この魔眼持ちに素晴らしい世界で祝福を! (サクサクフェイはや幻想入り)
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第一話 この少年に転生という祝福を!

作者はこういう物書きのサイトは初投稿となります、温かい目で見守ってください。
あまり長い前置きとかは得意ではないので、どうぞお楽しみください。
あ、オリ主が嫌いな方はブラウザバック推奨です


「ハァ...ハァ...」

 

一人の少年が裏路地を走っていた、正確には脇腹を庇いながら足を引きずるようにして。よく見ると少年は学生服を着ているのだが、所々に擦り傷や切り傷などがありその傷は大小かかわらず出血していた

 

「ハァ...ッ、ゲホッゴホッ!」

 

ついに少年はその場に座り込んでしまう

 

「ハハッ、これが俺の末路か」

 

口の端からこぼれた血をぬぐいもせず笑っていた

 

「まぁ最初に殺した時から覚悟してたが、最後は殺し合いの中で死ねると思ってたんだがなぁ...」

 

そう言いながら少年は、今の自分の姿を改めて見て笑う

 

「ざまぁねえな...」

 

少年は目を閉じる、次第に呼吸は浅くなり体の力も抜けていった

 

----------------------------

 

「・・・?」

 

俺が目が覚めると変な空間にいた、周りを見回してみると一人のジャージ姿の少年と水色の髪の少女がいた

 

なぜか少女の方を見ると少し頭痛がした

 

「ねぇ早くしてー、どうせ何選んだって一緒よ。引きこもりのゲームオタクなんかに期待してない...から?」

 

少女と目が合う、少女はとても不思議そうな顔で俺を見ている。ジャージの少年が何か喚いているが、俺の方から一切視線を外さない

 

「おい、なんとか言えよこのクソビッチ!大体なんで後...?」

 

そこでジャージの方とも目が合う

 

「「「・・・」」」

 

三人で見つめあい無言の時間が続く、最初に口を開いたのは少女だった

 

「あなたいつからそこにいたの?」

 

「いつからも何も、今だけど」

 

そう俺が言うとサイドテーブルに置いてある本をめくり何かを確認していたが、本を閉じてこちらを向く

 

「・・・まぁいいわ、とりあえずそこのヒキニートは選んでいなさい。私は彼に説明するから」

 

「だからヒキニートじゃない!!」

 

そう言いながら少女が俺に近づいてくる

 

「白夜志貴さん、ようこそ死後の世界え。あなたはつい先ほどあなたは死にました---」

 

この自称女神の話を総括すると俺はどうやら死んだらしい、そして俺はどうやら3つの道を選べるらしい

 

一つ、ゼロから転生するか

 

一つ、天国に行き老人のように過ごすか

 

一つ、ゲームのように魔王を倒す冒険者になるか

 

「どう考えても眉唾物なんですけど」

 

「そう思うのも仕方はないけどこれは事実よ!」

 

さっきの女神っぽいしゃべり方はどこえやら、急になれなれしいしゃべり方になる

 

「さあ、どれにするの?」

 

「・・・別にどれでもいい、今に未練があるわけでもないし。転生するのもいいし、異世界に行くのもいいし」

 

「じゃあ異世界行き決定ね、一人ひとり処理が違うのとか面倒だし、さっき言った特典はそこから選んで」

 

(なら最初から聞くなよ)とも思ったが口に出さないでおいた、面倒なことになりそうだからだ。自称女神はまた席に戻りポテチを食い始める、俺は俺で特典とやらを見ないといけないので見ているジャージに声をかける

 

「悪いけど俺も見せてもらっていいか?」

 

「ん?あぁ、大丈夫だ」

 

そう言って俺が見るスペースを空けてくれる

 

「悪いな、えーと...」

 

「和真だ、佐藤和真(さとう かずま)」

 

「さっき聞いたかもしれないが俺は白夜志貴(びゃくや しき)、志貴でいい」

 

「よろしくな志貴、俺も和真でいい」

 

「あのー、自己紹介とかいいから早く決めてほしいんですけどー」

 

俺と和真が話しているのが悪かったのか、自称女神が急かしてくる

 

「他の死者の案内がまだ残ってるんですけどー」

 

椅子でふんぞり返りながらそう言ってくる自称女神に、イライラしてか和真は隣でプルプル震えていた

 

「少しは待てよ...」

 

個人的にこういうのは、ゲームでもなんでもその時の気分によりきりだ俺は適当に選ぶ

 

「じゃあこれで」

 

そう言って俺が渡したのは「魔力値無限」と書かれたもの

 

「魔力値無限ね、さっきも言ったけど魔法が使えるから魔力値無限はいい選択ね」

 

効果が付与されたのか俺の下に魔法陣が浮かび上がりすぐ消える

 

「なぁ、一ついいか」

 

「何よ?」

 

「さっき処理が面倒だからって理由で俺の異世界行きが決定したよな」

 

「そうだけど、それが何?」

 

何言ってんのこいつみたいな目を向けてくるが気にせず

 

「それって女神さまの上司にばれたらどうなるんですか?」

 

「はぁ?そんなの、まさか」

 

ハッとした顔をする

 

「まぁ思っている通りでいいと思いますよ」

 

「・・・あたしに何をさせる気」

 

「や、特典をもう一個増やしてもらえたらなーって」

 

「・・・」

 

苦虫をかみつぶしたような顔で俺を見るがもう遅い

 

「・・・武器や防具、スキルとかはもうつけられないわよ...流石にそこまでしたらばればれだもの」

 

「いや?あのスターターセットてやつを付けて欲しい」

 

スターターセット お金や武器、防具、など色々なものが入ったものだ

 

「まぁ、それくらいならオプションで付けてあげないこともないわね、なんか希望ある?」

 

希望と言われて瞬間強い頭痛に襲われ一瞬意識を失うが、一瞬のことなので気にしてもいなかった

 

「希望はあるとは聞いたけど、少しは遠慮しなさいよねまったく...えーと、武器を短刀にして防具はなるべく軽いものでいいんだっけ?」

 

「え?あ、あぁ...」

 

そういわれて思わず返事をしたが、俺はそんな希望を言った覚えはなかった

 

(まぁいいや...てか武器と防具ダメって言ってなかったか?まぁいいならいいが)

 

「えーっと、これで完了...っと、というよりまだですかー和真さーん」

 

俺と自称神様が取引している間も、和真は選んでいたようだが決まっていなかった

 

(というより、なんかさっきよりも頭痛がひどくなってきてるんだ)

 

「和真さんまだですか?かーずーまーさーんー!!」

 

そんな俺を知ってか知らずか、自称神様は和真を煽っていた

 

「・・・早く決めろってか?じゃあ決めてやるよ...」

 

和真はプルプルしていたがついに我慢の限界に来たのかゆらりと立ち上がる

 

「異世界に持っていけるものだろ・・・」

 

「そうそう」

 

「じゃあアンタ」

 

そう言って指さしてるのは自称女神だった、きょとんとしながらも自称女神は立ち上がる

 

「じゃあ魔法陣からでないようにた...」

 

そこまで言ってようやく聞き返してくる、ちなみに俺や和真の足元には魔法陣が展開していた

 

「いま、なんていったの?」

 

その問いに答えるかのように近くに魔法陣が現れ中から天使が現れる

 

そこで俺の頭痛はより一層ひどくなる、周りが騒がしいが俺の意識は急速に遠のいていく

 

最後に聞いたのは

 

『忘れるな俺達は殺人鬼だ』

 

自分のような自分じゃないようなそんな声だった

 

 

転送される少し前和真と自称女神は気が付いていなかったが、天使だけは志貴の変化に気が付いていた。志貴は前に倒れるように一歩踏み出したが倒れはしなかった、それどころか普通に立ち眼鏡をはずし始める

 

「なるほどな魔法陣つまり魔法にも死線は見えるのか」

 

「なっ!?」

 

天使は驚いていた、無理もないだろう志貴の黒目が青く光っているのだから

 

「ほー、流石天使か少し集中しないと線が見えないなんてな」

 

「あなた、まさか直死の...」

 

「流石はそういう世界なだけあってご存知なわけか」

 

そう言いながら視線はアクアの方に向いていた

 

「線が見えるなら神だって殺せると思っていたが、こんなに集中してもこんなに薄くしか見えないとはな」

 

そのことに天使はさらに驚いていた

 

「アクア様の死線が!?」

 

「まぁどうでもいいがな」

 

「そこまで力が強いなんて、もしかしたら転生に何らかの影響が...」

 

そこまで言って門が開いてしまう、もう手遅れだった

 

------------------------

 

一人の少年が何やらはしゃいでいた、何故だか「異世界だ」などと言って周りを物珍しそうにして見ている。たいして隣の少女はこの世の終わりのような顔をしていた、そして目尻に涙を浮かべ言葉にならない声で少年をがくがくと揺らしている。そしてその二人の隣の少年は...突然倒れた

 

----------------------------

 

「えーと、つまりなんだ?俺は転生者で魔王を倒すためにこの異世界に来たと?」

 

「まぁ、信じられないと思うけどそういうことなんだ」

 

「・・・」

 

目の前の二人(というか一人)の説明をうける

 

「いや、信じはするが、ふーん...」

 

「なんかえらく興味なさそうだな」

 

「興味がないというか、実感がないというか...実際記憶ないし」

 

「そこよ!そこがおかしいのよ!」

 

それまで黙っていたアクアが口をはさんでくる

 

「何がおかしいんだよ?」

 

「だってあんた達転生したてよ?疲労どころか体のどこにも異常がないはずなのに、いきなり異世界に来てぶっ倒れるとかおかしいわ!!」

 

「あれじゃないのか?お前脳に負荷がかかるとか言ってたじゃないか」

 

「それはくるくるパーになるだけで、ぶっ倒れることなんかないわよ」

 

「いや、もうくるくるパーの時点でだめだろ!?」

 

と和真とアクアの言い合いが始まったが特に止めないで、状況を整理しようとするが手持ちの情報が少なすぎて整理のしようがなかった

 

(まぁ、記憶なんてそのうち戻るでしょ)

 

なんて気楽に考えていた

 

「とにかくさっさと冒険者登録しよう」

 

「そうね、このまま和真と話していてもしょうがないし」

 

「なんだと!?」

 

「なによ!」

 

なぜか言い合いを始めそうになる二人、仲がいいらしい

 

「仲がいいのはいいが、お前ら金持ってるのか?」

 

「仲いいように見えるかこれが!?って、かね?」

 

「うん、金。ほら」

 

さっき二人が言い合いしているときに取ってきたパンフレットを和真に見せる

 

「登録料に1000エリスかかります...エリスってなんだ?」

 

「エリスはエリスよ」

 

何ともざっくばらんな説明に仕方なく俺が補足する

 

「金の単位だ、俺らの国でいう円と同じだ。あとなんか国教にもなってるみたいだなエリス教、そこから来てるらしい」

 

「なるほど...ってそういうことは覚えてるのか?」

 

「みたいだな、記憶とかはないが単語は覚えてるみたいだ」

 

「ふーん...でだ、アクアお前は持ってるのか」

 

「はぁ?いきなりあんな状況になったんだもの持ってきてるわけないでしょ?」

 

「・・・」

 

そう堂々と言い切るアクアに和真は絶句というかあきれた表情をしていた

 

「でも志貴は持ってるわよ」

 

「へっ!?なんで?」

 

「だってそういうオプションつけたんだもの」

 

どうやらそういうことらしいのでポケットを探ってると

 

「ん?これか」

 

ポケットからそれらしいものを取り出す

 

「短刀に防具、エリスに救急セット...おいどういうことだアクア!!」

 

「あんたはイチイチうっさいわね!!」

 

また口喧嘩を始めた二人はほっといて受付に行く

 

「今日はどうされましたか?」

 

「冒険者として登録したいんですが」

 

「では、こちらに必要事項を記入してください」

 

そこには氏名、身長などのお馴染みの記入欄があり、記入し受付に渡す

 

「はい、確認しました。では登録手数料が1000エリスになります」

 

「はい」

 

「はい1000エリスちょうどお預かりしました。では改めてご説明いたします-説明中-それではこちらの水晶に手をかざしてください」

 

「・・・」

 

手をかざすと水晶は光はじめ冒険者カードに記載が始まっていく

 

「おースゲー光ってる」

 

「ステータスによっては複数の職業が選べますから慎重に選んでくださいね」

 

など言っているが、なぜか記載中ずっと少し頭が痛かったので聞き流していた

 

「はい、えーとビャクヤシキさんですね....はあぁぁぁぁ!!?」

 

記載が終わったのかカードを持ちながら近づいてきたのだが、いきなり叫びだした

 

正直に言うと記載が終わって頭痛はなくなったのだが近くで叫ぶのはやめてほしい

 

「全部のパラメーターが平均を大幅に上回ってますよ!?特に高いのが敏捷と魔力がカンストですよ、カンスト!!あれ?でもバットステータスに頭痛が...」

 

「はぁ...」

 

「で、ですがこれならすべての職業になれますよ!」

 

興奮気味で話しかけてくるが正直俺にはどうでもよかったなので

 

「基本職の冒険者でお願いします」

 

「冒険者ですか?ですが...」

 

「後からでも変更できるんですよね」

 

「え、えぇ...」

 

「なら冒険者で」

 

「わかりました...」

 

納得していないようだったが表情を切り替え

 

「それでは冒険者ギルドえようこそ、ビャクヤシキさま。スタッフ一同今後の活躍を期待しています!!」

 

そう言って頭を下げるスタッフの人たち、そして騒ぎ出す周りの冒険者たち

 

だが正直言って俺にはどうでもよかった

 

俺は金を出し、和真やアクアも冒険者として登録を完了する

 

余談だがアクアも俺と同じような扱いを受けた

 

(ほんとに女神様だったんだなぁ)

 

-----------------------------

 

俺たちは今ギルドを出て武具や防具を扱ってる店屋にいた

 

「何から何まで悪いな志貴」

 

「仕方ないだろ装備がなきゃクエストにも出られないし」

 

「ねえねえ志貴わたしこれほし「却下だ」なんでよ!」

 

ロッドを指さしていたアクアだが手持ちの金では買えないので即却下した

 

「とりあえずこんなものかな」

 

「ダガーだけでいいのか?」

 

防具などをそろえるのかと思いきや和馬が買ったのはダガーだけだった

 

「あぁ、初期資金も少ないしなもしクエスト失敗したりしたら飯代もない...なんて最悪だからな」

 

「確かに」

 

「そんなの心配するなんて小心者ねぇ、このアクア様がいるんだから大丈夫に決まってるでしょ」

 

「その無駄な自信はどっからくるんだか」

 

小声で言いながら外を見るともう夕暮れだった

 

「このままクエストってわけにもいかないから今日はギルドよって飯でも食うか」

 

「だな」

 

「そうね!」

 




このすば2期終わっちゃいましたねぇ...
早いところだともうちょうど一週間ですか、というわけなので投稿しました。
まぁ、この物語に関してはテレビ進行なのでもう全部書き終わってるんですけどね。
続きに関しては遅くても来週早ければすぐにでも、というわけでこれからもよろしくお願いします

追記 カズマの名前直しました、いつの間に馬に...


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第二話 この中二少女に祝福を!

気が向いたらと言ったなあれは嘘だ!
いや、プラモ作ろうとしたら微妙な時間だったんでそれなら投稿しようかなと
それではどうぞ!



立っているのか座っているのか、それとも浮いているのか。何もわからない空間にいた。ただひとつわかるのは鮮やかな紅い空間ということだけ。俺以外に何もいなかったはずだが目の前に紅い何かが浮かび上がる

 

それは見覚えがない--とてもよく知っている

 

見ていると不快感が--見ているととても覚えのある

 

そんな人型だった

 

『忘れるな俺たちは殺人鬼だ』

 

-----------------------------

 

目を覚ましたらそこは知らない天井だった、そんなことを考えながら少し痛む頭を押さえ起き上がる。眼鏡をかければこの頭痛もなくなるので、近くに置いてある眼鏡をかける

 

「ふぅ...ん?」

 

自分の考えに違和感を持つ

 

「なんで俺は眼鏡をかければ頭痛がやむことを知っているんだ?」

 

誰に問いかけるわけでもなく自然と口に出していた、だが思い当たることはない記憶喪失なのだから

 

「とりあえずひとつわかるのは...生前から頭痛持ちだったってことか」

 

そう思うと考えるのも馬鹿らしくなってきたので、顔を洗いに馬小屋から出た

 

(今日はクエスト受けるんだったな)

 

結局昨日は時間がなく晩飯を食ってそのまま解散となった、ちなみに馬小屋は和真たちとは別のだ。和真とアクアは一緒に寝てるみたいだが、アクアはものとして連れてこれているので大丈夫だろう

 

---------------------------

 

「ああぁぁぁぁぁ!!!?助けてくれ志貴ぃぃぃ、アクアぁぁぁぁぁぁ!!!!って、おわぁ!??」

 

そう叫びながら和真は草原を駆け回っていた

 

「いやお前助けろとか言われても....」

 

「プークスクス、和真が助けてくれとか、クスクス。ちょー必死で、ちょーうけるんですけど!」

 

俺は苦虫をかみつぶしたような顔をし、アクアに至っては必死に逃げている和真を笑っていた。俺たちのパーティーが受けた依頼は、2日間でジャイアントトードを10匹討伐せよというクエストだ。ジャイアントトードとはカエルのモンスターなのだが、でかい...

 

それから必死に逃げ回るのは当たり前だ、俺の短刀や和真のダガーは刃渡りが短いためカエルに致命傷を負わせることはできないだろう。何回も切れば話は別だろうが。俺が動こうとすると

 

「和真ー、助けてほしければ私をさん付けするところから始めてみましょうかー」

 

とかアホなことぬかし始めたので放置、それよりも

 

(向こうの方で3体も出てきてる)

 

おそらく地響きで目を覚ましたのだろうか、地中から出てき始めた

 

(和真たちは...気が付いてないみたいだな)

 

それどころか何故か和真を追っていたはずのジャイアントトードがこっち(正確にはアクアの方)に向かってきていた

 

「ちょうどいいか...和真ー!こっちは任せたー!」

 

「はぁっ!?ちょ、志貴ー!!」

 

驚いている様子だったが俺が指さした方を見ると納得していた

 

どうやら意図はきちんと理解してくれたようだが

 

「あ」

 

その直後アクアの声が聞こえなくなった

 

「ちょ!?喰われてんじゃねー!!」

 

そんなアクアの犠牲に胸を痛めつつ、地中から出てこようとしてる一番近いジャイアントトードに肉薄する。出てくるために身動きが取れないのか一気にかたを付けるため、ジャンプして頭に飛び乗り短刀を思いっきり頭に刺す。思ったよりも深く刺さり痙攣を起こすとそのまま動かなくなった

 

「まずは一匹!」

 

動かなくなったジャイアントトードを踏み台に、近くにいた2匹目に獲物を移す。ジャイアントトードを踏み台にしたのがいけなかったのか頭に飛び乗るはずが、結構地中から出て来ていたこともあって背中に着地しそうになった。が空中で姿勢を変え頭と足反対にし背中に短刀を突き刺した反動で頭に飛び乗ることに成功した

 

「これで2匹目!」

 

また短刀を深々と頭にさすとさっきと同じように痙攣して動かなくなる、三匹目を探すと和真たちの方に向かい始めようとしていた

 

「クソッ!!」

 

俺は和真たちのほうえと走り出していた、幸い和真たちの方は処理が終わっていたようでなんかアクアがすごい勢いで元々もう一匹いたジャイアントトードの方に

 

「ゴッドブロー!!」

 

とか叫びながら向かっていったが、喰われた

 

ということで距離は幸いにも空いていた、もともと俺の方が近いこともありすぐに追いついて追い抜きざまに足を切ったのだが

 

(切り口が浅かったか!)

 

そう思い勢いをあんまり殺さないようにしながら反転して攻撃を仕掛けようと思ったのだがジャイアントトードは舌を伸ばしてきた

 

「っ!」

 

弾いたのはよかったのだが粘液のせいでうまく弾けず頭をかすってしまう

 

「くっ!?」

 

派手に二転三転するが短刀を突き刺し体勢を立て直す

 

(あれ?)

 

違和感に気が付いたのは顔をあげてジャイアントトードを見た時だ

 

(線が?)

 

そう空以外すべてのものに線が見えるのだ、地面にも、草木にも、ジャイアントトードにも

 

なぜかとても気持ち悪くなってしまい、その場で吐いてしまう

 

「なんだよ、これ...」

 

痛い頭を短刀を持ってない左手で押さえながらつぶやく

 

「志貴、あぶない!」

 

そう声が聞こえ前を見てみるとジャイアントトードがまた舌を伸ばして攻撃しようとしていた

 

俺はそれを焦りもせずに舌に入った線に沿って短刀を通した

 

「「「え?」」」

 

俺もだが二人も驚いたように目の前の光景を見ていた

 

だってそうだろう、俺は力も入れずにまるで熱したナイフでバターを切るようにジャイアントトードの舌を切断したのだから

 

(それよりもなんで俺はこの状況で焦ってないんだ?)

 

疑問を感じたがそれよりも先にこの頭痛を何とかしたかった、だから俺は一気に間合いを詰め線にそってジャイアントトードを真っ二つにした

 

眼鏡を拾いかけると頭痛は収まった、やはりこのメガネは特別なようだ頭痛は嘘のように消え不快感伴う線は消えた

 

「とりあえず帰ろうぜ、疲れた」

 

「あ、あぁ...」

 

「えぇ...」

 

 

そしてその夜ギルドにてテーブルをたたいたアクアの方に目を向けると

 

「あれね、三人じゃむりよ。仲間を募集しましょう」

 

と真面目腐ったことを言っているが

 

(一番足引っ張ってるのこいつなんだよなぁ...)

 

と思ったが言わないでおいた、まさに触らぬ神に祟りなしということでいっぽう和真は

 

「カエル一匹5000エリス、命がけなのに土木作業の日給と変わらない」

 

と一人で落ち込んでおり話が進まないのでしょうもなく相槌をうつ

 

「パーティーってこんな最弱パーティーに来るもの好きいるのか?」

 

隣で和真も頷いていた

 

「ぷっはあぁー!私は最上級職のアークプリーストよ、どのパーティーものどから手が出るほど欲しいに決まっているでしょ!」

 

といつもの根拠のない自信で言って見せる。俺と和真は目を合わせため息をつく、アクアは何か言っているが好きにさせておいた

 

「そうだ聞きたかったんだけど、お前どうやって最後ジャイアントトードを真っ二つにしたんだ?」

 

「あーあれか...」

 

「あ、それアタシも気になってたのよ、教えなさい!」

 

和真どころかアクアも興味をしめしたようだ、ちょうどいいと言えばちょうどいいかもしれないもともとこちらもアクアに聞きたかったのだ

 

「ならちょうどいい、アクアなんか俺眼鏡を外すとそこら中に線が見えるんだが」

 

「線?なにそれ」

 

「ん?お前は見えないけど和真にもテーブルにも見えるんだ。その線にそって切るとなんかよく切れるんだが」

 

「なんじゃそりゃ?お前が嘘言ってるようには見えないけどにわかには信じがたいな」

 

「だろ?」

 

そんな話を和真としているのだがその間もアクアはブツブツと独り言を言っていた、そして考えがまとまったのか俺を見てくる

 

「ねぇ志貴、あなた魔眼持ちね」

 

「魔眼?」

 

「えぇ...あなたが持っている魔眼に私心当たりがあるの」

 

「おいアクア、なんだよ魔眼て?というか志貴ばっかりずるくないか優遇されてて」

 

「志貴を優遇してるわけじゃないわよこのヒキニート!志貴のはもともと持っていた魔眼よ!!」

 

「俺がもともと魔眼を持っていた?」

 

「えぇ、生前に何らかの形で魔眼を持っていたのよ」

 

「でも俺記憶喪失だし」

 

「転生者の中にも魔眼持ちはいたわ、多くはないけどたぶんそれがあなた」

 

そう言って俺を指さすアクア

 

「もともと魔眼持ちとかどんな人生送ってたかすごい気になる!」

 

和真は興奮した様子で聞いてくるが記憶喪失なのでわからない

 

「で?俺のその魔眼とやらの能力は?」

 

「直死の魔眼、生物の、あなたの場合非生物のものまで見えてしまっているみたいだけど...ものの死線つまりは死にやすい場所があなたには線となって見えているの」

 

「なるほどね...」

 

「驚いたりしないの?」

 

「実際に使ったわけだし?今更驚くこともないでしょ?」

 

(それに、たぶん俺は生前それを使っていたなんとなく久しぶりな感覚だったから)

 

「なーんだつまんないの」

 

そう言いながらぶーたれるアクアだっが最後に

 

「でも見るなとは言わないけど非生物に関しては見るのやめなさい」

 

「どういうことだ」

 

「アンタのバットステータス頭痛は直死の魔眼のせいだからよ、同じ生物ならまだしも非生物の死なんて普通は見られるものじゃないもの」

 

「あーそういうことか」

 

「なんかお前の魔眼も大変だな」

 

「それとこれも非生物関連だけど、集中すればよく見えるようになるけど余計脳に負担がかかるわよ」

 

「忠告は聞いとく、ありがとな」

 

「ふふん!!もっと私に感謝なさい!!」

 

調子が戻ったアクアに俺と和真はばれないようにため息をついた、結局その夜はアクアが書いたパーティー募集の紙を張り解散になり俺は少し魔法などのスキルを教えてもらいギルドを後にした

 

ちなみに5匹討伐分の報酬は25000エリスプラス食用にも用いれる肉なので買い取りも設定されており報酬は一人2万エリスだった

 

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今日は昨日のように鮮やかな紅ではなく、赤黒い空間にいた。それはまるで血のような色だった。たくさんの人型の物体を昨日見た物体が切っていた、

どれも同じ人型なのにそれだけは何故か一目で昨日見た人型だとわかった。

そいつは口元に笑みを浮かべながら他の人型を切っていた、そいつは満足したのかこちらを向き

 

『忘れるな俺たちは殺人鬼だ』

 

そうお決まりのセリフを言っていた

 

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「うわ...また見たのか俺は」

 

朝から少しげんなりしながら体を起こす、眼鏡をかけ外を見てみると空は明るくなり始めていた

 

「・・・支度するか」

 

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「来ないわね」

 

不機嫌というより不満げな感じでアクアがつぶやく

 

昨日の夜求人を張って今日は昼まで待っては見たが、誰も来なかった

 

(そりゃあ、あの文章じゃなぁ...)

 

昨日帰る時にちらりと呼んだが、詐欺師のような文章だった

 

「なぁハードル下げないか、このままじゃ一人も来ないぞ」

 

「だって、だって...」

 

和真がそうアクアに切り出したがアクアは目尻に涙をためたまま同じことしか繰り返さない

 

「大体お前は上級職かもしれないけど俺や志貴は・・・」

 

と和真のお小言が始まる、まぁ和真の意見には賛成なんだが

 

「ん?」

 

そこで戯れに発動させていた敵感知に反応があった、俺の場合なぜかそういうのがなくても気配には敏感な方なのだが

 

「募集の張り紙見させてもらいました」

 

「「「ん?」」」

 

後ろを向くとそこにはとんがり帽子に黒いローブと異世界の魔法使いのような恰好をした少女が立っていた

 

「この邂逅は世界が選択せし運命、私はあなた方の様の者たちの出現を待ち望んでいた...我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法爆裂魔法を操りしもの」

 

バサッとローブをはためかせ中二病全開の自己紹介をするめぐみんと名乗る少女、俺は面白そうなことになりそうなのでそのままにしようとしたが和真が止めようとしたのでそれを俺が止める。そんなことを知らずに紹介を続けるめぐみん

 

「あまりの強大さゆえ世界に疎まれし我が禁断の力を汝も欲するか。ならば、我とともに究極の深淵を覗く覚悟をせよ人が深淵を覗くとき、深淵もまた人を覗いているのだ」

 

満足げな顔でこちらを見ているめぐみんに和真が何か言おうとするが、それを俺が手で制し席を立つ

 

「なかなか素晴らしい紹介だね」

 

「そ、そうですか?まぁ私にかかればこんなものです」

 

褒められて少し嬉しかったのか顔をそらしながら返事をするめぐみん

 

「それでそんな中二全開の紹介して恥ずかしくないの?」

 

「へ?」

 

何を言われたのか理解できないのかきょとんとした顔になる

 

「いや、だからそんな中二全開の自己紹介して恥ずかしくないのかなと、それにこのパーティー真面目にやってるわけじゃないけど冷かしなら帰ってねそれじゃあ」

 

そう言い残し席に座ろうとすると

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいあの紹介のどこが恥ずかしいんですか!!それに冷かしじゃないです!」

 

と食い下がってくる

 

(ふむ、あれを恥ずかしいと思わないとは少し予想外だったな)

 

なんて考えていると

 

「?その赤い瞳もしかして紅魔族?」

 

「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手にして、我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも..くだ...く」

 

そんな紹介の中いきなり倒れてしまう

 

慌てて俺と和真は駆け寄り体を起こす

 

「おいどうした?」

 

おれがそう聞くと腹がグーッとなる

 

「もう三日もなにもタベテナイノデス、ナニカタベサテイタダケマセンカ」

 

そうのたまった

 

和真は立ち上がり苦い顔をしていた

 

「飯おごるのはいいがその眼帯はなんだ怪我してるならそこのアークプリーストに直してもらうと良いぞ」

 

椅子に座らせながらそう言う

 

「そうだなコイツ、回復魔法だけは、得意だから」

 

「回復魔法だけ!?」

 

和真の言葉にアクアが突っかかりそうになるがそれはいつものことなのでほっとく

 

「この眼帯は我が強大なる魔力を抑えるマジック、アイテム!もし外されることがあれば、この世に大いなる災厄がもたらされるであろう...」

 

余談だがなんかマジックアイテムって発音が無駄に良かっただけに少しイラっと来た、

 

「封印...みたいなものか?」

 

和真は興味を持ったのかそう問いかけると

 

「まぁ?ですが、ただオシャレでつけているだ

 

「・・・」

 

普通の声で言われムカついたので眼帯を引っ張る

 

「あぁ!ごめんなさい!引っ張らないでください!やめ、やめろぉー!」

 

何か言ってるが気にせずにギリギリと限界まで引っ張っていく

 

「あのね、彼女たち紅魔族は生まれつき高い知能と魔力を持っていて魔法使いのエキスパートでみんな、変な名前を持っているわ」「あぁちょっと離してください、でもそのまま離すと痛そうなので少しづづ少しづつ近づけて離してください」

 

とアクアが説明してくれる

 

そんな時でも俺はめぐみんの眼帯を引っ張るのをやめない、めぐみんはわめいているが気にしない

 

「てことは何?あだ名だと思っていたけど本名で、この中二は紅魔族みんながこんな感じってことか?」

 

「えぇ」

 

アクアが頷いたので俺は眼帯を離す、ちょくごパシン!と言い音が響いた

 

「あぁーー!!いったい!めがぁーー!!」

 

「悪かったなめぐみん、ほらとりあえずなんか頼め俺のおごりだ」

 

そう言いながらメニューを渡すと、若干涙目だったが受け取る

 

「いいのか志貴?」

 

「まぁおちょくったりもしたしなせめてものお詫びだ」

 

「まぁいいならいいけど、ところで親の名前は?」

 

「母の名はゆいゆい父の名はひょいざぶろー!!」

 

「「「・・・」」」

 

親の名前もこれまた独創的だった

 

「おい!私の両親の名前に何か言いたいことがあるのなら聞こうじゃないか!」

 

「まぁとりあえずなんか頼めよめぐみん」

 

「あ、それと冒険者カード見せてくれ」

 

 

めぐみんが食べている間に俺たちはめぐみんの冒険者カードを見せてもらう

 

「冒険者カードは偽造できないし彼女はアークウィザードで間違いないわ、強力な攻撃魔法が使える上級職よ!」

 

「確かにこの子の魔力値高いな」

 

「それに彼女が本当に爆裂魔法を使えるならすごいことよ、最上級の攻撃魔法だもの」

 

アクアと和真が話ているのを聞きながら俺は一つ気になることがあった

 

(なんでスキルの欄にスキルが一つしかないんだ?)

 

アークウィザードともなれば攻撃魔法などいくらでも覚えていそうなものなのだが、するとめぐみんはがっつくのをやめ

 

「おい、さっきからこの子とか彼女とか、名前で呼んでほしいのだが」

 

「あーそうだな、まぁとりあえずクエスト行こうぜめぐみんも食い終わったみたいだし」

 

 

草原につくと早速ジャイアントトードを発見した、数は五匹だが昨日のことを考えると地中にいる可能性もある

 

俺は敵感知のスキルを発動させる

 

(やっぱな、地中に四、五匹ってところか)

 

「おい和真」

 

「ん?どうした志貴」

 

「地中に五匹くらい眠ってるぞ」

 

「え?マジかよ!」

 

「そんなもの関係ないわ!昨日の雪辱ここで晴らす!女神に牙を立てたこと後悔しなさい!」

 

そう言って一匹孤立してるところに突っ込むアクア

 

「お前少しは待てよ!!志貴後は頼む」

 

そう言って和真はアクアの後を追いかけて行ってしまう

 

「ゴッドレクイエム!!」

 

杖の先が光ったと思うとそのまま杖を突きつけるが

 

「あ、喰われた」

 

昨日と全く同じ光景だった

 

「ところで私たちはどうしましょうか?」

 

「ん?とりあえず爆裂魔法であの四体吹き飛ばせるだろ?」

 

そう言ってジャイアントトードが四匹固まったところを指さす、幸いにも和真たちから結構離れているので当たることはないだろう

 

「・・・さっき地中に眠っているって言いませんでしたか?」

 

疑っているような目で見てくるが

 

「このままあいつらが和真たちの方に向かった方が大変だろ、まぁ最悪俺の方で何とかするし」

 

そう言いながら眼鏡に触れる、あまり使いたくはないのだが仕方ないだろう

 

「わかりました、あともう一つさっきアクアが言ってた女神とは?」

 

「あー...あれな」

 

正直に言ってもいいのだが、自分が変人扱いされかねないので誤魔化すことにする

 

「女神を自称する痛い子だ」

 

「可哀そうに...」

 

めぐみんが杖を構えながらそんなことを言う

 

(こいつに言われるとか相当だな)

 

そんなことを思っているといきなり空気が変わる

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒にわが真紅の混交に望み給たもう 覚醒の時来たれリ、無謬の境界に堕ちし理、むぎょうの歪みと成りて現出せよ!踊れ、踊れ、踊れ、 ー我が力の奔流に望むは崩壊なり。 ーー並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ! これが人類最大の威力の攻撃手段!! これこそが!究極の攻撃魔法 エクスプロォォージョンッ!!」

 

直後に紅い光が差し轟音と爆風が襲ってくる、かなり離れているのにこの爆風と轟音

 

「これが人類最高の攻撃手段...」

 

正直言って想像していたよりもすごかった、あまりのことに笑ってしまう

 

ひとしきり笑い終わた後ジャイアントトードが地上に出てき始めたのでめぐみんに声をかけようと振り向くと

 

「・・・お前、何寝てんの?」

 

「違います、我が奥義である爆裂魔法はその強力さ故消費魔力も絶大。要約すると限界を超える魔力を使ったので身動き一つとれません」

 

そんな話をしている今でさえカエルは近づいてきていた

 

「ならこのまま喰われるか?」

 

「すみません、助けてください」

 

「はぁ...」

 

俺がため息つくのと同時にカエルがちょうどめぐみんの前で止まりその大口を開く、だがそのカエルがめぐみんを食べることはなくそれどころか絶命していた

 

「な、なにが?」

 

めぐみんは俺に抱かれながら目をぱちくりさせていた

 

「ん?簡単な話俺がめぐみんとこまで一瞬できょりつめて頭に短刀刺しただけ」

 

「いやいや、言うほど簡単ではないですよね!?」

 

「そうでもない...っと!」

 

「きゃっ!?」

 

カエルが来ていたので後ろに飛びのいたのだが、思ってたよりも距離が離せなかった、というより

 

「今の悲鳴かわいかったぞ」

 

「何言ってるんでかあなたはこんな時に!//」

 

顔を赤くしているが確かに今はそんなことをしている場合じゃないので、もう一度後ろに飛びのき十分な距離を稼ぐ

 

「めぐみん背中に乗ってくれ、これじゃあ戦いにくい」

 

「わかりました」

 

めぐみんが背中に乗っている間に和真に声をかける

 

「和真ー!」

 

「なんだー!」

 

「そっちの近くに出てきた二匹任したー!」

 

「正直言って任されたくないけど何とかしてみるー!!」

 

なんか甘えたことを言っていたが無視しておいた

 

-----------------------------

 

夕暮れの町、俺はめぐみんを背負って和真はぐずるアクアの手を引きながら浴場に向かっていた

 

「うぅ...生臭いよぉ...」

 

「はいはい...めぐみん爆裂魔法は緊急時以外禁止な、これからは他の魔法で頑張ってくれよ」

 

「使えません」

 

「は?」

 

そこで先を歩いていた和真たちの足が止まる

 

「やっぱりかぁ...」

 

「え?志貴どういうことなんだ?!」

 

「俺より本人に聞けよ」

 

「やはりあなた気が付いていたんですね、私は爆裂魔法しか使えません、他には一切魔法は使えません」

 

とたん和真は苦虫をかみつぶしたような顔になる、アクアはアクアで不思議そうな顔でこちらを見ていた

 

「・・・マジか?」

 

「マジです」

 

一瞬時が止まる、といっても俺はもともと知っていたので別に気にしてもいないのだが

 

「え?ちょっと待って、爆裂魔法が使えるレベルならほかの魔法だって使えるでしょう?私なんて宴会芸スキル習得してからアークプリーストの全スキル習得したし」

 

「宴会芸スキルって何に使うんだ」

 

俺も和真と同じことを思ったが、成り行きを見守ることにする

 

「私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード、爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです!爆裂魔法だけが好きなんです!もちろん他の魔法も覚えれば楽に冒険ができるでしょう、でもダメなんです!!私は爆裂魔法しか愛せない!!だって私は爆裂魔法を使うためだけにアークウィザードになったんですから!!」

 

「おーい、熱く語るのはいいが首を絞めるな、あんまりひどいようだったら振り落とすからな」

 

「あ、ご、ごめんなさい」

 

そんな中アクアはプルプル震えていた、まぁアクアのことだ怒ることは絶対にないそれどころか

 

「素晴らしい、素晴らしいわ!非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に私は感動したわ!」

 

和真はまずそうな顔をしていたが俺はもはや予想通りすぎで何とも思わなかった

 

「そっかーたぶん茨の道だけど頑張れよーギルドについたら報酬は山分けでまたどこかで会おう!ほらアクア行くぞ」

 

早速引きはがしにかかる和真だがそこは俺が許さない

 

「まーま和真、この子をどうするか判断を下すには早すぎないか?」

 

「何言ってんだお前、こいつだけでも手に負えないのにこれ以上問題児が増えてたまるか!」

 

そう言いながらアクアを指さす和真だが

 

「確かに爆裂魔法だけで後先考えずいきなり敵の目の前で倒れるやつだが」

 

「おい貴様けんか売ってるの...ぎゃん!?」

 

「次首絞めようとしたら振り落とすって言ったろ」

 

「だからっていきなり落とすことないじゃないですか!」

 

涙目で訴えてくるが

 

「そんなの知らん」

 

「うぅ~」

 

恨めしそうにこちらを見てくるが気にしないでまたおぶる

 

「で、はなしの続きに戻るが」

 

「大体ダンジョンで爆裂魔法なんか撃ったら俺たちまで巻き込まれるんだぞ!」

 

「それに関しては大丈夫だコレがあるから」

 

そう言って自分の目を指す、実際見てるときに確かめたがあれには死線がはっきり見えた

 

「それに広範囲吹き飛ばせるなら何かと役に立つと思うが?」

 

「その魅力を上回るデメリットがあるっていう話だよ!」

 

「デメリットって言っても今回みたく俺がカバーできる位置にいれば十分だろ」

 

「いやまぁ、確かにそうだが...」

 

和真も反論材料がなくなってきたのかだんだん勢いがなくなる、そして俺は最後のカードを切ることにした

 

「それにな和真周りをよく見て見ろ」

 

「周り?」

 

そう言って周りを見る和真、そしてその視線に気が付いたのか顔を青くする

 

「この状況やばいよな」

 

「もちろんだろ?」

 

さっきまでの話和真はヒートアップしていたので大声ですべて話していた、周りに集まっている人たちにももちろん筒抜けだ

 

和真にばれないようにめぐみんにも目配せをすると、意図を理解したのか意地の悪い笑みを浮かべていた

 

「まぁ、和真これ以上評判が悪くなる前に諦めろ」

 

「はぁ...コレカラヨロシクメグミン」

 

「はいよろしくお願いします」

 

そう言ってかたや諦めたような表情で、かたや満足げな表情で握手している二人がいた

 

------------------------------

 

「ふぅ...疲れた」

 

そう言ってわらの上に敷いた布の上に寝転がる

 

「また明日も頑張りますかね」

 

目を閉じると俺は緩やかに睡魔に飲み込まれていった

 

余談だが今回の依頼達成報酬は24万エリス、山分けで一人当たり6万エリスだった

 




はい、というわけでめぐみん登場回です。めぐみん可愛いですよね!ちなみにマジックアイテムのくだりは俺の本心です。いやホントになんかそれまでのギャグの雰囲気にいきなりあんなにいい感じに言われたら笑いながらイラっと来ませんか?
というわけでめぐみん登場回でした、アクア?アクアは泣き顔可愛い。アクシズ教徒に殺されそうだけど。ちなみに作者はエリス教徒です、エリス様可愛い...


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第三話 鬼畜男の後始末を!

先に注意しておきますアニメに関してのネタバレはいいとして、とある少女のことで少しネタバレ入ります

いい人はこのまま読んでね


ゆっくりと身を起こす

 

「・・・」

 

眼鏡をかけ周りを見回す、何の変哲もない馬小屋だった

 

この頃魔眼を使うことが増えてきたからだろうか、夢がより鮮明になってきている

 

「夢っていうより俺の記憶なのかね...はぁ」

 

そう呟きながら支度を始めた

 

-----------------------------

 

 

「おっすめぐみん」

 

「? あぁシキですか、おはようございます」

 

ギルドに向かうとめぐみんがもう来ていた

 

「和真は?」

 

「私は見ていませんよ?」

 

「ほーん...あ、すみませんコーヒー一つ」

 

俺はめぐみんの隣の席に腰を下ろし注文をする

 

「コーヒーだけですか?体に悪い...って顔色が少し悪いみたいですけど大丈夫ですか?」

 

「ん?あぁ、夢見が悪いだけだ気にするな」

 

文句を言おうとこちらを見ためぐみんが心配そうにこちらを見ていた

 

「それに朝飯なら食ったし」

 

「食べた?自分で作ってるんですか?」

 

「料理スキルとったからな、それに自炊の方が安く済むし」

 

「・・・」

 

かなり意外そうな顔で見られた

 

「失礼だろ」

 

「い、いえ、なんかそういうイメージなかったので」

 

そう言いながら食べるのを再開するめぐみん、しばらく雑談しているとようやく和真がギルドにやってくる

 

「よ」

 

「よう和真、今日はずいぶん遅かったな」

 

もう昼間近くになっていた

 

「まぁ昨日はなんだかんだ言って疲れたからな」

 

「まぁ確かに」

 

「そうだめぐみんスキルについて教えてくれないか?」

 

「スキルですか?」

 

追加で注文した肉を食べながらめぐみんは説明し始める

 

「まずは誰かからスキルの使い方を教えてもらうのです、するとカードに項目が出ますのでポイントを使って習得すれば習得完了なのです」

 

かなりざっくりとした説明だったがその通りだった

 

「すると俺もめぐみんに爆裂魔法を教えてもらえば爆裂魔法を打てるようになるのか?」

 

「その通りです!」「あーやめた方がいいぞ」

 

「え?なにその志貴の反応、どういうことだ?」

 

とりあえずめぐみんを抑えながら和真に説明する

 

「確かに打てるようにはなるが取得ポイントがかなりかかる上に初期の説明にもあったが威力がかなり落ちる」

 

実際俺も取得しようと思ったが、かなりポイントがかかるので余裕があったらくらいに思ってる

 

「まぁそんなにうまい話はないよなぁ...ってなんでお前そんなこと知ってるんだ?」

 

「俺も教わろうと思ったからな、てかお前飯は静かに食え」

 

いい加減静かにさせたかったので席に座らせる

 

「う、うぐそうですね」

 

納得してはいないようだがまた食事を再開するめぐみん

 

「はー...なんかお手軽で役に立つスキルはないかなー」

 

「さがしたぞ」

 

俺が声をかけようとすると後ろからそんな声が聞こえた、後ろを見ると金髪の美女と銀髪の美女がいた。和真の方を見るとしまったという顔をしていた

 

「昨日は飲みすぎたと言って直ぐ帰ってしまったが」

 

「お、お気遣いなく」

 

和真の態度がなぜかよそよそしい、まぁ面白くなりそうなのでそのまま静観することにした

 

「ならば昨日の話の続きをしよう、私をキミのパーティーに

 

「お、お断りします」

 

「くぅう!」

 

なぜか断られて悶えていた

 

(あ、こいつやばいやつや)

 

俺は直感的にそう思った、関わりたくないので俺は付き添いの銀髪の美女に目を向ける。銀髪の美女のほうは笑いながらこちらにやってくる

 

「あはは、ダメだよダクネス強引に迫っちゃさ」

 

「え、えとあなたは」

 

「あたしはクリス、見ての通り盗賊だよ。この子とは、友達かな」

 

どうやら銀髪の美女の方はまともだった

 

「君役に立つスキルが欲しいみたいだね、盗賊系のスキルなんてどうかな?」

 

「盗賊系ってたとえばどんなの?」

 

前々から盗賊系には役立つスキルがあるのは聞いていたので、俺も興味があったので聞いてみる

 

「ん?君も興味あるの?」

 

「盗賊系は何かと役立つスキルも多いらしいし」

 

「そういうこと、しかも習得にかかるポイントも少ないしね」

 

「へー」

 

和真は感心したように返事をする

 

「というわけで教えて欲しいんだけど」

 

「いーよ、シュワシュワ一杯で」

 

「すみませーん、シュワシュワ一つ」

 

-----------------------------

 

「盗賊系のスキルには敵感知とか潜伏とかいろいろあるけど、特に私の一押しはコレ、いくよ」

 

そういってクリスは右手を前に突き出す

 

「うす、クリスさんよろしくお願いします」

 

と気合を入れる和真だが正直言って気合を入れる必要はない

 

「スティール!」

 

そう言って突き出したクリスの右手が光る、その手に握られていたのは

 

「あ!俺の財布!」

 

「なるほど、盗賊らしい盗みのスキルってわけか」

 

「そういうこと、どう気に入った?」

 

そう言いながらこちらを向くクリス

 

「まぁ使いようによっては便利だな、でもたしか取れるものってランダムだったような気がするんだが?」

 

「そうだよ、さてこんな感じに使うわけさ」

 

「へー」

 

和真に財布を返そうと手を伸ばしたが、何を思ったのか手を遠ざけるクリス

 

「?」

 

「ねえアタシと勝負しない?君も盗賊スキルを覚えてこの財布を取り返してみない」

 

隣で見ていたダクネスが何か言おうとするが俺が止める

 

「おい、いいのか?」

 

「まぁ和真だって冒険者だこういうことがあってもおかしくないことはわかってるだろ」

 

本音を言うと面白そうだから放っておいてるのだが、そんな話をしていると決まったのか和真がスキルを覚えていた

 

「よーしなに取られても泣くんじゃねぇぞ!」

 

「ふふん、あたりはこのマジックダガー売れば40万エリスはくだらない代物だけど、外れはこの小石!」

 

そう言うと両手を開いて大量の小石を見せる、若干汚いと思ったが和真が確認しなかったのがいけないので放置

 

「あー!きったねぇ!!」

 

「和真ー、お前が確認しなかったのが悪い。さっさとやれー」

 

「ぐぐぐ...」

 

悔しそうな顔をしていたが腹を決めたのか右手を前に出し

 

「スティール!!」

 

とさっきと同じように右手が光る

 

「よしとりあえず成功!」

 

「っ~~~///」

 

嬉しそうな和真とは対照的にクリスは何故か股を抑えてモジモジしていた

 

(え、なにこれ嫌な予感しかしないんだけど)

 

「なんだこれ・・・おぉ!!」

 

そう言って和真の手に握られていたのはパンツだった

 

「当たりも当たり!!おおあたりだー!!」

 

「い、いやーーーー!!パンツ、パンツ返してー!!」

 

「いーーーーーっやーーーーーっほーーーーう!!」

 

目の前では阿鼻叫喚な光景が繰り広げられていた、片やパンツを振り回し奇声を上げる男片や泣きながらパンツの返却を求める美女

 

「はっ!」

 

目の前の光景から現実逃避をしていたがそういうわけにもいかないので和真の後ろに回り気絶させる

 

「・・・あの、すみません、ほんとすみません」

 

急いで和真からパンツを回収しクリスに手渡す

 

「す、すみません...///」

 

半べそをかきながら急いで受け取るクリス、何とも気まずい空気になった。そんな中なぜか興奮していたダクネスだった

 

 

「ようやく帰ってきましたね、シキ、カズマ」

 

「どこ行ってたのよ和真、私の華麗な芸も見ないで」

 

ギルドに戻るとめぐみんとアクアがすぐに俺と和真のところに来る

 

「って、その人どうしたの?」

 

そういってクリスを指さすアクア

 

(まぁあんなことあればなぁ)

 

俺は思わず苦い顔をする

 

「あ、あぁじつは...

 

「うむ、彼女はカズマに盗賊スキルを教える際にパンツをはがれたのだ」

 

和真が喋ろうとするとダクネスが遮り説明し始めたすると和真の顔は面白いほど青くなっていく

 

「おいアンタなに口走ってんだ!!」

 

和真は和真で大声で否定し始めたので、俺は急いで離れ他人のふりをする

 

「それで今の話は本当なのですか?」

 

ちゃっかり後をついてきためぐみんが俺にそう聞いてくる

 

「あぁ...クリスの方も悪いが和真の方もやりすぎだ」

 

俺はさっき起こったことをかいつまんで説明していく

 

「うわ...最低ですね、最低です」

 

俺が説明し終わると和真の方を向いていうめぐみん、むこうも向こうで話が終わったのかクリスがこちらに来る

 

「さっきはありがとう」

 

「ん?あぁ...まぁこっちの方も悪かったし気にしなくていいよ」

 

「じゃあお互いさまということで...//」

 

クリスはクリスでさっきのことを思い出したのか顔を赤くして、何とも気まずい雰囲気になってしまった

 

「このクサレニート!!何してくれてんのよ!!!」

 

「あれー?おかしいな奪えるものはランダムなはずなのに」

 

声のした方を向いてみると和真がスティールをやったのかアクアのブラを握っていた

 

「「「・・・」」」

 

俺とめぐみんとクリスは言葉を失っていた

 

「こんな少女の下着を公衆の面前ではぎ取るなんて、真の鬼畜だ許せない!ぜひとも私をあなたのパーティーに入れてほしい!!」

 

「「いや、いらない」」

 

固まっていた俺でさえ自然に口から出た、その間も和真はアクアのブラを持っていた。この際なのでアクアのブラは気にせず隣のクリスに話を振る

 

「なぁお前の友達どうなってんの?」

 

「え、あぁダクネスのこと?」

 

「あぁ」

 

なぜか否定されたのに嬉しがっていた

 

「まぁちょっと性癖は特殊かもしれないけどねはいい子だよ?」

 

「あれが少しですか...」

 

「・・・」

 

アクアと和真はダクネスを放っておいて何やら話し込んでいた、放置されてうれしいのかなぜか自分の体を抱きしめているダクネス

 

「俺にはかなり高度な変態にしか見えないんだが...」

 

「あはは...」

 

-----------------------------

 

まぁ一応パーティーに入りたいとのことなので机に移動し冒険者カードを見せてもらう

 

「ちょ、この方クルセイダーではないですか」

 

「ちょっとなんでこんな上級職断ってんのよ和真!」

 

外野がグダグダ言っているが俺は和真に小声で話しかける

 

「おい、どうすんだよ和真」

 

「・・・なんとか説得してみる」

 

そう言うと和真は立ち上がって周りを黙らせる

 

「ダクネス君にどおしても伝えておきたいことがある。実はな俺とアクア、志貴はガチで魔王を倒したいと考えている」

 

別に俺はそんなことは思ってないのだがここは話の腰を折らないでおく

 

「へー」

 

「そうなんですか」

 

めぐみんとクリスは感心したようにつぶやく、それとは別に俺は嫌な予感を覚えていた

 

「そうなのよ、すごいでしょ?」

 

「この先俺たちの冒険はさらに過酷なものになるだろう。特にダクネス、女騎士のお前は魔王に捕まったら大変なことになるだろうそれはもうとんでもない目にあわされる役どころだ」

 

(あ、これ説得ミスったわ)

 

俺はもうどうでもよくなったので外を見ることにした

 

「なんかあからさまに興味がなくなったみたいだね」

 

向かいに座っているクリスが小声で話しかけてくる

 

「どう考えても説得失敗したからな」

 

「そんなにダクネス仲間に入れるのは嫌?」

 

「クルセイダーが上級職なのは認めるが本人の性癖がNG」

 

「まぁまぁ、そこを何とか」

 

そう言って小さく両手を前に出し

 

「おねがい」

 

と言ってきたので俺としては無碍にもできず

 

「・・・まぁ俺からは何も言わないよもう、決めるのは和真だしな」

 

「ふふ、ありがと」

 

そう言って自分のことのように笑うクリス、俺は考えるのも馬鹿らしくなったのでクリスから視線を外す

 

その時だった町にカーンカーンと鐘の音が町に鳴り響いたのは

 

「緊急クエスト、緊急クエスト!冒険者各員は至急正門に集まってください、繰り返します冒険者各員は至急正門前に集まってください」

 

「緊急クエスト?なんだそれ」

 

「おや?シキは知らないんですか?」

 

「多分この時期だからキャベツ狩りかな」

 

「キャベツ狩り?」

 

ギルドから正門まで向かう間に聞いたのだが全く意味が分からなかった、だが正門についてようやく意味が分かった

 

「キャベツが空飛んでるよ...」

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!!」

 

俺は唖然とし和真は叫んでいた、アクアはなんか説明しているがとりあえず無視することにした

 

「「「行くぞぉぉぉぉ!!!」」」

 

他の冒険者たちは雄たけびを上げながらキャベツの群れに突っ込んでいく

 

思っていたよりもキャベツは早く飛び体当たりを仕掛けてきているのか所々で鈍い音がしていた

 

「ほらシキもさっさと行かないとみんなに取られちゃうよ?」

 

クリスはクリスで楽しそうに突っ込んでいく

 

「取られるって言われてもな...」

 

いまいち納得がいかないのだが仕方ないので俺も向かおうとすると

 

「みなさーん、今年もこの季節がやってまいりましたー!今年のキャベツは出来が良く一玉の収穫につき一万エリスです!」

 

「一万エリスとか」

 

馬鹿馬鹿しいが少しやる気になった

 

「和真、今回は本気出すからソロでやるわ」

 

「え?あ、あぁそれはいいけど。どっちみちアクアが今回は報酬は個別でって言ってたし」

 

「了解、んじゃ」

 

そう言って俺は駆け出す

 

(たしか傷とかあんまりないほうがいいんだったな)

 

「なら!」

 

今回は短刀は無しで殴って落とす、幸い力のパラメーターが高いので一発で倒せるようだ。それに武道をやっていたのか拳を痛めるようなこともなさそうなのだ

 

「それにしてもやってもやってもきりないなこれ」

 

自分に向かって来ている分を落としているがそれでも、もう足元には結構な数のキャベツが転がっていた

 

「おー、やるねーキミ」

 

そんな状況下の中なぜか呑気に籠を持ちながらクリスはキャベツをとっていた

 

「余裕そうだな」

 

「まーねー、こういうのは慣れてるからねー」

 

「慣れてるのはいいけど慢心してると死ぬぞ」

 

そう言いながらクリエイトウォーターで剣の形を作り、フリーズで凍らせた剣をクリスの後ろに投げる

 

「ちょ、あぶな...って」

 

クリスの後ろでキャベツが落ちる

 

「こんなの当たり所が悪かったら死ぬだろ?」

 

キャベツを叩き落としながら言うとクリスは納得してないのか頬を膨らませていた

 

いきなり空気が震え始めた

 

(この感じ...まさか!?)

