『未完』リリカルなのは~逆行転生で原作大崩壊~ (echo21)
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第一話 リリカルマジカル大崩壊!
※3/25
各話の『美由紀→美由希』へ修正。
気づいた人いる?
なんやかんやありまして、神様が転生させてくれるっていうから相談しましてね。結果的にはサムズアップ! でしたわ。そんでまあ、俺の特典が三つあります。
ひとぉつ、原作キャラ達の精神逆行。
ふたぁつ、エミヤシロウの家事能力。
みぃっつ、一方通行の超能力でげす。
なぜ、この特典なのかと言いますと……いやあ、聞いてくださいよ。俺以外にも転生者が二人もいるそうで。
一人目を聞いた感想。踏み台とかやるぅ。
二人目を聞いた感想。オリシュじゃん、やるぅ。
そんな感じなんですわ。そんなに原作崩壊、二次創作やりたいんか! そう思った俺は考えたわけですよ。
『なのは達の精神を逆行させたら、すでに崩壊だよね』
神様、大爆笑でOK! ふたつ目とみっつ目の特典は私事です。いやあ、家事とか苦手でして。憧れるよね、主夫。一方通行は防衛手段ですよ、暴力反対。
俺を含めた転生者にリンカーコアがあるのは確定だが、能力はランダムなんですって。他二人は『優れた魔力』やら『すごいデバイス』やらを欲して、特典を選んだみたいで……神様がグチグチと荒れたわけですよ。
「まあ、そんな感じですね」
「ふぇっと、なのは? はやて?」
「納得したの!」
「把握したで!」
なにを隠そう、魔法少女三人娘が勢揃いしているのだ! 突如、精神が逆行した三人の幼女は大慌て。
海鳴の公園で黄昏ていたなのはが立った。
図書館で読んでいた本を投げ捨てたはやて。
リニスの教導をうけていたフェイトは墜落、って。憐れみの視線を向けられるフェイトにいち涙。
「だっだって、突然記憶がぐわあって、リニスのシューターがっ……なのはぁ」
「ああ、はいはい。それよりフェイトちゃん。プレシアさんはどうして?」
「そやで、フェイトちゃん。どうやって地球にきたん?」
「あ、俺も気になってました。そこんとこ、どうなんです? プレシアさん」
「ええ、ちゃんと説明するわ。ねぇ、リンディ?」
「ええ、まずは桃子さん?」
「そうねぇ。私達は家族みんな、逆行したみたいなのよ。ねえ? 士郎さん」
「そうなんだよ。聞いてくれるかい?」
実はここ、喫茶店『翠屋』で話し合いが行われているのだが、原作のキャラ達が集合しております。高町一家を始め、テスタロッサ一家とハラオウン一家のミッドチルダ組に、月村姉妹やアリサ・バニングスと執事までいるのです。そうそう。高町士郎さんは意識不明からの目覚めが、逆行した瞬間だそうで。
「それはまた、大混乱でしたね。退院したばかりと聞きましたが……」
俺の言葉に苦笑する高町士郎さんに、恭也さんが頷いて続く。
「俺も混乱したよ。娘をあやしていたら過去に戻っていたからな」
「私も、私も! 稽古後のお風呂場で焦って転んで痛かったなぁ」
「美由希達はいいさ。僕は入院してたから、夢か現か迷ったなぁ」
これには全員で苦笑い。逆行からの時間が経過している為か、それなりに落ち着いているものの、高町家は大混乱だったようです。
「高町家はそんな感じなのね。私のほうは混乱しているところに、リンディから連絡がきてね? その途中からリニスも参加しだして大変だったのよ」
「説得したのよ。今なら間に合うから、お宅の娘さんは~って」
「いや、母さん。あれは説教……いや、なんでもない。義理の家族とはいえ、僕達も逆行しているからな。もしかしたらフェレットも……そうだ、はやて。守護騎士達はどうなんだ?」
「まだや。それも相談したいねん。まあ、擦り合わせが先やからな。後で相談するわ。頼むで、クロノ君」
そんな魔導師組は、割と余裕そう。やはり潜った修羅場が違うのかね。
「一番の原因は君だ。アスカ。君の願いを叶えよう。そんな声で始まっているのだから」
そうなんですよね、クロノさん。のほほんと、五歳のショタっ子を満喫していたら、神様の声で『神楽坂明日香。君の願いを叶えよう』と響いたわけですよ。実はこれ、逆行した皆さんにも聞こえていたそうです。
すわ、一方通行キタコレ! なんて思ってた俺は超能力を試行錯誤して練習してたのよ。そんな俺を発見して拉致ったのは恭也さんだ。全員の日程が合うまでは、軽い打ち合わせ程度だったからなあ。本日の説明で『前世の記憶持ち』と『神様転生』やらを語り終え、甘くしたコーヒーを啜っているのです。
「もう一度言います。『僕は悪くない』」
「ネタはいらんのや。私らをどうするつもりなんや?」
鋭い視線を向ける車椅子の幼女に首をふる。俺はロリコンじゃないし、そんな性癖もないから嬉しくないのだ。
「いやいや、はやてさん。別に何も求めてませんよ。前世の記憶があろうとなかろうと、特典もらって神様転生したからといって現実は現実。二次創作じゃないんだよ? そう思っただけです。というか、神様転生といい、ネタが通じるんですね?」
「ネタやからな。そんじゃ、明日香君。私らは自由なんやな?」
「ええ。精神が逆行したからといって、それだけです。特に何もありません。皆さんの好きに生きてください」
「わかったわ。正直、嬉しい事態やから大歓迎やで」
「あ、ひとつだけ質問がありまして、答えてくれなくてもいいんですけど……」
「なんや? 聞くだけ聞くで?」
「何歳から逆行したのか知りませんが、結婚してた方には謝ろうかと」
「僕は大丈夫だ。逆行した翌日にエイミイにプロポーズをした」
「俺も大丈夫だな。忍には説明したうえでプロポーズしている」
おおっ、男前の二人だ! 見習わなければっ。
「なっ、なあ、なのはちゃん」
「言わないで、はやてちゃん」
「わっ、私達はほらっ、ねっ」
「そうなのよ。アスカ君。私とリニスだけ少し違ってね。私達が死んだ後のフェイトの記憶をみたのよ。それで気づいたの。この娘達、結婚してなかったのよ」
「そこですよ、プレシアさん。美由希もなのはも、どうしてこう……仕事が忙しいのはわかるけど」
「そこはまあ、管理局も悪いけど、三人にも原因があるんだから反省しなさいね?」
リンディさん達に謝る三人娘は置いておくけど、地球組も?
「ア、アリサちゃん?」
「ほっ、ほら、すずか! あの彼氏は?」
「違うよっ、あれは友達! アリサちゃんこそ!」
「あれは仕事の! ねえ、すずか。やめない?」
「ううっ、賛成。やめよう」
忍さんに目をやると、肩を竦められた。
「逆行したのはすずかとアリサちゃんね。私と鮫島さんは説明された側よ」
「エイミィもだ。ミッドチルダ側で確認が取れているのは僕と母さんで」
「アルフもですね。そこでアスカ。あなたにお願いがありまして……」
リニスさんの話だとプレシアさんの負担を少しでも減らしたいので、使い魔契約を解除するそうだ。だけどフェイトさんの未来が心配で心配で……。
「それで俺と契約をして見守ると?」
「はい。アスカの魔力ランクはプレシアを越えています。私の維持も楽にできると思いまして」
「はい? プレシアさんを? 越える? 俺が?」
「ええ、越えています」
「僕も同意見だ。簡易的にみても『SS』以上だろう。管理局に知られていないとはいえ、暴走の危惧もある。きちんとした訓練は必要だ。そういう意味でも賢い選択だと思う」
クロノさんからリニスさんと契約して訓練をしたらどうだと提案された。何かの事件に巻き込まれるかもしれないし、管理局に入局するのもいい。それもひとつの将来設計、就職だからとウインクをする。そんなお茶目は嫁にやれ!
