東方始天神 (永夜 報)
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第霊章 神代以前
1話 超爆発のその前の


『突然ですが、貴方は死んでしまいました!!』

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

 

    

 第一話 超爆発(ビックバン)のその前の 

 

 

 

 

 

『いやいや、は? じゃありませんよ。

死んじゃったもんは仕方ないんですから』

 

なにを言ってるんだ、こいつは。

目の前に立っているのは幼い少女だった。

 

もうちょっと丁寧に説明すると、

 

かなりの美少女で、銀色の髪を伸ばしている。目の色は金色で・・

 

まあ、そんなことより。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。一体これはどういうことだ?」

 

彼女は露骨に嫌そうな顔をして

 

『理解力低すぎやしませんか?

今の流れで理解できないやつがいるとは思ってなかったです』

 

・・・ちょっと酷くないか?

と、言うよりもここはどこだ?

 

『今更ですか。ここは要するに天国っぽい場所です』

 

心を読むな!!

 

・・・と、言うより天国?

俺、死んだの?

 

『最初に言いました。

話はしっかり聞きましょう』

 

あ、はい。

 

じゃなくてよ。

 

「なんで、俺は死んだんだ?」

 

『ありゃ、覚えてなかったんですか。

となると完全に無意識の行動だったんですね。

やはり貴方を呼んで正解でした』

 

あぁ、そういえば、思い出したような気もするぞ。

 

 

たしか・・・

 

 

 

 

『はい、貴方は他人の子供を救って自分の命を落としました。』

 

 

 

 

ああ、そうか。

 

『なかなか、主人公らしい死に方でしたよ』

 

うーん。そういう小説(ライトノベルとか)読んどいてよかったなぁ。

助けた子供はどうなった?

 

『無事です。かすり傷一つありませんでした』

 

なら、よかった。

 

「てか、お前誰だよ」

 

ようやく当然の質問を投げかけた。

 

『神もどき』

 

「なにそれ。そもそももどきってなんだよ」

 

彼女は俺の素朴かつ真っ当な疑問を無視して、発言を続けた。

 

『さて、どうします?』

 

「どうするってどういうことだよ?

俺は死んだんじゃないのか?」

 

『ありゃりゃ、つまんないの』

 

いらっ。

 

少女はため息とともにその言葉・・・

 

運命の言葉を吐き出した。

 

 

 

『貴方の目指したものは届いたんですか?』

 

「へ・・・?」

 

彼女は言葉を紡ぐ。

 

『貴方はあのたった十四年で満足出来ましたか?』

 

俺は声を出せない。

彼女の言葉が、頭の中で響いている。

 

『やり直したいと、思いませんか?始琉 神輝君?』

 

彼女は俺の顔を覗き込んだ。

 

その言葉は、まるで

 

 

 

 

再生の切符だった。

 

 

 

 

 

「やり直すってどういうことだ?」

 

俺は彼女に問う。

 

『あら、元の世界で散々観てきたじゃないですか』

 

散々観てきた・・・なんだろ?

『パソコンの画面にかじりついて、飽きもせず毎日見ていたではありませんか』

 

パソコン・・・ネット・・・小説・・・神様・・あ、

 

 

「神様転生か!」

 

『正解です。貴方には『東方project』の世界に転生してもらいます』

 

 

 

「・・・・・・え、マジで?」

 

俺は東方好きである。

まあ、なんちゃって好き。といったところか。

 

 

「え、いいのか?」

 

『いいからそうなったんですよ』

 

ふつーにうれしい。

 

『ついでにいろいろとチート能力もついてきます』

 

キター!転生チート!!!

 

『まず神様に生まれます』

 

よっしゃぁぁぁぁああ!!! 

 

 

ん?

 

 

「神様?」

 

『ええ。で、次に転生時間ですが・・・』

 

「ちょっ、ちょっと待て。神様転生ってそういう意味でもか?」

 

「そうです」

 

あっけらかんという彼女にちょっと自分の脳内が追い付いてないんですが。

 

『で、転生日時はビックバン10分前です』

 

ファ!?

 

『ついでに能力は『創造する程度の能力』です。・・・なんかチートにはありきたりですね』

 

・・・。

 

『次に性別ですが・・・あれ、どうかしましたか?』

 

「・・・おまえが伝えたことがどれもこれもショッキングすぎる」

 

既に俺のライフはとっくに0である。

 

「お前は俺に何を求めているんだあ!!??

元普通の男子学生だぞ!?

いきなり神様なんてできるわけがないだろ!?」

 

『気にしなくていいです。

自分の好きなように生きててください』

 

んなこと言われたって、無理だろ。

 

『ん、そうですか。困りましたね。

まあ変更はないんですがね』

 

ええ・・・。

 

「救いは?」

 

『もちろん、ないです』

 

勿論って酷すぎるだろ。

 

『じゃあ、早速行きますか。何か連絡があったら能力で聞いてください』

 

「ちょっと待って、心の準備とかいdじぇbんx四dんじゃxkンwンkqjx」

 

最後のほうは言語にすらなっていなかった・・・。

 

『そうだ、』

 

なんだよ。

 

『新しい名前をあげましょう』

 

名前?

 

『そうですね・・「始琉 神輝」ですから入れ替えて、私の名前をあげて・・・』

 

そして転生が始まった。

 

『貴方はこれから『始天輝 神琉』です』

 

『さぁ行きなさい。『始天輝 神琉』。貴方はここで生きるのです』

 

 

 

 

 

 




この小説()を読んでいただきありがとうございます。

初投稿で至らないところが多いと思います。
まだ学習不足の駄文ですが精進していきますのでよろしくお願いします。






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2話 霊異の御神籤

  

 第2話 霊異の御神籤・・・A Sacred Lot

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、名前つけられたての『始天輝 神琉』です。

 

なんか、目が見えない&動けない&声が出せない。

 

『アーアーアーアーア、聞こえてますね』

 

お、神様もどき。

 

『もどきやめてください。遅れましたが、私の名前は『天地(てんち)』です』

 

自分で言ってたろ・・・もどき。

 

『しつこいです。それよりまず,能力の使い方を教えましょう』

 

ああ、お願いします。

 

『念じるだけです』

 

念じる?

 

どこの超能力だよ。

 

まあやらないより取り合えずやってみようじゃないか。

 

んー・・・。

 

ほっ、と。

 

『あ、出来ましたね』

 

そんなんでいいのか。

 

『えっと、この能力は『境界を歪める程度の能力』みたいですね。

八雲紫の能力の進化といったところですかね?』

 

ふーん。

 

『じゃあ、その調子でどんどん能力を身につけてください。

ちょっとやることがあるんで』

 

やること?

 

ま、いいか。

どんどん能力を身につけていこう。

 

 

 

5分ほど後

 

 

 

大量の能力を身につけた。

多すぎるくらいだ。ま、もう少し自重すればよかった、と思うが。

 

 

取り合えず多すぎる能力は放っておいて。

 

「確かビックバン十分前といったな?」

『ええ、そろそろですね。あと3分と43秒くらいです』

 

普通にしゃべれるようになった、いや、した。

今は真っ白な、何もないだだっ広い空間の中にいる。

俺がさっき作った『境界を歪める程度の能力』の空間らしい。

 

 

『取り合えず自分の耐久性を限界まで上げてください。

ビックバンの力を測ったことがないんですが、

並の力じゃ耐えられないでしょう』

 

「ふーん。じゃあ・・・。」

 

先ほど手に入れた

『干渉されなくなる程度の能力』を起動する。

 

『準備できました?

それでは、ビッグクランチに境界をつないでください』

 

ok!

 

それじゃ行ってみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

世界とは名前だけだった。

その空間には何も存在しなかった。

 

生物、植物、鉱物・・・いや、

 

物質も、色さえも、音も、感覚も、何もない場所だったのだ。

 

 

『やっぱり、つまんない空間ですね』

 

いや、つまんないというか・・・

 

寂しすぎるし、辛すぎる。

こんな空間にずっといたら気が狂う。

 

『そうですね。貴方の精神の安寧と、私の退屈を紛らわすために、

 

 

 

 

超  爆  発(ビックバン)でも起こしますか』

 

 

 

そうだな、ちゃっちゃとやっちゃってくれたほうが・・・ん?

 

 

今なんて言った?

俺の耳がおかしくなければビックバンを起こすと聞こえたんだが?

 

『良かったですね。貴方の耳はとても正常ですね』

 

つまり、こいつは

 

宇宙誕生は自分のせいだと言っているのか。

 

 

うん。(元)一般人には理解できなそうだな。

 

 

『では、さっそく』

 

彼女が大きく息を吸い込み、目の前にトランプのような一枚の紙を出す。

その紙にまるで今、絵が描かれているかのように色彩が宿った。

 

そして今までで、初めて声を発する。

 

「始天『誕生の超爆発』ッ!!」

 

次の瞬間、世界に始まりが起きた。

全ての歴史は今刻まれ始めた!!

 

なんか・・・やばそう!?

 

『ああ、下手に動かないほうがいいですよ。

死ぬかもしれませんし、死ななくてもどっかに飛ばされるかもしれないですから』

 

そんなことをつぶやいている最中にも新しい紙を生み出し続けている天地。

 

あれ? その紙ってもしかすると・・・?

 

『ええ、後にスペルカードと名がつけられるものです』

 

そして彼女は2枚目をコールする。

 

「生星『ラブスター』ッ!!」

 

次の瞬間、星の生まれる世界、宇宙の基礎ができた。

 

そして、追い打ちをかけるように、

 

「誕命ッ、」

 

「『ライフヴォヤージュ』!!!」

 

世界を生んだ。

 

生命を生んだ。

 

始まりを生んだ。

 

 

これがどれだけの時を刻み、終わりが来ても、終わらない夢を、

 

 

()り続ける幻想を、真実の(偽りで狂った)歴史を。

 

 

始まってしまった物語。

 

もう止まらない。

 

 

(happy end)と出るか、(bad end)と出るか。

 

 

           

それを知るものは未だ、()()()()にもいない。

 

 

 

 

 



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3話 遥か138億年の彼方を目指して

 

 

 

 

「しかし、何すればいいんだ?」

 

今、俺はあの自分で作り出した白い空間にいる。

 

正直なところ、記憶じゃ130億年ぐらい先の出来事なんだよな。

 

『ふぅ、疲れた・・・そうです、あなたの生きていた時代まで、あと138億年ほどあります。』

 

 

・・・何して過ごそ。

130億年もぼーーっとしてたらボケそうだな。

 

『修行するとか、寝るとかそういうんじゃないんですか?』

 

「なんか違くね?あの、せっかく東方の世界におりたったってのに、

こう、あのふれ合い?がないってのは悲しい・・・かなぁ?」

 

天地は少し考えた様子を見せて、

 

『ま、仕方ないんで我慢してくださいね』

 

やっぱり酷いな。

 

「でも、何かして生きていかなきゃいけないだろ」

 

『自分で考えて下さい』

 

なんか冷たいな。

 

『私には一つ用事があるんですよ。

では、あと138億年頑張ってください。

で、これを』

 

そう言って天地が差し出したのは

先ほどまで自分の腕につけていた腕輪だった。

 

「ん?これって・・・」

 

 

『これは天の腕輪ですね。

天を使う程度の能力を使うことが出来るようになります。

あとトランシーバーみたいに、私と会話したりとかも』

 

便利・・・なんだろうな。

 

『ああ、それでは私は少し用事があるので、

何か用があったらその腕輪で呼んでください。それでは』

 

「おいちょっと待て!?まだ聞きたいことがたくさんッ!?」

 

だが、自分の願いもむなしく天地は消えてしまった。

「・・・なかなか面白い状況においてくれたな。クソ野郎・・・!」

 

 

 

 

 

東国までは遥か遠い時間が。

 

だが、彼はけっしてあきらめはしない。

 

その先に遥かな幻想が待っていると信じて。

 

 

 

 

そして一人俺は残されてしまった。ああ。

 

「うーん。

どうにかして能力の把握と封印をしなきゃいけないだろうか」

 

取り合えず創造する程度の能力で、探知する程度の能力と封印する程度の能力を

手に入れ、

能力の整理を開始する。

 

 

 

 

 

「はぁ。

まさかこんなにも能力を作っていたとは。

我ながら怖いような気がする」

 

自分はどうやら様々な能力の上位互換を手に入れていたようだ。

 

八雲紫の能力の派生である『境界をゆがめる程度の能力』を

筆頭に、

『魔導回廊を支配する程度の能力』とか、

『時間軸を抜ける程度の能力』とか、

『記憶を整理する程度の能力』だとか。

 

取り合えず使えそうな能力以外は浅い封印を施しておく。

 

あと、東方キャラに全く依存しないタイプの能力もそこそこあった。

 

代表例で行くと、『始力を操る程度の能力』とか。

始力というのが全く分からない。

 

あと、『超爆発を起こす程度の能力』と。

かなり、物騒な能力である。

 

要するにチートということである。

今、この能力たちのことを考えるのはかなり面倒くさそうだ。

 

 

ほっとこ。

 

 

 

じゃあ、地球が誕生するまでのあと100億年ぐらいは何をして過ごそうか。

 

 

それこそ寝て過ごすか、修行するかの二択じゃ・・・あ。

 

「もしかすると能力を使っていろいろできるかもなぁ」

 

境界をゆがめる程度の能力で現代のものを持ってくるとか。

それが出来たら、もしかすると・・・。

 

「やってやろうじゃんか、面白そうだ。

幸い時間はたっぷりあるしな」

 

こうして彼の無駄で、長い研究と修行は始まったのである。

 

 

 

 

 

 

「なんか、こう・・・・

すごい魔法使えるようにしてみようかな?

マスタースパーク!!みたいな!」

 

『お好きにどうぞ』

 

「あっ!

天地どこ行ってやがった!」

 

『えへへへへ。

ちょっと用事があってですね。

それではまた』

 

「あっ!次はどこ行くんだ!

待ちやがれおい!」

 

 

 

 

 

 

東国まであと128億年ぐらい。

 

 

 

 

 

 

 




次回からは文字数も増やしていきたいです。

次は魔法のお話!








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4話 魔導回廊

本日3話目の投稿。


かなりペースを上げていますが、
完全な不定期ですのでご了承ください。


それではどうぞ。












 あれから数億年流れて・・・・。

 

 遥か昔、遠い銀河系の彼方で・・・。

 

 

 

「この前置きはなんだ?

訳が分からん。元ネタを見たことはあるんだが」

 

『あ、そうなんですか。

まあ、銀河系も何もそんなにないんですけどね』

 

 能力の整理をしていたら、実に数億年ぶりで意思疎通をした。

 かなり久しぶりであったからコミュ障みたいになっているかと、

心配していたが別にそんなことはなさそうだな。

 

『それで今は何をやっているんです?』

 

「さあ?なんだと思う?」

 

 すごく適当に返す。

 でもこいつなら正解しそうだな。

 

『そうですねぇ。

ただの勘ではありますが『魔力の制御法について』、考えているのでは?』

 

 やっぱり当てやがったか。

 正直なところ心を読んだとしか考えられないし、

たぶんそうだろう。

 

「・・・・便利だな、それ」

 

『伊達に長く生きてるわけじゃないですよ。

そもそもあなたも似たようなもの持ってるじゃないですか。』

 

 なるほど。

 数億年でもこいつにとっちゃ一瞬ってことかよ。

 

 でだ。

分かっているなら手伝ってくれるか?

 

『ハイ。丁度暇してたんですよね♪』

 

 かなり、嬉しそうだ。

 

「じゃあ、お願いしましょう!」

 

 

 

 

「ていうかお前今まで何してたんだ?

こんなだたっぴろくつまんない宇宙空間でやることなんてないだろう?」

 

 漂う魔力を練り続け、それを使って魔法を使う空間を創る。

そういう作業をやっているときに、気になったので聞いてみた。

 

『・・・・・・・・好きなことやってりゃいいあなたとは違うんですよ。

私はここで星を作ったりそれで銀河を創ったりしているんですよ』

 

 なかなかめんどくさそうな作業じゃないか。

勿論やりたくないね。

 

『でも、他にやることもないんですよ。

暇すぎて暇すぎて。あー』

 

 ・・・・・こいつも大変なんだな。

・・・ただし同情はせん。

 

 そもそもこいつはなぜ俺を連れてきた?

いや、一億年もたっているのに今更だがな。

 

 こいつは俺を連れてきた理由を全く話していない。

いや、根本的にこいつはいったい誰でなんで俺をここに連れて来ることが出来た?

 

 こんな空間に干渉するなんていったいどういう存在なんだ?

 

 こいつに関しては疑問が多すぎる・・・いや。

 

 俺はこいつを何一つ知らない。

知らなすぎる・・・・・

 

 

『神琉君?手が止まっていますけど?』

 

「ッ!・・・・済まない。すこし考え事をしていた」

 

 突然に声をかけられちょっと動揺する。

 

『隠し事は無意味なんですよ。学習したらどうですか?』

 

 ・・・・・一瞬でバレてる。

 

『すみませんが何か教えるつもりはありませんし、聞いても何も答えません。

あと、探ることも無理です』

 

 ・・・・・こいつを上回れる自信が全くない。

策士という意味ではなく・・・・性格が悪い。

 

 

「はあ・・・」

 

『ほら、ため息なんてついたら進む作業も進まないんですよ?

もっと手を動かす!!』

 

「わかったわかった!

もう何も言わなくてもいいよ!」

 

 ちなみにさっきから手を動かすと言ってはいるが精神を使って、

魔力を通すパイプを作っているため手は動いていない。

 

 そして魔力を作る空間を創造し、

次に魔力を回す回路を作って、

最後に・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『この後何をするんですか?

もう特にしなくてはならないことはなかったはずですが?』

 

「いや、星を創ろうと思ってな」

 

『星ですか?なんで今作ろうと?』

 

 天地はどうやら理解できていないようだ。

・・・一瞬だけでも有利に立ててちょっとうれしいぜ!

 

『貴方は本当に失礼な人ですね!

で、どうしてなんです?星を創ろうと?』

 

「うん、星といっても魔力の塊を創ろうと思ってな」

 

『魔力の塊・・・?

ああ、そういうことですか。魔法を使うときの標として使うのですね』

 

 正解だ。

つまり自分が魔法を使いやすくするための、道具をつくるということだ。

いや、おそらく星がなくても扱うことはできると思うが。

 

『なら作るなら作っちゃってください。

そうなるとここら辺にもう惑星は作れませんね・・・。

魔力の塊なんて危険な物体の近くに星を創れません』

 

「はいはい、そんじゃ作っていきましょう!!」

 

 一応練習したから、作れるとは思うが・・・。

自分の魔力を固めてそれを一つにしていき、結果的に自分の十倍くらいまでに作った。

 

 まだちょっと足りない。

あと百倍ぐらいの魔力が必要だろう。

 

 

 

 

 

 

 数年かけて魔力を集めて、一応満足するぐらいには集めることが出来た。

それでも最初に求めていたようなものよりかは小規模で稚拙なものだ。

しかしこれで手を打たないと今度は十年単位で時間が必要になる。

 

『終わりました?』

 

「ああ、あとは仕上げに空中に浮かせるだけだな」

 

 空中に浮かせる。

ふつうは魔力の塊なんて宙に浮かない。

それを可能にするのはとても強い・・・・具体的にいうと

「縛りから解放される程度の能力」である。

 

・・・・博麗霊夢の能力の上位互換である。

 

「やっぱり主人公補正すぎるよな・・・

ありとあらゆるものから『浮く』なんてな」

 

『その能力の上位互換をつかうあなたはいったい何になるんですか?』

 

天地がちょっと呆れてるがが放っておこう。

 

 早速この能力を使って・・・・ハイ浮いた!

 

「これで終わりっと!」

 

『お疲れさまでした』

 

特に興味もなさそうに天地が拍手をしてくれる。

 

『まあ、これで魔法の概念が誕生して仕事が一つ終わりました。

あと、この星に名前を付けてあげてください。

それも通過儀礼なんで』

 

 名前?

・・・全く考えてなかったな。

 

「なんかいい名前あるか?」

 

『・・・・わかんないです。

私自身名前はすごく適当につけてます。

なんか東方関係でどうでしょうか?』

 

『・・・・パンデモウム』

 

 適当に、本当に適当に考えた名前をつぶやいてみる。

 

『パンデモニウム、ですか?いいんじゃないですか?

魔界の中の街の名前ですよね』

 

「まあ、そういうことなんだけどね」

 

『?

どういう意味です?』

 

どうやら割とマジで理解できなかったらしい。

 

『意味なんてないよ・・・』

 ・・・・すごい、適当だな。

そんでもって怒られそうだが気にしちゃいけない。

 

じゃあ、本当に完成か。

 

 

 

 

 ・・・・・また暇になるな。

 

 

 

 

 

 

 

東国まであと124億年。

 

 

 

 

 

 

 




惑星の名前は元ネタ分かった人が多いでしょう!

この後出てくるキャラも分かったでしょう!

何てったってパンデモニウムのプラネットだもんね!!








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5話 始点能力制御帖

 

 

魔導回廊を創ってから約2億年。

俺は能力の考察を進めていた。

 

 俺の能力にはいったいどういうものがあるのか?

そして、どういうことが出来るのか?

 

 恥ずかしながら全くと言っていいほど把握できていない。

一応今わかっている能力をあげていくと、

 

『境界をゆがめる程度の能力』、『封印する程度の能力』、『時間軸を抜ける程度の能力』、

『記憶を整理する程度の能力』、『干渉されなくなる程度の能力』、『魔導回廊を支配する程度の能力』、

『探知する程度の能力』、『縛りから解放される程度の能力』・・・・こんなもんか。

 

 

 

 東方projectのキャラクターに由来するものはな。

 

 

 

 

 あとのいくつかである『創造する程度の能力』や『始力を操る程度の能力』、

超爆発・・・つまり『ビックバンを起こす程度の能力』。

 

 これらは素晴らしい原作崩壊になる恐れがある能力だと考える。

 

 ・・・考える間もなくそうである。

明らかに世界を滅ぼすレベルのものもある。

 

 俺は世界のバランスを考える系チート野郎になりたいんだ!

適当にチートを使って無双したいわけじゃないんだ!

ただ適当に生きていきたいんだ!

 

 つまり、ビックバンなんてこの身に余る能力はいらないというわけなんです。ハイ。

 

 ただ、宇宙誕生から生きてる時点で言うほど静かには暮らせなさそうである。

 

 

そんなことより。

 

 

 

 この能力達をどのようにしていこうかと。

正直なところさっき言った通りチートはいらないんだ。

 

 だから多分使わない能力は封印してしまってよいと思う。

例えばどのようなものか。

 

まず『ビックバンを起こす程度の能力』。理由、危険だから。以上、次。

『干渉されなくなる程度の能力』。必要ないから、次。

『暗黒を操る程度の能力』。使わないだろうから、次。

『氷結させる程度の能力』。使わないだろうから、次。

『気配を操る程度の能力』。・・・・・・

 

「これ、便利そうだな。封印しないでおくか」

 

たぶん美鈴の能力の上位互換じゃなかろうか。

 

次行ってみよう!

 

『元素を操る程度の能力』。

「えらく壮大だが使わないだろう。封印」

 

『時空間を操る程度の能力』。

「時止めナイフやりたいから封印しない」

 

『運命線を決定する程度の能力』。

「強そうだけど無しで」

 

『破壊を司る程度の能力』。

「物騒だから無しで」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・紅魔郷だけでこれかよ!?

なんかまだ6個ぐらいしか封印してない気がするのにすごい疲れたぞ!?

 

 これを紺珠伝まで続けていくのか!?

そしたら結局、チートは変わらないじゃんかちくせう!

 

 俺は元の世界でいろんなネット小説を読んできたが。

チートなのもムリゲーなのもいろんなのを読んできたが。

 

結論。

「バランスって大事」

 

まさか自分の多すぎる能力に苦戦するとは思わなかったぜ!

 

 

 

5年後くらい後

 

 

 

 

「ああ!!、終わったぁ!!」

 

 やっと終わったぁ!!

まさか数年を能力の整理に費やすなんて考えもしなかったぜ!!まったく!

 

 正直ほとんど整理は出来てないと思う。

てか、出来てない。

 

 確か最後のほうは・・・・

 

 

 

「『狂わせる程度の能力』!!使わない、封印!次!

『純粋な物質を創る程度の能力』!!たぶん使わない、以上!次!

『三つ以上の頭を持つ程度の能力』よくわかんないから取り合えず封印!ハイ終わり!」

 

 

みたいな感じだった。

 

 

 

 適当なもんだな、我ながら。

 

 

で、使いそうな能力をピックアップして紹介してみる。

 

 

 

『境界をゆがめる程度の能力』。

今一番お世話になってる能力だろう。

 

 名前から察するに紫と同じ能力だが紫よりも強い能力だと思う。

つまりチ-トなんだろう。次!

 

 

 

『魔導回廊を支配する程度の能力』。

 

 名前そのまんまだからいいが、

魔導回廊を創る前からこの名前がついていたのはどういうことなんだろう?

 

あと、これは魔理沙の能力の派生らしい。さっき調べて分かったんだがな。

 

 

 

 

『時空間を操る程度の能力』。

 

時間戻せる・時間の速度を須臾以上に遅くできる&永遠以上に速くできる。

 

 チート過ぎて笑いしか出ないぜ!次!

 

 

 

『正体を変える程度の能力』

 

ぬえの能力の派生だ。

 

 見た目を完全に変化させることができる!

性格も言動も似せれば完璧になるだろう!!

 

 で、どうした!

転生ものにありがちな、見た目変化をやれってか!?

 

 もうやったよ!!

黒髪黒目の一般的日本男子中学生から、

白髪オッドアイの一般的中二病主人公に変えたりして遊んだよ!

 

 で、終了。

 

 

「で、どうしよう。

まーたやることなくなっちゃった」

 

 

 なので暇になってしまったのである。

 

 そもそも今日はなんかテンションが高い。

というのも10億年生きてくるとこのくらいのテンションで生きていかなきゃいけなくなるのである。

 

「じゃあ、この能力でいろいろ遊んでみようかな」

 

 結局、手に入れた能力で暇をつぶすくらいのことをするしかないのである。

 

 

 

 

 また1億年ほど後

 

 

 

 「あああああああ!

暇だぁぁぁ!!暇で気が狂うぅぅぅ!!

あばばばばぁぁぁ!!

ゆっかりんかわいいぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 俺は気が狂ってしまった。

いや、冗談だがそれぐらい暇なのだ。

 

 そんでもってなんでいきなりこんなことを叫び始めたかだが・・・・

 

『うるさいですよぉおお!!

貴方の声はいま能力で宇宙全体に広がってるんですよぉぉ!?

恥ずかしくないんですか!?

そもそも正気ですか!?』

 

「ああ(キリッ)」

 

 能力を使って遊ぶといったが能力にも様々なものがある。

俺は今回、光の三妖精のひとりのルナチャイルドの能力の派生を使わせてもらった。

 

 名付けて『音を操る程度の能力』!!

 

 悪戯(宇宙規模)にはぴったりの能力だぜ!!

 

『ああ、暇なんですね!

でも私に迷惑をかけないでいただけるととても嬉しいんですが!』

 

「あっははは、ごめんごめん。

暇で暇で仕方なかったんだ。次から気を付ける(もっと頑張る)ね」

 

『ルビに悪意が感じられます。

もう一度謝罪をどうぞ』

 

悪かったと思ってる(俺の行動は正しかった)反省しているし(反省はしていない)

後悔もしている(後悔もしていない)。ですのでどうか怒りをお鎮めください」

 

『・・・なんかどうしようもないですね。

分かりましたけど迷惑はかけないでくださいね!

絶対ですよ!?絶対ですからね!?』

 

分かった分かった(オーケー、フリだな)!任しとけ」

 

『フリじゃないですよ!?』

 

チッ。

 

 

 こんな風に俺の生活は過ぎていく。

楽しくも少し寂しい生活だ。

 

 

 

 早く地球誕生しないかな。

 

 

 

 

 

 

 東国まであと121億年。

 

 未だ東方の国は遠く。

 

 母なる大地もまだ遠く。

 

 

 彼はただ待っているだけ。

 

 

 

 




 ・・・・テンションが高いと思われます。

自分の文章は全く安定しないのでこんなことになります。

読みづらかったらすみません。






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6話 天地開闢

『すみません神琉君』

 

「・・・・・・・」

 

 

『おーい神琉君?』

 

「・・・・・・・」

 

 

『おーい神琉く・・・死んでる・・!?』

 

「・・・・・・・ハッ!?し、死んでねぇぞ!?てか顔近けぇよ!!」

 

俺が気付いた時には既に天地の顔が目の前にあった。

 

 どうやら、彼女の脳内では俺は死んでいたらしい。

 

『・・・一応聞いておきましょう。何やってたんです?』

 

「いや、暇だから瞑想でもしてたんだよ。

もしかすると強くなれるかなって!」

 

 これで俺は瞑想により宇宙の波動の力を手にした!!

俺は宇宙の意思と一体となりそのまま光へと帰る・・・!

 

『・・・手にしてもいませんし、帰りませんから

現実に帰ってきてください』

 

 ノリ悪いなぁ。

 

 ま、いいか。

 

 

 なんか真剣な顔してるしな。

 

 

 モードをおふざけモードから真面目なモードに変えさせていただく。

これは衣玖さんの能力の派生、『空気を変える程度の能力』によるものである。

 

 

『いいですか、神琉君』

 

「なんだよ・・・・急に真剣になっちゃって」

 

 天地の目は今まで見たことのないくらい真剣みを帯びている。

 

 彼女の口から今まさに放たれようとしている言葉に、

柄にもなく体をこわばらせて・・・。

 

 

 

 

 

『地球が出来ます』

 

 

 

 へ?

