凡人は天才を夢見る (ゆっくり霊沙)
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プロローグ

私は前世と呼ばれる記憶が存在する。

 

気がついたのは2才の時だった。

 

経緯は省略しよう。

 

聞いてもつまらないだろうからな。

 

・・・で、小さいながらに私は姉達同様に戦車道を行っていた。

 

家柄でそうせざるをえなかった。

 

そう、私は西住流の本家に産まれてしまったのだ。

 

私は凡人だ。

 

分家の専属教師に私は凡人と評価された。

 

砲弾は重くて持ち上げられない。

 

戦車のレバーを引く力もない。

 

天性の勘で相手を見つける(フィールド全体を見渡して指示を出す能力)もない。

 

お前は凡庸だ。

 

凡庸の三女西住ほむ(むほは語呂が悪かったんだろうな)

 

そう言われ続けている。

 

 

 

 

 

 

私は西住家でも一番きついポーカーフェイスだ。

 

産まれてこの方一度も笑ったことがない。

 

脳の病気ではないので笑おうと思えば笑えるが、笑えるような現状ではない。

 

前世の記憶が有るだけでまだ私は2歳、感情もこんなに発達するはずがないのだが・・・環境が悪いのよ。

 

環境が・・・

 

 

 

 

 

私の1日は1号戦車の中で始まる。

 

車内に置かれたレーション(菓子類無し)を食べる。

 

次に車内の掃除をしていると戦車を蹴る音が聞こえてくる。

 

キューポラを何とかして抉じ開け、教官(分家の人)を中に入れる。

 

「遅い、お姉様方は2歳の頃、とっくに朝のメニューを終わらせていたぞ。装填は?」

 

「ま、まだです。」

 

バコ

 

「早くしろ。次は平手では済まんぞ。」

 

「は、はい!!」

 

私は凡庸だ。

 

力がないのだ。

 

 

 

 

 

 

必死に装填して標準を絞っていく。

 

「遅い!!何分かかっているんだ!!お姉様方は15秒以内だったぞ!!」

 

「すみません。」

 

「謝るのだけは上手いな。お前は。」

 

私は凡人だ。

 

だから名前も呼ばれない。

 

三女か凡人か凡庸かお前しか呼ばれたことがない。

 

小さい頃は知らないが・・・。

 

 

 

 

 

 

キューポラを上下する筋トレを平手を受けながらやっていると、姉達が乗った2号戦車がどこかに行くのが見えた。

 

「何をしている!!手が止まっているぞ!!」

 

「すみません。」

 

記憶が確かなら川辺に行って釣りをしていた筈だ。

 

羨ましい。

 

 

 

 

 

 

 

姉達にとってアップのようなものを終わらせるのに、私は夕方までかかる。

 

私にはアップが終わるまで食事が出されないから死ぬほどお腹がすく。

 

15分間しか食事の時間が与えられず、喉に詰まらせながらもゼリー状の食事を流し込む。

 

姉達は天才だから練習を終わらせたら、普通の食事を食卓で食べている。

 

父親が申し訳なさそうにこちらを見てくるが、母親に何かを言われると目線を外す。

 

姉達はよくわかってないのか食事を終えるとテレビを見ていた。

 

私は夕方までとは別の教官がやって来て訓練を続けている。

 

私は凡人だ。

 

西住では歴代最弱だ。

 

 

 

 

 

10時には訓練が終わる。

 

戦車をそこから掃除して、そのホースから出る水で体を洗い、戦車の中を掃除していると意識が無くなる。

 

私の1日はこうして終わる。

 

お米が食べたい。



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1号戦車視点B

私は西住しほ、西住流次期家元候補だ。

 

私には3人の娘があり。

 

まほは幼い頃の私に似ている。

 

それでいて、西住流を姉妹の中で一番理解し、実践し、それでいて私にはない姉妹に対する優しさがある。

 

みほは私から見ても天才だ。

 

初代の生まれ変わりと言っても過言ではない。

 

ただ、優しすぎるところが有るが。

 

ほむは・・・まず感情がない。

 

死んだ魚のような眼をいつもしている。

 

それでいて何を考えているのかわからない。

 

また、ひ弱で、一般的な人よりも筋力が無い。

 

なにも訓練していない同じくらいの少女達でもほむの2倍から3倍の量をこなせる。

 

今までこんな人を見たことが無かったが、西住に産まれたからには一般以上に育てなければ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時からだろうか。

 

ほむが1号で生活するようになったのは。

 

私も昔、1号戦車で生活していた。

 

ほむよりは才能があったけど、家元を引き継ぐ立場の能力としては心許なかった。

 

私は我慢した。

 

ずっとずっと耐え続けた。

 

ほむもやってくれる。

 

私にできたのだから。

 

ほむならきっと・・・。

 

 

 

 

 

 

 

西住常夫はほむの父親である。

 

僕は西住流本家に婿として入籍した。

 

けれども4つある分家の人とも、お義母様とも友好的ではないから少々義実家である西住家は居ずらいところがある。

 

そんな中、お義父様は僕の気持ちがわかってもらえる数少ない人物だった。

 

「義息子よ、ほむはどうにかならんのか?」

 

「お義父さん・・・。すみません、戦車道に関してはしほさんに口出し無用と言われているので・・・。」

 

「・・・私も昔そうだったよ。それでしほに大変な思いをさせてしまった。・・・義息子よ。これでほむと一緒に連れて行きなさい。」

 

「お義父さん、これは・・・。」

 

「自由に使いなさい。このままではほむが壊れてしまう。息抜きをさせてあげなさい。」

 

「わかりました。感謝します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「堅いな。まぁ、そうでなければしほの婿にはなれんだろうが。しほや、もう少し優しさを前には出せんのか?」

 

「お父様、私は次期家元です。家族よりも西住流を大切にしなければなりません。」

 

「・・・そうか。」

 

「お父様、私も昔、同じことをしてもらいました。あれはお爺様から言われたのですか?」

 

「いや、自らだよ。」

 

「そうですか。」

 

「聞きたいことがある。四家は今どの様な感じなのだ?」

 

「南の島津は今までと同じく、福岡の津田、山口の吉田は後継者が私と同期のため弱体化、長崎の久保は後継者が多すぎて分裂する可能性が多々。」

 

「・・・。いつもいつも西住はこれか。・・・厳しいな。」



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1号戦車

今、私は父親の手を握りながら熊本城近くの大きなデパートで買い物を楽しんでいる。

 

父親はチラチラと私の顔を見る。

 

私は楽しいのだが、上手く笑顔が作れないため、父親はつまらないのではないだろうかと勘違いをしていそうだ。

 

そんな私は無言で本を握っていた。

 

世界リーグで使える戦車一覧が書かれた辞書だ。

 

「ほむ、これが欲しいのか?」

 

「うん。」

 

小さな声だったが、迷いのない返事だった。

 

 

 

 

 

 

 

日本ではマイナーな戦車道だが、世界的に見ればメジャーである。

 

歴史的には冷戦初期のトルーマン・スターリン協定と呼ばれる両軍の戦車で模擬戦をドイツのベルリン郊外で数ヵ月に1度行われていたことが始まりであり、その模擬戦にイギリス、フランスが入り、朝鮮戦争によりソ連は軍事技術秘蔵のため、協定を一方的に破棄するが、ソ連の場所にドイツ、イタリア、北欧諸国が参加し、戦車道の基礎が出来上がる。

 

朝鮮戦争終結後、西側と呼ばれる資本主義陣営で戦車道がメジャーとなり、日本もアメリカの進めにより参加、この時学園艦が欧州にて戦車道の基礎を学び、ドイツと再度友好関係を築き、ドイツ戦車を大量に貰ってきたのが黒森峰、欧州の流れについていけず、独自路線に走ったのが知波単、普通に学んで帰ってきたのが島田流のいた学園艦だった。

 

その時の黒森峰初代隊長が戦時中に戦車の神様と呼ばれた西住小次郎の娘であり、私の祖母になる。

 

(だから歴史ある西住だとか何とか言ってもたかだか40年くらいしかない。野球とかと比べると歴史が浅い・・・か。)

 

ペラ

 

(戦車道には年齢によって扱える戦車が替わる。中学生までは1940年までに製造された戦車のみ、高校生は第二次大戦終戦までに製造、実戦された戦車のみ、U-22までは朝鮮戦争開始まで、以降は国際戦車道連盟の決定した戦車〔ワールド 〇ブ タ〇クスの実際に生産されていない架空戦車を除いた全て 一部カール等の例外あり〕が使用可能・・・か。)

 

ほむは前世の記憶で戦車については2010年までだったら全ての戦車の性能、装備、その戦車の弱点を覚えている。

 

(ただ、記憶に有るだけで、実際に操った経験は無いため、何とも言えない・・・な。)

 

レストランで久しぶりのお米を堪能しつつ、無言で黙々とステーキを頬張る。

 

「・・・なぁ、ほむ。戦車道は好きか?」

 

「?好きか嫌いかで言えば好き。ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「私は姉達・・・お姉様達みたいに化け・・・才能に溢れてない。凡庸・・・それすらも劣ると自覚してる。」

 

「そうか・・・。」

 

「私は色々な国の戦車に乗りたい。ただそれだけ。」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 

 

(やはり、ほむには西住は重いな・・・。しほに話してみるか。)



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豆タンク

4年経過し、私は6歳。

 

姉達は私のことを哀れんだ眼で見てくる。

 

が、なにもしてこない。

 

姉妹でありながら、私と姉達で会話した回数など両手で数えられる程しかない。

 

「ええい!!まだできないのか!!」

 

「申し訳ございません!!」

 

「豆タンクぐらい操れるようにしろ!!」

 

私は九七式軽装甲車テケを操る。

 

テケは大日本帝国だったときに造られた軽戦車に近い豆戦車で定員は2名・・・なので相方がいる。

 

「・・・本家の3女はこれか。」

 

西住分家の島津家師範の次女島津とみ

 

私より1つ上で、みほと去年パートナーだった。

 

そのため私の平凡な指揮は彼女からしたら不満であり、子供だから思ったことをすぐに口に出す。

 

(泣きたい。)

 

だが、泣けないのがほむの顔であり、無反応が余計にとみを苛つかせる。

 

「15発中・・・命中弾3発・・・。」

 

グ

 

「舐めてるのか!!この西住の面汚しが!!」

 

ドサ

 

分家の教官が私を怒鳴る。

 

豆タンクから引きずり出され、胸ぐらを掴まれる。

 

「何か言ってみろよ!!」

 

サングラスをかけているのでメチャクチャ怖い

 

「・・・闘志もないのか・・・はぁ。ダメだこれは。・・・とき、明日以降こいつに付き合わなくて良いぞ。結果がわかった。」

 

「はい。わかりました。」

 

(私だって頑張ってるのに・・・何で当たらない。何で装填の穴に入らない・・・。)

 

 

 

 

 

 

小学生低学年タンケッテ大会・・・豆タンクと制限されている車両で1対1の戦いをし、勝敗を決めるトーナメント戦。

 

64両128名の大会・・・私の姉達もこの大会に前に出て、優勝している。

 

(・・・)

 

私は大会開始から無言であった。

 

周りは

 

「流石西住の娘だ、集中してらっしゃる。」

 

と言うが、とみはこの無言は別の意味が有ると感じていた。

 

ほむはじっと試合を観ている。

 

相手から何か技術を盗もうという貪欲な姿勢ではなく、別の視点であった。

 

(実力差がはっきりしていて勝てる可能性は皆無。先生が匙を投げるほど才能がないのもわかった。・・・だけど西住に産まれてしまったのだからどこへ行けども西住本家の名が付いてくる。30年後、40年後を見通して行動するしか見返せない。・・・私を馬鹿にして、哀れんだ眼で見てくる家族に。正月の分家の師範達の姉達と比べられる目線・・・。)

 

ジーーー

 

豆タンクなら豆タンクの役割がある。

 

自分の将来の為に・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボロ負けか。・・・。」

 

(常夫さんの話が現実味を帯びてきた。)

 

常夫はほむを常夫の実家に預けて欲しいと頼んでいた。

 

常夫の実家は本州にある自動車会社の幹部であり、本人はただの自動車整備士と言っているが、戦車の修理や戦車道用に復元、改造を行っているため、戦車道の縁の下の力持ちである。

 

(・・・)

 

しほは辛い決断をしなければならなかった。



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正月

冬休みに入ると私は戦車の訓練をさせてもらえなくなった。

 

久しぶりに自分の部屋で寝て、起きた。

 

私は自室に置いてある戦車の本を読みながら今後を考える。

 

(恐らくこの家から追い出されるだろう。・・・仕方ない。・・・ならそっちが帰ってきてくださいと土下座させるくらいの何かを手に入れたいね。・・・さて、どうするか。)

 

ペラペラページを捲る。

 

(なぜかある前世の記憶によると、私が高校2年にプロリーグができるらしい。世界大会はもう有るのに・・・。プロの殲滅戦は前世の戦車ゲームの遭遇戦の時の戦術が生かせる。・・・自分なりに考えておこう。)

 

ページはソ連軍の戦車の場所だった。

 

 

 

 

 

 

元旦・・・一般的な家庭ではおせちを食べたり、正月特番を見たり、笑点を見たりするらしいが、私の家では違う。

 

一番上の姉として、お母様の次の家元が私であると言う自覚から、この元旦にある親族や地域支部クラス師範の報告会に参加しなければならなかった。

 

今回は妹のみほも居るから少しは気持ちが楽だ。

 

・・・ほむはいないか。

 

「関東は西住流入門者が年々増加の傾向があり、千葉に大規模な練習場を建造しております。自衛隊や民間のサバイバルクラブ等に貸し出して元をとる予定です。」

 

「この場において西住流吉田家師範に着くことを家元に宣言します。」

 

ピリピリとした空気の中、最後に家元であるお婆様が口を開く。

 

「入って参れ。」

 

スーーーーパン

 

襖が開く。

 

(なぜそこから出てくる!!ほむ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度私西住ほむは西住流継承者としての資質がないことから西住を名乗るに値しないと家元から言い渡されたため、今日をもちまして西住ではなく父方の池田に名字を変更し、この家から出ていくことになりました。・・・以上。」

 

「と、言うことだ。西住に弱者は必要なし。」

 

「ま、待ってくださいお婆様!!いくらなんでもそれは・・・」

 

「まほ、お主・・・何を言っておる?ほむも理解してのことだ。」

 

「この場の皆様に迷惑をかけるので私とお姉様達は退席します。ご無礼をお許しください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむ・・・私、ほむが居なくなるなんてしらなかったよ。」

 

「そうだ。私にもみほにも言わないなんて。」

 

「私には西住でやっていける才能がない。だから私が必要な技術を身に付けるために家を出る。」

 

「で、でも。」

 

「まほは大学で、みほは高校で戦いたいと思う。それまで私は西住を捨てる。」

 

「それで本当に良いのか?」

 

「良い。私は揺らがない。」

 

(・・・高校、大学と言ったけど、この2人に車長として私が勝てる可能性は皆無。・・・最終的に何かしらで勝利すれば良い。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来たね。」

 

「久しぶりだなー。」

 

「今日からよろしく。」

 

「お袋、親父、ほむを頼む。」

 

「わかったんだなー。立派に育てるんだなー。」

 

「任せんしゃい。新潟まで来たんだからゆっくりしていけば良いのに。」

 

「こっちも色々あるからね。・・・ほむ、お母さんも本当はほむを家に住ませてあげたかったんだよ。」

 

「わかってる。不器用だけど愛情は感じていた。」

 

「そうか・・・お母さんに手紙をたまにで良いから送ってあげてくれ。」

 

「わかった。またね。お父さん。」

 

「(お父様と言わないか。自分の境遇をしっかり理解しているんだ。この子は。)またな。ほむ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・帰りましたね。」

 

「そうだなー。」

 

「ほむ、ほむは何かやりたいことは有るかい?小学校も変わるからここで何かしら興味が有ることをしなさい。」

 

「そうだなー。」

 

「お爺様に頼みが有ります。」

 

「ん?」

 

「私に戦車の整備、塗装、改造を教えてください。お願いします。」

 

凡人の私は凡人らしく今は裏に徹する。

 

池田ほむ。

 

小学1年の冬から彼女の人生は始まる。



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3号戦車

新潟という寒い環境で、私は祖父母と雪かきをしながら定年して暇になっていた祖父に戦車の技術的なものを習っていた。

 

その前の基礎をだが・・・。

 

バーナー等の工具の使い方、図面の引き方、特殊カーボンの加工方法等・・・。

 

余った時間は学校の勉強(高校レベル)をする。

 

前世の記憶で英語は早めにやれという嫌な記憶がこびりついて離れないので、英語だけでなく、全部の勉強をしている。

 

特に化学、物理、数学の3つは戦車の整備に必要なのでとことん詰め込んだ。

 

学校でも体育以外は全てできるので、天才ちゃん等と呼ばれ、一部の気の強い女子グループからは目をつけられそうになったけど、彼女達と話す事で個別に和解したりして凌いでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お母様へ

 

池田ほむは戦車道のプレイヤーとしては最底辺であり、才能も有りません。

 

しかし、分家の方々の態度や家元の完全実力主義には些か気に食わないところが有るので、私なりに見返してやろうという気持ちがあります。

 

そこでお願いが有るのですが、裏山に放置されていた3号戦車を私に貸してもらえないでしょうか。

 

今は言えませんが、私には必要なので・・・すぐにとは言いません。

 

お願いします。

 

池田ほむより。』

 

 

 

 

 

 

 

 

もう西住の肩書きが無いので様々なことができるが、とりあえず戦車ショップに通っていた。

 

戦車ショップに売っている戦車の模型は改造や塗装の際に目安にすることができる。

 

部屋中に置かれた戦車の模型はだいたいここでそろえる。

 

「いらっしゃい。今日は何が欲しいんだ?」

 

「ISを頼みます。」

 

「了解だ。待ってろ。」

 

45歳くらいの今時珍しいジャージに白のTシャツ、首から下げたタオルには戦車道応援組合と書かれている。

 

個人経営だから許されるその姿は私には好印象だった。

 

家の近くに有る戦車ショップは大規模なチェーン店なのでマニュアルに沿った対応しかしてもらえないから時間がかかってもこっちに来る。

 

「しっかし、嬢ちゃんくらいだよ。こんな小さいのに戦車道の整備員を希望してるなんて。普通花形の車長とか砲主になるからな。」

 

「・・・人によって役割がある。私には整備員に向いてるから。」

 

「ま、頑張りなよ!!」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喝!!溶接が甘い!!」

 

お爺様は工具を握ると人が変わる。

 

頑固なジジイになる。

 

「は、はい!!」

 

前のように上達していないわけではない。

 

ちゃんと人並み(お爺様は人並み以上と言っているが孫馬鹿になっているだけだろう)には上達している。

 

今は怒られたり、殴られたりしても前を目指せる向上心が湧き出てくる。

 

そうやって前に進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

3号戦車が届いた。

 

なぜか新品のように錆びが無くなっていた。

 

「おぉ、流石ほむなんだなー。仕事で頼まれた戦車を改造するわけにはいかないんだなー。」

 

「これを教材にする。」

 

「婆さん、ほむに重機の使い方も教えなくちゃいけなくなったんだなー。帰りはラーメン屋で食べてくるから後で合流するんだなー。」

 

「竹下さんのところに行くんかい?なら、お酒を持ってっておやりよ。」

 

「そうするんだなー。」

 

 



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重機

竹下さんは建設業者のお偉いさんで、戦車とお酒が好きな中年である。

 

私がここに来てからも小学校のPTAの活動として横断歩道で旗を持って安全に渡れるように見守ってくれる優しい人だ。

 

「こんにちはーなんだなー。」

 

「ほっほっ池田さんか。嬢ちゃんも一緒とは。」

 

「こんにちは。」

 

「この子が戦車の整備員希望なんだなー。ちょうど良い教材があるから重機の扱い方を教えてやって欲しいんだなー。」

 

「ほっほっ良いですよ。池田さんの頼みですし、戦車は私も好きですからな。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「ほっほっ基礎からバッチリ詰め込みますからな。」

 

 

 

 

 

 

3号戦車はとても良い教材だった。

 

戦車道に使えるバリエーションが沢山あり、砲塔を外して砲身を前面に溶接することで3号突撃砲にもなる。

 

私は戦車の整備をしている時に快感を覚えるようになっていた。

 

どれだけ速く整備できるか、その整備によって仕上げは完璧か、塗装が剥がれてないか等々、実に勉強になる。

 

ただ、私はそれだけでは普通の整備員であると思い、戦車道経験者にどんな整備員が欲しいのか聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

新潟市まで電車で4駅、そこにはとある場所がある。

 

道場・・・島田流の道場がある。

 

新潟県内にも小さいながらに西住流の道場はあるが、自分の小さなプライドで西住流の所に頼りたくなかった。

 

ピンポーン

 

「はーい。あら?どうしたのかな?」

 

見知らぬ小学3年生が居たらそうなる。

 

「戦車の整備員に成りたくて勉強している。戦車に乗っている人がどんな整備員が欲しいのか聞くために来た。」

 

「あらあら。まあまあ。友紀ー、佐井ー、ちょっと来てくれない。」

 

「どうしましたか師範代。」

 

「ここにいるよ~。」

 

「ちょっとこの子の相手をしてあげてちょうだい。何でも整備科希望らしいからね。」

 

「整備科か。いいよ。私達は乗り手だったから良いアドバイスができるかわからないけど。一応自分の乗ってる戦車くらいは整備できるけど。」

 

「整備科・・・整備員じゃなくて?」

 

「整備科は戦車道の中に入っていて部活なら戦車道部整備科みたいになってるんだよ。まぁ大抵は閑職扱いだけど戦車道が上手い人や長くやってる人は大切だから差別しないけどね。」

 

(差別が有るんだ。)

 

「戦車道をしていて思うことなんだけどね・・・履帯を切られたときにすぐに直せる選手がいれば戦闘継続時間が延びて、結果的に勝利に導けるんだよね。」

 

「中学までは強襲戦車競技に出るか道場どうしの練習試合しか戦車が壊れる機会が無いから整備の大切さが伝わらないまま高校生になって、そこで脱落した子が整備科に入るからそこまで技術的な人は居ないけど。」

 

「究極的な事を言えば被弾した弾痕を即座に埋めれたり、場所によって塗装を変えることができる選手が要れば良いのにね。」

 

「プロリーグが出来れば可能性が有るけど・・・メジャークラスでもそんな選手は居ないよね。」

 

「外国と日本の島田流の本質が違うからだよ。・・・西住流は外国と似てるけど。」

 

「撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れ無し、鉄の掟、鋼の心・・・ね。堅い戦車でやるからそんな選手が居ても使いこなせないよね。」

 

「変幻自在の戦術的な島田こそが日本の戦車道を体現していると思うけど。」

 

(両極端。でも・・・島田は陣形変化により敵の分散撃滅、からの包囲殲滅、西住は正面戦力にドイツ戦車の堅くて高火力車両を使うことで突破、分散、殲滅を可能にしている。・・・ダメだ。私にはここから発展もしくは新しい新戦術を生み出すだけの頭がない。・・・整備科の事はわかったけど、西住を破るには島田も越える必要がある。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。」

 

「また来なよ。今度は戦車をいじらせてあげるよ。」

 

「師範代には言っておくからさ。」

 

「・・・時間がかかる。腕を高めてからまた来る。」

 

「まってるよ~。」

 

 



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タンカスロン

《200円で修理やります》

 

タンカスロンが行われている会場の近くで工具と資材を持ってビニールシートの上でのんびりしていた。

 

5年生となり、修理にちょくちょく島田流の道場に遊びに行くことも多くなり、移動費を稼ぎたいのだ。

 

「誰も来ないか。」

 

約2時間待っているが誰も来ない。

 

強襲戦車競技=タンカスロンはルールなしの野良試合なので修理も自由、改造も重量制限に引っ掛からなければ自由である。

 

「帰るか。」

 

私は工具を纏めて帰宅する。

 

帰宅途中にある、とある本屋に時間があったので寄った。

 

月刊戦車道を買おうと思ったからだ。

 

私は月刊戦車道のあるコーナーに行こうとした時、何かを感じ、ある本を手に取った。

 

《シンキングベイスボール》

 

いつの間にか私はこの本を買って読んでいた。

 

家に帰って約二時間熟読した結果、戦車道の新しい可能性を持つことができたが、自分に実行できるだけの実力がないことから今は断念せざる終えなかった。

 

考え続ける戦車道。

 

この基礎を世界で誰よりも早く見つけるほむであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむ・・・彼女は今後に必要な人だと手紙を見ればわかる。

 

「お母様・・・家元は人を見る目が相変わらず無いか。・・・お父様が亡くなってから激しくなった気がする。」

 

しほは感情を表に出すのが苦手で小中と虐められた事がある。

 

西住の女性は何かしら欠点がある。

 

今でこそ完璧超人に見えているらしいが、私と常夫さんの出会いや、在学中に子供を2人産んだことを考えれば世間的にはダメだろう。

 

「飲むか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しぽりん誘うなら数日前にしてほしいよ!!」

 

「ちよきち、私はダメな母親だよー!!」

 

ちよきち・・・島田流次期家元の島田千代のことであり、中学、高校、大学、社会人でも凌ぎを削ったライバルである。

 

千代の子供が生まれてからはママ友に関係が変わった。

 

2人とも飲むと表向きの鉄仮面が剥がれ《見せられないよ》の顔に変わる。

 

「ほむ~、許してほむ~!!糞ババアと分家を説得できなかった私を!!」

 

「しぽりん落ち着いて、ちゃんと手紙を毎月送ってくれるんでしょ。許してくれるわよ。」

 

「うわぁぁぁん!!味方は夫とちよきちだけだよ!!」

 

(逆レして産んでゴールインしたから分家、母親の当たりが強いんだよねしぽりん。・・・良かった思い止まって。)

 

「まほさんとみほさんはどうなの?」

 

「まほは指導面で難が有ることが中学に行ってから解ったし、戦車乗りとしてはドイツに行ったらゴロゴロ転がってるレベル。小隊指揮能力はダントツで良いけど・・・。」

 

「戦略レベルだと厳しいのね。」

 

コクン

 

「みほは戦車乗りとしても戦略眼もあるけど、性格の弱さでとてもじゃないけど家を任せられない。何より姉に隠れて本来の実力が出せてない。」

 

「2人を協力させれば良いじゃない。なに、それでもほむさんが良いの?」

 

「彼女は戦車乗りとしては5流以下だけど、戦車の性能を2人よりも熟知してたの。それが無かったら4歳くらいには追い出されていたわ。・・・ただ、私に送ってきた手紙に書いてあった事が・・・。」

 

「なに?誓うわ。ほむさんの不利益にはしないわよ。今は島田流の次期家元じゃない千代個人だもの。」

 

「考え続ける戦車道。」

 

「え?」

 

「前面の補強→側面及び背面の対策→装甲の厚い戦車の補充→鈍足による突破力の低下→連係の強化による突破→駆逐戦車等の高火力戦車の待ち伏せ→偵察車両の増加→全体的装甲厚の低下→前面の補強。」

 

「繰り返しているわね。」

 

「これを打破する為の対策が書かれていたのよ。・・・重心点の誘発。これだけで戦車道は変わる。」

 

「でもそれを改善されたら・・・これが考え続ける戦車道。」

 

「彼女だけ次元が違うのよ。私達の15年は先を行ってる。」

 

「飲みましょう。強烈すぎて忘れたい。」



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免許

そろそろ中学校に上がる。

 

中学校は陸上にある中学校か学園艦の付属中学かを選べることができる。

 

・・・で、基本どこの学園艦に行っても良いのだが、プラウダ高校に行くために継続中学校に行くことにした。

 

なぜ継続か、理由は3つある。

 

1つ、石川県に母港が有るから比較的近いこと。

 

2つ、中学生でも人材不足で高校の戦車道部に参加できること。

 

3つ、プラウダのある場所に行くにはもってこいだから。

 

この3つの理由から継続中学校に入学する。

 

しかし、私は2つの免許を取るために猛勉強をしていた。

 

「ボルトが緩い!!電気回路の配置を考えろ!!」

 

「はい!!」

 

「《戦車製造許可書》なんて年齢制限が無いだけで工業系の大学生でやっと取れる資格の筆記試験の1次と2次をジジとババの知らないところで通りおって!!必ず取れ!!」

 

「はい!!」

 

高校生以下で1次を受かったのは3年ぶり、2次は15年ぶりであり、2次が通った人も3次の実技で落ちている。

 

それだけ難しい試験である。

 

その傍らで学園艦内だけで使える運転免許の試験も受けていたりする。

 

どちらも取らないと今後の人生設計に支障をきたすので何としても取ろうと前世のセンター試験並みに頑張った。

 

学校で男子から隈ヤバくねって言われたのは泣きたいほど悲しくなったが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《26

28

56

129

・》

 

チラ

 

《129》

 

「よし!!」

 

受かった。

 

「もうこの分野では凡人と言われることはない!!ふふふ。」

 

喜んでるのに笑顔が前面に出ないので少々怖い。

 

(資材が有るだけ戦車を造って造って・・・ふふ。)

 

前世のオタクと呼ばれた記憶がほむの性格に干渉し始めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

《200円で修理やります。》

 

試験に受かったものの、やることが3号戦車の改造か島田流の道場でM4とかクルセイダーの整備だけなので、雪が積もり、銀世界となったタンカスロン会場の近くでまたまたビニールシートを広げ、パラソルを立てて月刊戦車道を読みながら客が来るのを待つ。

 

「あら?可愛いお店ね。修理をお願いしたいのだけど良いかしら?」

 

高校生くらいの女性が立っていた。

 

チラッとパンツァージャケットを見るとサンダース大学付属高校のワッペン。

 

「ユニバーサル・キャリアなんだけど、エンジントラブルみたいなの、借り物(聖グロから)だから修理をしている所を探してたんだけど・・・できる?」

 

「任せて。」

 

「頼むわね。」

 

私はこの人を知っている。

 

月刊戦車道で数回全身写真で写っている。

 

《サンダース大学付属高校 副隊長策士のメグミ》

 

(サンダース大学付属高校では異質なほど数ヶ国の言葉を話せ、対西住、対黒森峰を掲げBC自由学園と継続高校の火力不足の中堅と戦術が良い弱小にレンドリースをして黒森峰包囲網を形勢〔BCは黒森峰ではなくプラウダと激突してしまったが凄まじい消耗戦となり、プラウダの戦車が次の試合車両割れを起こす 準決勝はサンダース〕し、サンダース準優勝の下地を作り、車長としてもプラウダ戦で4両撃破しているエース・・・て月刊戦車道に書いてあったけど非道そうな人じゃない。)

 

戦車の乗り方で戦車乗りの本性がわかる。

 

それを経験で心得ていた私はメグミさんが乗っていたユニバーサルを見て改めて思う。

 

(優しい人だ。あれ?深く考えているような人じゃないな。策士にはとても見えない。)

 

丁寧に扱っていたけど整備が苦手なようで、不器用なりにも修理した痕を見るとほっこりする。

 

「大丈夫。直せる。」

 

「ホント!!良かった~。」

 

「操縦手の人のブレーキが強すぎてパイプに圧がかかってる。エンジンは年による劣化。」

 

「どれぐらいかかる?」

 

「応急修理はもうしたから動く。エンジンは取っ替え。ブレーキを強めにしたから強くブレーキをしても負担が少ないように改良した。」

 

「ありがとう!!」

 

「メグミ先輩すみません。未熟で・・・。」

 

「良いのよ。それよりもストレス溜まってたんでしょ。モチベーション維持のためにあなたを呼んだんだから」

 

「頑張ります!!」

 

(来年は隊長かな。これは・・・。)

 

「ねぇ、小さな修理屋さん、あなたの名前教えてもらって良い?」

 

「ほむ。池田ほむ。小学6年生。」

 

「ねぇ、サンダースに来ない?」

 

「継続に行きます。修理や改装、改造、製造が必要なら呼んでください。」

 

「製造は無理じゃない?」

 

《戦車製造許可書 池田ほむ殿 15年間有効》

 

「すご!!え!!製造許可書!!現物始めて見た!!」

 

(凄い食い付くな・・・継続にシャーマン何両かくれないかな?・・・まぁ良いか。)



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継続

継続中学がある学園艦は古いの一言に尽きる。

 

入学式で壇上に上がる階段が腐っていて池田なので6番目の私は盛大に落っこちたのは学校を間違えたと思った。

 

校舎は田舎にある一部木造の校舎で、音楽の時間が週に2回、フィンランドの歴史が週に1回ある。

 

給食はまともで、日本食とフィンランドの郷土料理(香辛料は入ってます)が朝と昼に交互に出る。

 

夜は自炊を推奨しているが、購買でパンは売っているので、サンドイッチで済ます人もいる。

 

部屋は個室になっており、航路の関係で隣の部屋と分厚い壁、1室に1台の暖房器具、高校生と共同の巨大な風呂とサウナが寮にある。

 

学園艦の全貌として、学園艦内部を走るバスがあり、雪が甲板に積もっても住民が移動できるようになっている。

 

食肉用のトナカイの牧場もあるが、娯楽施設が皆無なため、市民ホールといった場所で演奏をしたり、聴いたりするのが唯一の娯楽となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ある意味自分にピッタリな学校なのではないだろうか。・・・ここにいる人達は何かしら思いが有ってここにいる。)

 

自分の食事を作りながらそう思う。

 

料理は基礎だけ押さえたので簡単な物しかできてないが、味噌汁と肉じゃが、それにごはんが有ればなんとかなる。

 

そんな食事を1年生が固まっている場所でちびちびと食べていると

 

「失礼。」

 

ドサッと山盛りのキャベツの千切りに大きなカツ、山盛りのごはんにプロテインといかにも運動系ですよといった大柄な女性が私の前に座った。

 

バクバクと食べる。

 

会話が無いので私も普通に食べる。

 

「あたい・・・南夏って言うんだけどあなたは?」

 

お互いが食べ終わった瞬間に彼女が喋りかけてくる。

 

「池田ほむ。」

 

「池田か。・・・あなたは何部に入るの?あたいは戦車道部に入るんだけど。」

 

「私も戦車道部。整備科に行きたい。」

 

「整備科?ならあたいの戦車を整備してくれない?タッグを組みませんか?」

 

本質は臆病な子なんだろう。

 

大柄だからそうは見えないけど、猫背の姿勢が低姿勢なことを現している。

 

「良い。戦車道の経歴は?」

 

「小学4年から・・・ただ、才能が無いって言われた・・・だからあたいは見返すんだ。・・・彼女達に!!」

 

「背が大きいから?戦車に乗ると厳しいの?」

 

「・・・うん。」

 

彼女は中学1年のこの時期で182センチもの身長がある。

 

性格もあり、同門に虐められたらしい。

 

私は西住のことを除き色々な事を話した。

 

「私も才能が無い。だから整備を極める。南は私が支える。」

 

「あたいは池田が整備した戦車に乗って池田の分まで見返す。」

 

才能が無い者と才能が有りながら無いと言われた者。

 

ここに組む。



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呼び出し・・・凡人の策謀

運が良かった。

 

メグミさんは性格は策謀を使うような人じゃない。

 

けれども、行動したことが、結果的に策となり、相手に恩を与えていることが解った。

 

なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「手紙?」

 

切手の無い手紙が寮のポストに入っていた。

 

宛先は私。

 

問題を起こした記憶は無いが、戦車のガレージ(屋根が無いため別名青空車庫)に来てほしいとのこと。

 

私はせっかくなので入部届けを持って青空車庫に放課後、移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー。」

 

チラチラ

 

「うん。」

 

「自己完結しないで。」

 

「いや、なに。メグミから継続に凄い新入生が来るって聞いてたからどんな子かな?と思ってね。・・・継続高校3年、戦車道部部長であり、隊長のルミ。池田ほむちゃん、よろしくね。」

 

手に持っていた入部届けを見て私に微笑んだ。

 

「よろしく。ルミさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュー ジジジ

 

「ほむちゃんそろそろ夕食の時間だよ。食べよ?」

 

「うん。」

 

「あたいも一緒に食べて良いですか・・・部長。」

 

「ええっと・・・南か。と言ってもジャムパンだぞ。」

 

「少し分けますよ。」

 

南は食事の量がとんでもなく多いため、弁当箱も4つくらいある。

 

(ルミさん・・・料理苦手なのかな?)

 

中学生と高校生が弁当を食べる奇妙な光景だが、上下関係が無いに等しい継続は日常的らしい。

 

「ほむちゃん、何を造ってるの?」

 

「KVシリーズの車体。」

 

「KVか。なんで?」

 

「シャーマン5両はジャンボとイージーエイトにできる。T-34の3両もT-34-85、SUシリーズに改造可能。ただ、重戦車が無い。」

 

「プラウダに賭け戦すれば奪えるけど?」

 

「後々難癖つけられる。プラウダとは友好的にいてほしい。」

 

「ドイツ車両は?」

 

「3号は突撃砲にして、2号はルクスにする。」

 

「残りのBT-7の5両もBT-42にしたり、BT-7artにする。改造無しのも有るけど。」

 

「15両だから準決勝までは同等の数で戦えるけど・・・やっぱり金持ち高校が羨ましい!!」

 

「部長落ち着いてください。」

 

KVシリーズの車体を造る意味は他にもある。

 

プラウダに入学するにあたり、KVしか触る機会が無かったので、ISシリーズまでの進化の過程を辿るためにKVを造ることに決めた。

 

「あ、ほむちゃん、ゴールデンウィークからなんだけどBC自由学園に行ってくれない?アズミに協力しないと後が怖いから。」

 

アズミ・・・BC自由学園隊長で第四共和策(サンダース、継続の外圧的結束策)という特殊な手腕でチームの分裂を防ぎ続けているが、今年からは対黒森峰をスローガンに纏め上げている。

 

そのため戦力の増強が急務で、頼りないが、本校マジノ女学院に戦車をまわしてもらおうとしている。

 

(サンダースの昨年の援助はシャーマン5両、本校からはルノーNC1両の産廃だけ。・・・ここと本校マジノもテコ入れしないと・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

べつに弱者救済のためにテコ入れをしている訳ではない。

 

ただただ黒森峰を倒すことだけを考えればプラウダを強化すれば良い。

 

それだけではつまらない。

 

西住を見返す、後悔させるのは10年後、20年後で良い。

 

そこまでに戦車道を発展させ、自分が教える考え続ける戦車道が日本一・・・いや、世界でも認められる今の西住と島田を倒せると認めさせることで初めて私の目標は達成になる。

 

(今は自分の腕しかない。・・・考えを広めるためには私の考えを理解している者に活躍してもらわなければならない。更にその考えを昇華させる為に必要な個人的なライバルが必要。・・・世界ルールが変わるかもしれない今、這いずり回りながらでも進むしかない。姉達のようにレールが有るわけでもない。一寸先も見えない暗闇を・・・協力してくれる味方もいない状態を・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月・・・世界ルールの変更により日本では大学、社会人どちらも乱世となった。

 

《終戦までに、戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車輌、装備品はそれらに搭載が計画されていた物に限る。オープントップ車は今までのように協議を続ける。・・・》

 

(・・・弱い国は猛反発しているけど無駄。これで独ソの戦車の価値がうなぎ登りになったし、今までサンダースが供給してきたシャーマンも大学や社会人に回さないといけなくなる。・・・何よりアメリカがルール変更に賛成したからには覆らない。日本で対策していたのは西住と島田だけ。他の流派は死に体になったか。えげつない。)

 

ルミさんからもらった特別艦外出許可書、BC自由学園滞艦許可書を持ってBC自由学園に向かう。

 

フランス系戦車の設計図も持って・・・。



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BC自由学園

BC自由学園に着いて数日・・・アズミさん以外にこの学園にまともな人はいないのか?

 

「ふん、ガキに何ができる。これだから旧自由派の隊長は。」

 

初めからガキとして、何も見ようとしない者。

 

「食事をお持ちしました!!あ、隊長にこの事をつたえなくていいですからね!!」

 

アズミさんの評価を上げようとすり寄り利用しようとする者。

 

まだ個人的なことなのでまだ良い。

 

まだましだ。

 

「島田派は出ていけ!!西住こそ至高!!」

 

「ファック。九州に引きこもってろ西住!!」

 

「西住も島田も死ねば良いのに。家の道場が潰れたのもこいつらが後ろで何かしたに違いない。」

 

「ファシストが良い!!隊長に独裁政治をしてもらわなければ!!」

 

「共和的に皆の意見を聞いてもらうべきだ!!」

 

「共産主義万歳!!」

 

「黙れ極左!!中道左派の社会主義的が一番だ!!」

 

「うぉぉぉお!!革命が私を呼んでいる!!ばんざぁぁぁい!!」

 

「外人部隊、外人部隊って・・・ドイツ系だからって隔離するんじゃねーよ!!」

 

「あぁん?黒森峰とドイツの関係が悪くなって入れなくなったのを拾ってあげたのはどこの学校かな?ここだよねぇ。」

 

(汚い。まるで絵の具の全部の色をキャンパスに塗りつけた見たいにグチャグチャだ。・・・体面だけでも持たせているアズミさんは化け物としか言えない。)

 

「日常よ。慣れなさい。」

 

「はい。」

 

「・・・で、どんな戦車を造ってくれるの?」

 

「G1シリーズの3両を造る。Renault G1、BDR G1B、ARL V39。」

 

「どれも強力な砲を搭載できるわね。・・・予算は限界ギリギリまで払うわ。造れるだけ造ってくれる。」

 

「わかりました。」

 

(この恩は安いかもしれない。5年後には私が贈った戦車も他の車両と同じ扱い、派閥争いの道具にされるかもしれない・・・か。)

 

バーナーと工具を持った少女は話を聞いてくれる派閥争いができるだけの力がない閑職の整備科に協力を依頼するのだった。

 

 

 

 

 

 

「ほんまに中1なん?どんどん戦車の形になるんやな!!」

 

「せやけん。せやけん。」

 

「皆の、協力が・・・あったから。」

 

「閑職扱いのあっし達も役にたてた。嬉しいなぁ。」

 

「せやけん。頼りにされるのは嬉しいけん。」

 

(・・・なぜ整備科が閑職なのだろう。本来道具は自分が整備する物。なのに他人に整備させ、それを使って戦車道をし、不備があれば整備科に責任を押し付ける。おかしい。実におかしい。)

 

BC自由学園を去る頃には、整備科閑職問題も改善しなければならない目標と意識するようになる。



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前龍

内ゲバ学校から退艦(脱出)した私は一旦継続に戻り、南を連れて夏休み期間だけサンダース大学付属高校に移動していた。

 

南をつれてきた理由は力があるので荷物持ち要因であったり、ヘビーのような鈍足戦車に触れてもらうためだった。

 

南は身長の関係でT-34には乗れず、かといってドイツ系の戦車では彼女の力が最大限活用できない。

 

南の最大の武器・・・それは意外なことに精密射撃である。

 

小さな車内での装填は筋肉と身長が邪魔して上手くできないが、砲手兼車長(後に出てくるブリザードのノンナと同じ役割)としては優秀であると私は確信していた。

 

「あたいが付いてきて良かったの?」

 

「あなたが必要。」

 

「・・・池田。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?あらあら?そっち系の趣味?」

 

「百合の趣味はない。」

 

メグミさんの冗談から始まったが、最近疲れているらしい。

 

前までは100両近くあったシャーマンも大学の方に回され、現在は半分近くにまで減り、4軍を解体して、人事異動を断行せざるをえなくなったりと苦労しているらしい。

 

「とりあえず・・・イージーエイトに改造できるだけお願いするわ。そしたら1両どんな改造でもして良いわよ。報酬として1両M6も用意しているから頑張ってね。」

 

「はい。・・・お願いがある。南をシゴイて欲しい。」

 

「良いわよ。南ちゃんはいい?」

 

「はい!!お願いします!!あたい頑張るから池田も頑張って!!」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

イージーエイトにするのは簡単である。

 

それこそ10日で20両いけるくらいには。

 

ただ、私の中で改造する車両数は25両までと決めている(決勝の20両に予備5両)。

 

なので時間が余る。

 

せっかくなのでサンダース大学付属小学校で将来性の有りそうな子に唾付けしておこうと思った。

 

ぷらぷらーっと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い痛い!!やめて!!」

 

「頭良いからって馬鹿にしやがって!!」

 

「いつもノートに何か書いて不気味に笑うのが気持ち悪いんだよ!!」

 

(・・・虐められてる自覚もある。が、悔しいことにこの子達に媚を売らないと戦車道をやるのに困る。西住流分家の次期師範になるであろう人間が1人、戦車の天才と言われている子が1人。そして取り巻きの15人。今に見ていろ。)

 

「やめなさい。」

 

「なんだよ!!・・・なんだ戦車道部かよ。しかも整備科。」

 

「吉田さんはね、西住分家の吉田流の師範の娘だよ。良いの?整備科のあなたが反抗して。」

 

「大丈夫?あなた?」

 

「う、うん。」

 

「無視するな!!」

 

「だから何?屑。西住にそんな屑はいない。分家の屑。」

 

「「な!?」」

 

「才能溢れる少女を潰す・・・戦車道に対する侮辱。」

 

「戦車に乗れないよ!?一生整備科だよ!!謝りなさいよ。」

 

「私は屑のあなたより才能は無い。だから戦車には乗らない。だけど私には夢がある。」

 

(夢?)

 

「西住、島田の両家をも越える・・・新流派を創ること。」

 

(・・・お、おお!!)

