恋姫†無双~成都に降り立つ異端児~ (新名択捉守)
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プロローグ―成都に降り立つ異端児―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある外史のとある時代。成都という名の州都にとある“大うつけ”がいた。その者は幼少期どんなことにも興味を示さず周りの者からも密かに「刺史様の四男は愚息」だという風に噂され、3人の兄達にも「愚弟」だと馬鹿にされていた。

 

しかしそんな者にも只1人だけ、“大うつけ”と呼ばれている者を理解している者がいた。それは、父・劉君郎である。その「愚息」とは・・・

 

 

 

姓は劉(りゅう)。名は璋(しょう)。字が李玉(りぎょく)で、真名が龍駕(りゅうが)。

 

 

 

そんな“蜀の大うつけ”から“蜀の帝王”そして―――――

 

―――――までの波乱の人生を描く物語・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―成都に降り立つ異端児―法正&張仁&魏延&黄敍&黄忠&厳顔√

 

 

 

 

 

 

 

 

時期は後漢時代末期。場所は益州州都・成都。現在、漢の首都である洛陽では、逆賊董卓と反董卓連合軍とが激しい攻防を繰り広げていた。そんな中、洛陽から離れた成都では美少女2人を連れ立って歩いている馬鹿がいた。

 

 

 

龍駕

 

「よっしゃぁ!!今日でオレも15歳!元服だぜ!!」

 

 

天理

 

「ほわわ・・・皆が私達を見てるよぅ。」

 

 

桜花

 

「もういい加減諦めようよ。天理ちゃん・・・」

 

 

 

そんな一行を見る目に写っているのは、後ろ向きなものでは決してなかった。それは何故か?単純明快、龍駕がいくら傍迷惑でいつもトラブルの中心にいたとしても、無駄にプライドが高く傲慢な兄達とは違い、父親同様に民たちを見下すような言動は一切取らなかったためである。

 

 

 

天理

 

「あのぅ、龍駕さまぁ。そろそろお帰りにならないと、劉焉さまがぁ・・・」

 

 

桜花

 

「そうですよ。元服の儀式を行わないとダメなのですから。」

 

 

??

 

「劉璋様ー!!」

 

 

 

ダダダダダダッ・・・と土煙を発生させながら、突っ込んでくる者の顔を見るなり直ぐに反転した。

 

 

 

龍駕

 

「げ、魏延だ。ってことは・・・」

 

 

桜花

 

「恐らく、劉焉様が厳顔様に龍駕様を連れてくるようにと仰ったのかと。」

 

 

龍駕

 

「うわっ、あの魔乳めぇ・・・」

 

 

 

そう呟いたとき、両手の華は自分達の胸を見たとか見てないとか・・・

 

 

 

??

 

「劉璋様!覚悟だよ!!」

 

 

 

その台詞と同時に顔を掠めた閃光が一閃。

 

 

 

龍駕

 

「黄敍まで!?三十六計逃げるに如かず・・・ここは退却だ!」

 

 

天理&桜花

 

「龍駕さま!!」「龍駕様!?」

 

 

 

ダダダダダダッ・・・と魏延にも負けず劣らずな速さで2人を抱えながら走り回る、大馬鹿者の姿が成都中で見かけられたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、龍駕は亀甲縛りをされた状態で、父・劉焉と対面していた。その横には、黄忠と厳顔の宿将2人も立っていた。そして龍駕の後ろには黄敍と魏延が、隣には天理と桜花の2人が立っている。龍駕含めて8人しかこの空間にはいない。

 

 

 

劉焉

 

「何か言ったらどうなんだ?お前には他の誰にも見えていないものが見えているとお父さんは確信している。だが何故、そう馬鹿なことばかりやってる?・・・元服の儀式の前にどうしても確かめておきたいんだ。」

 

 

 

真剣な視線が龍駕を貫く。そして尚も劉焉の言葉は続く。

 

 

 

劉焉

 

「生憎、ここには信頼できる者しかいない。それにお父さんはもう長くはない命なのだよ。お父さんが死ぬまでの間にどうにかして、お前に家督を譲りたい。何か、皆が納得する実績を残してはくれないか?お前になら出来るのだろう?」

 

 

 

尚も続く。

 

 

 

劉焉

 

「お父さんからの最初で最期のお願いだ。真の実力を見せてく・・・ゴホゴホッ。ゴホグハッ!?」

 

 

 

ここで龍駕がようやく口を開く。

 

 

 

龍駕

 

「・・・わらおあらひい。」

 

 

 

猿轡もされていたんだった。

 

 

 

