村人を見て、ヴィクトリーは絶句した。
普通の村娘なのだが、その右腕が無数の触手に成り代わっているのだ。
「何も無い村ですが、ゆっくりしていって下さい。」
「お、おめぇ、その腕……」
「うふふっ……リリィ様にお力を頂いた証です。リリィ様には感謝していますわ……」
なるほど、リリィから力をもらうとこんな感じになるのか……
そう思いながら、ヴィクトリーは村全体に集中する。
「……ヴィクトリー。」
「ああ……多分、この村の大半の人間はあんな感じだ……おっそろしい村だぜ……」
「私達が恐ろしいものですか……」
会話する二人に話しかけてきたのは、魔導師だった。
「少し前まで、この村は魔女が弾圧されてきたわ。事実上、女への迫害ね……男達は因習やら何やらで女への暴力や凌辱を正当化し……長年に渡り、虐待を繰り返してきた……」
「確かに、この村の男はおっかねぇみてぇだな……それを救ってくれたんが、リリィって奴か?」
「ええ、その通り……リリィ様は皆に触魔導の力を与え、現状を打破する力を授けて下さったのよ。」
「……」
話を聞いていたサラは、複雑な表情をしていた。
この触魔導のお陰で、助かったという人間がいるのも事実。
しかし、これは危険な魔術だ。
ポンポンと、外に出す訳にもいかないだろう。
「女の人が蔑まれ、虐待されてた村か……」
「ああ……俺はこんな問題、好きじゃねぇ……だけど、動かなきゃ解決しねぇからな……」
ルカ達は、調査を続ける。
この村にも、一応男は残ってる。
それは、虐げられた彼女らにも同情的な男だけだとか。
他の男がどうなったかは、言うまでもない。
彼らもまた、この村が抱える問題に苦難しているようだった……
「一番いいのが、リリィ本人に突っ込んでみる事だな。」
「うん……この村で何があったのかは、だいたい分かったよ。」
ルカ達は、リリィの屋敷を見上げながら言葉を交わした。
そして、ルカは扉を開ける。
「ごめんくださーい!」
「誰かいねぇんかー!?」
二人の呼びかけに応じ、奥から女性が来た。
綺麗で美しい、妙齢のお姉さんに見えた。
「待っていたわ……」
「おめぇがリリィだな。」
ヴィクトリーの言葉に、リリィは頷く。
「私に話を聞きたいのでしょう?それじゃあ、こちらへどうぞ……」
リリィに連れられ、ルカ達は応接室に入る。
そこでサラが出てきて、リリィに向いた。
「悪いけれど、すぐ本題に入るわ。まずは、この村の男性達を私的に処刑した疑いについて……」
「村の者達から、話は聞いたでしょう?この村の男達は、女性に苛烈な暴力と虐待を働いてきたの。それを因習で正当化し、弾圧を続け……この村の女の大半は、20歳になる前に死ぬのよ。そんな悲惨な現状を打破するには、力しか無いわ……私達は、自分の身を守っただけよ。」
リリィの話を聞いて、ヴィクトリーはサラに向く。
「なぁサラ。この場合はリリィの言うことも一理あるんじゃねぇか?言っちまえばこれは、正当化防衛だぜ。」
「どんな事情があろうとも、私刑は私刑よ。法治国家において、それは許されないわ。」
ヴィクトリーの方も向かずに、サラは厳正な態度でリリィに向く。
リリィはというと、無表情を崩さずにサラとヴィクトリーを見ていた。
「法治国家を気取る連中が、今まで何をしてきたの?この村では、男女の平均寿命に30歳以上もの差があったのよ。」
「男女の平均寿命が30歳以上……?いったい何をしたら、そんなに……」
リリィの言葉に、ソニアも絶句する。
「中央の人間は、それを確実に把握していたわよね?把握していたのに、何も……ずっと何の手も打たなかったわ。」
「おいサラ、どういう事だ……何で苦しんでる奴が居るのに、何も手を打たなかったんだ!」
ヴィクトリーはテーブルを乗り越えてリリィの方に来て、サラに向いた。
「地方行政権は、サバサ憲法の第5条で保障されているから……中央政府が強制的に介入すれば、それは憲法違反に……」
「人が死んでんだぞ!!同じサバサに住む人間の、ましてや中央国の王として、情はねぇのか!!」
「貴方が怒る必要は無いわ……優しいのね。」
リリィはヴィクトリーを抑え、再びサラの方へ向いた。
「法律的には地方自治権の侵害……虐待の多くも、民事への国権不介入で片付けられるわ……多くの因習は、思想の自由で保護されているし……何より、訴える者が居なければ事件にもならない……この村の女達に、正当な司法手続きなんて出来たと思う!?家に閉じ込められ、外に出られず、暴力を受け続けた女達が!」
リリィは、初めて感情を顕にした。
横に居るヴィクトリーは、同情を隠しきれないようだ。
「リリィ……」
「私だって、領主の娘だからチヤホヤされてたとでも思うの!逆よ!生贄同然だったわ、ずっとね……!結局、方は暴虐を行ってる者達を守ったのよ!私達に必要なのは、現状を打ち破る事のできる力だった!この屋敷に残された触魔導の書物を、独学で学び……そして力を手にして、ようやく村の女達は救われたのよ。」
「……」
サラは複雑な表情をして、黙り込む。
3秒ほどして、口を開けた。
「あなた達の境遇は、同情に余りあるわ。そして中央政府の非は非常に大きい……ここで私情を述べるなら、あなた達の行動は黙認したい……でも私は、法で動かなければならない立場なの。」
「法治国家の精神に則って考えるなら……今のあなたに、司法権はあるのかしら?」
「そうか、サラは女王じゃねぇ……今は民間人扱いか。」
「ええ、その通りね……あくまで司法に通報する一市民、という立場でしかないわ。」
「それに、この村で男達が虐殺されたという事だけど……私は力を与えただけで、何も指示はしてないわ。彼女達は、自分達の意志で現状を打破したのよ。己の命を守るため、仕方なく……ね。」
リリィは立ち上がり、ヴィクトリーの頭に手を置いた。
その頭を、優しく撫でる。
「この子の言う通り、これは正当防衛よ……個別的な正当防衛の集積であり、集団的虐殺にはあたらない。」
「……」
ここに来て、ヴィクトリーは複雑な表情を見せた。
リリィに、疑問を抱き始めたのだ。
「それは無茶よ……あくまで首謀者としての責任は問われるわ。」
「それで……それを法廷で証明できるのかしら?法治国家である以上、立証しなければならないわよね。」
「……」
「ともかく……あなたに何の法的権限もない以上、出頭には応じられない。」
ここで議論は落ち着いて、リリィは息を吐いた。
「それでも客人として遇したのは、理解して欲しかったからよ。私達がどんな境遇にあったか……そして、何をしないと生きられなかったか……それでも、私を訴えるというならご自由に。ただ、独立自治権や民事不介入の壁は厚いわよ……あなたの父親が、結局私達を救えなかったようにね。法律は、今度は私達の味方になるわ。それでも私を捕らえるなら、正当な訴状を持って出直すのね。今は何の権限もない、元女王の一般市民さん。」
煽りを込めた表情で、リリィはサラに言った。
サラは冷静に頷き、立ち上がった。
「……そうさせてもらうわ。しばらく後の事になりそうだけど。この村で何が行われてきたか、全て明らかにするべき……その上であらゆる情状酌量を鑑み、正当な判決を期待するわ。」
「全く……」
ようやく、アリスが口を開いた。
腕を組んで、偉そうにリリィを見る。
「あんまりサラをいじめてやるな。事件当時はまだ子供、この一件に責任を持てる立場じゃない。そして、用件は元女王をやり込めるだけとは思えんな。旅人としての我々に、何か話があるのではないのか?」
「ええ……あなた達に取引を持ちかけたいの。」
「取引……?」
ヴィクトリーに頷き、リリィは続けた。
「知っているとは思うけど、私達に反抗する者達がいるのよ。ルシアという魔導師率いる、暴力的な一派。彼女達は、触魔導の力を世界に広げたくないそうよ。ルシアも元々は私の同志で、力を与えられた者だけれど……この力を危険なものと見なし、秘匿しようとしているのよ。つい先日には、武力攻撃に踏み切ってきたわ。そこであなた達に、ルシアを倒してきて欲しいのよ。」
「反乱軍のリーダーを倒すのが、取引だって……?」
「なんでそんな事、取り引こうとしてんだ?」
ルカとヴィクトリーは、一緒になってサラに疑問を向ける。
「もちろん取引である以上、見返りはあるわ。この私が、あなた達の旅に同行してあげる。」
「それ、私達の仲間になるって事……?」
「ええ、その通りよ……世界には、まだまだ虐げられた者達がいるわ。力を持たないがゆえ、人間としての尊厳どころか、生命が危険に晒されている者達が……」
リリィはいきなりヴィクトリーを押して、壁ドンした。
「いっ!?」
「あなたなら聞こえるわよね……そうした者達の悲鳴を……私にも聞こえるのよ、助けを……そして力を求める声が。」
そう言いながら手首を掴んで、とてつもない力でヴィクトリーを押さえた。
そのまんま光の無い目で、ルカ達の方を見る。
「私は、そういう者達の嘆きに応えてあげたいの。現状を打破するための、触魔導という力を授ける事でね……」
「虐げられている人を救うために旅を……?それ、本当に……?」
ソニアは引き気味に、リリィに聞いてみる。
するとリリィは、ヴィクトリーの体に思いっきり抱きついた!
「ぐぁあ……!!?」
「だって、ほら……今も聞こえるでしょう、子供の泣き声が……こんなに大きな声で泣いているのに、あなたには聞こえないの?ほら、そこからも……あそこからも……!泣いてる、みんな泣いてるでしょう……!?」
「……」
苦しい。
人間の女の人とは思えない力で、体が抱きしめられている。
だけど、リリィも震えていた。
まるで、懇願するように。
まるで、助けを求めているように……
「この泣き声が聞こえなくなるまで……それまで、私は弱者を救済し続けなければならないのよ!」
「……」
「この村に居る者は、全て私が救ったわ。でも、外の世界からの泣き声は止まないのよ。それを全て止めるために、私は近く村を出るつもりでいたの。そこに、今回の反乱騒ぎなのよ……ルシアさえ居なくなれば、私も旅に出られるわ。虐げられた者達を救い、力を与える旅にね。あなた達も、これまで弱者を救ってきたのでしょう?ならば、あなた達と私は同じなのよ……だから……」
リリィはヴィクトリーを離し、ルカ達に向いた。
「ルシアを倒してきて。そうすれば私も、あなた達と共に行くわ。別にルシアを殺さなくてもいい……黙らせるだけでいいの。この村に混乱をもたらさないようになれば、それでいいのよ。」
「……」
アリスが黙ってる間に、ヴィクトリーはルカの横につく。
「あの様子だと、ウソは言ってねぇみてぇだぞ。」
「どうする?ルカ。」
「元女王としての判断は、さっきも言った通りよ。この取引は……ルカの決断に任せるわ。」
全ての決断は、このパーティのリーダーであるルカに託された。
重大な選択に、ルカは考え込んでしまう。
「……」
ルカは、ふとヴィクトリーの方を見た。
ヴィクトリーも、こくんと頷く。
「悪いけれど、もう少し考えさせてください……僕たちには、難しすぎる……」
ルカはそう言って、ルシアに頭を下げた。
あの話を聞かされただけでは、何も出来ない。
もっと詳しい話をを、何処かで聞かないと……
「言葉での返答は不要よ……ルシア撃退の報を、返事の代わりに受け取るわ。それじゃあ、私はここで待っているわよ。ルシアを倒してくれたら、晴れて私も仲間になるわ。」
「……では。」
ルカ達はリリィに頭を下げ、屋敷から出ていく。
「……」
ヴィクトリーはリリィの方を見ながら、遅れてルカに続いた……