 

「あなたの名前は?」

 

「美琴。・・・御坂美琴!!」

 



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前龍2

「美琴、継続に来な。私があなたを鍛える。」

 

屑を追い払った後、私は美琴に継続に来るように言った。

 

「え?サンダースの人じゃないの?」

 

「私は継続中の1年生。高校はプラウダに行く。」

 

「人生設計ができてるんだ・・・。」

 

「私は4歳頃に自分の戦車道の実力がわかったから。美琴、夢はある?」

 

「ない。ただ、戦車に乗りたい。強い戦車で沢山の敵を倒したい。」

 

「なら・・・造ってあげる。あなた専用の戦車を。」

 

「え・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は御坂美鈴・・・サンダース大学に通っている。

 

専業主婦をしていたが、美琴が大きくなったため、勉強したくなったので大学に行っている。

 

私が家に帰ってくると美琴が面白い友達を連れてきていた。

 

「美琴ちゃん。新しいお友だちかな?」

 

「いや、スカウト。」

 

「スカウト?そうなの?名前は?」

 

「池田ほむ。」

 

「ほむちゃんね。スカウト?なんの?」

 

「継続中学の戦車道部に・・・いや、私の戦車道に。」

 

「なになに?お姉さん気になっちゃった。」

 

「西住を倒すためにあなたの娘さんの美琴ちゃんが欲しい。この子はエースになれる。」

 

「エース?お姉さんも戦車道をかじったことは有るけどエースは聞かないな。アタッカー(前衛の主力)のこと?」

 

「最低5両を撃破できる存在。日本にはあまりいない。ドイツやロシアが多い。」

 

「え?そうなの?」

 

「あら?美琴ちゃんには言ってなかったの?それ以前になぜわかるの?」

 

「・・・私の姉達が天才だったから嫌でも上手い下手が区別できる。目には自信がある。」

 

「姉達?私も知ってるかな?」

 

「西住みほ、西住まほ。私の姉達。」

 

「西住!?本家の長女と次女じゃない!?」

 

「美琴口調が素になってるわよ。となるとあなたがタブーの3女ね。」

 

「実際下手だから何も言えない。だから倒す価値がある。」

 

「・・・その倒すのに私の娘が必要なのね。」

 

「美琴次第。私はここにいる分家に潰されるくらいなら私が育てたい。」

 

「美琴に任せる。」

 

「ちょっとお母さん!?」

 

「小学校も休んじゃえ!!私は止めないわ。」

 

「夏休み期間はこっちにいる。考えて。」

 

「わかったわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エースか。・・・言われて嫌な気持ちは無いわね。」

 

小学6年生の私はお母さんである美鈴の教育により他人よりも勉強、精神面で強い子である。

 

ただ、戦車のことになると暴走するのが短所である。

 

・・・ほむは私を見てくれた。

 

吉田流の長女と天才と呼ばれる少女を素通りして私を。

 

答えたい。

 

ほむの期待に。

 

叶えたい。

 

私も彼女の野望を。

 

支えたい。

 

彼女の開く新しい戦車道を。

 

答えは決まっていた。

 

「・・・行こう。ほむのところに。」



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「〇〇〇、あれ頼んだぞ。」

 

「〇〇〇、これどこに置くんだっけ?」

 

「〇〇〇、声が小さいんじゃないか?」

 

「〇〇〇先輩、あ、呼んだだけです。・・・無言でトンボを渡さないでくださいよ!!え?グランド整備2人でやる?そんな無茶な!!」

 

「〇〇〇先輩、僕もやりますよ!!」

 

あぁ、・・・懐かしい。

 

前世の夢か。

 

「・・・。」

 

お前もいるのか・・・〆〆

 

「お前は平だろ?キャプテンの俺に従えよ。」

 

「嫌だね。先輩から教えてもらったことに従う。それにお前はこのポジションやったこと無いだろ。」

 

「〆〆、お前なんなん?外野なめてんの?」

 

「いえ・・・覚えてろよ。」

 

 

 

 

 

グサ

 

「あ、わりい。スパイク当たっちゃった。」

 

シュ

 

「チィ、避けるなよ。ボールをさ。」

 

・・・背後から硬球を投げやがって・・・。

 

 

 

「監督、止めます。」

 

「〇〇〇!?思い直してくれないか!!」

 

「無理です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバ

 

「嫌な夢だった。」

 

 

 

 

 

 

 

南は重戦車に乗ってると本当に生き生きとしている。

 

狭い車内よりも比較的空間に余裕がある車両は彼女にピッタリだな。

 

「美琴、まずやること。」

 

「はい。」

 

「戦車の整備と食いトレ。」

 

「え?」

 

「戦車の整備は戦車の性能を把握するのに一番良い。例えば運転手ならレバーのグリップを自分なりに馴染む物にするだけで0.5秒近くの変化があったりする。食いトレは筋肉をつける段階だから脂肪まずつけてそこから絞る。私もしてる。」

 

「太るんですか?」

 

「太るけど身長や胸にくるから最終的には完璧な女性の体型になる。」

 

「が、頑張ります。」

 

「うん。・・・料理は栄養学の練習もしてるから私が作る。必ずプロテイン飲ませる。」

 

「小学生くらいにプロテイン飲ませると背が止まるとか聞いたことがあるんですけど・・・。」

 

「それは迷信。」

 

「そうなんですか。」

 

「そう。」

 

 

 

 

 

 

 

全国大会までにイージーエイトの改造を終わらせた私は美琴用に改造して良いとされたシャーマンをM26パーシング擬きにした。

 

もちろん戦車道には出せないが、後々乗ってもらう車両運用に近いので燃料が無くなるまで戦車を走らせた。

 

南は戦車道の試合を観てもらうために会場に行かせた。

 

私はその間に2人の夕食を作るために寮の食道でレシピ本とにらめっこしたり、戦車の整備をしたりした。

 

その中でふと思う。

 

なぜアメリカは戦車道ルール変更を認めたのだろうか・・・と。

 

(アメリカが勝つには審議中のTシリーズが認められないと話になら無い。不気味だ。)

 

後々特殊なルールの戦車戦がアメリカより提案されることになるとはほむは知らない。



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食いトレ

「う・・・。」

 

「早い・・・ゆで卵恐怖症になるの。」

 

「ゆで卵にマヨネーズかけて食べるのを夕食前に2個食べるなんて・・・。」

 

「そろそろアレンジ加えるから。」

 

「そうしてください。」

 

「あたいは何個でもいけるよ。」

 

「・・・もう一個食べます。」

 

南の驚異的な肉体を見ると食べないわけにはいかない美琴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたいは帰ってきた!!」

 

「継続。」

 

「小学校に通わない小学生がいるらしい。」

 

「私が高校レベルまで教える。」

 

「ほむって何者よ。」

 

「西住絶対倒すウーマン。」

 

「ただしそこまで憎悪は本家には無い・・・んだよね。」

 

「うん。」

 

漫才をしながら継続に私達は帰ってきた。

 

継続の今年の成績は3回戦敗退。

 

ギリギリまで粘ったらしいが、車両整備費用不足でシャーマンの足回りが故障していたため、速度が落ちてしまい、聖グロのチャーチルにフラッグ車を破壊され終了。

 

残りのテコ入れした各校も黒森峰にやられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この年でレポートを書く羽目になるとは・・・。)

 

黒森峰を倒すには黒森峰の戦術、保有戦車の弱点を上手く付かなければならない。

 

そのためどうしても引っ掛かるのがマウスだった。

 

フラッグ車両になることは滅多に無いが、時速25キロで動く化け物は本体より真っ直ぐ進む傾向が有るためマウスの進路がわかれば、腕の良い指揮官なら全体の進路がわかるだろう。

 

私にはわからないが。

 

「マウスを倒さない限り後ろには回り込めない。マウスの弱点であるホッペを貫通させるにはソ連のあの車両か弾数制限のある弾を使うしかない。・・・弾数制限のある弾でも角度によっては弾かれるからあの車両を使うしかない。・・・ただ、美琴も南もその車両に合ってない。」

 

机に顔を伏し、ズリズリと上下しながら考える。

 

凡人だから思いつくはずもなく、切り替えて、戦車の弱点を事細かく書くだけに留めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふう・・・。」

 

「美琴ちゃんお疲れ様。」

 

「お疲れ様です。」

 

「どう車長は?」

 

「し、しんどいです。ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「感覚でなんとなく色々な事が見えます。砲弾が何となく飛ぶ方向や地形の起伏が。」

 

「運転しやすかったのはそういうことか。」

 

(それ以外にもわかる・・・第三者視点て言えばいいのかな?砲身がこちらを向いているのが壁越しに見えた。・・・KV-1でこれならもっと速度が出る車両ならどうなるのだろう?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《プラウダ初戦敗退。戦車強けど人育たず。監督解雇に。》

 

《育成の失敗か?》

 

「ねぇのんな、どう思う?私達が行く高校は?」

 

「しあ、前監督は頑張っていたと思います。」

 

「そうよね。・・・やっぱり私達が学校を変えるしか無いかもしれないわね。」

 

「この際です。渾名で加藤しあ・・・カチューシャでも名乗って独裁制を引いては?」

 

「いいわね。ならのんなはノンナね。」

 

「変わってませんよ。カチューシャ様。」

 

「い、良いのよ!!シベリア送りよ!!」

 

「様になってますよ。カチューシャ様。」

 

「何だかくすぐったい。」

 

プラウダ中学3年、加藤しあ、東條のんな。

 

カチューシャとノンナに改め無名の小娘は改革を起こす。



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連虎

私はよく長期休暇は船の外に出かける。

 

冬休み。

 

南は残って自主練、美琴は私に着いてきた。

 

私が向かったのは長野県・・・そこに昔に没落した流派がいることを本家の本に載っていたので知っていた。

 

風見流、旧満州軍にて滷獲したT-34で農地を守った男性達が元祖で、戦車ならなんでも乗る。

 

農業が主流のため副業的な戦車道としてしか意識していなかった風見流は戦後10年で没落したことになっている。

 

「パンジーが一面に・・・。」

 

「きれい。」

 

「ここに風見流の子孫がいるのほむ?」

 

「いる。電話で確認は取った。」

 

「へぇ。・・・でもなんで?」

 

「風見流は花を咲かせる。血の花を。」

 

「え?」

 

「実弾を使った殺人流派だった。今は違うけど。」

 

「あら?詳しいこと。」

 

前に緑色の髪をした女性が立っていた。

 

季節外れの麦わら帽子がなぜか似合う。

 

「小さい子じゃない。お茶を出すから家に来なさい。」

 

「お邪魔します。」

 

「お邪魔します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今私の子は小学校だけど、貴女達は何が目的?」

 

「戦車道のチームメイト探し。」

 

「貴女の名前は?」

 

「池田ほむ。」

 

「貴女は?」

 

「美坂美琴。」

 

「良い名ね。・・・私の娘に戦車道をやらせるのは自由。あの子の意思で良いわ。ただ、風見流はルールの中では何でもやるわよ。それは勝つために。」

 

「だからこそ欲しい。・・・とある中学の戦車道の選手が道を外したらそれは戦争と言った。戦車はそもそも戦争の道具。戦車道はその道具を借りてるもしくは竹刀のような練習用の道具でしかない。・・・私がしてるのは西住に対しての戦争。島田もいつか倒す。」

 

「強欲だこと・・・あの子は強い戦車に乗りたがるわよ。勝つために最高の戦車に。」

 

「私が思う最強の車両と娘さんの思う最強の車両は違うかもしれない。ただ、戦車だけでは最強にはなり得ない。乗る人で変わる。」

 

「貴女が乗ったら?」

 

「鉄屑以下。ただ、美琴が乗るなら最強の名に相応しい戦車になる。」

 

「そう・・・あら。お帰りなさい。幽香。」

 

「お母様、だれ、そいつら。」

 

「お客さんよ。幽香に戦車道のチームメイトになってもらいたいのですって。」

 

「へぇ・・・なら私を焚き付けるような物を見せてくれない。」

 

「これ、あげる。」

 

「へぇ、良くできた地図ね。で?」

 

「ここにある農業区を自由に使えるようにする。プラウダの。」

 

「それは魅力的ね、他には無いの?」

 

「ソ連のIS系列の戦車かSU系列の戦車に乗せてあげる。」

 

「まだ無いの?」

 

「プラウダの副隊長にもしてあげる。・・・こちらからも条件を出す。幽香の見込みが有りそうな友達4人プラウダに連れてくる。隊長の命令には絶対に従ってもらう。美琴とそこにある戦車のシミュレーターで勝負してもらう。」

 

「勝負に負けたら飲んであげるわ。勝ったらこの話は無し。」

 

「美琴、頼む。」

 

「え?え?」

 

こうして美琴と幽香のシミュレーター対決が始まる。



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連虎2

シミュレーター・・・というよりworld of pantaというゲームであり、戦車道を始めるきっかけがこれだったというくらい人気でクオリティーの高いシュミレーションゲームである。

 

その回線が繋がれた、コンピュータを使って1対1で幽香と美琴が戦う。

 

 

 

 

 

 

 

幽香、美琴共に車両はT-34、57mm ZiS-4砲型であり、ステージは市街地。

 

「蹂躙開始。」

 

「進軍!!」

 

それぞれ掛け声を言って戦車を進める。

 

 

 

 

初めに動いたのは幽香だった。

 

市街地中央にある高台になっている教会を砲撃で破壊し、進路を封鎖。

 

そのまま高台に陣取った。

 

(俯角が足りていない。)

 

美琴はほむの影響で散々戦車の性能を詰め込んでいたので俯角が足りないT-34が中途半端な高台から若干車体下部が見える位置にいる愚策を瞬時に見抜いた。

 

川に隠れていた美琴のT-34はギリギリ見える履帯を切る。

 

 

 

 

「あ!?」

 

履帯が切られたことで角度が下に下がり側面が見える。

 

約2秒で装填が終わる57mm ZiS-4砲は履帯が回復する約10秒に8発の砲弾が突き刺さる。

 

履帯ハメと呼ばれるテクニックで完全に動けなくなってしまい幽香は降参。

 

どちらも小学生であるが、幽香は建物を壊して進路妨害するのは評価できるし、美琴は戦車の性能しっかりわかっていたこと、川に隠れてじっと待てる忍耐はとても良い。

 

 

 

 

 

 

 

「鮮やか。技前。」

 

「・・・くそ。」

 

「・・・いいや。この話は無し。別のところに行く。行こう。美琴。」

 

「え?え?」

 

「お茶、美味しかった。ありがとう。」

 

「あ、ありがとうございました。」

 

「また来なさい。」

 

 

 

 

 

 

 

「お母様、なぜ止めなかったの!!」

 

「幽香、あなたは試されていたのよ。勝負に乗った時点で評価が開始されていたの。いくらゲームとはいえ、戦車の性能もわかってない娘に戦車を乗せたくはないわ。・・・幽香は評価していた方の池田ほむにね。」

 

「・・・池田ほむ。もう一人は?」

 

「美坂美琴。・・・相手の名前も知らない時点でアウトよ。池田ほむは幽香の事を少しだけ知っていた。それが明確な敗因よ。・・・悔しくないの?やられっぱなしで。」

 

「悔しい!!」

 

「見返してやりなさい。どうするかは幽香、貴女次第よ!!」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある意味私は孤独な戦いをしているのかもしれない。

 

裏方で才能があったのが教育と製作の能力・・・他は良くても秀才レベル、戦略眼や資金運用能力は凡人、戦術、戦車運用はくそ雑魚ナメクジ。

 

今誰かに評価されていることは無いだろう。

 

先輩達は製造の方で才能が有っても、最終的な事を言えば、戦車の工場で作った方が遥かに安いし・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅん。」

 

西住の本家で1人がくしゃみをする。



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そりが合わない

私は2年生に上がって2ヶ月・・・高校の先輩に性格的に合わない人がいる。

 

ポロロン

 

「それは本当に必要なことかい?」

 

「一見必要でなくてもそれが生きることがある。」

 

ポロロン

 

「戦車道ではなく、自動車整備科に行けば君の将来は薔薇色じゃないかな。」

 

「戦車道が下手だから?・・・戦車道部を辞めてほしいの。」

 

「そうとは言ってない。」

 

ひねくれ者。

 

高校1年生のミカ・・・本名は不明。

 

 

 

 

 

 

「南、用意したSU-85Bは?」

 

「天井が無いから装填がしやすい。あたい、この戦車気に入ってるよ!!」

 

「そう。・・・美琴、A-20は?」

 

「速くて良いわね!!戦車道用だから80キロも出るから速い。」

 

「そう。」

 

美琴も中学生となり、正式に戦車道部に入部した。

 

けれど、やることはあまり変わらない。

 

頭が良いから私の代わりに指揮をお願いしたりしている。

 

・・・普通に彼女の方が上手かった。

 

そのため、指揮関係も凡人の域をでない私は指揮を程々にして、戦車の整備と彼女の達の食べる料理の腕がどんどん上がる。

 

才能が有るから2人が教えたことを実践してどんどん上手くなるのを眺めながら、私はカメラと工具を片手に、フラフラと艦外に出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「西本願寺、仏流の別家の聖家の長女。・・・聖白蓮。」

 

弱者救済、才能が無い者を上達させることを目的としていたが、本家の方針転換で孤立していた別家。

 

中学1年生。

 

「ソ連の戦車は強い。それはある程度の力が有れば才能が無い人でも戦力になれます。私はそれを証明するために貴女に協力します。」

 

不遇にも負けない同志を訪ねたり

 

 

 

 

 

「何でお父さん動かないの!!何でよ!!何がいけないの!!・・・うわぁぁ!!」

 

「淡、泣かないで。お姉ちゃん頑張るから。」

 

「黄炒姉・・・。」

 

社会人戦車道チームの母親がいる家を訪ねた時、母親の不倫とその父親が首でブランコしているのを発見したこともあった。

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに帰ってきたんだな。」

 

「お帰りなさい。ほむ。」

 

「ただいま。」

 

「ほむ姉だ!!」

 

「ほむほむ!!」

 

「元気だった?」

 

「あのねほむ!!黄炒姉がね・・・」

 

「や、やめてよ!!淡!!」

 

「えへへ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間はすぐに過ぎていく。

 

凡人は足掻く。

 

無様でも勝つために。

 

とにかく足掻く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本家の2人は素晴らしいですね。」

 

「まほ殿、みほ殿も西住の看板を背負うのに充分な力が今の段階で有りますものね。」

 

「我々分家も頑張っていきませんと。」

 

「黒森峰10連覇も見え始めましたし、我々分家も世間に見せつけませんと。」

 

「島津は4姉妹の3女と末っ子が中学生でしたな。」

 

「今高校の長女と次女はまほ殿、みほ殿を守ると意気込んでますの。」

 

「それはけっこう。」

 

西住分家には中学1年生と小学6年生の層が分厚く、島津の2人を始め、久保は師範家が1人、師範代の3家が4人、津田、吉田にそれぞれに3人、分分家や別家も合わせると18名になる。

 

ほむの最大の障害である。



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天才と凡人の違い

いくら才能が有っても、努力無しには上手くはならない。

 

前世の野球でそれを感じていた私は体が悲鳴をあげるまで全力で学び、そして鍛えた。

 

「TシリーズとISシリーズは良い。」

 

そんな中でも戦車の性能を限界まで引き出せるにはどうすれば良いか凡人並みに考えていた。

 

「表面焼き入れ、改良サスペンションの装着・・・くらい。」

 

今できることはそれくらいしかない。

 

けれども勝つためにはまだまだ必要である。

 

「どうすれば勝てる?どうすれば強くなれる?」

 

答えの無い問いを必死に探し続けるのであった。

 

「・・・いいや。パンツァーのクランで休憩しよう。地吹雪さんいる?」

 

スカイプでクランのメンバーに話しかける。

 

 

 

 

 

 

 

ポロロン

 

「何だろうね。あれは?」

 

私の名前はミカ・・・継続高校1年生だ。

 

あれとは中学2年生の池田ほむのことで、戦車に乗らないのに、同学年の南と中1の美坂に色々教えている。

 

私達高校側では彼女の評判は悪い。

 

「戦車が造れるならもっと強い戦車を造れよ・・・。」

 

「戦車道が下手くそなのに練習にも出ないでどこかに行くし・・・。」

 

「・・・私生活は凝り固まった昭和の人のようで気に入らない。」

 

「頭が良いから先生達の評価が高いのも気に入らない。」

 

軽くでこれほど出てくる。

 

一番嫌われている原因はジェンダー(男女差別)問題がある。

 

継続高校は共学であるためこの問題がよく上げられる。

 

男女平等を校風としているこの学校で

 

「整備は力のある男子にやってもらう方が本来は良い。」

 

「男女平等は不可能。男性か女性のどちらかが優勢になる。この学校でもそうだけど共学の学園艦は女性優遇が多すぎる。プラウダは例外。」

 

等と発言したことがあったので、一部の女子から嫌われている。

 

「その発言が本当に人生に必要なことかわからない。」

 

私の親は発言には本当に注意して生きてきた。

 

私もその姿を見てきたのでこんなひねくれた話し方になったのだと思う。

 

ただ、私も池田ほむが苦手だ。

 

何を考えているかわからないのに野望が有りそうで、死んだ魚のような目の中に燃える炎のようにギラギラした物がある。

 

ああいう人間が世界を変えていくのかな、等と下らないことを考えたりしたり、しなかったり。

 

今日はBT-7に乗りながらカンテレを弾く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむほむ!!これ良いね!!」

 

「ほむ姉、IS-1って言うんだよね?この戦車凄いね!!的が弾けとんだよ!!」

 

「試作車両だから不安だった。データを取りたいから乗り回して。」

 

「「わかった!!」」



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カチューシャと凡人

ゲームのクランチャットをしているとクラン長の地吹雪さんが悩み事を書くことがある。

 

地吹雪さんの学校では風紀が乱れているらしく、部活もそれに引きづられて、成果が出てないらしい。

 

カタカタカタ

 

《立場的にどうなん?書記長?》

 

書記長とは地吹雪のことである

 

《厳しい。先輩達が引退しないと体制は覆らない。》

 

ちなみに私はこの時、地吹雪さんを男の人で、夏のインターハイとか言うのでサッカー部の人と勘違いしていた。

 

《まぁ、地吹雪にかかれば全国狙えるくらい地力はある学校だから。》

 

地吹雪は打ち漏らして優勝が抜けている

 

カタカタカタ

 

《ブリザード副書記長は確か書記長のリア友でしたよね?あの人はどんなやくわりなん?》

 

《私の補佐と戦術の要ね。あとエース。》

 

《呼ばれた気がして。》

 

ちなみにブリザード副書記長のことも男だと思っているが、書記長への愛が強すぎるのでホモと呼ばれることもあるが、その後チームを組むと必ずフレンドリーファイヤで弾薬庫を破壊される。

 

カタカタカタ

 

《ホモさんちすちす。》

 

《・・・(^_^#)》

 

カタカタカタ

 

《無言はきついっすわw》

 

《ブリザード落ち着いて。》

 

《いや、同志様しかし。》

 

《で、体制強化した後、誰がその体制を継ぐの?》

 

《え?》

 

《強化に成功しても自分のカリスマだけで成り立たせるなら1代で終わり。来年と再来年だけで終わるよ。》

 

《・・・そ、そうだった。抜けてた!!》

 

《副書記長も確か同じ年だから大丈夫なの?》

 

《ダメですね。同志様、いかがします?》

 

ピロン

 

「ん?」

 

《コチャに呼ばれています。》

 

《同志ゆっくりにスカイプのID送ります。〇〇〇〇〇〇》

 

「まじか。」

 

ブレンドに登録するとすぐに

 

トントトン パパ トントトン

 

というスカイプの独特な音楽が流れ始める。

 

「怖いから南呼ぼ。あと美琴も。」

 

 

 

 

 

 

パチ

 

『あ、あー。聞こえる?』

 

「え、女?」

 

「ほむ!!何が男の人よ!!」

 

「あたい的には安心だけど。」

 

『え?何で声がいっぱい・・・ゆっくり!!どういうことよ!!』

 

「いきなり連絡をするから警戒した。」

 

『ちょっと!!カメラにしなさいよ!!顔が見えないじゃない!!』

 

『カチューシャ様、さすがに顔出しは不味いのでは?』

 

『ノンナ、これから戦車道で有名になるのよ!!顔出しNGなんて言ってられないわよ!!』

 

『そうですが・・・。』

 

ノンナ・・・カチューシャ・・・あ、

 

「プラウダのT-34-76の砲手と通信手。」

 

『ほら、ノンナ!!わかる人にはわかるのよ!!』

 

パチ

 

小さな女の子と黒髪の美人さんか映る。

 

「南、美琴、ここにいて。」

 

「「え?」」

 

パチ

 

私達もカメラに映る。



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四天王

私ことカチューシャはノンナとクラーラを誘ってゲームをしばしばする。

 

離れた友人の凛ことダージリンと会話をするのもこのゲームのチャットでするほどハマっている。

 

・・・んで、自分のクランを作ってノンナとクラーラの3人で小隊を組んだりしていた時、勝率69%、12000戦以上の猛者が入ってきた。

 

《暇人です。よろしく。》

 

これが彼女の始めての言葉だった。

 

そこから3年・・・受験期もズルズルと続けてしまい、高校で忙しくなった今でも自室のパソコンでやっている。

 

んで、たまにリアルの愚痴を書くことがある。

 

相手側の性別は戦車道をやっていると言っていたので女性とわかっていたので安心して書ける。

 

ただ、

 

《で、体制強化した後、誰がその体制を継ぐの?》

 

その言葉は私とノンナ(後でクラーラ)に衝撃を与えた。

 

「ノンナ、今の内部中学生に私の意志を継ごうと思っている奴はいた?」

 

「いえ・・・。」

 

カチューシャの天才的な頭脳で戦車道は普通より少し上手いくらいのダージリンがなぜ聖グロリアーナ女学院戦車道部で1年でありながらある程度の権力を持っているかを思い出した。

 

聖グロの次期隊長ゴールデンルールのアールグレイからの寵愛を受けていることが半分と【中学生のルクリリ、ニルギリ、ローズヒップの育成に成功している実績】、アッサム等の左遷された者達を引き上げた信頼の3つがある。

 

本人は中学生組は後継者にはなれないから別枠で引っ張ってくると言っていたので約5年間は絶大な影響力が存在することになる。

 

ダージリンも聖グロの戦車道部の3大派閥構想からの脱却という改革を使用としているので、成功すれば最低でも5年は安心できる。

 

こちらはどうか。

 

私はともかく、ノンナやクラーラは戦車道では鬼才の域であり、私も大隊指揮なら並ぶもの無し(これは後で西住姉妹や島田の娘も負けを認めることになる才能である)とだが、このまま改革を私達だけで断行し続ければ・・・

 

顔が真っ青になる。

 

「頭(私)や両手(ノンナとクラーラ)が消えたらただの肉片になるじゃない。」

 

思考の硬直化、次期隊長が間違った思考教育をする可能性、引退後、私を絶対視する生徒とそうでない生徒の内部抗争・・・負の面が出る出る。(ただしほむがいない世界ではこれが浮き彫りになり、暗黒期と呼ばれる低成長、停滞期が約10年近く続くことになる)

 

「ノンナスカイプの用意をしなさい!!」

 

「はい。カチューシャ様。」

 

 

 

 

 

 

『あ、あー。聞こえる?』



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四天王2

カチューシャと私はスカイプ越しに会話する。

 

その声をノンナ、南、美琴、後からやって来たクラーラが聴く。

 

「初めまして。ゆっくりこと池田ほむ。」

 

『改めて名乗るわね。カチューシャよ!!ほむは・・・継続高校の生徒ね。』

 

チラ

 

後ろに継続高校の校章の壁紙がある。

 

「そうです。」

 

『単刀直入に言うわ。カチューシャに協力しなさい!!』

 

「喜んで。」

 

『まぁダメだと思うけど、うちの学校は腐敗が酷くて今年の夏が終わったら革命を起こすわ。私が盟主じゃないけど、理事長兼校長先生を巻き込んでるから失敗はない・・・ってえ?』

 

「再来年、私と後ろで聞いてる大きい方がプラウダに行く。」

 

『ん?ん?展開早くない?』

 

「私には目標がある。そのためにはプラウダが良い。ただそれだけ。」

 

『・・・冬休みになったらこっちに来なさい!!直接話したいの。』

 

「わかった。ただ、人数は多くなる。」

 

『私とクラーラがカチューシャ様を手伝うので・・・。』

 

『約束だからね!!』

 

 

 

 

 

 

生粋の革命精神溢れる若者・・・それが私から見たカチューシャだ。

 

ノンナ、クラーラともに凄いことはわかっているが、学生であのカリスマを備えている彼女は女傑の名が相応しい。

 

私が今つくった仲間達は協力体制の状態・・・そこからどの様に本当の仲間にしていくか・・・これも課題だ。

 

ただこの会話はカチューシャの飛躍を決定した。

 

カチューシャを中心としてエースのノンナ、参謀のクラーラ、南もとある名前を与えられ氷山の渾名がつけられ、オットーと呼ばれるようになるほむがいた。

 

別名プラウダの四天王である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《お母様へ

 

そろそろ準備が終わります。

 

これから西住と敵対し、闘争を続けることになるでしょう。

 

手を抜かないでください。

 

全力で当たってください。

 

全力で私の前に立ち塞がってください。

 

それらをすべて乗り越え、踏み台にします。

 

戦車道の才能だけが戦車道じゃないことを示します。

 

池田ほむより》

 

 

 

 

 

 

 

 

「困りましたねぇ・・・。」

 

島田流次期家元島田千代は戦車道のルール改正で予想以上に各流派が没落したことに頭を悩ませていた。

 

「他国のように戦車道が盛んなら独自リーグを作るなりして生き残れるように政府が動けたと思う・・・が、今回のは動けなかったわね。」

 

数十に及ぶ流派の断絶・・・知的財産の損失は凄まじい物になる。

 

流派の弊害と言えばそれで終わりだが、秘伝の技術を流派の断絶とともに社会に解放するだろうと一部楽観視していた島田流上層部は断絶が本当の意味で身投げや心中、焼死により秘伝の書もろとも消えるのが余りに多かった。

 

まぁ戦車道1本で食べてきた者以外も死ぬことは無かったが、秘伝の書を徹底的に隠し、結果として日本の戦車道はやや後退してしまった。

 

問題はこれだけでない。

 

流派が無くなればそれだけ戦車道を教える道場が減るため、戦車道がやりたくてもできない。

 

残った道場のキャパを超えてしまい、質の低下が起きていた。

 

「何とかしないと・・・うぅ。」

 

島田流次期家元であると同時に手元にある大学戦車道連盟に就任予定の千代だった。



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島田流

一族経営とも言うべき西住とトップだけが一族で残りの幹部は所属する社会リーグの監督や地域の師範、師範代からなる島田流・・・。

 

西住の分厚い世代と島田流の世代もまた分厚い世代がある。

 

今の中学1年、小学6年と西住流とバッチリ重なっている。

 

これ等は今は幼い次期島田を支えるであろう島田愛里寿を支える為に幹部が子供の生む時期を調整したためだった。

 

年下では足を引っ張ってしまうかもしれないと西住のしほが産んだからその後に産むとは真逆であった。

 

西住の18人には人数で負けるが、既に才能の片鱗を見せている11名が存在した。

 

その少女達は島田流の支柱と見なされていた。

(後に島田愛里寿が超がつく天才だったことから島田の不安定間も解消されていくが今は混乱期であった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタカタ

 

《西住はどうですか?》

 

《組織としては徐々に改善されている。分家の師範達が経験を積んで使えるようになったから。私個人では最悪。》

 

カタカタカタ

 

《来年は黒森峰中学に行くの?》

 

《はい。姫様のように私も才能が有りませんし、そのせいでドメスティックバイオレンスを受けていますし・・・。》

 

カタカタカタ

 

《久保家か・・・。それも重鎮だったあなたの家なら久保のお家争いで傾斜しているのを止めるのに奔走したのに目をつけられて窓際にされれば歪むか。》

 

《あの頃は母も優しかった。私も才能が無いなりに支えようと頑張れた。しかし・・・。》

 

カタカタカタ

 

《打倒西住、打倒分家・・・ここまで意見が一致している者が一族内にいるなんてね。》

 

《いても私のように情報を流したりはしないでしょうに・・・。》

 

カタカタカタ

 

《お互いに悪女だよ。仏教の教えだったら親を敬い、歳上を敬い、主君・・・本家になるのですかね。それを敬わなければならない。大半を破ってるからね。お互いに。》

 

《悪女で結構。互いの弱味を握っている共犯者は私だけでいい。で、何人集めましたか?》

 

《あなたも入れて6人。》

 

《そうですか・・・ではこちらも少々誘います。》

 

《よろしく。》

 

《姫様、頼みますよ。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国大会は黒森峰が他校を圧倒し優勝した。

 

プラウダは聖グロ相手にノンナ、クラーラ、一部の真面目な人達が頑張ったが、そういう人に限って弱い戦車に乗るため撃破され、フラッグ車だったKV2(なぜそれをフラッグにした)の側面をチャーチルが1.5キロ先から撃破した。

 

なぜ見晴らしのよい場所にいたのか謎であるが、カチューシャが革命を起こす。

 

継続高校は私が上と仲が悪いので、戦車の増産をしなかったため、不運にもイージーエイト軍団率いるサンダースに擂り潰された。

 

カチューシャの革命は成功し、カチューシャニズムと呼ばれる独裁体制が始まる。



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プラウダ

冬休み・・・継続高校から抜け出した私、南、美琴はプラウダに来ていた。

 

「南さん、寒くないの?」

 

「あたい寒さには強いんだ!!」

 

「半袖は見てて寒い。」

 

胸に氷と書かれたネタTシャツを着ている南は私と美琴を見下ろしながら普通に歩く。

 

「やっと来たのね!!待ちくたびれたわよ!!」

 

「ようこそプラウダに。」

 

「・・・むぅ、ノンナ。」

 

「はい。」

 

いきなり肩車し始めたカチューシャは名乗る。

 

「私がカチューシャよ!!・・・南だっけ?あなた大きすぎよ!!」

 

身長2メートル10センチ、体重85キロ・・・巨人病でもない彼女は元気で流石に成長は止まっている。

 

「・・・で、学校見学にする?それとも戦車道部を見る?」

 

「戦車道部の方から見る。」

 

「わかったわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「T-34-85までしかない。・・・T-44は?」

 

「入手したいけど大半が北海道にある大学に持っていかれたらしいわ。」

 

(入学したら改造するとして大量の金属が必要になるな・・・プラウダならあるか・・・独裁体制だから無理ではないはず。こちらも少し動かないといけないけど・・・。)

 

プラウダの戦車道部は粛清の影響か人数が少ない。

 

かわりに整備科の人数がやけに多く、他にシベリアと呼ばれる窓の無い教室から泣き声が聞こえてきたり、矯正施設と書かれた生徒指導室のかわりに普通農業科とは別の農業科が存在もしていた。

 

(粛清の色が濃いけど・・・地力はある。)

 

 

 

 

 

「来年から動く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「南無三。」

 

「聖、どう?152mmは?」

 

「良いです。しかし、反動が大きいですね。」

 

「それは仕方がない。」

 

「一撃離脱・・・いや、中距離からの狙撃で活躍できる駆逐戦車。」

 

「運用方法は聖とお仲間さん達に任せる。」

 

「もう色々と始まってるのですね。あなたの中では。」

 

「目標のためには早めに動かなければならない。」

 

「・・・無理されてませんか?」

 

「いや、大丈夫。」

 

「それなら良いのですが・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春・・・中学3年となり、黄炒と淡がプラウダ中学に入学した。

 

私は動くと決めた前から集めていた黒森峰の弱点を探した。

 

凡人には一般的なことしかわからないので、戦車道の才能が開花した南と天才の美琴を交えながら研究もしている。

 

・・・で、ドイツ戦車を整備しながら思ったこと、美琴が戦術的に考察したことを纏めると

 

【泥とマウス、西住】が弱点となりうることがわかった。

 

泥は重い戦車が多く保有している黒森峰は日本の田園を通ることができる車両が限られている。

 

しかも夏という時期は雨が多く、普通の畑でもぬかるんでいることがある。

 

これは機動力の低下、進行進路の予測が容易にできる。

 

マウスは機動力の無さから主力と別行動することになるため、マウスを中心とした別動隊が必要となる。

 

そのため別動隊の動きはマウスを半径とした500メートル以内に必ずいることが判明している。

 

本体もマウスの進行方向と必ず交差する部分に向かうため、マウスの位置が分かれば全ての戦車の進行方向がわかる。

 

西住流は突発、分断を得意としているが、敗れるときは必ず頭が潰されるか包囲された時である。

 

ドイツのティーガー戦車の悪いところは旋回速度が遅いところであり、包囲が最適である。(優秀な西住の指揮官は包囲されないように動くが)

 

包囲戦が得意なのはカチューシャで、これはネットで議論したり、直接会った時の練習風景で確認できた。

 

私の盟友の友達も独特な包囲が得意らしいので憂いはない。

 

「ゴールデンウィークに黒森峰に行って情報を仕入れてくる・・・か。」



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正鴉

黒森峰・・・私の嫌いな分家のとある家が校長を、私の祖母が理事長をしている中高一貫校だ。

 

「・・・。」

 

私は今様々な顔をしているだろう。

 

憎悪が少しずつ増えていき、嫌いというレベルではなくなった私の西住への感情を帽子を深く被り必死に隠す。

 

身体が成長するにつれ、私の顔は母であるしほにとてもよく似てきている。

 

そのため見る人が見れば血縁を疑うはずだ。

 

「戦車道部の外部整備員の方かね?」

 

警備員が声をかける。

 

私の姿は有名な整備会社の作業服であり、一応整備の方の免許も持参している。(製造に比べると凄く簡単であり、会社等に勤めている人くらいしか取ることはない。)

 

「はい!!4号突撃戦車ラングの修理に来ました。」

 

「まっすぐ行った所に事務室が有るから校内移動許可書を書いてくれ。」

 

「はい。」

 

ときどき素の自分が出てしまう。

 

凡庸の私には潜入も完璧にはできないか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「新入部員、私が新しく隊長に就いた西住まほだ。君達に求めることは勝利だ。ここは黒森峰、全国で一番強い学校、つまり戦車道も全国の模範となるように頑張ってくれ。以上だ。」

 

まさか先輩が全員隊長就任を辞退するとは・・・。

 

こんな時期まで新しい隊長が決まらなかったなんて異常だ。

 

だが・・・みほは無論、エリカという逸材もいる。

 

先輩と同学年には島津4姉妹の長女島津義和さんと次女の島津義美がいる。

 

本当は義和さんに隊長をやってもらいたかったが・・・

 

「本家のまほちゃんがいるのに隊長やると私の胃が死んじゃうからやりたくないかなー・・・理解してくれる?」

 

と言われたからにはやらせられない。

 

そもそも義和さんは引きこもり体質だから隊長にはあってないのかもしれない。

 

「隊長、姉のかわりに私があなたを支えます!!」

 

戦術兵器義美・・・中学時代キル数57両の私の次に戦車を破壊しまくったヤバイやつ。

 

「私の胃が死ぬ。」

 

隊長なので弱い姿を見せるわけにはいかないが、変頭痛が希に起こるようになった。

 

ストレスだろうな。

 

「西住の次期家元がそんな顔をしない。」

 

工具箱を持った女性が立っていた。

 

「・・・!?ほむ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵情偵察は早々に諦め、4号突撃戦車を直し終え、あいつに会って帰ろうと思ったけど、頭を抱えている姉がいたので、せっかくなので声をかけることにした。

 

で、今姉の部屋である隊長室に場所を移していた。

 

「3LDK・・・黒森峰は金持ち・・・良いな。」

 

「まだ慣れていない。1人でこれだけ広いと使い道がない。」

 

「そんなもん・・・か。」

 

「お母様と文通していることは知っていたが、黒森峰に何の用だ?」

 

「敵情偵察・・・をしたかったけど、警備が厚くて無理だったからラング直して帰ろうとしていた。」

 

「継続も必死に探ってるんだな。」

 

「違う。継続高校の部員と私は険悪。」

 

「ならなぜ?」

 

「気分。」

 

「そうか・・・。」

 

「気分は気分だけど・・・宣戦布告をしようか。」

 

「宣戦布告?」

 

「西住を倒す。島田を倒す。戦車道というカテゴリー全てで。」



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姉と凡人

「・・・は?」

 

「その反応が普通。」

 

「いやいやまてまて、何で西住を倒すことになるんだ?池田に名字を変えたといって西住本家であることはかわらないぞ。」

 

「それじゃ楽しくない。」

 

「ほむ、何か辛いことがあったのか?」

 

「辛いと言えば今の現状が辛い。西住は戦車道の才能が無ければあまりに辛い。それを覆す前例・・・いや、弱者救済をしなければいけない。」

 

「ほ・・・む?」

 

「私のことを馬鹿にした才能が飛び抜けていても勝てないことを思い知らせたい。」

 

口調が変わる。

 

ほむは忙しくて忘れかけていた前世の記憶を思い出す。

 

その中にはガルパンのアニメや映画の記憶も含まれていた。

 

「私は馬鹿だ。とんでもないキチガイだ!!そんな言語障害の私でも意地がある。母としてのしほさんには感謝しているが、西住家元としてのしほさんには軽蔑しかない。倒す。まほ姉様、みほ姉様共々、分家も島田も・・・。」

 

まほの目には妹が狂ってしまったと思えたが、ほむはどんどん冷静になっていった。

 

(・・・苦難が続くけれど・・・ここさえ乗り越えれば凡人から脱却できる。)

 

さらに記憶が蘇るにつれて気になったことがあった。

 

(身体能力・・・あれ?)

 

今思えばおかしい。

 

野球を観たとき、フェンスの距離が180メートルが普通だったり、サッカー場が2回りくらい大きかったり、バドミントンのネットの高さが20センチ高かったり・・・前世以上にこの世界の人は丈夫なのだろう。

 

つまり、私の体がいくら鍛えても上達しないのではなく、この世界の人は成長速度が速いし、成長限界も見えてこないのは世界の理が違うのだ。

 

「長く話しすぎた。帰る。」

 

「あ、ああ。」

 

これで高校の間はとりあえず敵対できるだろう。

 

やれやれ、甘い姉だよ。

 

本当に・・・。

 

「天才は余裕があって羨ましいよ。」

 

凡人は黒森峰の停泊している港で呟いた。

 

その背中はとても小さかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西住、池田ほむは評価が極端に別れる。

 

西住本家では祖母以外は申し訳ない思いや、罪悪感だが、家元である祖母は違う。

 

「無能は百害あって一利無し。」

 

祖母も辛い思いをしてきた。

 

祖母の母が西住の基礎を創ったため、若い頃は評価が低く、評価されたのは自分より世渡りが上手い人物ばかり。

 

それは西住を強めるには有効だったが、乗っ取りの恐怖に駈られた祖母は親族を巻き込み、血縁関係を整理し、外部の野心溢れる者を弾き出し、使える者も飼い殺しにしてきた。

 

そのため自分の孫でも無能は使う価値無しと冷徹であった。

 

この性格が災いするのはもう少し後のことである。



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襲撃

黒森峰でまほに宣戦布告をしたほむの後ろを着ける人物がいた。

 

その人物は男であり、西住に実家を潰された恨みがあった。

 

彼は実家で自殺した姉が遺した遺書に

 

《西住に一太刀を》

 

という言葉を実行するためだけに黒森峰に来ていた。

 

しかし、黒森峰のセキュリティは堅く、しかも支配者たる西住の姉妹を襲撃することはできなかった。

 

3年と時間的な猶予もない今、彼は焦っていた。

 

黒森峰を出てしまえば、彼女はどこの大学に行くかわからないし、両親の遺産も大学に入学すれば吹き飛んでしまう。

 

焦りに焦った結果、彼はほむに目をつけた。

 

盗聴器で会話を聞き、学園艦から出て近くの港に来る瞬間を彼は襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむは数日記憶が曖昧だ。

 

なぜか2日で帰るはずが3日になっているし、体が重い。

 

風邪でもひいたかなと思いながら日常生活を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み・・・私達はプラウダに来ていた。

 

凡人にできる全てを持って・・・

 

ドサ

 

「カチューシャ様、これが私の半年。」

 

机に置かれたのは戦車道全国大会の出場校の中堅以上の学校、内部情報、友人関係、戦車の情報を纏めたレポートだった。

 

地盤を固めていたカチューシャには最高の贈り物だ。

 

「ナイスよほむ!!そうだ、これからオットーと名乗りなさい!!」

 

オットー・・・おそらくフィンランド人で裏切り者、仲間を売った人物のオットー・クーシネンから来てると思うが、無意識に知っている偉大な人物の名前をカチューシャは良かれと与えたのだろう。

 

後ろでノンナさんとクラーラさんが申し訳なさそうにしている。

 

「オットー・・・ありがとうございます。」

 

「良いのよ。さて、王者を引きずり下ろすわよ!!」

 

「はい。」

 

カチューシャの部屋を退出後、私は別の部屋に向かった。

 

《校長室》

 

「失礼します。」

 

「おぉ、よく来てくれた。」

 

ダミ声で話す福与かなお爺さん、いつも野球帽を被るのが特徴であり、愛称は熊さん。

 

「なんだい、熊さんよ。ついにカチューシャだけじゃなくて中坊まで手出すんか?」

 

「するわぁげないだろ。」

 

「よう嬢ちゃん。おれぁ、副校長の鈴木だ。周りからは黒ひげ呼ばわりされてる。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「とりあえずカチューシャからの推薦状が有ったから嬢ちゃんの推薦入学は認める。テストは受けなくてもいいぞ。」

 

「英検、漢検準一級、数検も一級持ちだがらなぁ。あと難問の検定も保有しているからなぁ。」

 

「受験は受ける。ただし冬休み以降はプラウダで過ごす。南夏も呼ぶ。」

 

「期待している。それこそカチューシャ以上に。俺も熊さんもほむを見ている。西住を潰してやれ。」

 

「期待に応えます。」



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社会情勢

中学3年の夏という節目の時期だが、戦車道も次世代に突入しようとしていた。

 

『世界戦車道、4年後の開催地は・・・和歌山!!』

 

世界最大の戦車道の大会が和歌山県で開催されることが決定し、日本政府は東京のオリンピックと関西の戦車道大会で日本経済再建に力を入れ始め、日本ではマイナーだった戦車道を野球やサッカー並に人気の有るものにするため16の県にプロチーム創設を依頼。

 

文部科学省はこの2つのイベントから戦車道を大規模にするため、老朽化した学園艦の再整備、統合もするため、新型学園艦計画と博打に出る。

 

この動きに東西の戦車道の名門は世界ルール変更の建て直しで手が回らない中小勢力を今回は組み込むことに成功し、残ったところは千葉の妖精と呼ばれるハイテンション集団(デパート、コンビニをやっており、国内140店舗の何で戦車道をやってるかわからない道場)は膨大な企業の利益で普通に耐え、長野の魔物と呼ばれる家族経営道場の連合も耐えた。

 

ちなみに風見流は帰農しているので、この連合には不参加である。

 

聖のところは完全に煽りを受けてしまい、一家離散の手前まで進む最悪の事態になるが、祖父母、地域の関係者を説得して聖の家族をこちらに呼んだ。

 

聖は親友達とプラウダで再開を誓ったらしい。

 

聖自身はプラウダに編入した。

 

そんなゴタコダの影響か、様々な高校の士気が低下する。

 

実家が不安定だと気になって全力が出せないのはまだ良い方で、西住や島田の下に入るのを嫌い、戦車道をやめる娘もいた。

 

一番影響を受けたのが継続であり、まさかの初戦敗退。

 

・・・一方プラウダは

 

「ひ、か、カチューシャ様、こ、これは・・・実家が心配で・・・。」

 

「情報の流出を抑えるため戦車道部員は外部との連絡をするのを禁じた筈よ。ノンナ。」

 

「はい。」

 

「ひ!!イヤだぁ!!シベリアの強制労働はイヤだ!!」

 

「原始農業をやってもらうだけでこんなに泣くなんて・・・先輩でも引くわ。そう思わない?オットー。」

 

コクン

 

「来年はノンナ様、クラーラ様の負担を軽くします。」

 

「頼もしいわ!!」

 

混乱期こそ権力者が必要であるとほむことオットーは考えている。

 

信長しかり、レーニンしかり、ヒトラーしかり、ワシントンしかり・・・。

 

しかし、私にはそんなカリスマ溢れる才能はない。

 

一番近いのはスターリンか。

 

軍事的才能が無いのは戦車道の才能が無い私と似ているし・・・。

 

しかし、私はスターリンになるわけにはいかない。

 

神輿をつくらないといけない・・・いや、必死につくっている。

 

南だ。

 

私は彼女をさりげなくカチューシャに売り込み、最初はその巨体にビビっていたカチューシャだったが、砲手兼装填手としての実力がわかると南にチルノという名前をつけた。

 

ガチルノ伝説の始まりである。



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プラウダと黒森峰

プラウダ対黒森峰の決勝戦・・・建て直しに成功したプラウダはカチューシャニズムと呼ばれ、下馬評ではそれだけでは西住に勝てないだろう・・・と、良くて3割くらいの勝率と見られていた。

 

「天はカチューシャに味方した。」

 

普段は絶対に言わないが、今日の天気は雨。

 

少ししたら土砂降りになる。

 

「カチューシャ様、準備が整いました。」

 

「KV-2は勝利のために絶対に動かさないで。・・・ノンナ、クラーラ、勝つわよ。」

 

「「Да。」」

 

 

 

 

 

 

 

「流石美琴、マウスが完全に進行ルートの制約になってる。」

 

「マウスは化け物だけど迂回すれば怖くない。しかも長距離射撃が不可能な市街地を通るから私はこんな戦車はやっぱり玩具にしかならないと思うんだよね。」

 

「悪い伝統が才能を潰す。」

 

「確かに、あたいたちもそんな伝統はやだ。」

 

「ほむはこの化け物どうする?」

 

「ん、ほっぺを狙う。それを貫通できる戦車も設計中。資料が古くて復元させてる。」

 

「流石ほむ!!あたいたちにできないことを平然とやってのける!!」

 

「そこに痺れる憧れる!!」

 

「ジョジョにハマった?」

 

「いや、言ってみたかっただけよ。」

 

「あたいはハマった。」

 

「「え。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・ちとアカンかもしれん。」

 

「義美、どないした。」

 

「包囲される。」

 

「・・・どうする?」

 

「決まってる。後退する。幸いこちらは別動隊だ。隊長と副隊長には迷惑がかからない。」

 

「そうするか。」

 

 

 

 

 

 

 

「流石島津・・・といったところですが、退くのが早すぎですよ。」

 

ノンナはIS-2に乗っていた。

 

ソ連のガバガバ砲でバカスカ敵に砲弾を当てる彼女は今回の戦術の肝となる狙撃を任されていた。

 

島津の退きは正解でもあるが、失敗でもある。

 

これはほむが提供した島津の早退きという秘伝情報だが、ほむ自身もとある人物からこの情報を仕入れた。

 

「島津の早退きは周りの部隊から孤立しないために2両で行動する・・・ですが、今回は失敗ですよ。」

 

島津姉妹の前にカチューシャとクラーラのT-34-85が現れる。

 

「カチューシャ様囮をありがとうございます。」

 

フラッグ車であるカチューシャが囮となりヘイトを集める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今よ。」

 

カチューシャは合図を送る。

 

待機していたKV-2が島津が退いたため隙ができた別動隊が移動する橋を砲撃する。

 

橋に着弾し、中央から石材でできた橋が崩落する。

 

このため本体と別動隊が分断され、マウスは市街地に取り残され、他の別動隊の車両も山に囲まれたぬかるんだ畑を通らなければならなくなる。

 

つまり本体10両以外は戦力外となり、島津姉妹をカチューシャ、ノンナ、クラーラのプラウダの最高戦力が潰しにかかれる最高の舞台が整った。

 

この戦略はカチューシャが描き、ほむ、ノンナ、クラーラが別視点から補強した物だった。

 

ただ、イレギュラーはおこる。

 

みほが指揮する小隊が本体から分離し、川沿いの悪路を進行しているとのことだった。

 

「KV-2は全てのキーよ。やりなさい。」

 

KV-2、川沿いの悪路に適当に砲撃を開始。

 

3発目・・・赤星と呼ばれる車長が乗る3号戦車の付近に着弾。

 

 

 

 

 

 

 

 

「川に落ちた。」

 

「ほむ!?冷静すぎない!!」

 

「南、落ち着いてください。ちゃんと整備されてれば脱出用ハッチで逃げれるハズです。」

 