 

 

 

『地球が出来ます』

 

 

 

 

 ・・・・・・

 

 

 おっしゃああああぁぁぁぁ!!

 

「ち、地球誕生ってマジか!?マジなのか!?」

 

『ま、マジです』

 

「やったぜ!これで俺の地球生活が始まって、んでもって東方キャラとも会えるんだろ!?」

 

『ま、まぁ。ですが、』

 

 

「うぉおおしゃああ!!最初はえーりんだよな!?

いろんな二次小説で読んだぞ!で次が諏訪の国譲りで・・・

やったぁぁ!マジでテンション上がってき」

 

『あの、神琉君?

お喜びのところ申し訳ございませんが、まだ生命体は生まれませんよ!』

 

「うおっしゃああぁぁ・・・・え?」

 

 え?

地球誕生って言っただろ?

 

『・・・・そもそも日本も生まれてないんですよ?

少なくとも貴方の知っている人たちが出てくるのはあと20億年以上かかります。

長い間何もしてなくてボケたんですか?』

 

「いや、そんなことはないと思うが」

 

 まさかもうボケたなんてことはないだろうが、

そういわれると何となく心配になってくる。

 

 そうじゃないか。

そもそも地球が誕生してすぐに生物が生まれるわけがない。

 

 ・・・・・と、なるとだ。

 

「まさか、俺ってもう人間じゃなかったりする?」

 

『・・・・・えらく、今更ですね。

貴方は人間じゃありませんよ、勿論。

かと言って安易に神様、という訳でもありません。』

 

 あれ?でも確かお前は・・・・。

 

「神様に転生するだとか、なんだとか言ってたよな?」

 

『あれは便宜上です。と、言うよりも後に神と呼ばれるようになります』

 

 ふーん。

・・・・ちょっと待て。一つ見逃せない発言があったぞ。

 

「後に?」

 

『はい。後に、です。

・・・・・・・気づきましたか』

 

 

 まさか、こいつ。

 

 

「お前、未来視ができるのか?

しかも不確定ではなく()()()()()()が?」

 

 

『ハイ。私には何が起ころうと変わらない未来の姿を見ることが出来ます。

なので、どう誰が動こうと未来は変わらないんです。

つまりこの能力にさほど意味はないんです。

・・・・なんでそんな人を殺せそうな目で見るのはよしてください』

 

 そうはいっても、結構うらやましい。

実用性ではなくそういう能力を持っている、ということがかっこいいのだ。

 

 

 そんなことより。

 

 

『いえ、未来視の話より先にしなくてはいけないことがありましてですね』

 

「?」

 

『いえ、地球上でこれから生活をしてもらうことになるんですが、

いくつかルールを守ってほしいんですよ』

 

「ルール?と言うとどんなものだ?」

 

 正直ルールを設定する理由がわからない。

 

『簡単です。

一つ、貴方が転生者であることを伝えないこと。

まあ、これは転生・召喚モノについてはお約束ですね』

 

 まあ、分かる。

原作知識とか持ち込まれたらたまらないだろう。

 

 他には何があるんだ?

 

『次です。

二つ、私の存在について語らない。

理由は私の力があまりにも強大すぎるからです。

恐怖の対象としても信仰の対象ともなりえます、私は。

そうなると私の力のバランスが崩れてしまいます』

 

 ほうほう。

で?まだあるだろ?

 

『うーん。非常に言いづらいのですが

ちょっとばかし手違いがございましてね』

 

 ほほう。

手違いってなんだ?

 

『・・・・まさか、貴方がそんなに詳しく日本神話を読み込んでいるとは思っていなかったんですよ』

 

 日本神話?

 

『はい。貴方のせいで本来の歴史とちょっと・・・いえかなりズレが生じてしまってですね』

 

 ほう。

 

『歴史の修復なんで結構時間がかかります』

 

 ほ。

 

『なので、歴史の修復作業に大きな負担をかける時間の巻き戻しと早送りはしないようにお願いします』

 

 その程度か。

なら、全然問題はないな。

 

 

『ルールは理解できました?』

 

「ああ。

俺が転生者であることを言わない、

お前のことをしゃべらない、

時間の早送りと巻き戻しはしない、

この三つだよな」

 

『はい。覚えてくれたようでよかったです。

それでは早速、地球を創りに行きましょう』

 

「おう!」

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・まてまて。

いつかこんなことがあったような気がするが。

 

 

「お前今なんて言った?」

 

 

 

『え?ですから地 球 を 創 ろ う と言ったんですよ』

 

 やっぱりか。

 

 予想はしていたがそっから創るのか。

 

 

『それでは神琉君。

地球誕生予定地へ転移をお願いします!!』

 

 

 

 

「ここが地球誕生予定地か。何もねえな」

 

『何かあったら地球が創れませんから。

さて、まずは何を創るでしょうか?神琉君!』

 

 唐突なクイズタイム!

 

「まずは太陽を創るんじゃないか?

太陽がないと地球は生命が生きられない星だったはずだ」

 

『正解です!商品はこちらとなります!』

 

 そういって天地は一枚の紙を掲げる。

 

 ん?紙?

 

『危ないですから、下がってくださいッ!!!』

 

 やっぱりあの威力のおかしなスペルカードか!

 

 

 

 

 

「陽生ッ!」

 

「『満霊天照之始法(まんれいあまてらすのしほう)』ッ!!!」

 

 

 結果からいうと太陽が完成した。

 

 

 

 次に彼女は水星や金星といった惑星を創り始めた、が長いんで割愛!

 

 

 

 そして最後に。

 

 

 

 

『久々ですよ。こんなに緊張したのは』

 

 

 地球を創るときになった。

 

「久々?どれぐらい時間がたっているんだ?最後に緊張した時から?

お前の久々、っていうのはすげえ長い時間なんだろう?」

 

『そうですね。たぶん私が最後に緊張したのは、10の68乗年以上を軽く超えると思いますよ』

 

 ほう、そりゃ世界を何周も何周もしていておかしくないな。

それがこいつの強さの理由か。

勝てる気がしないな。

 

 

『さあ!

だらだら引き延ばしても意味がないので!

さっさとやります!』

 

「おう!よろしく頼むぜ!」

 

『・・・・・正直ここで無詠唱なんてするとは思わなかったんですよね。

ではいきます!!』

 

 天地が息を吸う。吐く。

 

 

 

その魂の言葉とともに。

 

 

 地球が。生まれる。

 

 

「天地ッ!!!」

 

 

 

 

 

 世界が。

 

 

 

 始まりを刻む。

 

 

 

「開闢ッ!!!!!!」

 

 

 

 その言葉が刻まれた瞬間に、

 

 

 大きく、しかし美しい音が鳴り。

 

 

 全てを吹き飛ばすような強く、それでいて優しい風が吹き。

 

 

 荒々しくも、懐かしい大地が目の前にはあった。

 

 

 

 

 

 地球誕生。

 

 確かに俺の知っている地球とは全く違った。

俺の知っている地球はもっと蒼く、整っていたが。

 

 

 

 それでも分かる。

 

 

 ここが俺の住んでいた星なのだと。

地球なのだと。

 

 

 

『・・・・・なんかすごいですね。』

 

「・・・・・・・・・ああ。

今までは知らなかったが、ほんとに地球ってのはすごい星なんだな」

 

 

 ここが俺たちの星。

俺たちが生きる星。

 

 

 

 

 地球の歴史が、今刻まれ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 東国まであと45億と5000万年。

 

 

 

 

 

 

 日本神話の開始まで。

 

 あと42億年。

 

 

 

 

 

 




 遅れました。申し訳ございません。


 なかなかにはっちゃけた話ですみません。










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7話 雌雄を決せよ!~Magic battle!



一個の話でここまで長くできたらいいんだけどな。








 

 地球が出来た。

それはいいんだ。

 

 問題があるとするなら今の地球は、生物の住むことのできない環境ってことなんだ。

 

 要するに昔の『境界をゆがめる程度の能力』の中にいることの変わりは何もない、ということだ。

 

 地球を創った意味が全くないじゃないか!

 

 

 つまり、暇で暇で仕方ないんです。

 

 

 

 

 うーん、なにしよ。

 

 

 

 

「こうなったら、地球に魔法で爆弾でも落とすか」

 

『やめてください!そんなことしたら生命が生まれなくなります!』

 

 お、天地が出てきた。

てかお前いっつもどっから現れてるんだよ?

気づいたらそこにいるの怖いからやめてくれませんか?

 

『嫌です。そもそもこれ以外の移動手段がないんです。

それと地球に爆弾とかあほみたいなこと実行しないでくださいよ?

そんなことされたらもっと忙しくなるじゃないですか』

 

「そうじゃん!お前歴史の修復でなんちゃらこうちゃらとか言ってなかったっけ?」

 

『ひと段落したんですよ、まだまだ時間はかかりそうですけどね』

 

 ふーん。

てか、お前何のために来たんだよ?

別に今の俺の言葉を聞いて止めに来たわけでもないだろ?

 

『いや、止めに来たんですが・・・・。

あ、なら丁度いいです!』

 

 丁度いい?

何が?俺にはすごくイヤーな予感がプンプンぷんぷんするんだが・・・・。

 

「丁度いいってどういう事だ?」

 

『いえ、神琉君は暇してたんですよね?』

 

「ああ、暇してる、暇してる」

 

 さて。

さっきまでイヤーな予感を抱いていた神琉君はなんでこんな返答をしてしまったのか

後の2億年ぐらいずーっと後悔し続けます。

 

『なら、ちょっとばかり頼みごとをしてもよろしいですか?』

 

「嫌だ」

 

 本当に嫌な予感がする。

冗談じゃなくやばいかもしれない。

 

『えー神琉君暇してるんでしょー?

話だけでも聞いてくださいよー』

 

「・・・・・・聞くだけだぞ?」

 

 

『月創って下さい』

 

「断る!」

 

 

『えー!何でですか!?

今の神琉君の力なら1000万年くらいで出来ると思いますけど』

 

「1000万年だろうが1000年だろうが嫌なもんは嫌だ!」

 

 大体俺なんかに月なんか創らせたら、重大な欠陥とかできそうじゃないか?

この前のパンデモニウムは自分で創ろうと思った惑星だからよかったが、

月ってのは地球のいろんなことに対しても影響してるんだろ?

 

 そんなんを俺に作らせる訳がわからん!

 

『お願いしますよぉぉ~。

どんな魔改造してもいいですし、要塞作ってもいいですから』

 

「そんなのあっても嫌だし、そもそも俺に創らせる理由はなんだ?」

 

 暫くの沈黙。

 

『・・・・・・・・・未来の貴方のために、とでも言っておきましょうか』

 

 

 ・・・・思ったよりそれらしい理由だった!!

なんか真剣味あるよ!?

何?俺が月創ることってそんな重要なことなの!?

 

『それでは創ってくれるんですよね?』

 

「あ、ああ。まあ仕方ねえな」

 

『ありがとうございます!

・・・・これで未来がまた一つ・・・・・』

 

「ん?何か言った?」

 

『いえ、別に』

 

 嘘だ。

今、こいつ未来がまた一つだとかなんとか言っていたぞ。

 

 未来視が出来る奴の言葉は下手に信じることも疑うこともできないんだよな。

 

 きついぜ。

 

「・・・・・・・さあ、月でも創るか」

 

『・・・・・・・お願いしますね』

 

 

 そして前述のとおり創るのに2億年の歳月がかかり、

結局神琉君を苦しませたのに何一つ偽りはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから2億と4000万年ほど後。

 

 

「ああああぁぁ!やーっと終わったぁあ!」

 

『お疲れ様です・・・・ってこのやり取りどっかでやりませんでしたっけ』

 

 そんなことあったっけ?

まあ、そんなことより俺の創った月見てくれよ!

 

『まぁ、いいんじゃないですか?』

 

「なぜ疑問形なんだ!?心配になるだろ!?」

 

 これで重大な欠陥があるとか言われてたらもっと嫌だがな!

 

『大丈夫・・・・・です!』

 

 その間はなんだ!?

マジで心配になるからやめろよ!

 

『ほんとに大丈夫ですから心配しないでくださいよ!』

 

 ならいいんだが・・・・・これで地球に月が落ちてくるとかは嫌だかんな!

 

『あはは・・わかってますよ。・・・・・・・・それで神琉君に一つ頼みごとがあってですね・・・・・

あ、今度は貴方にも得はありますよ』

 

「こ と わ る!!・・・・・さっきのに得は無かったのか」

 

『いや、そんなことはないんですが・・・・・。

いえ、ちょっと決闘をしようかなと考えまして』

 

「決闘?なんでそんなもんを今しようと思ったんだよ?」

 

 決闘なんてする理由がわからないんだが・・・・・・

天地の悪戯っぽい顔を見ていると面白そうな予感がする。

 

『簡単です。ああ、でもあなたはこの言葉を知らないんでしたね』

 

「言葉?」

 

 天地は心底嬉しそうな声で・・・・・。

 

 

『魔法決戦!ですよ!

もっと簡単にいうと「fight it out!」ってことですね!』

 

 

 

 

 

 

 

「だからなんで今更魔法合戦なんてするんだよ!・・・・・ま、面白そうではあるが」

 

 彼女が言った魔法決戦とは要約して

何でもありの本気弾幕・・・・の魔法のみバージョンっていうものだ。

 

 約5メートル先の天地がそれに答えを返す。

 

『いいじゃないですか、楽しそうで』

 

 今、俺らは『境界をゆがめる程度の能力』で創った空間内に少し離れて立っている。

・・・・・あれだ。西部劇の決闘みたいなのをやりたいらしい。

 

 

『では、やりましょう』

 

「了解!・・5秒でいいか?」

 

『いいでしょう。貴方からどうぞ』

 

 不思議と緊張感が空間内にいっぱいになる。

・・・・・・・・たぶん今言うことはないと思うがあの毛玉みたいなんが転がっているのは

いったいどういうことなんだろう。

天地を見てみるが特に何にも感じていないようだ。

・・・・・・・気にしてはいけないのか、アレ。

 

「・・・・・5!」

 

「・・・・・4!」

 

 なんか天地の顔が見たことないくらいワクワクしてるじゃねえか。

声自体あんまり聞いたことないしな・・・・やっぱりいい声だな。

 

「3!!」

 

「2!!」

 

 

 取り合えず今は・・・!

 

 

 目の前のmagic battle!(魔法決戦!)に勝つことを考えようぜ!!

 

 「「1!!」」

 

 

 

 ゼロ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリムゾンファイア!」

 

「フェニックスバーン!!」

 

 

 奇しくも初撃は同じ火の属性だったようだ。

炎同士がぶつかり合い、周りにとんでもない熱気を発する。

 

 

 飛び火の弾幕が飛んでくるので簡単な水魔術で消化する。

 

「次行きます!!グリーン・ジ・アース!」

 

 ・・・早いッ!?

まさかこんなに二枚目を使うのが早いなんて・・・!?

 

 炎をまとった大地が俺の方へと動いてくる。

このままじゃやられる!

 

「・・・・・ウインドウォール!」

 

 風の壁を創り、火を消してみる。

・・・・・よし!成功だ!

風にあおられて先ほどまで大地を包んでいた炎は消えた。

 

 しかし、大地はまだ動き続けている。結局つぶされそうだな。

ならば・・・・・・!

 

「ワダツミウェーブ!!」

 

 大きな波を出して大地を押し戻す!

これも成功!大地は消えていき、残った波が天地の方へ押し寄せられるが・・・・。

 

「まだまだ甘いですよ!・・・カグツチフレイム!」

 

 天地の放った火がそれを押さえつけて、消して見せる。

そのまま放った火を消しこちらに向かって語り掛ける。

 

『ふっふっふ・・・。

その程度ですか、神琉君。まだまだ修行が足りませんねぇ』

 

 イラッ。あいつ調子乗りすぎじゃないか?

てか、技の名前が中二病じみてるぞ。大丈夫か?

 

『うわあああ!神琉君とどっこいどっこいですよぉ!!

あんまり差はないですよ!なんですか!クリムゾンファイアってw』

 

「・・・・・・・フェニックスバーンよかマシだろ」

 

「うっ・・・・・うるさいですよ!!水晶魔法之壱『破片』(クリスタルブレイク!)!!」

 

 なっ!?唐突だな!?

 

 天地が叫んだ瞬間、水晶の魔法陣が宙に浮かんで。

 

 

 割れた。

かと思うと、一瞬で地面へと刺さる弾幕に変化する。

 

「・・・・くっ・・・・!きっ、きっつい・・・・!」

 

 魔法陣から飛び出る水晶の破片は減る様子を全く見せずに、俺のほうへ飛んでくる。

 

 どうする!全くこの破片弾幕をよけきれる気がしない!

破片を全部排除できれば・・・そうだ!

 

 

 

 まずは後ろに跳躍して・・・・水の魔法で破片を流す!!

 

「まさかここでスペル一号を創ることになるとは・・・・・ま、いいか」

 

 イメージするのは・・・・・すべてを飲み込む、波の龍!

 

「荒れ狂い、ただすべてを流せ、水の天龍!流龍『天水龍神』(るりゅうてんすいりゅうじん)!」

 

 俺が唱えたスペルは水で作られた龍の姿をとった。

その龍が高く咆哮すると、天水龍神は水の形となって

刺さった破片を流し、刺さろうとしていた破片までもを飲み込み、

果ては天地までを飲み込んだ。

 

「やった!イメージだけでここまで行くとは!」

 

「ふっふっふ・・・・。やっぱりまだまだ甘いです!!水晶魔法之弐『反射』(クリスタルリフレクター!)!」

 

 はっ!?

 

 そう天地が叫んだ瞬間。

追加で、水晶の弾幕が降ってくる。

 

「くっそぉ!またか!?」

 

 またこの弾幕をよけるのかよ!

まだ天水龍神で刺さった破片を流せるのが救いだが・・・・。

 

「今回はそれだけじゃありませんよ!リフレクター!」

 

 うわ、なにする気だこいつ!?

何と次は光が水晶に反射してきた!

 

「水晶に加えて光もよけろと!?無理に決まってるだろ!?天水龍神!もっと大きく暴れろ!!」

 

 俺の言葉により天水龍神はもっと強く動き出すが・・・・!

 

「っぐ・・・・!光の反射相手だとやっぱり無理があるか・・!」

 

 水は透けているから結局光の弾幕はよけなくてはいけない。

そろそろ限界かもしれんな・・・。

 

 俺は勝負を決めるために一枚のスペルカードを用意する。

 

「よう、天地!そろそろきついから決めさせてもらうぜ!!」

 

『どんとこいです!』

 

 なら遠慮なく・・・・・!

 

 

 行かせて、もらおうかっ・・・・・・・!!!

 

 

 

 

 

「閃光魔法之壱ィイイ!!!」

 

 

 

 それは、

 

 

 

 

 

 

 普通の魔法使い(霧雨魔理沙)の十八番。

 

 

 最大火力の高威力閃光!

 

 

 

 

「『マスタースパーク』ッ!!!!」

 

 

 

 

 次の瞬間。

世界が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふう。

 

 まさかあれほどまでに高威力とは予想してなかったですね。

 

 彼は私のウソに気づいたでしょうか。

 

 私は未来視などできないことを。

 

 未来視ではなく。

 

 

 

 

 

 未来確定だということに。

 

 

 

 

 

 





 ハイ!!

 かなり好き勝手に書いてみました。


 題名とかスペル名とかです。


 あと、天地の視点がちょっとだけ入りました。


 あと、二話くらいで神代以前編は終わらせたいな。






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8話 星と剣と始まりと神様と


 戦闘シーンがやっぱり難しいな。







 

 結論から言おう。

 

 どうやらやりすぎたようだ。

 

 漫画で見たことのあるような煙が立ち上り、反動で俺まで吹っ飛んだ。

 

「いてて・・・・やっぱやりすぎたか」

 

 まあ、この程度で天地がやられるわけはないと思うが。

ほら。

 

『とんでもないことしてくれましたね!なかなかにきっつい一撃でしたよ!』

 

 言葉とは全く裏腹に元気に戻ってくる天地に

もう一発ぐらいマスパをお見舞いしたくはなるがその気持ちは抑えておこう。

 

 しかし本当に丈夫な奴だ。

そのまま床で寝ててもよかったのに。

 

「やられたら、やり返してやりましょう!いきますよ!

神星魔法之壱!『ブレイジングスター』!!」

 

 ブレイジングスター!?魔理沙のラストスペルだったか?

 

 たしか、魔理沙は光をまとった突進だったはずだが・・・・。

天地が突進などをするとは考えにくい。

そして、なぜか天地は魔法陣を呼び出した。

 

 それでもって

その魔法陣を天地がたたくと・・・・。

 

 光を放つ本物の星をよびだした。

いや、サイズは星の中でも小さなものだろう。

だが十分に脅威たる大きさだ。

 

 それを10ぐらい呼び出すと・・・・・・なんと飛ばしてきた!

 

 

「なっ!?」

 

 当たったら死ぬんじゃないか!?あのレベルの大きさと物量じゃ!

 

 ・・・・・あいつ、完全に殺る気だ!

 

「ふふふふ・・・・!なかなか計算外でしたが大丈夫ですよぉ・・・・。

まだまだこれからです!!」

 

 ここからの戦闘で俺は死ねるかもしれん。

 

「畜生!これはあんまり使いたくなかったが・・・・・・!

全てを吹き飛ばす神の風よ!我が前にあるすべての障害を打ち払え!嵐龍『天風龍神』(らんりゅう てんふうりゅうじん )!!」

 

 天水龍神の風属性バージョンといえばわかりやすいか。

もちろん神の名を持つ風をなめてはいけない。

 

 ありとあらゆるモノを吹き飛ばし進もうとする風は星でさえも飲み込む。

現に天地が放った星の弾幕は俺の風に・・・・飲まれないか。

 

 流石にあの大きさじゃ、返せない。

 

 うーん?さっさと勝負決めたほうがいいのかな?

風が効いてないこともないしね。今がチャンスだからとどめを刺しに行こう。

 

「と、言うわけで天地さん。とどめを刺させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

『出来るもんならやってみてくださいよ!』

 

 なら、遠慮なくッ!!

 

始剣「命霊之天剣」(しけん めいれいのあまつるぎ)

 

 俺がそうつぶやくと、俺の中にあった何かが手に宿ったのがわかった。

そのまま俺は手を上に振り上げる。するとまるで俺がもともと持っていたと思えるほど自然に剣が現れる。

 

『なかなか面白いスペルですね・・・・・・。

始力を纏った・・・いや、始力そのもので作られた剣?』

 

 何を言ってるんだ?始力?

・・・・・・そういえば俺の能力にそんなのもあったな。

『始力を操る程度の能力』だったか?

 

 勝てたら後で天地に聞いてみるか。

 

「しかしこの剣からは尋常じゃないくらいの力を感じるな・・・・・」

 

『なんてもんを創り出してくれたんですか?ほかの人に渡さないでくださいよ、ソレ』

 

 いわれなくても渡さんよ。 ・・・・・そろそろ、本気で行こうか。

 

「茶番はおしまい、ですね。

では、私も本気で行かせてもらいますよ!

 

未だ無き天の力持つ剣よ!ありとあらゆる穢れを払え!天剣『緋想の剣』!

 

続いて!

 

まだ見ぬ地の力放つ剣よ!ありとあらゆる邪悪を払え!地剣『蒼幻の剣』!

 

・・・・・ふふふ、二刀流ですよ」

 

 二本同時・・・・・!

 

 勝てるか!?

 

 ・・・・・近づきたくねえな。

 

『来ないのであればこちらから』

 

 こっちくんなよ!?

せっかく距離を取ろうとしていたのに!

 

 あの双振りよりは俺の剣のほうが長い。

だから距離をとれば有利になると思ったんだが・・・・。

 お見通しかよっ!

 

『緋想の剣ッ!すべてを薙ぎ払え!』

 

 天地が緋想の剣を一振りすると、空間がなくなる感覚がした。

 

 あれ?もともとの効果は相手の気質を見極め、弱点を突く剣だったはずだが?

あんなにチートだったか!?

 

『これがもともとの効果なんですよ。時間がたつにつれ力が薄れてきた、それがあの剣です。

そんなことより、考え事をしている暇はないでしょう!?ほらッ!』

 

 天地がもう一振りの剣をふるうと、次は大地が割れる。

割れた大地は俺のほうを狙って動く。

 

 しまっ・・・・!?

 

 油断した俺を狙って大地が俺の足をからめとる。

そのまま俺の足を砕き、飲み込む。

 

 ぐっ・・・・・!?そうだ、そんな場合じゃなかった!

全力で天地から距離を取り、足を確認する。

 人間なら致命傷であると思うほど足が砕かれていた。

自分の持つ力のすべてを足に廻して必死に回復させる。

 

 ・・・・再生できたが、まだ回復を始めてから5秒もたってないぞ?

嬉しいが自分が本当に人間をやめてることを感じてなかなかに複雑だ。

 

 まあ、いいか。考え事をするなと先ほど学んだからな。

目の前のあいつを倒してやらなきゃあな!

 

 俺は自分の剣を天地に向けて啖呵を切る。

 

「やってくれたなぁ!天地!」

 

 

 自分を追い込むために。勝利の準備を始めるために。

 

 

「なかなかに苦しかった!今の一撃は!」

 

 なかなか、ではない。正直に死ぬほど痛かった。

一瞬で再生したからよかったが、もしかするとあそこで負けていたかもしれない。

 

 そこで拾った命を俺は放り投げてやろうか!

 

『それはそれは嬉しい一言ですね。

ですが、まだまだ負ける気ではないですよね?』

 

 当たり前だ。ここで負けれるものか。

 

「なあ、天地。

俺がこの程度だと思っているか?まさか。

多分お前は俺を過大評価してると思うんだがな?」

 

『・・・・・・・・YESですね。

貴方はこの程度ではないと私は感じています』

 

 やはりか。

 

 

ならば、・・・・・・良しッ!!

 

「なら、これが俺の本気だァアア!!受け取れェ!!!」

 

 こんな能力使うとは思ってなかったがな・・・・。

 

 

 俺が持っているもっとも強大で恐ろしく、なのにこれがなければ始まらなかったものの一つ。

 

『ビックバンを起こす程度の能力』。

 

 出力を調整すればいいだろうッ!!!

まずは5パーセント程度で!!

 

 持っていた剣を放り投げて、自分の持ちうる力全てを使い全力で近づく。

 

 

「ビックバン!出力小!」

 

 

 小さな魔法にその力を込めて、天地に向かって放つ!

 

 

『なッ!?ビックバン!?』

 

 ちょっとした爆発音が響き渡るがそんなに強そうではない。

これぐらいに加減して使えばいいかな?

 

 で、天地に対してだが。

 

 反応は予想外のようだ!

決まったか!?・・・・あ、フラグ。

 

『うぅ・・・・。いててて。まだまだ戦えますね』

 

 くう!決まんなかったか!

 

『もーう許しませんよ神琉君!

ここからは一方的に私のターンです』

 

 やべえ!?本気で怒ってる!?

 

「霊異魔法之壱!『夢想封印』!」

 

 うげえ!まさかあんなんまで使ってくるとは・・・・!?

七色の光弾が俺を追尾する。

 

「もひとつ!境界魔法之壱!『二重黒死蝶』!」

 

 次は蝶の形を模した弾幕が、俺の周りへと置かれる。

 

「とどめです!蓬莱魔法之壱『ブリリアントドラゴンバレッタ』!」

 

 光り輝くレーザーが俺の逃げ場を封じる。

どの方向を見ても弾、弾、弾。

 

 

 

 

『ふ。これで終わりですね、神琉君。

今なら降参したら許してあげましょうか?』

 

「うわ、小物くっさ」

 

『謝っても許しませんよ、絶対に』

 

 うわー、怒らせたー。

 

 

 

 

 真面目に言おう。

 

 

 

 

 ・・・・・・こりゃ、万事休すだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてね。

 

 

 

 

「ふう。では天地。逆転の1枚を使わせてもらおう」

 

『へ?』

 

 

「『生命の共鳴』!!」

 

 瞬間。生命に共鳴して、周りに弾幕が放たれる。

ここにいる生命は、俺と天地の二人・・・・なはずだが。

 

 予想通りか。

 

 先ほど俺が放り投げ、地面に突き刺さっている剣からも、生命の共鳴が起きているのだ。

 

 天地の言っていた始力。これについて全くわかってはいないのだが、俺の生み出した力なら生命力があってもおかしくはないと思ったんだ。

 結果はこれだ。

どうやら剣から地面に対してもずっと始力を送り続けていたらしい。

ありとあらゆる方向から弾幕が放たれていく。

 

『あわわわわわ!?いったいこれは!?』

 

 天地のことを放って、刺さっている剣を取りに行く。

 

 弾幕なんて気にしてなどいられない!!

剣に向かって手を伸ばす。

 

 良し!掴んだ!

 

「さーて、天地さんよぉ!とどめ(ラストスペル)といこうじゃねえか!」

 

 喰らえ!これが今の俺の魔法の限界!

 

 

 

 

「始天魔法『         』!!」

 

 

 

 

 俺はこれに名前を付けられなかった。

どうしても、だ。

 名前をつけたら終わってしまうような気がしたから。

 

 これに名前が付けられるのは、いつのことだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

『ああ!負けました!負けました!悔しい!』

 

 さっきから天地がうるさい。

負けたならもっと静かにできないのだろうか。

 

「まあ、楽しかったぜ。お前の敗因は小物臭いセリフのせいだと思うが」

 

『うるさいですよ!もう・・・・・?アレ?』

 

「どうした?天地?」

 

 なんか異常事態だろうか?

