弊カルデアの幕間事情 (ヤコブ神拳)
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タマモキャット
epi1
タマモキャット
召喚日 2015.8.1
絆 8
宝具 5
スキル 10 1 10
「ご主人、毎日毎日飽きもせず種火種火と。たまにはキャットのことも労って欲しい。サーヴァントにも労基法を訴える権利はあるのではないか」
毎日の日課である種火狩り、それを終えて帰路の途中。マシュの次に長い付き合いである。タマモキャットが愚痴をこぼす。
「いつも苦労をかけるねー。でもキャットの宝具があればあんな不気味な手なんてイチコロだしほんと助かってるんだよ」
「まあ長い付き合いのご主人の言うことならこのキャット文句の一つ二つ三つ心の中でグッとこらえる良妻もどきだけども、やっぱもどきだから敢えて言わせてもらうなら報酬を要求する!」
「そっかそっか、それなら人参を」
「キャット同じ手には引っ掛からない。バーサーカーだからと侮られては困るぞご主人。あまり侮るともれなく酒池肉林だぞ!」
この場合のキャットのいう酒池肉林。それはあの董⚪みたいな欲にまみれたハーレム的なニュアンスではなく、正しくキャットの宝具動揺の血祭りであることは理解している。
ニンジンがきかないとなるとどうしたものか。この付き合いの長さと周回のお供としては弊カルデアのエースと言っても過言ではないキャット。
だがその思考回路の意味不明さと廃テンションの実態を見抜くことはいまだろくに叶わない。一応忠誠は誓ってくれてるし、それなりに絆は深めていると思ってはいるんだけど。
「じゃあキャットは何を要求するの?俺に出来ることなら叶えてあげるよ」
キャットはこの言葉に我が意を得たりと耳をピンと立てると尻尾をぶん回しながら吠えた。
「ご主人を1日独り占めにする権利を要求する!」
先日のキャットの言葉を聞き入れ、どうにか周りにも事情を説明し、サーヴァントのストレスフリーな職場環境を作るためと1日の休みを作ることに成功した。
「ご主人!今日はよろしくなのだ!」
そういって、今はもうあまり見なくなった巫女服でマイルームに入ってきたキャット。
「あ、その服懐かしいね。最初の頃はずっとそれ着てたよね。急に引っ張り出してどうしたの?」
「うーむ。見慣れている裸エプロンではやはり魅力にかけると思って初心に帰って巫女服で魅了しようと企んだ次第である。キャット魅了ないけど魅了されるがいいご主人!」
「キャットはおしゃれだから。何きても似合うよ」
みんなが服装をあまり変えない弊カルデアにおいて、およそコスプレにも近い極端さだが衣装を変えるキャットはおしゃれな部類なのだろう。
正直、1日中いつものエプロン一枚でいられるというのも健全な思春期男子としては耐え難いからどうしようという不安が前日からあったが杞憂に終わったようだ。
「さて、ご主人。今日は1日アタシに振り回されるといい!」
「いつも助けてもらってるからね。お安いご用だよ」
「そうだな。誰よりも種火を狩尽くしたキャットとしては鼻が高いぞ」
二人でマイルームを飛び出す。
慌ただしい1日が始まった。
まず、メディカルルームに興味があると言って、ドクターのところへ突貫し、サーヴァントなのに健康状態や、身体能力を計ったりした。ご主人も一緒にとメディカルチェックをし、どこがどういう結果なのか。彼女に伝わるかわからないが聞かれるままに答えた。
「ご主人、この数値は少し低いのではないか?」
「ご主人、運動不足が祟っているぞ。キャットとたまには走り込むぞ」
そのあとはキャットの忠告に従って、午前一杯簡単なトレーニングをした。
キャットはトレーニングのいろはを知らないとのことなので、レオニダスに頼んでトレーニング表を作って来てもらったとのことだ。
たまたまシミュレーションが空いてるとのことだったので、二人で使わせてもらった。いつもは他のサーヴァントが何かしら模擬戦やトレーニングを行っていたりするのだが調度いい。
『マスターレオニダスの今日からできる筋肉トレーニング!!心が折れさえしなければ、君も今日からスパルタですぞおおおおおお!!(初心者編)』
文章にてかかれているはずなのに所々熱気を感じるトレーニングメニューをいい汗を流しながらキャットと終える。その後、軽くシャワーを浴びるといつの間にかメイド服に身を包んだキャットが待っていた。
「ご主人!お腹が空いたのだ!食堂にいってニンジンを要求するとしよう。ついでにご主人も何か食べるといい。ニンジンはやらないぞ?」
食堂の今日の当番はエミヤ。一番多様な文化の食事を作れる弊カルデア随一のシェフである。他にもマルタやブーディカ、頼光といった面々が立つこともある。
「エミヤ。今日の日替りランチはなに?」
「おやマスター。タマモキャットとお揃いかね。ふむ、今日の日替りランチはワイバーンのモモ肉ソテーだったのだが、先ほど材料を切らしてしまってね。他のものでよければオーダーに答えるが」
「ではエミヤよ。アタシはニンジンを所望する。ご主人は運動後だからうーむシェフにお任せする!」
「心得た」
そのあと待つこと十数分。思いのほか早く運ばれてきた料理は
「肉じゃがだ。有り合わせのものですまないな。だが君も日本の出身だろう。この味は懐かしいのではないかね?」
オカン...