「そ、それなら・・・。あれ?美琴詳しくない?」

 

「ほむに詰め込まれました。」

 

「100点。」

 

「あれ?みほ副隊長が救出しようとしてますよ。」

 

「・・・姉に限って性能を理解していないってことはないはず・・・感情論。」

 

「感情・・・。」

 

「そ、戦車道は道を外れないから戦車道。私は勝つためなら何でもやるけど。」

 

「あたいには・・・。」

 

「価値観はそれぞれ。私が間違っていると思えば止めれば良い。」



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薩摩式シュレッター

「副隊長が川に飛び込んだ!?」

 

落ちたのは赤星車だが、混乱して助けに入ったみほが川に飛び込んだという誤報だけが全体に伝わった。

 

ほむが落ち着けといったのは自分達がこの状態に未来になる可能性が有るため、今回の事故を学びやすくするため南を遠回しに黙らせたのだ。

 

「義美!!」

 

「・・・了解。」

 

情報が伝わった瞬間に敗北を悟った島津姉妹は目の前のフラッグ車を撃破しようと奮闘する。

 

「さぁ、島津の突撃ぞ!!最上級生の意地・・・目に焼き付けよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・急ぐぞ。」

 

まほは焦った。

 

まほは全体的に纏まった天才であり、オールマイティーに何でもできた。

 

だからだろう・・・戦略で自分以上であるカチューシャが未知の存在に写ったのは。

 

「ふ、副隊長は大丈夫なの!?応答しなさい副隊長車!!」

 

隣のエリカ車から怒鳴り声がマイク越しに聞こえてくる。

 

「エリカを止めろ。士気が落ちる。」

 

『隊長、副隊長車撃破されています。』

 

「・・・な!?」

 

『飛び込んだという情報の流れた際の混乱で情報が伝わらなかったようです。』

 

「・・・。」

 

まずい、島津姉妹との連絡でフラッグ車と交戦中と来たが場所が最悪だ。

 

今だけはティーガーの重量を呪う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンピンピンロロロ

 

「電話。・・・2人も聞いていて。」

 

『おや?2人ということは姫様の言う美琴さんと南さんですかな?』

 

「「誰!?」」

 

「協力者。私の影。」

 

『影とは酷いですよ姫様。今日のプラウダの勝利おめでとうございます。』

 

「ありがとう。」

 

『おっと、これ以上の電話は危険なので切りますね。』

 

「お疲れ。」

 

ブチ

 

「数年後、美琴は彼女の力が必要になる。私以上に情報収集や工作が得意。それでいて戦車道も上手い。」

 

「名前ぐらい教えてほしいんだけど・・・。」

 

「まだダメ。」

 

「えぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

「チェスト!!」

 

バコン

 

カチューシャのT-34-85に当たるが、7.5cmKw.K42L/70砲の砲弾は装甲にめり込む形で止まっている。

 

「貫通しない!?・・・内張り装甲とコンクリートか!!」

 

内張り追加装甲は速度を落とすため使われることは少ないが、大破判定になりにくくなり、コンクリート装甲は薄くても貫通能力を低下させることができる。

 

そのため貫通せずに突き刺さった状態になったのだ。

 

「次弾装填いそげ!!昼飯用意!!」

 

バコ

 

「履帯をやられました。」

 

「姉様は!!」

 

「ラムアタックでフラッグじゃない方を相討ちに持っていきました。」

 

「1対1なら・・・何か来る!!対衝撃用意!!」

 

ドン シュポ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石ノンナ、これで相手の両腕と補助脳は潰れた。こちらもクラーラがやられたけど・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「包囲完了。カチューシャ様、流石。」

 

やはり天才はこうでなくては・・・天才は物量で潰す・・・か。

 

カチューシャ様らしい。



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計画

包囲完了してからの試合展開は早かった。

 

島津姉妹を含め別動隊と副隊長のみほ小隊が相手の戦力を潰すことなく殲滅され、マウスをKV-2が市街地にて足止めをしたことにより、本隊の8両は16両に囲まれる形で攻撃され、IS-2のノンナがフラッグ車のまほ車を撃破し試合終了。

 

まほは包囲されながら6両破壊したがそれでも多勢に無勢であった。

 

「天才には天才をぶつける・・・秀才3人、凡人6人ぶつけてようやく止まる。」

 

自身の戦訓とし、試合会場から私達は帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「設計完了であり、試作された戦車・・・。」

 

戦車道の戦車使用ルールで、私が作りたい車両は調べてもO.K.が出るか怪しい車両であり、ドイツのE-100並に際どい物だった。

 

(私が最上級生になるまでに試作車両を大半にして、今の黒森峰と同等の車両差にしたい。単体では批判もあるかもしれないからサンダースにも協力してもらおう・・・幸い、適任の人格の者が居る。)

 

凡人は必死に足掻く・・・。

 

 

 

 

 

 

「今日は私の奢りよ!!どんどん食べなさい!!」

 

数日後、祝勝会が開かれた。

 

その中に協力者として私達も参加していた。

 

「カチューシャ様、今大会優勝おめでとうございます。」

 

「ありがとう。・・・ほらオットーもっと食べなさい!!」

 

「私は人並みしか食べられない・・・。」

 

「人並み?私より少食のあなたが?」

 

「燃費が良い。」

 

(じゃあ何でそんなに背が高いのよ。あと胸も大きいし・・・。)

 

「逆に美琴とチルノは食べ過ぎよ。」

 

「食いトレ中、今の時期食べないと体が色々と問題になる。」

 

「そ、そう。」

 

「あとこれ。」

 

「なに?これ?」

 

「来年度の戦車改造計画予定表。」

 

「渡す予定の予算ギリギリね。」

 

「ここから効率化で実際の予算はガンガン削る。半分にする。」

 

「KV-1を改造するのがメインね・・・私の代だけでは無理だから来年の私引退後はオットー、あなたが部費を管理しなさい。」

 

「はい。」

 

(・・・嫌な予感がするわ。)

 

カチューシャはほむの身に何か起こるのではないかと心配するようになる。

 

それが自分が原因とも知らずに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・。」

 

最近無性に水が飲みたくなる。

 

あとお腹も出てきた。

 

腰も頭も最近は痛くなることがある。

 

ただ、少しすると治るので病院にも行かないで過ごした。

 

・・・が、中学を卒業し、プラウダに向かう頃なると更に腹痛が酷くなり、カチューシャ、チルノ、ノンナ、クラーラから病院に行くことを進められる。

 

「あなた・・・妊娠8ヶ月よ。」

 

 



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土下座交渉

入学早々の出来事に慌てはしたが、凡人は慌てれば慌てるだけ逆に開き直ることができる。

 

いや、開き直らないといけないと本能がそう動いた。

 

必死にこの状態をどうするか移された産科の待合室で考える。

 

まず記憶で今世か前世で現状を打破するヒントになるようなものがないかを探す・・・

 

「あ・・・。」

 

前世の祖父の兄弟の中に満州から帰国中に身籠った姉の話を祖母から聞いたことがあったし、その姉の人にも記憶の中だけだか会ったこともある。

 

身籠った子供も地方局アナウンサーをしていた。

 

(その場合は両親の協力で片親でもやっていけたらしい。・・・けど、今回は違う。・・・両親と祖父母、姉達、黄炒と淡には言わないと。黄炒と淡は後日。)

 

人工中絶も頭によぎったが、ここまで来たら産んだ方がまだ良いと思った。

 

(この世界基準では)圧倒的に体が弱いので母体である自身の体が耐えれるか耐えれないかわからないが、直感で耐えれると感じ、それに従うことにした。

 

「池田ほむさん。」

 

「はい。」

 

とりあえず診察室に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めに相談してぐれてぇ良かっだぁ。」

 

「熊さんよう、ほむ嬢ちゃんが気に入ってるからってあんたは大丈夫なのか?」

 

「ばぁれなきゃぁ良いんだぁよ。」

 

親もそうだが、まずは近くにいる学校のトップと話すことにした。

 

賭けであったが熊さんと鈴木副校長はとりあえず病気でしばらく実家で病養に入ってもらい、7月には復帰すれば退学はしなくて良いとおっしゃってくれた。

 

「レイプで未来ある若者がぁ進路をぉ潰すことほどぉ先公やぁっててやなことばぁない。」

 

「同感だな。しかし実の子扱いは無理だからな。それやったらこっちも庇いきれない。」

 

「わかってる。迷惑掛けて本当にすみません。」

 

「ぐぅちべたぁなほむがぁ土下座とは・・・わがっだぁ。安心しろ。守ってやる。」

 

プラウダのトップ2人は秘密にしてくれるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

私とお母様のしほ、お父様はほむの話を聞いて絶句した。

 

いつ生まされたか記憶に無いこと、8か月前に黒森峰から帰る際に日にちが違うこと、産みたいこと、お母様の養子として渡し、姉という立場で産まれてくる子を育てたい旨を話された。

 

西住はみほが黒森峰から出ていった混乱の余波がまだ残っているのにこれとは・・・。

 

「ダメです。そもそも育てられる筈がない。」

 

「言われると思ってました。が、我が子が可愛いのです。産まれてないけれど身籠っている我が子が可愛いのです。」

 

「育児費は?」

 

「3年間は頼らせてください。その後は自力で何とかします。」

 

「・・・ただ・・・いや、いいわ。産まれたら連絡を。」

 

「ほむ、犯人の男は必ず探し出してやる。待ってろ。」

 

「言いたいことがあるから私刑にはしないで。」

 

「・・・わかった。」

 

ほむはその後池田家で産休に入る。

 

 

 

 

 

 

「しほ、何て言おうとしたんだ?」

 

常夫さんが聞いてくる。

 

「こちらで預かろうとした。だけど・・・私の母が何をするかわかったものじゃない。ほむの子供ってだけで何かをするかもしれないと思ったのよ。」

 

「確かに・・・なぁしほ、そろそろしほが継いだ方が良いんじゃないか?このままだと義母様が死ぬまで強権を続けるぞ。」

 

「・・・そうね。」

 

後に西住家御家騒動と呼ばれる押し込めが発生することに繋がる。



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土下座交渉2

何とか両親の了承は得た。

 

そのためすぐに新潟に戻り祖父母に報告する。

 

心配されたが黄炒や淡の件があるため

 

「1人くらい増えてもダイジョウブなんだなー。」

 

と言われた。

 

 

 

 

 

 

妊婦ということで食事を自分から制限し、毎日食べていた梅干しの量を毎日6個から1個に減らしたり、野菜を食べ、レバー以外の肉類を食べるようにした。

 

この料理は自分で作り、継続時代の経験が生きた。

 

妊婦らしい生活をするようになるとお腹が一気に膨らんだ。

 

腹痛の原因も赤ちゃんがお腹を蹴る事だったので今は我慢し、擦ったり、音楽を聴かせると静かになる。

 

ただ、基本暇であるため無理のない範囲で、自分なりの戦車道の基本教育方針を定める。

 

これは後に西住流や島田流衰退に導く効率的な選手育成方法とそれが他のスポーツに流用できることが高く評価されることとなる。

 

主な項目として

 

《・動体視力向上の仕方

・太ってから搾れ

・3歳までは足の裏に刺激を与えるべし》

 

があり、どれも革新的だったらしい。

 

ほむからすれば前世からもたらされたもので、運動教育の第一人者と呼ばれるようになっても凡人であるといい続ける。

 

とにかく私は赤ちゃんに良いと言われていたことを全て行い、ゆっくり休んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかオットーが病気になるなんて・・・。」

 

「元々体が弱かったよ。ほむは、カチューシャ様。」

 

「チルノ、ほむではなくオットーよ。・・・体が弱い?詳しく教えなさい。」

 

「あたいが継続で生活している時、オットーは周りよりも怪我をすることが多かったし、あたい達が筋肉や体格を作るトレーニングを教える側だからってやってたんだけと、初歩の初歩でへばるんだ。」

 

「何かの病気?」

 

「わからない。でもあたいには筋肉が凄く付きにくい体質だと思う。」

 

「・・・なるほど。」

 

この瞬間にカチューシャはオットーことほむが後継者であることは変わらないが、それは思考部分と事務的なことであり、戦車道の部長件隊長として権力を集中している今、オットーは権力の副産物としてのし掛かる重圧に耐えられないのではないかと考えるようになり、後継者候補として育ててきた1年生のニーナ、アリーナ両名を隊長、副隊長にそえ、権力の分散化を・・・という道筋が見えてしまった。

 

「仕方ないわね・・・ノンナ、クラーラ、ニーナとアリーナを呼んできて!!あの子達を私の好きなKV-2に乗せてあげれるぐらい鍛えるわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうですか・・・ありがとうございました。」

 

まほは精神的にほむよりも疲れていた。

 

ほむを襲った犯人は数か月前に自殺しており、その親族もこの世には居なかった。

 

残っているのは西住への恨み辛みが書かれた遺書と彼の姉が愛用していたと見られるヘアピンだけだった。

 

「キツいな・・・これは。」

 

みほはまだ知らない。



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ライバル

ほむが戦線離脱した今、とある戦車道の1年生の魔物が動き出した。

 

次世代の磐石ぶりから来年から黄金期に突入されると噂される聖グロリアーナ女学院で、誰も見向きもしなかった神奈川県出身の一般入学生が入部してすぐに紅茶のソールネームをダージリン隊長から命名された。

 

「オレンジペコ、こんな格言を知ってるかしら。生まれながらに才能のある者は、それを頼んで鍛錬を怠る、自惚れる。しかし、生まれつきの才能がない者は、何とか技術を身につけようと日々努力する。心構えがまるで違う。」(織田信長より)

 

「精進します。」

 

「貴女に限って自惚れる事は無いと思うけれど何が貴女を変えるかわからない。気をつけなさい。」

 

「はい。」

 

ダージリンだけがこの魔物を制御できていた。

 

しかし、2学年にはオレンジペコに勝る者はおらず、同学年にもクルセイダー隊を指揮するローズヒップも化け物扱いされるが、馬鹿()であるため全体指揮が無理である。

 

ゴゴゴゴゴ

 

「OBどもが五月蝿いですね・・・今はダージリン様の迷惑にならないようにしますが・・・札(金)に物を言わせるのならこちらも考えがある。」

 

神奈川の大企業貿易部門出身の副社長が彼女の親であり、社長とも爺ちゃんと言う仲である。

 

今でこそ落ち着いているが魑魅魍魎蔓延る貿易の時代を幼いながらに間接的に見てきた彼女の経済的なセンスは聖グロの金の流れを把握するのは容易く、掌握するのもやろうと思えばすぐにできる。

 

「時期が悪い。今は優秀な装填手で潜るか。」

 

この腹黒に気がついているのはダージリンとアッサム、直感で気がついたローズヒップだけであり、それ以外は気弱そうな少女にしか見えない。

 

「ふむ。」

 

部屋の中で巻物のように長い紙を両手で掬うような態勢で眺めるオレンジペコであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アフリカで学園艦建造か。」

 

国土が狭いモーリシャスという国で国際中高大学一貫の学園が2年半後を目処に建造されているらしい。

 

(まぁ関係ないか。・・・暇だから西住流とか島田流の道場運営面を勉強してたけど・・・1地方までが精々・・・誰か頼らないと厳しいなぁ。)

 

人材は見つけるか育てるということを信条とする私は、あまり引き抜くという行動をしたくない。

 

ただ

 

(これは国内ではなく外国から引き入れたい。)

 

理由として、こういうのは大半西住か島田どちらかの息がかかっていたり、或いはそんなことしなくても普通に企業で上に行く人物であるため、良く言えばベンチャー企業、悪く言えば西住を裏切った賊軍の私のように不安定な所に住み込みで働いてもらうには厳しいし、体をあげようにも子持ちは厳しい。

 

「はぁ・・・先を見越すと溜め息しかでない。」

 

子供を食べさせないといけないのである意味必死だ。



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出産

6月・・・音沙汰無かったみほ姉が大洗が居ることがわかり、そこで戦車道を復活させたらしい。

 

臨月が今の私はいけないが、出産後にはプレゼントを持っていこうという気持ちになった。

 

「・・・そろそろか。」

 

日に日にお腹が痛くなる。

 

出産予定日もそろそろのため、いつでも産科に行けるように準備している。

 

思えば私が子供を産むことになるとは・・・前世の記憶でも弟の産まれるときくらいしか人間の出産には立ち会っていないな。

 

牛はいっぱいあるけど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっぷ。アギャァーアギャァー。」

 

「元気な女の子ですよ。」

 

「ちょっと痛くて喜びと半々。」

 

「初産なんてそんなものですよ。」

 

元気な女の子が産まれた。

 

祖父母は部屋の外で待ち、父も来ている。

 

お母様は明日到着する予定だ。

 

孫は父親がどんな人であれ、やっぱり可愛く見えるのだろう。

 

「ほむ、この子の名前は決まってるのか?」

 

「うん。かな。この子の名前はかな。」

 

「かなか。良いんじゃないか?」

 

「良いと思うんだな~。」

 

「かなちゃん可愛いのー。」

 

私の指先を小さな手で握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから大変よ。」

 

「わかってる。1学期は完全に休むことになるけど・・・色々何とかなる。校長、教頭には話をつけている。」

 

「そう・・・ほむ、池田から西住に戻る気は無いの?」

 

「私は無い。・・・ただ、かなは西住姓になるから、私に何かあったらお願いしたい。」

 

「良いわ。・・・普通はこれぐらいの歳では母親にならないのだけれど、私もほむも早すぎたわね。」

 

「16の子供は厳しい。22歳で小学生にこの子が上がるから色々言われそう。」

 

「安心したわ。楽観視してなくて。」

 

「凡人を自負してるから、今後を必死に見ないと厳しい。・・・生活のために黒森峰には勝たせてもらう。」

 

「頑張りなさい。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウサミン星から来ました!!ナナです!!キャハっ!!」

 

「お姉さん、今時キツいぞ、それ。」

 

「忠告ありがとうございます!!でも、これがナナです!!キャハっ!!」

 

「勝手にしろ!!」

 

「聞いてくださいナナの歌を!!」

 

安部菜々・・・千葉県津田沼に住む17歳、高校2年生である。

 

なぜ陸上に住み、地下アイドルをやっているか・・・それは中卒であることを物語っている。

 

バイトで生活費を稼ぎ、夢に向かって走る少女である。

 

なぜこの少女のことを話したか・・・

 

「ヒャッハー!!逸材を見つけたッスィー!!」

 

黄色いスイカの妖精こと名門戦車道の千葉の妖精(大企業)に発掘されたのである。

 

「歌って、踊って、戦車道ができる選手を見つけたッスィー!!」

 

「え、ちょっとお客さん引っ張らないで!!ナナを何処に連れていくの!!」

 

「妖精の園(本社、社長室)スィー!!」

 

メチャクチャ荒ぶるスイカの妖精に連れていかれる安部菜々であり、後の日本戦車道の広告塔となる逸材であり、ほむが神様のように敬う唯一の人物になる。



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復帰

7月22日・・・まだ幼い子供を校長室に連れ込み

 

「数時間だけ子守りお願いします。」

 

と頼んだ。

 

子供がいない校長、教頭コンビは保健の森久保先生を巻き込んでかなを孫のように可愛がった。

 

「・・・オットー、お帰りなさい。」

 

「ただ今戻った・・・クラーラさんだけ?」

 

「カチューシャ様、同志ノンナ、チルノ、ニーナ、アリーナを連れて聖グロでお茶会に行ってますよ。」

 

「わかりました。・・・遅れた分を始めます。」

 

工具箱を片手に戦車の修理を開始する。

 

「何よあなた。」

 

閑職といえども上下関係が存在する整備科で整備をしていた1年生が戦車を触ろうとする私に突っかかる。

 

「カチューシャから許可は出ている。オットーはこの整備科の権力を全て委託されている。」

 

「なにいってるのwあなたみたいな誰かもわからない子がカチューシャ様から権力を委託されているわけないでしょ!!」

 

その姿を見ていた3年生が慌てて私に頭を下げてくる。

 

「この馬鹿どもがすみません!!きっちり教育するのでどうかシベリアには送らないであげてください!!」

 

「せ、先輩何言ってるんですか?」

 

「この馬鹿!!去年の優勝の立役者のオットー様だよ!!私達も戦車のメンテナンスを教わったり、カチューシャ様が被弾した際に守った装甲をカスタムしたのも彼女よ!!こっちに来なさい!!」

 

「先輩!!髪を引っ張らないで!!」

 

「何?あれ?」

 

2年生の整備科の先輩が私の問いに答えた

 

「権利の委託をされているのはオットー様以外にはノンナ様、クラーラ様だけです。今は後継者扱いされているニーナ、アリーナ両名も権利は委託されてません。我々2、3年の中でカチューシャ様の後継者はオットー様、あなたで決まりなのですよ。」

 

「そう。・・・なら年間計画はつくった。これに従って改造、生産をしていく。」

 

「Да。」

 

「初めはKV-3 107mm ZiS-6を搭載する。Object-223とし、これをチルノ専用車両として夏までに製造する。監修は私がおこなう。」

 

「「「Да!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

クラーラ様から私の部屋の鍵をもらう。

 

部屋に向かう前に校長室にてかなを貰い、乳を与える。

 

少し前にミルクを与えてくれたらしいが乳の方が良いと思っている私はなるべく自分があげられる時は乳を与えるようにしている。

 

かなに乳を与え終わると預かってくれた3人に挨拶し、自室に向かう。

 

ガチャ

 

「・・・流石プラウダ。広い。」

 

1LDKのテレビ付きの部屋で、リビングにはプラウダの校章が飾ってあり、引っ越しの段ボールが積まれていた。

 

ビリ

 

「よし。」

 

かなの教育用の物、貴重品、戦車関係、自分の教材、日常品、パソコン、スマホとちゃんと全部あった。

 

「アギャァー!!」

 

「あ、よしよし。」

 

足を揉みながらオムツを代える。



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西住家御家騒動

ほむがプラウダでKV-3を製造している頃、西住本家では、分家を巻き込んだ御家騒動が発生した。

 

ただ、今回の御家騒動は分家は全てしほ支持であり、現家元支持を表明したのは一部の熊本県の支部だけだった。

 

分家がなぜしほを支持したか・・・根回しがあったことと現家元の疑心暗鬼が分家に飛び火する可能性があったからである。

 

久保家後継者争いにて介入し、一部の革新的な家をどさくさに紛れて消したりしていることを知っているので、粛清されると警戒されており、しほが立ったことで不満が爆発したのだ。

 

優勢か戦う前から決し、家元は一気に老け込み、京都の寺に押し込められることとなる。

 

ちなみに祖父は本家に残った・・・いや、残らされた。

 

電撃的な早業での決着に流石西住と言われ、内外から称えられた。

 

「本来なら御家騒動なんて家の羞恥を晒しているだけで、称賛されるような物ではない。・・・はぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チルノ、KV-3の砲塔ができたから装填訓練しておいて。」

 

「おお!!あたい専用車か!!赤く塗りたい!!」

 

「赤い彗星になりたいの?」

 

「・・・いや、良いや。目立たない色に塗装して。」

 

「了解。」

 

チルノの装填速度は100mmの砲弾を約8秒で装填する。

 

砲手としてはノンナ様と同等の命中率を誇る。

 

プロなら装填手一択であるが、勝つために分隊長として活躍してもらわなくてはいけないので、砲手兼車長となる。

 

「どう?実際に砲撃してみて。」

 

「・・・制御棒と改良型射撃装置、垂直安定装置に換気扇・・・どんだけカスタマイズするの?あたい、運営側から注意受けそうで怖いんだけど・・・。」

 

「ルール内。履帯、エンジンも最高のにしてある。無線機は中間局にもこの車両がなるから臨時司令部になる。」

 

「強い!!ルールを守れるんならあたい安心!!あたい、最強目指して頑張る!!」

 

「うん。ただ、乗務員になる人たちが不安。練度に。」

 

「確かに・・・癖が強いもんね。」

 

「まぁ、チルノ、頑張って。」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなちゃんは今日も元気。

 

アウアウ言いながら手をニギニギしている。

 

私はとにかく足を揉みながら乳を与える。

 

浴槽にぬるま湯をはるとかなにぬるま湯をかけたり、足だけぬるま湯の中に入れると歩いているようにも見える動きをする。

 

「ア~。」

 

「気持ち良さそうだねかな。・・・ごめん。こんな母親で・・・。お父さんも誰かわからないから学校に通い出したら困るよね・・・。」

 

西住かなはアウアウと返事をしたように声を出す。

 

『カナちゃん負けないし!!』



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極貧アイドル

「ここが君が働く職場スィー!!」

 

「トレーニングジムじゃないですか!!アイドルは!?私、アイドルでスカウトされたんじゃないんですか!!妖精さん(社長)」

 

「僕は戦車道の選手として発掘したスィー!!」

 

「え・・・じゃあアイドルは?」

 

「家にそんな部署は無いスィー!!やりたきゃ作れっスィー!!」

 

「えぇ!!」

 

(ナナピーンチ・・・とか言ってる場合じゃない、戦車道とアイドル両立しないと・・・。)

 

なぜ両立させなければならないか・・・年俸の額が2000万円を提示されたからだ。

 

「来年から戦車道のプロリーグができるスィー!!だからその広告塔に安部菜々ちゃんはぴったりだったスィーな。」

 

「で、でも・・・。」

 

「甘ったれるなよ小娘、高校にも行ってないのにアイドルだぁ?春でも売ってろ。・・・年俸は投資だ。何に使うかは任せるが、その金の使い方で首切るからな。」

 

「えぇー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったんですか?社長さんよ。」

 

「なんだ貴様か。」

 

「シックスでも孫は可愛いってか。」

 

「ぬかせ。私の孫だぞ。どんな才能があるか楽しみじゃないか。」

 

「火火火、性格も顔も全く似てないがな。」

 

「さて、営業だ。行くスィーよ!!」

 

「へいへい、火火火。」

 

(家出した娘を探していたら孫が見つかるとはな。・・・全く、私が保護しなければどうなっていたか。)

 

シックスは孫を溺愛しているが、それを知らない菜々は苦労する。

 

 

 

 

 

 

 

「カツカツに削るしかない・・・なんでこんな目に。・・・お給料実質無し。戦車道で成績を残すこと、アイドルとしての知名度を上げること、両方やらないと!!」

 

ネットで戦車のオークションを見るとどれもメチャクチャ高い。

 

安いチハ等の日本車でも1両50万もする。(高い王虎は2000万もするが、これらはコピー品であり、1945年までに生産された物ならヘッツァーでさえ15億になり、黒森峰のマウスは〇兆円する。なんであるかなぞである。)

 

「安く仕入れられてアイドル活動ができるような場所・・・無いかなぁ。無いよね・・・。」

 

まだ若い安部菜々はこれから約15年間苦労人として有名になっていくが、この時期はまだどこにでも転がってそうな一発逆転を狙う馬鹿な若者でしかない。

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、お茶会の時

 

「あら、今日は色々な人が居ることで。」

 

「ふふん、カチューシャの後継者達よ!!」

 

カチューシャとダージリンは仲が良い。

 

定期的に情報交換もしているため他校から見ると同盟関係にあると噂されている。

 

後継者の言葉にノンナは今日は居ないオットーことほむを追加するように言いたいが、空気的に言えずにいた。

 

「お茶とお菓子をお持ちしました。」

 

「あら?この子は始めてみるわね。ダージリンあなたの?」

 

「えぇ、来年にはこの戦車道部を任せるオレンジペコよ。」

 

「オレンジペコと申します。カチューシャ様、ノンナ様、チルノ様、ニーナ様、アリーナ様。」

 

「礼儀正しい子は好きよ。」

 

「ニーナって言うんだっぺよ。」

 

「アリーナって言うだ。」

 

「あたいはチルノ。」

 

「カチューシャ、チルノさんは大きすぎないかしら?」

 

「その分力持ちなのよ。チルノ、あれをやって見せて。」

 

「了解。」

 

キョロキョロと周りを見渡し、部屋にあるグランドピアノを見つけると、フンと言って持ち上げる。

 

200キロ以上あるピアノが持ち上がるので力が凄いことは判明するが

 

(カチューシャが居なくなったら暗黒期にに突入するのは変わらないわね。オレンジペコならわかってると思うわ。)

 

(カチューシャさんは確かに凄い、ノンナさんも砲手や補佐としても優秀・・・だけど後継者がダメダメ。ダージリン様の顔からして縁を切れとおっしゃっている。)

 

ほむも苦労が絶えない。



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夏の始まり

夏の大会が始まり、私も様々な準備をしなければならなくなり、かなの子育てとあわせてKV-3の製造速度が鈍化してしまう。

 

最近は私が居ないときに黄炒と淡、夏休みでこちらに来ている美琴も子育てに協力してくれるので校長室に預ける回数は減って、胃には優しくなった。

 

KV-3の製造速度の鈍化をカチューシャに報告すると更に遅くなることになるKV-2の修理を頼まれた。

 

「砲塔循環リングが故障したからメンテナンスも含めて直しといて。」

 

「はい。」

 

リングが故障した程度でなら問題は無かったのだが、そこから砲塔に繋がる電気ケーブルが破損していたのが問題だった。

 

砲塔を取り外して大規模な修理をしなければならず、どんなに頑張っても1回戦には間に合わない。

 

「1回戦に間に合わないぺな!?」

 

「はい。大規模な修理をしないといけなくて。」

 

「なんとかするだ!!カチューシャ様に迷惑をかけたくないだ!!」

 

「そう言われても・・・最善は尽くす。」

 

「もしかしておまえ・・・私たちが試合に出れておまえが出れないことに嫉妬してデタラメ言ってるだないが?」

 

「違う。」

 

「んだ!!リングの破損は認めるが、ケーブルに問題は無かっただ!!」

 

口論になるが、権限を使い、駄々を捏ねる2人をKV-2から引き離し、修理を開始する。

 

「ノンナ様、プールしていた予算投入する。」

 

「任せる。予算はもう私無しでも大丈夫そう。安心して任せられる。」

 

「補佐の2、3年生が居ないと厳しい。」

 

「普通の人よりしっかりできてるから頑張って。」

 

「はい。」

 

権限をフルに使い直していくが、同学年と確実に亀裂が入り始める。

 

 

 

 

 

 

 

アー ムグムグ

 

「かなはよく飲むね。・・・さて、予算を色々なところからバレない程度で引っこ抜いてきたからKV-3の他に何か造れる・・・IS-3かT-44・・・。」

 

どちらも強い戦車で、後々量産予定だが、型をどちらを早く作るかで今後が決まる。

 

ムグムグアンギャ-

 

「はいはい。今おむつ変える。」

 

着々と戦力増強に努める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり戦車道の本だけじゃダメですね!!現場いきましょ現場!!」

 

やけにテンションが高いアイドル(まだ若い)菜々は体力的な余裕が有るので、試合を観に行くことにした。

 

近場で良いところが無いか探すとボンプル高校とプラウダ高校の大会の1回戦が有ることがわかった。

 

「大会か・・・千葉らしいし、行ってみようかな。」

 

場所は夢の楽園。

 

「はぁ、アイカツしたい。」

 

テレビでは2歳年上の日高舞によって破壊されたアイドルグループの敗残兵達の今と言う番組がやっていた。



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ボンプル高校

夢の楽園・・・夏なので辺り一面に咲き乱れた向日葵とテーマパークのここが、戦車道の会場となる。

 

この日ばかりは片方のパークが休園となるが、戦車道関連の商品を売り込むことと、国からの補助金で会場が借りられていた。

 

「ボンプル高校・・・そもそも装甲を抜けない。」

 

軽戦車、豆戦車しかないボンプルはワッフル等に並ぶ弱小校であり、KV-2がいなくても余裕で勝てる相手だった。

 

かなも来ているが、私のことを知っているチルノに預け、カチューシャと出場する選手の近くにいた。

 

「クラーラは今回は温存するわ。夏バテ気味だから休みなさい。1年生と2、3年の補欠組、ノンナと私で今日は勝つわよ。いいわね!!」

 

「「「Да!!」」」

 

 

 

 

 

「カチューシャ様、フラッグ車とカスタムは?」

 

「塗装だけお願い。フラッグはいつもと同じT-34-85でいくわ。」

 

「わかった。」

 

「観客席でカチューシャの華麗な勝利を観てなさい!!」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぇ・・・あちゅい・・・。」

 

観客席に行くとチルノがウサミミを着けた女性を団扇で扇いでいた。

 

「あたいも暑い!!」

 

「私も扇ぎますからまたお願いします。」

 

「何してるの?」

 

「あ、ほむ。夏バテした菜々を助けた。」

 

「ウサミン星から来ました安部菜々でーす☆キャハ☆」

 

アー?

 

「・・・かな、見ちゃダメ。」

 

「ちょ!!引かないでください!!」

 

「かな、暑くないかな。」

 

「うー!!うー!!・・・ところであなたは?」

 

「池田ほむ。プラウダの整備員。」

 

「ほむは将来の部長候補筆頭だよ!!」

 

「へぇ~、試合には出ないんですか?」

 

「戦車道は下手。」

 

「なるほど。その子は?」

 

「池田かな。私の娘。」

 

「娘!?え、若すぎませんか?ほむさん年いくつですか!?」

 

「16歳。」

 

「わっか!?え、タメだと思ってました!!」

 

「色々ある、色々。」

 

「あ・・・(察し)」

 

なんとも微妙な空気の中、チルノがその空気をぶち壊す。

 

「そういえば、あたい専用のKV-3はいつ完成するの?」

 

「決勝までには間に合わせる。」

 

「そっか・・・。」

 

「修理でもしてるのですか?」

 

「いや、戦車を作ってる。」

 

「せ、戦車を!?え、免許の取るための試験がすごく難しい割に活用する場所があまり無いことで有名なあの戦車製造免許をお持ちで!?」

 

「持ってる。」

 

「キタァー!!ナナにも運がキター!!お金出すので戦車を造ってくれませんか!!」

 

「試作車両なら良い。」

 

「構いません!!」

 

「500万でKV-1Sならある。」

 

「買います!!買わしてください!!」

 

最初は残念な人程度にしか思わないほむだった。



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ボンプル高校2

菜々と商談している間にカチューシャ様とノンナ様は向日葵畑の中で待ち伏せしている部隊を向日葵が倒れた位置から場所を特定し、車両を破壊していった。

 

「チィ、こういう戦場だと自走砲が本当に欲しくなるわ・・・そうよねノンナ!!」

 

「はい、カチューシャ様。」

 

「・・・オットーの病気が本当にダメージだったわ。」

 

(カチューシャ様には妊娠、出産が原因とは言えませんね。カチューシャ様なら祝福してくれると思いますが、2、3年生はまだしも先生方や今の1年生の感情的になり遠からず処罰・・・いや、退艦処分をくらいますからね。・・・幸い上が味方で、子供も西住本家の養子にしたらしいので表向きは大丈夫だと思いますが・・・。)

 

不器用ながら資料を読み、寝る暇を惜しみ戦車を整備する姿にノンナは年下ながらにほむを気に入っていた。

 

クラーラも同様の感想を懐いていたので、カチューシャのニーナ、アリーナを隊長候補にする発言を2人は心の中で反対したが、それは嫌な予感と感情的な事なので、胸のなかに仕舞い込み、実利をとった。

 

(・・・試合に集中しませんと。)

 

「ノンナ!!11時の方向から発砲音がしたわ。恐らく隊長車よ。フラッグもついてるから料理しちゃいなさい!!」

 

「Да。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なげなく勝利・・・か。」

 

「流石プラウダ。昨年度のがまぐれではないと弱小相手でもわかりますね。」

 

「しかしこの世代の親戚一同が本家に集結すると狭く感じるっな!!」

 

「黒森峰の次期エース達が集結してるから本家の西住姉妹様方を除けば最高戦力の一部じゃろ。対抗可能はにっくき島田の11名・・・いや、天才と名高い本家の跡取りを入れると12名か。」

 

「本家の使いよ。家元様はまだなのか?」

 

「すばらっ・・・今しばらく少々お待ちください。」

 

「そうか。」

 

スー タン

 

襖が開く。

 

中から家元が現れる。

 

サッ

 

今まで姿勢を崩していた者も全て姿勢を正し、家元であるしほの姿をみる。

 

「よく集まってくれました。本日は西住の次代を支えるあなた達に私の4女のことを教えておきたいと思い集めました。・・・単刀直入に言うと地の繋がりのある養子です。表向きにはできませんが、本家の継承権はありません。まだ幼く、顔合わせはまだできる時期ではないのでしません。・・・」

 

しほの言葉が詰まり、場が一気に冷える

 

「・・・3女の池田ほむが本格的に動き始めました。恐らく西住の中でも彼女ほど現実を見ているものはいないでしょう。覇王になる前に倒しなさい。勝負は再来年いいですね。」

 

「「「はい!!」」」

 

しかし、分家の者達は過剰評価と切り捨て、長女のまほと次女のみほに目がいってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自称凡人ほど恐ろしいものは居ません。他人に頼ることができるのですから。」



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ヴァイキング水産

影は動きやすい。

 

前世ではその動きやすさに甘え、そして表で起こっていることがわからずチームは崩壊した。

 

(だから前世の記憶の反省から、南という友達をつくった。同学年の様子は彼女越しで入ってくる。)

 

ほむが一番嫌いなのは同学年である。

 

理由はただ、思考が読めないからだ。

 

前世のトラウマから今世まで引っ張られている同学年嫌いは彼女の楔となり、現在進行形で問題を発生させていた。

 

 

 

 

 

 

「カチューシャ様、KV-2の修理が完了し、予想外の収入でISの製造計画が早まった。ただ、大会には間に合うかわからない。」

 

どこかでウッサミーンという声が聞こえてきそうだが、こちらとしてはありがたい。

 

使い道が無いKV-1Sを買い取ってくれたのだから。

 

(ゲームではKV-1Sは優秀・・・だけど戦車道だとエンジンの出力が組合指定の物だからSよりノーマルのKV-1の後期型の方が使える。)

 

「よくやったわ。ヴァイキングはKV-2でギッタンギッタンにしてボルシチの具にできるわ!!」

 

というのも、ヴァイキング水産であるが、Strv m/42というT-34を破壊できる戦車が戦力の中心で、砲塔がカチカチで地形を利用すれば強い戦車である。

 

ヴァイキングの隊長も戦車の特性を理解しており、ハルダウンからの待ち伏せで1回戦を突破している。

 

「カチューシャ様!!KV-2で期待に答えてみせますだぁ。」

 

「うだうだ!!」

 

「期待してるわ!!」

 

「「はい!!」」

 

おう、こっち見て睨むなや。

 

嫉妬か?

 

嫉妬なん?

 

(て、煽りたくなる。)

 

3チャンばっか見て、ネットの人になりかけているほむだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュー

 

KV-3の製造をしながら記憶を手繰る。

 

ガールズ&パンツァー・・・略してガルパン・・・記憶にあるが、それが生きたことはない。

 

生かすこともできない低脳を呪うか、そもそも現実と二次元を比べるべきものではないのか・・・。

 

ジュー

 

(ただ、みほ姉が伝説に昇華する準決勝・・・なにもテコ入れをしないで軍神と言われた力を見るか・・・それをも越える壁と私がなるか・・・。)

 

ジュー

 

(今は無理か。来年ならなんとかなるかもしれない。)

 

ガタ

 

(さて・・・。)

 

KV-3の車体上部に取り付けられた仮設の司令部予定の空間・・・今は私の執務室として使われており、中には山積みにされた効率的な練習方法、学習方法と書かれたレポートに認定こども園に編入させてあげたかなの体調表、ノンナ様から貰った来期予算案(仮)を眺める。

 

「裏方万歳。来年、再来年は楽しめるよ。・・・美琴、幽香。」

 

普通に缶ジュースを飲む美琴とニタニタと笑う幽香が立っていた。



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ヴァイキング水産2

「プラウダに花を咲かせに来たわよ。負けたけれど、あのまま負け越しているのは嫌だからね。」

 

「中学生では相手にならないわよ。いつになったら私の戦車造ってくれるの?」

 

「流石、幽香、美琴。両脇は固められた。・・・幽香、約束は守ってくれる?」

 

「お母様から合格を貰った友達達(継承者)よ。」

 

 

 

5人の少女が現れる。

 

「こんにちわーなのか~。フランソワ・ルーミアなのか~。ドイツから来たけれど小さい時だから日本語の方が上手なのか~。」

 

中学時代の別名・・・殺しのルーミア

 

「上白沢慧音だ。この中では2番目にまともだと自負してる。」

 

中学時代の渾名・・・ハクタクギアチェンジ

 

「お、大泉葉子です。合格は合格ですが・・・実力が伴って無いって言うか・・・その。」

 

渾名は無く、無名であった。

 

が、たぶん一番まともな子である。

 

「僕はリグル・ナイトバグ!!緑色と夏、虫が好きかな。寒くても皆が行くから頑張る!!」

 

中学時代の渾名・・・蛍。

 

「へぇ、貴女が幽香を倒した・・・ふ~ん。良い腹心に恵まれたって感じね。才能ある人を探すのが上手そうな顔をしているわね。八雲紫。今覚えて。」

 

胡散臭い少女・・・渾名は大妖怪

 

「個性的・・・鍛えごたえがありそう。・・・池田ほむ。力は無い。頭も秀才止まり、経済感覚も凡人より上、ないない尽くしの西住を名乗ることもできないボンクラ。それが私。だから協力してほしい。あなた達は幽香を支えて。幽香の世代の部長は紫がやる。副部長は葉子と慧音がやる。美琴と幽香は二枚看板のエース。ルーミアはフラッグ車、リグルは偵察。」

 

「侮ってたわ。確かに幽香が負けた相手だわ。そこまで見えてるならならあなたにも協力するわ。ほむ。」

 

どうやら私が知らないところで美琴も含めた役割を決めていたらしい。

 

なんとな~く第一印象で決めただけなんだけど。

 

「・・・よし、色々渡す車両が決まった。KV-3の次に優先して造る。」

 

「わかったわ。」

 

「ほむ、私の戦車のデザインに稲妻模様を入れてくれると嬉しいな。」

 

「・・・わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァイキング水産とは四国の剣山地で開催された。

 

山地という悪路、木々に囲まれており戦車の通れる場所が限られている等、会場としては最悪の場所が当たった。

 

別名強豪殺しの山脈・・・。

 

ただ、天候は台風の影響もあり視界不良の遭遇戦となったことがプラウダを助けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆行くわよ!!」

 

「「「Ураааааааа!!」」」

 

カチューシャはフラッグ車のT-34-85をIS-2、KV-2に守らせ、自ら攻撃に加わった。

 

進行ルートが限られていることは待ち伏せされやすいことを意味しているが、履帯が広いソ連車両の特性上悪路にもある程度耐えられるので、狙撃ポイントを全速力で取りに行く作戦になった。

 

「オットー、あなたの力、このカチューシャに見せてみなさい!!」

 

通信手兼修理要員でクラーラ隊に同行する。



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ヴァイキング水産3

『ノンナ、クラーラが交戦を開始したわ。優勢らしいけれど釣られている感じがするわ。Dk6の地点Y字路で足止めをしなさい。』

 

「了解しました。オットー、小隊に連絡。」

 

「はい。」

 

通信手としては無難・・・誰にでもできるくらいにはでき、置物ではないことを証明したが、ノンナ的にはあまり乗せたく無いのが本心である。

 

体が弱いのは生まれつきらしく、筋肉が本当に付きにくく、この前腕相撲をしたときにあまりに弱くて折りそうになるくらいにヤワだった。

 

(私たちなら大丈夫な行動ももしかしたらオットーは耐えられなくて大怪我をしてしまいそう・・・。)

 

オットーことほむの扱い・・・ノンナは頭を抱えるが、カチューシャには見えていない視点だからこそほむの凄さが見えた。

 

気配りが上手いのだ。

 

ほむが2、3年生から可愛がられている理由は常に考えながら雑務をこなしてくれるからだ。

 

体操用のマットを朝運んでくれていたり、足りないものを嫌な顔(ポーカーフェイスなのでわかりずらいが)1つせず買い出しに行ってくれたり、カチューシャの愚痴を聞いてくれたり、夜間訓練中に食事を用意してくれたり・・・どんな人でもできる小さな事、それを率先してやってくれる・・・そして空いた時間でチームの戦力を上げるため整備や製造をしてくれる・・・それがほむ。

 

病気(妊娠)中にはチーム全体が心配するほど入学前から確固たる立ち位置を得ていた。

 

無意識にこれができる。

 

それが西住お嬢様がやってくれている。

 

これがカチューシャの次はほむことオットーが部長兼隊長になるべきとカチューシャ以外の2、3年の総意だった。

 

(カチューシャ様は勘が良い。だから今回乗車させて功績を与えておきたいのだろう。・・・やめてほしい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Y字路にて敵、3両!!」

 

「来やがった。おめぇら、敵さんに弾をプレゼントしてやれ!!」

 

「「「おぉ!!」」」

 

ヴァイキング水産らしい荒くれ女子達は7両のStrv m/42を操り、果敢に砲弾の雨を降らせる。

 

「履帯命中!!足は止まりましたぜ姉御!!」

 

「距離観測機もあれだけベコベコなら壊れてますぜ。」

 

「次弾装填だ。・・・え?」

 

「「「動き出した!?」」」

 

「なんで履帯直ってんだよ。」

 

 

 

 

 

 

「パーツは4秒あれば直る。」

 

「凄いな。」

 

「ノンナ様、絶対に私を轢かないでください。」

 

「わかってる。」

 

worldofpanzer携帯版にあるとある戦車に2秒で応急修理が完了する魔法の黒い戦車を目標にし、頑張った結果、4秒で大半のパーツは直せるようになっていた。

 

ほむ的には履帯を直すのは苦労するが、コツさえわかれば応急修理できるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな!!」

 

姉御ご立腹。

 

反撃を喰らってキュポンと音とともに旗が上がる。



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ヴァイキング水産4

流石に7両を倒すのにノンナ以外の車両は破壊され、ノンナの車両も凄まじいダメージを受けていた。

 

「5分で修理しますので、近場の洞窟に移動してください。」

 

豪雨の中で修理作業するのはほむでも厳しかった。

 

『流石ノンナね!!どう?オットーは役にたったかしら?』

 

カチューシャから無線が入る

 

「充分過ぎる活躍でした。」

 

『なら良いわ。ノンナの車両はボロボロだと思うからトドメは私達でやるわ。ゆっくり後退して防衛に加わりなさい。』

 

「Да。」

 

 

 

 

 

 

 

洞窟にて待機するノンナとオットー(ほむ)と2人の3年生の計4人はほむが持ってきていた4つのカップ麺ができるのを待ちながら(ほむは修理中)雑談をしていた。

 

「オットー様、そういえば西住で御家騒動があったらしいのですが大丈夫なのですか?」

 

ガチャガチャ

 

「たぶん・・・大丈夫。お婆様とお母様の争いだからお母様が勝った。相当前の話。」

 

「ありゃ?すみません。」

 

「別に・・・。」

 

「西住家は血族経営じゃないですか。それで大丈夫なのですか?御家騒動が頻発するんじゃ。」

 

「大丈夫・・・と言いたいけど次が怖い。」

 

「同志オットー、次とはまほとみほのことですか?」

 

「そう。まほ姉様は西住ではある程度の戦略眼と並み以上の指揮能力がある。みほ姉様は神憑り的な戦術眼と指揮能力がある。これだけだとみほ姉様の方がよく見えるけど、みほ姉様は私以上のコミュ障で経済センスもない。あと問題を一人で抱える癖がある。まほ姉様も金に対しての意識が疎いけどリーダーシップがちゃんとある。・・・けど、黒森峰10連覇の偉業を成し遂げられなかったから分家からつつかれそう。」

 

「同志オットーはどうなのですか?」

 

「欲に眩んだ者が神輿として来るかもしれないけど、普通は名前すら上がらないほど無能と見られてる・・・と思う。自分の考え方と一致してないから今さら・・・。」

 

「・・・オットーは自信が無いのですね。」

 

「西住を名乗れるような自信は無い。戦車道の元締めを名乗るくらいなら・・・新しい流派創りたい。」

 

「楽しみにしていますよ同志オットー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんでん返しも無く防衛に戻ると中でカチューシャ様がフラッグ車を撃破し、試合終了。

 

 

 

 

 

 

「乾杯!!」

 

「「「乾杯。」」」

 

カチューシャ様の部屋で、私、ノンナ様、クラーラ様の4人で簡単な祝勝会が開かれた。

 

「今日の料理はオットーが作ったのでしょ。ボルシチもそうだけどフォルシュマークも美味しいわ。弱冠フィンランド料理もあるけど。」

 

「お口に合いませんか?」

 

「いや?そうじゃないけど、フィンランド料理はイギリスの次に不味いことで有名だったから以外と美味しくて驚いてるわ。」

 

「アレンジされてますね。私でもこれなら食べやすいでーす。」

 

「クラーラ、本場はやっぱり不味いの?」

 

「例外はありますが歴史的に香辛料とか塩がない土地なのでとにかく味が薄かった記憶が・・・。」

 

「ふーん。・・・よくやったわオットー。」

 

