御堂玲奈の異世界譚 (疾風の警備員)
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プロローグ

どうも、疾風の警備員です。

書かなきゃいけない作品が沢山あるのに、性懲りもなく新作を作ってしまった……でも、ある方からこんな話を作ってみたら?と言われた瞬間、思い浮かんでしまったから後悔はない‼‼

それとこの話しはあらすじにある通り、作者の初作品の後日談的なものの1つです。ネタバレには注意してください。

では、良ければどうぞ。


日本のとある町、駒王町。

 

数年前までは天使や堕天使、悪魔による大きな事件に巻き込まれていたこの町も、今ではそのような事件が起こる事はなく、平和な日々が続いていた。

 

しかしその町にある山、そこの中腹にある開けた場所で特殊なフィールドが張られ、その中では戦いが繰り広げられていた。

 

戦っている二組は互いに似たような容姿をしているが、纏っている鎧に描かれている15ヶ所の模様と頭の飾りに違いがあった。

 

その近くで3頭身の体に胸にはゲームのコントローラーみたいな模様にゲージと武器の絵が描いてあり、両手にはバイクのタイヤを模した武器の様な物を持ち、頭にはハンドルみたいなパーツが付いた存在がその戦いを見ていた。

 

その戦いは壮絶なのかクレーターがあちこちにあり、二人が使っていたであろう武器が転がっていたり地面に突き刺さっていたりしている。

 

そして勝負は終盤なのか、二人は肩で息をしていて隙を伺っていた。

 

そこに一陣の風が吹き近くの木がしなる音が響き始めるが、長くは続かず吹き止むとしなる音も消える……

 

その瞬間、二人は同時に走り出して接近し拳を突き出すと腕を交差して、互いの顔面を打ち抜いた。

 

二人はしばらくの間、その体勢で固まるがゆっくりと後ろに傾き始め、そのまま同時に倒れた。

 

「はい、試合しゅ~りょ~。」

 

『ガシューン』

 

そこに3頭身の存在が声を上げ、腰にあるベルトからカセットの様な物を抜くと、3頭身の姿から肩までかかり左側の一部を纏めたサイドテールの髪型に水色の瞳をした8頭身の女性の姿になった。更に周囲の景色が開けた広場から、周りと同じ森に変わる。

 

「おーい二人とも、死んでる?」

 

「勝手に殺さないでよ……」

 

「ちゃんと生きてます…」

 

その女性が声を掛けると戦っていた二人が起き上がり、ベルトを外すと片方は青みがかった黒髪をピンクのリボンでポニーテールにしている金色の瞳の女性に、もう片方は黒髪のセミロングに翠の瞳の女性になる。

 

「まったく、【玲奈ちゃん】も【夏煉ちゃん】ももう少し周囲の被害を抑えられないの?私のゲームフィールドでももたないんじゃないかって場面が何度もあって、ハラハラものなんだよ?」

 

「ちょっと【夕夏】、それだと特訓の意味がないでしょ?」

 

「そうそう。」

 

「言い訳無用‼今後は現実世界にまで影響を与えない事、いい?」

 

「「はーい。」」

 

「…………絶対反省してないよ、この人達…」

 

サイドテールの女性【小鳥遊 夕夏】はポニーテールの女性【御堂 玲奈】とセミロングの女性【鬼町 夏煉】の軽い返答にため息を吐く。

 

「そういや、これで戦績はどうなるんだっけ?」

 

「今日ので全員99勝99敗999引き分け。」

 

「うわ~……見事にゾロったね…」

 

「ああ~‼まーた引き分け~!?そろそろちゃんとケリ着けないとね。」

 

「それは私の台詞だよ?今度も私が勝ち越す。」

 

「させるわけないでしょ。次は私が逆転してやるわよ‼」

 

「はーい、口喧嘩はそこまで。ほら、早くしないとお店が開店しちゃうよ?」

 

「「うっそ、マジ!?」」

 

口喧嘩はしばらく続くかと思われたが、夕夏の言葉に声をハモらせながら驚愕の表情となる。

 

「今日って翠屋の新作スイーツの発売日でしょ?早く回復と着替えをやらないとすぐに無くなっち「「回復‼着替え‼いずれもマッハで完了‼」」って早ッ!?」

 

夕夏の言葉が終わる前に、服を着替えて傷を回復させた二人は夕夏の両腕を抱えると、クラウチングスタートの体勢になった。

 

「へ?」

 

「「それじゃ、レッツゴー‼‼」」

 

「え、ちょ待ぴぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?!?」

 

そして、彼女を抱えながら、全速力(あまりの速さに夕夏の体が浮いている)で山を降りていき、夕夏の悲鳴が山に空しく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

「ありがとうございました~♪」

 

あれから翠屋まで走り抜き、店の前に出来ていた20人程の列の最後尾に並んで待つこと10分、3人とも目当ての物を買ってホクホク顔で店を出て近くの公園のベンチに座った。

 

「間に合って良かったね。」

 

「ちょっと値段が張ったけど…これが翠屋の新作スイーツ…‼」

 

「そう‼【レインボーシューセット】よ‼」

 

箱を開けると中には7つの色違いのシュークリームが入っている。色は赤、緑、黄、灰色、青、紫、橙でそれぞれ苺、メロン、バナナ、黒胡麻、ラムネ、紫いも、オレンジ味だ。

 

「「「それじゃ、いただきまーす♪」」」

 

それぞれが自分の箱から違う色のシュークリームを持って、口にする。因みに夕夏は苺、私はバナナ、夏煉はメロンだ。

 

……なんか変な歌が聞こえてきそうな色の組み合わせ?歌なんて気にしないの‼‼

 

「「「う~ん、美味しーい‼」」」

 

一口食べると、パリッとした生地にクリームが絡んで程よい触感になり、そのクリームから使われている素材の芳醇な香りや味が口全体に広がっていった。

 

「やっぱり彼処のスイーツはサイッコー♪」

 

「ほわぁ~♪口の中が幸せ~♪」

 

「次は絶対に皆の分も買おう♪」

 

そんな感じにプチ贅沢を味わい、弾む会話を楽しむ。

 

「そういえば二人はもうすぐ高校を卒業するんでしょ?その後はどうするの?」

 

「私はまだ決めてないわ。これといってやりたい事もまだ見つかってないしね。」

 

「私もおんなじ…」

 

ずいぶん前に貰った進路希望調査表も、いまだに白紙のままで先生にせっつかれてるし……

 

「ふーん、色々大変なんだね。」

 

「そういう夏煉はどうなのよ?将来について。」

 

「私はもう陽太義兄さん達の手伝いをしてるし。」

 

「「そういやそうだった…」」

 

くそぅ…‼最初から進路が決まっている奴は羨ましいわね‼

 

「今度は別の世界に修行に行ってみないかって、陽太義兄さんに言われてて…」

 

へぇ……私も前に行ったけど、こっちと全く違う文化を見るのは面白かったわね。また行ってみたいなぁ……

 

「そこってどんな世界なの?」

 

「それは行ってからのお楽しみだって。」

 

「ふ~ん…」

 

「それで、ここからは二人にも関係ある話なんだけど…」

 

夏煉はそこで1度言葉を切り…

 

「よかったら、一緒に行かない?」

 

私達を見ながら、そう告げた。

 

「「………………はい?」」

 

「陽太義兄さんからも、数人だったら連れていってもいいって言われてて、だったら私は二人と一緒に行きたいなと思って……………どうかな?」

 

「いや、急に言われても…」

 

正直私としては行きたいけど、お兄ちゃん達がなんて言うか……

 

「とりあえず少し待って。一応お兄ちゃん達に確認してみるから。」

 

「私もお母さんと相談してからになるかな?」

 

「返事は二人の卒業式前までに聞かせてくれれば大丈夫だから。それじゃ、私はもう帰るね。」

 

そう言ってベンチから立ち上がり、私達から少し離れるとその間を幽霊列車が走り抜け、通り過ぎると夏煉の姿はなかった。

 

「玲奈ちゃんはどうする?夏煉ちゃんの提案。」

 

「ん~……正直に言えば行きたいかな?」

 

「実は私も行ってみたいって思ってる。」

 

「なら、後は説得だけね。」

 

お互いの意思を確認した私達は、保護者の説得のために別れて家へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいぞ、行ってこい。いや行け。」

 

「そうですね、行ってきなさい。」

 

「即答で強要ッ!?」

 

その日の夜、仕事から帰ってきた兄である【御堂タケル】とつい最近結婚した妻である【御堂エルナ】義姉さんに夏煉との話をしたらなんの躊躇いもなく、コンマの早さで笑顔で私にそう言ってきた。

 

「たりめーだ、進路もなにも決まってないお前には丁度いいし…………新婚の俺とエルナがイチャイチャしやすくなる。」

 

「そっちが本音かい‼‼」

 

「はい、だからなんの遠慮もなく行きなさい。」

 

「義姉さんまでッ!?」

 

この人達、私の扱い雑にし過ぎじゃないですかねぇ!?

 

「そうと決まれば早速旅の準備をさせとかないとな‼」

 

「ならその間にボクは夕御飯の準備をしますね♪」

 

「おう、いつもの美味いやつ頼むよ。」

 

「は~い、ア・ナ・タ♥」

 

「……………………先に準備してるよ…」

 

この新婚空間にいたら、後々もたなくなると感じ取った私は、準備を理由にしてすぐに自室へと退散した。そして夕夏に連絡を入れたら、向こうも許可を得られたそうなので、行く世界がどんなのなのか話し、眠気がきたので電話を切り眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから日は経って、卒業式が終わった私と夕夏は公園にやって来た。そこには幽霊列車に夏煉とその義兄さんである陽太郎さん、この世界でお世話になった人達がいた。

 

「よ、二人とも卒業おめでとう。」

 

「「ありがとうございます‼」」

 

最初に声をかけてきてくれたチームのリーダーである【龍見一誠】さんにお礼をいう。

 

「二人もいなくなっちゃうなんて、寂しくなっちゃうな…」

 

「ほーら響、笑顔で見送るんでしょ?」

 

「なにも今生の別れでもあるまい。」

 

「オメーは涙が脆すぎるんだよ。」

 

「そういう雪音先輩も、目元が潤んでますよ?」

 

「バッ!?それは黙ってろって言ったろ木場‼」

 

「病気には気をつけるのよ?」

 

「…頑張ってね。」

 

「応援してるデスよ‼」

 

「お土産待ってます。」

 

「小猫ちゃん、それなんか違くない?」

 

他のメンバーの方達も、それぞれ言葉をかけてくれる。ただ塔城先輩、お土産は無理です。後、木場先輩と雪音先輩はいつまでも恋人じゃなくて早く結婚すればいいのに…

 

「二人ともありがとう、夏煉一人じゃまだ心配だったからね。」

 

「ぷー、私そこまでドジじゃないし…」

 

「それでも心配するのが、家族だろ?」

 

「……じゃあ仕方ないか。」

 

陽太郎さんの言葉に夏煉は反論するけど、返答にすぐに納得していた。

 

相変わらず家族大好きね。

 

「玲奈、たまには連絡入れろよ?」

 

「夕夏ちゃんと仲良くね。」

 

「分かってるよ。」

 

「お任せください。」

 

「それと、これを持ってけ。」

 

そう言ってお兄ちゃんは私に1つのアタッシュケースを渡してきた。

 

「今日来れないアザゼルさん達からだとよ。」

 

「じゃあ、ありがとうって伝えておいて。」

 

「あいよ。」

 

お兄ちゃんとエルナ義姉さんに答えた私達は、幽霊列車に乗り込んだ。

 

「さて、それじゃ出発するよ。」

 

最後に陽太郎さんが乗り込んで、列車が走り始めたので私と夕夏は窓を開けてそこから手を振った。

 

「「行ってきまーす‼‼」」

 

『『『『『いってらっしゃーい‼』』』』』

 

そして皆に見送られつつ、時空を越えるための空間に入った。

 

この先の世界でどんな事が起こるのか、まさしくワクワクもんだ‼‼

 

そんな期待を胸に、ここから私の物語は始まった。




いかがでしたか?

最初を三人称っぽくやってみたけど………………精進しよう……

それとこの作品でレギュラーになる鬼町夏煉は悪維持さんの作品【煉獄の義姉弟】に出てくるキャラなので、良ければそちらも御覧ください。

では次回予告です。




幽霊列車に乗ってやって来た異世界。三人はそこを散策していたら、沢山の女性に暴力を振るわれている一人の女の子を見つけ、見るに見かねた三人はその子を助け出す。

そして傷を治している間、その子の口から語られるのはこの世界の歪みだった。

次回【IS編 歪んだ世界】

「なによそれ、馬鹿馬鹿しいにも程があるわ…‼‼」

では、次回をお楽しみに。


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メインメンバー・プロフィール(増えれば更新予定)

メインメンバーになる人物の設定を簡単に御紹介します。(【最弱の一誠】のネタバレが含まれているので注意してください。)


 

御堂玲奈

 

CV:三森すずこ

 

見た目:青みがかった黒髪ポニーテールに金色の瞳、体型はモデル並み。

 

家族構成:兄(御堂タケル)、義姉(御堂エルナ)、玲奈

 

 

本作の主役

ハイスクールD×D世界出身の女の子。元気一杯で周りを引っ張っていくリーダー気質があるがたまに暴走することも。特技は射撃で、中学・高校共に全国大会で何度も優勝するほどの実力の持ち主。趣味はゲームで色々なものに手を出しているが、シューティングゲームは彼女の実力も相まって町中の筐体全てで1位に名を刻み、それを自身で何度も更新していっている。可愛い物を見ると抱き着いて頬擦りする癖がある。(主な被害者はゴーストガジェット)

 

 

【仮面ライダーユリン】

 

玲奈が【ゴーストドライバー】と【ユリン眼魂】で変身する仮面ライダー。

 

見た目:ゴーストのオレンジ部分をピンクに変えた姿。

 

性能はゴーストよりも少し劣る。射撃による遠距離攻撃を主力とする。15個の眼魂に武装はガンガンハンドとガンガンセイバーの2つで、ガジェットを装着するなどしてあらゆる戦闘に対応可能な上、ソウチャクスロットホルダーを使うことでエグゼイドに出るガシャットを使用可能になり更に強化できる。

 

兄に付いて裏の存在と戦っていたり夏煉との勝負を重ね、現在の強さはチート級。

 

 

 

使用眼魂

 

H01 美琴魂(とある科学の超電磁砲)

H02 シノン魂(ソードアート・オンライン)

H03 まどか魂(魔法少女まどか☆マギカ)

H04 黒子魂(とある科学の超電磁砲)

H05 アスナ魂(ソードアート・オンライン)

H06 ほむら魂(魔法少女まどか☆マギカ)

H07 なのは魂(魔法少女リリカルなのは)

H08 スバル魂(魔法少女リリカルなのは)

H09 吹雪魂(艦これ)

H10 雪菜魂(ストライク・ザ・ブラッド)

H11 明乃魂(ハイスクール・フリート)

H12 ネロ魂(フェイト・エクストラ)

H13 魔理沙魂(東方project)

H14 神楽魂(銀魂)

H15 ベルベット魂(テイルズ・オブ・ベルセリア)

アイコンドライバーH

 

使用ガシャット

 

ゲキトツロボッツ

ドレミファビート

ジェットコンバット

ギリギリチャンバラ

シャカリキスポーツ

ドラゴナイトハンターZ

 

 

 

 

小鳥遊夕夏

 

CV:新田恵海

 

見た目:セミロングの茶髪の右側の一部を纏めたサイドテールに水色の瞳。体型はスレンダー。

 

家族構成:父、母、夕夏

 

 

御堂玲奈の小学生時代からの親友。朗らかな性格だがゲームをする時はテンションが上がる。父親が単身赴任で海外に行ってしまった寂しさを紛らわすために、父親とよく行っていたゲーセンに入り浸っているときに玲奈と出会い、クラスも同じになってからは玲奈のお陰で寂しさを感じなくなった事に感謝している。趣味は玲奈と同じゲームでその腕前はシューティング以外なら玲奈に勝ち越している。体の一部(どこがとはいえない)があまり成長していないのが悩み。

 

 

 

【仮面ライダーレーザー】

 

夕夏が【ゲーマドライバー】と【爆走バイク】ガシャットで変身する仮面ライダー。

 

性能はエグゼイド原作よりも防御力が上がっている上、ブレイカー・ソード・マグナム・スパロー・バグヴァイザーといったガシャコンウエポンを全て使え、ソウチャクスロットホルダーによって、レベル3の上にレベル3や5のガシャットを上乗せすることが可能。更にはレベル50になるための【デュアルガシャットギアγ】も所持している。

 

レベル2の能力上ユリンとコンビを組んで活動する事が多いが、【ギリギリチャンバラガシャット】等を使ってレベル3以上になってからの足技を基本とした単独戦闘能力も高い。彼女も裏の存在との戦いや夏煉達との勝負を重ねた結果、現在の強さはチート級。

 

所持ガシャット

 

爆走バイク

マイティアクションX

タドルクエスト

バンバンシューティング

ゲキトツロボッツ

ドレミファビート

ジェットコンバット

ギリギリチャンバラ

シャカリキスポーツ

ドラゴナイトハンターZ

デュアルガシャットギアγ

 

 

 

 

 

鬼町夏煉

 

CV:原田ひとみ

 

見た目:黒髪のセミロングに翠の瞳の女性。体型はモデル並み。

 

家族構成:義兄(陽太郎)、義姉(薫)、他兄妹多数。

 

 

 

玲奈のライバルで普段は違う世界にいるが、玲奈達と勝負をするためによく玲奈達の世界にやって来る少女。しっかり者でがんばり屋な上、瞬時の閃きを持つ頭脳派。独り身だった自分を迎え入れてくれた義兄や義姉を慕っていて、力になりたいと仕事を手伝ったりしている。家族や友達をバカにされたり傷つけられるとぶちギレる。

 

 

【仮面ライダーヘレナ】

 

夏煉が【ゴーストドライバー】と【ヘレナ眼魂】で変身するゴースト系仮面ライダー。

 

見た目:ゴーストのオレンジ部分が紫で、角が2本の姿。

 

 

性能はスペクターより上。状況に合わせてのガンガンセイバーやガンガンハンド等の武器選択で戦闘能力はかなり高い。持っている15個の眼魂も特殊能力を持つものが多く、更に義兄によって改造が施され眼魔やガシャットの力を使える事によって予測不能な攻撃で相手を圧倒する。転生者ハンターの家族に鍛えられ、玲奈と夕夏を強くするほどの実力なので、強さはもちろんチート級。

 

 

使用眼魂

 

D01 焔魂(閃乱カグラ)

D02 羽衣狐魂(ぬらりひょんの孫)

D03 イカ娘魂(侵略イカ娘)

D04 澪魂(絶対可憐チルドレン)

D05 チンク魂(魔法少女リリカルなのは)

D06 詠魂(閃乱カグラ)

D07 パティ魂(絶対可憐チルドレン)

D08 未来魂(閃乱カグラ)

D09 ノーヴェ魂(魔法少女リリカルなのは)

D10 ディエチ魂(魔法少女リリカルなのは)

D11 ウェンディ魂(魔法少女リリカルなのは)

D12 日影魂(閃乱カグラ)

D13 カズラ魂(絶対可憐チルドレン)

D14 狂骨魂(ぬらりひょんの孫)

D15 春花魂(閃乱カグラ)

アイコンドライバーD

 

使用ガシャット

 

ガシャットギアフュンフ

 

 




ソウチャクスロットホルダーについては【最弱の一誠と歌姫達】のエグゼイドの世界 level2を見てください。

以上、プロフィールでした。


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IS編
歪んだ世界


ども、疾風の警備員です。

今回はIS編の原作前になります。ここでオリキャラ1人と原作キャラが2人出てきます。

では、どうぞ。


玲奈side

 

幽霊列車に乗ってから数分………

 

「ちょっと夏煉、そこだと射線の邪魔よ‼」

 

「そっちこそ、私ごと吹き飛ばすつもり!?」

 

「ヒャッハーッ‼‼この狩場は私の独占だァッ‼」

 