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マギステア村:ルシアの言い分

マギステア村で、魔導師と反乱軍の衝突が発生。
問題の解決に動き出したルカ達だが、この村の過去を知った事で問題は複雑になってしまう。
リリィの言い分を聞いた一行は、リリィの屋敷の前でため息を吐くのだった……
「リリィか、単なる暴君とは違うようだな……しかしこの場合、ただの暴君であった方が話は単純だった。」
「ああ……」
あいつの悲しみは、体を通して伝わってきた。
抱擁とは言い難い、しがみつくような抱きつき。
「虐げられた者達の声……かぁ。」
「その声は、リリィ自身の声かも知れんな。」
「リリィが、本当に救うべきなのは……世界中の弱者なんかじゃなく、自分自身かもしれないわね。」
「……」
そんな話をしていると、魔導の気が近づいてきた……
「……何もんだ?」
ルカとヴィクトリーは、すぐ横を見る。
そこに、魔導師が現れた。
「どうも、突然に失礼致します。私は、ルシア様の使いの者です。」
「ルシア側の……?」
「何の用だ。」
「どうか、この村にある私達の拠点にお越しください。宿屋の東にある丘の階段を上がり、東の建物です。失礼……」
それだけ言って、消えてしまった……
「ルシアって、反乱軍の……」
「反乱軍の側からも、接触してきたか……向こうも懐柔策で来るというのは、うすうす読めていた事だ。」
ルカとアリスは顔を見合わせ、ヴィクトリーは東の方を見ていた。
「とりあえず、接近されたんだ。向こうの話も聞いてみようぜ。そうしねぇと、この問題の全貌が分かんねぇ。」
「ああ……行ってみよう!」

東の建物……
そこでは魔導師や魔物が、せっせと本を読み漁っている所だった。
「ここは……」
「さっきまでこんな気は感じなかったぜ……何が……」
驚くヴィクトリーの横から、魔導師が話しかけてきた。
「流石のリリィも、目と鼻の先に戦線基地があるとは気付いていないわ。もちろん、隠遁の術や魔導遮断は幾重にもなされているのよ。」
「なるほど、通りで……」
ヴィクトリーの気の察知が及ばない程の、隠蔽術。
これなら、リリィの目も騙せるであろう……
「この地下に、ルシア様が来ているわ。どうか、頼みを聞いてくれない……?」
「……」
そう言えば、地下から一際大きい気を感じる。
おそらく、そのルシアという奴であろう。
ルカとヴィクトリーは魔導師に頷いて、地下への階段を降りた。
そこでも、魔導師達がせっせと調べ物をしている。
そして、この部屋の奥……
「ん、来たわね。」
いかにもな感じの魔導師が、座っていた。
「オッス!おめぇがルシアか?」
「初めまして……私が、レジスタンスのリーダーであるルシアです。」
気が入っていないにも関わらず、溢れ出ている魔力は相当のものだった。
その魔力から、高い戦闘力と実力が伺える。
「おめぇも、リリィに改造されたクチか?」
「ええ……私は、リリィの研究助手を務めたのですよ。錬金術分野の技能ならば、リリィよりも長じておりました。しかし今は、このように袂を分かち……レジスタンスのリーダーとしてリリィ打倒を掲げています。」
ここで、サラが前に出てきて、ルカと並んだ。
「するとあなたは、かつての仲間と敵対していると……」
「なぜ、同志だったリリィの打倒を?触魔導を広げるのに反対って話だけど……」
「リリィが広げようとしている触魔導の技術は、世を乱します。」
サラとルカの問に、リリィはスパッとそう答えた。
「これは、秘術のままにしておくべきものです。」
ルシアはそう言って、腕に力を込める。
そして、その腕を触手に変異させて見せた。
「っ!」
「すげぇ気の入りようだ……」
「確かに、これで虐げられた弱者が力を得るでしょう。そして、己の抑圧者を打ち破る……暴力と憎悪をもって。」
触手になった腕を眺めながら、ルシアは続ける。
「それがこの村で起きた事であり、そして悲劇です。多大な犠牲をもたらした事、皆さんもご存じでしょう。」
「……」
「……」
ルカとヴィクトリーは黙って、ルシアの腕を見つめていた。
この力ならば、弱者が強者に成り代わる事だって容易いだろう……
危険な力だ。
「私とて、この村の被害者でした。命を落とした男達に、同情など微塵もありません……ですが、触魔導の技術が広まったなら……この村の顛末が、あちこちで再生産される事になるでしょう。」
「確かに、そうだけどよ……自業自得とも言えなくねぇか?」
そう言うヴィクトリーの目の前に、触手が突きつけられた。
「いっ!?」
「この村で起きたような……いや、もっと恐ろしい形で……強者が弱者を憎む気持ちが、最悪な形で噴出すれば……」
「……復讐だけじゃ、すまねぇってか。」
ヴィクトリーがそう言うと、ルシアは腕を元に戻した。
元に戻った手を、グーパーさせる。
「……リリィは誤っているのです。弱者と強者の立場は、容易く入れ替わってしまうという事を。この力を備えた者が、今度は強者になるだけです。そうした者達が、弱者を迫害する日は必ず来るでしょう。」
「虐殺のミームは繰り返されるって奴か……」
「……まぁ、大筋で間違ってはおるまい。」
ヴィクトリーの言葉に頷いたのは、アリスだった。
「抑圧者と非抑圧者の関係など、得てして流動的なものだ。」
「私達の認識も、誤っていたようね。」
アリスに続いて、サラまで頷いていた。
「反乱軍は、村の支配権を巡って争っていたわけじゃない……もっと根底、触魔導を認めるか否か……その部分にこそ、争いの種はあったのね。」
ここで、ルシアは咳をついた。
そして、あらためてルカ達に向いた。
「さて、ここで私から申し出があります。見当はついているでしょうが、リリィを倒して欲しいのです。命を奪う事までは望みません、力の封印で十分です。そうする事で、我々レジスタンスの使命も終わります。そうなれば、リーダーの座もお役御免……以後は、あなた達の同志として力を貸しましょう。」
「おめぇもか……何か、目的はあんのか?」
「ええ……いずれ、世界を回って見聞を広めたいと思っておりました。私にとっても良い機会と捉えています。」
「……」
ルカは、少し黙ってからルシアの方を見る。
「仲間と話し合いたい……もう少し、考えさせてください。」
「そうですか……熟考のほどをお願いします。きっとあなた達は、リリィの危険性を分かってくれるでしょう。リリィ撃退の報、お待ちしております。その時こそ、あなた達の同志となりましょう。」
ルシアの言葉に会釈して、ルカ達は外へ出た……

リリィの言葉に賛同し、危険を伴う蝕魔導を使って世界の弱者を救うのか。
ルシアに味方して、触魔導の力を封印するか。
悩ましい選択となった。
「ふーむ、難しい問題だな……」
「うん……」
「……」
ヴィクトリーは、そこら辺のいい感じの段差に腰をつけて、目を瞑っていた。
「なぁヴィクトリー……お前はやけにリリィの肩を持ってたけどリリィに味方するつもりなのか?」
「……」
ルカの疑問に、ヴィクトリーは難しい顔をした。
「……確かに、リリィは可哀想だと思ってるぜ。だって、こんな村でひとりぼっちで虐められ続けてたんだからよ……自分の親族ぶっ殺しちまうのも、無理はねぇさ。けどよ……あんな魔法、あるだけで同じ事の繰り返しだ……」
「……」
「ここの男達がやってる事は正しいとは思えねぇ……奴らは、殺されて当然の事をしたんだからな……だけど、殺された奴にもそれぞれの人生がある……今のこの村の人間は、その事実から目を逸らして、虐殺するだけの魔物になりつつあんだ……」
そう言うヴィクトリーの手は汗が垂れ、震えていた。
「力ってのは、どんどんでかくなるんだ。でかくなった力は、罪のねぇ奴を巻き込んじまうかも知れねぇ……そうしたら、またどこかで復讐心を持った奴が生まれて……同じ事が、またどっかで繰り返されるかも知れねぇんだ。そんな事、ぜってぇさせる訳にはいかねぇ……!!けどよ……けどよ……!!」
「……ヴィクトリー?」
「どうしても、あのラダイト村であった事がチラつくんだ……!!女子供が男達に抑圧されて、その男達がリリス姉妹にぶっ殺されて……だけど、ぶっ殺された奴の中には助けたかった奴が居たんだ……俺がもっと強けりゃ、助けられた奴が……!!」
ヴィクトリーは、頭を抱えた。
腕には力が入っており、筋肉や血管が浮き出ている。
「……とにかく、俺には決められねぇ……リリィの弱い奴を救いたいって気持ちも分かるし、ルシアの言う触魔導の危険だって分かる……ルカ、決めてくれねぇか?」
「……」
皆の視線が、ルカに集まる。
ルカは、ヴィクトリーの肩を叩く。
「……僕は、リリィを倒しに行きたい。」
「!」
「やっぱり、触魔導がもたらす危険性は計り知れない……それに、ヴィクトリー。」
ルカは、ヴィクトリーの手を握って顔を見つめた。
「この蝕魔導が生む悲劇だけは、絶対に繰り返させる訳にはいかない。今なら、まだ間に合うんだ……」
「……」
ルカの手が、ぎゅっとヴィクトリーを包む。
「触魔導の力じゃ、弱者は救えない……弱者を救えるのは、本当の強さをもった力なんだ!」
「……!」
ルカは、ソニア達を一望する。
「今までの冒険で培ってきたこの力……僕達の強さは、偽りの強さなんかじゃないはずだ!」
託された想い、それぞれの信念……
それらを胸に込めて、僕達は冒険を続けていた。
ヴィクトリーを含めて、皆その筈だ。
「だから……僕達が、リリィに代わって弱者を……そして、リリィ自身を救おうと思う!」
ルカは、グッと拳を握る。
そして、真っ直ぐな目で皆を見た。
「協力してくれるか、みんな!?」
ルカがそう言うと……
「当たり前じゃない!私だって、頑張るんだから!」
「当然だな……」
「ええ……私も元女王だけど、今はルカの味方よ!」
ソニア、アリス、サラは快く応えてくれる。
ヴィクトリーは、少し遅れて立ち上がった。
「……分かった!俺も協力する!そして、リリィを救ってみせる!!」
拳を握って、ルカにそう言い放った。
そしてルカに近づいて、その拳をルカの前に突き出す。
「……頼むぜ、相棒。」
「ああ……!!」
二人の拳が、ガチンとぶつかる。
そして笑顔を交わして、一緒の方向を向いた。
「……」
「……」
二人の目に映るのは、リリィの屋敷。
今から、リリィと会って話をしなければならない。
戦闘になるのは、確実であろう。
「……準備はいいか?」
「いつでもオッケーだ……行こうぜ!」
戦士達は、リリィの屋敷へと向かう。
迷いに迷った末に、ルシアに味方する結果となった。
触魔導の悲劇を、ここで止める為に。
そして、リリィを救う為に……
「……よし、行くか!!」

