智「俺がパイロットに!?」 (ぽかんむ)
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立ち上がるオレンジのロボット

都内から少し離れたところに位置する小さなアパート。そこの一室に智(10)が独りで住んでいた。

 

 

智「ここをこうして......」

 

 

散らかった部屋の床にあぐらで座り、ドライバーでネジを回している智。趣味の電子工作に勤しんでいるようだ。

 

 

瀬玲奈「また何か作ってるの?」

 

 

鍵の開いていたドアからずかずかと足を踏み入れた彼女は瀬玲奈(10)。彼の幼馴染みで隣に住んでいる。

 

 

智「まあな。今度彼女にプレゼントをあげようと思ってるんだ」

 

瀬玲奈「ふーん。それなに?」

 

智「これ? 人工知能を持つ小型のロボットだよ。名前はプリン。見てくれはゆるキャラっぽいけど頭はいいんだからね?」

 

 

智はそういいながら半径7cmほどの球体型のロボットを見せた。

 

 

瀬玲奈「相変わらずロボット好きね......何か質問していい?」

 

智「何なりと」

 

瀬玲奈「今夜の夕食何がいい?」

 

プリン『今日はスーパーで鶏肉、卵が半額だからチキン南蛮は?』

 

瀬玲奈「凄い!」

 

 

感心しながら智にプリンを返した。

 

 

智「その程度で驚かないでよ。それはただの知識でしょ? プリンは思考力も抜群......」

 

 

突如地響きのような物が聞こえた一同。揺れはどんどん大きく、近づいているようだ。

 

 

智「なんだ!?」

 

プリン『危険 危険』

 

瀬玲奈「すぐに逃げよう!」

 

 

一目散に家を出て逃げる二人。そのとき目撃したのは18mほどの異形な姿をした"なにか"であった。

 

 

──────────────────────

 

 

"なにか"のコックピット内。

 

 

謙吾「我が軍最新鋭のモビルスーツ、エルレイドの性能は凄まじい! 負ける気がしない!」

 

オペレーター『今回の目的は我々の存在を広く知らしめる為の一種のパフォーマンスですので、徹底的に破壊活動をするのではなく広範囲に攻撃してください』

 

謙吾「了解!」

 

 

──────────────────────

 

 

智「あれは......ロボット!? 凄い......」

 

瀬玲奈「いいから早く逃げるよ!」

 

智「う......うん」

 

 

街を破壊するエルレイド。そこに戦闘機が三機現れ機銃で攻撃を仕掛けるがエルレイドの装甲に歯が立たない。

 

 

智「あれはなんだ?」

 

 

二人が走っていると前方にこれまた18mほどの大きさのものを発見。

智は直感からこれもロボットではないかと察した。

 

 

智「憧れの......夢にまで見たロボットが目の前に!」

 

 

今の時代工場などではロボットは日常的に使われている。

しかし幼い頃からガンダムやエヴァンゲリオン、スーパー戦隊を見て育った彼にとってロボットはただの機械ではなかった。

 

 

智(あれに乗ればあのロボットも倒せるかもしれない......)

 

 

思うが早いか智は瀬玲奈を置き去りに全速力で向かっていった。

 

 

瀬玲奈「ちょっと!?」

 

 

──────────────────────

 

 

智「何処に乗り込めばいいんだ?」

 

 

宛もなく各部分に触れていく智。何気なく腹部を触ったときつまみのようなものを発見。

 

 

智「ここからハッチを開くのか!」

 

 

大振りに開けた先にはシンプルにして洗練された空間が広がっていた。

 

 

智「もしや現実でこんな体験が出来るなんて......」

 

 

早速椅子に座りレバーを前に倒す。しかし動かない。

智も確かに違和感は感じていた。何故ならロボットは非常に動かすのが複雑、それをたかがクレーン車程度の操作で動かせるのは少し疑問だった。

 

 

智「......となると運転には別の要素が必要なのか? 例えばアシストするなにかとか......」

 

智「もしかして......人工知能!? プリン、運転のアシスト出来るか?」

 

プリン『まったく未知の領域のためわからない』

 

智「頼む」

 

プリン『了解した』

 

 

プリンが機械に働きかけるなか智は再度レバーを前に倒す。

するとオレンジ色の翼を生やしたロボットは立ち上がった。

 

 

智「立った! 凄い!」

 

 

オレンジの機体はややぎこちないものの、一歩一歩踏みしめるように前へ前へ進んでいく。

 

 

智「それにしてもあんなに立派な翼があったのに飛べないのかな?」

 

プリン『現状はまだ無理みたい。これは未完成品のよう』

 

智「なるほどね......」

 

──────────────────────

 

エルレイド内

 

 

謙吾「なんだあのモビルスーツは?」

 

オペレーター『モビルスーツ? 得体が知れませんし破壊してください』

 

謙吾「了解!」

 

──────────────────────

 

敵軍基地

 

 

オペレーター「敵軍のモビルスーツでしょうか?」

 

朱艇(しゅうてい)「だが大した性能ではないだろう。エルレイドとエリートパイロットの謙吾ならばとるに足らん」

 

慎司「......」

 

──────────────────────

 

オレンジのモビルスーツ内

 

 

智「あのロボットがこっちに向かってきてる! 望むところだ!」

 

──────────────────────

 

戦闘機Aコックピット

 

 

猛「あれはリザードン、どうして起動しているんだ? 一体誰が操縦しているんだ!」

 

猛「総員に連絡する。リザードンは敵に奪われた可能性があるから攻撃しろ!」

 

戦闘機BCパイロット「了解」

 

 

──────────────────────

 

 

三機の戦闘機はリザードンに対しても砲撃するも効果はない。

やがて三機は諦めたのか、戦闘から離脱した。

 

 

智「何だったんだ? うおっ!?」

 

 

エルレイドは両腕を刀のように変形させ降り下ろす。

プリンのお陰で何とかかわすも初めての感覚に動揺を隠せない智。

 

 

智「これが戦い......」

 

 

リザードンはエルレイドの腹部を殴ろうとするが腕で受け止められる。

両モビルスーツではリーチに差がありすぎた。

 

 

智「プリン! なにか手は無いの?」

 

プリン『待って......構造を把握しきれない......』

 

智「うわっ!」

 

 

エルレイドの蹴りが命中し吹き飛ばされる。その度に機体は大きく揺れる。もちろんコックピット内も例外ではない。

 

ついで左腕からの斬撃。慌てて腕でガードを試みるも切断されてしまった。

 

──────────────────────

 

 

謙吾「所詮は雑魚か! さっさとくたばりな!」

 

 

モビルスーツの扱いに手慣れている彼にとっては一連の流れも作業に過ぎない。

 

 

──────────────────────

 

プリン『あれ? これ......』

 

智「なにか見つけたのか?」

 

プリン『火炎放射機が搭載されてる』

 

智「それだ! ぶっぱなしてくれ!」

 

 

立ち上がれないリザードンに一歩ずつ近づくエルレイド。

そのとき口から炎が発射された。

 

 

謙吾「なに!?」

 

 

突然の、そして予想外の攻撃方法は判断の誤った謙吾にもろにヒット。その機体を燃やしていく。

 

 

智「やった......」

 

謙吾「ああああああああ!!!! 助けてくれ!!」

 

 

──────────────────────

 

オペレーター「そんな!」

 

朱艇「馬鹿な......こんなことあり得ない!」

 

慎司「なるほど......面白い」

 

──────────────────────

 

何とか死闘を征した智。そこへ先程離脱したはずの三機の戦闘機が現れた。

 

 

猛「リザードン、確保」

 

 

その合図で網のようなものが垂れ下がり、リザードンは囲まれた。

 

 

智「何々なに!?」

 

 

好奇心から勝手にロボットを操作してしまったことを今更反省する智。

このあと彼に待ち受けることなど誰も知らない。

 

リザードンを吊らし三機の戦闘機は何処かへと去っていった。




見ていただきありがとうございました


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命の重さ

よろしければ改善点を教えていただけると幸いです。


五分ほどたったあと智を乗せたリザードンは地面に降ろされた。

付近の滑走路には先程の戦闘機と同型のものがいくつも並んでいる。

そこへ自分達を運んでいた戦闘機も離陸し、中から人が出てきた。

 

 

猛「降りろ」

 

 

如何にも怖そうな男の声が聞こえる。

智は恐怖のあまり体が震え出す。

 

 

智「俺は怒られるのか?......そりゃ俺が悪いけどさ......」

 

猛「早く降りろ、それとも降り方がわからないのか?」

 

 

しびれを切らした猛はハッチを開けた。

すると中の光景に驚愕する。

 

 

猛「ガ......ガキ?」

 

猛(どういうことだ? リザードンはパイロットの技量とAIの支援があって初めて操作が可能になる......現在そのどちらもないはずなのに......)

 

智「あのあの......ごめんなさい......その......」

 

猛「街を救ってくれてありがとう」

 

 

礼儀正しくお辞儀をする猛。

想定外の行為に智は言葉を失った。

 

 

猛「それから君の才能は素晴らしいものだ。なんたってAI無しですべて手動で動かしたのだからな!」

 

智「はぁ......」

 

猛「こっちに来るんだ。なに君は今回のMVPなのだから胸を張ってよい」

 

智「はい......」

 

 

軍の前線基地内部

 

 

華澄「君がリザードンを使って敵を倒したの? 凄いね」

 

賢次「おお!」

 

智「はは......ははは......」

 

猛「緊張もほぐれたか?」

 

智「ええ......まあ......」(余計緊張するわ!)

 

智「あの......ロボットの左腕斬られちゃったんですけど......」

 

猛「そんなこと気にしないでいい。そのぶん被害が軽くなったのだからな」

 

賢次「なによりさ、いきなりリザードンを操作できたのも凄いけど、それでパッと敵を殺せた度胸も凄いよね」

 

智「えっ? 殺す?」

 

華澄「何を驚いてるの?」

 

智(そうか......あのロボットも誰かが操作していたんだ......中に誰かがいたんだ......あのときは夢中でそんなこと何にも考えていなかった......)

 

猛「それでものは相談だが......我々に協力してくれないか?」

 

智「い......い......嫌だ! 誰かを殺すなんてしたくない! 俺は殺してなんか......!」

 

猛「そう言わないでくれよ。君には才能がある。今のままではまだ不充分だが鍛えれば最強になれるだろう」

 

智「嫌だ!!」

 

 

現実の恐ろしさに気づいた智は何をするでもなく震えながら床に座り込んでしまう。

 

 

智「来るなよ! 人殺し......!」

 

猛「......」

 

華澄「......」

 

賢次「......」

 

猛「......その通りだ。一般市民である君の手を汚させる訳にはいかない......だが......」

 

猛「だがな! 敵も味方も全員無事で、仲良くなんてことは不可能なんだよ。しかし君がもしあのとき行動を起こさなかったらもっと沢山の人が被害にあっていただろう......」

 

智「......」

 

華澄「大変! 敵のモビルスーツが!」

 

賢次「なんだって!?」

 

猛「くそ......どうすれば......」

 

プリン『プリンが手伝う』

 

猛「?」

 

智「プリン......」

 

猛「この......物体はなんだ?」

 

智「それはプリン......人工知能を搭載したロボットです......俺が操作したときもアシストしてもらいました......」

 

猛「プリンとやら、協力してくれるか?」

 

プリン「了解した」

 

華澄「だけどリザードンは今壊れて......」

 

猛「大丈夫だ。俺に任せろ」

 

 

プリンを手に持ち奥へと走って向かう猛。

そのあとすぐに基地の一部が飛び去った。

その光景はあたかも飛行空母とでも形容されるものだろう。

現場に到着すると空母は地上に降り、中からリザードンが現れた。

 

──────────────────────

 

兵士「そんな破損した機体でエルレイドを倒せるとでも思っているのか? ぶっ殺してやる!」

 

 

完全に舐め腐る敵方の兵士。だがその考えは即座に否定された。

 

 

猛「火炎放射でいいか」

 

 

猛がそれとなくフットペダルを押すとリザードンは口から炎を発射。

先程の戦闘を見ていた兵士はエルレイドをジャンプさせてかわすがその判断が命取りとなった。

 

 

兵士「あぶねぇ......?」

 

 

突如エルレイドの装甲が少しずつ切り刻まれていく。自由に動けないその機体は防ぐことが出来ない。

 

 

猛「翼から発射されるエアスラッシュの威力を思いしったか?」

 

 

ついに刃がコックピットに刺さっり、コントロールを失った機体は地面に激突した。

中の兵士が生き残っている可能性は限りなく低いだろうがそれに触れることはしない。

 