私達3人はアザゼルさんが作った【ゲームガシェッター】という携帯ゲーム機で、ドラゴナイトハンターZをやっていた。

 

「このままレアアイテムも貰った‼」

 

「渡してたまるもんかぁッ‼」

 

「レアアイテムは私の物だ…‼」

 

「そのゲーム………協力プレイ用だよね?」

 

私達のプレイしている様子を見て、陽太郎さんが何か言ってるけど知ったことじゃない‼

 

因みに装備は夏煉がまるで魔王を模したような鎧で右手に剣を左手に盾を持ち、私は双銃と鎧のアチコチに砲身を取り付けた移動砲台、そして夕夏は何処で見つけたのか自分のキャラの顔がボディに描かれた巨大なパワードアーマーを身に纏っていた。

 

にしてもこのゲーム、なんでラスボスは人型のドラゴンなのよ?緑色の体に薙刀装備って、ドラゴン要素何処にも無いじゃない………

 

「よっしゃ、トドメだーッ‼‼」

 

そんな事を考えていたら、夕夏のキャラがラスボスに飛び蹴りを決めて、ポリゴン片となって散っていった。

 

《GAME CLEAR!!》

 

「「ああーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」」

 

「しゃあッ‼レアアイテムゲットだぜ‼」

 

やられたッ‼ここのレアアイテムで最強の一斉射技【クリティカルファイヤー】のロックが外れるのにぃッ‼

 

「くそッ‼もう一回「悪いけど、そろそろ着くから降りる準備をしてね。」あ、はーい‼」

 

再戦を申し込もうと思ったけど、陽太郎さんに言われてセーブをして電源を落としガシャットを抜いた。

 

「窓の外を見てごらん。もう時空を抜けて、3人が行く世界が見えるよ。」

 

その言葉に急いで窓に駆け寄ると、なんともいえない変な空間から、何処かの都会の様な場所に出た。

 

「ここは何処なの、陽太義兄さん?」

 

「それを調べたりするのも、修行の一環だよ?」

 

もう修行は始まってるって訳か………面白いじゃないの‼

 

「近くに人目につかない空き地があるからそこに降ろすよ。」

 

「「「はーい。」」」

 

そして空き地に停まった幽霊列車から荷物を持って私達は降りた。

 

「それじゃ夏煉、頑張るんだよ。」

 

「うんッ‼」

 

「二人も夏煉をよろしくね?」

 

「「了解。」」

 

「あ、後通貨は今ので大丈夫だし、この世界の物語に干渉しても別に問題は無いから。それじゃあね。」

 

私達にそれを告げたら、陽太郎さんは幽霊列車に乗って帰っていった。

 

「じゃあ、先ずは情報集めかな?」

 

「そうね。本屋かコンビニを探しましょ。」

 

「だったら降りる時に見つけてあるよ。こっち。」

 

当面の目的を決めた私達は、夏煉の案内の元で動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕夏side

 

どうも、小鳥遊夕夏です。私達は夏煉ちゃんが見つけた商店街の本屋やコンビニで数点の雑誌を買って、中央の広場にあるベンチに座って読んでいた。

 

「ふーん、この世界には【インフィニット・ストラトス】なんて兵器があんのね。」

 

「核をも越える兵器って穏やかじゃないね…」

 

「でも女性にしか使えないって……どう考えても欠陥品だよ。」

 

「しかもそのせいで、女尊男卑なんて下らない情勢になってるとは…」

 

う~ん…雑誌の情報だけだから偏りがあるけど、色々治安とかに問題がありそう……

 

「とりあえず、そろそろお昼にしようよ。時間も丁度良いしさ。」

 

私が時計を見ると12時を少し過ぎていたので二人に提案すると、二人も頷いてくれた。

 

「さて、何を食べようか「オラッ‼さっさと来いよこのクソガキ‼」ん?」

 

何を食べるか考えていたら、そんな物騒な言葉が聞こえ、視線を向けたら10人程の女性が私達と同年代位の女の子に殴る蹴る等の暴力を振るっていて、女の子はそれを必死に我慢していた。

 

「酷い…」

 

更に暴行は続き、お腹を殴られた時にその子の服から1枚の紙が落ちた。

 

「ん、何これ?」

 

「ッ‼返してッ‼」

 

女の子はそれを取り替えそうと手を伸ばすが、女達は……

 

「これ、あんたが描いたやつ?アハハハハッ‼ヘッタクソねぇ~‼こんなのいらないでしょ?」

 

「止めてッ‼それだけは…‼」

 

ケガで上手く動けないのをいいことに、その子の手の届かない所で嘲笑い、挙げ句の果てに破ろうとしていた。

 

「玲奈ちゃん、夏煉ちゃん……私行ってくる…」

 

「ちょっと待ちなさい、夕夏。」

 

それを見て頭にきた私はそこに乱入しようとしたけど、玲奈ちゃんに止められたので理由を聞こうとしたら……

 

チャリン……ピッ……ガコンッ‼

 

近くの自販機で缶コーヒーを買っていた。

 

「……わかったよ。」

 

「え、夕夏?」

 

その行動を見た私はすぐに横に一歩ずれ、その行動の意味がよく分かってない夏煉ちゃんは疑問符を頭に浮かべていた。

 

夏煉ちゃんは角度的に見えなかったかもだけど、私にはしっかりと見えた。玲奈ちゃんの唇が怪しそうに歪むのが……それに買ったコーヒーはブラックだけど、玲奈ちゃんブラックは飲めないからね。

 

玲奈ちゃんは缶コーヒーを軽く2回程上に投げたら、上体を後ろに反らし左足を天高く掲げた後、思いっきり振り下ろして大地を踏み締め右腕を振りかぶり……

 

「あ、手が滑っちゃった♪(棒)」

 

そんなわざとらしさと棒読み感丸出しのセリフと共に、パァンと空気が破裂するような音を出す勢いで、手の缶を()()()()

 

ドゴォンッ‼‼

 

「あべしッ!?」

 

「え?」

 

そしてそれは見事に、その子の大切な物を持っていた女の後頭部に直撃した。

 

「あ、姐さんッ!?後頭部にデケェたんこぶがッ‼」

 

「これ…缶コーヒー?」

 

「うわ……この缶開けてないやつじゃない…」

 

「えげつな…」

 

「一体誰よ‼」

 

「私達だよ…」

 

周りの取り巻き達が混乱している間にその中に飛び込んだ私は、某天の道を行く人張りの上段回し蹴りを一人の女に叩き込んだ。

 

「そうじッ!?」

 

「そりゃッ‼」

 

次に後ろにいる奴は、加速ライダー風の空中後ろ回し蹴りで仕留める。

 

「てるいッ!?」

 

着地したら右にいる奴に、3連回し蹴りを喰らわせる。

 

「モモタッ‼」

 

「アナタ、何者ッ!?」

 

「通りすがりの一般人だよ……覚えときなさいッ‼」

 

その女には飛び上がりながら右足を高く掲げた後、全力の踵落としを脳天に決めた。

 

「りょうッ!?」

 

「おいコイツ、ヤバイって…‼」

 

「逃げるぞッ‼」

 

「ほら…忘れ物……よッ‼」

 

逃げようとする奴等に夏煉ちゃんが倒れた5人を持ち上げて投げ飛ばし、下敷きになった。

 

「「「「「ぎゃっふんッ!?」」」」」

 

「全く…‼」

 

いい大人が子供虐めて何が楽しいんだか…‼

 

「ほら、貴女の大事なものなんでしょ?」

 

「あ、ありがとう…」

 

玲奈ちゃんは女が落とした紙を拾い、埃を軽くはたいてから女の子に返していた。

 

「あ~あ~、傷だらけじゃない。ほら、治療するわよ。」

 

「え?いや、そこまでは…‼」

 

「ダメよ、そのままだと跡が残るかもしれないんだから。夕夏、鞄持ってきて。近くにあった公園で手当てするわよ。」

 

「任せて。」

 

玲奈ちゃんに言われて鞄を持って、公園に移動して女の子の手当てを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

「はい、これで終わり。」(ぺしッ)

 

「あうッ‼」

 

「こら、なにやってるのよ玲奈。」

 

手当てが終わり、私が包帯を巻いた頭を軽く叩くと、女の子は少し痛がり夏煉に嗜められた。

 

「あの……ありがとうございます。助けてもらって…」

 

「気にしないでいいわよ。アイツらにムカついたのも事実だし、お兄ちゃんの教えでもあるからね。」

 

「教え…?」

 

「ええ、【助けられる距離にいる奴は助ける】ってのね?それで、貴女は何であんな奴等に襲われてたの?何処かに連れていかれそうだったみたいだけど…」

 

「……ッ‼」

 

私がそう聞いたら、彼女の体が突然震え始めた。

 

「えッ!?ちょ‼どうしたのよ!?どうすればいい、夕夏ッ!?」

 

「いや、私に言われてもッ!?」

 

私と夕夏は思わずテンパってしまい、慌てていたら…

 

「大丈夫、落ち着いて……私達は貴女の敵じゃない…心配もしなくていいから…」

 

「あ…」

 

夏煉がその子の手を握りしめて、まるであやすようにそう呟くと、段々その子の震えが止まってきた。

 

「もういいみたいだね。」

 

「あう……すみません…」

 

「さすがね、夏煉?」

 

「私も昔、義兄さんや義姉さんによくやってもらったから。」

 

ああ~、あの人達ならやってそうだわ~。

 

「それで、もう一度聞くけど大丈夫?」

 

「はい……あ‼私、【小比類巻(こひるいまき) レン】っていいます。」

 

「私は御堂玲奈、こっちは友達の小鳥遊夕夏と鬼町夏煉よ。」

 

「「ヨロシクね(よろしく)。」」

 

助けた女の子……黄里花と自己紹介し終えた私達は彼女の話を聞くことにした。

 

「私、ある研究所から逃げてきたんです…」

 

「研究所から?」

 

「はい、名前は知らないんですけど……【白騎士事件】で被害に遭った子供たちを使って非合法な実験を繰り返して、最強のIS操縦者を作るのが目的だったそうで…」

 

ここで私達はさっき調べた情報との違いに気づいた。

 

「白騎士事件って被害者はいないんじゃ…」

 

「違うッ‼‼」

 

「「「ッ!?」」」

 

夏煉の言葉にレンは大声で反論し、それに私達は軽く驚く。

 

「白騎士だけで2000発を越えるミサイルを落としていきましたけど、その破片の幾つかが地表に降り注いで避難中の人達を襲ったんです‼その中には私の親もいました…‼」

 

「その被害に遭ったのは183人……その内親を失った子供は私達含めて51人いたんです…‼そして大人達に政府は多額の賠償金を払うことで口止めさせ、子供の方はその時来たその女の閣僚が保護するという話になったんですけど…」

 

そこまで話した彼女は悔しそうに唇を結んだ。

 

「その保護先は孤児院を装った違法研究所だったんです…‼そこで私達は最強のIS操縦者になるための訓練や人体改造なんかを10年近くやらされてきました…」

 

「そんな…‼」

 

「それに耐えきれなくなった私達は何人かの子と脱走を謀ったんです。でも、それはすぐに気づかれて…」

 

その時、彼女の目から涙が流れ始めたのを見て、私は彼女をそっと抱きしめた。

 

「え…?」

 

「そこまででいいわ。辛い事を思い出させたわね………ごめんなさい…」

 

「いえ、そんな…」

 

「でももう大丈夫、貴女は私達が守ってあげる。」

 

視線を夕夏と夏煉に向けると、二人も頷いてくれた。

 

「そんなッ!?私と一緒にいたらまたあんな人達が…‼」

 

「あら、あの程度の輩なら100や1000いようがフルボッコにしてやるわ。」

 

「それに、貴方みたいな子を放っておくなんて出来ないよ‼」

 

「任せておいて。」

 

「皆さん…」

 

「だから今は泣いたっていいのよ。両親以外にも大切な人が亡くなったんでしょ?」

 

この子は途中から【私達】と言っていた。つまり、他にも一緒にいた人がいた筈だ。

 

「………お姉ちゃんが……いたんです………いつも一緒で………脱走の話もお姉ちゃんが提案して……でも……バレて……追っ手の…銃から…逃げ……遅れた………わたしを………かばって…‼」

 

そこから言葉が続く事は無く、彼女の小さな嗚咽が私の耳に届いた。

 

なんでこんな子が、これほど辛い目に合わないといけないんだろう…それとも、これがこの子の運命だった…?

 

「なによそれ、馬鹿馬鹿しいにも程があるわ…‼‼」

 

思わず浮かんだ考えを怒りまかせに否定する。そんな運命なんてあっちゃいけない‼‼

 

それから10分程して、レンが泣き止んだのか私から離れた。

 

「もう大丈夫?」

 

「はい、少し………心が楽になりました。」

 

レンの眼はまだ少し腫れていたが、表情はさっきよりほんの少し明るい感じになっていた。

 

「そう………ならこれからどうしましょうか?」

 

「そうだねぇ…」

 

この子の事も踏まえて、今後の行動をどうするか全員で考えてたら……

 

キィィィィィイイイイイイ……ドゴォンッ‼

 

「な…何ですかッ!?」

 

「「「……ッ‼」」」

 

空から何か飛んでくる音がしたと同時に、何かが目の前に落ちてきて砂煙が舞った。レンはびっくりして腰を抜かし、私達は念のためにベルトを装着する。

 

そして砂煙が消えると、そこには長大な腕に全身にスラスターと思われる部分があり、顔には複数の赤い目がある三メートル位のロボットが立っていた。

 

「「「……………………ロボットオォォッ!?」」」

 

「…変な見た目。」

 

アタシと夕夏はロボットなんてあまり見たことなかったから、レンと一緒に驚いた。あと夏煉、そこツッコミどころじゃない。

 

ロボットはゆっくりとこちら……レンへと拳を伸ばしてくるので、破壊を決意した私と夏煉と夕夏は眼魂とガシャットを起動させようとしたが、その手はその子の少し手前で止まり、拳を開くと中にはプロジェクターみたいなのがあった。

 

「なにこれ…(ブゥン‼)ひゃあッ!?」

 

夕夏がそれを覗き込んだらいきなり起動し、空中に浮かんだ画面にビックリして尻餅を着いた。

 

「あ~、ビックリした…‼」

 

画面を見ると、そこには赤い髪にうさ耳を模したメカチックなカチューシャを付けた女性が映っていた。

 

『あ~あ~、もすもすひねもす?聞こえてる?聞こえてたら決め台詞をビシッとどうぞ‼‼』

 

「命…燃やすわよ‼」

 

「優勝トロフィーは私の物だ‼」

 

「私の生き様、たっぷりと見せてあげる‼」

 

「ええッ!?あ…えと……ノーコンティニューでクリアします…?」

 

『OK‼ちゃーんと繋がってるみたいだね‼』

 

しまった……ついノッてしてしまった。

 

『いや~、ノリがいい子は束さん、大好きだよ~♪』

 

どうやら画面に映っている女は束というらしい。でも、何で機械的なうさ耳を頭に付けてんのかしら?

 

「私達に何の用かしら?」

 

『実は君を迎えに来たんだよ、【小比類巻 レン】ちゃん?』

 

「ッ‼なんで……私の名前を…?」

 

『そりゃ~この天災たばボンにかかれば、それくらいの情報のハッキングは寝起きの寝ぼけ眼での片手間なのだ~‼』

 

ん?なんか天才の発音が違って別の意味の言葉に聞こえるのは気のせい?

 

「玲奈ちゃん、ツッコミどころ違うよ?」

 

「そういう夕夏も心読んでんじゃないわよ。」

 

『君達もその子を助けてくれて、ありがとね~♪』

 

「どうも。所で貴女は?」

 

『う~ん、説明したいけどこの場所にこのままいたらマズイから…………君達も私の秘密基地に来てくれるかな?』

 

「「「いいとも~‼‼」」」

 

束の言葉に再び3人で乗ってみた。

 

『ニャハハハハハハッ‼‼うん、やっぱり面白いね君達‼気に入った‼‼よし、皆これから来るものに乗ってね。』

 

そう言って映像は終わり、空からまた何かが飛んできたかと思うと、地面に巨大なニンジンが突き刺さった。

 

「「「「なぜニンジン?」」」」

 

『私の趣味だ、良いだろう?』

 

思わず呟いた言葉に、入り口が開いたニンジンからボケが入る。どうやら中にあるスピーカーから声が聞こえているようだ。

 

「どうするんですか?」

 

「とりあえず行ってみましょう。敵だったら私達3人でフルボコるだけよ。」

 

夕夏と夏煉に視線で合図を送ると頷いたので、荷物を持った私達はその中に乗り込む。

 

『皆乗ったね?それじゃ、しゅっぱーつ‼』

 

そして私達は束が作ったコンテナ?で彼女の基地へと向かった。

 

………ところでコレ、どうやって移動してんのかしら?さっき見たとき、推進部とか見当たらなかったんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

束が4人に接触する数十分前………

 

「ふぅ、少し休むか…」

 

「お疲れさまです。」

 

その日の書類仕事中に私が一息つくと、緑の髪に眼鏡をかけた同僚が私の机にコーヒーを置いてくれた。

 

「すまないな。」

 

「気にしないでください。」

 

いれて貰ったコーヒーを一口飲むと、苦味が広がり緩んだ思考が再び起き出してくる。

 

【♪~♪~♪~】

 

「ん?………………すまん、私用の電話だ。少し席を外す。」

 

「あ、はい。」

 

画面を見た私は、同僚にそう言って仕事をしていた部屋から出て、通話ボタンをタップする。

 

『ヤッハロ~♪愛しい愛しい貴女のたば(ブツッ)』

 

言葉の途中で苛立ちが勝った私は通話を切る。

 

「さて、仕事に戻る【♪~♪~♪~】……ハァ…」

 

しかし、再びかかってきた電話にため息を吐きながら、もう一度通話をする。

 

『酷いよ~‼幼馴染みでしょッ‼いきなり切らないでよ~‼‼』

 

「何の用だ………束?」

 

掛けてきた相手【篠ノ之 束】に少し………いや、かなり面倒くささを込めて返事する。

 

『……………………【あの子】を見つけたよ…』

 

「ッ‼!?」

 

しかし、その言葉ですべてが吹き飛んでしまった。

 

「……………本当なのか?」

 

『本当だよ。いま迎えを出してる……それに頼もしそうな護衛がいるみたい。』

 

それを聞いて安堵とともに罪悪感が沸き上がってくる。

 

「そうか……………………ついに、この日が来たんだな…」

 

『うん………どうする?』

 

束が心配そうに声を掛けてくるが、私の心は既に決まっている。

 

「私をそちらに連れていってくれ。あの子には謝っても許されるとは思ってないが、キチンと謝罪だけはしたい………自己満足だと笑うか?」

 

『そんな事しないよ。それにそう言うと思って、既に迎えを寄越してる。』

 

「感謝する…」

 

『それじゃ着く場所はこの座標だから、ここで待っててね。』

 

「解った。」

 

そこで通話を切り、携帯に表示された場所へと歩き出す。

 

ーーーーーお前には悪いが、私は彼女に言われたどんな望みも叶えるつもりだ。………それが例え、死であっても………

 

それこそがあの事件に関わった私…【織斑 千冬】の贖罪だと、心に誓いながら………




いかがでしたか?ここでは兎は白にしてみたいです。

では次回予告です。


束の秘密基地にやって来た4人。そこで告げられた事に黄里花は激怒する。更に基地の場所がバレて3機のISが基地に接近してくる。そこに1人の戦士が立ちあがる。

次回【望み】

「そんなの私が許さない…‼」

では、次回でお会いしましょう。


玲奈「それと、開けてない缶を音速で人にぶつけちゃダメよ?この小説だとたんこぶですんだけど、実際は悲惨な事になっちゃうから。これ、お姉さんとの約束ね♪」



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望み

どうも、疾風の警備員です。

今回はここでの玲奈の初戦闘になります。

では、どうぞ。


玲奈side

 

ニンジン型のロケットに乗ってから数十分……

 

「ついにこの時が来たようね……夕夏。」

 

