憎悪の不死騎士 (斬龍 黒牙)
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憎悪の不死騎士

とある森

屍の森と呼ばれるこの森の奥には精霊と妖精の国がある。

その国から精霊か妖精の子供を拐って売れれば確実に三世代、もしくは五世代まで遊んで暮らせる大金が入る。

 

昔は大金欲しさに命知らずの誘拐犯が何度かこの屍の森に入り、無惨な死体で国境付近に返されていた。

それは誘拐犯だけでなく精霊と妖精以外すべての【ヒトガタが】である。

この事から昔は精霊と妖精の国がヒトを殺して回っているのかと初めはどの国も思ったが、実際入ってみると違った。

首が宙を舞い、ボロボロの軽装の男が襲ってくるのである。

このアンデッドが発生しているためこの森から出られず死んでいたのである。

そしてその首は侵入者を見つけると「Raaaaaaaaaaaaa」と叫びながら無数の魔法を放ちながら斬りかかってくる。

命からがら逃げ切った人達は直ぐ様、優秀な者達を集めて討伐に向かわせるが・・・結果は悲惨だった。

生き残った者に尋ねるとアンデッドの弱点とされるすべての魔法が効かず、どこを攻撃しても止まらずに襲ってきたそうだ。

それは例え肉体が散り散りになったはずでもだ。

すぐに各国(精霊と妖精の国は除く)は協力してこのアンデッド討伐に連合軍を出すが、惨敗。

国境付近には精霊と妖精達の結界があるため攻撃は反射されできず、結界を通ると速やかに飽和魔法攻撃の餌食。

それも同時多方向でだ。

これにより国はこのアンデッドをとある妖精に似ていることから【デューラ】と名付け、ギルドに討伐依頼を常時かける。

しかし連合軍で敗れたのだから、普通に討伐依頼は受けるものはいなかった。

 

それは今も変わらず討伐はほぼできないため、今では精霊も妖精も誘拐なんてしようとする馬鹿はいない。

腕に自信があるものなら【デューラ】討伐を今でも目指す者もいるかも知れないが、その尽(ことごと)くを【デューラ】は返り討ちにしている。

ヒトからは魔物(アンデッド)とされているが、精霊と妖精の国では彼は【忠犬クロ】と呼ばれ慕われている。

 

 

 

とある吟遊詩人曰く

 

かの騎士は未だに憎悪するのは

愛しき精霊(ヒト)を汚し

命を奪った者達への復讐のため

されどかの騎士は

愛しき精霊(ヒト)との過去(おもいで)を

その絆(たましい)を護るため

今もこの地を守護する

 

これは【悲恋に終わった騎士達の物語】なり

 

 

 

数十年後

 

「うーん。何かいいアイデアは無いですかね?」

一人の少女は紙と羽ペンを持ちながら歩いていた。

「この間の作品も落ちたから、そろそろお金が…ヒモジイです…誰か助けて欲しいのです」

お腹を空かせながらフラフラと、だけど紙と羽ペンを離さずしっかりと持ちながら。

少女はゆっくり道端に屈むと生えていた雑草を睨む。

「じゅるり…」

 

 

 

これは鎮魂のための物語



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