「ええっと、事情はわかりました。すぐには返答できませんが、プレシアさんとも話し合いたいと思いまして」
「あら? 別にいいわよ。老い先短い私は、フェイトをリンディに託すつもりなの。リニスは任せたわ。あ、フェイトも任せようかしら」
「母さん! リニスも!」
プレシアさんの言葉に頷くリニスさんに慌てるフェイトさんを横に、『あら? なのはと美由希も』とかいう言葉は聞こえませぬ。
「プレシアさん。それこそ、時間をくださいね」
「はいはい。フェイト、落ち着きなさい。アスカ君。リニスはすぐにでもお願い。フェイトは友人からでいいわ」
「ちょっと母さん!」
「わかりました。リニスさん。手順がわかりませんので、後程」
「ありがとうございます」
カオスな相談会が終わってからリニスと契約をした。条件は『好きに生きろ』だ。大魔導師のプレシアさんでも負担がかかるはずが、俺にはピンとこない。リニスはリニスで『能力をフル活用できる』状態になっており、プレシアさんを越える魔力値なのが証明されてしまった。その際、リンディさんから物欲しそうな目で見られた気もする。まあ、すぐに封印処置という『リミッター』をかけてもらったけども。
「次はうちの両親か」
「アスカの両親には話してなかったんですか?」
「まあね。ややこしくてさ」
帰宅中にアレコレ話ながらも迷っていたが、両親に打ち明けたさいに『事情を聞いてる』と笑われた。神様はやってくれたみたい。
詳しく訊くと、夢のお告げがあったそうです。不妊治療をしていた母は妊娠を知って泣き、魔導師だった父は喜びすぎて飛び起きたらしい。その為にお告げを途中から聞いていないと笑うので呆れてしまった。ミッドチルダから地球に移住したのも、母の不妊治療の為だったそうで。
「それじゃあ、知ってて黙ってたの? これでも勇気出したんだけど」
「明日香から言い出すまで黙ってようと母さんとだな」
「どちらにしろ可愛い息子だもの。別にいいのよ、前世があろうがなかろうが、ね?」
今生の両親に泣かされた家族団らんは温かかった。リニスの紹介も穏便に受け入れられ、神楽坂一家の未来は明るい。
「そう言えば、フェイトさんの訓練は?」
「逆行してますからね。終わってますよ」
なるほど。そりゃそうだわ。色々と話し合って疲れた一日がようやく終わりましたとさ。
続いていいのだろうか?
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第二話 リリカルマジカル行動開始?
一人目の銀髪。
「ニコポ、SSSの魔力、すごいデバイスだな!」
『ニコポ』Q洗脳? Aしません。
※ニコッとしたら(自分が)ポッとなるだけです。
『SSSの魔力』Q今は? A知らん。
※最大限を越える努力した上での上限値です。
『すごいデバイス』Qすごいの? Aすごいだろ。
※すごい安物のデバイスです。
二人目の金髪。
「優れた魔力、優れたデバイス、努力できる才能だ!」
『優れた魔力』Q優れた? Aエリートですよ。
※平均値よりは上(AA)の魔力値です。
『優れたデバイス』Q優れた? A高いですよ。
※平均値よりは(値段的に)上のデバイスです。
『努力できる才能』Qできるの? A頑張れよ。
※努力したいと思えることです。
三人目の赤髪。
「精神逆行、家事能力、一方通行だぜ!」
『精神逆行』Q全員? A自分で確かめてね。
※原作の主要キャラ達の精神が逆行しています。
『家事能力』Q家事だよ? Aエミヤ舐めんな。
※英霊の家事能力(スキル)はチートです。
『一方通行』Q超能力? A最強を舐めんな。
※学園都市最強の演算能力(頭脳)です。
神様の戯言。
「言葉って難しいですな(笑)正確に言わなきゃね?」
特典がやばいでげす。
カオスな相談会から数週間がたち、リニスとの訓練で進展したことをまとめておこう。リニスに封時結界を張ってもらい、一方通行の能力を中心的に訓練したらやばいことが判明したからね。
まずは、予想していた一方通行の『ベクトル変換』ではなく、認識できる『ベクトルを操作する』ことができたことだ。リニスとの訓練中、俺に迫ったシューターに『やばい! 止まれ!』と焦ったときに起きた。なんとっ! リニスのシューターが止まったのだ。その後に試行錯誤した結果、変換ではなく操作だと判明したのである。密かに『ベクトルを停止できたら一方通行じゃないな』とか思っていたりもする。
それ以外にも、一方通行の解析頭脳といえばいいのか、演算能力が安物のデバイスを鼻で笑うぐらいにある。リニス曰く『バルディッシュを越えてませんか?』だとさ。リニスとの契約で魔力を認識しているので、シューターなどの解析、演算が楽にできる代償だろうか。すぐに痩せる。一食あたりのカロリーを三人前以上必要とするのだから、ガリガリには気をつけよう。あと、体力がないっす。これもデメリットかね。
食事といえば、エミヤシロウの家事能力もやばい気がする。とりあえず、母は越えた。専業主婦のプライドを粉々にしたようで、夕方まで帰らないようにキツく言われた。『夫への手料理は私がっ』という、母には悪いと思っている。それでも、腕を錆び付かせないよう考えた末、桃子さんに弟子入りするつもりだ。エミヤシロウの家事能力はスキルに昇華されるほどだから、かな? エミヤちーと?
まだ認めて貰えてないが、師匠の桃子さんには俺の実力を披露している。『私より上手いなんて』と嘆く美由希がいた。鼻で笑ってやったけどね。美由希は『毒物生成』のスキルもちだし、味見した俺は死にかけたからな! ちなみに、自分で料理をするたびに『マルチタスク』が上達している。俺より先に弟子入りした母の反対をどうにかする方法を悩み中でげす。
そうそう。高町家とは家族ぐるみで仲が良く、うちの母が翠屋でアルバイトを始めた━━息子をライバル視するな、母よ━━俺は俺で体力作りの為に早朝マラソンだけは参加している。疲れたら『反射』しているので、練習にもなっていることは秘密。
なのはは逆行して以来、二人の娘に厳しくなった桃子さんに叩き起こされているそうだ。なんでも、過労死を心配する桃子さんに向かって、『今のうちに怪我をしにくい身体作りをするの! 全力全開なの!』と胸を張ったらしい。そんなわけで早朝マラソンに強制参加しており、過去の己を呪いつつ、毎朝へばっているのだから笑える。全力全壊でげすなあ、飛んできたシューターは反射したよ。ご苦労さん。
テスタロッサ一家は八神家に引っ越してきた。ハラオウン組も間借りしているそうな。ギル・グレアム氏との会談を終えたクロノさんは忙しいのに、暇をみつけては模擬戦に付き合ってくれるので頭が下がる。フェイトはプレシアさんに『親孝行を!』と気合をいれており、限りある余生だから、なるべく後悔がないように過ごして欲しいと思っている。時折見つめてくるリンディさんは、未だに勧誘をしてこないので不気味である。甘味の催促には応じよう。クロノさんには内緒だよ?
