ザ・ウォーキング・デッド in Japan (永遠の二番煎じ)
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シーズン1
終末の始まり


今回特に戦闘描写はありません。



ここはアジア極東に位置する日本の○○県である。

 

俺の育った○○村は山深く、一番近い郊外で同県○○市から自動車で2時間もかかる。

下手すれば土砂災害で陸の孤島になる場所だ。

俺はその○○市の会社まで電車で3時間かけて通勤していた会社員だ。

最近母親が亡くなり、一人で山奥の一件屋に暮らしている。

兄弟は弟がおり、俺より早く結婚もしていて婿養子として他県にとついだ。

 

俺はいつものように朝出勤前地元のローカルチャンネルのテレビでニュースを見ていた。

リポーター「ここはすごく大変な状況です!!!」

それは週初めの月曜の朝のニュースだった。

 

リポーターはヘリコプターから解説していた。

それは俺が通勤している会社を撮影しながら(通勤している会社の周りはビル群。主に東京23区や大阪市のビル群をイメージしてもらえればいいです。)であった。

 

カメラマンがヘリコプターから空撮していた映像をちらっと見た。

そこには迷彩服を着た人たちが市民に向け、軍用ライフルを発砲していた。

「なんだ、これ映画の宣伝か?まあ、地域活性化になるならいいけどな。」

テレビのコマーシャルだと思い込み、それが現実に起こっていることだなんて信じてなかった。

俺は朝飯を自分で作り、食べ、通勤電車に乗るためにマウンテンバイクで無人の最寄駅に行く。

 

無人駅なのに入口に駅員が一人立っていた。

「あれ、なんで無人駅なのに駅員がいるんだ?」

俺はいつもみたいに先に駐輪場に自転車を止めに行かず、自転車に乗ったまま駅員に聞いた。

「すいません、何かあったんですか?」

「君!!!政府がひいた戒厳令を知らないのか?」

「ええ、そういえば元々ここは過疎で人が少ないですけど、今日は俺だけですか?」

駐輪場を見ると駐輪警備のおじさんすらいなかった。

 

すると駅員は慌てて言った。

「君、郊外に行くつもりかい?」

「はい・・・今日会社なんで。もうそろそろ電車来るんで。それでは。」

俺が一度誰もいない駐輪場に自転車を止めに行こうとした時であった。

 

「電車は来ない!郊外に行くのは辞めておけ!!」

駅員は叫んで俺を止めた。

「え!どういうことですか?」

「○○線の○○駅あるだろ?」

「ええ、そこは電車で通過してもらわないと会社に行けない途中駅ですけど。」

「自衛隊と在日米軍がそこで防衛線を張ってる。」

 

俺は駅員の言っていることが理解できず受け流した。

「はあ、そうですか。」

 

駅員は駅の入り口をチェーンで封鎖し、チェーンに張り紙をしながら言った。

「君もこの県を出たほうがいいぞ・・・」

駅員はそう言って自前の自動車で去って行った。

 

始発が来なければ会社には間に合わない、だが電車が来ることはなかった。

会社に遅延で遅れることを電話で連絡するが繋がらない。

 

次に同期の会社の同僚に携帯で電話した。

他にも会社関係の人間全員に電話したが誰も通じなかった。

 

「ったく、会社どうなってんだ?」

弟に電話をするが繋がらない、混んでいるのだろうか。

 

今の状況が理解できず、一度家に戻ることにした。

俺は家に戻り再び、ローカルから全国ネットのチャンネルにテレビを回して見た。

俺にはフィクションにしか見えなかった。

 

リポーター「見てください。ここが××県××郡の最前線です。自衛隊が必死に封じ込めようとしています。」

その映像には迷彩服を着た人々が血だらけの特殊メイクをした人々を蜂の巣にしている映像に見えた。

自衛隊員「危ないから下がって、避難してください。もうすぐ米軍が空爆に来ますから。」

 

すると爆音が鳴り映像が途絶えた。

 

番組MC「とにかく、家からは出ないようにしてください。」

テレビ画面下には各県各市町村の避難勧告が出ていた。

そこには避難勧告に○○県○○市も画面に表示されていた。

 

「なんだこれは・・・ドッキリか。」

それから携帯の電池が無くなるまで使う事はなかった。

 

それから二週間集落で高齢者の仕事を手伝った。

この集落には20世帯住んでいるがほとんど高齢者でテレビがあるのは俺の家だけであった。

他の集落の人々は新聞で情報を入手していた。

しかし俺が失業する二日前の土曜日が配達で届いた最後の新聞だった。

 

俺のテレビも山奥なためにローカルと全国ネットの2つのチャンネルしか映らなかった。

以前俺は郊外にある会社や同僚の家でテレビを見て情報を入手していた。

 

聞いていたラジオも二週間前にすべて周波が途絶えた。

俺は○○県○○市を気になり、行くことにした。

 

村長「和成行くのか?再就職か?」

俺「はい、ここは自給自足で成り立っていますが、電気も通らなくなり蛇口から水もでなくなった。水は井戸があるから大丈夫ですが、一応○○市まで行ってみます。」

村長「そうか、帰ってきたら状況を教えてくれ。私達の集落は今や陸の孤島だからな。便利な物資も二週間は村に届いてない。」

 

俺は市に行くために村長の軽トラを借りた。

村長は俺が市に向けての出発際、軽トラの後ろで最後まで後ろで手を振っていた。

俺「なんていい村なんだ。」

俺は田舎ならではの優しさを久しぶりに感じた。

 

俺は軽トラで一本しかない山道を下った。

「車一台止まってすらねーな。」

下って行く途中に土木林業の会社の作業場を見たが車いやトラック一台すら停車していなかった。

 

俺はさらに山道を下った。

すると土砂崩れで一本道が通れなくなっていた。

「この二週間大雨なんて降ってなかったぞ。」

俺はしぶしぶ村に戻った。

 

俺は役場にいる村長に説明した。

村長「そうか・・・まあ救助が来るか道が開通するまで待つしかないな。」

それからさらに一週間待ったが誰も集落を助けには来なかった。

 

俺はもう一回村長に相談した。

村長「そうか、もう一回行くのか。」

俺「今度は軽トラックを前行った土砂で封鎖された場所に止めてそっから歩く。そこを越えれば俺は歩いて市まで行ける。」

村長「分かった、では改めて頼んだ。」

 

俺は登山用リュックに三日分の食糧・包丁・寝袋・組み立て式テント・着火マン・を入れて軽トラの助手席にリュックを入れてまた車で下山した。

 

二度目の出発の際も見届けてくれた。

 

土砂崩れでふさがってる道の手前で俺は軽トラを止め、助手席のリュックを持って降りた。

「こりゃあ、大変だな。」

 

よくニュースで見る山道が土砂崩れで通れない状態を想像してもらえればいいです。

 

俺は軽トラの荷台から縄を取り出し、土砂崩れした上を死ぬ気で上った。

そして縄を木に縛り付け、自分の腰にもしばり横断した。

 

横断して無事土砂崩れを越えて、腰縄をほどいた。

渡ると山道だけが続いてた。

 

「こっからは半日歩かないとな・・・」

俺はリュックを背負い車一つない山道を下山していた。

 

「まるで俺一人が人類で生き残ったみたいじゃねーか。」

俺は一人事をぶつぶつ言いながら下山していた。

 

すると市に近い村が見えてきた。

「2,3年ぶりに見た村だな。」

この村は電車が通っておらず、電車通勤だったために村を見たのは久しぶりだった。

 

「すいませーん、誰かいませんか?」

妙に静まり帰った村であった。

 

この村も俺の住んでる村同様に引き戸の木造建築の家が多かった。

ある家の引き戸が開いていた。

そこから異常な異臭がした。

引き戸には血痕の後が残っていた。

「うわ、怖いな・・・」

俺は入ることにした、律儀に靴を脱ぎ畳の部屋を歩き回った。

この家は意外に大きかった。

まあ、田舎ならではの大きい家の造りだ。

 

異臭がすごくなってきた時、俺は見つけてしまった。

俺は大きな居間でたくさんの(6,7体)死体を。

俺はその瞬間吐いた。

 

死体には顔や頭が潰されたり、刺し傷もあった。

そこそこ腐敗も進んでいた。

 

俺はサブカルチャーでしか見ないと思っていた、しかし実際見ると少なくとも今日はご飯は食べられないだろう。

 

「なんだ、これ。」

俺はいろいろ考えた。

なぜ警察がいないのか、なぜ大量虐殺が行われたのか、なぜ村人がいないのか、なぜ、なぜ・・・

 

俺はリュックから包丁を持ち出し、右手に持ちすぐに帰ることにした。

俺はすぐにその家から出て来た道を戻ろうとした。

 

「おい!!!」

 

誰かの声が聞こえた。

俺「どこだ?」

?「ここだ!!!死人が来る前に早く来い!!!」

 

俺は周りを見渡した。すると家の窓の二階から男が見えた。

その家の窓にはハシゴが備えてあった。

俺はすぐにそのハシゴに上り、二階から入った。

 

男はハシゴを窓から回収し、収納した。

?「あんた、どこも噛まれてないか?」

俺「ああ、何があったんだ?」

?「あんた何も知らないのか?」

俺「いや、俺は異臭がした家に入ったら死体がたくさんあった。」

?「あれは死人を始末したんだ。」

俺「お前がやったのか?」

 

俺は右手に持ちづけている包丁を構えた。

?「待て!待て!早まるな。」

俺「どういうことなんだ?一体どうなってる?」

?「とりあえず、まだ文明時代だった頃の自己紹介をしよう。」

?はそう言って俺を落ち着かした。

 

?「俺は中田勇気だ。27歳でこの村で役所の職員だった。」

俺「俺は青井和成だ。25歳で○○市の○○会社で働いてる。」

 

中田「ああ、二週間前に消滅した市だな。」

俺「何を言ってる?一体何が起こってるんだ?」

俺は非日常すぎてわけがわからなかった。

 

中田「あんたもしかしてこの上の集落に住んでるのか?」

俺「ああ、今は土砂崩れで陸の孤島だ。」

中田「じゃあ、今のところ安全てところだな。」

 

中田は話してくれた。

中田が見たニュースによれば三週間ほど前の土曜日、突然○○市で謎の病気が発症したらしい。

と同時に世界各地で謎の病気は発症したらしい。

俺は土日は集落で農業をしていてテレビも2つのチャンネルしか映らなかったから見ていなかったから知らなかった。

日本では謎の病気が○○市だけであったために自衛隊や在日米軍が総動員して健常者と感染者を隔離していた。

だが日曜日、感染者が増え、日本政府は迅速に感染者を弾圧することに決めた。

そして月曜日朝在日米軍は日本政府に許可なく○○市を空爆をした。

しかし月曜日には他県にも感染は広がっていたらしい。

 

中田「見てみろ青井。」

中田は二階の窓から歩いてる人に向けて指を指した。

俺は大声で声を掛けてみた。

「おーい!」

するとこっちを振り向いた。

 

中田はすぐに俺の口をふさいだ。

中田「ばか!あいつは感染者だ。」

俺「あれがか・・・」

よく見ると左手に食いちぎられた後があった。

 

俺「そういえばこの家の階段は?」

俺は階段を見てみると階段に分厚い板が何枚も釘やテープやらで打ちつけられ上り下り出来ない状態になっていた。

俺「だからハシゴを使っていたのか。」

中田「ああ、一階は突破される危険があるからあえて密室にしたんだ。」

俺「なるほど。」

中田「やつらが空を飛ばない限り、ここは無敵の要塞だ。」

 

中田は俺のリュックを気にしていた。

俺「缶詰あるけど・・・」

中田「いいのか?」

中田はうれしそうに聞いてきた。

俺「ああ、お前がいなかったら俺は生きてないかもしれないからな。」

中田はズボンのポケットからスイス製のナイフを取り出した。

 

俺「いいナイフだな。」

中田は缶詰を開けながら言った。

中田「親父の形見だ・・・」

俺「それはすまない。」

中田「いや、いいさ。」

俺「今日泊ってもいいか?」

中田「ああ、隣の部屋を使え。」

俺は泊らしてもらい、明日○○村に帰ることにした。

 



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死人

中田勇気・・・
ZDAY前日まで27歳で市の近郊近くの故郷の村で役所の職員だった。
地元の村は30世帯くらいの規模だ。集落と言っても過言ではない。


青井和成・・・25歳でテレビ会社の警備員として働いた。
しかしZDAY朝都市部への米軍の空爆により、会社は破壊され、職を失った。

今回は中田回です。
ZDAYの悲惨な状況を主に書きました。


中田に泊めてもらった翌朝、なぜあの日『ZDAY』から三週間以上もここに居るのか聞いた。

中田「俺も謎の病気が発症した日、ちょうど昼頃、家の臨時ニュースをテレビで見た。」

 

ZDAY・・・

中田によればデマかもしれないと思ったが○○市が近かったために感染爆発が起きる前に県外にホテルを取り、事態が収集するまでそこに逃げようと両親が提案した。

しかし、県外に出る国道各所に自衛隊による検問が設置され、大渋滞に巻き込まれたらしい。

中田は両親を車に残して検問所に行った。

 

自衛隊員「残念ですが、外に出すわけにはいけません。」

県民「なぜだ!!自衛隊は国民を守るためにあるんだろ!!こういう時こそ働け!!!」

すると見かねた米兵が抗議していた県民を射殺した。

それを見た他の県民たちはパニックに陥り逆方向に逃げた。

 

中田(これはやばい状況だ・・・俺も両親を安全な場所に。)

全身の毛穴という毛穴から汗がにじむ。

 

中田はすぐ両親が乗ってる車に戻った。

父親「勇気、なにがあったんだ?銃声が聞こえたぞ。」

母親「それに人がみんな車が渋滞している逆方向に逃げたわ。感染者が出たの?」

両親は心配そうであった。

中田「父さん・母さん逃げよう!」

 

父親「どこに逃げるんだ?」

中田「自宅なら山奥だから安全だよ。」

父親「あんな病院もない村に戻るのか?」

母親「食料はどうするの?」

中田「とりあえず、車から降りて逃げよう。」

父親・母親・中田は県内の中心部に逃げた。

 

県内の中心部は意外に人が多かった。

中田(ニュースのことをデマだと思ってるやつが多いんだな。)

そう、県内の中心部は普通に人が生活していたのである。

 

三人は手分けして必要な物資を調達し始めた。

待ち合わせは一応百貨店にした。

 

中田は謎の病気があるのかデマか本当か確かめたかったために大きな病院に行った。

そこには病院を包囲するように自衛隊と警察隊が陣取っていた。

中田は遠くから見ていた。

 

すると入口から何十人もの人々が逃げてきた。

その中には健常者もいた。

自衛隊員「感染者も他の病人も健常者も殺すな!ここで食い止めろ!!」

病院からは数十秒で数百人の人々が出て来た。

感染者もいたが人が病院前であふれかえり見分けがつかなかった。

だが自衛隊員や警察官たちは人との競り合いで噛まれ、ようやく銃を発砲する人もいた。

 

自衛隊員「やめろ、発砲は許可が降りていない!!」

しかし、発砲はあくまでも上に向けての威嚇射撃であったが、感染者に対しても逃げる人にとっても逆効果だった。

 

もはや事態収拾は不可能だろう。

 

感染者は次々と現れ、銃声を聞いて逃げる人々は建物内に避難していた。

 

中田(謎の病気は本当だったのか、やばいことになってきたな。)

 

中田は携帯で母親に電話した。

母親「勇気?今百貨店で父さんと一緒よ。」

中田「分かった、今から行くよ。じゃあね。」

 

中田は待ち合わせの百貨店に向かった。

しかし百貨店は閉まっていた。

オーナーは警備員に言われ、感染者を侵入させないように百貨店を閉めさせたのである。

一階の入口には多くの逃げ惑う人々が押し寄せていた。

 

中田(これじゃあ、拉致があかねーな。どうする・・・)

すると父親から電話がかかってきた。

父親「外で暴動が起こってるようだが私達は百貨店にいて安全だからお前は逃げろ。」

中田「父さん、分かった。また電話するよ。」

これが中田と両親との最後の電話だった。

 

中田はすぐに百貨店の入口に群がる人々を見た後、病院から出来るだけ遠く離れた。

すると路地裏に警官が壁にもたれ苦しそうに座っていた。

 

中田は駆け寄って行った。

中田「大丈夫ですか?」

負傷した警官「逃げてください。」

中田「しかし、手当しないと。」

 

負傷した警官は左肩に裂傷を負って血を流していた。

負傷した警官「いいですか、感染者に噛まれたら終わりで、感染者は頭に致命傷を加えれば死ぬ。まあゲームや映画と同じ原理です。」

負傷した警官は中田に警棒を渡し、拳銃の銃口を口に加え引き金を引いた。

 

中田はその瞬間を目の当たりにし、吐いた。

中田「嘘だろ・・・」

だがもう銃声は鳴り響き、県民の悲鳴で路地裏の銃声には誰も気にしなかった。

 

中田は乗り捨てられた原動機付き自転車で家に戻った。

 

中田は両親の携帯に自宅から電話をしたが両親が携帯電話にでることはなかった。

中田は両親を失い、悲しんだ。

しかし悲しんでいる暇はなかった。

 

住んでいた村には中田しかいなかった。

村人は県内の秩序がなくなったことに嫌気がさし、全員県外をめざし出て行ったのである。

中田は実家で休んだ。

その際家すべてに鍵を厳重に掛けた。

 

ZDAY二日目・・・

中田は玄関で物音が聞こえ、起きた。

(まさか、人かな、強盗か、救助か、いや考えるのはよそう・・・)

中田は台所にあった包丁と警棒を所持した。

包丁は包丁専用ケースに入れて後ろズボンにぶら下げた。

中田は警棒を右手に持ち、おそるおそる玄関を開けると感染者だった。

「おはようございます。」

感染者は小さなうめき声を言いながら玄関に入ってきた。

(もうこの人は人間じゃないのか・・・これは殺人罪にならないよな・・・)

 

中田は人間の心を忘れ、腹をくくった。

いや何かの大切なスイッチをオフにしたのだろう。

中田はすかさず玄関で警棒で頭を殴ったが致命傷まではいかなかった。

中田(この程度の力じゃあだめか、ここじゃあ狭くて力を振り絞れないな・・・)

中田は逃げ周り、居間で待ち伏せして一人ずつ頭を力をふりしぼり頭を殴りつぶした。

 

まだ二体いた。

中田(くそ、力が持たない。嫌だけどやるか・・・)

中田は後ろポケットから包丁を取り出した。

中田は二体相手に包丁で顔を刺しまくった。

着ている服が赤くなる。

 

中田(まったくおかしくなるぜ・・・)

 

中田は二階のある家で二階が広く見渡しのいい家を選び、拠点を作った。

中田は階段を一階と二階の両方から厚板で頑丈に閉じた。

厚板は元の住んでた家から持ってきた。

厚板はもともと台風の影響に使う道具であった。

そして工事現場にあったハシゴを使って二階の窓から入った。

 

缶詰も村中をあさり、二週間分確保した。

その際感染者も数人しかいなかったために戦闘を避けて力を温存しながら物資を確保していた。

中田(これでしばらくは大丈夫だな。)

 

昼くらいに土木業者のトラックが三台くらいが○○市に向かって走って行った。

土木業者たちはテレビを二日見て二日目で現実を見始めて行動に移したのだろう。

安全な場所つまり県外を求めて。

中田(まあ、ここにいてもなにもないからな。)

中田は事態収集まで、この二階で籠城するつもりであった。

 

この日は爆音が○○市方面で鳴り響いていたために中田も感染者を駆逐していると思っていた。

 

ZDAY三日目・・・

中田は窓の外を見た。

感染者が数体いた。

中田(今日は銃声がしないな・・・まさか感染爆発か・・・)

中田は感染者の目を見計らい静かに一本道の山道を登山した。

 

音を立てるのは危険であったために徒歩で○○村を目指した。

その際スイス製ナイフに警棒、金属バットを持って行った。

○○村に向かってる道中は何も遭遇しなかった。

だが土砂崩れで通行止めになっていた。

 

中田「畜生!!!!!!!!!!!」

中田は悔しく叫んだ。

 

○○市への米軍の爆撃の影響によって地響きで土砂崩れになったのである。

中田は仕方なく下山した。そしてまた自分の作った拠点でしばらく様子を見ることにした。

 

ZDAY四日目以降・・・

五日目・六日目と日を増すごとに村にいる感染者は減っていった。

中田は水道が止まったので川で体を洗ったり、洗濯をしていた。

夜はろうそくに火をつけて暮らした。

食べ物は缶詰があったが、食べれるキノコや木の実などを山で探したりして缶詰を節約した。

しかし缶詰もなくなり、野良犬を狩猟したりして食はまかなってた。

中田の衣食住は変化した。

たまに感染者はうろついていたが一体行動が多かったために頭を警棒でつぶした。

 

ZDAY二十四日目・・・

中田「そんで今に至る。もう何曜日かも覚えてない。」

俺「じゃあ俺の住んでる村に来るか?」

中田「いいのか?」

俺「ああ、自給自足だけどな。それにゾンビのことで村が心配だ。」

 

俺たちは○○村を出発するためにここを出ることにした。

中田「包丁だけじゃ危ない、これ一応もっとけ、護身用だ。」

中田は金属バットを俺に渡した。

 

俺「俺は人を殺したことない、いや殺せないぞ・・・」

中田「心配ない、男は危ないと感じた時本能で体が動く。」

中田はそう言ってハシゴから降りた。

 

俺と中田は登山し始めた。

道中に感染者がいた。

感染者はずっと這いずっていた。

俺「おい、こっちに向かってくるぞ。」

慌てる俺。

 

中田はおかまいなしに這いずってる感染者を警棒で頭をかち割った。

俺「うわっ・・・」

俺はその光景に引いた、そしてまた吐きそうになった。

中田「今のがお手本だ。俺だって最初警官が1メートルの距離で自殺した時は吐いたよ。」

するともう一体這いずっている感染者がいた。

中田「俺がやったみたいにやってみろ。」

 

俺は目をつぶってバットを振り上げて脳天をぶっつぶした。

俺「・・・人を殺すのは初めてだ。」

中田「もう人じゃない。大丈夫だ、殺したことにはならない。」

中田は冷静に言った。

 

引き続き登山しながら話した。

俺「こんなところにゾンビがいるなんて。昨日道を下った時通ったがいなかったぞ。」

中田「きっと道じゃない山の傾斜から登って来たんだろ。」

俺「こんな傾斜のある森の中をか?」

中田「だから這いずってたんだろう。」

 

すると土砂崩れの場所に着いた。

近くの木に括り付けてあった縄を解きながら俺は言った。

「お前から行け、縄を腰に縛ってやるよ。」

俺は腰縄を縛ってあげた。

 

中田「・・・俺高所恐怖症なんだ。」

俺も自分の縄を縛りながら言った。

俺「二階に拠点を構えてたのにか?」

俺はちょっとした矛盾に笑った。

中田「死ぬよりましだ!」

 

中田と俺は縄を持ちながら宙吊り移動した。

中田は移動する際下を見た。

中田(なんだこの土砂崩れ独特の急斜面、怖いな。)

 

俺「さっさと行ってくれ。」

中田「すまない、そう急かさないでくれ。」

 

二人同時に向こう側についた瞬間感染者が数体軽トラの周りにいた。

すると5体くらいがこっちに向かって強歩で向かってきた。

中田「この状態じゃあ、攻撃出来ない!」

俺は中田の服をつかみ、また一緒に宙吊りになった。

感染者5体は俺たちに釣られ、土砂崩れの急斜面から転げ落ちて行った。

 

俺は二人宙吊りのまま言った。

俺「完璧だったな。」

中田「いいから向こう側に早く着地しようぜ・・・」

中田はこの状況に高所恐怖症に参っていた。

 

二人は着地して縄を解いた。

中田「こっちの木に括ってる縄取らなくていいのか?」

俺「ああ、特殊な縛り方をしたからな。それにまた向こうに行く時、木に頑丈に括るのは面倒だ。」

中田「また、向こうに行くのか?確かに縄はまだあるのか?」

俺「ああ、軽トラに積んである。」

 

二人は軽トラに近づくと感染者がまだ山道に多数いるのが分かった。

中田「なんでこんな田舎にゾンビがいるんだ?」

俺「俺は○○村が心配だから、早く向かうよ。」

俺は○○村が感染者に襲われていないか心配になった。

 

俺と中田は軽トラに乗り、すぐエンジンをかけて多数の感染者からさらに山奥の○○村に向かって逃げた。

 



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死の村

果たして故郷の村を感染者から守れるのか?




俺と中田は軽トラで○○村に向けて一本道を登山していた。

中田「あと○○村まで何分かかる?」

俺「あと30分だな。」

そんなたわいもない会話をしていた時であった。

 

急カーブに差し掛かった時感染者が立っていた。

中田「避けれるか?」

俺「いや、無理だな。」

感染者は対向車線のど真ん中に立っていた。

 

運転した俺はやむ負えず感染者を引いた。

引いた時感染者の体が飛び、軽トラ正面ガラスに感染者の体が当たり運転席正面ガラスにひびが入った。

引いた感染者は後ろのガードレールを越え落ちて行った。

感染者を引いた際に、ガンと音が響いた。

俺はキ―――と音を鳴らし、急ブレーキをかけ止まった。

俺「やっちまったな・・・」

中田「大丈夫か?」

俺「ああ、だがひびが入って見にくい。」

 

すると青井は車内から警棒でひび割れたガラスを割った。

中田「ひびが入ったままじゃあ、見えにくくて、ろくに運転出来ないだろ?雨が降らないことを祈るか。」

俺「ありがとう。大丈夫だ、ここは森林で覆われていて豪雨でない限りガラスがなくても走れる。」

 

急カーブでの大きな音を聞いて感染者が集まって来た。

中田「急ごう、思ってたよりも感染者が多く集まって来た。」

俺「山深くにこんなにゾンビが到達しているのか?」

中田「居たっておかしくはない。あの日から三週間経ってるからな。」

俺「昨日は○○村から出た時動いてるものはお前しか見なかったのに・・・」

 

俺は再び軽トラを運転し始めた。

そこからは山道で感染者を一体も見なかった。

そして数十分後○○村に着いた。

俺と中田は村奥の役場に行った。

 

村役場は荒らされた後だった。

俺「くっそっ!」

俺は怒りと悔しさで職員ロッカーを蹴り倒した。

俺「遅かったか・・・一日でこんな状況になるのか・・・」

中田「青井、もしかしたら自衛隊が助けたかもしれない。」

中田は俺に1%以下の希望を持たせた。

 

俺「確かに・・・可能性は低いがありえるな。」

俺は極めて低い可能性を言った中田の気遣いの嘘に感謝した。

中田「今日はこの村のどこかで籠城しよう。また自衛隊が通りかかるかもな。」

俺「じゃあ俺の家に来ればいい。二階もあって窓からは結構見渡せる。」

 

俺は中田を自宅に案内した。

俺の家は築170年で二階もあった。

階段は江戸時代式の腐りかけの木造のハシゴ型階段であったため、バールを持って二人でぶっ壊した。

俺「これで俺の家も中田式要塞になったな。」

中田「こんな歴史ある階段を壊してよかったのか?」

俺「死ぬよりましだろ?」

中田「そうだな・・・」

俺と中田は無駄な冗談を言い合いながら作業した。

 

一旦昨日の中田の拠点の様に家の外に出てからハシゴを屋根に掛け二階の窓から入った。

俺「これじゃあ、昨日と変わらないな。」

中田「まあな、少し昨日より部屋は狭いが。」

俺は中田が上った後ハシゴを二階の窓から回収した。

 

しばらくすると二階の窓から人が見えた。

俺「あれはゾンビだな・・・」

中田「ああ・・・どうやら最も標高の高い村まで感染は到達したようだな。」

俺「だが、役場には血痕がなかった。もしかしたら獣道から脱出したのかもしれない。」

中田「道は一本だけじゃないのか?」

 

俺「整備されてる道は一本だけ○○市につながってるが、獣道も一応ある。」

中田「後を追えばたどり着けるかもしれないぞ。獣道はどこに出る?」

俺「他県の市外に出る。だが歩けば一日はかかるぞ。」

中田「そうだな。今日はここで休みを取ろう。」

俺と中田は狭い二階の自宅で休んだ。

 

翌朝長旅の準備をした。

俺「獣道は役場の裏を出たらある。」

中田「分かった。じゃあお互い物資を集めてから役場に集合しよう。」

中田は勝手にハシゴを降ろしながら言った。

二人は別々に登山リュックを持って物資を村中で探し周った。

 

俺は役場に先に行き、役場入口で中田が俺を目視できる場所で待っていた。

すると感染者が一体ゆっくり歩いてやってきた。

俺「中田まだかーー!!」

俺はあせって大声を出してしまった。

 

大声を出すとさらに二体強歩でやってきた。

俺(うそだろ。昨日一体しかうろうろしていなかったぞ。)

俺は慌てて役場の中に入り、中から両扉の取っ手にリュックにぶら下げていた金属バットをはさみ食い止めた。

感染者三体は最初入口のドアを叩いていたが役場入口周辺に散らばった。

 

それを物陰から見ていた中田・・・

中田(おいおい、三体ぐらい倒せよ。)

中田は携帯していた警棒を持って、役場入口に向かって突撃した。

中田は感染者三体を軽快なステップで頭を潰した。

 

中田「青井!!開けろ!」

俺は中田の声を聞き、隠れてた村長室から役場の入り口に向かった。

そして役場入口ドアの取っ手からバットを抜いて、中田を入れた。

俺「お前よく倒せるな。」

俺は感染者への恐怖と人間だったものに危害を加えるのに抵抗がまだあった。

 

中田「まったく何考えてるんだ?俺を見捨てる気か。」

俺「悪い・・・お前は頭や顔をつぶして何も感じないのか?」

中田「感じるが、今生きる方が大切だ。それより使えそうなものはなかった。」

俺「そうか、じゃあ急ごう。感染者が増える前に移動しよう。」

俺は村長室にある非常用出口から獣道に出た。

 

そこからは感染者を撒くために獣道を30分くらい軽く走って下山した。

俺「ここら辺でいい。お互い持ち物を確かめよう。」

中田「周囲にゾンビはいないようだな。」

俺と中田は朽ちた丸太に座り休んでリュックを降ろした。

 

俺は集落の家全体を一体の感染者から逃げながら物色したがとくに使えるものはなく早く役場に行き待っていた。

中田が遅くなったのは自動販売機を死ぬ気で壊し、飲料や携帯食をリュックに詰め込んでいたからである。

 

二人の所持品は合わせて警棒・金属バット・バール二つ・包丁二本・スイス製ナイフ・1.5㍑のペットボトル八本・缶詰と携帯食の食料三週間分であった。

 

中田「最低10日は生きれるな。」

俺「この状態でゾンビと戦うのはきついぞ。」

 

俺と中田は村で調達したお互いの物資を分け合いながら話した。

中田「ゾンビは歩くのがだいたい遅い。それに戦うときはリュックを降ろせばいい。」

俺「映画やゲームみたいに群れで襲いかかってきたらどうする?」

 

中田は飽きれながら言った。

「お前よくその行動と考えで一か月近く生きてこれたな。いいか。ここは傾斜の角度が厳しい。普通の人間ですら今の俺たちが下山している獣道以外を下ろうとすれば転げ落ちる。ゾンビはふらふらしていて不規則に歩いているからほとんどが山の傾斜から転げ落ちるし、あの日から一か月近く経つが群れで行動するのは見たこともない俺達の妄想かもしれない。」

 

中田は俺に対して論破した。

俺「そうだな・・・」

中田「それに俺はまだお前が立ってるゾンビを駆逐している光景を一度も見てない。」

俺「ああ、倒れてるやつしか駆逐してない。土砂崩れ前の道のところだけだ。」

中田「今度は逃げずに頼むぞ。青井。」

中田は俺の肩を叩いて勇気をくれた後、下山し始めた。



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安全を求めて

新キャラ登場
※感染者ではありません。



俺と中田はもうZDAYから約一か月まだ何月かは分かるがもう何日・何曜日かも分からなかった。

 

俺と中田は下山途中休んでいるときたまに感染者を見ていたが無視していた。

なぜなら感染者はこっちに来る途中勝手に山の傾斜で転げ落ちて行くからである。

それでも寄ってくるが転んで足をくじいた這いずり感染者は楽に座りながらでもバットや踏みつぶしで駆逐出来たし、歩いて襲ってきた感染者は2,3体だけであった。

寄って来た感染者は練習もかねて中田指導の元に全て俺が駆逐した。

 

俺と中田は○○村脱出後、下山して半日くらいのことである。

 

俺「夜になってきたな。」

中田「ああ、どうする?」

中田は俺にあえて最善の答えを試す様に質問した。

 

俺は考えて言った。

「夜は明かりをつけず、木の上で寝ないか?明日朝ゾンビは寄ってきていて2,3体だろう。」

 

中田「俺も同じ事考えてたよ。成長したな和成。」

俺「初めて俺の下の名前を読んだな!」

俺は知恵があり強かった中田に認められた気がして喜んだ。

 

中田「何子どもみたいに喜んでんだよ。」

中田も照れながら言った。

 

俺と中田は向かい合ってる別々の大きい木の上の枝で休んだ。

俺はリュックを枝の上で両足と股に挟んでリュックからなんでも取れる状態にしていた。

中田は同じ木のすぐ横のもう一本の短い枝にリュックをひっかけていた。

 

俺は夜眠れず中田に話しかけてみた。

俺「中田、寝たか?」

中田「いや警戒心で寝れない。」

俺「俺は木の上で寝るのは初めだ。」

中田「日本で木の上で寝る奴はいないからな。」

俺「確かにそうだな。」

俺と中田は気晴らしに会話をした。

 

中田「そういえば和成もその様子だと知らないよな?」

俺「何が?」

中田「謎の病気の感染ってニュースで見たが、噛まれる以外にあるのか?」

俺「俺はまだ目の前で発症した人を見たことないから何も分からない。」

中田「そうだよな。俺たちはゾンビって言ってるのも間違いかもな。」

俺「ゾンビ=噛まれたら死ぬってイメージだよな。おまけでひっかきで死ぬみたいな。」

中田「両親も死んだまま県内を彷徨ってるかもしれない・・・」

中田は急に暗いトーンで話した。

 

俺は暗い話から明るい話に変えた。

俺「中田は彼女はいなかったのか?」

中田「結婚ならしてた。3年で離婚したけどな。」

中田は笑い話のように言った。

中田「和成はどうなんだ?」

俺「俺は童貞だ。」

中田「じゃあ、まだ童貞ゾンビにはなれないな。」

中田はまた笑いながら言った。

 

その後下ネタで盛り上がったがいつのまにか二人とも寝ていた。

 

中田「・・・きろ!!!起き!!!・・起きろ!!!」

俺「うわ!!!なんだ?」

中田「下を見ろ。」

 

俺の寝ている木の下に這いずってる感染者が三体いた。

這いずってる感染者は俺の方に来ようとして登ろうと頑張っていた。

中田の寝ていた木の下には立っている感染者二人が中田を見ながら上って来ようと木の幹をかきむしっていた。

 

中田「和成、悪いが全部駆逐してくれないか。武器ごとリュックが落ちた。」

中田は初めてあせった顔を見せた。

俺「分かった。なんとかやってみる。」

俺はリュックから取り出し、金属バットを持ち包丁をズボンの右ポケットに入れて地面から3メートルの高さにある木からゆっくり降りた。

その際立っているゾンビは中田がひきつけた。

 

俺は地面から1メートルでジャンプし、着地と同時に感染者一体の頭を踏みつぶした。

それから同じようにバットで這いずってくる感染者二体を素早く頭をつぶした。

おれはそのまま7,8メートル離れた中田の上っている木の下にいる感染者二体の頭をたたき割った。

中田はゆっくり降りてきた。

「ありがとう、この形見のナイフは使わなくてよかったようだな。」

中田はスイス製のナイフをズボンの後ろポケットから出した。

 

俺「ナイフ持ってたのかよ!」

俺は若干キレ気味に言った。

すると中田は冷静に言った。

「親父の形見をゾンビには使いたくなかったんだ・・・」

 

おれは気持ちは分からなくもなかったが・・・

俺「それでも、ナイフがあるなら言ってくれてもよかったんじゃないか?」

中田「すまない。今から大事な隠し事はやめるよ。」

 

俺「ああ、そうしてくれ。進もう。」

俺は自分の寝ていた木にもう一度上りリュックを枝から落とした。

俺はリュックを背負い下山を続けた。

中田も後に続いて下山した。

 

俺「もう少しで□□県の□□市近郊に出る。」

標高が低くなると感染者を多く見るようになった。

中田「これじゃあ、まだ○○村の方がましだな。」

俺「ああ、この状況だと□□市近郊の町はゾンビがうじゃうじゃいるかもな。」

中田「戻るか?」

俺「また上るのか?」

 

俺はズボンの右ポケットから包丁を出して言った。

中田「まさか!ここにきて俺を殺すのか?」

俺「伏せろ!」

俺は包丁を中田に向かって投げた瞬間中田は伏せ、感染者の顔に刺さった。

中田「まったく、言ってくれよ。隠し事はなしだろ?」

中田は不快感を感じたようだ。

 

俺「俺が気づいたときにはお前のその距離でのゾンビへの攻撃は危なかった。」

俺は感染者の顔から包丁を抜き、感染者の汚い服で包丁についた血を拭きながら言った。

 

中田「後ろから来るということは戻るのも危ないな。」

俺「戻ったって意味はない。進んでみよう、俺たち以外に人間がいるかもしれない。」

俺と中田は□□県□□市に到達した。

 

俺と中田は町を見つけ、町に入ったが特にゾンビは多くなかった。

町をうろつくゾンビは意外にこっちに気づかなかった。

俺「意外とゾンビが少ないな。」

中田「見ろ、ホームセンターがあるぞ。」

俺と中田は一階建てのホームセンターに入った。

 

俺「正面入り口壊れてるから、なにかで封鎖しないか?」

中田「いや、さっさと出てまた民家でたてこもろう。」

 

俺と中田はホームセンター内で別れて行動した。

俺(あった、着火マンが。)

俺は最初に土砂崩れを渡る時にズボンから着火マンを落としていた。

俺(意外に店内は荒らされていない、感染が広まる前に人は避難したか?)

すると遠くにいるテントコーナーのゾンビを八体見た。

俺は金属バットを右手に持ち、10メートル先の棚に隠れ様子を見ていた。

 

一方中田は電動草刈り機を見ていた。

中田(使えるのにこれを持てばかなりの重武装になるな。ただでさえリュックが重いのに。)

中田は感染者二体が寄ってきたためにバールを構えた。

中田はバールで二体相手に頭を粉砕した。

中田(これが電動刃(チェンソー)だと力は使わなくて済むんだがな。だが電動だと音が大きくてゾンビが近寄ってくるから本末転倒ってとこか。)

 

俺は中田を見つけ、中田に小声で話しかけた。

俺「中田。」

 

中田も小声で聞いてきた。

中田「どうした和成?」

俺「テントコーナーにゾンビが八体いた。」

中田「八体ならいけそうだな。」

 

俺と中田は忍び足でテントコーナー近くに行ってみた。

俺と中田はバールを両手に持ち乗り出そうとしていた時であった。

どこかから飛んできた矢が一体の感染者の頭に刺さった。

 

俺と中田は様子を見た。

 

?「まだ七体もいる!」

女性の驚いた声が聞こえた。

 

腰のあたりまである黒髪のポニーテールが印象的だ。

 

?は腰につけてる鞘から矢を取り出し短弓にセットして撃った。

しかし今度ははずれた。

?は感染者の多さに驚きあせってはずした。

?「こんなところで死んでたまるかっての!!」

?は短刀をズボン右ポケットから持ち出そうとした。

 

俺と中田は阿吽の呼吸で感染者全員がテントコーナーに?に向かって歩いていたので後ろから感染者を殴り散らした。

 

俺「どうだ、中田全部駆逐出来たか?」

中田「ああ、軍隊式で言うとクリアだな。」

 

?は俺たちに向かって矢を向けてきた。

俺「待て!待て!早まるな。助けてやっただろ!!」

中田「そうだ、別にゾンビみたいに襲ったりしない。」

焦ってる俺に対して中田は冷静であった。

 

?「バールを手放して。何者?」

?は俺に矢を向けてきた。

俺と中田はバールを床にゆっくり置いた。

俺「俺は青井和成だ。○○県から逃げてきた。」

?「逃げてきた?逃げ場なんてないわ!」

中田「何をそんなに警戒している?」

 

すると?は中田に矢を向けた。

?「お前は?」

中田「俺は中田勇気だ。和成と同じく一緒に逃げてきた。」

 

?「○○県から山を越えて来たの!」

中田「ああ、俺たちはあの日自衛隊や米軍に包囲されて県外脱出は出来なかった。」

俺「俺たちは情報が一か月前のままだ。何があったか教えてくれ。」

中田「その様子だと□□県も○○県と変わらないようだな。」

?「そうよ。□□県も地獄だわ。」

俺「そっちの名前はなんだ?」

?「最後に名乗ってあげるわ、私は斉藤加奈よ。」



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弓使いの斉藤加奈

今回は新キャラの過去の話ですが思ったより長くなり、つい楽しんで書いてしまいました。



俺「まさか俺たちを殺すのか?」

中田「おいおい、斉藤さん本気か?」

俺と中田は両手を挙げながら言った。

斉藤「ええ、本気よ。」

斉藤は10メートルくらい先から俺たちに向けて短弓を構えていた。

 

いまからの話は斉藤加奈中心になる。

 

私は斉藤加奈、□□県□□市の私立大学二年生・・・だった。

中学から高校まで弓道をやってて高校では全国大会も行った。

親元を離れて一人暮らしで大学では空手部に入った。

 

ZDAY・・・

私は土曜日も昼から講義があったために、それまで空手の練習に励んでいた。

まあ、日曜日もバイトなくて全然暇だったら空手に励むけど。

 

私は大学の道場でいつものように朝から空手の練習をしていた。

坂下「加奈、今日のニュース見た?」

斉藤「いえ、起きてすぐに家を出て来たから知らない。」

 

坂下「隣県の○○市で謎の病気が起こったらしいよ。」

○○市は□□県の県庁所在地よりも□□市に近かった。

斉藤は確かに朝5時に歩いて大学に行く途中、警察車両や装甲車を見たがそんなに気にしていなかった。

 

髪ゴムで結ったポニーテールを一度解き、再びつむじ位の高さできつく結ぶ。

斉藤「それより、空手の相手してくれない?」

坂下「・・・うん、いいわよ。」

坂下は話を聞いてもらえず、我慢して稽古を手伝った。

 

大島は朝練終わりに東岡とともに道場に来た。

大島「なあ、斉藤さん。今日一緒に昼ご飯食べないか?」

斉藤「いい、坂下さんと食べるから・・・」

私は大島君の誘いを一年間断り続けてきた。

 

東岡「大島、ドンマイ。きっとそのうち一緒に食べてくれるさ。」

大島「東岡、ありがとう。お前はいいやつだな。」

東岡「お前ほどじゃない。」

東岡は大島を勇気づけ励ましていた。

 

大島君はいい人だった。

大島君は同じ賃貸に住む隣の住人だった。

部活は同じ体育会系の剣道部だった。

学部学科も同じで一年の時から結構仲が良かった。

大島君はカリスマ性があり、モテたが天狗にはならないいい青年だった。

でも大島君は月二回のペースで告白されるけど、私は友達としてしか見れなかった。

大島君は二年になり私を好きになったようだが、同じくして坂下さんも大島君を好きになった。

私は大島君とは友達のままの関係でよかった。

 

斉藤は大島に告白された時期に坂下から大島の相談を受けていた。

 

大島と東岡が道場から去った後・・・

坂下「ええ!いつも断ってるけど、もったいないよ!!!」

斉藤「しかし、私は大島君を男として興味がない。」

坂下「私のこと気にしないで。加奈がその気がないなら別にいいし。それに他の女がいっしょにランチしてたらむかつくし。」

 

斉藤「坂下さん・・・そこまで言うならあなたが大島君を振り向かせるまで私は大島君を他の悪い虫から守ってあげるわ。」

 

坂下さんは私に対して本当に良くしてくれた。

レポートを手伝ってくれたり、授業を代わりに出てくれたり坂下さんには恩があった。

 

坂下「本当に?あ!!でもそれでだんだん好きにならないでね!!!」

斉藤「あ・・・うん。」

斉藤は坂下に釘を刺された。

 

斉藤は大島に朝の冷たい態度の謝罪とランチOKのメールをした。

 

昼ごろ大学のカフェで大島君と私はランチをした。

大島「まさか、君と二人でご飯食べるのに一年かかるとは思ってなかったよ。」

斉藤「私は大学生活で大島君と二人でランチするとは思ってなかったけど。」

私はさらりと男としてみてないことを大島君に赤信号を出した。

 

大島「同じ賃貸で隣に住んでるのにか?」

斉藤「まあ・・・友達以上に帯の色は変わらないからね。」

私は大島の私への気持ちにとどめをさしにかかった。

 

大島「また空手の例えでふられたよ。」

斉藤「坂下さんとかの方が可愛いし女っぽいし家事出来るわよ?」

私はさらっと坂下さんをすすめた。

 

大島「どうして・・・君は僕を見てくれないんだ!!!僕はずっと君しか見てこなかったのに!!!」

大島はそう言って感情を高ぶらせてカフェを出て行った。

 

東岡と坂下は同じカフェで遠くの席でこっそり見ていた。

東岡は坂下が大島のことを好きだと知らなかった。

東岡「大島、途中までよかったのにな・・・」

坂下「本当だね。あともう少しってとこかな。」

(ナイス!加奈、私の期待に応えてくれて。我慢した甲斐があったわ。)

 

坂下は大島を一年から好きであったが接点がなく近づけなかったので、いつも一緒にいる斉藤に近づいた。

そこから斉藤を通して坂下は大島の女友達になれた。

そしてそこから坂下は大島を自分のものにするために斉藤の雑用に付き合ってきた。

これが小悪魔坂下の手口(下積み)である。

 

場面はカフェに戻る・・・

東岡「あれが!あれのどこがおしいんだ?野球で言えば、まだヒットすら打ってないぞ。」

東岡は頭を抱えていた。

 

坂下さんは私の向かいに座ってた大島の席に座ってきた。

坂下「ありがとう。本当に。」

斉藤「本音を彼に言っただけよ。今日ならきっとあんたの持ってる武器で落とせるよ。」

 

夕方頃剣道場・・・

大島「今日は早く帰るよ・・・」

東岡「心配するな!まだまだこれからだ!斉藤も他に好きな男いなさそうだしな。」

大島「お前はなんていいやつなんだ。次期主将にふさわしいな。」

東岡「だから斉藤のことあきらめるなよ!!!それに裏主将はお前だろ!」

東岡はテンション高く俺を元気づけた後、早めに部活から帰してくれた。

 

体育館の外で坂下は大島を待っていた。

大島「あ、坂下さん。部活終わったのか?」

坂下「まあね。一緒に帰らない?」

大島「・・・いいぞ。」

大島は斉藤に言われてかなり落ち込んでいた。

 

坂下は大島の誠実な心の壁を崩しかかった。

大島「斉藤はなんで俺のことを好きになってくれないんだ・・・俺が求めてない女性からは告白されるのに。」

坂下「斉藤さんは男に興味ないか、玉の輿に興味があるのかもね。」

大島「俺は大学で初めてあんな日本美人を見た。それも絵にかいたような。」

坂下「大島君の気持ち分かる。私と同じね・・・」

大島「え!お前って彼氏いないのか?」

大島はよく坂下が男と話すのを見ていたために彼氏がいないことに驚いた。

 

坂下「うん・・・一年からずっと一途に頑張って来たんだけどね。」

大島「そいつ、許せないな。俺が竹刀で叩きのめしてやるよ。」

坂下は切ない表情を崩し笑った。

 

大島「ん、なんで笑ってんだ?」

大島は不思議に思った。

 

坂下「あなたの事だから。」

大島「俺?」

大島は告白されてることにようやく気付いた。

 

坂下「そうやって自分の悩みを忘れて、人の悩みを心配する人なかなかいないから。」

大島「・・・」

大島は驚いた。

 

坂下「私はまだあなたに告白したことないから。」

大島「俺の事そんな風に見てたのか。」

 

大島は単純にうれしかった。

大島が多くの女性から告白される理由は剣道姿がかっこいいからとか、頭がいいからとか、英語話せるからとか、優しいからとかであった。

大島は贅沢だが本当の中身を知られ告白されたことはなかった。

 