 

門の方を見るとめぐみんが詠唱し始めていた

 

「あのばか!!」

 

そう思った瞬間にクリスをお姫様抱っこして俺は走り始めていた

 

「え?ちょっと志貴!?///」

 

「話はあとだ!!」

 

足元に紅い魔法陣が広がっていくギリギリ範囲内からは出たがまだ安心できない

 

「間に合えーーー!!」

 

直後めぐみんの爆裂魔法が炸裂する

 

「うぉぉぉぉ!?」

 

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

範囲内からは出たものの爆風に煽られてバランスを崩しゴロゴロと転がってしまう

 

5,6回周りようやく止まる

 

「いててて...大丈夫か?!」

 

「う、うん大丈夫...」

 

大丈夫は大丈夫だったのだが、まるで俺がクリスを押し倒しているような格好だ。眼鏡も落ちてしまったのでクリスを思いっきり見てしまうのだが

 

(死線が見えない?)

 

そう大地の死線は見えるのだがなぜかクリスにだけは見えなかった

 

「あの...その...そろそろどいてほしいなぁ...///」

 

「あ、あぁすまない」

 

死線が見えないことで放心していたが、クリスの言葉で我に返り急いでどく

。急に立ったのがいけなかったのか遅れて頭痛がやってくる

 

「あー、そのーありがとね助けてくれて///それとこれ//」

 

「あ、悪い」

 

照れてるのかそっぽを向いて眼鏡を渡してくれる、急いで掛けるが頭痛はなくならず少し痛みが和らいだくらいだった

 

「それにしてもいきなりお姫様抱っことか...いけませんよ!!//」

 

顔を赤くしながら怒ってくるがあんまり迫力がない

 

「あはは...まぁ説明してる時間なかったし」

 

「それでもです!せめて一言言ってからでもよかったんじゃないですか?//もう...」

 

口調がおかしかったが今は言う気になれなかったのでキャベツ狩りに戻ることにする

 

「あれまだ狩るんですか?」

 

「まぁ貧乏人にはいくら金があってもいいからね」

 

「怪我は...してないみたいですけど、気を付けてくださいね?」

 

「あぁ...」

 

それから頭痛でイライラしながらキャベツ狩りを行った

 

------------------------------

 

「納得いかねー、なんでたかがキャベツがこんなにうまいんだよ」

 

「それには俺も同意だわ...」

 

和真と俺は野菜炒めを食べながら愚痴をこぼす、ちなみに野菜炒めのキャベツだが今日のキャベツを使っていて食べるだけで経験値が入るとか

 

(ますます納得いかねー)

 

そんなことを思いながら黙々と食べていた、そんな俺たちをよそに女性陣は盛り上がっていた

 

「あなた流石クルセイダーね、鉄壁の守りにキャベツたちも攻めあぐねていたわよ」

 

「いや、私などただ固いだけの女だ、誰かの壁になるしかできない」

 

「アクアの花鳥風月も見事でしたよ、冒険者の士気を高めつつ収穫したキャベツの鮮度を冷水で保つとは」

 

「まーねー、みんなを癒すアークプリーストとしては当然よねえ」

 

「それ、大事か?」

 

これまで口を挟まなかった和真も口を挟む、俺も同意見だった

 

「アークプリーストの魔法の水はとても清いのよ!」「へー、へー」

 

「めぐみん魔法もすごかったぞ、キャベツの群れを吹き飛ばしていたではないか」

 

「紅魔の力思い知りましたか」

 

「あーそうだめぐみん」

 

そう今の話で思い出した

 

「なんでしょうか」

 

「お前味方の俺がいるのに爆裂魔法出したのは何事だ?ん?」

 

「ぎゃー!!」

 

あれから頭痛が収まらなくてイライラしていてアイアンクローをかましてしまったが仕方ない

 

「で?何事だ」

 

「す、すみません、すみません!!つい撃ちたくなってしまって、次からは気を付けます、気を付けますからぁ!!」

 

「ならよし」

 

そう言って放してやると顔を抑えるめぐみん

 

「うぅ...ひどいですシキ」

 

「・・・すまん、少しイライラしてるみたいだ。わるかったなめぐみん、あとクリスにも謝っとけよあいつも俺の近くにいて食らいそうになったから」

 

そう言って席を立つ

 

「え?シキ?」

 

「今日はもう寝る」

 

そう言い残し俺はギルドを出た

 

-------------------------------

 

「ようやく見つけた」

 

風呂の帰り後ろから声をかけられ振り向いてみるとクリスがいた

 

「ん?どうしたんだクリス」

 

「昼間のお礼とキャベツ狩りの時のお礼、ちゃんと言っておこうと思って」

 

「んなものいいのに」

 

そう言いながらなぜか頭痛がひどくなっていく

 

「いいの、私が言っておきたいんだから」

 

「ふーん」

 

「コホン...そのありがとね」

 

そう言って微笑まれる

 

「あー、なんか恥ずかしいねこれ...じゃあね!//」

 

そう言って駆けて行こうとする背に声をかけようとするとひどい頭痛が

 

「女神様ってなんでしって...っは!」

 

頭痛がやむと驚いた顔でこちらを見ているクリス

 

(てか女神様ってクリスが?確かにアクアも見えないが)

 

「ま、まぁいいや、またね!」

 

「お、おぅ!」

 

変な空気で別れてしまった

 

「それにしても...」

 

幾分ましになったとはいえまだ頭痛は続いていた

 




そういうことでクリス登場回です!ダクネスは...キャラ濃すぎて

そんなわけですが何でクリスは頬に刀傷があるんですかね?作者は原作web版と爆焔少々しか読んでないのでわかりません
それにしてもクズマさんぇ...とりあえずクリスの泣き顔はごちそうさまでした、めぐみんの恥ずかしそうなのもGood!


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第四話 強敵たちには爆裂魔法を!

アニメ準拠と言ってますが少しはオリジナル混ぜてます



「よぉ...」

 

「おっす志貴ってお前大丈夫か?」

 

「おはようございますシキ、なんか日に日に顔色が悪くなってますが大丈夫ですか?」

 

「ちゃんと寝ているのか?」

 

ギルドに入り和真たちに挨拶すると顔色のことを心配される、ここ最近の日課になりつつあった

 

「あぁ...気にしないでくれ夢見が悪いだけだから...」

 

「夢見が悪いだけって...連日ですよね?まさか呪いの類じゃ...」

 

めぐみんは真面目に考え込んで何を言うかと思ったらそんなことを言い始める。まぁ呪いの類と言ってもいいだろう、あれは俺の記憶だろうがそう呼んでもおかしくはないものだった

 

「そういうのじゃないって、それにそういうのだったらアクアあたりが気が付いてそうだし」

 

「それはそうですが...」

 

それでもなお心配なのか俺を見るめぐみん

 

「てかなんでまたアクアは騒いでるんだ?あ、こっちに来る」

 

受付嬢のルナをゆすっていたと思ったらこっちに笑顔で来る

 

「和真さん、今回のクエストの報酬はおいくら万円?」

 

和真は答えたくなさそうに視線を外すがアクアがそれを許さないのをわかっているので苦い顔をしながら

 

「・・・100万ちょい」

 

そう答えた

 

「「「100万!?」」」

 

驚いた3人だったが俺もそれ以上稼いでいた、アクアに目をつけられると面倒なことになるのはわかっていたからだ

 

「ふふ、和真様、あなたって前から思っていたんだけど...そこはかとなくいい感じよね」

 

なぜか和真に媚びていた、大方見当はつくが煽って金を借りようなんて斬新な手法だった

 

「褒めるとこ無いなら無理すんな!」

 

「うぅ~...和真さん!私今回の報酬が相当な額になると踏んで持ってたお金全部使っちゃったんですけど!ていうかこの酒場に10万近いツケがあるんですけど!!」

 

「知るか!!今回の報酬はそれぞれのものにって言ったのはお前だろうが!」

 

またいつものじゃれあいが始まったので放置を決め込む

 

「ちなみにシキは今回の報酬はいくらだったんですか?」

 

「お前今それ聞くのか?」

 

目の前でじゃれあっている和真たちを指さしそう聞く

 

「別にこんなのいつものことじゃないですか」

 

めぐみんも相当いい性格をしていた

 

「和真、仲間っていいものね!私たち最高のパーティーだわ!」

 

お金に頬ずりしながら言うアクア、お願いという名の強制は終わったようである

 

「まぁアクアも行ったしいいか、俺は150万ちょい」

 

「・・・和真より稼いでますね」

 

「久しぶりに気合入れてやったからな、全力でやったしいい運動になった」

 

「確かにシキの動きはすごかったな」

 

感心したように何度も頷くダクネス、そんな中和真はというと

 

「今日は解散、アクアに貯金とられてやる気なくなりました」

 

そう言って席を立ってしまう

 

「おーう、了解」

 

「なんかお金を手にした瞬間やる気なくしてますね」

 

「人間そんなもんだろ、でも金もできたことだし和真も装備そろえようと今日休みにしたんじゃないか?」

 

そう言いながら俺も席を立つ

 

「どこか行くんですか?」

 

なぜかついてくるめぐみん

 

「・・・なんでついてきてるんだ?」

 

「いえいえ私のことは気にせず」

 

何を言っても無駄そうなのでもう気にしないことにした、クエストボードを見ると簡単な依頼が少なくなっていた

 

(なんだ?難易度高いやつの方が多くなってきてるな)

 

多少疑問を抱きつつもジャイアントトード十体討伐を選ぶ

 

「うぇ...なんでよりにもよってそれを」

 

「いやお前に関係ないだろ俺が受けるクエストなんだから」

 

「それはそうですが...」

 

結局クエストについてきためぐみんは複数のジャイアントトードが固まっているところに爆裂魔法を撃ち倒れた、そして睡眠から目を覚ましたジャイアントトードに食われそうになるところを俺が助ける

 

そんなデジャブを体験しながらジャイアントトードを二十体狩った

 

達成報酬を受け取り二人で山分けし午後からは少し買い物をしてその日は解散となった。余談だが、依頼の帰り道でなんでついてきたのか聞いたのだが

 

「そんなの決まっているでしょう!この杖を試すためです!」

 

とのことだった

 

-------------------------------

 

次の日の朝、ギルドに来た和真はジャージ姿ではなく冒険者の格好をしていた

 

「カズマがちゃんとした冒険者みたに見えるのです」

 

「まぁジャージじゃファンタジー感ぶち壊しだものね」

 

「ファンタジー感?」

 

それぞれ感想を言っていた

 

「初級とはいえ魔法も習得したし、盾は持たず魔法剣士みたいなポジションで行こうと思う」

 

「言うことだけはいっちょ前よね」

 

と盛り上がっている他のメンバー俺はというと

 

(確かにファンタジー感ぶち壊しだよなぁ...)

 

俺はいまだに転生した時の制服のままだった、いかんせん素人の修繕だ、所々ほつれたりしてきているのでこれを機に替えてもいいかもしれない

 

「志貴とめぐみんは何か依頼に関して要望はないのか?」

 

俺はめぐみんと顔を見合わせるがめぐみんのほうもないようだった

 

「特にないかなぁ...」

 

「右に同じく」

 

「珍しいなめぐみんの昨日の感じからすると早く杖を試したそうなものなのに」

 

「昨日試しましたからね」

 

なぜかどや顔でいうめぐみんに呆れつつ和真は俺の方を見てくる、嘘ではないので頷く

 

「なるほどなー、ならジャイアントトードが繁殖期「カエルはやめましょう!」

 

和真がその話をするとアクアが真っ先に声を上げる

 

「何故だ?」

 

ダクネスが不思議そうに聞いている

 

「まぁ頭からぱっくりいかれればトラウマになってもおかしくないだろう」

 

「頭からぱっくりと!つまり粘液まみれに...くぅぅ!!」

 

興奮してる変態は放っておいて、昨日のことを思い出したので和真に言っておく

 

「そういえば和真」

 

「なんだ?」

 

「昨日クエストボード見たとき結構高い難易度のクエストしか残ってなかったから、確認した方がいいかもしれないぞ?」

 

「マジか?」

 

そう言って興奮してる変態と頭を振ってる駄女神を置いてクエストボードの前に行くと

 

「なんだこれ依頼がほとんどないじゃないか」

 

「やっぱ高い難易度のクエストしか残ってないな」

 

「申し訳ありません、最近魔王の幹部らしきものがこの町の近くに住み着きまして...その影響かこの近辺の弱いモンスターは隠れてしまいまして、仕事が激減してしまいます」

 

と受付嬢のルナが申し訳なさそうに声をかけてきた、魔王の幹部と聞いて一瞬頭痛がひどくなったが気合で黙殺する

 

「えー...」

 

和真は不満そうな声を出すが仕方ない

 

「んでリーダーどうするんだ?」

 

「流石にどうにもできないしなぁ...仕方ないから魔王幹部が倒されるまで活動休止」

 

「・・・カズマらしいと言えばカズマらしいですね」

 

ジト目で和真を見ているめぐみんだがこればっかりは仕方ないだろう

 

「クエスト受けたい場合はどうする?」

 

「・・・正直言って高い難易度のクエストしか残ってないからやりたくない」

 

「だろうな」

 

「それでも冒険者ですかあなたは」

 

「命あっての物種だ!で、志貴はどうするんだ」

 

「まぁ体なまらないようにちょこちょこ依頼うける、最悪だめならこの目があるし」

 

そう言って自分の目を指さす

 

「俺的にはあんまり使ってほしくないんだが...お前頭痛で辛そうだし」

 

「あくまで最終手段だ」

 

「本当ですかね、ともあれカズマとは大違いですね」

 

「ほっとけ」

 

「ちょっと和真何置いて行ってるのよ!」

 

話がまとまったところでアクアとダクネスが合流してきた、なぜかさっきよりもダクネスは興奮していたが無視しておいた

 

「とりあえず結論だけ言っておく、しばらく活動休止!では解散!!」

 

そう言うと和真はさっさとギルドから出て行ってしまった

 

「ちょ!待ちなさいよこのヒキニート」

 

アクアも和真の後を追って出て行き俺も続いて出ていく

 

「とりあえずそういうわけで」

 

------------------------------

 

「はぁ...」

 

「どうしたんですかため息なんてついて」

 

なぜか俺の後をついて回っているめぐみんは不思議そうに尋ねてきた

 

「まぁいい装備品がない」

 

「さっきアクアが言っていたふぁんたじー感という奴のためですか?」

 

「それもあるがそろそろボロボロになってきてるしな」

 

そう言って肩口を指さすとめぐみんは納得したように頷く

 

「シキの場合前衛で戦うことが多いですからね、数値的にクルセイダーのような前衛職にもなれるのですからそちらに変更してみたらどうですか?」

 

「いや?ダクネスっていう最高の囮がいるわけだし俺は冒険者のままでいいかな」

 

「仲間を囮って言いましたよこの人は」

 

ジト目で俺を見てくるが事実なので気にしない

 

「それに遊撃手みたいなポジションでいた方がいいから、装備はなるべく軽いのがいい」

 

「ですがシキが求めているようなものとなるとこの駆け出しの町には置いてないと思いますよ?」

 

「そうなんだよなぁ...」

 

武具やなどを回っているのだがなかなか目当てのものには出会えない

 

「なんか方法はないもんかねぇ...」

 

「うーん...はっ、ないこともないですよ志貴!」

 

何か思いついたのかぐいぐいと引っ張ってくるめぐみん、引っ張られる際に頭が揺れて頭痛がひどくなってるのだが意識の外に追いやって話を聞く

 

「妙案があるのか?」

 

「はい!オーダーメイドですよ、素材を持ち込んで自分の気に入ったものを作ってもらうんですよ、その分費用は掛かりますが出来合いのものを買うより安く済むはずです」

 

「オーダーメイドか...なるほど」

 

確かにいい案だった、今は強いモンスターしかいないがこの目があればなんとかなるだろうし悪くない条件だった

 

「流石に何の素材が必要かなどはわかりませんがそれならば志貴の目当てのものが手に入りますよ」

 

「だな、めぐみんのおかげだありがとう」

 

「い、いえ///そうと決まればさっそくモンスターを狩りに行きましょう!//」

 

お礼を言われて恥ずかしかったのか若干頬を赤くしながらぐいぐい腕を引っ張ってくるのだが

 

「流石に何の素材が必要か聞いてからにしようぜ」

 

「わ、わかっていますとも!!」

 

腕を離すとこっちに食って掛かってくるめぐみん。俺はそれを無視してオーダーメイドをやってる店がないか聞き、駆けだしの町なのにやっている店で素材を聞くとギルドに行きそのモンスターを確かめる

 

「見事に高い難易度のクエストばかりですね...」

 

「ま、明日から予定もなしちょうどいいさ。さて明日の準備でもし始めるかな」

 

「流石に暗いですし今日はもう解散ですね、明日は何時に集合にしますか?」

 

「ん?」

 

「ん?」

 

お互いに顔を見合わせる

 

「めぐみんも来るのか?」

 

「当たり前です!ここまで来てお前はもう必要ないっていう気ですか!?」

 

「いや、来てくれるのはありがたいぞ?」

 

「ならいいですね」

 

「んじゃ朝から行くから、今日は解散」

 

「わかりました、ではまた明日」

 

「おう」

 

------------------------------

 

「それでは行きましょう!強者を求めて」

 

「いやまぁ戦うのは強いモンスターばかりだが」

 

そうして俺とめぐみんの素材集めが始まった、ほかの仲間はというとアクアは商店街でバイト、ダクネスは実家に帰って筋トレ、和真はだらだら過ごしていた

 

そうして数日後

 

「ボロボロな服が余計にボロボロになりましたね」

 

「まぁしゃあないだろ」

 

実際めぐみんのおかげで目を使わずに済んだのはいいが、そうなると俺がやるのはめぐみんが魔法を安全に打つための囮兼足止め傷が増えるのは当たり前だった

 

「でもまぁこいつは仕立て屋に出すからまたきれいな状態で戻ってくるけどな」

 

「へー」

 

実際先に送り込まれた日本人のおかげでこういう服を治す仕立て屋などがあったのだ

 

「それにしても今から楽しみで仕方ありませんね」

 

「俺は別にそこまででもないがな」

 

めぐみんが楽しみにしてるのは俺が今日受け取る装備のことである。毒などの状態異常無効化、身体能力向上バフの時間延長など色々な効果を付与したものだった。まぁ効果はあっても微々たるものなのだがないよりはましだろう

 

「ノリが悪いですね...」

 

「ほっとけ」

 

その後めぐみんには先にギルドに行ってもらい、装備を受け取り制服を仕立て屋に預けギルドへと向かう。ギルドへと入り和真たちを見つけたのだがなぜかアクアが泣いていた、まぁいつものことなのでほっておいて声をかける

 

「よお」

 

「ん?志貴じゃ...お前その恰好は」

 

「新しい装備」

 

「装備というか服じゃないですか!でもいいですね!!」

 

紅魔族の中二の感性が騒ぐのかめぐみんがキラキラした目でこちらを見ている

 

「こっちにその服があったのは前から知ってたけどアンタが着るとアレね、李書文...「それ以上はいけない!!」

 

アクアがしょうもないことを言い出したので和真が慌てて遮る

 

「緊急!緊急!!冒険者の皆さんは直ちに武装し正門に集まってください」

 

そんなバカな話をしてるとルナが妙に切羽詰まった声でそう言った、指示に従い正門前に行ってみると

 

「・・・」

 

周りが騒いでいるが俺には雑音にしか聞こえなかった、俺の視線は目の前のモンスターにのみ注がれていた。なぜかあのモンスターを見ていると血液が沸騰したような感覚になり、頭痛もこれまでの比じゃないくらいだがなんとか抑える

 

「俺はつい先日この近くに越してきた魔王軍の幹部の者だが...毎日、毎日、毎日、毎日!!お、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちこんでくる...あ、頭のおかしい大馬鹿は誰だぁぁぁ!!!」

 

ダクネスが言っていたデュラハンはそれはもうお怒りだった

 

「俺はつい先日この近くに越してきた魔王軍の幹部の者だが...毎日、毎日、毎日、毎日!!俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちこんでくる、頭のおかしい大馬鹿は誰だぁぁぁ!!!」

 

怒り心頭のあまり同じことを二回言った

 

「爆裂魔法?」

 

「爆裂魔法を使えるやつって言ったら...」

 

こちらに視線が集まる、当たり前だが爆裂魔法が使えるなんて言ったらこの町ではただ一人めぐみんだけだからだ

 

「・・・」

 

視線を受けてめぐみんは横に視線をそらす、そこには可哀そうなことにウィザードがいた。相当テンパってるのか泣き出しそうな勢いだった、流石にかわいそうなのでめぐみんに声をかける

 

「おいめぐみん、行くぞ」

 

「・・・はい」

 

正直言って頭痛もしてだんだん吐き気もしてきているのだが俺も共犯なので一緒にデュラハンの前に行く

 

「お前か...お前が毎日爆裂魔法を撃ちこんでくる大馬鹿者か!俺が魔王軍幹部だと知って喧嘩を売っているなら堂々と城に攻め込んでくればいい、その気がないなら町で震えてるがいい!!ねえなんでこんな陰湿な嫌がらせするの?どうせ雑魚しかいない町だと思って放置しておれば、毎日毎日ポンポンポンポンポンポンポンポン打ち込みにきおって頭おかしいんじゃないのか貴様ー!!」

 

想定していたよりもずっとおしゃべりなデュラハンだった、それはいいのだがもう頭が割れそうなほど痛かったそれにまるで自分の体ではないみたいに腕が出が動きそうになり左手で右手を抑えてる状態だった。それとは別にめぐみんは

 

「我が名はめぐみん!!アークウィザードにして爆裂魔法を操りしもの!」

 

いつもの中二全開の自己紹介をしていた、一瞬の間の後

 

「めぐみんてなんだ、馬鹿にしているのか?!」

 

となった、まぁ一般人の感性からしたらそうだと思う

 

「ち、違わい!我は紅魔族のものにしてこの町随一の魔法使い、爆裂魔法を放ち続けていたのは魔王軍幹部のあなたをおびき出すための..作戦、こうしてまんまと一人でのこのことこの場所に来たのがあなたの運の尽きです」

 

本当のことを言うと作戦でもなんでもなく偶然なのだが何も言わないでおいた、それに俺自身がいつものように軽口をたたける状況じゃない。うしろでもなにかいっているのだろうガヤガヤしていたが特に何もなかったのだが

 

「しー!黙っていてあげなさいよ、今日はまだ爆裂魔法打ってないし後ろにたくさんの冒険者が控えてるから強気なのよ。今いいところなんだから見守るのよ」

 

なんて声が聞こえてくる

 

(ほんと駄女神だよな)

 

「ふっ...まぁいい、俺はお前ら雑魚にちょっかい掛けにこの地に来たのではない。しばらくはあの城に滞在することになるだろうがこれからは爆裂魔法を使うんじゃない、いいな」

 

そう言って背を向け帰ろうとするデュラハン、また頭痛が酷くなり幻聴まで聞こえ始める

 

『殺せ、あいつはアンデットだ...死体が俺たちの前に立つなど許されない』

 

それはとても聞き覚えのある声だったが気合でねじ伏せる

 

「無理です、紅魔族は日に一回爆裂魔法を撃たなければ死ぬんです」

 

そんな俺の精神下での駆け引きをしている間にめぐみんはとんでもないことを言う

 

「お、おい!聞いたことがないぞそんなこと!適当な嘘をつくなよ」

 

帰ろうとしていたデュラハンだったが急いで方向転換する

 

「どうあっても爆裂魔法を撃つのをやめる気はないと?」

 

デュラハンの問いに静かに頷くめぐみん

 

「おれは魔に身を落とした身ではあるが、元は騎士だ弱者を刈り取る趣味はない...だが!」

 

デュラハンの目が怪しく光る

 

「ふん...余裕ぶってられるのも今のうちです、センセー!お願いします!!」

 

見事なまでの他力本願だった

 

「しょうがないわね、魔王の幹部だか知らないけどこの私がいるときに来るとは運が悪かったわねあんたのせいでまともなクエストが受けられないのよ、覚悟はいいわね」

 

まさか来るとは思わなかったのだがきてしまった、まぁアクアだから予想通りと言えば予想通りだ。和真は呆然としているが

 

「ほぅ...これはこれはアークプリーストか俺は仮にも魔王軍の幹部こんな街にいるアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいないそうだなここはひとつ紅魔の娘を苦しませてやるか」

 

そう言うとデュラハンは右手を前に突き出す、突き出された右手はまがまがしい何かが出ていた

 

「私の祈りで浄化してやるわ」

 

「間に合わんよ...汝に死の宣告を、お前は一週間後に死ぬだろう」

 

それがどういうものかはわからないがやばいものだとはわかるので、めぐみんめぐみんの腕を引いたのだが

 

めぐみんを助けようとしたのかめぐみんのいたところにダクネスの姿が

 

「ぐわあぁぁぁぁぁ!!」

 

「ダクネス!」

 

和真も後ろから急いで掛けよってくる

 

「ダクネス!ダクネス!」

 

めぐみんは心配なのか急いでそばによる、俺もダクネスに肩を貸そうとするがまたひどい頭痛が

 

『お前がちんたらしているからそういうことになるんだ』

 

(うるさい黙れ!!)

 

頭を押さえながら聞こえる幻聴を振り払うように頭を振る、ダクネスが何か言っているがだんだん意識が遠くなってくる。俺が最後に見たのはダクネスを羽交い絞めにしている和真と、背を向けて去っていくデュラハンだった

 

『我慢するのはいいがまた失うつもりか』

 

-------------------------------

 

目が覚めたらそこは知らない天井だった、急いで眼鏡を掛けるがやはり頭痛は収まらなかったそれどころかここ数日より確実に酷くなっている

 

「あ、目が覚めたんですねシキ」

 

声がした方を向くとめぐみんがほっとした様子でこちらを見ていた

 

「あーまた心配かけたみたいっだな」

 

身を起こしながらそう尋ねる

 

「全くですよ!横でいきなり倒れるからびっくりしましたよ」

 

「てかダクネスは?」

 

「ダクネスの呪いはアクアが解きましたよ」

 

「そうか」

 

短く答えてベットから出る

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ」

 




爆裂、爆裂~。あのくだり好きです
それにしてもアクアに煽られるデュラハン、アクアはもうちょっと自重を覚えた方がいいと思う、でもそうなるとアクアじゃないというジレンマ


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第五話 この哀れな女神に大量のエリス(お金)を!

みなんとかの話です、個人的にはこの話にあってないから嫌いです。というよりも正義感強い人自体あまり好きじゃない、野郎だし
まぁそんな話は置いておいて、本編の方どうぞ!


今日も今日とてギルドに集まる俺達

 

「もう限界...借金に追われる生活。クエストよ!あのデュラハンのせいできついクエストしかないけど、受けましょう!お金が欲しいの!」

 

大きい声でアクアがそんなことを言い始める、いつもならツッコミ入れるところではあるがあの日からましになったとはいえまだまだ頭が痛いのだ

 

「・・・アクアもう少しヴォリューム落とせ」

 

「あ、ああ、アンタまだ頭痛かったんだっけ」

 

立っていたアクアだが、俺に言われて落ち着いたのか座る

 

「わ、私は構わないが...」

 

正直に言うとアクア以外はこの前のキャベツの報酬が残っているのでそれほど切羽詰まっていない

 

「お願いよぉ!もう商店街のバイトは嫌なの!!コロッケが売れ残ると店長が怒るのよ、頑張るから今回は私全力で頑張るから!」

 

と和真に泣きつくアクアもはや惨めだった、それと言ってるときにだんだんヴォリュームを上げるのやめてほしい頭に響く

 

「俺の金もいずれなくなるだろうし、よさそうなクエスト探して来いよ」

 

「わかったわ」

 

和真に敬礼すると依頼を見に行くアクア、和真は一息ついて俺の方を向く

 

「大丈夫か志貴」

 

「まぁぶっ倒れた時に比べればな」

 

「でも顔青いですよ?」

 

「まぁあんまり寝てばっかでも体なまるからな」

 

「まぁあんまり無理するなよ」

 

みんな心配そうに見てくるがそれよりも俺は心配なことがあった

 

「・・・和真一応見てきた方がいいんじゃないか?」

 

「あー確かにろくでもないクエスト選ばれても困るからな」

 

そう言うと和真は席を立ってクエストボードの方に向かっていく

 

「私としては安静にしててほしいのですが...」

 

「お前は俺の母親か何かか、大体あのゾンビメーカーの依頼の時だって大丈夫だったろ?」

 

実を言うとそのゾンビメーカーの依頼の時も幻聴がしたのだが黙殺した

 

「それはそうなんですが...」

 

「まぁ和真もいるしそこは何とかしてくれるだろ、もしダメそうだったら私を囮に!」

 

心配した様子のめぐみん、興奮したダクネスと場がカオスになったところで和真から声がかかる

 

「クエスト行くぞー」

 

--------------------------------

 

水質改善の依頼の道中、檻の中にいるアクアは怖気ずいたのか和真に尋ねる

 

「ねぇほんとにやるの?」

 

「俺の考えた作戦のどこが不満なんだ?」

 

「私今から売られていく希少モンスターの気分なんですけど

 

その表現もあながち間違いではないだろう、和真の考えた作戦それは

 

檻の中に入ったアクアを湖の浅瀬に沈め放置するのだから、どちらかというと売るより廃棄だが

 

湖につき用意も終わったところで和真がアクアに声をかける

 

「アクアー何かあったら言えよー!檻ごと引き挙げてやるからなー」

 

特にやることもなく日差しも気持ちいので寝ることにする

 

「和真」

 

「なんだ?」

 

「寝てていいか?」

 

「・・・おう」

 

苦い顔をしたが俺が頭痛持ちなこともあり許してくれた

 

--7時間後--

 

「シキ、起きてください。シキ!」

 

「ん?」

 

頭の下に柔らかいぬくもりを感じながらゆっくりと目を開ける

 

「ようやく起きましたね」

 

「んー?おぅ...」

 

なぜかめぐみんの顔が上にあるのだが若干寝ぼけた頭で考えるのをやめ身を起こす

 

「・・・?」

 

流石に違和感に気が付き後ろを見るとめぐみんが

 

「?どうかしましたか志貴?」

 

「・・・いやどうかしたとかじゃなく、なんでお前俺に膝枕を?」

 

「あぁそのことですか、志貴寝てたのはいいんですがすぐ自分の腕から落ちてしまいまして、そこで枕になるようなものを探したんですがなかったので私の膝をお貸ししたというわけです」

 

「・・・お前がいいならいいが」

 

確かに俺は腕を枕にして寝ていたが、なにもそこまでしなくても

 

「まぁなにわともあれありがとな、柔らかくて暖かくて寝心地よかったわ」

 

立ち上がって固まった筋肉を伸ばす、あまり頭もいたくないし結構いいコンディションかもしれない

 

「っ!?///またあなたはそういうこと言って...///」

 

「?何か言ったか?」

 

「なんでもありません!!//」

 

ぼそぼそと何か言ってたので聞いてみたら何もないそうなのでどうなったかめぐみんに聞いてみることにした

 

「それで依頼は?」

 

目の前に奇麗になった泉があるのは見えるのだが和真たちの姿が見えない

 

「水質は問題ないです、ブルーアリゲーターも大丈夫なんですが...ただ」

 

「ただ?」

 

めぐみんを見ると気まずそうに指さす、そこにいたのは

 

「なんでアクア檻に入ったままなんだ?」

 

「それが...」

 

-------------------------------

 

町に着くころには夕暮れになっていて、アクアは相変わらず檻に入っていた

。何故アクアが檻に入ったままなのかというと、和真たちはギブアップを進めたらしいのだがアクアが拒否しトラウマを抱えてしまったとのこと

 

「きっとこのまま売られていくよ~...」

 

「おいアクアその歌はいい加減やめてくれ、傷ついた檻に女を運んでいる時点で人の注目集めてるんだからな...ていうかいい加減出て来いよ!!」

 

「いや...この中こそ私の聖域よ、外の世界は怖いからしばらくでないわ」

 

和真の説得には応じない、相当深いトラウマが刻まれたらしい

 

「すっかり引きこもってしまいましたね」

 

「あぁ...」

 

「そうだな」

 

「以前の俺みたいだな」

 

和真のつぶやきは俺以外には聞こえなかったようだ

 

「女神様!」

 

後ろからそんな声がしたので見てみるとなぜか冒険者が檻をこじ開けていた

 

「うわぁ...」

 

「えぇー!」

 

「マジですか...」

 

他のメンツも多かれ少なかれ驚いているようだった

 

「何をしているのですか女神様!こんなところで」

 

「おい私の仲間になれなれしく触れるな、貴様何者だ」

 

珍しくあのダクネスが怒ってた

 

「おいアクア、お前の知り合いだろ?女神とか言ってたし何とかしろよ」

 

和真が呼びかけるとこっちを向くアクア、眼の光がないので和真は若干怖がっていた

 

「女神?」

 

「そうだよ!」

 

そのまま見合う二人、そしてようやくアクアの目に生気が戻る

 

(こいつ自分が女神だってこと忘れてたな...)

 

和真もそう思っているのか苦い顔をしていた

 

「・・・そうよ女神よ私は!」

 

そう言って檻の外に出るアクア、こけそうになったが胸を張りこう問いかけた

 

「さぁ女神のアタシに何の用かしら...ってあんた誰?」

 

(まぁアクアが覚えてるわけないよなぁ)

 

自己紹介が始まる、簡単に言うと俺たちと同じ転生者だった

 

そして何故か和真とミツルギキョウヤが勝負することになった、正直言って俺が嫌いというよりも生理的に無理な相手なので思い出したくもない。一つだけ付け加えると、ダクネスやめぐみんを職業でスカウトするような奴だと付け加えておこう。そして自分のパーティーに入れば最高級の武具を与えるということ

 

「僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ、君が勝ったら何でも言うことを聞こうじゃないか」

 

「よし乗った、いくぞぉぉ!!」

 

不意打ち気味に和真はミツルギに切りかかる

 

「ちょ!?ま!」

 

対応が遅れ一歩下がって剣を抜きガードしようとするが

 

「スティール!!」

 

左手を突き出し閃光がやむとその手にはミツルギが持っていた剣が握られていた。呆然としているミツルギにその剣が振り下ろされあっけなく気絶する

 

「言いたい放題言いやがって」

 

見下ろしながら和真がそう言うと、取り巻きの二人が騒ぎ始める

 

「卑怯者卑怯者卑怯者ー!!」

 

「あんたたちこいつの仲間か?」

 

「この最低男卑怯者!!」

 

卑怯なのはどっちだと言いたくなったが我慢する、というより我慢もそろそろ限界なのだが

 

「グラムを返しなさい!その魔剣はキョウヤにしか使えないんだから!」

 

「え?まじで?」

 

和真はアクアに聞くと

 

「魔剣グラムはその痛い人専用よ」

 

和真は考えているようだが決まったのか

 

「まぁせっかくだしもらっとくか」

 

と去ろうとするのだが

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

「こんな勝ち方私たちは認めない!」

 

と今だに突っかかってくる、いい加減我慢の限界だった

 

「・・・和真一回俺にその魔剣かしてくれ」

 

「?」

 

「とりあえず」

 

「お、おぅ」

 

和真は俺の雰囲気が違うことに気が付いたのか、少し戸惑いながら貸してくれる

 

「で?勝ち方認めないって言ったよな?」

 

「そうよ!だからグラムは

 

「なら俺が和真の代わりにやればいいんだろ」

 

「「は?」」

 

よっぽど俺の提案が意外だったのか呆けている、そんな取り巻き二人は置いておいてミツルギを起こす

 

「おい起きろよ」

 

ゆすぶったり頬をたたいて起こす

 

「ん、んん?」

 

起きたようなので放し数歩距離をとる

 

「そうだ僕は...」

 

「御託はいいとっとと始めるぞ」

 

そう言って魔剣を相手の近くに刺す

 

「?どういう」

 

「お前の連れが卑怯だなんだって言うから再選だよ」

 

「当たり前でしょうあんなの」

 

「少し黙れ、こっちは頭痛のせいとお前らみたいなのに絡まれてイライラしてんだよ」

 

うるさい外野を黙らすために睨むと二人はおびえた様子で黙る

 

「絡んだのについて謝るが

 

「だから御託はいいって言ってるんだよ、とっととルールの確認だ」

 

流石に発言を遮られて頭に来たのか剣を構える

 

「っ!...条件はさっきと同じだ僕が勝ったらアクア様を譲ってもらう、君が勝ったら何でも言うことを聞こうじゃないか」

 

「さっきみたいな不意打ちを防ぐためにコイントスだ、すみませんコイントスしてもらっていいですか?」

 

近くにいたギャラリーの一人にコインを渡す

 

「それじゃあルールの確認ださっきのように気絶するか相手の武器を奪うかで決着、スタートはコイントスで地面に落ちるのと同時にスタートだ」

 

「わかった...君は武器を構えないのか?」

 

「必要ない、お願いします」

 

噛みつかんばかりにミツルギが見てるが、審判の人にお願いする

 

「は、はい」

 

キン!とコイントスをしたためコインが空中に上がり始める俺は目を閉じ集中する

 

「おい、志貴目を閉じたら...」

 

和真が何か言ってるが気にしない

 

キン!と音がし目を開けるとミツルギは切りかかってきていたが俺は難なく左手で魔剣を受け止める

 

「なっ!」

 

驚いているが俺には全く驚きがないので、左手を思いっきり引き右ひじを六十%ぐらいの力で鳩尾に叩き込む

 

「っ!?」

 

ミツルギは吹っ飛ぶ、どうやら気絶しているのか動かない。防具もよく見ると少し凹んでいた

 

「で、これで文句あるか?」

 

「「ひっ!」」

 

俺がそう言うと取り巻き二人はおびえた様子ブンブン首を横に振っていた

 

「おい、和真これ」

 

そう言って和真に魔剣を渡す

 

「あ、あぁ...」

 

受け取る和真の返事はどこかか上の空だった

 

「それと、さっきの条件だけどお前らはもう二度と俺に近づくな。それだけだ」

 

「「は、はい!!」」

 

「和真悪い食欲無いから俺帰るわ」

 

返事も聞かずに俺はその場から立ち去った

 

-------------------------------

 

その翌日俺が少し遅れてギルドに行くとアクアがルナに掴みかかっていた、これまたいつものことなので無視し和真の隣に腰を下ろす

 

「おっす、何の騒ぎなんだ」

 

「ん?志貴かいや俺もさっぱりなんだ」

 

「てかその金は?」

 

和真の前には小袋が置いてあった

 

「あーこれかこれは昨日の魔剣を売った金だ」

 

「・・・お前そういうことしてるからゲスマだのクズマって言われるんだぞ」

 

「うっせ、それよりもお前大丈夫かなんか昨日雰囲気がおかしかったけど」

 

「あー、ただイライラしてただけだから気にすんな」

 

イライラは確かにしていたのだが昨日のことについてはあまり思い出したくないので話を切るために注文をする

 

「今回の報酬壊した檻の修理代を引いて10万エリスだって、檻の修理代が20万エリス...私が壊したんじゃないのに!!」

 

静かに椅子に座ったと思ったらそんなことを言いながら泣き出すアクア、今回はいじらないでおいた

 

「あの男、今度会ったら絶対ゴットブローをくらわしてやるんだから!!」

 

なんだか思っていたよりも元気そうだった

 

「探したぞ佐藤和真!!」

 

後ろからそんな声が聞こえる、勝負に負けたのに約束を破るとはいい度胸だ

 

「・・・朝からうるせえよ、何の用だ」

 

「「「ひっ」」」

 

どうやら取り巻きもついてきてたようで三人は俺を見た瞬間小さく悲鳴を上げる

 

「言ったはずだが俺の前に二度と

 

「ゴットブロー!!」

 

「・・・」

 

俺が制裁するまでもなくアクアが制裁していた

 

「し、志貴少し落ち着いてください。それになんか怖いですよ」

 

少しおびえた表情で俺に言ってくるめぐみん、それで少しは落ち着いたのだが

 

「ぼ、僕は佐藤和真に

 

「御託はいい用件だけ簡潔に言え」

 

「ま、魔剣を...僕の

 

「魔剣はない、和真が売った。これで用件は済んだなさっさと消えろ仲間のおかげで命拾いしたな」

 

そう言って注文したものを食べようと席に着こうとする

 

「う、売った?僕の魔剣を...」

 

呆然としているが正直早く消えてほしいので席に座る前に

 

「さっさと消えろって言ったはずだが?それと三度目はないぞ」

 

そう言って他のメンバーには見えないように短刀をミツルギに見せる

 

「ひっ!」

 

短い悲鳴を上げてさっさとギルドから出て行った

 

「志貴助かったが、少しやりすぎだ」

 

「そうですよシキ」

 

和真は若干引きながら、めぐみんは泣きそうな表情で言ってくる

 

「・・・悪い」

 

「緊急、緊急!全冒険者の皆様は直ちに武装し正門に集まってください!それと冒険者佐藤和真さんの一行は直ちに集まってください!!」

 

その呼び出しに俺達は顔を見合わせながら正門えと向かった

 

そこにはたいそうご立腹なデュラハンがいた

 




本当は今日は投稿する予定はなかったんですが書いているやつが早く終わったので投稿しました。
それにしてもお気に入り11件とは、ありがとうございます!評価をくれた人も同様にお礼を。これを励みに書いて行きたいと思います!
といってもこのやつは最後まで書き終わっているんですが


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第六話 このデュラハンとの戦いに決着を!

ベルディアは変態騎士
というわけで本編どうぞ!


「何故城に来ないのだ...この人でなしどもがー!!」

 

「「「「「はい?」」」」」

 

なぜか大層ご立腹なデュラハンがそんなことを言う、俺たちは身に覚えがないので呆然とする

 

「なんで?前のは事故だったとしても、もう爆裂魔法を撃ちこんでもいないのに...」

 

一応和真が代表して聞いてくれるが

 

「撃ちこんでもいないだと?何をぬかすか白々しい!!」

 

怒りのあまり自分の頭を地面に叩きつけるが急いで取ろうとするあたりなんとなくシュールだ

 

「そこの頭のおかしい紅魔の娘が、毎日欠かさず通っておるわ!!」

 

「「・・・」」

 

「・・・」

 

俺と和真がめぐみん方を向くと目を合わせようとしないめぐみん

 

「・・・」

 

「いひゃいいひゃいのれす!」

 

俺は無言でめぐみんの頬をつねる、一応理由があるみたいなのでいったん止めてやる

 

「今までならば何もない荒野やモンスターに魔法を放つだけで我慢できていたのですが、試しに城に攻撃した時にその魅力を覚えていらいその...大きくて硬いものじゃないと我慢できない体に//」

 

もじもじしながらそんなことを言うめぐみんの肩にそっと手を置く

 

「志貴...」

 

わかってくれたとばかりに目を輝かせるめぐみんだが

 

「よしこのままお前をデュラハンに差し出す」

 

回れ右させて右手で首根っこを掴みそのまま腕を上げる

 

「ちょ!すみません!すみませんでしたからやめてくださいー!!」

 

そうして謝るめぐみんだが俺は何も言わない、まぁ差し出す気はないが少しお灸を据えなければならないだろう

 

「ん、まてよ?めぐみんは魔法使ったらぶっ倒れるから運ぶのに共犯者が...」

 

と大事なことに気が付いた和真は周囲を見回すと一人だけ吹けない口笛を吹いてるやつが

 

「おまえかー!!」

 

「いふぁい!いふぁい!ふぁって、あいつのふぇいでろくなクエスト受けられないからふぁらいへがしたかったんだもの」

 

そんな風に和真が問い詰めていると突然禍々しい風が吹く

 

「聞け愚か者ども我が名はベルディア、この俺が頭にきていることは他にある...貴様らには仲間の死に報いようという気概はなかったのか!!生前俺はこれでもまっとうな騎士のつもりだった、その俺から言わせればあの騎士の鏡のようなクルセイダーの死を無駄にするなど!え?」

 

(あぁようやく納得がいった)

 

つまりコイツはあのダクネスが死んだのに敵討ちにも来ない俺たちが許せなかったと、でも俺達も行く必要はないのだなぜなら

 

「や、やぁその...騎士の鏡などと」

 

少し気まずいのかそれとも恥ずかしいのか控えめに出てくるダクネス

 

「へ?あ、あれーーーーーーーーー!?」

 

ダクネスは生きているから行く必要もなかったわけだが、それは大層ベルディアは驚いていた

 

「あれ?生きてる??」

 

「なになに?このデュラハンずっと私たちを待ち続けていたの??帰った後あっさり呪いを解かれちゃったとも知らずに???プークスクス、うけるんですけど!チョーうけるんですけど!!」

 

アクアは爆笑しながらベルディアを煽っていた

 

「お、俺がその気になれば街の住人を皆殺しに皆殺しにすることだってできるのだぞ!」

 

流石にいつまでも驚いて立ち直ったベルディアはそんなことを言い出す、流石にアクアも笑ってはいられないのかベルディアに向き直る

 

「アンタアンデットのくせに生意気よ!!」

 

ただの妬みだったらしい

 

「駆け出しの冒険者のまほうがつ「ターンアンデット!」

 

「ぎやーーーーーーー!!あーあーあーあーあーあーあー!!」

 

言葉を途中で遮られたとはいえ、駆け出しの魔法が通用しないと思っていたのか真正面から受けたベルディアだが思った以上にきいたらしく、奇声と発しながら地面を転げまわっていた。ちなみに彼が乗っていた馬は消滅した

 

「ねえ和真変よ!私の魔法が効いてないわ!」

 

「いや結構効いてように見えたんだが、ぎゃーって言ってたし」

 

この二人は漫才でもやっているのだろうか、そんな話をしているとベルディアは起き上がる

 

「お前本当に駆け出しか?!駆け出しが集まるのところなのだろうこの町は!」

 

そんなことを言うがコイツは女神なのだから当たり前なのであろう、当の本人は珍しくおびえていた

 

「まぁいい、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない...アンデットナイト!この連中に地獄を見せてやるがいい!!」

 

そう言うとベルディアの真下に魔法陣が現れアンデットが召喚されていく、俺の頭痛はひどくなる一方で体が勝手に動きそうになるのを必死に抑える

 

「あー!あいつアクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜきっと」

 

なんて今度は和真が煽っていた

 

「な!?ち、違うわ!いきなりボスがたたかってどうする、まずは「セイクリッドターンアンデット!!」

 

「ひやぁぁぁぁ!!目が、目がぁぁ!!」

 

またも途中で遮られさっきよりも強力な浄化魔法が直撃する、またベルディアは奇声を発しながら転げまわる

 

「ど、どうしよう和真!私の浄化魔法が効かないわ」

 

「いや、ひやーとか言ってたしすごく効いてる気がするが?」

 

だから思えらは漫才でもやってるのかと聞きたくなるようなやり取りをしている、ベルディアはというと煙を上げながら立ち上がっていた

 

「もういい!アンデットナイトよ!街の住人を...皆殺しにしろ!!」

 

そう言って突撃してくるアンデットナイトに周りの冒険者は騒いでいるが俺は町に行かないことを確信していた、なぜなら

 

「ん?え、ちょ!?うわー!!」

 

なぜかアクアに向かって突進していたからだ

 

「何故アクアに?」

 

「あぁ、そうか忘れてけどアイツ女神だからか...」

 

「そうかアンデットだから女神に救いを求めて...ってそうだめぐみんあのアンデットの集団に爆裂魔法を撃ちこめないか!」

 

「え?ああも、まとまりがないと」

 

妙案が思いついたと思ったのだが流石に無理なようだった

 

「おいちょっと待てあいつこっちに向かってきてるぞ!」

 

「はぁ!?」

 

アクアあの事だから何も考え無しにこっちに、というより和真の方に向かってきているのだろう

 

「和真さん!和真さーん!!助けて!たーすーけーてー!!」

 

「うわぁ!!」

 

和真も逃げていく

 

「ど、どうしましょうシキ」

 

「・・・めぐみん魔法唱えて待機だ」

 

「へ?」

 

「早く」

 

「わ、わかりました」

 

和真の方を見ると俺の考えを理解したのか思った通りに走ってくれる

 

「いまだ!」

 

「っ!感謝します、シキ、カズマ!深く感謝します!!」

 

そう言うとめぐみんは杖を構え詠唱を始める

 

「我が名はめぐみん!!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りしもの...わが力、見るがいい!!エクスプロージョン!!」

 

「ぷぎゃー!!」

 

一瞬の閃光の後大爆発する、正直頭痛が酷くなるのでやめてほしいのだが仕方ないだろう

 

「くっくっく...わが爆裂魔法を前にして誰一人として声も出せないようですね...はぁ...すごく、気持ちよかったです...」

 

そう言って倒れるめぐみんに近づく

 

「倒れてなければ満点なんだが、おんぶはいるか?」

 

「あ、お願いします」

 

そうして倒れためぐみんを背負い他の冒険者のところに戻ると歓声が上がる。歓声が上がるが頭のおかしいが付いてるのでめぐみんは喜んでいなかった、それどころか

 

「すみませんちょっとあの人たちの顔、覚えておいてください今度ぶっ飛ばします」

 

なんていう始末だ

 

「フフフフフフ....面白い、面白いぞ!本当に配下を全滅させられるとは思わなかったぞ、では約束通りこの俺自ら相手をしてやろう」

 

ちょっと最初はめぐみんの爆裂魔法をくらって頭のねじでも飛んだかと思ったがそうではなかったようだ

 

「カズマ、シキ!!」

 

そう言って俺たちを守るようにダクネスが前に出る

 

「ビビる必要はねぇ!」

 

「すぐにこの町の切り札がやってくる!」

 

他の冒険者たちはチャンスと思っているのだろうがそうではない、その証拠に俺の頭痛はひどくなる一方だった

 

(多分ここからが本気、そういうことだろう...)

 

「和真めぐみんを頼む」

 

「は?おい志貴!」

 

一応何かあったときのためにめぐみんを預る、その間に他の冒険者たちは突っ込んでいく

 

「余程先に死にたいらしいな...」

 

そう言って頭を放り投げる、囲まれているというのに余裕な態度を崩さなかった

 

そのことに嫌な予感がする、和真も同じなのか横で叫ぶ

 

「ヤメロー!!行くなー!!」

 

『このままじゃアイツら死ぬぞ』

 

そんな幻聴が聞こえる

 

(そんなことはわかってる!力を貸せ!)

 

『ふん、強情だな...後悔するぞ』

 

(何かを...いや仲間を守れず、大切なものを守れず後悔するよりずっといい!!)

 

『そうか...』

 

なぜか幻聴はそう悲しそうにつぶやいた

 

『なら力を貸してやろう」

 

もはやそれは幻聴なのか俺の声なのかわからなかったがひとつわかることは、俺がとんでもないスピードでベルディアに迫っていることだけだった。全員の攻撃を避け今まさに剣を振ろうとするベルディアに切りかかる、まるで自分の体を誰かに操られているようだが構わなかった

 

「ぬ!」

 

俺の殺気を感じ取ったのだろう急いで半歩分飛ぶベルディアだがそれすらも俺は予測済みだったので半歩踏み込んで短刀を振る

 

「ぐぬぅ!」

 

だがそこは魔王軍幹部傷は浅かった

 

「ちっ」

 

「・・・貴様何者だ、今の太刀筋完全に殺しに来ていたが」

 

落ちてきた首を回収しながらそんなことを言うベルディア

 

「これから殺す相手に名乗る必要があるか?あーでも元騎士だったかなら必要か俺は白夜志貴、冒険者だ」

 

「ただの冒険者がこの気迫だと?笑わせるなこのさ「っ!」

 

何を言うかわかったので踏み込んで短刀を横一閃するが、今度は剣に受け止められる

 

「ふははは!!いいだろう貴様は強者だ!俺はデュラハンのベルディア、いざ尋常に...勝負!」

 

また首を投げて突っ込んでくる、流石にこんな大剣を受けたら吹っ飛ばされるので紙一重でよける

 

「ほらほらどうした!よけてるばかりでは「あぁそうだな、よけてるばっかじゃだめだよな」

 

隙を見て蹴りを入れ下がらせたところを一閃、だが今回も剣で防がれる。距離を取ろうとバク転を二、三回転するが仕留めようと大振りで振ってくる。だが大振りということは隙ができるので後ろに回って横一閃したが、見えているのか浅くしか傷つけれれなかった

 

「ほー、後ろからの攻撃見えてるのか」

 

俺は感心したようにつぶやく

 

「余裕だな貴様!!」

 

「種はわかるからな。大方あの頭だろ」

 

そう言って浮かんでいる頭を指す

 

「見破るか!こんなに強いやつはいつぶりか!!ふふ、はははは!!」

 

そう言いながら鋭い一撃が来るが俺には当たらない、それどころか

 

「っ!」

 

「ぐ!」

 

隙を見て攻撃した短刀が甲冑を破り中身にまでダメージを与える

 

直ぐにそのまま縦に切りその場を離れる

 

「貴様、なぜこれほどの実力がありながら!」

 

「おしゃべりな騎士だなぁ、っと」

 

俺は頭を抑える

 

『まずいなこれ以上は」

 

そう言って体を操られてる感覚は消え、残ったのは今までの比じゃ無い頭痛と鉛のように重い体だった

 

「?さっきまでの感じが、だがこれは好機!!」

 

「く...そ...!!」

 

短刀で受けたため刀傷はないが大きく吹っ飛ばされる

 

「志貴ー!!」

 

和真の声が聞こえるが頭痛が酷くて前か後ろかもわからない

 

「ダクネス!」

 

「わかっている!」

 

「どけクルセイダー!私はそこの冒険者に用がある!!」

 

そう言って近くで激しい剣戟の音が聞こえる、それとは別に駆け寄ってくる音も

 

「志貴大丈夫か!?」

 

「あぁ...わるい」

 

肩を貸してもらい何とか歩く

 

「お前のおかげでかなり時間が稼げたよ」

 

「じかん?」

 

そう聞くが答えるのよりも先に和真は他の冒険者たちに声をかける

 

「みんなー!!」

 

「「クリエイトウォーター!!」」

 

なぜかベルディアに向けてクリエイトウォーターをするのに疑問をもったが

 

「デュラハンの弱点が水だからだよ」

 

その説明を受け納得がいく。安全なとこまで運ぶと和真も参加しに行くが当たらない、だが何を勘違いしたのか和真の方に行くアクア

 

「ねぇなんで和真は遊んでるの?馬鹿なの?」

 

「あいつは水が弱点なんだよ!!なんちゃって女神でも水の一つぐらい出せるだろぉ!!」

 

こんな時でもあいつらは口喧嘩をしていた

 

「アンタねぇ!いい加減にしないと罰の一つでもあてるわよ無礼者!洪水クラスの水だって出せますから!!」

 

「だせるのかよ!」

 

「謝って!水の女神のことをなんちゃって女神って言ったこと、謝って!!」

 

「後でいくらでも謝ってやるからはやくやれよこの駄女神が!!」

 

「きー!!今駄女神って言ったー!!見てなさいよ女神の本気を見せてやるから」

 

なんか今聞こえてはいけない言葉が聞こえた、本気と

 

「この世にあるすべてのわが眷属たちよ...水の女神アクアが命ず、その力を世界に示せ!セイクリッドクリエイトウォーター!!」

 

ベルディアは逃げようとするがダクネスに捕まり羽交い絞めにされていた

 

(てかあれじゃあもろ洪水クラスかかるよなぁ)

 

そんなことを思いながらフラフラながらも立ち上がる

 

「あのバカ絶対何も考えてないよなぁ...」

 

考えるまでもなく眼鏡をとる、大量の水が迫り今にも俺や後ろの冒険者たちを飲み込もうとしている

 

(頭の痛さが今までの比じゃねぇな)

 

生物は点が見えるが大地には点は見えないので集中する、それに比例して頭痛がよりひどくなるまるで警告をしているかのように

 

「ようやくうっすら見え始めたか...」

 

『いいのか?それをつけば本当に戻れなくなるぞ』

 

「さっきも言ったろもう覚悟はとうの昔にできてる、俺はもう」

 

そうして見えた点に短刀を突き立てる

 

「逃げない」

 

『そうか...ならお別れだな...いや一つに戻るだけか』

 

突き立てた瞬間何かが砕ける音が聞こえた

 

-------------------------------

 

俺はおぼつかない足取りでベルディアの方に歩いて行く

 

「私の負けだ」

 

俺が目の前まで行くとそう呟くベルディア

 

「・・・」

 

「殺したいなら殺せ」

 

「俺にお前は殺せない」

 

「くっくっく...さっきのを俺が見てないとでも?まぁいいさ今の俺ならアークプリーストでも浄化できるだろう」

 

「・・・お前が使ってたスキル教えてくれ」

 

「魔眼か?まぁいいさ教えてやろうとも俺は負けたのだからな」

 

教えてもらったので冒険者カードを見てみると、習得可能スキルのところに魔眼があった

 

「それと俺の剣も好きにしてくれて構わない、お前なら使えるだろう?」

 

「・・・」

 

黙ってうなずく

 

「ふ...さっきと大違いだな貴様、まぁいいさ貴様がした過去のことはどうにもならない後悔して生きるといい」

 

「言われなくてもそのつもりだ、話は終わりだ」

 

近くで人が起きる気配がするので話をやめる

 

「いつつ...志貴?」

 

「和真どうやら成功したみたいだ、コイツを浄化してやろう」

 

「あ、あぁ...アクア!」

 

「な、なによ、今起きたばっかりなのに...」

 

「浄化だ、やれ」

 

「わかったわよ...」

 

そうだるそうに言うと手を横に出すと杖が飛んでくる、ついでに羽衣も出していた

 

「セイクリッドターンアンデット!!」

 

ベルディアが横たわってる下に魔法陣が出てきて光に包まれる。ベルディアの体と頭が少しずつ薄くなり、宙に浮かび始める

 

「最後に貴様と戦えたことを誇りに思う、貴様の手が血に汚れていたとしても」

 

ベルディアは俺にしか聞こえない声で言う

 

「・・・」

 

「さらばだ孤独な殺人鬼」

 

そう言い残し消えるベルディア、和真は俺のそばに寄ってくる

 

「お、おい志貴、大丈夫か?」

 

心配そうに声をかけてくる和真、ありがたいが今は辛い

 

「ベルディアがあの剣をくれたからお前にやる、それとおれパーティー抜けるわ」

 

そう言って和真に背を向ける、和真は何か言ってるが俺は歩き続けた

 

-------------------------------

 

「・・・これでここで寝泊まりするのも最後か...」

 

寝泊まりしていた馬小屋を見て考えると感傷的な気持ちになるが

 

「・・・」

 

すぐに頭を振り考えを捨てる

 

少し歩き同じような馬小屋に入る、和真とアクアがいる馬小屋だ

 

「・・・」

 

俺は俺が使っていた短刀以外の装備品を置くと背を向ける、ちなみに今の俺は転生してきたときの制服だ

 

「今までありがとうな...じゃあな、会うことはあるだろうがもう他人だ」

 

そう呟き今度こそこの場を去った

 




この次の話からオリジナルになります、話の説明は次の方で


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第七話 この紅魔のボッチ娘とクエストを!