はやては記憶にある限りの『夜天の書』を再現するつもりで努力している。未だ目覚めぬヴォルケンリッターの状態を確認しなければ先に進めないのだが、プレシアさんから知識と技術を習っているので『あるで。希望は』とのこと。お願いされたわけではないが、俺とリニスは家事を手伝っている。リィンフォース・アインスの延命に挑むはやての時間は待ってくれないのだからね。めざせ、ハッピーエンドだ。
ハッピーエンドといえば、アリサとすずかだろう。今までと変わらない日常を過ごしながら、逆行前よりも早く仲良くなった女性陣と『結婚する為の出会い』に頭を捻っている。計画倒れにならないように祈ってます。まあ、出会いの前に女子力をあげたほうが……言わぬが仏かね。黙っておこう。アリサ達とは同い年だし、大人の精神を持っていることで仲間意識がある。今はまあ、茶飲み友達としての付き合いかね。
そんな日常に訪れた変化は翠屋に来る転生者達だ。彼らは暗い幼少期のなのはを探して彷徨うも見つからず、諦めたのか、一般客として翠屋に出没している。なのはのグチをよく聞かされる俺に遠慮はない。数十回の模擬戦で『ディバイン・シューター』を反射しまくったときから天敵扱いされているからね。突っ込みのシューターと名付けてあげた。フェイトは速度で攪乱する戦法をとるので、反射の角度を間違えれば一撃もらったりするのだ。さすがはフェイトそん。速度のチラ見せ、やばいです。なのは? もらいませぬ。
「また来てたのか? いやはや、モテるねぇ」
「笑ってる場合じゃないの。どっちも鼻につくの」
「なのはは翠屋があるからな。ドンマイだわ」
「明日香君。お話しよう? ディバイン・バスターができるようになったの! シューターじゃないから反射できないの!」
「ハッ。そこもかしこも一方通行だッ」
「はいはい。二人で『ぐぬぬ』しないの。まあ、迷惑なのよね。あの金銀コンビ」
アリサに宥められて腰をおろす。今日は八神家に集合しており、庭先で休む俺になのが絡んできていたのだ。それにしても、俺達を止めたアリサがついたタメ息がでかい。
「アリサちゃんにも?」
「すずかやフェイトにもね。『俺の嫁』発言の銀髪に『俺が守る』発言の金髪とか冗談じゃないわ。アイツら、もっと下心を隠せないのかしら? 透けてみえんのよ。それにね。私の夫は私が選ぶって言ってあげたし、守られるほど弱くないでしょ? なのは達はさ」
「そこでバーニングしなかったのか? アリサなのに」
「あら、明日香。私はレディなの。バーニングするのなら夫にするわよ」
「まだみぬ夫に?」
「ヘイ、明日香。最近のエクササイズで、私のコーチに褒められたのよ。『ナイス、フック!』ってね。そうそう。明日香にプレゼントがあるわ」
「反射すッぞ」
舌打ちするなよ、レディ。
「まあいいわ。そうだ、明日香。聞いたわよ? 明日香のお母様がお茶目してケーキを投げちゃったそうね。アイツらの顔に向かって」
「あれには驚いたの。拍手したの」
「給料からは引かれたらしいぞ。八つ当たりで小遣いが減ったからな。金が欲しいから桃子さんに弟子入りしたい」
「じゃあ、バスターをあげるの!」
「私のフックもつけてあげるわ!」
「愉快なオブジェにしてやるよッ」
睨み合う俺達にはやての叫び声が届く。慌てて居間に向かえば、ヴォルケンリッターがはやてに名乗りをあげ終えたところだった。はやてを囲むヴォルケンリッターの瞳が潤んでみえる。
「主はやて。お待たせして、申し訳ありませんでした」
「シグナムぅ」
「待たせたなっ、はやて!」
「ヴィータぁ」
「待たせちゃったわね。はやてちゃん」
「シャマルぅ」
「主よ。お待たせしました」
「ザフィーラぁ」
「お久し振りです。主」
「リィンフォースやぁ……みんなおる、みんながおるぅ」
「はやてちゃん!」
「ツヴァイもやなぁ。みんなや、みんなぁ」
「そっとしておこう」
「ネタ挟むなやアホぅ。明日香ぁ。みんなおるんやぁ」
ざめざめと泣くはやてを軽く抱き締めてやる。守護騎士達の生暖かい視線が恥ずかしいんだがね。
「ねぇ、ヴィータちゃん。みんなも逆行してるの?」
「バッチリだ。あたしらに関しては逆行の知識でアインスが頑張ってな。ちゃんと『夜天の書』だぜ」
「そうなの、良かったの……うん? それって大丈夫なの?」
「おうよ。大丈夫だぜ。だから時間がかかったらしいけどな? それにしてもなのは。過去に戻ったからって『なのなの』してんなあ」
「キャラ作りなの! どう? 幼女らしいの?」
「ビミョー」
笑い合うヴィータとなのはに、遅れてやってきたフェイトも涙をこぼしている。気がつけば皆が泣き笑いだ。
「はやて。涙の巻」
「うっさいわアホぅ」
背中をさすってやり、はやてが落ち着くまでに数十分は過ぎただろうか。嬉しそうにお茶をいれたシャマルに気持ちぶん警戒しつつ、皆で一息いれながらこちら側の状況を説明した後に『夜天の書』の状態を聞いた。
アインスが語る現状は最上を越えた。ヴォルケンリッターの逆行した知識を集め、『闇の書』を『夜天の書』に自力で改修したのだから頭が下がる。その改修作業で『闇の書の闇』を解析できたのは、ヴォルケンリッターから『紫天一家』の記憶情報を拾ったからであり、その結果、『砕け得ぬ闇』のユーリ・エーベルヴァイン、『マテリアル』の三人娘も正常稼働ができるという。
「ほんまかっ。犠牲は?」
「はい、ありません。しかし、契約する主が必要です。『紫天の書』の主は、主はやて以上の魔力が必要ですから……そんな人物、は?」
「目を逸らしたい」
「な、なあ、アインス。明日香でいけるんか?」
「可能だと判断します、が……すごい魔力値ですね。私が知る限り最上の魔力値です。過去に類を見ない魔力値ですから……『闇の書の闇』すら越えてませんか」
「やったわっ。ほんじゃ明日香、頼むわ! 何でもするっ、何なら嫁にいくわっ!」
「おい、子狸」
「エロも受け付けるで! ロリでよければなっ!」
「黙れ子狸。リニスと話し合ってからでいいな?」
「うっしゃ! 頼んだで! ……なんや? なのはちゃん? フェイトちゃんにアリサちゃんも? どないしたん、みんなで?」
ガッツポーズのはやてが引き摺られて消えていったので、リニスとアインスを交えて相談する。リニスが快諾したので『紫天の書』の主にデメリットがないのか細かい調査をすることが決まった。
「百合百合しいわねぇ。アスカ君。そろそろ夕食だけど、どうするのかしら?」
プレシアさんの微笑みに慌てる皆の笑顔が眩しい。これもひとつのハッピーエンド?
続けていいそうです。みなさんの反応が早い。次は何を書こうか……。
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第三話 リリカルマジカル犯罪者!
神楽坂明日香について。
総合ランク『SSS+以上』
魔力値は測定不能。
魔力光『黒』
術式はミッド式、ベルカ式でもない。
レアスキル・あり。
※地球人からみた場合。
一方通行の超能力(演算頭脳)×エミヤシロウの家事能力(身体能力)=バグ
※ミッドからみた場合。
一方通行の超能力(演算頭脳)×エミヤシロウの家事能力(身体能力)×リンカーコア(科学魔法)=バグ
いったい、俺の魔力はどうなっているのだろうか? 無意識に魔力版の『AIM拡散力場』でも操っているのか。真相を追究するのはやばい気がするが……神様、俺の身体はどうなっていくのでしょうか。
「なに黄昏てんねん。ほら、明日香。元気だしぃ」
「ニッコニコだな、はやてよ」
「当たり前や。みんながおるからな!」
守護騎士達が後遺症なく出揃ったはやての機嫌は良い。俺達は今日も八神家で寛いでいる。今は守護騎士達だけではなく、俺が契約した『紫天一家』も遊びにきているので、八神家の現状は幼稚園だな、うん。微笑ましく見守るプレシアさんはレヴィにすごく甘く、紫天の家長、ディアーチェを困らせていた。今もまた、お菓子を欲しがるレヴィを叱るディアーチェとアワアワしているユーリにほっこりする。
「どうもこんにちは。ロリです」
「黙れシュテル。お前にあの子が救えるのかッ」
「お断りします。子宮から出直してください。ところでご主人。わたし、気づいたんです。ロリって言うと笑い話ですが、ペドはやばいです。間をとって幼女が妥当だと思いますが、どうですか?」
「ブッ飛ばす」
棒読みの『きゃー』は萎える。
「シュテルんはどうしてシュテルんなんでしょう」
「自分でいうなや。シュテルんはどこに行くん?」
「ヴィータんが『大人のお友達』なので、『なのなの』するにゃのはを狙い撃ったわたしは『合法ロリ』を爆走する予定です」
