仮面ライダーディケイド ~Answer~ (survive)
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Answer

 これでよかったのか?

 

 俺が求めた『答え』は……。

 

 こんな、結末のことだったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荒野。

 命の息吹というものが微塵も感じられない世界の中で、一人の何かが立っていた。

 黒い鎧に身を包み、黄金の角を携えたそれは、闇のごとく漆黒に染まった大きな瞳で、荒野の先、それも遥か彼方を見据えていた。彼の後ろには靄が立ち込め、まるで何かを待つかのようにじっと佇んでいる。

 拳を握りしめ、辺りから感じる殺気に腰を落とす。

 刹那、呟いた。

 

「――――世界は、俺がもらう」

 

 その呟きと同時に、彼の後ろの靄が晴れた。

 そこにいたのは、夥しい数の人、人。それぞれが自分の宿す力を『仮面』に変え、鎧を身にまとい戦士と化している。

「……本当に、これでいいのか?」

 そのなかの一人、まだ変身していない黒いハットをかぶった若い青年が、彼に確かめるように問いかけた。本当に、後悔していないのか。今なら、引き返せるのではないか、と。

「……」

 彼は、それに答えず黒い瞳を前に向けたまま走り出した。

「……ったく、やるしかねぇみてぇだな」

 諦めたように、青年は嘆息すると懐から赤と銀の装飾が施されたバックルのようなものを取出し、腰にあてがう。すると、バックルからベルトが飛び出し青年の腰に巻きつく。と同時に、頭の中で遠くの存在と意識がつながるのを感じた。その意識に向かって、青年は呼びかける。

「フィリップ!出番だぞ!」

『……』

 呼びかけられた意識、『フィリップ』は、しかしなぜか躊躇うかのように押し黙ったままでいる。違和感を感じ、青年はもう一度呼びかける。

「変身だ、フィリップ。早くメモリを――――」

『……やはり、僕にはできない……』

 呼びかけに拒絶の意思を見せるフィリップ。その声はどこか、悲しみやもしくは憂いを帯びていた。

『本当に、これしか方法がないのだろうか、翔太朗(しょうたろう)……僕たちの力は、こんなことのために与えられたものなのだろうか……』

「……今さら何言ってんだ、フィリップ」

 後悔を隠し切れず、感情を吐露するフィリップを青年、翔太朗は戒めた。

「世界を救うにはこれしかないんだ。俺たちの街を、風都を守るためにも……時には残酷にもなる」

 翔太朗は、フィリップの様子を見かねてか先ほど身に着けたベルトを外し、別のバックルを取り出した。それは、先ほどのベルトの右側が無くなっている形をしていた。

「いいぜ、フィリップ。お前がやらねえなら、俺一人でも……!」

『翔太朗……』

 フィリップの呟きを聞きながら、翔太朗は懐から黒い何かを取り出した。

 J、のシンボルが描かれたその黒い物体のスイッチを押し、装置を起動させる。

 

 ―JOKER!―

 

 同時にベルトを身に着け、バックルにその物体、『ジョーカーメモリ』を挿し込む。ベルトから待機音がながれ、翔太朗もそれに合わせてポーズをとる。そして、

 

「――――変身……!」

 

 掛け声とともに、ベルトを展開させ機能を発動。

 

 ―JOKER!―

 

 翔太朗の体を黒いボディが包み込み、そこに赤い複眼の戦士が立っていた。

 彼の名は――――

 

「仮面ライダー……ジョーカー」

 

 彼の変身と同時に、そこにいるすべての『仮面ライダー』が走り出した。先ほどの黒い戦士と同じ、ある一点を目指して。

 翔太朗……仮面ライダージョーカーは、その姿を見ながらため息をつく。

「『監視者』ってのも、楽じゃねえな……さぁて、行くぜ……?」 

 そして、走り出す。

 誰かの、そして己自身の声を聞きながら。

 

 

 

「ディケイド……世界を救うために――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――消えてくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、俺たちの出した『答え』――――

 

 



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