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戦慄の触魔導

リリィとルシアの話を聞いて考え抜いた末、リリィを止めることにした戦士達
早速、リリィの屋敷に乗り込んだ……

「あら、まだルシアを倒していないようね。それとも……何か心変わりでもあったのかしら?」
リリィは、穏やかな表情で戦士達を見る。
ルカとヴィクトリーは顔を見合わせ、頷いた。
「……悪いな、リリィ。おめぇの気持ちは、よーく分かってる……」
「……?」
ヴィクトリーの言葉に、疑問の表情を浮かべるリリィ。
その横でルカが、リリィを睨んだ。
「僕は、あなたを止めることにした……触魔導の力で、悲しみを増やす訳にはいかない……」
ルカの言葉で、ようやくリリィは確信した。
そして、無表情になって冷たい眼光を向けた……
「あくまで敵対するというのね。ならば、ここから出ていきなさい……」
次の瞬間……
「っ!!?」
「なっ!?」
リリィの魔力で、戦士達は外へと放り出された!
「……あらららら……」
「ま、まさかそんな返しをするとは……」
戦士達も予想外な様子で、ぽかーんとしてしまう。
そして、屋敷の前で円を作って向かい合った。
「ヴィクトリー、先にリリィの所へ瞬間移動してくれないか?」
アリスは指を立て、ヴィクトリーにそう提案する。
「?何でだ?」
「貴様はリリィの肩を持っただろう?リリィも、貴様の話ならば耳を傾けるかも知れない……」
「抱きつかれたり、頭撫でられたりしてたからね~……何となく、気に入られてる所はあるんじゃない?」
ソニアも、何故かノリノリな感じだ。
「我々がゾロゾロ連れ歩くから、あんな対応をしてしまったのだろう。肩を持ってくれたヴィクトリーが一人で行けば、比較的穏便に済ましてくれるかもしれないぞ。」
「な、何でだよ……」
「ヤバくなったら、僕達も駆けつける。頼まれてくれるかい?」
「真面目か。」
ヴィクトリーは、ルカをしばく。
「余が何の策も無しに特攻させるか……少しでも寄り添った人間同士が二人きりならば、通じるものはある筈だ……」
「ヴィクトリー、頼めるか?」
「私からも、お願い。ヴィクトリー。」
ルカとサラからも頼まれたら、もう後が無い。
「しょうがねぇな……」
ヴィクトリーは額に指を当て、気を探る。
「……」
「これ、ヴィクトリー一人でラダイト村に行った時のアレね……その、瞬間移動?」
サラはそう言って、ルカに向く。
「ああ……場所じゃなくて、知り合いの気を捉えてそこに移動するって技だね。」
ルカはそう言いながら、ヴィクトリーを見ていた。
その横に居たメンバーも、反応する。
「今度、私も教えて貰おうかな。わざわざハーピーの羽根を使う必要が無くなるもの。」
ソニアはそう言って、指を額に当ててる。
「戦闘にも便利だが、話を聞いたらマスターするのに何年か掛かるらしいぞ……」
そんなソニアを見て、アリスはそう漏らした。
「……静かにしてくれよ~。」
ヴィクトリーは、ジト目でルカ達を見る。
会話で気が散って、集中しづらいのだ。
「ご、ごめん……」
「……」
ルカ達は黙り、ヴィクトリーも集中する……
……感じる。
微かに、魔導の気を。
呪詛のようなリリィの叫びを。
虐げられた弱者の嘆きを。
……
「とらえたっ!!」
ヴィクトリーは、瞬間移動で消えた……

リリィの屋敷の奥……
「……」
「よう。」
机で研究してるリリィの背後に、ヴィクトリーが現れた。
「……接近が感じられなかった……瞬間移動っていうやつ?」
「まぁな……」
「それで、あなたも私を倒しに来たの……?ルシア辺りにそそのかされたのかしら?」
「……復讐は復讐しか生まねぇ。もうやめとけよ。」
「……」
ヴィクトリーの言葉を聞いて、リリィはニヤリと笑う。
「ルシアの主張も、正しいように思えるわよね。触魔導の術を広めたら、かえって世界が混乱すると……でも、触魔導の術を秘めたものにしておくという事は…-それを、一部の者のみが管理するということになるのよねぇ。それこそが、一番危険な状態だとは思わない?」
「ああ……だけどよ……そんな力を、本当の力としてコントロールして使えねぇんなら、封印するべきだ。」
「本当の力……?」
「おめぇは今、憎悪とか悪意とかに晒され続けておかしくなってんだ……今のおめぇがその触魔導の力を使っても、誰も救えねぇ。」
「……っ!!」
リリィは片腕を触手にして、辺りを薙ぎ払った!
「おっと!」
ヴィクトリーは身を反らして避け、触手は周りのものを破壊する。
「……あなたなら、分かってくれると思っていた……助けを求める声が、聞こえていると思っていた!聞こえないのね……力を必要とする、弱者の声が!!」
「……すまねぇ……けど、俺はルシアの味方をする。」
ヴィクトリーは構えて、リリィに向いた。
「俺だって、目の前でよえぇ奴がぶっ殺されるのを見た……俺に力があれば救えた筈の命を、救えなかったんだ。」
拳を握り、目を鋭くする。
気を研ぎ澄ませて、リリィを見据えた。
「だけど、本当によえぇ奴を救いたかったら……そいつ自身が自分の力で強くならなきゃいけねぇんだ。」
「……」
「きっかけを与えるだけで良かったんだ……そうすれば、悲劇は生まれねぇ筈だ……だけど、その力は違う。」
「何がどう違うのか……教えて貰いますか……!!」
リリィは気を解放し、両腕を触手に変異する。
そして、ヴィクトリーに向かって伸ばした!
「界王拳……!!」
ヴィクトリーは10倍界王拳を使い、触手を避けながら接近する。
「ふっ!!」
そして、蹴りを放った!
その蹴りが、触手によってガードされる。
「聞け!リリィ!!助けを求める声ってのは、おめぇ自身の声なんだ!!」
「私の……!!?」
「おめぇは憎しみに晒され続けた結果、心が壊れかけてる!!それを『誰かを救う使命感』で無理矢理補強してるだけだ!!」
「ぐ……!!」
リリィは触手を揺らめかせ、ヴィクトリーに連打する。
しかしヴィクトリーは触手の連打に対応するように拳を放って、触手の猛攻を弾いた。
「その力は、よえぇ奴を救うのに向いてなかったんだ……!!大きすぎる力で胸の中の憎しみを爆発させちまって、虐殺の罪悪感に苛まれてるんだ……!!このまんまだと、マジで普通じゃ居られなくなるぞ!!」
「違うわ……!!私は、虐げられた弱を救う為に……弱き者の声を消すために……!!」
リリィの言葉が進む事に、気が跳ね上がる。
「……!!」
それと同時に、ヴィクトリーも押されていた。
「だって、そうしないと消えないでしょう……!!この泣き声が……泣き声が……泣き声が……!!」
そう言いながらヴィクトリーに向けた顔……
目から、涙が出ていた。
「はぁあっ!!」
リリィの触手がヴィクトリーを押し、退かせる。
「っあ……!!?」
「ふんっ!!」
束ねた触手が、ヴィクトリーの腹を打突した!
とてつもない威力の触手が、ヴィクトリーの腹筋を打ち抜いていた。
「おうぅ……!!?」
ヴィクトリーはゴロゴロ転がりながらぶっ飛び、壁も突き破る。
その中で体勢を整え、両手にエネルギーを溜める。
「かめはめ波ーっ!!」
そして、かめはめ波を放った!
「しゃあっ!!」
リリィは触手でかめはめ波を弾き飛ばし、ヴィクトリーに触手を向ける。
「こっちだ!!」
「!!」
既にヴィクトリーは高速移動でリリィの背後に回っており、そのこめかみに回し蹴りした!
「きゃああっ!」
「だだだだだだだっ!!」
ぶっ飛ぶリリィに追いついて、拳を連打する。
「ぐっ!!」
リリィは、触手でヴィクトリーの腕を抑える。
「こんな程度……!!」
数秒もあれば、充分だ……
そう思った時には、既にリリィの蹴りがヴィクトリーの顔面に入っていた。
「っぐぁあっ!?」
「痛みに悶えなさい……!!」
怯んだヴィクトリーに、触手が鞭のように連打された!
「うぉおおおおっ!!?」
「ふふふ……!!」
苛烈すぎる触手の猛攻に、ヴィクトリーは防戦一方になる。
「ぐ……!!ぐぐ……!!」
「どう、これが蹂躙される痛みよ……!!」
「…い……こ……ね…な……」
「……?」
次の瞬間、かめはめ波がリリィに飛んできて、直撃した!
「!!」
直撃したかめはめ波は大爆発して、リリィに大ダメージを与える。
「~~~……!!」
「たいしたことねぇな……!!」
リリィは、触手の何本かがかめはめ波で消し飛んでいた。
これで、少しは優位に立てるか……
「……ふんっ!」
消し飛んだ触手が、再生した。
「……そんなこったろうと思った。」
「ふふふ……」
戦いが止まり、両者は構えながら睨み合う。
「……」
「……」
お互いの距離は、そこそこ離れている。
先に仕掛けた方が確実に攻撃を当てないと、不利になるのは確実だろう。
「っふっふっふ……」
リリィは、触手を上手いことして、指パッチンのように鳴らす。
すると、ヴィクトリーの目の前に村娘が二人現れた!
「にっ!?」
「リリィ様の邪魔をする男は、始末する……」
「あの男達のように、死になさい……」
村娘達は気を腕に集中させ、触手に変異させる。
そして、ヴィクトリーに襲いかかった!
「ちっ……!!邪魔だっ!!」
ヴィクトリーは突進して、すれ違い際に村娘の一人に腹への膝蹴り、もう一人に後頭部へ肘打ちして、一蹴する。
そして、リリィの前に立った。
「……」
リリィは、不敵に笑いながらヴィクトリーを見ていた。
「何がおかしい……?」
「やっぱり、あなたも他の男と変わらなかったのね……それっぽい事は言ってるけど、結局は邪魔になった者は皆潰す……そうでしょう?」
「……」
ヴィクトリーの背後で、村娘二人が立ち上がる。
「……まだやる気か。」
そっちに振り返り、目を鋭くした。
「……ふふ……」
「うふふ……」
村娘達は、上半身の服を破き捨てた!
「……!!」
服を破き捨てる行為……
単なる、気合い溜めのようなものかと思っていた。
しかし、ヴィクトリーの目に映っていたのは……
「お、おめぇら……!!」
「……」
「……」
村娘達の、虐待の痕だった。
夥しいほどの傷が、その身に刻まれているのだ。
こいつらは、戦士でも魔物でもない。
慎ましく生きてきた人間の筈だ……
「あなたは今、弱き者が救われようとする所を邪魔しているのよ……見なさい、あの傷……あの顔、あの目を……!!」
「っ……っ……!!」
村娘は、光の無い目をしていた。
その目には憎悪を燃やし、歯ぎしりをしながらヴィクトリーを捉える。
「トドメよ……」
リリィはヴィクトリーの背中に触手を付け、魔力を流し込んだ!
「うわぁあああああああっ!!?」
「うふふ……」
触手を離し、ヴィクトリーを見る。
ヴィクトリーは頭を抱えて、うずくまった。
「っやめろぉおおっ!!やめるんだぁああっ!!うわぁああああっ!!」
流れ込んでくる。
この村で起きた、戦慄の記憶が。
村娘達の憎悪……リリィの憎悪も。
男達の不敵な笑みも、女達の泣き声も。
虐待された記憶、死よりも苦しい痛みが。
ヴィクトリーの中を駆け巡り、頭の中を切り裂いていた。
「もっと悶えなさい……」
村娘の一人が、ヴィクトリーに攻撃しにかかる。
「くそぉおっ!!」
ヴィクトリーは、カウンターしようと拳を握る。
しかしその村娘と、記憶の中の女達の泣き声が被った。
「うっ!?」
拳を止めてしまい、村娘の攻撃をモロにくらった!
「っぐはぁあっ!」
「思い知りなさい……!!」
リリィも触手を放ち、ヴィクトリーの体を打ち抜く。
「ぐっはぁあっ!」
ヴィクトリーは倒れ、血を吐く。
「私達の痛みを……!!」
村娘の一人が、ヴィクトリーの背中に膝を落とした!
「おぅううっ!?」
「無様ね……!!」
「今度は、私達の番よ……」
「あははははっ!あはははははっ!」
リリィ達は、一方的にヴィクトリーを痛めつける。
触手で殴り、足で蹴り、踏み潰し、捻り、叩きつけ、打ち、本で殴り、魔法で焼き……
「うわぁああああああっ!!!ぎゃああああああーーーっ!!!」
広いリリィの屋敷に、ヴィクトリーの悲鳴が響いた……