「おい幼女。それはヴィータの枠だ。それにな。きちんと契約してるから、主人の俺と共に成長するんだぞ」
「なん……だとっ……」
「シュテルん? オサレやな」
「ありがとうございます。満足しました」
一礼して立ち去ったシュテルは、レヴィが狙っていたお菓子に手を伸ばしている。気づいたディアーチェが頭を叩き、うずくまるシュテルにタメ息が出てしまう。自由を満喫しているのはいいが、ネタばかりのシュテルはどうしてやろうか。
「あるじぃあるじぃ。シュテルんが怒られてるからレヴィがあるじぃの分、食べていい?」
「俺の分だったのか。レヴィはご馳走さましたろ? ダメだな。ディアーチェに渡しなさい」
「あるじぃのいじわるっ! プレシアっ、あるじぃのレヴィが食べりゅ!」
「ほんまに園児らしいのはレヴィだけやな」
「だな。プレシアさんの甘やかしがなければ……」
そんなだらけた日にやってきた客がやばかった。正直に言う。相手をしたくないんだ。それでも聞かなければならない。まったく、夕飯前だというのに……。
「そんでまあ、ええっと、ドクター?」
「ふむ? 親愛を込めてスカさんと呼んでくれたまえ! こっちはウーノだっ!」
「初めましてウーノです。ご迷惑をおかけします」
高笑いをする者の名はジェイル・スカリエッティ。広域次元犯罪者までも逆行をしているそうで、延命処置を頼ったプレシアさんも驚いたそうな。
いくらスカリエッティとはいえ、逆行した知識には驚愕したらしく、『結果が知れてる事件を起こすと思うかね? 愉快犯の私が』の言葉には、かなりの説得力があった。一瞬、悲しげな顔を浮かべたスカリエッティが手を振り上げる。
「それでだっ。私は気づいたのだよ。密かに探ったプレシアの側に君がいるじゃないかっ! ……笑ったよ。未知の現象を起こしたヒント、重要人物を解たっ、おっと、何でもない」
「解体は断る。続きをお願いします」
こうしてはいられない! 焦ったスカリエッティは最高評議委員会━━スカリエッティ曰く『三脳』を殺害してナンバーズとヴィヴィオを完成させる準備に取りかかり、拠点を地球に移す為に汗を流したそうだ。管理局とも交渉済みで、レジアス・ゲイツ氏とギル・グレアム氏は大忙しなんだとか。巻き込まれているだろう、クロノさんに差し入れでも入れるかね。
「ちょっ、待てや! どないなっとんねん!」
「ふむ? 私は奉仕活動中なのさっ。私は悪くない!」
「ネタっ、ちゃう! ほんま、なんやねん!」
「ふむ? 今の私はちょっぴり愉快な科学者なのさっ」
「どこがやねん! あかんやろがほんまにぃ」
はやてが頭を抱えているが、どうしようもないと思う。バトンタッチしたプレシアさんが語ってくれたスカリエッティの現状。スカリエッティは司法取引を終えており、プレシアさんとリンディさんが保証人になっているのだから、予想以上に、色んな意味で手遅れなのだろう。高笑いするスカさんにあわせて笑ってあげたら褒められた。『イイ感じの笑い声だ』とさ。
「それじゃあ、スカさん。今日は挨拶をしに?」
「ふむ? プレシアから聞いてないのかね? 延命治療もあるし、保証人もいるからね……」
「待てや。流れがやばいでっ」
「住み込みに決まってるじゃないかっ!」
「くかきけこかかきくけ」
「本当にご迷惑をおかけします」
「うっさいわっ、笑うなやっ! あかんやろがっ! 嫌に決まっとるやろがっ!」
「はやて……私もいるから、ね?」
「フェイトちゃぁん。スカリエッティがっ、明日香がぁ」
今日も八神家は愉快である。
「そうだ。カレーにしよう」
「うっさいわ、ネタ挟むなアホぅ」
翌朝のマラソンを終えて八神家に寄ったなのはが叫んだ。仕方ないね。スカリエッティだもの。
「あんま気にすんなよ。顔芸のひとだから喜ぶぞ?」
「違うの! まだ言ってないの! そうじゃなくて、変質者なの! 犯罪者なの!」
「ううむ。納得しかけたが、私はちょっぴり愉快な科学者なのさっ!」
高笑いは放置します。そうそう。俺を含めた逆行した幼女組は幼稚園には通っておらず、八神家に集まっていることが多い。アリサとすずかのお嬢様コンビは塾通いだ。昨日はなんやかんやと大騒ぎだったし、ナンバーズを引き連れたスカさんが本格的に転居してくる今日は、汗水垂らしてお引っ越しのお手伝いなのである。
「お兄ちゃんだあ!」
「おう。ヴィヴィオ。朝飯は食ったか?」
「食べたよっ。カレーだったの!」
「そうかそうか。うん? なのは?」
「明日香君。私はどうしたらいいの? ヴィヴィオまでいるなんて……」
「なのはママだ! なのはママ、ヴィヴィオも覚えてるんだよ? スカさんがやってくれたの。ねぇ、なのはママ。いつまで魔法少女するの? 若返ったからって……少し、頭を冷やそうか」
「なん……だとっ……」
「そこで話し合ってろ、幼女共」
重たい物はザフィーラを始めとした守護騎士達がやってくれたし、休みを合わせたクロノさんもいる。細かい物は本人達がやったほうがいい。普段なら俺とリニスで昼食の準備をするのだが、士郎さんが気を使ってくれたので出張番『翠屋』です。有り難いことに、恭也さんが宅配をしてくれました。
「うまうま。ゴチになります」
「シュテルんはどこに行くん?」
「素直クールで落ち着く予定です」
「そういえばヴィヴィオ。ウーノさん以外のナンバーズは、みんなヴィヴィオと同い年? シュテル達とも一緒になるのかな?」
「そうなるの。なのはママより若い、若くてね。まだ四歳なの!」
「ヴィヴィオ……ねぇ、明日香君。なのははどうしたらいいと思う? ヴィヴィオが悪魔みたいなの」
「なのはママ。……悪魔で……いい……少し、頭を冷やそうか」
「天丼やで、ヴィヴィオちゃん」
「黙って食えよ、幼女共」
『ごめんなさい、なの!』
「ハモったなあ。シュテルんになのはちゃん」
心暖まる昼食を終えて、ナンバーズがわっさわっさしていた。そんな日に限って、お嬢様コンビも来たのだから幼女で溢れている。八神幼稚園はクロノさん的に厳しかったようで……庭先で休んでいるのを見つけたから、アイスコーヒーでも差し入れてあげよう。
「ありがとう。……そう言えば、アスカ。ちょうどよかったよ。君のレアスキルが判明したから伝えておくが、『
「やばそうな名前ですね、それ」
「ああ。君以外なら暴走してリンカーコアが破裂する可能性が高い。そうなれば運がよくて死亡、悪ければ植物状態だね。幸いなことに、君の反射能力は消費が大きいから、危険性は低いと思う。まさか『過剰吸収』ですら間に合わないほどの消費だとはね」
「それはまた、何と言っていいのか……」
リニスと紫天一家の契約も魔力の消費に役立っているようで、魔力が満タンにならない状態を維持する為にも、できるだけ『反射』を日常的に使って危険性を低くしておけと忠告された。普段は本家の一方通行のアルビノにならないよう、反射をしていない。これが日常的になるのなら、痩せてない一方通行に近づくなあ。
「どーん!」
「忠告はいらなかったかな」
飛び込んできたレヴィを反射したのは、一方通行的な『高い高い』である。苦笑しているクロノさんには、改めてお礼を伝えながらレヴィと遊ぶ。
「お兄ちゃん! レヴィ、ずるいっ。ヴィヴィオも!」
「順番は守れよ」
そうそう。恭也さんがヴィヴィオの親権についてスカさんと話し合っているのが笑えた。かなり複雑な顔を浮かべたなのはに向かって、恭也さんの『今は子供だからな。次は姉妹として暮らせ』の言葉にヴィヴィオが万歳をしている。姉妹ケンカ勃発。飽きるまでやっててくれ。
「にぎやかになりましたね」
「だな。リニスにも苦労をかけるが」
「大歓迎ですから、任せてくださいね」
ふと気づいた。ジュエルシードが降ってくる前に『闇の書事件』と『JS事件』が終わってないか? なのはがレイジングハートを手に入れてないんだけど……あ、うん。今のなのははデバイスなしで戦えてるからね。大丈夫だろう。うん? ジュエルシードの輸送中を襲ったのがプレシアさんなら。
「な、なあ。リニス。質問がある」
「はい? 何でしょうか?」
逆行以前も今回も、プレシアさんはやってないそうだ。そうすると、ユーノ・スクライア氏が逆行していない今、ジュエルシードの事件が起きる可能性はある。これでレイジングハートに逆行の知識があったら、ユーノ氏は泣いてもいいなあ。ユーノ・スクライアに幸あれ。
このまま行くとグダグダに(汗)
ユーノ・スクライアに幸あれ。
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第四話 リリカルマジカル転生者達?