龍駕

 

「わざとらしい、親父殿。」

 

 

劉焉

 

「バレたか。しかしな、お父さんに残された時間が少ないというのは本当なんだ。」

 

 

 

明るくも真剣味を帯びているその声色に、その場にいる者達は圧倒される。が・・・

 

 

 

龍駕

 

「あぁ!!?」

 

 

 

急に声を上げたかと思うと、立ち上がり部屋を飛び出そうとした。しかし・・・

 

 

 

龍駕

 

「離せよ!」

 

 

厳顔

 

「そうはいきませぬ。」

 

 

龍駕

 

「オレだって別に本当に行きたいわけじゃないんだって!でも、約束は約束だから守らなくちゃいけないんだってば!!」

 

 

 

そう言った龍駕の言葉に反応した者が約1名。

 

 

 

劉焉

 

「だったら、その約束を守るために行ってもいいから、その代わりにお父さんとも約束をしなさい。」

 

 

龍駕

 

「わーった。わーった。」

 

 

 

そう言う龍駕の返答はかなり投げやりだ。

 

 

 

劉焉

 

「皆の者がちゃんと家督を譲ってもらうのを納得できるように実績をつくること。」

 

 

龍駕

 

「りょーかい。りょーかい。」

 

 

 

これは右から左だな。

 

 

 

劉焉

 

「それから、元服の儀式までには必ず戻ってくること。」

 

 

龍駕

 

「はい。はい。」

 

 

 

もうテキトーにあしらってるよ。

 

 

 

劉焉

 

「約束だからな。」

 

 

龍駕

 

「約束。約束。」

 

 

 

あ、魔法の言葉。

 

 

 

劉焉

 

「よし、じゃあ桔梗離してやれ。」

 

 

 

その命令で厳顔が手を離した瞬間に龍駕は消え去っていった。

 

 

 

魏延

 

「あの劉焉様。」

 

 

劉焉

 

「ん?なんだ、焔耶。」

 

 

魏延

 

「お言葉ですが、劉璋様が劉家の家督に相応しいとは全く持って思えません!」

 

 

厳顔

 

「こら焔耶!!」

 

 

魏延

 

「し、しかし!!」

 

 

 

一喝されて尚も食い下がろうとする魏延。

 

 

 

劉焉

 

「まぁ良い。焔耶、もう少しばかり待ってはくれないか?奴は馬鹿だが約束は守る奴だよ。」

 

 

魏延

 

「いえ、あ、いや、しかし、私が言いたいのはですね、あの者にそのような能力が備わっているのk」

 

 

厳顔

 

「焔耶ァ!!・・・すみませぬ、劉焉様。どうか寛大なg」

 

 

劉焉

 

「まぁまぁ、奴の素行を見ていれば誰だってそう思うだろう。・・・だから確かめてこい。最近、南蛮との境辺りが騒がしくなってきている。だから南蛮平定を行おうと思う。それの大将に奴をつける。それの補佐として黄忠、厳顔、魏延、黄敍、張仁、法正の6人がついてもらいたい。」

 

 

黄忠&厳顔&魏延&黄敍&張仁&法正

 

「「「「「「御意に。」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洛陽では猛将・華雄が破られ汜水関が落とされ、現在は虎牢関での攻防となっていた。そんな時期に益州南部では南蛮平定と銘打った領土拡大政策をとり戦争を仕掛けていた。

 

 

 

龍駕

 

「敵は言っちゃ悪いが能無しの蛮族だ。だけど蛮“族”であるからこそ、“族”としての結束力は馬鹿には出来ない。よって、全力で潰しにかかる。天理!」

 

 

天理

 

「ひゃい!?」

 

 

龍駕

 

「地の利が相手方にあることは火を見るよりも明らかだけど、その地の利さえもこちら側に引っ張ってくることができる計略は?」

 

 

 

その問いに、ほわわ軍師殿は少しの間、目を閉じてそれから口を開いた。

 

 

 

天理

 

「はい。まずこちらから軽く一当てしてそれから退却します。その退却の道々に罠を数々仕掛けておいて敵をその罠に陥れる。そうすることによって地の利は手に入れられるかと。」

 

 

龍駕

 

「ということだ。じゃあ天理を中心にそれを発動させる地点を考えて視察に行ってくれ。兵は500あずけるから桜花はその護衛にまわってくれ。」

 

 

天理&桜花

 

「「御意です!」」

 

 

 

そしてその2人は、軍議から素早く抜けていった。それを目で追ったあと、龍駕はまた軍議の方に気を向ける。

 

 

 

龍駕

 