「光栄です。」



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軍神降臨

祝勝会の後、自室に戻り、かなの育児をしながら次の試合について話し合っていた。

 

『次女様が相手ですか・・・あれは規格外ですよね。倒せますか?』

 

「たぶん無理。今の戦力じゃ。」

 

『来年ならどうですか?』

 

「イレギュラーがなければたぶんやれる。」

 

『・・・まぁ、私がそちらに行くまでにST-1を頼みますよ。』

 

「わかってる。・・・実質IS-4擬きになる。」

 

『電気式変速装置はどうです?造れますか?』

 

「もう作ってある。バレると問題だからバラしてるけど。・・・STP-1ゴリゾーント(砲安定装置)も作った。乗せる予定だけで乗っけて良いのは戦車道ルールの穴なのか?電動砲塔旋回装置や、防水川底渡渉装置、新型換気装置も搭載できる。」

 

『それはそれは・・・すば・・・いや、なんでもないです。姫様、お子さんは元気ですか?』

 

「ん、元気。」

 

アー チュパチュパ

 

『それならいいです。来年から転校してそちらの中学に行きますので、手続きをお願いしますね。』

 

「わかった。用意しておく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西住殿?どうしたのでありますか?」

 

「秋山さん・・・えっとね、妹のことを思って。」

 

「みぽりんの妹ってプラウダにいるんだっけ?」

 

「うん・・・。」

 

「でも西住殿の妹殿なら相当な実力者なのでは?それだと次の試合は厳しいような。」

 

「・・・弱いよ。もう何年も会ってないけど、戦車道は凄く弱いよ。」

 

「・・・以外。」

 

「冷泉殿と同じ意見です!!」

 

「ところでみほさん。妹さんのお名前は何て言うのですか?」

 

「池田ほむ。」

 

「「「あっ。(察し)」」」

 

「みぽりん?何で妹ちゃんは池田なの?」

 

「お婆ちゃんが放逐させて・・・。」

 

「「「うわぁ・・・。(絶句)」」」

 

イマイチ理解していない武部沙織を除き、西住の闇の深さに絶句する面々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合当日

 

私は試合に出場することを辞退した。

 

「そう・・・良いわ。あなたの姉のみほは去年黒森峰戦で色々あったから楽に勝利してやるわ!!決勝には出なさいよ!!」

 

「はい。」

 

「行くわよ!!ノンナ、クラーラ。」

 

「「Да。」」

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははは!!カチューシャを笑わせるためにこんな戦車用意したのね!!」

 

カチューシャは大洗の戦車を見て笑う。

 

「あなた達は全てにおいてカチューシャより下なの!!」

 

それでいて大洗の河嶋桃からノンナに肩車してもらっていることを指摘されると

 

「カチューシャを侮辱したわね!!粛清してやる!!」

 

という。

 

去り際にはみほのことを最初からわかりきった上で

 

「あら、西住流・・・去年はありがと、あなたのおかげで優勝できたわ。今年もよろしく。じゃあねピロシキ。」

 

「До свидания。(さようなら)」



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寒すぎ

観客席には来年からプラウダに来る6人、チルノ、黄炒、淡と私の10人に加え、鈴木教頭が前に座る。

 

「あら?大洗の戦車弱すぎないかしら。」

 

「ドSの幽香ならこの戦力差なら虐めるでしょ。」

 

「あら紫、私はそこまで汚いことはしないわよ。心が折れるくらい波状攻撃するかもしれないけど。」

 

「嬢ちゃん方もこぇーな。ほむ、こんな腹黒娘制御できるのか?」

 

「大丈夫。できない。」

 

「ダメじゃねーかwww。」

 

「・・・ねぇ、あなた達が試合する立場ならどうする?」

 

「僕は迷彩を施して雪で砲塔を隠しながら偵察に徹するね。防衛ラインは市街地前の雪で高台になってる場所かな。」

 

「私は森なのかー。誘き寄せて各個撃破なのかー。」

 

「そうだな・・・平押しで良いと思うが。」

 

「私で半数やるから後の半数幽香がやって終わりじゃない?」

 

「そうね。被弾数は3から5発ってところじゃないかしら。美琴なら3発でしょうけど。」

 

「はいはい、エースエース。そうね・・・まずエースの2人はそれで良いけど補佐として慧音をつけて、プラウダの普通の選手を2か3両ルーミアにつけて森から進軍、側面砲撃をしてもらって隠れていたリグルを火消しに使うかしらね。葉子はフラッグ車かしらね。」

 

「じゃあ、あたいは大ちゃん守る!!」

 

「淡はねー、んー黄炒のサポートするよ!!」

 

「釣ります。」

 

「普通にこいつら強くね?」

 

「なんか感じたのを集めたらこうなる。」

 

「そ、そうか。」

 

このチルノの発言で、大泉は以後大ちゃん、大妖精と渾名がつけられ浸透することになる。

 

黄炒はカチューシャからイエローと言われ、淡はアワアワ、淡と言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかうちの砲当たらなくねぇか?」

 

「カチューシャ様のことだから包囲するまで当てる気ない。あとうちの練度の低さがある。」

 

「でもよー。仮にも昨年の優勝校だぜ。スパッと勝っていざ決勝へ勢いつけていきたくね?」

 

「・・・思考の違い。私は鈴木さんの方が良いと思う。」

 

「だろだろ。」

 

「ほむほむ、なんか包囲できてない。」

 

「そうだね。」

 

「ちょっと待ってて・・・んー。」

 

「双眼鏡なんか使って・・・見えないの?」

 

「裸眼だと遠すぎてわからない。」

 

「「「え?」」」

 

「それ、お前の目が悪いだけじゃね?」

 

「そう。・・・え?皆視力いくつ?」

 

「「両目3.5(イエロー、淡)」」

 

「両目6.0(リグル)」

 

「「「両目2.5(幽香、美琴、紫)」」」

 

「両目1.8(残り)」

 

「両目1.0は・・・えぇ。」

 

「悪いっちゃ悪いが、ギリギリ眼鏡じゃねーな。リグルなんなの?アフリカ人の血でも入ってるの?」

 

「教頭先生じゃなかったら叩いてますよ。」

 

「ガキが遠慮するなほれほれ~。」

 

「髭でジョリジョリしないでよ!!僕の肌があれる!!」

 

「こいつ面白いな。」

 

その様子をまほとしほは遠くから観ていた。

 

「何だかんだでうまくいってそうだな。」

 

「お母様、本当に来年黒森峰の障害とほむがなるのですか?」

 

「必ずなります。エリカでしたか、気をつけるように言いなさい。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダージリン様、本当に今後は私が隊長で良いのですか?」

 

「えぇ、任せるわよ。でも今は大洗とプラウダの試合を観なさい。」

 

「はい。・・・少し席を外します。」

 

「早く戻ってきなさい。」

 

「はい。ダージリン様。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私だ。例の物を9月までに全て納入しなさい。」

 

オレンジペコの手帳には

 

《・センチュリオン6両

・チャレンジャー6両

・ブラックプリンス4両

・コメット6両》

 

聖グロはオレンジペコの課金により強化されるようだ



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大洗戦

黄炒→イエロー(ポケスペ)
淡→大星淡(咲-saki-)
姿はこれね。


夏だというのに異常気象で吹雪く天候の中、観客席でジリジリと追い詰められているみほを観ていた。

 

(速攻は破綻した。戦力差は一応縮まったけれども厳しい。)

 

そんな時だった

 

カチューシャからのメールが入ったのは・・・

 

内容は

 

《大洗に降伏勧告をするわよ!!あなたが行きなさい。一時試合が止まるからその時に来なさい。》

 

だった。

 

試合が止まり、なおかつフィールドにいる審判が許可すれば入ることができるので私は席を外すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「条件はカチューシャの前で土下座。それでいいわ。」

 

 

「わかりました。」

 

「あと3時間の考える猶予も彼女達に与えるわ。オットー1人で行きなさい。」

 

「Да。」

 

「・・・オットー、厚着過ぎない?登山家よまるで。」

 

(何で吹雪く中スカートでいれる方がわからない。)

 

「寒がりなもので。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな建物の中で大洗の選手達は不安そうな顔をしながらブツブツと喋っていた。

 

白旗担いで向かった私に様々な感情の視線が突き刺さる。

 

「ほむ?」

 

「はい。みほ姉様。」

 

久しぶりの再会だが敵と味方であり、西住の次女と無能の三女である。

 

「降伏勧告をしに来た。」

 

「降伏だ!!するか!!そんなもの!!」

 

騒いでいる人を無視し、条件を述べる

 

「降伏を受諾次第、全員でカチューシャ様の前で土下座以上。猶予は3時間・・・。」

 

大洗の選手達はざわつくそんな中、ほむは言葉を続ける

 

「選択を楽しみにしている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしたか?」

 

「クラーラ様・・・降伏するかは半々ですね。カチューシャ様とノンナ様は?」

 

「カチューシャ様が眠たいようで仮眠しにいきましたよ。」

 

「・・・私は観客席に戻ります。」

 

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

歩きながらやはりカチューシャと私では考え方が根本的に違うのだなと感じた。

 

(あのカリスマは・・・人を酔わせるカリスマだ。)

 

それはどちらかといえばレーニンやヒトラーのようなカリスマである。

 

焚き付けるのだ。

 

ただ、私は近くで見ていたことでカリスマの幻想が解けてしまっていた。

 

恐らくノンナ様やクラーラ様も解けているが、親友だから関係が続いている。

 

(軍神が勝てばあと数時間であなたの夢(カリスマ)は終わる。いや、夏は続くか。でも破綻は近い。)

 

カチューシャは自身のカリスマが高いことしかわかってない。

 

だから後継者を指摘されて慌てて作って普通(ほむ視点だと失敗作)が出来上がるのだ。

 

(ポーカーフェイスじゃなかったら今回のは流石に顔に出てた。・・・クラーラ様だからなにも言わないと思うけど・・・。)

 

そんな時だった

 

「私だ、例の物を9月までに全て納入しなさい。」

 

声が聞こえる。

 

オレンジペコだ。

 

記憶と最近見た月刊戦車道の記事に載っていた写真どちらにも合致する。

 

彼女は手帳を見ながら何かを書き込んでいる。

 

バッ

 

目が合う

 

「・・・腹に何かある。西住の三女か。」

 

「ドス黒い・・・本性は真っ黒。まるでアイツみたい。」

 

だだそれだけしかお互い喋らなかったが、それだけで互いを危ない存在だと理解した。

 

ここから約2年間、オレンジペコとの外交合戦、諜報合戦が始まる。

 

ほむの圧倒的に不利な状態で。

 

「鋼の女め。」

 

「三枚舌。」



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軍神とは

原作通り大洗はアンコウ躍りをしだした。

 

私は絶対にしたくないな。

 

(記憶では友達と踊った事がある・・・あいつら元気かな。・・・あいつら?誰だっけ?あれ?・・・記憶が薄れてる?)

 

頭を抱えながら席に着く。

 

「3時間もどうしたのほむほむ?」

 

「ん、食事したり、電話してたりしてた。」

 

「電話?」

 

「来年から中学に同志が来る。名前は言わないけど。」

 

「ほむ!?私も知らないんだけど!!」

 

「美琴、慌てたらわからないよ。あたいもその子知らないし。」

 

「復讐鬼だから・・・欲がヤバイ。再来年の部長兼隊長候補。」

 

「お前さんがそこまで言うか。こりゃ、こっちも引き締めねーとな。・・・あ?大洗のやつら分厚いところに突っ込み始めたぞ。」

 

「・・・カチューシャ様の作戦が崩壊した。たぶん・・・負ける。」

 

「おいおい、周りにプラウダの関係者が俺達しか居ないからって言っちゃまずいんじゃね?」

 

「鈴木教頭、本心?・・・カチューシャ主義は未完成で不満じゃない?」

 

「たく、なんだよ。気がついてるのかよ。・・・カチューシャは権力が弱い。生徒会や風紀員と対等に話せる関係にはなったがそこ止まり。」

 

「私に期待してるのはそこ?」

 

「全部の権力を集中した部活・・・どんな化け物ができるか想像しただけで飯が食えるわ。・・・熊さんにはナイショな。」

 

「ん。理解。」

 

「・・・本当に負けちまったな。」

 

電光掲示板には大洗の勝利とデカデカと書かれていた。

 

「・・・始まり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチューシャ達3年生は泣いていた。

 

2年も1年も泣いていた。

 

泣いてないのは私とチルノだけ。

 

「あなたたち、決勝は観に行くわよ!!私達を破った大洗が優勝しなかったら許さないんだから!!」

 

「「「Да!!」」」

 

熱が籠っているが、私はノンナ様とクラーラ様に言った。

 

「準備を始めるので私は決勝へは行きません。」

 

「わかった。私とクラーラの事務机の中に鍵がある。それを渡す。」

 

「ありがとうございます。」

 

「カチューシャ様はあなたを評価してますからね。同志オットー。」

 

「クラーラ様、ではなぜカチューシャは私にオットーとつけたのでしょう?」

 

「オットー?」

 

「適当でもオットー・クーシネンからオットーを付けた・・・なら・・・。」

 

ほむはその後は言わなかった。

 

しかし、これが後に彼女の渾名が鋼の女と言われることになる由縁だった。

 

(オットー・クーシネン・・・スターリンの天才的弟子、裏切りオットー。カチューシャ様、あなたはスターリンではない。レーニンだ。)



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掌握

プラウダの学園艦の長さと人口知ってる人いたら情報ください。


プラウダ敗退の次の日。

 

カチューシャから正式に部長の権限をいただいた。

 

「プラウダを任せたわよ!!」

 

「Да。」

 

ただ

 

「隊長はカッリーネ(mob)にするわ。副隊長はニーナとアリーナ。」

 

「え!?カチューシャ様わだしらでええんか!!」

 

「そうよ!!カチューシャの考えを広めなさい!!」

 

「「ypaaaaaa!!」」

 

((余計なことを・・・。))

 

側近のノンナとクラーラは思ったが口には出さなかった。

 

横で何か秘策でもあるのかいつも以上に能面のほむの顔を見てしまったから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチューシャの根本的に存在するカリスマは勝利により作り出されている。

 

勝利への希望がカチューシャという絶対的な権力者を現す。

 

しかし、私にはそれがない。

 

カチューシャからは部長を任命されたが、実力が無いため、実力があり盟友のチルノという力による発言権しか無くなってしまう。

 

「だからここに来た。」

 

生徒会室の扉を見ながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部長になったからには学園艦全体でもある程度の発言力・・・いや、戦車道部の部長なので3か4番目に生徒の中では発言力がある。

 

生徒会長、風紀委員長、船長、戦車道部長これをトップとし、以下委員会の委員長が連なっている。

 

なぜ戦車道【部】ごときがこんなにも発言力があるか・・・それは明確な武力を持っているからである。

 

警察もピストルを持っているが、いくら非殺傷弾とはいえ、市街地で榴弾で砲撃されたら重傷ものであり、建物が崩れて普通に死ぬ。

 

それとプラウダには3つしかない部活のうち、2千人近くの女子が戦車道をやっているのだから予算も多くなり発言力が自然と強くなるといえば強くなるが・・・。(そんな人数を纏めあげていたカチューシャはやはり常人にはないカリスマが有るのだろう。)

 

ちなみに残りの部活はチェスと男子だけのスポーツサンボである。

 

(プラウダの学園艦は他の名門校と比べると小さい。・・・約全長12キロの3段階式に6万人が住んでる。・・・なのに娯楽がすごく少ない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

私が不満ということは、他の生徒も不満であるということであり、その不満を解消しようと生徒会は頑張るが、訓練用の土地が削減されることに反発してきた歴代プラウダ戦車道部と、風紀が乱れることを警戒して(風紀委員として反対、しかし自分達も娯楽が欲しいため)消極的反対の立場が続いていたため、パワーバランス的に生徒会の改革は進まずにいた。

 

さらにカチューシャが起こした革命により戦車道部の力が上がったため革命はできないだろう・・・という空気が流れており、生徒会からも完全にカチューシャ主義の側近が部長に就任したことは数時間前に伝わっているため諦めモードになっているらしい。

 

そんな生徒会・・・役持ち8名の会長、副会長2名、書記長、書記補佐、会計、会計補佐と雑務数十人が集まる部屋に私が単身で行った意味は・・・

 

ガラガラ

 

「失礼します。」

 

「・・・戦車道部の・・・新部長のオットーだね。」

 

「はい。」

 

「自己紹介をしておくよ。生徒会長新田だ。まぁ知ってると思うけどね。・・・なんのようだい?言っておくけど土地はもう無いぞ。」

 

生徒会役員達は不安そうな顔をしている。

 

まぁ私のことを知らなければ不安になる。

 

「違う・・・私は新部長のほむ。池田ほむ。生徒会の改革に協力したい。」

 

「なに?」

 

生徒会室にいた役員全員が私のことを改めて見る。

 

「池田くんは・・・カチューシャくんが怖くないのかね?」

 

「怖くない。カチューシャ様は天才、そしてカリスマがある。しかし、カリスマは勝つことにより生み出していた。革命から始まり、補佐をしていたノンナ様やクラーラ様、他の先輩方の力をうまく吸い上げて優勝に導いた。・・・が、それが西住の次女に負けたことによって若干揺らいだ。・・・ノンナ様、クラーラ様から事務の権限は完全に引き継がれている。何に使おうと自由。」

 

「反発が凄そうじゃないですかね?」

 

小鳥と書かれたネームプレートの横に書記補佐と記された先輩は問題点を指摘する。

 

「戦車道部の部員が移動込みの3日間プラウダから離れる時がある。その時に行えばいい。校長、副校長には手回しして許可は出てる。」

 

校長は

 

「えぇよ。」

 

と即答だった。

 

熊さんがこだわっているのは生徒の自律性であって、その方向性がどのようになってもそれはそれで生徒の成長に繋がると考えているため賛成してくれた。

 

カチューシャを支持していたのもカチューシャの革命が生徒が率先した行動として評価したのだ。

 

「お前、大会で俺の話聞いてたか?」

 

「聞いてた。だからする。・・・総力戦にするにはその下の段階が必要。基礎がないのにそんなことしたら反発で学校が終わる。でも短期間なら全ての権力を集めることは可能。」

 

「まぁ見といてやるよ。」

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

「手始めに第三演習場、校舎の1フロアを生徒会に戻す。それで部活をできるだけ多く復活させて欲しい。パソコン部と社会部(歴史系)、囲碁将棋部、報道部は欲しい。あとはスポーツを沢山。」

 

「ちょっとまて、ちひろ。」

 

「はい。創部するのは可能ですが予算が・・・。」

 

「ん、戦車道部の砲弾代8割、住居修復費を今年度から7割、新規戦車費は10割削っていい。」

 

「「「はぁ!?」」」

 

「正気!?あなたは戦車道部の部長なのよ!!」

 

緑色の守銭奴の別名を持つ千川ちひろ会計補佐・・・彼女はプラウダの少ない財源を効率的に回すことで財政を必死に動かす鬼才であり、私は戦車道部の財源を握っているので把握しているが、生徒会費の限り有る財源まで使って治安維持費に当てていた。

 

生徒の不満が爆発しないように。

 

それが監視社会となり、さらに財源悪化の悪循環にもなっているが。

 

「風呂敷を広げるのは得意。そしてそれを実現するのも。・・・優勝確実だった黒森峰の10連覇阻止・・・裏でどれだけ情報を漁ったことか。・・・黒森峰、継続、サンダース、BC自由、マジノ・・・情報網はあるし、黒森峰以外の戦力拮抗状態にしたのは私。メリットはプラウダの人気が上がる。人が集まれば注目される。注目さればその競技に寄付金が集まる。寄付金をどこに使うかは生徒会のサインが必要。中抜きしてそれを老朽化した施設の改築、娯楽施設を作れば更に人気が出る。施設を建築するからプラウダの金が回る。娯楽施設に部活を当てれば予算カットにもなる。」

 

「凄いな。カチューシャを越えてる。」

 

「私は遠くしか見えないし、広げられる手はとてつもなく小さい。道は示すから手伝って。リベラル改革の為に。」

 

「ふははは!!面白くなってきたじゃないか。」

 

ドサ

 

「こちらから誠意を見せる。」

 

2500万円の札束が置かれた。

 

これはプラウダのあちこちに転がっていたガラクタ(使えない戦車)を修理して売り払った金である。

 

知っているのはノンナとクラーラしかいない金である。

 

「誠意、受け取った。忙しくなるぞ!!」

 

その日、生徒会選挙の停止が校長権限で決定する。

 

「選挙なんてやってる暇ないぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カリカリ

 

「練習所は更に削る。練習はシミュレーターを使う。ゲームと連動させて模擬弾を装填するだけでゲーム内でも装填される仕組み、車内をイメージするための仕組みもしないと・・・実弾演習なんて1ヶ月に1回でいい。」

 

ほむの頭の中では新しい練習方法が浮かんでいた。

 

その為にスポーツ系専門な調理部が必要であり、シミュレーターはパソコン部が必要なのだ。

 

「どんな部活も無駄はない。」

 

薄れ始めた前世の記憶に残っていた部活である。

 

運動部16種、文化部35種と在学していたマンモス高校時代から引っ張り出してきた。

 

「ただ・・・整備科だけは独立させない。私が戦車道部の部長がやれなくなる。」

 

こういう内部の改革は上手いほむだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?なんかかわいそうなのがいる気がした。」

 

「姉さんどうしたんすか?」

 

アンツィオの財政を支えつつ、P-40を揃える資金を稼ぎあげたアンチョビの内政能力は天才的であり、やはりほむは秀才の域を出れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「KV-1S買ったけど・・・乗員がいない。」

 

もう1人の凡人こと安部菜々は凡ミスをしていた・・・

 

「・・・プラウダ高校から引退する選手を引っ張らせてもらおう。」



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次世代

ほむが必死に新しい戦車道の1つである戦車のシミュレーターを使った練習方法とカチューシャの権力を奪っている頃、他の学校でも新隊長が頑張っていた。

 

ポロロン

 

「まさか幹部の貴女が新隊長か・・・世の中わからないものだな。」

 

「家元も何を期待してるんですかねー。上条さんは凡人代表みたいな者なのに。」

 

上条当子・・・渾名幻想殺しの上条・・・高校1年生・・・島田流の悪夢の世代から1年早く生まれたが為に知名度は低いが、数々の逆転劇、相手の勝利という淡い幻想を壊すことから幻想殺しと言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで本当に良いのだろうかいや良くない・・・。」

 

知波単学園の新隊長西・・・はたから見たら優柔不断に見える。

 

そんな姿を見てきた福田は伝統ある知波単の突撃をやめることに凄まじく嫌悪感を抱いていた。

 

が、彼女も数日後にあるエキシビションマッチの軍神に感化され、6強時代に知波単の知名度を保つ選手であった。

 

後のスポーツ系及び歴史小説家である。

 

 

 

 

 

 

 

 

カチューシャ達が学園艦を離れた。

 

決勝前日の昼頃・・・生徒会と各部の部長予定者で学園艦の放送局にて声明を発表した。

 

『『『我々生徒会は部活道による学園艦の発展を目的とし、更なる本校の飛躍を目指しここに文芸復興の号令とする。文芸復興により申請すれば様々な部活を創ることを審査の上で許すこともここに宣言する!!』』』

 

これは文芸復興の大号令とまで言われるようになり、閉鎖的なプラウダを変化させていく。

 

 

 

 

 

 

「君がほむ君か!!悲願の野球部復活に協力してくれて本当にありがとう!!秋大には成果を出して共にプラウダの名を広めようじゃないか!!」

 

「報道の自由!!私はこれが欲しかった!!ほむちゃん、何か言われても今のあなたは正義!!だから何か言われても擁護する記事出すから負けないでね!!」

 

生徒だけでなく

 

「一教職員としてもほむさんの英断感謝しますよ。」

 

プラウダの先生も部活の顧問をしたかったようで、各々生徒達と部活を創っていく。

 

音楽の先生なので吹奏楽部に行くのかなと思っていた人が、実はプロボウリンクプレイヤーだったり、筋肉ゴリラがコーラス部顧問になったり・・・それがネタになり報道部や新聞部が記事にして活動が加速していく。

 

そして埋もれていた才能がすぐに現れてくる。

 

「野球選手大好きだよ!!特にキャップが好き!!」

 

小学5年生の姫川ちゃんが歌で才能を発揮、小学生ながら高校生のような声が出るので報道部企画の歌番組に出たり、姫川ちゃんが行く野球部の選手解説等のバラエティー系で才能を現す。

 

他にも

 

「オリヴィエ様!!ついに社会部ができるようです!!」

 

「よろしい。長かったが雪解けだ。」

 

後のウラジオストク市長オリヴィエ・ミラ・アームストロングも才能を開花させた。



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無名革命

あぁ、何でB・L・I・T・Zアップデート検索画面から動かないだよ!!

イライラするからこっちを書くぞ!!


カチューシャが居ない間に革命の峠は越えた。

 

戦車道部のカチューシャに連れていかれなかった組は3軍以下の戦力のため、抜けるのならいいし、残ればやる気があると私は見た。

 

「オットー様、本当によろしかったのですか?」

 

「私はほむ。先輩、間違えないでください。」

 

「そ、そうか。」

 

「先輩はどうします?残ります?」

 

「残る。ほむ様、聞かせてください。カチューシャが嫌いなのですか?カチューシャ主義が嫌いなのですか?」

 

「いや、カチューシャ主義はしっかり機能していた。だから嫌いではない。カチューシャも私を引き上げてくれた。嫌いじゃない。ただ、時代に合ってないから変える。」

 

「時代・・・。」

 

「閉鎖主義なんて50年前にとっくに廃れてる。今更ソ連みたいなことしても、それを教育委員会に指摘されて、メスを入れられたら廃艦もある。今、この瞬間に時代が動いてる。なら動いてる時代に合わせるのが制度であると私は考えてる。」

 

「なるほど。」

 

「あと・・・私的なことだけど将来自分の流派を創りたいからその時に選手を集めたい。」

 

「なんか人間味があって落ち着きました。・・・来年の大会はどうしますか?」

 

「全国大会優勝を狙う。正攻法でありつつ、新しい戦車道の形を見せつける。」

 

「新しい戦車道?」

 

「考え続ける戦車道。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なによこれ!!何が起きたのよ!!」

 

カチューシャ達が帰艦した。

 

そして変化したプラウダを見て戸惑う一行。

 

「革命。」

 

「オットー!!」

 

ほむは堂々と正面から現れる。

 

背後には生徒会と風紀委員もいる。

 

「抱き込まれたのね。新田、私が居ない間にオットーに何を吹き込んだの!!」

 

「いや、俺はなにもしていないよ。ほむ君が提案し、もう止められないところにある。」

 

ぷるぷるとカチューシャは震え始める

 

「オットー!!私が作り上げた革命を壊したな!!」

 

「独裁なんて私には無理・・・それができる人望がある人も居ない。プラウダ戦車道部の部長として部員を大会優勝に導く義務がある。だから変える。カチューシャ様、貴女は負けた。天才を越えた軍神に・・・そして貴女は軍神をミホーシャと呼ぶ。・・・カチューシャ様は気がついているのでしょう。個人の限界を。一部例外を除いて。」

 

「何よ!!それが関係あるの!!」

 

「ノンナ様、クラーラ様が支えていたから独裁は成立していた。・・・私はどうですか?チルノは支えてくれるでしょうが、私に戦車道の才能が無い私が・・・纏めあげるには外部の力が必要なのですよ。」

 

「ノンナ、クラーラ・・・取り戻すわよ。プラウダを。」

 

「「・・・Да。」」

 

この瞬間にカチューシャ主義は完結した。

 

そしてほむ流が初めて姿を現す。

 

カチューシャ達決勝観戦組は乗って帰ってきたT-34、T-34-85を動かし始める。

 

「で、嬢ちゃんよ。どうすんだ?俺らは?」

 

「風紀委員として取り締まれば。」

 

「部内の問題は部内で解決してくれや、銀さんはズラと調理部の女の子が作ったパフェ食わなきゃいけないからさ。」

 

「ズラじゃない桂だ。」

 

カチ

 

「・・・命令、赤の絨毯開始。」

 

バキバキバキ

 

「な!?」

 

「天才には努力家をぶつける。」

 

IS-3・・・2両がプレハブ小屋を破壊して登場する。

 

更に殺気からカチューシャは気がつく。

 

これの他にT-44も2両隠れていることに。

 

「チィ・・・。」

 

「後は頼んだ。チルノ。こっちに来なよ。」

 

「うん。」

 

「あ、ちょっと待ちなさい!!チルノ!!」

 

「あたいはほむと約束した。一緒に頑張ろうって。だからカチューシャ様、ごめん。」

 

26両対5両(1両KV-3はチルノが取りに行っているため途中から)

 

学園艦内の狭い場所で戦闘が始まる。



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IS-3

IS-3・・・薄い天板、近代的な車体が特徴的な重戦車であり、火力も122mmD-25Tを搭載しており、マウス等の重装甲車両以外には正面から破壊できる驚異の戦車である。

 

しかし、時間が無かったためキャタピラの改造が済んでおらず、曲がる時に時間がかかってしまう。

 

「そんなの関係ないわよ!!」

 

美琴が乗るIS-3には側面に雷のマークがペイントされており、威圧感がある。

 

「発射!!」

 

122mmの繰り出した火力はT-34に吸い込まれ、貫通。

 

「次弾装填!!」

 

「はい!!」

 

装填手は大ちゃん。

 

普通の装填手くらいの早さで弾を積める。

 

 

 

 

 

 

「美琴は地味ね。まぁ行進間射撃命中率89%が彼女の彼女からすれば、確実に撃破するのが見せ場なのかもしれないけど・・・つまんないじゃない。」

 

幽香は操縦手の慧音に指示を出す。

 

「仕方ないな。怪我するなよ。」

 

戦車道用のエンジンを使用しているため45キロの速さまで一気に加速する。

 

ドゴン ゴキ

 

T-34-85にぶつかり、砲身を上手くこちらの砲塔にぶつけてねじ曲げる。

 

そのままの勢いで砲撃し、後ろにいたT-34の側面に当たり装甲を抉りながらもなんとか弾き、その弾が別のT-34の履帯に当たる。

 

風見流・・・殺人流派と紹介したが、もうひとつ特徴がある。

 

戦車の戦闘能力、継続戦闘能力を削ぐことである。

 

今の少しの間に砲身破損による攻撃能力の喪失、片側の側面装甲の亀裂による中破、撃破1両と流派を体現した攻撃を見せた。

 

 

 

 

 

 

カチ

 

「(ロシア語)同志ノンナ、どうやら私達が引退後しても戦車道部は安泰ですね。」

 

「(ロシア語)そうね。しかし、オットー・・・いや、ほむがここまでの戦力を用意するとは予想外だったわ。」

 

「(ロシア語)KV-3を造りつつ、雑務と子育てしながらこれだけ早く戦車を造るか・・・来年が楽しみだわ。」

 

「(ロシア語)今はこの騒ぎをどのように終わらせるか・・・それだけを考えましょう。」

 

「(ロシア語)そうね。」

 

「ノンナ、クラーラ!!日本語で喋りなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カチューシャ様の信念をねじ曲げたアホ・・・私刑にしなくちゃきがすまないなぁ!!」

 

「うだぁ。」

 

「池田ほむ・・・許さねぇよ。」

 

ニーナ、アリーナ両名はカチューシャ以上にぶちギレており、後日カチューシャとの和解後も彼女達は許さず、カチューシャの置き土産と言われる爆弾になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カチューシャの得意戦術は何かと聞かれれば大半の人間は包囲殲滅というだろう。

 

しかし、カチューシャの本気の戦術は物量作戦であり、包囲殲滅も各個包囲することにより相手よりも優位になることにより、擬似的に物量作戦に切り替える事によって止めをさしていくのだ。

 

つまり・・

 

「どれだけ被害が出ても半包囲すればこちらの勝ちよ!!突き進みなさい!!」



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T-44-100PとT-44-122

T-44・・・大戦後期に造られたT-34の進化形であり、冷戦時ソ連の主力戦車T-54の原型となった戦車である。

 

今回私は戦車道用に改造したT-44を2つの試作機仕様にさらに改造した。

 

1つがT-44-100P・・・シュルツェンが特徴的であり、ほんの少し防御力があり、主砲の100mmは十分な攻撃力がある。

 

もう1つはT-44-122であり、搭載できる弾薬が24発と少ないが、T-54プロトタイプができるまでの繋ぎとして使用しようとほむは決めていたので別に損はない。

 

両車ともに弾薬庫が破損しやすく誘爆による撃破がされやすいこと、装甲がドイツ、イギリスの駆逐戦車や重戦車、貫通力がある中戦車だと正面装甲を抜かれるので、湿式弾薬庫、塗装による数mmの装甲のかさまし等、職人業の域でギリギリ大会規定内に収まるようになっており、砲安定装置、トランスミッション系をT-54と同じようにするなどの改良もされていた。

 

車長はイエローと淡・・・他の隊員はカチューシャに連れていかれなかった者達で、私のやり方に共感し、手伝ってくれた者であった。

 

「やっぱり餌が大きいと食いつきが違うね。」

 

「でもイエロー、吸い寄せる私の身にもなって欲しいな・・・食い付きすぎて重たいよ!!」

 

「仕方ないな。シーちゃんお願い。」

 

「誰がシーちゃんだ☆私は高1だぞ☆」

 

「心でしょ、だからシーちゃん。」

 

「おい☆部長のお気に入りだからって怒るぞ☆いや怒る☆」

 

「でも何でシーちゃんクラスの選手が3軍にいたの?」

 

「ハデな私服着て初練習に参加したらシベリアにぶちこまれたぞ☆今の部長は知らないと思うけどな☆」

 

「今度見せてシーちゃん!!」

 

「シーちゃん言うな☆シュガーハートと呼んで☆呼べよ☆」

 

グダグダ言っているが、心はしっかりイエローの要望にこたえた。

 

「車長さんよ☆ここでいいか☆」

 

「大丈夫。・・・後はリールを引くだけ。」

 

 

 

 

 

 

 

「よし!!お姉ちゃんいくよ!!」

 

IS-3の後退指示を淡が無線で知らせる。

 

化け物2人は後退も完璧にこなし、カチューシャの作った半包囲をやすやすと突破する。

 

そこに全速力で淡のT-44-122が突入。

 

一気に包囲の穴をすり抜け、隊列を乱し・・・

 

「捕った。」

 

イエロー、美琴、幽香の3両が個別に、そして確実に仕留める。

 

ノンナ、クラーラ、カチューシャの3両だけは淡の突入に冷静に対応したが、勢いというのは簡単には覆らない。

 

後に鎌倉の陣という新戦術(突破1両を海に見立て、後ろ3両を山とし、山はある程度の防御がある車両とし、海は快速戦車が前提であり、突破する1両の技量が全てのためほむはあまり好きではないが、ほむが直接指導した選手は普通に使った)は一気にほむ側を優勢にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ちました。」

 

「おぉ!!ざぁすがぁほむだぁ。この調子でがぁんばれぇ。」

 

校長は新戦術の完成度、即席部隊の練度の高さから来年の戦車道部優勝を確信する。

 

・・・相対的にカチューシャの存在感は低下していく。



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リヴァイアサン

カチューシャが残った数両を集めて淡をなんとか撃破しようと最後の攻勢を仕掛ける姿は報道部と新聞部が写真部と協力しながら記事が書かれていた。

 

そこにほむが現れる。

 

「ほむさん、華麗な勝利おめでとうございます!!」

 

「ん、ありがとう・・・と言いたいけど、私を持ち上げる記事は書かないでほしい。戦車道については私は無名の方が動きやすい。持ち上げるなら来年高校に上がる幽香や美琴達を書いてほしい。」

 

「そうですか・・・ではそう書きます。」

 

「お願い。」

 

私は権力は身の丈に有ったものしか必要ではなく、それ以上は邪魔であると考えていた。

 

「盟友が来れば革命うんぬんは安定する。やれるだけやろう。」

 

この行為事態カチューシャのカリスマがここまで高くなければほむはここまで急性に動かなかった・・・これが後の悲劇を生むこととなるとは知らずに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パスン シュポ

 

最後はチルノが残存車両を大破させて鎮圧した。

 

「負けた・・・の。」

 

絶対的な信頼を持ち、正面からなら黒森峰とも十二分に戦えると・・・。

 

軍神であるみほのことは様々な要素が絡んだため色々と区切れたが、今回は真っ正面から始め4両にいいように転がされて終わり・・・3年間革命、権力の掌握、部の強化と心を鬼として仲間を、先輩を、後輩をシベリアに送り、自己犠牲により積み上げたカチューシャニズムの終焉・・・それを直接実感してしまったカチューシャは大破した戦車の上で大粒の涙を流しながら気絶していた。

 

「・・・カチューシャ様・・・凡人の私には天才であるあなたの気持ちはわからない。背負っている責任の重さもわからない。・・・天才は・・・なぜ他人を頼ろうとしないのか私にはわからない。」

 

ノンナ、クラーラがそんな2人の姿を見ていた。

 

「(ロシア語)ほむは何が見えているのでしょうね。私はこの後もカチューシャ様を見守りますが同志ノンナはどうしますか?」

 

「(ロシア語)見守りますよ。例え世間がカチューシャを評価しなくなっても・・・親友ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

コポコポ

 

「・・・。」

 

「ねぇ、ほむ、あなたは反逆したのよ。私に。何で私の部屋にいるの?」

 

「個人的にはカチューシャの事が好き。」

 

「・・・加藤しあ。私の本名は。それで呼びなさい。」

 

「加藤先輩。・・・来年みほを破って優勝する。だから大洗の廃艦計画を潰してほしい。」

 

「廃艦?優勝したら撤廃されるんじゃ?」

 

「・・・あそこには宝か爆弾が埋ってる。そろそろお姉様なら気がつくと思う。気がつかないでほしいけど。」

 

「大洗に何か?」

 

「・・・旧陸軍の秘密兵器が有ると聞いた。それがなんなのかわからない。ただ、それが万が一人体実験関連だと諸外国に影響が出るから処理したいのだと私は考えている。凡人にはこれが限界。盟友はおそらく和虎だと言っているけど。」

 

「和虎・・・それだけでも価値は学園艦1つと釣り合うくらいだな。」

 

「加藤先輩。頼みました。」



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リヴァイアサン2

カチューシャとの和解・・・これは反ほむ派が結成して、ほむを倒してカチューシャの正統後継者はニーナもしくはアリーナにしようと画策していた行動力ある一部の生徒にとって大打撃となった。

 

「・・・警告。今後私の足を引っ張り、プラウダの改革を邪魔をする戦車道部員はシベリアに行かす。・・・意見なら聞く。感情なら容赦しない。」

 

新聞部、報道部でこれを発表したことも反対派の一部は脅しに屈して活動は沈静化していった。

 

そして一気に外側を作る。

 

戦車道部幹部専用の赤の寮を現在カチューシャが使っている寮をカチューシャ卒業後に寮丸々1つ占拠している状態を解消し、幹部制・・・正確には1軍のトップレベルによる部の運営により部長の負担軽減を狙ったり、稼働し始めたコンピューター部や技術研究部、ゲーム研究部は今年度の部費が無いため、戦車道部の協力をすることで、余っていた部費を全てシミュレーター製造費として渡し、外部から買った1台のシミュレーターを彼らに渡して量産を依頼した。

 

「このシミュレーターのようにリアルにしてほしい。・・・部を名乗るならこれぐらい作ってほしい。」

 

ある意味踏み絵であり、本当にいるかあやしい部なら成果をまず先に出せと言う生徒会からの圧力もあり、彼らは必死に解析して作り上げていく。

 

ただ、今は外部から購入したシミュレーター6台を必死にローテーションを組んだり、まだ残っている訓練所で演習したりしながら練度の向上をおこなった。

 

・・・そして、ほむの中で本命である作戦協議会を生徒会承認させようとしていた。

 

「作戦協議会・・・どのようなものなのだほむ君。」

 

「戦車道にいきなり男性を参加させることはできない。けれど戦車道に参加したい男性はたくさんいる。・・・シミュレーター越しに毎回練習試合をおこない、参謀本部と実動隊の車長が反省点を話し合ったり、作戦を立案したりする場。」

 

「今のままじゃダメなのかね?」

 

「今のままでは戦車道の発展は限界をむかえる。この行為が後で失策でも良策でも何かを始めないことには発展はない。やるなら早くやる方が良いと考える。」

 

会長の新田は警戒しながらも風紀委員の数名が組織がしっかり動いているか監視することを条件に許可を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休みも終盤に入り、カチューシャの部屋に聖グロのダージリンが来ていた。

 

「紹介するわ。ほむよ。」

 

「加藤先輩から部長職を譲り受けた。若輩ながら頑張る。」

 

「・・・オレンジペコが警戒するわけがわかったわ。」

 

「ダージリンどういうことかしら?」

 

「ほむ、貴女にこんな言葉を贈るわ。たえず喜びを求めながら生きている。そのための苦労には精一ぱいに耐える努力を惜しまない。(本田宗一郎)そんな目をしているわ。」

 

「凡人の私にはそんな天才の言葉は重すぎる。」

 

「本当に凡人なのかしらね。」

 

ティーカップを置いたダージリンはカチューシャに手紙を渡す。

 

合同練習会をしませんか?大洗も来ますよ。

 

カチューシャは私を見る。

 

私は首を縦に振る

 

「行かせてもらうわ。」

 

 

 



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映画編

私はすごい迷った。

 

ダージリンがカチューシャに渡した合同練習会・・・私も参加すべきか、参加しないべきか。

 

私が行けば少なくてもみほの生の実力が見れる。

 

数年間画面越しにしか見てない軍神の実力を・・・。

 

しかし、私が離れれば、沈静化したカチューシャ派が盛り返すかもしれない。

 

「・・・加藤先輩、チルノとKV-3を連れていって。」

 

「!?チルノはほむの力の基盤じゃ!?」

 

「もう1人・・・育てた南無三を呼ぶ。」

 

「南無三?」

 

「あら?私が聞いていても良いのかしら?」

 

「ダージリン、聞いていてもどうしょうもない事がある。彼女はそれ。」

 

「随分な自信ね。」

 

「ある意味私よりも育成の才能がある。」

 

「へぇ。」

 

結果、私は不参加を表明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむが不参加を表明したため、視点をチルノに移そう。

 

チルノはほむからKV-3でカチューシャ率いる中隊で活躍してこいと言われた。

 

「あたい、頑張らないと!!」

 

試合当日、ほむが自身の姉を軍神軍神といっていたけど、馬鹿なあたいにはわからない。

 

試合前の挨拶でカチューシャ様と握手してたけど、美琴や幽香みたいな背後から凄まじいプレッシャていうか、圧力みたいなのは感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・でかい。」

 

「大きいです。」

 

「大きいですね。」

 

「何よ大きいからって!!」

 

「本当に同い年なのかな?」

 

「坂口行ってこい。」

 

「あいー!」

 

ダッダッダ

 

「ねえねえ、プラウダのあなたさ、本当に1年生?」

 

「あたい?そうだよ!!あたいはチルノ。プラウダの1年生だよ。」

 

「何食べたらこんなに大きくなるの?」

 

「んーとにかくたくさん食べることかな?あ、ほむが作ってくれる料理ばっか食べてるからかな?」

 

「へぇ、私も食べたら大きくなる?」

 

「大きくても辛いだけだよ。私なんかKV-2とかKV-3か天井の無い戦車じゃないと乗れないし、大きすぎて装填手もできないからね。」

 

「大変なんだね。でも負けないよ!!」

 

「こっちも!!」

 

 

 

 

 

 

「坂口、何かわかったか?」

 

「河嶋先輩、友達になってきたよ!!」

 

「違う、情報だ情報!!」

 

「えーーーと?あ、背が高くてKV-2とか天井の無い戦車しか乗れないんだって。あとほむって言う人の料理たくさん食べたら大きくなったって言ってた!!」

 

「え・・・坂口さん、今ほむって言いました?」

 

「隊長言ったよ!!」

 

「ほむ・・・ここにはいないのかな?」

 

「みほさん?」

 

どこか悲しい顔をしたみほがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、あたい達の仕事をしますか。斎藤いける?」

 

「佐藤だ☆張った押すぞ☆シュガーハートでもいいぞ☆」

 

「心、運転任せた!!」

 

「言わないんかい☆」



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映画編2

カチューシャ様からから言われた命令は壁になること。

 

カチューシャ様は私をダージリン率いる聖グロの隊の鉄壁の陣で待つように・・・とのこと。

 

「で、絶賛砲撃中なんだけど☆壁なのはわかるよ☆だけど本当に壁になると心理的にイラつくぞ☆いや、イラつく☆」

 

車体が隠れるぐらいの浅い穴の中に砲塔だけだして迎撃している。

 

後ろに聖グロ車両がいるので後退もできず、ただただ・・・チハややわらか戦車を砲撃していた。

 

「5度回旋、4度戻して右8度。」

 

普通なら撃破されているのだが、ほむから準エース級と呼ばれるチルノは砲塔正面の薄い部分を狙撃されないように砲塔だけ力業で回し、それでいて反撃もおこなう。

 

「あたいはこれぐらいじゃやられないよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・ん・で・KV-3がいるんだ!!」

 

「こりゃ参ったね。しかも弱点を器用にいなして撃破できないし・・・かーしま、何とかして。」

 

「・・・はい。」

 

すっごい無理だと言いたげな顔をしながら、反論を全て飲み込んで、河嶋はメールを送信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みぽりん、河嶋さんからメールが来たよ。」

 

「すみません、読んでください。」

 

「KV-3何とかしてくれ!!できるだろ!!だって。」

 

「・・・放置で大丈夫です。今はその後ろの車両だけを狙ってください。」

 

「西住殿・・・そうも言ってられないですよ。」

 

外を見たみほは知波単学園が

 

「突撃!!」

 

「突撃だ!!」

 

「ちくわ大明神」

 

「チハたん∩(・ω・)∩ばんじゃーい!!」

 

その瞬間・・・軍神と言われるみほの頭脳はフリーズした。

 

自殺願望者にしか見えないからだ。

 

結論としては、生き残った車両を纏めて、地の利がある市街地戦に持っていくことに切り替えた。

 

(ダメだこの人達・・・狂ってる。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鴨がネギと鍋背負ってやってきたぞ☆」

 

「あたいも舐められたものだね。全部破壊しちゃうよ!!」

 

逆に知波単の突撃はプラウダ、聖グロ連合チームにとって最高の七面鳥撃ち状態、フィーバータイムになっていた。

 

『前進しますよ。プラウダのKV-3も進んでください。』

 

「5両しか狩れなかった・・・佐藤、市街地奥に移動して。」

 

「?海岸線じゃないのか☆命令では海岸線だぞ☆」

 

「あれだけ猛攻を喰らったから機関関係にトラブルが発生して、煙が出てる。それを止めるためにここで応急修理をしてから合流・・・て流れにする。」

 

「了解☆シュガーハート頑張っちゃうよ☆」

 

今日のチルノの勘は冴えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「KV-3・・・でありますか。」

 

遠くからKV-3を見ている福田はそう呟き、自分の乗っているチハが弱々しく見えた。

 

強い戦車が欲しい・・・心のどこかでそう思うようになった。



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軍神の実力

チルノの勘は冴えていたが・・・軍神の思考は別次元にある。

 

「・・・。」

 

「西住殿?」

 

「全車両に海側に注意するように言ってください。」

 

「わかったよ。」

 

「・・・。」

 

みほが海を見て海鳥が不自然にいない場所があった。

 

巧みに隠してあるが、砂浜より前にある舗装された道の端に履帯の食い込んだ跡もある。

 

「KV-2がここか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、来たけど誰もいないぞ☆」

 

「ここで待機。榴弾に変えておいて。」

 

「了解です。」

 

モブちゃんが頑張って次弾を装填する。

 

待つこと数分・・・別動隊と思われる軽戦車隊(ルノーもあるけど)が現れ、チルノの勘は的中した。

 

「美味しいうちに食べちゃおう!!」

 

キューポラから体を半分だし、敵の車両数を目視で確認していると、運悪く狙いがそれたチハの砲弾がチルノに当たる。

 

「・・・なんだぁ、今のは!!」

 

ガチギレモードに入ったチルノはスポーツ精神を投げ捨て、建物を破壊して道を塞ぎ、戦車を誘導する。

 

そして瓦礫で道を完全に閉ざして4両の戦車が破壊されることもなく動けなくなり、この試合使い物にならなくなる。

 

「こわ☆いやまじで☆」

 

これにはシュガーハートさんも震える。

 

 

 

 

 

 

 

で、試合は軍神の奮闘により4両少ないながら最後の攻防となり、ダージリンの機転によってなんとか勝利した。

 

「楽しかったー。」

 

チルノは約2m10cmの巨体を揺らしながら旅館に向かっていた。

 

「チルノ怖すぎるから☆お前砲弾当たったよね☆いや当たったよな☆何でピンピンしてるんだーよ☆」

 

ベチーンとチルノの背中を叩く心は叩いた瞬間に鉄板を叩いたかのような固い筋肉に驚く。

 

ベチベチ

 

「なんだこりゃ☆本当にこれ筋肉なの☆固すぎじゃね☆」

 

「え?美琴よりは軟らかいよ。」

 

「え?」

 

素の声が出る。

 

「あたいも結構力持ちだけど、美琴よりは力もないし、イエローや淡よりも技術もないからほむからもっと努力しろって言われちゃった。だから経験でその実力差を埋めろだってさ。」

 

(あ・・・こいつら修羅だ。私達凡人とは別世界で生きてやがる。・・・今は通用するかもしれないけどあわよくば新設されるらしいプロリーグに・・・なんて夢見てたけどダメだ。・・・部長の話も聞いたけど、あれは2歳くらいにもう現実が見えたらしいから・・・今からでも間に合うか?)