『ユーノ、レイジングハートと出会うの巻』
「デバイス? インテリジェンスかな……よいしょっと」
『やっとですか、淫獣。早くマスターがいる地球まで案内しなさい。これだから淫獣なんですよ』
「罵倒されたっ」
『私はレイジングハートですから……レイハと呼び、敬いなさい』
「しかも無視されたし……これはいったい、どうなってるのかな? ちょっとデータを拝見」
『そうやって弄るのですね? エロ同人みたいにエロ同人みたいに!』
ユーノ・スクライアに幸あれ。
※あくまでもおまけ。時系列は本編と同じです。
翠屋のテラス席のひとつ。待ちにまった誰かがいるのだろう。だからこそ、スカさんなみに声を張り上げようと思います。
「今ここにぃ、『転生者オフ会』を開催しますッ! 司会はこの俺、『カオスに向かって一方通行、アクセラロリータじゃありません』の神楽坂明日香! 助手兼にぎやかし、俺の頭に乗るのは使い魔である『山猫ってリンクス、あ、イレギュラーではありません』でお馴染みのリニスです!」
「にゃあ」
「解説はこの幼女な姉御、『おっきなお友達はいらん。合法ロリの旦那求む』のヴィータ!」
「見せてやるぜっ、本当に勇気あるロリを! ……これでいいのか?」
「ありがとうございます。ゲストはこちら、噂の金銀コンビの片割れ『ニコッとしたら、自分がポッとなって気持ち悪い』の銀髪こと穂村佑樹! そして相方『他人を守る前に自分の世間体を守れ』の金髪ことグレン・マーガロイド!」
「スカリエッティに顔芸仲間だと思われてよぅ。本気でへこんでるんだぞ。気遣ってくれ」
「桃子さんから説教されてさ。周りの子供に悪い影響があるって言われてね。落ち込むよ」
金銀コンビが翠屋に出没したさい、なのはとシュテルを間違えてニコッとした穂村君が悪い。昼食を食べにきていたスカファミリーもいたからね。バッチリ見られたのさ。高笑いするスカさんと愕然とする穂村君。騒ぎを収めたかったのか、これに遭遇したマーガロイド君がシュテルを守るように近づいたのに、『おお、リアル中二病さん達ですね。初めましてシュテル・エーベルヴァインです。ご主人、ご主人。リアル中二病ですよ、リアル中二病!』とか言って、机を叩き出したからね。仕方ないね。あ、そうそう。桃子さんと一緒にシュテルを叱りました。
「そんでアスカ。何するんだよ?」
「ズズっと啜るな、ヴィータ。はしたない」
「うっせい。いいだろ、別に」
とりあえず金銀コンビに『仲間だよぅ。逆行だよぅ』という説明をしたら、二人揃って頭を抱えた。
「あ、そうそう。二期と三期は解決済みで、残りの夜天組とナンバーズは今日も元気に八神家にいる。ほんでまあ、ヴィータ。アインスとヴィヴィオは? あと、ウーノさん」
「今の時間なら訓練だな。ヴィヴィオはザフィーラとストライクアーツか。アインスはプレシアとデバイス弄りだろ。あたしが出る前、ウーノとシャマルが洗濯してたはず……あ、あたしはなのは待ちだからな! それなりに家事してんだぞ! なのはの勉強待ちなんだからなっ」
「ナイスツンデレ?」
「ティアナはこんな感じだった、はず」
ストローを啜るヴィータに視線を向ける金銀コンビの表情がやばいでげす。
「アスカ。レヴィが騒いでますので、八神家に向かいませんか? スカファミリーは行きましたよ?」
「お? 俺らもそうするか。ああ、二人と話し合ってから向かうわ。先に紫天一家を連れてってくれ」
「了解です。それと、おやつが切れてます。プレシアとリンディのお土産も?」
「あ。クロノさんが来る予定だし、コーヒーの豆が切れていたからさ。頼むわ」
「わかりました。そちらも買っておきます。他に何かありますか?」
「他には……特にないと思うが、一応な、念話で確認をとってくれ」
だんまりの金銀? 飛び降りたリニスが紫天一家の席に向かった。
「ア、イ、ス! ア、イ、ス!」
「黙れヴィータ。我慢しなさい」
「待たせたなっ、なのはなの!」
「やべえ、意味がわかんねぇぞ」
「くそっ、なんでこうなったっ」
かなりテンションが高いなのはの登場に、金銀コンビが遠い目を送る。ヴィヴィオが来てからはっちゃけてるなのはさん。実は、なのはさんじゅうきゅうさいの魔法少女組は、社畜の一歩手前の環境から逆行してきたらしい。それはもう、ネタで『将来の夢は?』と訊けば『高町なのは、奥さまという名のニートを目指すの!』と言って、桃子さんの『全力投球で叱ってあげる』に震えあがった過去をもつ幼女だ。残念だったね。
「そうか。俺の嫁はいなくなったんだな……」
「可愛らしいなのははもう、いないのか……」
「失礼なの。だけど、許してやるの。ここ最近の日課で『感謝のディバイン・バスター』するなのはは忙しいの。それに明日香君の扶養に入って、家事をリニスさんに任せる夢の生活を目指してるの。だからね、金銀コンビはバイバイなの」
「アッ、イッ、スッ! アッ、イッ、スッ!」
「黙れ幼女共。愉快なオブジェになりたいンか?」
『ごめんなさい』
とりあえず、八神幼稚園の現状を伝え、美由希の試食トラップを潜り抜けて八神家にやって来た。金銀コンビには悪いが、お嬢様コンビにも来てもらい、『原作大崩壊!』を理解した二人がわめく。そんな金銀コンビを睨むプレシアさんのチェックは厳しく、『養えるだけの貯蓄を示しなさい。話はそれからよ』の無茶ぶりに拍手する女性陣。ふと目を向けたクロノさんが、視線を逸らした事実に哀愁を感じた。
「んんッ、二人共。何なら管理局で働くかい? 忙しいからすぐに貯蓄できる。……よければ、だ。僕が紹介すれば手続きも早いし、すぐに働けるが?」
「管理局はブラックだろうが。最高評議委員会が……い、て? まさかっ」
「スカリエッティがやってしまったよ。未来の大事件は起きない。起きないんだが、すでに皺寄せがあってね。前よりも忙しいかもしれない。……話は変わるが、ユウキ・ホムラ。グレン・マーガロイド。よければ入局しないかい? 二人なら、いや、二人共歓迎しよう」
「盛大になっ。じゃないわ! 同じ話題だろうがっ!」
「オレもちょっと遠慮を……五歳で就職は厳しいです」
「そうか。ダメか。管理局は生け贄を募集している。気が向いたら言ってくれ」
『嫌です!』
知ってた。まあ、色々とぶっちゃけたお陰か、金銀コンビとも仲良くなってきた。父がミッド出身の俺とは反対に、佑樹の母親がミッド出身で父親が日本人らしい。管理局で事務職をしていた母親が観光で日本にきて一目惚れ。その流れで生まれたのが佑樹である。それで五歳の誕生日に貰ったインテリジェンス・デバイスを自慢気にみせたくれた。
「すごく……安物です」
「はあっ! 嘘だろ?」
値段的な意味でクロノさんに説明されて落ち込む佑樹を放置し、グレンの事情を聞いたら愉快だった。グレンを妊娠中の間に浮気した父親にキレた母親は、母国であるアメリカを捨て、ひとりで日本へ飛んで出産。現在は、バニングス系列の企業で顧問弁護士をしながら、ひとり息子を育てる生活である。
「パワフルなお母ちゃんやなあ」
「はやて? 聞いてたのか……」
「まずくね? 桃子さんの説教」
………………。
「やばいやろ」
「やばいよな」
「やばいなあ」