 

『いえ、生命の反応を感じたんです。

おかしいな、まだ生命なんて生まれないはずなんですが・・・・・』

 

 生命が生まれた!?

人間!?人間なのか!?

 

『いえ、人間ではありません。

地球でもないこの星は・・・・・・あ』

 

 あ?

どうかしたのか?

 

『星の名前を言ってみましょうか?』

 

 天地が微妙な笑いを浮かべているんだが、これは一体どういうこと・・・・あ。

 

 

 恐らくその星の名は・・・・・

 

 魔星、パンデモニウム。

 

 

 生まれた生命は、三界の女神、ヘカーティア・ラピスラズリ。

 

 

「行ってみるか・・・・・・」

 

『そうしましょう・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたたちは一体・・・・?」

 

『「や っ ぱ り か」』

 

 

 そこにいたのは、ヘカーティア・ラピスラズリその人だった。

ただし、ちょっと小さめでまだ少女ではないくらいの大きさのだが。

 

 神様なはずなのに神力を全く感じない。

魔星の影響だろうか?

 

 確か、ヘカーティアの能力は『三つの身体を持つ程度の能力』。

 

 地球、月、異界の三つ分なので、この星を異界とすると、生まれていてもおかしくはない。

生まれたばかりのはずなのに、言葉を話せているのはなぜだろうか?

 

『貴方が作ったこの星と月と私が作った地球。

私たちの記憶を継いでいると考えられますね・・・・一部でしょうが。

全部継がれていたら、私の知識やあなたの原作知識などが流失します。まずいですよ、そんなことがあったら』

 

 うー。

原作キャラには会えたがこんなことになるなんてな。

 

 もしかすると、俺はかなりの影響力を持っているのか?

そうなると人との付き合い方を考えないとな・・・・・・。

 

 

 ああ、まだまだ時間はかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 東国まであと42億年。

 

 

 

 

 

 

 





ヘカテちゃん登場!

戦闘シーンが読みにくくてすいませんでした!





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9話 紺色の女神

 お気に入り25件!UA1200突破!なんやかんやで二万文字突破!

 ありがとうございます!本当に感謝です!

 それでは本編へ!





 ヘカーティア・ラピスラズリ。

 

 東方project15作目の東方紺珠伝において、stage7・・・まあ、EX面だ、に登場する女神さんだ。

 

 確か原作では一番強い設定だったような気がする。

まあ、能力とかも考えると本当に強い・・・・・はずなのだがな。

 

 

「そうなると、貴方たちが私の母親と父親ということになるわね」

 

「俺はそれは何かおかしいと思う」

 

『偶然ですね、神琉君。珍しく意見が一致しました』

 

 

 

 俺はこの惑星、パンデモニウムを創った。それに、かなり無理やりやらされたが、月も創った。

そして、天地。こいつは地球を創った。

 

 ヘカーティアの能力は『三つの身体を持つ程度の能力』。

三つの身体にはそれぞれ役割があり、地球は青色の髪になり、月は黄色の髪になり、異界は赤の髪のヘカーティアとなる。

 

 ここまではよろしいだろうか。

 

 つまり、三つの星を創ったのは俺たちなのでその星達を司る自分は俺たちが創ったということになり

それで俺たちが親になる・・・・とヘカーティアは主張しているのだ。

 

 おかしい。何かおかしいぞ。

言ってることは真実しかないんだが納得できないし、いろいろとまずそうなんだよ、原作介入的な意味で。

 

『貴方はいいんですよ、どうせ原作にバリバリ介入するんですから。

問題は私ですよ、私。あんまり存在を知られたくないんですよ、この前言ったでしょう』

 

 天地は自分の存在を知られたことに、怒りを抱いているのか?

いつになく不機嫌そうだ。

 

「私なら大丈夫よ、母さん。

誰にも母さんのことは言わないわ・・・・・たぶん」

 

『かっ、母さん!?私がですか!?』

 

 天地が母親・・・・・似合わないなぁ。

こいつは母親じゃなくて・・・・めんどくさい姉貴みたいな感じだ。

 

『似合わない・・・・・ひどいこと言いますね』

 

「まあ、私も似合わないと思うわ。それより今私が喋ってる言葉とかいろいろ聞きたいことがあるんだけれどもいいかしら?」

 

「ああ、何でも聞いてくれ」

 

「まず、貴方たちは一体どういう存在なの?それで私は一体どういう存在なの?

そもそもここはどこなの?」

 

 質問攻めだな。まあ仕方ない。今のヘカーティアには情報が全くと言っていいほどない。

こういう時は教えてあげるのが先輩としての役目だろうか。

 

「オーケー、答えるよ。俺は神様・・・・じゃねえや、神様もどきの始天輝 神琉っていうんだ。ま、よろしく」

 

『私は天地といいます。なんか肩書とかはないですね』

 

 俺は握手を求めて手を差し出したんだが、ヘカーティアは無視してくれた。

・・・・・・握手という習慣を知らなかったんだろう。そうなんだろう。

 

「握手はいいから、早く質問に答えてくれないかしら?私は一体誰なの?」

 

 酷い、さっきからヘカーティアの態度が酷い。 

 

 まあ、仕方ないので説明してやる。

 

「長くなるがいいか?お前の名前はヘカーティア・ラピスラズリ。なんやかんやで強い神様。終わり」

 

『説明に飽きてるじゃないですか!全然長くないですし!』

 

 えー、だって長いんだもーん。後は頼んだ天地君よ。

・・・・・しかし、俺の知ってるヘカーティアはなんだかよくわからない飄々とした態度の謎めいた神様だったような気がするんだが、今のこいつは余裕なんてかけらもなさそうだ。生まれたばかりであるからだろうか。

 

 天地の説明をさっさと聞き流しながらいくつかの不可解な点を考えてみる。

まず、今ヘカーティアが誕生した理由。他の神様は生まれていないのに、ヘカーティアだけが生まれた理由。

 

 次に、あいつが俺の知識を持っていない理由。

持っている理由ではなく持っていない理由だ。

 

 そこそこに考え込んでいると、どうやら天地の解説は終わったようだ。

俺は先ほど考察したいくつかの疑問を天地に聞いてみた。

 

『おそらくですが、前者は貴方の知識のせいです』

 

 ・・・・・・・どうやらまた、俺のせいのようだ。

 

『貴方はヘカーティアの元ネタ、ヘカテーの出てくるギリシア神話を完全に理解していますか?してないでしょう!そのせいでこんな奇妙なねじれが起きてしまった!ああ、また歴史の修復が面倒臭くなる!』

 

 困るのは天地だけか。ならいいや。

で、後者は?

 

『・・・・・・おおよそ考えてるでしょう。

貴方はこの世界において異物ではないのですが、貴方の前世は・・・・・』

 

 もし、ヘカーティアが原作知識を持ってしまったら、崩壊が始まるかもしれない。

そうならないように俺の前世をなかったことにし、ヘカーティアにわたる情報を制限した。そういうことだろう。

 

 しかし聞きたいことがまた増えた。

それは、『世界とはいったいどういうものか?』ということだ。

今までのことから考えるに、何かのシステムがあるのだろうがまったくどういうシステムかが分からない。

 

 まあ、天地に聞けばわかるか。

 

 そういえばヘカーティアは何してるんだろう?

そう思って顔をあげてみると、目の中にヘカーティアの姿が飛び込んできた。

 

 背は小さく、肩らへんまで伸ばした赤い髪の少女。周りには三つの星が浮かんでいる。

・・・・どっからどう見てもヘカーティアだが一番の特徴が足りない。

 

 服装が天地と同じようなローブなんだ。

ヘカーティアの特徴であるはずの、Tシャツがないんだ!

 

 これじゃあ面白くないな!そうだろ、天地?

 

『・・・・・まあ、そうですね。アイデンティティーは大切だと思いますし・・・・・』

 

「と、言うわけでヘカ、これを着てくれ!」

 

 俺は今までの集大成、『錬金術を操る程度の能力』を使用する!

能力で記憶の中にある変n・・・ゲフンゲフン、特徴的なTシャツを時空間を操る程度の能力を使ってコンマ単位で作成する!

それにチェックの柄のスカートも同時に!

 

 ・・・・・・俗にいう、能力の無駄遣いである。

 

『神琉君。今のスピードはどうあがいても物理限界を超えてましたけど・・・・?』

 

「気にするな!生命誕生以前なら何をやってもいいと開き直ったやつがいるらしい!」

 

『いや、誰ですか?』

 

 知らん!

そんなことより、ヘカさっさと着てくれないか!?それで俺は初めて東方キャラと出会えたことになるから!

 

「何を言っているの、貴方は?そもそもこのTシャツいったい何よ?

・・・・うぇるかむ、へる?意味が分からないわ。・・・・・ヘカって私のこと?」

 

 うー。そんな簡単には着てくれないってか。

 

『まあ、着てやってくださいよ、ヘカーティア。

この人は頭がおかしいのです、私は理解することをやめました』

 

 おお!

まったくうれしくないおまけ付きで天地が援護射撃してくれた!

 

 さあ、天地もこう言ってくれてることだし着たほうがいいんじゃないか!?

 

「うーん、でも、・・・・・・と、父さん。このTシャツさあ」

 

 Tシャツさあ?

 

 

「結構・・・・・へn・・・ユニークだよ、ね?」

 

「だから着せようとしてるんだろ!!!変なTシャツだから着せようとしてるんじゃないか!さあ早く!」

 

「うわーぁん!やっぱりこいつ確信犯か!助けてよ、天地母さん!」

 

『理解してない側からするとほんとに貴方おかしな人ですね』

 

 

 

 なんやかんやで。

 

 

 

「うう・・・結局着せられたのは、なんで?ほんとに」

 

『まあ、似合ってますよ・・・・』

 

 いや、どう見たって似合ってるだろ。

これこそがヘカーティア・ラピスラズリ、って感じだと思うんだが!

 

『原作のことを分かってる側からすればそうでしょうが・・・・・・。本人からすると迷惑極まりないでしょうね』

 

 ヘカーティアのほうを見るともうローブだった。

・・・・・・・・そんなに嫌か!?

 

 まあ、無理して着てもらうこともないか。いや、着てほしいけどね!

トラウマになられたりしたら元も子もないしね。

 

「・・・・・・・・二度と着ない」

 

 普通にトラウマにしてたよ!

これが原作崩壊ってやつか・・・・・。おそろしすぎるな。

 

『こんなしょぼい原作崩壊は今までなかったと思いますけどね』

 

 結構重要だと思うけどな。

そういえばヘカーティアが誕生したなら、他の神様もそろそろ出てくるんじゃ・・・・・?

 

『・・・・・・・東方世界において、神話に関係するキャラクターって他に何かいましたっけ?』

 

 神話?・・・・・えっと、思い出そう。

 

「永琳や神奈子の出てくる日本神話、ヘカーティアの出てくるギリシア神話、・・・・このぐらいかな?」

 

『一個忘れてるじゃないですかぁあああ!!!!中国の古代文明の下り!!!』

 

 中国の古代文明?

 

 なんとなくヘカーティアを見てみる。

ヘカーティア・・・・紺珠伝・・・・・黒幕・・・・・あ。

 

「もしかして、純狐さんのことですか!?」

 

『正解ですよ!全く!』

 

「ねえ、何の話をしているの?」

 

 ヘカ!その疑問はもっともだが今はちょっとやばいかもしれない!

 

『もしかしたら時間が狂うかもしれません!ちょっと歴史を修復してきます!』

 

 天地はそう言って姿を消してしまった。

 

 ・・・・・・・え、これどうすんの?

 

後には何一つとして理解できなかったヘカーティアと、俺が残されましたとさ。

 

 

 

「結局今のやり取りはなんだったの?・・・・・父さん」

 

「大人の事情っていう都合のいい何かでごまかさせてもらおう。てか、もう父さん呼びで確定なんだね」

 

 

 やることがないな。

取り合えずヘカーティアに能力と魔力の使い方と、それから神様の持つ神力についての使い方も教える。

 

 あと弾幕の張り方とか、普通に地球の知識とかいろいろ教えてみた。

 

 天地は一回も帰ってこなかった。申し訳ない!

 

 

 そして数十年の後。

 

 

 

「まあ、父さん。いろいろ教えてくれてありがとうね」

 

「いや、ちょくちょく会いに来るよ?」

 

 俺はまた放浪の日々に出ることにした。

てか、地球を見に行ってくる。

 

 境界をゆがめる程度の能力を使えば一瞬なんだが、それじゃつまんないということで

ヘカの独り立ちもかねて、この星を離れることにした。

 

「困ったら地球に来れば大丈夫だと思うから。じゃあ元気で」

 

「それじゃあまたいつか会いましょ、父さん」

 

 取り合えず宇宙空間に出てみる。

・・・・・ちなみにずっとローブで変Tは着てくれなかった。残念。

 

 へカーティアは適当な星に行ったようだ。

あいついろんな星に好き勝手ワープできるってことだもんな。便利な能力だよな。

 

『貴方もっといい能力持ってるじゃないですか。・・・・このやり取りしましたね、いつか。』

 

「うわっ!天地!?いつの間に!」

 

 気が付くと後ろに天地がたっていた。

 

『いま、ヘカーティアを見送ってきたんですよ。

・・・・・これから何するんです?』

 

 うーん、何しようか。

 

 寝るか。

 

『そんなことでいいんですか?いや、私に関係ありませんけど』

 

 でも、生物生まれるまであと結構すぐだろう?

ならその間ぐらい休んでおいてもいいと思うんだが。

 

『あと30億年以上ありますけどすぐというならすぐなんでしょう』

 

 じゃあ、お休み!

 

『はいはい、おやすみなさい』

 

 

 そのまま俺の意識は闇へと沈んでいく・・・・・。

 

 結構疲れたなぁ・・・・・。

 

 

 

 そういえばここ宇宙空間だったが大丈夫だろうか。

 

 

 

 

 

 やっと標を彼は見つけた。

その標は図らずとも彼が作っていたのだ。

 

 その標は東方を真っすぐに指している。

 

 いざ行けよ、始神。

 

 

 東国まであと41億年。

 

 

 日本神話まであと38億年。

 

 

 未だ先は長く。

 

 

 

 

 

 

 




はい!前書きに書かせてもらった通りです!本当にありがとうございます!

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!


四月一日 設定ミスで一か所訂正





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10話 時計の完成

 生命が生まれる確率・・・・・太平洋に時計の部品を投げ込み、
その水流だけで時計が完成するぐらいの確率。


 だそうです。(他にもたくさんあるんで調べてみてください)






 ここは宇宙空間である。

みんな知っているはずの空間だ。暗闇の中に星が浮かび、月や太陽のあるみーんなのよく知っている宇宙だ。

 

 基本的にこの空間において人間は生きられず、一瞬で死んでしまうとされている。

それは地球上に生きるどんな生物も例外ではない・・・・・はずなのだが。

 

 

 

 「・・・・・グー・・・・・・。」

 

 

 

 さて、ここに一人少年が浮いて寝ている。宇宙空間に。

あり得ないことだ。全てにおいて。

 

 まず前述のとおり、宇宙空間で人は生きてはいけない。

しかしこの少年はそんなこと知るかボケと言わんばかりに睡眠をとっている。

 

 次に。

 

 今は、まだ生物と呼ばれるものはいない。

なので、そもそも少年がいること自体おかしなことではあるのだ。

 

 最後に。

 

 

 『神琉君、もう一億年ぐらいたちましたが起きてはくれませんか?』

 

 

 その少年をゆすって起こそうとする、ローブをまとった銀髪の少女。

彼女もまた、浮いておりいろいろと面白い恰好をしている。

 

 全てにおいておかしいのだが、突っ込むことの出来る生命体はいてなどくれないのだ。

 

 ・・・・・・そいつがいることも異常になるのだから。

 

『かーんーるーくーん、おーきーてーくだーさーい!』

 

「・・・・・・・・ぐがー・・・・・・・」

 

『おきてくーださ、・・・・・・やっぱりこのやり取りはしたことがあるような気がします』

 

 少女の独り言は宇宙空間に消え去っていく。

そして声が消えた時にあるのはさっきと全く変わらない暗闇の情景。

 

 その暗黒の空間に漂う静けさは、言葉にせずとも伝わる一種の恐怖を伴っていr・・・。

 

 

「早く起きろぉお!!!始天輝神琉ぅ!!!」

 

 

「は、はい!!!」

 

 

 静けさは消え去った。

後に残るのはちょっと怒った少女と、怒鳴られて飛び起きた少年の二人。

 

 

 

 おいみんな、知ってるか。こいつら、この宇宙において最高神なんだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 あー、びっくりした。

まさか、天地があそこまで怒るなんて思ってなかったぜ。

 

 地味に呼び捨てされたのは初めてかもしれない。

まあ、それほど距離が縮んだってことでいいんだろうか。

 

 さて、そんなことよりわざわざ起こしたってことはなんか重要な用事があるんだろうな?

ただ、起こしただけだったら蹴飛ばすぞ。

 

『いえ、そろそろ地球に生命が生まれますよ、と言いに来ただけです。

一緒に見てみます?そんな面白くはないと思いますが・・・・』

 

 生命が生まれるのか。やっとか。

一応見に行ってみようか。

 

「よし、見に行くことにするよ。先に地球で待っててくれ」

 

『分かりました』

 

 そうして天地は姿を消してしまった。

俺が残った理由は体が鈍っているからちょっとばかり運動してからのほうがいいだろうと思ったからだ。

 

 境界の中に入って、中にある空間でちょっと走ってみる。

 

 という、建前があって。

 

 本音としてはちょっと考えたいことがあるからだ。一人で静かにな。

 

 

 それは、俺はこの世界においてどういう存在なのか、ということだ。

幾度も考えてはみたんだが、結局この結論に行きついた。

 

 

 『俺は東方projectの二次創作の登場人物なのではないか?』ということ。

 

 そもそも、俺は東方projectが創作の世界に生きていた・・・・・死んだけどな。

勿論、その世界には東方の原作者がいた。

しかし、俺や天地のことについては描かれていなかった・・・当たり前だけど。

 

 ならば俺は死んでどこか別の誰かが書いた二次創作の登場人物になってしまった、と考えるのが一番しっくりくるような気がするんだ。

つまり、俺は誰かの掌の上で動かされてるんじゃ・・・・・。

 

 そう考えていくと、なぜか自分で作ったはずの空間が恐ろしくなってきた。

取り合えず、今はメモに残して地球に行ってみるか。

 

 ポケットから出した自分で創り出した紙と鉛筆で考察したことを書き記す。

書き記したものをポケットに突っ込んで地球へと境界を開く。

 

 

 

 そこには天地が待っていた。

 

『何やってたんです?ずいぶん遅かったじゃあないですか』

 

「あはは、悪い悪い。ちょっと走ってたんだ」

 

 なんだか、天地が疑うような眼をしてきたが気にしないほうがいいだろう。

別にやましいことでもないんだし。

 

『じゃあ、生命を創りますか。・・・・・時に天地君、生命の始まりはどんな形だったと思います?』

 

 生命の始まり?

うーん、なんかあの・・・・アノマロカリス?とか、そういうのが思い浮かびますかね・・・・。

 

『それはもっと後の話ですね。今から作る生命はこんな感じです』

 

 そういって天地は指を丸の形にする。

 

 ・・・・・・・・?何がしたい?

 

 『これぐらいの大きさの生物です』

 

 

 へ?

 

 

 『今から作るのは、このぐらいのサイズの細胞ひとかけらです』

 

 

 ・・・・・・・しょぼくはないか?

なんか、今までの展開を思い出すとそれこそアダムとイブみたいなやつを創るのかと・・・・・・。

 

『どれもこれも貴方のせいなんですよ?

変に知識を持っているから、世界がそっちの方向に誘導され、歪まされてしまうんです』

 

 なんか、歴史関係は俺が原因なのが多いな。すまんな、天地。でも俺は悪くないから。

 

 『謝られてもすごく今更ですね・・・・・。まあ、私もしょぼいと思うんでこんな感じで作りました』

 

 天地が適当に手をこねくり回すと、光り輝いて何かが天地の掌の上に生まれる。

 

 俺たちの先祖である生命が、変な会話の片隅にできてしまった。別にいいけど。

しかも、一瞬。ムードも糞もない。

 

 作られたのは『ありとあらゆるものを視る程度の能力』を使ってやっと見れるほどの小さいサイズだった。

それが、なんだかよくわからない仕組みで、次々と分裂していく。

直視したいか、と問われるとさっさと逃げ出したくなるような絵面だ。

 

 率直に、キモイ。

 

「悪い、天地。見てらんない」

 

『ありゃ、そうですか。ならさっさと放っちゃいましょう。私も見たくはありませんし』

 

 そうして天地が手を離すと既に能力を使わなくても見ることが出来るぐらいには

多く増えた細胞たちが、大地の上に落下し、広がっていく。

 

 ちなみに今は殺風景な大地が広がっており、海もあるがやはり何もない。

生命がないとこんなにもつまんないんだな。

 

『しかし、それならここにいる理由はなくなりましたね。

境界の中に戻りましょうか?』

 

 そうだなぁ。ここに残ってこの気色悪い細胞を見ていくのも嫌だしね。

 

「なあ、天地。俺の知ってる・・・・てか形のある生物はいつ生まれる?」

 

『形ある生物は、今から約・・・・35億年ほど後ですね』

 

 35億・・・・・・!まだまだ先か・・・・・。

 

「意志のある生命体が出来るのはいつになる?」

 

『日本神話の始まりはそれから2億年ほど後です。結構早いですよ』

 

 

 よかった、本当に結構早いじゃんか。

天地基準で言われたらどうしようかと・・・・・。

 

『37億年って常人の間隔なら「永い」に入る部類ですよ?

貴方の精神さえも人間をやめてますが・・・・・』

 

 えへへ。

ごまかすように境界を開いてその中に入っていく。

 天地もその後を追うように境界を開き、入る。

 

 

 

 

 

 さて。

その後に地球に残された多量の細胞はどうなったのか。

 

 そのころの地球はただただ強い紫外線やら、生まれたものを殺すために漂う粒子やらがありました。

勿論のこと、いくら無限に増殖する細胞とはいっても生まれてすぐに死んでしまうのでは意味がありません。

その生きては死んで生まれては殺されが、少しの時間続きました。

 

 しかし、その細胞は幸運だったのでしょう。

一つの細胞が全てから守ってくれるあるところにたどり着きました。

 

 後に『海』と呼ばれる水溜まりでした。

 

 その細胞たちに意志などありませんでした。

 

 ただただ。未来に向かって託すために、一生懸命に生命を築き続けました。

 

 

 そしてその永さは。明けない夜は。いつか報われるのでしょう。

 

 

 生命の進化という、全ての始まりを以って。

 

 

 

『そろそろですね。全ての始まりまで』

 

 

 天地が生命を創ってから、かなりの時が経過した。

 

 様々ものを視てきたんだ。

変な動物だとか、変な植物だとか。

 

 そしてそろそろ。

 

 

 

 

 

 待ちに待った日本神話の始まりだぁーい!!ヤッホー!!

 

 

 えへん。いったん落ち着け、俺。

 

 さっき数十億年ぶりに天地がやってきて、こう言ったんだよ。

 

『そろそろ日本神話始まるんで予習スタートです』

 

 訳が分からないが、とりあえず話を聞くことにした。

 

『さて。一応神琉君は古事記を読んでいたんですよね?

それなら神代七世って知ってますか?』

 

 神代七世。それは日本神話で言う始まりの時代。

 

「ああ、知ってる。国之常立神から伊邪那岐神、伊邪那美神までの十二柱だっけ?」

 

 そして、その時代に生まれた神様のこともさす。

 

『その通りです!・・・・で、それについてですが・・・・』

 

 それについて?一体なんだ?

 

 天地が声を潜めて何かを言おうとするとなんかすごく不安になる。

 

『輝始天之琉神って知ってます?』

 

 ・・・・・知らない。が、やな予感だけはする。

 

 

「・・・・・・いったいどういう神様なんだ?」

 

 それに天地が重々しい感じで答える。

 

『ありとあらゆるものを操り、世界の根幹から生きており、ちょっと性格の悪い男神様です』

 

 全然重々しくなかった。

 

 ・・・・・・はあ。

 

「つまり!俺がその神様をやって神代七世をまとめろと!?」

 

『はい。伊弉諾、伊邪那美、以外の全ての柱を総称してください』

 

 くそぉ・・・!

 

『大丈夫ですよ。今の仕事とあんまり変わりありませんし、さぼっててもバレないですから』

 

 いや、そういう問題じゃ無くてな。

 

『じゃ、よろしくお願いしますね~!その時になったらまた呼びに来ますんで!』

 

「おいっ!!!だから逃げんなよ、こういう大事な時に限ってさあぁああ!!??」

 

 天地がサッサと境界を開いてどっかに行ってしまった。

やっぱり俺が後に残された。

 

「クソッ!結局どこに行っても目立つ運命なのか!?このまんまじゃあ、平穏に幻想郷で生きるプランがなくなるような気がするぞ!?」

 

 待ちに待っていた日本神話だが、実はかなりきつくなりそうな予感。

 

 それでは、締めに。

 

 哀れな始神の叫び声を。

 

 

「このクソッたれ天地がぁあああああ!!!!!」

 

 

 

 

 日本神話。

それがもうそろそろ始まるようだ。

どうやら始神の願いそのままではないようだが、始神も心の底ではきっと笑みを浮かべている。

 

 さあ、もうすぐ始まってしまうぞ、始神よ。

もう怠惰な日々はこれまでだ。

 

 ここからは。

 

 喧噪と、珍道中と、笑顔と、心が。

 

 待っているはずだから。

 

 

 彼が心の底で望んだものが。

 

 待っているから。

 

 

 それが。

 

 幾つものの幻想であるから。

 

 

 

 いざ行けよ、始神。

 

 

 東国まではもうすぐだ。

 

 

 

 東国まであと、2億年。

 

 

 

 

 日本神話まであと、265日。

 

 




 文章ぐちゃぐちゃ(いつも通り)。


 設定ぐちゃぐちゃ(予想外)。


 マズった。


 たぶん改訂入ります、すいません。

 後今章、今話じゃ終わんないです。






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11話 軽快な恋のメロディ、そして始まり

 え?タイトルが意味わからん?



 すまない。私もノリでつけたから、詳しくはわからん。


 ただ、『アイリス』だ。

 終わって、始まって。

 そんな意味がある(中二)。


 それでは本編へどうぞ!





 

 あれから二百日くらいたっただろうか。

俺は年甲斐にもなく、遠足の前の小学生のような気分で天地がまた現れるのを待っていた。

 

 仕方のないことだろう。だって、この130億年以上の時の中で待ちわびていた出来事なのだから。

本当の本当に待っていたんだ。これでかなり予定とは外れそうだが、東方の国へとたどり着くことが――

 

『ハーイ!お待たせしました神琉君!』

 

 ・・・・・クソッ!いい時に出てきやがって!

せっかくいい感じに決めようとしてたのに!大事な時に直ぐどっか行く癖によ!!

 

『・・・・なんかすみません。でも、日本神話の始まりですよ?

テンション上がりません?・・・・上がりません?』

 

 今上がってるのは怒りのボルテージだよ、まったく!

・・・・で。今出てきたってことはなんか用事があるんだろう?

無かったら蹴り飛ばすぞ?

 

『それは定型文なんですか?聞いたことありますね』

 

「そのセリフも聞いたことあるぜ」

 

『?そうですか?まあ、百億年くらい生きてたら似たような会話が続くくらいありそうですがね』

 

 そんなことよりっ!早く要件を言えって!

 

『はあ。なら要件を言いますね。日本神話が開始します』

 

 ・・・・・はあ。

 

『あ、あれ?神琉君?あんまり嬉しくなさそうですけど・・・?』

 

 天地が納得いかないらしいが・・・・

 

 あったりまえだろ!!

 

「そりゃそうだ!何が悲しくて日本神話の中の神様にならなきゃいけないんだよ!

それも、最初の最初の神様によ!」

 

 そもそも、どういう感じで日本神話に介入するんだ?

伊弉冉・伊弉諾を除いた神代七世を総称する?だっけ。

どういうことだよ?

 

『簡単ですよ。貴方を世界に介入させようとすると不具合が起こります。

と、いうわけで綺麗に貴方を入れるために世界のほうを貴方にあわせてみました。

つまり、神様10柱分を貴方に乗っけるんです。貴方はその分の力を持ってますしね』

 

 神様10柱分ってのは・・・・

 

「始まりの神、国之常立神(くにのとこたちのかみ)。雲の神、豊雲野神(とよぐもぬのかみ)。大地の対神、宇比邇神(うひぢにのかみ)須比智邇神(すひぢにのかみ)。命伸の対神、角杙神(つぬぐみのかみ)活杙神(いくぐいのかみ)。凝固の対神、意富斗能地神(おおとのじのかみ) 大斗乃弁神(おおとのべのかみ)。完成の対神、淤母陀琉神(おもだるのかみ)阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)で、全部か?それなら、別天津神(ことあまつかみ)はどうなる?」

 

 別天津神。それは、神代七世と並ぶもう一つの神様たちの始まり。

神代七世よりも前で、概念の象徴の神様たち。

至高の神、創造の双神、活力の神、天の神。

 

 

 こっちのほうが俺の象徴するものっぽい気はするけど・・・・。

 

『その方々は既に誕生してます。

大陸が出来た時すぐに隠れちゃったんですよね』

 

 なんだと!?