「そうね…………決着をつけましょう、夏煉ちゃん?」

 

二人は互いに睨み合った後、視線を下に向け……

 

「小鳥遊夕夏、バルベトスウルフキング…」

 

「鬼町夏煉、グシロンリメイクフルマーチ…」

 

「「いくぞッ‼」」

 

『FIGHT!!』

 

その電子音声に合わせ、二人は【ゲキトツロボッツ】を始めた。

 

「まったく、何時になったら着くのかしら…」

 

「もう30分位経ってますよね…」

 

私とレンは【マイティアクションX】をやっていたけど、既に全面クリアして暇していた。

 

「にしてもレンも結構上手いわね?中々いい反応だったじゃない。」

 

「ゲームをするのは初めてでしたけど、スッゴく面白かったです‼」

 

「なら良かったわ。」

 

最初は泣き止んだこの子を楽しませようと思ってやらせてみたんだけど……黙々とやり初めて、まさか30分で全クリしてしまうとわ。

 

(この子、ゲームの天才かも…)

 

ソフトは私が使ってた状態で貸したから、難易度はhardだったのにそれをあっさりと……

 

「ふぁ……あふ…あ、すいません…‼」

 

「良いわよ、着いたら起こしてあげる。」

 

眠そうに欠伸をする黄理花に、私は自分の膝を叩いて枕にしていいと促す。

 

「そんな‼さすがにそこまでは…‼」

 

「気にしなくて良いわ、今までゆっくりと眠る事なんて出来なかったんでしょ?」

 

「えっと…………あの………………それじゃ、失礼します…」

 

その押しに負けて黄理花は遠慮がちに、私の膝に頭を乗せて目を閉じると、すぐに寝息をたて始めた。

 

「お休みなさい。」

 

彼女の髪を撫でながら、私はある事を考えていたら……

 

「玲奈ちゃん、まるでレンちゃんのお姉さんみたいだよ?」

 

そこにゲキトツロボッツを終えて勝利の笑みを浮かべながら聞いてくる夕夏と、負けて膝をついている夏煉がいた。

 

「まあ……家族が死んだと思った時の気持ちは解るからね……」

 

私達の世界でお兄ちゃんは何度も死にかけている。でも、最後はそこから甦り強くなって帰ってきた。

 

「でも、この子はもう2度と会えないのよ。私と違って2度とね…」

 

「あ……そうだね…」

 

「なら、今はレンの気持ちを少しでも楽にしてあげるのが、私の役目かなって。」

 

「玲奈なら適任なんじゃない?」

 

そこに立ち直った夏煉も会話に参加する。

 

「そう?」

 

「その悲しみを一番知ってるのは玲奈だからね。私や夕夏には無理だよ。」

 

「なら、引き受けさせてもらうわ。」

 

「さて、話も纏まったし……今度は玲奈ちゃんもいれて三人で勝負だよ‼」

 

「今度は私が勝つ‼」

 

「悪いけど、私のフラメロス・メテオには勝てないわよ‼」

 

「「上等ッ‼」」

 

私もゲームを取り出し、レンを起こさないように音量は最小限にして始める。え、勝敗?二人が争い始めた所を私の攻撃力に極振りしたレールガンでズドンですけど何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンside

 

 

 

-―お姉ちゃん、待ってッ‼‼

 

-―レン、急いで‼‼

 

-―いたぞ‼‼逃がすな、殺せッ‼‼

 

-―ッ!?レェェェェェェェンッ‼‼

 

-―え?

 

 

 

 

 

 

「……ン……レン…?レンッ‼」

 

「はッ!?……はぁ……はぁ…‼」

 

私は耳元で大きな声が聞こえた瞬間、今見ていたものが消えてさっきまで見ていた機械だらけの風景と私を助けてくれた玲奈さん、夕夏さん、夏煉さん三人の女性の姿があった。

 

(今のは……あの時の…夢?)

 

「ちょっと大丈夫?凄くうなされてたけど…」

 

「え?……あ、はい…」

 

「とりあえず汗を拭きなさい。もう5分程で着くそうよ。」

 

そう言って玲奈さんが私の頭にタオルを置き、頭を吹いてくれる。

 

「す、すみま…「違うでしょ、こういう時は?」えっと……ありがとうございます…」

 

「はい、良くできました。」

 

そのまま拭いて貰っていたら、小さな揺れと共にロケットの動きが止まった。

 

『は~い、皆お疲れ様~♪着いたから出てきてイイよ‼』

 

「やっとか…」

 

「何処なんだろうね?」

 

荷物を持って降りていく夕夏さんと夏煉さんに続くように私と玲奈さんも外に出ると……

 

「「「「ここ何処おぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?!?」」」」

 

何処かの無人島らしき島にいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

(何で無人島なの!?持ってんの!?島、持ってんの!?)

 

着いた場所が無人島だった事に驚いていたら、目の前の地面がせり上がり、地下への入り口が出来た。

 

『そこから入ってきて~‼私は入った廊下の一番奥にいるから~‼』

 

無線からそう聞こえてら、近くにいたロボットがロケットを抱えて新しく出てきた入り口から地下に入っていった。

 

もしかしてあのロボット……ロケットをずっと抱えた?

 

まさかの移動方法に少し驚きながらも、私はベルトを出す。

 

「あれ?着けてくの?」

 

「何があるか分からないからね?」

 

「確かにそうね。」

 

夏煉と夕夏もベルトを装着してから夏煉が前、夕夏が後ろでその間に私がレンの隣になる配置をとって、その入り口(エスカレーター)から中に入っていく。

 

「にしても、ずいぶんハイテクだね……」

 

「自分を天災とか言ってたから、それなりの頭脳は持っているんでしょ。」

 

本当に秘密基地な感じの施設を見渡しながら歩くと、奥の扉の前に、銀髪に両目を閉じている女の子が立っていた。

 

「お待ちしておりました。」

 

「貴方は?」

 

「私は【クロエ・クロニクル】といいます。どうぞ此方に……束様がお待ちです。」

 

その子に促されて中に入ると、部屋は色んな機械の部品で散らかっていて、その中央にある椅子にさっきの女性が座っていた。

 

「やあやあ~、ようこそ私の秘密基地に♪」

 

「で、貴方は誰なの?」

 

「私は【篠ノ之束】。インフィニット・ストラトス…通称ISの生みの親で~す♪」

 

「「「へぇ~。」」」

 

「え…………えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?!?!?!?」

 

私達はその名前に聞き覚えがなかったけど、レンは何故か吃驚仰天していた。

 

「レン、この人知ってるの?」

 

「逆に何で知らないんですか!?」

 

そりゃ~、この世界に来て1日も経ってないから……なんて言えないし。

 

「ISのコアは世界に467個しかなくて、しかも作り方が公開されてないのでこの人しか作れなくて、世界中が躍起になって探している人ですよ‼」

 

「「「ふ~ん…」」」

 

「反応が薄いッ!?」

 

まぁ、アザゼルさんとかキャロルさんとか物凄い研究者が身近にいたから。

 

「そんな事より、私達を連れてきたワケを聞かせてもらえる?」

 

「それはもう少し待って……もう一人呼んで「束様、彼女が到着されました。」おお~‼グッドタイミングだよ、くーちゃん‼」

 

そこにクロエが来て、その後に背の高いスラッとした体型に黒いスーツをピシッと着こなした女性が入ってきた。

 

「待たせたな、束。」

 

「やあやあいらっしゃい、ち~ちゃん‼」

 

どうやらこの女性は彼女の知り合いみたいだ。

 

「玲奈、気を付けて。」

 

その時、夏煉が耳元でそう呟く。

 

「なんで?」

 

「彼女、結構強いよ。変身してなかったら、たぶんかなり手こずるかも…」

 

「わかったわ、注意しておく。」

 

左手にユリン眼魂を持ち、束とちーちゃんを見る。

 

「先ずは自己紹介をしよう。私は【織斑千冬】だ。」

 

「えっと…………小比類巻レンです…」

 

「御堂玲奈よ。」

 

「小鳥遊夕夏です。」

 

「鬼町夏煉。」

 

「それじゃ全員揃った事だし、君に来てもらった理由を説明しようか。」

 

そこで、さっきまでお茶らけていた束の雰囲気が一気に変わり、真面目なものになる。

 

「長々しく説明するのも大変だから率直に聞くけど……君は【白騎士事件】をどう思ってる?」

 

「え…」

 

束が聞いてきた言葉に、レンの体が強ばる。

 

「今、君が思ってくれている事を言ってくれるだけでいいの、で…どうなの?」

 

「わ……私は………………………………………仕方がない事だったと思います……」

 

何とか絞り出したかの様な声でレンはそう言った。

 

「その根拠は?」

 

「あの時は、ISを使う事でしか日本を守れなかったから「その結果、君の家族が殺されたのに?」ッ‼」

 

「ねぇ……貴方は何をレンに言わせたいの?」

 

「部外者は黙ってろよ。私はこの子に聞いてんの。」

 

このやり取りに違和感を感じた私がもの申すが、束の鋭い睨みと殺意が籠った言葉に黙らされる。

 

「でも……白騎士事件の犯人が何処の誰かなんて分からないじゃないですかッ‼だから何を言ったところ「その白騎士事件の犯人二人が今…………目の前にいると言ったら?」え…?」

 

その内容に再びレンの体が強ばった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンside

 

この人達は何を言っているの?白騎士事件の犯人が目の前にいる?

 

その言葉を告げた女性…織斑千冬を私は信じられない気持ちで見る。

 

あの研究所に囚われていたから、外の情報には詳しくないけど織斑千冬の噂は耳にしたことが何度もある。でもそれが…………女尊男卑の象徴にして初代ブリュンヒルデの彼女が白騎士の正体?つまり、両親や一緒に捕まった子やお姉ちゃんの仇なの?

 

この時点で私の頭はパニックになっていた。

 

「あの事件は束が世界中のミサイル基地をハッキングして日本に向かって撃ち、私がそれをISを使って全て撃ち落とすというデモンストレーションだったんだ。」

 

更に告げられたその言葉に、私の中で何かが沸き上がってきた。

 

それじゃなに?お父さんやお母さん、お姉ちゃん達はISを見せびらかす為のお遊びで殺されたっていうの?

 

「そんな…………そんなの……あんまりだよ…‼」

 

「私も束もしでかした事の重さは解っている……もし、君が望むなら何でも…………それこそ私は自分の死すら叶えるつもりだ。」

 

「それは私もだよ。君の好きな様に殺していいから。」

 

その一言に私の何かがキレた。

 

この人達はあれだけ自分勝手にやって、そして自分勝手に全てを終わらせようとしている?

 

「………………ふざけないでください。」

 

「「え?」」

 

「それは何です?反省してますってアピール何ですか?…………ふざけないでよッ‼‼」

 

「「ッ‼」」

 

「そんなの、ただあなた達が死んで楽になりたいだけじゃないッ‼‼それで全て許される訳ないでしょッ‼‼」

 

「レン……」

 

「私達を……殺したくないのか?」

 

「本当だったら貴方達を今すぐ殺したいですよ…ッ‼この手で皮という皮を剥いで、肉という肉を裂いて、骨の全てを粉々にしたいほどにッ‼‼でも…そんな事をしてもあなた達だけが死んで楽になるだけ…………そんなの私が絶対に許さない‼‼」

 

「なら、何を望むんだ……君は?」

 

「何でもって言いましたよね?だったら叶えてよ…」

 

私は懐に手を入れながら二人に近づいていく。

 

「止めてくださいッ‼」

 

その時、さっきのクロエと名乗った子が私の前に立ち塞がった。

 

「……退いてよ。」

 

「退きません‼束様を殺そうというのなら…‼「そんなことしないし、する気もない。」…え?」

 

何か勘違いしている彼女にそう言って横を通り過ぎ、二人の前に立つ。

 

「叶えて欲しい事って……なに?」

 

「お姉ちゃんの夢ですよ…」

 

そこで懐から手を出して、玲奈さん達に取り戻してもらった絵を見せる。

 

「“ISに乗って宇宙に行きたい”っていう、お姉ちゃんの最後の願いを‼‼‼」

 

その絵には私とお姉ちゃんがISを纏って手を繋ぎ、宇宙を飛んでいるところが描かれていた。

 

「もう2度と会えないお姉ちゃんが…私に託した最後のお願い……全てのISが宇宙に行くのを…………叶えてよぉ……‼」

 

涙を抑えるのはそこでもう限界だった。視界が滲み立つ気力も無くなり、私は座り込んでしまう。

 

「…………貴方のお姉さんは、ISが宇宙に行くための物だって信じてくれてたの?」

 

「はい……それで、宇宙を自由に泳いでみたいって…」

 

そこで顔を上げたら、篠ノ之博士も涙を流していた。

 

「そっか…………私と同じ夢を持ってくれる人…………まだ…いたんだ……‼なのに私は…1度認められなかったって……一人で勝手に腐って、あんな事…‼」

 

「博士…?」

 

博士は私の前にしゃがむと、手を優しく包んだ。

 

「わかった…‼貴方のお姉さんの願い、必ず叶えるよ‼もう腐ったりなんかしない‼必ずお姉さんの……ううん、【私の同胞の思い】を宇宙に行かせてあげる‼」

 

「……はい…‼お願いします‼」

 

「私も出来る限り協力しよう。この命、そのために使わせて貰う…‼」

 

そこに織斑千冬さんの協力も得る事が出来た。

 

「良かったわね。」

 

「はい‼」

 

声を掛けてくれた玲奈さんに返事をしたら……

 

ビィー‼ビィー‼ビィー‼

 

部屋に警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

「束さん、この警報は?」

 

「怪しい奴が近づいているみたい……そこの画面に出すね‼」

 

起動したモニターに視線を向けると、三人の女性が変な機械を纏って空を飛んでいた。

 

「あれがIS…?」

 

「打鉄が3機か……束、使えるISはあるか?」

 

「今、色々と魔改造とかやってたから一機も無いよ~‼」

 

「く…‼なら、急いで脱出を「その必要はないわ。」なに…?」

 

ISの接近に千冬さん達が対処方法を考えているところに、私は割り込んだ。

 

「束さんだっけ?この近くで外に出られる場所ある?」

 

「え?確か…3番ゲートがあるけど…」

 

「だったらそこに案内して。私が殲滅してくるわ。」

 

「「「「はあッ!?」」」」

 

夕夏と夏煉以外のメンバーが驚きの声をあげるが、私は扉の前に移動し始める。

 

「夏煉達はここをヨロシク♪」

 

「わかってる、【虫】の相手は任せておいて。」

 

「意味ないと思うけど、気をつけてね~。」

 

「了~解♪」

 

「あッ‼案内致します‼」

 

驚きから立ち直ったクロエちゃんの案内で3番ゲートに着いて、そこから外に出ると遠目に目標の3人が見えた。

 

「御堂様、こちらをどうぞ。これがあれば束様達と無線で連絡が出来ます。」

 

「サンキュー。」

 

「しかし、どうやって戦われるのですか?ISも無しで…」

 

「まあ、見てなさい。」

 

手渡されたインカムを耳に付け、右手に赤と白にオレンジで彩られた目玉の様なアイテム【アスナ眼魂】を、左手にドラゴンの顔の装飾がある銃のグリップに似たカセット【ドラゴナイトハンターZガシャット】を持つ。

 

「アスナ、久々の空中戦…イケる?」

 

『もちろんだよ‼あの子の為にも、ここを守らないとね‼』

 

「んじゃ、行きましょうか‼」

 

『ドラゴナイトハンターZ・ブレード‼』

 

ガシャットを起動させたら、アスナ眼魂を“上下逆”にして横のボタンを押すと、眼魂の赤い部分が水色に染まっていく。

 

そして眼魂を私のベルト【ゴーストドライバー】に装填してレバーを引き、ガシャットを左腰の【ソウチャクスロットホルダー】に差す。

 

『アーイ‼』『ガシャット‼ソウチャク‼』

 

するとバックルから白地に水色のラインが走り、フードは水色一色のパーカーが、後ろにはドラゴナイトハンターZのスタート画面が出てきて、その中から黒にピンクや水色、蛍光イエローで彩られたドラゴンみたいな機械【ハンターゲーマ】が出てきて、私の周りを飛び回る。

 

『バッチリミナサーイ‼バッチリミナサーイ‼』

 

ベルトのメロディーに合わせ、体を左に捻って左手を胸の前に置き、右手を後ろに大きく伸ばしながら思いっきり回し…

 

「大大大大…大変身ッ‼」

 

そして右手でベルトのレバーを押し込み、左手でホルダーのボタンを押した。

 

『カイガン‼』『レベルアップ‼』

 

すると私の体を黒にピンクの骨を模したラインが走るボディスーツになり、その上からパーカーを羽織ったら、右腕と右足にハンターゲーマの右腕の剣と右足の脚甲が装着された。

 

『アスナ‼剣と魔法‼永久の友情‼ソウチャック‼ド・ド・ドラゴ‼ナーナ・ナ・ナーイト‼ドラ‼ドラ‼ドラゴナイトハンター‼アスナー‼』

 

「そのお姿は…」

 

「仮面ライダーユリン・ハンターアスナ魂。」

 

「仮面ライダー…?」

 

「都市伝説みたいなもんよ。それじゃ、行ってくるわ。」

 

私は背中に水色の羽根を広げて飛翔し、高速で移動を開始する。

 

『御堂、聞こえるか?』

 

「織斑さんでしたっけ?聞こえてますよ。」

 

『その力について今は聞かん。相手は【打鉄】と呼ばれるISで装備されてるのは近接ブレード【葵】と携帯マシンガンの【焔備】だ。更に左右にある肩のパーツはシールドにもなる。』

 

「情報どうもです。」

 

『いや、本来なら大人である私が対処しなければならないのに、子供に任せてしまっているのだからこれくらいはな…』

 

「気にしないでくださいよ。もうすぐ接敵するんで切りますね。」

 

『ああ、武運を祈る。』

 

そこで敵が射程に入ったのか、私の前で止まる。

 

「なんだテメェはッ!?」

 

「教える必要はない。」

 

「チッ‼千冬様が篠ノ之束に会うという情報を手に入れて追って来たのに……邪魔が入るなんて‼」

 

千冬さんェ……貴方、ストーキングされてまっせ……

 

「そこにあのガキに付けていた発信器の反応もあったから、ついでに依頼主の所に連れていってやろうと思ったのによ‼」

 

「あ……?」

 

コイツら……レンにそんなもん付けてたのか…‼

 

『それはこっちで取って壊しておくから、遠慮しないで潰しちゃえ。後、束博士からISのコアの回収もお願いだって。』

 

「OK、殺っておくわ。」

 

夕夏から来た無線にそう答える。

 

「とりあえず邪魔だから死ねよッ‼」

 

先頭の一人が剣を構えて突っ込んでくるけど……

 

「……フッ‼」

 

「どぷッ!?」

 

最小限の動きでかわし、首に右手の【ドラゴナイトブレード】を全力で振り下ろし、直撃した女は海へと勢いよく落ちた。

 

「あのさぁ…さっきからその上から目線、鬱陶しいんだけど?」

 

「な、なんだ…アイツはッ!?」

 

「やべぇよ、早く逃げ『キメワザ‼』ひッ!?」

 

「逃がすわけないでしょ?」

 

『ダイカイガン‼アスナ‼オメガドライブ‼』『DRAGO KNIGHT!! CRITICAL STRIKE!!』

 

レバーとボタンを操作して必殺技を発動し、逃げようとした一人にブレードによる中段突きを3回、そこから切り払い攻撃の往復、斜め切り上げ、最後に上段への二度突きの8連撃を決めて海へと落とす。

 

「…スター・スプラッシュ。」

 

「あああああああッ!?」

 

「嘘でしょ…!?こんのぉぉぉッ‼」

 

残った一人がマシンガンを撃ってくるが、全てを切り落としていたら、シノン眼魂が出てくる。

 

『アスナ、スイッチいくわよ。』

 

『お願いね、シノノん‼』

 

バックルからアスナ眼魂が飛び出すと、シノン眼魂が自ら入ってパーカーが出てくる。それに合わせて私は左手でレバーを操作した。

 