はやてと一緒に肩を叩いてあげてたら、アリサが携帯を片手にニヤニヤして近づいてくる。『絶望したっ!』なんて言いそうなグレンは、『グレンのお母様にメールしたわ。きちんと怒られなさい』という言葉と共に見せられたメールの内容を知って崩れ落ちた。よくある二次創作のように逃避するのではなく、現実がみえてしまった金銀コンビに世間は世知辛い。
「二人はどうしたの? とりあえず、ざまあなの?」
「これじゃ、俺……原作を守りたくなくなっちまうよ……」
「ネタ挟むなアホぅ。まあ、あれやな。転生者達がいう『原作』は、私らからしたら『未来だけど、経験済みの過去』やからな。どんまいや!」
「俺の嫁……やはり二次元にしかいない、架空の生物なのですね。頑張ってください」
「うるせぇ。ガチでへこんでるだぞぉ」
「俺が守る……もうすでに、ご自分を守られていないのが明白。そのうち『オレがデバイスだっ』というのを期待しています」
「機動戦士じゃないから。中二病扱いはやめてくれ」
「追い込んで楽しんでるシュテル。おやつ抜きな」
「ででーん。シュテルん、アウトなの!」
「かちーん。にゃのはに八つ当たりします。桃子さんにメールします」
静かに庭に出たなのはとシュテルの模擬戦が始まったが、どちらも叱ってもらおう。
「桃子さんにメールしますた。まあ、現状は理解したか? ちなみに、俺らよりひとつ下の四歳だからな。シュテル達は」
「嫌になるほど理解したわ。このデバイスに『グレンダイザー』って名付けたのによぅ。マジでかぁ」
「オレは帰るのが恐くなってきたよ。ところでさ、シュテルの性格が一番ダメだと思うんだ、オレは」
「なのはとシュテル、ヴィヴィオは諦めろ」
『はい』
二人共、思うことはあるだろう。まあ、俺からしたら現状の認識を共有できたことが救いだな。反発して暴れたりするようなこともなく、本当にコンビのように慰めあってる二人が笑えた。彼ら二人の黒歴史に刻まれた一ページは、しばらくの間からかわれるのだろう。それでも穏便にすんでよかったよ。
「あ、あるじ。レヴィが三人分おやつを、その」
「ユーリ・エーベルヴァイン? おい、明日香。暴走とか大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「おいばかやめろ」
「ユーリ。ちょっとおバカでノリがいい佑樹に、ユーリの状態を教えてやってくれ」
「あ、はい。わかりました。……そうですね。一番の心配事でしょうから、暴走の件からですね。簡単に言えば暴走しても、あるじに勝てません。マテリアルどころか、ここにいる魔導師全員であるじに挑んで負けましたから、億が一暴走しても安心してください」
「フルボッコだ、ドン」
「待てよ、おい。意味がわからん」
「大丈夫だ、問題ない」
「おいばかやめろ、じゃない! 詳しく話せっ。グレンも来いっ。重要な話だ!」
どうにかこうにか、アリサを味方につけようとしていたグレンを佑樹が引っ張ってきた。遠い目をしながら語るユーリには悪いが、全員の攻撃を『反射』するだけの楽なお仕事でしたね。なんせ、空中で立っているだけでいいのだからね。一方通行だから仕方ないね。
「そんな目で見られてもテレる」
「おいこら明日香。チーターじゃねぇか」
「佑樹くぅん。『僕は悪くない』」
一万字こえたらアクセスが(白目)
皆さん。これは不定期更新なんだからねっ。
あ、あの。活動報告でアンケート紛いを始めました。
あのキャラにスポットを! 喋らせろ! などがありましたらご協力ください。
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第五話 リリカルマジカル実験台!
子供をもつ大人も安心!
恐ろしいほどに安くて小さい!
でもでも、インテリジェンス・デバイス!
※機能は以下の最低限になります。
曖昧な返答機能。
念話などの各種通信。
簡易バリアジャケット。
簡易プロクテクション。
詳細はこちら
『管理局広報課』マユ・ホムラまで。
時は遡る。今思い出しても薄暗い『時の庭園』を案内してもらいながら話し合ったときだ。リリカルなのはの原作にあった、プレシア・テスタロッサの悲願は娘の蘇生であり、満たされつつある今もなお諦めきれない妄念は刺激し続けている。だからこそ、カプセルの中の彼女、『アリシア・テスタロッサ』の前で両手を広げて下卑た笑みを浮かべ、その本領を発揮した科学者に向ける視線は厳しいのだろう。
「死者の蘇生? レリックウェポン? すでに知識はあり、結果はみえているうえに材料もある。君の延命治療は奉仕活動の一環だがね。プレシア・テスタロッサ。君からの対価、報酬はいらないんだよ」
「ジェイル。ジェイル・スカリエッティ」
「そう! すでに既知となったあの未来。私はもてる限りの技術を披露したのだ。制御された鎖を千切り、私怨に狂う心を弄んだのた! その結果が今だよ。今なのだよ、プレシア・テスタロッサ」
「ジェイル。聞きなさい、ジェイル・スカリエッティ」
「だからこそだっ。何だね、あれは? 『認識するベクトルの操作』だとっ。いいじゃないか。堪らないじゃないか。よろしいじゃないか。やりますとも! やってみせますともっ!」
「だからね。アスカ君が実験に協力するそうよ?」
「ありがとう! 本当にありがとう!」
やったね、スカさんの実験台になっちゃったよ! 狂喜のスカさんは気持ち悪いなあ。
「これでアリシアが……フェイト、レヴィ……私は。私達はアリシアと……」
フェイトに似たレヴィはアリシアの現身ともいえ、精神的に幼いレヴィの世話をやくフェイトを見守る日常はプレシアの心を確実に傷つけていた。アリシアの『妹が欲しい!』という言葉を思い出したプレシアは、誰よりも深く悩んでいたのだ。そこにつけ込むスカリエッティは狂っている。母娘の救いだとはいえ、自身を差し出すのは悪魔の契約。『無敵』を目指して実験に参加した彼がよぎっていった。
「まあいいさ。スカさん。まずはプレシアさんの強化。そんでアリシアの蘇生。それらが完了したらモルモットをしてやるよ」
「本当にありがとう。でも、いいのかい? 私はちょっぴり愉快な科学者だけど、ほんの少しだけマッドの自覚があるんだ」
「別にいいさ。スカさんなら、世界で一体だけの貴重なモルモットを。それなりどころか、かなり丁重に扱ってくれるだろう?」
「いやいや。ここまで信頼されたのはゼスト・グランガイツ以来だね。……もちろんだよ。細胞のひと欠片でさえ愛でると誓おうじゃないか」
「スカさんが誓うの? 何に? ……なら、その狂気と欲望に誓ってくれよ? 俺の超能力は誰にも解明されてない、文字通りの神様のギフト。神への反逆だからって、ビビってケツまくるなら今だぜ?」
「いいとも、いいとも。無限の欲望に誓おうじゃないか。ケツまくるぐらいなら死んでもいいさ。私の専門は『生命操作技術』なんだよ? 神秘や倫理をレイプした私が逃げるわけないじゃないか。最高に愉快な出来事でイキリ立っているほどだからね」
スカさんの薄ら笑いに返すように笑い声を漏らした。これだから科学者はやばい。本当に嫌になるぐらい人間らしいからなあ。そんな俺達に向けて微笑むプレシアさんは『私が言うのもなんだけど』と肩をすくめて見せる。
「まるでね。悪の結社の誕生だわ」
『それほどでもない』
あれから一ヶ月弱。待ちにまった瞬間がやってきた。レリックウェポンの『生者素体』になったプレシアさんが固唾をのんで見守る中、『死者素体』が適用されたアリシア・テスタロッサの目が開かれる。ほんの一瞬の出来事に息を吐く。