既に日本神話は始まっていたのか!?

何で言ってくれなかった、天地よ!

 

『いや、言ったらめんどくさそうなことになりそうですし予想通りめんどくさいですから』

 

 ・・・・。

酷すぎやしませんかね?何度も言うようだが130億年以上待ってるんだから

テンションが上がっちゃったりするのは仕方のないことなんだよ。

 

『はいはい、そうですか。

まあ、そんな訳で貴方が伊邪那岐、伊邪那美をまとめてあげてくださいということです。

本当にそれだけです』

 

 ・・・え?

俺の仕事、それだけ?

ちょっと地面まとめて、固めて、雲創って、完成?

 

『はい。それだけです。

あ、前与えた「輝始天之琉神」という名ですが、あんまり使わないでください。

重要な時だったり、神事だったら別ですが基本的には「始天輝 神琉」として生きてください』

 

 分かった! 

 

『あと!』

 

 まだ、何かあるのか?

もうそろそろ地上に降り立ちたくてたまんねえんだが・・・・・。

 

『すみません。長ったらしくなりますが聞いていただきましょう。

貴方の求めた答えもなくはないのですので。

この地球――以外にも一応ありますが――には、大きく分けて4つの力があります。

人が使い、妖を退ける、霊力。

妖が操り、異を呼び寄せる、妖力。

魔導の者が行使し、干渉する、魔力。

最後に神が持ち、威厳と力を象徴する神力。』

 

 四つの力?

地上に降り立ってからのことか?

話が早いような気はするが・・・・・。

 

『すみません、神琉君。地上にいるときには私は貴方と会話が出来ないので今話しているのです。

それで、力についてのことですが・・・・・』

 

 

 

 

 なぜ?

・・・・・なぜそれを今まで話さなかった?

俺は疑問に思ったがまあ、口には出さないでおいた。

 天地は力の説明を続けているが、俺の耳には入ってこない。

何とか、記憶の能力で覚えようとしているって所だ。

 

 やっぱり、天地には謎が多すぎる。

こいつは一体何者なんだ?

見た目だけなら、ただの少女。

気迫も何も纏っているわけでもなく、強大な力を持っているようにも見えない。

 

 中身も、数日話しただけならどんな者も「少し大人びた少女」という評価を下すだろう。

誰だってそうだろう。俺でも、そう答える。

 

 だが。

数百億年一緒にいた俺ならわかる。異質だ。

見た目だけならただの少女。その言葉を覆したりなどしない。

 

 でも。

俺はみたことがないんだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女が浮かべるのは、自然体で美しい笑顔。

しかしその実、全てが虚飾(うつろ)

 

 あいつは誰にも心を開かない。

こうであればとかそういうものの類にも絶対に。

 

 彼女は自分を教えない。

自分のことを人に教えない。

過去にも考えたことがあるが、俺は天地のことを一片たりとも知らない。

 

 あいつは何も・・・・・・。

 

 

 あは。

 

 

 少し笑って俺はため息をついた。

そしてもう一度考えてみる。

 

 なんだよ。あいつの表情は虚飾?

 

 笑ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 いつか、虚飾(偽り)を壊してやるって。

 

 その意識におぼれて意志とは正反対に虚ろに日常を重ねていたはずだろ?

 

 俺は誰かに自分を教えたか?

教えることの出来るほどに心を開いたものがいたか?

 

 彼女の瞳に、彼女の顔に、彼女の言葉に。

 

 あの時に(超爆発のその前に)ナニを重ねた?

 

 自分の虚ろな瞳を、顔を、言葉を。

 

 重ねた。

 

 

 ああ。

 

 いつの間にか、昔がおぼろになっていたな。

 

 そう思って、138億年の前の前に意識を戻し・・・・・・。

 

 

 

「・・・・神琉君!?神琉君!?」

 

 あれ?俺は何を?

天地の能力についての話を・・・・・。

 

『しっかり聞いてました?』

 

「あ、ああ。聞いてた」

 

 天地の疑るような視線から顔を背け、耳が記憶したことを脳に叩き込む。

 

 能力の使い方、能力はセーブして使え、さもなくば人をも殺す。

一瞬で多量の情報が入ってきたから頭が痛くなるが、別にいい。

 

 てか、この内容。

 

「縛りプレーで生きろ・・・・ってことだろ?

それぐらいなら余裕余裕!」

 

 正直なところこの程度の縛りなら想定している。

 

 と、言うよりもこれぐらいじゃなきゃ。

 

 

 楽しく生きてらんないぜ!

 

 

『はあ。その威勢がいつまでもつか・・・・・』

 

 なっ!?いきなり不穏な一言やめろよ!?

つーか、お前小物っぽい発言多いんだよ!?

降参すれば許すとか完全にフラグたててるじゃんか!?

 

 実績があると不安になるんだよっ!

 

『そこまで言わなくたっていいでしょう!?

好きで言ってるわけじゃないんですから!?』

 

 じゃ、なんで言ってるんだよ?

そう聞きたくなったが、別に知りたくもないのでいい。

 

 でもな。

 

 こいつとこうやって騒げるのも、これでラストかもしれないんだよな。

なら、目いっぱい騒いでおこうか!

 

 

 

 

 

        『まったく、心配させて。

                    貴方が記憶を掘り起こす必要などないでしょう』

 

 

 

 

 俺たちが騒ぎ、歌い、踊り。

 

 その終焉は突然だった。

 

 

 じゃらんじゃらんじゃらん。

 

 

 唐突に狂ったようにウエディングベルが鳴り響いたんだ。

 

 その音を俺たちは聞いて終焉を知った。

 

 

 そして始まりを、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              『それでは頼みましたよ』

 

 

            「任しとけって。次に会うのは?」

 

 

             『いつだっていいでしょう?

              私たちは不滅なんですから』

 

 

                「それもそうだな」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・行ってきます」

 

 

「・・・・・・・行ってらっしゃい、神琉君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、神代の前のちょっとした話は終わった。

 

 

 二人は別れ、そしてまたいつか出会う・・・・とだけ言っておきましょう。

 

 

 

 さて、ここからは神代の時代。

 

 人の代わりに、神様、妖、その他諸々が闊歩する古の時代。

 

 

 そこで始神はどう生きるのか?

 

 

 

 

 

 東国まで、あと3億年。

 

 

 日本神話まで、あと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 0日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ノリで書き上げましたので短い、訳わかんね、なんだこれ、です。

 一応、今話に伏線はないです!・・・・たぶん。

 暗いシーンを入れたのは、私が書きたくなったからです。唐突でしょ?

 これで神代以前は終了!

 閑話を入れるかどうかは私の気力次第!

 それでは、また次に。






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虚飾の世界と灰色の自分



 注意ッ!

 今話にはッ!以下の成分が含まれておりますッ!

 ・頭痛を起こす(かもしれない)中二病ッ!

 ・腹痛を起こす(かもしれない)視点変化ッ!

 ・腰痛を起こす(かもしれない)鬱・グロ描写(少なめ)ッ!

 ・正直この閑話あんまり必要じゃない


 以上を「ハッ!こいつの中二病なんて今更だぜッ!」とか
「ガキが書いた鬱・グロ描写なんぞ暇つぶしにもならんぞ!」という人は、

 ゆっくりしていってください。


 それではどうぞ!


 

 

 

 いつからだろうか。

 

 自分の生き方に疑問を覚えたのは。

 

 

 いつからだろうか。

 

 現実に怯えず、求めず、希望を抱かなくなったのは。

 

 

 いつからだろうか。

 

 自分の表層も深層も、虚像にしてしまったのは。

 

 

 いつから・・・・・?

 

 その問は消して消えることなく、自分の冷たい心に響く。

 

 

 

 ・・・・・・・。

 

 

 ・・・・・・・。

 

 

 いつもだ。いつものようだ。いつもと同じだ。

 

 

「帰ろうぜ、『■■■』。今日は早く帰りたいって言ってなかったか?」

 

「うん、でもちょっと用事があるから先に校門で待っていてくれ」

 

「分かった、早く来いよ」

 

 

 場所、ここは学校。自分の所属するクラスの教室。

 

 人、自分は学生。先ほどまで自分と会話していたのは友人。クラスメートの中でも親しいやつだ。

 

 時間・・・・・・自分の腕時計を除いて確認してみる。2014年10月18日、午後4時03分。

帰宅前のひと時、といったところだろうか。

 

 目的、担任の先生に忘れ物を職員室に届けに行くこと。

先ほど教卓を確認すると先生のカバンが置いてあった。

 あの人はうっかりものだから忘れていてもおかしくはない。

 

 自分の名前、■■■■■■■■■■。

 

 よし、忘れてない。虚ろになっていない。

 

 

 

 

 

 時が移り変わる。

 

 

 自分は何のためにいる?人として一度は考えたことがあるだろう。

普通なら、『何かを為したいから』『満足するため』とか。

 

 考えるだろう。

 

 あるいは、感受性の豊かな人や心が病んでいる人は『意味などない』と答えるだろう。

野望を持ったり、求めるものは『金持ちになるため』『強くなるため』と答えるのであろう。

 

 

 

 さて。

 

 上の事を踏まえたうえで聞こう。

 

 

 自分は何のためにいるのだろう。

 

 心が病んでいるわけでも、感受性が豊かなわけでも、何かを追い求めているわけでも、野望を持つわけでも、

 

 普通でもない。

 

 由縁に答えが出せない。

 

 それは意味などない、ということではないのか?

 

 その答えでは満足できないのだ。意味がないならなぜ生きる?

 

 いなくなってしまったらいいのではないか?

 

 

 そんな思いに取りつかれて生きている。

 

 虚ろに。

 

 

 

 自分、『■■■■■■■■■■■』は、現実に興味を抱いてなどいない。

 

 理由は、分からない。

 

 現実に自分の心など一度足りとても開いたことはない。

 

 そもそも、現実に何かを見出したことはない。

 

 現実など、何も抱いていない灰色の世界である。

 

 自分など、灰色にさえ心を開けない虚飾である。

 

 

 ならば、そんな灰色など、虚飾など

 

 

 壊してしまえ・・・・!

 

 

 そう、自分は遠い過去にそう誓った。

 

 ぶち壊すって。

 

 いつの日か、自分を、真実を。

 

 

 見つけ出すと。

 

 

 でも。結局は。

 

 虚飾にまみれて生きている。

 

 

 いつの日か・・・・・。

 

 

 

 いつの日か・・・・・・!

 

 

 

 

 また時が隔てる。

 

 

 

 

 

 世界とは。

 

 不自然だ。あまりにも不自然すぎる。 

 

 なぜ、真実と虚構が入り混じるのだろうか?

 

 その二つは何があろうと対極に位置する。

 

 真実の裏は虚構であると、学校でも家庭でも教えることなどないのに。

 

 子供も大人も老人も。男も女も変わりなく。

 

 虚構と真実・・・・言い換えれば現実と幻想。

 

 なぜその二つに境界線がない?

 

 『嘘も方便』という言葉がある。

実は自分はあれを『真実も方便』だと思っている。

 

 違うか?この世界の一体どれだけが真実だ?

この世界に偽りのない、混じりっけない純粋な真実があるか?

 

 真実が仮にあったとして、それさえも気づき上げた虚実の上に立っている。

 

 

 真実こそ、嘘であり虚ろである。

 

 

 

 ならば。

 

 虚構・・・・幻想は一体どうなるのか?

真実の混じる虚構は噓ではなく、ソレは幻想なのだろう。

 

 幻想。

 

 虚実を否定し、いつか自分の心をさらけ出せる時が来て、心の底の感情を世界にさらせるならば。

 

 

 否。そんなときは来ない。

 

 真実(自分)など決して見つからず、虚構に浸るしかないのだから。

 

 この世界に生きる限りは。

 

 

 

 そう、あこがれたのだ。

虚実と現実の境界がある、創作の中に。

 

 あれは何時の事だっただろうか。

幼き頃、真実を見つけようと決めたあの時か?

 

 それとも、もう諦めようとしている今の自分か?

いや、たぶんあれは自分の虚ろが怖くなりかけて何かに縋れるものを探していたあの時。

 

 虚ろを埋めようとしたときに。

 

 

 もしかしたらこれかもしれない、と思ったのだ。

 

 場所、小学校の図書室。書架番号、913。左から数えて二番目の棚の前。

 

 人、その時自分を見失いかけていた、あの時の自分。

 

 時、昼の休み時間だっただろうか?詳しくはもう覚えていない。

 

 目的、目的なんてなかったような気がする。そもそもなかったから図書室に行ったのではなかったか?

 

 自分の名前、■。

 

 

 虚ろになりかけている。あの時も。

 

 

 虚構にまみれた、その本を。

 

 その本は『■■■■■』だったっけか。

 

 全く何が書いてあるかもわからない、文章も稚拙な変な本だったような気がする。

なぜか全く覚えていないのだ。その本を手に取ったということしか記憶にない。

 

 でもそれからだったか。虚構を追い求めていったのは。

なぜか真反対なはずなのに、一番近い答えを目指していた。

 

 

 そうして俺は真実ではなく虚構を追い求めた。

いつか、虚構に本当の真実を。

 

 見出せるようにと。

 

 

 

 そしてまた時がうつろい。

 

 

 

 ついに見つけた!

 

 虚構と現実の境界線が描かれた物語!

 

 やったやったやったやったやったやった!!

 

 ついに見つけたんだ!

 

 帰結であるかもしれない物語を!

 

 

 

 

 

 

 

 その物語の名は『東方project』といったそうな。

 

 

 

 

 

「これだこれだ!

博麗の巫女を起点とした物語!

西洋と東洋が混ざり、死と生が混じり、朝と夜が混じり、人と妖とが混じり、そしてッ!

 

現実と幻想!すなわち真実と虚構の境界線が!

 

描かれた物語を!」

 

 あの日、あの時。

見つけた幻想はどうやら道しるべになりそうだった。

 

 

 

 一線を画す境界線を。現実において幻想を追い求めた。

 

 

 宵闇に紛れ薄暗がりに溶けゆく幻想を探し。

 

 暁の太陽に照らされた光の幻想を夢に見て。

 

 妖の跋扈する丑三つ時を越えて。

 

 

 それでも未だ幻想でさえも見つからず。

 

 この世界に幻想と現実の境界など。

 

 とっくに消え去ってしまったのかと。

 

 

 心のどこかで諦めながら、ただ一つ縋る糸である『創作』を。

 

 

 貪り喰らうように消費し続け。

 

 

 現実と創作との違いを脳に押し込まれ、それでもなお何かに懇願するように『創作』を見つめ続けて。

 

 

 そしてとうとう自分が『現実』に生きることを知った彼は。

 

 

 

 ただ一つ、『幻想入り』を望むしかなかった。

 

 

 

 彼が目指したモノ(真実)とは逆さの幻想(虚像)に溺れた生活。

そんな中で彼は生きていた。生きてきたのだ。

 

 

 

 

 しかし、ある時。

 

 

 

 虚ろは終わりを告げる。

 

 

 

 

 場所、学校より■■■メートルほど■、自分の家の方向に向かった■■■。

 

 時、学校帰りのあの瞬間。201■年■月■日、午後■時■分。

 

 人、自分、自分と同じ学校に所属する生徒、■■■、■■■■■・・・・親子連れ。

 

 目的、帰宅すること。そして虚ろに生きないこ■。

 

 自分の名。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 かなり虚ろだ。仕方はないと思うが。

 

 

 

 その時すべてがスローモーションであった。

おそらく彼はアニメや漫画で(追い求めた幻想で)こんな表現は使いまわされていたと思っただろう。

 

 それでもその通りだったのだから仕方がない。

親子連れのもう片割れ――もちろん子供のほうだ――が何を思ったか道路に飛び出した。

まあ、それ自体は小さい子供にはよくあることで何一つとしておかしくない。いい行為と問われると決してそうではないが。

 

 さて、こんな言い方をするなら皆様にはよーくお分かりだろう。

まるで弾丸のように飛びだす大型トラック!あどけなく穢れを知れない子供の、

のど元に食らいつこうとする鉄の牙!目を見開き我が子の行方を追う母親ッ!

 

 絶体絶命のピンチ!子供の運命や、いかに!

 

 というわけだ。勿論このままでは子供の命など助かるはずがない。

 

 しかしそこに一筋の希望が!

 

 自らの命も顧みず子供を突き飛ばしトラックの前に踊り出でた勇敢なる少年!

その少年は自分の生命と引き換えに子供を救ったのでした。

 

 ああ、なんと美しい自己犠牲の精神か。めでたしめでたし。

 

 と、なるはずもなく。

それではご覧いただこう。

『彼』の人生、最後のワンシーンを。

 

 

 

 

 ああ、自分はなんて虚ろだったのだろう。

 

 どうして虚ろに生きてきたのだろう。

 

 神様はこの可愛らしき子供と虚ろに生きた自分とを天秤にかけてこの子供をとったというのか。

それなら神様はとても良い判断を下した。

 

 ならば神様。図々しいかもしれない。

しかしこの虚ろな願い、聞いてはくれないか。

 

 

 自分は何のためにいたのか。それに対する答えを聞かせていただけないか。

ただ満足したいだけなのだ。虚ろであった人生が無駄でなかったと聞きたいだけなのだ。

 

 

・・・・・いや、いいんだ。答えなど実は求めていないのだから。

 

 

 なら、頼む。次こそは。

 

 

 虚ろではなく。真っすぐに生きれるようにと。

 

 求める真実と幻想とが見つかるようにと。

 

 この人生のやり直しではなく新しい生き方を。

 

 

 下さい。

 

 

 

 そうだろ。虚ろな神様(糞野郎)

 

 

 Goodbye, this wonderful world full of falsehood.

 

 

 そうして、この世界から、一人の虚ろな少年が、消えていきましたとさ。

 

 

 本当にめでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『はぁ・・・・・・!』

 

 少女が一人で大きなため息をついた。

ここは、ありとあらゆるものが近寄れず、干渉できず、見ることさえできない絶対神の住まう場所。

 

 仮にビッククランチとでも呼ぼうか。

 

 そこでただ一人佇む少女。

勿論ただの少女ではなく、彼女自身は自らを天地と名乗っていた。

まあ、他の生命体から呼ばれることなどないのだが。

 

 そんな彼女は己の虚ろな目で、ビッククランチに空いた『全てを見る穴』を見下ろす。

その穴に移る光景は、先ほど少年が身をもって経験したその後の出来事。

 

 少年の身体はまるで軽いものかのように切り裂かれ、紅い血液をまき散らしている。

交差点は文字通り血の海と化していた。

助けられた子供は、何が起こったかわからないと言いたげに――いや、事実分からないのか。

 

 子供の母親は、先ほどよりも顔を真っ青にしておりその場にへたり込んでしまった。

周りを歩いていた人々も悲鳴を上げるわ、走って逃げだすわ、やりたい放題。

トラックの運転手は頭を抱え込みうわごとのように繰り返し何かをつぶやいている。

 

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図、とでも表現するのがふさわしい。

 

 それを見下ろす少女は。

 

『はぁ・・・・』

 

 もう一度、繰り返すようにため息をついた。

そして少年の『遺言(LastWord)』をもう一度思い出す。

 

『糞野郎ですか・・・・・・。

願いをかなえてもらおうなんてみじんも感じられませんね。

どんな歪んだ人間でも頼み事するときに、しかも神様に糞野郎なんて言いませんよ。

そのうち天罰が下りますね。・・・・あ、もう死んでるか』

 

 虚ろな少年の願いはどうやら神様にポイと捨てられるらしい。残念でしt

 

『さっきからあなた適当なことばっか言わないでほしいですね!

迷惑なんですよ?本当に』

 

 おっと、すいません。

でも、あなたの言い分じゃ願いをかなえようなんてみじんも感じられませんが?

 

『叶えますよ・・・・・。余りにもこのままじゃ可哀想じゃないですか。

・・・・・あなたにはそういう類の感情が無さそうですが』

 

 何と失敬な!あ、私は神の視点に戻りますね。

 

『勝手ですねぇ・・・・・ま、いいでしょう』

 

 彼女は仕切り直してこう言った。

 

『いいでしょう、虚ろな少年。貴方の願い叶えましょう。

まだ、時間はかかりそうですがね』

 

 いつの間にか冷静になった誰かが救急車、そして警察を呼んだようだ。

サイレンの音がこちら側にまで聞こえてくる。

 

『まず、貴方の問いですが・・・・・この虚ろに意味などありませんでした』

 

 彼の希望を真っ二つに切り裂くような彼女の言葉。

しかし彼女は追いうちのように続ける。

 

『意味などなかったのです。貴方が生きた14年間の虚ろには』

 

 死人に鞭打つような・・・事実その発言。

これをもし本人が聞いていたなら、泣くなり怒るなりしていたと思う。

 

 

『由縁に』

 

 だが、彼女は言う。

 

 

『貴方の願い、かなえて差し上げましょう。

少なくともこの世界よりかは、真実も幻想も見つけやすいところにある世界を貴方に渡しましょう』

 

 

 彼女は救急車に乗せられた彼を見て言う。

 

『虚ろなままではつまらないでしょう?

次こそは真実に生きてくださいね?』

 

 

 彼女は、再生の切符を彼に渡す。

そう彼女自身が決めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは。

 

 

 

 

 幻想が始まる前の。

 

 

 

 おとぎ話が始まる前の。

 

 

 

 神話が始まる前の。

 

 

 

 地球が始まる前の。

 

 

 

 宇宙が始まる前の。

 

 

 

 世界が始まる前の。

 

 

 

 

 

 ほんの一幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 この閑話最初に言いましたが全然重要じゃないです。


 本編とほっっっとんど関係ないです。


 なので、あんまり脳みそに残さずにしといてください。


 あと前半眠い、中盤頭痛い、後半病み上がり、で執筆しているので
絶対訳分かんない部分あると思いますがいつも通りです。





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ヘカーティア・ラピスラズリちゃんの災難な半生


 注意!

 閑話です!いつも通りの文章崩壊です!
キャラ崩壊がございます!

 無理な方はブラウザバック、オッケー!な方はどうぞお進みください!




 今回は語り手『ヘカーティア・ラピスラズリ』でございます。
それではどうぞごゆっくり・・・・・。



 

 私はなんだかよくわからない何かである。名前はまだない。

 

 どこで生まれたかとんと検討がつかぬわけでは無い。

少なくとも今は、この星で呆然としていたことだけは記憶して・・・・いや、進行形でそうである。

 

 私はこの星で始めて神様というものを見た・・・・・見ている。

後に聞くにそれは『輝始天之琉神』という神様中で最も性格の悪く自分勝手で、ついでに迷惑、獰悪かは知らない。

 

 そんな神様と私は出会ってしまったのだ!

 

 

 

 

 真面目に。そして時をちょっと戻そう。

 

 

 気がつくと、私はこの星にいたのだ。

目に写るのは何もない惑星上の地表。それから虚空に浮かぶ星々。

 

 その星々に何か形容しがたい――後にそれは仲間意識というらしい――感情を感じて、

私は頭を痛めた。

 

 そして私は今何を考えていたのかさえ忘れてしまう。

それほどまでに重要なことを理解してしまったのだ。

 

 一体全体()()()()はなんだ?

私が今の今まで使っていた単語がやっと自分の知らないものだと自覚する。

 

 単語とはなんだ?自覚とは?私とは?理解とは?虚空とは?星とは?

ありとあらゆる疑問が脳内を支配する。

 

 しかし。その疑問は一瞬で剝がされる。

単語とは言語を構成する最小単位。自覚とは自分のことをよく知るということ。

私とは一人称において基本。理解とは論理によって判断し納得すること。

虚空とは・・・・ということ。星とは・・・・ということ。

 

 しかし、回答においても次々と疑問が出てくる。

言語とは?自分とは?一人称とは?論理とは?納得とは?

 

 脳内から泉のように湧き出る疑問に、砕け散りそうな痛みと。

 

 

 その疑問になぜか答えの出せるこの記憶を恐ろしく感じて私はそこに立っているしかなかった。

 

 

 そこでどれだけ私は待っていたのだろう。

少なくとも湧き出る記憶が止まって、頭痛がすることがなくなってからであることは分かる。

それでも、どうすることもできず自分の中の記憶に怯えて動くこともできなかった。

 

 そんな時。

 

 私は彼らに出会ったのだ。

いや、出会っているのだ。

 

 

 

 

 

 そして、冒頭へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・。不安でいっぱいである。

当たり前だ。何者かもわからない自分。何だか分からない知識の数々。

目の前には得体のしれない怪しい生命体。

 

 この状況において不安にならないものなどいない。

ただ、気休めになることがあるとするなら自分と相手が似通った姿をしていることだけだろうか。

 

 姿、だ。片っぽは私とよく似ている・・・・・のかもしれない。

ローブを纏い、髪を長く伸ばしている。違うところは銀の髪色と、あとは靴を履いているか、いないか。

 

 そのぐらいだろうか。

しかし、もう片方側・・・・・男のほうだ。こいつは私の容姿とはかなり外れた。

 背は高く、黒髪黒目。ローブではなく脳内の知識によると制服と呼ばれるもののようだ。靴も履いている。

 

 ・・・・・・・。取り合えず何かを話しかけるしかないだろう。

そうしないと意思疎通が出来うるかどうかも、有用な出来事も得られない。

 

 

「あなたたちは一体・・・・・?」

 

 勇気をかなり振り絞って聞いてみる。

かなり声が震えていたが仕方のないことだ。

 

 これで意思疎通ができるのなら返答を返してくれるはず・・・・・!

 

 

 

 『「や っ ぱ り か」』

 

 

 

 は!?

 

 やっぱり!?私のことをこの人たちは知っている!?

しかもどうやら私より詳しいレベルで!?

 

 何か前の二人が話しているが、自分のことを知っている二人だとわかって様々なことを聞きたい。

第一に私とあなたたちとの関係はなんだ?

 

 

 そもそも私たちは誰なんだ?

 

 

 そういうことを私は聞きたい。

 

 

 

 

 

 

 

「オーケー、答えるよ。俺は神様・・・・じゃねえや、神様もどきの始天輝 神琉っていうんだ。

ま、よろしく」

 

 男のほうは近くで見ると、私とはかなり違った容姿をしていた。

始天輝神琉。輝く始まる天。神の宝珠。漢字的にはそういう意味だろうか。

前述のとおり黒髪で黒目。鋭くはない目つきだが、意志を感じる瞳。

 

 ヘカーティアはまだわかっていなかったかその瞳に意志が映るなら、

それは『ヘカーティア・ラピスラズリに対する憧れと出会えた感動』だろう。

 

 

 それに反するように佇むのは、どこか厄介ごとをしょい込んだかのような金色の目をした

少女だった。

 

『私は天地といいます。なんか肩書とかはないですね』

 

天地。そのまま地面と空。全世界、という意味か。

 

 神琉が手を指し出して握手を求めてくるがあいにくそんな気分ではない。

だって、自分のことも分からないのだから。

 

「握手はいいから、早く質問に答えてくれないかしら?私は一体誰なの?」

 

 神琉が微妙な表情をしているが特に気にしない。

もっと重要なことだから。

 

「長くなるがいいか?お前の名前はヘカーティア・ラピスラズリ。なんやかんやで強い神様。終わり」

 

 短い!分かりやすいがまだ足りない!

もっと詳しく教えてくれ!

 

『説明に飽きてるじゃないですか!全然長くないですし!』

 

 私の表情を見て天地が助け舟を出してくれた。

そのまま神琉の説明の後を続ける。

 

『あなたの名前はヘカーティア・ラピスラズリですね。

種族は神様。ここまでは正解です。』

 

 ヘカーティア?どういう意味だ?

ラピスラズリっていうのは瑠璃っていう意味だったはずだが・・・・・。

 

『ヘカーティアは貴方の名前で神様の名前でもあります。

後にあなたはとある神話で、ヘカテーと名乗りますがそういうことです』

 

 心まで読めるのか・・・・・。しかも発言からして未来も見えるみたいだ。

天地はたぶんこの世界で最も強く厄介だと思う。

 

『・・・・・・聞こえてますよ?まあいいですが。

それで、貴方の能力についてです。自分の能力がわかりますか?』

 

 自分の能力?さあ、全くわからない。

 

『?自分の能力がわからないですか・・・・・。

まあ、いいでしょう。貴方の能力は『三つの身体を持つ程度の能力』です。』

 

 三つの・・・・・身体?

一体どういう意味だ?そのままストレートに体を三つ持っているということか?

 

『そんなもんです。

正確には月、地球、異界の三つの世界分の身体を持っているということですね』

 

 地球、月、異界・・・・・。

身体によって精神も違うのか?それならかなり不便そうだが・・・・・。

 

『自分の能力に不便もクソもないと思いますが・・・・・。

あ、精神も身体によって違うそうです。ただ、記憶と意志は共有してるみたいなので良かったですね』

 

 別によくない。まあ、いい。

そんなことより私の記憶についてが最大の疑問だ。一体この記憶はなんだ?

 

『ああ、その記憶はそこの神琉君のものが大半です。

恨むなら彼を恨んでください。』

 

 ・・・・・あいつのせいかよ。

これなら恨まれても仕方ないか。

 

『あと、貴方の持っている力は二種類あります。

神様として持っている神力。そして生まれたちの特性である魔力。

この二つを貴方はとても強く持っています・・・・・・・・』

 

 

 天地の説明はかなり続いたが、長いので割愛しよう。

 

 

 

 

『・・・・・まあ、そうですね。アイデンティティーは大切だと思いますし・・・・・』

 

 アイデンティティー?いきなり天地は何を・・・・。

 

「と、言うわけでヘカ、これを着てくれ!」

 

 そういって神琉が自分の手に服を呼び出す。

・・・・・ん?服を呼び出す?