『カイガン‼シノン‼捉える瞳‼冥界の女神‼ソウチャック‼ド・ド・ドラゴ‼ナーナ・ナ・ナーイト‼ドラ‼ドラ‼ドラゴナイトハンター‼シノンー‼』

 

そしてそれを纏うと右腕と右足のパーツが消え、今度は左腕に【ドラゴナイトガン】、左足に脚甲が装着される。

 

「撃ち落とす‼」

 

左腕から弾丸を撃ち、相殺させながら突っ込んでいって寸前の目の前で一気に上昇する。

 

「ッ!?何処に…‼「此処よ。」『キメワザ‼』ッ!?」

 

そこから一気に落ちて相手の肩を足場にして乗っかり、頭に銃を突きつける。

 

「じゃあね。」

 

『ダイカイガン‼シノン‼オメガドライブ‼』『DRAGO KNIGHT!! CRITICAL STRIKE!!』

 

「どばァッ‼」

 

脳天に必殺の一発を受けた女は海へと落ちていった。

 

その時、海から飛沫が上がって最初に落とした女が出てきた。

 

「テメェ…‼よくもやってくれたなッ‼」

 

「教えなさい、あんた達の雇い主を。」

 

「知りたきゃアタシを倒してみろやぁッ‼‼」

 

「…………美琴、聞いたわね?」

 

『ええ……なら、本気で潰して殺りましょうかッ‼‼』

 

シノン眼魂をバックルから取り出し、今度は美琴眼魂を装填する。

 

「じゃあ……倒してあげるわ。」

 

『カイガン‼ミコト‼科学と‼魔術と‼超電磁砲‼ソウチャック‼ド・ド・ドラゴ‼ナーナ・ナ・ナーイト‼ドラ‼ドラ‼ドラゴナイトハンター‼ゼェーット‼』

 

ミコトパーカーを羽織ると今度はハンターゲーマが出てきて、全てのパーツが私に装着される。

 

「何を装備しようが…‼‼」

 

「うっさいのよ。」

 

『キメワザ‼』

 

すぐにホルダーのボタンを押して両腕と顔についた龍の顔にエネルギーを充填していく。

 

「喰らえ。」

 

『ダイカイガン‼ミコト‼オメガドライブ‼』『DRAGO KNIGHT!! CRITICAL STRIKE!!』

 

「おら……」

 

相手が威勢よく突っ込もうとしてきたが、その前に私が放った電撃を纏った極太のビームに飲み込まれ、落ちていった。

 

「状況終了、これよりコイツらを回収して帰投するわ。」

 

『了解しました。こちらも駆除が終了してますので、お気を付けて。』

 

「了解。」

 

やっぱり別動隊がいたか……そんなに黄理花を捕まえたいのかしら?それとも束博士が目的?ま、考えても解んないか。コイツらに聞いた方が早いし。

 

海面まで降りて浮かんでいる女を引き上げたら……

 

「ん?もしかして死んでる?」

 

3人とも呼吸をしていなかった。

 

口封じかしら…………?どうやら相当厄介な奴が相手みたいね。まあ、大方の予想は出来たけど……やっぱり胸糞悪いわね。

 

仕方ないので、束博士の依頼のコアを回収してから島へと戻った。




いかがでしたか?

次回は残ってた二人の戦闘と、原作に入る直前まで進めたいと思います。では予告です。


玲奈が出てからすぐに、新たに警報が鳴り敵が進入してくる。それを夏煉と夕夏が撃退に向かう。そして騒動が終わり、そこで束からある提案をされる。そして、レンも玲奈の戦いを見て、1つの決意をする。


次回【始まり出す運命】


では、次回でお会いしましょう。


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始まり出す運命

どうも、疾風の警備員です。

今回で原作前が終わります。後半は一気に時間が飛びますけど………

では、どうぞ。


夕夏side

 

玲奈ちゃんがユリンに変身して出撃してすぐ、また警報が鳴り響きだした。

 

「今度は何だッ!?」

 

「え~と…げっ、別動隊みたい。他のゲート2つからこっちに向かってきてる。」

 

束さんが表示しているマップには新たに赤い光点が2つあり、こっちへと近づいてきていた。

 

「ど、どうするんですかッ!?」

 

「施設の広さならISは使えない…だが、武装がこちらにも無い以上反撃の手段も無い…」

 

「じゃあ夏煉ちゃん、私達が行こうか。」

 

「そうね、情報も欲しいし。」

 

「ち、ちょっと待てッ!?」

 

私達が出口へ向かおうとしたら、織斑さんが慌てた感じで呼び止めた。

 

「何ですか?」

 

「まさか君達が戦うとでもいうのか?」

 

「そうですよ、玲奈ちゃんと同じ力もありますからね。」

 

私はゲーマドライバーを、夏煉ちゃんがゴーストドライバーを見せる。

 

「しかし…‼」

 

「大丈夫ですよ、強さなら私達3人は同レベルですから。」

 

「……………………すまない、頼む…‼」

 

「「分かりました。」」

 

織斑さんが辛そうに声を出し、それに答えてから私達は光点があった場所へと駆け出した。

 

 

 

 

 

千冬side

 

「…情けないな………ブリュンヒルデ等と呼ばれておきながら、こんな時に限って無力とは…‼」

 

私は拳を握り、近くの壁を叩いた。

 

白騎士事件の悲劇を、もう繰り返さない為に力を持ったつもりだったのに………

 

「ちーちゃん…」

 

「解ってる………束、インカムを貸してくれ。先に出た子のサポートに入る。」

 

「うん、わかった。」

 

束からそれを受け取り、私は今自分が出来る事を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕夏side

 

私は途中で夏煉ちゃんと2手に別れ、入ってきている部隊の予測進路の脇道の無い通路上に立っていた。

 

「ん………貴様、何者だ‼」

 

待つ事数秒でその部隊がやって来た。

 

数は7人か……この狭い通路なら楽勝かな…

 

「ここの防衛を任されている者だよ。」

 

「我らの任務は実験体の確保……邪魔をするなら排除する。」

 

相手はそう言って、銃や短剣を構えた。

 

実験体ってレンちゃんの事か………あの子をこんな人達に渡す訳にはいかない…‼

 

「悪いけど、貴方達の任務はここで終わりだよ。」

 

私は両手にガシャットを持ち、起動させた。

 

『爆走バイク‼』『ギリギリチャンバラ‼』

 

「フェイズ3、変身。」

 

『ガシャット‼ガシャット‼ガッチャーン‼レベルアップ‼』

 

「ッ!?撃て‼」

 

私の行動に慌てて発砲してくるが、それは前に出たゲートとチャンバラゲーマが防いでくれて、それが終わるのと同時にゲートを潜りゲーマと合体して仮面ライダーレーザー・レベル3になる。

 

『ば~く走‼独走‼激走‼暴走‼爆走バイク‼アガッチャ‼ギリ・ギリ‼ギリ・ギリ‼チャンバラ‼』

 

「さあ、お覚悟…決めなさい。」

 

『ガシャコンソード‼』

 

五種類ある武器アイコンから、剣を選び取り実体化させて手に持つ。

 

「パワードスーツ!?でも、数ならこちらが上なのよ‼」

 

「ッ!?待ちなさい‼」

 

数で有利だと悟ったのか、一人の女性が恐らくリーダーだろう人の声を聞かずに、短剣を持って突っ込んでくる。

 

相手の能力も分からないで突っ込んでくるなんて…

 

「…バカでしょ?」

 

『コ・チーン‼』

 

ソードを氷剣モードにして、向かってくる敵をすれ違い様に切り、更に振り返りながらの一閃で氷漬けにした。

 

「なッ!?」

 

「悪いけど、もう終わりよ。」

 

『高速化‼』

 

私は近くにあったアイテムを取ると、目にも止まらぬ速さで一人を氷結させる。

 

「た、待避‼総員待避よッ‼」

 

隊長の指示で全員が逃げようとするが、それよりも速く私が追いつき、斬りまくって全員を氷結させた。

 

「ふう、夏煉ちゃんの方も終わったかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏煉side

 

私は夕夏とは別の反応がある場所に向かい、曲がり角から見つけた敵の観察をしていた。

 

(数は6人…ワザワザ正面から相対しなくてもいいか。)

 

懐から春花眼魂とインセクト眼魔眼魂を取り出して、眼魂の方をドライバーのバックルに入れる。

 

『アーイ‼バッチリミトケー‼』

 

するとそこから黄色のラインに桃と白を基調としたレオタード風のパーカーに、フードの頭部にはピンクの大きなリボンをつけているゴーストが出てくる。

 

「変身。」

 

『カイガン‼ハルカ‼傀儡‼薬物‼開発王‼』

 

それを羽織り、仮面ライダーヘレナ・ハルカ魂になり、更に左腕にあるグレーの中央に窪みのある箱【プロトメガウルオウダー】にインセクト眼魂をセットする。

 

『インセクト‼』『Loding!INVESTION・QUEEN‼』

 

すると頭に昆虫の触角が付いたピンクの帽子がプラスされた。

 

「さてと…」

 

『ダイカイガン‼ハルカ‼オメガドライブ‼』

 

私は必殺技を使い、大量の蜂を作り出す。この子達の針には特製の薬が塗られている。

 

「それじゃよろしくね?」

 

私の言葉に頷いた蜂達は、敵に突っ込んでいく。

 

「な、何だッ!?」

 

「この蜂、何処から‼」

 

「ちょっ‼刺さないで…‼」

 

そんな悲鳴は数秒で終わり、角から見ると全員が倒れていた。

 

「即効製の睡眠薬、効果はバッチリね。」

 

私は変身を解くと、ソイツ等の襟首を掴んで引きずりながら束達のいる部屋へ戻った。

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

私が戻ると部屋には動物の王者な戦隊のポーズをした氷の彫刻が7つと、グースカ寝ているバカが6人いた。

 

「お帰り、玲奈ちゃん。」

 

「ただいま…束さん、これが回収してきたコアよ。」

 

「お~、ありがとね♥」

 

「んで、これが入ってきた虫?」

 

「そう、私と夕夏で仕留めた。」

 

うわ~、生身でこの二人相手とか無理ゲーでしょ…

 

私が憐れみの目で虫達を見ていたら、レンが私に近づいてきた。

 

「あの…ゴメンナサイッ‼」

 

「へ?」

 

そして突然謝ってきたので、一瞬ポカン…としてしまった。

 

「何でレンが謝るのよ?」

 

「だって………この襲撃は私のせいで起きたんですよ?それなのに、皆さんに解決してもらって…」

 

「ていっ」

 

「あうッ‼」

 

段々暗い顔になっていくレンを見て、私は彼女の鼻にデコピンを喰らわせた。

 

「な、何を「別にレンのせいだなんて、誰も思って無いわよ。」…へ?」

 

「ああ、私もつけられていたしな。」

 

「それに~、束さんも狙われる理由満載だしね~♪」

 

「だ、そうよ?」

 

私の言葉に織斑さんと束さんが援護してくれた。

 

「ありがとうございます…‼」

 

「さて、そろそろコイツらから情報を貰いましょうか。夕夏、夏煉、起こして。」

 

「「任せて。」」

 

氷像を夕夏がガシャコンソードで溶かし、寝ている奴等を夏煉が何か薬を注入して起こしていた。それ、人体に悪影響ないわよね?

 

「う………こ、ここは?」

 

「ハロハロ~♪起きたかい、虫ケラの諸君?」

 

「し…篠ノ之束ッ‼」

 

最初に起きた女が束さんを見て驚愕の声を上げた。

 

「君達をここに送り込んだのは誰だい?勿論拒否すればどうなるか解ってるよね?」

 

「ヒィッ!?」

 

女は後ろに下がりながら体を探るけど、武器なんてすでに外しているに決まってる。

 

「ほら、後5秒だけ時間をあげるよ。5、4、3、2、い…「わ、わかったッ‼話す‼話すからッ‼」だったらさっさと言えよ?」

 

「私達をここに寄越したのは………がッ!?」

 

そいつが喋ろうとした瞬間、少し苦しんだと思ったらその場に倒れた。

 

「ありゃ、もしかして死んじゃった?」

 

織斑さんが動脈を測るが、すぐに首を横に振った。

 

「たぶん、自白しようとしたら毒が全身を巡るようになっていたんだろう。」

 

その後、起きていない奴等も調べたら全員が死んでいた。どうやら一人発動すると、全員が連鎖的に発動する仕掛けだったみたいね。

 

「これで手掛かりゼロか…」

 

「どうやら相手はよっぽど自分の素性を知られたくないみたいね。」

 

「どうする、玲奈ちゃん?」

 

「だったら来る奴全部、潰すだけよ。」

 

レンはもう充分苦しんだんだもの、これ以上苦しめようって奴がいるなら、私が必ずブッ飛ばす‼

 

「取り合えず向かってくる奴は潰すとして、今後の事を話しましょう。」

 

「今後?」

 

「私達、まだ宿を決めてないじゃない…」

 

「あ…」

 

夏煉の言葉に夕夏は思い出した様な顔をした。この世界に来てから怒濤の勢いだったから私もすっかり忘れてたけど…

 

「お前達、泊まるところがないのか?」

 

「ええ…」

 

「だったら束さんの所に住む?」

 

その発言に私達は束さんを見る。

 

「いいんですか?」

 

「たまにお仕事とか依頼を手伝ってくれるなら問題ないよ~。」

 

「………全員集合。」

 

レンを含めた4人で円陣を組み、どうするか話し合う。

 

「どう思う?」

 

「私は良いと思うよ?ここならあらゆる情報も手に入りそうだし。」

 

「私も夕夏と同じ意見よ。」

 

「レンはどう?」

 

「え、え~と…」

 

彼女は少し悩むが、やがてしっかりとした目で…

 

「私も良いと思います。それに、あの人が今後ISを宇宙開発へと向けてくれるのかどうか、この目で確かめたいですから。」

 

「そう………なら、決まりね。」

 

円陣を解き、私は束さんに頭を下げた。

 

「それじゃ、よろしくお願いします。」

 

「OK‼部屋は後で案内するから。」

 

ということで、この世界での寝床をGETだぜ‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンside

 

玲奈さんや夕夏さん、夏煉さんの戦いを見て私は凄いと思うと同時に、少し嫉妬してしまった。

 

研究所から逃げる時、あの強さが私にあれば………お姉ちゃんを死なせずに済んだかもしれない…

 

でもそれは既に過去に起きてしまった事で、今更どうする事も出来はしない。

 

それでも思ってしまう、私に強さが有ればと………

 

不本意にも私は最強のIS乗りになるための実験体だったので、身体能力はかなり高い。

 

でも、心が強くなかった。だからあの3人を見てあの人達からなら、それを教われるかもしれないと思った。

 

なので………

 

「私を弟子にしてくださいッ‼‼」

 

「「「いきなり何ッ!?」」」

 

侵入者の処理をした後、休憩スペースとなっている場所で私が3人にそう言ったら驚かれた。

 

「私も強くなりたいんです!もう誰かに守られてばかりなのも嫌なんです…自分の身くらい自分で守れる様に………そして、私みたいに苦しんでいる子がいたら助けてあげられる様になりたいんです‼」

 

「………………本気で言ってる?」

 

「はいッ‼‼」

 

「「「う~ん………」」」

 

3人はしばらく腕を組んで悩んでいましたが…

 

「分かった、私が面倒みてあげる。」

 

玲奈さんがそう言ってくれました。

 

「良いんですかッ!?」

 

「その代わり、教えられた事は絶対に守る事!少しでも破ったらその時点で破門だからね?」

 

「はいッ‼」

 

「良いのかな…?私達も鍛える為に旅してるのに…」

 

「誰かを教え導くのも、立派な特訓だと思うわ。陽太義兄さん達もそうだったと思うし。」

 

「………なら、いっか。」

 

「よーし、これからビシバシいくから覚悟しなさいよ‼」

 

「はい、師匠‼」

 

夕夏さんと夏煉さんが何か言っていたけど、私はそれが聞こえないくらいやる気に満ちていた。

 

これからの修業を頑張って、絶対に違う自分になってやる‼‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玲奈side

 

私達が束さんの所にお世話になって1年が経過した。

 

その間に色々な事があった。違法な研究所を襲撃したり、眼魂を分解しようとした束さんをブッ飛ばしたり、犯罪組織を潰したり、ガシャットを分解しようとした束さんをブッ飛ばしたり、レンの特訓をやったり、ゲーマドライバーを分解しようとした束さんをブッ飛ばしたりとかだ。何か似たようなのが複数あるのは気にしない方向で………

 

でも、一番変わったのは…

 

「コラ、もうフカ‼私の残してたケーキ食べたでしょッ‼」

 

「だから、知らないって言ってるだろ~‼」

 

束さんの研究所に新たに1人入居者が増えた事だ。

 

レンが追いかけ回してる金髪の女の子は【篠原 フカ】。とある違法研究所で実験体にされていた女の子だ。

 

彼女はレンと同い年なので、最初の頃は友達みたいな感じだったけど、今では姉妹の様な関係になっている。

 

因みに私が戦い方を教えているので、2人からよく【師匠】と呼ばれている。

 

「あれ、どしたの~?」

 

そこに目の下に隈を作った束さんがやって来た。この人また研究に夢中になって徹夜したな?

 

「レンが冷蔵庫に取っといたケーキが無くなって、フカが食べたかの喧嘩中。」

 

「えッ!?そ、そうなんだ~?誰なんだろうね~?」

 

その言葉に彼女は冷や汗をダラダラと流しながら、平静を装おうとしていた。

 

ん~?この反応………まさか…

 

「あれ、束様?昨日の夜に糖分補給とか言って、ケーキを食べてませんでしたか?」

 

「くーちゃん、シーッ‼‼」

 

やっぱりか………夜食は太るから止めろって言ってるのに…

 

「「た・ば・ね・さぁ~ん?」」

 

それが聞こえてたのか、走り回っていた二人が束さんを睨んだ。

 

「ア、アハハ………………………逃げるが勝ちッ‼」

 

「「待てコラァァァァァァァァァァァァッ‼‼」」

 

そして今度は3人での追いかけっこになった。

 

おお、レンもフカも大分スピードが上がったわね。今度は銃弾の回避訓練にしようかな?