坂下みたいに友達のように見ていた相手に本当の自分の中身を見抜いて告白されたのは初めてであった。

大島「いいよ。」

大島はそう答えたが指一本触れずに坂下を見極めたかった。

 

坂下「え!でも斉藤さんは?」

大島「あきらめるよ。斉藤もこれ以上俺に付きまとわれても困るだろ。」

大島は自虐的なことを言った。

 

坂下(やっぱり大島君は心もかっこいいよ・・・)

坂下「じゃあ大島君の家寄って行っていい?」

坂下は思い切って踏み込んだことを言ってみた。

 

大島「でも・・・俺結婚したいって思う人しか入れないんだ・・・」

坂下「私は他の女と違って遊びじゃない!!私も大島君と家庭築きたい。」

坂下は大声で本当の想いを伝えた。

 

坂下「今日は傷ついたでしょ?」

大島は驚いたが賃貸の家に招いた。

 

大島は冷蔵庫から麦茶を出しながら言った。

大島「周りからはちゃらそうとか言われてるけど童貞なんだ。」

大島は坂下に打ち明け言った。

 

坂下「そうなんだ、私もあなたを最初で最後の男にしたい。」

坂下は甘えるような声で大島を誘惑した。

 

大島「・・・分かった!!!俺もじゃあ、腹くくって人生のパートナーは斉藤さんじゃなく坂下さんにするよ。」

大島は坂下を一生守ると決めた。

 

坂下は大島の右手を胸に当てる。

坂下はそのまま大島の家に泊まった。

 

ZDAY二日目・・・

大島は起きてテレビをつけた。

そこには軍隊が市民を虐殺している映像が空撮で流れた。

軍隊が陣取ってる場所はモザイクが唯一かかっていなかった。

大島「大変だ。見てみろ。」

 

坂下は大島に起こされた。

坂下「・・・なに大島君?」

坂下もテレビを見た。

坂下「それ映画の宣伝じゃない?」

 

大島「いや、どのチャンネルも空撮からの虐殺の映像ばっかりだ。しかも昨日隣県で起きたことだ!」

坂下「昨日の謎の病気発症と関係あるかな?」

大島「とりあえず110しよう。」

しかし110はパンクしていた。

 

大島「早く服着ろ!逃げるぞ!!」

坂下「待ってよー!」

 

大島と坂下が大島の家から出た時、斉藤も同時に家から出てきた。

斉藤・大島・坂下「あ。」

三人は驚いた。

 

大島「すまない、斉藤!!!自分の欲に負けてしまった。」

大島は声を張って謝った。

それは大島が正しくないと思ったことをしてしまったために、かつ誠実だからである。

しかし大島は斉藤から坂下に気持ちが変わっていた。

 

斉藤「全部知ってたよ。坂下さんが私を利用したこともね。」

斉藤はさらっと言った。

 

斉藤は全て見抜いていた。

斉藤「ただ夜中だけは静かにしてね。」

斉藤は無表情なまま言った。

大島と坂下は照れていた。

 

坂下「加奈・・・ごめんね。」

坂下は幸せそうに言った。

斉藤「これでぱしりがいなくなると思うとつらいよ。」

斉藤は少し笑みを含んで言った。

 

坂下「加奈・・・」

坂下は斉藤への感謝が大きかった。

坂下「ぱしりじゃないけど、親友にはなったわ。」

 

そこに東岡が原付でやってきた。

東岡「大変だ!逃げるぞ!!」

東岡は慌てていた。

最初私は状況が分からなかった。

 

東岡「政府がここも避難区域にした!」

大島は東岡の言ったことと朝のニュースを見てすぐ意味が分かった。

斉藤「謎の病気のこと?」

東岡「ああ、謎の病気がこっちにも流行するおそれがあるらしい。」

大島「俺たちはみんな車を持ってない。ヒッチハイクしよう。」

東岡「名案だ。逃げながらヒッチハイクだな。」

 

四人は隣県からなるべく遠くにそれぞれの自転車で走って逃げた。

自転車は斉藤・大島の予備を貸した。

車が同じ進行方向に行くたびに自転車を止め、自転車道で四人でヒッチハイクしていた。

 

すると七人乗りのワゴンが止まった。

夫「乗りなさい!!」

四人は自転車を乗り捨てワゴンに乗った。

ワゴンには老夫婦の二人が乗っていた。

運転席に夫、助手席に妻が座っていた。

 

四人は急いで三列目に大島が右側、坂下左側、二列目に斉藤右側、東岡左側に乗った。

 

東岡「あ!」

私は東岡君の考えていることに感ずき、東岡君に耳元で簡潔に説明した。

東岡「お、おう。そういうことなら、まあいいか。坂下が大島のこと好きだったなんて全然気づかなかった。斉藤さんはなんでも御見通しだな。」

東岡は斉藤の恋のキューピット力に感心していた。

 

大島と坂下は窓の外を見て楽しそうに話していた。

夫は大島と坂下を見て言った。

夫「若いっていいな。」

妻「そうね。40年前の私達を思い出すわ。」

夫「これからは息子たちの時代だな。」

妻「この騒ぎもすぐに収まるわ。」

 

東岡は疑問に思った。

東岡「なんで二人でワゴンに乗ってるんだすか?小さい車の方が運転しやすいですよね。」

妻「これは息子たちがプレゼントしてくれた車よ。実家に帰って来た時に家族全員でどこか移動できるようにね。」

斉藤「いい息子さんたちですね。」

斉藤は夫の腕の包帯を見た。

 

斉藤「腕、大丈夫ですか?」

夫「ああ、昨日実家から逃げる時、暴動に巻き込まれてけがしたんだ。」

東岡「噛まれたんですか!!」

東岡は大きな声をだし、後ろの大島と坂下も静かになった。

夫「いや、ひっかかれただけさ。」

妻「それに謎の病気なんてデマですよ。こうやって昨日から主人は生きてるんですから。」

 

すると突然夫は意識を失った。

妻「あなた!!」

妻が夫の体をゆする時にハンドルに体が当たり右にワゴンが横転した。

私が次に目を開けた瞬間のことであった。

 

夫は妻の右手を食べていた。

私はその光景に吐きそうになった。

私は自力で脱出し、他の同級生三人はたまたまいた警官たちに引きずりだされた。

幸いその光景を見たのは私だけであった。

その時は私だけ見ただけでよかったと思った。

 

他の三人は気絶したままアスファルトに寝かされていた。

 

私はワゴンを見ていた。

すると警察官二人がワゴンに近寄り運転席と助手席の老夫婦の頭をガラス越しに持っていた拳銃で撃った。

私「どういうことですか?」

巡査A「新型狂犬病だ。患者に噛まれたり引っかかれたら終わりだ。分かったか?」

巡査Aは苛立ち忙しそうにしていた。

 

警部「もはや□□県も封鎖だな。県警に報告しろ。」

警部は部下に指示した。

 

巡査B「三人は奇跡的に無傷、以上なしです。」

三人は二発の銃声で目が覚めた。

 

坂下「何が起きたの?」

大島「あの夫婦は?」

東岡「みんな大丈夫か?」

三人は朦朧としていた。

三人はワゴンの方を見て恐怖していた。

 

警部「ご苦労、□□町に行って駆逐してきてくれ。」

巡査たち「了解。」

巡査たちは二台停車してたパトカーのうち一台のパトカーで乗り去った。

 

警部は私達四人に説明した。

警部「ゾンビって知ってるか?」

東岡「はい、ゲームや映画で見ました。」

東岡は自分が殺されるんじゃないかと恐怖していた。

 

警部「今はそういう状態だ。」

大島「何がどうなってるんですか?」

大島は冷静だった、しかしまだ現実を見れなかった。

 

坂下はほとんど放心状態だった。

 

感染者が一体寄って来た。

警部はズボン右のガンホルスターから拳銃を出し、感染者の頭を撃った。

私以外三人はその光景を見て吐いた。

 

大島「なんで殺したんですか?」

大島は感情を高ぶらせ大声で言った。

すると声に釣られ、感染者がもう一体強歩で来た。

感染者は臓物を出して歩いてきた。

坂下「・・・あれじゃない!特殊メイクよ!!」

東岡「ああ!そうに違いない!!!」

坂下も東岡も混乱していた。

 

警部は拳銃を構え、強歩で向かってくる感染者の腹部を撃った。

大島・東岡「なんてことを!!」

しかし感染者は倒れなかった。

警部「いいか、生きたければゾンビの頭をつぶせ。」

警部は次にまた感染者の頭を撃った。

 

警部「ゲームと思って駆逐すればまだ楽だ。まったく一体に二発も使っちまったぜ。」

警部は愚痴った。

警部「奴らを政府は新型狂犬病患者と言って報道規制してるが、もうゾンビだ。駆逐する時に頭を潰せ、まあ刃物で眉間や目を突き刺してもいい。あと友達が死んだり、奴らにひっかかれたり、噛まれたら頭をやれ。発症潜伏期間は短くて30秒くらいだ。」

 

斉藤「私達を保護してくれないんですか?」

警部「してやりたいが、政府からの命令は駆逐が最優先だ。それに人員も足りてない。多国籍軍が来てくれるのを待つしかないかもな。だが世界各地でゾンビが発生してる。」

警部は皮肉を言ってパトカーに乗り、別の町に走って行った。

 

大島「聞いたか?県外に脱出しよう。」

坂下「賛成だわ。」

東岡「そうだな、患者に対して先進国とは思えない対応だったな。」

斉藤「あれはもう患者じゃない死人よ。」

 

大島「そうだな、死人と呼ぶことにしよう。」

東岡「丸腰じゃあ不安だ。武器を調達しよう。」

坂下「見て!ゴルフ用品店があるわ。」

斉藤「いえ、ゴルフクラブじゃあ打撃に欠ける、もうすぐ行ったところにスポーツ用品店がある。」

 

東岡「じゃあそこに行こう。そこまで死人をふりきるぞ。」

そこまで5キロあったが走って行った。

坂下「ここまで来なくても空き家に死人を倒せるものあったんじゃない?」

斉藤「いや、家の人が警戒して殺してくるリスクを避けるためよ。」

 

現に○○県では家で自殺を図った人が生き返り、感染者となっている例がある。

 

四人はスポーツ用品店に入った。

坂下「店員がいないわよ?」

東岡「きっと逃げたんだろ。」

 

大島「よし!東岡、金属バットだ。」

大島と東岡は金属バットを右手に行こうとした。

斉藤「わたしもバット持っていくわ。一応空手部だから力はあるわ。」

東岡「俺たちは剣道やってるからいいけど、荷物にならないか?」

坂下「わ、わたしも!」

 

大島「坂下さん、持てるか?俺が命を懸けて守るぞ?」

坂下「あなたが死ぬときは、私も一緒よ。」

東岡「その流行らなさそうな、終末映画の演出みたいなの本当に見るとは思わなかったよ。」

四人は金属バットを持って国道を走った。

 

無人の車が国道で県外に向けて渋滞していたために県内に向けての国道を歩いた。

県内に向けての国道は車が十分走れるスペースがあった。

 

東岡「なんで、人がいないのに車だけ渋滞してるんだ?」

大島「推測するに交通事故か、自衛隊の検問かだな。」

東岡「しびれを切らしたり、死人の恐怖で車を乗り捨てたってとこか。」

坂下「命より大事なものはないものね。」

斉藤「そうだね。」

 

すると感染者が車から出てきてこっちに来た。

東岡「どうする?走って振り切るか?」

大島「いや、慣れるために倒す。」

(これからは俺が三人を守らないとな。)

 

大島は感染者が5メートル手前に来た時剣道の構えをした。

大島は金属バットを両手に握りしめ、金属バットを垂直にバットの先に目線を合わせた。

大島は感染者が3メートル手前に来た時右足から踏み込んだ。

 

大島「メーン!!!」

感染者の頭がスイカ割りのようにかち割れた。

大島は初めて感染者の頭を叩き割ったため吐いた。

 

遠くで見ていた坂下・東岡も吐きかけた。

 

大島が大声を出したために感染者が車の陰から20人くらい出て来た。

四人は走って必死で逃げた。

東岡「大島のバカ野郎!!!」

坂下「もう!大声出さない。」

坂下は大島と東岡、両方に注意した。

 

するとETCが見え、装甲車両数台と10人くらい自衛隊がいた。

大島「通してください!」

三等陸曹「通してもいい。しかし××県でも新型狂犬病患者が出た。」

坂下「そんな・・・」

坂下は足がすくんだ。

 

斉藤は冷静に質問した。

斉藤「ではなぜ撤退しないんですか?」

三等陸曹「今対策本部から入った情報だ。」

 

隊員A「三曹、××県国道から数えきれない数の患者が来ます!」

三等陸曹「いいか、あのジープで逃げろ。」

三等陸曹は□□県向きに止めてあるジープを指して言った。

 

大島「あなたたちは?」

三等陸曹「俺たちは警察同様、発症した患者も発症前の患者も駆逐しなければならない。」

大島「しかし・・・隊員さん!!」

三等陸曹「君たちなら生き残れる。車幅のでかいワゴンだと思えばいいさ。」

三等陸曹はそう言って大島にジープの鍵を渡した。

 

感染者の群れがETCの自衛隊の防衛線に迫って来た。

この感染者たちは人間の時にみんなETCを通過して□□県から××県に行ったが検問の際何千もの人を自衛隊の10人体制で急いで安全確認したために患者を見落としたのだろう。

隊員B・C・D「手榴弾!」

隊員A「頭を狙え!」

隊員たちは自動小銃を構え、撃ちまくった。

 

四人は自衛隊のジープに乗った。

大島は運転席に座り隊員にもらった鍵でエンジンをかけた。

東岡は助手席に、斉藤と坂下は後部座席に乗った。

そして国道を再びジープで走って□□県に戻った。

 



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弓使いの斉藤加奈2

斉藤・・・冷静女キャラ
東岡・・・熱血男キャラ
大島・・・リーダー男キャラ
坂下・・・小悪魔(若干ぶりっ子)

今回も青井や中田には触れていません。

ZDAY二日目・・・
前回昼前自衛隊のETCの検問所で感染者の群れが××県国道県境から押し寄せ、三等陸曹に逃がしてもらった場面の少しあとから始まる。



四人は県外脱出に失敗し、□□県□□市に取り残された。

 

四人は自衛隊のジープに乗り、国道で□□市に戻っていた。

 

三等陸曹はジープと言っていたが、防弾ガラスの軽装甲機動車である。

四人乗り(機銃手を入れたら五人乗れる)であるが、座席と荷台はつながっており、意外と広かった。

また荷台のトランクはドア式のトランクで、後部座席のボンネットはハッチ式で開けれる。

 

大島は運転しながら聞いた。

「どうする、これから?」

坂下「兵士さんたち大丈夫かな?」

東岡「分からないが、装甲車の上に機関銃が備えてあった。それにいざとなれば装甲車で突破して防衛線を崩して撤退すればいい。」

(多分あの感じだと救助が来ない限り死ぬまで戦い続けるだろうな・・・)

斉藤「まず、食料確保にガソリンも確保しましょう。」

 

大島「いや、ガソリンは当分大丈夫だ。」

 

大島は助手席の前に書いてあったジープの所属駐屯地の文字を見てガソリンの減り具合を計算した。

給油メモリはあと四分の三くらいあった。

分かりにくい表現だが最低でも東京から愛知までは走れる燃料分あった。

 

坂下「ねえ。加奈うしろに銃があるけど、本物だよね?」

斉藤「そうね、でも私たちは使わない方がいいし、使えない。」

 

荷台には64式小銃二丁が自衛隊の予備銃として置いてあった。

他にもジャケット・ヘルメット・リュックなど積んであった。

 

東岡「斉藤の言う通りだ。誤射の心配にその難しそうな銃(64式小銃)は訓練しないと誰も使えないだろう。」

東岡は坂下と斉藤の会話が聞こえ会話に割り込んできた。

大島はたまにいる感染者をよけて走るのに気をとられていて誰の話も聞かずに運転に集中していた。

 

斉藤「他にも使えるものがあるか見てみる。」

斉藤は荷台に行き、使えそうなものをあさった。

 

東岡「俺も手伝うよ!」

東岡が助手席から荷台に行った瞬間、坂下は助手席に後部座席から変わり座った。

坂下は大島を一番頼りにしていたためにまた安心するためにも横の助手席に座った。

 

斉藤は銃剣や手榴弾を手にして見ていた。

斉藤は手榴弾を左手に持ち、右手で安全ピンを抜こうとした。

東岡「待て。」

東岡が斉藤の右手を左手で握り斉藤が手榴弾の安全ピンを抜くのを阻止した。

 

東岡「それは俺に任せろ。俺はゲームの知識だけど、こういうミリタリー系は任せとけ。」

東岡は額に汗を流して真剣な顔で言った。

 

斉藤「分かった。じゃあ何すれば?」

東岡「斉藤さんは後部座席に座ってて。」

東岡はその後、荷台をあさり拳銃を数丁見つけた。

(アサルトライフルや拳銃は練習しないと使えないな・・・)

 

大島は国道を出たところで感染者が周りにいないことを確認してエンジンを切って駐車した。

大島「で?本当にこれからどうするんだ。」

大島は久しぶりの運転かつ感染者をよけて走ったために疲れていた。

 

東岡「大島、とりあえずこれ食うか?」

東岡は大島に向かって乾パンの入った袋を投げた。

大島「ありがとう、朝から何も食ってなかったからな。」

東岡「チキンはどうだ?」

坂下「私は肉は食べる気しないわ・・・」

坂下はえづいた。

今日起きた光景が坂下の頭の中でフラッシュバックしたのだろう。

 

坂下は大島と一緒に乾パンを食べていた。

東岡「みんな足元に金属バットあるか?」

他の三人はあると答えた。

 

斉藤「はい、これあなたのバットでしょ?」

斉藤は荷台にいる東岡にバットを渡そうとした。

 

東岡「ありがとう、後部座席の俺の席の足元に置いといてくれ。」

東岡は後部座席に戻って座った。

 

大島は乾パンを食べ終わり、エンジンをかけようとした。

大島「お前らは食べなくいいのか?」

東岡「俺はそんな気分じゃない、今日はな・・・」

斉藤「私はちゃんと朝食べたから、夜食べる。」

 

坂下「そういえば、加奈が昼ご飯食べるの数回しか見たことない!」

斉藤「ええ、基本一日二食だから。」

東岡「じゃあ、もし朝飯抜きで朝の出来事見てても昼食えたのか?」

東岡は驚いたように質問した。

斉藤「・・・まあ。」

(ワゴンが事故って夫が妻を食べてるの見た時だけ吐きそうになったけど・・・)

 

東岡「俺以外みんなすげーな!この状況でなにか食べれるなんて!」

東岡は素直に感心していた。

 

大島「じゃあ食料をこれから集めに行くぞ。」

大島はエンジンをかけて、再び□□市内にジープで戻った。

 

東岡「斉藤さん・坂下さん、荷台のものは触るなよ?」

坂下「じゃあ拳銃とかも?」

東岡「ああ、俺たちは多分だれも拳銃を撃ったことないだろ?誤射で死にたくはないだろ。」

東岡はみんなに重火器を使わないようにけん制した。

 

斉藤「東岡君の言う通りだわ。荷台には近づかない。」

坂下「分かったよ~。」

坂下もしぶしぶ了解した。

 

大島はコンビニから50メートル先にジープを止めた。

大島「コンビニに行って食料を探してくる。」

大島は運転席からバットを左手に持ち、右手でドアのぶをつかんだ。

大島は自分が戻らなかった時のために車内にジープの鍵を刺しっぱなしにした。

東岡「待て!!計画してちゃんと備えて行こう。」

大島「だが、もたもたしてたら死者が寄ってくる。」

 

すると東岡は空っぽの緑の迷彩色のリュックを大島に渡した。

東岡「そこに詰めるんだ。俺も行く。二人は残っててくれ。」

東岡もリュックを背負い、金属バットを持って車外に出ようとした。

坂下「大島君!大丈夫?」

坂下は今日一番の心配な顔をした。

 

大島「俺たちは剣道部だ。任せろ!!」

大島と東岡はリュックを背負い片手にバットを持って車を降り、速やかにコンビニに入った。

レジには血の付いた包丁を持った店員がいた。

 

店員「なんだ!また強盗か!!」

店員は大声を出して威嚇してきた。

 

店員はまだ悲惨な現状を受け止めきれず混乱していた。

店員「お前らも殺してやるぞ!!」

店員は少しレジから乗り出そうとしていた。

すると店員の後ろから腹部を刺された感染者が立ち上がった。

 

大島と東岡は見計らった。

大島「分かったから、落ち着け。」

二人はあきらめたふりをして後ろにゆっくり下がった。

 

感染者はゆっくり後ろから近づき店員の右肩を噛みちぎった。

店員「あああああああ!!!」

 

大島「今だ、東岡!」

大島と東岡は店員と感染者の頭蓋骨を叩き割った。

 

坂下「今すごい悲鳴聞こえなかった?」

坂下はコンビニから聞こえた大きな悲鳴に驚いた。

坂下「加奈、大島君たち大丈夫かな?」

斉藤「・・・どうかな。」

 

すると感染者4体がコンビニに向かって歩いて行った。

斉藤「やばいかもね。」

斉藤と坂下は遠くからジープの中で様子を見ていた。

坂下は助手席から荷台に拳銃を取りに行こうとしたが斉藤が後部座席で止めた。

斉藤「彼らを信じましょう。」

 

大島「急いで食料と生活用品をリュックに入れるぞ。」

東岡「大島!食料を頼む!俺は生活用品を探す!!」

 

二人は缶詰・酒・タオル・清涼飲料・お菓子など飲食種類関係なく詰めた。

しかし、県外脱出を試みた人や家に立てこもった人が事前に買いあさっててほとんど飲食もの生活用品は残ってなかった。

 

大島「東岡、行くぞ!!」

東岡「待て!レジのお金持ってくよ!!」

大島「金なんて役に立たないだろ!!」

大島は感染者が来るリスクを避けたかったために東岡を急かした。

 

東岡「いや、自販機にガソリン給油のことを考えればいる!!」

東岡はレジから銀行券に小銭をありったけリュックに乱暴に入れた。

 

大島と東岡はコンビニから出るとジープまで視界に感染者10体は見えた。

大島は一瞬で状況を判断し東岡に言った。

大島「接触する可能性は二体だ。俺は右を。左援護頼むぞ!!」

東岡「分かったよ、主将。」

 

二人は全力で50メートル先のジープに感染者を避けながら向かって走った。

東岡「大島、夕日がこんなにきれいに感じたのは初めてだ。」

大島「ならいっそ、写真部に入ったらよかったんじゃないか?」

走ってる途中に右から突然強歩で感染者が大島に襲いかかってきた。

大島「畜生!」

大島は金属バットを右手に剣道の突きで感染者が衝撃で尻もちをついた。

 

二人は無事ジープに乗り込んだ。

大島「はあ、はあ、剣道しといて・・・よかったぜ。」

大島は息を切らしていた。

 

ジープは10体の感染者に囲まれガラスを触ったり、ガラスに顔を押し付けてジープの中を見てきた。

坂下「きゃあああ!!!」

東岡「大丈夫だ、防弾ガラスだから多少大きな石で攻撃されても割れない。車体は鋼鉄だしな。」

東岡は冷静に言った。

 

斉藤「そんなこと分かるの?」

東岡「ああ、推測だが、荷台をあさった時にアラビア語がヘルメットに書いてあった。つまりイラクに行ったジープだ。イラクに行ってるなら当然防弾ガラスのはずだ。」

大島「とりあえず、君が悪いからどっか静かな場所に移動しようよ。」

大島はジープに差しっぱなしだった鍵でエンジンをかけて市外を目指した。

 

夜頃市外の□□町のはずれの畑地にジープを駐車した。

東岡「感染者がいるがこっちに気づかないな。」

大島「静かにしておけば大丈夫だろ。このジープは防弾ガラスだから普通の車よりも外への防音性能は高いだろ。」

感染者は数体歩いてきたが通り去った。

 

坂下「暗いんだけど、懐中電灯ない?」

斉藤「懐中電灯あるけど・・・どうなの東岡君?」

東岡「窓にカーテンをつければ大丈夫だろ。」

東岡は遠まわしに明かりはダメだと伝えた。

 

大島「寝よう、明日起きればきっと自分の寝室で目が覚める。」

大島はブラックジョークを最後に運転席で寝た。

 

ZDAY三日目・・・

大島は朝一に目覚めて、車のラジオでニュースを聴いていた。

「見てください。ここが××県××郡の最前線です。自衛隊が必死に封じ込めようとしています。」

「危ないから下がって、避難してください。もうすぐ米軍が空爆に来ますから。」

「!!!」

最後は大きな雑音を境にラジオが聴けなくなった。

 

大きな雑音で他の三人が目覚めた。

大島「ラジオが聴けなくなった・・・」

大島はラジオチャンネルや周波数も変えたがどれも雑音しか聴こえない。

 

東岡「どんな内容だったんだ?」

大島「○○県・□□県・××県は封鎖されてるらしい。そんで××県で空爆があるらしい。」

斉藤「それって、もう空爆されたんじゃない?」

東岡「空爆でラジオが聴けなくなるのか?」

 

斉藤「ええ、電波塔か放送局が爆破されたなら途絶える。」

するとヘリコプターのホバリング音が聞こえた。

 

□□市内に向かってヘリコプター3機が飛んで行った。

坂下「追って行けば、救助してくれるんじゃない!!」

坂下は希望を持ったように言った。

 

東岡「いや、空爆だろ・・・だって○○県が一番死人が多いのに××県で空爆してるんだぞ?」

大島「だが死者が○○県から□□県を大移動して××県に到達して一番多いから空爆してるのかもしれない。」

斉藤「とりあえず、しばらくは都市を避けて町や村を移動しましょ。」

坂下「しばらくって!!いつまで?奴らになるまで?」

坂下は半泣きになりながら斉藤に対して怒った。

 

大島は運転席から助手席の坂下を抱きしめ、この悲惨な状況から乗り切れると励ました。

 

ZDAY四日目・・・

東岡「なあ・・・俺隠してたことあるんだ。」

東岡が真剣な顔で打ち明けてきた。

 

東岡「実は俺、銃使えるんだ・・・」

大島「そうやって嘘ついて銃を撃ってみたいだけだろ。」

大島は冗談だと思って笑って言った。

 

東岡「大島、お前はなんで英語が話せるんだ?」

大島「東岡何言ってるんだ、一緒にホームステイしただろ?」

東岡「お前は熱心に英語をネイティブで話せるように努力してる間、俺は黒人の友達と射撃場に遊びに行ってたんだ。」

大島「だからお前はうまく英語が話せないんだな。」

大島は笑いながら言った。

 

東岡と大島は高校時代、アメリカにホームステイしていた。

東岡は乗りのいい黒人の友達とある日外へ遊びに行ったとき、鉄砲専門店に連れて行かれた。

鉄砲専門店はホームステイ先の黒人の友達の父親が経営していた。

東岡は多種類の銃に驚いた。

 

東岡は秘密裏(違法)に地下の射撃場で多種類の銃を解体したり撃たせてもらったりさせてもらってた。

 

斉藤「東岡君、なんでこのタイミングで?」

(なるほど、だから大島君は留学してきた外国の女の子にもモテたのか)

東岡「先進国で空爆なんて戦後聞いたことあるか?それくらい三県はひどい状態なんだろ。」

大島「だが刃物ですら死者を倒してないのに銃を使うのか?」

東岡「たしかに、斉藤と坂下に至っては死者を倒してない。」

坂下「拳銃はたしかに身を守るには最適かも。」

 

東岡「どうする?お前らは銃を使うか?別に使わなくてもいい。」

大島「お前は使いたいのか?それとも念には念を入れたいのか?」

大島は不安そうな顔で東岡に言った。

東岡「両方だ。それに死者が群れて襲ってきたらジープから離れてる時は接近戦はハイリスクだ。」

大島「そうか・・・だったら俺も銃を使おう。教えてくれるな?」

 

坂下「私も!」

坂下は接近戦が怖かったために銃の扱いを覚えたかった。

斉藤「私も教えて。」

東岡「俺と大島は死者の群れに出くわしたときだけ小銃を使う。坂下さんと斉藤さんは接近戦の時後ろで拳銃で援護してくれ。」

 

ジープを広い田地に移動した

東岡は坂下さんから練習させた。

東岡「いいか?坂下さん!」

坂下さん「うん!」

 

東岡と坂下はジープから降り、50メートル先にいる足が泥にはまって立ってる動けない感染者を練習台にした。

東岡は拳銃を構えた。

東岡「俺のやってるように見よう見真似でやってみて。」

坂下は拳銃を持って真似した。

 

東岡「もう少し左肘を曲げてもいい。」

坂下「こうかな?」

坂下は右手を伸ばして拳銃のグリップを持ち、左肘を曲げて左手で右手の甲を握るようにした。

坂下は右手人差し指を引き金に当てた。

そして坂下は50メートル先の感染者の頭に向けて引き金を引いた。

感染者は眉間に弾が直撃し、泥の中に沈んだ

 

坂下「やった!初めて倒した。おもしろい!!」

東岡「やったな。」

坂下と東岡はハイタッチした。

 

ジープの中では・・・

大島は困った顔をしていた。

斉藤「東岡君大丈夫?」

大島「まったく同感だ。東岡はゲーム感覚になってる。」

斉藤「まあ、この世間の状況じゃあストレスでおかしくなっても不思議じゃない。」

坂下がジープに乗って言った。

坂下「次、加奈の番だよ。」

 

その後斉藤も加奈と同じく拳銃で感染者を撃ち殺す練習をした。

大島も拳銃を撃ったが自動小銃(64式小銃)は東岡とともに構えただけであって実際には撃たなかった。

斉藤は疑問に思い、後部座席に東岡が乗って来た時質問した。

斉藤「なぜ、大きい銃は撃たなかったの?」

東岡「三発だけって決めてたんだ。まあ弾の節約ってとこだな。」

(それに坂下にはこの死と隣り合わせの状況に恐怖していたから、少し息抜きが必要だった・・・)

 

大島も運転席に乗り込んだ。

大島「なあ、俺以外にこの大きい車運転出来る奴いないか?」

斉藤「じゃあ私運転しようか?」

坂下「加奈免許持ってたんだ!」

東岡「・・・俺は仮免だからな。」

大島「斉藤さん、頼むよ。」

 

大島と坂下は後部座席に東岡は助手席に移った。

斉藤「じゃあ運転するね。」

東岡「また助手席に座れるとは思わなかったよ。」

斉藤は鍵でエンジンをかけて空爆された都市に行くことにした。

 

大島「斉藤さん、どこ目指すんだ?」

斉藤「空爆された都市。」

斉藤はそっけなく答えた。

 

東岡「名案だ、今日はヘリコプターが飛んでないからな。」

大島「あと食料を調達しよう。」

東岡「まだ三日分あるぞ?」

大島「お前の好きな念には念をだ。」

 

ZDAY五日目・・・

空爆された都市はイラク戦争の市街地の戦場みたいな場所になっていた。

瓦礫が散乱していて、普通自動車や二輪車で通るのは不可能だった。

 

斉藤「まるで新世紀の地獄ね。」

大島「そうだな。死者が燃えながら歩いてるぞ。」

坂下「みんな倒れてる人は焼死したのかな?」

東岡「きっと俺達みたいな生存者もいただろうな・・・」

斉藤は廃墟と化した都市を抜けて○○県方面に走った。

 

途中から住宅街に近い川沿いの道を走った。

大島「止めてくれ、家の中をあさって食料取ってくるよ。」

坂下「私も行くわ。」

斉藤「私は死者が来ないかジープの中で見張っとくわ。」

東岡「同じく、中で斉藤さんと仲良く見張っとくよ。」

(この際坂下さんにはあえて危険を犯してもらおう。斉藤さんは大丈夫そうだな。)

 

大島は弾倉の入ったジャケットを着て空のリュックと銃剣を付けた自動小銃を背負い、ズボンの右に拳銃の入ったポケットにガンホルスターを付けて左手にはバットを持ちフル装備で降りた。

坂下はリュックを背負い、金属バットを右手に持ちズボンの右に拳銃の入ったガンホルスターを付けて降りた。

 

大島と坂下はジープから一番近い家に入ることにした。

大島はジープを降りた時点でガス臭さを感じた。

大島「坂下さん。銃は使うなよ、ガス漏れだ。」

坂下「大島君、それくらい分かってるよ~」

坂下はちゃかした。

 

大島と坂下は家への侵入に成功した。

大島は侵入した玄関でバットをリュックに入れて銃剣の付いた自動小銃に持ち替えた。

大島「坂下、玄関見といてくれ。」

坂下「オッケー。」

 

大島はゆっくりリビングに行き感染者二体を見つけ銃剣で頭に素早く突き刺した。

大島は台所に行き、ガス栓を確かめた。

ガス栓は閉まっていた。

大島「ガス漏れはここじゃないのか・・・」

 

坂下は玄関の方を見ていると階段から降りてきた感染者が後ろから襲ってきた。

坂下はとっさに感染者の方を振り向きバットで殴ろうとしたが間に合わなかった。

坂下「きゃあ!!」

坂下は感染者がのしかかってきた衝撃でバットを手放してしまった。

大島「坂下さん!!!」

大島は急いで玄関の方に行った。

 

坂下の上に感染者は馬乗りになった。

坂下は噛まれそうになり、右手でホルスターから拳銃を出して感染者に向けた。

大島「やめろ!!!」

坂下は拳銃を撃った。

 

するとその家を中心に100平方メートルのガス爆発が起きた。

斉藤・東岡「!!!」

ジープはサッカーボールがミドルシュートされたように吹き飛び、川の真ん中に落ちた。



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弓使いの斉藤加奈3

感染者を殺すだけの勇気も武器も動く要塞(ジープ)もあった。
しかし・・・



東岡と斉藤はシートベルトをしていたがジープが吹き飛んだ時気を失った。

東岡「・・・!」

東岡は気を取り戻すとジープの中で逆さに水の中に沈んでいくのに気づいた。

斉藤は気絶したままだった。

 

東岡「一体どうなってるんだ!!」

東岡は状況がつかめず、無我夢中でジープからの脱出を図った。

東岡は水圧でドアが開けれなかったために右ズボンのホルスターから拳銃で運転席側の防弾ガラスを撃ちまくった。

防弾ガラスはひびが入り、割れて水が勢いよく流れ込んできた。

東岡は拳銃をホルスターに収め、気絶している斉藤を浸水しているジープの割れた窓から引き出し反対の川岸に泳いだ。

 

斉藤を川岸に打ち上げ、東岡は人工呼吸したが斉藤に反応はなかった。

東岡は大島と坂下が偵察していた燃える住宅街を見て自分が置かれている深刻な状況が分かった。

東岡「大島・坂下さん・斉藤さん・・・俺もそっちに行くよ・・・」

 

東岡はホルスターから拳銃を取り出し、空の弾倉をリリースしジャケットから新しく弾倉を装填した。

東岡は右手で口に拳銃の銃口を加えた。

 

斉藤「ゲホッ、ゲホッ。」

斉藤は一度気を取り戻したが再び気絶した。

 

東岡は銃口を口から抜き、斉藤に駆け寄った。

東岡「斉藤さん!」

東岡は斉藤がまだ生きているのを確認し、自殺をやめた。

それは同じ仲間である斉藤を守るという信念がまだあったからである。

 

住宅街の爆発音と火災の音で感染者たちが川沿いに寄って来た。

東岡は死にもの狂いで斉藤を左肩にへの字で持ち上げ、拳銃を右手に持ち堤防を上がった。

川岸から堤防を上がる途中、東岡は片手で寄ってくる感染者たちの足に弾を撃ち、立てないように時間稼ぎして住宅街に逃げた。

 

東岡は川から離れた住宅街の一軒の大きな二階建の家に逃げ込んだ。

玄関で斉藤を左肩からゆっくり降ろして、玄関の鍵を閉め拳銃をホルスターに収めた。

東岡は玄関にあった1メートルの鉄鎚を持って家中を調べた。

 

幸い住人も感染者もいなかった。

東岡は一階の窓と裏口の鍵をすべて閉め速やかに雨戸で外の景色を遮断した。

東岡は斉藤を玄関から運んで二階の寝室のベットに降ろした。

その日は東岡は一階で畳部屋での物入れをあさって夕方に布団を見つけてその畳部屋で寝た。

 

ZDAY六日目・・・

朝起きて東岡は斉藤の様子を見に行った。

しかし斉藤はその日も起きなかった。

 

ZDAY九日目・・・

斉藤は昼ごろ目を覚ました。

窓から差す太陽の光がまぶしかった。

(あれ、車の中じゃなくて部屋?)

斉藤はまずベッドの横の机の上に置いてある大工道具の薄ノミに気づいた。

それから斉藤の視界にはピンク色のものやぬいぐるみを多数みた。

 

(女の子の部屋?)

勉強机に近寄り、友達と一緒に映る制服姿の女の子のプリクラを見た。

斉藤は部屋を出て他の部屋に行ったらタンスや机があった。

(二階はこの二部屋か。)

 

「大島君!東岡君!!坂下さん?」

斉藤は恐怖の中での孤独感を初めて味わった。

寝ていた部屋に戻り、薄ノミをズボン後ろポケットに入れた。

階段を下りるとすぐに玄関が見えたが階段途中に1m30cmの高さの鉄板が隔てられていた。

階段手すりを乗って若干高い鉄板を乗り越え、一階に降りた。

 

ガチャっとドアを開ける音がした。

斉藤は薄ノミを右手に持ち構えた。

東岡「うぉ!!」

斉藤「わああ!」

 

斉藤「なんだ東岡君か、驚かさないでよ。」

東岡は弓と矢の入った鞘を肩にかけて右手にバールを持っていた。

東岡「斉藤!!!ついに起きたか!!」

東岡は斉藤が目覚めうれしそうであった。

 

東岡はろうそくに火をつけて斉藤を一階の真っ暗なリビングに案内した。

東岡はろうそくを置いて昼の暗い部屋の中で食卓机で斉藤にこれまでの経緯を話した。

 

斉藤「じゃあ、私達だけ生き残った・・・」

東岡「ああ、だがいいこともある。新たに軽自動車を手に入れたし、ここはソーラーパネルがあって冷凍庫が使えるんだ。ただ電気は冷凍庫だけに使うために明かりはろうそくで我慢してるんだ。」

斉藤「だから明かりをろうそくでまかなってるのね。」

東岡「いや、死者が寄って来ないためにも明かりはつけない。日を重ねるごとに外には死者が増え続けてる。」

 

東岡は弓矢と鞘を食卓机に置いた。

東岡「俺にはバールと包丁に拳銃があるが斉藤さんには薄ノミしかない。」

斉藤「私、東岡君に弓道やってたなんて一度も言ったことないけど。」

東岡「大島が言ってたさ、斉藤さん弓道で全国にも行ったことあるんだろ?」

斉藤は無言で弓と矢を鞘に入れ受け取った。

東岡「あと、冷凍庫の食料は自由に食べていいぞ。俺はもうお前を効率的なやつだと分かっているからな。こういうのは信頼が大事だ。」

 

東岡「今日はもう外には出るな。」

斉藤「分かった。」

斉藤は冷凍庫にある生野菜を食べた後また鉄板を上り越えて二階に行った。

斉藤は寝ていた部屋に戻り、勉強机の上に弓と矢の入った鞘を置いた。

斉藤は窓の外の夕日を見ていた。

 

(死者の数がすごいわ。住宅地の道路に視界に入るだけで両手両足の指の数は最低いるわね。)

斉藤は今まで気づかなかったが窓際の写真を見た。

そこには家族写真があった。

父親・母親・10代の兄妹の姿が映っていた。

(なるほどこの部屋は妹らしき女の子の部屋だったんだ。)

斉藤は隣の部屋のタンスをあさり10日ぶりに着替えた。

 

ZDAY10日目・・・

早朝アーミージャケットを着てリュックを背負いバールを片手に持った東岡が玄関から出て行こうとしていた。

斉藤「待って!」

東岡「ああ、おはよう。」

東岡は玄関のドアのぶを握っていた。

 

斉藤「私も行くわ。」

東岡「外は地獄だぞ?盗賊に死人がうようよいる。」

斉藤「それは避けられないんじゃない?」

東岡「まあ・・・そうだが。一人の方がリスクは少ない。」

斉藤「とりあえず待って。」

斉藤は二階に戻っていった。

 

東岡「早くしろよ!」

斉藤は5分後弓と矢の入った鞘を背負い、包丁を入れた包丁入れをズボン右にぶら下げ右手に薄ノミを持って降りてきた。

 

東岡「リュックは?」

斉藤「今日は死人を倒すことだけに集中するわ。」

東岡「そうだな、お前はたしか一つのことしかできなかったな。後ろから死者が来たら頼むぞ。」

東岡と斉藤は素早く家外に出て東岡はドアに鍵をかけ、家の前に止めてあった黒の軽自動車に乗った。

 

東岡「仮免だけど、結構道路を走れるようになったんだ!」

東岡は感染者とは関係ない日常の話をしようとした。

東岡「初めて二人のドライブデートだな。」

斉藤「そうだね。」

斉藤は東岡のジョークを受け流した。

 

東岡「斉藤さんは常に冷静だな。ツッコミすらしない。楽しいドライブデートになりそうだ。」

東岡は皮肉を言って車を発車した。

 

斉藤「ところでどこに行くの?」

東岡「食料は十分あるから音楽ショップに行って、CDを取りに行く。」

斉藤「音楽ショップ?」

東岡「家にはCDラジカセがあったから久しぶりに曲を聴きたい。」

斉藤「・・・」

東岡「俺はHIPHOPのCDが目当てだ。お前は何を聴くんだ?」

斉藤「クラシックにジャズかな。」

 

東岡「その斉藤さん情報は大島からは聞いてなかったな。」

斉藤「大島君は音楽よりテレビバラエティーの話ばかり聞いてきたから。」

すると音楽ショップに着いた。

東岡「斉藤さん、見張っててもいいんだぞ?」

斉藤は無言で車から降りた。

東岡はエンジンを切りエンジンキーを抜き、斉藤の後に降りた。

 

斉藤は先に自動ドアが壊された音楽ショップに入った。

店内から一体の感染者が歩いてきた。

斉藤は薄ノミを勢いよく感染者の右目に突き刺した。

銃で感染者を倒したことはあったが斉藤は接近戦で初めて倒したために吐いた。

 

東岡「おい!大丈夫か?」

東岡はうずくまった斉藤の背中をさすりながら言った。

斉藤「ええ、どこもひっかかれたり噛まれたりしてない。」

東岡「そういえば、こういう汚れ仕事は拳銃を撃った時以来だったな。」

斉藤「また、店内から二体死者が来た。」

東岡は素早くバールで顔面を突き刺し、もう一体は頭を殴って倒した。

 

東岡は店内の安全を確認した。

「よし、さっさと目的のCDを取って感染者が集う前に出て行こう。」

「そうね、ありがとう。」

「いいよ、あんなことはこの三日毎日やってるからな。」

 

斉藤・東岡はCDをかごに入れ、店を出て素早く車に乗り込んだ。

CDをかごに入れたまま車の後部座席に置いた。

斉藤「次は?」

東岡「斉藤さんは何かほしいものないのか?」

斉藤「え?」

東岡「俺はお前の意見も尊重する。俺は独裁者じゃないからな。」

斉藤「じゃあ、帰って早速音楽聞きましょ。」

 

東岡「家電量販店に行ってCDラジカセ取りに行かないとな。」

斉藤「じゃあラジカセ取りに行って今日は家で休みましょ。」

東岡「帰り道に家電量販店があったからそこに寄って帰って音楽を聞こう。」

東岡は帰りに車を近くに止めて家電量販店によった。

 

東岡「気をつけろ。」

店の出入り口に頭の原型をとどめていない感染者四体が倒れていた。

東岡はバールを片手から両手に持ち、斉藤は包丁入れから包丁を取り出した。

東岡と斉藤は店内に入った。

 

男A「止まれ!」

男の声が聞こえた。

そこには四人の男がハンマーや金属バットを持って四方の家電の陰から現れた。

東岡と斉藤は言われた通りに立ち止まった。

 

男A「ここは俺たちの場所だ。他のところに行ってくれ。」

東岡「ここに住みに来たわけじゃない、CDラジカセ1台持っていくだけだ。」

男A「ダメだ、ここにあるものは俺たちのものだ。」

東岡はバールを落とし、ガンホルスターから拳銃を抜いた。

 

斉藤「東岡君!それはやりすぎじゃない?」

斉藤は東岡を止めようとした。

 

男B「そんなモデルガンなんて向けられても怖くないぜ。」

東岡は商品棚にあるランプを撃った。

 

男たちは驚いた。

東岡は男Aに拳銃を向けた。

男A「早まるな!!!分かったから!!!みんなも鈍器を置け!!!」

東岡「お前ら全員入口に行け!!外の死人を見張っとけ!」

 

男たちは出入り口に行くと四方に逃げた。

東岡「よし、解決だ。CDラジカセを持っていこう。」

東岡は拳銃をホルスターに収め、CDラジカセを持った。

斉藤「あなた、こんなやり方で今まで物資を手に入れてきたの?」

東岡「こんな非常時に手段なんて選んでられない。」

 

男B「ああああああ!!!」

すると店の出入り口から感染者が押し寄せてきた。

東岡「こっちだ!!!」

斉藤は東岡の後をついていった。

東岡と斉藤は開いていた非常口から脱出して車の中に逃げ込んだ。

 

車の中から四人の男全員が感染者たちに襲われるのを見ていた。

斉藤「ここまでしなくても・・・」

東岡「言い訳するつもりはないが店から出て行けなんて言ってない。」

斉藤「私達だって他人に銃を向けられたらそうするわ。」

東岡「いや、俺は自分のアジトを死守するね。」

東岡は殺気立った目で斉藤に言った。

東岡はエンジンをかけてその場から家に帰った。

 

ZDAY11日目・・・

斉藤は東岡の様子を見て家を出て行くことにした。

リュックと弓と矢の入った鞘を背負い、包丁を入れた包丁入れをズボン右に携帯し、金属バットを持って玄関のドアを出ようとした。

 

東岡「待て。」

東岡は呼び止めた。

東岡「出て行くなら車にガソリン、食料も半分持って行け。」

斉藤「いいの?」

斉藤は冷静だった。

 

東岡「お前の判断は正しい。俺は確かに最近生存者をエサに死人から生き延びてる。」

斉藤「戻りたくなればいつでも戻ってこい。あと俺みたいな人間には気をつけろよ。そこらへんの死人よりも怖い。」

 

ZDAY12日目・・・

東岡「本当に行くんだな。」

斉藤「うん、車本当にいいの?」

東岡「車ならそこらへんにいくらでもある。」

斉藤「あと言い忘れてたけど、ジープから助けてくれてありがとう。じゃあ、元気で。」

斉藤は家を出て、黒い軽自動車で□□町のはずれにある畑地まで行った。

 

そこには感染者が数えるほどしかいなかった。

斉藤は車から降りて矢を鞘から取り出し弓を構えた。

(20メートルくらい離れてるか?私ならやれる!)

 

矢を放ち、見事感染者の額に矢が突き刺さった。

斉藤は突き刺さった矢を額から抜き鞘に回収した。

するともう一体強歩で近づいてきた。

 

(間に合わないか!)

斉藤は包丁を包丁入れから素早く取り出し、右目に深く刺し抜いた。

「はあ・・・」

斉藤は警戒しつつビニールハウスで野菜や果物をあさった。

 

ZDAY13日目以降・・・

斉藤は感染者を倒しつつ□□県内を点々と自動車で走っていた。

その際生存者のグループは避けてきた。

 

ZDAY23日目・・・

斉藤が乗っていた車が○○県に近い町で故障し、乗り捨て一階建ての家に立てこもった。

家に立てこもる際に家の中の感染者を三体すべて倒した。

東岡と同じく、家中の窓や外に通じる扉は鍵を閉め、雨戸で外の景色を遮断した。

斉藤は倒した感染者三体の体を持ち上げられなかったために上半身と下半身を家にあった中華包丁で切断し、感染者が周りにいない隙を見て窓から投げ捨てた。

 

ZDAY26日目・・・

斉藤はこの町に来てまだ入っていないホームセンターに入った。

感染者が複数店内にいたがこっちに気づかなかったために無視した。

(マッチか着火マンないかな。)

 

斉藤は着火マンを見つけた。

(あった!)

すると男の声がした。

(やばい早く逃げよう。)

 

斉藤は出入り口から遠回りに忍び足で歩いた。

(死者一体か、一体くらいなら切り抜けられる!)