 

 この服を作っていたにせよ、もともと私が生まれることはお見通しってこと?

・・・・・まさか。そんなことが出来るはずがない。

 

 そう思うことにする。

 

 

 まさか、準備していたのではなく今作ったのだと分かった時には卒倒するかもしれないが。

 

 

 

「何を言っているの、貴方は?そもそもこのTシャツいったい何よ?

・・・・うぇるかむ、へる?意味が分からないわ。・・・・・ヘカって私のこと?」

 

 意味が分からない大量の装飾と言葉の書かれたTシャツと、スカートを渡された。

これを着ろ、ということか?

 

 正直に言って似合わないような気がするが・・・・・。

 

『まあ、着てやってくださいよ、ヘカーティア。

この人は頭がおかしいのです、私は理解することをやめました』

 

 何ッ!?

 

 助けを求める目を天地に向けたら何故か着ろと言われた。クソ。

 

 と、なるとだ。この場に私の味方は自分一人のみというわけだ。

 

 ここはやんわり、相手の心を傷つけないように断るのが得策だろう。

そう考え、自分の知っている言語をどうにか。

 

「うーん、でも、・・・・・・と、父さん。このTシャツさあ」

 

 慎重に並べて。

 

「結構・・・・・へn・・!」

 

 おっと、危ない。口が滑りかけた。

 

 

「・・・ユニークだよ、ね?」

 

「だから着せようとしてるんだろ!!!変なTシャツだから着せようとしてるんじゃないか!さあ早く!」

 

 

 前言撤回!

こいつは心を根元から叩き折ってやらなくてはいけないッ!

 

 どうやら、神琉は自分の着せようとしているTシャツが変であると自覚があり、

その上で私にこのTシャツを着せようとしていると!

 

 許さん!

こうなったからには天地・・・母さんに、助けを求める!

 

「うわーぁん!やっぱりこいつ確信犯か!助けてよ、天地母さん!」

 

『理解してない側からするとほんとに貴方おかしな人ですね』

 

 

 

 ・・・・・・理解していない側?どういう意味だ?

 

 

 

 結局、問答の末ヘカーティアが服を着ることになったのを皆さんは知っているはず。

 

 

 

 

「うう・・・結局着せられたのは、なんで?ほんとに」

 

 理解の及ばないことだが着せられた。

もう二度と着てやるもんか。

 

『まあ、似合ってますよ・・・・』

 

 似合っているはずがない。どんな立派な人間が着ても似合わないと思う。

 

「・・・・・・二度と着ない」

 

 こんなTシャツ二度と着てやるものか。

少なくともあと五億年ぐらいは。

 

 そんなことを考えていると、いきなり二人が騒ぎ始めた。

 

 中国の古代文明?純狐?何の話だ、一体。

私には理解できない次元の話を、彼らは話している。

 

 すると、いきなり天地が

『もしかしたら時間が狂うかもしれません!ちょっと歴史を修復してきます!』と叫んで身を隠してしまった。

 

 ・・・・・え?

神琉といっしょ?こいつと?

この私が知りうるすべての中で、もっとも狂人に近いこいつと?

 

 取り合えず、慰め兼状況把握を彼に投げかける。

 

「結局今のやり取りはなんだったの?・・・・・父さん」

 

「大人の事情っていう都合のいい何かでごまかさせてもらおう。てか、もう父さん呼びで確定なんだね」

 

 

 おっと、まともな答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

 そこからは様々なことを教えてもらった。

神力、魔力の使い方を筆頭に、弾幕というものの張り方、料理なるものの仕方、、暇つぶしの遊戯について。

 

 私はこの神琉という人を勘違いしているのかもしれない。

そう考えるほどに『始天輝 神琉』とは意味が分からなかった。

 

 父として、知識を教えてくれるまさに『父親』そのもの。

 

 友人として、軽口をたたきあえる関係。

 

 そして数年かけてやっと理解した。

 

 

 とても簡単かつ馬鹿らしい答え。

 

 

 

 彼は――――――

 

 

  とても気まぐれであった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして私は数十年の後、彼と別れた。

 

 

 別れたのちにに天地とも会うことが出来た。

 

 

 そして様々な星を回って旅をした。

 

 目をつぶさんばかりに光り輝く、星。

 

 毒々しい色合いをした、星。

 

 面白い模様のついた、星。

 

 宝石のように透明な、星。

 

 

 これらを彼女らが作ったと考えると、この星々は私の兄弟か。

そう思うと親近感を抱くようにまでなる。

 

 そんなことを考えながら私は旅をつづけた。

 

 数億年の余り。

 

 

 そして――――。

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・・・。」

 

 

 とうとうローブがボロボロになってしまった。

 

 未だに生命と呼べるものには出会っていない。

その前にこのローブが朽ちるのが先だろう。

 

 自分のローブを見下ろすともう穴だらけであった。

 

「・・・・・・・・・・・はあ。でも、仕方ないか」

 

 

 ローブから、『あのTシャツ』をとりだし着替える。

 

 ・・・・・・・かなり体も大きくなったはずなのにサイズがぴったりなのはどういうことだろうか?

 

 

 ・・・・・・すごく不本意だが、気分が一転したような気がする。

不本意だが。

 

 

 

 

 

 

 そうして彼女はまた、旅を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 そして彼女が、復讐の女神と、星条旗の妖精と出会うのはもっともっと後、そしてまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 





 ・・・・・・こんなキャラじゃなかったはず。
キャラ暴走の一途をたどってます。やばいです。


 投稿が遅れても気にしないでください。それでは。

 4月18日 追記

『琉』という漢字について、作中でも書きましたが、宝石の意味があります。
その宝石とは『瑠璃』。
つまり、ラピスラズリの事です。
偶然でしたが調べて分かったのでここに書いておきます。



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天地創造之資料集~霊之巻



短編も出したんで良ければ見てってください。






タイトル 東方始天神(とうほうしてんかん)

 

 

 

コンセプト

 

取り合えず古代以前スタートって面白そう

神様転生とかチートとかやりたいな

なら他にもいろいろぶっこんでみよう!

これ

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

キャラ設定(霊章時点)

 

 

 

舞い降りた始神 始天輝 神琉 (してんきかんる)

 

性別 男(女にもなれる)

 

種族 神様もどき

 

年齢 約140億歳(精神年齢 14歳)

 

能力

 

創造する程度の能力

ビックバンを起こす程度の能力

生命を操る程度の能力

始力を操る程度の能力

 

縛りから解放される程度の能力・・・霊夢。

魔導回廊を支配する程度の能力・・・魔理沙。

時間軸を抜ける程度の能力・・・咲夜。

境界をゆがめる程度の能力・・・紫。

封印する程度の能力・・・藍。

記憶を整理する程度の能力・・・阿求。

正体を変える程度の能力・・・ぬえ。

気配を操る程度の能力・・・美鈴。

探知する程度の能力・・・スター。

錬金術を操る程度の能力・・・永琳。

神様の力を使う程度の能力・・・依姫。

天を操る程度の能力・・・神奈子。

音を操る程度の能力・・・ルナ。

 

 

一人称 俺

 

 

 

 

性格

 

 気まぐれの一言に尽きる。行動の全てに一貫性がない。

性格も一つでは言い切れず、優しかったり、厳しかったり、無駄にゲスかったりする。

 

 若干中二病を拗らせているところがあり、『エターナルフォースブリザード(僕の考えた最強の必殺技)』を素で言っちゃうタイプ。相手は(笑い)死ぬ。威力は相手を5回ぐらい余裕で殺せる。相手は死ぬ。

 

 普段は前世の記憶をフルに使って、『ボケのような何か』をかますが、突っ込みもできなくはない。

前世では、様々な物語を読んでいた・・・・・が、作者の知識が少ないため出てくるネタは限られる。

 

 前世の性格と差がありすぎるのは、ご愛敬。

 

容姿

 

 目つきは悪くなく良くもなく。黒い少し立った髪に深い黒色の目。

身長は、中の下ぐらい。体重は普通。整った顔立ちだが、モテはせず「あっ、男子だ」みたいな容姿。

 

 普通の男子中学生。

 

 服装は、帰り道に来ていた制服。普通の学生服。戯れで作った服などを着ることもある。靴もスニーカー。

 

 何故か見た目をころころ変える。最近はショタっぽい何かになって生きているそうな。

 

 

 誰か、絵を描ける人描いてくれると嬉しいのですが。

 

 

 

能力について

 

 

 創造する程度の能力

 

 名の通り、何でも作れる。タバコから生物まで。ミトコンドリアから概念まで。

ただ、本人はこの能力を全く気に入っておらず、使うつもりはほとんど無いよう。

ちなみに嫌いな理由は「糞チート、つまんねえ」だからだと。

 

 ビックバンを起こす程度の能力

 

 そのまま。威力を調整することで、地球上でもなんとか使える。

作中で使った、5パーセントの威力でさえ惑星一つ滅ぶレベルである。

 

 始力を操る程度の能力

 

 神琉だけが操れる力、始力を操るための力。

始力については後に解説。

 

 生命を操る程度の能力

 

 生命力を与えたり、逆に奪ったりできる。

この作品の生命という概念についても後で。

 

 

 

 

 

世界の管理者 天地(てんち)

 

 

 

性別 女?

 

種族 不定義神格霊異所持者。神様もどきだが、神琉とはまた違う神様もどき。

 

年齢 グラハム歳ぐらい?世界を何周も何周もしているようなことを言っている。

 

 

能力 何でもする程度の能力

 

 

 

何でもする程度の能力

 

 

文字通り何でもする。何でも。

 

 

一人称 私

 

神琉の呼び方 神琉君

 

 

 

 

性格

 

適当。どうやら本当の人格は、ずっと昔に封印したそうで今見えている人格は、作られた人格らしい。

作られた人格ではあるが、とても精巧に作られており人間の精神と感じても違和感はない。

 

 ただ、神琉を振り回すのは結構楽しいと感じているらしい。

最近は、振り回されることも多くなっており不満に思っているらしい。

 

 神琉のことを、どう思ってこの世界に転生させたかは不明。

だが、神琉のことを過大評価しているらしい。

 

 こちらも微妙な中二病を発症しており、やってくれたりする。

外の世界の創作物もいくつか知っているらしい。

 

 自分の存在を、異常に知られたくないらしくそのせいで

天地の存在を知っている者は、大きく絞られる。

 

 また、この文章はらしいばっかりだがどれもこれも天地が何かを企んでいるせいだからである・・・・らしい。

 

 

容姿

 

 

長く肩あたりまで伸ばした銀の髪に、金の瞳。

 

服装はローブのような何かで、それを引きずって歩く。

靴は紐靴であるが、片方のひもがきっちり結んであるのにもかかわらず、もう片方はほどけている。

本人曰く、陰と陽、調和とその崩壊、現実と幻想を表しているらしい。

 

体格は小柄。でもロリじゃないって本人は言ってる。

 

神様なのでまあ美形。てか、まさに創作の中の神様みたいな顔してる。

 

見た目は変えられるがこの姿からほとんど変えない。

 

右手の甲に魔法陣がありその魔法陣で自分の魔力を完全制圧していると思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

四つの力と、始力

 

 

 

 

 

 

    

霊力

 

人間が持つ基本的な力。

これが高いほど霊感が強いなどがある。

とても高いと巫女や霊媒師になったりする。

自然界にも多く生成される。

       

種類 霊力 最も人間が持つ普通の霊力。

 

巫力 巫女が持っている力を特筆してこういう。

 

仙力 仙人が持っている力を特筆してこういう。

 

天力 天人が持っている力を特筆してこういう。

 

 

妖力

 

妖怪が持つ基本的な力。

妖怪によって持つ妖力の差があり    

強いものは人型をとったりすることができる。

自然界にも多く生成される。

また、妖力は「恐怖」の想いとよく似ており、妖力をとるためには相手を恐怖されるのが最も早いといわれている。

 

種類 妖力 妖怪によって微量の違いがある。吸血鬼なら吸血鬼の妖力が、隙間妖怪なら隙間妖怪の妖力が。

 

幽力 上記の中でも、霊の持つ力のことをこういう。幽力の中でも大きくわけて死霊の使う『死幽力』、生霊の使う『生妖力』、亡霊の使う『亡幽力』、そして幽霊の使う『幽力』の四つに分けられる。

 

 

魔力

 

魔法使いなどがもつ基本的な力。

これも個人によってかなりの差がある。

また属性が存在する。

特定の場所にしか生成されず幻想郷でいうなら魔法の森など。

力としては例外で人為的に生み出された。なので魔力によって差が出ることはあまりない。

 

まず魔力とは、新しい力を産める万能のエネルギーのようなものである、ということを分かっていてほしい。

魔力をどうにかこうにか(適当)することによって魔力がその属性の魔法を起動することの出来る魔力へと変わる。

基本的な属性、つまりもっとも簡単に変換し行使することの出来るのは、『火・水・土・風(木)・金』の五つである。新しい属性を生み出せるほどの魔法使いはそう多くは存在しない。仮に新しい属性の魔法を創ったとしてそれを満足に扱えるのなど、魔法使いのひとかけらに過ぎない。

しかし、この五つの属性以外も操ろうと思うと、上のひとかけらの魔法使いの書いた魔導書を読むなり、魔導回廊の中を回って、どのような魔法が使われたかを調べてみるなり結構いろんな方法があったりする。

 

魔導回廊の中をまわるのはとても簡単で魔力を垂れ流したまま寝ればいい。

かなり無防備な状態になるが、とても有益な情報が手に入る。

 

 

神力

 

神様が持つ基本的な力。

信仰によって左右される『場合』がある。

今まで紹介した中では最も強力である。

神様の周りに生成されるが、使いこなすのはとても難しい。

 

どんな神様が持っているかにかなり力が変わり、信仰の対象が大きければ大きいほど力は強くなる。

 

 

神力・・・・神霊の持つもっともふつうの神力。一番信仰の量に影響されやすい。

 

八百万神力・・・・自然そのものの八百万の神様の力。信仰にはあまり左右されないが、忘れさられる可能生も高い。

 

土着神力・・・・その地に根付いた神様の力。土着神は信仰された妖怪だったりする場合が高い。妖力が信仰の力と混ざり合って変異した力。信仰には全く左右されず、逆に恐怖心こそが力の源となっている場合が多い。

 

 

 

 

始力

 

神琉だけが持つ唯一にして最強の力。

全ての力を管理したり取り込めたりする。

この力がどうしてついたかは不明。

生成は全くされず、使えるのは神琉だけである。

 

 

 

この作品の生命について

 

 

この作品の最高生命神は神琉君です。

 

生命力は強ければ強いほど、力も強くなります。また、概念に近ければ近いほど強くなります。

どんな生物であろうと生命力は持っているので、生命を持っていないものは死体だけです。

 

つまり強さ順で行くと、死体<動物<人間<妖怪<神<生命そのもの、になります(例外はある)。

 

そして!ここが最も重要だったり!

 

 

生命力がありすぎても、逆に死にます。

自分の器の分の生命力を超えてしまうとそのうち衰弱して死んでしまいます・・・・。

 

つまり、『生命を操る程度の能力』は裏返すと『殺す程度の能力』です・・・・。

 

 

 

 

スペルカード集

 

 

 

始天『誕生の超爆発』 使用者 天地

 

 

要するにビックバン。それを体現しすべての概念が生まれる基礎を作った。

もう一度使おうとすると世界が崩壊する。

 

 

生星『ラブスター』 使用者 天地

 

 

星の生まれる基礎を作った。これがなくては星、ひいては宇宙という概念が誕生しない。

 

 

 

誕命『ライフヴォヤージュ』 使用者 天地

 

 

生命の生まれる基礎を作った。これで宇宙の初期状態は完成。

後は星を創っていく。

 

 

陽生『満霊天照之始法』 使用者 天地

 

 

太陽を創る。とんでもない熱エネルギーが発される。

 

 

『天地開闢』

 

 

地球を創る。ここで言う、『創る』は惑星そのものではなく概念+地球の核のようなもの。

 

 

夜生『満霊月詠之始法』 本編未登場 使用者 始天輝 神琉

 

月を創る。こちらも概念+月の核。本編で出せなかった理由は、私の頭がそこまで回らなかったから。

ここで紹介する必要もないのですが、一応。

 

 

クリムゾンファイア フェニックスバーン カグツチフレイム

 

 

魔力の基本五属性のうちの火。

名前は中二病の極みだが、威力だけは化け物である。

 

 

ワダツミウェーブ

 

 

魔力の基本五属性のうちの水。

名前は中二病の極みだが(ry

 

 

グリーン・ジ・アース

 

 

魔力の基本五属性のうちの土。

名前は中二病(ry

 

 

ウインドウォール

 

 

魔力の基本四属性のうちの風。

名前は(ry

 

 

水晶魔法 使用者 天地

 

 

魔法属性で言うと水の派生になる。

天地が作ったので、魔導回廊の一番古い履歴を見れば使えるようになる。

 

『破片』

 

水晶をひたすらばらまく弾幕。当たったらちょっと痛い。

 

『反射』

 

上に追加して、光線を放ち適当に反射させる。

 

 

 

流龍『天水龍神』 使用者 始天輝 神琉

 

 

水の形の龍を呼び出し操る。

火・土・風・金でも同じことが出来る。

 

 

(○○魔法系統はカットさせていただきます)

 

 

 

始剣「命霊之天剣」 使用者 始天輝 神琉

 

 

純粋に始力のみで作られた剣。

端的にいうと生きており、生命力を発している。

神具の類に入り、その中でもトップクラスに強い。

 

 

天剣『緋想の剣』 地剣『蒼幻の剣』 使用者 天地

 

 

緋想の剣は空、つまり空中全てを切り裂く剣。

 

蒼幻の剣は地、つまり大地全てを切り裂く剣。

 

ちなみに・・・・緋想の剣は天界にある。

ならば・・・・蒼幻の剣は・・・天界の反対である場所に・・・?

 

 

 

『生命の共鳴』

 

パゼストバイフェニックスを生命の共鳴を条件に出させてもっと迷惑にしたような形。

 

これは、相手の生命力によって左右されるので天地、剣、神琉君、すべての生命力が桁違いに高かったあの状況は、素晴らしく密度の高い弾幕が張られていた。

 

 

 

始天魔法『         』

 

 

神琉君、最強、全力の技。

弾幕か、魔法か、物理かそれすらもよくわからない攻撃。

 

名前は『名も無き始まり』と、読む。

 

 

実は名前がついていない理由は私が思いつかなかったからだったり。

 

 

 

題名の元ネタ

 

 

霊異の御神籤・・・A Sacred Lot タイトルテーマ

 

雌雄を決せよ!~Magic battle!・・・魔法決戦!~Fight it out! 東方project三作目の『東方夢時空』

六人目のテーマ。私がこの話を執筆している間これだけしか聞いてません。

 

軽快な恋のメロディ、そして始まり・・・アイリス 東方project一作目の『東方靈異伝』エンディングテーマ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、疲れたぁああ!!

 

 これでやっと霊章完結かよ!

 

 これは心が折れるかもしれんな・・・・。

 

『何をおっしゃっているんです?報?』

 

 おっ、天地君じゃないすか?

元気にやってました?

 

『貴方の台本通りですよ、分かってるくせに』

 

 あはは。

ごめんごめん。

 

『心折れるとか言ってますが、無理やり短編と閑話を投稿したのは自分でしょうに』

 

 う・・・・あ、短編投稿しました。暇ならば見ていってね。

 

『露骨な宣伝乙です、ここではこの作品の話しなさいよ』

 

 えー、でも話すことないしなぁ・・・・。

 

 

 じゃあ、こんな小話。

 

 天地、この存在は実は神琉君よりもずぅぅぅぅっと前から頭の中にいる。

 

 こいつはいろんな世界で姿を変えて暴れてきたがとうとう神様にまでなっちゃったのか・・・・。

 

『貴方がさせたんですよ!!まったく・・・・・』

 

 ああ、話終わっちゃった。

じゃあ、次回予告でもするか。

 

 次回ッ!!

 

 

 神代編ッ!!突入ゥ!!!

 

 

 次々と出会う、未だ見ぬ神々!

 

 

『果たして百億年の間ほっとんど会話してない神琉君はどう生きるのか!?

 

コミュ障状態にでもなってないかッ!?』

 

 

 次回!

 

 神代編裏!!第一話!!

 

 日本の永き物語ッ!!!

 

 

 

 『「乞うご期待ッ!!!!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ、疲れました・・・・』

 

「?どうした天地?」

 

『テンションの高い、腐れ縁阿保馬鹿⑨野郎、駄文執筆中二病絶賛発病中脳内お花畑中学生に付き合わされてたんですよ』

 

 ・・・・・・・天地にそこまで言わせるのは、よっぽどの奴なんだろうな・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第壱章 神代
12話 日本の永き物語


 1章開始でございます!


 どうぞ神代の時代を・・・・・。


 あ、いつも通りの文章崩壊ですよ。注意してくださいね。



 ・・・・とても淡く。

 

 ずっと浸っていたいほどの淡く儚い、夢。

 

 長く、長く、世界という概念さえも壊すほどの長き夢。

 

 

 それでも、なお。

 

 

 

 彼は・・・・夢から覚めようとする。

 

 

 その夢の先に・・・・新たな『幻想』が待っていることを信じて・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは・・・どこだ?

 

 俺はそんな思いを抱いてここに立っていた。

 

 目を開けてみると、何かが目の中に飛び込んでくる。

目に痛みが走る感覚、反射的に閉じてしまう瞼。そして、どこか懐かしいその全て。

その何かを・・・俺は、思い出した。

 

 

 これは、日の光。

地球に降り注ぐ、太陽の恵みの光。

 

 そう、地球だ。

 

 俺は・・・大地に立っていた。

 

 

「・・・・お久しぶりだな、母なる大地さんよぉ」

 

 そんなことをつぶやいて俺はその場に座る。

およそ百億年ぶりぐらいの、大地、太陽、そして広がる平野に吹く心地よい風。

 

 その感覚をかみしめて、俺は目を開ける。

その目に映るのは、世界。

 

 

 

 

 

 と、多種多様な生物たち。

 

 見た覚えのある昆虫やらなんやらが大量に見えた。

 

 割と、あのグローい感じの奴らだ。

それがブーンブーンと飛んでやがる。一応虫は嫌いな部類の人間だった俺は顔を思いっきりしかめた。

 

 正直目視もしたくないので空に浮いて、雲の上にまで飛んでみる。

雲の上までくると、特に生物もいない。

 

 ましてやショッキングな見た目の古代生物など全くいなかったことに、俺は心底安心した。

 

 そういえばゴキブリってこの時代からいたんだよなぁ・・・・。

超古代Gちゃんなんて見た日には卒倒するぜ。

 

 そんなこんなで結構なスピードで飛んでいると・・・・・。

 

 

 

 ラピュ〇が見えた。

あの、空に浮く土の塊。

 

 

 えっ?えっ?

ここって東方の世界だよな?ジ〇リの世界観じゃ、ないよな?

 

 よく見ると、あの天空の城よりかは平べったく、広い。

よかった。何とは言わないが、引っかからなそうだ。

 

 しかし、あんなものが何で浮いてるんだあ?

 

 

 近づいて見てみる。

 

 ふーん・・・・・巨〇兵はいないからやっぱりあれじゃなさそうだな・・・。

周りを見ても薄っぺらい平原が広がっているだけで他には何もない。

 

 この島いったい何のために?いやそもそもどんな原理で浮いてるんだ?

 

 周りをふわふわ飛んでいても何もわからない。

埒が明かないので、その大地に降り立ってみることにした。

 

 ほーう、ふわふわぁーっと。

 

 そういえば、身体を動かすのが無駄にだるい気がする。

俺が宇宙空間やら境界やらで生きていたころには垂れ流しにしていた、力の類が抑えられたってことかな?

縛りプレーも、まあ楽じゃなさそうだ。

 

 

 

 そのまま、中に浮く大地に降り立った。

 

 

 すると・・・・・。

 

『第一神、確認。

 

・・・・・・読み込み開始 20%』

 

「ハァッ!!??」

 

 唐突に大地がしゃべり始めた!えええええ!?

 

 いいい、一体どういうことだよ!?

しかも、パーセントとか言ってやがる!こりゃ、天地の仕業か!?

 

『読み込み終了。

 

こんにちは、我が主様。

 

ここは神の生まれる所、高天原です。

 

第二神、第三神の情報を確認しました。

 

読み込みを開始しますか?』

 

 

 俺が驚いていると勝手にロードが終わった。

我が主様とか言ってる。ここまで来たらどうせ天地の仕業だろう。

 

『イェーイ、正かぁーい!

これはたぶん神琉君も知っている高天原です。神様が生まれ過ごすところですね。

取り合えず、結界張って伊弉諾、伊弉冉作っちゃってください』

 

 俺のつけてる、腕輪からそんな声がした。

ああ、天の腕輪か。こんなのつけてたことすっかり忘れてたな。

 

 結界・・・・ああ、こんなの浮かんでたら人間が出来たときびっくりするだろうな。

 

 そういうわけで、完全不干渉結界と完全保護の結界を張っておく。

まあ、幻想郷二重結界の超強化版みたいな感じだ。

 

 そんでもって・・・・。問題は・・・・。

 

『第二神、第三神の情報を確認しました。

 

読み込みを開始しますか?』

 

 

 これだ。

いや、仮にも超重要な神様二柱だ。

 

 作るとか、なんかそんな軽い感じじゃなくてもうすごい緊張する。

 

 てか、作るってどうやって作んの?

そもそも、読み込みとか、情報とかって何さ・・・・。

 

『読み込みを開始します。

 

第二神、伊弉諾 18%・・・・第三神、伊弉冉 14%』

 

 

『すいません、貴方が全く始めようとしないので先に始まっちゃいました』

 

 

「・・・・もう、天地お前が全部やれよ」

 

 

 クソっ!!俺の緊張を返せ!!

無駄だったじゃないか!!

 

 こんな感じで俺が憤っていると、伊弉諾、伊弉冉のロードが完了した。

 

 そのまま、この世界の粒子が集まっていき・・・・まずは男の体が形成された。

そのまま粒子が集まっていき服や髪の毛なども生成されていく。

 

 隣の女性体も同様だ。

 

 ・・・・・。

 

 もう百億年生きているとそういう感情も消えていってしまうが、まだまだピュアで居たいのだ、自分は。

 

 

 そんなことがあると、瞬く間にこの世界に二人の柱が生まれた。

イザナギ、イザナミ。二人が日本を産み、二人が大量の神を産む。

 

 日本神話の・・・・もっとも有名かつ初期の神様だ。

それが、今俺の前にいるんだ。ちょっとびっくりするわな。

 

 そう、イザナギ、イザナミは既に俺の前に立っている。

二人は・・・・なんだ、昔の服?あの神様が着ているような服・・・・ヤマトタケルみたいな?アレだ。

あれを着ている・・・・てか、俺もそんなの着ているがね。

 

 イザナギは、黒い短髪で正直に言って、ラノベの主人公かなんかと思う程の優男っぽさを醸し出している。

 

 イザナミは、反するように腰あたりまで伸ばした黒い長髪。元気いっぱいなヒロインみてーな感じだ。

 

 どうやら二人は俺の指示を仰ごうとしているようだ。

 

 

 ・・・・。

 

 

 指示!?俺がか!?

 

 ちょっちょっと待てって・・・!

 

 と・・・とにかくなんか言っとかなきゃ・・・!

 

 

「お ち つ け !」

 

「「・・・・・は?」」

 

 

 ああ。まさか神様との最初の会話がこんなテンパったものになるなんてな・・・・・。

 

 

 

「・・・・まあ、この鉾使って、国作ったって。

好きにしていいから。困ったら相談して。じゃな」

 

「いや、いや・・・・!

もうちょっと丁寧に教えてくださいよ・・・・」

 

 俺は取り合えず、二人を地上に下ろして国を創らせようとしているのだが、まだ早いらしい。

イザナギが困った様子で反論してくる。

 

「・・・・まあ、良いんじゃない?イザナギ。

まずはやってみようよ!」

 

 困った様子のイザナギとは反対に、イザナミはなぜかやる気満々だ。 

あの説明で、本当に分かったのだろうか?

 

「まあ、イザナミがそういうなら・・・・・」

 

 おいおい・・・・、それでいいのか?イザナギ?

完全にいいなりじゃあないか。まあ、東方世界なら女性のほうが強いだろうし、いいのかな?

 

「・・・・って、駄目ですよ!!

何をやるか全くわかんないんですから!?」

 

 うん。そうだろうね。

あれで納得されたら、将来がすごく心配になる。

しかも一応、てめーら最高神だからな?お前らのせいで日本人全てに影響が出るかもしれんのだぞ?

分かっとんのか?分かってないだろうな。てか、知らないだろうな。

 

 取り合えず、自分の覚えている範囲でやることを伝えてみる。

今度はどっちも理解してくれたようでよかった。

 

「まあ、頑張ってな。

さっきも言ったが、困ったら何でも聞きに来てくれ」

 

「はーい!神琉様!」

 

 伊弉冉が元気よく答える・・・・神琉様?

 

「・・・・様、いらんぞ?