「くそっ!!」
ルカ達は、走ってリリィの部屋へ向かっていた。
「どうしたのだ、ルカ!?いきなり先を急いで!」
「ヴィクトリーの気が乱れ減ってる!このままだと、あいつは死ぬぞ!!」
「そんな……!!」
話し合いながら進むルカ達の前に、魔物の群れが立ちはだかる。
「くっ!またか……!!」
「吸わせて頂戴……もっと、もっと……」
腕を触手に変異させた、村娘。
「……」
拷問器具が魔物化した、アイアンメイデン。
「……」
天井から吊り下がった触手モンスター、ザックボア。
その全員が、目が赤く光ってドス黒いオーラが噴出した!
「こんな時に、凶悪化か……!!」
「ヴィクトリー……まだ時間が掛かりそうだ……!!」
ルカ達は武器を抜いて、凶悪化した魔物の群れとぶつかり合った……

波乱する、リリィとのバトル。
この戦いの先に、ルカ達は何を見るのか。
そして、ヴィクトリーの運命や如何に……!?

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超サイヤ人、再臨!!

魔女狩りの村、マギステア。
そこで起こった戦いを止めるべく、ヴィクトリーは単身でリリィの所へ行く。
しかし、戦慄の記憶を流し込まれたヴィクトリーは、リリィ達に攻撃出来ずに倒れてしまうのだった……
「はぁっ……はぁっ……」
「……」
リリィは、触手をヴィクトリーに突きつける。
「最後に言い残す事は無いかしら?」
「ぐっ……!」
ヴィクトリーは拳を握り、床を殴る。
「くそぉおお……!!俺は、また救えねぇのか……!!」
「……また?」
ヴィクトリーには、救いたい命が二つあった。
一つはまっすぐな瞳をした、ラダイト村の少年。
しかし、自分が無力ゆえに救う事は出来なかった。
一つは目の前に居る、リリィ。
この戦慄の記憶と虐殺の罪悪感を蝕魔導で押さえつけ、今にも心が破綻しそうな女の人。
今度も、自分が弱い故に手を伸ばせない……
「な、情けねぇ……!!俺が、弱いばっかりに……!!」
「……」
震えるヴィクトリーを、リリィはただ見ているだけだった。
自分の情けなさと弱さに、ヴィクトリーは怒りを湧かせている。
「これが……限界なのかよ……!!こんなんじゃ……誰も、救えやしねぇ……!!」
強くなりたい。
本当の力を、リリィに見せるためにも。
リリィに救いの手を伸ばすためにも。
そして、こんな悲劇をもう二度と繰り返させないために……
「ぐっ……ぐぐぐぐ……!!!」
「……!!」
ヴィクトリーの髪が揺らぎ、金色に光り始める。
ただならぬ気を感じて、リリィは構えた。
「俺が……俺が終わらせてやる……!!」
バチバチと気がスパークして、どんどん大きくなっていく。
ゆっくりと立ち上がり、リリィを見た。
「な、なんなの……この気の上がりようは……!?」
リリィの顔と、助けを求める女達の顔が被る。
それを見て、ヴィクトリーは目を見開いた!
「うぁあああああーーーッッッ!!!!」
想いが極まり、ヴィクトリーは超サイヤ人へと変身した!
凄まじい気が轟き、辺りに嵐のような旋風が吹き荒ぶ!
「な……!?」
「金色に……!?」
「あ、あなた……一体……」
狼狽える三人を、ヴィクトリーの碧い瞳が捉えた。
「……俺は、ただのサイヤ人だ……」
超サイヤ人になり終え、気が安定する。
あの記憶は完全に吹き飛び、迷う要素はもう無い。
「……ちゃっ!!」
ヴィクトリーはその場に踏ん張り、正拳突きを二発放った!
拳圧が飛んで、村娘達をぶっ飛ばす。
「!!?」
「がはっ……!!」
「な……!!?」
さっきの攻撃だけで、村娘達は戦闘不能になったようだ。
「……リリィ……今から見せんのが、本当の力だ!!」
「へぇ……!!」
リリィは気を全開放して、ヴィクトリーに向く。
ヴィクトリーも構え、気を解放した!
「はぁああああああ……!!!」
「ぁああああああ……!!!」
二人は走り、一撃をぶつけ合った!
衝撃が巻き起こり、部屋中のあらゆるものが吹き飛ぶ。
「だりゃあああっ!!」
ヴィクトリーが、リリィのこめかみに蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
「あだだだだだだだだっ!!」
そのまんま、リリィに猛攻した!
「ぐ……ぐぐ……!!」
「だりゃぁあーっ!!」
リリィの腹に、思いっきり蹴りを入れる。
「うぐっ……!?」
「どりゃあっ!!」
アッパーして、顎をカチ上げる。
「だぁあーっ!!」
トドメに、顔面をぶん殴った!
「っぐぅううっ!!」
リリィは、踏ん張りながら後退する。
そして両腕の触手を振ってヴィクトリーに振り下ろした!
「ふっ!」
それを避けて、接近する。
その足に、触手が巻きついた。
「なっ!?」
「しゃあっ!!」
ヴィクトリーが振り回され、壁に叩きつけられる。
「ぐっ!!」
「ほぁあっ!!」
今度は、本棚に叩きつけられそうになる。
「だっ!!」
ヴィクトリーは剣で触手を切断し、抜け出す。
「だだだっ!」
そしてリリィに手を向けて、気弾を連射した。
「ふんっ!」
リリィは弾きながら接近し、ヴィクトリーの眼前まで迫る。
「だりゃあっ!」
ヴィクトリーの攻撃は、リリィをすり抜ける。
「残像っ……!?」
「はぁあっ!!」
その背中に蹴り上げが入り、ヴィクトリーはぶっ飛んだ!
「ぐはぁっ!」
「ふっ!!」
リリィは触手を伸ばし、ヴィクトリーに連打する。
「ちっ!あだだだだだだだっ!!」
触手の連打を全てガードして、壁に足をつく。
「波ぁあっ!!」
その状態でかめはめ波を放ち、触手を吹き飛ばした!
かめはめ波は、リリィに迫る。
「電圧過剰負荷、電子放出……真空放電!!」
魔導科学で真空放電を巻き起こし、かめはめ波を相殺した!
「こっちだぁ!!」
ヴィクトリーは瞬間移動でリリィの背後に回っており、後ろ廻し蹴りを放つ。
しかし、リリィも瞬間移動で背後にまわり込んで来た。
「なにっ!?」
「ふんっ!!」
触手で猛攻して、ヴィクトリーに迫る。
「おめぇも瞬間移動が出来るんだな……!!」
猛攻を防ぎながら、ヴィクトリーはリリィの顔を見る。
「魔導の心得、舐めないことね……!!」
加速していく触手に、ヴィクトリーは押されていた。
「くらいなさいっ!」
強烈な一撃が叩き込まれ、ヴィクトリーはぶっ飛んだ!
「ぐ……!!」
「攻撃する気なんて与えないわ……!!」
リリィが触手を伸ばすと、ヴィクトリーの体をグルグルと巻き付けた!
「うわっ!?」
「動けないでしょう……このまま、搾られるのよ……」
「させるかよ!!ビクトリーキャノン!!」
ヴィクトリーは口を開けて、そこからエネルギー波を放った!
「っ!!?」
リリィに直撃して、爆発する。
触手の拘束も解け、体が自由になった。
「うぐ……ぐ……!!」
「ちぇいっ!!」
揺らぐリリィの顎に、蹴り上げが入った!
「ぐはぁっ!」
「あだだだだだだだっ!!」
ダメ押しに、拳が体に連打される。
とてつもない力のパンチの連打は、確実にリリィの体力を削っていった。
「ぐっ……!!」
リリィの触手が、スパァンッとヴィクトリーの顔を叩いた!
「ぐはっ!」
「しゃああああああっ!!」
よろめいたヴィクトリーに、容赦なく触手が連打される。
速い上に重い一撃を連打され、ヴィクトリーは揺らぐ。
「ぐっは……!!」
「砕け散りなさい……!!」
リリィは触手を束ね、渾身の一撃をヴィクトリーの顔面に叩き込んだ!
ヴィクトリーはぶっ飛んで壁に叩きつけられ、その壁も粉砕する。
瓦礫に埋もれ、ヴィクトリーは倒れた……
「……あははっ!あはははっ!所詮は男ね……」
リリィは笑いながら、ヴィクトリーに歩み寄る。
束ねた触手を今度はドリルのようにして、ヴィクトリーに向けた。
「何かとてつもない変身をしたみたいだけど、残念ね……やはり、ここで散る運命なのよ……さようなら。」
その触手を、ヴィクトリーに放った……
次の瞬間、リリィの触手が切断された!
「ッッッ……!!?」
ボトリと触手が落ちて、動かなくなる。
腕を押さえながら、斬撃が飛んできた方を向いた。
「……あなたはっ!!」
「……」
居たのは、ルカだった。
ルカが、単身でここに来たのだ。
「起きろ、ヴィクトリー……そんな程度じゃない筈だ。」
「バレた?」
ヴィクトリーは立ち上がり、首をゴキゴキ鳴らす。
どうやら、そこまで大したダメージにはなっていないようだ。
「な……!?」
「ルカ、他の奴は?」
「僕に先に行かせて、敵の群れを押し留めてる……」
ルカは、改めてヴィクトリーを見た。
とてつもない怒気、金髪になって逆立った髪、碧い瞳……
「あの時の覚醒状態か……モノにできたのか?」
「たぶんな……」
ヴィクトリーは上半身のアンダースーツを破き捨て、上半身裸になった。
指をボキボキ鳴らし、リリィの方を見る。
「悔しいけど……俺一人じゃ、リリィの心の闇は晴らせねぇようだ。」
「どうやら、そうみたいだね……」
彼女の心の闇は、思っていたより深いようだ。
二人で、協力して戦うしかない……
「どうあっても、私を倒したいようね……」
リリィはそう言いながら腕に力を入れ、触手を再生させた。
再生した触手が粘液を垂らしながら、じゅるじゅるとうねる。
「いいわ、来なさい!」
「ああ……決着をつけてやる!!」