「ああ、アリシア……アリシアっ」
「稼働を確認したよ。諸々の検査があるが、恐らくは大丈夫だろう。問題は記憶だが……なに、すぐに結果が出るさ」
「ジェイル。私にも検査をさせなさい」
「もちろんだとも。自分の目で確認したらいい。私には未知の実験台……治験者が待っているからね! いやあ、みなぎってくるなっ!」
「言い直しても変わらないわよ? ……アスカ君。本当に、あなたの協力に感謝するわ。本当に、本当にありがとう」
「プレシアさん。少し早いですからね。まずは検査、記憶を確認してから、改めてお願いしますね?」
「そうね。本当にそう。まだ油断はできないわね」
高笑いするスカさんはウーノさんに、プレシアさんはリニスに任せて時の庭園から八神家の地下へ戻った。昼時を過ぎた八神家は静まり返っている。遊びに行ってる者、働いている者、休んでいる者……各々が満喫する自由にアリシアが加わるのも時間の問題か。
「ほいさ。『ベクトル・サーチ』……リビング?」
向かった先のリビングでは、ひとりで茶をすする佑樹がいた。せっかくなので背後から近づいて肩を叩こう。
「うおっ。……明日香かよ。邪魔してるぜ」
「いらっしゃい。佑樹は何かしてたの?」
「うん? ああ。グレンダイザーモデルがさ。面白いぐらい売れてるみたいでよ。母ちゃんから明日香へお礼のクッキーを届けにきて、茶をな」
「マジでか。そんでブツは?」
「レヴィが消化して本人は睡眠中」
「お? 佑樹くぅん。餌付けか? 餌付けなのか?」
「待てまて。純粋に癒しだ。ここにいる幼女紛いじゃ感じられない癒しをだな……あ、そう! アリサ! すずかも来てるぞ? 庭だな、庭へ行こう!」
佑樹に呆れながら庭へ出ると、見慣れたお嬢様コンビが優雅なティータイムを味わっていた。俺達が座るのを待っていたのか、すずかの笑い声が風に乗って聞こえてくる。
「明日香君。お邪魔してるね? 佑樹君はさっきぶり」
「ハイ。明日香。私のオリジナルでよければ紅茶はいかが? それと佑樹。プレシアさんから『まて』ってメールがきたけど?」
向けた視線を逸らされたよ。
「マヌケは見つかったな」
「そうみたいね」
「まったく。ね、佑樹? 光源氏計画なんてしてないでしょうね? リニスから『罰則はファランクスシフトを』ってきたけど?」
妙に上手い口笛を吹きやがって。
「アリサのオリジナルを頂こうかね」
「ええ。よく味わいなさい」
「ねぇ、明日香君。最近のアリサちゃん。お姉ちゃんみたいな、こう、人妻みたいな雰囲気を出すときがあるの。何か知らない、かな?」
小首を傾げるすずかは妖艶なときがあるよ? 言わないけど。
「うぉいうぉいうぉい。まあ、聞けって。グレンダイザーのコピー品、グレンダイザーモデルが売れててよ。明日香へのアイデア料というか、お礼のクッキーを持参した俺に落ち度があると思うか?」
「それを食べたのはレヴィと?」
「レヴィちゃんと?」
「佑樹ね。他は? はい、紅茶」
「子鴉らもだな。ほら、御主人。件のクッキーだ」
深いタメ息を吐きながら俺の隣に腰を落ち着け、クッキーをテーブルに広げた。
「ディアーチェだけか? ユーリは?」
「昼寝だ。レヴィらと寝ておる。ナンバーズらもな。シュテルは騒がしくてかなわん。美由希のクッキーを食べさせて寝かしつけたよ。アリサ嬢。我にも馳走を」
「いいわよ。お疲れ様ね? ディア」
「まったくだ。この一時がなければやってられん。それに御主人。レヴィとヴィヴィオばかりでなく、ナンバーズらやユーリとも遊んでやれ。皆が寂しがっておる。御主人は皆の御主人、兄様なのだろう?」
「そんなこと言っちゃって。ディアちゃんはアレだよね。みんなのお母さん」
「うるさいわ。我は王ぞ。皆が健やかに暮らす為に動いてるにすぎん。それと下郎。貴様にレヴィはやらん。子宮から出直してこい」
佑樹を鼻で笑ったディアーチェはアリサから受け取った紅茶に口をつけ、ディアーチェが漏らした息にアリサが微笑みながら頷いていた。
「なんだか、のんびりするなあ」
「もしかして明日香。疲れてる? スカリエッティのおじ様の実験ね。それが負担になってるの?」
「んにゃ。問題事がひとつ、形になったからかね。アリシアの件さ。だから、ひと息。……アリサ。ありがとな」
「いい? 無理はしないこと。いくら最強でも疲労はするのよ。心も身体もね。……私はいやよ。明日香を看病するのは。頑張らないで楽にね。明日香らしくいきなさい。愉快なオブジェになりたくないでしょ?」
アリサのウインク。そよぐ風に乗った紅茶の甘い匂いが鼻をくすぐる。
「ハッ。そりャそうだ、なりたくねェわ」
「あれ? アリサちゃん見せつけてる?」
「マジやばい。幼女じゃなくて女だろぉ」
「アリサ嬢。少しは周囲に気を配らんか」
…………真っ赤。
「どうも王様。ポイズンクッキーの返礼シューター」
「喰らうかッ。下郎のプロクテクション!」
「うぼわあ」
「アリサアリサ。真っ赤だよ? 風邪? レヴィは強いから風邪ひかないもんねぇ。いいでしょいいでしょ!」
「ヒッく。ディアーチェ……あるじぃ……ヒッく」
「お兄様! 聞きましたわよ! クアットロもお兄様と一緒に実験台になりますわ!」
「お兄ちゃんっス! わたしとも遊ぶっス! 今度こそゲームで勝つっス!」
「はやてさんが帰ったでぇ!」
「あ、兄様。わ、わたしと訓練、ナイフ投げを、その、ご一緒しませんか?」
「ヴィヴィオの勝ちぃ。なのはママの負けぇ。『フラッシュムーブ』だそうとして転んで恥ずかしくないの? ねぇねぇ。恥ずかしくないの?」
「今のは無効なの! むかし墜落したときの後遺症が疼いたからなの! 決して膝を擦りむいて、思ったより痛かったわけじゃないの!」
「おうおうおう! ヴィータさまのお帰りだ! 家までダッシュはヴィヴィオの勝ちなあ」
「はあ。はあ。はあ。はあ」
「グレンダイザーのグレンが、はあはあしてますよ! シュテルんは、シュテルんは逃げません! 闇に滅せよっ!」
「アリサちゃん。助かったね?」
「すぅずぅかぁ」
「きゃーっ、アリサちゃんが怒ったぁ」
今日も愉快な八神家である。
「オラオラァッ、黙れ幼女共ッ! 愉快なオブジェに変えてやンよッ、オルァッ!」
今回の逆行転生は~
『アリサ、デレる?』
『王様、初のセリフ』
『内密な? 光源氏』
~以上の三本でお送りします。
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第六話 リリカルマジカル秘密結社?
注意!
今回はいつもよりヒドい! 会話だらけですので笑って流せる方々のみ、お読みください。
毎回そうだって? いや、ほんとに。いつもよりヒドい(白目)
アリシアの蘇生から数日が経ち、明るく懸命にリハビリをこなすアリシアは受け入れられていた。アリシアには目立つような後遺症がなく、死亡期間中の記憶もなかった。すぐに紹介された『妹』のフェイトが世話をしてくるのが不満で、甘えん坊のレヴィこそが『妹』だと言い張っている。そこはまあ、みんなの『末っ子』だと自慢気に言うレヴィに呆れたけどね。
「でもでも、家族いっぱいで嬉しい!」
アリシアに幸あれ。気を付けろ佑樹! 『サンダーレイジ』がくるぞ!