 

猛「ふー......」

 

 

役目を終えたリザードンは飛行空母に格納されると基地に戻ってきた。

 

 

猛「ただいま」

 

華澄「おかえりなさい」

 

賢次「お疲れさま」

 

猛「プリンありがとな。持ち主のもとに帰っていいぞ」

 

プリン『そうする』

 

智「プリン......おかえり......」

 

猛「じゃあな。自分のやったことが辛いのならば今日のことは忘れろ。だけど......そのお陰で助かった命があること、少なくとも俺達の命は救われたことは......覚えていてもいいと思うぞ」

 

智「......」

 

 

プリンを連れ無言でその場を立ち去る智。

その表情は相変わらず悲しげだった。




最低でも3日に1話更新のペースを考えています。


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天才科学者翔太

モビルスーツ紹介

No1,リザードン
概要
メインパイロットは智、プリンがその補助に回る。
那奈釜戸軍のモビルスーツ第2号で近距離戦を得意とする。どんな局面でも対処できるように作られているため応用力は高いが量産は難しい
武装
かえんほうしゃ、エアスラッシュ、ドラゴンクロー
備考
飛行が可能(予定)


智「はぁ......」

 

 

智は浮かない顔をしながらも何とか街に帰ってきた。

予想通りビルなどが破壊されており再びさっきのことを思い出してしまう。

 

 

瀬玲奈「智!」

 

智「瀬玲奈......」

 

 

瀬玲奈の平手打ちが智に当たりよろける。

 

 

智「いっ......」

 

瀬玲奈「どうしてあんなことしたの?」

 

智「ごめん......」

 

瀬玲奈「一歩間違えていたら死んじゃったかもしれないんだよ?」

 

智「うん......」

 

瀬玲奈「でも生きてて良かったよ!」

 

 

いきなり大声で泣き出した瀬玲奈。

これまで必死で堪えていたのだろう。

 

 

瀬玲奈「あの変なロボット倒してくれてありがとね!」

 

智「うん......」

 

瀬玲奈「なんでそんなに落ち込んでいるの? 疲れちゃった?」

 

智「だって俺......人を......人を......」

 

瀬玲奈「?」

 

智「人を......殺しちゃったんだよ......」

 

瀬玲奈「人ってあのロボットを操縦していた人ってこと?」

 

智「うん......」

 

瀬玲奈「でもさ? その人は私たちの街をめちゃくちゃにしたんだよ? そんな奴死んだって構わないじゃん!」

 

智「瀬玲奈は強いね......俺もそのくらい強くなりたい......」

 

──────────────────────

 

軍前線基地内部

 

猛「あいつら、ついに動き出したな」

 

賢次「そうだね。やはり戦闘機の機銃じゃ歯が立たなかったね......」

 

華澄「それに予想より早く秘密兵器がバレちゃったしね......」

 

猛「本来ならばリザードンは完成するまで地下に隠しておくつもりだったのにな......」

 

華澄「まさか奴等のモビルスーツによって結果的に掘り起こされる形になっちゃったし......」

 

賢次「飛行能力はまだしもAIがないのは致命的......しかも一部破損状態......」

 

那奈釜戸(ななかまど)「敵の目的や要求はわからないのかね?」

 

 

そこへ早老の男が現れた。

それを見て急にかしこまり敬礼をする一同。

 

 

華澄「無理そうですね......調べても"世界征服"なる隠語が使われていますし......流石にこのご時世本気でそれを狙っているとは思えませんしね」

 

那奈釜戸「そうか......それでフシギバナとカメックスはどうなんだ?」

 

賢次「はい......この二体は機体は完成しているのですが相変わらずAIが......」

 

猛「AIについて、一つ私に作戦があるのですが......」

 

那奈釜戸「なんだね? 言ってみなさい」

 

猛「我々は昼頃、高度なAIを所持していた少年に出会いました。彼からそれを奪い研究し、複製すればより早く完成すると思います!」

 

賢次「それはちょっと......」

 

華澄「だけど......とても長期間借りられるようには見えなかったしね」

 

那奈釜戸「仕方がなかろう......よし! その子からAIを奪うのだ!」

 

三人「了解!」

 

 

その後の作戦会議の結果、猛とその部下二人が智の家を捜索し秘密裏に奪うこととなった。

 

─────────────────────

 

 

敵軍基地

 

 

朱艇「新型モビルスーツはまだ出来上がらんのか!」

 

翔太(メカニック系統担当リーダー)「それはかなり無茶な相談ですね......」

 

朱艇「何とかしろ! 出来ないなら既存の機体に武装を追加してみろ!」

 

翔太「そんなことが?」

 

朱艇「新型モビルスーツを一週間以内に完成させるよりは遥かに簡単なはずだ」

 

翔太「それは......ソウダケド......フカノウ....」

 

慎司「やめておけ」

 

朱艇「どういうつもりだ?」

 

慎司「そんな小手先の改造で打ち破れるほどオレンジの奴は雑魚ではない。そんなこと百も承知だろう。無駄に兵力を消耗する作戦に賛同する訳にはいかない」

 

慎司「俺としては......ここはじっと耐え忍ぶべきだと思う」

 

朱艇「......」

 

朱艇「いいや。そんな臆病な作戦に賛同できるか!」

 

朱艇「いいな翔太。オレンジの奴の炎や翼からのカッターを防げるのが最低条件だ! もしそれが出来なかったり破れたりしたときはどうなるかわかってるだろうな?」

 

翔太「しかし!」

 

朱艇「黙れ、早く造れ」

 

翔太「はい......」

 

 

困惑しながら翔太はその場を立ち去った。

再び地下の作業場に戻るつもりだ。

 

 

作業場

 

15人ほどの翔太の部下が集まっていた。

 

 

愚連「お疲れ様です。如何でしたか?」

 

翔太「なんと言うか......僕は首を切られるかもしれない」

 

妃和田「首すか?」

 

翔太「既存の兵器に後付け武装を施して敵軍のモビルスーツを倒せだとさ......新型の開発が難航している今、それが出来なければ......」

 

 

場が沈黙に包まれた。

実際に造る立場から言えばそんなことが難しいのは火を見るよりも明らかなのだ。

 

 

区千葉「やりましょう! モビルスーツの完成はあなた抜きでは絶対に無理でした。ここで死なせてしまうなんて考えられない!」

 

花田「そうですよ。一丸となって必ずオレンジの奴を倒しましょう!」

 

その他部下たち「そうだ!」

 

翔太「みんな......ありがとう。必ず成功させよう!」

 

 

殺伐とした上層部とは違いここはアットホームな環境だ。

社員同士の仲も良く休日は一緒にディズニーランドに行くこともあるほど。

こうした環境作りは翔太が苦心した末に出来上がり、結果も多く残しているのだが考え方の違いから朱艇からは疎ましく思われている。

 

 

──────────────────────

 

会議室

 

 

机が円形に綺麗に並べられており全員が椅子に座っている。

総員のノートや手帳と筆記用具を机に置いてある。

 

 

翔太「それではこれより企画会議を行う。どのような改造をすれば良いか案がある者は遠慮なく手を挙げてから言って欲しい」

 

翔太「まずは先程も言ったが上に言われたことを再確認する。上層部はオレンジの奴の武器である炎を放つ攻撃と翼からのカッターを防げる方法を第一に求めていた。他に必要なことがあればそれも意見して欲しい」

 

 

参加者は全員真面目にメモを取る。

その光景は漫画やアニメやゲームで描かれる所謂悪の組織とはかけ離れていた。

 

 

延寿「はいっ」

 

翔太「延寿君」

 

 

部下の一人延寿が手を挙げ、それを翔太が指す。

普段は無駄話等が飛び交っているが今日はそのような者はいない。そうしたオンとオフの切り換えもここの強みの一つだろう。

 

 

延寿「オレンジの攻撃を防ぐ方法とは言い難いのですがエルレイドにも遠距離武器は必要だと思います」

 

翔太「なるほど確かにな」

 

石築「はいっ」

 

翔太「石築君どうぞ」

 

石築「僕はやはり攻撃を防げる頑丈なシールドが必要だと思います」

 

翔太「なるほど、しかしカッターならともかく機体すらも燃やしてしまう炎にどう対抗すれば良いだろうか」

 

石築「それは......わかりません......」

 

翔太「誰か今の案に対する意見をもつ者は?」

 

区千葉「はいっあります」

 

翔太「どうぞ」

 

区千葉「あの炎を物理的に防ぐことは現在の我々では残念ながら不可能でしょう。そこでなるべく機体を軽量化してかわすことに重点をおいては?」

 

翔太「かわす......パイロットの腕に多少頼ることにはなるがそれがいいだろう。反対意見は?」

 

石築「炎はともかく翼カッターをかわすのは少し難しいと思います。何故ならあれは広範囲に攻撃しているように見えたからです」

 

翔太「うん。敵方の戦力がはっきりしないところではあるが確かにそうだな」

 

翔太「しかしかといってシールドを搭載すれば結局重く......」

 

翔太「そうだ!」

 

花田「なにか妙案が?」

 

翔太「カッターを軟らかい使い捨てのシールドで防ぎつつ炎はかわす、しかしそのままでは結局接近戦になってしまうから飛び道具で倒す」

 

延寿「なるほど......」

 

偶錬「しかし飛び道具はどうします? エルレイドでさえ普通の弾丸は効きませんし」

 

石築「そうなると......ミサイルか?」

 

翔太「ミサイル......ならば脚部、人間でいうところの太股当たりに付ければよいかな、だけど恐らく撃てるのは一発......左右合わせて二発だろうな」

 

区千葉「二発......」

 

妃和田「俺は賛成っす。何発有っても当たらなければ意味はないし反対に当たれば二発は充分すぎると思うからっす」

 

「私も」「僕もです」「必ず倒しましょう!」

 

翔太「反対意見も無いようだしこれで決定とする。明日から頑張ろう!」

 

部下たち「はい!!」

 

翔太「それじゃあ焼き肉にでも行こうか。全部俺の奢りだから遠慮なく食べな!」

 

部下たち「はい! ありがとうございます!」

 

 

翔太は部下たちを率いて近くの焼肉屋に向かった。

彼は普段からときどき同様のことをしており、それも人望に一役買っている。

 

──────────────────────

 

それから四日後......

 

翔太「出来た!」

 

部下たち「おおお!!」

 

 

彼等はエルレイドへの即席改造を完成させた。

背中には軟らかく軽いシールド、脚部の太股部分には一発限りのミサイルを発射する小さい砲台が搭載されている。

 

 

翔太「それでは行ってくる」

 

 

翔太は階段を登った。

朱艇達に機体が完成したことを伝えるためだ。

 

 

敵軍基地

 

 

翔太「エルレイドの改造に成功しました」

 

慎司「そうか」

 

朱艇「遅すぎる」

 

翔太「申し訳ありません......」

 

朱艇「それでは明日出撃させろ。パイロットはお前だ、翔太」

 

翔太「えっ?」

 

慎司「朱艇、お前自分が何を言っているのかわかっているのか? もし翔太が戦死したら今後どうモビルスーツを開発させるつもりだ?」

 

朱艇「どっちみちその程度の物しか造れないのならいてもいなくても変わらないだろ」

 

翔太「しかし......」

 

朱艇「返事はどうした!?」

 

翔太「......」

 

「待て、朱艇」

 

 

奥から現れた若い男の一言は朱艇に鋭く突き刺さった。

彼の名は繁(しげる)。彼らを率いる軍団の首領・凰城戸の孫にあたる。

 

 

慎司「繁か......」

 

繁「朱艇、自分と合わないからと言って貴重な人材を無駄にするのか?」

 

朱艇「その......えっと......」

 

朱艇「ならば私が改造エルレイドに載ってリザードンを倒します!」(もしも勝てそうになかったら緊急避難用パラシュートで逃げればいいだけ......どっちみち翔太はお仕舞いだ)

 

慎司「そうか......」(他人を利用し、自分の手は一切汚したくないこいつのことだ。絶対なにか企てがあるはず)

 

翔太「......」(僕のことを快く思わない奴のこと、どうにかして僕に罪を着せるつもりだろう)




モビルスーツ紹介

No2,エルレイド
概要
凰城戸軍の汎用モビルスーツで低コストでの大量生産に向いている。性能はそこそこだが操縦が簡単。
武装
リーフブレード
備考
世界初の実用軍事モビルスーツ


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復活の智 朱艇の思惑

一方そのとき猛達......