 

とりあえず、二人の為にも逃げる束の足を引っ掛けて転ばせておいた。

 

「お~い、皆テレビ見てみなよ‼」

 

そこで夕夏が呼んできたので、全員でテレビに視線を向けると…

 

『繰り返しお伝えします。本日、世界で初めてISに乗れる男性が見つかりました‼名前は【織斑一夏】かのブリュンヒルデ【織斑千冬】さんの弟さんです‼』

 

アナウンサーが慌てた感じで話していた。

 

「ISって女性にしか乗れないんじゃないの?」

 

「バグじゃない?」

 

「でも、これは一波乱ありそうね…」

 

「よーし、皆ちゅ~も~くッ‼」

 

そこで束さんが声を上げたので、今度は束さんに視線を向ける。

 

「れーちゃんにゆーちゃん、かっちゃんにれんちゃんにふーちゃんはこの春からIS学園に入学してもらいまーす‼」

 

「「「「「はい?」」」」」

 

その唐突な内容に私達はポカン…とした。

 

「ようは、いっくんの護衛をやって欲しいって事だよ。」

 

「あ、なーる…私は別に良いわよ。2度目の高校生活なんて面白いじゃないの‼」

 

「玲奈ちゃん一人だと危なっかしいから、私もいくよ。」

 

「私も了解よ。」

 

「レンとフカもいいわね?」

 

「「はい、師匠ッ‼」」

 

「よろしい、ならば支度だ。」

 

弟子2人が準備しに行ったのを見た後、私は束さんを見た。

 

「本当は護衛は二の次で、あの子達に学校生活を送って欲しいだけなんじゃない?」

 

「………何でそう思うの?」

 

「師匠の勘‼」

 

「アハハハハハ、さっすがれーちゃん‼大正解だよ。せっかく生きているんだから、楽しいことをいっぱい経験して欲しいからね。」

 

「そうね…んじゃ、私も準備してくるわ。」

 

「よろぴこね~♪私は皆の手続きをやってるから~。あ、それと君達全員のアレは、束さんの開発した新型パワードスーツって事にしておくから~♪」

 

その言葉に私は返事代わりに軽く手を振っておいた。

 

そんじゃ、弟子達の学生生活、満喫させてあげますか‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え~、速報です!!ただいま【エレボニア帝国】の大企業・ラインフォルト社で男性でも使えるパワードスーツが発表されました!!その名は【騎神シリーズ】!!これに伴い、完成した試作機6体をパイロットと共にIS学園に送るそうです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、成功例2つはまだ見つかりませんの?」

 

「申し訳ありません‼先の捜索隊は連絡が途絶え、新たな部隊で今も全力で捜索しておりますが…」

 

そこはとある一室……そこでロングヘアーとショートヘアーの二人の女性が向かい合っていた。ロングヘアーの女性は豪華なデスクの椅子に座り、ショートヘアーの女性はその女性に対して頭を下げていた。これを見るにこの二人は上司と部下の関係の様だ。

 

「早く見つけなさい。アレを他の組織に奪われるのは何としても避けないと…」

 

「はッ‼この身にかけ「失礼いたします。」おい、報告中だぞ‼」

 

その部屋に新たにメガネを掛けた別の女性が、書類の束を持って入ってきた。

 

「これは失敬、ですがこちらも仕事ですので。」

 

「何ですか?」

 

「例の書類をお持ちしました。」

 

そしてメガネの女性は、デスクにいる女性に書類の束を渡した。それは、様々な少女の情報が書かれた物…履歴書だった。

 

「ありがとう………………………ッ‼これは…‼」

 

それを確認していた女性は、ある少女達の履歴書を目にした瞬間、驚きに染まった。

 

「?…どうされましたか?」

 

「フフ………まさかこんな所にいるなんてね…」

 

そして束から2枚の書類を抜き取り、ショートヘアーの女性の足下に落とした。

 

「?………………コイツらッ!?」

 

「場所は分かったのだから、必ず確保しなさい。」

 

「はッ‼‼」

 

それを拾った女性はその書類を持って部屋から退出していった。

 

「貴方は彼女のサポートを。」

 

「畏まりました。」

 

ロングヘアーの女性はメガネの女性にそう指示すると、彼女は頷き部屋から出ていった。

 

「………………フフフフフ‼もう逃がさないわよ、実験体の分際で私に逆らうなんて…‼」

 

ロングヘアーの女性は部屋にある大きな窓から見える景色を見ながら一人呟く。

 

「待ってなさい、成功例()()()()2()()()()()3()………貴方は私の物よ…‼」

 

こうして様々な問題を抱えながら、IS学園の新たな1年は始まった。




どうでしたか?

次回から原作が始まります。

次回、『IS学園入学』

「お前は…………ゲンムッ!?」

では、また次回でお会いしましょう。


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IS学園入学

どうも、疾風の警備員です。

ここから、大幅にリメイクした内容になっていきます。

では、どうぞ。


桜が舞い散る春のある日…玲奈達一行は白い制服を着てモノレールに乗っていた。

 

「うわぁ~♪師匠!!外の景色、スゴいですよ!!」

 

「こらレン、みっともないでしょ。」

 

「や~い、怒られてる~♪」

 

「む~…!!うるさいよ、フカ!!」

 

「2人とも元気だねぇ…」

 

「夕夏、なんかおばさんみた…「なぁに、カレンチャン?」う、ううんッ!?何でもないッ!!」

 

5人は少し騒がしくも、和気あいあいとしていた。今、彼女達がモノレールで向かっている場所は【IS学園】と呼ばれる場所で、世界に1つしかないISについて学べる学校だ。

 

彼女達はそこに通う事になったのは世界初の男性操縦者【織斑一夏】の護衛の為だ。しかし裏の目的としてレンとフカに学校生活を満喫してもらうというのもある。

 

「それにしても、あの後に新しいニュース速報を見てビックリしたね。まさか性別関係なく乗れる機体を作れる国があるなんて…」

 

「束さんの話だと、騎神ってのはそのエレボニア帝国に伝わるおとぎ話をモチーフに作ったらしいね。」

 

「送ってくるのは男子3人と女子3人の計6人。若くしてラインフォルト社の特務隊に所属する人達だそうよ。」

 

「へぇ…なかなか強そうね。」

 

特務隊という事はプロ程ではないが、一般人よりも実戦経験を積んでいるアマチュアである。

 

「会えたら良い特訓相手になりそう。」

 

なお、夏煉はニュースの後にエレボニア帝国について調べたのだが…今では珍しい貴族制度を設けている国家で、独自の技術を持っている国である。数年前に内戦があったらしいが、今は治まっていて比較的に治安はいい国家であり、人外が時々生まれる事でも有名らしい…

 

「えッ!?千冬とか束以外にも人外がいたのッ!?」

 

「うん、特に剣を使う人に多いらしいね。【光の剣匠】とか【黄金の羅刹】って呼ばれる人が特に有名みたい。」

 

「千冬さんみたいなのが後2人とか…」

 

「何その無理ゲー?」

 

「だよねぇ…」

 

車窓の景色を楽しんでいるレンとフカを除いた3人は、そんな人外魔境な国家に呆れるしかなかった…

 

「あッ!!師匠、見えてきましたよ!!」

 

「ん?」

 

はしゃぐレンの声に玲奈達が窓の外を見ると、白い建物が視界に入ってきた。それこそが彼女達が目指すIS学園である。

 

「やっとか…」

 

「確か駅前で千冬と待ち合わせだっけ?」

 

「フカ…駅に着いたら千冬さんには敬語使いなさいよ?」

 

「わかってる、わかってる~♪」

 

「不安だ……」

 

フカは普段からお茶らけていて、よくイタズラをしては皆を困らせて楽しむ事があり、その度に玲奈が超キツい修行メニューを課せられていた。

 

今回も千冬に何かやるのではないかと思った玲奈は頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、よく来たな。」

 

「オッス、千冬~♪(スパァン!!)いだッ!?」

 

駅に着くと入り口に千冬が立っており、挨拶してきたのをフカが軽い感じで返すと、その体の何処に隠してたのか出席簿を取り出し、フカの頭を軽く叩かれ玲奈達はやっぱり…と呆れていた。

 

「今は敷地外だからあまり強く言わんが、目上には敬語を忘れるなよ?」

 

「アイ…」

 

「まったくフカは……お久しぶりです、織斑さん。」

 

「ああ、皆元気そうでなによりだ。」

 

「若干1名頭痛が…」

 

「あんたは自業自得でしょうが。」

 

そんな会話をしつつ、外に止めてあったIS学園所有の小型バスに彼女達は乗り込んでいくが、見た目とは裏腹に中はかなりの広さがあった。

 

「私達だけにしては、このバスはちょっと大袈裟じゃないですか?」

 

「いや、お前達以外にも連れていく子達がいるんだ。」

 

そう言って千冬は再度外に出る。誰が来るのか気になった玲奈達も、その後に続いてバスから降りた。

 

「ん?中で待っててもいいんだぞ?」

 

「誰が来るのか気になってね…」

 

「そうか。」

 

すると、新しくモノレールが駅に到着し乗客が下りてくる。その大半がIS学園の生徒なので白い制服が目立つが、その中で黒や紺を基調とした色合いの制服を着た6人の男女が駅から出てきた。

 

「ああ、彼等だ。」

 

千冬は降りてきた6人組の元に向かい、2・3言話したり金髪の男を1度出席簿で叩いたりして、バスの方へと彼らを連れてきた。

 

「千冬さん、彼等はもしかして…」

 

「ああ、エレボニア帝国から来た騎神のパイロット、【起動者(ライザー)】の子達だ。」

 

「初めまして!!【ラインフォルト社 特務隊Ⅶ組】から出向してきた【ユウナ・クロフォード】です。」

 

始めにピンクの髪をポニテにした少女が名乗り…

 

「同じく【クルト・ヴァンダール】です。」

 

次に青髪の中性的な顔立ちの少年が続き…

 

「【アルティナ・オライオン】です。」

 

「【アッシュ・カーバイト】だ。テキトーに頼むわ。」

 

「ウフフ…【ミュゼ・イーグレット】と申します。」

 

銀髪の小柄な少女に金髪でがっしりした体格の悪ガキ風の少年、ミント色のショートヘアに何処かお嬢様な雰囲気を纏った少女が名乗っていき、最後に黒髪でハンサムな少年が名乗った。

 

「初めまして、【ハルキ・シュバルツァー】です。」

 

「ええ、よろしく。」

 

挨拶してきた彼らに玲奈達も返そうとしたが、千冬から時間が厳しいから車内で頼むと言われ、彼女達はバスに乗り込んでから改めて彼等に自己紹介をして、互いについて話したりした。その時、ユウナが玲奈達が篠ノ乃束の関係者と知ると吃驚仰天して座席から滑り落ちたのが印象的だった。

 

「よし、着いたぞ。」

 

そんな楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、千冬運転の下、IS学園に無事到着することができた。

 

「諸君、ようこそIS学園へ。」

 

バスを降り、千冬を先頭にして彼女達は進んでいく。

 

「っと…言い忘れていたが、君達は全員私のクラスになる。」

 

「あ、やっぱりそうなんですか?」

 

「今年は特殊な事例ばかりでな…なるべく1つにまとめた方が良いとの学園長の判断だ。」

 

「……えっと…ご面倒お掛けします…」

 

「別に君達が気にしなくていいさ。」

 

どうやら彼女達の編成に色々苦労があったらしく千冬に悪い気がしたのか、ユウナは謝罪するが当の千冬は軽く手を振ってそう答えた。

 

「っと…ここがお前達のクラスとなる1組だ。」

 

話している間に教室を通り過ぎそうになっていたのか、千冬はすぐに止まって教室の扉に手を掛けた。

 

「では、私が呼ぶまでそこで待っていてくれ。」

 

そして教室に入っていく千冬。その時、件の男性操縦者が自己紹介をしていた。

 

「織斑一夏です…………………………以上です!!」

 

「「「「「「「「「ズコーッ!!」」」」」」」」」

 

「?…皆さん、何で倒れてるんですか?」

 

「あらあら、面白い自己紹介ですね♪」

 

だがそれを聞いた瞬間、アルティナとミュゼ以外がその場でズッ転けた。まあ、あれだけ溜めて名前だけで終わるのだから転けたくもなるが…

 

「お前はまともに自己紹介も出来んのか。」

 

―ズバァンッ!!―

 

「デュバラァッ!?」

 

そこに凄まじい轟音と織斑一夏の悲鳴が聞こえた。

 

「イツツ…お、お前は…………ゲンムッ!?」

 

「誰がコンティニュー全裸神だ、馬鹿者。」

 

―ドゴォンッ!!―

 

「ブベラァッ!?」

 

そこから続けてさっき以上の轟音が聞こえてきた。

 

「おい、列車砲みてぇな音したぞ?」

 

「いえ、今の音はそれより僅かに低いデシベルです。」

 

「いやいや、充分だからなアルティナ?」

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

アッシュの言葉にアルティナが詳しく捕捉する事にツッコむハルキ。その時、校舎が震える程の黄色い歓声が彼らの耳に飛び込んできた。

 

「うぎゃあッ!?」

 

「し、師匠!?耳が~!!」

 

「新手の音響兵器じゃないんだから…!!」

 

「騒ぐな!!」

 

鼓膜が破れるかと思ったその歓声も、千冬の一喝ですぐに収まった。

 

「まったく…とりあえず外に人を待たせている。入ってきてくれ。」

 

それから千冬のお呼びが掛かり、玲奈が先頭となって全員が入っていく。

 

「えッ!?織斑君以外の男!?」

 

「あの黒服ってラインフォルト社のッ!?」

 

「あっちは篠ノ之束が装着者に選んだ…!!」

 

「静かにしろッ!!色々な事情を鑑み、彼らもこのクラスで共に学ぶ事になった。ただ、そろそろHRが終わるので残りの自己紹介は個々人で頼む。君達は後ろの空いてる席に座ってくれ。では、15分後に授業を始めるから準備しておくように。」

 

そう言って千冬は教室中にいた緑髪の女性と一緒に出ていった。

 

「ほらアルッ!!こっちこっち~♪」

 

「ユウナさん…そんなに大声で言わなくても聞こえてます。」

 

「では私もそちらに♪」

 

「クルト、アッシュ、俺達はここにするか。」

 

「そうだな。ここならユウナ達とも話しやすいし…」

 

「それに、この位置なら寝ててもバレねぇだろ?」

 

「いや、寝るなよ…」

 

「私こっち~♪」

 

「んじゃアタシはこっち~♪」

 

「それじゃ私達はここにしよっか?」

 

「ええ。」「うん。」

 

ユウナとアルティナ、ミュゼが後部中央付近に座り、ハルキにクルト、アッシュが右側、玲奈達は左側に座り授業の準備を始める。ただし、興味の視線が男子達に向いているためハルキ達は居心地が悪そうだが…

 

(やれやれ、こうまで視線が集まると落ち着かないな…)

 

(まぁ…慣れるしかないさ。)

 

(けど、中々に上玉が揃ってるじゃねぇか。)

 

ハルキとクルトはこの状況にため息しかなく、アッシュは女子の品定めをしていた。

 

「う~ん…アル~!!この辺分かる!?」

 

「予習はしましたが、そこは私も微妙な所ですので…」

 

「なら、ミュゼは!?」

 

「私も特殊な用語が多過ぎて…」

 

「うわーんッ!?騎神とシステムが全然違うから覚えきれない~!!」

 

「あっちは苦労してそうね…」

 

どうやら勉強不足だったのか、ユウナはアルティナやミュゼに聞き回るがどちらも教えられる程では無いらしく、あえなく机に突っ伏した。

 

「まあ、束によるとISとはまったく別系統の代物らしいし…」

 

「こっちはその開発者仕込みだから、知識は問題ないけど。」

 

「ならお願い!!ここ教えてッ!!」

 

「いいよ、ここはね~……」

 

夏煉の呟きに耳聡く反応したユウナが玲奈達の元にやって来て、それに夕夏が対応する。

 

「…で、こうなるわけ。OK?」

 

「メッチャOKです!!助かりました~!!」

 

「それなら良かった。」

 

「ユウナさんが面倒を掛けてすみません。」

 

「いえいえ。」

 

「ちょっとアル!!それだと私がトラブルメーカーみたいじゃん!!」

 

「実際、その通りかと…」

 

「そうですね、帝国にいた時も色んな事に首を突っ込んでましたから。」

 

「ミュゼまでッ!?ちょっと、ハルキ君やクルト君も何とか言ってよ!!」

 

アルティナだけでなくミュゼにまで肯定され、慌てたユウナは男子チームにも援護を求めたが…

 

「アハハ…」

 

「すまない…」

 

「どう見たってトラブルメーカーだろ?」

 

「まさかの全員肯定ッ!?」

 

結果、全員から肯定されて再び机に突っ伏した。

 

「そんな事より、先程から聞きたかったのですが、皆さんはあの篠ノ乃束に新型パワードスーツの装着者に選ばれたそうですが、それはどういった経緯で?」

 

「そんな事扱いされた…」

 

「よしよし。」

 

アルティナの無情の一言に机を涙に濡らすユウナをクルトが慰め、それを苦笑いしながら玲奈がその質問に答える事にした。

 

「と言っても、こっちだって篠ノ之博士が突然現れて勝手に選ばれただけだから、経緯っていう経緯はないわよ?」

 

「………………そうですか。」

 

彼女の答えに無表情に……でも、納得しきってない顔で彼女は席に戻っていった。

 

(……ミュゼさん、彼女達をどう思いますか?)

 

(やはり、何か隠しているとしか思えませんね…)

 

(ククク…さて、どんな秘密を抱えてるのやら。)

 

(とりあえず、そっちは根気よく調べるしかなさそうだな。もし()()()()と繋がっていたら…)

 

(うう~…皆して酷いよ~…)

 

(いや、半分は君の自業自得だから…)

 

アイコンタクトで会話するⅦ組メンバー。そこに、織斑一夏がハルキの所にやって来た。

 

「えっと…ちょっといいか?」

 

「ああ、大丈夫だ。」

 

「ああ良かった…この学園に男子は俺だけじゃなくて…」

 

「ハハハ……まあ、1人だったらさすがに気まずいからね。」

 

「俺は織斑一夏、よろしくな。千冬姉がいるから一夏って呼んでくれ。」

 

「ハルキ・シュバルツァーだ。俺もハルキでいいさ。」

 

「クルト・ヴァンダールだ。僕も名前でいい。」

 

「アッシュ・カーバイトだ。好きに呼べや。」

 

「ああ、ハルキにクルトにアッシュ!!同じ男同士、よろしくな。」

 

一夏が差し出した手を握るハルキ。それを見てミュゼが笑みを浮かべる。

 

(あらあら、これは薄い本が厚くなりそうですね♪)

 

(アタシ、アンタのその趣味だけは理解したくないわ。)

 

(同感です…)

 

どうやら【腐】の属性を持っているミュゼに、ユウナとアルティナは冷めた視線を送るのだった…

 

しかし、特務隊に所属しているだけあって周囲の視線に注意を払っていたアルティナは、特徴的な2つの視線に気づく。1つは何やら質問するかどうか迷っているものと、明らかな敵意が籠っているものを……

 

(1つは問題無さそうですが…もう1つは注意しておきましょうか、()()()=()()()()。)

 

『ЖψκВβΦ』

 

何かの名前の様な言葉を呟くと、彼女の耳だけに独特な機械言語が聞こえてきた。

 

「お前達席に着け、授業を始めるぞ。」

 

その時、千冬がやって来たのでアルティナも席に着き、IS学園最初の授業が始まるのだった。




いかがでしたか?