「終わらせるぞ!!」
ヴィクトリーとルカは踏み込んで、リリィに突進した!
「あだだだだだ!」
「はぁああああ!」
「ふふふ……」
リリィと攻防しながら、二人は気を高めていく。
リリィもまた、気を高めていた。
「だぁあ!!」
ヴィクトリーのパンチが、リリィの顔面に迫る。
しかしリリィはその拳を受け流し、後ろ回し蹴りした!
「うぉおおっ!」
ルカが体に風を纏いながら、リリィに斬りかかる。
「ふんっ!」
剣の一撃を触手で止め、別の触手でルカを打ちにかかる。
しかしルカはそれを避けて、リリィの股を蹴り上げた!
「!!」
「リリィーーーっ!!!」
リリィの背後から、ヴィクトリーの声が響く。
振り向いた瞬間には、既にかめはめ波が迫っていた。
「ふっ!」
リリィは瞬間移動でそれを避け、ヴィクトリーの背後に現れる。
「なにっ!?」
「はぁあっ!」
そして、渾身の蹴りを放った!
「させるかっ!!」
ルカが前に現れ、その蹴りを剣で止める。
風の動きがルカを加速させ、土手っ腹に蹴りの一撃を叩き込んだ!
「っ!?」
「いくぞっ!!」
ルカは剣にエネルギーを込め、発火させる。
発火した剣は燃え盛り、紅蓮の刃と化す。
「烈火天翔閃!!」
その剣で、リリィを切り上げた!
「っぐはぁあっ……!!?」
見事に会心の一撃が入り、リリィに大ダメージを与えたようだ。
その体はぶっ飛ぶが、リリィは倒れる寸前に留まった。
「まだよ……まだ……弱者の声を消さない限り……!!」
リリィの目の前に、ヴィクトリーが瞬間移動してくる。
「……」
二本指でリリィの腹を指して、そこを見据えた。
「消えなさいっ!!」
リリィはすかさず触手を振り、ヴィクトリーに叩きつけようとする。
「超龍閃撃……!!」
しかしそれより早く、気を練り込んだワンインチパンチでリリィの腹を打ち抜いた!
「ッッッ!!!」
触手が静止し、リリィは吐血する。
全身に響くような衝撃が駆け巡り、悶絶した。
そんな衝撃が腹に叩き込まれ、ようやくリリィはダウンする。
「うっ……ぐぐぐ……!!」
しかしリリィはその状態から腕を向け、二人に触手攻撃をする。
「はぁあああっ!!」
「だーーーっ!!」
ルカとヴィクトリーは剣を構え、迫り来る触手を全て切り落とす。
「な……!!?ちぃいっ!!」
リリィはすぐさま触手を再生させて立ち上がり、両腕の触手でで戦士達に猛攻した!
「くっ!」
「任せろぉおっ!!」
たじろぐヴィクトリーの前に、ルカが躍り出る。
ルカの気が爆発し、その姿を消す。
無数の触手とリリィを通り抜け、ルカは着地して剣を納める。
「っ!!?」
「死剣・乱れ星……!!」
次の瞬間、触手とリリィに無数の斬撃が叩き込まれた!
「っきゃあああああああっ!!」
リリィは大ダメージを受け、膝をついてしまう。
「これで終わりだ……!!」
ヴィクトリーは両手に気を溜めて、フルパワーになる。
両手に溜まったエネルギーから、閃光が迸っていた。
「くらぇえっ!!超かめはめ波ーーーっ!!!」
そのまんま、渾身の超かめはめ波をリリィに撃ち放った!
「!!!」
リリィは避ける事もままならず、超かめはめ波に直撃してしまう。
そして、大爆発を巻き起こした!
「はぁ……はぁ……!!」
「……そん……な……」
リリィはフラフラとよろめき、そのまんま倒れた。
どうやら、これで戦闘不能になったようだ。
「……結局……私は……踏みにじられる……の……ね………」
リリィは、その言葉を最後に気を失った……
「はぁ……はぁ……」
ヴィクトリーは息を切らし、気を鎮める。
そうすると、金髪から黒髪へと戻ってしまった……
それを確認したルカは、ヴィクトリーの肩を叩く。
「やったな……」
「……ああ。」
二人は、リリィを見る。
「……丁度、終わったようだな。」
アリスが、背後から声をかけてきた。
ルカ達は、そっちに向く。
アリスだけではなく、ソニア達も居た。
「みんな。」
「これだけ消耗させれば、当分触魔導は使えまい。ルシアとの取引は、これで成立だな……」
「いろいろ難しかったみたいね……」
「……ああ。」
ヴィクトリーはソニアに返事しながら、リリィの顔を見た。
そして、微妙な表情を浮かべる。
「リリィは、きっと強い人だから……触魔導から解き放たれて、自分の心と向き合うと信じるよ。」
ルカはそう言いながら、みんなを見る。
「さぁ、ルシアさんの所に報告に行こう!」
ルカの言葉に皆は応じ、この部屋から出ていく。
ヴィクトリーはというと、まだリリィの顔を見ていた。
「……ごめん。」
そう言った後、少し遅れて仲間達に続いた……

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サルーンへ……

ヴィクトリーが超サイヤ人へと覚醒し、ルカとの協力もあって、何とかリリィを倒した戦士達。
それを、早速ルシアに報告した……
「リリィを倒したようですね……頼みを聞いて下さり、心から礼を言いましょう。」
「ああ……」
ルシアはリリィへの所感を述べた後、約束通りルカ達の仲間になった。
これで、マギステア村の騒動は収まった。
次は、ノームとの契約だが……
「その前に、サルーンに行ってみない?クリスタル製の装備が造れる鍛冶屋がいるって話じゃない。」
「うむ……激戦に挑む以上、装備も整えておきたいな。ルカ、貴様の判断に任せよう。」
「うん。」
「クリスタルか……どうやって加工すんだろうな……」
サルーンは確か、サバサ最北の町。
グランドールから北にサファル砂漠遺跡があるが、更に北。
山脈の切れ目に、砂漠から荒野に変わる地点がある。
そこを東側に進むと、サルーンがある……そういう話だ。
「ノームの力を手に入れるにしても、どうせノームと戦う羽目になるんだろうよ。装備は万全にしておいた方がいいんじゃねぇか?」
「ああ、そうだな……よし!サルーンへ行こう!」
マギステア村の騒動は収束し、新たな仲間も迎え……
一行は、次の目的地へと向かった……

道中……
あの暑い砂漠とはうってかわって、丁度良さ気な荒野に出た。
向こう側には、海が見える。
「ふぅ、砂漠地帯を越えられたから……次は、東方面だね。」
「……」
ルカとヴィクトリーは、先頭を歩く。
するとヴィクトリーの方が何かに気付いたようで、目を鋭くした。
「やぁあっ!!」
岩陰から一筋の影が飛び出し、ヴィクトリーに切りかかる。
しかし、ヴィクトリーはそれをガードしてみせた。
「!!」
「な……!?」
「魔物……の、少女!?」
ルカとソニアは、武器を抜く寸前に止まる。
「……魔物か。」
「うっ……!」
少女は離れ、剣を構え直す。
小柄だが、れっきとした魔物の戦士……
デビルファイターという奴らしい。
「そっちもひとりで来るなんてよ……指名は俺みてぇだな。」
「うんっ……!だって、戦ってみたかったの!つい最近話題の、勇者一行と……!」
「いいぜ……」
ヴィクトリーは気を解放して、デビルファイターに向いた。
「さぁ、こいっ!」
構えて、臨戦態勢を取る。
その瞳はデビルファイターをまっすぐに捉え、気を集中させている。
「……」
ルカはそれを見ながら、思う事があった。
スーパーサイヤ人にはならないのか……?
「やっ!!」
「ふんっ!」
デビルファイターの剣の一撃を、気を纏った腕でガードする。
そして回転して、廻し蹴りを放った。
「っ!」
デビルファイターはそれをしゃがんで避け、ヴィクトリーに足払いする。
「っ!」
「はっ!」
すかさず、剣を振り下ろした!
ヴィクトリーはそれをギリギリでかわし、何回かバク転してから着地し、両手にエネルギーを溜める。
「はぁあああっ!!」
そして、エネルギー弾を連射した!
「くっ!」
デビルファイターは剣を振って、エネルギー弾を弾き飛ばす。
そして、突きの構えをとって、ヴィクトリーを見据えた。
「こいっ!!」
「……っ!!」
デビルファイターは、地面を蹴って、ヴィクトリーに突きの一閃を放った!
極限まで研ぎ澄まされた、超スピードの剣がヴィクトリーに迫る。
「ふんっ!!」
「っ!!?」
ヴィクトリーは、剣を白刃取りして止めた。
そして、ゆっくりと顔を上げる……
「……なるほど、おめぇの強さはよーく分かった……だがな……!!」
その状態のまま、こめかみに蹴りを叩き込んだ!
「!!?」
デビルファイターはこめかみを足で打ち抜かれ、揺らぐ。
とてつもない速さの一撃を見切れずに、揺らいでしまう。
「だけどよ……!!」
次に強力なパンチが、腹を打ち抜いた。
デビルファイターの腹筋を貫き、背中を盛り上がらせる。
「っが……!!?」
「俺達だって、遊んでたわけじゃ……!!」
パンチを連打して、ラッシュする。
デビルファイターに無数の拳が叩きつけられ、ダメージが刻まれる。
「ねぇっ!!」
最後に、顔面をぶん殴って、ぶっ飛ばした!
「っがは……!!?」
デビルファイターは壁に叩きつけられ、倒れてしまった。
どうやら、これで戦闘不能になったようだ。
「……もっと強くなって、かかってこい!俺はもう一回戦ってやる!」
「……」
結局、スーパーサイヤ人にはならずに倒してしまった。
いや、使うまでも無かったようだ……
「よっしゃ、先に進むか!」
「うん、行こう!」
ヴィクトリーの実力を再確認した所で、一行は先へ進んだ……