 

 

サイゼリア 夜

 

 

猛「いったいAIはどこなんだ?」

 

渚「一向に見つかりませんからね......」

 

泊待「あれから三日ですか......」

 

 

回想

 

渚「あの少年の詳細がわかりました。名前は雅拉(まさら) 智、年齢は十歳、エーデルアパートの四号室に住んでいます」

 

猛「わかった。早速今夜決行しよう」

 

 

 

 

智「zzz......」

 

猛(大家に無理を言って開けてもらったが......AIはどこだ?)

 

渚「こちら、ありません」

 

泊待「こっちもです」

 

 

部下が小声で報告し、猛も首を振りそれに応える。

 

 

智「ふにゃ......」

 

猛「まずい、一度撤退だ」

 

二人「了解」

 

 

回想終わり

 

 

 

渚「こんなことが続いていますからね」

 

猛「これではいかんな。作戦を変えねば」 

 

泊待「やはり実力行使しかないのでは?」

 

猛「そうだな。しかしまずは無駄を覚悟で交渉に行くか」

 

 

三人はその足で、事前に調べていた智の家に向かった。

家に着き渚が呼び鈴を押すと智が出てきた。その表情は未だ晴れてはいない。

 

 

猛「こんばんは」

 

智「こんばんは......俺に何の用ですか?」

 

猛「率直に言う、プリンを預けてくれないか? 勿論タダとは言わないが」

 

智「嫌です」

 

猛「そこを何とか......君の力があれば奴等にだって必ず勝てるはずだ」

 

智「しつこい、もう帰ってください。何を餌にしようと俺は釣られませんよ」

 

猛「......悪いが俺達だってそう簡単に引き下がれることではない。かくなる上は......」

 

智「えっ?」

 

猛「渚は智を押さえつけろ、泊待は俺と共にAIを探すぞ」

 

二人「了解!」

 

智「あっちょ! 離してよ!」

 

渚「君には申し訳ないが暫くおとなしくしてくれ」

 

智(どうする? どうすればこの場を何とか出来るんだ?)

 

 

猛、泊待は金属探知機を片手に家の中をくまなく捜索している。

このままでは見つかるのは時間の問題だ。

 

 

猛(どこだ......ん?)

 

 

猛が金属探知機を机の引き出しにかざしているとピーっと音がなった。

しかし二人が片っ端から開け、その中を探すが見つからない。

猛が別の場所を探そうとしたとき突然引き出しの底を次々と叩き出す泊待。

 

泊待「ここだけ音が違う......」

 

猛「そうか、二重引き出し! 子どもにしてはよく考えたものだ」

 

泊待「しかし......これをそのまま開けて大丈夫でしょうか?」

 

猛「そんな天才高校生がある日拾った一冊のノートを使って新世界の神を目指す漫画じゃないんだから......」

 

泊待「それもそうですね」

 

 

泊待が力を込めるとダミーの底は簡単にはずれ、中からプリンが姿を現した。

 

プリン『危険』

 

 

プリンは腕から釘を発射しそれが泊待の腹に直撃した。

智は万が一に備えてプリンを改造していたのだ。

たとえ釘とは言え高速で打ち出されるそれは逃げるチャンスを作るのには充分な威力である。

 

 

智「プリン、こいつにもやれ!」

 

プリン『わかった』

 

 

釘は渚の手の甲に当たり、その隙に智達は逃げ出した。

猛、泊待は智の後を追おうとするがプリンを探すために散らかした部屋がバリケードの役目を果たし数秒の猶予を与える。

 

智「どこに逃げようか」

 

プリン『適当に巻いたら瀬玲奈の家に逃げ込むことを進める。敵の意表をつこう』

 

智「うん!」

 

 

遠くから猛達の声が聞こえる。

しかしここは複雑に入り組む住宅街なので土地勘のある智がこの場を知らない猛達から逃れるのは比較的簡単だ。

 

 

智「はあ......はあ......巻けたかな?」

 

プリン『大丈夫なようだ』

 

智「それじゃ戻ろっか」

 

数分後、智とプリンは自宅の隣の瀬玲奈の家に到着した。

猛達に瀬玲奈のことは知られていないのでこれで安全なはずだ。

呼び鈴を押す智。すると瀬玲奈が出てきた。

 

 

瀬玲奈「あっ智!」

 

瀬玲奈の平手打ちが智の頬に命中。衝撃からよろける。

 

 

瀬玲奈「何なの? あれから毎日毎日うじうじして家に引き込もって! 学校にも来てないし」

 

智「ごめん......」

 

瀬玲奈「それで要件は?」

 

智「匿って!」

 

瀬玲奈「はあぁ?」

 

 

部屋に入る二人。そこで智は自分の身に起きたことを伝えた。

 

 

瀬玲奈「なるほどね、でも今ママ居ないし」

 

智「仕事?」

 

瀬玲奈「うん、そうだよ」

 

瀬玲奈「ところで智、あんたいつそれを彼女に渡すの?」

 

智「えっ? 今までの話聞いてなかったの?」

 

瀬玲奈「聞いてたけどさ、それとこれは関係なくない?」

 

智「大有りです!」

 

瀬玲奈「まあそれもそうか。そんなんで会いに行ったら愛想尽かされちゃうか」

 

智「そんなことない!」

 

 

二人が話し込んでいると足音が近づいて来た。それは段々大きくなり智は次第に怯え始める。

 

 

瀬玲奈「どうしたの?」

 

智「だって......」(見つからないんじゃなかったの?)

 

プリン『この音は』

 

 

玄関前でその音は止み扉が開けられる。

 

 

「ただいま......」

 

智「ギャァァァァァァァァァ!!」

 

「キャァァァァァァァァァ!!」

 

瀬玲奈「おかえりー。そんなに騒がないでよママ」

 

─────────────────────

 

 

智「いやー、すみません。久し振りですねおばさん!」

 

瀬玲奈ママ「あらあらすっかり大きくなって!」

 

 

彼女は瀬玲奈の母親で名前はサキ。

かつてはサイレーサーだったらしいがマイナーな競技であるため智は詳細を知らない。

現在は若干疎遠になっていたとは言え智が幼いときにはよく一緒に遊んでいたため自然に会話は弾む。

 

────────────────────────

 

瀬玲奈ママ「あらっもうこんな時間。お風呂入ってきなさいお湯覚めちゃうから二人一緒にね」

 

智・瀬玲奈「一緒に!?」

 

瀬玲奈「ヤダヤダ絶対やだ!」

 

智「ムリムリ絶対ムリ!」

 

瀬玲奈ママ「あらそう、昔はよく一緒に入ったのにね......」

 

瀬玲奈「それじゃ先に私が入ってくるね」

 

智「いってら」

 

瀬玲奈「覗かないでよね!?」

 

智「興味ない」

 

瀬玲奈「今日見ない? ってことは明日は見るの? 最低!」

 

智「は? なにいってんだこいつ」

 

瀬玲奈ママ「ところで智君......さっきの話だけど......誰かに狙われているの?」

 

智「......」

 

瀬玲奈ママ「私智君のこと本当の息子のように大切に思っているからね。何かあったら遠慮なく言ってちょうだいね」

 

智「......はい、ありがとうございます。もしなにか悩みがあったら相談しますね」(言えるわけ無いよな......)

 

 

─────────────────────────

 

 

その頃(午後10時頃) 敵軍基地

 

 

朱艇「慎司、今から行ってきていいか?」

 

慎司「どうしてだ?」

 

朱艇「よくよく考えたら夜の闇に隠れて奇襲仕掛ければ良いと思ったからだ」

 

慎司「辞めておけ、夜の方が警戒は強いはずだ。だからこそ今まで昼間に出撃してきたわけだしな」

 

朱艇「俺には作戦があるんだよ、任せておきな」(昼間にパラシュートで脱出したらバレる可能性あるからな......)

 

朱艇「それではな、文句はないだろ? それから翔太も呼んでおけ。多分あいつが一番気になっているからな」

 

慎司「ああ。気を付けろよ」

 

朱艇(翔太......これで貴様もおしまいだ)

 

 

朱艇は改造エルレイドに乗り込むと少し歩かせ母艦・ペリッパーに口から入り搭乗。

そして部下がペリッパーを発進させた。

 

 

数分後、ペリッパーが空中で静止し口を開きエルレイドが姿を見せる。

更にそこから飛び降り地上に着陸。

付近の家屋は崩れ、地震のような揺れが発生した。

 

 

智「なに? 地震......違うこの揺れは前に感じたことが......!」

 

瀬玲奈「どうしたの智? 地震が怖いの?」

 

智「モビルスーツ......あのロボットが攻めてきてる!」

 

瀬玲奈ママ「何ですって? 早く逃げなきゃ!」

 

 

三人は一目散に家から飛び出した。

振り向くと改造エルレイドは目の前まで迫ってきている。

 

 

住民「逃げろ!」  

 

智「そんな......また来るなんて......」

 

プリン『危険危険』

 

瀬玲奈「早く逃げるよ!」

 

瀬玲奈ママ「うわぁぁ!」

 

 

三人の上から瓦礫が降りてきた。全速力でこれを避けようとするが......

 

 

智「はあ......はあ......」

 

瀬玲奈「何とか逃げれた......ママ大丈......」

 

 

ふと振り向くとそこに瀬玲奈の母親の姿はなく、あるのは瓦礫の山だけだった。

 

 

瀬玲奈「嘘でしょ......ママ! ママ!」

 

智「そんな......! 何でだよ!!」

 

猛「見つけたぞ! AIを渡してくれ!」

 

智「こんなときになんなんですか!......プリンは持っていかないで下さい......」

 

猛「気持ちはわかるが......!」

 

智「僕が行きます!」

 

猛「えっ?」

 

智「何か問題ありますか? この前はあんなにスカウトしてきたのに」

 

猛「な......ないが......」

 

智「早く!」

 

猛「わかった......」

 

瀬玲奈「智......」

 

智「バイバイ瀬玲奈。敵を倒したら帰ってくるから」

 

瀬玲奈「うん! 約束だからね!」

 

──────────────────────

 

朱艇「リザードンがいないじゃないか!」

 

 

そこへ飛行空母が現れ、中からリザードンが登場した。

 

 

智「戦うことが罪なら......俺が背負ってやる!」

 

 

リザードンは火炎放射を繰り出した。しかしエルレイドは素早く右にかわす。

 

 

プリン『エアスラッシュを撃って』

 

智「了解!」

 

 

エルレイドにエアスラッシュが襲いかかる。

これを背中からシールドを取りだし受け止め、更に脚部ミサイルを発射しリザードンの右翼に命中し破壊した。

 

 

朱艇「勝てる! これなら!」(即席改造でここまで出来るとは翔太恐るべし。やはり危険な芽は先に摘まねば!)

 

智「強い......だけど俺は負けるわけにはいかないんだ!」

 

 

リザードンは両腕を近接戦武装 ドラゴンクローに変える。

エルレイドも腕を刀の如く変化。

 

 

朱艇「近接戦でエルレイドに戦いを挑むなんて頭がソノオの花畑か!?」

 

 

両機体の近接兵器が何度も激突し、激しい火花を散らした。

 

 

朱艇(こんなところで充分か。脱出だな)

 

 

朱艇がボタンを押すと機体の後方と背中のパラシュートが開いた。

彼はそこから落下して逃げ出し、コントロールを失ったエルレイドはドラゴンクローの猛攻に曝される。

 

 

智「こんな奴等の為に、これ以上誰かの涙は見たくない!」

 

 

機体の軽量化とは装甲を軽くする、すなわち防御力を下げることになる。

その事も影響しエルレイドは粉々に粉砕された。

 

 

智「やった......」

 

プリン『おつかれ』

 

──────────────────────

 

敵軍基地

 

 

慎司、呼び出しを受けた翔太、その知らせをどこかからか聞きつけ終結した翔太の部下たちがこの戦いをエルレイドのカメラ越しに見ていた。

 

 

翔太「そんな......!」

 

慎司「やはり小手先の改造で敵うほど敵のモビルスーツはやわじゃないか。だがパイロットはまだ未熟なようだな」

 

 

強者のオーラを漂わせる彼は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

朱艇「はぁ......なんとか生き残ったぞ......」

 

 

朱艇はペリッパーに乗って帰還し、今彼らの元に着いた。

 

 

慎司「あの中でよく生きていたな。派手にやられていたようだが」

 

朱艇「まあな。それで朱艇、約束は覚えているよな?」 

 

翔太「......」

 

朱艇「覚えていないのか? だったら思い出させてやるよ」

 

朱艇「改造エルレイドはリザードンの前に敗れた。つまりお前は......処刑だ」

 

部下たち「そんな!」「待ってください!」「止めてください!」

 

朱艇「五月蝿い奴等だ。お前らも一緒に処刑しても構わないんだぞ?」

 

部下たち「それは......」

 

翔太「だ......だけど! 炎や翼カッターは完全に封じられました! 脚部ミサイルは翼を破壊できていました!」

 

慎司「そうだな。確かに翔太はお前の言い出した無理難題を見事に形に出来た。それを無視して結果のみを問えると思うか?」

 

朱艇「ぐぬぬ......」(仕方ない。ならば繁さんに取り合って......いや、利用して......)