斉藤は矢を放ち、後頭部に命中した。

斉藤はそこから走って逃げようとしたら、七体感染者がいた。

「まだ七体もいる!」

斉藤は焦った。

 

以下省略第四話参照・・・

 

斉藤は男二人に矢を向けた。



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助け合い

場面はホームセンターに戻る。
斉藤は青井と中田を敵視し、弓矢で撃ち殺そうとしていた。


中田「お前は人を殺したことあるのか?」

斉藤「ないけど、殺せなくわない。」

斉藤は弦を後ろに引っ張り、矢を中田に放とうとした。

俺「人を殺せばゾンビと一緒だぞ。斉藤加奈、君は人間であってゾンビじゃない。」

俺は生きるため、必死に斉藤を説得した。

 

斉藤は迷ったが俺の説得でやめた。

斉藤は弓の構えをやめた。

俺「ありがとう、殺さないでくれて。」

中田「俺たちはすぐにお前から姿を消すから安心しろ。」

 

すると出入り口から感染者の群れが入って来た。

俺「やばい!ゾンビの大群だ!!」

 

三人は店の奥に逃げた。

俺は脚立を見つけ商品棚の上に上れるように置いた。

中田「ほら!斉藤先行け!!」

斉藤はあせって上ったために脚立がぐらついた。

俺はとっさにぐらついた脚立を支えた。

 

中田は数体の強歩の感染者をリュックから取り出した警棒で足止めしてた。

俺も急いで脚立を上った。

俺「中田!」

中田も脚立を登る途中に感染者が脚立に到達し、中田が脚立から落ちそうになったが俺と斉藤で中田を引っ張り上げた。

その際に脚立は倒れた。

 

商品棚の上は2メートルの高さはあったが感染者に囲まれ、四面楚歌になっていた。

俺「とりあえず1分生き延びたな。」

中田「だが、この高い棚、もつか?」

 

俺「金属バットで群がってるゾンビの脳天叩き割るか?」

斉藤「いえ、しばらく静かにして様子を見ましょ。」

(こいつら信用できるか?)

 

一時間後・・・

商品棚の上で感染者が減るのを待っていた。

中田「半分ぐらいどっかいったぞ。」

俺「俺達にもゾンビの匂いが移ったのかもな。」

斉藤「さっきから聞いてると、あんたたち、ゾンビって呼んでるの?」

斉藤は無表情に質問した。

 

中田「ゾンビじゃないのか?」

斉藤「仲間の間では死者(死人)と呼んでた。」

俺「あいつらに正式名称がつく時代が再び来るといいな。」

斉藤「警察の人もゾンビって言ってたから、ゾンビって私も呼ぶわ。」

 

斉藤は数的不利であったために青井と中田に従うフリをした。

中田「別にどんな呼び方をしてもいい。とりあえず今この状況を考えよう。」

中田は面倒くさそうに言った。

 

俺「ところで、斉藤。あんたは何人仲間がいるんだ?」

斉藤「今はゼロよ。二人は爆死で、一人は意図的に別れた。」

俺「じゃあ、ここらをたまたま通りかかっただけか?」

斉藤「・・・そうよ。長居すると危険だから。」

中田「いや、嘘だ。なんで俺たちと違って荷物がそんなに軽そうなんだ?」

中田は斉藤の軽装を見て、斉藤の嘘を見破った。

斉藤「あなたたちは信用できない。」

斉藤ははっきり言った。

 

俺「おいおい、さっき真っ先に脚立を上らせたじゃないか!それに一緒に脚立から落ちそうな中田を助けただろ。」

中田「そうだ、俺達ふたりなら今からでもお前をここから落として奴らのエサにしてる間に逃げることも出来るんだぜ?」

斉藤は危険を感じ、包丁入れに手を伸ばした。

中田は頭に血がのぼり威圧するように斉藤に寄った。

 

俺「待て、中田それは言いすぎだ。俺たちは人間だろ?」

俺は中田と斉藤の間に入り、仲介した。

中田「和成、そうだったな。たしかに言い過ぎた。」

中田は冷静でなかったことに反省した。

俺「それに俺たちは姿を消すと言った。言ったことの責任は男として守ろう。」

 

中田「ありがとう、和成。もうすぐで野蛮になるとこだったぜ。」

俺「悪いな、斉藤。ホームセンターを出るまで一緒にいるの我慢してくれ。」

斉藤「・・・」

(まだ信用できるか分からない。)

 

さらに二時間後・・・

野良猫が入って来た。

すると群がっている感染者たちは三人が籠城している商品棚から野良猫を出入り口に追いかけて行った。

中田「今ならいけそうだな。」

感染者は二体だけ三人を見上げてた。

俺「ゾンビは人間だけしか襲わないんじゃないのか?」

すると斉藤が商品棚の上から感染者二体に向けて矢を放った。

見事頭に命中した。

 

中田「今だ、斉藤・和成降りるぞ。」

俺「え!今か?」

俺は絶望的な状況に逃げるタイミングが分からなかった。

斉藤は素早く飛び降り、二体の頭から矢を抜き鞘に入れた。

中田も降り、落とした金属バットを拾い右手に構えた。

 

俺「分かったよ・・・」

俺はもう少し様子を見たかったがしぶしぶ降りた。

中田「あそこに非常口があるぞ!」

三人で非常口に行ったが非常口には鍵がかかっていた。

 

中田「俺がドアノブを叩き壊すから、二人は奴らを頼む。」

中田は商品として置いてあったハンマーを振り上げてドアノブを壊し始めた。

すると破壊音につられて感染者たちが集まって来た。

 

斉藤は商品として置いてあったバールを持ち、感染者の頭を突き刺した。

俺はリュックから金属バットを取り出し、頭を叩き割った。

だんだん感染者が寄ってくる数が増えてきて、俺はあせった。

俺「中田!!、まだか?」

すると中田はドアノブを壊し、ドアを開けた。

俺「ナイス!中田!!斉藤先に行け!!!」

中田は非常口を最初に出て向かってきた感染者一体をハンマーで頭部を砕き駆逐して安全を確保しハンマーを投げ捨てた。

斉藤もバールを捨て非常口を出て、最後に俺が出た。

三人は走って急いで通りに向かった。

 

三人は非常口から通りに出ると、無数の感染者が通りにいた。

中田「さっきホームセンターに入る前はこんなにいなかったぞ!」

俺「逃げ切るのは無理だ!!どっか家に立てこもろう。」

斉藤「ついてきて!」

斉藤は走り出した。

俺と中田は斉藤を追いかけ雨戸で締め切った家に入った。

 

斉藤は拠点に中田と俺を案内し、助けてくれた。

中田「斉藤の実家か?」

斉藤「いえ、三日前に引っ越してきた。」

俺「じゃあ新居だな。」

斉藤は玄関にあったろうそくに着火マンで火をつけ、リビングに案内した。

 

斉藤は家の中の見回りをしている間、俺と中田はテーブルの前に座った。

斉藤「死者の侵入はなかったわ。」

斉藤が奥の通路から戻ってきた。

 

俺「侵入してくるのか?」

斉藤「いえ、まだ三日住んでるけど、人間も死者もまだ侵入を許したことはない。」

中田「斉藤、助かったよ。」

俺「そうだ!まだ礼を言ってなかったな。ありがとう。」

斉藤「外の死人が少なくなれば出て行くんでしょ?」

 

中田「ああ、それまでは居させてくれ。」

俺「斉藤、聞きたいんだが。」

斉藤「何?」

俺「自衛隊か警察隊見なかったか?」

 

斉藤「見たけど政府武装組織は助けてくれないわ。」

中田「それは知ってる。だがもう一か月だ。どこかにゾンビから守る要塞があってもおかしくないだろ?」

斉藤「見たのは二日目か三日目の自衛隊が最後だった。」

俺「そうか・・・」

 

中田「この状況だと和成の村長も絶望的だな。」

俺「これからどうすればいい・・・」

世界各地は約一か月前から地獄で絶望的であったが俺は今希望を失い絶望した。

 

中田「和成、嘆いても仕方はない。」

俺「中田・・・じゃあこれからの計画があるのか?」

中田「地道だが全国を周って安全地帯を見つけよう。」

中田は俺をまた勇気づけた。

 

斉藤「そんなものはないわ。脳を破壊しない限り、死んでも歩き続ける。そう警察に言われた。」

俺「そんな・・・」

俺はまた落ち込んだ。

中田「なら死ななければいい。安全地帯は絶対ある!」

 

俺と中田は感染者が道路からそれぞれの民家に侵入し少なくなった時、二階建の隣家に拠点を移した。

隣家の中には五体の感染者がいたがすべて駆逐した。

その後素早く俺と中田は斉藤みたいに一応一階の窓や裏口の鍵をかけ雨戸で外の景色を遮った。

駆逐した五体は二階の窓から投げ捨てた。

 

俺は押し入れにある布団を見つけた。

俺「中田!今日は布団で寝れるぞ?」

中田「本当だな、明日に備えてゆっくり睡眠取ろうぜ。」

そして夜を迎え翌朝××県を目指すことにした。



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安全を求めて2

ZDAY27日目・・・
××県に行くためにも青井と中田は移動に欠かせない車を手に入れることにした。



ZDAY27日目・・・

俺と中田は××県を目指して命を懸けた旅の準備をしていた。

俺は家の中で支度をしながら話していた。

俺「斉藤は置いていくのか?」

中田「仲間と別れてまで、今まで一人で生きぬいてきたんだ。そっとしておけ。」

中田はスイス製のナイフで缶詰のふたを開けながら言った。

 

俺「・・・わかった。ところで中田は出発準備出来たのか?」

中田は缶詰を台所にあったフォークで食べながら言った。

中田「ああ、昨日寝る前に支度はした。どっからゾンビが入ってきてもおかしくないからな。」

俺「手際がいいな。」

俺は中田のふんぞり返った余裕が頼もしく見えた。

 

俺「なあ、そろそろ車に乗りたいんだが車探さないか。車がないと移動は大変だろ?」

中田「そうだな、確かに車は防衛にも使えるし便利だ。」

俺と中田はまずこの町の車庫に車が入っている家を物色することにした。

 

俺(金属バット・包丁・家の鍵)と中田(警棒・スイス製ナイフ・包丁・家の鍵)は凶器と家(拠点)の鍵だけをそれぞれ所持して、車を探すことにした。

 

中田「行くぞ。用意はいいな?」

俺「ああ。」

感染者が道路に少ない時を選び、外に出た。

俺はすぐに外から玄関ドアの鍵をした。

俺と中田は別々に車が置いてある家々の中を物色した。

 

だが町民が××県に脱出を図ったためか、動かせる車自体少なかった。

道路を見た限り、転倒している車や炎上した後の車は少なくなかった。

 

そんな中俺は車庫に動きそうな赤のSUVの車を見つけた。

(こんな上物まだこんな町にあったのかよ。)

俺は家の中の玄関に入ったらすぐに靴箱の上に複数の鍵の入ったかごを見つけた。

(お!ラッキー。)

だが車の鍵らしきものは見つからなかった。

(てことは、寝室とか物入れか?)

 

俺はバットを構え、さらに奥に行くと感染者がリビングに四体いた。

俺は感染者の頭を素早く三体殴りつぶし、最後の一体はバットで力いっぱい殴るのは距離的に無理だったので包丁でつむじから頭に突き刺した。

(危なかったぜ。)

俺は駆逐した一体の男の感染者のズボンを探り、財布を見つけ中から車の鍵を取り出した。

(やったぜ。案外早く車の鍵が見つかった。)

 

すると後ろから見逃していた感染者が襲いかかってきた。

俺は仰向けに倒れ込み、両腕のない感染者は俺に馬乗りになった。

「うおおおお!!!」

右手で感染者の両目と左手で首をつかみ、噛まれるのを必死に阻止するのがやっとであった。

感染者は俺を食べようと口角を激しく動かしていた。

 

俺は近くに落ちてあった四角い灰皿を右手で素早く取り、頭を殴った。

感染者は頭を灰皿で殴られそのまま動かなくなった。

(サスペンスで良く見るけど、本当にこういう状況ってあるんだな。)

俺は本当に死ぬ覚悟をした。

 

一方中田は・・・

中田は行き止まりで大量の感染者に囲まれていた。

(道路の視界に入るだけで10体以上はいるな。家に入って立てこもってもいいが、家の中にも最低玄関に三体入れば俺のゾンビ生活が始まるな。)

 

中田は家に入るのをやめ、和成の助けを信じ戦うことにした。

右手には警棒・左手には包丁を持って自ら感染者に近づいた。

中田「おらッ!」

中田の視界右の感染者の顔を警棒で潰した。

そして左から来た感染者の眼球に包丁を素早く刺し抜いた。

 

もう一度それを繰り返し計四体駆逐したが焼け石に水のようなものであった。

(ダメだ、一人では多すぎる・・・家に立てこもるか)

その時近くの家の屋根から矢が飛んできた。

その矢は感染者の側頭部に命中した。

 

中田(斉藤、お前は俺たちを助けないんじゃなかったのか?)

中田は斉藤に援護をしてもらい、感染者を合計12体駆逐した。

斉藤は屋根から飛び降りる際に受け身をとった。

そして斉藤は素早く五本の矢を感染者に刺さってる頭部から抜き回収した。

 

中田「お前俺たちを助けないんじゃなかったのか?」

斉藤「一度ホームセンターで助けてもらってるから。」

中田「・・・斉藤、話がある。俺の拠点に寄って行かないか?」

斉藤は一応中田についていくことにした。

 

俺は一足早く家に戻っていた。

すると玄関のドアの解除の音が聞こえ、俺は玄関に行った。

俺「大丈夫だったか?」

中田「大丈夫ではなかった、だが斉藤のお蔭で切り抜けた。」

中田の後ろには斉藤が立っていた。

俺「そうだったか・・・それは大変だったな。」

中田「斉藤、悪いが玄関で待っててくれ。」

中田は俺だけをリビングに連れて行った。

 

中田「すまないな。車が調達できなかった。」

俺「その心配はいらない。近くの民家で赤のSUVを見つけた。」

中田「SUV!」

俺「家の前に移動させたかったが、エンジン音で奴らが寄ってきそうだったから置いてきた。」

中田「車の鍵は見つけたのか?」

俺は鍵を見せた。

 

中田「良くやった!和成!ところで・・・斉藤も連れて行こうと思うんだ。」

俺「斉藤を?別にいいが。さっきほっとけって言ってなかったか?」

中田「あいつは戦力になるし、ほぼ無言で無表情だが良い奴だ。」

俺「まあ、確かにそうだが。中田がそこまで言うなら説得してみるか?」

 

中田は玄関に行き、ろうそくの火で照らしたリビングに斉藤を案内した。

斉藤を椅子に座らし、中田は向かいに座った。

中田「なあ、斉藤一緒に来ないか?」

斉藤「いいえ、一人の方が安全だもの。」

中田「分かった、じゃあ話題を変えよう。なんで仲間と別れたんだ?」

斉藤「仲間は危険だった。そのうち私を利用して生き延びそうだと思った。」

 

中田「そうか、仲間は何年の付き合いだ?」

斉藤「知り合って一年くらいかな。」

中田「確かに今は人類史上最悪の状況だ。人は冷酷に変わったり、おかしくなる世界になったかもしれない。だが俺たちはホームセンターで一度は殺し合おうとしたがしなかった、いや出来なかった。それはまだ文明人だからだ。それに三人で何回もゾンビ相手に助け合っただろ?」

 

斉藤「・・・」

感情の高ぶった中田を見て俺はまたホームセンターの時の様に割って入った。

俺「中田、無理強いも良くない。彼女は山で野郎がのんびり一か月近く暮らしてきた俺達とは違う。ほっといてやれ。」

すると中田は斉藤に言い放った。

中田「なら!どうして!!あの時助けたんだ!!!」

中田はそう言って二階に上って行った。

 

俺「なにがあったか知らないが、中田の我儘に付きあわせて悪かったな。」

斉藤「いえ、青井さん。相棒を大事にしてくださいね。」

斉藤は隣の自分の拠点に戻った。

 

その日は俺と中田は出発しなかった。

中田は二階から外を見ていた。

俺は近寄り話した。

俺「斉藤は援護してくれたのか?」

中田「ああ、斉藤がいなければ俺は今ここで夕日を見てないだろう。」

俺「・・・そうか。明日出発するけどいいか?」

中田「・・・そうだな。前に進もう。」

 

ZDAY28日目翌朝・・・

中田「起きろ!!!」

俺「うわ!脅かすなよ!!」

 

中田は俺を二階に案内した。

中田「二階に来い、もっと驚くぞ。」

俺は二階から窓の外を見ると感染者の群れが大行進していた。

俺「どこに向かってるんだ?」

中田「きっと、新鮮な肉を求めて○○県に大行進してるんだ。」

俺「俺たちと目的地が違ってよかったな・・・」

 

中田「俺たちが降りてきた山の中に消えていくぞ。」

俺「やつらはホームセンターで野良猫を追いかけた。つまり野生の動物もエサなんだ。」

中田「たしかにあの山は鳥や鹿が多くて有名だからな。」

俺と中田は物資を登山リュックに入れ、拠点を捨てた。

俺と中田は200メートル先にある車庫に置いてあるSUVに向かった。

 

俺と中田はたまにいた感染者を振り切り、ドアロック解除ボタンを押しながら車に乗り込んだ。

中田は助手席に乗り込み、俺は運転席に乗り込んでエンジンをかけ、××県に向かって走り出した。

すると前から斉藤の拠点から斉藤が弓を構え斉藤の拠点の玄関口に矢を撃ちこみながら後ろ向きに出て来た。

 

俺は運転席からドア窓を開き言った。

俺「斉藤!乗れ。」

斉藤は素早く後部座席に乗り込んだ。

俺は車を出した。

バックミラーを見ると何十もの感染者が斉藤の拠点から出て来ていた。

 

中田「斉藤、何があったんだ?」

中田は後部座席の中田に話しかけた。

斉藤「奴らに雨戸を突破された。」

中田「噛まれたりしなかったか?」

中田は斉藤を心配した。

斉藤「大丈夫、噛まれてもひっかかれてもない。」

 

俺「ひっかかれてもダメなのか?」

斉藤「警察いわく、そうらしいわ。」

三人は○○県・□□県の県境の町を脱出した。



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安全地帯

シーズン1最終話。
彼らの安息の地は存在するのか?



三人は××県に向かうため、国道を走っていた。

斉藤「青井さん、さっきはありがとう。」

俺「いや、いいんだ。助け合いだろ。」

斉藤は後部座席でドアポケットに入っていた□□県内地図本を見つけた。

斉藤「助けてもらって図々しいとは思うけど、ここに向かうのお願いしていい?」

俺は感染者の少ない道で車のエンジンを切った。

俺は後部座席を向き、開いた県内地図本の斉藤が右手の人差し指と中指で指している場所を見た。

 

俺「川沿いの住宅街か?」

そこはかつて斉藤が東岡と一緒に拠点を構えていた場所であった。

斉藤「そこにはまだ別れた仲間がいるかもしれないから。」

斉藤は心配そうな顔で言った。

中田「斉藤が前そいつから自分で危険だから逃げたって言ってなかったか?」

 

斉藤「私だけだと手におえないけど今は三人いるから。」

中田「いや、やめておこう。俺たちがリスクをおかしてまで助けに行く必要はない。」

中田は俺達三人の安全を優先した判断だった。

 

斉藤「彼は一丁だけど拳銃を持ってる。」

中田「おいおい、ならなおさらやばいじゃねーか。」

中田は斉藤の仲間に会いに行くことに猛反対した。

 

俺は吟味して結論を出した。

俺「分かった、じゃあ行こう。斉藤がいれば向こうも仲間になるはずだ。」

中田「まじかよ。生存者と遭遇するのはゾンビと戦うよりリスキーだぞ?お前だって最初矢を向けたじゃねーか。」

斉藤「・・・」

俺「残念だけど多数決で決まりだな。だが拠点にいなかった場合は××県目指すぞ?」

斉藤「分かった、それでいいわ。」

中田「なんだよ、多数決はずるいぜ。」

中田もしぶしぶ了解した。

 

俺は再びエンジンをかけ、サブ目的地に走り出した。

 

訪れた町(東岡が拠点を構えてる町)はところどころ住宅が焼け落ちていた。

俺「ガス爆発でも起きたのか?」

火災している住宅も何軒か見た。

 

斉藤「そんな・・・」

斉藤は悲しそうな声でつぶやいた。

中田「どうした?」

中田は斉藤のつぶやきを拾った。

東岡の拠点は一階もろとも木端微塵になっていた。

斉藤「焼け落ちてたわ・・・」

 

俺「そうか・・・だが焦土戦でわざと焼いて逃げたのかもしれない。」

斉藤「そうね、私の目的は果たしたわ。もうこの県に用はないわ。行きましょう。」

中田「・・・そうだな。」

中田は斉藤にかける言葉がなかった。

 

三人は焼け落ちた東岡の拠点を後に再び××県に向かって走り出した。

感染者はZDAY二日目を境に徐々に数を増やし、今や都市部で大群を見ないことはなかった。

俺「これからも都市部は避けないとな。」

中田「そうだな、遠回りして都市は避けて田舎を走ろう。」

 

俺「だが俺たちは、斉藤以外にこの県であった生存者なんて見てないぞ。」

中田「俺はあの日から青井と斉藤しか見てないぞ、みんなゾンビになったか安全地帯に逃げたかだな。」

斉藤「死んでも頭をやらないと死者になるらしいわ。」

 

俺「本当か!それは初耳だ。」

中田「どうしてそんな大事なこと言わなかったんだ!!」

斉藤「まさか、あなたたちと長期に行動するとは思わなくて・・・」

 

すると一人の警察服を着た人が三人の乗った赤いSUVの車の前に立ちはだかった。

警部「俺は患者じゃない!」

俺は生きてる人間はひけず車を止めた。

 

中田「どうして車を止めたんだ!!!」

斉藤「・・・」

(ひけない気持ちは分からなくもない。)

警部「ありがとうよ!!!」

警部は機嫌よく後部座席に乗り込んだ。

 

警部は斉藤を見て驚いた。

警部「あの時の二十歳前後の四人組の女の子じゃねーか!これは驚いたな、まだ生きてたとは。」

警部は会ったことのある顔を見て安心した。

 

中田「斉藤、知り合いか?」

斉藤「あの日から二日目にワゴンから助けてもらった警察官よ。あと謎の病気の予防法と対処法を教えてくれたのもこの警官。」

中田「なら、安心だな。」

中田は皮肉を言った。

 

中田は警部の体を見ると左ひじから下がなかった。

中田「刑事さん、左手どうしたんだ?」

中田は痛そうな顔をして質問した。

 

警部「やつらに、いや部下に噛まれて、斬り落としたのさ。」

俺「噛まれた局部を切断したらゾンビにならなかったのか?」

警部「ああ、部下は全員死んだ、いや発症したが俺は発症せず生き延びた。」

 

警部「俺はもう政府組織の人間じゃない。」

警部はそう言って警察バッジと拳銃の入ったホルスターをドア窓から開け、投げ捨てた。

 

中田「今こそ銃が一番大事じゃないのか?」

中田は警部の行動に理解が出来なかった。

斉藤「・・・」

警部「心配するな、生き延びた盗賊が拾ってもあの銃の中に弾は入ってない。」

 

警部は所持していた警棒を俺たちに見せた。

警部「俺にはこれがあれば十分だ。それに今俺はバッジを捨て公務員を辞めた。俺の名字は森下だ。」

中田「よろしく、森下。俺は中田で、運転してるやつは青井だ。」

斉藤「・・・」

斉藤は森下にはまだ警戒心が強く、口を開かなかった。

中田「あんたを警戒している彼女は斉藤だ。」

 

森下「早速頼みごとで申し訳ないが、ここに行ってもらえるか?」

中田「またかよ、俺たちはタクシー会社じゃないんだよ。」

中田はストレスが溜まっていたから今日は精神が不安定だった。

森下は残った右手で器用に地図本を開き、場所を右手の人差し指で指した。

 

中田「三角州?海に面した都市部のど真ん中じゃねーか。」

森下「ああ、自衛隊や民兵がそこを盗賊や発症者から守ってるらしい。」

俺「そんな情報どこから手に入れた?」

森下「この目で見たんだ。三角州に続く橋の上には三つのバリケードがあった。」

 

俺「なんで、その時安全地帯に行かなかったんだ?」

森下「左ひじがないやつを通してくれると思うか?見られたら発症者と間違われて最悪射殺さ。」

斉藤「あんたたち政府組織は守ってくれなかった・・・」

森下「それは感染爆発初期の命令だ、いや最後の政府の命令だ。政府も秩序ももう崩壊してる。」

四人で安全地帯について話していると後ろから何かが猛スピードで近寄ってきた。

 

馬に乗った特殊急襲部隊(SAT)の防備をした20人くらいの人々が刀や弓を持って後ろから来た。

謎の武装集団は寄ってくる感染者の頭を矢で撃ったり、跳ね飛ばしながら馬を操っていた。

森下「逃げろ!!!」

俺は森下の声とともにアクセルを力いっぱい踏み急発進させた。

俺は見事謎の武装集団から逃げ切った。

 

中田「今日に限って生存者が多いぜ。」

森下「やつらはSATの防備をした盗賊集団だ。生きていようが死んでいようが立ってる人体の頭を刎ねる。俺は昨日それを見た。」

斉藤「そんなB級映画にありそうな演出をしてくるなんておもしろいわね。」

中田「まさに世紀末だな。まだ21世紀が始まったばかりなのに。」

斉藤と中田は後ろを見ていなかったためほとんど信じていなかったが、俺は乗馬してこっちに向かってくる人々はバックミラーで見えた。

 

俺「状況が変わったな、三角州(安全地帯)に向かうがいいか?」

中田「そうだな、馬乗って刀振り回してるやつ>鈍いゾンビより危ないぜ。」

謎の武装集団は国道から走って来たために俺は独断で三角州に行くことにした。

 

三人は田地に車を駐車して夜を乗り切った。

 

翌朝四人は海に面している三角州に向けて車を走らせた。

 

三角州(安全地帯)に向かう途中・・・

中田「なあ、森下。お前は健常者を殺したことあるか?」

森下「ねーよ。俺は県民を守る県警の警部だったんだぞ?」

中田「本当か?あの日から盗賊とか殺人が増えなかったか?」

森下「さあな、あの日から二日目で警視庁からの連絡、いや命令が途絶えた。」

 

俺「じゃあ、俺の一日前に失業してるじゃねーか。」

俺はバカにして笑いながら言った。

斉藤も少し微笑んだ。

 

森下「そうかもな・・・」

斉藤「あなたの部下は最後どうなったの?」

斉藤は真剣な表情で聞いた。

 

ZDAY16日目・・・

□□県とある郊外で運転しているパトカーの中で

巡査A「警部!もう二週間上層部からは命令が着ません!」

警部「ああ、だが発症者を殺し続けるんだ!!」

巡査A「畜生!!ついに俺達人間の時代は終わりか!!」

警部「殉職した巡査B・C・D・Eのためにも最後まで県民を守るぞ!」

 

運転していた巡査Aは路側帯にパトカーを停車し、襲われかけている県民を助けに我先にと突撃した。

警部も助手席から少し遅れて助けに行った。

先に行った巡査Aは県民をかばい、感染者たちに群がられ食われた。

「逃げてえええええええ!!!」

 

パトカーの方には20代の父親と20代の母親が走って来た。

母親の背中には1才の子供がおんぶ紐で締め付けられていた。

感染者たちは巡査Aの新鮮な肉に夢中だった。

 

父親「僕たち家族を助けてください!!!」

警部「さあ、パトカーに乗って!!」

母親はパトカーの後部座席に乗りおんぶ紐をほどき泣いている子供をあやしていた。

父親が助手席に行こうとした時であった。

警部は左手で父親の左手をつかみ、止めた。

「お前が運転しろ。」

「刑事さんが運転してくれるんじゃないんですか?」

父親は警部の言ってる意味が分からなかった。

 

「いいから、家族はどこも噛まれてないな?」

「はい、でも・・・」

「本当にいいから、俺は警察だ!お前らと違って車がなくても俺は奴らに噛まれない。」

 

父親はパトカーに乗り、感染者の群れと逆方向に走り去った。

警部「よくも俺の部下たちを全員殺しやがったな!!!」

警部はホルスターから取り出した右手の拳銃で巡査Aに群がって食ってる感染者たちの頭を次々と撃ち倒した。

感染者たちは音で新たな新鮮な肉に気づいた。

 

「巡査Aは父親が早く亡くなったから母親と二人暮らしだった。彼は母を守るために職業が安定した警察になったんだ。」

警部は泣きそうになりながら独り言を言った。

パン!!!

 

「巡査Bはさっきの家族と同じで小学生の娘が・・・」

パン!!!

 

「巡査Cは俺の代わりに食われた・・・」

パン!!!

 

「巡査Dは・・・」

パンパンパンパン!!!!!!

 

「最年長の俺だけが生き残った!!!なぜ俺が!!!」

警部は弾切れになった銃をホルスターに収め、警棒を右手に持った。

 

「おおおおおおおお!!!」

巡査Aから警部に目移りした感染者が寄って来た。

警部は次々と頭を潰し散らした。

気づくと警部の立ってる場所は死屍累々であった。

 

警部はしばらく頭がぼーっとした。

(銃を抜くか・・・)

警部は無意識に弾倉を入れ替え、右手で右側頭部に拳銃を当てていた。

(よし!・・・)

 

自分の頭を吹き飛ばそうとした瞬間、かつて巡査Aだった発症者はひざまずき両腕のない状態で左手の付け根にかぶりついた。

「ああああああああ!!!」

警部は反射的に巡査Aだった頭を拳銃を撃ち吹き飛ばした。

警部の左手が神経線や血管を出してぶらぶらしていた。

 

「そうか、巡査Aお前は俺に生きろと言う意味で噛みついたのか?」

警部は自分の悲鳴で近寄ってきた感染者を次々と持っていた拳銃で撃ち倒した。

警部は落ちてあった柄に血の付いた斧で左ひじから下を切断した。

その時警部の顔は鬼瓦のような表情であったが声には痛みを出さなかった。

 

「例え俺が最後の人間でもお前らには絶対殺させない。」

 

ZDAY29日目夕方ごろ・・・

 

俺「森下、安全地帯のすぐ外には着いたぞ。」

森下は青井の呼びかけでうわの空から戻った。

森下「ああ、そうか。すごいだろ?」

森下はまだ心ここにあらずだった。

 

中田「なんだこれ、橋以外から絶対入れないし出れないし、中で感染爆発したらもろ刃のつるぎだな。」

斉藤「まるで海の倉庫ね。」

 

車は三角州(安全地帯)から対岸に止めて様子を伺ったが橋以外には大型コンテナが隙間なく積まれ、高さは平均15メートル以上はあった。

 

俺(どうやったらこんな短期間で島全体ほとんどをコンテナで囲めるんだ?)

 

※橋はレインボーブリッジくらいの大きさをイメージしてください。

 

俺たちは安全地帯に続く橋に向かった。

橋から国道までの県道は障害物が歩道に避けられていた。

 

俺たちは橋の前の最初のバリケードで止まった。

最初のバリケードはコンテナが道の脇にあって大型トラック4台が通れるくらいの幅があった。

俺は手を挙げて運転席からゆっくり降りた。

民兵A「日常にようこそ。」

 

民兵B「噛まれたりひっかれたりしてないか検査していいか?」

四人はそれぞれ試着室みたいな独立した個室に連れて行かれた。

 

斉藤には女の民兵が目視で身体検査した。

民兵D「あなたどこも怪我してないのね。」

斉藤「ええ、処女ですから。」

民兵D「あなた、処女なの!見た目に似合わないわね。」

民兵Dはげらげら笑った。

 

森下「俺は噛まれた経験はあるが入れてもらえるのか?」

森下は自分が噛まれたが入れてもらえるかどうか心配した。

民兵C「もちろん、大丈夫ですよ。」

民兵Cは笑顔で答えた。

 

民兵C「この要塞には生き延びるために噛まれた部分を切除した人はたくさんいますから。心配いらないです。」

森下「お、おお・・・ならよかった。」

他にも重武装した民兵たちが数十人いたが、快く通してくれた。

 

四人は橋の道の脇に装甲車だけ置いてある第二バリケードでまた迷彩服を着た民兵に止められた。

四人は車から降ろされ、車を押収された。

 

そこから四人は橋の上を1キロメートル歩き、第三(最終)バリケードに到着した。

今度は安全地帯入口の脇のコンテナに乗った見張りの自衛隊員が何十人もいた。

隊員A「君たちの中には追放者も紛れていなかった、安全を求めてやってきたのだな。」

隊員Aは写真を何枚も見ながら言った。

 

中田「そうだ、島の外は地獄だった・・・」

中田は疲れ切った表情で言った。

隊員A「よく来たな!知ってる者や親族を失った悲しみは俺も分かる・・・彼らの分まで俺たちは生き抜こう!」

森下・斉藤・中田「・・・」

 

赤いSUVが第三バリケード手前に走って来た。

赤いSUVから民兵が降り、再び歩いて持ち場の第二バリケードに戻った。

隊員B「君たちは車で来たなら。それは君たちのものだ。安全地帯で自由に生涯を暮らすもいいし、出て行ってもいい。ここは刑務所じゃないからな。」

隊員Bはバリケードの三メートルの鉄板の扉を開けるよう無線機で他の人たちに指示した。

 

四人は最後のバリケードを突破し、発症者のいない安全地帯に赤いSUVで入った。

 




次回安全地帯の仕組みが明らかとなるか!!!
シーズン2に続く・・・


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シーズン2
安全地帯2


前回四人は安全地帯手前のバリケードで検問を受け、居住を許可された。



ZDAY29日目夜・・・

一台の赤いSUVが四人の希望を乗せてコンテナに囲まれた安全地帯に新入する。

安全地帯(三角州)の中を初めて見た。

四人の入った中央橋は安全地帯の中で一番海抜が高かったため、安全地帯を見渡せた。

四人は久々に夜の街の明かりを見て感動した。

「まさか、こんなところでもう一度暮らせるなんて。」

俺は涙が出た。

 

「ここからまたやり直せるんだ。」

中田は希望にあふれた声で言った。

 

この安全地帯は家が五万件あり、そのうち二万件はもう住人が住んでいる。

安全地帯総人口約10万人で1000人が米兵・傭兵・元自衛隊員関係者・元警察関係者。

1万人は予備戦闘員として登録。

他の職業はざっくりしており、農耕者・漁業者・技術者(建築も含む)でこの安全地帯は構成されている。

発電所に下水処理場などまだ20世紀の文明がここには生き続けていた。

 

俺たちはSUVを走らせ、明かりのついてない空き家を探した。

 

「ここでいい。」

俺は六階建のエレベーターが作動していないマンションに停車した。

中田は車の荷台から自分のリュックを背負った。

「また、この町のどこかで会おう。」

「こんなところでいいのか?」

「ああ、俺は一人暮らしをしたことないからな。都会っぽいマンションに一度住みたかったんだ。」

「じゃあ、あばよ。相棒!」

 

俺も車から降り、ハグした後、中田はマンション一階の端にある螺旋状の非常階段を上って行った。

俺は中田を降ろして引き続き家を探した。

「俺は障害者が集団で暮らしてる施設に降ろしてくれ。」

「いいけど、どうしてなんだ?」

「彼らなら俺の気持ちが分かるからだ・・・」

「あ・・・悪かった。」

「・・・」

 

「気にするな!」

「・・・そうだな。」

「それをやめろよ!!」

 

俺は森下を案内センターと書いてある木の看板の前で降ろした。

「青井・斉藤、世話になったな。」

森下は案内センターの中に入って行った。

 

俺は最後に斉藤の新たな家を探してあげた。

 

「斉藤、お前はどこに住みたいんだ?」

 

俺は明かりのついていない家々を見ながら言った。

 

「ここでいいわ。」

 

俺が停車すると、斉藤は降りた。

斉藤は暗闇の中アパートの一室に入っていった。

(そっけねーやつだな。)

 

俺は一人SUVを走らせ前に住んでいた家に似た一軒家を探して見つけた。

(ちょうど、和風の瓦屋根の二階建だな。)

 

俺は車庫がなかったために家の前の玄関先のすぐ横に車を駐車し、玄関に土足で入った。

夜も遅かったので汚いほこりのかぶったベッドを見つけ、寝ようとしたが癖で家中が安全か徘徊してから包丁を横のドレッサーに置きようやく就寝した。

 

俺は気づくと誰もいない霧がかかった田地にいた。

周りはほとんど霧で三メートル先しか見えなかった。

「刀?」

俺は右手に日本刀を持っていた。

やつらが寄ってくる。

「なんだ!」

俺はやつらを斬り裂いた。

必死に斬り裂いた。

 

そこには中田がいた。

「嘘だろ・・・」

中田は感染者となって俺に襲いかかってきた。

俺は斬り裂けなかった・・・

「あああああああああ!!!」

俺は中田に食われた。

それが幽体離脱のようにして今度は上から見えた。

 

ZDAY30日目朝・・・

引き戸から男の声が聞こえた。

「すいません!!!」

 

俺は男の声で悪夢から目が覚め、包丁を携帯して玄関に行った。

 

玄関を開けると四人の迷彩服を着た兵士がいた。

「おはようございます。私はこの地域の責任者上野です。顔色大丈夫ですか?」

玄関で一人の兵士がお辞儀をした。

俺もおもわずお辞儀をした、そして顔をあげた。

「いえ、ちょっと嫌な夢で・・・私は青井和成です。新しく来た難民です。」

「私は責任者ですから、こうやって新しく来た人には顔を出しておかないといけないですから。」

「よくここが分かりましたね。」

「ええ、この安全地域には監視をめぐらしてますから。」

 

上野は安全地帯にまんべんなく部下を配置して秩序を保ったり、発症者が出たりしないか常に警戒しているのである。

 

「よかったらこれ読んでください。まだここ(安全地帯)は出来て二週間ですが、この安全地域の歴史の本です。」

上野は薄い本を俺に両手で渡した。

俺は片手で受け取ったが、表紙には三角州の絵が描いてあった。

 

その後上野は丁寧に別れの挨拶をした後、三人の兵士たちを引き連れジープに乗り去った。

 

俺は薄い本をリビングのソファに座り、読んだ。

 

『安全地域』

この地域を築いた者は上野三等陸曹である。

 

ZDAY二日目に三等陸曹率いる小隊は□□県と××県の県境の国道のETCで検問をしていた。

 

(ZDAYってなんだ?)

 

俺はZDAYが気になり本の【はじめに】を見た。

 

ZDAYは悪夢の始まりからの年表か、それとも感染者との闘いが始まった日のなにかだった。

 

「ここはもうもちません!!」

その時××県国道方面から発症者は何百との大群で小隊に迫った。

「よし!!!全員撤退だ!防衛線を崩して避難する。」

三等陸曹は下士官たちにそう言って□□県の有名な三角州に向かった。

「生きている隊員はみんな□□県三角州に向かってくれ。」

三等陸曹はジープの無線で警官や自衛隊員に伝えた。

 

三角州にはその日のうちに約1000人の警官と隊員あと在日米軍が集まった。

案外三角州は発症者が少なかった、だから三日で三角州の秩序は取り戻した。

海上自衛隊や在日米海軍は安全確保を約束に三等陸曹要請の元にコンテナを全国からありったけ海上輸送し三角州の川岸にトラックで運び、発症者の侵入を防ぐ作戦に出た。

 

「三等陸曹、三角州の中は安全ですから三つの橋さえ抑えればコンテナで囲む必要はないと思いますが?」

「ああ、だが奴らは俺たちと違って呼吸をしないかもしれない。そのリスクは考えたか?」

「いえ・・・失礼しました掃討に戻ります。」

 

三等陸曹の適切かつ迅速な安全地域確保に半月で三等陸曹から責任者(□□総司令官)となったのだ。

 

俺は本が苦手だったので60ページの薄い本でも重要な部分だけ読んだ。

裏表紙には殺人・窃盗・恐喝が禁止と手の禁止マークが描かれていた。

 



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対発症者用訓練

俺は薄い本に書いてあった募兵の見出しを見て訓練所に行ってみた。

 

住所を見て訓練所に行ってみると明らかに高校であった。

(たしかに、基地なんて造れる場所ないもんな・・・)

学校外のフェンスから運動場での訓練の様子を見ていたがどうやら体術訓練らしい。

弓道場も見えたので見てみると斉藤が40メートル先に向かって的に矢を放っていた。

的は円形で半径50cmの大きさであった。

的のど真ん中を見事的中さしていた。

 

「すごいな、それだけ正確ならゾンビも怖くないな。」

「青井、何の用?」

「俺は訓練しに来た。お前はここで何してるんだ?」

「東岡を探すために練習してる。」

 

斉藤は矢を放ちながら言った。その矢も真ん中ではないが的に刺さった。

「邪魔して悪かったな、斉藤。」

俺は弓道場を出て行き志願しに高校の事務室に行った。

 

「すいません!」

「なんですか?」

窓口から女の人が用件を聞く。

 

「志願しに来たんですけど?」

「じゃあ、運動場に行って畑辺さんに会ってきてください。」

俺は写真を渡された。

その写真には迷彩服を着たいかつい顔のした50くらいのおじさんが写っていた。

(うわ、これ絶対鬼教官じゃん。)

 

俺は早速畑辺さんのいる運動場に行った。

「畑辺さん?」

「なんだ?青年。志願兵か?」

「はい、青井和成です。」

 

畑辺は俺が思っている以上に間近で見ると身長180cmのボディビルダーみたいな体型であった。

(これは素手でもゾンビを殺せそうだな・・・)

 

「青井君、今はある程度安定し防衛部隊も調達隊も人数は十分いるから君はどっちに入る?」

「防衛隊?調達隊?」

「君はマニュアルを読まなかったのか?」

 

マニュアルとは上野責任者がくれた薄い本のことであった。

 

「・・・まあ、そういう人も少なくない。とりあえず訓練してもらおう。」

畑辺は俺と同じくらいの青年を呼んだ。

 

「畑辺チーフ、なんでしょうか?」

「時間を取らせるが、彼を体育館まで案内してやってくれ。」

畑辺は俺の背中を押した。

 

「分かりました。畑辺チーフ!」

俺は青年に連れられ、体術の訓練を受けた。

 

「俺は青井和成だ。よろしく頼む。」

「僕は田辺だ。青井、よろしく。」

 

田辺によればゾンビ(発症者)と盗賊の二種類の敵に応じて体術を訓練しているらしい。

「俺は○○県から来たが盗賊にはあわなかったぞ?」

「それは幸運だ。盗賊でも少数ならともかくサムライ盗賊団に遭えば生存率は半分だ。」

「サムライ?」

 

サムライ盗賊団とは遊牧民のように拠点を構えず、ゲリラで襲う盗賊集団のことである。

その盗賊団の規模はどれくらいかは上野責任者もちろん誰も把握していない。

 

「サムライ盗賊団を見たことあるか?」

「ああ!車の中でバックミラー越しに馬鎧の馬は見たぞ。」

「何!よく生き延びたな。」

「その時は仲間に言われて車を急発進させたからな。」

「でも今回は発症者相手の訓練だ。」

 

田辺と話していると体育館についた。

体育館では何も持ってない人々が強歩で一人の女の人を追いかけまわしている。

 

「これが訓練だ。戦うのではなく、いかにうまく逃げて身を潜めやり過ごすかだ。」

「なるほど、ホームセンターを思い出すな・・・」

「じゃあ頑張れよ!」

田辺はそう言って運動場に戻って行った。

 

女の人は仮想発症者から逃げるために十段の跳び箱に上った。

「合格!」

一人の仮想発症者がそう言って強歩していた人はみんな休憩し始めた。

 

他にもマットや卓球台など障害物が置いてあった。

 

俺も挑戦をした。

「新入りだが容赦するな。」

いきなり15人くらいが強歩で俺に襲いかかってきた。

 

俺は落ちていた太鼓棒を拾い、強歩で歩いてくる仮想感染者を腹への突きで倒した。

さっきの女の人と同じくして跳び箱を上る途中跳び箱が崩れた。

「うお!!!」

 

俺は跳び箱の周りに敷いてあったマットに落ち、怪我はしなかった。

「大丈夫?」

「大丈夫か?」

そんな俺を心配する声が飛び交う。

 

「ああ、みんなありがとう。」

 

俺は体育館を出るとすっかり夜になっていた。

「そういえばコンビニとか飲食店とかあるのか?」

「あるわよ。」

優しい声で話しかけてきた女性は目鼻たちが整っており日本美人な感じである。

彼女は最初俺が体育館で見た時に仮想感染者から逃げていた女の人であった。

 

俺は一瞬で分かった。

彼女は自分に気があるということが。

 

「じゃあ、一緒にご飯食べないか?」

「分かった。案内するわ!」

彼女は快諾してくれた。

 

「この状況だから肉類は希少で手に入らないけど、魚とか麺類の飲食店ならあるわよ。」

「そうか、じゃあ君がいつも行く店に案内してくれ。」

 

店に着いた、ご近所は真っ暗だが店は30分並ぶくらい繁盛していた。

「そういえば君は名前なんていうの?俺は青井和成。」

「生田優香。これからもよろしくね。青井くん。」

 

俺は海鮮丼、生田は魚介ラーメンを食べた。

「じゃあ、また訓練所で。」

「うん。またね。」



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再び地獄へ

安全地帯には本土に続く三つの橋がある。
ファーストブリッジ・・・××県に近い国道が続く。
セカンドブリッジ(中央橋)・・・□□県の県道に続く。
サードブリッジ・・・○○県に近いが県境の山を歩いて越えるか、車で山のふもとの山道を遠回りしなければ○○県にはいけない。



ZDAY30日目昼・・・

中田はバイクでファーストブリッジから安全地帯を出ようとしていた。

「なあ、通してくれないか?」

 

するとコンテナの上に立っていた一人の武装した兵士が降りてきた。

「いいが、患者になったら即射殺だ。それでもいいのか?」

「ああ、その時は自分でやるつもりだ。」

「これは脅しじゃない、本当にあった事例があるんだ。」

「分かったから、明日までに戻ってくるつもりだ。」

「感染してなければ半年後でもいいぞ。」

 

扉は開き、中田はバイクで再び地獄へ。

 

中田は××県に近い町を目指し走っていた。

まだZDAYから一か月、家で籠城している人々も少なくはなかった。

だが外でさまよってる発症者は増え続けていた。

 

安全地帯には酒やビールは不足しており、

中田は酒を飲みたくて酒の種類が多い知っている安全そうな田舎の店に向かっていた。

 

中田は店の前にバイクを止めた。

幸い感染者は見渡す限りいなかった。

「まだ、酒が残ってるのを祈るぜ。」

酷く破られた店の出入り口に入った。

 

金属バットを両手に持ち店内を警戒していた。

すると後ろから関係者入口から一体の感染者が襲ってきた。

「食らえ!!!」

気配を感じ間髪入れずに後ろを向きバットを振りおろし頭をかち割った。

 

(早く酒をありったけリュックに入れて逃げよう。)

だが店内に年代物の酒はほとんどなかった。

(畜生、関係者しか入れないところに行ってみるか・・・)

関係者入口に倒れている自分が倒した屍をまたいでゆっくり入った。

 

すると倉庫に酒がありったけ眠っていた。

(やったぜ。ブランデーにテキーラにワイン!こいつは上物だ。)

中田は店の外を見ると感染者が道路に数十の群れで歩き回ってた。

中田はすぐに出入り口横の壁に身を伏せた。

(くそッ、俺を探してるのか。俺の匂いを嗅ぎつけたのか?)