今回のお話はオリジナル回になります、話が続きますがどうぞ!


「・・・」

 

冬の危険なクエストに俺は一人で来ていた。なんでも冬はモンスターが狂暴になる上にアクセル近隣は吹雪と結構な量雪が積もるので基本クエストを受ける人はいない、一部俺たちのようなチート持ちを除いては

 

「・・・」

 

俺は倒した一撃熊を見下ろしていた

 

(また死ねなかった)

 

さっきも言うように危険な冬のクエストに俺は一人で来ている、もちろん目は使っていないそれでも死ねないのだ

 

 

「・・・戻るか」

 

死ねないのならここにいても仕方ないそれなら新たにクエストを受けてモンスターを狩った方がましだろう

 

-------------------------------

 

「こちら一撃熊達成報酬の50万エリスとなります」

 

「いつもの通り門の返済にでも充ててくれ」

 

「かしこまりました...あの、失礼ですがクエスト続きですしそろそろ休まれた方が」

 

「問題ない」

 

そう言ってクエストボードに向かう、ここのとこころ俺が狩りすぎてクエストがあまりない現状だが

 

(これでいいか...)

 

白狼の群れ50匹討伐で100万エリスと書かれたクエストを取ろうとすると横から手が伸びてくる

 

「?」

 

人のことは言えないがこんな危険なクエスト受けるのは誰なのかと思いそちらを向いてみると

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

なぜか謝られた

 

 

話をしようということになり近くのテーブルに腰かけているのだが

 

「・・・」

 

「・・・」

 

会話がない、俺は腹ごしらえもかねてカエル定食を食べているのだが相手はもじもじしていて話してこない

 

(すげー気まずい)

 

そう思いながら最後の一口を食べ切った、はっきり言っていつもなら無視をしていたのだがこの子は放っておけない気がした、あと紅魔族なのでめぐみんを思い出していたのかもしれない

 

「・・・とりあえずなんか食わなくていいのか?」

 

「え!?あの、その...///」

 

すこし声をかけただけなのにすごい挙動不審だった、ばれないようにため息をつきながら再度話しかける

 

「とりあえず深呼吸でもして落ち着け」

 

「は、はい!すー...はー...すー...はー...」

 

少しは落ち着いたのか顔の赤みが引いてくる

 

「す、すみません、落ち着きました」

 

「別にいいが...それで何か食わなくても平気なのか」

 

「はい、さっき食べましたので」

 

「ふーん...まぁいいやそれでさっきのクエストなんだが」

 

「あ、さっきのクエストならお譲りします!」

 

突然そんなことを言い始めた

 

「譲るって...まぁいいならいいけど」

 

「はい...さすがに私一人では50匹なんて無理ですし」

 

「は?ひとり?」

 

「はい、一人ですけど?」

 

不思議そうに首をかしげる、普通なら紅魔族ならアークウィザードで引く手あまただと思うのだが

 

(あぁ...めぐみんなんて例外もいたか)

 

そんなことを思いながら見ているとなぜか目の前の少女の顔がだんだん赤くなってくる

 

「あ、あの、その...そんなにみられると恥ずかしい...です...///」

 

「あぁ、そうか、すまん」

 

そう言って視線を外す、この子がどういう子か知らないが話してみて悪い子ではないことがわかるのでとあるパーティーに進めておく

 

「パーティー組む気はないのか?」

 

「え?あの...その...」

 

そう言ってクエストボードのとある紙を指す、その募集要項は見たことあるが

 

「あぁ...あれ君だったのね...」

 

「・・・」

 

無言でうなずく少女、はっきり言って募集条件はボッチの子が彼氏か友達募集にしか見えなかったのだが

 

「まぁいいや、少なくとも組む気があるなら和真って冒険者が組んでるパーティーに入るといい。一人抜けて大変なはずだからな」

 

「和真さんですか?」

 

「こないだ...っていっても、もう数か月前かデュラハンがこの町の近くにいたのは知ってるか?」

 

そう話すが知らないのか首を横に振る

 

「まぁ魔王軍幹部を倒したパーティーなんだが、たぶん受付の人に聞けばわかるだろうな」

 

「そ、そんなにすごい人たちのパーティーに私が!」

 

「手柄だけ聞けばな...まぁそう言うわけだ、それにそのパーティーなら同じ紅魔族もいるし」

 

「紅魔族?それって?」

 

「めぐみんってやつだ」

 

「!?」

 

どうやら知り合いだったのか、それはそれは驚いた様子だった

 

「まぁそう言うわけだじゃあな、クエストありがたく受けさせてもらう」

 

そう言ってクエスト受注のために受付に行き、そのままギルドを出た

 

-------------------------------

 

「・・・」

 

「・・・」

 

俺はいや、俺たちは何故か二人で雪山を目指していた

 

「・・・」

 

「・・・」

 

俺が門を出るとこあたりからついてきているのだが一向に帰る気配がない、仕方ないので歩みは止めずに質問をする

 

「それでさっきクエストは譲ってくれたと思うが?」

 

「・・・クエストに関しては確かにお譲りします、でも受付の人に言ったら抜けた人はいないそうです」

 

「へぇ...」

 

和真に別れを告げたはずだがあっちはそう思ってはいなかったらしい

 

「ですがその日からパーティーは元気はなくクエストもあまり行ってないみたいです」

 

「・・・それを俺に言っても関係ないんだが」

 

「関係なくないですよね!!カズマさん?のパーティーメンバーの白夜志貴さん!!」

 

そう言うと俺の前に回り込んでくる、仕方なく俺は歩みを止める

 

「ふぅ...それでなに?」

 

「なにじゃありませんよ!なんでパーティーで活動しないでソロで活動してるんですか!」

 

まるで自分のことのように怒る少女それに対して俺は極めて冷静に答える

 

「もう和真にはパーティーを抜けるっていう話はした、あっちが勝手にそう言ってるだけだ」

 

「・・・」

 

無言で睨んでくる少女やはりパーティーなど紹介しない方がよかったのだろう

 

「・・・話をしてる時間はないようだな」

 

「え?」

 

敵感知に多数引っかかる、周りを見回してみるとかなりの数に囲まれているようだ

 

「ひい、ふう、みい...20ってところか」

 

流石白狼かなりの群れのようだ

 

「こ、こんなにいるなんて...」

 

「震えてるのは構わないが死ぬぞ」

 

顔を真っ青にしている少女に声をかけるがこちらを向いて口をパクパクさせているだけで、何もしようとはしない

 

「・・・譲ってもらったとはいえ、このクエスト受けようとしたんじゃないのか?」

 

「あの時は見てなかったですし...逃げましょう!この数をどうにかするなんて無理です!!死んじゃいますよ!」

 

「・・・」

 

隣でまだ何か騒いでいるが気にせず精神を集中する、今回は予想外に巻き込んでしまったようなので眼鏡をはずす

 

「・・っ!」

 

まず飛び込んできた一匹を線を切って真っ二つにする、後ろから来た二匹も横に一閃しまとめて片付ける

 

-------------------------------

 

紅魔族の少女視点

 

「綺麗...」

 

思わず私はそう呟いていた、シキさんはまるで踊っているように白狼を切っていた。あんな短刀でスパスパ切れるはずもないのだけど、全く力を入れずに白狼を切っていた

 

「綺麗...」

 

私は知らず知らずにその光景に見入っていた

 

-------------------------------

 

志貴視点

 

半分を片付けたぐらいだろうか、別の群れが来たのか白狼は30匹ぐらいに増えていた

 

(片づけても片づけてもきりがないな!)

 

いい加減きりがなくなってきたので撤退も考えているのだが

 

「綺麗...」

 

なぜか少女はそんなことを言いながら一歩も動こうとしない

 

「っ!」

 

やっぱり休んだとはいえ体の機能が落ちてきているのか頭痛が酷くなってくる、そんな隙を狙っていたといわんばかりに囲まれて一斉に飛び掛かられる

 

「そんなんで...俺を殺せると思うな!!」

 

頭痛状態でもそんなものはハンデにすらならず冷静に捌いていく、だが俺の敵感知は俺とは別の場所に残りの塊がそちらを見ると少女が囲まれていた

 

「あ、あぅ...」

 

怖くて腰が抜けているのか後ずさるように距離を開けようとしているが囲まれている

 

「くそ!!」

 

やっぱり連れてきたのは間違いだった

 

「魔眼!!」

 

-------------------------------

 

紅魔族の少女視点

 

「あ、あぅ...」

 

怖くて腰が抜けてしまって後ずさりしかできない距離を開けようとするが後ろからも白狼の唸りが聞こえる

 

(か、囲まれてる...)

 

そう思った瞬間あきらめに似た感情が胸に去来する

 

(いろいろあったなぁ...)

 

走馬燈のようなものなのだろうかそれを見た瞬間、後ろからジャンプするような音が聞こえ目を閉じる

 

「魔眼!!」

 

志貴さんの声が聞こえたけどもう間に合わないだろう

 

(結局どうしてパーティーやめたのか聞けなかったなぁ...)

 

そう思っていたのだがいつまでたっても衝撃は来ない、白狼の悲鳴のようなものが聞こえてそっと目を開けると目の前に志貴さんが私を見下ろしていた。その瞳はさっきのような黒目ではなく蒼くなっていた。その目に若干恐怖というか死の危険のようなものを感じたが、それよりも志貴さんが寂しそうにしているのが気になった

 

-------------------------------

 

志貴視点

 

俺は魔眼を発動する、と言っても直死は眼鏡を外した時点で発動しているのでベルディアから教えてもらった魔眼だ。魔眼を発動すると死角つまり後ろからの攻撃なども視えるようになる、と言っても映像でも多少は視えてはいるがあくまでも魔力の流れを視ているようなものだ。そしてもう一つ死角が視えるようになるのもそうだが、体感速度を自由にできるのだ。だからこうして間に合わないタイミングでも、人より早く動けるので少女に飛び掛かろうとしてる白狼を切り周りの白狼も排除する。だが無理なタイミングで助けに入ったこともあり白狼から反撃を食らうが問題なく処理する

 

「・・・」

 

少女は死を受け入れたのか身動き一つせず衝撃を待っているが来ないことを不思議に思ったのかゆっくり目を開ける。俺と目が合うのだがその顔は恐れとかもあるようだがなぜか不思議がっていた。少女に死の線が見えていることに気が付いて慌てて眼鏡をかけ息を落ち着ける、改めて話しかける

 

「大丈夫か?」

 

「あ、はい...」

 

しばらくぼーっとしていたが我に返ったのか慌ててお礼を言ってくる

 

「あ、あの...その!ありがとう...ございます...///」

 

「・・・」

 

その光景を見て俺は

 

「・・・なんでお礼なんか言ってるんだよ」

 

思わず俺は苦笑していた、普通なら俺のせいで死にかけたとか言われてもおかしくないのに

 

「なんでって...だって命を助けていただきましたし...あれ?わたしおかしいですか!?」

 

さっきのしおらしい態度はどこえやら今度はワタワタと慌てていた

 

そんな態度に俺は

 

(いや...これ以上はやめよう)

 

頭を振って考えを中断する

 

「とりあえず大丈夫か、立てるか?」

 

「あ、えっと、その...腰が抜けちゃって...」

 

「・・・」

 

まぁそんなことだろうとは思っていたが、仕方ないので少女に背を向けて腰を下ろす

 

「とりあえずここにとどまるのはまずい移動するから乗ってくれ」

 

「あぅ...///」

 

顔は見えないがたぶん真っ赤にしているのだろう、しばらく待つとおずおずと背中に乗ってくる

 

「おねがい...します..///」

 

「・・・はいよ」

 

周りも暗くなってきているし、なにより吹雪いてきている下手にギルドに戻るよりそこら辺の洞くつで雪風しのぐことにした

 

「そう言えば名前聞いてなかった」

 

「あ、そう言えば...」

 

背中でコホンと咳ばらいをし

 

「我が名はゆんゆん!めぐみんのライバルにして、いつかは紅魔族族長を継しもの!!」

 

「お、おぅ」

 

相変わらず中二臭い名乗りだったが

 

「ゆんゆんか、かわいい名前じゃないか」

 

 

 




というわけでゆんゆんの登場です!一期からOPには出てるのに本編登場はなかったゆんゆんですが、出しました。
なぜかって?好きなキャラだからだよ(殴
そう言うわけで話は続きます、本当は昨日あげたかったのですが、これでも一応社会人(笑)なので、それに別のも書いてたし
というわけで続きます!


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第八話 この雪山で雪崩を!

それにしても書いてるときはよかったですけど、まさか本編でも遭難話があったとは...
かいてるときはもちろん知りませんでしたので、では本編どうぞ!
あと前の時は書き忘れましたがお気に入り登録が増えてるのは嬉しいです、こんな作品でよかったら読んでください!


バチバチと音を立てながら燃えるまきを見ながらぼーっとする

 

「・・・」

 

「・・・」

 

反対側では落ち着かないのかゆんゆんがそわそわしていた。なぜこんなことになったのかというと、結局帰るにしても吹雪いている中を下山するのは危険ということでちょうど雪風しのげる洞窟を見つけたのでそこで休んでいるところだ

 

「・・・」

 

「・・・」

 

そろそろ沈黙が辛くなってくる、洞くつに入ってからずっとこうなのだ。なのでさっき狩った白狼の肉を捌き鉄串に刺し火にかざす

 

「えっと、あの...なにやってるんですか?」

 

ゆんゆんも沈黙が辛いと思っていたのかすぐにネタに食いついてくる

 

「見た通り調理してる」

 

「調理してるって...白狼って食べられるんですか?」

 

「わからん」

 

ゆんゆんはあきれたような微妙な表情で俺を見ているが知らないものは知らない

 

「どっちにしろ食わないとな、体の機能が落ちる方が問題だ」

 

「機能って...でもそうだよね、食べないと...」

 

ゆんゆんはこんがり焼けた白狼の肉を見ている、ちなみに俺は全く気にしないで食べている

 

普通の肉なのだが筋肉のおかげで身が締まっているので普通においしい

 

「味はどうですか?」

 

「ん?普通にうまいぞ」

 

「・・・はぐ」

 

俺の感想を聞いて肉を食べたゆんゆん、感想はというと

 

「あれ?おいしい」

 

すごく意外な顔をしながらそんなことを言っていた、その後はというとゆんゆんも俺も腹いっぱいになるまで食べた。クリエイトウォーターで水を出しながら食後のひと時

 

「あの...」

 

おずおずとゆんゆんが話しかけてきた

 

「ん?」

 

「さっきの戦闘に関してもなんですが...なんでパーティーを抜けたんですか?」

 

(やっぱりその話になるか)

 

そう思いながら水を飲む

 

「・・・」

 

俺が話そうかまよっていると

 

「あ、もし言いたくないんだったらいいんですけど...」

 

だんだんしりすぼみになりながら気を使ってくれる

 

「・・・言いたくないっていうか...」

 

俺も言葉を濁してしまう、というよりなぜ俺はめぐみんの友達というだけで自分の過去を話そうとしているのだろうか

 

そう考えると頭が一気に冷えた、俺は横になりながら一言だけ告げた

 

「・・・俺は人殺しだからだ」

 

「え」

 

俺は目を閉じ寝る

 

-------------------------------

 

次の日の朝洞くつから出てみると晴れていた

 

「これなら普通に下山できそうだな行くぞ」

 

返事を聞かずに歩き出す、足音を聞くとちゃんとついてきているが会話はない。俺は敵感知で周囲を探りながら進んでいく、そこまで歩いていないはずなのだがいつのまにか山の上部近くまで上がってきてしまっていたらしい

 

「・・・」

 

「・・・」

 

後ろから視線を感じるが無視して歩く、ゆんゆんを下山させられればまた白狼を安全に狩ることができる。だがそんな上手くいくはずもなく敵感知に次々反応が

 

「ちっ」

 

俺は舌打ちをしながら短刀を構える

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「敵だ、厄介なことに昨日より多いぞ」

 

「わ、私だって!」

 

右手に短刀、左手に杖を構えて戦闘準備をするゆんゆん多少力が入りすぎているような気がする

 

「力むのはいいがもう少し肩の力を抜け、敵はこちらで引き付けるからそっちにはあまり行かないだろうからな」

 

「そ、そうは言われても...」

 

「今までどうしてたんだお前は...まぁ昨日みたいにならなければいい」

 

「・・・」

 

そう言うと余計力んだみたいだった

 

「まぁいいか...デコイ!それと魔眼!!」

 

正面の白狼の群れに突っ込んでいき横に一閃、三匹の白狼の首を一気に飛ばす。正面だけでも20匹くらいいるのですぐにおかわりが来る、囲まれるように来ているがほとんどが俺の方に来ている。一斉に飛び掛かられるが昨日と同じ要領で処理するのだが、頭痛などで体に機能が落ちているのか数匹残ってしまう

 

「くそ...」

 

だんだんと周りの白狼が増えてきてしまう、飛び掛かってくる白狼の数もだんだん増えてくる

 

「ぐっ!」

 

処理するキャパシティーを超えつつありだんだんとかすり傷が増えてくる。ついに短刀を持つ右手に噛みつかれてしまう、手が止まり左手で処理しようとするも左腕、右足、左足と噛みつかれてしまい自由に動けなくなってしまう

 

(あぁ...ここまでか、ようやく、ようやくだった)

 

飛び掛かってくる三匹の白狼さすがにこれは避けられない

 

 

ゆんゆん視点

 

「まぁいいか...デコイ!それと魔眼!!」

 

そういって正面の白狼の群れに突っ込んでいく志貴さん、次々と敵を倒していくのだがなぜか昨日より動きが鈍いような気がする

 

「わ、私もやらなきゃ!」

 

志貴さんがひきつけていると言っても全部が志貴さんの方に向かうわけでもなく、数匹は私の方に向かってくる

 

「ら、ライトオブセイバー!」

 

視えない斬撃が白狼を襲い大なり小なり傷を負う、白狼は警戒しているのか足を止めるが好都合だった

 

「ファイアーボール!!」

 

その止まっている白狼に向かって火の玉が数個飛んでいく、中には無傷で脱出した白狼もいたが

 

「ライトオブセイバー!」

 

で処理をする、ある程度処理をしているとなぜか私の方に来ないで志貴さんの方に向かっていく

 

嫌な予感がしてそちらを向いてみると、志貴さんは白狼に噛みつかれ動けなくなっていた

 

(まずい!このままじゃ志貴さんが!)

 

魔力もそろそろ尽きてきているけど志貴さんがやられる方がまずいので、魔力のほとんどをつかって

 

「ライトオブセイバー!!」

 

 

志貴視点

 

「ライトオブセイバー!!」

 

そう叫ぶ声が聞こえたと思ったら目の前の飛び掛かってきていた三匹の首が飛ぶ

 

(魔法の斬撃か...)

 

死の線が見えていたので恐らくそうなのっだろう、死に損なったのは残念だが白狼の注意も一瞬だがゆんゆん方に向く

 

「一瞬あれば...十分だ!!」

 

右手の刃を持ち替え、噛みついている白狼の死の点に思いっきり突き立てる。頭痛はひどくなるがそんなこと言っている場合じゃない、右手が自由になり一気に噛みついている白狼を処理する。多少問題はあるが体は動くので周りの白狼を一気に処理をする

 

「・・・」

 

敵感知を発動するが周りにはもう白狼はいないらしい

 

「ふー...」

 

眼鏡をかけ体を引きずるようにしてゆんゆうに近づく

 

「お疲れ様、さっきは助かったよ」

 

「・・・死ぬの怖くないんですか...」

 

表情はうつむいていて見えないがそんなことを言う。言うかどうか迷ったがさっき助けてもらった借りもあるので言うことにする、こんなことで借りをチャラにしようとは思わないが

 

「・・・俺自身もう一回死んでる身だしな、それに俺は人殺しだ殺されたって文句は言えない。行くぞ」

 

そう言って歩き出すが腕の袖を掴める、後ろを見るとゆんゆんが俺の袖をつかんでいた

 

「移動しないとまた白狼に襲われるぞ」

 

「そんな...そんなこと言わないでください!!」

 

顔を上げたゆんゆんはなぜか泣いていた

 

「一回死んでいるから、人殺しだから...殺されても文句ないなんて、そんなこと言わないでください!!」

 

そう言って泣いていた、俺はどう言葉をかけようと迷うがとりあえず言おうと口を開いたとき異変に気が付く

 

(なんだ?)

 

山の形が少し変わっているような気がするのだが、目を凝らしよく見てみると少しづつこちらに迫ってきていた

 

「雪崩か!!」

 

俺はゆんゆんの手を引き走りだす、だが人間の足で逃げ切れるわけでもなくだんだんと雪崩は迫ってくる。俺は仕方なく眼鏡を外し目を閉じ集中する、目を開けると地面にも死の点が見えるようになる

 

「魔眼!」

 

ゆんゆんの手を放しそこらへんに落ちていた白狼の死骸を数匹持って死の点が見えている地面に短刀を突き立てる。その際に頭が割れたような激しい痛みがしたが無視してゆんゆんを抱きかかえ、さっき短刀を突き立てて大穴を開けたところに入る。思っていたよりも大地を殺してしまったのか穴が深いが丁度いいのかもしれない、死の線に突き立てないように気を付けながら壁に刀を突き立て勢いを殺す。休んでいる暇もなくゆんゆんが抱き着いているのを確認し壁の死の点を左手で突く。丁度いい穴が出来上がったので急いで入ると、さっきまで俺たちがいたところに大量の雪が流れ込んできていた

 

「はぁ...はぁ....はぁ...っ....」

 

「・・・」

 

二回目の死の点を突いたとき一瞬意識を失いかねるほどの激痛がした

 

(これはやばいな、やれて数回ってところか)

 

そう思いながら眼鏡を掛けるが本当にうっすらだが死の線が見えたいた

 

(能力がつよくなってる?)

 

思い出してみるが眼鏡をかけて線が見えるなんてことは一度もなかった

 

「あの、志貴さん大丈夫ですか?なんか顔色が悪いみたいですけど...」

 

「あ、あぁ...大丈夫だ」

 

そう答えるがこの眼鏡でも抑えられないとなると絶望しかなかった

 

「大丈夫だが疲れたから少し寝させてもらってもいいか?」

 

「は、はい」

 

ゆんゆんに許可をもらい横になるもう考えるのも嫌になったので寝る

 

「おやすみなさい」

 

ゆんゆんのそんな声を聞きながら俺は眠りについた

 




誤って投稿してしまった...
てなわけで後書きです、そう言えば志貴の魔眼について説明忘れてましたね。もちろん直死じゃない方ですが。魔眼はわかりやすく言えばzeroで切嗣が使っていた固有時制御の発展という感じでしょうか


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第九話 魔眼持ちとボッチ娘の捜索を!

別にゆんゆんのことディスってるわけじゃないです、タイトルが思いつかないんです。タイトルとかのネーミングセンス欲しぃ...


ギルド内は騒がしいがそれはいつものような騒がしさではない、その証拠にギルドにいる面々は酒が入っていなかった

 

「まだ見つからないのか?」

 

「もう四日目だぞ...」

 

そうギルドでは今とある二人の捜索が行われていた、白夜志貴とゆんゆんだ。四日前、正確には五日前だが白狼の群れの討伐に向かった二人、そこまではよかったのだがその次の日雪崩が起きたのだ。白狼の生息地と雪崩が起きた場所は完全に一致していて巻き込まれた可能性は高かった。ギルドはアークウィザードであるゆんゆん、ベルディア撃破に大きく貢献した白夜志貴の捜索をすぐに開始するが状況は芳しくなかった。雪崩のせいで二人の痕跡が発見できるはずもなく、また冬にクエストに出るなどほんの一握りの冒険者だけなので目撃情報もなく捜査は難航を極めていた

 

「・・・」

 

そんな中和真は一人苛立っていた、自分が捜索に出られないのもあるがこうやって待っていることしかできないのが

 

「カズマ落ち着け、今日は見つかるかもしれないだろう?」

 

「ダクネス俺は大丈夫だ、それよりめぐみんを」

 

ダクネスは何か言いたげだったが、めぐみんの方が状況はまずいのかそのままギルドを出ていく

 

「ねぇ和真」

 

「なんだよ」

 

和真は苛立たしげにアクアの問いに答える

 

「この捜索意味あるの?」

 

瞬間和真はアクアを睨む、だがアクアもその視線に負けず和真を睨み返す

 

「だってそうでしょう!目撃情報もなくしらみつぶしで探して、しかも今だに大なり小なり雪崩も続いてる。もう四日よ四日!!流石に...」

 

「俺たちが信じないで誰が志貴やめぐみんの友達の生存を信じるんだよ!!」

 

机をたたきながらそう言う和真、和真自身もわかっているのか悔しそうに唇を噛みしめていた

 

その様子を見たアクアも頭が冷えたのか

 

「ごめんなさい、わたし...」

 

「いや、俺も悪い」

 

二人が気まずい雰囲気の中ギルドの入り口から数十名の冒険者たちが入ってくる、その顔には疲労の色が浮かんでいた

 

「皆さんどうでしたか?!」

 

ルナは帰ってきた冒険者たちに駆け寄るが皆は首を横に振る、ルナは苦い顔をした後ギルド内を振り返る

 

「・・・皆さんにお知らせがあります、ゆんゆんさんとビャクヤシキさんの捜索ですが今日をもって打ち切りにしたいと思います」

 

「「なっ!?」」

 

アクアと和真は驚いたようだが、ルナは気にせず続ける

 

「ギルドとしてもこれ以上捜索は意味がないと判断し、今日で打ち切りという判断にさせていただきました。協力していただいた冒険者の皆さんには大変感謝しています」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ探してない範囲も」

 

「悪いが探せるところは探したんだ」

 

捜索に加わっていた冒険者の一人が語りだす

 

「雪崩も今日はほぼなくて山の上部まで探したんだが、痕跡すら見つけられなかった」

 

「・・・でも全部探せたわけじゃ

 

「和真」

 

アクアが和真の言うことを遮る

 

「皆さんありがとうございました」

 

そういってアクアは和真の手を引きギルドから出た

 

-------------------------------

 

次の日和真たちのパーティーの姿は雪山にあった、あくまでも雪精討伐のためだ

 

「おーい!志貴ー!!」

 

「出てきなさいこの大馬鹿ー!!」

 

「シキー!!」

 

「・・・」

 

だが一人だけ呼びかけに参加しないものがいためぐみんだ

 

「・・・和真雪精の方は私に任せてください」

 

「あぁ流石に一匹も討伐しないで帰るのはまずいからな」

 

「・・・我が真紅の流出を以て、白き世界を覆さん。エクスプロージョン」

 

いつもの元気はなく威力も低かったが雪精を巻き込む

 

「十匹倒しました」

 

「おいめぐみん!倒してしまったら、やっぱり」

 

いつものように倒れるめぐみんだが、ダクネスは珍しく焦っていた

 

それもそうだろう、だって冬将軍が現れているのだから

 

「くっそ!なんでこんな時に!」

 

「カズマやめろ!」

 

ダクネスの忠告も聞かず冬将軍に切りかかるが

 

「っ!?」

 

冬将軍はいつのまにか和真の前で剣を振り下ろしていた

 

 

志貴視点

 

(あれから五日か、流石に限界だな)

 

あの雪崩の時からずっとこの穴に閉じこもっているがそろそろ限界だった

 

大穴の方を見るが上から雪が降ってくるようなことはなかった、昨日もそうだったのだが一応様子見で今まで待っていたのだ

 

「ゆんゆん」

 

「・・はい」

 

掠れているようだが意識はしっかりしているようだった

 

「もう食料は尽きた外に出るぞ」

 

「・・はい」

 

起き上がろうとするが力が入らないのか座ってしまう

 

「ごめんなさい私はもう無理みたいです」

 

そう笑うが俺はそれを許さない

 

「早く乗れ」

 

背を向けて乗るように言うが一向に乗る気配がないので無理やり乗せて、クリエイトウォーターとフリーズで外に足場を作り大穴の外に出るどれくらい歩いたかわからないが、懐かしい大きな爆発が見えた

 

「今のは...」

 

「多分そうだな...走るぞ」

 

そう言って走り始めるがどうも足元がおぼつかない、だがそれでも前に進みようやく和真たちが見えるところまで来ると

 

「なんだアイツ」

 

「あれは冬将軍です、あのままだと前の人が」

 

俺も嫌な予感がして魔眼を発動して一気に距離を詰める、予想通り和真を切ろうと振り下ろされた冬将軍の刀を短刀で受け止める

 

「何してるんだ...お前。俺の仲間に」

 

冬将軍はホバー移動のように後ろに滑るように移動する、距離が開いたのでゆんゆんを下ろし眼鏡を外す

 

「ようやく来たわねこの大馬鹿!とりあえず話はあとよ土下座しなさい土下座、そうすれば許して

 

「許してくれるはずないだろう、あいつは俺を完全に殺すつもりだ」

 

それが合図のように再びホバー移動のように一瞬で距離を詰めてくる、振り下ろされる剣を間一髪で受け止める

 

受け止めきれずに傷が増えていく

 

「やめろ志貴!そいつは殺せない!!」

 

「そうよ!そいつは精霊で人々が無意識に想像したものから出来上がってる存在なのよ!!」

 

「殺せない?笑わせるな!俺のこの目に殺せないものはない!!」

 

全く変わらないスピードで振り下ろされる剣だが、受け止めるのではなく避けそのすきに剣を持っている右腕を切る

 

「!」

 

感情のない精霊のはずなのだが、今俺を恐れ距離を開けようとホバー移動する。だが俺がその隙を逃がすはずがない

 

「俺の仲間に手を出した落とし前つけてもらうぞ!!」

 

ホバー移動よりも早く動き、冬将軍の死の点を突く。冬将軍はだんだんと薄くなっていく、だがその姿はどこか満足そうだった。鞘を俺に投げて渡し剣を指さす、俺にくれるということなのだろうか。わからないが俺は静かに頷く、冬将軍は完全に消え残ったのは俺が持つ鞘と地面に刺さった剣だった

 

「やったのか」

 

「ダクネスそれフラグ!」

 

「おい志貴、大丈夫...ってお前目から血が!!」

 

駆け寄ってくる和真、俺の意識はそこで途切れた

 

(多分あと一回点を突いたら俺は...)

 




もうそろそろアニメ一期も終わりですねぇ、ここで補足説明をすると和馬はもう屋敷を手に入れています、サキュバス回はやっていませんけどね
というわけで次の話で一期は最後となります


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第十話 この魔眼持ちに素晴らしい世界で祝福を!

というわけで一期最終話、アニメ準拠ですがゆんゆんが出ていたりしてます
それではどうぞ!


ドゴーン!!という大きな音で目を覚ます。知らない天井だが俺が何をすべきなのかはわかっていた

 

「行かないとな...」

 

ベッドから起き上がるが体中に激痛が走る、だが動く

 

「動くなら...俺は行かなきゃならない」

 

着替えて俺は正門の方に向かう

 

-------------------------------

 

ギルド内に集まる無数の冒険者、いつものような陽気な雰囲気はなくお通夜みたいな雰囲気だった

 

そんな中ルナは口を開いた

 

「皆さんがこの町の最後の砦、どうかよろしくお願いします」

 

そして水晶を持った職員が一歩前に出る

 

「現在機動要塞デストロイヤーは町の北西方面からこちらに向けてまっすぐ進行中です、到着まであと一時間」

 

水晶を覗いていた冒険者たちだったがいきなりその映像が映らなくなる、おおかた偵察用のものが破壊されたのだろう

 

「あの、デストロイヤーって古代の魔法王国が作ったんですよね?作った人たちは何か対抗策を用意してなかったんですか」

 

「デストロイヤーの暴走で真っ先に滅ぼされました」

 

一人の冒険者が聞くがそう答えるルナ、それもそうだろうでなければこんなに長いことデストロイヤーが脅威として恐れられるはずがない

 

「こんな時ミツルギさんがいたら」

 

一人の冒険者がそう呟く、他の冒険者もつぶやくがこの場にミツルギはいない

 

いたとしても単騎では役に立たないだろうが

 

「早くみんなで逃げた方がいいよ」

 

クリスはそう言うがダクネス譲らなかった

 

「いやそれは駄目だ、街の人が帰る場所を失ってしまう」

 

「はぁ...相変わらず頑固だなぁダクネスは」

 

クリスも本気で言ってたんだろうが、ダクネスが頑固なのはわかっていたのか苦笑していた

 

「本当はシキのがいればなんか思いついてそうだけど..ねぇキミ何かいい案はない?」

 

そう言って和真の服を引っ張るクリス、この場に白夜志貴はいないあの雪山の一件以来ずっと眠り続けている

 

「いきなりそんなこと言われても...」

 

考える和真だったが妙案が思いついたのかアクアに話を振る

 

「おいアクア!お前なら結界を破れるんじゃないのか?」

 

「うーんやってみないとわからないわよ?」

 

和真の問いに難しい顔をして答えるアクア、その話を聞いていたのかルナが話に割り込む

 

「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!」

 

「い、いやぁ...もしかしたらってことなんですけど」

 

「それでもお願いしていいですか!」

 

「あ、あぁ...」

 

若干押され気味だが了承する和真

 

「後はダメージを与えられる魔法さえあれば...」

 

そのつぶやきを聞いた冒険者の一人がつぶやく

 

「いるだろう、火力持ちなら。頭のおかしいのが」

 

他の冒険者も思い出したかのように頭のおかしいのがとつぶやいて少女を見る、だが当の本人は元気がないのか顔を上げもしなかった

 

「・・・めぐみん気持ちはわかるが、お前の爆裂魔法でデストロイヤーは破壊できるか?」

 

ダクネスがそう問うとようやく顔を上げるめぐみん

 

「・・・わが爆裂魔法でも流石に一撃では仕留めきれないと思われる」

 

再びお通夜ムードになるが

 

「すいませーん、遅くなりましたーウィズ魔法具店の店主です。一応冒険者の資格は持っているのでお手伝いに」

 

「店主さんだ!」

 

ウィズを見た冒険者たちは一気にテンションを上げ始める、聞けばこの貧乏店主昔は凄腕のアークウィザードだったとか

 

今はリッチーだが

 

「それでは皆さん!緊急クエスト開始です!!」

 

勝てる見込みがそろったのかルナがそう言うと準備は急ピッチで進められる、正門前に簡易バリケードを組むなど色々な準備が進められ今に至る

 

「冒険者の皆さん!そろそろデストロイヤーが見えてきます、戦闘準備をお願いします」

 

そうルナが言うと徐々に徐々にその姿が見えてくる、巨大な蜘蛛のような兵器だった。そのデカさに冒険者たちはビビっていた

 

「ちょっとウィズ!大丈夫なんでしょうねぇ!?」

 

そんな中緊張感のないアクアの声が響く

 

「大丈夫ですアクア様、これでも最上位のアンデットなのですから」

 

特に緊張はしていないのか平然と答えるウィズだが、その顔は少し不安そうにしていた

 

「本当に大丈夫なんでしょうねぇ!!」

 

「もし失敗したらみんなで仲良く土に帰りましょう」

 

「冗談じゃないわよ!冗談じゃないわよ!!」

 

アクアは相変わらずわめいていた、一方反対側の方では

 

「・・・」

 

「・・・」

 

二人の少女が無言でいた、片方の少女はうつむいていてもう片方の少女は落ち着いてデストロイヤーを見いていた

 

「まさかデストロイヤーを相手にする日が来るなんてね」

 

「・・・」

 

「ちょっと前の私だったら逃げてたかもしれないけど、いまはシキさんに聞きたいことができたから」

 

そう言うと俯いていためぐみんはゆんゆんを見る、ゆんゆんは視線に気が付いたのかめぐみんのほうを見る

 

「聞きたいことですか?」

 

「うん、なんでパーティーを抜けたのかとかそう言うこともだけど寂しそうな眼をしてたから...」

 

「・・・」

 

静かに聞いているめぐみん、だがゆっくり話している時間はなさそうだった

 

「きたぞー!!」

 

さっきは米粒くらいだったがもう少し離れたところまで来ていた

 

それが合図になったのかアクアは騒ぐのをやめ、いつも間にか飛んできていた杖を頭上で回し始める

 

「セイクリッドーー!」

 

アクアの目の前にでかい魔法陣が5つ浮かぶ

 

「ブレイクスペル!!」

 

杖を前に突き出し呪文を唱えると魔法陣から魔力が放出されデストロイヤーの結界にぶつかる

 

だが結界を破るには至らず硬直状態が続く、だがそれもすぐに終わる

 

「っっ~~~~!うらぁーーーーー!!!」

 

魔力をさらに込めたのか、でかい5つの魔法陣は巨大な一つの魔法陣になりデストロイヤーの結界をついに破る

 

「いまだー!!」

 

結界を破るのを確認した和真がウィズとめぐみんにむかって叫ぶ

 

「めぐみんさん、今です!」

 

同時に爆裂魔法を放とうとするウィズが声を掛けるがめぐみんは返事をしない

 

「めぐみん?」

 

「・・・」

 

ゆんゆんが声を掛けるが、それすらもめぐみんは反応しない。そんなめぐみんの様子にゆんゆんは

 

「いい加減にしなさいよ!」

 

あのゆんゆんがキレた、キレたゆんゆんはめぐみんに掴みかかる

 

「めぐみんがここで爆裂魔法撃たなかったらシキさん死んじゃうのよ!」

 

「っ!」

 

その言葉にようやく顔を上げるめぐみん、かまわずゆんゆんは続ける

 

「シキさんが死んでもいいの!?お願いめぐみん、私は爆裂魔法が撃てないから見てることしかできない...でもめぐみんは撃てるだから...」

 

「はぁ...ゆんゆんに慰められるとか私も焼きが回りましたかね...」

 

「・・・へ?」

 

理解が追い付かないのか唖然とした顔のままめぐみんを見るゆんゆん

 

そこにさっきまで俯いていた少女はいなかった、いるのはいつものように不敵に笑うめぐみんだった

 

「ウィズご迷惑をおかけしました、いつでも行けます」

 

「あ、はい」

 

「ゆんゆん」

 

「なに?」

 

少女はデストロイヤーをその赤い瞳を光らせながら親友に語り掛ける

 

「今までも認めていなかったわけではないですが認めましょう、これからは正真正銘のライバルです」

 

「!?」

 

「そして親友ですからね、そのお願い聞いてあげますよ...では行きます」

 

マントをたなびかせ、めぐみんとウィズの詠唱が始まる

 

「「黒より黒く、闇より黒き漆黒に闇より暗き漆黒にわが真紅の混交に望み給たもう」」

 

頭上に魔法陣が現れる

 

「「覚醒の時来たれリ、無謬の境界に堕ちし理、むぎょうの歪みと成りて現出せよ!エクスプロォォージョンッ!!」」

 

巨大な練りあがった二つの魔力はデストロイヤーに直撃し大きな爆発を引き起こす、足を全部破壊されデストロイヤーはその動きを止めた

 

「・・・どうですか?」

 

「うん、止まったみたい」

 

「そうですか、よかった...ですが流石凄腕のアークウィザード私をはるかに上回るレベルです」

 

「ふふ...とりあえず皆さんと合流しよう」

 

そういってめぐみんをおぶさるゆんゆん

 

「ねぇめぐみん」

 

「?なんですか」

 

「私負けないから」

 

「ふっ...今までの勝負は私の勝ち越しですがね」

 

「でも負けない」

 

「・・・私だって負けませんよ」

 

 

志貴視点

 

「はぁ...はぁ...」

 

思うように走れないため息が上がる、だがようやく正門前までやってきた

 

ここにくるまで数名の冒険者とすれ違ったがみな口々に自爆と言っていた

 

巨大な変なものが転がっていたがあれがたぶんデストロイヤーという奴だろう

 

「さて行くか」

 

息が整ったので走り出す

 

『いいのか、次使えば死ぬぞ」

 

『言ったはずだぞ俺はもう決めたって」

 

『ならもうこれ以上言わないさ」

 

独り言のように思えるが記憶がもうほとんど戻ってきているため、意識が混ざっているのでもう幻聴のような感じで話さない

 

「「シキ(さん)!」」

 

話していて気が付かなかったがいつのまにかめぐみんたちの前にいたようだ、俺は立ち止まる後ろは向かないが

 

「よぉ久しぶりだな」

 

「久しぶりじゃないですよ!!いきなりパーティー抜ける言い出すわ、目の前に現れたと思ったらゆんゆん連れていますし」

 

そうやって罵声が飛んでくるが立ち止まっている時間はない手早く話を終わらせる

 

「あー悪い文句なら後で聞くわ、今時間ないし」

 

そう言って走りだろうとすると

 

「後でなら聞いてくれるんですよね、あの時聞きそびれたこと聞きたいのでちゃんと帰ってきてくださいね」

 

「・・・わかったよ、行ってくるわ」

 

後ろを向いて二人の顔を確認し、俺は走り出す

 

「絶対、絶対ですからねシキ!!」

 

眼鏡を取り正面の線に沿って切り裂く

 

どこに行けばいいなんてわからないが直感で進む、結構な壁を切り裂き進んでようやく目的の部屋にたどり着く

 

「志貴!?」

 

和真の声が聞こえたが、それよりももはや臨界を越しているのか赤白い光を放つそれに向かって飛び死の点を突く

 

頭から何かが割れたような甲高い音が聞こえ、そこで俺の意識はそこで途絶えた

 

-------------------------------

 

「またこのパターンか...」

 

見慣れたわけでもないが周りの暗い部屋、死んだ直後にきた部屋だろう

 

「てことは、俺は死んだのか」

 

「ビャクヤシキさん、ようこそ死後の世界へ。私はあなたに新たな道を案内する女神エリス、この世界でのあなたの人生は終わったのです」

 

俺がそう納得していると、いつの間にやらクリスがそんなことを言っていた

 

「ん?クリス何やってるんだ、というより頬の傷がないが」

 

「私はクリスではありません、女神エリスです」

 

「あ、そうですね本体がエリス様でしたね」

 

「ですから私はエリスで、クリスではありません!」

 

少し怒った風に言うエリス様、まぁわかっていてからかっていたわけだが

 

「まぁそんなことは置いていおて、俺は死んだんですね」

 

「え?あ、はい...」

 

納得いかないのか呆けた顔をしていたが、コホンと可愛らしく一息入れ続きを喋りはじめた

 

「あなたはコロナタイトに刃を突き立て暴走したコロナタイトを止めましたが、意識を失いそのまま...」

 

「こっちにきたと」

 

頷くエリス様、まぁそうだろうあの死の点を突いたことで俺は死んだ

 

「異世界から来た勇敢な人、せめて私の力で平和な日本に生まれ裕福で幸せになれるように転生させてあげましょう」

 

「・・・優しいんですねエリス様は」

 

これは俺の正直な感想だった心からの正直な感想、だがエリス様は不思議そうな顔をしていた

 

「えっと...何かご不満ですか?」

 

「いや、心からの感想ですよ?でもそれ誰目線からの幸せですか?」

 

「え?」

 

今までこんなこと言う冒険者はいなかったのだろう、それもそのはずだが大変驚いた顔をしていた

 

「いやそんなの誰の幸せなんだろうなーと、大部分の人は幸せでしょうけど俺にとっては幸せでもなんでもない」

 

「・・・」

 

そんな俺の独白を静かに聞くエリス様

 

「少なくとも俺にそんな幸せは似合わない、俺は地獄に落ちるのがお似合いだ」

 

「そんなこと...」

 

「俺は人殺しですよ、前の世界でたくさんの人を殺した。最初は村の集落全員皆殺しにした。父さんも、母さんも。俺はその殺しの記憶さえも封印してのうのうと生きてた。そして二度目は通り魔で人が殺されているのを見て、気が付いたらそいつをばらしていた。それからは記憶がなかったにしても人殺しを楽しんでた」

 

俺の過去、ここに来たことで俺は完全に思い出していた。自分の罪を

 

「そんな俺が転生して裕福で幸せな生活?馬鹿言っちゃいけませんよ」

 

「・・・確かにあなたは多くの罪を犯しました...ですがこの世界では人を殺していない、それどころか魔王軍幹部を倒したじゃないですか!」

 

「あんなのはただの偶然ですよ」

 

「でも!」

 

俺が地獄行きを望んでいるのが納得できないのか食い下がってくるエリス様、だが俺の意見は変わらない

 

「いいんですか?女神さまが贔屓して」

 

「贔屓ではありません!私の評価は順当です!」

 

「まいったな」

 

「ちょっと志貴!何死んでるのよ!!」

 

なぜかアクアの声が聞こえてくる

 

「あいつはどこでもうるさいやつだなぁ...」

 

なんかこの部屋の神聖さが損なわれたような気がする、そんなことを思っていたのだがエリス様がうろたえ始める

 

「この声アクア先輩!?まさか本物?」

 

「あれ?気が付かなかったんですかエリス様、うちのパーティーにいる自称女神アクアは本物の水の女神アクア様ですよ?」

 

「えぇーーー!!!?」

 

「なんか今失礼なこと聞こえた気がするんですけど!?それよりも志貴聞こえてるわよね!あんたの体に復活魔法かけたからもうこっちに帰ってこれるわよー」

 

「復活魔法とかほんとにゲームかよ」

 

少しがっかりしているとエリス様から注意が入る

 

「ちょっと待ってください!あなたは一度生き返っているので天界規定により、これ以上生き返ることはできません!!」

 

「あ、よかったそうだよな」

 

でなかったら命の価値も軽そうだ

 

「おい駄女神、天界規定忘れてないか」

 

「はぁ?そんなお堅いこと言ってるのはどこのドイツよ

 

「ほんとアイツうるさいなぁ...」

 

アクアとの会話を打ち切りにしエリス様との会話を再開させる

 

「でもエリス様、仮に俺が生き返れたとしても頭の方がダメだと思うんですが?」

 

「あのアクア先輩放っておいていいんですか?」

 

「あんなのいつものことなので無視で、それよりどうなんですか?」

 

エリス様はおろおろしているが、それこそ関わっていたら本当に話が進まないので無視

 

「頭ですか?どういう意味でしょうか」

 

「あれ?俺の目のこと知らないんですか?」

 

そう言って眼鏡を取ると少し頭痛がする

 

「その目は...」

 

息をのむ声がするそれもそうだろう、強くなりすぎた俺の目は集中しなくてもエリス様の死の線が見えていた

 

「話が早くて助かります、ってか能力強くなりすぎて毎回目から血が出るのは困るな」

 

「困るなじゃありません!!ようやくあなたの死因がおかしかった理由がわかりました、おかしいと思ったんですよコロナタイトが刺さっただけで止まるとか」

 

「それで、どうでしょうか」

 

「確かに今仮に生き返れたとしても植物状態は避けられないと思います。いくらアクア先輩と言えど、あなたのその力は強くなりすぎています、完全には直せないためあなたの頭は使い物になりません」

 

「・・・なんかわかっていたことですけど、その言い方されると色々とショックなんですけど」

 

「あ、ご、ごめんなさい」

 

「いえ、いいですが」

 

ちょっとショックだったのは事実だが、シュンとしているエリス様を見たら別にどうでもよくなった

 

「さて、そろそろ「シキ!どうして、どうしてですか!!」

 

「・・・」

 

声が聞こえた悲痛な叫びが、そしてまた聞こえる悲痛な叫び

 

「約束したじゃないですかシキさん!帰ってきたら話を聞かせてくれるって!!」

 

「あの...」

 

エリス様は何か言いたそうに俺を見ていた、俺は何も答えない

 

「さて、エリス様俺を早く地獄送りに」

 

「いいんですか?」

 

「だって俺は生き返れないでしょう?それに本人にその意思がないですし」

 

「私はそう言うことを聞いてるんじゃないです!!」

 

「・・・」

 

エリス様に怒られ俺は居住いを直す

 

「はぁ...正直に言うと生き返りたいですよ、あいつ等とまだまだ過ごしたいですし」

 

「だったら「でも、俺はそれを望んじゃいけない人殺しですし...なによりもとは一つだったのに日常生活と殺人を任せる性格...一番嫌っていた一族とおんなじになった俺自身が許せにないんですよ」

 

偽りのない本音、俺たち一族は特殊だった。昼は普通に生活し夜は人殺しを平気でする、そんな一族だった。普通の人なら良心の呵責に耐えられないだろうが、そこが俺たち一族が特殊と言われる所以だった。いわゆる二重人格、それを俺が知ったのは小さいころで真夜中森に迷い込んだ俺は一族の者に殺されかけた。それ以来俺は一族の者が嫌いになった。殺したいとは思わなかったが結局また同じような状況になり、俺はそこで二重人格自分の嫌いな一族と同じになったのだ

 

「・・・」

 

流石に俺の思いを受けそれ以上何か言ってくることはなかった

 

「おいおいコロナタイトは取り除いたはずだろ」

 

少し遠いが和真のそんな声が聞こえた

 

-------------------------------

 

 

無数の冒険者たちがなぜか急いでデストロイヤーから降り始める、口々に熱いと言いながらだ

 

見るとデストロイヤー赤くなっていた

 

「おいおい!コロナタイトは取り除いたはずだろ!?」

 

「これは...内部にたまっていた熱が吹き出ようとしているのでは?」

 

その証拠に各部から水蒸気のようなものが出ていた

 

「このままでは町が火の海になってしまいます!」

 

「コロナタイト飛ばした意味ねー!!」

 

そんなことを言っている場合じゃないのは和真が一番よくわかっているのか次の策を講じる

 

「もう一度エクスプロージョンを!」

 

「もう魔力がほとんどありません!」

 

ウィズがそう言う、現状撃てるのはめぐみんかウィズだけ、めぐみんは撃てるはずないしウィズも撃てないとなると打つ手がないのか考え込む和真

 

「そうよウィズドレインタッチよドレインタッチ!」

 

「ですが、ゆんゆんさんと和真さんの魔力を吸っても撃てるかどうか...」

 

「ならアクアの魔力を」

 

「ばか、ウィズに私の神聖な魔力を注ぎ込んだらこの子消えちゃうわよ!!」

 

そんな言い争いしていると突然めぐみんが騒ぎ出す

 

「なにを、何を言ってるんですか志貴!」

 

「どうかしたのかめぐみん!」

 

 

志貴視点

 

「だから俺の魔力を使え!体は生き返ってるんだからやれるだろう!」

 

「でも成功するかわからないですよ!」

 

「だぁー!和真近くにいるんだろう!俺からドレインタッチしてめぐみんに魔力を!」

 

「や、やってみるけど成功するかわからないぞ!!」

 

「早く」

 

直後何か吸い取られるような感覚が

 

「うぉ!?」

 

「無理をしないでください!」

 

エリス様から魔力を流されているのか幾分か楽になる

 

「何考えているんですかあなたは!」

 

「いやだって特典で魔力値無限だから」

 

「それでも体は生きていたとしても、魂はこっちにあるんですから無理をしたら駄目ですよ!」

 

本気で怒っているのか顔がとても近かった、ドレインタッチとやらが終わったのか何かを吸い取られる感覚がなくなる

 

「あのエリス様終わったみたいなんですが」

 

「駄目ですしばらくは魔力を流したままにしますから」

 

そうしていたのだが不意に声がかかる

 

「シキ、今から爆裂魔法を撃ちますが終わったら話がありますちゃんと帰ってきてください」

 

「・・・へいへい、わかったよ」

 

ついに俺は根負けしてそんなことを言ってしまう

 

「よかったんですかあんなこと言って」

 

「その前に一つあいつと話したいんです」

 

「あいつ?」

 

「俺の片割れ、もう一つの人格と」

 

「わかりました...」

 

そう言って俺えの魔力注入をやめにして少し離れる、直後何かが抜ける感覚がして隣を見ると

 

「よぉ」

 

俺がいた

 

「時間もないし単刀直入に言う、俺を殺したくないか?」

 

「なにを」

 

そんなエリス様の声を手で制す、これは俺の問題なので話に入ってこられると困る

 

「質問の意味がよくわからないな」

 

「お前だって普通の生活がしたいって考えたことぐらいあるだろう?なのに俺はお前につらい過去とかを押し付けただから」

 

「なるほど...想像することあっても俺は別に気にしたことはなかったな、俺はもともとそういう存在だ」

 

「だが」

 

「俺に遠慮しなくてもいいお前と俺はもともと一つだ、元に戻ったところで俺は消えはしないだから俺のことは気にするな」

 

そう言って話し終わったとばかりに消える、俺は肩の力が抜ける

 

「相変わらず勝手な奴、まぁ俺自身だしな」

 

そう言ってエリス様に向き直る

 

「決まったみたいですね」

 

「えぇ、エリス様俺を生き返らしてください」

 

驚いたような顔をするがすぐに表情を引き締める

 

「さっきも言いましたが天界規定によりそれは」

 

「まぁ別に生き返してもらわなくてもいいですよ?」

 

「え?」

 

俺の言葉が予想外なのか呆けるエリス様、ちょっとちょーっと良心が痛むが仕方ないだろう切り札を切ることにする

 

「やー俺が転生した理由アクアが面倒だから何ですよねー」

 

「え?!」

 

「しかもそのアクアは俺が魔眼使いだって知らなかったみたいなんですよーこれを上司に」

 

「わかりました、わかりましたからそれ以上言わないでください!!」

 

泣きつかれた少々いじめが過ぎたようだ

 

「うぅ...アクア先輩のせいでいつも理不尽です...」

 

「すみませんねなんか」

 

「本当ですよ...はいこれで現世とつながりました」

 

足元に懐かしい魔法陣が展開される

 

「何から何まですみません」

 

「本当はこんなことないんですからね...志貴さんと言いましたね」

 

「クリスの時みたいに志貴でいいですよ」

 

「ですから私はエリスです、このことは内緒ですよ」

 

そう言ってウインクして舌を少し出すエリス様、俺はその状況に苦笑していた

 

少しずつ浮遊するからだ、俺は思い出したので聞いてみる

 

「そう言えば頭大丈夫なんですか俺?」

 

「はい、さっき魔力を流した時に直しておきました。あと私からのお詫びもかねて少し能力をいじらしてもらいました」

 

「へ?」

 

「大丈夫ですよ、ほとんど変わりませんから。ただ線を切る分には頭痛がしなくなり、点を突くと魔力は大量に消費しますけどこれまでよりは脳に負担を少なくするように。と言っても使いすぎれば今回のようになりますからね」

 

「ほんと何から何までありがとうございます」

 

「いえ...アクア先輩をよろしくお願いします」

 

「あ、それともう一つ、話したいことがあるので夜にギルドに待ってますんで」

 

「え?あの!」

 

そこで俺の意識はまた途切れる

 

次に目を開けると

 

「エクスプロージョン!!」

 

今まで見た中で一番の爆発だった

 

「200点満点中100点だな」

 

 

結局あの後目が覚めたことがバレ、号泣やらぶっ飛ばされそうになるなどでゆっくり話す時間が取れなかったわけだが

 

ところ変わって屋敷の俺にあてがわれた部屋、なぜか二人の少女に正座させられていた

 

「なんで俺は正座させられてるんですかね」

 

「わからないんですか」

 

「約束破りましたよね」

 

絶賛興奮中なのか二人は瞳を光らせながら俺の前に仁王立ちしていた

 

ちなみに紅魔族は興奮すると瞳が光るらしい、てかパンツ視えそうなんですが

 

「約束の件は一応守ったと思うんですが?こうして帰ってきてるわけですし」

 

「守ったと言えるんですか、一回死んでるんですよ?」

 

「あー、はい、すみませんでした」

 

そう言って頭を下げると、ようやく正座を解いていいらしいので適当な椅子に座る

 

「それで何が聞きたいんだ?」

 

「すべてです」

 

「シキさんのすべて、です」

 

真剣な目でお願いされる、正直言って話たくはなかったのだが約束した手前話す

 

「・・・面白い話じゃないぞ」

 

「それでもです」

 

「わかった」

 

おれは語り始める転生前の世界でどんなことをしてきたのか、俺がどういう人間なのか

 

「・・・というわけだ」

 

話し終えて二人を見ると俯いていて表情は見えなかったが

 

「アホですかあなたは!!」

 

スコーンと短刀を投げつけられる刃わ出てないので危険はないが地味に痛かった

 

「アホとは失礼だろう」

 

「そうです!私たちのこと見くびらないでください!!」

 

「確かにあなたが転生前にしたことは許されないことです、それはあなたが一番よくわかっているでしょうが私たちのことを全く分かっていないじゃないですか!」

 

「そうです!私たちは付き合いは短いかもしれませんが誰よりもシキさんのことをわかっているつもりです、苦しんだり悲しんだりしたと思います...でも、もっと私たちを信用してください!!」

 

「「その程度のことで私たちは仲間をやめたりしません!!」」

 

まるで頭を金づちで殴られたような衝撃だった、こんな俺は誰からも受け入れられるわけがないとそう思っていたからだ

 

「あー、うん、そうか...ありがとな」

 

椅子から立ち上がり部屋を出ようとする

 

「どこに行くんですか?」

 

「いや、まぁ、今回もう一人に迷惑かけたからなその人にも謝らないとな」

 

そう言って部屋を出た

 

-------------------------------

 

ところ変わってギルドに行くと約束の人はもう来ていた

 

「おーい志貴!こっちこっち」

 

「あークリス待たして悪い」

 

急いで席まで行き腰を下ろす、来たばっかりだが周りが騒がしすぎて帰りたい

 

「まったく私も忙しいんだからね」

 

「なら外出ようぜ流石にこんだけうるさいとゆっくり話もできないしな」

 

「いいよー、じゃあ会計「俺が払うから先に外で待っていてくれ」

 

そう言って席を立ち会計を払い、外で待ってるクリスに合流する

 

「強引だね」

 

「そうか?とりあえず歩きながら話そうぜ」

 

「はいはーい」

 

そう言ってゆっくりと歩き始める

 

「それで今日呼び出した要件は?」

 

「ん?ズバリ今日のことだよ」

 

「今日?ワタシは何もやってないけど」

 

「あーはいはい、それならエリス様に伝えといてくれよ」

 

もう面倒になったのでおざなりに対応すると

 

「む、なにその言い方」

 

ふくれっ面になったが気にしない

 

「ほんと今日は助かったよ、結局デストロイヤー殲滅終わったら仲間に拉致られて知らない屋敷に連れていかれてさ」

 

「知らない屋敷って?」

 

「あーなんか俺がソロでやってる間に、屋敷を報酬でもらったらしいんだよ」

 

「え?なにそれすごい」

 

「だよなぁ...んまぁその話は置いといて、仲間に俺の転生前話したらさ受け入れてもらえたからさ...だからあの時許可出してくれてありがとうございましたエリス様」

 

お礼を言うために止まり頭を下げる、そんな俺にクリスは

 

「え、えっとお礼言われても困ります//それに認めてくれたのは志貴さんの行いがいいからであって///」

 

となぜか照れていた

 

「そう言うことにしておきますよ」

 

「なんでニヤニヤしてるんですか!//」

 

「正直に言っていいんですか?」

 

「っ~~!//最初はいい人だと思ったのに...」

 

「人を見る目がないんじゃないですか?」

 

そんなくだらない話をしばらくしていたが

 

「エリス様」

 

「なんですか?というより私はエリスではなくクリスだよ」

 

今まで反応していたくせに急いで口調を治していうクリス

 

「とりあえず困ってることない?」

 

「・・・それ皮肉?」

 

軽くにらんでくるがそういう意味では断じてない

 

「そうじゃないです。今回のことで多大な迷惑かけたじゃないですか、だから恩返ししたいなーと思ってさ。それじゃなくてもどこぞかのダメな先輩のせいで貧乏くじ引いてるんじゃないかと」

 

「・・・」

 

図星なのか押し黙るクリス、しばらく俺は夜空を見ながら歩いていたが不意にクリスの足が止まる

 

「ふぅ...もう面倒なので正体を明かしますが私はエリスです、今回のことはまぁアクア先輩のこともありますが、志貴さんが決めて私が送り出したんですから責任を感じることは「いや、責任は感じてますけど力になりたいってのはそれとはまた別ですよ?」

 

俺がそんなこと言ったのは意外だったのか目を丸くするエリス様

 

「いやだって当たり前でしょ?さっきも言った通りなんだかんだでエリス様、貧乏くじ引かされそうですし。それにあなたも俺の過去を聞いてそれでも俺をちゃんと見てくれていますから、そう言う人の力になりたいって思うのは当たり前でしょう?」

 

「・・・それなら仕事を増やさないで欲しいです//」

 

そう言うとなぜかそっぽを向いてしまうエリス様、それも少しの時間だけで何かを決心したように話しかけてくる

 

「なら私に協力してくれませんか」

 

「なににですか?」

 

「神器集めです」

 

「いいですよ?」

 

「危険なこともありますが...って、え?いいんですか?」

 

あっさり決まりすぎたことが意外なのか聞き返してくるエリス様

 

「いいですよ?」

 

「危険なこともあるんですよ?」

 

「そんなの百も承知ですよ」

 

「貴族の家に侵入したり「あー、いいですって。危険なのは百も承知ですしそういうのもあるんだろうなとは思ってますから、それであなたの助けになれるならいいですよ」

 

「っ~~~!!///あ、あとで、じゃなくて...そう盗みに入るときに手紙届けるから、じゃあね!!///」

 

そう言ってとっとと行ってしまうエリス様

 

「な、なんだったんだ」

 

俺は一人呆然としていた

 

 

アクアに朝たたき起こされてギルドに向かうと、騎士二人を従えた女性がいた

 

「冒険者サトウカズマおよび、ビャクヤシキ、二人には現在国家転覆罪の容疑が掛けられている自分とともに来てもらおうか」

 

「「はぁ?」」

 

俺と和真は声をそろえて言う、もちろんそんなことをした覚えがないからだ

 

「貴様らが破壊したコロナタイトだが元は大領主アルダープ様の物、それを壊したともなれば相応の罪だ」

 

「それは!」

 

俺は他の奴らが何か言おうとするのを手で制す

 

「わかりましたついて行けばいいんですね」

 

「殊勝な心掛けだなビャクヤシキ」

 

「おい志貴!」

 

「和真、正当性は俺らの方がある。なら無実を証明した方が早い」

 

「それはそうかもしれないが」

 

「ですがわざわざ捕まりに行くのは」

 

「そうですよシキさん!」

 

他の奴はそう言うが

 

「ここで下手に抵抗してみろ、そっちの方が面倒臭くなる」

 

その言葉で他の奴らは黙るのだが

 

「かーずーまーさーんー!!犯罪者じゃ魔王討伐なんて無理じゃないですか!!どうすんのよー!!」

 

一人だけ空気の読めないやつがいた

 




というわけで一期は終了です!ゆんゆんメンタル強くなりすぎだろとかクリスちょろすぎとかそんなのは気にしないでください。とりあえず次からは二期の内容になります楽しみにしていてください


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第十一話 この不当逮捕と裁判に終止符を!