という事で、閃ノ軌跡Ⅲから新Ⅶ組メンバーが追加と一夏アンチの撤廃になります。

レン「どうも、今回の次回予告を担当しますレンです!!次回は金髪ドリルの人が織斑君とシュバルツァー君に余計な事を口走って喧嘩を吹っ掛け、それが私をも巻き込んだバトルに発展してしまいました…」


次回【口は災いの元】


レン「さて、師匠に頼んでアレを使いこなせるように特訓してもらお♪」


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口は災いの元

どうも、疾風の警備員です。

今回はセシリア登場回ですが、少しアンチみたくなります。ですが、初期だけですのでオルコッ党の方はご安心を…

でも実際、初期の彼女はこんな事を引き起こすかも知れなかったんですよね…

では、どうぞ。


最初の授業が終わり、休み時間…

 

「「プシュー…」」

 

ユウナとフカは頭から湯気を出して机に突っ伏していた。

 

「ユウナ…机に突っ伏してばかりね。」

 

「勉強はあまり得意じゃありませんから。」

 

玲奈の机の側でわからない所を聞いていたアルティナの言葉に、ユウナはガバリと起き上がった。

 

「違うもん!!ISの構造が難しいだけなんだから!!帝国の学院だったら成績上位者なんだよ!!」

 

「そうだそうだ~!!」

 

「フカは違うでしょ…」

 

ユウナの言葉に便乗して声をあげるフカにツッコむ玲奈。

 

「勉強中すまないが…少しいいか?」

 

その時、玲奈の席に黒髪をポニーテールにした少女がやって来た。

 

「貴方は?」

 

「私は【篠ノ之 箒】です。貴方達を選んだ篠ノ乃束の妹なんですが…」

 

「ああ~ッ!!見たことあるなぁって思ってたけど、貴方が博士が溺愛してる箒ちゃんか!!」

 

玲奈がそう言うと箒はその場でズッこける。姉の知り合いだから自分の事も知っているかもと思っていたが、まさかそんな覚え方をされてるとは思わなかったからだ。

 

「え、えっと……とりあえず、姉は元気そうですね…」

 

「ええ、今も元気にISを空に上げる研究をしてるわ。」

 

「ッ!!……そうですか、姉はまた自分の夢を目指し始めたんですね…」

 

その事実に箒は頬を綻ばせる。実際、彼女がISを学会で発表し、酷評をもらって帰ってきてからの荒れ様を知っていたからこそ、また夢に向かって進んでいる事が嬉しかったのだ。

 

「それならレンにお礼を言ってあげて。あの子と亡くなった姉のお陰で、また夢に向かう力をもらったらしいから。」

 

「…それはもしかしてあの事件で…」

 

「その先はシーッ…よ?」

 

「ッ……分かりました。」

 

そう言ってお辞儀をして、彼女はレンの所へと向かっていった。

 

「あの事件とは【白騎士事件】の事ですか?」

 

「…さぁね。」

 

一応この事件の真相は伏せられているため、玲奈は言葉を濁す事にしたが、アルティナはそれが逆に肯定と判断した。

 

「では、この部分を教えてもらっても?」

 

「ええ、そこは…」

 

そんな感じに玲奈達が勉強している時、一夏もハルキ達の席に来て、勉強を教えてもらっていた。ただし、そのレベルは格段の差があるが…

 

「ハハハハハッ!!参考書を捨てるとか…!!お前も度胸あるな…!!」

 

そう、一夏は授業で使う参考書を古い電話帳と間違えて捨ててしまい、千冬から出席簿アタックと新しく発行する参考書を一週間で覚えろと命令されていたのだ。

 

「笑うなよアッシュ…お陰で出席簿アタックまで喰らうし…」

 

「まあ、自業自得だな。」

 

「ハハ…まぁ、俺達に教えられる所は教えるからさ?」

 

「ありがとう、ハルキ…!!」

 

ハルキに授業で出そうな所を教えてもらいながら、何とか詰め込んでいたら…

 

「ンン…!!ちょっとよろしくて?」

 

「「「「ん?」」」」

 

そこに金髪に縦ロールの髪型をした一人の女子が尊大な態度でやって来た。

 

「あん?…誰だテメェ?」

 

「まあッ!?この私に声を掛けられてるのに…なんですの、その反応は!!」

 

「ハッ!!知らねぇもんを知らねぇって言って何が悪い?」

 

彼女の傲岸不遜な態度に、アッシュも煽る様な言動を返し、彼女の怒りに余計に火を付けた。

 

「知らないッ!?このイギリス代表候補生にして、首席合格の【セシリア・オルコット】を!?」

 

「なんだ……単なる【補欠】か。」

 

「なッ!?あなたねぇ…!!」

 

このままではアッシュとセシリアの喧嘩に発展しそうになりそうな雰囲気に、クラスの空気が張りつめたその時…

 

「なあクルト……代表候補生って何だ?」

 

 

―ドンガラガッシャーン!!―

 

 

一夏の一言でクラス中の生徒がズッ転けた。

 

「お前なぁ…そんぐらいテレビ見てりゃ知ってるだろ…」

 

「一夏、代表候補生は読んで字の如く国家代表の候補生だ。」

 

「ああ、なるほど。そりゃスゲェ。」

 

クルトの説明にようやく納得する一夏。

 

「そうッ!!つまりはエリートなのですわ!!」

 

「んで、そのエリート様が何の用なんスか?」

 

「ふん、どうせ貴方達はISの事をろくに理解してはいないのでしょう?もし泣いて頼むのでしたら、入学テストで教官を倒したこの私が教えて差し上げてもよろしくてよ?」

 

(なるほど…これが()()()()か。)

 

(どうやら、帝国とは違って各国ではかなり酷いみたいだな。)

 

彼らの住むエレボニア帝国では女尊男卑は殆んど起きていない。それは帝国現政権のトップであり【鉄血宰相】と呼ばれている【ギリアス・オズボーン】が帝国にISを導入しなかったからだ。それにより、最初の頃はISを持つ他国の侵略を受けそうになるが、それらを帝国独自の技術や軍人達の高度な戦略、【列車砲】等の特殊兵器によって阻止してきたのだ。さらに最近はG・シュミット博士という人物によって【機甲兵(パンツァー・ゾルダ)】と呼ばれる人型ロボットの開発に成功。ISを持つ国家と互角以上に戦える力を手にした。これらの功績を帝国政府は男女関係無く称賛する事で、女尊男卑の思想を極限まで抑えたのだ。

 

なお、ラインフォルト社の騎神シリーズは機甲兵の技術と戦場に廃棄されたISを回収・解析した技術を合体応用し、採算度外視で作られた超高性能機体でもある。

 

「あれ?教官なら、俺も倒したぞ。」

 

「なッ!?」

 

「へぇ…」

 

そこで一夏が衝撃の事実を口にした。もしそれが本当なら、才能の塊なんてものではない。

 

「つっても、向こうが突っ込んできたのを避けたら、壁に激突して自滅しただけなんだけど…」

 

「んなこったろぉーと思ったぜ…」

 

だが、実際は教官の自滅という情けないものだったが…

 

「そ、それは本当ですのッ!?」

 

しかし、あまりの驚きでそこまで聞いて無かったセシリアはかなり食いかかってきた。

 

「教官を倒したのは、私だけだと聞いてましたのに!!」

 

「【女子では】ってオチじゃねぇの?」

 

「く…!!『キーンコーンカーンコーン』また後で来ますわッ!!」

 

「もう来んな。」

 

チャイムがなると同時に彼女は席に戻っていく。アッシュはそんな彼女に中指を立てて見送った。

 

「やめろアッシュ、無闇に敵を作るな。」

 

「へぇ~へぇ~…」

 

「悪いッ!!俺も席に戻るな!!」

 

「ああ。」

 

一夏も慌てて席に戻り、千冬が入ってくる寸前で席に着けた。

 

「では授業を始める……と、言いたい所だったが、その前にクラス代表を決める。これは読んで字の如くで、まぁクラス委員長みたいなものだと思ってくれていいが、クラス代表は年に何回かある代表戦に参加して貰う事にもなる。誰か立候補はいないか?いないなら、推薦でもいい。」

 

千冬の話に誰も手を上げようとはしない。誰もそんな面倒を引き受けようとも思わないが…

 

「はいッ!!織斑君がいいです!!」

 

「私も!!」

 

「私も私も~!!」

 

「皆も織斑君でいいかな?」

 

「「「「いいとも~!!」」」」

 

「えッ!?俺ッ!?」

 

そこで次々に上がる織斑コール。当人は困惑しかないが…

 

「推薦者は織斑だけか?なら、織斑で決定するが…」

 

「ちょッ!?俺はそんなのやらな…「推薦されたのだから、甘んじて受けろ。」そんな…」

 

一夏の抵抗も虚しく、千冬によって却下されてしまった。

 

「……どうやら他にいないので、クラス代表は織斑に「待ってください!!そのような選出、納得いきませんわッ!!」なんだ、オルコット?」

 

千冬によってクラス代表が決まる直前、机をバンッ!!と叩きながらセシリアが立ち上がった。その顔は誰が見ても怒りで染まっている。

 

「クラス代表に相応しいのは実力のある人物でなければなりません!!それはこのセシリア・オルコットですッ!!なのになぜそこの極東や低文化な帝国の猿より下に見られなければなりませんのッ!?」

 

「おいおい、俺達関係ねぇのに巻き込まれてるぞ?」

 

アッシュがぼやくが、今のセシリアは怒りで我を忘れ止まる事を知らない。

 

「だいたいこの国の文化だって遅れてますし、帝国なんてISを使ってすらいないではありませんか!!そんな国の下等生物がこのクラスのトップだなんて断じて認めませんわ!!それは私につまらないサーカスを見てろとでもいうんですのッ!?それにエレボニア帝国なんて未だに古臭い文化を続けている国家!!これなら我が国の方がどれだけ素晴らしいか…!!」

 

(……イギリスも貴族社会じゃなかったっけ?)

 

(完全に我を忘れてますわね…これは【プランF】を実行するかもしれませんわ…)

 

「そっちだって対してお国自慢はねぇだろ?世界一マズイ料理で何年覇者だっての。」

 

ユウナやミュゼが呆れる中、とうとう我慢の限界にきた一夏が反論する。

 

「なッ!?貴方、私の祖国をバカにするんですの!?」

 

「先にしてきたのはそっちだろうがッ!!」

 

「ハイハイ、そこまで。」

 

口論がまだ続くかと思われた時、レンが手を叩きながら立ち上がった。

 

「それじゃまるで子供の喧嘩だよ?高校生ならもっと落ち着かないと…」

 

「でもよ…!!」

 

「織斑君はイギリスに行って、その料理を食べた事あるの?」

 

「それは…」

 

レンの問いに口ごもる一夏。レンは念のため千冬に視線を向けると、彼女は首を横に振ったので無いことが証明された。

 

「食べた事もない料理を貶すのはどうかと思うよ?もしかしたら美味しいかもしれないし。」

 

「………………確かに、少し頭に血が昇ってたな。昔、千冬姉にも【自分で見て、感じたものを信じろ】って言われたし…」

 

レンの言葉に一夏は幼き頃の事を思い出す。周りの人がそう言っていたからそうだと思って行動したことが間違っていて、千冬にすごく怒られた時の事を…

 

「それにオルコットさんだって悪いんだよ?」

 

「なッ!?私のどこが悪かったとでも!?」

 

だが、血が昇り過ぎたセシリアには簡単に届かない。だからこそ、事実を突きつけるのが一番だと判断してレンは語る。

 

「ISを作ったのは何処の誰?ISで初めて世界一の操縦者になったのは何処の誰?それも解らないなんて言わないよね?」

 

「当然ですわッ!!作ったのは日本の……ッ!?」

 

そこで彼女は言葉を止める。これを口にしたら、自分の負けを認める様なものだからだ。

 

「そう、どっちも日本人だよ?それなのに、よく文化が低いなんて言えるね?エレボニア帝国も他の国には無い独自の技術で今の体制を作り上げてきたんだから、古臭いとは到底思えない。つまり、貴方の言葉は間違ってるの。」

 

「ぐぬぬ…!!」

 

レンの言葉に顔を歪めるセシリア。確かに日本の文化は先進国の中でも上位であるし、エレボニア帝国も独特の文化を持ちつつも、他国の災害時には救援をすぐさま送り、最近ではインドで起きた大規模土砂崩れに機甲兵を派遣、生き埋めになっていた者の救出に一役買っていた。

 

「怒り任せの言葉は身を滅ぼすよ。これに懲りたら、貴方も織斑君みたく頭を冷やすんだね。」

 

だが、レンの放ったこの言葉がセシリアの怒りに油を注いでしまった。

 

「……決闘ですわッ!!!!この私をそこの猿共より下に見るなんて……許しませんわ!!」

 

「ええ~…」

 

プライドが高いセシリアにとって、一夏やハルキ達より下に見られるのはとてつもない屈辱だった。だが、その頭に血が昇り過ぎた事が、最悪の一言を口にしてしまう。

 

「しかし、そこの猿達は何も言えないんですのね?やはりエレボニア帝国などとるに足らない国家!!我が祖国で支配するべきですわッ!!」

 

「おいッ!!それはいくらなんで「セシリア・オルコット……それは本心か?」ハルキ?」

 

友達までバカにされ怒る一夏だったが、今まで黙っていたハルキが立ち上がり、何の感情も込めずにセシリアにそう問う。その雰囲気は先程まで温厚だった彼の面影を残さない程に…

 

「なんですの?今さら命乞いするのでしたら、もう遅いですわよ。」

 

「そうか…アルティナ、プランFを発動。」

 

「了解、先程までの音声データを全て帝国政府へと送信します。」

 

「へ?」

 

彼女の言った言葉が理解出来ないセシリア。そこにハルキが持つ端末が鳴る。

 

「織斑先生。」

 

「許可する。」

 

千冬の許可を得て端末の着信に出て2・3言話したら端末を耳から話す。

 

「申し訳ありませんが、これを正面のスクリーンに繋いでも?」

 

「良いだろう。」

 

その端末を繋ぐと、先程までの授業の内容が映されていた画面が揺らぎ、一人の男性が映った。見た目は50代程だが、その身に纏うオーラはかなりの大物を思わせる。

 

『映像越しで失礼する。私はエレボニア帝国宰相、ギリアス・オズボーンである。』

 

その人物はまさかのエレボニア帝国現トップであった。

 

「て、帝国の鉄血宰相ッ!?」

 

「何でそんな大物がッ!?」

 

「落ち着けッ!!今は彼の話を聞くように。」

 

クラス中がその光景に驚くも、千冬の一喝で静かになる。

 

『すまないな、織斑千冬殿。』

 

「いえ、それで…今回はどのようなご用件で?」

 

『では、本題に入らせてもらおう…セシリア・オルコット嬢。』

 

「は、はいッ!?」

 

突然話を振られたセシリアはビクッ!!としながら背筋を正す。相手は一国の政治を司る存在、その迫力はとてつもないものだ。

 

『君の言葉は拝聴させてもらった。若者らしい力強く勢い溢れたものだが……些か、ご自身の立場を理解されてないようだ。』

 

「どういう意味ですのッ!?」

 

『君はイギリスの国家代表候補生……つまり、君は国に雇われている身分であり…君の言葉は国の言葉とも取ることが出来るのだよ?その立場でこの発言…どうやらイギリスは、我が国と戦争をするのがお望みの様だ…』

 

「え…?」

 

『ならば、その気概に答えようではないか。』

 

そこでセシリアは察する。彼が何を言おうとしているのかを…

 

「ま、まさか…!!」

 

『我がエレボニア帝国は…』

 

「や、やめて…」

 

『イギリスに対して…』

 

「やめて…!!」

 

『武力を行使する事を、ここに宣言する!!』

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

現政権トップからの武力行使の宣言……それはつまり、事実上の戦争の始まりである。まさか自分の言葉で戦争が始まるなどと思っていなかったセシリアが叫ぶが、もう遅……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ククク、冗談だよ。』

 

いわけでは無かった。

 

「へ…?」

 

『君の様な女尊男卑に染まっていて、尚且つ力を持っている者には…こういった行動が一番身に沁みるものだからな。』

 

「フゥ…宰相閣下も人が悪いですね?」

 

千冬の言葉にギリアスは楽しそうに笑いだした。

 

『ハハハハハ!!…これぐらいは許して貰いたい。我々もIS保有国から何度もちょっかいを出され、頭を悩ませているのでね…』

 

「これは……一体どういう事ですの?」

 

頭が完全にパニクってるセシリアにギリアスが楽しそうに答えた。

 

『見ての通り、単なるお芝居だよ…オルコット嬢?』

 

「プランFのFはフェイク…つまり、嘘さ。」

 

「「「「「「「「嘘ッ!?」」」」」」」」

 

ハルキの説明にクラス中が驚いた。

 

そう、これは彼等が持つ敵性対象への対応の1つで、女尊男卑の国家代表候補生に対して使う心理的カウンターだ。自身の言葉が戦争に繋がると思わせる事で、自分の立場と責任を思い知らせるのが目的である。

 

「これ……千冬姉は知ってたのか?」

 

「ああ、エレボニア帝国はIS委員会からの擁護が得られないので、万が一を備えて幾つかのプランを宰相閣下と作っていたんだ。」

 

『だが、この件に関してイギリス政府へ抗議は行わせてもらう。そこで我々が要求するのは……イギリスが持つISの武装データ全てだ。』

 

「なッ!?そんなもの、渡せる訳がありませんわッ!!」

 

ISの武装に関するデータはまさに国家機密そのものといえ、それがバレてしまえば対抗策を練られて自国の力が弱まる事を意味している。

 

なお、IS学園に通う専用機持ちの装備は、完全試作品で実用性も伴っていない物も混ぜて、どれを正式採用させるかを解らなくする処置をするのが通例だ。

 

『では、先程の冗談を実行する迄だが?』

 

「うッ!?」

 

『君にはもう選択権すら無いのだよ。こちらの言葉に頷く以外はな…』

 

しかし自身の発言で完全に行動を封印され、ギリアスの手のひらで踊るだけの人形になってしまったセシリア。だが、ここでギリアスがある提案を彼女に提示した。

 

『しかし、そちらにいる我が国の起動者達の誰か二人のタッグと君のタッグで勝負し、君が勝てたなら今回の事は不問にしよう。もちろん、君が負けた場合…データはいただくがね?』

 

彼女にとってこれは正しく救いだった。自分さえ勝てば、全てが無かったことになるのだから。自分に絶対の自信を持つセシリアはこの条件を飲む事にした…いや、飲むしかなかった。

 

「う…受けて立ちますわ!!この私が……負ける訳ありませんものッ!!」

 

『言質は取ったぞ?では千冬殿、後は頼んだ。』

 

「はッ、オーレリアにも宜しくお伝えください。」

 

『確かに承った。では去らばだ。』

 

画面が切れ、再び液晶には一時間前の授業内容が映し出されるも、誰もその内容は入ってはいない。目の前で行われた一方的な会話に呆然とするしか無かったのだ。

 

「では丁度いい、宰相閣下の言葉を受けてクラス代表決定戦を行う。参加者はオルコットに織斑。それと……エレボニアチームからは誰が出るんだ?」

 

「それなら、俺ハルキ・シュバルツァーと…」

 

「はいはーい!!ユウナ・クロフォードが出まーす!!」

 

事態の発端であるセシリアともともと推薦された一夏は参加決定で、エレボニア帝国からはハルキとユウナが参戦する事になった。

 

「分かった。後、束チームからも誰か2人出してくれないか?政府が束作のパワードスーツを見たいと何度も言ってきていてな…」

 

千冬の言葉に、玲奈はレンとフカの肩を叩く。

 

「だったらレンとフカを出しますので。」

 

「「えッ!?《私/アタシ》聞いてないッ!?」」

 

「拒否権はありませ~ん!!一年の修行の成果を見せてらっしゃい!!」

 

「「イエス、マイロード!!」」

 

最初は嫌がる素振りを見せるレンとフカだったが、師匠である玲奈達の期待に応える為、力強く返事をした。

 

「ならこれで参加者は揃ったな。対戦日は来週の月曜日で時間はあまり取れないので対戦内容は4チームのバトルロイヤルとする。織斑とオルコットは今日中に共に出るパートナーを私か山田君に申告しろ。それが無かった場合、単独で出てもらう。それでは授業を再開する。」

 

こうして一組のクラス代表はバトルロイヤルにて決定する事となった。




いかがでしたか?

ハ「今回、次回予告をやることになったハルキと…」

ユ「ユウナです!!」

ハ「はぁ…宰相閣下の戯れにも困ったものだ…」

ユ「でも良いじゃん!!これで合法的にあの代表候補生を倒せるんだから!!」

ハ「そうだな…でも、篠ノ之束に選ばれた彼女達の力が未知数だから、油断はするなよ?」

ユ「もっちろん!!」


次回【開戦!!バトルロイヤル!!】


ハ「いくぞ、ユウナ!!」

ユ「OK!! Ⅶ組魂を見せてあげる!!」


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開戦!!バトルロイヤル

どうも、疾風の警備員です。

シンフォギアXDで、ガシャチケを使って一回回したら一発で戦国ギアの翼が、そのあと、十一連一回と単発一回で戦国ギアのマリアが当たりました……最近くじ運いいけど、何か不幸が起きそうで怖い…

今回はバトルロイヤル開始までです。

ではどうぞ。


クラス代表を決めるタッグ制のバトルロイヤルをすることが決定した日の昼休み…

 

 

一夏side

 

「どうしたらいいんだ…」

 

俺は食堂でそのパートナーを誰にするのか頭を抱えていた。最初はクルトかアッシュに頼もうと思ったんだけど…

 

(悪いが僕達は参加しない。)

 

(既にハルキやユウナが出んだ。俺達まで出たら楽しみがいがないだろ?)

 

という事ですげなく断られてしまった。

 

「それじゃ、俺が組める奴がいないじゃん…」

 

周りは知らない女子ばっかでなんか誘い難いし…見てくる目が怪しい奴ばっかだから組みたくない。

 

「このままじゃボッチ参戦じゃねぇかよ!!どうすりゃ…「随分悩んでいるみたいじゃないか。」へ?」

 

突如聞こえたその声に、俺は覚えがあった。

 

そのどこかツンケンしてるけど、実は可愛い人形集めが趣味で、たまに頬擦りして癒しを得ている女の子の声は…!!