 

──────────────────────

 

軍前線基地

 

飛行空母と共にリザードンに乗った智が帰還してきた。

 

 

智「その......協力してもいいですよ?」

 

猛「......っだそうだ」

 

泊待「それにしてもいきなりの心変わりだったよね? どうしたの?」

 

智「......以前、瀬玲奈に言われたんですよ。"その人は私達の街を滅茶苦茶にしたんでしょ? そんな奴死んだって構わないじゃん!"って」

 

智「そして今日......目の前でおばさんが......─俺小さい頃から親がいなかったのでおばさんは本当の母親のように思えてて─」

 

智「そのとき振りきれたんです。奴等は絶対に許さない、一人残らず駆逐するって」

 

華澄「そ......そう......」

 

 

智を除いた場の全員がこの思想に戸惑った。

しかし今の彼らにとって智は無くてはならない貴重な戦力であるため何も言うことが出来ない。

 

 

猛(ガキが背負うにはいささか重すぎる責任だったか......こうでもしないと自分を保てないのだろう)

 

智「あの......眠いんですけど......」

 

 

現在時計は12時を指そうとしている。

10歳の子どもにとっては大変な夜更かしであろう。

 

 

賢次「うん、そうだよね。むこうに仮眠室があるから思う存分眠るといいよ」

 

智「ありがとうございます......」

 

 

欠伸をしながらゆっくりとその場を去っていく智。

 

──────────────────────

 

同時刻 作業場

 

 

翔太が熱心にパソコンを操作している。

 

 

翔太(僕は間違いなく近いうちに消される......その前に出来ることといったらこれくらいしかない......)

 

翔太(朱艇め......お前はいったいどのような手を使って僕を消すつもりなんだ?)

 

翔太(凰城戸様に栄光あれ......!)




モビルスーツ紹介

No3,エルレイド(改)
概要
エルレイドを後付け武装によって強化した姿で、後にエルレイドの基本型になる。
武装
脚部ミサイル二門、強化リーフブレード、リフレクター
備考
機動力を上げるために装甲を薄くしているため耐久に難がある


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揺れ動く作業員と新たなるモビルスーツの足音

モビルスーツ紹介はお休みです


翌日 午前5時頃

 

敵軍基地

 

翔太は再び呼び出され、寝不足に耐えながらやって来た。

そこにはいつもは居るはずの慎司の姿がなく朱艇の姿のみがある。

 

 

翔太「なんでしょう......」

 

朱艇「喜べ、お前の処刑が正式に決まったぞ!」

 

翔太「えっ......?」

 

朱艇「本来我が軍の処刑方法は投薬による安楽死だがお前にそのような死に方は似合わん」

 

 

咄嗟に翔太はその場から逃げ出すために朱艇に背を向けて走り出した。

そのとき銃弾が翔太の身体を貫通。

 

 

翔太「な......に......を......」

 

朱艇「ハハハ!! くたばれ! 死ね!」

 

 

絶えずピストルを乱射する朱艇。

その凶弾の前に翔太はなすすべなく倒れてしまった。

 

 

翔太(薄々予感はあった......だからといって来るのを拒めば命令違反でどっちみち殺されていただろう......僕の技術の集大成 メガシンカをこの目で見られないのが残念だ......)

 

 

翔太が動かなくなったことを確認すると朱艇は近づき、銃創目掛けて足を降り下ろす。

最早翔太に意識はないがそこからは血が噴水のように激しく吹き出した。

 

 

朱艇「ざまー見やがれ! はっはっは!」

 

朱艇「おっと......余韻に浸るのはこのくらいにして......隠蔽工作に移るか」

 

 

朱艇は事前に監視カメラに細工をして"刃物を振り回してきた翔太に襲われた朱艇がやむなく発砲"するCG で作られた映像が記録されるようにしていた。

あとはその映像の通りのことを再現すればいいだけだ。

 

──────────────────────

 

軍前線基地 6時頃

 

 

眠そうな目を擦りながらやってくる智。

その場にはすでに猛、華澄、賢次の姿があった。

 

 

華澄「起きたね、朝食はそこに置いてあるから食べてね」

 

賢次「それで食べながら聞いて欲しいのだけど、プリンを貸してくれないかい?」

 

智「それはちょっと......」

 

賢次「なんなら君も一緒でいいから」

 

智「それならいいですよ」

 

智「ごちそうさまでした」

 

華澄「食べるの早っ!」

 

──────────────────────

 

研究室

 

 

賢次は着くなりプリンを小さなガラス張りのケースに入れると、それをコンピューターにセットした。

 

 

智「プリンを使ってどうするつもりですか?」

 

賢次「いやあね。君のAIは大したものだから研究したいと思っていてね。成功したら新たなモビルスーツの開発も進むだろうし」

 

智「新たなモビルスーツ?」

 

賢次「うん、フシギバナとカメックス。機体はもう出来上がっているんだけどね......」

 

智「ところで敵の目的はなんなんですか?」

 

賢次「それは......残念ながらわからない。世界征服なる隠語が使われているんだ」

 

智「それ、言葉通りの意味では?」

 

賢次「ふふふ......今のご時世本気でそんな馬鹿げたことを考える人なんていないでしょ」

 

智「わかりませんよ。もしかしたら宗教絡みとか」

 

賢次「それなら征服なんて言葉、使わないと思うけどね」

 

 

コンピューターから電子音が流れた。

プリンの解析が終わったようで賢次は興味津々で結果に目を通す。

 

 

賢次「凄い! 君はこれを一人で作ったのかい?」

 

智「はい、そうですね」

 

賢次「早速これの複製作業に移るね、プリンは返すよ」

 

智「どのくらいで出来るんですか?」

 

賢次「そうだね......だいたい三日ってところかな?」

 

智「三日......」

 

──────────────────────

 

作業場

 

 

翔太の死の真相は結局朱艇の目論み通りに隠蔽されてしまった。

もちろん翔太配下の部下はこの判断に意義を申し上げたが、作り出された証拠の前になす術はなく意気消沈している。

 

 

延寿「やっぱりおかしいよな」

 

妃和田「そうっすよね。絶対朱艇が怪しいっすよ」

 

区千葉「証拠として挙げられた監視カメラの映像......やはりなにか引っ掛かるね」

 

 

コンコンと扉をノックする音が聴こえる。

 

 

花田「はい? どちら様ですか?」

 

 

開かれた扉。そこには三十代と思われる男が一人。

 

 

雅拉「ここか? 技術班諸君の根城は」

 

石築「まあそうなりますね。用件はなんでしょう?」

 

雅拉「私の名は雅拉。今日からここの班長に任じられた者だ」

 

区千葉「班長ですか!?」

 

延寿「これはまた突然ですね」

 

雅拉「言っておくが俺は前任とは全く違うからな。俺の命令に意見したり逆らったりした者には容赦ない制裁が待ち受けているぞ」

 

妃和田「それちょっと......いや、かなりおかしくないすか? 現に前々任から翔太さんに班長の座が移り、方針が変わってから仕事の能率は大幅に上がったわけっすから」

 

雅拉「ほう......早速口答えか」

 

 

懐から拳銃を取り出すと雅拉は何の躊躇いもなく妃和田の左足に弾丸を撃ち込んだ。

痛みと恐怖から震え上がる妃和田。

 

 

雅拉「こうなりたくなかったら貴様等のやるべきことは一つ、身を粉にして凰城戸様に尽くせ!」

 

──────────────────────

 

夜 

 

 

帰宅途中3人の作業員たちが歩いている。

 

 

区千葉「妃和田大丈夫かな?」

 

延寿「あいつ明日になったら、辞めるとか言い出しそうだよな」

 

石築「それにしても僕達何のためにモビルスーツを作っているんですかね......最近わからなくなってきました」

 

延寿「それは勿論凰城戸様の世界征服のためだろ?」

 

区千葉「だけど俺等は凰城戸様の姿を実際に目にしたことはないから実感がわかないのも解る。繁は無能だし......」

 

石築「普通に就職したら実は裏では人を殺す兵器も作っている企業だった、なんてねぇ......」




ここまでありがとうございました。


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そびえ立つ御三家

モビルスーツ紹介

No4,カメックス
概要
メインパイロットは華澄。リザードン、フシギバナと同時期に設計された。中距離戦が得意。
武装
ハイドロポンプ、れいとうビーム、ロケットずつき
備考
水中戦、海戦で真価を発揮する。


翌日

 

 

作業場

 

 

雅拉「いいか? 一週間以内に新型モビルスーツを完成させろ!」

 

延寿「そんな......!」

 

雅拉「返事はどうした?」

 

作業員「「「はい......」」」

 

 

その場から立ち去った雅拉。

 

 

妃和田「出来るんすか?」

 

石築「あんな無茶が出来るわけ......って妃和田!?」

 

妃和田「昨日は結局ここの医務室に泊まったんすけど、朝あいつが来て"行かないと処刑する"って言われたんすよ」

 

石築「そんな......」

 

愚連「新型は翔太さんがいても開発に難航した代物......それを俺たちでやるなんて......」

 

区千葉「色々と問題は山積みだがまずは動こう!」

 

「「「はい!」」」

 

 

以前から翔太のサポートをし、他の部下を纏めていた区千葉は現在事実上のリーダーとして活動している。

もちろん皆から押し付けられたに過ぎないのだが......

 

 

──────────────────────

 

二日後

 

 

敵軍基地

 

 

慎司「現在のモビルスーツの数は?」

 

雅拉「七台だ」

 

朱艇「流石だな」

 

慎司「それだけの兵がいれば奴等を一思いに潰すことも出来るだろうな」

 

朱艇「一斉攻撃と言うことか」

 

慎司「そうだ。あまり時間をかけては先にこちらの基地の場所が相手に知られ、攻撃される可能性があるからな。前線の奴等だけならともかく、増援部隊でも繰り出されたら勝ち目は無い」

 

雅拉「それもそうか......じゃあ決戦の日時は?」

 

慎司「明日だ。事前に繁や凰城戸様に連絡は済ませてある。俺も出撃するつもりだ、エレキブルに乗ってな」

 

朱艇「あれは操縦性やコストの関係で没になった試作品。パワー、スピードはエルレイドを凌ぐが常人では性能の20%も引き出せない......」

 

慎司「俺を誰だと思っている......使いこなして見せるさ」

 

雅拉「なら俺も行かせてもらうぜ」

 

慎司「取り合えず優秀なパイロットを集めろ」

 

朱艇「了解した」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その場には精鋭パイロット20人ほどが集まっていた。

 

 

慎司「君達に集まってもらったのは他でもない。それでは早速今回の作戦を発表する」

 

慎司「繰り出すモビルスーツは合計9体、内訳はエルレイド7台にエレキブルに......だ。さらにそれを二隊に分ける」

 

慎司「先鋒がオレンジのモビルスーツを倒したら、次鋒は基地を乗っとれ」

 

 

──────────────────────

 

 

そのころ前線基地では賢次がはしゃいでいた。

新型モビルスーツの開発に成功したようだ。

 

 

猛「これで漸く俺たちも戦えるのか」

 

華澄「やったね!」

 

猛「智には学校があるからな......それに極力戦わせたくはない」

 

賢次「だよね...... 」

 

 

智はリザードンのパイロットである以前に普通の小学生のため、平日は当然いない。

 

 

智「ただいま......」

 

華澄「あら、智帰ってきたみたいね」

 

智「嬉しそうですけど、何かあったんですか?」

 

賢次「ほら! この間言った新型モビルスーツが完成したのさ!」

 

智「おめでとうございます!」

 

華澄「それにしても最近全然あいつら襲ってこないね。猛! 敵についてなにかわかった?」

 

猛「駄目だ。兵力も、資金源も、基地がどこにあるかも、とにかく何一つとしてわからん。まあそれほど大規模な集団ではないことは確かだろうが」

 

──────────────────────

 

翌日 朝五時頃

 

 

敵軍基地

 

 

慎司「ついに来たか......今日が」

 

朱艇「健闘を祈る」

 

 

エルレイド3台とエレキブルを載せたペリッパーが先陣を切って敵軍基地から飛び立った。

その後ろにはエルレイド4台と謎の機体が格納された二陣用ペリッパーも控えている。

 

──────────────────────

 

前線基地

 

 

部下「敵の飛行空母が接近してきています」

 

 

部下がサイレンを鳴らすと、続々と関係者達が集まってくる。

 

 

華澄「なーにー?」

 

猛「やつらついに来やがったな!」

 

智「眠い......」

 

那奈釜戸「恐らくあの中に入っているモビルスーツは1台ではない」

 

猛「なんですって!?」

 

賢次「と、いうことは!」

 

那奈釜戸「モビルスーツ、全機出撃!」

 

智 華澄 猛「「「了解!」」」

 

 

三人は飛行空母に乗り込むと各々のモビルスーツに搭乗し、出撃した。




モビルスーツ紹介

No5,フシギバナ
概要
メインパイロットは猛。リザードン、カメックスと同時期に設計されたものだが完成に時間がかかった。遠距離戦を得意とする
武装
エナジーボール、ソーラービーム、じしん、ヘドロばくだん
備考
地上戦に特化


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激戦! 慎司のエレキブル!