 

シュガーハートこと佐藤心は選手の練習をしながらコーチング技術をほむと協力して磨いていくこととなる。

 

紆余曲折あり、大学でほむとうさみんこと安部菜々と組んで第3世代の育成と現在あるプロリーグ千葉の妖精を大正義の常勝軍団へと導いていくのは数年後のお話。



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映画編3

「よっこいしょー。」

 

ザバー

 

五右衛門風呂の中身が半分になるくらいお湯が溢れる。

 

チルノの巨体だと普通の風呂に入ると水嵩が低くなるのでそれを控えての五右衛門風呂だったが、チルノの前に浮いていたアヒルの人形は流されて排水用の溝でプカプカと浮いているくらいだ。

 

「・・・アヒル。」

 

ウサギさんチームの丸山紗希が流されたアヒルさんを持ち上げる。

 

そして坂口の頭の上に置く

 

「おっ?アヒルさん?」

 

「・・・。」

 

丸山はまた黙ってしまう。

 

「・・・なんか同じ年とは思えません。」

 

この光景を観ていたオレンジペコの言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあぁん!!助けてください!!」

 

一方プラウダではウサミンこと安部菜々がほむに泣きついていた。

 

「・・・クビ?」

 

「違いますけど戦車道の基礎をナナは知りませんでした!!指導してください!!」

 

「・・・は?」

 

ウサミンはこの1ヶ月あの手この手で戦車道を必死に覚えようと頑張ったが

 

「ここまで基礎ができてなかったスィーな・・・その金やるから数年間自由にやるスィ!!」

 

と社長に言われてしまい、宿無しになってしまった。

 

いまさら親に頼るわけにもいかず、とりあえずKV-1Sを買ったプラウダに来たらしい。

 

「・・・住み込みなら良い。」

 

「本当ですか!!やった!!」

 

「来て。」

 

 

 

 

 

 

なぜ住み込みで彼女を教えるか・・・。

 

まずかなのことを知っていること。

 

あの後迂闊なことをしたと反省していたが、巡りに巡って頼み込んでくるとは思っていなかった。

 

しかし、かなの事情をしっかり話し、お互いにメリットが有れば、彼女は裏切らないと感じた。

 

「あー?」

 

「かなちゃんおいでー。」

 

「あー、キャッキャ!!」

 

「可愛いですね。」

 

「うん。」

 

私は安部菜々に抱かれて喜んでいるかなを見て少し安心した。

 

「安部菜々さん、住み込みの条件は家事の手伝いとかなを育てるのを手伝って欲しい。こども園に行かせてるけど、帰りがミーティングで遅くなるときが新学期に入ったら必ずある。だから手伝って欲しい。」

 

「ナナに任せてください!!」

 

「お願いします。」

 

同居人のナナが誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗の廃艦が決定された。

 

それは一部の例外を除いて戦車道をしている者達に衝撃を与えた。

 

なぜ大会で優勝できるほどの実力があり、まだ使えそうな艦を廃艦に擂るのかというのがよくわからないらしく、とあるニュースで

 

「喝!!政府は老朽化と言っているが、それならばもっと人口が少ない艦から廃艦にすべし!!」

 

とバッサリ言われてしまう。

 

ちなみにほむは一部の例外である。

 

「どうせひっくり返る。軍神はその程度で負けないし・・・西住の名はそんなに小さいものじゃない。」



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キンクリ

タグの注意を言われたのですが、これから出てくるキャラ合わせるとタグこえるんだよな・・・これ以上タグ増やせないし・・・


大洗は学園艦廃艦を撤回させるべく、西住本家、日本戦車道連盟、島田本家、文部科学省を巻き込んだエキシビションマッチが開催された。

 

飛び級で13歳ながら大学生の天才島田愛里寿率いる大学選抜チームが大洗の相手となり、軍神みほの力でも勝負にならない戦力差と殲滅戦という全車両撃破しないと試合が終わらないルールにより窮地に追い込まれた大洗だったが日本戦車道連盟理事長の機転により一時留学制度を利用し、各校の隊長やエースが集結し、その中にほむの姿は無かったが、代理としてチルノと佐藤の姿があった。

 

他から見ればまほ、みほと西住本家の後継者2人対島田愛里寿の島田本家後継者の代理戦争というものにしか感じなかった。

 

2人の家元は社会人チームに勝って天狗になっている島田愛里寿の鼻を叩き折りたい島田側の事情と、高校で優勝が1年の時だけの小隊を率いていた時しかないまほの実力が疑問視されている分家を抑えるために箔をつけたい西住側の利害が一致した結果だった。

 

KV-3のチルノと佐藤はしっかり仕事をした。

 

チルノは丘に登ることに違和感を感じ、重戦車ばかりが丘に登るよりも平原に向かうルートの方がハルダウンもでき、役に立つことをカチューシャに提案し、みほが受諾した。

 

これが美琴や幽香なら自走砲が来ることを直感でわかったし、リグルなら強行偵察でカールがいると言う情報を獲れたのだが、準エースのチルノではこれが限界だった。

 

まほやみほもこの感は準エース止まりだが、対応は神がかっていた。

 

平原から森林地帯でチルノ車は遅延戦術を展開し、中破ながらも撤退に成功し、プラウダがカチューシャ車以外撃破されたことで萎れていたカチューシャに佐藤がキレ

 

「シベリアにぶちこむぞ☆低身長が☆」

 

と3年相手に啖呵をきり、少しの間殴りあったが、カチューシャが殴ったことで元気になり、遊園地エリアにて体勢を建て直すこととなる。

 

どこに組み込んでも浮いてしまうため、後方にて狙撃を任されたチルノだったが、島田の砂煙による本隊による奇襲を後方にいたチルノ車は受けてしまい、豚飯をしながらT28等の猛攻に耐えたが、限界がきたことにより、チルノは本車を大学選抜チームの進行ルート上で、わざと撃破され、細い通路に十数両が閉じ込められ、なおかつ奇襲を頓挫させることに成功する。

 

・・・それは大学選抜チームの戦略の破綻だった。

 

まほ、みほ両名はこのチャンスを見逃すことなく、快速のクルセーダーのローズヒップを中心に背後をとり、重戦車まほの率いる重戦車隊が到着する前に6両を撃破することに成功する。

 

ほむもお世話になったメグミ、アズミ、ルミの3人もここで撃破されてしまい、愛里寿が無双するも、物量差が圧倒的であったため撃破されてしまう。(とどめはまほ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語はここから始まる。



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凡人・・・

部屋でかなをあやしながら菜々と話しながら今後の戦車道についてしゃべっていた。

 

あと菜々の将来どうしたいかも・・・。

 

「歌って踊れる声優アイドルをしたいです!!」

 

と戦車道に全く関係無いことに驚いたが

 

「社長さんに2000万円も私に投資してもらいましたから・・・ナナは気持ちを裏切りたくないんです!!」

 

というが、その菜々さんに投資した社長さんことシックスは実の孫を使って楽しんでる面もあるが・・・。

 

そんな誠実な菜々だが、戦略眼は凄かった。

 

「男性も戦車道に協力させるならシミュレーターを男性にも乗せるべきですよ、数が多ければ多いだけ情報が集まりますから。」

 

「戦車を造る資金がないならこの際融資という形で資金を集めてみませんか?生徒会の人達に許可を取る必要がありますが・・・戦車道部が持っている敷地を手放すのならその敷地を競りにすれは集まるんじゃないですかね。」

 

資金問題を別の視点から解決策を瞬時に提示した菜々を私は尊敬するようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参謀本部・・・私は報道部と新聞部を通して人材の募集を行い・・・

 

「ジャイアン、僕には無理だよ!!」

 

「うるせぇのび太!!愚痴いってるんじゃねぇ!!」

 

「まぁまぁジャイアン。」

 

野比のび太、剛田武、骨川スネ夫の高校2年組

 

「戦車道なんて確率さえわかれば勝てる物だ。」

 

平山幸雄(ダメギ)中学3年生

 

「戦争ができると聞いて!!」

 

モンティナ・マックス(少佐)中学2年生

 

「まともな学生が僕しかいないじゃないか!!」

 

志村新八(ダメガネ)風紀委員 高校1年生

 

「ワシが呼ばれた理由はこれか。左遷かと思ったが・・・楽しめそうだな。」

 

両津勘吉 プラウダ警察署勤務

 

「私は両津が来てから汗が止まらないよ。」

 

夜神総一郎 プラウダ警察署学生治安対策課課長

 

半分以上役にたたなそうなメンバーが集まった。

 

・・・凡人の学生達は凡人なりに天才両津勘吉と凡人ながら必死に天才を倒す努力をし続けるほむに感化されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休みが終わり、9月1日・・・学生は永遠に来てほしくない日付で夏休みの怠けが残っているのが普通だが、プラウダでは全校生徒がドタバタ走り回っていた。

 

資金集めのためである。

 

部活は金と土地と部員と先生が必要で、特定の部活には金が払われたが、必要かどうか怪しい部活は部費が出ていないため、資金問題を解決するため朝からアルバイトや物を売る学生で溢れていた。

 

んで、ことの原因を作ったほむは戦車道部員全員に向かってこう言った。

 

「・・・全員を良妻にさせる。・・・全員に活躍できる場を提供する。・・・優勝する。だから色々不満もあるけど耐えて欲しい。以上。」



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新生プラウダ

世界戦車道が残り2年に迫り、大洗の奇跡と遇わせて世間はサッカーのなでしこ達が優勝した時や、ラグビーが南アフリカに勝利した時のような感じで世間が戦車道に注目していた。

 

そんな中・・いつも通りに過ごす3人の女子と赤ちゃんの姿があった・・・。

 

「今日のご飯はナナ特性のスタミナ丼でーす!!」

 

「醤油よこせよ☆」

 

「佐藤、塩分とりすぎ。」

 

「あんああんあー。」

 

住み込みで戦車道について勉強している安部菜々と、大学選抜チームとのエキシビションマッチで己の実力を把握し、選手でありながらコーチング技術を習得しようとほむのもとに押し掛け、かなのことがバレたので、言いふらさない事を条件に、こちらも住み込みで勉強している。

 

朝食を食べながらニュースで大々的に報道される改造され、一大都市として活性化し続ける和歌山県と戦車道を観ながら感想を言っていた

 

「開発ラッシュってバブルとかみたいに一時的なものですよね。今は潤ってますけど、大会が終わったらどうするんでしょうね?」

 

「ゴーストタウンじゃね☆」

 

「・・・西住と島田のどちらかが分家を置くらしい。だからゴーストタウンにはならない。」

 

「どこから資金出てるだ☆聞いている限り無限に財源が有るみたいに感じるんだけどさ☆」

 

「政府からの援助金、門下生からの寄付や受講料、スポンサーからの金、競技用戦車、部品の販売。」

 

「・・・ちなみに1年でいくらぐらい動いているんですか?」

 

「西住は3兆、島田が3兆2000億くらいってどっかの記事に書いてあった。」

 

「・・・莫大すぎじゃね☆いやマジで☆」

 

「・・・。」

 

ほむは・・・いや、ここにいる3人は凡人で、金が無い、貧乏学生2人はわかっていて言う。

 

無限の資金なんてものはどこにも存在しない。

 

「どう崩すか・・・。」

 

親子でも譲れない気持ちがほむにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん、野球がしたい。」

 

「野球?」

 

「うん!!野球!!」

 

前世の父親は料理人だった。

 

私が野球を始めると、父親の料理店が潰れ、父親は私にのめり込んだ。

 

「許さない。」

 

それがいつの間にか父親の口癖になり、私に暴力は振るわなかったものの、凄まじい恐怖で縛り付けられた。

 

恐怖は父親が死ぬまで払拭することはできず、野球を辞めたとき一時的に解放されたと思ったが、父親=恐怖、親は怖い、母親も怖いという連鎖をしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・今も変わらない。」

 

「ど、どうしたんですか!!いきなり泣き出して。」

 

「え・・・あれ?」

 

「らしくないぞ☆」

 

深く聞かない彼女達に私は感謝した。



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全国戦車道大会優勝記念杯に向けて

トーナメント表 誰か知りませんか?


「納入お疲れ。」

 

「つ、疲れた。」

 

「んんwwwこの論者(コンピューター部部長)にかかればシミュレーションなど簡単ですぞwww。」

 

「おいバカ!!」

 

「じゃああと10ダース。よろしく。」

 

「「「うぁぁぁ!!」」」

 

コンピューター部と技術研究部、ゲーム研究部は更なるデスマーチを強いられることが決定した頃、戦車道部は全国戦車道大会優勝記念杯に向けて準備を始める。

 

無名革命とその他改革によりカチューシャは完全に引退となり、ほむが他の部との確固たる繋がり、生徒会、風紀委員、更に参謀本部という組織に警官を入れたこと(夜神刑事は学生の監視だが、両さんは完全に遊びモード)により【戦車道部内】での権力は完全に独裁状態に突入した。

 

つまり、隊長、副隊長組にはなんも決定権もないのだ。

 

隊長自身はこの状態になぜか安心していたが・・・。

 

(建前だけだけど・・・カチューシャ様の後継者扱いは無理無理!!絶対無理!!ほむがいてよかった・・・操り人形演じてれば私の1年は終わる。終われば薔薇色な人生!!隊長の肩書きだけで職には困らないもんね!!)

 

とゲスな事を考えていた。

 

「料理は量を食べれば良いってものじゃないけど・・・食いトレだからみんな太ろう。私も頑張るから。」

 

太ってから絞る。

 

もしくは筋肉をがっちりつける。

 

下半身が強ければ子供を産むときにも役立つので良妻を目指すように言ったからには、選手としてだけでない部分も指導しなければならない。

 

成功例は美琴だろう。

 

ペッタンコで、ちっちゃかった体が今では170のEカップである。

 

体も引き締まり、胸以外に無駄な部分がほとんど無い完璧な肉体を手に入れていた。

 

逆に失敗例はチルノだったりするが・・・。

 

沢山食べてもらうため、新しくできた調理部に頼み、大量に料理を毎日提供してもらった。

 

ロシア料理も多いが、日本食や中華料理も出すようにしてもらった。

 

「日本食がいい。スズキの刺身にそれにどんぶりにして醤油をかけるのがいい。鰹の叩きでも良いな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今あるシミュレーターでガンガン乗り回す。シミュレーターが普通の戦車に乗る9割りくらいしか練習にならないのなら2倍乗れば8割りのお釣りが来る。」

 

シミュレーターを使った練習では楽しく量をこなさせていた。

 

そのため色々な戦車を収録し、アメリカ、日本、フランス、イギリス、ドイツ、ソ連は大会使用可能なものはすべて使えた。

 

しかし、やる気の無い人も一定人数出てくるので、カチューシャみたく脅すのではなく

 

「お疲れさま。」

 

退部届けを手渡した。

 

「名前書いて生徒会の方に出して。」

 

「いや、えー?」

 

「貴女の部内に居場所はありません。」



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全国戦車道大会優勝記念杯

12月・・・抽選会には隊長に行ってもらい・・・

 

「2番か。良し、黒森峰とは別ブロック。ってあれ?」

 

初戦大洗。

 

隊長に運は無かったようだ。

 

んで、ほむは参謀本部にて作戦会議をしていた。

 

・・・といっても、現時点で使えるのが両さんとマックスのデブ少佐だけなのが心許ないので、オブザーバーという名のお茶汲み要員で菜々、佐藤も召集した。

 

「初手大洗・・・か。情報が少なすぎて打つ手があまり無いぞ。」

 

「KV-3、KV-2以外の主力重戦車に誰も乗れないのが辛い。」

 

マックスは頭を抱え

 

「何で乗れないの?」

 

と今一理解していないのび太が聞く

 

「あのなのび太、戦車をしっかり扱えないなら100%扱えるT-34の方がIS-3より強いこともあるし、中隊単位行動になると車両がバラバラなだけで指揮官の負担が跳ね上がる。しかもISシリーズは車内が狭いから練習が必須だが、時間が圧倒的に足りてないんだ。」

 

「「ジャ・・・ジャイアン?」」

 

「なんだよ悪いか!!」

 

「「い、いや。」」

 

(こいつ・・・使える。)

 

ジャイアン改め剛田武・・・自身の妹が入学してくるにあたり、何とかして美術部、可能ならば漫画研究部を創部させようと2年間奔走し、ほむの無名革命により叶えられたことで後に120%のホムニスト、池田絶対主義者と呼ばれるようになるが・・・今は勉強中である。

 

「脱線したから戻すぞ・・・T-44の配備は完了したんだから今回は85mm砲でいこう。」

 

「不安ばかりだがそれしか無いだろう。」

 

「僕ちんも反対しないよ。」

 

参謀本部は作戦を隊長に伝え、隊長はそれを受諾した。

 

「カチューシャ様からドクトリンは教えられたけど、普通の人に超人的な勘を要求する作戦は、私の胃袋から血が吹き出すだけなので、ほむ様の作ってくれた参謀本部の意見に従います。従わせてください。」

 

なぜこんな人を隊長にカチューシャが選んだかすごく謎だが、頭が良くて世渡りも上手い、そして美人で絡みやすいため男女共に人気が有るからカチューシャは選んだのだが、中が残念過ぎて、先輩であるにも関わらず、ほむ以外からはタメ口で話されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・久しぶり。聖。」

 

「お久しぶりですね。どうですか?順調ですか?」

 

「順調。」

 

「それはよかったです。ほむさんと私の理想が現実になるのですね。」

 

「弱者救済・・・。」

 

「私の専用機の製造もお願いしますよ。」

 

「・・・わかってる。」

 

目の前にいる聖は確かに強いし、宗教関係者のこともあり集団心理に働きかけることが得意だが・・・

 

(理想と現実のどちらかを取らなければならないときに理想を取る。・・・制御しないと危険。)



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イレギュラー

 

大会開始数日前・・・両さんが食い入るように新聞記事を見ていた。

 

「・・・不味いな。島田系の株が急に上がり出して、大洗の土地の相場も上がってる。」

 

ギャンブラーの勘がここは降りを選択しなければならいと感じ、ほむに電話をかける・・・。

 

 

 

 

 

 

「それは・・・本当?」

 

『姫様間違いないです。』

 

「わかった。ありがとう。」

 

ガチャ

 

同志からもたらされた情報・・・黒森峰の情報から引っ張ってきたことだが、大洗に島田愛里寿が編入したらしい。

 

それもセンチュリオンやM26パーシングも一緒に・・・

 

『ほむ、島田か大洗に動きがなかったか?ワシの勘だとなにかしら起きてるはずだ。』

 

「島田愛里寿が大洗に編入した。」

 

『なに。・・・今回の試合は落とすぞ。夏に調整する。T-34-85にT-44は変えるぞ。幸いどの車両に乗るかはまだ発表してなかったはずだ。』

 

「わかった。」

 

隊長に理由を話すと、少し悩んだ末、了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだ・・・あれ。」

 

プラウダの隊員の1名がそう呟いた。

 

みほはⅤ号戦車パンターG型に乗り、愛里寿はセンチュリオンを操りながら路上をかける。

 

必死に応戦するが、次々に撃破されていく仲間達・・・。

 

「あ・・・。」

 

ドゴン

 

シュポ

 

プラウダ対大洗・・・世間は今回の大会からプラウダの暗黒時代が到来したと確信し、一部の学校を除いて練習試合も誘われなくなる。

 

7-0で大洗の勝ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリサ、これ。」

 

「ありがとねー。でも本当に良いの?T29なんかくれて。」

 

「良い。夏に楽しませてほしいし、練習試合もしてほしい。」

 

「まぁいいけど。」

 

「私はこれで。」

 

「ああ。」

 

数年前から私が製造した戦車の整備をするためにサンダース大学付属高校にちょくちょく行っており、無名革命の元はサンダースの自由を重視する姿勢と最新式の設備だった。

 

ただ、自由すぎるのもどうかと考えていた時に、現サンダース隊長のアリサと出会い、数回の食事会で友達となり、学年と学校を越えた協力関係ができていた。

 

両者ともいかにして利を手に入れるかギラついた瞳を他人が見れば狸の化かし合いにしか見えないが・・・。

 

「お礼と言ってはなんだけど、代金としてこれを渡すわ。」

 

それは5台の最新式のシミュレーターだった。

 

「これでどう?」

 

「ありがとう。」

 

利には利を。

 

アリサの戦場以外では借りをなるべく作らない姿勢は今後ほむを多いに助けることになる・・・アリサがいる間は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗に2回目の敗北をしたことで、事情を知らない一般隊員はシベリア行きを覚悟していたが、帰ってくるとピカピカの最新式のシミュレーター、テーブルに並べられた数々の美味しい料理が出迎えた。

 

「夏勝てば良い。情報不足で負けたのは仕方ない。次に生かせば良い。」

 

 



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参謀本部不要論

今回の試合により生徒会が参謀本部不要を唱えた。

 

立案者はちひろと小鳥で、組織の重要性が理解できていなかったのが原因であった。

 

当初対応は私が生徒会に説明していたが、自身の仕事量から上手く説明できなかった・・・しかし

 

「俺にチャンスを・・・いや、俺達に最後のチャンスをくれないか。」

 

剛田武が頑張った。

 

レポートを片手になぜ参謀本部が必要かを力説し、時には土下座までした。

 

生徒会だけでなく、周りを巻き込むために立ち会い演説も行った。

 

なぜ彼を動かすか・・・妹のジャイ子の夢を続けさせてくれた。

 

他人から見ればただそれだけ事・・・しかし、ジャイアンにとっては家族を救ってくれた恩人なのだ。

 

「・・・ジャイアンがこんなに必死に動いてるんだ。ボクちんも動かないとね。」

 

「ジャイアン・・・目が覚めたよ。」

 

カチャ

 

「戦車は狙撃ができるのだろう。」

 

ジャイアンが行動したことで火がついた2人はスネ夫は資金を、のび太はノンナが居なくなったプラウダの砲手改造案を元に動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはこうだ。ソ連戦車は砲の精度が悪いが、ちゃんと照準を絞れば当たるんだ。馴れるまではシミュレーターに乗るしかないがな。」

 

「「「はい!!」」」

 

シミュレーターながら通常の停止してからの射撃だけでなく、偏差射撃の命中率100%を誇るのび太の腕は冬休みの間に認められ、敵Exモードとしてのび太のデータを元にした敵が出るようになり、練度向上に大きく貢献することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

3学期の中頃になると、ジャイアンの熱意に折れた生徒会が参謀本部不要論を撤回し、様子を見る事を決定した。

 

「・・・よし。」

 

「だし?」

 

私の声に反応したかなは戦車道プロリーグの試合を観るのをやめて、テトテトと歩いてこちらに来た。

 

「お母さんの・・・計画が上手くいった。」

 

「・・・だし?」

 

きょとんと首を傾げるかなの髪を撫でながら私はかなに赤ちゃん用の食事を与えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほむ、次の戦車だが、偵察車両としてT-50-2はどうだ?」

 

両さんは私の考える先を見据えているのか、それとも偵察の重要性を再認知したのか・・・。

 

「今ある戦車では優勝杯で異常的な強さを見せた4校には勝てんぞ・・・継続もバカにできんしな。」

 

優勝は大洗だったものの、黒森峰は偵察車両にレオパルド、カールやG.W.Tigerといった自走砲を追加し、聖グロは新隊長のオレンジペコが私のような革命ではなく、平和的に権力を掌握し、文句を言ったOB方は金と権力で黙らせた。

 

そしてセンチュリオン、チャレンジャー、ブラックプリンス、コメットといった名車両を導入し準決勝まで圧倒し続けた。

 

サンダースはフェアプレイの精神を粉砕し、勝ちにこだわったアリサが、大学に取られていたイージーエイトを高校に戻し、ヘルキャットやT29が暴れまくった。

 

他校と別格となってしまったこれらの高校は4強と認定され、一矢報いる事ができた継続の隊長上条当子は大洗の次期家元の愛里寿と協力関係を築き、再び凝り固まった高校戦車道が出来上がる。

 

「・・・両さんこれ。」

 

「・・・なんだ?・・・!?この写真は!!」

 

「・・・来年の夏はIS-3を8両、T-54(1946)を4両、KV-3、KV-2、IS-2、IS、Object704、T-50-2、残りT-44でいく。IS-3は2両造ったけど、ソ連領内に廃棄されたのも見つかってる。残りはT-50-2以外作った。」

 

「いつ造ったんだ・・・ワシもわからんかったぞ。」

 

「型ができれば量産は楽。金もノンナにわからない程度で抜いたり、生徒会からわざと多く報告して抜いた。・・・一番はいらない車両をマニア達に売った金だけど。」

 

両津はほむが服で今はわからないが、すごく痩せていた理由を知り、様々なことを考える。

 

「ほむ、休め。」

 

この言葉に全て込められていたが、ほむはキョトンとしていた。

 

そしてなにかに納得した

 

「戦車を造ったのは私だけじゃなくて100人近くいる元シベリア行きの人や整備科で燻っていた人を焚き付けた。」

 

裏方は完全に掌握し、ほむの本当の基盤はここであり・・・。



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前龍、連虎

4月7日・・・入学式の日。

 

今年のプラウダ入学者は前年比1.78倍が入学した。

 

厳しい校風ながら部活が増えたことにより、特色が無かった(監獄のプラウダの渾名は存在した)プラウダに厳しいながら鍛えられるという今時には無い特長が生まれ、それを目当てに人が集まった。

 

・・・しかし、戦車道部に入った人数は50人・・・去年の4分の1であり、この事を2、3学年は不安に感じていたが、私はそんなことを全く感じなかった。

 

「待ちくたびれた。」

 

「仕方ないじゃない!!ここに来るように言ったのはほむよ!!」

 

前龍 御坂美琴

 

「ちゃんと私の戦車はあるのよね?」

 

連虎 風見幽香

 

「ほむのケーキ食べたいのかー。」

 

フランソワ・ルーミア

 

「さて、教育といこう。」

 

上白沢慧音

 

「チルノ先輩、久しぶりです!!」

 

大泉葉子(大ちゃん)

 

「自然豊かだね・・・ここは。」

 

リグル・ナイトバグ

 

「ぴっちぴちの16歳!!頑張ります!!・・・おい、誰だBBAって言ったの。殺すわよ。」

 

八雲紫

 

【第1世代・・・2大巨星世代】

 

「それ以外にも大駒がある。・・・豊作。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7名の1年生は、シミュレーターで初練習でのび太以外の記録を軽々と更新し、無名革命に参加していなかった部員達の度肝を抜いた。

 

「全員Mバッチ・・・まぁこんなものよね。」

 

「まだまだ遊び足りないのかー。」

 

「アタイの記録が・・・。」

 

「チルノちゃん。」

 

2メートル越えの巨体が悔しがる姿は進撃の巨人が150センチしかない大ちゃんを補食しようとしてる様にしか見えない。

 

そんな些細な事もあったが、プラウダは反撃のために動く。

 

 

 

 

 

 

 

シュタ

 

「久保保子殿、プラウダは完全に戦車道に関しては停滞もしくは衰退期に入りました。」

 

「島津歳知殿ご苦労であります!!・・・カチューシャもあんな出来損ないに権力を渡さなければ良かったものを。」

 

島津歳知・・・島津家の3女であり、謀略、情報収集担当。

 

久保保子・・・久保家を分断したお家騒動で母親が師範の座を獲得し、久保家の当主の娘である。

 

「保子ー、エリカ隊長を立てながら妹様とにっくき島田の娘を倒そうよ!!不慮の事故で島田は消そうよ!!」

 

久保政子・・・お家騒動で負けた方だが、保子とは親友で、物騒だが血の繋がりを滅茶苦茶重視する根っからの保守思考である。

 

「やっぱり西住が最強なんだな。こんなにも人材がいっぱいいるんだな!!」

 

津田3姉妹の長女・・・津田松。

 

とある野球掲示板の影響を受けすぎてとても残念な美女である。

 

「・・・個性が強すぎて、私の存在感無さすぎる・・・。」

 

吉田金糸・・・吉田家の長女で戦車道は退きの金糸と言われるほど逃げることに定評があり、フラッグ車両に毎回乗せられる。

 

ただ、普通に上手い。

 

他にも中徳瀬里奈、日比谷言葉、中村茶、中村麦、深川凛、最中キリと分家ではないがエリカ級の逸材が沢山入学した。

 



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戦争の開始

「1年生は一部の例外を除いて今回の夏は入れない。・・・ただし、例外には能力次第で車長にも小隊長にもする。」

 

本来部長にはこんなことを言う権利は無いが、隊長が完全に操り人形になってしまったので、私には都合の良い環境に変わっていた。

 

ニーナ、アリーナ両名は一番危険な人物なので旧シベリア組でガチガチに監視させた。

 

???

 

「これでよろしかったのですか?姫様。」

 

「良い。・・・同志は私も消すの?西住だから。」

 

「多少は覚悟してくださいよ。その代わりお子さんは守りますし、役に立ちますから。」

 

「悪魔の取引。」

 

「その悪魔が活躍できる場を整えてくれたのは誰なのやら・・・。姫様、私は裏で姫様を操ります。でも操り人形にはならないでくださいよ。」

 

「期待に応えられるように頑張る。」

 

「・・・どちらが悪魔なのやら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抽選会・・・戦車道全国高校生大会の抽選会場に私は居た。

 

横にはチルノもいる。

 

学校の方は、もう私が外出しても大丈夫だと判断したため生徒会や美琴達に任せてきた。

 

「始まったね。」

 

「うん。」

 

「あたい達はどこだろうね?」

 

「8番辺りを取りたい。黒森峰とは別になりたい。大洗もだけど。」

 

「あたいもそれは思うよ。」

 

『プラウダ高校の代表は壇上に登壇してください。』

 

「行ってくる。」

 

「がんばって!!」

 

 

 

 

 

 

 

【4番】

 

一回戦・・・知波単学園

 

「よし。」

 

自席に戻り、チルノ以外には見えないようにガッツポーズをする。

 

「知波単学園はチハ改までしか使わない学校だよね?ほむ?」

 

「そう。・・・T-44も貫通しない貧弱な戦車・・・だけど、日本人らしさは見習わなければならない。」

 

「大和撫子・・・ノンナ様みたいなのを言うのかな?」

 

「そんなものを思えば良い。」

 

「あたいは無理かな?」

 

「性格の否定はしたくないから、チルノは南のままで良い。」

 

「そう・・・そうだよね。」

 

この時、私はチルノの目に光が無かったことに気が付けば、私の未来も、チルノの将来も変わっていたのかもしれない。

 

それだけ私には余裕が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平押しでも勝てるが、何か対策はいるか?」

 

「私と美琴の実力がバレるのは不味いわ。そこを隠しながら戦うわ。」

 

「・・・今回の試合、僕に任せてくれないかな。」

 

手を挙げるリグル・・・目には闘志が宿っていた。

 

「リグルに任せてみたい。ただ、大まかにはこちらで決めさせてもらう。」

 

「場所は・・・山口の秋吉台だったよな。持久戦にしないか?」

 

「なぜ?剛田?」

 

「シミュレーターでいくら練習したからといって、実戦とは違う。せっかく弾が貫通しないことが確定しているじゃあ・・・射撃訓練ができないか?」

 

「「「ナイス。」」」

 

こうして知波単にとっては悪夢の35時間が始まる・・・。



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光虫 リグル・ナイトバグ

秋吉台の岩と草しかない丘でプラウダと知波単は対峙した。

 

「プラウダ高校戦車道部部長・・・池田。宜しく。」

 

「知波単学園戦車道部隊長西です。宜しくお願いします。」

 

軽い挨拶を終えると、私は観客席に向かい、スコアボードにメモを始める。

 

(・・・おや?・・・原石がある。)

 

丸メガネの知波単学園の1人の車長に目がいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・敵はあっちにいるね。」

 

リグルは何もない様にしか見えない場所を指差す。

 

「なんにもなくない?」

 

【虫の知らせ】

 

 

 

 

 

 

 

古くは毛利元就が尼子氏を攻めているとき、蛍の動きで伏兵を見破った逸話があり、リグルは自身の持つ洞察力を極限状態にすると、擬似的なレーダーとして敵の居る場所を知ることができる。

 

同世代の7人は何かしらこの様な得意分野・・・端から見れば超能力じみたことができた。

 

これはほむの教育によって開花したため、ほむは才能が皆無以外の人でもできるようにしたいと頑張っているが・・・

 

 

 

 

 

 

「「これが・・・才能の違い☆」ですね。」

 

佐藤心、安部菜々の心を改めて折るには十分な衝撃であり、選手と観客の違いは有れど、才能を開花させたほむを尊敬した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まほ、あなたは何か感じますか?」

 

「お母様、リグルという選手ですか?」

 

「・・・はぁ。・・・だからあなたは準優勝になるのですよ。」

 

「観なさい、テレビ番組に数日後でるのならほむの異常性を。」

 

「ほむの?」

 

「こちらを食い殺そうとしてるわよ。・・・斥候辺りでしょうね。・・・私の予想ではチルノという選手も実験的に育てたのでしょうね。」

 

「チルノ・・・プラウダの筋肉の化け物ですか?」

 

「恐らく失敗作ね。・・・目から冷酷な思考が彼女にはある。あなたには無かったね。・・・まぁ、ほむほどあなたは優しくもないけど。」

 

「お母様・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合は1日を跨ぎ、長時間の試合となり、10両全てがまだ動くのに知波単学園側が降伏した。

 

砲塔は機関銃の射撃によりボコボコ、履帯は格好の的にされ、直される度に切られ、砲もべっきり全車両折れていた。

 

精神病発症15名も出るほど鬼畜の戦車戦であった。

 

「お疲れさま。どう?練習になった?」

 

「「「Да。」」」

 

「とりあえず次のワッフルも同じ作戦でいくことが参謀本部で決定された。現場指揮は八雲紫に一任する。」

 

「わかったわ。その時の勝利の料理は?」

 

「料理研究部と料理科の教員が作る本気のブッフェ。あと初戦敗退したアンツィオから数名料理人が来る。リミッターも外して良い。」

 

「「「おぉ!!」」」

 

「責任重大ね。」

 

「頑張れ。」

 

「まぁやるだけやるわよ。」

 

ニタァ

 

「別に全員精神病を発症させても良いのでしょう。」

 

「どんどんやれ。ワッフルの裏には聖グロがいるから。」



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テレビ

「こんにちは、皆さん。えー、平野彰です。今日はね、今話題の戦車道を去年の各学校の隊長さん達やプロの選手、専門家を交えながら紹介していきたいと思います。では皆さん宜しくお願いします。」

 

「「「よろしくお願いします。」」」

 

「では皆さん、今さらそもそも戦車道とは何かなんて聞けませんよね。今日はそんな疑問に答えますから安心してくださいね。」

 

ハハハハハ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではお待ちかね、今高校の女子生徒達が頑張っている戦車道全国高校生大会についてです。まずは今年の目玉について意見をどうぞ。」

 

「黒森峰か大洗でしょうね。」

 

「菊地さん、それはまたなぜですか?」

 

「二大流派の関係者がこの場に居るので大まかに・・・黒森峰は西住流の一門が多く入学し、次世代の師範や師範代になれる人が多くいます。それだけ実力も底上げされていますから強さに磨きがかかっているのですよ。対する大洗は西住から飛び出したみほ選手が大洗の奇跡とも呼ばれる昨年の大会、大学選抜エキジビション、優勝杯の3つを勝ち、さらに大学選抜で飛び級したため指揮をしていた島田愛里寿選手もここに居るため恐ろしく強いのです。」

 

「試合結果もすごかったですからね。」

 

「あら?聖グロも負けていませんわよ。」

 

「ダージリンさん、なぜですか?」

 

「オレンジペコよ。柵に囚われることなく聖グロの戦力を強化しているわ。」

 

「なるほど・・・。」

 

「失礼。」

 

「西住まほさん、どうしましたか?」

 

「・・・プラウダが上まで来るだろう。」

 

「プラウダ高校ですか?カチューシャさん、どう思われますか?」

 

「入部人数が過去最低で、戦車道部の部費も大幅に減らされだから、今年は厳しいと考えている。」

 

「ほむが居るのにか?」

 

「「「ほむ・・・え。」」」

 

「おや?プロ選手のメグミさん、アズミさん、ルミさんどうしましたか?」

 

「西住さん、ほむと言いましたか?」

 

「言ったが。」

 

「持論を変える、優勝はプラウダ高校ね。」

 

「「私達も・・・。」」

 

「ほむ?聞いたことがありませんが選手でしょうか?」

 

「違う。プラウダの部長。西住の3女で池田ほむという。」

 

「西住の3女・・・失礼ですが詳しく聞いてもよろしいですか?」

 

「言えることなら・・・家元がことあるごとに次期家元はほむにしたいと言う。私やみほには無い何かを感じてるらしい。」

 

「ほう、それはそれは・・・でも選手ではないのでしょう?」

 

「そう。選手じゃないから彼女は怖い。自称凡人らしいからな。」

 

ポロロン

 

「番組中にカンテレは弾かないでもらいたいのですが・・・。」

 

ポロロン

 

「裏方が弱ければ勝てない。・・・彼女が言った言葉だ。継続は全員選手で全員裏方ができることに自信を持っていたが、彼女だけだね。全否定したのは。『だから3流。極めようという覇気がない。逃げ道がある。自然とどちらも疎かになっていく。』衝撃だったけど、それが継続だからね。・・・まぁ堂々と否定した割には優勝杯では散々だったけどさ。」

 

「捨ててたよ。弱い戦力だけで向かわせて、本体を隠し通した。」

 

「カチューシャさん、よろしいので?」

 

「・・・じつはな、こんな物をほむから貰ってきてる。番組中にほむの話が出たら使ってほしいとさ。」

 

「・・・チーフDこれを流してもよろしいでしょうか?」

 

カンペ

 

《何のための生放送だ。事故ってなんぼ。やれ。》

 

「許可が出たので流します。」

 

 

 

 

 

 

『おはよう。私はほむ。プラウダにいる。・・・今ある二大流派に喧嘩を売る。勢力を食う。噛み千切る。・・・私は弱い。姉達に比べれば凡人。・・・だけど、凡人は凡人であるがゆえに天才を倒せる。・・・私はスペードの3。大富豪では一番弱い存在。・・・だけど・・・ジョーカーは倒せる。』

 

衝撃的な番組となった。



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隙間 八雲紫

ワッフル学院・・・まぁ弱小高校だが、今年は聖グロの期限付き援助により1回戦をなんとか突破したが・・・待っていたのはこの世の地獄であった。

 

 

 

 

 

 

 

「鳥取砂丘は私達に味方してくれるでしょう!!砂漠戦を想定してないソ連戦車には辛いはずよ!!絶対勝つわ

ドガァン 何事!!」

 

「隊長!!至近弾です!!自走砲です!!」

 

「なにー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「砂漠の蜃気楼は厄介ね。敵味方関係なく惑わせるもの。」

 

八雲紫は現地の軍師であり、曲射の達人である。

 

当てるのが難しいといわれている曲射で命中率9割代なのは彼女だけである。

 

これだけならエースとは言われないが、彼女の恐ろしいところは隙間射撃と呼ばれる普通なら射てないところから砲撃をすることである。

 

例えば建物の隙間、例えば橋の下、例えば砂漠の砂の中・・・計算と直感で砲弾が誘爆しないギリギリを見極め砲撃する職人技である。

 

「さて、こちらは私ともう1両以外は全部T-44よ。装甲は抜けるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

「隊長・・・。」

 

まる1日何も食べない、敵の姿は見えないのに散発的な砲撃でレンタルだというのに戦車が破壊されていく。

 

損害を減らすために市街地にて戦おうと市街地に向かうと、瓦礫で市街地に入る道が全て封鎖されていた。

 

「このままでは・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫!!紫!!そろそろ食べたいのかー。」

 

「頃合いね。ルーミア、幽香とチェンジしたIS-3の威力を見せつけて来なさい。」

 

「了解なのかー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ニパァー

 

「殺しのルーミア・・・。」

 

「それは中学までなのかー。今は狂犬の名前をほむからもらってたりするのかー。」

 

車内ではこんな雑談をルーミアとmobの1年生が話しているが、敵にとってはたまったものではない。

 

「やめてくれ!!もう白旗は上げてるだろ!!」

 

バシュ。

 

白旗を掲げようとキューポラを開いたところに榴弾をぶちこむ。

 

「安心するのかー。たぶん死なないのかー。」

 

ワッフルは降伏されることも許されず、26時間目にしてルーミアが全車両を破壊して試合は終わった。

 

その日・・・ワッフルの戦車道部の歴史は幕を下ろし、残ったのは、聖グロから借りた戦車の損害賠償だけだった。

 

「経験は積めたわね。・・・まぁ悪の組織みたいだわ。」

 

「どう見ても悪の組織だろうが!!ニュースで散々喝マークをやられただろ。」

 

「まぁまぁ慧音怒らないでほしいのかー。」

 

「行動が行動だからね。僕もやった側だから何も言えないけどさ。」

 

「もう少しだけ優しく普通の戦車道しませんか?」

 

「あたいも大ちゃんの意見に賛成ー。」

 

「・・・次は大ちゃんにやってもらう。幽香と美琴は補佐について。」

 

「「りょーかい。」」

 

 



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同志

ワッフルを粉砕した後、私のもとに教育委員会や他校から警告文の手紙が大量に届けられた。

 

「この紙束はどうしますか?姫様?」

 

「捨てておいて。見る必要もない。」

 

「なるほど・・・では燃やしておきますよ。」

 

「そもそも戦車道と道がついているけど、戦車は戦争の道具。私達学生が戦車という兵器を国から認可され、保有し、来るべき国難のために戦争の真似事をするのが戦車道と考えてる。・・・どう思う?同志・・・いや、旧新道寺分家・・・花田煌。」

 

「ここで名前を言うのは初めてですね。・・・すばらです。」

 

「意識しないと口癖が出るのも直らない。」

 

「おおっと・・・失礼しました。・・・私にとって姫様は踏み台ですが、感謝してるんですよ。」

 

「何回も聞いた・・・しつこい。」

 

「まぁまぁ。・・・かなちゃんは1歳ですか。元気に走り回って・・・すばらです。ほらお姉さんですよ。」

 

「だしだし!!」

 

「かな。」

 

「お母様どうしたし!!」

 

「いや・・・困ったらこの人かお祖母ちゃんに頼るようにね。」

 

「???」

 

「かなちゃんにはまだわかりませんよ姫様。」

 

「そうか。・・・専用のST-1は用意できてる。こっち。・・・かな、一人で待ってられる?」

 

「だし!!」

 

「よし。」

 

私は煌を連れ、歴代隊長が使用していた学園艦最下層の倉庫に移動する。

 

「私も隊長になる前はここの存在を知らなかった。カチューシャ隊長もここは使ってなかったらしいけど。」

 

目の前にある戦車のせいで狭く感じるが、それだけ存在感と威圧を放っていた。

 

「ソ連の計画中止車両で戦車道連盟の許可もある。・・・主砲は122mmM62-T2・・・マウスの頬っぺたならギリギリAP弾で貫通できる。」

 

「すばらっ。すばらです!!カラーはなんですか?」

 

「題名は偉業。灰色の中に少し赤を入れた。・・・ヘイトを本車で上げて、後ろにいる自走砲やISシリーズで破壊する。・・・そもそもこの戦車の正面を貫通できる車両は限られてる。」

 

「来年は私が部長ですか?」

 

「そう。反ほむ主義を展開したら。」

 

「ご冗談を。こっちが把握している反乱分子を姫様を使って粛清させてもらいますがね。」

 

「煌・・・黒森峰では聖女と言われ、本家に住み込みでいたあなたが・・・黒くなった。」

 

「元から真っ黒ですよ。・・・来年は友達の白井黒子を連れて乗り込みますからよろしくお願いします。」

 

「わかってる・・・。来年は全校が敵になるだろうから。」

 

凡人は腹黒聖女こと花田煌と話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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魁蝶 大泉葉子

大泉葉子は凡人だった。

 

長野の普通の農家で生まれ、自然での生活もしながらたまに都会へ遊びに行く普通の女の子。

 

しかし、数年前に幽香が私を戦車道に誘ってから生活が変わった。

 

殺人流派なだけあって、気を抜いたら死ぬんじゃないかという訓練と、(ほむから)風見家に送られてくる手紙に書かれたメニューを食べる食いトレ・・・体重が痩せたり太ったり激しく変わるので寝込んだ日も多々あったが、なんとか免許皆伝できた。

 

そしてプラウダに来たら来たで、1年のエース組として特別訓練、更に激しくなった食いトレ・・・。

 

だが、実力は付いた。

 

同世代のエース達が信長の野望ステータスなら武勇、知力120レベルで特能いっぱいの化け物だが、大ちゃんも武勇100くらいはある。

 

他校なら絶対のエースになれる力がある。

 

そして、彼女の本当の力は仲間の士気の維持だった。

 

声かけ、手助け、カウンセリングやプロ並みに栄養学を把握しており、料理家という一面もある。

 

ほむの目指す良妻賢母、大和撫子の考えにエースの中では一番合っており、プロパガンダの右翼として活躍もしていたりする。

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女は継続学園戦の作戦を戦争狂のマックスや剛田武、御坂美琴、風見幽香の4人で話し合っていた。

 

会話には参加しないが、私と佐藤心、安部奈々の3人は書記としてその場に座っていた。

 

他の参謀組は別の役割で忙しく、エース組も車員の訓練で忙しかった。

 

(・・・やはりというべきか、剛田は頭がキレる。普通の勉強面ではダメだけど、焚き付けるカリスマと特殊な事に関しては凄い。・・・戦車道のルールを過去の事例も含めて丸暗記。マックスは戦争のことしか頭にないけど戦術と割りきって考えれば使える。・・・美琴や幽香も悪くないけどやっぱり選手。大泉葉子は司会としてしか機能してない。・・・部長は無理。隊長・・・は不味いからやっぱりプロパガンダとしてモデルケースで活用するしかない。・・・盗聴機越しに聞いている花田煌も同じ事を考える。)

 

「部隊を3つに分け、A隊、B隊、C隊とし、A隊の隊長に大泉にやってもらい、フラッグ車はKV-3のチルノ、B、C両隊は御坂と風見が挟撃する形をしよう。・・・ほむ部長。修理班を使い戦力を回復してもらいますぞ。」

 

マックスの意見が採用され、作戦名ステップが決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・未来か。・・・池田流の基礎。うーむ。」

 

1人になる機会があり、将来の事を考えていた。

 

かなのことも有るので働きながら実績を積みたいと考えるようになる。

 

・・・遠からず機会が訪れることを知らない。



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巨壁 南夏(チルノ)

「・・・ナメられたものだ。継続はそこまで弱くは無い。」

 

上条当子は島田家家元から預かった指揮棒を見つめながら呟く。

 

「今のプラウダの情報収集能力は極端に低い。・・・騙し騙し何とかしていたらしいが、その幻想をぶち壊す。」

 

カチューシャの革命、カチューシャの大粛清により情報収集関連が壊滅し、カチューシャが頼っていた聖グロリアーナの情報収集能力はカチューシャの代で関係が終わり、今は敵対している。

 

ほむの無名革命により報道部、新聞部をメインに写真部や社会部等の情報収集機関が創られたが経験不足。

 

当子は知らない花田煌も体は1つしかないので持ってこれる情報量も限られているので、継続が今どうなっているかわかりづらかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピキーン

 

「「何かがいる。」」

 

美琴、幽香はそれぞれ作戦通り別の場所で敵を半包囲するために動いていたが、2人のエースは継続の動きに疑問を持つ。

 

そして直感で感じた。

 

「「本隊が危険だ!!」」

 

指揮権を2人は一時的に3年生に委託し、急いで本隊であるA隊に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

戦車道に関しては凡人となるほむはピーンと来る何かを感じることもなく、フラッグ車のKV-3でチルノ、佐藤心と談笑していた。

 

(チルノの出番が少なくなっているが、ほむとはよく喋る。)

 

そんな時、KV-3の正面にいたIS-2が狙撃により大破し、フラッグが上がる。

 

『て、敵車両観測!!・・・シャーマン?が5両!!』

 

(シャーマン?・・・それにしては着弾音が異常・・・まさか。)

 

「シャーマンの砲身先端部に何かある?」

 

『縦にわっかみたいな物が付いてます。あとマズルブレーキが大きいかも?』

 

「それはスーパーシャーマン。シャーマンのカスタム車両だからいけるのか。・・・美琴、幽香。」

 

『今向かってるわ。あと3分で到着する。』

 

『同じくらい!!持つ?』

 

「チルノ、佐藤。」

 

「迎撃してる!!」

 

「何とかしないと☆いやする☆」

 

「持たせる。」

 

『『了解!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央のA隊が必死にフラッグ車のKV-3を守っている頃、B、C両隊が敵予測地点に到着したが

 

「やられた!!」

 

合流した時点で敵がおらず、スーパーシャーマンを筆頭に、中央を強行突破したらしい。

 

「島田流か。忍者戦法使いなら有り得る。」

 

いっつもほむのされるがまま身を投げ出していた隊長がいつもは見せないカリスマを発揮する。

 

「雪原を突破する。待ち伏せがあろうと物量で潰せ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら。案外何とか耐えられるかもしれないわね。」

 

対戦車自走砲のObject704を操る紫はA部隊の後ろから援護射撃をしつつ、そう感じた。

 

 

 

 

 

で、フラッグ車を守るのにIS-3に今回乗っている慧音とルーミアは建物を使った逆豚をしながら耐えていた。

 

「弾幕が多すぎて移動できないのかー。」

 

「くそ!!フラッグ車が孤立ぎみだ。何とかしないと!!」

 

戦場は継続が有利に進んでいた。



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あたいはチルノ・・・

スーパーシャーマンの砲はKV-3の装甲を普通に貫通できるだけの推進力があり、更に弱点である砲塔の傾斜が少ない部分を上手くチルノがカバーしている今は良いが、徐々にダメージが蓄積していった。

 

「・・・。」

 

その光景をほむは静かに見ていた。

 

「ほむ・・・。」

 

「チルノ、私があなたに言えることは無い。」

 

この言葉を佐藤心は言葉が足りないなと感じ、チルノは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やってくれたわね。」

 

「ふぅー・・・間に合った。」

 

幽香、美琴、継続高校戦車隊の背後を捉える。

 

「血祭りよ。」

 

「ビリビリに痺れさせるわよ!!」

 

敵からしたら魔王が2人降臨する。

 

傾いた戦況は2人による背後からの一撃で継続高校の優位性とフラッグ車の短期撃破の戦略は脆くも瓦解した。

 

「・・・最後の意地だ。くらえ!!」

 

上条当子の操る3号突撃砲によるラムアタックは・・・

 

ガン

 

「う!?」

 

「ほむ!?」

 

衝撃で身体が弱いほむが衝撃によりあばら骨が折れる怪我をしたものの、大事にはならなかった。

 

「ほむの仇!!」

 

チルノの放った砲弾は3号突撃砲に直撃し、試合終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦の失敗はすぐさま参謀本部に報告され、今回から試合に出た1年生全員が反省会という名の議会に参加させられた。

 

ほむ、佐藤心、安部奈々はその場に居たが、話には参加せず、終始ノートに議会の事を書き続けた。

 

 

 

 

 

 

議会の事を持ち帰り、部屋の中でかなの相手をしながら3人で勉強会を行う。

 

議会だけでなく、3人から見た選手の評価、成長課題等も話される。

 

凡人3人組は選手や戦術を自ら練ることには限界が有ることがわかっていたので、自分達・・・いや、日本戦車道では未熟なコーチング技術、監督としての技術を磨いていた。

 

幸い私にも、他の2人にも才能が有ったので毎回何かしらの成長を感じることができていた。

 

ちなみにチルノはこの分野は苦手で、自身は理詰めを理解できるが、人に対して説明ができないため、ほむはチルノを勉強会には呼んでいなかった。

 

それがチルノからしたら疎外感に感じたのかもしれない・・・

 

母や年の離れた姉のような存在2人の姿を遊んでもらいながら見ていたかなは1歳ながらに非凡な成長をしていくこととなる・・・それはほむの評価を高める一方、西住、島田、日本戦車道連盟の3つを混乱に導き、日本の戦車道を掻き乱す存在となることをほむは・・・いや、現時点では誰も知らない。

 

ニタァ

 

「・・・母親が露助の思考に触れてなくて良かったし。・・・北方の冬が懐かしいし。」

 



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軍神+島田VS凡人と愉快な仲間達

ほむはかなと喋っていた。

 

かなが私と同じ匂いが最近するのだ。

 

転生者の匂いが・・・

 

「かなちゃんはかなちゃんだし。確かに1歳の私がこんなに喋れるのはおかしいと周りを見ればわかるし。・・・自我が産まれた時から存在したし。前世の記憶も断片的にあるし。・・・しゅむしゅ島、満州国、大本営・・・よくわからないし。」

 

「・・・かな。かなは私が母親に見える?それとも他人?」

 

「母親だし。」

 

「それと同じ。かなはかな。どんな記憶があってもかな。・・・かなは戦車は好き?」

 

「好きだし!!ただ・・・露助の戦車は嫌いだし。」

 

「わかった。何か好きな戦車はある?」

 

「猫の戦車が良いし!!」

 

「・・・そう。」

 

ある中佐の名前が口元まで出てきたが私は言わなかった。

 

かなはかな。

 

私の娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなという世界史に残る規模の偉人が着々と母親であるほむから技術を盗むようになった頃、準決勝大洗女子学園への対策を進めていた。

 

大洗はついに和虎を発見し、マウス並みに価値がある本物のP虎というドイツの文化財を盾にしつつ、西住、島田の援助により着々と戦力を整えたものの、角谷杏前生徒会会長のような戦車道に全力を注ぐという博打打ちの会長では無かったので、生徒会、風紀委員は戦車道から手を退いていた。

 

つまり一致団結しているかと言われたら微妙なのだ。

 

西住みほ隊長と島田愛里寿が仲良くやっているから現状は微妙で済んでいるが、西住みほが抜けた瞬間に島田一色になる危険性もあり、付け入る隙があるのだ。

 

「・・・どうしたものか。」

 

「おぉ、ほむじゃぁねぇか。大丈夫かぁ?」

 

「堀田校長。」

 

「悩み事ならぁ聞くぞぉ。」

 

「大洗を倒す方法。」

 

「あぁ。・・・連携だぁなぁ。」

 

シュボ

 

煙草を口にくわえ、堀田さんは私の隣に腰を掛ける。

 

「大洗がぁ微妙な感じなのはぁ知ってる。どうもコーチと島田の娘がぁ揉めとるらしいぞぉ。」

 

「コーチ・・・特別講師の人?」

 

「そうだぁ。」

 

「蝶野亜美。・・・足りない。」

 

「力になれねぇ。すまないなぁ。」

 

「感謝すべきは私。ありがとう。」

 

「あ、そうだぁ。ほむ。2学期からフランス語を学べよ。お前にオファーが来た。」

 

「オファー?」

 

「西住を調べていたぁ人物らしいんだが、たまたまほむの事を知り、惚れたぁらしい。そいつがぁここ出身でぇ教師なんだよぉ。ほむ。悪いこと言わねぇ、そいつと見合いを受けてくれねぇか。18歳、片親で娘を育てるのは厳しいだろぅ。そいつもかなちゃんと同じ位の娘がいるから。」

 

「どこの教師?」

 

「新造学園艦のモーリシャス国立学園の日本文化研究学部講師兼英語の講師もしているやつだ。」

 

「名前は?」

 

「泉そうじろう。」



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お前は誰だ?