というわけで二期の内容になります、便宜上十一話になってますが二期の一話です。OVAは見ましたが、書くかどうか迷ったので本編の方を優先しました
ではどうぞ!


拝啓 父さん母さん私は今異世界にて牢屋にいます

 

なんてアホな始まりは冗談として、牢屋にいるのは本当だ

 

「ちがーう!!」

 

「和真騒がしいぞ」

 

俺は溜息をつきながらまた眠ろうと目を閉じるが、和真が声をかけてくる

 

「だっておかしいだろ俺たちが逮捕されるなんて!!」

 

「コロナタイト破壊したの事実だろ」

 

そうあのデストロイヤー戦にて俺達が、いや俺がコロナタイトを破壊したのは事実だった

 

「でも俺たちは町を救った英雄で」

 

「それなら門の時に適応されてもおかしくなかっただろ?」

 

過去ベルディア戦にて俺たち、というよりアクアの馬鹿が破壊した門は借金という形で返済を迫られた

 

その額3億2千万エリス、ベルディア討伐の報酬金3億で残り2千万となったが

 

実際町を救った英雄なのだからチャラになってもよかったはずだ

 

「それは...そうだけど」

 

和真も過去の件でそうなるはずがないとわかっているのか、座る気配がする

 

「実際これから取り調べも行われる、そこで身の潔白を主張できるんだからいいだろ」

 

「・・・そうだな、そうだよな」

 

和真もだんだん落ち着いてきたのか、声も通常時のものに戻っていく

 

「ほら寝ようぜ」

 

「あぁ、お休み志貴」

 

「お休み」

 

(まぁ実際言いがかりレベルの逮捕だったのは認めるが)

 

俺は逮捕された時のことを思い出していた

 

-------------------------------

 

「私は王国監察官のセナ、冒険者サトウカズマおよびビャクヤシキ。貴様らには国家転覆罪の罪が掛けられている」

 

きつい目をした女性はセナと名乗り、紙を見せてくる

 

どうやら俺たちの逮捕状のようだ

 

「和真、志貴!あんたたち今度は一体何をやらかしたの!?謝って!私も一緒にごめんなさいしてあげるから、ほら早く謝って!!」

 

そう言って俺たちの頭を後ろから掴むが、俺はその手をどけて目の前の逮捕状を見続ける。和真たちは言い争いをしていたが、俺はセナに質問する

 

「何故コロナタイトを壊したぐらいで、逮捕されなきゃいけないんですかね?」

 

コロナタイトを壊したぐらいでと言うが、コロナタイトはとても希少なものなのでそんなことは言えないのだが。どちらにしろ俺は壊していなかったとしても、爆発していただろう

 

「そのコロナタイトが元をたどれば大領主アルダープ様のものだからだ」

 

確かここら近辺を治めている領主がそんな名前だったと思うが、はっきり言ってそれはどうでもいい。元をたどればと言ったが、どうも胡散臭かった

 

「まぁその件についてはいいとして、なんで和真まで?破壊したのは俺ですよ」

 

「メンバーの強行を止められなかったのはリーダーの責任、領主様はそう判断されたのだ。それに、今まで内部に侵入できなかったとはいえ何度も破壊を試みていたコロナタイトが簡単に壊れた、ということも領主殿は引っかかっておられる。それこそ壊れてように見せかけて自爆させようとしたのではないかと、よって貴様らはテロリストとみなされている」

 

どうにもキナ臭すぎる理由だった。何を考えているが知らないが、これ以上ここにいても他の奴らに迷惑がかかるので捕まろうと思ったのだが

 

「待ってください!デストロイヤー戦において、カズマやシキの機転がなければ多くの被害が出ていたんですよ」

 

「「めぐみん...」」

 

俺と和真は感動したが

 

「まぁシキは人のことを信用しませんし、カズマはセクハラなどの小さい罪を犯したりするでしょうけども」

 

なんか感動を返してもらいたかった、いやまぁ確かに信用していなかったわけじゃないがなんかそう言われると傷つく

 

「検察官殿何かの間違いでは」

 

「「ダクネス...」

 

今度はダクネスが俺たちのために何か言ってくれるようだった

 

「確かにシキはさっき言ったように私たちのことを信用していなかったりするが...カズマに関しては、薄着の私をあんな獣のような目で見ておきながら夜這いの一つもかけられないヘタレだぞコイツは」

 

なんかもうお前ら俺の感動を返せよ、確かに今までの行動が原因かもしれないけどさ。そんな中でパーティーの唯一の良心であるゆんゆんが口を開く

 

「確かにシキさんは人のこと信用していないところはありますけど、それだけです!」

 

なんかもうゆんゆんにまでそう言われると、流石に傷つく。後でイジメられるとき思いっきりイジメて、愉悦に浸ってやることを心に誓った

 

「そうだ!カズマもシキも犯罪者なんかじゃねえ!!国家権力の横暴だ!!」

 

とダストが言うと周りの冒険者たちも同調してくれる、そんな場が盛り上がったところで冷ややかな一言が

 

「国家転覆罪は主犯以外にも適用される場合がある。この男とともに牢屋に入りたいなら止めはしないが」

 

一斉に止む声、見ると視線を逸らすものまで。まぁ気持ちはわかるが

 

「もっと頑張れよ!もっと抗議しろよ!!」

 

和真はそう言うが、まぁ無理だろう。その後も色々ひと悶着あったのだが割愛する

 

-------------------------------

 

今思い出してもひどいものだが、まぁあの場は仕方なかっただろう。とりあえずめぐみんとゆんゆんは出たら一番でイジメる決意を新たに、俺は瞳を閉じた。閉じたのだが、聞き覚えのある爆発音に思わず目を開ける。嫌な予感がして和真の方を向くと、和真も苦虫をかみつぶしたような顔をしていた

 

「シキさん、シキさん」

 

呼ばれた方を向くと、挙動不審なゆんゆんが

 

どうやら和真の方はアクアが来たようだった

 

「ゆんゆん、どうしてここに?」

 

まぁ聞かなくてもわかるが、一応聞いておいた

 

「助けにきたんです!シキさんは大切な仲間なんですから」

 

そう言われて嬉しかったのだが、なぜか心には響かなかった。とりあえず長くいさせたら、怪しまれることは確実なのでいじらないでおくが

 

「まぁなんで来たのかは分かったけ、どさっきの爆発は?」

 

「この近くで放っためぐみんの爆裂魔法です、ダクネスさんが回収してくれることになってますけど...」

 

「やっぱりか...」

 

やはりめぐみんの爆裂魔法だったようだ、町で爆裂魔法放てるのは一人だけなのでこれで心証が悪くなったらいやだなと思いつつ

 

そんな俺の様子に申し訳なさそうに

 

「・・・やっぱり迷惑でしたか?」

 

と聞いてくる

 

「・・・本音としては嬉しい、でもここで逃げたって変わらないだろ?それに逃げたら指名手配だろうし、そりゃあ死刑になるのはごめんだから最後にはこれを使うだろうが」

 

そう言って目を指さす。別に死刑なぞ怖くはない、こちとらもう二回は死んでいるのだ慣れはしないが

 

「・・・」

 

ゆんゆんも今回のことにはあまり賛成ではないのだろう、納得はしていなさそうだが俺の意見は聞いてくれたようで

 

「わかりました、納得はしてませんけどシキさんの言う通りですね...必ず、帰ってきてくださいね」

 

「はいよ」

 

ゆんゆんは姿を消した、和真の方を向いてみるがなぜか針金を持っていた

 

「・・・なんでお前針金なんて持ってんの?」

 

「・・・アクアに渡された」

 

俺達の牢屋はダイヤル式だった、和真は針金を投げ捨て俺たちは眠りについた

 

-------------------------------

 

そして次の日、連続で何かを撃ちこむように爆発音で目を覚ました

 

「今度は何だ...」

 

「シキ、シキ!」

 

俺よ呼ぶ声がしたのでそちらを向いてみれば、めぐみんがいた

 

「今度はめぐみんか、どうした?」

 

「どうしたじゃありませんよ!ゆんゆんは説得されて戻ってきますし...どうして脱出しようとしないんですか!?」

 

「そうしてと言われても...昨日説明した通りなんだが」

 

昨日説明した通りなので、今日も脱出する気は全然ない

 

「国家転覆罪は最悪死刑なんですよ!こんな不当な罪で判吹っ掛けられるような裁判なんて、勝ち目がないじゃないですか!」

 

「だとしても逃げたらそれこそ相手の思うつぼだぞ?最悪この目があるから逃げることはできる」

 

「それは!そうですが...」

 

めぐみんも俺が逃げることはないとわかっているのだろう、だんだん諦めた表情になってくる

 

「ところで今日はゆんゆんが爆発起こしてるのか?」

 

「はい、ファイアーボールを魔力使い切るまで撃ち続けました。今頃は覆面被ってダクネスが回収してるでしょうけど」

 

まぁそんなことだろうと思ってはいたが

 

「逃げる気はないんですね?」

 

最後の確認という感じで聞いてくる

 

「もちろん」

 

「はぁ...わかりました」

 

ため息をついて視線を逸らすが、すっきりした顔をしてこっちを向く

 

「待ってますからね」

 

「あいよ」

 

今度こそめぐみんは見えなくなった、和真はというと糸鋸を持っていた

 

「・・・」

 

「・・・」

 

普通に届かないと思うのだが、入口の方からアクアの声がするので察するに

 

踏み台を持ってきたんだろうが、そんなもの差し入れとして許されるはずもなく

 

「アホだなあいつ...」

 

「でもそう言う前向きなとこは、見習わないとな...」

 

そういって糸鋸を外に投げた

 

「お休み」

 

「おやすみ」

 

俺達はそう言って寝た

 

-------------------------------

 

次の日取り調べをするということで、部屋に案内されたのだが。二人で同じ部屋に案内される

 

「これが何か知っているか?嘘を看破する魔道具だ」

 

そう言ってベルを置く検査官、俺はこの世界はこういうものまで普及しているのかと感心していた

 

「ではまず出身地と、冒険者になる前は何をしていたのか聞こうか」

 

和真はどうも言いたくないようなので先に答える

 

「出身地は日本で、学生やってました」

 

音はならない、まぁ付け加えるなら学生やりながら殺人鬼やってましただが。続いて和真の番だ

 

「出身地は日本で、そこでは学生をしていました」

 

チリーンとベルが鳴る、和真を見ると信じられないように

 

「なんでなるんだ!?」

 

驚いていた

 

「出身地と経歴詐称...」

 

どうやらメモられているようだ、俺は和真の脇を小突く

 

「待ってくれ!別に嘘はついてない

 

チリーンとまたなるベル、和真は少し濁った眼で語り始めた

 

「出身地は日本で、だらだらとだらけた生活を送っていました...」

 

俗にいうニート、引きこもりの生活を送っていたようだった。なんかもうこれからのことを想像すると、和真に同情を禁じ得ないのは俺だけだろうか。ならないので次の質問に移行する

 

「冒険者になった動機は?」

 

また俺が先に答える

 

「その時は記憶喪失だったんで、なりいきで」

 

ベルはならないが、突っ込んで聞いてくる

 

「記憶喪失?なんでまた?」

 

「さぁ?この地についていた時にはもうなっていたので、もう戻りましたが」

 

またもベルはならない、嘘は言ってないが本当のことも言ってない。この魔道具はある程度ぼかして伝えることなら可能なようだ、それ以上は検察官は聞いてこなかった。次は和真の番となったわけだが

 

「魔王軍に苦しめられている人たちをたす

 

またもやチリーンとなる魔道具、和真の瞳はさっきよりも濁っていく

 

「冒険者ってなんかかっこよさそうだし、楽して大金稼いで美少女たちにちやほやされたいなと思いました」

 

「和真おまえ...欲望に忠実すぎるだろう...」

 

思わず俺がそう言うと、和真は顔を背けた。一瞬目元に光るものが見えた気がするが見なかったとこにしておいた

 

「よ、よし次だ。領主殿に恨みは?借金を背負った際にいろいろなところで愚痴ってたと聞いたが」

 

今度はどうやら和真が先に答えるようだった

 

「デュラハン討伐でもらった賞金は、町の修繕費との差し引きで借金になったわけで、納得

 

チリーンとなるベル、これに関しては俺も修繕費を払っていたし。俺とのことでストレスを感じていても仕方ないので、何も言わない

 

「はい、正直そんな感じの言い訳で憤る仲間を説得はしました。本音を言えば、町を救った英雄にこの仕打ちかよぶっ殺してやりたいと思いました」

 

「和真ぶちゃけすぎ、ぶちゃけすぎ」

 

すごい勢いで本音をぶちまけていく和真を止める、瞳はもはや濁って大変なことになっている。最早耐えられないのか検察官は俺に早く喋るよう促してくる

 

「恨みねぇ...はっきり言ってそれどころじゃなかったし。このころ俺はパーティー抜けてソロでクエスト行ってたから、正直自分のことで手一杯でした」

 

やはりならないベル

 

「パーティーを抜けた?何故?」

 

「今回の件とは関係ないので黙秘」

 

ならないベル、無関係と分かりそれ以上聞いてくることはなかった

 

「そうか、では次は

 

「あのちょっといいですかね」

 

検察官が質問しようとしたのを遮り、和真が声を上げる。どちらにしろ和真が声を上げなくても俺が言うつもりだったので、ちょうどいいと言えばちょうどよかった

 

「いっそのことストレートに聞いてくれませんか?何度も言ってますが、あれをやったのは町を救うためでしたから!」

 

ベルは反応しない

 

「俺ももう一杯一杯の状態でしたし、臨界が近かったから壊しただけで故意的にというわけじゃないです」

 

やはりベルは反応しない、それを見ると検察官はさっきまでのきつい目線をふっと和らげる

 

「自分が間違っていたみたいですね、あなた方...というよりはサトウカズマさんについては悪いうわさしか聞かなかったもので、すみません...自分の勘違いだったみたいですね」

 

赤い顔でモジモジし始める検察官、そんなことしたら和真が調子に乗るんじゃないかと思ったら

 

「まったく!噂を鵜呑みにして人を疑うなんて、検察官失格じゃないんですかね!」

 

案の定調子に乗る和真、そして謝る検察官。増長していく和真の言葉を意識の外に追いやりながら、俺は思考を再開する

 

(それにしても、取り調べはこれで終わったんだろうがこの件がこれで片付くとはとうてい思えない。生活で注意していた方がいいかもな)

 

思考をまとめていると、和真は盛大に地雷を踏みぬいたのか謝っていた

 

「あなたは巷でなんて呼ばれているか知っていますか?」

 

「あー、かすまだとかクズマとか悪魔に最も近い男、レア運だけのとか結構色々呼ばれてますね」

 

「・・・マジで?」

 

最早和真は泣きそうだった、というより意図せずいじってしまった

 

反省

 

「はぁ...念のためもう一度聞きますが、あなた方は本当に魔王軍の関係者ではないのですね?魔王の幹部などと交流があるだとか?」

 

この質問は俺たちにとって地雷だ。関係者ではないが、交流はあるのだから。俺が慎重に答えを選んでいると、和真は

 

「ないですってそんなもの!

 

チリーンとベルが鳴る、どうやら和真は盛大に地雷をぶち抜いたようだった

 

最早この場で言いつくろってもどうにもならないので、裁判に持ち越されることになった

 

-------------------------------

 

「これより被告人サトウカズマおよびビャクヤシキの裁判を執り行う」

 

裁判などやったこともないが、俺は意外にも落ち着いていた。それよりも外でやっているため、多くの冒険者がいるのはいいのだが。青空がまぶしいので若干恨めしい気持ちになってはいるが

 

和真はというと

 

「オエェェェェ...」

 

隣で吐いていた

 

「意外にも緊張していないんですね」

 

「大丈夫...大丈夫ですよね!?」

 

「落ち着けゆんゆん」

 

手錠が頭に当たらないように撫でてやると、緊張がほぐれてきたのか段々笑顔になってくる

 

「・・・イチャつくのはいいですが、裁判始まりますよ?」

 

何故かめぐみんはめぐみんで静かに怒っていた

 

「べ、別にイチャイチャなんて」

 

「ならそのにやけ顔をやめてから言ってもらおうか!!」

 

何故かめぐみんとゆんゆんで喧嘩が始まったが、今はそんな場合じゃないので止める

 

「とりあえず裁判は頼むな、めぐみんゆんゆん」

 

とりあえず二人いっぺんに撫でるわけにもいかないので、一人ずつ撫でる

 

「ふふん!任せてください、紅魔族随一の天才があの検察官が泣くまで論破してやりますよ!!」

 

「任せてください!」

 

めぐみんの方はなんか不安を感じたが、ゆんゆんは頼もしかった

 

まぁ一番の問題はアクアがいることだ

 

今は和真の方に行ってるが

 

「では、検察官は前へ!」

 

仲間たちは弁護席に戻り、いよいよ裁判が始まる

 

「希少なコロナタイト壊したこと、そしてそのコロナタイトの持ち主の領主からの要望により、国家転覆罪を適用を求めます」

 

改めて傍聴席から横暴だな等の声が上がる、それもそのはずだろう領主の要望で国家転覆罪が適用されるなど

 

「横暴等の声が聞こえますが、あれ一個でどれだけのエネルギーが賄えるか...まぁそれに関しては後でもいいでしょう。問題は被告人たちがそれを故意に壊したのではないか、という点です。証人をここに!!」

 

証人尋問ということだろう、呼ばれた証人を見てみると

 

「クリス?どうしてここに」

 

「あはは...なんか呼び出されちゃって」

 

頬の傷をかきながら苦笑するクリス、これやった俺よりの和真の方が立場悪くなるんじゃと思いもしたが

 

「クリスさんあなたは公衆の面前でスティールを使われ、下着を盗まれたとか...間違いないですね?」

 

「おいダクネス...」

 

俺はダクネスに小声で話しかけ、今回は真面目そうなので和真の弁護を頼むことにした

 

「なんだ?」

 

「このままだと和真に不利な証言ばっかり集められる、あの状況を思い出して弁護してくれ」

 

「確かに...」

 

「今回ドMはなしだぞ」

 

「わ、わかっている...いぎ

 

「私見たんです!」

 

ダクネスが弁護しようとした瞬間、傍聴席いる冒険者が声を上げる

 

「見たとは?」

 

「路地裏でパンツを振り回してる人を!」

 

「それは一体!?」

 

この検察官ノリノリである、それはおいておいて。その冒険者は震える指で和真を指さした、和真は声にならない声を上げていたが

 

「ま、待ってくれ!一応補足するがその勝負はもともとはクリスが吹っ掛けたものであって...」

 

「そうだそうだ!」

 

「だからと言って勝負を受けたのは被告人自身であり、パンツを振り回していたのは被告のサトウカズマです!」

 

「「・・・」」

 

事実なので着席するダクネス、クリスも押し黙る

 

「ほかに何かなかったですか?ビャクヤシキの方は?」

 

「えっと、ビャクヤサンはサトウさんからパンツを取り返して、すぐあの盗賊の方に返してましたけど...」

 

なるほど見てる人は見ているらしい、それよりも主犯の俺より指示したとされる和真の方の立場が悪くなるとかちょっと面白い

 

「そうですか、ありがとうございます!」

 

一人目を終えて、二人目

 

「ミツルギキョウヤさん、あなたは魔剣を強奪されて売り払われたと聞いてますが」

 

そうあのミツ何とかだ、まさか三度目の邂逅を果たすとは

 

おれはある意味嬉しくて笑顔でミツ何とかを見ているのだが、あっちは顔を真っ青を通りこして白くなっていた

 

「あのミツルギさん」

 

「す、すみません!気分が悪いので、さよならー!!」

 

そういって一目散に逃げだした、まぁ今回は裁判なので無効なのだが何がそんなに怖かったのだろう。こちらは笑顔なのに、ちなみにミツ何とかのパーティーメンバーも気分が悪いとかで帰ったとか。大丈夫だろうか、心配だ。まぁ証言一つでも和真の屑さが伝わったようだが

 

「もういいだろうさっさと極刑にしろ」

 

偉そうなおっさんがそう言う、あれが領主アルダープだとか。絵にかいたような悪徳貴族だった

 

「異議あり!」

 

めぐみんが立ち上がり弁護を開始する

 

「和真の性格が曲がっているのは認めますが、こんな証言証拠として認められませんよ!」

 

俺の方は何も出てこなかったので和真の方を弁護するようだった

 

「めぐみん!」

 

「和真がテロリストだというのならもっとましな証拠を持て来てください」

 

「そうよ根拠よ根拠!」

 

アクアが乗っかるが、正直黙っていてほしかった

 

「根拠、根拠ですか...よろしいでしょう!」

 

そう言うとやけに自信満々に眼鏡を直しながら宣言する

 

「ひとーつ!デュラハンを倒したとはいえ、町に洪水による被害を与え。ふたーつ!町の近くで爆裂魔法を放ち地形や生態系を変え、あまつさえここ数日においては深夜に騒音騒ぎを起こし。そして三つ!被告人サトウカズマは、本来アンデットにしか使えないスキルドレインタッチを使用していたという目撃情報があります」

 

ダクネスと俺以外は黙秘なのか耳をふさいでいた、こいつら使えねー

 

「耳をふさいでもなかったことにはできませんよ!もっとも大きな根拠としてあなたがたに魔王軍幹部との交流はないかと尋ねました、その際魔道具が嘘を感知したのです!!これこそが最大の証拠ではないでしょうか!!」

 

「最大の証拠ねぇ...」

 

その言葉に俺は笑う、和真がドレインタッチを覚えててくれて助かった

 

「何を笑っている!!」

 

よっぽどお冠なのか、すごい勢いで睨んでくる検察官

 

「ならその最大の証拠とやらを崩してやるよ、和真こっからなに聞かれても返事するな」

 

小声で和真には忠告しておく

 

「確かに魔王軍幹部とは交流があった、だがそれは死んだデュラハンベルディアだ!」

 

ベルは反応しない

 

「ふん、語るに落ちたか...」

 

領主はそう言うが、この話には続きがある

 

「まぁただ死ぬときにスキル教えてもらっただけだが」

 

またもならないベル、俺は冒険者カードを出しスキルの欄を見せる

 

「この魔眼を教えてもらっただけだ、まぁ他の冒険者はその時起きてなかったからしらないけどな」

 

ならないベル、法廷は静まり返り検察官は顔を青くしていた

 

「魔眼についてならデュラハン戦で戦った冒険者たちに聞けばすぐに詳細は取れるぞ?」

 

そう言って後ろの冒険者たちの方を向くと、数人は頷いていた

 

「つまりあなたたちの交流があったのは死んだデュラハン、そう言うことですね」

 

「交流というか倒したから教えてもらって、剣も貰ったわけですが」

 

和真は返事をしなかったが、ベルはならないそれを見届けた裁判官は

 

「これでは検察官の証言を証拠と認めるわけにはいかないですな、よって被告人サトウカズマおよびビャクヤシキ両名は証拠不十分として無

 

「死刑だ、裁判長」

 

それでもあきらめきれないのか、領主がそんなことを言い始める

 

「アルダープ殿...」

 

「私に恥をかかせる気か、裁判長」

 

まぁ流石中世のような世界観だ、裁判長を恨みはしないが

 

「やけに俺たちのことが殺したいみたいですね、領主殿?」

 

俺が馬鹿にしたような声で言うと、青筋を立てながらこちらを見てくる

 

「なんだと?」

 

「おや、聞こえませんでしたか?やけに俺達のことを殺したいようですね領主殿と言ったんですよ?」

 

「貴様!?」

 

激昂して掴みかかってくるが俺は気にしない

 

「だってそうでしょう?手記によればあるかもわからないコロナタイト、それが領主殿のところにあるとわかっていればあの開発者だってそれ以上の無茶を言ったはずです」

 

手記、デストロイヤー製作者の手記だが何故かギルドにあったりする

 

俺はそれを読む機会があったので読んだのだが

 

「なにを?」

 

「所有権云々はこの再確認が取れないので置いとくとして、あなたはデストロイヤーが破壊した町の修繕費とか今まで払ったんですか?」

 

「何を言っている、そんなもの払うわけがないだろう!!」

 

これではっきりした、完全にあのコロナタイトはこいつの物じゃない

 

俺は体を振り拘束が緩んだすきに、距離を取る

 

「俺たちに自分のコロナタイトを壊して国家転覆罪を適用する割には、そのコロナタイトで動いてるデストロイヤーが破壊した町の修繕費は払わないんですね」

 

しまったという顔をするがもう遅い、言質はもうこの法廷にいる全員がとっている

 

「大体どちらにしろ臨界を迎えていたコロナタイトだ、壊さなければ町に被害が及んでいたし。その後デストロイヤー本体を破壊したわけだからな、どちらにしろ破壊しなければならないものだった。裁判長、聞きたいんですけどコロナタイトがもし領主の物だった場合損害賠償は払わなくていいものなんですか?」

 

「そ、その場合だと全額とは言わなくても、一部は払ってもらうことになります」

 

裁判長を睨んではいるが事実なのでどうしようもない

 

「だそうですがどうするんですか、領主殿?」

 

「貴様、貴様っ!」

 

睨んではいるが事実なのでどうしようもない、この場で嘘だったと言えばその瞬間裁判は終わる。だがこの領主は思った以上に諦めが悪かった

 

「・・・いいだろう弁償してやろう、だが貴様らもコロナタイトは弁償してもらう!!」

 

どうやらコイツは俺たちを殺そうとしたのではなく、別の目的があるみたいだが今の俺には今の俺にはわからなかった。和真を見ると頷く、死刑にならないだけ御の字だろう

 

「いいだろう、だが試算に関してはこちらが出さしてもらう」

 

「貴様らに出来るのか?」

 

ニヤニヤ見ているが、こっちにはダクネスがいる。ダクネスを見ると協力してくれるようだ

 

「もちろんだ、後で裁判所を通じてそちらに送る」

 

「ふん、いいだろう...」

 

ちらりとダクネスを見る領主、どうやらダクネスのことを知っているようだ。もしかしたらとも思ったが、確認が取れないので考えないことにした

 

「被告には無罪。だが故意ではないとはいえ希少なコロナタイトを壊したことは事実、よって弁償を命じる。後で試算の方はこちらに提出するように!では閉廷!!」

 

その瞬間盛り上がる裁判所、てかいいのかよ法廷がこんなに盛り上がって

 

「ふぅ...」

 

「お疲れ志貴」

 

そう言って声をかけてくる和真、俺もそれを返す

 

「おう、和真もお疲れ」

 

「お前のおかげで助かったよ」

 

「仲間だろ、お前自体はゲスイけど」

 

そう言って手を合わせる、和真は苦笑していたが

 

「かずま~」

 

「シキ(サン)!」

 

和真はアクアに、俺はゆんゆんとめぐみんに抱きつかれる

 

「よかったです、シキサン!」

 

「私の弁護のおかげですね!」

 

「君ら早々に耳ふさいでたよな」

 

「「はぅっ!?」」

 

流石にこんな場に出てきてくれたのだ、イジメるのはとりあえずここまでにしておく

 

「まぁ二人ともありがとうな」

 

そう言って頭を撫でるととたん俯いて静かになる

 

-------------------------------

 

何日かぶりに帰ってきた我が家、なんか見た瞬間ほっとした

 

「それにしても今回は悪かったな」

 

ダクネスに向き直る、これからダクネスは頼んだ件で一回帰るようだ

 

「今回ばかりはお礼を言わないとな」

 

そう言って和真は握手を求める、それに応じながらダクネスは神妙な顔を崩さづ告げる

 

「今回の件、たぶん相当な額に上るぞ?一応家からも援助はするが...」

 

「まぁ仕方ないだろ...とりあえず頼むぞダクネス」

 

「任せろ」

 

男らしく去っていったのだが、和真はいらぬ一言をかける

 

「ララティーナ」

 

「その名で呼ぶな!」

 

肩を怒らせながら歩いて行くダクネスに笑いながら家に入っていく和真たち、だが

 

「シキサンどうしたんですか?」

 

「ゆんゆん、水の魔法用意しておいてくれないか?この門がちょうど閉まるくらいの」

 

「え?あ、はい」

 

不思議に思いながら準備をするゆんゆん、やがて俺が準備をさせていた理由一行がやってきた

 

「あれは騎士?」

 

「だな、ゆんゆん!」

 

「はい!」

 

魔法を発動し、俺は

 

「フリーズ!」

 

発動し、屋敷に通じる唯一の出入り口を閉じる

 

「貴様!何のつもりだ」

 

先頭の騎士が叫ぶが、知ったことではない

 

「それはこっちのセリフだ、いきなりこんな人数で」

 

「裁判所の命により、被告人の資材を差し押さえすることになっているのだ!」

 

そう叫ぶが聞いてないものは知らない、不安なのかゆんゆんが俺の裾を掴むがそれどころではない

 

「そんなことは聞いてない、命なら書類とかは?」

 

「そんなものはない!」

 

威張ってそんなものはないと言ってきた、これは事案である

 

「試算も済んでいないにもかかわらず、裁判所が資材差し押さえねぇ...舐めんじゃねえぞ」

 

ゆんゆんを撫でて裾を離させ、眼鏡を外す。そして氷を死の線に沿って一閃、まるでバターのように切れる氷に向こう側にいた騎士たちは息をのんだ

 

「俺を納得させたいなら裁判所の書類を持ってこい...それもないのに今この場で差し押さえなんてしようとしてみろ、どうなるか知らんぞ」

 

そう言いながら残った氷を跡形もなく切る

 

「・・・ヒイィィィィ!!?」

 

一人が声を上げると、次々と逃げ出す騎士たち

 

結局一人も残らず帰ってしまった

 

「ふぅっ...」

 

「ふうっ...じゃありませんよこの馬鹿!何やってるんですかあなたは!?」

 

「いて!」

 

杖で殴られる、殴られる覚えは一切ないのだが

 

「何するんだよ?」

 

「何するんだよじゃありません!騎士たちに喧嘩売ってどうするんですか!?」

 

「それなら問題ないぞ?」

 

一応裁判が終わったときに裁判長の方に確認はとってあったのだ、差し押さえなどがないかなどを

 

それをめぐみんに話すと

 

「それを最初から言ってください...」

 

と呆れられたが、これは俺にとって格好のおちょくるネタだった

 

「ほーう、心配してくれたのか?」

 

そう言って頭を撫で繰り返すといつも通りおちょくりがいのある反応が返ってくる

 

それに愉悦を感じながら俺は屋敷の中に入った

 

 

ちなみに試算は済んだが、希少なコロナタイトに値段はつけられないということで

 

アルダープが払うこれまでの破壊された町の代金の一部、と言っても俺達には関係ないのであくまでそう言う名目になっているが

 

その額12億4000万エリス、もはや人が払う額を超えていた

 

まぁここから冬将軍討伐による報酬とでいくらかは引かれるとはいえ、それでも前途多難だった

 

唯一の救いはダクネスの家のおかげで無利子で、気長に返していいのと

 

家財差し押さえがなくなったことだろうか

 

しかもあの家財差し押さえに関しては、アルダープの私兵がやったということで無効だそうで

 

「まぁまた明日から頑張りますかね」

 

そう思い目を閉じた




艦これやりながら誤字脱字のチェック...適当にやってるわけじゃないですがやり切れてないみたいですね...とりあえずお気に入りが増えてきているのは嬉しい限りです。前書きのほうでも言いましたがOVAの方はまだ書いてないのでもし見たいという方がいましたら感想の方にでも、気が向いたら書いて最終話後に投稿しますので


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第十二話 この新たに始まった借金生活に救済を!

今回はお風呂回ですね!もちろんありますよ、というわけでそういうのが嫌いな方はブラバしてください
それでは本編どうぞ!


それは借金生活が再開した次の日の朝、俺が居間に行くと俺と先日実家に帰ったダクネス以外の全員がそろっていたのだが

 

「「「「・・・」」」」

 

お通夜のような雰囲気が漂っていた、とりあえず俺はほっといて朝飯を食べる。借金生活が再開したのだ今は一分一秒が惜しい、惜しいのだが何故か黒猫が俺の足元にすり寄ってくる

 

「ニャ~」

 

「なんで猫が?おーいこの猫誰が拾ってきたんだ?」

 

「あぁ、それは私が...って!」

 

「なんでこの状況でご飯が食べられるんですか!?」

 

ゆんゆんが詰め寄ってくる、この状況と言われてもそもそもなんでこの状況になったのかも知らないのだから仕方ない

 

「んぐ...そもそもなんでこんな状況に?」

 

「志貴...おまえはダクネスが心配じゃないのかぁぁぁ!?」

 

「うぉ!?なんだお前はいきなり」

 

今度は和真が詰め寄ってきた、いきなり掴みかかられるとか予想外すぎる。というかダクネスなら

 

「あいつ実家にいるって言ってたじゃないかよ...」

 

「確かにそうかもしれない!でも、でもなもしかしたらあの悪徳領主に...うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

かなり錯乱していた、他のみんなも同じ理由なのか頭を振っていた

 

「気持ちはわかるが...いくらあんな領主でも、王国の懐刀であるダスティネス家を敵に回すかねぇ...あーでも借金のかたにしてなんてことも」

 

一瞬安心したみんなだったが、俺の言葉で再び頭を振り始める。なにこれちょっと面白い、まぁいい加減事態の収拾を図らないと行かないだろう

 

「まぁダクネスも少女趣味みたいなとこあるから、大丈夫だと思うぞ?」

 

「だ、だよな」

 

「てかコイツの名前は?」

 

食べやすい大きさに切ったパンの耳をあげると、上機嫌で食べている黒猫を指さす

 

「ちょむすけです」

 

一瞬の沈黙、ゆんゆんは知っていたのだろう苦笑していた

 

「サトウカズマ、サトウカズマはいるか!!」

 

何故か検察官のセナが堂々と不法侵入していた

 

-------------------------------

 

「クリスがいてくれて助かったよ」

 

「ギルドに寄ったのは偶然なんだけどね~」

 

俺は今クリスと行動を共にしていた、和真たちは今頃ジャイアントトードの討伐で忙しいだろう。何故こんなことになっているかというと、あの脱獄騒ぎの時にめぐみんやゆんゆんが魔法を使ったこともあり冬眠中だったモンスターが数種類起きてしまったそうなのだが、俺もその件で駆り出されているのだが

 

「まさか一撃熊複数討伐とか...」

 

「なんでこんな危険なクエスト受けたの?」

 

まぁクリスの言うことももっともなのだが

 

「多分前に俺がソロでクエスト受けてたのが原因だと思うんだよなぁ...」

 

「あぁ...」

 

クリスも納得したのか苦笑していた、死にたがっていた俺はソロで高難易度のクエストを受けていたため。今回のようなクエストが、俺に依頼されたのだと思う

 

「まぁどちらにしろ後始末だしな、俺が受けるのも筋だろう」

 

「律儀というか、なんというか...」

 

相変わらず苦笑していたが、なんだかクリスは楽しそうにしているように見える

 

「っと...来たみたいだな」

 

「そうだね」

 

敵感知に数体引っかかる、俺とクリスは気を引き締める。目撃された数より多いが問題ないだろう

 

「俺の方は10体だけど」

 

「私の方も同じだよ、付近に他の敵は」

 

「うーん...近くにはいないみたいだな」

 

千里眼を発動するが近くには敵は見えない、というより冬眠しているんだろう。そのためこうやって町の近くまで来ているのだろうが

 

「どうするの?」

 

一応目視できるぎりぎりの距離から観察を続けるが、あまり動かないため乱戦は必須だった

 

「俺が突っ込んで数を減らして、クリスが潜伏スキルを使って死角から致命傷を負わせる...どうよ?」

 

「正直言って心配なんだけど...止めても聞かないんでしょう?」

 

「もちろん」

 

「笑顔で言うことじゃないからね...」

 

呆れているみたいだが反対はされなかった、眼鏡を外し刀を抜く

 

「そういえばその刀は?」

 

「冬将軍にもらった」

 

そう前に冬将軍からもらった刀だ、この刀意外に便利なのだ

 

例えば相手の腕を切ったとき魔力を多く込めると、多さに比例してあいての腕を氷漬けに出来る範囲や速さが上がるのだ。しかも刃こぼれしないし切れ味もいい、俺の目と相性もいい最高の武器なのだ。流石に殺した場合氷漬けにはできないが。それにこの刀は乱戦の時にしか使わないのだ、タイマンなら短刀の方が便利なことも多い

 

「潜伏と魔眼...っと!!」

 

一気に距離を詰めジャンプ、まずこちらに背を向けている一匹の首を刈り取る。着地をするとまだこちらに気が付いていないのか、動きを見せない一撃熊の集団。まぁ当たり前だろう、俺が使える範囲で体感速度を速めているのだから。まぁ慣れてきたのでまた上げようと思ってはいるのだが、そんなことはさて置き目の前の腕を上がりもう一匹首を狩る。残り八体、流石に俺に気が付いたのか向かってくる

 

「デコイ!」

 

一応保険のためにデコイを発動しておく、クリスはどうやら潜伏を使っているようでばれていない。スローで迫ってくる腕に飛び乗りながら、一歩踏み込んで首を狩る。残り七体、流石にスローになっているとはいえ四方八方からくる腕は脅威だが魔眼の効果で難なくいなす、というよりも魔力を多く込めてわざと切り付けて腕を氷漬けにする。クリスも闇討ちしてくれるおかげで数は後二体になった、一体は氷像になったのであと一体だが。魔眼を終わりにし腕の攻撃をいなす、クリスは隙を窺っているのか様子見をしていた

 

「あー、もう!めんどくせえ!!」

 

迫ってきた腕を最小限の動きでよけ、魔力を込めながら腕、両足の順番で切り抜ける。クリスはクリスで俺が避けるのと同時に、出てきて首にダガーを一刺しあっけなく一撃熊は絶命した

 

「わ!?」

 

俺が刀を鞘に納めていると後ろからそんな声が聞こえた、振り返ってみてみるとなぜかクリスは雪の上で尻もちをついていた

 

「ふぅ...大丈夫か?」

 

俺は手を差し出すが何が気に入らないのか、頬を膨らましていた

 

「む~~」

 

「何むくれてるんだよ」

 

「なんかその余裕がムカつく」

 

「そんなことはないぞ」

 

少し笑ってしまうと余計にむくれるが、気にせず引っ張り起こす

 

「・・・ありがとう、ってあれ?」

 

立ったのだが何故かまた座り込んでしまう、流石におかしいと思い足を見てみると

 

「・・・お前足くじいてるじゃないか...」

 

流石にこればっかりは呆れてしまう、クリスはというとそっぽを向いていた

 

-------------------------------

 

「・・・ねぇ、流石にここまでしなくても//」

 

「怪我人は黙って運ばれてろ」

 

現在街に帰ってるのだが、俺はクリスをおんぶしていた

 

そこまでひどくはないのだが、一応ということでおんぶしている

 

流石に包帯とか布切れがあれば巻いておいたのだが

 

「うぅ...屈辱」

 

「はいはい、次は頑張ってくださいね~」

 

「おざなり過ぎないかな!?」

 

クリスで適当に遊びながら帰ってきたのはいいのだが、門の近くで少し面白い見世物が

 

「おー、派手にやってんなー」

 

大きいクレーターに小さいクレーター、果てにはライトオブセイバーなどゆんゆんが大活躍のようだ

 

「あれって...たしか紅魔族の...」

 

「ゆんゆんだ、なんかいつの間にかパーティーメンバーになってるけど」

 

なんかなし崩し的にメンバーになっているが、本人的にいいのならいいのだろう

 

「流石紅魔族の子だね」

 

「めぐみんもすごいけど、継戦能力で言えば圧倒的にゆんゆんの方が優れてるからな」

 

多種多様の魔法が使えるので本当に重宝している

 

「でもあの子泣き入ってない?」

 

「まぁメンタル弱いし、それに」

 

魔力がなくなってきていることもあるのだろうが、めぐみんを背負っているからだろうなかなかカエルと距離が離れない。それどころか段々と距離が縮まっている、まぁ二人が食べられるのを見て愉悦に浸るのもいいのだが

 

「助けに入るか...」

 

「なんで仕方なさそうなのさ...」

 

眼鏡は取らず魔眼を発動、クリスをおぶっているのでちょうどいいだろう。まぁ魔眼も発動しなくてもいいだろうが念のためだ。まずゆんゆんたちのすぐ真後ろで口を開いているカエルの舌を魔力を多めに込めた刀で切りつける。瞬時に氷漬けになる、明らかにオーバーキルだった

 

「やば、魔力こめすぎた」

 

「へー、魔眼使用中ってこういう風になってるんだ」

 

おぶっているのでどうやらクリスにも魔眼の効果があるようだった、特に気にもせずゆんゆんの周りにいたカエルは狩り終える

 

「便利なスキルだね」

 

「まぁ正直教えてもらって損はなかったな」

 

「もういや...ってあれ?」

 

「シキ?それにクリス?どうしてここに?」

 

「俺が受けたクエスト終わったその帰り」

 

完結に事実を伝えるのだが、なぜかめぐみんはジト目だった

 

「あれ?シキサン?」

 

俺とめぐみんの話が聞こえたのだろうゆんゆんがこっちを向いたのだが、何故かゆんゆんもジト目に

 

「なんだよお前ら二人して...」

 

「いえ...」

 

「ねぇ...」

 

気が付いたのだが視線は俺でなくクリスに向けられていた、そこでようやく合点がいく

 

「あぁ、足くじいたから一応な」

 

「「・・・」」

 

それでも二人はジト目をやめない、まぁ俺に向けられているものではないのでスルー

 

「お前らー!!談笑してないでたすけてくれぇぇぇ!!」

 

和真のことをすっかり忘れていた、忘れていたが

 

「悪いな和真、クリスをおぶってるから無理だ」

 

笑顔で言ってやった

 

「お前その状態でゆんゆんとめぐみん助けてんだろうが!!どうわ!?」

 

まぁ仕方ないので助けてやることにする

 

「ほっ」

 

眼鏡を外し短刀をカエルに向かって投げる、その短刀は見事カエルの死の点に命中し絶命した

 

「「「えぇー...」」」

 

めぐみん、ゆんゆん、クリスは信じられないものを見るような目で俺を見ていた

 

「ほれ、助けたぞ。後短刀投げてくれ」

 

「助けてくれたのは感謝するけど、素直に喜べない...ほっ!」

 

和真は短刀を投げてはくれたが全然届かない、まぁここら辺はステータスの関係もあるのだろう。俺は拾いながら

 

「その二人も助けておけよ?」

 

和真の後ろ、喰われたカエルからなぜか頭を出し入れしている二人を指さす

 

「あ、アクアー!!」

 

忘れていたのだろう急いで助けている、まぁ俺は帰るが

 

「じゃ!頑張れよ」

 

「君もなかなか鬼だよね...」

 

「まぁ、シキですからね...」

 

「そう言いながらめぐみんも帰ろうとしてるじゃない!いいの!?」

 

ゆんゆんは慣れてないのだろうが

 

「「いつものことだしな(ですし)...」」

 

「あぁ...」

 

なんとなくゆんゆんは察したのだろう、俺たちについてくる

 

「それでいいのかなぁ...」

 

クリスはいまいち納得いってないのだろうが、ならば俺から降りて助けに行けばいいのではないのだろうか

 

-------------------------------

 

結局和真たちを置いて家に帰ろうと思っていたのだが、クリスの治療が先なので教会に来ていた

 

ちなみにゆんゆんとめぐみんは疲れたそうなので、先に帰るとのことだった

 

「なんかごめんね、治療代まで出してもらって」

 

「まぁ俺のクエストについてきてもらったわけだしな」

 

まぁ治療と言っても日本みたく、診察とかはなくヒールをかけて終わりだが

 

「それにしても俺が教会にねぇ...」

 

俺の集落にそんな上等なものがあるわけなく、引っ越し先でも寄る機会なんてなかったので始めただが

 

ある意味かなりの皮肉だろう、しかも神様と言っても下界している状態の神様と一緒とか

 

「どうしたの?」

 

「いや、俺みたいなのが教会に来るとは考えたこともなかったんでな」

 

「・・・」

 

俺の過去を知っているクリスはそれを聞いて黙ってしまう、別にシリアスな空気にしたかったわけではないのだが

 

「後悔...しているんですか?」

 

教会にいるがプリーストなどは奥に引っ込んでいるため、礼拝堂には俺とクリスの二人っきり。だからだろうかクリスとしてではなく、女神エリスとして聞いているのだろう

 

「後悔...ねぇ...」

 

俺はその言葉を考えるが

 

「わからないですね」

 

「わからないですか?」

 

「ええ、そういう一族に生まれたんですから。一般人からしたら殺しはいけないものでしょうけど、俺達からしたらそうじゃない。人間が息を吸うのを無意識に行ってるように、俺たちはそれと同じように人を解体してるんですから」

 

「・・・」

 

流石に引くかと思ったがエリス様は真剣に聞いていた

 

「まぁ殺した奴らには悪いとも思わないですし、もはや過去のことです。俺は...そうですね、過去と決別したと言ってもいいですかね。エリス様やめぐみん、ゆんゆん...他の仲間の奴らのおかげで」

 

「・・・そうですか、流石にちょっと思うことはあるけどね」

 

エリス様の雰囲気が和らぐ、というよりクリスに戻ったという言い方もおかしいけど

 

「まぁ今は楽しいですしね」

 

「その割には彼の扱いひどいと思うよ」

 

「あれはわざとってか愉悦を感じるために」

 

イタズラっぽい笑みを浮かべていたクリスが、俺がそう言った途端苦笑する

 

「ほんとに、その性格直した方がいいと思う」

 

「さて用も済んだし家行こうぜ、今日は俺が当番だから晩飯ご馳走する」

 

「いや、流石に...」

 

まぁクリスならそう言うと思っていたので

 

「お前に拒否権ないから、強制連行」

 

「ちょ!?」

 

驚いてるようだが手を掴み、家に帰る為に教会を出た

 

-------------------------------

 

和真に文句を言われ、アクアに泣きつかれたり。色々なことがあったが、夕食後のひと時。とりあえず夕食の時に報酬の話をしたのだが、俺の方の報酬は受け取れなかったので明日改めてギルドに行く必要があるだとか。それともう一つ、何故か俺が料理ができると知るとクリスは意外そうな顔をしていた。ゆんゆんやめぐみんの時もそうだったが、なんで俺料理できない認定されてるのやら

 

「おい志貴風呂あがったぞ」

 

和真が俺に声をかけてくる、どうやら風呂から上がったらしかった。俺は俺で本を読んでいたので遅くなったが、どうやら女性陣も入ったらしい。ちなみにアクアは帰ってきたときに和真に風呂にぶち込まれたらしい

 

「おう、了解」

 

俺は立って風呂場に向かう、札とロウソクはつけなくてもいいだろうどうせこの後誰も入らないのだから。体を洗い湯船につかり、一日の疲れを癒す。といっても一撃熊討伐して、クリス背負ってきただけだが。考えると二人で行って怪我したのが最後に足くじいただけとか、普通の冒険者が聞いたら卒倒ものだ。ある意味小さいころから体を鍛えていたことを感謝しながら苦笑した

 

「今度は王都に行ってドラゴンとか狩るのもいいかもな...」

 

もちろんソロで、ドラゴンスレイヤーの称号が欲しい。まぁその場合めぐみんにゆんゆん、他のメンバーからぶっ飛ばされるだろうが。その光景がありありと浮かんで思わず苦笑する、そんなあほなことを考えていると脱衣所の方が騒がしくなる。会話は聞こえないが、数人いるようだ

 

「あ、これまず...おい、おれが

 

「「「・・・」」」

 

声は届かず明るくなった風呂場で俺たちはご対面した、もちろんタオルは巻いてましたよお互い

 

(もういいや...)