 

華澄『私実際に戦うのこれが初めて何だよね......』

 

智『大丈夫ですよ!』

 

猛『敵は複数......気を付けろよ!』

 

 

しばらく飛行していると両空母はまみえた。

お互いの空母の中からモビルスーツが出撃。

 

 

猛『数はあちらの方が上か』

 

智『全部焼きつくす!』

 

 

慎司は敵軍基地にいるオペレーター、朱艇と通信している。

 

 

慎司『新手のモビルスーツが2体?』

 

オペレーター『どうしました?』

 

慎司『新たに緑、青のモビルスーツを確認した』

 

朱艇『何だと!?』

 

 

エルレイドAは脚部ミサイルを撃ち放つがカメックスの甲羅にすべて弾かれてしまう。

 

 

華澄『凄い、流石ね』

 

智『リザードンの翼を難なく吹き飛ばしたあのミサイルを受けて無傷だと!?』

 

 

カメックスの肩部砲台から発射された高圧力の水流波、ハイドロポンプはエルレイドAの腹部をパイロットごと貫通した。

 

 

猛『喰らえ!』

 

 

猛の操縦するフシギバナの花弁から放たれたのは高出力エネルギー波、ソーラービーム。

溜めを必要とするがその威力は絶大でエルレイドB,Cの一掃に成功。

 

 

智『残るは一機。いつもと感じが違うけどまあいけますよ!』

 

慎司「折角のエルレイド軍団を簡単に破壊するとは......許さん!」

 

 

エレキブルの右拳に稲妻がほとばしる。

 

これに対しリザードンはドラゴンクローを展開し待ち受けた。

しかしその攻撃方法は智の思考の一歩先を行っていたのだ。

 

 

高速で射出されたその拳 かみなりパンチはリザードンの頭部を破壊した。

コックピットは腹部なので智は無事だが、視界の一部が閉ざされてしまう。

 

 

華澄『智、大丈夫!?』

 

智『なんとか......』

 

 

エレキブルは、いつの間にか戻ってきていた拳をはめていた。

 

 

ドラゴンクローを高く掲げてエレキブル目掛けて走るリザードン。

慎司がそれに気を取られているうちにカメックスはエレキブルの後方に移動。

 

 

慎司「あのオレンジ......何を企んでいる? ただの馬鹿なのかそれとも......」

 

華澄『決めるわ!』

 

 

トリガーを引きハイドロポンプを発射させた華澄。

 

 

慎司「そうかオレンジは囮! つまりは!」

 

 

慎司の発生させた光の壁はエレキブルをハイドロポンプから守りきった。

光の壁とは実弾、火を除いた遠距離攻撃をすべて無効化できる盾であるが、燃費が悪いのであまり多用できるものではない。

 

 

華澄『そんな!』

 

慎司「後ろだな」

 

 

エレキブルは背中の二本のコードでカメックスを捕らえた。

 

 

猛『華澄!』

 

 

エレキブルから見て斜め左方向にいたフシギバナは球状強化炸裂弾 エナジーボールを足元目掛けて放つも、かみなりパンチで相殺される。

 

 

華澄『離しなさい......!』

 

 

抵抗空しく、エレキブルから逃げることの出来ないカメックスは、そのままエレキブルの高電圧攻撃 10まんボルトをまともに喰らってしまった。

 

 

華澄『あれ? 動かない......』

 

慎司「10まんボルトは機体をショートさせることができる。これで残りは緑のみ!」

 

 

勝ちを確信した慎司だったがそこにエアスラッシュが飛んできた。

軌道が読めないその攻撃はエレキブルの左腕を切り刻む。

 

 

智『たかがメインカメラをやられただけだ!』

 

猛『智!』

 

慎司(左腕......秘密兵器を破壊されたのは痛いな......だがこれだけ消耗させられればあとは第二隊での制圧は可能か......)

 

 

降りてくるペリッパーに乗り込んだエレキブル。

猛はそれを追いかけるも間に合わず、ペリッパーは飛び立ってしまった。

発射されたエナジーボールもペリッパーの装甲の前には無力。

 

 

猛『くそっ! 逃がすか!』

 

賢次『飛べ! 智!』

 

智『へっ?』

 

賢次『リザードンはもう飛べる! ペリッパーには恐らく火力はほぼないだろうから、手負いのリザードンでも勝てるはず!』

 

智『了解! プリン、できる?』

 

プリン「任せて」

 

 

プリンが何やら操作をすると、翼がバタバタと動き始める。

やがてその機体は地を離れた。

 

 

智「飛んでる!」

 

華澄『凄い......』

 

 

リザードンはペリッパーに接近しつつドラゴンクローを展開。

 

 

敵部下「後ろからオレンジが近づいてきています!」

 

慎司「なんだと!? 飛んでいるのか?」

 

敵部下「はい......」

 

 

リザードンはドラゴンクローをペリッパーの左翼に突き刺すとそのまま破壊、制御の効かなくなった機体は市街地に勢いよく墜落した。

 

 

猛『やったか?』

 

華澄『あとでたんまり怒られそうね......』

 

慎司「貴様!!」

 

 

しかし墜落の寸前に慎司は間一髪エレキブルに搭乗し脱出していた。

 

 

慎司「くたばれ!」

 

賢次『智! 新技を使うんだ!』

 

智『新技?』

 

プリン「任せて」

 

 

すると突然リザードンの全身が赤く発光。

 

 

智『なに?』

 

慎司「燃えているのか?」

 

 

エレキブルは全電力を身体に纏わせ、渾身のワイルドボルトを放つ。

対してリザードンはフレアドライブを発動させ、対象目掛けて特攻を仕掛けた。

 

 

慎司「貫け!」

 

智『吹っ飛べ!』

 

 

両者の攻撃は拮抗、その光景はどこかシンオウリーグスズラン大会の準々決勝を彷彿とさせた。

 

 

智『死ねぇぇ!!!』

 

慎司「お......押されている......負けるわけには......」

 

慎司「負けるわけには......いかないんだ!!」

 

 

均衡が破られ、エレキブルはフレアドライブに打ち勝った。

その衝撃から投げ飛ばされるリザードン。

一方でエレキブルも全エネルギーを消費したため動きが止まった。

 

 

慎司「引き分けか......」

 

智『俺が......負けた......』

 

慎司(だが第2陣が到着すれば我が軍の勝利は揺るぎない!)

 

猛『智!?』

 

華澄『大丈夫なの...... ?』

 

 

そこへもう一機のペリッパーが襲来した。

前線基地の賢次、那奈釜戸はその事実に絶望を隠しきれない。

 

 

賢次「そんな馬鹿な!」

 

那奈釜戸「現在辛うじて戦闘可能なのも精々猛くらいだろう......万事休すか......」

 

賢次「どうしましょうか?」

 

那奈釜戸『猛、華澄、智聞こえるか』

 

 

通信機を口に近づけた那奈釜戸。3人に命令をするためだ。

 

 

那奈釜戸『今すぐ逃げ出せ! 新手の兵がすぐそばまで近づいてきている!』

 

華澄『なんですって!?』

 

猛『しかしそれでは基地が......』

 

那奈釜戸『やむ終えん......我が軍の完敗だ......』

 

 

ペリッパーから出てきたのはエルレイド4機と全身が青く覆われた鮫のような機体はだった。

 

 

那奈釜戸『ん? あれは!』

 

賢次『あれはガブリアス...... 間違いありません!』

 

 

廃墟と化した街

 

 

智「このままじゃ......」

 

華澄「智! 大丈夫!?」

 

智「華澄さん、猛さん! 俺は平気です。だけど......」

 

猛「問題はない! ガブリアスは雅拉さんの愛機、俺達の仲間だ」

 

智「えっ? 雅拉?」

 

華澄「どうかした?」

 

智「いえ、なんでもないです......」

 

智(雅拉って俺の苗字......偶然とはとても思えないけど......)

 

 

ガブリアスは降り立つと、同じく地面に着地したエルレイドをダブルチョップで粉々に破壊した。

 

 

敵軍基地

 

 

朱艇「雅拉!? どういうつもりだ!?」

 

雅拉「残念だったな!! 悪いがすべて盗ませてもらったよ」

 

朱艇「貴様裏切ったな!」

 

雅拉「それは誤解だ。最初から仲間じゃ無かったんだよ!」

 

朱艇(おのれ......この作戦でモビルスーツはほとんどすべて消費してしまった! 正確には1台残ってはいるがあれは繁さんの機体、俺達には使いこなせない)

 

雅拉「俺はお前らの居場所も、残りの兵力も、全部把握済みだ! 首を洗って待っていろ」

 

朱艇「ちくしょう!!」

 

 

ガブリアスは動かないエレキブルを掴むと、前線基地へと飛んで向かった。

また、後から来たペリッパーは猛の直属の部下である渚、泊待によって戦闘機で基地まで運ばれた。

自軍のモビルスーツ3機も同様の手法で回収。




モビルスーツ紹介

No6,エレキブル
概要
メインパイロットは慎司。凰城戸軍の試作モビルスーツで性能は高いが操縦や燃費に難がある。
武装
10まんボルト、ワイルドボルト、かみなりパンチ、ひかりのかべ
備考
量産不可能


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メガシンカが鳴らす終わりの音色

那奈釜戸「ご苦労だった、雅拉」

 

雅拉「はい。ありがとうございます」

 

賢次「それで成果は如何でしたか?」

 

雅拉「いえ、その前にまずは会っていただきたい者がいます。よろしいですか?」

 

那奈釜戸「構わん」

 

雅拉「慎司を連れてこい!」

 

 

雅拉が扉に向かってこう指示をすると、部下二人が慎司と共に入ってきた。

その手には手錠が嵌められている。

 

 

賢次「彼は誰ですか?」

 

雅拉「名前は慎司。我々の敵、あえて名付けるならば凰城戸軍の幹部だ」

 

賢次「凰城戸?」

 

雅拉「敵の大将の名は凰城戸 幸成。実質的なトップは孫の繁」

 

那奈釜戸「それで慎司とやら、お前は今捕虜というわけだが......」

 

慎司「足掻くつもりはない。......殺せ」

 

那奈釜戸「そうはいかん。お前のモビルスーツ操縦スキルはかなりのものだったからな。お前さえよければ協力してはくれんか?」

 

慎司「......俺は凰城戸様の理想とする世界を実現させるために今まで尽力してきた。しかし繁なんかのために身を粉にして働きたいとは思わん」

 

慎司「雅拉......お前も噂くらい聞いたことはあるだろ? 既に凰城戸様は繁によって殺されているとかいう......」

 

雅拉「まあな。もっとも物的証拠がないだけで凰城戸が死んでいる......最低でも遠い場所に幽閉されていることはほぼ確定だろうが」

 

慎司「そうだ。だけど俺は諦めきれない。失業し、人生のどん底をさ迷っていた俺を拾ってくれたのは......今日まで生き長らえたのは......凰城戸様のお陰なんだ。それを裏切ることは出来ない......」

 

雅拉「だが翔太が朱艇によって殺された。次のターゲットはあんたじゃないのか?」

 

慎司「それは......! 」

 

賢次「どういうこと?」

 