 

バイクまでに六体はいた。

(包丁で刺していくか、それとも振り切るか。)

中田のリュックは酒が入って重くなり、バットを振る力を入れるのはきつかった。

中田が出した決断は酒棚で出入り口を防いだ。

 

「今日はここでお泊りだな。」

中田は出入り口付近でリュックを降ろし、店内に残っている感染者を始末した。

中田は階段を見つけ、上ると普通の2DKの部屋があった、そこにいた感染者も倒した。

(ここは店と自宅の一体型なのか。)

 

部屋の窓からバイクを見ると感染者がさっきより集まって来た。

(ここで酒を全部飲んで死ぬのも悪くないな。)

 

中田は一度リュックを取りに戻ると出入り口には奴らが押し寄せていた。

だが出入り口を防いだ酒棚は爆破でもしない限り出入りは出来ないだろう。

何重にもなった酒棚のバリケードに何十もの感染者の押し寄せるきしむ音が聞こえた中田には時速80キロで電車が通る線路橋の下にいる気分だった。

急いでリュックを二階に持っていき、二階にある二体の屍を階段から一階の倉庫に投げ落とした。

 

「もう一度外に出ると、やっぱり安全地帯は楽園だな・・・」

中田は改めて安全地帯のありがたみを噛みしめていた。

中田はスイス製のナイフを後ろズボンのポケットから取り出し、リュックに入っていたワインのコルクの栓を抜き、ワインボトルをボトル飲みした。

 

中田は外が暗くて見えなくなるまで道にいる感染者の様子を酔いながら見ていた。

 

ZDAY31日目・・・

中田は目が覚めるとまず先にしたことは窓の外を見ることだった。

昨日と違い今日は窓の外は嘘みたいに過疎していた。

「どうなってんだ?」

中田はリュックを背負い二階の窓から一階の外に置いてある室外機に着地して、バイクを安全地帯に向け走らせた。

安全地帯に感染せず戻るのだけを考え、久々の二日酔いだったが、忘れていた。

 

すると白の軽乗用車に10体くらいの感染者が群がっていた。

(あの車のお蔭か。)

中田は車の中の人物を見捨てようとしたが、

かすかであったが運転席に斉藤が乗っているのを見た。

 

(斉藤、なんでお前なんだ。お前じゃなかったら見捨ててたぜ。)

中田はリュックをハンドルにぶら下げバットを持ってバイクから降り、車に群がってる感染者を一体ずつ脳天をかち割った。

感染者の血しぶきが白い軽乗用車を赤く染めた。

 

「別に助けなくても。」

「じゃあなんで群がられてたのに車で逃げなかった?」

 

斉藤の車はどこか故障し、動かなくなったと同時に奴らが急に集まり斉藤自身も車から外に脱出を出来なかったのである。

 

「まあいい、とりあえず奴らが集う前に逃げるぞ。俺のバイクの後部に乗れ。」

「もう遅いわ・・・」

 

感染者がさらに数十の数で四方八方から押し寄せてくる。

斉藤は軽乗用車の後部座席から弓と矢の入った鞘を取りだし、感染者に向けすぐさま矢を放った。

 

「この数じゃあ無理だ。一旦車の中に戻ろう。」

「・・・」

斉藤は一心不乱に矢を近づいてくる感染者の眉間に撃ち倒した。

「分かった・・・ぎりぎりまで援護してやるよ!」

 

仕方なく中田は助手席側に回り、感染者をバットで殴り倒した。

(たしかにこの数じゃあ軽乗用車の耐久が持たないかもな。)

倒しても倒しても数は減らなかった。

 

すると馬鎧を防備した馬に乗ったSAT(警察特殊部隊)の武装をした10人くらいの集団が二人を取り囲むように防衛線を張り、次々と感染者の首を刎ねたり、頭に向かって矢を放ち倒した。

あっという間に周りの地面は感染者の死屍累々となった。

 

「三週間ぶりだな。」

そう言って馬から降りてゴーグルをはずしたのは東岡だった。

「東岡君、生きてたのね。」

「それはお互い様じゃないか?」

東岡はまだホルスターに三週間前と同じ拳銃を収めていた。

 

「なぜ助けたの?」

「襲われてる人間はほっとけないだろ?同じ人間として。」

中田は会話の様子を見た。

 

「今は俺じゃなくこの男と組んでるのか?」

「いえ、物資調達で一人で安全地帯を出たら車が故障して彼がたまたま助けてくれた。まあ安全地帯にたどり着く以前も同じ仲間として助け合ってたけど。」

「まあいい、こうして長居してるとまた奴らが寄ってくる。ついてくるか?」

 

中田は驚いた。

「いいのか?」

「ああ、俺は東岡だ。」

「俺は中田だ。バイクで後ろをついていくよ。」

 

中田はバイクの後部に斉藤を乗せて謎の武装集団の走っている馬の後ろをバイクでついていった。



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死生活

馬に乗った謎の武装集団があきらかになる。


馬に乗った東岡たちは騎乗しながら寄ってくる感染者を駆逐していた。

東岡たちは国道を乗馬で駆け抜けて××県に入った。

中田はその後ろをバイクで走りながら考えた。

(どこに向かってるんだ?こいつら安全地帯を知らないのか。)

 

××県の県道をしばらく走ると競馬場が見えてきた。

 

関係車両入口の門が勝手に開き、入るとトラックにはキャンプがあった。

競馬場は元々馬の脱走防止で3メートルの柵があるが感染者が入って来れないよに出入り口をほとんど塞いでいる。

ざっと中田が見たところ数百人はこの競馬場内に避難している。

競馬場の難民を守っている兵士は100人程度である。

 

東岡は馬から降り、迷彩服を着た人に状況を説明していた。

その人はバイクから降りた中田と斉藤に話しかけてきた。

「私は大堀だ。安全地帯から来たそうだな。」

「俺は中田だ。こいつは斉藤だ。」

斉藤は中田に紹介されたとき嫌な表情を浮かべた。

 

中田は安全地帯がるのにここに籠城していることを疑問に思った。

「大堀さん、安全地帯には行かないのか?」

「ああ、ここに残ってる数百人は移動させれないからね。」

 

すると東岡が割って入って来た。

「曹長、病院にあった抗生物質持ってきました。」

「よくやった東岡、さっそく必要としている人々に届けてやれ。」

東岡は馬鎧に装着していた袋を持ってキャンプを周った。

 

「曹長?」

「ああ、俺は元陸上自衛隊の陸曹長だった。」

「そうだったのか、だから数百人の難民をこの小さな競馬場で守れてるんだな。」

「君たちは安全地帯に帰るのか?」

 

すると斉藤が重い口を開いた。

「ええ、ここより快適ですから。」

「じゃあ、なんで安全地帯の外にいたんだ?」

「・・・」

斉藤は物資調達の目的で外に出ていた。

 

安全地帯は元々原住民の自給自足で成り立っていたために、兵士になるか安全地帯を出て高価なものを調達するしかなかったのである。

 

森下のような身体障害者はかろうじて責任者の上野が守るのを安全地帯で約束していたのである。

だから青井や森下と違って無職の中田と斉藤は外で感染者の目を忍んで物資をあさっていたのである。

 

「やつら(安全地帯の役人や兵士)は結局本当の意味で守ってくれてはないだろ?」

「だが、広いし海もある。それに夜はゾンビを気にせず眠れる!」

「いや、上野三等陸曹は危険だ。何千もの命を見捨てたからな。」

曹長はそう言って建物の中へ入って行った。

 

「中田さんと斉藤さんは今日は泊って行ってください。明日ここに残るか、出て行くか決めてください。」

兵士Aはそう言って競馬場を見回りに行った。

 

「何言ってるんだ?」

「どのみち今日は泊るしかないわね。それに安全地帯の案内書にもクーデターについては書いてなかった・・・」

 

ZDAY32日目早朝・・・

騎手控室で陸曹長は四人で作戦を立てていた。

「東岡、石油の入ったコンテナを狙え。」

「中央と三番バリケードの間ですか?」

「そうだ、他は陽動で一番バリケードを襲撃するぞ。」

みんなが作戦を立てた後、東岡だけを呼び止めた。

 

「東岡、頼りにしてるぞ。お前は俺の部下の隊員に匹敵するぐらいの責任能力と判断力があるからな。」

「いえ、自分が盗賊に襲われた時助けてくれたのは曹長ですから。」

 

その頃俺は三番バリケードの第一バリケードで畑辺チーフの指示で感染者を自動小銃で撃ち倒す練習をしていた。

俺と訓練兵は二メートルの高さのコンテナの上から立って30メートル先の感染者に向かって発砲していた。

(ついに日本も銃社会か?)

俺は自動小銃(89式小銃)で感染者の頭を撃ち抜いた。

「いいぞ、青井!さすが地獄で生き抜いてきただけあるな!」

 

生田を見てみると集中した面持ちで次々と数百メートル先の感染者を撃ち倒していた。

「ふうー。」

 

「生田すげーな。」

「そんなことないわ、青井くん。」

俺は銃の腕に尊敬した。

 

「大丈夫だ、青井。お前だって練習すれば次々と撃ち倒せるようになるさ。」

「私だってまだ一週間しか撃ってないから。」

生田は謙遜していた。

(俺は別にゾンビが群れてなければ鋭利な武器で十分だが・・・)

 

畑辺は訓練兵から銃を回収した。

「次は昼から例の高校で体術訓練だ。」

畑辺はそう言ってコンテナから降りて自転車で第一バリケードから安全地帯に戻った。

 

俺は赤いSUVに生田を助手席に乗せ、家まで送った。

生田を家に降ろそうとして、自分の拠点に帰ろうとした時であった。

「ねえ、青井くん。よかったらランチしていかない?」

「ああ、そうだな。ここ三日外食にインスタントばっかりだったから・・・てかご飯作れるのか?」

「それは失礼よ。」

生田は微笑みながら家に入った。

俺も生田に自宅に招いてもらった。

 

生田の家は黒のストレート屋根で外壁は灰色のコンクリートだった。

近所は空き家である。

隣人はきっとどこかに逃げたのだろう・・・

「お邪魔します。」

「どうぞ。」

生田は長袖長ズボンの体操服から着替えて下はジーンズの上はカーディガンで黄色いエプロンで台所に立った。

 

「そういえば家族は健在か?」

この質問は俺にとって避けられない質問だったから知り合って早めに聞いた。

「この三角州で父も母も発症して私が・・・」

彼女は黙り込み黙々とたまねぎを切った。

 

「俺はゾンビが湧く前に両親は他界したよ。同僚も多分あの日に大半が死んだよ。両親が羨ましいよな。もうこんな地獄にはいないからな。」

俺はそこそこ元気で語った。

 

「そうね、私たちもなんで生き残ったか分かんないけどきっと意味があるのよ。」

彼女は泣いていたがそれがたまねぎが原因かそれとも他なのかは分からなかった。

 

俺は話題を変えた。

「俺は25だけど、生田は?」

「あなたと一緒。」

「今日ゾンビを始末した数か?」

俺はジョークを言った。

彼女は泣きながら少し笑った。

 

彼女が作ったのはチャーハンであった。

「チャーハンか。他人の手作りは久々に食べるな。」

俺は大匙のスプーン一杯にチャーハン乗せ食べた。

 

「俺のより1,5倍はおいしい。」

「なによそれ。」

俺はカップルみたいなやりとりを生田としていた。

 

兵士Aは出入り口で中田と斉藤に聞いた。

「残るのか?」

「残るわ。」

「斉藤!残るのか?」

中田は斉藤が残る選択に驚いた。

 

なぜなら競馬場は安全地帯と違い、全てが質素だからである。

夜は懐中電灯、ろうそく。

食べ物は外から持ってきたものを兵士が貯蔵していて守っている。

安全地帯はもう安定してきてはいるが競馬場はいつ反乱がおきてもおかしくない空気。

 

「だって責任者なんかうさんくさそうだし。」

「俺は安全地帯に戻るぞ。」

 

兵士Aは門番の仲間に無線で出入り口が安全か聞いた。

「残念だが今は発症者が外に群がっていて危険らしい。」

兵士Aは立ち去ろうとした。

 

すると中田は兵士Aの前に立ちはだかった。

「待て、冗談だろ?」

「本当だ。仲間が物資を調達しに帰って来たと同時に出してやる。」

 

それは日が沈むころに暗闇の中に放り出されるという事だ。

(くそっ、兵士にならないと安全に外には出れないってことか。)

 

斉藤は中田と兵士Aがもめてる間に東岡のテントに行った。

 

東岡はテントで重火器の手入れをしていた。

「斉藤さんから来るとは珍しいな。二、三週間前くらいは俺を置いて出て行ったのに。」

「あれから、もう一度あなたの拠点に行ったけど死んだかと思ったから。」

「俺も斉藤さんがまだ生きてるなんて信じられないよ。」

「大島君に坂下さんもみんな死んだから・・・もしかしたらあなたも。」

「ああ、拠点は感染者の大群が押し寄せてきたからガス爆発で家を燃やしたんだ。一体でも多く駆逐してやったよ。」

「でも無事でよかった。」

斉藤は目に涙を浮かべながら言った。

「たしかに古い友人は斉藤さんだけだ。でも斉藤さんはあの時俺が人を殺した冷酷な印象になっただろ?」

「あなたが正しいとは言えないけど、でもこれからはそうしなきゃいけないって分かった。」

斉藤は東岡の背中に抱きついた。

抱きつかれ思わず抱き返すと黒髪から桃色の香りがほのかにする、

そして腰に回した手にさらさらした斉藤の髪が柔らかい。

 

そこに陸曹長が東岡のテントに来た。

「お!悪かったな。」

陸曹長はテントから空気を読み、去った。

 

東岡は斉藤の方を向いた。

そして斉藤の両腕をつかんでいった。

「俺は確かにあの時おかしかった。子供みたいに銃を振り回してた・・・だが、今は曹長に助けてもらって俺には守るべき人や仲間が数百人できた。友達を二人失って正気じゃなかった。斉藤さんはもう一回友達に戻ってくれるのか?」

斉藤の目から涙が頬をつたう、そしてうなずいた。

 

東岡は斉藤が去った後すぐに高所にあるアナウンス室に行った。

陸曹長はアナウンス室から競馬場や発症者を眺めてた。

「東岡、さっきは邪魔したな。」

「いえ、曹長。なにか用件があったんじゃないんですか?」

「さっき、中田が俺の部下になりたいと言ってきた。どう思う?」

「多分安全地帯に戻りたいんでしょう。でなきゃあ外なんて出たくないですからね。」

 

陸曹長は一息つき東岡の顔を見た。

「私は中田が部下に入ればいいと思うのだが。なるべく円滑に物事を進めたい。」

「ではここに連れて来ましょうか?」

「頼む。東岡。お前は後から入った仲間で唯一信用できるからな。」

 

中田と斉藤は競馬場の客席で状況を話していた。

「俺ここの兵士になるよ。一度入ったら難民はここで骨を埋めるしかないらしいからな。」

「そう、私は残るわ。」

「東岡、見つかったもんな。確かに安全な場所はいくつもありそうだが、信用できる人間もそれくらいの数だもんな。」

 

すると東岡が来た。

「中田、志願についてだ。ついてこい。」

「噂をすれば東岡、兵士にしてくれるのか?」

 

中田は東岡によってアナウンス室に連れて行かれた。

「やあ、中田くん。君は兵士になって脱出したいんだろ?」

「大堀さん、さすがここのトップですね。」

東岡は黙ってドアの前で聞いていた。

 

「東岡にも初めて話すが俺がなんで上野に追放されたか教えてやろう。まあ厳密には追放ではないんだが。」

 

最初安全地帯を指揮していたのは陸曹長であった、しかしZDAY14日目に船で全国から来た何千もの難民の受け入れに三等陸曹の上野は反対した。

 

また他の隊員や在日米軍も物資が当時不足したために受け入れの賛成派は少数であった。

少数派は事態の収拾がつかないと思い安全地帯を離脱、何千もの難民を××県に誘導し上陸させたが運悪く感染者の大群に遭遇し、たどり着いた辺境の要塞が競馬場だった。

 

上陸からの競馬場までの移動の生存率は20パーセントであった。

 

「だから追放者だとか見張りが安全地帯で言ってたのか。」

「俺たちは追放者扱いか、まあクーデターではないがそんなものだ。だから東岡がついてきた時はうれしかった。安全地帯には行かずに競馬場に来てくれたんだからな。」

「曹長・・・曹長がいなければ今の自分はいませんから。喜んで弾除けにもなります。」

東岡は曹長に対して狂信的な忠誠心を持っていた。

 

「中田くん、君にもこれくらいの忠誠心を私いや守っている難民に命を捧げる覚悟があるなら兵として採用しよう。」

 

中田は真剣な顔で考えた。

「そんな話安全地帯では聞かなかった。まあ、そんなに人と関わらずでてきたからな・・・」

「来るもの拒まずだ。」

「じゃあ、二人だけ安全地帯からここに連れてきていいか?」

「いいだろう。早くこっちに連れて来いよ。」

 




競馬場は空間的に閉鎖的だと作者の偏見と独断で勝手なイメージで書きました。


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軍閥

ZDAY33日目朝・・・

中田は一人バイクに乗って安全地帯に向かった。

 

その頃責任者の上野と畑辺が兵士訓練所として使っている高校の校長室で話していた。

「チーフ、どうだ新兵の育成は?」

「総司令官、順調だ。」

「今は兵力が1000人で十分足りてるが、なんせ十万人を守ってるからな。予備兵士や自己防衛は大切だ。ここもかつては日本だったが今は戦国時代になりかけてる。ただでさえ外には発症者がいるのにここを、この場所を奪おうとしている。大堀が仕掛けて来たらこっちも迎え撃って拠点を潰し皆殺しにしてやる。」

「大堀?少数部隊で出て行った自衛隊員か?病気で死にそうな人はマークするか?」

「頼むよ、チーフ。」

 

安全地帯では感染を防ぐために死んだら発症する前に脳を破壊するのである。

病院もあり、そこでは余命を言い渡されたら週5で兵士が様子を見にやってくる。

畑辺は日本が崩壊する前に裏組織で仕事をしていたために汚れ仕事も得意である。

畑辺はとある五人家族の家に来ていた。

「母が亡くなったんです。急に心臓麻痺かなにかで・・・」

「奥さん、じゃあ鍵を下さい。」

畑辺に庭のガレージの鍵を渡した。

 

ガシャガシャ言ってるガレージ特有の音が響いている。

「まるでホラー映画に出てる気分だな。」

畑辺はガレージの鍵を解除し、ガレージを開けようとした。

「見ない方がいいですよ。」

「じゃあ、あとは任せます・・・」

家族は家中に戻った。

 

ガレージを開けるといきなり70くらいの老婆が白褐色の瞳で襲いかかってきた。

畑辺は左手に持っていたナイフで思いっきりつむじを刺した。

 

一時間後畑辺は部下を呼び死体袋に遺体を詰め、火葬場に行った。

ちなみに病院では発症者を研究しているがなにも分からず、被検体は全部処分される。

日本で一番の医学部を出てる医者でも蘇る病は原因が分からなかった。

 

廃工場で森下は左手に義足をつけて働いていた。

兵士たちの要請で弾倉に弾を入れる仕事をしていた。

「本当なら撃つ側だったんだけどな。まあ今でも撃てないことはない。」

ぶつぶつ言いながら弾倉に一発ずつ弾を入れていた。

 

昼ごろ競馬場では装甲車が出発の準備をしていた。

斉藤は武装した東岡見つけて駆け寄った。

「斉藤さん、いつもの物資調達だ。明日には戻ってくるよ。」

「分かった。」

 

日が沈み暗くなった頃、ファーストブリッジの第一バリケードで突如銃撃戦が起きた。

暗闇の中で第一バリケードの兵士たちは混乱せず対応した。

「サムライ盗賊団か?」

「まさかこんな要塞に攻撃しに来るとはな。」

「司令長官に使いを一人送れ!」

 

すると今度は第一バリケードに感染者の大群が押し寄せてきた。

「やばいぞ!発症者だ!!」

兵士たちはコンテナの上から食い止めようと機銃で蜂の巣にしたが焼け石に水であった。

 

中央橋でも同じ事態に陥っていた。

そんなことは知らず俺と生田はサードブリッジの第三バリケードでざる警備をしていた。

「あそこに山があるだろ?」

「うん、昼も霧がかかってて見えない場所だね。」

「○○県のあの山頂付近が俺の故郷なんだ。謎の病気が流行る前はあそこから○○県内の都市部で会社員をしてたんだ。」

「へえー、よくここまで生き延びれたね。」

生田は感心した。

 

すると中央橋とサードブリッジの間のコンテナが急に爆発した。

俺はかすかだがモーターボートが爆発の火で見えた。

「何があったんだ!」

 

爆発が起こった近くには仕事を終えた森下がいた。

爆破で吹き飛んだコンテナを突破して感染者が侵入してくる。

「畜生!ここは安全じゃなかったのか?」

森下は侵入してくる感染者を右手で護身用のナイフを頭に突き刺し抜いた。

その際左から感染者が襲ってきたが左手の義足に幸い噛みついてきた。

左手に噛みついている感染者も右目を刺し抜き倒した。

 

森下は侵入してくる感染者を援軍が来るまでさばききれないと思い逃げた。

左手の義足にすぐにナイフをガムテープで巻きつけながら逃げた。

 

俺は生田と共に燃えているコンテナに行った。

コンテナの炎の明かりで感染者たちが水の中から出て来て寄ってくる。

だがそれはまるで開店時に並んでた行列の客が待っていたかのように中に入る。

あらかじめモーターボートで川底に感染者を引きよせていたのだろう。

 

「生田、伏せろ!」

俺は兵士として戦うのではなく、隠れた。

十人ぐらいの兵士たちが乗用車三台で事態を収拾に来たがあっという間に感染者の大群に飲み込まれた。

生田は最初は携帯している自動小銃で撃とうとしたが、俺の伏せろの意味が分かった。

 

「事件だな。」

「え?」

「きっと襲撃してきたんだ。一番手薄な警備している場所だ。しかも夜に。」

 

総司令官は例の高校の校長室にいた、と同時に畑辺もいた。

使いがやってきて状況を説明した。

「どうします?総司令官。」

総司令官は冷静であった。

「人の畑を荒らされたんだから、こっちも襲撃に行こうじゃないか。」

「総司令官、相手は正体不明だぞ?」

「いや、正体も顔も知ってる。」

畑辺は驚いた。

「サムライ盗賊団ですか?」

 

総司令官は畑辺の質問を聞き流し、逆に命令した。

「俺は部隊を率いて殲滅してくる、お前はここを守ってくれ。」

「・・・分かった。」

 

ZDAY34日目朝・・・

俺はまだ生田とコンテナの上で感染者の動向を観察していた。

感染者の侵入は止まらない。

昨日伏せた時から一言もはなしていない生田が口を開いた。

「ここももう安全地帯じゃなくなったわね・・・」

 

俺は10万人の人々がどうしているかは分からなかった。

「逃げるしかないわね。」

「そうだな・・・だがどうやって逃げる?」

「コンテナを渡って港から逃げるわ。」

 

俺と生田はコンテナから港へ行くと港はもぬけの殻であった。

「昨日のうちに船は全部出払ったみたいだな。」

「まだここまで奴らは来てないわ。ボートで逃げましょう。」

 

すると中田が港で話しかけてきた。

生田は自動小銃を向けた。

「待て、生田。俺の仲間だ。」

「和成、無事だったか。」

「この人は?」

「俺は中田だ。この安全地帯に来るまでに危ない旅を共にしてきた。」

 

中田は漁船に乗りエンジンをかけた。

「中田、船操縦できるのか?」

「ああ、専門学校で資格を取ったんだ。乗らないのか?」

 

俺と生田は漁船に乗り込んだ。

そして港を出た。

中田はこれまでの経緯を話した。

もう一つ××県に安全地帯(競馬場)があり、そこから昨日昼ごろから戻りずっと俺を三角州の中を探していたらしいが見つからず、宿に泊まっていると避難勧告が責任者から出され、安全地帯はパニックになりほとんどの安全地帯の人々はサードブリッジと港から車や船で出て行った。

家に残って戦った者もいたらしいが中田は俺と同じくコンテナの上でしのいだ。

 

「じゃあその競馬場まで行く?」

「斉藤や森下は見なかったか?」

「斉藤なら競馬場で例の古い友達を見つけて仲良くやってる。森下は分からない・・・」

俺は森下なら生き延びていると信じた。

三人を乗せた漁船は××県に向かった。

 

その頃競馬場では東岡たちが物資を調達して戻ってきた。

すぐに陸曹長が東岡に内密に聞いた。

「作戦は成功したか?」

「はい、モーターボートは発症者が多くて時間的に余裕がなく回収できませんでしたけど。」

「成功したならいいんだ。これで奴らも終わりだ。」

(この曹長がトップじゃあいつかこの集団は殺し合いになるな・・・)

 

東岡はテントに戻った。

すると斉藤が来た。

斉藤は身支度している東岡を不審に思った。

「東岡君、なにしてるの?」

「ちょうどよかった、斉藤さん。ここの元自衛隊員幹部はおかしい。一緒に逃げないか?」

「いきなりどうしたの!」

「曹長を見てると前の俺を見ているみたいだ。」

「大堀さんは見捨てられた難民を助けたのよ?」

「いや、今はもう別人だ。どうする?」

斉藤は悩んだが答えは決まっていた。

 

「分かった、私も支度してくるわ。」

斉藤も自分の場所に戻った。

 

するといきなり爆音が聞こえた。

その後銃声が鳴り始めた。

兵士A「敵だ!盗賊だ!!」

 

陸曹長が来て言った。

「来い!東岡。三等陸曹め!!今こそぶっ殺してやる!!!」

陸曹長は正気ではなかった。

東岡は後ろから大堀をナイフで心臓を刺した。

 

爆音が鳴って東岡を心配して戻ってきた斉藤はその一部始終を見て驚いた。

「斉藤!これを見ても俺についてくるか?」

「・・・分かった。」

 

東岡と斉藤は銃撃戦に紛れて装甲車に乗り、フェンスを突き破って競馬場を脱出した。

 

森下はサードブリッジから脱出して○○県に続く山道で力尽きる寸前であった。

(畜生ダメだ、昨日から感染者の相手しっぱなしで力が入らなくなってきた・・・)

そこにパトカーが走って来た。

森下の後ろでパトカーは止まり、男が運転席から女が助手席から出て来た。

八体ほどいた感染者相手に男はバットで殴り倒し、女は回転式拳銃を撃っていた。

そこで森下はアスファルトに倒れ込み気が遠くなった。

 

次に森下が目が覚めた時は車の中にいた。

森下は後部座席でシートベルトをしていた。

左横にはチャイルドシートが備え付けられ赤ちゃんが乗っていた。

「目覚めましたか?」

それはかつて自分が乗っていたパトカーで唯一市民として助けた家族だった。

 



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安全地帯3

青井・中田・生田の三人は崩壊した□□県の安全地帯を漁船で沿岸に避難し、その後××県に漁船で向かった。


青井・中田・生田は××県の港に上陸しようとしていた。

港の周りにはおそらく無人の大型客船や海外の軍の輸送船などいろいろ着港していた。

 

俺と生田は銃剣を付けた89式小銃を装備し、ガンホルスターには9mm拳銃が収まっていた。

それぞれ弾は二人合わせて200発。

対照的に中田はナイフや日本刀など接近戦の武器ばかりを所持していた。

 

「中田は生粋の日本人だな。」

「ゾンビ相手なら銃より剣の方が弾数を気にしなくていいからな。」

俺は拳銃を中田に渡したが中田は断った。

「俺がピンチの時はそのデカい銃でお前が援護してくれ。」

 

港に上陸したが何千もの屍が腐敗してピクリとも動いていなかったが、死臭が三人の鼻を襲う。

感染者は見渡す限り片手の指の数くらいしかいなかった。

「ひでーな。一か月前まで先進国だったとは思えない光景だな。」

「車を調達しなきゃね。」

「その必要はなさそうだぞ。」

 

港から続く道路は車が無数に散乱していた。

「これは歩きだな。」

「先が思いやられるね。」

 

三人はまず旅行代理店で××県の地図本を手に入れた。

地図本で競馬場の位置を確かめた。

「結構遠いんだな・・・」

「中田、お前こっちに来たのに競馬場の位置知らなかったのか?」

「ああ、陸から行ったからな。」

「そうね、そこそこ遠いね。歩きだと二日はかかりそうね。」

 

その後車が渋滞した国道を30分歩いた、そして路側から車一台通れるくらいの幅を見つけた。

三人はドアが開けっぱなしのエンジンキーが刺さった車に乗った。

この車(コンパクト)の持ち主は地震対策の対応をして逃げたために車に乗れた。

俺は運転席に中田は助手席、生田は後部座席右シートに乗った。

 

「よし、このまま国道を走れば競馬場に早く着くな。」

「ゾンビの大群に遭遇したらどうするんだ。こんな小さな車で大丈夫か?」

「大群がいたら引き返して別の道を走ればいい。遠回りにはなるけどな。」

 

生田は地図を見て競馬場を確認して俺に指示した。

俺は指示通り国道をしばらく渋滞の車をジグザグに避けながら県道に道を変えた。

中田は田園地帯を見ながら言った。

「ゾンビがいねーな。死体もほとんどない。」

「きっと競馬場に群がってるのよ。」

「いや、競馬場には数十体程度しか柵の外にしかいなかったぞ?」

「まあ、いけば分かる。それよりもっと楽しい話しないか?」

俺は感染者の話よりもっと明るい過去の話をしたい気分だった。

 

中田は助手席の前に収納してあるCDを十枚見つけた。

「中田、音楽はダメだ。」

俺は中田に注意した。

「ええ、もう一か月聞いてないし。それに今は移動中だし車の中だから大丈夫でしょ?」

気持ちは分からなくもなかったが今は何が起こってもおかしくなかった。

 

「ダメだ!拠点を構えてから聞け!!」

俺は念を押して二人に注意した。

 

「まあ・・・和成の言う事も一理あるな。じゃあみんなこうなる前の職業を打ち明けようぜ。」

「私は今流行りのフリーターってやつね。中田さんは?」

「俺は地方公務員だ。だった。でも生き残ったのは趣味でテコンドーをやってたからだ。」

「中田、それは初めて聞くな。俺はテレビ局の警備員だったよ。」

「だから、あんなワイヤーアクションも出来たのか?」

中田は土砂崩れの件をまだ覚えていたようだ。

 

「え、まじ!!じゃあ有名人とかの出入り確認してたの?」

生田は青井の職業に興奮した。

俺はそれ以上なにも言わず、運転に集中した。

 

夜になり感染者のいない場所(田地)で車の中で寝ることにした。

生田は後部座席で横になり寝、俺と中田はシートを限界まで下げた。

 

ZDAY35日目朝・・・

「痛!」

生田は頭を青井が倒しているシートにぶつけた。

「ちょっと!これじゃあ起き上げれないじゃん!!」

「静かにしろ!感染者にばれるだろ。」

生田には見えていなかったが、俺と中田は感染者の大群が車のドアを挟んですぐ横から歩いてるのを見た。

俺と中田は恐怖でシートを元に上げれなかった。

 

「どうする、和成?この方向競馬場の方じゃないか。」

「とにかく今は俺たちの事が最優先だな。」

感染者が車内を見てきたがどうやら幸運にも俺たちの存在を認識できなかったようだ。

感染者の大群が去った後の十分後に俺と中田はシートを戻した。

生田の方を見ると二度寝していた。

 

俺は安全を確認してから降りて生田をシートにもたれさせシートベルトをした。

それでも生田は起きなかった。

「生田は噛まれても起きないんじゃないか?」

中田は笑いながら黒い冗談を言った。

俺は再び運転席に戻り、中田にこれからどうするか話し合った。

 

「お前の競馬場本当に安全か?」

「さあな、安全地帯があんな状況に陥ったからな。正直分からない、だが希望はもったほうがいい。」

確かに中田の言う通りではあった。

「じゃあ、競馬場まで大群がいないことを願うか。」

 

俺は再びエンジンをかけ競馬場を目指した。

昼ごろ競馬場が見えてきた。

ちょうど生田は目を覚ました。

「あれ、発症者の大群は?」

「もう心配することない、新しい安全地帯だ。」

だがどこか様子がおかしかった。

 

中田はフェンス越しに複数のキャンプを見たが誰もいなかった。

「あれ?」

中田は何か様子がおかしいと察した。

するとフェンスの一部が壊れ、車で侵入出来た。

俺は車で侵入し、テント付近で駐車した。

俺と生田はトランクから自動小銃を取り出し警戒した。

そして三人は自動車から降り、周りを見渡した。

死体も感染者もない。

ただ血が黒くなったところがいくつもの場所にあった。

 

「どうなってるんだ?」

俺は中田に車の鍵を渡し、偵察することにした。

「二人は車の近くで警戒していてくれ。」

 

スタンドの中に入ると吹き抜けの通路に武装した兵士たちの死体が数体あった。

どうやら自分で自分の始末をしたようだ。

(どうなってるんだ?)

更に奥に通路を進むと感染者の群れが通路いっぱいに静止して往生していた。

俺は素早く壁に隠れた。

(どうやら安全地帯なんてなさそうだな。)

 

中田は警棒で感染者の頭蓋骨を叩き割った。

「まだ戻って来ねーのか、和成。」

「中田さん、もう少し待ってみましょう。」

生田も心配していた。

「お前の彼氏だもんな。」

また一体近寄ってきた感染者を中田は倒しながら言った。

 

青井が車に戻ろうとした時、一体の感染者が立ちはだかった。

俺は目を手でこすり、もう一度見たがそれは村長であった。

「村長!生きてたのか。」

青井はまだ村長の死を受け入れていなかった。

 

89式を村長の顔に向けながら言った。

「俺は村長と再会できると思っていたがまさかこんな再開とはな・・・」

村長は唸り声しか出していなかったが青井は一方的に話しかけていた。

「村長残念だ。」

 

銃声が競馬場で響いた。

銃声で感染者たちがいろいろな物陰から現れた。

「なんの銃声だ?」

中田は驚いた。

「生田、待っててくれ。」

「え、ええ!一人!!」

中田は青井の様子を見にスタンド中へ走って行った。

 

俺は我を忘れ、後ろから襲ってくる数十体の感染者の頭を89式で撃った。

弾が無くなると弾倉を次々と変え、次々と撃ち倒した。

さらに奥から数体やってきた。

89式は弾が詰まり、発砲できなくなったが、俺はガンホルスターから9mm拳銃を取り出し、再び撃ち倒した。

「ふぅ、これがサバイバルホラーゲームの実写か・・・酷いぜ。」

俺は我に戻った。

気配を感じ、後ろに拳銃を構えると中田がいた。

 

「待て!和成。落ち着け!!俺だ!!中田勇気だ。大丈夫か?噛まれてないか?」

「ああ、指一本やつらには触れさせなかった。」

「何があった?お前らしくないぞ。」

するとまた感染者の群れが迫って来た。

「話は後で聞くぞ。」

二人はスタンド外へ逃げた。

 

そこには生田が一人で数体の感染者を接近で倒していた。

俺と中田は一瞬立ち止まった。

だがそれが悲劇を招いた。

応援席にいた感染者がスタンド出入り口の上に集まっていた。

数体が上から飛び降り自殺のように降ってきた。

運悪く中田に直撃し倒れ、落ちてきた感染者に噛まれた。

 

「中田!!!」

俺は数体の感染者を銃剣で刺し倒し、中田に駆け寄った。

「俺は・・・もうだめ・・・だ。」

中田はそう言って最後の力を振り絞り胸ポケットから車の鍵を遠くに投げた。

俺は何度も呼びかけたが反応はなかった。

 

迫りくる感染者に俺は逃げるしかなかった。

感染者はまだ新鮮な肉の中田に群がった。

俺は人口芝生に落ちた車の鍵を取って車に走った。

 

「青井くん!大丈夫?中田さんは?」

「・・・乗れ!!逃げるぞ!!」

「中田さんは?」

俺は生田の質問を無視して運転席に乗った。

生田も四方八方から群がってくる感染者に戸惑い助手席に乗った。

俺は車にエンジンをかけてすぐに壊れたフェンスから競馬場を脱出した。

 

俺はしばらく走ってからどこかも分からない住宅地に車を止めた。

「一度も勇気と呼ばなかった・・・」

「青井くん、中田さんは死んだの?」

生田は真剣な顔で俺に質問してきた。

 

「俺のせいだ・・・俺が乱射したからだ・・・」

青井は正気じゃなかった。

すると生田は俺を胸に抱き寄せた。

「和成くんのせいじゃないよ・・・私の事を代わりに下の名前で呼べばいい。」

「生田・・・」

 

生田の胸は意外に大きく柔らかかったがそんなことよりも包容力に助けられた。

俺は生田から離れ、ハンドルを握った。

「優香、じゃあこれからこう呼んでもいいのか?」

「うん、私も和成くんって呼ぶからね。」

車内はしんみりした空気だった。

俺は再び優香とともに物資調達にショッピングモールに走り出した。



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サバイバル

前回指導者たちの軍閥争いから逃避行した東岡と斉藤。
東岡と斉藤に待ち受けるものとは!




ZDAY34日目昼・・・

東岡と斉藤は競馬場を見捨てて逃げた。

そして□□県に再び戻っていた。

 

陸曹長から盗んだ装甲車(96式装輸装甲車)には12人の武装した兵士が便乗する空間には豊富な物資が詰まれていた。

東岡は知らずに、運よくたまたま盗んだ車が物資の貯蔵代わりにされている装甲車であった。

 

一人なら二か月は持つぐらいの物資だ。

□□県に通じる国道を走っている時、目的地を二人で相談した。

「斉藤さん、これからどうする?」

「そうね・・・一度大学に戻ってみたらどう?」

「久しぶりに、様子を見に行ってみるか。」

 

東岡がこの輸送型装甲車を運転できたのは陸曹長の元で運転の仕方を教わり、物資調達の時に運転していたからである。

住宅街の道路に入り走っているとバットや鉄パイプを持った人々が家々から出てきた。

東岡は車を停車した。

「どうするの?東岡君。」

「まず、彼らの話を聞こうじゃないか。」

東岡はズボン右のガンホルスターに右手をそえて降りた。

 

東岡は相手が飛び道具を持っているか探った。

人々が鈍器を構えると。

「なんだ、自衛隊の人じゃないのか。」

東岡は身軽な服を着ていたために鈍器を持った人々は助けに来た自衛隊でないことに落胆した。

一人の大男が言うには拠点はここから1km先の小学校で若年層がお年寄りと子供を守って感染者を排除しているらしい。

「食料分けてくれないか?」

大男は頭を下げて頼んできた、おそらくこのグループをまとめている男なのだろう。

 

「残念だが、俺たちも食料はないんだ。明日飢えて死ぬかもしれない。それは君たちと同じ状況だ。」

東岡は食料を貯蓄しておきたかったために嘘をつきやりとうそうとした。

「じゃあせめて武器を分けてくれないか?」

大男は装甲車の屋根上の重機関銃を見て要求してきた。

「残念だが俺もこれしか持ってないんだ。」

銃は何丁か装甲車の中にあったがあえて秘密にした。

右手でガンホルスターを二回叩いて言った。

 

「じゃあ車の中見せてもらってもいいか?」

大男は指示して二人装甲車に近づいてきた時、東岡は大男に拳銃を向けた。

「待て!分かった。」

斉藤も車内から一部始終を見て驚いた。

大男は二人に指示して装甲車から遠ざけた。

大男はため息をした後他の仲間たちに道を開けるように指示した。

 

東岡は再び運転席に戻った。

「大丈夫?盗賊?」

斉藤は不安そうであった。

 

「いや違うみたいだ、道を開けてくれるそうだ。」

「脅されなかった?」

「いやむしろその逆かもな。」

東岡はホッとして再び大学に装甲車を走らせた。

 

装甲車という利点を生かして車でふさがってる道は強行突破した。

強行突破するたびに置いてある銃器がガシャガシャ言っていた。

 

大学の正門の前の駐車場に駐車すると二人の自動小銃を構えた陸上ホッケー選手あるいはアメフト選手のような重装をしていた人がきた。

 

東岡と斉藤は銃を構えて降りると、

「銃を下に置くんだ!」

すると二人はヘルメットを取った。

それは大島と坂下であった。

 

ZDAY五日目・・・

大島と坂下はジープから一番近い家に入ることにした。

大島はジープを降りた時点でガス臭さを感じた。

「坂下さん。銃は使うなよ、ガス漏れだ。」

「大島君、それくらい分かってるよ~」

坂下はちゃかした。

 

大島と坂下は家への侵入に成功した。

大島は侵入した玄関でバットをリュックに入れて銃剣の付いた自動小銃に持ち替えた。

「坂下、玄関見といてくれ。」

「オッケー。」

 

坂下は階段の下の扉を見つけ地下室のようなものを見つけた。

それは60年前の防空壕であった。

そこには珍しく食料が貯蔵してあった。

 

大島はゆっくりリビングに行き感染者二体を見つけ銃剣で頭に素早く突き刺した。

大島は台所に行き、ガス栓を確かめた。

ガス栓は閉まっていた。

「ガス漏れはここじゃないのか・・・」

 

坂下は地下室から出て玄関の方を見ていると階段から降りてきた感染者が後ろから襲ってきた。

坂下はとっさに感染者の方を振り向きバットで殴ろうとしたが間に合わなかった。

「きゃあ!!」

坂下は感染者がのしかかってきた衝撃でバットを手放してしまった。

「坂下さん!!!」

大島は急いで玄関の方に行った。

 

坂下の上に感染者は馬乗りになった。

坂下は噛まれそうになり、右手でホルスターから拳銃を出して感染者に向けた。

「やめろ!!!」

坂下は拳銃を撃った。

見事感染者の頭に命中した。

 

「危なかった・・・」

坂下は一息ついた。

大島は思った、なぜガス爆発が起きなかったのか・・・

ちょうどリビングと玄関あたりは密閉空間になっておりガス漏れがしていなかったのだ。

 

銃声を聞きリビングから感染者が押し寄せてきた。

リビングから玄関に通じるドアを感染者たちは突破してきた。

「大島君!ここに地下室があるよ!!」

大島はジャケットに装備していた手榴弾を一個リビングに投げ込み、

(これで生きるか・・・死ぬか・・・)

扉を閉め、地下室に閉じこもった。

この時生きるのに必死で東岡や斉藤のことは頭になかった。

 

するとその家を中心に100平方メートルのガス爆発が起きた。

地下室(防空壕)は奇跡的に吹き飛ばなかった。

 

ZDAY10日目・・・

大島と坂下は地下室に貯蓄してあった食料が尽き、大学に戻ることにした。

大島は扉を開けると外は焼野原になっていた。

水量が少なくなった川の方を見るとジープのタイヤが浮き出ていた。

「俺のせいだ・・・」

大島は自分を責めた。

「そんなことはないよ。きっと東岡君も斉藤さんも生きてるから!」

坂下は大島を激励した。

 

ZDAY15日目・・・

大島と坂下は自転車やバイクを使ってなんとか大学に戻ってきた。

大学の正門には鈍器を持った人々が見張りをしていた。

大島と坂下は近くの丘の高台から様子を見ていた。

 

「あれはどう見ても大学生じゃないな。」

「学校に避難してきた人とかじゃない?」

「もう少し様子を見てみようか。」

 

感染者が一人正門に寄って来た。

その時二階の渡り廊下から矢が放たれ見事頭に命中させた。

正門の見張りが矢を回収しに倒れた感染者に近寄り引き抜いていた。

 

「見た感じ銃は持ってないようだな。」

「どうするの?」

大島は銃を持っていけばおそらく取り合いになり厄介だと思った。

「銃器をすべてどこかに隠そう。」

大学は森に囲まれており、森に銃器を埋めた。

 

大島と坂下は大学の正門に行き校内に入れてくれるように見張りに言った。

すると快く入れてくれた。

 

入ってみると大学内には避難者がかなり多くいた。

「離れるなよ、坂下。」

そこには老人や子供に警察の制服を着た人もいた。

 

大島は警察の服を着た人に話しかけた。

「刑事さん?」

「ああ、元警察関係者だがなんだ?」

「ここのリーダーは誰だ?」

これだけの組織力は元社長や指導者がいないと守るのは無理だと大島は思った。

 

「そんな者はいない。」

「え!じゃあみんなで決めてるのか?」

「・・・二日前独裁者がいたが俺が殺した。」

突然の告白に大島は驚愕し、坂下は絶句。

 

「独裁者は正気じゃなかったからな。多くの人も彼が消えることを望んでいたよ。だから俺がみんなの代わりにやったんだ。」

大島は知らない人との急な集団行動をしていなかったために元警察関係者の言ってる事は理解できなかった。

ただ分かったのは生きている人間も発症者と同じく警戒しなければならないということであった。

 

ZDAY18日目・・・

大島は学校の周辺の見張りをし、坂下は雑用などみんなで決めた役割をしていた。

「調達長、俺になんか用か?」

調達長とは避難している人の物資を確保するために大学の外に物資を手に入れる班のリーダーだ。

「君は外を知ってるからもしよかったらと思ってね。」

大島は見張り班に配属されていた。

「場所次第なら同行しますよ?」

「・・・コンビニをあさってまわるんだが行くか?」

 

大島は十人編成の調達班でコンビニをあさりにまわった。

調達班の武器は鈍器に弓矢やボウガンなどで10トン以上はある大型トラックでスーパーなどから乗せれるだけ物資を乗せた。

その際にいくつものグループや集団が海に向かっているのを見た。

「あの集団も日本脱出か安全地帯を目指してるんだろうな。」

そう後ろにいた男が大島に言った。

「安全地帯ってなんだ?」

大島は不思議に思い聞いた。

 

「発症者がいない生活地域だ。」

大島はその答えに納得がいかなかった。

「発症者がいない?死んでも発症するんだろ?」

「安全地帯で暮らしたことない俺に聞かれても分からねーよ。だが遭遇した平和な集団は噂にしてたぞ。」

「そうだな、でも物資がありあまるぐらいあるならそこに行った方が賢明かもな。」

 

ZDAY20日目・・・

校内では三角州の安全地帯の噂が広がり、大学を出て行くものが絶たなかった。

この状況にリーダー格の人たちは困っていた。

「この状況じゃあ大学で感染が広まるのも時間の問題だ。」

「確かに、俺たちも安全地帯に移動するか?」

大島と坂下が大学を訪れた時は1000人がいたがいまはその半分もいない。

 

すると裏門の見張りから伝令が来た。

「発症者の群れが裏門に押し寄せてきてる!」

リーダーたちは裏門に行き門を閉めたが数で圧倒され門が破壊された。

また大学防衛の人数不足にも原因はあった。

感染者の群れは大学内に侵入し、次々と人々を襲った。

 

大島はサバイバルナイフを右手に持ち、坂下を探した。

坂下は食堂の厨房に隠れていた。

「坂下さん、脱出するぞ。」

「分かったわ。」

坂下はフライパンを右手に持ったまま食堂から逃げようとした。

 

すると食堂にも感染者が押し寄せてきた。

「厨房に外につながる裏口があるわ。」

大島は坂下の後を警戒しながらついていき裏口から大学を脱出した。

 

大島と坂下は森に逃げ、埋めた銃器を掘り起こした。

「使えるかな?」

「大丈夫だろ。発症者が少ない場所に隠れよう。」

大島と坂下は大学近くのマンションに身を潜めた。

 

ZDAY34日目・・・

大島と坂下は廃墟と化した大学に再び戻り物資をあさっていた。

「坂下さん、これ。」

大島は関節部分を守るパッドを持ってきた。

「これつけるの?」

大島は外にいる感染者を見ながら、

「ああ、ダサいけどあいつらになるよりはましだろ?」

 

すると渡り廊下から二人は装甲車を見つけた。

「自衛隊?」

大島は坂下を連れ、すぐに身を潜めた。

大島は関節パッドを装着しながら、

「とりあえず、発症者に噛まれないようにして様子を見に行こう。」

 

大島と坂下は64式小銃を持って装甲車に近づいた。

自衛隊なら助けてくれるかもしれない。

だが盗賊なら命が危ない。

だが大島は知らない集団が感染者に向けて撃つのは隠れて見たが人同士の争いの銃声は聞かなかった。

 

そう考えていると装甲車から降りてきたのは東岡と斉藤であった。

大島と坂下は思わずヘルメットを取った。

(生きてたのか!)