俺、別に偉いわけでもないから・・・・・」

 

「はい!じゃあ、行ってきます!!」

 

 嬉しそうに声をあげ長い髪を揺らしながら飛び降りたイザナミ。

いや、話聞けよ。

 

「あっ!ちょっと待ってよ、イザナミ!置いてかないで!?」

 

 情けない声をあげて、後を追うように落ちていくイザナギ。

・・・・おい。この後の展開知ってるからわかるが、こりゃ声をかける順番を間違えても仕方ない。

完全に、イザナミが主導権を握ってるな。

 

 二人は落ちて落ちて落ちて・・・・・上空のあるところで止まった。

そう、日本が生まれるべきある場所だ。

 

 二人はそこで顔を見合わせた後・・・・俺がさっき作って、渡した矛を差し込んでいった。

 

 

 ・・・・史実通りっぽくてよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度はやることがなくなったので、高天原をうろちょろしてみる。

うん、なーんにもねえな。人も動物も、建物すらない。いつまでも広がっていく平原があるだけだ。

 

 何しよ・・・・・。

何にもすることのない俺は、その場で寝っ転がってみる。

 

 ・・・・このまま原作まで昼寝するのもいいかな?

そんな事を考えながら、俺は眠りの中に沈んでいった・・・・・。

 

 

 

「おーい、起きて、起きて。神琉君?」

 

 う・・・・誰だ・・・・?

 

 俺は聞いたことのない声で目を覚ました。

 

 上げた瞼の前には、イケメンがいた。

イケメン・・・・・誰だ?

 

「ボクはアレ・・・・『造化三神』って言ったら分かる?アレの一番上の天之御中主神だね。

気軽に『みなか』とでも呼んでくれ」

 

 あめのみなかぬしぃ!?

別天津神の!?至高の神様!?

 

 俺は飛び起きて、目にもとまらぬ速さで土下座する。

 

「サアセン、シッタぁぁぁぁああ!!」

 

「え・・・・・何が・・・・・?」

 

 みなかちゃんが、びっくりしてるが気にしてなんぞいられない!

 

「別天津神様に偉そうな口きいてスイヤセンしたぁぁああ!!!!」

 

 俺は、一応神代七世の人物なんだ!

日本神話において、『別天津神>>>>その他』なのは確定的に明らか!

 

 そう、俺はもう、世界最初の完全な土下座を披露して見せたのだ。

 

 

 たかが土下座。

 

 

 

 されど土下座。

 

 

 

 見よ!!今の時代を!

 

 日本の街を歩く外国人に日本の伝統芸能、DOGEZAを披露するとこう言ってくれるはずだ!

 

 ジャパニーズ、マジクレイジーね、と。

 

 そう!!!!日本の土下座は!!

 

 

 日本神話から始まっていたのだッ!!!!

 

 

 万国共通、最高級の謝罪を表し、ソレはある種の美しささえもあらわす、土下座。

 

 

 それを間近に喰らったみなかちゃんはッ!!

 

 

 目が潰れた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こともなく。

困ったように「頭をあげてください・・・・」と言った。

 

 

 

 

「あの・・・そんなに、我々との差はないですから。

むしろ貴方のほうがちょっと偉いぐらいですよ?」

 

 どうやらかなり俺は誤解をしていたらしく、別にそんなに別天津神と他のものの差はないようだった。

なら、別にいいんだが・・・・・。

 

「だって、貴方はもともとの歴史からちょっと外れて動いているのでしょう?

ならば、我々より上でも何の問題もありません」

 

 いや、そのりくつはおかしい。

てか、その外れてるってどうやって分かったんだよ!?

 

「『天地神』様に聞きました。

この世界の全てを管理して司るとても素晴らしい神様に」

 

 ・・・・何だよ、またあいつか・・・・。

 

 

 まあ、いいけどさ・・・・。

 

「そういや、他の別天津神は?」

 

「私に押し付けて、ビビって逃げて行っちゃいました。

『あの神様、すごく強いうえに自分勝手で、横暴で気まぐれかつ、中二病なんでしょ!?

天地神様が言ってたから間違いないよ!』って言ってね」

 

 みなかが、たはは、と頭を掻いて、言ってくる。

 

 おーし、天地ぜってー許さねえぞ!

次あったらぶん殴って、ひき肉にしてやる!

 

 そんなことをみなかと話していると、イザナギ、イザナミペアが戻ってきた。

かなり浮かない顔をしているので、国産みに失敗したのだろう。

 

 逃げていった他の別天津神を、集合させるついでに、殴ってやろうか。

 

 

 二人がここに戻ってくる。そう、次こそは本当に日本が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、日本の永き物語・・・・スタートだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 使い古された表現だ。

 

 

 それでもこの言葉が当てはまるのだから、仕方ない。

 

 

 そう『昔々・・・・・』だ。

 

 

 この永遠の冒険談をこの定型文に当てはめてみる。

 

 

 昔々、あるところに、ある少年がいました・・・・と。

 

 

 

 『・・・昔々、真実を追い求めた少年は・・・・・』

 

 

 さあ、見つけてくださいよ・・・・。

 

 せっかくお膳立てしてあげたんですからね・・・・。

 

 

 真実を、ね。

 

 

 

 

 





久しぶりの本編だったな・・・・。





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13話 gravity of free will


 二日連続投稿とかいう泥沼・・・・。

 でも明日(今日)絶対投稿できないしなぁ・・・・。

 誤字脱字あるかもしれませんし、いつもながらの文章崩壊!

 そして、とうとうあの人が・・・・!


 どうぞ!!


 

 

「すいません・・・・失敗しちゃいました・・・・」

 

 行きは、元気いっぱいだったイザナミががっかりしながら帰ってきた。

その隣のイザナギも同様の表情だ。

 

「・・・・失敗しちゃったの?」

 

 みなかがそんなことを聞く。

俺は大筋の物語を知っているが、基本的には口出しをしないようにしたい。

 

「はい・・・一回目はしっかりとした子供では無く『ヒルコ』が。

二度目は固まっていない島である『淡島』が。ともに海に流してしまいました・・・・」

 

 そういえば、これリアルタイムで日本神話なんだよな。

そう考えると大河ドラマかなんかの中に入ってみたいでとてもわくわくする。

 

「うーん・・・・何があったのだろう。ちょっと占ってみようか・・・・。

おーい!タカギ!ムスビ!ちょっと来てみてくれ!」

 

「どうしました・・・?あっ!!」

 

「どうしたの?突然・・・・?あ」

 

 ここに歩いてきたのは、こっちも優男っぽい、インテリ系神様、高御産巣日神さんことタカギ。

そして、後ろからのんきに歩いてきた女神の神産巣日神ことムスビさんだった。

 

「おい・・・お前ら、さっき散々中二病だの言ってくれたらしいな・・・・?」

 

 個人的にうらみのある二人だがな。

 

「覚悟しろよ・・・?お灸据えてやるから・・・・」

 

「ひいっ!?ごめんなさいっ!!」

 

 ムスビはそう言って逃げていくが、タカギはそこで慌ててすっ転んでしまった。

くっくっく・・・・安易に天地のことを信じるからこんなことになるのだよ・・・・。

 

 取り合えず、頭に一発拳を落として、涙目になったタカギ。

それを放って、逃げたもう一柱を追わなくてはならない。

 

「おい、ムスビィ・・・!覚悟はいいな・・・?」

 

「ごめんなさいって言ってるじゃないの!?お願い殺さないで、いやほんとに!」

 

 そして追いかけっこが始まった。

 

 

「あのぉ・・・みんなやる気ある?」

 

 唯一、占いをやる気のあるみなかが問うが、答えてくれるものはいない。

イザナギ、イザナミは意気消沈してその場で座り込んでおり、タカギは頭を抱えて痛みに苦しんでいる。

後の二人は前述のとおり鬼ごっこの最中だ。

 

 みなかはそれを見てため息をつく。

そして胸元から骨と木の樹皮を取り出し、おもむろに火を焚き始めた。

 

 

 これは太占という占いで、骨のひびの入り方で何があったかを占うことが出来る。

少し時間が空いたので、二人の追いかけっこを見といてみる。

 

 捕まりそうで捕まらないムスビと追いかけ続ける神琉はどこまでも行きそうなぐらい走っている。

みなかはそれを見てまたため息をつく。

 

「ふう・・・・何やってんだか・・・・あ、結果出たよ」

 

 

 

 結果が出たというので、集まってみる。

そこにはひび割れた骨が置いてあった。

 

 

「うーん・・・・すっごくひびが入ってるねぇ・・・。

タカギ、何があったかわかる?」

 

 頭を痛めたタカギは、少し考え込んだ後何か分かった様子で座り込んだ二人にこう言った。

 

「なあ、君たち『儀式』をしたときどっちから声をかけたかい?

もしかしてイザナギからではなくイザナミから声をかけなかったかね?」

 

 そう問われた二人は、思い出すとそうだったことに気づく。

 

「そうです!僕が声をかけようとおもったら、先にイザナミが声をかけちゃうんですもの。

これでいいのかってなりましたねぇ・・・」

 

 うん、うん。史実どおり。

 

「それじゃあ、駄目に決まってるじゃない!

男は度胸、女は愛嬌よ?もっとイザナギちゃんはガッツリいかなきゃ!」

 

 結局俺から逃げ切ったムスビがそんなことを言う。

まあ、全然間違ってないのだが。

 

「なるほど・・・・」

 

「参考になりますね!」

 

 二人のこの小学生みたいな純粋な心。

尊敬したいね。

 

 イザナギが手をあげて質問する。

 

「じゃあ、どうすればいいですか?」

 

 小学生か。

喉まで出かかった言葉を、どうにかして抑え込んで黙る。

 

 その質問はみなかが答えた。

 

「もう一回、結婚式をやり直せばいいよ」

 

「はい!分かりました!」

 

 イザナミが元気に答える。

・・・・いや、本当に小学生か?

 

「それでは、もう一度行ってきますね!

次こそは素晴らしい国を作ってきますね!」

 

 そして二人はまた下界に降りようとする、が俺はそれをちょっと留めてこう言った。

 

「引き止めちゃってすまん。でもちょっと助言をしようかなって」

 

 そう、助言。

史実から外れるようなことは言いたくないし、変わらないかもしれないことだが。

 

「助言ですか?」

 

「そうだ。まず、イザナミ。お前は無理をしすぎるな。

そして、イザナギを信じろ。それが一番だ」

 

 たぶんイザナミには理解できなかっただろうが別にいいのだ。

そのまま、俺はイザナギに続ける。

 

「イザナギ。お前は激情するな。妻と子供を大切にしろ。

そして、怯えるな。前をみろ。いかなる時も、信じろ」

 

「・・・・はい」

 

 イザナギはよくわからないながらも返事をしたようだ。

 

「まあ、頑張ってくれ。

何かあったらすぐに頼ってくれや。はい、ドーン!」

 

「うわっ!ヒッ・・・!ギャアアア!!!」

 

 俺はイザナギを押して、下に落とす。

悲鳴ごと落下していってるな。

イザナミは自分から降りていった。

 

 下を見るともう一度神殿を回り始めている二人がいた。

 

 まあ、無事に着地できたみたいで良かった。

 

 

 さて、もう一回寝るか。

いや、先にムスビ殴るか。

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、俺はムスビ殴って寝た。

で、今起きた。

 

 あれから、百年ほどたったらしい。

 

 そんでさあ・・・・。

 

 

「貴方は第一神さまなのでしょう?

ならばあなたについていくが道理です。

貴方を私の主とします。私の名前は八意思金神です。主よ、ご命令を。」

 

 銀色の髪に、赤と青の服。

一度見たら忘れやしない、あの人。

 

 こりゃあ、一体どういうことだよ。

 

 なんで、あの八意永琳が!

 

 俺の部下になりかけてるんだよ!?

 

「おいおいおいおい・・・・!一体何がどうこじれてそうなったんだ?」

 

 まるで謎すぎる。

まずはその考えに至った経路を、聞きださなくては・・・。

 

「・・・・説明が必要ですか?

では説明いたします。

私はこれより18分前に誕生いたしました。

そして、自らの中に『知識』が入っていることを知りました」

 

 ほうほう・・・。

たしかオモイカネってのは知識の神様だったはずだからな。

 

「その知識の中には、己が知識の神であること、そして貴方様がここの最高神であることを知りました。

ならば、最高神に仕えるのが私の持つ知識では道理だろうと判断し、貴方様に下ることを決定しました。

・・・・ご満足でしょうか?」

 

「・・・・ああ。よーく分かったよ・・・・」

 

 なるほど・・・・。生まれたばっかりで勘違いしてしまったか・・・・。

正直なところ、俺はここの最高神なわけでもないし、もちろん俺に仕える必要はない。

 

 そのことを伝えると、露骨に彼女は失敗した・・・という表情を見せた。

しかし。神様にとって契約とは、正に力に等しかった。

 

 既に永琳自身が『仕える』と決めてしまったのだ。

もう仕える以外の道はない・・・・・訳でもなく。

 

 正直俺ぐらいの神様になると、そんな薄っぺらい『契約』など引き裂くことが出来る。

だが、それをする馬鹿はいない。理は『ありとあらゆるものを知っている神様』を手放すものなどいないからだ。

 

 俺だって原作知識がなかったらそうしていただろう。

でも、原作の中ではまずツクヨミ、そして蓬莱山輝夜に仕えているのだ、永琳は。

 

 まあ、前述の通りに俺が自分のことを放さないと思ったから永琳は絶望的な表情を浮かべているのだろう。

かなり、見損なわれているようだ。

 

「『契約』を引き裂く」

 

 そう俺が言った瞬間、永琳は俺から放たれた。

永琳は悪い予想を裏切られたようで、俺を驚きと猜疑の目で見てくる。

 

 まあ・・・・騙したわけでもないし、俺は悪くないのだがね。

どんだけ俺が下種な野郎だと思ってたんだか・・・・・。

 

「・・・・どういうこと?」

 

「・・・・気まぐれだ。さあ、さっさとどっかに行けよ」

 

 心のままを口に出す。

俺が永琳を解放したのは事実気まぐれだし、また、さっさとどっかに行ってこの事を忘れてほしいのも、心象そのままだ。

 

 てか、その口調だよ!

さっきから違和感がすごく強かったんだが、その口調のせいか。

やっぱり永琳は、その女医さん口調じゃないとな・・・・。

 

 ・・・・いや、どっか行けって言ったろ。何で動かないんだよ?

さっきから永琳は足を一歩たりとも動かさない。

 

「なあ、早くどっか行けって・・・・」

 

「・・・・興味が湧いたわ。貴方についていく、輝始天之琉神」

 

 

 ・・・・は!?

また、突然に・・・・。

 

「何を言おうとついていく。貴方と一緒ならばもっと知識を得られる。そんな気がする」

 

 彼女の黒い目が、俺を射抜く。

その視線を反射するように返して俺は答える。

 

「勝手にしろ・・・」

 

 俺は取り合えず歩きだしてみる。

永琳が生まれたってことは、他にもいろんな神様が生まれていたって不思議ではない。

 

 その後ろを彼女はついていく。

二人の足取りはいまだ未確定。

 

 

「そうだ・・・・!」

 

「どうした?輝始天之琉神」

 

 すっかり忘れていたが、言わなきゃいけないことがあった。

 

「その『輝始天之琉神』っていう名前あんまり使いたくないんだ。

出来れば、『始天輝 神琉』の下のほうで呼んでくれないか?」

 

「・・・・わかったわ、神琉。・・・・こういうことでしょ?」

 

「・・・ああ。ついでにだが・・・・」

 

「ついでに何よ?まだ何かあるの?」

 

 訝しげにこちらを見るその双眸。

その黒い瞳はまるで宝石のようだった。

 

「いや・・・・オモイカネってなんか堅苦しいじゃん。

だから新しい名前をあげようと思ってな・・・・」

 

「新しい、名前?」

 

「そ。お前は今日から・・・・『八意永琳』と名乗れ」

 

 そう。八意永琳。オモイカネの名を捨て、月に行き、地に帰り、永遠となる名前。

俺は彼女に枷をかけてしまった。でも・・・・。

 

「えいりん・・・・エイリン・・・・ふふっ、良い名前じゃない?」

 

 彼女が喜んでるなら、いいや。

 

 

 

 余談だが、永琳の『琳』にも『澄み切った玉』の意がある。

神琉の『琉』も同様だ。神琉君はそのことを知らないのですがね。

 

 

 

 と、言うわけで俺たちは二人で行動するようになった。

 

 と、いってもあんまり変わらず、たまに会話を交わすだけだった。

 

「私って、一応知識神なのよね?何で神琉のほうが物を知っているの?」

 

「経験の差だよ。お前もいつか分かるだろう」

 

 こんな会話だったり。

 

 

「永遠っていったい何なの?理解が及ばないわ」

 

「それが理解出来たら、俺を超えられるね」

 

 こんな会話だったり。

 

 

 二人の話はとてもよく弾んだ。

 

 二人は話した。太陽の元、星の元。そして、月の元で。

 

 

「あの月・・・・一応俺が作ったんだぜ」

 

「・・・・ふふっ。いくら神琉でもそれは冗談でしょう」

 

 永琳には信じてもらえてないが。

 

「いや、結構ほんとだぜ」

 

「ふーん・・・また一つ賢くなったわ」

 

 

 

 でも・・・・。

 

 

 

「なあ・・・これから別行動にしないか?」

 

「なんでまた?」

 

「いやぁあ・・・ちょっと遠いところを一人で見たくなったんだ」

 

 永琳は首をかしげてこう言う。

 

「いや、別にいいけど・・・・寿命も長いし。でも!約束しなさい!」

 

 約束?

 

「絶対帰ってきなさい。そしてまたいつか相まみえましょう」

 

「おう!それじゃあな!」

 

 もちろん・・・!そのために俺はこの世界に来たんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 





 はい!

 永琳登場!

 ヒロインっぽいですがたぶん違います。
てか、この小説にヒロインなるものはたぶんできません。

 ・・・・たぶん。

 それでは、次の話で。


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14話 太陽、月、地球

 題名で察せる人。いいですねぇ・・・!


 第一目標を、評価バーに色を付けることにしました。


 てなわけで、評価お願いします!!





「よっ・・・・と」

 

 俺はふわりと立つように高天原へ降りる。

 

 久しぶりの地上だ。

最後に永琳と別れてから、また二百年ぐらいたっただろうか。

 

 あの後俺は、まずパンデモニウムに行った。

あの惑星、魔力を俺が使いやすくするとか言ってたような気がするが、あれを動かすにも魔力が必要だ。

その魔力を・・・充電?するために星で百年ぐらいとどまってた。

 

 いやぁ・・・割と退屈だったね。

最近はいろんな人と話してたから、もっと退屈に感じたな。

 

 何もすることがなかったから、天地に頼んで東方の新作借りたりしたなぁ・・・。

まあ、STGあんまり得意じゃないんだけどね・・・・。

 

 そんでパンデモニックの充電が終わった後、久しぶりに我が愛娘、ヘカーティアに会いに行こうとしたんだ。

全然見つからなかったよ。あいつどこほっつきまわってんだ?

 

 宇宙の果てあたりまで探しにいったんだがな・・・・。

いないってことは異世界かどっかにでも行ったか?

親としては心配な気持ちもあるが、あいつ強いし多分不死身だろうし、大丈夫かな?

 

 で、あとはそのうちツクヨミとかが移住する月のコンディションも整えておいた。

多分あんまり必要ないとは思うけど。

 

 久方ぶりの高天原は様子が全く変わっていなかった。

何もない、草原が永遠のように広がっている。

 

 まあ、何にもないパンデモニウムや月よりはきれいで、目に優しい場所だ。

疲れたから寝ようかな・・・・。

 

 

「やれやれ・・・・神琉君いっつも寝てますねぇ・・・・」

 

「・・・みなかか」

 

「はい。みんなの最高神様こと、みなかですよ?」

 

 俺が寝ようとして寝っ転がると、どこから湧いてきたのか、みなかがやってきた。

こいつも天地と同じで神出鬼没だ。ビックリはしないが心臓には悪い。やめてほしい。

 

「呑気ですねぇ・・・・割と下では大変だっていうのに・・・」

 

 ん?下?

下界のほうの事か?

 

 

「ええ。国造りの最中に事故でイザナミが死んでしまいましてね。

怒りに怒ったイザナギが、その時に生まれた子供の首をこう・・・・」

 

 みなかが首を斬るジェスチャーをする。

俺は顔をしかめる。くそ。助言はやっぱり意味がなかったか。

 

「それでカグツチの首を掻き切った後にイザナミを迎えに黄泉の国まで行ったのですが、

・・・・まあ、変わり果てたイザナミの姿を見て逃げ帰ってきたところです」

 

 はあ・・・・・。

 

「・・・・下界降りてくるよ」

 

「・・・・気をつけてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が下界に降りると、夜明け前で雨が降っていた。

 

 そして黄泉の国からの出口の前に佇むイザナギがいた。

 

「おい・・・・・イザナギ?」

 

 イザナギは下を向いて拳を握り締めていた。

爪が食い込んで血が滴るほどに。

 

「・・・ど・・して・・・!・・・・・どう・・・して!!」

 

 彼は泣いていた。

俺はその様子を見て声をかけることをためらう。

 

 

「どうしてッ!!彼女は死んでしまったんですかッ!!」

 

 

 それは彼の心の底からの叫び。

共に長き間寄り添い、国を創り、正に一心同体だった二人。

 

「何故ッ!!僕たちは引き裂かれてしまったのですかッ!!

何が・・・・・。何が悪かったのですか!!

僕ですか!?彼女を拒んだ僕が悪いのですか!?

それとも彼女ですか!?彼女が死んだのが悪いのですか!?

我らの子供ですか!?彼女を殺したあの子供が悪かったのですか!?」

 

 彼は、叫んだ。

己に降りかかる、愛する者との別れに、その理不尽に抗おうとして。

 

 それでも・・・・過去は決して変わることはない。

 

 

「教えてください・・・・神琉様。

貴方はこのことを知っていたのでしょう!?僕たちの末路を!この哀れな結果を!

どうして・・・・・教えてくれなかったのですか!?」

 

 

 彼の目。

もしその答えが『納得できぬもの』であれば、たとえお前であっても容赦しない。

そういうことを込めた目だ。

 

「・・・・・助言はした。言い訳にしかならないけどな」

 

 そう、俺は助言はした。

かなり抽象的だったが、あれを実践すればこれを回避できたかもしれないのだ。

 

「・・・・・ッ!ならば、彼女を生き返らしてくださいッ!!」

 

 彼は涙を流し叫ぶ。

彼の頬を伝うは血の涙。

その願いは、生命神である俺なら出来る。

しかしそれは決して叶えることはできない。

 

「・・・・運命は変えられない。変えてしまってはいけない・・・・・」

 

「ふざけるな・・・・ッ!」

 

 

 唐突に俺の頬に痛みが走る。

それは、キレたイザナギが俺を殴ったからだ。

 

 でも俺は・・・・それを否定することなどできない。

ただ地面に膝をつき謝罪することしかできない。

 

「・・・・・済まない。・・・・・・本当に」

 

 

 

 未だ雨はやまない。

 

 

 

 

 

「お前の悪いところはすぐに激情してしまう所だ」

 

「先ほどはすいませんでした。頬を殴ったりなどして」

 

 

 夜が明けて、雨が止んだ。

 

 イザナギは先ほどのことをしきりに誤ってくるが別に気にしてはいない。痛かったけどな。

逆にあんなことを言われてキレないやつはいない。最愛の人を諦めろなどと。俺だってキレるだろう。まだ人を愛したことはないのだけど。

 

 この後は確か・・・・禊で神様を大量生産、最後にあの有名な三貴神を生み出すんだっけか。

 

「・・・・身体洗ってこい。黄泉の穢れが大量にくっついてるぞ」

 

「・・・・はいっ」

 

 先ほどの涙は消えて、よく見ると昔よりかは締った顔をしているイザナギ。

体を洗いに行かせる。

 

 まあ、体を洗わせている間にいくつかやりたいことがあるのだ。

まず・・・・・俺はカグツチの殺されたところに転移してみる。

 

 血がまき散らされて、かなり凄惨な現場だ。

どこの殺人・・・・殺神?現場だろうか。

 

 そしてこの場所、ただの殺神現場でもない。

もはや肉体は、朽ちて骨も残っていない。骨や肉体、血は別の神様になったんだっけか。

そこに今残っているのは先ほども言った通り血痕と・・・・怨霊の気を放つ、紅い石だけだった。俺はそれを拾い上げる、が。

 

「熱ッ!!何だこの石!?」

 

 まるで火のように熱かった。拾い上げた瞬間直ぐに落としてしまう。

神力や霊力を体に流しているわけでもない、ただの肉体ではやけどすることは必至だった。

 

「なんだよ、この石・・・・・って大体知ってんだけどな」

 

 よく耳を澄ますと、石からは声が聞こえてきた。

それもおどろおどろしい恨みのこもった。

 

『グファ・・・・燃やしてやる・・・・許しを乞うても燃やしてやる・・・・!

生まれ落ちた火の神をを切りおとし罪・・・・!消して軽くなどないぞ・・・・!

いくら貴様が最高神だろうと関係がない・・・!黄泉の炎に巻いてやる・・・!』

 

 殺されたカグツチの怨みの言葉が延々と繰り返される。

ずっと聞く気にはなれないから、その石を境界の中に放り込んでおく。

 

 

 

 突然だが、皆様は古事記を読んだことがあるだろうか?

 

 ある、という人はそのまま聞いてもらっていい。

 

 ない、という人はあまり分からないかもしれないが、いつか読んだときに「ここか・・・・」とでも思っておいてくれ。

 

 

 イザナミとイザナギの国造り。

それは、とても素晴らしい物だった。たくさんの神様を創り、始まりを始めた、正に偉業だ。

 

 

 イザナミの最後を除いて。

 

 

 そう、さっきまでにあったようにカグツチを産み、火に巻かれてイザナミは死んでしまう。

イザナギはキレてカグツチを切り殺す。そのままの勢いで黄泉の国に行く。そこでイザナミを連れ帰ろうとして、失敗し、イザナミに追いかけられる。逃げ切ったイザナギは二つの世界をつなぐ道を岩で閉じ、そこで二人は離縁をする。

 

 

 俺は、この話が嫌いだった。

さっきのイザナギの疑問とも一緒だ。なぜ死ななくてはならなかったのか。

 

 なぜ幸せになれなかったのか。それを考えることは多かった。

 

 

 話がずれた。元に戻そう。

 

 そう、殺されたカグツチの話だ。

カグツチの死体からは多くの神々が出来た。

 

 剣から滴り落ちた血からもだ。

 

 だが・・・・新しい神様を産めたからと言って。

 

 

 生まれて、すぐ殺されたカグツチは喜んで死ぬだろうか?

 

 

 

 もちろん、そのはずは無い。

殺したイザナギ、自分を産んだイザナミを強く恨んでいたに違いない。

 

 それほど、燃やし殺したいほど。

 

 だから怨霊・・・・いや、神様だと荒魂か?・・・になって生きていた。

 

 この石を回収すると何かがあるわけでもないが、一応回収しておくことにする。

これで目標の一つ目は達成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、二つ目・・・・・。

それをかなえるために元の場所に戻ると・・・。

 

「神琉様ッ!!見てください!!」

 

 いつの間にか、イザナギが戻ってきていた。

ってことは・・・・。

 

「こんなにも貴い、子供たちが生まれてきてくれました!」

 

 そういって、見せてきたのは女神二人に、男神二人。

そう、天照大御神、月読尊、須佐之男命の三柱、後世の三貴神である。

 

 ・・・・ツクヨミって女神なんだ。

元の世界じゃあ、男神の扱いだったような気がするが・・・・。

ま、あっちはどんな作品でも女体化はあるからな。逆があっても何ら不思議ではない。

 

「こんにちは!()()()()()!!」

 

 アマテラスが元気に挨拶してくる。

 

 うむ。元気がある子供が一番じゃ。この子は高天原を収めるほどの大物になるぞ・・・。

 

 ・・・・・って、まてまて・・・。

 

 俺はイザナギの胸ぐらをつかんで問い詰める。

 

 

「おいッ!!アマテラスになんて吹き込んだんだッ!?」

 

「?・・・『神琉様は僕のお父さんみたいな人だ』って・・・・」

 

 ・・・・てめぇなぁ・・・。

 

「俺はまだッ!!若々しいからなッ!!精神的にも肉体的にもッ!」

 

「すいません・・・・」

 

 俺がイザナギに怒りをぶつけていると、ツクヨミが話しかけてきた。

 

「おはようございます、()()()

 

 

 その言葉を聞いて俺はまずイザナギを殴った。全力とはいかないがそこそこの勢いで。

 

 

「痛いですよぉ・・・!」

 

「うるせぇ!まだ『おじいさま』は分かるが、なんで『父さん』なんだよッ!!」

 

「い・・いえ。ツクヨミは月の神様なので、月を創った神琉様を父、とするのがいいのかなと思いまして・・・」

 

 やかましぃ!混乱するわぁ・・・!

 

 そういえば、まだスサノオは一言も話していない。

声を聞いてみたいところではあるが・・・・。

 

「・・・・ちわ、じっちゃん」

 

 お、声を聞けた。

しかし、ナイスタイミングだ。心でも読めんのかな?

 

「読めねぇよ・・・・」

 

 読めてんじゃん!スサノオの性格が全く分からなくなったぞ!

 

 

「まあまあ・・・とりあえず三人に役割を振り分けさせてもらっても?」

 

 ああ、ごめん。

 

 

 

 イザナギがかしこまった様子で読み上げる。

 

「それでは・・・・オホン!