慎司「凰城戸軍のメカニック担当リーダーだった翔太は有能だったがゆえに朱艇という名の男に殺されたんだ」

 

賢次「そんな......」

 

那奈釜戸「慎司......お前の気持ちはよくわかった。ならこう考えたらどうだ? 凰城戸 幸成に恩返しをするために、彼の名を使って悪事を働くものを倒すと......」

 

那奈釜戸「凰城戸はもしかしたらまだ生きているかもしれない。その可能性に賭けるんだ!」

 

慎司「......」

 

賢次「......」

 

雅拉「......」

 

慎司「利用される気はないが俺も朱艇にみすみす殺されたり、役立たずの繁の下で働かされるのは気に食わないからな。打倒繁軍の為に協力してやる」

 

─────────────────────

 

作業場

 

 

延寿「聞いた? 雅拉の奴スパイだったらしいよ」

 

妃和田「ほんと驚いたっすよ。俺達からの評判はともかく、信頼されているみたいでしたから」

 

区千葉「だがこれで今までの疑問も解決したな。俺達に無茶な要求、重労働、過度な罰則を課したのも結果的なモビルスーツ開発の遅れ、それに伴った兵力減少を狙っていたのならば辻褄があう」

 

石築「ところで新型モビルスーツはどうすればいいんだよ? とうとう繁さん直々に命令されてしまったからな......」

 

愚連「それに"これはお祖父様からの命令でもある"と言われましたしね......出来なかったら今度こそ首が飛ばされるのかな?」

 

花田「でももう俺達じゃ無理だよ......こんなとき翔太さんがいればな......」

 

多摩虫「そうだ! 1度翔太さんの使っていたパソコンを覗いてみるのは?」

 

古金「それは少し抵抗があるな......あれはプライベート用にも使っていると言ってたし。前に翔太さんに家族と旅行に行ってたときの写真とか見せられたし......」

 

常磐「だけど......翔太さんなら何かを遺しくれている可能性だってあるいは......」

 

愚連「やってみましょうよ! 賭ける価値はあると思います」

 

妃和田「どうします? リーダー」

 

区千葉「......やろう。最後まで絶対に俺達は諦めないぞ!」

 

「「「「「おぉーー!!」」」」」

 

 

区千葉がパソコンを立ち上げるとホーム画面には娘と思われる画像が貼り付けられてあった。

ファイルを調べると最終更新が翔太の死の数時間前を示しているものが見つかる。

 

 

妃和田「これすか?」

 

愚連「中を確認してみましょう」

 

区千葉(頼みます翔太さん......俺達に希望を......!)

 

 

念を押しながらそれをクリックする区千葉。

そこに書かれていたのは......

 

 

「メガシンカ?」

──────────────────────

 

賢次「それは何ですか?」

 

雅拉「翔太のパソコンを漁っていたら見つかったものだ。彼が密かに設計していたらしい新型エンジンと新素材を用いて作られるまったく新しいモビルスーツってところだろうな」

 

那奈釜戸「なんと!」

 

賢次「データはありますか?」

 

 

ポケットからUSBメモリーを取り出した雅拉は、それを賢次に渡す。

 

 

雅拉「その中に詰まっている。本当はあのパソコンからデータを消したかったが、ロックが厳しくてそれは叶わなかった」

 

慎司「ならば先にそれを完成させた方の勝ちだな。お互い居場所は知れ渡っているのだからな」 

 

賢次「早速作業に取りかかります!」

 

賢次、はその場を去る。

 

猛「ただいま帰還しました!」

 

華澄「右に同じく」

 

智「あの......雅拉という人がいると聞いたんですけど...... 」

 

雅拉「おれだが...... 何かようかい?」

 

智「俺も雅拉なんです。雅拉なんてそう多い名字ではありませんし......」

 

雅拉「まさかお前...... 智か......? サキを知っているか?」

 

智「はい! まさか、俺の父親?」

 

雅拉「いや......その事についての詮索はするな」(止めておこう。真実を語るのは......)

 

雅拉「物事には優先順位というものがある。俺の正体なんかより今はもっと考えることがあるはずだ」

 

智「は......はい...... 」

 

──────────────────────

 

区千葉「これだけ揃っていれば俺達だけでも作れるはずだ。頑張ろう!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

こうして両軍とも最終決戦に備えるための準備に取りかかった。

那奈釜戸陣営はリザードン、カメックス、フシギバナに改造を加える形で、繁陣営はエルレイドをベースとした新しい機体の開発及びまだ見ぬ繁の愛機への改造をしていく。

 

 

──────────────────────

 

10日後、敵軍基地では作戦会議が行われていた。

 

 

繁「この度の戦闘で我が軍はモビルスーツをすべて失ってしまった。そして雅拉の裏切り、慎司の殉職と有能な部下共も消えていった。だから奴等のモビルスーツの修復が終わっていない今に基地に乗り込む!」

 

朱艇「......しかし雅拉のガブリアスは今だ無傷。繁さんのモビルスーツ一機では危険かと」

 

繁「なんだと!? 何が言いたい?」

 

朱艇(あんたが権威を得るために祖父を必要としているように、俺にもあんたが必要なんだよ! この無能が!)

 

朱艇「......私は貴方の御身体にもしものことがあればいけないと思い、こう申し上げた所存です」

 

繁「そうか......ならばどうすれば!?」

 

オペレーター「あの......こういうのはどうでしょうか?」

 

繁「まあ聞いてやってもいいぞ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

朱艇「ほう......」

 

繁「それだ! それならまず勝てるだろう!」

 

──────────────────────

 

 

そして1か月後......

 

賢次「テストも良好! 完成しました!」

 

那奈釜戸「うむ! よくやった!」

 

智「今までとは段違いだったぜ!」

 

猛「ああ」

 

華澄「凄いじゃない!」

 

慎司「賢次、エレキブルの修理の件については礼を言っておく」

 

那奈釜戸「それでは2日後、事前に知らせた作戦通りに決行だ!」




次回更新は3月27日です


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一進一退の攻防 華澄のカメックス

モビルスーツ紹介

No7,ガブリアス
概要
パイロットは雅拉。那奈釜戸軍のプロトタイプのモビルスーツ。性能はかなり高いが負担が大きく、実用的ではない。
武装
ダブルチョップ、あなをほる、ドラゴンダイブ、りゅうせいぐん


その日の夜

 

智は基地内の自分の部屋のベッドに寝転がっている。

 

 

智「プリン......この戦いが終わったら君とはお別れだね......」

 

プリン『それが本来の役目のはず』

 

智「それはそうだけど......とにかく、明日は頑張ろう!」

 

プリン『了解した』

 

──────────────────────

 

翌日 朝5時頃

 

 

那奈釜戸「これより作戦を開始する。出撃!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

飛行空母の中にはリザードン、カメックス、フシギバナと13機の戦闘機を、以前敵から奪ったペリッパーにはエレキブル、ガブリアスが格納されてある。

 

以前までは対モビルスーツには役に立たない戦闘機だったが、回収されたエルレイドのつけていた脚部ミサイル、装甲を研究した結果作られた新型ミサイルを備え付けることで大幅な強化を遂げていた。

先陣は雅拉の乗るペリッパーが切り、案内係を務める。

 

 

そしてしばらくして......

 

 

雅拉『まもなく到着するので、一層気を引き閉めてください』

 

猛『了解』

 

華澄『ドキドキするね......』

 

智『すべて焼き尽くす!』

 

 

凰城戸軍基地

 

 

オペレーター「敵軍が襲来しました。おとなしく敵を内部に引き入れて下さい」

 

 

エルレイドコックピット内

 

 

朱艇「いよいよか......」

 

 

???コックピット内

 

 

繁「捻り潰してくれるわ!」

 

 

ペリッパーは基地に侵入した。

 

 

オペレーター「自軍の兵器ですが油断はいけません。もう1機ありますので、それを引き入れてから退路を断ちます」

 

 

ほどなくして、飛行空母も到着する。

 

 

空母内部

 

 

猛『これより先は狭いからモビルスーツに乗り込んで先を急ぐ』

 

慎司『任せたぞ......』

 

渚『はいっ!』

 

 

先に飛び出した戦闘機群はエレキブルが使っていた光の壁を発生させペリッパー、飛行空母を覆う。

 

 

朱艇「撃てぇぇ!!」

 

 

待ち伏せしていたエルレイド8機は所持しているライフル銃からビームを繰り出したが、シールドの前に防がれた。

 

 

部下「効かない!?」

 

朱艇「これはエレキブルの光の壁? 破壊された機体から技術を奪われたのか!」

 

 

空母の中からモビルスーツが次々と外に出る。

そのなかにはもちろんエレキブルの姿もあった。

 

 

朱艇「エレキブルは並大抵の奴には扱えないはず! 慎司め裏切りやがったな!」

 

慎司『智、光の壁は火と実弾は防ぐことができない。つまり今一方的に攻撃できるのはお前だけだ』

 

智『はい!』

 

 

リザードンが次々と火炎放射をエルレイドに浴びせていく。

メガシンカ技術によって強化された攻撃は一撃必殺の威力を誇る。

 

 

朱艇「しまった......7機が破壊された!」

 

華澄『残りは1機ね! あれは私が倒すから皆は先を!』

 

猛『了解!』

 

智『気を付けて下さいね』

 

雅拉『奴は......朱艇か? それなら特に問題はないな』

 

 

4台の機体、戦闘機群は奥へ進む。

それにより光の壁の効果が消えた。

 

 

朱艇「俺を舐めやがって! メガシンカの力を見せてやる。しかもこいつは俺専用の特注機体! 負ける気がしない」




次回更新は3月29日です。


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朱艇VS華澄! 絶望へのボタン

カメックスのハイドロポンプを持ち前の素早さでかわしつつ、接近していくエルレイド。カメックスには近接用兵器が無く、殴る蹴るといった単調な攻撃しか出来無いため圧倒的に不利だ。

 

 

華澄『だったら......近づかせない!』

 

 

カメックスは地面に砲台を向けると、そこかられいとうビームを放った。地面が凍りつく。

 

 

朱艇「うおっ!? 転びそうだ......」

 

華澄『高速スピンで吹き飛ばす!』

 

 

回転しながら殻に籠ったカメックスは、凍りついた地面を利用して迫り来る。

エルレイドは避けることができない。

 

 

華澄(エルレイドは耐久が低い! 当たれば破壊も容易なはず)

 

朱艇(つるつるの地面がお前だけにメリットをもたらすわけないだろ?)

 

 

肘を展開して刀の形態にしたエルレイドはそれを地面に突き立てると腕を中心として、滑りやすさを利用して回転。

 

 

華澄(真っ向勝負って訳ね)

 

 

激しく回転している両機体が激突した。火花が舞い、お互いの表面が削れていく。

やがてエルレイドの動きが遅くなった。

 

 

華澄(勝った!)

 

朱艇(メガシンカはこんなものじゃないんだよ!)

 

 

脚部ミサイルを撃ち放つエルレイド。

それによりカメックスを吹き飛ばすことに成功した。

 

 

華澄(凍りついた地面が仇になったか......だけどこれは仕方がないこと)

 

朱艇(残りは一発......あの機体は確かに甲羅は固そうだが、腹部まで硬いのか?)

 

朱艇(もしも腹部の強度はそれほどでもない場合、ミサイルが"当たれば"撃破は可能だろう。しかしどう当てる?)

 

 

れいとうビームを繰り出すカメックス。エルレイドはそれを背中から取り出したシールドで防いだ。

 

 

華澄(れいとうビームが当たりさえすればモビルスーツだろうとその動きを止めることは出来る。だけどエアスラッシュを完封したあの盾がある限り当てることは不可能......)

 

華澄(......考えるのはやめよう。こうなったら火力を上げて粉砕する!)

 

 

スイッチを押す華澄。するとカメックスが光に被われた。

 

 

朱艇(なんだこれは? もしやメガシンカ技術は雅拉によって流されていたのか?)

 

朱艇(だけど俺はそいつの弱点を知っている......)

 

華澄(メガシンカが発動できるのは僅か1分。それを越えると機体はバラバラになってしまう)

 

朱艇(つまり1分間逃げ延びれば......!)

 

華澄(1分の内に蹴りをつけられれば...... !)

 

「『勝てる!』」

 

 

光が消えるとそこには、外見の変わったカメックスがあった。メガシンカの発動が完了したのだ。

 

 

華澄(ハイドロポンプ!)

 

朱艇(速い!)