四人は同時に再開し最初に思った。

 

無言で大島と東岡・坂下と斉藤は勝手に体がハグしていた。

大島「まさか生きてるなんて、あの時死んだと思っていたよ。」

斉藤「私は死にかけた、でも東岡君が助けてくれた。」

坂下「あの時ジープが沈んでたから・・・てっきり。」

東岡「まあいいじゃないか!こうして奇跡的に再会出来たんだ。」

 

四人は装甲車に乗り、向かい合っているベンチシートでこれまでの経緯を話した。

後部には物資であふれかえっているのを坂下は驚愕していた。

「よくこんなに!!」

 

大島は神妙な面持ちで

「そうかそっちはいろいろ複雑だったんだな。斉藤は東岡が狂ったと思って一人に、東岡も人を間接的に殺したのか・・・集団紛争から逃避行。本当によく生き延びたな。」

大島は改めて感心していた。

 

坂下はそんな暗い話より斉藤と東岡が相思相愛になっていることに驚いた。

「まさか斉藤さんが東岡君と付き合うなんて!」

斉藤は確かに東岡を好きであった。

東岡もまた好きという気持ちではなく仲間を守るという意識のほうが高かった。

 

「え、寝たの?え、寝たの?」

坂下の興味がすごかった。

大島はポンと坂下の頭を叩き、

「こいつは性の化け物だから聞き流せばいい。」

 

「・・・」

東岡と斉藤は黙った。

 

大島は地図をリュックから出しながら、

「ところでこれからどうする?」

 

東岡は大島から地図を取り、開いた。

「全国を周って仲間を集めよう。そして最終目標は安定した拠点を作ろう。」

「私もそれはやってみる価値はあると思う。」

斉藤は東岡の意見に賛成した。

 

「でもそれって物資をあさりながら旅するってこと?」

坂下はなにか不満があったようだ。

坂下はこの四人でまた生き抜きたいと思っていた。

 

大島は東岡の意見を聞きつつ、

「じゃあ仲間選びは慎重にしないとな。」

「そうだな、てことはみんな賛成でいいのか?」

東岡が最終決を聞いた。

 

「まあ大島君がそう言うなら・・・」

坂下は仕方なくみんなとあわせた。

ここで坂下一人が抜けても、生存率は一人だとかなり低い。

 

大島は我先にと運転席に。

「お前運転できるのか?」

東岡はほくそ笑みながら聞いた。

「これから覚える。運転の仕方教えてくれるよな?東岡裏主将」

「ああ、もちろんだ。主将。あと自衛隊と警察は信用するなよ。」

 

四人の日本一周が始まった。



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家族

シーズン2最終回。


ZDAY35日目朝・・・

 

※パトカーは日本の白と黒の模様のクラウン。

 

父親はパトカーを感染者のいない山道の途中で止めた。

森下はパトカーの後ろで白いトラックの上に左手を置いて右手でナイフをぐるぐる巻きにして左手に固定していた。

その間母親が近くで赤ちゃんを抱っこしてあやすのを見ていた。

 

父親は森下に話しかけた、

「刑事さん、先日は本当にありがとうございました。」

父親は若干目に涙を浮かべながらお礼を言った。

 

「いいよ。」

森下は面倒くさそうに対応した。

「部下の分まで生きてくれよ。」

これは森下の助けた家族への頼みと願いだ。

 

父親はまるで森下を迎えるかのように、

「いえ、あなたもこれからは家族ですよ。」

 

森下は助けた家族から立ち去ろうとしていた。

「俺みたいな足手まといを家族にしてくれるのか?」

「ええ、あなたも生きるべきだ。」

父親は生きる希望を捨ててはいなかった。

 

森下は父親の牧師みたいな振る舞いに、

「言っておくが俺は刑事じゃなくなった・・・森下だ。」

「森下さんですか、下の名前は?」

「下の名前は別にいいだろ。そっちは三人まとめて教えてくれ。」

 

すると父親は家族紹介した。

父親は三浦壮介、母親はリコ、赤ちゃんは男の子で康介だ。

 

「じゃあ俺は三浦森下だな。」

「そういうことになりますね。」

森下の冗談を真に受ける父親の壮介。

 

森下は会話中に壮介の背後から静かに近寄ってきた感染者を左手のナイフで頭を突き刺した。

「ところでこれを壮介はなんて言ってるんだ?」

「死人(しにん)ですかね。」

「死人か。俺はゾンビって呼んでる。」

森下はナイフを頭から抜き、

「呼称は統一しとかないか?緊急時に聞き違いがあったら死ぬご時世だからな。」

 

「じゃあ発症者ってのは?」

「それは天国(世界が崩壊する前)だったころを思い出すからやだな。」

森下は冗談交じりに言って却下した。

 

すると康介を抱きながらリコが寄って来て

「何話してるの?」

「家族紹介してもらってたんだ。」

森下は話を逸らした。

壮介も逸らした森下に合わせた。

「そうそう、刑事さんは森下って名字らしい、ただ下の名前は教えてくれない。」

壮介は機嫌よく妻のリコに話した。

 

森下はパトカーの後部座席に戻った。

壮介とリコと抱えている康介もパトカー内に戻った。

 

壮介はパトカーを再び山道から郊外に向けて走らせた。

「で、どこに向かうんだ?」

「スーパーに行く予定なんだけど、どうします?」

リコは森下に他に行く場所がないか聞いた。

 

「食料調達か?」

「はい、それと康介の幼児食を調達したくて。」

森下はリコのズボンのガンホルスターを見た。

「弾はまだあるのか?」

「最後の装填した五発だけあるわ。」

 

すると山の傾斜側で自動小銃を持った兵士がガードレールにもたれて地べたに座っていた。

「こんなところで兵士が一人で死んでるなんて珍しいな。」

壮介は運転中であったためによく見なかった。

リコもたまに自殺した兵士の死体を見ていたので特に気にはしなかった。

 

「壮介、止めてくれ。」

壮介は森下に言われて兵士がもたれている場所から10メートル通り過ぎたところで止めた。

「俺になにかあったら置いていってくれ。」

「おい!」

森下は降りて兵士に近寄った。

運転席から壮介も森下を止めようとして降りて後ろをついていった。

リコはパトカーの中で周りに注意を払っていた。

 

義手の左手にナイフを装備していたがさらにズボン右から包丁をいつでも取り出せる備えをした。

壮介も警棒を右手に恐る恐る近づいた。

 

よく見るとアングロサクソン系のアメリカ兵であった。

森下はぼそっとつぶやくように、

「アメリカ兵か。」

 

壮介は森下の背中に向けて、

「なんでアメリカ兵って分かったんだ?」

 

「これでも俺は元警察関係者だからな。」

 

持ち物は自動小銃(M4A1)と拳銃(ベレッタ92)だけであった。

森下は頭を突き刺そうとした時、

「Wait!Wait!」

森下はその言葉を聞いて義手のナイフが止まった。

 

※ここからは日本語吹き替え字幕です。ただし外国人と言葉での意思疎通はしていません。

 

「○○県だけは行くな。引き返せ。銃を持った暴漢がはびこってる。」

だがこのアメリカ兵の言葉は森下たちには届かない。

 

「壮介、○○しか聞こえなかったけど、それ以外なにか分かったか?」

「森下さん、俺も○○しか聞き取れなかった。」

二人はアメリカ兵をどうするか困っていた。

 

「くそっ、通じないか。だったらジェスチャーだな。」

アメリカ兵は困っている二人にナイフ以外の装備一式を差し出した。

 

「くれるのか?」

森下はアメリカ兵の奇行を疑問に思った。

 

するとアメリカ兵は上半身裸になり背中の傷を見せた。

 

森下と壮介は反射的に差し出された銃を構えた。

「そうだ、助からない。撃ってくれ。奴らと同じにはなりたくない。」

 

森下は英語のニュアンスで察した。

「ナイフでもいいか?」

 

アメリカ兵も森下の日本語のニュアンスで分かり、

アメリカ兵はひざまずき、自分のサバイバルナイフを森下に渡した。

森下は右手で柄の部分を刃が下になるように握った。

 

「壮介、お前は先に戻っておいてくれ。見るのは俺だけで十分だ。」

「あ、ああ分かった。リコにも事情を説明しとくよ。」

壮介は見てはいけないものから逃げるようにパトカーに戻った。

 

アメリカ兵は無表情で。

「Good luck!」

森下は最後までアメリカ兵の目を見て、

「さんきゅうー。」

 

森下は渡されたサバイバルナイフを思いっきり降りおろしアメリカ兵の頭を躊躇なく刺した。

名前も知らない生きたアメリカ兵は発症することなく死んだ。

アメリカ兵はどうせ死ぬのならば感染者にならなければどんな死に方でもよかったのだ。

アメリカ兵はただ死んでいるのに自分が勝手に動き出すのが嫌であったのだ。

 

森下は処刑したアメリカ兵の前で十秒くらいぼーっと立っていた。

するとリコが大きな声で、

「死人が集まって来ましたよーーー。」

 

森下は我に返り、素早く自動小銃と拳銃と弾薬をパトカーに持って戻った。

「終わったのか・・・」

「ああ、ほら。」

 

壮介は再び車を○○県に向けて運転した。

感染者たちはアメリカ兵の方に群がって行ったのが最後にリコがサイドミラーで見た。

切ない顔をしているリコに森下は拳銃(ベレッタ92)と弾倉を渡した。

「これは森下さんのじゃ。」

「いや、使い方はまた撃って覚えればいい。リコにはベレッタのほうが使いやすい。俺の拳銃返してくれ。」

リコと森下は拳銃を交換した。

 

森下の回転式拳銃が再び手元に戻ってきた。

拳銃を手にした時初めて発症者を撃った記憶が蘇った。

 

「あと壮介にはこのアサルトライフル(M4A1)を持っておいてもらう。」

壮介はあかるさまに嫌な顔をして、

「俺は銃なんて必要ない。それに自動小銃は重い。」

「そうか、発症者の大群や盗賊にあえばこれが命綱に見えてくるぞ。」

 

森下は運転席の左横にアサルトライフルと弾倉を置いた。

 

真昼に山々に囲まれた小さな町に着いた。

感染者はいたが町の中心部のスーパーからはかなり離れた場所に数体確認しただけであった。

 

駐車場にパトカーを止め、リコはパトカーの周りの見張り、

壮介と森下はスーパーの中に入る準備をした。

壮介は一応自動小銃を肩にかけ、リュックを背負い左手に懐中電灯右手に金属バットを持った。

森下はズボン右のホルスターに回転式拳銃を収め、工事現場で夜によく使われる黄色の懐中電灯ヘルメットを装着し、リュックを背負い装着し右手は手ぶらにした、左手は今朝からナイフのままである。

 

スーパーの乗客用出入り口はこんなご時世なのに大きな板で打ち付けられ、入れない。

森下はガラス張りから中を懐中電灯で照らしたが、感染者は目視で確認できなかった。

森下と壮介は裏口から入ることにした。

 

「中には死人はいなさそうだ、行くぞ!」

だが森下がそう言いながら壮介の方を見てみると壮介の両手が震えていた。

「この震えは閉鎖された暗い空間に行くのが初めてなんだ。」

声さえも震えていた。

 

「壮介!!大丈夫だ。俺がついてる。あの時(ZDAY二日目パトカーごと感染者から逃がした時)だってそうだっただろ!今回もお前は生き残る、家族のためにも。俺は分からねーけどな!」

森下は壮介を激励すると裏口であろうドアを右足で蹴り壊し先陣をきって侵入した。

 

侵入してすぐ懐中電灯の光を周りに当てると空っぽの段ボール箱が無造作に散らかしてあった。

後から入った壮介であったがバットをリュックに入れ懐中電灯を口に加え、潜在的にアサルトライフルを構えていた。

 

二人は調理室のような場所に来た。

森下は小声で、

「このドアの向こうが売り場だぞ。」

壮介は相槌をうつ余裕もなかった。

 

森下はドアを音を立てずに慎重に開けると感染者が売り場一面にいた。

壮介は感染者の群れを見た瞬間すぐに自動小銃の引き金を引いたが弾はでなかった。

さらに壮介はパニックに陥り自動小銃を落とした。

ドン!!!と音が調理室で響いた。

 

その瞬間森下はドアをすぐに閉めたが、感染者たちはドアの方を向いている。

森下はさらに小声で壮介の方を向いて、

「落ち着け!大丈夫だ!銃を拾え。」

 

壮介は口に加えてた懐中電灯を右手に持ち替えた。

 

森下は壮介の奇妙な行動に対してジェスチャーでやめろと指示した。

次の瞬間壮介は全力疾走で裏口に向かい逃げた。

 

森下は再び売り場につながるドアの方を見た瞬間に感染者二体に噛まれそうになり、左手のナイフで感染者二体の頭を一気に額から深く斬り裂いた後、森下も全力で裏口に向かった。

 

パトカーの外で見張りをしていたリコは裏口から出てきた壮介のただ事でない様子を察して運転席に乗りエンジンをかけた。

 

壮介は助手席に乗り、

「車を出してくれ、感染者が中に大量にいた。」

完全なパニックを引き起こしていた。

 

「でも森下さんは?」

リコは冷静に壮介に聞いた。

 

壮介は間近で感染者を大量に見てパニックで森下を忘れていた。

すると森下が裏口から走って来て運転席にいるリコに言った、

「すぐ車を出せ。」

その後すぐ森下は後部座席に座った。

 

リコはすぐ車を出すと裏口から数十の感染者が出てきた。

壮介は合わせる顔がなかった。

「森下さん、本当にすいません。謝っても仕方ないですね・・・」

 

壮介は森下に殺されるくらい怒鳴られると思った。

だが森下は冷静に壮介に言った。

「お前が死人を大量に見た時、引き金を引いただろ?でも弾はでなかった、それは安全装置をはずしてなかったからだ。安全装置のことは言っておくべきだったな。」

 

「森下さん、俺の事怒らないんですか?」

 

森下は引き続き解説するかのように、

「たしかに普通は怒って当然かもしれない。だが今は仲互いしてる場合じゃない。俺たちは家族という名前のチームだからな。だから俺は助言しかしない。無駄な怒りはただ自分の体力を余計に削るだけだ。」

 

壮介は言葉が出なかった。

するとずっと黙って聞いていたリコが、

「私達をいつも守ってくれてありがとうございます。しかも壮介は三度も森下さんに救われました。」

「今朝のこと見てたのか。抜け目ない嫁さんだな。」

 

森下はチャイルドシートから康介を抱き上げ康介の変顔で遊んでいた。

 

三浦一家と森下は次に物資を求め郊外に向かった。

 

スーパーの中に感染者の群れがいたのは他の誰かかグループが事前に中におびき寄せ閉じ込めた、しかしそれを知らず森下と壮介は小さな小さなパンドラの箱を開けてしまったのだ。

 




シーズン3に続く・・・


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シーズン3
終わった世界が終わらない


競馬場の悲劇以降・・・
青井和成と生田優香は全国を点々としていた。
終末世界の時間が進むにつれて秩序なき行いが人々を追いつめる。
青井と生田はいくつものグループに属していたが盗賊の襲撃や感染者の大群によって何人もの仲間が死ぬのを見てきた。
そして二人は集団に属さないように生き延びていた。



競馬場の悲劇以降・・・

 

青井和成と生田優香は都市を避けて全国を点々としていた。

車は何台も乗り換え、度重なる感染者の群れ相手に使っていた銃火器もなくなった。

今はナイフを上手く使って二人で生き延びている。

俺は赤いナイフを常に所持している。

 

俺が運転している時、助手席から腰に装備しているナイフが見えたのだろう。

「そういえば、そのナイフいろいろな機能があるのね。」

「ああ、中田の形見だからな。あいつは俺にいいものを残してくれたよ。あいつはこれでゾンビを最後まで殺さなかった。」

 

「そうだったんだ・・・」

中田の死後に中田について話したのはこれが初めてであった。

俺は優香が気を使っているのがあからさまに分かったので、

「そんなに気をつかわなくてもいい。反省しても後悔はするなだ。」

少し微笑みながら言った。

しかし心の中には後悔を引きずって今も終わった世界を生きている。

 

すると生田はいろいろ質問してきた、両親のことであったり友達であったり恋人であったり。

「恋人は世界が終わるまでできなかったな。優香は元彼とかいないのか?」

「え!和成童貞なの~うける~。恋愛歴は秘密~。」

とこんな和んだ話をしているといつものように感染者が現れ、嫌な緊張感を与える。

 

こういう時はある程度距離を取り車で引き返していた。

今回もいつものように引き返した。

 

「これからどうするの?」

「今日は飯食べれないかもな。」

「そうかもね。」

生田はいつものように他人事のような返事をした。

 

「とりあえず安全そうな場所を見つけて食料を探そう。」

赤い軽乗用車を田園広がる道に走らせ、キャンプを探していた。

すると一台のキャンピングカーが田園の道にぽつんと止まっていた。

 

キャンピングカーからはお米の炊けたいい匂いがした。

軽乗用車をキャンピングカーの後ろに駐車した。

俺と優香は車を降りてキャンピングカーを覗いた。

すると猟銃を構えながら一人のおじいさんが出てきた。

「なんだ、日本人か?」

 

優香は俺の背中に隠れた。

「ええっと、もしよかったら食べるもの分けてもらえないですか?」

「ああ、もちろんだ。入りたまえ。」

 

キャンピングカーの中は思ったより広かった。

台所にはおばあさんがいた。

「ばあさん、この若者たちにおにぎりを握ってやってくれ。」

「はいはい。」

おばあさんは炊飯器からご飯をしゃもじで皿に乗せておにぎりを握っていた。

 

「さあ、二人ともそこに座って。」

俺と優香はキャンピングカー独特の備え付けられたソファに座った。

「ありがとうございます。」

俺たちはお礼を言って座った。

 

「最近じゃあ銃を持ってる日本人と外国人は信用できんからな。まあ私は所持しているがね。ほっほほっほ。」

急に陽気な感じのおじいさんになった。

「じゃあ俺たちが銃を持ってたらどうしてたんですか?」

 

「君たちだって銃を持ってなくても銃を持った老いぼれ二人くらい殺せるだろ。」

「・・・」

たしかにそうだが俺はそういう生き方は望んでいなかった。

 

「まあ、私の先見の目で君たちを招いたのだよ。君たちはこれから生きて行かねばならんからな・・・」

おじいさんは田園の泥で動けなくなっている発症者たちを見ていた。

 

おばあさんがおにぎりを弁当箱のようなものに詰めて持ってきた。

俺と優香はゆげが出ている米は何か月ぶりに見ただろうか。

優香は感動しながら、

「いただきます!」

優香は遠慮なくおにぎりを口にした。

 

「おい!お礼を言わないとだめだろ!!」

青井は代わりにお礼を言った。

 

「いいんだよ。若い子は食べ盛りだからね。」

おばあさんはニコリと笑った。

すると急に銃弾が飛んできた。

 

「窃盗団だ!」

おじいさんは運転席に行きしゃがみながら猟銃で応戦した。

おばあさんは急いで棚から弾薬を出していた。

 

俺たちはすぐに机の下に隠れた。

おじいさんは俺たちになんか言い放っていた。

だが蜂の巣にあっているキャンピングカーの中では声が銃弾にかき消される。

俺は「逃げろ!」という言葉だけ聞こえた。

 

「逃げるぞ!」

「え?」

飛んでくる銃弾や銃声で俺の声が聞こえない優香を無理やり手を引きキャンピングカーを脱出した。

青井と生田は軽乗用車に乗り込み、逃げ走った。

 

するとキャンピングカーが爆発した。

最後にバックミラーには大勢の感染者が爆音を聞きつけ、燃えゆくキャンピングカーに群がるのが見えた。

俺は何回こうした絶望の中の絶望から運よく逃げてきたのか。いまだに自分でも分からない。

 

生田は助手席で泣いていた。

俺は運転しながら左手で背中をさすってあげた。

優香の背中をさするのはこれで何回になるだろうか・・・

 

「また生きる理由が増えたな・・・あの老夫婦のように最後まであきらめず生き延びよう。」

「・・・うん・・・」

 

この数か月俺の周りで何人死んだのだろうか。自分が死神にさえ感じる。

 

青井は田園の近くの山道に車を止めた。

「今日はここで寝よう。」

「分かった。明日はどうする?」

「明日考えよう。」

「・・・そうね。」

 

翌朝目が覚め、運転席を下げた状態からもとに戻すと、

車の外で優香ともう一人優香と同じくらいの年の女性が話しているのが見えた。

俺は車外に出て駆け寄った。

「何してるんだ?ゾンビが群がってくるぞ。」

俺は少し叱りながら優香に聞いた。

「この女性の父親がキャンプのリーダーらしいよ。」

 

すると初めて会った女性が、

「初めまして、北谷彩香です。いきなり失礼ですがお願いがあるんですけど私のキャンプまで送ってもらえませんか?」

「え?」

俺は申し出に驚き色々考えた。

 

見かねた優香は、

「助けたら食料くれるって!!」

 

そんな明るく優香に頼まれたら選択は一つであった。

 

三人は車に乗り込み山を二つ越えた・・・

 

「ここがキャンプか。え?なにもないぞ?都市に近くないか?」

俺は状況が把握できなかった。

そこは河川沿いの砂場に一つだけ黄色いテントがあった。

近くに橋があるので橋を利用されれば他の好戦的なグループがくれば銃撃戦には不利な場所にあった。

 

土手を車で降りて適当にテントの近くに駐車した。

「彩香!」

と声が聞こえた方を見ると還暦風に見える男の人がテントから出てきた。

 

二人はハグしていた。

「お父さん。」

「彩香。よかった無事で。」

 

冷静になり、大谷彩香は紹介した。

「こちらの青井さんと生田さんに助けてもらったの。」

 

「ありがとう、青井君に生田さん。私は大谷宗雄、彩香の父だ。お礼に何かしないと・・・」

すると娘の彩香が提案した。

「この人たち食料が欲しいらしいわ。」

 

「食料か、食料なら移動したキャンプにある。よかったら来るか?待っててもいいが。」

大谷宗雄は俺が見る限り、約束は守る人間のようだ。

 

「キャンプも見たいから取りに行かしてもらうよ。」

「だったら俺と娘を車に乗せてくれるか?」

「ああ。」

 

宗雄はテントをリュックに収納し、トランクにいれた。

 

四人は車に乗り、宗雄が取り出した地図を見て郊外の高等学校に向かった・・・

 

車内で、

「別に俺のグループに入ってもいいんだぞ?」

「ありがたいですが、どうする優香?」

俺は優香の意見も聞いた。

 

「いえ、いいです・・・周りで人が死ぬのは見たくないですから。」

「そうか、だがそれはもう無理な時代だぞ。」

「まあまあお父さん。彼らには彼らの生き方があるから。」

「そうだな。」

俺はもくもくと運転し、娘の彩香が取り繕った。

 

「ところで二人は恋人同士なの?」

「うん。」

「へえ!じゃあ私と一緒だ!!私は結婚したんだ。」

「え?そうなの!」

優香は話に食いついた。

 

宗雄は聞きたくないような態度で窓をずっと見ていた。

それが分かったのが宗雄がバックミラーに映っていたからだ。

 

高等学校が見えてきた。

案外周りは田んぼに畑が多く、2,3階の教室や廊下の窓から見通しがよさそうだ。

 

正門前に車を止めた。

宗雄はドアミラーを下げて窓から顔を出して、

「おーい!大谷宗雄だ。開けてくれー!!」

すると門が開きすぐに車ごと入った。

 

校内は慌ただしい様子であった。

彩香は夫を見つけるとすぐに駆け寄って抱きついた。

遅れて宗雄が夫の春人に近づき状況を説明した。

 

「運動場にいた発症者は駆逐しましたが、まだ校内にいるようです。」

「了解した、俺は校舎裏を見てくる。」

そう言って宗雄はナイフを春人から貸してもらい一人で見回りに行った。

 

「君たちは父さんと彩香を助けてくれた人か?」

「ああ、一体何がおきてるんだ?」

「とりあえず発症者を駆逐してるんだ、家族を助けてもらってなんだが手を貸してもらえないか?」

「分かった。」

俺はタガ―ナイフを車から取り出した。

 

「優香、ここにいろよ。」

「彩香もだ。」

俺と春人は校内に行き、感染者の駆逐を手伝った。

ここにいる感染者は学生服を着た感染者だけでなく非難してきて感染したと思われる者もいた。

そこには自動小銃を持った人々が感染者に銃身で殴り倒したり、銃剣で眉間や目を突き刺してる光景が目に入って来た。

 

俺は弓を構えている春人に質問した。

「狙撃はしないのか?」

「狙撃すれば学校付近の発症者が音を聞いて近づいてくるからな。発砲はドンパッチになった時だけだ。」

すると廊下後方から感染者が近づいてくる。

俺はタガ―ナイフで後方から近づく感染者の顔を真っ二つや首から上を跳ね飛ばしたりした。

春人は前方から来る感染者を弓矢で頭を撃ち抜き倒していた。

 

校内にいた感染者は一体残らず駆逐した。

校庭に集まり、状況報告した。

「どうやら片づけたようだな、死体を集めて学校裏の焼却炉で燃やそう。あとは外を警戒するだけだな。」

リーダーの宗雄はそれぞれ配置につくように指示した。

一人の男が、

「俺噛まれたんだ、誰か助けてくれ!!」

急にパニックに陥った。

すると春人がナイフで後ろから心臓を一突きして殺した後頭にナイフを突き刺した。

 

「助かる方法はない、これしかな。」

春人は悲しさを抑えて殺した男を学校裏に運んだ。

 

俺も手伝い死体はすべて焼却した。

数か月こんなことをしていると人肉の焦げる臭いも慣れたものだ。

 

宗雄率いる移動型グループは30人編成だ。

宗雄の後釜は婿養子の春人だ。

宗雄は全員に運動場でキャンプするように指示した。

それはまだ校内に感染者がいる可能性がないとは絶対的に言えないからである。

 

しかし十人で交代して校内から周りを見張らなければならない。

 

俺は黄色いテントに行った。

「俺は明日出て行くよ。グループに迷惑をかけるわけにはいかない。」

「待て!青井。お前みたいにまっすぐな目をしたやつは日本がなくなってから見たことない。残ってくれないか?それに中年や未成年しか戦力にいない。俺は心配なんだ。春人は今病んでる。」

「だが俺には関係ない。」

俺はきっぱり断り駐車場に止めた自分の車に戻った。

 

「どこ行ってたの?」

「ああ、明日二人で出て行くと宗雄に報告してたんだ。」

「あ、そう。じゃあ明日出発ね。それより乾パン食べる?」

俺は缶に手を入れて乾パンを食べた。

 



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籠城

斉藤・東岡・大島・坂下は人間や感染者の群れに襲われつつも、仲間を増やし全国を周っていた。

これから始まる物語までに死んだ家族の数は数えきれないだろう。

家族・・・ここでの家族の意味は同じ集団生活の仲間のことである。



斉藤・東岡・大島・坂下は安全を求めて、全国各地を周っていた。

そして現在途中で出会った信頼できる生き残った生存者たちと集団で行動していた。

 

東岡が六階建のマンションの屋上で街を見張っていた時である。

このマンションは二階から上しか使えないように全ての一階に通じる階段をタンスや電化製品で塞いでいた。

 

大島は白いタオルのようなものを持ってきた。

東岡「大島、そんな汚いタオル持ってきてどうしたんだ?」

大島「これで仲間を見分けるんだ、最近じゃあ別の敵対グループがスパイとして入っていることがあるからな。」

 

東岡はスナイパーライフルで街を見渡しながら、

「それは名案だな、俺達ぐらいでかい集団は他にいないからな。」

 

大島は恥ずかしそうに、

「じゃあさあ、ついでに俺たちの集団名も決めとかないか?」

 

東岡は意外な反応を見せ、

「それもいい案だな、で?お前はどんな名前にするつもりなんだ?」

大島「日本隊、新日本国、日本自由連合とか?」

 

東岡は鼻で笑った後、

「全部日本が入ってるな、シンプルに渡り鳥でよくないか?」

大島「『渡り鳥』か、いいな!」

大島は気に入ったようだ。

 

大島は機嫌よく屋上から去った。

 

こうして四人率いる『渡り鳥』という集団となった。

そして『渡り鳥』の人々には日の丸の腕章をするように義務付けた。

『渡り鳥』という集団の命名の意味は常に移動することの意味も込められていた。

 

四人は五階の部屋で移動会議をしていた。

その部屋の前のインターホンの下に幹部会議室とチョークで書いてある。

 

斉藤「もうこのマンションに来て一週間経つわ。」

坂下「加奈の言う通りだわ、移動しよう。私いつ発症者の大群が襲ってくるか心配だし。」

東岡「問題は子供たちをどうやって移動させるかだな・・・ここを気にいっているようだしな。」

東岡はあからさまにここで籠城したいという態度が出ていた。

大島「じゃあ東岡はここを守ればいい、俺はしばらく安全な場所を探してくる。」

 

大島「斉藤、来てくれないか?」

大島は斉藤に何か話したがっているのを察知して斉藤は、

斉藤「分かった、ついていくわ。」

大島「あと、物資調達班から小林・鈴木・金井・伊藤の四人を連れて行っていいか?」

東岡「大型トラックでも使う気か?好きにしろ。主将。」

 

六人は拳銃とサバイバルナイフを携帯してから二階のマンションの一室のベランダからカーテンの縄で降りた。

 

大島があらかじめ用意した軽トラに乗って六人は次の『渡り鳥』の棲家を見つけに走り出した。

大島は運転席・斉藤は助手席に乗り、後の四人は荷台に乗った。

 

大島「なあ、もう本土は盗賊がいたりして危ないからどこか島を目指さないか?」

斉藤「島?でも今の拠点のマンションから遠いわよ、それに船は?」

大島「船なら見つけた。大型客船をな、それにあとはバスを見つけて移動するだけだ。」

斉藤「だからあの四人を連れてきたのね、海を移動するってこと?」

大島「ああ、そういうことだな。」

そういう会話をしているうちに市営バスが何十台も止まっている場所についた。

 

金井「おいおい、俺はトラック運転手だぞ?それに新しい拠点を探すんじゃないのか。」

大島は降りて金井に頼んだ。

「頼む、バスとトラックは似たようなもんだろ?」

すると小林が、

「じゃあ、俺が金井にバスの操作方法教えるから、それでいいだろ?」

 

大島「じゃあ、あのバスで教えてやれ。」

大島は一部焼け落ち、ガラスがすべて割れたバスに指を指した。

 

小林「分かった、ボス。」

小林と金井は廃車と化していたバスに向かって行った。

大島「周りに注意しろよ!」

 

伊藤「俺たちはどうするんだ?」

大島「残りで使えそうなバスを探す、発症者には気をつけろ。」

斉藤「手分けして探すの?」

大島は頷いた。

 

鈴木「まじかよ。」

鈴木は嫌そうにしていた。

 

伊藤は一台のバスの中を窓から覗き見ようとした。

バスの窓は曇っていた。

伊藤はおそるおそる近づき斜め上の窓を見ると、いきなり感染者が窓にへばりついて見てきた。

伊藤は無意識に後ずさりした。

 

大島が伊藤の後ろから、

大島「このバスは感染者専用らしいな。」

伊藤「うわ!いきなり驚くな。」

大島「そんなことより、ドアが開いてるバス探すぞ。」

 

鈴木は車内が空のバスを見つけ、そのまま中に入って様子を確認した。

「これなら、運転出来るな。」

鈴木が外に出ると横から感染者に襲われた。

「うわ!」

鈴木は倒れ込み、覆いかぶさるように感染者が首を狙って顎を動かしている。

鈴木は両手で感染者の両腕を掴むので精一杯であった。

 

一瞬の出来事であった、矢が感染者の頭を射抜いた。

感染者は頭が矢で持っていかれバスの側面に張り付いた。

斉藤「大丈夫?」

弓を持った斉藤は駆け寄り鈴木をおこした。

 

鈴木「ああ、助かった。」

鈴木は鍵が刺しっぱなしのバスのエンジンをかけた。

鈴木「OK、ガソリンもそこそこあるからこのバスは走れるな。」

 

大島「みんな、集まってくれ。途中経過報告だ。」

六人は軽トラックの前に集まった。

 

大島「金井、バスは運転できそうか?」

金井「ああ、なんとか。」

斉藤「鈴木と一緒にバスを一台見つけたわ。」

大島「俺と伊藤でガラスは全部割れてるが二台見つけた。」

小林「てことは、あと一台だな。」

鈴木「あと一台どうするんだ?ボス。」

 

大島は考えた、

「よし、三台でなんとかしよう。」

金井「じゃあ俺が来た意味あったのか?」

大島「ああ、もしもの時のための代役だ。」

 

伊藤・鈴木・小林はそれぞれバスに乗り、運転し始めた。

大島・斉藤・金井は軽トラに乗った。

 

軽トラが先に道を先導して走った。

金井「バスは車幅的に遠回りしないとマンションまでたどり着けないな。」

大島「ああ、国道を通るってのは分かってる。問題は他の集団や発症者の群れに襲撃されたらやばいってことだ。」

 

すると廃車の障害物があって軽トラは通れるがバスは通れない幅であった。

廃車は見事に側面が地面につき、シャーシ(車の裏側)が見える。

 

大島は面倒くさそうに軽トラから降りた。

「こいつを路側帯に移動させるぞ!」

六人はシャーシを思いっきり押した。

シャーシが天を向き、ガシャー!と音が響いた。

 

すると車の陰に隠れていた感染者たちが姿を現し始めた。

大島「よし、面倒なことにならないうちに出発だ。」

 

再び大島は先導し始め、無事マンションに戻った。

大島と斉藤は幹部会議室に行くと、東岡が

「話は坂下から聞いたが、俺に相談してくれてもよかったんじゃないか?」

大島「リーダーは俺だ。俺が決める。俺が正しいと思ったことも。」

 

すると東岡が激しく反論した。

「いや違うな!今やこの集団も100人規模だ。家族の意見を聞くべきじゃないのか?」

大島は自信げに

「いいだろう、じゃあ無記名投票で決めようじゃないか。」

 

幹部会議室が投票所となり翌日一日かけて投票が行われた。

投票箱の前には斉藤と坂下が座っていた。

坂下は誰が投票したかをメモ帳に書いていた。

斉藤「あの二人昨日以降一言も話してないみたいね。」

坂下「まあ、ほっとけばいいんじゃない?いつものことでしょ。」

 

確かに今や100人の集団を四人でまとめているがここまで守る人が増えるまで家族にするかしないかでもめていたのは大島と東岡であった。

マンションを砦にしてから、難民たちが駆け込み、この一週間でマンションに住んでいる人が四倍に膨れ上がった。

人数のせいか少数で活動する盗賊たちも近寄れない集団の規模になっていた。

だが問題は外でなく家族の食料問題であった。

 

そして開票が行われた。

斉藤「移動に21票。多分マンションに来る前に共に戦っていた家族だね。」

坂下「大島君にはどう説明しよう・・・」

坂下は困った。

大島「やっぱりそういう結果か。じゃあしばらく滞在しよう。」

大島はがっかりしてこれからを考えながら去って行った。

 



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変わらない人格

今回の主な話は全てマンションの廊下で起こったことです。



東岡はマンションの裏の非常口階段で斉藤に話した。

「最近、大島は自分がヒトラーになったかのような気分で指揮してる。お前はどう思う?」

「まあ確かに、満身創痍してふんぞりかえってるのはたしかね。」

斉藤も最近の大島のリーダーの資格を疑いはしていた。

 

「なあ、このままじゃあ家族が危ない。俺とお前で指揮らないか?」

斉藤は東岡の提案に驚きを隠せなかった。

「つまりクーデター?」

「ああ。」

 

その時、階段に空き缶がカラン・コロンと音を立てて落ちてきた。

「一つ上の階だ!」

東岡が叫ぶと、

斉藤はすぐに階段を上がり弓を構えた。

「止まりなさい!」

 

斉藤には女性の後ろ姿が見えた。

だが盗み聞きしていた女性は斉藤の忠告を聞かずに止まらなかった。

斉藤はやむ負えず、矢を放った。

 

見事矢が太ももに命中して女性がこけた。

女性は左太ももに刺さった矢を痛がっていた。

東岡も後から階段を上って来た。

そして東岡は先に近寄り誰か確認した。

 

女性は坂下であった。

斉藤は驚き、

「坂下さん!ごめんなさい!!今医療班呼んでくるから!!」

「待て!!!」

東岡は大声で斉藤を止めた。

 

「坂下さん、もしかして大島に言うつもりだったのか?」

東岡は冷静に質問した。

斉藤も少し離れたところで様子を見ていた。

 

坂下は矢の刺さった左太ももを抑えながら頷いた。

東岡は坂下をへの字に右肩に抱いた。

「さあ、早く坂下さんを医療班のところに!!」

 

すると東岡は斉藤の言葉を無視し、五階のマンション廊下から坂下を投げ捨てた。

東岡は冷酷な顔で斉藤の方に向いて、

「これで一人大島派は消えた。」

 

上層階の騒ぎに家族が集まって来た。

大島も来た。

「何があったんだ?」

大島は廊下を見て一瞬で把握した。

乾いていない血痕、坂下が身に着けていたペンダントが東岡の前に落ちていた。

 

大島は拳銃をホルスターから抜いて東岡に構えた。

「東岡、どういうことだ。説明しろっ!!!」

 

東岡もホルスターから拳銃を抜いて大島に向けた。

この光景を見た家族たちは見なかったかのように自分たちの生活空間に急いで戻った。

廊下には三人だけとなった。

 

「お前のせいだ!お前が自分に負けたから坂下は死んだんだ!お前に俺は撃てないだろ!!おおしまあああああ!!!」

大島は東岡の裏の顔を見て尋常じゃない狂気を感じた。

「東岡、お前がそんな奴・・・いやこの世界が変わったからか。だが家族を危険にさらすやつはここに置いとけない・・・」

 

パンーと一発の銃声がした。

 

大島は東岡に頭を撃たれ即死した。

「これで俺の集団だ。これから俺の集団だ。」

東岡は強面で独り言を言っていた。

まるで壊れた機械のように。

 

斉藤はナイフで後ろから思いっきり東岡の心臓を突き刺した。

東岡は仰向けに倒れた。

「斉藤・・・お前に・・・こんな勇気があるとはな・・・」

最後に膝枕のような形で斉藤は東岡を見る、呼吸の回数が少なくなっていく。

ハア、ハアと息を吸おうと口呼吸で。

長い結った髪が胸元に。

東岡は片手で包み込むようにポニーテールの先端を掴む。

 

斉藤に向かってなぜか喜の顔で東岡は息絶えた。

目に涙を浮かべながら東岡の最後を看取った。

斉藤はゆっくりと東岡の頭にナイフを刺した。

 

この事件後、斉藤は責任を取ってマンションから出て行った。

 

こうして斉藤・東岡・大島・坂下の四人の友情物語にピリオドがついた。

もしこんな世界でなければ四人にこんな悲劇は訪れなかっただろう・・・



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ZDAY・・・一年後

ゾンビが支配する世界になって一年ぐらいだろうか。

緑のテントを中心に農園を造り、さらにまた農園の外側を堀でゾンビの侵入を防いでいる。

円を描くように農園の外側を掘った、渡る時だけ木材を橋として堀の上に置く。

青井和成と生田優香は二人だけで安全なところに身を置いて再び生活していた。

 

「もう人を一か月見てない。」

「そうだね、大丈夫?」

「このまま二人で平穏に暮らそう。」

野菜を見ながら会話した。

鍬を持って農園の端に行く。

 

和成は農園の周囲の堀に落ちているゾンビに口笛でおびき寄せる。

ゾンビが寄ってくると頭めがけて鍬を振り下ろす。

溝を掘りたての時は毎日5体くらいハマっていたが、最近では二日に一体堀にはまっているかいないかだ。

 

処理した死体を農園の外で焼いた後、大型のテントに戻り、

「優香、俺たちが最後の人類かもな。」

「ふふ、ロマンチックね、最後のアダムとイブってこと?」

「ああ、まさに現代のノアの大洪水ってやつだな。」

今日獲れたてのトマトとキュウリがお皿に、そして缶詰が収納型のテーブル台に置いてある。

缶詰をスイス製ナイフで開ける和成。

 

向かいに優香が座る。

「使ったら貸して。」

「オッケー。」

 

ゾンビや盗賊からの危機管理から忘れていたが、かつての日常を思い出す。

サラリーマン時代の入行許可証のチェック、揺れる電車やバスにテレビゲーム、まるで夢だったかのようだ。

今の生活に慣れ現実が今だと受け入れた自分はこの世界に負けたのかと時々考えさせられる。

 

「和成、缶詰無くなりそうだから近々久々に町行ってみる?」

「そうだな・・・」

「何か不満?」

「いや、優香が心配でさ。」

「え?今更~。てか私も戦えるし大丈夫よ。」

 

二人は笑いながら、

「確かに、安全地帯に居た時は優香の方が強かったもんな。」

「今は和成が守ってくれてるから楽してるけど、いざとなれば援護するわよ。」

 

翌日堀の外で和成と優香は調達について話している。

「本当に一人で大丈夫か?」

「うん、和成は農園をしっかり守って。」

「そっちこそ。」

と言って和成は拳銃を渡す。

優香は拒否して、

「まだ、持ってたんだ。」

 

扱え慣れていない銃器はすべて二人で処分したが、和成は念のため拳銃を隠し持っていた。

「確かにあの時俺達には争いは向いてないと決めて放棄した・・・だが町に行くとしたら別だ。」

優香は和成の隠し事に驚き、無視して軽トラで調達に出かけた。

 

峡谷を走って県道に入る。

ゾンビはほとんど見なかった。

 

町に入ると二十歳くらいの女の子がゾンビをナイフで殺していた。

ナイフを持って援護に行こうとした時、弓矢を向けてきた。

「待って、ナイフを捨てるから。」

優香はゆっくりナイフを地面に置く。

置いた途端に弓使いの女は倒れた。

 

目を開けると、

「緑の天井?」

目を覚まして持つナイフが近くにない。

「大丈夫か?」

「青井さん・・・」

「そうだ、話したいことや聞きたいことは山ほどあるが今は寝ておくんだ。」

「・・・」

 

テントを出ると優香が、

「知り合い?」

「ああ、いや知り合いだったと過去形にしたほうが正しいかもな。」

 



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生田優香の本心

ナイフを何度も横の木製のテーブルに軽く突き刺さるように、トン、トンと一定のリズムを刻んで落とす。

目が鋭く、そのマナコはマットに横たわっている女に向けられる。

ナイフの音で女の目が覚める、慌ててナイフを腰に収納する。

目つきを緩めて、

「加奈ちゃん、おはよう。ぐっすり眠れた?」

「はい・・・生田さん。」

「優香ちゃんでいいよ。」

「じゃあ、優香さん・・・」

 

外で三人で食卓を囲む。

「ここに来て一週間、もう慣れたか?」

「はい・・・おかげさまで。」

「みんな辛い思いをして生き残った。ここで最初に再開した時過去について語り合おうと思ったが過去は水に流して協力しよう。」

 

昨日テントの外で・・・

「和成?あの女をここに置くの?」

「かつては仲間だったんだ、それに仲間は多い方がいい。」

「えっ!前は二人でもいいって言ってたじゃん。」

「大丈夫だ、お前の心配していることは分かってる。」

「そうよ、あなたが拳銃を隠し持っていたことより不愉快だわ。」

「別に俺は一夫多妻を築こうなんて思ってないし、そんな身構えるなよ。」

和成は夜空の下で優香を抱き寄せる。

だが彼女を許せなかった、和成のヒロインは私だけでいいのだ、私たちの愛の創世記を潰されるのは許せない。

そう確信したのは女を連れ帰って和成に見せてからであった。和成は女を知っているような顔とともに私にしかみせてほしくない顔をしていた。私の和成はこいつが居る限り必ず取られる、心も体も。

 

場面は朝の食卓に戻る、

「なあ、優香?」

「そうね、一人が病気しても二人いればシフトが回るもんね。」

「いえ、私は出て行きます。」

後押しするように、

「そうなんだ、まあ加奈ちゃんがそうしたいならそうすればいいと思うよ。」

「確かに、斉藤がそう決めたならいつ出て行っても・・・俺たちに口出しする権利はない。」

 

その日の昼、斉藤が倒れた場所に和成が送る。

和成は運転席、斉藤は助手席で、

「お前っぽいよな。」

「何がですか?」

「常に冷静だ・・・」

「はい、いつか生田さんに殺されそうですから。」

「気づいてたのか。」

「青井さんは助けないんですか?」

「助ける?」

「あれでは新鮮な肉を求めているゾンビと変わりませんよ。」

車を停車させた。

 

フロントガラスに見える前からゾンビが2体寄ってくる。

斉藤は素早く降りて一体には弓矢を放ち、一体には矢をそのまま頭に突き刺した。

矢が足に刺さって倒れてもがいているゾンビの脳天をナイフで突き刺した。

背後を振り向き、

「和成さ・・・」

と次の瞬間ゾンビが襲ってきた。

両手を掴まれ首を噛まれそうになるがなんとか耐える。

パクパクと口をしているゾンビの後頭部にナイフを刺す。

「大丈夫か?」

「助かりました。」

 

生田は和成の農作業袋から隠していた拳銃を見つける。

斉藤が戻ってきたら手っ取り早く始末できるように、また和成への見せしめとして他者との共存をあきらめさせるためでもある。

拳銃を後ろ腰に閉まった時であった。

「優香さん、何してるんですか?」

生田が声の方に拳銃を向けた時、斉藤は人一人分の距離で両手を挙げていた。

「あれ、和成は?」

「そっちこそ、なんで私に拳銃を?」

「質問に答えなさいよ。」

生田は感情的になる。

「死にました。」

死にました、死にました、死にました。

頭の中でエコーが響き渡り、何度もその言葉が駆け巡る。

涙を流しながら顎下に右手で銃口を突きつける。

 

引き金を引く瞬間、右手を叩かれ押し倒される、銃口の火花は顔の横で散る。

右耳にキーンという耳鳴りが。

斉藤は馬乗りになって眉間に矢じりを突きつける。

「さあ、殺しなさいよ。まさか盗賊を町で助けるなんて。」

そんな後悔よりも和成の最後に立ち会えなかったことに涙している。

「どうして・・・私を?」

「私を?・・・撃っても撃たなくても和成は生き返らないからよ。」

「でも、私を道ずれに出来た。」

「そんなことに意味はないの。さあ一思いに・・・」

生田は最後に目を閉じる。

 

「私も東岡くんや大島くんに坂下さん・・・多くの大切な人を失いました。」

「あなたの過去なんて死ぬ前に聞かされても意味ないわ。」

目を閉じても涙がぼろぼろ出てくる。

生田の頬に斉藤の涙の粒がしたたる。

「甘ったれ!大切な人が死んでその人の分まで生きようと思わないの!」

声を張り上げ、目を開く。

「悔しかったら、この矢を私に刺してみなさい。」

「ああああああ!」

 

斉藤をひっくり返して殴ろうとしたとき、

「ちょっと待てええええ。」

と男の声が。

この声は和成?