それからも、わちゃわちゃと愉快な毎日を送っている。転生者組のひとりであるグレンは、脳筋な魔導師達と共に汗を流している。茶化しながらも付き合うなのはは教導時代を思い出すそうで、『鍛えがいがあるの! 悲鳴が心地いいの!』と楽しんでいた。佑樹は佑樹でレヴィやアリシアの周りをうろちょろしている。『幼女に癒されてるだけだ!』と言い、兄扱いされるように努力していた。まあ、たまに? 焦げてた。俺はアレだ、実験台。たまに脳ミソを弄られてる気もするが、今日も元気だカレーが上手い。そんな感じである。
「それじゃあ、ゲイツ氏の理解も頂けたので、グレアム氏もご納得を?」
『無理にでも飲み込むしかあるまい。なあ、グレアム。カグラザカはこう言っておるが、わかっているのだろう?』
『わかってはいる。わかってはいるが……感情が反発するのだ。間違いなく違法だぞ? 耳触りよくもまあ。新しい治療行為だとはいえ、倫理的にもアウトだ』
『わしは構わん。だからこそ、法を変えようと話し合っているのだ。表向きは治療行為の『機人化』であり、枕に『戦闘』はつかん』
『ゲイツ。嘘をつくな。怪我で引退した者を優先的に治療するなど。結果的には『戦闘機人』ではないか。これは覆らないぞ』
「そう言われましてもね。『陸』には希望が必要です。今は『グレンダイザーモデル』で『基礎AI』をばらまいてデバイス技術の底上げを目指し、即時的には退役者で『機人化』治療による対処を行う。それ以外に『陸』の、失礼。……『海』もですね。管理局全体の向上案は思いつきません」
『それはわかってはいるのだ。その未来にだ。アスカ・カグラザカの実験結果を経て、脳ミソを弄るなどと……賛成できるわけがない。スカリエッティもそうだが、貴様は狂っているぞ』
『その点は同意する、が……『海』の賛同がなくとも、わしは賛成に回ろう。カグラザカの実験結果次第で、埋もれていた才能を発掘できる。新たな分野の『超能力』には期待したい』
『正気か? 脳だぞ? 脳ミソを弄ったヒトなど、最早それは違う人種だっ。狂っているぞ、貴様ら!』
「何も、直接的に弄るわけではありません。自前の演算能力を専門的に発達させていくだけです」
『だから倫理的にもアウトだと言っている!』
『先送りするしかあるまい。少しは落ち着け、グレアム。治療行為には賛同してもらうぞ』
『ぐっ、むう。……致し方あるまい。『超能力』の先送りは絶対だ。治療行為は賛同に回ろう』
「それでは、ご納得頂けたので、治療行為における『機人化』の詳細はお任せします。『超能力』については、また機会をもって話し合うことにしましょう」
『わかった。カグラザカ。自ら名乗りあげたとはいえ、スカリエッティには自重させるようにな』
『まったく。管理局は変わらねばならぬと言うのに……闇が深すぎる。また話し合おう』
通信が切れて息を吐く。プレシアさんにお膳立てされたとはいえ、久しぶりの根回しは疲れた。
「なかなか見れたものだったわ。振り回される人達は大変そうだけどね」
「ああいったプレゼン能力が不足している私は、もう少しこう、愉快なショーにしたくなる。何とかならないかね?」
「スカさんは知らん。プレシアさんは俺をどうしたいのか話し合いませんか?」
「悪の結社の仲間?」
「プレシア女史。それはすでになっているよ。私達と同類だと言われてたではないか」
「それもそうだったわ。あら? これも立派な後継者。人材育成なのかしら?」
「ふむ? ……なるほど。いわゆる『管理局の闇』の後継者を育成しているのか。面白い。面白いじゃないか! プレシア女史。私達の知識や技術を受け継がせてみようじゃないか。アスカ君はぜひ、管理局を乗っ取ってくれたまえ!」
「それ、面白そうね。やってみましょう。……あ。リンディや高町家には内密にね。また、アスカ君が怒られてしまうわ」
「道徳観ってヤツだな。あれは愉快だった……」
俺は辛い。逆行させたことがバレたときも、恭也さんからキツく説教されたからな。
「それじゃあ、ジェイル。アスカ君?」
「はいです。合い言葉は?」
『みんなには内緒だよ?』
すぐにバレた。グレアム氏経由でリンディさんに伝わったそうです。数時間にわたる正座を強いられ、説教をしてくる相手が入れ替わり立ち替わり。最後は恒例のはやてさんです。
「まったく。大変だったぜ」
「あかんやろ。いくら、他人を巻き込まないで、自分が実験台になっとるとはいえな。やってもええこと、悪いことはあるんや。私らもグレーゾーンには目をつぶる。それでもあかんのはあかん。もちっと反省せぇ」
「はいです。すみませんでした」
「まあな。治療行為は善行や。レリックウェポンかてそうやわ。だからこそ飲み込んだわけや。リンディさんもな。それなのに、こう。闇を受け継ぐなや!」
「はいです。すみませんでした」
「ほんまに反省せぇよ。明日香はアレや。結果的に良くなるならええよね? そんな感じや。もちっと他人の事情を考慮しなあかんで」
「はいです。ごめんなさい」
「今回はここまでにしたる。それでもな。事前に私らにも話を通す、約束をしてもらうで」
「はいです。ごめんなさい」
「約束やからな? ほな、キリキリ立って、おやつでも作ってもらおうか。まだまだ桃子さんに届かんとはいえ、私よりも下やからな。明日香は弟子入りしたいんやろ? 私も教えるから、一緒に美味いおやつを作るんやで!」
「はやてさんには感謝してます。はい」
「まったく。気を抜いたらやらかすんは、どないかせんといかんわ」
痺れる足を弄り回されたあとに、はやて監修でおやつを作りあげて皆さんに謝罪をした。かなり呆れた視線を貰ったが、おやつは好評で嬉しかったのだ。気分一新、これからも精進しよう。そんな決意をしていた俺を呼び出したフェイトと、庭のカフェスペースで向かい合っている。何やら決意めいたものを感じるのだが。
「フェイトそんって言ったのがバレた?」
「知らないよ! また、そうやって茶化し……あ。レヴィが言ってた『フェイトはそんそん? にゃのはみたいにそんそん?』でしょっ! 意味不明すぎて対応に疲れたんだよぅ」
「あ。悪い。実はシュテルだから、犯人。『なのなの』に対抗させたって」
「シュテルはもう……じゃなくて、姉さんのことで相談があるの」
「アリシア? 聞こう」
アリシアはフェイトと同じ五歳だが、プレシアさんが言う通りにフェイトの姉としている。フェイトはプレシアさんに応えようとする気持ちの所作が出てしまい、それを感じたアリシアが『フェイトのほうがお姉さんみたい』と不満をもつという。あくまでも『妹』になりたいフェイトは、どうしたら『妹』になれるのか悩んでいたらしい。
「まずはフェイト。妹らしい妹ってなんだ? 何となくでいいから、フェイトが思ってることで言ってみて」
「それはあれだよ。レヴィみたいに甘えん坊な感じ? こうね。構いたくなる感じの。よしよしって」
「甘えん坊の末っ子を自称するレヴィみたいな? 遊んで遊んで! ややウザい。そんなの?」
「そうそう。ついつい世話をしたくなる感じの。可愛いんだよ? ウザくないよ?」
「それは別に妹は関係なくね?」
「うん。妹じゃ……あれ?」
「まあ、アレだ。フェイトのイメージした妹は子供だな。でも、フェイト。大人になっても妹は妹だぞ? ちなみに、身近にいるなのはは美由希の妹だ。すずかは忍さんの妹だな」
「そうだね。そうだよねぇ。なのはが甘えるはずないし。すずかは甘やかす側だよぅ」
「フェイトが二人に何を想像したのかは訊かないが、妹だから甘えん坊だとは言えないってことだな」
「本当にそうだよねぇ。なのはなんて……あ、別に。なのはがすぐに魔力で訴えるとか、すずかが思慮深くて恐いなんて思ってないよ!」
「いや、まあ、いいんだけどさ」
慌てん坊のフェイトそんは迂闊、でも可愛いものだ。
「はあ。そっか。甘えなくても妹は妹なんだね。ちょっと自信ついた」
「だな。妹は妹だ。アリシアにも『私が妹! 何か文句あるのバスター!』すればいいんじゃないか?」
「しないよ! なのはじゃないんだからっしないよ!」
「気づけ、フェイト。自爆自爆」
「うぐっ。なのはには内緒ね? 絶対だよ? ……そうそう。アスカは母さん達を継ぐんだよね? な、ならさ。アスカ・テスタロッサに、なんて」
「フェイト? それなら、アスカ・スカリエッティになる可能性もあるんだが……」
「あ、うん。ごめんね? ……でも、私にとって、レヴィは妹だからよろしくね?」
「あ、うん。……言い逃げっ」
フェイトは速いなあ。
「話は終わったようだな」
「おわた」
「さあ。説教のあとは物理で話そう。今回は父さんも参加するが、約束通りに?」
「わかってます。反射はしません」
「よろしい。高町家の道場までご案内だ」
「きゃーっ、恭也さん格好いい!」
「二割増しだな」
「うぐっ」
「そうだ。『僕は悪くない』」
「恭也さん? 根にもってる?」
「むしろ楽しんでいるさ。……さあ、友よ。逝こうじゃないか。ちなみに、だ。明日香の母さんから外泊の許可が出てる。夜通し訓練だ。うちの母さんからは、『当分なし』だとさ。弟子入りが長引いたな?」
「おわた。マジに終わった」
そのあと? いえるかバカやろーっ。
※どうでもいい話?
なぜか、リリカルな彼女達はダメ男を好きになるイメージがある。
『私がしっかりしないとダメなんだから』という世話焼きが多いような……。特に○○○とか、○○○○ですかね。誰だって? 言わせんなよ、恥ずかしい。
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