女神、天照大御神よ。主は高天原を治めよ!

 

「はいっ!」

 

 オレンジ色の髪の毛に、赤の巫女服のような物を着た少女が元気よく答える。

続いて、月読尊が呼ばれる。

 

「次に男神、月読尊よ!主は夜の国を!」

 

「はいっ!」

 

 蒼い髪を伸ばした腰のあたりまで伸ばした、少女が元気よく答える。

 

 

 ・・・ん?男神?

 

 

「「「・・・・ええ!!!???」」」

 

 驚きの声がダブった。俺と、アマテラスと、スサノオだ。

後の二人は俺たちが驚いている理由がわからないようだ。

 

 それもそのはず、ツクヨミの容姿はどう考えても女のものだったからだ。

ってことはだよ・・・・。

 

 

「男の娘・・・・ねぇ・・・・」

 

 割とツクヨミと一緒に行くのは楽しそうだ。

 

「なんで驚いてるんだ?・・・まあいい。

最後に男神、須佐之男命よ!主は海原を治めよ!

これでいいかな・・・?」

 

「ほいほい、了解っと」

 

 

 こうして三人が受け持つ国が決まり、日本神話は新たな世代へと受け継がれた!

 

 

 

 

 

 

「うわああああああん!母ちゃんに会いてぇよぉぉぉ!!寂しいよぉぉぉおお!!」

 

 はずなのだが。

実は泣き虫の、スサノオに任せた海は荒れていた。

 

「こ、こら!スサノオ!そんなに泣くなよ!」

 

「うわあああああん!!母ちゃんの、住んでる、根の堅洲国に、いきてぇよぉ!ぐわあああん!!」

 

 イザナギはキレかけていた。こいつのキレ症は全然治りそうにない。

 

 

「うるさぁああい!!そんなに行きたいなら勝手にしろぉぉ!!その代わりこの日本からは追放だぁあ!!」

 

 

 と、いうわけで泣き喚いたスサノオは海を治める仕事から解雇されてしまいました。

日本神話じゃあ、ここから高天原に上がっていくのですが・・・・。

 

 

「・・・なぁ、スサノオよ。お前、母さんに会いたいんだっけか?」

 

 そう。はた迷惑な神様こと神琉がこの世界にはいるのだ。

 

「うん・・・・グスッ・・・黄泉の国に行きたい・・・・びええええん!!」

 

 神琉はそれを慌てて止める。

 

「おいおい、泣くなよ・・・まあ、奇遇だな。お前は幸運だぜ」

 

 そして、ニヤリと笑ってこういう。

 

 

「俺も行く予定だったんだ。一緒に行かないか?」

 

 

 

 

 

 

 




 ではまた今度。GWも終盤ですねぇ・・・




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15話 黄泉の唄~Izanami object



 かなり長いですんで、注意。

 タイトルはここ最近で一番お気に入りです。






 

「俺も行く予定だったんだ。一緒に行かないか?」

 

「・・・・・へ?」

 

 スサノオはどうやら理解できなかったようだ。まあ、仕方ないだろう。

まさか、イザナギはダメと言ったのに、その上の父であるような俺はいいと言ったのだから。

 

 口をぽかんと開け、涙を流していた眼を見開き擦る、スサノオ。

こいつの性格は、全くわからない。冷静に心を読むとか、いきなり泣きわめくとか。

 

個人的には、暴虐な神様のイメージが一番強いがね。こいつ、原典でも性格が初期後期で変わってるしなぁ・・・。後で問いただしてみるか。

 

「・・・・どういうことだよ、じっちゃん?」

 

「そのまんま。最近、イザナミの様子見てなかったし、お前も黄泉の国行ってそこで暮らしたいんだろ?

だから俺が様子見るついでにお前を連れてってやろうかな・・・・・って」

 

  スサノオはこちらを探るような眼付きで見てくる。お前さっきまで泣いてただろうに。

一瞬で表情も視線も変えやがって。可愛くない孫だなぁ・・・・。

 

「・・・・じゃあ、連れて行ってくれよ。まだ会ったことのない母さんに会いたい。

それでツクヨミと、アマテラスに自慢してやるんだ!」

 

 堂々と言い放つ、スサノオに俺は苦笑する。自慢できるようなものではないだろうからだ。

腐敗した肉体、怨みに落ちた精神。そんな母を見てもスサノオは大丈夫だろうか・・・・?

 

 

 俺はそう思って目の前の少年を見る。

強き決意を込めた黒い目。一歩たりともひかぬという意思を窺えるその表情。

それは、今まさに俺たちが会いに行こうとしているイザナミの特徴と一致した。

 

 こいつなら・・・大丈夫だ。伊達に、三貴神の一柱じゃないな。

 

「そんじゃ、いくぞ。まずは黄泉の国への入口を探さなくては」

 

 イザナギが一番わかりやすい入り口を閉じてしまったので、別の場所から冥界へと入らなくてはいけない。まあ、イザナギが閉めたところから入ったっていいのだけども。

 

「分かった!じっちゃん!」

 

 スサノオは元気に返事をする。こういうところは、流石あの二人の子供だ。

 

 ・・・・というか、じっちゃんって言われると本格的にじいちゃんみたいだな。

俺はまだまだ『中学生ソウル』のはずなんだが・・・。

 

 

 

 

 割と彷徨ってやっと見つけた黄泉への入り口は、十センチも空いてりゃいいレベルの小さな穴だった。それでも禍々しい、近寄るだけで吐き気のする感覚はここが黄泉の国への入り口だということを強く主張している。勿論、誰も入れない。大きさ的にも、気分的にも。入れるのは小人ぐらいかな?大きさ的な意味だと。

 

 指を突っ込んでみる。なにかに引っ張られる感覚が自分の指先を襲う。たぶん、黄泉の国に引きずり込もうとしているのだろう。もっともっと、死者という自分の仲間を増やすために。

 

 まあ、あいにく俺は引きずり込まれないだけの力も、引きずり込まれたとしても帰ってこれるほどの能力も持っているがね。たぶん。

 

「・・・・じっちゃん、ここ入んの?」

 

 スサノオは穴に向かって指をさし、顔を引きつらせて聞いてくる。

入り口でさえこの瘴気だ。中になんて入りたくないだろう。当たり前だ。

 

 俺はスサノオの疑問に答えてやる。

 

「母さんに会いたいんじゃないのか?ここで行かなかったら・・・・・もう二度と会えないかも・・・・

 

「分かった分かった!!行くから行くから!・・・しかし・・・・黄泉の国っていったいどんなところなんだろう・・・・入り口でこれだと・・・・」

 

 スサノオがぶつぶつ言いながら黄泉の国へと入っていく。

俺もその後ろに続いて入ってみる。真っ暗な空間で体がグニャグニャと歪むような感覚。それなのに痛みや苦しみがないのが逆に不安を煽る。但し気分は悪くなる。そんな空間を数十秒体感したところでどこかに吐き出された。

ここは・・・・黄泉の国か。地上の夜よりも暗い世界。いるだけで命に危機が及ぶような空間。

 

 俺らが落ちてきたところは黄泉の国と現世をつなぐ場所だった。デカい岩が道をふさいでいることから、イザナギが逃げる時に使ったルートであることがよくわかる。

 

 スサノオは地面に倒れていたが、頭を振って立ち上がる。

そして周りを確認した後感想をつぶやく。

 

「ここが黄泉の国か・・・・。あんまり気分のいいとこじゃないな・・・住むには向かなそうだ」

 

「同意するぜ、スサノオ。まあ、ここまで来たならイザナミに会いに行くか」

 

 そうして俺たちは、黄泉の奥のほうへと歩き始めた。

 

 

 

「桃ノ木・・・・なんでこんなところに?」

 

「こりゃあ・・・・あれだ、『オオカムヅミ』だな。おめえの父さんの救世主みたいなもんだ。

これにお祈りとかしとけば、もしかしたら良い事あるかもしれないぜ」

 

「ふーん・・・・」

 

 俺たちは黄泉比良坂と呼ばれる坂をゆっくり登って行った。

しかし、地底の国なのに坂を上るって面白いな。完全に異空間なんだな。

 

 スサノオは桃ノ木に向かって礼をしている。律儀だなぁ・・・。

そういえばちょくちょく、『魔物』みたいなのを見かける。

 

 本当に、この黄泉の国は魔物と死霊の帝国なんだな・・・・。

 

「・・・・そういえばスサノオ。お前の性格って結局どれが本当なんだ?

泣き喚く性格と、今の性格が同じようには俺にはどうしても思えんぞ・・・・・」

 

 気になっていたことの一つを聞いてみる。

スサノオが答えてくれたことにどうやら、普通に感情の起伏が激しいだけなようだ。

 

 そんなことを駄弁りながら歩いていると、いつの間にか神殿についていた。

神殿というよりかは・・・・でっかい掘立小屋みたいな感じだ。

 

「なあ・・・本当にここ入るんだな!?本当なんだな!?」

 

 スサノオは、ビビってる。当たり前か。

神殿からは、死臭や瘴気が漂ってくる。近寄りたいやつはいないだろう。

 

 まあ、ここまで来たなら行くしかないんですが。

 

「本当だ。さあ、さっさと入るぞ」

 

「・・・・・ぐわあああ!!マジで言ってんのか!?」

 

 スサノオが頭を掻き毟って悶えるが、仕方ないだろう。

さっさと、覚悟を決めやがれ。

 

 俺は腐りかけた扉を押して開く、スサノオはその後ろをついてくる。

 

 

 

 

 

 神殿の中は暗く、人っ子一人いない・・・・ように見えた。

だが、この腐った気配と瘴気の揺れる様子は分かる。

どれだけ巧妙に隠されていようとも。スサノオは感知できなくても。俺は一応生命神だからな。

 

「いるんだろ?イザナミ」

 

「えええ!?母ちゃんいんの!?」

 

 スサノオは驚いて周りを見回す。が、周りには暗闇が見えるだけ。

しかし、神琉がそういってすぐ聞こえてくる声があった。

 

「・・・・さすがです、神琉様。気づかれていましたか」

 

 この世の・・・・この世じゃなかったか。まあいい。

この世のものとは思えないほどのおぞましい声が、聞こえた。その声は死そのものでもあった。

未だに姿を見せることはしないが、その声だけでイザナギ・・・・いや、俺たちもか。

俺たちに対するとんでもない憎悪が感じることが出来た。いや、感じざるを得なかった。

 

「・・・・馬鹿にしてんのか?気づかないわけないだろ」

 

「うふふふ・・・・。実に素敵です、神琉様。ずっとそばにいてほしいぐらいに・・・・!」

 

 声だけが聞こえ、それと会話を続ける。スサノオは震えている。無意識にでも感じているのだろう。

 

 

 少しずつ近づいてくる、邪悪な気配に。

 

 

 

「・・・・なにがしたい、イザナミ?俺には理解しがたいなぁ」

 

 イザナミは笑いを含んだ声で答える。

 

「なに、簡単ですよぉ・・・・イザナギとまた一緒に過ごせるように、たくさんの、イザナギの愛している人を殺すのですよぉ。殺して殺して殺して殺して殺して殺して・・・・うふふふ・・・・。

神琉様を殺せば来てくれるでしょうか・・・そこのガキも。愛しい私の夫・・・・」

 

 ガキ呼ばわりされた、スサノオ。しかし彼はそんなこと、もう気にも留めていない。

最初はただ近づいてくるだけだった邪気が徐々に強くなり、今はもはや神殿を揺らすほどの揺れまで伴っていたのだ。スサノオはもちろんそっちに気を取られる。

 

「なっ・・・・!何だよこの揺れぇ・・!?」

 

 スサノオの叫び。だが・・・・。

 

「スサノオ!叫ぶ暇があったら、神殿を出ろっ!崩れるぞ!」

 

 もはや、神殿は揺れるだけでは収まらず、完全に崩れ落ちようとしていた。

俺はスサノオの手をつかみ引っ張って、外へ飛び出る。

 

 外に飛び出した瞬間、神殿が音を立てて崩れ落ちた。

そして崩れた神殿の瓦礫から、飛び出してくる八体の邪神と十八体の獣たち。

 

 最後に完全に腐り、瘴気と殺意と狂気を交えた黄泉の女神、イザナミが登場した。

もはや生前の面影はほとんどなく、ゾンビと言っても差し支えないぐらいだ。

 

「・・・・母ちゃんか?」

 

 スサノオは呆然として聞く。ああ、そうだ。これが前の母親だぜ。

眼を見開きその姿を見るスサノオ。それと対照的に、狂気の笑みを浮かべこちらを見るイザナミ。

 

「・・・・ふふふっ。私が母親、ですか?・・・・と、なると・・・・あなたはスサノオですね。イザナギの子供の。・・・・・なら・・・・貴方を殺せば・・・・イザナギは来てくれるのかも!」

 

「・・・・大分堕ちたな、イザナミ。その性根を叩きなおしてやろうか?」

 

 イザナミのある意味ヤンデレ発言を、俺はぶった切ってやる。

てか、言ってることが怖すぎるんだよ、イザナミ。

原典でも、千人殺すとか言ってたしなぁ・・・・。

 

「ふふふふ・・・・いいです、神琉様。遊びをしましょう」

 

 イザナミは唐突に、不気味な提案をしてくる。

 

「遊び?こんな場所で?・・・何をするつもりだ?」

 

 気味の悪い笑いと、声でイザナミは囁く。

 

「・・・遊び。私のかわいい子供たちと遊んでくださいな」

 

「遊び、ねぇ・・・・遊ぶどころか意思も通じそうにないんだが」

 

 それらは人の形をかろうじて保っているが、目は血走り、口からは涎を垂らす、まるで意思など感じられない見た目だった。獣に至ってはその名の通り、『魔獣』と呼ぶにふさわしい見た目だった。

 

 そいつらと、遊ぶ。遊ぶのだ。

 

 

 

 ・・・まともな遊びじゃねえことは確かだなぁ?

 

 

 俺がそう考えたのを分かったかのように、イザナミがルールを説明する。

 

「決まりは簡単。私の子供たち相手に生き残れば勝ち、です。貴方達はこの黄泉の国から解き放たれます。

しかし・・・・・負けて死んでしまえば・・・・・永遠にここで過ごしてもらいましょう。死人として!」

 

 確かに簡単だ。勝利条件、生き延びること。シンプルで本当に最高だ。

 

 

 俺は隣に立つ少年を見る。脚は震え、目を見開き、冷や汗でびっしょりの。

仕方がない。ここで負けてしまえば死、だ。それも永遠の苦しみを背負った。

 

 たぶんスサノオは、黄泉の国なんて来るんじゃなかったとでも思っているのだろう。俺はスサノオに、話しかける。緊張を緩ませるために。

 

「なあ。スサノオ」

 

「何だよっ・・・・!じいちゃん!」

 

 スサノオは今、緊張の頂点に在った。声を発するだけでも強い精神力と体力が必要とされる。

勿論死の危機に立っているからだ。それでも絶対に弱音を吐こうとしないスサノオはマジすごい。

 

 てな、訳で。

そんな偉い子には・・・・・。

 

「スサノオ、これ持ってろ」

 

 俺はそう言ってあるものを投げ渡す。スサノオはそれを受け取る・・・・と、同時に驚く。

 

「なんだ、この剣!?重さが無い!?」

 

 俺が投げ渡したのは俺が昔に始力を使って精錬した、『命霊之天剣』。

それは、驚くほど『軽く』、驚くほど『切れ味のよく』、そして驚くほど『生命力』に満ち溢れていた。

 

 ・・・・・そーいえば。この剣、人に渡すなって天地が言ってたような気がする。まあいいか。

 

 

『良くないですよ!悪用でもされたらどうするんですか!』

 

 

 ・・・・・空耳かな?空耳に違いない!

 

 俺は、強そうな剣を手にして喜ぶスサノオに言葉をかける。

 

「その剣、お前なら使いこなせるだろう?目標は合計4体。そいつらを4体倒しとけ。あとは全部俺がやっとくから。ついでにイザナミもな」

 

「クスクス・・・・・そんな小僧に私の子供が4人も倒されるわけないでしょう?

そしていくら神琉様と言っても、22体の我が子と私相手にどこまで戦えますか?」

 

 イザナミの言ってることは割と正論だ。多分こいつら、並の神様よりかは強い。

てか、8体も集まれば三貴神と並ぶかもしれん。

 

 ぶっちゃけ、お手上げだろ。

 

 

 俺の力が、その程度だとイザナミが思っているんならな。

 

 

 俺は全力で、自分の持つすべての言語を込めて、イザナミを挑発する。

 

「慢心だな、イザナミ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()この俺に勝てると!?

死んでから随分と強く、偉くなったじゃねぇか!てめえのその腐った心と体なんぞ、俺の前じゃお前がどれだけ居たって無と同じだ!」

 

 俺はそこで息を吸って最後の挑発をする。

ちょっとしたセリフを借りて。

 

 

 

「手加減してやるから、全力でかかってこい。もう一遍ぐらい殺してやるよ」

 

 

 

「くッ・・・・!調子に乗ってェ・・・!やってやれ、魔獣ども!!邪神ども!!

ここでそいつを倒せば、今日の夕飯は久々の神の肉が喰えるぞ!?そいつを八つ裂きに、肉片にしてしまえ!!」

 

 イザナミがキレて、とうとう本性を現した。どうやらありゃ完全に別人になっちまったようだ。

 

 

 だが、俺はイザナミの言葉には耳を傾けず、スサノオに向かって語り掛ける。

 

「さっき言ったことを、覚えているか?魔獣を4体。それを倒せば後は終わりだ。俺が終わらせる。

だから、アドバイスだ。『やりたいように狩れ』。それだけだ。事実、その剣にはそれだけの・・・・・

いや。お前にはそれだけの力がある」

 

 スサノオに向かって一気に語り掛けると、スサノオは強くうなずいた。

 

「分かった、じいちゃん。でも、そんだけ大口叩いて死ぬんじゃないぜ?帰れなくなるからな」

 

 こんなときでも冗談を言うか。呑気だなぁ・・・・。

 

 スサノオは、魔獣の一体に切りかかっていく。

剣を一度振り下ろしただけで、魔獣の腹は切れ、黒い血のような物が噴射する。

 

「すげぇ!この剣、使いやすい!」

 

 スサノオは笑顔で魔獣の身体に切り傷を増やしていく。怖い。やっぱり暴虐な神様のイメージで間違ってなかった。

 

 見ている間に、なんともう一体の魔獣を殺してしまった。

これは剣のおかげもあるだろうが、そもそものスサノオの実力が高かったことだろう。スサノオは2体目へと切りかかっていく。

 

「見ている暇などありますか!行け、邪神ども!8体同時でだ!」

 

 8体同時に、邪神が切りかかってくる。そいつらは般若の表情を浮かべ、声にならない怒声を呻き、剣を振り回す。俺は、逃げ回ることしかできない。理由は剣を持っていないからだ。さっきスサノオに渡しちゃったからな。

 

 まあ、逃げ回ることも容易なのでこいつらを相手にするのは全く難しくない。

正直、スサノオが4体倒すまで逃げることも余裕だ。

 

 全く捕まらない俺を見て、イザナミは憤怒の表情を浮かべ、怨みの言葉を叫ぶ。

 

「早く捕まえろ、邪神ども!魔獣も加勢しろ!」

 

 数体の魔獣が、こちらによってくるが、俺を捕まえることなどできない。

と、ずっと逃げ回っているとスサノオが4体の魔獣を倒したようだ。正直早すぎる。

 

 

 

 てな、訳で。時間稼ぎはここまで。

 

 

「鈍刀『鈍色之黄泉剣』。ここからは本気だ」

 

 俺は始力で、わざと錆びた刀を創り出す。当然、イザナミは侮ってくる。

 

「なんですか?その程度の鈍刀が本気?逃げることしかできない神様なのですか?」

 

 イザナミの嘲笑。正直不愉快だ。いくら精神が崩壊してしまってるといっても、あの陽気なイザナミの顔で煽られると、怒りが浮かんでくる。

 

 だが、その感情は顔には出さず。代わりに俺はこんな言葉を口にして、嗤ってやる。

 

「鈍刀・・・・()()()()()()()()。こういうことだ」

 

 そういって俺は、物語中最大の糞チート、どっかの吸血鬼だとか、瀟洒なメイドさんとかが良く使ってるアレを発動させる。

 

 

 

「『世界(ザ・ワールド)』・・・てな」

 

 

 

 瞬間。

 

 

 すべてが制止する。人も、神も、無機物も、風も、そして・・・・時の流れさえ。

 

 今この世界上で動けるのは俺と、天地だけだろう。

 

 そうッ!!皆様ならお分かりだろう!!これは・・・・『時間停止』であるッ!!

 

 俺がやりたかったことのまず一つが・・・・ついに達成したッ!!

しかも時間制限はない。最高にハイである。実にすがすがしい気分だ。

 

 そして2つ目だ。

そう考えて、周りから見ると多分とても邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺は時間停止を解除する。

時間停止の空間の中で何をやっていたか。それはいたってシンプル、そして分かっている人もいるだろう。

 

 

 まずは・・・・。

 

「・・・・ガ?」

 

 残った魔獣、邪神を鈍刀で一掃した。

イザナミは突然倒れた子供たちに困惑を隠せないようだ。

 

「なっ・・・!何をした、始天輝神琉ゥウウウ!?」

 

 そして、2つ目。

聡明な皆様ならお分かりだろう。時間停止、ザワールド、とくれば・・・・。

 

「そんなこと聞いていいのかね?自分の目の前に集中しろよ」

 

「は・・・・?グハァアア!?」

 

 周りに気を取られていたイザナミは、自分の真正面から飛んでくる鋭い鉄に気づかなかった。

 

 そうッ!!

 

 

 時間停止と言えば、投げナイフであるッ!!!!

 

 

 そして真正面からだけではなく、様々な方向からも飛んでくるナイフ。

それらに次々と、串刺しにされてイザナミは既に針山状態だった。

 

「グフッ・・・・これは・・・・いった、い?」

 

 口から血のような何かを垂らしながら呻くイザナミ。

その姿にもはや、哀れみなど覚えない。

 

 だから。とどめを刺す。

 

 

「てめぇの敗因はたった一つだぜ、イザナミ」

 

 俺はもはや満身創痍のぼろ雑巾の、イザナミに指をさして宣言する。

そして、あっけにとられていたスサノオも近づいてきて言う。

 

「たったひとつの簡単(シンプル)な答えだ」

 

 分かってるねぇ、スサノオ。

まあ、このセリフは吸血鬼じゃないほうなんだがね。

 

 

 

 

「「てめぇは俺らを怒らせた・・・!!」」

 

 

 

 

 

 そういってイザナミを2つの刀で切り裂いた。

彼女は、断末魔の悲鳴を上げその場に消失していった・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、やっと終わったか。ならこんなところからさっさと出ようぜ。気分悪くなった」

 

「同意だぜ、じいちゃん。でもどうやって出るんだ?確か入り口は、石でふさがれてなかったか?」

 

「あ、そうそう。俺どこでも好きなところに転移できるの忘れてた」

 

「・・・・ふざけんなよ・・・?最初黄泉への入り口探すのにどれだけかかったと思ってんだ!?」

 

「ごめんごめん・・・・さっさと出ようぜ?」

 

「・・・・ああ。それじゃあな、黄泉の国。できれば2度と来たくないぜ」

 

 

 

 そうして二人は元の世界に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 最後のほうの、疾走感とネタ臭が半端じゃない。
最初のほうはシリアス気味だったのになぁ・・・。

 しかしこの話、全然東方キャラ出てこないですね。




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16話 夜と夜と夜と昼の随で

 遅れてすみませんでしたぁ!
ちょっとばかしリアルが忙しかったので。

 あ、UA4000突破ありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。

 タイトルでも微妙に察せそうですが『随』を買いました。
個人的には、『奉』に並ぶぐらいよかったですね。


 そんなことより、一昨日より『オールドモチーフの呪い』なる言葉が頭の中を反芻するのですが。助けてください。


 太陽がまぶしい。言うほど長い間潜っていたような気はしないが、目がチカチカする。

 

「くぅ!やっと戻ってきたぁあ!やっぱり地上が一番だな!!」

 

 俺の後に続いて隙間から出てきたスサノオが伸びをして言う。

なんだ、その旅行から帰ってきて「まあ、ホテルもいいけど家が一番だ」みたいなの。

 

 確かにそうだと思うけどな。

 

 そう、俺たちは今まで黄泉の国に潜っていて、今帰ってきたところなのだ。

ちなみに、黄泉の国じゃあスサノオの母さんをスサノオと切り捨ててきた・・・・・言葉だけだと鬼畜だな。

 

 俺はふと気になってスサノオに問うてみる。

 

「なあ、お前これからどうすんの?海原からは追放され、結局黄泉の国も行く気ないんだろ?

行く当て無いじゃん。どうやって生きていくつもりなんだ?」

 

 そう、スサノオは今、家無し、金無し、知り合い無しと、割と詰みだ。

原典じゃあ、高天原に行っていろいろやらかして、結局地上に追放だったが・・・・?

 

「俺は、高天原に行くよ。地上に行く前に姉ちゃんにあいさつと自慢をしてこなきゃな」

 

 なんだ、史実通りか。まあ、自慢できるかどうかは果てしなく謎だ。

自慢するって言ったって、『俺、ゾンビの母さん見てきたんだぜ』って?自慢になんねえよ。

 

 まあ、せっかく高天原に行くってんなら・・・。

 

「ほれ、餞別だ」

 

 そういって俺は、さっきと同じように剣を投げ渡す。

ただし、さっき貸した命霊之天剣ではなく、俺が作りたてほやほやの刀、鈍色之黄泉剣だ。

 

「なんだ、さっきのあの剣かと思ったのに」

 

 但しスサノオは不満そうだ。何を言ってるんだろう。その剣多分普通の神具よりも何倍も強いと思うんだがな。

まあ、確かに天剣よりは見た目もしょぼいし、弱そうだ。

 

「ま、そう言うなって。もらっときな、いつか役に立つかもしんねえしな」

 

「・・・・ありがとな」

 

 俺がもらっとけと、スサノオは一応お礼をしてくれた。

素直な孫が出来て俺は嬉しいぜ。・・・まだ爺ちゃんなつもりは無いけどな。

 

 

「そんじゃ行ってくるなぁ。またいつか会おうぜ、じいちゃん」

 

「おう!それまで元気で生きろよ!・・・っとちょっと待て、助言をしてやろう」

 

 スサノオが、天空に上ろうとしたが、俺は引き止める。

こんなパターンは、イザナミの時にもあったような気がするがまあいい。

 

「助言?一体何を言うつもりだ?」

 

 スサノオは疑問符を頭に浮かべて、首をかしげて問う。

 

「取り合えず、聞いててくれ。覚えてなくても、覚えててもどっちでも俺は構わないんだがな。

じゃあ行くぞ、まず・・・・迷惑をかけるのは程々に、周りをしっかり見ろ。そしてたとえ怒り狂ったとしても息を整えろ。暴虐が目の前に現れたなら、知で切り捨ててやれ。最後に・・・・いつかお前のもとに来る、『王』には力を分け与えてやれ。いいか?」

 

「・・・まあ、分かった」

 

 俺の助言は、全て神話の中でスサノオに関係することだ。このことをスサノオが実行したら、世界が大きく変わるのだが、別にいい。天地がどうにかしてくれるはずだ。

 

 スサノオは、半分理解、半分疑問のようだ。

 

「じゃあ、元気でなぁ!」

 

「・・・ああ」

 

 それで、結局スサノオは高天原へと昇って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・どうすっかなぁ・・・・!やることが無い!」

 

 てなわけで、暇。

スサノオは、どっか行っちゃったし、ヘカーティアと永琳は居場所分からないし、またここらへんで寝転んで寝てようかな。

 

 て、言うことでお休み!

 

 

 

 

「とうさーん!助けてくださーい!?」

 

 

 

 ・・・・なんか聞き覚えのある声だ。具体的には、三貴神の二番目。

何だ?何をやったんだろう?そう思って、声のした方向へと飛んで行ってみると・・・。

 

 

 地べたに座り込んで、叫んでいる少女・・・失礼、少年がいた。

そう、『夜の最高神』ことツクヨミちゃんである。

 

 何やってんだ?いや、マジで。

 

「どうした、ツクヨミ?お前、夜を治めるんじゃなかったか?」

 

 なんで、そんな神様が葦原の中つ国にまで下りてきてるんだ?

 

「いやぁ、アマテラス姉さんと喧嘩して飛び出してきちゃったんですよ」

 

 飛び出してきちゃったんですよ、じゃねぇ!

何やってんだよ!?職務を放り投げて何してんだ!?

 

 おう、えへへ・・・。じゃねぇよ!?マジでさぁ!?

 

 あー、もう!手伝ってやるしかねえじゃんかよっ!

 

 

 

 

 

「まず!計画もなしに飛び出してくるんじゃねぇ!あとあと面倒くさくなるだろ!」

 

「申し訳ございません・・・」

 

 いま、俺の前にはツクヨミが正座している。そんで、説教タイムだ。仕方のないことだ。何も考えずにこの葦原の中つ国に降りてくる事自体、神様にあるまじきことなのだから・・・・え、俺?例外だよ。

 

「そんで!自分の仕事ほっぽらかして、何やってんだよっ!この地上で夜を治めるつもりだったら嗤うぞ!?