「ようこそ私の裏側へ。」

 

また夢か。

 

ワタシの前に過去の私と僕と俺がいる。

 

「クークックック。ひねくれ者の僕よ、今の自分はひねくれているかい?」

 

「熱血で馬鹿でホモな俺よ。まだ情熱はあるかい?」

 

「全てが燃え尽き、社会人となった私よ。今の生活は順調ですか?」

 

あぁ順調だとも。

 

周りに信頼できる仲間もいるからね。

 

「「「それは本当に仲間ですか?」」」

 

パチン

 

場面が切り替わる。

 

裏切られた時の場所だ。

 

信頼していた友人が、腹心が、親友が、親族が裏切った記憶だ。

 

パチン

 

「親族は滅茶苦茶にしたよね。・・・16分の1しか血が繋がって無かったけどさ。」

 

「そいつの母親焚き付けて、再婚させて、母親の愛を奪ってやったよね。」

 

「面白いほど簡単だったよ。幼いながら3年間も下準備してさ。」

 

あぁ、だからなんだ。

 

そいつが学校に転校してきてクラスの空気が悪くなった。

 

皆が仲の良いクラスだったのに・・・いじめを煽って弱者を潰してたから・・・。

 

「それだけじゃないよね?」

 

「邪魔だった。でしょ?俺よ。自身の評価を押し下げようとする屑が。」

 

確かにそうだ。

 

邪魔だった。

 

だから消した。

 

地域社会から。

 

「腹心も滅茶苦茶になったね。」

 

「私がいじめられていたのに加担してさ。」

 

「私を消そうとしたから。」

 

「チームごと消したね。」

 

「内乱状態は傑作だったね。言葉がいかに凶器になるか学べたよね。」

 

確かにそうだ。

 

だからなんだ?

 

「友人はどうしたんだっけ?」

 

「あぁ、成績を落としたよね。」

 

「私は優等生、だから先生も動かしてさ。」

 

「私語をする癖をつけさせれば簡単に楽な方に流れてさ。」

 

「どうなったんだっけ?」

 

「大学落ちたんだよね。」

 

あぁ、そうだ。

 

だからなんだ?

 

「「「ほむ、君はまた何かを潰したいのか?そうでないなら気を付けろ。彼女はもう疲れきっているぞ。君の☆△◎○●○☆☆・・・。」」」

 

パチン

 

「・・・。」

 

・・・。

 

「やぁ。」

 

なにか用?

 

「おいおい、忘れたとは言わないでくれよ。マジキチ。お前は毎回壊れるんだよ。」

 

何でかな?キチガイ。

 

お前ほど私に影響を与え続け、思考、行動を拘束した者はいない。

 

「まぁこれが夢であることはわかってるのだろ?・・・警告だ。これ以上西住と島田、プラウダを痛めつけるな。」

 

なぜ?どれも痛めつけるようなことはしてないけど?

 

「無意識ほど恐ろしいことはない。お前の本性は小心者の働き者の無能だ。わかってるだろ。どれだけ頑張っても有能にはなれない。頑張るなとも言わない。」

 

じゃあどうすればいい?

 

「死ねば良いと思うよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバ

 

チュンチュン

 

「久しぶりに見たな。予言の夢。」

 

試合当日の朝の事だった。




作者もたまに予言の夢を見ます。

最近だと落雷が近くに落ちる夢で、実際1ヶ月くらい後に下校中に市役所のスピーカーに落雷が直撃して自転車をひっくり返すくらい驚いた事がありました。


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軍神+島田VS凡人と愉快な仲間達2

天才に勝てるのは天才だけ。

 

前世も今世も身に染みてわかた。

 

その天才をサポートし、私が創る池田流の考え続ける戦車道、大和撫子型の女性を育成が主だ。

 

今の女性は様々な権利により、日本人らしさが薄れてきている。

 

島田や西住の本流は比較的まともだが、学園艦の国際色が強すぎて、日本人でありながら外人にしか見えないのはいかがかなものか。

 

知波単は日本らしさが滲み出ているが、あれはあれで日本人の悪いところを凝縮している様にしか見えない。

 

協力してくれている佐藤心も安部奈々も外はアレだが、中身は日本人らしくなってきている。

 

二重人格みたいで怖い時もあるが・・・。

 

「成功例の2人はどう?」

 

私が言う成功例とは美琴と幽香でまさに天才だった。

 

今回は彼女達に自由を与えた。

 

何をしてもいい。

 

「どうなるか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下馬評的には大洗女子の圧勝もしくは勝利で大会前のテレビの事は単なるブラフだと思われていた。

 

しかも前回以外の試合内容は批判が大量に運営やプラウダに来る物で、地力が余りなく、戦車は良いが小手先で何とかしている器の小さい学校というのがプラウダ戦車道部だった。

 

・・・プラウダは西住みほ、島田愛里寿の踏み台。

 

2人が活躍することでテレビ局や新聞社は日本の戦車道の英雄として持ち上げ、来年に行われる世界戦車道関連の部数、視聴率を上げることしか頭になく、大衆もそれを望んでいた。

 

パチン パチン ジャリジャリ

 

「・・・ほむ、今爪を綺麗にしなくてもよくない?」

 

「あら?ポーカーフェイスでわからないけど焦ってるの?ほむ。」

 

「美琴、幽香。15分。・・・2両で全滅させろ。」

 

「ふふふ。良いじゃない。わかったわ。ほむ。」

 

「ういー、さて、ちゃっちゃとやりますかね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美琴と幽香の作戦は単純明快であり、彼女達にしかできない戦法だった。

 

敵陣に単機突入。

 

美琴と幽香は西住みほか島田愛里寿のどちらかがフラッグ車だと事前の調査で当たりをつけ、西住みほが軍神となる市街地に入る前に撃破しようと考え、それを実行した。

 

操る戦車はあえてT-34-85を選択した。

 

T-54プロトタイプやT-44でも良かったが、彼女達は戦車の性能で勝ったと言われるのが嫌だった。

 

だから・・・

 

「「ほむ・・・地獄を作るよ。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【悲劇の3分間】

 

準決勝にてプラウダ高校戦車道部の御坂美坂選手、風見幽香選手が2部隊に別れていた大洗女子戦車道科にそれぞれ単機で突入し、同士討ちを誘発。

 

大混戦の末、(西住みほ選手)大洗女子の隊長のフラッグ車を御坂選手が大破させ試合は終了。

 

御坂選手は5両、風見選手は7両をT-34-85を操り僅か3分で大破させた。

 

 



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裏側

大洗女子の完敗は戦車道に関心が高まっていた日本全土・・・特に関東と九州では凄まじい反響だった。

 

軍神やら飛び級の天才やら報道関係を巻き込んで持ち上げていたスターが、踏み台と思われていた敵に瞬殺されたのだから・・・。

 

今回の勝利によって、美琴と幽香の知名度は大幅に上がり、1年生ながら新設されたプロリーグからオファーが入るようになり、我らがほむは新聞社関係者やテレビ局の関係者が八百長を持ちかけてくるようになり、対処で忙しかった。

 

「ほむさん、個別に時間を取っていただきありがとうございます。僕は毎夜新聞の富竹と申します。」

 

「用件は?」

 

「勝利の秘訣と決勝の予想を。」

 

スッと茶色い封筒を2通渡してくる。

 

「・・・決勝ではプラウダに勝たれては困る?」

 

「いやいや、そうとは言ってませんよ。」

 

1通は現金が、もう1通にはかなの写真が入っていた。

 

「受け取れない。・・・言わせてもらう。ジャーナリストあるまじき行為。下衆が。今後近づくな。」

 

「おやおや?良いのですか?」

 

「失敗すれば私とかなの水死体がどっかで打ち上げられるだけ。」

 

「隊員はどうするのですかな?」

 

「私の活動範囲外。まぁ買収は無駄。家族を脅したら脅した本人が社会的に消える。」

 

風見家に買収に行った記者がなぜか全身複雑骨折状態で警察署につき出され、記者が実刑判決を受ける事件が数日後に実際に起きる。

 

「そもそもかなの事がバレてもなにか起きる?プラウダは子供が出来たから辞めろだなんて言う学校ではない。」

 

「・・・後悔するなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむ・・・と言います。泉そうじろう・・・さん。」

 

「池田ほむさん。時間が無い中お会いする時間を取っていただきありがとうございます。」

 

お見合いの前の顔合わせとしてプラウダ学園艦内のファミレスに来ていた。

 

かなと泉そうじろうさんの娘である泉こなたもいる。

 

「モーリシャス国際大学と学園艦の事は調べた。・・・戦車道の実力も。」

 

そもそもモーリシャスとはアフリカにある島国で、神様は天国をモーリシャスを真似て創ったと言われるくらい綺麗な海があるリゾート地で、国民総中産階級と言われるくらい産業も発展し、宗教、人種を越えて争いが殆ど無い平和な国。

 

そのモーリシャス共和国が海軍戦力、本島で震災が起こった際に国民が逃げるための避難所、海外資本を呼び込むための投資先として造られた巨大学園艦シウサガル・・・その大きさは沖縄本島と同じくらいある。

 

「僕もあなたも色々問題があります。・・・モーリシャス国際大学の講義となると、子育てをしながらは色々厳しいものがあります。今は産休でなんとかなってますが・・・。」

 

「・・・結婚だとか共同生活だとかはどうとでもなる。泉そうじろうさんもまだ奥さんの事があり、踏ん切りがつかないと思う。だけど利が一致しているから良いと思う。幸いフランス語と英語ができる。・・・卒業したらそっちに行きたい。」

 

「え?え?いいの?そんなに簡単に決めて。」

 

「どちらにしろ日本から出ないといけなかった。」

 

「電話でもう少し話そう。」

 

 



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決勝

西住まほは敗北を実感したのが決勝の日だった。

 

妹のほむと結局会うことはなく、3年間が終わり、今は横にいる姉のまほと母のしほと共に決勝の会場で座っていた。

 

「お母様、いまだにほむを後継者にしたいのですか?」

 

「えぇ、まほ、みほ。あなたたちは恵まれた環境で育った。・・・ほむは何もない状態から必死に頑張ってプラウダの実権を握った。・・・ほむは第一子を産み、母親としての強さもある。寡黙ながら自身の気持ちを相手にぶつけることができる。・・・まほ、大学生活はどう?」

 

「・・・戦車道中心の生活です。戦車道関係者に支えられながらプロリーグへの準備もしています。」

 

「みほは?」

 

「え、えっと・・・その。」

 

「はっきり言いなさい。」

 

「は、はい!!大学はお姉ちゃんがいる熊本大学に推薦も来ているから行きたいな・・・。」

 

「・・・これがあなた達とほむの差よ。」

 

お母さんは私達が見えるように1通の手紙を開いて見せた。

 

『拝啓お母様

 

何分急に決まったことなので口が回らない私はお母様に直接手紙を渡すことをお許しください。

 

身を固め、再来年から2年間は潜伏しようと思っており、母国日本を旅立ち、学友を引っ張り、婚約者がいる所に行きたいと思います。

 

事後報告になりすまないと思ってますが、片親の私がかなを育てるにはこの様にするしかないと思ったためです。

 

日本国内にいると、マスコミは私を潰しにかかるでしょう。あなたの横にいる西住の跡取りと軍神を持ち上げてますから。

 

・・・私は何が起こっても大丈夫ですがかなの事を考えるとこの様に動くしかない自分が不甲斐なく感じます。

 

あと、私をそろそろ勘当してください。

 

これからほむ個人として動きます。

 

西住の名を使う訳にはいきませんし、西住の名を私が汚すわけにもいきませんから。

 

まぁ、正面から叩き潰しますが。

 

みほ姉。

 

どう?私が5年近く育て上げた2人の実力は?まだまだ成長限界が来てないから育てるけど・・・まほ姉、軍神なら破ってみなよ。私の残す第一の壁を。

 

もちろんまほ姉がこの壁を乗り越えても良いけどね。

 

追記・・・テレビで私の名前が入った宣戦布告文章が流れたけど、私の側近が暴走して許可なくカチューシャに渡したからノーカン。

 

勝負は今じゃない。

 

10年後の組織の規模だよ。』

 

「あなた達は良くも悪くも場当たり的過ぎます。ほむは自身の戦略を元に動いています。この違いわかりますね?」

 

「「・・・はい。」」

 

「西住だけでなく島田も潰す模様なのでほむがどう動くか全くわかりませんがね。」



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エリカと凡庸

決勝戦・・・黒森峰側は戦車道というより、勝利のためなら何でもやりかねない外道のプラウダを粉砕し、戦車道ここにありきというのを知波単以外には求められていた。

 

そのため孤立しているプラウダとは違い、練習試合による練度向上により、過去最高の仕上がりをみせていた。

 

西住分家達やエリカ等の指揮官、車両にも恵まれ、名門黒森峰の維持をみせてやると士気も高かった。

 

「いやぁすばらです!!実に潰しがいがありますね!!」

 

暴走気味の花田煌は黒森峰の車両、作戦、進行ルートの情報をすっぱ抜き、参謀本部に伝えていた。

 

その情報を元に作戦が立てられ、エース以外の作戦は決まった。

 

エースは各自自由に行動することとなり、美琴、幽香はT-54プロトタイプにそれぞれ乗り、ルーミア、慧音はIS-3、リグルはT-50-2、紫はIS-3から改造したSU-122-54の122mmM62-C2砲を搭載させ、対マウスの切り札であった。

 

「正直過剰だと思う。」

 

「そうですね。・・・奈々的にも彼女達の実力を考えると・・・。」

 

「エース級はそれだけで戦術兵器だな☆黒森峰にエース級はいるのか?」

 

「いない。チルノレベルの準エース級なら数人いるけど。」

 

「あれ?島田愛里寿ちゃんや西住みほさんは何級になるんですか?」

 

「戦術家・・・希代の天才で中隊規模で初めて真の実力が現れるのがみほ。天才は天才でも理詰めによる相手の心理を読み取る天才が島田愛里寿。」

 

「結構あっさり勝ったけどな☆」

 

「美琴、幽香は天才でも努力を怠らなかった。島田愛里寿は経験が足らず、みほは味方に捕らわれる癖がある。・・・まぁ2人が天才を越えつつある。欧州やロシア、アメリカ各リーグのトップクラスの逸材だからかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

試合は開始して5分後に平野でリグルのT-50-2が黒森峰のレオパルド、ルクスの2両とかち合い、戦況が動く。

 

ドイツの鈍足重戦車よりも早いソ連重戦車はKV-2、KV-3を市街地に向かわせ、残りはリグルが交戦しているポイントに急いだ。

 

一方プラウダ主力の中戦車は1両を除いて郊外の川沿いを確保しようと移動していた。

 

トラブっている1両はほむが乗る車両で、ほむが酔って顔を真っ青にしていたため、T-44を茂みに隠して、ほむの隊長がよくなるまで休憩していた。

 

吐いて水を飲んでまた吐いてと体調最悪で、見捨ててくれと頼んだのだが、後輩達は動こうとしなかった。

 

「部長、自動的に吐くのは家に向かおうとしてからにしてくださいね。」

 

「うっぷ・・・高垣楓・・・腕は良いのに私生活とダジャレ治せば・・・うっぷ。」

 

「あぁ。また吐いた。」



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エリカと凡庸 2

我らが主人公ほむが盛大にリバースし、その横で1年の高垣楓がつまらないギャグを言い続けるという同じ戦車に乗っていた隊員がSAN値をゴリゴリ減らし続ける地獄絵が出来上がっている頃、エリカ率いる黒森峰中重戦車部隊とプラウダ主力部隊が激突した。

 

「E-100だ。」

 

「マウス、E-100、王虎、虎って・・・足回り弱すぎる機体ばっかじゃない。」

 

ジュルリ

 

「倒しがいがありそうじゃない。」

 

エースの美琴と幽香は言わずもがな、レギュラーとして出ているメンバーはそれ相応の実力を備えていた。

 

「正面からぶち当たったわね。王者の戦いを見せてやるわよ。」

 

フラッグ車のティーガーⅠに乗るエリカはプラウダの主力部隊と正面から対峙できてご満悦。

 

目の前にいるのが化け物というのを除けば・・・。

 

イナズマのペイントがされたT-54プロトタイプと向日葵が描かれたT-54プロトタイプがエンジンが擦り切れるようなけたたましい音を出しながら黒森峰主力に突入し、残りのプラウダの戦車は黒森峰を半包囲する陣になる。

 

「やらせません!!」

 

島津歳知がティーガーⅡの88mmの主砲が火を吹く。

 

ここにほむが居たら

 

「アハトアハト、そいつは素敵だ大好きだ。」

 

と口には出さないで心の中で呟くだろう。

 

その88mmのAP弾は幽香の緊急旋回により、砲塔の曲面に当たり、跳弾する。

 

T-54には数mm鉄板が抉られ、弾痕が残る。

 

島津歳知に続いて黒森峰は砲撃をしようとするが、久保保子が乗っていたパンターの様子がおかしい。

 

「な、何でありますか!!」

 

「車体前方部高温です!!エンジンがイカれてます!!」

 

「いや、これは・・・!?脱出!!脱出するであります!!車体放棄!!」

 

エンジン内部の燃料に引火するまで時間はかからなかった。

 

久保保子は脱出できたが、通信手だった者が車体放棄を馬鹿正直にエリカに伝えようとしたため逃げ遅れ、全治半年の大火傷を負ってしまう。

 

「アハハハハ!!ドイツ戦車はよく燃えるわね!!」

 

跳弾するだけにとどまらず、弾いたらどこに跳んでいくかを計算し、それがパンターに直撃したのだ。

 

「保子ー!!っ化け物め!!」

 

「あなた後方見なさすぎ。幽香だけじゃないのよ。」

 

「なぁ!?」

 

ティーガー系列・・・いや、ドイツの後期に製造された戦車は大半が砲塔の回転が遅い。

 

しかも大混戦の中懐に潜られたらいくら強い戦車に乗っていてもゲームセットである。

 

美琴は久保政子の乗るティーガーⅡの砲塔側面を撃ち抜き、瞬く間に主力2両が脱落する。




就活忙しい(汗)


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決着

主力級が激突したことによりエリカは指揮を自分の周辺にのみに意識がいってしまった。

 

更に指揮ができる者が主力に集まりすぎたことで、幽香や美琴の餌食になり、分隊指揮系統が混乱してしまう。

 

片やゲロってはいるものの、乗車している全員で通信回線を手動で繋ぎ会わせ、リグルの軽戦車方面、ルーミアとチルノ、慧音の重戦車方面、紫の駆逐戦車方面と通信で主戦場に集まるように指示することができた。

 

また、分隊指揮系統が独立しているため、混乱しても混乱が伝播することはない。

 

更に大まかな作戦が参謀本部で決まっているため、ある程度の行動パターンも作成されていたので、紫と慧音が隊長から指揮権限を剥奪し、そのまま後方より正確な指示をすることができた。

 

つまり、数が有利だったため黒森峰はプラウダの数を削ろうとしたが、エース2人組により大混戦になったが為に指示できず、プラウダはそのわすがな時間で進路を変更できた。

 

ということだ。

 

結果、ラングやヤクパンは主戦場に到着する前にエリカが撃破され試合終了。

 

プラウダ対策で持久戦も考えていた黒森峰はプラウダの電撃戦で敗北するという皮肉な結末となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ったか・・・帰る。」

 

「よろしいのですか?お嬢様。」

 

「気分がまだ悪い。」

 

「なるほど。」

 

「まって!!」

 

振り向くと姉達とお母様がいた。

 

「お姉様、お母様・・・なんですか?」

 

「ねぇ・・・ほむ、戻ってこないか?西住に。」

 

「また、一緒に暮らそうよ。」

 

「・・・まほ、みほ、努力してもできないことがあった?まほ、みほは無いでしょ。誰も彼もが協力的で、頼られて、認められて。」

 

「そんなこと・・・。」

 

「無いと言えるか!!」

 

「ほ・・・む?」

 

「這いつくばいながら努力したのに体がひ弱で弾すらまともに装填できず、皆が普通にできる事ができない。友達も西住とわかると勝手に期待されて、落胆されて・・・戻る?今やっと認めてもらえたプラウダを、池田という名を捨てて・・・できるわけ無いでしょ!!」

 

修理や製造はコツや型、ある程度の技術があれば誰でもできる。

 

いや、私よりも上手くやれるだろう。

 

悲しいかな。

 

元の世界でも凡人だった私は今の世界に生きている人は皆天才に見えるのだ。前の世界で持っていた知識、技術はどこにでもある普通の事。

 

いや、この世界の方が遥かに進んでる。

 

歴史も、科学も、国民性も。

 

自分の店が壊されて、新しくしてもらえるからって喜んでいる・・・私は無理だ。

 

頭は古い。

 

かといって能力もあまりない。

 

「・・・西住は倒すべき目標だよ。」



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盲腸炎

大会が終わり、3年生は引退となる。

 

私は引き続き部長だが、隊長、副隊長を誰がやるかで揉めた。

 

私的には紫、美琴、幽香、慧音もしくはチルノから選びたいが、同学年からはニーナ、アリーナを押す声が大きかった。

 

一時的に抑えたカチューシャ主義派対革新(ほむ)派の派閥争いが再燃したのだ。

 

戦車道部は今だ学園艦での力が強いため早急に対処しないといけなかったほむは生徒会と職員を抱き込み、妥協案として隊長にチルノこと南夏を、副隊長にニーナを置くという条件で事態の沈静化を図った。

 

しかし、カチューシャ主義派はこの案にNoとはっきり言った。

 

「・・・譲歩した瞬間にこれ・・・か。」

 

「ほむ~、顔が怖いよ。」

 

「淡!!・・・ごめんなさいほむ姉。空気を読まない妹で。」

 

「良い。・・・つぅ!?」

 

「「ほむ!?」」

 

パワーバランスを保っていた権力者のほむがストレスによる盲腸炎で緊急入院することになる。

 

一時学園艦から離れ、青森県にある大学病院に、ドクターヘリで搬送される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ、ほむが倒れた!?」

 

一番困ったのはチルノである。

 

チルノ自身は隊長をやるつもりはなかったが、ニーナやアリーナに隊長、副隊長を任せるとほむとの亀裂でプラウダ戦車道部に修復不能なダメージとなる・・・そう感じたが為に引き受けようと決心した矢先にほむの入院である。

 

「・・・ほむが居なくてもできることをしなきゃ。あたいはあたいだ。」

 

久々にチルノの眼に燃え上がる何かが宿った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむさんが倒れた!?」

 

「おぃ、それヤバくないか☆いや、冗談抜きでヤバイな。」

 

佐藤心が語尾に☆を付けることをやめるほど危険な状態だった。

 

まずかなちゃんの事をどうするか。

 

ほむは絶縁と言ったが、かなは書類上西住しほの養子となっているので、事前に何かあったらほむは西住本家に預けることになっている。

 

しかし、ほむには婚約者がいるのでそちらに預けた方が良いのではないかと2人は思う。

 

「ええい!!ほむには後で謝るから西住本家に電話しますよ!!」

 

「私達はどうするのさ☆」

 

「ほむさんが居ない期間、参謀本部がちゃんと機能するか見張りますよ。シューガーハート!!」

 

「ウサミンもな☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチャ

 

「ほむが倒れたか。」

 

「調整役が居ないのは辛いな。」

 

「のび太、スネ夫、どうするかわかってるよな・・・もうすぐ3年の俺らはここを退かないといけないが・・・ほむの恩には報いらないとな。」

 

「ジャイアン。」

 

「ククク、これだから3年は。」

 

「ダメギじゃねーか。」

 

「ククク、荒れるぞこれから、覚悟しておけ。」

 

覚醒ダメギはアカギへと昇華する。



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各々

ほむが倒れてからチルノは燃え上がる炎のようにすさまじい活力で問題解決に向け、物事を推し進めようとした。

 

「それはほむからの指示なのか?」

 

参謀本部は戦車道部に協力はしているが、最近では他の部活の戦略、情報解析もしているためチルノが期待していた程には力にならず

 

「今はかなちゃんを何とかするのが先ですから、隊長云々はまた後で話し合いましょう。」

 

ほむの側近の佐藤心や安部菜々は別の問題があり、返事を先送り

 

「チルノさん、隊長問題よりも冬の優勝杯に向けた練習をしましょうよ。」

 

エースや1年生組は、そもそも問題に無関心であり、ほむを部長よりも監督のように感じているので、問題もほむが最終的に何とかするだろうと思い

 

「ほむの腰巾着が。」

 

ほむと仲が良かったことで、現在の2年生とは仲が悪く、話し合いすらできなかった。

 

ほむはよく対立している相手に交渉の席につかせたとチルノは思う。

 

「・・・。」

 

チルノは自分の無力に悲しくなる。

 

大ちゃんだけがチルノの気持ちを理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなちゃんを一時お願いします。」

 

『・・・わかったわ。わざわざ連絡ありがとう。』

 

「いえ、本当にいきなり電話してすみません、西住さん。」

 

『すぐにヘリで迎えを送ります。』

 

「はい。お願いします。」

 

菜々は堂々と西住しほに用件を伝えた。

 

「さすがウサミン先輩☆貫禄が☆」

 

「まだ18歳だから・・・アイドル的には17の方が良いよね・・・。かなちゃんもうすぐお婆さんが来るから着替えようね。」

 

「だしだし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここは。」

 

「お目覚めですか?姫様。すばらです。」

 

「・・・花田。・・・あと黄炒と淡・・・寝てるか。」

 

「盲腸炎レベル3です。大会でストレスが溜まっていたんでしょうね。」

 

「盲腸炎・・・か。」

 

前世でも盲腸炎になったな。

 

あの時は・・・小学6年生の最後の運動会の数日前だったな。

 

・・・今世もまさか同じ苦しみを味わうか。

 

「今麻酔が切れて痛い。・・・寝たまま話す。」

 

「わかりました。」

 

「まずかなは本家に預けられた?」

 

「私が学園艦を出るときにヘリが降りていくのを見たので恐らく。」

 

「・・・そう。何日入院すればいい?」

 

「先生からは12日だそうです。想像以上に悪かったようですよ。」

 

・・・戦車に乗ったときに酔いだと思ったけど、盲腸炎も関係してたか。

 

それで悪化したか。

 

「花田、恐らく私が居ない間にニーナ、アリーナが勢力を伸ばす。悟られないように妨害しつつ、チルノに隊長の座を回せ。」

 

「わかりました。」

 

「・・・花田の横に居るのは誰だ?」

 

「やっと気がつきましたか。すばらです。私の親友の・・・」

 

「白井黒子ともうします。お姫様。」

 

「声が・・・。」

 

「そうです。すばらでしょ!!」

 

「この黒子、美琴お姉さまが居るところに行きたくて行きたくて。」

 

「美琴?お姉さま?」

 

「この子、熱狂的な美琴さんのファンなんですよ。すばらっ。」

 

「花田さん、お姉さまの素晴らしさは神秘の域ですよ。それを育てた方にお会いできたのも光栄です。サインください。」

 

「サインなら後で。黒子、美琴を支え続けて。美琴は卒業したらアメリカに行く。アメリカリーグの覇者を狙ってる。」

 

「わかりました。お姉さまを支えられるよう頑張ります!!どうかご教授くださいまし。」

 

サラサラサラ

 

「寝ながらで悪い。字が汚くて。サイン次いでに練習メニューと食事。最低これはしておいて。」

 

「・・・え。」

 

「諦めてください黒子さん、私みたいにボンキュボンに頑張ればなれるすばらな練習ですよ。逃がしませんから。」

 

 




安部菜々さん28歳以上説ってマジなん?

まぁこちらでは27歳説で続けますけど。


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急報

注意

鬱成分あり。

気を付けろ。









良いならどうぞ


ほむが入院して数日が経過し、手術後のリハビリがてら近くのテレビがある部屋まで点滴を引きずりながら歩き、子供達とお見舞いに来ていた親達がドラえもんの映画を見ていた時、事件はおこった。

 

バッ

 

「ほ、ほむ!!一大事だ!!」

 

佐藤心がいつもの☆どころか、髪の毛もセットしておらずストレートだった。

 

凄まじく嫌な予感がする。

 

「いいか、これは現実だからな。夢じゃないからな。」

 

「お見舞いの方、お静かに。」

 

「ナース、それどころじゃないんだ。・・・ほむ、今朝南夏が姿を消した。・・・正午過ぎ水死体で発見された。」

 

な・・・え?

 

「戦車道部どころか学校が制御不能な程混乱してる。ほむ、体調が悪いのはわかるが退院して戻ってくれ。」

 

「キミ!!何を勝手なことを言ってる!!彼女はあと3日は傷が膿むかもしれないから安静にしていないとダメだ。」

 

「・・・。」

 

ブチ

 

「すぐに連れてけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巨星堕ちる・・・いや、奴(ほむ)の盾が壊れたな。」

 

「オレンジペコ?どういうことですの?」

 

「なに、少しプラウダに楔を打ち込んだだけですよ。弱体化すれば御の字。既にプラウダ包囲網は1つを除き完成しましたからね。」

 

チルノの死は情報収集能力が日本の全学園艦の中で頭3つ分抜けている聖グロはほむよりも早くチルノの死を把握していた。

 

裏でニーナとアリーナを操り、妥協案を蹴らしたのもオレンジペコというバックがいたからである。

 

凡人が今世の3分の1と先輩達の信用、多数の恨みを賭け、手に入れた権力をオレンジペコは金の力と己の天才的な経済センス、ダージリンの側近という力で黙らせ、不和もなくほむと同じものを手に入れた彼女だからできた荒業である。

 

そう、聖グロで天才オレンジペコは外交能力も手に入れオレンジペコ=謀神と言われるまでになっていた。

 

「しかし・・・今回の件は妙だ。流石に死人が出た以上原因を探り、同じことが聖グロで起こらないようにしないといけないからな。」

 

そう、不自然なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・チルノちゃん。」

 

全ての真相は大ちゃんだけが知っていた。

 

チルノは心労により睡眠薬を過剰摂取するようになっていたが、死亡する前日、チルノに呼ばれた大ちゃんは今後の日程を話すと言われ、そこで隊長でもないのに色々と一年の○○を見てくれだとか2年は動かないだとかはなされた。

 

そしてチルノがほむから渡されている体調管理及び食事量の手帳を開いた時見えてしまった。

 

チルノの手帳が全て赤線で塗りつぶされているのが・・・。

 

更に睡眠薬がなぜか2瓶あり片方がやたら古いのだ。

 

つまり事故に見せかけた自殺であった。

 

海水浴中に古い睡眠薬を大量に飲み、眠るように亡くなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダは混乱する。

 

それがほむの第二の壁であった。



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粛清

ザッ

 

「ほむさん、こっちです。」

 

学園艦に戻った私は安部菜々さんに案内してもらいながら安置所に杖をつきながらいどうした。

 

「・・・南。」

 

体の一部が水を含んだことで膨脹し、均等の取れた巨体は見るも無惨な姿になっていた。

 

「・・・。」

 

この時ほむはこれからの事で頭が一杯であった。

 

南の両親に南を届け、事情を説明しなければならないし、死者が出た部活の存続を学校側に一応交渉しなければならない。

 

マスコミもわらわらと沸いてくるためその対処も必要。

 

新たな隊長を置かなければならなかったり・・・。

 

ただでさえやることが多いこの時期にチルノの急死(自殺)は、ほむに少なくないダメージを与えることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナンマハラミヤ・・・・・・」

 

お経が詠まれるなか、まず南の事を最優先で終わらせることにした。

 

両親への説明は私より同伴した校長先生が殆ど言ってくれた。

 

そして今に至る。

 

周りに居る部員は全員泣いているが、私は冷めていた。

 

私が入院してからの事は聞いている。

 

一部の2年が抗議を繰り返し部活を邪魔していたことも知っている。

 

「・・・。南、お別れだ。」

 

私はその場にいた誰よりも早く区切りをつけ、帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「福田閣下、プラウダは本当にこの状態で活躍できるのでありますか?正直土台が腐っておりませんか?」

 

「くどいぞ山田。私は空気が読めない女だ。・・・だから西前隊長のように優柔不断には行動しない。」

 

「・・・西先輩は粛清されて当然の方でした。福田閣下の行動は当然です。」

 

「だろう。ならこの福田についてこい。今は中立こそ正義だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・集まってくれてありがとう。」

 

8月31日、隊長が決まらないまま練習が再開され、士気はどん底になっていたが、腐らずに1年は練習していた。

 

2年は私に協力的な者と昔シベリアと呼ばれる罰を受け、反カチューシャ派と呼ばれる者以外は全員ボイコットしていた。

 

その現状に痺れを切らした私はエース組と佐藤心、安部菜々を召集した。

 

「現状隊長不在は問題。そこで新しく佐藤心を隊長としたい。」

 

「え☆正気か?」

 

「少し無茶じゃないか?いや、佐藤先輩を貶している訳じゃないが。」

 

「隊長といっても佐藤は私の補佐として練習を近くで指導するコーチの役割を頼む。隊長の権限は副部長を新たに作りそこに権限を半分以上移す。佐藤が卒業後隊長職は廃止し、完全に部長をトップにする体制をとる。」

 

「それなら・・・まぁ☆」

 

「副隊長は廃止し、代わりに外部コーチ枠を作る。そこには安部菜々を置く。これは数ヵ月前から学校側に通達していた。副部長廃止は後で付け足す形になる。」

 

「え?良いんですか?」

 

「その能力なら問題ない。今もコーチみたいなことはしてもらっているからそれに役職と給料が発生しただけ。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「で、試合の指揮は慧音を1位として2位に紫とする。補佐は大ちゃん。・・・大ちゃん、チルノの意思を無駄にしたくなかったら2人を補佐しろ。」

 

「はい!!」

 

「美琴と幽香は分隊の隊長にする。」

 

「わかったわ。」

 

「ういー。」

 

「もしもう1分隊必要なら高垣楓に今はする。・・・人材が補充されたら外す。」

 

「そうなのかー・・・いや、そうしてくださいマジで。」

 

ルーミアがここまで言う理由は彼女が使用している練習場所にある冷蔵庫に問題であった。

 

ウォッカは当たり前、焼酎に日本酒、ワインにシャンパン、梅酒にアサヒスパー○○○が常に置かれており、シミュレーター内が外から見えない事を良いことに必ず飲酒しているからだ。

 

注意しているのだが、校長達と飲み友らしく校長室で飲みだしたのでシミュレーター内での飲酒は黙認することが部内の暗黙のルールになり、その問題行為から先程のルーミアの反応になる。

 

実力は飲酒するとルーミアクラスになる。

 

ちなみに前ほむが酔ったのも楓の酒気の影響もあったりする。

 

「・・・同学年の反対派は退部届けをポストに入れた。ニーナとアリーナには自主退学届けを送った。学校側とも話してある。」

 

カチューシャの革命よりも熾烈な粛清は後に大粛清と呼ばれ、ほむはチルノの葬儀中1滴も涙を流さず、仁王立ちをしていたため、とあるテレビ局が鋼の女だと言ったことから悪の皇帝と呼ばれるようになる。



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かなちゃんin西住本家

リアルが忙しすぎて書けない(泣)


「・・・だし。」

 

私は池田かなというし、正式には西住かなでお母さんは池田ほむ、養母は西住しほというし。

 

今2歳でしっかり自我があるし。

 

菜々姉も心姉も一緒に戦車の研究も楽しかったし。

 

「・・・お義母様、母が落ち着くまでよろしく頼むし!!」

 

「えぇ、あなたの伯母達もあなたが来るのを待ってるわ。」

 

西住の次期家元と軍神・・・か。

 

テレビ越しで観るとどっちも覇気がお母さんよりないし。

 

こう、精神的に追い詰められるような死物狂いの努力とか、絶対に勝ってやるみたいなのが・・・。

 

で、実際に会ってみて

 

「可愛い!!頬っぺた柔らか~い。」

 

「みほ、それよりもかなはご飯まだ食べてないからその後に沢山楽しみなさい。」

 

「はい!!」

 

「ねぇかな、この服なんかどうだ?かなに似合ってると思うんだが。」

 

「お姉ちゃんずるい!!」

 

完全にお人形だったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西住流とは何か?」

 

母である池田ほむは西住流を否定する立場のため詳しく語ってくれない。

 

だから伯母達(義理の姉達)とお義母(祖母)に直接聞いてみたし。

 

「本流は突撃、突撃、突撃だな。統制された部隊を率いて陣形を組み、正面から敵を粉砕する。故に短期で決着をつける。」

 

「私は邪道って言われてるけど、みんなで勝つことに主体を置いてるよ。」

 

どちらも言えるのは集団で戦術単位で行動しているところ・・・恐らくそれが西住の本質だし。

 

でも・・・まほ姉のはまほ姉のカリスマが無いと成立しないし。

 

「誰にも真似できないから軍神なのかだし。」

 

ぼそっと呟くかな。

 

実際みほの作戦は信頼関係と運、みほのカリスマと作戦修正能力によって成り立っているためほむは

 

「技術を伝える事ができない。・・・上杉謙信みたい。」

 

と、この事をかなから聞いて呟く。

 

「・・・せっかくだからかなの戦車道を見て見ましょう。」

 

「何乗るし?」

 

「九二式重装甲車にしましょう。」

 

「日本戦車だし!!」

 

「まほ、みほ、かなと一緒に戦車に乗って様子を見なさい。危なかったら止めなさい。」

 

「「はい。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

かなの戦車に対する意気込みはまず乗る前に日の丸が書かれたハチマキを付け、胸に池田家の家紋の刺繍がある服を着て、皇居の方向に

 

「天皇陛下万歳!万歳!万歳!!」

 

万歳三唱を行ってから乗車する。

 

見ていた伯母2人(まほ、みほ)はドン引きしながら

 

「ほむに言われてやってるんだよね?」

 

とみほがかなに聞くと

 

「ちがうし!!陛下への敬意を示すのは当たり前の行為だし!!今日の日の本が存在するのは現人神・・・陛下のおかげだし!!」

 

こうして不安が渦巻くかなちゃんin西住本家が始まった。



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実況パワフル戦車道

前半はネタ

少ししたら本編


戦車道がブームになったことによりとあるゲーム会社が野球ゲームのサクセスを改造して戦車道のゲームを作製した。

 

実況パワフル戦車

 

サクセスモードと社会人モード、アメリカリーグモードの3つとオンライン対戦モードが熱いゲームとして飛ぶように売れた。

 

・・・で、発売から2週間するとプラウダシナリオが糞選手しか育たないことから攻略板は荒れまくっていた。

 

『指揮、運転、直感、筋力、バランス、連携、適応能力オールCしか育たん!!』

 

『カチューシャの粛清で2年と1年mobが消えて戦力ダウン連携上昇、粛清回避すると評価最低値まで下がるとか。』

 

『やっぱコ〇ミの選手評価おかC。』

 

とさんざん言われていたが、ある動画が公開されるとサクセス最高難易度が解放されるようになっていた。

 

『なぁ、プラウタ包囲網ってイベント出たんだけど何これ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・今日以降・・・指揮系統全てに手を出さない。」

 

完全に権力の集中に成功したほむはその権力を行使する気は南の死によって無くなり、責任だけ取るかわりに試合のメンバー構成から作戦立案、使う車両まで各自に任せることにした。

 

負担は軽くなったためそのまま再入院をし、復帰後は監督よりもコーチの様な役割を安部菜々と選手として限界を感じ、見切りを付けコーチとしてほむを支える佐藤心と共に行っていくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ほむが再退院した報告と顔を出すからかなを返してほしいという連絡が西住本家に届いた。

 

その頃かなは軍歌を歌いながら西住門下生の車両を虐殺のように破壊していた。

 

「日本国のー、栄光はー、鬼畜米兵、露助を倒し、並みいる敵は皆殺しだし。」

 

かなと一緒に乗っていたのはまだ戦車道を初めて間もない者であり、中高校生が乗る50両の1943年に使用されていた各国の車両がかな操るチヘ1両に全滅させられたのである。

 

それを縁側で見ていた祖母と伯母達(まほ、みほ)は

 

「あれは本当の化け物だな。」

 

「軍神何て呼ばれてたけど、かなちゃんを見ると・・・。」

 

「かなは確かに凄い、けど本当に恐ろしいのはこの様な者を量産できるほむじゃないのか?みほは生で感じてるだろ?」

 

「・・・御坂美琴と風見幽香と・・・。」

 

「その他に1段階落ちるがあと4人ほど居たな。」

 

「亡くなったが南夏もあの身長であの実力は凄かったな。」

 

後にとある事情により西住本家はかなが継ぐことになるのだが、それまで西住流は島田流と共にほむ1人によって長年苦しむこととなるのは後の話。



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姫川世代

かなも連れて帰り、一段落した頃・・・ほむは考えていた。

 

数年おきに発生する粛清や権力闘争で、プラウダ戦車道部の戦力が低下するのをどうすれば止められるかを。

 

チルノのような悲劇を再び起こさないためにも・・・そのため何かないか・・・

 

『もっとっっっ熱くなれよ!!!!』

 

「・・・これだ。」

 

 

 

 

 

 

かなも含めてプラウダの小学生を自主参加制で毎週土曜日と日曜日に集め、子供戦車道クラブを開催することにした。

 

部活を見ながら次世代の育成も始め、佐藤と安部を基本こちらにつけることでコーチとしての経験を上げさせようとした。

 

「キャッツのプロ野球選手が戦車道の選手と結婚したから私も・・・戦車道すれば・・・。」

 

打算まみれのプラウダの歌姫・・・姫川友紀もこの時から参加し、ほむに気に入られて毎月練習メニューと食事量をメモで渡されるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ戦車道部は優勝記念杯の調整に入った。

 

プラウダ包囲網のため練習試合ができず、仕上げに不安が残るが、シミュレーションでそこは埋めつつ、初戦に備える。

 

初戦の相手は継続で、上条当子の居ない継続で、引退直後から戦力低下が目立つ可愛そうな高校でもある。

 

「プラウダ包囲網という名の同盟ですかっ。となると持久戦になりますね。」

 