 

「和成・・・」

「お、おう・・・ダマして悪かったな・・・」

生田は立ち上がり和成に飛びついた。

斉藤は青井さんよかったですね的な笑顔を見せて一件落着した。

 

夜テントの中で三人夕ご飯を食べた。

「まあ、最初は私のほうが気があったんだけど和成も今は私以外興味ないって感じかな。」

「大丈夫ですよ、優香さん。それにしてもこのトマトとキュウリおいしいですね。」

「斉藤、お前も初めて会った時と比べてだいぶ話すようになったな。」

こうして三人で楽しく過ごした。

 

夜中マットの上で寝ている斉藤の眉間にナイフの先端を突きつけた。

斉藤の顔を見て思い出す・・・

『甘ったれ!大切な人が死んでその人の分まで生きようと思わないの!』

ナイフを腰に戻す。

まちがえないでね・・・もしあなたが和成とできたなら喜んで殺すね。

 



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強襲

「優香さんはあの山奥で一生生活するんですか?」

「うん、和成と半年あの場所にいるけど盗賊はいないしゾンビも少ないからね。」

軽トラを降りて二人は住宅街の一軒一軒を物色する。

 

斉藤は右腰に矢の入った鞘をぶら下げ弓は左腰に、そしてリュックを背負う。

生田はナイフを右手に構え、念のために拳銃を後ろの腰に収納している。

 

玄関を入って生田は壁を叩く。

トントンと家中だけに響くように、するとゾンビが一体姿を現す。

土足で上がってゾンビの頭にナイフを刺す。

 

キッチンや押入れを開けて使える物を探すが、どうやら他の生存者に先を越されているようだ。

「ダメみたいですね。」

「そうだね。」

 

軽トラに戻って地図を見て作戦会議をする。

「この先に薬局がありますよ。」

「本当だ、横にはコンビニが隣接か。」

 

その頃和成は農園で作物を育てて管理していた。

「このトマトはまだ青いな。」

育てる作物の種類を増やして後々は家畜も育てようと自分の中で計画していた。

植物はなんとかなるが、動物はどうすればどうやって育てればいいのだろうか。

 

後方から誰かに殴られ気絶する。

 

夜暗くなって帰って来た時、

「今日は何もなかったですね。」

降りようとする斉藤を生田が止める。

「・・・待って、何かおかしい。」

「・・・」

斉藤は生田の険しい顔を見て緩めた気を一気にまた引き締める。

 

「盗賊ですかね。」

斉藤は冷静に推理する。

「その可能性は極めて高いね、ゾンビは堀にハマるから。」

「何か危ない合図が和成さんから?」

「ええ・・・夜はいつも明かりが漏れないようにしてるけど。」

確かにテントから明かりが少し漏れている。

 

テントの中で両手をコンセントケーブルで前に縛られて正座させられる。

三人の大柄の男がライフルを持ち脅す。

「俺はあんたを不意打ちしたが悪気はない。」

「・・・」

「ずっと黙ってるが仲間はいるのか?」

「・・・後悔するぞ?」

和成は睨みつけた。

「なんだその目は?この状況でお前が有利なのか。」

リーダーらしき男は微笑みながら和成を殴る。

 

ライフルを持った見張りをした男は

「はあ~。」

とあくびをする。

足音がして不審に思い明るいテントの方を見る。

気のせいだと感じたが、次の瞬間グサッと。

「うっ!」

口から血が出る。

背中からナイフを刺される。

その時斉藤は東岡をマンションで刺した時を思い出す。

ライフルを奪い弾倉を確認する。

 

ライフルを持った見張りをした女は

「ったく、まだ~。」

生田は暗かったため油断をついて後ろからうなじにナイフを刺しこむ。

その時斉藤加奈を刺した気分になった。

少し心地が良かった。

 

「見張りの交代だ。」

リーダー格の男は指示した。

男たちが出て行き、男と二人になった。

「これで一対一だ、腹割って話そうじゃないか。」

「じゃあ、まずこの両手を解いてくれ。」

「いいだろう。」

男はケーブルを解く。

「お互いを知るには臆病な世の中だからな。」

 

「交代だ。」

見張りの男はふらついている。

「おい。酔ってるのか?」

暗くて見張りの状態が分からなかったために近づいた。

すると男は交代に来た男に噛みつく。

「ああああ!」

 

外の大声にリーダー格の男もびびる。

「だから言ったじゃないか。」

その後外で銃声が数秒鳴ったがすぐに夜の静けさが戻る。

「この野郎!」

男は拳銃を正座している和成に向ける。

斉藤と生田はすぐにテント内に突入する。

「拳銃を捨てて出て行きなさい。」

「・・・分かったから撃たないでくれ。」

男は必死に命乞いをする。

何度も撃たないでくれと。

 

銃を捨て男をテントから出す。

堀まで誘導して、

「他に仲間はいないんだな?」

「ああ。」

「じゃあ、その薄板を向こうに架けろ。」

男は言う通りにして板を架ける。

斉藤と生田はライフルを構えて気をまったく緩めない。

「まさか、この上を歩くのか?転生者の上を・・・」

堀には先ほどの銃声で集まったゾンビがパン食い競争のアンパンを見ているような角度で男を見ている。

 

斉藤は男の足元に威嚇射撃をする。

「板が割れますよ。」

男を焦らして早足で板の上を歩かせる。

ゾンビたちは手を伸ばし、板に届く。

「援護してくれ!頼む。逃がしてくれるんだろ!」

男が渡りきろうとしたとき、斉藤と生田は薄板を撃つ。

薄板は割れて堀に落ち、男は足を滑らせて外側寸前で落ちた。

男は倒れそこにゾンビが群がった。

暗くてよくわからなかったが、男の断末魔だけが聞こえた。

 

「二人ともどうして撃ったんだ・・・」

和成はそもそも襲撃グループを殺さずにむしろどう仲間に引き入れるか考えていた。

「脅威だからに決まってるじゃん。」

まさか私と同じ考えだったとは加奈。

「優香さんに同感です。」

 

翌朝対人において三人で話し合った。

「確かに昨日襲われたがリーダーと見られる男は少なくとも話せる相手だった。」

「もうこれ以上人が増えるのはトラブルの元だよ。」

「私もそう思います。」

「俺も最初はそう思ったがこのやり方は人間らしくない・・・これじゃあまるで獣のグループだ。」

「敵はゾンビではなく人間よ、だからこの山奥に住んでるんじゃないの?」

「最もです、味方であったはずの人間が敵になりますから。」

この発言に生田は一瞬斉藤を睨む。

「それは前に口に出していた三人の名前のことか?」

すると斉藤は沈黙する。

「とりあえず、攻撃してくるやつとか銃向けてくるやつは論外よ。」

 

これでは内部破綻も時間の問題である、どうすればいい。

とりあえず、今できることは生田の嫉妬と斉藤の心の傷のケアだ。

だが下手な行動はできない。

 

農園の外側で死体を焼いているとき、

「よう、安全地帯以来だな。」

「その声は森下さん。」

斉藤は無表情だったが内心驚いた。

「今は仲好し四人組で住んでないんだな。」

「喧嘩売りに来たんですか?」

森下は右手で拳銃を構えながら左肘に装着したナイフで銃身を置いていた。

「安全地帯は崩壊してお前たちが崩壊のきっかけになったのも知ってる。」

「青井さんがいますよ、会いますか?」

森下は斉藤を煽るが動揺を隠した。

「ああ、ここのリーダーなら詳しく話したい。」

森下は拳銃を降ろしてガンホルスターに収納する。

 

斉藤は森下をテントに案内して和成と生田に会わせる。

四角の机に四人が四方に座る。

「久しぶりだな、和成。」

「そうだな、森下・・・」

「あれ?久々の再会にお前も斉藤と同じで喜ばないんだな。」

「初めまして、生田優香です。」

「初めまして、森下だ。」

「しかし・・・どうしてここが分かった。」

「ああ」

森下は思いだすように話し始めた。

「みんな誰かを失ってるだろ?」

森下以外は黙り込む。

「部下を失い、安息の地も失い、新しい家族も失った。」

ため息交じりに、

「だから復讐に来た。」

「復讐?昨日の盗賊たちの仲間か。」

生田は腰に隠している拳銃のグリップを握る。

斉藤は腰にしているナイフの柄を握る。

「まあ、そう焦るな。目的はお前たちじゃなかったんだ。」

「じゃあ、盗賊に・・・」

「そうだ、5人組、一人女であとは男の元自衛隊員だ。だが驚いた、その5人をかつて一緒に戦った仲間たちが葬ってくれたんだから感謝しなきゃな・・・だからお礼を言いに来た。」

それを聞いて斉藤と生田は両手を机の上に再び置く。

 

森下は席を立ち農園の方に戻る。

「どこ行くんだ?」

「俺はもう一人がいいんだ。」

「待て森下、一人じゃあ長く生きれないのを知っているだろ?」

「人は変わるんだ。」

「私もここに来て少しずつ変わりつつある。だから森下さんもここに残るべきよ。」

森下は足を止める。

「いいだろう・・・」

森下は説得され残ることにした。

だが森下は安全地帯に居た時とまるで違う、どこか心が閉鎖的だ。



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峡谷農園

黒と白のクラウンのパトカーで農園から離れた場所に森下を案内する。

「この峡谷なら人も発症者もでくわなそうだな。」

パトカーは県道をそれて整備されていない山道に入る。

「まさか、俺を始末するのか?」

「その逆だ、あんた元警察官だろ。それに今の世の中こそあんたの手腕が問われる。」

「おお、言うじゃないか。一年間でこんなに人はしっかりしてかわるもんなんだな~。」

和成の分析に少し感心する森下。

 

二人は車から降りて4丁のアサルトライフルと3丁の拳銃を持って歩く。

看板が見え、【この先神社】と書いてある。

「神様に奉納でもするのか?」

「まあ、近からず遠からずだ。」

神社の裏に森下を連れ、シャベルを持つ。

和成は地面を掘る。

「神社の中に入るんじゃないのか?」

「神社の中はたまに人が漁りに来る。中を見てみるか羅生門みたいだぞ。」

「いいよ、想像したくもない。」

 

すると土で茶色くなったゴルフバックが出てきた。

「なるほど・・・ここに武器を隠してるのか。」

「ああ。」

ゴルフバックの中には8個の手榴弾にリボルバーや89式小銃・M4カービンなど合計10丁の銃が入っていた。

「誰かと戦争でもするのか?」

「生田や斉藤には黙っててくれ。」

「質問の答えになってながまあいい。」

7丁の銃を新たにゴルフバックに収納して埋める。

「なんで俺にだけこの場所を教えたんだ。」

「元警察官に守秘義務も守る。それに彼女たちにはできるだけ武器を持たせたくない、心にゆとりがない。」

「こんな世に心にゆとりのいる奴なんているのか?」

かつてテレビ局の警備員をしていたとき○○県警が重役を麻薬取り締まりで逮捕した。

だが大手テレビ会社にも関わらずその情報は一切世界が終わるまでスクープされ漏れることはなかった。

 

「そうか、警官時代に資料で読んだテレビ局の警備員だったのか。」

「だからあんたを信頼している中田さんの次にな。」

「そりゃあ、ありがたい。」

 

会話していると声でゾンビがよってきた。

森下は左肘に装着したナイフを寄ってきたゾンビの目に突き刺す。

「さあ、用も済んだし農園に戻るぞ。」

森下はゾンビの服で汚れたナイフをふく。

 

一方生田と斉藤は農園で堀にハマっているゾンビを始末していた。

「加奈ちゃん、あなたは森下をここに置くことに賛成みたいね。」

「はい、かつて命を救われました・・・ゾンビの弱点も教えてくれました。」

堀の上から矢を放ちゾンビを殺す。

 

「まあ、男だから気にしてないしそれに元警察官だから役に立ちそうね。」

「そうですね・・・危機管理能力は四人の中で一番高いかもしれないですね。」

今堀に落とせば怪しまれないだろう。

だが元警察官が居る以上そのやり方も通用しない気がする、これは女の勘である。

 

「優香さん?」

「何?加奈ちゃん。」

「話聞いてました?うわの空って感じでしたけど・・・」

「ごめん、和成が心配で。」

 

パトカーで農園に戻る和成と森下。

「俺は今の農園を大きくしたいんだが間違っているだろうか?」

「いや、間違っちゃいねえ。そもそも衣食住がなければ今は成り立たない。」

「栽培する野菜の種類を増やし、ゆくゆくは家畜も育てたい。」

「夢を持つことはいいことだ。」

「そこでお願いがあるんだ、あんた部下がいたんだろ?」

「そうだが、まさか俺にリーダー丸投げか?」

「そういうことじゃない、役割を決めたい。」

「なるほどな、俺は軍人お前は生産者ってことか?」

「最初は優香と二人で一生農園で暮らすつもりだったが斉藤と再会したとき状況が変わった。それこそ弟がまだ生きているかもしれない・・・そう信じたい。」

「仲間を増やすのか?」

「そうしたいが他の2人は違うようだ、森下はどうなんだ?」

「まずは他の2人が仲良くしないとな。こんな世界だ、いつだって誰でも殺せるし裁くものもいない・・・」

農園が見えてきた。

外側では二人でゾンビを重ねて火葬している。

「お疲れ。」

と口々に出す。

和成は優香に近寄り、

「この後斉藤と調達に行くんだろ?」

「そうだけど。」

「農園の野菜の種類を増やすから野菜の種を見つけたら持って帰ってくれ。」

 

板を渡りそのまま和成と森下は農園へ。

「今はキュウリとトマトだけか。」

「二人で暮らすには十分だったが四人だからな。」

「じゃあ農園を、敷地を広げよう。」

「いい案じゃないか、そうしよう。前は二人で堀を作ったから大変だったがいいかもしれない。」

こうして和成と森下はいろいろ話し合った。

 

死体を燃やした後軽トラで生田と斉藤が町へ物資調達に行った。

「今回は野菜の種もらしいわ。」

「了解です。」

今回は田舎の方に行った。

スーパーはおろかコンビニすらない集落であった。

 

だが不自然に一軒の家にゾンビが群がっている。

「調べましょう。」

「いえ、あそこはパスよ。危険だわ。」

生田の言う事を聞かず、斉藤は車を降りてゾンビに向かって矢を放つ。

次々とゾンビの頭を射抜き、残り一体が近づいてくる。

鞘に手を伸ばしたが矢は使い切っていたようだ。

「しまった。」

パンと音がした。

ゾンビの額に風穴が空いて倒れた。

振り向くと生田は拳銃を手にしていた。

「まさか、久々に撃って一発で命中するとは奇跡ね。」

「ありがとうございます。」

銃声に引き寄せられ家の玄関から一体ずつ出てきた。

阿吽の呼吸で交互に縦列で歩くゾンビを一体ずつ殺した。

 

玄関を進むとスニーカーが脱げているというより丁寧に脱いだという印象だ。

「誰かいるんですかね。」

「ええ、物資をいただきましょう。」

二人は何に襲われてもいいようにナイフを構える。

「これじゃあまるで私たちが盗賊ですね。」

おそらく寝室とされるドア式の押入れには茶色い手形が無数にある。

二人は目で合図してドアを開けるとボロボロの汚れた上下ジャージの少女が隠れていた。

怯えていて私たちに恐怖していたようだ。

生田がナイフを振り下ろした・・・

 

斉藤は生田の腰にタックルして少女の殺害を止める。

「離して!」

「殺さないですか?」

生田は頷き、斉藤は生田の手を取り起こす。

「加奈は人を信じないんじゃないの?」

「優香さんこそ、町で倒れた私を助けてくれたじゃないですか・・・」

生田は拳銃を構える。

「あなたがそれを望むなら殺せばいい。」

斉藤は命乞いをしなかった・・・生田は引き金を引いた。

 

斉藤の背後にいたゾンビが倒れる。

「ありがとうございます・・・」

斉藤はてっきり殺されると思った。

「・・・それより女の子逃げたわよ。」

「追いかけましょう。」

 

二人で集落を探していると二階建の古民家の一階の屋根の上に居た。

どうやって屋根に登ったかは分からないが屋根上の少女に二人で説得を試みる。

「そこから降りてきなさい、さっきは刺そうとしてゴメンね、ゾンビだと思ったから。」

「私達は同性だから乱暴なことはしない。」

少女はしばらく怯えていて様子を見ている。

「武器地面に置くから信じて。」

生田と斉藤は拳銃と弓矢とナイフを地面に置いた。

騒ぎを聞いてさらにゾンビが寄ってくる。

少女は観念して屋根から降りる。

 

「さあ、早く軽トラに乗って。」

少女を助手席に乗せて生田は運転席に斉藤は荷台に乗った。

 

「どうして押し入れの中に?」

「両親が私の代わりに犠牲になってくれた・・・そしてあそこに逃げ込んだ、だから生きてる。」

「ゾンビ・・・奴らを倒したことは?」

「ううん、両親が守ってくれたからないかな。」

「盗賊は?」

「幸運にも遭遇しなかった。」

 

農園に帰る頃には暗くなっていた。

生田は和成と森下に説明した。

「心のケアは俺と斉藤で行う、和成と生田はいつも通り農園と調達を頼む。」

和成と生田は森下の指示に従う。

 



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峡谷農園2

目を開くと緑の天井が見えた、そして横を向く。

背中は柔らかい素材の何かが負担をしてくれている。

「あなたは弓矢の女兵士さん。」

少女はマットに横たわり、意外にも冷静でパニックは起こさなかった。

「私どうなるんですか?」

「大丈夫よ。」

 

「私もここで目覚めた時すぐにナイフを持ちたい気持ちになったわ。」

「あなたは誰ですか?」

「斉藤加奈よ、よろしくね、久保文香さん。」

久保文香、年齢15歳、今迄どこにも属さず家族だけで生き延びてきた。

生田から聞いたのはそれだけであった。

「ごめんね、殺そうとして。」

「あなたは私を助けてくれた、それに今は不思議じゃありませんよ。初対面の人を殺すのは・・・生きるためですから。」

 

テントの中に森下が入ってくる。

「交代だ。」

「ええ、森下さん後は任せますよ。」

すると久保は斉藤の手首をつかむ。

「行かないで・・・」

久保は不安そうな顔をする。

「大丈夫、この人はあなたに危害を加えない。加えたら私が許さないから。」

優しそうな顔で久保を励ます。

「おお、言うじゃないか。初めて会った時は保護してほしいなんて言ってたのになあ。」

斉藤は森下と目を合わさず出て行く。

 

久保は怯える。

左肘から下はナイフ、顔は厳格そうな性格を主張しているような印象を与える。

「久保文香、自称15歳、最近両親を失った・・・」

「・・・」

「両親が死ぬ瞬間はどうだった?」

「・・・」

久保は顔を森下から背ける。

「まあ、話すことはおろか思い出したくもないだろう。」

「ジジイ。」

と小声でつぶやく。

「家族が死ぬのが見れただけでもマシだと考えられないか?俺にはあんたと同じ年くらいの娘と妻がいたが・・・生きているかもしれない・・・いや死んでるかもしれない、生きて再開出来たならこんなにうれしいことはない、だが死んでるかもしれない。だからまだお前はマシなんだ。」

「・・・」

「まあ、当分は無口でも大丈夫だ。ここならしばらく安全だろう。ゆっくり休め。」

 

場面は堀に変わる。

「面倒だ・・・」

堀の中にゾンビが這いつくばっている。

「優香、援護頼むぞ。」

「はーい。」

生田は鍬を外側で構える。

和成は飛び降り、這いつくばっているゾンビの頭頂部にナイフを刺す。

いつものように外側で死体を焼く。

 

「最近数が増えてるな。しばらくは大きな音は控えた方がいいいかもしれない。」

「最初は二人だったのに・・・」

「ああ、確かに食料に余裕が無くなってきた・・・だが、斉藤がいなければ俺は盗賊に殺されていたし少女も死んでいた。まあ盗賊は死なせたくなかったが・・・」

和成のもっともな主張に口を紡ぐ。

「お前は何か勘違いしている、一番大事なのはお前だよ。」

和成は生田を抱き寄せる。

「・・・うん、ありがとう。和成。」

生田も和成を強く抱きしめ返す。

 

俺は本当に彼女を愛しているのだろうか、今の状況を乗り切るための気休めにしかすぎないだろうなのか。

 

「じゃあ、約束してくれ。」

「何?」

生田は和成の微妙な愛情を感じたのか上機嫌だ。

「もう仲間を傷つけないと・・・」

「・・・分かった。和成の落ち込んでる顔見たくないから。」

「じゃあ・・・約束のくちづけするね。」

生田は目をつぶり待つ。

二人は焼死体の前で優しく唇を重ねる。

 

夕方ごろ四人は新しく黄色のテントを建てて食卓を囲む。

「森下さん、久保さんの様子どうでした?」

「少なくとも自分で命を絶つことはないだろう、俺の勝手な推測だが。」

「それはよかった・・・」

和成はホッと息をつく。

「久保さんが出て行きたいと言い出したらどうするんですか?」

「その時は俺の元警察官時代のスキルが試されるな。」

半笑いで答える。

生田は黄色のテントの中にご飯を持ってくる。

トマトとキュウリと缶詰いつもの組み合わせだ。

スイス製ナイフで缶詰を開ける。

斉藤は和成のスイス製ナイフを見て罪悪感がひしめく。

和成は斉藤の目線に気づき、

「貸してほしいのか?」

「はい、そのナイフ開けやすそうですね。」

斉藤は平気で顔に出さず嘘をつく。

 

「うん、爪切りにもなるよ。」

森下は缶詰の側面を見て、

「俺のツナだ・・・和成、そのチキンと交換してくれ。」

「私も欲しいです。」

「じゃあ公平に三人で自分のを分け合おう。」

森下と斉藤の拒絶の反応が飛び交う。

 

久保は人の足音で目を開ける。

「ごめん、起こした?」

近くの収納机に食器トレーを置く。

「いえ、癖なんです。車の中で生活してましたから・・・」

「あの時いきなり殺そうとしてゴメンね。」

生田はにこりと笑う。

「・・・あなたの選択は間違ってなかったと思います。私があなたなら同じことをしました。」

「そうかもね、だから私を後悔させないでね。文香ちゃん・・・」

それは15歳の少女には分からない意味深な発言であった。

生田は黄色のテントに遅れて入った。

 

「どうだった、優香。」

「元気そうよ。」

その会話のやり取りに斉藤と森下は安堵する。

 

その夜農園の外側で和成と森下がパトカーの中で今後の計画を話し合う。

「俺は久保に生き方を教える、しばらくは生田と斉藤を頼む。」

「・・・森下、あんたがいて助かったよ。」

サイドガラスからかすかであるがふらふら歩くゾンビが外側から堀に落ちていく姿が見える。

 

「俺一人じゃあとても抱えきれなかった・・・」

「和成、お前こそまだ若いのによく仕切ってるよ。」

おそらく森下が和成を誉めるのは初めてだろう。

「俺たちは仲間が死んだから生きてこられた。」

「同感だ、だから命は大事にしないとな、こんなに軽い世の中なんだからな。」

 

一か月後。

「さあ、殺すんだ。」

森下は久保に竹槍を渡してゾンビの殺し方を教えていた。

堀にハマったゾンビがこちらを向いてうめき声をあげている。

森下はしゃがんで膝をついて、左肘のナイフを使わず右手だけでバールを持ちゾンビの顔を突き刺す。

「文香、お前は両手があるんだ出来るだろ?」

 

堀にハマっているゾンビは衣服が泥で汚れ、ボロボロで腐臭がただよっている。

だが久保の目にはかつて人間であったころの姿が幻覚として映る。

そしてうめき声が「助けて、助けて。」と空耳で聞こえる。

久保はゾンビの堀に吸い込まれそうになる。

ふらっと堀に落ちかけた・・・

森下は右手で後ろから久保のお腹を抱えて後ろに尻餅をつく。

「まだ無理か?」

「ごめんなさい。森下さん。」

「気にするな、時間だけはある。」

 

農園ではキュウリとトマトに加えて新たに調達したネギ・ジャガイモ・ピーマン・ニラ・さつまいもと合計7種類の野菜を育てている、さらに鶏5羽と豚2匹を奇跡的に見つけて園内で育てている。

 

生田は鶏や豚にエサの虫を食べさせる。

虫を畜産スペースにばらまき豚や鶏が寄ってくる。

遅れて和成が来る。

「ごめん、日課を忘れてた。」

「大丈夫だよ、昔は虫も触れなかったけど今は人を殺すぐらいの覚悟があるから。」

「どうだ、鶏は卵産んだか?」

「いえ、今日は産んでない。」

 

和成は緑のテントに戻り、

「斉藤、俺と優香で調達に行ってくる。」

斉藤は弓と矢の手入れをしている。

「分かりました、あと水が残り少ないんでゾンビがいなければ川から水を汲んでもらってもいいですか?」

「了解した。」

 

生田と和成は軽トラに乗って街を目指す。

「和成、こうやって二人きりになるの久々だね。」

「そうだな、一週間ぶりくらいだな。」

「最近は森下さんと調達いってたもんね。」

「今日は洋服を見つけよう。タオルにも火燃料にもなるからな。」

 

いつも物資調達している町は通り越し、郊外に来た。

この郊外の町はゾンビは少なく無視しても問題なかった。

洋服店が並んでいたが、盗賊が入った後であった。

「最近は物資が手に入らないな。」

「そうね、家電はたくさんあちこちにあるのにね。」

二人は落胆してそのまま引き返す。

 

夜中緑のテントで生田・斉藤・久保、黄色のテントで青井と森下が寝ていた。

するとテント近くで打ち上げ花火のような爆音が鳴り、地面が轟く。

「なんだ。」

驚愕して拳銃をすぐに手にする。

森下が急いで左ひじにナイフを装着し始めた。

「拳銃は使うな。場所がばれる。」

 

緑のテントから三人が非常事態に気づいて出てくる。

テント近くの生田は見覚えのない中型トラックに発砲する。

次の瞬間緑のテントが爆発した。

 

和成と森下もテントを出ると周りはゾンビだらけであった。

そして女性陣が寝ているテントが燃えていた。

和成と森下は絶句。

 

こちらに誰か走ってくる。

我に返り和成と森下は拳銃を構える。

走って来たのは久保だった。

「生田さんが・・・」

名字を聞いて、正気ではいられなかった。

大量のゾンビの中で燃えゆくテントに向かう和成。

「おい、待て和成。」

その声に反応して無数のゾンビが森下の方を向く。

「文香、外側に走るんだ。いつもゾンビを殺す練習をしている場所だ。」

久保は頷き、走って行く。

森下は時間を稼ぐためにゾンビを出来るだけ多く倒した。

 

斉藤が生田を担ごうとしていた。

「優香!」

「大丈夫です、優香さんは生きてます。」

「分かった、援護頼む。」

バチバチという音とともにうめき声がこちらに向かってくる。

代わりに和成が生田を担いで、立ちはだかるゾンビに対して斉藤はタックルやナイフで殺して道をつくる。



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因果応報

ZDAY34日目昼・・・

上野は陸曹長を暗殺するために、少数で競馬場に来たが、様子がおかしかった。

「総司令、突撃しますか?」

双眼鏡で競馬場を見回す。

破られた一部のフェンスから大量のゾンビが競馬場に流れ込み、生存者を食い散らかす。

「その必要はなさそうだ。」

転化した陸曹長を見て判断した。

「この競馬場は長くない、発症者様々だ。」

 

陸曹長は背中に刺傷がある、

噛まれて発症したようでないとするならば内輪で小競り合いか?まあ、脅威が一つ減り解決した。

 

「さあ、三角州に撤退だ。」

 

その夜三角州で悲劇が起きた。

中央の橋までゾンビを駆逐し、橋のあたりで防衛線を張っていた時である。

□□県方面は装甲車の機銃でゾンビを片っ端から木端微塵にして食い止め、三角州側から来るゾンビを調査隊に対処させていた。

「こちら責任者上野。こちら責任者上野。」

装甲車の中で無線で呼びかけるが誰も応答しない。

「総司令!もう弾がありません。」

機銃手は遠まわしに命令を下さいと言う。

「よし、三角州まで防衛線をさげるぞ。その間に応援が来るのを待つしかない。」

 

すると三角州から猛スピードで一台の自動車が出てきた。

「おい、ここは閉鎖する!」

と車に声をかけるが、

車は倒れた死体を轢いてバランスを崩して横転してその猛スピードのまま宙に浮き、装甲車の機銃手に直撃し、機銃手は圧死する。

その反動で残り少ない弾の機銃が暴発し、調査隊員たちに不運にも当たる。

機銃手は首から上が押しつぶされ、車内が血だらけになる。

「畜生・・・」

 

怪我を負った隊員たちが、

「司令!」

「助けてください!」

「来るな!」

と口々に発する。

 

許してくれ。

拳銃を口の中に突きつけて自殺しようとするも弾切れだ。

 

上野は死ぬ気で橋から飛び降りた。

だが河川は思ったより深く、そのまま気を失う。

 

隊員たちは次々にゾンビの群れに呑まれて一人残らず食べられる。

 

「心肺停止!」

ピッピッと心電音が聞こえる。

呼吸器を付けていてしゃべれない。

ぼんやり見えるが内科や外科の医者が着ているような白衣を着ている。

 

ZDAY40日後・・・

「先生、もう退院できますか?」

「そうだな・・・」

聴診器を当て、

「いいだろう。職業は何をしていたんだ?」

「飲食店で働いていました。」

上野は浜辺に打ち上げられているのを発見され助けられた、そして船が転覆したという嘘もついている。

 

「退院できるが、行く当てはあるのか?」

「特にないです。人を失うことに疲れた・・・だから一人で旅をしたい。」

「出て行くなら同志から訓練を受ければいい、十分な用意をしてから退院してくれ。」

 

この病院に来て初めて病室を出る。

「こんにちは。」

「・・・こんんちは。」

患者は車椅子で右足の膝から下がなかった。

「あなた新入りさんですか?」

「はい・・・」

「ああ、足が気になるんですね。」

患者は気さくに話した。

「足はふくらはぎを感染者に噛まれて切断したんですよ。」

「ここは安全なのか?腕を切断したやつは見たが、足を切断して生き残った奴なんて見たことない。」

「・・・」

「すまない、こんな言い方をして・・・」

「そうなんですか、私はずっとここにいますから。」

患者は車椅子を走らせ上野の元を去る。

 

引き続き院内廊下を歩くと突然発症者を乗せた担架を看護師が走らせる。

「急げ、同志たちが引きつけてくれている。」

上野は後をついていく。

ついていった先は中庭であった。

「なんだこれは・・・」

看護師は中庭の扉を開け、中庭に入る、担架の拘束具を素早く外した後担架から乱暴に発症者を落とす。

そして院内に戻り素早く扉を施錠する。

「何してるんだ?」

看護師に詰め寄る。

「病院の方針よ。」

看護師たちはすぐに持ち場に戻って行く。

中庭を見ると発症者が数十人はいるだろう。

そして真ん中に木が一本生えており、枝の上に猫がいる。

中庭の隅に集まっていた発症者たちは再び中心の木に集まる。

 

「最初はみんな驚く。」

いきなり話しかけられびくつく。

「これは・・・」

「ここを出て行くのだろ?」

「はい、先生。」

「なら君には関係ない。」

中庭を見ながら、

「彼らは人類の未来のために必要な存在だ。」

そう言って診察室に戻る。

 

病室で荷作りをして廊下に出た時、車椅子の患者さんが話しかけてきた。

「ああ、出て行くんですか。」

「ここにいたら俺も中庭行きだしな。」

「私は出られないですから・・・」

「大丈夫だ、俺が連れ出してやるよ。俺は上野総一。」

「島津志穂です。」

しゃがんで車椅子患者と同じ目線で指切りをした。

 

病院を出ると駐車場にキャンプがある。

そのキャンプはかつて自衛隊員が使っていたキャンプだが今は病院を守っている自警団くずれが使っている。

「開けろ、トラックが戻ってきたぞ!」

トラックは開門を通過した。

出て行こうとしたとき、門は閉まる。

「出してくれ。」

「駄目だ。」

「先生は出てもいいと言ったぞ。」

「駄目だ。」

門番は腰のホルスターの拳銃のグリップに触れる。

 

そこにアサルトライフルを常備している迷彩服を着た男が歩いてくる。

「何を揉めているんだ?」

「俺は先生の許可で出ていいと言われた。」

同志と呼ばれる組織に抗議する。

 

「同志よ、ここは私が引き受ける。院内の見回りに行け。」

「隊長、了解しました。」

男は院内へ入って行く。

 

銃身に銃剣が装着された89式自動小銃を構え、

「あんたが責任者か?ここを出してくれ。」

「助けたのは俺だ。」

「別に助けてもらわなくてもよかった。」

「戻れ。」

「一度助けた人間を殺すのか?」

 

隊長と呼ばれる男は上野の胸に銃剣を突きつける。

睨みつけた後自分の病室に戻る。

 

ZDAY50日目夜・・・

中庭に通じる扉のドアノブを針金で上手く施錠を解除する、そして開けっ放しに。

その夜同志たちはいつものように見回りをしていた。

「異常なし。」

中庭に隣接する廊下から無線で伝える。

「いや待て・・・」

発症者が廊下を徘徊しているのだ。

夜は電気節約の為病院は廃病院のように暗い、そのため懐中電灯を使って人を確認する。

「異常発生、発症者脱走。発症者脱走。」

とトランシーバーに伝える。

「出来るだけ殺すな、最悪の場合だけ銃は使え。」

隊長が全同志たちに命令する。

 

「了解。」

後ろ歩きで発症者を誘導していると後ろから首をへし折られる。

発症者は新鮮な肉を求めて、まだ死にたてほやほやの同志に群がる。

院内全体に緊急放送が流れる。

『発症者脱走により患者および職員のみなさんは個室で籠城してください、同志たちが対応します。』

繰り返し流される。

 

「1と2班で発症者を誘導する、3班は閉門を守れ。」

緊急放送が病院近隣にまで響き、発症者がよってくる。

隊長は1、2班を率いて事態の収拾を計る。

駐車場のキャンプに先生が慌ててくる。

「頼む、発症者を殺さないでくれ。」

「分かりましたから、ここでおとなしくしてください。院内は危険です。」

 

島津は緊急放送が流れた時休憩スペースでくつろいでいた。

「同志さん、助けて。」

だがその人は発症者であった。

それに気づいた島津は急いでキャンプのある出口に向かう。

だがその方向からも発症者が来る。

挟み撃ちだ。

だが後方から上野が点滴棒で発症者の頭を叩き割る。

「大丈夫か?」

「上野さん。」

上野は島津を病室まで避難させる。

「上野さん、ありがとう。」

「ああ、俺は自分の病室に戻る。」

「危ないですよ!」

「大丈夫だ、俺は百戦錬磨だから。」

そう言って、病室を後にする。

 

隊長含め同志たちは発症者を誘導する。

隊長は一人行動で、怪しく空いた個室専用の病室に入る。

ライフルを構えてさらに奥のトイレに行く。

ベッドの下に隠れていたが、暗闇で気づかれずにやり過ごした。

トイレの中に発症者がいた。

「なぜ?」

と思った時には遅かった。

ベッド下から素早く出て隊長を絞め殺す。

トイレのドアを開けて隊長をひとかじりさせた後、拳銃で発症者と隊長の頭を破壊する。

 

銃声に気づいた一人の同志が駆けつける。

「隊長。」

「無駄だ・・・もう死んでる。」

動揺する演技。

 

「何があったんですか?」

「発症者に噛まれて頭を破壊してくれと頼まれた。」

都合のいい殺害理由。

 

「あなたは誰ですか?」

「上野だ。」

「分かりました、とりあえず安全な場所に隠れてください。」

上野は拳銃を同志に渡す。

同志に素直さと柔軟性を見せる。

 

その夜多数の発症者と死体を出した。

 

ZDAY51日目・・・

中庭に迷彩服を着た男が徘徊している。

硝子を挟んで、

「あの時俺を解放すれば、サイコパスな医者に人体実験されることはなかったのになぁ。」

発症者は半分以下になり、先生は少し落ち込む。

 

ZDAY120日目・・・

上野は実績を残して副隊長レベルの役職について病院を去る、その際上野には10人が一緒に病院を出た。

 

「ほら、時間はかかったが病院の外に出れる。」

車椅子を引いて、

「総一さん、ありがとう。」

軽自動車に乗せてあげようとすると。

島津は自分で車椅子から軽自動車に乗り移る。

計4台の車で病院を後にした。

 

ZDAY半年後・・・

三浦壮介、リコ、康介、森下はパトカーで全国を点々としていた。

ある日四台の車に囲まれる。

三浦一家は手を挙げてパトカーから降りる。

「何が目的だ?」

「森下。」

「責任者じゃねーか。」

 

四人は田舎の木造の小学校に案内される。

現在15人が田舎で暮らしており、物資も豊富にある。

教室で石炭ストーブを中心に、

「知り合いじゃなかったら、どうしてた?」

「そっちこそどうしてたんだ?」

「安全地帯は再建しないのか?」

「ああ・・・」

そこに上野の部下が来る。

「隊長、ご飯の用意が出来ました。」

「承知した。」

 

その夜壮介とリコは会議室で二人話し合う。

「ここに残るべきだ。」

「いえ、康介はここにいてもいい成長はしないわ。」

「ここなら守ってくれるし、守れも出来る。」

「私達は森下さんがいなければきっと殺されていたわ。」

「確かにそうかもしれない・・・」

「大丈夫よ、あの隊長って呼ばれている人なら見逃してくれるわ。」

盗聴器をしかけられてるとも知らずに二人は話し合う。

ぶっちょう面で上野はトランシーバーで会話を聞く。

 

職員室で一人計簿をつけている。

「なあ、あんた名前は?」

「島津志穂。」

「俺は森下だ。」

「下の名前は?」

「本当に信頼した人にしか教えないことにしているんだ。」

「そうなんだ、お互い似たもの同士ね。」

「見た目で失ったものは似てるかもな。」

 

自分の寝泊りする教室に戻ると康介しかいなかった。

すぐに康介を抱いて職員室に戻る。

「頼む、赤ん坊を見といてくれ。」

「え、ええ。」

いきなりの頼みに戸惑いを隠せない。

 

森下はパトカーで小学校を出て行く。

夜にあの両親が子どもを置いて出て行くなどありえないと推理して上野を追う。

しばらくパトカーを走らせていると、後方から車が追ってくる。

「罠か、畜生。」

ここで確信に近い形で三浦家は処刑されたと考えた。

普通ならハラワタ煮えくり返るが今は生き延びるのに必死だ。

 

リーダー格の男が止まっているパトカーを包囲するように他の四人に指示する。

「誰もいません。」

「そうか。」

 

上野の部下たちはそのまま渓谷農園を見つける。

 

現在・・・

堀の上に鉄板を敷いて農園内に中型トラック2台を侵入させる。

それぞれの荷台の扉を開けてゾンビを農園に放つ。

 

「用意はいいか?」

「はい、上野隊長。」

ロケット砲のRPGを緑のテントに向ける。

「撃て。」

テントを反れて近くの地面に着弾する。

爆音がしたテント付近にゾンビは歩き出す。

中型トラックは急いで鉄板を渡り、反撃の銃弾から逃げる。

 

「次は外すなよ。」

砲兵は見事に二発目で緑のテントに着弾させ、爆破に成功する。

「明日の朝まで待機だ。」

 




無理やりこじつけましたが許してください(-_-;)
シーズン4へ続く・・・


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シーズン4
神社


今回ちょこっと台本形式にしました。


朝・・・

 

農園は焼野原となりところどころ白い煙が立ち込める。

身体の部分部分が焦げたゾンビが農園内を徘徊している。

双眼鏡を見ながら、

「これだけやれば奴らは死んだも同然でしょう。」

部下は表情を緩め、成果を得たと確信している。

だが上野は引き締まった表情を緩めない。

 

そこに上野に報告が入る。

「報告します、四人の足跡が農園外で確認されました。」

上野は報告に頷いた後、

「撤退だ、感染体を集めて学校に撤収だ。」

 

すると一人の部下が恐る恐る提案する。

「敵は四人ですし、猛追すれば始末できるのでは?」

 

眉間にしわを寄せて少し考えた後、兵法の基本を言う。

「確かにこっちは10で相手は4かもしれない、だが実際は敵を叩く時最低でも相手の三倍以上の兵力じゃないと制圧できない、つまり12いや15はいるだろう、だがそんなにあいつらには人員を割けない。そこでだ、」

 

「ゾンビを活用ですか?」

「ああ、だから感染体を早く捕まえて撤退するぞ。」

 

上野の部下たちは捕獲網を使って堀にはまっているゾンビを捕まえ中型トラックに押し込む。

押し込まれたゾンビは暗闇の中籠に入ったネズミに気をとられる、その間にどんどんゾンビを詰め込む。

 

森林の中で安全を確認した後、気絶している生田を起こす。

「大丈夫か?」

「うん・・・」

寝ぼけたような返事だったが大丈夫そうだ。

「ここで見張ってくれ。」

 

非常事態のために青井と斉藤が倒木や枝でカモフラージュして隠していた車を使う。

「森下さんや文香ちゃんは?」

 

青井は神妙な面持ちで、

「生きていることを願おう。これから神社に向かう。」

 

「神社?」

と尋ねながら生田も車にかかっている木の枝を掃うのに手伝う。

 

「森下に何か起これば神社で合流すると話した。」

地面を掘り起こしてビニール袋を見つける。

袋から車の鍵を取り出す。

 

青井は運転席、生田は助手席、斉藤は後部座席に乗る。

県道を走る。

生田「もし合流出来れば、襲撃者をつきとめて殺しましょ。」

青井「相手が何人かも分からないし、争いは不毛だ。身を隠して生きる。」

生田「じゃあ、森下さんと合流したとき、この件について話し合いましょう。」

 

県道から山道に入る。

車を降りてシャベルを青井が持つ。

斉藤「何か掘るんですか?」

青井「ああ、こんなときのために銃を隠しておいた。」

生田「じゃあ反撃できるじゃん。」

なぜ武器があるのに戦わないのかと不服に思う。

 

しばらく歩くと神社が見える。

 

木陰からゾンビが一体出てくる。

斉藤「私に任せてください。」

ゾンビの側頭部にナイフを突き刺す。

 

神社に到着し、青井は神社の基盤となるコンクリートに腰を休める。

生田「中に入らないの?」

扉の取っ手に手を当てる。

青井「中は人骨だらけだ。」

生田「そう・・・。」

取っ手から手を放し、青井の横に座る。

 

青井「優香の気持ちも分かるが、争いは良くないと思う。話し合いで解決すべきだ。」

生田「いきなり挨拶もせず攻撃してきた奴らと会話できる?」

青井「ああ、だからそういう奴らとは避けて生きる。」

腰を上げてゴルフバックを埋めた場所を掘りはじめる。

 

ザックザックという音に、近くにいたゾンビが反応する。

「優香、斉藤、任せるぞ。」

 

斉藤はゾンビの頭を次々とナイフで突き刺す。

死角から来たゾンビにポニーテールを掴まれ、体勢を崩す。

「うわ。」

 

青井「加奈!」

その声に反応したゾンビが青井にも近寄る。

シャベルを振り上げて首を刎ねる。

 

倒れた状態で上からゾンビが自然に重心をかけてくる。

右手でゾンビの鎖骨部分を抑えるが腐敗した肉がどんどん剥がれて、徐々に顔が近づく。

左手はもう少しで落ちている木の枝に届きそうだ。

斉藤(くっ、これまでなの!!!)

 

突然ゾンビが動かなくなり、下敷きに。

ゾンビには生田がとどめを刺したようだ。

「これで二回借りが出来たね。」

ほくそ笑みながら生田はゾンビをどかして斉藤に手を貸す。

 

それを見て青井はフーと息を吐く。

 

ゴルフバックを掘り起こし、中身を見ると銃や弾は減っていなかった。

青井「まだ森下は来ていないようだ。」

生田「か、死んだか・・・」

青井「・・・念のため銃を少し残して置手紙もいれておこう。」

生田「え?本当に来ると思っているの?」

青井「ああ、絶対に来るさ。」

 



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サバイバル2

必死に森を駆け抜ける少女、地面を踏む音で周りから人でも獣でもないうめき声が徐々に近づいてくるのが分かる。

走っても走っても奴らはなぜかそこらじゅうにいる。

整備された道が見え、走って逃げるのに少し足への負担はマシになるだろう。

 

道路に出て、

「あれ・・・」

足が軽くなると意識が遠くなる。

走りすぎて酸素が脳に追いつかなくなり、その場で倒れる。

ゾンビが少女の前で四つん這いになった瞬間、銃声が響く。

 

森下は銃声が聞こえ、

「瑠璃!!!」

と大声を叫ぶ。

森の中でやまびこのように跳ね返ってその声が自分の耳に帰ってくる頃にやるべきことを思い出す。

地面の小さな靴の足跡を追跡する。

 

不覚にも銃声につられなかったゾンビが大声を出した森下に寄ってくる。

「足あと、足あと・・・」

ほとんど赤から黒に染まった左腕のナイフを振り回す。

 

ゾンビのまとったぼろ雑巾のような服の胸元を掴んでは引き寄せてナイフに頭部を突き刺す、の繰り返し。

それを地道にやっていくと森を抜けた先に道路が見える。

 

道路に出ると死体が4体仲良く転がっている。

かつて警察だった時の立ち回りと推理を自然にやっていた。

 

死体はゾンビに転化して一年は経つ、だが頭にはきれいに一発ずつ銃弾が命中している。

頭から出ている微量の血はまだ固まっていない。

つまり誰か銃の扱える者がついさっきいたのだろう。

 

青井か、それとも襲撃者か。

おそらくこの二択・・・刑事の勘ってやつ。

 

タイヤ痕があり、地平線の向こうに続いている。

 

強い日差しで気が付く。

揺れている、心地が良くない。

下には青いビニールシートが引いてあり、布の毛布がかぶせてあった。

周りをよく見るとトラックの荷台で寝ていた。

どおりで寝心地が悪いわけだ。

 

張りつめた緊張が走る。

「気が付いたか?」

前の方の右隅と左隅に中年の男がもたれて座っている。

二人とも胸に拳銃がホルスターに刺さっている。

 

左隅であぐらをかいている男は煙草を蒸かし、右隅の男は眼鏡をかけてペンを持ち、正座で地図を見ている。

「名前なんて言うんだ?」

煙草を蒸かしながら、すこし低めの声で質問。

 

「久保・・・ふみかです。」

がたがたがたがたと道路を走る音だけが聞こえる。

 

煙草を道路に捨てた後、

「そうか、久保ちゃんね、こいつね、全然しゃべんねーんだよ。」

「はい・・・」

 

緊張をほぐすのが得意なのか、急に軽快に話しだした、

「はは、まあそんな萎縮すんなよ。俺久保哲郎、この眼鏡北斗栄治。んーで運転してんのが前橋トオル。」

「同じ久保ですね。」

と苦笑いしながら状況が把握できないために、なんとか場を取り繕う。

 

「そうだな、おいメガネ、お前ロリコンなんだからしゃべれよ。」

「そんなことよりこの先に薬局がある、寄って帰ろう。」

北斗は久保の軽い話にはいつも乗らない。

 

北斗はペンで地図に印をした後、運転席側を叩く。

そして地図を裏側にして運転席後部ガラスに押し付ける。

車は一旦止まるがその後また動き出す。

どうやら北斗と前橋の合図のやり取りらしい。

 

「な、一言も俺と会話しない、一言も。息が詰まるだろ?」

と笑いながらまた煙草を吸い始める。

 

「あの・・・」

この人たちなら青井さんや斉藤さんと分かり合えるかもしれない。

そう文香は直感で感じた。

 

哲郎「そういえば探索班は農園を襲撃したらしいな。敵なのか?」

北斗「仲間の足跡が5人あの辺りで消えたらしいから間違いないだろう。」

哲郎「お!!!初めてまともに会話したじゃん。」

 

煙草を蒸かしながら文香に、

「そうそう、最近谷深くで仲間が消えたんだよ。そしたら若者2、3人?・・・だっけ、情けねーよな。俺なら一人で相手できるぜ、なんで物資班に配属されたのかねー。なんか言った?」

 

「いえ。」

文香は一気に顔が真っ白になる。

絶対自分たちの事だと確信する、そうとなればあの場にいたことは是が非でも隠さなければ。

 

「そういえば、文香ちゃん若いね。」

急に荷台に緊張がまた戻ってくる。

その発言に北斗も、

「確かに、もし君がそうだったら僕たちのルールには守られないね。」

 

哲郎「なーんて、嘘、嘘。」

と煙草をまた道に捨てる。

 

地図を見ながら北斗は、

「確かに、君はゾンビも殺せない女の子だから。」

哲郎「そうそう、俺がいなければとっくに奴らと一緒に彷徨ってたよな。」

 

そして車が止まる。

 

運転席から前橋が降りる。

前橋「目を覚ましたのか、大丈夫?」

 

「はい。」

ざっくり言ってイケメンだ。可愛い系の男のモデル雑誌に出てそうな顔立ち、そして甘いマスク。

思わず返事しちゃうよね。

 

「何紳士ぶってんだよ、この世界じゃあゾンビから女を守れるやつがモテんだよ。」

哲郎が一喝する。

 

「メガネ、見張っとけよ。」

前橋と哲郎は拳銃を構えて、薬局に入って行く。

 

北斗「もう少しでコミュニティーに着くから。」

「はい、助けていただきありがとうございます。」

北斗「ああ、いいよ、いいよ、俺銃の扱い下手だからトラックに運んだだけだけど。」

「なんか、いいグループですね・・・」

襲撃者はゾンビより怖い吸血鬼のような心を持った人間だと思っていたが、複雑な思いになる。

 

北斗「はは、意外と俺二人だったら話すから、ここだけの話あまり哲とは話合わなくてさ。」

 

このグループなら青井さんや斉藤さんに会えなくてもなんとかやっていけるかも。

悪い人には見えないし、真実を話そう、うん。

「実は・・・」

と打ち明けようとしたとき。

 

トラックのフロントからコツ、コツっと鉄筋音が聞こえる。

北斗は銃をガンホルスターから出して構える。

その手は震えている。

「ま、待っててね・・・」

不安そうに荷台から降り、忍び足でトラック前方を確認しに行く。

 

音は止むがそれでも北斗は神経質な性格なので安全を確認するまでは気が済まない。

荷台からは死角になっていたトラック前方に銃口を向けると後ろから腕で首を絞められる。

「だ・・・」

声帯ごと閉められ声を出すことはなかった。

 

文香は口を押さえられる。

「俺だ、森下だ。」

と小声で知らされる。

 

「森下さん、無事だったんですね。」

安堵と疲れが同時に出る。

 

「ああ、瑠璃こそ、死んだらお父さん泣いちゃうよ。」

「るり?」

森下は文香に拳銃を渡す。

「これはさっきの男から取った、ゾンビが来たら発砲して知らせろ。お父さん、すぐに助けてやるから。」

「お父さん・・・」

 

まるで3分クッキングのような合理的な行動で薬局に入って行く。

 

薬局ではすでに右手に拳銃、左手に籠を提げて左手で懐中電灯を持って歩く前橋と先導する哲郎。

中は真っ暗だが意外にも商品はほとんど残っている。

 

哲郎「この薬局当たりじゃん。やっぱり田舎はいいな、基地に戻ったら上野さんに報告だな。」

前橋「ああ、それに人も見つけた。」

哲郎「・・・で、何が必要なんだ?」

前橋「・・・はは、北斗さんに必要なもの聞いてくるよ。」

 