「天理の言っていた策の敵に一当てする部隊の指揮だけど・・・そうだな、厳顔と魏延に任せよう。右翼伏兵には黄忠が、左翼伏兵には張仁と黄敍に任せる。本隊はオレと法正が担当する。皆の者、異論はないか?」

 

 

 

視線をぐるりと皆を見渡すために向けるが、異論がある表情をしているものは誰一人としていなかった。

 

 

 

龍駕

 

「では2日後には敵と戦闘に突入する。それまでは各部隊ともに休息に励むように・・・以上解散!」

 

 

 

そして解散を告げた龍駕は我先にと、その場から足早に立ち去った。そしてここからは残された者の会話である。

 

 

 

厳顔

 

「いやはや・・・よもや劉璋のクソボウズと今までは散々侮っておったが、これはどうしてなかなか・・・英雄の雰囲気を纏っているではないか。」

 

 

魏延

 

「まぁ、ちょっとは見直してやっても良いかもしれん。」

 

 

黄敍

 

「能ある鷹は爪を隠す・・・っていうことだったのかもね。」

 

 

黄忠

 

「そうねぇ、今の劉璋様だったらお嫁に行ってもお母さんなにも言わないわよ?璃々。」

 

 

黄敍

 

「な//・・・ちょ、お母さ~ん///」

 

 

黄忠

 

「うふふ、冗談よ。じょ・う・だ・ん。」

 

 

 

からかわれてムスッとするお年頃な黄敍。それを見ておちょくる桔梗。そしてそれを抑えようとしているふりをして、またからかう紫苑。それには巻き込まれまいと無関心を装う焔耶も、熟jy・・・・・・ではなく美人なお姉様方の餌食となるのであった・・・

 

 

 

 



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2

―成都に降り立つ異端児―法正&張仁&魏延&黄敍&黄忠&厳顔√

 

 

 

軍議を解散し数刻の時が過ぎた頃、罠を仕掛ける地点を見極めるために視察していた筈の天理が慌ただしく龍駕の天幕へと入っていった。その中からは甘い鳴き声など聞こえてくるはずももちろん無く、将達に緊急召集が掛けられたのはそれから間も無くのことであった・・・。

 

 

龍駕

「天理、説明してくれ。」

 

天理

「は、はい。え、えと・・・こほん。私は護衛に回された兵の内、数名を選んで斥候として偵察に行かせました。するとその内の1人が南蛮兵の軍隊が拓けた一箇所の地に段々と集まって来た様子を見たようです。その兵が見た限り南蛮の兵数は2万から5万。明らかに南蛮内や他少数民族への攻撃をするには多過ぎる数。そこから考えるにどうやら私たちが南蛮を攻めようと考えたように、南蛮も私たちを攻めようと考えていたようですね。」

 

 

敵の兵数の多さに一瞬場が静まる。

 

 

厳顔

「我らの2倍から5倍か・・・」

 

黄忠

「ちょっと多いわね。」

 

魏延

「そんな数。私にかかれば!」

 

黄敍

「いや流石に現実的に考えて無理だと思うよ?」

 

桜花

「どうなさいましょう?龍駕様。ここは一度城に戻って・・・」

 

龍駕

「出るぞ。」

 

 

龍駕は桜花の言葉を遮るようにして言った。

 

 

厳顔

「し、しかしですな劉璋様。攻めの戦で敵兵との兵力差が2から5倍ともあっては勝つのは至難の業。ここは張仁の言うように一度本城か、それか近くの城に篭もり南蛮を撃退するのが上策かと。」

 

 

その厳顔の言うことに、他の将達も賛同している表情をする。が、しかし・・・

 

 

龍駕

「駄目だ。全然駄目だ。」

 

桜花

「龍駕様っ!」

 

 

その発言にやはり“蜀の大うつけ”でしかなかったか・・・と、桜花と天理以外の将が見限ろうとした。

 

 

龍駕

「お前たちは全然分かっていない。」

 

 

“分かってないのはお前だろ”と、誰しもが思った。

 

 

龍駕

「オレ達は確かに侵攻が目的でここへ来た。だがしかし、来てみれば敵の数は圧倒的に多く強大。ならば一度安全な自分の土地に戻りそこで敵を迎え撃ち撃退するのが正解なのか?敵を自らの懐へ迎い入れ民に負担を強いそれでもって追い返すことが?・・・答えは否だ。親父殿の治める益州を、我らの守るべき人々がいる益州を土足で踏み荒らそうとしている輩など一歩たりとも我らが益州に入れたりは出来ない!」

 

 