サルーン……
「サルーンに着いたね。」
「ああ……」
そこは、のどかな雰囲気の普通の町だった。
「ここに、クリスタルの武具を造る職人がいるって話だけど……」
「うむ、鍛冶屋に行ってみるか。情報集めも忘れるなよ。」
「ああ……」
久しぶりに、のどかな雰囲気の町だ。
ここ最近、疲れるイベントが多かったから、息抜きもかねて町を歩いた……

情報集めをしてみると、意外な情報が見えてきた。
どうやらこのサルーンのいう町、アサシンゆかりの町らしい。
今では、アサシンも大人しいんだとか。
あと、東のタルタロスの入口に土が積まれてて、入れないとかいう情報もあった。
ノームを使役して、何とかしてみよう。
クリスタルが採れるという、町のすぐ南にある洞窟……
そこは、竜人の盗賊団のアジトになっているとか。
盗賊団とは、穏やかな雰囲気では無さそうだ。
こちらも、対処しなければ。
「さて、目玉のこいつだな。」
「うん……」
一行は、武具屋の前に立つ。
ここの鍛冶屋は、クリスタル武具鋳造の技術を受け継いでいる。
しかし、なかなかに偏屈な職人らしい。
そのため、多くの旅人が門前払いを食らっているとか。
やはり、ここの鍛冶屋もアサシン一族出身だったみたいだから、アサシン族にツテでもあればいいのだが……
「まぁ、まずは行ってみっか。」
「おう。」
ルカとヴィクトリーは、鍛冶屋に入った……
「オッス!」
「よう、何か用かい……?」
迎えたのは、目付きが悪い筋肉質な女の人だった。
その手にハンマーを握りながら、ルカ達を見る。
「あの、クリスタル製の武具を造って欲しいんですけど……」
「ああ、サラーンから話は聞いてるぜ。」
出てきた言葉は、意外なものだった。
「サラーン……?」
「ああ……俺も鍛冶なんてやってるが、アサシン族の出なんだよ。」
……どうやら、サラーンさんが話を通してくれたらしい。
後で、ちゃんとお礼を言わなければ。
「あいつの恩人なら、断れねぇな。ただし……クリスタルの原石は、そっちで確保してもらうぜ。」
「まぁ、そうなるんか……」
「この町のすぐ南にある鉱山で、クリスタルが採れるはずだ。なんとかいう盗賊団の根城になってるから、注意しな。」
「ああ……」
その情報なら、さっき聞いた。
盗賊団も、居るだけで行商人が怯えてしまい、流通が滞ってしまう。
何とかしなければ……
「あと、こいつは完全に別件なんだが……アクセサリ屋が失踪したらしい。力になってやれねぇか?」
「はいっ!もちろんその件も任せて下さい!」
「よーし、やる事は決まったな!」
南の鉱山で、クリスタルの原石の採取と盗賊団の撃退。
失踪したアクセサリ屋の捜索……
とりあえずは、この二つが課題となった。
「どうする、ルカ?」
「うーん、これは2チームに分かれて攻略出来そうだね。」
「2チーム?」
「ああ……僕とお前をリーダーにチームを作って、一方が鉱山に、一方がアクセサリ屋さんを助けに行くって感じかな。」
「そりゃいいな……ちょうど、引っ込んでる仲間達を活躍させる場が出来る……どんなチーム分けにする?」
「うん……」
ルカとヴィクトリーは落ち着ける所で座って、話しあった……
話し合いの結果、ルカとソニアとアリスとヌルコがアクセサリ屋探しへ。
ヴィクトリーとルシアとプロメスティンとヒルデが南の鉱山へ行く事となった。
「こっちはあんまり代わり映えしないね。」
「ふふん……余達の腕なら、すぐに終わるぞ。」
「久しぶり!ヌルコ!」
「きゅー!」
ルカとアリスは気合を入れており、その横でソニアがヌルコに抱きついてる。
「おっしゃー!」
「ふむ、こんな所で出番が来るとは……」
「ふふふ、久しぶりの外ですね。丁度サンプルが足りなくなったところです。」
「ヒルデ、出番、久しぶり……がんばる……」
ヴィクトリーは気合万端の様子で、腕を掲げる。
ルシアとプロメスティンは同じ知恵の者同士で気が合ったのか、仲良さそうにしている。
ヒルデが、場違い感を感じて縮んでいた……
「よーし、ルカ。任せたぜ!」
「ああ!」
二つのチームは解散して、それぞれの役割を果たしに向かう。
果たして、どうなる……?

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対決!ウロコ盗賊団

サルーンの町で、装備を整えることになった一行。
そこで、クリスタル製の武具を造って貰おうとしたが、問題が発生してしまった。
一つは、クリスタルの原石がある鉱山が、盗賊団に乗っ取られている事。
一つは、アクセサリ屋の娘が行方不明になっている事。
皆で話し合った結果、ルカとアリスとソニアとヌルコがアクセサリ屋の娘探しへ。
ヴィクトリーとプロメスティンとルシアとヒルデが、鉱山へ行って盗賊団を懲らしめる事にした……
「盗賊団か……どうやら、今度はイリアスベルクの時とは訳が違うみてぇだな……」
「イリアスベルク……?」
「イリアスベルクの時……?」
「はて……」
分かってくれる人が、一人も居ないというのも寂しい。
とにかく、このメンバーで鉱山へ殴り込みをかけるのだ。
果たして、上手くいくのだろうか。
「プロメとルシアの頭脳に、ヒルデと俺のパワーがありゃ、どうってことねぇさ!」
「プロメ……」
プロメスティンは、呼ばれた事も無いような呼び名で呼ばれ、少し困惑する。
しかし、すぐに笑顔になった。
「久しぶりの前線戦闘になりますが、私も私で遊んでいたわけではありません。修行の成果という奴……見せてあげますね。」
「ああ、期待してっぞ!それに……」
ヴィクトリーは、ルシアを見る。
「はい……約束通り私も仲間なので、存分に私の力を振るいましょう。」
「ああ……!」
ルシアは、相変わらずの気の入りようだった。
これは、頼もしい味方が出来た……
「ヒルデも、修行、頑張った……頑張る。」
「おお、ヒルデ!おめぇも遊んでたわけじゃねぇみてぇだな……!」
ヒルデの戦闘力……
以前とは格段にパワーアップしてる事が、気を感じて通じる。
このチームは、中々に期待できそうだ……
「よし、行くぞ!れっつごー!」
ヴィクトリーが先頭に立ち、仲間を引き連れる。
そして、サルーンの町を出た……