 

 

シールドを取り出したエルレイドが攻撃を受け止めた。しかし水流は盾を貫通し、右腕ごともっていく。

 

 

朱艇(そんな! だがこれで終わると思うなよ!)

 

 

エルレイドは最後のミサイルを放ったが、カメックスの腹部を直撃するもまるで効いていない。

 

 

華澄(しまった! ミサイルの目的はカメックスの破壊ではなく反動を利用して素早く間合いをとること!? だけどどうして?)

 

朱艇(切り札は最後まで温存するに限る)

 

 

ボタンを押した朱艇。

 

 

華澄(そんな......どういうこと?)

 

朱艇(エルレイドの新たなる形態......それこそがこの分離システムだ!)

 

 

エルレイドが頭部、上半身、右足、左足に別れていた。頭部、上半身は宙に浮いている。

 

 

朱艇「一斉砲火!」

 

華澄『不味い! 殻に籠る!』

 

 

全身が開くとそこから現れたのは発射口。

放たれた高出力エネルギー波を懸命に耐える。

 

 

朱艇(いつまでそうしていられるかな?)

 

華澄『ふふふ......』

 

 

その場で回りだすカメックス。

 

 

朱艇(何を企んでいる? だが例え突進を仕掛けようと当たることはないと思うが......)

 

華澄(水圧の調整が勝利への鍵ね......失敗は許されない......)

 

華澄(渾身のハイドロポンプを受けてみなさい!)

 

 

華澄がレバーを引くとカメックスの四方から水流が噴出された。全方位攻撃となったそれをかわすことはできず、両脚部が最初に粉々になる。

 

 

朱艇(っち......だけどまだ手はある! あの攻撃は縦と横はカバーできても高さ、上下の動きにはついていけないはず...... !?)

 

 

朱艇の願いは無惨に裏切られた。

カメックスは回ることを止めると地面に向かって砲台から水を噴射し空中に飛びあがる。

 

 

朱艇(なに!? 突進なら防げるだろうが......いや待て......そろそろ時間だ )

 

華澄(殻に籠ってハイドロポンプ。これなら倒せるはず! あっ!)

 

 

メガシンカが解け、元の姿に戻ったカメックス。

四方にハイドロポンプをすることは出来なくなったが構わず突っ込む。

 

 

華澄『それならば! ロケット頭突き!』

 

朱艇(速い! こうなれば......)

 

朱艇「リーフブレードで迎え撃つ!」

 

 

カメックスの頭部とエルレイドの刃が激しくぶつかった。

 

 

華澄『うぐぐぐぐぐ......!』

 

朱艇「おおおおおおお......!」

 

朱艇(ここでメガシンカ! 胸部だけとはいえここで発動させれば勝ちは揺るがない!)

 

華澄(押されている......これじゃ......)

 

朱艇「誰かは知らんが優秀なパイロットだったと覚えておいてやろう」

 

 

朱艇はボタンを押した。するとエルレイドは眩しい光に覆われ......

 

 

華澄『メガシンカ? そんな......』

 

朱艇『ん? 熱い......まさか!』

 

 

機体は激しく爆発すると燃え上がる。

 

 

朱艇(何故だ!? まさか作業員の奴等も裏切っていたのか?)

 

「朱艇、この言葉を聞いているということはメガシンカのボタンを押してしまったか......」

 

朱艇(誰だ? いや......この声は翔太の部下の奴のか?)

 

区千葉「貴様は自分の地位を守るために、それを脅かす可能性のある者を次々と消していった。翔太さんもその一人......メガシンカ技術の原型を作ったのも翔太さんだった」

 

朱艇「そんなのでたらめだ!」

 

区千葉「我々は貴様の不当な処刑の証拠をすべて握った。翔太さんの件で証拠として挙げられた映像も加工に関わった者を洗いだし、すべてを吐かせた」

 

朱艇「なんだと? ふざけるな!」

 

区千葉「我々としては貴様がこのまま燃え付きようと悔いはないが、我々も鬼ではない。すべてを認めるのならば助け出してやろう」

 

朱艇「頼む! お願いだ! 認める!! 殺したのは俺だ! 何でもするから助けてくれ!」

 

区千葉「......」

 

朱艇「頼む! お願いします! あっ! 日が火がもうここまてで迫り来ている! 早くしてくれ!

 

 

区千葉「この言葉は事前に録音されていたものだ。従って貴様がどういった対応をしようと許すつもりはない」

 

朱艇「!? 嘘だ! ここから出してくれ!! 悪かった! 謝る! 助けろ!」

 

区千葉「加えてコックピット内には盗聴器を隠しておいた。それからかまをかけただけで証拠を握ったと言うのは嘘だ。貴様の最後にはお似合いの惨めさだな!」

 

朱艇「そんな!! 嘘だ! 俺はやっていない! 本当だ! 違う! ごめんなさい! もうしません! 嫌だ! 死にたくない! 俺はまだ死ぬわけには!!」

 

朱艇「死にたくない!!!!」

 

 

こうして朱艇はエルレイドごと業火に焼かれた。

一方でカメックスはその炎の影響はほぼ受けず、着地。

 

 

華澄『最後がよくわからなかったけどまあいいや』

 

 

カメックスは奥へ進む。




次回更新は3月31日です。


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臣下の真価

一方その頃

 

 

雅拉『至るところに罠が仕掛けられているな...... 』

 

猛『敵機が見当たらない......』

 

 

天井が突然爆発し、破片が降り注ぐ。

 

 

慎司『しまった!』

 

智『うわっ!?』

 

 

破損箇所こそ無いが、一同の機体が埋まる。

 

 

猛『出られん......今攻撃を喰らったらひとたまりもないぞ!』

 

部下A「撃て!」

 

 

現れた5機のエルレイドは手に持ったビーム兵器の引き金を引こうとしている。

 

 

雅拉『穴を掘る!』

 

 

だがそれは地面を掘り進んだガブリアスの攻撃によって防がれる。

ガブリアスはエルレイドの足元に辿り着くとそこから地上に上がり、爪で破壊していったのだ。

 

 

部下A「おのれ......! メガシンカを使うか」

 

雅拉(唯一俺の攻撃を避けられたか......しかもメガシンカ......厄介だな)

 

雅拉『猛、俺はこいつを潰すから先に行ってくれ』

 

猛『しかし出られません!』

 

雅拉『何言ってんだ? ガブリアスが抜けた分少し岩にゆとりが出来たはずだ』

 

智『あっほんとだ! 出れた』

 

雅拉『というわけだ』

 

慎司『さっさと行くぞ』

 

 

3機、さらに進む。

 

 

雅拉『姿まで変わっちまってるのかよ。まあいくか!』

 

 

ガブリアスとメガエルレイドは両者共に白兵戦に優れている機体だ。

よって戦いはダブルチョップとリーフブレードの一進一退の撃ち合いから始まった。

 

 

部下A「通常モビルスーツで勝てると思っているのかな?」

 

 

メガエルレイドは上昇した攻撃力で強引に打ち合いを征すると、そのまま斜めに切り裂く。

 

 

雅拉『ほう......単純な殴りあいでは不利か』

 

 

穴を掘って地面に身を隠すガブリアス。

 

 

部下A「あっ! くっ......どこから出てくる?」

 

雅拉(少しずるい気もするが......これで決める!)

 

 

レバーを引いた雅拉。するとガブリアスは真上に光弾を発射、それが地面を貫通して地上に現れる。

 

 

部下A「そこか! どこを狙っている?」

 

 

光弾はある程度の高さまで上昇した後、分裂しながら勢いよく落下した。

 

渾身の流星群はメガエルレイドに全弾命中、操縦者が怯んでいるうちにガブリアスはさらにメガエルレイドの真下に移動して、飛び出て追い打ちを仕掛ける。

 

 

部下A「くそぉぉ!」

 

 

ライダーキックのような飛び蹴りをするメガエルレイド。

ジャンプしてかわしたガブリアスはそのまま勢いよく落下。

ドラゴンダイブはメガエルレイドをスクラップにした。

 

 

その頃智達......

 

 

猛『でかい!』

 

智『視界悪い......こんなのどうやって倒せば......』

 

慎司『超巨大モビルスーツ バンギラス。繁の切り札だ!』

 

 

彼らの眼前にはリザードンの3倍ほどの大きさの機体と、3機のエルレイドがそびえ立っている。

それから辺りには砂嵐が吹き荒れる。




次回更新は4月1日予定です。


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Strange Blossom

もっと変化技を活かせればと思う今日この頃


慎司『リザードンはバンギラス攻略の鍵になるはずだ。反対にフシギバナは不利だ。だから智は俺と共にバンギラスを、猛はエルレイドを一掃しろ!』

 

猛『そんな勝手に......』

 

慎司『俺はこいつらの内情は理解している。それを考慮した上で言いつけたまでだ』

 

智『いきましよう!』

 

猛『わ......わかった』

 

 

フシギバナに次々と襲いかかるエルレイド。

フシギバナは四足のため、インファイトとなると体当たり位しか出来ない。

 

 

猛『ならば強引に遠距離戦に持ち込むまでだ』

 

部下B「うわっ!? 揺れる......」

 

部下C「まさか奴がこの地震を発生させているというのか? 距離をとれ!」

 

部下D「待て、シールドで身を守りながら後退するんだ!」

 

 

エルレイドが後方に跳んで避けた隙にフシギバナはエナジーボールを繰り出したが防がれる。

地震で距離を取って遠距離戦にもつれ込ませようとする猛の作戦はこれにより破綻した。

 

 

部下D「いくぞみんな、ジェットストリームアタック!」

 

 

エルレイド達のコンビネーション攻撃に手も足も出ないフシギバナ。

ヒットアンドアウェイを取っているため1打1打の威力こそ低いが確実にダメージを蓄積させていっていった。

砂嵐も機体の損傷に一役買っているようだ。

 

 

猛(どうすれば......素早さが欲しい......)

 

──────────────────────

 

慎司『こいつ......攻撃がびくともしない』

 

智『こんなやつどうすれば...... 』

 

繁「はっはっは! このまま死ね!」

 

 

今のところバンギラスのいわなだれは全弾回避し、リザードン、エレキブルの攻撃のみが一方的に当たっている状況だが、バンギラスは傷一つついていない。

それから2機も砂嵐のダメージは避けられない。

 

 

智『こうなったら...... 超火力で一気に決めるぜ!』

 

 

智がスイッチを押すとリザードンの全身が光に包まれた。

そして砂嵐の勢いも徐々に弱まっていく。

 

──────────────────────

 

その頃フシギバナはぼこぼこにされていた。

自分の攻撃は当たらず、相手の攻撃が一方的に被弾する戦況だ。

 

 

部下B「そろそろ決めるぞ」

 

部下C「メガシンカを使うまでもなかったな。折角温存できたんだしこれであと2機を倒すのがぐっと簡単になったな」

 

部下D「砂嵐が止んだ?」

 

猛『眩しい......これだ! これならいける!』

 

 

エルレイドのジェットストリームアタックはなおも続く。しかしフシギバナはそれを信じられない速度ですべてかわしたのだ。

 

 

部下D「はっ?」

 

猛(隠し機能 葉緑素......莫大な太陽光線を浴びているときに素早さが2倍になる起死回生のまさに切り札。そしてこいつのもたらす恩恵はもう一つ......!)

 

 

放たれたソーラービームはエルレイドを一掃した。

陽射しが強いため、溜めることなく瞬時に撃てたのでエルレイド達にはかわす隙が無かったからだ。

 

 

猛『あとはあのでかい奴だけか......』




次回更新は4月2日。残りは3話を予定しています。


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高き壁を今越えよ

遅くなってしまい申し訳ありません。残り3話で終わることが決まったので最後まで御付き合いください。お願いします。


智『燃やすぜ!』

 

 

光が消え変形が完了したリザードン。

溢れるばかりの過剰な熱エネルギーが周囲に発散され、それは砂嵐を打ち消し気温を上昇させた。

 

 

プリン『暫くの間かえんほうしゃ、フレアドライブの威力が上がる』

 

智『そうなのか? じゃあ早速!』

 

 

かえんほうしゃがバンギラスに炸裂。

危険を感じたのか繁は辺りの瓦礫で身を守ろうとするも、それごと左腕を燃やされた。

 

 

智『やりー!』

 

慎司『油断するな!』

 

 

リザードンに対して、口から光線を狙っていたバンギラス。

エレキブルがかみなりパンチで発射口の方向を変えたためなんとか防いだ。

 

 

慎司(秘密兵器を使えればあの堅い装甲の破壊も可能だろうが......)