 

「ほう(ガンッ!!)ごはッ!?」

 

「何か人の恥ずかしい秘密の事を考えただろ?」

 

「人の心、読まないでくれませんッ!?」

 

その女の子の名前を呼ぼうとしたら頭に衝撃が走り、涙目になりながら視線を俺を叩いたであろうその手に持ったお盆で肩をトントンと叩いているポニーテールの女の子を見る。

 

「久しぶりだな、一夏。」

 

「ああ、本当に久しぶりだな…箒。」

 

彼女は俺が小学4年生まで同じ学校で過ごした幼なじみ【篠ノ之 箒】だった。

 

「でも、久しぶりの挨拶がお盆の一撃とか酷くねぇ?」

 

「なら、千冬さんの出席簿の方が良かったか?」

 

「それだけは勘弁してください。」

 

箒のお盆アタックと千冬姉の出席簿アタックを比べた俺は、速効で頭を下げた。

 

だってあの一撃、尋常じゃねえ痛さなんだぞッ!?本気で一瞬、記憶が全部飛んだかと思ったわッ!!

 

「まあいい……悩んでいるのは代表決定戦のパートナーか?」

 

「……そーなんだよ、アッシュとクルトには断られたし…周りは知らない女子ばっか…………ん?」

 

そこで俺はふと思った。すぐ近くに知ってる女子いるじゃんと!!

 

「まあ、なんだ……お前がどうし「頼む箒ッ!!俺と組んでくれ!!」うぇぇぇッ!?」

 

これも神の…いや、箒は女だから女神か……とにかく女神の導きに違いない!!

 

「俺にはもうお前しか頼れる奴がいないんだ…!!頼むッ!!」

 

「し、ししししししし仕方ないな…!!良いだろう!!私が相方を勤めよう!!」

 

「おおッ!!ありがとう、箒ぃ!!」

 

やった!!これでボッチ参戦しなくてすむ!!

 

「だ、だが……そろそろ手を離してはくれまいか…!?」

 

「へ?」

 

箒に言われて自分の手を見ると、俺の両手が箒の手を包み込むように掴んでいた。どうやら無意識でやっていたみたいだ。

 

「おっと…悪かったな。」

 

「い、いや…気にするな!!」

 

何か箒の顔が赤いけど大丈夫かな?……いや、ここは食堂だし、他の奴等に見られて恥ずかしかったんだな!今後は気をつけよう…

 

「それで箒はどれくらいISを動かせるんだ?」

 

箒なら参考書を捨てた俺よりも詳しいと思って聞いたけど…

 

「それは……」

 

すぐに口ごもって、視線を俺から反らした。

 

あれ?これってもしかして…

 

「まさか…殆んど動かした事ない?」

 

「うッ!!……………………(コクッ)」

 

「マジかぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

その事実に俺は再び頭を抱えた。

 

俺はIS超初心者だからどうやって動かしたらいいのか、全くと言っていいほど解らない。だから箒に教わろうと思ったのに…

 

「はぁ…本当にどうしよ…」

 

「……………………そうだ、あの人達なら…」

 

そこで箒が何か思い付いた様な顔になった。

 

「心当たりがあるのか?」

 

「ああ、だが……引き受けてくれるかどうか…」

 

どうやら気難しい人なのかな?でも、他に心当たりもないなら一度頼んでみるしかない。

 

「とりあえず、放課後になったら一度聞いてみようぜ?それで駄目だったら、他を考えるしかないさ。」

 

「そうだな、まずは当たってみるか。」

 

となれば今は腹ごしらえだな!!時間も少し使っちまったし、早く食わねぇと、また千冬姉の出席簿アタックが炸裂しちまうッ!!

 

俺達は急いで昼飯を済ませ、教室へと向かうのだった。

 

 

 

それから放課後、箒に付き添って歩いていくとそこにいたのは、今回バトルロイヤルの敵である束さんが新型パワードスーツの装着者に選んだ人の一人の所だった。

 

って!?敵が俺達の指導なんかしてくれる訳…!!

 

「御堂さん。」

 

「あら、どうしたの?織斑君まで連れて…」

 

「私達にISの事を教えて貰えませんか?」

 

「OK♪」

 

「早ッ!!そして軽ッ!!」

 

まさかの即OKかよッ!?

 

「………………いいんですか?私と一夏は一応敵になるんですが…」

 

「ああ、織斑君は箒ちゃんと組むのね?別に、私達が使うのはISとは構造が全く違うし、レンとフカにも対策として基礎はもう一度教えるつもりだからね。後、二人にも強くなってもらった方が、あの子達の相手になるかもしれないし。」

 

……それならいい…………のか?

 

「それじゃ早速始めましょうか。」

 

御堂さんに従って俺と箒も歩き、アリーナの1つ……確か第2だったかな?…に入った。

 

「あ、師匠~!!」

 

「およ、お客かな?」

 

「ゴメンゴメン、この二人にも参加して貰う事になったんだけどいいかな?」

 

「「「「いいとも~♪」」」」

 

フィールドにいた他の4人の人達にも許可を貰えた俺達は、小比類巻さんと篠原さんの特訓の為に御堂さんと別れ、早速小鳥遊さんが借りてきていた量産型ISの1つ【打鉄】に乗る。

 

「まずは自分の感覚で飛んでみなさい。それから教えてあげる。」

 

鬼町さんにそう言われ、俺と箒は交代しながら打鉄を軽く動かしていく。でも歩く度にコケ、飛んだとしても速度は全く出なかった。下手すれば自転車の方が速いんじゃね?というぐらいに…

 

「なるほどね、だいたい解ったわ。」

 

「それ、破壊者の台詞。」

 

「別にいいでしょ、まずは二人とも歩く時は別にISを着てるのを意識しないで、普通に歩く時みたいに動いてみなさい。」

 

「「は、はい!!」」

 

とりあえず、鬼町さんに言われた通りに動いてみたら、一度に歩ける距離が少し伸びた。

 

「マジか…」

 

「2人とも変にISを纏っているって意識し過ぎて、1歩の進みが遅くなってたのよ。そのせいで片足の時間が長くなってバランスを崩していたの。だから逆に普通に歩けばその時間は短くなるから、バランスを崩しにくくなって距離が伸びたのよ。」

 

な、なるほど…!!確かにどこだったら安定するかとか考えていたから、片足の時間が長くなってたのか…!!

 

「それと飛行については…あまりイメージ出来てないようね?」

 

「はい、前方に円錐をイメージするっていうのが解りづらくて……」

 

「そういう時はこれね。」

 

今度は鬼町さんが俺達に何かを見せてきた。それは一冊のマンガだった。しかもISとは一切関係ない、バトルマンガを…

 

いや、これでどないせよと?

 

「見るのはマンガじゃなくて…ここ。」

 

鬼町さんが指差したのは、主人公が決め台詞であろう言葉を言っているシーンだ。

 

にしても【俺はもう決して自分を見失わない。この力は完全に……俺のものだッ!!】って何かカッコいいな…俺もこういうの作ってみようかな?

 

「見るのは主人公の台詞じゃなくて、その周りにある【集中線】よ。」

 

「これって見てると真ん中に吸い込まれる様な感じがするでしょ?まずはこれを意識してみて。」

 

小鳥遊さんの言葉に確かにそうだ…と思い、それで飛んでみると、さっきよりもかなり早い速度で飛べた。

 

「ISはイメージを意識して操作するものが多いからね、こういう身近な物からそのヒントを探る様にしなさい。」

 

「「はいッ!!」」

 

やっべぇッ!!この人達の説明すげぇ解りやすい!!頼んで正解だったかも…!!後で箒に何か奢ってやろう。

 

ちなみにその時の小比類巻さんと篠原さんは…

 

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」」

 

「そらそらッ!!速度落ちてるわよッ!!残り10周に後30周プラスされたいッ!?」

 

「「師匠の鬼ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」」

 

「…………………………プラス50周決定。」

 

「「ごぉめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!?」」

 

「全く…先に周り終えた方には、食堂で一番高いパフェ奢ってあげるわよ?」

 

「「よっしゃあああああああああああああッ!!」」

 

そんな感じでフィールドを生身で走り回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして月曜日、クラス代表決定バトルロイヤルの日、レンとフカ、ハルキとユウナ、一夏と箒がそれぞれのチームでピットに集まっている中、セシリアだけは1人でいた。

 

(なぜ…?何故誰も私と組もうとしませんの…!?)

 

彼女は一週間前、バトルロイヤル決定の後パートナー探しをしたが誰からも相手にされず、そのまま期限を過ぎてしまい1人での参加となったのだ。もちろん、織斑先生に期間の延長を求めたが…

 

「特別扱いは認めない、潔く諦めろ。」

 

そう言われ、とりつく島も無かったのだ。まあ、1組は一夏の為にエレボニアチームを除いてなるべく日本人で固める様になっていて、クラスの大半が日本人だ。そこであんな発言をして謝らず、むしろ高圧的に頼まれて受ける者などいるはずがないが…

 

(ですが私は代表候補生!!ポッと出の者達に負けることなどあり得ませんわ!!)

 

しかし、彼女も代表候補生に選ばれたプライドがある。そう思う事で自分を奮起させるのだった。

 

 

一方レン達束チームでは、玲奈達が二人を応援していた…

 

「二人とも、最初に負けたら特訓量三倍ね?」

 

「後お小遣いも半額にするから♪」

 

「「そんな殺生なッ!?」」

 

「貴方達に拒否権はない。」

 

……………………応援?されていた。

 

「うう~…!!」

 

「その代わり、レンには景気付けにコレあげるから。」

 

「へ…?わぷッ!?」

 

そう言って玲奈はウサギの耳の様な飾りの付いた、ピンク色の帽子をレンに被せた。

 

「レンはウサギ好きでしょ?ネットで見つけて買っといたの。」

 

「わあ~♪ありがとうございます!!」

 

「ちなみに、最初に負けたらの罰にコレの金額の返金も追加ね?」

 

「死ぬ気で勝ちますぅッ!?」

 

「ちなみにアタシには?」

 

「「「ない。」」」

 

「うそーんッ!?」

 

まあ、そんな感じでほのぼのしていた……

 

 

そしてエレボニアチームでも、ハルキとユウナを応援していた。

 

「お二人とも、体調はどうですか?」

 

「ああ、問題ない。」

 

「もぅバッチリ!!」

 

「へッ!!不様に負けたら笑ってやるよ。」

 

「ハハ、そうならない様に頑張るさ。」

 

「ユウナさん、相手の情報は頭に入ってますか?」

 

「うん、しっかりとね!!」

 

「さすがは【情報局】だな。」

 

「二人とも、頑張ってきてくれ。」

 

「「ああ!!/うん!!」」

 

こちらはどうやら相手の情報を仕入れ、勝利への確率を高めたらしい。その顔には余裕があった。

 

 

「なあ、箒……俺達勝てるかな?」

 

「正直、厳しいだろうな…」

 

一方、一夏と箒のチームは勝ち目のない勝負と解っているのか、少々テンションが低かった。

 

「だが、ここでやらねば教えてくれた御堂さん達に申し訳が立たないぞ?」

 

「解ってる…だからできる限り足掻いてやるさッ!!」

 

自分の両頬を思いきり叩き気合いを入れる一夏。しかし、彼にはまだ問題があった。

 

「つか、俺の専用機……何時になったら来るんだ?」

 

そう、彼が使うはずの専用機が、未だに届いてなかったのだ。

 

「まさかこのまま来ないで、不戦敗なんてオチじゃねぇよな?」

 

「うーむ……織斑先生だから、強ち否定できないのがなんとも…」

 

「だよな…」

 

「お邪魔するわよー。」

 

そんな感じで落ち込んでいると、玲奈と夕夏と夏煉が彼らのピットに入ってきた。

 

「激励に来たわよ。」

 

「ありがとうございます。しかし、今絶賛のピンチなんです…」

 

「「「ピンチ?」」」

 

箒から話を聞き、玲奈達はため息を吐いた。

 

「全く…期限を守らないとか、開発者失格ね。」

 

「ほんとほんと。」

 

「お、織斑君!!織斑君!!織斑君!!」

 

そこに一組副担任である【山田摩耶】が慌てた様子で入ってくる。

 

「山田先生、どうしたんですか?」

 

「お、織斑君の……専用機が…やっと……届きま…した…!!」

 

そして背後の扉が大きく開くとグレー色の機体が入ってきた。

 

「これが織斑君の専用機【白式】です!!」

 

「え?これ、白っていうか……灰色?」

 

「もしかしてPS装甲?」

 

「よしッ!!通電させましょう!!」

 

「ま、待ってッ!?そんな物理攻撃無効化の装甲じゃないですからぁッ!?」

 

玲奈と夏煉が山田先生と遊んでいる間に、織斑先生が一夏の元にやって来た。

 

「千冬姉!!」

 

「すまない、遅くなったな。しかし、このままでは初期化(フィッティング)最適化(パーソナライズ)は試合をしながらになってしまうな…」

 

「ウェイッ!?」

 

フィッティングとパーソナライズを行わない限り、専用機は本来の性能を発揮できない。しかし、この作業にはかなりの時間が必要で試合まで後10分しかない現状では、どう考えても間に合わない。

 

「こうなったら、なるようにな「そんな時はコレ、兎印の高速パッチ~♪」へ?」

 

それでもやってやると気合いを入れた一夏だったが、夕夏が1つのUSBメモリを取り出し、それをパソコンに接続した。

 

「それはなんだ?」

 

「束さんが作ったもので、ISの初期化と最適化を高速で行えるアイテムなんです。これを使えば…織斑君、ISに乗って。」

 

「は、はい!!」

 

一夏が白式と乗るのを確認した夕夏は、USBメモリを挿した端末のエンターボタンを叩いた。するとウィンドウが幾つも現れては消えを高速で繰り返し、1分後には初期化が、それから3分後には最適化まで終わってしまった。

 

「うっそーん…!!」

 

「束め…相変わらず、やりすぎだ…」

 

光輝いた白式は見た目が純白に黄色や青がアクセントとなった色合いに、背中には大型スラスターがある姿へと変わった。

 

「すげぇ…」

 

「これで何時でも出られるよ。」

 

「ありがとうございます!!箒、コレならやれるぞ!!」

 

「やれやれ…勝てるかどうか解らないのに…だが、不戦敗なんて情けない結果になるよりかはマシか。」

 

そう呟き、彼女も打鉄に乗り込んだ。

 

「皆さん、もうすぐ試合開始です!!頑張ってくださいね!!」

 

「「はい!!」」

 

山田先生の応援に元気良く答え、二人はフィールドへと飛び出すと、アリーナは既に満員になっていた。

 

「うおッ!?なんだこの人数!?」

 

「どうやら他クラスからも観戦に来ているようだな…」

 

『さあ始まりました、一年一組のクラス代表決定バトルロイヤルゥッ!!実況は二年の私、黛 薫子と……』

 

『同じく三年で解説の布仏 虚がお送りします。』

 

「「まさかの実況付きッ!?」」

 

なぜこうなったかというと、一組の子が今回のバトルロイヤルの事を他クラスの子に話してしまい、それが凄まじい速度で学園中を駆け巡ったのだ。その結果、学園中の生徒が見に来る事態になってしまった。なお、アリーナに入れなかった者は食堂にある大型スクリーンでも映像配信されるので、そこに集まっている。

 

『まず現れましたのは、世界初の男性操縦者である織斑一夏君と篠ノ之箒さんの幼なじみペアッ!!篠ノ之さんは打鉄、織斑君は政府より与えられた専用機【白式】に乗っての登場だあッ!!』

 

一夏と箒が周りから響く大歓声に圧倒されていると、別のピットからセシリアが飛び出してきた。

 

『おおっとッ!!次に出てきましたのはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットだ!!彼女とその専用機【ブルー・ティアーズ】は揃うと中々の高貴さを醸し出しますねぇ。』

 

『ブルー・ティアーズは第三世代機。どのような特殊武装があるのか見物です。』

 

「なんだ、パートナーが見つからなかったのか?」

 

「フン、もともといらないだけですわ!!」

 

「………………強がりにしか聞こえないな…」

 

1人で出てきたセシリアに、ざまあみろと箒が視線を向けていると、周囲の歓声が一際高まった。何事かと視線を巡らせると、エレボニアチームの二人がピットに立っていた。

 

『キタァァァァァァァァァッ!!今回の三つのメインの二つ目ッ!!エレボニア帝国からやって来た【特務科チーム】!!かの国が作り出した誰でも使える新型パワードスーツとは、どんなものなのでしょうかッ!!私、気になります!!』

 

『薫子さんは新聞部でしょう?』

 

実況がそんな会話をしていたら、特務科チームの二人は生身のままピットから飛び降りた。

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?生身のまま飛び降りたッ!?下まで50メートルはあるのにッ!?』

 

その高さを落ちれば大怪我ではすまない。だが二人は余裕を崩さずにお互いを見て…

 

「ってユウナ、すまんッ!?」

 

「へ?………………………………ッ!!」

 

突如謝って顔を背けるハルキにユウナは首を傾げるが、すぐに何故かわかり、顔を赤くしてスカートを押さえた。どうやら落下の時の風で捲れ上がったスカートの中を偶然見てしまったのだろう…

 

「ハルキッ!!後で覚えてなさい!!」

 

「いや、忘れた方がいいんじゃないのかッ!?」

 

「…………………………」

 

「あ、アルティナ?」

 

「何ですか、クルトさん?」

 

「いや…何でもない…」

 

そんな事をやっていたら地面まで目前と迫っていたので、二人は慌てて右手に着けた有角の獅子が描かれたブレスレットを前に翳し、その名を叫ぶ。

 

「来いッ!!灰の騎神【ヴァリマール】!!」

 

「起きなさい!!緋の騎神【テスタ=ロッサ】!!」

 

その瞬間、灰色と緋色の光に二人は包まれ、地面にゆっくりと着地。そして光が収まるとハルキは灰色を基調とし、所々に黒や金の高貴さを漂わせる色合いに、背中には二つのスラスターを背負った全身装甲の姿に、ユウナは緋い中世の騎士を思わせる外見に、ウィングスラスターを背負った全身装甲の姿に変わった。

 

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!あれがエレボニア帝国のおとぎ話【騎神伝説】で語り継がれる七つの騎神の内の二体、灰の騎神ヴァリマールと緋の騎神テスタ=ロッサだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

その登場に周囲は驚きつつも、歓声はさらに強まっていく。

 

「あれがハルキとユウナの…」

 

「気を付けろ一夏、二人とも全く隙がないぞ…!!」

 

「ああ…!!」

 

ハルキとユウナの迫力に圧されていた一夏は、そこで最後のピットに立っているレンとフカを見つけた。

 

「そういえば、二人はどんなパワードスーツなのか結局教えてもらえなかったな…」

 

「ああ、一体どんな姿なんだ?」

 

『さあ、最後のチームである【束チーム】の二人も登場したぞッ!!篠ノ乃博士お手製の新型パワードスーツ!!一体どんな姿を見せてくれるんでしょうかッ!!』

 

実況の声に合わせ、二人は腰に三つの歯車と右側にレバーがあり、左側には何かを挿すだろう窪みが2つあるアイテム【ビルドドライバー】を当てて黄色いベルトを伸ばし装着する。

 

次に右手に色が青くメーターと端子がある銃のグリップに似たアイテム【リスクトリガー】を持ち、上部にあるカバーを外す。

 

これは玲奈達の世界でアザゼルがセントの持つハザードトリガーを制御しやすい様に改良を加えたもので、オーバーフロー状態でも自力で意識を保つ事が出来るが出力が多少落ち、制御もかなり困難な代物である。

 

レンとフカは玲奈達からベルトを託された時から制御の修行を行い、一年かけてオーバーフロー状態を通常時でも制御出来るようになったのだ。

 

その起動ボタンを二回押してオーバーフロー状態へと即座に移行できる様にする。

 

『『MAX HAZARD ON!!』』

 

それをビルドドライバー右側上部に取り付け、レンは赤と金で彩られた、フカは青と金で彩られた細長いアイテムを取り出してそれを振り始めた。

 