思わず心を射抜かれる気遣いのある一品である。キャットはニンジンが多目に入れられている。
「これは運動後にいいものなのか?」
「適量であれば、大抵の食事で害はない。だが、こういった汁に溶け込むものは、水溶性や熱に弱い栄養素も余すことなく効率よく摂取できるからな。カレーなどもその類いだ。流石に今からカレーでは時間がかかってしまうのでね。それと細やかながらマスターには夏みかんのシャーベットを、キャットにはにんじんジュースのジュレを。」
ホントオカン……!
エミヤのオカンスキルに感極まりながら食事を終える。
食後ということもあり緩やかな眠気が襲ってくる。だが、今日はキャットのための1日。それを堪え彼女の要望に答えていこう。
「キャット、次はどうしたい?」
「んー可能なら日差しの当たる縁側でお茶でも啜りながら眠りにつきたいのであるが、それは難しい相談。なのでご主人の部屋に赴くとしよう」
マイルームはいつも通りの装い。自分の慣れた空間である。キャットはどこから出したか湯飲みにお茶を注ぎはじめた。
「ほれご主人。冷めないうちにぐいっと一杯。お茶うけも完備してある。できるキャットはやはり違うな」
キャットがくれた湯飲みを手に取り火傷をしないように飲んでいく。喉を通って体の芯から暖まる。
「美味しい。けど、これって紅茶だよね?」
「ふふっ、そこに気づくとはやはりご主人お目が高い。何を隠そう隠す気もないがこれはハーブティー!薬草大好き緑マントから頂戴してきたものだ。疲労回復!滋養強壮!精力増大!あるかは知らないが多分万能だから好きなだけ飲むといい」
「湯飲みで紅茶ってのもまた乙だねえ。ふわぁ」
おっと思いのほかマッタリとした空気に思わずあくびが、自覚したのと同時に強い眠気が襲ってくる。
「ふむご主人もおねむと見える。この安眠ハーブ効果半端ないな。緑マントにニンジンをわけてやるか。ともかくご主人寝るならせめてこの胸の中で!」
いや、それは不味いだろうユダと言葉にするのも億劫な眠気に襲われ、意識が闇に落ちていく。
目が覚めた。目の前にキャットの顔があった。ニコニコとした顔はどうやらこちらの顔を散々見ていた証左なのだろう。
そして背中の柔らかい感触。これはあれだ。そう全世界の男子の夢というか理想のあれだ。ひざまくら。しかもこのキャット最終再臨済みだ。ふとももは柔らかい。それよりも、顔の真横でひらひらするエプロン。絶対に目線をそちらにやってはならない絶対にだ。
「おはようご主人。悪夢は見れたか。キャットはご主人のいまの百面相だけでご飯3倍は食べられたぞ。ごちそうさまだ」
心からそういってるだろうキャットのストレートな言葉に面食らって、思わず目をそらし、体を起こす。
「キャットはご主人のひざまくらで脚が疲れてしまった。マッサージを要求する!」
「え、俺がキャットのマッサージ?」
「当然、ご主人のせいで疲れてしまったのだからご主人がもみもみ、全身もみもみするのは当然だ。この要求が通らないならご主人の種火はもはやなくなるも同然。さあはやくはやく」
そういうとキャットは俺のベッドの上でうつ伏せに寝転がる。
妖艶に揺れる尻尾。こいつが少し間違えれば、この物語はあっというまにR指定行きだ。
COOLだ、COOLに切り抜けねば。
「きゃきゃ、キャット。その体勢はまずいんじゃないかな?」
「何が不味いのだ?このままご主人に襲われてもアタシはウェルカムだし、チキンなご主人の今夜からのおかずにされても特に問題はないぞ?」
「それは本当に不味い展開だし、冗談でなくなる場合もあるので、代案をお願いします」
俺は、なんてチキンなんだ……