 

 

そこへフシギバナが駆けつけると、ヘドロ爆弾でなおも追撃。

 

 

智『猛さん!』

 

猛『お前のメガシンカのお陰でフシギバナは素早さをてに入れた! さあ行こうか』

 

繁「あいつらめ、ちょこちょこと! 喰らえ......」

 

 

繁はガスマスクの様なものを装着するとレバーを引く。

するとバンギラスの肩部から球状のものが二つ現れた。

 

 

猛『なんだあれ?』

 

智『とにかくこのまま押しましょう!』

 

慎司『あんな技に見覚えはないが......』

 

繁「新たに備え付けた必殺兵器......その名も原子の力! 核爆弾でぼこぼこにしてやる!」

 

 

バンギラスは爆弾を投げつけた。

3機は直撃は余裕でかわしたが、その後に起こった巨大な爆発に巻き込まれてしまう。

その威力は絶大で、建物ごと一瞬で破壊された。

 

 

猛『うぐっ......もしやこれは核?』

 

智『なんて威力だ......』

 

繁「流石に最新鋭のモビルスーツは壊せないか。だがその機体で満足に戦えるかな?」

 

華澄『みんな! 大丈夫?』

 

 

カメックスに乗った華澄が駆けつけた。

 

 

慎司『華澄、猛......モビルスーツの残り電力をエレキブルにくれないか?』

 

猛『どういうつもりだ?』

 

慎司『頼む! 俺を信じてくれ、エレキブルの左腕の秘密兵器を使えば、バンギラスであろうと勝てるはずなんだ!』

 

猛『わかった...... だがそれが出来なかったときは...... わかっているな?』

 

華澄『うん!』

 

慎司『あぁ! 凰城戸様は俺が取り戻して見せる』

 

 

背中のコードを伸ばして2機の電力を吸いとっていくエレキブル。

 

 

智『時間稼ぎは俺が!』

 

 

リザードンはバンギラスの周りを飛び回ると、かえんほうしゃで注意を引き付けた。

だけど先程のダメージのせいで満足に動くことが出来ない。

 

 

繁「邪魔だ!」

 

 

バンギラスの拳が遂にリザードンをとらえてしまった。

恐るべし一撃を受け、真っ逆さまに墜落リザードン。

さらにメガシンカの時間、1分が迫っていたため解除せざる終えなくなり、気温上昇も消え去る。

 

 

華澄『智!』

 

猛『くっ...... 機体が......ボロボロだ......』

 

慎司『智......リザードンはまだ行けるか?』

 

プリン『これ以上のダメージは危険』

 

智『......だそうです』

 

慎司『......危険を承知で頼みたい......バンギラスにフレアドライブを撃ってくれ。俺の秘密兵器と君の攻撃があれば、あの堅い装甲も必ず破れる!』

 

智『......わかりました』

 

 

リザードンは全身を発火させると、ありったけの素早さでバンギラスに接近する。

 

 

慎司『これで決めるぞ! Z技発動』

 

 

慎司がレバーを引くとエレキブルの左腕が砲台とかした。

そこから放たれた超高圧電磁キャノン スパーキングギガボルトがバンギラス目掛けて直進。

 

 

慎司『華澄......猛......ありがとう。俺の勝ちだ』

 

華澄『まだ戦いは終わっていない。少し早いんじゃない?』

 

慎司『いや......フシギバナ、カメックスは行動不能、そしてリザードンも......』

 

 

エレキブルの攻撃がリザードンの方向に逸れると凄まじい爆発が発生、辺りも爆煙に包まれた。




本日21時ごろ予定


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終戦の兆し! 智頂上決戦!!

雅拉『俺を忘れて貰っては困るな......』

 

 

ガブリアスは途中から地中に隠れていたが、リザードンの危機を知ると勢いよく飛び出しエレキブルの攻撃から身を呈して守った。

 

 

智『雅拉さん?』 

 

雅拉『慎司は最初から改心などしていない。何故なら一月前の戦いでの奴等の目的は我軍の基地への進入だったからだ!』

 

慎司『......』

 

雅拉『逃げる隙は充分にあったのに奴がエレキブルの中に留まったのもそのためだろ!』

 

慎司『はぁ......やはりバレていたか......だがどうする? この戦力差で勝てるとでも?』

 

雅拉『智! リザードンの戦闘力では不充分...... お前がガブリアスを操縦して奴等を倒すんだ!』

 

智『どうして俺なんですか? というか、大丈夫なんですか?』

 

雅拉『ガブリアスには電気は効かないから安心しろ。お前を選んだ理由だが、リザードンのAI は唯一脱着が可能だ。ガブリアスはAI が備え付けられていないから負担が大きく、俺の身体も限界が近い...... あとを頼む...... 』

 

智『そんな!』

 

プリン『決断を。ガブリアスの性能ならば現状のエレキブルを倒すことは恐らく可能』

 

智『......』

 

慎司『その音声は俺にも聞こえているということを忘れるな。どうするんだ? このまま負けるか、足掻いて死ぬか!』

 

智『......俺は決めたんだ! 奴等は絶対に許さない、一人残らず駆逐するって。正直それでいいのか悩むときもあった......でも迷っているうちに悲しむ人が、失われる命があるのならば、俺はその罪を背負い続けて最後まで戦い抜く!』

 

慎司『それがお前の出した答えか』

 

 

智はコックピット内に掛けてあったガスマスクを着けると、リザードンを出てガブリアス内に乗り移った。

 

 

繁「オペレーター、俺はどうすればいいんだ?」

 

──────────────────────

 

通信

 

オペレーター「エレキブルを援護してください! メガエルレイドとビーム兵器でのガブリアスの破壊こそ叶いませんでしたが、今二対一で戦えば必ず勝てます!」

 

──────────────────────

 

エレキブルのかわらわりとガブリアスのダブルチョップが激しく火花を散らす。

 

 

慎司(ガブリアスには電気攻撃は効いていないようだった。つまり俺が勝つには純粋な殴りあいで征する必要があるな......)

 

智(パイロットとしての腕では俺はあいつには敵わない...... ならばこれだ!)

 

 

ガブリアスは地面に身を隠した。

 

 

慎司(何処から来るんだ?)

 

智(まずはお前だ! 繁!)

 

 

ガブリアスはバンギラスの足下に着くと円を描くように動いた。するとそこに空洞ができ、足をもっていかれたバンギラスは横転。

そのままバンギラスはエレキブルの方向に倒れてきた。

 

 

繁「しまった!」

 

慎司(このままじゃ潰される......! 仕方ない許せ......)

 

 

ワイルドボルトを発動したエレキブルはバンギラスの胸部をぶち破り何とか脱出。しかしガブリアスが地中から放った流星群をまともに喰らってしまう。

 

 

慎司『おのれ! 何処にいる?』

 

智『真上さ!』

 

慎司『なに!?』

 

 

いつのまにか地中から出ていたガブリアスのドラゴンダイブによりエレキブルはぺしゃんこになった。

 

 

繁「あっ! 慎司!」

 

智『最後はお前だ! 繁!』

 

繁「喰らえ! メガシンカ!」

 

 

バンギラスがメガシンカをすると再び砂嵐が巻き上がる。

だが終始自分にとって有利に働いていた1度目とは違い、今回はガブリアスに最大限の恩恵を与えた。

 

 

繁「ど......どこだ? また地中に逃げたのか?」

 

雅拉『ガブリアスは砂嵐のダメージは受けず、砂嵐が吹き荒れている環境下では回避率を上げることが出来る』

 

智『なるほど、だから打倒バンギラスとして適任だったってことか!』

 

繁「死ね! いわなだれだ!」

 

智『そんなの当たらないさ、決めるよプリン』

 

繁「ちくしょう! こんなところで死ねるか!」

 

 

ガブリアスの怒りのこもった乱打はバンギラスの損傷箇所のヒビを徐々に広げていく。

そして最後の一撃が当たったとき、遂にバンギラスは動きを止めた。

 

 

智『はぁ...... はぁ...... 』

 

雅拉『やったか?』

 

慎司『貴様! 絶対に許さん! せめて貴様らだけでも道連れにしてやる!』

 

智『慎司!?』

 

 

間一髪で逃げ延びていた慎司は乗り捨てられていたリザードンに乗り込むと、ドラゴンクローを展開して走って襲いかかってきた。




次回最終回は4月5日更新予定です。


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諦めぬ抵抗 覆されぬ事実

智『俺のリザードンで勝手なことしてんじゃねえ!』

 

 

ガブリアスのダブルチョップがリザードンに掠れるとその全身はバラバラになった。

しかし同時にガブリアスの腹部にも片方のドラゴンクローが突き刺さっていた。

 

 

雅拉『コックピット狙いか......手慣れたモビルスーツでやられていたら奴の思惑通りになっていたな』

 

智『勝ったの?』

 

雅拉『あぁ...... 』

 

オペレーター『聴こえる?』

 

猛『誰だ? スピーカー越しにキコエテクるが』

 

オペレーター『確かに我々はモビルスーツ同士での戦いには敗れた...... だけどこっちにも意地というものがある! ここから逃がさない!』

 

 

一同が音の鳴る方を振り向くと、出口が瓦礫で閉ざされていた。

 

 

オペレーター『さらに! バンギラスの中の原子の力は未だ健在!』

 

華澄『まさか!』

 

オペレーター『スイッチオン!』

 

 

バンギラスの残骸から激しい爆発が起きようとしていたが、隠れていた数機がそこに飛び出すと爆発は防がれた。

 

 

オペレーター『なに?』

 

泊待『あんたのとこのエレキブルの電磁シールドさ』

 

 

温存していたミサイルによって障壁を破壊される。

 

 

オペレーター『あっ!』

 

智『これで逃げられる!』

 

猛『ここもいつ崩れるかわからん、ひとまず逃げるぞ!』

 

 

猛、華澄は無理矢理ガブリアスに乗り込み、総員は飛行空母、ペリッパー目掛けて逃げ出す。

大型機2機が飛び立つとその衝撃で凰城戸軍基地は完全に崩れた。

 

 

智「......」

 

華澄「......やったね......」

 

猛「智......あとで正式に伝えられるとは思うが、君は今回の件の役目を見事に果たしてくれた。だから今日で終わりだ。今日まで本当にありがとう」

 

智「そうですか......」

 

猛「民間人である君をここまで付き合わせてしまったのはこちらとしても不甲斐ないことだ...... 」

 

智「そんなのいいんですよ。俺としても憧れだった巨大ロボットに本当に乗れたんですから!」

 

雅拉「智...... 元気でな......俺の妹のサキと娘の瀬玲奈によろしくな」

 

智「えっ?」

 

雅拉「もう戦いも終わったから言うが、俺はお前の息子であり瀬玲奈から見れば叔父にあたる」

 

智「やっぱり...... それじゃ俺のお母さんは?」

 

雅拉「すまない...... お母さんはお前を産んだときに...... 」

 

智「そうだったんだ...... それなら俺も言わないと。お父さんの妹さんは瓦礫の下敷きになって...... 」

 

雅拉「...... そうか...... サキに"本当の母親のように接してあげて欲しいと頼んだが、それは果たしてくれたか?"」

 

智「もちろん!」

 

 

その後一同を乗せた大型船は基地に辿り着いた。

智は検査などを受けたが問題は見受けられなかったため、翌日に帰宅することになった。

 

翌日

 

智「短い間でしたがありがとうございました!」

 

華澄「じゃあね! いつでも遊びに来てね」

 

猛「それはそれで困るが...... 元気でな!」

 

賢次「ありがとう!」

 

雅拉「......頼んだぞ」

 

那菜釜戸「よく戦ってくれた、これはほんのお礼だ」

 

 

そう言うと那菜釜戸は智に封筒を手渡した。

 

 

智「お元気で!」

 

 

振り返ると智はプリンを連れて走り出す。

 

──────────────────────

 

瀬玲奈の家

 

 

瀬玲奈「......それでそのまま彼女の家に行って告白したらあっさりと降られちゃったの?」

 

智「もう無理」

 

瀬玲奈「だったらプリンに聞いてみればいいじゃん。彼女の作り方とか」

 

智「それもそうだね。プリン教えて!」

 

プリン『身近な所にいる』

 

智「えっ......それってまさか......」

 

瀬玲奈「だってさ。それじゃ探しに行こうか!」

 

智「そ......そうだね! 近くにいるみたいだし.....」

 

プリン『直感は案外あたるもの。良いことも悪いことも』

 

おしまい




ここまで見ていただき本当にありがとうございました。


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