「「さあ、実験を始めようか。」」

 

『RABBIT!!』

 

『TANK!!』

 

数回振った後キャップを回し、レンは赤い兎でフカは青い戦車の絵を選択し、それを一度引き伸ばしてから折り畳み、ベルトに装填した。

 

『RABBIT & RABBIT!!』

 

『TANK & TANK!!』

 

『『ドンテンカン!!ドーンテンカン!!ドンテンカン!!ドーンテンカン!!』』

 

そして不思議な待機音が鳴り響く中、二人はレバーを掴むと思いきり回していく。

 

『『ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!』』

 

すると二人の前後にプレス機の様な機械【ハザードライドビルダー】が展開される。

 

「何かしら、あれ?」

 

「ねぇ…何か嫌な予感がするんだけど…」

 

それを見て観客はある疑念を抱くが、二人はそんなもの気にせずファイティングポーズを取り、師匠達が叫ぶ言葉を口にする。

 

「「変身ッ!!」」

 

『『OVER FLOW!!』』

 

そして観客の予想通り、ビルダーが二人を勢い良くプレスした。

 

「「「「ひぃッ!?」」」」

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっとッ!?これは一体どういう事だッ!?まさかの失敗なのかあッ!?』

 

『いえ、違います。』

 

虚の答えに合わせ、まるでパンが焼けたトースターみたく、チン♪という音と共にビルダーが開き、中から背が小さかったのに、一般の高校生の平均値まで背が伸びた二人が、左目が赤い兎で右目が青い戦車の複眼でそれ以外が黒一色な戦士が出てきた。だが、それで終わりではない。レンの側に赤い大きなウサギ型のロボットが、フカの側には青い小型戦車が六機に装甲車が一機やって来た。

 

「あ…」

 

「今度はどうした、アルティナ?」

 

「いえ、何でもありません。」

 

(フフ、あのウサギさんに反応したんでしょうね♪)

 

そんなアルティナを他所に、ウサギは体を分離して何かのアーマーとなり、戦車達もまるで鎧の様な配置に空中に並んでいく。

 

「これは…!!」

 

「あれって鎧だったのッ!?」

 

ハルキとユウナがそれに驚くと、二人は高速で動き回ってその鎧を身に纏っていき、最後に胸の鎧を纏うと頭部の複眼がレンは向かい合う赤い兎に、フカは背中合わせの青い戦車に変わった。

 

『紅のスピーディージャンパー!!ラビットラビット!!ヤベェーイ!!ハエーイ!!』

 

『鋼鉄のブルーウォーリアー!!タンクタンク!!ヤベェーイ!!ツエーイ!!』

 

そのままフィールドに着地した二人は片方の複眼をなぞり、最後に手を開く。

 

「「勝利の法則は決まった!!」」

 

『ついでに決めポーズも決まったアァァァァァァッ!!これが博士の新しいパワードスーツ……まるで日曜朝の特撮ヒーローを思い出しますねッ!!』

 

『ええ、ですが能力は未知数……これは波乱の戦いになりそうです。』

 

「あれが騎神か…カッコいいね。」

 

「ありがとう、君達のもカッコいいさ。」

 

「でしょッ!!アタシも気に入ってるんだ~♪」

 

まるで踊る様に回るフカこと【仮面ライダービルド・タンクタンクフォーム】。

 

それをレンこと【仮面ライダービルド・ラビットラビットフォーム】が苦笑いしながら見ていた。

 

「そんなのは所詮コケ脅しに過ぎませんわッ!!」

 

「だったら試してみるか?」

 

「お前に振るう剣に、私達は一点の曇りも持たないぞ?」

 

「お黙りなさい!!勝つのは私ですわッ!!」

 

『まもなく試合開始です。総員、武装の展開をお願いします。』

 

流れるアナウンスに従い、一夏と箒、ハルキは一振りの刀を、セシリアはスナイパーライフルの【スターライトMk.Ⅲ】を、レンとフカは同型である大剣型の武装【フルボトルバスター】を、ユウナがマシンガンを内蔵したトンファー型の特殊警棒【ガンブレイカー】を手にする。

 

『それでは…………試合開始ッ!!』

 

そして、薫子の合図に全員が動きだし、中央で激突するのだった。




いかがでしたか?

レ「レンです!!」

フ「フカだよ~♪」

レ「とうとう始まりました、バトルロイヤル!!」

フ「いや~皆強そう強そう…」

レ「でも私達だって負けられないよッ!!」

フ「特訓三倍とかお小遣い半額とか、何としても阻止しないとなッ!!」


次回【勝者は誰だ!?】


レ・フ「「次回もレッツ、ビルドアップ!!」」


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勝者は誰だ!?

どうも、疾風の警備員です。

一度で終わらせようと思ったけど、長くなりそうだから二つにしました。

では、どうぞ。


遂に始まったクラス代表決定バトルロイヤル。まず始めにぶつかったのは、スピード重視の一夏とハルキだ。他者を置いていく速度で、二人は白式とヴァリマールの刀をぶつけ合わせる。

 

『始めにぶつかったのは織斑君とシュバルツァー君!!互いの武器らしく真剣勝負だあッ!!』

 

『資料によりますと、二人の機体は高機動型。そして武器も太刀一つと似通った性能です。となると、後は特殊武装か本人達の技量が勝敗を分けますね。』

 

「まさか、お前も刀を使うとはなッ!!」

 

「父さんから教えてもらったものさッ!!」

 

「私も混ぜさせて!!」

 

つばぜり合う二人に向かい、レンが空中を跳ねながら飛び込んで来てバスターソードモードのフルボトルバスターを全力で振るい、一夏達は迎え打とうと互いの距離を離して構える。

 

「いい的ですわッ!!」

 

そこをオルコットが三人を狙うも、それに気づくとすぐさま離れ、レーザーは三人の間を通り抜けていく。

 

「わっととッ!?」

 

「あっぶね!?」

 

「ユウナッ!!」

 

「任せて!!」

 

ハルキの指示にユウナはガンブレイカーを銃形態(ガンナーモード)に変え、弾丸をばら蒔き牽制する。

 

「このッ!?」

 

「へへっ…も~らい♪」

 

「キャアッ!?」

 

それに意識が向いた瞬間、背中に攻撃を喰らって吹き飛ぶオルコット。ユウナが視線を向けると、地上からフカことビルド・タンクタンクフォームがフルボトルバスターをバスターキャノンモードにして構えていた。

 

「アタシ達を忘れてもらっちゃ…困るぜ?」

 

「隙が丸出しだぞッ!!」

 

「うわっちゃあッ!?」

 

そんな決め台詞を言っている間に、近づいてきた箒が刀を振り下ろす。フカはそれに気づくと慌てて下がって回避したが、バランスを崩して後ろに倒れゴロゴロと少し転がった。

 

「あっぶないな~!!当たったらどうすんだよ!!」

 

「いや、そんな事言われても…」

 

起き上がりながら文句を言うフカに呆れる箒…そんな隙をユウナは見逃さない。

 

「ARCUS駆動。」

 

静かに呟くユウナ……そんな彼女の周りを水色の幾何学的模様の輪が現れる。

 

『おや?クロフォードさんの周りに何か浮かんでますね?』

 

『資料によりますと、あれは【導力魔法(オーバルアーツ)】と呼ばれるものですね。』

 

『おーばるあーつ?何ですかそれは?』

 

『簡単にいえば…』

 

「【ニードルショット】!!」

 

それが弾けると、彼女の前に石が集まって大きな塊となり、フカ目掛けて高速で飛んでいった。

 

「ほえ?……ふんぎゃッ!?」

 

まさかの攻撃に行動が遅れたフカはその直撃を喰らい、吹き飛ばされた。

 

『はいッ!?』

 

『擬似的な魔法です。』

 

「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」」」」

 

虚の説明に会場が驚く。空想の中ででしかなかった魔法が今、目の前で使われているのだから。

 

「いっつつ……何今のッ!?スッゲー!!」

 

だが、喰らった本人はまるで子供(身長的にも余計にそう見える)のようにはしゃいでいた。

 

「フッフーン!!これがオーバルアーツよ。」

 

「魔法……まさか、この目で見る日が来るとは…」

 

「私を無視しないでくださいますッ!?」

 

そんな三人にレーザーが放たれるが、フカとユウナはアッサリと避け箒は偶然だったが、少し動いたお陰でシールドに当たってダメージを抑えられた。

 

「全く、魔法だの何だのと古くさいものを…!!」

 

「これ、エレボニアの最新技術なんだけど…」

 

「アッチの女は頭が古くさいんじゃない?」

 

「おい篠原、あまり本当の事を言ってやるものじゃないぞ?」

 

「ふざけないでッ!!」

 

箒の言葉で完全にキレたオルコットは、腰にあるビットを展開して様々な方位からレーザーを放っていく。ユウナとフカは軽々避けるが、箒は動きに翻弄され放たれたレーザーの一つが持っていた剣の持ち手に当たり、壊れてしまう。

 

「しまッ!?」

 

「もらいま「【ジェミニブラスト】!!」くッ!?」

 

動きを止めた箒に狙いを定めてライフルを放とうとするオルコットだったが、ユウナの弾幕にそれを中断、後退して回避するが、その内の一発がビットの1つに当たり爆発する。

 

「やった!!ラッキー♪」

 

「よくも私のティアーズを…!!」

 

ラッキーヒットを喜ぶユウナだったが、それがさらにオルコットの怒りを買い、残り三つのビットに狙い撃ちされる。

 

「うわわわわわわわわッ!?」

 

「ん~…?もしかして!!おーい、箒~!!」

 

「ん?何だ?」

 

「実は頼みたい事が…」

 

そこでオルコットを見て何かに気づいたフカは箒を呼び、それを話すと箒もニヤリと笑う。

 

「分かった、その話に乗ろう。」

 

「うっしゃ!!後は…」

 

箒の協力を得られたフカはフルボトルバスターの中に飛行機が描かれたボトルとガトリングガンが描かれたボトルを装填する。

 

『ジェット!!ガトリング!!ジャストマッチで~す!!』

 

「よっこらしょっと…!!発射!!」

 

『ジャストマッチブレイク!!』

 

狙いをオルコットに定めて引き金を引くと、銃弾の代わりに青い戦闘機が飛んでいき、両翼の下に付いているガトリングガンでビットを攻撃、避けきれなかった二機が破壊される。

 

「これはッ!?」

 

「フカちゃん、ナイスアシスト!!」

 

「イェーイ!!」

 

「だったら私も…!!セット!!ストライカー!!」

 

フカの援護にユウナは打撃形態(ストライカーモード)にしたガンブレイカーをクルクルと回しながら腰だめに構え…

 

「【ブレイブスマッシュ】!!」

 

高速でオルコットへと突撃していった。

 

「なッ!?」

 

オルコットはそれに驚き、すぐさま射線から逃れるが、同じく射線に残っていたビットが直撃を喰らい破壊された。

 

「これでビットはもう使えないだろ?」

 

「甘いですわねッ!!ビットはまだ…」

 

フカの挑発的な言葉に叫ぶオルコットだったが、そこに弾丸を喰らい腰にあった丸い筒状の【ミサイルビット】が破壊された。

 

「そんなッ!!」

 

「悪いけど…そっちの機体情報はもう手に入ってるから。」

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

それを行ったユウナに視線が向いた瞬間、箒が一直線にオルコットへと向かっていった。

 

「くッ!?インターセ「遅いッ!!」ッ!!」

 

それに気づいたオルコットは近接武器を出したが、すぐに箒が持つ剣…フカから貸されたボトルが4つ入ったフルボトルバスターによって弾き飛ばされてしまった。

 

「篠ノ之流、一閃…」

 

「この……素人風情がッ!!」

 

「二断ッ!!」

 

『アルティメットマッチブレイク!!』

 

「ガッ!?」

 

そして上段からの振り下ろしに反応しきれなかったオルコットは、直撃を貰って地面に叩き落とされた。しかし、ギリギリでシールドエネルギーは残った。

 

「ま…まだです…!!まだ私は…!!」

 

「ざ~んねん、アンタはもう終わりだよ。」

 

「ッ!?」

 

『ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!』

 

まだ諦めないと起き上がろうとするオルコットだが、目の前にいたフカは仮面の下で悪者的な笑みを浮かべながらベルトのレバーを回していく。

 

『Ready Go!!』

 

「ま、待って…!!」

 

「やーだね♪」

 

『Hazard Finish!! Tank Tank Finish!!』

 

ゆっくりと右足を上げ、足裏のキャタピラを回す光景にオルコットは恐怖するが、最後にはその足で背中を思いっきり踏みつけられ、エネルギーが0になった。

 

『ブルー・ティアーズのエネルギーが0ォォォォォッ!!この時点でイギリス代表候補生セシリア・オルコット選手の敗けが決まったァァァァァァァァァッ!!何という番狂わせでしょうか!!』

 

『これは誰が勝つか解らなくなってきましたね。』

 

「んじゃ、次はアタシらの決着つけようぜ?」

 

「望むところだよ!!」

 

「すまないが私はこれで棄権する。得物が無くては全力で戦えないからな。」

 

「そっか~…なら、やろうぜユウナ!!」

 

「OK!!」

 

『篠ノ之選手はここで棄権するようですね。しかし、経験が浅いのに代表候補生に健闘してみせたのは凄いことでしょう。会場の皆さん、彼女に惜しみない拍手を。』

 

念のため倒れているオルコットを回収し、ピットに戻る箒に観客達から大きな拍手が送られ、彼女は顔を赤くしながら急いで戻った。

 

その頃、一夏とハルキとレンはというと…

 

「「「ハアァァァァァァァァァァァァッ!!」」」

 

高速で動き回りながら、剣をぶつけ合っていた。しかし、レンは二人と比べてダメージが多かった。

 

「このッ!!」

 

「ふッ!!」

 

ハルキへと剣を振るうが、まるで知っていたかの如く回避され脇腹に蹴りを喰らう。

 

「ぐ…!!」

 

「貰ったッ!!」

 

体勢を崩したレンに一夏が迫り、剣を振るって来るのをフルボトルバスターで何とか防ぐが大きく後ろに飛ばされ壁に激突する直前に足下の空気を蹴って跳躍し、激突を免れた。

 

「二人とも…強いね?」

 

「父さんや母さん、その仲間の人達に小さい頃からシゴかれたからね。」

 

「鬼町さん達が一週間鍛えてくれたけど……スパルタ過ぎだろ…」

 

一夏は一週間鍛えただけで素人顔負けに戦えるとなると、IS操縦の才能があるのかもしれない。しかし、レンが気にしていたのはハルキの強さだった。

 

彼の剣技はまさに実戦を意識したものであり、彼自身の動きも幾度かの実戦を掻い潜ってきた猛者のものだった。つまり、彼は…いや、()()は本物の戦場を経験しているのだろう。

 

「それに小比類巻さんはまだ、本気じゃないだろう?」

 

「……バレちゃってたか。」

 

「ああ、君の今の姿は空中戦には向いていない。でも、君の動きは空中戦を知っている者の動きだ。なら、空中での戦いに向いている姿もあるんじゃないのかい?」

 

そして、まだ出していない手札についてまで、ハルキには既に気づかれていた。

 

(さすがにこのままじゃマズイし……アレを使う時かな?)

 

「うわっちゃあッ!?」

 

そう思っていたレンの隣にフカが吹き飛んできた。後を追うようにユウナもやってくる。

 

「それじゃあ、厄介そうな二人を先に倒しますか!!」

 

「ああ、そうした方がいいだろうな。」

 

「二人には悪いけど、俺もハルキ達に賛成だな。」

 

ユウナとハルキ、一夏に囲まれレンとフカは背中合わせになる。

 

『束チーム囲まれてしまった!!さあ、ここからどう巻き返すのか!?』

 

「フカ……アレを使おうと思うんだけど?」

 

「だったら、付き合ってやるさ…!!」

 

フカの同意も得られ、ベルトのボトルを抜き元に戻してから再び振り始めた。

 

『おや?細長い筒をもう一度フリフリしだしたぞ?』

 

「「「?」」」

 

「「さあ、もう1つの実験を始めようか。」」

 

ボトルを振る事数回、すると振る音がレンのは燃え盛る焔の様な、フカのは戦闘機のエンジン音みたいな音に変化した。

 

「音が変わった?」

 

首を傾げるユウナ。そしてキャップを最初とは反対方向に回し、レンは焔の鳥が描かれた面にして、フカは戦闘機が描かれた面に変えた。

 

『PHENIX!!』

 

『JET!!』

 

再びボトルを引き伸ばし、折り畳むとリスクトリガーの上部スイッチを二度押ししてから、ベルトに装填する。

 

『『MAX HAZARD ON!!』』

 

『PHENIX & PHENIX!!』

 

『JET & JET!!』

 

そしてレバーを回していく。

 

『『ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!ガタガタゴットン!!ズッタンズタン!!』』

 

『ARE YOU READY?』

 

するとベルトが再度問う…準備はいいか?…と。

 

「「レッツ・ビルドアップ!!」」

 

『『OVER FLOW!!』』

 

二人はそれに大きな声で答え、同時に纏っていた鎧がキャストオフされる。

 

「「ッ!!」」

 

「いだッ!?うおッ!?ぐはッ!?」

 

ハルキとユウナはその場をすぐに離れ鎧を回避するが、一夏は間に合わず何個か鎧が直撃してシールドエネルギーを減らしてしまった。

 

「何が起きて『ピュイィィィィィッ!!』ぶほらッ!?」

 

頭を押さえながら体勢を立て直そうとする一夏に、今度は後ろから何かの鳴き声と同時に、後頭部に何が激突した。

 

『織斑君、変則な攻撃に対応できずに次々と当たってしまう!!まるでコントのようだ!!』

 

『実際起きたらドン引きですけどね。』

 

「さっきから何なんだよ…」

 

後頭部を撫でつつ、激突してきたのは何かと思い視線を巡らせると、レンの上にオレンジ色の不死鳥みたいなロボットが、フカの上には四機の小型戦闘機と一機の大型戦闘機が滞空していた。

 

「アレは…新しい鎧か?」

 

「えっと…火の鳥に戦闘機?」

 

不死鳥型のロボットは翼をはためかせて焔を飛ばし、それが先ほどのラビットラビットアーマー同様の手足の鎧へと変わり、自身も変形して胸部用の装甲へと変化した。戦闘機の方も翼を畳み、手足の部分に配置され大型戦闘機もその中央で形を変え、鎧となった。

 

それらをレン達は先程と同じ様に纏っていく。

 

『灼熱のクリムゾンフェザー!!フェニックスフェニックス!!ヤベーイ!!モヤセーイ!!』

 

『蒼天のスカイハーイ!!ジェットジェット!!ヤベーイ!!タケーイ!!』

 

装着を終えたレンこと【ビルド・フェニックスフェニックスフォーム】と、フカこと【ビルド・ジェットジェットフォーム】は翼とジェットエンジンで空へと舞い上がる。

 

『おおーっと!?鎧を変えた二人は何と!!空を飛べる様になったぁッ!!』

 

『資料によりますと、あの二つは空中戦に特化した姿だそうです。』

 

『……………………………………先輩、そんな機密にも近い情報…どうやって手に入れたんですか?』

 

『禁則事項です。』

 

『真顔で言った!?』

 

「さて、続きといこうか、フカ!!」

 

「おうよ!!今のアタシは…負ける気がしねぇぜ!!」

 

「「「「「「「「パクったッ!?」」」」」」」」

 

「ユウナ、戦闘準備!!これより、あの二人を撃破する!!」

 

「了解ッ!!」

 

「俺も行くぜッ!!」

 

観客がフカの台詞にツッコミを入れる中、戦いはまた始まる。一体勝者は誰になるのだろうか?




いかがでしたか?

一「今回は俺、織斑一夏が予告を担当するぜ。つっても、箒はリタイアしちまったから二対二対一なんだよな…やべ、勝てる気がしねぇ…それでも、簡単に諦めてたまるか!!俺は最後の最後まで足掻いてやるぜ!!」


次回【代表決定】


一「でも、なんか嫌な予感がするんだけど……気のせいか?」


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