 

若干投げやりな気持ちになり、三人から背を向け奥のかどで小さくなる

 

「お前らいつまでもそこにいたら冷えるだろ?入るか着替えるかしてほしいんだが。もし入るなら後ろ向いてるから気にしなくてもいいぞ」

 

そう言ってるのだが動く気配がない、まぁ当たり前だが。そして自分の性欲のなさに苦笑する、というか枯れてるんじゃないだろうか。まぁ年頃の男子だ興味はある、あるが意識の外に追いやれる程度だ。いい加減角っこにいるのに見られ続けているのに耐えられず、今度は大きめに声をかける

 

「おーい、風邪ひくぞー」

 

「「「はっ」」」

 

「ななな、ななななななな!!?///」

 

「な、ばっかりだな」

 

「なんであなたがここに!?///」

 

「見ればわかるように風呂に入ってる」

 

「そんなのはわかっています!なんでロウソクも灯さず、札もそのままにしていたんですか!!?///」

 

素が出てるけどいいんだろうかと思いつつ質問に答える

 

「いやもう入ったのかなぁとか思って、ロウソク灯すの面倒だったし札もそのままでいいかなと」

 

質問されたことを簡潔に答えるが、相変わらず視線はこちらに固定されていた

 

「というかさっきも言ったけどお前ら風邪ひくぞ?俺が出るにしてもお前ら入り口にいるから、俺出れないんだけど」

 

その言葉に納得したのかと思いきや

 

「・・・なんかだんだんイラっときてるのですが」

 

「・・・奇遇だねめぐみん、アタシも同じ気持ちだよ」

 

「え、え?めぐみん、クリスさん?」

 

うん、これ詰んだ。はっきりとクリスとめぐみんのまとう空気が変わった、てかイライラしているって言ってたし

 

「いいですよ、シキはそこにいてください」

 

「そうだよ。逃げ出したらどうなるか、わかってるよね?」

 

お前らがそこにいるのにどうやって逃げ出せと?そう言いたかったが言えるはずもなく。ゆんゆん以外移動したようだった

 

「え、え?えぇーー!?」

 

「ゆんゆん、何をやってるんですか?私たちは喧嘩を売られてるんですよ?」

 

「え?喧嘩?」

 

「そうだよ、シキは私たちがいるこの状態でも普段と変わりない様子なんだから。それは私たちが女として見られていないと同じことだよ」

 

いやそういうことではないのだが、そりゃあ人より枯れている自信はあるが。何だろう悲しくなってきた、そんな俺とは裏腹に

 

「そ、そういえば!!」

 

ゆんゆんまでやる気になってしまったようだった、もうここには良心はないようです。軽い現実逃避していたが体が洗い終わったのか、近くから三人が湯船に入ろうと近づいてきているようだった

 

「こちらを向いてもいいですよシキ」

 

「いやぁ~」

 

「なんだ志貴ってヘタレだったんだね」

 

好き勝手言ってくれるなコンチキショウ、特にクリスは後で覚えておいてもらおうか

 

「うぅ~///」

 

ゆんゆんは恥ずかしいのか特に声をかけてくることはなかった

 

「おい、いいからこっちを向け!」

 

いい加減しびれを切らしたのかめぐみんがこっちを向かせようとしてくる

 

「そうだよ志貴!」

 

クリスは悪乗りなのか判断つかないが、めぐみんに加勢する

 

「お前らやめろ!」

 

流石にここまでやることないと思うのだが、なぜかムキになっている二人。だが力で俺にかなうはずもないのだが

 

「ゆんゆん何をやっているのですか!」

 

「やっぱりなんかおかしいわよ!?///」

 

「何を言ってるんですか!女として見られてないんですよ私たちは、これがどんなに屈辱かあなたにはわからないんですか!?」

 

「た、確かに...」

 

ゆんゆんちょろすぎぃ!!と思わず言いたくなったがそれどころではない、三人ともなると流石に押し負ける可能性が出てくる。こんな状態だ本気を出すわけにもいかない、だが少し力を出すくらいなら

 

「おら!放せ!」

 

「ちょ!志貴暴れないで」

 

「ゆんゆん早く!」

 

「その、えいっ!」

 

ゆんゆんは背中に抱き着いてきた、のだが...最悪のタイミングだった、ちょうど拘束緩まり立とうとしたとこだったのだ。そんな状態で抱き着かれれば

 

「おわっ!?」

 

「きゃ!?」

 

「あいたたたた...まったくゆんゆんは...」

 

「もとはと言えばめぐみんのせいでしょ...」

 

思い思い起き上がる

 

「お前ら大丈夫っか!?」

 

打ったところを押さえ起き上がったのはよかったのだが...

 

「「「「・・・」」」」

 

俺を含め全員が巻いていたタオルが取れていた、俺は魔眼を発動させ緊急離脱を図る。感想を言えば、ごちそうさまでした

 

-------------------------------

 

翌日俺は早めに起きて速攻で家を出た、そこからギルドが開くギリギリの時間まで暇をつぶし。適当な上級クエストをかたっぱしから受け、なるべく合わないようにしていたのだが

 

「どうしてこうなった...」

 

今日のクエスト依頼主が貴族やそこそこ有名な人たちだったようで、何故か依頼報酬とは別でお礼という感じでいろいろもらったのだが。まぁ専属護衛になってほしいだの色々言われてたので、ご機嫌取りだろうが。そんなわけで現在ウィズ魔法具店に向かっている、扉を開け中に入ると

 

「ちわー...って」

 

俺以外のパーティメンバーがいた、俺は即座に

 

「すみませんでした!!」

 

DO☆GE☆ZAした

 

「え?え?なんで志貴土下座してんの?なにかやったの?」

 

「いや、俺は知らないが...」

 

「「「・・・」」」

 

件のメンバーの沈黙が重かった、とりあえず店の迷惑を憚らないで土下座しているわけだが

 

「ふぅ...ねえみんなそろそろ許してあげようよ」

 

クリスが一息ついてそう提案していた

 

「そうですね...私たちも悪かったわけですし//」

 

「ねぇねぇ和真さん、和真さん。どういうこと?」

 

「だから俺も知らないって言ってるだろ?」

 

「あのそろそろ...」

 

外野がうるさいが気にせず頭を下げ続ける、ウィズの方は無視できないので早めにしていただけるとありがたのだが

 

「ち...仕方ないですね」

 

今の一言で俺はこいつが俺のことをいじくろうとしていただけと分かった、いい根性してるじゃないかめぐみん

 

「とりあえず頭あげてよ志貴」

 

言われた通り頭を上げて三人を見ると、クリスは苦笑、ゆんゆんは恥ずかしそうにこっちを見ていて、めぐみんはつまらなそうに見ていた

 

ゆんゆんはこの間の件をチャラにしようと思ったが、めぐみんはいじくりまわすことに決めた

 

「とりあえずもう一回謝らせてくれ、すまなかった」

 

「いいって言ってるのに」

 

「それでこそシキサンって気がしますけどね」

 

とりあえず二人は苦笑しながら許してくれた

 

「ところでゆんゆんが持ってるそれは?」

 

「おい普通に流したぞ」

 

「私たち空気みたいよね」

 

「おいお前らさっきからうるさいぞ」

 

一応アクアと和真も忘れてはいない、注意をしておく

 

「仲良くなる水晶っていうものらしいです」

 

「なんぞそれ?」

 

店主であるウィズの方を向く、明らか欠陥品の多いこの店でそれは地雷臭がした。もしもの時のために聞いておく

 

「熟練した魔法使いしか使えない、徳の高い大変すばらしいものなんです!」

 

めっちゃいい笑顔で言ってくる、十中八九ろくでもない商品だった

 

「なのでゆんゆんが勝負を吹っかけてきたんです」

 

めぐみんが言葉を引き継ぐ、ゆんゆんには悪いが犠牲になってもらうことにした

 

「ほーん...どうやってやるんですかこれ?」

 

「えーっと...」

 

準備も整い二人が魔力を水晶に注ぎ込む

 

モニターのようなものに映像が表示されている

 

「oh...」

 

「なんだよこれは...」

 

「ちょっと待って...」

 

見てはいけないものを見てしまった...のだが

 

俺は満足した、これは重要な弱みだ

 

もし俺のことを煽ろうものなら、これを遠慮なくいじることにしよう

 

ゆんゆんはやると泣きすぎるだろうが、めぐみんなら

 

「「うわぁーーーー!!」」

 

「なんなんですかこれは!?」

 

「店主さん!!仲良くなる水晶だって言いましたよね!?」

 

二人は思わず悲鳴を上げる、てか二人は気が付いていないのだろうが魔力をこめるのをやめればいいのでは?そんな俺の予想をよそに、ウィズは商品の詳細な説明を始める

 

「これは、その...お互いに恥ずかしい過去をさらしあうことで、より友情や愛情は深くなるという大変徳の高いものなん...で...す...」

 

「というか恥ずかしい過去さらして、仲良くなるものか?」

 

「いや、あたしに聞かれても...」

 

クリスに話を振るのだが流石にわかるはずもなく

 

「どりやぁぁぁぁぁ!!!」

 

めぐみんは水晶をもって腕を高く掲げる、そしてそれを振り下ろして

 

(ありゃあまずい)

 

流石にあんなくだらないものでも魔道具は魔道具、壊したら弁償ものだろう。余計な出費は増やしたくないので、魔眼を発動し地面につく前に回収。よくよく考えたのだがクリスにスティールしてもらっても、よかったのかもしれない。ついでに眼鏡を外し、空間を線を切って殺しておく

 

「あぶねぇ...おいめぐみん、流石に赤裸々過去を大暴露されたからって水晶割ろうとするなよな」

 

「ならそのにやけ顔をやめてもらおうか!!」

 

おっと、うっぷんを晴らせると思ったらついにやけ顔に

 

「まぁまぁ気にするなって、貧乏はお前のせいじゃない...でも紅魔族随一の天才が野菜盗むっていうのはどうなの?」

 

「あーあーあーあーあー!!聞こえません聞こえません!!」

 

耳をふさぐが肩を組んでやる

 

「いやー、あのザリガニみたいなのをそのまま煮るとは。流石のお兄さんも驚きですわー」

 

「あーあーあーあーあー!!」

 

そろそろ泣きが入りそうなのでやめておく、て言うコイツ逆境弱いし。気にいらないやつならこのまま精神崩壊まで追い込んでもいいが、仲間を泣かせるのは本意ではない

 

「めっちゃいい笑顔してるなアイツ」

 

「ダクネスあたりが見たら喜びそうね」

 

ゆんゆんはゆんゆんでクリスに泣きついていた、仲いいのなあの二人

 

「それにしても面白いなこの水晶」

 

「今の阿鼻叫喚の状況も見て面白いとか、お前俺よりも鬼畜てか外道だよな...」

 

「流石に和真には負ける、おれはTPOわきまえてるし」

 

「お買い上げになりますか?」

 

目を輝かせながら近づいてくるポンコツリッチー、たくましいなある意味

 

「いや買わない、てか鑑定してほしくてここに来たわけだし」

 

「鑑定ですか?」

 

なんか話が脱線事故並みにこんがらがったが、ようやく本題に入る

 

「そういえば気になってたけどその荷物なんだ?」

 

「まさか私への献上品?!」

 

「寝言は寝て言え、今日の依頼の報酬とは別件のもの」

 

俺は依頼中に言われてことをそのままそっくり和真に伝える

 

「あー...基本ハイスペックだもんな、お前...羨ましぃ...」

 

怨嗟の視線を向けては来るが、これは努力の末につけた力なのでスルー

 

「すごいね、結構いいものばかりだよ?」

 

盗賊のクリスが言うのだからそうなのだろう、少しでも借金返済の足しになればいいのだが

 

「それでは鑑定しますので、少々お待ちくださいね」

 

そう言って奥に引っ込むウィズ、その前に

 

「おいアクア、その後ろに持ってるものだせ」

 

「ひぅ!?」

 

すかした顔でそっぽを向いていたアクアが俺がそう言うと、ビクッと体を震わせ額に汗をだらだらかき始めた

 

「な、なんのことですかねー...志貴?」

 

「ほう、あくまでシラを切ると...まぁ良いよ、そしたら力ずくで羽衣奪うだけだから」

 

アクア曰くあの羽衣も神器級の物らしい、だが意外なところから声が上がった

 

「おい待て志貴!!」

 

「和真さん...」

 

「なんだよ和真、お前が止めるなんて」

 

「そりゃあ止めもするだろう、アクアの羽衣売るなんて」

 

「どういうことだ?」

 

和真の考えがよくわからない、なので聞いてみることにした

 

「今回の借金はもしかしたら払わなくてよくなるかもしれないだろ?」

 

「そうだな」

 

可能性的にはありえないことではない、あの悪徳領主の悪い噂は後を絶たない。そのうち捕まって借金がチャラになる可能性がないわけではない

 

「今の借金はそのうち終わるだろうが、今度は完全にこちらが悪い状況になった場合必ず払わにといけない」

 

それも当たり前だろう、そしてここまで言われてわかった。一言いいたい、和真おまえは最低だ

 

「その時に売るものがないと困るだろ!?」

 

「最低だねキミ...」

 

クリスは思わず言ったが、他のみんなも同様な目だった

 

「・・・アクア」

 

「ええ返すわ...それとこのヒキニート、アンタねぇ!!」

 

「あぁ!?」

 

またいつものじゃれあいが始まった、それを見ていてもいいのだが

 

「ふむ...クリス」

 

「ん?なに」

 

俺に呼ばれ近くに寄ってくるクリス

 

「これやってみないか?」

 

「・・・」

 

「えっ!?」

 

「ほう、いいですね」

 

クリスはジト目で見てくるが、まぁ当たり前か

 

ゆんゆんは驚き、めぐみんは乗り気だ

 

「さぁ!やってみましょう!!」

 

結局クリスと俺はやる羽目になり、魔力を込めていたのだが

 

「あー...やっぱりこうなったか」

 

「「「・・・」」」

 

三人は無言になる、てか店内が静かになる。まぁ殺人現場が流れれば当たり前だろう、クリスの方は砂嵐だった。てかこれ欠陥品どころか、やばいものだろう。流石にずっと見せるわけにもいかないので、さっきと同じように線を切って殺す。商品を棚に戻すが店内の空気は重いままだった

 

ちなみにクリスの予想通り、結構なものだったようで

 

かなりの額で売れた

 




書いてるときも思ったんですけど最後別にシリアスにするつもりなかったんだけどなぁ...
なにはともあれお風呂回でした、クリスは本編あんまりでないので俺のほうではちょくちょく登場させます。
まったく関係ないんですけどFGOの周回つらい...そして沖田さん欲すぃ...



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第十三話 この魔眼持ちの日常を酒の肴に!

なんかタイトル見て意味不明だった、だが後悔はしていない!(キリッ
今回は少々オリジナル入ってます、それではどうぞ!



「相変わらずギルドは騒がしいなぁ...」

 

朝のギルド、冬ということもあり相変わらず危険度の高いクエストしかなく

 

冒険者たちは飲んだくれていた、まぁなんでそんな中に俺たちのパーティがいるかというと

 

「明日はダンジョンに潜ります」

 

「嫌です」

 

「行きます」

 

「いやです、いやです!」「行きます、行きます」

 

相変わらず漫才が好きだなこいつら

 

「まぁひとまず落ち着けめぐみん、んでダンジョンって言ってもここらのダンジョンとかキールだろ?」

 

キールのダンジョン

 

その昔悪い魔法使いキールが国王の妃を連れてダンジョンに立てこもったとか、その他にも諸説あるのだが割愛。ここは初心者の街アクセル、キールのダンジョンは初心者でもはいれる簡単なダンジョンだ、うまみがあるとは思えない

 

「あぁ...幸い志貴とダクネス、ゆんゆんのおかげで飢えずにはすんでるが...」

 

そこで言葉をいったん切りアクアとめぐみんを見る和真、二人はさっと視線を逸らす。片や天才魔法使いにもかかわらずネタ魔法の習得者、片やアークプリーストでありながら知力が壊滅的。どっちも素のポテンシャルが高いのに活かせていない、まぁ面白いからいいが。まぁこのパーティーで俺が稼ぎ頭なのは否定しない、殺人技巧が役に立ってるしな。初心者の街とは言え危険なクエストもある、それを優先的に斡旋してもらい時には一人で行っているわけだし。ダクネスは色々貴族の力ではあるが助けてくれている。ゆんゆんはその高い魔力と数々の魔法を操り多種多様な状況に対応できる。まぁ個人個人では欠点ありありだが

 

「そこでだ、これを受けたいと思う」

 

そう言って一枚のクエストを出す

 

「えっと、これを受けるんですか?」

 

「実はですね...」

 

ルナさんが説明をしてくれる、端的に言うと新しい通路が見つかったので大々的に探索しようと思っていたところだったのだが

 

「俺から頼んで斡旋してもらったんだ」

 

「なるほどな」

 

「なるほどね、未調査エリアならお宝が残ってるものね!!」

 

ルナさんと和真は親指を立てていた、仲いいねおたくら

 

「まぁ未調査エリアならその分危険かもしれんが、頑張れよ?」

 

「おう!」

 

「なんだ、金の話か?」

 

昼から酒盛りしているダストが寄ってくる、お前は金持ってるからいいだろう。和真が寄っていって話している、大方クエストに来ないよう説得しているんだろう。サキュバスのとこの割引チケット握らせてるし

 

「シキはどうするんですか?」

 

「明日か...今日はオフだが明日は特に決めてないな。まぁ和真がダンジョン潜るなら俺はソロでなんか狩って、借金の足しにでもするさ」

 

「あ、それなら受けてもらいたいクエストが...」

 

そう言って一枚のクエストを見せてくる、内容は

 

「龍種の討伐...」

 

「ちょっと待ってください!?」

 

「龍種!?」

 

「こ、声が大きいです!!」

 

急いで口をふさいで周りを見るルナさん、どうやら周囲にはばれていないようだ

 

「なになに?どんなクエスト?」

 

アクアがクエストを見ると、固まって動かなくなった

 

「なんでまたこんなのを俺に...」

 

「今までならミツルギさんが受けてたんですが、そのいまは...」

 

まぁグラム無しであのヘッポコが受けたら間違いなく死ぬだろう

 

「だから俺に回ってきたと...」

 

「はい...」

 

申し訳なさそうな顔をされても困る、正直言ってこんなクエストあの時なら喜んで受けたが

 

今受けるとなると

 

「「・・・」」

 

主にこの二人、ゆんゆんとめぐみんにぶっ殺される

 

だが

 

「・・・ってこれ意外に生息地近いな...」

 

「はい...流石に町には来ないと思いますが、万が一ということもありますので...」

 

あの俺とゆんゆんが遭難した山だった、正直言って受けたくないが

 

「はぁ...仕方ねぇから行きますか」

 

「ありがとうございます!!」

 

頭を下げるルナさんだったが、俺が受けることを決めた瞬間ゆらりと迫ってくる影が二つ

 

「おい、詳しく聞こうじゃないか...」

 

「なんで受けることにしたんですかシキさん」

 

「こえーよ...ちゃんと説明するから」

 

目を光らせながら静かに怒るとかほんとにやめて欲しい、怖いから

 

「まずこの街に近いんだよ、生息地が」

 

そういってクエストを見せると、二人がみる

 

「ここって...」

 

「ゆんゆんとシキが遭難した山ですね」

 

そう近いのだ

 

「この街にもなんだかんっだ言って世話になってるからな、だから受けることにした」

 

「「・・・」」

 

二人は納得してはいないだろうが、それ以上何も言ってこない

 

てか何を勘違いしているのだろうか

 

「君ら二人も行くんだぞ?」

 

「「・・・ふぇ?」」

 

間抜けな声を上げる二人、ちょっと面白かったがここは我慢だ

 

「流石に俺一人じゃ荷が重い、いくら目の使用制限が軽くなったと言ってもこの目万能じゃないしな」

 

それに龍種だ殺してしまってはもったいない、本来ならいくつものパーティーが合同でやるものだが仕方ない

 

「てなわけで手伝ってくれ」

 

「「はい!!」」

 

-------------------------------

 

翌日、依頼の準備をしクエストの場所である雪山にきたのだが

 

「めっちゃ、吹雪いてて数メートル先すら見えないんですが...」

 

一応めぐみんやゆんゆんが付いてきているのは、ちょこちょこ確認しているし敵感知も使ってはいるのだが。この劣悪な視界状態で戦うのは、流石に勘弁してほしい

 

「まーた冬将軍でも出張ってるのか?」

 

「流石にそれはないと思いますよ?たぶん今回のドラゴンのせいだと思いますが...」

 

「どういうこと?」

 

流石に今回のクエストの討伐または撃退対象であるドラゴンについては、一応ルナさんから情報はもらっているが。そこまで詳しいわけではない

 

「えっと、今回の対象であるドラゴンなんですけど...というよりも龍種全体に言えることなんですが、龍種は高い魔力耐性があり個体差にもよりますけど上級魔法ですら効かない場合があって。しかもその周りは常に風の魔法で覆われています。この魔法については諸説あるんですけど、おおむねそんな感じです」

 

ゆんゆん先生による有難い解説だった、つまり

 

「近くにドラゴンがいるってことか?」

 

「そういうことです」

 

今のところ敵感知に引っかかることも

 

「ん?あぁようやくか」

 

そこでようやく敵感知に引っかかった、千里眼を発動し見てみると悠然と低空飛行している、ドラゴンを確認した

 

「見つけたんですか?」

 

「あぁ」

 

見つけたのはいいが、流石にこのままではまずいだろう。ドラゴンの周りは風はやんでいるが、ほんとの周りだけだ。ゆんゆんは身を守れるにしても、めぐみんの爆裂魔法に関しては詠唱が長いため避けることもままならないだろう。となると気が付かれる可能性もあるだろうが、周りの魔法を解除しようと眼鏡を外すのだが

 

「点はおろか、線も見えない?」

 

起点はドラゴンだろうから、ドラゴンの近くにあっても不思議ではないのだが俺の目は視えなかった

 

「どういうことだ?魔法なら見えるはずなんだが...」

 

「どうしたんですかシキ、というより目は使わないのではなかったんですか?」

 

「いやこの風だけでもなんとかしようと思ったんだが...視えない」

 

「それは多分...さっき魔法にも諸説あるって言ったことが、関係してるんだと思います。この風なんですが、魔法で龍種が起こしているのではなく自然発生しているんじゃないかっていう説もあって...」

 

たぶんそっちなのだろう、俺は眼鏡をかけ直し改めて作戦を立てる

 

「となるとどうする?しょっぱなは立てた作戦通りに行くとして、めぐみんが遠くから爆裂魔法を撃つのはできなくなったわけだが」

 

一応作戦としては飛ばれたらまず追いかけるのも攻撃するのも不可能なので、ゆんゆんに魔法で撃ち落としてもらい、俺が冬将軍で翼を切り付け凍り付けにし、多分鱗とかで覆われているから爆発のダメージではなく、衝撃の方で決着がつくだろうと思ったのだが

 

「雪山っていう条件が悪かったですね...ですが流石に目視できない状態で撃つのは、当てることもままならないですよ?」

 

「となるとやっぱり近づくしかないわけだが...」

 

「でも火球なら殺せるかもしれませんけど、ブレスは防ぎきれないと思います」

 

「そうなんだよなぁ...」

 

火球は一発一発撃ってくるので魔眼なりで対応できるが、いくら魔眼で体感速度遅くしてもずっと続くブレスは冬将軍で凍らしてもジリ貧になるだけだ

 

「とりあえず考えてもらちがあきません、その時その時で臨機応変に対応しましょう」

 

言いたいことはあったが、確かにその通りなので頷いておく。風がやむかやまないかのところで止まり、最後に作戦を確認する。ドラゴンに関してはこちらに背を向けて飛んでいるのを、確認しているので問題ない

 

「とりあえず一緒に入って俺が先行するけど、その間にゆんゆんは」

 

「ファイアーボールをぶつけて、ドラゴンを落とすんですよね」

 

「おう。それで俺が翼を氷漬けにして多分落ちてくるだろうから、もう片一方も氷漬けにして俺とゆんゆんでめぐみんをアシスト」

 

「そしてわが爆裂魔法でとどめ!完璧な作戦ですね!!」

 

まぁ字面にすれば簡単だが、これはアクシデントがなかった場合の話だ。想定外のことが起こることも頭に入れつつ、行動を開始する

 

「んじゃ行こうか。魔眼、潜伏!!」

 

一応潜伏で気配を消しつつ、ドラゴンに接近する

 

「ファイアーボール!!」

 

ゆんゆんは手はず通りにファイアーボールを連発して当てるのだが

 

(思ったよりも高度が落ちてこない)

 

魔法耐性が高かったのか思ったよりも落ちてこない、だが関係はない

 

跳躍をし翼を魔力多めに込めた、冬将軍で切り込むのだが

 

「ちっ!入りが浅かったし、下が雪なのも最悪だ!!」

 

下が雪のせいで思ったよりも飛べず、またファイアーボールで高度もあまり下がらなかったので切れた範囲が浅く氷漬けも思ったよりできなかった。なので今だにドラゴンは飛んでいる。俺は冬将軍を地面に刺し、急いで方向転換をする。そして丁度ゆんゆんたちの方に向いたのか、尻尾がこっちに来ていた

 

「うし!」

 

尻尾に乗る際、鱗と鱗の間に冬将軍を突き立て地面と尻尾を氷漬けにしておく。多少の抵抗はあったが、切れないなんてことはなく。これで少しは時間が稼げるだろう。スピードは落とさず尻尾を駆け上り、さっき切った方の翼を今度こそ氷漬けにする。するのだが

 

「これでも落ちないのかよ!!」

 

ゆんゆんたちの前に降りたのだが、器用に片方の羽で飛んでいた。魔眼をいったん切り、状況を確認しようとするのだが

 

「相変わらず便利な能力ですね!!」

 

「シキさん来ます!!」

 

ゆんゆんに言われドラゴンを見ると、火球を撃ちだしてきていたのだが

 

そのわきで不自然に迫ってくるものが一瞬見えた、嫌な予感がして眼鏡を外してみると

 

「ちぃっ!!ゆんゆん火球の方を頼む!!」

 

「え?は、はい!!」

 

俺は冬将軍を左手に持ち替え、短刀で迫ってきていたかまいたちを殺す

 

「何をやっているんですかシキ?!」

 

「かまいたちだ!」

 

おそらく風の魔法の一種なのだろうが知らないので、簡潔に伝えておく。翼から飛ばしているようだが、器用なことで。このままではジリ貧だし、何よりブレスがきたらまずいのだが

 

「火球が!?」

 

どうやら最悪の事態のようだった、もはやなりふり構ってはいられない

 

「ゆんゆん、あとどれくらい魔力残ってる?」

 

「そんなに余裕はないですけど、まだまだ打てますよ?」

 

「ならいいや、あいつがブレス撃つのを一瞬止められれば」

 

「それくらいなら!」

 

「めぐみんは爆裂魔法撃つ準備を」

 

「いいですけどどこら辺に?」

 

「あいつの腹あたりに」

 

「了解です!」

 

二人は詠唱を開始する、俺は俺で左手に力を籠める

 

「まぁ利き手は右だが何とかなるでしょ...」

 

幸いドラゴンは動かない、後は俺の腕次第

 

「らぁっ!!」

 

かまいたちを避け氷漬けにしてない方の翼に向かって、思いっきり魔力を込めた冬将軍を投擲する。さらに調整が効くのか冬将軍に向かってかまいたちをするが、そんなもので勢いを殺せるはずもなく。見事翼に刺さり氷漬けにしていく、徐々に高度が下がるがドラゴンはブレスをしようとするが

 

「カースドライトニング!!」

 

ゆんゆんの魔法が見事口の中に命中、一瞬だがその動きを止めることに成功する

 

「エクスプロージョン!!」

 

腹の位置に撃つように言ったエクスプロージョンは、高度が下がったドラゴンの胸に当たる

 

「あれでも仕留めきれてない!!?」

 

実際胸周りの鱗は吹き飛ばし、衝撃でブレスもやめているようだが気は失っていないようだった

 

「どんだけタフなんだよ!!魔眼!」

 

落ちて砂埃はすごいが俺は気にせず突っ込み、冬将軍を回収する

 

砂埃は治まりドラゴンと目が合うが

 

「これで終わりだ!!」

 

ドラゴンの胸に冬将軍を突き立て、かなりの魔力を込める。苦しみ暴れるドラゴンだが、俺は冬将軍を離さずさらに魔力を込める。そしてドラゴンは動かなくなるが、俺は油断せずに魔力を込め続ける。そうして数分が立っただろうか、徐々にドラゴンは氷漬けになり始めた。そこで俺はようやく冬将軍を抜く

 

「ふいー...」

 

「本当に三人で討伐するなんて...」

 

「今日から私たちはドラゴンスレイヤーを名乗れますね!!」

 

「倒れた状態で言われてもな」

 

流石龍種、魔法耐性が高すぎて爆裂魔法でも殺しきれないとは

 

仕方ないので持ってきた、『冬将軍』で氷漬けにした

 

まぁ流石に広範囲凍らすのはゆんゆんにやってもらったが

 

「なんであなたはそんなに余裕そうなんですか...」

 

背中におぶさっためぐみんは呆れていた、ゆんゆんに肩を貸しながらその質問に答える

 

「だって俺がやるの基本的に囮だし、そもそも鍛え方が違う」

 

「もう鍛え方の問題じゃないと思う...」

 

ゆんゆんが珍しく辛辣だった。俺の今回の役割はというと、囮に索敵、めぐみんへのブレスなどを殺し、ゆんゆんへの攻撃に対するフォローなど多岐にわたったが

 

「一人で狩ってるほうが楽だったけど、仲間がいる分安心感が違うしな」

 

「・・・ある意味これは喧嘩を売られているのでしょうかゆんゆん」

 

「・・・奇遇ねめぐみん、私もそんな風に感じたわ」

 

「売ってない売ってない」

 

絡まれても面倒なので先に言っておく、鍛え方が違うと言っても疲れていることには違いなく

 

「とりあえず帰ってギルドに回収依頼出さないと」

 

「素材を売って、どのくらいの金額になるか楽しみですね」

 

「借金は早く返したいものだもんね...」

 

「とりあえず一部素材はもらってとっとこう、色々使えるかもしれないし」

 

-------------------------------

 

回収依頼を出し、一度家に帰ってからギルドにまた来たのだがなぜか騒がしい

 

「なんかギルドの中が騒がしいですね」

 

「騒がしいのはいつものことだと思う」

 

「でも、いつもより騒がしいな。しかも和真コールなんて」

 

俺達は顔を見合わせながらギルドに入ると、俺達の姿を見た瞬間別の意味で騒がしくなる

 

「来たぞー!!別の意味で今日一番ホットな三人組だー!!」

 

「「「おーーーーーーーーー!!」」」

 

騒がしいことこの上ない、てかゆんゆんは俺の後ろに隠れるな

 

「いったい何の騒ぎだ?」

 

酒を飲んだくれているアクアは放っておいて、和真に話しかける

 

「いや、ダンジョン行ったらお宝が見つかってな。だから今日はみんな俺のおごりで飲もうって話にな」

 

「なるほど」

 

まぁ良いとは思うがこの人数におごりとか

 

「それでそっちは?」

 

「見事ドラゴン狩ってきた」

 

「それだけじゃねえだろー!!」

 

「そうだそうだー!!」

 

こいつらそうとう酔ってるらしく、絡みがうざい

 

「どゆこと?」

 

「シキさんたちはほぼ無傷でドラゴンを狩ったんです」

 

和真の疑問にはルナが答えた

 

「ほぼ無傷!?」

 

驚いてこっちを見るが

 

「俺たちは無傷だぞ?」

 

「え?じゃあほぼ無傷って?」

 

「ドラゴンをほぼ無傷で狩ったんです」

 

お酒を持ちながら補足説明をしてくれるルナさん

 

「そうだぜ!そのおかげで俺たちは臨時報酬でたしなー!!」

 

笑っている冒険者たち、まぁあの大きさを運ぶなら助っ人は必要だろう

 

「ふっふっふ、わが爆裂魔法が致命だになりました!!」

 

「確かになったけど!」

 

ゆんゆんやめぐみんは別のところで盛り上がっていた

 

「てなわけで和真」

 

「なんだ?」

 

「代金は俺とお前もちで...」

 

そこでいったん言葉を切り

 

「今日は無礼講だぁぁぁぁ!!」

 

「「「うおーーーーーーーーーー!!!」」」

 

さっきより野太い声が上がる、まぁたまにはいいだろう

 

「ジャンジャン飲み食いするぞーー!!」

 

「「「おーーーーー!!」」」

 

ギルド職員は苦笑していたが、どうせ巻き込まれることになるのだから楽しんだもの勝ちだと思うが

 

「アクアー!!景気づけに盛り上げてくれー!」

 

「わかったわ!!花鳥風月ー!」

 

こういう時宴会芸の神様は役に立つ

 

「カズマァ!あれやってくれよ!」

 

ハンカチをひらひらさせながら他の奴らが言ってくる、どうやらスティールをやれと言ってるらしい

 

「あ~?しょうがねぇ...なあぁぁぁ!!!」

 

手をワキワキさせながら応じる和真、ノリノリである

 

「んふふふふふ!んふふふふふふふ!!」

 

湧き上がるスティールコオル、和真は乗っているのかハンカチの真正面に移動し

 

「スティーーール!!」

 

「なになに!カズマとシキのおごりだって!」

 

運悪くクリスが入ってきてしまう、俺にはオチが読めてしまう

 

なので

 

「魔眼!!」

 

体感速度を精一杯早くし、俺がクリスのパンツを視認した瞬間に回収。そして和真には適当に回し蹴りをし、クリスをお姫様抱っこしてギルドの外に出る

 

「とりあえずこれ...」

 

素早く降ろしてクリスに触れたままパンツを返す、一応魔眼は切ってないのでまだ周りは遅いままだ

 

「あ、もしかして...///」

 

受け取りながら予想が付いたんだろう、紅い顔をして受け取るクリス

 

「ありがとう...///」

 

そして魔眼を切り、中に入ると

 

いきなり吹っ飛んで和真を笑っている冒険者たちと、何が起こったかわからない和真のわのなかにそっと入った

 




というわけでドラゴン回でした、それにしてもなぜ幸運値高いはずのクリスは毎回パンツをスティールされるのか。和真の幸運値どんだけ高いんだよ、スティール俺も覚えたい


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第十四話 この貴族の娘に縁談を!

ダクネスの見合い話...バルターは確かにイケメンでしたね
何かあんまり前書きがひねれない、本編どうぞ


「「うぁー...頭いてー(痛い)...」

 

和真とアクアは真っ青な顔で頭を抱えていた。昨日の飲み会で調子に乗った二人は、酒を浴びるように飲んでいたのでそれが原因だろう

 

アクアに関しては帰り道で吐いたし

 

「だらしないなお前たちは...」

 

テーブルの上に朝食を置きながら、俺は二人に呆れていた

 

「そうですよ少しはシキを見習ってください」

 

「「志貴がおかしい」」

 

めぐみんは朝食を食べながらアクアと和真に注意する、なのだが俺の方を向いて真顔な二人がそんなことを言い出した

 

「昔一族の集まりでしこたま飲まされたからな...その時アル中でぶっ倒れたけど、それ以来大丈夫になった」

 

「「・・・」」

 

アクアと和真は信じられないような目を向けてきた、実際本当の話だ

 

「めぐみんとゆんゆんはこんな大人になるなよ?酒は飲んでも飲まれるなだ。周りに注がれても自分のキャパシティ超えそうなら、断ること」

 

「わ、わかりました」

 

「そもそも飲ませてもらえない件について」

 

ゆんゆんはわかってくれたようだが、めぐみんは文句を言ってるみたいだった。自分の分の配膳も終わり、食べようとしたところでそれは起こった

 

「大変だ和真!大変なんだ、助けてくれ!」

 

見覚えはあるが見知らぬ女性がリビングの扉を開けた入ってきたのだ、和真の知り合いのようにみえるが

 

「「「「「誰?」」」」」

 

みんな声をそろえて尋ねた

 

「くぅぅぅ!!」

 

なぜか喜んでいた、そこで俺は察した

 

「あぁ...ダクネスか...」

 

すごくがっかりした、本当にがっかりした。だがほかのメンバーはそうではなかったのか

 

「え!お前ダクネスか、心配させやがって!」

 

「ダクネスゥゥゥ(さん)!!」

 

アクアとゆんゆんが泣きつき、めぐみんはというと

 

「ダクネス...何があったのかは聞きません、ですがゆっくりお風呂にでも入って...」

 

何かを察していた、俺はあほらしいので朝食をパクパク

 

「え、えっと?」

 

ダクネスが困惑しているので、仕方なく助け船を出す

 

「んぐ...お前が帰ってきて安心してるのもあるんだろうが、みんなあの豚にあんなことやこんなことされたんじゃないかって心配してたんだよ。後その猫の名前はちょむすけな、ちょむすけおまえの分だし忘れてたな」

 

にゃーんとめぐみんの腕から脱出し、出した餌を食べ始めるちょむすけ。今日もいい喰いっぷりだった、それはそうとダクネスだ。なんか茶番でもやったのか、なんか怒ってるし

 

「んで?何が大変なんだよ?」

 

「そうだった!これを見てくれ!」

 

そう言ってポケットから、一枚の紙を出して見せてくる

 

和真が受け取りみんなで見てみると

 

「なんだこのイケメン...ムカつく」

 

「あぁー!何をやってるんだおまえはー!!」

 

和真が破くのと同時に、ダクネスが声を上げる。とりあえずアクアとゆんゆんが、似顔絵の方を直しているが

 

「あのイケメンが領主の息子ねぇ~」

 

「奴め、和真への猶予の代償として息子との見合いを申し出てきた。このところ帰ってこなかったのは、見合いのほうをどうにかして阻止するためだったのだが...私の父もアルダープの方はともかく、息子のことは高く評価していてな。一番乗り気なのは父なのだ...頼む!私と一緒に来て父を説得してくれないか!」

 

ダクネスのお願いに悩む和真

 

「はいこれ、どう、完璧でしょう?」

 

アクアが修復が終わった紙を見せてくる、ほんとこういうとこだけは器用だなこいつ

 

「おまえこういうことに関しては、本当に多芸だな...」

 

和真は俺と同じ感想を抱いていたようだ、そんなことはさて置き俺は嫌な予感がしていた。息子の方は調べたがかなりいい好青年だ、ダクネスにはもったいないくらいの。逆にこのままくっつけて、性格矯正した方がいいじゃないかとも思う。だがあの豚は別だ、妙にダクネスに固執している。黒い噂が絶えないくせに何故か尻尾を出さない、一人に話を聞けたたのだがその人はそのことすら覚えていなかった。間違いなく何か絡んでいる、そう結論付けていると

 

「これだぁぁぁ!!」

 

何やら和真がせっかく修復した似顔絵を破っていた

 

-------------------------------

 

ところ変わって外にいるのだが寒い、あちらこちらに雪が残っているので当然だ

 

「私に見合いを受けろというのか!」

 

「ダクネスがこのままパーティーから抜けてもいいというのですか!?」

 

「カズマさんがそんな人だったなんて...シキさん!シキさんからも何か言ってあげてください!」

 

アクアは泣いて、めぐみんとゆんゆんは和真に文句を言ってる。俺も和真と同じく見合い自体は賛成だが、多分思惑が違うので話を聞いてみることにする

 

「見合いを断ったところで、あの領主はまた無理難題を吹っかけてくるに決まってる」

 

「まぁたしかにな」

 

「だったら見合いは受けたうえで、それをぶち壊す。ダクネスの家の名が傷つかない程度にさ」

 

和真の言ってることはもっともなのだが、こういう時の和真は確実に何か考えている

 

「それだ...それでいこう!上手くいけば見合いのたびに父を張り倒しに行かなくて済む!!」

 

オヤジさんある意味頑丈だな、てかアクアはいつまで泣いてるんだよ

 

「サトウカズマ!サトウカズマは居るかぁー!!」

 

「まーたきたのか...」

 

このとこの恒例行事になりつつある、検察官様のご登場だ

 

「今日は何ですかー?」

 

俺は面倒臭くなりながら対応する

 

「街の周囲に見慣れないモンスターが出歩いている、心当たりがあるんじゃないか?」

 

断定口調で絡んでくる

 

「もはや名誉棄損で訴えられるレベルでの断定口調、出るとこでて勝負します?」

 

「やれるものならやってみてもらおうか、それより出頭してもらおう」

 

というよりこんなことしていても時間の無駄なので、断ろうとすると

 

「お断りします!いま、私たちの大切な仲間が危機にさらされているのです!それを放っておくわけにはいきません!」

 

「そ、そうです!紅魔族は...私たちは仲間を見捨てたりしません!」

 

「めぐみん、ゆんゆん...」

 

うーんパーティーの絆が確かめられるな、まぁそんなことはさて置き。流石に誰か行かなくてはまずいだろう

 

「めぐみん...ゆんゆん...お前たちで行ってくれ」

 

でました和真がろくなことを考えてないときのイケボ

 

「大量のモンスターがいるなら、めぐみんの爆裂魔法の出番じゃないか?援護するならゆんゆんは多種多様な魔法がある...」

 

めぐみんやゆんゆんは何か言おうとするが、この場は乗らせてもらう

 

「まぁこっちは任せろ、俺もいるし和真や...アクアもいる。モンスターの方はお前たちに任せるよ」

 

「「わかりました」」

 

納得はしてないのだろうがわかってくれたようで、二人はしぶしぶと検察官について行った

 

-------------------------------

 

場所は変わってダスティネス家の屋敷にきた俺達、当主でダクネスの父親と対面していた

 

「あぁ...本当にいいのかララティーナ」

 

「はい、本当ですお父様。ララティーナは此度のお見合いを、受けようかと思いますわ」

 

いつもと違う態度に和真やアクアは笑っていた、いや失礼だろ

 

俺も笑いそうにはなったが

 

「この三人は?」

 

「私の冒険仲間です。今回のお見合いに臨時の執事とメイドとして、参加させようかと」

 

そうやって紹介される俺達、その前に

 

「お初にお目にかかりますダスティネス卿、娘様の冒険仲間のビャクヤシキと申します」

 

頭を下げ自己紹介をする、この間の礼を言うために頭を上げる

 

「この間の裁判の件、ありがとうございました」

 

「いや、話を聞いた限りだと不当な裁判だったとか。それに娘の頼みだ気にしなくていいよ」

 

笑って許してくれる、うわさに聞いていた通りいい人のようだ。それから俺たちは着替えるために移動したのだが、着替えた和真とアクアがいつものじゃれあいを始めたいた。俺は俺でさっき当主から言われたことを思い出していた、なんでも今回の見合いが成功したら特別報酬が出るらしい。和真はそれを聞いてやる気を出していたが、俺的には報酬はどうでもいいがどっちに転んでもあまりうれしくない。いや成功したらそれはそれで面倒だが、失敗してもドMの面倒を見るのだから

 

「お前が見合いを受けてくれてうれしいよララティーナ、幸せになるんだぞ」

 

「いやですわお父様、ララティーナは見合いを前向きに考えると言っただけです」

 

ほのぼのとした当主の言葉から、ダクネスは宣戦布告した。俺は頭を抱えたくなったが、成り行きを見守ることにした

 

「なに?」

 

「ふふ...そして考えた結果、嫁入りなどまだ早いという結論に達しました。もう今更遅い!見合いを受けるとは言ったが、結婚するとは言ってはいない!ぶち壊してやる...見合いなんてぶち壊してやるぞぉ!!」

 

「ララティーナ...」

 

ダクネスは高笑いし、当主はこの世の終わりみたいな顔をしていた。なにこれ、なんだこれ...状況はカオスだった、だが意外なところから助けが入る

 

「はしたない言葉を使うのはおやめください、先方に嫌われてしまいますよ」

 

「貴様裏切る気か!」

 

和真だった、ダクネスはダクネスで和真を噛みつかん勢いで見ている。裏切るも何も最初から協力的すぎなくらいだと思うが、いつもの和真だったらもっとめんどくさがるし

 

「今の自分はダスティネス家の臨時執事、お嬢様の幸せが自分の幸せです」

 

「か、カズマ君」

 

なにこの茶番、超面白い

 

「和真貴様!」

 

ダクネスが和真に詰め寄るが時間切れのようだ、玄関の扉が開く

 

二人の執事だろうか、とりあえず二人の従者を引き連れたバルターが現れた

 

「おぉ...バルター殿」

 

「よく来たなぁ、貴様がこの私の見合い相手か!我が名はダスティネスフォードララティーナ、私のことはダスティネスと

 

「お嬢様、お足もとにお気をつけて!!」

 

ダクネスがバルターの姿を確認した瞬間ツカツカ歩み寄っていったのだが、裾を踏んで和真が最悪の状況を回避する

 

-------------------------------

 

「先ほどは申し訳ありませんでしたバルター殿」

 

そう言って対面に座るバルターに頭を下げる、和真のおかげで最悪の事態にならなかったとはいえ謝っておくに越したことはない。ちなみにこの場にダクネスはいない、一応お色直しということで席を外している。まぁあっちは和真に任しておく、何故か俺は当主の方についてくる羽目になったのだが

 

「いえいえ、彼女はどうしたんですか?」

 

「お嬢様は見合いを断っておりましたゆえ、慣れてないんだと思います。申し訳ありませんが、今後失礼があるとは思いますがなにとぞ」

 

「わかりました、ですが今回の

 

扉があきダクネスたちが入ってくる、話し合いはここで終わりのようだ

 

「では自己紹介を、アレクセイバーネスバルターです」

 

「わたくしはダスティネスフォードララティーナ。当家の詳しい紹介は省きますわね、成り上がりものの当主の息子でもしっていてもとうじぇん!!」

 

いきなりダクネスが奇声を上げ始まる、ように見えただろうが原因は俺と和真だ。フリーズを凍らない程度に使いダクネスが余計なことを言わないようにしていた、よくよく考えたらこれを目当てに余計なことを言うかもしれないが、いくら先方が優しいと言っても限度があるだろうし

 

「どうされました!?」

 

「い、いえ...バルター様のお顔を見ていたらきぶんがわるきゅぅ~~~!!」

 

やっぱ狙ってるだろこれ、俺が呆れていると和真がすかさずフォローする

 

「お嬢様はバルター様とお会いできて、少々舞い上がっておられるのです」

 

「先ほどそちらの執事さんの方から聞きました、そういえば顔が赤いですね。いやぁ、お恥ずかしい」

 

和真が何か耳打ちしているようだが流石に聞こえない、そんな中当主は朗らかに笑う

 

「はっはっは、私がいてはお邪魔かな?どうだね庭の散歩でもしてきては」

 

-------------------------------

 

当主さんが機転を利かせたおかげで、和真御一行とバルターは庭を散歩していた。俺はというと当主と二人きりだった

 

「えーと...俺は娘さんの付き添いはよろしかったんですか?」

 

「カズマ君がいれば大丈夫だろう、たぶん...」

 

言いきらないあたり自分の娘のことをよくわかっていらっしゃる、それとも和真の力量を図り切れていないのか

 

「それで君は私に用があったのだろう?」

 

流石王国の懐刀と言われるダスティネス家の当主だ

 

「ええ、一応警告と言うか、注意してほしいというか」

 

「聞こうか」

 

そこには今までの優しそうな紳士はいない、俺の真意を見抜くように鋭い眼光をこちらに向けている

 

俺は一度深呼吸をし、俺の予想や調べたことなどを当主に伝える

 

「・・・以上です」

 

「ふむ...」

 

考えるように顎をさする当主さん、もちろん民間が調べられるような情報なのでわかっているとは思うが

 

「短期間でここまで調べ上げたのかい?」

 

「まぁそうですね。クエストなども受けて、検察官もいましたからかなり行動は制限されましたけど」

 

「・・・確かにアルダープ殿の悪事に関しては噂はそこかしこでささやかれているが、証拠もないのは事実だ」

 

「はい、俺が調べた限りでもそうでした」

 

「だが君の情報の中には有益な情報があった、よく接触できたものだね噂の被害にあった人物に」

 

「まぁ覚えていなかったですけどね」

 

何か証拠でもと思ったが覚えていなかった、それどころかそんな事実さえないと接触した人は頑なに言っていた。あれは嘘ではなく本当に心当たりがなかったのだろう、まぁその話は置いておくとして

 

「見た感じだと魔法的痕跡は一切なかったですね、たぶん薬でもない」

 

「事実をなかったことに...まさに悪魔の所業だな」

 

「悪魔...」

 

そういわれ俺は閃く、たぶんそうだろう悪魔だ

 

「可能性の話ですが」

 

「悪魔だろう?だが色々な悪事が発覚するたびに使ったとすれば、流石に魂が食いつぶされているはずだ」

 

「・・・何らかの神器や何かしらの方法で契約を踏み倒している可能性は?」

 

「ないとは言い切れないな...」

 

「「・・・」」

 

どれも可能性の話だが、あの豚が悪事を働いているということは変わらない

 

「君の言う通り注意するようにしておこう、ダクネスの方は君に任してもいいかな?」

 

「まぁ俺一人には手が余るので、パーティーメンバーと何とかします」

 

そう言って俺は苦笑する、当主の方も苦笑していた

 

どうやらわかってくれたようだった

 

-------------------------------

 

「クリエイトウォーター!!」

 

何故か和真がダクネスに水をかけていた、このくそ寒い真冬にだ

 

「何やってんだよ...」

 

俺は呆れながら近づいて行く

 

「えぇ!?」

 

「な、なんだ?」

 

驚くバルターに驚く和真、そりゃあそうだろう

 

「いや木刀の試合で魔法は使わないだろうと」

 

「そういうものなのか?」

 

アクアに説明を求めようとしたがたぶん無理なので、バルターに聞くことにした

 

「どういう状況なんですか?」

 

「えっと...」

 

どうやらいつも通りのダクネスに戻ったようだった

 

「止めなくていいのかい?」

 

「本当は俺執事じゃないですし、パーティー内ではいつもこんな感じなので」

 

目の前を見ると和真がドレインタッチで体力を吸い取っているようだが、ダクネスは明らか手を抜いていた。多分さっきチラッと聞こえたすごいことのためなんだろうが、あっ気絶した

 

「さすがカスマさん」

 

「クズマとはよく言ったものだね」

 

「そこうるさい!!」

 

「差し入れを」

 

そこで当主さんが入ってくる、目の前の惨状を見て持っていたワインを落とす当主さん

 

心中さっします

 

「そこの二人がやりました」

 

和真とバルターを指さすアクア、当主さんは冷静に

 

「よし、処刑しろシキくん」

 

「なんで俺が...」

 

「「違うんです、誤解です!!」」

 

二人とも声をそろえて言う、仲いいね

 

まぁとりあえず

 

「何が誤解だよ、ノリノリでダクネス気絶させたくせに」

 

「おま!?」

 

とりあえずおちょくっておく

 

「まぁ仕方ないよなぁ...当主の命令だし」

 

肩を回してほぐしながら和真に近づく、当然和真はおびえ始める

 

「な、なぁ志貴...俺達仲間だろう?」

 

「あぁ、当たり前だろう」

 

笑顔で答える、和真はその表情に救われたと言わんばかりに畳みかけてくる

 

「なら仲間に手を出すのはよくないと思うんだ、これからの士気にも関わるし」

 

「ならお前が悪評持ってくるたびに、俺たちの心証まで悪くなるのは厳罰対象だよな」

 

「・・・」

 

露骨に目をそらす和真、裁判後も何かとうわさがたえないんですよねぇ何故か

 

「何か言い残すことは?」

 

「・・・優しくしてね?」

 

「とりあえずお前にはお灸をすえる」

 

脳天にチョップを入れておく、和真は貧弱だから気絶したようだ

 

「アクアー、帰ったら金払うからヒール頼む」

 

「了解しました!!」

 

敬礼して和真の治療にあたる、こいつもコイツで悪評持ってきてるからな和真の生贄はいい薬だろう

 

「き、君は仲間に対してもためらいがないね」

 

「仲間だからこそ直してほしいとこでもあるんだけどな」

 

木刀を拾いメイドさんに渡そうとすると

 

「・・・いい機会だシキくん、キミの実力を見せてくれ?」

 

そう言って俺が持っている木刀を一本バルターに渡す当主さん、はて嫌な予感がするんだが

 

「バルター殿、彼はあのデュラハンを倒したほどの腕前。手合わせしてみたいと思わないか?」

 

挑戦的な視線を向ける当主さん、俺は振り返った見ると

 

そこにはやる気を出しているバルター

 

「ぜひお願いしたいです」

 

「はぁ...」

 

面倒なことにやる気十分だった、面倒なので応じることにする

 

「騎士道とか俺にとって一番縁遠いものなんだが...」

 

構えず脱力した状態でバルターと見合う、たいしてバルターは剣を構え動かない

 

「早くしてくれ...」

 

「なら、行かせてもらう!!」

 

そう言って踏み込んでくるが俺からしたらかなり遅い、難なく受け流すが流石最年少で叙勲しただけあって見事なものだった。打ち合いをしばらく続け面倒になったのでいったん離れる

 

「すごいな今のを受けきるなんて」

 

感心したように言うバルター、少し息が上がっているようだった。俺は全く上がっていないが、面倒なので終わりにすることにした

 

「さて、それじゃあ終わりにしよう」

 

俺は少し姿勢を低くし踏み込むための準備をする、たいしてバルターは明らか警戒をしている。まぁ警戒されても無意味だが、心配のなのはこの木刀の刃渡りが長いことだが

 

「行くぞ」

 

そう宣言しバルターの懐に飛び込む、俺の剣はバルターののど元に合った

 

だがバルターは

 

「これは驚いた...」

 

そう言って木刀を下ろす、言うまでもなく勝負はついた

 

「相変わらずお前の運動神経ってチートだよな」

 

気が付いたのだろう、何やら和真が失礼なことを言っていた

 

-------------------------------

 

「娘はもともと人付き合いが苦手で、クルセイダーになっても一人でなぁ...毎日教会に通いつめ、冒険仲間ができますように。って祈っていたらはじめいて仲間ができた、盗賊の女の子と友達になったと喜んで帰ってきたよ。うちは家内を早くになくしていてね、男で一つで甘やかしながらもとにかく自由に育ててきた。それが悪かったんだろうなぁ...」

 

どうしてそれで真性のドMが生まれてきたのかは、謎だった

 

「ララティーナ様は素敵なお嬢様だと思いますよ?カズマ君やシキさんがいなかったら本気で妻にもらいたいと思っています」

 

何故そこで俺まで入っているのかはなはだ疑問だが、本気でそう思っているのだろう優しい目をしていた

 

「すいません、ちょっと何言ってるのかわからないです」

 

感動的なシーンなんだから空気読めよ和真、俺もそう思ってたけど言わなかったんだから

 

「君の方がララティーナ様を幸せにできるだろう」

 

「お前ちょっと表に出ろ、領主の息子だろうが関係あるかぁ!!」

 

「お前は...反省してないみたいだな....」

 

流石に呆れる

 

「和真さんやめて!私まで一緒に処刑されちゃうぅぅぅぅ!!」

 

アクアはアクアで和真を止めていた

 

「はっはっはっはっはっはっは、カズマ君ララティーナのことをよろしく頼むよ。これが馬鹿なことをしないように見張ってくれ。もちろんシキくんもだ、頼む」

 

そう言って頭を下げる当主さん、そんな当主さんに返事をしようとしたのだがどうやらダクネスが目を覚ましたようだった

 

「おお目が覚めたか」

 

「この状態は事後なのか...はっ!!意識を失っている間にいかがわしいことを!」

 

「してねぇよ!!まだ何もしてねえよ!!」

 

「まだねぇ...」

 

小声で言ったため聞こえていなかったのか、ヒートアップしていた

 

ダクネスはおもむろに立ち上がり、和真の横に並ぶ

 

「お父様、バルター様、どうか今回の見合いはなかったことにしてください。今まで隠してきましたが私のお中にはカズマの子が...」

 

「!?お前童貞の俺になにいってやがんだこらぁぁぁ!!」

 

なーんかいつもみたいな雰囲気になってきてるし、一応ここダスティネス家だからな

 

「あははははは、そうかおなかにカズマ君の子が。父には僕からお断りしたと言っておきます、その方が都合がいいでしょうから。後シキサン再戦はいつか必ず」

 

そう言ってウインクされる俺と和真、めんどくさいし男にウインクされてもうれしくない

 

「孫...初孫...ここここここ、このわしにかわいい孫が...」

 

「あわわわわわ...和真とダクネスが...和真とダクネスがそんな関係になっていたなんて...広めなきゃ、町のみんなに広めなきゃ」

 

まぁ当主さんはわかるが、アクアは慌てすぎだろう

 

だが

 

「アクア...」

 

俺はアクアの肩に手を置く

 

「宣伝は大々的にやろう...金なら俺が出す!!」

 

「そうね...そうよね!!」

 

「待てやお前ら!!!」

 

「サトウカズマ!サトウカズマはいるかーー!!」

 

いきなりドアを開かれ注目する俺達、現れたのはセナやめぐみん、ゆんゆんだった

 

「てかお前ここ貴族の家だぞ?下手したらこれじゃないか?」

 

首の前で水平に手を振る

 




そういうわけでダクネスの見合い回になります。アクアの鯉呼んだのはスキルなんですかね?気になるところですが。
それとOVAのほうですが要望がありましたので書こうと思います、というわけで待っていてください


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第十五話 この仮面の同志に同情を...