鉱山……
何気なく、普通に入る。
中は証明が設備されていて、程よく明るい洞窟だった。
しかし、侵入者の訪問に快く思わない者が近づいてきた……
「おいおい……」
「……!」
視線をやると、ヴィクトリーの前に竜人の女が二人立っていた。
「あいつらは……」
「リザードシーフですね……様子を見ましょうか。」
リザードシーフは、プロメスティンと話し合うヴィクトリーを見ながら、剣の峰をポンポン叩く。
そして、にやけながら声をかけてきた。
「ここはウロコ盗賊団のヤサだって知らなかったのか?」
「有り金置いてけ、って言いたい所だが……お前は美味そうだ、とっ捕まえてマワしてやるぜ!」
「いぃっ!?」
初対面の男を、いきなりマワそうとするリザードシーフ……
彼女らは剣を構え、ヴィクトリーに襲いかかってきた!
「はっ!」
「マシンバルカン……」
ヴィクトリーの背後で、二つの気が爆発する。
プロメスティンが魔導科学で真空放電させ、二人のリザードシーフを電撃する。
「っぐぁあっ!?」
「ぁああっ!!」
「起動だよ……!!」
すかさず、ヒルデがマシンバルカンでリザードシーフ二体に銃撃した!
「ぐぁあああっ!」
「ちっ!」
一体は倒したが、一体が銃弾の雨から抜け出し、ヒルデに迫る。
「ふっ!!」
しかし、その一体にルシアの触手が巻きついた!
「うわぁあっ!?は、離せっ……!!触手なんかに、絶対負けるもんかっ!!」
「かめはめ波ーっ!!」
ヴィクトリーがかめはめ波を放ち、リザードシーフを爆撃する。
「なんなんだ、殴り込みかよ……!」
黒焦げになったリザードシーフはそう言い、意識を失った……
「……!」
「レーダーに、多数の敵性反応を確認……騒ぎを聞いて、やってきたみたいだよ。」
ヒルデの言う通り、すごい数の気がこちらに向かってくる。
それも、全部敵意を持った気だ。
「よーし、みんな!遠慮なんかすんじゃねぇ!ガンガンやろうぜ!」
「はいっ!」
「分かったわ!」
「了解……」
ヴィクトリー達は気を解放し、構える。
その前に、多数のリザードシーフが武器を構えて現れた。
「なんだなんだ、殴り込みかい!?」
「面白ぇ、存分にやってやる!」
「男の方は捕まえて、あたし達の奴隷にしてやるぜ!」
血の気の多い、ウロコ盗賊団の団員達。
一筋縄では、いかないだろう……
「はぁあああっ!!かめはめ波ーっ!!」
ヴィクトリーが、率先にかめはめ波を放った!
「!!!」
かめはめ波が一体に当たり、爆発が周りのリザードシーフを吹き飛ばす。
「ぐ……!!」
「怯むな、かかれーっ!!」
かめはめ波が開幕の合図となり、大乱闘が始まった!
「ふっ!はぁあっ!」
プロメスティンは、魔導科学を駆使しながら上手く敵を薙ぎ払っている、
「やぁあっ!!くらいなさいっ!!」
ルシアは触手腕で敵を薙ぎ払いながら、錬金術で生み出した魔法の石を投げて爆発させている。
「ビームデスサイズ……!!」
ヒルデは、お得意のビームデスサイズを振るいながら、無双していた。
仲間達は、問題は無いようだ……
「おらぁあっ!!」
「どりゃあっ!!」
ヴィクトリーは、正面から迫ってきた敵の腹に正拳突きする。
「っ!?」
「よっ!」
その股に手を回して持ち上げて、別の敵にぶん投げた。
「うわぁあっ!」
「ぐはぁあっ!」
「ち……!!」
リザードシーフの一体が舌打ちして、頬を膨らませる。
「っ!?」
「はぁーっ!」
ヴィクトリーに向けて、火の息を吐いた!
「熱っ!?あぢゃぢゃっ!!あぢゃぢゃぢゃぢゃっ!!」
服に火がついて、転がり回るヴィクトリー。
その動きを止めるように、敵の一体がヴィクトリーを踏みつけた。
「よっしゃあっ!!叩けぇっ!!」
「うぉおおおおーっ!!」
敵達は、剣の峰で、足で、棒で、ヴィクトリーを袋叩きした!
「〜〜〜っ!!」
うつ伏せに倒れ、ボカボカと攻撃を食らってしまうヴィクトリー。
しかし、黙ってはいなかった。
「界王拳っ!!」
界王拳を使って、気を上昇させる。
「そんなもん、怖くねぇよっ!!」
敵の一体が、ヴィクトリーの顔面に蹴りを繰り出す。
しかしヴィクトリーは蹴りを受け止め、足を掴んだ。
「っ!?」
「でりゃあああっ!!」
敵をぶん回し、周りの敵も薙ぎ払う。
「ーっ!!?」
「とんでけーっ!!」
そいつの足を離して、すかさず蹴り飛ばした!
「うわーっ!」
「行くぜ……!!」
ヴィクトリーは、周りを見回す。
その中に、岩を両手で持ち上げてる奴が居た。
「ようっ!」
そいつに迫り、顔を近づける。
「っ!!」
そいつは若干のパニックと敵意が混ざり、岩を振り上げる……
「だっ!!」
しかしヴィクトリーはそいつの胸に蹴りを入れ、蹴り飛ばした!
「っきゃ……!!?」
「よっ!」
敵の手から岩が離れ、それをヴィクトリーがキャッチする。
そして、そいつの脳天に思いっきり岩を叩きつけた!
「ーーーっ!!?」
そいつは、頭に星を回しながら気絶した……
「よっしゃ、みんなっ!!」
「うん……」
ヴィクトリーの横にヒルデが来て、マシンバルカンを起動する。
それで、敵を掃射した!
「うわぁああああっ!!」
「な、なんなんだよ……!!」
構えたのは、ヒルデだけではなかった。
「真空放電……!」
「雷石っ!」
錬金術で生み出された雷石と、プロメスティンの真空放電により、辺りに電撃が駆け巡った!
駆け巡った電撃は、マシンバルカンの銃弾を辿りながら敵を切り裂く。
「ちくしょうっ!」
敵の一体が、ヴィクトリーの前に来る。
「こいっ!」
「はーっ!!」
構えるヴィクトリーの顔に、火の息が迫る。
「よぉっし!おりゃあっ!!」
迫る火の息を、廻し受けで霧散させた!
「んなっ……!?」
「おっしゃあっ!!」
その敵の腹に、重い一撃が入る。
「がはぁあっ……!!」
そいつは白目を剥いて、倒れた……
「かかれーっ!!」
まだまだ、多数の敵がヴィクトリーに迫る。
「だーっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を10倍にして、敵の群れに突っ込む。
そして、拳で無双した。
「おらっ!!あだだだだっ!!でりゃあっ!!」
迫り来る敵を次々に倒し、遠くの敵には気弾を撃つ。
「くらいなさいっ!」
敵の一体が、ヴィクトリーにナイフを投げる。
「えい。」
ヒルデがそれを撃って、弾き飛ばした。
「っ!?」
「しゃああっ!!」
すかさず、ルシアが触手腕で敵を打ち抜く。
「っ!?」
「私は、こういう事は得意では無いのですが……それっ!!」
プロメスティンがその敵を、蹴り飛ばした!
ヴィクトリーが戦闘に立って切り込み、仲間達がヴィクトリーの補助をする。
ヴィクトリーにとっては、理想的な戦闘方法だ。
「うぉおおっ!」
「はぁあーっ!!」
「くらえぇっ!」
四方から、同時に攻撃が迫る。
ヴィクトリーは腕をクロスした。
「はぁあっ!!」
目を見開き、思いっきり手を広げる。
次の瞬間、ヴィクトリーを取り囲む敵が吹き飛んだ!
「うわぁあっ!」
「ーっ!!?」
「な、なんだぁ!?」
あまりの異常事態に、敵は怯む。
そして、戦士達を囲む輪を広げた。
「ふむ、気合で吹き飛ばしましたね。」
「ええ……身体中にあるエナジーを、衝撃波として撃ち出すとは……あんな器用な事は、そこらの武道家のモンスターでも難しいはず……」
ヴィクトリーが次々に敵を蹴散らし、遂に最後の一体となった。
「だぁあっ!!」
その一体を、思いっきりぶん殴る。
「ぶっ!」
「おりゃあーっ!!」
そいつの後頭部を掴んで、思いっきりぶん投げる。
「ぶへっ!?」
壁に叩きつけられ、倒れた……
「っひぃいいっ!」
倒れながら、後ずさるリザードシーフ。
その前に、ヴィクトリー達が立った。
「これで全員か?」
「どちらにしろ、これ以上やっても無駄な事は明確ですよ……」
プロメスティンは、そう言いながら手を向ける。
その手を、ヴィクトリーが下ろした。
「く、くそっ……!!覚えてろーっ!」
リザードシーフは、洞窟の奥へと逃走した!
「ヴィクトリーさん、追いましょう!」
「おうっ!」
逃走したリザードシーフの気を追いながら、走る戦士達。
道を進み、階段を降り、角を曲がり……
その足は、一直線に最奥へと向かっていた。
「……!」
奥から、でかい気を感じる。
こいつが、盗賊団のボスであろう。
「……っ!」
戦士達は、広い間に出た。
地面には豪華なカーペットが敷かれ、玉座がある。
そこには、いかにもな感じの女が座っていた……
女は、突如として飛び込んできた戦士達に動じず、目を向けた。
「ずいぶん、うちの手下が世話になったみたいだねぇ……あたしが、ウロコ盗賊団のボスさ。」
「人間……!?」
「いいえ、あれでも竜人です。」
人間と同じ色の肌に、一瞬ヴィクトリーは見間違える。
しかし、プロメスティンの指摘でハッとする。
よく見ると、肩や背中から脇腹にかけて、竜人族特有のウロコがある。
極めつけに、尻尾まであった。
間違いない、ここのボスだろう。
まぁ、リザードボスといった所か。
「おめぇがここのボスか……おめぇらの盗賊行為で、みんな迷惑してんだ!こんな事、もうやめろ!」
「残念だけど、そうもいかないねぇ……この稼業、簡単に止められやしないよ。それに、ここまで暴れたあんたを黙って帰しやしないさ。あたしと手下共の慰み者になってもらうよ!」
「じゃあ、盗賊行為はやめなくていいから、せめてクリスタルの原石は寄越せ!」
「まぁ、合理的な条件ですね。」
ヴィクトリーの提案に、リザードボスは首を振る。
「お断りだ!あれはあたしのシマにあったんだから、あたしのモンだ!」
「どうやら、やるしかねぇみてぇだな……手出すなよ!」
ヴィクトリーは仲間にそう言ってから、リザードボスの所へと歩み寄る。
「うん、了解……ヒルデ達は、手を出さない。」
ヒルデはそう言いながら、下がった。
「手を出すな……?彼は、何を……」
「見れば分かりますよ……」
プロメスティンもルシアを引っ張り、下がる。
これで、この場はヴィクトリーとリザードボスの一騎打ちの場になった……
最奥へと進撃し、リザードボスと対面するヴィクトリー。
二人は睨み合い、笑った……