後方の前橋が来た通路を戻ろうとした瞬間、ドスドスドスと重い足音が聞こえた。

前橋は反射的に発砲する。

 

哲郎「なんだ!!!」

前橋「い、今、何かいたんだ!それは感染者と違って殺気だった何かが・・・」

前橋は声を震え上がらせる。

 

哲郎「そんな、震え声じゃあイケメンが台無しだぜ。」

と言いつつ心の中で焦り、周りを手当たり次第照らす。

 

哲郎「うわ!!!」

ドン、ドンと銃声を鳴らす。

チュウチュウと言いながらネズミが銃弾で穴の開いた電気配管工から出てくる。

 

哲郎「なんだ・・・ネズミかよ。」

と笑いながら前橋を見ると首がない。

 

哲郎「ま・・・前橋!!!」

と叫んだ瞬間には腹から鋭利な何かが突き出ていた。

哲郎は息が出来なくなり口からよだれのように血を出す。

 

耳元で

「上野の指示かもしれないが俺の娘を誘拐した罪は重い。」

背中から抜き出し、左から右にナイフを横に思いっきり振り斬る。

 

哲郎の上唇から頭が暗い地面に落ちる。

 

文香は心配して、トラック荷台から降りる。

両手に拳銃のグリップを握りしめて暗い薬局の入り口に向かう。

すると、北斗が近寄る。

 

北斗「そっちは入っちゃだめだよ。」

文香「北斗さん、来ないでください。」

北斗「僕と一緒に父さんや母さんに会いに行こう。」

 

文香は拳銃を構えながら、

文香「こ、来ないで。」

北斗はゆっくりと歩く。

 

文香は北斗の顔に照準を合わせる。

距離は軽自動車一台分。

引き金に指を当て引く。

北斗の右肩を弾丸は貫通する。

何もなかったかのように北斗はゆっくりと定速で近づく。

 

北斗「そんなもの使ってもこの悪夢からは逃れられないよ。」

文香「確かにそうかもしれない、でも父と母の分まで私は生きる!!!何を利用しても!!!」

距離人一人分。

 

目をつぶって引き金を引く、そして奇跡的に頭に命中する。

 

外の銃声を聞いて血まみれの森下が薬局から出てくる。

「瑠璃!!!」

「・・・」

 

森下は抱きつく。

「良かった、本当に良かった・・・」

「森下さん・・・」

かつて一緒に生活していた娘と重ねているのだろうか、いや狂ってしまっているのかもしれない。

しかし、文香にとっても森下には父親に似ている所がある。

それは一番に守ってくれたこと、そして私の一番の味方だった父親に。

 




タイヤ痕、哲郎の吸いたての煙草の吸殻によって追跡したらたまたま再会みたいな感じです(小並感

移動は走りです、走れメロスぐらい走ったと思ってください(適当


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再出発

今回ほとんど台本形式です。


物静かな山の中にある神社で、

「和成、来るの?」

疑いの目で青井に何度も聞いている。

生田は亡霊を待っている気分になる。

 

「ああ、ゴルフバックの中身だけ無くなってたから生きている、と思う。」

だんだん自信が無くなりトーンダウンする青井。

 

神社の中で神を祀っている方向に対面して斉藤は正座して手相を上に向けて膝上で指先を合わせる。

周りには人骨が転がっている、しかし斉藤は瞑想状態になる。

 

数時間後・・・

 

青井と生田は銃を構える。

二人並んで歩いていてこちらに向かってくる。

青井と生田は安堵の表情を浮かべ、銃をホルスターに収める。

 

四人は再会して、互いに抱擁と握手を交わす。

青井「みんな、無事で良かった。」

生田「うんうん、まさか生きてるなんて思ってなかったよー。」

森下「そうだな・・・」

 

神社の騒がしさにゾンビが数体近寄ってくる。

森下「水を差されたな。」

 

近寄ってくるゾンビの頭に次々と矢が刺さる。

青井・生田・森下・久保は斉藤の弓矢の射るはやさに圧巻する。

 

青井「さすが弓道部だな。」

斉藤「弓道部じゃないけど、かなり練習はしました。」

森下「矢は銃弾と違って回収できるから便利だな。まあ俺は弓矢を扱えないが。」

斉藤はゾンビに刺さった矢を次々と脳天から抜いていく。

 

森下「そういえばお前らどこに住んでるんだ?」

青井「車中でやり過ごしてたよ。」

森下「そうか俺も一緒だ。軽トラックで2人でしのいだよ。」

青井「これからどうする?」

森下「とりあえず、安全な場所に移動しよう。」

 

5人は下山してそれぞれの車に乗る。

軽トラに森下と久保、軽自動車には青井・生田・斉藤が。

 

牽引する軽トラの後ろを走行する青井。

 

町は避けて常に下道を走り続ける。

すると軽トラが止まる。

 

前から森下と久保が軽トラから降りてくる。

青井も生田と斉藤を残して軽自動車を降りる。

青井「どうした、森下?」

森下「ガス欠だ・・・」

 

軽自動車に五人全員乗る。

青井「安全な場所ってあるのか?」

森下「この先に大きな敷地を持っている瓦屋根の家がある。」

生田「本当に?」

森下「昔、刑事事件で家宅捜索したことある。」

ちらほらと家が建っているがかつて田地であった場所が広がっている。

 

運転していると外壁が白塗りで鼠色の屋根瓦の大きな屋敷が見える。

黒い板塀に囲まれているようだ、周りにはゾンビどころが人の生活している気配もない。

屋敷前に車を止めて、青井・斉藤・森下が薬医門の前に立つ。

 

門は閉まっていて門の格子の隙間から見ると庭は荒れていて草が伸びまくっている。

青井「門はこのままでいい。」

軽自動車を板塀にギリギリまで寄せる。

青井は自動車の上に乗り、板塀に乗り移り庭に降りる。

森下と斉藤も青井に続き、庭に侵入する。

 

木の引き戸の洋錠の鍵穴を青井はスイス製ナイフのキーピックで鍵を解除する。

森下「手慣れてるな。」

青井「ああ、こうやって物色して生き延びてきた。」

斉藤は弓を構え、森下は片手で拳銃を構える。

青井はゆっくり音を立てないように引戸を引く。

 

土間に侵入し、森下が土壁をコンコンコンと叩く。

スーツを着たゾンビが出迎える。

斉藤は矢を射る、見事におでこに命中する。

青井と森下は死体を庭に出してから、五人は家に入る。

 

生田「和室しかないよ。」

青井「そうだな。」

青井は使い古されたかまどを見つける。

青井「江戸時代からリフォームされてないのか。」

森下「ああ、ここは明治から公民館として使われていた。だが殺人事件現場となり閉鎖されたんだ。」

畳はほこりがかぶり黄色からグレーにやや変色しつつある。

 

太陽が沈む頃、広間に円になって集まる。

召集をかけたのは生田であった。

生田「襲撃された農園について解決しましょう。」

青井「優香は反撃したいそうだ、正体も分からない相手に。」

生田は不服そうに。

 

森下「正体なら分かる。」

久保と斉藤は召集された時から無言で静かにしている。

 

青井「なんだって、それは本当か?なら話し合いに持っていくほうがいい。誰だ教えてくれ。」

森下「まあまあ、そう早まるな。相手は上野という人物だ。」

生田「上野総司令・・・」

 

すると真一文字の口を開く。

斉藤「決めつけるのは早いわ。」

森下「最初は俺も安全地帯のトップが頭によぎった・・・確かに、そうだな。」

久保「あの?上野総司令って誰ですか?」

 

森下「俺たちはゾンビが発生した時、瑠璃はその時いなかったが安全地帯に受け入れてくれた人物だ。」

斉藤「・・・」

青井「ああ、だが安全地帯は盗賊団に襲撃され崩壊した・・・」

久保「そうだったんですか・・・」

 

生田「昔の希望に浸る前に、反撃するかしないか決めましょう。」

それた話を戻す生田。

青井「よし、じゃあ反撃したい人は挙手だ。」

森下「多数決だな。」

すると森下と生田が手を挙げる。

 

生田「な!森下さんだけ!!」

てっきり斉藤も手を挙げると思っていた生田。

青井「・・・」

森下「俺は瑠璃を守りたい。だから少しでも危険な要素は排除したいんだ。みんなの意見聞かせてくれ。」

生田「そうよ、森下さんの言う通り。ゾンビはもちろん私達に攻撃的な人間も敵だわ。」

青井「気持ちは分かるが、やはり話し合いをもちかけるべきじゃないのか?」

斉藤「私はこの心友たちだけでゆっくり暮らしたい。」

久保「・・・正直分かりません。」

 

議論は拮抗して結論は出せずに解散し夜を迎える。

長テーブルのろうそくに火を灯している。

ナイフで木の枝をできるだけ円柱に削り、鳥の羽を先端に装飾する。

その作業がろうそくの光によって障子に造影されている。

 

斉藤「誰?」

生田「ばれたか。」

と明るい声色で答え、暗闇から障子を開けて部屋に入る。

斉藤は円柱にした棒の羽の付いた先とは逆の先端をナイフで削り尖らし始めた。

 

生田「矢作れるんだ!!すごいね。」

斉藤「・・・」

何の反応もしない斉藤。、

 

生田「ねえ、農園の時一緒に人殺したよね。」

偽善な態度をやめ、本題に。

斉藤「なんで反撃に手を挙げなかった。って言いたいんですか?」

生田「加奈ちゃん、すごいー、私の心の中分かるんだ。ならなんで?」

無表情で問う。

斉藤「私は追ってくる敵だけと戦います、死んでいようが生きてようが。」

生田「なるほど、自分さえよければそれでいいと?何回も助けてあげたのに。」

実際何回も助けてもらったが恩着せがましい。

斉藤「それは優香さんじゃないんですか?」

 

一方別の部屋で。

畳の上で2人は足を崩して話し合う。

森下「もし、こんな夜中に襲撃されたらどうする?」

青井「襲撃なんていつされてもおかしくない。それより瑠璃って誰だ?」

森下「また言っちまってたようだな・・・生き別れた娘さ。つい久保がそう見えちまうのさ。」

青井「そうか・・・だが反撃したって憎しみを生むだけだ。何のために反撃する?食料?燃料?情報が入った端末のためか?違う・・・憎しみが反撃を生む、ゾンビを殺すのとは訳が違う。」

 

翌朝再び広間に円になって多数決を取る。

青井「森下、優香、斉藤、久保・・・この決で今後の俺たちの生き方が変わる。」

手を挙げたのは森下と生田であった。

森下「・・・決まりだな。」

青井「よし、移動だ。」

 

五人は荷物をまとめて出発した。

 



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寺院

五人は軽自動車で都市部を避けて、草むらに挟まれ塗装された二車線の道路を走る。

運転席に森下、助手席に青井、後部座席には右から生田・久保・斉藤が乗っている。

青井の目にドアやトランクの開いた車がたくさん停車しているのが遠くからでも分かる。

 

森下「両端にガードレールがしっかりあるな。」

青井「今度は無理だな。」

二車線にも関わらず、全車両が同じ方向を向いている、ZDAYから数日後の出来事だろう。

中央線を徐行するが大型バスが横転しており、見事に道路を塞いでいる。

 

森下はバックミラーを見ながら後進し始めると、

青井「待て、ちょうどゾンビもいないし給油しよう。」

森下「そうだな、みんな降りて物資を探そう。」

五人はそれぞれ廃車をあさる。

 

斉藤は荷台からポリタンクを出して、廃車に残っている車の給油口から手動ポンプでガソリンを吸い取る。

生田や久保は手分けして物資をあさる。

森下は車列が安全かどうか確認する。

 

青井は横転しているバスの先が気になり、バスをロッククライミングのように登る。

様子を見るために顔を出すとゾンビの群れが道路を歩いている。

青井の行動を見ながら給油している斉藤と目が合う。

斉藤は青井の焦った顔を見て察したようだ。

 

青井は横転したバスの割れた窓の中に体をひょいと潜り込ませる。

中腰になった斉藤は生田に近寄る。

生田「そんなエロい体勢でどうしたの?」

斉藤「ゾンビの群れです。」

と耳元でささやく。

生田はすぐに近くの車体の下に潜る。

斉藤はトランクに身を投げ入れる。

 

ゾンビはモーゼの十戒の海のように両端ガードレール沿いを歩く。

ガードレール外を歩いているゾンビに気づいた森下はミイラを盾にして地べたに伏す。

 

青井は静かにするので精一杯で気づかなかったがバス中で死んだゾンビが腹ばいで寄ってくる。

後ずさりするが気づけば一番後ろであった。

右腰に手を当てるがナイフがなかった、おそらく助手席で落としたのだろう。

左足を掴まれ、右足で蹴ちらすが、なかなかゾンビが手を離さない。

右手でガラス片をゾンビの頭に突き刺す。

 

斉藤はトランクから歩くゾンビの後ろ姿を見て状況を伺っていた。

青井はバス窓から首を出してゾンビの群れが通り過ぎたのを確認。

 

生田は車体の下から、斉藤はトランクから出る。

森下はミイラを体から離して起き上がる。

四人は横転したバス付近に集まる。

 

生田「和成、大丈夫?」

青井「ああ・・・」

森下「おい、お前右手から血が出てるぞ。」

青井は右手を見ると血がだらだらと出ている、生きることに必死でアドレナリンが出て傷のことを忘れていた。

 

生田「ま、まさか・・・」

青井は落ち着かせるように、

「これは窓硝子で切ったんだ。噛まれてない。」

生田は胸を撫で下ろす。

斉藤は青井の手のひらをぐるぐるときれいな布きれで巻く。

 

森下「そういえば、文香はどこだ?」

斉藤「私も見ていません。」

生田「え?誰も文ちゃんのこと見てなかったの?」

森下は血相書いて車列を調べ回る。

だが見つからなかった。

 

青井「・・・探そう。」

森下「何当たり前の事言ってるんだ?」

怒りと不安を抑えながらガードレール外の足跡を調べ始めた。

 

久保は小走りで草むらを抜けて森林に入る。

だがまだゾンビが追いかけてくる。

 

袈裟姿の少年が木の上からその様子を見ている。

久保はむき出しの木の根に気づかずに足をひっかけ転ぶ。

その時、

「うつけ者、うつけ者!!!」

と叫ぶ少年の声が。

 

ゾンビは声のする方に体が向く。

久保はゾンビが気を取られている間にまた逃げ走る。

森林を出ると大きな寺院が建っている。

 

白い土壁には銅黒い手形がたくさんついている、軒先があるから雨にさらされずに残っている。

門には和錠が掛かっている。

 

?「こんにちは。」

と茶色の袈裟をまとった坊主の少年が久保に挨拶する。

少年は合掌し、頭を下げて少しお辞儀する。

 

久保「いつの間にいたんですか。」

一瞬ナイフに手を添えるが両手を地面に向かって垂直にしてお辞儀する。

日本人に沁みついた作法だ。

 

?「私の名は鈴木最言と申します。」

丁寧な口調で自己紹介をする様は上品に見えるがその後ろの壁には銅黒い手形があり、奇妙な光景だ。

 

久保「わ、私は久保文香・・・」

思わず合掌でも頭は下げない。

 

最言「久保さん、あなたは私を信じますか?」

にっこりと問いかける。

 

久保「信じれば救われるんですか?」

と皮肉交じりに問い返す。

 

最言「信じなくても救います。」

と言って門の和錠を解く。

 

久保は聖域に足を入れる前に最言に

「この寺院では殺生する道具は預かります。」

と寺院の規則を言う。

 

久保「ここはそんなに安心なんですか?」

最言「信じなくても包丁はこちらで預かります。」

久保は素直に最言にナイフを渡す。

 

ナイフを大きな袖に収める最言は寺院を案内する。

井戸もあり畑もある、最低限生きる上では苦労しないだろう。

 

 

 

久保の足跡を追って生田と斉藤を残す、

森下「ここで転んだ跡がある。木の根に足を引っかけたんだろう。」

青井「足跡が3つから1つに減ってるぞ、そのまま向こうに続いている。」

そこにゾンビがやってくる。

青井は包帯を巻いた手でナイフでゾンビの頭を刺す。

 

森林を抜けると寺院がある、足跡はそこで消えている。

森下「この中か。」

青井は白壁の手形を気にする。

青井「何かあったのか?」

森下「それはどうだろうな。」

 

すると内から門が開く。

青井と森下は拳銃をホルスターから抜く。

?「ようこそ、いらっしゃいました。」

黒い袈裟姿の老いた僧侶が出迎える。

 

森下「なあ、あんた少女を見なかったか?」

左肘のナイフを地面から水平にして拳銃を添えて尋問する。

青井「まあ待て、森下、相手は無防備だ。」

二人は拳銃をホルスターに収める。

 

?「私の姓名は鈴木空親と申します。殺生物を木箱に入れてください。」

老いた僧侶は空の木箱を開く。

 

二人は言われた通り、銃とナイフを木箱に入れる。

空親「その左義手もお願いできますか?」

にっこりと穏やかに問う。

 

森下「ところで瑠璃はどこなんだ?」

義手を外して木箱に入れる。

 




鈴木空親(すずきそらちか)・・・平安宗という宗派の僧侶。
鈴木最言(すずきさいごん)・・・祖父空親の孫息子で修行僧。

※平安宗(平安教)・・・存在している宗教の侮辱を避けるために平安宗という名称にしました。おそらく平安教という単語は使わないでしょう(多分


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寺院弐

 

空が茜色に染まるころ。

生田と斉藤は軽自動車で待機していた。

生田「遅いね、大丈夫かな。」

斉藤「・・・」

 

コンコンと窓ガラスを叩く。

運転席に座る生田が手動で窓ガラスを下げる。

生田「文ちゃん見つかった?」

青井「うん、もうすぐ夜だから日が沈む前に移動するぞ。久保もそこにいる。」

 

斉藤「森下さんは?」

右手だけを使い、森の中で一人銃が入ったバックを埋める。

青井「心配ない、それより荷物持って行くぞ。」

生田と斉藤はリュックを背負い軽自動車をあとにする。

 

夕日が沈み、蒼黒い空の中、

寺院の門の前で青井は扉に付属している鉄の輪をカンカンと鳴らす。

すると内側から門が開く。

黒い袈裟をまといし老いた僧侶が出迎える。

空親「ようこそ、いらっしゃいました。外は危険です、お入りください。」

合掌して一礼する、それに対して青井・生田・斉藤も浅くお辞儀する。

 

空親「リュックは私が預かります。」

生田「え?」

青井「約束したんだ、ナイフも預けろ。ここの規則らしい。」

強めに語気を荒めて言う。

 

空親に案内され、木の引き戸から土間に入り、スリッパに履きかえる。

縁側を少し歩き、畳の和室に案内される。

すでに久保と森下が座っていた。

生田「文ちゃん。」

と感動の再会で久保に抱きつく。

 

四隅の灯篭が和室を時代劇の夜部屋のように紅葉色に染め上げる。

森下「みんな、疲れただろ。ここならゆっくり休めるぞ。」

青井「俺はお坊さんに包帯をもらってくる。」

斉藤「私はもう少ししたら寝る。」

と意味深な感じで告げる。

 

森下「そうか、じゃあ生田、文香先に就寝するぞ。」

三人は押し入れから布団を出して、障子を挟んで男女で部屋を別れて寝る。

 

青井と斉藤は灯篭を持って、部屋を出る。

星が煌めく夜空の下の縁側を平行して歩きながら、

青井「斉藤、塀の外壁を見たか?」

斉藤「いえ、暗くて見えなかった。」

青井「塀の軒下の無数の黒い手形があったんだが、その前で何事もなく坊さんは向かい入れた・・・」

 

合いの手を入れ頷きつつも、

斉藤「よく見る光景じゃないですか?」

青井「確かにそうだけど、何か勘ぐってしまう。」

廊下がT字に分かれている。

 

斉藤「私はこちらに行きます。」

青井「分かった、まだ油断するなよ。」

二人は分かれて用事を済ましに行く。

 

漆黒の廊下を灯篭で照らしながら進むと、経典を唱える老いた声が木霊す。

青井「怖いな・・・」

神聖な像が祀られている部屋にこっそり入る。

経典を読み終わり、空親は正座したままゆっくりと後ろの青井に振り向く。

青井「和尚さん、ありがとうございます。向かい入れていただき感謝しています。」

と正座を組み、頭を下げながらお礼を言う。

 

空親「いえいえ、私の信仰している宗教では人を助けるのが大前提でございます、助け合い。」

坊主頭を下げる。

青井「あと、良ければ包帯もらえますか?」

 

その頃斉藤は灯篭を置いて、ある畳の部屋で正座して膝の上で両手の指先をあわせて瞑想する。

半眼で瞑想している時、茶色の袈裟姿の僧侶が横目に入る。

斉藤「あなたも坊さん?」

坊主の少年は足を崩さず、

最言「はい、祖父の孫の最言と申します。」

斉藤「あなた、最言さんは気配を消すのが上手ね。そうやって生き延びてきたの?」

最言「・・・いえ、信仰を信じたから生かされたのかもしれません。」

 

斉藤は最言と話した後みんなのいる和室に戻ろうとしたとき、ドンドンと音が近くから聞こえる。

縁側からスリッパから草履に履き替えて音のする方に行く。

灯篭を照らすと白い土壁が見え、高窓には鉄格子が見える。

周りを歩いて分かったことは正方形に近い土蔵のようだ。

木造の扉には固く和錠が何重にもしてあり、外から薄板で張り付けている。

ドンドンドンドンと高窓から灯篭の光が漏れたのか、活発に聞こえる。

 

心臓に悪い緊張が走る。

 

翌朝おじさんの鼾がうるさくて眉間にしわをよせる。

障子から朝日が差し込んできて、まぶしさに起きる。

森下はちょうど影の部分でまだ心地よく寝ている。

部屋を出て、全身に日光を当て頭を無理やりにでも目覚めさせる。

畑では楽しそうに久保と最言が土を耕している。

最言は袈裟姿でなく紺色上下のジャージで、久保も桃色上下ジャージのペアルックだ。

 

空親に挨拶しようと神聖な像が祀られた部屋に向かって廊下を歩いていると、井戸近くで優香を見つける。

土間から出て、優香に声をかける。

青井「おはよう、朝から洗濯か?」

生田「和成、おはよう。」

朝からはきはきしていて青井も元気が伝染する。

乾ききった血がこびりついた服を一生懸命手でこすっている。

 

青井「手伝うよ。」

包帯を取り、真水で手を洗って生田の横で一緒に洗濯し始めた。

生田「久しぶりにやさしいね。」

青井「そうか、この洗濯の量は手洗いで一人じゃあきついよ。」

生田は青井の頬にくちづけをする。

二人は黙々と洗濯する。

 

空親が日課のように朝、経典を音読している。

その後ろで袴姿の斉藤が手を合わし、目をつぶる。

いつもの髪ゴムでなく、かんざしでつむじの上に長い髪を団子結びにしてうなじが見える。

経典を読み終わり、斉藤に気づく。

 

空親「おやおや、孫息子の最言のごとく忍び足で入って来られたのですか。」

傍から見れば面白くもないが空親は笑いながら斉藤に言う。

斉藤「何があったんですか?」

と真剣に斉藤は聞く。

 

すると空親の顔も引き締まる。

空親「・・・分かりました、斉藤さん。俗世のことは分かりません、しかしここで起きたことを話しましょう。」

空親は話し始めた。

 

ZDAY数日後・・・

和やかな朝の太陽が僧侶の頭をぴかぴかさせる。

かつてこの寺院には30人もの平安宗僧が信仰のために修行や人々を助けていた。

畑を耕し、経典を音読し、貧困の人々に手を差し伸べていた。

 

突然末法がやってくる、近くの公道で無数のクラクションが鳴り響く、と同時に凄まじいブレーキ音が響いた。

聞いたことのない爆音がして、大地が揺れるほどの大事故が起きた。

 

空親「最言、決して外には出るんじゃないですよ。」

最言を部屋中から施錠できる部屋に避難させる。

 

空親「どうしたのですか?」

僧侶「大変です、血だらけの人々がこちらに向かってきます。」

空親「とりあえず、受け入れなさい。」

俗世から身を置いた僧侶たちは知る由もない。

 

負傷者を入れて数十人を受け入れている最中だ。

門で驚愕の光景を目の当たりにする。

森の方で僧侶が人々にほね付き肉のように喰われている。

空親「じ、地獄だ。」

その光景は現世で忘れることはないだろう。

「門を閉めてくれ、頼む、お坊さん。」

と悲鳴のように耳に入る。

 

恐怖におののいた修行僧が門を閉ざす。

門の外にいた僧侶や俗世の人々の最後の顔は今でも夢に見る。

絶望、恐怖、発狂。

全てが塀をまたいで聞こえてくる。

それは月が暗闇の中で浮かんでもまで続いた。

 

翌朝外の無数のうめき声で寝ることができなかった。

大部屋で負傷した人々は次々と疫病で転化した。

そしてたちまち寺院でも混乱は起きた。

転化した人々によってもたらした理性の崩壊は大きかった。

土蔵に感染者と発症者を無理やり押し込んだ。

無理な説法と屁理屈を盾にして、

「君たちは絶対治る・・・」

この言葉を信じ込ませた罪は大きいのかもしれない。

 

生き残った者はしばらく寺院で暮らしていた。

血で汚れた建物や敷地は他人同士で力を合わせて終末前の状態に戻した。

最言にこの悲惨な状況を見せるのは若すぎる。

だが最言はすべて見ていた、人々が転化してかつて家族だったものを襲ったり、土蔵に地獄の使いを閉じ込めたのも。

 

そしてその最言のいた場所からは塀を挟んで外の人々の慈悲の目も見えたのであった。

 

今日に至る・・・

空親「そして転化した彼らを私たちはうつけ者と呼ぶようになったのです。」

斉藤「・・・」

 



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生田優香の本心2

 

門を出る時、最言から荷物が渡される。

森下「ありがとう。」

最言「この先に商店街があります。」

相変わらず少年にしては腰が低い最言。

生田「最言くん、親切に教えてくれてありがとうね。」

異性で目が合えば秒殺スマイルの生田。

 

最言の肩を掴み、

森下「文香を頼んだ。」

その一言の重みに最言は任せてくださいと答えるようにお辞儀する。

 

門は閉まり、森下と生田は廃車が渋滞していた道路に足を向ける。

生田は森下の左肘にナイフの装着を手伝ってあげる。

上腕二頭筋に生田の豊かな胸の谷が当たるのが分かり、変な鼓動がする。

森下「悪いな・・・」

色々申し訳ない気持ちになる。

生田「全然いいよ。家族みたいなもんだし。」

森下「ちょっと、寄って行くよ。」

 

森下は生田を連れてゴルフバックの隠し場所に誘導する。

右手でシャベルで地面を掘りはじめる。

生田「私やるから代わりに見張って。」

森下「ああ、了解した。」

辺りを見回す森下。

 

生田「寺のこんな近くに隠してて大丈夫?」

森下「その時は夕暮れだったから仕方なかった、それに寺から近いと非常時にもいい。」

生田「なるほど。」

まあまあ外れてはいない森下の考え。

 

リボルバーと9mm拳銃を二丁ずつ所持する。

ゴルフバックを埋め戻した後、廃車の場所に向かう。

森下「あの時のままだ。」

軽自動車のドアには鍵が刺さっていて、ガソリンの入ったポリタンクも荷台にあった。

 

生田「運転頼みまーす。」

助手席に乗る。

森下「了解。」

ガソリンを満タンにした後運転席に乗りエンジンをかける。

 

バックミラーを見ながら後進して遠回りをして商店街を目指す。

運転中の会話。

生田「ねえ、私と同じ意見でしょ?」

退屈そうに話しかける。

森下「意見?」

生田「農園襲撃に対して反撃をするってこと。」

森下「ああ、そのことか。だが寺は襲撃者に知られてないし、閉鎖された環境だ。」

 

語気を荒らげて、

生田「あなた警察でしょ?どこのだれか知らない人たちが突然襲ってくるかもよ。」

森下「その時は青井に任せればいい、彼がリーダーだ。」

生田「あなたは仕切る気ないの?」

森下「俺にその資格はない・・・」

生田「あっそ。」

どこか残念そうな生田。

 

道路の両側に張り付く多種多様な店舗、オレンジ色の道路。

商店街の前に車を止める。

二人は車から降りる。

森下「俺は右側、生田は左側からだ。暗い部分は行くなよ。」

生田「そっちも気をつけてね。」

 

そこそこ埃っぽくて混乱した形跡はなく、そのまま廃墟になった感じだ。

光は差しているが奥のレジカウンターの方は天井により日光が遮られて陰で暗い。

 

大型冷凍庫に下敷きになってうつむいている上半身だけが出たゾンビを見つける。

ゾンビは森下を目視してうめきながら両腕を前に動かす、死ぬ直前のセミのように。

左義手ナイフでゾンビにトドメを刺す。

その一部始終を後ろで生田は見ていた。

森下「どうした?」

我に返ったかのように、

生田「いえ、生活用品を探しましょ。」

 

そのとき、店の物陰から暴漢が素早く3人出てくる。

生田は盾にされ刃を喉元に突き付けられる、それぞれ刃物を持っている。

森下がホルスターに手を伸ばそうとすると、

「おっと、それ以上手を動かせばこの女の命はない。」

両腕を天に掲げる、他の2人が森下の体を調べる。

 

「兄さん、我慢できませんぜ。」

一人の男は鼻息を荒くして森下の鍛えられた右腕を見て興奮する。

森下「な、俺が標的なのか?」

完全に女性を狙った犯行と推測したのが外れて、戸惑う森下。

「ああ、俺たちは同性が好きなんだ。どんなにケツの穴が汚くても生きてればいいんだ。」

 

不敵な笑み浮かべながら、挑発的に

森下「お前ら三人で仲良くやってろ、俺はあいにくノーマルなんでね。」

「そうかなら俺たちがこっちに引き込んでやるよ。」

 

暴漢たちは武器を取り上げ、一人の男がベルトをゆるめはじめた。

森下はその男の股間の前に跪かされる。

森下「後悔するなよ?」

と言った後、生田に向かって頷く。

 

生田は左手首に隠していたスイス製ナイフで男の太ももに突き刺す。

「うわあ!!!」

と悲鳴をあげる。

「あ、兄貴!!!」

間髪入れず森下はベルトをゆるめた男の腹に左義手を突き刺す。

無傷の男は命乞いする。

 

「兄貴!」

無傷の男は生田が太ももを刺した主犯格の男の左肩を持ってゆっくり逃げる。

森下は慈悲なく無傷の男にも後ろから左太ももを刺す。

森下「よかったじゃねーか、兄貴と同じ傷が増えて。」

「助けてくれ、助けてくれ。」

生田「私達を甘く見たようね。」

二人の男は許しを乞うが森下と生田は無視する。

 

店舗内から騒ぎを聞いてゾンビたちが商店街歩道に出てくる。

死んでまだ温かい男の死体に群がっている間に、

森下と生田は二人の男を置いて必要なものだけを収集して車に戻る。

帰り道車内で、

森下「はは、ブラックだったな。」

生田「そんなことないよ、和成のお守りのおかげだよ。」

スイス製ナイフに付着した血を紙で拭きながら言う。

 

森下「和成が見たら驚くだろうな、いろんな意味で。」

生田「うん、だから黙っておいてね。」

森下に釘を刺す。

 

太陽が西の水平線の位置にあるころ、廃車が並んだ車道に戻ってくる。

森下「先に寺に戻っててくれ。俺はまた銃を隠してくる。」

生田は一足先に寺院に戻る。

 

その夜珍しく青井は井戸に呼び出される。

青井「どうした?」

スイス製ナイフを返す。

生田「実はその私もう好きじゃないんだ・・・」

と言いずらそうにもごもご言う。

 

青井「なんでそんなこと言うんだ?」

若干声帯に力が入る。

生田「あなたは加奈ちゃんを必要としてるから・・・神社で叫んだり、加奈ちゃんは真っ先にあなたの右手の平を止血した。」

青井はスイス製ナイフを握りしめて、

「俺達、安全地帯から上手くやって来たじゃないか・・・中田勇気が死んだ時も支えてくれたし・・・それから別グループから離脱するときも君は常についてきてくれた・・・農園が襲撃された時は真っ先に君を心配した。」

 

生田「でも!!!加奈ちゃんもきっとあなたが好きだわ!!!」

青井「それは薄々・・・」

生田は声を張り上げて室内に戻って行く。

青井はショックであった・・・初恋の人と初めて真剣に喧嘩して言葉にはできない物苦しさが襲う。

その会話を井戸端に隠れて、盗み聞きした久保は開いた口が塞がらない。

 

そこに灯篭で照らした斉藤が食器を持ってやってくる。

斉藤「喧嘩ですか?」

相変わらず人の心に土足で入ってくる。

青井「なあ・・・」

斉藤は井戸近くの洗面台で食器洗いを始める。

青井「なあ・・・」

斉藤「なんですか?そんな何回も言わなくても聞いてますよ。」

青井「俺の事好きなんだろ?」

 

青井は包み込むように斉藤の背中から抱きつく。

耳元でささやく、

青井「なあ・・・好きって言えよ。」

斉藤「・・・離してください。」

青井は斉藤から離れると斉藤は青井の方に振り向く。

 

面と向かって、

斉藤「好き・・・でも今のあなたはクズですね。」

と言い放ち頬を平手で叩く。

斉藤「お皿8枚洗っといてください。」

最後の言葉が鼻声の斉藤は何も持たず暗闇に消えていく。

青井は心に空いた穴を埋めたかったがそう上手くはいかない。

久保は終始その場面に居合わせた。

 

翌日まだ蒼黒い空を縁側で見る。

経典を音読する若い男の声が聞こえる。

神聖な像が祀られた部屋に足を運ぶ。

経典を読み終えてすぐの茶色の袈裟を着た最言に昨晩の出来事を話す。

 

二人は正座して向かい合う。

最言「煩悩ですね。」

久保「煩悩?クズじゃなくて?」

最言「それは口が悪いお言葉です、やめましょう。煩悩とは抑えられない気持ち・・・みたいなもんですよ。」

優しく煩悩の持論を教える。

久保「もし、青井さんみたいな立場だったら最言くんはどうするの?」

最言「我慢に限りますね。私は修行僧の身ですから。」

 




面白い恋愛小説カキタイネ♂


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弓使いの斉藤加奈4

青井和成と生田優香が喧嘩した次の朝から物語は始まる。


 

太陽が照りつける時間帯であるが森の中は涼しい、弓を手に森で練習する。

大木に向けて左手で弓を地面と平行にして右手で矢をセットし片目で絞る。

「斉藤さん。」

聞き覚えのある声、矢を背中の籠に収め、弓を体にたすき掛けする。

 

「驚かせてすいません。」

坊主の紺色上下ジャージの最言が猿のように木から降りる。

斉藤「今日はお休み?」

最言「休みっていうかどう言えばいいでしょう。まあ休みってことで。」

 

二人は静かな森中を散歩する。

最言「弓は誰の影響で始めたんですか?」

斉藤「・・・」

 

数十年前・・・

かつて貴族だった先祖の名残で祖父は流鏑馬を生業にしていた。

この頃はまだお河童頭の少女だった。

加奈「じいじ、何やってるの?」

祖父「これは馬に乗って弓矢を使って的に当てるっていう簡単なお仕事だよ。」

 

髪が肩まで伸びた時祖父に弓を習う。

最初の数年は当たらなかった。

立ったままですら的にかすりもしない、

そんな自分と違って祖父は馬に乗りながら横の的を的確に当てることの凄さは中学になって分かった。

中学生に入って空手部に入部するが弓は家でも続けた。

 

高校に入る前には矢の勢いが続く限りはほぼ正確に射抜けるように慣れた。

だがそんな特技こんな平和な日本、ましてやIT革命時代に必要性を感じなかった。

 

でも弓は私を助ける・・・

高校1年の時、三年の空手部の先輩から告白されたけど、丁寧にお断りした。

 

次の日の放課後・・・

下校しようと正門に行くと、門の前でぎらついた目を二年の先輩たちが6人こちらに向ける。

危険を感じて裏門に行くが、それは罠であった。

三年の先輩たちが三人組で獣のように走って来た、その中には断った先輩がいた。

 

無人の弓道場に逃げ込み、入口の引き戸に鍵を掛けた。

壁まで下がり、両手のひらを壁にくっつけるが汗ばんでいたのが分かる。

欲望の力はすごい、鍵が数秒でぶっ壊れ、雄犬のように入って来た。

近くに立てかけてあった弓と矢を自然に構えた。

 

その姿に先輩たちはやや怯み気味だったが、

「あんなのはったりだ。」

近寄られ泣きそうになる。

すると重い金属的な衝撃音が鳴る。

 

一人の男子が入ってくる。

男前田「男三人がかりで後輩の女子を襲うなんて卑怯っすよ。」

散弾銃を持ったクレーン射撃部の男前田くんだった。

クラスが一緒の男前田くんは素朴で陰気だがこの時は英雄に見えた。

 

「男前田!!!」

プライドが許さなかったのだろう、先輩は頭に血がのぼっていた。

そのあと男前田は先輩たちのサンドバックになった。

 

先輩たちはすっきりしたのか弓道場を去って行く。

「大丈夫?」

倒れている男前田の状態をおこす。

「斉藤さんこそ、大丈夫だった?」

 

後日職員室で

先生「お前三年に向けて散弾銃を構えたらしいな?」

顧問の鬼の角が生えかける。

男前田「はい、許せなかったんです・・・」

しょんぼりする男前田の陰気さに拍車がかかる。

先生「だからさっきから何が許せなかったんだ?」

男前田がしっぽり怒られた後先生に事情を話す。

 

後日教室で

男前田「おはよう。退学ならなかったよ・・・」

男子生徒A「え!!!まじかよ、じゃあ退部処分か?」

男前田「退部でもなかった・・・」

斉藤を見る。

 

思わず目を背ける。

男子生徒A「退部でもないの・・・それは何か大きな力がお前を守ったのか?」

男前田「さあ・・・」

男子生徒A「そんなことより、三国戦士英雄牧場見たか?」

男前田「ああ、見た見た!劉備と曹操が乳牛の乳搾り対決するアニメだよな。」

 

どんなアニメだよ。

でも弓道場の時の男前田はかっこよかったな・・・

と思い出して浸る。

 

数日後・・・

中間テストが終わり、部活再開。

部活終わり、教室でたまたま2人っきりになった。

男前田「ああ、お疲れっす。」

何も覚えてないようだ。

斉藤「お疲れ様。」

私を見て男前田くん・・・

 

教室のロッカーから学生鞄を脇に抱えて出て行こうとしたとき、

斉藤「あ・・・」

と話しかけようとした時。

 

幼馴染「ねえ、なんで来ないわけ?」

高圧的な態度。

男前田「悪りぃ悪りぃ。」

平謝りする男前田。

幼馴染「まあ・・・別に来てもらってもうれしくなかったけど。」

男前田「そうだったの?」

困惑しながら男前田は教室を出て行く。

小声で

幼馴染「馬鹿・・・からかっただけよ。あんたが居なかったらつまんないんだから・・・」

 

斉藤「・・・お疲れ様です。」

幼馴染「わ!!忍者みたいに気配なかったですね、お疲れ様です。」

驚いた後、男前田には決して見せない笑顔で斉藤に挨拶する幼馴染。

幼馴染「ちょっと待ちなさいよ、一緒に映画見に・・・」

と幼馴染の独特の響く声がどんどん聞こえなくなる。

 

大学進学前・・・

男前田は世界大会のクレーン射撃ショットガン部門で初優勝したことを学校新聞で知る。

写真には散弾銃の形のトロフィーを持った男前田とちゃっかり幼馴染が泣いて喜んでいる姿が写っていた。

 

私は多感な時期だった。

 

現在・・・

 

最言「男前田くん気が合うかもしれません。僕も三牧好きです。」

斉藤「ああ、あのしょうもないギャグアニメね・・・」

最言「斉藤さんは僕と同じですね。」

斉藤「なんで?」

最言「僕も祖父の弟子として修行してますから。」

 

気が付くと森の果てまで歩き、薮の向こうにアスファルトが見える。

 

荷台に島津志穂が乗ったトラックがアスファルトを走る。

ガタンと何か障害物に乗り上げた後島津は宙に浮いた後、荷台から落ちて気を失う。

次に気がついた時ゾンビが数体すり足でよってくる。

左足と両手の力で立ち上がり、義足を引きずりながらドアの開いた廃車に向かう。

地面のゾンビに気づかず、義足を掴まれ転倒する。

上半身を起こした状態のまま、ホルスターから拳銃を取り出し、安全装置を外し、引き金に指を絡ませる。

銃口から火花が散ると同時にゾンビの脳天が吹き飛ぶ。

近くの車までは間に合わず、ゾンビをシューティングゲームのように絞って片っ端から撃つ。

弾が無くなり、最後のゾンビが向かってくる。

義足を変形させてから短剣を取り出し、ゾンビの頭に突き刺す。

 

だが、今度は二体ゾンビが森から出てくる。

短剣を構えるが座った状態では一体しか相手できない。

慣れた手つきで短剣を義足に収めて、近くの車にたどり着き、運転席に這い上がるように乗る。

ドアを閉めて、命からがらホッとする。

サイドガラスからゾンビが手のひらでガラスを叩き、顔をくっつけ、顎をカツカツと動かす。

するとゾンビの側頭部にナイフが刺さる。

 

ドアを開けて出ると、矢籠を背負い弓を持つ女性と坊主の少年が藪に帰って行く。

島津「すいません!」

と声を掛けると振り向く。

斉藤と最言は島津に駆け寄る。

斉藤「大丈夫ですか?」

島津「はい、ありがとうございます。」

西に傾いた陽の光。

最言「よければ寺院に来ますか?」

島津「ええと・・・」

斉藤「夜は危ないから、戻ろう。」

最言は迷いのある島津をおんぶして、寺院に向かい早歩きで帰る。

 

寺院の門に着く。

最言は和錠を解除して島津を招く。

その際もちろん島津の拳銃は没収した。

 

月のない夜が黒く染まる。

大広間に青井・森下・生田・斉藤・久保・空親・最言が集まる。

そこで公開裁判のように自己紹介させられる。

島津「島津志穂です・・・右足は噛まれて切断しました。」

森下「上野は元気か?」

森下の発言に青井・生田・斉藤・久保が心の中で驚き、空親と最言はクエスチョンマーク。

島津「はい、なぜ森下さん学校から突然いなくなったんですか?」

森下「上野の部下に殺されそうになったからだ。」

空親「その上野という人物はみなさんお知り合いですか?」

森下「ああ、上野の部下を何人も俺たちは殺害した・・・」

重たい空気が大広間を包む。

 

その時無数のうめき声が庭から聞こえてくる。

青井「なんだ。」

燈籠で庭を照らすとゾンビがそこら中にいる。

森下「まじか、丸腰だぞ。」

生田「みんな隠れましょう。」

久保・空親・最言・島津はできるだけ家の中心の部屋に避難する。

最言が早歩きするため、島津の右肩を貸す。

 

青井「優香、俺と来い。」

森下「じゃあ斉藤アシスト頼む。」

青井「出来るだけ建物から遠ざけるぞ。」

三人は頷く。

おとりの四人は燈籠を持ってゾンビをおびき寄せるために外を歩く。

 

斉藤は森下を土蔵に案内する。

斉藤「扉が開いてる・・・」

森下「そうだが、それがどうかしたのか?」

斉藤「この中にゾンビを閉じ込めたと空親僧侶が言いました。」

森下「なんで他人から武器は取り上げといて、そんな大事なこと隠してるんだ。」

 

青井は門の前に到着する。

青井「門から侵入したんじゃないのか?」

門は固く閉ざされていた。

生田「どうするの?」

焦りが顔に出る。

 

青井「蔵があったはずだ、そこに一旦閉じ込める。」

生田「でもどうやって?」

と問うと青井は閃いたように、

青井「いや・・・火葬だ。」

 

障子を横にスライドさせて四人は部屋に入る。

ゾンビが部屋に居ないのを確認した後、空親は燈籠の光を消す。

真っ暗闇の中静寂を保ちつつ、廊下の床を踏む足音がギ―、ギ―、と耳に入る。

 

青井・生田と森下・斉藤が門と土蔵の中間地点で合流する。

青井「門は開いてなかった。」

森下「蔵は開いてたぞ。」

青井「それがどうした?」

斉藤「蔵にゾンビが閉じ込められてたんです。」

生田「どうゆうこと?」

青井「・・・とりあえず蔵に来てくれ。」

 

四人は土蔵に向かう。

蔵中を照らすと、藁がたくさん地面に置いてある。

四人それぞれが燈籠から藁に放火し、炎は徐々に蔵中を延焼していく。

 

炎で紅葉色になる障子には鬱向いて歩くゾンビの影が反映されている。

ゾンビが炎に向かって歩いて行くのが障子越しでも分かる。

 

闇が後退し始め、青黒い空の中残ったゾンビを台所にあった中華包丁で四人は片づける。

土蔵は全焼して白い煙がもくもくと昇ってゆく。

 

門前で青井と森下は話す。

青井「なあ、昨日森下の知り合いと再会したのと蔵からゾンビが出てきたのは偶然だよな?」

森下「ああ、蔵を焼く前南京錠が落ちてた。真っ暗だったがかすかに見た。」

青井「つまり、意図的にゾンビを放った人間がいるってことか?」

 

錠を開けられるのはキーピックが得意な青井と生田、

鍵を持っている空親と最言。

青井は島津を受け入れてから森下と監視していたし、空親は苦労して閉じ込めたゾンビを出すのは考えられない。

 

森下「最言だな、少年で思春期だし、ゾンビの修正に興味があるかもしれない。」

青井「最言じゃない・・・」

森下「まあ最後まで聞け。」

青井「違うんだ・・・昨日優香にスイス製ナイフを貸してと言われ貸した。用途を聞いても答えなかった。」

森下「・・・そうか、まだ生田とは仲直りしてないんだよな?」

青井「何が言いたい。」

森下「とりあえず、この件は置いて・・・島津に・・・」

 

次の瞬間青井が森下に殴りかかる。

青井「置いておけるか、全員死んでいたかもしれないんだ。」

口の中が切れて血を唾と共に吐く。

森下「いいパンチじゃねーか。俺はもう警察じゃないぞ。」

左肩でタックルして倒し、青井を片手しかない右手でひたすら顔面を殴る。

 

空親は縁側から頭が損壊した無数の死体を見渡す。

空親「やはり俗世の者は信用できない・・・」

神聖な像が祀られている部屋に閉じこもり写経し始める。

 




最初の方の回想は楽しくなって脱線してしまいました。
まえがきに回想を移そうかな、なんて考えましたが・・・


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リーダー

前回までの登場人物の情報。
青井和成・・・生田・斉藤・森下と揉める。
森下信悟・・・左ひじが無く、生田を好きになりつつ、久保文香を娘に重ねる。
生田優香・・・心変わりが激しく情緒不安定。
斉藤加奈・・・常に冷静で人を見極める、空手や弓道に精通。
久保文香・・・最言を好きだが、自分自身はまだ気づいていない。
鈴木空親・・・末法思想でこの世界が一度滅びまた復活する最中であると思い込んでいる。
鈴木最言・・・平安宗修行僧で身のこなしが軽く、自分は何も殺生しないという平安教の教えが身に付きつつある。
島津志穂・・・森下のことや上野のことも知っている、上野の右腕で仲間からは教頭と言われている、シーズン4の鍵。
上野総一・・・前の安全地帯の責任者で現在は小規模のグループを率いて学校を拠点に統括している、仲間からは責任者、校長とも言われている。


暑い日差しの中、

青井と森下は台車に腐敗体や焼死体を乗せて寺院の門の外に運ぶ。

森林に燃え広がらないように、芝生すら生えていない土の上に可燃ごみのように荷台から死体を降ろす。

空親は部屋にこもり取りつかれたように写経し、中華包丁を持つ生田と斉藤は島津を見張る。

 

最言と久保は燃え広がらないように草むら辺りを見回す。

手を合わして目を塞ぎぶつぶつと何か唱えている最言。

久保「何言ってるの?」

最言「魂を清めているんだ。」

そう言われてなんとなく久保も手を合わせる。

 

バチバチと鳴る炎に寄ってくるゾンビ。

森下は左ひじのナイフで前頭葉に刺した後、そのまま死体を引きずって炎の中に運ぶ。

青井と森下は燃える死体を見ながら、

青井「さっきはいきなり殴って悪かったよ、自分を忘れてしまってた。」

森下「ああ、俺こそ悪かったな。」

 