このすば見ながら誤字脱字などの見直し、今日は書く気になりませんしね。それに月曜は艦これで忙しい(殴



「サトウカズマー!!街の周囲に溢れ返ったモンスターの出どころを調べたら、先日貴様らが潜入したキールダンジョンから出てきていることが分かった!」

 

などと和真に詰め寄っている、それよりも

 

「討伐しに行ったんじゃないのか?」

 

「それなんですが...モンスターを倒していくうちについたのが、キールのダンジョンだったんです」

 

「なるほどな」

 

ゆんゆんが説明してくれる、まぁあまり疲れてはいなそうだ

 

「それでお見合いのほうはどうなったんですか?」

 

「相手はいい人だったんだが、もともとあっちから断る気だったのか断られた」

 

「それは...よかったのやら悪かったのやら」

 

微妙な表情だった

 

「この馬鹿がぁぁぁぁぁ!!」

 

和真がいきなり声を上げたのでそっちを見ると、少し離れたところで何故かアクアが殴られていた

 

アクアは痛がっているが、和真は戻ってくる

 

「モンスターはともかく、街の人たちが困っているのは見過ごせません!協力させてください」

 

なんて言っていた、まぁアクアが原因なのだろう

 

流石にこれ以上ダスティネス家で騒ぐわけにはいかないので、当主に挨拶することにした

 

「騒がしくして申し訳ありません、そういうことなのでこれで失礼します」

 

「ふふ、あぁまた会おう」

 

最後まで優しい人だった

 

-------------------------------

 

俺達は夜なのだがキールダンジョンに向かっている、と言うのもアクアがリッチーがいた部屋に結界を張ったらしい。それのせいではないだろうが、一応勘違いされたら嫌なので消しに行くとのこと

 

「毎度毎度あれか、お前は活躍の差し引きをマイナスにしないとどうにかなる病気なのか!」

 

「うえ~ん、和真さんがイジメる~!!」

 

さらに泣き出してしまうアクア、正直言ってうるさいことこの上ないのだが

 

だが丁度ついたようで、泣いていたアクアはモンスターを探しているのかキョロキョロしていた

 

俺もモンスターを探すため入口を見てみると

 

「なんだあれ?」

 

「確かになぞのモンスターだな」

 

俺と和真はモンスターを見つけたのだが、本当になぞだった。なんか人形が歩いているみたいだった、いや本当に

 

「サトウさん」「はい佐藤です」

 

「ご協力感謝します。どうやら何者かがモンスターを召喚しているようです。ですから術者を倒し、召喚の魔法陣にこれを貼ってください。強力な封印の札です」

 

そう言ってセナは和真に札を渡す

 

「にしてもあんなモンスター召喚して何が目的なのかね?見たとこがいなさそうだけど」

 

「見た目に騙されちゃ駄目ですよ、見た目は害はなさそうに見えても実際危険なモンスターはいますから」

 

ゆんゆんにそう言われ俺はめぐみんをじっとみる、見られているめぐみんは不思議そうな顔をしていた

 

「・・・なるほど」

 

「おい、何故私を見て納得した。説明を要求する」

 

目を光らせて俺に接近してくるめぐみん、その反応ならわかっていると思うんだが。見た目はかわいいのに、口を開けば爆裂爆裂いう娘と言う意味では同じだろうなんて思っているが。気を抜いているわけではないが、やはり脅威は感じられなかった

 

「うわーー!!」

 

なんかアクアの間抜け声が聞こえそちらを見ると、なぜかアクアが焦げて倒れていた

 

「・・・そこは髪型アフロじゃないのか...」

 

「心底残念そうだな...」

 

「爆発したらアフロは鉄板だろ」

 

「確かにそうだが、それ言ったらダクネスだってなってなかっただろ?」

 

「少しは心配しなさいよ!!」

 

俺と和真がそんなことを言っているとアクアが起き上がる、元気そうだった

 

「御覧の通りこのモンスターは、とりつき自爆するという習性を持っています」

 

「はぁ、なるほど」

 

その説明をこうなる前にすればよかったのに、アクアドンマイ。まぁ確かに街の住人にしてみれば、こんなの食らえば大怪我だろう。何故かダクネスは草むらから飛び出し、入口の方に向かっていく。一匹飛びつき自爆するが、まぁ無傷だった

 

「でしょうねぇ...」

 

「なんでそんなに冷静なんですか!?」

 

「だってあの変態ダクネスだし、それに硬さはベルディア戦で証明されてるし」

 

「あぁ...」

 

めぐみんは察したのだろう、呆れた表情になる。そんな俺たちの心中を知らないのか、ダクネスは毅然とした態度でこちらに告げる

 

「私が露払いのために前に出よう、和真は私の後ろをついてこい」

 

かっこいいはかっこいいのだが、本心は測りかねるので正直言って微妙な気分にはなるが。頼りになることには違いない、俺も俺で確かめたいことがあったので草むらから出てモンスターに取りつかれる

 

「おい志貴!?お前までドMになったのか?」

 

「確かめたいことがあるんだよ!!」

 

やはり爆発するまでラグがあるらしく、眼鏡を外して切る。やはり殺すと爆発しないようだ、形が崩れたと思うと何故か土になったのだが

 

「なんだこれ...まぁいいや、一応俺は自衛できるからよろしく」

 

「シキ、私は足手まといになりますしここで待機してます」

 

「なら和真さん、私も!」

 

「お前は一緒に来るんだよ!!」

 

めぐみんは爆裂魔法をダンジョン内で撃たれると崩落するのがあるのはわかるが、なんでアクアまで

 

「いや...もうだんじょんはいやぁぁー!!」

 

そういえばアクアは前回のダンジョン探索でトラウマ植え付けられたんだったな、青い顔をしてマジで嫌がっている。まぁ判断は和真に任せることにした

 

「ゆんゆんはどうする?正直言って何が出てくるかわからない状況だし、長距離の攻撃手がいてくれた方がありがたいんだが」

 

「えっと...わかりました」

 

「一応敵感知は常時使ってるし、何かあったら俺が守るよ」

 

「は、はい!」

 

なぜかゆんゆんは赤い顔をしていて、その横のめぐみんはむくれていた。何故に?

 

とりあえずむくれているめぐみんとトラウマ発動中のアクアは置いて行くことになった

 

「へーダンジョンなのに明るいんだな」

 

「普通なら暗いはずなんですけど、これもモンスターを作っている主の仕業なんですかね?」

 

とりあえずダクネスは先行し、俺、ゆんゆん、和真の順番で進んでいる。ダクネスが剣が当たってテンション高いが、そんなに当たるのがうれしいなら攻撃系のスキルとれよ

 

「まぁ言っても無駄なんだろうけど...」

 

「だな...」

 

「?」

 

和真は俺が言いたいことが分かっているのだろう、もはや諦めた顔をしていた

 

「それにしても」

 

後ろの冒険者たちの方を向いて呟く和真、おそらく魔法陣を消したいんだろうがこの状況じゃばれるだろう。だがそんな心配は杞憂に終わる、止まったことによりダクネスから他の方に注意が向いてるらしく。後ろの冒険者一団にもさっきのモンスターが張り付く

 

「和真」

 

「わかってる、よしダクネスそのまま進め!!」

 

「よし任せろ!」

 

意気揚々と進むダクネス、俺と和真はその後ろをついて行ってるのだが

 

「ゆんゆん行くぞ!」

 

「で、でも」

 

まぁ心優しいゆんゆんだから見捨てられないのだろうが、ここは仕方ない見捨てるのはひじょーに心苦しいのだが

 

「一応アクアの結界消しにきたんだ、アイツらがいるとばれる可能性がある」

 

「でも...」

 

「それに奥からきてるなら、元を叩いた方が被害は少ないはずだ」

 

「・・・」

 

納得はしてないのだろうが頷いてくれる、俺達もダクネスの後に続いた

 

「なんだこの高揚感は...初めてクルセイダーとして、活躍している気がする!!」

 

「そう思うようなら攻撃スキルとれよこのアマ」

 

-------------------------------

 

ダンジョンの奥、モンスターが出ている方を辿ってきたら

 

壁の前に座り込む仮面の男がいた、俺たちは角から様子をうかがっていた

 

「どうする?」

 

「ゆんゆんの魔法で先制するか?」

 

「なら麻痺系の魔法で」

 

「あ、おい!」

 

「とりあえずゆんゆんは、いつでも麻痺系の魔法出せるようにしておいてくれ」

 

「はい!」

 

何故かダクネスが先走ってしまう、俺たちは後を追いかける

 

「貴様がこの元凶か」

 

「ほう...よもやここまでたどり着くとは。我がダンジョンへようこそ冒険者よ、吾輩こそが諸悪の根源にして元凶。魔王軍幹部にして、悪魔たちを率いる地獄の公爵。この世のすべてを見通す大悪魔...バニルである」

 

モンスターは大胆不敵に自己紹介をし始める、俺は眼鏡を取り臨戦態勢に

 

「まさかこんな大物が出てくるとはな」

 

「なんでお前はこんな状況で笑ってるんだよ!!おい、逃げるぞ!!」

 

「女神エリスに仕えるものが、悪魔を前にして引き下がれるか」

 

なんかそれっぽいこと言っているが、お前は逃げろよ

 

「とりあえず俺が時間稼ぐから、お前らは逃げろ」

 

「ちょっと待ってください!魔王軍幹部ですよ、一人で相手なんて!」

 

こちらが臨戦態勢にもかかわらず、目の前の悪魔は構えもしない。舐められているのか様子を見ているのか微妙だ

 

「ほぅ...魔王より強いかもしれないバニルさんと評判の吾輩を」

 

「へぇ...じゃあお前倒せば魔王は楽勝だと」

 

そう言われるとやる気が増すが、どうも納得がいかない。そんなに強いなら何故手を出してこないのかが不思議だ、それどころか戦闘をしようとも思っていないようだ

 

「まぁ落ち着くがいい。魔王軍の幹部とは言っても、城の結界を維持しているだけのいわばなんちゃって幹部だ。魔王の奴にベルディアの件で調査を頼まれた」

 

あーなんか色々と心当たりあるわー、しかもなんちゃって幹部とかどこかで聞いた言い回しだわー

 

「ついでにアクセルに住んでいる、働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つポンコツ店主に用があってきたのだ」

 

しかもウィズの知り合いだったとか、いよいよ手が出せない

 

「そして吾輩は世間でいう悪魔族。悪魔の最高のご飯は、汝ら人間がはっする嫌だなと思う悪感情。汝ら人間が一人生まれるたび、我は喜び庭駆け回るであろう!!」

 

犬だろそれ、とりあえず対話が通じるようだ眼鏡はそのままに短刀を下ろす

 

「ダンジョンからこの人形がぽこぽこ出てきて、その人間がずいぶん難儀してるんだが?」

 

「なんと、こ奴らを使いダンジョン内にいるモンスターを駆除していたのだが...ふむ、外とにあふれ出しているということは、もうモンスターはおらんのだな。ならば次の計画に移行するとしようか」

 

元の土くれに戻る人形、次の計画とは

 

「何を企んでいるんだ!」

 

「失敬な!鎧娘が数日間帰ってこなかっただけで、自室を熊のようにうろうろして心配していた男よ!」

 

「おおおお、オイ!やめろよ!まるで見てきたみたいに言うなよ!!」

 

「あぁ、見通すってそういう...」

 

多分コイツは過去、現在、未来...文字通りすべてを見通すのだろう、だがそんなことよりもこの機会を俺が逃すはずがない!

 

ダクネスが赤い顔をして和真を見ているので、助太刀する

 

「口ではあんなこと言って本当は心配だったんだなぁ...確かになんだかんだ言って、最初にダクネスが心配だって言って騒ぎ始めたの和真だったしなぁ」

 

「おいやめろ!ほんとににやめてください!!お願いします!!」

 

最早土下座しそうな勢いだった

 

「「愉悦」」

 

俺と同時に言葉を発するやつがいた、もちろん悪魔だ。俺は悪魔の方を向くと親指を立てる、悪魔も親指を立てた。なるほど、同志だ

 

「吾輩にはな破滅願望があるんだ...まずダンジョンを手に入れ各部屋には悪魔たちを待機させ罠を仕掛ける、挑むわ凄腕の冒険者たち。そして!苛烈な試練をくぐりぬけ、勇敢な冒険者がたどり着く!!待ち受けるのはもちろん吾輩!!よくぞここまで来たな冒険者よ、さあ我を倒し莫大な富をその手にせよ!!そしてついに始まる最後の戦い、激戦の末とうとう倒された吾輩の背後には宝箱が現れる...乗り越えた冒険者たちが宝箱を開くとそこには!スカ...と書かれた紙切れが、それを見てオタオタする冒険者たちを見て。吾輩は滅びたい...」

 

なんてことを語った大悪魔バニル、だが

 

「それじゃあダメだろ」

 

「なに?」

 

こちらに顔が向く

 

「ボス前はいいとしても、ラストが点で駄目だな」

 

「ならお前はこっれよりすごい案がると?」

 

「ああ、お宝はありにしよう。それでお前が消えるのはもうちょっと後だ。お宝を手にダンジョンを出る冒険者たち、その道中で戦いの大変さや達成感とかいろいろ膨れ上がるだろう...そしてダンジョンから出るとお宝はごみ屑になり、風に流されて消える...呆然とする冒険者を眺めてお前は消える...どうだ?」

 

「・・・愉悦!!」

 

俺達は親指を立てあう、完全に息の合った証拠だ

 

「シキさん...」

 

「おっと」

 

ゆんゆんの声で普通に戻る、一応敵対者だ仲良くするのはやめよう

 

「その計画を実現するため、友人の店で金をため巨大ダンジョンを作ってもらうつもりだったのだが...偶然ここを通りがかり、ダンジョンの主がいないようだったので。もうこのダンジョンでいいかなぁと。だがこの奥にけしからん魔法陣があってな、中に入ることが叶わん」

 

何だろうアクアのせいでもあるし、アクアせいでもない。和真を見ると同じことを思っているのか、苦虫を噛み潰したよう顔をしていた。バニルは何か気づいたように和真の方を向く、まぁ見通したんでしょうね

 

「ほう、貴様の仲間が魔法陣をはったのか...どれどれ」

 

手でファインダーを覗くように見ている、てか目が光ってる

 

「ちょっと拝見...ふふっ!ふははははは!!なんということだ!貴様らの仲間のプリーストがこの迷惑な魔法陣を作ってくれたというのか!見える、見えるぞ!お前らのプリーストが茶を飲んでいる姿が、よく見えるわ!!」

 

それまでの雰囲気に変わり、いきなりやる気満々だった。アイツは後で締める、が今は短刀を構え直す

 

「ほうやる気か?同志だけは特別でな、なぜか見通せんのだ」

 

「見通せないってどういうことだ?」

 

「俺に聞くなよ」

 

「吾輩の能力は見通せるのが、自分よりも実力が下の物だけだ。つまり同志は吾輩と実力が同じ、またはそれ以上と言うことだ」

 

と言うことらしい

 

「まぁどうでもいいや...俺もお前は同志だと思ってるが、仲間を襲おうとするなら話は別だ」

 

姿勢を低くする、これでいつでも近づける

 

「人間は殺さぬが鉄則な吾輩だが、同志は別だな...」

 

構える様子は見せないが、さっきのようなおもしろな雰囲気ではなくなっていた

 

「バニル式殺人光線!!」

 

「っ!!」

 

まんま目からビームだった、異世界に来て目からビームとか。一瞬虚を突かれたがすぐさま反応する、一応刃の部分で受けてはいるがこれでは動けない

 

「ほう、初見で受けるとはさすがだな!!」

 

「そうかよ!ゆんゆん」

 

「は、はい!カースドライトニング!!」

 

後ろから黒い稲妻が撃たれる、稲妻が直撃し光線がやむ。その隙に一気に距離を詰め、横に一閃。上半身と下半身が綺麗にわかれる

 

「見事...」

 

そう言って地面に落ち形が崩れる

 

「終わった...のか?」

 

和真がそう俺に尋ねるが、一瞬でゆんゆんの後ろに移動バニルの手刀を受ける

 

「流石だな、仲間を守るか」

 

「さっきも言っただろ仲間を襲おうとするならって」

 

腹に蹴りを入れ距離を離す

 

「シキさん!」

 

「志貴の攻撃を受けたのになんで!」

 

「なるほど、再生できないとは思ったがその魔眼が原因か」

 

「そうだ」

 

どうせ俺の能力など仲間内には言ってあるのだ、遅かれ早かればれる

 

「にしても体は土でできてるのか、切っても切っても埒が明かないな...」

 

姿勢を低くしていつでも踏み込めるように準備をしておく、たぶんアイツの本体はあの仮面だろう。次は仮面を切るだけだ

 

「行くぞ...」

 

バニルは無策にも突っ込んでくる、だがあの悪魔がただで突っ込んでくるわけがない。だが迎撃は必須だ、俺も魔眼を併せて突っ込む。だがバニルはそこで仮面を投げる、俺は狙いが分かったが間に合わず。ダクネスの顔に仮面が

 

「やはり同志は気づいていたか」

 

「お前のような奴が無策で突っ込んでくるわけがないからな...」

 

ため息をつきながら短刀をしまい、眼鏡をかける

 

「流石にあの中年騎士のスキルを持っているのには驚いたが」

 

「だ、ダクネス?」

 

和真が声を掛けるが、俺は首を振る

 

「あいつの本体は仮面だ、ダクネスについているってことはわかるだろ和真」

 

「憑依したみたいな感じか?!」

 

「いかにも!!よく聞け小僧!同志、そこのボッチをこじらしている紅魔の娘!!」

 

「んなっ!?」

 

「とりあえずバニルゆんゆんの悪感情煽るのはやめとけ?俺がキレるぞ」

 

「ウム、やめることにする。同志を怒らせると残機全部殺されそうだ」

 

少しおびえているバニル、俺の力すげえな

 

「シキさん...」

 

なんかウルウルしてこっちを見ている、相変わらず庇護欲そそるなー

 

「まぁ聞くがいい!我が力により、どうしよう和真!シキ!体が乗っ取られてしまった!どうだ小僧!この娘に攻撃できるものなら...一向にかまわん!むしろどんどん攻撃してくれ!!さあはやく!これは絶好のシチュエーションだ!!やかましいわ!!」

 

なんか締まらねー...とりあえず一つ言えることは

 

「バニル」

 

「なんだ同志...」

 

何故か息絶え絶えになっていた

 

「そいつの体とのっとったのは失敗だ、そいつはど変態だからな」

 

「ド変態!!くぅぅぅ!!ふざけるなー!!はぁはぁ」

 

なんか大変だなーバニルも、せめて俺の体ならよかったのに

 

「馬鹿な...なんだこの...麗しい!娘は!一体どんな頑強な精神を...まるでクルセイダーの鏡身のような奴だな!やかましい!!」

 

「おい志貴何とかできないのか?」

 

「できるっちゃできるっけど、やるなら集中しなければいけないし。ダクネス自身無事にできるかは自信ない」

 

「でも、何とかしないと...」

 

「とりあえず和真あいつら漫才してるし、今のうちに消しに行けばいいんじゃないか?」

 

「あぁ、たしかに...ちょっと通りますね~」

 

普通に横を素通りする和真、奥の部屋で紋様を消していた

 

「なぁゆんゆん、麻痺魔法今の状態で発動したらどうなるんだ?」

 

「えーっと...多分ですけど悪魔自身の魔法抵抗力と、ダクネスさんのスキルで無効化されると思います」

 

「ゆんゆんでも」

 

「おそらく...」

 

まぁあいつ自身も相当な防御に全振りしているようなスキル構成だ、いくらゆんゆんが優れていても常時ならともかく悪魔付きの状態では難しいだろう。いつの間にか和真が拭き終わって部屋から出てきたのはいいのだが、バニルに剣を突きつけられていた

 

「それ以上近づくな小僧!和真、私を置いて先に行け!そうそう貴様の思い通りには...あぁ、これを一度言ってみたかったのだ!ええぃ、貴様が憎からず思っているこの娘に傷つけたくはあるまい?このまま娘が我が力に耐え続ければ...カズマ!この自称見通す悪魔が今気になることを言ったのだが...やかましい!!」

 

ほんと締まらねぇ...、おお和真が札を貼った

 

「よしもうアクアのところ行こうぜ!」

 

「そうだな!」

 

「なんか悪魔がかわいそうになってきました...」

 

それから地上を目指して走っていたのだが、精神化での抵抗は体中に激痛が走るらしいのだが流石ダクネス、地上に出るまでの辛抱だと和真が言ったらお構いなくって言いやがった

 

「ダクネス!よく耐えたな」

 

ダクネスからの返事はない、もう一回和真が名前を呼ぶ

 

「ダクネス?」

 

「ふっはっはっはっはっは!!支配完了」

 

「まさか」

 

「そんなダクネスさん!!」

 

俺達の声を聞かずにバニルは行ってしまう、だが俺の予想通りなら

 

「心配しなくても大丈夫だろ」

 

「何を言って!」

 

「そうですよシキさん!」

 

「だってあのアクアだぞ」

 

その俺の言葉を証明するかのように

 

「セイクリッドエクソシズム!!」

 

そんなアクアの声が響いた

 

「ほらな」

 

「「・・・」」

 

二人は絶句していたが、俺としては予想通りだった

 

ようやく階段を駆け上がりアクアにはなった和真の第一声は

 

「おいこら!いきなり魔法ぶっぱなすなよ!!」

 

「なんか邪悪な気配が突っ込んできたから、撃ち込んでみたんだけど」

 

流石アクア勘だけは一流だ、まぁ確認しないのはどうかと思うのだが

 

「ダクネスは今魔王軍幹部に体を乗っ取れれているんだ!!」

 

「ま、魔王軍幹部!?」

 

セナは驚いているようだが、アクアはなぜか鼻を押さえていた

 

「う、くっさ!ナニコレ、くっさ!!間違いないわ、悪魔から漂うにおいよ!!ダクネスったらえんがちょね...」

 

「ふふ、ふははははは...まずは初めましてだ、忌々しくも悪名高い水の女神と同じ名前のプリーストよ。我が名は!アクア私自身はにおわにと思うのだが!我が名はばに、和真もかいで見てくれ!臭くはないはずだ。やかましいわ!!我が名はバニル!!出会い頭に退魔魔法とは、これだから悪名高いアクシズ教のものは忌み嫌われるのだ!礼儀と言うものを知らんのか」

 

「いやっだ!悪魔のくせに礼儀とか何言っちゃてるんですか?人の悪感情がないと存在できない、寄生虫じゃないですか。プークスクス!!」

 

アクアの馬鹿は煽っていた、この状況がよくわかっていないらしい

 

「セイクリッドハイネスエクソシズム!!」

 

しかも後ろに俺達がいるのにもかかわらず魔法を撃ってきやがった

 

「ゆんゆんちょっとごめんな?」

 

「ふえ?」

 

ゆんゆんはぼーっとしているが、お姫様抱っこして砂埃を回避する

 

アクアは後で和真に頼んで折檻だな、そっとゆんゆんを下ろす

 

「ずるいですよ!!私もおひ...じゃなくてあの仮面欲しいですよ!!紅魔族の琴線に触れるんですよ!」

 

「仮面が本体なんだよそいつの」

 

怒ってるのかわからないがこっちに食って掛かるめぐみん、無理なものは無理だ

 

「確かにあれは手配書に記されている見通す悪魔...皆さん確保ー!!」

 

冒険者たちが囲むが、たぶん無理だろうなーと思っているのだが。ゆんゆんはと言うと

 

「・・・」

 

なぜか固まっていた、どうやら立ったまま気絶しているようだった

 

どうやらセナが和真に何か言ってるようだった、めぐみんは俺の隣に来ているが

 

「とりあえずゆんゆん頼むなめぐみん」

 

「え、は、はい」

 

事の成り行きを見守る、最後の冒険者が倒れアクアが和真に助けを求めていた

 

「和真ぁ!!実は今までで一番ピンチなんですけど!和真、和真ぁ、カジュマシャーーン!!」

 

何やら葛藤している和真だったが

 

「かーじゅーまーしゃーんー!!」

 

「しょうがねぇなぁぁぁ!!」

 

「なんかいつも通りになってるなぁ...」

 

俺は何があってもいいように眼鏡を外しておく、仮面自体に線は見えるが少し集中しないといけない。どうやらいつもの通りいつもの姑息戦法だった、だが仮面は取れないようだった

 

「撃て。アクアの魔法が効かないなら、構わんこの私ごと爆裂魔法をくらわしてやれ」

 

そう言ってこっちを向くダクネス、目は見えないが確かな意思を感じる

 

「む、無理です!私の爆裂魔法は経験を重ね、以前よりも高みに上りつつあります。いくらダクネスでも...」

 

そう言って俺を見るめぐみん、その表情は泣きそうだった

 

「ハァ...仕方ねえな。おいダクネスじっとしてろよ?」

 

「おい、志貴何を?」

 

一度目を閉じて、意識を集中させる

 

目を開け姿勢をかがめる、切る前に一言言っておく

 

「またな同志」

 

「ふっ...」

 

一閃、ダクネスを傷つけることなく仮面を真っ二つにする

 

仮面は取れ落っこちていく仮面を俺は、跡形もなく切り刻んだ

 

 

「冒険者、サトウカズマ殿!貴殿を表彰しこの町から感謝状を与えるのと同時に、サトウカズマ殿、ビャクヤシキ殿、両名に嫌疑をかけたことに対し深く謝罪させていただきたい」

 

ギルドにて俺たちのパーティの表彰が行われていた、ようやく俺たちの嫌疑も晴れた。ダクネスはダクネスで感謝状をもらっていたようだが、外野がララティーナって連呼するから泣いていた。最後にとどめを刺したのはもちろんアクアだ

 

「そして冒険者サトウカズマ一行!機動要塞デストロイヤー討伐における多大な貢献に続き、今回の魔王軍幹部討伐はあなたたちの活躍なくばなしえませんでした。なのでここに、あなたたちが背負っていた借金およびコロナタイトの弁償金を報酬金から差し引き借金を完済した残り分金三億エリスを進呈しここにこの功績をたたえます!!」

 

盛り上がるギルド内、俺と和真はそっとギルドを後にしてハイタッチをした

 




バニル襲来!回です、今更ですけど志貴の簡単な説明です。志貴の性格ですが某麻婆神父と殺人貴状態をたして二で割った性格です。能力は元ネタの志貴や式より強いですまぁ女神であるアクアの線が見えてるわけですから予想がついていた人はついていたでしょうけど。


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第十六話 この世界でしょうもない死を!

今日は一話だけの投稿です、OVAの方を書いてるんでね...
てかすごく今更なんですが投稿スピード早すぎてあと四話しかないOVA入れても五か六...少ししかねぇ!
まぁ本編の方どうぞ!



「・・・はぁ」

 

俺は目の前の光景に思わずため息をついた。めぐみんとゆんゆんはアクアをダクネスは和真をクエストに引っ張り出そうとしているのだが、まぁあの二人が動くはずもない

 

「まぁ和真やアクアの気持ちはわからんでもないが...」

 

「何を言ってるんですかシキ!」

 

「そうですよ!この二人は甘やかしちゃいけないと思います!!」

 

めぐみんとゆんゆんが俺の言葉に反応して吼えるが、スルー。冬ということもありまだ外は寒い、和真に至ってはこたつを開発しそれにこもってるのだ。日本人としては至極まともな反応だし、借金は見事完済して三億エリスもおつりが来たのだ誰だって働きたくなくなる。まぁ普通の精神なら、そもそも冒険者という職業柄こんな短期間でこれだけを稼いだのだ多分過去を探してもないだろう。そんな寒い中俺はいや、俺たちは金持ちにかかわらず働こうというのだ。いまだ駄々をこねている和真に俺は一言

 

「和真装備受け取りに行かなくていいのか?そろそろできてるころだろう?」

 

「あー...作ってもらってるんだし、直接お礼しに行った方がいいか」

 

一瞬俺に受け取りに行ってもらおうと思ったのだろうが、それではだめだと思い直したようだ

 

「仕方ない...おいそこの駄女神、行くぞ」

 

「アンタの方がダメでしょう!クソニート!!」

 

動き出したのはいいが漫才を始めた二人

 

「相変わらず仲いいねぇ...」

 

「「どこが!?」」

 

「そういうところがですよ...」

 

めぐみんに指摘され黙る二人、どうやら和真は外行の服に着替えるようだ

 

「それにしても助かったぞシキ、あの二人はなかなか動かないからな」

 

「まぁ別に俺は一人で体動かす程度のクエスト受けようとしただけなんだがな」

 

元々事の発端は俺がクエストを受けようと家を出るところを二人に見つかったのだ、それからパーティー全体を巻き込んだわけだが

 

「一人では行かせませんよ」

 

「シキさん目を離すとすぐ無茶しますからね」

 

「お前らは俺の母親か何かか」

 

ずっとこんな感じだ、まぁ心配かけた手前強く言えない俺だが。さて和真が来るまで和真が開発したこたつのことを話そうと思う、と言っても一言で済むのだが。バニルが開発しました。前回俺が殺したはずのバニル、何故生きているかというと残機を一つ減らしたというからくりだ。まぁ俺もそのことが分かっていたからあえて死の点を突かなかったわけだが、そのときの和真とダクネスの驚きようと言ったらまぁ愉悦だった。その話はまた今度にでも、和真も来たみたいだし

 

「よしそれじゃあ行こうか」

 

「はいよ」

 

-------------------------------

 

「あぁまだ外は寒い...」

 

「あぁ...暖炉、ソファー...」

 

「貧弱だなぁ...」

 

寒いと言ってもそこまででもない、まぁ雪山の無理な行軍してた俺から言わせればであるが

 

「ついたみたいですね」

 

「チィーッス!!」

 

テンション高く武器屋に入っていく和真、テンションの落差に呆れながら俺達もあとに続く

 

「おういらっしゃい!」

 

「おっちゃん出来た!俺の刀そろそろできた!!」

 

「おう一応できてるぞ!言われて通りの形状にしては見たが...」

 

そう言って刀を出す店主

 

「おお」

 

俺は軽い驚き、まさかこっちの世界でも刀を見ることになるとは思わなかった。愛刀である冬将軍は別だが、一応今も腰にさしてある

 

「あれってシキさんたちの故郷の武器なんですよね?」

 

和真のはしゃぎようを横目で見ながらゆんゆんが聞いてきた

 

「そだよ、まさかこっちで見ることになるとは思わなかったけど」

 

「名前...名前ですか」

 

「そのくらい和真につけさせてやれよ...」

 

「?何を言っているのですか、シキの使っている短刀の名前を考えてるんですよ?」

 

なぜそうなった、てかもう名前付いてるし

 

「もうついてるぞ、ホレ」

 

短刀を渡す、持ち手のところにそれほど大きくない字で七夜と

 

「なんですかこの字?」

 

「俺の故郷の文字、ななやって読むんだ」

 

「これでナナヤ」

 

ゆんゆんとめぐみんは興味深そうに文字を見ていた

 

そしてガチャガチャ音がするのでそちらを見てみると、なぜかフルプレートメイルを着た和真が揺れていた

 

「・・・何やってんの、お前」

 

「剣構えようとしたら動かない...」

 

そりゃあそうだろう筋力値が足りないだろうからな、作る前にわかったような気もしないでもないが

 

「まぁ体になじんだ装備が一番だよ」

 

店主に慰められる和真、もう鎧は脱いでいた

 

「まぁ装備一式新調できなかったけど、武器だけ出来たしいっか」

 

そうして刀を腰に刺して

 

「よろしく頼むぜ相棒」

 

かっこよくマントを翻し悠然と歩きだしたのだが、陳列されてる武器に刀引っ掻けるわ

 

極めつけは出入り口に引っかかっていた、締まらねぇ

 

「思ってたのとちがーう!!」

 

店を出て刀を地面に投げだす、まぁそれは当たり前だろ。てかなんで横に刺した、そら当たるわ

 

-------------------------------

 

「ずいぶん短くなりましたね、相棒」

 

「うるさいなぁ!!」

 

めぐみんの一言にキレる和真、ブツブツ言っているがスルー。めぐみんはめぐみんで煽るだけ煽って食事を再開していた。アスパラみたいな野菜を切って、口に運んで...

 

「お前はリスか」

 

「?」

 

なぜか少量ずつパリポリと食べていた

 

「おーい、カズマー」

 

「シキさーんクエスト決まりましたよー」

 

何て呼ばれる、ゆんゆんもこんなに人がいるのに呼べるようになったみたいで微妙にうれしかった。なのでクエストの説明を受ける

 

「リザードランナーと呼ばれるモンスターなのですが。繫殖期に入り姫様ランナーのもとにオスが集まり、巨大な群れを形成し姫様ランナーをかけて勝負をするのです」

 

「勝負?」

 

なーんか冒険者たちが同じような状況になってるんだが、まぁいつものことか

 

「走るんです、大群で進路上のなにもかもを巻き込んでひたすら。走り回り一番早いオスが王様ランナーとして姫様ランナーとつがいになるのです」

 

「それはまたはた迷惑な...」

 

ルナさんが身振り手振りで説明するせいで胸が揺れる、和真いやらしい視線で見てると他の奴からにらまれるぞ。そんな視線に気が付いてないのか、はたまた慣れたのかわからないがルナさんは説明を続ける

 

「今回のクエストはこのリザードランナー討伐です、何せ数が多いので大変かとは

 

「シー...大丈夫」

 

何故か人差し指で口をふさぐ和真、ルナさんは顔を赤くしていた。俺は見てられなくなり外に出ることにした、ゆんゆんとめぐみんもついてきたようだ

 

「カズマにはああいうの似合わないと思うのですが?」

 

「俺に聞くなよ」

 

少し待ってみるがなかなか和真たちがこない、中を見てみると和真とアクアが漫才していた

 

「喧嘩してますね...」

 

「もういいや先行こうぜ」

 

俺達は先にクエスト場所へと向かった

 

-------------------------------

 

「みんな用意はいいな!」

 

和真は木に登って俺たちに声をかけてくる、めぐみんとゆんゆんは木のうえ

 

ダクネス、俺、なぜかアクアは地上にいる

 

「こっちはいつでも大丈夫よ!」

 

「ウム!アクアの支援魔法もかけてもらったし、これならいつもよりも耐えられる!」

 

「うち漏らした時はこの私に任せてください」

 

「めぐみんの露払いは任せて!」

 

「まぁ気張らず行こうや」

 

それぞれの返事を確認した和真は作戦をもう一回確認する

 

「よし行くぞ!まず俺が王様ランナーと姫様ランナーを狙撃。その二匹さえいなくなればリザードランナーの群れは解散するらしいから、残された雑魚は放っておく。もし狙撃に失敗してもダクネスが絶えてる間に俺がもう一度王様ランナーと姫様ランナーを狙撃それすら失敗したならめぐみんの爆裂魔法で囲まれる前にぶっ飛ばしうち漏らした敵は俺が狙撃で撃破、ゆんゆんはめぐみんの補佐、アクアは全体の援護を頼む」

 

役割分担されそれぞれ返事をするが、俺だけ言われなかったなのでその意趣返しもかねて

 

「どうでもいいけどさなんでお前狙撃だけそんなイケボでいうの?そして俺は?」

 

「お前は指示出さない方が動きやすいだろ?よし!それじゃあ行くぞ!!」

 

スルーしやがった、仕方ないので正面を見るときたみたいで土ぼこりを上げていた。俺は千里眼を使い群れを見てみる、なんだろうか一昔前に流行ったエリマキトカゲのような生き物だ。気持ち悪いのだが、その中でもひときわ気持ち悪い色違いがいた。多分姫様ランナーだろうそれはいいのだが、王様が分らない。和真も同じなのか

 

「おいアクア王様はドイツなんだ?」

 

「一番偉そうなのが王様なんじゃないのー」

 

アクアのざっくりとしたアドバイスだった、ゆんゆんの方を見てみるとゆんゆんもわからないようだ

 

「お前に聞いた俺が馬鹿だった」

 

何故アクアに聞いたのか、まぁいいや

 

「和真おまえは姫様狙ってくれ、俺は一番早いやつを」

 

「そうだわ!王様ってのは一番早いわけよね、モンスター寄せの魔法でアイツらを呼んで一番にここについたのが王様よ!!」

 

アホなことを言っていた、和真も何か言ってはいるがアクアは名案とばかりに手を叩いていた

 

「めぐみーん、爆裂魔法準備ー」

 

「わかりました!!」

 

「フォルスファイア!」

 

炎が上がりそれを見た瞬間、ランナーたちはすごい勢いでやってきた

 

「うわ、マジでキモイ!」

 

群れが一斉にこちらに迫ってきてるのだ、しかも立ちながら

 

「この馬鹿!!毎度毎度何かやらかさないと気が済まないのかお前は!王様と姫様さえこっそりと打ち取れさえすれば、無力化できるのになんでわざわざ呼び寄せるんだー!!」

 

「何よいきなり!私だって役に立とうとしてやってるんだから怒んないでよ!!どうせこの後の展開なんていつものことでしょう、きっとあのランナーたちにひどい目にあわされて泣かされるんでしょう!?わかってるわよいつものことよ!さあ殺すなら殺せー!!」

 

和真に怒られて、駄々をこね始めるアクア。もうね...面倒なのでスルーなのだが

 

「ダクネス、そのアホ回収しとけ」

 

一応ダクネスに回収させておく

 

「あぁ、わかった」

 

「めぐみん!」

 

「できてます!エクスプロージョン!!」

 

数を減らすため、あわよくば全滅なんて狙ったのだが。和真が王様に打ったはずなのだが、余計に加速したため姫様と一部ランナーは無傷だった

 

「どういうことだよ!?」

 

「駄目ですカズマさん!王様から先に倒すと、新しい王様になる為に狂暴化するんです!!」

 

見事余計なことをしたようだった、というか拗ねてるアクアが先に言えばよかった話なのだが

 

「ライトオブセイバー!!」

 

ゆんゆんが姫様を狙うがいかんせん数が多すぎる、しょうがないので

 

「ゆんゆんは後続の方を減らしてくれ!和真は姫様を!」

 

「おい志貴、お前は!」

 

「先頭の数を減らす!!」

 

冬将軍を抜き氷の斬撃を飛ばす、便利なのだがホントに数が多い

 

ある程度は減らせたがもうだいぶ迫ている、こうなれば構っていられない

 

真正面にいるランナーたちを短刀で切る

 

「ふっ、紙一重だったな...」

 

そう和真の声がしてランナーたちが止まる、見てみるとジャンプした姫様を仕留めたようだが

 

「あのバカ!!ゆんゆんとめぐみんは衝撃に耐えろ!!」

 

あのままでは和真の近くに落ちる、なのだがあのバカは気が付いていない

 

魔眼を発動しなくても間に合うので急ぐ

 

「へ?」

 

どうやら気が付いたようだが間に合わない、間に合わないが

 

「ドアホが!」

 

俺は枝に着地すると同時に和真の襟首をつかみ、ダクネスに投げる!!

 

ダクネスは見事受け取ったが、それを確認した直後木が揺れる

 

「あ」

 

振動がすごく和真を投げた後だったので不安定な体制で、俺は足を滑らせ落ちた

 

-------------------------------

 

目を開けるとそこには見覚えのある空間が、そして見覚えのある顔

 

少し困ったように頬を掻いていた

 

「どうも」

 

椅子に座らしてもらう

 

「気を付けてくださいね、以前規約を曲げて生き返らせたときすごく苦労したのに...」

 

「いやぁ...それに関しては悪いと思ってるんですよ?前回ならまだしも、今回は死ぬとは思いませんでしたし」

 

この頃気が緩んでいるのではないだろうか、魔眼などのスキルで簡単に討伐できるようになっている現状。今一度気を引き締め直さねければいけないような気がした、でなきゃ仲間の命に係わる

 

「はぁ...冒険者というお仕事していらっしゃるのですから、危険が付きまとうのはわかりますが...でも今回は和真さんに非があるわけですし

 

「いえ、関係ないでしょう。確かにあいつが油断したのもあるでしょうけど、俺が魔眼発動すればよかった話ですからね」

 

「・・・」

 

黙って聞いてはいるが納得いっていないのだろう、何か言いたげな顔をしていた。まぁ俺の性格が分っているエリス様だ、言っても無駄と思っているのかもしれないが

 

「そう言えばあの後アイツらどうなりました?」

 

「・・・あなた以外は無事です。先輩に関してはあんなところで寝ころんでいたせいで。ランナーたちに蹴られたり踏まれたりして少し泣いていましたが...ひどくなる前にダクネスが回収してくれましたよ。和真さんもダクネスがキャッチしたおかげで怪我もありません」

 

「んで俺の体はアクアがリザレクションかけてると...まぁあいつらが無事でよかった」

 

俺がほっと一息ついてるとエリス様は話しかけてくる

 

「・・・ずいぶんと落ち着いていらっしゃるのですね」

 

「まぁもう通産三回目ですしね、この展開にも慣れました。死に慣れるのもどうかと思いますけど」

 

そう言って部屋を見回す

 

「?」

 

「てか暇ですね」

 

「いいんですよ、私が暇ってことはそれだけ皆さん元気なわけですから」

 

「まぁそういうもんですか」

 

「?」

 

俺の答えが不思議だったのだろう可愛い顔しているのだが、こういう状況に慣れすぎているのだろう。エリス様が優しい性格なのはわかるが、もう少しくらいわがままを言ってもいいんじゃないだろうか

 

「エリス様は地上に行かないんですか?」

 

「?クリスとしてなら行ってるって知ってるじゃないですか?」

 

「エリス様自身でですよ、今のアクアみたいに」

 

「えぇっ!?い、行けませんよ...天界規定もありますし...」

 

まぁまじめすぎるのもあるのかもしれない、もうちょいあのフリーダムの先輩を見習った方がいいと思う

 

「いや、あの先輩を反面教師にしたならこうもなるのか?」

 

「あの?」

 

思わず声を出したがこの問いに答えが返ってくるはずもなく、早々に思考を打ち切る

 

「まぁいいや...ならこのまま地上に遊びに行きません?どうせ暇なわけですし」

 

「ですからさっきも言ったように...」

 

「志貴ーリザレクションかけ終わったわよー、早く帰ってきなさい。そうしないと和真さん死んじゃうからー」

 

「なんと間が悪い...てかどういうことだってばよ?」

 

そう言いながら席を立つ

 

「それじゃあエリス様お願いします」

 

「わかりました」

 

パチンと指を鳴らすと体が浮き上がる感覚がする、なので俺は

 

「そうだ夜になったらギルドで待ってますね」

 

「え?あの!」

 

「それではまた!」

 

「あぁもう!あなたが死なないように陰ながら祈ってますからね!」

 

その言葉に俺は苦笑を返すしかなかった

 

-------------------------------

 

目を開けると夕日が目に入った

 

「・・・もう夕方か...寝よう」

 

すぐに目を閉じる

 

「ちょ、ちょっと待って!とめて、あれ止めて!!私たちじゃ止まらないから」

 

「いつもは簡単に離れるの、になんでシキがかかるときのお前たちは異常なパワーを発揮するのだ!!」

 

うんまぁ気が付いてたけど、仕方ないのでゆんゆんとめぐみんに話かける

 

「お前らその辺にしてやれ、和真が死ぬ」

 

「何を言ってるんですかシキ!カズマには一回ガツンとわからせた方が!!」

 

「そうですよシキさん!」

 

どうやら聞く耳も単状態なので、頭を軽く小突く

 

「「いた!?」」

 

「ええぃ、いい加減にしろ馬鹿ども。俺のために怒ってくれるのは嬉しいが、俺の不注意でもあるんだだからやめろ」

 

その言葉でようやく和真を離す二人、その和真をアクアに渡し屋敷に帰ることにした

 

途中目覚めた和真に土下座されるなどあったが

 

-------------------------------

 

俺は今ギルドにいた、もちろん一人でだ

 

なんでギルドにいるかというと

 

「あ、やっと見つけた...というよりこの頃呼び出し多くない?」

 

「悪いなクリス、忙しいか?」

 

「・・・それ皮肉?」

 

「いや仕事のほうじゃなくて、違う方の回収の話をしたんだが」

 

「あぁ...」

 

なんてか軽口を叩きあっていた、クリスの分を奢り本題に入ることにする

 

「とりあえず今日俺死んだじゃん?」

 

「知ってるように話すのはどうなのさ...いや知ってるけど」

 

呆れたように話すクリス、だが俺は気にしない

 

「んで俺も含めパーティー内で油断てか、慣れが出てきてると思うんだよ」

 

「ふんふん、それで?」

 

「なので俺は修行しようと思う、というわけで協力してくれ」

 

「・・・なんで私なの?」

 

「なんとなく」

 

そんなことを言うと脱力したように机に突っ伏すクリス、めんどくさそうに言葉を続ける

 

「・・・はぁ、まぁ理由はわかったけど。そんなのパーティー全体でやればいいじゃん」

 

「今日のこともあってウチのパーティー、しばらくクエスト自粛ムードになってるから」

 

「あぁ...」

 

気が付いてそして当然だという顔をするクリス、だが俺はそれでは納得しない

 

「なのでお前を誘って、夜のクエストに出たいと思う」

 

「はい?なんで夜なの?昼でもよくない?」

 

「夜の方が危険じゃん?それに色々ハンデがあるわけだし」

 

「・・・」

 

睨んでくる、メッサ睨んでくる

 

なんか漏れ出してる、神聖な力漏れ出してる

 

「危険なのも重々承知だし、運が悪ければ死ぬのもわかってる。でもな今の状況、このぬるま湯につかった状況から前の状態に戻すには多少の荒療治も仕方ないと思うんだ」

 

言い訳ではない本当に思っていることだ、だからこそ監視でクリスについてきてもらうのだ

 

「はぁ...どうせ言っても聞かないんでしょう?」

 

「そういうこと」

 

まぁ諦めた表情になるよな

 

「というわけで俺が納得するまで、夜のデートとしゃれこもうぜ」

 

「なっ!?デデデ、でーとぉ!?」

 

赤い顔でわめいてるが無視、クリスの手を取って受注してあった一撃熊討伐に向かった

 

てか思ったけど血なまぐさいデートもあったもんだねぇ、俺が企画したけど

 




マジアクアの寝転がったところは笑った、てかあの表情女神的にどうなのよ?
そんなことよりエリス様だ!マジでエリス様可愛い...


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第十七話 この湯治に平穏を!

温泉とかいいですよねぇ...時間があったら行きたいなぁ
まぁそんな時間があるんだったら寝ていたい
本編どうぞ!


ズドンと何かが倒れる音がした、まぁ俺が倒した一撃熊なのだが

 

目隠しを外し一息つく、そんな俺に寄ってくる気配がする

 

「うわ...本当に目隠しして倒しちゃった...」

 

俺の姿にひいてるクリス、まぁ目隠しして一撃熊倒してればそれもそうだろう

 

「酷くない?傷つくわー」

 

「そんな棒読みされて言われても...それに自分でもわかってるくせに」

 

「まあな」

 

こんなことをするのは俺ぐらいだろう、そもそもパーティーで狩るならまだしもソロで狩るのはあまりいない。しかも目隠しつけてなんてよっぽどの自殺志願者でもなければいないだろう、俺か

 

「それにしても本当に見えてないんだよね?スキルの発動なんかは感じなかったけど」

 

「心眼」

 

ドヤ顔で言うと呆れた顔をするクリス、冗談はさて置き

 

「まぁ音を聞けば大体わかるし」

 

「それはシキだけだよ」

 

疲れた表情をしていた、なんか失礼だよな

 

「とりあえず帰ろうぜ、勘も十分取り戻せたし。この逢瀬も今日で終わりかな」

 

「なんでそういう言い方するかな!!///」

 

「真っ赤になって可愛い!」

 

真っ赤になったクリスをおちょくると叩いてきた、てかなんか神聖なものが漏れ出してる状態で殴られると結構いたい

 

俺とクリスは殴られながら街に戻るのだった

 

-------------------------------

 

「「「・・・」」」

 

俺、めぐみん、ゆんゆんは目の前の状況に言葉を失っていた

 

いや正確には呆れていたというのが正しいが

 

「最高級のお茶が入りましたわよ、和真さん」

 

「ズズ...お湯なんだけど」

 

和真が笑顔で告げる、和真にしては珍しく怒っていなかった

 

「私としたことがうっかりしていたわ」

 

「もしかして紅茶を浄化してしまったのかな?」

 

「ごめんなさいね和真さん」

 

「また入れ直せばいいだけさ、ありがとうアクア。これはこれでいただくよ」

 

そう言ってお湯を飲む和真、いやなんで飲み干すんだよ

 

「うん、お湯!」

 

「気持ち悪い」

 

いい加減この漫才を見てられなくなって声を出す

 

「やだなぁ、気持ち悪いなんてひどいなぁ志貴くん」

 

「よし殺そう」

 

目にもとまらぬ早業で短刀を抜刀、一瞬で和真の首元に短刀を添える

 

笑顔で

 

「ごめんなさい、すみませんでした。許してください、殺さないでください」

 

「よろしい」

 

短刀を引っ込める、何故かダクネスがこちらを赤い顔で見ていたが無視

 

「アクアもこんなつまらない茶番続けるなら、どうなるかわかるな?」

 

「サー、イエス、サー!」

 

敬礼までしだすアクア、はて?何が何やら

 

「「・・・」」

 

そんな中視線を感じそちらを見ると、めぐみんとゆんゆんが俺のことを険しい目で見ていた

 

「どした?」

 

「いえ...」

 

「私たちの気のせいだったみたいです...」

 

なぜか納得いかないようにこっちを見ていた、今のでバレたらしい勘の鋭いこって。なぜこんなことになっているかというと俺も詳しくは知らないが、バニルが和真の開発したものの利権関係を買い取るということで話にきたらしい。その時俺は夜な夜な狩りに行ってたので知らないわけだが、かなり愉快な状況だったらしい。主にバニルとアクアが、ぜひ見たかった。それでこんな状態になっているわけだが、いまだ返事はしていないので金はないがちかじかはいる予定だ

 

「まぁお金はあるのは素晴らしいことだが、そろそろ討伐に行かないか?」

 

見かねたダクネスがそう提案するのだが、和真は

 

「え?嫌だよ。なんで働かなきゃいけないんだよ?装備を整えて作戦だって立てたのに志貴が死んだんだぞ?決めた!俺はこれから商売で食っていく、冒険者稼業なんてやめてぬるく生きてくよー」

 

そんなことをのたまった、人生舐めてる元ニート。流石に俺は呆れてものも言えなかった、めぐみんやゆんゆんを見ると微妙な表情をしていた

 

「ねぇ和真さん、私それじゃあ困るんですけど。魔王を倒してくれないと色々困るんですけど」

 

また漫才が始まった、もういいやこいつらに話を振るのは間違いだろう

 

「てかいつまで俺たちはクエスト自粛してるわけ?」

 

「それは...」

 

「し、シキサンの傷が治るまでです!」

 

「いや治ってるけど」

 

その日に、どうやら俺は頭から落ちたので首がぽっきり逝ったらしく。直すのがそうとう大変だったとアクアが言っていた、それでも自粛に付き合っていたのは俺も責任があったからで。流石にそろそろいいのではないだろうかと思い聞いてみたのだが、まだだめらしい

 

「そんなにクエストに行きたいんですか?」

 

「別にそんなに行きたいわけじゃないが、そろそろいいんじゃないかと思ってな?」

 

別にクエスト自体は行ってるし、夜な夜な内緒だが

 

「わかりました...ですが!まだ安静にしてほしいので湯治に参りましょう!水と温泉の都、アルカンレティアに!」

 

「えっ!?」

 

「今温泉と聞こえたが!」

 

「ねえ今アルカンレティアって言った!!水と温泉の都、アルカンレティアに行くって言った?」

 

漫才やってる和真たちが反応した、それはいいのだがゆんゆんのあの反応は何なのだろうか

 

ダクネスを見るが...うん、ほっとこう

 

「湯治ねぇ...まぁこっちに来て温泉なんて入る機会そうそうないだろうし、俺はいいけど?」

 

「よし行こう!」

 

俺よりも乗り気な和真、だらしない顔から見るにラッキースケベを期待しているのだろう

 

-------------------------------

 

アルカンレティア行きが決まった夜俺はギルドに来ていた、もちろんクリスとの逢瀬だ

 

「アルカンレティア!?」

 

「声が大きいって」

 

周りに頭を下げながら小声で注意する、だがそれくらい衝撃だったのだろう

 

なんか不安になってきた、どういう都市なのか聞いてみることにした

 

「なぁアルカンレティアってどういうとこなんだ?」

 

「水と温泉の都、アルカンレティア...アクシズ教の聖地だよ」

 

「・・・」

 

アクシズ教、アクアから度々言葉に出ている宗教団体だ。水を司る女神アクアをご神体とする、超迷惑集団。それの聖地、もう考えただけで頭痛を通り越して吐き気ものだ

 

「どうしてそこ行こうって話になったのさ」

 

シュワシュワを煽りながらクリスが聞いてくる、俺は昼間のことをかいつまんで話す

 

「なるほどね」

 

「うわーそう思ったら行きたくなくなってきた」

 

「頑張って行ってきなよ」

 

他人事なのか笑顔で言ってくるクリス、流石にムカつきはしないが苦虫をかみつぶしたような顔をする

 

「他人事だと思いやがって...」

 

「実際他人事だし」

 

「このやろう...」

 

俺もシュワシュワを煽る、そこでいい考えが浮かぶ

 

「そうだクリスこの頃付き合ってもらってたよな」

 

「うん?いきなりどうしたの?」

 

「それのお詫びってか恩返しをしようと思ってな?」

 

「おーそれって何さ?」

 

さっきの話から連想できそうな気もしないでもないが、クリスは乗ってくる

 

「一緒に温泉行かないか?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

無言で見つめあう俺とクリス、やがてクリスは引きつった笑みをしながら俺に言ってきた

 

「あははーヤダなーシキ、私たちそんな関係じゃないでしょう?」

 

「いやいやいや、親しき中にも礼儀ありっていうだろ?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

再度見つめあうがさっきみたいな沈黙はなかった、速攻でクリスは行動を起こしたが

 

「はなせー!!」

 

「はっはっは、俺が逃がすわけないだろう?」

 

逃げる前にクリスの腕を掴む、有無を言わさずクリスの分も代金を支払いギルドを出る。もちろんクリスはわめいていたが、俺はそれ以上の声を出していたので周りにはばれてない

 

「やれやれ、甘いなクリス」

 

「ぐぬぬ!」

 

悔しがっているクリスを見るのはいい気分だった、まぁ最初の段階で逃げていたとしても難なく捕まえたが。これも荒療治の成果だろう、よきかな良きかな

 

「さてクリスに拒否権はないからな?」

 

「酷くないかな!?」

 

「もし逃げたりしたらどんな目に合うかわからないからよろしく!」

 

そう言って手を離す、クリスに逃げる様子はない諦めたらしい

 

「それで?明日は何時集合?」

 

「昼前には出発になってるから」

 

「了解...はぁエリス教徒の私が行ったら何をされるか...」

 

「まぁ心配すんなって、誘ったのは俺だからなもし何かあったら俺が守ってやるよ。またな」

 

そうして俺は帰路に就いた

 

-------------------------------

 

「あー、ねみ...」

 

早朝ともいえる時間にたたき起こされた、いや湯治に行くのは決まっていたが。こんな早朝に起こされるとは思っていなかった、そもそも馬車の寄り合い所自体開くのが相当先だ。実際ダクネスは知らんがめぐみんのゆんゆんなんか、俺に引っ張られている状態だ

 

「マジねみぃ...」

 

あくびをかみ殺しながら歩く、アクアはアクアで元気すぎてちょこちょこしていた。正直言ってうざい、眠いながらも意識は覚醒しているのが最悪だ。ちなみに保護者こと和真はいない、なんでもアクアの話だと先に一番いい馬車を取っておく手筈のようだ

 

「って、和真いないじゃないの!!」

 

寄り合い所についたアクアが最初に言った、まぁそんな気はしていたが。とりあえず俺の裾を引っ張っているゆんゆんとめぐみんを外し、俺も探し人を探す

 

「お、クリス。ようやく見つけた」

 

丁度いい散歩になるかなと思い探し始めたのはいいが、ようやく見つかったのが明るくなってからだった

 

「ずいぶん早いね」

 

「まぁアクアにたたき起こされやからな、朝っぱら早くに」

 

「あはは...」

 

「とりあえずアイツらに合流しないと、というわけで行こうぜ」

 

「うん!」

 

クリスもこういうのは初めてなのか少しいつもよりそわそわしていた、ようやく合流地点に戻るとダクネスが和真の首を絞めていた

 

「どういう状況だよ...」

 

アクアはアクアで馬車がどうのこうの言ってるし、めぐみんとゆんゆんは起きていた

 

「君のパーティーはいつも騒がしいね」

 

苦笑しているがその瞳はまぶしいものを見ている眼だった、俺はそれを聞こえなかったふりをしてめぐみんとゆんゆんに近づく

 

「なにこれ?なんでウィズがいんの?」

 

「それより私はクリスがいる方が気になるのですが」

 

「昨日誘った、それだけ」

 

「・・・それはそれで気になりますけど、ウィズさん消えかかってたのでカズマさんがダクネスさんの許可なくドレインタッチをして」

 

「それであの状況なわけね」

 

なんかゆんゆんもめぐみんも呆れた顔で俺を見ていたがスルー、とりあえずダクネスが手招きしていたので俺たちは行くことに

 

「どした?」

 

「座席決めるから来てほしかったのだが、クリス?」

 

「無理やり誘われてね...」

 

疲れたような顔をしていた、三人の視線が刺さるがその通りなので何も言えない

 

「んで、どうして呼んだんだ?」

 

「座席決めるからじゃんけんだ、一人が...ってクリス居るから二人荷台だな」

 

「なら俺荷台でいいや、寝る」

 

俺はじゃんけんから外れさっさと荷台に移動する、そのあとアクアがぐずっていたがクリスが変わると言って事なきを得た

 

「アルカンレティア行きー、発射しまーす!」

 

馬車なんて初めて乗ったが意外と乗り心地は悪くなかった

 

「それにしてもゆっくりなんだな」

 

「馬車なんてこんなものだよ?」

 

「何回か乗ったことあるのか?」

 

「まぁ回収の方でね」

 

そう言って笑っていた、流石に日差しも暖かいので眠くなってきた

 

「眠いの?」

 

「あぁ...」

 

意識がまどろんでいく

 

「おやすみ」

 

そう聞いたような気がするが、俺はもう意識が落ちていた

 

-------------------------------

 

何やら周りが騒がしい、仕方がないので起きることにする。というよりもこんなにうるさかったら寝れないし

 

「おいクリス起きろ」

 

「うん...?」

 

俺の太ももでいつの間にか寝ていたクリスをおこし、和真に話しかける

 

「何の騒ぎだ?」

 

「おお志貴起きたか!この馬鹿のせいでハシリタカトビが!」

 

「はぁ?」

 

この状況で冗談でも言ってるのだろうか、寝ぼけているのかいまいち感覚がはっきりしない

 

「そういうモンスターがいるんですよ!」

 

「ともかく危険なんです!」

 

めぐみんやゆんゆんがそういう、少し遠くで騒がしいと思いそちらに目を向けると何かが走ってきていた

 

「へぇ...あれが俺の睡眠を邪魔したのか...」

 

ゆらりと立ち上がる、数にして十五匹程度だろうか

 

「殺す...」

 

短刀を抜いて誰よりも先に走りだす、後ろから制止の声が聞こえるが俺は早く終わらして寝たいのだ

 

「というわけで死ね」

 

眼鏡を外し跳躍、一気に後ろに着地する。そこからまた駆け出し一番後ろにいたやつの足を切り、三匹くらい一気に頭を飛ばす。そしてひかれないように器用に走り抜ける、もちろん走り抜けたときに近くの奴らの首を切り落とすのは忘れない。残り五匹ここまで行けばあとは簡単だ、各個撃破して馬車に戻る

 

「ふぅ...」

 

「相変わらず見事な手際だね」

 

クリスは普通にねぎらってくれるが他のみんなはポカンとしていた、当たり前だよなぁ。そしてこの状況に普通になれているクリス、お前もこっち側だ

 

「おっちゃん馬車出してくれ」

 

「あ、は、はい!!」

 

おっちゃんは他の人たちに声をかけて急いで馬車を出す、俺はまた荷台で目を閉じた。そんな俺の様子を見てか、めぐみんやゆんゆんは何か言いたそうにしていたが何も言ってこなかった

 

後からの追求怖いなぁ

 

 




デートと言いつつ数行で終わる...まぁ何日も同じような作業書いてもね、というわけで水の都アルカンレティア編です、もう残り少なくなってきてる...
OVAは後は和真視点を残すのみなので和真視点入れても四話くらいですかね、後はリクエストくらいでしょうか、気が向いたら書くくらいになるでしょうけど。
それでは皆様終わりまでお付き合いください!
あ、あとお気に入りや感想などありがとうございます。書き終わってはいるものの励みになってますので


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第十八話 この街でアクシズ教徒の恐ろしさの片鱗を!