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VSリザードボス

クリスタルの原石を取りに行くと同時に、ウロコ盗賊団を懲らしめにやってきたヴィクトリー達。
最奥へと踏み入ったヴィクトリーは仲間を下げ、盗賊団のボスである、リザードボスと対面した……
「仲間に頼らず、一人であたしの相手をするつもりかい?馬鹿だねぇ。」
「そう言うなよ。一対一って、案外楽しいんだぜ?」
リザードボスは、右手に剣を、左手に短剣を持って構える。
ヴィクトリーは、いつも通り我流武道の構えだ。
「ふん、後悔させてやるさ……10秒で終わらせてやる。」
「……」
ここで、ヴィクトリーが気を解放した!
とてつもない気が爆発し、嵐のような突風が吹き荒ぶ。
「!!」
「へへ……」
ヴィクトリーは踏み込んで、リザードボスの顔面にパンチする。
「っ!」
リザードボスはまともに食らうが、少し仰け反っただけだった。
「しゃっ!」
短剣を振って、反撃する。
ヴィクトリーはそれを避け、アッパーを繰り出した。
「そいっ!」
しかし、リザードボスの剣がヴィクトリーの拳を弾いた。
「うわっ!?」
「せぇいっ!!」
更に、渾身の力を込めて剣を振る。
次の瞬間、ガキィンッという音が響いて、ヴィクトリーは靴を擦らせながら後退した。
「……金属音……?」
リザードボスは、ヴィクトリーの方を見直す。
見ると、ヴィクトリーは剣を抜いて構えていた。
「ひゅ〜、あぶね〜……!」
「あ、あの一瞬で抜剣して、あたしの攻撃を凌いだってのかい……!?大した男だね……!」
リザードボスはそう言ってから、ヴィクトリーに突進する。
「だぁーーーっ!!」
「はぁあああっ!!」
刃と刃が超スピードでぶつかり合い、激しい攻防が展開される。
「ちっ!」
ヴィクトリーはリザードボスの猛攻から抜け出し、手を向けて気弾を連射する。
「効かないねぇ!」
リザードボスは二刀流で次々に気弾を弾き飛ばし、ヴィクトリーに迫る。
「ち……!!」
「やぁあっ!!」
短剣を振り上げ、斬り下ろしにかかる。
「ふっ!」
斬り下ろしを刃で凌ぎ、蹴りを放った。
しかし蹴りは避けられ、その足に剣が振り下ろされる。
「っ!?」
驚きを見せたのは、ヴィクトリーではなく、リザードボス。
なんと、刃が足をすり抜け、ヴィクトリーが消えたのだ。
「残像っ!?」
「こっちだ!」
ヴィクトリーは、その背中に思いっきり正拳突きを炸裂させた!
「ッッッ!!?」
腹へと突き抜けるような衝撃で、リザードボスはぶっ飛んだ!
壁に叩きつけられ、その壁も粉砕して、瓦礫に埋もれる。
「……はぁーっ……!」
正拳突きのポーズを崩し、リラックスする。
「おーい、とっくに10秒は経ったぞーっ!」
こんな程度で、参るような奴じゃない。
恐らく、今までの立ち回りの中でも本気の欠片も出していないだろう。
「っはぁあっ!!」
案の定、リザードボスは立ち上がった。
気を解放して瓦礫を吹き飛ばし、身体の埃を払う。
「……やっぱりな。」
と、ここまでは予想通りだ。
しかし……
「ふふふ……ひ、久しぶりだね、強いヤツと戦うなんてさぁ……わくわくしてくるなぁ……!」
そう言ってから腕をクロスして、更に力を解放して見せた!
「な……!!?」
「……ここからが、本当の勝負だよ……!」
ヴィクトリーに剣を向けてから、笑うリザードボス。
遂に、本気を出したようだ。
今までとは違う、尋常ではない気迫。
それを伴う、この洞窟を包む緊張感……
そうだ、ここからが本番だ……
「はぁあっ!!」
「!!」
リザードボスは一瞬でヴィクトリーの眼前に迫り、猛攻した!
重い斬撃が、次々にヴィクトリーに向かって放たれる。
「くっ!?」
速すぎる猛攻に、ヴィクトリーはたじろぐ。
間一髪で、攻撃を剣で凌いでいる状態だ。
「はぁあーっ!!」
「うわっ!?」
超パワーの斬撃が、ヴィクトリーの剣を弾き飛ばした!
剣は回転しながら飛んで、壁に突き刺さる。
「やぁあっ!!」
「くそっ!」
振り下ろされた剣を白刃取りして、何とか止める。
「こっちがあるんだよっ!」
リザードボスの短剣が、ヴィクトリーの手を突き刺した!
「っぐぁあっ!?」
手から血を流しながら、後ずさる。
「ほらほらぁ!スキだらけだよっ!」
リザードボスは、揺らいだヴィクトリーに容赦なく斬撃した。
一撃、もう一撃と、斬撃を連打する。
「うぐっぐ……!!」
何とか腕に気を纏って、剣をガードしていた。
「そらよっと!!」
リザードボスが繰り出してきたのは、蹴りだった。
腹に蹴りが入り、ヴィクトリーは目を見開く。
「ごはぁあ……!!」
吐血しながらも、歯を食いしばる。
そして、リザードボスの顔面をぶん殴った!
「っ……なかなかやるじゃない……のっ!!」
ヴィクトリーに、剣が振り下ろされる。
その剣を何とか避けて、両手を合わせる。
「っ!?」
「かめはめ波っ!!」
ヴィクトリーは、かめはめ波を放った!
リザードボスは腕をクロスして受け、爆発した!
「いいねぇっ!」
多少のダメージが入ったようだが、まだ元気な様子だ。
迷うことなく、ヴィクトリーに正面から突っ込んできた。
「界王拳ーっ!!」
ヴィクトリーは界王拳を使って、こちらも正面からぶつかり合う。
「あだだだだっ!だだだだだだっ!だだぁあーっ!!」
「はぁっ!そらぁっ!やぁっ!せいやぁっ!」
拳と剣が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「らぁっ!!」
リザードボスの斬撃が、ヴィクトリーの腕に入る。
「だぁあっ!」
ヴィクトリーのパンチが、リザードボスの顔面に入った。
「だりゃあーっ!!」
更に廻し蹴りを、こめかみに向かって放つ。
「ちっ!」
リザードボスは、.ヴィクトリーの足を掴む。
「なっ!?」
「らぁあっ!!」
思いっきり振り回してから、地面に叩きつける。
その時の衝撃で、この鉱山が揺れた。
「おぅうっ……!!?」
「どっせぇいっ!!」
悶えるヴィクトリーの顔面を、蹴り飛ばした!
ヴィクトリーはぶっ飛び、壁に叩きつけられてから、倒れる。
「っぐ……!!」
顔を上げると、さっきの剣があるのを感じる。
一瞬でそれを取って、今度はリザードボスの方を見た。
「くらいなぁ……!!」
リザードボスは剣を掲げ、そこにエネルギーを纏わせていた。
「な……!?」
「竜の怒りで真っ二つさ!極竜斬!!」
その剣がヴィクトリーに振り下ろされ、エネルギーが大爆発した!
爆発による衝撃が響き、辺りに爆煙が舞う。
その様子を見て、仲間達は絶句した。
「そ、そんな……!!」
「あ、あれだけかっこよさげな事を言っておいて、あんな簡単にやられるなんて……」
プロメスティンの絶句する方向に、ルシアはちょっと困惑する。
しかし、すぐにヴィクトリーの方へと向き直した。
「……本当に、やられて……」
「ううん。」
ルシアに、ヒルデが首を振る。
「ヴィクトリーの戦闘力は、まだ落ちてないよ。それどころか……」
そう言いながら、ヒルデもヴィクトリーの方を見る。
次の瞬間、凄まじい気が吹き荒んで、爆煙が吹き飛んだ!
「……!!」
「うっ……ぐ……!!?」
「……」
ヴィクトリーはスーパーサイヤ人となって、剣を剣で受け止めていた。
「な、何ですかアレは……!?髪や眉毛が金色に……!?」
「瞳も碧くなって……これが、スーパーサイヤ人……!?」
「戦闘力は、50倍に跳ね上がってるよ。すごい……」
初めてスーパーサイヤ人を目撃した三人と、リザードボスは驚愕する。
「な、なんだ……!?」
「だっ!!」
ヴィクトリーは剣を弾き飛ばし、リザードボスの腹に拳を叩き込んだ!
「っぐはぁあっ!?」
腹筋が打ち抜かれ、ぶっ飛ぶ。
何とか踏ん張って、ヴィクトリーの方を睨んだ。
「悪ぃな……あんまりにも久しぶりつえぇもんだからよ……我慢出来なくなった……!」
ヴィクトリーは剣をしまって、構える。
そして、目を鋭くする。
「よぉし、こいっ!!」
「はっ……金髪になったぐらいで、いい気にならない事だね……!」
リザードボスは構えて、ヴィクトリーとぶつかり合った!
拳と剣が疾風(はやて)のように飛び交い、超スピードのバトルが展開される。
一撃がぶつかり合う衝撃が連続して、何度も響いた。
「だりゃあーっ!!」
「!!」
ヴィクトリーのパンチがリザードボスの頬に入り、戦いが止まった。
「あだだだだっ!!せぇいっ!おりゃあっ!!」
体にパンチを連打して、腹に膝蹴りして、思いっきりぶん殴る。
「っぐ……!!」
リザードボスは後ずさり、頬を膨らませる。
「くらえ……!!」
そして、激しい炎を吐いた!
「魔閃烈障壁!!」
ヴィクトリーはバリアーを張って、炎の中を突き破る。
「っなっ!?」
「だだだだだだだっ!!」
そのバリアーを纏い、何度もリザードボスに体当たりした!
「っちぃい!!」
リザードボスは剣に気を込めて、ヴィクトリーに渾身の一撃を放つ。
「だぁあーっ!!」
バリアーを解除し、拳を握る。
その拳を剣にぶつけた!
「うぉおおおおおおっ!!!」
「あぁああああああっ!!!」
激しい気を波動させながら、押し合いが始まった。
バチバチとエネルギーがぶつかり合い、波動する。
「ぐっぐぐぐぐ……!!!」
「ぉおおっおっおおおお……!!!」
一撃に、どんどんと力が込められる。
とてつもないパワーが、更に大きく高まっていく。
「だりゃあああっ!!」
「うぉおおおおっ!!」
次の瞬間、一撃はすれ違い、両者は左拳を振りかぶる。
そして、顔面を打ち合うクロスカウンターが決まった!
「っぐぅう……!!」
「っひひひ……!!」
悶えるリザードボスに、薄ら笑いするヴィクトリー。
二人は距離をとって、互いを睨んだ。
「はぁ……はぁ……!」
息切れを起こしながら、何とか構え直すリザードボス。
「……」
口から出た血を拭い、冷静に構え直すヴィクトリー。
「……しゃあっ!!」
先に動いたのは、ヴィクトリーだった。
高速移動で眼前に迫り、顔を蹴り上げた!
「!!?」
顔を蹴られ、ぶっ飛ぶリザードボス。
「っぐぅうっ!!」
大勢を整えて着地し、剣の刃を煌めかせる。
「ぁあああっ!!」
走ってヴィクトリーに迫り、猛攻した!
迫り来る無数の斬撃を、ヴィクトリーは腕でガードする。
「ぐ……!!」
「だぁああっ!!」
リザードボスの方は限界が近く、必死のようだ。
その証拠に一撃が重く、気を纏った状態でも痺れて、切り傷が入っている。
「うぉおおおっ!!」
ヴィクトリーも全力を出して、猛攻した!
猛攻は、超スピードでの攻防へと変化する。
「だぁだだだだだだだだっ!!」
「ぁああああーーーっ!!」
ノーガードで、二人はぶつかり合う。
切られ、殴られ、刺され、蹴られと、互いにダメージが蓄積されていった。
「ま、負けるわけにはいかない……!!」
「ああ、俺もだ!!」
攻防が激しくなり、一歩も引かぬままの状態が続く。
しかし……
「っ!!?」
ヴィクトリーのパンチが、リザードボスの顎に入った!
それは、まさに会心の一撃だった。
「っぐ……!!?」
顎を打たれたリザードボスは脳震盪を起こし、揺らぐ。
「ここしかねぇ……!!決めてやる!!」
ヴィクトリーは、リザードボスの胸を二本指で指す。
「くぅう……!!」
短剣が、その手に刺さる寸前だった。
「超龍閃撃!!」
気を込めたワンインチパンチが炸裂して、リザードボスをぶっ飛ばした!
「っぐはぁあああ……!!?」
リザードボスは後ずさり、ダウン寸前の所を踏ん張った。
まだ倒れないが、これはチャンスだ。
「よし……これで終わりだ……!!」
ヴィクトリーは、渾身のパワーを込めてかめはめ波を放つ体勢をとった。
「か……め……は……め……!!」
「っぐぐぐ……!!」
リザードボスが、顔を上げたその時……
「!!!」
ヴィクトリーは、リザードボスの懐に瞬間移動していた。
その手に、膨大なエネルギーを込めて……
「し、しまっ……」
「波ーーーッッッ!!!」
リザードボスに瞬間移動かめはめ波が入った!
瞬間移動で懐に入り、全エネルギーをリザードボスにぶつけたのだ。
「そ、そんな……まさか、不覚を取るなんて……!!」
ここで、大爆発が巻き起こった!
「……ふぅ……」
ヴィクトリーは、スーパーサイヤ人を解いて息を吐く。
その前に、黒焦げになったリザードボスが倒れた……
「ぃよっしゃー!」
激戦の末、スーパーサイヤ人になり、遂にリザードボスを倒した。
ヴィクトリーは拳を掲げ、勝ち名乗りを上げる。
これで、ウロコ盗賊団を成敗することができたのだった……

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