四人は火元が消えるのを確認して寺院に戻る。

最後に中から門を頑丈に閉める最言、

森下「なあ、お前が蔵からゾンビを放ったのか?」

肩と肩がぶつかるぐらい近寄って小声で最言にだけ聞こえるように問いかける。

 

最言「蔵の中にうつけ者がいたことは知っていました・・・それを隠していたことは謝ります。しかし信仰に誓って蔵から疫病を放とうとは思いません。」

真っ直ぐな目で森下に告げる。

 

森下「分かった、そういえば蚊も殺さないんだったな?」

最言「おっしゃる通りでございます、平安宗の信仰では殺生はいけません。」

森下「最近文香と仲良くしてるが、お前はゾンビを殺さず文香を守れるのか?」

最言「・・・信仰によって助けます。」

返答に詰まりつつもあくまでも平安宗として答える。

森下「もし出来ないなら文香から距離を置いてほしい・・・」

 

場面は島津を捕えた畳のある和室に変わる。

島津「私を解放すればあなたたちを助けてあげられる。」

生田「そんなこと本気で信じると思う?」

包丁をちらつかせる。

 

島津「私は善意で言ってるの。」

斉藤「私達をほっといてくれるならいいですよ。」

生田「ちょっと、加奈ちゃん勝手に口挟まないで。」

 

そこに青井が障子を開けて入ってくる。

青井「島津志穂さん、俺は安全地帯のとき上野責任者と会った事ある。農園を襲撃したのか?」

島津「・・・」

黙秘する島津。

 

生田「やっぱり、この女は農園襲撃したんだわ。」

青井「待て、待て。」

持っている中華包丁で近づく生田を青井は左腕で阻止する。

 

青井「優香、斉藤、二人にしてくれ。」

生田はむくれて出て行く、斉藤もどこか納得せず無言で出て行く。

少し隙間のある障子をぴたりと閉める。

 

青井「俺はこのグループのリーダーだ、上野責任者は対談できる人物だと信じてる。」

島津の目と合わして、見開いて真剣に話す。

島津「・・・分かったわ。その変わり犯罪者扱いはやめて平等にしてくれる?」

青井「いいだろう・・・ただしあんたが信頼できるまで寺院内で当分は働いてもらう。」

握手を交わして、島津を部屋から出す。

 

廊下で待っていた生田と斉藤は、

生田「和成、どうゆうこと?」

青井「交渉が成立したんだ。」

斉藤「強引ですね。」

青井「俺はグループを想って一番いい方法を試してる。」

珍しく声を荒げ感情的になる青井。

 

そこに森下が通りかかる。

生田「森下さん、言ってやって。」

森下「リーダーは和成だ・・・」

と言って通り過ぎる。

生田は飽きれてその場から去る。

斉藤「本当に交渉は上手くいきますか?」

青井「それは相手を信じるしかない。」

 

森下は久保を連れて涼しい森の中でゾンビへの護身術を教える。

森下「ナイフはこう持つんだ。」

ナイフの刃先をやや傾け、地面に向けて柄を持つ。

久保も柄を持ちナイフの刃先を真下に向ける。

森下「手に力を入れるんだ。」

 

アドバイス通りに強く握る久保。

森下はナイフの柄を拳を振り下ろすように持ってそのまま近くの幹に刺す。

森下「やってみろ。」

同じようにナイフを持ち、幹に刺そうとするが弾かれる。

久保「できないよ。」

弱音を吐く。

 

森下「体重をかけてみろ。」

言われた通りやってみるとナイフは幹に刺さる。

久保「やった。」

と口角を上げて笑う。

 

するとその幹に隠れていた島津が刺さったナイフを抜いて、久保を羽交い絞めにして目元に刃先を近づける。

森下「やめろ。」

島津「どうやら大事な娘さんらしいね。」

森下「頼む、たった一人の娘なんだ。」

助けを乞う。

 

島津「だったらナイフを捨てて。」

言われるがままナイフを捨てる。

島津「左ひじの義手ナイフも捨てなさい。」

森下「一体何をさせるんだ?」

右手で左ひじの義手を外し、地面に捨てる。

 

島津「私のホームに帰るのよ。」

森下は久保を人質に捉えられたまま、前を歩かされ軽自動車に向かわされる。

道路が見え森から藪に変わるときゾンビが一体来る。

森下「ナイフを貸してくれ。」

島津「あなたが噛まれても私は死なないから。」

後ずさりする森下。

だがゾンビに両肩を掴まれ押し倒される。

 

押し倒されたと同時に右手に収まらないごつごつした石を掴み、ゾンビのこめかみを砕く。

そのとき返り血が顔にかかる。

石を持ったまま立ち上がる。

鬼のような形相で島津を睨む。

島津はナイフを久保の喉に突き付けると、森下は血のついた石を捨てる。

森下は軽自動車の助手席に乗り、島津と久保は後部座席に乗る。

エンジンをかけてレバーを不器用に右手で操作する。

 

森下「俺はいいが瑠璃は殺さないでくれ。頼む、お願いだ。」

島津「・・・考えとくわ。」

森下は片手ハンドルでアクセルを踏む。

指定された場所を言われ、向かう。

 

寺院内で・・・

井戸の近くの洗面台で服を洗う二人。

青井「前は悪かった。」

斉藤「・・・」

青井「ちゃんと優香と向き合うよ。」

斉藤「・・・」

 

塀に不自然に梯子がかかっているのを生田が見つける。

そこに最言も居合わせる。

生田と最言は察する。

生田「油断してたわ・・・やはり殺すべきよ。」

最言「久保さんと森下さんが外で訓練してます。」

心配そうに言う最言。

 

井戸から服を持って母屋に帰る青井と斉藤を生田が見つける。

生田の話を聞いて、青井と生田は夕暮れ時の森に向かう。

森中で地面に赤く光るナイフと義手ナイフを見つける。

生田「殺してやる。」

生田の目が鋭くなる。

青井「それは状況次第だ、道路に行ってみるぞ。」

 

廃車が並ぶ道路、月が浮かんで来ようとしている。

青井「もう遅い、お前は帰れ。」

生田「やだよ、絶対殺してやる。」

青井「気持ちは分かるが、ゴルフバックを寺院に運んでおいてくれ。」

生田「でも・・・」

青井「誰も戻らなかったらお前が引っ張っていってくれ。」

青井は斉藤が島津を見つけた場所に向かって近くに乗り捨てられていた自転車で走って行く。

 

バスが横転していたために、遠回りしただけで意外と寺院に近い道路に戻ってくる。

島津に十字路の真ん中で軽自動車を停車するように指示される。

森下「こんなど真ん中じゃあゾンビに袋の鼠にされちまう。」

島津「ライトを消しなさい。」

ライトを消すと月明かりだけが周りを照らしている。

 

しばらくするとヘッドライトを点けた中型トラックが向かってくる。

ライトの中にぎりぎり入るくらいの位置の向かいに止まる。

逆光がまぶしく、荷台から降りてくる黒い人影のシルエットだけが見える。

シルエットには玩具には見えないしっかりとしたカービンライフルが形として浮かび上がる。

 

しっかりと引き締まった大声で、

「全員降りて手を挙げるんだ。」

三人は手を挙げて車から降りる。

人影が島津に気づく、

「教頭!!!」

島津「この女の子と一緒にトラックに乗せて。」

島津は久保と一緒にトラックの荷台に乗る。

 

トラックはUターンして暗闇に消えていく。

残ったのはカービンライフルを持った男二人と森下だ。

「名前はなんて言うんだ?」

「森下だ。」

「下の名前は?」

と聞いて二人の男がライフルを構えるのをやめた瞬間、森下は二人の男からは死角になっているドアからリボルバーのグリップを持ち、引き金を引く。

 

鈍く激しい響きが青井の鼓膜にも届く。

それを聞いてペダルを漕ぐ回数を増やすが、古タイヤがスピードについていけずにパンクする。

自転車を捨てて、銃声のあった方向に向かう。

 

森下は死んだ男二人から計4丁の銃を奪う。

森下「これでも昔は刑事だったんだ。」

と死体に話す。

 

二丁のライフルを片手に肩にかけて自動車に戻る。

銃身下に付いているライトを照らすと青井がいた。

森下「おお!!!びびったじゃねえか。」

青井「久保はどうしたんだ?」

森下「多分生きてるだろう、だから今から追いつく。」

青井「待て、夜は危険だ。」

森下「今からなら追いつける。」

 

口論していると車のフロントに暗くて分からないが、丸い何かが飛んでくる。

よく見ると・・・

 

青井「伏せろ。」

青井と森下は地面に張り付く。

車は爆発音とともに炎上する。

その赤い炎にゾンビが寄ってくる。

手榴弾を投げた壊死状態の男はゾンビに喰われる。

 

森下「野郎!」

青井は森下からカービンライフルとオートマティック拳銃を一丁ずつ取る。

八方から来るゾンビの頭を丁寧に撃つ。

炎上する車の前で自動小銃の弾丸たちが暗黒の空間に向かって脳天を撃ち抜き光線が斬り裂く。

 

青井「寺院に向かうぞ。」

森下は頷き、青井の後ろを護衛する。

銃身付属のライトで闇の深い森に向かって二人は走る。

銃声でゾンビをおびき寄せないように、立ちはだかるゾンビはリアサイトを持ちバッターのように振り払う。

 

真夜中の寺院で開門し燈籠を二つ端に置き、サブレッサー付きのアサルトライフルを持つ生田と弓を構える斉藤。

ゾンビが燈籠の光に導かれて近づいてくる。

生田が銃を構える。

斉藤「待ってください、弾の無駄です。」

弓を絞り、絶好の距離でゾンビの頭に矢を命中させる。

生田「群れて来ても弓で戦うの?」

斉藤「・・・」

矢をゾンビの頭から引き抜く。

 

最言が門にやってくる。

最言「見てください。」

三枚の写真を見せられる。

生田と斉藤は絶句。

最言「塀に立てかけてある梯子の向こう側に落ちてました。」

 

するとゾンビが数十体ほどよろよろと不規則に近づいてくる。

三枚の写真を最言から取り上げるようにポケットに入れる生田。

斉藤は置いてあるゴルフバックからサブレッサー付きの自動小銃を取り出す。

生田と斉藤はまるでジェンガの塔を崩さないように銃弾を正確に急所に当てる。

これには間近で見ている少年も感心する。

 

二つの赤白い光が見える。

青井「もう少しだ。」

森下「ああ。」

二人は拳銃に持ち替え、片っ端から寄ってくるゾンビを至近距離で撃つ。

 

生田「和成と森下さんが帰って来た。」

二人の男が福男になるために門を目指しているみたいに必死に走る。

二人は滑り込み地べたに倒れる、生田と斉藤が門を閉める。

ドンドンと外から壁を叩く音と唸り声が無数に聞こえる。

 

生田は森下の肩を持って介抱し、斉藤は青井に駆け寄る。

青井「俺は大丈夫だ・・・森下を運んでやってくれ。」

斉藤「分かりました。」

 

翌日昼下がりに目が覚める。

大広間から何か話し合う声が聞こえる。

いつも横で寝ている森下がいない、布団をたたんで和室から縁側に出て声のする大広間に歩く。

森下・生田・斉藤・空親が座布団に座って談合している。

森下「文香がさらわれたんだ、今日の夜襲撃に行く。」

斉藤「気持ちは一緒です、でももう少し冷静に対処を。」

生田「森下さんの言う通りよ。」

最言「と、と、とりあえずお、落ち着いてください。」

青井「おはよう。」

 

すると四人が静まる。

青井「急に身内のお通夜みたいにどうしたんだ?」

生田「これを。」

三枚の写真を青井に見せる。

そこには農園の時の青井・生田・斉藤がピンでそれぞれ写真に写っている。

斉藤「きっと敵がきますよ。」

森下「和成、昨日の件で分かっただろ。交渉なんてはなっからねえんだ。」

青井「来るなら説得あるのみだ。」

森下「いや、瑠璃を助けて上野も島津も殺す。」

青井「久保が生かされてるなら、まだ話し合いで解決できる。」

森下「だったら今回も多数決で決めようじゃねーか。招くか、お邪魔するか。」

 

青井「じゃあ説得に手を挙げてくれ。」

誰も手を挙げない。

森下「襲撃に賛成のやつ。」

生田が手を挙げる。

生田「加奈ちゃんと最言くんは?」

斉藤「私はこちらが数的不利な場合は迎え撃つ形の方が有利だと思います。」

最言「・・・斉藤さんの意見に賛成です。」

青井「おい、最言!お前の信仰は平和を信じる宗教じゃないのか?」

斉藤「最言くんに当たらないで。」

森下「お前は少しの間・・・リーダーという荷物を降ろせ。」

青井「争いは何も生まないぞ・・・」

森下「じゃあみんなの意見を総合的に判断して、迎え撃つ。」

青井以外のその場にいる三人が納得する。

 

夕暮れ時青井は黒い大理石の浴場に入る。

シャワーを浴びて、湯気の出ている熱湯がはったヒノキの浴槽に身体をゆっくり入れる。

もしかしたらリーダーというものが自分を追いつめたのかもしれない、そう考えながら白い湯船に顔をつける。

するとガラガラと誰か浴場に入ってくる。

青井「森下か?」

ぺたりぺたりとゆっくり足音が近づいてくる。

「私でした。」

浴槽を挟んで後ろから両手を青井の鎖骨あたりに絡ませる。

青井の耳に甘噛みする。

柔らかい唇が耳に快感を与え、もっちりした胸が青井の背中に吸い付く。

「仲直りのセックスか?」

「謝って。」

甘えるような声で耳元にささやく。

「確かに俺達最近気まずかったよな・・・」

「意見は違うけど、私達家族よ。」

「ごめん。」

浴槽を挟んでお互い舌を絡ませ合う。

 

墨汁のように黒い景色の中に薄明かりが漏れている学校・・・

丘から上野がいるであろう学校を見渡す。

戦場の兵士のような重装備の森下と生田。

森下「隠密に行くぞ。」

生田「ええ、二度と反撃できないようにしてやるわ。」

森下は最言に拳銃を渡す。

森下「さっき教えたとおり、安全装置を外して、引き金を引くだけだ。」

最言「あくまでも文香さんを助けるだけだ。人は殺さない、うつけ者もだ。」

森下「だったら急所を外せ、10発入ってる。今は信じてるだけじゃあ何も救えない。」

何かに葛藤しながらも最言は銃を受け取る。

 



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因果応報2

トラックの荷台に乗せられる・・・

Uターンするとトラックのはるか後ろの暗闇の中で大きな金属音に身をびくつかせる。

島津「大丈夫よ。あなたを殺す気はないわ。」

島津はナイフを一緒に荷台に乗っている武装した女性に渡す。

女兵士「無事でよかったです。」

島津「ええ、今度は置いていかないでね。」

と話の内容は酷い出来事なのに笑いながら会話する。

 

島津「寝てもいいわよ。」

そう言われ、油断してはいけないと思いながらも今日の緊張感が解けてつい寝てしまう。

 

朝太陽の日差しが急に瞼を熱くする。

小さいまなこを開くとテントの中にいた。

後ろには大きな白いコンクリートの建物が立っていて前に運動場が見えるが運動場トラックが囲むようにビニールハウスがある、その向こうには木造の建物がある。

上野「初めまして、上野総一だ。ここの管理、まあ校長と思ってくれ。」

上下森林迷彩服で筋肉質で腰に銃が刺さっている校長何て見たことないが、

久保「久保文香です。私殺されるんですか?」

と悟ったように質問する。

 

高笑いした後、

上野「僕はここの校長だ。それに君を殺す理由なんてない、むしろ未来を託すぞ。」

と久保の肩をトントンと叩き、大きな白いコンクリートの中に入って行く。

 

上野の後ろにいた上下迷彩服の顔が整った美青年が話しかける。

?「僕は羽田佑一だ。君を紹介して周るように責任者に任されてるんだ。」

さわやかな笑顔を見せる。

 

久保「ここは学校ですか?」

羽田「うん、そうだよ。まずは目の前のビニールハウスを案内しよう。」

羽田はビニールハウスに歩き出し、後ろをついて行く。

 

ビニールハウスの中で作業する人々が片手の指くらいいる。

羽田は麦わら帽子を被った中年のタンクトップにジーンズを履いた男に話しかける。

?「おお、羽田くん。新入りか?」

首にかけてあるタオルで汗をぬぐう。

 

久保「久保文香です。」

羽田「この人は猪野大地さん、作物班の班長だ。」

猪野「よろしく、いろいろ手伝ってもらうから。そんときはお願いね。」

と雌犬を見る獣のような目つきで久保を見る。

 

そんな目つきを気にせず、

羽田「今は何が育ってます?」

猪野「じゃがいもだ。掘ってみろ。」

羽田は言われた通り掘る、両手でしかも素手で。

羽田「食べごろですね。」

実ったじゃがいもをまじまじと見つめる。

 

猪野「そうだろ、香辛料さえ調達できれば味も楽しめる。」

土まみれの手を掃いながら、

羽田「そうですね、いいですね。」

とくったくのない笑顔で素直に喜ぶ。

 

羽田「お邪魔しました。」

ビニールハウスの外に出る。

思い出したかのように、

羽田「ゴメンね、楽しくなって忘れちゃったよ。」

久保「いえいえ、全然大丈夫です。」

と苦笑い。

 

またかも思い出したこのように、

羽田「そうだ、君の役割を紹介するよ。」

久保「役割ですか?」

羽田「ああ、発症者と無縁の君にぴったり・・・かもね。」

と最後さわやかに笑って誤魔化す。

 

木造の建物に入る、古い下駄箱があり、一部は腐っている。

羽田「ここは戦後まもない頃に立てられた校舎なんだ。この北に立つ校舎は新しい校舎なんだ。」

丁寧に説明しながら幅の狭い廊下を歩くと他の教室とは別格に大きな教室に足を止める。

土で汚れた手で木造のドアを開けると、四人の年齢一桁くらいの子ども達が羽田を囲む。

「羽田兄ちゃん。」

「羽田くん。」

と甲高い声で興奮する子ども達。

 

?「羽田、ちゃんと手を洗ってから入るんだ。本が汚れる。」

どうやらここは図書室らしい。大きな机の上にノートが置いてある。

羽田は図書室から出て行き、手を洗いに外へ。

 

?「私はここで子供に勉強を教えている、本郷文太です。」

還暦に見える男性は身なりが整っており、上野よりよほど校長っぽい風貌だ。

久保「久保文香です。」

児童1「じゃあ文香先生。」

そう言われまんざらでもない顔の久保。

本郷「私はかつて高校教諭だったんだ、君は高校生くらいだね?」

久保「はい。」

本郷「一緒に未来ある子供を育てよう、まあ君も未来だがな。」

と言い低い声で上品に笑う。

 

児童4「じゃあ一緒にこれから毎日ふみ先生と遊べるの?」

羽田「その前に挨拶周りがあるんだ、久保さんは。」

児童は挨拶周りという言葉にポカンとする。

図書室を出る時、羽田は一礼する。

それを見て慌てて久保も一礼する。

子どもたちがドアガラスから手をふる。

 

羽田は久保を新しい校舎に連れて行く。

再び運動場を通り、真っ白の下駄箱を通り、廊下を左に西に進む。

奥から技術室、コンピュータ室、音楽室とある。

羽田「技術室は発症者対策に使う道具を作る部屋だ・・・あそこはいいや。コンピュータ室と書いてあるが僕たち対処班では監視室と呼んでいる教室だ、校門やフェンスに監視カメラを設定していてそれが監視室でモニタリング出来るんだ。」

 

羽田はコンピュータ室に入る。

羽田「真子、異常なしか?」

?「ええ、異常なしよ。その子遭難者?」

すぐに久保に気づく。

羽田「ああ、・・・まあそんなところだ。」

?「あ、そう。」

 

久保「あ、あの、久保文香です。」

?「あ、自己紹介まだしてなかったね。東堂真子よ。」

PC画面を見る男性が2人いるが、こちらを見向きもしない。

東堂「羽田は彼氏だから取らないでねー」

と茶化す。

羽田「余計なことを。」

気おくれしたように言う羽田。

 

コンピュータ室を出ると同時に技術室からも上下森林迷彩の男性が出てくる。

羽田「武村・・・」

空気が殺気立つ。

 

武村「おお、これはこれは次期校長。」

白々しくどこか馬鹿にしながら言う。

武村「上野さんは素晴らしいリーダーだ、君と同じで正義感があふれていらっしゃる。」

羽田「今度、真子に手をつけたらお前をここから追放してやる。」

今迄温厚だった羽田が武村にカバのように牙を剥く。

 

胸元を掴み、表情で威嚇する羽田。

武村「正義の羽田くんはそんなことで追放しないでしょー、愛しの真子ちゃんだって欲求不満だったんだよん。」

ふざけ続ける武村。

羽田「クソ野郎!!!」

一発顔にコブシを浴びせる。

 

ゴム鉄砲のゴムが放たれたかのように武村は殴られた衝撃で飛ぶ。

武村「そうやって正義のヒーロー気取ってるやつは絶対暴力を振るう、自分の良し悪しの基準でな・・・」

武村は胸元を整えて東に歩いていく。

羽田「醜い部分を久保さんに見せてしまったよ。」

久保「・・・」

 

その頃屋内プールで・・・

プールで猿轡をしたゾンビ30体ほどがひしめき合う。

水槽の高さだけではゾンビが溢れるのでさらに50cmの薄板で補強している。

これによってゾンビは水槽を上がれずに鳥籠の中で突っ立ている。

 

それをプールサイドで見る上野・島津・武村。

上野「外には常に盗賊団がいると国民に言っているが本当に出てくると脅威だ。」

島津「青井和成はあなたと対話したがってたわ。」

上野「それでも殺された仲間の為にも青井和成・生田優香・斉藤加奈は消さないといけない・・・」

武村「では息の根を止めに。」

上野「ああ、国民を守るために手を汚さないとな。」

この判断に島津は納得はいかない。

 

燃えるような夕日が沈むころ、監視カメラにゾンビがフェンスの金網に引っ付き虫のように掴む。

監視室からトランシーバーで、

東堂「発症者一体南フェンスに確認。」

対処班は正門近くの、置いてある細い竹槍でゾンビの頭を突く。

 

羽田に久保の寝床を案内される。

木造校舎の一年生の教室で畳が置いてあり、教室の真ん中には石炭ストーブが置いてある。

羽田「加入者はしばらく信頼を得るまでここで寝てもらう。」

教室の隅には毛布と枕だけある、窓は割れていてフェンスの監視カメラがなければ逃げれるだろう。

 

黒曜石のように暗い教室が外の対処班の電灯がたまに天井を照らす。

すると夜に人影がカラカラとドアをスライドさせ、誰か入ってくる。

得体のしれない何かなので、あまりの恐怖に声が出ない。

窓を開けて助けを求めようと脱出を試みようとすると、

 

最言「文香さん、助けに来ました。」

小声で最言が話しかける。

久保「最言くん?」

最言は黒ずくめで、口元を布で隠して野球帽をかぶっている。

 

久保「森下さんは無事なの?」

最言「はい、近くで待ってます、寺に帰りましょう。」

ガラガラと今度は大きなスライド音がした。

猪野「久保さん、ちょうど手伝ってほしかったんだ。」

汚い声で甘える猪野。

 

久保「何をですか?」

猪野「まあ、俺の部屋に来てくれ。」

 

ウーと備え付けられた拡声器からサイレンが鳴る。

 

舌打ちをした後

猪野「今は発症者なんてどうでもいい、俺が居なくても対処できるだろ。」

久保を押し倒して左手で口を塞ぎ、右手で器用にジーンズを降ろす。

うめき声が窓から聞こえる。

 

ロッカーに隠れていた最言が猪野に向かってタックルする。

猪野は鈍く転がり、足をくじく。

猪野「痛てえ・・・」

外で銃声が鳴りはじめた頃、

最言「大丈夫か?」

久保「・・・」

脂ぎった男性に襲われかけて大丈夫であるはずがない。

 

そのとき足を掴まれる。

猪野「この野郎!!!」

そのまま引きずり最言を殴る。

何回も何回もパンチングマシーンのように最言を殴りまくる。

 

すると猪野は肩を負傷して転がる。

久保は最言が猪野と揉みあった時に落とした銃を拾って安全装置を外して撃ったのだ。

久保はタコ殴りにあった最言に手を貸す。

猪野「お前ら二人とも殺してやる。」

窓際で負傷した猪野がホルスターから銃を構えるが、無数のゾンビが割れた窓外から手を伸ばして窓外に引っ張り出す。

猪野は叫ぶことなくゾンビの餌となった。

 

最言と久保はあっけにとられるが脱出を試みる。

運動場の方に逃げると、人々が向かいのコンクリートの校舎に避難する。

最言「駐車場に森下さんが待ってます。」

北の校舎でなく西の駐車場に向かう。

 

サイレンが鳴る五分前・・・

監視室に正門にいる対処班から報告が入る。

報告を受けて見る監視カメラにはどこからともなく雲のようにゾンビが集まってくる。

東堂「増援を送ります。」

閉ざされた正門から警備班の二人が無数のゾンビ相手にカービンライフルを撃ちまくる。

 

サイレンが鳴りはじめ、

監視カメラの目を潜って、正門の外に隠れていた生田がゾンビに気を取られている警備員を撃つ。

正門を外から開けて、ゾンビを招く。

砂時計のようにゾンビが正門から侵入すると同時に生田も上野暗殺のために潜入する。

南の正門から突破したゾンビは木造校舎の中に入ったり、周りを歩く。

 

サイレンを聞いて飛び起きて運動場に集結する人々。

運動場の朝礼台に立つ上野、その立ち姿は勇ましさを彷彿とさせる。

上野「戦える者はこの学校を守るんだ。女子供や高齢者は避難しろ。」

男たちは鎌や鍬、竹槍を持って南に向かう。

 

朝礼台から降りる上野は羽田に遺言のように告げる。

上野「もしもの時は頼むぞ。」

羽田は敬礼した後、避難民を誘導する。

 

上野は武村を連れて、ゾンビ討伐に加勢しに古い校舎に行く。

闇が包み込む中でゾンビを倒すのは容易ではない。

 

人々は噛まれながらも勇敢に戦う。

「うう。」

「噛まれたのか?」

「ああ、だが今は目の前のことをやるんだ。」

鎌で首を刎ねたり、鍬でゾンビをこかし頭をぶっ潰したりする人々。

そこに上野や対処班が銃で応戦する。

「校長が来たぞ!」

男たちの間で士気が高まる。

 

トランシーバーで東堂に確認する。

羽田「どこが安全だ?」

東堂「駐車場はもう無理だわ、裏門から逃げるのが最良の選択だわ。」

羽田「責任者を置いてはいけない。」

トランシーバーをオフにする。

羽田は北のコンクリートの校舎に避難民を誘導する。

 

ライフルを構えて寄ってくるゾンビに技術室で作った手製の銃剣を頭に向かって突き刺す。

 

転倒する子どもに手を貸す羽田。

羽田「大丈夫か?さあ立つんだ。」

 

生田はバイオリンが入りそうな箱から鉄の部品を組み立てスナイパーライフルを完成させる。

体育館の吹き抜けの二階通路から銃口を向ける。

ゾンビに向かって銃撃する上野をたまたま暗視スコープに捉える。

狙いを済ますと後ろから島津が腰に向かって体当たりする。

 

生田は体勢を崩すも、折り畳み式ナイフを腰から出す、暗闇に銀色に光る刃。

暗闇の中で意志を持ったかのように動くナイフが島津を襲いかかる。

無数の乾いた声が二階を登ってくる。

生田は銃口が出ている窓から無理やり飛び降りる。

スナイパーライフルを廊下に向けて暗視スコープで頭を狙撃する島津。

 

島津は後ろから上野に噛みつこうとするゾンビにヘッドショットする。

体育館から上野を掩護する。

ゾンビに押されていた上野たちは次第にゾンビに対して満潮の潮が引くかのように巻き返し始める。

侵入源の正門を無事閉めて、学校敷地内の残りのゾンビを駆逐する。

 

夜が更けて朝の陽が顔を出す。

 




屋内プールのゾンビは農園襲撃に使用されたものです。


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寺院参

性と死。


 

土蔵からゾンビが流出した夜から空親は神聖な像が祀られている部屋で篭もり、写経を

している。

いつも剃っている顎には無精髭が生え、二日間ずっと筆で経典を写し続けている。

青井・生田・森下、最言の言霊すらも無視をして執り付かれたように筆を上から下に動かす。

 

そんな空親は青井の言葉に突如写経をやめる時が来たる。

神聖な部屋に入り、祀られた像に一礼してから、

青井「最言が昨日から見当たらないんです、空親僧侶は知ってますか?」

 

それを耳に入れ、空親は二日間動かし続けた筆を真っ黒な中皿に休める。

空親「それは真ですか?」

平静を保てず質問返し。

青井「は、はい。」

質問返しに頷く。

 

照りつける朝の日光、グォググ。と地面と木材が擦れる音とともに門の開く音がする。

縁側に老いた僧侶とは思えない足の速さで下駄を履いて最言に近寄る。

最言はスニーカーを履いていたが、縁側から空親が引きずり込むように神聖な像の部屋に連れて行く。

森下「あれは、角生えてるな。」

生田「まあ、文ちゃん助けたし大丈夫でしょ。」

 

青井「反撃に行ったのか・・・」

昨日昼下がりに、森下・生田・最言が同時に居なくなったのは久保を助けるためだと謎が解ける。

生田「和成・・・」

青井は疑り深い目で生田を睨む。

 

眉間にしわを寄せて目を吊り上げる。

青井とすれ違いざまに、

森下「悪かったな、ダマして・・・」

何も言わず門を開けっ放しで森の方に消えていく青井。

 

井戸についた蛇口で斉藤が水を少し出しながら服を洗っていると生田が皿を井戸の近くの洗面台に置く。

ゴシゴシとキュッキュッの擬音だけが2人の間に響く。

斉藤「殺したんですよね?」

生田「加奈ちゃんの言う通り、全員殺したよ。」

斉藤「ならよかったです・・・」

 

どこか悲しげな斉藤。

追加の皿を持ってこようと縁側から近道して母屋に上がる。

周りには誰もいない、生田と斉藤だけの空間。

生田は反吐が出そうになる気分だ。

 

本能のままにホルスターから拳銃を抜いて、井戸の軒下で選択している斉藤に標準を合わせる。

洗っている服が和成のものだったからなのか、自分のいない夜に青井と斉藤の2人で淫らな行動を想像してしまったからなのか、はたまた自分より女子力が高いからなのか・・・

 

森下「おい?」

目を真ん丸にして呼びかける。

 

拳銃をホルスターに収め、一息溜めてから、

生田「うんん、ゾンビがいるかと思って。」

咳払いをした後、言い訳する。

 

森下「皿はあと俺が洗うから。」

右手に大皿を何枚も重ねて持っていた森下。

生田「ありがとう、森下さん。」

 

生田は縁側から引き戸の土間に向かう。

森下はじっと井戸の斉藤を見つめる。

 

空親が最言に説教しているのがたまたま耳に入る、盗み聞いて障子に耳を傾ける久保。

空親「まさか、信仰に背くようなことをしたのですか?」

最言「・・・いいえ、私は人助けがしたかっただけなんです。」

空親「ならなぜこんなものが最言僧侶、あなたの懐に。」

空親はかすかに血の付いたオートマティックの拳銃を写経の横に置く。

 

最言「・・・」

空親「今は末法な世の中、最言僧侶もうつけ者になろうとお思いなのですか?」

 

脹らまし過ぎた風船が割れるかのように感情を爆発させる。

最言「確かに人を殺しかけた、いや殺しました。だがそうしないと僕が死んでいたんです!!!」

心からのサケビというか本音が吐露。

 

最言「私は信仰に守られないのですか?」

空親「例え・・・死が訪れようともそれは受け入れなければなりません。・・・それが平安教の教えです。」

最言は障子を全開にして神聖な部屋から走り出る。

 

廃車が多く残る道路で夕日を前に一心不乱にゾンビを始末する青井。

顎の下から脳天まで突き刺したり、側頭部から逆に刃先が出るほどの力でゾンビを倒す。

対照的に頭の中で考えることは森下と生田がデキていることだ。

 

性と死。

 

その光景を見物する斉藤は横転したバスの側面に足をぶら下げて座っていた。

斉藤「青井さん、まだですかー?日が落ちますよー。」

と声を大にするがそれが負のスパイラルのごとくゾンビを呼び寄せる。

ため息をついた後、青井に近づいてくるゾンビの頭に矢を射ぬきながら、

斉藤「ちょっと、青井さん・・・」

と呼びかけが終わる前に倒されて首を絞められる。

 

青井「この野郎!!!」

力いっぱい喉を閉める。

斉藤「げげげっほ・・・」

気が遠くなっていく・・・青井の顔が度数のあわないコンタクトレンズをしているかのように見える。

 

青井「も・・・」

一心不乱にすべてを抹殺するというスイッチが頭に入っている。

 

すると誰かが青井のうなじを棍棒のようなもので殴った。

誰かが声を掛けるのが聞こえる。

ひざまずいているジャージの坊主?と久保だろうか。

最言「だ・・・だい・・・大丈・・・」

斉藤は意識が帰ってくる。

 

最言「大丈夫ですか?」

視力が戻りすぐに自力で倒れている上体を起こす。

横でうつむいて青井がのびている。

 

久保「仕方なく殴ってしまいましたが・・・何があったんですか?」

事情を聴こうとする最言と青井を怖がり近づこうとしない久保。

 

斉藤「なんでもない・・・」

と今はとりあえず呑み込む。

最言「歩けますか?青井さん運ばないと。」

と心臓の鼓動を仰向けにしてチェックしてから青井を背中でおんぶする。

 

夕闇が森を包もうとするころ、

並列して歩く最言と久保。

後方から斉藤はゾンビに警戒する。

 

久保「助けにきてくれてありがとう。」

最言「大事な人の助けが僕の信仰だから。」

と言われ普通の思春期の男子なら照れるが、表情を変えずに言う。

 

門を閉じて、燈籠を灯す。

最言「部屋まで運びます。」

斉藤「ありがとう、最言くん。」

 

燈籠一つだけが和室を照らす部屋、机を挟んで向かい合い、

森下「ありがとう。」

生田「何が?」

森下「瑠璃を助けに行ってくれたことだ。」

生田「当然、当然。妹みたいなもんだし。」

森下「そういえば、ここに来る前から生田は反撃派だったな。」

 

久保はまだ学校から助けてもらったお礼を言っていなかったので言おうと森下と生田を探すと、

普段使われていない離れに、赤い障子に照らされたL字型の薄黒い陰を見つける。

赤ん坊の小指くらいの障子の穴から森下の赤い裸の背中越しに男のうなじに腕を絡め、上下に動く女体が見える。

 

一瞬目を背ける・・・見てはいけないものを見ている気分であったがそれとは逆に好奇心が湧いてくる。

気づいたら廊下から顔が障子に張り付くくらい熱心に男女の営みを見ていた。

それに気づいた生田は灯篭の灯りをさりげなく消す。

 




読んでいただきありがとうございました。
これからもゾンビのように投稿し続けます。


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バッドエンド

田舎の町工場の中で・・・
六つの車輪のついた個性のある椅子に座り、四角い作業机に手を置く。
向かいに青井は背もたれのない丸椅子で作業机に体重をかけるように座る。
上野「さあ、停戦協定だ。かつての同志。」
青井「・・・」


コンピュータ室と書かれた教室。

二人の男が八つの監視カメラを通して安全を確保している。

プリンターに画像処理された写真がウイーンと出てくる。

黒い紙は次第に暗闇に写る何かを捉えた写真に変わって行く。

上野は写真を見て腹の中で誰にも悟られないように決める。

 

東堂「襲撃者?」

上野は顔を縦にゆっくりとふる。

東堂「彼らを受け入れるでしょ?」

上野「それは彼らの態度次第だ。」

 

東堂は上野が何人もの善人や悪人を受け入れるのを見てきた。

仲間とは常に一期一会の中で島津は唯一の学校以前の上野のことを知っている人物だ。

東堂「なぜ、島津さんじゃなくて佑一なの?」

上野「島津にはリーダーシップがない、俺自身が必要なくなる時が来ることを願ってるからだ。」

 

コンピュータ室を出て、東に足を向けるとピアノの音楽が聞こえてくる。

音楽室に入ると子ども達四人が英語で合唱している。

アメージング・グレースを島津が引いている。

指先が器用な蜘蛛の足みたいだ、右足は義足・・・

 

口々に、

「校長。」

「今日もかっけー。」

と無邪気に駆け寄る少年少女。

島津「はい!今日はこれで終わり。本郷先生のいる図書室に戻りなさい。」

子ども達は元気よく返事した後、音楽室を出て行く。

 

上野「ピアノ弾けるのか?」

島津「左足で出来るように必死に練習したんだ。」

島津は三十路であるが少女のように喜ぶ。

上野「そっか、ピアニストだったのか?」

島津「ええ、全国を周ったわ・・・結局オーストリアで弾く夢は叶わなかったけど。」

笑顔が散る。

 

上野「弾けばいいじゃないか・・・」

島津「え?」

上野「オーストリアでコンサートしろよ。」

島津の肩をポンポンと叩いてから音楽室を出て行く。

 

駐車場に行こうとするとビニールハウスに入る羽田が見えた。

 

上下グレーの作業着で、

羽田「俺しかいない、変わりはいないんだ。」

そう言い聞かせてビニールハウスで一人菜園で作物を育てる。

 

上野「何一人でぶつぶつ言ってる羽田少尉。」

羽田「僕がやらないと作物が駄目になる。」

上野「ああ・・・新鮮なの頼むぞ。」

羽田「もちろんです。」

虫に食われ、荒れ果てた菜園を羽田は手直しする。

 

上野「襲撃者の写真見るか?」

羽田「いえ、それよりやることが。僕にしかこの農園は直せないんだ・・・」

上野「そうか・・・」

羽田は仲間が大勢死んで参っているようだ。

 

武村は駐車場で車のバッテリーの充電部分をなんとか直そうとしている。

手にした白い軍手は黒色に変色し、顔もところどころ黒い。

上野「武村少尉、バッテリーは使えないか?」

バッテリーをいじりながら、

武村「・・・はい校長、全部やられてます。襲撃されて正門で対処班が集まっているときにやられたんですよ。」

バッテリーの壊れた充電部分を見せる。

 

悪魔のようにささやく、

上野「もし、壊されたバッテリー分調達できればお前を右腕に考えてもいい、かつての久保哲郎のようにな。」

一瞬笑みがこぼれそうになるが、

武村「分かりました、壊された分の同じ種類のバッテリーが手に入るかどうかは保証できませんが・・・」

上野「根性と努力があればすぐ見つけられる、武村少尉、君の事は高く評価してるんだ。」

 

一か月後・・・

 

廃車置き場と化している道路、青空の下でゾンビを倒す。

それを横転したバスの上から見る斉藤。

弓を絞り、青井の後ろから近付くゾンビの頭を狙っていると千里眼を持っているかのように、

青井「全部俺が殺すんだ、お前は見ていろ。」

らしくない言葉を挟んで斉藤をけん制。

振り向きざまに手製の竹槍を目玉に突き刺す。

 

斉藤「もう一か月経ちますよ。」

青井「時間なんてもう存在しない、明るいか暗いかだけさ。」

久保奪還から一か月間寺院に住む7人全員はなんとか暮らしている。

気持ちが離れて行き、いまや青井を気にかけるのは斉藤と空親だけである。

寺院を仕切っているのは敷地主の空親やここまで導いてきた青井でもなく森下である。

 

そこに一台のシルバーのRV車が死んだ車たちを避けてジグザグ走行で青井に向かう。

青井は竹槍を捨て、ホルスターの拳銃のグリップを握る。

中から上下森林迷彩の服を着た一人の男が車から降りる。

?「はじめまして、僕は怪しい者じゃないですよ。」

両手を見せて主張する。

 

青井はグリップから手を放す。

青井「何かようですか?」

?「ええ、この写真の人たち見たことあります。」

男は胸ポケットから写真を出して見せる。

 

写真を手に取り、

青井「まだ、上野責任者とは話せるのか?」

?「ええ、大丈夫ですよ。」

胡散臭そうな笑顔で答える。

 

「青井和成だ、この争いを終わらせたい。」

「武村茂です、私も同感です。」

 

青井と武村が話しているのを遠くから藪に隠れて見る斉藤。

少し話し込んだ後、武村はシルバーのRVに乗り来た道を走り戻った。

 

立って見送る青井の元に向かう。

斉藤「なんだったんですか?」

斉藤の質問を無視して、

青井「話は帰ってからだ、協力してくれるか?」

 

後日指定された場所に赤い軽自動車で向かう。

田園風景が広がる中にぽつぽつと家がまばらに建っている。

煙突のある建物に到着し、駐車場に車を停める。

 

大きな鉄の扉が開いていて中に上野が座っている。

鉄の扉の前には武村と三人の武装した男がいる。

その中には武村もいる。

 

武村「中に責任者がいます。」

青井「さしで話せるのか?」

武村「はい。」

斉藤に外で待つように指示する。

 

上野の向かいに青井は背もたれのない丸椅子で作業机に体重をかけるように座る。

上野「さあ、停戦協定だ。かつての同志。」

青井「・・・」

上野「その前にこの写真見たよな?」

青井「ああ、武村という男から見してもらったよ。」

その写真は深夜の駐車場で最言と久保が写っているものだ。

 

上野「彼らを引き渡せばもう君たちの事は放っておく・・・ことにしよう。」

青井「他に方法はないのか?」

上野「ない。当然連れてきたよな?」

上野は青井にプレッシャーをかける口調で問う。

 

青井「・・・君の部下に言われたが連れて来ていない。和解の道はないのか?」

上野「君たちから仕掛けてきたんだろ。」

憤慨する上野。

 

青井「いや俺たちは義足の仲間を救ったぞ。むしろそっちがこっちの好意を踏みにじったんだ。」

上野「だが家族同然の仲間は15人死んだ、君の仲間のせいでな。」

青井「俺は安全地帯がなくなったから家族じゃなくなったのか?」

上野「・・・」

 

その頃外でゾンビが寄ってくる。

武村は手鎌でゾンビの脳天を上から垂直に突き刺す。

そしてゾンビの体を蹴って、鎌を抜く。

武村の背後からゾンビが来るが斉藤は矢で突き刺す。

 

武村「さすが女戦士ですね。」

武村は不気味に笑う。

斉藤「・・・」

他の上野の部下は拳銃を斉藤に向けている。

 

すると上野と青井が外に出てくる。

部下は上野の目を見て拳銃を収める。

上野は部下を引き連れてジープで無言のまま去る。

 

ジープを見送りながら、

青井「襲撃に来るぞ。」

斉藤「そうですね・・・」

競馬場での光景を走馬灯のように思い出す二人。

 

青井「帰ってみんなに報告して話し合うぞ。」

斉藤「はい。」

 

二人は赤い軽自動車に乗って寺院に帰る。

 

ある日ある晩学校で会議室で上野とその幹部は話し合う。

上野・島津・羽田・武村・東堂・本郷は机を囲んで投票で決める。

 

上野は箱から小さく折りたたんだ紙を取り出す。

「戦う・・・いくさ・・・戦わない・・・」

と箱から投票紙を取り出し発表する。

 

結果は4対2で戦うに決定した。

上野「よーし、寺院を制圧だ。」

本郷「待て・・・」

異議を申し立てる本郷。

 

本郷「なぜ殺し合いになる、放っておけばいいじゃないか。」

羽田「・・・本郷さんの言う通り、それに人員が不足してここを守るのに精いっぱいですよ。」

武村「放っておけばまた襲撃される、俺達だけでなく50人の命がかかっているんだ。」

本郷「子ども達には武装したよそ者を排除しろと背中で教えるようなものだぞ。」

上野「もちろん、納得できなければ来なくていい、ここを守ってくれ。」

 

一方寺院では大広間に全員が集まる。

森下「いきなりどうしたんだ?この一か月孤立してたのに。」

真剣な顔つきで、

青井「率直に言おう、上野がここに来る。いまからでも逃げた方がいい。」

久保「え?死んだんじゃないの?」

 

生田は顔を下に向ける。

空親「私はこの寺院に残って祈ります。」

最言「そんなこと言ってる場合じゃないですよ。」

大広間は混乱する。

 

森下「だったらこの場所で始末してやるよ。」

青井「無理だ!相手はここの5倍いる。」

生田「とりあえず、避難できる準備はしておきましょ。」

 

さらに一週間後・・・

ゴゴゴと音を鳴らしながら鉄の巨体が寺院に目指す。

木をなぎ倒す機械音が森に響く。

オフロードのコンテナ付きトラック四台が木をなぎ倒す怪物の後ろを走る。

怪物の砲塔から弾丸が飛び出し、寺院の塀を突き破る。

トラックはそこから侵入し、東西南北の限られた空間にゾンビを放出する。

 

ゾンビは寺院中を徘徊し、一気に聖域から地獄に変わる。

上野は怪物の入口から顔を出して拡声器で降伏を呼びかける。

『こっちは30の戦力と発症者がいる、降伏しろ。』

森からはさらに20の兵力が徒歩で迫ってくる。

 

戦車内から武村が、

「逃げたかもしれませんね。」

30人の私兵は戦車を囲むように陣形を整えている。

 

上野「ああ、そうかもな・・・」

すると突然銃弾が上野の横を通る。

 

「敵だ!」

と誰かが声を上げた瞬間戦車を円陣で守るようにして森や寺院に銃撃する。

 

複数の金属音に集まってくるゾンビ。

そして寺院の塀がドミノ倒しのように爆音とともに崩れ去る。

「罠だ。」

と上野は拡声器で部下たちに伝える。

崩れ去った塀からは放ったゾンビが大量に戦車に向かって前進してくる。

戦車に備え付けたハッチ上の機銃でゾンビを粉砕していくが、弾が詰まる。

上野の兵士たちは応戦するが次々とゾンビに喰われていく。

 

そして追い打ちをかけるように鉄の横雨が襲う。

木の上から銃撃する青井たちを上野はようやく見つける。

上野「あの木だ。」

砲塔は特定の木を狙って砲弾を撃ち込む。

木は倒れて久保が地面に叩きつけられる。

 

木から落ちた久保を見つけてゾンビはゆらゆらと迫ってくる。

両手で拳銃を構えてゾンビを撃つが弾はなくなる。

立とうとしても足を挫いたのか立てない。

這いつくばって道路の方に逃げているとゾンビに足を掴まれる。

ゾンビはふくらはぎを噛もうとしているが、そこに空親が助けに入る。

 

空親は久保の肩を持って歩いていると久保は腹を撃たれる。

二人は倒れ込む。

久保「行ってください・・・」

空親「置いてはいけません。」

袈裟の長袖を引きちぎり、久保の腹を抑える。

 

最言と生田が助けに来る。

最言は久保を抱えて森から逃げる。

最言「文香・・・」

全力で走る最言、一生懸命走る空親、応戦しながら逃げる生田。

 

上野は顔を歪めながら、

「あいつらを追え。」

 

戦車は逃げる生田たちに向かって走り出した。

すると戦車の横からオフロードバイクで銃撃しながら青井が走ってくる。

上野はハッチから撃ち返す。

バイクが飛びあがり、青井は手榴弾を砲塔にダンクする。

武村「手榴弾!」

 

脱出を試みる武村を踏みつけて、上野は我先に飛び出る。

青井もダンクの瞬間上野に左肩を撃たれ、バイクから転倒する。

戦車は爆音とともに内部から火がつき、ゾンビが戦車の爆音と炎に寄ってくる。

 

それにも構わず青井は上野の眉間に銃を突きつける。

青井「お互い・・・こんなバッドエンディング望んでないだろ?」

上野「命乞いなどするものか。」

引き金を引く・・・

 

だが弾は出なかった。

すると上野は青井の顔に殴りかかる。

馬乗りになり顔を何発も殴る。

ときおり右手で上野は負傷した左肩を殴る。

青井は打たれっぱなしで意識が無くなっていく。

上野に噛みつこうとしたゾンビたちを部下たちが援護するがその部下たちも次々と・・・

 

後ろのポケットに違和感を感じ触ると中田のスイス製ナイフが。

上野「気は済んだ・・・」

上野は後ろ腰に装備してるサバイバルナイフに手をやると、青井が。

 

青井「だったら徘徊してろ。」

スイス製アーミーナイフを上野の胸に突き刺す。

上野は目を真ん丸にして口から血を垂らし、ゆっくり青井の横に倒れる。

 

左肩を抑えながら青井は命かながら立ち上がり、寺院から遠ざかって行く。

最後に上野を振り返るとゾンビたちが群がって新鮮な上野の肉を食らい尽くしている光景であった。

 




シーズン5へ続く


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