将達は“蜀の大うつけ”の本性を垣間見た。

 

 

龍駕

「それでも篭城するというなれば隊を率い、戻るがいい。親父殿に報告したりはしない。・・・但し、オレが家督を引き継いだら・・・まぁ、いいや。作戦は南方にいる南蛮軍が進軍してきたところに一隊を軽く一当てし、先程法正が仕掛けた罠の位置にまで連れてくる。そこで北側に配置してある本隊と共にその一隊は反転し突撃を敢行。その突撃を援護するために西と東に配置しておく伏兵部隊が矢で南蛮軍後方に一斉射撃。罠と先鋒への突撃、それから後詰への矢の雨で混乱に拍車が掛かったところで全軍鶴翼陣を敷いて一斉突撃。南蛮軍の後方である南を逃げ道とし、それ以外を覆い尽せ。本陣の指揮は法正に任せ、オレは本隊最前線に出る。これに異議がある者、帰還の意を示したい者は直ちに申せ。作戦に変更が出るかもしれない・・・・・・いるかっ!?」

 

法正&張仁&魏延&黄敍&黄忠&厳顔

「「「「「「御意のままに。」」」」」」

 

龍駕

「3刻後に作戦に向けて行動を開始する。以上解散!!」

 

 

 

 

 

天理

「・・・龍駕さま、きちんとお考えがあったのですね。いえ、これでは失礼ですね。私たちよりも御高い御考えがあったのですね・・・」

 

厳顔

「・・・そのようじゃな。」

 

 

龍駕は軍議の解散を宣言した後、さっさと自分の天幕に戻ってしまっていた。その場に残された将達は、さっきまでその場にいた今までとは違う龍駕が今まで感じたこともない雰囲気を全身から醸し出し、今までに聞いたことのない尊厳ある声色で宣言した彼自身の考えと行動原理を頭の中で回想していた。

 

 

黄敍

「それで劉璋様は陣形までは指示してたけど隊の割り当てまではしてなかったよね?・・・どうするの?」

 

天理

「はい。それは私が・・・。んっ。まず、南蛮軍に軽く一当てする隊を率いるのは魏延さんにお願いしてもよろしいですか?」

 

 

その言葉に魏延は力強く肯定の意を示した。

 

 

天理

「あ、ですが、く・れ・ぐ・れ・も!突撃を勝手にしたり、深く相手の懐に潜り込んだりして兵を無闇矢鱈と減らさないでくださいね?・・・やっぱりちょっと不安なので桜花ちゃんが行ってください。」

 

桜花

「分かりました。」

 

 

魏延は「私はどうなった!?」と、騒いでいるが、師である厳顔と親友である黄敍によって「どうどう」と宥められている・・・って、馬か。

 

 

天理

「お願いします。では、罠の東側に置く伏兵部隊の指示をしてもらうのは・・・厳顔さん、お願いします。」

 

厳顔

「あい分かった。確かに承った。」

 

天理

「その反対側、罠の西側の伏兵部隊は黄忠さん、お願いします。」

 

黄忠

「承りましたわ。」

 

天理

「魏延さんと黄敍さんは、それぞれ厳顔さん、黄忠さんの隊の副将として同行してください。」

 

魏延&黄敍

「分かった。」「分かったよー。」

 

天理

「お願いしますね。・・・あなた方の隊には罠から中距離程度離れてもらい、南蛮軍が罠に掛かったところで矢の雨を降らせてください。その後は本隊の動きに合わせて各隊それぞれ鶴翼陣形を敷き、突撃です。では皆さん、準備のために奔走してください。」

 

張仁&魏延&黄敍&黄忠&厳顔

「「「「「了解っ!」」」」」

 

 

 

 

 

一方その頃、南蛮軍側はというと・・・

 

 

朶思

「美以さま・・・」

 

孟優

「兄ぃ・・・、姉ぇ・・・」

 

木鹿

「・・・・・・お腹減った。」

 

 

基本的にグダっていた。

彼女達3人は、孟獲の側近中の側近であった。ちなみに真名は上から順に、(紗夢|シャム)、(美華|ミケ)、(斗良|トラ)である。

 

 

孟獲(?)

「ガハハハハ・・・・・・。野郎共!益州攻略の旅に出発だァ!!」

 

南蛮兵

「「「「「「「「「「オォォォォォ!!!!!」」」」」」」」」」

 

朶思&孟優&木鹿

「「「・・・・・・ふぁぁ。」」」

 

 

彼らの士気は同じ南蛮であるのに天と地ほどの差、雲泥の差であった。なぜならそれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



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