てか!今までどうやって夜を治めてたんだよっ!?」

 

「なんとなくで・・・・」

 

「なんとなくって何だよ!てか一人で治めてたのか?」

 

 もしツクヨミ一人で夜を統治していた・・・具体的には、夜の時間を設定して、ほとんどの星を動かして、なおかつ月の軌道も管理して、夜の全てを支配していたのだとしたらそりゃ、すげぇ。

 

「はあ、僕一人で治めていましたけど・・・」

 

 マジかよ。すげぇな。じゃなくて!

・・・・分かった。こいつあれだ、クラスで一人だけ問題解けてて、「え?なんでみんな解けないの?」とか言っちゃって敵を増やすようなタイプだ。

 

「・・・・まあ、いいや。でも、一人で夜を治めていたの大変じゃなかったか?誰かに手伝ってもらったりとかすればよかったのに」

 

「いえ、一人で十分間に合っていましたので・・・・」

 

 ・・・・。なんかイラっとくんな。

 

「・・・はぁ。人を増やして都市を建てるぞ。それで、夜をもっと効率的に治められるようにしろ。俺も手伝ってあげるからさ」

 

 何故だろう。無意識にため息が出てしまう。

 

「わ、分かりました!確か何人か手伝わせてくれって言ってる人もいたので彼らを連れてきます!」

 

 何だよ、手伝ってくれる奴いるじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 

 先ほどツクヨミに人手を増やす、と言ったのだが。

 

 正直なところ、伝手はたった一つしかない。

 

 そう、月の賢者様、八意 永琳だ。でも、消息不明でどこにいるかわからないんだよなぁ。

 

 他に、月関係で頼めそうな奴ら・・・・。

 

 よし、まず東方の『月』に関係する人々を思い出していこう。

 

 

 まず、ウサギ。これは月にいるだろうから論外。

次に、永琳。消息不明だから後回し。

 

 かぐや姫こと、蓬莱山 輝夜。今、この世界に生まれているかどうかは知らないが『蓬莱山家』ならあるかもしれない。一応考えておこう。

 

 綿月姉妹。どうなんだろう。確か永琳の遠縁の親戚だという記述を見たことがあるので、すでに誕生していてもおかしくはない。

 

 稀神 サグメ。この人は絶対にいる。だって元ネタは『天探女』だったはずだ。

いつか巡り合えるといいけど・・・・。

 

 他には・・・これで全部か?

なら、ちょっと探せばすぐ見つかりそうだな。良かった。

 

 俺は安心して、背後に立っていた女性に話しかける。

 

 

「久しぶりだな、永琳」

 

「あら、バレていたの?久しぶりね」

 

 

 俺が話しかけると、何もない空間から突然赤と青の服の少女が現れる。手には小瓶を持っている。どうやら自分で作った薬で姿を消していたようだ。

 

 

「・・・何やってんだ?」

 

「懐かしい顔を見たもんで、驚かしてみようと思ったのよ」

 

 そういって永琳は、別の瓶の中に入っている液体を飲む。すると永琳の姿はたちまち消えてしまった。

どうやら、能力を完全に使いこなせるようになったみたいだな。

 

 じゃあ。

 

「なあ、永琳。ちょっと頼みごとを聞いてはくれんか?」

 

 永琳は小首をかしげて、何かと聞いた。

 

「ちょっとばかり、手伝ってほしいことがあってな。一緒に夜の都を整えてはくれないか?そしてそのままツクヨミに仕えて右腕となってくれると嬉しい。どうだ、やってくれるか・・・・っと、答えを急ぐことはないぞっ・・・」

 

「やるわ。丁度ぶらぶらするのにも飽きてきてたのよ。いい頃合いだわ」

 

 

 即答だった。ならばお言葉に甘えて頼むことにしよう。

 

「ありがとな」

 

 感謝の気持ちを永琳に伝える。事実永琳が仕えてくれなかったら歴史・・・・というか、原作が崩壊するからな。すると永琳は、にっこり笑ってこう言った。

 

「この程度じゃ返しきれないのよ、貴方からもらった恩はね。貴方のおかげで、私は知識と、意識と、そして名前を得たの。それが無ければ今の私はいなかった。礼を言うのはこっちの方ね」

 

 そんな大したことしてないと思うけどなぁ。

そもそも、俺という『イレギュラー』が、この世界を混乱させてるんだがな。

 

 

 

 

 まあ、いいや。結局予定通りに進んでるっぽいし。

 

 

 

 

 

 




 ちょっと短いですがお許しください。

 次こそは、ちゃんと古代編に入れます。


 ♢たぶん。





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17話 夜空を統べる都


 ちょっと雑かも。







 

「なあ、永琳。蓬莱山って分かるか?ついでに綿月と、稀神って言う姓も」

 

 もしかしたら、永琳ならこの四人について何か知っているかもしれない。

そんな淡い望みを抱えて俺は永琳に質問をしてみる。

 

 すると、永琳はあいまいに頷き、こう答えた。

 

「幾つかは、心当たりがある」と。

 

 

「まず、蓬莱山家。この家系は確か高天原に住んでいたはずよ。ただ……ちょっと面白いことがあってね」

 

 永琳は、一つずつ、まず蓬莱山家について語り始めた……が、面白いことってなんだ?

 

「蓬莱山は元より高天原に生まれ落ちた天津神ではないのよ。かといって地上から上がってきたわけでもない」

「へ?それじゃあどうやって存在できたんだ?生まれる術がないじゃないか」

 

 今のこの時代は、基本的に神が全てを生み出し操っていく時代だ。

つまり、出所が全く不明な家など怪しくてならない。

 

 と、言うことは、宇宙人だな。

 

 ………冗談だ。いや、割かし冗談でもない。

少なくとも、神様でも人間でもないことは決まっているから、もしかするとまたあの神様(天地)がなんかやってくれたのかもしれない。

 

『なんかって………そんなに大したことやってなかったはずですが?そもそもいろいろとやらかしていたのは貴方でしょうに』

 

 あーあー聞こえなー。

 

 

「次に稀神ね。これは簡単よ。高天原に住んでいる『天探女』が別の名前として使っているだけ。分かりやすい理由ね」

 

 ほうほう……なら、なぜ東方世界じゃ『稀神』という名前を使っていたのだろう?

なんか理由があるのかな?まあいいや。

 

「綿月……という姓については知らないわ、役に立てなくてごめんなさい」

「いや、ありがとう。おかげで大体の目途がついたぜ」

 

 まずは、都市を建てたらサグメと輝夜を連れてくるんだ。そうしたら………そうしたら、本当に『東方project』の世界が始まるだろうから!

 

「さあ、行こう、永琳!まずはこの時代を生き抜くんだ!」

「いきなりどうしたのよ?……まあ、生き抜くのには反対じゃないわ」

 

 永琳が呆れた声で、しかし元気な声で返事をしてくれた。

やる気は十分、ならば良し!

 

 

 神代の夜を、始めてやろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 さっき、ツクヨミは何人か手伝ってくれる人に心当たりがあると言っていた。

 

 それは間違いだ。これは何人か、ではなく何百人か、だ。

俺とツクヨミと永琳があたりを見渡すと、俺が転生してからこんなに人が集まっているのを見たことが無いぐらいに、神様の大集会が開かれていた。

 

 俺は不安なことがあるのでツクヨミに小声で質問する。

 

「おい!こんなに人集めてアマテラスの方には怒られないのか?」

 

 ツクヨミは苦笑いを浮かべてこんなことを言う。

 

「今の高天原に不満を持っている者たちは少なくないのです。別に多いわけでもないですし、基本的には平和なのですが。束縛されている、と言ってもいいかもしれません。そういうものが嫌いな人たちの中でも、行動的な方々が今ここにいるのではないでしょうか。そして………その通りならもっと移住者も増えるでしょう」

 

 俺はもう一度だけ周りを見回す。

老若男女、ありとあらゆる姿が俺たちを囲んでいた。

 

「なあ、お前ら」

 

 俺は、周りを囲むそいつらに話しかけた。覚悟を問うために。

 

「今、ここに集まった奴らはさあ。大きかれ少なかれ、高天原より今から俺らが無から作る夜の国が、いいと思ったんだろ?もし……今、高天原のほうがいいと思ったなら、さっさと戻った方がいい。こっちによい未来があるなんて保証はできないからな。それでも……もしかすると二度と戻れないかもしれない。それでも………こっちをとるなら。夜の国を皆で創っていくというなら。俺は笑って歓迎してやろう!」

 

 俺がそういうと……誰も動かなかった。覚悟は十分。

いや、皆の口角が上がった。笑みを浮かべた。

 

 ………ふむ、分かったぜ。ここにいるのは………。

 

 

 みんな創りたいやつらなんだな。

 

 

 上等だァ!高天原が、霞むほどの都市を創ってやろうぜ!

 

 

 

 

 そこからの動きはとても速かった。まずツクヨミが人を集め、都市……というよりはまだ集落か。集落を創らせた。人の住む家はもちろんのこと、都市に必要ないくつかの機能。それに夜を治めるのに必要な星を動かす『星詠機』や夜の長さを決める『暗光之蝶伝』も作られていった。それらの作成には永琳の知識が総導入された。

しかも、やってきた神の中に、錬金術のような力を使うことの出来るものがいた。………木を、なんだかよくわからない丈夫な物質に変えるのは、錬金術ではないよな?たぶん違うよな!?まぁ、そういう技術者や、能力者が多かったおかげで、発展することは時間の問題だった。

 

 少しづつ、少しづつ、『夜の都』は出来上がっていっていた。あれから、まだ百年もたっていない。ツクヨミは、姿や、俺に見せる内面こそ変わっていなかったが、夜とこの都市を治めるモノの風格は出来上がっていた。

 

 永琳は、夜の都を治めるのに必要不可欠な存在になり、ツクヨミの右腕として、夜の都の指導役として、そして腕の良い薬師としても、活躍していた。

 

 で、俺は。特に重要な立ち位置にいるわけでは無く、しいて言うならば、最も高天原に近いところの統治と、必要だと思った人材を引っ張りこむ役目を担っている。

 

 要するに高天原からの引き抜きだ。まあ、そんなことをした覚えはなく、それっぽいことで移民の管理をしているだけだ。気楽にやっているよ、ということで。

 

「ふぁぁあ………割と暇だぁ……」

 

 俺は、自分の書斎で一つあくびをした。

勿論さっきの言い方で理解できたと思うが、何もすることが無い。要するに暇だ。俺の気楽は、暇という意味に直結するからな。平穏もいいが、それにずっと浸かりっぱなしってのも無為だ。

 

 そういえば。

 

 綿月の家が、夜の都へやってきた。まだ姉妹は生まれていなかったが。

『今は』特に重要な一族でもないので、接点は無い。だが、あの二人が生まれたら、機会はできそうだ。

その時までおとなしくしておこう。表面上は。

 

 俺は、書斎を出て、ツクヨミのところへ行く。

理由は都市の建設の進み具合を、詳しく聞きに行くためだ。

 

 ちなみに、自動ドアではなく手動で開けるタイプだ。

どうやら、電気を操る能力者はいないようだ。俺が知識を与えたりとか能力を使ってあげたっていいのだが、それだとつまらないことになってしまう。

 

 と、もうツクヨミの部屋の前だ。

俺は扉をノックして、ツクヨミに話しかける。

 

「よう、俺だ」

 

「父さんですか、入ってください」

 

 俺は許可を得たので、扉を開ける。

すると、何か困った様子のツクヨミが渋い顔で椅子に座って、あるものをじっと見ていた。

 

「どうした、ツクヨミ。なんかあったのか?」

 

 俺が部屋に入り、聞くと、ツクヨミは顔をその何かから上げてこちらに頭を向け話し始めた。どうやらそのなにかは、この都市に住んでいる人物と、そのうちのいくらかが持つ能力についての書類だった。

 

「そいつは永琳がこの前まとめてたやつだな。それがどうかしたのか?」

 

 俺はそれに見覚えがあった。

その書類は永琳が、ツクヨミに提出するといって必死に仕上げていたものだ。

 

「いえ………これを見ていますと、夜を治めるのに一番必要な能力を操れる者がいないんです」

 

 夜に必要な能力?

ツクヨミに書類を渡してもらい、じっと眺める。

 

 人物の名前と、能力がある場合はその右隣に概要と能力の強さが書かれている。

ざっと見ただけでも能力者は五十人以上いた。中には、『方向を操る程度の能力』や『言葉を操る程度の能力』などの強力そうな能力を保持する者もいた。俺と永琳の名前も入っていた。

 

 それでも、一番必要な能力は無いとなるとだ。

 

「一体何の能力を求めているんだ?この書類に書かれてあるものだけでも、十分に夜の都は機能しているはずだが………」

 

 俺がそういうと、ツクヨミは笑って答えた。

 

「夜の都、それは名の通り夜を治めるためにあるのです。

そして、夜というのは太陽が沈んでいる間、つまり概念です。極端に言ってしまえば、太陽が昇らなければずっと夜。本当は太陽を操れる能力者がいてもよかったのですが………。それはアマテラス姉さんですしね。まあ夜は概念の中でも『時間』に属するものですので……」

 

 なるほど。

つまり()()()()()()()()()()()()んだな?

 

 生憎、同じこと考えてたんだよなぁ。

 

「もしかしたら、心当たりがあるかもしれないな、そいつ」

 

 俺がそういうとツクヨミは座っていた椅子から立ち、目をぎらつかせて聞いてきた。

 

「本当ですか?どこにいますか?誰ですか?」

 

 正直がっつきすぎで怖い。やめろ。

てか、なんでそんなに時間能力者を求めているんだ?

 

「……まず、落ち着け。そんで、まだそいつは生まれていない」

 

「すみません………。では生まれていないとはどういうことですか?

そのうち生まれるということですか?そもそも、なぜ生まれると言い切れるのですか?」

 

 質問は、一つずつにしろよ。まあ、いいや。

 

「お前は、高天原に住む蓬莱山、という家を知っているか………?」

 

 

 月の都の、密かな物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 同時に、原作への歩みも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くすくす………夜の都、ね。面白そうではあるじゃない」

 

 

 黒髪が、夜空に靡いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 最後のは輝夜じゃないです。でも、重要なキャラでもありません。

 すこし、更新できない日が続きますが待っててくれると嬉しいです。
詳しくは活動報告で。

 では、また。


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18話  動き出す時間



 お久しぶりです!お待たせしました、活動再開です!

 これからも不定期で小説を投稿させていただきます!




「なるほど………須臾と永遠ですか………」

 

 神琉が自分の知っている蓬莱山の情報を全てツクヨミに話すと、何やらツクヨミは頷いて笑った。

 

「個人的には時間の遅延、加速、停止の全てを操れる人材のほうが欲しかったのですが、十分です。まあ、なんでそれを父さんが知っているのかがもっと気になったりはしますが………須臾と永遠ならほとんど同じ……いや、おそらくそれ以上のことが出来るはずです。例えば………」

 

「………何だよ?」

 

 彼がそういうと、ツクヨミの笑いは不敵なものから、苦笑いなようなものに変わった。

 

 考えてないのかよ。やっぱりちょっとおバカなツクヨミだった。てか、そもそもまだ生まれてないってのに気が早いんじゃないか?二人が机を挟んで互いに話していると、扉にノックの音、そして永琳の声がした。

 

「失礼します、先日の書類の件についての修正がありました。訂正の書類をお渡しします」

 

 どうやら、今ツクヨミが持っている書類にミスがあったようだ。彼女がミスするのは珍しい。

しかし、そういって書類を交換しようとする永琳をツクヨミは片手をあげて止めた。

永琳は少し目を丸くして驚く、がツクヨミはもっと永琳が驚くようなことを言った。

 

「大丈夫です、永琳。一番欲しい情報は今、受け取ることができました。それで、ひとつ頼みが出来たのですが………」

 

 頼み?今度は、何を思いついたんだと神琉が訝しむ。

 

 ツクヨミは一応、『頼み』と言っているがまったく有無を言わせぬ口調で断ることなど許さない。ただ、永琳だし断るという選択肢はないだろう。

 

 事実永琳は膝をつき、すでに命令を聞く姿勢、ひいては実行する姿勢に移っている。

 

「ツクヨミ様、頼みとは?」

 

 ツクヨミは頬杖をついて答える。永琳との差が浮き彫りだ。勿論無駄に生真面目なのが永琳。自分から頼んでおいて適当なのがツクヨミ。

 

「あ、高天原に行ってきてください。そこの父さんと一緒に。目的は父さんから聞いておいてください」

 

 …………ふーむ。俺も行くことになっているのか?別に忙しいわけでもないし、むしろ行きたいとは思っていたのだが。許可も何も取らないのはどうかと思うんだぜ?神琉がそういうと、ツクヨミは口をとがらせて、

 

「……すみませんね、父さん。でもどうせ行くつもりだったでしょう?行くなって言っても」

 

 と言った。よく分かってるじゃないか。俺は何にも縛られないのだよ、と神琉は内心で笑った。

神琉は立ち上がって、永琳に話しかける。

 

「じゃ、永琳。行こうぜ」

 

「ええ、高天原なんて数百年ぶりかしら……」

 

 永琳の表情は、何かを懐かしむようなものだ。でも、永琳が高天原で過ごしていた時間なんて大したもんじゃないと思うが……。いや。俺の時間感覚がおかしいのかな?彼はそう考える。彼の時間感覚がおかしいのは事実である。

 

 しかし永琳は何を勘違いしているのか?

 

「おいおい、なんで高天原に行くことになってるんだ?」

 

 永琳は彼のその発言に首をかしげる。

 

「え?なら他にどこに行くの?」

 

 永琳、お前は天才じゃあないのか!?なんで気づかないんだよ、おい!今から高天原に『遠足』に行くんだぞ、

と神琉が叫んでいる。

 

「いえ、遠足じゃないです……」

 

 ツクヨミが小さな声で反論するが神琉の耳には届かない。今の彼に言葉を届かせるのは不可能に通じるだろう。端的に彼の耳は今、「都合のいい耳」である。

 

「遠足、だ!で、遠足と言えばなんだ、永琳!?」

 

 彼はおそらく永琳には意図の読めない問いを掛ける。永琳は、曖昧に「さあ……」と笑った。同じ問いをツクヨミにも投げかけたが、同じような反応だった。

 

 神琉は肩をすくめて言う。

 

「お前らがそこまで馬鹿だったなんてな……こんな簡単なことにも気づかないなんて……」

 

 大げさに芝居がかった動きは、見ている二人の精神を苛立たせた。まあ、もはや嘲笑と言っても過言ではない笑みをその顔に浮かべて、ついでにジェスチャーまでつけているので当たり前と言えば当たり前だが。

 

 そして彼は口を開いた。

 

「遠足だぞ!?遠足だぞ!?遠足にはおやつが必須だろ!?」

 

 数秒後、そこには永琳に爆薬を投げられまるでぼろ雑巾になった始神と、いえ、だから遠足じゃないですって、とつぶやく月神がそこにいた。

 

 

 

 

 何かに横たわっている感覚。目を開けると灰色のコンクリート……のような何かが目に入った。つまり俺は地面に寝っ転がってるってわけだ。

 

「ああ、痛ぇ……何も、よく分からない爆発する薬物を投げつけることはないじゃないか」

 

 あの後、俺の意識は数分刈り取られたのだろう。で、気づいたら建物の外に放り出されていた。爆弾の所為で身体の節々が痛い。俺をこんな状態にした張本人を探すため体を起こし、辺りを見回す。

 

「調子はどう?いえ、体の方じゃなくておかしなことを抜かすあなたの頭の方ね」

 

 後ろから声がかかる。振り向くとそこには超危険薬剤師こと、八意永琳が立っていた。失礼な!俺の頭は全くもって正常だ!

 永琳は俺の身体を見回して言う。

 

「ふむ……身体に異常は無し、精神面は言わずもがな、ね。良好かしら?」

 

「俺は健康について全く無縁なので知らん……って、言わずもがなってなんだよ!馬鹿にしてるだろ!」 

 

 俺の叫びを聞いて、永琳は鼻で笑ってこう言った。

 

「馬鹿にはしてないわ、ただ貶しただけよ」

 

 もっと酷いじゃないか!俺は心の中で全力で叫ぶ。しかし、永琳に心を読む能力は無いので聞き取ることはできない。なので、彼女は俺にこう言った。

 

「で。さっさと高天原に行ってやることを済ませてしまった方がいいような気がするのだけど?私はこんなところで無駄話をすることが有益だとは思わないわ」

 

 永琳の冷たく、そしてまるっきり正論なその言葉。俺はそれを聞いて少し考え込む。いや、考え込むまでもないか。

 

「……じゃ、行くか。高天原。お前の言うとおりだ」

 

 俺には……違う。俺たちには今、目的がある。それを蹴飛ばしてまでこんなところで止まっている理由がない。

まあ、これはそれっぽい建前だ。本音は勿論、高天原に行った方が面白いだろ?ということだ。

 

 なんたって、神様がたくさんいるんだからさ!

 

 

 そう叫んで俺はチョコレートを口に放り込む。現代のものを持ってくることは終ぞ叶わなかったが、現代の複雑でない食物のようなものなら作り出せるようになったのは大きな進歩だろう。

 俺は永琳にチョコレートを差し出して聞く。

 

「食べる?」

 

 永琳は少し戸惑った後、俺の手の上にあるチョコレートをつまんで口に入れた。

そして数秒の咀嚼の後、感想を口にする。

 

「……甘いわね」

 

「おう!チョコレートだからな!」

 

 砂糖はたくさん入れた。

でも、神様でもチョコレートを食べることが分かってよかった。今度は別の菓子でも作ってみようかな?

 

 俺がそう考えていると、永琳が手を差し出して言う。

 

「もう一つ頂戴」

 

 俺はその手にチョコレートを置いてやる。まあ、二つ名「月の頭脳」だし糖分が必要なのかもね?

そして、永琳がチョコレートを口に入れようとする……が。

 

 ふと、何かに気づいたようでその手を止めて疑問の言葉を放つ。

 

「ねえ。高天原行くんじゃなかったっけ?」

 

「そういや、そうだったな」

 

 すっかり忘れていた。砂糖菓子はこういうことが起こるからあまり食べたくない。

 

 

 

 で。高天原についた。過程は省略させていただくが、別に面白いことはなかった。ていうか、ただ俺の能力で隙間開けて飛んでくるだけなんだけどね。

 

 今俺たちの前には、俺が最後に見た時と何も変わらない草原が広がっている。草原のその向こう側には何軒かの家も見えることからどうやら、かなり多くの神様が住んでいるようだ。ただ、今回探している奴は何処にいるのかさっぱり見当もつかない。そもそも存在しているのかな……?

 

 まあ、ここで二人で悩んでいたって何か有意義なことがあるわけでもないのでちらほらと家の見える方へと歩いていく。そっちの方ならたぶん適当な神様に話を聞くことが出来るだろう。

 

 居たら居た、居なかったら居なかったで俺はどうだっていいが、早く輝夜には会いたいし、もし輝夜じゃなくても輝夜の親とかならあってみたい。輝夜の親ってどういう能力なんだろうか?

 

 歩いていくと、一人の青年の神様が立っていた。かなりモブキャラっぽい見た目の。かなり暇してそうだ。彼に永琳は話しかける。

 

「ねえ、貴方?」

 

「はあ?」

 

 青年はいかにも暇している、という表情と気だるげな声でこちらを向く。が、永琳を見た瞬間真面目な表情になった。そして、一瞬で顔が赤くなり眼を瞬かせる。

 

 あ。こいつ、永琳に惚れたな。

 

 永琳は、俺たちの目的である蓬莱山家について質問しようとする。

 

「『蓬莱山』と、いう名前に心当たりは無……」

 

 だが、その答えは返ってこず。

 返ってきたのは、

 

「結婚してください!」

 

 そう、彼の好みど真ん中で無意識に契りをかわそうと言ってしまう、簡単にいうと一目惚れした彼の求婚の言葉だった。

 

 俺は、こみ上げてくる笑いをこらえて彼に言葉を投げかける。

 

「落ち着けよ、ほらまず深呼吸だ」

 

「一生ついていきます!どうか、結婚してください!」

 

 彼は、落ち着かないようだ。

 

「ね、ねぇ貴方? 私と……その……け、結婚したいって」

 

「マジです!」

 

「え……っと……あのぉ……」

 

 ダメだ笑いが止まらねぇ。いつも冷静な永琳がここまで狼狽えているのは本当におもしろい……ククッ。

面白いが話が進まないので、彼を小突いて説明させる。割と鈍い音がした気がするがあくまで小突いただけだ。

 

 どうやら彼によると、高天原の一番端っこにある丘の上の屋敷がソレだそうだ。

彼に感謝を言って別れることにする……が、彼はここに留まらず都市にむかうらしい。人が増えるのは良いことだが、永琳とお付き合いするのはかなりハードルが高いと思うぞ?

 

 さて、一段落したところでその屋敷に向かうとするか。そう思って俺は永琳に声をかけるが、なぜかむちゃくちゃ疲れた様子だ。

 

「どうした? なんでそんなに疲れてるんだ?」

 

「わざわざ説明させるの?」

 

 ……そうか。心の中で謝っておく。

 

 

 

「さぁ、行くか。お屋敷とやらに」

 

「ええ」

 

 そうして俺たちは、その屋敷目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 目的の屋敷にたどり着くころには日が暮れかけていた。

 

「なかなか……はぁ、遠かったわね……」

 

 別に普段から体を鍛えているわけでもないが、疲労しない体質である俺は特にどうともない。

だが、永琳は肉体派ではなく勿論頭脳派である。知識の神様だしね。

 いや、虚弱と言うわけではないんだろうけども。

 もはや息も絶え絶え、とでもいった感じだ。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ……大丈夫……よ……」

 

 全然平気そうではないが……。

ま、本人がいいと言っているから別にいいだろう。

 

 しかし、遠目で見た通りのデカイ家だ。

夜の都にもここまでデカイ家はそうそう無い。

かなりの高待遇を準備しないと、移住には同意してくれないかも知れないな。

 

 さて……勿論この世界の住宅にドアホンなどというものはついていない。

なので、そのままドアをノックしなくてはいけないのだ。

 

 永琳の方を見て、準備は良いかと目で問う。

先ほどの疲れは何処へやら、すでに緊張した表情だ。

 

 俺は恐る恐るドアを二回叩いた。

 

 コンコン。

 

 

「? お客さんかしら? はい、今出ます!」

 

 

 

 数秒の後、返事が聞こえ玄関のドアが開いた。

 

 ドアを開け、出て来たのは 黒髪に桃色の着物を着た女性だった。

彼女はその黒髪と同じ黒い瞳を瞬きさせ、

 

「どちら様ですか?」

 

と聞いた。

 

 永琳がその質問に対し説明を始めた。

要約すると、私たちは夜を治める神様の持つ都市の住人だ。貴方のご主人を我らが都市に招待したいと考えている。

ご主人にお目にかかることはできないだろうか……、と言うことだ。

 

 そして、この家の使用人だと思われる少女はもう一度目を瞬かせたあと、

 

「主人に聞いてまいります」

 

と言って、廊下を駆けていった。

 

 ふむ。着てまだ数分しかないが、実に怪しいな。

 

 そもそも、家の中からはさっぱり人の気配を感じない。この時点でも怪しいがもう一つ。

 

 あの少女は、俺たちがノックして数秒の後に返事をして出てきた。

つまり、玄関にとても近い場所にいたと言うことに他ならない。この広い館の中で。人っ子一人もいなさそうな雰囲気であるのに。

 

 俺は永琳に、警戒しろ、と目でで合図を送った。永琳は小さく頷いた。

 

 その時、その少女が再び現れ、こう告げた。

 

「主人がお会いになられるそうです。こちらへどうぞ」

 

 そういって、付いて来いと仕草で表した。

 

 俺たちは、若干警戒しながらも彼女に付いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 ……廊下が長い。

もうかなりの時間歩き続けているような気がする。

 

 流石に豪邸とはいえ直線を十分以上歩き続けるってのは明らかにおかしいよな。

永琳は、ここまで来るのにも体力をかなり使っているのでもう限界、といった感じだ。

しびれを切らして、永琳は前を行く使用人の少女に話しかけた。

 

「ねえ……その主人の部屋って言うのは……あと……どのくらいなのかしらぁ……?」

 

 彼女は少し考えた後こう答えた。

 

「後少しです。かなり長いでしょうがもう少しですので頑張ってください」

 

 永琳はその答えを聞いてため息をついた。

 

 しかし、その時。

 

「こちらが主人の部屋です。どうぞお入りください」

 

 少女が急に立ち止まり、ある方向を手で差した。

そこには、襖が現れていた。

 

 ……もうおかしい。さっきまでそんなところに襖はなかったはずだ。

 

 これは彼女の能力か、それともこの家の主の能力なのか?

もしくはその両方、とか。

 

 これは罠である可能性が非常に高い。

 

 いや、でも行くけど。

俺は再度、永琳に小さな声で「覚悟を決めろ」と囁いた。

 

「いったいここの主……どんな能力なの?それともこの少女の能力なのかしら?

廊下を引き伸ばしたり、襖を現れさせたり……まるで能力に統一性がない……」

 

 永琳は少し不安があるようだ。それでも、覚悟を決めて俺たちはその部屋に入り込んだ。

 

 

 部屋に入り、最初に目についたものは小さな物書き机。

と、言うより他には何もなかった。ここで待っているはずのこの館の主も。

 

「チッ……! 最悪の予想通りだッ……!」

 

 罠だ。

 

 それに気づいた瞬間部屋が暗闇に染まった。

 

 

 

 

 






 さぁ、この館の主はいったい誰なんでしょうね?


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