今日は二話投稿、話数ないって言ってるのにですが
それでは本編どうぞ!


「あー早く寝たい...」

 

結局あの後寝ようとしたら第二派が襲来し寝れなくなった、馬車も出せず立ち往生だ。護衛の冒険者が頑張ってはいるが

 

「げふっ!」

 

打った魔法に当たりハシリタカトビが死ぬのはいいが、勢いはそのまま突っ込んでくるわけなので当然当たる。チキンレースなので器用に馬車は避けていくのだが、ダクネスの硬さに引き寄せられるならまた引き寄せられる可能性がある

 

「なんかいい方法ないかなぁ...」

 

クリスはクリスでうんざりしていた、一応俺は参加しなくてもいいと言ったのだが自主的に参加していた。盗賊なのでバインドするのが主な仕事なのだが、数が多い。俺は俺で面倒になったので結論だけを言う

 

「ダクネスをここに放置」

 

「それやったら本気で怒るからね」

 

目がマジだった、冗談なのだが

 

「崖とかあったら落とせるけどなぁ...」

 

「今聞いてきたら洞窟があるらしい!二人とも早く馬車に」

 

馬車を見ると俺とクリス、和真とダクネス以外は乗っていた

 

「了解だ」

 

「わかった!」

 

和真はダクネスの方に向かったが鎧が重いのか持ち上がらないようだ

 

「おい和真!もう限界だってよ、早くしろ!」

 

「わかってる!」

 

何故か馬車からロープを引っ張りダクネスに結んでいた、うんたぶんダクネス言ったんだろうが。馬車に和真が戻ると急いで出す、引きずられるダクネス

 

「うん、わかってるけどないわー」

 

「和真さんが鬼畜なのは知ってたけど、これは流石にないんじゃないかしら...」

 

全員がゴミのような目で見る中俺は

 

「和真...ダクネスがそうしろって言ったんだろ」

 

「志貴お前...わかってくれるのか?」

 

「まぁお前の筋力値がもっと高ければこんなことにはならなかったんだけどな!これもレベル上げさぼってるからだな」

 

いい笑顔で言ってやった、うんいい表情だ。しかもみんなは和真をゴミのような目で見てる、あの温厚なウィズまでもだ。ちなみにクリスは俺が押さえてる、そうでもしなきゃ和真に襲い掛かりそうだからな!

 

「お客さん!」

 

「どうしたんですか?!」

 

そんな中馬車のおっちゃんが切羽詰まった声を出す

 

「このままじゃ追い付かれますよ!」

 

「洞窟までは!?」

 

「まだあります!」

 

「「もう駄目だー!!」」

 

和真と馬車のおっちゃんの声が重なる、仕方ないので俺はクリスを離す。ウィズも同じ考えなのか荷台の方に行く

 

「ボトムレススワンプ!」

 

ウィズは泥沼魔法を発動させて足止めをする

 

「ゆんゆんできるだけ数減らしてくれ」

 

「は、はい!カースドライトニング!!」

 

雷属性の上級魔法だ、流石ゆんゆんだ数は減るが全部ではない。そしてその後ろから後続のハシリタカトビガも来ていた、なので俺は

 

「まったく...俺はゆっくり寝たいのによ!!」

 

魔力を多めに込め冬将軍を地面に突き刺す、もちろん軽く刺してるだけなので馬車のスピードは落ちるようなことはない。地面を氷漬けにしたおかげか滑ったハシリタカトビガは後続を巻き込み、大クラッシュしていた

 

「和真!」

 

「わかってる!」

 

アクアに支援魔法をかけてもらった和真が狙撃で先頭の奴らを減らす、だいぶ差が開いたところでようやく洞窟が見えてきた

 

「お客さん、しっかりつかまっててくださいよぉ!!」

 

そんな声とともに馬車が揺れる、どうやらブレーキをかけたみたいだ

 

「ゆんゆん捕まれ!」

 

荷台にいるためゆんゆんは捕まるところがなく振り落とされそうになっていた、俺は鞘を荷物の固定されているロープにひっかけゆんゆんに手を伸ばす。しっかりとゆんゆんの腰を抱き密着させた、恥ずかしがっているようだが今は緊急事態なのでスルー。馬車は止まり和真は一目散にダクネスの方に駆け出した

 

「めぐみん爆裂魔法の準備を!」

 

「はい!」

 

詠唱を始めるめぐみん、その間和真はダクネスを洞窟の入り口に投げていた。てか強化されても投げるのやっとかよ、どんだけ貧弱なんだアイツは。頭から着地したダクネスだがはぁはぁ言っているので大丈夫だろう、その上をハシリタカトビガ飛び越えていく

 

「めぐみん!」

 

「はい!エクスプロージョン!!」

 

全部入ったのを確認しめぐみんに指示を出す、見事な爆発で入り口をふさぐ

 

「ナイス爆裂!」

 

「ナイス爆裂」

 

俺が親指を立てるとめぐみんも親指を立てながら倒れた

 

-------------------------------

 

「胃がいたそうだな和真」

 

「彼マッチポンプ嫌いだもんね」

 

俺とクリスはこの馬車達の偉い人から褒められてる和真を遠くから見ていた、クリスの言う通りマッチポンプだから誉められたものではないが

 

「あなたも褒められた側ですけどねシキ」

 

「いつの間にか離れててびっくりしたんですよ?」

 

呆れた表情のめぐみんと少し怒ったような顔をしているゆんゆんの登場だ

 

「え?聞いてないから関係ないっしょ」

 

「君は相変わらずだよねぇ...」

 

そんな俺の態度にクリスは苦笑していた、くうものも食い終わったので俺は横になる。和真はダクネスの鎧修理、ダクネスはそれを見ていて。アクアは宴会芸を披露し、ウィズはなんでかそれに付き合わされていた

 

俺達はというと

 

「さて昨日からの疑問が今日確信に変わりました」

 

「シキさん夜の散歩ってどこ行ってたんですか?というより散歩は嘘ですよね」

 

詰問されていた、というかやっぱり気が付いていたようだ

 

「・・・勘が鋭いこって」

 

「「何をやっていたんですか?」」

 

二人して迫ってくる、ばれないようにクリスの方を見るのだが

 

「・・・」

 

口笛でも吹きそうな感じでわれ関せずだった、流石にその態度にイラっと来たので

 

「そこにいるクリスさんと夜な夜なあってた」

 

笑顔で言ってやった

 

「「「なっ!?」」」

 

反応は三者三様だった、めぐみんとゆんゆんの注意はクリスに向かったようなので俺は寝ることにした。もちろんめぐみんとゆんゆんは迫ってきたがどんなことをされようが寝たふりで通した、というよりクリスを売ったのでどうせクリスにより情報が流れるだろうし

 

-------------------------------

 

夜も更け真夜中と言っても差し支えない時間、俺は目を覚ました

 

「こういう時の自分が嫌になるよなぁ」

 

何かが迫ってくる気配がする、その気配のせいで起きたのだ。昔からそうあるように訓練されて身に着けた特技、別に何とも思わないが鈍ると鈍るでなんか気持ち悪い。敵感知と千里眼を発動する、どちらもこの頃発動はしないがスキルレベルは高い。ゆらゆらと移動する何かがそこそこの数がいる、急ぎはしないが和真を起こす

 

「和真」

 

「うん?・・・なんだよ志貴まだ夜じゃないか...」

 

眠ろうとする和真を再度起こす今度は要件付きだ

 

「敵っぽいのが来てる、起きろ」

 

「敵?」

 

起きだし周りを見回す目視できるはずはない、どうやら千里眼を使ったようだ

 

「ほんとだ何かいる」

 

「全員起こすぞ」

 

「わかった」

 

「私も手伝おう」

 

ダクネスはどうやら起きていたようだ、ダクネスにも手伝ってもらいパーティーメンバー全員プラスウィズとクリスを起こした時。護衛の冒険者たちも気が付いたのだろう、声を上げる

 

「おい何かいるぞ!全員起きろ!」

 

護衛の冒険者が松明を投げる、どうやら影の正体はゾンビだったようだ

 

「ほぉ、亡者共が俺の睡眠を邪魔したのか...朝から寝不足だっていうのに、夜の睡眠すら邪魔するのか」

 

眼鏡を取り一歩歩き出す

 

「お、おい志貴?落ち着け、アクアもいるんだからアクアに浄化まかせとけばいいだろう?」

 

後ろからひきつったような声が聞こえる、だがそんな説得は俺の怒りを抑えるには足りない

 

「何言ってるんだよ、死んでもなお動き続けるなんてかわいそうだろう?これはいわば慈善行為だ」

 

笑顔を向けると和真はなぜか怖がっていた、はて何故だろう

 

「さて、お仕置きの時間だ」

 

ゾンビはアクアと協力して全部空に返した、もちろん線を切ったりしたが点はついていない。手が滑ってなければだが

 

あの後また偉い人がきて報酬のひと悶着があったのだが和真は結局受け取らなかった、俺はというと討伐が終わったら荷台で寝ていた

 

 

「シキさん、起きてくださいシキさん」

 

「ん...?」

 

揺らされる感覚がする、目を開けるとどうやらゆんゆんが起こしてくれたようだ

 

「あぁ...わるいなゆんゆん」

 

「それより見てください綺麗ですよ!」

 

興奮した様子のゆんゆん、俺も釣られて周りを見渡す。入口はどうやら短いトンネルのようだ、岩肌を掘ったようだが見事なものだった。そしてトンネルを超えると池というか湖というか、ともかく綺麗なエメラルドグリーンとでもいうんだろうか。ともかく透明度がすごい湖(?)だ、それだけでもすごいのだが。街はまぁ中世時代だが屋根はアクシズ教の総本山だけあって青なのだが、落ち着いた青なので景観を損ねてはいない。もっとうるさいのを想像していた街中も、普通の喧騒だった

 

「へぇ...」

 

「どうしたんですか?」

 

俺の感心したような声が聞こえたのだろう、ゆんゆんは俺を不思議そうに見ていた

 

「いや、別に」

 

「?」

 

気が付いたら俺は笑っていた、声を上げてはいないものの。こんなことならもっといろんなところに旅行すればよかったと、それはこの世界に限った話ではないがまぁでもこれから騒がしくなるんだろうなぁと、確信にも似た予感が

 

-------------------------------

 

 

「よい旅路をー」

 

「ありがとなおっちゃーん」

 

色々迷惑をかけた馬車の人たちにお礼を言い分かれた、めぐみんはなんか悲しんでいたが

 

「あーじゃりっぱ、じゃりっぱが行ってしまいました...うー...」

 

「・・・なんだじゃりっぱって」

 

「あの馬車にいたレッドドラゴンのことです」

 

そう説明して苦笑するゆんゆん、やっぱ紅魔族のネイミングセンスないわー

 

一応寂しそうなので撫でておく

 

「・・・なんで私は頭を撫でられているんですか///?」

 

「なんとなく」

 

嫌がってはいないのでそのまま撫で続ける

 

「さぁみんなどこえ行く!この町のことなら何でも聞いて、なんせここは私の加護を受けたアクシズ教の総本山なんだからね!」

 

得意げに胸を張るアクア、俺は疲れがどっと出てきた。この景観に騙されていたがアクアの言う通り、ここはアクシズ教の総本山なのだ

 

とりあえず

 

「クリス気休めかもしれないけどこれかぶっとけ」

 

めぐみんとは撫でている逆の手で服の内ポケットからマントを出しそれをクリスにかぶせる

 

「わわ、ナニコレ?」

 

「ウィズの店で売っていた認識阻害のマント、効果は実証済み」

 

「待て待て待て!なんだそれ、てかウィズの店ってことは...」

 

「・・・なんかすごい魔力食うんだけど」

 

「そういうこと」

 

ウィズ魔法具店、言わずと知れたアクセルのポンコツ店主のがいる店だ。その店主が和真に背負われているのだが、まぁきのうの浄化魔法はウィズにもあたったようで消えかかっているのだが。まぁそんなことはさて置き効果のほうだが、気配遮断や熱感知対策消臭など結構色々な効果が詰め込まれている一見お得なマントなのだが。デメリットはすごく魔力が食う、そらもうべらぼうに。一定時間経過すると上級魔法並みに魔力を食うのだ、俺は特典のおかげで何ともないのだが

 

「あー、まずいフラフラする」

 

「おっと」

 

手をつないでドレインタッチ

 

「ギャー!!」

 

おっと間違って吸ってしまったようだ、睨まれたので魔力を送る

 

「アトデオボエテロ」

 

なんかろくな気配を感じないので前もって離れておく、俺の予想通り和真やダクネスは哀れアクシズ教徒に囲まれてしまう

 

「先に宿でも行ってるかー」

 

「「「ソウデスネー(ダネー)」」」

 

俺達四人はそそくさと移動し始めた

 

-------------------------------

 

「はっ!?」

 

宿につき遅れてやってきた和真たちに恨み言を言われながらゆっくりしていると、どうやらドレインタッチを行っていたウィズが目を覚ましたようだ

 

「ここは?」

 

「やっと目を覚ましたか、ここは宿だよ。もうアルカンレティアについてるから」

 

和真がウィズに説明するが当のウィズは心ここにあらずで、ようやく口を開いたと思ったらおかしなことを言い出した

 

「きれいな川の向こうでベルディアさんが笑いながら手を振っていました...」

 

三途の川か、てかあの変態自称騎士やはり魂まで消滅させておくべきだったか。なーんて考え事をしいていたら和真から声がかかった

 

「志貴たちはどうするんだ?」

 

「んぁ?なにがだ」

 

「話を聞いていなかったのか?これからだ、お前たちは観光するのか?」

 

俺とクリスに声をかけてくるダクネス、クリスはどっちでもいいのか俺の答え待ちだ。ちなみにアクア、めぐみん、ゆんゆんはアクシズ教の教会に向かったようだ

 

「まぁたまには羽を伸ばすのもいいか、着替えてくっかな」

 

そう言って部屋を後にした

 

-------------------------------

 

「なんだかなぁ...景色が綺麗なのに納得がいかない」

 

「何それ」

 

街を歩きながらひとりごちる、なぜか素直に楽しめないのはここがアクシズ教の聖地だからだろう。ちなみに俺の今の格好はYシャツにアクセルで見かけたジーパンぽいズボン、クリスはいつものショートパンツに上だけ俺のYシャツだ

 

「なぁ気がついたんだけど」

 

「なにさ?」

 

「こうやって手をつないで歩いていたら、恋人と間違われるんじゃないか?」

 

「ここここここ、恋人!?」

 

「どんだけどもってるんだよ」

 

俺は呆れていた、第三者から見たらそう見えるんじゃないかと思ったので言っただけなのだが

 

「そそそ、そんなことないですよ?」

 

素が出てるから、エリス様になってるから。まぁ気にしないのでそのまま手を引いて歩く、クリスはされるがままだ。まぁドレインタッチしていなければクリスは倒れるので当たり前だが、なんか握る力が強くなった気がするが気のせいだろう。なーんて観光をしていると、前から男に追いかけられた女が助けを求めてくる

 

「きゃーたすけてー、そこのお方助けてー」

 

なーんか演技臭い、なのでそのまま見ていることにする

 

「助けなくていいんですか?」

 

「とりあえず様子見で」

 

クリスにはそう言うが助ける気はない、ここは人通りはそんなにないと言っても皆無なわけではない。俺も過去にそういうことをしていたからわかるが、そういうことをするならできるだけ可能性を減らしたいのだ。もちろん俺がやっていたのは人殺しなので余計だ、その俺の心情を知ってか知らずか演技を続ける

 

「あのエリス教徒と思しき凶悪な男が、私を無理やり暗がりに引きずり込もうと...」

 

「おいそこの兄ちゃん!お前はアクシズ教徒じゃねえな、へっ強くてかっこいいアクシズ教徒だったなら逃げ出したところだがそうじゃねえなら遠慮はいらねぇ!!なんせ暗黒神エリスの加護を受けた俺様の邪魔をするっていうんなら遠慮はいらねぇ!」

 

女の方はチラチラこちらを見ているので演技で確定だろう、てか男も早く襲えばいいのに

 

「あーいいですよここで見学していきますからどうぞ」

 

二人の動きがぴたりと止まる、俺は笑顔で続きを促した

 

「あれ襲わないんですか?なんでも無理やり暗がりに連れて行こうとしたそうですが?」

 

「えっと...普通こういう状況なら止めるのでは?」

 

「え?なんでですかお二人知り合いみたいですし、止める必要あるんですかこんな茶番?」

 

対応は笑顔で、二人は流石に笑顔のまま凍り付いていた

 

「いやはや全く面白くなかった茶番ですね、クリス行くぞ」

 

「鬼だね君」

 

ある程度離れるとぼそっと言ってくるクリス、顔を見ていると呆れていた

 

「そうか?」

 

「見てみなよ、いまだあの人たち固まってるよ?」

 

後ろを見るとクリスが言うように固まっていた

 

「いい気味だろ、あれでも反省しなさそうだが」

 

「そうなのかなぁ...」

 

「それに」

 

俺はそこでいったん言葉を切る

 

「俺の恩人を悪く言うような奴に俺は容赦する気はないしな、むしろ人格崩壊していないだけありがたいと思ってほしい」

 

「え?どういうこと?」

 

クリスはわからないのか聞いてくる、まぁ恥ずかしいがいうことにする

 

「ほらエリス教のこと悪く言ってたろ?てことは御神体であるエリス様のことを悪く言ってたわけだからな、俺が今こうしてピンピン居られるのもエリス様やみんなのおかげだしな」

 

そう言って三歩くらい先を歩く、クリスは遅れずについてくる。そんな風に観光をしてると、いつの間にかエリス教の教会前についていた

 

「なんでこんなにおんぼろなんだ?」

 

「失礼じゃないかな君...ここはアクシズ教徒が多いから...」

 

聞いた話だとアクシズ教とは数が少ない割に活動は熱心だとか、色々嫌がらせのほうしか聞かないが

 

「入るか?」

 

「いいの?」

 

「まぁついでだし」

 

てなわけで俺とクリスのエリス教教会の訪問が行われた、と言っても締まってたのをクリスがエリス教ということで入れてもらい

 

中の掃除に外の落書きなどの掃除、アクシズ教徒の追っ払いと仕事は多岐に上る

 

終わるころには夕暮れになっていた

 

「うーん!いいことした後は気分がいいね!」

 

「そうかぁ?俺は別に手伝っただけだしなぁ」

 

実際仕事はクリスとエリス教の人に任せていたわけだし、俺がやったのは簡単な雑務頑固な汚れ落としアクシズ教の追っ払いだ

 

「なんでお礼を素直に受け取れないのかなぁ...」

 

「別にそんな訳じゃないんだが...」

 

そんなことを話していると前から子供が走ってくる、見ていてほほえましいのだが段差に躓いて転んでしまう

 

「大丈夫か?」

 

起こしてやると子供は泣きそうだった

 

「大丈夫?」

 

「ほれ濡らしたハンカチだ、ちょっと染みるぞ」

 

傷口の汚れをふき取ってやる、痛いはずなのに泣き言も言わなかった

 

強い子だ

 

「ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

「気にすんなよ、ほれ」

 

手を取って立たせてやる

 

「痛むところはない?」

 

「うん!もう大丈夫。ねえ親切なお兄ちゃん、お名前教えて?」

 

「うん?ビャクヤシキだ。こっちのお姉ちゃんは、クリスだ」

 

「よろしくね」

 

マントの頭だけを取るクリス、何故助けただけで名前を聞かれるのかは疑問なのだが

 

「ねえお兄ちゃん、ビャクヤシキってどう書くの?」

 

「ん?それは...ここまでやるかアクシズ教」

 

渡された紙を見て静かに怒る、クリスはのぞき込んで目のハイライトが消えた。子供は不思議そうに見ていた

 

「これはとりあえずしかるべきところに持って行くから君は帰っていいよ、今度は怪我しないように気を付けるんだよ?」

 

「う、うん?」

 

子供は納得していないようだが帰ってくれるようだ、子供は悪くない悪いのは親だ。短刀を出し眼鏡を外し、ごみを切るそれはもうひとかけらも残さず。何事もなかったように一言

 

「おれアクシズ教は滅べばいいと思う」

 

「・・・」

 

クリス、いやエリス様は答えなかった

 




浄化してるときのアクアの顔はやばいと思うの。そんなことはさて置きついにアルカンレティア入りました、ウィズの店にあんなマントはあるのだろうか?まぁあったら製作者は間違いなくひょいざぶろーでしょうけど。さてアニメの内容だとクリスとゆんゆんは居ませんが私の作品は居ます!というわけで楽しんで下さい(まぁアニメの内容準拠なのでそこまで出番があるか....



ここからは少しネタバレになりますので見たくない方は読まなくても大丈夫ですよ!
てか見てて思ったんですけどめぐみんはアルカンレティア行ったことあるのにまるで来たことない風にお話進んでましたが、まぁ俺は原作読んでないのでわからないですしWebもここまで行ってないので確かめようがないのですが。少なくとも爆焔だと言ってるわけですから。まぁこういう考察も楽しいですよね


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第十九話 この温泉街に駄女神による騒ぎを!

というわけで残りはこの話入れても二話になりました、次はどうしましょうかねぇ...
まぁそんなことより本編どうぞ!


「ただいまー...」

 

和真が帰ってきたようだが元気がない、というか

 

「「シキ(さん)---!!」

 

「ぬぉ!!!」

 

めぐみんとゆんゆんが飛びついてきた、何故か震えてるし

 

「おいおいどうしたんだこれ?」

 

飛びついてきためぐみんとゆんゆんの頭を撫でながら和真に聞く

 

「まぁアクシズ教徒がな...」

 

「ホーン...大変だったみたいだな。よしよし」

 

普通に頭を撫でている俺を見て和真は首をかしげていた、めぐみんたちは震えは収まったようだ

 

「・・・なぁこんなこと聞くのもおかしいんだけどさ、お前たちの観光はどうだった?」

 

「はぁ?アクシズ教徒に邪魔されながら観光してたけど?」

 

なんで当たり前なことを聞くのが不思議だったが、答える

 

「ならなんでお前そんなに疲れてないんだ?」

 

「普通に疲れてるんだが...」

 

「あれ君たちも帰ってきてたんだ?」

 

「あ、カズマさん」

 

どうやら風呂に入っていたクリスたちが帰ってきたみたいだった、やはり風呂に入ると雰囲気が違うな

 

「たった今だけどな」

 

「なぁクリス、観光はどうだった?」

 

俺の言葉は信用ならなかったのかクリスにまで聞き始めた和真、少し傷つくんだが

 

「えーっと...アクシズ教徒に邪魔されながら観光したけど?」

 

「どういうことなんだ...どういうことなんだ!!」

 

なぜかこの世の終わりみたいな顔をする和真、意味が分からないので俺とクリス、ウィズは顔を見合わせた

 

「えっとどういうことですか?」

 

「俺は...俺はなぁ!この馬鹿がエリス教のネックレスしてるからなそのたびに絡まれたんだ!それでなくても勧誘の多さに嫌になってるのに!」

 

「馬鹿とは何だバカとは!!だが流石カズマだ!」

 

いきなり怒り出す和真、興奮するダクネス

 

「俺に言うなよその馬鹿に言えよ」

 

「言ったんだよ!言っても聞かないんだよこの変態は!」

 

「まぁそうだろうな」

 

わかってたけど愚痴なんか聞きたくない、なので

 

「とりあえず和真、温泉でも入ってさっぱりしてこい。混浴もあるぞ」

 

最後は小声で、和真は...見事釣れたようだ

 

鼻を大きくして風呂に向かった

 

「ダクネス、ダメだよ彼を困らしちゃ?」

 

「そんなことはしてないぞ!」

 

「嘘つけ」

 

小声で言ったので聞こえなかったようだ、クリスは相変わらずダクネスを注意していたがいうことをきかないよだ

 

「てか君らはいつまで俺に引っ付いているのかね?」

 

「「・・・」」

 

返事がないただの屍のようだ、ではなく顔を覗き込んでみるとどうやら二人とも寝てしまったようだ

 

「たく...仕方ねえなぁ」

 

起こさないように細心の注意を払いながらベッドまで移動し、寝かせる

 

「やっさしぃー」

 

「冷やかすな」

 

クリスにチョップをしておく

 

「仲がよろしんですね二人とも」

 

そんな俺達を見てウィズが一言

 

「まぁ仲良くなかったらこんなに喋らんからなぁ...基本俺人間関係淡白だし」

 

「確かに、ギルドとかで見ててもシキパーティーメンバー以外話しかけないもんね」

 

「このメンバーくらいじゃないか俺がまともにしゃべるの」

 

椅子を引き寄せベットの近くに座る

 

「まぁこいつら起きるまではゆっくりしますかね」

 

結局夜まではゆっくりできたのだが、アクアが泣いて部屋に入ってきた

 

「あんまりよー!!私ただ温泉入っていただけなのにー!」

 

「あのアクア様?アクア様の涙が当たるとすごくピリピリするんですー!」

 

扉をバンッ!と開けたと思ったらアクアはウィズに泣きついていた、今の物音でめぐみんたちは起きてしまったようだ

 

「うぅーん...何の騒ぎですか?」

 

「まぁ気にせずお前ら温泉でも入って来いよ」

 

相変わらずアクアと和真の漫才は続いている、横目で見ていると和真が鼻で笑っていた

 

「温泉...温泉!めぐみん、シキさん温泉に入りましょう!」

 

こっちはこっちでゆんゆんが爆弾発言していた、流石にこれは俺とめぐみんも驚いた

 

「はぁ!?」

 

「待ちましょうゆんゆん!冷静になりましょう!」

 

めぐみんがそう声を掛けるが、覚醒しきってないまともな思考ではないゆんゆんは

 

「行きましょう!」

 

何故か腕を掴まれ

 

「ちょっと待てなんでこんなに力強いんだよ!」

 

「ゆんゆんー!!」

 

俺達は温泉に連れていかれた、まぁゆんゆんは脱衣場につく前に正気に戻った

 

なので流石に混浴は入ってないよ?、入ったのはそれぞれの温泉だ

 

-------------------------------

 

「この街の危険が危ないみたいの!」

 

「アホかおまえは」

 

いきなり朝飯を食べていたらアクアが叫びだした、なのでツッコミを入れておく

 

「危険が危ないってなんだ。一晩中泣いてたと思ったら」

 

「管理人のおじさんが言ってたんだけども」

 

どうやらこの頃温泉の質が悪くなっているらしい、昨日街を歩いていても色々噂してたのを思い出した

 

「これは我が教団を危険視した魔王軍が真っ向勝負では勝てないと踏んで、温泉という大事な財源を奪いに来たのよ!」

 

「へっ...」

 

俺は鼻で笑ってやった、まぁアクアの推理も間違いではないだろう

 

真っ向勝負したくないしアクシズ教徒とかと、和真は和真で

 

「ソウナンダスゴイネ」

 

「本当よ!信じてよー!!」

 

興味なさそうだった、そんな和真にアクアは泣きついていた

 

「まぁアクシズ教団が疎まれてドン引きされているのは事実ですが、そこまで回りくどいことをしますかねぇ」

 

めぐみんの意見に賛成だった、そんなめぐみんにアクアは聞いてないのか

 

「私はこの街を守るために立ち上がるわ!というわけでみんなも協力してくれるわよね!!」

 

そんなことをほざいていた、もちろん

 

「パス1」

 

「俺は散歩とか、観光で忙しいし」

 

「私もアクシズ教徒の恐ろしさを知ったので、もう関わりたくありません」

 

「私も...」

 

「あはは...」

 

ダクネス以外はアクアに協力しないようだった、まぁダクネスは何にも言っていないが

 

そんな俺たちにアクアは駄々をこねるが

 

「おい、俺はまだ食事中だ。静かにしろ」

 

俺が殺気を飛ばすと黙る、黙ったが視線はダクネスに

 

「わ、私はその...あれだ」

 

まぁ根はやさしいからな、答えに困っただけネスにアクアはこれ幸いとたたみかけた。可哀そうなことにダクネスの持っていたグレープジュースはアクアに浄化されてしまった、浄化されたのに協力する羽目になったダクネス

 

合掌、ナム

 

「そうだ、なんだかんだ言ってウィズはお前に甘いからウィズは?」

 

「ウィズなら私が一晩中泣きついてたら、浄化しそうになったから休ましてるわよ?」

 

ウィズが不憫すぎる、可哀そうに

 

-------------------------------

 

結局和真と別れ俺は足湯に浸かっていた、日本にあったが入ったことはないのだがいいものだ

 

「あーいいわー」

 

「何か足だけなのに体全体がポカポカしてきた」

 

「温泉饅頭がおいしいですねー」

 

「はー...」

 

何故かクリスにめぐみんとゆんゆんが付いてきた、まぁクリスはマントがあるので強制なのだが

 

「にしてもほんとろくでもない湯治になったなぁ...」

 

クリスに聞いて来たくないと思ったが、本当にこなきゃよかったと後悔している。温泉はいいのだが、人が

 

「それに巻き込んだのは誰かな?」

 

クリスは笑いながら俺に聞いてきた、なので俺は

 

「俺ですが何か?」

 

「なんで威張ってるのさ...」

 

威張って言うと、クリスは呆れていた

 

「なんか私が言い出したとはいえ、すみません」

 

珍しくめぐみんが謝ってきた、それだけ精神的に追い詰められているのだろう

 

なんせ

 

「あーーーーらーーーーー!!」

 

「あん?」

 

声がした方に殺気を飛ばすとスタスタと歩き去って行った、ここに来て何回も同じ光景を見た。このように勧誘が後を絶たないのだ、まぁ俺はアクシズ教徒にすら危険人物扱いされているようだが

 

「シキさんのおかげで声をかけられるのが減ってるのでありがたいです」

 

ゆんゆんは死んだ目をしていた、まぁ人がいいゆんゆんだ昨日は大変だったのだろう色々と

 

「まぁアクシズ教徒にも危険人物認定されたけどな俺。なにわともあれ二人ともお疲れさん」

 

めぐみんとゆんゆんの頭を撫でておく、顔が赤いが大丈夫だろうか

 

クリスはクリスでなんかもの欲しそうに見てるし、なので

 

「後でお前も撫でてやろう」

 

「・・・なんで偉そうなのさ」

 

「悪魔倒すべし!魔王しばくべし!」

 

「・・・あー温泉饅頭うめー」

 

「気持ちはわかる、わかるけど。聞こえないふりしたって無駄だと思う」

 

「ごもっとも」

 

アクアが何かを叫んでいたので聞こえないふりをしたのだが、クリスにそう言われ諦める。幸いアクアが立っている噴水は近いので、このまま見ることは可能なようだ

 

「我が親愛なるアクシズ教徒たちよ!この街では現在魔王軍による破壊活動が行われています!」

 

「ます...」

 

「うわー、ダクネスかわいそ」

 

「ならなんで笑ってるのさ...」

 

「そんなもん愉悦だからだろ」

 

「・・・」

 

最早クリスの俺を見る目がやばい、だが気にしない

 

「何が行われているのかというと、毒が混ぜられています!多くの温泉で破壊活動が行われていたことを確認しました!」

 

「しました...」

 

それにしても不思議だアクシズ教徒はみな狂信者みたいなものだし、力を落としたとはいえ目の前にご神体がいるのだから気が付きそうなものなのだが

 

「考え事ですか?」

 

「うん?ああ」

 

手が止まったことが気になったのだろう、めぐみんが俺に聞いてきた

 

「お前も知っての通り、アクアはあんなんでも一応神だろ?目の前に崇拝している神がいるのに、気が付かないもんだなーって。アクシズ教となんかみんな狂信者みたいなもんだろ?」

 

「まぁ確かに...」

 

ゆんゆんも納得したようだ

 

「それか...いや、可能性だからいいや」

 

「そこまで言われると気になるのですが...」

 

「まぁ気にすんな」

 

撫でるのを再開する、俺が考えた可能性それは知っていてなお放っておいているかだ。まぁそんなのは本当に一部の狂信者達だろうし、ほとんどの奴らは多分気が付いてないはず

 

「あわわ...どうしよう...」

 

なんて思考していたら焦っているクリスの声が聞こえた

 

「どした?」

 

「あれ」

 

指さした方向を見ると相変わらずアクアが、噴水のうえで喋っている場所だった

 

「お集りの敬虔なるアクシズ教徒よ、私の名はアクア。そう、あなたたちが崇める存在水の女神アクアよ!あなたたちのを助けるために私自らこうしてやってきたの!」

 

「あーあ...お前ら帰るぞ」

 

「待ってください!いきなりどうしたんですか?」

 

「あれを見ろ」

 

アクアは自分の信者たちにけちょんけちょんに言われていた、それは別にいいのだが内容が問題だった。魔王軍のものだとか何とかまで聞こえてくる

 

「昨日この街に来た時にアクアと一緒にいたとこは見られてるし、それにパーティーだとも知られてる可能性がある。ここにいたら、下手したら厄介ごとに巻き込まれるぞ」

 

「「「・・・」」」

 

三人の目のハイライトが消える、まぁ最悪の事態の話だがありえないことではない

 

「行くぞ」

 

一応潜伏まで使いその場を離れたのだった

 

 

その夜宿に戻ってきたアクアは早速泣いていた、それはどうでもいいのだが

 

「あー嫌な予感がする」

 

「おいやめてくれ!志貴の嫌な予感て当たるんだから!」

 

そんなこと言われても困る、するものはするのだから

 

「私は寝ますおやすみなさい」

 

「私も」

 

紅魔族の二人はさっさと寝てしまうようだ、俺もそうしたいが

 

「悪魔倒すべし、魔王しばくべし!」

 

遠くからそれも大人数でやってきたようだ、まだ小さいから他の奴らには聞こえてないらしい

 

「はぁ....」

 

「どうしたの深いため息なんてついて?」

 

「なに、お前もじきにわかる」

 

声が近くまで聞こえたときにはもう宿は囲まれていた、和真は冷や汗を流しながら

 

「なぁお前の嫌予感て」

 

「十中八九これだろうな」

 

和真はその場で崩れ落ちた、だがアクアは違うのか窓際に寄っていく

 

「なになに!うちの子たちが私の話を信じてきてくれたのかしら」

 

だが現実は非常だ、アクアのことを魔女なんて言う始末

 

てかアークウィザードがいるのに魔女とかウケる、まぁとりあえず宿の前で騒がれるのは迷惑なので

 

「冬将軍と七夜どっち持ってくかな」

 

「・・・ちょっと待って、どこ行くの?」

 

クリスの言葉にニッコリ笑いながら答える

 

「ん?決まってるだろ。偉いやつはいないだろうが、ほとんどのアクシズ教徒が集まってるわけだろ?ならここで皆殺しにしとけば少しは平和になるだろ?」

 

流石にアクアに泣きつかれた

 




石鹸洗剤の場面はカットしました、あの場面好きなのですがそれやるとめぐみんが精神的に追い詰められているので...それとやっぱりアクアは泣き顔可愛い、でもそれに巻き込まれるウィズは不憫すぎる...
そんなわけで次が最終話、OVA入れても残り三話(新しく出る方はまだなので含めてないですが)最終話が終わった時点でアンケート取ろうかと思っているのでどうか皆さん、協力ください。
それでは投稿できたらまた明日


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第二十話 この魔眼持ちの仲間達に素晴らしい世界で祝福を!

というわけで最終話になります!お話は後書きの方で
本編の方どうぞ!


「どうするんだよこの状況」

 

冬将軍を腰に差し、七夜は内ポケットに入れてアクアに聞く。流石に皆殺しは駄目だと言われたので、気絶はいいだろうと言ったが駄目らしい。この状況は頭痛いので早急に何とかしたいのだが

 

「「・・・」」

 

紅魔族組は目のハイライトが消えて虚空を眺めていた、どんだけ精神的に来てるんだよ。アクアはアクアでない頭で考えているが、まぁ良い案が出るはずもない

 

「和真ー、なんかいい案ないか?」

 

「・・・アクアを差し出せばいいんじゃないか?」

 

「カズマさん!?」

 

「冗談だよウィズ」

 

流石にそれはこの状況では得策とは言えないのは和真もわかっているようだ、声は本気だったが

 

「とりあえず逃げない?このままじゃ宿にも迷惑かかるし」

 

「て言ってもどうやってだ、出入り口は無理だぞ?」

 

アクシズ教徒は宿を取り囲むようにしているので表はおろか裏口も無理だろう、だが和真は何かを思いついたようだ

 

「おいアクア、お前の出番だ?」

 

「え?」

 

カズマの策は簡単だ、後ろの山に面した窓からの脱出だ。着地の方の問題は?と思うだろうがそこは心配ご無用、アクアの羽衣だ。羽衣は神器と同等のもので、しかも伸縮自在ときた。どんだけ便利なんだよと思わずツッコミを入れたいが、それは置いといて後はクリスの潜伏を保険で掛けたぐらいだ。それでも脱出したことはばれたのだが、今もアクシズ教徒がそこかしこでアクアを探している

 

「源泉が怪しいと思うの」

 

路地裏に隠れるとアクアがいきなりそんなことを言い始めた

 

「ほーん、で?」

 

「そこを浄化すれば温泉が元に戻ると思うの!臭いにおいを根元から絶つの」

 

「いたぞー!パチモンだー!!」

 

どうやら信者に見つかったようだ、てかアクアのことパチモンとか

 

「パチモンとか...ぶふっ」

 

「笑ってるばいいじゃないだろ?というかあんなこと言ってる奴ら助けなくて良くていいんじゃないか!」

 

俺達は走りながらアクアに言うが

 

「でも!あたしの可愛い信者たちがぁ!」

 

アクアが半泣きである

 

-------------------------------

 

源泉の方についたのだが

 

「ねぇ!私アクシズ教のアークプリーストなんですけど!ほら、私の冒険者カードをちゃんと見て!!」

 

そう言ってカードを見せるアクアだが、状況は芳しくなかった

 

「いくらアークプリーストでも無理なものは無理なんです。先ほどはいられた管理の方からも、誰も入れるなと言われてまして」

 

「管理の人?」

 

カズマが復唱する、俺も少し気になった

 

「すみません。管理の人って言いましたけど、管理の人ってこの時間によくここに来るんですか?」

 

「ん?どうだったか...でもこの時間はあまり来ないような気がするな」

 

「ども」

 

あまり来ないか

 

「この世界に姿を変えるような魔道具や魔法ってある?」

 

隣のゆんゆんに聞いたのだが

 

「どうなんでしょう...ウィズさんどうなんでしょうか?」

 

「一応あるにはありますが高価ですよ?」

 

「ありがと」

 

「どうしたんですかシキ?」

 

「いや?管理者が偽物の可能性が出てきた」

 

「どういうこと?」

 

クリスが聞いてくる、なので俺の推察などを言う

 

「なるほどね...」

 

クリスは顎に手を当てて頷く、めぐみんやゆんゆんも同じだった

 

「でもさ、仮に偽物だったとして目的は?」

 

「さぁ?でもアクアの話が本当なら」

 

「温泉が汚染されるということですか?」

 

俺はめぐみんの言葉に頷く、あくまでも予想だ

 

「でも本人だったら?」

 

「それは俺の勘違いで済むから結果オーライでしょ」

 

「おいお前ら、そんなとこで会議やってなくていいからこっち手伝ってくれ!」

 

和真の方を見てみるとダクネスと取っ組み合になっていた

 

「何やってんの?」

 

本当に何やってんの、見るとなんか胸元に手を伸ばしているが

 

「ほらペンダントだよ!ぐお!?」

 

「あぁ...」

 

どうやらダスティネス家のペンダントが欲しかったようだ、ただ事情を知らない人から見たら

 

「胸揉みたいようにしか見えないぞ?」

 

「「なっ!?」」

 

和真とダクネスが同時に声をあげる、どうやら気がそれたようだ

 

「ななな!!///」

 

「何言ってるんだよお前は!?」

 

「え?何ってお前たち恋人だからってこんなとこでそんなプレイしなくても?」

 

「会話にすらなってない!?」

 

ダクネスは相変わらずこういう会話には弱いようだ、いい感じに無力化できた。なので目で和真に合図する、伝わったようだが滅茶苦茶悔しがっていた

 

「くっそう、とったどー!」

 

「あぁっ!?」

 

ダクネスは気が付いてないようだが胸に触れたのは黙っておいてやろう、和真が門番に見せると本物だとわかったらしく謝っていた

 

「ところでさっきのは本当なんですか?」

 

「さっきのって?」

 

「ダクネスさんとカズマさんが付き合ってるのです」

 

めぐみんとゆんゆんが詰め寄ってくる、もちろん

 

「嘘に決まってるだろ?仮に本当だったとしてそんなことここで言うわけがないだろ?」

 

「ほ...」

 

話しているとクリスも真に受けていたのかほっとしていた、まぁそんな話をしている間に和真たちは漫才していたようで

 

「ちょろいな」

 

「ちょろいわね」

 

どうやら和真にうまいこと言われたようでダクネスは嬉しそうにしていた、ちょっろ。それから移動すること数分、温泉が見えてきたのだが

 

「おい黒いぞこの温泉!」

 

「毒なんですけど!思いっきり毒なんですけど!?」

 

確かに和真の言う通り温泉は黒かった、アクアが言うには毒らしいが

 

「汚染されてるってことは、やっぱさっき門のとこ通ったのは管理人じゃないってことで間違いなさそうだな」

 

「ですが管理人じゃないにしてもかなり強い毒ですよ?」

 

「仮にこの濃度の毒を持ち歩くとなるとかなり気を付けないといけないことになりますし...」

 

めぐみんとゆんゆんが補足してくれる、だが魔道具で変装した人間がこんなものを持ち歩くのはほぼ不可能らしい

 

「・・・なぁウィズ、モンスターで猛毒を持つのはいるか?」

 

「モンスターですか?それならスライムとかなら可能でしょうけど...」

 

「少し待ってください、こんなことをするような高い知能を持ったモンスターなんて」

 

「いることはいるでしょうけどなぜわざわざこんなことを?」

 

「そんなの本人に聞くしかないだろ?」

 

どうやら和真は移動し始めたようで俺達もついて行く

 

「待て、誰かいる」

 

和真の言葉で俺たちは近くの岩陰に隠れる、遠目だが誰かいるのを俺も確認できた

 

「管理人じゃなさそうだな」

 

「あの人は...」

 

「知り合いか?」

 

管理人は老人という話だったし、どうやら和真の知り合いのようだ

 

「昼間のせんざ...じゃなくて、おい待て!身投げしようとしてるぞ!!」

 

「待つんだ!早まるんじゃなーい!!」

 

と言って飛び出す和真、俺は特に焦らず岩陰から普通に出る。だってただ腕を源泉に突っ込んだだけなのだから、正確には高温のはずの源泉に突っ込んだのだから

 

「ありゃモンスターで決まりだな」

 

「どういうことですか?」

 

「寄って見てみればわかる」

 

「「?」」

 

二人は不思議そうにしていた、クリスはというとこの距離でも見えるのだろう視線が厳しくなる。俺達が近づくと男は居住いをただし、愛想笑いを浮かべた

 

「これはこれは観光ですか?実はこの温泉腰痛肩こり美容効果その他諸々

 

「はぁ...もういいよ。いい加減正体を現せよ」

 

「・・・何のことですかね?」

 

俺は男の話を遮りそう言うと、笑顔が固まり苦し紛れにそう絞り出した

 

「この方、見覚えが...」

 

そうウィズが言うと顔をそらす男、確定だ

 

「これだけ情報が集まればわかったわ」

 

「シキさん?」

 

ゆんゆんが不思議そうに俺を見てくる、だがウィズの言葉ではっきりした

 

「お前魔王軍幹部、デットリーポイズンスライムのハンスだろ?」

 

「そうですハンスさんです!」

 

ウィズは同じ幹部なので嬉しいのかハンスに寄っていく、俺たちは逆に距離を取る

 

「魔王軍幹部ってどういうことだよ志貴」

 

「というよりなんでお前がそんなこと知っているのだ?」

 

ダクネスや和真の疑問はもっともなのだが、簡潔に答える

 

「あらかたの賞金首の特性や名前は頭に入ってるからな、ほら死にたがってた時に」

 

そんな話をしているとハンスは逃げようとしているようだが、俺がその前に立つ

 

「どこに逃げようっていうんだハンス」

 

「そんな風に気安く呼ぶんじゃねぇ!」

 

気安く呼んだ覚えはないのだが、まぁ逃げようとしなくなったし良しとしよう

 

「はぁ、年月をかけ隠密にやってきたと言うのに...ウィズ確かお前結界の維持以外は魔王軍に協力しない、その代わり俺たちに敵対はしないっていう互いに不干渉って関係だったはずだ。それがどうして俺の邪魔を?」

 

「え!?私ハンスさんの邪魔をしてしまいましたか!?久しぶりに知り合いにあったから声をかけただけじゃないですかぁ!」

 

「それが邪魔になってんだ!」

 

本人にその気はなかったとはいえ、天然怖いなぁ

 

「アンタのせいでどれだけ苦汁をなめたか...覚悟しなさい」

 

珍しくアクアがマジ切れしているらしい、まぁあんなことがあればね

 

「どうするんだウィズ。俺とやりあう気か?」

 

「この人たちは私の友人なんです!話し合いとかできませんか?」

 

「相変わらずリッチーになってから不抜けてるんだなウィズ。お前がアークウィザードとして俺達を狩りまくっていたあの時には、話し合いなんて言葉は出てこなかっただろうに!」

 

「はぁ...どうしてこう魔王軍幹部の奴らっていうのはおしゃべりなやつばっかりなんだ?」

 

「お前いつの間に!?」

 

後ろに回った俺を確認しようとしたハンスなのだが、腕が落ちる

 

「貴様!!」

 

「遅えよ」

 

回し蹴りをくらわし距離を取る、足に違和感を感じ見てみると

 

「靴融けてる...」

 

「シキ!アホですかあなたは!デットリーポイズンスライムですよ、猛毒を持ってるんですよ!」

 

「あ、そっか」

 

普通に人型だったので忘れていたが、こいつやばいやつだった。それを頭に入れ気を引き締め直す

 

「いいだろう...人は俺の本性を見るのと同時にひれ伏し許しを乞うてきた...お前は骨がありそうだ。俺の名はハンス、魔王軍幹部デットリーポイズンスライムのハンスだ」

 

そう言うとハンスの人の形が崩れ始める、だがその前に聞きたいことがあった

 

「一つ聞きたい、本物の管理人はどうした?」

 

「食った」

 

その言葉を聞いた瞬間魔力が爆発的に上がるのを感じた、そして長らく感じていなかった殺気。俺は刃渡りの長い冬将軍を振るう、氷漬けは免れたようだ

 

「まったく危ないじゃないかウィズ」

 

「すみませんシキさん、ですがそこから離れてください。今の私は加減が効きませんから」

 

普段温厚なウィズからは考えられない殺気、俺はその心地いいさっきに思わず口笛を吹く

 

「ヒュー、これが氷の魔女の本気か」

 

流石に睨まれる、これ以上いると俺も氷漬けになされそうなので離れておく。和真たちはウィズの豹変に声が出ないようだ、こんな状況じゃなきゃ俺も本気のウィズに手合わせを願っていたところだ。そんな風に静観をしていたがハンスの形が完全に人型じゃなくなった、ダクネスはこんな状況でも興奮していた。アクアはアクアで源泉を浄化していた

 

「さてこんな状況になったわけだが、クリスあの馬鹿どもを安全なとこまで避難させてくれない?」

 

「・・・シキはどうするのさ?」

 

「もちろんあれを殺すけど?」

 

「そんな!危険です!!」

 

ゆんゆんはそういうのだが

 

「あれを放っておいた方が危険でしょ」

 

「それは!...そうですけど」

 

納得いかないのか文句を言おうとするがでてこない

 

「とりあえず和真、なんかいい策ない?」

 

「そんなこといきなり言われても!...くそ!ウィズさっきみたいに氷漬けに出来ないのか?」

 

「今の私の魔力では流石にあの大きさを凍り付かせることはできません!なんとか小さくできれば」

 

「小さくねぇ...」

 

結構な大きさだ、流石にこの大きさを解体するのは骨が折れるどころか不可能に近い。クリスやダクネスが誘導しているが馬鹿どもは一向に離れる気配はない、それどころか色々なものを投げていた

 

「ん?」

 

「志貴どうしたんだ?」

 

「あれを見ろ」

 

ある方向を指さす

 

「スライムでも選り好みするんだな...」

 

「あれ使えないか?」

 

「誘導には使えるだろうが...ん?」

 

目を細める和真、俺もそちらを見ると骨が。どうやら馬鹿どもの話によると源泉の管理人らしい、どうやら完全に消化するまでには時間がかかるらしい

 

「・・・腹は決まったか?」

 

「最後の詰めは頼む」

 

「あいよ」

 

「アクア!完全に蘇生されていなければ蘇生はできるか!!」

 

「めぐみん!あっちに行って爆裂魔法の準備をしてくれ!ゆんゆんは俺の補佐を頼む!!」

 

カズマと視線を合わせ、頷き合いそれぞれに指示を出す。その間にもハンスはアクアを食おうと近づいていた

 

「お前の相手は俺達だ!ゆんゆん!」

 

「はい!ライトオブセイバー!!」

 

いつもより気合が入っているのかかなりの太さの魔法が発動する、俺は死の点に向かって七夜を投擲する

 

「!!!?」

 

死の点を突いたことにより隙ができる、その隙にライトオブセイバーでハンスの体の一部が切れる

 

だがアクアを食おうと近づいていたため、切られたハンスの一部は源泉に落ちそうになっていた

 

「あっ!?」

 

「っ!!」

 

俺は久しぶりに魔眼を発動する、流石にこの状況では仕方ないだろう

 

一気に体感速度を限界まで上げ、一瞬で凍らせある程度の大きさに切った氷を蹴る

 

「?」

 

足に違和感を感じみてみると、戦闘用のズボンが溶けていて足が軽く爛れていた。だが戦闘には支障がないので次の段階に移る、魔眼を切りながら和真の方へと向かう。俺に迫ってきたようだが、和真が投げた温泉饅頭で和真に視線が向いたようだ。てか温泉饅頭でヘイトが稼げるって、本能怖い

 

「お前のエサは、俺だぁ!!」

 

そう言って俺とは別方向に走り出す和真、それについて行くハンス

 

「後は頼んだぞ!みんなー!!」

 

和真は崖から飛び降りる、それを追うハンスも和真を飲み込みながら崖の下に落ちる

 

「めぐみん!!」

 

「わかってます!!・・・最高最強にして最大の魔法、爆裂魔法の使い手、我が名はめぐみん。我に許されし一撃は同胞の愛にも似た盲目を奏で、塑性を脆性へと葬り去る。強き鼓動を享受する!哀れな獣よ、紅き黒炎と同調し、血潮となりて償いたまえ!穿て!エクスプロージョン!」

 

これまでで一番すごい爆発と爆風だった、俺は内心でめぐみんを褒め称えながらハンスを見る。だがあの爆裂魔法を食らってもなおハンスは半分以下にならなかった、ならば

 

「ゆんゆん、頼むぞ!!」

 

「っ!!はあああああぁぁぁぁ!!!ライトオブ...セイバー!!」

 

全魔力を注ぎ込んだのだろう、ハンスを真っ二つとはいかなくても三分の一ぐらいは切り離した

 

「お前も運が悪かったなぁ!!」

 

小さいほうに狙いを定め冬将軍を振るう、俺が素で出せる最高速で振るう

 

ハンスの一部だったものは細切れになりながら氷漬けになった、なったのだが

 

「まさかこうなるとはなぁ...」

 

腕を急いで切り落とす、断面が氷漬けになるので止血はいらないのだが。まさか切ろうと腕を近づけただけで腕が腐り、しかも毒が回りそうになるとは

 

「カースドクリスタルプリズン!!」

 

ウィズが魔法を発動したようで、俺は急いでその場から離れる。見事氷漬けになるハンス、どうやら成功したようだが気は抜けない。そんな風に崩れる氷を見ていると、クリスたちが近づいてくる

 

「もう馬鹿!!何やってるのさ!」

 

「本当ですよ!」

 

「すぐアクアさんに治して貰わないと!」

 

「それより和真が先だろ...」

 

流石にこの状況だが呆れる、和真なんか骨だぞ骨。ダクネスはダクネスでめぐみんを運んでウィズの方に行ったようだ、やったかとか言うのはフラグにしか聞こえないのでやめて欲しい

 

「俺をここまで追いつめるとはなぁ...」

 

最後まで残っていた氷の一角が割れる、そこから出てきたのはベホマスライムのようなハンスだった。まぁ色が毒々しすぎて間違うことはないが、なんか言っているが放っておく。だってこんな状況でもとある一団の先頭にアクアがいるのだから

 

「悪魔倒すべし、魔王シバクべし...」

 

今回はアクアに譲ることにする、てか俺も片腕で戦うのは面倒だし

 

「ゴッドブロー!!」

 

見るのはカエルに食べられた最初のころ以来だが相変わらず拳が光っていた、てか

 

「触れて大丈夫なのかよ?俺一応こんなんなったんだが」

 

無いが右腕の方を見る、俺がこの通りなのだが

 

「心配ないよ、アクアさんの神器の効果忘れた?」

 

「あー」

 

状態異常無効でしたね、なら安心して見てられる

 

「ぐうぅぅぅぅぅ!!何かと思えば、そのくらいでは俺は倒せんぞ!このへなちょこプリーストがぁ!!」

 

拳が呑み込まれるがアクアに焦りの色はない、そして何を思ったのか馬鹿どもはアクシズ教の教義を言い始める

 

「アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い!嫌なことからは逃げればいい!逃げるのは負けじゃない、逃げれば勝ちという言葉があるのだから!迷った末に出した答えはどちらを選んでも後悔するもの、どうせ後悔するのならいまを楽ちんな方を選びなさい!汝老後を恐れることなかれ、未来のあなたが笑っているかそれは神ですらわからない...なら、今だけでも笑いなさい!悪魔倒すべし、魔王しばくべし!」

 

「なんだろう良いシーンなのに、全く感動がない」

 

流石にこの状況には俺やクリス、めぐみん、ゆんゆんは苦笑いだ

 

だがそんな信仰のパワーみたいなものが、アクアの左の拳に集まっていく

 

「かわいい信者たちの大切な温泉を穢したその罪、万死に値するわ!!神の救いを求め懺悔なさい!」

 

なんかアクア自身も輝いている、てか魔法陣がかなりの量展開されているのだが

 

「なぁあれやばくないか?」

 

そうクリスに聞こうとした瞬間

 

「エリスの胸はパット入り!!」

 

なんて声が聞こえ隣の温度が一気に下がる、めぐみんやゆんゆんなんて離れてるし

 

「シキ」

 

「はい」

 

「あれを止めてください」

 

「ラジャー」

 

今まさに振り下ろさんとするゴッドレクイエムを俺は左手で殺した

 

「悪いなアクア、それやったら嫌な予感がするんでな」

 

口にくわえていた回収した七夜を左手に持ち、ハンスの死の点に突き立てる

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

流石に小さくなっているだけあって濃度も濃いようで、俺はそのまま意識を失った

 

-------------------------------

 

「これで通算三回目、転生の時合わせたら四回目か」

 

「すみません...」

 

いい加減命の価値が軽くなってくる今日この頃、まぁだからと言って死にたいわけではない。エリス様に迷惑かけることになるし、めぐみんやゆんゆんに怒られたり泣かれたりするのは堪える。何故かいつものところに行くとエリス様に謝られる、何故だろうか?