安部菜々の才能も開花し始め、的確に相手の作戦を読み始める。

 

「紫ちゃん、食料多めにしておきましたからねっ!!」

 

この頃から自称17歳と言い始め、お節介やきも磨きがかかる。

 

「あらぁ、菜々さんありがとう。」

 

参謀本部と紫達が作戦を練り上げるなか、私はいつも通り練習を教える。

 

横には佐藤もいる。

 

「そこ!!もっと力入れろ☆こうだよっ☆」

 

監督(ほむ)、コーチ(菜々)、ボス(心)と心だけ明らかに怖がられて渾名がついているが3人の中で唯一選手と同じ目線で教えられる心は練習に混じりながらのコーチング能力が高かった。

 

一回ほむもやろうとしたがKV2の152mmを持ち上げようとしたが肩が外れそうになったためほむが一緒にやろうとすると皆が必死に止めに来るようになり、レポートを纏めながら数字や能力に合わせたトレーニングを進める監督方式になったという経緯もある。

 

全体的に見れば凄まじい勢いで進化し続けるプラウダだが一部使い物にならなくなる子もいる。

 

最近だと大ちゃんだ。

 

チルノの気持ちがわかったが為に自殺前にできることがあったのではないかと思い詰めてしまい、スランプになってしまった。

 

ほむはそういう子は一旦戦車道から離し、休ませることにしている。

 

それが一番効率が良いと信じて。

 



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全国戦車道大会優勝記念杯パート2

初戦継続高校はやはりというか持久戦を挑んできた。

 

その為比較的居住性の良いSU-100Yを休憩車両に指定し、対策もしてきた。

 

「・・・美琴や幽香に効くと思うなよ。」

 

西住しほとほとんど姿が変わらないほむは観客席近くの杉の木の下に椅子を置き、ラジオ放送をイヤホンで聞きながら、近くの大型モニターを眺める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず私達は既に手を縛られているわ。速攻か持久戦か。思考がこれに固まってしまうの。」

 

紫が相手の心理を語る。

 

「じゃあどうすればいいのかー?」

 

「奇襲をするわよ。」

 

「奇襲か?朝駆けでもするのか?」

 

「いいえ、奇襲には2つの要素があるの。時間と場所よ。今回は場所を使うわ。この積雪30センチの場所もあれば2メートル近くの場所もある。奇襲し放題じゃない。駆逐戦車を囮にするわ。バレるかバレないかのギリギリのラインで見つかるの。後退してここのポイントまで下がり、釣られた敵を面白おかしく食べるわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪雪崩・・・紫は自然現象を人工的に起こし、地形を変えることにより奇襲を成功させた。

 

駆逐戦車隊が思うように釣られなかったため第二の策だったが。

 

「もう、危ないじゃないですか。」

 

駆逐戦車隊を率いていた楓がゆっくりしたトーンで紫に文句を言うが、全く怖くない。

 

「あらあら、でも楓の腕を信じていたからできた策よ。楓もとっさに作戦を変えてくれたの気づいてくれてありがとう。」

 

そう言われると怒れない楓である。

 

継続はフラッグ車を含めて雪雪崩に巻き込まれないように逃げたら雪のあまりない凹地に入ってしまい、出れなくなる。

 

プラウダは温存していた自走砲や戦車で凹地に相手から撃たれない角度、距離から集中砲火を喰らわしてゲームセット。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・。」

 

椅子を持ち上げ、ほむはゆっくりと学園艦の方に歩き出す。

 

ザッザッザッ ピタ

 

「・・・オレンジペコ。」

 

「オットーと呼んだ方がよろしいかしら?それともスターリン?小モルトケでも良いわね。」

 

「彼らのような偉人ではない。本質はただの凡人だ・・・今のプラウダを見ればわかるでしょ。・・・何もかも中途半端。男性を戦車道に参加させるために創った参謀本部は生徒会から今学期限りで解体命令が出た。存在意義を見いだせないだと。才能が無くても1流半にはなれることを証明させようと育てた南は死んで、改革でプラウダの特色は薄れてしまった。」

 

「あら?その改革の失敗で残ったカスでも私達は包囲網を作らないといけないほどなのよ。」

 

「・・・私にとってはそれだけは成功かもしれない。まぁ経験はできたし、コーチとしての人材も、数年間は覇権を維持できるだけの人材は用意できた。」

 

「ふーん。・・・纓田よ。」

 

「・・・本名か。池田いや、西住でも良い。纓田、日本の戦車道を数年間託す。来年には日本から消える。」

 

「わかったわ。楽しみにしてるわよ。」



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全国戦車道大会優勝記念杯パート3

「・・・なぁ。ほむ。聞いてもいいか?」

 

「そうじろうさん。・・・何でしょうか?」

 

「試合、行かなくて良いのか?」

 

「初戦だけでわかる。もう私が試合を見なくても勝ってくれることがわかる。反省も自分で考え、仲間と改善する努力もできる。居なくても大丈夫。」

 

「そうか。」

 

私は青森にある古びた旅館にいた。

 

試合の選手や応援に行っているメンバーは高級ホテルで調整中である。

 

かなとこなたは旅館内にある椅子の上でそれぞれ本や漫画を読んでいた。

 

絵本じゃないのが2人らしい・・・

 

「私の・・・影響力を落とす必要がある。」

 

「影響力?なぜそんなことを気にするんだ?」

 

「私個人に依存したシステムがある。それを他人に渡すには私が選手であってはならない。・・・そして試合もここぞという時以外は居なくても大丈夫な状態が望ましい。」

 

ポリポリ

 

「僕にはわからないな。」

 

「大丈夫。」

 

「モーリシャスに行くのに2人連れていきたいって言う話だけど校長からは許可が出たよ。2人の学生証と仮教員証を発行するだと。・・・期待しているだと。」

 

「ん・・・わかった。」

 

「・・・単刀直入に言う、こなたは戦車道でどれぐらいの選手になれる?」

 

「ドイツのモールス選手(現ドイツ戦車道のトップエース、火消のモールス、激戦や乱戦に強く、消耗抑制能力や独特な防御理論を持つ人物である)くらいにはなれる。世界最強にはできない。」

 

「そこまでか・・・どこからくるんだその自信は。」

 

「実験結果。プラウダの何百名の選手育成理論とかなの幼少期育成計画から考えて出たこと。」

 

「そうかい。」

 

「・・・モーリシャス国際大学からの要望は?何を達成すれば良い?」

 

「アフリカリーグで4位以内に4年以内に、6年までにアフリカリーグで準優勝だと。」

 

アフリカリーグとは経済規模が小さいため大学と社会人を合わせたリーグであり、本来は社会人だけでリーグ(プロ)が構成されている。

 

プロの欧州リーグは150チーム、アメリカリーグは68チーム、旧ソ連加盟国のロシアリーグは36チーム、中国リーグ26と経済もしくは土地の広さでチーム数が決まり、チームの数もしくは金持ちの国が強い傾向がある。

 

ちなみに日本は現在世界ランキング32位・・・。

 

「・・・アフリカ34チームの頂点か。ワールドリーグに進ませるのが必要。」

 

ワールドリーグ・・・各地域代表枠数の中から選出される世界最高峰のリーグで他のリーグがオフの時期にやるトーナメントの大会である。

 

日本で参加したことがあるのは砲手兼車長の西住しほと通信手兼装填手の島田千代、名前がわからないしどこにいるかも不明な運転手の3名だけである。

 

名前がわからないのは両流派が秘密にしたことと、選手の希望だったため世界の戦車道のレジェンド達が動いたからだった。

 

「・・・とにかく頑張る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サク

 

「・・・あら?落花生に刺さっちゃったわ。いけないいけない。」



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全国戦車道大会優勝記念杯パート4から4月へ

2回戦、3回戦も紫の策により瞬殺し、準決勝に駒を進めた。

 

準決勝は西住分家が多く集まる黒森峰である。

 

分家、その関係者、免許皆伝した者は過去最多であり、昨年の雪辱を晴らすべく【西住式の正攻法】で攻撃を敢行した。

 

しかしそれは自走砲の割合が増えたプラウダにとって的が大きくなるだけだった。

 

個々の技量も連携も素晴らしいが、それはゲリラ的な攻撃やエースによる技量が更に高い者が暴れれば効果が薄くなってしまう。

 

エースを倒せるのはエースだけ。

 

他はいかにエースを生かす作戦をするか。

 

時代は移りつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝は大洗だったがこれも粉砕し、優勝杯を制した。

 

ほむ・・・いや、美琴や幽香達もだが視点が代わり始める。

 

同世代の日本には敵無しという状態になる。

 

で、練習試合は包囲網が継続しているため不可能なのでロシアのチームと練習試合をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・当たり前か。」

 

ロシアのチームはロシアの大地で開発され、それだけを乗り回していたT-34-85で戦ったが、同じT-34-85に乗る美琴や幽香に一撃も与えられずに全滅した。

 

相手の監督やコーチは唖然とした。

 

何でもプロリーグからもマークされているチームだったため、調整のつもりで対戦した日本のソ連風の学校にコテンパンにされたのだ。

 

その情報はロシアとなぜかアメリカにリークされた。

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、・・・SUMOUやBUDOU以外に日本に素晴らしい人材がいたとはな。」

 

「大統領、いかがいたしますか?」

 

「なんとしてでもこちらに呼び込みたいところだな。」

 

「ではそのように。」

 

 

 

 

 

 

「スバーラシー!!とてもいいですね!!是非とも合衆国に呼びたいですね。・・・来年のドラフトは荒れるぞ。」

 

執務室で呟いたと言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・勝負の年

 

初詣で戦車道がうまくなれますようにと願い事をしたら頭の中に

 

『その願いは私の技量より越えている』

 

と言われたような気がし、おみくじは大凶であった。

 

これは酷い。

 

もうあの神社に行くのは止めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

4月・・・戦車道部は前年度と同じか、少し少ない数の生徒が入部した。

 

その一角に凄まじいオーラを放つ集団がいた。

 

「ほむほむ!!」

 

「ほむ姉!!」

 

淡と黄炒

 

「すばらっ。」

 

「ここがプラウダ戦車道部の練習場ですか。」

 

花田と白井

 

「「・・・場違いだぁ。」」

 

の友達としてついてきてしまった初春と佐天

 

「弱者救済ですよ!!」

 

最近真言宗に改宗して両親と友人の精神的にダメージを与え続けている聖

 

「聖・・・私の胃が痛いからもう無茶はしないでくれ。」

 

「ご主人胃薬あるぞ。」

 

胃痛役の寅丸とナズーリン

 

「ぎゃーてーぎゃーてー。」

 

「おどろけー!!」

 

「頼むから黙ってくれよお前ら。」

 

幽谷、多々良、ぬえ

 

「お嬢様、本当に大丈夫なのですか?」

 

「不安しかない。・・・というか雲山、お前教員としてここにいて大丈夫なのか?」

 

「今年から顧問は私ですよ。」

 

「えぇ・・・学校が不安の塊に見えてきたぞ。」

 

音楽の教員兼顧問兼雲居一輪の執事の雲山と旧華族現実業家の娘の雲居

 

「・・・本当は船舶科だから部活やる時間なんて無いんだけどなぁ。何で私だけ部活できるんだろう?」

 

村紗とエースの原石がゴロゴロしていた。

 

 



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特訓特訓また特訓






4月のこの時期は1年生を鍛えつつ、レギュラーだったり補欠だったりした者達が1年の姿を見てやる気を出す季節でもある。

 

普通の学校なら先輩のパシりになる季節でもあるが、プラウダでは実力主義なため、下手に1年を先輩風をふかせて潰そうものなら制裁もしくは私刑もしくはポストに手紙が入っていたりとシベリアよりも恐ろしいものが出来上がっている。

 

勿論1年生でも実力が無いのに調子に乗っていたら、翌日ほむから

 

「戦車道に今後一切関わらないことを誓えるならプラウダ高校の退学だけは許すけどどうする?」

 

と言われる。

 

そのため皆必死であり、その姿を見たほむはゴールデンウィークまでの期間(1か月ちょっと)学校で泊まり込み(普段寮を使っている人はそのままだが、そこに自宅から通っている人を入れたり、使っていない寮の部屋に入れたりした)合宿を開催した。

 

目玉はゴールデンウィークに予定されている準プロ戦車道チーム(アメリカ2チームとロシア3チーム)との試合である。

 

勝てば1勝につき食事や部室の中に娯楽が増えるが、負けたら合宿の延長と言われた。

 

2、3学年はガタガタと震えだしたが、無知の1年生はポカーンとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~そして時間は過ぎていく~

 

佐藤と安部はコーチングをする際にはサングラスをかけ、髪を下ろすようになり、今回の合宿終了後その姿を見ると

 

「ボス(佐藤のこと)」

 

「コーチ(安部のこと)」

 

と敬礼されながら言われるようになる。

 

勿論アル中楓もする。

 

3時間の睡眠、6時間の学校以外はシミュレーター内か戦車の中で生活し、大破フラッグを取り払い、極限状態戦車戦(車内火災がヤバくなる、修理が大変、運が悪いと重症になる、車内の金属がカーボンを突き抜けてパンツァージャケットが無い部分に刺さる危険あり)をおこない、死ぬ気で集中力を鍛え、連携を鍛え、ドイツのスポーツ医を招いて実験させたり

 

「成功させなきゃ沈めますよ。すばらっ。」

 

「セイコウデース。・・・部長サンダケ失敗デース。」

 

とやはりほむは失敗したが、地獄の練習は続き、筋トレとして魚釣り(釣れなければその晩飯抜き)をさせたり(ほむ飯抜きである)陸に上がれば山登り、ロードワーク(ほむどちらも吐きながらもゴール)等過酷を極めた。

 

ゼヒューゼヒュー

 

「あ、明日は紫頼む・・・。花田、紫の補佐として通信手に・・・。」

 

「わかったわぁ。」

 

「すばらです!!」

 

「これから5日間50台毎日出すから・・・補欠やベンチ外も・・・チャンスを掴め。」

 

ガク

 

「はぁ~い、トイレはこっちだぞ☆」

 

「ほら、無理しないでくださいよ。」

 

ウプ

 

【見せられないよ】



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試合死合私合

「・・・今日はよろしくお願いいたします。」

 

ペコペコしながら相手の監督やコーチの方々にお願いする。

 

ロシアの準プロで圧勝したが、準プロは普通に戦車道をやっていたらいけない場所であり、日本の社会人のエリート選手でもここのレベルであり、日本の弱さがよくわかる。

 

ただ、それに圧勝できればプロ級であり、今回来るのもプロでの経験がある人や期待されている新人だったり準プロでも上の方である。

 

「見せてもらおうか♪ロシア連邦の戦車道とやらを☆」

 

「プラウダはジオンですねっ佐藤。」

 

私の後ろで佐藤と安部が初代ガンダムネタをしていたけど無視することにする。

 

「・・・絶対未来でこいつら1世代前の若い世代と話が噛み合わなくなるタイプだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュー

 

プラウダ、ロシアの準プロどちらもT-34-85を50両で戦ったが、プラウダがラスト20両になると驚異の連携と練度により残っていた39両を撃破する。

 

「なるほど・・・エースの力が強いのか。いや、高校生にしては全員完成度は高いな。」

 

ロシアチームの首脳陣はチーム力と個性を伸ばし、存分に活躍できる選手と指導者に惜しみ無い称賛を贈る。

 

選手は入れ替わるが首脳陣の一部は残り、3日目のロシア最終試合まで日本にとどまった。

 

勿論全勝である。

 

「どうかね?ロシアのプロリーグに来ないか?」

 

そして始まるスカウト合戦。

 

選手的には日本よりも海外でプレーする方が金銭的にも戦車道の設備的にも優れているので行きたい気持ちがあったが育ててくれたほむや家族のことを考えると踏みとどまってしまう。

 

「・・・行きなさい。幽香、リグル、紫。あなた達なら卒業後にロシアの大地なら更に成長できる。」

 

ほむは2年生の3人に声をかける。

 

「家族とも相談。だけど行った方が良い。」

 

そう強く言う。

 

ちなみにだがアメリカには美琴と慧音を行かそうと思っており、ルーミアは弱い部類に入るがフランスの歴史あるチームから声がかかっていた。

 

アル中の楓とスランプの大泉葉子は戦車道は高校までと明言されたためスカウト合戦には参加しなかった。

 

この後アメリカの戦車道チームともやったが、最終日になぜかプロチームを連れてきた。

 

2年エース陣はプロだろうと関係なく圧倒し、6-0で勝利を納める。

 

美琴はこの時に年棒10億契約で名門行きが確定し、なぜか私もコーチとして誘われたが丁重に断った。

 

こうして合宿は終了する。

 

プラウダの名は世界に広がり、数ヶ月後の私の最後の夏の大会はいつもの2倍盛り上がる。




前龍 御坂美琴
連虎 風見幽香
凶犬 フランソワ・ルーミア
変鹿 上白沢慧音
魁蝶 大泉葉子
光虫 リグル・ナイトバグ
隙間 八雲紫
緑狼 高垣楓
上弦の月 池田黄炒
下弦の月 池田淡
聖人 花田煌
黒死蝶 白井黒子
宣教者 聖白蓮
小さき賢将 ナズーリン
恐怖の置き傘 多々良小傘
ハイカラ少女 雲居一輪
船長 村紗水蜜
毘沙門天 寅丸星
常識と認知外 封獣ぬえ
コピーウーマン 幽谷響子

プラウダオールスター
おそらく来年のスターティングメンバー


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縛り

「今回の大会は旧ティア制度のティア6までしか使わないことにする。」

 

大会前の最後のミーティングでほむは爆弾発言をする。

 

「何でなのかー?」

 

「・・・来年もしかしたらティア制度が復活するかもしれない。まぁ和歌山で行われる世界大会はこのままらしい。」

 

「でも何でティア6なの?」

 

「皆が勝てると思ってるギリギリがそこ。・・・やり方次第ではマウスだろうと何だろうと勝てる。」

 

力強くほむは言う。

 

「となるとT-34-85、KV-85、T-150、SU-8、SU-100かしら。KV-2は運用上の制約が大きいから使わないとして。」

 

「紫、SU-100Yも入るわよ。」

 

「T-50-2も使えるよね。元ティア5だから。」

 

ワイワイガヤガヤ

 

「戦車だよりだなんだと言われてましたからねっ。」

 

「そう。・・・そのイメージは私達の代で終わらせる。」

 

「きっかけもほむだろ☆おぃ!こっち向けよ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・ほむさんには悪いけどあなたの負の遺産は精算してもらいますよ。」

 

オレンジペコの後ろには血走った眼をした少女が2人いた。

 

ニーナとアリーナである。

 

どちらもBC自由学園の制服を着ていた。

 

「M44・・・まぁ有効に使いなさい。私達には必要ないものだから。」

 

オレンジペコ以外は何も音を発しない。

 

これが彼女の起業家的、商人的なカリスマである。

 

「もう下がるといいわ。紅茶が不味くなるから。」

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ、黒森峰、大洗、聖グロ、サンダースの5強状態のためこの5校は1回戦ほぼ無傷で勝利し、プラウダはサンダースとぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダースは現在良くわからないチームである。

 

ケイの時代のようなフェアプレイ精神のチームでもなく、アリサの時代のようななんとしてでも勝つというような覇気もなく、ただただ残骸のような正義感と先輩方が残した遺産にぶら下がるような連中である。

 

アメリカンを目指した日本人が陥りやすいフワッとした感覚の上に存在しているのがサンダースである。

 

アリサやケイ達はこの光景を見て涙を流した逸話は関係者には有名な話である。

 

そんなサンダースにプラウダは容赦なく牙を剥く。

 

T29、T30、T32を筆頭にした重戦車部隊にパーシング、シャーマン後期のバランスの良い戦車を使用した。

 

普通は勝てないのだが建物を壊し、重戦車の砲身をへし折ったり、行動不能にさせてしまえばどうとでもなる。

 

最後は残ったT28の側面を戦車で挟み、身動きが取れない所を自走砲でキューポラを撃ち抜いて終了と練度の差を見せつける。



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3回戦

鬱、残酷描写注意


3回戦・・・BC自由学園との試合この日は会場側にある桜の木下で椅子を置いて試合を観戦する予定だ。

 

本当は行く予定はなかったのだが、部室にあるテレビが不調で画面の真ん中に黒い棒線があり、見辛かったので来ることにした。

 

「・・・麦茶でも飲むか。」

 

クーラーボックスからお茶を取りだそうと体を捻った時、試合開始の合図が聞こえた。

 

「始まったか。」

 

紙コップを口に咥えながら呟くと、私の前に強力な衝撃がかかった。

 

ビチャァー

 

ゴロゴロ

 

ドス ウッ

 

「あ、あぁ・・・。」

 

至近に強力な一撃は自走砲の至近弾であり、私が座っていた場所には赤と肌色の何かが落ちていた。

 

その後直ぐに私は意識が無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、夢か?

 

「・・・。」

 

「〇〇、人数会わないから抜けてくれ。」

 

「・・・いいよ。」

 

「〇〇、病気明けに悪いな、これ男子がお前を推薦したから後5分後に話し合いに出てくれ。」

 

「・・・はい。」

 

「〇〇。」

 

「〇〇。」

 

あぁ、嫌な夢か。

 

「〇〇ってさ、言葉通じないよな。」

 

「サイコパス。」

 

「訛ってるし。主語が抜けるし。」

 

・・生は嫌いだ。

 

同級生は嫌いだ。

 

何を考えているか全くわからん。

 

「・・・〇〇、友達でいようね。」

 

受験期になれば人が変わるようなやつらは嫌いだ。

 

厄介ごとを押し付けるやからも嫌いだ。

 

「皆、皆・・・覚えておけよ。」

 

バチッ

 

「・・・病院・・・か。」

 

「全身包帯まみれ、両足も膝から下が無くなったか。」

 

どんどん真っ青になりながら日付を確認する。

 

「・・・大会終わってる。」

 

ほむ、最後の大会、意識が無い状態で終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は巻き戻り、ほむが意識を失って15分後、プラウダにほむが血だらけで発見されたと報告が入る。

 

『紫さん、これから部長職は花田煌が引き継ぎます。試合指揮は現状のまま進めてください。』

 

全車両に向けて花田がほむの後継者宣言を言う。

 

『指揮官として了承したわ。エース2人、異論ある?』

 

『ないわ。』

 

『ない!!』

 

『・・・目標不審な行動をしていた自走砲。仇討をするわよ。』

 

『『『了解』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BC自由学園は敗れたが、観客への砲撃により反則負けという形になる。

 

普通ならこれに被害を受けた人に選手は謝罪し、被害を受けた側も対人用砲弾のため野球の軟式ボールが当たったくらいのダメージで済むため、選手と和解の握手をして終わりになるのだが、今回は足がもげ、瀕死の重症と、戦車道大会全体でも約25年ぶりの大事故であり、日本戦車道連盟は諸外国の戦車道関係者から突き上げをくらい、国内外のマスコミの反応も、戦車道先進国では大々的に報道され、ほむの治療費はそこからの寄付金で何とかなるほど民衆の感心も高かったが、日本のマスコミは前にほむに予想を外された恨みもあり、ほむのことより戦車道は安全なのかとか、世界大会を進める政府もどうなのだとか別のことを叩きまくっていた。

 

実行犯であるニーナ、アリーナは不慮の事故ということで謝罪をテレビでし、早く良くなるように願ってる等々心にもないことを言って、日本国民からは不良品の砲弾を掴まされた不幸な少女達として同情の眼差しで見られた。

 

「・・・愛想が尽きた。」

 

ほむは完全に日本の【群衆】に呆れ、3学期が始まるまで入院して過ごすことになる。



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旅立ち

やっと書けるまで回復した(泣)


「ほ、本当に大学に入れるんですか!!」

 

「はぁともいいの♪」

 

「うん。」

 

この言葉を起きてすぐに2人に話した。

 

幸い安部菜々も高等学校卒業程度認定試験に昨年合格しており、大学側が推薦状までくれたので彼女達は即決だった。

 

まぁ佐藤は親と相談する必要があるが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・。」

 

卒業式が終わるとすぐに私は簡単な結婚式を行い、今は飛行機でドバイ経由でモーリシャスに向かっていた。

 

遠ざかる日本に私は目を背け、かなの手を握りながら毛布を膝にかけ、眠りについた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前龍 御坂美琴

 

ほむ卒業後プラウダ2連覇に貢献し、ほむ、佐藤、安部の抜けたコーチ枠にも関わり、プラウダ黄金期の長期化に貢献する。

 

プラウダ卒業後、日本のプロチームからオファーがかかったがそれらを門前払いし、アメリカのトップチームに10億円で契約する。

 

アメリカではライトニングという渾名をつけられ、今日も愛車のパットンで戦場を駆け巡る。

 

 

 

連虎 風見幽香

 

美琴と協力して黄金期を長期化させる。

 

ほむが残してしまった整備班との確執やチームの利害調整を暴力とカリスマで纏めあげ、数年間革命騒ぎを起こさせなかった。

 

プラウダ卒業後はロシアに風見流の本拠地を移し、ロシアリーグで12億円でプレイしている。

 

美琴と共に世界でも5本の指に数えられる車長としてロシアの大地に君臨し続ける。

 

 

 

凶犬 フランソワ・ルーミア

 

フランスリーグで頑張っている。

 

ほむ卒業後に再びティア制になり、フランス車両の価値が上昇した時期と重なり、フランスリーグ飛躍の起爆剤となる。

 

最近結婚したらしい。

 

 

変鹿 上白沢慧音

 

苦労人。

 

縁の下の力持ちとしてプラウダを支え続け、ルーミアの装填手としてフランスに渡る。

 

自由なフランスのプロ達に振り回され続け、車長でもないのにキャプテンをしていたりする。

 

最近白髪染めと胃薬の量をいかに減らすか考えている。

 

 

魁蝶 大泉葉子 

 

チルノの死によりプラウダを卒業するまでスランプは抜けず、そのまま日本の幽香の母親に再び弟子入りする。

 

戦車道について書いた本の執筆活動も行っている。

 

のび太と結婚したらしい。

 

 

 

光虫 リグル・ナイトバグ

 

行方不明

 

イスラエルやイラン、イタリアや南アフリカ等で目撃情報があるが信憑性は限りなく低い。

 

知っている方は110までお電話ください。

 

隙間 八雲紫

 

プラウダの参謀総長。

 

黄金期の長期化に一役かう。

 

オレンジペコの策謀を経験し、自身も高校最後の年に暴れる。

 

高校卒業後は幽香についていき通信手や運転手をしているらしい。

 

緑狼 高垣楓

 

モデル

 

 

 

上弦の月 池田黄炒

下弦の月 池田淡

 

プラウダ卒業後に新潟の池田家でほむを待ち続ける。

 

新潟のプロ戦車道チームに入り、西住、島田を徹底的に威嚇した。

 

 

 

聖人 花田煌

 

聖人と呼ばれるが真っ黒であり、プラウダを完全に制御し続けた。

 

ほむの足を消した責任感と西住の復讐の完了により卒業後は戦車道をやめる。

 

黒死蝶 白井黒子

 

美琴を追いかけ佐天と初春を連れてアメリカに殴り込む。

 

3人6億円で契約し、美琴の車員として頑張っている。

 

宣教者 聖白蓮

小さき賢将 ナズーリン

恐怖の置き傘 多々良小傘

ハイカラ少女 雲居一輪

船長 村紗水蜜

毘沙門天 寅丸星

常識と認知外 封獣ぬえ

コピーウーマン 幽谷響子

 

日本のプロ戦車道チームで頑張っているらしい。

 

 



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7年後

これから安部菜々視点に変わります


「ミミミンミミミンウーサミン!!」

 

27歳独身1ヵ月前に346プロで私・・・安部菜々は入社しました。

 

日本に帰国しはや6年・・・地下時代を積み重ね、ファンも日に日に減っていってもうダメかなと思った日も多々・・・

 

「しかーし!!ナナは永久の17歳!まだ運命の女神からは見捨てられてませんでしたよ!ほむさん!」

 

『・・・おめでとう。』

 

モーリシャスに私は3年間居ましたが・・・激動な時期でした。

 

ほむさんが監督をしてから2年でアフリカリーグ制覇、3年目には不可能と言われたフランスとイギリスに勝利してワールドリーグに大学チームが入る異例の事態を引き起こしました。

 

アイドルやってますがウサミンではなくナナ・アベと海外戦車道関係者に言うと握手やサインをねだられるくらいには知名度がありますよ。

 

私が居たのはここまでですが、佐藤はもう1年残ってから帰国したらしいですね。

 

・・・今どこにいるかしりませんが・・・。

 

たまに連絡はしているので案外近くにいるかもしれませんね。

 

そんな私はテレビ電話を使ってモーリシャスにいるほむさんに定期連絡をしています。

 

日本の情報が入りづらいモーリシャスだと認知に齟齬が発生してしまいますからね。

 

・・・ほむさんは今未亡人です。

 

一時は泉姓を名乗っていましたが、死別後姓を池田に戻しています。

 

なぜ未亡人になったかは・・・来るべき時まで胸に閉まっておきましょう。

 

そのなんやかんやあって私は帰国した訳ですが、今ほむさんはなんやかんやで養子や里子を

 

「7人でしたっけ?」

 

『ん・・・今9人。』

 

「増えてるっ!!」

 

まぁ元気なら良いです元気なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

346プロに入社してからの初ライブ・・・プロデューサーさんに拾ってもらったこの身・・・頑張って成功させますよ!!

 

「・・・げ!?」

 

ステージから出ようとした時見えてしまいました。ステージ袖の逆側にスイカの妖精の姿が・・・。

 

何とか気持ちを建て直し、コアなファン3人、見物人4人の7名という空席が凄まじく目立つ大型ショッピングモールでの初ライブは終わり控え室に戻るとスイカの妖精が私の控え室で堂々とお茶を飲んでいました。

 

「久しぶりだな。」

 

凄く低い声が聞こえてきました。

 

カポ

 

「・・・!?!?」

 

「お前の祖父のシックスだ。お年玉の2000万有意義に使えた様で結構。」

 

今ならわかります。

 

あれは私の人間性を見るためのテストでしたか。

 

「・・・フー。」

 

電子タバコを咥え、私は祖父に聞く。

 

「で、何のご用で?」

 

「いや、ただのファンだよ。孫を応援するな。(実に良く育ってくれた。これは面白い。)」

 

初日のライブから私は祖父(シックス)と関わっていく・・・。



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ウサミン星人

「・・・腰がぁ~。」

 

「立て安部!!まだレッスンが続くぞ!!」

 

皆さんには言ってませんが活動限界があります。

 

パワプロ風に言えば爆弾ですね。

 

永久の17歳を騙ってるのですがバレるので年齢による腰の疲弊をダミーとして本当の原因はほむと佐藤しかしりません。

 

「が、がんばります~。」

 

声優アイドルになるためにもガタが来ている体に鞭を打って頑張りますっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふひ~、極楽極楽!」

 

千葉にあるアパートで小さなユニットバスで入浴を終え、私はもうひとつの仕事のために隠してある部屋に入ります。

 

大家さんにもこの部屋の中身は見られたくありませんからねっ。

 

・・・ふー。

 

バサ

 

「・・・島田大分裂か。東京埼玉横浜以外の島田本家の撤退。」

 

島田大分裂はほむさんの2つ下の代が25となり元々能力主義で血縁関係の薄かった島田で繋がりが薄くなりつつあった時に、22歳となり島田家を継いだ島田愛里寿が上条家長男上条当麻と西住みほの婚姻を勧め、そのままみほを島田家の重要拠点である阪神工業地帯の戦車道支部に据えてしまったことで不満が爆発し、8人の幹部(プロ野球だと4番張ってたり、エースだったりする実力選手)のうち6人が独立してしまった騒動である。

 

西行寺幽々子と野田たしぎが残ったから良かったものの、8幹部とは別の実力者だった上条当麻の姉で継続を率いた上条当子は活動を制限するしかなくなり、島田の影響力だけが削れる結果となる。

 

「西住も西住で軍神の放出は痛手だったようだけど、それだけの利を得ているから勝ちは西住か。」

 

まほはみほが結婚したのを見計らい、婚約者がいることを明らかにした。

 

現在不確定要素であるほむは地球の裏側、モーリシャス。

 

知名度が有れど国内には浸透してないためまほの地盤は磐石であった。

 

つまり西住は九州中国関西圏という膨大な資金源を手に入れたこととなる。

 

「・・・さてと。」

 

プチ

 

「こんにちは、菜々の通信教育始めるからSkype繋がるメンバー集まれっ。」

 

コミニティーサイトで戦車道の通信教育を行っていた。

 

勿論信用できる少数限定だが、売れないアイドルでバイトしながら戦車道の感覚を忘れないために必要だった。

 

「・・・あれ?姫川は先週プロ戦車道辞めたから来ないんじゃなかったっけっ?原田美世は機械慣れた?」

 

『あ、いやぁ~アイドルにスカウトされちゃったからどうしようかなって菜々コーチに聞こうかなって。』

 

『私もされたよ!!イェーイ。』

 

ブゥー

 

「え、え、えぇーーー!?」



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姫川とは

姫川は現在日本にいるほむの最後の世代と言われていた。

 

ほむの残した選手達は西住だろうが島田だろうが、相手のティアが2高かろうが、10両に囲まれようが撃破する戦術兵器であり、ほむの指導を受けた選手かどうかで年俸は5000万変わり、その中でエース級ともなれば5億は軽く越える。

 

至高の存在の中で最後のエース級・・・それが姫川だった。

 

ほむが日本を出ていった後も彼女だけは国際電話で指導が続けられ、世界戦車連盟発刊の世界選手ランキング67位に17歳で載せられ、20の現在は30位と日本戦車道を牽引すべき選手であったのだが・・・

 

「キャッツーなんでクライマックスいけないのぉ!!」

 

酒をベロベロまで飲んでいる彼女は誰もそんなすごい選手には見えない。

 

で、クラクラになった状態で346プロからスカウトされ、後先考えず引退からのアイドルデビューというウルトラCをかました。

 

ネット、テレビ、新聞はなぜ何どうして状態で姫川に直接インタビューしたら

 

「少し前にアイドル大好きなプロ野球選手がいたし、やっぱりプロ野球選手と結婚するならアイドルかなって思い、戦車道は引退しました。」

 

アイドル業界、マスコミ、プロ野球、プロ戦車道を巻き込んだ大混乱の幕開けだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ、酒飲ませて私との関連性は喋らないようにさせないと。うぅ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近場のスーパーやショッピングモールで少ないファンに囲まれながら地道な努力を続ける。

 

頑張っている姿を認められラジオ番組に出させてもらいました。

 

「えー、では最近デビューされた安部菜々ちゃんです。」

 

対面に座る司会の人に紹介され、私は元気よく挨拶する。

 

「ウサミン星から来ましたウサミンこと安部菜々ですっ!ブイ!よろしくお願いしますっ!」

 

普通に話して普通に終わる。

 

アイドルなんて積み重ねだ。

 

普通の事務所ならラジオなんて出させてもらえない。

 

ラジオが終わった後、私は必死に自分を落ち着かせます。

 

「・・・仕事も終わりましたし帰りますか。」

 

レッスンする気になれず早めの帰宅のために電車に乗りました。

 

「「あ。」」

 

乗るとビックリ懐かしのマックス君がいました。

 

「お久しぶりと言うべきですね。あ、今はゴップと名乗っておりますので・・・。」

 

「そうですか。」

 

「・・・ほむさんは元気ですか?安部さんは元気そうですが。」

 

「連絡の限りでは元気そうですよっ。」

 

「それなら良かった。・・・いつの日かほむさんの汚名・・・いや、一般的なイメージを払拭させ、帰れるように頑張ってます。」

 

「それは良いですね。・・・いつの日か。」




後の千葉県知人である。


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ウサミンとちひろ

「どうぞコーヒーです!」

 

「ありがとう菜々さん。」

 

千川ちひろさん・・・一応同じ年で来年の5月になれば私は28・・・。

 

アイドルと事務員の関係ですが、私が仕事の無い日に社内のカフェでバイトをしていると彼女がよくやって来ます。

 

高校時代はまさに守銭奴といった雰囲気で何度も部費交渉をほむさんの代役として討論しました。

 

まぁ私は雇われみたいな形で私の給料が生徒会から出ていたので強く出れずに何回も負けましたが・・・。

 

私がモーリシャスに行っている間に彼女は346プロの一流事務員として様々なプロジェクトを影から支えており、計画段階らしいのですがシンデレラプロジェクトを伝説の(飲酒運転逮捕が多くて免許取り消しを喰らった)酒飲みモデルをトップアイドルに導いた奇跡のプロデゥーサーの武内Pとタックを組むらしいので組織の力の入れようが伺えます。

 

まぁまだ11月なので大丈夫なはず・・・。

 

「あぁ、心に染みますね。このコーヒー。」

 

滅茶苦茶心労で疲れている理由・・・それはあのやきゅうのお姉さんが既にやらかしたことがアイドル部門全体を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 

「スターズ優勝記念、ドキッアイドル達と大検定!」

 

346だけでなく765、876等、女性アイドルが集まる中プロ野球選手とファンを盛り上げるための花である、いや、花にならなければならないのだが

 

「スターズ・・・キャッツの怨みいつはらすべき・・・今しかない。」

 

完璧な人選ミスを346プロはやらかした。

 

「最初の種目はこちら!ストライクナインです!アイドルの皆さんも硬球でこのパネルでストライクを目指しましょう!それではプロからお願いします!」

 

スパンスパンスパン

 

「流石スターズのエース!予備の10球を残したままクリアーです!〇〇選手も全面落としをクリアーです!続いてアイドル軍団!」

 

ポーンポテガン

 

「中々上手くいきませんね~。・・・ん?」

 

「これが私のVスラだ!」

 

ズバーン

 

「さ、3枚抜き!?」

 

「156キロストレート!」

 

バゴーン ボトボト

 

「2枚抜き!?二連続!?」

 

「止めのスライダー!」

 

カックン

 

「離れたパネルを落としたー!?」

 

無双してしまい、遠投バックスクリーン直、50メートル走5.4、打撃もバカスカ打ちまくりプロよりも目立た。

 

トドメが

 

「来期はキャッツの時代だよ!!!」

 

スターズファンの前で大声で叫びながらスターズのユニフォームを破るという暴挙にでる。

 

これにより346プロは後始末に奔走するはめになり、ちひろが疲れている理由である。

 

「む、無理はしないでくださいね。」

 

「はい~。・・・菜々さんのアイドル活動の方はどうですか?」

 

「うぐっ!・・・固定のファンが10人を超えました・・・。」

 

「が、頑張ってくださいね。・・・スタミナドリンクですが受け取っておいてください。」

 

「ありがとうございますぅー。頑張ります!」

 

涙目の菜々であった。




ロッテ・・・来年は・・・


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ウサミンと佐藤心

「ん~、スイーティ~♪プロデゥーサーの言うだけあって765プロの中はきれい☆・・・」

 

「・・・」

 

「「なんで菜々(心)がここにいるんですか!?(いるんだよ☆)」」

 

 

 

【キングクリムゾン・・・現状報告と女々しい二十代後半アイドルの話を吹き飛ばす。】

 

 

 

 

「で、最近スカウトされたと。」

 

「そうそう☆あ、リグル探してたらあいつ実弾で戦車道してたんだぞ☆今はロシアの幽香のチームに拾ってもらったらしいけど。」

 

「あぁ、だから音信不通な時期が・・・。お疲れ様です。」

 

「菜々もうすぐ上がるでしょ?そしたら葛飾区の亀有行くぞ♪拒否権はねーぞ☆」

 

「えぇ、一応歳上ですからね。あ、え、永遠の17歳・・・。」

 

「やめーや☆私にまで響くんだぞ☆」

 

「葛飾区亀有・・・両さんのとこですか?」

 

「そうそう♪両さんの同僚の人も来るらしいけどパーとやるぞ♪」

 

「お酒の匂いがしますね。」

 

「「・・・で、出たァ!(☆)楓だ!(☆)」」

 

「一緒に行かせてください。」

 

「あ、菜々さんに帰ってきたさんだ!・・・え?なんで佐藤コーチがいるの?」

 

「姫川、シュガーハートだぞ☆」

 

「あ、そういうの良いんで。」

 

バキゴキドゴ

 

「シュガーハートだぞ☆」

 

「yes ma'am.」

 

「心さんのスイッチ入っちゃいましたね。」

 

「久しぶりの再会ですが、こういうのも良いですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「両ちゃんにこんなに可愛い知り合いが居たなんてね。」

 

「うるせぇ、ワシは佐藤だけ呼んだつもりだったんだがなんで来たんだ?」

 

「まぁ成り行きですねっ。」

 

「「お酒が飲めるんで。」」

 

「あはは、アイドルっていっても僕達と性格は変わりませんね。」

 

ヒソヒソ

 

「部長、一番身分がすごいやつがなんか言ってますよ。」

 

ヒソヒソ

 

「言葉のあやだろ、中川はアイドルなんて見慣れてるだろうに。」

 

「2人も小声になってないよぉ。」

 

寺井が2人に対して注意する。

 

「細かい事は気にしない♪それ乾杯☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中川さんは中川コンシェルツの中川エクスクルーシブ社長さんで、秋本さんは秋本貿易会社の娘さんですかっ。」

 

酒に弱い中川は顔を真っ赤にしながらプライベートの事を話始めたな。

 

今なら聞けるな。

 

「佐藤、安部・・・ほむは元気か?」

 

「ふへぇ~、元気ですよ~。モーリシャスに引きこもってますがァ~。」

 

ピクッと部長が反応したか。

 

部長は新聞を鵜呑みにすることがあるから厄介だな。

 

「部長~、ささ、もう一杯。」

 

「おぉ、すまんな。・・・ほむとは池田か西住のほむか?」

 

「・・・えぇ。」

 

「お前が数年プラウダに飛ばされていた事は知ってる。・・・わしは昔池田ほむ君は好かんかった。だが足を失った時のマスコミや新聞でどこもほむ君の事を報道しなかった事に疑問を持った。たまたまその事についての事件性を調べることができたが・・・驚いた。砲撃した側が故意であり、砲弾は大会用だったが、威力が強い榴弾にしてある。わしはまだ若かった。上に上げたが揉み消されたよ。・・・両津、あれはわしの過去一番の汚点だよ。ほむ君に悪いと思いながらも国外にいるから裁判にもできん。・・・世間もいまだにほむ君を敵視しているからな。」

 

「部長・・・。」

 

酒の席はまだまだ続く。



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ウサミンと宴会

テスト終わったからペース上がりまーす。


コクコクコク プハー

 

「あ~、両津さん、ほむさんがまた里子だが養子を取ったらしいですよ~。」

 

「また?ワシは知らんかったが。」

 

「ある~れ~?言ってませんでしたっけ?かなちゃんとこなたちゃんだけだと可哀想だから海外にいる日本人?日系人を養子や里子にしまくってるんですよ~。キャハっ・・・うい~みんなかわいくてかわいくて。」

 

「そういえば話がちらほら出てくるけどほむさんって日本戦車道から追放された西住の方だったっけ両さん?あれ?なんで菜々さん達はその方に詳しいんだ?」

 

「寺井、ワシとここにいる彼女達は一時期プラウダで戦車道を研究したり、技術を教えた仲だ。まぁ姫川はガキだったからワシはあまり関わらなかったがな。」

 

「えー?そんなことないじゃん。遊んでもらったじゃん。私の中では両さんと夜神さんは交番のお兄さんだったから。」

 

「ワシももう31か。」

 

「両さん話それてるよー。」

 

「寺井さんに質問です。あなたから見た戦車道とはどういうものですか?」

 

高垣楓の質問に寺井は少し考えた後

 

「外国では国民的なスポーツかもしれないけど僕らにとってはあんまり馴染みがないかな。だからテレビとかで戦車道特集がバンバンやっていても気にならないし。」

 

「だ、そうですけど菜々さん、心さん。」

 

「・・・まぁそれが日本だと一般的ですよね。一応これでもモーリシャスのレジェンドリーグ代表コーチだったんで海外に関しては知り尽くしてますし。」

 

「「!?!?」」

 

「中川君、麗子君、大丈夫か?顔が真っ青だが。」

 

「れ、レジェンドリーグ代表コーチ!?」

 

「モーリシャスのコーチって伝説の日本人じゃないですか!!」

 

「ほむ監督率いる最強チームのコーチ!?」

 

「え、え?どういうこと?」

 

「「なんでアイドルなんかやってるんですか(の) !?」」

 

それだけ二人には衝撃だったが、寺井や部長は話に付いていけてない。

 

「ワシが説明するが・・・先進国では日本だけが戦車道に関心が薄いんだ。ヨーロッパやアメリカだと国の軍事パロメータにもなるからな。日本だとスポーツと位置付けているが、それ事態がそもそもの間違い。冷戦時のソ連とアメリカの軍事演習から発展した歴史から軍人育成のための機関が戦車道で、それに死者をいかに出さないか、怪我をさせないか追究して今の世界戦車道連盟がある。オリンピックと同等の経済効果が有った和歌山の世界戦車を改めて考えればすぐにわかるぞ。」

 

「へぇ、レジェンドって伝説って意味でょ。それだけすごい人なの?」

 

「寺井ちゃん。そこに出れる人は戦車1両で一般の戦車を1連隊を撃破できるエースだらけのところよ。」

 

「実際に紛争で秘密兵器としてレジェンドリーグクラス選手達が作戦に参加して不可能といわれた1000人の武装兵を殲滅した逸話も有りますから。」

 

「なんだかこわいな。」

 

酒の席はまだまだ続く



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ウサミンとほむの今

「ねぇ、なんでそんなに凄い活躍しているのに日本でそんなに知名度ないの?普通ならイチローや日本人初の宇宙飛行士の毛利さん並みに報道されても良いと思うけど・・・。」

 

「あ?あぁ、ほむは日本のマスコミに正面から喧嘩売ったんだぞ☆しかも西住ほむって調べても昔の事故以外はすっごい後ろの方にプラウダ関連の活躍が載ってるぐらいだな♪池田ほむに関しては日本語翻訳されてない海外記事しかないからな☆」

 

「闇が深いよ~。」

 

「・・・もう少し今のほむさんについて教えてくれませんか。」

 

「中川さんどうしましたか?」

 

「いや、色々動かなければいけないと思いまして。」

 

「んー、良いですよ。今のほむは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうか家の子をお願いします!!お金は払いますから!!」

 

「・・・お断りします。・・・戦車道に向いてない。金と親の力を借りるゴミは育たない。」

 

「そ、そこをなんとか。」

 

「本人を連れてこない時点で論外。・・・娘さん金輪際戦車道に関わらせない方が良い。」

 

ほむのこの言葉は事実上娘さんは永久にプロアマ関係無く一生戦車道に参加するなという力を持っていた。

 

キリスト教全盛期の破門状並みの力がある。

 

それくらいほむの言葉は重いのだ。

 

現在10歳のほむの娘達はかなを除き人工的に作り上げられた天才である。

 

才能が乏しいのをほむの徹底したカリキュラムをもって作られた。

 

ほむの考える池田流の1つの完成形である。

 

7年でほむの指導した者は1000人を超え、スター選手を量産し続けた。

 

 

「というのがここ最近のほむの動きでイギリスのセシリア・オルコットやフランスのシャルロット・デュノアは一流って呼ばれてるけどほむや私、心からしたら駄作も良いところですね。選民意識が高くてほむ共々苦労して育てましたよ。」

 

 

 

 

 

 

「毎日実戦訓練させていただきありがとうございます。首相。」

 

「なんのなんの。我々は貴女に国の宝である子供を救ってくれたお礼ですよ。」

 

「・・・私は何もしていません。ここを出ていった彼女達こそが英雄。」

 

「確かにそうですが・・・沈み込んだ我々に戦車道で希望を与えてくれたのは貴女です。それに我国で小さいながらに陸軍を創設できたのも・・・。」

 

「首相、私は私のために行動をしているだけ。選民を育てているのも、そのデータを得たいから。」

 

「貴女が言う駄作でも我々からしたら至高なのです。黒い三連星の女性達は普通の出来と言っておりましたが、今ではインド系の希望ですよ。」

 

「・・・希望か。・・・首相。また来ます。」

 

「いつでもどうぞ。・・・私に貴女の闇はわからない。だが、貴女は紛れもなく我国の人間です。」

 

「ありがとう。」



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子供達

菜々は更に話を続ける・・・

 

ほむの子供・・・世間からは選ばれし子と呼ばれている。

 

そしてそう遠くない未来に戦車道の重鎮として名を残すだろうとも言われている。

 

「私も数年前まで近くで見ていて」

 

それぞれの評価もある。

 

池田かな(西住かな)

 

日本を愛しており、それが右翼的な思考になってしまっており、天皇の事に感じて悪く言うと、仲間だろうと戦車で轢こうとする。

 

が、ほむの直子であると知る者は少ない。

 

しかし、それ以外に欠点はなく、身分や人種に関わらず幅広い友人関係、家族からの絶対的な信頼と信用、ほむにはなかったカリスマ性を10歳ながらに持っており、指導力に関しても片鱗を見せ始めている。