「まあここでこうなることは聡明なるキャットには予想ずみ。むしろ襲われたらバーサーカー同盟の名のもとキャット火あぶり斬殺もワンチャンあったぞ。もちろんその場合は我が生涯に一片の悔いなしと果てるしかないのだワン」
「バーサーカー同盟?あまりきいてはいけないような」
「では代案として、ご主人をアタシがマッサージする。さあひれ伏すがいい」
「え?待って俺」
流石に筋力B+。全く抗うこと叶わずうつ伏せのままマウントをとられてしまった。
「さてご主人!キャットの肉球で極楽へと導いてやるぞ」
思いのほか最高に気持ちよくて、とろけそうなマッサージが始まった。
開始30分。もはやキャットの技量に身も心も溶かされた俺はあることに思い至る。
なんだか、今日は振り回されたって言うより
「キャットに尽くされた1日だったような」
「んにゃ?」
「健康状態調べられたり、運動に付き合ってもらったり、食事やハーブティーの用意。このマッサージもだけれど、なんだか俺ばっかりいい思いしてない?」
「ご主人のような勘のいいガキは嫌いだぞ。うむ、ばれてしまっては仕方ない。今日はキャットのための、ご主人ご奉仕デーに他ならないのだ」
「最初から最後まで?」
「うむ、ご主人は毎日毎日飽きもせず種火以外にもあれこれ忙しい身。その疲れに野性の勘で気づいたキャットがあれこれ用意させてもらった。流石できるキャット」
「ご主人、キャットはご主人が幸せならそれで万事オーケイな一途な一匹猫なのだ。だから今日のお休みはキャットにとってもいい休日だったのだワン。だからアタシはニンジンを要求するが、それ以上にご主人を要求する」
「そっか。色々準備までしてくれてありがとう。キャット。これからは日頃から休むように心がけるよ」
自分の疲れを見抜いて、振り回すフリして癒してくれるだなんて、流石に付き合い長いだけある。
「周回の相棒として当然。誰よりもキャットがご主人といたのだからそれがわからなくて、なにがキャットか。ご主人が辛いとアタシも辛い。キャットは楽しいことと嬉しいことしかわかりたくない。世界を救う前にご主人を救え。流石のアタシもこれ以上は恥ずかしいぞ。理性なんてないのに恥ずかしいとは不思議なものだな」
「ああ、俺も恥ずかしいよ。でも本当に嬉しい」
「顔が赤いぞご主人。アタシの悩殺ボディーを背中で感じているからか。おっと迂闊に動くなよ。服と擦れるとアタシも野生が覚醒しかねないから気を付けるべき」
「なっ!?なにいって」
話をそらすかのようにもっと恥ずかしいことをいいはじめたキャットの言葉に思わず体を身動ぎさせる。
「ひゃんっ!…………ご主人、ご主人はなにも聞かなかった。いいな。アタシの極楽マッサージが誤って秘孔をついて本当に極楽に召されたくなければ頷くのだワン」
こくこく
「いいご主人だ。それではキャットお手製の料理を用意してある。朝のメディカルチェックを参考にしたエミヤ印のメニューを再現したフルコースだ。準備をするからそこでお座りだぞ」
このあとも二人でわいわいと騒ぎながら、夕飯に舌鼓を打ち、久方ぶりの休みを過ごさせてもらった。
キャットのあの声だけが脳裏から離れない。
一番お世話になってる周回のエースオブエース。
意味不明な発言は多いができるキャットなので、古参として結構なんでも許されてる。
最近は周回の後輩にニトクリスがきたので、メシェド様と戯れる姿が散見される。
カレスコ凸をつけており、3waveを〆るのは彼女に任せきり。
裸エプロンが馴染みすぎてエロスを感じなくなりつつあるこの頃。
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