 

「えーっと?」

 

「あんなこと言われたとはいえ命令するように言ってしまって...」

 

「あぁ、エリスの胸はパット入り」

 

「・・・」

 

それまでの照れてるような雰囲気から、絶対零度の目で見られる。これはその筋の人からしたらご褒美ではないだろうか、もちろん俺は違うが

 

というか

 

「口に出ただけなので謝りますけど、そんな気にするほどのことですかね?いやもちろん女性ですから気にするんでしょうけど、別に俺からしたら胸の大きさなんて気にしないですけどねぇ...」

 

視線がいくらか柔らかくはなるが厳しいままだ、まぁ俺が言ったところで枯れているので説得力ないのだが

 

「別に小さくても大きくてもどっちでもいいと思うんですけどねぇ...」

 

「・・・なら志貴さんはどうですか?」

 

なんとエリス様はそんなことを聞いてきた、普通の男なら滝のような汗をかきながら誤魔化すところだろうがそこは俺だ、別に枯れているので問題ない

 

「俺ですか?俺の意見は世間一般的な男性の総意みたいに捕らえられても困るのですが...枯れてるわけですし。それでも意見を言うとしたら、別に気にしないですね。俺に関してはセフレとかも興味ないですし、てか女性をそういう目で見ること自体失礼なような気がしますし。まぁ身体的特徴でいじることはありますけど、本気でけなしてるわけじゃないですし」

 

「・・・」

 

さっきまでとは違った意味でジト目で見られる、まぁいつものことなので慣れたが

 

「はぁ...まぁ今回のことは私にも責任がありますので特にお咎めはありません。どうせ私の書類仕事が増えるだけなので...」

 

最後の方はよく聞こえなかったが背中が若干すすけていた、それにしても今回は蘇生までが長い

 

「そういえばあの後どうなりました?」

 

「えーっと...魔王軍幹部のハンスは志貴さんが殺しきりました、ですけど手柄を盗られたアクア先輩が号泣してその...泣き止ますのに時間がかかりまして、それから和真さんの蘇生に取り掛かったので...」

 

「俺の蘇生が遅れていると...」

 

「はい...それに和真さんの場合は骨だけの状態でしたので蘇生は難しくなかったのですが、志貴さんの場合だとまず体内から毒を完全に浄化しなければならないので」

 

「なるほど」

 

まぁまだまだかかるということが分かったので、エリス様と雑談でもしてよう

 

「エリス様今回の湯治はどうでしたか?」

 

「あはは...色々ありましたけど楽しかったですよ?いい息抜きになりました、ありがとうございます」

 

「まぁまだ終わりじゃないですけどね」

 

お礼を言うエリス様に俺は苦笑してそう返す、これでは湯治が伸びそうな気がする

 

「そうですね...」

 

エリス様もこれから起こることが思い浮かんだのだろう、苦笑していた

 

「志貴ーリザレクションかけ終わったわよ、早く帰ってきなさい!ゴッドブロー喰らわしてやるわ!!」

 

話がひと段落したところでアクアから声がかかる、どうやら相当怒っているようで物騒なことを言っている

 

「さて、エリス様お願いします」

 

「はい」

 

指パッチンをすると前回と同じく門が開く、体の浮遊する感覚

 

「あ、そうだ一つ言い忘れていたことが」

 

「?なんでしょうか?」

 

もう少しで転生というところで声をかける

 

「そのうちエリス様をここから連れ出しますから、俺旅行に目覚めたので」

 

「はい?」

 

その時のエリス様の顔は面白かったが、流石に時間がない

 

「天界規定とかそんなもん俺は知ったこっちゃないですからね、というわけで近いうちに絶対ここから連れ出しますので。ちなみに俺は有言実行というわけじゃないですけど、宣言したら必ず実行するので覚悟してくださいね」

 

言い切ると丁度転生したようだ、最後のエリス様の表情は苦笑していた

 

-------------------------------

 

「・・・」

 

意識が戻ると空が明るくなり始めていた、最後に見たのは真夜中だったのだが

 

「ゴッドブロー!!」

 

「いきなりかよ...」

 

二、三回転がり体を起こす

 

「シキ(さん)---!!」

 

起き抜けのゴッドブローを避けると今度は、めぐみんとゆんゆんが抱き着いてきた

 

「あーまったく、泣くな泣くな」

 

俺は苦笑をしながら二人を撫でてやる、そんなほほえましい状況の中アクアは

 

「よーし、二人とも...そのまま抑えてなさい...」

 

指をパキポキ鳴らしながら近づいてきた

 

「流石にお前はこの状況だぞ?自重しろよ」

 

「まぁまぁアクア」

 

「ちょっと二人とも離して!これは私と志貴の問題よ!!」

 

後ろからダクネスと和真に抑えられるアクア、暴れているが拘束はほどけないようで

 

こちらを恨めしそうに見ていた、正直言って助かった

 

動けない状態ではないが、二人が泣きついてきているので動きにくいのだ

 

「お帰り」

 

「おうクリス」

 

クリスは苦笑しながら俺にそういう、だがエリス様としてはさっきまであっていたので多少変な感じだ

 

「和真もお疲れさん」

 

「あぁ...志貴もお疲れさん」

 

俺たち二人は苦笑しながらお互いをねぎらった

 

結局めぐみんたちは泣きつかれてしまい眠ってしまった、ダクネスとクリスが運んでくれたので俺は普通に歩いていた

 

まぁ一応生き返りたてなので気を使ってくれたのだ、まぁそんな状態でもアクアはゴッドブローをやってきてるのだが全部いなしておいた

 

そして・・・

 

「ほんとろくな湯治にならなかったな...」

 

俺は馬車の荷台で揺られながら今回の湯治を思い出す、ほんと最初から最後まで碌な湯治じゃなかった

 

「それをわかってて誘うのはどうなのさ?」

 

クリスがふざけて中から声をかけてくる、ちなみに行きと同じ馬車だ

 

「悪うござんしたね」

 

「よろしい」

 

満足そうな声だ、ちなみに和真たちは先に帰った。アクアはぐずっていたが、いまだアクアが御神体だと信じていない信者も多く。温泉をただのお湯に戻そうとしたこともあり、ハンス討伐の功労者と相殺になった。まぁ源泉の管理者は、ゴッドレクイエムのせいで源泉が浄化されそうになったのを薄々感ずいているようだった。そういう意味で居づらいこともあり、和真はダクネス、アクア、ウィズと共にテレポート一足先にで帰った。俺は俺でどうせアクシズ教徒に危険人物認定されているならと開き直り、追加で湯治を楽しむことにした。と言っても声をかけられることはあったので、純粋に楽しめたかと言われれば微妙なところだが

 

「それにしても意外でしたね、追加で湯治をするなんて」

 

「まぁアクアのせいでゆっくり出来なかったからな」

 

「あはは...」

 

実際俺はあのハンスを討伐した張本人ということで余計危険人物として見られていた、そのおかげで段々声をかけられる回数も減っていったのだが

 

「お、アクセルの街が見えてきたみたいだね」

 

千里眼を発動する、どうやら本当にアクセルが見えてきているようだ

 

「さて今日は帰って寝直すか、クエストは明日からでいいし」

 

「あんなことがあってもクエストに出るんですね...」

 

「まーなー」

 

「気のない返事ですね...」

 

紅魔族二人は呆れなのか諦めなのか判断つかない声を出す、まぁやめる気はないし。アクセルにつき馬車のおっちゃんに別れを告げる、街を歩くと色々なところから声をかけられる。本当にアクセルに戻ってきた感じがしきていた、そして

 

「さて...」

 

「「「ただまー」」」

 

「お邪魔しまーす」

 

クリスたちと共に家に入ると、和真や他のメンバーが迎えてくれる

 

とりあえず...俺たちの戦いはこれからだ!!

 

「打ち切り最終回みたいだな...」

 

「和真、発言メタすぎ。まぁアニメは三期の情報ないしな」

 

「お前もメタ発言じゃないか」

 




はい、というわけで最終話です。ハンス戦最後は変えさせてもらいました、志貴に手柄を立てさせるのは正直微妙だったのですがアクアがあんなふうになるのは少し不憫に感じたので。
てかアクシズ教教義ェ...
まぁエリス様はマジ女神で締めさせてもらいたいと思います、一応三期があればまた書くつもりですがどうなのでしょう...
一応OVAの話がありますので続きますが本編というくくりではこれが最終話です、短い間でしたがありがとうございました!!
あと活動報告にも書きましたがリクエストの方受付しますので活動報告の方にコメント下さい
エリス様マジ女神!


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休話 このしょうもないリーダーに癒しを!

OVAのネタバレになります、見てない人はブラバ推奨
いいって方はどうぞ!
ちなみに和真視点も上げますのでどうぞ!


「ようウィズ、遊びに来たぞー」

 

「カズマさん、それに皆さんも。いらっしゃいませ」

 

今日はパーティー全員でウィズの店に遊びに来ていた

 

「邪魔する」

 

「なんでアンデットの店なんかに」

 

「相変わらず産廃なものしか置いてないな」

 

「相変わらず失礼ですねシキは」

 

「でもウィズさんの店はそこらへんに店では取り扱ってないようなものも一杯あるから、見ていて飽きないんですよ?」

 

ゆんゆんはそう言っているがそれはそうだろう、駆け足の街でこんな上級者が使うようなものはおかしいし。なにより産廃のような効果の物しかないので、余計だ。そんな俺の思いは知らないゆんゆんは棚を物色していた、めぐみんはゆんゆんの近くで商品を見ていた

 

「はぁ...」

 

俺はひそかにため息をつきながら違う棚を見る、説明書きを読むのだがどうにも産廃だ。ましな商品はないのだろうか、いやあるにはあるが高いのだ。高級品なのだから仕方ないのだが、クエストを受けてもマイナスになるのは流石に手が出ない

 

「あの、今日はこれください!」

 

そんな声が聞こえそちらを見てみると、ゆんゆんがチョーカーを持っていた

 

「おや?願いが叶うチョーカーですか、それで一体どんな願いをかなえるつもりですか?」

 

早速めぐみんがゆんゆんをイジリ始めた、俺は今回は静観することにした

 

願いなんて聞くもんじゃないしな

 

「べ、別に何でもいいでしょ!//」

 

めぐみんに聞かれただけなのになぜか顔を赤くするゆんゆん、てかこっちをちらっと見たのは気のせいだろうか

 

だがめぐみんはそんなゆんゆんの態度に

 

「ほぉ...なるほどなるほど」

 

静かに闘志を燃やしていた、てかめぐみんが闘志燃やすとろくな結果にならないからやめて欲しいのだが

 

「な、なによ」

 

「別に。まぁ私はそんなものに頼らずとも、自分の力で目的を達成しますけどね」

 

煽っていた、何故かはわからないが煽っていた。まぁ別に俺に被害がなければいいけど、そんな言葉を受けゆんゆんはもっていたチョーカーを棚に戻した

 

「「・・・」」

 

無言で見合う二人、完璧にまじりあった視線の中央に火花が見える

 

「ねー私お茶欲しいんですけど、お菓子も欲しいんですけど」

 

「はいアクア様!ただいまお持ちします!」

 

そんな空気の中能天気に注文を出すアクアと、飲食店でもないのにその注文を受けたウィズは早速準備をしていた。なんだこれ、どうにもおかしな雰囲気になってきた

 

「すみません、ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

何とも珍しい人がウィズの店に現れた、そうギルドの美人受付嬢ことルナだ

 

なんかギルド以外で見たのは始めてなような気がする、てか休みあるのかルナ

 

「あのー?」

 

どうやらアクアのお茶の準備が忙しいらしく気が付いていない店主、仕方ないので俺が接客することにした

 

「どうしたんですか?」

 

「あ、ビャクヤサン。ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

俺は無言で店の奥を指さす、どうやらこけたようでルナは苦笑していた

 

「とりあえず今は忙しいですし、出直すか少し待った方がいいですよ」

 

「そうさせてもらいます」

 

「相変わらず騒がしいな、たまには癒しが欲しい...」

 

ウィズがこけたせいで物は飛んでくるは、商品は床に散らばるわで大変だ

 

俺は俺で散らばった商品を片づけていた、ルナも見ていられなかったのか手持ち無沙汰なのかはわからないが手伝ってくれた

 

「あ、カズマさん。後はそれを棚に戻すだけなので、貸してもらえますか?」

 

「え?」

 

ガシャンと音がしたのでそちらを向くと、何故かさっきの願いが叶うチョーカーをしている和真の姿が

 

「なんでお前チョーカーしてんの?」

 

「いや、装備すると幸運度が上がる商品なのかと思って...」

 

「だからってつける必要ないだろ、そもそも試しでつけていいものなのか?」

 

「か、カズマさん!?」

 

俺が試着いいのか聞こうと思ったら、ウィズがやけに焦った声で和真の名前を呼ぶ

 

「そ、そそそ、それ...」

 

「いや、願いが叶うチョーカーってやつ?事故でちょっとついたけど、やっぱりまずかったか?」

 

事故なら仕方ないとは思うが、やけにウィズが切羽詰まった表情をしているのが気になる

 

「それは願いが叶うまではずれない上に、日を追うごとに徐々に締まっていく魔道具でして...」

 

「呪いのアイテムかよ!?」

 

確かに和真の言う通り呪いのアイテムだな、てかなんでそんな危ないもん売ってるんだよ

 

「違います、女性に人気の商品なんです!死ぬ気になれば絶対に絶対に痩せられるって...」

 

自力で叶えるのに願いが叶うチョーカー、いやまぁ願いとかは自分で叶えるものだが死ぬ気でとか。なんかそれ本末転倒してないとも思うのだが、ルナは責任からか青い顔をしている

 

「で?和真ったら何をお願いしたの?」

 

「それが、特に何か願ったわけじゃないんだよ...」

 

「まずいですよカズマさん!このままだとチョーカーがゆっくりと締まって行って四日後に...」

 

「俺はこんな馬鹿馬鹿しいダイエット器具で死ぬってのか!?」

 

なんか皆さん俺の目の能力忘れてません?まぁ使うつもりはないが。だって面白そうじゃん、これから何が起こるかわからないが。間違いなく俺には実害はないだろうなので、本当にやばい時以外は力を貸すつもりはない

 

「私のせいですね...あの時私が声を掛けなければ...」

 

「いや、あの時ウィズが私やアクアに気を取られていなければ...すまないカズマ」

 

「一番悪いのは私ですから!私がこんな危険な商品を店に並べていたのがいけないんですから...」

 

「「「・・・」」」

 

なんかアクア以外言ってるのだが、俺、ゆんゆん、めぐみんは状況について行けない。俺は棚の商品を拾ってたわけだし、めぐみんとゆんゆんは何してたのかは知らないが謝らないとなると関係ないのだろう。そしてこの状況で謝らないアクア、流石だ。俺が感心しているとウィズが和真に近寄り、手を取る

 

「カズマさん、なんとしてでもそのチョーカーを外してみせますから安心してください!」

 

「わ、私もできる限り協力させてください!」

 

「私も尽力しよう!」

 

「わ、私は何も悪くないわよ。でも一応言っておくわね、ごめんね!もし死んだら、ちゃんとリザレクションかけてあげるから」

 

この状況でも自分に責任がないと言えるアクア、流石やでぇ...

 

「今度死んだら生き返らないでおこうかな、人生をストライキするわ」

 

「ちょ、何言ってるのよ。私と魔王討伐するのはどうなるのよ?」

 

流石に冗談じゃないとわかったのだろう、アクアはそんなことを言うが和馬の意思がそんなので代わるはずがなく

 

「あと俺が死んだら膨らんだ借金は全部お前のもんだから」

 

「わかったわよ!私も協力すればいいんでしょう!和真のチョーカが外れるまでみんなでなんでもするわよ!」

 

「おい、さらっと俺を混ぜるな。とりあえず俺は借金の方を何とかするから、和真の方はよろしく」

 

なんかろくでもない予感がしたので俺はそう言って店から出た

 

「「・・・」」

 

なんかめぐみんとゆんゆんもついてきたが丁度いい、二人と一緒にクエストに出ることにした

 

-------------------------------

 

「なんだこれ...」

 

クエストを終え屋敷に帰ったのはいいのだが、ひどい惨状だった。ダクネスは満ち足りた表情で倒れてるわ、アクアは泣いてるわ。ダクネスやアクアに関してはどうでもいいのだが、意外なことにウィズとルナは膝枕をしていただけだったようだ

 

「私、穢された...女神なのに穢された、うわーん!!」

 

なんてアクアが泣いていたがスルー、穢されたとか今更

 

「最低ですね、最低です...」

 

「見損ないましたカズマさん」

 

二人は俺の後ろでそう呟いたが、和真には聞こえていなかったようだ

 

「んで、まだチョーカー外れないのか?」

 

「あぁ、残念だが...明日も俺の願望を叶え続けるしかないな」

 

そう和真がつぶやくとアクアの嗚咽が止まる、まぁそういうことになるわな

 

「とりあえず明日も金稼ぎするか、巻き込まれたくないし」

 

「私も行きます」

 

「私も」

 

食い気味で反応するめぐみんとゆんゆん、まぁ少し話は聞いたがそういう反応になるだろう

 

「すまないな志貴...俺がこんな状態じゃなければ...」

 

「愁いの表情でしかも少し声かえて言うとかやめろ、虫唾が走る。だいたいそんな状態じゃなくても、お前は理由つけていかないだろうが」

 

「・・・」

 

目をそらす和真、事実だから何も言えまい。そんなしょうもない和真は放っておき、俺はルナに声をかける

 

「そう言えば受付嬢、ギルドの奴らが騒いでたぞ。戻ってこないって」

 

「そういえば...」

 

巻き込まれたとはいえ忘れていたようだ、だがこの状況和真が逃がすとは思えない

 

なので

 

「まぁ俺から上手いこと言っておこう。てなわけでギルド行ってそのまま公衆浴場行くから、後はよろしく~」

 

手をひらひら振りながらその場を後にする、もちろんめぐみんとゆんゆんも一緒だ

 

「あ、一つ言い忘れてた。和真に癒しを与えればチョーカー取れるのも早くなるかもな」

 

今度こそその場を後にする

 

-------------------------------

 

「さっきのはどういう意味だったんですか?」

 

屋敷から少し離れギルドへの道中、めぐみんがそんなことを聞いてきた

 

「さっきの?」

 

「癒しをってやつです」

 

ゆんゆんも気になったのだろう、めぐみんの後を引き継ぐ

 

「あー、そのことか」

 

簡潔に説明していく

 

「なるほど、それで癒しですか」

 

「そういうこと。でも和真にとって何が癒しなのか、それが分らないからねぇ」

 

「今の状況は癒しになってない...そういうことですか?」

 

「なってないことはないと思う、でも結局和真が満足いくまで続くんじゃないあれは」

 

「「あー...」」

 

魔道具なんてひどく曖昧なものだ、たぶん使用者の心次第そういうことだろう。めぐみんもゆんゆんも納得したのだろう、呆れた顔をしていた

 

-------------------------------

 

結局アクアたちが奮闘したようだが、芳しくなかったらしい。というか和真のくずい願望を叶えて言っただけなのだが、そして迎えた四日目。本来なら関係ない俺、めぐみん、ゆんゆんも集合掛けられて居間にいる

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

何故か土下座している和真、何故に

 

「ありがとうみんな、俺幸せだったよ」

 

「「「「「「はぁ?」」」」」」

 

今回の件に関係ない俺たちまでお礼を言われる、ほんとにどうしたんだコイツ

 

「えっと、カズマさん?」

 

「もういいんだ。今まで付き合ってくれてありがとう、本当にありがとう」

 

ウィズが困惑して和真に聞くが、また上げた頭を下げる和真。いつもの和真はどこに行ったんだろうな、てかイジリてぇ。そんな俺とは対照的にめぐみんとゆんゆんは困惑していた、まぁ俺達関係ないしね

 

「わ、私は筋トレして体を洗っていただけだぞ!もっとえぐい命令...を?」

 

興奮しているダクネスだが、和真を見た瞬間冷静に戻ったようだ。和真の表情が死んでいた、なにこれ今日の和真本当に面白いんだが

 

「恥の多い人生を歩んできました。欲望のまま振舞っても、タダむなしさが残るだけ...」

 

「えっと...」

 

これにはさすがのルナも苦笑い、あれか賢者タイムみたいなもんか?

 

「俺が死んだらこのジャージをもらってくれ。俺がこの世界にいたせめてもの証のために...」

 

死んでも生き返れるやん、それに俺のこの目があるのどいつもこいつも忘れてるだろ。とりあえずこの空気について行けないのだが、めぐみんやゆんゆんも同じらしくこっちに助けを求めていた。だが俺も同じなのでおとなしくしている

 

「ちょっと待ちなさいよ...」

 

アクアは何か言おうとするが和真が遮る

 

「アクア。お前が買ってきた焼きそばパンとシュワシュワ、おいしゅうございました」

 

何故か手を合わせて遠い目をしている和真、もうね...アクアたちとの温度差が激しすぎてね

 

「カズマさん...」

 

感極まったという感じで寄っていくウィズ、ウィズを皮切りに和真に寄っていく他の奴ら

 

「カズマ」

 

「カズマさん...」

 

そして最後にアクアが和真に寄っていく

 

何度でも言おう、なんだこれ

 

「和真、私と一緒に魔王を討伐するんでしょう?たしか...」

 

「カズマさんは死なせたりしません...もっと何でも言ってください」

 

もういろんな意味で見てられないんだが、それとウィズ何でも言ってくださいってこの状況でもろくな予感がしないからやめろ

 

「だったら最後に謝りたいことがあるんだ...ルナさん、ウィズ。二人と話している時俺の視線は、いつも胸のところに固定されてたんだ。ウィズは豊かだし、ルナさんは服がエロい上に飛び出そうなたわわが...そんな体をしているお前たちが悪いんだって思ってたんだ、ごめんな。ダクネス屋敷で一緒に暮らし始めてからお前には、おっぱいしか求めていない。お前はおっぱいだ、おっぱい。ごめんな。」

 

それぞれ自分の体を抱えていた、というかいい加減我慢の限界だ

 

「「「ごめんなっていえば何でも許されると思うな!!」」」

 

めぐみんもゆんゆんも我慢の限界だったのだろう、全く同じタイミングだった

 

「まさか女神である私まで穢すようなことを...」

 

外野である俺たちの声は聞こえてもいないのか、はたまた聞き流しているのか。和真の謝罪、というか謝罪になるのかすらわからないものは続いていた

 

「アクア。何とかお前をヒロインとして見ようと頑張ってみたけど、やっぱ無理だったわ。ごめんな」

 

「あっきらめないでよ、和真さん!諦めないでよー!おねがい、お願いだから和真さん!」「これでもう思い残すことはない、ありがとうみんな」

 

まぁアクアのヒロイン云々は置いといて、アクアが和真をガクガク揺らすとポトッと首についていたチョーカーが外れた、瞬間時間が止まった気がした

 

「あれ...なんで?」

 

「だから言っただろう癒しが必要だって」

 

馬鹿馬鹿しくなり俺は和真たちに背を向ける

 

「めぐみん、ゆんゆん。飯食うか?」

 

「いただきます」

 

「あ、私もお願いします」

 

なんか和真の悲鳴が聞こえるが気にしない、腹減ったし

 




そんなわけでOVAのはなしです、特に語ることはないので和真編に続く


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休話 このしょうもないリーダーに癒しを!~和真視点~

はい和真視点です、志貴視点を見てないと少しわかりにくいのでそちらを見てから見てください


アクアのなんでもする発言があったので、俺たちはウィズの店を離れ屋敷に帰ってきた

 

「あ、あの。カズマさん、寝心地はいかがですか?///」「カズマだよ~」

 

寝心地?そんなもの

 

「ウィズの太ももはひんやりしてて悪くない、あととても柔らかい。そして、ウィズが恥ずかしがっている様子もとてもいい」

 

アンデットだからなのかウィズの太ももは少し冷たかったが、だがその冷たさが気持ちよかった。柔らかしいな、それにウィズのテレ顔が最高です!

 

「そ、そうですか。それは、あの...どうも!///」

 

願いが叶うチョーカー、これはとてもいいものだ!首が完全に閉まるまで四日もあるんだ、何とかなるだろう。そんなことを考えているとルナさんが飲み物を持ってきてくれる。

 

「カズマさん、お飲み物はいかがですか?」

 

「いただきます。飲ませてください」

 

「は、はい...」

 

ルナさんにストローを持ってもらい飲ませてもらっている俺!

 

「うわ...流石和真ね」

 

「いいだろう。貴様が何を望むか知らないがこの私がすべて受け

 

「お前は鎧を脱いで腕立て伏せ100回」

 

ダクネスは喜んでいたが気にしない、それより俺は見たいものがある。流石フルプレートメイルだ落とした時の音がかなり鈍かった、だがダクネスは準備ができたのか腕立て伏せを開始した

 

「ほう...これは悪くないな」

 

「なっ!あんなけだもののような視線にさらされ逃れることも出来ないとは...奴の頭の中ではもっとあられもない姿に剥かれ...や、ヤメロー!だが私は騎士として屈するわけにはいかない!」

 

やはり自分の判断は間違っていなかった、俺の視線はダクネスの形を変えるお〇ぱいに視線が釘付けだ。ちなみにダクネスの発言は聞き流している、理解したくないのだ

 

「な、なんてこと。この男ここぞとばかりに美しい私たちに、欲望の限りを尽くすつもりね!」

 

「おまえはダッシュで焼きそばパン買ってこい」

 

「なんでよー!!」

 

「アクア様ー!」

 

アクアは泣きながら焼きそばパンを買いに行った、普段アイツには散々苦労させられているのだ。こういう時に役に立ってもらわないとな、まぁアクアのせいでウィズが立ってしまった為今はルナさんに膝枕してもらっているのだが。それにしてもゆんゆんとめぐみんがいないのが悔やまれる、まぁあの二人は志貴について行ってしまったのだが。でもあの二人になんかすると志貴から報復されそうだから助かったと言えば助かったのだが、まぁいい居ないなら居ないで他のメンバーで楽しめばいいだけだ!

 

俺はそう思い庭に移動する

 

「あの和真さん?膝枕って向きが逆なのでは?」

 

「俺が生まれた国にはこういう膝枕もあった」

 

「そ、そうですか」

 

そう今の俺は顔を太ももの方に向けているのだ!顔面に柔らかい感触が...いい匂いが...

 

すー、はー、すー、はー、おっとこれ以上は変態だと思われるので自重しておこう

 

「かってきたふぁ!」

 

「おそい!あと買ってきましただろ!」

 

「きまふぃた!」

 

なんかアクアの声が変に聞こえるのだが、疑問に感じつつ体を起こし紙袋を受け取る

 

「ん?おい、お前これ半分食っただろ」

 

「ふ、ふってない!」

 

「こいつ、リスみたいな顔しやがって!!」

 

口をもごもごし、頬を膨らませた状態で言うアクア。コイツは今の自分の立場が分かっていないらしい、いいだろう

 

「おいダクネス、腹筋は終わったか?」

 

「ああ、ちょうど今終わったところだが...」

 

頬を上気させながら俺を見るダクネス、こいつはこいつで息が上がったからなのか嬉しさなのかわからない。いや多分嬉しいんだコイツ、瞳の奥がよろこんでやがる

 

「ならちょうどいい、アクアとダクネスで野球拳だ」

 

「なっ!?」

 

「野球拳?」

 

「アクア説明してやれ、ルナさんはこっちに」

 

ウィズは堪能したので、今度はルナさんの方を堪能するために近くに呼ぶ

 

「ふざけんじゃないわよこのヒキニート!なんであたしが」

 

その言葉に俺は首元を撫でる、どうやらそれで察したようだ。わめいていたがダクネスの説明に入る、よきかなよきかな

 

「それじゃあ終わったら呼んでくれ、ではルナさん失礼します!」

 

そう言ってルナさんの太ももに顔面ダイブする、こっちも柔らかいなりぃ。結果から言うとアクアが惨敗、素っ裸になっていたが大事なところは隠してあったので見えなかった

 

べ、別に残念とか思ってないし!!アクアなんてペット枠だし!その状態で高級シュワシュワ買ってこいと言ったら流石に泣きつかれたので、服を着させて高級シュワシュワは買いに行かせた。まぁその後顔に落書きしてやったのだが、それから少しすると志貴たちが帰ってきたのだがすぐにギルドに行ってしまった。その際癒しがどうの言われたが意味が分からなかった、そうして一日目が過ぎていった

 

-------------------------------

 

そして迎えた二日目、俺は思いつく限りの願いを叶へ続けた。ウィズとルナさんのおっぱいの上に頭を置き、ワインを飲ませて貰ったり。太ももの感触を楽しんだり、アクア?もちろん仰ぎ係だ

 

ダクネスにはスクワットをしてもらった、揺れる乳...けしからん!

 

そう言えばウィズとルナさんに、ルパンダイブを決行したりしたんだった

 

「ふ~じこちゃ~ん!!」

 

とお決まりなセリフを言い胸にダイブ!もちろん胸を揉みしだいたりもしたのだが。いつの間にか眠っていたのだ、はてなんでなのだろうか?だが胸の感触とあの艶やかな声は忘れもしない...ごっつぁんです!!

 

-------------------------------

 

そして三日目、今日は風呂だ!

 

「私は体を洗っているだけでいいのか?」

 

「そうだ、それでいい。そしてそれを見ている俺!」

 

そうだこれこそがベスト!俺は昨日の一件で学んだのだやりすぎてはいけないと。何故眠っていたのかはわからないがそういうことなのだろう、なので俺は調子に乗らないことにした

 

「今日も女神たる私を穢すつもりね!何をさせるつもり!」

 

正直言ってペット枠のアクアだ、穢すも何もとか思うのだがまぁいい

 

「お前は天然温泉掘り当てろ、出来るだろ?」

 

「は?なんでよ?」

 

それまで俺の視線から逃れるように身をひねっていたが、俺の言葉の意味が分からないのかこっちを見るアクア

 

「おまえ水の女神だろ?おっと悪い、宴会芸の神だったかー」

 

「やってやるわよ!!女神の実力見せてやるわ!」

 

安い挑発に乗るアクア、よしこれでしばらくは静かだろう

 

「かゆいところはないですか?カズマさん」

 

右腕を洗ってくれているルナさんが聞いてくる、ここでいつもなら「しいて言えば前のほうかな?」とか言うところだが、今の俺は一味違う!

 

「うーん...とくにはないかな、そのまま続けてください」

 

「はい」

 

何もしないと見せかけて

 

「うんっ...」

 

「どうしたウィズ?」

 

「いえ...」

 

身じろぎするふりしてパイタッチ!、ふっふっふこれならばれまい。いつもなら調子に乗るが、今日の俺は違うのだ!でももう少しくらいならいいよね?ほんの少しくらいならパイタッチ増やしてもいいよね?そう思い身じろぎの回数を増やす、ふっふっふ大丈夫なようだ。ならこの際要求を変えても、問題ないよね!

 

「二人に提案があるんだ...次は胸で洗ってくれ、挟み込むようにな!!」

 

「「えぇっ!?」」

 

二人が驚いたような声をあげるが、俺は気にせず

 

「ほら、ほら!!」

 

「きたー!!」

 

アクアの声が聞こえたと思ったら、ケツに衝撃が走る

 

「んぎゃーーーーーーー!!!!!!!???」

 

それは俺が浮き上がるくらいのお湯がいきなり出てきたのだ!

 

ケツが!ケツがー!!

 

割れる、すでに割れてるけどよっつになるー!!

 

俺はケツのダメージが思いのほか大きく、これ以上調子に乗らないように寝た

 

-------------------------------

 

そして四日目、俺は居間にみんなを集めて謝った謝ったのだが

 

「「「ごめんなっていえば何でも許されると思うな!!」」」

 

と言われたが何のことかわからない、そのあとアクアに謝り俺は清々しい気持ちになりながらアクアに揺さぶられていた

 

だがポトリと落ちるチョーカー

 

「あれ...なんで?」

 

「だから言っただろう癒しが必要だって」

 

俺が疑問に思っているとシキは呆れた表情でそう言った、よくよく思い出してみれば俺はこれを付ける前に癒しが欲しいと言っていた。そうか、そういうことか。納得は行くがこの状況で外れるのは勘弁してほしい、だって目の前にいる四人はごみを見る目で俺を見ているのだから。志貴たちは飯だと言っていて、その背中は遠ざかっていた

 

「・・・ねぇクソニート、もう一度このチョーカーつけてみなさい。大丈夫、優しいみんながきっとあなたを助けてくれるわ」

 

そうして俺はエリス様と会うことになった...ぐうの音も出ないこと言われたけど

 




予想以上のクズマになった...(愕然
まぁ和真なら素でもこんなことしそうですが、そう言うわけでいったん終わりです。
リクエストなどありましたら活動報告の方で


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番外編 例えばこんな爆裂娘デートに祝福を

というわけでリクエストが来たので書きました、言った通りにクオリティは期待しないでねッ☆
では本編どうぞ!


「シキ、シキ!起きてください!」

 

「んぁ~...」

 

俺は気持ちよく寝ていると何かに揺さぶられる、朝の睡眠は何物にも代えがたいものなので無視をする

 

「おかしいですね、いつもはこのくらいゆすれば起きるのですが...」

 

一旦ゆするのをやめる誰か、そうだそのまま俺を寝させてくれ

 

一応起きてはいるが完全に意識は覚醒しておらず、このまま寝ることも可能なのだから寝させてほしいのだが

 

「ならここで日課を...黒より黒く、闇より暗き漆黒に

 

「お前は何をしてるんだ」

 

せっかくまどろんでいたのに一気に覚醒をする、それはそうだろういきなり爆裂魔法の詠唱が始まれば。そうして起きた俺を見て、件の犯人であるめぐみんは満足そうな顔をして

 

「おはようございますシキ」

 

と何事もなかったかのように挨拶をしてきた、いい根性してるわコイツ。そう思いながら俺は溜息をつき、挨拶し返す

 

「おはよう、めぐみん」

 

-------------------------------

 

「ほれ、お前の分だ」

 

「すみません」

 

まずは腹ごしらえということで飯を作る、ついでにめぐみんの分も作っておいた。なんと驚くことに俺はお昼近くまで寝ていたらしい、そんなに疲れることはしていないのだが珍しいこともあるものだ。ちなみに和真たちはクエストに行ったらしい、まぁゆんゆんもいるしよっぽどなことが起きない限り大丈夫だろう。ちなみにこの話はめぐみんから聞いた、どうも俺を起こす時にひと悶着あり留守番を任されただとか

 

「にしてもお前はクエストついて行かなくてよかったのか?」

 

「まぁゆんゆんもいますしね、よっぽどなことが起きない限り大丈夫かなと思いまして」

 

そうやら俺と同じことを思ったらしい、まぁせっかくのオフだゆっくり体を休めることにする

 

「てかやっぱり足らなかったな」

 

「そうですね...」

 

適当にあったもので作ったのだが、量がやはり足りなかった

 

「適当にどっか食いに行くか?なんかそれもそれで微妙だけど」

 

「ならサンドイッチなど買って、どこかに食べに行けばいいんじゃないですか」

 

「あー、確かにそれはいいかもな」

 

外はいい天気だ、飯を食ったら読書でもしようかと思っていたが丁度いいかもしれない

 

「んじゃ、行くか」

 

「少し待ってくださいよ...」

 

まぁ男と女では食べるスピードも量も違う、俺は食べ終わっていたがめぐみんは食べ終わっていなかった

 

「ほいほい」

 

-------------------------------

 

さてここはどこかというと、前に廃城に爆裂魔法を撃っていた場所だ。なんだかんだ言ってここからの眺めはいいのだ、とりあえず適当に買ったサンドイッチをめぐみんに渡す

 

「ほい」

 

「ありがとうございます。それにしてもあの時ならいざ知らず、行きにモンスターに出会わないなんて珍しいですね」

 

「確かに」

 

あの時はベルディアに怯えてモンスターはいなかったが、今はモンスターがいてもおかしくはない。なのにモンスターに合わないとは、運がよかったのだろう

 

「それで、なんでここに来たんですか?」

 

サンドイッチを食べながら聞いてくるめぐみん、だがそんなこと言われても特に理由などない

 

「別に理由はない。強いてあげるならここの風が気持ちいのと景色がいいからかな」

 

「なるほど」

 

まぁ廃城は薄気味悪いがここの風と青空は結構好きなのだ、めぐみんも何も言わずサンドイッチを食べ進めていた。俺達は特に会話はなかったが別にそれが苦痛ではなく、静かな時を過ごした。しばらく穏やかな日差しを浴びていると少し眠くなってきた、めぐみんはどうなのだろうかと隣を見ようとすると肩に軽い衝撃が

 

「すー...すー...」

 

どうやらめぐみんは寝てしまったようだ、こうなると俺は寝れないわけだがそれもまたいいだろう。しばらくめぐみんの寝顔を観察し、また廃城の方をぼーっと見上げていた

 

-------------------------------

 

夕方、俺たちは街を歩いていた

 

俺の方は両手に買ったものを持っていた、めぐみんには何も持たせてはいない。まぁあの後起きためぐみんは、なぜか顔を赤くしながら「今日の日課をしないと!」とかほざき爆裂魔法を使った。杖がなくしかも服装もいつもの物ではないので余計に疲れたのだろう、ついさっきまで歩けなかったのでおんぶしていたのだ

 

「すみません、持ちたいところなんですが...」

 

「気にするなって、お前やっと歩ける状態だろ」

 

申し訳なさそうだが、実際めぐみんはやっと歩いてる状態だ。そんな奴に重いものを持たせるわけにはいかない、それにこんなの俺は別に重いと思わないが。隣を歩くめぐみんだが何かを思いついたのか、手を伸ばし始めた

 

「これなら片方は重くないですよね」

 

ビニール製ではないが、袋に入ってる買ったものなのだが。めぐみんは袋の持ち手を片方持ったのだ

 

「そもそもそこまで重くないけどな」

 

「でもさっきより重くないですよね」

 

「まぁな」

 

めぐみんは嬉しそうな顔をしていたがこの状況に気が付いてないのだろう、周りの奴らはお熱いねぇとかほざいているのに。まぁ俺も別に気にしないが

 

それを見たゆんゆんが興奮しめぐみんに襲い掛かり、めぐみんが俺に助け求めたのはまた別のお話

 




はい!とりあえずめぐみん編でした。自然にデートに行く流れ、これが一番長く主人公と居たヒロインの貫禄。まぁ別にめぐみんがメインヒロインというわけではないのですが。この作品に限らずハーレムですが何か? まぁそんなことはさて置き、これがデートと言うのかは微妙ですが...まぁ女の子と二人で出かけてるんだしデートでしょ(暴論 少なくともめぐみんは志貴に好意を持っているわけですし。少し解説するってかめぐみんの服装ですが、アニメのアルカンレティアの服装だと思ってください。今日は珍しく早く仕事が終わったので早く帰れました、そのため書いたわけですが。気に入っていただけると幸いです


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番外編 例えばこんな紅魔の娘と普通のデートに祝福を!

というわけでリクエスト第二弾(と言ってもリクエスト自体は三人のデート書いてくださいなのですが)
相変わらずタイトルは無理やり、てか書いといてなんなんですが普通のデートって何ぞや(真顔
それでは本編どうぞ!



「し、シキさん!」

 

「どうしたゆんゆん?」

 

「わ、私と...私と!デートしてください!!」

 

「・・・」

 

穏やかな休日俺達パーティメンバーば珍しく、居間でまったりしているとゆんゆんがそんなことを言いだした。その瞬間時が止まった。だが次の瞬間あるものは顔をニヤニヤさせ、あるものは取り乱し、またある者は怨嗟の叫びをあげ、そのまたあるものは恥ずかしさのあまり部屋から出て行った。そして言われた俺は

 

「・・・とりあえず出かけるか」

 

と顔を真っ赤にしているゆんゆんを部屋から連れ出し、阿鼻叫喚になりつつある屋敷を出た

 

-------------------------------

 

「つまりめぐみんが色々あることないこと吹聴して、ゆんゆんを煽ってきたと」

 

「はい...」

 

件の騒ぎから少し経ち、俺は落ち着いたゆんゆんから事情を聴いていた。まぁ原因は何のことはない、いつものめぐみんのイジリだったらしい。だがあることないこと吹聴し、それを信じるゆんゆんもどうかと思うが。でもまぁ仕方ないのかもしれない、ゆんゆんは対人スキルはほぼゼロに等しいし。俺がそんなことを考えているとゆんゆんはなにを勘違いしたのか、さらに縮こまっていた

 

「どうした?」

 

「あの迷惑だったかなって...」

 

対人スキルうんぬんよりこの被害妄想の強さなんとかしたようなほうがいいような気がしてきた、いや俺の顔が怖いのか。密にショックを受けながら俺は、ゆんゆんの頭を撫でる

 

「あっ...」

 

「別に迷惑だとも思ってないし、怒ってもいないよ」

 

安心させるように、その思いが通じたのか顔がほころんでいく。ある程度撫でたところで俺は手を止める、ゆんゆんは名残惜しそうにしていたが俺だって名残惜しい

 

「さて、どこ行こうか」

 

「え?」

 

「だってデートだろ?」

 

「ふぇ?」

 

ちょっと反応が面白くてからかいたくもなるが我慢だ

 

「だからデートするんだろ?俺は別に断ってないしね?」

 

「え、まぁ、それはそうですけど...っ~~~///」

 

恥ずかしいのかまた顔を真っ赤にしていた、少し頭を撫で手をつないで先に歩く

 

「さて、どこ行こっか」

 

「シキさんに...お任せします//」

 

手を握る強さが少し強くなった、まぁ緊張がほぐれたんだろうよかったよかった

 

-------------------------------

 

「いらっしゃいませ同志よ!今日のおすすめはこの高い魔力にさらされるとばくは...おっと」

 

来店そうそうインパクトのある接客をされてしまった、店に入ったら店員が持っていたポーションが爆発するとか斬新すぎる

 

「捨て身のギャグだが10点だな、俺だけなら20点だが今日もゆんゆんも一緒だからな」

 

「相変わらず採点が厳しいな同志よ!だがまぁその通りだな、同志は殺しても死ななそうだがそこの紅魔の娘を巻き込むのはないな」

 

「失礼だろお前」

 

とりあえず来店、バニルに圧倒されっぱなしだがゆんゆんは。店に入ってから一言もしゃべってないあたり、さっきのはゆんゆんにはインパクトが強すぎたようだ

 

「いらっしゃいませーって、シキさんとゆんゆんさんこの間はありがとうございました」

 

「あー別に俺は湯治に行っただけだし」

 

この間というのはアルカンレティアの話だろう、そんなことを言われても逆にこっちが恐縮してしまううのだが。どっちかと言えばこっちが巻き込んだようなものだし

 

「そう言えば同志はハンスを討伐したんだったな」

 

「あーそう言えばお前も魔王軍幹部だったな」

 

よくよく考えたらバニルも魔王軍幹部だ、まぁ元だが

 

「まぁ元だがな」

 

「はっ!」

 

ようやくゆんゆんが再起動したようで、恐る恐るバニルに聞く

 

「あの、バニルさんはハンスさんを討伐した私たちをどう思ってるんですか?」

 

「どう?そうだな...」

 

少し考え込むバニル、だがすぐに答えが出たようだ

 

「別に何とも思わないが?強いてあげるなら貧乏店主がいたとはいえ、よくお前達みたいな初心者に毛が生えた程度の冒険者に倒せたというところだろうか」

 

「ほんと失礼だなお前」

 

「同志は別だ。同志だけなら熟練の冒険者と遜色ないしかも奥の手の目がある、だが装備は下位だ。あのチンピラ女神のバフがあったとしても、ハンスを倒せるかどうかは別だ。それは同志が一番よくわかっているだろう」

 

「まぁな」

 

バニルも言うことはもっともだろう、実際俺のズボンは弱いとはいえ対毒の効果もあるものだ。それがああもあっさり溶けしかも皮膚まで爛れていたのだ、あの毒の対策をしない限り分の悪い戦いだろう

 

「・・・」

 

ゆんゆんは黙っているままだ、何を気にしているのかわからないが

 

「ふむ...紅魔の少女よ一つ言っておこう、魔王軍幹部に横のつながりはほぼない。吾輩とこの貧乏店主は縁があったからこうして仲良くしているが、本来ならつながりがほぼないのが普通だ」

 

「ゆんゆんさん、やっぱりずっと気にしていたんですね...」

 

どうやらウィズにも聞いたようだった、なるほどそういうことを気にしていたのか

 

だが

 

「なぁゆんゆん、アイツはこいつらと違って一般人にも手を出してた。あそこでウィズやバニルの知り合いだからって見逃してたらこれからあれより大きい被害が出てたんだ、正しいとは言えないかもしれないが俺たちは出来ることをやったんだ」

 

「はい...」

 

とりあえずこれ以上気にすることをやめたようだ、少しは笑顔が戻った

 

「好きに見ていってくださいね、おもしろいものもたくさんありますから」

 

「面白いのは貴様の商才だ!またガラクタばっかり仕入れおって!!」

 

「ば、バニルさん!?」

 

いつもの漫才が始まった、この頃アクセルでも有名になってきているようで俺にもうわさが回ってきた

 

「あれが氷の魔女だもんなぁ...」

 

「シキさん」

 

ピシリと空間にひびが入った音が聞こえた、やばい地雷踏んだらしい

 

「バニル今ゆんゆんとデートしてるんだがいい店ないか?」

 

「ならばこの店に行くのが吉だ」

 

そう言って一枚の紙を投げてくるバニル、ちなみにバニルの現在位置は俺とゆんゆんペア反対側のウィズの間だ

 

「何も書いてないんだが...」

 

そう言って裏返してみると思わず動きが止まった、そんな俺の様子にゆんゆんが肩口からのぞき込む

 

「すまん間違えて貧乏店主の若いころの写真を投げてしまった、本当はこちらだ」

 

俺は受け取り急いで店を出る、バニル無茶しやがって。まぁあいつなら大丈夫だろうということで容赦なく見捨てる、とりあえず地図に従って歩く

 

「バニルさん大丈夫でしょうか?」

 

「あいつなら問題ないだろ、ここか」

 

外観はシックな感じだ、決して古いわけではないが古めかしい

 

「わー」

 

ゆんゆんも気に入ったのか目をキラキラさせていた、俺も少し満足。というわけで中に入る、中も中でシックな感じで好みだ。しかも客も少ない、どうやら穴場のようだ。本当にいい店を紹介してくれたものだ、適当に注文をし頼んだ料理を食べる

 

「これうまいな」

 

「おいしいですね」

 

本当にうまくて自然に笑顔になる、少し量は足りないが軽食なのでこんなものだろうとも思う。しばらく談笑していたのだがあまり長居も迷惑だろうとのことで二人で店を出た、外に出るともう夕方になっていた

 

「もう夕方か、早いな」

 

「そうですね...」

 

「帰るか」

 

「はい!」

 

さっき手をつないでいた時よりも距離が近くなっていた、それにつなぎ方も

 




はい、と言うわけでゆんゆん編でした
めぐみんとゆんゆんのお話はつながってはいません、もちろんこの後のクリスもです。前回説明忘れましたが、このお話は最後アクセルに帰ってきた後のお話です。OVAはあれ微妙ですよね時間軸、というわけで特に決めてません。
さて次のクリス編ですが今日は燃え尽きたので、投稿はありません。
それではまた後日、フルブでもやるかな


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番外編 例えば盗みの後に夜間デートに祝福を!

まったく関係ないですがフレームアームズガール始まりましたね、まだ見てなですが。そしてFGOのイベ、沖田派が負けてるってどういうことだ!釘宮病が多いのか!?ええやん沖田さん...桜セイバーいないけどさ!(血涙
まったく関係ない話を長々してしまいました、さてクリス編です。いつもの通りタイトルは無理やり、それにしてもやっぱりクリスもエリス様も可愛い...
そんなわけで本編どうぞ!


「ほら早くして!」

 

「別にそこまで急ぐ必要はないだろ...」

 

お宝を袋に詰めながら返事をする、そう今はクリスの手伝いで神器の回収をしているのだ。まぁもう警備の方にばれているから向かってきてるんだけどね、しかもここは地下で出入り口は一つだけ。まぁどういうことかというと積んでる、今もお宝詰めてるけど階段の方から足音聞こえるし複数

 

「なんでそんなに悠長に詰めてるのさ!あぁ、入口ふさがれた...」

 

丁度お宝が詰め終えるのと同時に入口がふさがれたようだ、数を見てみると一杯としか言えない

 

「まーた数だけはいるなこれ」

 

「なんでそんなに普通にしてられるのさ...」

 

クリスは隣で呆れているが別にこんなもの何とも思わない、実力はどうあれ俺より下なのは間違いないし。それにこんな狭い空間だあまり自由に動けないだろう、まぁそれはこっちも同じなのだが

 

「貴様らに逃げ場はないぞ!神妙に捕まれ盗賊団」

 

「「・・・」」

 

クリスの神器回収を手伝っていたためいつの間にか盗賊団と呼ばれる始末、まぁ気にしていないが。逃げ場はないと言ったがそんなことは全然ない、俺だけなら強行突破してもいいがクリスも一緒だ。しかもあらかじめやりすぎないように言われている、全くやりずらいったらありゃしない。俺達の一挙手一投足を観察している守衛たち、俺は溜息をつくと眼鏡を取る

 

「失礼」

 

「わっ!?」

 

クリスをお姫様抱っこし七夜を取り出す、武器を取り出したのを見て構える守衛たちだが

 

「まぁまぁゆっくりしていてください皆さん、それではこれから見せるのは種も仕掛けもないマジックです。刮目してご覧ください」

 

壁を蹴り天井の死の線に七夜を通す、いつもの通りすっと刀が入り綺麗に穴をあけた

 

そこから俺たちは脱出する

 

「さて行くぞ」

 

「・・・」

 

穴から出たのでクリスを下ろしたのだが、何故かぼーっとしているクリス。いや余裕はあるかもしれないが困るんだが

 

「おーい」

 

「はっ!」

 

ようやく再起動したようだが見る見るうちに顔が赤くなっていく、あれなんかデジャヴ

 

「おーい?」

 

「まったくあなたは何回言ったらわかるんですか!?///」

 

やっぱりいきなりお姫様抱っこはいけないらしい、でも思うんだが毎回言ってる余裕ないと思うんだ

 

「とりあえず説教は後で聞く、それじゃあ手筈通りに」

 

そう言って俺は足音が聞こえる方に走り出す、クリスは背中で何か言っていたが俺は聞こえないふりをして走った

 

-------------------------------

 

「・・・私が何を言いたいかわかってますよね?」

 

「いや?なんのことか

 

「わかっていますよね?」

 

妙にドスが効いた声で聞いてくるエリス様、後笑顔が怖いですてか素が出てますよ?

 

「いや、わかりますけど。言ってる暇ないと思うんですよ?いい加減慣れてくれませんか?」

 

「なんで私が悪いみたいになってるんですか!?」

 

王都の貴族屋敷から逃げた俺たちは俺のテレポートでアクセルにいた、まぁ王都も登録してあるのでクリスの足に使われている。なのでいくら声が大きくても問題ないのだ、まぁ夜だろというツッコミは置いておいて

 

「いや毎回同じようなこと言われてますけど、毎回おんなじ風に返してますよね?」

 

「それはそうですけど...でも手を引くとかでも」

 

「いやそれ逆に上る難易度上がってますよね?」

 

「・・・」

 

露骨に目をそらすエリス様、とりあえずこの議論に決着がつくことはない

 

「それで神器の方は?」

 

「もう封印したよ」

 

話を変えるために神器の話題を出したのだが、流石クリス仕事が早い。俺は神器に興味はないので見つけたとしてもクリスに渡している、なので揉めることもない。いつもならこれで解散なのだが逃げている途中にいいものを見つけたので、クリスを誘うことにする

 

「なぁクリスこの後暇か?」

 

「暇かって...まぁ予定はないけどさ」

 

「なら一緒に飲もうぜ、月見酒」

 

そう言って盗ってきた高級酒を掲げる、クリスは呆れ顔だ

 

「どうしたのさそれ」

 

「逃げてる途中で盗ってきた」

 

「はぁ...」

 

ため息までつかれたが断るつもりはないようだ、なので屋敷の屋根に上り俺の部屋にあったグラスを二つ持ってくる

 

「用意周到だね」

 

「まぁ誰か部屋に来たときになにも出せないのはな、てなわけでほい」

 

「ありがとう」

 

クリスの分を渡し、俺は自分のグラスに酒を注ぎ乾杯する

 

「乾杯」

 

「かんぱーい」

 

グラスを合わせ乾杯する、たまには月を見ながら一杯もいいもんだ。少量口に含みながらそんなことを思った、クリスもちびちび飲んでいるようだ

 

「にしても大変だよなー」

 

「なにがさ?」

 

「だってこんなの俺が手伝う前は毎回やってたんだろ?」

 

今日の盗みの話だ、こんなことを毎回やってたと思うと本当に頭が上がらない

 

「こんなギリギリになる前に逃げるけどね」

 

ジト目で見てくるクリス、まぁ確かにそうだろうな。まぁ別に悪徳貴族だ金がなくなろうがどうでもいい、善良な貴族なら取るもん取ったらずらかるが。まぁ神器所有に良い貴族などほとんど少ないけどな

 

「でも危ないこともあったわけだろ?」

 

自分のグラスに酒を注ぎながら聞く、クリスの方も少なくなっていたので注いでやる

 

「ありがと。まぁ、そうだね」

 

月をみながら酒を少し飲むクリス、実際語らないだけで大変なことはたくさんあったのだろう。そう思うと少しもやっとした気持ちになる、まぁ何も言わないから言うこともないのだが

 

「お疲れさん」

 

グラスを差し出す、クリスは驚いた顔をしていたが意図が分かったのか

 

「ありがと」

 

笑顔でグラスを合わせた、別にお礼を言われるようなことはしていないのだが。それからしばらく無言で飲んでいたのだが、クリスが俺に寄りかかってきた

 

「どうしたって...寝たのか」

 

肩口を見ると人の肩を借りて穏やかな寝息を立てていた、冬は抜けたとはいえもう深夜と言ってもいい時間帯だ流石に寒い。それにコイツの場合は薄着だ余計に寒いのではなかろうか、仕方ないので座布団代わりに使っていた俺の毛布を掛けてやる。ケツは冷たくなったが仕方あるまい、クリスはあったかくなったはずなのだが体をもぞもぞ動かしていた

 

そして

 

「どうしてこうなった」

 

俺は動いているクリスを気にせず飲んでいたのだが、いつの間にかクリスは俺の腕を抱いて寝ていた。左腕だからいいのだがこれでは動けない、まぁ酒はもう封をしたので飲むつもりはないが。しかもその影響でかけてやった毛布がずれていた、寒いのか余計に俺の腕を抱き込むクリス。仕方ないので俺ごと毛布にくるまる、あったかいのはいいのだがどうしようこの状況

 

「まぁいいや、考えるのもあほらしい。とりあえずお疲れさんクリス」

 

「んふ...ありがとう...すぅすぅ...」

 

流石に苦笑する、頭をなでてやると肩にすり寄るクリス

 

俺はしばらく撫で続けた、また起きたときに顔を真っ赤にして説教されたのは別の話

 




デートってなんだ?この頃デートが哲学になってきてる。そんなことはさておきクリス編、手伝うと言って手伝っている描写を書けなかったので満足。デートになったかは微妙ですけどね!とりあえずデートと言うことにしておいて下さい、お願いします。後はもう一本書くとか?その場合クリスは恥ずかしい目にあう可能性が?(書くものも決まってないので何とも言えませんが)


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