 

「そう言えば、ほむはかなのことを最高傑作であり最大の駄作って言っていたな☆」

 

「他の子と比べると異常なほど才能が有りましたからねっ。天狗になることなく常に自分に負荷をかけ続け、実力以上の力を発揮していきますもんねっ。」

 

「実子では有りませんがそうじろうさんの遺児・・・」

 

「泉こなたか♪あれはほむが優秀作品と言っていたな☆」

 

泉こなたは父が倒れると一時期は精神衰弱に陥ったが、ほむとかなが励まし立ち直ることができた。

 

しかし、その影響で身長は養子や里子も含めて最小になってしまった。

 

「皮肉ですが、強戦車のソ連のIS-3の人間工学問題を低身長がフィットしていましたもんねっ。」

 

「あの頃は頭も良くてムードメーカーでありながら実力があるからな☆」

 

「ん?あいつ結婚してたのか?」

 

「両さんが2年の末に戻ったからな☆前に言わなかったか☆」

 

「ワシが忘れてただけかもしれんが、そうじろうなんてはじめて聞いたぞ。」

 

「あちゃー。そこから詳しく話しますね。・・・あぁ、楓さん、姫川ちゃんに飲ませ過ぎですよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へーくしゅん!!」

 

「ほら、お腹出して寝てるからそうなるのよ。」

 

「ははっ、ごめんごめん。」

 

「ほーら、こなた、シャキッと。」

 

「かがみもつかさもよく私なんかのメイドなんてやるよね?里子だからって気にしない方が良いよ。」

 

「べ、別にそんなんじゃないわよ。」

 

「まぁまぁお姉ちゃん。照れないの。」

 

「つーかーさー!!」

 

「えへへ。・・・でもお母様もよく養子や里子を集めるんだろうねー。」

 

「そりゃー池田流を広めるためだよ~。後は弱い私達を守りたいからじゃないかな?」

 

「弱い?・・・確かに昔は弱くて家族も守れなかったけど・・・今は違うわよ。」

 

ガラガラ

 

「やれやれ、こういう面白い話は僕を呼んでよ。」

 

「ゲッ、安心院。」

 

「ゲとは酷いね。まぁ僕はお母様がみんなに守って欲しいって言う気持ちと西住に対しての当て付けじゃないかと考えているよ。」

 

「あ、あぁ、理解した。」

 

「流石こなた。頭の回転が早いね。そういう君が好きだよ。」

 

「私は腐ってないぞ。百合でもないし~。」

 

「家族としてだよ。」

 

「当て付け・・・お母様は西住に対して恨んでるの?」

 

「つかさー、それは違うんじゃないかな~。むしろ分家だけだと思う。」

 

「やだな、僕はそこまで過激な事は言ってないよ。西住は血統でガッチガチだから選民意識で流派が停滞、島田は地位と金だけの関係だったからごたついた・・・いや?半壊が正しいか。」

 

「池田流がそうならないようにってこと?」

 

「僕を含めて癖が強いのしか居ないからね。」

 

「私もか!!」

 

「・・・お姉ちゃん自覚しなよ・・・。」

 

「はっはっはー、(天海)春香は魔王でしょ、お空は馬鹿でしょ、(十六夜)咲夜は変態でしょ・・・まともなのが居ないね。」

 

「お母様いわくまだ増やすらしいよ。」

 

「私達が18になる頃には20人くらい居そうだね。」

 

「それはそれで面白いかもね。」



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ウサミンと仕事

中川さんや秋山さんに説明しているとあっという間に日付を越えそうになっていたのでお開きとなりました。

 

「寝る前に明日の仕事の確認っと。」

 

まぁ来る仕事は糞爺・・・祖父のシックスの会社関連か、近場で地下アイドルと似たり寄ったりの仕事だけですが・・・。

 

(お金だけだったら戦車道のコーチとしての実績だけで年収5億は軽く超えますが・・・それは夢を諦めるのと同じ。・・・声優の仕事・・・こないかなぁ~。)

 

実際アパートを2部屋借り尚且つ1部屋改造している時点で蓄えは一般人の何十倍もある。

 

これはさっき酒を飲んでいたアイドル3人も同じで、余裕が有るからゆっくりでも着実に仕事を貰えるよう頑張っていける自信の源でもある。

 

少なくとも346プロにいる成人を越えたアイドル達は貯蓄が少なからず有るから仕事ができるという事情もある

 

閑話休題

 

確認を終えるとゆっくり眠りにつく菜々であった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヵ月が過ぎた頃、シンデレラプロジェクトが始動したと小耳に挟んだ。

 

私は相変わらず小さい仕事か祖父の仕事しかありませんが・・・。

 

まぁ上も私にはあまり期待していなかったようですので、逆に祖父の会社から仕事が継続して受けれるのは予想外で当たりだったとかなんとか・・・。

 

祖父と私の関係を知っているのは心とほむぐらいで、モーリシャス時代に軽く呟いたくらいなので、ほむは忘れてるかもしれませんが・・・。

 

仕事が無い日に346プロ内部のカフェでバイトをしていると、シンデレラプロジェクトの子達がたまにやって来ます。

 

特に前川みくちゃんは私の事を純粋に尊敬していて嬉しくなりますね。

 

中等部のプラウダ戦車道部の天才隊長も居ました・・・。

 

グデー

 

「なんでここには先輩達が一杯いるのさ。ねぇ、安部コーチ。」

 

「ウサミンですよーキャハッ!永遠の17歳!」

 

「・・・じゃあ菜々さんでいい?」

 

「えぇ、良いですよ。」

 

「戦車道辞めちゃったの?」

 

「コーチとしては続けてますよ。ただ、昔からの夢が声優アイドルだったので。」

 

「ならいいや、杏は菜々さんのファンだから・・・。」

 

「杏ちゃんはどうしてアイドルに?中等部の試合を観てましたが才能が有るのでもったいない気もしますが?」

 

「疲れたんだー。車内のギスギスした雰囲気が苦手で・・・まぁアイドルの方が良いかなーって思ったから。アイドルとして成功すれば印税で暮らせるってのもあるけど・・・働いたら負けだよね。」

 

言い方を変えれば専業主婦でも良いのではないかと菜々はとらえる。



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協力とは

「人は誰かを頼らないと生きてはいけない・・・昔から思っていた。今はもっと思う。」

 

西住に産まれてからずっと考えてきたけど、西住しかり、島田の天才しかり、他人を頼らなさすぎる。

 

私は足が無いから誰かにつくってもらった車椅子を階段や坂道を誰かに押してもらわないと動けない体であり、家事も娘達の協力が有って初めてできる。

 

娘を増やすのも戦車道の研究もあるけれど、娘達の負担を減らす意味もある。

 

人数が増えればそれだけ負担も減る。

 

世間からどうと言われようと、私は頼ることの大切さも教えてきたつもりだ。

 

「・・・性格がネジ曲がってるのが多いけど・・・良い子ばかりで楽。・・・本当の親を無くすと辛くても自力で何とかしようとする。・・・他人の力を借りることができるようになった今、彼女達は一人前。・・・はぁ、駄作だなんだは人間性も言ってるのに・・・。」

 

あのフランスとイギリスの特権階級娘はイライラした。

 

なまじ才能が有るから話を聞かないし・・・。

 

その分黒い三連星は良くできた子だった。

 

年は私とそこまで変わらないが、私の指示をしっかり聞いた上で、さらに効率良くしようと努力していた。

 

あれこそ私が求めているものだった。

 

まぁかなは私の教えより独力で完成した軍用戦車戦術だから手があまり出せないから最高傑作であり、私が教えることができないから未熟な私の手腕を駄作と言ったけど、なんでかかなが駄作に扱いになたったんだよなぁ。

 

「・・・今年の良作はフレンダ・・・か。あの子はシャルル関連で苦労をかけた。・・・ルーミアがいるチームに拾われたからレギュラーで黄金時代を作るだろう。あとはボチボチ(世界だと一流と呼ばれ、レジェンドリーグでも通用するかしないかレベル)。」

 

ガチャ

 

「ほむ、ごはんだしー。」

 

「わかった。」

 

「・・・何時からかなはお母さんと呼ばなくなったっけ?」

 

「こなたが父親を亡くした日だし。」

 

「・・・そう。・・・かな、今は流派云々より私個人で池田ほむの価値で池田が形成されてる。・・・かな。正式に池田流の後継者として署名して欲しい。後見人は私とモーリシャスのお偉いさんがしてくれる。」

 

「別に良いし。・・・本拠地はどうするし?このモーリシャス国際大学のある学園艦シウサガルに置く訳にはいかないし。」

 

「・・・融資をどこかに頼むかも・・・。」

 

「はぁ・・・プラウダを離れてから責任感が緩くなって行き当たりばったりに最近なってるし。ばんばか養子や里子を取って。」

 

「・・・まだ取るよ。」

 

「家族が増えるのは嬉しいから良いし。」

 

家族仲は良好である。



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ほむの金銭事情

戦車道をやっているところは基本的に金がかかる。

 

昔の戦車を今の技術で造るのも、高級車くらいはする。

 

なので、自動車会社や兵器系の会社が戦車道関連のバックに必ずいる。

 

西住でも三のつくグループ2つの企業がスポンサーであったし、島田も日〇とかのバックが弱体化した今もいる。

 

ではほむはモーリシャスでどうしているか?

 

政府からの資金も最近入ってくるが、ほむは補助金程度にしか考えてない。

 

遠征費とかでそんな金額は溶ける。

 

いくら富裕層が多く、国民総中流層と言われるモーリシャスでも大国みたいにバンバン金を渡すわけにはいかないのだ。(そもそも島国で陸軍関連に金は少ししか払えない)

 

スポンサーもいるにはいるのだが、本命の繋ぎ程度で、私に娘を育てる代わりにスポンサーになってもよい等とぬかす人は、私が娘さんが気に入れば入れるが、基本的に突き返す。

 

そもそも大学側から雇われてる身で有るため、そういった金は全て大学に行く。

 

まぁ正攻法でモーリシャス国際大学に入学して戦車道に来るのなら拒むことはしないのだが・・・。

 

何気に大学側からの給料が私の収入の2番目にくる。

 

日本円で月150万と良い大学の教授よりやや多いくらい貰っている。

 

ただ、これは生活費、子供達の教育費、戦車の燃料代、家のローン、私の治療代(両足の義足や車椅子の修理等)で大半が消える。

 

では一番の収入は何か・・・

 

「フレ/ンダ、入団おめでとう。」

 

「フレンダ!!フレ/ンダじゃない!結局いつまで私はからかわれる訳よ!22歳!子供じゃない訳よ!」

 

プロチームからの紹介金(1名約1000万、フレンダみたいな当たりと呼ばれる選手は5000万もある。ちなみに最高は黒い三連星の1人、ララ 8900万)と選手とチームからの謝礼金である。

 

大学チームながらレジェンドリーグまで持ち上げ、育てた選手を惜しげなく放出する。

 

プロチーム、そのバックの国からはとてつもなく有難い行為であり、22歳(23歳)の脂が乗った最高の20代ということもあり感謝され、それが謝礼金である。

 

選手からの謝礼金は全て後輩選手育成のために機材費に使うが、プロチームからの金は貯金及び、スカウトの給料にしている。

 

「スカウトは良いのがいて本当に良かった。・・・花田煌が来てくれれば良かったけど・・・30になるまで表から消えるか。・・・どこにいるかわかるから良いが・・・。」

 

「良いスカウトと呼ばれて嬉しいよ♡」

 

「こいし、また居なくなったと思ったらここにいたの。」

 

「あ、おねーちゃん。」

 

「・・・2人とも・・・30歳?」

 

「あらやだほむさん、アフリカで拾った私たちの歳を忘れたの?」

 

「はぁ・・・どうせ私達は童顔で10歳くらいに見えますよ。」

 

養子候補を見つけたと最初思ったが、実際はアフリカ旅行に来てただけの姉妹で、レイプされそうになっていたところを助けた過去があり、その後私と打ち解け専門スカウトとなり世界を懲りずに飛び回っている。

 

「・・・良いのを見つけた。ターニャ・アルデルト、ソ連に社員全員が玉砕したアルデルト社長の子孫で指揮官としての才能が有るけど戦車道の才能は未知数。どう?」

 

「・・・面白い。育てる。」



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シンデレラガールズとウサミン

「始まったと同時に3人抜けたんですかっ。」

 

「本当に今の子は就職の厳しさが分かってないから・・・。」

 

どうもおはようございます・・・今日は仕事がないので346プロのカフェでメイドさんの仕事をしてたら、顔を真っ赤にしたちひろがやって来て、コーヒーを頼み、そして愚痴り始めた。

 

「・・・腰抜けどもめっ・・・教え子だったら再教育ですねっ。キャハッ!」

 

「今から再教育してもらいたいくらいですが、辞めたからもう関わることもできませんし・・・。」

 

「それより武内プロデューサーは大丈夫ですか?若手であの酒飲み制御した幹部候補が失敗となると、他のプロデューサーは無理ですよね。」

 

「まだ再編する期間が与えられたので大丈夫ですし、逸材を見つけたらしいのでアプローチしているらしいですが・・・。今回の件でやはり少し感情にブレーキがかかったかもしれません。」

 

「もし何かあったら私だけじゃなく、心と楓も巻き込んでください。楓は武内プロデューサーと今も仲が良いですしっ。心も渇を入れるのは得意ですからねっ!」

 

「はい。・・・別件ですが、今度前川みくちゃんに会ってもらえませんか?彼女が菜々さんのファンらしくて。」

 

「おぉ~、見る目がありますねっ!そういうことなら今度お邪魔しますねっ!」

 

「えぇ、待ってます。あと、菜々さんの事務室大丈夫なんですか?地下の元倉庫で、カビ臭くありませんか?」

 

「必要な時以外は入らないようにしてますねっ。・・・喉を痛めそうなので、基本的に使いません。」

 

「もう少ししたら大型除湿器が導入されるようなので、そしたら改善すると思いますよ。」

 

「本当ですかっ!ありがとうございます!!」

 

アイドルで地下に事務室あるの私だけなんですよね・・・とほほ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あと何年アイドルができるか・・・。」

 

27歳という年齢と日に日に増していく腰の痛み。

 

歌って踊れる声優アイドルの夢もそろそろ辞めなければならないかもしれない。

 

・・・そしたら私に残るのはなんだ?

 

戦車道、祖父から言われた才能、人間関係・・・結構ある。

 

でもやっぱり・・・子供が欲しいな。

 

私の体じゃもう子供を産むことはできない。

 

「人間の本能って呼ばれる行動ですかね。・・・いや、人間に本能なんて存在しないんでしたっけ。有るのは衝動。母性衝動と言えばいいですかね。」

 

人間に本能が有るのなら私はここまで悩むこともないんでしょうけど。

 

「社会性により疑似本能ができる。・・・モーリシャスに居たときにほむさんから言われましたね。その疑似本能と備えられた衝動を操ることで人は次のステップに昇華できるでしたっけ。・・・まぁ今は考える時ですね。」

 

 



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先輩としての生き様

27歳、アイドル・・・貯金は数百万・・・月給は沢山。

 

「醜いですね。」

 

「仕方がないんじゃない♪シュガハとウサミンは綺麗な人間ではもういれないんだし。」

 

「シンデレラプロジェクト・・・再編で忙しそうですが、本当のシンデレラは私達じゃないですかね?」

 

「・・・あの日・・・世界が変わった☆走馬灯も、臨死体験も・・・1秒が数分に感じた☆」

 

「たった2日。それでも私達は醜い姿でアイドルなんかをやっている。」

 

「英雄なんかじゃない♪」

 

「かといって一般人にも戻れない。」

 

「「生きる衝動。」☆」

 

「・・・ふぅ。少し熱くなりましたね。愚痴を言わないと精神的にきますね。」

 

「私も久々に溜め込んでいたのが出ました♪・・・さて、私はこれからドラマのキャストに選ばれたので346プロにいる時間が数ヵ月減るよ☆・・・だから新しい時代のシンデレラ達に渇を入れてあげなよ♪菜々先輩☆」

 

「はぁ・・・もしかしたらこれを見越してプロデューサーは私をスカウトしたのかもしれませんね。・・・見捨てられたか。」

 

私を担当していたプロデューサーは別の若い子を集めたアイドルユニットを編成し、シンデレラプロジェクトと競い合わせることでトップグループを増やす方針に切り替えたようで、見込みのある年配組はドラマかロケで長期の日程を組まれ、若い子の邪魔にならないように隔離するようです。

 

では見込みの無いのは・・・

 

「・・・飼殺し。」

 

「・・・。」

 

わかってました。

 

今会社に残った予定の無い20代後半は若い子の為の踏み台。

 

「・・・私の他の人は既に数年働いて、近々引退を自主的にする方達。恐らく私は踏み台の数が足りないから見繕ってきた人材なんでしょう。・・・適度に実績を与える為に社内の仕事を与える。偶々祖父の会社の繋ぎもできたけど別に他の人でも良いと考えてますね。・・・畜生・・・。」

 

涙が零れます。

 

会社では絶対に見せないウサミンの内側はこんなもんです。

 

「・・・ふー、菜々さん、どうしますか?このままこんな会社に埋もれますか?」

 

「まさか、そんなことしたらほむさんに失礼でしょう。終わりに大輪の花・・・いや、爪痕を残しましょうか。」

 

「それでこそ菜々さんだよ♪」

 

「ではもう少し飲みますかっ!」

 

「いぇーい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後数日間、仕事やカフェのバイト、レッスンをしていると、とあることを耳にしました。

 

シンデレラプロジェクト再開。

 

「・・・さて、私も私がすべきことをしますか。」

 

安部菜々は今日もアイドルをする。



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ウサミンマジック

シンデレラプロジェクトで、新しく加入した3人に飲み物を出していたりするウサミンこと、安部菜々ですっ。

 

キャハッ!

 

少々社内の仕事が増えてきましたが、大半はアイドルにやらせるものじゃありませんよ。

 

なんですか・・・スタントマン体験って。

 

まんまスタントマンの仕事をさせられて、腰が壊れるかと思いましたよ。

 

そんな菜々ですが、今病院に来ています。

 

本格的に体がボロボロなので、レッスンを早めに切り上げて行きました。

 

・・・ブラックジャック先生の・・・ですがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「菜々さん、私は無茶はしないようにと言いましたよね。」

 

「・・・夢は諦めきれないものです。例えそれが仮りそめでもね。・・・そろそろ首を切られますよ。」

 

「・・・あなたの体は穴だらけなのですよ。」

 

「わかってます。でも・・・もう少しだけ動けるようにしてください。」

 

「100万だ。」

 

ドサ

 

「一括でっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分裂・・・ですか?」

 

「そうだよ~。」

 

カフェにやって来てイチゴオレを飲む杏さんにシンデレラの事を聞いたら、出るわ出るわ、問題が。

 

ビキッ

 

「我慢を知らない若い子が・・・。」

 

「そこら辺プラウダは徹底してるよね。」

 

「まぁ我慢を常時強いられますから・・・。わがまま言っていたら最後は粛清か、解任、失脚・・・。卒業まで権力を掌握できていたのって、様々な部や活動の中でも歴代でほむさんと煌さんだけでしたからね。」

 

「生徒会や風紀委員も権力闘争あったからねー。・・・杏が動くとややっこしくなるから一応菜々さんに話を持ってきたんだけど。」

 

「・・・本当ならNoって言いたいですけど、これも込みで雇われてますからね。様子を見ながら近々お邪魔しますね。」

 

「わかった。菜々さんありがとう。」

 

 

 

 

 

それから私は怒鳴り込みましたね。

 

ストライキだ、なんだ、CDデビューだ・・・

 

「前川さん、アイドル舐めてません?」

 

その場にいた杏以外のシンデレラメンバーが凍りつきましたね。

 

「大きなステージでデビュー・・・良いですよねっ!私は観客0からスタートの地下アイドルでしたよ。中卒の底辺な私からすればね・・・こんな場所にその年で居られる才能が羨ましいですよっ!」

 

「あ~・・・菜々さんの年齢皆勘違いしてるけど27歳だからね~。」

 

「「「え、えぇーー!?」」」

 

「今はそこはどうでもいい。余計な事をしないでレッスンをしなさい。1年や2年デビューさせないとは武内プロデューサーも言ってないですよねっ。彼はプロデューサーの中でも一二を争うくらい有能な方です。気長に待っていなさい。」



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解雇

「これは上層部の決定なのだ。解ってくれ。」

 

「美城常務の命令ですね。今西部長も大変なことで。」

 

「・・・。」

 

「私はアイドルです。アイドルでないのならこの社から消えるのが適切ではないでしょうか?」

 

「・・・。」

 

「・・・。解雇と言ってください。」

 

「・・・本当に良いのか?ここに残れば可能性がまだ有るだろうに。」

 

「腰の怪我が限界で、営業も正直厳しいのです。」

 

「怪我をしていたのか!!」

 

「医者からは走ることはできないと言われてます。」

 

「なぜ我々に言わなかった!!」

 

「私のアイドル像は歌って踊れる声優アイドル。できないならばキッパリと辞める。」

 

「・・・そうか。わかった。こちらから解雇するから退職金も出す。すまない。」

 

「謝るべきはこちらです。報連相もできない私を雇ってくれてありがとうございました。」

 

 

 

キー

 

「失礼しました。」

 

バタン

 

 

「今西部長、私も彼女はシンデレラプロジェクトの糧程度の認知でいましたが。撤廃させてもらいます。彼女はシンデレラでした。」

 

「あぁ。失って初めて彼女の決意に気づくとは・・・私もまだまだだ。・・・恐らく安部は何かをやるだろう。目に闘志が宿っていた。」

 

「・・・。」

 

「・・・期待していよう。我々はそれしかできない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後5年間安部菜々は一部の友人以外はどこに居るのかすらわからない状態になる。

 

安部菜々を慕っていた前川は数日間泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安部菜々が346プロをやめて3年後、ヨーロッパで・・・いや、戦車道で前代未聞の事件が発生した。

 

【欧州リーグを13歳が指揮をするグループが制覇】

 

池田ほむとその娘達の名声が頂点に達した瞬間である。

 

ほむの子供達の最年長13、最年少も11歳で、人種は日系が多いが、白人も黒人もいる。

 

この成果をもって、ほむは中川コンシェルンからの大型学園艦を貰い、選手人選権限、練習方針に関しての不干渉、どの大会に参加するかの発言権を条件にほむは中川コンシェルンとのスポンサー契約を締結した。

 

普通はスポンサーが関与するが、圧倒的に池田ほむ有利の契約だった。

 

せっかちで有名な中川龍一郎会長がこの時は二次会まで参加し、約15時間他の仕事をしなかったことは社内で伝説となる。

 

 

 

 

 

コト

 

「で、池田流の創始者となった池田ほむ殿・・・って、柄でもないから監督と呼ばせてもらう。」

 

ターニャ・アルデルト 池田流2軍育成監督

 

「・・・ここに居るのが池田流の幹部で良いのかしら?」

 

古明地さとり スカウト長

 

「私も座れると思わなかったよ♪」

 

古明地こいし スカウト

 

「日本から呼ばれてもう3年か・・・。」

 

池田黄炒 池田流コーチ

 

「だね~。」

 

池田淡 池田流コーチ

 

「まさか、本当に私を見つけ出すとは思いませんでしたよ。隠居させてくれればすばらだったのに。」

 

花田煌 池田流コーチ

 

『・・・私もテレビ越しですがいますよーキャハッ!』

 

安部菜々 元コーチ

 

『菜々・・・キツいぞ☆』

 

佐藤心 元コーチ

 

「・・・良い話は中川コンシェルンと正式に契約が完了し、私達の教え子は全員池田流の名を背負うと宣言してくれた。リグルもじきにこちらに合流する。」

 

「リグルか、またなつかしい名前ですね!すばらです!」

 

「悪い話は西住流家元の西住まほが事故死した。」

 

『「「・・・!?」」』



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西住後継者問題

ナレーションみたいな形に今回はします。


西住まほ・・・真面目で、コツコツと積み上げてきた実績、日本のプロリーグでもほむの残した選手達を様々な方法で切り崩し、勝利してきた。

 

西住しほはほむという化け物が居たことで評価が低いが、分家や世間一般的には若いながら家元という役目をしっかりと行い、弱体化した島田家をみほを通じて援助したり、西住の勢力を九州中国四国地方までだったのを関西を呑みこみ、中部の南部を押さえたことで、日本の戦車道を指揮する立場を築き上げた名人だった。

 

まほには2歳の双子がおり、分家のことも考え、どちらが長女か明白にせず、鹿児島の島津家と山口の吉田家をそれぞれ娘の師範にし、残り2家・・・久保家と津田家はほむの補佐と置くことで、分家のパワーバランスを調整していた最中での今回の出来事である。

 

事故は雨のスリップでガードレールを突き破っての転落から爆破、炎上の3コンボ。

 

父親も助手席に座っていたため御臨終。

 

この時に西住しほが咄嗟に家元代行として強権を発動し、今にいたる。

 

家族であるみほとほむにも伝えられ、それがほむの中川と契約完了の報告会議直前だったため、会議にぶちこんた。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の件で更にややこしくなるのがスペアの不在である。

 

みほは上条家に嫁いだため、西住本家を継ぐ資格がなく、ほむは池田家に戻した関係と表向き絶縁ということで継ぐ資格は限り無く低かった。

 

低いがために持ち上げようとする馬鹿もいるが、本人が海外に居るため、他方向からそんな馬鹿は攻撃される。

 

何より西住を海外でさんざん攻撃しているほむが西住を継いだらどうなるかわからないと4分家は判断し、この可能性も消える。

 

では西住しほを再び家元に再任することは親戚、関係者一同満場一致で決定したが、問題は次期後継者問題である。

 

まほの娘のくじらとめだかを後継者にするべきという派閥と養子であるがしほの娘に家系上なっている西住かなにすべきと、上層部と門下生が分裂した。

 

これはスペア問題で出なかったのは姿を見せないため、どんな人物か不明であったからであり、これを機に幻の四女を表に出そうと暗躍した勢力もおり、それが門下生を煽ったため、西住流は内部紛争の模様に発展する。

 

かなは池田を海外で名乗っているため、西住かなとしては見られておらず、池田、西住、2つの人物を世間が勝手に出来上がってしまったため、このような認知のすれ違いが発生していた。

 

かなの生い立ちについては上層部でも分家当主くらいしか知らないため、西住しほはこの問題をどうするかほむに国際電話で相談することにした。



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西住後継者問題2

「・・・お母さま、それは本気ですか?」

 

『本気だ。勿論ほむとかなが反対なら取り止める。』

 

西住後継者問題の池田流としての介入は保留として池田流の幹部会議は終わったが、ホットライン(家族電話)での話し合いは加熱していた。

 

家族の前で話しているので子供達も家事をしながら聞いている。

 

子供達は15人。

 

実子、里子、養子に違いが有れど、家族にしてライバル。

 

彼女達はその家族愛とライバルとしての競争心を混ぜ合わせ、常に負荷をかけ続ける。

 

その頂点にいる池田かなが口を開く。

 

「かなは・・・日本に行きたいし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

福岡空港

 

 

「かな。待ってましたよ。」

 

「お婆様・・・いや、御母様?」

 

「家元でいいですよ。あなたを西住家宰相に任命します。まほの長女のくじらが中学になるまでお願いしますね。」

 

「謹んでお受け致します。・・・何から始めるべきだし?」

 

「まず、まほの葬儀からです。そこで宰相就任をさせます。」

 

「わかっただし。」

 

西住かな、公の場に初めて姿を現す。

 

西住分家の当主達は苦い顔をしながら、その他は驚きの表情で固まった。

 

葬儀の主役がまほからかなに変わる。

 

吸い寄せられるようにかなに全ての視線が集まる。

 

誰も言葉を発することが出来ない。

 

葬儀であるので当然であるが、本来お経を唱えるべき坊さんも言葉を発せない。

 

圧倒的な存在感と威圧感。

 

移動による疲れなのか、それともまほに対しての感情なのか、真っ赤に充血した瞳は光の反射で獲物を狙う肉食獣に見間違うほど恐ろしく感じられる。

 

(西住かなではない・・・池田の娘ではないか!!)

 

散々擁護して、担ぎ出した御輿は皆で担ぎ上げる物ではなく、勝手に動くモンスターマシンだった事にこの瞬間、その場にいた人物が認知した。

 

(西住を池田などという下等なものにやるものか。)

 

(どうする・・・我々が反発すればいけるか?)

 

(実力しかない者だろう。なに、常識と称して首輪を着ければ・・・。)

 

(西住まほさんが居ない今、私達が西住を守るのだ。)

 

(分家以外にも西住を守ろうとするものは多いのだ。)

 

(戦車道は1人でやるものではない。なに、人員で困らせれば勝手なこともできんだろうに。)

 

「かなは、西住流宰相の就任を受けるし。この困難期を穏和に済むとは思ってない。中学1年のかなは家元のご意向により本家在住になるし。」

 

日本中を掻き乱すかなの行動は後に極右と呼ばれるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家元、ひとつお願いがあるし。」

 

 

 

 

 

 

【人を殺した経験がある同じ年がいれば私の乗務員にしたいし。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3人の狂人

あけましておめでとうございます!!

さて、お正月休みも終わるので書きますか。


精神病院にかなは歩いていた。

 

医師は奇妙な眼でかなを見る。

 

なぜ精神異常で無罪判決が出た殺人者を仲間にしようとするのか理解不能であるからだ。

 

(まぁ、調べてここから出しても何とかなりそうなのは全国で2人だけだったし。)

 

そう思うかなはチラリと手に持つ資料を見た。

 

1人は桂言葉・・・虐めによる精神の消耗による錯乱で、偶々押し倒した男子が打ち所が悪く数日後に死亡した事件(事故)により、極度の対人恐怖症

 

2人目は魂魄妖夢・・・家訓であった免許皆伝のため祖父を斬り殺したため、同意殺人が適応された人物であり、精神病院内の中等教室に通っている人物である。

 

「さて・・・耐えれるかし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

呼び出された2人は強化ガラスのT字型の敷居を隔てた部屋にそれぞれ監視の人を含めた4名が部屋にいた。

 

互いの顔を知っているが、桂は魂魄を怖がり、妖夢は言葉を怖がりだな位の感覚でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・こちらです。」

 

ガラスを隔てた向かいのドアが開かれると黒い塊が見えた気がした。

 

私は咄嗟に腰に手を向けさせたが、脇差は無いため手が空を切る。

 

「!!!」

 

ガラスを隔てた隣にいる桂さんは顔が真っ青になって震えている。

 

というよりも監視人は直立したまま気絶しているのに比べれば凄いと思う。

 

「・・・だし。」

 

「?」

 

「おちつくし。」

 

言われた瞬間に私達は冷静になった。

 

言霊というか超能力的にも感じることぐらい恐ろしく、不可思議な事が自身の体で起こっている。

 

現に中腰だった筈なのに、気がつかないうちに席に着席しているのだから。

 

「うん。これだし。これが殺った人の顔つきだし。」

 

「・・・だれだみょん。」

 

「皇国日ノ本をこよなく愛する女・・・池田かな・・・いや?西住かなだし。」

 

「・・・!!中二病の方ですね。」

 

そんなわけあるかと桂さんにツッコミたい気持ちを抑え、かなを注目する。

 

「いやぁ、最近の若いのは覇気というか殺気というか、死に対して緩すぎるし。バカスカ死人が出る太平洋戦争中の露助を殺しまくった時期など皆嬉々としていただし。それが今じゃ腑抜けばかり。」

 

「何を言っているみょん。」

 

「まぁ戦車道の西住流位は知っているし?」

 

「・・・かじり程度だみょん。」

 

「一般教養位でしたら。」

 

「2人をスカウトしに来たし。」

 

ペラペラ

 

「そういえば桂言葉は対人恐怖症らしいけど私は大丈夫だし?」

 

「・・・あ。」

 

「最初の恐怖で打ち消した?かな?・・・あ、これから2人は家で生活することになるし。これは決定事項だし。」

 

「「え!?」だみょん!?」



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分裂の開始

宰相就任して、葬式の次にやった事が精神病院からの人材確保と狂気の沙汰をやったかなに分家、マスコミ問わず批判が殺到した。

 

が、これをかなとしほは黙殺した。

 

「これでよかったのですか?」

 

「はい。家元。これでいいし。」

 

「しかし、なぜ人を殺した経験がある同じ年がいれば私の乗務員にしたいなどと・・・日本の西半分の人材なら集め放題だったのに。」

 

「孫には甘いだし。」

 

「・・・ほむには苦労しか与えられなかった。才能が乏しく孤立した幼少期も私が庇うことができず、池田家に単独で送り出し、高も反ほむ連合を許してしまい、最後には両足を失った。理解者だった友人の自殺か事故死かわからない死に方、レイプ被害であなたを産む為の苦労・・・安全と思ったモーリシャスでも戦闘に巻き込まれて未亡人に・・・」

 

「・・・モーリシャス国際大学の戦闘は1000人規模の敵がいたし。偶々敵の侵入した場所が日本人が住む区画に近くて巻き込まれて、幼稚園に行っていた私達幼児と、戦車道の訓練でその区画にいなかったほむ、佐藤さん、安部さんだけが生き残り、佐藤さんと安部さんが訓練用のT-54に乗って鎮圧に乗り出した。」

 

「・・・。」

 

「菜々さんが腹部を被弾して、代わりに私が乗って、百数十人を殺して・・・。」

 

「・・・。」

 

「死を経験したかしないかで、選手としても変わることに私は気がついたし。」

 

「ほむはどうなのですか?」

 

「そこだけは絶対に曲げなかったし。あくまでも天才を倒す凡人を創のが母であるほむの育成方針だから。」

 

「・・・そうですか。」

 

「さてと、私はこれからどうすればいいし?私は一応飛び級で大卒だし。」

 

「拾って来た子をどうするかですが・・・」

 

「私が勉強教えるから高校までみっちり仕込ませてほしいし。」

 

「まぁ下手な中学に通わせるよりは良いでしょう。それで、高校はどうするのですか?」

 

「西住流にとって私は異分子だし。だから次期家元を高校に入学したら決定して西住流対私という構造にしてほしいし。」

 

「今は孫達を区別しません。くじらとめだかも今の段階でかな、あなたが教育しなさい。」

 

「・・・わかったし。ただ、将来的に島田を潰して西住流で日本を統一して世界の池田流と戦うことになると思ってほしいし。今はアフリカとフランスを池田流に染めたけど、英独露米日中と一部独裁国家を除いて全て染め上げるし。」

 

「私が生きている間に達成しなさい。」

 

(まほ、私はどうすればいいか。本当なら西住流など潰してしまいたいがあなたが西住流を守ろうとしている姿を見てきたから・・・こんな母親でごめんなさい。あなたの子供はあなたの姪に自由を学ばせるから。)



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狂った年

かなが日本に戻った年は狂った年、不透明な年と呼ばれる時代と後の世で言われることとなる。

 

西住かなの宰相就任、ロシア戦車道の魔女風見幽香のロシア政治家との結婚(後のロシア首相)、とある大企業が別の企業で十数年前に破綻したセル計画を繰り返すかのごとく似たような計画を社運をかけた博打に走ったこと等があげられる。

 

別にこの時期だけが日本にとって不透明な時期とは言えないが・・・

 

島田の分裂による求心力の低下を抑えようと努力していた天才島田愛里寿も疲労でリーグ中に倒れてしまった時や、戦車道のティア制度による高校戦車道の下克上、アメリカからの中型学園艦4隻の輸入問題等々、この年だけではないのだ。

 

まぁ、いつも以上に不透明なのは確かだが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、かなは家元であるしほと中学生の制限上限であるティア4の車両もしくはティア3の車両をどれにするか悩んでいた。

 

チハに乗りたいがチハは知波単系列や、戦車道の入門用に各地に渡ってしまっているので、直ぐに動かせるのが無いと、元々私を呼ぶことに反対していた者達が嫌がらせをした。

 

なまじ正論のため家元であるしほが強制徴収すれば摩擦が発生するのでしほは10年前の自分の時代がいかに纏まっていたのかをあらためて思わせられた。

 

「仕方がないし、 Ⅱ号戦車が有ったはずだし。それを使わせてもらうし。」

 

(あれは・・・これも時代・・・。)

 

思い出すのはまだ小さかった頃、まほ、みほ、ほむの3人がいた頃・・・ほむは記憶に無いかもしれないが、1度だけしほも含めた4人でそのⅡ号戦車に乗った。

 

乗るといっても中に入ったわけでなく、戦車の車体に乗っかって、記念写真を撮った程度だが・・・。

 

その後、ほむは居なくなり、Ⅱ号戦車にはまほとみほの玩具となり、これも別の思い出がある。

 

「わかったわ。中学時は貸し出します。ただ、高校はティア6までの戦車を選んでおいてくださいね。」

 

「検討している戦車はあるし。・・・ただ、今の妖夢と言葉は厳しいから徹底的に鍛えるし。」

 

「ほどほどにしなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かながいなくなった今、誰が池田の隊長をやるのかな。僕は気になるんだけど。」

 

安心院なじみは円卓テーブルを囲んだ義姉妹達を見ながら言う。

 

「うにゅ?」

 

「ん~、こなたでいいでしょ。」

 

春香は言う。

 

「えー、めんどくさいなぁ。」

 

「しかし、こなた様、春香様の言う通り、なられた方が私達も動きやすいかと。」

 

「咲夜はかたいなぁ~。実力ならお空でしょうに。」

 

「隊長として任せるのは不安だよね・・・。」

 

「うにゅ・・・隊長はやだなぁ・・・。私頭よくないし・・・。」

 

「まぁ、今は仮でこなたに頑張ってもらえば良いしさ。私達も手伝うから。」

 

「なじみ、押し付ける気満々だったでしょ。」

 

「はて、なんのことかな。」



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かなの力

「やはりくじら様とめだか様は我々分家が預かるべきです。まだ中学生のかな殿が教育できるとは思えませんな。」

 

(こいつらは・・・蝶野亜美貴女が言うことは自衛隊もですか。)

 

分家当主4名、自衛隊代表の蝶野亜美、その他に師範代複数人が家元しほに直訴した。

 

「なりません。これは前に決め有ったではありませんか。」

 

「我々分家としての立場だけであればかな殿が宰相なのは繋ぎとしての役として置きつつ、しほさんが手綱を握ると思い、折れたのですよ。何ですかあの狂人は!!」

 

「・・・。」

 

「自衛隊からも彼女を危険視する者もいます。犯罪者を擁護するなどもってのほかだと。」

 

「そこまで言うのなら教育できる実力があるということですね。」

 

「何を今更。」

 

「かな。」

 

スッー

 

「はい。」

 

「聞いていたと思いますが、実力と思想の両方に彼女達は不安があるようです。どちらかでもいいので証明しなさい。」

 

「ならばティア4で戦います。相手は誰でもいいですので。」

 

「言ったな。」

 

「ええ。」

 

「家元、各家と自衛隊代表の5両の一騎討形式で後日場所はしていさせてもらいます。」

 

「宰相、よろしいですね。」

 

「はい。わかりました。」

 

明確なかなと分家の敵対はここから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「会ってからまだ数日しか経過してないけど、一緒の生活はどう?言葉、妖夢。」

 

「家事は馴れてたし、こう、なんと言うか、武士のような感じは実家にいた頃から感じるものが有ったから馴染みやすかったみょん。」

 

「ただ、家元さんとその夫の方、家元さんのお父様以外の方の視線が冷たくて・・・わかっては居ましたが・・・。」

 

「殺人者なんてどこにでもいるものだし。ただ、直接手を下したか下さないかの違いだけだし。昔なら呪殺や暗殺、今では自殺や社会的抹殺。まぁ、私が近くにいる間は私が守れるから安心するし。・・・まぁ、御恩と奉公よろしく、私が守る対価をさっそく支払ってもらうし。」

 

・・・ゴク

 

「今訓練している偶々西住の博物館に保管してあったケホ、あれをある程度操れるようにみっちりしごくし。運転は言葉、装填は妖夢に適正が有るから今はそれだけを頑張ってもらうし!!」

 

「あの・・・スペックだけ見たらイギリスのマチルダやドイツのヘッツァー、ソ連のSU-85Bなんかが強そうですが・・・。」

 

「大和魂が有ればそんな糞みたいな戦車は直ぐに大破させられますから。まぁ、他国の戦車はティア6のヘルキャットだけは認めてるし・・・。」

 

「何でだみょん?」

 

「奴だけには姉妹で誰かがヘルキャットに乗ると日本戦車じゃ勝てないから・・・。」

 

(速度がね。あと90mmが辛いし・・・。)




BLITZでケホ修行中


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大和魂

かなの訓練は精神を鍛え、それに肉体を追従させる形で実力をつける。

 

「もう無理ですよ・・・。」

 

「言葉ァ!!動かないと戦車で引くだし!!」

 

「ひぇぇえ!?」

 

元々運動系じゃない言葉は毎日死ぬ思いをしながら体を動かし続け、妖夢は体力はあるので生きてはいるが、それでもきつそうである。

 

「休憩30分が終わったらもう1セットやるし!!」

 

「ふぁい・・・。」

 

「みょん。」

 

 

 

 

 

 

「かなさんハァハァ・・・凄いですね・・・ハァハァ。」

 

「体力お化けだみょん。」

 

「あれは例外よ。」

 

「「!?家元さん。」」

 

「誰もいないときはしほでいいわ。・・・かなさんは?」

 

「休憩と私達に言ってまた訓練所に戻ったみょん。」

 

「・・・そういえば、妖夢さんと言葉さんはかなさんがなぜ同じ年なのに宰相になったか聞いてませんよね。」

 

「はい。」

 

「聞いてないみょん。」

 

「血縁であることが1つありますが、生い立ちが特殊なので私の養子となりましたが、本来は孫と祖母の関係です。」

 

「孫!?え、しほさんってまだお若いですよね!!」

 

「まず私の家系とかなさんの過去をお二人には知ってもらわなければなりません。お二人がこれから戦ってもらう分家の方々の思考もおおよそがわかってくるので。・・・私には3人の娘が居ましたが、長女はつい最近事故で亡くなり、次女は結婚して嫁いだため数年前に西住から出ました。3女がかなさんの母親にあたる人物で、幼い頃に私の母・・・かなさんからすれば曾祖母がかなさんの母親を勘当にしました。」

 

「その後私がかなさんの曾祖母を隠居させ、実権を握った時にかなさんの母親との縁も少しだけ戻すことができましたが、西住を恨む者によりかなさんの母親は襲われました。その時に宿ったのがかなさんです。かなさんの母親は産む決断をしましたが、学業もあり、体面的に厳しいものがあるため、書類上では私の子であると書かれましたが、母親とかなさんは学校側のはからいもあり、同じ空間で生活できました。」

 

「かなさんの母親は高校卒業後海外で生活し、私の長女も子供を産み、その後家元を継いだのですが、不慮の事故により他界、家元不在となりました。私の長女が家元に就任した時点で分家も家督を子供に渡しているので世代が交代しているため、私の長女の派閥が宙ぶらりんになりました。そこに野心ある西住流の下の者達がかなさんを引っ張り出し、家元にさせようとしたのを治めるためにかなさんを海外から呼び戻し、私が家元になることで沈静化させたのですが・・・元長女派だった分家達と自衛隊がかなさんの解任をさせようとして今度戦うことになったのです。」

 

 



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ある程度戦車を動かせるだけの練度に仕上げたかなは、分家の方が指定した会場予定地に赴き、偵察をしていた。

 

「市街地で来ると思ったが・・・まさかの湿地だし。」

 

選ばれたのは湿地・・・戦車全車両が道を間違えれば即座に行動不能になる立地であった。

 

「快速戦車よりも重戦車タイプで来る可能性が高い・・・し。D.W. 2かマチルダかB1か・・・若しくは駆逐か。」

 

湿地という工夫の仕方で様々な有利不利が出来上がるフィールドに木々による視界が狭い場所・・・

 

「まさに私を潰しに来てるし。」

 

フィールド的には西住流が適しているとは言えないが、対島田流として対策していたためある程度は戦えることをかなは感じた。

 

また、かなは快速戦車に乗る傾向があり、それを見越した一手であるともとらえられた。

 

「西住流は私が想像していた以上に強かな場所かもしれないし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ドイツ ムンスター特別軍事研究所~

 

戦車大国ドイツ・・・それを揺るがす出来事が日に日に浸透していた。

 

池田流の浸透である。

 

ルーミアを筆頭としたエース達が活躍し、純ドイツの選手が後塵を拝するのは陸軍大国であることに絶対な自信があるドイツ連邦軍幹部はこの現状を打開するために特別カリキュラムと称して才能ある子供を住み込みで戦車を操る訓練をさせていた。

 

かなの正反対の才能ある者による戦車道である。

 

しかし、成果が出るのはもう少し後の話である・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うー、疲れたぁ~。」

 

「ただいま~。」

 

「お疲れ様です。ご飯はできてますよ。」

 

千葉にある安いアパートに安部菜々は高校生くらいの娘(養子)と3人で暮らしている。

 

「しっかし菜々さん、本当に外見の年齢と実年齢が噛み合わないよね。」

 

「ふっふっふっ、心はいつでも17歳。」

 

「もうアラサーでしょ。無茶するのは古傷にも悪いよ。」

 

「な!!何を言うんですか鈴仙、古傷なんてへっちゃらですよっ。」

 

「コルセット巻いてないと日常生活も辛いんだから、本当に無茶しないでよ。菜々さん倒れたら私達また行き場を失うんだから。」

 

「行き場を作るために頑張っているんですけどね・・・。」

 

養子と言うより里子というか、養子縁組を前提とした里親というのが正確で、一応高収入と、2人を引き取ったのが中学生だったので、夫不在でも引き取ることができましたが・・・。

 

片方は鈴仙優曇華院イナバとかいう長い名前で、複雑な家庭環境だったため今は呼ばれるのは鈴仙だけしか呼ばれたくないと私が預かった時に話された。

 

私を含めて3人の中で一番の常識人。

 

もう1人は篠ノ之束、セル2の開発者。

 

なんで里子になったのか決して語らないが、なぜか私に懐いたので引き取った。

 

タマに見せるポンコツ、ボケで鈴仙に叩かれることもしばしば・・・。

 

彼女達が公に知られることになるにはもう少し時間が必要であった。



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「・・・来た。」

 

場所は九州のとある湿地帯、前日の豪雨により更に足回りが悪いこの場所でかなと西住の戦いが始まる。

 

かなが乗る戦車はケホ・・・大日本帝国時代に試作された軽戦車だ。

 

小さい車体に、緑色の塗装を施し、更に見にくいように湿地に生えている蘚や水草つきのネットを被せて、認識しづらくなっている。

 

5両の戦車に乗り、各家と自衛隊代表が会場入りする。

 

妖夢と言葉は戦車を降り、整列する。

 

戦車から降りてきたかなを見て妖夢と言葉以外は絶句する。

 

古めかしい大日本帝国陸軍の軍服に傷だらけの大佐の勲章、千人針を腹に巻き、双眼鏡を首からぶら下げて、頭には日の丸が描かれた鉢巻と1人だけ太平洋戦争中にタイムスリップしていた。

 

「ふ、ふざけるな!!こんなコスプレ女が宰相だと!!恥だ、西住流の汚点だ!!」

 

分家の1人が吠える。

 

他の面々も頷いているが、2人だけ違う感想を抱いていた人物がいた。

 

島津家の代表で、島津家の分家に当たる高校生の少女と、久保家の分家の中学3年生である。

 

「・・・甘くさ、見てたけ、世界クラスはバケモンけんね。」

 

「久保やすえ、また訛っとるよ。」

 

「島津のねーさんもけん。」

 

「こりゃ、厳しくなりそうだな。」

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

「心配するまでもなかったわ。」

 

「・・・お母さん。」

 

「みほ、急に呼び出してごめんなさい。」

 

まほの葬儀から数ヵ月、かなの宰相就任やその後の動きを上条家に嫁いでからも耳にしていた。

 

ただ、実家と言えど、みほ自身も上条家の宰相(こちらは実権も完全に乗っ取っている)の地位にいるため中々訪ねる機会がなかった。

 

そんな中、かなの実力を測る目的の決闘があると、母親であるしほから連絡を貰い、これ幸いと駆けつけたのだった。

 

「かなちゃんの噂はここ(日本)にいると中々入ってきませんから・・・でも欧州リーグの覇者ってことは聞いてます。」

 

「実際に指揮をしたのもかならしい。かなレベルの指揮者が複数名いることは確かだ。」

 

「頭脳の1人かぁ。・・・実力もすごいんだろうなぁ。あんなにちっちゃかった子が・・・立派になって。」

 

(みほ・・・婆臭いぞ。言わないけど・・・。)

 

「・・・あの格好はどうにもできなかった。」

 

「何かのジンクスかもしれませんし、公式戦じゃないから大丈夫じゃないかな?」

 

「・・・始まった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

かな以外の練度不足、泥濘による足回りの不良という致命的と言って良いハンデを背負っていたかなであるが

 

「これだけ稼働できるのは良いことだし。」

 

と呟いた。



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